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2017.2.4 日本における外国人労働者・難民の受入状況、日本人の労働参加率、働き方改革について (2017年2月6、7、9《図の説明》、11日追加)
     
 2017.1.28  外国人労働者と雇用事業所数推移 2016年外国人労働者数 外国人労働者賛否   
  東京新聞                2017.1.28西日本新聞          2016.2.4朝日新聞

(図の説明:日本で働く“外国人労働者”は次第に増え、日本全国では2016年10月末で108万3,769人となったが、総人口(1億2,698万人)に占める割合は0.85%にすぎない。そのうち九州は59,053人で日本全体の5.4%だ。また、“外国人労働者”と呼ばれている人のうち、技能実習生や留学生のアルバイトは本来の労働者ではない上、経済連携協定による受入者も3年で帰国を求められる人が多いため、労働者としてあまりあてにならない。なお、我が国は、専門的・技術的分野の外国人労働者は積極的に受け入れているが数が少なく、永住者・定住者には戦前から日本に住んでいる人も入っている。なお、外国人労働者の受け入れには、全体では過半数の人が賛成だが、40代男性のみ反対の方が多い)

  
      *1-5、2017.2.4佐賀新聞より                        労働力人口推移
                                     女性の就労が進む場合と進まない場合

(図の説明:日本の労働力人口は、女性や高齢者の就労が進んでも減少するが、進まなければ急速に減少する。そのため、外国人労働者の受入は合理的な選択となっており、外国人労働者なしでは考えられない職種や地域もあるため、受入地域は外国人と生活者として共生する準備が必要だ)         

(1)日本における外国人労働者と難民の受け入れについて
1)外国人労働者と難民の受け入れについて
 厚労省の調査で、*1-1のように、日本で働く外国人労働者が2016年10月末時点で108万3,769人になったことが分かり、厚労省は、①政府が単純労働に従事する技能実習生の受け入れを拡大し ②留学生の就職支援を強化し ③高度技術を持つ人材の受け入れが増えたことが要因だとしている。

 しかし、一番上の左図の専門的・技術的職種、永住者・定住者、看護師・介護士など特定の職種の人のみが外国人労働者であり、技能実習生・留学生は正確には技術や知識を学びに日本に来た人で労働が目的で来た人ではないため、世界標準では外国人労働者と認められないだろう。

 また、特定の職種の外国人労働者も、*1-2のように、労働基準法などを順守せず過酷な労働を強い、日本人と比較して給与水準が低く設定されて、合理的理由なき差別のある職場も多いのは問題だ。

 さらに、難民については、*1-3のように、日本政府は今年から5年間でシリア難民の留学生とその家族を計300人を受け入れるそうだが、規模が小さすぎて殆どの人が救われず、シリアで約480万人が難民として周辺国に逃れている中で、欧米諸国の①米国60,964人 ②カナダ48,089人 ③ドイツ43,708人 ④英国20,000人 ⑤フランス16,497人 ⑥ブラジル11,450人 ⑦ノルウェー9,000人 ⑧スイス6,700人 と比較して、受け入れ人数があまりにも少ないと言わざるを得ない。

2)イスラム教徒の受け入れについて
 それでは、大量のイスラム教徒を受け入れた場合についてだが、日本では「信教の自由」を根拠に学校など公共の場での女性のベールを禁止したり、浜辺でのブルキニ着用を禁止したりすることを批判する声が強いが、これは、実状を知らない日本人の甘さだ。

 何故なら、その傍にいるイスラム教徒の男性は、ベールをかぶっていない女性や浜辺で通常の水着を着ている女性や教育を受けて社会で自由に活躍している女性について、それが異教徒であってもひっかかるものがあるため、近くにいる日本女性の行動も制限されることになるからだ。例えば、私は、20年くらい前、ODAでキルギスタンに行った時、「日本人女性がODAで来ていることが知れ渡って、街のイスラム教徒の男性がつけまわしていて護りきれないから、早く仕事を終わって日本に帰って」と、同じチームの男性チーフに言われて、ショックを受けたことがある(ちなみに、同じチームに親切なイスラム教徒の男性もいて、一緒に市場を見に行き、説明を聞いて、よい見聞もできたことを付け加えておく)。

 また、多くのイスラム教徒の移民を受け入れているフランスでは、*1-4のように、沿海のリゾートでブルキニ着用を禁止した自治体の数が約30に上り、サルコジ前大統領を先頭に右派勢力はブルキニ着用を全国で禁止する措置の法制化を強く求めており、一方、ベルナール・カズヌーブ内相は地元紙のインタビューで「ブルキニの着用を法律で禁止するのは憲法違反だ」と指摘しつつ、「イスラム教徒側にも、引き続き私たちと共に男女平等、共和国の不可侵の原則、寛容さに関わっていってもらいたい」と注文していることから、現在の状況が伺える。そのため、私は、イスラム教も、もう中世型を脱して21世紀型に変化すべき時だと考える。

 そこで、日本がイスラム教徒の難民を国内に受け入れるにあたっては、日本国憲法で男女平等や教育の権利・義務、勤労の権利・義務などの必要事項が定められており、民法で重婚の禁止が定められており、男女共同参画基本法や男女雇用機会均等法・女性活躍推進法もあるため、「日本国内では日本の法律に従う」という誓約書への署名を最低の受入要件とし、その意味をしっかり説明しておく必要がある。

3)外国人労働者や難民の受け入れについて
 佐賀県基山町長野地区の住民は、*1-5のように、外国人に自転車や地域で暮らすためのマナーを身につけてもらおうと、英語、ネパール語、中国語、ベトナム語、日本語の5カ国語で解説し、親しみやすいイラストを添えて小冊子を作ったそうだ。これは、日本人も勉強した方がよさそうだが、今後は、外国人労働者を雇う企業が増え、外国人労働者を受け入れた方が地域も活性化するため、重要な一歩だろう。

 また、過疎地や国境離島ではない離島で、既にある学校や空き家などのインフラを使い、まとまった数の外国人労働者や難民を、まずは農林漁業や中小企業の被用者として受け入れることも考えられる。

(2)女性・高齢者の雇用について
1)高齢者の定義と定年制について
 *2-1のように、老年学会が高齢者は「65歳以上」ではなく「75歳以上」としたため、高齢者の定義、定年年齢・年金支給開始年齢の妥当性について議論が始まった。確かに、日本人の平均寿命が延び、2015年は女性87.05歳、男性80.79歳になったため、75歳くらいまで働ける高齢者は多いだろう。

 そのため、定年制を廃止して働きたい人は働く方式にするのが理想だろうと私も考える。しかし、その際には、望む仕事が得られるかどうか、教育は人生の前半だけでなく途中での追加も必要なのではないかということが問題になる。

2)労働参加率上昇の必要性
 九州経済調査協会は、*2-2のように、急速な人口減少で企業の人材確保が難しくなっており、今後はさらに争奪戦が激しくなるため、女性や高齢者など多様な人材の活用に加え、限られた要員で稼ぐ力を高めることが必要だとしており、尤もだ。

 しかし、女性は賃金よりも職種や勤務時間、休日などを重視しているとして、①短時間勤務 ②地域限定正社員 ③再雇用 ④IT技術を活用した「テレワーク」の導入 などを提言しているのは、「正社員での採用」や「男性との同一労働同一賃金」の仕事が自由に選択できた上での話だろう。「女性=短時間勤務、自宅でのテレワーク、再雇用を希望する」と位置づけるのは、家事と仕事の両方を女性が行うことを女性も望んでいるという前提の男性の発想であり、30~50年古いと言わざるを得ない。

(3)日本における明確な女性差別
 私も驚いたが、*3-1のように、埼玉県川越市のゴルフ場が女性の正会員を認めていなかったのだそうだ。これは、女性に、ゴルフをするような仕事上の場面を想定していないということだろうが、私から見ると、「はあ?何を時代錯誤してんの!」と言いたくなる状況だ。ちなみに、関東には、公立高校も男女別学の地域が多く、これは高校から男女で別の教育をしているということで、埼玉県もその一つだ。

 そして、それを批判した小池百合子東京都知事に対し、丸川珠代五輪相は電話で真意を聞いたそうだが、真意を聞くということは、何か他に真意があることを想定していたのだろうか? 小池東京都知事が「言葉通りです。せっかくスカートをはいておられる五輪相もいるのだから、もっと明確に言うべきではないか」と言われたのは、全く同感だ。

 なお、*3-2のように、成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案に、婚姻適齢を男女とも「18歳以上」に統一する規定が盛り込まれていることが分かったと、佐賀新聞が「置き去りだった差別」として記載している。先進国では男女同一が普通であるのに、日本では女性の方が心身の発達が早い(そして発達が速く止まる)などとしているのは非科学的であり、男女平等後進国のなせるわざだ。

<外国人労働者と難民の受入状況>
*1-1:http://qbiz.jp/article/102594/1/
(西日本新聞 2017年1月28日) 外国人労働者100万人突破 全都道府県 前年上回る
 日本で働く外国人労働者が初めて100万人を突破し、2016年10月末時点で前年比19・4%増の108万3769人になったことが27日、厚生労働省の調査で分かった。08年の集計開始以来最大の増加率で、全都道府県で前年を上回った。政府が事実上、単純労働に従事する技能実習生の受け入れを拡大してきたことなどが背景にあり、国民的議論がないまま外国人労働者受け入れが進んでいる。厚労省は留学生の就職支援強化や、高度な技術を持つ人材の受け入れが増えたことが要因としているが、働き先は製造業が31・2%、卸売・小売業が12・9%で、人手不足感の強い業種を中心に、外国人労働者が増えている。全国の労働者の2%程度を占め、雇用する事業所数も最多の17万2798カ所に達した。在留資格別でみると、高度で専門的な知識のある人材が20・1%増の20万994人なのに対し、日本の技術を学ぶ技能実習が25・4%増の21万1108人、留学生が25・0%増の20万9657人となっている。国籍別での最多は中国の34万4658人で、前年比6・9%増。ベトナムが56・4%増の17万2018人、フィリピンが12万7518人で続いた。増加率では、ネパールも35・1%と大幅に伸びた。都道府県別では、東京が最多の33万3141人で、2番目に多い愛知の11万765人と合わせ2都県で全体の4割が集中。九州では福岡が全国で8番目に多い3万1541人で、留学生アルバイトの比率は全国最多の42・7%だった。政府は介護現場での技能実習生受け入れの解禁を既に決め、今国会では国家戦略特区を活用して農業分野で外国人が働けるよう法改正する方針で、今後も受け入れを拡大する。
*外国人の就労 外国人が日本で働くためには在留資格が必要で、大きく分けて(1)永住者や日本人の配偶者ら、日本人と同じように就く仕事に制限がないグループ(2)外交官や医師、外国料理の調理師らそれぞれ定められた範囲、職種で就労が認められるグループ−がある。技能実習生や経済連携協定(EPA)に基づく看護師などは(2)のグループで、昨年の入管難民法改正で新たに介護分野も加わった。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017020301001792.html (東京新聞 2017年2月3日) 比女性らと介護施設が和解、大阪 過酷労働を陳謝
 大阪府東大阪市の介護施設「寿寿」に勤めていたフィリピンから来日した男女ら10人が、厳しい条件で勤務を強いられたなどとして、未払いの賃金や慰謝料などを求めた訴訟が3日、大阪地裁(菊井一夫裁判長)で和解した。和解は、施設側が労働基準法などを順守せず、過酷な労働を強いたことを陳謝し、総額計約1千万円の解決金を支払う内容。訴状などによると、10人はいずれもフィリピンから来日した20~50代の男女。日本人の職員に比べ給与水準が低く、差別的な待遇だったとし、それぞれの未払い賃金のほか、残業代など計約4100万円を請求していた。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/ASK225HLZK22UTFK00R.html?iref=comtop_list_int_n03 (朝日新聞 2017年2月3日) シリア難民、300人規模で受け入れへ 政府、定住に道
 日本政府が今年から5年間で、シリア難民の留学生とその家族を計300人規模で受け入れる見通しになった。留学生は配偶者と子供を帯同でき、家族にも生活手当が支給される。留学終了後は必ずしも帰国する必要がなく、事実上家族とともに定住する道を開くことになる。特定国のまとまった難民受け入れ策としては、1970年代後半から2005年までに1万人を超えたインドシナ難民、10年から計123人が来日しているミャンマー難民以来となる。国際協力機構(JICA)の技術協力制度を活用し、年20人の留学生を受け入れる。対象はレバノンとヨルダンに逃れたシリア人難民。JICAはシリアの一般家庭の家族構成を踏まえ、5年の受け入れ数は300人規模になると試算。今年夏、最初の20人と家族が来日する予定だ。日本政府は昨年5月、JICA枠と文部科学省の国費外国人留学制度枠(年10人)を使い、5年間で150人のシリア難民を受け入れると表明。主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)の議長国として難民問題に前向きに取り組む姿勢をアピールする狙いで、留学生の募集や留学先の選定を進めてきた。JICA枠は、留学終了後の帰国を義務づけないうえ、留学中は本人に月約14万円、配偶者に月1万3千円、子供1人当たり月6500円を支給するのが特徴。日本での就職も後押しし、事実上定住を容認する内容だ。JICAは「あくまでも帰国して復興を担う人材の育成が目的だが、(内戦状態の)シリア情勢を考えると卒業後すぐに帰国しなさいとはならない」(担当者)と説明する。日本は欧米各国に比べて難民受け入れに後ろ向きで、15年に難民認定されたのは27人。一方で、混乱が長期化しているシリアでは約480万人が周辺国などに逃れているとみられ、欧米諸国は数年前から、外国に逃れた人を別の国が受け入れる「第三国定住」制度で多くのシリア難民を受け入れてきた。この制度は日本にもあり、これまでミャンマー難民を受け入れてきた。シリア難民については、政府内に「第三国定住制度で受け入れるほど、国内の世論が熟していない」との意見があり、JICAの既存制度を活用することにしたという。移民大国の米国ではトランプ政権が誕生し、難民受け入れの規制に転換。欧州でも反移民を掲げる右派勢力が台頭している。世界の難民政策が曲がり角を迎える中、日本はミャンマー難民の2倍以上のシリア難民を受け入れることになる。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のダーク・ヘベカー駐日代表は「日本はまだ、永住を前提としたシリア人の定住を受け入れる準備ができていない。一方で、何かしなければならないことをよく分かっている。留学生としての受け入れは『妥協案』なのだろう」と指摘する。難民問題に詳しい筑波大の明石純一・准教授は「定住も意識しており、中東の難民問題へのアプローチとしては画期的。ただ人数が圧倒的に少ない。保護を必要とする世界の難民全体のうち微々たる数に過ぎない。今回の仕組みをパイロット事業と位置づけ、受け入れ人数を広げていってほしい」と話している。(機動特派員・織田一)
     ◇
■主要国のこれまでのシリア人難民受け入れ
                   ※表明分含む
  国名       人数
①米国      60964
②カナダ     48089
③ドイツ     43706
④英国      20000
⑤フランス    16497
⑥ブラジル    11450
⑦ノルウェー    9000
⑧スイス      6700
-----------------------------------------------------------------
日本        300規模  ※日本はJICA枠での今後の受け入れ見通し。
                    そのほかは、昨年末時点の国連難民高等弁務官事務所調べ。

*1-4:http://www.afpbb.com/articles/-/3098942?utm_source=yahoo&utm_medium=news(朝日新聞2016年8月29日)ブルキニ禁止法は「違憲」 仏内相 、取り返しつかない結果に警鐘
 フランスのベルナール・カズヌーブ(Bernard Cazeneuve)内相は28日に掲載された地元紙のインタビューで、同国でイスラム教徒の女性向けの全身を覆う水着「ブルキニ」の着用を法律で禁止するのは憲法違反だと指摘するとともに、こうした法律を制定すれば取り返しのつかない悪影響を及ぼす恐れがあると警鐘を鳴らした。日刊紙ラクロワ(La Croix)のインタビューに応じたカズヌーブ内相は、国内の一部自治体が導入して物議を醸しているブルキニ規制について、政府としては反対という立場を重ねて示した。この問題は女性の権利やフランスの厳格な世俗主義をめぐって、国内外で大きな論議を招いている。カズヌーブ内相は「政府が(ブルキニ禁止の)法制化を拒否しているのは、こうした法律が違憲かつ無効であり、対立や取り返しのつかない緊張を生む恐れがあるからだ」と説明。その上で「イスラム教徒側にも、引き続き私たちと共に男女平等や、共和国の不可侵の原則、寛容さに関わっていってもらいたい」と注文した。仏沿海のリゾートでブルキニ着用を禁止した自治体の数は約30に上っているが、フランスの行政裁判の最高裁にあたる国務院は26日、うち1つの自治体による禁止措置を凍結する判断を下した。この判断は他の自治体にも影響を及ぼす判例になるとみられている。一方、来年の次期大統領選に出馬を表明した二コラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)前大統領を先頭に、右派勢力はブルキニ着用を全国で禁止する措置の法制化を強く求めている。

*1-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/402173
(佐賀新聞 2017年2月4日) 基山町長野地区住民ら、外国人向け冊子作成、相互理解へ活用
■暮らしのルール5カ国語で解説
 外国人に自転車や地域で暮らすためのマナーを身につけてもらおうと、基山町長野地区の住民らが小冊子を作った。交通標識などを英語、ネパール語、中国語、ベトナム語、日本語の5カ国語で解説し、親しみやすいイラストも添えた。舟木喜代美区長(67)は「声かけやあいさつと併せて活用し、融和を図っていきたい」と意気込む。長野地区には企業の工場などが多く立地している。近年は外国人労働者を雇う企業が多く、通勤のため地区内を自転車で通行する外国人の数が急増。道路上での並走や2人乗り、ごみのポイ捨て、深夜に大声で騒ぐなどの事例が相次いだため、地区として対策に乗り出した。冊子はA6判12ページのフルカラー。県国際課や県警などの協力を得て200部を作成し、ネーティブスピーカーに表現に間違いがないか確認してもらうなど念入りに準備した。自転車の乗り方では、「車道の左側を走る」「2人で乗らない」「携帯電話は使わない」などの基本マナーを紹介。「くらしのルール」編では、「地域の人に会ったらあいさつしよう」「ごみの投げ捨てはいけません」「住宅地は静かに通りましょう」などと呼び掛けている。1月末に街頭で通勤途中の外国人に冊子を配布したほか、企業3社に計80部を贈った。舟木区長は「異国の地で暮らすための、基本的なマナーを知らないままの人も多い。今後も外国の方は増えていくと思うので、啓発に向けて町全域で継続して取り組んでいきたい」と話す。

<女性・“高齢者”>
*2-1:http://mainichi.jp/articles/20170201/dde/012/040/003000c
(毎日新聞 2017年2月1日) 特集ワイド 「高齢者は75歳から」の是非 年齢の線引き、捨てよう
 高齢者は「65歳以上」ではなく、「75歳以上」に--。こんな提言が今、話題を集めている。確かに最近の中高年は元気で、そう言われれば納得しそう。ただ、多くの人が見直しの動きを警戒しているのも事実だ。そこで経験豊かな有識者に聞いてみた。高齢者の定義変更をどう見ますか?しゃれたレストランを都心などで手掛ける会社の役員が打ち明けた。「困ってるんですよ。60代の優秀な料理人がどんどん定年になっちゃって……。このままでは経営が立ち行かない」。今の60代は現役とまったく変わらない。気力も体力も衰えず、高い技術は若い人に代えられないほどだ。でも会社にはルールがある。働き続けてほしいと願うが、臨時雇いになって給料が激減すれば辞めてしまう。この会社は定年後も待遇を変えず、人材をつなぎ留める方法を真剣に検討し始めた。日本人の平均寿命は延びている。厚生労働省によると、2015年で女性87・05歳、男性80・79歳。戦後間もない1947年は女性54歳、男性50歳だった。「人生50年」は過ぎ去り、今や「80年」の時代。それなのに、現状に合わない“高齢者像”が生き残り、さまざまな場でひずみをもたらしている。そんな中、日本老年学会などがこの1月、65歳以上の体の状態や知的機能は10~20年前と比べ5~10歳ほど若返っているとし、医療や介護などで「65歳以上」とされてきた高齢者の定義を「75歳以上」に見直すべきだと提言した。大きな狙いは65~74歳の積極的な社会参加を促すことだ。社会問題について積極的に発言しているライフネット生命保険の会長、出口治明さん(68)に提言の印象を尋ねると、「高齢者の体力などを考えたら、ごく自然なことでしょう。当たり前の話では」と笑う。そうはいっても、この線引き、なんとなく割り切れない思いを抱く人は少なくない。人気長寿番組「世界ふしぎ発見!」(TBS系)の司会などとして活躍するテレビキャスター、草野仁さん(72)は、まずこう問い掛ける。「『高齢者』とひとくくりにすることに無理があるのではないでしょうか」と。「人は年を取るほど、体力をはじめ、いろんな意味でバラつきが出てきます。一律に『高齢者』と決めつけることは好ましくありません」。生きてきた環境が異なるうえ、大病をしたり、しなかったりなど健康面の違いも生じ、高齢になるほど個人差は大きいとされる。若者と同じように精力的に外で動きたい人もいれば、「引退」してのんびり過ごしたい人などさまざまだ。それを一つにまとめることに違和感を覚える人は多い。今回の提言では、これまで「高齢者」と呼ばれてきた65~74歳を、高齢者の準備段階となる「准高齢者」と位置づけた。これには言葉のプロである草野さんは不満を隠さない。「75歳以上を『後期高齢者』と呼ぶこともありますが、『もうアウト』と言わんばかりの愛情のない表現です。『准高齢者』には、それと同じ冷たさを感じますね。私はそんなふうに呼ばれたくないなあ」。なぜわざわざ「准高齢者」とくくるのか。普通の「大人」でいいではないか。「高過ぎるわね、定義が75歳以上というのは」。はっきりとした口調で話すのは、エッセイストで青森大副学長の見城美枝子さん(71)だ。見城さんは、公的機関の委員や大学の同期会会長を務めるなど活動が幅広い。同世代との付き合いも多い中、体感として、こう感じるという。「女性なら70歳を楽々と越えていきますが、男性は少し違います。一握りの特別な人は別でも、70歳が一つの峠になっていると思うんです」。定義するにはもっときめ細かな配慮が必要だというのだ。見城さんのように、提言に対する慎重な見方は多いが、それは多くの人が直感的に、ある種の不安を感じるからといえよう。現在の社会保障制度の多くは65歳を基準としているからだ。「高齢者は75歳以上」という社会的な合意ができれば、年金の支給開始年齢の引き上げなど社会保障の見直しにつながる可能性もある。見城さんもこの可能性を否定せず、こう主張する。「社会保障制度などを見直すというなら、国はまず、『これまでの制度設計には誤りがありました』と謝罪すべきです。既存の制度は設計ミスで維持できないときちんと説明し、国民の納得を得た上で次に進まないといけません」。まるで暗雲が垂れこめるようにばかり言われる「超高齢社会」。若者が抱える閉塞(へいそく)感を打ち破るためにも、定義変更の提言をチャンスとし、日本が進むべき未来像をはっきり示すべきだと呼び掛ける。
●定年制を廃止せよ
 そもそも、年齢を基準に物事を決めることは必要なのだろうか。草野さんは、日本のテレビ放送はニュースなどで人を紹介する場合、「何歳」と伝えるが、海外ではそういう例はほとんどない、と指摘。「日本人は相手に敬意を払うため、年齢に対し非常に細やかな神経を使います。それが逆に、何かに挑戦する時の阻害要因になってしまう」と述べ、こう強調する。「もう70歳だから遅すぎるとか、年齢を意識して前に進めない人がとても多いが、そんな意識は絶対必要ない。やれる範囲のことに一生懸命打ち込むことこそ、生きる充実感につながると私は思います」。年齢なんか気にしていたら、本当に生きているとは言えないというのだ。草野さん自身、同年代の人たちと競い、100歳以上も参加する「マスターズ陸上」に、75歳になったら挑戦しようと準備している。高齢者の定義変更自体に異論はないという出口さんに、社会保障制度について改めて聞いてみた。出口さんは「今の制度はゆがんでいる」とし、もはや年齢を基準にしてはいけないのだと主張する。「少子高齢化の本質というのは、年齢制限を設けない『年齢フリー』の原則に移らなければ、国はもたないということです。その選択肢以外に生きる道はないんだから」。超高齢社会の中、若者が多くの高齢者を支えるのは限界がきている。一定の年齢になれば全員に公的年金を支給する従来の形ではなく、生活にあえぐシングルマザーなど本当に困っている人に集中して給付するよう仕組みを変えなければいけない。だから、年齢に関係なく、お金がある人は相応の負担をし、幾つになっても働きたい人は働く。そのためには定年制を廃止するしかない--。それが出口さんの主張だ。  実際、出口さんが経営するライフネット生命に定年制はない。「定年は戦後日本の高度経済成長期に作られた慣習でしかない。社会の変化に応じた構造改革をやらないことが大きな問題ですよ」。年齢を重視し、「高齢者」とくくることに何の意味があるのか。高齢者の定義見直しについて考えていくと、根源的な疑問にたどりつく。

*2-2:http://qbiz.jp/article/102952/1/
(西日本新聞 2017年2月3日) 女性、高齢者の活用提言 九州経済白書「柔軟な人事制度を」
 九州経済調査協会(福岡市)は2日、「人材枯渇時代を生き抜く地域戦略」と題する2017年版九州経済白書を発表した。急速な人口減少で企業の人材確保が難しくなっており、今後はさらに争奪戦が激しくなると予想。女性や高齢者など多様な人材の活用に加え、限られた要員で稼ぐ力を高めるためにも、人口増加に支えられてきた「これまでの成功体験から脱却」し、働き方の大転換を図る必要があると提言している。国勢調査によると、九州地域の生産年齢人口(15〜64歳)は2000年に比べ足元で1割以上も減少している。九経調が地場企業・団体を対象に実施したアンケート(有効回答数741)では、55・1%が人員について「不足」「やや不足」と回答。要因として「地域の人口減少」などを挙げる企業が多く、「人口減少や高齢化といった構造的要因で人材不足が顕在化してきた」ことが浮き彫りになった。アンケートで、人材不足解消への取り組みを聞いたところ、「正社員の採用拡大」や「給与の引き上げ」が上位に入った。だが、政府が経済成長を支える「最大の潜在力」と期待する女性は賃金よりも職種や勤務時間、休日などを重視しているとの調査もあり、白書は企業側との認識に「ずれ」があると訴えている。人材確保のためには、賃金の引き上げだけではなく、柔軟な人事制度が重要と指摘。先進事例を紹介しながら、短時間勤務▽地域限定正社員▽再雇用▽IT技術を活用し自宅でも仕事ができる「テレワーク」の導入−などを提言した。また、九州地域で機械化やICT(情報通信技術)の導入を検討している企業は少数であるとして、人材枯渇時代を見据え「ICTやロボット、人工知能(AI)といった新しい技術の導入にも積極的になるべきだ」としている。 

<日本における明確な女性差別>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017020301001360.html
(東京新聞 2017年2月3日) 【政治】 丸川五輪相、都知事に真意問う ゴルフ会場巡る批判で
 丸川珠代五輪相は3日の記者会見で、2020年東京五輪のゴルフ会場が女性正会員を認めていない問題を巡り、批判している小池百合子東京都知事に電話で真意を聞いたと明かした。「『言葉通りです』と直球が返ってきた。ありがたく承る」と述べた。小池氏は今月1日「せっかくスカートをはいておられる五輪相もいるのだから、もっと明確に言うべきではないか」と政府の対応に不満を示していた。会見で丸川氏は「(都庁のある)西新宿から永田町のグリーンに『ワンオン』をずばんと打たれた感じだ。私も飛距離を伸ばすよう頑張りたい」と競争心をちらつかせた。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/401877 (佐賀新聞 2017年2月3日) 結婚、女性も「18歳以上」 民法改正案、置き去りだった「差別」
 成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案に、結婚できる年齢(婚姻適齢)を男女とも「18歳以上」に統一する規定が盛り込まれていることが2日、政府関係者への取材で分かった。終戦直後に定められた女性は「16歳以上」とする規定が見直される公算が大きくなった。法務省は「共謀罪」の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の成立を優先し、民法改正案の今国会提出は見送る方針。現行民法は婚姻適齢を男性18歳以上、女性16歳以上と規定。さらに未成年者の場合は親の同意が必要となる。国際的には男女同一が一般的だが、日本では女性の方が心身の発達が早いなどの理由で低く設定されている。明治時代の民法施行時は男性17歳以上、女性15歳以上だった。しかし女性の高校進学率が飛躍的に伸び、16、17歳での結婚が減少したことなど社会的な背景が変わり、男性と区別する合理的な理由がないとの指摘が出ていた。さらに現行制度のまま成人年齢を18歳に引き下げた場合、女性だけ成人年齢と婚姻適齢が一致せず、親の同意が必要なケースが残ることになる。こうした観点から、今回の民法改正と同時に婚姻適齢を18歳に統一するのが適当と判断した。法案成立後、3年程度の周知期間を設ける方針。厚生労働省の人口動態調査によると、2015年に婚姻届を提出した女性約63万人のうち、16、17歳は1357人だった。婚姻適齢を巡っては、法制審議会(法相の諮問機関)が1996年に「男女とも18歳」とする民法改正案の要綱を答申したが、法改正に至っていない。法制審は、成人年齢の引き下げを議論した際の最終報告書でも同じ意見を表明している。国連の女性差別撤廃委員会は、日本の現行民法の婚姻適齢規定を「差別的」と批判している。


<働き方改革について>
PS(2017年2月6日追加):働き方改革は、*4-1のように、残業時間の上限を「繁忙期100時間」「2カ月平均月80時間」「年間720時間」に抑えるように労働基準法を改正し、違反には罰則を科す方向となり、これに対し野党は反対しているが、私はこの程度でよいと思う。何故なら、民進党の大串さんもよく御存じのように、税理士の例では、個人所得税申告書の提出期限は3月15日に集中しており、繁忙期に合わせて従業員を増やせば閑散期に養いきれずに倒産することになり、このように季節変動のある職種は多いからである。そのため、電通の女性新入社員の自殺という特殊な事件を背景に、低い上限規制を導入して狭い範囲の“ワーク・ライフ・バランス”を国民に押し付けるのは、研究や仕事が趣味という人もおり、そのくらいでないと何かを成し遂げることはできないことも考えれば、事業主だけでなく、働く人をもHappyにしないだろう。なお、勤務の終了から始業までに10~11時間くらいを保障する「勤務間インターバル規制」はよいと思うが、インターバルとして必要な時間や子育てへの利便性は通勤時間によっても異なるため、往復2~4時間もの通勤時間を使わせるような職場と住居の配置は変えるべきである。
 また、*4-2に、「先生の多忙が問題になっており、学校を働き方改革の例外にしてはならない」「日本の先生の勤務時間は参加34カ国、地域の中で最長」「精神疾患で病休をとる先生の数は、年間5千人台で高止まりしている」と書かれている。そして、忙しさの原因は、①書類作りや部活動 ②給食費の集金 ③保護者への対応など切りがない としているが、教育は学校に任せられる必要があるため、先生の仕事を吟味し、他の人が行っても支障がなかったり、よりよくできたりする仕事は他の人に任せ、先生しかできない教育をより充実して行うべきだと考える。例えば、部活動の指導はメダリストなどの専門家が行った方がよい指導ができる上、選手を引退した後の生活も保証される。また、給食費の集金は自動引き落としにすれば正確かつ確実であり、書類は最小限にして新人の先生を副担任として採点や教育に関する雑用をさせるなど、学校が組織として最小費用で最大効果を出すための改善も可能だ。
 その上で、*4-3のようないじめに対しては、「忙しかったから対応しなかった」「担任教諭も名前に『菌』をつけて呼んだ」「担任は親しみを込めたと言っている」など、先生として正しい説明や教育をしていないようなあるまじきケースは、決して起こしてはならないのである。

*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12776816.html
(朝日新聞 2017年2月2日) 残業上限、線引きどこに 長時間労働是正、政府議論が本格化
 安倍政権が旗を振る働き方改革の最重要テーマ「長時間労働の是正」をめぐる政府の議論が1日、本格的に始まった。事実上、青天井に設定できる残業時間に「月平均60時間」といった上限を設ける方向で議論は進みそうだが、早くも「これでは不十分」との異論が野党などから出ている。
■繁忙期「100時間」原案 野党反発
 政府の働き方改革実現会議(議長・安倍晋三首相)はこの日、残業の上限規制をめぐる議論に着手。メンバーが意見を交わした。「時期的な繁閑の差があるなど、どうしても残業が必要な場合もある」(榊原定征〈さだゆき〉・経団連会長)、「残業の上限が『月100時間』など到底ありえない」(神津里季生〈りきお〉・連合会長)。労使の代表らによる応酬の後、安倍首相は「長時間労働の是正については、罰則つきで限度が何時間かを具体的に定めた法改正が不可欠。次回はより具体的に議論したい」と述べた。規制強化には経済界の反発が予想されたが、女性新入社員が過労自殺した事件で、広告大手の電通が昨年末、労働基準法違反の疑いで書類送検され、社長が引責辞任。これが「追い風」(厚生労働省幹部)になり、上限規制の導入に向けた動きが水面下で加速した。この日の会議では示されなかったが、政府は残業時間の上限の数字を明記した原案を昨年秋にまとめ、労使双方への根回しを進めてきた。原案は、労基法36条に基づいて労使協定(36〈サブロク〉協定)を結ぶことを前提に、上限を「月45時間(年間360時間)」に設定。特に忙しい時期は「月100時間」「2カ月の平均が月80時間」を上限にすることを認める一方、年間を通じて「月平均60時間(年間720時間)」に抑えるよう求め、違反には罰則を科す――という内容だ。経済界は繁忙期などに対応できるように「例外」の設定を強く主張している。政府が落としどころとして持ち出した数字が、厚労省による過労死の労災認定基準として用いられる「月100時間超」「月80時間超」。厚労省が2013年に約1万1千事業所を対象に実施した調査によると、36協定で定める上限時間が「月80時間超」の事業所は4・8%。大企業に限ると14・6%。実際の残業時間より上限を高めに設定するケースも多く、政府関係者は「この上限で困る企業はほとんどない」とみている。しかし、原案の内容が先週末に報じられると、野党側は「規制が不十分だ」と猛反発。1日の衆院予算委員会でも、「過労死ラインと同じようなものを上限としても、ほとんど規制していないに等しい」(民進党の大串博志氏)などと安倍首相らを追及した。

*4-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12778736.html
(朝日新聞社説 2017年2月3日) 先生の多忙 学校にも働き方改革を
 働き方を改革するなら、学校を例外扱いしてはならない。先生の多忙が問題になっている。国際調査では、日本の先生の勤務時間は参加34カ国・地域の中で最長だった。精神疾患で病休をとる先生の数は、年間5千人台で高止まりしている。松野文部科学相は、業務改善のモデル地域の指定、有識者ら業務改善アドバイザーの教育委員会への派遣、部活動の休養日などに関するガイドラインづくりという三つの対策を掲げた。忙しさの原因は多様だ。書類作りや部活動、給食費の集金、保護者への対応など切りがない。個々の業務を軽くするよう工夫し、先生が担うべき仕事を吟味することは不可欠だ。ただ、連合のシンクタンク「連合総研」が全国の公立小中学校の教諭に調査し、労働時間と学校の取り組みを分析したところ、行事の精選やノー残業・部活動デーといった試みが必ずしも労働時間の短縮につながっていなかった。「新たに生まれた時間を他の仕事に充てるからでは」と連合総研は見る。時間の余裕があればもっと授業の準備をしたい。子どもの作文にコメントを書きたい。そんな先生たちの気持ちは貴重だ。しかし、疲れを抱えたまま子どもの前に立っても、よい授業や丁寧な言葉かけはできまい。先生の長時間労働を改めるには、校長らが先生の勤務時間を管理することが出発点になる。ところが同じ調査だと、自校の管理職が「出退勤時刻を把握していない」「しているかどうかわからない」と答えた教諭の合計は小中とも半数近くに上る。都道府県の条例で決められた所定勤務時間数を「知らない」と回答した教諭も6割近い。研究者が「学校は労働時間の無法地帯」と言うのも無理はない。学校が時間管理に熱心でないことの背景にあるのが、「公立学校教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)だ。先生の仕事は複雑で管理が難しいとして残業代を払わず、代わりに基本給の4%を全員に支給する仕組みになっている。1971年に成立した。誰にも一律の額を出すため、管理職は勤務時間を把握する義務があるのに、時間管理の必要に迫られない。文科省の勤務実態調査では、法が成立した頃と比べ、残業時間は5倍に増えている。法の見直しの議論を始めるべき時ではないか。もっと先生の数を増やしてほしいとの現場からの訴えにも耳を傾けるべきだ。先生にも労働者としての権利があることを忘れてはならない。

*4-3:http://mainichi.jp/articles/20161203/k00/00m/040/119000c
(毎日新聞 2016年12月2日) 新潟原発避難いじめ 市教委が謝罪 担任「親しみ込めた」
 新潟市教育委員会は2日、福島県から自主避難してきた同市立小4年の男子児童が、同級生や40代男性の担任教諭から名前に「菌」をつけて呼ばれるなどのいじめを受け、1週間以上学校を休んでいると発表した。男児は先月、担任に相談していたが、直後に担任からも「菌」づけで呼ばれ、強いショックを受けたという。教委の高島徹教育次長は記者会見で「他の児童も同様に『キン』をつけて呼ばれており、原発事故と直接結びついていないが、いじめと捉えている。担任の言動は児童の心を傷付ける不適切なもので、児童と保護者に深くおわびする」と陳謝した。市教委によると、男児は東京電力福島第1原発事故を受けて家族と避難し、新入生として入学した。3年の時から仲間はずれにされたり、からかわれたりし、今年になっても持ち物を捨てられるなどのいじめがあったという。  男児は今年6月、「ばい菌扱いされている」と担任に相談。担任は、いじめた児童らを指導し、落ち着いたとみていたという。横浜市立中学で福島県から避難してきた生徒が「菌」をつけて呼ばれた問題が報道されるようになり、11月17日、児童は再びいじめについて担任に相談した。だが、同22日の昼休み、教室で担任から連絡帳を受け取る際、同級生の前で名前に「菌」をつけて呼ばれた。保護者に「もう学校に行けない。担任と会いたくない」と話したという。保護者の指摘を受け、同校は同29日、児童らに聞き取り調査。複数の児童が担任による「菌」づけ発言があったと話し、担任も認めた。市教委によると、このクラスでは映画などの登場人物にかけて名前の後に「キン」をつけて呼ぶことが流行していたといい、担任は「菌の意味ではなく親しみを込めた発言だった」と釈明。「児童に謝罪したい」と話しているという。2日の授業は別の教諭に担当させた。


PS(2017.2.7追加):東京オリンピックのゴルフ会場になっている「霞ヶ関カンツリー倶楽部」は、*5のように、正会員が男性に限定され、女性は日曜日にはプレーできないことになっているため、大会組織委員会事務総長が「できるだけ早く正会員に女性が入れるような細則にしていただきたい」と要望したが、今日の理事会でも対応が決まらず、霞ヶ関カンツリー倶楽部の木村理事長は「オリンピックは頼まれて受けただけで、こちらから『いらっしゃい』と言ったわけではないので、急にこんな事態になったのは迷惑で困惑している」とNHK・TVで言っていた。しかし、このような差別的な場所で行われるオリンピックは応援したくない人が多いため、会場を変えるか、適切な会場がなければオリンピックでのゴルフを中止するくらいの厳格な対応をした方が今後のためによいと思われる。

*5:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170207-00010000-teletamav-l11
(Yahoo 2017.2.7) 霞ヶ関カンツリー倶楽部 理事会で対応を協議
 東京オリンピックのゴルフ会場で、川越市にある霞ヶ関カンツリー倶楽部が女性正会員を認めていない問題で倶楽部側は7日、都内で理事会を開き今後の対応を協議しました。霞ヶ関カンツリー倶楽部は現在、およそ1,200人の正会員が男性に限定され、平日は女性もプレーが可能ですが原則として日曜日はプレーできません。この問題を受け、大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は2月2日、国際ゴルフ連盟などと連名で規則改正を求める文書をメールで提出したうえで「できるだけ早く正会員に女性が入れるような細則にしていただきたい」と述べ早期の対応を要望しました。要望を受け霞ヶ関カンツリー倶楽部は7日、都内で理事会を開き今後の対応について協議したということです。霞ヶ関カンツリー倶楽部の木村希一理事長は「これからどう対応しようかということを話しました。それだけです」と話しました。また、この問題を受けて上田知事は7日の定例会見で「正々堂々と女子の会員を認める。そうすることで立派なゴルフ場として判断される」と話しました。


PS(2017年2月11日追加):*6で、JA佐賀中央会金原副会長は、「①国内では多くの品目で生産戸数が減少し、それに伴って需要に追いつかない品目が出ている」「②『6次産業化』の販路を広げ、品目の幅を充実させたい」としている。このうち、①については、生産戸数が減少しても規模を拡大し、繁忙期には人を雇うようにすれば収入が増加し、繁忙期は地域や作物によって異なるため、農協や派遣労働会社が(外国人)労働者を雇って繁忙な場所に労働者を派遣するようにすれば、効果的な人の使い方ができる。また、②についても、日本では人件費がネックであるため、機械化や外国人労働者の使い方を工夫すれば、より安価に加工食品を作ることができ、輸出にも貢献できると考える。
 なお、「現在は、自民党を勝たせすぎて、主権者の意図しなかった変更が、よく吟味もせずに次々と行われている」というのには、私も同感だ。また、自由貿易協定(FTA)になればTPPより条件が厳しくなるという交渉力のなさも情けなく、他の先進国同様、食料自給率は重視すべきだ。

*6:http://qbiz.jp/article/101787/1/ (西日本新聞 2017年1月16日) 投資進め生産基盤強化 JA佐賀中央会 金原 寿秀副会長 トップに聞く新年展望
 近年、農業を取り巻く環境は転換期を迎えている。JA全中の組織見直しを柱にした改正農協法が昨年施行し、トランプ次期米大統領の出現で発効は絶望的とされるものの環太平洋連携協定(TPP)も国会で承認された。県内農業はどうなるのか。JA佐賀中央会の金原寿秀副会長に新年の展望を聞いた。
−農家の経営力強化が課題とされている。
 担い手や収益確保に向けて集落営農組織の法人化を進めている。昨年、JAグループ佐賀は法人化や新規就農を支援する「県域担い手サポートセンター」を開設した。生産者が加工から販売まで手掛ける「6次産業化」も販路を広げ、品目の幅を充実させたい。
−新規就農については。
 新年度から市町と協力し、武雄市などではキュウリを、佐賀市富士町ではホウレンソウを栽培する農家を育てる。国内では多くの品目で生産戸数が減少しているが、良質な作物は売れる。収益を見込める作物に特化して就農を促す。
−改正農協法をどう評価している。
 十分な議論がないうちに通ってしまった。改正法は将来的に信用、共済事業を分離することも視野に入れている。農協の営農指導は費用も手間がかかるが、これを賄うのは信用、共済事業の収益だ。専門的な書類作成も営農指導員が担っており、指導員を減らすのは難しい。
−JAグループ佐賀の政治団体、県農政協議会は次期衆院選にどう対応する。
 現在の農協改革は自民党を勝たせすぎたのが原因で対応を考えないといけない。政府の農業政策や通商政策を見据えたい。
−TPPをトランプ次期米国大統領は否定している。どう見通すか。
 日米の2国間交渉で、TPPよりも厳しい条件を突き付けられないか心配だ。韓国は米国との自由貿易協定(FTA)で食料自給率が大幅に低下した。
−新年の展望を。
 作物の安定供給のためには生産基盤の強化が必要だ。生産戸数の減少に伴い、需要に追いつかない品目が出ている。県域全体で投資を進め、基盤を強化する。産地力の向上のため、作付けや収穫などの在り方も見直しながら、需要が高い地域に販売できるようにしたい。

| 経済・雇用::2016.8~ | 10:01 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.1.24 “ポピュリズム(衆愚)”という表現は、生活者として多様な立場から考えている国民に対する上から目線の罵倒であり、日本のメディアが、トランプ米大統領の「米国第一主義」や英国の「EU離脱決定」を“保護主義”“ポピュリズム”と評するのは傲慢である。 (2017年1月25、26、27、29日に追加あり)
      
トランプ大統領就任演説 英国のEU離脱をめぐる経緯  メイ首相の演説    日本の永住資格

(1)トランプ大統領の政策と日本政府・メディアの反応
 米国大統領選は候補者同士のくさしあいとなり、両候補とも魅力に欠ける状態に陥ってしまったが、*1-1のトランプ大統領就任演説全文を見ると、私はトランプ大統領は米国大統領としては当たり前のことを言っている部分が多いと思った。

1)「国民に権力を」について
 トランプ大統領が述べている「①大切なのは、国民が政府を動かしているかどうかだ」「②権力を首都ワシントンからあなた方国民に返還する」「③支配層は保身に走り、市民を擁護しようとしなかったため、支配層の勝利や成功は皆さんの勝利や成功とはならなかった」というのは、米国でもそうだったのかと思われたが、日本では実質的にそうなっていないため、もっと深刻である。そのため、このフレーズは、日本人こそよく考えて聞くべきで、主権者に権力があるのは、日本国憲法に明示されているとおり、民主主義(主権在民)の国なら当たり前のことなのだ。

2)「全てが変わる」について
 「①この米国は皆さんの国だ」「②大切なのは、どの政党が政権を握るかではなく、国民が政府を動かしているかどうかだ」「③国家は国民に仕えるために存在する」「④国民は子どもたちのために素晴らしい学校を望み、家族のため安全な環境を欲し、いい仕事を求めており、それは善良な人々のごく当たり前の要求だ」のうち、①③は日本国憲法にも明示されている理念だ。また②も真実であるし、④はどこの国の人も同じで、どこかの国だけが特別ではないだろう。

3)「殺りくに終止符」について
 しかし、「①都市の市街地で母子が貧困から抜け出せないでいる」というのは、米国では特に、離婚や無計画な出産が多すぎるのではないかと思う。「②さびついた工場群が墓石のように国内の至る所に散らばっている」というのは本当かも知れないが、それを解決するためには昔に戻せばよいのではなく、米国内に高コスト構造に耐える現代産業を育成するしかない。

 「③何十年もの間、われわれは米国の産業を犠牲にして、他国の産業を豊かにしてきた」というのは、NAFTA・中国・日本のことを言っているのだろうが、これらの国は、「遅れているから」として米国に負担ばかりをかけられる時代が過ぎ、相互主義でやるべき時代が来たことを実感すべき時なのだろう。

 なお、「④自国の国境防衛は疎かにしながら、他国の国境を守ってきた」というのは真実なので笑ってしまったが、その相手が日本だとすれば、それは米国がアドバイスしてできた世界でも理想的な日本国憲法の下、日本は弱い自衛軍しか持たないため、日米安全保障条約を結んで米軍に頼っているのだが、本当に頼りになるかどうかは心配だ」というのが本音である。

 また、「⑤国外で何兆ドルも金を費やしている間に、米国のインフラは荒廃し、朽ち果ててしまった」というのは、米国のインフラもIT時代の最新のものに更新すべきで、日本も他山の石とすべきだろう。

4)「米国第一」について
 「①今日からはひたすら『米国第一』で、貿易、税金、移民、外交で常に米国の労働者と家族の利益となる決定を下す」というのは、時代錯誤にあたるような過度の保護主義でなければ、米国大統領として当然のことだ。また、「②この素晴らしい国の全土に新しい道、高速道路、橋、空港、トンネル、鉄道を造る」「③国民を生活保護から抜け出させ、仕事に戻ってもらう」というのも、失業者に生活保護給付をし続けるよりも、その労働力を使ってインフラ整備をした方が建設的であるため同意する。

 「④国益を最優先する権利が全ての国にあるという考えに基づき実行する」というのも、過度の保護主義でなければ当然のことであり、「⑤われわれの流儀を押しつけたりはせず、模範として追随されるように、われわれを輝かせよう」というのも、民主主義には発展段階があり、専制から一足飛びに完成型にはならないため、米国流を押し付けるのではなく、次第に理想形に変えていく必要があり、同意だ。

5)「国民の結束」について
 「①われわれの政治の根底にあるのは、米国への完全な忠誠や国民同士の忠誠心だ」「②心を開いて愛国主義を受け入れれば、偏見が生まれる余地はない」「③神の民が一つになって共に生きることは、なんと幸せで楽しいことか」というのは、戦後の日本人には馴染みの薄い言葉の連続だ。

6)「行動の時」について
 「①大きく考え、大きな夢を見よう」というのは賛成だ。しかし、権限があってできる立場にいるのに「②口ばかりで行動しない政治家、不平ばかり言って自分では何もしない政治家」が米国にはいるのだろうか?この章は、全体として論理の飛躍が多く、一般の人が夢を持てる言葉を並べたものと思われる。

7)「声・希望・夢」について
 「全ての米国民の皆さん。住んでいる町が近くても遠くても、小さくても大きくても、山々や海に囲まれていようとも、あなたたちが無視されることは金輪際ない。あなたたちの声、希望、夢が米国の運命を決めるのだ」というのは、本当に実行されれば、それこそ民主主義のよい国である。そして、現代では、IT技術の発達によって、それも可能になっている。

8)「一つの中国」の見直しについて
 トランプ次期米大統領は、*1-2のように、「中国と台湾を不可分とする『一つの中国』原則を含めて全てが協議される」と述べ、見直しもあり得るとの考えを示した。これには、中国は反発するだろうが、台湾の望みを考えれば、日本政府にはできない勇気ある行動だ。

9)環太平洋連携協定(TPP)からの離脱表明について
 *1-3に、「TPPを成長戦略の柱に据える日本は、経済・外交・安全保障分野で大転換が求められ、新たな対米関係が迫られる中で日本の立ち位置が問い直される」と書かれているが、自国の国益を第一に考えるのは日本も同じであるべきだ(でなければ日本国民が困る)。しかし、だからといって国際協調をしないということではないため、*1-4なども含め、日本のメディアは冷静さを欠く保護主義キャンペーンをし過ぎている。

 また、企業のグローバル化とは、地球規模で生産・販売・研究開発・資金調達・租税政策などを行うことであり、EU、TPP、NAFTAのように経済の囲い込みをすることではないため、「トランプ現象=反グローバル」というのは間違いだ。そして、どの国にとっても産業政策・雇用政策は重要で、日米自由貿易協定(FTA)などの2国間協議でも、日本政府は国益を優先して交渉すべきだ。しかし、これに関して、私はビジネスマン出身のトランプ大統領と比べて、日本の政治家・行政官はもめないことを最重要課題として本当の交渉をしないため、不利な交渉結果を導くことが心配である。

10)オバマケアの撤廃について
 トランプ米大統領は、オバマ前政権が進めた医療保険制度改革の撤廃に向けた大統領令に署名されたそうだが、誰にとっても必要不可欠な国の医療・介護保険制度をきっちり作った方がよいと、私は考える。何故なら、それは必需品であり、雇用吸収力があるとともに、中産階級以下の国民の将来の心配を軽減することによって、現在の需要への支出を増やすことができるからだ。

(2)「欧州覆うか『自国第一』、相乗効果狙い右翼ポピュリズム政党結集」というメディアの論調
 「トランプ米大統領の就任式参加者がオバマ前大統領よりも少なかった」という報道が日本では多い。しかし、トランプ米大統領の就任演説は、就任式に参加した人だけでなく、衛星放送やインターネットで聞いた人も多いため、前評判やトランプ米大統領の政策の世界への影響から、世界ではオバマ大統領よりも多かったかもしれない。日本では、私も就任演説を聞きたいと思ったが、真夜中だったため、翌朝の新聞に英文と日本語訳の全文が掲載されたのを読んだ。つまり、トランプ米大統領の就任演説は、オバマ前大統領に劣らず、世界中で関心が高かったと言える。

 そして、*1-5のように、「重要選挙を迎える欧州連合(EU)各国の右翼ポピュリズム政党が就任式翌日の21日、ドイツに集まって『エリートでなく、民衆による政治が始まった』と気勢を上げ、トランプ大統領と同じ『自国第一』を掲げた」そうだ。

 しかし、私は、「右翼ポピュリズム政党」という表現は正しくないと考える。何故なら、「自国第一」を掲げるのは「右翼ポピュリズム政党」と定義するのであれば、世界中の多くの政党が「右翼ポピュリズム政党」ということになり、日本では全政党が「右翼ポピュリズム政党」ということになって事実に反するからだ。

 日本は、*4-1のように、難民受入国支援のために約2800億円拠出し、シリア人留学生150人の受け入れ表明をしたが、難民の受け入れは極端に少なく、「国境を自由にして難民が自由に出入りできるようにせよ」と主張している政党はないため、相手によって異なる多重基準でモノを言うのは不公平だ。

 また、*4-2のように、外国人労働者の受け入れも、留学生・実習生として日本に入国した外国人を介護専門職に育成して就職に繋げる法律ができたばかりで未施行であり、その留学生も、*4-3のように、例年20人程度だった留学生の入学者数が2016年度は257人になった程度だ。なお、研究者や企業経営者等の高度の専門性を持つ外国人は、*4-4のように、従来は最短5年で永住権取得を認めてきたが、今後は1年で永住権を取得できるようにするそうだ。ただ、その要件は非常に厳しい。

 しかし、私は、*1-5のように、難民受け入れに寛容なドイツのメルケル首相が批判されているのは気の毒だと思う。何故なら、メルケル首相は、東ドイツ出身でありながら統一ドイツの首相になった聡明な人で、難民の受け入れに寛容な精神を持っている理由が理解できるからだ。

(3)英国の欧州連合(EU)離脱決定をポピュリズム(衆愚)と呼ぶのは、民主主義への挑戦である
1)英国国民投票でのEU離脱決定はポピュリズム(衆愚)か
 2016年6月24日の英国国民投票でEU離脱が決定し、*2-1は、「①反EUのポピュリズム(衆愚)が理性に勝った」「②英国のEU離脱決定は欧州統合の機関車役ドイツにも打撃」「③この開票結果は、欧州市民の間でEUへの失望がいかに深く、右派ポピュリズム勢力への支持が強まっているかを示した」「④英国に追随して国民投票によるEU離脱の動きが広がる可能性があり、2016年6月24日は、欧州の歴史の中で暗黒の日として記憶されるだろう」としている。

 私は、①の表現は、国を単位とする民主主義への挑戦であり、誰から見た目かわからないが、国民投票の結果をポピュリズム(衆愚)と呼んでいる点で傲慢だと考える。②は、国境という国の主権にかかわる問題にEUが自由化を強制した点が問題なのであり、③は、ギリシャに強制的に年金削減をさせるなど財政という国家主権に関わる部分にまでEUが口を出しすぎ、国情によっては唯一の解決策ではないのに強制したという不安・不満があったため、きっかけさえあれば、④のように同じ動きが広がるのである。

2)EU離脱で英国経済の競争力は低下するか
 *2-1に「①英国のEU離脱決定は英国経済にとって激震となる」「②英国の輸出額のうち半分以上をEU加盟国向けが占め、対EU輸出は英国のGDP(国内総生産)の約15%を稼ぎ出し、英国の輸入額の約50%もEU諸国からである」「③そのため、英国はEU脱退によって雇用が脅かされるかもしれない」「④EU離脱によって多くの金融機関がロンドンから欧州中央銀行(ECB)があるドイツのフランクフルトに拠点を移すと予測されている」「⑤英国に拠点を持つ日本企業も欧州市場戦略を大きく見直す必要がある」「⑥スコットランドがEU加盟を求めて、英国からの独立運動を再燃させる可能性もある」「⑦英国の唯一の経済的利点は、EU加盟国が支払う会費を納める必要がなくなることだ」と書かれている。

 このうち、①は本当だが、マイルドな方がよいとはいうものの、変革に震動はつきものだ。②③④については、東西冷戦後の東欧諸国からの安い賃金の移民を使った経済モデルが終わり、新しく英国は雇用吸収力のある現代産業を育成する必要があるのであって、私は、それが可能だと考える。⑤は、日本企業の都合であって英国の都合ではないため、英国から見れば、『だから外資に頼らず自国の産業を育てておくべきだ』ということになり、立場を逆にすれば日本政府も同じだ。⑥は、現在、その最中だが、困った時に協力できない分断された国なのかと思う。⑦の利点は、国家主権にかかわることにまで強制が及ぶことも考えれば、英国にとって大きく、新しい経済モデルに踏み出す時と言えるだろう。

3)移民増加と排外主義の高まりか?
 *2-1に、「EU脱退がもたらす経済的打撃にもかかわらず、英国の有権者がEU離脱の道を選んだ理由は、難民危機を追い風として、英国だけでなく欧州全体で右派ポピュリストに対する支持が高まっている事実がある」と書かれている。

 しかし、*2-2に、「EU離脱がポピュリズムというのはこじつけだと、離脱派の旗振り役だったジョンソン英外相が反論した」「英国には、EUを弱体化させたり、EUに対して意地悪をしたりする意図は全くない」などが書かれている。

 私は、英国の有権者がEU離脱を選んだ理由を右派ポピュリストと呼べば、世界中が右派ポピュリストと呼ばれる政党ばかりとなり、その呼称はおかしいと考える。そして、先進国の高い賃金の労働者が賃金の安い移民・難民に労働市場で敗退するのは、どの先進国でもあったことで、EUの重要な原則の一つである域内移動の自由は、国が計画的に移民・難民を受け入れることを不可能にするため、反発があったのだと考える。

(4)英国、メイ首相の方針
 英国のメイ首相は、*3-1のように、EUとの離脱交渉を控えてロンドンで演説し、域内での人、モノ、サービス、資本の移動の自由を原則とする欧州単一市場に「とどまることはできない」としてEUから完全に離脱する意向を示し、EU域外の国々との貿易強化方針も打ち出し、「より強く、よりグローバルな英国をつくる」と主張したそうだ。

 これは、英国へ進出した日本企業にも影響を及ぼすが、日本企業も東欧の安い労働力を使って生産したものを欧州に輸出するという経済モデルは終わりに近づいたことを認識し、英国の方針転換に適応して次のモデルの準備をした方がよいだろう。そして、新しいモデルには適応できない企業は別の場所に移転するしかない。

 なお、*3-2のように、日本のメディアは、「英国とEU『自国優先』に歯止めを」というような論調が大半であり、その価値観は異常だ。何故なら、ある国の政府が自国民のために政治を行うのは、主権在民(民主主義)の政府であれば当然であり、地球のことを考えれば愛国心だけでは足りないというだけである。そのため、「人の移動の自由を受け入れてまで、EUの単一市場に残る選択をしない」という選択も、批判すべきではない。英国なら、それよりダイナミックな、次の時代に向けての展開もあり得る。

<トランプ大統領就任>
*1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201701/CK2017012202000110.html (東京新聞 2017年1月22日) トランプ大統領就任演説全文 「米国はかつてないほど勝利していく」「みんなで米国を再び偉大にしよう」
◆大切なのは、国民が政府を動かしているかどうか
 ロバーツ最高裁長官、カーター元大統領、クリントン元大統領、ブッシュ元大統領(子)、オバマ前大統領、米国民の皆さん、世界の皆さん、ありがとう。
▽国民に権力を
 米国の市民は今、国を挙げた壮大な取り組みに臨もうとしている。国家を再建し、全ての人が希望を取り戻す取り組みだ。われわれは共に、米国や世界が今後何年にもわたって進む針路を決定する。難題や苦難に直面するだろうが、仕事をやり遂げる。四年ごとにわれわれはここに集まり整然と平和裏に権力を移行する。オバマ前大統領とミシェル夫人に感謝する。政権移行を丁重に支援してくれた。彼らは素晴らしかった。ありがとう。ただし、今日の式典には特別な意味がある。単に政権交代が実現し、権力が政党から別の政党へと移っただけではない。権力を首都ワシントンからあなた方国民に返還するのだ。あまりに長きにわたり、政府から恩恵を享受するのは首都にいる一握りの人々にとどまり、国民にはしわ寄せが及んできた。ワシントンは繁栄しても、国民が富を共有することはなかった。政治家が潤う一方で、職は失われ、工場は閉鎖された。支配層は保身に走り、市民を擁護しようとはしなかった。支配層の勝利や成功は、皆さんの勝利や成功とはならなかった。支配層が首都で祝杯を挙げていても、懸命に生きる全米の人々に浮かれる理由はなかった。
▽全てが変わる
 ここから、たった今から、全てが変わる。この瞬間は皆さんのためにある。今日ここに集まった皆さんと、式典を見守る全米の皆さんのためにある。今日は皆さんこそが主役で、これは皆さんの祝典だ。そしてこの米国は皆さんの国なのだ。大切なのは、どの政党が政権を握るかではない。国民が政府を動かしているかどうかが大切なのだ。二〇一七年一月二十日は、国民が再び主権者となった日として記憶されるだろう。忘れられてきた人々も、これからは忘れられることはない。皆さんの声に誰もが耳を傾けている。大勢の皆さんが歴史的なうねりの当事者となるためやって来た。世界がかつて目撃したことがないような社会現象だ。その中心には重大な信念がある。国家は国民に仕えるために存在するという信念だ。国民は子どもたちのために素晴らしい学校を望んでいる。家族のため安全な環境を欲し、いい仕事を求めている。善良な人々のごく当たり前の要求だ。
▽殺りくに終止符
 しかし、あまりに多くの市民にとって、現実は異なっている。都市の市街地で母子が貧困から抜け出せないでいる。さびついた工場群が墓石のように国内の至る所に散らばっている。教育システムに金がつぎ込まれても、若く優れた学生たちは知識を得ることができずにいる。犯罪、悪党、麻薬が多くの命を奪い、可能性の芽を摘んできた。こうした米国の殺りくは今ここで終わる。われわれは同じ米国民だ。彼らの苦悩はわれわれの苦悩だ。彼らの夢はわれわれの夢だ。彼らの成功はわれわれの成功となる。われわれは一つの心、一つの故郷、そして一つの輝かしい運命を共有している。今日の私の大統領就任宣誓は、全ての米国人に対する忠誠の誓いだ。何十年もの間、われわれは米国の産業を犠牲にして、他国の産業を豊かにしてきた。米軍の嘆かわしい劣化を招いた一方で、他国の軍に資金援助してきた。自国の国境防衛はおろそかにしながら、他国の国境を守ってきた。そして国外で何兆ドルも金を費やしている間に、米国のインフラは荒廃し、朽ち果ててしまった。他国を豊かにしている間に、われわれの富や強さ、自信は地平のかなたへ消え去っていった。工場は次々と閉鎖され、残された何百万人もの米国人労働者を顧みることなく、国外へ移転していった。中間層の富が奪われ、世界中にばらまかれた。だがそれは過去のことだ。今、われわれは未来だけを見据えている。
▽米国第一
 今日ここに集まったわれわれは、全ての都市、全ての外国政府、全ての権力機関に向かって、新たな決意を宣言する。今日から、新たな考え方でわが国を治める。今日からはひたすら「米国第一」だ。米国が第一だ。貿易、税金、移民、外交では常に、米国の労働者と家族の利益となるような決定を下す。物作り、企業、雇用を奪う外国から、われわれは国境を守らなければならない。(貿易や雇用の)保護は、大いなる繁栄と強さをもたらす。私は全身全霊で、皆さんのために戦う。そして私は皆さんを決して失望させない。米国は再び勝利し始める。いまだかつてないほど勝利していく。われわれの雇用を取り戻す。国境を取り戻す。富を取り戻す。そして夢を取り戻す。この素晴らしい国の全土に新しい道、高速道路、橋、空港、トンネル、鉄道を造る。国民を生活保護から抜け出させ、仕事に戻ってもらう。そしてわれわれの国を、米国人の手によって、米国人の労働力で再建する。われわれは二つの簡潔な規則を守っていく。米国製品を買い、米国人を雇う。われわれは世界の国々との友好、親善関係を求めていく。ただし、国益を最優先する権利が全ての国にあるという考えに基づき、実行していく。われわれの流儀を(他国に)押しつけたりはしない。むしろ模範として追随されるように、われわれを輝かせよう。古くからの同盟を強化し、新たな同盟関係も築き、文明国を一つに束ねてイスラム過激派によるテロに対抗し、地球上から完全に根絶する。
▽国民の結束
 われわれの政治の根底にあるのは、米国への完全な忠誠だ。そして国への忠誠心を通して、われわれは国民同士の忠誠心も再発見することになるだろう。もし、心を開いて愛国主義を受け入れれば、偏見が生まれる余地はない。聖書にこう書かれている。「神の民が一つになって共に生きることは、なんと幸せで楽しいことか」。自分の考えを包み隠さず語り、相違があれば率直に議論しなければならないが、常に結束を目指さねばならない。米国が団結すれば、誰にも止めることはできない。恐れることはない。われわれは守られており、これからも常に守られる。軍、治安機関がわれわれを守ってくれる。そして、何より重要なことに、われわれは神に守られている。
▽行動の時
 最後に言いたい。大きく考え、より大きな夢を見よう。米国では、努力してこそ国は存続するということをみんな知っている。口ばかりで行動しない政治家、不平ばかり言って自分では何もしない政治家はもう認めない。無駄話の時間は終わりだ。行動する時だ。できないなどと言わせてはならない。米国の熱意、闘志、気概をもってすれば打ち勝てない困難などない。失敗することはない。米国は再び繁栄し、成功するのだ。宇宙の謎を解き、地球上から病の苦しみをなくし、未来のエネルギー、産業、技術を活用する新たな時代が始まったばかりだ。国への新たな誇りがわれわれの魂を揺り動かし、視野を広げ、分断を修復してくれるだろう。わが国の兵士たちが決して忘れない、古くからの格言を今こそ思い出そう。肌が黒くても、白くても、褐色でも、同じ赤い血が流れ、国を愛する気持ちに変わりはないということだ。同じ輝かしい自由を享受し、同じ偉大な米国旗に敬礼するのだ。子どもたちはデトロイトの都市部で生まれようとも、ネブラスカの風吹きすさぶ平野で生まれようとも、同じ夜空を見上げ、同じ夢で心を満たし、同じ全能の創造主により命の息吹を吹き込まれる。
▽声・希望・夢
 全ての米国民の皆さん。住んでいる町が近くても遠くても、小さくても大きくても、山々や海に囲まれていようとも、次の言葉を聞いてほしい。あなたたちが無視されることは金輪際ない。あなたたちの声、希望、夢が米国の運命を決めるのだ。あなたたちの勇気、優しさ、愛がわれわれを永遠に導くのだ。みんなで米国を再び強くしよう。米国を再び豊かにしよう。米国を再び誇り高くしよう。米国を再び安全にしよう。そう、みんなで米国を再び偉大にしよう。ありがとう。皆さんに神のご加護があらんことを。米国に神のご加護があらんことを。ありがとう。米国に神のご加護があらんことを。
(原文略)

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/395328
(佐賀新聞 2017年1月14日) 「一つの中国」見直しも、トランプ氏、中国反発必至
 トランプ次期米大統領は米紙ウォールストリート・ジャーナルとのインタビューで、中国と台湾は不可分とする「一つの中国」原則を含め「全てが協議される」と述べ、同原則の見直しもあり得るとの考えを示した。ロシアに科されている制裁解除の可能性にも触れた。同紙電子版が13日伝えた。「一つの中国」原則の尊重を米中の「政治的基礎」と位置付ける中国の習近平指導部の反発は必至だ。トランプ氏は昨年12月、米歴代政権の慣例を破って台湾の蔡英文総統と電話会談し、「為替操作国」と批判する中国に揺さぶりを掛けた。

*1-3:https://www.agrinews.co.jp/p39970.html (日本農業新聞2017年1月22日) トランプ政権発足 問い直される対米関係
 米国の新大統領にトランプ氏が就任し、新政権は環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を正式表明した。就任演説では「米国第一」主義を宣言し、「米国製品を買おう」「米国人を雇おう」と呼び掛けた。TPPを成長戦略の柱に据える日本は、経済・外交・安全保障分野で大転換が求められるのは必至だ。新たな対米関係が迫られる中で日本の主権、立ち位置が問い直されている。異様な雰囲気での新大統領誕生となった。首都ワシントンの就任式には多くの民主党議員がトランプ氏の人種差別的な発言に抗議して欠席、全米各地で就任に反対する市民団体の集会が開かれた。就任時の支持率が4割という歴史的な不人気ぶりだ。歓迎と抗議が交錯する。分断された米社会が浮き彫りとなった。米国第一主義は世界に何をもたらすのか。オバマ前政権の国際協調路線から自国中心主義に傾くのは明らかで、安全保障や貿易ルール、地球温暖化問題に影響を及ぼすのは避けられない。国と国が協力し、譲歩し合い、時間を掛けて構築してきた秩序をそう簡単に放棄すべきではない。米国は国際社会の一員として、世界の平和と安定に貢献し続けるべきである。極端な米国第一主義には、保護主義や差別・排外主義が潜む。こうした考えは、世界に受け入れられるものではない。一方でグローバル資本が利益の最大化を目的とした自由貿易のひずみと矛盾も直視すべきだ。就任演説でトランプ氏は「権力をワシントンからあなた方国民に返還する」と断言した。政府から恩恵を受けたのは一握りのエリート層にとどまり、市民の職は失われ、工場は閉鎖されたとし、これからは国境、製造業、雇用を守ると強調した。「トランプ現象」を生んだ反グローバルの潮流は、格差と貧困が社会問題化する欧米で広がった。そうした民意が新大統領を生んだのも事実だ。このことから目を背けてはならない。トランプ氏がどう民意に応えていくか、注視したい。トランプ政権は、TPPからの離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を表明した。米国抜きのTPPは発効が一層難しくなった。一方で、トランプ氏は2国間貿易協定に意欲を示す。2国間交渉となれば、米国からの農産物の市場開放圧力はTPPの合意内容以上に攻め込まれるのは必至だ。米国に追従する安倍政権の経済・外交政策は限界を迎え、抜本見直しを迫られている。新政権の動向を見極め、日米自由貿易協定(FTA)の阻止に備えることこそ肝要である。トランプ氏は各国との関係について、「国益を最優先する権利が全ての国にあるという考えに基づき、実行していく」とも明言した。安倍政権は日米同盟の在り方も含め、日本の国益を損なわない政策実現が急がれる。.

*1-4:http://digital.asahi.com/articles/ASK1M7X8ZK1MUHBI047.html
(朝日新聞 2017年1月21日) TPP発効は絶望的 日本、通商戦略見直し必至
 トランプ政権は就任式直後から、ホワイトハウスのホームページで、「米国第一エネルギー計画」「米国第一外交政策」「雇用と成長を取り戻す」「再び米国軍を強くする」など、外交や貿易に関する6項目の主要政策を発表した。そのなかで、「強固で公平な協定により、貿易は我が国の成長のために活用できる」として、「その戦略はTPPからの離脱によって始まる」と強調。公約通り、就任初日から、TPPから離脱する方針を正式に表明した。さらに、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を求める方針も示し、参加国のカナダとメキシコが交渉を拒めば、NAFTAから離脱することも打ち出した。TPPの発効には米国の批准が不可欠で、TPPは発効が不可能となる。TPPを成長戦略の柱としてきた安倍政権は、戦略の見直しを迫られる。雇用創出では、「年4%成長への回帰をめざす」と強調。選挙中に35%から15%への引き下げを訴えた法人税率は、「世界で最高水準の税率を引き下げる」としたが、数字には触れなかった。一方、外交・安全保障政策については、「米国の国益と安全保障を最重視する」ことを基本方針に掲げた。そのために、米軍の軍事力の再構築を進めていく方針を打ち出した。過激派組織「イスラム国」(IS)やイスラム過激主義のテロ組織の壊滅を最優先課題と位置づけ、軍事作戦を強化する。その上で、各国と協調して、テロ組織の資金源の遮断や情報共有を進めていく。また、防衛予算の一律削減を終わらせ、海軍の艦船と空軍の航空機を増強していく。北朝鮮やイランのような国からのミサイル攻撃を防ぐため、最新のミサイル防衛システムを開発することを表明。サイバー分野での防衛・攻撃双方の能力向上も優先的に進めていく。さらにトランプ氏はこの日、オバマ前政権が進めた医療保険制度改革(オバマケア)の撤廃に向けた大統領令にも署名。新たな規制の凍結も各省庁に指示するなど、精力的に動いた。
■トランプ氏方針、覆る見込み薄
 米国のトランプ大統領が環太平洋経済連携協定(TPP)を離脱する方針を明確に打ち出したことで、安倍政権が成長戦略の柱に据えてきたTPPの発効は、絶望的になった。日本政府は、まずは自由貿易の重要性を米側に訴え、TPPへの理解を得たい考えだが、トランプ氏の思い入れが強い貿易政策の方針が覆る見込みは薄い。日本側が通商戦略の練り直しを迫られるのは必至だ。TPPは、太平洋を取り囲む日米など12カ国で域内の関税を撤廃したり投資などのルールを共通化したりする協定で、2015年10月に合意に至った。しかし、経済大国である日米両国が批准しなければ発効できない条件になっている。トランプ氏の離脱表明を受け、日本の内閣官房幹部は「時間はかかるが、TPPが米国にとっても利益になるということを分かってもらうように説得するしかない」。だが、オバマ前政権の貿易政策を転換し、米国の雇用を守るという主張は、トランプ氏の最重要の公約で、簡単に方針を転換するとは考えられない。安倍晋三首相は20日の施政方針演説で、TPPを「今後の経済連携の礎」とし、発効をめざす考えを強調していた。TPPによって、アジア・太平洋地域への輸出を増やしたり、日本企業の進出を促したりすることで、日本経済を押し上げようと考えてきたからだ。また、この地域の経済ルールを日米が主導して決め、台頭する中国に対抗する狙いもあったが、米国の離脱が決定的となり、こうした通商戦略の見直しは避けられない状況だ。

*1-5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12760754.html (朝日新聞 2017年1月23日) (トランプの時代)欧州覆うか「自国第一」 右翼ポピュリズム政党、相乗効果狙い結集
 トランプ米大統領の就任による大波が、早くも欧州に及んでいる。今年、重要選挙を迎える欧州連合(EU)各国の右翼ポピュリズム政党が就任式翌日の21日、ドイツに集まり、「エリートでなく、民衆による政治が始まった」と気勢を上げた。掲げるのは、トランプ大統領と同じ「自国第一」だ。
■反移民掲げ「次は我々だ」
 21日、ドイツ西部の人口11万の町コブレンツに、欧州各国で「自国第一」を掲げる面々が勢ぞろいした。オランダのウィルダース自由党党首やフランスのルペン国民戦線(FN)党首、新興政党「ドイツのための選択肢」(AfD)のペトリ党首らは、約千人の聴衆を前に「次は欧州の番だ」と言わんばかりだった。「エリートが、我々の自由を危険にさらしている」「我々は、我々の国を再び偉大にする」。ウィルダース氏の発言は明らかにトランプ氏の就任演説を意識していた。ルペン氏は「最初のパンチは英国の民衆が選んだEU離脱。二つ目がトランプ政権。2017年は大陸欧州が目覚める」と宣言した。会合は、EU批判を繰り広げる右翼政党が結成した欧州議会の会派「国家と自由の欧州」の主催。相乗効果で支持拡大を図る狙いがあるのは明らかだ。各党とも移民制限を主張し、中東やアジアからの難民受け入れへの反対で一致している。ペトリ氏は「政治家やメディアは寛容を口にするが、なぜ普通の人々に聞かないのか。彼らは不安だらけだ」と話した。3月に総選挙を迎えるオランダでは、イスラム教への敵意をむき出しにする自由党が、世論調査で支持率トップを走る。フランスでも4月の大統領選第1回投票でルペン氏が首位に躍り出る可能性がある。9月に連邦議会選が予定されるドイツでも、支持率が12~15%のAfDは初の連邦議会入りが確実視される。
■メルケル氏批判
 批判の矛先は、欧州の統合を重んじ、難民受け入れに寛容なドイツのメルケル首相に向かう。会場では、党首らの演説に、聴衆がしばしば「メルケルは去れ」と連呼して応えた。トランプ政権の発足と右翼政党の高揚で、欧州でも分断と緊張が広がる。会場付近では、開催に抗議する約3千人が「開かれた欧州を」と訴えてデモ行進した。ドイツのガブリエル副首相や、ユンケル欧州委員長の出身国ルクセンブルクのアッセルボーン外相ら、いま政治を動かしている側の姿もあった。
■政策はそろわず
 「自国第一」や「愛国心」を唱える各党。EUやエリート層への批判で一致はしているが、具体的な政策で足並みをそろえているわけではない。訴えも日和見主義的だ。例えばAfDは、ギリシャ危機後の13年に共通通貨ユーロへの反対を掲げて誕生した。だが15年にペトリ氏が実権を握ると、難民危機を受けて反難民、反イスラム色を強めた。ルペン氏は「違いを探すことに意味はない」と意に介さなかった。「大義のために集まったのだ。国境を管理して国民を守る。国を愛し、主権を取り返す」。この日の会合には、ドイツの公共放送など、一部メディアの取材登録が認められなかった。その一人、フランクフルター・アルゲマイネ紙のユストゥス・ベンダー記者は「主催者から『うそを書くのをやめろ。フェアな記事を書け』とのメールが来た」と話した。「彼らは批判的な記事を書くジャーナリストを受けつけない。これも米国と同じだ」
■分断の背景、各国で相似
 トランプ氏は、就任演説で「ピープル」という単語を10回繰り返した。「2017年1月20日は、民衆(ピープル)が再び、この国の支配者になった日として記憶される」。19世紀末の米国で、既成政党に属さない農民運動として「ピープルズ・パーティー(人民党)」が台頭。「ポピュリスト党」とも呼ばれたことからポピュリズムという言葉が生まれた。そして今、「ピープル」を強調し、「自国第一」を主張する政治家が、各国で支持を集める。トランプ氏らへの支持が広がる背景や世論の動向も、各国で相似形を描く。きっかけは2008年のリーマン・ショック後の世界不況だと米ジョージタウン大学のマイケル・カジン教授は説く。不況とともに、大量の移民、格差の拡大、ITによる省力化などで、「自分たちは見捨てられた」と考える人が急増した。「政府は経済を統制できず、救済を必要としている国民を助けようともしないと、人々は悟った。既成政治への不安と怒り、叫びこそが、米欧で起きている現象の理由です」。従来の政党が効果的な回答を見いだせない限り、反既成政治の運動は成長する。一方で、怒りや反発だけで国家を治めることはできない。「ポピュリズム運動が政権を取っても、効果的に統治を行うのが難しい」とカジン教授は言う。トランプ氏は、欧州の政治家に先駆けて、現実という試練に向き合うことになる。

<ポピュリズムとは?>
*2-1:http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/219486/062400017/?rt=nocnt (日経ビジネス 2016年6月24日) 反EUのポピュリズムが理性に勝った日、英国のEU離脱決定は、欧州統合の機関車役ドイツにも打撃
 6月24日、英国の国民投票でEU離脱派が勝った。英国の有権者は、キャメロン首相の嘆願を拒絶し、43年ぶりにEUに背を向ける道を選んだ。実際に英国がEUから脱退するまでには、少なくとも2年間はかかると見られているが、この国がEUと袂を分かつことは確実だ。キャメロン首相は辞任を表明した。離脱によって悪影響を受けるのは、英国の経済界だけではない。長期的には、EUそして欧州統合を最も強力に進めてきたドイツにとっても大きな打撃となる。この開票結果は、欧州市民の間でEUへの失望がいかに深く、右派ポピュリズム勢力への支持が強まっているかを示した。英国のEU離脱は、EU政府に相当する欧州委員会に対し、EUの根本的な改革を迫るものだ。英国に追随して他のEU諸国でも、国民投票による離脱の動きが広がる可能性がある。6月24日は、欧州の歴史の中で暗黒の日として記憶されるだろう。
●英国経済の競争力低下へ
 この決定はまず、6月24日のポンド暴落が象徴するように、英国経済にとって激震となる。同国の輸出額のうち、半分以上をEU加盟国向けが占める。対EU輸出は、英国のGDP(国内総生産)の約15%を稼ぎ出している。また英国の輸入額の約50%も、EU諸国からのものだ。英国はEU脱退によって、単一市場の利点(関税廃止、人と物の自由な移動、自由な資本取引)を失う。英国では輸入品の価格が上昇する。対EU貿易での価格競争力も弱くなる。したがって、同国はスイスやノルウェーのようにEUと交渉して、少なくとも関税廃止などの利点を維持しようとするだろう。同国にとって特に大きな懸念は、金融機関の動きだ。英国のGDPの約8%は金融サービスによって生み出されている。ロンドンには、米国の投資銀行、商業銀行など外国の多くの金融機関の欧州本社がある。EU離脱によって、ロンドンはEU域内の自由な資本取引の流れから遮断される。国民投票の直前に金融機関に対して行われたアンケートによると、回答企業の33%が「英国がEUから離脱した場合、同国でのオペレーションの規模を縮小する」と答えていた。EU離脱は、欧州最大の金融センターであるシティーで働く人々の雇用を脅かすことになるかもしれない。欧州では、「EU離脱によって、多くの金融機関はロンドンから、欧州中央銀行(ECB)があるドイツのフランクフルトに拠点を移すだろう」と予測されている。日本の外務省によると、英国には約1000社の日本企業が進出し、約16万人を雇用している。同国に拠点を持つ日本企業にとっても、欧州市場戦略を大きく見直す必要がある。ドイツのバーテルスマン財団の研究報告書によると、EU離脱が英国経済にもたらす損失は、2030年までにGDPの0.6%~3%に達する。外国企業の数が減少し、失業率が上昇することも避けられないだろう。さらにスコットランドがEU加盟を求めて、英国からの独立運動を再燃させる可能性もある。英国にとって唯一の経済的な利点は、EU加盟国が支払う「会費」を納める必要がなくなることだ。英国は現在約86億4000万ユーロの「会費」をEUに払っている。しかしこれは英国のGDPの0.5%にすぎない。価格競争力の低下や外国企業のユーロ圏への流出、雇用の減少などのデメリットを相殺することはできない。EUにとっても英国の離脱は大きな痛手だ。2015年の英国のGDPは約2兆5690億ユーロで、ドイツに次ぐ第2位。EUは同国の脱退によって、GDPが一挙に17.6%減ることになる。ドイツにとっても、英国の喪失はマイナスだ。両国の意見はしばしば対立してきたが、英国は南欧の債務過重国の経済を立て直す上で、財政出動よりも構造改革を重視するという点では、ドイツと考え方が似ていた。財政出動を重んじるギリシャ、イタリア、スペインの意見を抑える上で、プラグマティズムを重視する英国はドイツの「盟友」だった。つまりドイツは、南欧諸国との交渉の中で重要な応援団を失うことになる。
●移民増加と排外主義の高まり
 日本の読者の皆さんは、「EU脱退がもたらす経済的な打撃について再三伝えられていたのに、なぜ英国の有権者はEU離脱の道を選んだのか」と不思議に思われるだろう。この背景には、難民危機を追い風として、英国だけでなく欧州全体で右派ポピュリストに対する支持が高まっている事実がある。英国のEU脱退を最も強く求めていたのが、ナイジェル・ファラージ率いる「イギリス独立党(UKIP)」だ。同党の党員数は2002年には約9000人だったが、2014年には約4倍に増えて約3万6000人となっている。2015年の下院選挙で同党は12.6%の得票率を確保。2014年の欧州議会選挙では得票率が28%に達し、英国社会に強い衝撃を与えた。英国のポピュリストたちがEUを批判する最大の理由は、EUが政治統合・経済統合を進める中で、域内での移動の自由と他国での就職の自由を促進したことだ。この結果、英国ではポーランドなど東欧諸国からの移民が急増し、ロンドン以外の地方都市を中心として、移民制限を求める声が強まった。英国の反EU勢力は、EUの事実上の憲法に匹敵するリスボン条約を改正し、域内での移動の自由を制限することを求めていた。だがEUにとって、域内の移動の自由は欧州連合にとって最も重要な原則の1つだ。ドイツのメルケル首相をはじめとして、他国の首脳は英国のためにリスボン条約を改正することに難色を示していた。英国のポピュリスト勢力は、「我々はEUが自らを根本的に改革し、加盟国の利益を尊重しなければ、脱退すると再三訴えてきた。だがEUは結局、改革を拒絶した。だから我々はEUから出ていく」と主張していた。私の脳裏に去来するのは、ウインストン・チャーチルが1946年9月19日にチューリヒで行った演説である。彼は、この中で第二次世界大戦のような惨劇を二度と起こさないために、欧州大陸の国々が統合し『欧州合衆国』を作るべきだと提唱したのだ。だがチャーチルは、この合衆国に英国は加わるべきではないと断言していた。彼は、大戦中の苦い経験から、英国は欧州大陸とは一線を画するべきだという態度を持っていたのである。英国はユーロ圏に加盟しない道を選んだ時にも、チャーチルのこの思想を実践した。今回の国民投票により、ジョン・ブル(英国人のこと)たちは再びチャーチルの警告に耳を貸したのである。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJD26QWTJD2UHBI02Y.html
(朝日新聞 2016年12月2日) EU離脱はポピュリズム? 英外相が反論「こじつけだ」
 欧州連合(EU)をめぐる国民投票で離脱派の旗振り役だったジョンソン英外相が2日、英王立国際問題研究所(チャタムハウス)で講演し、「離脱の投票結果を世界中に広がるポピュリズム(大衆迎合)と比較しようとする性急な議論がある」と述べ、米国のトランプ現象とEU離脱を結びつける議論を「こじつけ」と反論した。ジョンソン氏は「私を含め、離脱に投票した人の多くは、外国人への嫌悪や恐怖から投じたのではない」「英国には、EUを弱体化させたり、EUに対して意地悪をしたりする意図は全くない」とも述べた。フランスの右翼・国民戦線(FN)のルペン党首や英国独立党(UKIP)のファラージ前党首らEUを敵対視する政治家や、排外主義的なゼノフォビア(外国人嫌悪)と英国政府の立場に一線を画したい意図があるようだ。対アジア政策では、国連安保理常任理事国拡大に賛成だとしてインドの国名に言及した。中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に「英国はいち早く加盟した」と語った。日本については質疑応答で「すでに非常に強固な関係をさらに伸ばす余地がある」と述べるにとどまった。

<メイ首相の方針>
*3-1:http://qbiz.jp/article/101901/1/ (西日本新聞 2017年1月18日) 英、EU単一市場を離脱 移民制限を優先 メイ首相が交渉方針表明
 欧州連合(EU)との離脱交渉を控える英国のメイ首相は17日、ロンドンで演説し、域内での人、モノ、サービス、資本の移動の自由を原則とする欧州単一市場に「とどまることはできない」としてEUから完全に離脱する意向を示した。英国へ進出した日本企業にも影響を及ぼすのは必至。メイ氏が交渉方針を表明したのは初めて。単一市場への参加継続を訴えてきた与野党議員や経済界の反発は避けられず、政局や市場の混乱が予想される。メイ氏はEU域内からの移民流入を制限するなどの優先事項を提示。加盟国間の関税を撤廃し域外との貿易に共通関税を設けるEUの関税同盟から離脱、新たにEUと貿易協定を結びたい意向も表明した。メイ氏は3月末までにEUに離脱の意思を通知し、原則2年の離脱交渉に入る考え。2年の交渉で離脱した後に一定の移行期間を設けることが望ましいとしたほか、EUとの最終的な合意について、上下両院に投票による承認を求めるとも述べた。演説では「EUとは前向きで新しい関係構築」を目指すとし「部分的にEUのメンバーになるような中途半端なことは目指さない」と強調。単一市場の規則に関する判断を示すEU司法裁判所の管轄から外れる考えを表明したほか、EU域外の国々との貿易強化方針も打ち出し「より強く、よりグローバルな英国をつくる」と主張した。英国の離脱派は単一市場へのアクセス維持と移民制限の両方を交渉で勝ち取るとの考えを示していたが、EU側は移動の自由が単一市場参加の条件だとの原則を示し「いいとこ取り」は許さないとの姿勢を堅持。メイ氏がどちらを優先させるのか、その選択に大きな注目が集まっていた。

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12754139.html (朝日新聞社説 2017年1月19日) 英国とEU 「自国優先」に歯止めを
 欧州の「一つ屋根」から完全に離別し、孤独な道を歩むのか。それは英国にも世界にも利益になるとは思えない。メイ首相が欧州連合(EU)からの完全離脱を表明した。昨年6月の国民投票の結果をふまえ、方針を鮮明にした。EUの単一市場に残るには、人の移動の自由を受け入れざるをえない。その選択肢を捨てて「完全離脱」するのは、あくまで移民の流入規制を優先させるためだという。英世論は今も割れ、政治も揺れている。首相はその混迷に区切りをつけたかったようだ。しかし、英国はEUを含む国際協調の枠組みの中に常にいた国だ。自由貿易の理念や、移民に門戸を開く寛容な価値観を推進する責任を果たしてきた。国民の反移民感情に配慮する必要があったとしても、英国が欧州の国々と積み上げてきた政治・経済の協調枠組みから早々に決別するのは得策ではない。メイ氏は「よりグローバルな英国を築く」と、楽観的な将来像を描く。EU域外との貿易協定を目指していくという。だが英国の最大の貿易相手はEUであり、輸出のほぼ半分を占める。日本を含む多くの外国企業も「EUへの足がかり」として英国に拠点を置いてきた。離脱は、英国自身の貿易を損ねるだけでなく、保護主義を広げかねない。規制に批判的だった英国を欠いたEUは、障壁を強めるかもしれない。EUが揺らげば、経済・金融危機は他の地域にも波及する。移民が経済的な繁栄を下支えしてきた事実を無視して英国が規制に突き進めば、排斥の機運が各国にも広がりかねない。EU離脱は実現しても、それにかわるEUとの貿易協定交渉がスムーズにまとまる保証はない。むしろ国内にEU懐疑勢力を抱える国々は、英国に厳しい条件を求めるはずだ。英国に住むEU市民や、EU域内の英国人の権利や雇用をどう守るか。同じ「欧州」の人間として長く共生した関係を変えるのは容易ではあるまい。少なくとも離脱の衝撃を和らげる十分な移行期間が欠かせない。EU側もこれを引きがねに、欧州の統合という歴史的な取り組みを頓挫させてはならない。国際協調路線を守り、「自国優先」の拡散を防ぐために、英国もEUも、長期的な秩序安定の道を探ってもらいたい。交渉の過程で孤立主義の弊害が顕在化すれば、民意が変化することもありえるだろう。その時、英国は改めて引き返す賢明さも忘れないでほしい。

<日本の場合>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12572990.html (朝日新聞社説 2016年9月23日) 難民と世界 もっと支援に本腰を
 世界の難民・避難民が6500万人に達し、第2次大戦以降で最大になった。迫害や戦火を逃れる難民だけではない。より良い暮らしを求めて他国へ渡る移民の流れも急速に広がっている。この喫緊の問題にどう取り組むべきか。その国際協調を探るサミットが国連で開かれた。とりわけ内戦の出口が見えないシリア、アフガニスタンなどから逃れる難民の流出は深刻だ。国際社会は停戦への努力を強めるとともに、難民受け入れの負担に苦しむ周辺国に、まず目を向ける必要があろう。100万人超のシリア難民を受け入れたレバノンや、250万人が避難したトルコなどからは「限界だ」との声が漏れる。全会一致で採択された宣言に「責任の公平な分担」が明記されたのは当然だ。地球規模で人が移動する時代であり、難民・移民問題は世界の政治・経済に直結する。紛争地からの距離にとらわれず、国際社会全体で負担を分かち合うべきだ。では、各国がどう分担するのか。具体的な数字や期限が宣言に盛り込まれなかったことは、大きな課題として残った。腰が引ける背景には、テロの恐怖や、「仕事を奪われる」との不安による排斥感情の高まりがある。欧米では近年、そうした主張をする政治家や政党が勢いを増している。しかし、こうした排他的な非難は、貧富の格差など広範な社会問題への国民の怒りを利用した責任転嫁であることも多い。長い目で見れば、難民や移民は受け入れ国に、利益や活力を少なからずもたらしてきた。サミットの会合で、経営者や労働者の団体は「秩序ある移民や難民の受け入れは経済を活性化させる」と述べた。経済協力開発機構(OECD)も、長期的に経済的にプラスになると指摘する。各国政府は、そうした受け入れのメリットについて国民にきちんと説明すべきだ。安倍首相は受け入れ国支援のための約2800億円の拠出や、シリア人留学生150人の受け入れなどを表明した。だが、多くの国と比べて難民の受け入れが極端に少ない現実は変わっておらず、国際的に批判の的となっている。近年は日本でも難民の雇用に取り組む企業や、支援団体に寄付する人が増えている。政府も行動の幅を広げ、もっと世界に門戸を開き、十分な責任を果たす国の姿をめざすべきだ。

*4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161119&ng=DGKKASFS18H5J_Y6A111C1EA2000 (日経新聞 2016.11.19) 外国人労働者、まず介護から 改正入管法成立 「高度人材」と両にらみ
外国人労働者の受け入れを拡大するための法律が18日、成立した。留学生や実習生として日本に入国した外国人を介護専門職に育成し、就職につなげる。来年中に施行する。国内での外国人材育成を重視する新たな仕組みで受け入れの大幅増を目指す。政府は人手不足分野と高度人材の2本柱で受け入れを検討中で、介護での制度構築は、その第1弾になる。在留資格に「介護」を追加する改正出入国管理・難民認定法と、外国人技能実習制度を拡充する法律が成立した。18日の参院本会議で自民、公明、民進など各党の賛成多数で可決した。改正入管法は日本の介護福祉士の資格を取得した外国人を対象に、介護の在留資格を認める。外国人技能実習適正実施法は、実習期間を最長3年から5年に延ばす。長時間労働などを防ぐため、受け入れ団体・企業を監督する機構を新設。同法の施行と共に、技能実習の対象に介護を加える省令改正をする。2法の成立を受け、政府は外国人が実習中に国家資格を取れば、実習後に介護の在留資格で就職できる制度を設計する。これまでの制度では、介護職は経済連携協定(EPA)の枠組みに限って受け入れをしてきた。インドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国が対象だ。滞在期間を限定しているうえ、現地の資格や日本語能力が条件。ハードルが高く、過去8年間の累計で看護師とあわせ約3800人(9月時点)にとどまる。厚生労働省の推計では、介護職員は2025年に日本国内で約38万人も不足する。この差を少しでも埋めるため、今回の法整備はEPAを締結する3カ国以外の留学生も対象にした。少子高齢化で日本人の生産年齢人口は減少の一途だ。今後の成長のためには外国人労働力は有力な選択肢になる。政府は2本柱で受け入れを進める考え。経営者や技術者ら高度人材では、最短1年の滞在で永住権を認める制度を検討中だ。もう一つ、介護を含めた人手不足産業では、日本は単純労働者の入国を原則認めていない。だが政府内では建設業で2国間協定を使った受け入れ拡大を考えているほか、農業では特区での受け入れ解禁を検討中だ。

*4-3:http://digital.asahi.com/articles/ASJC46QKVJC4PTFC01M.html
(朝日新聞 2016年11月10日) 介護福祉士の学校、留学生急増 入管法改正の見通し
 日本介護福祉士養成施設協会によると、例年20人程度だった留学生の入学者数は、昨年度は94人、今年度は2・7倍の257人に。国籍はベトナムが114人と最も多く、中国53人、ネパール35人、フィリピン28人と続く。入学者全体の3%を占める。なぜ急増しているのか。留学生が介護福祉士の資格を得ても、現状では日本で介護の仕事はできない。これが変わる可能性が出てきたためだ。政府は今国会で、出入国管理及び難民認定法(入管法)改正法案の成立をめざす。外国人の在留資格に新たに「介護」を設ける内容。成立すれば留学生が卒業後に在留資格を「留学」から「介護」に切り替え、日本で仕事に就くことができる。外国人の介護福祉士をめぐっては、2008年度から経済連携協定(EPA)に基づく候補者の受け入れが始まった。しかし資格試験に不合格なら原則帰国など、留学ルートよりハードルが高い。今国会では、この入管法改正法案とは別に、外国人技能実習制度の適正化法案も審議されており、成立、施行されれば実習の対象職種に介護が加わる方向だ。外国人が介護現場で働く流れが一気に拡大することになる。ただ、介護業界の慢性的な人材難の大きな理由は賃金の低さだ。そこが改善されていない状況で外国人を広く受け入れると、現在の低い賃金水準が固定化されるのでは、という懸念はぬぐえない。日本介護福祉士会は「外国人が介護を担うことにより、介護職の処遇や労働環境をよくするための努力が損なわれることになってはならない。その点は国の検討会で確認されており、受け入れの前提と理解している」と話す。介護現場で働く外国人への支援も検討しており、「日本の介護全体の質を上げる努力をしていきたい」という。留学生の処遇も課題だ。外国人介護労働者の問題に詳しい京大大学院の安里(あさと)和晃特定准教授(45)は、授業料が借金となる懸念があるとし、「授業料の軽減や教育内容の充実、就職先を選択する自由を保障すべきだ」と訴える。「多様な人々が尊重され活躍できる場になるよう、学校や施設側は業界を挙げて努力する必要がある」
■ベトナムから視察団
 10月中旬、介護福祉士を養成する関西社会福祉専門学校(大阪市阿倍野区)に、日本への関心が高いベトナムからの視察団が訪れた。現地の医療短大の学長らだ。この専門学校では、今春に新入生の約2割を占める9人の外国人が入学。6人がベトナム人で、新たに日本育ちのベトナム人講師を採用し、10月から専門用語の学習をフォローする授業を始めた。「来年はベトナム人だけで25人程度入学します」。山本容平学校長(35)が説明すると、視察団の学長は大きくうなずいた。視察団をこの学校へ案内したのは、大阪市の医療法人「敬英会」だ。今夏以降、この医療短大から卒業生7人を受け入れた。7人は敬英会が用意した寮に住み、敬英会が運営する介護施設でアルバイトをしながら、日本語学校で学んでいる。来春はこの専門学校に入学し、介護福祉士の勉強をスタートさせる予定だ。その一人、グェン・ティ・ハンさん(22)は、母国で看護の勉強をしながら日本語を学んできた。「今は漢字の勉強が大変だけど、介護の免許をとって、日本で働きたい」と話す。敬英会の光山(みつやま)誠理事長(51)は将来の人材不足に備えてきた。「質が高く信頼される育成の仕組みを作りたい」。この動きを参考に、大阪介護老人保健施設協会も取り組みを進める方向だ。いま、同じような留学生受け入れのルートが国内各地で生まれている。東京国際福祉専門学校(東京都新宿区)では今春、中国、フィリピン、ベトナム、台湾から6人の留学生が介護福祉科に入学した。しかし日本人はゼロ。来春に向けて、人材紹介業者や外国人採用を考える法人とのパイプを増やし、定員の40人に近づけたいという。担当者は「経営を考えると数が多いほどいいが、授業についていけないようでは困る。いかに日本語能力が高い人を見つけるかがカギ。現場のリーダーとなる人材を育てたい」と話す。
■事業者自ら養成する例も
 人材難に苦しむ介護事業者が、自ら介護福祉士の養成校を作り、留学生を受け入れようとする動きもある。兵庫県篠山(ささやま)市。無人駅から徒歩約15分の山や田んぼに囲まれた場所に、3階建ての校舎が建っている。特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人「ウエルライフ」(同県西宮市)が来秋の開校をめざす「篠山学園」だ。1学年80人の2年課程。ホーチミンの日本語学校と提携し、入学者の多くをベトナム人留学生にする予定という。介護福祉士の養成校の多くは専門学校。専門学校は、外国人がほとんどを占める状況では認可されない。しかし篠山学園は、あえて外国人の制限がない「各種学校」での養成校をめざし、県に申請中だ。ウエルライフ側の危機感は強い。十分な採用ができずに人材派遣会社に頼らざるをえず、その費用が大きくなっている。開設準備室の安平衛(まもる)事務長(58)は「施設運営に介護福祉士は絶対必要。リスクは大きいが、直接のルートを作る方がいいと判断した」と話す。篠山市も期待をかける。県立高校の分校だった建物を県から約6千万円で購入し、同法人に貸す。校内で高齢者サロンを開く計画もある。「留学生のために、ベトナム料理に欠かせないパクチーを作ろうか」という地元からの提案も。市の担当者は「地域活性化につながるだけでなく、卒業後はできる限り市内で働いてもらえればありがたい」と話す。

*4-4:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170118-00000014-asahi-pol (朝日新聞 2017/1/18) 外国人の永住権、最短1年で付与へ 高度人材の確保狙う
 研究者や企業経営者など高い専門性を持つ外国人が最短1年で永住権を取得できる「日本版高度外国人材グリーンカード」が3月から始まる。現在は5年間日本で暮らせば永住許可を申請できるが、学歴や年収などを点数化し、条件を満たした場合は取得に必要な在留期間を短縮する。1年での永住権取得は国際的にも最短クラスで、獲得競争が激しくなっている外国人の人材を呼び込む狙いだ。外国人が永住権を取得するには、通常は10年以上の在留期間が必要だが、法務省は2012年に「高度人材ポイント制」を導入した。「学術研究」「専門・技術」「経営・管理」の3分野に分け、研究者の「博士号取得者」に30点、経営者の「年収3千万円以上」に50点などとポイントを積算。70点以上で「高度外国人材」と認めて最短5年で永住権取得を認めてきた。今回は、永住許可の申請に必要な在留期間を5年から3年に短縮。さらに、ポイントが80点以上の対象者は最短1年とする。「大学ランキングの上位校を卒業」(10点)、「国内で経営している事業に1億円の投資」(5点)なども新たにポイントとして加算する。


PS(2017年1月25日追加):*1-4の「米国第一エネルギー計画」「新たな規制の凍結も各省庁に指示」に関連して、トランプ米大統領は、*5-1のように、「①日本との自動車貿易は不公平だ」「②われわれが自動車を売る際、日本が販売を難しくしているが、日本は米国で多くの自動車を販売している」と指摘している。これは、関税だけでなく規制による非関税障壁も含む発言だが、環境規制などは規制緩和しさえすればよいわけではない。日本車は、1)狭い道路を走れる小型車を開発したり 2)高いエネルギー代金に対応する省エネを進めたり 3)厳しい環境規制をクリアしたりすることによって、付加価値の高い自動車を作ったため、米国でも売れているのである。そして、今後は、高齢化社会対応の自動運転車や環境対応の電気自動車・燃料電池車の開発が進むため、*5-2のように、米国がシェール、石油資源などの化石燃料を開発し、*5-3のように、化石燃料の増産や環境規制の緩和を図る方針を打ち出せば、米国の自動車は機能で他国の市場では売れなくなる。つまり、1980年代の日米自動車摩擦が再現するのではなく、需要者がどのような自動車を選択するかが重要であるため、販売は日本車に限らず顧客ファーストで考えたところが勝つのだ。
 これに対して、英国は、*5-4のように、①グローバルな競争力をもつ製造業の集積 ②世界最先端の専門知識の集積と研究開発 ③英国政府の支援 などによるビジネス環境の魅力により、自動車でゲームチェンジ(イノベーション)が起こった時に勝つための準備ができつつあるようだ。

    
  テスラ電気自動車    BMW電気自動車    日産電気自動車   ジャガー電気自動車


  日産電気トラック    トヨタ・ヒノ燃料電池バス   トヨタ燃料電池列車   ホンダ燃料電池車

*5-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017012590070133.html (東京新聞 2017年1月25日) 【経済】日本の車市場を狙い撃ち 日米貿易摩擦再燃の恐れ
 トランプ米大統領は二十三日、ホワイトハウスで環太平洋連携協定(TPP)から「永久に離脱する」とする大統領令に署名した。一方で「二国間の貿易協定を目指す」と明言、米国の利益を最優先にする米国第一主義に基づき、各国に市場開放を迫る方針を示した。日本については「日本との自動車貿易は不公平だ」と指摘しており、一九八〇年代から九〇年代にかけての日米自動車摩擦時のような厳しい交渉を強いられる可能性もある。「米国の労働者にとって非常に良いことだ」。トランプ氏は大統領令を掲げ、満足そうに語った。通商政策の司令塔となる新設の国家通商会議(NTC)のトップに就くカリフォルニア大のピーター・ナバロ教授らが見守った。政権が本格稼働した同日、ホワイトハウスで最初に署名した大統領令が、TPPからの永久離脱だった。続く労働組合の幹部らとの会合で「交渉参加国と二国間の貿易協定を目指す」と宣言した。署名の前には企業経営者らと会合。「われわれが自動車を売る際、日本が販売を難しくしている。だが、日本は米国で多くの自動車を販売している」と批判し、対日圧力を強める考えを示した。日本は自動車の関税を撤廃しているが、米国メーカーは燃費や安全規制が厳しいと主張してきた。トランプ氏は、大統領選挙戦では「ラストベルト」と呼ばれる中西部各州で、自動車産業などで働く白人労働者階級に「海外に奪われた仕事を取り戻す」とアピールし、彼らの支持を集めることで勝利の原動力とした。日本の自動車市場批判は米国から日本への輸出を増やし、支持層に報いる狙いがあるとみられる。トランプ氏の日本批判について菅義偉官房長官は二十四日のテレビ番組で「日本は関税ゼロで、事実誤認。米国メーカーも右ハンドルにするとか努力をすれば問題ない」と反論した。日本政府は米国との二国間交渉には否定的な立場で米国にTPPに加わるよう翻意を促す方針。日米首脳会談を二月上旬に行う方向で調整しており、安倍晋三首相はその場でもTPPの重要性を訴える考え。だが、逆にトランプ氏から二国間交渉の要求を突きつけられる可能性がある。TPPの事前協議に農林水産省の交渉官として携わった明治大の作山巧(たくみ)准教授は「多国間交渉では、大国でも主張を押し通せない場合があるが、二国間では理屈抜きに主張がぶつかり合うため、大国が優位になる」と指摘。二国間交渉になった場合、農産物や自動車で米国の圧力が強まると予想している。
<日米自動車摩擦> 1973年の第1次石油危機などを背景に米国で小型車の需要が高まり、日本車の輸入が増える一方、対応が遅れた米自動車メーカーは大きな打撃を受けた。米国内で対日感情が悪化し、日本車の輸入規制を求める動きが広がった。日本側は81年以降、対米輸出の自主規制を実施。93年に始まった日米包括経済協議で自動車は優先分野となり、95年に両国政府は日本市場への参入拡大などで合意した。摩擦を受けて日本自動車メーカーの海外進出が進んだ。
<米大統領令> 立法手続きを経ずに米大統領が直接、連邦政府機関や軍に発する命令。議会は大統領令の内容を覆したり修正したりする法律を制定することで対抗することができる。憲法に反する内容の場合は、最高裁が違憲判断を示して無効とすることもある。太平洋戦争開戦から約2カ月後の1942年2月19日にルーズベルト大統領が出した大統領令9066号は、日系人の強制収容につながった。 

*5-2:http://ieei.or.jp/2016/11/special201603013/ (国際環境経済研究所主席研究員、東京大学公共政策大学院 教授 有馬 純 2016/11/15) トランプ政権の下で米国のエネルギー・温暖化政策はどうなるか
 米大統領選でドナルド・トランプ氏が当選したことは世界中を驚かせた。そのマグニチュードは本年6月の英国のEU離脱国民投票の比ではない。選挙キャンペーン中のトランプ氏の過激な言動や公約が、大統領就任後、どの程度実行に移されるのかは未知数である。しかし確実に言えることは米国のエネルギー温暖化政策が大きく様変わりするということである。
1.国内エネルギー生産の拡大、安価なエネルギー価格が中核
 トランプ氏のエネルギー政策の中核は国内エネルギー生産の拡大と米国のエネルギー自給の確立である。彼の「米国第一エネルギー計画(An America First Energy Plan)」注1) は以下の公約を列挙している。
●米国のエネルギー自給の確立、数百万の雇用創出
●50兆ドルにのぼる米国のシェール、石油、ガス、クリーンコール資源の開発
●OPECカルテルや米国の利害に敵対する国々からの輸入を不要に
●連邦所有地(陸域、海域)のエネルギー資源開発への開放
●排出削減、エネルギー価格の低下、経済成長につながる天然ガスその他の国産エネルギー源の使用を促進
●オバマ政権の雇用破壊的な行政措置を全て廃止し、エネルギー生産への障壁を削減・撤廃することにより、年間50万人の雇用創出、300億ドルの賃金引上げ、エネルギー価格の低下を図る
 またトランプ氏はAn American First Energy Plan の中で、オバマ政権の「反石炭的な規制」を引き継ぐクリントン氏を強く批判している。トランプ氏が10月に発表した「米国を偉大にするための100日行動計画(100-day Action Plan to Make America Great Again)」注2) では「米国の労働者を守るための7つの行動」の中で上記のエネルギー資源開発の促進に加え、「キーストーンパイプラインを含むエネルギーインフラプロジェクトに対してオバマ・クリントンが課した制約を撤廃する」としている。こうした彼のエネルギー関連の公約には、シェール開発で巨万の富を得たContinental Resources 社オーナーのハロルド・ハム氏が強い影響力を及ぼしているといわれる。ハロルド・ハム氏は以前から2012年の大統領選ではミット・ロムニー候補のエネルギー問題のアドバイザーを務めており、トランプ政権のエネルギー長官候補としても名前が挙がっている。またトランプ氏の移行チームの中でエネルギー省を担当するのはMWR Strategies社長のマイク・マッケンナ氏である。彼はエネルギー省、運輸省の対外エネルギー関係アドバイザーやバージニア州環境局の政策・対外関係局長の経験があり、MWR Strategies社はダウ・ケミカルやKoch Industries, TECO Energy, GDF Suez 等のためのロビイングを行っている。エネルギー長官候補として彼の名前を挙げる記事もある。

*5-3:http://www.cnn.co.jp/usa/35093713.html (CNN 2016.12.14) トランプ氏、エネルギー長官にペリー氏を指名へ 情報筋
米国のトランプ次期大統領は、新政権のエネルギー長官にリック・ペリー前テキサス州知事を指名する方針を固めたことが14日までに分かった。政権移行チームの複数の情報筋がCNNに語った。
ペリー氏は同州の共和党重鎮として知られ、2012年と今回の大統領選に名乗りを上げたものの撤退していた。12年の共和党指名レースでは3つの省庁を閉鎖するべきだと訴えたが、討論会でそのうち1つを思い出せずに立ち往生した。この省庁がまさにエネルギー省だった。今回の指名レースでは当初、トランプ氏批判の先頭に立ったものの、資金集めに行き詰まって昨年9月に撤退。その後はトランプ氏支持に回っていた。オバマ現政権下のエネルギー省は再生可能エネルギー開発事業への助成や融資などを通し、化石燃料からの方向転換を推進してきた。一方、トランプ氏は現政権のエネルギー政策を覆し、化石燃料の増産や環境規制の緩和を図る方針を打ち出している。規制の多くは環境保護庁の管轄下にあるが、エネルギー省も重要な役割を果たすことになる。連邦所有地での化石燃料掘削には内務省の許可が必要とされる。移行チームから13日に入った情報によると、新政権の内務長官にはエネルギー自給を主張し、環境保護団体から批判を浴びているライアン・ジンキ下院議員が就任する見通しとなった。

*5-4:http://special.nikkeibp.co.jp/as/201501/innovation_is_great/great4.html
 急速なグローバル化が進展する自動車産業の中で、英国の存在感が増している。その背景には3つのファクターが存在する。英国の自動車産業に詳しいリカルド ジャパン株式会社代表取締役社長の山本雄二氏に話を聞くことができた。同社は英国の自動車産業を代表する総合エンジニアリング企業であるリカルド社の日本法人だ。リカルド社は今年で創業100周年を迎える歴史を誇り、英国のみならず日本および世界の自動車メーカーと幅広くビジネスを展開している。
 第一のファクターは、グローバルな競争力をもつ製造業の集積である。「欧州では自動車の開発プロセスにも数多くのサプライヤーが関わります。自動車メーカーにとって、確固たる技術基盤をもったエンジニアリング企業の存在は必要不可欠になっています」と山本氏。同社が提供するエンジニアリング分野は幅広く、自動車分野だけでもパワートレイン開発、ワイヤハーネス設計、軽量化技術など、多岐にわたるソリューションを提供している。「およそ自動車メーカーができることはリカルド社もできると思っていただいて結構です」。さらに同社の大きな特徴に「戦略コンサルティング」が挙げられる。単に技術の提供だけでなく、商品企画段階から市場予測に基づく戦略的コンサルティングを行っているのだ。リカルド社は現在、ジャガー・ランドローバー社と長期的かつ包括的なサポート契約を結び、エンジン・車体開発の一部を担当している。また、マクラーレン・オートモーティブ社が製造する超高性能スポーツカー向けのエンジンを共同開発し、その生産まで請け負うなど、エンジニアリング企業の枠を超えた自動車メーカーとの関係を築いている。リカルド社のような企業の存在こそが、英国の自動車産業のイノバティブな躍進を支える大きな原動力と言えるだろう。
 第二のファクターは、世界最先端の専門知識だ。英国にはホンダ、日産、フォード、BMW、上海汽車、吉利汽車など、世界を代表する自動車メーカーが拠点を構え、研究開発を行う。リカルド社でも「既存のエンジン技術での資源の有効活用、低排出ガス(CO2抑制)などが求められるなかで、高効率ハイブリッドシステムやEV関連などの研究開発も行っています。特にバッテリーやモーターに関するソリューションを提供できるエンジニアリング企業は世界的に見ても少ないのが実情で、当社の強みの一つとなっています」とその先進性を語る。「英国には次世代のイノベーションが期待できる産官学連携のプログラムが数多く用意されています。当社でもいくつかの基礎研究分野において英国の大学との共同研究を行っています」。英国におけるイノバティブな産業育成プログラムといえば、前々回記事で紹介した、政府と産業界が資金を拠出する「カタパルト」が知られている。自動車関連では「高付加価値製造(HVM: High Value Manufacturing)カタパルト」によって多くの研究機関が連携するほか、輸送システムにおける将来のイノベーションの開発と展開を目指す「輸送システム・カタパルト」も積極的に活用されている。
 最後のファクターは、ビジネス環境としての英国の魅力である。英国政府は産業界と連携し、前出のカタパルトを補完しながら、将来の自動車技術を開発する企業を支援している。投資受け入れ先として英国自動車産業の魅力を高めることにも積極的だ。取り組みの一部を紹介する。
 ・先端推進システム技術センター(APC: Advanced Propulsion Centre )
  産官共同の自動車産業戦略の中心となり、今後10年間に10億ポンド(約1940億円)の資金を
  投じ、先端推進技術の開発、商業化の実現を促進。
 ・低排出車両庁(OLEV:Office for Low Emission Vehicles)
  超低公害車の初期市場を支援する政府横断的な組織。9億ポンド(約1740億円)超の資金を
  投入し、超低公害車の開発、製造および利用で世界の先頭に立ち、温室効果ガス排出と
  大気汚染の削減を促進。
 ・国立自動車イノベーションキャンパス(NAIC:National Auto Innovation Campus)
  政府、ジャガー・ランドローバーおよびタタ・モーターズによる9200万ポンド(約178億円)の構想。
  化石燃料依存を削減し、二酸化炭素排出を低減する新技術の開発を目指す。約1000名の研
  究者、科学技術者、エンジニアが働く。
 ・政府、ジャガー・ランドローバーおよびタタ・モーターズによる9200万ポンド(約178億円)の構想。
  化石燃料依存を削減し、二酸化炭素排出を低減する新技術の開発を目指す。約1000名の研
  究者、科学技術者、エンジニアが働く。
 英国に拠点を置く企業に対する税務上のインセンティブも大きい。英国の法人税は現在、G20諸国中で最も低い20%にまで引き下げられている。大幅な研究開発費控除(適格研究開発支出1 ポンドにつき最大27 ペンス控除)を提供しているほか、特許発明などのイノベーションから生じた利益に対して法人税率を軽減(10%)するパテントボックス税制も適用している。また、製造部門の労働費用も西欧諸国としては最も低い水準であり、人件費の面でもメリットがある。「グローバル化とともに、自動車メーカーが全てのリソースを自前で賄うのがむずかしい時代になりつつあります。すでに欧州がそうであるように、日本でも外部のエンジニアリング企業にアウトソースを求める時代が到来しつつあります。そうしたなかで、日本企業が英国および英国企業とパートナーシップを組むことは意義のあることだと思います」。グローバルな視座からマーケットを俯瞰し、ダイナミックに変化し続ける需要にフレキシブルに対応できる英国のビジネス環境。そこには新しいビジネスの可能性が広がっている。すでに新しい日英パートナーシップは走り出している。その象徴が、欧州最大の自動車生産工場である日産サンダーランド工場が製造する電気自動車「リーフ」である。2015年9月8日(火)~9月18日(金)、英国政府による「Innovation is GREAT~英国と創る未来~」のキャンペーンロゴをまとった日産リーフが、東京の英国大使館から全国ツアーに出発する。日本各地の観光名所、英国ゆかりの地を巡りながら、日英パートナーシップをアピールするという。日本F3に参戦する英国人ドライバー、ストゥラン・ムーア選手が運転することが既に決定している。


PS(2017年1月26日):*6のように、佐賀県内の追突事故の1割弱は自動前進機能が原因だそうだが、運転車が意図しないのに自動車が動き出すのはプログラムミスだ。そのため、オートマチック車の運転者に「停止中はニュートラルして、サイドブレーキを使うように」と言うよりは、オートマチック車のプログラムを変更した方がよいと考える。また、確かに警察が集計した交通事故原因を参考にして改良すれば「運転支援システム」や「自動運転機能」の完成に役立つだろうし、事故が起こった際の関係者の怪我を集計すれば、車体の安全性における改良ができるだろう。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/399034
(佐賀新聞 2017年1月26日) 県内の追突事故、1割弱が「自動前進」原因、県警「サイドブレーキを」
 佐賀県内で昨年1年間に発生した追突事故のうち316件(8.7%)が、ブレーキから足を離すと自動的に進む「クリープ現象」によるものだったことが県警の集計で分かった。オートマチック車の運転者にサイドブレーキの徹底を促している。25日の定例会見で説明した。交通安全企画課によると、信号待ちなどで停止した際、後部座席のチャイルドシートを見ていて踏みが弱くなり追突したケースや、ブレーキペダルを踏む筋力自体の衰えでぶつかった高齢ドライバーもいた。同課は「ゆっくりとした前進でも大きな事故につながる可能性はある」と指摘し、「停止中は車間距離を十分取ってニュートラルの状態にし、サイドブレーキを引くことを徹底してほしい」と呼び掛けている。追突事故を原因別で見ると、脇見などの前方不注意が最も多く2378件(65.1%)。次いで歩行者らへの注視を怠った事例が744件(20.4%)、クリープ現象を含むブレーキ操作に起因するケースが435件(11.9%)だった。


PS(2017年1月27日追加):ゴーン社長率いる日産・ルノー組が世界で最初にEVを開発したが、日本の政府・メディアは航続距離が短いなどの批判ばかりを行ってディーゼル車やガソリン車への回帰を進め、EVの短所解決に協力することはなかった。そのため、*7のように、EVで世界の第一線から外れたのであり、日本の技術は、ハンドルを握っている文系の愚(中等・高等教育や組織構成に問題があると思われる)により、世界から遅れて初めてエンジンをかけられるというお粗末さなのである。なお、PHVは、ガソリンエンジンを併用しているため、部品が多くてコストダウンできず、車内も従来のガソリン車と同様なので、EVのメリットが出ない。

*7:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12767174.html (朝日新聞 2017年1月27日) ホンダ、EV開発に注力 燃料電池車の普及進まず
 ホンダが、出遅れた電気自動車(EV)の開発に本腰を入れ始めた。水素で走る燃料電池車(FCV)を「究極のエコカー」と位置づけてきたが、FCVの普及が進まず、米国で今秋に始まる環境規制への対応も急務となっているためだ。「EVをやめたわけではない」。昨年12月、早稲田大で講演したホンダの八郷隆弘社長は、「なぜEVに力を入れないのか」と質問した学生にこう強調した。社外には公表していないが、昨年10月、開発部門ごとに散らばっていたEVの技術者を集め、専門組織を新設。四輪車開発の責任者の直属とし、米国で今年売り出すEVの仕上げや、次世代のEV開発に当たらせている。ホンダは昨年3月、FCV「クラリティ フューエルセル」のリース販売を始めたが、初年度の国内販売計画は200台。米国も当面はカリフォルニア州の12店舗だけでの販売で、普及にはほど遠い。一方のライバルは、日産自動車がEV「リーフ」を世界で約25万台売った。同じくFCV重視だったトヨタ自動車も昨年11月、2020年をめどにEV量産を目指すことが判明した。米カリフォルニア州で今秋発売の18年モデルから始まる規制強化も、ホンダにEV開発を迫る背景だ。排ガスのない車(ZEV〈ゼブ〉)をより多く売り、一定の「点数」を稼ぐ必要があるが、ホンダなど日本勢が得意のハイブリッド車(HV)はZEVから外れた。三菱UFJモルガン・スタンレー証券によると、18年モデルでホンダが規制を達成するための販売の水準はEV約3千台、FCV約1千台、プラグインハイブリッド車(PHV)約8千台と厳しい。点数を満たせなければ罰金を支払うか、超過達成した他社から点数を買わなければならない。日産のようなEVの量産経験に乏しく、研究開発費がトヨタより3割少ないホンダにとって、EVとFCVとの「二正面作戦」が重荷になる可能性もある。ただ、ホンダが12年からリース販売した小型車「フィット」のEVは、開発にHVやFCVの知見を生かし、一度の充電で走れる距離を当時の世界最高水準にした。広報担当者は「技術で他社より遅れているとは思わない」と話す。
■自動車大手3社はZEV規制への対応を急ぐ
<ホンダ>
●従来の主なエコカー/クラリティ フューエルセル(FCV)
●累計世界販売/年200台以上を予定(16年3月発売)
●米国のZEV規制への対応/16年にクラリティ、17年にクラリティの車台を使ったEVとPHVを投入
<トヨタ自動車>
●従来の主なエコカー/ミライ(FCV)
●累計世界販売/約2300台(14年12月発売)
●米国のZEV規制への対応/ミライに加え、「プリウスPHV」の2代目を投入。20年メドにEV量産
<日産自動車>
●従来の主なエコカー/リーフ(EV)
●累計世界販売/約25万台(10年12月発売)
●米国のZEV規制への対応/リーフで対応。近い将来にリーフは全面改良し、傘下の三菱自動車のPHV技術も導入


PS(2017年1月29日追加):台湾には、17世紀頃に中国福建省の人が移民して来る前から居住していた先住民がおり、第二次世界大戦後に日本に代わって台湾を統治した中華民国政府は、1949年2月7日に蒋介石率いる中国国民党が台湾島に来たことにより実効支配するようになったものである。そのため、*8-1のように、中国から「日本が台湾を侵略したことを忘れたのか」と批判されるのはおかしい上、日本が侵略したとされる他国と異なり、台湾の人々は親日的な人が多いのだ。
 また、*8-2のように、厚労省の発表では、2016年10月末時点の外国人労働者は108万人で、(労働条件は改善すべき点が多いものの)中国からの34万4,658人が最も多く、日本は中国へのODAもかなりやってきたため、「日本が中国を侵略した」ということを、いつまでも外交カードに使ってもらいたくない。さらに、私は個人的に、中国はスケールが大きく将来性もある国だが、民主国家とは言えず、まだ公害が多くて人権が疎かにされているため、安心して住めないような気がしている。 

*8-1:http://mainichi.jp/articles/20170129/k00/00e/030/107000c (毎日新聞 2017年1月29日) 台湾、蔡英文総統が英語と日本語でツイート 内外に波紋
 台湾の蔡英文総統が28日の春節(旧正月)に合わせて英語と日本語で新年のあいさつをツイッターで投稿したところ、中国から「なぜ中国語で書かないのか」と批判の書き込みが相次いだ。これに対し日本や台湾からも反論が投稿され、激論となった。台湾紙、自由時報(電子版)が28日、伝えた。蔡氏は大みそかにあたる27日、英語と同時に日本語で「日本の皆様、今年は実のある素晴らしい一年となりますよう、心よりお祈り致します」と書いた。中国からは「ごますり」「日本が台湾を侵略したことを忘れたのか」などと批判が殺到した。

*8-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201701/CK2017012802000113.html (東京新聞 2017年1月28日) 外国人労働者108万人 昨年10月末 技能実習生、受け入れ拡大
 厚生労働省は二十七日、二〇一六年十月末時点の外国人労働者数が初めて百万人を突破し、百八万三千七百六十九人になったと発表した。前年比で19・4%増加し、企業に届け出を義務付け集計を始めた〇八年以来最多となった。全体の増加率はこれまでで最も大きく、全ての都道府県で前年の人数を上回った。人口減少で人手不足感が強まる中、外国人労働者に頼る流れは続くとみられるが、欧米諸国では外国人居住者の増加が国を二分する論争になっている。日本でも受け入れを巡り国民的な議論が必要となりそうだ。人手不足から高い技能を持つ人材や留学生アルバイトの受け入れが増えたほか、安価な労働力との批判がある技能実習生の大幅増も全体を引き上げた。国籍別で最多は中国の三十四万四千六百五十八人で前年比6・9%増。次いでベトナムが十七万二千十八人で56・4%増加し、留学生によるアルバイトや技能実習生が多くを占めた。フィリピンが十二万七千五百十八人で続いた。ネパールはベトナムに次ぐ増加率(35・1%)だった。都道府県別では、東京が最多で三十三万三千百四十一人、愛知が十一万七百六十五人、神奈川が六万百四十八人だった。

| 経済・雇用::2016.8~ | 02:51 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.1.5 日本が先進国となり、少子高齢化した中で増える需要と雇用吸収力のある産業は何か → 高齢者いじめの年金・医療・介護の負担増・給付減は憲法違反であると同時に、国民経済を悪化させること (2017年1月6、8、10、13、15日に追加あり)
 あけまして、おめでとうございます。書くべきことは多いのですが、今日は2017年度の国家予算と高齢者いじめの年金・医療・介護の負担増・給付減の話です。


 国の借金     国の一般会計    2017年度予算案 社会保障推移  日本の人口構成
           2015.1.28Goo  2016.12.22毎日新聞

(図の説明:国の借金は1989年《平成1年》の消費税導入以降、次第に増えて2015年《平成27年》には1000兆円を超えた。これは、消費税増税を目的として税収増以上の景気対策と称する歳出増を行ってきた結果である。また、消費税は、価格を上げて消費を抑える効果もある。この結果、2017年政府予算案では、国債費が最も大きな支出項目となっているが、このうち国債の利払費は低金利の現在、国債を借り換えすることによってかなり節約できる。社会保障費の割合は大きく金額も増えているが、これは高齢者の数が増加したことが原因で一人当たりの社会保障費が増えたわけではない。特に介護は大きく不足しており、我が国の社会保障は、まだ削減するよりも充実すべき段階にある)

 
労働生産性 労働者一人当たり労働時間推移   労働時間世界比較   医師の労働時間世界比較

(図の説明:我が国の労働生産性はOECD加盟国のうち21位で決して高くないが、全員の労働生産性が低いわけではなく、公的部門や雇用対策・景気対策でなされる事業の生産性が特に低いのだろう。また、我が国の労働者1人当たりの年平均実労働時間は、1980年には2,104時間/年だったが、2012年には1,765時間/年まで減っており、これはアメリカ・イタリアより少ないため、我が国の労働者は働き過ぎだと主張する人は30年古い感覚である。しかし、医師の労働時間数は世界でもとりわけ高く、過労死認定基準を超えており、このように疲れていては治療の安全性さえ危ぶまれるが、他の職種との給与差は世界でも小さい方であり、度重なる診療報酬の引き下げは医療の質を落とす可能性が高い)

(1)国の異次元の借金と歳入・歳出について
 *1-4に、「①国の借金が1062兆5745億円に達して国民1人当たり約837万円の借金になった」「②高齢化で増え続ける社会保障費を賄うため借金が膨らんだ」「③経済対策の財源として建設国債を発行するため、2016年度末の国の借金は1119兆3000億円程度になる」と記載されている。

 このうち①は、国の負債部分しか見ておらず資産を考慮していないため正しくない。そして、その資産は使い方によっては大きな収益を産んで価値が高くなるが、金をどぶに捨てるような使い方をすれば価値がなくなり、現在は後者の使い方が目立つ。

 また、③は事実を書いたのだろうが、②の「借金が膨らんだ理由は社会保障費だ」というのは間違いだ。何故なら、社会保障費はあらかじめ予測できた支出であり、受益者たる国民は働いた期間に保険料を支払ってきたため、基本的に保険料収入から支出すべきもので財政支出すべきものではないからだ。それにもかかわらず、国民が支払った保険料では賄いきれずに財政支出しているのは、これまで監督官庁が単年度の収支しか考えておらず、保険料の徴収や積立金の管理・運用・配分等が著しく杜撰だったからである。

 そのため、その本質的な原因をなくさずに、「官は正しいことをしてきたが、少子高齢化(これも予見できた)が原因だ」などとして積立金不足の責任を特定世代の国民にしわ寄せするのは、正義に反する上、それでは社会保障が信頼をなくし、杜撰な管理・運用が今後とも改善されないのでよくない。

(2)2017年度の政府予算案について
1)予算案はまともに審議されるのか?
 一般会計歳出総額97兆円台半ばの2017年度政府予算案が、*1-1のように閣議決定されたが、これでもし衆議院が1月に解散されれば、国会のしっかりした審議もなく膨大な予算が執行されることになる。そのため、これは主権者である国民を無視した憂慮すべき事態だ。

2)国債残高と利払いについて
 大手新聞社は、*1-1のように、一貫して「社会保障が膨らみ、新規国債の発行額は16年度の34.4兆円をわずかに下回る薄氷の減額で、改革の切れ味が鈍い」という論調だが、正しくは国債増加額と国債の利払いを問題にすべきだ。そうすると、金利の低い現在は、新規国債を発行して金利の高い国債を返済し、今後の利払いを抑えるのが賢明だということがわかる。そして、「歳出の中で割合が大きいから、社会保障費を削るのが改革だ」とするのは、後で理由を書くとおり、間違いである。

3)沖縄振興と政府開発援助について
 沖縄振興は、基地を縮小し、沖縄自身が観光業・その他の産業を起こし、街づくりをして自ら稼ぐことができるようにするのが最も有効な投資であり、基地負担を強いるためにいつまでも補助金をばら撒くのは誰にとってもプラスにならない。

 また、政府開発援助(ODA)も大きいが、日本の外交は、国民に負担させて金をばら撒くばかりで、論理的に交渉する力に欠けているため、無駄遣いが多すぎる。

4)高齢者の負担増について
 高齢化による自然増6400億円の社会保障費を1400億円抑え、中高所得者とも言えない所得の低い高齢者の医療・介護負担を増やして高齢者向け社会保障費を5000億円増に抑えたのは、現在の本物のニーズである高齢者の医療・介護需要を減らさせ、命を支えている医療・介護従事者に不当な負担を強いた上、高齢化社会で必要となる財・サービスの開発・普及を妨げているため、間違った政策である。

 一方で、健康な生産年齢人口に当たる人の“働き方改革”に2100億円も充てているが、これは、脱法行為も含む労働基準法違反や男女雇用機会均等法違反をしっかりと取り締まればよいのであり、補助金を積んで改善していただくべき事項ではない。

 なお、*1-5のように、電通の新入社員である高橋まつりさんが異常な長時間労働の末に自殺した事件について、母の幸美さんが「日本の働く全ての人の意識が変わってほしい」と求める手記を公表し、一つの特殊な事例を働く全ての人に敷衍しようとしているが、これには無理がある。何故なら、(アウト・プットを見ればわかるとおり)電通は広告会社であり、東大は研究者や各界のリーダーを養成する校風であるため、東大文学部を卒業したからといって電通の仕事をする能力に長けているとは限らないからだ。

 また、上司が「目を充血させて会社に来るな」と言ったのも、本人が長くエネルギーを出し続けるためには無茶な残業をするよりも規則正しく仕事をする方がよい上、朝から他の社員に疲れを伝染させるようなことはしない配慮も必要であるため、上司として必要な注意だったかも知れず、パワハラとは決めつけられない。さらに、上司が「君の残業は電通にとって無駄だ」と言ったのも、成果があがらないので少なくとも頑張っているところを見せたいため長時間残業をする人もおり、それは本当に無駄であるため、必要な注意をしたのかもしれないからである。しかし、新入社員に、一人で責任を持つ形で困難な仕事をさせていたのであれば、それは異常であるとともに、社員を育てる意識に欠ける。

 そのため、まつりさんは、①社内の人事部などに相談する ②私もされた経験があるのでわかるのだが、東大卒など上昇志向の女性いじめの可能性も高いため、大学の就職相談室に相談しておく (労働基準監督署は、それ自体に女性差別があり、賃金と残業時間くらいしか対応できないため、このような女性差別の問題は大学の就職相談室が相談を受け付け、会社毎に挙がってくる問題を集計して対処した方がよい) ③労働問題・男女共同参画問題の専門家である弁護士に相談する ④(本当に自殺なら)母一人子一人の母親に喪失感を与えるような自殺はしない ⑤どうしても仕事や社風が合わなければ転職する など、大人としてやるべきことがあった筈なのだ。

 なお、日本社会は、「会社に入ったら辞めるのは落後者だ」という烙印を押すのをやめ、諸外国と同様、転職や中途入社をしても不利にならない雇用システムにすることが重要だ。また、本気で仕事における女性軽視や上昇志向の女性いじめをやめることも必要である。そして、この事件に対する日本社会の変な反応によって、本当に必要な時間外労働をしている人までが批判され、わかりやすい例を挙げれば、医療・介護も夜間・休日は休業しなければならないとか、メディアも生放送や朝刊をなくさざるをえないなどの負の結果が出るのは論外だ。さらに、仕事量が減らないのに午後8時や10時に全館消灯されると、家に仕事を持ち帰らざるを得ない人が増え、電車に忘れたりしてセキュリティー上のリスクが上がるとともに、それこそ仕事とプライベートの堺をなくさせ、ペースを乱させて労働生産性を下げる。なお、生産年齢人口が減る中で労働生産性を下げると、労働の量と質の両方が減ることを忘れてはならない。

 最後に、*1-2に、「1億総活躍社会の実現」として、保育士や介護職員の処遇改善に952億円を充てたと書かれているが、このやり方は保育と教育の連携や医療・介護制度の全体を考慮していないため、資本生産性が低い。

5)防衛費について
 防衛費は過去最高の5.1兆円に増やしたそうだが、東京オリンピックの競技場と同様、政府が購入する物品は国内市場価格の3~4倍であり、中国と比較すれば5倍にものぼる。そのため、多く支出する割には大したことはできておらず、公的部門の資本生産性(支出1円当たりの効果)は著しく低い。

 また、*1-2の海上保安庁の予算(2106億円)も同様だと思われるため、高コスト構造や公的部門の購入コストを何とかしなければ、無駄遣いが非常に大きいのだ。

6)土地改良事業について
 資本生産性が低いのは、4020億円を充てた土地改良事業も同じだ。土地改良費はこの20年の累積で約8兆円(4000億円/年 x 20年)近くにのぼるが、未だに大型機械が入らない区割りになって
いる場所があったり、いつまでも土地改良事業が必要だと言っていたりするのは、これまで何をしてきたのかと思われる。私は、災害で壊れた場所を治す時も、何度も同じ場所を工事する必要がないように、復旧して元に戻すのではなく、時代の要請にあったものを造るべきだと考える。

7)歳入・歳出と消費税増税について
 歳入面では、来年度の税収は今年度当初比1000億円増の57.7兆円に留まり、歳出の伸びと比較して税収の伸びが鈍いため、外国為替資金特別会計の運用益等の税外収入を2016年度の4.7兆円から2017年は5兆円超に伸ばす方針なのだそうだ。しかし、これまでに書いてきたとおり、税収増は、各生産性を上げ、国産自然エネルギーに代替したり、新産業を創出したりすることによって実現でき、税外収入は地熱・天然ガス・地下資源などの国産資源を開発する方が大きな効果が得られる。

 なお、日本の消費税は、1989年(平成1年)に導入されて税率3%でスタートし、1997年(平成9年)に5%に引き上げられ、2014年(平成26年)4月からは8%に引き上げられた。そして、一番上の左から2番目のグラフを見ればわかるとおり、消費税導入翌年の平成2年から国の歳出が歳入を大きく上回り始め、その差は増税毎にますます大きくなって、それにつれて国債発行残高が増えているのだ。これは、消費税増税のための景気対策と称して消費税増税以上の歳出をしているからで、消費税が財政に貢献するというのは消費税増税自体が目的である政府の御都合主義の神話である。なお、「社会保障費は消費税や付加価値税からしか支出してはいけない」などとする国は、日本以外にはない。

8)少子高齢化社会のニーズに合ったサービスである社会保障の削減について
 東京新聞が*1-3に記載しているように、政府が12月22日に閣議決定した2017年度予算案は、上記3)~6)の増加があった半面、高齢者関係の社会保障費の増加を抑え、高齢者に対して予算のしわ寄せを行っている。

 そして、歳出の1/3を占める社会保障費の伸びを抑えるためとして、医療・介護の分野での高齢者の負担増が多く、①一定の所得のある70歳以上を対象とした医療費の自己負担上限引き上げ ②後期高齢者医療制度保険料の自己負担増加 ③高齢中所得者の介護保険サービスの利用者負担上限引き上げ が盛り込まれ、菅官房長官が12月22日の記者会見で「社会保障と財政を持続可能にすることができるようにするということは当然」として、翌年度以降も医療・介護での負担増は避けられないとの考えを早くも強調したそうだ。

 しかし、この政策は、“社会保障”と“財政”を持続可能にするどころか社会保障の機能を失わせ、「高齢者は国民負担になるから、次世代のために早く他界してくれ」と言わんばかりだ。これは、憲法25条の「①すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する  ②国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という国民の生存権と国の社会的任務を定める規定に反する。

 また、(3)で書くとおり、もともと少ない高齢者の可処分所得を削り、生産年齢人口にあたる健康な人のために景気対策と称して資本生産性の低い大きな財政出動を行って国全体の労働生産性を落としつつ、今後人口における割合が高くなる領域(一番上の右端のグラフ参照)の消費を抑えてGDPの増加(=経済成長)を阻害している点で、賢くない政策である。

(3)GDP算出方法の基準変更と実質GDPが増えない理由
 異次元の金融緩和や莫大な財政支出による景気対策を行っても、*2-1のように、実質国内総生産(GDP)の成長率は2%に満たず、①個人消費などの内需は弱くて輸出が牽引している構図に変わりない ②企業の設備投資が下方修正された ③民間在庫の減少も下押し要因となった とのことである。私は、①は税と社会保障の一体改革で人口の25%を占める65歳以上の消費を抑制した影響が大きく、その結果、国内消費が冷え込んだため、②③のように国内投資が抑制されたのだと考える。

 また、内閣府はGDP算出方法の国際基準変更に伴って、今回から研究開発費を投資に追加する変更を行い、過去分にさかのぼって数値を修正したところ、設備投資は速報値の前期比0.03%増から0.4%減と悪化し、GDPの6割を占める個人消費は0.1%増から0.3%増に改善したそうで、内閣府が国際基準の変更に伴ってGDPの計算方法を見直した結果、2015年度の名目GDP確報値は532兆2千億円になり、基準変更の影響だけで2015年度の名目GDPは旧基準と比較して31兆6千億円拡大して、安倍政権が目標として掲げる名目GDP600兆円に近づいたそうだ。しかし、これは尺度の変更にすぎない。

 このうち最も大きな変更点は、今まで費用とされてきた研究開発費を付加価値を生む投資としてGDPに加えるようになったことで、これによる名目GDPへの上乗せ効果が研究開発費だけで19兆2千億円あるそうだが、研究開発に失敗はつきもので研究開発費のすべてが付加価値を生む投資になるわけではないため、私はこの認定は甘すぎると考える。国際会計基準(IFRS)では、研究開発投資について合理的な根拠がある場合(新商品に繋がる可能性が高く、その際に特許権・商標権等が生じるなど)に限って資産性を認めて資産計上できることになっている。

 なお、*2-2に書かれているとおり、新基準では統計の基礎となる産業連関表を実勢に近い2011年分に切り替えるそうだが、日本の産業連関表は、第二次産業(製造業)が細かく分析されているのに対し、第一次産業(農林漁業、鉱業)や第三次産業(サービス業)が大雑把にしか扱われていない点で時代についていっていないため、これを改善すべきだと、私は考える。

 何故なら、先進国で高コスト構造の日本は、既に製造業による加工貿易に適した国ではなく、そのような国で雇用吸収力の高い産業は国内向けの財・サービスを生産する産業で、実際にそれらのGDPに占める割合が高くなっているからだ。さらに、人口に占める割合の高い高齢者向けの需要は増え、日本で高齢者向けの洗練された財・サービスを開発すれば、それは後に続く他国へも輸出可能な筈である。

 なお、日本で輸出を伸ばせる産業には、これまで重視してこなかったため伸びしろが大きく、工場のように移転できない農林漁業と関連食品産業、鉱業、現代の技術を取り入れた伝統産業などもある。

 そのため、(2)の予算のように、高齢者から可処分所得を巻き上げ、高齢者がQOLを高くするために自由に選択して消費することを不可能にし、それによって高齢者向けの洗練された財・サービスの開発を妨げて、一方でグローバル化と称して農業を犠牲にして自動車の輸出を計るのは、過去のやり方を繰り返そうとしているだけで現在と将来を見すえていないため愚かである。

(4)高齢者に対する給付減・負担増は日本経済にマイナスであること
1)年金について

“改革”の工程   圧縮案   年金“改革”の内容    賃金スライド    “改革”の理由
         2016.11.24   2016.10.13      2016.12.3  
           佐賀新聞      毎日新聞       西日本新聞

(図の説明:一番右の表のように少子化で支え手が減るという理由で、一番左の表のように年金・医療・介護などの高齢者向け社会保障は給付減・負担増ばかりだが、これでは社会保障の機能を果たさない。そのうち年金に関する支給開始年齢の引き上げはよいと思うが、仕事も蓄えもなければ生活保護に頼らざるを得ないため、70歳くらいを年金支給開始年齢(=定年)として、それ以前に健康で仕事がない人には失業保険で対応するのがよいと考える。なお、年金については、受託者が失敗した徴収・管理・運用の責任を国民に押し付け、受給額引き下げや賃金スライドまで取り入れて減額に専念しているが、このままでは今後も同じことが繰り返される。そのため、組織の見直しでお茶を濁すことなく、年金に退職給付会計を採用して要積立額の数理計算を行い、年金受給者のための徴収・管理・運用を徹底すべきだ)

 
 各国の公的年運用        日本は積立金運用方針変更で赤字     厚生年金未加入者

(図の説明:公的年金の積立金運用は、アメリカでは100%債権であり、そうでない国もあるものの、金融技術が進んでいるのはアメリカだ。私も、老後資金であり喪失できない年金積立金の運用は、元本が減らないような割合(80%以上)で債権による運用をすべきだと考えているが、日本では年金積立金をリスク資産に振り向けた結果、大きな赤字を出し、積立金のさらなる減少を招いた。なお、物価上昇や低金利は債権での運用に不利だが、そもそも物価上昇や異常な低金利は国民生活を害する経済政策なのだ。また、利子率は労働生産性や資本生産性などの生産年齢人口の稼ぎ方に依るため、日本は労働生産性や資本生産性を上げるような予算の使い方をしていない点でも政策が間違っている。なお、日本では厚生年金に加入できない人が多く、老後の生活に不安があるが、これらの人も厚生年金に加入させれば、厚生年金財政も少し楽になる)

 日経新聞は、2016年12月8日に経済教室で、*3-1のように、中央大学教授の山田氏の見解を掲載しているが、このように高齢者は金を使わないと言うのが、現在言われている高齢者からは金を巻き上げてよいとする根拠だ。しかし、この感覚は全く変である。

 その内容は、「①欧米と違い、家族の制約から高齢者はお金があっても消費に回さない」「②日本では家計を妻が管理しており、引退後も夫は自由に金を使えない」「③団塊世代の夫婦年齢差は平均4歳で平均寿命も6歳ほど女性が長く、妻は夫が亡くなった後の10年を1人で生活しなければならないため、金を夫に使わせたくない」「④日本では夫婦共通の趣味を持つ高齢者が少なく、共通の趣味を楽しむために2人で金を使う夫婦は少数」「⑤夫婦仲も欧米に比べて良いとは言えず、自分の趣味のために夫婦のお金を使うと相手に嫌がられる」「⑥高齢者は子との関係が悪化することに不安をもっており、資産のない高齢者は子との関係が疎遠になりがちなため、資産がなくなったら子から見捨てられるかもしれないという不安がある」「⑦そのため、金を持っていようという高齢者が増える」「⑧日本では、病気や介護状態が長期化した時、中流生活を維持しようとすれば、ヘルパーなど余分な費用がかかるので、可能性は低くてもそういう状態になった時に困らないように、お金を取っておこうとする」などと書かれている。

 このうち、①は間違いで、⑧の医療・介護需要は必需品の消費だ。そして、高齢者は医療・介護が必要になった時に、あてにできない子に頼らなくてもよいように蓄えを持っておこうとしているというのが正しい。さらに、③のように一人で生きなければならない期間に年金が減らされて貧困に陥るのを避けるため、②のように無駄遣いをしないようにしているのだ。また、④⑤は一般化できず、⑥⑦のように子との関係維持のために資産が必要だというのは、よほど子の教育が悪かった人だろう。

 そのため、私は、意図的に高齢者の消費を抑えなければ、堺屋氏の言うように高齢者が多く消費する時代が来て、洗練された高齢者のニーズが新たな財・サービスの開発に繋がると考える。

 しかし、*3-1のような世論を作った上で、将来の年金水準確保が狙いだとして、*3-2のように、政府は、「物価が下がった場合だけでなく現役世代の賃金が下がった場合にも高齢者への年金支給額を減額する」という新ルールを作って高齢者への年金支給額抑制を強化した。これにより、*3-3のように、国民年金の支給水準が現行より最大0.6%下がり、将来世代の受け取りが最大0.6%上昇する計算だそうだが、このような単純な算術しかできない人が日本経済を考えたり年金の設計をしたりするのが、大きな間違いなのである。

 なお、中小企業の従業員や非正規社員も、本来は厚生年金に加入しなければ老後の生活に困るため、ここを厚生年金に加入させることは、本人のためである同時に、年金財政上も重要である。そして、年金で生活できなければ貯蓄を増やさざるを得ず、貯蓄がなければ生活保護受給者になるのだ。

 また、私は、*3-4の「年金運用巨額赤字 国民に失敗のつけを回すな」という琉球新報の社説に同感で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がリスク資産への投資を増やして、2015年度の運用損が5兆円を超える巨額赤字になる見通しだというのは失策だと考える。そして、ここまで大きな責任に対し、誰かが引責辞任したからといって、国民にとっては何の役にもたたない。

 さらに、*3-5のように、厚労省は、75歳以上の後期高齢者医療制度で保険料徴収システムの不備があり、2008年度の制度発足時から全国的に計算ミスで保険料を過大・過小に徴収し、ミス発覚から5年間も放置していたとのことだが、これがこれまでにも多かった厚労省の杜撰さで、民間企業ならとっくに倒産しているところだ。しかし、2年を超えて請求のなかった債権債務は、短期消滅時効にかかるため請求はできない。

 なお、*3-6のように、国民年金・厚生年金を受け取るのに必要な受給資格期間が25年から10年に短縮されたのは、少し進歩だ。しかし、本来は、短い期間でも年金保険料を支払った人は、支払期間と支払金額に応じて年金を受けとれるようにするのが公正で、今まで支払期間が25年に満たないとして年金が支払われなかった分は、国の不当利得になっていたのである。

2)医療・介護について

“改革”の工程   圧縮案    医療の高額療養費    介護負担   65歳以上の介護保険料
          2016.11.24   2016.12.16 
           佐賀新聞      東京新聞

(図の説明:高齢になると病気が増えるので医療・介護費がかさむが、働いている期間は病気もしないのに保険料を支払っているので、これによって保険制度が成立するわけである。そのため、高齢者のみが入る後期高齢者医療制度を作るなどというのは、保険を理解していない人のすることだ。また、高齢になると医療・介護の出費がかさむため、大金持ち以外は75歳以上の窓口負担を1割にしたり、高額医療費の上限を低くしたりするのが当然で、支払上限は医療・介護の双方を足した金額も考慮して決めるべきだ。また、救急で近くの専門医に運んでもらったり、深刻な病気でセカンド・オピニオンをとったりする場合もあるため、かかりつけ医以外を受診すると追加負担させるというのも先進国のすることではない。さらに、入院した際に部屋代以外に高熱水費をとられるのは、ホテル代を支払う時に高熱水費を別に請求されるのと同じくらい違和感がある。そして、こうまでしてたった数百億円を節約するために既に法案提出の準備を終わったというのだから呆れる。さらに、介護については、2000年(平成12年)4月に始まったばかりで、まだ軌道にさえ乗っていないのに、上限引き上げ・利用料引き上げ・保険料引き上げ・サービスカットなど負担増・給付減の話ばかりで、40歳以上からしか介護保険料を徴収せず、利用者の年齢も制限しているという不合理で変則的な制度については改善していない。つまり、他では兆円単位の無駄遣いをしながら、命を支える医療・介護には数百億円単位でケチケチしており、倫理に反する)

 来年度から順次実施される医療保険と介護保険の見直し案が、*4-1のように決まり、それは高齢者に負担増を求める内容で、①医療は70歳以上で現役並みに所得のある人の月毎の負担上限額を現役世代と同水準に引き上げ ②75歳以上の保険料を本来より軽減している特例も段階的に縮小し ③介護では、現役並み所得者の利用者負担を2割から3割に引き上げる ④現役よりも所得の少ない人も、住民税が課税されていれば月毎の負担上限額を医療並みに上げる とのことだ。

 さらに、*4-1には、会社勤めの人の保険料は、大企業の社員は重く、中小企業の社員は軽くなると書かれている。見直しの根底にあるのは、大企業・高額所得者という分類を設けて負担を重くすることだが、「大企業」を分ける意味はなく、「現役並み」とする境界も低すぎる。また、所得の再分配は累進課税で既に行っているため、同一サービスを同一対価で受けられないのはむしろ差別にあたる。その上、高齢者は支えてもらう側というのも、働いている期間に多額の保険料を払って来た人にとっては失礼な話だ。さらに、悪影響を受けるのが高齢者だけならよいとする発想はあくどい。

 つまり、*4-2のように、高齢者の命に関わる支えをはずし、高齢者の生活を脅かす改悪をして公正さを損ないながら、社会保障費でたった1400億円を抑制するよりも、(2)に記載したとおり、抑制すべき桁違いに多額の無駄遣い予算がいくらでもあるのだ。

 さらに、*4-4のように、医療費と介護費の毎月の自己負担額にそれぞれ上限を設ける「高額療養費制度」「高額介護費制度」も上限を上げるそうだが、医療費で高額療養費制度を適用されるような高齢者は、介護も受け続けなければならないケースが多く、高齢者の収入から両方を支払うのは年収370万円(=月収約31万円だが、介護保険料や水光熱費は必ず引かれる)だったとしても容易ではないだろう。そのため、医療費と介護費を合計した上限も設定すべきである。

 また、*4-3のように、厚労省は、2017年度から予定する公的医療保険制度の見直しで、75歳以上の後期高齢者医療制度で、所得が比較的低かったり扶養家族だったりした人も保険料の特例軽減を廃止して段階的に引き上げ、70歳以上の医療費優遇措置も縮小して、国費350億円の抑制を見込むそうだが、小さな効果のために高齢者の生活を脅かすのはいい加減にすべきだ。

 そして、診療報酬削減も繰り返した結果、*4-5のように、地域医療が崩壊の危機に瀕し、居宅・特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・介護老人保健施設のニーズの見直しが進んでいるが、高齢化が進んでいる農村で、住民が住み慣れた土地で安心して暮らし続けられるためには、医療・介護の一体化が欠かせず、地域包括ケアを根付かせることができるかどうかが地域医療の試金石となるそうだ。

 なお、日本農業新聞が、*4-6の2016年11月13日に書いているとおり、介護の必要度が比較的軽い「要介護1、2」でも、社会的入院をせず自宅療養するためには在宅支援サービスの生活援助が不可欠であるため、介護保険が縮小されると介護利用者の不安が頂点に達するそうだ。そのため、現在でも足りないくらいの介護費用を数百億円削り、健康な生産年齢人口の人に対して景気対策と称する数兆円規模の無駄遣いをするのは不適切である。また、年中、制度変更と削減を繰り返されると、介護主体も経営が安定せず混乱する。その上、介護や生活支援のように毎日必要とされる重労働に報酬で報いることなく、善意のボランティアで済ませようとするのは、介護や家事労働を馬鹿にしている人の発想だ。

<国の財政支出、借金>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161218&ng=DGKKZO10806150X11C16A2NN1000 (日経新聞 2016.12.18) 来年度予算 改革の切れ味鈍く、歳出、社会保障膨らむ/歳入、薄氷の国債減額
 政府は2017年度予算案で一般会計の歳出総額を97兆円台半ばとする方針だ。5年連続で過去最高を更新する。国債の想定金利を過去最低の1.1%に据え国債費を抑えたが、高齢化で社会保障費の膨張が続く。歳入面では税収が16年度当初予算並みの水準にとどまると想定し、新規国債の発行額は16年度の34.4兆円をわずかに下回る薄氷の減額となる。麻生太郎財務相らが19日に関係閣僚と折衝し、沖縄振興や政府開発援助(ODA)、教職員定数など残された課題の予算規模や方針を詰める。22日に閣議決定し、来年の通常国会に提出する。歳出総額は前年度の96.7兆円から増やし、97.4兆~97.5兆円とする案を軸に最終調整している。夏の概算要求の段階で高齢化による自然増を6400億円と見積もった社会保障費は、中高所得者の高齢者の医療・介護分野の負担を増やし5000億円増に抑えた。その一方で、子育てや介護、年金などの充実策には新たに3000億円程度を投じ、働き方改革の予算には前年比3割増の2100億円を充てた。ミサイル防衛などを強化する防衛費は過去最高の5.1兆円に増やし、4020億円を充てた土地改良事業を含む公共事業費は5年連続増の6.0兆円とした。今年度第2次補正予算案で追加支出した農林水産関係費は20億円減の2.3兆円に、文教・科学技術振興費も微減の5.4兆円とした。一般歳出以外の経費では、財務・総務両省が地方交付税交付金を前年比3000億円増の15.6兆円前後とする方向で詰めの協議を進めている。国債費は国債の想定金利を過去最低の1.1%に据えた。5000億円程度の抑制効果があり、国債費全体でも16年度当初の23.6兆円を最大1000億円下回る。歳入面では、今年度第3次補正で税収見積もりを1.7兆円下方修正する影響で、来年度税収が今年度当初比1000億円増の57.7兆円にとどまる。歳出の伸びと比べ、税収の伸びが鈍かったため、外国為替資金特会などの運用益などの税外収入を確保し、16年度の4.7兆円から5兆円超に大幅に伸ばす方針だ。この結果、財源不足を穴埋めする新規国債の発行額は16年度の34.4兆円を数百億円程度下回る見通しだ。ただ、国債減は想定利率の大幅な引き下げや税外収入の確保といった特殊要因の寄与度が大きく、減額幅は安倍政権発足後ではもっとも小さくなった。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12719390.html (朝日新聞 2016年12月23日) 膨張予算、歯止め遠く 来年度、過去最大97.5兆円案決定
 政府が22日に閣議決定した2017年度予算案は、5年連続で過去最大になった。高齢化で年金や医療など社会保障費が膨らむ中、防衛費や公共事業費も増える。一方、ここ数年は数兆円伸びていた税収は、16年度当初比で1080億円の微増にとどまる。一般会計の歳出総額は97兆4547億円。歳入穴埋めのための新たな国債(国の借金)発行額は34兆3698億円となった。16年度当初より622億円減らすが、17年度末の国債の残高は2・4%増の865兆円に膨らみそうだ。税収は、政府の17年度の経済成長率見通し(名目2・5%、実質1・5%)が前提。米大統領選後の円安・株高も織り込んでおり、世界経済の動向によっては想定通りの税収が得られない可能性もある。社会保障費も1・6%増の32兆4735億円で、過去最大を更新した。一部の負担増で自然増を圧縮しつつ、「1億総活躍社会の実現」として、保育士や介護職員などの処遇改善には952億円を充てた。防衛力強化に向け、防衛費も過去最大の5兆1251億円とした。海上保安庁の予算は要求を上回る2106億円を認めた。公共事業費も、5年連続で前年度を上回った。政府は、16年度より新たな借金はわずかに減らせたことから、「経済再生」と「財政再建」を両立できたとする。だが、税収は伸び悩み、新たな借金に頼らない財政という20年度の目標は遠のいた。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201612/CK2016122302000143.html (東京新聞 2016年12月23日) 安倍カラー 暮らしにツケ 17年度予算案 閣議決定
 政府が二十二日に閣議決定した二〇一七年度予算案の一般会計の歳出総額は九十七兆四千五百四十七億円で、五年連続で過去最大になった。防衛費は五年連続で増やし五兆一千二百五十一億円と過去最高を更新。一方で社会保障費は増加を抑えるなど、安倍政権の姿勢を反映した予算のしわ寄せは、国民の暮らしに及んでいる。
◆膨張
 「わが国を取り巻く厳しい安全保障環境の下で、防衛の質と量をしっかり充実させることが必要だ」
 稲田朋美防衛相は二十二日の記者会見で強調した。一七年度予算案では防衛費が過去最高額を更新。予算額は一六年度当初比で1・4%増の五兆一千二百五十一億円に膨れあがった。押し上げ要因として浮かび上がるのは、米国製の高額な武器を積極的に購入していることだ。最新鋭ステルス戦闘機F35六機の取得費計八百八十億円、新型輸送機オスプレイ四機の取得費計三百九十一億円、無人偵察機グローバルホーク一機の組み立て費百六十八億円…。米国から買う武器で一七年度予算案に盛り込まれた総額は三千五百九十六億円に上る。四千億円台だった一五、一六年度よりは減ったが、一四年度の千九百五億円を大幅に上回る高水準だ。F35を巡っては、トランプ次期米大統領が「計画も費用も制御不能だ」と批判し、米国防総省による購入費の削減に取り組む考えを表明。日本政府内にも「高額であることは間違いない」(高官)との意見がある。
◆圧迫
 一方、歳出の三分の一を占める社会保障費の伸びを少しでも抑えるため、医療や介護などの分野で国民の暮らしを圧迫するメニューはめじろ押しだ。一定の所得のある七十歳以上を対象とした医療費の自己負担上限を引き上げることや、後期高齢者医療制度の保険料の自己負担を段階的に増やすこと、さらには、中所得者を対象に介護保険サービスの利用者負担上限を高くすることなどが盛り込まれた。菅義偉官房長官は二十二日の会見で「社会保障と財政を持続可能にすることができるようにするということは当然。不断の取り組みが大事だ」と話して、翌年度以降の予算編成でも医療や介護での負担増が避けられないとの考えを早くも強調した。歳出は拡大していく一方だ。公共事業は老朽インフラの更新などで五兆九千七百六十三億円と微増ながら増加を続け高止まりだ。中でも五年連続で増やした防衛費は五兆円を突破しただけでなく、一六年度第三次補正予算案でも千七百六億円を計上する大盤振る舞いだ。高齢者の医療や介護では自己負担の増加を求める一方で、防衛費や効果が見えない「アベノミクス」の柱である公共事業を優先-。安倍政権の「本音」がより鮮明になった予算の姿を浮かび上がらせている。

*1-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/376438 (佐賀新聞 2016年11月14日) 国の借金1062兆円 過去最大、国民1人837万円
 財務省は、国債と借入金、政府短期証券を合計した9月末時点での「国の借金」が1062兆5745億円に達し、過去最大を更新したと発表した。国民1人当たり約837万円の借金を抱えている計算になる。高齢化で増え続ける社会保障費を賄うため、借金が膨らんだ。経済対策の財源として建設国債などを発行するため、2016年度末には1119兆3000億円程度になると財務省は見込んでいる。これまでは15年6月末の1057兆2235億円が最大だった。今年6月末からは9兆1069億円増えた。9月末の借金の内訳は、国債が926兆1383億円に上り、6月末に比べ7兆6619億円増加した。金融機関などからの借入金は9749億円増えて53兆6869億円。一時的な資金不足を穴埋めする政府短期証券は4701億円増の82兆7493億円だった。

*1-5:http://qbiz.jp/article/100680/1/ (西日本新聞 2016年12月25日) 過労死ない社会、母の願い 電通社員自殺1年で手記
 電通の新入社員、高橋まつりさん=当時(24)=が長時間労働の末、自殺してから25日で1年を迎え、母の幸美さん(53)が、電通の役員や幹部に「まつりの死に対して心から反省をして、見せかけではなく本当の改革を行い、二度と犠牲者が出ないよう決意していただきたい」と求める手記を公表した。「仕事のために不幸になったり、命を落としたりすることはあってはならない」とも記述。最後を「日本の働く全ての人の意識が変わってほしい」という一文で締めくくっており、過労死を招く社会の在り方を考え直すことを求める内容となっている。まつりさんが命を絶ったのは、昨年12月のクリスマスの朝。幸美さんは娘を失った喪失感を「あの日から私の時は止まり、未来も希望も失った。息をするのも苦しい毎日。朝、目覚めたら全て夢であってほしいと思い続けている」とつづる。夫と離婚後、静岡県で働きながら育て上げたまつりさんについて「困難な境遇でも絶望せず、10歳の時に中学受験をすると自分で決めた時から夢に向かって努力し続けた」と振り返り、電通に入社後も「期待に応えようと手を抜くことなく仕事を続けたのだと思う」と推察。「あの時、会社を辞めるよう強く言えばよかった。母親なのにどうして助けられなかったのか」と後悔を吐露している。今年9月にまつりさんの自殺が労災認定されると、東京労働局などが電通への強制捜査を実施。折しも政府の働き方改革実現会議の議論も進んでおり、長時間労働を抑制する機運が高まっている。こうした状況について、幸美さんは「まつりの死が、日本の働き方を変えることに影響を与えているとしたら、それは、まつり自身の力かもしれない」とする一方、「まつりは生きて社会に貢献できることを目指していた。そう思うと悔しくてならない」「本当の望みは娘が生きていてくれること」とも書いてあり、抑えきれない悲しみが伝わってくる。
   ◇   ◇
●午後10時全館消灯…改革半ば
 昨年12月に自殺した電通社員、高橋まつりさんの母幸美さんが、悲痛な思いをつづった手記を公表した。まつりさんは昨年春、電通に入社。東大在学中に就職先として広告大手を選んだのは「一流企業に就職し、お母さんを楽にしてあげたい」という思いがあったから。入社後はインターネット広告などを担当した。しかし、昨年10月に本採用になると業務が激増。月100時間以上の残業も強いられた。「死にたいと思いながらこんなストレスフルな毎日を乗り越えた先に何が残るんだろうか」。亡くなる直前まで書き込み続けたツイッターの文面を見ると、今となってはSOSにしか映らない。若者の雇用問題に取り組むNPO法人「POSSE」の今野晴貴代表は「企業の自主的取り組みだけでなく、長時間労働の法規制まで踏み込むべきだ」と、政府に注文を付けた。電通は午後10時以降の全館消灯を始めるなど改善に取り組むが「みんな仕事を持ち帰るようになっただけ」(20代社員)という声もあり、改革は道半ばのようだ。「会社の深夜の仕事が東京の夜景をつくっている」。まつりさんは生前、深夜残業がまん延している異常さを、こんな表現で幸美さんに伝えていたという。「制度をつくっても、人間の心が変わらなければ改革は実行できない」。幸美さんが突き付ける言葉が重く響く。
■電通社員の過労自殺 2015年4月に電通に入社した高橋まつりさんが、同年12月に東京都内の社宅から飛び降り、24歳で亡くなった。三田労働基準監督署は、長時間労働が原因として16年9月に労災と認定。まつりさんは自殺前「本気で死んでしまいたい」「もう体も心もズタズタだ」などの思いを会員制交流サイト(SNS)などに書き込んでいた。

<GDP>
*2-1:http://qbiz.jp/article/99717/1/ (西日本新聞 2016年12月9日) GDP下方修正、年1.3%増 内需低調、輸出頼み続く 7−9月期改定値
 内閣府が8日発表した7〜9月期の国内総生産(GDP、季節調整値)の改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0・3%増、このペースが1年間続くと仮定した年率換算は1・3%増で、速報値の年率2・2%増から下方修正した。3四半期連続のプラス成長だが、個人消費など内需が弱い中で輸出がけん引する構図に変わりはなく、景気は力強さを欠いている。速報後に公表された法人企業統計を受けて企業の設備投資が下方修正され、民間在庫の減少も下押し要因となった。内閣府は国際基準の変更に伴い、今回から研究開発費を投資に追加するなどGDPの算出方法を変更。過去分にさかのぼって数値を修正した。改定値の内訳をみると、設備投資は速報値の前期比0・03%増から0・4%減と悪化。不動産業や鉄鋼業などで減り、2期ぶりのマイナスだった。GDPの6割を占める個人消費は0・1%増から0・3%増に改善。内閣府は「テレビや飲料販売、宿泊施設関連の増加がプラスに寄与した」と説明する。一方で、大和総研の長内智氏は「引き続き内需に力強さが欠けている点には留意しておく必要がある」と指摘する。輸出は速報値の2・0%増から1・6%増に下方修正されたものの2期ぶりに増加。実質GDPへの影響を示す外需の寄与度は0・3%と、押し上げ効果をもたらした。トランプ次期米大統領の政策が見通せないことなど、世界経済を巡る「不確実性の高い状況は続く」(黒田東彦日銀総裁)中で、今後も輸出が成長を主導できるかは流動的といえる。景気実感に近いとされる名目GDPは前期比0・1%増、年率換算0・5%増で3期連続の増加だった。
   ◇   ◇
●名目GDP31兆円拡大 15年度、国際基準見直しに伴い
 内閣府は8日、国際基準の変更に伴って国内総生産(GDP)の計算方法を見直した結果、2015年度の名目GDP確報値は532兆2千億円になったと発表した。安倍政権が目標として掲げる名目GDP600兆円にやや近づいた形だ。内閣府は新基準の採用に合わせ、GDPを過去22年分にさかのぼって改定した。16年7〜9月期の実質GDPは速報値に比べ下方修正されたが、内閣府は「基準改定による影響は分からない」と説明している。計算方法の見直しは、統計の精度向上が目的だが、基準変更に伴う影響だけで15年度の名目GDPは旧基準と比べ24兆1千億円拡大した。今回、約5年に1回実施している基準改定や、統計の基礎となる産業連関表の切り替えも行った。これらの影響も含めると、15年度の名目GDP確報値は旧基準の推計値から31兆6千億円増えた。GDPは一定期間に国内でつくり出されたモノやサービスの付加価値の合計額だ。計算方法は国連が定める国際基準を基に各国が決めている。今回の見直しは国際基準が08年に刷新されたことに対応したもので、日本では16年ぶりの大幅改定になる。もっとも大きな変更点は、これまで費用とされてきた研究開発費が付加価値を生む投資と認められ、GDPに加えるようになったことだ。名目GDPへの上乗せ効果は研究開発費だけで19兆2千億円あった。この他に、特許使用料や不動産の仲介手数料、防衛装備品なども加算された。

*2-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS08H0R_Y6A201C1MM0000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2016/12/8) 15年度の名目GDP、31兆円かさ上げで532兆円、基準改定、研究開発費など加算
 内閣府が8日発表した2015年度の名目国内総生産(GDP)の確報値は532.2兆円となった。研究開発費の加算など新たな基準に切り替えた影響などで、31.6兆円かさ上げされた。旧基準では500.6兆円に相当する。安倍晋三首相は20年ごろまでに名目GDPを600兆円に増やす目標を掲げており、100兆円の開きが一気に縮まることになる。新基準は統計の基礎となる産業連関表を、実勢に近い11年分に切り替える。これまでは05年分を使っていた。また国連の最新の基準を使い、推計方法も見直し、1994年まで遡って再計算した。GDPの押し上げに大きく影響したのは研究開発費で、それだけで19.2兆円上振れした。これまでは「経費」として扱ったが「投資」とみなしてGDPに加えた。このほか、特許使用料の加算が3.1兆円、不動産仲介手数料の加算が0.9兆円のかさ上げ要因になった。新基準への切り替えで、16年7~9月期の名目GDPは季節調整済みの年率換算で537.3兆円となり、過去最高を更新した。旧基準では日本経済がデフレに陥る直前の1997年10~12月期の524.5兆円(新基準では536.6兆円に相当)がピークだった。

<年金>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161208&ng=DGKKZO10386900X01C16A2KE8000 (日経新聞 2016.12.8) 経済教室:家族の衰退と消費低迷(7)高齢者のお金は消費に回らず 中央大学教授 山田昌弘
 今回は高齢者の家族状況と消費との関連を示しましょう。10年ほど前、堺屋太一氏と対談したとき、堺屋さんは「これから高齢者消費の黄金時代が来る」と言われました。堺屋さんが名付けた「団塊の世代」が退職する。資産があり、年金もまだ高水準、時間も十分にある高齢者が消費市場に出てくるというのです。しかし、筆者は、欧米と違い、日本では「家族のあり方」が制約になり、次に挙げるいくつかの理由で、お金があってもなかなか消費に回らないのではないかと疑問を呈しました。まず、日本では通常、家計を妻が管理しています。筆者の調査では、現役世帯で4組に3組の夫婦が、夫は収入を全額妻に渡し、小遣いを妻からもらう形態をとっています。引退後も、財布のひもは妻が握るのが多数派です。すると、いくらお金があっても、夫は自由には使えません。団塊世代の夫婦年齢差は平均4歳で、平均寿命も6歳ほど女性が長くなっています。平均すれば、妻は夫が亡くなった後の10年を1人で生活しなければなりません。それを考えると、お金を夫に使わせたくないのです。さらに日本では夫婦共通の趣味を持つ高齢者は少なく、共通の趣味を楽しむために2人でお金を使う夫婦は少数派です。夫婦仲も欧米に比べて良いとは言えないので、自分の趣味のために夫婦のお金を使うと相手に嫌がられます。夫が引退後、田舎で暮らしたいと言っても、妻が反対して実現しないことが多いのです。子どもとの関係も問題になります。高齢者は子どもとの関係が悪化することに不安をもっています。現実に日本では、資産がない高齢者は子どもとの関係が疎遠になりがちです。これはいい悪いの問題ではありません。資産がなくなったら子どもから見捨てられるかもしれないという不安があるので、自分で使わずに持っていようという高齢者が増えるのです。また日本では、いざ病気や介護状態が長期化したとき、中流生活を維持しようとすれば、ヘルパーなど余分な費用がかかります。可能性は低くても、そのような状態になったときに困らないように、お金を取っておこうとするのです。

*3-2:http://qbiz.jp/article/100046/1/ (西日本新聞 2016年12月14日) 年金額の抑制強化へ、改革法成立 現役賃金下がれば減額
 年金制度改革法が14日午後、参院本会議で自民、公明両党や日本維新の会などによる賛成多数で可決、成立した。将来の年金水準を確保することを狙い、支給額の抑制を強化。毎年度の改定ルールを見直し、現役世代の賃金が下がれば高齢者への支給を減額する。中小企業に勤めるパートなどの短時間労働者は、労使が合意すれば厚生年金に加入できるようになる。現行制度では、支給額改定に際して高齢者の暮らしに大きな影響を与える物価の変動を重視している。2021年度以降は保険料の支払いで制度を支える現役世代の賃金を重視し、賃金が下がった場合は年金も必ず減額する。

*3-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/390819
(佐賀新聞 2016年12月28日) 年金新ルールで支給0・6%減 厚労省が試算公表
 厚生労働省は27日、先の臨時国会で成立した年金制度改革法に基づく支給額改定の新ルールが適用された場合の試算を公表した。リーマン・ショック時のような経済状況になり現役世代の賃金が下落すると、国民年金(老齢基礎年金)の支給水準は現行ルールよりも最大0・6%下がる。その分、将来受け取る世代は最大0・6%上昇する計算だ。支給額は毎年度、物価や現役世代の賃金を踏まえて改定されている。2021年度からは賃金が下がった場合は、その下落率に合わせて必ず減額するようルールが変更される。試算では、リーマン・ショックの影響を受けた08~09年度の賃金下落率を21~22年度に当てはめ、それ以降の支給水準を現行ルールと新ルールで比較した。賃金の下落は数年後の改定に反映される仕組みで、ルール見直しによる水準の低下は26年度に最も大きくなった。早い時期に支給水準が下がれば、その分、年金財政に余裕が生まれるため、現役世代が将来受け取る水準は上がる。43~44年度にかけての支給水準は新ルールの方が0・6%上昇した。

*3-4:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-251749.html (琉球新報社説 2016年4月6日) 年金運用巨額赤字 国民に失敗のつけを回すな
 政権の面目を保つために国民の資産を危険にさらすのは、もうやめにしてもらいたい。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2015年度運用損益が、専門家の試算で5兆円を超える巨額の赤字になる見通しが強まっている。安倍政権が金看板とするアベノミクスと連動した投資配分の変更が、いまや全て裏目に出た。GPIFが運用する約140兆円のうち、国内株式投資は25%、約35兆円とみられる。この半分、約17兆円を売りに出すだけでも市場の混乱は必至だ。損失拡大を防ぐ株式売却すらできない。まさに袋小路だ。国民の資産を守り、混乱を最小限に抑えるため、GPIFは緩やかな退却を模索する以外にない。GPIFの資産構成割合は、かつては比較的安全な国債60%、国内外の株式に12%ずつだった。2014年10月に資産構成割合を国債35%、国内外の株式で計50%へ変更したのは、日銀の大規模金融緩和により、国債の利回りが低下したことと株式市場が上昇基調にあったからだ。その後、市場が安定したのは、ほかでもないGPIFの資金が流入したからだ。株価を下支えしたのが国民の資産だった。ところが15年8月には中国を「震源地」とする世界同時株安が進み、日本市場も乱高下した。最終的に日経平均株価は15年度だけで2400円値下がりした。運用比率変更当初から複数のエコノミストが「年金運用の安定性が損なわれる」「年金資産が株価操作に使われる」と懸念したことが現実になった。GPIFの担当者は「長期的な視点で捉えてほしい」と言う。だが客観的に見れば、損失を出した当事者が責任を取らず、次世代に先送りしているとしか見えない。責任を取るべきは、株価上昇を演出するために国民の資産を相場につぎ込んだ安倍政権だ。しかも例年、6月末から7月上旬に発表している年度の運用実績を、ことしは参院選後の7月下旬に公表するという。選挙に影響しないよう公表を先送りする意図が見え、論外だ。政府は少子高齢化時代を見据え、年金給付抑制策を強化する。積立金が目減りすれば、つけは国民に回ってくる。政府は運用比率を見直すなど「長期的な視点から、安全かつ効率的」(国民年金法)な運用にかじを切るべきだ。

*3-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/390597
(佐賀新聞 2016年12月27日) 厚労省、徴収ミス5年放置、後期医療、保険料6億円
 厚生労働省は27日、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度で保険料徴収システムの不備があり、2008年度の制度発足時から全国的に計算ミスで保険料を過大、または過小に徴収していたと発表した。ミス発覚から5年放置していた。対象者の抽出などは来年1月以降に行うが、推計では約2万人、総額約6億円に上る可能性があり、取り過ぎた分は返還、不足分は追加徴収する。厚労省によると、11年から同省には制度を運営する都道府県の広域連合から正しい計算方法に関する問い合わせがあったが、個別対応で済ませ放置してきたという。

*3-6:http://mainichi.jp/articles/20161116/dde/007/010/037000c (毎日新聞 2016年11月16日) 無年金救済法.成立 加入期間短縮 新たに64万人受給
 国民年金や厚生年金を受け取るのに必要な加入期間(受給資格期間)を現行の25年から10年に短縮する改正年金機能強化法が16日、参院本会議で全会一致により可決、成立した。来年10月から約64万人が新たに年金を受けられるようになる見通しだ。受給資格期間は保険料を納めた期間や免除された期間を合計する。2015年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げと同時に短縮する予定だったが、安倍政権による増税延期で先延ばしされていた。改正法は来年8月に施行。加入期間が10年以上25年未満の人は9月分の年金から受け取れるようになり、実際の支給は10月に始まる予定だ。無年金の人の救済につながる一方で、加入期間が短いと支給額は低く、将来低年金者が増えるとの懸念もある。国民年金の場合、加入期間が10年だと支給額は月約1万6000円、20年だと約3万2000円にとどまる。対象となるのは65歳以上の人と60代の前半から厚生年金の一部を受け取る人を合わせて計約64万人。費用は通年で約650億円。

<医療・介護>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12711673.html (朝日新聞社説 2016年12月18日) 高齢者負担増 将来像示し不安なくせ
 来年度から順次実施される医療保険と介護保険の見直し案が決まった。高齢者を中心に負担増を求める内容だ。医療では、70歳以上で現役並みに所得のある人の月ごとの負担上限額を、現役世代と同水準に引き上げる。75歳以上の保険料を本来より軽減している特例も段階的に縮小する。介護では、現役並み所得者の利用者負担を2割から3割に上げる。それより所得の少ない人も、住民税が課税されていれば月ごとの負担上限額が医療並みに上がる。会社勤めの人の保険料は賞与を含む収入に応じた負担とし、大企業の社員は重く、中小企業の社員は軽くなる。見直しの根底にあるのは「年齢を問わず、負担能力に応じた負担を求めていく」という考え方だ。4年前の社会保障・税一体改革大綱で示された方針だ。少子高齢社会のもと、社会保障費が膨らむ一方で、制度を担う現役世代は減る。高齢者は支えてもらう側、若い人は支える側という従来の考え方では、立ちゆかなくなる。高齢者でも負担ができる人には負担を求めることは必要だろう。ただ、生活の実態に照らして過重な負担にならないか、影響は丁寧にみる必要がある。とりわけ介護は、治療を終えれば負担がなくなる医療と違い、長期化する傾向にある。必要な介護サービスが利用できなくなれば、家族の介護のために仕事をやめる介護離職が増えてしまうかも知れない。影響を受けるのは高齢者だけでないことも、忘れてはならない。介護保険では、昨年夏に一定所得以上の人の利用者負担が1割から2割になったばかりだ。わずか1年あまりでさらなる引き上げを決めたのは、あまりに場当たり的との印象を与えた。負担はどこまで増えるのか。そんな先行きへの不安に応える改革の全体像と将来ビジョンを示すことが不可欠だ。政府は、社会保障費の伸びを抑えるために、さまざまな検討項目を示している。しかし、それらをどこまで、どう実施していく考えなのかが見えない。検討課題の一つだった軽度の人への介護サービスの縮小などは今回、見送りになった。今後、そうした給付の抑制にも踏み込むのか。給付の抑制が限界だというなら、今のサービス水準を維持するために、保険料や税の負担を増やすことも考える必要がある。サービスを担う人材の不足も深刻で、そのための財源も考えねばならない。社会保障制度の根本に立ち返った改革に取り組んでほしい。

*4-2:http://mainichi.jp/articles/20161216/ddm/002/010/128000c (毎日新聞 2016年12月16日) 社会保障費 1400億円抑制 高額療養など自己負担増
 厚生労働省は15日、自民党と公明党の部会で、2017年度予算で高齢化による社会保障費の自然増を約1400億円分抑制する案を提示し、大筋で了承を得た。焦点となっていた70歳以上の一般所得者(住民税が課税される年収370万円未満の人)が外来の窓口で支払う毎月の限度額を、現行の1万2000円から17年8月に1万4000円に引き上げる方針でまとまったほか、介護費の自己負担増、大企業に勤める会社員の介護保険料の引き上げなどによって抑制を図る。  医療費の毎月の自己負担額に上限を設ける「高額療養費制度」を見直し、約220億円を捻出する。70歳以上の一般所得者について、厚労省は当初2万4600円への引き上げを提案したが、引き上げ幅を圧縮し、年間上限額(14万4000円)も設ける。一方、18年8月には1万8000円に引き上げる。年収370万円以上の現役並み所得者は外来限度額を5万7600円とする。40~64歳の介護保険料は、収入に応じた計算方法「総報酬割り」による算出を段階的に導入し、収入の高い大企業のサラリーマンなどの保険料負担を増やす。来年8月の導入で500億円弱を確保する見通し。また、75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度の保険料では、負担軽減のための特例を段階的に縮小し、180億円前後を確保する。介護保険で利用者の自己負担に上限を設ける「高額介護サービス費」は、住民税が課税される一般所得者の毎月の負担上限額を3万7200円から4万4400円に引き上げる。厚労省は17年度予算の概算要求で社会保障費の自然増を6400億円と見込んだが、財務省から最終的な増加を5000億円程度に抑えることが求められている。

*4-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/381488 (佐賀新聞 2016年11月29日) 75歳以上329万人に保険料軽減を廃止
 厚生労働省が2017年度から予定する公的医療保険制度の見直し案の全容が28日、分かった。75歳以上の後期高齢者医療制度では、所得が比較的低かったり、扶養家族だったりした人ら計329万人を対象に、保険料の特例軽減を廃止し、段階的に引き上げる。医療費の自己負担に月ごとの上限を設ける「高額療養費制度」でも、70歳以上の優遇措置を縮小する。厚労省は、後期高齢者医療と高額療養費の見直しで、17年度にそれぞれ国費350億円の抑制を見込む。30日の社会保障審議会の部会で提案し、来月上旬までに与党と調整して最終決定する。75歳以上が支払う保険料の軽減措置には(1)所得に応じた部分(2)定額部分-の2種類があり、合わせて900万人以上が対象となっている。このうち74歳まで専業主婦ら扶養家族だった人(169万人)の定額部分は、最大9割の軽減を17年度に5割に縮小。18年度には77歳以上で軽減を廃止し、保険料は現在の月380円から約10倍に引き上げる。所得に応じた保険料は現在徴収していないが、77歳以上は18年度から支払うようになる。また年金収入が年153万~211万円の160万人を対象に、所得に応じた保険料を5割軽減している特例も17年度に廃止する。定額部分を9~8・5割軽減する特例(約614万人対象)は、新たに75歳になる人を含め当面存続する。「高額療養費制度」では、70歳以上の上限を見直す。「現役並み所得」の人は、17年8月から外来医療費の月ごとの上限額4万4400円を5万7600円に引き上げる。18年8月からは特例を完全に廃止し、入院などを含めた世帯全体の上限も現役世代に合わせる形で引き上げる方針だ。

*4-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/389660 (佐賀新聞 2016年12月24日) 保険料増、介護3割負担 医療・介護制度見直し
■70歳以上の高額費上限額を引き上げ
 今回の見直しは、高齢者らの支払い能力に応じ、負担増を求めているのが特徴だ。医療では、患者の窓口負担が重くなりすぎないようにするため、月ごとの上限額を定めた「高額療養費制度」があるが、70歳以上を対象に上限額を段階的に引き上げる。年収370万円未満で住民税を課税されている人の場合、外来の上限額(月1万2千円)は2017年8月に1万4千円、18年8月には1万8千円になる。ただ持病などで通院している人は出費がかさむため、年間の上限額14万4千円(1万2千円の12カ月分)も新たに設けた。入院を含めた世帯当たりの上限額(月4万4400円)は5万7600円に上がる。年収370万円以上の人は、外来が月5万7600円に引き上げられた後、18年8月に上限がなくなる。入院を含めた世帯の上限額は18年8月以降、月8万100~25万2600円になる。後期高齢者医療制度に加入する75歳以上は、これまで特例で安くなっていた保険料が増える。所得が比較的低かったり、74歳まで夫や子らに扶養されたりしていた人が対象だ。このほか慢性疾患で医療療養病床に長期入院している65歳以上の人は、光熱水費の支払いが増える。18年4月以降は一律で1日370円(難病を除く)。介護では、サービスを主に利用する高齢者と、制度を支える現役世代が負担を分かち合う。現役並みに所得が高い高齢者は、18年8月から介護サービス利用時の自己負担が現在の2割から3割にアップ。さらに医療と同様に、月ごとの上限額(高額介護サービス費)も見直す。住民税が課税されている年収383万円未満の単身世帯などで、17年8月から上限額が7200円増えて月4万4400円に。収入が少ない世帯は3年間に限り、年間の上限額を据え置く。40~64歳が支払う保険料は、収入に応じた「総報酬割」と呼ばれる計算方式に変更。20年度までに段階的に導入し、大企業の社員や公務員の負担が増えることになる。
■高額医療・介護費、合算制度で払い戻しも 
あまり知られていないが、1年間(毎年8月から翌年7月)に支払った医療と介護の自己負担額を合算して、一定額を超えた場合は払い戻しを受けられる仕組みがある。「高額介護合算療養費制度」または「高額医療合算介護サービス費制度」と呼ばれ、市町村に毎年申請しないと利用できないので注意が必要だ。数十万円が戻ってくるケースもある。井戸さんは「手続きに手間がかかるが、分からないときは市町村の窓口で相談してほしい」と話す。

*4-5:https://www.agrinews.co.jp/p39294.html (日本農業新聞 2016年10月27日) 危機の地域医療 厚生連の包括ケア期待
 地域を支える医療が崩壊の危機にさらされている。都会と農村の医療格差は拡大する一方だ。日本農村医学会は未来の地域医療をテーマに27、28の両日、第65回学術総会を三重県志摩市で開く。JA厚生連病院の課題と試みを共有し、農村再生につなぐ。成果を期待したい。玉置久雄学会長(JA三重厚生連松阪中央総合病院名誉院長)は「地域医療について国や行政は対策を講じてきたが、むしろ医療の偏在化、格差は広がっている」と指摘する。総会の主催県・三重は人口当たりの医師数が全国平均より少なく、遠隔地ほど慢性的な医師不足が深刻だ。医師の高齢化は救急医療を制限せざるを得ない事態にまで追い込んでいる。国は増え続ける医療費の削減のため地域医療構想を各地で検討するよう指示している。効率化を求めた病床数の削減などが始まっている。これから厳しい診療報酬改定、消費税増税が待ち構えている。在宅医療については居宅、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設などの需要見直しが進む。その結果、地域の統廃合で病床数の削減の影響を最も受けるのは、農山村に立地する厚生連病院である。全国の厚生連病院の多くが地方にあり、変革を迫られるのは必至だ。地域医療の崩壊は、地域社会の崩壊につながる。人口流出を生み、若い世代のU・Iターンといった田園回帰の流れを阻みかねない。高齢化が進む農村では住民が住み慣れた地で安心して暮らし続けるための医療と介護の一体化が欠かせない。この地域包括ケアを根付かせることができるか、農村医療の試金石ともなる。玉置学会長は「将来の人口減を見据えれば立場の異なる地域の病院が限られた医療資源を補完し合うことも必要だ」とし、競争から協調へ、かじを切る時期が迫っていると言う。シンポジウム「地方から発信するこれからの医療」には三重、新潟、広島、愛知の厚生連病院の取り組みが発表される。医師・看護師不足の下、救急医療や在宅医療、地域包括ケアにどう取り組んでいるか、先進的な取り組みに期待したい。一般演題は540とこれまでにない応募数となった。終末期医療、大災害時の医療、看護教育、在宅ケア、病院食の地産地消など今日の課題を網羅する。市民公開講座には関心の高い認知症を取り上げた。家族を支えるための知識、認知症患者の安全対策について報告される。ポスター発表では、韓国農村振興庁が取り組む農業労災を予定している。総会後の29日には、日本農村医学会と韓国の主催で第8回日韓合同農作業安全シンポジウムが開かれる。韓国が国家資格として今年創設した「農作業安全指導士」制度が報告される。日本の参考となろう。地域医療、農作業安全に貢献する学会となることを望む。

*4-6:https://www.agrinews.co.jp/p39431.html (日本農業新聞 2016年11月13日) 介護保険縮小 利用者の不安 直視せよ
 2018年度の介護保険改正に向けた見直し議論が進んでいる。介護の必要度が比較的軽い「要介護1、2」のサービスを中心に削減する考えだ。現場の反発は強く、大幅な改正は見送る方向だが、年末の取りまとめに注視が必要だ。要介護度は軽い順から5段階に分かれる。見直し議論の焦点は軽度者向け在宅支援サービスで、訪問介護の生活援助など。厚生労働省は、ホームヘルパーが自宅を訪れて掃除や調理などを介助する生活援助を保険対象から外し、市町村事業へ移行する改革案を示した。この案に利用者や介護関連団体は猛反発している。「自宅で自立した生活を送るために欠かせないサービス」「サービスの質が変わることで重度化を招き、かえって介護費用が膨らむのではないか」など、制度変更を疑問視する声だ。既に前回の15年度改正で、要介護よりさらに軽度な「要支援」向けサービスの一部を保険から外し、市町村事業に切り替えた。移行期間を経て来年4月には全市町村で事業を開始しなければならない。介護保険にかかる費用を国の全国一律給付から市町村の独自事業とし、NPOやボランティアなど地域住民の活用によってコストを抑える狙いだ。しかし、実際は体制がなかなか整わない。そこに要介護1、2まで市町村に移行するとなると、これまでと同様のサービスを受けるのは難しい。介護の必要性は数値では測りきれない。「要支援」「要介護1、2」は一つの基準にすぎず、高齢者を取り巻く状況は千差万別である。介護の必要度が軽い人でも、独居であったり老夫婦世帯であったり、家族が介護できない状態であるかなどで異なる。例えば、認知症なら重度化を防ぐため介護保険サービスを続ける必要性が高くなる。暮らす環境も違う。住まいが過疎の山間部にあるのか、都会なのか。「要介護度」という物差しで一律に当てはめるのは難しい。利用者の状況に合った適切なサービスが行き渡る手法を模索するべきだ。高齢者は年を取るほど心身の調子が不安定になり、要介護度は変化しやすい。利用者の環境や状況を考慮した上で支え方を見極めなければならない。在宅介護で欠かせない視点である。介護の世界で懸念されるのが“2025年問題”だ。団塊世代が75歳を過ぎ、要介護者が急増し、社会保障財政が行き詰まる事態が予測される。少子高齢化は加速し、介護サービスのコスト削減、効率化は免れないだろう。肝心なのは本当に支援を必要としている人に、適切なサービスが提供できるかだ。既存のサービス縮小を論じるだけでは介護を必要とする人や家族の不安は募る。利用者が尊厳を保ち、安心して暮らせるよう、自立を支える支援の在り方について議論を深めるべきだ。


PS(2017年1月6日追加):日本老年学会は、*5のように、心身の若返りを理由に65歳以上とされている高齢者の定義を75歳以上に見直す提言を発表したそうだ。そのため、年金支給開始年齢と定年年齢を75歳にし、前提が覆る日が来るかもしれない。しかし、人に依って若さや健康状態は全く異なるので、「超高齢者」や「准高齢者」と呼び分ける必要はないだろう。なお、仕事を続けている高齢者の方が矍鑠(かくしゃく)としているのは、よく知られているところだ。


 国の歳入・歳出    社会保障費の抑制     介護費と介護保険料の推移 高齢者の定義
 2016.12.23      2016.12.23                          2017.1.6      
  佐賀新聞         東京新聞                             佐賀新聞

(図の説明:一番左のグラフのように、国家予算に占める社会保障費は大きいが、高齢者が仕事を続けて収入があるのでなければ年金や医療・介護の軽減を受けて支えられる側にならざるを得ない。しかし、一番右の図のように、高齢者の定義を75歳以上として65~75歳の人が働ける環境を整えれば、支える側になれるので、その前提が変わる。そのため、社会保障費を節約するには、70~75歳まで仕事を続けられる環境を整えるのが、誰にも無理がいかない。一方、国債の支払利子も大きいが、これは借り換えで節約できる。地方交付税は、それぞれの地方がエンジンとなる産業を持てば節減できる)

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/392784
(佐賀新聞 2017年1月6日) 「高齢者」は75歳以上 身体若返り、学会見直し
 高齢問題の研究者らでつくる日本老年学会などは5日、現在は65歳以上とされている「高齢者」の定義を75歳以上に見直し、前期高齢者の65~74歳は「准高齢者」として社会の支え手と捉え直すよう求める提言を発表した。医療の進歩や生活環境の改善により、10年前に比べ身体の働きや知的能力が5~10歳は若返っていると判断。活発な社会活動が可能な人が大多数を占める70歳前後の人たちの活躍が、明るく活力ある高齢化社会につながるとしている。高齢者の定義見直しは、65歳以上を「支えられる側」として設計されている社会保障や雇用制度の在り方に関する議論にも影響を与えそうだ。学会は、年金の支給年齢の引き上げなど社会保障制度の見直しに関しては「国民の幅広い議論が必要だ」と強調している。提言をまとめた大内尉義(やすよし)・虎の門病院院長は「高齢者に対する意識を変え、社会参加を促すきっかけになってほしい」と述べた。平均寿命を超える90歳以上は「超高齢者」とした。学会によると、日本は50年以上前から国連機関の文書などに基づき、慣例的に65歳以上を高齢者としている。学会は、脳卒中や骨粗しょう症などの病気や運動のデータを解析。慢性疾患の受診率は低下し、生物学的な年齢が5~10歳若返っているとみている。知能の検査では、最も得点の高い世代が40代から50~60代に変化。残った歯の数も同一年齢で比べると年々増える傾向にあり、死亡率や要介護認定率は減少していた。国の意識調査で、65歳以上を高齢者とすることに否定的な意見が大半であることも考慮した。昨年9月の総務省の推計によると、65歳以上は約3400万人で人口の約27%。高齢者を75歳以上とした場合は約13%に半減する格好だ。准高齢者は、仕事やボランティアなど社会に参加しながら、病気の予防に取り組み、高齢期に備える時期としている。
=解説= 保障や雇用に影響も
 現行の社会保障や雇用・労働の制度は高齢者を65歳以上とすることを前提としているものが多く、今回の提言は制度の見直しにも影響する可能性がある。少子高齢化の中、働き手、社会保障の支え手を増やす議論は加速しそうだ。高齢者の急増で国の財政負担は重くなり、現状のまま制度を存続させるのは難しい。医療保険や介護保険では、高所得者への負担増などが相次いで打ち出されている。会社員らの厚生年金の支給開始年齢は、60歳から段階的に65歳に引き上げられている途中段階だ。高齢になっても働き続ける人が増えた。高齢者の定義を巡る国民の意識も変わりつつある。40歳以上を対象にした昨年の厚生労働省調査で「高齢者と思う年齢」を尋ねたところ「70歳以上」との回答が最も多く、41・1%で、「65歳以上」は20・2%にとどまった。「75歳以上」は16・0%だった。日本老年学会などは「提言は医学的なもの」と強調するが、提言がこうした流れを後押しする可能性もある。ただ、高齢者の負担増については、反発も大きく、見直しは容易ではない。


PS(2017年1月8日追加):*6のように、確かに病院や介護施設の食器も、趣のないプラスチックではなく、軽くて強い磁器があればよいだろう。なお、年末に、一年に一度の人間ドックに行ったところ、壁に素敵な絵がかかっており、有田焼で作った絵もいいのではないか思った。

*6:http://qbiz.jp/article/101294/1/
(西日本新聞 2017年1月8日) 熟練のろくろで「くるまおろし」 有田・深川製磁
 有田町幸平の深川製磁で7日、仕事始めとなる「くるまおろしの儀」があり、ろくろ師たちが熟練の技を披露した。神職による祝詞奏上や玉串奉納の後、この日89歳の誕生日を迎えたろくろ師、深川剛さんが「ようっ」と気合の声を上げながら土の塊からつぼを形作った。隣に座る剛さんの長男、聰(そう)さん(60)は直径65センチの大皿の仕上げにいそしんだ。深川一太社長(68)は年頭あいさつで欧州での発信拠点をミラノからパリに移したことに言及。「継続性ある海外ブランディングを展開したい」と話した。高齢化社会に応じた医療用食器や葬祭用具作りにも意欲を見せた。


PS(2017年1月8日追加):*7のように、輸入チーズは伝統に根ざした美味しさがあるが、日本産チーズも負けてはいない。例えば、カルシウムや鉄分を強化した製品やワサビ・ゆず・からしめんたい・アーモンドなどと混ぜて小さく包装した製品など、日本でしか作らないような逸品もあり、これらは、どこにでも輸出できるだろう。なお、牛乳・卵はアイスクリームにすると保存がきき食べやすいが、私は、まだハーゲンダッツ以上の日本産アイスクリームに出会ったことがない。しかし、アイスクリームも、日本産の果物等を使えば工夫の余地が大きく、輸出可能だと考える。

*7:https://www.agrinews.co.jp/p39853.html (日本農業新聞 2017年1月7日) [TPP徹底報道 需要奪還 5] 乳製品 地元密着で付加価値 成長市場のチーズ
 国内での総消費量がここ10年で2割増と、需要拡大がさらに見込まれるチーズ。国産割合はまだ15%(2015年度)で、伸びしろは大きい。酪農振興の新しい柱と期待されるが、有望市場は他国も狙う。EUは、大詰めを迎えるEPA交渉で大幅な自由化を要求。欧州産のブランド力は脅威で、酪農家らは生き残りに向け、価格だけではない酪農の価値を発信しようと、地域や消費者との結び付きを強めている。150万人が暮らす大都市・神戸市の中心部から車で約20分、閑静な住宅街の一角に牧場へと続く門が現れる。酪農家が手掛ける国産チーズの先駆けとして、1985年から代表商品「フロマージュ・フレ」などを販売する弓削牧場だ。約9ヘクタールの敷地内では、放牧された牛が歩き回り、全国から訪れる年間約3万人の客がログハウス風のレストランでチーズをふんだんに使った料理を楽しむ。弓削牧場では、生乳生産部門の箕谷酪農場から加工部門のレチェール・ユゲが生乳の3割を買い取り、チーズやホエー(乳清)を使った化粧品作りなどを手掛ける。和食と組み合わせた日本人向けの食べ方提案など、欧州のチーズと差別化を図りながらファンを増やしてきた。加工部門は売り上げ全体の7割を占め、今や経営の柱だ。
●価格競争に懸念
 国内のチーズ消費量も増え、裾野は広がっている。その半面、安さを重視する中食・外食の需要で、輸入品が入り込む可能性が高い。輸入量は10年で2割以上増えたが、国産割合は思うように上がらず、むしろこの5年は4ポイント下げている。代表の弓削忠生さん(71)は「ただチーズを作って売るだけなら、輸入も国産も同じ」と言う。生産現場と切り離された商品として扱われれば、外国産との単なる価格競争に陥りかねない。TPPや日欧EPA交渉が、心配を膨らませる。外国産にはない価値をどう発信するか。弓削牧場では生乳生産を基本に置き、命につながる食料を生産する農業の本質を伝える講座や牧場での結婚式の企画などに力を入れる。近隣の森林植物園にカフェを出店するなど、地域との連携も重要視する。バイオガスプラントを設け、資源循環型農業にも乗り出した。弓削牧場と同様、同県明石市の住宅街の一角で酪農を営む伊藤靖昌さん(32)も「都市型酪農を続けていくには地域との結び付きが必要だ」と呼応し、生乳の価値を発信するため加工にも取り組む。
●取り組み発信を
 国産チーズの活路について、酪農情勢に詳しい名古屋大学大学院の生源寺眞一教授は「品質面での差別化だけでなく、発達した情報通信技術(ICT)も活用しながら、背景にある作り手の思いや取り組みを発信していくことが重要だ」と指摘する。


PS(2017年1月10日追加):*8のように、シルバー人材センターが耕作放棄地を農地として整備し、会員高齢者の就労や技能習得の場として利用するのは、アクションが速くてよいと思う。このケースなら、最終的に高齢者が月収15万円くらい稼げるようにすると、生活を支えることができるだろう。

*8:http://qbiz.jp/article/101357/1/ (西日本新聞 2017年1月10日) 耕作放棄地 高齢者に“活” 九州各地 シルバー人材センターが整備
 九州各地のシルバー人材センターが、全国的に増えている耕作放棄地を農地として整備し、会員の高齢者の就労や技能習得の場として利用する例が相次いでいる。高齢者の生きがいづくりと、低迷する農業の活性化につながる「一石二鳥」の取り組み。今後の充実・拡大が期待される。一方で、収穫物の売り上げだけでは必要経費を捻出できないなど、事業の難しさも浮かび上がっている。
●就労、技能習得の場に
 北九州市シルバー人材センターは2014年度から、会員たちに農作業の知識・技術を習得してもらう「シルバー農園」事業を開始。同市小倉南区の約1200平方メートルと若松区の約千平方メートルの耕作放棄地(放棄地になる恐れがある農地を含む)を借り、雑草を除去して事業を進めている。参加する会員は約100人で、大半が農業未経験者。月数回、シルバー農園に通い、元農家の会員らの指導を受けながら大根やジャガイモなどを育てている。収穫物はイベントなどで販売。売り上げは会員に分配せず、借地料や苗代などに充てている。会員たちはシルバー農園で稼ぐことはないが、身に付けた農業技術を生かし、センターが外部から受注した農作業の仕事に出向いている。その受注額は14年度約50万円、15年度約100万円。「シルバー農園によって農作業ができる会員が増えたので、受注に積極的に動いている。会員の就労機会拡大を図り、地域の農業活性化に貢献したい」とセンター企画課の神野譲嗣課長。
   ◆     ◆
 福岡県の築上町シルバー人材センターは、耕作放棄地になる恐れがある農地約2千平方メートルを15年度から借り、会員たちの就労の場として利用。会員15〜20人がイチゴ栽培に取り組んでいる。イチゴの売り上げで、会員の報酬をはじめ、農地の借り賃など必要経費を賄う仕組み。ただし1年目に報酬を時給850円に設定して赤字が出たため、本年度の途中から時給を定めず、売り上げの範囲で報酬を払う「出来高払い」に変更した。センター業務主任の古門敏彦さんは「会員の皆さんが頑張って売り上げを伸ばせば、報酬も増える。出来高払いに納得してもらっている」と話す。熊本県の八代市シルバー人材センターも12年度から放棄地を借り、就労の場にしている。場所は山に囲まれた同市坂本町鶴喰(つるばみ)地区で現在は約6千平方メートル。本年度は会員16人でコメ2460キロを収穫した。やはり出来高払いで、会員1人当たりの報酬は平均で約2万円(時給で800円強)になる見通しだ。 (編集委員・西山忠宏)
   ◇  ◇
●農地再生へ思惑一致 国・自治体センター
 各地のシルバー人材センターが耕作放棄地の活用に乗り出しているのは、放棄地の増加に歯止めがかからないことが背景にある。国も自治体も放棄地の解消・発生抑制に取り組んでいるが、力不足は否めず、センターが対策の加勢をしている形だ。放棄地は農家の高齢化などで増加。農林水産省の「農林業センサス」によると2015年には全国で計42万3千ヘクタールと過去最大を更新、富山県とほぼ同じ面積になっている。問題点として農地減少だけでなく(1)雑草や害虫が増え、周辺農地に影響を与える(2)鳥獣の隠れ家となり農作物への被害が増える(3)廃棄物が不法投棄される恐れが高まる−などが指摘されている。一方、センター側からすれば、農業分野に積極参入することで、主目的の「高齢者への就労の機会提供」を拡大できる利点がある。放棄地の問題を解決して地域に貢献でき、存在感を高める狙いだ。全国シルバー人材センター事業協会(東京)によると、センターは全国に1282団体(昨年3月末現在)。放棄地の活用事業に取り組むセンターの数は把握できていないが、放棄地を安く借りられることもあり、かなり広がっているとみられる。ただ、事業を拡大するには「しっかり稼ぐ手法」の確立が欠かせない。


PS(2017年1月13日追加):森林の手入れや草刈りなどの環境関連の仕事は、最近できたものであるため人手不足だ。そこで、「製造業や事務職は高給取りだが、森林の手入れは環境好きのボランティアの仕事」などと考えるのではなく、働きに応じた報酬を支払えば中高齢者を含めて雇用吸収力がある。

*9:http://qbiz.jp/article/101616/1/
(西日本新聞 2017年1月13日) 福岡県、森林環境税継続へ 保全、再生「理解得られる」
 福岡県は森林の保全や再生を目的に2008年度から導入した森林環境税について、徴収期間が終わる17年度以降も継続する方針を固めた。温室効果のある二酸化炭素を吸収し、地下水を蓄えて土砂流出や崩壊を防ぐ森林の機能は公益性が高く、県民負担への理解は得られると判断した。森林環境税は10年間の時限措置として、個人県民税に一律500円を上乗せして徴収。法人は資本金などに応じて、千円から4万円までの5通りの税額を設定している。新たな課税期間は18年度から5年間を軸に検討し、税額は変更しない。森林環境税の検証や在り方を検討する有識者委員会の報告を受けて、正式決定する。15年度までの8年間で103億円超の税収があり、間伐や植栽をする市町村への助成、森づくりに関わるボランティアの育成などに充てている。有識者委員会が昨年実施した県民アンケートでは「良い取り組みだと思う」と評価する回答が多かった。


PS(2017年1月15日追加):日本では、65歳以上の“高齢者”に対する介護と65歳未満の“障害者”に対する福祉は、サービスの内容が異なる。そのため、障害者が65歳になると、それまで受けていた自立支援サービス等を受けられなくなったりする。しかし、年齢で差別するのは不合理であるため、介護事業者は両方の指定を受けられるようにし、地域包括ケアシステムを整備して、どのサービスを受けるかについては、本人・家族・医師・ソーシャルワーカーなどが相談して決められるようにするのがよいと私も考える。また、その場合は40歳未満の人からも介護(福祉)保険料を徴収し、介護・福祉サービスの内容に年齢を理由とする差をつけないのが妥当だろう。

   
年齢階層別障害者数推移 サービス利用手続  介護サービスの内容      障害者福祉の内容

(図の説明:障害者に占める65歳以上の割合は次第に増え、2011年には2/3を超えている。そこで、介護と福祉サービスを年齢で分けず、必要なサービスは年齢に関わらず受けられるようにすべきだ)

*10:http://mainichi.jp/articles/20170115/k00/00m/040/103000c
(毎日新聞 2017年1月15日) 厚労省、介護・障害を一括サービス 18年度実施へ法案
 厚生労働省は、介護保険と障害福祉両制度に共通のサービス創設の方針を固めた。高齢の障害者が、一つの事業所で一括してサービスを受けられるようにするなど、利用者の利便性を高めるのが狙い。2018年度の実施を目指し、20日開会の通常国会に関連法案を提出する。介護・障害の両制度は、サービスを提供するのに、それぞれ指定を受ける必要がある。このため、65歳以上の高齢の障害者が、障害福祉事業所で介護サービスを受けられないなどの課題が指摘されている。そこで同省は、通所や訪問など、いずれの制度にもあるサービスについて、事業者が両方の指定を受けやすくするよう制度を見直す。同省は、高齢者や障害者、児童といった福祉分野に関し、地域住民とも協力して包括的にサービスを展開する「地域共生社会」を目指している。高齢化がさらに進む中、地域内の限られた施設や人材の有効活用を促す。実施には介護保険法や障害者総合支援法などの改正が必要で、関連法案を一括し、「地域包括ケアシステム構築推進法案」として提出する方針だ。同法案には、介護サービス利用時の自己負担について、特に所得の高い人は、現在の2割から3割に引き上げることも盛り込む。対象は、単身の場合で年収約340万円以上、夫婦世帯は約460万円以上。当初は単身で383万円以上を想定していたが、見直した。負担増になるのは利用者の3%に当たる12万人で、18年8月実施を目指す。一方、40~64歳の介護保険料について、年収の高い会社員らの負担が増える「総報酬割り」の導入も盛り込む。17年8月分からの適用を想定している。

| 経済・雇用::2016.8~ | 11:55 AM | comments (x) | trackback (x) |
2016.10.27 日本の経済学者がノーベル賞を受賞できない理由と日本政府の経済運営について (2016年10月29日、11月1、2日に追加あり)
   
   発展段階別       $と購買力平価による  アジアの購買力平価による   日本の   
一人当たりGDP成長率     GDPの比較       一人当たりGDP推移    平均世帯所得

(グラフの説明:既にGDPが大きくなっている先進国ほど「一人当たりGDP成長率(「一人当たりGDP」ではない)」は低い。また、物価の高い日本では購買力平価によるGDPの順位は$ベースの順位より低くなっており、アジアの中で比較しても日本の購買力平価による一人当たりGDPは高くない。さらに、日本の平均世帯所得は減少しており、特に高齢者世帯で低い)


      
ASEAN諸国の人口ピラミッド     世界の人口推移            日本の人口推移           
                                                           
(グラフの説明:ASEAN諸国をはじめとするアジアの他国では、まだピラミッド型の人口構成をしており、次第に日本に近いつぼ型になるだろう。そして、開発途上国で人口増加が止まるまで世界人口は増え続け、2011年の世界人口は70億人で、2050年には93億人になりそうだ。どの国も産業革命後に急速に人口が増加し始めたのは、物資が豊富になって栄養が行きわたり、衛生状態がよくなるとともに、医療が普及したからだと言われているが、人口がピークになっている現在の日本と同様、人口増加の終息後は各国とも人口減に転じ、次第に高齢化社会になっていくと考えられる)

(1)日本の経済学者がノーベル経済学賞を獲得するには・・
1)私がこの解を書ける理由
 私は人間の遺伝や進化(今で言う生命科学)に関心を持って東大理科Ⅱ類に入り、女性が結婚しつつやりたい研究をして大学で昇進できる可能性の低さに愕然としながら医学部保健学科(今から40年以上前に環境の研究をしていた)に進学し、人類生態学・環境・疫学等を勉強し卒業した後に、公認会計士・税理士に転向して仕事を続けてきたので、本気で生物系と経済学・法律の勉強をした経験がある。そのため、両方のアプローチを比較して、日本人がノーベル経済学賞を受賞できない理由を書けるので書く。

 例えば環境を例にとると、ヒトが生きる環境を悪化させる要因は多く、複数の物質が反応し合って複合汚染を起こす化学物質や単体でも人体に重大な害を与える放射性物質・有機水銀のような物質もあり、特定するのは一苦労だ。そのような中、ヒトに与えている害の原因を求めるには、注目する要因と背景となる要因の相関関係を多変量解析して発生している事実と比較する方法があるが、考慮すべき要因が多いためすっきりした解が得られないことが多い。

 一方、経済学は、人間の意思決定と行動から生じる社会現象を簡単な数式やグラフで説明しており、私はそれを初めて勉強した時には理論の美しさに感動したが、不変と看做して無視する“与件”が多すぎて、実際の社会現象を実証的に説明することはできていない。それが、現在、日本で語られている経済学の欠点で、つまり科学になっていないのだ。

 そのため、「①マクロ経済はミクロの経済行動の総計である」「②公害・環境は無視できない重要な要素となった」「③技術進歩を無視することはできない」「④食料・資源・地球環境は、地球上での人口増加・経済拡大の限界を意味する」などを前提とし、これまでの経済学では無視していたものも考慮し、社会調査に基づいて日本で起こっている現象を実証主義によって数式で説明すれば、課題先進国である日本の経済学者は、世界の課題に大きく貢献し、ノーベル経済学賞候補になれると考える。

2)日本人がノーベル経済学賞を獲得できない理由
 産経新聞は、*1-1で、経済学賞は日本人が獲得したことのない唯一のノーベル賞だが、ノーベル賞受賞者は「①米国の有名大学を拠点に活動している」「②ノーベル賞を受賞するには米国で論文を積極的に発表し、その論文を世界の研究者が頻繁に引用する必要がある」「③功績に追随する人が一派をなしている」「④日本人は米国の主流派に大きな影響力を持つ研究者が少ない」などとしている。しかし、ノーベル経済学賞の選考はスウェーデン王立科学アカデミーが行うため、英語で論文を発表し、それを世界の研究者が読んで頻繁に引用する必要はあるが、米国の主流派か否かは関係ないと思われる。そのため、他分野の日本人ノーベル賞受賞者が日本で活動した人も多いことを考えれば、①②③④は泣きごとにすぎない。

 また、日経新聞も、*1-2で「英語力の壁」「インパクト不足」を上げているが、世界の研究者がその論文の存在を知って引用するためには英語で記載されていることが必要条件ではあるが、内容が先進的で新しい解を導いており魅力的でなければ、世界の研究者が引用する理由がなくインパクトも小さい。しかし、日本の経済学者には、それがないのである。なお、アメリカの文化・歴史・社会背景を理解していない日本人がアメリカで研究した経済学は、それらを理解しているアメリカ人がアメリカで研究した経済学よりも背景に詳しくない分だけ考察が浅く、インパクトのある内容にはなりにくいと思われる。

 そこで、私は、「経済学の新分野を開拓した、あるいは既存の分野に新しい視点を取り入れて経済学を革新したと多くの経済学者が認識する理論を造る」には、課題先進国日本で、社会調査に基づいた実証主義により問題を解明して経済学の理論を造れば、地球に貢献する大きな流れができ、評価力のある人から評価され得ると考える。

 なお、東京大学経済学研究科でゲーム理論の人気が高いそうだが、観念的で単純化しすぎた理論だけでは実際の経済事象を説明することができないため、その功績は限られるだろう。

(2)GDPの算出方法による歪んだ実態把握
1)GDP(国内総生産)について
 GDPは、国内で新しく生産された財・サービスの合計で、経済活動の規模や動向を総合的に示す指標として用いられる。また、GDPには名目と実質があり、実質GDP(名目GDP/《1+物価上昇率》)は、名目GDPから物価変動の影響を除いたものだ。

 また、GDP等の経済実態を把握する方法は経済統計だが、*2のように、GDP統計の把握の仕方が古く、実際に生産しているものがGDPに入っていなかったりして、GDP統計に基づいた政策決定を誤らせるという問題点が指摘されている。そのため、総務相の高市早苗氏が個人消費の新指標を開発する研究会を立ち上げられたのはよいことだ。

 私自身は、日本のGDPは製造業中心で、医療・介護・保育・教育・ハウスキーピングなどの20~21世紀型サービスが十分に算定・評価されておらず、このことが政策におけるこれらのサービスの軽視に繋がっていると考える。しかし、2014年の統計では、日本のGDPの構造は、第三次産業(サービス業)が74%と最も大きく、次に第二次産業(製造業)24.9%、最後に第一次産業(農林水産業)1.2%となっており、日本はモノを作って輸出するのに適した国ではなくなっているのだ。

2)GDP成長率(いわゆる経済成長率)について
 GDP成長率とは、GDPの変化率(g=GDP、t=時間として、dg/dt)のことで、変化率であるため、本来、プラスの場合もマイナスの場合もありうる。しかし、経済を語る文系の人は、微分・積分を知らない人が多く、GDP成長率と名付けたこともあって、GDPの成長に子の成長のような特殊な積極的意味を付加している。しかし、感情の入らない科学用語としては、「GDP変化率」が適切だ。

 また、「GDP変化率」と表現すると、人口が減少してGDPの総計が減っても、一人当たりGDPが増え、一人一人がより豊かな生活を送れるようになっていれば問題ないことがわかる。

(3)伊勢志摩サミットで世界に向けて語られた日本の政策の誤り
1)財政出動
 日米欧の主要7カ国(G7)が4月26、27日に、*3-1のように、首脳会議(伊勢志摩サミット)を三重県で開き、その最大のテーマを「マクロ経済政策の協調」とし、「①原油価格の下落」「②中国をはじめとした新興国の経済低迷」を理由に、財政出動での内需拡大を求めたそうだ。

 しかし、原油価格下落は日本にとってはマイナスではなく、中国のGDP成長率の鈍化はリーマンショック後に金融緩和して世界経済を支えた中国の出口戦略によるものであるため、外国のせいにして新たな財政出動を合理化するのは正しくない。

 むしろ、日本は東日本大震災、熊本地震、鳥取地震等からの復興や東京オリンピックの準備などで既に莫大な財政出動を余儀なくされているため、景気対策のためにこれ以上の財政出動をしなければならない理由はなく、*3-2のように、無駄な財政支出をやめ財政出動に慎重なメルケル独首相の見解の方が正しいと、私は考える。
 
2)金融緩和
 日本は結論ありきの消費税率10%への引き上げのため、*2のように、デフレ脱却と称する金融緩和のインフレ政策を行い、貨幣価値を下げることによって国の借金を実質で目減りさせ、株価や土地の価格を上げ、グローバル企業の利益を増やしたが、これによって国民は実質賃金や実質債権価値が下落し、実質賃金下落の効果として雇用は増えたものの生産年齢人口でも生活の苦しくなった人が多い。まして年金生活者は、年金給付の実質目減りと介護保険料の負担増で生活できない人も出ている。

 これは、日本の政治が経済学のマネタリズムを御都合主義で利用して過度の金融緩和というインフレ政策を行い、声の小さな国民にしわ寄せした結果であるため、私は、これを日本国憲法(第11条基本的人権、第25条生存権、第29条財産権)違反だと考える。

 また、*3-3のように、先進国の金融緩和政策の長期化に伴う低金利の副作用への警戒感が急浮上しているが、いくら金融緩和したり低金利にしたりしても、最終需要者の国民から消費財の購入資金を奪っているため、それを供給する企業の健全な投資も起こらないのが当然だ。ただし、低金利を利用して本当に必要なインフラに投資すれば、その後の生産性向上に資するし、ゼロ金利を利用して政府が国債を借り換えすれば、年間20兆円に及ぶ国債の利払いを抑えることが可能だ。

3)生産性の上昇
 麻生財務相は、*3-4のように、「生産性上昇で低成長克服を」と述べておられるが、確かに生産性を高める技術進歩と構造改革は重要だが、電力自由化後も原発への国費の無駄遣いが続いたり、新電力に原発の廃炉費用を負担させようとするなど、国内での自由競争を阻害する政策が多すぎる。そのため、「経済成長(GDPの変化率をプラスにすること)が善である」と述べているが、どういう状態をゴールとして、いかなる方法で、何のためにGDPを拡大させたいのかという最も重要な展望を考え直すべきだ。

 私自身は、日本国憲法に書かれていることが、まさに日本が目指すべきゴールであり、これは条文を読めばわかることで、日本国憲法が外国から強制されたか否かは問わないと考える。

(4)年金削減と介護サービスの削減は伸ばすべき消費を抑えたのだということ
1)年金について
 年金は高齢者の生活の糧であり、これを不当に侵害しなければ、高齢者が必要とするものを購入することによって、人口における高齢者の割合が著しく増加する課題先進国日本で、新たに起こる需要に対応する供給が確立してきた筈のものである。

 そのため、*4-1のように、年金を受け取るのに必要な加入期間(受給資格期間)を25年から10年に短縮し、無年金となっていた64万人を新たに年金を受け取れるようにしたことは、公正な方向への変更であり歓迎だが、本当は、年金保険料を支払ったことのある人なら加入期間にかかわらず誰にでも受給資格を与え、年金加入期間と保険料支払い額に応じて支給額を調整するのが公正だと私は考える。

 なお、*4-2のように、厚労省は年金の試算において、会社員の夫と専業主婦のモデルケースで2013年度の厚生年金の所得代替率を62.6%と過大に試算していたが、賃金と年金をいずれも手取りで計算し直すと所得代替率は53.9%に低下し、税・社会保険料を含めて計算すると所得代替率は50.9%にまで下がるとのことだ。しかし、まだ夫と専業主婦の2人世帯のモデルケースしか試算しておらず、どちらか1人になれば年金額はさらに減少する上、高齢者は生産年齢人口の50%程度の収入があれば生活できるとしているのも不可解であり、今後、高齢者が生活できない状況は頻繁に起こりそうだ。

2)介護制度について
 介護制度も、高齢化・核家族化が進んだ現在、生存権を護るために必要なもので、高齢者や障害者にとっては生きるために必要不可欠なものであるため、介護制度を改悪すれば介護制度の存在意義が怪しくなる。もう一方の見方をすれば、高齢化・少子化した日本では、介護サービスは真に必要とされるサービスであり、これを抑制することは、本物の需要を抑えて真に必要なサービスの供給を発展させるのを妨げたものだ。

 そのため、*4-3のように、介護と言えばサービスを縮小して現役世代の負担を減らすことばかりを主張するのではなく、現役世代は介護を自分でしなくてよくなった分だけ確実に負担軽減されていることを考慮し、まだ十分に供給されたこともない介護サービスの削減ばかりを唱えずに、必要な需要は供給できるよう、働く生産年齢人口は全員、医療保険と同様に介護保険料を負担するようにすべきである。

<日本人がノーベル経済学賞を獲得できない理由>
*1-1:http://www.sankei.com/politics/news/161011/plt1610110054-n1.html (産経新聞 2016.10.11) 日本人はなぜノーベル経済学賞を獲得できないのか…米主流派、英語が壁?  
 2016年のノーベル経済学賞は米国の経済学者2人が受賞し、日本人で最有力視された米プリンストン大の清滝信宏教授(61)は今年も受賞を逃した。経済学賞は日本人が獲得したことのない唯一のノーベル賞。米国の学界が「主流派」として幅をきかす中、英語力のハンディもあり、日本人は受賞の“地歩”を築けていないのが実情だ。ノーベル経済学賞は、市場の役割を重視する米国主流派の系譜を引く学者が相次ぎ受賞している。2010~16年の受賞者14人中12人が米国の大学教授や名誉教授だ。背景には現代経済学の主流派の多くが、米国の有名大学を拠点に活動していることがある。このため、ノーベル賞を受賞するには、米国で論文を積極的に発表している▽その論文を世界の研究者が頻繁に引用している▽功績に追随する人が一派をなしている-などの条件が必要とされる。日本人に関しては「米国の主流派に大きな影響力を持つ研究者は少ない」(内閣府経済社会総合研究所の堀雅博上席主任研究官)。語学力の壁もあって説得力ある論文の執筆や人脈作りが難しく、受賞の条件を満たせないとの見方がある。この点、毎年候補に名前の挙がる清滝氏は米国に足場を持つまれな存在だ。また14年に死去した宇沢弘文・元東大名誉教授も数理経済学の業績で受賞に近いとされた。ただ、米国から日本に帰国後の1970年代、社会運動にのめりこみ、主流派に批判的となったことが受賞を最終的に不可能にしたといわれる。日本人の受賞を目指すのであれば、若手研究者が米国で腰を据えて研究できる環境整備や、米国から優秀な指導者を招き、日本の学界を底上げする取り組みが求められそうだ。

*1-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGH05H0Y_V01C16A0000000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2016/10/10) ノーベル経済学賞、日本人が受賞する条件
 今年のノーベル経済学賞は、米ハーバード大学のオリバー・ハート教授、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のベント・ホルムストロム教授の受賞が決まった。ノーベル賞の歴史の中で、日本人が受賞していないのは経済学賞だけで、今年も受賞を逃した。日本人の経済学者が世界で評価され、ノーベル賞を受賞するためには何が必要なのか。
■「英語力の壁」やインパクト不足
 昨年夏に死去した青木昌彦氏(米スタンフォード大名誉教授)の生前の活躍ぶりを示す著書が9月、書店に並んだ。タイトルは「比較制度分析のフロンティア」(青木昌彦・岡崎哲二・神取道宏監修)。世界各国の経済学会の連合体である国際経済学会連合(IEA)の会長を2008年から11年まで務めた青木氏が企画し、11年に北京で開いた世界大会での発表の中から、青木氏が厳選した論文を邦訳した。IEAの初代会長はジョセフ・シュンペーター。以来、ポール・サムエルソン、ケネス・アロー、アマルティア・セン、ロバート・ソローら世界を代表する経済学者が会長を務めてきた。ちなみに青木氏の後任はジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授(11~14年)である。青木氏は、人々の行動を左右する慣習などを「制度」と定義し、ゲーム理論の手法を使って各国の経済構造の違いを解明した。歴史や文化の中ではぐくまれる「制度」と、経済学の中でもとりわけ「純粋理論」の色彩が濃い「ゲーム理論」。対極にあるようにもみえる両者を結びつけて独自の理論を展開する、斬新な着想が世界の経済学界で高く評価された。人脈づくりにも熱心で、青木氏を中心に世界の研究者の強力なネットワークができあがっていた。「ノーベル経済学賞を受賞する資格があり、本人も狙っていた」(今井賢一・スタンフォード大名誉シニアフェロー)と評される青木氏のような存在は、残念ながら現在の日本には見当たらない。「比較制度分析のフロンティア」には、清滝信宏・米プリンストン大教授の「金融制約へのメカニズムデザイン・アプローチ」と題する論文も収録されている。引用された論文数を基準にノーベル賞候補を毎年発表している米トムソン・ロイターは10年、清滝氏を経済学賞の候補に選んだ。日本人が初受賞するなら清滝氏と関係者は口をそろえる。清滝氏の名前がよく挙がるのは、世界で認められている日本人がごく限られているためでもある。世界で評価される条件は何か。日本人の経済学者たちに尋ねると、ほぼ同じ回答が返ってくる。
(1)アメリカン・エコノミック・レビュー、エコノメトリカ、ジャーナル・オブ・ポリティカル・エコノミーなど「トップジャーナル」と呼ばれる論文誌に投稿し、多くの論文が掲載される。
(2)論文が世界の経済学者の間で注目され、他の論文に引用される。
(3)論文に関連するテーマに取り組む研究者が増え、経済学界に大きな流れができる。
(4)経済学の新分野を開拓した、あるいは既存の分野に新しい視点を取り入れて経済学を革新したと、多くの経済学者が認識する。何をすればよいのかは十分わかっていても、実行できないのはなぜか。依田高典・京大教授は「英語力の壁」を挙げる。数理経済学が全盛だった頃は、数学が得意な日本人学者が活躍する余地が大きく、ノーベル経済学賞の有力候補と呼ばれた宇沢弘文氏(東大名誉教授)らのスターが生まれた。応用経済学が主流となった現在、トップジャーナルのレフェリーを納得させる論理を展開するのは難しいとみる日本人学者は多い。岡崎哲二・東大教授が日本人学者に欠けているとみるのは「新しい問題を発見し、大きな流れをつくっていく力」。トップジャーナルへの掲載を目指してこつこつと努力し、成果を上げている学者は増えてきたものの、経済学界に大きなインパクトを与えるほどの勢いはない。
■海外との人材交流も乏しく
 この点でよく指摘される問題が、特定の分野への研究者の集中だ。例えば東京大学の場合、経済学研究科の大学院生の間で最も人気が高いのはゲーム理論。ゲーム理論が専門でトップジャーナルへの論文掲載の実績がある教授陣が在籍しているため、世界で活躍したいと考える若手研究者がゲーム理論に殺到している。論文を量産しないと大学に職を得にくいという就職事情も影響しているようだ。ゲーム理論は確かに最先端分野の一つではあるが、今後も「成長分野」であり続けるのかどうか。「ゲーム理論の論文を積み上げても、経済学の革新に貢献したと評価されるのは難しいのではないか」と懸念する声もある。

<政府統計>
*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160920&ng=DGKKASFS16H0X_W6A910C1PE8000 (日経新聞 2016.9.20) 統計大論争(1)GDP信用できない
 ふたりの“教授”が霞が関を震撼させている。やり玉にあげるのは政府統計。追及の手が緩む気配はない。ふたりの教授は毎週金曜日、午後3時からみっちり2時間、官僚とゼミを開く。物価変動の影響をみるデフレーターの算出方法をただし、生産性の分析の仕方を問う。専門用語が飛び交う。「自分が呼び出されるのはいつだ」。統計を扱う官僚は戦々恐々とする。ゼミの教授は大阪学院大教授の三輪芳朗(68)。もうひとりの「教授」は所属する自民党岸田派でついた異名、行政改革相の山本幸三(68)だ。ふたりは東大教授だった経済学者、小宮隆太郎(87)の門下生。1年先輩の三輪が後輩である山本の大臣補佐官を引き受けた。勉強会で統計の不備をただすのは主に三輪の役回りだ。三輪が書いた「よりよい政策と研究を実現するための経済統計の改善に向けて」は官僚必読の論文。ふたりの教授は正確な統計を生かし、誤りのない政策決定に導くという思いを共有する。勉強会には若手国会議員も顔を出す。教授を中心にした統計論議は騒がしさを増している。
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 山本は旧大蔵省出身で、宮沢喜一の蔵相秘書官も務めた。政界入り後は日銀にデフレ脱却を迫ってきた。筋金入りのリフレ派だ。やや異端視される存在だったが、旧民主党政権時、今の首相、安倍晋三(61)に金融緩和の必要性を説いた。安倍は首相復帰後、アベノミクスの第1の矢に「大胆な金融政策」を据えた。山本がアベノミクスの「生みの親」と主張するゆえんだ。そんな山本が閣僚に就くや、真っ先に矛先を向けたのが政府統計だった。就任2日目の8月4日。「ぜひやりたいのは、政府の経済統計の整理統合」「日本のGDP(国内総生産)統計はどこまで信用していいかわからない」。消費統計の不備などから経済の実情がつかめないと持論をぶった。「景気がいまひとつなのを統計のせいにするのか」。内閣府は真意をいぶかった。だが、この夏、異論を唱えたのは山本だけでなかった。日銀職員2人が7月、GDPの算出方法に疑問を投げかける論文を公表したのだ。2014年度の名目GDPが内閣府の公表額(490兆円)より約30兆円多い519兆円だったと指摘。実質成長率は内閣府のマイナス0.9%でなく、2.4%と主張した。内閣府内には反論文書を出すべきだとの意見も出たが、最後は「論評に値しない」と切って捨てた。一部の研究者やエコノミストが援軍に回った。「消費増税があったのに、14年度のプラス成長はにわかに信じがたい」。内閣府を勇気づけた。内閣府も統計の機能不全を否定しない。実質GDPは15年7~9月期に速報値のマイナスから改定値でプラスに転じるなど、数字のぶれが信頼性を下げている。消費統計もネット販売を加味せず、若年層の購買行動を捕捉できていない。それでも「今ある統計を作るのに精いっぱい。改善の人手も予算も足りない」(内閣府)。
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 統計への厳しい視線を感じ、重い腰をあげたのは総務省だ。9月15日夕、総務相の高市早苗(55)は大学教授やエコノミストら約15人を集め、個人消費の新指標を開発する研究会を立ち上げた。高市は「政府統計が新たな地平をひらくための挑戦の場」と意気込んだ。1時間半の会議終了後にはみずから参加者を見送る熱の入れようだった。これまでも消費統計の刷新を探る動きはあったが、めぼしい成果はない。研究会では有識者から総務省の本気度を問う声もあがった。「(すべてのものがインターネットでつながる)IoT時代に沿った、新たな政府統計を作りたいと思います」。総務省消費統計課長の阿向泰二郎(46)は退路を断った。日本最初の政党内閣を組織した大隈重信。総務省は統計の礎を築いたとたたえる。大隈は1916年、全省庁に発した内閣訓令第1号で統計の重要性を訴えた。「其の調査は、迅速精確にして実用に適するものたるを要す」。正確なデータが国の政策づくりに不可欠と喝破した。今、100年前の大隈の訓示をかみしめる時が来ている。
   ◇
 経済の実態をつかむのは難しい。統計という物差しが古び、精度が低ければ、なおさらだ。愚直に数字を積み上げるだけで日本の今はとらえられない。(敬称略)

<世界経済と伊勢志摩サミット>
*3-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO00288580Q6A430C1970M00/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2016/5/3) 世界経済占う「伊勢志摩」 サミットの焦点と歴史
 日米欧の主要7カ国(G7)は26、27両日、各国首脳が一堂に会する主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)を三重県で開く。日本で開くサミットは8年ぶり6回目。首脳同士が同時通訳を介して直接、さまざまな世界の難題を話し合う首脳外交のひのき舞台だ。議長として安倍晋三首相の力量も問われる。
■最大のテーマは マクロ経済政策の協調探る
 サミットは主要国の首脳が世界の重要課題を話し合うため年1回開く国際会議だ。初会合は1975年11月。石油ショックへの対応を話し合うため、先進6カ国首脳がフランス・パリ郊外のランブイエ城に集まった。メンバーは日本、米国、英国、フランス、西ドイツ、イタリア。76年にカナダが加わり「G7」(Group of Seven)と呼ばれるようになった。98年にロシアを加えて「G8」になったが、2014年にクリミア半島の併合を強行したロシアを外し、この年からG7の枠組みに戻った。毎年の議題は大きく政治と経済に分かれる。今年は世界経済の先行きに不透明感が増すなか、G7が一致してマクロ経済政策で協調姿勢を打ち出せるかが最大の焦点だ。原油価格の下落を引き金に、昨年来、これまで世界経済をけん引していた中国をはじめとした新興国の経済が低迷。収縮しつつある世界経済を下支えするには、G7や新興国に財政出動での内需拡大が求められている。ただ財政規律を重視するドイツは財政出動に慎重だ。サミットでの世界経済の議論が、17年4月に迫った消費税率10%への引き上げを延期するかどうかの安倍晋三首相の判断に影響するとの声も多い。内需拡大で一致するなら、消費増税は消費や投資拡大の足かせになるとの見方だ。富裕層や有力政治家らのタックスヘイブン(租税回避地)での節税の実態を明らかにした「パナマ文書」を巡る問題を受け、課税逃れ対策の取り組み強化も話し合う。政治分野では、過激派組織「イスラム国」(IS)による相次ぐテロや、シリア内戦による欧州への難民流出問題が大きなテーマになる。G7がどこまで具体的な処方箋を示せるかが注目点だ。4月に広島で開いたG7外相会合では、サミットで「具体的な施策を含むテロ対策行動計画を作成する」とした。テロリストやテロ組織の資金の流れに関する情報や、航空機の乗客情報を共有する仕組みづくりなどが課題だ。日本政府としては「アジアで8年ぶりに開くサミット」(安倍首相)で、アジア地域の問題も重点的に取り上げる。特に核実験や弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮への対応や、人工島造成など南シナ海での海洋進出を強める中国への対応が焦点だ。G7外相会合では中国の活動を念頭に「挑発的な一方的行動に強い反対を表明する」と明記した声明をまとめた。首脳宣言でけん制のトーンをどう強めるかが注目だ。議長国の日本としてはサミットを通じ、安倍政権が国際協力の柱に据えるアジアでの「質の高いインフラ投資」の促進や、目玉政策である「女性活躍の推進」も国際社会にアピールしたい。エボラ出血熱や中南米でジカ熱が流行していることを踏まえ、感染症対策など保健衛生分野での貢献策も打ち出す。サミットに先立ち、財務相・中央銀行総裁など計8つの閣僚会合を開き、各分野でグローバルな課題を話し合う。サミット閉幕後に発表する「首脳宣言」に反映する。
■なぜ「G7」で開催 民主主義など価値観共有
 サミットの主要議題は、その時々の国際情勢を映す。1975年の初会合は経済問題が議題で、当初は経済政策が中心だった。ソ連のアフガニスタン侵攻を受けた80年のベネチア・サミットから「西側の結束」を確認する政治討議に比重が移った。地域紛争や環境問題など議題は広がり、2000年代以降は地球温暖化やテロ対策といったグローバルな課題が目立つ。ロシアは冷戦終結後に加わったが、2014年からG7がロシアの参加を停止。再び自由や民主主義などの価値観を共有する国だけの集まりとなり「話し合いは格段にスムーズになった」(外務省幹部)。その分、G7の結束力が高まったと言える。共通の価値観を土台にすることで、中国の挑発行為も話しやすくなった。南シナ海や東シナ海への海洋進出で「法の支配」に反するような動きは、どの国も賛意を示せない。かつては中国をサミットに加える構想も浮かんだが、いまは消えている。世界でみると裕福なG7のテーマは、新興・途上国が今後直面する課題にもなる。高齢化や医療、女性活躍など課題を先取りして世界の議論をリードする役割もある。サミットは国際社会の中で常に存在意義を問われてきた。最近では08年のリーマン・ショックの後。世界経済を揺るがす事態の発信源が米国だったことに加え、日本や欧州各国の経済も大きく傷み、国際社会への影響力を一時は失った。代わりに存在感を高めたのが20カ国・地域(G20)。G7にブラジル、中国、インド、ロシア、韓国、インドネシアなどを加えた枠組みだ。首脳会議はリーマン・ショック後にブッシュ前米大統領の呼びかけで始まった。金融規制や監督など危機の再発防止策をまとめ、ギリシャ危機を受けた10年には財政健全化策を議論した。ただ先進国と新興国の利害が対立することも多く、協調はなかなか難しい。現在は新興国経済が軒並み伸び悩む。G20だと発言する人数が多すぎて突っ込んだ議論ができない問題も明確になり、再びG7に注目が集まっている。
■国際社会への影響力は 閉幕の「首脳宣言」カギ
 サミットがどこまで国際社会に影響力を与えられるかは、閉幕時に打ち出す首脳宣言がカギを握る。そろって具体的なメッセージを打ち出せば、その後の国際社会の流れに道筋が付く。逆にいかにG7とはいえ、打ち出すメッセージがバラバラでは影響力は維持できない。例えば1979年の東京サミットは第2次石油ショックへの対応で、石油消費・輸入上限目標を国別に具体的数値で示すことで合意した。83年のウィリアムズバーグ・サミットは、米国による西欧へのミサイル配備の是非が議題になり、激論の末に中曽根康弘首相が必要性を主張。ソ連への対抗姿勢を示した。2008年の北海道・洞爺湖サミットでは、50年までに世界全体の温暖化ガスを半減する長期目標に合意。目標設定に慎重だった米国を巻き込み、環境問題を前進させた。今回のサミットでは、欧州で社会不安の原因となっている中東からの難民問題で、欧州の緊迫感を日米が共有できずにいるとの見方は多い。ロシアや中国との距離感でも温度差を抱える。G7の結束を打ち出せるかどうかは議長である安倍晋三首相の力量次第だ。かつて1年ごとに首相が交代し、「日本の首相は毎回サミット初参加」という時代と異なり、安倍氏は今回でサミット参加が5回目と経験も豊富だ。G7が再び結束を強められるか。安倍氏の役割は大きい。

*3-2:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO01960380V00C16A5I00000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2016/5/5)メルケル独首相、財政出動にゼロ回答、日本との対立避け、温和な表現
 ドイツが日本の期待に応えて財政出動に踏み切るかが焦点となっていた4日の日独首脳会談。安倍晋三首相との話し合いを終えて共同記者会見に臨んだメルケル独首相は成長戦略について「詳細は日本で議論する」と語った。文字通りに受け止めれば、ドイツが新たな景気刺激策を講じることに理解を示したかに見える。だが発言を丹念に追えばゼロ回答なのは明かだ。わざわざベルリンを訪れた安倍首相のメンツをつぶさないように温和な表現に終始し、日本との対立を避けるという配慮を見せた。会見で安倍首相は「機動的な財政出動が求められている」と語った。これをメルケル首相は否定しなかったどころか「投資、構造改革、適切な金融政策の3つが必要だ」と呼応した。だが新たな補正予算を組んで、景気刺激に乗り出すつもりはない。ドイツ政府が4日夜に公表したプレスリリースを読めば真意が分かる。「主要7カ国(G7)首脳会議の準備=メルケル首相、訪独の安倍首相と会談」と題された報道資料で、財政政策には一言も触れなかった。具体的に書き込まれたのは日本と欧州連合(EU)の自由貿易協定(FTA)やテロ対策。肝心の財政は素通りしたのである。共同会見の発言からもゼロ回答がにじみ出た。「大勢の難民がドイツに流入したことで内需が刺激された。さらにFTAで成長を高め、世界経済に貢献する」。行間から読み取れるのは、難民対策やFTAというのがドイツの成長戦略で、新たな景気対策は検討しないというメッセージである。なぜメルケル首相は頭ごなしに財政出動を拒否しなかったのか。理由はいくつかある。ひとつはドイツの政治情勢だ。ドイツは財政黒字だが、難民対策で歳出は膨らんでいる。しかも来秋に連邦議会(下院)選挙を控え、教育など重点政策には予算を厚めに配分せざるを得ない。外から見れば緊縮派でも、実際にはドイツなりに財政拡大しているのである。このタイミングで財政政策を「不要」とは言えない。ふたつ目は日本への配慮。わざわざ訪独し、構造改革にも言及した安倍首相を追い返すようならドイツの度量が疑われる。「大人の対応」で亀裂を目立たなくしたということだろう。メルケル首相は2013年にアベノミクスを公然と批判し、昨年3月は日中韓で争う歴史認識問題に注文をつけた。今回は対立する政策があっても事を荒立てず、無難にやり過ごした。裏返すと真正面から議論し、G7を舞台に財政・経済政策で協調するという発想はない。対日政策の優先順位も低い。英国のEU離脱や難民危機、それに極右の台頭をどう抑え込むかという域内の問題でメルケル首相は手いっぱい。日独首脳会談について地元メディアは小さく報じただけだった。

*3-3:http://qbiz.jp/article/95611/1/
(西日本新聞 2016年10月8日) 低金利の副作用警戒が浮上 IMFC開幕
 国際通貨基金(IMF)の運営方針を決める国際通貨金融委員会(IMFC)が米首都ワシントンで7日午後(日本時間8日午前)に開幕し、世界経済が直面する課題を議論した。6日の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に続く一連の国際会議で、先進国の金融緩和政策の長期化に伴う低金利の副作用への警戒感が急浮上している。資金の運用で利益を十分に上げるのが難しくなり、銀行の経営不安や年金の収益悪化を招く恐れがあるためだ。各国の金融政策頼みは岐路を迎えている。会議に出席した日銀の黒田東彦総裁は7日の記者会見で「金融政策だけではバランスの取れた成長につなげるのは難しい」と述べた。IMFのラガルド専務理事は6日の記者会見で「銀行や保険会社、年金ファンドのビジネスモデルを見ると、ゼロ金利近辺での運用で苦しい事態に陥っている」と述べ、金融政策への過度な依存に警鐘を鳴らした。日米欧は長らく緩和策を継続してきたが、成長率は低迷する。「経済の体温」である物価は上がらず、緩和の限界と低金利の弊害が指摘され始め、6日のG20でも、低金利が銀行や年金基金に及ぼす悪影響の度合いを巡って議論が交わされた。銀行は顧客から集めたお金をより高い金利で運用することで利益を得ており、低金利で利ざやが縮小する弊害を無視できなくなってきた。日本では、年金に収入を依存する高齢者の暮らしを脅かしかねない。IMFCでも、低金利の長期化が世界経済や銀行に与えるリスクを議論。オーストラリアはIMFCに提出した声明で「低金利で金融は脆弱さを増す。過度に金融政策に頼るのは避ける必要がある」と強調した。一方、アルゼンチンは低金利で調達した資金をインフラ投資などに充てれば経済が底上げできると主張。G20やIMFCを契機に、低金利の評価を巡る議論が国際社会で活発になりそうだ。

*3-4:http://qbiz.jp/article/95613/1/
(西日本新聞 2016年10月8日) 生産性上昇で低成長克服を 世界経済で麻生財務相
 麻生太郎財務相は7日夜(日本時間8日午前)、米首都ワシントンで記者会見し、「世界経済には不確実性が存在するが、過度な悲観論に陥ることなく適切に対処することが重要だ」と述べ、低成長克服へ生産性を高める構造改革に取り組む重要性を強調した。ルー米財務長官との会談では「世界経済や為替市場など幅広いテーマについて意見交換した」と説明。財務省同行筋によると、環太平洋連携協定(TPP)の重要性を強調し、臨時国会で成立させると伝えたという。米財務省によると、ルー財務長官も米議会でのTPPの速やかな承認と発効に向けて努力すると強調。麻生氏に対して、輸出増を狙って通貨価値を意図的に引き下げる通貨安競争を回避するとした20カ国・地域(G20)の合意を守ることが重要だと伝えたという。麻生氏は会見で世界貿易の減速に関して「要因をしっかり把握し対処することが大事だ」と指摘した。保護主義の台頭を念頭に「自由貿易の障害を除去する行動が求められる」と語った。米大統領選が世界経済に与える影響については「うかつに言えない」と言及を避けた。同席した黒田東彦日銀総裁は日銀が金融政策の枠組みを変更したことに対する他国の反応を問われ「日銀の政策は以前から十分な理解が得られており、新たな政策枠組みについて特段の意見は聞かれなかった」と述べた。

<年金・介護>
*4-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/368667
(佐賀新聞 2016年10月21日) 無年金64万人を救済、法案、今国会成立へ
 無年金の人を救済するため、年金を受け取るのに必要な加入期間(受給資格期間)を25年から10年に短縮する年金機能強化法改正案は21日、今国会で成立する見通しとなった。同日に衆院厚生労働委員会で審議入りした。野党も賛成の意向のため、早ければ来週にも衆院を通過する。成立すれば、来年10月にも約64万人が新たに年金を受け取れるようになる。一方、支給額の抑制を強化する年金制度改革法案には、民進党が反発を強めており、審議入りのめどが立たない状況が続いている。

*4-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJBP73Z4JBPUTFK01S.html?iref=comtop_favorite_03(朝日新聞 2016年10月21日)年金試算、不適切な計算式を使用 塩崎厚労相が認める
 厚生労働省が年金の試算で不適切な計算方式を使い、現役世代の平均的な収入に対する年金額の割合(所得代替率)が高く算出されるようになっていた。塩崎恭久厚労相が21日の衆院厚労委員会で明らかにした。政府は厚生年金の所得代替率について「50%以上を維持」と公約しているが、将来的に割り込む可能性が高くなった。年金の試算は5年に1度、時々の経済情勢に応じて年金制度を見直す財政検証で行う。厚労省は所得代替率を計算する際に、分母となる現役世代の収入は税や社会保険料を除いた手取りとし、分子の高齢者の年金は税や社会保険料を含めた収入としていた。21日の衆院厚労委では、民進党の長妻昭氏の質問に対し、塩崎氏は年金の試算について「役割を果たしていないこともありうる」と述べ、不十分だと認めた。その上で「次期財政検証に向けて議論する」として、2019年度の財政検証の際に新しい計算方式を検討する考えを示した。会社員の夫と専業主婦の2人のモデルケースでは、13年度の厚生年金の所得代替率は62・6%とされている。厚労省によれば、仮にいずれも手取りで計算すれば53・9%に低下。いずれも税や社会保険料を含めると50・9%になるという。実質賃金が上がり続け、経済成長率が実質0・4%のプラスが続くという前提では、43年度の所得代替率は50・6%と試算されている。厚労省は計算方式を変えた場合の試算を明らかにしていないが、13年度の再計算後の下げ幅から見ると50%を割り込みそうだ。所得代替率は欧米では税や社会保険料を両方含めるか、両方除外して算出するのが一般的だという。安倍晋三首相は1月の衆院本会議で「新たに年金を受給される方の所得代替率は50%が確保されることを確認している」と強調している。
     ◇
〈所得代替率〉 現役世代の平均的な収入に対する年金額の割合。最新の財政検証では、厚生年金に入る会社員と専業主婦の「モデル夫婦」が14年度に65歳になった場合、年金を受け取り始めるときは月21万8千円と試算。現役世代の平均的な収入の62・7%とした。43年度に65歳となる夫婦は50・6%になると見込んでいる。

*4-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161022&ng=DGKKZO08673770S6A021C1EA1000 (日経新聞社説 2016.10.22) 将来を見据えた介護保険の改革いそげ
 介護保険制度の改革議論が難航している。介護が必要な度合いの低い軽度者向けサービスの縮小が焦点だったが、厚生労働省は大きな改革を見送る方向だ。大きな改革は利用者にいたみをもたらす。改革案を議論している厚労省の審議会でも、選挙が近いのではと浮足立つ与党内でも、反対意見が強い。厚労省はそうした声に配慮したようだ。ただ、介護が必要な高齢者は増え続ける。2025年には団塊の世代が、要介護状態になりやすいとされる75歳以上の後期高齢者になる。このままでは莫大な介護費用が必要になりかねない。コストを抑えて持続可能な仕組みを整えるのに残された時間は、実は少ない。その場しのぎではない改革の議論を急ぐべきだ。在宅の要介護者向け訪問介護サービスには、身体介護と生活援助の2種類がある。身体介護は食事や排せつの世話などだ。生活援助は調理や掃除、洗濯などを指す。軽度者はこのうち生活援助を多く利用する傾向がある。生活援助サービスがないと困る人はいるだろう。その一方で「がんばれば自分でできることまでヘルパーにやってもらうので、かえって状態が悪くなっている」といった指摘も絶えない。14年の前回改革では、要介護状態になる手前の要支援者に対するサービスの一部について、介護保険による全国一律の給付から市町村独自のものに切りかえることが決まった。生活援助的なサービスは各自治体の判断でボランティアやNPOなどを活用し、効率化しようとの考えだった。今回の議論でも、軽度者の生活援助サービスについては市町村の独自事業に切りかえる案が出された。しかし「自治体の態勢が整わない」ことなどを理由に見送る方向が、早々と固まりつつある。代わって、生活援助サービスを提供する事業者に支払う報酬を引き下げる案などが浮上している。だが、報酬引き下げだけで増え続ける軽度要介護者に対応していけるのか、疑問だ。自治体へのサービス移管も視野に、さらなる効率化は避けられないのではないか。保険を使わず自費で生活援助サービスを購入しやすい環境も、整えたい。社会保障制度のなかで最も急激に費用が膨らむと予想されているのは介護だ。改革の手をこまねいてはならない。


<中高年人口の増加と需要構造の変化>
PS(2016年10月29日追加):第三次産業(サービス業)が74%と最も大きい日本の需要構造(=供給構造)はどう変わったのかと言えば、*5-2のように、65歳以上の高齢者が住民の半数以上を占める集落が、2015年4月には1万5568に上っている。また、*5-3のように、女性の3割超が65歳以上となり、ネットの活用が60代に広がっており、ネットショッピングを利用した65歳以上の世帯は13.6%となって過去最高を更新し、購入した商品・サービスはパック旅行、食料品、健康食品・サプリメント・贈答品等で、本当かどうかはわからないが64歳以下の世帯より多く支出しているそうだ。これは、現在の65歳以上は高卒以上が多く、職場で普通にパソコンを駆使していた購買意欲の高い層だからだろう。
 一方で、*5-1のように、井筒屋の社長(男性)が、「流行のボタンを押せていないから、消費が振るわない」と述べておられるが、実際は、中高年人口の割合が高い時代に消費の対象を若い女性のみに据え、人口の多い中高年世代を無視しているのが販売が振るわない原因だと考えられる。購買経験を積んだ中高年女性は、流行や面白いだけのものは買わず、質のよいものを選ぶため、本来は百貨店に販売機会が多い筈だが、私の経験でも百貨店の品揃えは細身・小型の若年女性中心で中高年女性の魅力を引き出す衣料品が少なく、あっても野暮ったかったり、少し良いと非常に高い価格設定になっていたりする。そのため、顧客の大半が女性で女性従業員が多い小売やデパートは、女性を馬鹿にせず女性管理職や女性社長を増やして、本物のニーズを発掘するのが良いと思う。なお、中高年者のニーズを察して満たせるためには、接客する従業員にも同世代の経験豊富な人がいた方がよい。

*5-1:http://qbiz.jp/article/96279/1/ (西日本新聞 2016年10月21日) 「流行のボタンを押せていない」 井筒屋・影山英雄社長(10月11日)
 消費が振るわない。しかし、それは、小売り側が需要を喚起できていない表れではないか。そんな流通の「心構え」を示すような一言を、全国の政令市で最も高齢化率(1月1日現在で28・6%)が高い北九州市に本拠を置くデパート、井筒屋のトップが発した。中間期としては8年連続の減収となった井筒屋。主力の衣料品が振るわず、関連商品も含めて前年に比べ8億円の減少と足を引っ張った。高齢化や人口減に歯止めがかからず、地域経済の先行きが見通せない。さらに、ライバルの福岡都市圏は商業集積が進むばかり。そこに、天候不順も重なった。不振の理由を挙げれば、枚挙にいとまがない。そんな厳しい環境下でのことだった。4月下旬〜5月上旬にかけ、小倉井筒屋(北九州市小倉北区)であるイベントを開いたところ、商品が飛ぶように売れ、完売も相次いだという。その商品とは、マスキングテープ。スマートフォンのケースに独自のデザインをあしらうなど、若い女性に人気のアイテムだ。売れ筋の単価は1個200〜300円と安いながらも、1カ月にも満たない期間中の売り上げは2千万円に上った。10月11日。2016年8月中間決算の記者会見に臨んだ影山英雄社長は、こう語った。「面白いものには人が来てくれる。(われわれは)まだ流行のボタンを押せていないということ」。期待か、自省か。潜在需要を感じさせつつ、それを引き出せていない地場デパートトップの重みのある一言だった。井筒屋が今後、どんな流行のボタンを押すのか。「百貨店といえば衣料品」という従来の枠から脱した発想が必要かもしれない。

*5-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/358375
(佐賀新聞 2016年9月21日) 高齢者半数の集落1万5千、15年、5年で1・5倍
 65歳以上の高齢者が住民の半数以上を占める過疎地域の集落は、2015年4月時点で1万5568に上ることが21日、国土交通、総務両省の調査で分かった。10年度の前回調査から約5千の増加。調査対象の集落全体に占める割合も15・5%から20・6%に上昇した。過疎地域の高齢化が進行し、共同体の維持が困難な「限界集落」とも呼ばれる集落が増えている実態が浮き彫りになった。調査は、過疎法の指定地域などがある1028市町村にアンケートを実施。調査対象の集落は7万5662で、今回から離島なども加わったため前回(6万4954)から大幅に増えた。

*5-3:http://qbiz.jp/article/94318/1/
(西日本新聞 2016年9月19日) 女性の3割、65歳以上に 敬老の日、総務省推計
 敬老の日を前に総務省が18日発表した人口推計によると、女性の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が9月15日時点で30・1%となり、初めて3割を超えた。男性は24・3%。男女を合わせると前年から0・6ポイント増の27・3%だった。65歳以上人口は73万人増の3461万人で、割合、人数とも過去最高を更新した。女性の総人口に占める65歳以上の割合は2001年に20%を上回り、09年に25%を超えた。今年の65歳以上人口は、女性が前年より38万人増えて1962万人、男性は35万人増の1499万人だった。後期高齢者医療制度の対象となる75歳以上は1697万人で総人口の13・4%。女性が1037万人、男性は660万人だった。推計は、15年国勢調査の人口速報集計を基に、その後の出生・死亡者数から算出した。日本の高齢者の割合は欧米主要6カ国との比較でも最も高く、22・7%のイタリア、21・4%のドイツを上回った。1995年以降の伸び幅も日本は12・7ポイントに達した。イタリアの6・2ポイント、ドイツの6・0ポイントを大きく引き離しており、日本の高齢化が急速に進んでいることを改めて示した。また労働力調査によると、15年に職に就いていた高齢者は730万人と12年連続で増え、過去最多を更新した。約半数の360万人が企業などに雇用されていて、このうち74・2%に当たる267万人がアルバイトやパートといった非正規雇用だった。就業率は21・7%で、米国18・2%、カナダ12・8%を上回るなど、欧米6カ国より高かった。男女別では男性が30・3%、女性が15・0%だった。
   ◇   ◇
●ネットの活用 60代に広がり
 総務省の家計調査によると、世帯主が60〜69歳の2人以上世帯が、2015年にインターネット接続料として使った金額は年間で約2万5千円だった。5年前より約5千円多く、29歳以下の世帯と肩を並べた。ネット普及の世代格差が縮小していることがうかがえる。またネットを旅行予約や食品購入などに活用していることも分かった。家計消費状況調査では、ネットショッピングを利用した65歳以上の世帯(単身を除く)も15年に13・6%となって過去最高を更新。05年の3・8%から大きく伸びている。ネットで購入した商品・サービスのうち、パック旅行などに使った金額の割合が最も高く、全体の22・5%。次いで食料品の16・4%だった。健康食品やサプリメント、贈答品も、64歳以下の世帯より支出した金額の割合が高かった。総務省の担当者は「レンタカーやホテルの予約など、レジャーの手配にネットを活用している実態がうかがえる」と説明している。


PS(2016年10月29日追加):*6のように、ドイツのメルケル首相がフクシマの惨状を目にして脱原発に転換したのも、安価でクリーンなエネルギーを開発・普及するための英断だと私は考えるが、それに対して日本人が、「なぜそんなに福島の事故を恐れるの?」と問うのは、無知で恥ずかしすぎる。何故、それに気がつかないのだろう?

*6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016102902000192.html (東京新聞 2016年10月29日) 【社説】ドイツの大転換 民意こそエンジンだ
 ドイツでは電力消費量の三割をすでに、再生可能エネルギーで賄っている。シュタインマイヤー外相の手記は訴えてくるようだ。「エネルギー大転換」のクリーンなエンジンは「民意」であると。3・11の年。ちょうどハロウィーンのころにドイツを取材した。「原発はいらない」と書かれた黄色い旗が、カボチャの飾りとともに目についた。フライブルクやミュンヘンの街頭で手当たり次第に聞いてみた。「なぜこんなに、福島の事故を恐れるの?」。異口同音に問い返された。「福島は日本じゃないの?」。ドイツの反核、反原発の歴史は深い。東西冷戦の最前線で核ミサイルを目の前に突きつけられた恐怖は、国民的トラウマ(心的外傷)と言っていい。そして一九八六年のチェルノブイリ原発事故。千二百キロ離れたドイツにも放射能が降り注ぎ、食卓から牛乳やキノコが消えた。「母親が沈み込んでいた。あんなの、もうたくさんだ」とミュンヘンの青年が吐き捨てるように言った。ドイツは原発事故の当事者にはなっていない。だが、ドイツ市民には原発事故の当事者という自覚が強い。二〇〇〇年にはすでに、時のシュレーダー政権が脱原発の方針を打ち出していた。3・11の前年、メルケル首相は運転寿命延長による原発の再浮上を図ったが、フクシマの惨状を目にして急転換。原子力の専門家以外で構成する倫理委員会の意見を優先させて、二二年までに全原発の段階的廃止を決めた。メルケル首相が恐れたのは、チェルノブイリやフクシマの再来を正しく恐れる民意である。一方、欧州では、日本とは段違いに温暖化への危機感が強い。昨年末のパリ協定は、石油、石炭など化石燃料の時代の終わりを予言した。とはいえ原発はそれ以上に恐ろしい。生命が大切ならば、再生可能エネなのである。環境や倫理だけではない。福島や温暖化への危機感をバネにした再生可能エネへの大転換には、やがてそれが巨大な世界市場を形成するとの読みもある。だから大手電力を含む経済界も、連邦政府の方針を受け入れざるを得ないのだ。「国民の八割以上が再生可能エネルギーの拡大に賛同しています」。シュタインマイヤー外相の手記の行間、浮かんできたのはやはり、あの言葉。「福島は日本じゃないの?」


PS2016年10月31日追加):*7-1のように、高島と池島で若者がハッサクやヤギを利用しているそうだ。離島は、海・田畑・山が近くにあり、海も本土とは比べ物にならないくらい美しいため、シチリア島のようにハッサクをレモン・オリーブ・アーモンド・ブドウに変えたり、山羊を羊・牛に変えたり、カレイだけでなくウニ・アワビも養殖したりすれば、稼げる事業を行うことができる。現在は、*5-2のように、日本全体では高齢者が半数以上を占める集落が1万5千もあり、若者が住み着いて何かを始めるのに協力する人も多い。また、デザイン・染色・絵画・音楽なども、美しい日本の風景を写し取った方が、都会のコンクリートの中で醜いアニメに興じているよりも世界の人々に訴えられる作品を作り出すことができ、自己実現する方が仮装して初めて自己表現できる状況にいるよりもずっと面白いだろう。
 そこで、*7-2のハロウィンだが、発祥地の外国ではかわいい子どもの祭りであるにもかかわらず、日本では成人が醜いおばけ姿の仮装大会に興じている(同じことはディズ二ーランドでも起こっている)。これは、普段、一人の大人として発言することのできない人が、仮装して初めて何かに反抗して自分を出したつもりになっている幼稚さとこれまで触れてきたものの貧しさによる美意識の退化に見える。

 
  佐賀県馬渡島    春の北アルプス         渋谷でのハロウィン仮装姿

*7-1:http://qbiz.jp/article/97053/1/ (西日本新聞 2016年10月31日) 閉山の島再生、若者が一歩 長崎 懸命の荒れ地対策
 世界文化遺産の高島炭坑がある高島(長崎市)と九州最後の炭鉱があった池島(同)で、急速な人口減少のため荒れ地が増えている状況を打開しようと、魚や動物を活用した取り組みが始まった。雑草刈りや間伐の人手が不足する中、知恵を絞り出したのは30歳前後の若手たち。「何とか島の荒廃に歯止めをかけたい」と力を込める。
●高島…未利用のハッサク餌に
 1986年に閉山した高島は、68年のピーク時に約1万8千人が暮らしていたが、現在は384人(今年9月末)。閉山後、当時の高島町が地域振興策として「島民や観光客が収穫できる果樹を植えよう」と炭鉱住宅跡など広範囲にハッサクを植えた。だが、過疎化がさらに進んで通路などに草木が生い茂り、多くのハッサクが収穫も管理もされていなかった。市と漁協が出資する長崎高島水産センターに昨春入社した永田晋作さん(27)は高島出身。幼少期に親がハッサクを取って食べていたことを思い出し、昨秋から伐採を兼ねて収穫した。果汁を飼料に混ぜて養殖ヒラメに与え続けると、臭みが消え、ハッサクの香りが付いたため、今月17日から一般に売り出した。「収穫するためには間伐が必要で、結果的に荒れ地対策になる。『はっさくヒラメ』がヒットし、島民や観光客に草刈りをしようという機運も高まってほしい」と生まれ育った島への思いを強くする。
●池島…ヤギ飼い除草に一役
 池島炭鉱は2001年11月に閉山した。1970年に約7700人だった島の人口は、今年9月で159人に。こちらも除草作業が追いつかず、荒れ地の拡大やイノシシの繁殖が懸念された。そこで有志が同7月、ヤギ2匹を飼い始めた。発案したのは、池島を含めた長崎市外海地区の地域おこしに関わる嶋田純人さん(37)。島民が小屋などを準備し、生い茂る雑草を食べさせたところ、少しずつ減っているという。嶋田さんは東京都出身。都の職員だった昨年夏に旅行で訪れ、人の良い土地柄を気に入った半面、地方の厳しい現実を知った。「地方に支えられて都市がある。行政サービスに携わってきた者として助けたい」と昨年秋に移住してきた。島では道路や建物の老朽化など課題も多い。それでも「ヤギは餌代がかからないし、島民や観光客の癒やしの存在にもなっている」と前を向く。2匹の名前は「けん」と「めい」。島民らの「懸命」な思いを込めた。

*7-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJBV72XMJBVUTIL049.html
(朝日新聞 2016年10月28日) ハロウィーン、渋谷厳戒 初のホコ天・更衣室設置…
 ハロウィーンの「本番」10月31日が近づいてきた。今年はイベントが開かれる期間が4日間と長く、この間のイベントは、最も盛り上がる東京・渋谷だけで100件近くある。一方で、ゴミやトイレ、騒乱など年々、規模とともに問題も増えており、地元や警視庁は厳戒態勢。今年初めて渋谷駅近くを歩行者天国にし、混乱を防ぐ。
■4日で催し100件
 31日は月曜日にあたるため、ハロウィーン関連のイベントは前の週の金曜日から予定されている。
 渋谷区の担当者は「人がいつ集まるか読めない」と嘆く。区は28日から11月1日まで、仮装のための更衣室や仮設トイレを渋谷駅周辺に設け、案内などのため、駅周辺に職員やボランティアを計120人置く。特に、トイレは深刻だ。昨年の10月31日前後、区には「トイレに入れない」「街中で尿のにおいがする」といった苦情が相次いだ。百貨店などのトイレで若者が仮装するために着替えたり、メイクしたりしたため、買い物客がトイレを使えなくなったからだ。外で用を足す人もおり、繁華街一帯では異臭が漂ったという。区は今年、渋谷駅周辺の3カ所に仮設トイレを置き、ゴミ集積所も増やす。さらに人だかりを分散させようと、区観光協会は駅から少し離れた代々木公園で31日、イベントを開く。参加者が放置するゴミも難題だ。区と地元商店街などは11月1日の朝に、約500人で繁華街のゴミ拾いをする。区によると、昨年のハロウィーンに関連する一般ゴミの収集量は2・3トンにのぼった。
■DJポリス出動
 多くの人出を見込む警視庁は28~31日の4日間、混雑に応じて渋谷駅近くの車道を開放し、歩行者天国にする。ハロウィーンの警備で車の通行を制限するのは初めてだ。大勢の若者が歩道からあふれ、事故につながることを防ぐためで、仮装した人が集まり始める午後7時以降を想定している。歩行者天国は、駅前のスクランブル交差点の先からファッションビル「SHIBUYA109」をはさんだ文化村通りの約300メートルと、道玄坂の約250メートル。交差点と地下鉄の出入り口は規制しない。駅周辺の3カ所で検問も行う。不審な車の侵入や暴走行為を阻止するためだ。渋谷署員に加え、機動隊の爆発物処理班や銃器対策部隊も出てテロを警戒。現場の警察官は頭に小型カメラをつけ、映像を警視庁本部に送る。英語、中国語、韓国語に自動翻訳できる拡声機を使い、集まった人が転ばないように誘導する。車上からマイクで呼びかける「DJポリス」も出動する。昨年の10月31日は土曜日で、夜に数千人が渋谷駅周辺に殺到し、警視庁は交差点周辺を数百人態勢で警備した。痴漢のほか、機動隊員に殴りかかったり、商店街のガラスを割ったりした容疑で計3人が現行犯逮捕された。警視庁は今年も最大で数百人規模を動員し、土曜、日曜にあたる29、30日の夕方以降を中心に警戒を強める。鎌谷陽之警備1課長は「集まる人数が予測しにくく、チャレンジングな警備になる」と話す。(池田良、小林太一)
     ◇
〈日本でのハロウィーン〉 ハロウィーンは古代ヨーロッパのケルト民族の収穫祭が起源。米国では10月31日、仮装した子どもたちが「トリック・オア・トリート」と菓子をもらいにまわる習慣が文化となった。日本では2010年ごろから、仮装して「非日常」を楽しむ意味合いで人気が高まった。「日本記念日協会」によると、今年のハロウィーンの推計市場規模は前年比約10%増の約1345億円。バレンタインの約1340億円を初めて上回るとみられる。マーケティング会社「マクロミル」が首都圏の10~40代の1千人を対象に調査したところ、「仮装する」は28%。「仮装してお出かけする街」では渋谷が40%、2位の六本木は17%だった。


PS(2016年11月1日追加):主権者が政治を理解せず幼稚でいるのは、自分の利益のために政治を利用しようとする人にとっては願ってもないことで、例えば介護される立場になりながら現役並みに所得の高い高齢者はいないにもかかわらず、*8-1のようなヒューマニズムと根拠に欠けた政策を提案する人もいる。なお、介護される人が配偶者であったとしても、介護されるようになれば家事負担が困難になるため世帯が困窮するのは同じだ。そのような中、*8-2のように、「コストが安くて安全だ」と主張してきた原発が起こした事故の損害賠償や除染費用の超過分を国費で負担するよう、電気事業連合会の元気な人たちが政府に要望しているのは、税金の使い方の優先順位に関する認識が間違っているだろう。これまで、大手電力会社は総括原価方式で優遇されて莫大な資産を形成してきているので、電力自由化に向け送電会社を作って株式を上場するなど、独自の資金調達方法やビジネスがいくらでもあり、そんなことも自分で考えつかないようでは社会貢献できる企業にはなれない。

*8-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016103101002294.html
(東京新聞 2016年11月1日) 介護保険、3割負担案が浮上 高所得の高齢者対象に
 介護保険制度の見直しで、現役並みに所得の高い高齢者を対象に、サービス利用時の自己負担を3割に引き上げる案が政府内で浮上していることが31日、分かった。増え続ける介護給付費の抑制が目的。実施する場合、来年の通常国会に提出予定の介護保険法改正案に盛り込むことになる。ただ、介護保険の自己負担は制度スタートから一律1割で、昨年8月から一定以上の所得(単身で年金収入だけの場合年収280万円以上)がある人を対象に2割にしたばかり。浮上しているのは、2割負担の人の一部をさらに引き上げる内容。高齢者からの反発は必至で、調整は難航しそうだ。

*8-2:http://mainichi.jp/articles/20161004/k00/00e/020/174000c (毎日新聞 2016年10月4日) 福島原発、8兆円負担増 電事連、国費求める
 電力業界団体の電気事業連合会(電事連)が、東京電力福島第1原発事故の損害賠償・除染費用について、東電を含む大手電力各社の負担額が当初計画を約8兆円上回るとの試算をまとめ、超過分を国費で負担するよう政府に非公式に要望していることが4日明らかになった。政府はこれまで「賠償・除染費用は原則的に原発事業者の負担」との立場を取ってきており、慎重に検討するとみられる。福島第1原発事故の賠償・除染費用は、(1)国がいつでも現金に換えられる「交付国債」を原子力損害賠償・廃炉等支援機構(国の認可法人)に渡す(2)東電は機構から必要な資金の交付を受け、賠償・除染に充てる(3)機構は後に東電を含む大手電力から負担金を受け取り、国に返済する−−という仕組み。賠償分は東電と他の大手電力が分担▽除染費用は機構が持つ東電株の売却益を充当▽中間貯蔵施設の費用は電源開発促進税で賄うことになっている。政府は2013年、賠償費用5.4兆円▽除染費用2.5兆円▽中間貯蔵施設の建設費などを1.1兆円と見込み、機構への資金交付の上限を9兆円とした。だが、関係者によると、電事連は、賠償費用が見通しより2.6兆円増の8兆円、除染費用が4.5兆円増の7兆円になると試算。また、東電株売却益も株価下落で1兆円減少し、合計で8.1兆円の資金が不足すると見積もっている。大手電力各社は「除染費用は東電株の売却益で賄えず、最終的に電力各社が負担を迫られる」とみている。一方、原発再稼働の停滞や、電力小売り自由化による競争激化などから大手電力の経営環境が悪化したとして、賠償・除染費用の超過分の政府負担を求めた。福島第1原発の廃炉費用を巡っては、東電が2兆円を工面しているが、数兆円規模の財源不足も予想される。東電ホールディングスは7月、廃炉費用などの負担支援を政府に求めている。今回の電事連の要望に廃炉費用は含まれていない。政府は福島第1原発の賠償や廃炉費用の負担について、5日から始める「東京電力改革・1F問題委員会」などで議論することにしており、電事連の要望も今後協議される可能性がある。
●解説 事故つけ回し「無責任」
 電気事業連合会が東電福島第1原発事故の賠償・除染費用の超過分を国に負担するよう要望した。だが、大手電力各社はこれまで「原発のコストは安い」と説明してきた。事故のつけを国に求める姿勢は、「無責任」との批判が免れない。電力各社には「原発は『国策民営』で推進されてきたのに、事故が起きたときは事業者が責任を取らされる」との不満がある。東電以外の大手には「東電の事故の責任を負わされるのは理不尽」との思いもある。だが、大手電力は原発稼働で巨額の利益を上げてきた。原発の「安全神話」に寄りかかり、事故対策を怠ってきた面は否定できない。福島第1原発事故に伴う賠償・除染費用が膨大な額に達する見通しになったからといって、国に負担を押しつけるのは筋が通らない。国が負担を引き受ければ、最終的に税金が投入され、国民負担につながる。福島第1原発事故の処理費用は、国が原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じていったん立て替えるが、最終的に電力各社が負担する仕組みだ。この制度の趣旨にも大きく反する。


PS(2016.11.2追加):*9-1に書かれているように、日銀は金融政策決定会合で、物価上昇率2%の目標達成時期の見通しを「2018年度頃」に先送りし、黒田総裁は、2013年4月に始めた大規模な金融緩和で2%の物価上昇目標(生鮮食品を除く)を達成することを目指したが断念し、達成できなかった原因を「①消費増税後の景気低迷」「②原油安」「③新興国経済の減速」といった環境変化によるものとした。しかし、②は原油高でコストプッシュインフレーションが起き、国民資産が海外に多く流出して国民生活が困窮しても物価さえ上昇すればよいという逆の発想であるし、①は消費税率に影響されない(結果として売り手が消費税を負担する)生鮮食品を除けば、消費増税後に物価が上がり、それに伴って需要が減るのは当然のことだ。また、③は景気を下支えしていた中国の金融緩和が出口に向かったため支えが弱くなったということで、文句を言いながらの中国頼みだったのだ。
 一方、物価上昇・年金削減・介護負担増などで消費者の可処分所得を減らし、原発再稼働のために電力自由化という大改革を骨抜きにして自然エネルギーが普及するのを妨げたことは、エネルギー改革や民間投資による技術進歩と生産性向上を阻害した。そのかわりに、投資1円当たりの生産性向上が低い公共投資を増やしたため、全体の生産性は上がらなかったのである。つまり、国民には、気分でモノを買えるような人が少なくなっているので、需要増による物価上昇がなかったのは当然だったのである。
 なお、*9-2の日銀法第二条に定められているように、本来、日本銀行は物価の安定を通じて国民経済を健全に発展させることを理念としている。しかし、その日銀が物価上昇(インフレ)目標を持って金融緩和を続けたことにより、実質資産や実質収入が減り、国民は将来にも不安を感じたので、消費を増やすどころか節約してできるだけ貯蓄せざるを得なかったのだ。そして、これは経済学の原則どおりであるため、やってみなくてもわかることだった。


実質家計収入と消費支出 2015.6.12日経新聞 2016.11.2日経新聞 2016.10.20東京新聞  

*9-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12638027.html
(朝日新聞 2016年11月2日) 物価2%目標、任期中断念 黒田日銀「18年度ごろ」
 日本銀行は1日の金融政策決定会合で、物価上昇率2%の目標達成時期の見通しを「2017年度中」から「18年度ごろ」に先送りした。黒田東彦総裁は13年4月に始めた大規模な金融緩和で、2%の2年程度での達成を目指したが、18年4月までとなる任期中の達成を事実上断念することになった。物価目標の達成時期の先送りは今年3度目で、大規模緩和開始からは5度目となる。日銀は会合で、3カ月に1度まとめる「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の物価上昇率(生鮮食品を除く)の見通しを下方修正した。16年度平均は7月時点の見通しのプラス0・1%からマイナス0・1%に、17年度は1・7%から1・5%に、18年度は1・9%から1・7%にそれぞれ引き下げた。黒田総裁は記者会見で、目標を達成できなかったことは「残念ではある」とし、任期中に達成できない責任は「物価がどうなるかということと私自身の任期に特別な関係はない」と言及を避けた。日銀は13年に政府と2%の早期達成を約束したとして、「早期実現に適切な政策を決定し実行することに尽きる」とし、任期中に達成できなくても、日銀として目標実現を目指す必要性を強調した。日銀は9月の会合で、物価目標が達成できなかった原因は、消費増税後の景気低迷や原油安、新興国経済の減速だったと検証し、政策の重点を、市場に流すお金の量の拡大から長期金利の操作に切り替えた。黒田総裁は会見で、目標が達成できなかった理由は「検証に詳しく書いている」と繰り返し、「世界共通の事象が影響している。欧米の中央銀行の予測も後ずれしている」と主張した。また、追加の金融緩和は見送った。黒田総裁は「企業や家計の両部門で、所得から支出への前向きなメカニズムは維持されている」と説明した。
<解説>異次元緩和の「敗北宣言」
 日本銀行が「2%インフレ目標」を黒田総裁の5年間の任期中には達成できない、と初めて認めた。事実上、異次元緩和の「敗北宣言」に等しい。2年間で2%の目標を達成し、デフレから脱却する――。黒田総裁は3年半前、そう高らかに宣言して登場し、アベノミクスの第1の矢を担った。「今後は物価が上がる」というインフレ期待を生めば、早めに投資や消費をしようとする動きが広がって経済が活性化し、賃金も上がるというシナリオを描いた。しかし現実はそうはならなかった。最近は物価上昇率はマイナスが続き、経済成長率も低水準にとどまる。相変わらず消費はさえず、賃上げも期待通りには広がっていない。日銀は物価が上がらない原因を、(1)原油価格の下落(2)新興国経済の不調(3)消費増税の影響といった環境変化によるものとしてきた。とはいえ、5年間でも無理だとしたら、もはや環境を理由にはできないのではないか。政策手法に問題があるか、目標自体が間違っていると考えるべきだ。黒田総裁は記者会見で、今の政策を続ければ今後物価は上がると主張した。緩和策を支持する安倍晋三首相に配慮せざるをえない事情もあるのだろう。日銀の金融緩和の規模はケタ外れだ。市場への資金投入量は国内総生産(GDP)比で8割に達し、2割ほどにとどめている米欧をはるかに上回る。将来、緩和を縮小する「出口」では、金利の急上昇などの副作用が予想され、日銀はそうしたショックにも備えなければならない。黒田総裁は目標を任期中に達成できず、政策の正常化は「ポスト黒田」も視野に入れた、日本経済の長期的な課題となっている。

*9-2:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09HO089.html 日本銀行法
(平成九年六月十八日法律第八十九号、最終改正:平成二三年六月二四日法律第七四号)
第一章 総則
(目的)
第一条  日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。
2  日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。
(通貨及び金融の調節の理念)
第二条  日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。
(日本銀行の自主性の尊重及び透明性の確保)
第三条  日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。
2  日本銀行は、通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容及び過程を国民に明らかにするよう努めなければならない。
(政府との関係)
第四条  日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。
(業務の公共性及びその運営の自主性)
第五条  日本銀行は、その業務及び財産の公共性にかんがみ、適正かつ効率的に業務を運営するよう努めなければならない。
2  この法律の運用に当たっては、日本銀行の業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない。  (以下略)

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