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2018.4.22 データは、集め方、解釈、使い方が重要で、そのためには、その分野に関する総合的な知識が必要なのである ← しかし、みんなで考えれば、よい解決策も出るだろう (2018年4月23、25日に追加あり)
   
  名目と購買力平価によるGDP      欧州・中国・日本の電源構成
                       2018.4.17、14東京新聞   

(図の説明:日本は物価水準が高いため、名目GDPでは中国との差が小さいが、購買力平価換算では中国との差が大きい。また、日本は、最も自国に有利で環境にも良いエネルギーである再生可能エネルギーの採用を進めず、電源構成に占める再エネ割合はヨーロッパだけでなく中国よりも小さい上、今後の普及計画も見劣りする)

   
 アジアの再エネ  世界の再エネ  日本のレアアース      原発再稼働への
  導入ペース   普及と電力価格               九州電力の執念 
  2018.4.19   2018.4.15    2018.4.19        2018.4.21
  日経新聞     東京新聞    西日本新聞        西日本新聞

(図の説明:世界は、再エネの普及時代に入り、それに伴って電力価格が下がっている。また、アジアの再エネ普及は他地域を上回っている。日本は、南鳥島付近の海底にレアアースが大量に存在することがわかり、21世紀の電源構成を邪魔する者は、現在は既得権益者しかいない)

(1)経済発展には総合的知識に基づいた計画性が必要であること
1)中国の出資規制緩和について
 中国は、1992年10月の14回党大会以降、市場経済に基づく社会主義(社会主義市場経済)と世界経済への参入に進路を明確化し、*1-1、*1-2のように、外資系企業が中国へ進出する際には、中国企業(もしくは個人)と合弁させ、外国資本の出資割合は50%以下しか認めなかった。これは、中国が市場を開放するにあたって自国の産業を育成するためで、技術を吸い尽くしていらなくなった外資は、追い出すこともできるようにした。私は、この頃、中国に進出する日本企業のケアをするために中国の外資規制を調査して、その巧みさに感心して唸った。
 
 その中国政府は、2018年4月17日、乗用車分野への外国企業の出資規制を、2018年中にEVなどの新エネルギー車、2020年にトラックやバスなどの商用車、2022年に乗用車で撤廃すると発表した。しかし、今や中国の新エネルギー車は国際競争力を持っており、新エネルギー車で出遅れた日本や米国の自動車メーカーにとっては、特に事業拡大の機会にはならないだろう。日本の経産省は、馬鹿の一つ覚えのように自由貿易のみを提唱しているが、1980年代と同様、日本の自動車産業の方が進んでいると考えている点が思考停止で甘い。

 しかし、中国政府は、2018年末までに造船・航空機の外資規制も撤廃するそうで、これらはまだ世界中でガソリン・エンジンを使っているため、日本が新エネルギー製品を投入すればリードできそうだが、日本の経産省は現状維持に汲々としており、環境でリードしようという先進的な意気込みがない。 
 
2)再エネに関する日本の遅れ
 また、中国では、*1-3のように、政府が2007年に再エネ拡大計画を立てて再エネが急速に増え、2017年の発電に占める再エネ割合は約33%となり、2050年には再エネを中心にするそうだ。また、世界1位、2位の企業を含めて200社以上の太陽光発電機器メーカーが激しく競い合い、値下げ競争をしているため、太陽光電力の価格が下がっているとのことである。

 さらに、日本の東電福島第一原発事故を受けて中国政府が原発の建設計画を大幅に見直し、2013年以降、原発の新規建設計画を承認しておらず、2050年には大半の電気を再エネで賄い、EVも再エネで動くことになるそうで、これは、私が、1995年前後に、日本で(もちろん世界でも)最初に提唱し、馬鹿者どもの逆噴射でつぶされたことだった。

 また、再エネは、*1-4のように、アジアでも急伸し、世界全体の伸び率の5割を大きく上回って5年で倍増しており、それを牽引しているのは中国とインドとのことだ。また、アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアなどでは、100万キロワット以上のギガソーラーが相次いで建設されており、エネルギーの脱炭素化と脱原発は進むであろう。

 しかし、日本では、*1-5のように、25年経ってもまだ「再エネを主力電源にするには技術上の課題がある」などとしているが、競争力はやっている人につき、やらない人にはつかないので、最初から見極めることなどできない。そもそも、20~25年もの間、「再エネは自然条件による変動の大きい」などとして解決策を講じず、それを解決しないのも論外である。

 さらに、日本の場合は、*1-9のように、大手電力会社が自らの経営のために原発再稼働を望み、まだ原子力か火力で発電することしか考えず、*1-6のように、「送電線に空き容量がない」として再エネ電力の送電を拒んで、新規参入してきた再エネ事業者を破たんさせてきた。このシステムは、日本で起業が少なく、*1-8のようにイノベーションが進まない理由の一つである。

3)レアアース
 希少金属のレアアース等は、自動車産業、電子産業を始めとして広い分野で使われ、現在の先端技術に不可欠な資源だが、その殆どは中国で産出されている。そして、経産省は「資源は輸入するもの」という頭を切り替えられず、日本の先端産業は中国の意図次第で左右されるようになっている。

 そのような中、*1-7のように、海洋研究開発機構や東大のチームが、日本の排他的経済水域内の南鳥島沖にレアアース等が1600万トン超埋蔵されているとの推計を発表した。国としてやればすぐできるのに、相変わらず「現時点で利用できる見通しは立っていない」「今後10年で採掘技術を開発する」など、国の真剣さがないわけだ。

4)化粧品の「爆買い」と品切れ
 このようにぼけっとしていながら、*1-10のように、中国人客が「爆買い」して中国で転売されるとして、ブランドイメージ低下を懸念して、日本の化粧品メーカーが顧客に購入個数の制限を求めたそうだ。

 しかし、同じアジア人であるため、化粧品に望まれることが近く、今は売れるのが当たり前の時で、これは有難いことであって、今のうちに中国に販売ルートを作って必要な特許を取り、ブランドイメージを打ち立てなければならないにもかかわらず、「アルバイトを使って買い占めた」「化粧品の爆買い」などと客を馬鹿にしたり、購入禁止にしたりしている。そんな態度では、それに近いものが中国で安く生産され、日本人もそちらを買うようになるだろう。
 
 つまり、日本人は、日本人を持ち上げるために、中国などの中進国や後進国の人を馬鹿にすることが多いが、実際には、日本は、1980年代から30年に渡って進んでいないことに、謙虚に気付くべきである。

(2)教育研究の重要性
1)研究とイノベーション
 全米科学財団(NSF)がこのほどまとめた報告書で、*2-1のように、科学技術の論文数で中国が米国を上回り世界1位となったそうだ。2016年に発表された論文数は、中国が約43万本で約41万本の米国を抜き、3位以下は、インド、ドイツ、英国で、日本は6位だった。

 研究はイノベーションに直結するため、研究者の質と量の確保が重要なのだが、日本だけ研究論文数が13%減っているのである。これは、「勉強だけできても」などと無意味な比較をしたり、理数系教育を疎かにしたり、研究者をポスドクにして冷遇したりしたせいで、*2-2のように、過度に不正を言い立てて研究者の地位を魅力ないものにしたことも一因だろう。

2)個人情報の利用はどこまで認められるか
 日経新聞は、*2-4のように、「データの世紀だ」「データは情報資源だ」「データを集めろ」「データは新たな石油だ」などと言っているが、データは、①誰が ②何の目的で ③どういう集め方をして ④どのように比較したりトレースしたりして結果を出すか についてきちんと計画していなければ、ただのゴミだったり、個人情報の不正利用になったり、監視社会を作ったりする。私は、誰かが失敗するまで、それがわからないのを不思議に思う。

 そして、*2-5のように、8700万人の会員情報を不正流出させた米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者は、米議会上院の公聴会で証言して全面的に謝罪したが、利用者の個人情報を利用して利益を得る組織はフェイスブックだけではない。また、*2-6のように、利用者の個人情報を悪用するのもIT関連企業だけではなく、コンピューターウイルスの作成者でさえ野放しになっている現在、悪用の防止は不可能である。

 そのため、欧州では2018年5月に、企業などに個人情報の厳格な扱いを義務づける「一般データ保護規則」が施行されるそうで、日本も、欧州や米国などの先進国並みに個人情報保護を重視すべきだ。

(3)データ分析と研究
 日立製作所・ヤマトホールディングスなどの大手企業9社が、*3-1のように、データ分析の専門家「データサイエンティスト」の育成に乗り出し、そのデータサイエンティストには統計学に加え、データを取捨選択して問題解決につなげる能力も求めるそうだ。

 しかし、問題解決は、その分野の十分な知識がなければできないため、それぞれの分野(例えば、医学・薬学・マーケティングなど)の人がデータ分析の知識を持つべきなのであり、“データ分析のプロ”が問題解決をできるわけがない。また、“統計学を専門に教える大学”で、統計学しか勉強しなかった人が、どういう問題なら解決できるのか疑問だ。

 さらに、*3-2のように、日本の科学研究の実力が急速に低下しているのは、科学者や研究者を大切に育成しなかったことが原因である。そして、政府支出を評価する「独立財政機関」を設置しても、そこが正しい評価をできなければ、天下り先として政府支出がさらに増えるだけで、「政府研究開発投資はGDP比の1%にすることを目指す」というような支出金額の目標しか立てられないのであれば、単なる無駄遣いになるだろう。

 それでは、何故、そのようなお粗末な結果になってしまっているのかと言えば、*3-3の「全国学力テストの小6と中3で、これまで国語と算数・数学しかテストしていなかったが、3年ぶりに理科を加えて3教科で実施する」というように、近年、勉強することをないがしろにしているからである。

 そう言う理由は、上に書いたように、イノベーションのもとになる研究があっても、経営者・官僚・政治家・メディア・国民などがその価値を認めて前に進める態勢をとらなければ、イノベーションの種を殺してしまうからで、そのためには、文系・理系を問わず、必要な知識を持っておくことが必要不可欠だからである。

(4)データの読み方


  平均寿命の推移    医師数/人口1000人     GDPの推移  家電普及率推移

(図の説明:日本人の平均寿命は、1950年には男58.0歳、女61.5歳だったが、1965年まで急激に上昇し、その後2010年までは少し緩やかなカーブで上昇している。そして、2011年の東日本大震災で短縮したが、その後、さらに緩やかなカーブで上昇し始め、90歳~100歳の間で収束するように見える。1965年までの急激な上昇は、栄養状態・衛生状態の改善により乳児死亡率(0歳で死亡するため平均値を下げる)が減ったためだと言われている。その後、1965~2010年のカーブは少し緩やかになって漸増している。この平均寿命のカーブは、人口1000人当たりの医師数のカーブより、人口一人当たりのGDPのカーブや洗濯機・冷蔵庫などの家電普及率のカーブに似ている。そのため、長寿には、まず十分でバランスの良い栄養による体力づくりや清潔さが必要で、それでも病気になった場合に医師が関与して治癒させることが大切だということがわかる。なお、2011年の東日本大震災を境に寿命の伸びが緩やかになり、これを生活習慣病が原因だとする人もいるが、生活習慣病だけが原因なら1990年頃から寿命の伸びが緩やかになってよかった筈だと思うので、死亡原因別の死亡率推移も比較すべきだ)

1)県毎の平均寿命・健康寿命の比較
 2015年の都道府県別平均寿命は、滋賀県が長野県を抜き、男性が全国1位、女性が4位となって、長野県は30年ぶりに男性トップを奪われたそうだ。*4-1のように、どちらも健康を重視していることには変わりないが、県ごとに原因追及を行って対策を講じるのはよいことだ。

 また、*4-2のように、男女を合わせた平均寿命を1990年と2015年で比べると、都道府県の格差は広がっており、2015年トップの滋賀県(84.7歳)と最下位の青森県(81.6歳)は3.1歳の差があるそうだ。そのため、生活習慣(喫煙、食生活など)の見直しは必要で、都道府県間の格差分析は生活環境や実態の違いを把握するのに有効だろう。

2)介護保険制度について
 厚労省は、*4-3のように、介護が必要な高齢者の身の回りを世話する「生活援助」について、平均以上の利用回数になる介護計画を市町村に届けるよう義務づけ、過剰な利用を洗い出し、本人の自立支援や重度になるのを防ぐ中身かどうか検証するそうだ。

 しかし、何が過剰かの判断は重要で、生活援助を減らすと新たに施設に入らなければならない高齢者も出るため、施設を増やして高齢者を収容した方が安上がりで高齢者のQOLが高くなるのか否か熟考すべきだ。何故なら、月30~40回(1日1~2回)と生活援助の利用回数が多い高齢者というのは、甘えている人というより、重篤だが自宅で過ごそうとしている独立性の高い高齢者だと思われるからである。

 なお、介護サービスの需要は実需であり、介護保険制度は始まって20年未満であるため、介護給付費が2025年にかけて現状の2倍の20兆円規模まで膨らむと予想されるのは全く自然で、生活援助が給付費の1%程度であるにもかかわらず無駄遣いを指摘する声が多いのは、「家事は仕事のうちに入らない楽なものである」と考える人が少なくないからだろう。しかし、多くの老夫婦世帯で生活援助は必要不可欠であるし、男性だけが残った世帯ではさらに重要になっている。

 そのため、生活援助のより安価な担い手を確保したり、保険適用と保険不適用(自由)の混合介護をやりやすくして、安いから頼むのではない実需を探って適正額を決め、必要と認められるものは速やかに保険適用にしていくのがよいと考える。

 なお、*4-4のように、介護保険料を8割の自治体で上げ、健保組合は全国の約1400組合のうち3割が2018年度に保険料率を引き上げたので、給付抑制が必要だとする意見がある。しかし、現在の介護保険料は40歳以上からしか徴収していないため、まず受益者である働く人すべてから介護保険料を徴収するように改正し、価格の高すぎる機材の必要性とその価格の見直しから始めるべきである。

<経済発展への総合的知識の必要性>
*1-1:http://qbiz.jp/article/132030/1/ (西日本新聞 2018年4月17日) 中国、車の外資規制撤廃へ EV18年、乗用車22年に
 中国政府は17日、乗用車分野への外国企業の出資規制を、2022年に撤廃すると発表した。現在は現地合弁企業に対する50%までの出資しか認めていないが、この規制を取り除く。電気自動車(EV)などの新エネルギー車は18年中に、商用車では20年に、それぞれ出資規制を撤廃する。日本の自動車メーカーにとっては、中国事業拡大のチャンスになりそうだ。自動車分野の規制緩和は、米国や日本が強く求めてきた。米中貿易摩擦などで中国市場の閉鎖性への批判が高まる中、基幹産業である乗用車分野の開放策を打ち出すことで、改革・開放政策の継続を印象付ける狙いだ。中国政府は、ガソリン車などを含む乗用車での撤廃により、自動車業界での出資規制は全てなくなると説明している。中国の習近平国家主席は10日の演説で、改革・開放政策を進めるために自動車などの分野で市場開放に取り組む姿勢を示していた。

*1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180418&ng=DGKKZO29492320X10C18A4MM8000 (日経新聞 2018年4月18日) 中国、車の外資規制撤廃 22年に、市場開放アピール
 中国政府は17日、外資系自動車メーカーの乗用車分野の出資規制を2022年に撤廃すると発表した。同年までに電気自動車(EV)や商用車など自動車産業の外資規制をすべて撤廃する。米国との貿易摩擦をにらみ、市場開放をアピールするのが狙い。世界最大の自動車市場で日本勢を含む外資メーカーの経営戦略の自由度が高まりそうだ。国家発展改革委員会が新しい政策を発表した。習近平(シー・ジンピン)国家主席が10日に博鰲(ボーアオ)アジアフォーラムで表明した自動車産業などの外資規制の緩和方針を受け、自動車の分野別にロードマップを明らかにした。これまでは外資の出資は50%が上限だった。外資規制撤廃の時期は、18年中にEVなどの新エネルギー車、20年にトラックやバスなどの商用車、22年に乗用車とする。中国政府が17年4月に発表した自動車産業の中長期発展計画では「25年までの外資規制の緩和」としており、時期を前倒しするとともに撤廃にまで踏み込んだ。過半出資にこだわって中国進出が難航する米電気自動車メーカー、テスラなどを後押しする狙いとみられる。新エネ車を除き原則2社までだった中国での自動車生産の合弁会社数の制限も22年に撤廃する。中国政府の新しい外資規制撤廃で、日本勢を含む外資メーカーは中国市場での経営の自由度が高まる。一方、外資系自動車大手幹部は「中国側の協力を得られなくなると中国事業にマイナスに働くので、出資比率の引き上げは慎重に考える必要がある」と漏らす。具体的な規制緩和の扱いについても「これから公表される詳細な細則などをみないと分からない」(外資系メーカー幹部)との指摘もある。中国政府は自動車以外でも、18年末までに造船、航空機製造の外資規制を撤廃する。すでに公表した金融以外でも、18年以降にエネルギーや資源、インフラ、交通、流通分野で規制緩和を順次進める方針を打ち出した。中国の新車販売台数は17年で2887万台。世界2位の米国の1.7倍、日本の5.5倍に達する。乗用車を中心に独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズ(GM)、日産自動車、ホンダ、トヨタ自動車が合弁で生産するブランドが上位を占める。規制緩和によって中国市場で外資と中国メーカーの競争が進み、業界再編が進むとの見方も出ている。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201804/CK2018041402000147.html (東京新聞 2018年4月14日) 【経済】<原発のない国へ 世界潮流を聞く> (1)中国「50年には再生エネ中心」
◆中国国家気候変動戦略研・李俊峰教授
 世界各国で太陽光、風力など再生可能エネルギーが飛躍的な拡大を続けている。日本政府が依然、原発を基幹電源として位置付け、再生エネルギーが伸び悩んでいるのと対照的だ。世界潮流から何を学ぶべきか。国内各地の再生エネ導入の現場をルポした第一部に続き、研究者やビジネスマンなど世界の専門家たちにエネルギー事情の最前線を聞く。
-中国の再生エネの導入状況は。
 「中国政府が二〇〇七年に再生エネの拡大計画を立ててから、再生エネが急速に増えており、一七年の発電に占める再生エネの割合は計約33%に増えている。これまでは水力、風力の割合が大きかったが今後は太陽光が急増する。二〇年の目標は35%だが、前倒しで達成できるかもしれない。経済政策を立案する国家発展改革委員会は三〇年の目標として、温室効果ガスを排出しない非化石電力である再生エネと原子力で電気の50%超を賄うことを掲げている。原子力はこのうち5%にも満たないだろう」
-再生エネ増加の背景は。
 「技術が進歩し、大量生産が可能になった。太陽光発電用のパネルなど設備投資費用は〇七年から十年間で八分の一まで下がり、いまも急速に下がり続けている」
「これに伴い発電費用は下がるので、電力会社が発電会社から買い取る際の固定価格も大規模太陽光は今年は一キロワット時当たり〇・五五元(九・二円)まで下がっている。これも日本(本年度十七円)の半額だ。二五年には石炭より安くなり、買い取り制度そのものが不要になるだろう」
-なぜそれほど設備投資費用が下がっているのか。
 「太陽光発電設備を作るメーカーが激しく競っているためだ。中国では太陽光メーカーは世界一、二位の企業を含め二百社以上がひしめき合っている。いまや中国メーカーが世界の太陽光生産の70%を占める。風力タービンのメーカーも二十社以上ある。受注を巡って値下げ競争が起きている」
-原発政策は。
 「中国政府は日本の東京電力福島第一原発事故を受け、原発の建設計画を大幅に見直した。一三年以降は新規の建設計画を承認していない。すでに建設中の原発はあるが、二〇年時点の原発の設備容量の目標はもともとの百二十ギガワットから半分以下の五十五ギガワットに大幅に下方修正している」。「建設途上にある国産原子炉が成功すれば、流れが変わるかもしれないが、原発の問題は高い建設費用と安全性だ。人口が大きい中国ではどこに建てたとしても集住地域が近くにあり、安全面のリスクが高い。中国の国土は広いが、最終処分場をつくるメドもたっていない」
-中国は自動車もガソリン車から電気自動車(EV)に転換する計画を発表しているが、発電以外の計画は。
 「二〇五〇年には大半の電気を非化石電力で賄うことになり、再生エネが中心になっているだろう。EVの電気も再生エネで賄うことになる」
<り・しゅんほう> 中国国家気候変動戦略研究・国際協力センター教授。同センターはエネルギー政策を研究し政府に助言している。過去には中国の国家戦略を立案する国家発展改革委員会のエネルギー研究所副所長も務め、政府の再生エネの関連法や中長期計画の立案に携わった。

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180419&ng=DGKKZO29568160Z10C18A4MM0000 (日経新聞 2018年4月19日) 再生エネ、アジアで急伸 5年で倍増、中国けん引
 再生可能エネルギーの導入がアジアで急拡大している。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の調べによると2017年末の発電容量は5年でほぼ倍増。世界全体の伸び率の5割を大きく上回った。太陽光発電を推進する中国やインドの伸びが大きい。環境意識が強い欧州などに加えアジアでも採用が増え、世界で再生エネの存在感がいっそう高まりそうだ。17年末の再生エネの発電容量は21億7900万キロワットだった。発電方式別では水力が53%、風力が24%、太陽光が18%と続く。太陽光の構成比が過去5年で約2.6倍となり、伸びが大きい。けん引するのが中国で、太陽光が5年で36倍に増えた。13年に再生エネを高い価格で買い取る制度を導入して大気汚染の一因とされる石炭火力発電を抑制。太陽光発電施設の新設が相次ぎ、中国資本の太陽電池メーカーも育った。太陽光発電はパネルの価格下落で発電コストが5年で約半分に下がったうえ「風力ほど設置や運営のノウハウが要らない」(自然エネルギー財団の大林ミカ氏)。中国では17年も16年に比べ68%増えるなど増加率は高水準が続く。水力発電も過去5年で36%増えた。足元で再生エネの導入が急速に進んでいるのがインドだ。17年の増加率は18%と、比較可能な01年以降で最高となった。ソフトバンクグループが合計2千万キロワットの再生エネ発電所を建てる計画を掲げ、17年4月に一部設備が稼働した。日本では過去5年で2.1倍に増えた。増加分の96%が太陽光だ。発電容量の地域別構成比はアジアが42%、欧州が24%だ。欧州も過去5年で30%増えたが伸び率はアジアより低かった。国際エネルギー機関(IEA)によると、再生エネが世界の総発電量に占める比率は16年に24%に高まった。40年には再生エネの発電量が2.6倍に増え、総発電量の40%に高まるとみている。アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアなどでは100万キロワット以上の太陽光発電施設「ギガソーラー」が相次いで建設されている。

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180411&ng=DGKKZO29216810Q8A410C1EE8000 (日経新聞 2018年4月11日) 再生エネ「主力」へ技術課題 2050年戦略、競争力見極め難しく
 経済産業省は10日、省内の有識者会議で2050年に向けた国の長期エネルギー戦略の提言を取りまとめた。太陽光や風力など再生可能エネルギーを「主力電源」にする目標を明記した。ただ再生エネを主力にするには技術的な課題も多い。火力なども含めてどの電源や技術に経済性や競争力があるのか、今後も難しい見極めが迫られる。今夏をめどに閣議決定するエネルギー基本計画に反映する。再生エネを主軸としつつ蓄電池や火力、原子力など多様な技術や電源を組み合わせて変化に対応できるようにする。エネルギー情勢を客観的に分析し、最適な選択に向けた判断材料を示す新組織も設立する。再生エネは海外に比べて高コストから脱却できておらず、発電システムの一層の効率化を事業者に促す。再生エネの大量導入を受け入れられる送配電網の整備も課題。天候や季節で出力が変動する弱点を補うためには、火力発電など他の手段の活用も必要になる。それぞれに技術的な課題が多く50年の明確なエネルギー構成は示せなかった。原子力は依存度を低減する方針を明記する一方、「脱炭素化の選択肢」として「安全性や経済性、機動性に優れた炉の追求」も続ける。10日の会議では原子力について、「地球温暖化への対応を考えると依存度低減は合理的ではない。逃げてはだめだ」(コマツの坂根正弘相談役)といった意見が出た。一方で「推進しないほうがいい」(イーズの枝広淳子代表取締役)との異論もあり、明確な方向付けはできなかった。

*1-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180418&ng=DGKKZO29496450X10C18A4EE8000 (日経新聞 2018年4月18日) 再生エネ拡大へ、送電線空き活用 経産省会議が対応策
 再生可能エネルギーの普及拡大を議論する経済産業省の有識者会議は17日、発電コストの低減策や、送電線の空き容量を柔軟に運用するルールなどを盛り込んだ対応策の骨子をまとめた。今夏にも改定するエネルギー基本計画に反映する。有識者会議は送電線の利用ルールを見直し、使える容量を拡大する「コネクトアンドマネージ」を2018年度から順次導入する方針を示した。空き容量をどこまで活用できるかを今後、経産省と電力会社で詰める。自然条件による変動の大きい太陽光や風力などの再生エネを大量に導入する場合、電力の需給バランスを保つ方法を確保する必要がある。骨子では蓄電池や水素などのコスト低減を目指し、技術開発を加速する方針も明記した。政府は2030年度に再生エネ比率を22~24%にする目標を掲げている。再生エネを主力電源とするためには、詳細な制度づくりや技術開発に課題が残る。

*1-7:http://qbiz.jp/article/132184/1/ (西日本新聞 2018年4月19日) 南鳥島沖の深海に希土類1000万トン超 世界消費の数百年分
 海洋研究開発機構や東京大のチームは、太平洋の南鳥島沖の深海底で見つかったレアアース(希土類)を含む泥の濃度を調査した結果、2500平方キロの範囲で埋蔵量が1600万トンを超すとの推計を発表した。周辺は日本の排他的経済水域(EEZ)内で、世界で消費されるレアアースの数百年分に相当する大量の資源だとしている。ただ実用レベルの採掘技術が存在しないため、現時点で利用できる見通しは立っていない。東京大の加藤泰浩教授は「企業や研究機関と検討を進め、今後10年で実際に使える採掘技術を開発したい」と話している。チームはこれまでに南鳥島沖の水深約5千メートルの海底にジスプロシウムやイットリウムなどを含む泥が2500平方キロにわたって広がっているのを発見している。調査船で25カ所の海底を掘削して泥に含まれるレアアースの濃度を調べると、北西部の約100平方キロで特に濃度が高かった。この海域だけで120万トン、全体では1600万トンを超す埋蔵量があると推定される。泥に含まれる粒状の生物の骨や歯には多くのレアアースが含まれ、それらをすくい上げて回収することで採掘コストを抑えることができるとチームはみている。

*1-8:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180411&ng=DGKKZO29236340Q8A410C1CR8000 (日経新聞 2018年4月11日) イノベーション、日本勢創出難しく 研究者3000人調査 「国際的成果少ない」26%
 文部科学省科学技術・学術政策研究所は10日、日本の産学の研究者約3000人を対象とした意識調査の結果を発表した。国際的に突出した成果が日本から出ているか、との質問では回答者の26%が前回調査に比べて状況が悪化していると回答した。政府は画期的な研究成果をイノベーションにつなげて経済成長を実現する方針だが、研究現場の認識と大きな開きがあることがうかがえる。同研究所は、研究現場の意識変化を継続的に追う目的で2016年に調査を初めて実施。17年末に同じ回答者を対象に2回目の調査を実施して1回目と比較。対象者は大学や公的研究機関に所属する約2100人、企業に所属する約700人で回答率は92.3%だった。国際的に突出した成果が生み出されているかとの質問は26%が前回よりも悪化しているとした。変化なしは68%で、改善したとするのは5%だけだった。状況を10点満点にすると回答者の平均は大学所属の研究者が4.1と前回に比べ0.58ポイント低下、産業界も0.5ポイント減の4だった。研究成果がイノベーションにつながっているかという質問でも20%の回答者が悪化とした。ポイントも大学で0.4ポイント低下の4.1、産業界は0.29ポイント減の3.3だった。日本の研究状況が悪化している理由として、中国やインドの台頭による国際的な地位低下、学術論文の動向などを挙げた。ベテラン研究者の固定観念が若手研究者の自由な発想を妨げているのではとの回答もあった。ノーベル賞の受賞などは近年目立つものの、過去の蓄積によるもので今後は研究力が落ちる一方という意見も多かった。

*1-9:http://qbiz.jp/article/132329/1/ (西日本新聞 2018年4月21日) 九電、社長交代で成長戦略へかじ 原発4基実現へ、経営再建にめど
 九州電力のトップが約6年ぶりに交代する人事が固まった。2011年の東京電力福島第1原発事故後、大きく傷んだ経営を立て直す環境づくりに一定のめどがついたことが背景にある。今後、重要度が増すのは成長戦略。瓜生道明社長から後を継ぐ池辺和弘氏が、成長の歩みをどのように進めるのかが焦点だ。原発の長期停止による火力発電の燃料費負担増加で、九電の財務は急激に悪化。2012年3月期から4年連続で赤字を計上し、有利子負債は約1・5倍に膨らんだ。収支改善と電力の供給力確保が喫緊の課題となる中、瓜生氏は原発再稼働を推進。川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)は福島事故後で全国第1号となった。並行して経費削減を徹底。16年の電力、17年のガスと続いた小売り全面自由化、20年の発送電分離に向けた「カンパニー制」導入など、重要課題への対応も指揮した。3月の会見では「嫌というほど濃密な6年間だった」と振り返った。最後の大きな課題が川内1、2号機と玄海3、4号機(佐賀県玄海町)の原発4基体制の実現。玄海3号機が蒸気漏れで一時発送電が停止になったものの、4号機の再稼働への影響は抑えられ、「経営の大きな節目」(九電幹部)を乗り越える見通しがついた。役員の序列では10人抜きで社長に昇格する池辺氏。昨年6月に22人抜きで取締役常務執行役員に就いた後は、若手社員のアイデアや他社技術を活用した新規事業創出に携わり、トップとして成長戦略を進めるための布石との見方もあった。一方、財務は好転しているとはいえ、自由化で競争は激化し、経営環境はなお厳しい。池辺氏も策定に関わった中期的な財務目標では連結の経常利益を17〜21年度の平均で1100億円以上などと掲げるが、社内でも「かなり高い目標」との見方がある。池辺氏は2月、役員制度の見直しに関する記者会見で「意思決定の迅速化が重要」と語った。九電が目指す「日本一のエネルギーサービスを提供する企業グループ」実現のためには、スピード感ある対応が鍵を握る。

*1-10:https://digital.asahi.com/articles/ASL3Z52XCL3ZULFA00Z.html (朝日新聞 2018年3月31日) 化粧品「爆買い」制限広がる 品切れ・海外への転売懸念
 化粧品メーカーが顧客に商品の購入個数の制限を求める動きが広がっている。訪日客向け販売の急増による品切れや、一部が海外で転売されていることが背景にある。訪日客への販売増で業界は好調だが、品切れによる既存顧客への悪影響や、転売によるイメージ低下の懸念から、購入制限を求めざるを得なくなっている。
●「バイト20人で買い占め」 化粧品「爆買い」の実態
 ファンケルは2月、メイク落とし「マイルドクレンジングオイル」の購入個数を「1週間に1人10個まで」とする日中2カ国語の顧客向け通知を直営店に出した。中国人客が「爆買い」したとみられる商品が現地で転売される例が見つかり、ブランドイメージ低下を懸念した。コーセー子会社のアルビオンは昨年末から、「アルビオン」ブランドの乳液の購入を1日1個に制限。ネットに顧客向けの「お願い」を日中英3カ国語で出した。訪日客への販売増で生産が追いつかなくなったという。資生堂は2月ごろから、銀座の百貨店などで「SHISEIDO」ブランドの美容液の購入を1日1個に制限。店頭に営利目的購入を禁じる日中英3カ国語の掲示も出した。制限は「多くのお客様に届けるため」(広報)という。購入制限は訪日客増とともに2015年ごろから目立ち始めた。最近は対象商品が増え、1回あたりの個数の上限も減らす傾向にある。訪日客向けが好調で、資生堂とポーラは直近の決算で営業利益が過去最高、コーセーも最高益の見込みだが、急増した販売の「副作用」が購入制限という形で表面化している。

<データと研究>
*2-1:https://www.sankei.com/world/news/180125/wor1801250041-n1.html (産経新聞 2018.1.25) 科学・工学分野の論文数、中国が初の首位 米国抜く 日本6位 米財団調査
 各国の科学技術力の分析に当たる全米科学財団(NSF)がこのほどまとめた報告書で、科学技術の論文数で中国が初めて米国を上回り世界首位となったことが分かった。日本は6位となり、新興国ではインドにも追い抜かれており、科学技術立国としての基盤低下が懸念されそうだ。報告書はNSFが2年ごとにまとめている。2016年に発表された論文数は中国が約43万本となり、米国の約41万本を抜いた。3位以下はインド、ドイツ、英国が続き、日本は6位と低迷した。7位以下はフランス、イタリア、韓国。報告書がまとめた統計によると、直近10年間の国別の論文数の推移は、中国が約124%増と大きく飛躍。インドも182%増と伸び、新興国の躍進が著しい。日本は13%減った。米国が7%増、欧州連合(EU)域内は28%増だった。論文数を分野別にみると、中国は工学分野で欧米を上回ったが、医学・生物学分野では米国などが優位を保った。中国は科学研究の底上げのため、民間を含む研究開発費を増加させている。論文数増加は、こうした事情が背景にあるとみられる。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL454HRCL45PLBJ005.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2018年4月12日) 研究不正、大学教育で防げ 「インチキ論文」見破り方も
 東京大分子細胞生物学研究所や京都大iPS細胞研究所など、著名な機関で研究をめぐる不正が相次いでいる。国は大学や研究機関に対して、ビデオ教材などによる不正防止教育を求めているが、効果はいま一つだ。そうした中、危機感を募らせた大学の間では、学生たちが不正に手を染めないようにと、独自の教育プログラムを取り入れる試みが広がり始めている。「どこが、どう怪しいのか。どう修正すべきか。考えをまとめてください」。滋賀県立大の高倉耕一准教授(生態学)が、学生たちに呼びかけた。受講する十数人の学生が持ち寄ったのは、健康器具や化粧品などのチラシ。他社製品との違いをアピールする言葉が並ぶ。「事例紹介ばかりで、肝心のデータがない」「グラフの目盛りを操作して効果を大きく見せている」。学生たちが、互いに意見をぶつけあう。大学院の「環境研究倫理特論」という授業のひとコマだ。
●不正見抜くソフトの使い方も
 「身近なチラシの観察は、自分が不正に手を染めず、上からの不正の指示に批判的に対処するためのトレーニングです」と高倉さん。この授業は昨秋から今年2月まで15回行われ、学内外の9人が講師を務めた。「インチキ論文」を見破る技術として、画像の切り貼り・使い回しや不正な統計処理などを見抜くソフトの使い方を教えたり、過去の研究不正の裁判記録を読み解いたりした。「特論」を企画した原田英美子准教授(植物科学)は、主任教授などの上司が指示し、若手を巻き込んで組織的に行われる「トップダウン型」の不正を念頭に置いたという。若手は生活のために、人事権者の理不尽な指示に従わざるを得ない。「学生には怪しい論文や研究室を見抜く目を持ち、近づかないようにしてほしい」と話す。互いに意見を出し合って問題の解決策を探るアクティブ・ラーニング(参加型)の授業は学生に好評で、今秋にも同様のプログラムを予定している。
●過去の不正を題材に議論
 東京工業大でも、大学院の修士課程で、選択科目として研究倫理の講義を行っている。2016年度は約290人、17年度は約240人が受講した。座学のほか、ほぼ毎回グループ討議を行う。過去の不正事例を題材に「科学者が重視すべき価値」、「不正が起きた原因や背景」などについて、学生同士で話し合う。講義を担当した東工大の札野順教授(科学技術倫理)は「論文の作成・出版は、本来、研究成果を共有し、研究をより進める手段にすぎない。しかし、それ自体が目的化していることが不正の背景にある」と指摘する。「研究する意味や目的を正しく知れば不正はおのずと減るはず」。19年度からは、対象を学部1年生から博士課程までに拡充する計画だ。
●「不安定な雇用環境が背景」指摘も
 京都大iPS細胞研究所で1月に発覚した研究不正は、任期付きで採用された30歳代の研究者が起こした。成果を出さないと次のポストが得られない若手の不安定な雇用環境が、不正の背景として指摘されている。若手だけでなく、研究代表者らも、国からの補助金が減り続ける中で予算獲得の強い圧力の下にある。科学界全体が過度の成果主義にさらされている。研究不正の防止に特効薬はなく、海外でも大きな課題となっている。東京大医科学研究所の技術専門職員で、日本医療研究開発機構の主査として海外の事例を調査した池上徹さんによると、たとえばカリフォルニア大学のある教員は、「倫理、および『生き抜く』術」と題した討議やロールプレー(役割演技)などのプログラムを導入。研究倫理上問題となる具体的な状況を参加者たちが自ら設定し、論文の責任著者、研究グループの代表者、雑誌の編集者、資金を出した機関の人などの立場で対応を演じ合う。研究者として生き残るため、正解のない問題に対して、自分ならどうするかを考えてもらう試みだ。他大学の教員らの間でも、同様の取り組みが草の根的に広まりつつあるという。
●文科省の不正防止教育「不十分」
 日本では文部科学省が、国の研究費を受ける条件として、不正防止教育を大学などに課している。ただ、ビデオ教材を視聴する「eラーニング」が中心で、不正防止には不十分との指摘は多い。一方、東工大や滋賀大のように教育カリキュラムに組み込む大学独自の参加型のプログラムは、まだ全国でも数えるほど。国立大学の法人化を機に、国からの運営費交付金が減り、新たな教育プログラムに必要な専門の教員を雇う十分なお金が大学側にないという事情もある。池上さんは「研究倫理を、大学の研究教育の一分野として確立する必要がある。そのための予算と教員の措置は、ぜひとも必要だ」と指摘する。

*2-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180403&ng=DGKKZO28878060S8A400C1MM8000 (日経新聞 2018年4月3日) データの世紀 情報資源、世界を一変、始まった攻防(1)人体から宇宙まで 企業・国、先頭競う
 世界各地で毎日、企業の活動や個人の行動などから膨大な量のデータが生み出される。つぶさに分析すれば成長の原動力になる「新たな資源」だが、人の行動を支配しうるリスクも抱える。企業や国を巻き込んだ攻防も始まり、世界はデータの世紀に入った。3月27日。英下院の委員会に、赤く染めた短髪にスーツ姿の男性が現れた。米フェイスブックで約5千万人分のデータが不正流出し米大統領選の選挙工作に使われた疑いが浮上。男性は問題を内部告発した英データ分析会社、ケンブリッジ・アナリティカの元社員だ。この会社は流出データの提供を受けていた。証言に費やされた時間は延々、3時間半。米国では大統領選への関与が注目されている。一方、英国で議論を呼んだのは、委員の質問に淡々と答えていたこの男性が、2016年の英国の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票にも関与していたと示唆したことだ。委員「もしその関与がなかったら?」。男性「国民投票の結果は、違っていたかもしれません」
●「新たな石油」
 データ分析は個人の行動をも動かす領域にまで高度化した。全世界のフェイスブックの利用者は月間20億人以上。「フェイスブック上での反応を分析して広告を打てば、消費者を大きく動かせる」。米コロンビア大学のサンドラ・マッツ准教授らの研究では、「いいね!」ボタンの押し方などから得た嗜好に沿ってその個人に合った化粧品の広告を流すと「購買数は54%増えた」という。全世界で1年間に生み出されるデータの量は既にギガ(10億)の1兆倍を意味する「ゼタ」バイトの規模に達する。米調査会社IDCの予測では、25年に163ゼタバイトと16年比10倍に増える。これは全人類一人一人が、世界最大の米議会図書館の蔵書に相当するデータを生み出すような規模だ。ネットの検索履歴や車の走行情報が新サービスを生み、経済や政治のデータがマネーを動かす。「データは新たな資源」「新たな石油」。米インテルやIBM、中国アリババ集団などIT(情報技術)大手の経営者は口をそろえる。限りある石油と違い猛烈な勢いで膨張するデータを、世界中の企業が吸い上げる。宇宙からは、モノの動きを見逃すまいと人工衛星の「目」が光る。港のタンカーの出入りやスーパーの駐車場の稼働状況から、公式情報より早く経済の動向を予測。データを駆使するヘッジファンドが利益を上げる。「全世界を毎日撮影する」。日本でも超小型人工衛星開発のアクセルスペース(東京・中央)が18年秋、大きさ数十センチメートルの衛星を3基打ち上げ、最終的に50基に増やす。「衛星画像を様々なデータなどと組み合わせて分析すれば、ビジネスになる」(中村友哉社長)
●病気リスク軽減
 データは命をも救いうる。米アルファベットは17年4月、傘下企業を通じ1万人の心拍などの健康情報を少なくとも4年間集めるプロジェクトを始めた。日本でも内閣府と東京大学や京都大学が共同で18年6月から、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」技術を使い生活環境と血圧の関係を即時測定する実証実験を始める。病気リスクの軽減が狙いだ。20世紀を石油の世紀とすれば、21世紀はデータの世紀。その先頭を走るのがグーグルやアップルなど「GAFA」と呼ばれる米IT4社だ。合計時価総額は10年代前半、かつて「セブン・シスターズ」と呼ばれた石油大手4社を逆転した。急拡大ぶりは、勃興時の石油産業の姿にも重なる。石油の大量供給は世界で自動車産業の発展をもたらした。一方、巨大化の弊害も指摘された。ジョン・ロックフェラー氏らが19世紀後半に設立したスタンダード石油は1911年に反トラスト法(独占禁止法)で分割。後に栄えたエクソンやテキサコなど巨大7社も、今は4社に集約された。現在は、肥大化したGAFAに対する逆風が世界で強まる。歴史は繰り返す。データの世紀が問いかけるのは、産業構造の転換や企業間の攻防にとどまらない。石油の世紀には、石油輸出国機構(OPEC)が誕生。中東諸国による石油支配を生み出し、石油危機を通じて先進国経済を大きく揺さぶった。そのアキレスけんを守ろうと米国が同地域に軍事介入する結果となった。データの世紀は米国1強にもみえる。だが世界のルールと一線を画す独自政策で、官民を挙げて世界中からデータの収集にかかる中国のような国もある。ロシアもデータの力で世界を揺さぶる。「宗教や民族や国家といった従来の枠組みに代わり、情報を軸とした新たな世界秩序の構築が始まる」。慶応義塾大学の山本龍彦教授は、そう予言する。その行き先を、まだ誰も知らない。

*2-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13446853.html (朝日新聞 2018年4月12日) FB全面謝罪、議会追及かわす 情報流出でザッカーバーグ氏、米公聴会証言
 米フェイスブック(FB)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が10日、米議会上院の公聴会で証言し、最大8700万人の会員情報が不正流出した問題について全面的に謝罪した。だが、利用者の個人情報を利用して収益をあげる巨大IT企業の事業モデルそのものへの不信感は拭えていない。(ワシントン=香取啓介、青山直篤、江渕崇)
■対策講じ、低姿勢貫く
 ダービン議員「昨日どこのホテルに泊まったか教えてくれませんか?」。ザッカーバーグ氏「ここでは明らかにしたくありません」。ダービン氏「これがプライバシー。FBが集めている情報なのです」。公聴会では上院定数の半数近い44人の議員が次々と質問。追及は5時間近くにわたった。普段のTシャツ姿ではなく、紺色のスーツに水色のネクタイを締めて臨んだザッカーバーグ氏。「我々は会社を経営する上でたくさんの間違いを犯してきました」などと対策の遅れや不十分さを謝罪し、低姿勢を貫いた。「世界の人々をつなぐ」との理想を掲げるFBは、誰でも無料で使える。その代わり、利用者がインターネット上に出す個人情報を元にして広告主に広告スペースを提供し、収入を得る。創業14年で、利用者は世界で20億人を超えた。情報の不正流出が発覚したのは3月。アプリを通じて利用者の個人情報が抜き取られ、2016年の米大統領選でトランプ陣営を支援した英選挙コンサル会社に不正利用された疑惑が持ち上がった。偽ニュースの拡散を許し、選挙への介入を招いたとの批判もある。FBは先週来、アプリ開発者の情報へのアクセス制限や広告表示の自主規制など、対策を発表。議員からは政府による規制に関する質問も相次いだが、ザッカーバーグ氏は「正しい規制なら歓迎する」と応じ、論戦にならないようにした。広告なしの有料版を検討しているか問われると「広告モデルが10億人単位の人々にサービスを届ける唯一の道だ」と答えた。追及をかわしたかにみえるザッカーバーグ氏だが、不信感はくすぶっている。「使命よりも広告の価値を上位に置く事業モデルなのに、米国人のプライバシーを守るために自らの意思で本当に変われるとどうして信じられるだろうか」。ハッサン上院議員はこう問いかけた。
■規制強化求める声も
 問題が深刻になった背景には、米巨大IT企業が情報や富を独占し、米政治や社会がその悪影響への懸念を強めていることがある。米調査会社によると、フェイスブックとグーグルだけで昨年の米デジタル広告市場の6割以上を稼ぎ、寡占度合いは年々高まる。欧州に比べ、独占に甘い競争政策をとってきた米国だが、今回の問題を契機に流れが変わる可能性はある。欧州では5月、企業などに個人情報の厳格な扱いを義務づける「一般データ保護規則」が施行される予定で、ザッカーバーグ氏も順守を誓った。米国でも同様の厳しい規制が必要だとする見方が出ている。ニューヨーク大学のロバート・シーマンズ准教授は「データの収集や利用について人々が注意を払うきっかけになった。消費者が完璧なプライバシーを得ることはできなくなっている」と話す。

*2-6:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/204114 (佐賀新聞 2018年4月12日) FB悪用対策「不十分」
 米交流サイト大手フェイスブック(FB)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は10日、個人情報の不正利用やFBを通じたロシアの米大統領選介入など一連の問題について、対策の不備を認めて陳謝した。「悪用防止に十分な対応をしていなかったのは明らかだ。私の過ちで、申し訳ない」と述べた。上院司法委員会と商業科学運輸委員会の合同公聴会に出席した。サイト利用者保護のため、偽アカウントや投稿内容を確認する要員を年内に5千人増やし、約2万人にすると表明。個人情報の収集や利用に関し、規制強化の必要性を指摘する議員らに「正しい規制であれば歓迎する」と一定の理解を示した。一連の問題でのザッカーバーグ氏の議会証言は初めて。反省の姿勢を強調し、イメージ悪化や利用者離れの食い止めを図った。株式市場では再発防止策の説明が評価され、FBの株価は前日と比べ、4・5%上昇した。ザッカーバーグ氏は、モラー特別検察官によるロシア疑惑捜査にFBが協力中だと明らかにした。自身は聴取を受けていないと語った。最大8700万人分の利用者の個人情報を不正取得した英政治コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカについて、2015年に情報削除を要求したが実際は消されず、確認が足りなかったと責任を認めた。同社は16年米大統領選でトランプ陣営のために個人情報を使ったとされる。大統領選中にFBに虚偽情報を投稿していたロシア企業インターネット・リサーチ・エージェンシーに関し「約470のアカウントやページがあり、約8万件の投稿をしていた。約1億2600万人が影響を受けたと推定される」と説明した。

<研究とデータ分析>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180402&ng=DGKKZO28858360R00C18A4MM8000 (日経新聞 2018年4月2日) データ分析のプロ、産学で育成 日立など9社、5大学と
 日立製作所やヤマトホールディングスなど大手企業9社がデータ分析の専門家「データサイエンティスト」の育成に乗り出す。東京大学など5大学と組み、企業が持つビッグデータを使った大学院生の育成プログラムを始める。産業のデジタル化と人工知能(AI)の導入が進むなか、データを扱える専門家の層の厚さは企業の競争力を左右する。産学が手を携え実践的な専門家を育てる。データサイエンティストには数値の規則性を探り出したりする統計学に加え、データを取捨選択して問題解決につなげる能力も求められる。業界ごとの課題を理解し企業のエンジニアと意思疎通することも要求される。フリーマーケットアプリ大手のメルカリ(東京・港)ではデータサイエンティストが利用履歴などをもとに、サイト画面の改善や顧客動向の予測につなげている。パナソニックは17年、製品の故障予測などを目指し、優秀なデータサイエンティストが在籍する米企業を数十億円で買収した。日本では統計学を専門に教える大学が少ないなど、育成体制に課題があった。課題解決に向け「一般社団法人サーキュラーエコノミー推進機構」を立ち上げた。日立やヤマトに加え、アステラス製薬、NTTドコモ、MS&ADインシュアランスグループホールディングスなどが参画。元経済産業事務次官の望月晴文氏が代表理事に就いた。推進機構は東大、京都大など5大学と育成プログラムを立ち上げ、大学院生を対象に7週間、データの分析手法を教える。まずは特定の研究室の学生が原則費用負担なしで受講できるようにする。初年度は20~30人を育成し、早期に年間100人体制に増やす。プログラムは参画する事業会社の持つデータを使い、経営課題を解決する人材の確保にもつなげる。物流会社の配送ルートの策定や新薬候補物質の探索方法といったテーマが浮上しているようだ。大学側はプログラムを授業の一環として組み込んだり、単位認定したりすることを検討する。データサイエンティストは争奪戦が激しく、求人情報大手が扱う求人は1年間で6倍近くに増えた。

*3-2:https://toyokeizai.net/articles/-/176110? (東洋経済 2017年6月16日) 日本の科学研究の実力が急速に低下している、政府支出を評価する「独立財政機関」の設置を
末廣 徹 : みずほ証券 シニアマーケットエコノミスト
 2017年度版の「科学技術白書」(6月2日政府、閣議決定)によると、主要な科学論文誌に発表された論文のうち、引用された件数の多い論文の国別順位で、日本はこの10年間で4位から10位に下がっており、基礎研究力の低下が著しいと指摘されている。すでに日本の基礎研究力の低下は議論されており、政府は4月に行われた総合科学技術・イノベーション会議(議長は安倍晋三首相)で名目GDP(国内総生産)600兆円の達成に向け、技術革新を推進するための研究開発への投資額を来年度から3000億円上積みする方針を固めた。生産性向上のためには科学技術のブレークスルーが必要となるが、日本の財政を考えると大盤振る舞いできる状況にはない。第5期科学技術基本計画で示されている「(政府研究開発投資は)対GDP比の1%にすることを目指す」を中心に議論せざるをえないため、研究開発投資の金額を増やすためにはGDPを増やす必要がある。これはつまり、「高い経済成長をするためには高い経済成長が必要である」と言っていることになり、とても苦しい状況だ。3月23日に英国の科学誌『ネイチャー』(Nature)は「日本の科学成果発表の水準は低下しており、ここ10年間で他の科学先進国に後れを取っている」と発表した。世界の8000以上の大学や研究機関における研究を指数化したNature Index(科学論文の本数を指数化したもの)において、日本の論文の割合が2012年から2016年にかけて6%低下したという。指数の水準は米国、中国、ドイツ、英国に続く5位につけているが、2~4位の国とは距離が拡大しつつある。(以下略)

*3-3:http://qbiz.jp/article/131976/1/ (西日本新聞 2018年4月17日) 全国学力テスト、小6と中3で実施 理科加え3教科、7月に結果公表
 小学6年と中学3年の全員を対象にした文部科学省の「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)が17日、一斉に行われた。国語と算数・数学に加え、3年ぶりに理科を加え3教科で実施し、計約213万4千人が参加。結果は7月に公表する。参加は小学校1万9629校の約107万2千人と、中学校1万80校の約106万2千人。国公立は全校で、私立の参加率は49・8%。東日本大震災で事実上実施できなかった2011年度を除き、今回で11回目となる。同時に子どもたちに学習意欲や生活習慣などを尋ねる質問調査も実施し、さまざまな分析に役立てる。

<データの読み方>
*4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180402&ng=DGKKZO28791810Q8A330C1TCC000 (日経新聞 2018年4月2日) 寿命 データ活用で延ばす、滋賀県、長野抜き男性1位に 課題見つけ改善策具体的に
 2017年12月に厚生労働省が発表した15年の都道府県別平均寿命で、滋賀県が男性で全国1位、女性で4位となり、長寿県として注目を集める。30年ぶりに男性トップを奪われた長野県は、滋賀県との違いをデータ分析した報告をまとめ、5年後の首位奪還を目指す。全都道府県で平均寿命と健康寿命は延びているものの、データ分析を踏まえた食事、喫煙、運動など生活習慣病の長期的な対策などによって明暗が分かれている。「一に健康、二に健康、三に健康。健やかな滋賀をつくろう」。滋賀県の三日月大造知事は18年1月、年頭の記者会見で「健康」を繰り返して強調し、医療・福祉・保健のネットワーク基盤の拡充と同時に、ビッグデータを活用して取り組むことを宣言した。
●もとは平均以下
 同県は15年の都道府県別の平均寿命で、男性が81.78歳で初めて全国トップになった。女性も87.57歳で4位。三日月知事は「滋賀県民は長生きだと注目された」と喜ぶ。もともと長寿県だったわけではない。約50年前の1965年時点では滋賀県の男性の平均寿命は67.26歳で、全国平均(67.74歳)を下回って全国27位。女性も72.48歳で全国平均(72.92歳)より低く、全国31位にとどまっていた。転機は約30年前から本格的に取り組んだ生活習慣病対策だ。その一つが86年から始めた「滋賀の健康・栄養マップ」調査だ。当時、県民の食事や生活習慣に関するデータは十分に把握できていなかった。「県の情報処理システムが改善され、大きなデータを扱えるようになり、県独自に初めて実施した」(県健康寿命推進課)。5年に1度の調査で県内の地域ごとに県民の健康状態を分析。データに基づき、栄養バランスや運動、余暇、虫歯予防の大切さを伝えるガイドブックを作り、県内全世帯に配った。「健康への1%投資運動」として、1日24時間の1%となる15分程度を散歩や体操など運動に充てることを具体的に県民に呼びかけた。県健康寿命推進課は「主体的に健康づくりに取り組む県民が増えるきっかけにつながった」とみる。喫煙率も男性は5割超だったが、県の計画で2001年に「喫煙率を半減させることが望ましい」と努力目標を設定。数値目標を掲げる自治体は珍しかったが、禁煙か完全分煙を行っているとして登録した飲食店を「受動喫煙ゼロのお店」と公表して後押しした。その結果、喫煙率は激減し、16年に男性で20.6%と全国で最も低い県となった。対策の広がりとともに県の平均寿命の順位は上昇した。男性は05年、10年の調査で2位、今回(15年)調査で初めて1位になった。女性も05年に13位で全国平均を上回り、10年は12位、今回は4位に食い込んだ。
●健康寿命も長く
 自立した生活を過ごせる健康寿命も滋賀県は長い。東京大学大学院の国際保健政策学教室と米ワシントン大学の共同調査によると、滋賀県は男女合わせた健康寿命は15年までの25年間で4.1歳延び、福岡、佐賀と並び全国で最も延びた。「滋賀県と比べ、働き盛り世代で運動習慣のある人が少ない」。0.03歳の僅差で男性の平均寿命トップから30年ぶりに陥落して2位だった長野県は「長野県の健康課題~平均寿命男性1位の滋賀県との対比から」という報告をまとめた。働き盛り世代の運動不足のほか、滋賀県と比べて食塩の摂取量や喫煙者も多いことがトップ陥落の主因として、18年1月中旬に開いた健康づくり推進県民会議で報告を公表。データで課題を明確にし、県民に健康づくりを呼びかけていく。生活習慣病対策を放置すると、平均寿命に大きく響く。長寿県で知られていた沖縄県は00年の調査で女性はトップを維持したが男性は前回調査の4位から一気に26位まで転落。40~50代の脳卒中や糖尿病による死亡率の高さが原因だった。平均寿命が延びても、健康寿命が延びなければ、寝たきりの高齢者が増え、医療・介護費の大幅増になるだけだ。寿命を延ばすための生活習慣病対策は同じ県内でも地域で異なる。財政に限りがある中、データ分析で不十分な分野を見直し、有効な対策を地域ぐるみで採り入れる工夫が必要だ。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180402&ng=DGKKZO28791850Q8A330C1TCC000 (日経新聞 2018年4月2日) 地域格差、最大で3.1歳 「喫煙対策 強化が必要」
 男女を合わせた平均寿命を1990年と2015年で比べると、都道府県の格差は広がっている。両年とも全国平均以上だったのは19都府県あり、逆にいずれも平均未満だったのは18道府県と二極化している。平均以上から平均未満に転落した県、平均未満から平均以上に改善した県もそれぞれ5県あった。男女合わせた都道府県ごとの寿命のデータは、東京大学大学院の国際保健政策学教室が米ワシントン大と共同で分析した。調査によると、1990年に男女合わせた平均寿命が最も長い長野県(80.2歳)と最も短い青森県(77.7歳)の差は2.5歳だったが、2015年にはトップの滋賀県(84.7歳)と最下位の青森県(81.6歳)の差は3.1歳。25年間で差は0.6歳広がった。健康寿命も1990年に最も長い長野県(71.5歳)と最も短い高知県(69.2歳)の差は2.3歳だったが、2015年にはトップの滋賀県(75.3歳)と最下位の青森県(72.6歳)の差は2.7歳で、0.4歳拡大した。分析した東大大学院の渋谷健司教授は「喫煙対策は強化する必要がある。男女とも食生活の見直しも不可欠」と指摘。「今後、都道府県格差をさらに詳しく分析し、実態を踏まえた対策が必要」と話している。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180403&ng=DGKKZO28902210S8A400C1MM8000 (日経新聞 2018年4月3日) 生活援助 使いすぎ抑制 厚労省 介護計画、月30~40回で届け出
 厚生労働省は介護が必要な高齢者の身の回りを世話する「生活援助」について、平均以上の利用回数になる介護計画(ケアプラン)を市町村に届けるよう義務づける。過剰な利用を洗い出し、本人の自立支援や重度になるのを防ぐ中身かどうか検証する。介護費用の膨張を抑制する狙い。4月中にも正式に決定し、10月から始める。生活援助は介護が必要な高齢者の家を訪問し、掃除や調理、買い物など身の回りを世話する訪問介護サービスの一つ。自己負担は1回数百円と安価に利用できる。その半面、平均を大きく上回る過剰利用が問題視される。厚労省は、利用回数が平均を大きく上回る場合、ケアプランをつくるケアマネジャーに届け出を義務づける。市町村は「必要以上の利用になっていないか」「他のサービスで代替できないのか」などの観点からプランを検証。必要に応じて変更を求める。対象は介護の必要性の度合いで異なるが、おおむね月30~40回前後の利用とし、対象者は年間で数万人規模に上るとみられる。2016年9月のデータによると、生活援助の利用者(48万5千人)は月間平均で11回程度使っている。そのうち31回以上の利用者が2万5千人を占め、100回を超える例もあった。介護給付費は25年にかけて現状の2倍の20兆円規模まで膨らむと予想される。生活援助は給付費の1%程度だが、無駄遣いを指摘する声も多い。定額制の別のサービスがあるのに生活援助を使ったり、生活援助を使いすぎて本人の自立がかえって難しくなったりしていると指摘され、効率化が急務だ。利用回数の上限設定や軽度者の対象除外の是非も議論になっている。厚労省は、不足する生活援助の担い手の育成も始める。新設の短期研修を受ければ、利用者の自宅を訪問して生活援助できる資格を与える。

*4-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180419&ng=DGKKZO29537990Y8A410C1MM8000 (日経新聞 2018年4月19日) 介護保険料 止まらぬ上昇、自治体の8割上げ/健保も3割 給付抑制が急務
 介護保険料の引き上げが広がっている。日本経済新聞の調べでは、65歳以上の介護保険料は8割の市区町村で上がった。現役世代が加入する企業の健康保険組合では、全国の約1400組合のうち3割が2018年度に保険料率を引き上げた。介護給付費は過去10年間で57%増え、医療費の伸びを大きく上回る。介護保険制度(総合2面きょうのことば)の維持には給付抑制が課題だ。65歳以上の介護保険は市区町村や広域連合が運営する。保険料は介護サービスに必要な費用の見通しなどをもとに自治体が3年ごとに見直す。18~20年度の基準月額を15~17年度より引き上げた自治体は全体の8割。月額6000円を超える自治体は前期の1割強から4割に増えた。制度が始まった00年度の全国平均は2911円で2倍の水準にあたる。7000円超の自治体も50を上回り、3倍以上になった。基準月額が最も高かったのは福島県葛尾村。9800円と前期から3割引き上げた。「東日本大震災の避難生活の影響もあってか、村内の要介護認定率が高まっている。人口減少で被保険者の数自体も限られている」(住民生活課)。東京都は8700円の青ケ島村、大阪府では大阪市の7927円が最も高かった。最も低かったのは北海道音威子府村で前期と同じ3000円に据え置いた。「村には介護サービスが乏しく給付が少ない。住民も介護が必要になる前にサービスが充実する都市部に転出していく」(住民課)という。40~64歳の会社員らが負担する介護保険料は18年度の月平均が5723円。10年前に比べ45%増えた。特に収入の多い大企業で負担が増している。18年度に保険料率を引き上げたのは450程度で健保全体の3割を占める。JRグループ、ファーストリテイリング、新日鉄住金などの健保が引き上げた。要因は健保加入者の平均収入に応じて、介護納付金の負担額を決める「総報酬割」の導入だ。17年度から段階的に導入しており、20年度に完全実施する。厚生労働省の試算では導入前に比べ、平均で月700円程度の負担増になる見込みだ。社会保険料の負担が増えれば、賃上げ効果が薄まる可能性もある。介護給付費は15年度で約9兆円。10年間で57%増えた。この間の国民医療費の伸びは3割弱だ。一定の給付抑制策は欠かせない。例えば、軽度な要介護者向け料理などの生活援助サービスは一部の利用者が月100回以上使う例がある。回数制限など抜本的な見直しが必要になる。今後の見通しも厳しい。「団塊の世代」が全員75歳以上となる25年度には、65歳以上の保険料はさらに上昇する。沖縄県と大阪府は9000円を超えると推計。東京や京都、石川など11都府県が8000円以上を見込む。保険料は年間で10万円の大台が迫ってくる。調査は日本経済新聞社が4月上旬、全国1571の市区町村などの保険者をまとめている都道府県を対象に実施。広島県を除く46都道府県が回答した。25年度の推計は31都道府県が答えた。

<原発は地球では過去のエネルギー>
PS(2018年4月23、25日追加):*5-1のパナソニックのように、新興国や途上国に、教育や地場産業創出の支援として太陽光発電・蓄電システムや照明を寄贈するのはよいことである上、パナソニックや日本のよいイメージを新興国や途上国の人に定着させることに資する。
 一方、*5-2のように、日本の経産省有識者会議が「再生可能エネルギーを主力電源にする」という提言をしたが、「原発は温暖化対策のための選択肢として維持し続ける」という姿勢を変えなかった。しかし、公害は二酸化炭素の排出だけでなく、原発によるものもあるため(そんなことも知らずに、気を付けている人に対して、「風評被害」「ポピュリズム」などと言っているのですか?)、日本政府は世界に遅れたイメージを与えている。しかし、もう世界の主流になった再エネの普及を加速させるべき時なのだ。
 なお、*5-3のように、九電は、管内で再稼働を目指していた原発4基全ての再稼働のめどが立ったことで経営を刷新し、新しい取締役常務執行役員の池辺和弘氏は「エネルギーサービスで日本一の会社にしたい」と意気込んでいるそうだ。しかしながら、こういう判断では、世界進出も日本一も難しいと、私は考える。何故なら、*5-4のように、原発輸出は福島原発事故で状況が一変して、多くの原発関連会社が①採算悪化 ②破綻 ③撤退 しているので、もし九電がアフリカでインフラ整備に進出するとすれば、日本と同じ段階を踏む必要はなく、初めから地熱・太陽光等の再エネを基本とした方が世界の潮流に乗っており、感謝されるからだ。

 
 爆発直後の原発  何年も野積みされている除染土  増える汚染水タンク 原発輸出状況
           福島第一原発事故の現実              *5-4より

*5-1:http://qbiz.jp/article/132436/1/ (西日本新聞 2018年4月23日) パナ、太陽光発電で開発支援 100周年で途上国に
 パナソニックは23日、創業100周年に合わせてアジアやアフリカなどの新興国や途上国を対象に、太陽光発電システムを活用した教育や地場産業の創出といった開発支援を始めたと発表した。十分な電力供給のない地域に太陽光発電・蓄電システムや照明を寄贈するなどして、地域の発展や貧困解消を目指す。まずインドネシア、ミャンマー、ケニアの3カ国で、現地で活動する非政府組織(NGO)などと共同で支援を開始し、対象国・地域を順次拡大する。寄贈したシステムは家庭や学校、集会場の明かりとして使ってもらったり、発電した電気を活用して農産物や水産物の加工といった産業づくりに役立ててもらったりする。パナソニックは、これまでも電力供給のない地域に太陽電池付きの小型照明を寄贈する「ソーラーランタン10万台プロジェクト」を実施。2013年以降、30カ国で10万台以上を無償提供している。

*5-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018042302000131.html (東京新聞社説 2018年4月23日) 再生可能エネ 主役に起用するのなら
 「再生可能エネルギーを主力化する」-。経済産業省の有識者会議からの提言だ。風力や太陽光を電力の未来を担う主役に据える、というのなら、それなりの舞台と待遇を用意すべきではないか。風力や太陽光といった再生可能エネルギーを「主力電源」にすると持ち上げる一方で、原発は温暖化対策のための「選択肢」として維持し続ける-。二〇五〇年のエネルギー政策はどうあるべきかを考える、経済産業省の有識者会議による提言だ。風力や太陽光は増やしましょう。だが原発に関しても、依存度は小さくするが、なくすわけではないという。相変わらず、どっちつかずと言うしかない。第一に「主力電源」という位置付けが、よく分からない。四年前に閣議決定された国の第四次エネルギー基本計画でも、再生可能エネは「有望かつ重要な低炭素の国産エネルギー」と位置付けられて、最大限、導入を加速するとされてきた。政府は現在、三〇年時点の再生可能エネの比率は、原発とほぼ同じ、22~24%と決めている。“先進国”と言われるドイツは、五〇年までに消費電力の少なくとも80%を再生可能エネルギーで賄う目標を掲げている。そのために、太陽光と風力を最優先で利用してもらい、足らない分を揚水発電やバイオマス発電などで補うよう、電力の供給体制も変えてきた。「主力電源」とうたうからには、少なくとも現行を大幅に上回る導入の数値目標、そして、基幹送電線への優先接続など給電システムの改革案を具体的に明示すべきなのである。送電網の拡充などに時間と費用がかかるという意見もある。しかし、3・11を経験し、原発の新増設は、もう不可能と言っていい。老朽化していく原発に膨大な費用を投じて安全対策を施しながら、あと三十年、恐る恐る使い続けていくよりは、はるかに安上がりかつ合理的ではあるまいか。原発維持は、温室効果ガスの排出をなくしていくためだという。しかし、原発の燃料であるウランの採掘などの過程で、かなりの二酸化炭素(CO2)が排出されるという指摘もある。再生可能エネ普及の加速こそ、脱炭素化の王道でもあり、世界の主流なのである。「脱炭素化のため」と言われても、原発維持の口実にしか聞こえない。

*5-3:http://qbiz.jp/article/132437/1/ (西日本新聞 2018年4月23日) 再稼働めどで九電社長交代 昇格の池辺氏「日本一の会社に」
 九州電力は23日、瓜生道明社長(69)の後任に取締役常務執行役員の池辺和弘氏(60)を昇格する人事を発表した。管内で再稼働を目指していた原発4基全ての再稼働のめどが立ったことで経営を刷新する。6月就任予定で社長交代は6年ぶり。福岡市で記者会見した池辺氏は「エネルギーサービスで日本一の会社にしたい」と意気込んだ。瓜生氏は代表権のある会長に就く。貫正義会長(73)は相談役に退く見通し。瓜生氏は池辺氏を後任の社用に抜てきした理由について「知識もあるが、視野の広さが突出している。今後の難局を乗り越えられる」と述べた。池辺 和弘氏(いけべ・かずひろ)東大卒。81年九州電力。執行役員を経て17年6月から取締役常務執行役員。大分県出身。

*5-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180425&ng=DGKKZO29808960V20C18A4EA2000 (日経新聞 2018.4.25) 原発輸出 福島の事故で状況一変
▽…安倍政権は原子力発電所の海外展開を成長戦略の柱に位置づける。民主党政権時代の2009年、アラブ首長国連邦(UAE)の原発新設計画で有力視されていた日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)の企業連合が、官民一体で取り組んだ韓国勢に受注競争で敗れたのがきっかけになった。▽…11年の東京電力福島第1原発の事故を機に状況が変わる。10年にベトナムの原発計画で三菱重工業などが受注する方針が固まったが、ベトナム政府が16年、財政難などを理由に計画中止を決定。トルコ・シノプの原発計画も当初は東芝と東京電力の企業連合が受注する予定だった。▽…国内だけでなく、ドイツやスイス、韓国など脱原発を掲げる国が増え、世界的に需要増は見込めない。仏原発大手、アレバ(現フラマトム社)は原発計画の遅れから採算悪化に陥り、仏政府主導で経営再建を選んだ。東芝も米原発子会社ウエスチングハウスの経営破綻を機に海外事業から撤退。新設計画の先細りに加え、供給体制の弱体化が起きるなど状況が大きく変わっている。

<電力へのエネルギーシフト>
PS(2018年4月25日追加):世界最大級の北京国際自動車ショーの報道向け公開が始まり、*6-1のように、世界14カ国・地域から計1200社余りが参加して1000台以上の自動車が展示される見通しで、中国はEVを機にゲームチェンジを図る狙いが伺えるそうだが、中国の政策ならそれが可能だろう。しかし、世界でEV車に変えることは、中国・インドが本格的に市場参入してきた1995年前後に私が日本の経産省に提案したが、日本メーカーは日産自動車以外はEVを作らず、ハイブリッド車でお茶を濁したのである。そして、日本における最初の“空気”は「EVは音がしないから危険だ」「EVは走行距離が短い」などとEVをくさすものばかりで、それを改善しようという努力はなかった。つまり、何に対しても、日本人は、“その場の空気を読む”だけの役立たずばかりが多く、「空気を変えよう」とか「空気をきれいにしよう」と志す人が「変人」扱いされてイノベーションを阻害するのである。
 そのような中、*6-2のように、安川電機がワイヤレス充電できる電動船を世界で初めて開発したのはよかった。電気タイプを漁船に利用すれば、離島などの地域で発電した安価な電力で操作性の良い漁船を使うことができ、大型船に利用すれば港の水をきれいすることができるので、欧州や中国だけでなく、日本でこそ普及を推進すべきなのである。
 なお、「乗り物が電動化すれば産油国が困るのでは?」と高いエネルギー代を払いながら言っている馬鹿な日本人もいるが、*6-3のように、サウジアラビア政府は、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の指揮下で脱石油依存の経済改革を進めており、こちらには技術で協力した方が感謝されるだろう。

*6-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29814760V20C18A4MM0000/?nf=1 (日経新聞 2018/4/25) 中国、EVで覇権狙う 北京自動車ショー開幕
 世界最大級の自動車展示会、北京国際自動車ショーの報道向け公開が25日午前に始まった。電気自動車(EV)に傾斜する中国メーカーに加え現地で一定の生産比率を義務付けられる日米欧勢も電動技術を誇示した。エンジン車では先進国の壁を越えられなかった中国がEVを機にゲームチェンジを図る狙いが展示からうかがえる。世界14カ国・地域から計1200社余りが参加し、展示する自動車は1000台を上回る見通し。このうち新しいEVとプラグインハイブリッド車(PHV)だけで170台が出展される。会場は中国勢のEVが目立つ。北京汽車集団傘下の北京新能源汽車は人工知能(AI)でエネルギー効率や安全性を高めた車種を披露。北京汽車の徐和誼董事長は「EVやPHVを成長戦略の中心とし世界トップクラス入りを狙う」と話した。日本車では日産自動車が中国で生産するEVを2018年後半に現地で発売すると発表した。トヨタ自動車は20年までに新たに10の電動車を中国で追加する計画を明らかにした。開幕に先立ち独フォルクスワーゲン(VW)のヘルベルト・ディース社長は「中国は世界の自動車産業のカギとなる市場だ」と強調した。中国政府の統計によると、17年のEVとPHVの世界販売台数は142万台。このうち中国は55%を占め78万台と2位の米国の約3.5倍に相当するという。メーカー別でも13万台の比亜迪(BYD)のほか北京汽車と浙江吉利控股集団の年間販売が10万台規模に達した。先進国メーカーでは米テスラが10万3千台で日産自動車は7万3千台。中国勢の販売は大半が現地だが物量の実績で日米欧メーカーに優位に立っている。中国政府は大気汚染や渋滞の対策としてガソリン車の規制を強め、市場が広がった。これを受け現地大手がこぞってEVやPHVに参入し完成車や専用部品を手掛ける300社ものスタートアップが勃興している。将来の基幹産業の芽が育ち、苗●(つちへんに于)・工業情報化相は「市場としての世界一は3年連続だ」と胸を張る。19年にはEVやPHVで一定比率の生産を義務付ける。巨大市場をバックに外資が技術を持ち込まなければ売らせないという得意の誘導策を持ち出した。EVなどで一定比率を生産できないメーカーはクリアしている競合の余剰分を「クレジット」として買い入れないとガソリン車の生産制限を受ける可能性がある。EVの現地生産で出遅れれば成長が難しくなる。一方、50%までとしている自動車メーカーへの外資出資ルールは22年までに全廃する。目指すのは米テスラをはじめとするEVメーカーの誘致だ。規制の強化と緩和の両面の取り組みで中国にEV工場を引き込もうともくろむ。「ガソリン車では外資にかなわなかったがEVでは接近した勝負になる」。工業情報化省幹部は言う。部品点数が減るEVでは先進国メーカーと横一線で開発をスタートできると読む。多くの中国メーカーは出資規制緩和で外資と競うようになる。自動車ショーでは中国勢がその水準に達しているか否かを世界の競合が見定めようとしている。

*6-2:http://qbiz.jp/article/132575/1/ (西日本新聞 2018年4月25日) 世界初、電動船ワイヤレス充電 安川電機が開発 プラグ接続不要、煩雑さ軽減
 安川電機(北九州市)は24日、電気で動く「電気推進船」向けの非接触型(ワイヤレス)充電システムを世界で初めて開発したと明らかにした。欧州を皮切りに中国などで本格販売を始める。二酸化炭素(CO2)削減を目的とした欧州の環境規制などで電気推進船の導入拡大が見込まれており、充電システムを含む船舶関連事業を新たな収益事業の一つに育てる構えだ。電気推進船はバッテリーにためた電気で動く「電気タイプ」と、重油などを使い船内の発電機でモーターを動かす「ハイブリッドタイプ」があり、同社のシステムは電気タイプ向け。港の岸壁に送電設備を設置し、受電設備のある船が近づくと、電気を供給する仕組み。バッテリーに充電して推進用のモーターを動かすほか、船内の照明や空調などの電気設備に利用する。現在は岸壁の充電スタンドからプラグを接続して給電しており、システム導入で充電の煩雑さの軽減が図れる。国土交通省によると国内の電気推進船は現在33隻。ディーゼルエンジンの船舶に比べ揺れが少ないため、多くが旅客船として活用されているという。環境面に加え、大型のエンジンが不要で船内の空きスペースが増えるなどのメリットもあり、欧州や中国でも小、中型の観光船や貨物船に導入され、大型化に向けた研究開発も進んでいる。安川電機は2020年に欧州で船舶に対する排ガス規制が強化されるため、電気推進船の導入が進むと予想。16年に買収したフィンランドの船舶エンジン機器メーカー「バルチラ社」の船舶用電気推進装置部門のノウハウと、自社のコンバーター技術を融合させ、今回の充電システムを開発したという。18年2月期に10億円弱だった船舶事業売上高を、21年2月期には80億円まで伸ばすことを目指す。扇博幸システムエンジニアリング部長は「技術を強みに競争力を高め、新たな分野を開拓していく」と話した。

*6-3:http://qbiz.jp/article/132599/1/ (西日本新聞 2018年4月25日) サウジ、石油外収入1.2兆円 脱依存へ数値目標
 サウジアラビア政府は24日、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の指揮下で進める脱石油依存の経済改革で、国営企業の民営化などにより2020年までに石油以外の収入として90億ドル〜110億ドル(約9800億〜1兆2千億円)を達成することを柱とする計画文書を発表した。ロイター通信などが報じた。サウジ政府は世界最大の石油企業である国営サウジ・アラムコの新規株式公開を目玉に、石油依存からの脱却を目指す経済構造改革「ビジョン2030」を推進中。今回の文書は20年までの数値目標を示しており、最大1万2千人の雇用創出も盛り込んだ。

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2018.3.9~11 働き方改革・雇用・人口減少など (2018年3月12、15、17、19、20、21日に追加あり)
(1)働き方改革・裁量労働制・高度プロフェッショナル制度について

    
   2018.1.22日経新聞     2017.8.24、2018.2.15東京新聞 2018.2.24佐賀新聞

1)裁量労働制について
 「裁量労働制は、i)平均的な方で比べれば ii)一般労働者より勤務時間が短い というデータもある」等と政府は答弁してきたが、*1-1-1のように、i)の「平均」は、統計的に求めた平均値でも最頻値でもなく(この統計学は小学校で勉強済)、企業が勝手に選んだ者だった。また、ii)の根拠となったデータは、裁量労働制で働く労働者と一般労働者への質問内容が異なり、比較できるシロモノではなかった。

 これに対して、日経新聞は、*1-1-2のように、「①政争している場合か」「②一人ひとりの能力を最大限に生かし、生産性を高める多様な働き方ができる土俵づくりを急がなければならない」「③日本の1人当たり労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国の中で21番目と欧米諸国に劣後したままだ」「④反対があるから延期するでは、あまりに稚拙」等と反論した。

 確かに、誰かを辞めさせるための政争の具としてのみ追及する党には眉をひそめる点もあるが、重要なのは、本当に裁量労働制の下で働く労働者が一般労働者よりも仕事の進め方や労働時間を自分で工夫でき、モチベーションが上がって生産性を上げられているかどうかである。これについては、経産省・経団連など企業側の要請で裁量労働制を拡大するために、厚労省が故意に結果ありきの非科学的な調査をしたことが明らかで、裁量労働制を拡大すれば本当に労働生産性が上がるわけではない。そして、小学校でも習うような統計を国会議員も中央省庁の役人も理解しておらず、議論のツールにできていない状態こそが、日本の労働生産性の低さを招いているのである(ちなみに、医学・薬学の分野では、当然のこととして正確な調査と統計処理を行うため、私はじめ医学部卒の人なら、30分も話を聞けばいい加減な調査をしたことがわかる)。

 そして、安倍首相は、*1-1-3のように、裁量労働を巡る残業データに異常な数値117件が見つかった問題を受け、衆院予算委員会で聞き取った1万件超の全データを再精査すると表明されたが、これは、データの誤入力や聞き取りミスのような小さなミスではなく、調査そのものが真実を知る目的で科学的に設計されたものではないという大きな問題であるため、やるとすれば科学的に設計した調査をやり直さなければならないのだ。

 そのため、この状況は、加藤厚労大臣が引責辞任すればすむような問題ではなく、法律を変更すればよりよくなるという実証もないのに変更して改悪する事例で、国民の経済活動を政府が邪魔しているものだ。加藤厚労相は東大法学部卒で大蔵省出身の典型的なエリートだが、それでも、いい加減な調査に基づいた効能より害の方が大きそうな法律変更であることを理解してストップをかけることができなかったのだから、首相や担当大臣を変えればすむような問題ではなく、他の人がやっても同じかそれ以下のことしかできないかもしれないという問題なのである。

 これは、東大はじめ、他国の法律を翻訳することしかやってこなかった法学部教育に問題があるからで、多くの官僚を出している東大は、事実を正確に調査・分析してから法律変更する法学部教育に率先して改めるべきである。そして、これは、事実の科学的調査と法律の変更、法律変更後の影響のフォローアップなどを卒論で経験させれば簡単にできるものだ。

 そのため、私は、*1-1-4の佐賀新聞の「裁量労働制を削除して、議論を一からやり直せ」という佐賀新聞の記事が正しいと考える。また、高度プロフェッショナル制度も、本当に仕事の進め方や労働時間を自分で管理できる人だけが対象になっているわけではないため、なくすのがBetterで、現在の労基法のように自ら仕事を管理できる立場の管理職に残業手当がつかなければ十分だろう。

2)高度プロフェッショナル制度について
 高度プロフェッショナル制度の対象も、①研究開発・金融・コンサルタントなどの高度な専門的知識を要する業務に就く年収1075万円以上の労働者で ②労働者本人が希望し ③職務の範囲を明確にする などの要件をみたせば、労働者が労働時間管理の対象から外れる制度だ。

 しかし「高度な専門的知識を要する業務に就く年収1075万円以上の労働者だから、必ず経営者との交渉力があって希望が通る」とは限らない。また、何故、研究開発・金融・コンサルタントを、高度な専門的知識を要する業務と定義したかも不明だ。

 つまり、“高度な専門的知識を要する業務”としたことで納得したような気になっている人が多いが、これら専門職の人も最初から高度なわけではなく、仕事をしながらOn the job trainingを積んで次第に高度になっていくものだ。その典型例は、*1-2-1の医師で、医師国家試験を通ったからといってすぐ高度と言えるわけではなく、多くの事例に遭遇しながら先輩医師の指導を受け、経験を積み重ねることによって、次第に“高度”になっていくものである。

 そのため、私は、年収要件をつけ職業の特定をしたから残業代は0でよいというのは間違いで、*1-2-2のように、生産性を重視する経済界の要請で2015年4月に国会提出された高度プロフェッショナル制度は、働く人の視点に立てば働き方改革法案から削除すべきだと考える。

3)では、何が不十分なのか
 労働基準法は、第2次産業の労働者を主な対象として昭和22年に制定された法律で、当時はベルトコンベアーで運ばれてくる部品を組み立てるなど労働時間と成果が一致する働き方をしている人が多く、状況に合っていた。しかし、そうでない労働者が増えた現在では、能力評価の視点も加わり、労働時間の長さではなく成果で労働者の待遇を決めるニーズが増えたということに、私も賛成だ(https://bengoshihoken-mikata.jp/archives/1568 参照)。

 しかし、成果によって労働者の待遇を決めるために必要なことは、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度のような残業代を0にする法律ではなく、公正に実績を評価して賃金や昇進に反映させる仕組みだ。しかし、日本人は、自ら経験のない人が多いせいか、上から下まで公正な実績評価を苦手とする場合が多く、(3)3)で書くとおり、うまく機能しないのである。
 
(2)人口減少と労働力


     世界の人口       日本の人口推移   老齢年金の額  働きたい高齢者

 「少子化の影響により、産業界では現役世代の人口減少が既に深刻な労働力不足をもたらしている」「対処法としては、①ITなどによる省力化 ②国内の潜在労働力の活用 ③外国からの移入 の3点が挙げられる」と、*2-1で、西日本新聞が記載している。

 しかし、これまでは、生産年齢人口の男性のポストを増やすために、分けない方がよい職務を細切れに分け、女性や高齢者を何とか辞めさせようとし、外国人に門を閉ざしてきたのだ。そのため、まず、65歳定年制を無くして働きたい人は働けるようにすれば、支える側から支えられる側に移る人が減るとともに、健康寿命が延びて医療費・介護費の増加を抑制できる。

 また、細かすぎる職務の区割りを適切にして、もう少し広い視野で仕事ができるようにすべきであるとともに、これまで女性は働かない方がよいかのように言われ、専業主婦への不可逆的移動圧力が社会的にあったが、働きたい女性が気持ちよく働ける社会環境を作れば、労働力不足の解消に確実に役立つだろう。

 さらに、現在は、外国人労働者なしでは日本社会は回らなくなったと言われるほどだが、地球全体は人口が増えすぎて困っている状況であるため、日本は入国した外国人労働者を正規の労働者と認めて労働基準法を適用すべきだ。そして、高齢者・女性・外国人労働者などの多様な人材が活躍している方が、それらの人々のニーズを知ってビジネスに繋げやすいのである。

 なお、*2-2のように、九州生産性本部は、「2017年度 人事部門の抱える課題とその取り組みの実態調査」の結果、「企業や団体が直面している課題は優秀な人材の確保・定着」「人手不足が深刻」と回答した割合がどちらも70%前後あったことを明らかにした。その影響は、「技術継承ができない(55.8%)」「商品・サービスの質の低下(29.6%)」「失注の増加(22.6%)」などだそうだ。

(3)これまで労働市場から締め出していた潜在労働力の活用
1)高齢者の雇用
 政府は、*3-1のように、高齢者施策の指針となる高齢社会対策大綱を閣議決定した。その内容は、65歳以上を一律に高齢者とみることをやめ、公的年金の受給開始時期を70歳超も選択できるようにし、高齢者の就労を促すことを狙って、年齢にかかわらず柔軟に働ける環境を整備することだそうだ。

 しかし、65歳を過ぎてから新規雇用・再雇用される高齢者の70%がパートなどの非正規で、正規は女性19%、男性35%しかいない。これでは、高齢者が安心して気持ちよく働ける状態からは程遠く、それさえ改善すれば働いた方が年金を受給するよりも高額の所得を得られるため、高齢者も文句はないだろう。それより、「高齢者=不健康」「高齢者=ボランティア活動で満足すべき」などと決めつけるのは、年齢による差別である。そして、社会貢献する必要がある人に年齢制限はなく、慣れた仕事を通した社会貢献が最も強力である。

 また、九州経済調査協会は、*3-2のように、九州のニュータウンの調査を行い、2015年の高齢化率(65歳以上)は20.8%で、九州全体の高齢化率28.0%は下回ったが、30%を超えるニュータウンも少なくなく、再生に向けた支援や取り組みが必要だとした。古い「ニュータウン」は便利な場所にあり、似たような世代の人が購入しているため、保育・教育・介護などのニーズが一斉に変化するのが特徴だ。しかし、訪問診療・訪問看護・訪問介護は、同じニーズの人が集まった場所の方が効率的にできるため、便利な場所にあるニュータウンは、容積率の制限を緩和して高さを増し、従来の住民は無料で新築に住み替えることができる形で建て替えて、新たな住民も募集してはどうかと、私は考える。

2)女性の雇用


 2018.3.7 2018.2.28 2017.12.25  65歳以上の介護保険料  大学別平均年収
    日経新聞      東京新聞

 世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数について、*4-1のように、日本弁護士連合会会長が「①日本は、調査対象144カ国中114位と前年より順位を落とした」「②日本は、健康1位、教育74位という女性の現状よりも、経済114位、政治参画123位など女性の地位で順位が低い」「③特に国会議員の男女比は129位、閣僚の男女比は88位と大幅に低いが、女性の政治参加は、あらゆる分野における女性の地位向上の必須条件である」「④経済は若干改善したものの、給与格差、管理職や専門職での男女比が100位以下と低い」「⑤女性活躍推進法の完全施行で女性活躍は大きなうねりになった」等の談話を公表している。

 このうち①②③④については、他国は本気で努力しているのに、日本は「形だけ」や「やっているふり」をしている地域・職種が多いため、次第に置いて行かれたものである。また、⑤については、(私が資料を付けて手紙で頼んだ)安倍首相はじめ何人かの国会議員の力が大きい。

 さらに、*4-2のように、政府が上場企業に女性取締役の起用を促すため、改定予定のコーポレートガバナンス・コードで取締役会に女性がいない企業は投資家に理由を説明するよう求めたのはよいことだが、こうすると、*4-3のように、候補者が少ない(又は、いない)という言い訳が必ず出てくる。

 しかし、最初の男女雇用機会均等法施行は1985年で、男女の雇用機会均等を努力義務から義務に変更した改正男女雇用機会均等法施行は1999年であるため、現在も女性取締役候補者が少ないと言う企業は、最初の14年間は女性を育てる努力をせず、後の19年間は脱法行為をしており、その間、労働基準監督署もそれを見て見ぬふりしていたということになる。

 なお、女性に取締役となる資質がないわけでないことは、他国との女性取締役比率の比較を見れば明らかで、日本では、能力ある女性もさまざまな社会的圧力や社会環境によって昇進を妨げられたり、離職したりしたのだということを、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数は物語っているのである。

 しかし、女性が取締役となる資質を有するには、仕事を継続して男性と同レベルの知識や経験を有していなければならず、その妨げになっているのは、*4-6のような保育所・学童保育施設の不備、*4-4のような介護負担による離職などだ。つまり、女性に家事負担を押し付け、その家事負担を支えるインフラは心もとないわけである。

 にもかかわらず、*4-5のように、「40歳以上からしか介護保険料を徴収しない」「高齢者の介護保険料を上げる」「介護サービスを減らす」などと言うのは、自分は介護を担当しないと考えている男性の視点であり、まさに国会議員や閣僚に女性が少なく、女性のニーズを政治に織り込めていない例になっている。

3)成果主義(=能力主義)の採用について
 それでは、0歳から保育所に預けられた子どもの発育は、祖父母・父母・叔父・叔母などを含む家族が見ていた場合と比べてよいか否かについては、(私は、3歳児神話を信じているわけではないが)1人の子どもを複数の家族が暖かいまなざしで見守っている場合と複数の0歳児を保育士が仕事で見守っている場合では、その子の注目のされ方・愛情の与えられ方・手のかけられ方は違うと考える。

 その違いが子どもに与える影響は、正確な調査をしなければわからないが、やり方によっては、家族ではできないプロの教育を保育所・幼稚園・児童館などはできる可能性もあるため、子どもにとってどれが一番よいかは、場合によって異なるだろう。

 そのような中、女性は出産や夫の転勤を機に離職や転職を迫られることが多いので、*4-7のように、勤務年数ではなく公正な成果の測定による「成果型(=実績主義or能力主義)」で給料を払ってもらわなければ大損なのである。一方、男性は、1つの会社で勤め上げることが可能な人が多いため、年齢が高くなるほど年功序列型が得なわけだが、それができるなら女性も年功序列の方が楽でよいに違いない。

 しかし、公正に成果を測定して「成果型(=実績主義or能力主義)」で給料を支払う仕組みこそが、労働者を年齢・性別・学歴・国籍などの属性で決めつけずに、高齢者・女性・外国人が気持ちよく活躍できる社会を作るための必要条件なのである。なお、転勤が多い人は、いつも慣れない仕事をしているため、本当は労働生産性が低いと思われる。

(4)外国人労働者の雇用
 厚労省は、2018年1月26日に、*5-1のように、「2017年10月末時点の外国人労働者数が127万8,670人で、日本の雇用者総数の約2%を占める水準だった」と発表した。国籍は、中国が全体の29.1%、ベトナムが18.8%、フィリピンが11.5%で、立場は技能実習生と留学生が多く、専門的・技術的分野もいたそうだ。

 日本の外国人労働者の受入体制は遅れており、政府は単純労働者の受け入れを認めていないが、私は、企業・農協・漁協・森林組合・人材派遣会社等を通して、雇用のある単純労働者を受け入れれば、海外に出てしまった第一次・第二次産業を地方で再生することも可能だと考える。

 そのような中、政府は、*5-2のように、国家戦略特区に指定した新潟市、愛知県、京都府で外国人の農業就労を解禁する方針を固めたそうだが、「①国家戦略特区のみに限定」「②1年以上の農業実務経験が必要」「③農業に関する専門知識や技術を持つことも条件」「④受け入れる人材は、農作業に必要な日本語を話せる外国人」「⑤受入期間3年以内」などの規制をするそうで、本当に受け入れる姿勢とは思えない。また、独立して農業をやるわけではなく、企業・農協・農業生産法人などの従業員として農業やその関連産業に従事するのであれば、この①~⑤は、双方のニーズに合わない規制だ。

 ただ、合計特殊出生率が2016年で1.44人の日本人の中に同出生率が3~6人の異民族が移住してくると、次世代は2~4倍の割合になる(例えば、1世代目が10%なら2世代目は20~40%になる)。これは米国で実際に起こっており、ドイツのメルケル首相も難しい立場に立たされている事象であるため、移住総数や出生率には注意しなければならないだろう。

<働き方“改革”・裁量労働制・高度プロフェッショナル制度>
*1-1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13368806.html (朝日新聞社説 2018年2月21日) 裁量労働制 政府の説明は通らない
 もともと比べられないデータを比べ、国会で説明したのはまずかった。しかし政策の中身には影響がないから、法案は予定通り、近く国会に出す。安倍首相の国会答弁とその撤回を巡って論戦が続く裁量労働制の適用拡大について、政府の姿勢をまとめれば、こうなる。こんな説明は通らない。野党が求める通り、政策論議の基礎となるしっかりしたデータをそろえてから議論するのが筋だ。問題となっているのは、あらかじめ定めた時間を働いたとみなす裁量労働の人と、一般の労働者の1日の労働時間を比べたデータだ。「裁量労働制の拡大は長時間労働を助長しかねない」と懸念する野党に対し、首相は1月末の国会答弁でこのデータに基づき「平均的な方で比べれば一般労働者より短いというデータもある」と反論した。しかし、裁量労働の人と一般労働者では質問内容が異なり、両者は比較できないものだった。厚生労働省によると、調査の担当者とは別の職員が15年に野党への説明資料として作り、国会審議でも使われてきた。あくまでミスだったという。だが、こんな重要な資料を大臣に報告もせず職員が勝手に作るとは、にわかに信じがたい。誰の指示で、どんな意図で作られたのか。徹底的に解明することが不可欠だ。問題となった比較データそのものは、裁量労働制拡大を検討した厚労省の労働政策審議会には示されていない。従って法改正を進めることに問題はない。政府はそう強調する。しかし政府はこのデータを、長時間労働への懸念に反論する支えとしてきた。誤った説明を繰り返し、賛否が分かれる論点の議論を尽くさずにきたこと自体が、大きな問題である。疑問に答える先頭に立つべきは、行政の責任者である首相だ。裁量労働を広げても心配ないと言わんばかりだった基本認識が問われる。ところが首相は「厚労省から上がってきた答弁(案)にデータがあったから、紹介した」「すべて私が詳細を把握しているわけではない」と、ひとごとのようだ。データ比較は不適切だと厚労省が認識したのは、最初の首相答弁から4日後の今月2日。7日には加藤厚労相に報告されたのに、首相が答弁を撤回したのは14日だった。2週間近くも問題が放置されたことになる。政府の対応はあまりに鈍く、国会軽視もはなはだしい。こんな状況で、法案を国会で審議するわけにはいかない。政府に再考を求める。

*1-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180222&ng=DGKKZO27219470R20C18A2EA2000 (日経新聞 2018年2月22日) 政争している場合か
 なぜこうも時間ばかりが費やされるのだろうか。政府は野党の反発を踏まえて働き方改革関連法案を修正し、裁量労働制の拡大など大半の制度の施行を1年遅らせる検討に入った。日本は人口減で働き手が減る。人工知能(AI)の登場で従来通りの働き方は通用しなくなる。一人ひとりの能力を最大限に生かし、生産性を高める多様な働き方ができる土俵づくりを急がなければならない。働き方改革を政争の具にしている場合ではない。日本生産性本部によると、日本の1人当たり労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国の中で21番目と欧米諸国に劣後したままだ。そんな状況にもかかわらず、裁量労働制の拡大も脱時間給制度導入も3年前の国会で提案されながら、審議もされずにずるずると今に至っている。野党などの「かえって長時間労働を助長する」といった批判が強かったためだ。そのような声には長時間労働を防ぎ、労働者の健康を守る仕組みづくりで対応するのが筋。「反対があるから延期する」では、あまりに稚拙ではないだろうか。仕事の進め方や労働時間を自分で工夫し、モチベーションを上げ、生産性を上げられる人は少なくないはずだ。そういう人たちには制度面で後押しし、日本の成長につなげる必要がある。マイナス面を是正し、プラス面を生かす議論こそが求められている。働き方改革の法案には長時間労働の是正や同一労働同一賃金なども盛り込まれている。「多くを詰め込んだ一つの法案にまとめるのは乱暴」との批判もあるが、世界的に進む大きな環境変化に、大きな対応の素地をつくっておくのは間違いではない。すべての世代が性別に関係なく、生き生き働ける環境は欠かせない。改革に「待った」をかけ続けるだけでは何も進まない。

*1-1-3:https://mainichi.jp/articles/20180223/k00/00m/010/124000c (毎日新聞 2018年2月22日 ) 裁量労働制:安倍首相「全データ1万件超を再精査」
衆院予算委で表明 加藤厚労相の引責辞任を否定
 安倍晋三首相は22日の衆院予算委員会の集中審議で、裁量労働を巡る残業データに異常な数値117件が見つかった問題を受け、個々の事業場から聞き取った1万件超の全データを再精査すると表明した。加藤勝信厚生労働相の引責辞任は否定し、裁量労働制の拡大を含む働き方改革関連法案を今国会へ提出する方針も変えないとした。一方で加藤氏は、法案の内容を「妥当」と結論づけた厚労省の労働政策審議会(労政審)で、一般労働と裁量労働の労働時間を比べた議論はしていなかったと明らかにした。「長時間労働が問題だという認識は、(労政審の)各委員にあった」と釈明したが、裁量労働制の拡大に反対する野党は「根拠のない法案だ」と撤回を要求。政府が月内を予定した法案の提出は3月以降にずれ込む見通しだ。首相は予算委で、異常なデータについて「改めておわびする」と陳謝。データの基になった調査票が厚労省の倉庫から発見されたことを受け、「調査票と(それを基に)入力したデータを突き合わせ、精査しなければいけない」と述べた。再精査の期限は「1万件以上あり、いつまでにとは言えない」とした。加藤氏は調査票の現物を国会へ提出する考えを示した。問題になった「2013年度労働時間等総合実態調査」は、全国の1万1575事業場から労働基準監督官が聞き取りなどを実施。厚労省は21日に異常な数値が117件(87事業場)見つかったと発表した。野党は働き方改革法案が「間違ったデータに基づいていた」とし、労政審で議論をやり直すよう要求。だが加藤氏は「(異常があったのは)主たるデータではない。全体として結論は変える必要がない」と拒否した。 予算委では与党議員からも、「(首相が答弁を撤回した)性格の異なるデータ比較は極めて不適切だ。猛省を促す」(公明・佐藤茂樹氏)と政府の対応に批判が相次いだ。首相は法案に盛り込む裁量労働制の拡大に関し、(1)労使の合意や労働者本人の同意が前提(2)みなし労働時間と実態がかけ離れた場合は、適切に指導する(3)対象を限定し、営業職全体に広がるという懸念を払拭(ふっしょく)する--などとして理解を求めた。

*1-1-4:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/187727 (佐賀新聞 2018年3月2日) 裁量労働制の削除、議論を一からやり直せ
 政府が今国会の最重要法案と位置付ける働き方改革関連法案を巡り、安倍晋三首相は「不適切データ」の発覚によって批判が噴出した裁量労働制の拡大を削除すると正式に表明した。骨格部分の切り離しは政権への大きな打撃となるが、世論の反発が強まれば、9月の自民党総裁選での連続3選に影響すると判断したとの見方も出ている。裁量制拡大は罰則付きの残業時間規制、非正規労働者の処遇改善に向けた同一労働同一賃金、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度(高プロ)と並ぶ4本柱の一つ。政府は残り三つの柱は維持して今国会に法案を出し、成立を目指す方針を変えていない。だが裁量制の断念で法案に対する不信や不安は拭いがたいものになった。もともと8本の法案を一本化し、労働環境の改善に資する規制の強化とともに緩和も実現させようというやり方に野党や労働組合は強く反対していた。さらに規制強化について、経済界の要望から中小企業の残業規制を1年延期する修正案が用意されるなど改革の後退に不満が募っている。残業規制が施行後5年間猶予される医師や建設業労働者らの懸念も根強い。裁量制を除外してしまえば、あとは予定通りにというわけにはいかない。規制強化と緩和の切り離しも含め、議論を一からやり直すべきだ。実際に働いた時間ではなく、あらかじめ決められた時間に基づいて賃金を支払う裁量労働制の対象業務拡大を巡っては野党が「長時間労働を助長し、過労死を増やしかねない」と批判。安倍首相は1月末に厚生労働省の裁量労働データを持ち出して「裁量労働制で働く人の労働時間は一般労働者より短いというデータもある」と反論した。ところが野党の追及で、一般労働者に「1カ月で最も長く働いた日の残業時間」を聞き、裁量制で働く人には単に1日の労働時間を尋ねるという不適切な調査手法が明らかになり、首相は答弁を撤回。その後も「異常値」が次々に発覚した。政府が盛んに強調した裁量制の労働時間縮減効果を支える根拠が崩れたのだから、今回の削除は当然だ。ただ問題はまだまだある。まず野党が「残業代ゼロ法案」と批判する高プロの導入。高収入の金融ディーラーや研究開発職などは時間外労働をしても割増賃金をもらえなくなるが、どれくらいの人に影響が及ぶのか、はっきりしない。サービス残業の実態についても厚労省は調査していない。さらに働く人のためになるはずの残業規制では、中小企業に限って適用を1年延期する修正案が先に厚労省から自民党に提示されている。やはり中小の同一労働同一賃金や残業代割増率引き上げも遅らせる。「人手不足に残業規制が重なると、労働力が確保できなくなる」との経済界の訴えが反映された。もう一つ忘れてはならないのは、医師や建設業労働者は残業規制の適用が施行後5年間猶予されることだ。厚労省の調査でも医師は長時間労働を余儀なくされ、建設業については2020年東京五輪・パラリンピックに向け労働環境が厳しくなることが予想される。どうすれば、過重労働や過労死をなくせるか、本当に働く人のためになるのかという根本に立ち返り、制度設計について議論を尽くすべきだ。

*1-2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201802/CK2018022402000152.html (東京新聞 2018年2月24日) 医師の長時間労働 特定機能病院7割に勧告
 大規模病院で違法残業や残業代の未払いが相次ぎ発覚している問題で、高度医療を担う全国八十五の特定機能病院のうち、七割超の六十四病院で労働基準法違反があったとして労働基準監督署が是正勧告し、少なくとも二十八病院に複数回の勧告をしていたことが二十三日、明らかになった。共同通信が二〇一三~一七年の関係資料を入手した。藤田保健衛生大病院(愛知県)など五病院に関しては勧告が四回繰り返され、労使協定(三六協定)の未締結や労基署への無届けを指摘された病院も六病院あった。勤務医らの長時間労働の根深さが裏付けられ、医師の働き方改革の議論に影響がありそうだ。勧告を受けた病院や運営法人の中には、三六協定の上限時間を引き上げることで違反状態を解消しようとする病院もあった。がん研究会有明病院(東京都)を運営するがん研究会は、三六協定に基づく医師の残業上限(月八十時間)を超える残業をさせたなどとして一六年十二月に勧告を受け、「過労死ライン」とされる百時間を大幅に上回る百五十五時間を上限とする協定を結び直していた。四回の勧告があったのは藤田保健衛生大、奈良県立医大、山口大、愛媛大、長崎大の各病院。長崎大病院は、時間外労働に関する労使協定の上限時間(月八十時間)を超える月九十五時間の残業をさせたなどとして一三年三月に是正勧告を受け、一七年六月までほぼ毎年、違法残業か割増賃金の未払いで勧告を受けた。未払い分は既に支払ったという。藤田保健衛生大のほか、千葉大、日本医大(東京都)、横浜市立大、京都府立医大の各病院と静岡県立静岡がんセンターは、医師らとの間に三六協定を結んでいなかったり労基署に届け出ていなかったりしたにもかかわらず残業させたとして勧告を受けた。いずれも現在は協定を結び、届け出もしているとしている。医師の長時間労働は、診療の求めを原則拒めないと医師法が規定する「応召義務」も一因とされ、厚生労働省の検討会が在り方について議論。患者への説明など一部の業務を他の職種に任せるタスク・シフティング(業務移管)の推進を柱とした緊急対策をまとめた。
◆是正勧告を受けた関東の21特定機能病院
【東京】
杏林大学医学部付属病院
慶応義塾大学病院
がん研究会有明病院
昭和大学病院
帝京大学医学部付属病院
東京医科歯科大学医学部付属病院
東京医科大学病院
東京慈恵会医科大学付属病院
東京大学医学部付属病院
東邦大学医療センター大森病院
国立国際医療研究センター病院
日本医科大学付属病院
日本大学医学部付属板橋病院
【神奈川】
北里大学病院
横浜市立大学付属病院
聖マリアンナ医科大学病院
東海大学医学部付属病院
【千葉】
千葉大学医学部付属病院
国立がん研究センター東病院
【栃木】
独協医科大学病院
【茨城】
筑波大学付属病院

*1-2-2:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20180302/KT180301ETI090007000.php (信濃毎日新聞 2018年3月2日) 働き方改革 高プロ創設も切り離せ
 安倍晋三首相が今国会に提出予定の働き方改革関連法案から、裁量労働制の対象拡大の部分を切り離すことを決めた。実際の労働時間に関係なく、あらかじめ決めた時間を働いたとみなし、賃金を支払う制度である。労働時間に応じた残業代を支払う必要がないため、長時間労働を招く懸念が付きまとう。政府は裁量制で働く人たちの労働時間や業務量の変化などを調査せずに、対象拡大を法案に盛り込もうとした。影響が不明のまま審議することはできない。法案作成に使った厚生労働省の調査も、調査目的が違う上、大量の異常値が見つかった。法案から切り離すのは当然だ。安倍首相は裁量制の実態調査を実施する方針を示している。慎重かつ厳密に行わなければならない。厚労省調査のデータ異常の原因を突き詰め、手法を改善しなければ信頼性は保てない。調査結果だけでなく、すべてのデータも最初から公表するべきである。関連法案には容認できない点がまだ残る。最大の問題は「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」創設である。労働基準法上、労働時間の上限は週40時間、1日8時間とされ、超えた場合は時間外労働として残業代を支払う必要がある。残業代には働かせすぎた会社に対するペナルティーの意味がある。高プロは、収入1075万円以上で「高度な専門的知識を必要とし、労働時間と成果の関連が高くない」仕事の人を、この規制から外す。安倍首相は「柔軟な働き方を可能にする」と述べている。果たしてそうだろうか。どんな長時間労働も労働者の判断として扱われ、残業代はない。企業の刑事責任が問われる範囲は狭くなる。会社から過大な成果や仕事を求められる心配もある。法案に設けられている健康確保措置も十分ではなく、過重労働に歯止めがかからないだろう。経営者には年収要件の引き下げを求める声もある。導入後、対象が拡大していく懸念は拭えない。高プロ創設は、生産性を重視する経済界の要請で2015年4月に国会提出された。過労死を増やすとして野党が反対し、審議入りが見送られてきた経緯がある。単独では難しいからといって、労働団体が要望してきた残業規制などとセットにして成立を図るのは認められない。安倍首相がいう「働く人の視点に立つ働き方改革」が真実なら、法案から削除するべきである。

<人口減少と労働力>
*2-1:https://mainichi.jp/articles/20180109/ddm/005/070/038000c (毎日新聞社説 2018年1月9日) 論始め2018 人口減少と労働力 従来の枠組みを超えよう
 2017年に生まれた子どもは推計94万人で、過去最少となった。死亡数から出生数を引いた「自然減」は40万人を超える。これはまだ序の口で、25年には64万人、40年は89万人、60年には94万人が1年間に減っていく。人口の少ない県や政令市が毎年一つずつ消えていくようなものだ。産業界では現役世代の人口減少がすでに深刻な労働力不足をもたらしている。20年には416万人が不足するとの試算もある。従来の枠組みを超えた取り組みが必要だ。労働力不足への対処法としては、(1)ITなどによる省力化(2)国内の潜在労働力の活用(3)外国からの移入--の3点が挙げられる。ITを使った事務の省力化は医療や介護の現場でも少しずつ進んでいる。膨大な情報を瞬時に処理できる人工知能(AI)や、力仕事を人に代わって行うロボットも期待される。しかし、AIやロボットでは置き換えることが難しい仕事も多い。
●「65歳定年」の見直しを
 現在は働いていない高齢者や専業主婦は貴重な潜在労働力だ。各種統計で使われている「生産年齢人口」(15~64歳)は、50年には約2500万人も減るとされている。しかし、「生産年齢」と言っても、現在は10~20代前半で働いている人は少ない。むしろ65歳を過ぎても働いている人の方が多い。今後も65歳以上の人口は増えていく。日本人の健康寿命は延びており、65歳で定年とする制度や慣行の見直しが必要ではないか。元気で働く意欲のある高齢者、高学歴で専門職のキャリアがありながら育児や介護のため離職している女性などが働けるようになれば、労働力不足の解消に大きく貢献するだろう。自宅や近くのオフィスで働くテレワークを導入する企業も増えている。さまざまな事情で通勤が難しい人の活用も進めていくべきだ。問題は外国人労働者である。一昨年、日本で働く外国人は初めて100万人を超えて108万人となった。特に多いのがアジア諸国からの技能実習生や就労目的の留学生だ。技能実習生は約21万1000人、留学生は約20万9000人で、それぞれ前年より25%も増えた。都市部のコンビニ店ではアジア系留学生の働く姿がよく見られる。彼らの存在なしでは日本の社会は回らなくなったと思えるほどだ。技能実習制度は「開発途上国への技能移転」を名目に1993年に始まった。小さな繊維関係の会社や農業・漁業などで働く人が多い。一部を除けば、日本人がやりたがらない過重労働や危険な仕事を担っており、労働者としての権利保障の枠外に置かれているのが実態だ。実習生はブローカーに多額の仲介料や保証金を取られる上、日本に滞在できるのは原則3年。決められた会社でしか働けないため、低賃金で劣悪な職場環境に不満があっても転職ができない。
●矛盾多い外国人労働者
 こうした技能実習制度は国内外から強い批判を浴びてきた。政府は受け入れ期間の3年から5年への延長、実習生からの保証金や違約金の徴収禁止などに取り組んでいる。17年には「外国人技能実習機構」を新設し、実習計画のチェックを厳しくすることにした。それでも政府の基本姿勢は、日本への定住は認めず、安価な労働力として活用する、という枠内にとどまっている。生活習慣や宗教・文化の異なる集団が大量に国内に流入し、定住することで生じる摩擦を警戒する意見は根強い。労働力不足を補うために拙速な政策変更を行えば混乱が生じることにもなるだろう。ただ、現行の技能実習や留学の制度は、本来の目的とかけ離れている。働き手不足を補ってくれる貴重な戦力なのに、制度の隙間(すきま)で使い捨てにしているのも同然ではないか。少なくとも、労働者として認められる最低賃金や労働時間のルールを実習生らにも適用すべきである。最近では中国沿岸部の上海など、日本より賃金が高い都市も出てきた。韓国やタイで働くベトナムやミャンマーの労働者も増えている。このままでは日本を訪れる外国人労働者はいなくなるのではないか。日本の社会が人口減で縮小し、活気を失わないためには、これまでの発想を変えるべきだ。高齢者や女性、外国人労働者など多様な人材が活躍できる社会を目指したい。

*2-2:http://qbiz.jp/article/129128/1/ (西日本新聞 2018年3月3日) 7割が人手不足「深刻」 九州生産性本部調査 技術継承に懸念
 九州生産性本部(会長=田中優次西部ガス会長)は2日、2017年度「人事部門の抱える課題とその取り組みの実態調査」の結果を発表した。企業や団体が直面している課題として最も多かったのは「優秀な人材の確保・定着」の69・1%で、人手不足について「深刻化している」「やや深刻化している」と回答した割合も70・7%に上った。調査は昨年11〜12月、九州7県の企業・団体を対象に実施し、328件の回答を得た。人手不足が「深刻化」「やや深刻化」と答えた企業・団体に、その影響を尋ねると「技術継承ができない」(55・8%)が最も多く、「商品・サービスの質の低下」(29・6%)▽受注に失敗するなど「失注の増加」(22・6%)▽「利益の減少」(19・9%)−が続いた。18年春新卒の採用活動で「予定通り採用できなかった」と答えたのは36・7%で、前年調査に比べ4・5ポイント上昇。19年春の新卒採用を増やすのは22・0%に倍増した。働き方改革には8割以上取り組んでおり、具体的には「長時間労働の管理・是正」(90・0%)や「育児休業や短時間勤務など子育て世代の支援」(63・6%)が多かった。「テレワークなどの在宅勤務」「副業・兼業の容認」は数%にとどまり、同本部は「想定よりも取り組む企業が少なかった」としている。

<高齢者の雇用>
*3-1:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-669102.html (琉球新報社説 2018年2月21日) 高齢社会対策大綱 「老後の安心保障」基本に
 政府は高齢者施策の指針となる高齢社会対策大綱を閣議決定した。65歳以上を一律に高齢者とみることを見直し、公的年金の受給開始時期を70歳超も選択できるようにする。高齢者の就労を促すことを狙い、年齢にかかわらず柔軟に働ける環境の整備を打ち出した。高齢者を一律で65歳以上とみる考え方は、確かに現実的ではない。高齢でも自立生活が送れる「健康寿命」は男性71・19歳、女性74・21歳である。厚生労働省が2016年に実施した調査では「高齢者だと思う年齢」の質問に「70歳以上」との回答が41・1%で最も多かった。日本老年学会なども17年に「高齢者」の定義を現在の65歳から10歳引き上げて75歳以上に見直し、前期高齢者の65~74歳を「准高齢者」として社会の支え手と捉え直すよう求める提言を発表している。一方、16年版厚生労働白書によると、60歳以上を対象にした調査で65歳を超えても働きたいと7割が希望しているものの、実際に働いている人は2割にとどまっている。厚労省の調査では、昨年1月から7月までに65歳を過ぎてから新たに雇用、または再雇用された高齢者約65万人のうち、70%がパートなどの非正規だった。正社員は女性19%、男性35%でしかない。現状は「年齢にかかわらず柔軟に働ける環境」には程遠い。その改善は急務である。高齢者の年齢を見直す大きな理由の一つに年金支給額の抑制があるのは確実だ。25年には全人口の3人に1人が65歳以上で占める。働き盛りの世代が高齢者を支えることを前提につくられた年金制度は、現行のままでは維持できなくなってきている。受給開始を70歳以上も選択できるようにしたのは「選択肢の幅を広げる」(加藤勝信厚労相)ためではない。幅を広げることで、早めに受給する人への支給額を減らし、全体として支給額を抑制するのが目的である。国は年金支給水準を抑制する政策を既に実施している。支給額をこれ以上、減額することは断じて認められない。安倍晋三首相は高齢社会対策会議で「高齢化はますます進行し、地方人口の減少も見込まれている。全ての世代が幅広く活躍できるような社会を実現することが重要だ」と述べた。安倍首相が言う「活躍」とは、働くことで日本経済に貢献することなのだろう。強い違和感を禁じ得ない。加齢や障がいが原因で働けない高齢者もいることを忘れてはいないか。それぞれの立場で、社会に貢献できることはあるはずである。高齢者の雇用確保も重要である。だが、高齢者施策の基本は「老後の安心」を保障することである。就労促進と併せ、支えが必要になったときに安心して暮らせる仕組みを充実させなければ、超高齢社会は乗り越えられない。

*3-2:http://qbiz.jp/article/129402/1/ (西日本新聞 2018年3月8日) ニュータウンの高齢化率2割超 40%近い地域も 九経調調査
 九州経済調査協会(福岡市)が行った九州のニュータウンに関する調査によると、2015年の高齢化率(65歳以上)は20・8%(推計値)だった。九州全体の高齢化率28・0%を下回ったが、30%を超えるニュータウンも少なくなく、再生に向けた支援や取り組みが必要としている。国土交通省が13年度に作成したニュータウンリスト(対象は計画戸数が千戸以上もしくは計画人口3千人以上など)と国勢調査を組み合わせて推計し、3月の九州経済調査月報でリポートとしてまとめた。県別でみると鹿児島、長崎、宮崎、大分で高齢化率が20%を超えた。九経調によると、この4県は1960〜70年代に開発されたニュータウンが多く、鹿児島県では40%に迫る地域も複数あった。福岡県は1980年代以降も開発が進んだこともあり、高齢化率は九州平均を下回った。ただ福岡市東部から宗像市にかけたエリアのほか、大野城市や北九州市小倉北区、小倉南区などで高齢化率が30%を超えるニュータウンが目立った。九経調の竹下和希研究員は「全てのニュータウンで若者の流入を前提とした再生を期待するのは困難」と指摘。リポートでは団地住民が農業を通じてにぎわいを生み出している福岡県宗像市の「日の里ファーム」を紹介し、「高齢者を地域の担い手として位置付け、生きがい創出に重点を置くなど、多様な再生が必要になる」としている。

<女性の雇用>
*4-1:https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2017/171201.html (日弁連会長声明 2017年12月1日 日本弁護士連合会会長 中本和洋) 世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数に対する会長談話
 世界経済フォーラム(WEF、本部・ジュネーブ)は、2017年11月2日、同年の世界各国の男女平等の度合を指数化した「グローバル・ジェンダー・ギャップ」を発表した。日本は、調査対象144か国のうち、114位と前年より3つ順位を落とし、過去最低となった。2015年が101位、2016年が111位と年々順位を落としている。ジェンダーギャップ指数は、女性の地位を、経済、政治、教育、健康の4分野で分析し、ランク付けしているが、日本は、経済114位、政治参画123位であるのに対し、教育74位、健康1位と分野間のばらつきが大きい。特に、女性の地位改善の鍵ともいうべき政治分野が最も順位が低く、国会議員の男女比が129位、閣僚の男女比は昨年の50位から88位と大幅に落ち込んでいる。生活の基盤となる経済は昨年の118位から若干改善したが、給与格差、管理職や専門職での男女比は、いずれも100位以下と低い。教育の分野では、初等・中等教育や識字率が1位であるため、教育全体では74位であるが、高等教育は101位といまだに低い水準にとどまっている。日本政府は、「すべての女性が輝く社会づくり」をその重点課題に掲げ、2017年6月6日には「女性活躍加速のための重点方針2017」を明らかにした。その中で、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律が完全に施行されてから1年余りが経過し、「女性活躍は大きなうねりになっている」との現状認識を示し、また女性活躍の実現に不可欠な働き方改革の取組を今後も強力に進めるとしている。しかし、2017年のジェンダーギャップ指数は調査が始まってから過去最低の順位を記録しており、上記施策が十分に成果を上げたとは言いがたい。国民の半数を占める女性の意見が十分に反映されてこそ、男女平等の視点を有する各種施策の立案が可能となることから、女性の政治参加は、あらゆる分野における女性の地位向上のための必須の条件である。当連合会においても、会内における男女共同参画の重点課題として、意思決定過程への女性会員の参画拡大に取り組んでいるところである。また、高等教育における格差解消は、社会に出てからの経済分野や政治分野における男女格差の改善に大きな影響を及ぼすことから、政府の掲げる女性活躍推進における有効な布石となるはずである。したがって、当連合会は、日本政府に対し、2017年のジェンダーギャップ指数の順位が過去最低となった事実を厳粛に受け止め、女性活躍を更に推進するために、働き方改革の取組にとどまらず、女性の政治参加及び高等教育における男女格差解消を重点課題とし、我が国のあらゆる分野にはびこっている性差別を根絶するためのより実効性のある具体的措置、施策を早急に講じるよう求めるものである。

*4-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27450860X20C18A2SHA000/ (日経新聞 2018年2月28日) 女性取締役増を統治指針に 政府方針、企業に説明責任
 政府は上場企業に女性取締役の起用を促す。今春に改定するコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針に方針を示し、取締役会に女性がいない企業は投資家に理由を説明するよう求める。上場企業の役員に占める女性の割合は、欧米は2~3割だが日本は4%弱にすぎない。国際標準に近づける仕組みづくりが急務だった。同指針は東京証券取引所が上場企業向けに定める企業統治の規範で、取締役会のあり方や役員報酬の決め方などを規定する。強制力はない。金融庁は3月にも、有識者を交えた同庁の会合で指針の改定案を示す。「ジェンダーや国際性の面を含む多様性」を求める規定を盛り込む。パブリックコメント(意見公募)を経て5月中に改定案を固め、それを踏まえ東証が導入する予定だ。指針の実効性を高めるため、新たに「投資家と企業の対話ガイドライン」をつくる。社内・社外の取締役に関して「ジェンダーや国際性の面を含む多様性を十分に確保した形で構成されているか」「取締役として女性が選任されているか」を企業に問う内容だ。ガイドラインにも強制力はないが、女性取締役を起用しない上場企業は、決算説明会や投資家向け説明会などで機関投資家や株主、マスメディアなどに理由を明らかにする必要が生じる。内閣府の資料によると、監査役なども含む「役員」に占める女性の割合は、日本の上場企業は2017年に3.7%。15年のフランスの34.4%や英国の23.2%、米国の17.9%などに比べ、圧倒的に少ない。欧州では役職の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」の導入で女性登用が制度化されている。03年にノルウェーが採用後、フランスやドイツ、イタリアなどに広がった。多くの国では役員への女性登用の水準を3~4割としており、満たさない企業に罰金などの処分を科す国もある。自主的な取り組みもある。英国では女性役員比率を3割以上に引き上げることを目指す上場企業でつくる「30%クラブ」がある。米国やカナダなどに支部があり機関投資家なども加盟できる。日本は政府の男女共同参画基本計画で20年までに上場企業の女性役員の割合を10%以上にする目標を掲げている。安倍晋三首相は13年に上場企業の役員のうち1人は女性を起用するよう経済界に要請。15年には有価証券報告書で女性役員比率を示すよう義務付けていた。同指針を改定するのは、15年に導入して以来、初めてとなる。女性活躍や多様性の確保に加えて、今回の改定では社外取締役の増員も検討する。現行の指針の「2人以上」を「3分の1以上」に変更する方針だ。安倍政権は、日本企業の国際競争力を高める重要施策としてコーポレートガバナンスの強化を進めてきた。こうした施策を盛り込んだ指針を導入した後、外国人投資家の日本株の保有比率は上昇している。16年度の保有比率も30.1%と、15年度比で0.3ポイント上がった。海外勢の保有額は約174兆7000億円と同時期に13%増えた。

*4-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27457780X20C18A2EE8000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2018年2月28日) 候補少ない女性取締役、人材争奪戦も
 政府が女性取締役の起用を求めることで取締役会の顔ぶれが多様になれば、企業統治が前進し機関投資家の投資マネーを呼び込みやすくなる。一方で女性の役員は候補者が少なく、現在でも複数の企業で役員を兼任する事例は珍しくない。女性取締役の起用が広がれば人材の獲得競争が一段と激しくなりそうだ。コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)に強制力はないが、企業は実質的に説明責任を負う。指針改定で取締役に女性を起用する企業が増える可能性は高い。日本企業の取締役会は多くの場合、生え抜きの中高年男性で構成され多様性に欠けるとの批判があった。経営コンサルティングのエゴンゼンダー(東京・千代田)の佃秀昭社長は「取締役会に女性を迎えれば長年の慣習にとらわれない議論ができる」と指摘する。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や米運用会社のJPモルガン・アセット・マネジメントなども女性比率の引き上げを求めている。女性取締役の起用が進めば機関投資家が投資しやすくなり、株式市場の活性化につながる。ただ、企業にとっては候補者探しが課題だ。厚生労働省の雇用均等基本調査によると16年度の女性管理職の比率は12.1%だった。部長相当の役職では6.5%にとどまる。生え抜きの女性役員を登用するには女性の管理職を一段と増やす取り組みが欠かせない。社外で探すのも簡単ではない。ガバナンス助言会社プロネッド(東京・港)の昨年7月の調査によると、東証1部上場企業の社外役員(監査役含む)を4社以上兼任する女性は12人いた。弁護士や大学教授といった経歴が多く「これらの職種では獲得競争が激しくなる」(酒井功社長)。労務行政研究所の調査では2016年度の社外取締役の年間報酬は平均で669万円だった。候補者の争奪戦が激しくなれば報酬が一段と高くなる恐れもある。この調査では女性の社外役員を選任する企業の割合は株式時価総額1兆円以上の企業で71%なのに対し100億円未満では16%で、企業規模により対応に差が生じる可能性もある。

*4-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201712/CK2017122502000209.html (東京新聞 2017年12月25日) 「介護離職考えた」半数 管理職 業務との両立悩む
 介護を経験した管理職の半数近くが、退職を検討したことが人材会社アデコの調査で分かった。60%以上が公的な介護休暇・休業や社内制度を利用しづらいと感じていることも判明。「業務に支障が出る」などとして仕事との両立に悩む姿が浮かんだ。政府は介護離職ゼロを目指しているが、実現の見通しは立っておらず、働き続けるための環境整備が緊急に求められそうだ。企業の管理職は介護と仕事の両立を迫られる可能性が高い年代。調査は十月、親族を介護した経験がある部長職、課長職六百人を対象にインターネットで実施した。介護離職について20%が「何度も考えた」、28%が「一、二回考えた」と回答。「考えたことは一度もない」は53%だった。離職を考えた人の理由で最も多かったのは「体力・精神的な負担や不安」で、考えたことがない人は「収入面での不安」が多かった。介護で会社を休んだことがある四百二人が利用した制度を複数回答で尋ねたところ、最多は有給休暇で88%。育児・介護休業法で定められている介護休暇は16%、介護休業はわずか3%だった。同社は「介護休暇中は無給の企業が多く、雇用保険から給付金が支給される介護休業も事前の手続きがハードルになっている」と分析している。社内制度では半日・時間単位休暇の利用が多かったが、「制度自体がない」との回答も目立った。「介護関連制度が利用しづらい」と答えた人は63%。理由は「自身の業務に支障が出る」「部下の業務に支障が出る」「介護を理由に休みを取る管理職がいない」などだった。介護に携わる部下がいる二百八十四人のうち92%が「部下を支援したい」と回答したが、「実際に支援できた」と答えたのは74%だった。
 ◇ 
 四捨五入のため、合計は100%になりません。

*4-5:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/189884 (佐賀新聞 2018年3月7日) 介護保険料6千円超が65%、4月から85%の44市区で増額
 4月に3年ぶりに改定される65歳以上の高齢者の介護保険料(基準額)について、都道府県庁所在地(東京は都庁のある新宿区)と政令指定都市の計52市区のうち65%の34市区で月額6千円を超す見込みであることが7日、共同通信の調査で分かった。85%に当たる44市区で引き上げられ、据え置きは8市にとどまる。多くの自治体で値上げするのは、高齢化の進行で介護サービスの利用が増え給付費が増加することや、事業者に支払う報酬が4月から0・54%引き上げられるため。介護施設の整備を進めていることも影響した。

*4-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180105&ng=DGKKZO25320040U8A100C1EE8000 (日経新聞 2018.1.5) 保育ニーズ、正確に把握 厚労省、申込者以外も推計
 厚生労働省は待機児童の解消をめざし、保育のニーズの実態把握を正確にする。2018年度から、これまで集計してきた保育所の申込者数とは別に「保育所への入所が必要だが申し込まなかった」といったケースを含め把握する。市町村ごとに見込み数を集め、厚労省が公表する。原則、すべての市区町村を対象にする。待機児童がいる自治体だけでなく、今はいなくても保育ニーズの増加が今後想定される場合も対象にする。厚労省は「子育て安心プラン」で、20年度末までに新しい保育定員枠32万人分を整備する方針を示している。民間調査では、保育所を利用できなかった親の4割が申し込みをしていない。申込者だけでは保育需要を把握できないことが浮き彫りになっている。18年度からは毎年度、推計の中で実際には申し込みに至らないケースを把握し、実態との差があれば原因を分析する。需要の推計や実績は厚労省が市区町村ごとに一括して公表する。厚労省は実態の「見える化」を促し、自治体が需要の過小評価などによって、待機児童数を少なく見せることがないようにする。政府が保育の定員枠を増やすための予算確保をしても、需要が多い地域に局所的に保育所が足りないミスマッチや、保育需要の適正な把握がされなければ待機児童の解消にはつながらない。

*4-7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150105&ng=DGKKZO81541250U5A100C1M10700 (日経新聞 2015.1.5) 働く意識、多様化進む 男性は「年功序列」 / 女性は「成果型」
 働き手の仕事に対する意識は世代や性別で多様化している。年齢に応じて給料を払う「年功序列型」と、働きに応じて支払う「成果型」のどちらの賃金制度がいいか尋ねたところ、全体ではほぼ半々だったが、男性は年齢が高くなるほど年功型を好み、女性は成果型を支持する傾向があった。年功を支持する男性は20代が52.9%、50代は63.5%。大企業の中高年男性は1つの会社で勤め上げる人が多い。残業や転勤に耐えた長年の貢献に報いてほしいという意識が強い。一方、女性は転職経験がある人が58.8%と男性(40.7%)より高く、短期間の実績が給与につながる成果型に支持が集まった。女性は夫の転勤や出産を機に離職や転職を迫られやすい。男性に比べ会社への帰属意識が低く、生活環境の変化などに合わせて転職する人が少なくない。海外勤務志望については、働く人の78.2%が「海外で仕事をしたいと思わない」と答え、内向き志向が強かった。主な理由(3つまで選択)は「語学力に自信がない」が65.7%と最も多く、「治安が悪い」(45.8%)、「国内でもやりがいのある仕事はできる」(40.8%)と続いた。大手企業を中心に海外で働くグローバル人材の需要が高まっている一方、働く側の多くは国内を出たがらないようだ。年代別では、20~30代で「海外で仕事をしたい」と答えた人が24.6%と40代(21.6%)を上回り、若い層の海外志向はやや高い。大学教育の国際化対応で、英語での授業や海外留学が一般的になっていることもありそうだ。

<外国人の雇用>
*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180127&ng=DGKKZO26189750W8A120C1EA4000 (日経新聞 2018.1.27) 外国人労働者 最多に 10月末127万人、5年で60万人増 人手不足の職場補う
厚生労働省は26日、2017年10月末時点の外国人労働者数が127万8670人だったと発表した。前年同期から18%増え、増加は5年連続。企業の届け出を義務化した07年以降で過去最高を更新した。製造業で働く技能実習生やサービス業で働く留学生らの増加が目立ち、人手不足が深刻な職場を外国人で補う構図が強まっている。外国人労働者の数は12年から急激に増加し、5年間で約60万人増えた。日本の雇用者総数の約2%を占める水準だ。外国人を雇う事業所の数も、前年同期比12.6%増の19万4595カ所と過去最高になった。国籍別にみると、中国が37万2263人で全体の29.1%を占める。ベトナムの18.8%、フィリピンの11.5%が続いた。伸び率はベトナムが最も高く、前年同期と比べて約4割増えた。資格別にみると、労働現場で外国人労働者を実習生として受け入れる技能実習制度の在留資格が25万7788人、留学が25万9604人だ。ともに2割以上増えた。高度人材などの「専門的・技術的分野」も23万8412人と18.6%増。技能実習の8割近くが製造業か建設業で、留学の半数以上が卸小売業かサービス業で勤務している。日本での受け入れ体制整備は遅れている。政府は高度人材の受け入れに前向きだが、単純労働者の受け入れは認めていない。技能実習制度や留学生として事実上の単純労働者が急増しているのが実態だ。外国人を活用したいという企業も増えているものの、実習生の数や年数には限度がある。

*5-2:http://qbiz.jp/article/129389/1/ (西日本新聞 2018年3月7日) 新潟など3特区で外国人就農解禁 高齢化で人手不足が深刻化
 政府が国家戦略特区に指定している新潟市、愛知県、京都府の3自治体で外国人の農業就労を解禁する方針を固めたことが7日、分かった。1年以上の農業実務の経験を持つことが条件で、受け入れ期間は通算3年を上限とする。国内農業は高齢化が進んで人手不足が深刻化しており、経験や技能のある即戦力を海外から呼び込んで現場を活性化する狙いがある。外国人の就農は昨年9月施行の改正国家戦略特区法で認められた。この3自治体が第1弾となる見通しで、9日にも特区諮問会議を開いて決定する。特区で効果が確認された場合は、全国に広げることも検討する。受け入れる人材は、実務経験に加え、農作業に必要な日本語を話せる外国人の中から選ぶ。農業に関する専門知識や技術を持つことも条件とし、外国人に働きながら技術を学んでもらう技能実習制度とは区別する。対象者は人材派遣会社と雇用契約を結び、各地の農業生産法人や農家へ派遣される。農作業だけでなく、農作物の加工・販売を手掛ける「6次産業」にも従事できる。技能実習制度を巡っては、過重労働や賃金不払いが問題となっている。特区の就農受け入れではこうしたトラブルを防ぐため、日本人と同水準の賃金を保証。人材派遣会社に対し、受け入れ先での雇用状況を確認した上で、政府や自治体でつくる協議会に報告することを義務付ける。


<役所の労働生産性と資本生産性>
PS(2018年3月12、17、20日追加):労働生産性を高めることは常識となったが、資本生産性(資本1円投入あたりの生産量)については、未だ無視されている。しかし、*6-1-1のように、岩手県陸前高田市で10mかさ上げされた宅地(総費用:1,400億円、造成面積:約300ヘクタール)の引き渡しが始まったが、かさ上げした宅地は空き地が目立つそうだ。それは当然のことで、*6-1-2のように、陸前高田の津波は、海岸から約500メートルにあるガソリンスタンドで15.1mを記録しているため、10mしかかさ上げされていない地盤の弱い埋立地は安全ではないからである。そのため、国民が本来の所得税に2.1%上乗せして「東北の復興のため」にと黙って支払った復興特別所得税によるこの事業の資本生産性は0に近い。また、*6-1-1には、高台移転が間違っていたかのように書かれているが、津波高に対して十分な高さのある地盤の強い山側に移転する高台移転と、15m以上の津波が来る地域で10mしかかさ上げされていない地盤の弱い埋立地を作ることとは全く異なる。これを、事前に考えなかったのは、心のこもった復興ではなく、ヘリコプター・マネー(税金の無駄遣い)だったからである。
 さらに、*6-1-1は、女川町が公共施設や市街地を、元のJR女川駅周辺に集約したのがよいことであったかのように書いているが、女川町では、*6-1-3のように、17m超の津波に襲われ谷状の町が壊滅して、高台にある病院の1階部分も津波で激しく損傷したのだ。次の津波が来たら、また同じことを繰り返して、国民から復興税をとるつもりだろうか。しかし、次の災害時は、わかっていてやったことなので、自己責任にしてもらいたい。 怒
 その上、気仙沼市の大谷海岸地区では、*6-2-1のように、宮城県が55億円の予算で海抜9.8メートルの防潮堤を整備するそうだが、気仙沼市の津波の高さは20メートルを超えていたため、背後地約4.0haを防潮堤と同じ高さにかさ上げしても、陸前高田市と同様、誰も使わないだろう。それでも10m弱の防潮堤を作り、10mかさ上げすればよいと考えるのは愚かとしか言いようがなく、この事業の資本生産性はマイナスである。何故なら、役に立たないだけではなく、*6-2-2のように、生態系と景観を破壊するからだ。
 なお、津波の危険性だけでなく、福島第1原発事故による放射能汚染も環境を破壊し住民が近寄ることすら困難にして先が見えないが、*6-3-1の凍土遮水壁もまた金を使うことが目的の資本生産性の低い支出だった。原子力規制委員会は、国の基準以下に薄めて汚染水を海に放出する必要があるなどとしているが、2倍に薄めて2倍の分量を放出すれば放射性物質の放出量は変わらないため薄めることに意味はなく、こういう発想をする人たちが放射性物質汚染に対する注意を風評被害と呼ぶのは、あまりにもおこがましい。
 その上、原発立地自治体は、平時でも、*6-3-2のように、原発の再稼働や定期検査で作業員が来たり(この時、宿泊)、重機で工事をしたりして原発需要がある上、迷惑料である電源開発促進税などが入るが、それらは消費者が電力料金に含めて支払っているのだ。そして、今後も新たなテロ対策施設の建設が控えるとしているが、世界は卒原発の時代で、*6-3-3のように、東日本大震災前後から新燃岳の噴火や大地震が増えているにもかかわらず火山噴火のリスクを低く想定しているため、それこそ集中と選択で電源を自然エネルギーに移行し、玄海町は農産物・海産物・関連工業品やサービスにシフトするのがよいと考える。
 九電は、既にインドネシアで世界最大規模のサルーラ地熱発電に参画しており(http://www.kyuden.co.jp/press_h170322-1.html 参照)、また、*6-3-4のように、九電工がインドネシアのスンバ島で太陽光発電と蓄電池を組み合わせて電力を安定供給する「エネルギーマネジメントシステム(EMS)」の実証事業を始めたくらいで、再生可能エネルギーを活用した“地産地消”の電力供給も既にできる状況になり、これらは、「(日本を含む)世界中どこでも通用する技術」なのである。
 しかし、*6-3-5のように、佐賀地裁は、九電玄海原発3、4号機運転差し止めを求める仮処分の申し立てを退け、「原発なくそう! 九州玄海訴訟」本訴訟の原告団長元佐賀大学長の長谷川照さん等が「国内や世界の情勢を考えると司法は遅れている」と嘆かれた。司法は、内容だけでなく、お白洲で裁くような作りであり、明治時代から形式を変えていないのも遅れている。

*6-1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13398484.html (朝日新聞 2018年3月12日) (東日本大震災7年)高台移転に時間、戻らぬ被災者 大事業難航、戸数35%減
 東日本大震災の被災地でまちづくりが縮んでいる。宅地造成による住宅の計画戸数は約1万8300戸と、5年前の計画から35%減少した。復興までの期間が長引き、別の場所に居を構える選択をした住民が少なくないためだ。今後の震災を想定し、こうした教訓をいかす取り組みも始まっている。岩手、宮城、福島3県の自治体が実施する高台移転(防災集団移転や土地区画整理事業によるかさ上げなど)について、復興庁の資料を元に集計した。2012年12月時点で約2万8100戸だった高台移転による住宅の計画戸数は、17年9月時点で約1万8300戸(12年比35%減)。岩手が約7500戸(同26%減)、宮城が約9千戸(同42%減)、福島が約1900戸(同26%減)だった。
■陸前高田、用地交渉も壁
 津波で市街地が壊滅した岩手県陸前高田市。今年1月、かさ上げされた市の中心部で宅地の引き渡しが始まった。総費用1400億円、造成面積は東京ドーム64個分の約300ヘクタール。被災地最大となる住まいの再建事業はようやく出口に差し掛かった。だが、かさ上げした新たな宅地はいま、空き地が目立つ。市が行った最新の意向調査では、いまだ利用予定がない宅地は6割。長い歳月を要したことで、完成を待ちきれない人たちは別の地に住まいを求めた。上部徳七さん(88)は震災から5年後、内陸部に土地を購入して自宅を再建した。妻(86)とみなし仮設のアパートで暮らしていたが、かさ上げ部の宅地の引き渡しは2018年度の後半と伝えられた。「死ぬ前に一刻も早く家を建てたかった」と振り返る。復興事業に時間がかかったのはなぜか。市は山を削って高台移転を進めたほか、津波にのまれた旧市街地を10メートル前後かさ上げすることを決め、住民の私有地に宅地や道路を再整備する区画整理事業を活用した。大がかりな事業に最初から壁が立ちはだかる。まずは用地だ。地権者約2200人と交渉するため、北海道から長崎の離島まで足を運んだ。工事が始まってからも復興工事の集中や東京五輪関連の建設需要で資材や人手が不足した。時間が経つにつれ、かさ上げ同様、高台での住宅再建を望む被災者も減少。計画を見直し、区画数を縮小していった。結局、全体の事業認可は震災から3年後。すべての宅地ができるのは、計画から2年遅れの20年度の見通しだ。戸羽太市長は「5年ぐらいのスパンなら待ってくれる住民もいた。スピード感を持ってやらないと人の気持ちが変わって外に出て行ってしまう」と話す。
■「以前と同規模、非現実的」 女川、駅前に市街地集約
 被災地で人口流出が続く中、その現実を踏まえて計画を進める自治体もある。宮城県女川町。建物全体の8割以上が被害に遭い、人口は約6割に減少した。「震災の被害は人口減を加速させる」。そう考えた町は、地元企業と連携し、公共施設や市街地をJR女川駅周辺に集約。住宅約1420戸(12年12月)の計画を、昨年9月までに760戸に修正した。新たに造った交流センターの面積は被災した公民館の約7割にとどめた。「被災前と同規模の街を造るのは現実的ではない」と町の担当者は説明する。
■将来の被災想定、復興にも備え 次の街の姿、住民と共有
 南海トラフ地震の被害が想定される地域では、東日本大震災の教訓を踏まえた対策が始まっている。行政が住民とともに被災後の復興を考える「復興事前準備(事前復興)」だ。和歌山県は2月、「復興計画事前策定の手引き」をまとめた。東日本大震災では復興計画策定まで9カ月、そこから住民の合意を得て事業認可まで2年半という事例があった。時間がかかれば人口の流出を招くため、手引きは、街を高台で再建するのか、防潮堤を強化し、かさ上げして再建するのか、といった災害後の街の姿を、普段から行政と住民が共有することが重要と指摘。市町村には復興事業で使う用地に関し、地権者や境界の把握、埋蔵文化財の発掘調査などを済ませておくよう求めている。県の担当者は「被災から1年以内の事業着手も不可能ではない。住民参加型で市町村ごとに復興計画を作りたい」と話す。
■<視点>人口減前提の区画整理を
 土地区画整理事業で造ったまちに空き地が生まれることは懸念されていた。もともと高度経済成長期に都市部で頻繁に使われた手法だ。社会全体の人口が増えるため、宅地や公共用地の再整備に時間がかかっても、土地の利用が進むことを前提にしている。東北の多くは震災前から人口減と高齢化に悩む過疎のまちだった。震災で人口流出は加速し、時間がかかるかさ上げ工事での再建を待てない高齢者は多かった。人口増を前提とした区画整理は手法としてそぐわなかったが、当時はこれほど大規模なかさ上げと土地の造成ができる制度は、区画整理以外に用意されていなかった。人口減の時代、このままでは次の災害でも、同じような空き地を生み出すことになりかねない。東日本大震災の事例を検証し、より短期間で宅地や公共用地を造成できる制度のあり方を考えるべきだ。

*6-1-2:https://www.iwate-np.co.jp/article/2018/1/16/1642 (岩手日報 2018/1/16) 津波高さ示す看板撤去へ 陸前高田のガソリンスタンド
 東日本大震災で陸前高田市を襲った巨大津波の高さを示す同市高田町のガソリンスタンドの看板が、夏までに撤去される見通しになった。周辺の道路や土地がかさ上げされてスタンドが移転するためで、運営会社は津波の恐ろしさを伝える貴重な資料として市に保存を働き掛ける考えだ。スタンドは海岸から約500メートルにある「オカモトセルフ陸前高田」。津波で事務所は流失したが、2012年に同じ場所で営
*9-2業を再開した。看板は一部がへこんだり、はがれたりしたため補強工事を施し、津波到達地点を示す矢印と「津波水位15・1M」の文字を記した。スタンドは今年7月ごろ市内の別の場所に移転する予定。看板の移設も検討しているが、市などによると、屋外広告の面積を規制する県条例に抵触するため困難という。運営会社の担当者は「被害の大きさを感じられる看板。何とかして保存したい」と話している。

*6-1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK05015_V00C11A4000000/ (日経新聞 2011/4/5) 高台の病院を襲った17m超の津波、宮城県女川町
 岩手県大船渡市から宮城県石巻市にかけて三陸沿岸の建物の被害を見て回った。なかでも、津波の破壊力という点で強く印象に残ったのが、宮城県女川(おながわ)町だ。女川町は石巻市の東側にある港町。県外の人にとっては、「女川原子力発電所のある町」といったほうが分かりやすいかもしれない(発電所の敷地は女川町と石巻市にまたがっている)。同原発は2011年3月11日の震災発生時に停止し、今のところ放射線漏れなどの被害は報告されていない。それもあって、一般メディアで女川町の津波被害に関する情報は少ない。しかし、建築・土木関係者は、この町で起きたことを知っておくべきだろう。下の写真を見てもらいたい。女川港を東に望む女川町立病院の駐車場付近から見た、女川町の街並みと病院の建物だ。谷状の町が津波でほぼ壊滅してしまっていることに驚かされる。それにも増して驚かされるのが、高台の上に建つ病院の1階部分が津波で激しく損傷していることだ。

*6-2-1:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201801/20180121_13016.html (河北新報 2018年1月21日) 気仙沼・大谷海岸、復活へ一歩 防潮堤工事始まる 21年度には海水浴場再開へ
 東日本大震災で被災した宮城県気仙沼市本吉町の大谷海岸地区で、宮城県が海抜9.8メートルの防潮堤を整備し、気仙沼市が背後地に「道の駅」をつくる復旧工事が20日、始まった。砂浜が失われるとして、県が当初計画した防潮堤は住民が反対し、見直しを実現させた。位置を内陸に移し、国道との「兼用堤」とする工事は2020年度に完了し、21年度には海水浴場が再開する。防潮堤(長さ約680メートル)は見た目の高さが6~7メートル。国道の約980メートル区間を9.8メートルまでかさ上げして防潮堤の役目も持たせる。海側は緩やかな傾斜で階段を付け、海水浴客が休憩できるようにする。事業費は約55億円を見込む。市は背後地約4.0ヘクタールを防潮堤と同じ高さにかさ上げし、道の駅「大谷海岸」を復旧させる。事業費は25億円で20年度内の完成を目指す。県は当初、砂浜に防潮堤を築く計画を立てたが、住民が強く反発。地元の街づくり団体が建設位置を内陸に移し、国道との兼用堤とする対案を市に提出し、県が見直した。今回の工事で震災前と同じ約2.8ヘクタールの砂浜が確保される。現地であった着工式には県、市の関係者ら約90人が出席。くわ入れなどで工事の安全を祈った。山田義輝副知事は「砂浜を確保するために地域が一体となり、希望がある計画ができた」とあいさつ。菅原茂市長は「海水浴場と道の駅の復活、国道からの景観の確保を維持することができた」と強調した。大谷海岸の大谷海水浴場は環境省の「快水浴場百選」にも選ばれ、震災前の10年は約6万5000人が訪れた。ピーク時の1975年には約43万5000人でにぎわった。大谷地区振興会連絡協議会の鈴木治雄会長は「多くの行楽客でにぎわう、最高の海水浴場になるだろう」と歓迎。大谷里海(まち)づくり検討委員会の芳賀孝司副会長は「かつての大谷のにぎわいを取り戻す」と話した。

*6-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXNZO74004420Z00C14A7X93000/ (日経新聞 2014/7/12、日経産業新聞 2014年7月10日付) 巨大防潮堤、被災地で反対運動 議論に住民不在
 宮城県気仙沼市にある小泉海岸は白砂青松の砂浜で、環境省の「快水浴場百選」にも選ばれた浜辺である。ここに高さ14.7メートルと日本一の巨大防潮堤が計画され、物議をかもしている。底辺は90メートルにも及び、砂浜を覆いつくさんばかりだ。
■景観・生態系の破壊を疑問視
 小泉海岸は東日本大震災の津波で海岸線が200メートルも後退し、砂浜や松林が消失した。そこに事業費230億円の巨大防潮堤が計画された。「震災直後、高台移転とセットだと誤解して、防潮堤を受け入れざるを得ないと思った住民が多かった。今は防潮堤によって美しい海と暮らしが分断されるのが辛い」。地元の阿部正人氏らは巨大防潮堤に反対を訴えている。小泉海岸のように、被災地では巨大防潮堤に反対する住民運動が起きている。国は約1兆円を投じ、600カ所に総延長400キロメートルの防潮堤を整備する計画だ。しかし、高台移転で人が住まなくなる地域に巨額を投じて防潮堤を造ることや、景観や生態系が破壊されることを疑問視する声が高まり、建設を中止したり高さを下げたりする動きが広がっている。こうした中で国は6月4日に海岸法を15年ぶりに改正。海岸の防災・減災対策を検討する際に、住民や学識経験者が参加する「協議会」を都道府県が設置できるという新制度を打ち出した。これまで国や都道府県が決めていた防災・減災の方法を、今後は市民や研究者などが参加して決定できる。国の海岸行政の大転換でもある。「既に決定した計画への住民参加を狙ったものではない」(国土交通省)が、防潮堤建設に影響を与えるのは間違いない。そもそも巨大防潮堤に各地で反対運動が起きているのは「計画作りに住民が参加できなかったことが一因」と九州大学の清野聡子准教授は指摘する。震災後、国は地震の規模と津波をシミュレーションし、湾ごとに津波の高さを弾き出した。この数字を受けて県が防潮堤の高さを決めた。しかし「波が来る方向や浜辺近くの地形、河川の有無で津波の高さは変わるのに、細かな条件を入れずに国はシミュレーションした。本来なら地元住民にも加わってもらい、津波の遡上の仕方など過去の知見を生かすべきだった」と清野准教授は指摘する。このように国の計算結果には幅があった。その過程を住民にほとんど公開しないまま、数字だけが一人歩きしてしまったのである。
■住民による津波の測量も可能に
 震災から3年たって、小泉海岸には砂浜や干潟が復活し、豊かな生態系が戻りつつある。未来に残す故郷の風景をもう一度住民同士で話し合ってもらいたいと、首都大学東京の横山勝英准教授は被災地図に防潮堤をCGで合成した画像を作成した。防潮堤ができた後の町の様子を実感してもらうためだ。そこには防潮堤が要塞のように町を囲む姿が浮かび上がる。横山准教授は防潮堤を低くして陸側にセットバックし、海側の砂浜や汽水域を保全する方が、防災上も環境上も効果があると代替案を提案する。清野准教授は海岸法の改正により住民参加の法定協議会ができることを評価し「予算も付き、住民による津波の測量も可能になるだろう」という。建設が始まった巨大防潮堤の見直しにも弾みが付きそうだ。

*6-3-1:https://mainichi.jp/articles/20180303/ddm/005/070/041000c (毎日新聞社説 2018.3.3) 福島第1原発の凍土遮水壁 費用に見合う対策なのか
 東京電力が、福島第1原発で土壌を凍らせ地下水の流入を防ぐ「凍土遮水壁」の効果を初めて試算した。汚染水の発生削減効果は1日約95トンで、効果は限定的だとみられる。政府と東電は、凍土壁を汚染水対策の切り札と位置付け、国費約345億円が投入された。凍結の維持にも毎年十数億円かかる。費用に見合った効果が出ているのか。政府には、しっかりと検証し、今後の汚染水対策に生かす責務がある。凍土壁は1~4号機の建屋の周囲(全長約1・5キロ)に約1500本の凍結管を地下30メートルまで打ち込み、冷却液を循環させて造る。2017年11月に凍結作業をほぼ終えた。東電の発表によれば、雨水や地下水に起因する汚染水の発生量は、凍結後の3カ月間平均で1日約110トンだった。凍結前の15年冬に比べると約380トン減少していた。東電は、地下水をくみ上げる井戸を設置したり、雨水の浸透を防ぐために敷地を舗装したりする対策も同時に実施している。380トン削減はこうした対策を合わせた結果で、凍土壁による削減効果は、あくまでもその一部に過ぎない。それでも東電は、凍土壁などの成果で「建屋に地下水を近づけない水位管理システムが構築された」という。認識が甘くはないか。今回、汚染水の発生量を比較したのは降水量が少ない冬場だ。台風の接近が相次いだ昨秋には、降雨で汚染水の発生量が急増した。より長期間の評価が欠かせない。建屋の東側にはケーブルや配管を通すトンネルがある。そこには凍結管が入っておらず、凍土壁で地下水を完全に遮断することはできない。現状では、汚染水の発生がいつ止まるのか、分からないままだ。汚染水は「多核種除去装置」で浄化するが、放射性物質の一種のトリチウムだけは除去できない。浄化後の処理水は原発敷地内のタンクに貯蔵されており、20年度までしかタンクの増設計画は示されていない。原子力規制委員会は、国の基準以下に薄めて海に放出する必要があるとの立場だが、漁業関係者などの間では風評被害への懸念が根強い。処理水をどう処分するのかのめどが立たない限り、汚染水対策はいつ行き詰まってもおかしくない。

*6-3-2:http://qbiz.jp/article/129830/1/ (西日本新聞 2018年3月15日) 玄海再稼働で再び町に特需 「原発あるから」依存なお 廃炉時代の自立模索も
 6年余り全基停止していた九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の3号機が23日にも再稼働する。貧しい農漁村だった玄海町に原発建設計画が浮上したのは半世紀ほど前。以来、町は原発の受け入れと引き換えに経済的恩恵を受けてきた。東京電力福島第1原発事故を経てもなお、原発への依存は続く。「廃炉の時代」をにらみ、自立の道を探る動きも出ている。玄海原発の敷地に、作業員を乗せた大型バスが次々と乗り入れる。正門から数百メートル離れた場所にはショベルカーなどの重機が並び、新たな安全対策で手狭になった敷地を拡大する造成工事が急ピッチで進む。福島の事故から約9カ月後の2011年12月、玄海原発は全4基が停止した。大きな打撃を受けた町の経済は今、「再稼働特需」で息を吹き返しつつある。原発から南東へ約1キロ。溝上孝利さん(59)が営む民宿「要太郎」も原発停止後、宿泊客がぱたりと途絶えた。再び客が戻り始めたのは、再稼働に向けた安全対策が始まった13年ごろから。客室稼働率は停止以前より3割ほど増えた。この間、溝上さんは原発関連以外の収入を増やそうと、町のふるさと納税の返礼品となる海産物を販売したり、高校生のスポーツ合宿誘致に力を入れたりしてきた。「豊かな自然や食を生かして暮らしていけるよう、変えんといかん」。一方、原発では今後も新たなテロ対策施設の建設が控える。いずれ定期検査も行われ、作業員らでにぎわう。「やっぱり原発があるから町は大丈夫だ」。町民から、そんな声も漏れる。
     **
 原発の稼働と町の財政は直結する。18年度一般会計予算案の歳入は、国の交付金など原発関連が6割。原発停止に伴う税収減で17年度、23年ぶりに地方交付税(普通交付税)を受け取る「交付団体」になったが、「再稼働すれば税収が回復し、19年度は不交付団体に戻る」(岸本英雄町長)。町議会は昨年9月の選挙で、原発推進派が全議席を占めた。年内にも改定される国のエネルギー基本計画に、原発の新増設を明記するよう求める意見書案を19日の本会議で可決する。「意見書は原発立地町の責任だ」と町議会の脇山伸太郎総務文教委員長。原発に世論の厳しい視線が注がれる中、増設にこだわる背景には「税収減につながる1号機の廃炉決定がある」とみる町民もいる。「原発がある町から、原発“も”ある町へ」。岸本町長が唱えてきたキャッチフレーズだ。実際には町も町議会も、原発に依存する姿勢を変えていない。
     **
 町民の受け止め方は一様ではない。福島の事故で、原子力災害への不安は以前より高まっている。町の人口は1955年に9720人だったが、今年2月現在、5717人に減った。原発の恩恵を受けつつ、過疎化に歯止めはかからない。町とは対照的に、自立を模索する動きもある。農家や商業関係者が16年、町おこしチーム「Genkai Hot Runner(GHR)」を結成した。「若い人が減り、このままでは町が寂れる」。代表の世戸耕平さん(38)は危機感をあらわにする。目を付けたのはイチゴやハウスミカンなどの農産品だ。原発補助金を活用し、佐賀県内有数の産地になった。隣接する唐津市の飲料メーカーと共同でイチゴやミカンを使ったサイダーを商品化し、年間2千本を出荷。福岡市内にアンテナショップの開業も目指す。「原発があったから産地になれた」。GHRメンバーでイチゴ農家の渡辺高広さん(54)は言う。「でも、原発の増設は現実的には無理。地域が自立して生きていけるようにしなければ」

*6-3-3:http://qbiz.jp/article/130026/1/ (西日本新聞 2018年3月17日) 【玄海再稼働】原発まで130キロ阿蘇火山リスクは? 九電→破局的噴火の予兆わかる 専門家→データに限界、予測困難 安全性の見方定まらず
 原発に対する火山の危険性が注目されている。広島高裁は昨年12月、熊本県の阿蘇カルデラの噴火リスクを理由に四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを決定。群馬県の草津白根山や宮崎、鹿児島県境の霧島連山・新燃岳(しんもえだけ)など各地の火山で噴火も相次ぐ。再稼働が間近に迫る九州電力玄海原発3号機(佐賀県玄海町)と阿蘇カルデラの距離は、伊方原発とほぼ同じ約130キロ。安全性に問題はないのか。噴火の想定が難しいこともあり、見方は分かれる。原子力規制委員会は火山対策指針として「火山影響評価ガイド」を策定。原発から160キロ以内の火山を対象に、安全性確認や対応策を電力会社に求めている。九電は玄海原発に関し、阿蘇カルデラや雲仙岳、九重山など17火山を「将来活動の可能性がある」と判断。その上で、過去の噴火履歴や地質調査を根拠に、いずれも原発が稼働している今後数十年の間に火砕流が発生しても原発敷地内には達しないと結論づけた。火山灰が到達する可能性はあるが、降灰時も非常用発電機が機能を維持できるように昨年11月、吸気口にフィルターを設けた。広島高裁が指摘した「破局的噴火」のリスクについては、九州で過去に破局的噴火を起こした五つのカルデラを調査。約9万年前に阿蘇カルデラで発生した破局的噴火では山口県付近まで火砕流が到達したとされるが、活動周期や地下のマグマに関する文献から「破局的噴火の直前の状態ではない」とする。大規模噴火を起こすマグマの動きは地殻変動や地震を引き起こすことから「破局的噴火の予兆は捉えられる」と九電の瓜生道明社長は説明する。
     **
 一方、火山の専門家は噴火予測の難しさを指摘。東京大地震研究所の中田節也教授は噴火履歴に関するデータは限られており「巨大噴火の想定には限界がある」と語る。火山影響評価ガイドについては「立地選定の情報にするなら分かるが、既存の原発の安全性審査に用いるのは違和感がある」と疑問を呈す。熊本県阿蘇市にある京都大火山研究センターの大倉敬宏教授は、阿蘇カルデラで巨大噴火が起こる可能性は当面は低いとの認識を示しつつ「観測データから噴火の前兆はある程度捉えられるが、規模や時期まで予測するのは難しい」と話す。九電は「できるだけ多角的に捉えることが重要」とモニタリングを強化する方針だ。ただ、破局的噴火は九州全域に大被害をもたらすような規模。両教授とも「原発だけの問題ではなくなる。噴火規模をどこまで想定するか国民的な議論も必要」とする。

*6-3-4:http://qbiz.jp/article/129814/1/ (西日本新聞 2018年3月15日) インドネシアで「地産地消エネ」 九電工が実証開始 送電手段ない離島で活用
 九電工(福岡市)がインドネシアのスンバ島で取り組む、太陽光発電と蓄電池を組み合わせて電力を安定供給する「エネルギーマネジメントシステム(EMS)」の実証事業が始まった。基幹送電網の整備が進んでいない離島で、再生可能エネルギーを活用した“地産地消”の電力供給を図るもので、他地域にも広がるか注目を集める。スンバ島は首都ジャカルタから東に約1400キロに位置。面積は九州の約3分の1、人口は約50万人。九電工によると、近年は観光地として注目されており、電力需要は増加傾向にあるという。島内の電力は主にディーゼル発電機を利用しており、二酸化炭素(CO2)の排出や燃料費が課題。インドネシア政府は島を再エネ導入のモデル地域と位置付けて出力500キロワットの太陽光発電所を整備したものの、出力が不安定で十分な電力供給ができていなかった。九電工のEMSは、双方向通信が可能な電力計で需給の状況を把握し、発電や蓄電を制御。雨天時や夜間など発電が止まる時間帯でも安定的に電力を供給できる。「蓄電池まで含めて全てのデータを集約して一体的に制御できるシステムは珍しい」と九電工国際事業部の松村敏明担当部長。昨年、特許を取得している。スンバ島の実証事業は、環境省が海外で展開する補助事業として実施。200キロワット時の電力を昼間の6時間供給する計画で、1月から本格運用が始まった。今のところ、安定した電力供給が続いているという。蓄電には鉛蓄電池を使用。日本で一般的なリチウム電池と比べコストが3分の1程度に抑えられる上、扱いやすい。寿命の短さが課題だったが、2系統の供給系統を交互に使って充放電の効率を上げることで、最大20年ほど使える計算になるという。通信技術を生かし、遠隔地で運用できる点も現地で高く評価されている。稼働状況は九電工の本社で監視。現地での作業は定期的な設備の清掃や点検程度で、維持費用も抑えられる。10年ほど運用すれば初期投資を回収できると見込む。有人の離島が数千に上るインドネシアは電力供給網の整備が遅れている。スンバ島の実証事業は低コストで電力の安定供給に道を開くと期待される。九電工は無電化地域を想定してEMSを開発した。松村部長は「世界中どこでも通用する技術」と語り、海外での受注拡大も見据える。

*6-3-5:http://mainichi.jp/articles/20180320/k00/00e/040/287000c (毎日新聞 2018年3月20日) 玄海原発:「司法は遅れている」申立人の元佐賀大学長
●運転差し止め認めず
 佐賀地裁が20日、九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の運転差し止めを求める仮処分の申し立てを退けた。九電は予定通り23日に3号機を再稼働できることになり、司法に望みを託した申立人らは「裁判所に声が届かなかった」と肩を落とした。「原発がどれだけ時代遅れか司法は気づいてくれない」。市民団体「原発なくそう! 九州玄海訴訟」の関係者が「不当決定」と書かれた垂れ幕を掲げると、佐賀地裁(佐賀市)前に詰め掛けた申立人らからはため息が漏れた。弁護団の板井優弁護士は「不当決定というよりも、これは違法だ」と憤りを見せた。申立人の一人で福岡市東区の立川由美さん(47)は「いくらこういう決定が出ようと、私たちは絶対にあきらめない」と涙を流した。今回の決定をした裁判長は、別の市民団体による同様の仮処分の申し立てについても、昨年6月に却下している。申立人の一人で元佐賀大学長の長谷川照(あきら)さん(79)=佐賀市=は立ちはだかった司法の壁に「国内や世界の情勢を考えると司法は遅れている」と嘆いた。早稲田大理工学部と京都大の大学院で原子核理論を学んだ。戦後復興の中で核の平和利用が議論されていた時代。大学の友人たちは原子力関連の企業に就職していった。長谷川さんにも企業から声がかかったが「平和利用と言っても、人命より金を優先するようになる」と考え、大学で学び続ける道を選んだ。6年間務めた学長を2009年9月に退任した後の11年3月、東日本大震災で津波被害を伝える映像に衝撃を受けた。子供の時に千葉で体験した空襲の記憶を思い起こした。「空襲では自宅も燃えた。がれきが残った様子やぽつんと電車がある様子が重なった」。津波は東京電力福島第1原発事故を引き起こした。「やっぱり原発はやめておいた方がいい」と感じた。原発訴訟に関わる弁護士に声をかけられ、12年1月、「原発なくそう! 九州玄海訴訟」の結成に参加。玄海原発の操業差し止めを求める本訴訟の原告団長に就いた。司法で原発を止めるのは「相当運がよくないと難しい」と考えているが、まだ本訴は続いている。「福島の事故は収束していない。再生可能エネルギーに転換しないといけない」。そう語気を強めた。


PS(2018年3月15日追加):*7のように、麻生財務相が、①佐川氏を呼び捨てにしたことを批判しつつ ②組織のトップが責任を足らなければ示しがつかない とするいくつかの記事を見たが、メディアは、こんな自己矛盾にも気がつかないのだろうか。②のように、「財務相トップの麻生氏が責任をとるべき」と言うのなら、同じ組織の人について外部の人に話す時は、①のように、謙譲の意味で呼び捨てにするのが正しい日本語で、これは、毎日新聞の社長が従業員のことを第三者に話す時に、様やさんを付けないのと同じである。
 また、②のように、「トップが必ず責任を足らなければならないか」については、日本では戦国時代に高松城開城と当主の切腹をもって毛利家と羽柴秀吉が和睦して以降、トップが責任をとって部下を助けることを美談としてきた。しかし、現在の経営学では「権限なきところに責任なし」というのが常識で、権限を持って指示した人に責任があり、権限がなく指示する立場でもない人に責任はない。そのため、事実を明らかにしなければ責任の所在は明らかにならない筈だが、何でもいいからトップが頭を下げ、引責辞任すればよいという日本の習慣は、むしろ問題をうやむやにして改善に向かわせないのである。
 なお、私は麻生財務相と仲がいいわけではないが、この際、複式簿記による公会計制度を導入して国の資産や税収の使い方をガラス張りにするのは、民間企業の社長出身で腕力のありそうな麻生氏が適任ではないかと思っている次第だ。 

*7:https://mainichi.jp/articles/20180314/k00/00e/010/275000c?fm=mnm (毎日新聞 2018年3月14日) 森友文書改ざん:「佐川が…」責任転嫁に躍起 国会審議
 「森友学園」(大阪市)との国有地取引に関する決裁文書の改ざん問題で、財務省が「書き換え」を認めてから初めての国会審議が14日始まった。野党が欠席する中、政府・与党からは、理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官に責任を押し付けるような発言が相次ぎ、識者からは「国民の理解は得られない」と批判の声が上がった。「(佐川氏の)答弁が誤解を受けることのないようにした。『そんたく』した話ではない」。14日午前の参院予算委員会。自民党の西田昌司氏から、財務省が文書を削除するなどした理由を問われた麻生太郎財務相は言い切った。佐川氏を呼び捨てにし、「書き換えは本省の利害で行われたもの。(政治家の)不当な圧力はなかった」と繰り返し、自身や安倍晋三首相らの関与がなかったと強調した。「書き換えは佐川氏が自分に不都合なことを直したこと。自分のためにやった」「(削除された内容は)公表しても問題ない文書。書き換えにより、かえって(首相の)ご夫人や総理が迷惑を受けた」。西田氏の質問にも、改ざんの責任を同省に求めようとする思惑がにじむ。西田氏の矛先は、学園の籠池泰典前理事長にも向けられた。補助金の不正受給による詐欺罪などに問われていることを強調。昨年3月の証人喚問で、事実と異なる証言をしたなどとして「まさに詐欺の語り口。(国有地売却問題は)詐欺で容疑を受けた人が首謀した事件だ」と断じた。安倍首相も、決裁文書から削られた妻昭恵氏に関する記述について「(記載された発言は)籠池さんが(近畿財務局に)語ったこと」などと述べ、「書き換え前の文書を見ても、私や妻が関わっていないということは明らか」と断言した。質疑を通じ、改ざんなどの責任を財務省や籠池氏にとどめようとする政府と与党の「連係プレー」を印象づけた。政治アナリストの伊藤惇夫さんは「政府が佐川氏や財務省理財局に責任を押し付けようとしているのは見え見えで、このままでは国民の理解を得られない」と批判。「与党側に『重要法案の審議が進まない』という声があるが、そもそも森友問題を1年間もうやむやにしてきたのは政府・与党だ。こういう事態に陥った以上、与党側が佐川氏や昭恵氏の国会招致に応じなければ議論は進まないだろう」と語った。


PS(2018年3月19日追加):*8のように、全自動編み機の島精機製作所の株価が、アジアの賃金上昇や省人化の流れで急騰したそうだが、これは、課題先進国の日本が課題を解決する製品・サービスを作って、20~30年後に他のアジア諸国で売れ始めた良い例だ。私は、全自動織機やプリント型自動染色機も日本国内に生産拠点を戻すことができ、しばらくすれば他国でも売れ始めると考えている。

*8:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180319&ng=DGKKZO28300750Z10C18A3ENI000 (日経新聞 2018年3月19日) 島精機 全自動編み機、中国で好調、ゴールドマン報告書追い風
 全自動編み機を手掛ける島精機製作所の株価が16日、急騰した。一時は前日比860円(13%)高の7620円をつけた。終値は10%高の7440円。日経平均株価が反落するなか、東証1部の値上がり率で4位に入った。ゴールドマン・サックス証券が15日、新規にリポートを出したのがきっかけだ。ゴールドマンは15日付で、島精機の投資判断を3段階で最上位の「買い」、目標株価を1万円として調査を始めた。担当アナリストの劉京元氏は「アジアの賃金上昇や省人化の流れを見ると、成長余地は大きい」と指摘する。すでに島精機をカバーする証券会社は6社。そのうち大和証券と岩井コスモ証券の2社が目標株価を算出し、いずれも7500円に設定する。ゴールドマンが高い目標株価を掲げたのを受けて、機関投資家や個人に買いが広がった。島精機はニットなどを全自動で編む機械を世界で唯一、開発する。値段は一般の編み機に比べて約4倍と高価だが、人件費の高騰する中国などで販売が伸びている。2018年3月期は連結売上高が前期比17%増の730億円、純利益は39%増の100億円を見込む。岩井コスモの大西等氏は「為替の円高はリスクだが、中国市場で利益率の高い製品が普及期に入ったのはプラスだ」と評価する。今期の予想PER(株価収益率)は27倍とミシン大手のJUKI(13倍)より高い。ただ、17年4~12月期の純利益は通期計画の9割に達し、業績の上振れ期待が強い。今後の成長戦略が明確になれば、株価は一段高となる可能性もある。


PS(2018年3月20日追加):*9-1のように、JR鹿児島中央駅西口地区再開発を巡り、鹿児島県が市道の拡幅に必要な測量調査を1年以上拒否し続けているとのことだが、新幹線の駅ができると通院圏や購買圏が沿線に広がるため、再開発するチャンスである。長崎市新大工町一帯の再開発は、*9-2のように、長崎玉屋の田中丸氏が中心になって市と協力し、「国内外の観光客が楽しめる」「地域の可能性を発揮する」などのコンセプトで21世紀型の街づくりが進んでいる。鹿児島市の場合は、郵便局も協力すれば広いエリアの再開発ができるため、京都駅などを参考に鹿児島の長所を出せばよいと思われる。さらに、新しいマンションには、*9-3のようなAIスピーカーを装備すれば、自宅療養や一人暮らしの高齢者の役にも立つだろう。

    
   *9-1より      *9-2より    西日本新聞2018.1.21
  鹿児島市のケース     長崎市のケース    福岡市のケース

*9-1:http://qbiz.jp/article/130192/1/ (西日本新聞 2018年3月21日) 進まぬ再開発事業 JR鹿児島中央駅西口 県が道路測量拒否 JR九州の計画に影響も
 鹿児島市のJR鹿児島中央駅西口地区再開発を巡り、土地を所有する鹿児島県が市道の拡幅に必要な測量調査を1年以上拒否し続けている。市は再開発に伴う道路整備は欠かせないとしているが、実現の見通しは立たない。既にビル建設計画を進めているJR九州は、事業進捗(しんちょく)に影響が出る恐れもあるとして、県の対応に気をもんでいる。西口地区には県が約1万平方メートル▽JR九州が8500平方メートル▽日本郵便(JP)が5700平方メートル▽市が700平方メートル−をそれぞれ所有。4者は2006年、11年の九州新幹線全線開通を見据え、計2万5千平方メートルの一体的な開発を目指して連絡会を発足した。09年にはコンベンション施設やホテルなど望まれる機能の基本規模を提示。概算工事費などの調査報告書をまとめたが、周辺で同種施設の民間開発が相次いだため協議は停滞し、14年8月に個別活用を含め幅広く検討する方針に転換した。JR九州は16年8月、所有地に商業ビルやマンションを建設する計画を発表。市も17年1月の連絡会で、再開発区域内で市道拡幅などの道路整備を提案した。拡幅時には所有地の一部提供が想定され、JRとJPは受け入れたものの、県だけは「現有地を確保したい」として応じず、連絡会も以降開かれていない。県の姿勢にJR九州幹部は「困った」と戸惑う。既に敷地内の建物の解体を始めており「県があと半年テーブルにつかなければ、着工や開業が計画より遅れるかもしれない」と危ぶむ。
     ▽△
 県は3月県議会で、所有地について「県民にとって最も望ましい利活用方法を検討中」と繰り返し、方針を示す時期も明らかにしなかった。県議の一人は「県民の貴重な財産。何年も『検討しています』だけでは納得できない」と批判する。表向きは活用方針を検討中とする県だが、腹案があるとの見方は強い。老朽化した県立総合体育館の建て替え地だ。県は有識者の検討委員会を設置し、市中心部を想定したアリーナ的施設整備が望ましいとする提言を2月に受けた。西口の土地は提言に符合する。新体育館構想は県から非公式に連絡会側に伝えられているという。県の構想を進めるには県所有地だけでは手狭。残り3者の協力が不可欠だが、JR九州幹部は「50年に一度の開発で計画を変えるつもりはない」と話し、JPも取材に「(現在の施設を)今後も活用する方針だ」と答えた。再開発の行方は見通せない。
:http://qbiz.jp/article/130201/1/ (西日本新聞 2018年3月21日) 九州の都市再開発、新大工町再開発図を公表 市長「観光客楽しめるよう」 組合「可能性を発揮したい」
 長崎市新大工町一帯の再開発を進める「新大工町地区市街地再開発組合」(田中丸弘子理事長)が20日、田上富久市長に事業の進捗(しんちょく)状況を報告、2021年度に完成予定の再開発ビルのイメージ図を示した。田上市長は「国内外の観光客が楽しめるようにしてほしい」と要望、田中丸氏は「地域の可能性を発揮したい」と述べた。組合によると、地元商店街の雰囲気も大切に、長崎の食文化体験ゾーンも手掛ける考えという。一帯は長崎玉屋の閉店に伴って再開発に向けた動きが始まり、14年1月に準備組合が発足。4年がかりで協議を進め、今年2月の本組合設置にこぎ着けた。組合の事業計画によると、旧長崎玉屋ビルがある北街区3800平方メートルに26階建て複合ビルを建設。地下1階に駐車場、1〜3階に商業施設を配し、4〜26階は分譲マンション大手の大京グループ(東京)が購入して販売する。国道34号を挟む南街区1300平方メートルは12階建て駐車場ビルを建設し、11〜12階はオフィスとする。総事業費は163億円。再開発を契機に市は二つの再開発ビルをつなぐ歩道橋を掛け替える。国と県は長崎電気軌道・新大工町停留所の西側に横断歩道を設けてスロープでつなぎ、車いすでも乗降可能なバリアフリー構造とする方針。

*9-3:http://qbiz.jp/article/130111/1/ (西日本新聞 2018年3月20日) 九電がAIスピーカー参入 家電操作や節電アドバイス
 九州電力は、人工知能(AI)搭載の対話型スピーカーを使った新サービスを今夏から始める。さまざまなものをインターネットでつなぐIoT技術を生かし、家電の操作や節電アドバイス、防犯などができるようにする。AIスピーカー製造の技術を持つ企業と協力して独自の端末を開発。利用者の話し掛けに応じてサービスを提供する。蓄積したデータを端末が分析し、各家庭に合わせた電化製品の自動制御もできるという。19日には、スピーカーがアニメキャラクターの音声で応答するサービスを導入すると発表。第1弾として「妖怪ウォッチ」のウィスパーを起用する。利用者の指示に「了解でうぃっす!」などと答える。24、25日に東京であるアニメイベントで披露し、今後、キャラの追加を検討するという。電力の小売り全面自由化で競争が激化する中、利便性の高いサービス提供で顧客獲得につなげる。毎月利用料を徴収する料金体系を予定しており、新たな収益源をつくる狙いもある。料金や開始時期は今後詰める。無料モニターも募集する予定。

| 経済・雇用::2016.8~ | 04:24 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.1.29 高齢化した成熟国家では、医療・介護などの福祉サービスは実需であること (2018年1月30、31日、2月1、2、3、4、7、10日に追加あり)
   
      日本の人口構成の変化               *3-3より

(図の説明:日本の年齢階層別人口は、1番左と左から2番目のグラフのとおり、高齢者の割合が増えて、収入構造《賃金・年金》と需要構造が変わった。つまり、全収入に占める年金収入の割合が増え、高齢者向けサービスの実需が増加したのだ。にもかかわらず、政府は、高齢者向けサービスを削減し、インフレによって高齢者の資産移転を行ったため、不要な需給ギャップが生じ、GDPの伸びも抑制された。こういう不要なことをしなければ、高齢化社会で真に必要とされる財・サービスの開発と供給が進み、それは今後、世界で必要とされた筈である。なお、何歳まで健康かという問題については、左から2番目のグラフで同年齢の人口が急カーブで減り始める頃までと思われ、健康状態は人によって異なるため階段状になっているわけである)

  
  購買力平価による各国GDPの推移    日本の実質・名目賃金と消費者物価指数

(図の説明:その需給ギャップを解消するためとして、インフレ政策を行い、生産性の低い政府支出に多くの予算を配分し、実需を抑制したため、購買力平価で比較して日本のGDPの伸びは先進国・開発途上国を合わせて最低になった。また、インフレ政策で実質賃金の伸びもマイナスになっている《年金支給額は当然マイナス》が、これは国民を主体としない政策の結果である)

(1)医療について
1)医師の長時間労働と医師の時給
 *1-1、*1-2のように、杏林大学医学部付属病院が36協定を超えて医師に残業させ、残業した時の割増賃金も不十分だったとして三鷹労基署から是正勧告・改善指導を受けたり、北里大学病院の36協定の結び方が不適切で「協定が無効だ」と労基署から指摘されたりしているが、医師には応召義務があり、(役所と違って)9時~5時の勤務時間には入らないことも多々ある職種であるため、これに近いことはどの病院でも行われていると思われる。また、残業代を請求できる医師ばかりではないため、医師の時給はかなり低くなるだろう。

 それでは、労働基準法を順守する上で必要な医師数は確保できるのかと言えば、例えば、*1-3のように、正常出産でも「9時~5時」の間に子どもが生まれるとは限らない産婦人科で、医師数を確保できていない。産婦人科医を増やすことも必要だと言われているが、*1-6のように、地域や診療科間で医師数は偏在しており、外科系や産婦人科は医師数が減っている診療科なのである。

 外科の医師数が減る理由は、手術が長引いたり、重篤な患者の治療を行ったりするため、医師の労働が過重になるからだが、だからといって、*1-4のように、救急患者が「たらい回し」にされて治るものも治らないという事態になってはならない。これを解決するには、医師個人の善意に依存して医師に重労働を課し命を削らせてきた現在の医療政策を改め、十分な数の医師を配置して無理なく診療できる組織体制を作ることが必要で、そのためには、診療報酬削減一辺倒の現在の医療政策を改めなければならない。

2)女性医師割合の増加で起こったこと

  
     2018.1.28東京新聞    女性の医師割合及び医師国家試験合格者割合の推移

 医師国家試験合格者に占める女性割合は次第に増加し、2014年は31.8%となり、これに伴って医療機関で働く2016年末の女性医師数は、*1-5のように、6万4305人で全体の21%となった。男女比は年齢層が若いほど女性の割合が高く、29歳以下は35%、30代は31%を占め、20年前と比べると29歳以下も全世代で8%高くなったそうで、私はよいことだと考える。

 また、私は、女性だからといって妊娠・出産を機に離職して職場復帰しない人はむしろ少なく、そのために男女雇用機会均等法で育児休業等が定められているのだと思うが、女性医師は結婚後のことも考えて過重労働を強いる診療科を敬遠し、無理の少ない診療科に集まる傾向があるそうだ。それもあって、地域や診療科による医師の偏在が起こっているため、希望者の少ない地域や診療科は、担当する医師を厚遇する必要があるだろう。

(2)介護について

  

(図の説明:介護保険制度は、導入されて17年しか経過しておらず、全世代型になっていないため不完全だが、著しい伸びが見込まれている。これは、核家族化した高齢化社会を迎えた日本で、本当に必要とされている実需だからだ)

   
  2018.1.27日経新聞   2017.6.27読売新聞     2018.1.27東京新聞 

(図の説明:政府は、その実需を無駄遣いであるかのように抑制することに努めているが、身体が動かなくなった人が自宅で暮らすには家事支援も必要であるため、少なくとも混合介護を認めるべきであろう)

 介護保険制度は、1995年前後に私が提案し、1997年の国会で制定された介護保険法に基づいて、2000年4月1日に施行され、2000年時点で184万人だった介護保険制度の利用者は、2025年には657万人になると予想されている。これだけ利用者が増加するのは、核家族の多い成熟した高齢化社会の日本で、合理的な介護サービスは必要性の高い実需だからにほかならない。

 厚労省は、*2-1のように、自立支援や重度化を防ぐ取り組みに報酬を手厚くし、医療との連携拡大を促すそうだが、このうち医療と介護の連携は当然のことで、自立支援に頑張った事業者が報われる仕組みは必要であるものの、どうしても自立できないから介護サービスを利用している人も多いため、*2-2、*2-3のように、介護報酬の改定は、利用者の生活の質の向上に資する利用者本位のもので、無理に自立を押しつける改定であってはならないと考える。

 日経新聞は、「介護サービスは生産活動ではなく無駄遣い」と見做しているせいか、*2-5のように、「給付の効率化、給付削減が不十分」という記載が多い。しかし、核家族化した高齢化社会の日本で、介護サービスは必要性の高い実需であるため利用者の増加があるのであり、やみくもな介護費の抑制はむしろGDPを落とす。

 そのため、私は、医療・介護は保険適用分と自己負担分を作って混合でサービスを受けることを可能にし、自己負担でも多くの人が購入するサービスは、順次保険適用にしていくのがよいと考える。そうすれば、保険適用を前提とした日本だけ不当に高い価格付けはなくなるだろう。

 なお、東京新聞は、*2-4のように、「介護の見直しに、必要性を増す担い手の確保策が十分か疑問が残る」という記事を書いており、これらはしっかりと考慮されなければならない。

(3)年金と高齢者雇用
 日本老年学会などは、*3-1のように、医療の進展や生活環境の改善により、10年前に比べて身体の働きや知的能力が5~10歳は若返っていると判断し、現在65歳以上とされている高齢者の定義を75歳以上に見直すよう求める提言を発表した。

 そのため、75歳まで働ける人は、*3-2のように、年金受給開始を75歳からに選択することもでき、年金支給開始年齢を遅らせた人は毎月の受給額が増える制度を拡充し、定年延長など元気な高齢者が働ける仕組み作りも進めるのはよいと考える。働いている人の方が認知症にならず、身体も元気でいられるので、介護サービスを使わずにすみ、多面的なメリットがある。

 そのような中、*3-3に、日経新聞が、「2008年のリーマン・ショック以降、先進国を苦しめてきた『需要不足』と呼ばれる状態が約10年ぶりに解消される見通しとなり、米国の景気回復を追い風に貿易や投資が刺激され、需要が増えている」としているのには驚いた。

 何故なら、未だに日本の需要を米国輸出とそのための投資に頼っているが、これは先進国ではなく低賃金を使った製造業による輸出に頼る開発途上国の発想であり、この前提は戦後すぐの日本には正しかったかも知れないものの、現在には全く当てはまらないからである。現在は、福祉サービスなどの内需を満たす方向で需要を作り出すのが、国民を豊かにするための正道だ。

 なお、東日本大震災の復興需要があり、福祉サービスの担い手も足りないため、金融緩和しなくても失業率を最低水準にし、さらに人手が足りない状態を作ることはできたと思われる。にもかかわらず、金融緩和とインフレ政策で実質賃金を下げたことは、不問に付されるべきでない。

 また、「失業率が下がるほど物価が上がるという相関関係は、右肩下がりの“フィリップス曲線”に示されるが、日本や米国は失業率が完全雇用と考えられている水準を下回っている割に物価の反応が鈍い」とも書かれているが、過去に米国で観測されたフィリップス曲線を出すまでもなく、実質賃金や実質年金が下がれば需要が減る上、現在の需給は国内だけでなく開発途上国も含めた世界市場で調整されているため、安い賃金で働く開発途上国が市場経済に参入してくる限り、物価は上がらない。これは、1990年以降の米国でも観測されていることであり、賃金の高い先進国は別の豊かさを考えるべきなのである。

<医療>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13322983.html (朝日新聞 2018年1月20日) 杏林大の医師、長時間労働 月100時間超の例も 労基署が是正勧告
 東京都三鷹市の杏林大学医学部付属病院が、労使間の時間外労働の取り決め(36協定)を超えて医師に残業させ、残業した時の割増賃金も不十分だったとして、設置者の杏林学園が三鷹労働基準監督署から是正勧告と改善指導を受けていたことが分かった。杏林大は「勧告を真摯(しんし)に受け止める」としており、働き方の見直しに着手。医師数百人に不足分の賃金数億円を支払ったとしている。杏林大などによると、勧告と指導は昨年10月26日付。杏林大は就業規則と協定で、医師について週39時間の所定労働時間、月最大70時間の残業時間を定めているが、労基署の調査では約700人の医師のうち約2%が「過労死ライン」とされる残業80時間を超え、100時間を超える医師も数人いたという。労働基準法が定める、残業に対する割増賃金も一部の医師について法定の割増率を下回っていた。杏林大は昨年末、同年4~9月の不足分を対象者に支払ったという。長時間労働の理由について、杏林大は朝日新聞の取材に「医師には(治療を求められたら拒めない)応召義務があり、患者側に立って丁寧な診療をしたり、手術が予想以上に長引いたりすることがある」などと説明している。割増賃金については、法定割増率を下回る別の手当を支払っていたという。同病院は高度な医療を提供する施設として国が承認する全国85の「特定機能病院」の一つ。2016年度の外来患者は約64万9千人、入院患者は約29万5千人に上る。医師の長時間労働や勤務管理を巡っては、聖路加国際病院(東京都中央区)や北里大学病院(相模原市)なども労基署から是正を求められていることが明らかになっている。厚生労働省は有識者会議で医師の働き方についての議論を進めており、18年度末までに具体案を取りまとめる予定だ。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13318146.html (朝日新聞 2018年1月18日) 北里大病院、勤務ずさん管理 医師の労働時間定めず、36協定不適切
 北里大学病院(相模原市)が、医師らを残業させるために必要な労使協定(36〈サブロク〉協定)の結び方が不適切で、協定が無効だと相模原労働基準監督署(同)から指摘されていたことがわかった。医師の勤務時間を就業規則で定めずに違法な残業をさせていたなどとして、労働基準法違反で是正勧告や改善指導も受けており、大病院のずさんな労務管理の実態が明らかになった。勧告や指導は昨年12月27日付。法定労働時間を超えて病院職員を働かせるには、労働者の過半数で組織する労働組合か、労働者の過半数代表者と36協定を結び、残業の上限時間などを定める必要がある。北里大病院の関係者によると、病院には労組がなく、各部門の代表が集まる「職員代表の意見を聴く会」で過半数代表者を選び、残業の上限を「月80時間」などとする36協定を代表者と結んでいた。だが、各部門の代表になるには所属長の推薦が必要なうえ、人事担当の副院長ら幹部が過半数代表の選出に関わっていた。このため選出の手続きが労基法の要件を満たさないと指摘されたという。2千人以上いる職員の残業が違法状態にあったことになり、この点でも是正勧告を受けた。また、同病院は「勤務時間管理規程」に従って職員の勤務を管理し、所定労働時間は週38時間とする▽残業させる場合は責任者の承認を必要とする――ことなどを定めているが、医師や管理職をこの規程の「適用除外」にしていた。北里大病院は全国に85ある、高度な医療を提供する「特定機能病院」の一つ。2016年10月時点で医師約600人が勤務しているが、始業・終業の時刻や所定労働時間、休日についてのルールがない状態で働かされていたことになる。同病院の職員によると、職員の出退勤時間を打刻するタイムカードはあるが、医師の多くは出勤か退勤のどちらか一方のみを打刻するよう病院側から指導されていたという。長時間労働が長年常態化していたとの声もある。医師がどれだけ残業したかの十分な記録がないため、違法残業の時間や未払い残業代の規模の把握も難しいとみられる。残業時間の上限規制の導入を目指す政府は、医師への規制適用を5年をめどに猶予する方針だ。だが、組織ぐるみともみられかねない大病院の不適切な労務管理が明るみに出たことで、勤務医の労働環境の改善を急ぐよう求める声が強まるのは必至だ。

*1-3:https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20171108-OYTET50038/ (読売新聞 2017年11月8日) リスクの高い出産に対応する病院、6割が産科医不足
 リスクの高い出産に対応する総合周産期母子医療センターの約6割が労働基準法を順守する上で必要な産婦人科医を確保できていない、とする初の推計を日本産婦人科医会がまとめた。宿直や休日の日直の限度回数を超えた勤務が常態化している恐れがあるという。労基法では、労働基準監督署の許可があれば、労働時間の規制外となる宿直や日直を認めている。厚生労働省は通知で、1人につき宿直は週1回、日直は月1回が限度としている。同センターは、合併症のある妊産婦や新生児の集中治療を行う医療機関で、全国に107施設が指定されている。原則24時間、複数の産婦人科医の勤務が要件だ。同医会では、通知と要件に従った場合の宿直・日直体制には16人が必要と試算。今年6月、同センターの人員体制を調査したところ、107施設中66施設(62%)で産婦人科の常勤医が16人未満だった。非常勤医を加えても56施設(52%)が16人に達しなかった。実際は、高齢や妊娠・育児中などで宿直・日直を免除、軽減される医師も多い。16人以上いても、限度回数を超えている医師がいる可能性がある。産婦人科医不足を巡っては、同センターなど地域の基幹病院に医師を集めて、勤務負担を減らす対策が進む。同医会の中井章人常務理事は「さらに集約化を図るとともに、産婦人科医を増やす方策も必要だ。地域や診療科間での医師の偏在解消が急務だ」と話している。

*1-4:https://dot.asahi.com/dot/2017112200086.html?page=1 (AERA 2017.11.24) 救急患者「たらい回し」の裏側 断らざるを得ない当直医の窮状とは、連載「メディカルインサイト」
 11月7日、香川県内の県立病院で昨年度、時間外労働が2千時間を超える勤務医がいたことが報じられた。県は背景に医師不足があるとし、医師確保に努めているという。だが、「妙案はない」とも。現役の医師であり、東京大学医科学研究所を経て医療ガバナンス研究所を主宰する上昌広氏は、著書『病院は東京から破綻する』で、医師不足が原因で患者を受け入れられない病院側の実情を、自身の経験をもとに打ち明けている。
     *  *  *
 2013年1月、埼玉県久喜市で救急車を呼んだ75歳(当時)の男性が、県内外の25病院から合計36回、受け入れを断られ、最終的には県外の病院で死亡しました。典型的な「救急患者のたらい回し」です。亡くなった患者さんのご冥福をお祈りすると同時に、医師も患者受け入れが嫌で断っているのではないことをお伝えしたいと思います。埼玉県は日本で最も人口あたりの医師の少ない地域の一つです。私自身の経験から考えても、埼玉県の病院の当直医師が、全ての救急車を受け入れることは不可能です。私は1995年から2001年まで、大宮赤十字病院(現さいたま赤十字病院)の内科・循環器科に常勤、非常勤医師として勤務しました。06年から現在に至るまで、埼玉県北部に存在する行田総合病院に内科非常勤医師としても勤務しています。大宮赤十字病院に勤務していた頃、私は20代でした。1人でも多くの患者を診ようと、先輩医師に当直業務をかわってもらうことも珍しくありませんでした。当時の大宮赤十字病院では、内科は一般内科1人と循環器科1人の2人当直体制でした。周辺の医療機関と比較して、恵まれていたと思います。三次救急を受け入れる地域の基幹病院だったため、次から次に救急車がやってきました。一睡もできないことも珍しくありませんでした。その後、都内の虎の門病院や国立がんセンター中央病院(当時)に勤務し、当直業務をこなしましたが、大宮赤十字病院との違いに啞然としたことを覚えています。大宮赤十字病院では、心肺停止から急性心筋梗塞、脳卒中までの患者を引き受けていました。こうした患者は早期の対応が求められます。たとえば、心筋梗塞の患者が来たら、すぐに検査や治療を指示し、同時に緊急カテーテル検査を行うか判断しなければなりません。判断に困るときは、先輩医師に電話して、指示を仰ぎました。心臓カテーテル検査を実施すると決めれば、他の先輩医師にも電話して、緊急来院をお願いしました。彼らが来てから検査に入ることもありました。このような重症患者に対応している間は、別の患者を診ることは不可能です。脳卒中や心筋梗塞など、迅速な対応が必要な患者の場合は、救急隊から連絡を受けても、「申し訳ない」と思いながら、お断りしたことが何度もあります。これが、当直医の立場から見た「救急患者のたらい回し」の実態なのです。
■「緊急受け入れ病院」制度の限界
 埼玉県は、救急車の「たらい回し」を防止するため、14年4月には全ての救急車にタブレット端末を設置し、15年2月には「緊急受け入れ病院」を4ヵ所から12ヵ所に増やすことを決定しました。「緊急受け入れ病院」制では、埼玉県が認定する施設で、受け入れを2回断られた患者に対し、3回目で必ず対応することが義務づけられます。埼玉県によれば、タブレット端末の導入により、受け入れ照会が4回以上の「たらい回し」患者は14%減少したそうですが、この程度では問題は解決するとは思えません。「緊急受け入れ病院」を指定し、補助金と引き替えに救急車を引き受けさせても、他の患者を治療している間、病院のベッドで待ってもらうことになります。結局、救急隊の代わりに当直医に責任をなすりつけるだけです。脳卒中や心筋梗塞の治療は時間との戦いです。こうした形骸的な対応は患者にとって決していいことではありません。医師不足が深刻な千葉県や埼玉県で、「救急患者のたらい回し」を減らすには、医師を増やすしかありません。ところが、それが困難です。医師会や医学部経営者など既得権者の思惑が絡むからです。既得権を打破するには、市民が問題を認識し、既得権者を批判する必要があります。そうすれば行政や政治は動かざるを得なくなります。
※『病院は東京から破綻する』から抜粋

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180129&ng=DGKKZO26119940V20C18A1TY5000 (日経新聞 2018.1.29) 女性医師、働き続けやすく、東京女子医大 育児での離職者再研修/総合メディカル モール設立開業を支援
 遅れていた女性医師のキャリアと出産・育児との両立を後押しする動きが広がっている。20代では医師の3割超が女性になった。日本の医療を支えるために女性の活躍は不可欠で、復職支援や働き続けやすい環境づくりを進める。「この1、2年で症状が変わったことはありますか」。東京女子医科大学病院(東京・新宿)の総合診療科で1月上旬、山口あけみ医師(40)が精密検査に訪れた男性を診察していた。山口さんは2017年秋、約10年間の専業主婦生活から、非常勤医師として医療現場に復帰した。同大学卒業後、付属の医療機関に勤めていたが、4年目に夫の仕事の都合で米国に引っ越すため離職した。現在4~10歳の2男2女を育てている。17年1月の帰国を機に、医師の仕事を通じて社会に役割を持ちたいと復帰を願ったものの、長く現場を離れ不安があった。「仕事を忘れているのでは」「ミスを起こしてしまったら」。後押ししたのが同大の女性医師再研修部門が提供する「再研修―復職プロジェクト」だった。原則3カ月で希望者の要望に沿った頻度、内容の研修をする。制度は06年度に始まり、結婚や育児などで医療現場から離れた女性医師が対象だ。卒業校は問わない。17年1月までに233人が相談し、96人が研修を受けた。休職していた相談者のうち75%が復職した。山口さんは子育てとの両立を考え週1度、総合診療科で研修した。指導医にアドバイスをもらいながら実際に診療をして「自分にもできる役割がある」と前向きになれたという。再研修部門の唐沢久美子部門長は「キャリアが多様化し、一旦離職する医師も増えた。復職したいときに相談できる人がいないことが課題。人材という宝を掘り起こす必要がある」と話す。厚生労働省によると医療機関で働く16年末の女性医師数は6万4305人で全体の21%。ただ男女比は年齢層が若いほど女性の割合が高く、29歳以下は35%、30代は31%を占める。20年前と比べると29歳以下も、全世代でみても8ポイント高くなった。日本医師会の今村定臣常任理事は「女性には妊娠・出産など男性と異なるライフステージがあるが、女性に働いてもらわなければ医療現場は立ちゆかなくなる」と指摘。医師会は厚労省から委託を受け、就業希望者に医療機関を無料で紹介する「女性医師バンク」をつくった。一方、08年から子育てや介護中の医師らに基本3年間の「キャリア支援制度」を提供するのが岡山大学病院(岡山市)。それまでの定員と別に応募医師を配置する。勤務時間や頻度が比較的自由になる。制度利用後は大学病院で常勤復帰したり、地域の病院に就職したり。希望者が増え、来年度からは受け入れ可能時間を増やす予定だ。働き方改革も進む。久留米大学病院(福岡県久留米市)は18年度、小児科のワークライフバランスを進める取り組みを、他科に紹介し広げる意向だ。ママさん医師が活躍中の小児科は13年末から土日にしっかり休めるよう体制を整備。休日にも主治医が担当患者の見回りやガーゼ交換をしていたのを、基本的に全て当直医が対応するよう変更した。入院患者らに対応する医師約20人の土日の平均勤務時間は、1日平均3.5時間から2.7時間に減少。患者から大きな不満はないという。キャリア支援を担当する一人、守屋普久子医師は「結婚出産を控える若手の女性医師が増える中、働き続けやすい環境作りが必要。大学病院で人材が不足すれば地域に医師を派遣できなくなる可能性もあり、地域医療に影響を及ぼしかねない」と話す。働く場を自ら作ることで子育てとの両立を図ろうとする試みもある。医療コンサルティング大手の総合メディカルは開業を希望する女性医師向けに19年4月に複数のクリニックが集まる「女医モール」の開業を都内2カ所で目指す。社内に女性社員主体の「JOY☆Working Team」を設け、医師の募集や開業地の選定に当たる。将来は子育て中の女性がワークシェアできる体制の医療モール開設も目指す。保育園と小学校に通う3人の子を育てながら首都圏の病院に勤める40代女性医師は開業を検討中だ。同医師は「自宅近くで開業できれば、子どもの下校後にクリニックで宿題をさせるなど、そばにいられる」と話す。今は父母の力も借りながら午前8時半~午後5時半を定時として働くが、緊急時には突如の時間外勤務や深夜の対応が必要なことがある。いつまでこの生活を続けられるか不安を感じるそうだ。ただ、「これまで約20年キャリアを積んで来られたのは、大学や患者さんから多くの機会を与えられてきたから。医師として返し続けることが使命」と強調する。医療に携わり続ける気持ちは変わらない。

*1-6:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018012801001532.html (東京新聞 2018年1月28日) 専門医研修、地方は低迷 外科「10人未満」27県
 若手医師に分野ごとの高度な知識や技術を身に付けてもらうため、4月から新たに始まる専門医養成制度で、医師が希望する研修先が大都市に集中し、地域に大きな偏りがあることが28日、分かった。外科は東京での研修希望者が170人に上る一方、青森、高知など27県は10人未満、内科でも9県が15人以下だった。指導医の数など、研修機関としての基準を満たす病院が地方に少ないことが背景にある。新たな制度は大学の医学部教授や公的機関の代表で構成する一般社団法人「日本専門医機構」(2014年設立)が運営。研修先登録結果は同日までに機構が公表した。

<介護>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180127&ng=DGKKZO26194380W8A120C1EA3000 (日経新聞 2018.1.27) 介護自立支援、報酬手厚く、重度化防止も対象 医療と連携拡大促す
 厚生労働省は26日、4月から適用する介護保険サービスの新しい料金体系(介護報酬)を公表した。介護を受ける人の自立に向けた支援や、重度化を防ぐ取り組みに報酬を手厚く配ることが特徴だ。効率化に向け残された課題は多い。介護報酬全体の改定率は、昨年末の2018年度予算編成の過程でプラス0.54%と決まった。保険料などを除く国費ベースでは支給額が約140億円増える。同日の社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の分科会では、報酬の増額分をどこに配分するかや、どのサービスを効率化するかの詳細を固めた。柱の一つである自立支援は、食事や入浴、歩行といった日常動作が通所介護(デイサービス)を通じて改善できた事業所に対して報酬を加算する。外部のリハビリ専門家や医師と協力した重度化防止の取り組みにも報酬を厚くする。適切な支援を通じ、服の脱ぎ着が自分でできるようになったり、不安定だった歩行がしっかりとした足取りになったりする例がある。介護事業者の間でも「やり方次第で要介護度が改善する人は多い。頑張った事業者が報われる仕組みが必要」との声が根強くある。要介護度が改善すれば生活の質が向上し、給付費も少なくて済む。今回の取り組みはその第一歩だが、加算額はわずかなため「自立支援のインセンティブとしては不十分」(介護事業者)との指摘が早くも出ている。自立支援などを重視する背景にあるのは、逼迫する介護保険財政だ。制度を施行した2000年度と15年度を比べると給付額は約3倍の9兆円、要介護認定者数は倍近くの445万人まで増えた。自立支援を通じて状態改善を促し、給付額の増加幅を抑える。今回の報酬改定では医療との連携拡大への評価も盛り込んだ。特別養護老人ホームでは終末期のみとりに対応するため、夜間や早朝に医師が駆け付ける態勢を充実させた施設への報酬も増やす。みとり対応が特養で可能になれば、病院への救急搬送などが必要なくなる。高齢者の「薬漬け」が問題となる中、かかりつけ医と連携した「減薬」への加算も新設する。介護施設と病院間で、利用者の状態について緊密に情報を共有することも促す。今回は報酬全体が増額となるため、事業者にとっては収益上プラスとなる面があるが、利用者の負担は増える場合がある。厚労省の試算によると、通所介護を週3回、訪問介護を週2回利用している場合、1カ月あたりの総費用は訪問介護分で5万2900円から5万5290円へと5%弱増える。自己負担を1割とすると200円超負担が増える。通所介護では自己負担は50円ほど増える。特養のモデルケースの場合、総費用は1カ月28万1040円から28万8730円へと8000円程増える。自己負担も800円近く増えることになる。今回は介護職員の負担軽減につながる情報通信技術(ICT)の活用促進策は一部にとどまった。特養の見守りセンサー導入で夜勤対応に関する加算を取りやすくするほかには目立った施策はない。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13335157.html (朝日新聞社説 2018年1月29日) 介護報酬改定 利用者本位を忘れずに
 介護保険サービスで、事業者に支払われる介護報酬の4月からの改定内容が決まった。大きな特徴は、利用者の自立支援や重度化防止につながる取り組みに対し、重点的に報酬を手厚くしたことだ。リハビリを強化・充実するほか、通所介護(デイサービス)で、日常生活で使う身体機能が維持・改善される利用者が多い場合に「成功報酬」を加算する仕組みを入れる。特別養護老人ホームなどでは、排泄(はいせつ)で介助が必要な人の「おむつ外し」を支援する取り組みも評価する。身体機能が改善したり、自分でトイレに行ったりできるようになれば、利用者の生活の質の向上につながるだろう。一方で、利用者が望まないサービスを事業者が強いたり、改善が見込めそうな軽度の人ばかり選んだりしないかという懸念もある。十分留意したい。今回の改定には、高齢化が今後ピークを迎えるなかで、介護費用の伸びを抑える狙いもある。経済界などからは、給付の抑制策が不十分だとの不満も聞かれる。厳しい介護保険財政への目配りは必要だ。ケアプランを作るケアマネジャーの能力と中立性を高める工夫など、無駄をなくす努力も続けねばならない。同時に、利用者が自分らしく暮らすことを支えるという、介護保険の理念を見失ってはならない。調理や掃除といった生活援助サービスについて、財務省などは利用回数に上限を設けるよう求めていたが、導入は見送られた。利用が平均を大きく上回る場合は自治体が設ける専門職らの会議で検証し、必要があれば改善を促すことになった。利用回数が多い人には、ひとり暮らしや認知症の人も少なくないとされる。個々の事情をよく考慮してほしい。介護人材の待遇改善も、引き続き待ったなしである。今後の消費増税分を活用した改善策が検討されているため、今回の改定では具体策は限られる。しかし、介護報酬が全体として6年ぶりにプラス改定とされたのは、待遇改善による人手不足解消が喫緊の課題であることに配慮したからだ。事業者は肝に銘じてほしい。利用者のニーズにあった質の高い介護サービスを提供することは、「介護離職ゼロ」を実現するための基本である。そのためには、サービスのあり方だけでなく、税金投入や保険料を納める制度の担い手拡大など、負担増を視野にいれた議論も避けるべきではない。

*2-3:https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=89990 (南日本新聞社説 2018年1月28日) [介護報酬改定] 自立の「押しつけ」懸念
 利用者の意思に関係なく、自立を押しつけるようなことがあってはならない。厚生労働省が2018年度からの3年間、介護保険サービス事業所に支払う介護報酬の改定方針をまとめた。事業所が外部の医師らと連携して身体機能の回復に取り組んだ際の報酬を手厚くするほか、通所介護(デイサービス)で利用者の状態が改善すると加算する「成果型」の報酬が新設される。身体機能が回復すれば、生活の質の向上が期待できる。手厚いケアが必要な高齢者の増加を抑えられれば、増大する介護費用の抑制にも効果があるだろう。介護の総費用は18年度予算ベースで11兆円超に上る。団塊世代が全員75歳以上になる25年、日本は全人口の3人に1人が65歳以上という超高齢化社会に突入する。持続可能な制度とするために、費用の抑制は不可欠である。今回の改定は、医療機関に支払われる診療報酬との同時改定だ。夜間や早朝に医師が駆けつける態勢を整えた特養への加算を新設するなど、医療、介護の連携強化を目指すのも理解できる。ただ、介護保険制度の原点は利用者が目指す生活を補助することなはずだ。治すことを目的とする医療とは異なることも忘れてはならない。要介護度が重度の高齢者の増加を防ぐのは、厚労省のここ数年の方針だ。昨年の法改正では住民の要介護度の維持・改善に取り組み、成果を上げた自治体に財政支援をする交付金創設が決まった。事業所への成果報酬もこの一環といえる。利用者の要介護度が上がれば、事業所への介護報酬は上がる。逆に高齢者の状態が改善すれば、事業所の収入は減ることになる。事業所の努力が報われない今の仕組みは、確かに改善した方がいい。だが、成果報酬目当てで利用者にリハビリを強制する事業所が出ないとは限らない。国や事業所が機能回復に重点を置きすぎて、利用者の希望や実情が置き去りになるようでは本末転倒だ。訪問介護のうち掃除や調理などの「生活援助」については、市町村がケアプランを検証する仕組みを設けるなどの利用抑制策が盛り込まれた。軽度の利用者がヘルパーを家政婦代わりに使っている一部の例が問題視されているのは確かだ。しかし、定期的なヘルパー訪問は高齢者の見守りという意味合いも大きい。離れて暮らす家族の安心につながる役割に十分配慮する必要がある。

*2-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018012702000132.html (東京新聞社説 2018年1月27日) 介護の見直し 担い手の確保忘れずに
 三年に一度の介護報酬の見直しの内容が公表されサービスメニューが出そろった。超高齢社会を支えるための改定が行われるが、必要性を増す担い手の確保策が十分なのか、疑問が残る。介護報酬は、事業者に介護保険などから支払われる報酬で、いわばサービスの価格表だ。公的価格で国が定め、二〇一八年度から実施される。増やしたいサービスは価格を上げ取り組む事業者を増やすことを狙う。増える高齢者の在宅生活を支えるためのサービスの充実、自立した生活を支える介護予防やリハビリテーションの強化を図る。特に、今回は二年に一度の医療の診療報酬も改定される。同時改定を利用した医療と介護の連携メニューも並ぶ。在宅での医療ケアを担う看護職員の活躍の場が広がる。介護職員が医療機関や主治医との利用者情報の共有を進める。メニュー充実の方向はいいが、介護を担う人材の確保の視点を忘れてはならない。今改定では、訪問介護のうち生活援助について、研修を受けた幅広い人材の参入を図る。今担っている介護福祉士など専門性のある職員は身体介護に集中してもらうためだ。元気な高齢者が新たな担い手になれるが、介護の質を維持するため研修内容の十分な検討は欠かせない。人材確保が難しく地域のニーズに合わないなどの理由で広がらないサービスがある。一二年度に在宅を二十四時間支える訪問介護・看護サービスが始まった。在宅介護の“切り札”と期待されたが、一六年度で利用者は一日当たり一万三千八百人。今改定でも要件を緩和して事業者の参入を促すが、当初見込みの二五年度に一日当たり十五万人の達成は厳しいのではないか。サービスをつくっても担い手がいなければ普及しない。厚生労働省によると、一六年の介護職員の月給は全産業平均より約十万円低い。待遇改善は報酬改定の中でも進められているが、十分なのか。今改定では実施されない。春闘で賃上げが決まれば他産業とさらに差が開く。今後は、一九年秋に消費税率が10%に引き上げられた際、増税分を活用して一千億円を充てる予定でそれを待たなければならない。二五年度には三十八万人の介護職人材が不足するといわれる。介護ロボットの活用による負担軽減策も同時に広げながら、人材確保を進める必要がある。

*2-5:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20180127&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO26194380W8A120C1EA3000&ng=DGKKZO26194110W8A120C1EA3000&ue=DEA3000 (日経新聞 2018.1.27) 給付の効率化は不十分
 介護報酬全体の改定率が6年ぶりのプラス改定となった。大規模な通所介護事業所や家事援助サービスの報酬引き下げ、福祉用具レンタルへの上限価格設定など複数の効率化策をそろえたが、給付のムダを抑える半歩にすぎない。医療や年金を上回るスピードで増える介護費の抑制には力不足だ。焦点の一つとなっていたのが、利用者の自宅で調理や掃除を手掛ける「生活援助」と呼ばれるサービスの効率化だ。財政制度等審議会で月100回を超えるような頻繁な利用が問題視され、上限回数を設けるなど何らかの制限をかけるべきだとの声が上がった。最終的には上限設定は見送られ、代わりに平均を大きく上回る利用には市町村による一定のチェックが働く仕組みになったが、どこまで機能するかわからない。比較的収益率が高いとされる大規模な通所介護事業所の報酬も減らされる。ただ、これについては事業者から「規模拡大による経営効率化の動きを妨げる」との指摘も出て、改定にちぐはぐな面が否めない。介護給付費は2025年度に現在の2倍の約20兆円まで増えるとの推計もある。「どこまで社会保険で面倒を見るかの議論をしないと、際限なく給付が増えかねない」(大和総研・鈴木準政策調査部長)との懸念が広がっている。

<年金と高齢者雇用>
*3-1:https://www.nikkei.com/article/DGXLAS0040011_V00C17A1000000/ (日経新聞 2017/1/5) 75歳で高齢者、65歳は「准高齢者」 学会提言
 日本老年学会などは5日、現在は65歳以上と定義されている「高齢者」を75歳以上に見直すよう求める提言を発表した。医療の進展や生活環境の改善により、10年前に比べ身体の働きや知的能力が5~10歳は若返っていると判断した。前期高齢者とされている65~74歳は、活発な社会活動が可能な人が大多数だとして「准高齢者」に区分するよう提案。社会の支え手と捉え直すことが、明るく活力ある高齢化社会につながるとしている。65歳以上を「支えられる側」として設計されている社会保障や雇用制度の在り方に関する議論にも大きな影響を与えそうだ。平均寿命を超える90歳以上は「超高齢者」とした。提言をまとめた大内尉義・虎の門病院院長は「高齢者に対する意識を変え、社会参加を促すきっかけになってほしい」と述べた。学会は、お年寄りの心身の健康に関するさまざまなデータを解析。身体の働きや知能の検査結果、残った歯の数などは同一年齢で比べると年々高まる傾向にあり、死亡率や要介護認定率は減少していた。内閣府の意識調査でも、65歳以上を高齢者とすることに否定的な意見が大半で、男性は70歳以上、女性は75歳以上を高齢者とする回答が最多だったことも考慮した。准高齢者は、仕事やボランティアなど社会に参加しながら、病気の予防に取り組み、高齢期に備える時期だとした。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180117&ng=DGKKZO25752900W8A110C1MM8000 (日経新聞 2018.1.17) 年金受給開始 70歳超も、政府検討 選択制、額は上乗せ 高齢者に就労促す
 政府は公的年金の受け取りを始める年齢について、受給者の選択で70歳超に先送りできる制度の検討に入った。年金の支給開始年齢(総合2面きょうのことば)を遅らせた人は毎月の受給額が増える制度を拡充し、70歳超を選んだ場合はさらに積み増す。高齢化の一層の進展に備え、定年延長など元気な高齢者がより働ける仕組みづくりも進める方針だ。2020年中にも関連法改正案の国会提出を目指す。政府が近くまとめる高齢化社会に関する大綱に「70歳以降の受給開始を選択可能とする制度を検討する」と盛り込む。政府が70歳超を選択肢として明示するのは初めて。大綱には、ハローワークに高齢者の再就職支援の窓口を増やしたり、起業をめざす高齢者を事務手続きや融資の面で支援したりする方針も示した。定年延長や継続雇用をする企業への助成制度の活用も明記した。現在の公的年金制度では、受け取り開始年齢は65歳が基準だ。受給者の希望に応じて、原則として60~70歳までの間で選択できる。受け取り開始を65歳より後にすれば毎月の受給額が増え、前倒しすれば減る仕組みだ。現行制度では、受給開始を65歳より後にすると、1カ月遅らせるごとに0.7%ずつ毎月の受給額が増える。例えば66歳で受け取り始めた場合、65歳から受け取るよりも月額で8.4%上乗せされる。いまの上限の70歳まで遅らせた場合は、受給額は同42%増える。70歳を超えてから受け取り開始を認める制度にする場合、70歳超の部分は65~70歳で受け取り始める場合の上乗せ(いまは0.7%)よりも高い上乗せ率にする方針だ。現行制度でも70歳超で受け取り始めることはできるが、70歳超の受給額の加算は対象外だった。受給開始年齢の上限は、いまの70歳から75~80歳程度に引き上げることを想定している。上限を定めた国民年金法と厚生年金保険法を改正する方針だ。制度が発足した当初、厚生年金の受給開始年齢は55歳(国民年金は65歳)だった。政府は高齢化に伴い、徐々に引き上げてきた。さらに開始年齢の上限を上げる場合、年金財政に影響が及ばないよう設計する方針。先送りで支給が不要になる分を、その後の受給額上乗せの財源に充てる。年齢の上限や増額率などは、厚生労働省の社会保障審議会年金部会で議論し、19年中に具体化する。受け取り開始年齢をめぐっては、17年に内閣府の有識者会議が引き上げを提言。自民党のプロジェクトチームも同様の方針をまとめていた。大綱にはこのほか、20年代初頭までに介護施設やサービスの受け皿確保を通じて介護離職をゼロにする目標などを盛り込んだ。安倍晋三首相をトップとする高齢社会対策会議の議論を経て、月内にも閣議決定する。

*3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180128&ng=DGKKZO26238120X20C18A1MM8000 (日経新聞 2018.1.28) 先進国、需要不足解消へ、今年、10年ぶり 経済、なお浮揚力欠く
 2008年のリーマン・ショック以降、先進国を苦しめてきた「需要不足」と呼ばれる状態が今年、約10年ぶりに解消される見通しとなった。米国の景気回復を追い風に貿易や投資が刺激され、需要が増えている。だがデジタル経済化に伴う経済の変質などの構造問題で物価の伸びも鈍い。金融緩和に頼らず、浮揚力を高めていけるか。主要国の経済運営は、なお難しいかじ取りを迫られている。国際通貨基金(IMF)の推計によると、日米欧などの先進39カ国はリーマン危機直後の09年、国内総生産(GDP)の3.9%にあたる1.5兆ドル(約163兆円)の需要不足に陥った。急激な需要減は大量の失業を招き、企業の設備投資も急減。だが、先進各国の経済対策で需要不足は徐々に解消に向かい、18年には0.1%と小幅ながらプラスに転じる見通しだ。
●失業率も最低水準
 経済は何年もかけて大きな波を打つように変動しており、この「景気循環」と呼ぶ流れを判断する目安が「需給ギャップ(総合2面きょうのことば)」だ。需要が不足すると経済活動が停滞して物価を下押しするデフレ圧力が強まるため、各国は金融緩和や財政出動で需要を喚起する。リーマン・ショック後の危機対応に伴う相次ぐ追加財政支出で、17年の先進国の政府債務残高は50兆ドル(約5500兆円)強と10年間でおよそ7割も増えた。13年には主要7カ国(G7)の全てが需要不足だったが、18年にはドイツが1.0%、米国が0.7%の需要超過になる見込み。専門家の間では超過の幅も順調に広がるとの分析が多い。日本は09年に7.3%だった需要不足が0.7%まで縮小しており、日銀の試算ではすでにプラスに転じている。背景には世界経済の同時成長がある。米国は3次にわたる大規模な量的金融緩和や減税で回復の足取りを強め、景気拡大は9年に及ぶ。数年前まで停滞感のあった欧州や中国も持ち直し、建設機械や電子部品の貿易も急回復中だ。17年の世界の貿易量は4.7%増と16年(2.5%増)から勢いを増し、危機から10年を経て世界経済の現状は「大いなる安定」ともいわれる。経済の活動水準が上がって雇用が逼迫し、先進国の失業率も5%台半ばと00年以降の最低レベルだ。IMFは22日、18年と19年の世界成長率見通しをともに3.7%から3.9%へと上方修正した。過去5年、先進国の物価上昇率の平均は中央銀行が目標とする2%を下回ってきた。経済学のセオリー通りなら、需要超過の下で物価や賃金にも上昇圧力がかかってきてもおかしくない。実際、欧米では物価が少しずつ上向く兆しが出ており、IMFは19年に2%を上回るとの見通しを立てるなど強気だ。米連邦準備理事会(FRB)は18年のシナリオとして3回の利上げを見込む。欧州中央銀行(ECB)も今月から資産購入を減らし、正常化を探り始めた中銀の一挙一動に市場は敏感に反応している。米長期金利は年明け以降、米税制改革や原油高に伴うインフレ期待を先取りするように上昇傾向をたどった。もし物価が予想以上のペースで上がり始めれば、利上げのテンポも速めざるを得なくなる。問題は、経済がそうした引き締めに耐えられるほど強固になったのかどうかだ。世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツ創業者のレイ・ダリオ氏は「FRBが1~1.25%の(追加)利上げをすれば資産価格は下落する」と話す。米国の株価や不動産には過熱感もみえ、調整が始まれば世界に波及する恐れがある。低金利で均衡を保っているグローバル経済が、一瞬にして変調を来すリスクと背中合わせだ。
●構造問題には課題
 物価上昇には懐疑的な見方も多い。世界的なデジタル経済の拡大と人口の高齢化、政府債務の増大――。「循環的な面では危機の後遺症がほぼなくなるものの、構造的な成長力の弱さは払拭されていない」。みずほ総合研究所の門間一夫氏はこう語る。失業率が下がるほど物価が上がるという負の相関関係は、右肩下がりの「フィリップス曲線」に示される。危機後はこの連動性が薄れ、日本や米国は失業率が完全雇用と考えられている水準を下回っている割に物価の反応が鈍い。オンラインショッピングの普及や機械化で賃金が抑えられるといった歴史的な構造変化が進んでいるためで、2000年に3%弱だった先進国の潜在成長率は金融危機後に1%強に低下し、いまも1%台半ばだ。経済の実力が弱いままだと、次の景気後退期が来るのが早まる恐れがある。需給ギャップが10年ぶりプラスとはいえ、中国や新興国との競争激化などで先進国がかつてのような成長トレンドを描くのは難しい。サマーズ元米財務長官が唱えた「長期停滞論」に重なるもので、各国当局者の戸惑いは消えない。この先、需要超過の勢いや物価、利上げテンポなど様々な景気の変数がどう推移するのか。世界経済が安泰といえる状況にはまだ遠い。

<サービス付高齢者住宅>
PS(2018.1.30追加):*4のように、三菱地所が老人ホームを開発したり、東急不動産・東京急行電鉄などが共同で高齢者住宅の複合開発に着手したり、野村不動産がシニア住宅を供給する目標を掲げたりしているのは、アクションが速くて感心する。しかし、有料老人ホームはマンション用地より手狭でよいというのは疑問が残るし、高齢者住宅は、サービスも付けられるようにした方がよいと考える。

*4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180130&ng=DGKKZO26271860Z20C18A1TJ2000 (日経新聞 2018.1.30) 三菱地所、老人ホーム開発、大手各社、高齢者住宅に的 狭い敷地を有効活用
 三菱地所が有料老人ホーム開発に参入する。主に東京23区で物件を開発して運営会社に賃貸する。東急不動産も東京急行電鉄などと共同で横浜市で分譲マンションと高齢者向け住宅の複合開発に着手した。不動産大手は市況の見通しが不透明になる2020年の東京五輪以降も見据え、安定した収益が見込める高齢者向け住宅事業を強化している。三菱地所はグループで住宅事業を担う三菱地所レジデンスを通じて参入する。有料老人ホームはマンション用地としては手狭な約1千平方メートル前後の敷地でも建てられることから、開発の柔軟性と収益性は高いと見ている。第1弾として老人ホーム運営のチャーム・ケア・コーポレーションが東京都区部で展開する物件を開発。チャーム社が物件を賃借して2019年春に開業する。物件は地上5階建てで、48室規模となる予定だ。当面は年間1~2棟の老人ホームを開発し、物件の賃貸や売却で15億~20億円規模の売り上げを目指す。地所レジは16年春に開発チームを発足させ、今年度から専属の社員を置いた。東急不動産は昨年、東京都世田谷区で分譲マンション「ブランズ」やシニア住宅「グランクレール」を複合開発した「世田谷中町プロジェクト」を開業したが、第2弾として横浜市緑区の十日市場で同様のプロジェクトを進める。東急電鉄やNTT都市開発の3社共同事業として展開。19年内の開業を目指し、分譲マンションと高齢者住宅を複合開発する。東急不は世田谷や横浜に次ぐ案件開発も模索している。政府は25年に高齢者人口に対する高齢者住宅の整備率を4%、146万人に高める目標を掲げているが、足元では2%程度にすぎない。野村不動産はシニア住宅の供給拡大が不可欠とみて、昨年10月に千葉県船橋市で介護が必要な人や健康な高齢者を対象にした住宅「OUKAS(オウカス)」の1号案件を開業。今後も千葉市や横浜市などでも順次施設を開業する方針で、向こう10年間で40棟、5千戸規模のシニア住宅を供給する目標を掲げている。

<ド阿保の発想>
PS(2018年1月31日、2月2日追加):日経新聞記者がどういう話の持って行き方をしたのかが疑問だが、*5-1のように、「原油から水素を取り出し、燃料を使って船で運んでくる」というのは、発想が悪すぎる。その上で、「石炭火力で作った電力や原油から作った水素でEVやFCVを動かしたら環境への負荷は減らない」などと言う人がいるが、これにはサウジアラムコのアミン社長も唖然とするだろう。サウジのムハンマド皇太子が原油の販売収入に頼った経済を見直す改革を進めているのは、サウジに石油化学製品などを作る会社や技術を誘致するという意味であり、原油から水素を作ることではないのである。なお、日本は、自然エネルギー由来の電力が余り始めて水も豊富であるため、その電力で水を電気分解すれば100%クリーンな水素と酸素が容易に得られる状況であり、このようにして国富をサウジに移転する必要はない。
 また、今日の予算委員会の質問で、「再エネを接続すると再エネ賦課金がかかり、電力消費者に負担になる」と言っていた委員がいたが、私の家の2018年1月の東電の再エネ賦課金は1,950円(10.0%)で、その他の部分が17,429円(90%)であり、17,429円の中には、①火力発電の燃料費 ②稼働していない原発や稼働率の低い発電所を含む従来の発電設備の減価償却費 ③種々のメンテナンス費用 ④事務費 ⑤原発事故処理費 等が含まれているのであり、従来の発電コストは決して安くない。そして、そもそも発電コストを正しく比較するには、発電方法毎に発生した原価の実績を正確に計算する必要がある。
 上のような理由で日経新聞記者のド阿保ぶりにはまいったが、*5-3のように、「九州水素・燃料電池フォーラム&水素先端世界フォーラム2018」が福岡市であり、九大の佐々木副学長が「経済と環境を両立させるキーテクノロジーが水素だ」と語られたり、九州の自治体や民間企業が水素社会の実現に向けた取り組みをしたりしているのは期待を持つことができる。2020年の東京オリンピックは、世界の人々を水素社会の幕開けに招待したいので、是非、オリンピック前に花開かせてもらいたい。

*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180131&ng=DGKKZO26352050R30C18A1MM8000 (日経新聞 2018.1.31) サウジアラムコ、次世代エネで日本と協力、社長会見 脱・原油へ水素製造
サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコのアミン・ナセル社長兼最高経営責任者(CEO)は都内で日本経済新聞記者と会見した。原油販売への依存を減らすため、原油から水素を取り出す技術で日本企業と協議に入ったと明らかにした。アジアで石油化学工場などへの投資も加速する。史上最大規模となる新規株式公開(IPO)は「2018年後半をめどに実行する」と言明した。サウジはムハンマド皇太子が旗振り役となり原油の販売収入に頼った経済を見直す改革を進めている。アラムコ株を最大5%上場して1000億ドル(約11兆円)を調達し、民間企業の育成に投じる計画だ。アラムコは世界の原油生産の1割近くを握り、売り上げの大半を原油販売に依存する。ナセル氏は「原油相場は健全な需要に支えられている」と話し、年内に供給過剰が解消するとの見通しを示した。だが英仏が将来のガソリン車販売を禁じる方針を打ち出すなど脱化石燃料の流れは加速している。このため将来の柱の一つとして温暖化ガスを排出しない水素の利用拡大に向け「原油から水素を取り出す技術の実用化を日本企業と議論している」と述べた。水素は環境への負荷が低い次世代エネルギーの中核となると期待されている。燃料電池車や発電への利用が見込まれ、水素関連のインフラ市場規模は50年に約160兆円になるとの試算がある。アラムコは豊富な埋蔵量を誇る原油から水素をつくることで、将来も原油から収益を得ると同時にエネルギー大国としての地位の維持を目指す。関係者によると、経済産業省系の日本エネルギー経済研究所が日本側の窓口になる。日本は官民を挙げて水素産業の育成を進め、トヨタ自動車や川崎重工業、千代田化工建設などが水素ビジネスの実用化をリードする。アラムコと日本側はすでに実務者級の協議を複数回実施。年内にサウジ国内の試験プラント設置に向けた事業化調査で合意を目指している。足元では原油をガソリンや化学製品に加工して販売する体制の整備を急ぐ。ナセル氏は「エネルギーと化学の複合企業となる」と強調。需要が拡大するアジアに照準を絞り、マレーシアやインドネシアで石油化学工場や製油所に投資する。「インドは重要な市場だ」とも強調した。同国の石油需要は40年まで年率3.3%成長を続ける見通しで「複数の企業と製油所開設に向けて協議中だ」と明かした。今年後半を目指すIPOによる資金調達額は過去最大だった中国のアリババ集団(約250億ドル)を大幅に上回る見通し。ニューヨークやロンドン、香港に加え東京市場も誘致に名乗りをあげる。ナセル氏は「上場市場は政府が最終的に決める」と述べるにとどめた。
*アミン・ナセル氏 1982年キングファハド鉱物資源大学を卒業、サウジアラムコ入社。開発・生産担当の上級副社長を経て、2015年から現職。

*5-2:http://qbiz.jp/article/127215/1/ (西日本新聞 2018年1月31日) 電力7社、燃料高で減益 市場の自由化で顧客流出も
 電力大手10社の2017年4〜12月期連結決算が31日出そろい、北陸、四国、沖縄3電力を除く7社の経常利益が前年同期比で減少した。火力発電の燃料となる原油や液化天然ガス(LNG)の価格が上昇し、利益を押し下げた。市場の自由化に伴う顧客の流出も響いた。燃料費は関西電力を除く9社で上昇し、東京電力ホールディングスなど2割程度増える企業が目立った。北海道電力は経常利益が半減し、中部電力は26・2%、東北電力は18・2%、東電は10・4%それぞれ減少した。一方、関電は3・1%の減益にとどまった。高浜原発3、4号機(福井県)の稼働で火力燃料費を抑制できた。四国電力は伊方原発3号機(愛媛県)の運転によって他の電力への販売が増え、経常利益は約3・4倍となった。沖縄電力は修繕費の低減などで17・0%増益。北陸電力も増益だったが、燃料費がかさんだため純損益は2年続けて赤字となった。売上高は、燃料高騰に伴う料金単価の上昇により10社全てで増えた。18年3月期予想は北海道、中国、四国3電力を除く7社が経常減益を見込む。

*5-3:http://qbiz.jp/article/127324/1/ (西日本新聞 2018年2月2日) 「水素社会」実現へ福岡でフォーラム
 水素エネルギーの普及促進策などを考える「九州水素・燃料電池フォーラム&水素先端世界フォーラム2018」(九州経済産業局、九州大など主催)が1日、福岡市であり、水素関連企業や大学関係者など約460人が参加した。九州大の佐々木一成副学長が「脱炭素・水素エネルギー社会実現への産学官地域連携と将来展望」と題して基調講演。「経済と環境を両立させるキーテクノロジー(主要技術)が水素だ」と語り、低コストで水の電気分解ができる技術や燃料電池の発電効率化に向けた開発が進んでいる現状などを紹介した。自治体や民間企業などの担当者による講演もあり、水素社会の実現に向けたさまざまな取り組みが報告された。

<外国人労働者>
PS(2018年2月1、3日追加):人口減少を問題視する論調が多いが、団塊の世代が働き盛りだった昭和50年代には、生産年齢人口の男女に対して十分な職場を作れなかったため、女性には仕事での達成を遠慮してもらって家事・育児に専念させていた経緯がある。そのため、昭和50年代の女性の労働力率は低く、1979年に国連総会で国連女子差別撤廃条約が採択され、日本も1985年に批准し、我が国でも男女雇用機会均等法が制定されて後、次第に女性の労働力率が上がってきたのである。従って、生産年齢人口の減少で女性や高齢者がフルに働いても失業率が低くなったのは一つの進歩と言わざるを得ず、*6-1の「動員型」の達成は、憲法27条1項の「すべて国民は勤労の権利を有し義務を負う」という条文から当然やらなければならないことである。しかし、労働力生産性(労働力人口1人当たりの生産性)も上げなければ、賃金や報酬を上げることはできないため、教育・訓練による労働の質の向上、技術革新の導入等が必要で、これも生産年齢人口の減少に伴う機械化・大規模化や教育水準の上昇で可能になった面がある。
 しかし、日本は、まだ外国人労働者を締め出している国だ。例えば、*6-2のようなフィリピン人女性が家政婦として働いているような国では、*1-5のように女性医師が仕事を辞める必要はなく、複数の家政婦を雇って子育て期を乗り切っている。これを、「女性間の不平等」などと馬鹿なことを言って高度専門職の女性も社会的に家に閉じ込めようとしたのが日本であるため、その原因を追究して猛省するところから始めなければ論点がずれ続けるのである。
 なお、*6-3のように、農業はロボット化やICT化などスマート農業による労働力軽減を行っても労働力不足が深刻になるそうで、外国人労働者を受け入れることが必要だ。そのためには、農協や農業法人を受け皿にすることができ、外国人の人権や権利を守りながら、異なる文化の接触で今までなかった製品が生まれるような形で外国人労働者を受け入れるのが望ましい。

 

(図の説明:1番左のグラフのように、日本は世界の中で失業率の低い国である。また、左から2番目のグラフのように、国内の失業率には変化があるが、正規雇用に適用される改正男女雇用機会均等法《1999年4月1日施行》、介護保険法《2000年4月1日施行》が導入された後、2000年代前半に失業率が5%代に上がり、非正規雇用《=非常勤》が増えた。さらに、左から3番目のグラフのように、女性の労働力率は次第に上がり、M字カーブは薄くなったが、今でも女性は非正規が多い。また、1番右の図のように、現在、日本は外国人の単純労働者を受け入れていない)

*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180127&ng=DGKKZO26189740W8A120C1EN2000 (日経新聞 2018.1.27) 人口オーナス第2幕に備えよ
 少子化・人口減少が進むと、経済・社会を支える生産年齢人口(15~64歳)が絶対数でも、人口に占める比率としても減少・低下する。いわゆる「人口オーナス(重荷)」現象である。この人口オーナスの中にあって、持続的な成長を維持するためには「生産年齢人口1人当たりの生産性(生産年齢人口生産性)」を高めるしかない。生産年齢人口が5%減っても、生産年齢人口生産性が5%上昇すれば、人口オーナスの負の影響を帳消しにできる。実際はどうだったか。2012年度と、政府見通し数値を用い17年度を比較してみよう。この間、生産年齢人口は5.3%も減少したが、実質GDPは7%増大した。生産年齢人口生産性が13%も上昇したからだ。すると、日本経済は人口オーナスを生産性の上昇で克服してきたことになる。しかし話はそう簡単ではない。この生産年齢人口生産性を引き上げるには2つの道がある。一つは、生産年齢人口との対比でみた労働力人口の比率(労働力率)を引き上げることであり、もう一つは、「労働力人口1人当たりの生産性(労働力生産性)」の引き上げである。前者は働いていなかった女性、高齢者が働くようになることであり、いわば動員型の道である。後者は、働く人がより効率的に働くようになることであり、教育・訓練による労働の質向上、技術革新の導入、生産性の高い分野への労働移動などによってもたらされる効率性向上型の道である。再び12~17年度を振り返ると、女性や高齢者の参入増で労働力率は8.4%上昇した一方、労働力人口生産性は4.1%の上昇にとどまった。つまり、近年、人口オーナスの悪影響を克服できたのは、主に動員型によるものだったわけだ。人口オーナス第1幕は動員型による生産年齢人口生産性の上昇で乗り切ってきた。だが、女性や高齢者の参入は近く限界に達するだろう。女性労働力のM字カーブは解消傾向だし、もともと高水準だった高齢者の就業率をさらに引き上げることは次第に難しくなる。動員型が限界に達した後の人口オーナス第2幕においては、効率性向上型による労働力生産性の上昇が必須となる。今からそれが実現できるような働き方改革を進めていくべきである。

*6-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180130&ng=DGKKZO26271910Z20C18A1MM8000 (日経新聞 2018.1.30) 共生への鍵(1)いずれ誰も来ない国に、競争力 見つめ直そう
 人口減で日本の働き手が減る構図が続く限り、年々増える外国人労働者は存在感を高める。国際的な人材獲得競争を見据えてどのように受け入れていくべきか。共生の輪を紡ぐ方策を探る。中国・上海市内には多くのフィリピン人女性が家政婦として働く。マリア・トマスさん(仮名、38)は「子供たちと離れるのはつらいが、家族を支えなくてはいけない」。月収は約8千元(約14万円)。日本で働いた経験があるが「日本よりも2割多い。中国の方が条件がずっと良い」。中国の平均年収(2015年)は6万2千元と20年前の12倍。就労を認めない中国に旅行ビザで入国する不法滞在の状態だ。地元メディアによると中国本土のフィリピン人家政婦は約20万人。あっせん業の男性は「ビザなど規制が緩和されれば殺到するだろう」と話す。中国93%増、韓国444%増――。国連統計によると00年から15年間で外国出身者の人口は日本で21%増だが近隣国も軒並み増えた。経済成長によりアジアで働く労働者の賃金もうなぎ登りだ。日本貿易振興機構の16~17年の調査を10年前と単純比較すると、一般工職の月給はインドネシア・ジャカルタが2倍近く増え、ベトナム・ハノイも3割上昇。日本の半分に満たない都市も多いが、格差は徐々に縮まる。いわゆる単純労働でも受け入れに制約ばかりが目立てば、いずれ選ばれない国になりかねない。日本に技能実習生を最も多く送り出すベトナム。ルオン・バン・ベトさん(27)は実習生として日本に行くのをやめ、台湾を出稼ぎ先に選んだ。技能取得が名目の実習制度では滞在が原則3年間で、台湾の方が長く滞在できると考えた。実習生を日本に派遣する機関の代表、レ・チューン・ソンさん(32)は「今後5年は日本に行きたがる若者が伸びるだろうが、その先はどうなるか」。こんな思いを日本側に伝えている。日本は15年から25年までの10年間で15~64歳の男性人口が270万人減る。これを補う高齢者や女性の就労も限界が近い。25年には団塊の世代が全て75歳以上になる。各年齢層の労働参加率の上昇ペースが2倍に速まり、女性の参加率が男性並みになっても、就業者数は25年をピークに減少に転じるとの試算もある。外国人材に三顧の礼で来てもらわなければいけない時代が現実味を帯びる。待っていても経済力が引き寄せるというのはもはや幻想だ。官民ともに外国人の立場になって魅力を売り込む知恵を練り上げる必要がある。起業をめざす人材にビザを認める特区となった福岡市では、手厚い支援体制で20人超が会社を起こした。「起業の準備期間が半年というのは短い。1年にしてくれれば」。フランス人のトマ・ポプランさん(29)の注文にも国が対応を検討中だ。受け入れ分野を一気に広げるのが難しくても、こうした取り組みは日本の競争力を引き上げる。意欲と質の高い外国人材を得るために、残された時間は少ない。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p43091.html (日本農業新聞論説 2018年1月24日) 農業労働力不足 施策総動員で対応急げ
 空前の人手不足が、農業生産基盤の弱体化に拍車を掛けている。この先、日本の食と農を誰が支え、担うのか。主役は若い就農者。新技術活用や広域での農作業受委託も欠かせない。外国人材の位置付けも課題だ。施策、人、IT、先進ノウハウを総動員して、労働力不足に対応しなければ農業に未来はない。政府は「農業の成長産業化」を目指すが、担い手や労働力不足という構造問題抜きには語れない。今国会の柱「働き方改革」論戦の重要テーマだ。わが国の基幹的農業従事者数は160万人弱(2016年)。10年で3割約65万5000人減った。しかも65歳以上が65%を占め減少は加速していく。半面、明るい兆しも。新規就農者は2年連続で6万人(16年)を超え、49歳以下は3年連続で2万人超えとなった。法人経営体の増加を受け、雇用就農者の伸びが堅調だ。だが減少には全く追い付いておらず、絶対数の不足は深刻さを増す。それを端的に表すのが有効求人倍率(16年)。米麦や園芸で1・63、畜産で2・34。全産業平均の1・25を上回り、求人しても人が集まらない状況だ。特に法人経営の従業員や実習生、個人経営では農繁期のパート、農作業受託組織はオペレーターなどの人材が不足している。経営形態が個人経営から法人経営へと移行していく中で、雇用問題は経営問題に直結する。地域農業にとっても生産基盤を維持できるかの瀬戸際にある。日本農業法人協会、JA全中など全国連と全国農業会議所で組織する農業労働力支援協議会が昨年末、農業人材・労働力不足への対策を提言にまとめたのは、こうした危機感が背景にある。提言は「労働力不足解消に向けた対策の拡充」と、外国人技能実習制度の改善など「外国人の活用」に大別される。対策では就農環境の整備、広域での農作業受委託の仕組み作り、省力化技術の開発などを挙げ、行政や各団体の役割、関係機関との連携を明記。新規就農者増加の流れを着実なものにし、将来が見通せる経営の安定化を図ることが、問題解決の本筋である。併せて、ロボット農業技術や情報通信技術(ICT)などスマート農業による労力軽減、省力化を急ぐべきだ。外国人技能実習生については、昨年末施行の技能実習法で監理団体の許可制や実習生の保護強化など適正な運用を求めており、提言でも新制度の定着をうたう。併せて、複数の経営体や通年実習など運用面の改善を要望するが、技術移転の本旨に沿った運用に徹するべきだ。国家戦略特区を活用した外国人材の受け入れ拡大も提言したが、体制や法制度整備などを課題に挙げる。コスト優先の単純労働拡大に安易に走ることなく、外国人の権利保護、人権尊重など社会的・文化的側面も含め、この課題に向き合うべきだ。労働力問題は社会と農業の持続可能性を問い掛けている。


<惨めで悲しすぎる最期>
PS(2018.2.4追加):*7-1、*7-2の札幌共同住宅で入居者の男女11人が亡くなった火災では、建物の1階中央部に灯油ポリタンクが置いてあり、各部屋に灯油ファンヒーターが設置されていたそうだが、これなら高齢者の多い居住者のうち誰が失火してもおかしくないため、周辺住民を含む全員にとって危険な造りだったと言わざるを得ない。また、これは旅館だった建物を借りて生活保護受給者らを受け入れ、住居や就職先が見つかるまで一時的に居住させていたもので月3万6千円だったとのことだが、生活困窮者は家賃の安い公営住宅に入れて必要な人には介護や生活支援を行ったり、老人ホームに収容したりするくらいのことはすべきだ。

*7-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/161078 (北海道新聞 2018.2.2) 札幌の共同住宅火災、火元は1階か 付近に灯油ポリタンク
 1月31日午後11時40分ごろ、札幌市東区北17東1、生活困窮者の支援を目的とした木造2階建て共同住宅「そしあるハイム」(16人入居)から出火し、入居者とみられる男女計11人が死亡した火災で、階段のある1階中央部分の燃え方が激しく、階段付近には暖房用の灯油入りポリタンクが置かれていたことが2日、関係者への取材で分かった。札幌市消防局などは何らかの火が灯油に引火し、短時間のうちに住宅全体に燃え広がったとみて出火原因を慎重に調べている。共同住宅は路上生活者らを支援する札幌の合同会社「なんもさサポート」(藤本典良代表)が運営。生活困窮者が新たな住居や就職先を見つけるまで一時的に受け入れていた。同社などによると、共同住宅は元旅館で築約50年が経過していたという。消防は老朽化に加え、厳冬下の空気の乾燥なども重なり、火の勢いが増したとみている。道警は1日午後から現場検証を開始。消防によると、燃え方が激しい1階中央部分の付近には調理場があるが、当時、火を使っていなかった。藤本代表によると、各部屋には灯油ファンヒーターが設置されていた。同社関係者によると、1階中央部分の階段付近には普段、ヒーターへの給油用の灯油入りポリタンクが置かれていたという。1階東側の物置でも複数の灯油入りタンクが保管され、火災現場からは焼けたポリタンクが数個見つかったという。
■安否確認ができていない方々
 道警は1日、札幌市東区の「そしあるハイム」の火災で、安否の確認ができていない40~80代の住人11人を発表した。名前と年齢は次の通り。
▽竹内正道さん(85)▽森ハナエさん(82)▽渡辺静子さん(81)▽大友靖男さん(78)▽沢田昌子さん(76)▽今井栄友(えいとも)さん(72)▽渋谷新一さん(72)▽川勝正幸さん(67)▽湯浅隆之さん(66)▽白府幸光(しらふゆきみつ)さん(61)▽西山被佐雄(ひさお)さん(48)

*7-2:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/177275 (佐賀新聞 2018.2.4) 札幌共同住宅火災、より踏み込んだ支援を
 生活保護受給者らの自立支援を目的とする札幌市の共同住宅が全焼し、11人が死亡した。築50年ほどの老朽化した木造の建物はあっという間に炎にのまれた。16人いた入居者の大半は高齢で身寄りもなく、中には介護を必要とする人もいた。1人1部屋で各部屋には火災報知機があったが、スプリンクラーは設置されていなかったという。厚生労働省によると、生活困窮者向けの「無料・低額宿泊所」は、全国で530カ所以上が自治体に届け出て、約1万5千人が利用している。一方、無届けの施設も1200カ所余りが確認されており、約1万6500人が身を寄せている。火災が起きた札幌の住宅は無届けの一つだった。近年、こうした施設で火災が相次ぎ、犠牲者が後を絶たない。支援団体などが築40~50年の木造の建物を改装し、安い家賃で困窮者らを受け入れることが多いが、防火対策を充実させるのが難しいという。資金的余裕がなく、夜間に人を配置するといった対策を取れば家賃に跳ね返り、住まいを必要とする人たちが住みにくくなるからだ。厚労省は宿泊所について、防火態勢や個室面積の最低基準を定めるなど規制を強化する方針を固めている。無届け施設の実態把握も急がなければならない。さらに多くの施設に対して資金的にも人的にも、より踏み込んだ支援を行う必要がある。火災で11人が亡くなったのは札幌市東区の「そしあるハイム」。市内にある合同会社が以前は旅館だった建物を借りて運営。住居や就職先が見つかるまで一時的に生活保護受給者らを受け入れ、16人が保護費などから月3万6千円を支払っていた。各部屋に石油ファンヒーターがあった。昼間は職員が常駐しているが、火災が発生した深夜の時間帯は不在だった。ハイムでは入居者に食事を提供していたことなどから、市は無届けの有料老人ホームに当たる可能性があるとみて調査する。法律で定められる防火対策は建物の用途や規模により異なるが、有料老人ホームであれば誘導灯などの設置を求められ、自力避難の難しい入所者が一定割合を超える場合はスプリンクラーの設置も義務付けられる。市はこれまで4回にわたりハイムに調査票を送付した。だが回答はなく、実態を把握できなかったという。運営会社が防火対策の費用がかさむのを懸念し、応じなかったとの見方も出ている。秋田県横手市では昨年8月、精神障害者を多く受け入れていた木造アパートが全焼し、5人が死亡。2015年5月には、宿泊者の大半が生活保護受給者だった川崎市の簡易宿泊所の火災で11人が亡くなるなど、惨事が相次いでいる。建物が古く、狭い居室が密集する構造であるため、火災に見舞われると、被害が拡大しやすいとされる。ただ困窮者向け施設を必要とする人はこれからも増えるだろう。厚労省が16年に実施した調査では、住まいのない困窮者は首都圏を中心に03年の2万5千人余りから約6200人にまで減少したが、高齢化と長期化という傾向が見て取れる。そうした人たちの住まいの安全をどう確保していくか。規制強化の一方で、施設への財政支援はもとより、施設の職員がいなくなる夜間に地域の協力を得て人員を派遣するような仕組みを整えることも求められよう。

<防衛の無駄遣い>
PS(2018年2月7日追加):*8-1のように、佐賀県神埼市の住宅に陸自攻撃ヘリが墜落し、原子力燃料も飛散そうだが、政府は「佐賀空港の西側に陸自オスプレイ17機・ヘリ50機を移駐する計画を基本的に変えない」としているそうだ。しかし、この計画は、①田畑をつぶし ②海苔養殖が盛んな有明海を汚す危険性がある上、 ③佐賀空港に配備する機体は、長崎県佐世保市の陸自相浦駐屯地に新設する離島防衛部隊「水陸機動団」と連携運用を予定しているそうで、無駄遣いにも程がある。特に、③については、尖閣諸島を中心とする離島防衛部隊を長崎県と佐賀県という離れた場所で運用し、離島防衛に海自・空自ではなく陸自の水陸機動団とこのようなヘリを使って“攻撃する”という設定自体が合理的でない。また、戦争の道具に原子力を使用すれば墜落・撃沈時に周囲を汚染するため(まさか、想定外ではあるまい)、離島防衛の旗を掲げても必要最小限の費用で環境を汚さない有効な方法を考えるべきである。しかし、NHKは、このような議論も行われている予算委員会を放送せず、よくあることなのでとっくの昔に解決していなければならない*8-2のような積雪被害と角界のゴシップ(??)ばかりをしつこく報道し、重要な論点を国民の目から隠しているのが問題だ。そして、以上のような政策をとりながら、国民の生命・財産を護ることを大切にしているとは、とても言えないのである。

*8-1:http://qbiz.jp/article/127598/1/ (西日本新聞 2018年2月7日) 墜落「最悪のタイミング」 防衛省、オスプレイへの影響懸念
 佐賀県神埼市の住宅に陸上自衛隊AH64D攻撃ヘリコプターが墜落した事故で、小野寺五典防衛相は6日、佐賀空港への陸自オスプレイ配備計画への影響について「予断することは差し控える」と述べるにとどめた。政府筋は「計画は基本的に変えない」とするが、影響が出るのは必至とみられる。防衛省内には「最悪のタイミングだ」と嘆く声が広がっている。計画では、佐賀空港の西側に2019年度以降、陸自オスプレイ17機や今回墜落した機体が所属する陸自目達原(めたばる)駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)のヘリ50機が移駐する。佐賀県の山口祥義知事は昨年7月に計画受け入れに前向きな姿勢を示したが、米軍オスプレイの相次ぐ事故で判断を保留している。防衛省幹部は「米軍ヘリの不時着問題があった沖縄県名護市長選を乗り越えたので、佐賀県の陸自オスプレイ配備も進められると思っていたが、最悪のタイミングだ」。その上で「地元は反発ムードが高まるだろう」と声を落とした。佐賀空港配備の機体は、3月に陸自相浦駐屯地(長崎県佐世保市)に新設する離島防衛部隊「水陸機動団」と連携運用を予定しており、計画見直しは考えていない。「ただでさえ理解が進んでいないのに、丁寧に説明していくしかない」(政府高官)と、引き続き理解を求めていく方針だ。
   ◇   ◇
●目達原の全ヘリが飛行見合わせ
 陸上自衛隊は6日、墜落、炎上したAH64D攻撃ヘリコプターが所属する目達原駐屯地の約50機の全ヘリについて、5日夕の事故後、飛行を見合わせていることを明らかにした。事故を受けて、自衛隊が運用する全てのヘリを整備点検しているためという。佐賀県で唯一の陸自駐屯地で、陸自西部方面航空隊や第4師団第4飛行隊が所属している。
   ◇   ◇
●佐賀県知事が現場視察 「けがの女児支える」
 佐賀県の山口祥義知事は6日午前、陸上自衛隊ヘリコプターが墜落した同県神埼市千代田町の事故現場を視察した。同市の松本茂幸市長も同行した。山口知事は「ここは住宅地で小学校や幼稚園もあり、憂慮すべき状況」と述べた。墜落した民家の家族と面会後、けがをした女児について「かなりショックを受けていると聞いた。全力で支えていくと話した」と記者団に明かした。これに先立ち、6日未明、現地派遣された大野敬太郎防衛政務官は県庁で副島良彦副知事と会談し「心からおわび申し上げる。原因究明、再発防止に全力を挙げたい」と陳謝。副島副知事は「県民の不安が高まっている」と述べ、原因調査に万全を期すよう求めた。

*8-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL272JM7L27PTIL004.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2018年2月7日) 真っ白な世界、立ち往生する大型車 記者が見た雪の福井
 目の前は、空と地上との境界がわからないほど真っ白な世界が一面に広がっていた。7日午前7時ごろ、通行止めの国道8号を迂回(うかい)し、福井県あわら市の県道周辺の光景を見た。点在する住宅は、1階の半分くらいまで雪に埋もれていた。他は雪のじゅうたんがぎっしり。田畑か道路か、駐車場か。大阪出身で土地勘のない私には見当もつかない。福井市内に向かう主要な県道はある程度除雪され、車道と歩道の間に積み上げられた雪が巨大な壁となり、歩行者の姿が見えない。車はゆっくり進んだが、路上の雪の塊に乗り上げると、車体は身体が浮き上がるほど上下左右に大きく揺れた。道路脇には、大型トラックがあちこちで立ち往生。屋外駐車場の車は雪にすっぽり包まれ、巨大な蚕の繭が並んでいるようだ。車の窓越しにみると、除雪作業の住民たちの姿がある一方、完全に玄関が開かないほど雪に埋もれている民家もある。高齢者が除雪できる積雪量ではない。自然の脅威をまざまざと見せつけられる光景だった。福井市のえちぜん鉄道職員の鈴木和緒(かずお)さん(66)は7日午前8時半から、自宅前の除雪作業をしていた。高齢の母と妻と3人暮らし。「子ども3人は県外にいるから除雪作業は1人でやるしかない。(最大196センチの積雪を記録した1981年の)『56豪雪』も経験したが、それ以来の雪の量だ」と驚いていた。「福井の国道で1千台の車が立ち往生している」との一報で、私は6日午後2時、大阪市内を四輪駆動車で出発した。同日夕には福井県鯖江市の北陸自動車道の鯖江インターチェンジを降り、国道や県道を通って福井市内を北上し、あわら市にたどり着いた。福井市内は車が流れず、約20キロの道のりを進むのに3時間半。北陸道を降りた直後の国道8号では、30分ほど車が前に進まず、「立ち往生してしまったのではないか」とひやひやした。福井市内のコンビニエンスストアにも立ち寄ったが、パンやおにぎりといった食料品はほぼ完売。ガソリンスタンドではタンクローリーが来ないため、1台につき給油は20リットルまでという制限を設けていた。

<服育について>
PS(2018年2月10日追加):*9の銀座の中央区立泰明小で、8万円超のアルマーニ監修の服を標準服に決めたそうだが、小学生はすぐ大きくなるため、何回も買い変えなければならず、保護者には負担ではないだろうか。私は服育もある程度は大切だと思うが、下の1番左のアルマーニの標準服は、真ん中の学習院や右端の星野学園の制服と比較して特にデザインが優れているようには見えない。それより銀座の小学校なら、卒業生や保護者にもデザイナーがいる筈なので、かわいい夏服・冬服のデザインをいくつか出してもらい、その中から一番良いものを選んで、銀座ユニクロを通して日本の季節や子どもに適した生地で安く縫製してもらう方が賢いと考える。いくつかの区立小学校で同時に採用すれば、さらに安くなるし・・。

       
  2018.2.10佐賀新聞  学習院小学校 お茶大附属小学校     星野学園 

*9:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/180125 (佐賀新聞 2018年2月10日) アルマーニ制服校長「変えない」、銀座の区立小
 高級ブランド「アルマーニ」が手掛けた制服を標準服として今春から採用することにした東京・銀座の中央区立泰明小学校の和田利次校長は9日、区役所で記者会見を開き「これまでより高額になるが、ご理解いただき購入してほしい。(採用を)変える考えはない」と述べた。一方で「各家庭に相談して進めてくれば良かったと反省点を持っている」とも話した。和田校長は採用した理由について「銀座の町の学校として発展していくために、ブランドの力をお借りするのも一つの方法と思った」と説明。「学校として統一性ある服を着ながら、同じ学舎で子どもたちが過ごすこともいいのではないかと考えた」と強調した。アルマーニが制服のデザインを監修しており、上下の服にシャツ、帽子、バッグなどを含めると、保護者の負担は8万円を超える場合もある。和田校長は高額な価格に「本校の保護者ならそれぐらいは出せるのではないかと思った。泰明小でなければこういう話は進めない」と語った。

| 経済・雇用::2016.8~ | 05:43 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.12.7 国民負担増・社会保障削減・思いつきの無駄遣い指摘ではなく、国に公会計制度を導入して、国全体の資産管理・効果的な歳出・税外収入の増加等が必要なのである(2017年12月8、9、10、11、12、13、14、16、17、19、21、22、24、26日、2018年1月10、11日追加)

    財政        日本の2017、2018年度予算案   サウジアラビアの財政      

(図の説明:一番左のグラフのように、国と地方の歳出は消費税増税を行っても税収を大きく上回り、税収と歳出の差額を公債で賄っているため、債務残高がうなぎ上りに増えている。そして、左から2番目の2017年度予算案を見ると社会保障費が最も多いが、社会保障は保険料で賄われているため、発生主義で積立金を積んでおけば、本来は税金投入が不要だったものである。また、左から3番目の図のように、2018年度予算案でも税外収入が少なく、税収と歳出との差額分が国債で賄われているため国債費が多いが、一番右のグラフのように、サウジアラビアは政府歳出が政府石油収入で賄われているため税がない。日本も多くの資産や資源を持っているため、本来は工夫次第で税外収入を増やせるにもかかわらず、政府が高いエネルギー価格の負担を国民に押し付け、社会保障を減らすことに専念しているのは、自らの責任を放棄して国民の生命線を切っているものであり、無能すぎるとともに憲法25条違反だ)


  所得税増税案 社会保障費の推移と医療・介護の変更案 アジア諸国の人口ピラミッド

(図の説明:政府は、一番左の図のように種々の増税に専念し、左から二番目・三番目の図のように医療・介護費用を削減のターゲットにしているが、病気は最初の診断がその後の治療成果を左右するため、最初こそ大病院でしっかり検査して治療方針を決めることが重要だ。それにもかかわらず、最初に大病院に行くのを難しくしたり、急性期病棟の報酬要件を厳しくしたりしているのは、変更内容に疑問が多い。また、今でも十分でない介護サービスをさらに削減すれば、国民の生命線を切ることになり、憲法25条違反である。なお、人口構成は、どの国も死亡率が下がった後で出生率が下がる形で変化するため、ピラミッド型からつぼ型への人口構成の変化が起こり、日本では1980年代にはその変化を見通すことができたし、現在の開発途上国でも同じことが起こる。しかし、日本政府はその準備を怠ったのだ。なお、人口構造が変われば需要構造が変わるのであり、高齢者割合が増えたから経済成長しないというメッセージは浅学すぎる)

(1)国の杜撰な国有財産管理と無駄な歳出
1)国有財産の管理について
 *1-1の「森友学園」に対する国有地売却に関する土地評価額は、埋設されたごみの量が8億2千万円の値引きの根拠になっているが、証拠資料がないため妥当とは言い難い。しかし、財務省の管轄下に国税庁があり、国税庁は民間企業に対して譲渡資産の評価には正当な根拠とそれを立証する証拠資料の7年間の保存を求めているため、財務省が税務調査に対応できる程度の資料を揃えておくことは、技術的には簡単である上、国民の血税を使っている省庁として当然のことである。

 従って、この契約に関する資料の一部が廃棄され、売却価格の妥当性が確認できなかったということは、その国有財産の売却価格(評価額)は適切でなかったという推測ができる。そのため、こういう場合に国税庁ならどう取り扱うかを、財務省は国税庁に聞いてみればよい。しかし、ここで問題なのは、国税庁も会計検査院と同じく、財務省に予算の配分をしてもらう立場であるため、完全な独立性はないことである。

 そのため、*1-2のように、今更、「重要文書の保存期間を原則1年以上とする」などという新指針を出すのは馬鹿げているのだが、私は、安倍首相など特定の政治家をつぶすために、森友・加計問題のみをとりあげて追究する野党の姿勢には賛成しない。何故なら、このような国有財産の低廉譲渡は、年金資金や郵政資金で作られたホテルはじめ、多くの国有財産でこれまでも行われてきたことで、森友・加計だけが問題なのではなく、そういうことが起こる背景が問題だからである。

2)放置される国の膨大な無駄使い
 このほか、国の歳出には、*1-3の「原子力事業の環境整備」に代表されるような時代錯誤の支出も多い。これは、古くから既得権益を持っている相手に対する誤った配慮だが、債務保証であっても偶発債務を国が引き受けることになるので、国に膨大な支出をさせる可能性が高い。そのため、40年経っても民間で完結できないほどリスクが高いのなら、原子力事業はすっぱり止めるのが、国民負担が最も少なく、よほど安上がりなのである。

(2)国への公会計制度の導入の必要性
 これらの国有財産の低廉譲渡や膨大な時代錯誤の支出を無くして賢く使えば、国民に痛みを強要せずに経済発展することは可能だ。しかし、国有財産の低廉譲渡や膨大な時代錯誤の支出は、思いつきでいくつか指摘すればすむようなスケールではなく、網羅性・検証可能性を担保する複式簿記による公会計制度を国に導入して、(民間では当たり前の)資産・負債、発生主義などの概念をすべての省庁に徹底させ、つぶさに行政評価する必要があるのだ。

 何故なら、①固定資産の管理という意識がないため、各省庁は国有財産を低廉譲渡しない動機付けがなく ②価格交渉は「トラブルを起こす」として、むしろ嫌がり ③特定の政治家に媚びても、自らの省庁の政策を通す方が賢いことになり ④それによって国民に損をさせても、管理も公開もしていないのでうやむやにできる のが現状だからである。
 
 私は1995年前後から公認会計士としてこのことについて指摘しており、2005~2009年の衆議院議員時代は予算委員会の分科会で、①網羅性・検証可能性のある複式簿記による公会計制度導入 ②それに基づいた行政評価 ③我が国の財政状態 等について質問形式で提言している。

 しかし、国はなかなか重い腰を上げず、地方自治体が先に導入し、地方自治体は、現在、複式簿記・発生主義会計による公会計制度に移行しつつあり(http://www.soumu.go.jp/main_content/000379748.pdf#search=%27%E7%B7%8F%E5%8B%99%E7%9C%81+%E8%A4%87%E5%BC%8F%E7%B0%BF%E8%A8%98%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E5%85%AC%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%88%B6%E5%BA%A6%E5%B0%8E%E5%85%A5%E6%99%82%E6%9C%9F%27 参照)、公会計制度導入の必要性は、*1-4にも記載されているとおりだ。

 従って、技術的には十分可能で、民間企業はどこでもやっていることであるため、国も速やかに複式簿記による公会計制度に移行すべきである。

(3)税と社会保障の一体改革(増税と社会保障削減のセット)では解決できないこと
1)森林環境税の新設
 *2-1のように、森林環境税が2024年度から国に導入されるそうだが、森林環境税は地方税(県民税)として既に導入されている。これも、国がなかなか環境税を導入しなかったので、地方自治体が先に導入した税の一つだ。しかし、私は、国が森林環境税を導入するのは、人口が少なく森林の多い県だけでなく、人口が多いのに森林が少ない県からも税を集めて、全体の緑の割合に応じて支出できるメリットがあるため、前進だとは思っている。

 しかし、国に公会計を導入して無駄使いされないことを保障できなければ、国民負担増と政府の放漫財政の規模が大きくなるだけであるため、複式簿記による公会計制度の導入とそれを前提とした使い方のチェックが必要不可欠である。そして、国が集めた森林環境税の配分方法には徹底した公正性と無駄遣いの排除が求められる。

 なお、国が森林環境税を導入する時には地方税の森林環境税は廃止すべきであり、その時は、地方は国がまだ逡巡している環境税を導入すればよいと考える。

2)観光促進税の新設
 *2-1には、2019年4月から日本を出国する全ての人から、「観光促進税」として1000円徴収することが記載されている。しかし、訪日客が急増すれば法人税・所得税が増える筈で、その増収分を観光インフラの整備に当てられるため、観光促進のために「観光促進税」を徴収する根拠は考えにくい。

 つまり、国は、国有財産を低廉譲渡したり、稼げる資産で稼がなかったりしながら、くだらない歳出をしたい放題して、増税するという理念なき政策をやめるべきなのである。

3)所得税増税
 *2-2-1のように、政府・与党は、サラリーマンの給与所得控除を一律10万円引き下げ、控除上限額も現在の「年収1000万円以上で年220万円」から「800万円以上で年190万円」に引き下げ、基礎控除は、現在の年38万円から年48万円に引き上げて、年収800万円超の会社員は増税とするそうだ。

 しかし、物価が上昇している中で、「年収800~1000万円」は、転勤が多くて共働きができない上、都会の市場価格で住宅費を支払わなければならないサラリーマンにとって高給ではないし、配偶者控除の年間38万円や48万円で配偶者を養えるわけではない。そのため、私は、フランスのように、N分N乗方式(https://kotobank.jp/word/N%E5%88%86N%E4%B9%97%E6%96%B9%E5%BC%8F-183863 参照)を選択できるようにするのがよいと考える。

 さらに、*2-2-2のように、政府の税制改正は、働き方の違いによる不公平や所得格差を是正するものだとしているが、子育てや介護世帯の負担が増えないようにすればさらに煩雑化して税法の理念である公正・中立・簡素から程遠くなり、増税になる人が会社員は全体の約5%、年金受給者は全体の約0.5%と少ないのなら増税の効果は小さい。また、ここで公務員を除くのも意味不明だ。

4)社会保障の削減
 そのような中、「無駄遣いは、社会保障」とばかりに、*2-3のように、2018年度予算編成に向けて、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が、①医師の技術料 ②介護報酬 のマイナス改定等の歳出改革の提言を公表したそうだが、①②とも、もともと少なすぎることが問題になっている分野である。さらに、このブログの2017.1.5にも記載しているとおり、どれも働いている期間には保険料を支払ってきたものであるため、発生主義で引当金を積んでおけば、団塊の世代が退職し高齢化したからといってあわてる必要のないもので、すべての原因は厚労省・財務省の無知と無責任にあるのだ。

 にもかかわらず、「低金利が続き借金の利払い費が伸びづらく、歳出改革への危機感は広がらない」などという社会保障の削減を目的とするような考え方は重大な問題であり、抜本的に改革すべきは各省庁とメディアの姿勢である。

 また、地方自治体に複式簿記・発生主義会計による公会計制度が導入された現在では、国より地方自治体の方が本当の意味で効率的・効果的な予算編成ができる素地ができたため、地方に配る地方交付税を削減するのなら、消費税は全額地方税にするなどの税源移譲をした方がよいと考える。さらに、都道府県や市区町村が積み立てた基金の総額は21.5兆円と過去最高だなどとしているのは、発生主義による引当金・積立金の発想がないからなのである。

 なお、*2-4のように、高齢になるほど改善が難しく自立できにくくなるため、高齢者自身のためにも家族の負担軽減のためにも、生活援助サービスは必要不可欠であり、介護サービスこそ本当の需要だ。それにもかかわらず、財務省は介護報酬を全体でマイナス改定するよう求めているが、それならば機器や薬剤の価格が他国と比較して高すぎることにメスを入れるべきで、診療報酬は他国に比べて低く、介護報酬は国内の他産業と比べても低いことを忘れてはならない。

<国の杜撰な財産管理と歳出>
*1-1:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171122-00000074-asahi-soci (YAHOO、朝日新聞 2017/11/22) 地中のごみ量、最大7割減 森友問題、値引き根拠揺らぐ
 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地の売却経緯を調べた会計検査院は22日、調査内容を国会に報告した。地中のごみの量について、国が売却契約時に推計の理由としたデータは根拠が不十分としたうえで、独自に試算した結果、最大で約7割減ることなどを指摘した。ごみの量は8億2千万円の値引きの根拠となっており、売却価格の妥当性があらためて揺らぐことになった。検査院は、契約に至るまでの資料の一部が廃棄されるなどで、価格決定の詳しい経緯が確認できなかったとも指摘した。国の財産処分が適切に行われたかどうかが検証できない状態で、「適正」と繰り返してきた政府の姿勢が厳しく問われることになる。問題の国有地は、2016年6月に学園側に売却された。鑑定価格は9億5600万円だったが、学園側が地中深くにごみがあると申告したことから、売却価格はごみの撤去費用として8億2千万円などを差し引き、1億3400万円とされた。こうした大幅な値引きのうえ、公開が原則の売却価格が非公表だったことなどから、契約の経緯が問題となっていた。今年3月に国会の要請を受けた検査院は、売却契約の窓口になった財務省近畿財務局や、土地を所有していた国土交通省大阪航空局などへの調査を実施。主に価格の決定経緯について調べを進めてきた。調査では、国が1万9520トンと認定した地中のごみの量は、推計の理由とされた混入率や深さに十分な根拠が確認できなかった。そこで検査院は混入率や深さを算定しなおし、ごみの量を独自に試算。その結果、少ない場合だと6196トン、多くなる場合でも1万3927トンとなり、国の推計を7~3割下回った。国は売却時、1トンあたり2万2500円の処分単価をごみの量に掛け合わせて処分費用を算出した。検査院はこの処分単価についても調べたが、どのような内訳で見積もられたのかを示す資料がなく、詳細な内容は確認できなかった。このため、適切な売却価格は示せなかった。また、学園側との具体的な交渉内容が確認できる資料などが廃棄されていたことから、検査院は「会計経理の妥当性の検証が十分に行えない」と指摘。検証ができないのは適切でないとして、行政文書の管理について改善を求めた。
     ◇

〈会計検査院〉国などの会計経理を監督する機関。憲法90条で設置が定められ、会計検査院法で「内閣に対し独立の地位を有する」とされている。国会は会計検査院に対し、特定のことについて調べて結果を報告するよう求めることができる。

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/153217 (佐賀新聞 2017.11.27) 首相、公文書管理で新指針、森友、加計批判受け表明
 安倍晋三首相は27日の衆院予算委員会で、学校法人「森友学園」と「加計学園」の問題で批判を受けた公文書管理を巡り「国民の信頼を一層高いものにするように、行政文書管理のガイドラインの改正を年内に行う」と表明した。公文書管理法の改正も検討する考えも示した。森友問題で文書管理の改善を求めた22日の会計検査院による報告も踏まえた対応。重要文書の保存期間を「原則1年以上」とすることで理解を得たい考えだ。首相は公文書管理のガイドラインに関し、各府省庁間で打ち合わせを行った際の記録作成と、相手方との相互確認などで文書内容の正確性を確保するよう義務付けると明言した。

*1-3:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171130/k10011241521000.html (NHK 2017年11月30日) 東京電力 原子力事業で国に環境整備を要請へ
 東京電力は、原子力事業をほかの電力会社と共同で進めていくため、国に対し、債務保証などの事業の安定化に必要な環境整備を要請する考えを明らかにしました。東京電力は、福島第一原発の廃炉や賠償などに必要な費用の総額が21兆円余りに膨らむことを受けて、原子力事業のほか、送電や配電の事業を再編して収益力の向上を図る新しい事業計画を、ことし5月に策定しました。東京電力が30日に明らかにした計画の今後の進め方によりますと、原子力事業では、青森県で建設する予定の東通原発の事業をほかの電力会社や原子力関連のメーカーと共同で進めるため、具体的な協議に入るとしています。そのうえで、原子力事業は、電力小売りの自由化で長期的な採算が見通しにくくなっているとして、国に対し、債務保証などの事業の安定化に必要な環境整備を要請するとしています。また、送電や配電の事業では、ほかの会社と海外展開などで共同事業を進めるための協議に入るとともに、国に対して規制の見直しを求めていく考えです。会見した東京電力の文挾誠一副社長は「原子力事業はいろいろなリスクがあり、今後の予見性を高められる制度をお願いしたい」と述べました。

*1-4:http://sinwagroup.jp/wp/p-account/pa-corner/post99.html (新和会計グループ 2008年9月16日) 新和会計グループは企業と地域社会の発展に貢献していきます。  - 第01回 なぜいま公会計改革か
 今回、地方公共団体における公会計制度の整備の推進により、すべての地方公共団体に、連結ベースでの新たな財務4表の作成、公表が求められていますが、この背景に、行政の役割の拡大に伴う行政の肥大化、地方債などストック化の進行があります。更には、今後、少子高齢化の進行が必至で右肩上がりを前提とした財政運営はできないという事情があります。今回の地方公会計整備は、複式簿記の技術ないしその考え方の導入と純資産変動計算書に特徴がありますが、それだけでなく、行財政運営の本質に迫るものを含んでおり、「公会計改革」といわれるゆえんでしょう。
1 なぜいま公会計改革なのか
(1) 全体が見えない -ストック情報の欠如とフロー情報の不備
 行政の決算は、公金の使途、収支を明確にすることを目的としており、減価償却や引当金なども含めた赤字・黒字や資産・負債・純資産の把握を目的としていないため、現在どうなっていて・これからどうなるのかの財務ポジションがつかめず、財政の全体の姿が見えません。更に、行政には、特別会計や企業会計、独立行政法人など複雑な仕組みがあり、国から地方への補助金等財源移転の仕組みもあるため、ますます分かりにくいものとなっています。増税が必要だとしても、これでは国民はいつも半信半疑になります。更には行政への不信や不安が拡がります。つまり、行政と住民との信頼を培う財政情報に不備があると見られます。年々の税収増が期待できる右肩上がりの時代には、これでも問題がなかったといえますが、既に基礎的収支もあやうく、長期債務が累増し、少子高齢化が必至の状況においては、これを補う必要があります。フロー、ストックの全体状況を分かりやすく示す新たな財務情報が必要です。これが第一の課題です。
(2) 将来計算ができない -マネジメント情報の不備
 発生主義、複式簿記の大きな特徴は、フロー(損益)とストック(資産負債)が緊密な連絡を保って、体系をなしている点です。従って、民間企業においては、どれだけの設備投資をすればそれが将来どれだけのコスト圧力となり、将来どれくらいの建替え需要が生じるかの計算が可能で、いつでも将来貸借対照表、将来損益計算書、将来資金繰り計算書を計算することができます。しかし、行政の収支決算システムには、この仕組み・体系がありません。即ち、財政の将来計算の仕組みがないということです。これは将来に対する共通の認識を欠くことになります。これは少子高齢化が進行する中で、将来を図り、計画的に財政を運営する上で大きな課題となります。これが第2の課題です。
(3) 行政コストが捉えられない -コスト情報の欠如
 しばしば「役所にはコスト意識がない」といわれますが、今日の収支決算システムにはむしろ「コスト意識を持つ仕組み」がありません。費用測定の仕組みが不完全であるために、全コスト(フルコスト)や将来にわたるコスト(ライフサイクルコスト)の把握が不完全なままで政策選択をすることになります。したがって、行政の効率化の観点からは、これを仕組みとして行政に埋め込む必要があります。これが第3の課題です。
2 行政は赤字か黒字か
 役所の決算時期になると、今年は「○○円黒字」だったとか・「○○円赤字」だったとか報道されます。これは普通「実質収支」のことです。「形式収支」や「実質収支」が「○○円」赤字だとか・黒字だとかいう言い方もしますが、いずれも(収入-支出)で捉えた収支差額のことです。下記は、「会計君」の家計簿と役所の捉え方を対比して示したものです。会計君は収支がトントンでも毎年100万円の赤字になっていて、財産がそれだけ減っているのを認識しています。事態を正しく認識するために何が必要かはおのずと明らかです。発生主義会計を取り入れるとは、こういうことであり、財政運営の基本にかかわることです。

<増税と社会保障削減>
*2-1:http://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/267228 (福井新聞論説 2017年12月3日) 二つの新税導入へ、国民の痛み感じているか
 「用を節して人を愛す」とは2500年も前に孔子が説いた財政の眼目だ(「論語」)。政治に携わる者は、税金を元に仕事をしているのだから費用を節約し、人民の福利増進を図れというのである。外国人旅行者や日本人が出国する際に徴収する「観光促進税」が2019年4月から、また森林の間伐費用などを賄う「森林環境税」が24年度から、それぞれ導入される方向になった。恒久的な国税の新設は、土地バブル対策のため1992年に導入された「地価税」以来。孔子の金言は生かされるだろうか。
■1人当たり千円■
 観光促進税は、航空機や船舶を問わず日本から出国する全ての人から1人当たり千円を徴収する内容だ。航空機利用ならチケット代に上乗せし、船舶の場合は実態を踏まえた徴収方法を採用するという。導入の背景には訪日客の急増がある。16年は2404万人と5年前に比べて3倍近くに増え、消費額も3兆7476億円で約3・5倍となった。国は東京五輪・パラリンピックの20年に4千万人、30年には6千万人の達成を目標に掲げている。そのためには観光インフラの整備など観光立国実現に向けた各種施策が必要になる。その財源として浮上したのが観光促進税である。使途には出入国手続きの迅速化や標識の多言語対応、地方の観光振興などを見込んでいる。一方の森林環境税は、二酸化炭素の削減や土砂災害防止を目的として、約6千万人が負担する個人住民税に1人当たり年間千円を上乗せして徴収する。森林面積などに応じて自治体に配分し、荒廃した森林の整備に充てる。
■取りやすいところから■
 どちらの新税導入も、理由はもっともである。だが、疑問や課題も少なくない。特に観光促進税である。「受益者負担」の原則から懸け離れていないかとの指摘は傾聴に値する。まず、出国する日本人には千円を負担するだけのメリットはあまりない。いまでもそれほど待たずに出入国できるし、まして標識の多言語化には関係ないからだ。そこで、税を負担する対象を外国人に限ることも検討されたようだが、各国と結ぶ租税条約などに「国籍無差別」の原則があるため立ち消えになった。結局、海外旅行を楽しむぐらいの経済力がある人たちだから許容範囲とみたのではないか。税金は取りやすいところから取る、という典型例だろう。もっとも、訪日外国人であっても全員に十分な利益があるわけではない。2割はビジネス目的だからで、税の投入で観光関連施設が整備されても負担に見合う受益はなさそうだ。
■無駄遣いの恐れ■
 二つの税を導入すると、税収はどうなるか。16年の出国者は訪日外国人と日本人を合わせて約4千万人なので、観光促進税で約400億円。観光庁の17年度当初予算の2倍近くになる。もう一つの森林税は、個人住民税を支払っている約6千万人に千円を掛けて約600億円だ。いずれも特定の目的に使うだけに、税収を1年ごとに使い切ろうとして無駄遣いされる恐れがある。かつてのガソリン税がそうだった。道路整備のための財源だったのに、マッサージチェアの購入などに使われた。先日あった自民党の税制調査会では早速、二つの新税を巡って想定以上の使い道を求める声が上がった。「用を節して…」の金言とは無縁の様相である。現パナソニック創業者の松下幸之助にも政治家を戒める言葉がある。「税金を取るのは当然と考えるばかりか、増税することに痛みを感じない為政者は失格である」。安倍晋三政権はどうなのか。

*2-2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13259273.html (朝日新聞 2017年12月5日) 会社員増税、年収800万円超 政府・与党が最終調整 20年1月目標
 所得税の見直しについて、政府・与党は、年収が800万円を超える会社員を増税とする案で最終調整に入った。2020年1月の実施をめざす。5日にも自民・公明両党の税制調査会の非公式幹部会に示し、与党内の議論を経て、14日にまとめる税制改正大綱に盛り込む。この案によると、会社員向けの給与所得控除を一律で10万円引き下げる。さらに控除額の上限もいまの「年収1千万円以上で年220万円」から「800万円以上で年190万円」に引き下げる。一方で、すべての納税者が受けられる基礎控除は、いまの年38万円から年48万円に引き上げる。この結果、年収800万円以下の人は、給与所得控除の縮小額と基礎控除の増加額が同じになり、増税にならない。年収800万円超から増税になり、900万円で年3万円、1千万円で年6万円の負担増となる。ただし、22歳以下の子どもや、体が不自由で介護が必要な人がいる世帯は増税にならないようにする。基礎控除は年収2千万円を大幅に上回る人から段階的に縮小し、2500万円超でゼロにする方向だ。年金受給者向けの「公的年金等控除」は、控除額を一律で10万円減らし、年金以外の収入が1千万円超の人は控除額をさらに減らす。年金収入が1千万円超の人や年金以外に年1千万円超の収入がある人は増税になる。今回の見直しによる増税対象者は給与所得者の5%程度で、全体で1千億円超の増税になる見込みだ。
■給与所得控除と基礎控除の見直しによる負担増額
  <給与収入>  <負担増額>
  800万円以下    なし
  850万円    1.5万円
  900万円      3万円
  950万円    4.5万円
 1000万円      6万円
 1500万円    8.6万円
 2000万円    8.6万円
 3000万円   33.5万円
 5000万円   36.9万円
 (金額は年間ベース。3000万円以上は基礎控除の段階的縮小・廃止の影響を含む)

*2-2-2:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/156333 (佐賀新聞 2017.12.6) 所得増税、会社員全体の5%、給与1千万円で6万円
 政府が2018年度税制改正で検討する所得税の改革案が5日判明した。基礎控除と給与所得控除、年金控除を見直して、働き方の違いによる不公平や所得格差を是正。子育てや介護世帯の負担が増えないようにしつつ、年収800万円を超える会社員や高収入の年金受給者を増税、自営業やフリーで働く人らを減税とする。増税となるのは会社員で全体の約5%、年金受給者は20万人程度で全体の約0・5%と想定しており、20年1月からの実施を目指す。公務員を除く会社員全体の5%で単純計算すると200万人余りとなる。年間の増税額は年収1千万円の会社員で6万円となる見込みだ。

*2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171130&ng=DGKKZO24040570Z21C17A1EE8000 (日経新聞 2017.11.30) 歳出削減に政治の壁、社会保障・公共事業…財制審提言、改革迫る
 2018年度予算編成に向け、財務省と各省庁が本格的な調整を始めた。財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が29日、歳出改革の提言を公表。医師の技術料などの診療報酬本体や介護報酬のマイナス改定などを求めたが、関係省庁や与党の族議員などの反発は強い。低金利が続き借金の利払い費が伸びづらく、歳出改革への危機感は広がらない。18年度の政府予算案は12月22日に閣議決定する見通しだ。財制審の提言を受け、財務省は各省庁との調整を急ぐ。財制審は各分野にわたり抜本的な改革を求めるが、関係省庁や与党の族議員の反発などで実現が見通せないものも多い。例えば高齢化で国の歳出が膨張する社会保障。財制審は診療報酬本体で「一定程度のマイナス」を求め、企業や個人の保険料負担の上昇を抑えるため介護報酬も引き下げを訴えている。だが自民党の厚労族議員はプラス改定を主張。安倍政権は日本医師会と距離が近く、本体はプラス改定との見方が政府内で大勢だ。財務省は報酬の抑制だけでなく、患者負担の引き上げなども訴える。代表的なのが所得の多い75歳以上の高齢者の窓口負担の引き上げだ。高齢者の反発を恐れる厚労族などから反発は強く、実現は見通せない。国が地方に配る地方交付税の削減も焦点だ。都道府県や市区町村が積み立てた基金の総額は21.5兆円と過去最高だ。財務省は交付税を減らしても自治体の財政運営は成り立つと考えているが、総務省の反発は大きい。教育分野では、政府・与党は全大学生を対象にした出世払い方式も中期的なテーマとして検討している。在学中は授業料を納めず卒業後に所得が一定水準以上の場合は授業料の相当額を後払いする仕組みだ。ただ、財制審は高所得者にも恩恵が及ぶ点や制度設計の難しさなどを理由に「導入は不適切」としている。与党内からは公共事業の上積みを求める声が強い。内閣府によると、7~9月期の国内総生産(GDP)速報値から試算した日本経済の需要と潜在的な供給力の差を示す「需給ギャップ」はプラスだ。すでに需要が供給を上回っている状態で追加需要を作っても経済への効果は限定的といえる。にもかかわらず、17年度補正予算案で公共事業関係費が膨らみそうだ。財政運営では、財制審は国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化の早期達成を求めた。政府は消費増税の使途変更により20年度の黒字化目標を事実上、断念した。財制審は「財政規律がこれまでにも増して強く問われている」と訴えるが、政府内には早期の黒字化目標の設定に慎重論がくすぶる。
▼財政制度等審議会 予算編成や財政運営の基本的な方針について議論し財務相に提言を出す。現在の会長は経団連の榊原定征会長が務める。年末に建議を示し、政府の予算編成作業へ反映を目指す。財政再建を重視し、厳しい歳出改革を求めることもある。

*2-4:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20171126/KT171125ETI090012000.php (信濃毎日新聞 2017.11.26) あすへのとびら 社会保障をどう守る 一時しのぎは通用しない
 一口に社会保障と言っても分野は幅広い。医療、介護、年金、失業手当、生活保護、児童や障害者への手当…。何らかの事情で日常の暮らしの維持が困難になった際、憲法に記された文化的生活を続けられるよう支えるのが社会保障である。この仕組みが機能不全に陥りつつある。高齢化が進んで医療や介護の費用は増大し、地域社会や家庭、雇用の環境の変化もあって、現役世代も重くなる負担を背負い切れなくなっている。来年は診療報酬と介護報酬を同時に改定する6年に1度の年。政府は支出を抑えようと躍起で、息苦しい調整が続く。これからますます、高齢化率は上がり、労働人口は減るというのに、一時しのぎを繰り返すしか手はないのだろうか。介護報酬を巡る議論を取り上げてみたい。貫かれているのは「自立」という考え方だ。例えば、厚生労働省は、介護が必要な高齢者の自立支援で成果を上げた事業所への報酬を増やす方針を示している。通所介護(デイサービス)で、リハビリ専門職と連携して身体機能の訓練を行う事業所には手厚くし、消極的な事業所は引き下げる。訪問介護でも、掃除や洗濯、調理を担う生活援助には短期で養成するヘルパーを充てて報酬を減らす。その分、現行のヘルパーによる身体介護は高くする。こんな案も浮上している。国が評価指標を用意し、高齢者の自立支援や要介護度の維持・改善に取り組み、実績を上げた市町村に新設の交付金を支給する―。いずれも、要介護度の重い人を減らすことで費用の抑制を狙う。
<不安を高める議論>
  「高齢になるほど改善は難しくなる」「高齢者が家に閉じこもるのを防ぎ、家族の負担を軽くする役割は評価しないのか」「生活援助で気持ちに余裕が持てたのに、使えなくなると困ってしまう」。介護事業所の職員や利用者からはそんな声が聞かれる。財務省は、介護報酬を全体でマイナス改定するよう求めている。他の産業に比べ、給与が著しく低い介護職の待遇改善のため、この4月の臨時改定で報酬を引き上げたばかりだ。また減らすことになれば、人手不足に拍車を掛けることになりかねない。厚労省は今月、世帯ごとに発行している健康保険証の番号を個人ごとに割り当て、個々人が受診履歴や健康診断の結果を閲覧できるようにする、との方針を打ち出した。2019年度から発行を始めるとしている。国民の健康意識を高める目的というが、それだけか。いわば医療版「マイナンバー制度」で、健康に関する情報を国が一元管理することになる。プライバシーがさらされ、医療費抑制の名の下、健康増進への統制色が濃くならないか懸念される。暮らしの悩みを解消するはずの社会保障の議論が、国民の不安を高めているように感じられる。安倍晋三首相も、その不安を大きくした。社会保障制度の安定に使う計画だった消費税増税分を幼児教育の無償化に回すとし、衆院解散の理由にした。高齢者に偏っている社会保障を「全世代型」に転換することに異存はない。が、真っ先に着手すべきは幼児教育の無償化なのか、財源を消費税に求めるのが適当なのか。疑問の多い判断だ。年間の医療費は45兆円、介護費用は10兆円に上る。団塊の世代全員が75歳以上となる25年には、医療費は4割増え、介護費用は倍になると試算されている。サービスの効率化を図ることも大切だけれど、改定のたびに報酬を増減させ、利用者の負担割合を見直す対症療法で、超高齢社会を乗り切れるとは思えない。
<政治の責任は重く>
 政治の責任は重い。国民に構想を示し、負担=痛みから逃げずに議論する。それは政治にしかできない。安倍首相、そして与野党にその覚悟はあるのか。一向に将来が見通せない状況に、国民は不安を感じている。人口減少だけではない。非正規雇用の割合が高まり、格差が広がって、社会保障を担ってきた中間層が疲弊している。地域や家庭で支え合う関係は薄れ、人々の社会的孤立が問題になっている。こうした現実を見据え、国民、政府、自治体、企業の役割と負担のあり方を見直すこと。地縁や血縁に代わる地域のセーフティーネットの拡充も求められる。首相が言う全世代型への転換も、全体像を欠いては説得力がない。自立した生活を望まない人はいない。それができなくなったときの支え合いとして、社会保障はある。原点を忘れず、時代に見合う仕組みの構築を急いでほしい。

<増税・社会保障削減・貧困と無駄遣いの負のスパイラル>
PS(2017.12.8、2018年1月10、11日追加):*3-1のように、高校公民の教諭が「アクティブラーニング(主体的学習)」を学んだことは、民主主義国の主権者たる有権者を育てる上で重要だ。しかし、発展途上国の貧困を取り上げて、できる支援について話し合っただけなら、日本の主権者教育としては不足である。何故なら、日本にも貧困家庭は多いのが現実で、現状と政府の政策の妥当性を冷静な目で判断できる有権者が民主主義には必要だからだ。
 一例は、*3-2のように、文系のエリートと思われる日経新聞記者が、病院が介護施設などの代わりをしている高知市の社会的入院の事例を「日本の未来」として取り上げているのだが、これは未来ではなく過去の話で、病院のベッドしか居場所のない可哀想な高齢者をなくすために、自宅療養を可能にする介護制度を設けたり、施設を個室にする政策を行ってきたからだ。つまり、介護を後退させれば、病院のベッドしか居場所のない高齢者がまた増えるにもかかわらず、虚実をごちゃまぜにした質の悪い記事を書き、財政悪化の懸念を言い立てるようなことをしているのである。しかし、*3-4のような数千億円規模の無駄遣いは枚挙にいとまがなく、この記者が国民に求める①「自助」「共助」の範囲 ②それを行う主体 ③その実行可能性 などを具体的に検討すれば、現在の「公助」は足りないくらいであり、少なからぬ人が現場の実態に基づかずに、論理性も実現可能性もない議論をしている不都合な真実がわかる筈である。
 なお、*3-3のように、無年金の高齢者に対する生活保護費の見直しで、厚労省は「生活扶助」も引き下げる方向で検討に入ったそうだが、これも過去の年金制度・年金保険料の徴収法・年金積立金の管理に関する不備・不手際によるところが大きいため、憲法25条違反になるような生活を強いることのないようにすべきだ。
 さらに、診療報酬のマイナス改定や物価上昇による人件費・材料費の上昇が続き、*3-5のように、公立病院は2016年度で約6割が赤字だそうだ。しかし、民間病院も含む病院の赤字は、私が衆議院議員をしていた2005~2009年頃には既に多数言われており、その状況が激しさを増したと思われるが、特に公立病院や拠点病院はその地域の人が先端医療にアクセスできるか否かを左右し命に関わるため、民営化して収益性の低い診療科を廃止したり、経験のないスタッフに変えたり、非正規労働者を増やしたりすればよいわけではない。つまり、一定地域内に経験と技量のある医師や必要な質・量を満たすスタッフを確保しておくことが必要で、合理化して経営改善しさえすればよいわけではないのである。そして、総務省が2017年末に病院改革の報告書で述べている地域医療の再編を促すネットワーク化は、市町村を超えて経験と技量のある医師やスタッフを確保し、どこに住んでいても30分以内でどの科の先端医療にもアクセスできる状況を最低のコストで実現するために私が提唱して佐賀県では既に終わっているものだが、これだけ病院や医師を標的にした診療報酬のマイナス改定、物価上昇による人件費・材料費の上昇、消費税増税が続けば、その効果もかき消されただろうと考えている次第だ。
 このように、国民の命綱になっている社会保障を1千億円単位で節約しながら、*3-6のように、民間企業である日立製作所が英国で進める原発事業に日本が融資する1兆1千億円分に日本政府が保証(=偶発債務)をつけ、原発事業のリスクを肩代わりするそうだが、原発は、今でも安くて安全なエネルギーという触れ込みなのである。これは、第二次世界大戦の際に、先進国は戦闘機の時代に入っていたにもかかわらず、日本軍は巨艦主義の過去から脱せず、理論的・科学的思考を排して精神論で闘い、国民を犠牲にして敗戦したのと酷似している。従って、ここは、民間企業が脱原発を決意するのが賢明だろう。

  
  厚労省の生活保護実態調査      2017.12.8日経新聞(*3-2より) 

(図の説明:現在、社会的入院をしたり、施設に入ったり、介護を受けたりしている高齢者は、右の写真のように孫の世話ができるお爺さん・お婆さんではなく、自分のこともできなくなったひいお爺さん・ひいお婆さんの年代であるため、*3-2の写真は現実とは異なる。つまり、自助ができず、共助にも負担がかかるようになった人を、公的にサポートしているのだ)

*3-1:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/157328 (佐賀新聞 2017.12.8) 高校公民教諭が主体的学習事例学ぶ、7日、佐賀北高で研修会
 次期学習指導要領に盛り込まれた「アクティブラーニング(AL)」をテーマにした高校教諭向けの研修会が7日、佐賀市の佐賀北高で開かれた。新設される公民の必修科目「公共」や主権者教育での活用が期待されるALの実践事例を学んだ。島根県立大客員研究員で、秋田県内の高校で教える市川聖教諭が、発展途上国の貧困を取り上げた授業を報告した。映像も活用して途上国の現状を詳しく学んだ後、自分たちにできる支援について話し合い、それぞれが意見を発表することで理解を深めた。市川教諭は「途上国について知りたいという探求心が芽生えてきた」と成果を語った。指導要領は、ALを「主体的・対話的で深い学び」と位置付けて授業改善を求めている。公開授業を行った春田久美子弁護士も交えたパネル討論で、市川教諭は「普段の授業から、クラスの生徒全員に質問して対話に務めている」と紹介した。主権者教育に関しては「公民科の教員にとどまらず、学校全体で取り組むことが必要」と課題を指摘した。県高校公民部会が主催し、約30人が参加した。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171208&ng=DGKKZO24396610X01C17A2MM8000 (日経新聞 2017.12.8) 2030年への責任(4)不都合な現実 今こそ直視 痛みは分かち合うもの
 日本の未来を探るため、取材班がこだわってきた地域がある。人口当たりの病院や病床数、医療費が常に上位に入る高知市。街を歩いて病院やクリニックの看板を数えるとすぐ両手に余る。「病院が介護施設などの代わりをしていた」と岡崎誠也市長。高齢化が全国平均の10年先を行くのに、介護で済む人を入院させていれば、医療費がどんどん膨らむのは自明だ。
●病院に変化も
 高知の手ぬるい医療財政が破綻を免れるのは、公的保険という大きな器の一部にすぎないからだ。だが足元で変化が始まっている。「病院は機能の向上を求められるようになった。さもなくば淘汰だ」。JR高知駅前に病院を展開する近森会の近森正幸理事長は神妙に語った。医療保険の配分ルールがじわりと厳しくなり、治療の必要の乏しい長期入院は認められにくくなった。業態転換を余儀なくされる病院があり、退院を促される高齢者がいる。許されていた甘えが少しずつ通用しなくなってきた。では、いまの高知のように日本全体で3人に1人が高齢者になると何が起きるのか。団塊の世代が80代になる2030年の試算が衝撃を告げる。年金や医療、介護の隠れた債務はおよそ2000兆円。国が抱える1000兆円の借金の2倍もの負担が将来世代にのしかかる。人類が経験したことのない状況を迎える。厳しい未来予想図を前に、私たちはいまどうすべきだろう。取材班はヒントを求めてこの1年以上、現場を歩いてきた。話を聞いたのは有識者から公務員、年金受給者や高校生まで延べ数百人。ほとんどの人たちと「このままでは持たない」という思いを共有した。
●刻々と財政悪化
 いま必要なのは世代や立場を超えた痛みの分担だ。公的サービスである「公助」の領域が小さくなり、不便を感じる人も出てくるはずだ。そのぶん皆が自己責任の「自助」に努め、周囲が手を差し伸べ合う「共助」を広げる。地道な取り組みが求められている。ところが目の前の政治には厳しい未来への責任が感じられない。高齢者に偏る社会保障を全世代に広げるという掛け声で進むのは保育所や幼稚園の無償化。2兆円もの税金を使って公的サービスの範囲を広げる。03~04年に厚生労働次官を務めた大塚義治氏が今日と似た風景に接したのは若手官僚だった1970年代。老人医療費が無料化された。「医療費が大爆発し、財政が大変なことになった。30年余りの仕事の大部分は高齢化対策だった」。退官から13年、財政はいまも刻々と厳しさを増す。医療と介護、生活保護や福祉。安心網の柱をなす諸制度が2018年春から同時に改まる。一斉点検は30年に1度しか来ない。不都合な現実から目をそらさず、厳しい選択に向き合う。私たち一人ひとりがそう思うところから始めるしかない。

*3-3:http://qbiz.jp/article/124190/1/ (西日本新聞 2017年12月8日) 貧困高齢者の暮らし窮迫 食費切り詰め「もう追い込まないで」 生活保護引き下げ検討
 5年に1度の生活保護費見直しで、厚生労働省は一部世帯について、食費や光熱費などに充てる「生活扶助」を引き下げる方向で検討に入った。受給世帯の過半数を占める65歳以上の高齢者では、単身世帯の多くが対象になる見通しだ。社会保障費を抑制したい国の思惑が透けるが、現状でも切り詰めた生活を送る高齢者らは「これ以上、追い込まないで」と訴える。スーパーで半額になったヒレカツ190円、キャベツの千切り58円、まとめて炊いておいた白米とみそ汁−。東京都大田区の都営住宅に住む浜井清見さん(79)のある日の夕食だ。「外食は一切しない。お金がもたない」。多めに買った牛スジを大根とコンニャクと煮て、3日間しのぐこともある。9年前に妻を亡くし、現在は1人暮らし。中学卒業後、配管工として働いてきたが年金に加入せず、貯金は脳梗塞で倒れた妻の医療費で底を突いた。5年ほど前までは水道工事などで生計を立てていたが、体力的に厳しくなって無職に。やむなく生活保護を申請した。毎月7万5千円弱の生活扶助が支給されるが、光熱水費や電話代、新聞代で月3万円は消える。食費はやりくりしても2万〜3万円。消耗品などを買えば数百円残るかどうかで、常にぎりぎりの生活だ。おととし広島県に住む母親が亡くなったが、役所に頼んでも交通費の支給が認められず駆けつけられなかった。さまざまなことを制限される老後の日々。「千円減るだけでも大きな差だよ」と、さらなる引き下げに不安を募らせる。各地で訴訟も。生活保護の受給世帯は今年9月時点で約164万世帯を超え、20年間で約2・7倍となった。このうち1人暮らしの65歳以上の高齢者が48%と大半を占める。年齢や病気で就労が困難な人のほか、浜井さんのような「無年金」や、保険料の納付期間が足りず満額を受け取れない「低年金」の人の増加が背景にある。生活保護費は国と自治体が全額公費で賄い、国費分だけでも約3兆円(2018年度予算概算要求)に上る。このため、支給基準の抑制圧力は年々強まっている。前回の13年度改定では生活扶助が世帯平均で6・5%減額された。憲法が保障する最低限度の生活を維持できないとして各地で違憲訴訟も起きている。負のスパイラル。今回の引き下げの根拠は、生活保護を受給していない低所得世帯の消費支出に比べ、受給水準が上回るとの調査結果に基づく。だが、そもそも生活保護が必要な人のうち、約2割しか実際には受給していないという専門家の指摘もあり、実態を反映していない恐れがある。元厚生官僚で生活保護制度に詳しい尾藤広喜弁護士は「年金の支給水準も下がり、下流老人、老後破産といった言葉に象徴されるように、高齢者の生活は全体的に窮迫している。生活扶助を引き下げるのは負のスパイラルで、受給者の生活が破壊される」と指摘。「『最低限度の生活』とは何かという議論を無視し、最初から引き下げの結論ありきで、政府が誘導しているとしか思えない」と話している。

*3-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171207&ng=DGKKZO24330990W7A201C1EE8000 (日経新聞 2017.12.7) もんじゅ廃炉、30年で 原子力機構が計画提出 費用3750億円、上振れ必至
 日本原子力研究開発機構は6日、原子力規制委員会に高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の廃炉計画を提出した。2018年度に着手し47年度までに廃炉を終えるとしている。費用は3750億円を見込むが、国内では高速炉の廃炉経験はなく技術も確立していない。放射性廃棄物の取り出し後の処分場も決まっておらず、今後費用の上振れは必至だ。原子力機構が6日に提出した計画では22年度末までに核燃料の取り出しを終える。最大の難関は原子炉内のナトリウムの取り出しだが、今回の計画では具体的な時期の明記は見送った。ナトリウムは水や空気に触れると爆発する恐れがあるため取り扱いが難しい。原子力機構の伊藤肇理事は「コスト面でもできる限り削減を検討する」と話すが、今後の技術開発には大きなコストがかかる。また福井県の外に搬出するとする核燃料やナトリウムの取り出し後の処分場も決まっていない。今後、原子力機構などが選定作業に着手するが、ナトリウム処理と同様に費用が上振れする要因になりそうだ。核燃料サイクル施設関連では、同じ原子力機構が持つ東海再処理施設は廃止費用が70年で1兆円に上ることを明らかにしている。

*3-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180109&ng=DGKKZO25434510Y8A100C1NN1000 (日経新聞 2018.1.9) 公立病院、6割が赤字 16年度、材料・人件費重荷
 総務省がまとめた2016年度の公立病院の経営状況によると、経常収支が赤字の病院は全体の61.7%だった。比率は6年連続の増加で、8年ぶりに6割を超えた。人件費や材料費の上昇、診療報酬のマイナス改定などが響いている。病院数は15年度比で1.5%減の873と過去最少だった。同省の調査研究会報告書によると、独立行政法人を含めた公立病院の経常損益は831億円の赤字。15年度は542億円の赤字で赤字幅は1.5倍に拡大した。人手不足や、機材・材料費の高騰が経営を圧迫している。ただ公立病院の多くは地方のへき地など過疎地域の医療体制の維持には不可欠だ。全国の病院のうち公立病院数は11%にとどまるが、へき地医療の拠点病院に限れば62%を占める。地方では医師不足も問題で、赤字比率が高止まりすれば地域医療の維持も難しくなる。総務省は17年末に病院改革に向けた報告書をまとめ、地域医療の再編を促すネットワーク化の推進や外部人材の活用などで経営改善を目指すことなどを提言した。

*3-6:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13307475.html (朝日新聞 2018年1月11日) 
 日立製作所が英国で進める原発事業をめぐり、日英両政府が官民で総額約3兆円を投融資する資金枠組みについて大筋で合意したことが分かった。出資額4500億円のうち、日立の出資は3分の1にとどめ、日英で折半する融資額2兆2千億円の日本分には政府保証をつけるなど、異例の手厚い政府支援で原発事業のリスクを肩代わりする。ただ、事業で損失が出れば国民負担につながりかねない。複数の関係者によると、両国政府は昨年末、今回の枠組みについて書簡を交わして確認した。対象となるのは日立が英西部アングルシー島で計画する原発2基の事業で、2020年代半ばの運転開始をめざす。日立は12年、英国の原子力事業会社ホライズン社をドイツの電力会社から約900億円で買収したが、今回の枠組みはこのホライズン社の事業への投融資が柱だ。出資額は日立と日立以外の日本側、英国側の3者が1500億円ずつで、日本側の出資は政府系の日本政策投資銀行や大手電力会社などが想定されている。1兆1千億円にのぼる日本側の融資の主体は政府系の国際協力銀行や3メガバンクが見込まれる。政府系の日本貿易保険が融資の全額を保証する方向で検討している。先進国向けの貿易保険で全額保証は異例だ。日立は事業を進めるかどうかの最終判断を20年夏にする方針だ。その判断基準として挙げているのが、ホライズン社への出資比率を現在の100%から50%未満まで下げることだ。東芝が米国の原発事業で行き詰まり、経営危機に陥った事態を踏まえ、事業を日立本体の連結対象から切り離すためだ。枠組み通りに進めば、日立の出資比率は33・3%になる計算だ。一方、安倍政権は原発や新幹線技術などのインフラ輸出を成長戦略の柱に掲げる。とりわけ日立の英事業は「先進国で原発が成立するかしないかの最大の試金石」(経済産業省幹部)と位置づけ、英政府と支援策を交渉してきた。国内で原発の新増設が見通せない中、海外で実績を重ね、人材や技術を維持する思惑もある。とはいえ、東京電力福島第一原発事故以降、先進国では原発の建設コストが高騰している。日立の英事業も当初の総事業費は「1・5兆~2兆円」とされたが、為替変動などもあって3兆円に膨らんだ。英国政府はこの原発で発電される電気の買い取り価格をまだ決めていない。日本の大手電力は出資に応じるかも決めておらず、事業の先行きは不透明さをはらむ。

<生産性が低くて無駄遣いの多いのが日本の役所>
PS(2017年12月9、24日追加):*4-1のように、11月末に北海道松前町沖で見つかり、函館港沖に曳航されて海上で巡視船に横付けされていた北朝鮮の木造船が、12月8日、事情聴取していた警察官が巡視船に引き揚げた後にエンジンを動かして巡視船から離れ、海上保安本部が元の位置へ戻したそうだが、粗末な木造船に8人も乗せたまま10日以上も海上においているような①日本の警察の仕事の遅さと判断の悪さ ②10日以上も一つの舟に横付けしている巡視船の暇さ(ほかにも仕事はあるのに・・) ③人権意識の低さ に呆れた。北朝鮮船は松前小島に一時接岸し、島から家電などが無くなったそうだが、乗組員と船を陸に上げて調べればよい。
 一方で、*4-2のように、北朝鮮の拉致問題は蓮池さんたちが帰国してから15年経っても1mmも進んでおらず、選挙には利用するが解決する気は無いように見え、そのようなことを訴え続けたい人はいないのに時間ばかりかけて、引き裂かれた人々の台無しにされた人生や人権には思いをいたしていないように思われる。
 さらに、尖閣諸島については、*4-3のように、最近は尖閣諸島付近の領海周辺への中国船侵入が恒常化しているのに、巡視船が警告するだけで報道が少なくなった。そこで、*4-4のように、沖縄県石垣市の中山義隆市長が同諸島の地名を「石垣市尖閣」とする議案を12月の市議会に提出し可決される見通しだそうだが、「石垣市尖閣」の後は、一年間も議論しなくても、久場島、大正島、魚釣島などの各島名にすればわかりやすいのではないだろうか。
 また、*4-5のように、中国は東シナ海でガス田の開発をしており、大人口を抱える中国の第一の目的は明らかに資源獲得で、日中中間線の中国側にガス田の“構造物群”を作っているので、中国の程駐日大使が「中間線から西は双方の意見に食い違いがない海域で、日本から異を唱えられる余地は全くない」と発言したのは正しい。つまり、日中中間線から西側は中国の裁量下にあり、*4-6の菅官房長官の「指摘はまったく当たらない」という反論の方が間違っているのだ。なお、日本政府の言う東シナ海の資源開発に関する2008年6月の日中合意はあるが、日本側には共同開発する気配も意欲もないため、いつまでもは待たないのが世界常識である。そして、税外収入を得るのではなく、くだらない予算を分捕ったり、資源を外国から輸入したりすることしか考えていない日本の経産省が、将来を展望しておらず、情けないのだ。
 結論として、最も生産性が低いのは役所であるため、ここが大量の資金を使うと役に立つ投資への資金投入や経済成長が小さくなるわけである。
 なお、*4-7のように沖永良部島沖海底で金・銀・鉛などの鉱物を含む海底熱水鉱床を新たに見つけたのは頑張った成果であり、希少金属(レアメタル)も含んでいるのは有望だが、レアメタルの存在が明らかになっても採掘技術の開発を急がず、2020年代半ばまで事業を開始しない真剣みのなさと生産性の低さが日本の役所の問題点だ。そして、排他的経済水域内の海底は国有財産であるため税外収入を得られる筈だが、採掘権も無料で民間企業に譲ってしまうのが、ビジョンなき日本政府の特徴なのである。

  
  北朝鮮の木造船と日本の巡視船   拉致被害者家族 日中中間線付近のガス田開発

*4-1:http://www.sankei.com/photo/story/news/171208/sty1712080011-n1.html (産経新聞 2017.12.8) 北朝鮮木造船、かじ故障しているのに逃亡? 松前小島の被害額800万円
 北海道松前町沖で11月末に見つかり、函館港沖にえい航されて巡視船に横付けされていた北朝鮮の木造船が8日午後3時25分ごろ、男性乗員10人のうち8人が乗った状態でエンジンを始動し巡視船から離れた。第1管区海上保安本部(小樽)によると、船につながれたロープが外れており、別の船艇が再びロープをつないで停止させ、約2時間半後に元の位置へ戻した。逃亡を図ったとみて経緯を調べている。北朝鮮船は、松前町の無人島、松前小島に一時接岸していた。島から家電などが無くなり、道警は窃盗の疑いで乗員全員から任意で事情聴取。松前さくら漁協は8日、避難小屋の発電機やボイラーも壊されて被害総額が800万円近くに上ることを明らかにした。
●突然前進
 捜査関係者によると、木造船の前部と後部が巡視船とロープでつながっていた。事情聴取していた道警の警察官が巡視船に引き揚げた直後、突然前進を始めたという。木造船のかじは故障しているが、エンジンに問題はなく、動きだした際は8人が木造船にいた。

*4-2:https://mainichi.jp/articles/20171013/ddm/041/040/074000c (毎日新聞 2017年10月13日) 北朝鮮・拉致問題:北朝鮮から帰国15年 解決一刻も早く 蓮池さん「拉致は夢と絆奪う」
 北朝鮮による拉致被害者5人が帰国して、15日で15年になるのを前に、被害者の一人、蓮池薫さん(60)が新潟県柏崎市内で毎日新聞のインタビューに応じた。蓮池さんは「私や家族にとって、かけがえのない15年だった」と振り返った。その一方で「被害者家族の高齢化が進んでいる。秒読みとも言っていいような切迫した問題」と今も故郷の地を踏めずにいる被害者の早期帰国を訴えた。「帰国してからの15年間は自分の意思で人生を自由に切り開いていけた日々だった。北朝鮮にいた24年間とは対照的な時間で、それは私の子どもたちにも言えることだと思う」。蓮池さんは中央大学法学部に在学中だった1978年7月31日、当時交際していた妻祐木子さん(61)と新潟県柏崎市の海岸で拉致された。北朝鮮では日本の出版物を翻訳する仕事を命じられ、招待所と呼ばれる施設での生活を強いられた。「帰国したいという思いはあったが、考えてもつらくなるだけだったから、ずっと抑え込んできた」と振り返る。風穴が開いたのは、2002年9月の日朝首脳会談だった。北朝鮮は日本人の拉致を認め、翌10月に蓮池夫妻、地村保志さん(62)、富貴恵さん(62)夫妻、曽我ひとみさん(58)の5人が帰国を果たした。「故郷に帰った瞬間、抑え込んできた気持ちがあふれ出した」。蓮池さんは北朝鮮には戻らない、という決断を下す。しかし、北朝鮮に長女(35)と長男(32)を残したままだった。家族が離ればなれになることに祐木子さんは猛反対したが、「自分で人生を選ぶ生き方は北朝鮮ではできない。リスクはあるかもしれないが、政府を信じ、日本で子どもたちの帰国を待つべきだ」と考えたという。子どもたちの帰国は1年半後に実現した。蓮池さんは柏崎市役所に臨時職員として勤めながら、一家4人での生活を取り戻した。それでも、気持ちは落ち着かなかった。「自分の人生の『居場所』が見つけられなかった」ためだ。「拉致される前は法学を勉強していたが、今から学び直して、法律で生きていくことはできない」。自分に何ができるかを模索していた時、知人から韓国の書籍の翻訳の仕事を紹介された。周囲の協力もあって05年5月に出版にこぎ着けた。「あの国の言葉を武器に生きていく」--。翻訳という仕事が蓮池さんが見いだした「居場所」だった。沈黙を守っていた拉致問題に対し、声を上げるようになったのもそのころからだ。「日本政府は核・ミサイル問題を解決するために独自の寄与をしつつ、日朝交渉では拉致問題を最優先にすべきだ」「全てが解決すれば国交正常化交渉の開始などを盛り込んだ平壌宣言の履行という『未来』を示すことも必要だろう」。今では、新潟産業大で准教授を務める傍ら、各地の講演などで政府への提言もする。「帰ってきた喜び、生きがいが大きいからこそ、他の人が帰って来られない状況がもどかしい」。蓮池さんは「人生には夢と絆が必要だ」と語る。夢とは自由に人生を生きる選択肢を持つことであり、絆とは家族とのつながりだという。二つを引き裂いたのが、拉致事件だ。「拉致問題は被害者が帰ってきて終わりではない。その後に夢と絆を取り戻すには、時間が必要になる。だから、一刻も早く解決しなければいけないのです」。蓮池さんはそう訴え続ける。
■北朝鮮による拉致事件
 1970~80年代に日本人が不自然な形で、相次いで行方不明になった。北朝鮮の工作員らの関与が指摘され、2002年の日朝首脳会談で北朝鮮は日本人の拉致を認め、謝罪した。日本政府が認定した被害者17人のうち蓮池薫さんら5人が同年に帰国。しかし、北朝鮮は横田めぐみさん(行方不明時13歳)や有本恵子さん(同23歳)ら8人については「死亡」と主張、松本京子さん(同29歳)ら4人は「未入国」としている。

*4-3:https://mainichi.jp/articles/20170925/ddg/041/010/006000c (毎日新聞 2017年9月25日) 沖縄・尖閣諸島:中国船4隻、領海周辺に侵入
 25日午前10時10分ごろから、沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に中国海警局の船4隻が相次いで侵入した。中国当局の船が尖閣周辺で領海侵入したのは21日以来で、今年24日目。第11管区海上保安本部(那覇市)によると、1隻は機関砲のようなものを搭載。領海から出るよう巡視船が警告した。

*4-4:https://mainichi.jp/articles/20170922/ddp/041/010/034000c (毎日新聞 2017年9月22日) 沖縄・尖閣諸島:地名「石垣市尖閣」に 市長が変更案提出へ
 尖閣諸島を行政区に抱える沖縄県石垣市の中山義隆市長は、同諸島の字を変更し地名を「石垣市尖閣」とする議案を市議会12月定例会に提出する方針を示した。同市が明らかにした。賛成多数で可決される見通しという。現在の尖閣諸島の地名は「石垣市登野城(とのしろ)」。中山氏は開会中の市議会9月定例会で19日、「住所に『尖閣』の文言を入れ込むため、どのような字名を付ければいいか内部で検討している」とし、字を「尖閣」とする意向を表明。その上で「12月議会には必ず(議案を)上程し、住所として『尖閣』の言葉が入るようにしたい」と明言した。市の担当者は「住所を見ただけで、その場所が尖閣諸島だと分かるようになる」と話した。尖閣諸島の字の変更は、昨年から市議会で議論されていた。

*4-5:http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/223968.html (NHK 2015年7月29日) 時論公論 「東シナ海 中国のガス田開発の狙いは何か?」
 東シナ海の「日中中間線」付近で、中国がガス田開発の構造物の建設を着々と進めていることが明らかになりました。そこには、エネルギー資源の獲得だけではない、したたかな中国の戦略が垣間見えるように思います。今夜は、ガス田開発をやめようとしない中国の狙いと日本政府の対応について考えます。
■(ガス田構造物群)
 政府の発表によりますと、中国が建設した洋上の構造物は、日本が東シナ海の境界線にすべきだと主張している「日中中間線」のすぐ西側に集中しています。あわせて16基が確認されていて、この2年間だけで12基も増えました。
■(日中中間線とは?)
 はじめに、「日中中間線」とはどういうものなのか整理しておきましょう。
そこで日本が提案したのがこの「中間線」です。地理的に中間にある線を境界線にするべきだとの主張でしたが、中国はこれを受け入れず、200海里よりもさらに深く日本側に入り込んだ「沖縄トラフ」が境界線だと主張しています。そして中間線ぎりぎりのこの位置にガス田の“構造物群”をつくってきました。
■(日中中間線付近のガス田問題の経緯)
 日中はかつて、中間線付近でのガス田開発で合意に達したことがあります。中国が2004年、中間線のすぐそばで「白樺」と呼ばれるガス田の施設の建設を始めたことがきっかけで問題化しました。その後、協議の末、2008年6月、白樺ガス田を共同開発することなどで合意しました。境界が確定するまでは互いに協力するなどとした合意で、日本が提案していた中間線の考えを中国側も尊重したものと受け止められていました。ところが、同じ年の12月、中国の法執行機関の船が尖閣諸島の日本の領海に初めて侵入。さらに2010年、尖閣諸島沖合で、中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突する事件も起きて、以来、交渉は中断したままになっています。
■(損なわれる日本の海洋権益)
 中国側の構造物は、中間線からはみ出してはいませんが、ここで重要な点は、日本は「中間線」を提案してはいるものの、境界が画定されていない以上、200カイリまでの海域の権益を放棄したわけではないという点です。ところが今回確認された構造物のほとんどは、この係争海域につくられていて、中国の一方的なガス田開発によって日本の権利は損なわれている状態です。
■(16基のガス田構造物の現状)
 今回撮影された14枚の写真を見ると、多くの構造物は海底にのびる細い「掘削用のパイプ」が確認でき、このうち5基の構造物からは、ガスを生産する際に発生する炎が噴き出しているのが見えます。先月、存在が確認されたばかりの土台だけの構造物もあり、この海域でガス田開発をさらに拡大させていく姿勢をうかがわせています。
■(中国ガス田開発の狙い)
 さて、中国が中間線付近でガス田の開発を続ける狙いはどこにあるのでしょうか。指摘されているのは、主に次の3つです。1つは文字通り「エネルギー資源の確保」、「軍事目的の利用」、そして、「海洋権益の拡大」です。ひとつずつ見ていきます。
■(エネルギー資源の確保か)
 エネルギー資源の確保は、急速な経済発展で需要が増している中国にとっては喫緊の課題です。実際、中間線付近のガス田の一部からは中国本土に天然ガスが送られ、上海で消費されているといわれています。中国では、エネルギー資源のおよそ60%余りを石炭に依存しています。石炭は、深刻な大気汚染の原因になっているため、中国政府は、その比率を減らし、天然ガスや石油を増やしていこうとしています。しかし、石油や天然ガスは、多くを輸入に頼っていて、特に石油を運ぶ中東からの海上輸送ルートはアメリカ海軍の影響力が大きく、中国としてはこのルートを使わずに済む中国近海でのエネルギー資源の開発を目指しています。中国が東シナ海と南シナ海の海底資源に強い関心を持つのはこのためです。しかし、これまでのところ、中国が期待する大規模なガス田の存在は確認されていません。
■(軍事目的の利用か)
 一方、防衛省は、「軍事目的」に使われる可能性を指摘しています。例えば、ヘリコプターや無人機の洋上の基地となることです。また、軍事専門家は、レーダーが設置されるかどうかに注目しています。現在、東シナ海に中国軍機の飛行を支援するレーダー施設はなく、ガス田の構造物に航空管制レーダーが設置されれば、中国空軍の行動半径は大きく広がることになるからです。
■(狙いは「海洋権益の拡大」か)
 そして、政府関係者や多くの専門家がこぞって指摘するのは、中国の真の狙いは「海洋権益の拡大」だというものです。
(中略)
■(日本の対応は?)
 さて、こうした中国の海洋権益の拡大の動きに対して日本政府は、どのように対応してきたでしょうか。中国による構造物建設の状況を、上空からの監視飛行によってつぶさに把握する一方、先週までその詳細を公表してきませんでした。公表に踏み切ったことについて菅官房長官は「中国の開発行為が一向に止まらないことや、中国の一方的な現状変更に関する内外の関心が高まっていることなどを総合的に判断して公表した」と説明しました。中国と交渉を進める上で様々な「外交的配慮」が必要だったにせよ、中国の海洋進出の実態を世界に発信して、国際的な世論を味方につけ、中国と交渉するという手段もあった筈だと批判する声もあります。また、安全保障法制の国会での議論を有利に進めるためにこのタイミングで公表したとのではないかと訝る声もあります。一方、中国の程永華駐日大使は、「中間線から西の部分は双方の意見に食い違いがない海域で、日本から異を唱えられる余地は全くない」と発言しました。私には、「東シナ海の半分はすでに裁量のもとにある」と言っているかのように、聞こえました。この問題をめぐって中国は話し合いを続ける立場を示しています。日本としては、中間線付近では互いに協力することで一致した「2008年の合意」に戻るよう求め、対話による解決の糸口を探っていく方針です。中国による既成事実化と現状変更の試みに対して、今後、効果的な手段をどのように繰り出していけるのか、日本の外交力が問われています。   

*4-6:https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS23H0E_T20C15A7EAF000/ (日経新聞 2015/7/23) 官房長官、中国の非難に反論 東シナ海ガス田写真で
 菅義偉官房長官は23日午前の記者会見で、中国による東シナ海のガス田開発の写真公開をめぐって、中国外務省が主権の範囲内だと非難したことについて「指摘はまったく当たらない」と反論した。日本政府として一方的な開発行為の中止や、東シナ海の資源開発に関する2008年6月の日中合意に基づく協議再開を中国に求めていると強調。「中国側が日本側の呼びかけに応じて建設的に問題を解決するよう期待したい」と語った。

*4-7:http://qbiz.jp/article/125146/1/ (西日本新聞 2017年12月24日) 沖永良部沖に海底鉱床 金多く含み希少金属も
 鹿児島県・沖永良部島沖の海底で金や銀、鉛などの鉱物を含む海底熱水鉱床が新たに見つかった。調査、発見した独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は「国内の他の海底鉱床より金、銀の含有量が多く魅力的な鉱床。今後、鉱石の全体量や金属の資源量を詳しく調べる」としている。JOGMECによると、調査は経済産業省の委託を受け、2016年11月〜17年2月に実施。水深1100メートルの海底で、長さ300メートル、幅100メートルの範囲で熱水を噴出する様子を、無人探査機を使い確認した。鉱物が冷えて沈殿した煙突状の構造物「チムニー」も多数発見。最高220度の熱水を噴出する高さ約30メートルの巨大チムニーもあり、一定期間活動を続けている鉱床とみられる。同島の洞窟「銀水洞」にちなみ「銀水サイト」と名付けられた。採取した鉱石の分析では、鉱石1トン当たり金13・6グラムが含まれ、これまでJOGMECが沖縄本島沖などで発見した5カ所の鉱床よりも含有量が多いという。レアメタル(希少金属)のガリウムも微量ながら検出した。海底の鉱床から鉱石を大量採掘する技術は開発中で、JOGMECは今夏、鉱石をポンプで吸い上げる試験に世界で初めて成功した。国は20年代半ばに鉱石の採掘事業開始を目指している。

<森林環境税等について>
PS(2017.12.10、17追加):*5-1に、「1人当たり年1000円で総額年620億円にもなる森林環境税を、①私有林の面積や林業就業者数などに応じて市町村に配分し ②私有林の間伐のための林道整備や放置された私有林の整備などに使う」と書かれている。しかし、①は、国有林や公有林は森林環境税とは別に予算を取るということであり、②は私有林の世話(それも道路整備)だけに使うということであるため、国民全体で負担する意義が見い出せない。
 私は、森林保全のために森林環境税を徴収するのなら、国有林・公有林(税外収入の宝庫)の維持管理費用もそれで賄い、私有林についても間伐のための道路工事だけではなく、里山の持続的な利用を可能にする政策を行っていくべきだと考える。そのため、各地域大学の農学・林学・水産学等の研究室に、①現在、その地域で何が足りないか ②地域の森林にどういう手入れをすれば、豊かな自然を守って持続可能に利用していけるか などを報告してもらい、必要な予算を積み上げて森林環境税の個人負担額を決め、負担と効果を毎年チェックすべきだ。
 なお、*5-2のように、九大の研究者でつくる「豪雨災害調査・復旧・復興支援団」が、九州豪雨被災地で出された住民の意見を集落ごとに空撮地図上に記入した新聞を住民に配布し、住民から「まとまっていて次の議論に生かせる」「集落の未来図が分かりやすい」と好評だそうだ。このように、住民にフィードバックして住民の意見を集約していくことは大変重要だが、未来の街を造るためいろいろな学部からアドバイスを提示するのもよいだろう。これは、東日本大震災の復興はじめ都市の再開発などの街造りに大学の知を活かすよい機会であり、学生が現場の事例を参考にしながら具体的なニーズを知って研究する機会にもなるため、それぞれの地域の大学が行うのがよいと思われる。

*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171210&ng=DGKKZO24464740Z01C17A2EA2000 (日経新聞 2017.12.10) 森林環境 使途限定が課題
 森林保全に使う森林環境税は2024年度から導入する方向だ。1人当たり年千円を個人住民税に上乗せして課税する。23年度までは東日本大震災からの復興事業費として、住民税に千円上乗せしている。24年度から代わりに導入し、途切れなく徴収する格好だ。対象は住民税を納める約6200万人。単純計算で年620億円の増収になる。私有林の面積や林業就業者数などに応じて、市町村に配分する。お金は間伐などによる林道整備や放置された森林の整備などに使う。ただ使い道を特定の政策目的に限ると、無駄遣いを生みやすく、効果が不明瞭なバラマキに陥る恐れがある。国際観光旅客税にも同じ懸念があるが、森林環境税は都市部の納税者に利点がみえにくいのが難点。独自に実施する自治体では住民に二重の課税を強いる可能性がある。

*5-2:http://qbiz.jp/article/124410/1/ (西日本新聞 2017年12月17日) 復興アイデア新聞 朝倉市と東峰村 九大支援団製作
 九州大の研究者でつくる「豪雨災害調査・復旧・復興支援団」が、九州豪雨被災地の福岡県朝倉市と東峰村の住民集会で出された意見を集落ごとに新聞にまとめ、住民に配布している。集落の空撮地図上に意見などを記入。住民から「まとまっていて次の議論に生かせる」「集落の未来図が分かりやすい」と好評だ。
●「集落の未来図 分かりやすい」
 朝倉市、東峰村は、いずれも来年3月に復興計画を策定する予定。これに住民意見を反映させようと集落や地区ごとの集会が活発化する中で、新聞が生かされている。朝倉市では、松末(ますえ)地区の集落集会などに九大の教授や学生が参加。出た意見を島谷幸宏大学院教授の研究室スタッフがパソコンで空撮地図上に書き込み、A3判1枚の新聞にして集落ごとに配っている。10月から製作を始め、現在は松末、林田、白木各地区などで7種を製作した。このうち松末地区の乙石、中村、石詰3集落の意見をまとめた「乙石川復興新聞」は、表の面に集会の合意項目などを表にしてまとめた。裏面は空撮写真上に新たに住宅や田んぼが望ましいと思う位置が一目で分かるよう色分けして描いた。他にも、主要道路に「洪水時でも通れるよう(中略)片側1車線以上は確保」などと記載。新聞の内容は集会のたびに更新される。石詰集落区会長の小嶋喜治さん(62)は「新聞を見ながら家族で話せるし、次へ進む知恵が出る。復興へ前向きになれる」と語る。一方、東峰村では、4地区ごとに地域住民協議会が開かれているが、こちらは三谷泰浩大学院教授の研究室が製作を担当。協議会で出された意見を空撮地図上に書き込み、次の協議会の場で配布している。島谷教授は、新聞が復興計画策定時に住民意見として活用されることに期待。「住民だから分かる情報も入っている。私たちが(復興策を)行政などにアドバイスする際にも役立つ資料」と話す。今後、他集落から要請があれば新たな新聞を製作したい考え。

<日本における水素社会の意味>
PS(2017.12.10追加):*6のように、神戸市は水素燃料で発電した電気や熱を公共施設に供給する実証実験を始めるそうで良いことだ。しかし、「水素は発電時には二酸化炭素(CO2)を排出しない」と書かれているように、水素を都市ガスや天然ガスから作ればCO2や他の廃棄物が出る上、料金を海外に支払わなければならない。そのため、水が豊富な日本は、自然エネルギー由来の電力で水を電気分解して水素と酸素を作るのが最も安価で環境に良いのだが(海の水を使えば、同時に塩も分離できそうだ)、外国に金をばら撒くことでしか日本の存在感を示せない能無しの経産省が、高い燃料を輸入して国民に負担を強いたがるのは困ったものである。

*6:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/158129 (佐賀新聞 2017.12.10) 水素発電施設が神戸で完成、世界初、市街地へ供給実験
 来年1月に神戸市で、水素を燃料として発電した電気や熱を病院などの公共施設に供給する実証実験が始まるのを前に、水素発電のプラントが同市中央区のポートアイランドに完成し10日、記念式典が開かれた。市などによると、市街地での実証実験は世界初という。実験は来年1月下旬から3月中旬までの予定で、市が進める水素を活用した都市づくりの一環。水素は発電時には二酸化炭素を排出しないため、クリーンなエネルギーとして注目されている。プラントの敷地は約3700平方メートル。水素だけを燃焼させたり、天然ガスを混ぜて発電したりして、安定して運用できるかを調べる。

<民間企業は工夫次第の筈>
PS(2017年12月11日追加):*7-1に、「①過疎地の店舗網を存続させるため、銀行支店の営業日を週2日に」という提言を佐銀の頭取が行い、「②日銀のマイナス金利政策による低金利の影響で銀行の収益環境が悪化した」と書かれている。しかし、銀行は一般企業に貸付を行って収益を挙げるのが本来の業務であるため、それをしっかり行えば日銀のマイナス金利は銀行にはプラスに働く筈であり、②は誤りだ。それでは、どうしっかり行えばよいかについては、自然エネルギー・PFIによる鉄道高架化・電線地中化・都市の再開発・工場や事務所のオートメーション化・介護施設建設などの時流にそった投資に貸付を行ったり、銀行自身のルーチンワークを徹底的にオートメーション化して余剰人材を営業や接客にまわしたり、子会社を作って中小企業の経理を代行したりすれば、生産性が上がり、新しいニーズも見えてくる筈である(例えば、眞子様のご結婚にあたり、美智子皇后がお持ちのものと同じか少し色違いの佐賀錦の帯を完全機械織りで作って差し上げるなど、現代に合った高度なオートメーション化もあってよい)。
 また、郵便局も、*7-2、*7-3のように、郵便が減少していることを悔やんでばかりいても仕方がないので、資産であるネットワークを活かして便利な宅配便を作ったり、建物が便利な場所にあることを活かして、*7-1のような銀行業務を受託・代行したり、建物の中にクリニック・介護施設・保育施設・ショッピングセンターなどを入れてもよいだろう。そして、このような工夫は、郵政省の管轄下ではできなかったが、民営化後の現在は、先入観にとらわれずに他の業種と提携すれば簡単に行えるのである。

*7-1:http://qbiz.jp/article/123873/1/ (佐賀銀行 2017年12月11日) 「支店営業は週2日に」 佐賀銀・陣内頭取 過疎地の店舗網存続へ提言
 銀行支店の営業日を週2日に−。経営合理化で銀行の支店網が全国的に見直される中、佐賀銀行の陣内芳博頭取は過疎地の店舗網存続に向けてこんな構想を打ち出した。銀行法は原則、平日に休業日を設けることを認めていないが、陣内氏は「顧客に不便をかけずに合理化を進めるためには規制緩和が必要」と唱える。陣内構想は、同じ顔触れの行員グループが1週間に2日ずつ、複数の店舗を移動しながら勤務する。これなら「行員を増やさず、過疎地の店舗網を維持することができる」とした。同行も拠点網の再編を進めている。来年8月には、水ケ江支店(佐賀市)の犬井道出張所と東与賀出張所を市内に新設する拠点に集約する。ただ、両出張所の統廃合はせず、同居の形で存続させるという。顧客が口座番号を変えずに済むといい、これまでも同じ対応を取ってきた。拠点数は福岡、佐賀、長崎、東京の4都県で計91カ所と1減になるが、支店・出張所は計103カ所を維持できるという。銀行業界では日銀のマイナス金利政策による低金利の影響で収益環境が悪化。みずほフィナンシャルグループが国内拠点の約2割削減を表明するなど、拠点再編の動きが広がっている。陣内氏は11月29日の記者会見で「銀行の支店は社会インフラだ。むやみに閉めていいとは思わない」とし、全国地方銀行協会の佐久間英利会長(千葉銀行頭取)にも構想を提言したという。

*7-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24414940Y7A201C1000000/ (日経新聞 2017/12/11) 「ゆうパック」年末危機 ヤマト値上げで殺到
 「ゴルフバッグの送料は往復で820円上がった。嫁に怒られる」。ヤマト運輸や佐川急便が10~11月に相次ぎ実施した宅配便値上げが家計を直撃している。その分、来年3月まで料金をすえ置いている日本郵便「ゆうパック」に日本中の荷物がシフトしている。だが日本郵便も喜んではいられない。
■来年2月まではゆうパック
 札幌市に住む50代の主婦は、東京で一人暮らしをする娘に宅配便で食品を仕送りしている。10月のヤマトの値上げで、段ボール箱の縦・横・高さの合計が100cmの荷物を送る運賃は1620円から1793円に上がった。「食品も値上がりしているからお財布に響く」。同じ条件なら1500円で済むゆうパックに切り替えた。ゴルフが趣味という都内在住の50代男性は、週末になるとヤマトを使って長野県のゴルフ場にゴルフバッグを送っていた。料金は1404円から1814円に上がった。往復では820円の負担増だ。日本郵便なら、今なら片道1400円で送れる。10月1日、ヤマトは個人向け運賃の定価となる基本料金を引き上げた。佐川も11月21日に値上げを実施。日本郵便も追随するが、値上げ時期は来年3月1日とした。個人向けの値上げはヤマトが消費増税時をのぞいて27年ぶり、佐川が13年ぶりなのに対し、日本郵便は2015年に値上げしたばかり。日本郵便だけが年越しとなったのはこうした背景もあるが、「大手3社の中では最下位の日本郵便が、先行2社の動向を見極めた」とも言われている。16年度のシェアはヤマト47%、佐川31%、日本郵便16%で、一気に追い上げるチャンスだ。いずれにせよ、年末の繁忙期に1社のみ運賃をすえ置いたゆうパックに、日本中の荷物がシフトしている。個人向けだけではない。実は宅配便の総量のうち、個人向けが占めるのは1割に満たない。9割を超えるのが、アマゾンジャパン(東京・目黒)などに代表される大口顧客向けだ。個人向けと違い、大口顧客向けは宅配の総量が圧倒的に多く、価格も定価がなく、料金は相対で決まるブラックボックスだ。荷主企業を取材してみると、ヤマトや佐川が強硬な値上げを要求している実態がわかった。
■中小通販会社の悲鳴
 「もう決まったこと、の一点張りで、とりつく島がなかった」。千葉県の中堅倉庫会社の社長は憤る。同社は通販会社の商品を倉庫で預かり、発送を代行している。ヤマトと契約して宅配便で商品を発送しているが、9月に一方的に値上げを通告された。同社の場合、荷物1個当たりの平均料金は300円台だったが、ヤマトの営業担当から提示された見積もりは2倍超の700円台。しかも運賃改定の実施日は1カ月後の10月だという。値上げ幅の圧縮と延期を求めたが「こちらの主張はまったく聞いてもらえない」。契約を打ち切るわけにはいかず、泣く泣く値上げを受け入れた。

*7-3:https://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2017_1002.html (NHK 2017.12.11) 民営化10年 郵便局は変わったか
 130年以上にわたって国が行ってきた郵政事業が民営化され、1日で10年を迎えました。民営化の大きな狙いは、金融事業が抱える巨額の資金を民間に回し、経済を活性化させること。一方で、赤字体質の郵便事業は効率化が進められ、過疎地のサービスが低下すると懸念されました。全国におよそ2万4000ある郵便局は、民営化から10年でどう変わったのか。各地の郵便局を訪ねてみました。「民営化でよくなったことはない」。茨城県北部の大子町。福島・栃木の両県に接し、観光名所の「袋田の滝」で知られる山あいの町は人口が年々減少し、現在およそ1万7000人。65歳以上の高齢者が40%を超え、過疎化と高齢化が進んでいます。大子町にある「上小川郵便局」は、ことしで開局90年を迎えた職員5人の郵便局。周辺のおよそ1000世帯をカバーしています。1日に訪れる客はおよそ30人。近くに金融機関やコンビニがなく、ATM=現金自動預け払い機を利用するために訪れる人も多いといいます。石井義孝局長は、10年前の状況を「お客様から見たら郵便局は郵便局のままなのに、急に制度だけが変わって当初は苦情も多かった」と振り返りました。民営化からの5年間は、窓口業務は「郵便局会社」、集配業務は「郵便事業会社」と別会社が行う形態でした。上小川郵便局の窓口にいる職員は全員が「郵便局会社」の所属。集荷の依頼や郵便の問い合わせは受けられなくなり、利用者には30キロ以上離れた別の郵便事業会社に電話してもらうことになりました。実は、壁1枚隔てた窓口の裏には、集配を担当する職員がいたため、窓口で利用者の依頼を聞き取ってメモで手渡したこともあったといいます。民営化に伴って、手続きも厳格化。窓口で預金を引き出す際、“顔パス”で済ませていた本人確認も、毎回、書類を提出してもらうことが必要になりました。この10年、石井局長が懸念していた郵便局の統廃合はありませんでしたが、預金や保険の契約をとるなどの“営業目標”が厳しくなったといいます。「職員にとっては、民営化でよくなったことはないと思います。ただ、民営化して何か変わらないといけないという危機感があったのも事実です」と複雑な心境を語ってくれました。
●新たな役割 新たな活路
 全国一律のサービスの維持を法律で義務づけられている郵便事業は、慢性的な赤字体質からの脱却が課題です。売り上げの大幅アップが難しい過疎地の局では、地域の課題にあわせたサービスに活路を見いだそうとしています。その1つが、「高齢者の見守りサービス」です。大子町の郵便局ではことし4月、町と連携して75歳以上の1人暮らしのお年寄りを対象に、月に1度、自宅を訪問する取り組みを始めました。体調や暮らしぶりを尋ね、回答をタブレット端末に入力。役場と家族にメールで報告するもので、およそ150人が利用しています。利用料は町が負担しています。利用者の85歳の女性は「近所の人も施設に入ってしまい、話し相手がいないので、郵便の方が来てくれるのは楽しみ。これからも続けてほしい」と、笑顔で話していました。日本郵便は、この高齢者の見守りを1日から、月額2500円の有料サービスとして全国およそ2万の郵便局で始めました。コストの要因となっている郵便局を収益の上がる存在に変えるチャレンジ。今後さらに増加が見込まれる1人暮らしの高齢者を支える社会インフラになれるかが問われます。
●若い世代を取り込め!
 “高齢者の支え”に活路を見いだそうという郵便局がある一方、若い世代の取り込みに力を入れる郵便局もあります。千葉市美浜区にある大型商業施設「イオンモール幕張新都心」の一角に、この7月、郵便局ができました。全国で17局目となるショッピングモールの中の郵便局。周辺に大きな住宅地がなく、高齢者も少ないため、従来の考え方では郵便局にとって不利なエリアです。しかし、買い物に訪れた家族連れなど、いわゆる「いちげんさん」を引きつけることに成功。オープンからの3か月で保険商品の契約金額は、半年分の目標を達成したということです。好調の秘けつは、郵便局の施設にあります。平均的な郵便局の2倍ある広いスペースには、子ども用の小さな机といす。そして、描いた絵を壁に映すことができるプロジェクター。子どもが絵を描くことに夢中になっている間に、母親に貯金や保険の商品をすすめる戦略です。2歳の子どもと一緒に訪れた40代の母親は「家の近くにも郵便局はありますが、何か用事がないと行くことはありません。このモールには週に1回は来るので、ついでにちょくちょく立ち寄っています」と話していました。「イオンモール幕張新都心内郵便局」の田中義明局長は「赴任する前は、お客さんは来ないと思っていたが、予想外に売り上げが伸びている。カウンターの外に立って、モールに来たお客さんに声をかけて営業する『攻めの姿勢』を心がけています。ハロウィーンやクリスマスなど季節のイベントにあわせたキャンペーンを展開して、さらに売り上げを伸ばしていきたい」と意気込みを語っていました。「まだ1合目か2合目」。民営化10年の節目を控えた9月29日。グループを束ねる持ち株会社「日本郵政」の長門正貢社長は記者会見を開きました。「現状に点数をつけるとしたら?」という質問に対しては、「立派な業績を挙げてから採点したい。郵便事業はもうけることを前提とせずに、140年近くやってきた。いろんなところにコストがかかっていて、それを跳ね返さないといけない。富士山ならまだ1合目か2合目」と述べました。そのうえで長門社長は「世の中の動きが早く、未来永劫、安泰と言われる事業はない。10年、20年先を見据えながら、強い成長戦略を描いてくことが急務だ。次の中期経営計画でグループ全体の成長戦略を示せるよう努力したい」と決意を語りました。メールに続いてSNSが急速に普及し、“手紙離れ”には歯止めがかかりません。民営化から10年、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の金融事業の収益が郵便事業を支える構図は変わっていません。昨年度は、海外事業の業績悪化が響いて、初の最終赤字に転落した日本郵政。全国にある郵便局の不動産やネットワークをいかに収益に結びつけ、自立した経営を実現するか。各地の郵便局の試みに、今後も目を向けていきたいと思います。

<教育はすべての基礎>
PS(2017年12月12、21日追加):*8-1のように、「①歴史の変遷を説明するのに必須ではない」として、「②教える歴史用語を絞って授業時間を確保し歴史の流れなどの考察力育成を促す」とするグループがあるそうだが、①は、定義や背景とともに用語を覚えていなければ記憶に残らずコミュニケーションすることもできないため、②の考察以前になる。ちなみに、中国の高校中国史は日本の1.5倍くらいあり、日本が勉強しない方向への改革ばかりしているのは、全分野の人材を劣化させるためよくない。
 そのため、高校までは広範囲の知識を覚えることが必要条件で、その知識を教える際に、ただの丸暗記ではなく流れや相互関係として理解できるよう、先生自身がそれを理解して解説し、生徒の質問にも適格に答えられるなど、教える人に能力(知識と論理性)が必要なのである。そして、授業時間の確保は、中学・高校で同じことを2回教えているのをやめ、中高一貫校で日本史と世界史を2年間ずつ教え、概略は小学校で教えておけばよいのだ。この時、*8-2の人づくり革命で、小学校を3歳児以上とし、高校までを義務教育とする政策が効いてくるのであり、財源は、カンフル剤的な景気対策を節約して作らなければならない。
 なお、歴史の流れを理解するには、世界史なら人類の発生、移動とその原因、その際に起こった戦い、民族による価値観の違いとその理由、王家同士の関係、文化の融合などを解説できなければならず、その真実は人類の壮大な歴史スペクタクルである。また、日本史なら、古代も含めて世界や周辺諸国と日本との関係もごまかさずに教えなければ背後関係がわからず、役に立たない丸暗記となる。そのため、先生の報酬は上げ、優秀な人が先生になるようにすべきだ。
 従って、NHKの大河ドラマも、戦国時代と明治時代ばかりを繰り返して放送するのではなく、中国や朝鮮の歴史と絡んだ日本の古代史を放送してもよいのではないかと考える。
 なお、世界史で人類の移動とその理由、その際に起こった既存民族との戦いなどを勉強しておけば、国際関係について現状維持が最善とするのではないもっと深い報道ができる筈だ。その事例の一つに、*8-3の「トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認め、国連総会(193カ国)が米国に撤回を求める決議案を採決することを受けて、決議案に賛成した国には援助を打ち切ることをトランプ大統領が示唆した」というのがある。エルサレムは、紀元前20年にはヘロデ大王によって統治され、その神殿を取り巻いていた外壁の西側部分が、現在「嘆きの壁」として残っている。しかし、紀元135年にローマがイスラエルの地を「パレスチナ」と改称し、1191年にユダヤ教徒は十字軍に追われて世界に散り辛酸を舐めることとなり、1946年にパレスチナにはアラブ人が130万人、ユダヤ人が70万人住んでいたが、1947年の国際連合によるパレスチナ分割決議によって、1948年にイスラエルが国として独立し、世界に散っていたユダヤ人も故郷に戻れた。この時、その地は本来は誰の故郷かという問題になっているのだ。

*8-1:http://qbiz.jp/article/124371/1/ (西日本新聞 2017年12月12日) 脱暗記で歴史用語半減を提言へ 教員有志、龍馬・信玄も入らず
 大学入試で問われる歴史用語が多すぎる影響で高校の歴史教育が暗記に偏っているとして、大学、高校教員有志でつくる研究グループが、教科書本文で扱うべき重要用語を精選した案をこのほど公表した。「歴史の変遷に関する説明に必須か」などの観点から選び、用語を現状の半分程度にとどめており、日本史では坂本龍馬や吉田松陰、武田信玄、上杉謙信ら著名な人物でも案に入らなかった。案をまとめたのは、高校や大学教員ら約400人でつくる「高大連携歴史教育研究会」(会長・油井大三郎東大名誉教授)。用語を絞って授業時間を確保し、歴史の流れなどの考察力育成を促すのが狙い。

*8-2:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20171212/KT171211ETI090010000.php (信濃毎日新聞 2017.12.12) 人づくり革命 持続性ある政策なのか
 安倍晋三政権が、幼児教育や保育、高等教育の無償化を柱とする「人づくり革命」の政策パッケージを閣議決定した。少子化対策が急がれる。ただ、巨額の予算を投じるからには、子育て世代の要望を踏まえ、持続性のある財源を確保して臨まなければならない。パッケージの中身は現場の声を優先したとは言い切れず、財源も曖昧なままだ。教育費の無償化や減免は、10月の衆院選で与野党がそろって公約していた。パッケージをたたき台に、国会で精度の高い内容に練り上げてほしい。柔軟に議論に応じるよう安倍政権に求める。幼児教育・保育では原則3〜5歳児の全員を、0〜2歳児は住民税非課税世帯を対象とする。高等教育でも、入学金や授業料を免除するなど低所得世帯の学生を支援する。私立高校授業料の無償化は所得制限を設けて実施する。気掛かりなのは財源だ。政府は消費税再増税の増収分のうち1兆7千億円と、企業の拠出金3千億円を充てるとする。掲げた政策を全て実現するとなると、この2兆円では足りない。社会保障給付費は年115兆円に上っている。教育費の無償化をもって安倍首相は「全世代型の社会保障への転換だ」と言う。高齢化に伴い、給付の増大が見込まれるのに、逆進性の高い消費税に財源を絞ることに無理がある。企業や会社員、自営業者らから保険料を徴収し「こども保険」を創設する―。自民党若手議員の提言は検討したのか。それぞれの社会保険が一定額を出し合う「子育て支援連帯基金」の案もあったはずだ。前提として「子どもを社会で育てる」との理念を根付かせることも政治の役割だろう。現場の要望との不一致も気になる。母親たちは「保育所の整備と質の向上が先」と訴える。国は保育士の確保へ賃金を月3千円引き上げるとしたが、現場は「焼け石に水」と指摘する。高等教育関係者からも「教育の質を高めることが優先」との声が聞かれる。大盤振る舞いにも映る構想を、衆院選から2カ月足らずで固めた理由として、来年に控える自民党総裁選、憲法改定を見据えた公明党との連携を意識した、との見方も出ている。少子化対策は社会の根幹に関わる重要な課題だ。それだけに党派を超えて知恵を持ち寄り、中身の濃い計画に仕上げなければならない。政局と混同してはならないことは言うまでもない。

*8-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13284425.html (朝日新聞 2017年12月21日) トランプ氏、援助停止示唆 エルサレム決議、賛成なら
 米トランプ政権がエルサレムをイスラエルの首都と認めた問題で、国連総会(193カ国)が米国に撤回を求める決議案を採決することを受けて、トランプ大統領は20日、「我々に反対する投票をさせておけばいい。我々はたくさん節約する」と語り、決議案に賛成した国には援助を打ち切ることを示唆した。米国の方針に反対する国を脅迫するかのような外交姿勢に反感が高まるのは必至だ。国連総会は21日(日本時間22日午前)に緊急特別総会を開いて、決議案を採決する予定。採択には投票国の過半数の賛成が必要だが、多数の賛成で採択される見通しだ。トランプ氏は20日、ホワイトハウスで開いた閣議の冒頭で「何億ドル、何十億ドルも(米国から)受け取る国が、我々に反対票を投じる」と不満をあらわにし、「我々は投票を見守る」と強調。「米国民は(他国に)利用されるのにうんざりしている。これ以上利用されない」と警告した。またトランプ氏の発言に先立ち、米国のヘイリー国連大使は「大統領は米国に反対した国についての報告を求めている」とする書簡を国連加盟国に送付した。国連総会の採決で加盟国には、「賛成」、「反対」、「棄権」のいずれかのボタンを押すか、そもそも採決に参加しないという選択肢がある。国連総会のライチャーク議長は20日に開いた会見で、トランプ氏を名指ししなかったが、「それぞれの考え方を示すのは加盟国の権利であり責務だ」と強調した。一方、国連関係者からは、米国ににらまれることを恐れて、採決に参加しない国が増えると予測する声も出ている。米国がトランプ氏の発言通りに援助を打ち切るかは不透明だが、実行すれば米国から多額の経済援助や軍事支援を受ける中東諸国にとっては大打撃になる。

<教育の質>
PS(2017.12.13、14《図》追加):*9-1の教育の質(教育内容・供給者・供給体制)は、人材を育てる上で決して無視してはならない課題だ。また、*9-2の大学トップが挙げる重点課題のうち、「能動的学習や対話型授業」が行われていないのは、大教室で教授の言うことを書き留めて覚えることを主とする文系学部の教育で、これでは創造的な技術を導入できる人材を育てることができない。「課題解決型学習」は、国や地方自治体がかかえる課題を近くの大学に投げかけて解を出させ、結果をフィードバックすれば、お互いに有効に機能するだろう。
 なお、*9-3のように、政治とは関係ない筈のオリンピックでロシアが差別されるのは目に余るが、ロシアの選手はバレエの素養があるためか、フィギュアスケートや体操等では技術が確かな上、表現も魅力的だ。つまり、しっかりした基礎をつけておけば何をやってもうまくなるものであるため、私は、小学校を3歳からにして、素人の教諭ではなく専門家が、語学・バレエ・絶対音階・楽器・スポーツなどの基礎となる素養を、子どもを楽しませながら教える仕組にするのがよいと考える。ちなみに、日本のアイドルは、芸がお粗末すぎて鑑賞に堪えない。

    
            幼児教育            2017.12.13日経新聞

(図の説明:小学校を3歳から始めると、これまで時間が足りないためできなかった教育を全員に行うことができる。また、現在は、音楽や英語などの専門家も多くなっているため、専門家が本物の教育をすることが可能だ。さらに、教育の専門家である教諭がやらなければならない仕事とサポートの仕事を分けて分担することによって教育の生産性が上がり、必要な人には相応の報酬を支払うことが可能になって教諭の質を上げることができる)

   
2017.12.13日経新聞                 2017.12.14日経新聞

(図の説明:能動的学習や課題解決型の学習がこれまで行われていなかったことがむしろ驚きだが、高等教育ではグローバルに通用する人材を作らなければならない。ただし、これには留学してMBA等をとってきた人材を関係部署に配置して育てるのではなく、別の仕事をさせてつぶし、社員全員を「何もできない人」にするような日本企業の人の使い方にも問題がある)

*9-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171213&ng=DGKKZO24533460S7A211C1EN2000 (日経新聞 2017.12.13) 教育改革に必要な供給側の質
 幼児・高等教育の無償化の大枠が決まった。経済的理由で子供を持てない、あるいは貧しい家庭の子供たちが進学を断念するといった状況の解消に主眼が置かれている。子供と子育て世代に大胆に政策資源を投入するこれらの政策は、待機児童解消などと並び、社会保障制度を高齢者だけでない全世代型に改革していく第一歩といえよう。ただし、幼児教育、高等教育の課題はこうした需要側だけではない。教育改革では供給側の質も同時に問われなければならない。幼児期は、能力開発、人格形成、情緒と道徳心の涵養(かんよう)などにとって極めて重要な時期であり、教育の役割は重大だ。幼児期の教育が将来の所得向上をもたらすとの研究結果も広く受け入れられつつある。従って、待機児童解消や幼児教育無償化の次に問われるべきは、幼児教育の中身である。だが、教師の質の向上や教育内容充実の議論は、これまでのところあまり行われていない。高等教育の質の重要性はいうまでもない。日本の学生の質の低下が懸念されているが、同時に教育の供給側の質の向上も待ったなしだ。大学側からは入学時の学生の質を問う声が多く聞かれるが、ならば入学時から卒業まで学生の力がどれだけ伸びたかを客観評価し、大学教育の質を問うのも一つの手法である。地方には、偏差値はさほど高くないが、卒業生が引く手あまたの私立大学もある。就職後に必要技能を学ぶ「リカレント教育」も同様だ。長寿化時代でライフステージが複線化するだけでなく、IT(情報技術)、人工知能(AI)がイノベーションを加速させる社会では、リカレント教育のあり方が今まで以上に問われる。単なる教養講座に終わらせず充実させるには、今後、教育機関と産業界、行政が連携を進め、産業界のニーズなどを踏まえた教育プログラムを組み、教育人材の確保、再就職支援にまで取り組む必要がある。企業も社内教育だけでなく、社外教育の活用を視野に、人事制度や雇用のあり方にまで踏み込んで、本気で働き方改革を進めることを求められる。真に教育改革を進めるなら、今回の教育改革で議論の対象になっていない義務教育も含め、一気通貫で教育の質を問い直す場を設けるべきである。

*9-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171213&ng=DGKKZO24535880S7A211C1TCN000 (日経新聞 2017.12.13) 教育改革が重点課題
 大学トップが当面の重点課題と考えていることは何か。選択肢から5つまで選んでもらったところ、最も多かった回答は「教育改革」(85%)で、「研究力の向上」(71%)や「国際化の推進」(68%)が続いた。
学部教育の改革で重視する項目としては60%が「能動的学習や対話型授業の拡大」、39%が「課題解決型学習の拡大」を挙げた。「評価の改善や学習成果の可視化」(38%)、「海外留学の促進」(37%)も多い。ほかは「教養教育」(22%)、「カリキュラムの体系化」(18%)など。低所得層の高等教育無償化が決まり、教育の質の確保が求められているが「進級・学位認定の厳格化」は7%にとどまる。社会人の学び直しニーズへの対応に関わる「既卒者や社会人の受け入れ」も4%と少ない。能動的学習などはきめ細かな指導が必要だが、学生・教員比率(S/T比)の改善について尋ねたところ、36%が「教員数を増やしたい」と答えた。教員増・学生減のどちらも考えていない大学が59%を占め、「学生の削減と教員の増加をともに実施したい」としたのは1%(2校)だった。

*9-3:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/158998 (佐賀新聞 2017.12.12) ロシア選手、平昌五輪参加へ、個人資格で、大統領支持
 ロシア・オリンピック委員会(ROC)は12日、モスクワで総会を開き、来年2月の平昌冬季五輪に同国選手が国旗や国歌を使用できない個人資格で参加することを支持すると全会一致で決めた。ジューコフ会長が発表した。ペスコフ大統領報道官は、プーチン大統領も決定を支持すると表明。この結果、国際オリンピック委員会(IOC)が、ドーピング違反がないことなどを認めたロシア選手は五輪に参加できる見通しとなった。ジューコフ氏は記者会見で「IOCの決定は多くの点で不公平だが、ロシアの栄誉のために勝利をつかまねばならないとの意見で一致した」と説明した。

<“化石”は地球環境と経済の両方に有害>
PS(2017年12月16、19日追加):*10-1-1のように、EV・燃料電池車等の環境対応車や自動運転車は日本が先頭だったが、メディアを巻き込んだ逆噴射によって外国に後れを取り、他国の進歩を見て追随している情けない状態だが、これは、「EVは、エコカーだから走る喜びはない(?!)」などと言うような科学的判断のできない人々の責任である。
 また、*10-1-2の「三菱重工業の火力発電所向けガスタービンが不振」というのも、世界の化石燃料離れから今後も回復する見込みはない。しかし三菱自動車は、世界で最初に燃料電池車を作った会社であるため、工業用・個人用の水素燃料による発電、燃料電池による航空機・船舶を作っていれば、トップランナーでいられ、従業員の転用を行う時間も十分あった筈で、経営者が直ちに正しい意思決定をできることが重要なのである。ちなみに、「ゆっくりした方がよい」などと言うのは、世界中で日本だけだ。
 さらに、*10-1-3の「A重油の値上がりが農漁業に打撃を与えている」という課題も、私が衆議院議員をしていた2005年当時から農漁業関係者に言われていたため、私はエネルギーの変換や省エネが不可欠だと考えて取り組んできた。そのため、10年以上も同じことを言って国民に負担ばかりかけるのではなく、農業なら自家発電・ハウスの省エネ・EV化などを既に進めて終わっていてもよい時期で、燃料費が漁業経費の3割に達する漁業もまた同じである。
 そして、人件費や化石燃料価格が高いのに、運転手付きディーゼルカーを走らせているJRの損益分岐点が高止まりするのは尤もで、*10-1-4のように、JR九州は来年のダイヤ改正で九州新幹線や在来線の運行本数を1日当たり現状より117本減らすそうだが、既にこのブログで書いてきたように、鉄道の経営体質を強化する方法は退却ばかりではない。
 なお、広島の住民が四電伊方原発3号機の運転差し止めを求めた仮処分の即時抗告審で、広島高裁は、*10-2-1のように、阿蘇の巨大噴火の危険性と火砕流到達の可能性が小さくないことにより立地不適として2018年9月末まで運転停止を命じる決定をしたそうだが、これまで苦労を重ねてこられた弁護士はじめ関係者の皆様には敬意を表する。私も、原発は事故を起こせば膨大な被害になるため、事故の確率が0でなければ積算した被害額は大きくなり、速やかに廃炉にしてもらいたいと考えている。
 そのような中、地元四国の新聞はこの司法判断について称賛の記事が多いのに、日経新聞は、*10-2-2のように、「九電瓜生社長は『伊方原発差し止めは残念だ』『火山の状況はモニタリングしている』『マグマの状況など科学的な説明を示して安全性を訴える』と述べた」と書いている。しかし、火山学者は「噴火予知はできない」と言っているので、次は地震・火山・断層・津波に関する安全神話を作らないようにすべきだ。また、*10-2-3のように、2017年12月19日には、政府の地震調査委員会が、「北海道東部沖太平洋で、海抜20m超の大津波を伴うM9級の超巨大地震の発生が切迫している可能性が高い」と予測し、「近畿から西に延びる中央構造線断層帯は、四国を横切って大分県に及ぶ」と改めたそうだが、プレートの境界を見ると阿蘇山から霧島連山も含んでいると考えた方が自然である。

 
2017.12.16日経新聞        2017.12.14、19東京新聞

(図の説明:世界は自然エネルギーに方向転換し、環境に悪い化石燃料や危険な原発は過去のエネルギーとなりつつある。日本でも、自然再生可能エネルギー・水素燃料・電気エネルギーを使うのが、最もエネルギー自給率を上げ、経済と環境によいだろう)

*10-1-1:http://qbiz.jp/article/124671/1/ (西日本新聞 2017年12月16日) EVや燃料電池車ずらり AI搭載の自動運転車も 福岡モーターショー
 クルマと変えよう暮らしの未来」をテーマに開幕した福岡モーターショー2017。会場には最先端の電気自動車(EV)や水素で走る燃料電池車(FCV)、人工知能(AI)を搭載した自動走行車など計204台が並び、大勢の自動車ファンたちが車の将来像に思いをはせた。 世界的な環境規制強化で「EVシフト」が鮮明になる中、注目を集めたのはEVのコンセプトカー。ホンダのスポーツカー「ホンダ・スポーツ・EV・コンセプト」は車体の重心が低く、EVが得意にする加速時の安定走行を可能にする。EVはエコカーのイメージが強いが「EVの世界でも走る喜びを提供する」(広報担当者)。ダイハツ工業は、低床で広い室内空間を確保した商用EV「ディーエヌ プロカーゴ」を出展している。トヨタ自動車は、3分程度の水素充填(じゅうてん)で約千キロの走行を目指すFCVのコンセプトカー「ファイン−コンフォート ライド」を展示。FCVは水素ステーション数が少ないなどの理由で普及が遅れているが、航続距離や充電時間などでEVより優位に立つ。先行開発推進部の内藤了輔主任は「FCVの得意分野は長距離なので、EVとのすみ分けが起きてくる」と分析する。各自動車メーカーは、AIを活用した自動運転技術もアピールする。三菱自動車は、AIが運転手に路面状況などを伝え、運転操作をアドバイスするコンセプトカー「ミツビシ e−エボリューション コンセプト」を披露。日産自動車もAIなどを搭載し完全自動運転を目指すコンセプトカー「ニッサン IMx」を展示している。IMxが自動運転モードに切り替わると、ハンドルが格納される様子を見ていた熊本市の会社員野崎大貴さん(23)は「自動運転の技術が急速に発展している気がする。実現化が待ち遠しい」と目を輝かせた。会場では発売予定の最新型車のほか、高級車やバイクなども間近に見ることができる。

*10-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171216&ng=DGKKZO24704800V11C17A2TJ2000 (日経新聞 2017.12.16) 三菱重、火力不況が直撃、主力重電「低迷2年続く」 欧米大手、リストラ先行
 三菱重工業の屋台骨がきしんでいる。15日には宮永俊一社長が主力の火力発電所向けガスタービンの不振が少なくとも今後2年は続く見通しを明らかにした。営業利益の7割を稼いだ主力部門の失速は、MRJや造船の不振とは影響の大きさが違う。世界の需要が半分以下に縮む「火力不況」で、先行して大胆なリストラ策を打ち出した欧米大手に対抗できるか。15日、7カ月ぶりに開いた記者会見で宮永氏は「パワー(発電所向け)があれほど急激に落ちたのは想定外だった」と危機感をあらわにした。温暖化ガスの削減義務を新興国にも求めるパリ協定の成立で、太陽光や風力など再生エネルギーの普及が加速。同社が得意とする出力30万キロワット超の大型ガスタービンは市場の収縮が止まらない。環境急変に対応し、独シーメンスは11月に6900人の人員削減を発表。米ゼネラル・エレクトリック(GE)も12月に入って1万2千人の大規模なリストラを公表した。ただ宮永氏は「日本の企業にレイオフはなじまない」とリストラを否定する。全国5カ所にある製造拠点の再編や効率化に活路を見いだす考えという。だが、悠長に構えている余裕はない。2018年3月期のパワー部門の受注高は前期比2割減の1兆4500億円の見通し。当初のプラス想定を5千億円引き下げた。「GEがあり得ない価格で出してくる」(関係者)というライバルの安値攻勢にも手を焼き、採算も悪化。営業利益は当初想定の3分の2の1千億円にとどまるとみている。ガスタービンを手がける三菱日立パワーシステムズ(MHPS)の安藤健司社長は「大胆な価格を提示して、少し無理をしてでも取りにいく」と採算度外視の受注もあると強調する。しかし、肝心の需要が出てこない。シーメンスによると大型ガスタービンの世界需要は年間110基程度。これに対して世界の生産能力は4倍近い年400基に達し、供給能力の過剰感が目立つ。三菱重工は巨額損失を計上した豪華客船や納入延期を繰り返すMRJなど負の連鎖が続く。だが、ガスタービンは同社の屋台骨。17年3月期には旧エネルギー・環境部門(現パワー部門)が営業利益の7割を稼いだ。客船やジェット機など「夢のある事業」(関係者)でつまずいても、後ろに控える安定感抜群のガスタービンが安心材料だった。14年には仏アルストムの重電部門買収で「打倒GE」を旗印にシーメンスと組み、敗れはしたものの存在感を示した三菱重工。それから、わずか3年の市場急変だ。GEでは8月に就任したジョン・フラナリー最高経営責任者が電光石火でリストラを加速している。世界は待ってくれない。宮永氏は来春で就任5年の節目を迎える。祖業の造船部門の分社など改革を断行した5年を「この会社に足りないのは意思決定のスピードだと感じた」と振り返った。何よりスピードが求められているのは今なのかもしれない。

*10-1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171216&ng=DGKKZO24702360V11C17A2QM8000 (日経新聞 2017.12.16) A重油、3カ月で18%上昇 農漁業に打撃
 ビニールハウスの暖房や漁船燃料に使うA重油が値上がりしている。国内スポット(業者間転売)価格は1リットル56.8円前後(海上物)と前月比で2%、3カ月前に比べ18%高い。漁業者への卸価格も上がっている。例年より早い寒波の到来に原油高が重なり、農家や漁師の負担が増えている。農林水産省によると、A重油購入などの光熱費は農業経営費の2~3割を占める。ピーマンは26%、バラは31%が燃料代だ。「今年は寒くなるのが早く2週間ほど早めに需要期を迎えた」(全国農業協同組合連合会)。漁業への影響も出始めている。全国漁業協同組合連合会(東京・千代田)のA重油販売価格は前年同月比で2割高く、漁師から悲鳴が聞かれるという。燃料費は漁業経費の3割に達する。今年はイカやカツオ、サンマが不漁だったため、A重油価格の上昇が打撃になっているという。一度に3キロリットル程度給油するという岡山市の洋ラン農家は「1円上がっただけでシーズンの出費が数万円増える」と話す。価格がさらに上がると温度を下げざるをえず、出荷遅れを懸念する。長崎県佐世保市のミカン農家は「燃料費がかさむと栽培可能なギリギリの温度に設定するため品質に関わる」とこぼす。

*10-1-4:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/160489 (佐賀新聞2017.12.16) JR九州 運行117本減 過去最大、佐賀は7本、来年3月ダイヤ改正
 JR九州は15日、来年3月17日のダイヤ改正で、九州新幹線や在来線の運行本数を1日当たり現状より117本減らして3011本とすると発表した。九州全7県が対象で減少規模は過去最大。佐賀県関係は7本削減のほか、始発や最終便の時間繰り上げなどがある。沿線の人口減少を踏まえた鉄道事業の合理化が狙いで、運転区間の短縮や運行日の見直しも行う。ただ、利便性が損なわれることになり、さらなる利用減を招く可能性もありそうだ。博多(福岡市)―鹿児島中央を結ぶ九州新幹線は6本減らして119本とする。在来線では、特急が24本減の277本、快速と普通列車が計87本減の計2615本となる。佐賀県関連では、筑肥線(唐津-伊万里)の最終列車を上下とも約1時間半繰り上げる。唐津線は多久-西唐津の早朝1本の運転を取りやめ、佐賀-西唐津の始発を現行より22分遅くする。長崎線は肥前山口発の最終列車の運転区間を短縮し、諫早行きを肥前大浦まで、多良行きを肥前浜までに変更。肥前山口-佐世保の最終も23分繰り上げる。博多-長崎の特急は、平日の利用が少ない午前10時台~午後3時台の上下各2本を土、日曜日、祝日だけの運行とする。佐賀発の上りの最終や、下りの午後10時台の1本を取りやめ、前後の運転時間の変更などで利便性を確保する。2017年3月期の連結売上高は鉄道事業が4割超を占める。単体での鉄道事業の営業損益は会計処理に伴う費用軽減分を考慮しなければ87億円の赤字となる。福永嘉之鉄道事業本部副本部長は「他事業の黒字で埋めればいいものではなく、鉄道事業を永く続けるために経営体質を強化しなければいけない」と説明する。改正内容では、「早朝や深夜、昼間など利用が少ないところを見直し、通勤、通学の時間帯は(できるだけ)現状のままにした」と語った。佐賀県は今後、県内沿線の影響を把握するとともに、JR九州に利便性の確保を要望する。副島良彦副知事は「公共交通機関に頼っている地域もあって非常に厳しく、本数が減るのは誠に遺憾。県の実情や沿線の声をいろんな形でJR九州へ届けていく」と述べた。

*10-2-1:http://www.kochinews.co.jp/article/145907/ (高知新聞 2017.12.14) 【伊方原発】運転差し止め決定は重い
 原発の安全性について、あまり注目されてこなかった角度から司法が疑問を呈した。広島の住民らが四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求めた仮処分の即時抗告審で広島高裁は、来年9月末まで運転停止を命じる決定をした。最大の理由は、阿蘇の巨大噴火の危険性だ。火砕流が到達する可能性が十分小さいとは言えないとして、立地を不適とした。3号機は昨年8月に再稼働し、ことし10月から定期検査のため停止している。来年1月に運転を再開する四電の計画は事実上不可能になったといってよい。原発の再稼働を巡っては、伊方を含め、各地で運転差し止めの仮処分申請が相次いでいる。地裁段階では判断が分かれているが、高裁が運転停止を命じたのは初めてだ。火山は全国各地に存在する。大きな課題を突き付ける、重い決定といえよう。政府や電力企業、安全審査を担う原子力規制委員会も深く受け止める必要がある。決定で広島高裁は、約9万年前に阿蘇で発生した「カルデラ噴火」に触れ、四電の火砕流シミュレーションの甘さを指摘した。研究では、この時の噴火は火砕流が100キロ先まで到達し、山口県に達したことも分かっている。阿蘇の火砕流が海を越えて伊方に到達する危険性は、簡単に想像できるものではない。違和感を持つ人もいるだろう。思い返したいのは東京電力福島第1原発事故だ。大津波の襲来を過小評価し、悲劇を招いた。自然の脅威を謙虚に受け止めることが大きな教訓である。火山の影響も軽んじることはできない。だが、原発回帰は進んでいる。規制委トップが新規制基準に適合しても「絶対安全とは言わない」と主張している中で、だ。決定はこうした現状に改めて疑問を投げ掛けるものでもあろう。広島高裁は他方で、地震や津波など火山被害以外の新規制基準、四電の想定は「合理的」とした。伊方原発は北側に巨大活断層の中央構造線が走る。原告は、四電が耐震設計の目安となる基準地震動を過小評価しており、新規制基準の実効性の不十分さも主張してきた。決定は、地震と火山とでは明らかに判断が異なっている。大きな疑問を残したといえよう。伊方3号機の運転差し止めを求める仮処分を巡っては、今後も司法判断が続く見込みだ。松山地裁の却下決定を受けた高松高裁の即時抗告審のほか、大分地裁、山口地裁岩国支部でも審理が続いている。四電は広島高裁に対し、早急に異議申し立ての手続きを取る方針だ。裁判長は近く定年退官するため、新裁判長による審理が注目される。福島第1原発事故のような惨劇を繰り返してはならない。安全を求める住民の当然の権利に対し、司法の責任は重い。

*10-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171216&ng=DGKKZO24697760V11C17A2EA6000 (日経新聞 2017.12.16) 九電社長、伊方原発差し止め「残念」 火山の状況注視
 九州電力の瓜生道明社長は15日、都内で開いた記者会見で、広島高裁による四国電力伊方原子力発電所3号機(愛媛県)の運転差し止めに対して「残念だ」と述べた。高裁は熊本県の阿蘇山が過去最大規模の噴火をした場合の安全性の観点から伊方原発の立地を不適当だと判断した。九電は熊本県と同じ九州の佐賀県と鹿児島県に原発を持つ。瓜生社長は原発運転期間中に高裁が指摘したような噴火が起こる「確率は非常に低いと思っているし、確認のために火山の状況はモニタリングしている」と説明。自社の原発に対する差し止め訴訟では「地下のマグマの状況など科学的な説明」を示して安全性を訴えるとした。神戸製鋼所のデータ改ざんを受けて玄海原発(佐賀県)の再稼働時期を延期した問題で、神戸製鋼への損害賠償請求は「(するかしないかも含め)弁護士と相談中だ」と述べた。再稼働が遅れると原発の代わりに稼働させる火力発電所の燃料費がかさむが、2017年度業績については「発表(した予想)どおりになるよう全社をあげて対応する」とした。

*10-2-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017121901001512.html (東京新聞 2017年12月19日) 北海道東部沖で「M9切迫」 政府調査委、大津波も
 政府の地震調査委員会(委員長・平田直東京大教授)は19日、北海道東部沖の太平洋で、大津波を伴うマグニチュード(M)9級の超巨大地震の発生が「切迫している可能性が高い」との予測(長期評価)を公表した。道東沖では340~380年間隔と考えられる超巨大地震が約400年前に発生。北海道大の研究では、この時の津波は海抜20メートルを超え、沿岸から4キロ内陸まで浸水したと推定されている。同時に四国地域にある主な活断層の長期評価も公表。近畿から西に延びる「中央構造線断層帯」は四国を横切り、大分県に及ぶと評価を改めた。断層帯の長さは360キロから444キロになった。

<燃料電池と太陽光発電、次の展開へ>
PS(2017年12月22、26日追加):*11-1の仏ルノーのゴーン会長兼最高経営責任者退任は寂しいが、後継者として欧州エアバスのブレジエ最高執行責任者の名前が挙がっているのは、エアバス社が航空機に燃料電池や電動を取り入れる準備が進みそうで期待が持てる。是非、ゴーン氏も何らかの役職に留まって企業連合全体を統括してもらいたいものだ。
 なお、EV・燃料電池と太陽光発電を組み合わせれば、我が国は「資源のない国」どころか「エネルギー自給率の高い資源大国」になれる。そして、EVと同様、太陽光発電も1995年前後に私が経産省に提案してから20年以上が経過し、最初は100%日本製だったにもかかわらず、現在では、*11-2のように、2016年のシェアで上位5位以内に日本勢は1社も入っておらず、スリム化することしか思いつかない状況なのである。この原因には、非科学的・感情的思考が多い文系出身者の理系教育の不十分さとそれによる世界競争を考慮しない視野の狭い競争と反発のような次元の低い思考過程がある。

*11-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171222&ng=DGKKZO24921130R21C17A2EA1000 (日経新聞 2017.12.22) ゴーン氏、ルノーCEO退任観測 仏紙報道 来年任期
 仏ルノーのカルロス・ゴーン会長兼最高経営責任者(CEO、写真)が退任するとの観測が浮上している。レゼコー、フィガロなどの現地メディアは21日までに、ヘッドハンティング会社による後継者の選定が始まったと報じた。改選期を迎える2018年の株主総会に向けた駆け引きが激しくなりそうだ。ゴーン氏のルノー取締役としての任期は18年6月15日に開かれる株主総会で切れるため、CEO職の去就に注目が集まっていた。CEOを交代する場合、株主総会までに後任を選ぶ必要がある。ルノーは2月に経営委員会を招集し、候補者を決めるとみられる。現状では人材会社に社内人材の評価や外部人材のヘッドハンティングを依頼し、候補者を選んでいる段階とされる。現地メディアでは後継候補として、ルノーでものづくりを統括するチーフ・コンペティティブ・オフィサー(CCO)のティエリー・ボロレ氏や販売担当責任者のティエリー・コスカス氏の名前が挙がっている。ルノーの広報担当者は報道についてコメントを避けた。外部の人材では、欧州エアバスのファブリス・ブレジエ最高執行責任者(COO)らの名前が取り沙汰されている。同氏の名前は2~3年前から挙がっている。自動車業界では、トヨタ自動車のディディエ・ルロワ副社長、仏グループPSAのカルロス・タバレスCEOらの名前も挙がる。タバレス氏は元ルノーでゴーン氏の懐刀的存在だった。ただ、外部の人材はよほどの逸材でないと難しいとの見方が強い。仏政府は外国人CEOを避けたがっているとの観測もある。1999年に始まったルノーと日産自動車の提携関係は20年近くに及ぶが、16年に新たに企業連合に加わった三菱自動車を含め、各社の成長は今もゴーン氏のリーダーシップに依存している側面がある。ルノーのCEOを退任する場合にもゴーン氏はなんらかの役職にとどまり、日産や三菱自の会長職も続けながら企業連合全体を統括するとみられる。

*11-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171226&ng=DGKKZO25048780V21C17A2TI1000 (日経新聞 2017.12.26) 太陽電池、日本勢スリム化 シャープ、子会社移管 パナソニック、国内を縮小
 日本の太陽電池メーカーが事業の抜本改革を急いでいる。シャープは2018年春に開発や設計、保守、海外営業など本体の数百人の人員を販売子会社に移管し、蓄電池や家電を組み合わせた提案営業を強化する。パナソニックや京セラは生産を縮小する。日本企業のシェアは中韓勢に押され下がり続けており、事業をスリム化して収益を確保できる体質をめざす。2005年時点の太陽電池の世界シェア(生産量)は、上位5位中4社が日本企業だった。だが再生エネルギーの買い取り価格引き下げや中韓勢の低価格品の流入で日本勢の劣勢が続く。16年のシェア(出荷量)では上位5位以内に日本勢は1社も入っていない。シャープは太陽電池の研究開発や保守管理を手がける葛城工場(奈良県葛城市)の社員などを販売子会社シャープエネルギーソリューション(SESJ、大阪府八尾市)に移管する。開発や間接部門から営業への異動など、配置転換も含めて検討する。今後は住宅や建材メーカーに太陽光パネルを供給するだけでなく、開発部隊などが営業に同行して現場の需要動向に即応できる体制にする。シャープの太陽電池事業は、16年8月に鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入って以降、原料であるシリコンの調達価格契約の見直しにより17年3月期に営業黒字に転じた。だが同期の売上高は1036億円とピーク時(14年3月期)の4分の1程度になっている。12年に始まった再生エネの固定価格買い取り制度(FIT)の見直しで価格が当時の半分程度まで下落しており、シャープ以外も事業見直しを急いでいる。パナソニックの太陽電池事業は17年3月期に初めて赤字に転落した。国内市場の落ち込みにより、「セル」と呼ぶ中核部材を作る二色の浜工場(大阪府貝塚市)は停止中で、島根工場(島根県雲南市)も稼働率が低迷している。太陽光パネルの組み立て工程を担ってきた滋賀工場(大津市)は17年度内に生産を終了する。国内シェア首位の京セラも採算性改善のため生産再編で選択と集中を進めてきた。太陽光パネルに関しては三重県伊勢市と米工場での生産を中国と東近江市に集約した。太陽電池の製品販売も補助金優遇が進むタイなど東南アジアへのシフトを進めている。営業担当者も異動などで海外を増やしている。

<科学的・論理的思考の欠如と集団主義が根本原因>
PS(2017年12月24日追加):*12-1に、博多発東京行き「のぞみ」の台車に亀裂があった問題で、「①小倉駅を発車して乗務員が焦げたような匂いに気付き、福山-岡山間で乗客から車内にもやがかかっていると申告があり、岡山から検査班が乗り込んで確認して『異常なし』と告げた」「②JR西の乗務員は新大阪駅でJR東海の乗務員に引き継ぐ際にも『異常なし』と口頭で報告した」「③JR西には、走行中に異常音があったらすぐに停車するなどを定めたマニュアルがあるが、異臭については決められていなかった」と書かれている。また、*12-2に、「④2日に1度、目視による台車検査を実施するが、ファイバースコープや超音波による非破壊検査は実施していない」「⑤JR西は列車数に余裕がないため、列車交換ができなかった」というその原因が記載されている。
 しかし、①②のように、明らかに異常があるのに「異常なし」として列車を使い続ける安全よりも社内の人間関係を重視する誤った価値観、③のマニュアルに書いてなければ安全だとする思考力の欠如、④の目視だけで検査できると考える非科学性、⑤の列車交換も可能にしておくセキュリティー概念の欠如 など、時間の正確さを損なわずに安全を維持する工夫がない。そして、その根本には、ゆとり教育と推薦入学で必要な知識を持たず、甘い価値観を持った人間が見え隠れする。つまり、基礎教育不十分が根本原因であるため、こういうことが、命に関わる医療やメディアを始め全分野で進んでいるという恐ろしい事態なのだ。

*12-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201712/CK2017122002000238.html (毎日新聞 2017年12月20日) 【社会】新幹線亀裂「異常なし」引き継ぎ 新大阪駅でJR西乗務員
 博多発東京行き新幹線のぞみの台車に亀裂が見つかった問題で、JR西日本の乗務員が新大阪駅でJR東海の乗務員に引き継ぐ際、「異臭はあったが異常はない」と口頭で報告していたことが二十日、JR東海への取材で分かった。両社が具体的なやりとりを調べている。JR西は十九日の記者会見で、新大阪駅でJR東海に運転状況と車両状況が引き継がれたと説明し、「内容については調査中」としていた。異常音や異臭を感知していたが結果的に運行は続いており、指令所と車掌のやりとりの中では走行を止めるという判断はされなかったという。JR東海などによると、のぞみは十一日午後四時ごろ新大阪駅に到着。福山(広島県福山市)-岡山(岡山市)間で乗客から車内にもやがかかっていると申告があったが、JR西の乗務員は交代時に「岡山駅から検査班が乗り込み、異常がないかどうか確認した」として、「異常はない」と告げていた。JR西によると、新幹線の走行中に異常音があった場合はすぐに停車するなどのマニュアルがあるが、異臭については特に決めていないといい、担当者は「今回は異臭や異常音がずっと続いたわけではなく、直ちに支障が出るものではないと判断した」としている。のぞみは十一日午後に博多駅を出発し、小倉駅(北九州市)を発車した際、乗務員が焦げたようなにおいに気付いた。さらに岡山駅を過ぎてうなり音が確認され、名古屋駅で運行を取りやめた。

*12-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2492306021122017TJ1000/ (日経新聞 2017/12/21) JR西新幹線トラブル 運行と検査の体制に穴
 JR西日本が東海道・山陽新幹線ののぞみで台車に亀裂が入ったまま運行を続けたトラブルは、2つの問題を浮き彫りにした。一つは異常に気がついても列車を止められなかった運行体制。もう一つが亀裂の予兆を見落とした検査体制だ。「新幹線は遅らせてはいけないという深層心理がある」。JR西の関係者は打ち明ける。JR西はJR東海より新幹線の列車数に余裕がなく、車両繰りに苦労している。新幹線のトラブルでの重大インシデントは今回が初めて。博多駅を出発した列車が運行中に異音やにおいが発生しているにもかかわらず走り続け、JR東海が名古屋駅で台車の亀裂を発見。岡山駅で乗り込んだJR西の保守担当が異常を感知したが停止させなかった。JR西の来島達夫社長は「運行ダイヤ優先ではない」と否定する。だが新幹線は鉄道収入の5割を稼ぐ主力事業。在来線は異常が見つかればすぐに停止して点検する。一方、新幹線は運行中に年100件程度の異音が報告されるが、列車を止めて点検をすることはほとんどない。JR西は2005年に乗客106人が死亡する福知山線脱線事故を起こした。事故を受けて「安全性向上計画」を策定し、自動列車制御装置の導入など年1000億円規模の安全投資を続ける。ヒューマンエラーの研究なども進めてきたが、安全優先の意識が現場まで徹底できたかどうか。もう一つの問題が点検体制の不備だ。JR西と東海は2日に1回のペースで目視による台車検査を実施する。一定期間走行した後も部品などを取り外してより精密な目視検査を行う。だが、今回亀裂が起きた場所は力が集中しない場所と判断し、細かいキズの有無を確認する非破壊検査を実施していなかった。JR西は当面、運行の合間に新たに非破壊検査を実施する。将来は振動センサーを台車部分に設置して運行中でも運転席から異常を検知できるシステムの導入を目指す。JR東海も目視で確認しにくい狭い場所に入り込めるファイバースコープや素材内部も確認できる超音波など、非破壊検査の対象拡充を検討する。今回の重大インシデントの原因は国土交通省の運輸安全委員会で調査を進める。JR西と東海は抜本的な解決策は結果が出てからとしている。

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2017.10.1 伝統産業のイノベーションとそれを支える人材(2017年10月4、6、8、26、29日、11月1、4、9、10日に追加あり)

      2014.6.9日経新聞             2015.10.6日経新聞

(図の説明:左の2つは、インクジェットで染められた布とその機械、右の二つは、3Dプリンターで作られた有田焼で、伝統工芸も最新技術の導入で進化できることがわかる)

 

(図の説明:写真は博多人形だが、これにロボット技術を加えて、しゃべったり、音楽を奏でたり、一定の動作ができたりするようにすると面白いし、写真を使って亡くなった人とそっくりのしゃべる人形を作ったりすることも可能だろう。上の博多人形は、ロボットでなくても今にも動き出しそうにしているため、リンカーン大統領、マハトマ・ガンジー、サッチャー首相、メルケル首相等のロボットを作って、象徴的な演説や仕草を真似させ、アメリカ・インド・英国・ドイツなどに寄贈すれば、博多人形ロボットを世界で有名にすることができると考える )

(1)伝統産業には、どういうイノベーションが行えるのか
1)織物と染色-秩父銘仙の事例
 銘仙は、*1-1のように、ガシャンガシャンとにぎやかに機織機の音が響く中でほぐし織りにするため両面を使えるそうで、美しくて便利なため世界でヒットさせることもできそうだ。

 しかし、作り方は「父が数時間でできる仕事が、1週間かけてもできない(=生産性が低いため、価格が高くなる)」ということを現代でも繰り返す必要はなく、名人が作った製品と同じものやそれよりも安定したものをコンピューター制御で作れば、飛躍的に生産性を上げながら静かに美しい絹織物を作ることができるだろう。例えば、*2-2の、キヤノンが宮崎工場を自動化して競争力を強化し、製造業の日本回帰事例となっているように、である。
 
 また、染色も、*1-2のようなインクジェットによる染色もできるので、少量多品種生産が容易になった。さらに、現代では、繭を育てる背景の色を変えたり、DNA操作をしたりすれば、繭自体に初めから色や蛍光を持たせることができるため、退色しない美しい絹織物を作ることもできそうだ。

2)陶磁器-有田焼の事例
 有田焼の産地、有田では、現代にマッチした製品を作るため、伝統の中に最新技術を取り入れようとしているが、*1-3のように、佐賀県窯業技術センターが、3Dプリンターで造形した立体モデルを焼成して陶磁器の成形品を得る技術を開発した。

 3Dプリンターでは、インクジェットノズルから吐出したバインダーで粉末材料を固める手法を採用し、有田焼と同じ天草陶石の粉末を使って成形品を造形したが、最初は成形品を取り出す際に崩れてしまい、流動性の確保とバインダーの固着性の向上などを実現して強度を高めていったそうだが、私は、その粉末に冷えると固まり焼くとなくなる接着剤を混ぜておけばよかったのではないかと考える。

 有田焼の場合も、3Dプリンターやインクジェットを使えば、名人はがっかりするかも知れないが、すでに著作権のなくなった過去の名品を高すぎない価格で再現したり、新しい作品を作ったり、書や絵画を有田焼にして残したりすることも可能になり、応用は多岐にわたるだろう。

3)林業の振興-新建材CLTの事例
 直交集成板(CLT)を使えば、*1-4のように、6、7階建ての木造中層ビルも容易に建てられるそうだが、現在は、鉄筋コンクリートよりも総工費が高くなるため使われず、その克服には需要拡大でCLT製造価格が下がる好循環を作るしかないそうだ。そして、欧州に遅れること20年で、日本でもようやく普及段階に入ったものの、普及速度が緩慢なのだそうである。

 日本では、良い方向への変化でも変えるのに20年以上かかり、他国よりもかなり遅れてから追いかけるため、変えようとした人には負担がかかり、最初にその事業にチャレンジしたパイオニア企業は倒産することが多い。これは、我が国で新規事業の利益率が低く、その結果、新規事業の開業意欲が低い一因だろう。そしてすぐ、政府の補助金頼みになるのだが、森林の育成には都道府県の森林環境税を投入しているため、林業は既に「役所が補助している産業」なのである。

(2)労働力としてのロボット
 中国の人民網が、*2-1のように、「超高齢社会の日本を支える『第4の労働力』」として、「日本人の中には、高齢者、女性、外国人という3つの労働力で問題を解決できると考える人もいるが、実際には第4の労働力としてロボットがある」と伝えているのは面白い。

 日本でも、パナソニックが「離床アシストロボット」「自立支援型起立歩行アシストロボット」を開発し、トヨタは歩行不自由な障害者の歩行や起き上がるのが難しい障害者のベッドの上り下り・トイレへの移動を支援するパートナーロボットを作成し、ホンダは利用者の動作に合わせてモーターで歩行を支援する歩行アシストロボットを作っており、今ではロボットが普及向上期に入ったのだそうだ。

 ちょうどEVへの転換で仕事がなくなるとされている自動車部品メーカーは、これまでに培った精密な技術を活かして、航空機やロボット部品などの新技術に転換すればよいだろう。

(3)エネルギーと自動車のイノベーション
1)エネルギーのイノベーション


2017.10.5佐賀新聞   スカイマークの  都道府県別      主要産業の
            民事再生法申請   倒産状況      倒産件数推移 

(図の説明:太陽光発電事業者の倒産は買取制限によって増加し、航空参入したスカイマークも民事再生法を申請した。右の2つは、2015年の都道府県別倒産状況と産業別倒産件数である)

 私が1995年頃に太陽光発電を提案して20年以上が経過し、ドイツは、*3-1のように、フクイチ以後、科学的・論理的に脱原発を行って自然エネルギーを進め、トランプ米大統領のパリ協定離脱表明を受けて離脱に反対する米国の州と連携して引き続き米国を取り込み、温暖化対策で国際協力を進めているのに対し、日本は太陽光発電による電力を制限しつつ原発を再稼働した。そして、これは、新興企業が既得権のある大企業と政府にひねりつぶされた一例となった。

 また、*3-2のように、2017年9月24日投開票のドイツ総選挙では、緑の党の結党以来の主張だった「脱原発」は国の方針として定着し、「ドイツのための選択肢(AfD)」以外はすべての政党が「脱原発」を前提として再生可能エネルギーの拡大を掲げ、緑の党は「2030年までに全電力の需要を再生可能エネルギーで賄う」という公約を打ち出したのだそうだ。私は、「2030年までに全電力の需要を再生可能エネルギーで賄う」という公約も、市場の選択によって前倒しで達成され、それが緑の党の存在意義だと考える。

2)自動車(輸送手段)のイノベーション

 

(図の説明:左は京都市内を走っている中国製のEVバス、真ん中は太陽光発電と組み合わせたEV乗用車、右はロボット掃除機で、どれも日進月歩だ)

 電気自動車も、私が1995年頃に提案して始まったのだが、日本では、何かとEVの邪魔をする世論が多く、ハイブリッド車しか普及しなかった。しかし、*3-3のように、中国ではガソリン車が禁止され、BYDのトップは「中国市場からガソリン車が消える時期は、2030年になる」という見通しを示したそうだ。私は、あらゆる点でEVの方が優れているため、市場の選択によって、変化はそれより早いと考える。

 そのため、トップを走っていた日本は、*3-4のように、仏英両国の2040年までの「脱エンジン」の方針を見て、「ここで競争に負けてはならない」などと言わなければならない羽目に陥っているのだが、「車の動きはもっとゆっくりだろう」と兎さんではなく亀さんの方が寝ている状態であるため、とても競争に勝てそうにはない。つまり、このような油断と誤った方針決定が、技術を遅らせ敗退させるのである。

 なお、*3-5のように、スマホはワイヤレス給電のものがあるため、自動車も駐車場に駐車してスイッチを入れれば充電され、レストランから出てきた時や買い物が終わってスーパーから出てきた時には充電が終わっているということになればなおさら便利だ。そのため、市民は、そういう設備のあるレストランやスーパーを選ぶことになりそうである。

<伝統産業のイノベーション>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/CMTW1709211100003.html (朝日新聞 2017年9月21日) (13)秩父銘仙(秩父市)
◇ハイカラ復活 新たな挑戦
 華やかなデザインと色彩で大正、昭和の女性を魅了した着物「秩父銘仙(めいせん)」=◎。夏目漱石の小説にも登場し、竹久夢二も大正浪漫漂う銘仙姿の女性をたびたび描いた。セメントや材木と並ぶ秩父の近代産業を代表した銘仙の復活へ、若い後継者たちがいま、新たな挑戦を続けている。
◇ほぐし織り 現代に生かす
 秩父市黒谷(くろや)にある織元「逸見(へんみ)織物」。工場を訪ねると、ガシャンガシャンとリズミカルに機(はた)を織る自動織機(しょっき)の音がにぎやかに響いていた。逸見織物は1927(昭和2)年、初代が皆野町の織元から独立して創業した。秩父銘仙協同組合によれば、昭和初期、秩父には約500軒の織元が年に約240万反(1反は約12メートル)を織り、約7割の住民が、養蚕を含む織物関連の仕事に従事していたという。「そこらじゅう機織(はたおり)の音が響いていた」と2代目逸見敏(さとし)さん(84)。銘仙は、絹の経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を交互に組み合わせた平織物の総称。大正、昭和に大流行した模様銘仙は「ほぐし織り」という高度な技法で作られる。1908(明治41)年に地元の坂本宗太郎が「ほぐし捺染(なっせん)」の技法で特許を取得。仮織りの糸をほぐしながら本織りするのでほぐし織りという。新技法は画期的で、型紙で捺染するため大胆でハイカラな柄を織れるようになった。ほぐし織りの工程はちょっと複雑だ。まず真っ白な経糸を並べ、本数と長さを整え(整経(せいけい))、整経した糸を仮織り機でざっと織る(仮織)。仮織りした経糸に、模様を彫った型紙を載せ、染料を塗る(捺染)と、経糸に柄が入る。「つなぎ」をかけ、本織りした糸を「蒸し」て色止め。最後に「整理」と「検査」を経て、反物に仕上がる。織物はかつて一貫生産されていたが、工場経営に変わると分業体制が進んだ。しかし今、各工程の職人の高齢化などで分業を維持できるか難しい状況もある。銘仙は戦後、復興や朝鮮戦争の好景気で日常着として人気を集め、物不足の時代に飛ぶように売れた。ガチャンと機が動くと万単位の金が入る「ガチャ万」と称された「糸へん景気」だったが、昭和30年代に洋装が中心になり、和服も銘仙も廃れた。秩父の織元も現在、数軒に減ってしまった。銘仙を織り続ける逸見織物は貴重なその一つだ。作家宇野千代さんの依頼で、ほぐし織りの桜模様の着物を製作。30年前に長女の恭子さん(49)が3代目を継ぎ、夏銘仙の復活など様々な試みを続けている。ほぐし織りの良さを伝えたいとの思いは秩父市中宮地町の「新啓(あらけい)織物」も同じだ。新井啓一さん(83)が1970年に創業。織り手の妻ヤスさん(85)とともに国認定の伝統工芸師だ。新啓織物では12年前、長男の教央(のりお)さん(49)が2代目を継いだ。インドなど世界や日本各地の織物を見て、ほぐし織りの魅力を再発見。デザイナーとして15年勤めた繊維商社を辞め、元同僚の妻園恵さん(51)ら一家で里帰りした。「両親が織る物は魅力的だと思う半面、携わっていない自分への疑問もあった」。しかし家業を継ぐことに啓一さんからは「苦労するから」と反対された。現実はその通りで、父が数時間でできる仕事が、1週間かけてもできない。「でも、昨日できなかったことが今日は少しだけできる。それが励みになった」。まもなく園恵さんも加わり立ち上げたのが、ほぐし織りのブランド「機音(ハタオト)」。新感覚の色柄の銘仙のほか、園恵さんのセンスで淡い色合いの反物を織りだしている。工場に捺染の仕事場も併設し、自社一貫生産も目指す。反物だけでなくストールやバッグ、綿や麻に素材を変えたほぐし織りも制作。銘仙を現代に生かすため、新たな魅力を探る。長瀞町の清流沿いに看板を掲げる「秩父織塾工房横山」も秩父銘仙の一貫生産を試みる。1920(大正9)年創業の工房には、2代目横山敬司さん(83)が関東一円の工場などから収集した織機類がぎっしり。まるで織機の博物館だ。戦後は夜具(やぐ)地や大手寝具メーカーの発注で大手百貨店に置く座布団カバーのほか、サンローランやエマニュエル・ウンガロなどライセンス物を手がけたが、「原点に返ろう」と草木染に力を入れながら銘仙復活を目指している。「日本は絹文化と生きてきた。絹と絹織物の文化の証しを残すのは自分の使命」と敬司さん。今は3代目の大樹(たいじゅ)さん(56)が敬司さんから一貫生産を目指して学ぶ日々だ。「銘仙の全工程を自分でできるようになりたい。それができる機械がそろっているから」。秩父銘仙は2013年、国の伝統的工芸品に指定された。100年以上の歴史があり、主要部分が手作業という条件を満たし、県内では春日部の箪笥(たんす)などに続く指定で、織物では初だ。逸見織物3代目の恭子さんは今、新企画「STYLE*MEISEN(スタイル銘仙)」に取り組む。秩父や栃木県足利市の職人、服飾デザイナーらと組み、銘仙を洋服に発展させようという試み。香港など海外でも展開し販路を広げる。「現代のファッションとして銘仙を復活させる、ジャパン・メイドの誕生です」
◎秩父銘仙
 絹の経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を交互に組み合わせた平織物「銘仙」は、秩父・足利・桐生・伊勢崎・八王子が五大産地。秩父銘仙の起源は織物の女神が創案した布「千千布(ちちふ)」に由来し、秩父の地名の語源の一つとされる。経糸を仮織りし、型紙を使って模様を先染めして本織りをする。経糸と緯糸の色の重なりが角度によって変化して見える玉虫効果が特徴。染めた糸に織るため表と裏が同じ柄になり、色あせたら裏返して仕立て直しができる。
《ちちぶ銘仙館》 秩父織物や銘仙の資料を収集・展示し、伝統技術の継承を目的に2002年にオープン。本館や工場棟は昭和初期の面影が漂う旧県秩父工業試験場の建物で、国の登録有形文化財。生糸をたぐる作業から織り上げるまで全工程を見学できる。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ0408U_U4A600C1000000/ (日経新聞 2014/6/9) ものづくり進化論:インクジェット、広がる用途 衣類や食品、医療にも
 液体をノズルから飛ばすインクジェット技術。これまでは紙に文字などを印刷する場合に使われることが多かったが、アパレルや食品の製造現場を変えようとしている。ノズルを搭載する先端部品(ヘッド)やインクの改良により、衣服に使う生地に直接柄や模様を描いたり、食品にカラーのイラストや写真を描いたりすることができるようになってきたからだ。医療分野での応用も進み始めた。
■製造工程、2カ月から3日に
 繊維製品を染色する捺染(なっせん)加工を営む工場が集積するイタリア北部のコモ地区。工場の中では、大型のインクジェットプリンターが24時間稼働し、高級シャツやネクタイを量産している。コモ地区では工場の2割程度が、染料と溶剤をまぜた糊(のり)や原版を使う伝統的な捺染から、インクジェットプリンターによる量産に移行しているとされる。長野県諏訪市に本社を置くセイコーエプソンがインクジェット技術をコモのメーカーに提供、同社が印刷機を製造した。従来の捺染方式と違い、版を製造したり、洗浄したりする必要がなく、直接模様などを描くことができるため、1.5~2カ月かかっていた製造工程を、3日~2週間程度まで短縮できる。ぎりぎりまでデザインをいじれるため、「工場の方にデザイナーが(インクジェット方式の導入を)要求することが多い」(インダストリアルソリューションズ事業部の有賀義晴課長)という。エプソンの装置が捺染に使えるのは、同社のインクジェット技術が多様なインクに対応できるからだ。インクジェットには加熱で作った気泡で液体を吐出する「サーマル方式」と、電圧をかけると変形するピエゾ素子にスポイトのような働きをさせて液体を吐出する「ピエゾ方式」があり、エプソンは後者を採用している。印刷画質での違いはないとされるが、ピエゾ方式は液体に熱を加えないためインクの自由度が高いのが特徴だ。そのため、技術供与した製品やエプソンが2013年に自社製造・販売を始めた捺染プリンター「シュアプレスFP―30160」は、絹や羊毛に向く酸性インクや、麻や綿に向く反応インクなど粘度が異なる様々な液体を飛ばすことができる。07年には半導体の微細加工技術を取り込んで開発した新型ヘッドを発表。インクを出すノズルの設置密度が従来機種の2倍で、小型になったうえ印刷の速度や精度も上がっている。同ヘッドを搭載したシュアプレスFP―30160は従来機種に比べて製品自体の体積が半分程度、大きさも3分の1程度だ。
■食べられる印刷
 エプソン以外にも長野県の中信地域にはインクジェット装置を独自で開発するメーカーが多い。特殊プリンターを製造・販売するマスターマインド(塩尻市、小沢啓祐社長)は食品に絵や写真を印刷できる「フードプリンター」を扱う食品業界で有名なメーカーだ。創業者である小沢千寿夫氏が地元の農家に「りんごに印刷できる?」と話を持ちかけられたのが開発のきっかけだ。そこで特殊な液で下塗りをして印刷をしたリンゴを持っていったところ「これ食べられないの?」と聞かれたので、「食べられる印刷」ができる装置の開発に乗り出したという。食品に色をつける「色粉」を液体に混ぜるだけだと、プリンターのヘッドに詰まりやすい。同社はインクメーカーと協力し、食物油の量や種類を工夫し、詰まりにくいインクを開発した。食品に模様を付けるには、焼きゴテを使って食品の表面を焦がしたり、可食インクを判子を押すように食品に載せる手法などを使うのが一般的。だが、専用の焼きゴテを作るのに3万~4万円かかったり、圧力で食品が割れてしまったりするのが難点だった。デジタルデータをもとに印刷するインクジェット方式なら、少量多品種にも対応できるほか、食品を変形させる心配もない。核となるプリントヘッドの部分は、大手のプリンターメーカーの製品を使っているが、食品をヘッドの下で搬送するベルトコンベヤーの制御技術は独自のものだ。同社は6月10日に始まる国際食品工業展「FOOMA JAPAN2014」でフードプリンターの新製品を発表する予定だ。食品を搬送するベルトコンベヤーの幅を2倍の60センチメートルにすることで、製造速度を2倍近くに高めた。大手菓子メーカーの工場にも営業をかける。ご当地ゆるキャラの流行でキャラクターをデザインしたお菓子の需要は増している。また「2020年には東京五輪の開催もある。需要は間違いなく伸びる」(営業部の芦田賀浩課長)という。研究所向けのインクジェット装置を開発・販売するマイクロジェット(塩尻市、山口修一社長)はこのほど、液体の吐出の仕方を自動調節できる新製品を開発した。装置に新材料を入れると電圧のかけ方や電流波形を変えて何度か試行的に吐出し、カメラで飛散の仕方などを捉える。装置にはいくつかの材料の飛散に関する基本データを盛り込んだソフトウエアがあらかじめ組み込まれており、このソフトが基本データを参照しながら、カメラが捉えた画像を吟味して吐出の最適条件を自動的に決める仕組みだ。
■研究開発向けでも脚光
 インクジェット装置は、一定量の液体を精密に出すことができるので、ナノ金属インクによる電子回路の作製やDNAやたんぱく質によるバイオチップの製作など、高価な液体を使う研究開発分野でも使われ始めている。吐出条件を自動調整できれば、材料のロスを抑制できる。同社は5月にはドイツの企業と連携し、液体の流路となるパイプを交換できるヘッドも発売した。薬剤を変えるなど実験内容を変えても、パイプを交換しながら使用を続けることができるため、部品全体を交換するのに比べて費用は3分の1以下で済むという。ものづくりのデジタル化は今後ますます進む。注目が集まる3Dプリンターが速度や精度の面でまだ「量産」に使える水準にないのに対し、インクジェット装置の一部はアナログなものづくりに比べて速度も精度も遜色がないレベルに来ている。製造業や研究所への普及が加速しそうだ。

*1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO91640500R10C15A9000000/ (日経新聞 2015/10/6) 3Dプリンターで有田焼 伝統工芸、デジタルで革新
 佐賀県窯業技術センターは、3Dプリンターで造形した立体モデルを焼成して陶磁器の成形品を得る技術「C3DPO(Ceramic 3D-Direct Print-Out)」を開発した(図1)。石膏型に液状の泥である「泥漿(でいしょう)」を流し込んで硬化させるという従来の成形方法に比べて、大幅な工程短縮や低コスト化、複雑なデザインの実現などが期待できる。
■有田焼と同じ材料
 3Dプリンターとしては、インクジェットノズルから吐出したバインダーで粉末材料を固める手法を採用する市販の装置を導入。この装置で、有田焼と同じ天草陶石の粉末を使って成形品を造形した。開発を始めた当初は、成形品をうまく固めることに苦労したという。粉末材料が3Dプリンター用の純正品とは異なるため、成形品を未硬化の粉末から取り出す際に崩れてしまうのだ。粉末粒径を均一化するなど試行錯誤しながら、流動性の確保とバインダーの固着性の向上などを実現して強度を高めていった。その結果、3Dプリンターで成形品を得られるようになったが、それで有田焼の製品が完成するわけではない。成形品を素焼きし、下絵付けと施釉(せゆう:釉薬を施すこと)をした上で本焼成。さらに上絵付、上絵焼成という工程を経て初めて製品となるからだ。最終的に求められるのは、製品としての品質である。実際、3Dプリンターによる成形品を素焼きしたところ、当初は崩れてしまうことが多かったという(図2)。そのため、従来の石膏型による成形品を焼成する場合とは異なる条件を見出す必要があった。具体的な温度は明らかにしていないが、温度や焼成時間などを試行錯誤することで、陶磁器として完成させることに成功した(図3)。このように、陶磁器の成形品を3Dプリンターで造るためには、3Dプリンターに関する造形条件の工夫だけでは済まない。特に、成形品は製品になる前の中間品である。陶磁器の製造プロセスを構成する他の工程においても、従来とは異なった手法を見出し、それと組み合わせることが求められた。
■シート積層法で原型を造形
 実は、佐賀県窯業技術センターにおける3Dプリンターの活用はこれが初めてではない。まず取り組んだのが、石膏型を造るための基となる原型を3Dプリンターで造ることである。紙をカッターで切断し、積層していく方式の3Dプリンターを10年以上前に導入し、実際の製品に適用した(図4)。ただし、造形後に不要部分(原型ではない部分)を削除したり、角度によっては表面を滑らかにしたりする手作業が必要だったことなどがネックになった。さらに、造形後に時間がたつと変形してしまうこともあったため、原型での活用は続かなかったという。その後、しばらく3Dプリンターの適用は考えず、3Dデータを使って石膏型を切削加工することに取り組んだ(図5)。しかし、型を使う以上は抜き勾配という形状の制約はどうしても発生する。原型や石膏型ではなく、成形品を直接3Dプリンターで造れれば、その制約はなくなる。3Dプリンターの機能や性能が向上したことも踏まえ、再度チャレンジしたことで実現したのがC3DPO技術である。
■熟練技能者の減少対策にも
 有田焼は2016年に創業400年を迎える。近年の売り上げ減少や熟練技能者の減少といった課題にさらされる中、3Dプリンターの活用はこれらを解決する手段の1つになるかもしれない。例えば、3Dプリンターによって直接、成形品を得られることは、複雑な形状だけでなく、ごく少量や単品の生産も容易にする。型のコストを大量生産で吸収する必要はないからだ。一般消費者によるオーダーメード・システムなど、新しいビジネスモデルや市場を開拓できる可能性が広がる。現状では「完全に磁器化していないため、強度が不足している」(佐賀県窯業技術センター陶磁器部デザイン担当係長の副島潔氏)ことが課題だという。今後、さらに造形条件や焼成条件などのノウハウを蓄積して、3Dプリンターを活用した陶磁器の製造技術を確立していく考えだ。

*1-4:https://www.agrinews.co.jp/p41984.html (日本農業新聞 2017年9月23日) 新建材CLT普及 林業振興へ加速化急げ
 政府が国産材活用で期待する直交集成板(CLT)だが、普及はまだほとんど進んでいない。コスト高が障害になっている。CLTを使えば6、7階建ての木造中層ビルを容易に建てられるものの、鉄筋コンクリートより総工費が1割ほど高い。その克服には、需要拡大でCLT製造価格が下がる好循環を早くつくるしかない。林業振興に向け、政府は思い切った普及加速支援を急ぐべきだ。CLTは、ひき板を交互に積層接着したパネルで強度がある。壁や床にすれば、柱なしで中層の木造施設を建てられる。鉄筋コンクリートに代わって大量のCLTを使うようになれば、国産材の需要が大きく増えて林業振興に直結する。政府が目指す「林業の成長産業化」の切り札になり得る。CLTの日本農林規格(JAS)が制定され、国内初建築となった2013年が「CLT元年」とされる。昨春に国土交通省が建築基準を整えたことで、CLTは新建材として一般的に使えるようになった。欧州に遅れること20年。日本でもようやく本格的な普及時代に入った。しかし、その普及は緩慢だ。今年3月末までに国の支援を受けて建てられてCLT施設は、全国で51棟にすぎない。ほぼ半数の22府県は皆無だ。国内のCLT8工場の経営は厳しい。稼働率は昨年度がわずか1割で、今年度も3割がやっとの見込みだ。稼働率を高める需要拡大がないと、工場の存続自体が危ぶまれ、製造価格も下がらない。政府は、CLT生産体制を7年後の24年度までに年間50万立方メートルとする目標を掲げている。国内工場における昨年度の製造能力の10倍、製造実績の100倍に匹敵する。この量産体制を実現すれば、CLT製造価格を半減でき、建築工費を鉄筋コンクリート並みにできる算段だ。この目標を必達してこそCLTは独り立ちでき、木造ビル新時代に入る。欧州連合(EU)では来年、CLT生産量が日本の目標の2倍になると推計され、上昇飛行が続く。CLTのオフィスビルやマンション、ホテルなどが次々と建つ。木造は地球環境に優しく、社会的貢献の高いメッセージ性がある。日本は短期間で欧州に追い付かなければいけない。だが、わが国ではCLTは離陸後も低空飛行だ。会社や自治体、個人などの建築発注者が、鉄筋コンクリートに比べたコスト高にひるみ、二の足を踏んでいる。国交省や林野庁などにCLT建築のコスト高を埋める補助金があるが、財源が限定的で普及に弾みがつかない。今はCLT建築の発注増が何より肝要だ。量産によってCLT製造価格が下がれば、それがまた注文を呼ぶ。その経済的循環の早急構築が欠かせない。政府は今年1月に普及の新たなロードマップを示したが、悠長ではいけない。補助金増額をはじめ施策の集中的投入による普及の加速化が求められている。

<労働力としてのロボット>
*2-1:http://qbiz.jp/article/117436/1/ (西日本新聞 2017年8月28日) 中国・人民網おすすめ記事:超高齢社会の日本を支える「第4の労働力」とは
 よく知られているように、日本は深刻な高齢化社会の国だ。人口高齢化にともなう深刻な労働力不足にどう対処したらよいだろうか。日本人の中には、高齢者、女性、外国人という3つの労働力で問題を解決できると考える人もいる。そして実際にはこれ以外に第4の労働力といえるものがある。それはロボットであり、決して冗談を言っているわけではない。「光明日報」が伝えた。日本はこれまでずっと高齢者の生活を支えるロボットの開発を積極的に進め、この分野では世界のトップレベルにある。パナソニック、トヨタ、ホンダといった大企業が相次いで主業務と無関係にみえる介護ロボットの開発に乗り出している。報道によると、パナソニックは車いすと介護ベッドが誘導した新発想の「離床アシストロボット」を開発した。ベッドの高さ、背上げの角度、アームレストの高さを調節でき、ベッドから車いすを分離することが可能だ。車いすは眠ることはもちろん、自動的に血圧や体温をはかる機能も搭載されている。パナソニックが開発した自立支援型起立歩行アシストロボットは高齢者の小さな動きを検知し、この情報に基づいて高齢者の状態を予測し、ベッドからトイレへの移動、ベッドからイスへの移動を支援する。内蔵のモーターが足りない力だけをアシストして、高齢者の自立的動作を支援するため、筋肉の衰えを防ぐことができる。医療者や介護者の負担を軽減し、被介助者にとっても福音といえる。トヨタが打ち出した4種類のパートナーロボットは、下肢麻痺で歩行が不自由な障害者の歩行を支援したり、起き上がるのが難しい障害者のベッドの上り下りやトイレへの移動を支援したりする。そのうちの1つでロボット脚を備えた「ウェルウォークWW‐1000」シリーズは、ロボット脚を膝下部分に装着し、ベルトで太もも、膝、足首、脚にしっかりと固定して、膝の曲げ・伸ばし運動を補助するものだ。ホンダが開発した歩行アシストは、バッテリーを内蔵した腰フレームを腰に巻き、下に伸びた大腿フレームを膝に固定する。利用者の動作に合わせ、モーターで歩行を支援する。利用者の脚の動きを検知して、約1キログラムの力で前後の移動を支える。特定の病気の患者の歩行を支援するだけでなく、高齢者の日常的な動作も支援することができる。日本には脳血管障害の後遺症やパーキンソン病により歩行が不自由な患者が40万人以上いる。こうしたロボットの登場は歩きたいと強く願ってきた人々にとってうれしいニュースだ。
●ロボットの応用は普及段階へ
 介護ロボットは日本のロボット研究の1分野に過ぎない。日本のロボット発展は短い揺籃期を経て、急速に実用期へ突入し、今では普及向上期に入った。日本はロボット産業に極めて大きな期待を寄せており、ロボットを日常生活、公共サービス、工業生産の中で人により近づいたツールにすることを目指している。日本政府は中小企業に対して積極的な経済的補助政策を打ち出し、小規模企業に出資してロボット応用の専門的な知識や技術を身につける指導などを行い、応用ロボットの一層の発展と普及を奨励し、ロボット産業に取り組む企業の積極性を高めている。日本政府の予測では、2020年には日本のロボット産業の規模は2兆6700億円を超え、12年の4倍以上になるという。日本政府が15年に発表した「ロボット新戦略」では「アクションプラン−五カ年計画」が制定され、製造業、サービス業、農林水産業、医療・介護産業、インフラ建設、防災などの主要応用分野をめぐって、ロボットの技術開発、標準化、実証実験、人材育成、ロボット規制改革の実行など具体的な行動が打ち出された。日本は各分野のロボット化推進を通じて、作業の効率と質を大幅に向上させ、製造業やサービス産業などの国際競争力を強化するとともに、「少子高齢化」がもたらす一連の問題の解決をサポートしたい考えだ。注目されているのが、日本のロボット研究の第一人者で「日本の現代型ロボットの父」などと呼ばれる石黒浩氏が、人間そっくりのアンドロイドの研究を続けていることだ。石黒氏によれば、「ロボットは人間を模倣しなければならない」という。なぜなら人の理想的な対話型インターフェースは人であり、人間の脳は人を認識することができ、人間にとって最良の対話方式は人と人との対話にほかならないからだ。そこで人間そっくりのアンドロイドを研究し、人と機械がいかに対話するかを研究している。人間との密な対話が必要な多くの分野では、アンドロイドなら暮らしのニーズにかなり応えられる。特に高齢者や子どもに医療行為や介護を行う場合は、アンドロイドなら利用者の世界に入っていけるという。石黒氏が指導する研究計画では、さまざまなタイプのアンドロイドと高齢者、子どもとの対話が行われている。石黒氏はかつて、「自分のチームが発見したのは、高齢者でも子どもでも、アンドロイドに反感を抱く被験者はいなかったということだ。アンドロイドは認知症や自閉症の患者の介護で、大きな役割を果たすことができると確信する」とも述べている。

*2-2:http://qbiz.jp/article/118392/1/ (西日本新聞 2017年9月9日) 拠点国内回帰進む キヤノン宮崎に新工場 カメラ生産九州に集約 自動化で競争力強化
 キヤノン(東京)が、宮崎県高鍋町にデジタルカメラ製造などを担う新工場を開設するのは、生産拠点の国内回帰の一環だ。同社の国内でのカメラ工場設立は、2008年の長崎キヤノン(長崎県波佐見町)以来。九州に生産拠点を集中し、カメラ組み立ての自動化などを進めた最新鋭の工場を新設することで、競争力を強化する。「カメラはできるだけ日本に残そうと、生産技術を磨いていた。為替が1ドル=100円以上(の円安)であれば採算に合う」。8日に宮崎県庁であった記者会見でキヤノンの御手洗冨士夫会長はこう強調した。同社は現在、カメラ工場を国内に4カ所、海外に3カ所展開。国内は全て九州で、大分県に2カ所、長崎県に1カ所、宮崎県に1カ所ある。キヤノンは国内生産を維持するなどの狙いから、生産の自動化によるコスト削減を進めてきた。16年には、大分キヤノン安岐事業所(大分県国東市)に、自動化に向けた生産技術の研究開発拠点となる「テクノ棟」を設立。九州をカメラ生産の本拠地と位置付けている。今後は、宮崎キヤノンが運営する新工場と、大分キヤノンや長崎キヤノンとの連携を進め、市場動向に伴う需要の変化にも、柔軟に対応できる生産態勢を構築するという。御手洗会長は「今は64〜65%が国内生産。高鍋ができれば70%になると思う」との見通しを示した。一方、新工場の進出先である宮崎県高鍋町の黒木敏之町長は「キヤノンが高鍋町に工場を建てることで、雇用やにぎわいが生まれ、知名度が上がり、町民みんなで歓迎している」と語った。宮崎キヤノン従業員の雇用が維持されることについて、同県の河野俊嗣知事は「全体の雇用が守られるということでありがたい」と話した。 
   ◇   ◇
●製造業回帰広がる
 日本の製造業は2012年ごろから国内回帰の動きが出始め、15年ごろから本格化した。パイオニアは日本市場向けのカーナビ製造の一部をタイから青森県十和田市の工場に移管し、ダイキン工業は中国企業に委託していた家庭用エアコン生産の一部を滋賀県草津市の工場に切り替えた。JVCケンウッドも高級ホームオーディオの生産をマレーシアから山形県鶴岡市の工場に移している。経済産業省の調査によると16年には海外生産を行っている製造業の11・8%が国内に生産を戻した。移管元は中国・香港が66%を占め、人件費の高騰が後押ししているという。

<エネルギーと自動車のイノベーション>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201707/CK2017070602000136.html (東京新聞 2017年7月6日) ドイツ環境相の寄稿全文 「脱原発通じて独は多くを学んだ」
 ドイツのヘンドリクス環境・建設・原子力安全相(65)が本紙に寄稿し、トランプ米大統領が地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」から離脱表明したことを受け、離脱に反対する米国の州による「米国気候同盟」と連携して引き続き米国を取り込み、温暖化対策での国際協力を進めていく考えを表明した。パリ協定履行に向け、トランプ政権との対立も辞さない決意を示した形だ。
   ◇
 一年あまり前に福島第一原発と周辺地域を訪れ、原子力の利用はいかに甚大なリスクを伴うのかを目の当たりにしました。二〇一一年三月十一日、海底地震が引き起こした津波は日本沿岸を襲い、広い地域が荒野と化し、二万人近い住民の方々が亡くなったり、行方不明になったりしました。その後の数日間に福島第一で起きた原発事故は大惨事となり、当時のドイツで、政治における考え方を根本的に改める契機となりました。ドイツ政府は、国内の原発の運転期間延長を決定したばかりでしたが、政策転換に踏み切り、原発八基の運転を停止し、残り九基も段階的に稼働停止することを決めました。これにより遅くとも二二年末にはドイツの全ての原発が停止することになります。この決定でドイツでは再生可能エネルギーが大幅に拡大しただけでなく、国内の政治論争が納得いく形で収束し、エネルギー政策、気候変動政策の将来のあり方が示されました。ドイツのエネルギーシフトは、同様の計画を進める他国にとってモデルケースとなるだけではなく、むしろドイツ自身が他の部門や業種で構造改革を行う際に役立つ多くのことを学んでいます。ドイツは五〇年までに温室効果ガスニュートラル(排出量と吸収量を相殺)を広範囲で実現しなければなりません。そのために必要な変革を社会とともに形づくり、新たなチャンスが生まれ、皆が社会的、経済的、そして環境的に持続可能な行動をとるようになることを目指しています。この枠組みを定めるのが、一六年末に、パリ協定履行のため長期戦略として策定された「地球温暖化対策計画2050」です。この計画は、経験から学ぶ過程を打ち立て、定めた道筋が削減目標達成のために適切かどうかを定期的に検証することを盛り込んでいます。また、計画は欧州連合(EU)の気候変動政策にも合致しています。ドイツの三〇年温室効果ガス排出削減目標の「一九九〇年比で少なくとも55%削減」も、EUの二〇三〇年目標のドイツ分担分に相当します。エネルギー需要を再生可能エネルギー源で全て賄うまでは、エネルギー部門で脱炭素化を推進するため、特にエネルギー効率を大幅に高める必要があります。これに関してドイツはこれまで日本から学び、今でも活発な交流を続けています。資源効率性の向上もまた、日本とドイツが協力して国際的に取り組んでいるテーマの一つです。日本との協力関係が、二国間でも、また先進七カ国(G7)、二十カ国・地域(G20)といった多国間の枠組みでも築けていることは非常にうれしいことです。昨年の「脱炭素社会に向けた低炭素技術普及を推進するための二国間協力に関する日独共同声明」は、長期的課題や温暖化対策のさらなる局面において、両国が共に進むべき道を示しています。米国政府がパリ協定からの離脱を決定したにもかかわらず、もしくは離脱決定があったからこそ、新たな協力関係が生まれています。ジェリー・ブラウン米カリフォルニア州知事とはつい最近、共同声明に署名を交わしました。知事は、パリ協定を順守するための州の組織「米国気候同盟」で主導的な役割を担っています。パリ協定は現米国大統領の在任期間を物ともせず存続し続けていくと、確信しています。ドイツは、特にフランスをはじめEU内で、そして日本、中国、インドとも協力し、地球温暖化対策をさらに推進したいと考えています。G7ボローニャ環境相会合の共同声明は、協力関係を国際的にどう展開していくのかを示しています。ドイツが議長国を担うG20でも必ずや野心的な成果が得られることでしょう。今年九月にドイツでは連邦議会選挙が行われます。どの政党が政権を担うことになっても、ドイツの温暖化対策の取り組みは変わることなく、場合によってはより野心的目標を掲げ継続されるのは間違いありません。ドイツの経済産業界も確固たる意志でこの政策を受け入れています。日本とドイツは将来も必ず、両国の温暖化対策技術をさらに進展させていくでしょう。(バルバラ・ヘンドリクス=ドイツ環境・建設・原子力安全相)

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/ASK950P7XK94UHBI03T.html (朝日新聞 2017年9月10日) 脱原発「当たり前」、緑の党の支持下落 ドイツ
 24日投開票のドイツ総選挙で、緑の党が「2030年までに全電力の需要を再生可能エネルギーで賄う」との公約を打ち出している。結党以来の主張だった「脱原発」が国の方針として定着。緑の党は支持率が下落傾向にあり、さらに野心的な公約を掲げて党勢回復を狙っている。ドイツでは再生可能エネルギーの発電割合が約3割だが、石炭火力も4割、天然ガスも1割を占める。公約では現在100以上ある石炭火力発電の設備のうち、効率の悪い20設備を即座に停止し、30年までに全て廃止する目標だ。再生可能エネルギーシフトには経済界から、「供給が不安定で、急速な拡大は経済活動に影響する」(ドイツ産業連盟のデニス・レントシュミット博士)との懸念があるが、緑の党のベルベル・ヒューン連邦議会議員は「蓄電池の開発や電力需要のコントロールで、安定化させることは可能だ」と強気だ。ドイツ政府は東京電力福島第一原発の事故をきっかけに、22年までの全原発停止を決めたが、今回の選挙では、議席獲得が予想される政党のうち、新興右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」を除くすべての政党が「脱原発」を前提として、再生可能エネルギーの拡大を掲げている。世論調査では、他政党も環境や気候保護をテーマにしているので「緑の党はもはや重要ではない」との意見に57%が「ほぼ同意する」と回答。新たな目標の設定は、存在意義をかけた闘いと言えそうだ。

*3-3:https://www.nikkei.com/article/DGXLZO21456050S7A920C1FFE000/ (日経新聞 2017/9/23) ガソリン車禁止でBYDトップ「中国の車、30年に電動化」、自社電池を外部供給
 中国最大手の電気自動車(EV)メーカーである比亜迪(BYD)のトップの王伝福・董事長(51)は日本経済新聞などのインタビューに応じ、中国市場からガソリン車が消える時期が2030年になるという見通しを示した。中国政府は9月上旬、将来ガソリン車を禁止する意向を表明し、時期は検討中としていた。政策立案にも関わる王氏の発言から今後、急拡大が予想される中国EV市場の内情を読み解く。王氏は21日のインタビューで、中国のガソリン車の廃止時期について「車種別に工程表を決めることになるだろう」と語った。具体的には「20年に公共バスが全面的にEVに代わり、25年にトラックなど特殊車両、30年には全ての車が電動化するだろう」と述べた。その上で、中国のガソリンは現在62%を輸入に依存していると指摘し、「国家の安全上、中国はどの国よりも早く(ガソリン車禁止の)期限を公表し、EVの拡大を急ぐ必要がある」と語った。英国とフランスは40年までにガソリン車などの販売を禁じる方針を示しており、王氏の見解通りなら、中国はそれより早く大きな転機を迎える。王氏は、中国EV最大手として「これまでも先頭に立ち、政府に(EVなどの)政策を提案し、政策を推し進めてきた」と強調。王氏の意向は今後のEV関連の新政策にも、強い影響を与えていくとみられる。実際、王氏は「我々の強みは中国の政策に精通していることだ」と語る。エコカー推進役として政府の信頼も絶大だ。すでに手厚い補助金の後押しを受け、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)の「新エネルギー車」(新エネ車=NEV)の販売は昨年、前年比7割増の9万6千台へと急激に膨らんだ。中国政府は今後、中国新車市場が25年に16年比で25%増の約3500万台に達すると予測する。そのうち20%以上を新エネ車とし、700万台の販売を目指す計画だ。普及のカギを握るのは政府が18~19年に導入を予定する「NEV規制」だ。中国でガソリン車を販売するメーカーに対し、販売量に応じて一定量の新エネ車販売を義務付けるものだ。これまで中国政府は、多額の補助金をほぼ自国メーカーのみに使い、市場を独占させてきた。一方、支援のない外資は中国で新エネ車の体制整備が遅れた。そのため厳しいNEV規制をクリアするには、市場をリードする中国のEVメーカーからクレジットと呼ばれる権利を購入しなければならないケースもある。NEV規制の建前は、あくまで環境規制の強化だ。だが実際は中国企業をクレジットでもうけさせ支援するものとも指摘され、外資から反発の声が上がるのが裏事情だ。BYDはNEVの導入後の3年間だけで、クレジット販売で少なくとも140億元(約2400億円)の利益を手にするという試算もある。そんな同社の株価は連日上昇し、香港証券取引所では21日終値は71.65香港ドルと、今月に入り53%も上昇する過熱ぶりだ。当の王氏も「NEV導入は政府の補助金支援に代わる新しい我々への(支援)政策と理解している。利益がどれだけかは不明だが、トップメーカーとして恩恵は受けるだろう」と語った。中国政府はNEVの導入で新エネ車市場の拡大と中国メーカーの後押しを一挙にもくろむ。16年の50万台から25年には700万台へ急拡大を見込んでいるが、課題は無いのか。これに対し、王氏は「電池生産には巨額投資が必要で、最大の今の課題は電池の供給能力だ。このままでは20年以降、市場全体で電池が足りなくなる」と指摘した。対応策として「すでに現在、複数社と合弁生産や自社で生産する電池の外部供給、協力体制について交渉中で、大きなプロジェクトになる」と明かした。さらに独ダイムラーとのEVでの提携関係も一段と強化し、「新モデルの投資を今後行う」とも述べた。政府はNEV規制導入の詳細を近く公表する。外資各社はその動向を固唾をのんで見守らざるをえない状況だ。

*3-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170910&ng=DGKKZO20957690Z00C17A9EA1000 (日経新聞社説 2017.9.10) 電気自動車時代の足音が近づいてきた
 電気自動車(EV)シフトの動きが世界的に高まっている。日産自動車はEV「リーフ」の初のフルモデルチェンジを実施し、西川広人社長は「日産のコアになる車」と表明した。米国ではテスラが50万台という破格の予約を集めた「モデル3」の納車を始めた。メーカーだけでなく各国政府もEVの普及に熱心だ。仏英両国は2040年までにガソリン車などの販売を禁止する「脱エンジン」の方針を打ち出した。中国やインド政府、あるいは米国でもカリフォルニアをはじめとする有力州がEVの普及を後押ししている。以前のEVブームは尻すぼみに終わったが、今回は本物だろう。日本としてもここで競争に負けて、基幹産業の自動車を失うわけにはいかない。EV化の波を「脅威」ではなく、電池の部材や車の新素材、関連する電子部品など幅広い産業を浮揚させる「好機」ととらえ、変化を先取りしたい。ただ、いたずらに慌てる必要はない。携帯端末の世界では、スマートフォンがいわゆる「ガラケー」に取って代わるのに10年もかからなかったが、車の動きはもっとゆっくりだろう。米金融大手のゴールドマン・サックスは2040年時点でも世界の新車販売におけるEVの比率は32%にとどまり、エンジン車の45%を下回ると予測する。電池の性能向上や量産体制の確立、さらにリチウムやコバルトなど電池に使用される金属資源の増産にはかなりの時間が必要になる。使用済み電池のリサイクル技術の確立も未解決の課題だ。とはいえ変化の波は確実に押し寄せる。過去100年続いた「エンジンだけが車の動力源」だった時代が終わる衝撃は予想以上に大きいかもしれない。独自動車工業会などは「エンジンがなくなれば、ドイツ国内で60万人以上の雇用が影響を受ける」と試算した。日本でも「脱エンジン」の加速で、一部の自動車部品メーカーなどが痛みを被る恐れはある。こうした負の側面の一方で、EV化は電子部品や軽量な炭素繊維などの需要を広げるだろう。EVは自動運転技術との相性がよく、機械が人の運転手をサポートすることで、交通事故が大幅に減る可能性もある。そして何より排ガスがゼロになるので、新興国を中心に大気汚染に苦しむ地域には朗報だ。EV時代の足音を、冷静に前向きに受け止めたい。

*3-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170910&ng=DGKKZO20925630Y7A900C1MY1000 (日経新聞 2017.9.10) スマホ・車 どこでも充電、置くだけ 走るだけ 感電なし
 電線を使わずに電気を送るワイヤレス(無線)給電が身近になりつつある。電動自転車などに電気を供給する国内初の実験が始まったほか、人気スマートフォン(スマホ)の最新型にも搭載されるとみられている。宇宙空間でつくった電気を地上へ送る研究もある。いつでもどこでも電気が充電できる「電線のない社会」が実現するかもしれない。京都府南部に位置する精華町役場。今年3月、新しい電動自転車が登場した。見た目は普通の自転車だが、前カゴに板状の受電装置があり、専用の送電装置の前に駐輪すると無線を受けて充電できる。無線は電子レンジにも使うマイクロ波を使う。充電は安全面を考慮し職員がいない夜間だけ。1回の充電で約25キロ走れる。同町は研究所が点在する関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)があり、業務に自転車は欠かせない。森田吉弥健康推進課長は「重いバッテリーを取り外す手間が省けて便利だ」と話す。同町では5月、役場の5階にある企画調整課内の壁に貼り付けた温度計へ無線給電する実験も始めた。配線が難しい壁近くの温度が簡単に分かり、空調を管理しやすい。得られたデータは高齢者施設で入居者の体調などを把握するセンサーの開発に役立てる。これらの装置は京都大学と三菱重工業、パナソニックが共同開発した。いずれも政府の国家戦略特区で電波法の規制緩和を受けた国内初の実証実験だ。篠原真毅京大教授は「無線給電の普及に向けた大きな一歩になる」と強調する。電気自動車(EV)も無線給電の用途として期待されている。三菱電機は2つのコイルの間で磁界の変化を介して電気を伝える「電磁誘導方式」で、高効率の無線給電装置を開発した。「自宅に設置した太陽光発電との間で、電気を簡単に融通できる」(同社)。英国の高速道路では、走行しながら充電できる専用レーンの計画も進む。EVと無線給電の組み合わせにより、燃料補充の心配がない、新しい自動車社会が誕生しそうだ。実用化が先行するのは携帯電話だ。電磁誘導方式を採用する。普及を後押しするため、中国語で「気」の意味を表す「Qi(チー)」という規格が2010年に始動した。世界の携帯機器や自動車のメーカーなど約240社が、同規格を運営するWPCという団体に参加している。欧米を中心に、互換性のある製品が200点近く市場に出ている。今年2月には、米アップルがWPCに加盟した。9月12日に発表するスマホ「iPhone(アイフォーン)」の新型に同規格による機能が搭載されるとみられている。篠原教授は「無線給電の知名度が一気に上がる」と期待する。Qiの送電能力は現在15ワットまで。60ワット、120ワットと能力を上げていく計画だ。能力が高まれば携帯電話から照明やテレビ、パソコン、掃除機まで用途が広がる。家庭から電源コードがなくなるかもしれない。同規格の日本代表を務めるロームの鈴木紀行通信スマートデバイス課長は「新サービスが生まれたり、生活が便利になったりする」と話す。コンセントが要らず、水にぬれても感電の心配がないため、喫茶店のテーブルに置くだけで充電したり、屋外の自動販売機などから電気をもらったりもできる。充電機能を売りにした机や照明機器、カバンなども登場しそうだ。こうした商品が身の回りにあふれれば、「充電」という意識すらなくなるかもしれない。地球規模の研究も進んでいる。京大の石川容平特任教授は宇宙空間で太陽光により発電し、地上に送る「宇宙太陽光発電」技術の実現を目指している。静止軌道に浮かべた太陽光パネルで電気をつくって、海中に設けた装置にマイクロ波で送り、いったん蓄えた後に、陸上へ送電する構想だ。石川特任教授は「世界全体を網羅して安定的に電力を供給する全く新しい送電網が実現できる」と力を込める。大きな期待が集まる無線給電にも課題はある。一つは安全性だ。電磁波の人体影響に詳しい京大の宮越順二特任教授は「長期の評価はまだ十分ではない」と指摘。篠原教授と協力し今年度からマイクロ波による影響研究を始める。もう一つは電波を扱う規格だ。携帯電話使用時に発生する電磁波との干渉が指摘されている。普及には電波法を見直す必要があるが、日本は欧米に比べて出遅れており、国内メーカーは危機感を抱く。無線技術の進歩で生まれた携帯電話はこの数十年で、ビジネスや生活スタイルを大きく変えた。「第2の無線技術」といえる無線給電が普及すれば、新たな経済社会が生み出されるだろう。

<医療のイノベーション>
PS(2017年10月4日追加):医療もイノベーションを繰り返してきた伝統産業と言えるが、私は衆議院議員時代(2005~2009年)に再生医療を進め、日本は世界でリーダーになれるかに見えたが、*4-4のSTAP細胞はじめ、日本ではiPS細胞以外の研究は嘘か邪道であるかのような批判をして排除するようになったため、またまた先端研究が世界に遅れ始めている。
 例えば、*4-1のような体性幹細胞を利用した臨床研究は、皮膚などの体細胞に遺伝子を導入することがないためiPS細胞よりも問題が少なく、外国では進んでいるのだが、日本では手術や抗癌剤治療や放射線治療などで既に造血機能が低下したり免疫機能が損傷したりしている患者にしか適用されないので、効果が低い。
 また、臍帯血にも生命力あふれる元気な幹細胞が含まれているが、*4-3のように、臍帯血を違法に患者に移植していたとして医師ら6人が再生医療安全性確保法違反の疑いで逮捕され捜査されるのだそうだ。しかし、“違法”とはいっても、法律が医学研究より先を行くわけではないため、これでは日本で先進医療やその研究を行うのは医師にとっては危なすぎることになり、頭脳流出の原因になるだろう。また、治療による深刻な副作用であれば、現在の癌の標準治療の方がむしろすさまじいため、これらに関する検証は、抗癌剤を作っている薬剤会社の側に立ちがちな厚労省だけでなく、本当に公正に比較できる学者組織が行うべきである。
 さらに、*4-2のように、厚労省は癌の免疫療法に有効性を認めず実態調査をするそうだが、最も安全で賢い治療方法は、もともと体が持っている免疫機能を利用したり、それを強化したりして治すことであるため、「患者自身のリンパ球を使うものや癌ワクチンなどは科学的な効果が確立されていない」などとして研究や治療を禁止するのではなく、研究者に必要なバックアップを行って安定した結果を出せる治療法を確立すべきである。そして、文系出身の役人も、こういう知識を持って、知識に基づき正しい判断ができる教育をしておくことが必要だ。

*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13104676.html (朝日新聞 2017年8月27日) (科学の扉)体性幹細胞、変える治療 再生医療の研究、iPS・ESに先行
 自分の体の中に存在し、骨や神経など特定の組織を再生する能力を持つ体性幹細胞(組織幹細胞)を利用した臨床研究が、iPS細胞やES細胞に先行している。従来の治療をどのように変えていくのだろうか。幹細胞は、体を構成する様々な細胞に変化する分化能と、自分と同じ細胞に分裂できる自己複製能を併せ持つ。中でも、受精卵の中にある細胞を取り出して作るES細胞や、皮膚など体の細胞に遺伝子を導入して作るiPS細胞は、体の中のどんな細胞でも作り出せ、多能性幹細胞と呼ばれる。一方、幹細胞のうち、体の中に元々存在し、決まった組織や臓器の中で働くのが体性幹細胞だ。傷ついて古くなった細胞を入れ替えたり、病気やけがで失われた細胞を新しく補ったりする役割を担う。体性幹細胞には、赤血球や白血球などの血液をつくる造血幹細胞、神経系をつくる神経幹細胞、骨や軟骨、脂肪などへの分化能がある間葉系幹細胞などがある。幹細胞の機能を使った再生医療では、安全性の評価などに課題があるiPS細胞やES細胞に比べ、体性幹細胞の研究が実用化に近づいている。札幌医大の研究グループは2014年、脊髄(せきずい)を損傷した患者に、自分の骨髄液から分離した間葉系幹細胞を静脈内に投与して神経を再生させる臨床試験(治験)を開始。神経や血管系に分化する能力を持つ間葉系幹細胞は骨髄細胞の中に0・1%程度含まれる。これを1万倍に増やし細胞製剤にして点滴すると、患者の体内で傷ついた神経に細胞が集まり、その働きを取り戻すことが期待されている。国は16年に「高い有効性を示唆する結果が出ている」として、承認審査の期間を短縮する「先駆け審査指定制度」の対象に指定し、治験も終了。同大は、骨髄の間葉系幹細胞を脳梗塞(こうそく)患者に静脈投与し、後遺症の軽減を目指す治験も進めている。
■「親知らず」活用
 ただ、患者自身の幹細胞を使う方法は、摘出する際に体へ負担がかかり、培養に時間やコストがかかる問題もある。そこで、他人の良質な幹細胞を大量に培養し、必要な患者の治療に使う方法も研究されている。東海大の佐藤正人教授(整形外科学)は、ひざの軟骨がすり減る変形性膝(しつ)関節症の8人を対象に、患者自身のひざから取りだした軟骨細胞を培養したシートを患部に貼り付け、軟骨を再生させる効果が全員にあったことを確認した。細胞シートが特殊なたんぱく質などを出して、ひざの骨にある骨髄由来の間葉系幹細胞を活性化し、軟骨が再生すると考えられるという。今年2月からは、先天的に指が6本ある多指症の赤ちゃんから、手術で切除した指の軟骨の提供を受け、細胞シートに培養して患者に移植する臨床研究を始めた。佐藤さんは「軟骨は他人の細胞でも拒絶反応が起こりにくい。乳児の細胞は増殖能力が高く、修復を促す成分も多い」と話す。抜歯後に捨てられていた「親知らず」が歯周病の治療に役立つ可能性も見えてきた。東京女子医大の岩田隆紀准教授(歯周病学)は歯の根と周囲の骨(歯槽骨)の間にある歯根膜に着目した。歯根膜は間葉系幹細胞が豊富に存在し、骨の再生を促す役割があるが、歯周病の患者では部分的に失われている。そこで、抜歯した親知らずから歯根膜を採取して培養した細胞シートを歯の根元に移植し、骨の欠損部に一緒にいれた骨補填(ほてん)材(リン酸カルシウム)が骨に置き換わって周囲の骨を再生させる方法を考えた。重い歯周病10人を対象に患者自身の親知らずを使った臨床研究では、骨が平均で約3ミリ回復した。すでに、20代前半の健康な人の親知らずから細胞シートを作り、患者に移植する研究の準備を進めている。岩田さんは「1本の歯から約1万人分のシートができる。大量生産することでコストの大幅な削減が見込める」と言う。
■商品化、ごく一部
 再生医療の「治療薬」はごく一部で商品化されているが、研究の多くは安全性や有効性の確認を進めている段階だ。ロート製薬と新潟大の寺井崇二教授(消化器内科学)は7月、他人の脂肪組織に含まれる幹細胞を培養し、肝硬変の患者に点滴する治験を開始すると発表した。肝硬変は、肝臓の組織が炎症を繰り返して硬くなる「線維化」を起こす。マウスの実験で、脂肪由来の幹細胞を投与すると線維化が改善したため、治験をすることになった。寺井さんは「脂肪の採取は体への負担が比較的軽く、美容整形などで余っているものが入手しやすい」と話し、20年度の承認を目標としている。沖縄県は今月、再生医療の産業化を進める目的で、「脂肪幹細胞ストック事業」を琉球大などに委託することを決めた。琉球大医学部や再生医療ベンチャーのセルソース(東京都)の加工施設で、医療機関から提供された脂肪組織から幹細胞を抽出し、長期的にストックする技術を構築することを目指す。琉球大の清水雄介特命教授は「脂肪幹細胞の性質は個人ごとに大きな差があり、治療に適したものを選ぶ方法も確立していない。まず多くの細胞をストックして、個人ごとの異なる性質を解析することが不可欠だ」と課題を挙げる。
<治療法確立の分野も> 体性幹細胞による再生医療としてすでに治療法が確立しているのが、白血病などの治療における造血幹細胞移植だ。抗がん剤や放射線治療によって骨髄の造血機能が損傷した患者に、正常な造血幹細胞を移植して回復させる。骨髄液を採取して患者に移植する骨髄移植は1970年代に開発された。造血幹細胞はほかにも、特別な薬を投与すると全身の血液に流れ出す末梢(まっしょう)血幹細胞や、赤ちゃんと母親を結ぶ臍帯(さいたい=へその緒)と胎盤の中に含まれる臍帯血にも含まれており、それぞれ移植に使われている。

*4-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13164507.html (朝日新聞 2017年10月4日) がん「免疫療法」、調査へ 厚労省、拠点病院など434カ所 効果、不確かなケースも
 厚生労働省はがんの「免疫療法」について、有効性が認められておらず、治療費を患者が全額負担する治療があるとして、初の実態調査をすることを決めた。対象は、地域のがん医療の中心となるがん診療連携拠点病院など434カ所。加藤勝信厚労相は3日の閣議後会見で「どういう形で実施しているのか、速やかに調査したい」と話した。免疫療法は、体内の異物を攻撃して排除する免疫のしくみを利用して、がんを治すことを目指すもの。オプジーボなどの新しいタイプの薬・免疫チェックポイント阻害剤は、一部の進行がんで保険適用されている。一方、患者自身のリンパ球を使うものやがんワクチンなどは科学的な効果が確立されていない。研究目的の臨床試験でなければ、治療費は全額患者負担となる。こうした自由診療は民間クリニックだけでなく、国が指定するがん診療連携拠点病院でも実施し、多額の費用を患者が払うケースもあるという。国立がん研究センターの若尾文彦・がん対策情報センター長は「効果が確認されていないことなどの説明を十分せずに患者側の期待をあおり、多額のお金を使わせるのは問題だ」と指摘する。厚労省は、どれだけの拠点病院が免疫療法を実施しているかや安全管理体制などについて調査する。

*4-3:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/461079 (佐賀新聞 2017年9月6日) 無届け臍帯血移植、患者保護へ規制を見直せ
 他人の臍帯血(さいたいけつ)を違法に患者に移植していたとして、医師ら6人が再生医療安全性確保法違反の疑いで逮捕された。リスクが高い医療行為であるにもかかわらず、厚生労働省が認めた委員会で審査を受け、同省に届け出るという定められた手続きを踏まなかったというのが直接の容疑。安全性に問題がある移植が行われていた疑いも指摘されている。捜査で実態を明らかにするとともに、安全性や有効性に問題がある類似の医療行為から患者を守るため、再生医療に関する現行の規制や患者への情報提供の問題点を洗い出し、早急に対策を進めるべきだ。臍帯血は、赤ちゃんのへその緒や胎盤から採取される血液で、さまざまな血液細胞に成長できる幹細胞を多く含む。臍帯血移植は白血病などの治療法として確立しているが、容疑者らは、別のがんの治療や美容目的など、効果未確認の移植を行っていたとされる。再生医療安全性確保法は2014年施行。自由診療で幹細胞の移植を受けた患者が死亡した問題などをきっかけに検討が進み、今回が初の刑事摘発だ。同法がなければ、医師と患者の合意の下で行われる自由診療に当局のメスが入ることは、深刻な健康被害が明らかになるなどしない限り考えにくかった。法は一定の役割を果たしたと言える。一方で、現行の規制に深刻な不備があることもはっきりした。移植に使われた臍帯血は、09年に経営破綻した民間の臍帯血バンクから流出したものだとされる。国内には、白血病患者らの治療に使うため、産婦から任意で提供を受けた臍帯血を保存する公的バンクが複数ある。これらは法に基づく許可制で、臍帯血の品質確保のための基準もあるが、他人への移植を前提とせずに有償で臍帯血を預かる民間バンクは規制の対象外。破綻時の対応も業者任せで、保管方法に問題があれば、健康被害に結びつく可能性がある。日本で人工多能性幹細胞(iPS細胞)が開発されたこともあり、再生医療の研究は国が積極的に推進し日々のニュースにも登場する。それだけに患者の期待も膨らむが、多くの再生医療はまだ研究段階にあり、長期の効果やマイナス面ははっきりしていない。そうした現状での大きな問題は、再生医療と称し患者に提案される個別の自由診療の安全性や有効性について、患者自身が判断できる材料が非常に乏しいことだ。再生医療安全性確保法は「認定再生医療等委員会」と呼ばれる委員会が治療計画を事前に審査することで一定の安全性などを担保する仕組みだが、委員会の審査の質にはばらつきがあることや、治療後のフォローが十分なのかといった疑問も指摘されている。改善が急務だ。患者が自由診療の具体的な中身を他の医療機関と比較することも難しい。厚労省は、再生医療に携わる医療機関の情報提供を、患者に役立つ形に見直す必要がある。日本再生医療学会は、一般の人から再生医療の相談を受け付ける窓口を開設する方針を決めた。これも実施を急いでほしい。患者が相談したり、疑問を寄せたりしやすい仕組みを常設することは、患者を助けるだけでなく、問題ある医療機関の情報を、学会や当局が把握するにも有益だ。

*4-4:http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48272 (「週刊現代」2016年3月26日・4月2日合併号)小保方さんの恩師もついに口を開いた!米高級誌が報じたSTAP騒動の「真実」
 小保方さんは間違っていたのか、それとも正しかったのか—アメリカの権威誌に掲載された記事には日本で報道されていない新たな証言が書かれていた。世界中が彼女に注目し始めている。
●すさまじい駆け引き
 「私は、STAP細胞は正しい、確かに存在すると100%信じたまま墓場にいくつもりだ」。こう語るのは、小保方晴子さん(32歳)の恩師、アメリカ・ハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授だ。バカンティ氏は、小保方さんが発表し、後に撤回された「STAP細胞論文」の共著者でもある。小保方さんが、自らの言葉で綴った手記『あの日』が、海の向こうでも話題になっている。アメリカで有数の権威を持つ週刊誌『NEW YORKER』(ニューヨーカー)の電子版に、一連のSTAP騒動を検証する記事が掲載されたのだ。筆者は、アメリカ人のデイナ・グッドイヤー女史(39歳)。'07年まで『ニューヨーカー』の編集者として勤務し、その後、ノンフィクション作家として独立した人物である。冒頭のバカンティ氏の言葉は、グッドイヤー女史のインタビューによって騒動以降、初めて明らかになったものだ。在米の出版社社員が現地の様子について語る。「バカンティ教授が取材を受けたのも『ニューヨーカー』だからこそです。それくらいこの雑誌で記事が組まれることはステータスでもあるんです。この記事を掲載するに当たって編集部は約半年にもわたり、準備をしたそうです。かなり気合が入った記事であることは間違いない。小保方さんが手記を出したことで、世界が再び彼女に注目しています」。『ニューヨーカー』はアメリカ雑誌界の最高峰に君臨。読者層は知的好奇心が高く、「高級で権威がある雑誌」と認識されている。紙の雑誌の発行部数は100万部以上。電子版も好調で、こちらも100万人以上の会員数を誇る。一本一本の記事が丁寧に書かれている総合誌で、非常に読み応えがあるのが特徴だ。小保方さんに関する記事のタイトルは「THE STRESS TEST」。幹細胞研究の世界はまさに陰謀、欺し合いが錯綜している。そこに細胞に対して行う「ストレス・テスト」を引っかけ、ストレスに弱い者は、科学界で生き残れないことをこの記事は示している。グッドイヤー女史は日本中を巻き込んだ「STAP」騒動をどう分析しているのか。まず小保方さんの登場について記事ではこう書かれている。「この仕事(STAP)の背後にいた『革命児』が小保方晴子であった。彼女は男性中心の日本の科学界に女性として一石を投じた。彼女は他の女性に比べて、男たちとの駆け引きの中で生きることに長けていた。そして独創的な考えの持ち主であると賞賛されていた」(『ニューヨーカー』より・以下カッコ内は同)。その小保方さんを引き上げた人物こそ、バカンティ教授だった。「小保方がバカンティ教授の研究室にやってきた時、バカンティはすぐに『彼女にはopen‐minded(心の広さ、進取の気性に富む)と、明敏さがある』ことに気づいた。ただしバカンティは当面、細胞にストレスを与えると幹細胞を作り出す可能性があるという仮説を伏せておいた。彼がもっとも避けたかったのは、留学生が自国に戻って、他の誰かの研究室で彼女のアイディアを展開することにあった。バカンティは私にこう言った。『私の主な懸念は、我々はハルコを信用できるのかだ』と」
●「彼女には才能がある」
 だが、バカンティ氏の懸念は杞憂に終わる。小保方さんは彼の研究室で信頼を高めていった。「小保方の下でリサーチ・アシスタントとして働いたジェイソン・ロスはこう言った。『彼女がいかに才能があるかは、誰もが分かった。ハルコのような才能のある人はそう多くはいない』。それに対して小保方はこう返した。『日本では女性研究者は二流です。たとえ年下の大学生でも、男性が必要としたら、女性は顕微鏡を使うのを諦めないといけません』」。やがてバカンティ教授の元での短期留学を終えた小保方さんは、日本に帰国し、'11年に理化学研究所(CDB)の研究員に。そこで「STAP騒動」のキーパーソンである若山照彦教授のチームに所属する。そして本格的にSTAP細胞の研究に取り組んでいく。「生物学者の山中伸弥がノーベル賞を受賞したとき、CDBの研究者たちの野心は奮い立った。CDBのチームは、自分たちの発見が山中の発見と張り合う、いや山中の研究をobsolete(時代遅れ、廃れた)にしてしまうとまで考えた」。その一方で、当時の小保方さんについては、「小保方はCDBでの昇進は早かったが、うまく適応できてなかった。アメリカ的になっていたので、元同僚たちによると小保方は、日本の研究所の厳格なヒエラルキーにイライラしているように見えた」。と記している。'12年、STAP細胞発見への意欲を見せる小保方さんのもとにもう一人の協力者が現れる。それが騒動中に自殺した笹井芳樹・元CDB副センター長だった。笹井氏のもとで、小保方さんは論文を再構築する。そして'14年、ついに世界的権威を持つ科学雑誌『ネイチャー』にSTAP論文が掲載される。日本のメディアは割烹着姿で顕微鏡をのぞき込む小保方さんを「リケジョの星」、「ノーベル賞級の発見」と煽り持ち上げた。だが、風向きが急速に変わり始める—。「ブランドン・ステルという名の神経科学者が'12年に創設した『PubPeer』というオンライン・フォーラムがあり、そこでは誰もが科学論文を分析して議論することができる。STAP論文は彼らにとってまさに、好奇心をそそる材料であった。2週間も経たないうちに、匿名のユーザーが論文に掲載された画像の2つがほとんど同一のものであることに気づいた」。STAP論文の発表は世界に衝撃を与えると同時に、世界中の研究者からの検証にさらされることにもなった。これこそが「ストレス・テスト」なのだ。このテストにバカンティ氏と小保方さんは耐え抜くことができなかった。「ハーバード大学の科学者でボストン小児病院の幹細胞移植のディレクターであるジョージ・ダレイは私にこう言った。『当時、世界中の私の同僚たちは、お互いにメールをしあって、おーい、何が起きているんだ。うまくできたか? 誰も成功してないのか、と言い合っていた』」
●今も信じている
 グッドイヤー女史によると、ダレイは「STAPは幻想である」ことを立証するための論文を『ネイチャー』に発表する準備を始めたという。さらにダレイは2回にわたって、バカンティ氏に間違いを諭そうとしたが、無駄に終わったという。「ダレイは私に『バカンティは自分が正しいと思い込んでいる』と言った。そして、昨年の9月、『ネイチャー』はダレイのSTAPに関する論文を掲載した。そこには小保方の主張を正当化すべく7つの研究室が再現をしようとしたが、すべて失敗したと書かれていた。この論文の共著者であるルドルフ・イェーニッシュは、遠慮することなく私にこう言った。『小保方が若山にいろいろ混ざった細胞を渡したことは明らかだ。若山は彼女のことを信じてそれを注入した。そして美しいキメラができた』」。バカンティ氏は一度、小保方さんに「データの捏造はしてないのか」と尋ねたが、小保方さんの答えは、「それならこんなに時間をかけて実験はしない」だったという。さらに記事の中には、バカンティ氏は論文撤回後もSTAP細胞作製に向け、いまも研究を続けていると書かれている。断っておくが、『ニューヨーカー』に掲載されたこの記事は、誰が正しいと断定はしていない。あくまでそれぞれの当事者に取材し、主張を丁寧に拾ったものである。騒動以降、口を閉ざしたままだったバカンティ氏が、今も小保方さんを信じ続けていることは、この記事を読めば十分に伝わってくる。筆者のグッドイヤー女史は今回、記事を書くにあたって小保方さんとメールでコンタクトを取ったことを明かしている。「小保方は『私はスケープゴートにされた』と書いてきた。『日本のメディアはすべて、若山先生が犠牲者で、私がまったくのろくでなしと断定した』とも」。小保方さんは今、どんな思いで、何を考え、日々を過ごしているのだろうか。


<エネルギーから考えた街づくりのイノベーション>
PS(2017/10/6追加):*5-1に「①経産省は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度で、太陽光発電のさらなる価格引き下げを行い、最終的には10円前後を目指して、今後は競争を通じて民間で自律的に市場を拡大していくよう促す」「②小規模な発電にも入札対象を広げることを検討する」「③太陽光発電の導入費用は、日本が1キロワットあたり約30万円と欧州の2倍であるため、事業者には安価で質の高い設備などの一層の技術革新が求められる」と書かれている。この①②③については、最初に太陽光発電を導入した事業者には普及を促す目的で高い買取価格を20年間保障し、普及後は次第に市場に委ねる方法が正しい。にもかかわらず、最初に太陽光発電を発明した日本では、普及が遅れて技術が進まず、欧米の5~10円/kwhに及ばない状況となっているのは、油断と妨害の結果である。なお、電力のコストは「賦課金」ではないため、記者は原価計算を踏まえて正確に議論すべきだ。
 また、*5-2には、「①柏崎刈羽原発6、7号機に原子力規制委員会が安全審査に事実上の『合格』を出し、再稼働にようやく動き出した」「②日本では再生エネでベースロード電源を担うのは難しい」「③原発1基再稼働させれば同規模の火力発電に比べてコストは年350億~630億円、二酸化炭素(CO2)排出では260万~490万トンを減らせる。」「④政府は原子力の総発電量に占める割合を2030年度に20~22%とはじく」などが書かれている。しかし、原発に絶対安全はなく、事故を起こせばCO2どころではない公害を引き起こし、使用済核燃料の最終処理まで考慮すれば発電コストは最も高いため、①②③④こそ、環境後進国日本の思考停止による見解だ。そして、再生可能エネルギーの制約として書かれている内容は、使用済核燃料の処理よりもずっと簡単に解決でき、外国では既に実践されているものである。そのため、分散発電を前提とした良質で安価な機器が増え、それを使った街づくりが進めば、100%再生可能エネルギーによる電力社会は、石炭から石油に転換したよりも早いスピードで来るだろう。

*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21969410W7A001C1MM0000/?n_cid=NMAIL004 (日経新聞 2017/10/6) 太陽光買い取り価格、さらに下げ 18年度20円弱に
 経済産業省は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)で、太陽光発電のさらなる価格引き下げに乗り出す。2018年度にも産業用の買い取り価格を現在の1キロワット時21円から同20円弱とする見通しで、最終的には10円前後を目指す。再エネの導入拡大に向け国が手厚く支援してきたが、今後は競争を通じ、民間で自律的に市場を拡大していくよう促す。FITは再エネでつくった電気を大手電力が一定期間、同じ価格で買い取るよう国が定めた制度。参入事業者が収益性を見通しやすくする目的で、12年度に導入した。経産省はこのほどFITに関する有識者会議「調達価格等算定委員会」で18年度以降の見直しに向けて議論を始めた。年度内に結論を出す。12年度に制度を導入した際の産業用の買い取り価格は1キロワット時あたり40円だったが、産業用は17年度は21円となっている。また、同省は17年度からは2千キロワット以上の大規模な太陽光発電に対し、欧州などで普及する入札制を導入し、さらなる価格下げを促している。今秋に予定する初の入札の結果を踏まえた上で、現在21円の入札上限価格についても今後、引き下げるほか、より小規模な発電にも入札対象を広げることを検討する。太陽光の普及が進み、入札制が多い独仏、米国などは1キロワット時あたりの太陽光発電による電力価格は5~10円が相場で、日本の半分から4分の1と低い。経産省が太陽光発電の導入費用を調べたところ、日本は1キロワットあたり約30万円と欧州の2倍に上る。事業者には安価で質の高い設備の導入など、一層の技術革新が求められる。より発電効率の高い太陽光パネルやパワーコンディショナー(電力変換器)を使ったり、効率的な保守管理サービスを利用したりする必要がある。再エネ導入を加速させるためFITで手厚く支援してきて、太陽光の普及は進んだ。しかし事業者側のコスト競争力はまだ低い。経産省幹部は「日本でも大幅なコスト削減を進め、競争力のある電源にしていく」とし、買い取り価格の引き下げや入札制度の導入で、太陽光関連事業者の「自立」を促す。同省は太陽光に限らず、風力、水力、バイオマスなど他の電源でも価格の引き下げを進める方針だ。FITの背後で高まる消費者負担に配慮する面もある。標準家庭が月々の電気代で負担する再エネ促進のための「賦課金」は、17年度で686円と、12年度の57円から跳ね上がった。30年度には1千円を超える見通しで、対応を迫られている。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171006&ng=DGKKZO21827100T01C17A0EA1000 (日経新聞 2017.10.6) 環境後進国ニッポン(下)思考停止 もう許されない
温暖化対策と安定的な電力供給を両立する原子力発電は過度な依存を望めない。一定量の電力を低コストで安定供給できるベースロード電源の議論は堂々巡りが続く。
●再稼働弾み期待
 東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)。原子力規制委員会が安全審査に事実上の「合格」を出し、再稼働にようやく動き出した。事故を起こした福島第1原発と同じ「沸騰水型」で初の合格内定。経済産業省は同型原発の再稼働に弾みがつくと期待する一方で、「東電を適切に指導したい」と気を引き締める。同意が必要な地元の反応はなお厳しい。1年前の選挙に勝って新潟県知事に就いた米山隆一氏。福島原発事故の県独自の検証が済むまで認めない立場に固執し、3年ほどかけるという。東電は理解を得る活動を急ぐ。政府が報道各社の世論調査を分析したところ、福島事故直後から今まで「再稼働賛成1に対し反対2」の構図のままだ。経産省は原発再稼働をベースロード電源と位置づける。1基再稼働させれば同規模の火力発電に比べ、コストは年350億~630億円、二酸化炭素(CO2)排出では日本全体の0.2~0.4%にあたる260万~490万トンを減らせる。政府は原子力の総発電量に占める割合を2030年度に20~22%とはじくが、16年度は2%。経産省によると、目標達成には全国にある42基のうち30基程度の再稼働が要る。12基が安全審査を待つが、達成はなかなか厳しい。老朽化による廃炉かリプレース(建て替え)かの判断を迫られる原発も出てくる。同省幹部は「30年以降、原発の新増設がなければ20~22%は維持できない」と語る。想定する水準を確保できなければどうするのか。今の総発電量に占める再生エネの割合は15%(大規模水力含む)。30年度は原子力より高い22~24%になるとみる。ただ天候や日照時間に左右される太陽光や風力は電力が安定しない。国境をまたいで送電網がつながる欧州では、再生エネの普及するドイツと、原発大国のフランス間で電力の融通が成り立つ。現時点の日本では再生エネでベースロード電源を担うのは難しい。地球環境産業技術研究機構(RITE)の秋元圭吾主席研究員は「再生エネの普及と技術の革新を進めながら、火力と原子力を使うのが現実的」と話す。再生エネの不安定さを液化天然ガス(LNG)火力で調整して、発電量を安定させられる。
●地熱は10年停滞
 ベースロード電源の可能性を秘めた再生エネもある。火山国、日本で資源豊富な地熱発電だ。世界3位の約2300万キロワットの資源量があるとの試算があり、日本の電力の総設備容量の約1割にあたる。だがここ10年間は50万キロワット超で大きく変わらず、ニュージーランドやアイスランド、トルコ、ケニアに抜かれた。停滞の理由は内向きの事情だ。適地の8割が国立・国定公園内にあり、景観との兼ね合いで慎重論との一進一退になりがち。温泉地に重なり関連業者の懸念もある。環境を論じるには温暖化と密接に関わるエネルギー政策が欠かせない。衆院選でも争点となり、希望の党代表の小池百合子東京都知事は30年までの原発ゼロを主張。それなら代替エネルギーを示すべきだ。東日本大震災で原発を軸とする構成が壊れて6年半。思考停止を乗り越え、エネルギーの将来像を議論する時だ。

<農林漁業のイノベーション>
PS(2017年10月8日):*6-1に、「①地方銀行による農林業への融資残高が2017年3月末時点で約5400億円に上り、資金需要は拡大傾向」「②各行は農家への助言強化や農家が生産から流通までを手掛ける『6次産業化』を後押しするサービスを拡充し、需要の取り込みに躍起」「③強い農業には生産技術に加え、生産計画や財務管理といった企業経営で求められるノウハウが必要だ」と書かれている。農林漁業のイノベーションにも資金が必要であるため、①のように銀行が融資先として認識し始めたことはよいことで、②③に述べられている農林漁業の経営管理は非常に重要だが、無理に融資して貸しはがしすることにならないよう、銀行も情報収集力や人材を活かして農林漁業の得意先と一緒に育って欲しい。
 このような中、*6-2のように、「森林環境税(仮称)」を財源に市町村が管理の行き届いていない森林を整備し、担い手への集積・集約化を進める仕組みの構築を目指すとのことだが、CO2を吸収するのは森林に限らず、環境を汚している主体からはそれに見合った金額を徴収したいので、私は「環境税」という名前にした方がよいと考える。なお、木材の価格低迷で森林の所有者が森林を管理する意欲を無くしている点については、*6-3の大川のように、日本各地に家具の街があるため、これも伝統産業のイノベーションを行い、現代の住生活にあったおしゃれな家具を安価に作れるようにした方がよいだろう。何故なら、消費者は、自分の家に合わない家具やないものは欲しくても買えないのであり、この要求を満たせば輸出も可能だからである。


 2017.10.7西日本新聞

(図の説明:地方銀行の農林漁業への貸付残高、農林漁業金融公庫/日本政策金融公庫の農林水産事業への貸付が増え続けている。また、合板用材の国産割合も増加中だ)

*6-1:http://qbiz.jp/article/120196/1/ (西日本新聞 2017年10月7日) 地銀の農業融資5千億円超 大規模化、企業参入背景
 地方銀行による農林業への融資残高が2017年3月末時点で約5400億円に上ったことが7日、分かった。農業の担い手減少が続く一方、農家の大規模化や異業種からの企業参入を背景に資金需要は拡大傾向にあり、融資残高も年々増加している。各行は農家への助言強化や、農家が生産から流通までを手掛ける「6次産業化」を後押しするなどサービス拡充の動きを活発化させ、需要の取り込みに躍起だ。第二地方銀行協会などの集計では、第二地銀を含む地銀の13年3月末以降の農林業の融資残高は年100億円超のペースで増え、16年3月末時点で5千億円を突破した。長野県地盤の八十二銀行の17年3月末の農業融資残高は215億円で、前期から41億円伸ばした。農家との接点を増やそうと6次産業化や経営に関する講座などを開催。強い農業には生産技術に加え、生産計画や財務管理といった企業経営で求められるようなノウハウが必要だと訴えてきた。農業の専任担当者は「高い経営感覚を持った農家が増えれば、資金供給先も増える」と期待。企業から農業参入の相談があれば、経営計画の策定や、その後の販路開拓を後押しする。地域の基幹産業である農業に自ら参入して知見を蓄積しているのは鹿児島銀行(鹿児島市)。運転資金がかかる畜産向け融資も堅調で、17年3月末の残高は528億円と全国の地銀でトップだ。昨年9月に農業法人「春一番」を共同出資で設立し、銀行から出向した4人がタマネギとオクラを生産。「農業経営の理解が深まり、どうすれば稼げるかを考える意識が高まった」(鹿児島銀の担当者)といい、営業力強化へ増員を予定する。6次産業化を推進する西日本シティ銀行(福岡市)は農業融資の残高を17年3月期までの5年間で約16倍に拡大。宮崎銀行や常陽銀行(水戸市)、宮城県地盤の七十七銀行、北陸銀行(富山市)といった有力地銀も残高の伸びが目立った。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p42095.html (日本農業新聞 2017年10月6日) 森林管理 委託を促進 所有者の責務 法で規定も 規制会議
 政府の規制改革推進会議は5日、農林ワーキング・グループ(WG、座長=飯田泰之明治大学准教授)の会合を開き、林業改革について議論した。「森林環境税(仮称)」を財源に、市町村が管理の行き届いていない森林を整備し、担い手への集積・集約化を進める仕組みの構築を目指す。管理が困難な所有者に市町村への委託を促すため、適正に管理する責務をいかに法的に課すかが焦点となる。年内に結論を取りまとめる方針。同会議では9月の初回会合で、今期の重要課題のひとつに林業の成長産業化を掲げ、年内に結論を出すとしている。具体的には、意欲ある林業経営者に、森林の管理を集積・集約化する仕組みの構築を目指し、こうした仕組みを補完する市町村の役割などを詰める。所有者が管理できない森林について、市町村が受託し、作業道の整備や間伐などをした上で、担い手となる経営体に再委託する仕組みを検討する。一方、こうした市町村の取り組み財源として、与党は2017年度の税制改正大綱で、18年度の税制改正で森林環境税を創設する方針を示している。焦点となるのは、森林所有者にいかに市町村への委託を促すかだ。農水省によると所有者の約8割は経営意欲が低く、さらにそのうちの7割は主伐の意向がない。こうした中で、自ら管理する意向がない所有者に、市町村への委託を促すため、所有者に対して森林を適正に管理する責務を法律で課すことを検討する。来年の通常国会での森林法改正か、新法の制定も視野に入れる。この日の同WGの会合では、総務省が森林環境税の検討状況を報告。財源の使途について、間伐や作業道の整備の他、森林の所有者を特定する調査にも充てるとした一方、地方公共団体からは、森林の状況に応じて柔軟な使い方ができる仕組みを求める声が上がっていると説明した。

*6-3:http://qbiz.jp/article/120204/1/ (西日本新聞 2017年10月8日) 1万点の家具 展示販売 大川木工まつり始まる
 家具のまちの秋恒例イベント「大川木工まつり」が7日、大川市酒見の大川産業会館と大川中央公園をメイン会場に始まった。市内外の家具メーカー約200社が最新の約1万点の商品を展示販売しているほか、木工体験などさまざまなイベントがある。9日まで。会館横の市文化センターでは、東京を拠点に国内外で活躍する男女2人組のアートユニット「ミレイヒロキ」さんが、市内の倉庫に眠っていたタンスやベッドなどに色鮮やかな花を描いて再生させた作品を展示。木工体験では、南米生まれの箱形楽器「カホン」を作るコーナーもあり、親子連れでにぎわっている。8日は午前10時55分から木工まつりパレードがあり、市出身の歌手大川栄策さんや俳優の陣内孝則さん、騎手の的場文男さんが市民約500人とともに練り歩く。酢の醸造蔵や製材所などを巡る工場見学バスツアー「職人めぐり」(無料)も実施する。大川商工会議所=0944(86)2171。


<農業とJRのイノベーション>
PS(2017年10月26、29日追加):農業は起伏のある広い土地を有しているため再生可能エネルギー生産の適地であり、*7-1のように、京大農学研究科とNTTデータ経営研究所が「エネルギー創造・利用型農業」の実用化・普及に向けた組織を立ち上げたそうだ。そして、京大付属農場は、既に透過光型の太陽光発電パネルを園芸温室の天井や妻面に貼って、農産物の生産性を落とさずに発電する実験を始めたそうで、早期の実用化が望まれる。これらの製品は、世界で受け入れられるに違いない。
 なお、発電した電力は消費地に送電しなければならないが、近距離ならNTTの線やガス管・水道管に併設した電線を使うことが可能だ。長距離なら、*7-2のようなJRが送電事業に進出して超電導電線を敷設するのがよいと思われる。つまり、JRが送電子会社を作って事業の多角化を行えば、連続した土地という既にある資産を使って収益を挙げることができ、駅ビル・マンション・大型開発地でも創電すれば、さらに収益拡大が可能だ。そうすると、鉄道利用者が少ない路線も貨物運搬や送電線敷設場所を兼ねて存続することができるだろう。
 さらに、*7-3のように、環境省は国立公園をドローンで空撮し、外国人観光客を増やすため外国に発信するそうだが、外国人だけでなく、(楽しみながら歩いた方が健康に良い)高齢者も対象とすれば利用者数が増える。そのため、高くない入場料をとる形で国立公園や国定公園内に遊歩道や乗り物を組み合わせて配置すればよいだろう。そこで、*7-2の耶馬日田英彦山国定公園内にある日田彦山線は、生活路線としてだけでなく、日本史のKeyである標高1200mの英彦山や日田を通る観光路線としても使い、鉄道沿線に、春は梅・桃・みかん・りんご・アーモンド・桜・菜の花、夏は大豆・蕎麦・ひまわり、秋は楓など、その地域にあった花と収穫を楽しめる植物を農林業や地域の人と協力して植え、絶景を作ればよいと思われる。
 




(図の説明:上の段の左からEVトラック、EV軽トラ、EV電車だ。また、下の一番左はBMWの自動運転車で、中央は自動運転車の仕組に関する説明である。そして、一番右の図は超電導電線の説明で、電動化・自動運転化の技術も既にあるため、JRはじめ多くの産業がこれらの技術を使ってコストダウンし、損益分岐点を下げるのは容易な筈である)

*7-1:https://www.agrinews.co.jp/p42292.html?page=1 (日本農業新聞 2017年10月26日) 「創エネ」組織を発足 農家の収益向上に 京大とNTTデータ経営研
 京都大学農学研究科とNTTデータ経営研究所は25日、農産物とエネルギーの両方を作る「エネルギー創造・利用型農業」の実用化・普及に向けた組織を立ち上げたと発表した。名称は「グリーンエネルギーファーム(GEF)産学共創パートナーシップ」といい、ヤンマーやパナソニック、和郷園、京都府など同日の時点で23団体が参加。京都府木津川市にある同大学付属農場を拠点とし、研究開発や制度設計、政策提言などをしていく。現在のエネルギー消費型の農業を、創出型に転換させる。そのモデルを、大学と産業界が提携して作り出す。農作物を生産するとともに、エネルギーを作る“創エネ”の考え方を農業に導入し、農家の収益性向上につなげる。具体的には、太陽光や風力、小水力、バイオマス(生物由来資源)などを利用した発電事業に農業者が参入しやすいように、大学と企業などで技術開発の共同研究や事業開拓を手掛ける。作物の生育に必要な色の光だけを透過させ、それ以外の光は発電に使うような太陽光発電システムの開発や、農業とエネルギーを一緒に作る「農・エネ併産」型農業の収益性の実証などを進める。「農・エネ併産」に必要な制度や政策の提言もする。企業や大学への研究支援にも取り組む。将来は農場で生産した電力や水素で農場の電力自給や地域へのエネルギー供給ができるような社会へとつなげる構想を描く。京都大学の付属農場では既に透過光型の太陽光発電パネルを園芸温室の天井や妻面に貼り農産物の生産性を落とさず発電する実験を始めている。GEFパートナーシップには、新興の電力会社、電気、通信、ガス関係企業の他、金融機関や農業法人などが参加。大学も、京都大学以外に5大学が入っている。今後も多くの企業や団体の参加を呼び掛けていく。NTTデータ経営研究所によると、欧州では化石エネルギーを大量に消費する今の農業を見直す方向にある。農場で農産物と併せて再生可能エネルギーを作り出し農産物のブランド化を目指す。

*7-2:http://qbiz.jp/article/121273/1/ (西日本新聞 2017年10月25日) JR九州上場1年、多角化で成長をけん引 被災や赤字線…鉄道事業には課題
 JR九州が東京証券取引所第1部に株式上場して、25日で1年。企業の合併・買収(M&A)による多角化や九州域外への進出など、鉄道以外の事業を積極的に展開、成長のけん引力になっている。一方で本業の鉄道事業は実質的に赤字が続き、地震や豪雨で被災、復旧のめどが立たない路線もある。上場企業として、鉄道事業の改革をどう進めるのか。2年目の課題は重い。広い敷地に、黄色い建設機械がずらりと並ぶ。世界最大の建設機械メーカー「キャタピラー」の九州地区での販売を担う「キャタピラー九州」(福岡県筑紫野市)。今月、JR九州が販売・リース事業を買収し、傘下に収めた。JR九州から出向した山根久資(ひさし)社長は「JR九州グループの建設会社への営業や、駅ビル工事などへのアプローチも積極的に進めたい」と、組織力を生かした経営に意欲を見せる。これまでもドラッグイレブンなど運輸関連とは異業種のM&Aを進めており、JR九州の青柳俊彦社長は「九州を元気にする事業、鉄道と相乗効果を生む事業で(M&Aを)考えていきたい」と、さらなる事業拡大を狙う。
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 困難視されていた上場を果たしたJR九州。原動力となったのは、事業多角化による収益の拡大だ。駅ビルやマンション、流通や外食など幅広い事業を手掛け、2017年3月期の連結売上高3829億円のうち、鉄道以外が約6割を占める。9月には、福岡市中央区の九州大六本松キャンパス跡地に複合施設の商業エリアをオープン。同社にとって初の沿線外での大型開発となった。青柳社長は「六本松で一つの実績ができた。応用する場所はたくさんある」と強調する。九州外での事業展開にも力を入れる。14年の東京に続き、今年6月には那覇市でホテルを開業。今後はアジアへの展開も加速する構え。タイ・バンコクに現地法人を設立し、ホテルなどを視野に不動産開発を本格化させる。
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 鉄道以外の事業が拡大を続ける半面、最大の課題は鉄道事業の収支改善だ。7月には路線ごとの輸送密度(1日1キロ当たりの平均利用者数)を初めて公表。現状を理解してもらい、鉄道網の在り方への意識を高めてもらう狙いだが、利用者の少ない沿線では廃線への懸念が募る。7月の九州豪雨で被災した日田彦山線では、復旧の見通しも示していない。青柳社長は赤字ローカル線に関し「今回のような大きな災害があった場合、ゼロから鉄道を造るようなもの」と指摘。日田彦山線については地元に現状などを説明し、意見を聞いた上で鉄道以外での輸送も検討する可能性を示唆する。沿線の自治体関係者は「JRから見れば利用者は少なくても、生活には重要な路線。早期の全線復旧を望む」と訴える。青柳社長は上場前の15年、国会で「路線の廃止は検討していない」と明言。一方で、不採算路線に対する投資家の厳しい目があるのも事実だ。地元や株主の理解を得ながら、いかにして鉄道の収支改善を図るか、経営手腕が問われる。

*7-3:http://qbiz.jp/article/121580/1/ (西日本新聞 2017年10月29日) 国立公園の魅力 ドローンで空撮 環境省、外国人向けに発信
 環境省は、国立公園を訪れる外国人観光客を増やすため、小型無人機「ドローン」を使って上空から動画を撮影、無料で配信する取り組みを始める。インターネット上での閲覧や海外のテレビ局に無償提供し、番組で紹介してもらうことを想定している。環境省が訪日外国人旅行者の誘致に向けて「国立公園満喫プロジェクト」に指定した8カ所を2017〜18年度に撮影する。17年度は阿寒摩周(北海道)、十和田八幡平(青森、岩手、秋田)など、18年度は阿蘇くじゅう(熊本、大分)、霧島錦江湾(宮崎、鹿児島)などが対象。それぞれ特徴となる美しい自然を収録する。撮影や編集は主にNPO法人「ネイチャーサービス」(埼玉県坂戸市)に依頼。動画は同法人のサイトなどにアップされる。公開時期は調整している。政府は20年までに訪日外国人旅行者を4000万人に増やす方針。関連して国立公園の訪日外国人利用者数を16年の546万人から、20年には1000万人まで増やす目標を掲げている。

<産業と社会のイノベーション>
PS(2017年11月1日追加):日本が先行のチャンスを失ったのは、*8-1の「量子コンピューター」だけでなく、EVもその一例だ。そして、先行する技術にケチをつけ、その技術をビジネスに結びつけて変革するのを妨げたのは、ほかならぬメディアと経産省だった。なお、創造は規則的なサイクルになってはおらず、サイクルだと考えること自体に意味がない。そして、企業は市場のニーズにあった事業を行い、市場によい提案を行い続けなければ、市場からそっぽを向かれ淘汰されて、世界の先頭に立つどころか技術も失うのである。
 そして、まず、*8-2のように、次世代エコカーはEVが中心でFCVが置いてきぼりになった状態を「雌伏」と表現しているが、「雌伏」とは「女性は負けて伏せる」という意味であるため、女性に対して失礼である。しかし、このように、メディアは女性蔑視用語を多く使い、「女性は劣った存在だ」という先入観を社会に広めているのだ。
 また、EVもFCVも、(1995年前後に私が電気自動車を提案して)日本発の技術だったのに外国に追随せざるを得なくなったのは、①EV用電池を改良することを考えずにEVの航続距離にケチをつけることに専念した ②部品点数が少ないEVの価格を高止まりさせた ③FCVの燃料である水素を再生可能エネルギーで水を電気分解して作るのではなく、輸入した化石燃料から作ることを考えた など、関係者があまりにも馬鹿だったからである。ちなみに、水素だけを作って皆で使うと「酸素不足」という公害が起きるため、再生可能エネルギーで水を電気分解して水素を作り、一緒に発生した酸素も車内に放出するなどして使う必要がある。
 なお、EVの航続距離が延びた現在、仕組みが簡単で爆発の危険のないEVの方が、より乗用車に向いていることは明らかになった。しかし、FCVの開発は無駄だったわけではなく、大きな馬力を必要とするトラック・電車・飛行機などではFCVの出番も多いだろう。さらに、電車も新幹線まで含めてFCVにすれば、建設・維持コストを低く抑えることができる。そのような中、EV・FCVへのシフトでガソリン車の部品を作っていた会社が苦境とのことだが、現在の日本は、*8-4のように、(私の提案で)航空機を作ることも可能になったため、公害を出さない燃料電池を使った航空機部品を作れば、付加価値の高い仕事をすることができる。この時、輸入品で作るアルミ部品を使う必要はなく、炭素繊維を使って強く軽くした方が燃費にもよいのだが、日本企業は炭素繊維も含めていつまでも製品価格を高くしておくのが問題なのである。
 さらに、*8-3のように、長府工産が水素給湯器を事業化し、まず家庭用・小規模事業所向け給湯器として商品化するそうで、これも価格を安くして普及させれば規模の利益が得られるが、ここが技術をビジネスに繋げるポイントの一つだ。


  2017.11.1日経新聞       2017.11.1日経新聞      2017.11.1日経新聞

(図の説明:中国・インドなどの人口が多い新興国で論文数や基礎研究の伸びが著しいのは当たり前だが、日本は基礎研究力が減少し、応用開発力の伸びも小さいため、全体として革新力が低い。米国は1位を保っているため、違いが出る理由を明らかにして改善すべきだ)

*8-1: https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171101&ng=DGKKZO22923560R31C17A0MM8000 (日経新聞 2017.11.1) 活路はどこに(1)瀬戸際の技術立国、新たな創造の循環を
景気回復や株高が続きながら、高揚感に欠ける日本社会。新産業を生み続ける米国や急成長する中国に押され「技術立国」の看板が色あせているためだ。問われるのは技術を生かし社会や産業を変革するイノベーション(革新)の力。世界は進化する人工知能(AI)など新たな産業革命のさなかにある。技術立国をどう再建するか。その挑戦がニッポンの未来のかたちをつくる。神奈川県厚木市のNTT物性科学基礎研究所。大型冷蔵庫よりも大きい箱型の「量子コンピューター」試作機を研究者が整備する。11月27日から公開し、顧客に無償で利用してもらうためだ。小さな粒子で起きる物理現象を利用する量子コンピューターを使えば、3年以上かかるデータ処理を理論上、1秒でできる。あらゆる機器にAIが載る時代の基幹技術で、西森秀稔東京工業大学教授が理論を提唱するなど日本が先行してきた。NTTは試作機の公開で実用化へ一歩進むが、世界はその先を行く。「未来へようこそ」。カナダ・バンクーバー郊外にあるスタートアップ企業、Dウエーブ・システムズの本社は垂れ幕で顧客を迎える。同社は2011年、世界で初めて量子コンピューターを商用化した。「ドクター・ニシモリがもたらした変革に我々は鼓舞されている」。営業部門トップのボウ・エワルド氏は笑みを交えて語る。Dウエーブ製は得意な計算領域が限られる「簡易型」だが、デンソーとの利用契約を決めるなど実績を重ねている。「性能は我々の方がずっと上だが、Dウエーブはマーケティングがうまい。日本はそこが弱い……」。NTTの技術者はこうぼやく。だが、世界が高性能の製品ができるまで待ってくれると考えるのは、楽観的すぎる。時代や市場の変化に即応し、革新を実現する経営力の貧しさがにじむ。日本は明治維新後、欧米の模倣(イミテーション)から出発し、技術を改良(インプルーブメント)して魅力的な商品を創ってきた。最近のノーベル賞ラッシュは日本が発明(インベンション)で力を持ったことの証左だが、それをビジネスに結びつけ、社会を変える革新力では後手に回る。日本の革新力は現在、世界でどんな水準にあるのか。日本経済新聞社は日米独中韓5カ国について、革新力を示す4つの指標を選び、06年と16年を比較した。日本は「稼ぐ力」を示す上場企業の営業利益の合計が11%増えた。しかし、7.3倍の中国などに遠く及ばず、伸び率は最低。産業の「新陳代謝力」を示す株式公開から10年未満の企業の時価総額は約半分に減った。「基礎研究力」を示す科学技術の有力論文数を推計すると、米中独韓は大幅に増えたが日本は2%減少。「応用開発力」を示す国際特許の出願も中国が追い上げ、日本は4指標を総合した「革新力指数」が伸び悩む。瀬戸際の技術立国・日本をどう立て直せばいいのか。同じコンピューター分野にヒントがある。「AIの利用が世界で広がれば、コンピューターを動かす電力が足りなくなる」。ペジーコンピューティング(東京・千代田)の斉藤元章社長はこんな問題意識でスーパーコンピューターの開発に取り組んでいる。世界のスパコン開発は13年以降、中国勢が計算速度で独走する一方、消費電力をどう抑えるかという難題が浮上する。ペジーなどスタートアップ2社は半導体回路を工夫し、機器を液体に直接浸して冷やす独自手法で電力消費を抑える。10月には、日本最速の計算速度と世界トップ級の省エネ性能を両立したスパコンを開発したと発表。技術ありきという発想を転換したことが日本を最前線に呼び戻した。市場のニーズに真摯に耳を傾け、「使われる技術」を生み出す新たな創造のサイクルを築ければ、日本は世界の先頭に立つ力があるはずだ。

*8-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13207933.html (朝日新聞 2017年11月1日) 燃料電池車、雌伏の時 「究極のエコカー」復権のカギは価格
 次世代エコカーの開発競争が電気自動車(EV)を軸に激しさを増し、水素をエネルギー源とする燃料電池車(FCV)には逆風が吹きつける。インフラ整備が進まず、車両価格も高いためだ。FCVは、二酸化炭素(CO2)を出さない水素で走る「究極のエコカー」。巻き返しのチャンスはあるのか。「FCVへの我々の取り組みが後退したわけではない」。開幕中の東京モーターショーで、トヨタ自動車のディディエ・ルロワ副社長は力をこめた。10月25日、報道陣向けのプレゼンで、「水素社会実現へのトヨタの『変わらぬ意志』の象徴」と語り、FCVのコンセプトカーを披露した。FCVは燃料電池で水素と酸素を反応させ、生み出した電気でモーターを動かして走る。トヨタは、電池の発電効率などを上げて、水素の充填(じゅうてん)1回で航続距離1千キロの実現をめざす。2014年末に世界で初めてFCV「ミライ」を販売したトヨタは、モーターショーでEVの試作車や、EV用次世代電池を開発する計画を打ち出した。ルロワ氏が強調しなければ、FCVに対するトヨタの姿勢に疑問符がついたはずだ。今回のモーターショーは、本格的なEV時代の幕開けを告げた。新たなFCVを出展しているのは、トヨタと独ダイムラーのメルセデス・ベンツぐらいだ。航続距離は日産自動車のEV「リーフ」の400キロに対し、ミライの650キロが上回る。一方、国内のインフラ数は、EVは約7100(急速充電)あるが、FCVは約100。車両価格はFCV700万円台、リーフは最安のグレードで約315万円。いずれも国などの補助金があるものの、EVの方が手が届きやすい。ベンツは、外部電源で充電もできるプラグインFCVを出展。水素による航続距離は437キロだが、備えたバッテリーだけでも49キロ走れる。水素が切れても走れ、インフラ不足をカバーする。来年から生産を始め、ドイツや日本、米カリフォルニア州などで販売する計画だ。FCV開発を担当するダイムラーのゲオルグ・フランク氏は、「長距離走行やバスやトラックにはFCVが向いている。いまもガソリン車とディーゼル車があるようにEVとすみ分けできる」とみている。FCVもEVもエコカーとして注目されるが、地球温暖化対策としては、どちらもまだ不十分だ。水素は、天然ガスなどの化石燃料からつくる方法が主流で、その過程でCO2が発生する。EVも石炭や石油など化石燃料でつくった電気を使えば、CO2の発生量を大きく減らせない。ただ、発電時にCO2を出さない原発の再稼働に慎重な日本にとって、水素は大きな可能性を秘める。風力や太陽光、バイオガスなど自然エネルギーを生かし、CO2を出さずに水素をつくる実験が全国で進む。究極のエコカーを実現できる供給網づくりもFCVの普及に急務となる。FCVの技術は日本勢の一部が優位に立つが、内外の他社も巻き込まないと広がりに欠ける。「クラリティ」を昨春発売したホンダは米ゼネラル・モーターズと組み、新たなFCVを20年ごろに投入する。こうした仲間づくりも課題だ。追い風もある。20年の東京五輪で水素社会の幕開けを世界に示そうと、政府は水素ステーションを160に増やす目標を立てる。九州大の佐々木一成・水素エネルギー国際研究センター長は「EVが注目を集めるいまはFCVにとって雌伏の時。東京五輪までには新型車が出てくる。インフラ整備を進めるためにも、車両価格をどこまで下げられるかが、FCV復権のポイントになる」と話す。

*8-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22893630Q7A031C1LC0000/ (日経新聞 2017/10/31) 長府工産、水素給湯器を事業化 年明けに展示場・実験施設
 住設機器販売の長府工産(山口県下関市)は水素を燃料とする給湯器を開発、事業化に乗り出す。自社の石油給湯器の技術を応用、水素バーナーを製品化する。本社内に水素給湯器のほか燃料電池、蓄電池、モデルルームなどを備えた水素利用の実験施設を年明けをメドに設ける。水素燃料が一般に普及する前に先行して、生産技術を確立する狙いだ。トクヤマ、東芝燃料電池システム(横浜市)、岩谷産業などとのグループで昨年末に山口県周南市の水素型コージェネレーション(熱電併給)システムに納入した実験機の技術をもとにする。この際、水素と空気を混合してガスコンロのように円形に噴出し、点火する手法の水素バーナーを開発。炎の熱を水に伝える部分の構造は石油給湯器の方式を採用した。冷水から80度のお湯にする加温能力を確保した。今後は外装ケースの小型化と家庭用水素バーナーの構造を詰め、まず家庭用・小規模事業所向け給湯器として商品化する。価格は一般の石油・ガス給湯器並みの30万円以下を目指す。当面は災害用の水素ステーションを導入する予定の自治体や近隣の企業向けの販売を進める。水素は単位体積あたりの熱量がガスなどの3分1程度しかなく、燃料費は3倍とあって、現時点でコスト面で化石燃料の代替にはならない。水素給湯器は水素をエネルギー源として活用する「水素社会」を目指す自治体で必要な機器として提案する。将来は太陽光・廃棄物由来や、工場からの副生で得る水素を燃料とする発電・蓄電システムが普及するとみて、参入を決めた。今回、水素給湯器をはじめとする関連技術のショールームとして本社敷地内に実験施設を設けることにした。水素ボンベの収納庫、純水素型燃料電池、水素給湯器、水素由来の電力と湯を利用する設備としてシャワー室や洗面所、パソコンを置いたコンテナ型のモデルルームを設ける。家庭用蓄電池や電気自動車も置き、接続できるようにする予定。現在工事を進めており、年明けにもオープンできる見通しだ。長府工産は1980年に住設機器の商社と部品メーカーが統合して発足した。2017年3月期の売上高200億円のうち、9割超が他社製太陽光システムの販売で、残りが自社開発の給湯器、風呂釜、温水暖房製品になる。昨年から「フューチャー10」という長期計画を掲げ、メーカー機能を強化して売り上げの3割程度を占める構造としたい考えだ。水素関連の機器開発もその一環。
▼水素社会 エネルギー源を水素を中心とすることで二酸化炭素(CO2)排出ゼロとする社会。日本では経済産業省が2014年6月(16年3月改定)に「水素・燃料電池戦略ロードマップ」をまとめた。第1段階は家庭用燃料電池、燃料電池車(FCV)の普及。家庭用燃料電池は30年時点で530万台、FCVは25年にハイブリッド車並みの価格を目指す。

*8-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13207896.html (朝日新聞 2017年11月1日) MRJ部品調達、神鋼から変更も 三菱重工が検討 
 三菱重工業は31日、開発中のジェット旅客機「MRJ」にデータが改ざんされた神戸製鋼所製のアルミ部品が使われていた問題で、部品の調達先変更を検討する方針を明らかにした。この日、東京都内で開いた2017年9月中間決算の会見で、小口正範常務執行役員が「(調達先を)今のままいくのか、変えるのかは当然検討の俎上(そじょう)にある」と述べた。米国などで試験飛行中のMRJは、垂直尾翼の付け根や胴体の骨組みの一部などに神鋼製の部品を使っている。「安全性に問題はない」(小口氏)という。また、MRJの設計見直しについて、三菱重工は同日、「秋までに完了させる」としていた従来の方針を事実上撤回した。ただ、設計の見直しが終わった部品から順次、製造を始めており、20年半ばに納入を始めるスケジュールは維持する。


<運転支援の標準装備へ>
PS(2017年11月4日追加)*9のように、「高齢ドライバーは症状を自覚していなくても認知症の恐れがある」などと言って免許の返納や取り消しを推奨するのは、人生100年時代に高齢ドライバーの足を奪い、家にひきこもらせ、意気消沈させて命を縮めるため感心しない。また、高齢者でなくても、居眠り運転・疲れ・飲酒運転・病気・よそ見、乱暴な運転などで交通事故を起こす人は多いため、世界に先んじてアクセルやブレーキを備えた車には運転支援機能を標準装備するという規制に変更すべきだ。

*9:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201711/CK2017110202000244.html (東京新聞 2017年11月2日) 認知症のおそれ 3万人 増える高齢ドライバー
 七十五歳以上の高齢運転者を対象にした認知症対策が強化された改正道交法が施行された今年三月十二日から九月末までの半年間に、検査で認知症の恐れがあると判定されたのが三万人超に上ったことが、警察庁のまとめで分かった。このうち、六百九十七人が医師に認知症と診断され、運転免許が取り消し・停止された。警察庁によると、施行からの半年で、百十一万七千八百七十六人(暫定値)が認知機能検査を受け、認知症の恐れがあると判定されたのは2・7%の三万百七十人。このうち免許の自主返納などを除き、七千六百七十三人が医師の診断を終えた。施行後半年で受診者が千九百三十四人だった昨年一年間の四倍増となった。認知症と診断されて免許が取り消された人が六百七十四人、免許が停止されたのが二十三人だった。ほかに医師の診断待ちなどが約一万人いるため、これらの人数はさらに増える見通し。七十五歳以上で免許を自主返納したのは、今年一~九月で十八万四千八百九十七人(暫定値)で、過去最多だった昨年一年間の十六万二千三百四十一人をすでに上回っている。「認知症の恐れ」と判定された人数を都道府県別で見ると、多いのは愛知の千五百三十六人、茨城、神奈川の千二百五十六人など。東京は八百十六人だった。警察庁は「医師会などとの協力で、改正道交法は円滑に施行されている。高齢ドライバーの増加を見据えて、さらなる対策を検討する」と説明している。
◆生活の足 支えが課題
 改正道交法の施行後半年で、認知症と判明して運転免許が取り消し・停止となった高齢ドライバーは、既に昨年一年間の人数を上回った。七十五歳以上の免許保有者は二〇二一年までに百万人増える見通しだ。事故防止への取り組みが急がれる一方で、高齢者の生活を支える視点も欠かせない。運転できる車種や時間帯などを指定する限定免許の検討など、運転能力に応じたきめ細かな対策が模索されている。昨年十月、横浜市港南区で集団登校中の児童に突っ込んだ軽トラックのドライバーは、認知症であることが事故後に判明した。当時八十七歳の男性は症状を自覚しておらず、小学一年の男児ら八人が死傷したものの「過失責任が問えない」として不起訴になった。警察庁では、昨年末に五百十三万人だった七十五歳以上の免許保有者は、二一年には六百十三万人になると推計。事故をどう防ぎ、日常の移動手段の確保など、高齢者の生活をどう支えていくかが課題になる。同庁は有識者らの検討会議を設置。初期の認知症などを念頭に、認知機能に応じた対策を調査研究するほか、アクセルとブレーキを踏み間違えても加速を抑える「安全運転サポート車」などに限定する運転免許に関して、海外事例などをもとに導入の可否を検討している。
<認知機能検査> 3年ごとの免許更新時に加え、更新前でも認知機能の低下が疑われる信号無視、逆走などがあった場合、受検を義務化。約30分の筆記検査で、指定の時刻を示すように時計の針を文字盤に書いたり、イラストを記憶して何が描かれていたかを答えたりする。点数に応じて「認知症の恐れ」「認知機能が低下している恐れ」「記憶力・判断力に心配がない」の3段階に分類。認知症の恐れがある場合は医師が診断し、認知症ならば運転免許が取り消し・停止になる。

<製品の社内検査に国家資格?>
PS(2017年11月9、10日追加):*10-1のように、EUの欧州委員会は、2017年11月8日、EU域内で販売する自動車のCO2排出量を、2030年に2021年の目標に比べて3割削減する規制を発表し、電気自動車(EV)などの環境対応車普及を後押しするそうだ。燃料の変更は、日本にとって最もメリットのあることで、日本の自動車メーカーは20年以上前から環境対応車を手がけるチャンスはあったため、2020年には、①新車はすべて環境対応車にする ②電力は再生可能エネルギー由来にする などが可能な筈で、いつも外国の後ろからあわてて追いかけることしかできないのは情けない限りだ。
 そのような中、日産自動車は(日本人ではない)ゴーン社長のリード下で、世界最初のEVを実用化したが、日本のメディアはEVの航続距離の短さや静かさなど、何でも悪くしか報じなかったのを、私は忘れていない。そして、EVは既に世界競争が始まっており、競争相手は日本のメーカーだけではないのに、*10-2、*10-3のように、1)日産自動車が無資格の補助検査員らに完成車両の検査をさせていた 2)補助検査員は正規検査員の判子を使って検査結果を記す書類に押印していた 3)国土交通省は、長年にわたり検査現場で組織的な偽装工作が行われていた疑いがあるとみて実態の解明を急いでいる 4)日産自動車検査員テストで解答を見せて受験させた などを問題にしているのである。
 私は、この報道が行われ始めた頃から、企業の工場内で行われる最終検査に国家資格が必要であることの方が異常で、今からEVを売り出そうとしている日産自動車への嫌がらせではないかと感じた。何故なら、①現在の平均的な車を前提としている国家資格を持っている従業員と持っていない従業員の間で、日産車の検査能力に有意な差があるとは思われず ②仮に国家資格を持っていたとしても、企業に従属している企業内資格者が検査すれば独立性はない上 ③企業は製造物責任があることによってユーザーから厳しく評価されている からであり、1)2)3)は、電気製品などの工場内最終検査に国家資格が必要ないのと同様、国土交通省のシステムの方がおかしい。そして、あまり意味のない資格なら、4)のように、日産自動車が検査員テストで解答を見せて受験させたのはよいことではないものの、その国家資格に意味を感じていなかったことが原因とも考えられる。
 このような中、*10-4のように、中国は、「中国資本の出資比率50%以上」という合弁規制を緩和し、自由貿易区で新エネ車等をつくる場合に限り自由化して高度技術を持つ外資を誘致する政策に変更したそうだ。そのため、これまで外資が経営権を握れなかった規制が解除され、外資系メーカー主導の現地生産が可能になるため、日産などは中国の自由貿易区で新エネ車を作って輸出した方がやりやすい上、種々のコストが下がる。ここで、中国の賢さは外資のノウハウを入れつつ遅れていた自国の産業を育成し、自国企業に競争力がついた時点で外資と競争させて産業を高度化しようとするビジョンがある点で、日本の愚かさは優良企業を技術付で追い出そうとしているビジョンのなさである。
 なお、日本のメディアはあまり報じなかったが、*10-5のように、トランプ米大統領が来日された際に、2017〜2018年に米国と協力して石炭火力発電所と原発の建設を世界に広げることに合意したのであれば、日本は温室効果ガス削減にも消極的であるため、「化石賞」に選ばれたのは尤もであり、馬鹿にも程があると言わざるを得ない。


                               2017.11.7東京新聞
(図の説明:1番左の図のように、CO2排出量の総量は中国が世界一だが、一人当たりのCO2排出量は米国・韓国・ロシア・日本と続く。そのため、左から2番目の図のように、意識の高い国はEV化を進めて内燃機関を禁止しつつある。従って、次世代環境車はEVが中心になると思われ、右から2番目のグラフはハイブリッド車やプラグインハイブリッド車の伸びを高く見積もりすぎている。その結果、日本では、一番右の図のように、EVのホープを追い出そうとしているが、これは太陽光発電のシャープが追い出されたのと同じ愚かな構図だ)

*10-1:http://qbiz.jp/article/122338/1/ (西日本新聞 2017年11月9日) EU、車CO2排出量3割削減へ 30年、EV普及促す
 欧州連合(EU)の行政執行機関に当たる欧州委員会は8日、域内で販売する自動車の二酸化炭素(CO2)排出量に関する規制を発表し、2030年に21年の目標値に比べ3割の削減を要求した。ガソリン車やディーゼル車では達成が難しいとみられ、電気自動車(EV)など環境対応車の普及を後押しするのが狙い。日本メーカーも対応が求められる。日本政府による今後の排出量目標にも影響を与えそうだ。地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」の策定で中心的な役割を果たしたEUの環境規制は世界で最も厳しいとされる。欧州委には、これを一段と強化し温暖化対策をリードしたい思惑もある。EUの乗用車のCO2排出量目標は21年が1キロ走行当たり平均95グラム。欧州委は25年にこれを15%、30年に30%それぞれ減らすとしている。日本の環境省によると、日本は20年に122グラムを目標としており、中国が20年に117グラム、米国は25年に97グラムとなっている。フランスは40年までに石油を燃料とするガソリン車やディーゼル車の販売終了を目指す方針を表明している。ただ、規制導入には加盟各国や欧州議会の承認が必要で、協議は曲折も予想される。大手自動車メーカーが本社を構えるドイツなどが反発する可能性がある。欧州自動車工業会は30年のCO2排出削減量は21年比で2割が妥当だとの考えだ。

*10-2:https://mainichi.jp/articles/20171005/k00/00m/020/063000c (毎日新聞 2017年10月4日) 日産 組織的偽装か 検査しない有資格者の印
 日産自動車が無資格の補助検査員らに完成車両の検査をさせていた問題で、正規の検査員が自分の判子をあらかじめ補助検査員に渡していたことが4日、分かった。補助検査員は正規検査員の立ち会いなしでこの判子を使い、検査結果を記す書類に押印していた例があった。国土交通省は、長年にわたり検査現場で組織的な偽装工作が行われていた疑いがあるとみて実態の解明を急ぐ。日産は、神奈川、栃木、京都、福岡にある国内すべての完成車工場で、正規検査員に交じって補助検査員が日常的に出荷前の最終段階の検査を行っていた。最終検査は、1台ごとに8人程度で分担。ブレーキの利き具合などをチェックするもので、検査を通らないと出荷できない。日産によると、全国で正規検査員は305人、補助検査員は19人いる。補助検査員が検査する際、書類への押印も含めて正規検査員が立ち会うが、不在時には補助検査員が自分1人だけで押印した例があった。書類上は複数の項目の検査を1人の検査員が同時に行ったことになり、書類を調べた国交省が不自然さを指摘して発覚した。国交省は3日、京都と栃木両工場に抜き打ちで立ち入り調査を行った。今後、他工場でも実態把握を進める。日産は既に在庫約3万4000台の再点検に着手。週内に計24車種を対象に販売済みの約121万台のリコール(回収・無償修理)を届け出る。原因究明と再発防止策を10月末をめどに報告する。

*10-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201711/CK2017110702000118.html (東京新聞 2017年11月7日) 【経済】日産、検査員テストで不正 解答見せ受験させる きょう生産再開
 日産自動車は六日、新車の無資格検査問題を受け停止していた国内向けの生産と出荷を、七日から順次再開すると発表した。再開が決まったのは完成車を組み立てる全六工場のうち、グループのオートワークス京都(京都府宇治市)を除く五工場。また第三者調査では、正規検査員を認定するテストで解答を見せ受験させるなど教育面の不正が六工場であったことが分かり、国土交通省はこれらの問題是正を再開の条件とした。国交省の検査で不正が発覚してから約一カ月半ぶりに事態が正常化へ向かうが、ずさんな品質管理体制が改めて浮き彫りになった。日産によると、追浜工場(神奈川県横須賀市)など五工場が、部品メーカーからの調達を含む準備が整い次第、生産と出荷を始める。国交省は各工場に立ち入り検査をした結果、生産体制について一定の見直しが進んだと判断した。関係者によると、正規従業員が出荷前の最終検査に携わる運用を確実にするため、当面は以前より生産ペースが大幅に落ちる可能性があるという。新たに判明した不正は、試験で解答を見せたことに加え、本来七十二時間が必要な受講時間を短く済ませた例があった。日産は時期や規模を明らかにしていないが、正規検査員約三百人全員への再教育や再試験を実施し始めたという。また、各工場で検査スペースを独立させ週一回の外部監査を行い、現場で適正に運営されているかどうか確認する。日産の無資格検査は九月十八日の国交省の立ち入り検査で発覚。公表後も不正が続いたことが判明し、十月十九日に国内向け生産、出荷の全面停止を発表した。国交省は今月六日にオートワークス京都を立ち入り検査し、これで不正が発覚した国内全六工場に検査が入った。京都も対策が十分だと認定されれば、生産と出荷を再開する見通し。

*10-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13221582.html (朝日新聞 2017年11月10日) 中国、車の合弁規制緩和へ 自由貿易区の新エネ車に限定
 中国外務省の鄭沢光次官は9日、中国資本の出資比率が50%を下回らないという自動車メーカーの合弁規制を、自由貿易区で新エネルギー車などをつくる場合は試験的に自由化すると述べた。外資系メーカー主導の現地生産が可能となりそうだ。2018年6月までに実施する。国営新華社通信が報じた。既存の規制は、外資が経営権を握れない点が問題視されていた。中国の習近平(シーチンピン)指導部は19年から自動車メーカーに、電気自動車など一定量の新エネ車の製造・輸入を義務づけるなど、新エネ車大国化を推し進めている。出資比率を緩和することで高度な技術を持つ外資を誘致。現地企業と競争させて中国の自動車産業を高度化しようとしている。新華社通信によると、鄭次官はこの日、米中首脳会談の成果について記者団に説明する席で、出資比率の規制緩和を明らかにした。

*10-5:http://qbiz.jp/article/122452/1/ (西日本新聞 2017年11月10日) 日本、化石賞をダブル受賞 石炭火力広げ、目標消極的
 世界の環境保護団体で組織する「気候行動ネットワーク」は9日、地球温暖化対策の前進を妨げている国を指す「化石賞」に、日本と、「先進国」をそれぞれ選び、ドイツ・ボンの気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)会場で発表した。日本は先進国にも含まれるため、不名誉な化石賞のダブル受賞となった。日本が単独で選ばれた理由は、トランプ米大統領が来日した際、2017〜18年に米国と協力して石炭火力発電所と原発の建設を世界に広げることに合意したため。先進国は、歴史的に温室効果ガスを大量に排出してきたにもかかわらず、削減目標の引き上げに消極的なため。

| 経済・雇用::2016.8~ | 04:39 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.9.12 日本に現存する差別とその目的 (2017年9月12、14、17、25、26、28、29、30日追加)
 
    高齢者人口の割合       年金受給年齢の引き上げと継続雇用
                      2017.9.7日経新聞

  
 日本人の平均余命  支えられるべき高齢者 外国人労働者  女性労働のM字カーブ 
                              2017.9.9日経新聞

(1)高齢者に対する差別
 日本老年学会と日本老年医学会は、*1-1-1のように、現在は「65歳以上」とされる高齢者の定義を「75歳以上」に引き上げるべきだと国に提言した。私も、65歳時点の平均余命は男性19歳、女性24歳と長く、75歳時点の平均余命でも男性12歳、女性15歳で、医療の進歩や健康意識の高まりで高齢者が若返った状態で平均寿命が延び続けていることを考えると、高齢者は75歳からとし、65~74歳はできるだけ社会の支え手になってもらうのがよいと考える。

 ただし、その際、高齢者に対して雇用差別を行ってはならず、平均余命や平均寿命に男女差・個人差があることも考慮すれば、職種や個人によって仕事が続けられる上限は異なるため、定年ではなく客観的評価(しかし、日本人はこれが苦手なのが問題なのである)でFairに報酬を決めて、働けるようにするのが良いだろう。

 一方、*1-1-2のように、医療制度や人口統計上の区分で「高齢者=65歳以上」が定着しているのに、公務員の定年を60歳から65歳に引き上げることに反対意見があり、役職定年の導入に取り組むべきだとしているが、これは高齢者差別そのものであるため、役職は仕事の遂行能力で決めるべきである。

 また、*1-1-3のように、60歳定年後も希望者全員を雇用することを企業に義務付ける高年齢者雇用安定法改正案の成立に対し、企業は継続雇用の対象者を能力などで絞り込めなくなるため負担増に備えて対応を急いでいると書かれているが、これも働く以上は年齢で差別すべきではないと考える。そして、第一生命経済研究所の熊野首席エコノミストの「人件費の増加を防ぐため能力の高い高齢者の賃金まで企業が一律に抑制しかねない」という警鐘は現実で、人口が減り働き手が減ると言いながら、高齢者の雇用が若年者の雇用を食うと言うのはおかしい。

 つまり、私は、公務員であれ、民間企業のサラリーマンであれ、仕事をこなせる人は気持ちよく働けるようにすべきであり、年齢や性別による差別に合理性はないのに、若い男性しか働かせない状態にしているのはむしろマイナスであって、日本で自動車、家電・パソコンの説明書、銀行の書類等が高齢者や女性に扱いにくい仕様になっている原因だと考える。

(2)社会保障に関する政治・行政・メディアの主張の不合理
1)“子ども保険”創設の主張について
 幼児教育・保育の無償化を目指し、*1-2-1のように、自民党は「子ども保険」の創設を提言しているそうだが、「子ども保険」はリスクも便益もない人からも保険料を徴収するため保険ではなく、公的保険として創るべきでない。小泉氏は「子どもがいなくても年金、医療、介護の受け手となるが、その持続可能性を担保するのは若い人だ」としているが、社会保障には消費税増税か子ども保険による新たな負担が必要で、その他の膨大な無駄は垂れ流しのままでよいとする広報ばかりを受けて育った日本の若者が、真摯に高齢者に寄り添った政策を作ったり介護したりする人材になるわけがないため、外国人労働者の方がよいということになるだろう。

 そしてまさに、*1-2-2のように、「若者に比べて高齢者を優遇する“シルバー民主主義”が財政を悪化させてきたが、政治家は投票所に足を運んでくれる人の意向を気にするため、選挙制度を変えて、“ドメイン投票”や“余命投票”が真剣に議論されている」と言う人まで出てきており、これは底の浅すぎる解釈で、日本国憲法で定められた普通選挙、基本的人権の尊重、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利などを無視している。さらに、「政治家が高齢者の意向を勝手に忖度しているだけ」「新たな人気取り」などとしているのは、(ここでは長く書かないが)我が国の周回遅れの社会保障と本物の財政改革の遅れに対する合理化にすぎない。

2)介護保険制度について
 *1-2-3に、「我が国の介護保険は膨張しており、介護施設や在宅サービスの給付費は総額約9兆円に上り、2025年度には2倍以上のおよそ20兆円に膨らむ見込みで、週2回、月10回程度の訪問が常識的だ」と書かれている。しかし、自宅療養をする人に月101回(1日3.4回)は不自然ではなく容体によるため、最高利用回数が月30回というのを威張る必要はない。

 そして、ムダを生む理由の一つは「安さだ」とも書かれているが、介護保険制度はすべての人にリスクと便益があるのに、介護保険料は「40歳以上~死亡時」まで支払わなければならない。一方で、医療保険制度は世帯主が支払義務者で40歳以下でも支払っているのであり、私は「子ども保険」を創るよりも介護保険料の支払義務者を医療保険と同じ世帯主とし、保険料の支払者・受益者の年齢制限をなくすのが筋だと考える。そうすれば、病児保育も介護で賄える。

 なお、「生活援助サービスは無駄」とも書かれているが、高齢や病気で家事ができない場合は、生活援助サービスがなければ施設に入らなければならず、QOL(Quality of Life)が低くなると同時に、施設の建設コストもかかる。そのため、「回数を増やすとコスト意識が甘くなる」などと言うのは、家事が知識と体力を要し失敗の許されない労働であって、85歳の高齢者には大変な仕事であることを知らない人の主張である。

 また、*1-2-3では、サービス付き高齢者住宅(以下、サ高住)等での在宅サービスが問題視されているが、自宅を離れてサ高住に住まなければならなくなった高齢者がどういう人であるかの丁寧な考察がない。つまり、サ高住で介護保険の給付が増えるのは当然で、そのため介護サービスの内容は障害の程度に応じて専門家が判定しており、認められているケアを100%受けても足りない程度の設定になっているのである。

 このように、メディアが「高齢者は金持ちで社会保障などする必要のない人」「若者の負担になるだけの存在」などという宣伝を熱心に行った結果、*1-2-4のように、二度と稼げない高齢者から、息子を語って大金を奪うなどという詐取が増えた。私は、「子どもだとしても、甘やかしすぎだ」「見ず知らずの人に、そんな大金をよく渡すものだ」などと驚くことが多いが、詐欺は騙した人が悪いのであって騙された人が悪いわけではないため、警察は、気を付けるように広報するだけではなく、犯人を逮捕して厳罰に処し、犯罪の予防に繋げるべきである。

(3)外国人労働者に対する差別
 佐賀県は、2016年に、*2-1のように外国人数が前年比13%増の5,140人で伸び率では全国の都道府県でトップになり、県が受け入れ態勢づくりに取り組んで、「壁」の突破に努めているそうだ。

 しかし、政府は、トランプ政権の移民政策を批判する割には、*2-2、*2-3のように、技能実習でも最長3年しか働けず労働条件が悪く、国家戦略特区で認めた農業の外国専門人材も日本で働ける期間を通算3年に制限するなど、外国人労働者に対する差別的扱いを行っている。ちなみに、最長3年では、仕事を覚えたところで帰国するため、労働力として頼みにならない。そして、農業だけではなく、加工・販売・輸出入・製品企画などで、日本人労働者と同じ条件で働けることを「差別のない状態」と言うのである。

(4)高度専門職差別と女性差別
1)高度専門職に対する差別
 *3-1のように、労働基準法を改め、「残業代ゼロ」制度を作って“高度プロフェッショナル”と呼ばれる人をそれに当てはめる制度は、他の法案と一括化して出し直すのではなく、①“高度プロフェッショナル”と呼んでいる人は本当に高度プロフェッショナルなのか ②“高度プロフェッショナル”なら、残業代をゼロにするのが適切な理由は何か などについて、立法理由を明確に説明すべきである。

 しかし、私は、労働時間を自己管理できて報酬もそこそこに高い管理職に残業代がつかないことで十分であり、“高度プロフェッショナル”という職種を分けて残業代をゼロにするのは不適切だと考える。何故なら、努力して“高度プロフェッショナル”になると、プラスどころかマイナスになる社会システムにしては、智の時代に対応できないからだ。そして、現在、博士課程を修了してポスドクになっている人も同じである。

2)女性に対する差別
 *3-2のように、日本女性には、谷が緩やかになったとはいえ、まだM字カーブがある。そのM字カーブは欧米にはないが、それは保育施設が整っているだけではなく、ナニーやメイドを雇って子どもを見させることもできるからである(ただし、日本でこういうことをすると批判する人すらいる)。そのため、優秀な日本女性は、欧米に留学している間や欧米に転勤している間に子ども作る人が多く、そうした方がやり易いと言われている。

 そのM字カーブが、近年は米欧とほぼ遜色のない形に近づいたそうだが、女性は労働条件が悪く、昇進も困難であるため、賃金が低い。その理由は、生産年齢人口の男性を中心に据えて、多くの女性を補助的労働力と捉えているからにほかならない。

<高齢者差別>
*1-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGKKASDG05H6Y_V00C17A1EA1000/ (日経新聞 2017/1/6) 「高齢者は75歳から」 学会が提言 65~74歳は社会の支え手
 日本老年学会と日本老年医学会は5日、現在は「65歳以上」とされる高齢者の定義を「75歳以上」に引き上げるべきだとする国への提言を発表した。心身が健康な高年齢者が増えたためで、65~74歳は「准高齢者」とし、社会の支え手として捉え直すべきだとしている。社会保障や雇用制度をめぐる議論に影響を与える可能性がある。提言をまとめるに当たり、両学会は高年齢者の様々な健康データを解析。日本老年医学会副理事長の秋下雅弘東京大学教授によると、医療の進歩や健康意識の高まりで現在の高齢者は10~20年前に比べ5~10歳若返った状態にあるという。提言は、前期高齢者とされる現在の65~74歳は「心身の健康が保たれ、活発な社会活動が可能な人が大多数」と分析。健康な間は仕事を続けたり、ボランティアに参加したりするなど、支えられる側から支える側に回る必要があるとした。この世代を過ぎた75~89歳を高齢者と定義し、平均寿命を超えた90歳以上を「超高齢者」と呼ぶのが妥当だとしている。2016年9月の総務省の推計によると、65歳以上は人口の約27%。高齢者を75歳以上とした場合、約13%と半減する。日本では「65歳以上を高齢者とする」と定めた法律はないが、医療制度や人口統計上の区分などで「高齢者=65歳以上」が定着している。高齢者を65歳以上と定義した1956年の国連の報告書が契機とされる。海外でも60歳以上や65歳以上を高齢者とする国が多い。ただ、56年に男性63.59歳、女性67.54歳だった日本の平均寿命は2015年にそれぞれ80.79歳、87.05歳に延びた。内閣府の14年度の意識調査では、高齢者だと考える年齢は男性が「70歳以上」(31.3%)、女性は「75歳以上」(29.9%)が最多。65歳以上が高齢者だと答えたのは男性が7.1%、女性は5.7%にとどまった。

*1-1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXKZO20949810Y7A900C1EA1000/ (日経新聞社説 2017/9/9) 公務員の定年延長には十分な議論が要る
 安倍内閣は公務員の定年をいまの60歳から65歳に引き上げる方針だ。国や地方自治体の財政事情が厳しいなか、総人件費が膨らまないか、心配になる。民間で定着している役職定年の導入などに取り組むのが先決であり、拙速に定年延長を進めれば社会の反発は免れないのではないか。国家公務員法は定年を原則60歳と明記しており、地方公務員もこれに準拠する。定年の延長には法改正が必要で、政府は6月に「公務員の定年引き上げに関する検討会」(座長・古谷一之官房副長官補)を発足させた。早ければ来年、法案を国会に提出し、2019年度から段階的に定年を引き上げる構えだ。年金支給開始年齢が65歳になったことで、60歳からの5年間をどうやって生活すればよいのかと不安を訴える公務員が多い。内閣人事局はそう説明する。しかし、そのための措置を政府はすでに講じている。公務員が再任用を希望したら必ずそうする、と閣議決定しているのである。これは民間企業の多くが導入している再雇用制度と大差ない。再任用から定年延長へ、なぜ急いで移行させるのか。十分な説明が求められる。公務員の給与体系は民間に比べて恵まれている。成果主義が導入されたとはいえ、最低の評価を受け続けても給与が増えないだけで減りはしない。役職定年がないので、いちどたどり着いたポストの給与が定年まで続く。検討会は定年延長とセットで役職定年の導入を検討しているらしいが、役職定年は民間ではとうに常識で、周回遅れの感がある。そもそも長年の課題である公務員と民間の年金格差がなお残っている。こうした課題を早く片付けるべきだ。いまのご時世に公務員の総数を増やすことは考えられない。定年を延長すれば新規採用の抑制は不可避だ。それで組織の活力を維持できるかどうかも、疑問点だ。ベテランのノウハウの継承は大事だが、官が人材を抱え続ければ政府が目指す労働力の流動性の増大をさまたげる要因ともなる。再任用では定年前よりも給与水準が下がるのが普通だ。そうしないための定年延長であり、公務員だけがいい思いをしようとしている。そんなふうに有権者に受けとめられたら、政治への不信はますます増大することになる。

*1-1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXNASDF2800Y_Y2A820C1EA2000/ (日経新聞 2012/8/28) 65歳まで雇用、企業身構え 義務付け法 29日成立
 60歳の定年後も希望者全員を雇用することを企業に義務付ける高年齢者雇用安定法改正案が29日、成立する。来年4月から厚生年金の受給開始年齢が引き上げられるのに対応し、定年後に年金も給料も受け取れない人が増えるのを防ぐ狙い。2025年度には65歳までの雇用を義務づける。企業は継続雇用の対象者を能力などで絞り込めなくなるため、負担増に備え対応を急いでいる。28日の参院厚生労働委員会で民主、自民、公明などの賛成多数で可決。29日に参院本会議で可決、成立する見通しだ。会社員が加入する厚生年金(報酬比例部分)は現在60歳から受け取れるが、男性は13年度に61歳からとなり、以降3年ごとに1歳上がって25年度には65歳開始となる。現在、企業の82.6%(約10万9千社)は継続雇用制度を持ち、定年後も希望者を雇用している。ただ、その5割強は労使協定の基準を満たす人に対象を絞っている。労働政策研究・研修機構によると、健康状態や出勤率・勤務態度のほか、約5割の企業が業績評価も基準に使っている。改正法は企業が労使協定で対象者を選別することを禁じる。ただ、企業の負担が重くなり過ぎないよう、厚生労働相の諮問機関である労働政策審議会で指針を作り、勤務態度や心身の健康状態が著しく悪い人は対象から外せるようにする。継続雇用する対象者の範囲は年金の受給開始年齢の引き上げに合わせて広げ、受給開始が65歳となる25年度には65歳まで希望者全員の雇用を求める。指導や助言に従わない企業名は公表する。11年6月の厚生労働省の調査では、過去1年に定年を迎えた約43万人のうち10万人以上は継続雇用を希望しなかった。年金の受給年齢が上がると定年後もしばらく年金を受け取れなくなるため、来春以降は希望者は増えると考えられる。みずほ総合研究所の試算では、継続雇用を希望しなかった人と希望しても離職していた人が全員、継続雇用されると賃金総額は来年度に4千億円増える。25年度には1.9兆円増え、総人件費を約1%押し上げる。コスト増以上に、能力の低い従業員も雇用しなくてはならず労働生産性が下がると懸念する声も多い。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「人件費の増加を防ぐため能力の高い高齢者の賃金まで企業が一律に抑制しかねない」と警鐘を鳴らす。高齢者の雇用が増える結果、企業が若年者の雇用を抑える可能性もある。「高齢者と若者のワークシェアなど柔軟な働き方を進めていく必要がある」と高年齢者雇用コンサルティングの金山驍社会保険労務士は指摘している。

*1-2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201709/CK2017091202000117.html (東京新聞 2017年9月12日) 子育て「共助で」 「こども保険」提言の小泉氏
 幼児教育・保育の無償化を目指す新制度「こども保険」の創設を提言した自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長=写真、小平哲章撮影=は十一日、本紙のインタビューに答え「親の自助だけに子育てを委ねるのは難しい。急速に人口が減っている中で、優先すべきは人生前半の教育だ。共助の仕組みである保険がかなう」と必要性を強調した。こども保険は、厚生年金と国民年金の保険料に一定額を上乗せし、児童手当の増額などに充てる制度。税金でなく「社会保険方式」で財源を確保するのが特徴だ。小泉氏らは約一兆七千億円あれば、実質無償化になると試算する。だが、負担が現役世代に限られることや、子どものいない世帯はサービスを受けられない点が課題と指摘され、自民党内にも反対論が強い。小泉氏は「子どもがいなくても年金、医療、介護の受け手となる。その持続可能性を担保するのは若い人だ」と指摘。二年後に予定される消費税増税の増収分を財源にすべきだとの意見には「政治的な困難、待ったなしの子どもの問題を考えたら現実的なのはこども保険だ」と反論した。こども保険は二〇一六年二月、小泉氏を中心に自民党の若手議員が参加した「二〇二〇年以降の経済財政構想小委員会」が議論に着手。今年三月に導入を促す提言をまとめた。四月に政調会長を委員長とする特命委員会に格上げされた。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170828&ng=DGKKZO20438380X20C17A8NN1000 (日経新聞 2017.8.28) 忖度しすぎ?シルバー民主主義、高齢者を優遇、財政悪化 負担増、受け入れる素地
 年金は少しでも多く、医療・介護や税の負担は少しでも小さく――。若者に比べて高齢者を優遇する「シルバー民主主義」政策が財政を悪化させてきた。お年寄りがこれからますます増えるなか、目先の痛みを強いる財政再建など、とても支持を得られない。だがこうした常識を覆す研究が出てきた。諦めるのはまだ早い。お年寄りの政治への影響力は大きい。直近3回の衆議院選挙の平均投票率は20代が39%なのに対し、60代は75%だった。2025年には、有権者の6割が50歳以上になる。病院の窓口負担を増やしたり、年金の給付額を減らしたりするのは難しくなるというのが霞が関や永田町の常識だ。
●利害・公共心カギ
 政治家は投票所に足を運んでくれる人の意向を気にする。それなら選挙制度を変えるしかない。そこで親が子どもの分まで投票する「ドメイン投票」や、年齢が若いほど1票の価値を高める「余命投票」などが真剣に議論されてきた。しかし、本当に単純な世代間対立で語れるのかと異議を唱える研究が最近、出てきた。鶴光太郎慶大教授らが全国の6128人に税制と社会保障に関する考え方を聞いたところ「増税をして社会保障を拡大する必要がある」とした人が20代では29%で、60代では40%だった。高齢になるほど高くなる。高齢者はすでに社会保障の恩恵を受けており、実利の面から増税と社会保障充実の組み合わせを選んだ可能性がある。一方、20代で最も支持を集めたのは「増税をせず社会保障を拡大する」というただ乗りで、35%を占めた。高齢者に比べてすぐに社会保障の恩恵を感じにくいため、増税への支持が少ないようだ。調査では政府やまわりの人への信頼が低く、ゴミのポイ捨てや年金の不正受給などに目をつぶる「公共心の低い人」ほどただ乗り政策を選ぶ傾向もあった。財務総合政策研究所の広光俊昭氏は仮想の国の財政政策について、負担を30年後に先送りするか、現世代と将来世代が分かち合うかを10~70代の447人に聞いた。先送りは、30年後に付加価値税(消費税に相当)が10%から25%に、年金給付が月10万円から5万円になる。分かち合いは付加価値税が20%、年金給付は7万円の状態がずっと続く。30代は67%が、60代は54%が分かち合いを支持。「将来世代」役を1人置いて討議をすると、分かち合いを選ぶ割合はさらに高まった。広光氏は「政策選択には個人的な利害と公共的な判断が併存して働く」とみる。
●若者の理解課題
 「政治家が高齢者の意向を勝手に忖度(そんたく)しているだけ。きちんと説明すれば高齢者もある程度の負担増を受け入れる」。「シルバー民主主義」(中公新書)を書いた八代尚宏・昭和女子大学特命教授はいう。
ただ、お年寄りの理解を得ても財政再建のハードルは高い。莫大な国の借金が若者の不安につながっている。鶴氏は「若い人でも目先の利益を重視する傾向がある」と話す。教育年数が短く、時間あたりの所得水準が低い人ほど、小さな負担で大きな受益を求めがちという。世界的に所得格差の不満が高まるなか、新たな人気取りは財政再建をより難しくする。

*1-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXLASDC08H39_Y7A900C1MM8000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2017/9/10) 介護費膨張 3つの温床 25年度に20兆円、ムダの解消急務
 介護保険が膨張している。介護施設や在宅サービスの給付費は総額約9兆円に上り、2025年度には2倍以上のおよそ20兆円に膨らむ見込みだ。給付の伸びは高齢化だけでは説明しがたく、サービスのムダにつながる3つの温床が浮かび上がってきた。「お肉はこのくらいでいいですか」。横浜市金沢区の団地。ヘルパーの藤田博美さん(62)が菅野茂さん(81)に尋ねながら料理する。訪問は週2回。「体の状態が悪いとき、言わなくても分かってくれる」と菅野さん。利用するのは生活援助と呼ぶサービスで、全国の平均的な利用回数は月10回程度。菅野さんのように常識的なケースが多くを占めるが「家政婦代わりに使われて本人の自立につながらない」(神奈川県の中堅介護事業者)との指摘が絶えない。北海道標茶町101回、大阪市98回……。財務省が6月まとめた調査には生活援助のひと月当たりの利用ケースで驚くような数字が並んだ。介護の取り組みが先進的とされる埼玉県和光市では月平均わずか6.7回で最高利用回数も30回だ。
■安い自己負担
 標茶町によると、101回利用したお年寄りは軽い認知症を患うなどして手厚い世話が必須だ。こうしたやむを得ないケースもあるが、全国でみれば要介護度や居住環境が同じでも自治体格差が大きく広がっている。ムダを生む理由の一つは「安さ」だ。例えば生活援助なら1回約2千円。自己負担は原則1割の200円ほど。最低でも1時間925円ほどかかる民間の家事代行サービスより格段に手軽だ。軽い介助が必要な要介護1なら保険給付の月額限度額は17万~19万円程度で、上限内で何度でも利用可能。コスト意識が甘くなり生活の「援助」に使うという本来の目的を逸脱しやすい。財務省幹部は「あまりにずさんな使い方が増えた。来年度改定で厳格に対応する」という。政府内ではサービス利用の上限制導入などが課題に浮上している。介護保険の給付費は国や自治体による公費と40歳以上からの保険料(労使折半)でまかなう仕組みだ。健康保険組合連合会によると13年度から17年度にかけて労使を合わせた保険料は7千円近く増え、年9万円に迫る。15~25年の要介護の認定者数の伸びは3割強を見込むが、保険からの給付費総額は2倍になる。高齢化で重度の認定者が増える面もあるが、財務省などはムダ遣いなどの非効率が広がってきた影響だと分析している。
■規制に抜け道
 保険対象の施設などには国の総量規制があるが、ここにも死角がある。その一つがサービス付き高齢者住宅(サ高住)などによる需要の囲い込みだ。サ高住自体は一種の賃貸住宅で保険の枠外。ところが運営者の企業などがサ高住に住むお年寄り向けに自社系列の事業者を使い、頻繁な在宅サービスを供給するケースも急増した。大阪府が昨年12月公表した調査では、府内のサ高住や有料老人ホームでは給付限度額の9割前後を消化していた。全国平均は約4~6割だ。この6年で府内にサ高住などの施設数が3倍に拡大した結果、その施設と在宅などのサービスが抱き合わせで増えていたのだ。
■監視難しく
 では介護サービスの内容を定めるケアプランを厳しくすればいいかといえば、それも困難だ。ここに3つ目のムダの温床がある。介護保険の運営主体の市町村にはプランを精査して見直しを迫る権限がない。介護事業所の経営者は「ケアマネジャーと事業者が結託すれば過剰サービスは防ぎようがない」と明かす。介護保険には今年度から収入が多い人ほど多く保険料を負担する「総報酬割」が段階導入される。大企業を中心に約1300万人は負担増の見込みで、高所得者を中心に現役へのしわ寄せは拡大の一途だ。焦点は政府と与党が年末にかけてまとめる来年度の介護報酬改定だ。「要介護度が低い人向けサービスを定額制にしたり、事業者が回数を抑えたりする動機付けが必要」。日本総合研究所の西沢和彦氏は指摘する。例えば現行は状況が改善して要介護度が下がると介護報酬も下がり、事業者の経営が苦しくなる。そこで自立を後押しした事業者には努力に報いて報酬を上乗せすれば、ムダ遣いを直す余地が生まれる。近年の介護費用の伸び率は医療や団塊の世代が受給し始めた年金を大きく上回る。介護の効率化を進めながら質の高いサービスの担い手のやる気を引き出せるか。介護保険は改革を先送りできないところまで来ている。

*1-2-4:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170907-00000022-kyt-l25 (京都新聞 2017/9/7) 息子をかたり490万円詐取 大津の女性被害
 滋賀県警大津署は7日、大津市内の女性(68)が息子をかたる男に490万円をだまし取られたと発表した。
同署によると、5日から6日にかけ、女性宅に息子を名乗る男から「友人と投資をやっていて、友人が会社の金に手を出した。500万円の示談金が必要」と電話があった。女性は大阪府高槻市内で、弁護士の代理を名乗る男に現金を手渡したという。

<外国人労働者差別>
*2-1:http://qbiz.jp/article/117249/1/ (西日本新聞 2017年9月3日) 佐賀県、外国人受け入れへ態勢着々 在住者13%増、伸び率全国トップ
 佐賀県内在住の外国人数が、2016年は前年比13%増の5140人で、伸び率では全国の都道府県でトップになった。県は今後の増加を見据え、日本語教室の開設を後押しするなど受け入れ態勢づくりに取り組んでいる。全国ではごみ分別の理解不足などから住民トラブルに陥ったり、犯罪に巻き込まれたりするケースも後を絶たないが、山口祥義知事は「官民で多文化共生を進めたい」と話す。県によると、県内在住者のうち、技能実習生が1863人で前年より426人増えた。留学生も前年比87人増の744人。この両者で全体の増加(604人)の約85%を占め、伸び率を押し上げた。コンビニや工場などの労働現場は人手不足に陥っており、技能実習生は「引く手あまた」(福岡県内の機械部品メーカー)の状態。県によると、多くが製造現場で働いており、今後も増える見通しという。このため、県は外国人の受け入れの課題や対策などの助言を政策に反映させようと、国際交流の有識者や関係者を招き、2015年4月に国際戦略本部会議をスタート。8月24日に6回目の会議を開き、「外国人住民への生活支援」をテーマに約20人が論議した。この日の会議では、日本で暮らす外国人を支援する東京のNPO法人国際活動市民中心(通称CINGA=シンガ)のコーディネーター新居(にい)みどりさんが、「外国人の在住には法律と言葉、心の『三つの壁』がある」と指摘。具体的には(1)夫の暴力で骨折しながら「逃げたら在留資格を失って子どもに会えなくなる」と逃避できない(2)東日本大震災で「タカダイ(高台)」の言葉の意味が分からず避難が遅れて被災した(3)マンションの隣人から「怖い」と敬遠され孤立した−といった事例を報告した。県によると、県内には日本語での会話に支援が必要な小中高校生が50人いるといい、子ども世代へのサポートも欠かせないという。県は「佐賀モデル」として、市民ボランティアによる日本語教室開設を会場費の助成などで後押ししており、現在、13教室が運営されている。本年度からは専任のコーディネーターも1人配置し、「壁」の突破に努めている。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170909&ng=DGKKASFS06H5G_X00C17A9MM8000 (日経新聞 2017/9/9) 外国人就農、通算3年 特区で延長 総労働時間には上限
 政府は国家戦略特区で認めた農業の外国専門人材について、日本で働ける期間を通算で3年とする方針だ。技能実習制度で働く場合は最長3年だが、特区では農繁期だけ働く場合などは初めて来日してから3年を超えても働くことを認める。年間総労働時間の上限も設け過重労働を防ぐ。外国人材の活用で、高齢化などで担い手不足に悩む地方農業の活性化を狙う。農業での外国人受け入れを盛り込んだ改正国家戦略特区法が6月に成立したことを受け、受け入れの詳細をまとめた指針や政令を近く公表する。自治体の間で農業分野の外国人活用に対する関心は高く、すでに特区に指定されている愛知県のほか長崎県や茨城県、群馬県昭和村、秋田県大潟村などが関心を示している。政府は年末をめどに特区を追加指定する方針で、これらの自治体が選ばれれば、農業での外国人活用が広がる。政府・与党内には特区に限らず全国で認めるべきだとの声もある。農業で受け入れる外国人は満18歳以上で、1年以上の実務経験がある人材に限る。農業に従事するうえで必要な日本語が話せることも条件とした。派遣会社が雇用契約を結び、過去5年以内に労働者を雇用した経験がある農業生産法人などに派遣する。生産法人が直接雇用することは認めない。期間は通算で3年だ。例えば春から夏にかけて半年だけ日本で働くケースでは、初来日から6年目まで就労できる。農作業のほか加工や販売にも携わったり、複数の生産法人で働いたりすることもできる。派遣会社には日本人労働者と同等以上の報酬を払うことを義務付ける。指針などとは別に、法令の解釈通知を通じて年間の総労働時間の上限を決める。

*2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/461590 (佐賀新聞 2017年9月8日) 外国人実習生の労働条件改善を 市民団体、県に要請
 労働組合や患者団体などでつくる「はたらくもののいのちと健康を守るネットワークさが」は7日、外国人技能実習生の労働条件の改善などを求める要請書を佐賀県に提出した。実習生の長時間労働や賃金の未払いなどの違法な労働実態の調査や、実習生に対応できる相談窓口を設けることなど4項目を求めた。要請書を手渡した東島浩幸弁護士は「外国人技能実習生の制度は『奴隷労働』と国際的にも批判されている。窓口の設置や、通訳をつけて対応するといった相談体制の充実に取り組んでほしい」と強調した。県産業人材課の担当者は「国が所管しているため、(県では)取り組みを進められない項目もある。対応できる部分は関係課に報告したい」と話した。団体側はアスベストを使用した建物の所在を掲載したハザードマップの作成も求めた。

<高度専門職差別と女性差別>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201709/CK2017090902000140.html (東京新聞 2017年9月9日) 【政治】働き方法案に「共謀罪」・安保法の手法 「残業代ゼロ」根幹残し一括化
秋の臨時国会に提出される「働き方改革」関連法案のうち、労働基準法を改めて「残業代ゼロ」制度(高度プロフェッショナル制度)を創設する部分は、継続審議となっている法案を取り下げ、他の法案と一括化して出し直す。かつての「共謀罪」法や安全保障関連法と似通う手法だ。「残業代ゼロ」制度は、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す。政府はこれを柱とした労基法改正案を二〇一五年の通常国会に提出したが、一度も審議入りしていない。法案要綱では、関連法案のうち「残業代ゼロ」を導入する労基法改正案は、休日確保措置などが新たに盛り込まれたが、従来の法案と根幹部分は変わらない。批判が強い法案の内容を微修正して出し直すやり方は「共謀罪」法と重なる。「共謀罪」法案は〇三、〇四、〇五年に国会提出され、「人権侵害につながる」との懸念が出て廃案に。安倍政権は構成要件を一部変更した上で罪名を「テロ等準備罪」に変え、今年六月に成立させた。また、今回の法案は残業時間の上限規制や正社員と非正社員の待遇差縮小など、性格の異なる法案と一括化して提出する。審議時間を短縮するのが狙いで、「残業代ゼロ」など個別の制度の是非を巡る審議が不十分になる可能性がある。多くの法案と抱き合わせる手法は、一五年九月に成立した安保関連法と似ている。同法も、集団的自衛権行使を可能にする武力攻撃事態法、地球規模で米軍を支援可能にする重要影響事態安全確保法など十本を一本化し、批判を受けた。政府が提出した法案を自ら取り下げるのも異例。二〇〇〇年以降では、衆参の多数派が異なる「ねじれ国会」で成立を断念するなど計八法案だけだ。一橋大大学院法学研究科の只野雅人教授(憲法、議会制度)は「政治的な思惑から法案を一括化することは、審議の充実という観点から問題がある。賛否が分かれる法案は個別に提出し、別々に議論すべきだ」と話す。 

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170909&ng=DGKKASDF29H17_Y7A900C1MM8000 (日経新聞 2017.9.9) M字カーブ 「谷」緩やかに、30~40代女性の離職に歯止め
女性の就労が増えている。労働力としてみなされる女性の割合を示すグラフをみると、30~40歳代の部分が顕著に落ち込む「M字カーブ」と呼ばれる特徴が薄れ、米国や欧州各国などに似通ってきた。育児休業など企業側の制度整備が進んだことや働く意欲を持つ人が増えたことが大きいが、待機児童の解消はなお道半ばだ。働きやすさと労働の質を高めるさらなる工夫がいる。デイサービス(通所介護)大手のツクイは従業員の75%が女性だ。働き手の確保のため介護施設内に託児所を設け、0~2歳児の子供が5人いる。ある従業員は「休憩時間をつかって子供の様子を見に行けるので安心」と語った。総務省の7月の調査によると15~64歳人口に占める女性の労働力の割合(労働力率)は69.7%で、働く女性は着実に増えてきた。年代別ではM字の谷に相当する35~44歳の労働力率が前年同月比0.7ポイント増の75.3%。10年前の2007年7月と比べると全ての年代で上昇し、全体的に底上げされている。
●米欧に近づく
 15年時点では米国や英国、北欧地域とは大きく異なるカーブを描いていた日本。近年は米欧とほぼ遜色のない形に近づいており、女性の労働市場は歴史的な構造変化を遂げつつある。女性の就労が加速した最大の理由は、企業が離職防止に取り組んできたことだ。女性の育休取得率はやや低下傾向にあるとはいえ8割超で推移している。育休中の生活を支える政府の育児休業給付金の受給件数は、06年度の13万件から16年度の32万7千件へと2倍以上に増えた。高齢化で15~64歳の生産年齢人口はこの10年で700万人以上も減った。その一方で実際に働いている労働力人口をみると同じ時期におよそ50万人増えた。女性だけに限れば約200万人増え、M字の底を押し上げるのに大きく貢献したことがわかる。働き口も高齢化でニーズの強まる医療・福祉業など裾野が大きく広がっている。大和総研の鈴木準政策調査部長は25~44歳女性の就業率について「このままのペースで伸びれば22年には80%に到達する」と話す。国立社会保障・人口問題研究所の試算をもとに計算すると22年に25~44歳女性の就業者数は16年と比べて200万人以上減る見通しだが、就業率が80%に上がることで減少幅は46万人で済む。政策努力などでさらにこの比率を高めることができれば、減少を食い止めることができるかもしれない。もっとも楽観的な見方を戒める声も目立つ。第一生命経済研究所の柵山順子氏は「M字カーブの完全解消には保育所不足などがハードルになるだろう」と分析する。ここ数年で女性の就労が政府の想定以上のテンポで進み、待機児童は減るどころか2万6千人強に膨らんだ。政府は22万人の保育枠を追加整備する方針だが、都市部の整備が遅れるミスマッチを解消するのはやさしくない。
●賃金は伸び鈍く
 生産年齢人口の急激な減少が進む中で女性の就労をさらに後押しするには企業の一段の取り組みも重要だ。オリックスは配偶者の転勤で現在の勤務地で仕事が続けられない場合、勤務エリアを変更できる制度を昨年3月に導入。配偶者の転勤で退職を選ぶ社員も多かったが「キャリアを途中で諦めなくてすむので好評だ」(同社)。ユニ・チャームは全社員を対象に在宅勤務を導入。ネスレ日本は昨年に在宅勤務の制約を緩和し、上司の許可があれば理由に関係なく会社以外で勤務できるようにした。経済成長の土台を確かなものにするにはM字カーブを解消し、労働力を底上げするのは理想的な方向だ。とはいえ夫の収入が低迷するなどしてやむを得ずパートなどで働きに出る女性もまだ多く、賃金の伸びは鈍い。さらに女性の就労を後押しするには育児休業などの整備を加速させるのはもちろん、生産性向上と賃上げなどで働き手に報いる努力が必要だ。離職者向けの再就職支援、学び直しの機会の提供など、様々な手立てを講じることも欠かせない。

<サービス付き住宅>
PS(2017年9月12日追加):*4のように、訪問サービス付き高齢者向け集合住宅に大手不動産などの参入が相次いでいるそうだが、私の叔父が入っている横浜市のサ高住には食堂があり、栄養管理した食事が出されて介護付きであるため、便利だ。中では、書道や軽い体操などのコースもあるが、高齢者が若い頃に流行っていた音楽や映画などもやると心が元気になってよいと思われる。なお、訪問サービスの内容に介護だけでなく、家事サービスを加えて間取りを広くすれば、高齢者だけではなく、独身者、共働き家庭、子育て家庭にも便利な住宅になりそうだ。

*4:http://digital.asahi.com/articles/ASK945D0FK94UTLZ00G.html?iref=comtop_list_biz_f03(朝日新聞 2017年9月9日)「サ高住」銘柄に熱視線 大手不動産など参入相次ぐ
 「足腰が元気なうちに『終の棲家(すみか)』となる新築物件に移り住もう」。郊外の持ち家を処分して都心の超高層マンションに引っ越すシニア層が増えています。一方で、看護・介護の訪問サービス付きの高齢者向け集合住宅、いわゆる「サ高住」が高い関心を集めています。利用者の需要も全国レベルで拡大。事業者向けの税制優遇や融資制度など、国や自治体が促進施策を充実させて、参入企業も増えています。登録物件をオンラインで公開する高齢者住宅推進機構によると、有料老人ホームも含めた「サ高住」は7月末時点で、全国6697棟、21万8851戸。この4年で棟数、戸数とも倍増しました。政府は共同住宅、寮、ホテル、老人ホーム、賃貸住宅など既存施設の改修を呼びかけていますが、補助事業全体に占める改修物件の割合は少なく、大半は民間企業が医療・社会福祉法人と手を組んで開発した新築物件です。「サ高住」事業に参入している民間企業で有名なのは、学研ホールディングス系の学研ココファン。神奈川県を中心に全国で117事業所を展開しています。最近勢いがあるのは、大手損害保険のSOMPOホールディングス。「メッセージ」「ワタミの介護」と介護事業者を相次いで買収し、新築物件を供給しています。大手不動産の参入も目立ちます。賃貸アパート受託など、サブリース事業を手掛ける企業が、入居者への転貸目的で働きかけを強めそう。「サ高住」は株式市場のテーマとしても今後、注目の的になる可能性があります。

<開発力・技術力とそれを支える国民>
PS(2017年9月14日追加):*5-1のように、佐賀新聞は2015年度の国民医療費が42兆円に達し、これは、高齢化に加えてオプジーボなどの超高額薬の保険適用が影響したものだと報道している。高齢化によって有病者が増えるのは自然だが、薬の飲ませすぎもあるのではないかと思われ、オプジーボの価格も、図のように、英国・米国では日本の約1/5と1/2だったので、厚労省の価格決定や過度な使用範囲の制限が問題なのだと思われる。何故なら、原理から考えると、オプジーボは、どの癌にも効き広範に使用できるのが当たり前だからだ。
 また、*5-2-1のように、英国・フランスに続き中国がガソリン車・ディーゼル車の廃止に向けた検討に入り、環境規制を強化するため、自動車大手は電気自動車(EV)の開発を急いでいるそうだ。しかし、日本の「リーフ」は、いつまでも「市街地で短い距離を走るなど、中国では独自の使われ方がある」などと、排気ガスを出さないのだから少しくらい不便でも我慢しろという態度だ。しかし、EVは、①排ガスが出ない ②静か ③操作性がよい ④燃料費がいらない など、ガソリン車と比べて欠点がないから売れるのであって、ドイツのVWは、*5-2-2のように、2030年までにEVに200億ユーロ(約2兆6千億円)を超える投資を行う計画を発表し、2025年までには80車種の新型車両を投入する方針にしたそうだ。なお、開発を始めて20年以上経過している日本は、とっくの昔にそれをクリアしていなければならない時期なのである。そして、こういう意思決定を速やかに行えるためには、文系の人もこの程度の理系の知識は必須であるため、それを高校卒業までに教えておかなければ国力をそぐことになる。
 そのため、*5-3のように、私企業である日立が英国に建設する原発に、同じく私企業である日本の銀行が融資する建設資金を、日本政府が全額補償して膨大な偶発債務を引き受け、昔帰りの技術に固執するなどという馬鹿な税金の使い方を止めさせつつ、幼児教育の無償化もよいが、それに先立って小学校への入学年齢の3歳への引下げを行い、いろいろなことを高校卒業までにマスターしておけるようにすることが必要だと考える。

   
   2017.9.13佐賀新聞      日米英の価格比較    2016.11.2朝日新聞

*5-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/462976 (佐賀新聞 2017年9月13日) 15年度国民医療費42兆円、過去最高、高額薬が影響
 厚生労働省は13日、2015年度に病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われた医療費の総額(国民医療費)が、前年度比1兆5573億円増(3・8%増)の42兆3644億円だったと発表した。国民1人当たりでは1万2200円増(3・8%増)の33万3300円。いずれも9年連続で過去最高を更新した。高齢化の進行に加え、がん治療薬「オプジーボ」など超高額薬の保険適用が相次いだことが要因。国民医療費が国民所得に占める割合は10・9%。年代別では、65歳以上の高齢者向けが25兆1276億円で59・3%を占めた。

*5-2-1:http://qbiz.jp/article/118672/1/ (西日本新聞 2017年9月13日) EVシフト急加速 英仏中、ガソリン車廃止検討
 英国やフランスに続き中国がガソリン車とディーゼル車の廃止に向けて検討に入った。環境規制の強化を受け、自動車大手は電気自動車(EV)の開発を急ぐ。割高な生産コストや基幹部品である電池の安定調達がEV転換への課題となる。「フォルクスワーゲン(VW)の歴史に新たな幕が開こうとしている」。フランクフルト自動車ショー開幕を前にした11日、ミュラー会長は環境規制に対応したEVを含む電動化投資戦略を発表。2030年までにグループで200億ユーロ(約2兆6千億円)超を投じる計画をぶち上げた。欧州に続いて、中国政府はEVをはじめとする新エネルギー車の普及を加速させる。EVの主戦場になると予想される中国市場で、日系メーカーは攻勢をかける構えだ。先行する日産自動車は18〜19年に複数のEVを投入する方針で、今月披露した新型「リーフ」の発売も検討する。西川広人社長は「市街地で短い距離を走るなど、中国では独自の使われ方がある」とし、現地で受け入れやすい商品展開を狙う。現地主導で開発するホンダは18年に新型EVを投入する予定。出遅れるトヨタ自動車も19年をめどにEVモデルを既存車種に設定する考えだ。規制強化をいち早く打ち出した欧州では、低燃費を売りにしたディーゼル車からの撤退が進む。ホンダは18年に欧州で売り出すスポーツタイプ多目的車の新型「CR−V」にディーゼル車の設定をなくす方針。SUBARU(スバル)は20年をめどにディーゼル車販売を取りやめる見通しだ。ある日系メーカー首脳は「環境対応車の主役にディーゼル車が今後座ることはない」と断言する。ただ、EVはエンジン車に比べると依然として割高感があり、販売が政府の補助金に頼っている面は否めない。さらに、基幹部品のリチウムイオン電池に使われるレアメタル(希少金属)の生産は中国やアフリカ、ロシアなど少数の国に偏っており「安定調達がネックになってくる」(日産幹部)との懸念もある。国際エネルギー機関(IEA)は、世界の新車販売に占めるEVの割合は35年でも1割程度だと予想。住商アビーム自動車総合研究所の大森真也社長は、EVの普及見通しについて、エンジン車の乗り入れが将来禁止されそうな都市部で存在感を示すなど「すみ分けが鍵となる」と指摘する。

*5-2-2:http://qbiz.jp/article/118559/1/ (西日本新聞 2017年9月12日) VW、電動車両に2・6兆円投資 80車種投入へ
 ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は11日、グループで2030年までに電気自動車(EV)など車の電動化に200億ユーロ(約2兆6千億円)を超える投資を行う計画を発表した。25年までに80車種の新型車両を投入する方針だ。VWの排ガス規制逃れによる欧州でのディーゼル車離れや、市場シェアが高い中国の大気汚染規制の動きに対応する。欧州最大級の国際自動車ショーが12日にドイツ・フランクフルトで開幕するのを前に、ミュラー会長が公表した。車に搭載する電池性能の向上のほか、工場設備や充電設備を整備する。80車種のうちEVが約50車種、プラグインハイブリッド車(PHV)が約30車種になるという。グループのブランド全300車種に電動化モデルを最低一つそろえる。ミュラー氏は「自動車産業の(電動化への)変換は止められない。VWがそれを主導する」と語った。また、VW傘下の高級車アウディは11日、ハンドルやペダルがない完全自動運転によるEVの試作車を公開した。1回の充電で800キロまで走行できることを想定している。具体的な実用化の時期は未定。

*5-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170902&ng=DGKKASFS01H5T_R00C17A9MM8000 (日経新聞 2017.9.2) 政府、原発融資を全額補償、まず英の2基 貿易保険で邦銀に
 政府は日立製作所が英国に建設する原子力発電所について、日本のメガバンクが融資する建設資金を日本貿易保険(NEXI)を通じて全額補償する。先進国向け案件の貸し倒れリスクを国が全て引き受けるのは異例の措置だ。国内の原発新増設が難しい中、国が全面的な支援に乗り出してメガバンクなどの協力を引き出す狙い。インフラ輸出は中国など新興国勢との競争が激しくなっており、国が他のインフラ案件でも支援拡充に動く公算が大きい。安倍晋三首相は8月31日にメイ英首相と会談し、原発建設の協力推進を確認した。貿易保険(総合2面きょうのことば)の補償対象は日立子会社のホライズン・ニュークリア・パワーが受注した、英中部ウィルファで計画中の原発2基だ。両政府と日立は事務レベルで資金支援の枠組みを詰めて2019年中の着工を目指している。試算によると、事業費は2基で2兆円超だ。英政府と日立、日本政策投資銀行、国際協力銀行(JBIC)が投融資を実施する見込みだが、巨額な資金を調達するには民間融資が不可欠になっている。NEXIは通常、民間融資が焦げ付いた場合に備えた保険を提供し、融資額の90~95%を補償する。今回の英国案件については全額を補償する方向で邦銀と協議に入る。原発事業は東京電力福島第1原発事故以降に安全対策費が膨らみやすく、三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行も貸し倒れリスクが大きいと判断しNEXIの全額補償を条件にしていた。過去に途上国向けで全額補償したことはあるが、先進国では例外的な措置だ。数十年程度の長期融資などが補償の条件になる見込みだ。原発事故などが発生した場合、三菱UFJ、みずほ両行は第三者から原発事業への貸し手責任に関して訴訟を起こされるリスクもある。両行は損害賠償に関する日英両政府間の協議などを見極めたうえで最終判断する。国が資金支援で前面に立つのは大きなリスクとも隣り合わせだ。原発建設は徹底した安全対策で工程が長引く傾向にあり事業費が想定を上回るケースも後を絶たない。貸し倒れになったりすればNEXIやJBICのバランスシートを直撃し、税金投入を通じた資本増強が不可避になる。最終的に多額の国民負担が発生する危険を冒しながらインフラ輸出を推進することの是非についても議論が活発になりそうだ。一方で中国は国有企業を中心に国を挙げて大型のインフラ輸出を加速させており、日本も対抗上、相応のリスクを取らなければ激しい受注レースで生き残れない現実もある。英政府は15年、英南東部で中国製の原子炉を先進国では初めて導入することを決めた。安倍政権は今回、全額補償措置などと引き換えに英国側にも官民での資金支援を手厚くするよう要請する。

<福岡市の再開発と自動車>
PS(2017年9月17日追加):日本で5番目に多い人口約153万人を擁する福岡市で、*6-1のように、建物の高さ制限を緩和しているのは新しい街づくりが進み易くなってよいが、次はオフィスや商店を高くなったビルに集めて、広い自動車道・自転車専用道・歩道などを備えた緑多き安全な街づくりをして欲しい。なお、排ガスの出る自動車が通らなければ、ビルの中を通る道路や高速道路を作ることも可能だ。また、福岡市は市内に空港があって便利な街だが、航空法の規制緩和は危ないので、空港を能古島か糸島半島に移転してはどうかと考える。現在は北九州空港もできているため、福岡空港は西に移動してもよいのではないだろうか。
 さらに、*6-2のように、我が国では、現在の一般車を前提として高齢者の免許返納を進め、高齢者の運転を制限しているが、免許返納して外出できなくなってから認知症になる高齢者も多いため、何でも禁止するのではなく、自動運転車や運転支援車など、自動車の方を迅速に改良すべきだ。

*6-1:http://qbiz.jp/article/118957/1/ (西日本新聞 2017年9月17日) ウオーターフロント地区も高さ緩和 福岡市都心部再開発 上限100メートル、国が最終調整
 福岡市都心部の再開発を促進する一連の建物の高さ上限緩和で、国が博多港中央・博多両ふ頭のウオーターフロント(WF)地区について、現行から最大30メートル引き上げて高さ上限を最高点で約100メートルとする方向で最終調整していることが16日、分かった。高さ上限緩和を巡っては、国が「天神明治通り地区」(中央区)で渡辺通りを挟んで西側は一律約115メートル、東側は約99メートルを最高点とするレベルまで大幅に引き上げる方針を既に固めており、月内にもWF地区と合わせて正式に決定する見通し。福岡市は天神、JR博多駅周辺、WFの3地区を「都市成長の軸となるトライアングル(三角形)」と位置付け、民間を中心としたビルの新築・建て替えを誘導するため、国に対し国家戦略特区による航空法の規制緩和を要望している。7月には、天神に隣接する旧大名小跡地(中央区)の高さ上限が地上26階建て相当の約115メートルまで緩和されたばかりで、都心再生に向けた環境整備が急ピッチで進みだした形だ。WF地区は、海外からの大型クルーズ船の発着地点として注目が高まっており、市は民間活力を生かして高級ホテルや大型ホール、商業施設を集積する再整備計画を検討している。WF地区の建物の高さ上限は現在、福岡サンパレス付近で約70メートルなどとなっている。市は、地区内の博多ポートタワー(高さ約100メートル)と同じ高さを最高点とする規制緩和を求めていた。実現すれば、地上22階建て相当のビルの建築が可能となり、WF地区の再整備計画の追い風となりそうだ。また、市はJR博多駅周辺地区についても、現行の高さ上限約50メートルを最高約60メートル(地上13階建て相当)まで引き上げることを要望しており、国との協議が続いている。

*6-2:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-572995.html (琉球新報 2017年9月12日)75歳以上の免許返納14万件 改正道交法、事故対策に一定効果
 75歳以上の高齢運転者への認知機能検査を強化した改正道交法は、12日で施行半年となった。高齢者の事故が依然として高水準な一方、1~7月の運転免許証の自主返納は14万件を超え、死亡事故も減少するなど一定の効果があった。警察庁は運転できる車種や地域、時間帯を限定した「限定免許」の導入も検討するなど、さらに事故防止の取り組みを進めていく。警察庁によると、75歳以上の1~7月の免許自主返納は14万3261件(暫定値)で、昨年1年間の16万2341件を上回る勢い。過失の重い「第1当事者」となった死亡事故も1~7月に219件で、過去10年間で最少だった。

<教育は国の礎なのに>
PS(2017年9月25、26日追加):明治時代から「教育は国の礎だ」として小学校から大学まで整備してきたことは、我が国の経済発展に大いに寄与した。今、そのうちの義務教育を3歳から18歳までとして無償化し、現代に必要な基礎的知識や技能を義務教育で身に着けられるようにすることは、無駄遣いでもバラマキでもなく、必要な教育を国民全体に行き渡らせ、生産性を向上させるために必要なことである。にもかかわらず、*7-1のように、「教育無償化」「保育」と言えば、「財源として消費税増税やこども保険が必要だ」とか「バラマキだ」などという批判が出るのは間違っている。バラマキは、景気対策と称して生産年齢人口の成人が働く産業に支払う多額の支出や補助金であり、教育レベルを高めることは、国から補助してもらわなければならない人を減らして税金を多く支払う人を増やすものであるため、消費税以外の税収を財源として優先的に支出しても何ら問題ない。
 また、外国では海底油田から原油を採掘しており、日本の排他的経済水域(EEZ)にも地下資源が埋蔵されていることがわかっていたのに、*7-2のように、海底鉱物採掘は2020年代の半ば頃しか商用化できないそうで、経産省の判断の悪さと生産性の低さが問題である。遅れ馳せでも海底鉱物資源を大量採掘することに成功したのはよいが、海底資源は国有財産であるため、国交省・財務省は国の収入として教育・福祉・国の借金返済に貢献するスキームを作るべきだ。

*7-1:http://qbiz.jp/article/119372/1/ (西日本新聞 2017年9月25日) 財政健全化の目標先送り 人づくり2兆円、ばらまき批判も
 衆院解散・総選挙を決断した安倍晋三首相は25日、「人づくり革命」に2兆円を投じる方針を掲げ、政策パッケージを年内に策定するよう関係閣僚に指示した。2020年度までに3〜5歳児の幼稚園・保育所の家計負担を全て無償とし、0〜2歳も低所得世帯に絞って無償化する。財源には消費税増税分の一部を転用する方針。基礎的財政収支を20年度に黒字にする財政健全化目標の先送りを事実上認めた。19年10月に予定する消費税率8%から10%への引き上げでは、増収分のうち4兆円を「社会保障の安定化」として借金抑制に充てる計画だったが、使途見直しにより財政再建は後回しとなる。無償化で家計は助かる一方、選挙での票獲得を狙った「ばらまき」との批判も強まりそうだ。首相は25日の記者会見で財政目標の20年度達成は「困難」と説明。黒字化自体は引き続き目指すと強調したが、具体的な時期は示さなかった。人づくり革命では、低所得世帯の大学生を対象に17年度から一部導入した給付型奨学金の支給額を大幅に増やすことや、授業料減免の拡充を表明。待機児童の解消に向け、32万人分の保育の受け皿を22年度まで5年間で整備する計画を前倒しし、20年度末までに完了する方針も打ち出した。幼児教育・保育の無償化はこれまで低所得世帯を中心に段階的に進めてきた。年収を問わず全て無償化するには約7300億円の追加費用が必要になる。首相は財源の大半を消費税で賄うとした上で、企業と従業員が負担する「こども保険」の導入是非も引き続き検討すると述べた。企業の設備投資などを促す「生産性革命」についても年内に政策パッケージを策定する。20年度までの3年間を集中投資期間とし「税制、予算、規制改革を総動員」(安倍首相)する方針だ。

*7-2:http://qbiz.jp/article/119459/1/(西日本新聞 2017年9月26日) 海底鉱物、大量採掘に成功 20年半ば、商用化目指す
 経済産業省と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は26日、海底にある鉱物資源を船で大量採掘することに世界で初めて成功したと発表した。沖縄県近海では海底から熱水と一緒に噴き出した金属が堆積してできる「海底熱水鉱床」の存在が相次いで確認されており、2020年代半ばごろの商用化を目指す。海底熱水鉱床には亜鉛、鉛のほか、金や銅などの資源が含まれている。今年8月中旬〜9月下旬、沖縄近海に投入した採掘機で海底約1600メートルの鉱床を細かく砕き、ポンプで海水とともに船に吸い上げる方式で試験を実施して成功した。今回採掘した鉱床には日本の年間使用量に相当する亜鉛が存在すると分析しているという。沖縄近海の排他的経済水域(EEZ)内では過去3年間で6カ所の鉱床が見つかっており、今後も新たな鉱床が発見される可能性が高い。日本は鉱物を輸入に頼っており、経産省は「生産性の高い採掘方法を確立し、十分な埋蔵量が確認できれば資源産出国になれる可能性がある」と期待している。18年度に経済性評価を実施する予定だ。

<保育・学童保育の質について>
PS(2017年9月28日追加):*8のように、放課後学童保育は必要で、これは量だけでなく質も重要だ。私は、退職後の教諭が予習・復習を手伝ったり、エンジニア出身者が遊びを兼ねて工作を手伝ったりなどすると、子どものうちから知らず知らずのうちに役に立つ能力が身につき、興味がわいてよいと考える。

*8:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/466972 (佐賀新聞 2017年9月28日) 学童保育、定員501人増 新設や余裕教室活用
 9月定例佐賀県議会は27日、総務、文教厚生、農林水産商工、県土整備・警察の各常任委員会の質疑を行った。共働きやひとり親家庭の小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)の待機児童が増え続け、5月現在で235人に上っている問題で、県こども未来課は、市町がクラブを新設したり、余裕教室など既存施設を改修したりすることで、本年度中に定員が501人増える見込みを示した。放課後に安心して過ごせる生活の場としての放課後児童クラブを質・量ともに充実することが課題となっている。待機児童問題や、職員の処遇改善などについて、徳光清孝議員(県民ネット)が聞いた。定員増により、待機児童が出ている6市町中、佐賀市を除く5市町は施設面では待機児童を受け入れることができる見通しだが、一方で放課後児童支援員の不足も深刻化しており、「『待機児童が解消される見通し』とまでは言えない」(こども未来課)という。152人と県内で待機児童が最も多い佐賀市の定員増は50にとどまる。支援員の資質向上や処遇改善の質問に、藤本武こども未来課長は「子どもたちが安心して放課後を過ごすため、放課後児童支援員が果たす役割は大きい。市町と連携し、支援員が働きやすい環境づくり、質の向上に努めたい」と答弁した。過熱する部活動や教職員の負担軽減の観点では、武藤明美議員(共産)と古賀陽三議員(自民)が取り組みを尋ねた。牛島徹保健体育課長らは中学校の部活動に関し、「県内統一の休養日を設定する方向で調整している」と述べた。部活動の過熱化にブレーキをかけるとともに、教員の負担軽減を図る。10月初旬にも通知する。6月時点では佐賀市など6市町の教育委員会が休養日を独自に設定している。


<希望の党の小池氏への期待>
PS(2017年9月29日追加):*9-1、*9-2のように、高齢世帯の4分の1が貧困状態にあり、その生活水準は「生活保護以下」である。これは、スーパーでちょっと気を付けて庶民の高齢者の買い物かごを見ていればすぐにわかることで、買いたくても金がないから買えないのだ。にもかかわらず、経済政策は、①物価上昇を目的に金融緩和して貨幣の購買力や資産価値を低下させ ②ゼロ金利にして金融資産からの収入を無くし ③年金を削減し ④介護保険料などの負担は増やし ⑤消費税増税を自己目的化して他の工夫はせず ⑥教育・福祉の財源は消費税しかないかのような論調をはびこらせて高齢者いじめをしており、目に余る。
 そのため、安倍首相の「消費税収の使い道の変更」が衆議院選挙の争点になっているのだが、実際には、*9-3、*9-4の原発は、何十兆円もの予算を使いながら激しい公害を出すシロモノで、速やかに「原発ゼロ」にすれば多額の原発予算を削減して本物の地域再生や教育・福祉にまわすことができるため、希望の党の小池百合子氏には、具体的に、「速やかな原発ゼロと自然エネルギーへの転換」「消費税凍結」「脱世襲政治」を前面に掲げて欲しいと考える。

*9-1:http://qbiz.jp/article/118821/1/ (西日本新聞 2017年9月15日) 高齢世帯の4分の1が貧困状態 「生活保護未満」立命館大教授分析
●独居女性では2人に1人 
 65歳以上の高齢者がいる世帯の貧困率は2016年時点で27・0%−。厚生労働省の国民生活基礎調査を基にした立命館大の唐鎌直義教授(経済学)の独自分析で、こうした結果が明らかになった。1人暮らしの女性は特に深刻で、2人に1人が生活保護の水準を下回る収入で暮らしている。高齢者世帯の貧困率は上昇しており、その背景について唐鎌教授は年金受給額の減少を指摘している。唐鎌教授は、全国約29万世帯を対象に所得や家計支出などを調べた16年の国民生活基礎調査のデータから高齢者世帯の所得状況を分析。平均的な生活保護費(1人世帯で月額約12万円と想定)に租税免除などの影響を加味し、生活保護受給者と同等の生活水準になる世帯年収を1人世帯160万円▽2人世帯226万円▽3人世帯277万円▽4人世帯320万円と設定。この基準に満たない世帯の割合を貧困率として算出した。分析によると、1人世帯の貧困率が特に高く、女性56・2%、男性36・3%。2人世帯でも2割を超え、高齢者と未婚の子の世帯は26・3%、夫婦世帯は21・2%だった。高齢者世帯全体の貧困率は27・0%で、以前まとめた09年調査の分析結果と比較すると2・3ポイント増加。この間、貧困世帯は156万世帯以上増えて約653万世帯に、人数で見れば1・3倍の約833万6千人になった計算だ。背景について唐鎌教授は「公的年金の給付額が低下したため」と指摘。国立社会保障・人口問題研究所の統計から割り出した高齢者1人当たりの年金受給額は「(直近の調査結果である)14年度は年間約161万8千円で、09年度に比べ14万円減っていた」と説明する。国民生活基礎調査は、1986年から毎年実施。全国から無作為に対象世帯を抽出し、回答結果から全体数を推計している。3年ごとの大規模調査の年は、子どもの貧困率も公表しているが、高齢者の貧困率については算出していない。子どもの貧困率は、平均所得の半分に満たない家庭で暮らす子どもの割合で、今回の分析はこの基準と異なるが、唐鎌教授は「子どもだけでなく高齢者の貧困も深刻。生活保護受給者は今後さらに増えるだろう。これ以上の年金引き下げはやめるべきだ」と強調した。

*9-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170929&ng=DGKKASGF28H0R_Y7A920C1EE8000 (日経新聞 2017.9.29) 市場、財政悪化を警戒、国債の信用リスク高まる、消費増税の扱い懸念
 金融市場で日本の財政悪化への警戒感が高まっている。日本国債の信用力を映すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料率が数日で急上昇し、約1年2カ月ぶりの高水準をつけた。長期金利もおよそ2カ月ぶりの水準まで上がった。衆院選を前に、安倍晋三首相をはじめ、どの政党が勝っても財政再建の道は険しいという見方が広がる。安倍首相は選挙の争点に「消費税収の使い道の変更」を掲げる。2019年10月に予定する10%への消費増税の際、もともと借金返済にあてる予定だった税収の一部を、幼児教育の無償化などに回す方針だ。基礎的財政収支(プライマリーバランス)を20年度に黒字化する目標も「達成は困難」としている。市場が意識するのは、首相の発言や動向だけではない。「希望の党」代表の小池百合子東京都知事は景気が回復するまで「増税は凍結する」と唱える。民進党はこの希望の党に事実上合流する。市場関係者は消費増税の行方を注視しつつ「自民・公明両党もそうだが、他党も輪をかけて財政拡張路線ではないか」と警戒している。具体的な市場の動きとしては、情報会社マークイットによると、日本国債の信用力を映すCDSの保証料率がここ数日で急上昇した。市場がよりリスクを意識すると、CDSの需要が高まり保証料率が上がる仕組みだ。料率は衆院解散観測さえなかった今月初めまでは0.3%程度。足元で0.4%前後と16年7月以来の水準まで上がった。長期金利も上がっている。新発10年物国債利回りは28日、国債を売る投資家が増え一時0.075%と約2カ月ぶりの高水準を付けた。この10日で0.03%上昇しており、40年物国債など償還までの期間が長い超長期債で金利上昇が目立つ。欧米の金利上昇が主因だが、メリルリンチ日本証券の大崎秀一氏は「日本の財政悪化懸念もあって投資家の買い意欲が鈍っている」と指摘する。国債の格付けにも不安は連鎖する。欧米の格付け会社は変更しない方針だが、格付投資情報センター(R&I)は28日、首相の財政健全化目標の先送り表明を受けて「政策運営の信頼感を損ね、見通しに対する懸念を高める事態だ」との見解を示した。R&Iは現在、国債の格付けの先行き見通しを「ネガティブ」(弱含み)とする。仮にここからさらなる格下げとなれば、地方自治体が発行する債券や社債などにも影響が広がる可能性もある。政府系金融機関や地方自治体が発行する債券の格付けは、日本国債をもとに決まる。たとえば日本の金融機関などの信用度が下がると、外貨を調達する際の金利が高くなる場合も発生し得る。市場関係者はこぞって「少なくとも選挙が終わるまで不透明感はぬぐえない」と語る。選挙戦で与党も野党も「痛みを伴う改革」よりも、景気刺激に重きを置く政策に傾きやすいとみる。金利動向をはじめ市場にも緊張感が当面残りそうだ。

*9-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170929&ng=DGKKASFS28H67_Y7A920C1EA1001 (日経新聞 2017.9.29) エネ政策 原発再稼働で対立
 原発政策でも溝は深い。自民党は原発について安全性の確保を前提として、季節や天候、昼夜を問わず安定的に発電できる「ベースロード電源」として活用すると主張。原子力規制委員会の基準を条件に原発再稼働を進める方針を示す。一方の小池氏は28日の会見で、新たな原発の新設は難しいと説き「30年までに原発はゼロにもっていくためにどういう工程があるか検討したい」と表明。「原発ゼロ」に慎重な連合を名指しし「膝をつき合わせて真剣に考えたい」と述べた。原発ゼロには代替エネルギーの確保が必要。エネルギーの輸入を増やすならコストがかかる。実体経済にどの程度の影響を与えてゼロを目指すのか、デメリットへの言及は乏しい。小池氏は「原発ゼロ」を唱える小泉純一郎元首相と近く、人気をとりこむ思惑も透ける。

*9-4:http://qbiz.jp/article/119749/1/ (西日本新聞 2017年9月30日) 九州の原発:玄海3号機にMOX燃料16体を装填方針 九電
 九州電力の山元春義取締役は29日、来年1月の再稼働を目指す玄海原発3号機(佐賀県玄海町)について、今年12月に想定する核燃料の装填(そうてん)時に、プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料16体を使用する方針を示した。MOX燃料数は東京電力福島第1原発事故前と同じになる。29日の佐賀県議会で説明した。九電は2009年、国内で初めてMOX燃料を使ったプルサーマル発電を玄海3号機で始めた。再稼働でもプルサーマル発電を行う計画。山元氏によると、16体は3号機が10年12月の定期検査で運転停止するまで使用していた。停止中に福島原発事故が起き、保管していたが、再稼働に向け「もう1回入れる」という。さらに16体とは別に、新たなMOX燃料を「20体準備している」と説明。装填数を増やすなど今後については「検討している」とするにとどめた。

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2017.8.3 地域振興・歴史と観光・鉄道 (2017年8月4、5、9、10、18日、9月9日追加)
(1)長崎新幹線のフル規格化とJR九州赤字路線の扱い

 
          2017.7.26西日本新聞        2017.8.1西日本新聞

(図の説明:リニアを通す時は、唐津線・久大線の土地を使って通せば、殆ど用地買収がいらず安価にできそうだ。また、リニアも地下を走ると景色が見えないため、高架を作って走らせるのがよいと私は考える。なお、筑肥線は「福岡空港(福岡市営地下鉄空港線)⇔博多(福岡市営地下鉄空港線)⇔筑前前原(JR筑肥線)⇔唐津(JR筑肥線)⇔呼子⇔玄海町(脱原発とセット)⇔伊万里⇔松浦⇔平戸口⇔佐世保⇔長崎」を連続させると、日本海のリアス式海岸の絶景を眺めながら、新鮮な天然の魚介類や真珠・鮪・ふぐ・鯛の養殖など各産地を通るので、利便性だけでなく観光にも有益だろう)

1)長崎新幹線のフル規格化
 九州新幹線長崎ルートで当初予定されていたフリーゲージトレイン(FGT)は、*1-1、*1-2のように、武雄市、嬉野市の両市長が「全線フル規格化を実現するよう国に働きかけてほしい」と要望したにもかかわらず、佐賀県知事と副知事は「負担を考えると議論する環境にない」と答えたとのことである。一方、長崎県の中村知事は「一番効果が期待できるフル規格を実現してほしい」と要請している。

 現在、在来線が走っている「新鳥栖⇔武雄温泉間」のフル規格化には5千億円規模の財源が必要で、佐賀県の負担は800億円超に上るとされるが、長崎県までの運転になるため、今さらミニ新幹線を作るのではなく、全線フル規格と定めて建設費の削減(外国製の車両使用や建設への外国人労働者の使用等)や建設費の捻出(ふるさと納税もある)に頭を絞った方が、今後のためになると私は考える。

 このような中、*1-3のように、JR九州はバンコク事務所を開設し、青柳社長が「東南アジアでマンション、ホテルなどの不動産開発事業を1年以内に始めたい」などとしているが、国内で稼いだ金を海外で散財するようなら、地域の人は応援しなくなる。そのため、国内で速やかに新幹線を整備し、駅周辺で新しい街づくりを行った方が、確実に収益が得られる上、地域の協力も得やすいと考える。

2)JR九州赤字路線の扱い
 JR九州は、*1-4のように、6割の12路線で乗客が減少し、存廃を巡る議論につながる可能性もあるそうだ。しかし、鉄道は、繋がれば便利になって利用者が増えるものであるため、「赤字路線→廃止」だけではなく、「赤字路線→黒字路線との連続→周囲を一体として再整備」という選択肢もあるだろう。

 特に九州は、原発事故発生地域から遠く、成長途上のアジアに近い上、これまで投資が遅れていたので、将来性が大きい。そのため、今はむしろ投資すべき時だと考える。

(2)神武天皇東征のルートに沿って進むリニア
 
      宗像大社           宗像大社の所蔵品   2017.7.31日経新聞
                                百舌鳥・古市古墳群
(図の説明:左2つの写真は宗像大社で、左から3番目、4番目の写真は宗像大社の所蔵品である。志賀島で発見された「漢の倭の奴国王印」は金印であるため、卑弥呼に贈られた鏡なら、大量に出てくる三角縁神獣鏡よりも金の装飾のついた4番目の写真のようなものの方がふさわしそうだ。一番右の写真は、仁徳天皇陵などだ)

1)神功皇后(台与)と応神(=神武?)天皇の進路
 ユネスコの世界遺産委員会は、2017年7月8日、*2-1のように、古代東アジアの交流にまつわる沖ノ島など「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」を構成する8つの史跡を世界文化遺産に登録する決定を行った。宗像大社(福岡市)は、新原・奴山古墳群などの8つの国指定史跡で構成され、天照大神の三柱の御子神(田心姫神、湍津姫神、 市杵島姫神)を祭っている。そして、沖ノ島は、九州と朝鮮半島の間に位置して航海の安全や交流の成就を祈る祭祀が行われ、入島制限で守られてきたため、遺跡がほぼ手つかずで残っている。

 そして、宗像大社の近くに住吉神社(福岡市)があり、その祭神は、主祭神底筒男命、中筒男命、表筒男命の「住吉三神」と、天照皇大神、神功皇后である。『日本書紀』等によれば、神功皇后は神功元年から神功69年まで政事を行ない、夫の仲哀天皇が香椎宮(福岡市)にて急死した後、熊襲を討伐した。それから住吉大神の神託により、お腹に子供(のちの応神天皇)を妊娠したまま佐賀県唐津市の港から玄界灘を渡って朝鮮半島に出兵し、新羅の国を攻めると新羅は戦わずに降服して朝貢を誓い、高句麗・百済も朝貢を約して、これが三韓征伐と言われている。

 神功皇后は、渡海の際、月延石や鎮懐石と呼ばれる石を腹に当ててさらしを巻き、冷やして出産を遅らせ、筑紫の宇美(福岡県宇美町)で応神天皇を出産したと伝えられている。そして、神功皇后が三韓征伐の後で畿内に戻る時、自分の皇子(応神天皇)の異母兄にあたる香坂皇子、忍熊皇子が畿内で反乱を起こして戦いを挑んだが、神功皇后軍は武内宿禰(蘇我氏などの祖とされる)や武振熊命の働きでこれを平定したのだそうだ。

 現在、神功皇后は、住吉三神とともに住吉大神の祭神とされ、応神天皇とともに八幡三神の祭神としても信仰されており、佐賀県唐津市の鏡神社、大分県宇佐市の宇佐神宮、大阪府大阪市の住吉大社、福岡県福津市の宮地嶽神社、福岡県大川市の風浪宮、京都市伏見区の御香宮神社などの祭神でもある。

2)百舌鳥・古市古墳群
 文化審議会は、2017年7月31日、*2-2のように、2019年の世界文化遺産に登録をめざす国内候補として「百舌鳥・古市古墳群(大阪府)」を選び、政府がユネスコに推薦書を出して、2019年夏の世界遺産委員会で審査されるそうだ。この古墳群は国内最大古墳の仁徳天皇陵古墳(百舌鳥古墳群、486メートル・堺市)と、2番目の応神天皇陵古墳(古市古墳群、425メートル・羽曳野市)など、4世紀後半~5世紀後半に造られた49基で構成され、「応神天皇=神武天皇」とも言われている(そろそろ、正確な特定が必要な時だろう)。

 そして、*2-3のように、「百舌鳥・古市古墳群」が世界文化遺産に登録されれば、観光客らが前年比で約561万4千人増えると仮定し、その経済効果は、大阪府全体で1年間に約1000億円、堺市では、約338億円と試算している。さすがに大阪は計算が速く、佐賀県も見習うべきである。

3)飛鳥・斑鳩時代
 聖徳太子(厩戸皇子:574年~622年)が眠っているのは大阪府南河内郡太子町にある叡福寺で、そこには、父の用明天皇や推古天皇陵もあり、母の穴穂部間人皇后や妻の菩岐々美郎女も一緒に埋葬されており、叡福寺の境内を北に見ると聖徳太子廟があるとのことである。また、近くに、隋の皇帝煬帝が激怒したことで有名な 「日出處天子致書日沒處天子無恙」という文言がある国書を隋に持参した小野妹子も眠っているそうだ。

 そして、この太子町には、飛鳥時代に飛鳥京と南波を結んだ日本で一番古い「竹内街道」と呼ばれる官道があり、シルクロードの終点として大陸文化を伝えてきたところだ。

 なお、日本書紀には、厩戸皇子は推古天皇の摂政として蘇我馬子と協調して政治を行い、国際的緊張のなかで遣隋使を派遣するなど、当時進んでいた中国の文化・制度を学び、冠位十二階や十七条の憲法を定めるなど、天皇を中心とした中央集権国家体制確立を図り、仏教を取り入れて神道とともに信仰し興隆に努めたと書かれている。

4)リニア中央新幹線名古屋―大阪の早期開業について
 奈良県の荒井知事は、2017年7月26日、*2-4のように、リニア中央新幹線名古屋―大阪の早期開業を求める会議を、三重県や大阪府と合同で設立すると発表したそうだ。リニア中央新幹線は、釜山・九州・四国を通ってシルクロードの終点である堺市、奈良市に至るまでは、中国の言う一帯一路の終点にあたり、奈良より東に関しては奈良県の荒井知事が三重県や大阪府ととともに早期開業を求めているわけだ。私は、京都はこの道筋からは外れ、東海道新幹線が通っているので、重ねてリニアまで通す必要はないと考える。

 しかし、「釜山→対馬→壱岐→唐津→鳥栖(吉野ヶ里、大宰府、久留米の近く)→日田→宇佐→四国→堺→奈良」という経路のリニア新幹線又は新幹線を作ると、現在は赤字路線となっている鉄道過疎地に高速鉄道ができ、その高速鉄道は古代史の跡をなぞるという面白いことになる。

5)魏志倭人伝の卑弥呼・台与(トヨ)と日本書紀の天照大神・神功皇后
 「魏志倭人伝(http://www.eonet.ne.jp/~yamataikoku/6000.html 参照)」によると、*2-5のように、邪馬台国は「対馬国(長崎県)→壱岐国(長崎県)→末盧國(佐賀県)→伊都国(福岡県)」まで行った後、「南水行二十日(南に船で20日)南水行十日陸行一月(南に船で10日 陸路1月)」で邪馬台国に着くと記されており、この通りだ考えれば邪馬台国は九州の遥か南の海中になってしまうが、沖縄県与那国島付近の海底に立派な遺跡があるため、素直に読んでそこだと結論付けることもできる。

 この場合、248年9月5日に地殻変動が起こって沖縄の大部分が沈み、それによって卑弥呼が亡くなったが、「魏志倭人伝」の著者である陳寿は、そう記載しても誰も信じないだろうと考え、「卑弥呼以て死す」としか書かなかったのだという説もあるので、中国と沖縄にそのような大地震や地殻変動の記録があるか否かを確かめる必要がある。

 そうでなければ、「伊都国」までは北部九州にある現在の地名で辿れるため、「狗奴国」は球磨国、投馬国は投与国の書き違いと考えられる。そして、肥前と肥後の間に肥国(=日国:佐賀県吉野ヶ里町付近)、豊前と豊後の間に投与国(=豊国:大分県宇佐市付近)があったと推測できる。それにしても、魏志倭人伝(中国の歴史書『三国志』中の「魏書」第30巻烏丸鮮卑東夷伝倭人条)は、日本に関する漢字に卑しい当て字を使ったものだ。 怒

<長崎新幹線のフル規格化>
*1-1:http://qbiz.jp/article/114694/1/ (西日本新聞 2017年7月22日) 武雄、嬉野両市長「全線フル規格に」 九州新幹線長崎ルート
 九州新幹線西九州(長崎)ルートでフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)導入の見通しが立たなくなっていることを巡り、沿線の武雄市の小松政市長と嬉野市の谷口太一郎市長は21日に県庁を訪れ、副島良彦副知事と会談した。両市長は「地元の財政負担スキーム(枠組み)を見直した上で、全線フル規格化を実現するよう国に働きかけてほしい」と要望した。長崎ルートは、武雄温泉駅で新幹線と在来線を乗り継ぐ「リレー方式」での2022年度暫定開業が決まっている。ただ、導入予定のFGTは車軸の改良や検証だけで「年単位の時間が必要」とされ、開発のめどが立っていない。小松市長は「新幹線の特性である安全性、高速性、定時性と、関西方面への乗り入れを確保するには現段階ではフル規格による整備が必要」と主張。全線フル規格化では県負担が約800億円に膨らむことから、谷口市長は「財政面のスキーム見直しを国に強く伝えてほしい」と求めた。副島副知事は「地元負担は法律で決まっている。フル規格効果はFGT以上と認識しているが、負担を考えると議論する環境にはない」と答えるにとどめた。会談後、谷口市長は記者団に対し、長崎県の沿線自治体とも連携して国に全線フル規格化を求めていく考えを示した。

*1-2:http://qbiz.jp/article/115269/1/ (佐賀新聞 2017年7月29日) 長崎新幹線、長崎県は全線フル規格を要請 佐賀県は難色
 九州新幹線西九州(長崎)ルートに関する与党の検討委員会は28日、フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の導入を断念する方向となったことを受け、長崎、佐賀両県から意見を聞いた。長崎県の中村法道知事は「一番効果が期待できるフル規格を実現してほしい」と要請。一方、佐賀県の山口祥義知事は「フルは地元負担の課題があって非常に厳しい」と強調、在来線に新幹線幅のレールを設ける「ミニ新幹線」については「提案があればしっかり検討する」と前向きな姿勢を示した。同ルートは、在来線と新幹線を乗り継ぐ「リレー方式」で2022年度に暫定開業を予定。中村氏はリレー方式は「交流人口の拡大に万全ではない」と指摘し、長崎県知事として初めて、全線を新幹線区間とするフル規格化を提案した。ただ、在来線区間の新鳥栖−武雄温泉のフル規格化には5千億円規模の財源が必要。佐賀県の負担は800億円超に上るとされ、山口氏はフル規格化には難色を示しながらも、整備費が抑えられ、既存の新幹線とも直通運転ができるミニ新幹線に関しては「真摯(しんし)に考えていきたい」と述べた。与党検討委は8月下旬、新しい整備方法の検討に着手。全線フル規格とミニ新幹線を軸に、総事業費や工期、費用対効果などを検証しながら整備方法を絞り込む考え。新たな整備方法が決まるまでには、少なくとも数カ月はかかる見通しという。

*1-3:http://qbiz.jp/article/115421/1/ (西日本新聞 2017年8月1日) JR九州、6割12路線で乗客減少 地方路線の低迷目立つ
 JR九州は31日、路線ごとの利用状況を示す2016年度の平均通過人員(輸送密度)を初めて発表した。JR九州が発足した1987年度と比較ができる20路線のうち、6割に当たる12路線で利用者が減少。鹿児島線など幹線の多くで利用は増えた一方、地方路線で落ち込みが目立った。JR九州は当面、現在の路線網を維持する方針だが、利用低迷が続けば、存廃を巡る議論につながる可能性がある。輸送密度は、1キロ当たりの1日の平均通過人員を示す鉄道の経営指標。JR九州は路線別の収支は公表していないが、昨年秋の株式上場に伴い、大半の在来線が赤字とされる鉄道事業の現状を「より細かく伝える」ために指標を公開した。幹線のうち比較可能な7路線では、利用者が2倍になった篠栗線をはじめ5路線で乗客が増加。一方、利用が一定数以下の「地方交通線」は、乗客がほぼ3分の1になった吉都線など13路線中10路線で利用者が減った。より細かな区間ごとでみると、比較可能な55区間のうち6割超に当たる35区間で利用者が減少。都市部で乗客は増えたが、山間部などでは利用減が進んだ。輸送密度を巡っては、JR発足前の国鉄分割・民営化の際、4千人未満の場合は廃止の検討対象となった。JR北海道は昨年冬、輸送密度が200人未満の路線をバス輸送などに転換し、200〜2千人未満の区間についても、運賃値上げや駅の廃止などを地元と協議するとの方針を打ち出している。31日に記者会見したJR九州の青柳俊彦社長は「(現状の)交通ネットワークを維持するよう努力する」と強調しながら、輸送密度の公表で「いろんなことを検討していただければ出した意味がある」と述べた。

*1-4:http://qbiz.jp/article/115258/1/ (西日本新聞 2017年7月29日) JR九州バンコク事務所開設を記念し式典 東南アジアで不動産開発へ
 JR九州は27日夜、タイの首都バンコクのホテルで、5月に構えたバンコク事務所の開設記念式典を開いた。青柳俊彦社長は東南アジアでのマンション、ホテルなどの不動産開発について「1年以内に事業を始めたい」と報道陣に語った。式典にはタイに進出している日系企業などが参加。青柳社長はあいさつで「4千億円弱の売り上げの約60%を鉄道以外の事業で稼いでいる。九州などで培った(不動産開発)事業を海外でも展開するため、バンコクの地にやってきた。新参者だが精いっぱい汗をかきたい」と意欲を示した。バンコク事務所は日本人2人、現地スタッフ2人の4人体制。タイやベトナムなど東南アジア地域の土地情報や売却物件情報を収集している。海外では中国・上海で外食事業の実績があるが、不動産開発は初めての取り組みとなる。

<日本史に沿って進むリニア>
*2-1:http://www.sankei.com/life/news/170709/lif1707090039-n1.html (産経新聞 2017.7.9) 宗像・沖ノ島、世界遺産に逆転一括登録
 ポーランドのクラクフで開催中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は8日、古代東アジアの交流にまつわる沖ノ島など、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡県)を構成する8つの史跡全てを世界文化遺産に登録することを決めた。事前審査をしたユネスコ諮問機関のイコモスが5月、沖ノ島と周辺の岩礁を登録し、本土側の宗像大社など4つを除外するよう求めた勧告を覆す一括登録となった。日本国内の世界遺産は昨年の「国立西洋美術館」(東京都)に続き21件目。文化遺産が17件、自然遺産が4件となる。宗像・沖ノ島は、沖ノ島と3つの岩礁(福岡県宗像市)、九州本土の宗像大社(同)、新原(しんばる)・奴山(ぬやま)古墳群(福津市)など8つの国指定史跡で構成する。沖ノ島は、九州と朝鮮半島の間に位置し、4~9世紀に航海安全や交流成就を祈る国家的祭祀(さいし)が行われた。入島制限の禁忌が守られ、自然崇拝に基づいた古代祭祀の変遷を示す遺跡がほぼ手つかずで残る。奉献品約8万点が出土し、“海の正倉院”とも呼ばれる。

*2-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG31H3E_R30C17A7000000/ (日経新聞 2017/7/31) 世界文化遺産に「百舌鳥・古市古墳群」推薦、19年審査
 文化審議会は31日、2019年の世界文化遺産登録をめざす国内候補として「百舌鳥(もず)・古市古墳群」(大阪府)を選んだ。政府は国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦書を提出。諮問機関による現地調査などを経て、19年夏の世界遺産委員会で審査される見通し。百舌鳥・古市古墳群は堺市と羽曳野、藤井寺両市に広がる古墳群の総称。文化庁に提出した推薦書案では、国内最大規模の大山古墳(仁徳天皇陵)など、4世紀後半~5世紀後半に造られた49基で構成する。文化審議会の国内推薦は、今回が4度目の挑戦だった。世界文化遺産の推薦は各国年1件に限られており、17年の世界遺産委では「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡県)の登録が決まった。政府は18年の審査に「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(長崎、熊本両県)を推薦している。

*2-3:http://www.shinmai.co.jp/news/world/article.php?date=20170802&id=2017080201001687 (信濃毎日新聞 2017.8.2) 古墳群の経済効果1千億円と試算 世界遺産登録で大阪
堺市の公益財団法人堺都市政策研究所は2日、2019年の世界文化遺産登録を目指す大阪府の「百舌鳥・古市古墳群」に関し、登録されれば府全体で1年間に約1005億8400万円の経済効果があるとの試算を発表した。研究所は、19年に登録された場合、古墳群がある堺市や同府藤井寺市などを訪れる観光客らが前年比で約561万4千人増えると仮定。観光客らが使う宿泊費や飲食費などを足し合わせて経済効果を計算した。このうち、国内最大の前方後円墳・大山古墳(仁徳天皇陵)がある堺市では、約338億3900万円の経済効果があるとした。

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10204/449523 (佐賀新聞 2017年7月26日) リニア早期開業訴え会議開催へ、予定ルートの奈良など3府県
 奈良県の荒井正吾知事は26日、県庁で記者会見し、リニア中央新幹線名古屋―大阪の早期開業を求める会議を、三重県や大阪府と合同で設立すると発表した。9月に初会合を開く。三重県の鈴木英敬知事も同日、会見する。荒井知事は「引き続き、ルート、駅の位置の早期確定をお願いしていきたい。大阪府が入ることで促進することを期待する」と話した。リニアは、品川―名古屋が2027年に開業する予定。名古屋以西のルートは、11年に決定した国の整備計画で奈良市付近を通るとしているが、京都府などが「京都を通過するルートの方が、経済効果が高い」などとして、京都経由を求めている。

*2-5:https://blogs.yahoo.co.jp/tsn_take/1257315.html
■ 「魏志倭人伝」
 邪馬台国の存在の根拠とされる史書は、中国の「魏志倭人伝」の僅か二千文字のみ。その地理的位置を示す記述は曖昧で、正確な位置については専門家でも意見が割れていた。倭人伝には邪馬台国への行き方が、対馬~壱岐を経て現在の福岡市付近まで行った後、「南水行二十日(南に船で20日)南水行十日陸行一月(南に船で10日 陸路1月)」で邪馬台国に着くと記されている。しかし、この通りだと邪馬台国は九州の遥か南の海の中になってしまう。弥生時代の1~3世紀、約30の国(クニ)からなる「倭国」の中心のクニ「邪馬台国」が在った。「魏志倭人伝」では「邪馬壹国」とあるが「後漢書」には「邪馬臺国」とある。"臺"の字を"台"を以って代用したと見られる。元々は男王が治めていたが、1~2世紀、倭国全体で長期に亘る戦乱「倭国大乱」が起きた。魏志倭人伝には、他に「伊都国」と「狗奴国」が登場するが、伊都国は邪馬台国の支配下。邪馬台国と言う国名に卑しい漢字を用いられていないことから中国にとって重要な国であったのではないか? 一方、「狗奴国」[男の国王・「卑弥弓呼」(ひみここ)]は邪馬台国の南にある敵国。この国は邪馬台国に屈することはなかった。邪馬台国は戦乱による疲弊を逃れえず、「卑弥呼」(ひみこ)という女王を立てることによって、ようやく混乱が収まった。弟が彼女を補佐し国を治めていた。女王は魏に使節を派遣し親魏倭王の封号を得たが、248年頃、卑弥呼は狗奴国との戦いの最中に死去している。両国の争いは、どちらが勝ったか負けたかは定かでない。最後の記述は、男王が後継に立てられたが混乱を抑えることができず、「壹與」または「臺與」(台与)が女王になることで収まり、魏国に貢物を贈ったところで終わっている。卑弥呼の死とともに、中国の歴史書から消えるのである。その後の100~150年間、日本では何があったのか?少なくとも、親・中国政権は誕生しなかったのだろう。空白の時代。ポスト邪馬台国の「ヤマト王権」への歴史の連続性が未だはっきりしない。
■ 明治期に二つの学説が対立する。
 が、両説とも、江戸期の新井白石や本居宣長の説のように、自分の思想や仮説に都合のよい唯我独尊が見え隠れしていた。
□ 東大教授・白鳥庫吉氏
 倭人伝の「陸行一月」は「陸行一日」の間違いであろう。そう考えると、邪馬台国は九州島の中、熊本辺りに在った筈である ⇒ 九州説。
□ 京大教授・内藤湖南氏
 倭人伝の間違いは距離ではなく方角であって「南水行」は「東水行」の間違いであろう。そう考えると、九州ではなく近畿に在った筈である。⇒ 畿内説。 (以下略)

<新しい時代の街づくりへ>
PS(2017年8月4日追加):*3-1のように、九州北部豪雨で被害が出た朝倉市と日田市では、病院・介護施設・障害者施設・小中学校・保育所など災害弱者が利用する154施設のうち、4割弱の57施設が浸水や土砂災害の恐れのある区域に立地していることが分かったそうだ。しかし、こういう安全を無視した土地利用は日本全国で同じであり、都市計画や土地利用計画が有効に機能していないということである。そのため、高齢化と人口減を踏まえ、安全性・利便性・好環境を備えた都市計画・土地利用計画が必要であり、それには地方の鉄道再編と駅周辺における福祉を考慮したコンパクトシティーへの再開発が有効だろう。
 このような中、*3-2のように、フランス・英国・中国・インド等の環境規制強化と自動運転技術の進展により、EV自動運転車への変換を前提に日本の自動車会社も再編を始めている。そのため、私は、列車こそ(高架にして)EV自動運転車に変えれば運行コストの削減が可能だと考える。また、*3-3のように、分散型電源が普及し始めて再生可能エネルギーのコストも下がっているため、JR九州なら①自家発電システムを作れば燃料費を0にできる ②地方自治体と協力し、分散型電源で作った電力を集めて他地域に送電するシステムを構築して送電料を収入とすることができる など、持っている資産を活用して収益を増加させることも可能だ。

     
     2017.8.4佐賀新聞   2016.9.1毎日新聞 2016.8.31Yahoo  2017.8.4 
                  岩手県の台風による河川の氾濫     東京新聞

(図の説明:川の中に作られたと言っても過言ではない住宅や高齢者施設が多く、これは避難の問題というよりも、土地利用の問題だ)

*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/452232 (佐賀新聞 2017年8月4日) 九州豪雨 避難時利用施設、警戒区域に4割弱
 九州北部の豪雨で大きな被害が出た福岡県朝倉市と大分県日田市で、高齢者や子どもら災害避難で配慮が必要な人が利用する計154施設のうち、4割弱の57施設が浸水や土砂災害の恐れのある区域に立地していることが3日、分かった。豪雨発生から5日で1カ月。6月以降、避難計画の策定が義務化されており、国は全国の同様の施設に対応を求めている。これらの施設は介護施設や障害者施設、小中学校・保育所、病院など。昨夏の台風10号で岩手県岩泉町の高齢者グループホームの入所者9人が犠牲になったことなどを受け、浸水想定区域や土砂災害警戒区域にある場合、避難計画の策定や訓練、自治体への報告を義務付ける改正水防法などが6月に施行された。朝倉市では123施設のうち、浸水想定区域にあるのは24施設、土砂災害警戒区域が17施設。日田市では少なくとも31施設のうち浸水想定区域は9施設、土砂災害警戒区域は7施設だった。いずれも今回の豪雨で直接犠牲となった人は確認されていない。国土交通省によると、昨年3月末時点で約3万の対象施設のうち計画策定済みは約2%にとどまり、朝倉、日田両市はゼロだった。朝倉市の担当者は「(義務化を受けて)施設から報告を受ける窓口などに関し内部で協議を始めたばかりだった」と明かす。国交省は2021年度までの全施設の計画策定を目標にしており「高齢者や子どもの逃げ遅れがないよう策定を進めてほしい」と訴える。静岡大防災総合センターの牛山素行教授(災害情報学)も「避難発令を待たずとも、それぞれの施設で危険を感じたら安全確保の対応をするのが重要だ」と指摘する。

*3-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017080490135907.html (東京新聞 2017年8月4日) 【経済】トヨタ、マツダが資本提携 EV技術を共同開発
 トヨタ自動車とマツダが資本業務提携する方針を固めた。トヨタがマツダに5%程度を出資し、マツダもトヨタ株を取得する。トヨタが自動車メーカーとの間で株式を持ち合うのは異例。電気自動車(EV)技術の開発を共同で進めるほか、米国で新たな車両組立工場を共同建設するなど、包括的な提携を進める。四日午後に両社が東京都内で共同記者会見して発表する。両社は二〇一五年五月、環境や安全技術分野で提携することで基本合意。その後、具体的な内容を協議してきた。一五年の記者会見では「資本提携は考えていない」(マツダの小飼雅道社長)としていた。しかし世界的な環境規制の強化で欧米メーカーがEV開発を急加速させている状況を踏まえ、競争に勝ち抜くには資本提携を通じた関係強化が必要と判断した。トヨタは一九年をめどに中国で、小型SUV(スポーツタイプ多目的車)「C-HR」を改良した初の量産型EVを生産・販売する計画。マツダも同時期にEVの市場投入を目指しており、互いの技術を持ち寄って基幹技術を共同開発する。トヨタは、自社技術をマツダに提供することで技術基盤を共有する仲間を増やせるメリットがある。マツダは遅れ気味なEV技術でトヨタの支援を受けられる。米国の生産でも提携し、SUVなどを組み立てる新工場を共同で建設することを検討。設備投資の負担軽減を図る。世界では、従来型のエンジン車から走行時に二酸化炭素(CO2)を出さないEVへの移行を促す動きが相次いでいる。フランスと英国は四〇年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針を表明、中国やインドなどもEV優遇策を鮮明にしている。
◆環境規制競争に対応
 トヨタ自動車がマツダと異例の資本提携に踏み込むのは、自動運転技術の進展や、環境規制の強化など自動車を取り巻く環境が激変し、一社だけでは対応が困難になっているためだ。株式を持ち合い、関係を強固にすることで、競争に勝ち抜く体制を構築する。トヨタは自社で開発したハイブリッド車(HV)などの環境技術や自動運転技術を世界標準にするため、マツダやスズキなどと提携を積極的に進めてきた。最初から資本を入れてグループ化させる欧米勢とは異なり、トヨタは技術面の協力などを軸に、国内メーカーだけで年間販売が千六百万台に上る緩やかな連合を形成している。当初、マツダとは資本関係にまで踏み込む予定ではなかったとみられる。しかし、最近になってフランスや英国、中国などが従来のエンジン車への規制を強化した。急速に変化する市場環境に対応するには迅速な電気自動車(EV)開発が不可欠となり、資本関係を結ぶことを決断したとみられる。豊田章男社長は今年六月の株主総会で「明日を生き抜く力として、今後はM&A(企業の合併・買収)を含め、あらゆる選択肢を考える」と強調しており、今後も資本提携先を広げる可能性がある。 
<トヨタ自動車> 愛知県豊田市に本社を置く世界最大規模の自動車メーカー。ダイハツ工業や日野自動車をグループに抱える。ハイブリッド車(HV)などの技術に定評があり、2017年3月期連結決算の売上高は27兆5971億円、純利益は1兆8311億円。グループの世界販売台数は12年から4年連続で首位だったが、16年は2位に後退し、17年上半期は3位だった。連結従業員数は約36万人。
<マツダ> 広島県府中町に本社を置く自動車メーカー。ガソリン車やディーゼル車の省エネ技術に強みを持つものの、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の開発は出遅れている。2017年3月期連結決算の売上高は3兆2143億円、純利益は937億円だった。世界販売台数は過去最高の155万9000台を記録し、うち3割弱を主力の北米市場で売った。連結従業員数は約5万人。

*3-3:http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/264994/062400064/ (日経BP 2016/6/28) 【エネルギー】分散型電源の導入は、もう止まらない
 太陽光発電に風力発電――。再生可能エネルギーの導入は、止まることはなさそうだ。5月23日~6月23日の「エネルギー」サイトで最も読まれた記事は、調査会社のブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)が発表した、エネルギー長期予測の記事だった。BNEFは2040年までに世界で新たに導入される発電設備への新規投資のうち、約3分の2を再エネが占めると予想している。加えて、太陽光と風力のコストは今後、急速に低下すると分析。環境志向だけではなく、「安い電気」として再エネが活用される日が来ると予測する。既に世界では、再エネ電力の調達に動く企業も出てきた。ここ最近では、米国ネバダ州の自治体や企業の動向が相次いで報じられている。第5位にランクインした「米ラスベガス市、2017年に電力需要を「再エネ100%」に」や、第17位の「米大手電力、世界最大のデータセンター向けに「100%再エネ」プラン」に詳しい。ネバダ州最大の電力会社、NVエナジー社は、自治体や企業の要請を受け、「100%再生可能エネルギー」電力プランの提供を開始した。ただ、米国の大手電力が最初から再エネ電力の供給に前向きだったかというと、そういうわけでもなさそうだ。
●事業変革を求められる世界の大手電力
 ネバダ州は1月、「ネットメータリング」と呼ばれる制度を変更し、太陽光発電の「第三者保有モデル」が成立しにくい環境へと変わった。これは、ネバダ州の公益事業委員会が、火力発電を中心とした垂直統合型の電力会社であるNVエナジーに配慮したためと言われる。第三者保有モデルの増加は、太陽光の自家消費量の増加を意味する。NVエナジーにとって、販売電力量を減少させるビジネス形態だからだ。一見、NVエナジーなど大手電力は、増殖を続ける再エネ電源に既存事業を脅かされるリスクを軽減したかに見える。だが、BNFFの調査が示すように、分散型電源の導入は今後も止まりそうにない。今はまだ環境志向から再エネ電力の調達を進めている企業も、遠からず「安い電気」としての再エネ電力を求めるようになるだろう。再エネ電力をどのようにビジネスに取り込んでいくかは、急務となっている。独最大手のエーオン、第2位のRWE、仏エンジー(旧GDFスエズ)など、欧州の大手エネルギー会社が相次いで事業再編に踏み切ったのも、こうした事業環境の変化を捉えるためだ。実際、RWEのテリウムCEOは、事業再編を経て「プロシューマー・モデルの推進役になる」と明言している。プロシューマーとは、分散型電源の保有し、自家消費する需要家のことだ。再エネというと、固定価格買取制度(FIT)や補助金などに頼った官製市場というイメージが依然、強いかもしれない。だが、大量普及とそれに伴うコスト低減は、再エネの位置づけを変えていくだろう。もちろん、日本も例外ではない。

<パリ協定と燃料電池車>
PS(2017/8/5追加):燃料電池の方が馬力がありそうなので、トラック・電車・貨物船・航空機などに向いていると思ったが、①水素ステーションをいつまでも増やさなかった ②水素燃料価格をガソリンと同程度に高止まりさせていた ③燃料電池車の価格が高すぎた などが理由で、*4-1のように、乗用車ではEVに負けそうだ。これは、プラズマTVが、画面はきれいだったが電気代が高い上、本体価格も高く設定しすぎたため普及せず、後から開発された液晶テレビに打ち負かされたのと似ている。つまり、日本政府はアクションを間違い、日本企業はちょっと付加価値の高いものを作ると法外な価格設定をし続けることが、問題だったのである。
 また、米政府は、*4-2のように、「パリ協定」の離脱方針を国連気候変動枠組条約事務局に正式に通知したそうだが、「パリ協定」を守らなければ、米国はますます世界で売れる車を作れなくなるため、米国の自動車産業・関連労働者・国民にとって好ましくないのは明らかだ。何故なら、現在は、地球規模で産業革命が起こっている時代であるため、環境維持は決して無視できないからである。

*4-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL04HN6_U7A800C1000000/ (日経新聞 2017/8/4) <東証>大陽日酸が2%下落 水素ステーション関連が安い
 13時10分、コード4091)反落している。一時前日比29円(2.2%)安の1279円まで下落した。「トヨタ(7203)がマツダ(7261)に出資し、電気自動車(EV)の共同開発などを検討する」(4日付日本経済新聞朝刊)と伝わり、これまでトヨタがけん引してきた燃料電池車(FCV)の開発が停滞し、普及が遅れるとの懸念から売りが出た。水素ステーション向けの機器を製造する。水素の供給や設備を手がける岩谷産(8088)も安い。一方で、リチウムイオン電池の部材を手がけるWSCOPE(6619)や安永(7271)はEV普及が加速するとの思惑で買われている。

*4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170805&ng=DGKKASGT05H0K_V00C17A8NNE000 (日経新聞2017.8.5)米、パリ協定離脱通知 条件次第で再加盟に含み
 米政府は4日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の離脱方針を国連気候変動枠組み条約事務局に正式に通知した。トランプ大統領が6月に表明したパリ協定から離脱する意向に沿ったものだが、米国務省は声明で「米産業や労働者、国民、納税者にとって好ましいとみなせば、トランプ氏はパリ協定に再加盟する意思がある」と含みを持たせた。トランプ氏は6月の離脱表明時にも、米国にとって「公正な協定」を再交渉したいと述べていた。国務省は「あらゆる政策の選択肢を残す」として、11月にドイツ・ボンで開かれる第23回気候変動枠組み条約締約国会議(COP23)などの国際会議への参加を続けることを明らかにした。声明では、温暖化ガスの排出削減と経済成長やエネルギー安全保障のバランスをとる方針を強調。化石燃料の効率利用や再生可能エネルギーの活用を進め、温暖化ガスの排出削減の取り組みを続けるとしている。パリ協定の規定によると、離脱が可能になるのは発効日から4年後の2020年11月4日。前日の3日に次期米大統領選があるため、実際にパリ協定から離脱するかどうかは次期大統領が決めることになる。トランプ氏は再選に向けパリ協定離脱の是非を選挙の争点にする狙いとみられる。

<地図は一番乗りの開拓者が作るもの>
PS(2017.8.9追加):日経新聞は、*5-1のように、「①EVへの大転換は海図なき戦いだ」「②欧州発ドミノ、トヨタ走らす」「③中国やインドは環境規制を盾に自動車産業での下克上を狙う」と表現している。しかし、①のように海図がなければ方針を決められない企業は、1番手ではなく2番手以下にしかなれない。また、海図やマニュアルに従ってしか働けない人も、ロボットに置き換えられるだろう。しかし、環境を汚さず、需要者に求められる品質を持ち、より安価な製品が売れるという単純な原則は必ず成立する。さらに、②のように、先発は必ず欧州でなければならないわけではなく、また、競争相手が無数にいる社会では、③のように特定の敵をターゲットにして競争する発想では勝てない。しかし、求められるものをよりよく作れば必ず売れ、日本はその技術を持っているため、それをやればよいのだ。
 そのような中、*5-2のように、九電が欧州や北米で発電事業に進出し、5年で550億円投資して新たな収益源に育てるというのは面白い。米国・カナダでは天然ガス火力発電所建設、欧州では洋上風力等の再生可能エネルギー事業へ参画を検討しており、ベトナム・インドネシア・メキシコなどの新興国7カ国・地域では既に8カ所の発電所に出資し、アジア・アフリカの19カ国でコンサルティング事業を手掛けて発電所の建設可能性調査や省エネ推進など、新興国のエネルギー事情の向上を支援しているそうだ。ただし、新興国でも、初めから環境適合性を重視するのが、無駄な投資をしないコツだろう。

  

(図の説明:世界のGDP成長率は新興国で高いため、自動車や電力需要の伸びも新興国の方が大きいが、九電の場合は、欧州や北米で発電事業を行うことによって、他流試合して先端競争を学ぶことが可能だ。なお、日本の成長率が欧米よりも低いのは、需要の大きな部分《年金・医療・介護などの社会保障サービス》を減らし、インフレ政策・消費税増税で国民から所得を分捕り、環境機器への変換投資を遅らせ、外国人労働者を受け入れないことなどが原因だろう)

*5-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170809&ng=DGKKZO19810670Z00C17A8MM8000 (日経新聞 2017.8.9) EV大転換(上)海図なき戦いだ 欧州発ドミノ トヨタ走らす
 100年超続いたエンジンの時代の終わりが見えてきた。英仏政府は2040年までにガソリン車やディーゼル車の販売を禁止し、中国やインドは環境規制を盾に自動車産業での下克上を狙う。トヨタ自動車とマツダは電気自動車(EV)の共同開発に向け資本提携を決めた。うねりを増すEVシフトはあらゆる産業に大転換を迫る。「EV試作1号車」。今春、トヨタはEVの投入に向けた試作車を完成させた。昨年12月に「EV事業企画室」を立ち上げ、従来の開発期間の半分となるわずか3カ月で仕上げた。デンソーなどトヨタグループからの出向者ら企画室の4人が社内調整を省き迅速に仕様を決定。普及を見すえ銀行や愛知県豊田市の関係者なども加えた約30人を集め開発期間を縮めた。「海図なき戦いだ」。マツダとの資本提携を発表した記者会見でトヨタの豊田章男社長はこう述べた。世界の2大市場、米国と中国で環境規制が強化され、英仏政府が40年までにエンジン車の販売を禁止するなど大気汚染対策の動きも世界中に広がる。「EVシフトは想定よりも早い」(トヨタ役員)。異例の開発体制は危機感の裏返しだ。トヨタは走行距離の長い燃料電池車(FCV)を次世代環境車の本命とする。走行時に水しか出さず「究極のエコカー」とされるFCVだが、量産が難しく水素の充填インフラも未整備。開発が容易なEVが先に普及すればトヨタのシナリオに狂いが生じる。トヨタを突き動かしたEVドミノ。車の技術革新をけん引してきた欧州と世界最大の中国市場の「共振」が発端だ。独フォルクスワーゲン(VW)から広がった排ガス不正問題でディーゼル車の信頼が失墜。パリやマドリードは25年からの乗り入れを禁じ、ほかの大都市も追随する構えを見せる。一方でドイツ車の「ドル箱」である中国はEV普及を国策に掲げる。ドイツ勢の変わり身は早く、VWにダイムラー、BMWの独3社は25年に販売台数の最大25%をEVなど電動車にする計画を打ち出した。「未来は間違いなくEV」。VWのマティアス・ミュラー社長は言い切る。
●下克上狙う中印
 中国やインドが狙うのは参入障壁が低いEVシフトによる自国メーカーの競争力底上げだ。中国は既にEVの世界シェア3割を占め、比亜迪(BYD)など地元メーカーが市場を席巻。中国資本傘下のスウェーデンのボルボ・カーは19年から販売する全モデルの電動化を宣言した。従来のエンジン車の部品点数は約3万個。EVでは部品の約4割が不要になるとの試算もある。それだけに従来の「勝ち組」には痛みを伴う。トヨタは今春、EVなどの生産拡大による部品メーカーへの影響を調べ始めた。トヨタ幹部は「変革のスピードアップと影響を抑える施策の両立を考えなければ」と悩む。富士経済によると16年のEVの世界販売は47万台で、うち日本車は14%。まだ世界販売全体の1%にも満たないEVが、エンジン車の誕生から100年以上続いてきた自動車産業を根本から揺るがす。

*5-2:http://qbiz.jp/article/116117/1/ (西日本新聞 2017年8月9日) 九電、欧米で発電事業に進出 5年で550億円投資へ
 九州電力は、欧州や北米での発電事業に進出する方針を明らかにした。2017年度から5年間で、直近5年間の11倍の550億円を海外での発電事業に集中投資し、新たな収益源に育てる。電力自由化や人口減少で九州の電力需要が縮小する中、既に発電所を保有しているアジアやメキシコの新興国に加え、先進国を含む海外事業を成長戦略の柱と位置づける。九電の掛林誠常務執行役員(国際担当)が西日本新聞の取材に応じ、「欧米や先進国もチャンスがあればやっていきたい」と述べた。既に社員を現地の展示会などに派遣し、メーカーや開発事業者などから情報収集を進めている。欧米市場は成熟し、競合企業も多いが、確実な投資リターンや世界最先端の市場情報を得られると判断した。電力需要の伸びが見込める米国やカナダでの天然ガス火力発電所建設や、欧州で洋上風力などの再生可能エネルギー事業への参画を検討。新興国と合わせ10件以上の建設や買収を計画している。九電は01年、海外で発電所を保有し電力を卸売りする海外発電事業を開始。ベトナムやインドネシア、メキシコなど新興国7カ国・地域で8カ所の発電所に出資し、日本の商社や大手電力会社、外国企業と共同で事業を運営している。天然ガス火力を中心に風力、地熱発電も手掛け、市場の成長性が高い新興国に技術移転してきた。九電は6月に公表した財務目標に、海外発電事業の強化を盛り込んだ。17年度153万キロワットの出力を、21年度240万キロワット、30年度に500万キロワットに増加。同事業の経常利益も年20億円から21年度70億円、30年度には100億円を目指す。
■九州電力の海外事業 発電所を自ら保有し電力を卸売りする発電事業を、新興国7カ国・地域の8カ所で展開。収益性が高く、海外事業の軸に据えている。アジアやアフリカを中心とした19カ国ではコンサルティング事業を手掛け、石炭火力や水力発電所などの建設可能性調査や省エネの推進など、新興国のエネルギー事情向上を支援している。

<エネルギーミックスに見る政府の愚かさ>
PS(2017.8.10追加):2030年時点のエネルギーミックスを人為的に決めようとすること自体、環境志向や技術進歩による価格低減によって変化する市場を考慮しておらず、経済学の原則に反する。さらに、日経新聞は、*6の社説で「重要なのは30年時点の目標の先をにらみ、エネルギーを安定的に使い続ける長期の視点だ」などとして原発の新増設を結論付けているが、これには呆れるほかない。何故なら、その根拠として「再生可能エネルギーのコストは電気料金に上乗せされて電力需要者の負担になっている」としているが、再生可能エネルギーのコストは上乗せされているだけで電力製造の原価計算には入っておらず、原価計算には膨大な原発コストが入っており、原発には税金からも膨大な支出が行われているからだ。その上、原発には、見積もりすらできていない膨大な後処理費用が存在する。そのため、“エネルギーミックス”を決めたり、このような記事を書いたりする人は、おかしな屁理屈を言わないために原価計算くらい頭に入れておくべきだ。なお、地球温暖化対策の道筋を定めたパリ協定は、電力を作るのに、原発ではなく再生可能エネルギーを予定している。従って、50年も経たなくても、旧式の日本車以外はEVになり、その動力は再生可能エネルギーで賄われているだろう。

*6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170810&ng=DGKKZO19849720Z00C17A8EA1000 (日経新聞社説 2017.8.10) エネルギー政策の見直しは長期の視点で
経済産業省がエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の見直しに着手した。2つの有識者会議で議論し、来年3月末をめどに見直し案をまとめる。2030年時点でどのようなエネルギーを、どんな組み合わせで使っていくのかについて、14年につくった計画を足元の変化をふまえて再検討する。国際情勢の変化や技術の進展に応じてエネルギー政策を見直すことは大切だ。ただし、重要なのは30年時点の目標を達成するだけではない。その先をにらみ、エネルギーを安定的に使い続ける長期の視点を欠いてはならない。東日本大震災後初となった現行の基本計画では、原子力発電所への依存は「可能な限り低減させる」と明記する一方、原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、安全性の確保を条件に再稼働を進める方針を確認した。太陽光や風力などの再生可能エネルギーは「重要な低炭素の国産エネルギー」と位置付け、「13年から3年程度、導入を最大限加速」するとした。国はこれをもとに30年に原子力を20~22%、再生エネルギーを22~24%などとする電源構成の組み合わせ、いわゆる「エネルギーミックス」を定めた。これまでに11社の26原発が再稼働に必要となる安全審査を申請し、5基が再稼働した。ただ、今後も再稼働が順調に進むかどうかは不透明だ。また、30年時点の発電量は確保できても、国が定める最長60年の運転期間が過ぎれば廃炉となり、いずれゼロになる。基幹電源として使い続けるならどこかで新増設を考えなければならない。30年以降を意識した議論を今から始めるべきではないか。割高な再生エネルギーの費用を電気料金に上乗せして普及を促す「固定価格買い取り制度」が12年に始まり、再生エネルギーの導入量は制度開始前に比べ2.7倍に増えた。発電量に占める比率は約15%まで高まった。だが、買い取り費用は17年度で2兆円を超す見通しだ。導入拡大に伴って国民負担はさらに増える。いつまでも青天井は許されない。持続可能な形で普及を促す仕組みに変えていかねばならない。地球温暖化対策の道筋を定めたパリ協定が発効し、電気自動車(EV)へのシフトも加速している。エネルギー利用の変化は社会を変える。50年後、100年後を見据えた備えを始めるときだ。

<赤字路線の商機>
PS(2017年8月12日追加):四国でも将来の利用者減が見込まれる鉄道路線網の維持に向けて対策を話し合うため、*7-1のように、JR四国と4県知事らが懇談会を開いたそうだが、やはり地域ぐるみで他産業を巻き込みながらやるのが効果的だろう。
 観光では、*7-2のように、JR西日本が山陰地方の日本海沿岸を巡る観光列車「あめつち」を、鳥取駅と出雲市駅間150キロを約3時間半かけて走らせるそうだ。天井の一部まで透明な窓の広い列車で、歴史の真実に関する新発見のあるストーリーとともに走ると面白い。
 また、貨物との混合輸送では、*7-3-1のように、岐阜県等が出資する第三セクター「長良川鉄道」がヤマト運輸と提携し、宅配荷物の一部を旅客用の車両に載せて運ぶ「貨客混載輸送」の実証実験を9月に行うそうだ。私は、旅客用の車両に載せるよりも、旅客用の車両は乗客数に合わせて小さくし、スイスのように必要な大きさの貨物車両を連結した方が、つぎはぎのようなデザインにならないためよいと考える。また、ヤマト運輸の荷物を運ぶ貨車なら、小さく猫のトレードマークを付ければヤマト運輸の宣伝にもなりそうだ。
 さらに、豊田市は、*7-3-2のように、公営バスの一部路線で、ヤマト運輸から預かった荷物を運ぶ実証試験に取り組んでいるそうだ。そのため、新幹線に新幹線用貨物車両を繋ぐのもありではないだろうか。

*7-1:http://qbiz.jp/article/116714/1/ (西日本新聞 2017年8月18日) 四国の鉄道維持に向け初会合 JR四国と4県知事らが懇談会
 四国4県とJR四国は18日、人口減少で将来の利用者減が見込まれる鉄道路線網の維持に向け、対策を話し合う懇談会の初会合を高松市で開いた。懇談会は、神戸大大学院の正司健一教授が座長を務め、4県の知事やJR四国の半井真司社長らで構成。来夏ごろにまとめる中間報告を基に、県ごとに分科会を開いて具体的な対策を検討する。半井社長は会合の冒頭で「10年、20年先を見据えた場合、自助努力のみでは今の路線の維持が困難になることが想定される。抜本的な対策について地域を挙げて議論していただきたい」とあいさつした。

*7-2:http://qbiz.jp/article/116696/1/ (西日本新聞 2017年8月18日) 新観光列車「あめつち」導入へ 鳥取と出雲を3時間半で結ぶ
 JR西日本米子支社は17日、山陰地方の日本海沿岸を中心に巡る新観光列車「あめつち」を来年7月に導入すると発表した。約3時間半かけ、鳥取駅(鳥取市)と出雲市駅(島根県出雲市)を結ぶ約150キロを走る。列車の名称は古事記の書き出し「天地の―」に由来し、コンセプトは「ネーティブ・ジャパニーズ」。山陰地方は神社や歌舞伎、相撲などの文化の発祥の地とされ、多くの神話が生まれたことにちなんだ。車体の外観は海や空をイメージした青を基調に、山陰のたたら製鉄と日本刀から連想した銀色の装飾を施す。定員59人の2両編成で、土・日・祝日に両駅を1往復する。

*7-3-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK8B4GQ3K8BOHGB009.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2017年8月12日) 宅配荷物、ローカル線の救世主に? ヤマトなど実証実験
 岐阜県などが出資する第三セクター「長良川鉄道」(本社・関市)は、宅配最大手のヤマト運輸と提携し、宅配荷物の一部を旅客用の車両に載せて運ぶ「貨客混載輸送」の実証実験を9月に行う。過重労働が問題になっている宅配ドライバーの負担軽減と、経営が厳しいローカル鉄道の増収が期待されている。実証実験では、関駅(関市)から美並苅安(みなみかりやす)駅(郡上市)までの約20キロを1日1回、列車に荷物を積んで運ぶ。荷物は専用の輸送ボックス(高さ170センチ、横107センチ、奥行き78センチ)に入れ、車内の乗降口付近のスペースに置く。美並苅安駅で荷物を車に積み替え、ヤマト運輸のドライバーが郡上市南部の美並地区に配達する。美並地区は面積が広く、担当ドライバーは郡上市中心部の支店まで、日に何度か往復約1時間かけて荷物を取りに戻る必要があった。鉄道輸送で労働時間の短縮や利用者へのサービス向上が期待できるという。長良川鉄道は1986年の開業以来、赤字続きで、沿線自治体が多額の補助をしている。特に昼間の列車は乗客が数人以下と少なく、荷物輸送を新たな収入源と見込む。実証実験は平日に約20日間行い、来年度から本格運用をめざすという。国土交通省中部運輸局によると、鉄道と宅配業者の提携は新潟県の北越急行と佐川急便などの例があるが、東海地方では初めてだという。

*7-3-2:http://digital.asahi.com/articles/ASK8B4334K8BOBJB001.html?iref=pc_rellink (朝日新聞 2017年8月11日) (愛知)路線バスに人も貨物も 豊田で試験開始
 豊田市は、公営バスの一部路線で、宅配大手ヤマト運輸(東京)から預かった荷物を運ぶ実証試験に取り組んでいる。市側にとっては運賃収入のアップに、ヤマト側にとっては運転手の負担軽減につながる。利用路線の拡大も検討している。試験をしているのは岐阜・長野県境にある稲武地区と足助地区を結ぶ基幹バス「稲武・足助線」(路線距離29キロ)。市から運行を委託された豊栄交通(本社・豊田市)が、両地区を1日11往復している。このうち午後2時55分に足助病院を出発し、午後3時43分に稲武のどんぐりの湯前に到着する便を利用する。バスは一部の椅子を外して高さ60センチ、幅80センチ、奥行き60センチの荷物用の箱を積んでいる。ヤマト運輸の足助センター(営業所)の運転手は、バスが足助病院へ行く前にこの中に荷物を入れ、稲武にいるヤマトの運転手が荷物を受け取る。バスは通常通り客も乗せる。これまでは、ヤマトの足助センターの運転手が朝、荷物を稲武まで運んで配り、午後はいったん足助まで戻って追加の荷物を受け取り、再び稲武へ行き、配っていた。この試験によって、計1時間20~30分の時間の節約ができ、運転の負担が軽減できるという。一方、市はヤマトから輸送した分の運賃を受け取る。運輸業界では運転手不足が深刻となっており、ヤマト運輸中部支社(名古屋市)は、配送効率の悪い過疎地での、回送距離を減らすため豊田市に提案し、実現したという。ヤマトは同様の試みを、北海道や兵庫、熊本県など5道県で民間業者のバスを使って実施しているが、自治体のバスを使っているのは全国で初めてという。利用している基幹バス「稲武・足助線」は乗車率が1便あたり4・7人と12路線あるうちの下から3番目に低い。公営バス全体では昨年度、「赤字」で7億4400万円の負担を強いられている市にとって、利用収入を増やすことは課題の一つだった。試験は9日から始め、毎週火~土曜、来年1月末までの半年間の予定。市の試算によると、1年続けた場合、30万~40万円の収入になるという。市交通政策課の担当者は「双方に長所があることなので、できれば他の路線にも広げていきたい」と話している。

<日出ずる国の発電方法>
PS(2017年9月9日追加):九州では、*8のように、太陽光発電容量が817万キロワット(原発8基分)に達し、稼働を控える施設も419万キロワット(原発4基分)あって、九電は受け入れきれないと言っているため、JR九州が発電子会社を作って受け入れたらどうかと考える。そうすれば、自社用電力をなるべく自給した後、余剰分は他社に販売することが可能で、太陽光発電は「日出ずる国」の発電方法としてBestだからだ。

*8:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/461927 (佐賀新聞 2017年9月9日) 九電、太陽光電気供給増で 今秋一時停止要請も、15日から訓練
 九州電力は8日、太陽光発電事業者の電気供給量が増加し需給バランスが崩れて、今秋、事業者に対し発電の一時停止要請に踏み切る恐れがあると発表した。混乱を招かないよう、発電停止を要請する「出力制御」訓練を15、20、21日の3日間実施して備える。九電によると、電気の安定供給に影響しない範囲での太陽光の発電容量817万キロワットに対し、受け入れ量は7月末時点で741万キロワットに達したという。これ以外にも、九電と受け入れ契約を結び稼働を控える施設がすでに419万キロワット分ある。出力制御は、揚水・火力発電での調整、他電力との融通などができなくなった場合に実施する。訓練は九州の太陽光・風力発電の専門事業者約2千社を対象に行う。電話とメールによる模擬指令だけで、実際の制御作業はしない。佐賀県内では百数十社が対象という。15日は、全国の電力会社同士が電力を融通し合う際の連絡訓練にも取り組む。九電の担当者は「秋はエアコンなどの電力需要が大幅に減り、需給のミスマッチが大きくなれば制御する可能性が出てくる。訓練結果を参考に準備したい」と語った。

| 経済・雇用::2016.8~ | 06:29 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.7.14 ふるさと納税と返礼品・使途・地域振興・街づくりなど (2017年7月15、17、18、19、20、29、30日、8月3日追加)
 
      2017.7.4西日本新聞     2017.4.24日経新聞  2017.7.9
                                西日本新聞 

(図の説明:ふるさと納税でいつも上位にくる地方自治体には、その努力に敬意を表する。それに対し、努力もせずに無駄遣いばかりしている負け組の地域が、勝ち組の返礼品等に文句をつけているのは、正々堂々と競争しておらず見苦しい。また、使途による寄付は、東日本大震災や熊本地震などの大災害で著しく増加したが、そのようにわかりやすい使途だけが重要なのではないため、主体である地方自治体に自由に決めさせるべきである。そのため、総務省は、地方自治体の箸の上げ下げにまで指示するのは控えるべきだ)

(1)災害支援とふるさと納税
 九州北部の激しい豪雨で、福岡・大分両県の被災地では、*1-1のように、自衛隊や警察などによる捜索や救助が続き、有明海に5遺体が流れ着くなど、その被害の大きさを物語っている。また、熊本地震と重ね合わせてみると、どのようにして日本の山・川・扇状地・平野・干潟ができたのかが、映像で記録された体験として理解できる。

 福岡県朝倉市、大分県日田市付近は、大宰府・吉野ヶ里遺跡・神崎・耶馬渓・高千穂に近く、まさに日本の古代史の現場である。そして、そこから中継されてくる映像を見ると、近年、もともと川だった場所に道を作ったり、堤防を過信して川の近くや三角州に住宅を建てたりしており、これならちょっと激しい雨が降れば危険になるのは当然だと思われる。また、その山に作ったコンクリートのちゃちな砂防ダムで、山崩れが防げるわけがない。

 そのため、少子高齢化で人口減少時代の現在であれば、復旧ではなく、住居は安全性と高齢者等のケアを考えて街づくりを行い、危険になりやすい地域は農業や林業を行う形で復興するのがよいと思われる。たくさん流れてきた木材も、製材すれば使えそうな立派なものが多いようだ。

 そのような中、政府が激甚災害の指定を行い、災害復興のために要する地元負担が小さくなったのは助かるとともに、*1-2のように、福岡県朝倉市と大分県日田市への「ふるさと納税」が急増しており、感謝されている。ただ、今回は、熊本地震の時とは異なり、他の自治体がふるさと納税事務の代替をしているわけではなく、災害の対応と両方を行っている役場の人手は足りているのだろうか? また、被害を受けた地域は、福岡県朝倉市と大分県日田市だけではないので、正確に報道すべきだ。

(2)ふるさと納税の実績
 ふるさと納税制度は、2005~2009年の間に衆議院議員をした私の提案で、2008年4月30日に公布された「地方税法等の一部を改正する法律」により開始され、手続きの簡易化や上限の引き上げにより、2016年度の寄付総額は、*2-1のように、約2844億円に上った。そして、その制度の導入が決まった時の自民党税調会長は、青森県選出の津島雄二衆議院議員だった。

 これに対し、*2-2、*2-3のように、全自治体を合計した返礼品の調達費約1091億円に送料、広報、事務費などを加えた総経費が1485億1千万円に達して寄付総額の半分を超えた等々の批判があったため、総務省は2017年4月の通知で寄付の30%を超える品物や換金性の高い商品券や家電などを贈る自治体に見直しを求めた。

 しかし、私は、今回被害を受けた久留米市の久留米絣や大川市の家具、その他中小企業の工場がある地域など、応援したい産業のある地域もあり、国が一律に地方の箸の上げ下ろしにまで口を出して護送船団方式にするのはよくないと考える。つまり、良識の範囲のことをしていればよいのであり、仮にふるさと納税の大部分を返礼品に使ってしまえば、その地方自治体はふるさと納税の事務費はかかるが、ふるさと納税収入で事業を行うことができなくなり、これはその自治体自身の経営の問題だからである。

(3)地域振興と街づくり、教育と福祉
 地域振興・街づくり・教育・福祉などは、地方自治体が賢い基本計画を作って実現していくべきもので、その成否がその後の地域の発展や住みやすさに繋がる。その原資には、地方交付税交付金、地方税、地方消費税、ふるさと納税などがあり、産業を振興し、居心地のよい安全な街を作り、教育・福祉を充実させることが、その後のその地域の振興に繋がる。

1)地域振興と街づくりに関する地方自治体の総合基本計画
 野村総合研究所(東京)がまとめた国内100都市対象の「成長可能性都市ランキング」では、*3-1のように、九州は福岡市が2位、鹿児島市が5位に、福岡県久留米市が9位、長崎県佐世保市が10位と、上位10都市中、九州が4市を占めたそうだ。しかし、調査は九州の10市を含む人口10万人以上の主な都市を対象にしたものだそうで、人口10万人以上の主な都市しか対象にしなかった点で、調査者は自らは気付いていない先入観を持っている。それは、*3-2の沖縄の例をはじめとして、地方都市は、その命運をかけて地域の基本計画を作りつつある所が多く、住みやすい街は人口10万人以上の主な都市とは限らないことである。

 そして、*3-2のように、沖縄総合事務局と沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)が観光客を迎える視点で道路の景観を考える「沖縄における観光の推進と道路緑化シンポジウム」を那覇市のテンブスホールで開いたところ、東京都市大学環境学部の涌井特別教授が「玄関口である道路で、沖縄らしさをどう表現するかを練らないといけない」と基調講演で強調され、沖縄総合事務局南部国道事務所の小幡所長は「都市や海岸、山あいなど地域の特性に応じて植樹すべきだ」と述べられたそうで、その地域らしい美しさや魅力を演出するのが最も効果的なのは、北海道から沖縄まで同じだろう。

2)教育と福祉
 東京の大学は、*3-3のように、画一化を脱するため、地方出身者用の奨学金や学生寮の充実を行い、多様な学生を全国から集めようとしている。そして、これをやらなければ、東大、東工大などは、東京近郊にある受験高出身の男子学生が大半を占め、その人たちが大挙してエンジニアになったり官庁に就職したりする結果、自然を知らない人、教育・福祉・環境を軽んじる人ばかりがリーダーとなって、視野が一面的で狭くなる。

 私も、地方出身者や理系女子学生数が少ないことで、多くの分野で考え方が悪い意味で画一化されているため、母集団の多様性こそが幅広い思考の原点になるという大学の思いに賛成だ。

 さらに、*3-4のように、東大は女子学生に限定して家賃補助を行い、それが逆差別との批判もあるが、もともと男子学生寮は充実している上、家族やそれを取り巻く社会は東大志望の女子生徒には「無理しなくても」と言い、男子生徒には「何が何でも頑張れ」と言う傾向にあることから、女性の高学歴に反対する社会や親へのよいメッセージになると考える。

 確かに、佐賀県も東京の県人寮に入居できるのは男子学生だけであり、女子には高学歴は不要だと言わんばかりのように見える(それどころか、はっきりそう言う人もいる)。しかし、管理職やリーダーの母集団になる女性は、男性と同等以上の実力・能力を要求されるため、東大方式はジェンダー(社会的性差)の公平を狙った策であり、不平等にはあたらないだろう。

 そして、地方では、ふるさと納税収入から、これらの教育・福祉にかかる経費を支払ったり、卒業後にふるさとで就職した学生に奨学金返済を肩代わりしたりすることも可能だ。

<災害とふるさと納税>
*1-1:http://qbiz.jp/article/113836/1/ (西日本新聞 2017年7月9日) 豪雨死者18人に 被災者か、有明海に5遺体 福岡・大分
 九州豪雨による福岡、大分両県の被災地では8日も自衛隊や警察などによる捜索や救助が続いた。福岡県朝倉市では新たに女性の3遺体が見つかり、犠牲者は両県で計18人になった。福岡、佐賀両県沖の有明海では豪雨で流されたとみられる男女5人の遺体が見つかった。生存率が急速に下がるとされる発生から「72時間」が経過する中、大分県日田市では安否不明者全員の無事が確認されたが、福岡県では依然として27人と連絡が取れていない。犠牲者の内訳は、朝倉市13人、同県東峰村2人、日田市3人。朝倉市黒川で見つかった3遺体は、渕上麗子さん(63)と娘の江藤由香理さん(26)、江藤さんの長男友哉ちゃん(1)▽同市杷木林田の遺体は岩下ひとみさん(36)=杷木池田▽東峰村宝珠山の2遺体は熊谷国茂さん(81)と妻千鶴代さん(81)と判明した。また、日田市の田代川近くで発見された遺体は矢野知子さん(70)=鶴河内=と確認された。福岡県などによると8日午前、朝倉市杷木を捜索していた消防隊が川の上流で女性の遺体を発見。その後も杷木の竹やぶなどから女性の2遺体が見つかった。被災地の川から数十キロ下流にある有明海やその沿岸でも女性3人、男性2人の遺体が相次いで見つかった。福岡、佐賀両県警によると、周辺に大量の流木があったことなどから豪雨で流された可能性があるという。安否不明の26人がいる朝倉市では、果樹園の様子を見に行ったまま行方不明となっている男性などの捜索が続いた。1人の行方が分かっていない東峰村宝珠山でも捜索が行われたが、二次災害の危険があることから日没で打ち切られた。同日夕現在、孤立しているのは朝倉市で1人、東峰村で28人、日田市で545人。避難所には朝倉市1142人、東峰村429人、大分県378人が避難している。朝倉市と東峰村では計2170戸が断水し、計1200戸が停電。日田市では410戸が断水している。交通では、大雨の影響で不通となっていたJR佐世保線の肥前山口−早岐で運転が再開されたほか、東九州自動車道や九州道も8日までに通行止めが全線で解除された。九州北部は8日も、朝倉市や福岡県嘉麻市で局地的に非常に激しい雨が降った。今後も大気の不安定な状態が続くといい、気象庁は土砂災害などへの厳重な警戒を呼び掛けている。9日午後6時までの24時間予想雨量は多いところで熊本200ミリ、福岡150ミリ、佐賀、長崎、大分120ミリ。

*1-2:http://qbiz.jp/article/114256/1/ (西日本新聞 2017年7月14日) 2017九州豪雨:被災地のふるさと納税急増 朝倉、日田両市
 九州豪雨で被災した福岡県朝倉市と大分県日田市への「ふるさと納税」が急増していることが13日、分かった。朝倉市によると5〜12日の8日間だけで計4888万370円(2485件)。「応援しています」など、被災者へのメッセージも添えられているという。朝倉市へのふるさと納税は、昨年7月の1カ月間では計2051万9000円(1388件)だった。同市は6日から返礼品をストップしているが、勢いは止まっていない。日田市でも今月5〜12日、少なくとも1605件、計2802万3600円(1605件)が集まった。直前の6月27日〜7月4日は計409万円(305件、いずれも暫定値)で、約6.9倍に増えた計算だ。同市は「『一日も早く復興に向かうよう祈っています』などコメントを付けて納税してくれる方が多く、本当にありがたい」と感謝しきりだ。

<ふるさと納税の実績>
*2-1:http://qbiz.jp/article/113473/1/ (西日本新聞 2017年7月4日) ふるさと納税が過去最高の2844億円 首位は2年連続で宮崎・都城市
 総務省は4日、ふるさと納税による2016年度の寄付総額が過去最高の2844億887万5千円に上ったと発表した。15年度より1200億円近く増え、伸びは1・7倍。返礼品の充実に加え、インターネットでの簡易な手続きが定着したことも追い風になったが、住民税や所得税の減税が受けられる寄付額上限が約2倍に引き上げられた15年度の伸び(4・3倍)には及ばなかった。件数は1・8倍の1271万件だった。寄付額は宮崎県都城市が73億3300万円で2年連続のトップ。昨年4月に大規模な地震があった熊本市は復興支援の寄付が急増して36億8600万円で6位に入った。寄付額の上位には、高額な商品や多彩な特産物を返礼品とする自治体が並んだ。2位以下は長野県伊那市の72億500万円、静岡県焼津市の51億2100万円、宮崎県都農町の50億900万円、佐賀県上峰町の45億7300万円と続いた。都道府県別の寄付額は、北海道271億2400万円、山形225億3300万円、宮崎206億200万円の順だった。総務省は4月以降、返礼品競争の過熱を抑えるため、寄付の3割を超える金額の品物や、換金性の高い商品券や家電などを贈る自治体に見直しを要請した。その結果、寄付額上位の約200自治体のうち9割程度が見直す意向を示したという。15年度の寄付総額は1652億9102万円。17年度に入ってからは総務省が高額な返礼品の自粛を全国の自治体に求めており、伸びが落ち込む可能性もありそうだ。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/443653 (佐賀新聞 2017年7月5日) ふるさと納税2844億円 16年度過去最高、返礼品が追い風
 総務省は4日、ふるさと納税による2016年度の自治体への寄付総額が過去最高の2844億887万5千円になったと発表した。15年度の1・7倍で、返礼品の充実やインターネットでの簡易な手続きが定着したことが追い風になった。ただ住民税や所得税の減税が受けられる寄付額の上限が約2倍に引き上げられた15年度の伸び(4・3倍)には及ばなかった。件数は1・8倍の1271万件だった。寄付額は宮崎県都城市が73億3300万円で2年連続のトップ。長野県伊那市の72億500万円、静岡県焼津市の51億2100万円と続き、上位には高額な商品や多彩な特産物を返礼品とする自治体が並んだ。昨年4月に大規模な地震があった熊本市は復興支援の寄付が急増し、36億8600万円で6位だった。都道府県別の合計は、北海道271億2400万円、山形225億3300万円、宮崎206億200万円の順だった。寄付額に占める返礼品調達費の割合は全国平均で38%。15年度から横ばいだった。全自治体を合計した調達費1090億8千万円に、返礼品の送料や広報、事務費などを加えた総経費は1485億1千万円に達し、寄付総額の半分を超えた。高額な返礼品で寄付を集める自治体間の競争が過熱したことから、総務省は4月の通知で寄付の30%を超える金額の品物や、換金性の高い商品券や家電などを贈る自治体に見直しを求めた。ただ寄付額の上位約200自治体のうち10%ほどは受け入れておらず、今後も働きかけを続ける。15年度の寄付総額は1652億9102万円だった。17年度に入ってからは総務省の要請に応じた返礼品の見直しが広がっており、寄付の伸びが鈍化する可能性もありそうだ。

*2-3:https://www.agrinews.co.jp/p41343.html (日本農業新聞 2017年7月11日) 再考 ふるさと納税 返礼品競争に終止符を
 2016年度のふるさと納税の寄付総額が過去最高を更新した。地方支援の広がりは歓迎するが、豪華な品物で寄付を集める「返礼品競争」が過熱し、本来の趣旨を逸脱する面もみられる。行き過ぎた競争は早期に是正する必要がある。ふるさと納税は、出身地や応援したい自治体に寄付をすると税金が軽減される制度。08年度に始まった。寄付金額から2000円を引いた額が所得税や住民税から控除される。寄付した自治体からは、特産品などの返礼品が届く。15年度からは、減税される寄付額の上限が2倍に引き上げられ、寄付先が5自治体までなら確定申告のいらない「ワンストップ特例」が導入された。この結果、全国の自治体が受け入れた寄付額は1653億円と前年度の4.3倍にも増えた。16年度は前年度比1.7倍の2844億円で過去最高となった。一方で、返礼品調達費は16年度で1091億円にも上り、寄付額に占める割合が全国平均で38.4%にも達した。負担になり始めている。総務省は4月に、寄付額の3割以下に抑えるように自治体に通知し、6月からは100団体に改善を求めているが、対応が遅れている。自治体の中には、寄付金で財政が潤い、特産品の消費拡大にもつながるとして、見直しには消極的なところもある。見直し根拠が曖昧なことへの戸惑いも見える。しかしこのまま高額の返礼品が続けば、対価を求めない寄付文化をゆがめたり、特産品の廉売につながったりする。総務省は説得に努めるべきだ。とりわけ農畜産物は、農業関係者の間に「将来的に安売りや投げ売りにつながり、自らの首を絞めることになりかねない」との懸念が強まっている。返礼品に「上限」を設けたり、品目を制限したりする明確なルールを考えるべきだ。寄付の集まらない自治体の不公平感や、住民が他市町村の特産品を目当てに寄付し「税金が逃げる」という弊害、多額の寄付ができる富裕層ほど税の控除が多くなる問題も指摘されている。政府はこうした問題の是正も急ぐ必要がある。寄付する側の意識改革も必要だ。商品を探すように、ネットでの返礼品人気ランキングを見ながら寄付先を選ぶような行為は制度本来の姿ではない。返礼品を得ることが目的ではないはずだ。制度の趣旨を理解した上での冷静な行動が求められる。制度創設時から過剰な返礼品を規制すべきだとの議論はあった。その対策を怠って混乱させた政府の責任は重い。このまま過熱し続けると、制度の存亡に関わる。全国市長会など地方6団体が中心になって返礼品の是正に取り組むことも重要だ。都市と地方との関わりの契機となり、寄付した人が実際に産地を訪れたりする。そうした真のふるさと創生につながる制度となるよう抜本改革も含め再設計する必要がある。

<地域振興と街づくり>
*3-1:http://qbiz.jp/article/113834/1/ (西日本新聞 2017年7月9日) 福岡市が「成長可能性都市」2位 鹿児島など九州4市もトップ10入り
 野村総合研究所(東京)がまとめた国内100都市対象の「成長可能性都市ランキング」で、福岡市が2位、鹿児島市が5位になった。他に福岡県久留米市が9位、長崎県佐世保市が10位と、上位10都市中、九州が4市を占めた。1位は東京23区だった。野村総研は「九州の地方都市は、大都市に頼らない『ローカルハブ』(地方拠点)になる可能性を秘めている。自らの強みを生かし、地域経済をけん引してほしい」としている。調査は九州の10市を含む人口10万人以上の主な都市が対象。人口、事業所数、地価、財政力、地方交付税への依存度、創業支援策、産学連携など計131の指標に加え、各自治体100〜300人の住民アンケートを点数化し、合計のスコアから順位を算出した。その結果、2位の福岡市は空港、新幹線駅へのアクセスや起業支援策が充実し、市民の幸福度も高いことなどから「“支店経済”の街を脱し新たなビジネスを創出するなど、三大都市圏に次ぐ第4の都市として成長している」。鹿児島市は「外部人材の受け入れに寛容でビジネス集積の伸びしろが大きい」とした。一方、久留米市や佐世保市については「一見、産業創出力が乏しいイメージだが、多様性があり、企業、人材の誘致につながる潜在力は高い」としている。分析した小林庸至上級研究員は「多様なローカルハブを育てていくことは、地方創生だけでなく、首都直下型地震の危機に備えた、災害に強い国づくりにもつながる」と述べた。

*3-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-531155.html (琉球新報 2017年7月9日) 経済:「道路に沖縄らしさを」 戦略的緑化を議論
 沖縄総合事務局と沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)は4日、観光客を迎え入れる視点で県内道路の景観を考える「沖縄における観光の推進と道路緑化シンポジウム」を那覇市のテンブスホールで開いた。観光、道路緑化などに携わる関係者による討論では、維持管理費の公共予算が減額される中、緑化保全にも優先順位を付ける必要性が確認された。沖縄海洋博覧会の基本計画やハウステンボス、全日空などのリゾート計画に関わった東京都市大学環境学部の涌井史郎特別教授が基調講演し「玄関口である道路で、沖縄らしさをどう表現するか。そのことを戦略的に練らないといけない」と強調した。討論では、OCVBの前田光幸専務理事がシンガポールやハワイなど観光と道路緑化を戦略的に実践している国々の事例を紹介した。沖縄総合事務局南部国道事務所の小幡宏所長は「観光客の訪問頻度や、都市や海岸、山あいなど地域の特性に応じて植樹するべきだ」と述べた。和歌山大学システム工学部の山田和司非常勤講師は、亜熱帯気候のため他県より3倍の早さで成長する沖縄の植物管理頻度の高さを指摘した。沖縄国際大学の宮城邦治名誉教授は「観光客が抱く『日本の中の異国感』という印象を植樹でも想起させるべきだ」と提案した。

*3-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020202000130.html (東京新聞 2017年2月2日) 【社会】来れ地方の学生よ 東京の大学、脱「画一化」に挑戦
 入学試験に「地域の課題」、地方出身者用の奨学金、学生寮の充実-。多様な学生を全国から集めようと、東京の大学が試行錯誤している。親の世帯の収入の減少などで地方出身者が減少し、理系を目指す女子学生数も伸び悩む。放っておけば画一化が進みかねない中で、多様性こそが、幅広い思考の原点になるという大学側の思いが込められている。早稲田大は二〇一七年度、「地域に貢献する人材育成」をうたう「新思考入学試験(地域連携型)」という入試を文学部や商学部など五学部で始める。リポートなどで、自分の暮らす地域の課題と解決のために大学で学びたいことなどを示してもらうという。入学センターの担当者は「広く日本各地の受験生に挑戦してもらいたい」と期待する。全国から学生が集まることを特色の一つとしてきた早大でも、地方出身者は年々減少し、現在は全学部生のうち首都圏出身者が約七割を占める。仕送りの負担から、東京への進学をあきらめている地方の若者を後押しするため、〇九年度に首都圏以外の受験生を対象にした「めざせ!都の西北奨学金」も導入。年間約四十万円を給付してきたが、一七年度からは半期分の授業料(約五十万~七十万円)を免除する制度に拡大する。他の私立大でも地方出身者対象の奨学金導入は広がっている。一二年度から「学問のすゝめ奨学金」を設けた慶応義塾大は、首都圏以外の道府県をブロックに分け、給付人数を振り分けて地域が偏らないようにしているという。同大でも一九九五年の入試では43・8%を占めていた首都圏以外の合格者の割合が二〇一五年には28・9%に減少している。女子学生を増やすため、住まいの確保を重視する大学もある。東京工業大は二年前に老朽化で閉鎖した女子寮を建て替え、設備を充実させた上で今年四月にオープンする。キャンパスまで徒歩十五分と便利だ。東京工業大の女子の学部生は12%にとどまり、このうち九割近くは首都圏から通学している。留学生は女子の割合が増えてきており、担当者は、「留学生も含め、安心できる環境を整備して女子学生を増やしたい」と話す。同じく女子学部生の割合が19%と低い東京大は今春、地方出身の女子学生に月三万円の家賃を補助する制度を導入する。安全性を重視した住居百室を用意し、最長で二年間支給する。制度を公表すると、「男子学生との不平等になる」との意見も出たが、同大は「学生の多様性を拡大するため」と説明している。

*3-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12723358.html (朝日新聞 2016年12月26日) 東大の家賃補助、女子限定のワケ 家族、志望に「無理しなくても」 安全重視、高め物件
 東京大が来年度から設ける女子学生向けの家賃補助制度にさまざまな声があがっている。女子学生を増やす狙いだが、「なぜ女子だけ?」といった批判の一方、女子の高学歴への偏見や自宅外通学を理由に受験を反対された人たちの間では歓迎の声が上がる。年明けからは本格的な受験シーズン。東大だけでなく各地の大学も、女子学生増へ手探りの試みを続ける。歓迎の声の一つは、家賃補助制度が、東大をはじめ、女子の志望先に反対する親へのメッセージになることへの期待だ。「女の子が無理して頑張らなくてもいいのに」「なぜ東京に行くの?」……。東海地方出身の東大4年の女子学生(23)は、家族の言葉が忘れられない。当時、東大に毎年10人以上が進学する県立高に通っていた。先生の勧めで高校2年の1月、志望校に決めた。だが、80代の祖母と50代の母が反対した。祖母の兄弟姉妹で大学に行けたのは男の子だけだったといい、母も短大卒。今では「それが影響したのかも」と思う。現役で受験に失敗すると、「女の子が浪人なんて」と言われた。結局は父が賛成で、東大に挑戦できたという。東大の女子学生の割合は2割未満。この女子学生は「東大が地方の女子学生を増やす手段を採ったことには好感がもてる。送り出す親の意識も変わるだろう」と期待する。家賃補助を歓迎する側のもう一つの理由は、女子が安全に暮らせる住居へのニーズが切実なことだ。東大によると、大学の説明会などで、女子の安全な住まいの確保を心配する保護者の声があったという。「遠くの大学は危ないからダメだ」。神奈川県の30代の女性会社員は湘南地方の高校に通っていた時、父からこう反対されたのをよく覚えている。「一橋大か京都大を目指す」と家族に宣言。模擬試験の成績では十分にめざせる判定だったが、受験を認めてもらえず、自宅から約1時間の私立大に進学した。東大は今回の家賃補助の対象を「自宅から90分以上かかる女子学生」とし、安全や耐震性にも配慮することも強調している。女性は「東大は女子学生がなぜ来ないのか、その理由を調べたのだろう。こうした制度があれば、一人暮らしに反対する親を説得する材料になる」と期待する。東海地方の女子学生も合格後、住居で苦労した。「東京の県人寮に入居しているのは男子学生だけ。女子学生には、安くて安全な住居の選択肢が少ない」。東京で民間の女子専用学生会館に住んだが、干していた下着を盗まれたこともある。3年で一人暮らしを始めたが、安全面から家賃を高めにするしかなかった。一方、東大によると、この制度に約80件の意見が寄せられ、「(男性への)差別だ」という声が多かった。ネット上では「女性限定ではなく、(男女関係なく)貧困の学生に補助すべきだ」という声のほか、まず女子に高学歴は必要ないなどとする一部の風潮に対処すべきだとして「家賃は根本的な問題ではない」などの意見もあった。
■男女平等とは、他大学も模索
 女子教育に詳しいNPO法人サルタック理事の畠山勝太さん(31)は「安全性が高い住まいという女子のニーズへの対応は、ジェンダー(社会的性差)の公平を狙った策で不平等にはあたらない」とみる。「日本の女子の学力は国際的にもトップレベルで、大学進学率の低さは能力の問題ではない」と指摘。東大の家賃補助制度を「国際的には当然のことだ」と話す。男子学生だけでなく、優秀な女子学生を増やすことで研究の多様性を向上させようと大学も様々な試みを続けるが、手探りの段階だ。金沢工業大(石川県野々市市)はバイオ・化学部を新設した2008年度から2年間、女子の特別選抜制度を設けたが、志願者は12~13人と少なく中止した。「特別選抜が敬遠され、AO入試など別の試験が受験しやすかったようだ」(同大)という。大阪電気通信大(大阪府寝屋川市)は十数年前から、公募推薦入試の優遇制度の一つに「女子への点の加算」を設けるが、「女子の志願者は増えていない」という。九州大(福岡市)は12年度の理学部数学科の入試で「将来の女性研究者を増やすため」として、女性枠を設けようとした。だが、「『法の下の平等』の点から問題があるのではないかとの意見があり、社会的影響や入学した学生の精神的負担などを総合的に判断して取りやめた」(同大)という。辻村みよ子・明治大教授(憲法)は「東大の家賃補助は女子寮に代わる学生支援の特別措置ならば、男女共同参画社会基本法上のポジティブ・アクション(積極的改善措置)と認めることができ、法の下の平等を定めた憲法にも違反しない」と指摘。そのうえで「入試では(特例で入学したという)女子学生への烙印(らくいん)にならないよう、男女ともに合格最低点を設けるなどの方が有効だ。こうしたポジティブ・アクションは社会的合意が大切で、大学が丁寧に説明する必要もある」と話す。
◆キーワード
 <女子学生への家賃補助> 東大が2017年度から、駒場キャンパス(東京都目黒区)周辺に安全性や耐震性の高い部屋を100室ほど確保し、入居した女子学生に月3万円の家賃を補助する。自宅から90分以上かかる女子学生が対象で最長2年間支給。保護者の所得制限はつけない。


<地方の選択に中央政府の指示は不要である>
PS(2017.7.15追加):日経新聞は、*4-1のように、都市寄り・省庁寄りの見解が多いが、これまでに多くの投資がなされて資源や人材の多い都市部自治体の税収減は努力と工夫不足の結果にすぎないため、言い訳無用で自助努力させるべきである。そして、三重県の鳥羽、志摩両市が真珠の返礼品を認めるよう総務省に要望したのは同感で、(高いものから安いものまである)真珠が返礼品になるのは面白く、「返礼品は農産品に限る」などとするのは、論理とは関係なく反対したいだけの狭い発想である。
 なお、*4-2のように、西日本地区の18の経済同友会が、観光推進で地域活性化するため西日本全体が広域で連携すべきだとし、四国新幹線を含む交通網に言及したのには賛成だが、広域の方がよいのは西日本だけではないだろう。ただ、カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)を起点にするという発想は情けなく、九州を起点として四国を通り、伊勢志摩から奈良・京都に至った方が余程面白い。さらに、2025年に万博を大阪に誘致するというのは、日本が開発途上国で威信を示さなければならない時代ではないため古くさい戦略で、既に有名な陶磁器・織物・染色・真珠養殖・漆器・機械などの生産現場を案内した方がよほど面白くて買ってもらえるだろう。つまり、誰にとっても、ゲームより本物の方が見ごたえがあるということだ。

*4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170705&ng=DGKKASFS04H64_U7A700C1EA2000 (日経新聞 2017.7.5) ふるさと納税、自粛・継続で割れる自治体
 ふるさと納税の人気上昇とともに制度のひずみが鮮明になっている。2016年度の寄付額は2844億円。4年連続で過去最高を更新した。特色ある返礼品で納税者の関心を引き付け、地元農産品の活用や被災地支援など地方振興で成果をあげている。その一方で高額の返礼品や都市自治体の税収減といった問題も浮上。自治体には適正な競争が求められている。ふるさと納税は自治体への寄付額から2千円を引いた額が国の所得税、地方の住民税から一定額控除される仕組み。自治体は寄付を増やそうと返礼品を充実させている。16年度に最も多くの寄付を得たのは宮崎県都城市。2年連続の首位で、返礼品の宮崎牛や焼酎の人気が高く73億円を集めた。2位の長野県伊那市は家電の返礼をあてにした寄付を集めた。ふるさと納税を通じ、被災地を支援する動きも目立つ。6位の熊本市は昨年の震災を機に寄付額が増え、前の年度の86倍に膨らんだ。使途として熊本城の修復を指定したものが多かった。
■総務省の要請に難色
 ただ寄付獲得へ向けた自治体間の競争は過熱気味だ。寄付の趣旨から外れ「2千円で返礼品がもらえる」とあおる自治体もある。総務省は4月、寄付額に対する返礼品の割合を3割以下に下げるよう全国の自治体に要請した。都城市は6月に約6割あった割合を下げると表明。佐賀県上峰町も約5割だった返礼割合の引き下げを目指す。一方、難色を示す自治体もある。ふるさと納税を特産品などのPRに使う自治体には不満がくすぶる。総務省によると、寄付額の上位200自治体のうち、20弱が指摘を受けた返礼品を見直さない意向を示した。三重県の鳥羽、志摩両市は真珠の返礼品を認めるよう総務省に逆に要望した。
■都市は税収減を懸念
 都市と地方のあつれきも表面化している。都市部は地方の自治体に税収を奪われると反発。ふるさと納税による減収額は東京23区で16年度129億円、17年度207億円の見込み。17年度の減収額を30億円とする世田谷区は「30億円といえば学校1校の改築費にあたる規模。税収減が累積すると行政サービスに影響が出る」(財政課)と危機感を強める。地方に対抗しようと、中野区は16年10月から返礼品を設けた。区内レストランの食事券や交流のある他県の日本酒など特産品もそろえる。品川区も競馬場の指定席を返礼品に加えるなどした。
■使途の明確化が必要
 ふるさと納税の運用を巡っては、専門家からも異論が出始めている。とりわけ問題視するのは、集めた寄付の使い方。関西大の橋本恭之教授は「4割の自治体が寄付金の使途を明らかにしていない。公表しない場合は特例控除の適用外にすべきだ」と指摘、使途の明確化を求める。一橋大の佐藤主光教授は「財源を必要とする地域に寄付金が渡っていない。返礼品は農産品などに限り、調達の情報公開を進めるべきだ。過剰競争で利用者も返礼品以外に無関心になっている」と警鐘を鳴らしている。

*4-2:http://qbiz.jp/article/114338/1/ (西日本新聞 2017年7月15日) 九州など18同友会が声明 観光推進へ広域連携を
 関西や中部、九州など西日本地区の18の経済同友会は14日、大阪市内で開いた会議後に、観光推進による地域活性化を実現するため、カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)などの観光資源を起点にし、西日本全体が広域で連携するべきだとする声明を発表した。声明では、増加を続ける訪日観光客の受け入れ態勢を整える必要があると強調。国に対し、空港・港湾の整備や、四国新幹線などの整備計画を早急に検討するよう要望した。北陸新幹線の大阪までの早期延伸も求めた。会議後に記者会見した関西経済同友会の黒田章裕代表幹事(コクヨ会長)は、2025年の大阪誘致を目指す国際博覧会(万博)やIRを西日本全体の観光推進につなげるため、「大阪からそれぞれの観光地にお連れするには、交通網をどうすれば良いのかなどの検討が必要だ」と述べた。

<災害支援法と街づくりのあり方について>
PS(2017年7月17、18日追加):*5-1については、①災害額を確定するためには被災状況の調査や被害額の算定は必要だが、それに時間がかかることが問題であり、②災害補償は復旧を後押しするだけなので、より災害に強い街へ都市計画を変更できないという欠点がある。
 そのため、①については、必要な書類と被災状況を証明する写真を標準化しておき、それに従って提出された書類をコンピューター処理すれば固定資産税評価額等と照合して概略の被災額・補償額を直ちに計算して支払い、後で確認して調整する仕組みにすればよいだろう。また、②については、川の三角州やもともと川だった場所を埋め立てて洪水リスクの高い場所に住宅を作っているようなので、人口減少社会で何度も同じ被害が起こらないよう、安全で便利な街づくりに変更するために、復旧だけではなく積極的な復興も対象にすべきである。
 なお、溶岩の上に火山灰や有機物が積もってできた九州の地形では、*5-2のような表層崩壊が起こるのは想定内になるため、それに耐える土地利用や街づくりをすべきだ。
 

              2017年7月九州北部豪雨被害

 
                    2017.7.16西日本新聞

*5-1:http://www.shinmai.co.jp/news/world/article.php?date=20170716&id=2017071601001513 (信濃毎日新聞 2017.7.16) 二階氏、激甚災害法の改正検討 豪雨被害受け、手続き迅速化
 自民党の二階俊博幹事長は16日、福岡、大分両県で大きな被害が出た九州北部の豪雨を受け、激甚災害指定の手続きを迅速化するため、激甚災害法の改正を進める考えを表明した。視察先の福岡県朝倉市で「災害発生後、(政府が)直ちに指定の準備に当たれるよう、法改正を検討したい」と記者団に述べた。秋に想定される臨時国会での成立を目指す考えも明らかにした。激甚災害法は、地震や豪雨など大規模災害で被災した自治体の財政負担を軽くすることで、復旧を後押しする。ただ被災状況の調査や被害額の算定に時間がかかり、1~2カ月後になるのが一般的だ。

*5-2:http://qbiz.jp/article/114370/1/ (西日本新聞 2017年7月16日) 土砂崩れ300ヵ所超 雨で進行の懸念も 農水省調査
 九州豪雨により発生した土砂崩れが、福岡県朝倉市と東峰村、大分県日田市で少なくとも300カ所に上ることが農林水産省九州森林管理局の調査で明らかになった。ほとんどは、深い岩盤までは崩れず、表土層と樹木が滑り落ちる「表層崩壊」とみられるという。識者は、斜面に残った土砂や樹木が今後の強い雨や台風で流れ落ちる恐れがあるとして、警戒を呼び掛けている。九州森林管理局は8、10日に上空から被災地を調査した。土砂崩れは朝倉市と東峰村に集中し、その多くは長さ数メートルから数十メートルと比較的小規模だった。調査に加わった森林総合研究所九州支所の黒川潮・山地防災研究グループ長は、山の谷筋に雨水が集中して斜面が削られ、同時多発的に土砂崩れが起きたとみている。熊本大学の北園芳人名誉教授(地盤工学)によると、上空から見た限り、朝倉市や東峰村の土砂崩れでは深い岩盤は崩れておらず、多くが浅い表土層が崩れた「表層崩壊」だった。猛烈な雨が斜面の表面を勢いよくそぎ落とし、深く根を張らないスギなどの針葉樹も流れたとみられるという。表層崩壊は、雨水が深くまで染み込み、岩盤部分から崩れ落ちる「深層崩壊」と比べると、流出する土砂は少ないが、今回は表層崩壊が多発したことで、流れ出た土砂や樹木が膨大になったとみられる。日田市の土砂崩れは数十カ所と比較的少なかった。ただ、朝倉市などの土砂崩れと異なり、川の流れをせき止める“土砂ダム”ができた日田市小野地区の土砂崩れについて、北園名誉教授は、深層崩壊に近いとみている。豪雨翌日の6日朝に発生したことから、雨が時間をかけて斜面深くに染み込み、地下水位が上がって土が浮き上がり、崩れたと考えられるという。福岡大の村上哲教授(地盤工学)の調査では、小野地区の一部斜面では岩盤が露出。山はなお大量の水を含んでいる可能性もある。朝倉市や東峰村も含め、さらに土砂崩れが進む恐れがあると指摘している。

<木材の利用法>
PS(2017年7月19日):国交省は、*6-1のように、九州豪雨で土砂・流木が堆積している福岡県朝倉市の県管理河川について、国が権限代行して緊急に大量の土砂・流木の撤去を始めたそうで、福岡県も少しほっとしただろうが、*6-2のように、①20万トン超の流木があり ②寺内ダムは水面を覆うように大量の大木が漂い ③具体的な処理方法は決まっておらず ④1次仮置き場に収集運搬した後で2次仮置き場に移し、 ⑤▽木材として利活用▽破砕して焼却▽バイオマス燃料のチップや建築資材として売却するなどの方法を検討しているそうだ。
 しかし、①②③から、所有者がいるのならその人に引き取ってもらえばよいし、所有者がわからず廃棄物となっている木材なら、焼却して無駄にした上、余分なCO2を出すよりも、利活用できる人に無償で渡した方がよいと考える。また、⑤については、写真から、1)建材・家具材として使える大木 2)バイオマス燃料のチップにはできそうな枝・古材 3)焼却して発電できる木材 などがあるため、引き取り手が受け取りやすいように、④の2次置き場は分類して置くのがよいだろう。なお、木材は、一昔前は、水に浮かせて貯蔵したり運んだりしていたため、泥が付いたから価値が低いということはない。 

 
                     (2017.7.17、19西日本新聞)

*6-1:http://qbiz.jp/article/114430/1/ (西日本新聞 2017年7月18日) 2017九州豪雨:国が土砂や流木の除去代行 朝倉市の3河川、新制度で全国初
 国土交通省は18日、九州豪雨で大量の土砂や流木が堆積している福岡県朝倉市の赤谷川など県管理3河川について、国が権限代行で緊急的に土砂や流木を除去すると発表した。国による代行は今年6月に施行した改正河川法に基づく新制度で、全国初の適用となる。対象となる河川は、いずれも朝倉市を流れる筑後川水系の赤谷川、大山川、乙石川の計15・5キロ。上流の山腹で多数の土砂崩れが発生したため、大量の土砂や流木が河道をふさいで氾濫の要因になっていた。権限代行は14日に福岡県が要請。二次災害の恐れが高いほか、撤去には高度な技術を要することもあり、国が18日から緊急的に撤去を始めることになった。作業の終了する時期は未定で、国交省は「軟弱になった地質の状況なども勘案する必要があるが、なるべく早く終えたい」としている。

*6-2:http://qbiz.jp/article/114459/1/ (西日本新聞 2017年7月19日) 2017九州豪雨:流木20万トン処理に苦慮 仮置き場足りず 材木転用にも難題
 九州豪雨により、被災地の福岡県朝倉市などで発生し、有明海まで広がった流木の処理に行政側が頭を悩ませている。福岡県の推計によると、流木は少なくとも20万トン超。5年前の九州北部豪雨時に比べて3倍を超える。現段階では、回収して一時的に保管する仮置き場の確保もままならず、復旧は見通せない。山あいになみなみと水をたたえる同市の寺内ダム。水面を覆うように漂う大量の大木を見つめ、管理する独立行政法人水資源機構の担当者は声を落とした。「具体的な処理方法は決まっていない」。船や重機を使って回収する方針だが、本格的な作業は手付かずだ。豪雨で山腹が崩壊し、大量の木々や土砂が河川や道路、海にまで散らばった。県の推計は市内を流れる二つの川の航空写真から目視で算出したもので、有明海の流木は含んでいない。流木や土砂の処理は筑後川や有明海などは国、ダムは水資源機構、県管理の河川や道路などは県、農地や民有地などは市町村が担う。いったん1次仮置き場に収集運搬した後、より広い2次仮置き場に移す。1次仮置き場は現在、朝倉市と東峰村の駐車場や広場など計7カ所。福岡県は近隣自治体を含め、民有地など約20カ所を候補地として、1次、2次仮置き場の確保を目指す。だが「廃棄物」だけに地域の反発も予想され、「地権者や周辺住民に対し、丁寧に説明している」(廃棄物対策課)段階という。保管した流木はその後、木材として利活用▽破砕して焼却▽バイオマス燃料のチップや建築資材として売却−する方法を検討しているものの、「売却は交渉次第であり、泥が付いた流木は買ってくれない」と県の担当者。二次利用も容易ではなさそうだ。家屋やがれきなども含む災害廃棄物は九州北部豪雨では約6万5千トン。被災自治体だけでなく、福岡市や北九州市で広域処理した。今回も既に両市のほか久留米市が受け入れを始めたが、その総量も不透明だ。

<無電柱化と街づくり>
PS(2017年7月20日):東京都は、*7-1のように、小池知事が公約を実現して無電柱化条例を成立させたが、無電柱化は防災・景観の両方の視点から重要なことである。また、無電柱化はコストが高くつくという主張もあるが、やる気があれば、市町村・事業者との連携やコスト削減技術の開発で可能で、既に先進国だけでなくアジア諸国も高い割合で無電柱化しており、日本の無電柱化率が異常なくらい低いのである。
 しかし、日本の地方自治体も、*7-2のように、福岡県田川市は電力自由化を受けて民間5社と新電力を設立し、電気料金削減とその収益の地域への還元で地域活性化を図るそうだ。また、佐賀県伊万里市は、*7-3のように、佐賀県西部4市5町の広域ごみ処理施設「さが西部クリーンセンター」を完成し、溶融処理で発生する熱を利用した発電や溶融物の再資源化を図っており、これは循環型社会のKeyになりながら収益を挙げる点で先進的な例だ。
 さらに、*7-4のように、地方交付税が不要な不交付団体は76自治体で、2017年度は5年ぶりに減少したそうだが、地域電力供給や電線地中化で水道管に電線を併設し、電気料金や配電料金を税外収入として収益源にすればよいと思われる。


 世界の無電柱化率 日本の無電柱化率   災害時の電柱   景観への電柱と電線の影響

*7-1:http://www.sankei.com/politics/news/170608/plt1706080018-n1.html(産経新聞 2017.6.8 11)東京都が全国初の無電柱化条例成立 小池知事の公約実現、9月施行
 都道上への電柱新設を原則禁止することを柱とした「無電柱化推進条例」が7日、東京都議会本会議で全会一致により可決、成立した。都によると、都道府県での条例化は全国で初めて。9月1日から施行する。無電柱化は、災害時に電柱が倒壊して道路をふさぐことなどを防止する防災面の機能強化と、景観の確保が狙い。小池百合子知事が昨夏の知事選で公約に掲げていた。都は条例に基づき、無電柱化を推進する計画を策定。区市町村や事業者と連携を図るほか、無電柱化を進めるために必要なコスト削減方法の調査や技術開発に取り組む。国会では昨年末、国や自治体、事業者に無電柱化を促す法律が議員立法で成立している。

*7-2:http://qbiz.jp/article/111921/1/ (西日本新聞 2017年6月14日) 電力新時代:田川市が民間5社と新電力を設立 料金削減と収益還元で地域浮揚狙う
 福岡県田川市は13日、民間企業5社と共同出資する筑豊地区で初の地域新電力会社「Cocoテラスたがわ株式会社」を設立した。同社は九州電力などの発電事業者から卸値で電力を調達して安価で供給。電気料金削減と収益の還元で地域活性化を図る。12月からまず市の公共施設へ電力供給を開始。2020年度以降は民間企業や一般家庭にも広げる予定だ。「Cocoテラスたがわ」によると、同社からの電力供給により、市公共施設の電気料金は年間約470万円削減されると試算。同社は18、19年度に約600万円、民間への供給を始める20年度以降は年間1千万円前後の収益を見込んでいる。収益はまちづくりなどの地域振興事業などに活用する。資本金は870万円。市と小売・卸売電気事業「パシフィックパワー」(東京)、「NECキャピタルソリューション」(同)が各250万円、福岡銀行、西日本シティ銀行、田川信用金庫の3金融機関が各40万円を出資する。設立記者会見で、二場公人市長は「電力小売自由化を背景に新たなビジネスに挑戦する。公共施設の電気料金削減とともに、新会社を核に収益を地域に還元する地域活性化の新たな手法と確信している」と語った。

*7-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/263515 (佐賀新聞 2015年12月26日) 「さが西部クリーンセンター」が完成、循環型社会のモデルに
■溶融熱で発電、再資源化
 伊万里市松浦町に建設していた県西部4市5町の広域ごみ処理施設「さが西部クリーンセンター」が完成し25日、竣工(しゅんこう)式があった。溶融処理で発生する熱を利用した発電や溶融物の再資源化も図り、運営する県西部広域環境組合(管理者・塚部芳和伊万里市長)は「循環型社会形成の拠点」と位置付ける。1月4日から正式稼働する。県ごみ処理広域化計画に基づき、老朽化の進む伊万里市環境センター、杵藤クリーンセンター(武雄市)、有田町クリーンセンターの3施設を統合した。伊万里、武雄、鹿島、嬉野の4市と有田、大町、江北、白石、太良の5町の計24万人のごみを処理する。総事業費は約174億円で施設建設工事は約143億円。総事業費のうち国の交付金や地方債を除く約25億円が市町の負担となる。高温でごみを溶かすガス化溶融炉は計2炉で1日最大205トンを処理できる。溶融物のスラグとメタルを分離回収し、それぞれ道路舗装用材や建設機械のおもりに再利用する。溶融処理の熱で発電する蒸気タービン(3900キロワット)で施設内の電力を賄い、余剰分は売電する。不燃ごみや粗大ごみを処理する「マテリアルリサイクル推進施設」では、鉄やアルミを再資源化する。竣工式で塚部市長は「一部事務組合の設立から8年余りで竣工を迎えられたのは、地元の理解と協力のおかげ。4市5町が団結し、施設運営に取り組みたい」と述べた。

*7-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/447960 (佐賀新聞 2017年7月20日) 交付税不要は76自治体 17年度、5年ぶり減、税収伸び悩みが要因
 独自の税収が豊かで国から地方交付税(普通交付税)を受け取らなくても財政運営できる2017年度の自治体は、宮城県女川町など76団体の見通しであることが分かった。全体の4%に当たる。前年度より1団体少なく、減少は5年ぶり。地方税収の伸び悩みに加え、社会保障費の支出が膨らんでいることが要因。総務省が近く閣議で報告する。不交付団体の数は、景気回復により12年度の48から増え続け、16年度は77だった。17年度はこのうち栃木県上三川町、東京都羽村市、静岡県富士市、佐賀県玄海町の4市町が交付税を受け取るようになる一方、新たに宮城県女川町、埼玉県八潮市、大阪府摂津市の3市町が不交付となる。不交付の都道府県、政令指定都市は16年度に引き続き東京都、川崎市だけとなる。総務省は毎年度、自治体ごとに地方税などの収入と、事業や住民サービスにかかる支出の見込み額を比較。収入が支出を上回っている場合は不交付団体として普通交付税を配分しない。同省は、交付税を必要としない自立した自治体の拡大を目指している。しかし大企業などが立地する一部の地域を除き、大幅な増加は難しい状況だ。17年度の交付税は総額16兆3300億円。災害対応などに充てる特別交付税を除く15兆3500億円が普通交付税として配られる。

<木材のプレカット工場>
PS(2017年7月29、30日追加):唐津市佐志浜町の埋立地が空き地になっていたので、*8-1のように、「木材プレカット」事業の最大手「ポラスグループ」が新工場を完成させたのは喜ばしいことだ。伊万里市にも中国木材(http://www.chugokumokuzai.co.jp/home.html 参照)があり、2005年に国産のスギとベイマツを組み合わせた異樹種集成材「ハイブリッド・ビーム」の生産を開始し、原木集荷などに広いネットワークを持つ伊万里木材市場株式会社と、原木集荷・製材・乾燥・集成・プレカット・流通を一貫して行える木材コンビナートを形成している。そして、今回の北部九州豪雨を見ればわかるとおり、九州には良質の木材資源が多く、これを高度な技術で自動的にプレカットして付加価値をつければ、復興に使用できるだけでなく、アジアの木材の少ない地域へ輸出も可能だろう。
 また、*8-2のように、市内産材を利用して雪や風に負けない木造ハウスができたそうだ。木造といっても全体を木造にする必要はなく、上部は軽い素材の方が丈夫になるのではないかと私は思うが、専門家がしっかりと設計して標準化し、プレカットして組み立てて、安価で災害に強く、生産性の上がるハウスを作るのがよいと考える。



(図の説明:一番左のような骨組みにビニールをかぶせた農業用ハウスが作られ始めているが、災害の度に壊れるのではなく丈夫で作業が快適なハウス作りをした方がよいため、専門家の設計を標準化して自動プレカットし、左から二番目、三番目のような温室を安価に作る方法を考えた方がよいだろう。また、一番右の図のように、リビングの先を温室にすると、共働き家庭が、テラスやベランダよりも安心して洗濯物・布団を干したり、植物を育てたりできる)

*8-1:http://qbiz.jp/article/115253/1/ (西日本新聞 2017年7月29日) 唐津市に新工場完成 住宅建材加工のポラスグループ
 住宅建材加工「木材プレカット」事業の国内最大手「ポラスグループ」(埼玉県越谷市)は、佐賀県唐津市佐志浜町の埋め立て地「虹の松原ファクトリーパーク」に、新工場「レインボーフィールド(佐賀工場)」を完成させ、21日に見学会を開いた。県有地約3・8ヘクタールを購入し、鉄骨平屋の工場(床面積約1・5ヘクタール)と事務所棟を建設。コンピューター制御で建材の継ぎ手を成形するなどの機械を導入し、木造在来工法を中心とした住宅の月約300棟の生産能力を備えた。初期投資額は約20億円。社員数は33人で、うち22人を地元雇用した。九州一円の工務店や住宅建築会社に販路を求め、2018年5月までにフル稼働を目指す。さらに3〜4年内に隣接地で第2工場を建設し、生産能力を月約500棟に増強する計画。新工場は国内5カ所目で、九州では初めて。同グループは、耐震性向上に向けた構造計算サービスが強み。16年4月の熊本地震を受け、復興需要に応えようと、誘致を受けた唐津市への進出を決めた。21日は市内のホテルで完成披露パーティーも開かれ、中内晃次郎社長が「住宅事業は地域密着に徹する必要がある。地域の発展に役立つ工場になるよう考えていく」とあいさつした。

*8-2:https://www.agrinews.co.jp/p41470.html (日本農業新聞 2017年7月28日) 雪や風に負けない 木造ハウス実証 広島県廿日市市
 広島県廿日市市に木造構造のビニールハウスが登場した。市内産材を活用して大雪、台風などの影響を受けずに農業生産ができるかを実証しようと、市の事業で3月に設置。地元のJA佐伯中央が実証試験に協力し、効果を確かめる。同市が2016年度の「市産材活用モデル事業」として取り組んだ。幅6メートル、長さ25メートルで、主に市内産の杉を使う。施工費や材料費などで520万円かかった。同市飯山のJA研修農場に設置。50センチほど雪が積もる場所で、パイプハウスでは雪の重みに耐えられないこともある。JA職員が管理し、7月上旬に小ネギの種をまいた。使い勝手は通常のパイプハウスと変わらないという。費用対効果が課題だが、市は「農業の振興とともに木材の新たな需要を作っていきたい」(産業振興課)としている。

<循環型社会に捨てるものはないこと>
PS(2017年8月3日追加):大分県と同県日田市が、九州豪雨で大量に発生した流木を木材チップにして、木質バイオマス発電の燃料として活用することを決めたのはよかった。しかし、「流木の表面に付いた泥や中に含まれる水分は、細かいチップに加工する作業の支障になる可能性があるため、水分が抜きにくい根や泥は、流木を回収して搬送する過程で取り除く」というのは、都会のコンクリートの中で育って掃除すらしたことのない人の発言ではないかと思われる。何故なら、泥は水で洗い流せば落ち、水分は屋外に放置しておけば乾くからだ。しかし、チップとして燃やすには少し泥が残っていても機械に不具合を生じさせるというのなら、細かく粉砕して有機肥料にする方法もある。

*9:http://qbiz.jp/article/115641/1/ (西日本新聞 2017年8月3日) 2017九州豪雨:流木を発電燃料に 大分県と日田市 福岡からも受け入れ検討
 大分県と同県日田市は2日、九州豪雨で大量に発生した流木を木質バイオマス発電の燃料として活用することを決めた。流木は河川の復旧工事や農業の足かせになっており、順調に進めば、福岡県内の流木も受け入れる方針だ。国土交通省の推計によると、大分県内の流木は日田市の大肥川や花月川の流域で約2万立方メートル。県や日田市は県建設業協会などの協力を得て流木を回収し、木質バイオマス発電の燃料となる木材チップを加工する「日本フォレスト」(日田市)に処理を委託する。同社は1年間に大分県の流木量以上の処理が可能で、木材チップは県内や九州一円の発電事業者に販売する。流木の表面に付いた泥や中に含まれる水分は、細かいチップに加工する作業の支障になる可能性がある。このため水分が抜きにくい根や泥は、流木を回収し、搬送する過程で取り除く。福岡県内の流木は朝倉市を中心に約19万立方メートルと推計(国交省)され、県などが処分後の活用策を検討している。大分県循環社会推進課の担当者は「日田市で発生した流木の処理を優先するが、隣県としてできるだけの協力をしたい」と話した。

| 経済・雇用::2016.8~ | 02:45 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.6.26 経営戦略と組織再編 ― 日本郵政、東芝、富士ゼロックス、JR九州、農業、自動車産業の事例から (2017年7月4、5、6、7、10、11、13日、8月7日に追加あり) 
  
   2017.6.21         2017.6.24        2017.6.25   
   日経新聞          東京新聞          日経新聞   

    
   2017.6.24       2011.2.26        2017.6.26
    佐賀新聞        日経新聞          佐賀新聞

(図の説明:日本郵便の利益は、2017年3月期は買収したオーストラリア物流子会社ののれん減損処理の影響で、マイナスになりそうだ。ウェスティングハウスの買収による巨額損失を抱えこんだ東芝は、上場維持さえ危うくなり、東芝メモリを売却することによって債務超過を回避しようとしているが、これまでに締結した不利な契約に束縛されて困難が多い。富士ゼロックスは、ニュージーランド子会社の不適切会計を理由として統括会社の支配を強めようとしているが、ローカルな市場に直面する販売はローカリズムを維持した方がよいと考える。JR九州は不動産事業の好調で順調な上場を果たしたが、気のゆるみや驕りは巨額損失に繋がるので禁物だ。また、鉄道の不採算路線は、地域社会と協力しながら、ふるさと納税も利用して話を進めることにより、問題解決して次の収益機会が得られると考える)

(1)大企業の買収・分社と失敗事例の原因
1)買収で巨大損失を招いた日本郵政
 日本郵政は、*1-1のように、買収したオーストラリアの物流子会社の業績が振るわず、のれんの減損処理をする必要が出て、民営化後初の赤字の可能性とのことである。

 減損処理を検討しているのは、2015年に純資産額より約4,700億円も高い6,200億円で買収した豪トールの「のれん代」で、上場前に国際物流で成長するというメッセージを発する目的で買収し、「上場を乗り切ろうという姿勢で、会社の将来を考えての判断とは思えない」状況だったのだそうで、この時の株主は国であり、買収は東芝出身の西室前社長の主導で行われて、内部での検討は殆どなかったそうだ。

 また、*1-2のように、早ければ7月とされる政府保有株の売却を前に、郵政が持つ膨大な不動産を野村不動産の力を借りて再開発する成長の展望を示そうと動いた日本郵政の野村不動産ホールディングス(HD)の買収交渉は中止となった。郵政株の売り出しの主幹事を務める野村証券は郵政との良好な関係を維持したいが、野村不動産は安定収益を稼ぐグループ会社であるため、郵政の要望にどう応じるべきか、野村社内には困惑するムードがあり、郵政による買収検討が伝わると野村不動産株式は急上昇したのだそうだ。

 この日本郵政の両方の買収に言えることは、金や取引関係や政府の後ろ盾を背景に、競争相手に望まない買収をしかけていることである。そのため、必要以上に高い価格で買わされ、被買収会社のモチベーションは低く、買収価格に見合った収益が挙がらないのだろう。では、相手も望む組織再編はどういうものかと言えば、技術やネットワークを拠出しあえるなど、お互いにシナジー効果のある買収や合弁だ。

 例えば、*1-3のように、ドイツポストは、配送用の電気自動車(EV)の生産で米フォード・モーターと提携し、7月からフォードの車台を使って中型のEVトラックを生産し、2018年までに2,500台を生産し、中型EVトラックとしては欧州最大規模の生産体制にし、自動車大手との提携で小包配送車をEV化する計画を加速するそうだ。この理念と仕組なら、相手も喜んで協業するだろう。

 そのような中、日本郵政のこれまでの業務とシナジー効果のある成長戦略を考えると、①最もよく使う配送車をEV化するため、日本の優秀な自動車会社とジョイントベンチャーを作る ②配送や仕分けの拠点は、土地の価格が安くて便利な高速道路のインター付近に引っ越して自動化する ③街の中心部に持っている主要郵便局は、高層化して商店・保育所・学童保育・介護施設・サービス付きマンション等を入れ、建設会社と組んで新しいスマートシティーを提案する などだ。つまり、今の時代に必要とされるサービスを提供できるよう、シナジー効果のある事業を関係する会社と合弁会社を作って行うのがよいと考える。 

2)東芝のウェスチングハウス買収と不利な契約締結による失敗
 東芝も、*1-4のように、ウェスチングハウスの高値買収と米原子力発電所建設に関して電力会社に提供した親会社保証契約で債務総額 98億ドル(約1兆900億円)を抱え、東芝原子力エナジーホールディングス(以下、TNEH)は、米国連邦倒産法第11章(Chapter 11)に基づく再生手続を申し立てることを決議して、同日付でニューヨーク州連邦破産裁判所に申し立てた。

 そして、*1-5のように、東芝は、東芝メモリを2兆円で売却して利益を出す計画で、経産省が日本勢が66.6%の株式を保有する「日米韓連合」を提案し、日米韓連合案は産業革新機構と政策投資銀行が計6千億円、ベインとSKが計8,500億円を拠出し、銀行融資も加えて2兆円となっている。そして、産業革新機構以外は融資や優先株による出資を含むため、議決権は産業革新機構が50.1%、政策投資銀行が16.5%、ベイン側が33.4%で、売却から2〜3年後の上場を目指すそうだ。

 しかし、半導体工場を東芝と共同運営する米ウエスタン・デジタルが「契約違反だ」と反対し、法廷で争う姿勢を鮮明にして経産省などと駆け引きを続けているとのことである。

 このように、高値買いと不利な契約締結の結果、東芝は、*1-6のように、2017年3月末で5,816億円の債務超過が確実となり、今月末に期限を迎える2017年3月期の有価証券報告書(有報)の提出を8月10日まで延期することを関東財務局に申請して承認され、2017年8月1日付で東証2部に降格となった。

3)東芝と日本郵政の巨額損失を招いた西室元社長について
 日本郵政は、*1-7のように、郵便事業や貯金・簡保などとは業務の異なる東芝から西室社長(1935年生まれで、2015年のトール買収時に80歳)を招き、自社に技術のないものを人脈と金にあかして買収で手に入れようとして高値買いをするという東芝と同じ失敗をしている。そして、東芝と同様、不利な契約を結んでいるという悪材料が次々と出てくるのではないかと心配されている。

 買収時に被買収会社の企業価値を厳しく精査するのは外資系企業では当然であり、私もPWCで監査していた頃、買収会社の依頼で被買収会社を監査したことがある。その目で見ると、日本企業の経営者は、根拠なき信頼をベースに企業価値をしっかり精査もせずに買収し、欧米企業を買収したこと自体に喜びを感じる人がおり、買収後の経営戦略が甘すぎるケースが散見される。

(2)富士ゼロックスのケースについて
 富士ゼロックス(株)は、富士写真フイルム(株)と英ランク・ゼロックス社との合弁会社として1962年に誕生したコピー機メーカーで、写真屋とコピー屋が技術を出し合って優秀なコピー機ができたケースだ。現在、富士ゼロックスは富士フイルムホールディングスの連結子会社だが、米ゼロックス社も25%の株式を保有しており、この協業はもともと成功事例だった。

 しかし、*1-8のように、ニュージーランドのプリンターリース会社MARCOが、普通のリース取引の形をとりながら、金融会社FINCOにリース債権を譲渡する形でリース販売を確定させ、売上の過大計上をしていたそうだ。ただ、「リース開始時に見積もったリース債権額と満了時までのリース料総額(コピー料金総額)に大きな差額が出るのは、リースが満了すれば直ちに損失計上すべき」と書かれているが、リース期間満了時に直ちに使えなくなるコピー機はないため、コピー料金で全額を支払うまでリースを解除できない契約にしておけば回収可能になる。

 実は、私は衆議院議員の時、唐津事務所で富士ゼロックスのいいコピー機を使っていて、ハンコを押した書類はどちらがオリジナルかわからないほどのカラーコピーの出来栄えに感心していたが、リース料とコピー料金が高すぎるのが欠点で、有権者に配る資料を思う存分カラーコピーすることができなかった。これは、物価の安い外国ではなおさら感じられることだと思うため、この提案をした次第である。

 今回の会計不祥事を受けて、*1-9のように、グループの成長を引っ張ってきた独立心の強い富士ゼロックスの経営を、富士フイルムHDが経理・人事・広報などで年内にも一体的に運営し始めるというのは、経理は一体的に行った方がコストの削減効果が大きいが、国によって異なるマーケットに直面している販売を統合管理するのはむしろマイナスで、人事もまた日本の論理を押し付けすぎると、現地に合ったやり方を阻害して業績悪化を招く恐れがある。

 そのため、不正をなくすためには、経営の自由度を保ちながら、富士フイルムホールディングスに社長直轄の内部監査部を作って、世界中の関連会社をローテーションしながら社内監査する仕組みにすればよい。私はPWCで監査をしていた頃、ロイズやブリストルマイヤーズの内部監査人(Big4出身の公認会計士が多い)が日本子会社の監査に来た時に、日本(東京)のPWCからその内部監査の手伝いに行っていたので知っているのだ。

 なお、写真屋とコピー屋の合弁会社である富士ゼロックスなら、*1-10のような薄い太陽電池を建材シートに印刷することも可能ではないだろうか。これにより、爆撃で建物が壊滅したイラクなどで、昔の写真を使って元の街並みを断熱性の高い建材で復元した上、可能な場所には元の建物と同じ色調の太陽電池シートを張って元の街並みを復元しながら、超次世代の街を作れば面白いし、日本の技術のアピールになると考える。

(3)JR九州について
 JR九州は本物の利益を出して滞りなく上場にこぎつけたが、*2-1のように、上場後初の株主総会に向けて準備を進めるにあたり、他社を見学したり、23人の役員全員でリハーサルを3回も開いたり、質疑に対する各役員の答弁練習を実施したり、会場で案内などを担当する社員への教育を進めたりしたのは面白い。しかし、このような成長期には、すべてを子飼いの社員でやらなくても、上場会社で総務を担当していた人材、公認会計士、弁護士、税理士などを雇えばもっとスムーズに付加価値の高いことができると考える。

 なお、JR九州の上場を容易にしたのは、*2-3のように、「不動産事業」からの収益だ。何故なら、JR九州は、現在は運輸サービス事業と駅ビル・不動産事業の利益がそれぞれ全体の4割で、不動産からの収益が多いからだ。私は、鉄道会社が運輸サービス事業とシナジー効果の高い駅ビル・不動産事業を行うのは極めて合理的だと考えている。何故なら、運輸サービス事業の充実によって、手持ちの不動産の価値を上げることができるからだ。ただし、これは、自らが運輸サービス事業を行っている地域に限られ、他の地域や外国に出るとシナジー効果はない。
 
 このような中、上場後初の総会では、*2-4のように、株主に地方路線での廃線の動きを懸念する声があったり、株主から不採算路線については第三セクターへの移譲を検討してはどうかとの意見が出たり、JR九州の担当者が効率化を図ることでネットワークを維持していく方針を説明して理解を求めたりしたそうだ。私は、鉄道収入だけを見れば不採算でも、その鉄道があることによって連続性を保つことができたり、駅近くの地価が上がったり、観光振興ができたりすることを考えれば、廃線や第三セクターへの移譲のようなコストカットだけが解決策ではなく、その特性を活かした収益拡大策があってよいと考える。

 また、*2-2のように、九州新幹線長崎ルートのフリーゲージトレインは、車体価格などコストが通常よりも約3倍になるうえ、長崎と新大阪を直通運転することもできないため、R九州の青柳社長は、全線を通常の新幹線と同じフル規格で整備すべきだとの意向を示したそうだ。私も、長崎行きがフル規格でないのはもったいなすぎるため、①高架下を利用したり ②駅近エリアの開発を行ったり ③送電線を敷設して送電料をとったり ④夜間は新幹線貨物を走らせたり しながら、フル規格で整備すれば何とかなるのではないかと考える。

 ちなみに、九州新幹線を使うと、*2-5のように、新大阪―鹿児島中央間でも3時間45分で走ることができ、夜間の新幹線貨物なら止まる駅が少ないので3時間程度で走ることができると思われる。そのため、*2-6のような物流会社と合弁会社を作れば、九州の農水産物を高付加価値のまま、高くない運賃で大消費地に届けられるだろう。

 また、街づくりのために新幹線の駅が欲しい都市は、*2-7の「ふるさと納税」で使い道を指定して寄付を集め、JR九州に目的を持って出資して、路線の有効な使い方にも知恵を絞るのがよいと考える。ただし、これがうまく機能するためには、JR九州は路線ごとに別会社にして管理しておく必要がある。

(4)合併後の戦略について ー 十八銀行の事例から
 どの合併会社でも同じだが、経理・総務は一つになり、販売も店舗の統廃合や業務の効率化で、*3のように、合併後には余剰人員が生まれる。2017年10月にふくおかフィナンシャルグループ(FFG)との経営統合を目指す十八銀行は、FFG傘下の親和銀行との合併に伴う店舗統廃合等で計400人以上の余剰人員が生じ、余力を地域活性化や新規事業に振り向けるそうだ。

 それが成功するためには、視野が広くて応用力のある優秀な人材を、経営企画部・新規事業部に配置し、事業として再編されようとしている農水産業・食品・新エネルギー・第4次産業革命・地域活性化などに関する仕事を開拓させることが必要だ。銀行経験者は、情報通で、きちんとした経理や経営計画を行う能力があるという意味で貴重な人材だが、とかく投資よりコストカットに目が向きやすい欠点があるため、自覚して気を付けるべきである。

<大企業の買収・分社と失敗>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK4P4S39K4PULFA00Y.html (朝日新聞 2017年4月22日) 日本郵政、誤算の買収 豪子会社巡り巨額の損失計上へ
 日本郵政が巨額の損失を計上し、民営化以来初めて純損益が赤字になる可能性が出てきた。買収した豪州の物流子会社の業績がふるわず、会社の資産価値を切り下げる「減損処理」をする必要があるからだ。買収に慎重論もあったが、西室泰三前社長が主導した。日本郵政が減損処理を検討しているのは、2015年に6200億円で買収した豪州の物流大手「トール」。資源価格の低迷を受け、16年4~12月期の営業利益が前年同期に比べ7割も減るなど、業績は買収前の予想を下回る。買収額はトールの純資産額より約4700億円も高かった。トールのブランド力やノウハウが収益につながると期待したためで、この差が「のれん代」と呼ばれる。のれん代は買収した企業の資産になるが、期待ほど収益が上がらなければ損失として計上しなければならない。東芝が巨額損失を計上したのと同じ構図だ。買収発表は日本郵政が株式を上場する約9カ月前。「上場前に郵便事業の成長戦略を描く必要があった。国際物流で成長するというメッセージ」(当時の幹部)だったが、巨額の買収費用に「高値づかみだ」との声も出ていた。トールののれん代は16年12月末時点で3860億円あり、日本郵政は来週前半の取締役会でこの大半について減損処理を決める見通しだ。日本郵政は17年3月期決算の純損益を3200億円の黒字と予想するが、減損額によっては07年10月の民営化以来、初の赤字に転落する可能性がある。業績の大幅悪化は、政府が東日本大震災の復興財源に当て込む日本郵政株の売却益を減らしかねない。政府は22年度までに郵政株の3分の2を売って計4兆円を確保する計画。15年に約2割の株を1・4兆円で売却済みで、早ければ7月にも追加で売却するとみられる。日本郵政株の終値は、減損の検討が明るみに出た20日に前日比で2・6%下落。翌21日に1・6%戻したものの、今後も不安定な値動きが予想される。財務省理財局は「売却時期や規模については、市場環境などをふまえて適切に判断する」と話す。株価の下落が続く場合、売却時期の先送りもありうる。
■「内部検討ほとんどなし」
 日本郵政グループ幹部によると、西室前社長は15年春の取締役会で初めてトールの買収を説明し、「もう決めた」と語った。取締役から批判が上がったものの、西室氏の意思は変わらなかった。巨額買収を心配する声は当初からあった。別のグループ幹部は「買収について内部の検討はほとんどなかった。上から降ってきた話」と明かした。元幹部は「とにかく上場を乗り切ろうという姿勢で、会社の将来を考えての判断とは思えない」と語っていた。16年初めの日本郵政の経営会議。トールの現状について「かろうじて黒字」などと報告されたのに対し、社外取締役から「日本郵便にとって意味があるから買ったのでは」「いくらもうかり、いくら損して、これからいくら負担しなければならないのか、数字で示してくれ」などの懸念が出た。グループ内でも「すぐに減損処理せざるをえない」との見方が強まっていた。このころ、西室氏がかつて社長を務めた東芝の子会社、ウェスチングハウスも原発の受注悪化などから減損が避けられないとの見方が出ていた。だが、東芝はまだ「将来の収益が見込める」として損失の計上は不要との姿勢を続けていた。16年2月に取材に応じた日本郵政幹部は、同年3月期にトールの減損を実施するかを問われ、こう答えた。「しない。ウェスチングハウスと同じだ」(真海喬生、織田一)

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170621&ng=DGKKZO17905290Q7A620C1EE9000 (日経新聞 2017.6.21) 郵政成長戦略の舞台裏(上)、大型買収不発 次の一手模索 政府の保有株売却を意識
 日本郵政による野村不動産ホールディングス(HD)の買収交渉が中止になった。早ければ7月とされている政府保有株の売却を前に成長の展望を示そうと動いたが、大型買収への懸念をぬぐいきれなかった。オーストラリアの物流会社への出資に続く失敗で、M&A(合併・買収)による成長の道は狭まった。これから新たな戦略の模索が始まる。「ちょっと難しくなってきたな」。6月上旬、日本郵政のある幹部が関係者にこう漏らした。郵政による野村不HDの買収が報じられて1カ月。6月に入って資産査定のプロセスが止まり、買収交渉からの撤退は秒読み段階に入っていた。郵政が持つ膨大な不動産を野村不の力を借りて再開発する。野村不は有望なマンション用地などを確保。互いにメリットがあると思われた枠組みを止めたのは、他ならぬ郵政自身の「失敗」だ。
●ゲームより汗を
 郵政は2015年11月に株式上場したが、発行済み株式の8割はまだ政府出資だ。追加で売り出す株式の収益は東日本大震災の復興財源にあてられる。郵政が成長するかどうかは震災からの復興に響く。海外の買収で大失敗した直後に出てきた野村不の買収案は、政治家の目には浮ついた「マネーゲーム」に映った。郵政は野村不の買収を巡り、親会社の野村ホールディングスと交渉を進めていた。郵政株の売り出しの主幹事を務める野村は郵政との良好な関係を維持したい。一方で野村不は安定収益を稼ぐグループ会社でもある。郵政の要望にどう応じるべきか、野村社内には困惑するムードがあった。
●高値づかみ批判
 5月上旬に郵政による買収検討が伝わると、野村不株は急上昇。4月まで1800円前後だった株価は2500円程度まで上がった。「トールに続く高値づかみ」。こんな批判に耐えて買収に踏み切れるほど郵政に自信はなく、応援する人も少なかった。買収は白紙に戻ったが、成長戦略を白紙にしておくことはできない。政府が株式の追加売却を迫られているためだ。政府は3月に2次売却を引き受ける主幹事証券を決めており、追加売り出しは最も早くて7月だ。日経平均株価は2万円を超え、市場の環境は悪くない。だが郵政株は1300円台でもたついている。17年度予算に盛り込まれた売却額は1兆3000億円。郵政株が1200円台なら届く水準だが、成長戦略がきちんとしていれば、もっと大きな額で売れる可能性はある。郵政の強みは郵便・貯金・保険の3事業で培った顧客層。全国の郵便局は投資信託の販売網などとしても有力だ。華々しいM&Aには取り組みにくくなり、郵政は原点に立ち戻ろうとしている。

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170615&ng=DGKKASDZ14HS2_U7A610C1TJ1000 (日経新聞 2017.6.15) 独ドイツポスト、フォードとEV生産 来年までに2500台
 国際物流・郵便世界大手の独ドイツポストは14日、配送用の電気自動車(EV)の生産で米フォード・モーターと提携すると発表した。7月からフォードの車台を使って中型のEVトラックを生産する。2018年までに2500台を生産する。中型EVトラックとしては欧州最大規模の生産体制になる。自動車大手との提携で小包配送車をEV化する計画を加速する。フォードのドイツ法人と契約を結んだ。フォードの商用車「トランジット」のシャシーをベースに独自仕様の車体やEVシステムを載せる。組み立ては独西部アーヘンのドイツポスト子会社の工場で手がける。ドイツポストはEVベンチャーを買収し、積載容積4立方メートルなどの小型の自社開発EVを国内で2500台導入している。ドイツポストは全ての小包配送車をEVにするため、積載容積20立方メートルの車両を18年までに投入する方針を表明していた。フォードとの提携で中大型車両の導入に道筋を付けた。

*1-4:http://news.mynavi.jp/articles/2017/03/30/toshiba/ (マイナビニュース 2017/3/30) 東芝、最終赤字1兆円超 ウェスチングハウスの負債はこれで本当に終わるか?
 巨額の損失が発生することが判明した東芝。そのがん細胞となっている、海外原子力事業リスク遮断のため米国子会社・ウェスチングハウス社切り離しに向けて大きな動きがあった。
●債務総額 98億ドル
 米国時間の2017年3月29日、東芝の海外連結子会社に米ウェスチングハウスエレクトリックカンパニー社とその米国関係会社、米国外の事業会社群の持会社である東芝原子力エナジーホールディングス(以下、TNEH)が、米国連邦倒産法第11章(Chapter 11)に基づく再生手続を申し立てることを決議し、同日付でニューヨーク州連邦破産裁判所に申し立てしたと、東芝が発表した。ウェスチング社とTNENの2社の債務総額は98億ドル、日本円で約1兆900億円だ。3月29日、午後5時45分から都内の東芝本社で開かれた会見の冒頭、説明にたった綱川智社長は、今回の11章に基づく再生手続きの適用について「ウェスチンググループの事業の再生に不可欠だ。それと同時に、非連結化により原子力事業のリスクを遮断するという当社の方針にも合致する」と説明。申請と同時に再生手続きに入ったため、ウェスチンググループは裁判所の法的保護のもと、電力会社、東芝などの当事者の協議によって事業再建をはかることを模索していくとした。これによってウェスチンググループは東芝の実質的な支配から外れ、2016年度通期決算から連結対象からはずれることになるという。ウェスチングハウス社の今後については、再生手続に乗っ取った事業再編を念頭に置き、当面は当面現行の事業をこれまでどおり継続する予定だという。この当面の事業継続のために、ウェスチング社は8億ドルの第三者からのファイナンスを獲得し、そのうち東芝が、2億ドルを上限として債務保証を提供する予定としている。建設中の米国原子力発電所2サイトについては、ウェスチンググループと東芝の2社が、顧客である電力会社と当面のプロジェクトの継続にむけた合意を目指して協議を進めているという。包括的な合意形成にむけて協議を行う当面の間は、電力会社が建設コストなどを支払う前提だという。
●東芝への影響について
 東芝本体への影響については、2016年度業績は、現時点でまだ影響額を確定できていないと説明した上で、2月末までの計算を公表し、追加の影響可能性額を示した。2月14日に公表した2016年度業績見通しでは、原子力事業ののれん減損によって営業利益が7125億円、当期純損益・株主資本・純資産については6204億円の悪化影響を織込んで、当期純損益3900億円の赤字、株主資本1500億円のマイナス、純資産1100億円としていた。この値から当期純損益は、6200億円規模の追加悪化となり、1兆100億円の赤字。株主資本については、4700億円規模の追加悪化となり、6200億円のマイナス。連結純資産では、4500億円規模の追加悪化となり、3400億円のマイナスだという。これだけの追加の影響が出ると想定される要因。それは、再生手続きの開始によって、主にアメリカ原子力発電所建設プロジェクトの東芝が電力会社に提供している親会社保証に関連する損失計上と、ウェスチンググループへの東芝の債権に対する貸倒引当金の計上を新たに検討する必要があるというのだ。2月末時点で、親会社保証は全額で6500億円規模、債権は全額で1756億円規模で、それに対する貸倒引当金が見積もられている。その一方で、ウェスチングハウスグループが連結から外れる影響で当期純利益が概算で2000億円超の改善影響が出る見通しだ。これらを勘案し、上記のような影響額になる可能性が示された。計上額は、再生手続きの過程で確定する再生計画の内容で大きく変動すること、額の算出については、東芝グループの2016年度第4四半期実績を踏まえる必要があるとしている。このため、先に述べたように、影響額は確定できていないというのだ。「一時的には追加の損失が発生する可能性があるが、マジョリティを含むメモリー事業の譲渡。外部資本導入に加え、聖域なく保有する資産の意義を見直し、意義の低い資産の売却を進める。新生東芝において注力事業と位置づける社会インフラなどで安定的に利益を拡大、確保し、債務超過の解消と毀損した財務基盤の回復をはかる」と発言した。再生手続きの申請によって、一つ山を超えた東芝だが、親会社保証などの額が確定していない。さらには建設中の4基の原発のスケジュールの遅れなど指摘されているリスクはまだまだある。3月30日の臨時株主総会、4月11日に予定される第3四半期決算など動向を見守りたい。

*1-5:http://qbiz.jp/article/112533/1/ (西日本新聞 2017年6月21日) 東芝メモリ売却、日本勢6割超 「日米韓連合」が提案
 経営再建中の東芝は21日、半導体子会社「東芝メモリ」(東京)の売却に向け、経済産業省が主導した「日米韓連合」と優先的な交渉に入ると発表した。連合の提案によると買収額は2兆円で、東芝メモリ株の議決権の66・6%を日本勢が握る。国外への技術流出阻止や雇用確保の観点から財界の実力者や有識者を含む取締役会が「最も優位性が高い」と判断した。28日の株主総会までに合意し、来年3月までの売却完了を目指す。だが三重県四日市市の半導体工場を東芝と共同運営する米ウエスタン・デジタル(WD)は「契約違反だ」と反対するコメントを改めて発表し、法廷で争う姿勢を鮮明にした。WDは売却の差し止めを求めて米国の裁判所に提訴している。WDは「(現地時間の)7月14日に予定される審問を楽しみにしている」と表明した。訴訟の展開次第では売却手続きが頓挫する恐れがある。日米韓連合は政府系ファンドの産業革新機構、日本政策投資銀行、米ファンドのベインキャピタルで構成。韓国半導体大手SKハイニックスはベインと連携し参画するが、東芝メモリと同じ主力製品で高いシェアがあり、中国など独占禁止法の審査で問題視される可能性もある。日米韓連合案は現時点で、革新機構と政投銀が計6千億円、ベインとSKは計8500億円を拠出。銀行融資も加え2兆円とした。革新機構以外は融資や優先株による出資を含むため、議決権は革新機構が50・1%、政投銀が16・5%、ベイン側が33・4%。売却から2〜3年後の上場を目指す。日本企業数社や米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の出資も取り沙汰され、陣容や枠組みは変わる可能性もある。WDは経産省側などと駆け引きを続けており、買収に関与する可能性も残る。対抗馬だった米半導体大手ブロードコムの陣営は、訴訟の行方を見守る構えだ。東芝の資金繰りを支えるため、三井住友銀行やみずほ銀行など主要取引銀行7行は6月中に、280億円の新規融資をする方向だ。

*1-6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201706/CK2017062402000138.html (東京新聞 2017年6月24日) 【経済】東芝、東証2部に降格 8月1日付 決算発表も延期に
 経営再建中の東芝の株式について東京証券取引所は二十三日、八月一日付で東証一部から二部に降格になると発表した。二〇一七年三月末で負債が資産を上回る債務超過が確実になったため。また東芝は今月末に期限を迎える一七年三月期の有価証券報告書(有報)の提出を八月十日まで延期することを関東財務局に申請し、承認された。綱川智社長は東京都内で記者会見し、「非常に責任を感じている。上場を維持し、有報の提出へ監査法人と協調し最善を尽くす」と語った。有報の提出延期は、四半期ベースを含め、不正会計問題が発覚した一五年以降で五度目。元子会社の米原発大手ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)を巡るPwCあらた監査法人の監査が七月末までかかるため延期した。東芝がWHの巨額損失をいつ認識したかについても、あらたとの意見の相違を解消する必要がある。東芝は、WHの破綻に伴い米電力会社が求める債務保証の負担などが膨らんだとして、債務超過の額が従来予想から四百十六億円増え、五千八百十六億円になったことも明らかにした。東芝は来年三月末時点で債務超過を解消できていなければ上場廃止になる。このため財務改善に必要な半導体子会社「東芝メモリ」の売却に向け、政府系ファンド産業革新機構などがつくる「日米韓連合」と交渉を急いでいる。三重県四日市市の半導体工場を共同運営する米ウエスタン・デジタル(WD)が売却に反対し係争中だが、綱川社長は今月二十八日の株主総会までに連合と売却契約を結べるとの認識を示した。

*1-7:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/204179/1 (日刊ゲンダイ 2017年4月25日) 東芝に続き…日本郵政の巨額損失招いた西室元社長の罪
 日本郵政の巨額損失を巡り、市場の判断が揺れている。日本郵政は2015年に子会社の日本郵便を通じて、オーストラリアの物流会社トール・ホールディングスを6200億円で買収した。ところが、オーストラリア経済の低迷などでトール社の業績は悪化。3000億~4000億円程度の減損を計上する可能性が指摘されている。17年3月期の最終損益で赤字転落する恐れも出てきたのだ。「ウミを一気に出し切ることは悪くない。ダラダラと損失を処理するより、よっぽどマシでしょう」(株式アナリストの黒岩泰氏)
■「悪材料がまだあるのでは…」
 一方で、トール社買収を主導した人物が、西室泰三元社長だったことから、市場がざわついている。
「西室氏といえば東芝の元社長です。“東芝の天皇”とすら呼ばれ、その影響力は計り知れません。東芝が不正会計に手を染めたキッカケとされる経営トップの人事抗争をつくり出した張本人ともいわれます。日本郵政の巨額損失は、東芝と同じ海外M&Aに絡んでいます。もしかすると日本郵政も東芝と同じように、次々と悪材料が出てくるのではないか……と勘繰っているのです」(市場関係者)。
西室氏はトール社買収に際し、「日本郵政は世界をリードする物流企業だ。アジア太平洋で最大級のトール社との組み合わせは強力」と自信満々にコメントした。だが、西室氏の見立ては、わずか2年あまりで崩壊。買収当時、市場がささやいていた「株式上場(15年11月)に向けた“お化粧”にすぎない」「高い買い物」が正解だった。東芝の米ウェスチングハウス(WH)社買収(06年)に暗躍したのも西室氏だ。当時、西室氏は相談役に退き、社長は西田厚聰氏に譲っていた。WH社を巡っては日立製作所や三菱重工も熱心だったが、最終的には東芝が手中にした。決め手は、院政を敷いていたといわれる西室氏が人脈を駆使し、ベーカー元駐日米国大使に働きかけたからだといわれている。「ただ、その過程でWHの買収額は倍以上の約6000億円にハネ上がっています。日本郵政のトール社買収も西室氏の鶴の一声で決定したといいます。企業価値をキチンと精査しなかったので、今回のような巨額損失が生じるのです」(証券アナリスト)。日本郵政にとって「西室つながり」は悲劇だが、投資家の不安は高まるばかりだ。

*1-8:http://toyokeizai.net/articles/-/176127 (東洋経済 2017年6月14日) 富士フイルムHD、「不正会計」の絶妙カラクリ、海外子会社で売り上げのカサ上げが行われた
 6月10日。富士フイルムホールディングスの第三者委員会は、海外子会社の不正会計疑惑についての調査報告書を同社に提出した。その全文版には不正の実態が克明に描かれている。調査報告書は「不適切会計」と多く記述しているが、「不正会計の隠蔽指示」「監査上の重要性の低い監査対象外の会社での不正な会計処理等」など不正会計という記述もある。単に間違えただけなら不適切会計だが、意図的に悪意を持って正しくない会計処理をすれば不正会計だ。はたして富士フイルムHDのケースは、どちらのケースなのか。
●一見すると普通のリース取引&債権譲渡
 不正の舞台となったのはニュージーランドのプリンターリース会社MARCOと金融会社FINCOである。両社を合わせて富士ゼロックスニュージーランド(FXNZ)と呼んでいる。MARCOとFINCOの親会社が、シンガポールにあるアジア・オセアニア地域統括子会社富士ゼロックスアジアパシフィック(以下FXAP)。その親会社が富士ゼロックス(以下FX)、さらにその親会社が富士フイルムHDという複雑な親子関係だ。MARCOとFINCOの取引は大きく3段階に分けられる。まず、リース会社のMARCOはプリンターを顧客にリースする。期間は平均48〜60カ月だ。リース料金は毎月のコピー代で回収する。次に、MARCOはそのリース債権を金融会社のFINCOに全額譲渡する。最後にMARCOはリース債権を譲渡することで、債権譲渡と同時に、向こう48〜60カ月分のリース代金の合計を売上高として一括計上する。これだけならごく普通のリース取引であり、通常の債権譲渡である。問題はリース債権の見積もりにあった。このリース債権をかなり高く見積もることで、実態よりもかなり多い売上高を計上していたのである。どうやって高く見積もっていたかというと、MARCOは毎月のリース料をプリンターの使用量に完全比例するように料金設定していたが、この使用量の見積もりを、実態よりも高く見積もっていた。その高く見積もった使用量をベースにした金額でリース債権をFINCOに譲渡し、リース開始時点でリース満了までの収入を一括で得ていた。この手法だと、リース開始時に見積もったリース債権額と満了時までのリース料総額に大きな差額が出る。これはリースが満了すれば、直ちに損失計上すべきものだ。それなのにFINCOはこの差額を、未回収のリース債権としてバランスシートに計上していた。あたかも回収可能性があるかのように会計処理をすることで、損失を先送りしていたのである。
●これはやはり「不正会計」
 このケースはやはり「意図的に悪意をもって正しくない会計処理をしていた」といえるのではないか。実は、富士フイルムHDの過去分の決算修正はこれからだが、大手監査法人は不正会計を検証する前提ですでに修正作業に入っている。なぜこうした不正会計が行われたのか。調査報告書はいくつかの原因を指摘している。最大の原因はMARCOとFINCOの経営者が同一人物のニール・ウィッタカー氏だったことだ。同氏は現地採用でたたき上げの人物だったという。「料金は使った分だけ。使わなければ無料」を意味する「ミニマムペイメント(=固定費部分)なし」契約を始めたのは同氏だという。この顧客に有利な条件を武器に契約数を伸ばしたと見られる。特殊な報酬体系も不正の温床となった。売り上げ増に対する評価部分が大きいことが、毎月のリース料を高く見積もることにつながった。ウィッタカー氏はFXNZでの実績が認められてオーストラリア子会社の経営トップに栄転している。そのオーストラリアでもニュージーランドと同様の不正会計がなされた。富士フイルムは同氏への損害賠償請求を検討しているという。そもそも不正はなぜ見過ごされてきたのだろうか。調査報告書は、ニュージーランド現地の自主性を重んじ、FXが日本人経営者を派遣しなかったこと、内部監査と業績目標の管理部門が同一だったことなどを挙げている。FXでは、吉田晴彦副社長が山本忠人会長や栗原博社長に報告しないという隠蔽もあった。だが報告書は、不正会計や隠蔽は組織的だったとまでは結論付けていない。不正会計はあくまでもウィッタカー氏個人の、隠蔽は吉田副社長個人の行為だとしている。
●3月に1300億円の社債を発行
本調査が4月20日〜6月10日まで約50日もかかったのは、国内外のすべての子会社でニュージーランドやオーストラリアと同様の不正がないかを調査したからだという。結論は「ニュージーランドやオーストラリア以外で同様の不正は見つからなかった」というものである。一方で報告書は「もう一丁(1兆)やるぞ!!」をスローガンとした売上高1兆円回帰運動や、「プライド値」という売上高目標の存在を指摘し、業績至上主義の体質を指摘している。もし報告書が指摘する通りであれば、本当に不正会計問題はこれですべてなのか。他の手口による別の不正会計は存在しないのだろうか。12日の会見は2時間近くに及んだが、すべての疑問が解決されたとまでは言えそうにない。なお、今回の不正会計騒動の最中、富士フイルムは3月に1300億円の社債を発行している。また、不正会計への疑惑が指摘されているにもかかわらず、あずさ監査法人が第2四半期・第3四半期の四半期レビュー報告書で適正意見を表明している。PwCあらた監査法人が東芝に対してしたように、あずさの監査意見が「不表明」だったら、このタイミングでは社債を発行できていなかったおそれもある。

*1-9:http://www.nikkei.com/article/DGXKASDZ20IDY_R20C17A6MM8000/?dg=1 (日経新聞 2017/6/25) 富士フイルム・ゼロックス 17年目の親子接近、管理部門統合 日本流グループ統治、岐路
 富士フイルムホールディングス(HD)が子会社の富士ゼロックスと年内にも管理部門を統合する。グループの成長を引っ張ってきた富士ゼロックスは独立心が強いことで知られるが、同社の会計不祥事を受け、富士フイルムHDは経営を任せてきた方針を転換する。人事権を含めて経営を掌握して名実ともに傘下に入れる方針。成長を目指してM&A(合併・買収)で手に入れた子会社の統治が、日本企業の盛衰に直結する経営課題に浮上している。管理部門の統合は6年間で375億円の損失を出した会計処理を受け、12日に発表したガバナンス(統治)見直しの一環だ。経理や人事、広報などが候補で、年内にも一体的な運営を始める。部門の重複を減らして効率を高め、ガバナンスも強化する。近くプロジェクトチームを設け、具体的な手法を詰める。とりわけ人事部門の意味合いは大きい。2001年に連結子会社にして以来、足かけ17年にわたり主要人事の大半を富士ゼロックス側に任せ、親会社として追認するにとどめてきた。今後は富士フイルム側が社長を含む人事や主要な経営方針に強く影響を及ぼす。経理も所管しM&Aを含めたお金の流れを把握する。
●収益の多く生む
 新体制では富士ゼロックスの栗原博社長を除く6人の役員が一斉に退任。富士フイルムHDは古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO)が富士ゼロックス会長を兼務するなど計7人の役員を派遣した。財務や技術といった主要ポストに富士フイルム側の人材が就き、栗原氏は営業を主に担う体制に改めた。
12日、富士フイルムHD本社。取締役会を終えた古森氏は富士ゼロックス会長を務めた山本忠人氏に会い、「辞めてもらえないか」と切り出した。栗原氏を除く総退陣という大なたを振るう形で、古森氏は聖域に切り込んだ。これまで経営に細かく口を挟まなかったのは、富士ゼロックスが富士フイルムHDの収益の多くを生み出してきたからだ。経営の柱だった写真フィルムは00年代、デジタルカメラの台頭で市場が急速に収縮していた。液晶パネル用部材、医薬品、化粧品――。富士ゼロックスが業績を支える間に富士フイルムは業態転換を進めて安定収益の礎を築いた。今も連結の売上高の半分近く、営業利益の4割を富士ゼロックスが稼ぐ。だが、両社の関係はこのころからよそよそしかった。もともとは折半出資だった米ゼロックス側の経営不振に伴い01年に富士フイルム側が25%分の株式を買い取った。富士ゼロックスは米ゼロックスを親会社と思う風潮が強く、富士フイルムによる連結子会社化に戸惑いを隠せなかった。両社の関係に緊張が走ったのは00年代半ばだ。古森氏が富士ゼロックスの社外の取締役として率直に意見を言い始めた。市場環境や販売の見通しといった当然の質問だが口調は厳しい。富士ゼロックスの故小林陽太郎氏は「古森さんが遠慮無く、優れた質問をする。いい意味での厳しさが増している」と評していた。両社が表立ってトラブルを起こすようなことはない。しかし、下町の印刷所に印刷材料を売り歩いて出世の階段を上った古森氏と、国際派の小林氏らは大きく境遇が異なると周囲に見られた。古森氏はこのころ「両社の関係が前向きでないなら、そうしてみせる」と微妙な間柄を示唆するような発言をしていた。富士フイルムHDの助野健児社長が12日の記者会見で言った「遠慮があった」という表現は、両社の積年の関係を映す。打ち解けない親子関係は、富士ゼロックス幹部が会計を操作する遠因にもなった。好業績こそが独立性を保てる最大の理由だということを、富士ゼロックス幹部は分かっていた。
●東芝も危機招く
 国内市場の伸び悩みを受け、日本企業はM&Aに活路を見いだしている。米ゼロックスの苦境を救う意味があったとはいえ、富士フイルムも富士ゼロックスの連結子会社化により、成長の足がかりをつかみたかった。M&Aで子会社が増えれば、それをどう管理するかという問題に直面する。とりわけ海外は目が行き届きにくい。東芝の経営危機は子会社だった米社のずさんなコスト管理が招いた。ソニーは米映画事業で1千億円以上の損失を出した。富士ゼロックスの不祥事も豪州とニュージーランドの事業で起きている。欧米の大手企業はCEOが強い権限を持ち、グループ企業の意思決定もトップに一元化している。日本企業はそれが曖昧だった面は否めない。成長に向けてM&Aが欠かせない手段となった今こそ、グループ統治の基盤強化が求められている。

*1-10:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170626&ng=DGKKASGG23H3W_V20C17A6TJM000 (日経新聞 2017.6.26) 薄~い太陽電池、丈夫で長持ち 理化学研究所、食品ラップの3分の1
 理化学研究所の福田憲二郎研究員らは薄型でも丈夫で長持ちする太陽電池を開発した。厚さは食品ラップの約3分の1の3マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル。腕に巻いたり服に取り付けたりしながら4~5年は使い続けられるという。健康管理用のウエアラブル(装着型)機器の電源などとして2~3年後の実用化を目指す。開発した有機薄膜太陽電池はシート状で軽い。研究チームは電池の基板に防水性に優れた「パリレンフィルム」を採用した。全体を変形させても発電に関わる部分は壊れないように設計を工夫した。従来の有機太陽電池は基板にポリイミドなどを使うのが一般的。全体の厚さは数十マイクロメートルで、折り曲げることはできても全体をくしゃくしゃにすることはできなかった。渡り鳥に取り付けて生態調査に役立てるといった用途も検討している。

<JR九州について>
*2-1:http://qbiz.jp/article/112433/1/ (西日本新聞 2017年6月21日) 「初の総会」準備着々 他社を見学、予行も JR九州、23日開催
 JR九州は23日に福岡市で開く上場後初の株主総会に向け、大詰めの準備を進めている。上場前は国土交通省所管の独立行政法人鉄道・運輸機構が全株式を保有していたため、同機構の担当者のみへの対応だったが、今回は会場のホテルに千人を超す株主の来場が見込まれる。鉄道事業の合理化などに投資家の厳しい目が向けられることも予想され、円滑な総会運営へ万全の準備を目指している。「どのくらいの来場者数を見込み、どんな会場で準備をしたらよいのか。苦労しました」(広報部)。同社は“初の総会”に向け、総務課を中心とする各部門の担当者などで準備作業を進めてきた。これまでは、福岡市の本社会議室で鉄道・運輸機構の担当者1人に対する総会を開催。所用時間は質疑応答を含め長くて2時間ほどだったという。ところが今回は、総会前に約14万通の招集通知を発送。JR他社や地場大手企業などを参考に、千〜2千人程度の来場を見込む。当日は約200人の社員で会場案内などをする予定だ。上場後を見据えJR九州は、株主総会に備えた情報収集を3、4年前から進めてきた。いつ招集通知を発送するか、会場受け付けはどうするか−。他社の総会リハーサルを見学することもあった。上場が目前に迫った昨年は、今回の会場となる福岡市のホテルで株主総会を開催。ひな壇に約20人の役員が並び、鉄道・運輸機構の担当者に対して説明するなど、来るべき日に備えて運営などを確認した。準備は今年4月から本格化。23人の役員全員でリハーサルを3回開いたほか、質疑に対する各役員の答弁練習も実施。会場で案内などを担当する社員への教育も進めてきた。鉄道事業の合理化や九州新幹線西九州(長崎)ルートへのフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)導入、上場後に相次いだ輸送障害といった課題を抱えるJR九州。「株主の関心が高そうなところはしっかり準備をし、円滑な答弁ができるようにしている」。広報部の担当者は力を込める。

*2-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO17641000T10C17A6TJ2000/ (日経新聞 2017/6/14) JR九州、採算見込めず 長崎新幹線フリーゲージ導入断念
 JR九州は2022年度に開業予定の九州新幹線長崎ルートで、フリーゲージトレイン(FGT、軌間可変電車)の導入を断念する方針を固めた。車体価格などコストが通常よりも約3倍になるうえ、長崎と新大阪を直通運転することもできない。昨秋に上場し、実質赤字の鉄道事業に株主から厳しい視線を向けられるなか、十分な収益を得られないと判断した。FGTは線路の幅が違う新幹線と在来線を行き来できる利便性がある一方、軌間を変換させるために特有の部品を使用することなどから車体価格が高くなる。また、部品交換のために台車の解体が必要で、保守点検も高コストだ。鉄道建設・運輸施設整備支援機構が開発し、川崎重工業と日立製作所が試験車両を製作していたが、コストは通常の車体などと比べて約3倍になるとみられる。「従前の新幹線と比べ費用がかかるという状況で、効果的な対策が出ていない」。5月、JR九州の青柳俊彦社長は定例記者会見でこのように述べ、FGTの経済性に懸念を表明していた。JR九州は長崎ルートでの採用を目指していた。博多から新鳥栖(佐賀県)まで新幹線を走り、新鳥栖から武雄温泉(同県)までは在来線。武雄温泉から長崎までは新幹線を走行する計画だ。現状では長崎と新大阪を直接結ぶこともできない。FGTについてJR西日本の来島達夫社長は「山陽新幹線への直接乗り入れは難しい」との見解を示している。FGTの最高速度は時速270キロメートル。「山陽新幹線は同300キロメートル区間で、走行性能が異なる」(来島達夫社長)ためだ。山手線や東海道新幹線のようなドル箱路線のないJR九州の17年3月期の鉄道事業は「実力では87億円の赤字」(同社)。長崎ルートの開業が収益の改善につながらなければ、株主から厳しい批判を受けかねない。加えて、安全性にも課題が残る。走行試験を始めた直後に不具合が発覚するなど開発は難航している。社内では「万が一事故が起きた際に責任を取るのは我々だ」という意見も根強い。JR九州はこうしたFGTの問題点を説明することで政府・与党や地元自治体から理解を求める考えだ。今後長崎ルートの運行方法はどうなるのか。暫定開業する22年度は、博多から武雄温泉まで在来線を特急が走り、武雄温泉で新幹線に乗り継ぐ「リレー方式」で運行することは決まっている。JR九州の青柳社長は「今夏に(実用化できると)断定できなければ、対案を示すのが国の仕事だ」と述べ、全線を通常の新幹線と同じフル規格で整備すべきだとの意向を示した。フル規格は収益性は高いが、新幹線の整備に関しては政府・与党や地元に委ねられ簡単には決まらない。このため、リレー方式による運行が長期化しそうだ。FGT導入というJR九州にとって“最悪のシナリオ”は脱することになりそうだが、鉄道事業の収支改善に道筋をつけるのはこれからだ。

*2-3:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ25H80_V21C16A0000000/ (日経新聞 2016/10/25) JR九州上場、快走演出した「不動産事業」
 九州旅客鉄道(JR九州)が25日、東京証券取引所第1部に上場した。朝方から買い注文が膨らみ、取引開始から30分ほどたって付けた初値は3100円と、売り出し価格(公開価格、2600円)を19%上回る水準。ひとまずは順調な「走り出し」といえそうだが、人気の背景を探ると、少し気掛かりな点も浮かび上がる。
■営業利益でみると「不動産会社」
 「現在は運輸サービス事業と駅ビル・不動産事業の利益がそれぞれ全体の4割。しばらくの間はこの構成で成長を目指す」。青柳俊彦社長は午前中、経済専門チャンネルの番組に出演し、成長のけん引役として不動産事業への期待感を隠さなかった。JR九州は社名の通り、鉄道事業が主力ではあるが、実は不動産事業が孝行息子。九州新幹線をはじめとする鉄道事業は2017年3月期にひとまず黒字化する計画だが、営業利益でみると連結全体の4割にすぎない。残る6割のうち、4割分を稼ぐのが駅ビル不動産事業。営業利益でみれば、鉄道事業と同じ規模なのだ。JR九州はJR博多駅の駅ビル「JR博多シティ」(福岡市)や4月に開業したオフィスビル「JRJP博多ビル」(同)など駅前の不動産を活用した商業施設や賃貸用不動産を運営しており、今後も駅ビルや駅ナカを開発していく方針を示す。保有不動産の収益力を高めるというストーリーは、東日本旅客鉄道(JR東日本)や東海旅客鉄道(JR東海)が歩んできた成長路線と重なる。初値時点でのJR九州の時価総額は4960億円と1兆~3兆円に達する、他のJR3社と比べると小粒だが、割安なJR九州に投資する理由は十分にある。
■不動産マネーの「逃げ場」にも
 完全民営化で経営の自由度が高まれば、成長のけん引役である駅ビル運営で大規模投資や他社との連携などに踏み切りやすくなる。楽天証券の窪田真之氏も、「高収益の駅ビル不動産事業は、これからさらに利益を拡大する余地がある」と指摘する。JR九州株の初値は、不動産事業への「期待料込み」ともいえる。実際、日本株の運用担当者の間では、「国内外の機関投資家がJR九州の不動産事業に注目して投資しようという動きも出ていた」という。そして、もう一つのJR九州にとっての追い風も吹いたのかもしれない。日本国内の不動産に向かっていた投資マネーの変調だ。ここ数年来の不動産価格の高騰で、投資額に見合う利回りを得にくくなっており、今年1~9月の累計で海外勢や国内の事業法人は不動産をこぞって売り越した。行き場を失った不動産への投資資金が向かいやすいのは、流動性が高く、一時期に比べて過熱感が薄れた不動産投資信託(REIT)や株式。つまり、巨大な投資マネーの流れの中で、JR九州株が資金の「一時的な逃げ場」になったのかもしれない。
■初値は「追い風参考記録」か
 もっとも、期待通りの水準だった初値が「追い風参考記録」になる恐れもある。JR九州が自社で保有する不動産は九州地方が中心で、東京や東海地域の一等地に資産を持つJR東日本やJR東海とは異なるからだ。不動産市況の過熱感が想定外に強まれば、新規の案件の取得や開発にかかるコストが膨らむ。今後、九州より不動産市場が大きな首都圏、成長著しいアジア地域で不動産ビジネスを拡大したとしても、リスクは消えない。25日のJR九州株は初値に比べて178円(5.7%)安い2922円で午前の取引を終えた。シナリオ通りに不動産事業を伸ばし、JR東日本など旧国鉄民営化の成功事例に加われるだろうか。

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/440538 (佐賀新聞 2017年6月24日) JR九州合理化強調 上場後初の総会
■地方廃線、株主懸念も
 JR九州は23日、昨年10月の上場後初めてとなる定時株主総会を福岡市で開いた。青柳俊彦社長は「九州外のエリアに事業進出して売り上げの拡大を目指す。徹底的なコスト削減も図りたい」と述べ、不動産など非鉄道事業で収益拡大を図る一方、合理化を推進する姿勢を強調した。株主には地方路線での廃線の動きを懸念する声もある。総会には個人株主ら987人が出席し、約1時間45分で終了。株主から不採算路線について「第三セクターへの移譲を検討してはどうか」との意見が出た。日豊線の大分-宮崎空港(213キロ)の一部列車に導入した車掌を乗せない「ワンマン特急」に関して説明を求める質問も出され、JR九州は「安全面で問題はない」と回答した。JR九州の担当者は鉄道事業に関し、効率化を図ることでネットワークを維持していくとの方針を改めて説明し、理解を求めた。フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の九州新幹線長崎ルートへの導入可否については「初夏に予定される国の専門家委員会の(耐久性などの評価に関する)判断を待ちたい」と述べるにとどめた。JR九州株を巡っては、廃線の可能性が取り沙汰されている沿線の自治体がけん制の目的で株式を取得する動きもある。日南線沿線の宮崎県串間市の担当者は総会には参加しなかったが「路線存続を求める意思表示を続けたい」と話した。

*2-5:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2500I_V20C11A2000000/ (日経新聞 2011/2/26)九州新幹線、新大阪―鹿児島中央間を最短3時間45分、空とシェア争奪
 3月12日、九州旅客鉄道(JR九州)が運行する九州新幹線鹿児島ルートが全線開業する。九州を南北に縦断して博多(福岡市)―鹿児島中央(鹿児島市)の257キロメートルを直結。同時に西日本旅客鉄道(JR西日本)が運行する山陽新幹線との相互直通運転も始まり、九州と関西の交流拡大も期待される。博多―新八代(熊本県八代市)が新たに開通、2004年に開業した新八代―鹿児島中央とあわせて全線が開業する。博多―鹿児島中央は、新幹線と在来線特急を乗り継ぐ現行に比べ所要時間を約50分短縮、最速約1時間20分で結ぶ。博多―熊本は約35分となる。列車は停車駅の数に応じて3種類。新大阪から鹿児島中央までを約4時間10分で結ぶ「さくら」は1時間に1本を運行。九州新幹線でのみ運行し、各駅に停車する「つばめ」は博多―鹿児島中央を2時間弱で結ぶ。さらに新大阪―鹿児島中央を約3時間45分で結ぶ最速列車「みずほ」を投入。途中停車駅を新神戸、岡山、広島、小倉、博多、熊本に限り所要時間を短縮。朝夕にそれぞれ2往復運行する。使用する車両は2種類。九州新幹線区間の折り返し運転に主に使うのは、すでに開業区間を「つばめ」として走る800系。山陽新幹線との相互直通運転にはN700系の改良車両を使う。正規料金は博多―鹿児島中央は1万170円(指定席利用)、新大阪―鹿児島中央が2万1300円(同、最速列車「みずほ」は300円加算)。インターネット利用による割引切符は主要区間で最大40%割引する。乗車日の3日前までしか予約、変更ができない早期割引切符「e早特」は新大阪―鹿児島中央で1万7000円、新大阪―熊本で1万4400円。博多―鹿児島中央は早割で8500円。博多―熊本の早割は正規料金より40%安い3000円。九州内のネット予約割引にはJR九州が発行するクレジットカードへの入会が必要。山陽新幹線との直通列車のネット予約割引にはJR西日本発行のカードも使える。所要時間の短縮や割引料金の設定で、9割以上が空路を利用するとされている大阪―鹿児島を筆頭に、交通機関のシェア争奪戦激化は必至。全日本空輸が3月の伊丹―熊本線を正規料金から最大1万1300円割引き、最安で九州新幹線の割引料金と同程度の1万4400円とするなど、各社は新幹線対抗策を強化している。

*2-6:http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/012600245/?rt=nocnt (日経BP 2017/1/26) Amazon.comが物流事業を拡大、海上輸送への進出本格化
 米Amazon.comが海上輸送事業への進出を本格化させていると、複数の海外メディア(米The Verge、米TechCrunchなど)が現地時間2017年1月25日、米Wall Street Journalの記事を引用して報じた。同社はすでに、中国の小売業者がAmazon.comのeコマースサイトで販売する商品の米国への海上輸送を始めている。こうした輸送事業はこれまで米UPSや米FedExなどが手がていたが、Amazon.comは今後これらの企業と直接競争することになり、自前の物流事業構築計画をさらに一歩前進させることになるとWall Street Journalは伝えている。英Reutersによると、Amazon.comは2015年に「Beijing Century Joyo Courier Service」と呼ぶ中国子会社を、非船舶運航業者(フォワーダー)として中国運輸省に登録した。これは自ら輸送船を保有しないが、通関や書類手続きなどを行って貨物輸送を取り扱う業者。Amazon.comはこれにより、中国から同国外への海上貨物輸送業務が可能になった。今回のWall Street Journalの報道によると、2016年10月以降、同社が取り扱った中国からの海上輸送コンテナ数は150超に上る。今月には、前述の中国子会社が、仕分けや貨物追跡といった業務についての料金を公開したという。なお、Amazon.comは約1年前に、同社の倉庫など米国における施設間で商品を輸送するために、自社ブランドのトラックを大規模導入すると発表した(関連記事:Amazon.comが数千台の輸送トラック導入 配送を効率化)。2016年8月には、「Amazon One」と呼ぶ自社ブランドの貨物航空機を利用した輸送業務を始めたことも明らかにしている(関連記事:Amazon.com、自前の貨物航空機の運航開始)。こうして同社はこれまで外部委託していた物流の中間業務を自社で手がけ、輸送業務の拡大とコスト削減を図っているとTechCrunchは伝えている。

*2-7:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS17H6H_Y6A610C1NN1000/ (日経新聞 2016/6/18) ふるさと納税寄付額の4割が返礼品経費に
 個人が故郷や好きな自治体に寄付できる「ふるさと納税」で、寄付額の4割が返礼品の費用に使われていることが総務省の調べで分かった。広報などの経費も含めると、地方の活性化に活用できるのは半分程度になる。寄付額が全国最多の宮崎県都城市や長野県飯山市では返礼品の費用が7割超だった。同省が全国の自治体から2015年度に受け取った寄付額と返礼品の費用などを聞き取った。寄付額が全国合計で1652億円だったのに対して「返礼品の調達費」に632億円、「返礼品の送付費」に42億円かけた。返礼品は地元の肉や魚といった特産物が多い。自治体にとって寄付してもらう動機づけになるほか、地元のPRにもつながる。全国最高の42億円の寄付があった都城市は肉と焼酎が人気で、返礼品経費は31億円だった。飯山市は寄付額17億円に対して12億円を返礼品に使った。高額な返礼品が増えたため、総務省は4月、高額だったり寄付額に対して経費がかかり過ぎたりしている返礼品の自粛を自治体に要請。これを受け、7自治体が返礼の取りやめや価格を下げることにした。自治体間の行き過ぎた競争につながりやすい返礼品の価格や寄付額に対する価格割合の表示をやめることにした自治体も33あった。高市早苗総務相は「(返礼品の費用は)基準を決めてこちらから指導するようなものではない」として自治体側の対応を見守る考えを示している。

<合併後の戦略>
*3:http://qbiz.jp/article/112722/1/ (西日本新聞 2017年6月24日) 余力400人超「新事業に」 十八銀頭取、統合意義を強調 株主総会
 10月にふくおかフィナンシャルグループ(福岡市)との経営統合を目指す十八銀行(長崎市)の株主総会が23日、本店であった。森拓二郎頭取は、親和銀行(長崎県佐世保市)との合併に伴う店舗統廃合や業務の効率化で計400〜500人の余剰人員が生じると説明。余力を地域活性化や新規事業に振り向けるとし、統合の意義を強調した。現在の行員数は十八銀が約1400人、親和銀が約1200人。合併後、2割弱が余剰になる計算。総会は非公開で約250人が出席。十八銀によると、森頭取は「スケジュール通りの統合を目指す」と語ったという。一方で株主から「選択肢として白紙撤回もあるのでは」との意見が出たほか、貸出金シェア引き下げに向けた債権譲渡に関する質問が複数あったという。総会後、長崎市内の男性株主(65)は「人口が減る中で統合する理由は分かるが、本当に実現するのだろうか」と話した。

<大都市の街づくりについて>
PS(2017年7月4日追加):東京のマンションは、容積率を上げれば階数を2倍以上に増やすことができたり、古いマンションは、容積率以下の上、建築後に建築基準法が変わっていたりするため、*4は、周囲の低層建築も巻き込みながら、階数を増やして建て替え、緑の多いマンションと住宅地に変えるのがよいと思われる。その場合、ハードを整えるだけでなく、希望する人は家事や介護のサービスを受けられるマンションにすると、高齢者・独身者・共働き世帯・学生など、多くの世代のニーズを満たすマンションにできると思うが、それを実現するためには、あらかじめ東京都知事のところへ行って、東京の都市計画・容積率緩和・介護等の社会保障に関して意思疎通しておくのがよいだろう。 

*4:http://qbiz.jp/article/113428/1/ (西日本新聞 2017年7月4日) JR九州が東京でマンションを取得 賃貸用12階建て
 JR九州は、東京都北区東十条の賃貸マンションを6月1日付で取得したと発表した。取得額は非公表。同社は収益拡大に向けて積極的に不動産事業を展開しており、東京で保有するオフィスやホテルなどの事業用不動産は7件目となる。取得した「東十条マンション」はJR京浜東北線の東十条駅近くで、地上12階建て。全182戸のうち約9割が入居しており、リニューアルするか建て替えるか検討していくという。

<農協監査について>
PS(2017年7月5日追加): *5のように、農協法の改正に伴ってJAに公認会計士監査が義務付けられ、JA全中の監査部門であるJA全国監査機構が行っていた監査を公認会計士監査に移行するのに伴い、JAを中心に監査を行う「みのり監査法人」が業務を開始して会計士を50人規模に増やすことにしたのは一歩前進だ。
 しかし、「農協監査士は、独立性を確保し、都道府県中央会などから転籍・出向する」と書かれているのは、出向してきた人は独立性を持てず、農協しか監査したことのない人は農協の特殊な遅れに気付かないため間違いであり、今後は農協の監査しか経験していない農協監査士は必要ないと言わざるを得ない。何故なら、製造業や金融関係の監査をしている公認会計士も、最初は全業種の監査を経験し、できれば外国企業の監査も経験した上で、その業種の監査に長く従事して詳しくなっているので、その業種に詳しいだけでなく、業種間比較や連携が容易だからだ。さらに、農学部卒はじめ理系の人や経営学修士(MBA)である公認会計士も少なくない。
 なお、日本は、資格を細かく分けて狭い範囲のことしかできない人材を作りたがる国だが、その職に就いた人にとっては時代が変われば努力して得た資格と人生を台無しにされ、視野の狭い人材ができ、人材の無駄使いも多いため、このやり方は生産年齢人口の少ない時代に適さない。

*5:https://www.agrinews.co.jp/p41280.html?page=1 (日本農業新聞 2017年7月4日) 「みのり法人」始動 JAの公認会計士監査対応
 農協法の改正に伴いJAに公認会計士監査が義務付けられたことを受け、JAを中心に監査を行う「みのり監査法人」が3日、業務を開始した。会計士と農協監査士が連携し、JA事業に精通した監査を実施。公認会計士監査に完全移行する2019年度までに会計士を50人規模に増やし、全国のJA監査の受け皿になることを目指す。みのり監査法人が同日、発表した。16年4月施行の改正農協法で、貯金量200億円以上のJAなどに、公認会計士か監査法人の監査を義務付けた。従来、JA全中の監査部門・JA全国監査機構が行っていたが19年9月までに公認会計士監査に移行する。15年2月に政府・与党が決めた「農協改革の法制度の骨格」では「全国監査機構を外だしして、公認会計士法に基づく監査法人を新設」するとしていた。同法に沿って、みのり監査法人は、全国監査機構でJA監査に従事した経験のある会計士ら17人が6月30日に設立。あずさ監査法人出身の大森一幸氏が理事長に就任し、3日に業務を始めた。JAや連合会を顧客の中心と想定し、会計士と農協監査士がチームを組んで監査に当たり、JA事業に詳しいのが特徴だ。農協監査士は、独立性を確保し、都道府県中央会などから転籍・出向する。全中は、今後も農協監査士の資格試験を継続するという。ただ、実際にJAなどを監査するのは、JAが公認会計士監査制度に完全に移行する19年度からとする。それまでは、公認会計士監査に円滑に移行できるよう、全国監査機構による監査に帯同するなどしてJAの内部統制の整備を支援する。内部統制が不十分だと監査時間が増し、費用が膨らむためだ。一方、同監査法人の会計士は全国監査機構への出向などでJA監査の経験を積む。現在、監査の対象となるJAや連合会は全国に600超ある。JAは他の監査法人も選べるが、同監査法人は19年度までに会計士を50人程度に増やし、全JAを担当できる体制を整える方針だ。これらを踏まえ、全中は今後、必要な農協監査士の人数や、都道府県中央会による業務監査の在り方などを検討していく。

<農業の競争力強化について>
PS(2017年7月6日追加):*6-1のように、JA全中の次期会長にJA和歌山中央会会長である中家氏が当選したのは尤もで、その理由は、和歌山県は米だけでなく、他の農産品でも実績を挙げている県だからだ。JAは現在、農家の所得向上や地域活性化に向けて自己改革を進めており、全中は、2019年9月末までに一般社団法人に移行して、中家氏には変革期のJAグループを導くリーダーシップが求められるそうだが、変革の課題は、①農家の高齢化と担い手不足は農業所得が労働と比較して低いこと ②EUとの経済連携協定(EPA)など、農産物市場開放に堪える農業にするためには生産性と付加価値(安全性を含む)の高い農業経営を行わなければならないこと に尽きる。そのため、農業には、国会議員・大学教授・官僚のような経営の素人ではなく、優秀な経営コンサルティングが必要であり、経営戦略・中長期事業戦略・成長戦略ならアクセンチュアやマッキンゼーのような世界的なコンサルティング会社に、世界のBest Practiceを調べてもらい、自らも視察に出掛けて、日本の得意技を織り込みながら、世界で勝てる農業を創るしかないと考える。
 なお、*6-2のように、農業は殆どが家族経営であるため女性の参画は50%以上だが、認定農業者に占める女性割合は低く、農業委員に占める女性割合7.4%(2015年10月現在)、JA役員に占める女性割合6.8%(2015年3月末現在)など、10%以下である。私は、海外の優良経営体や市場・スーパー・デパートの食品売り場などに出ている農産物の種類・価格を見れば、女性がピンとくるものも多いため、しばらくは農閑期に、(温泉ではなく)出荷している農産物や気候が近い優良な国に、地域農協でまとまって視察に行ったらどうかと考える。

*6-1:https://www.agrinews.co.jp/p41294.html (日本農業新聞 2017年7月6日) 全中会長に中家氏 「自己改革やり遂げる」
 JA全中の次期会長に5日、JA和歌山中央会会長の中家徹氏(67)が内定した。選挙の結果、JA東京中央会会長の須藤正敏氏(69)を抑えて当選した。任期は3年で8月10日の臨時総会を経て正式に就任する。中家氏は記者会見で「JAグループの自己改革をやり遂げる」と強調。農業者の所得増大に全力を上げる決意を示した。会長選は現任の奥野長衛氏(70)の任期満了に伴うもので、中家氏は前回の2015年に続き2回目の出馬となった。JA組合長ら全中代議員(定数251人)が6月22日から郵送で投票。締め切りの5日に即日開票し、有効票総数240票のうち中家氏が152票、須藤氏が88票を得た。結果を受け、全中の役員推薦会議が中家氏を次期会長候補として推薦することに決めた。和歌山市の和歌山県JAビルで5日に開いた記者会見で中家氏は、奥野氏の路線を基本的に継承する方針を示した上で、「自己改革の一丁目一番地は農業者の所得増大」と強調。「農家や地域の方々からなくてはならないと言われる組織を目指す」と述べた。政府・与党の農業・農協改革などには、是々非々で対応していく考えを示した。また大枠合意の可能性が高まっている欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉について、「酪農家を守るのはわれわれの使命だが、今の状況では推移を見守るしかない」と述べた。選挙戦で消費者との連携を強調してきた須藤氏も同日、東京・大手町のJAビルで会見し、「立候補には意味があった。中家会長を中心に、JAグループとして(自己改革の実践などを)しっかりやっていかなければならない」と述べた。JAグループは現在、農家の所得向上や地域活性化に向けた自己改革を進める。全中は、中家氏の任期中の19年9月末までに一般社団法人に移行する。中家氏には、変革期にあるJAグループを束ね、導くリーダーシップが求められる。農家の高齢化や担い手不足、農産物の市場開放といった内外の農政課題への対応も待ったなしだ。一方で安倍政権の農業・農協改革には、生産現場の不信感も根強い。政府・与党に是々非々で臨み、日本農業の持続的発展に向けた提言をしていくことも必要となる。全中は28日の理事会で役員選任議案を決める。8月10日の臨時総会で新体制が正式に発足する。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p39934.html?page=1 (日本農業新聞 2017年1月17日) 女性認定農業者が増 農委7.4%、JA役員6.8% 内閣府調査
 女性の認定農業者が3年連続で増えていることが、内閣府男女共同参画局が16日に発表した「政策・方針決定過程への女性の参画状況」で分かった。2015年3月末時点で1万812人と前年より441人増え、12年から年間400人以上増え続けている。農業委員やJA役員に占める割合も向上しており、女性の活躍の場が広がっている。認定農業者は、農業経営改善計画を申請、認定されなければならない。同計画が認定された農業者のうち女性の単独申請と夫婦による共同申請から女性の人数を算出した。女性の単独申請は5950件と449件増加。一方、夫婦による共同申請は4862件と8件減少した。農水省経営政策課は「農業女子プロジェクトなどで女性の活躍を後押しする取り組みがある中でじわじわと増えてきている」とみる。認定農業者に占める女性の割合は、担い手としての女性の活躍や、農業経営への女性の関与状況の指標となる。第4次男女共同参画基本計画でも、男女共同参画社会の形成の状況を把握する上で重要な指標としている。また、農業委員の過半を認定農業者としなければならなくなり、女性登用を進める上でも女性の認定農業者を増やしていく必要がある。同課は「農業就業人口のおよそ半数を女性が占める中、認定農業者となり積極的に経営に関わる女性が増えていくことは大切」と強調する。男女共同参画基本計画の成果目標である農業委員に占める女性の割合は7.4%(15年10月時点、前年比0.1ポイント増)、JA役員に占める女性の割合は6.8%(15年3月末時点、前年比0.7ポイント増)と改善した。ただ、指導的地位に占める女性の割合を表す指標である女性の指導農業士等は6405人(16年3月末時点)と390人減少した。女性の占める割合は30.6と1.4ポイント減少した。

<経産省のお馬鹿な政策>
PS(2017年7月6、7日追加):*7-1のように、経産省は、馬鹿の一つ覚えのように「自由貿易」「自動車」と言ってはTPPやEPAを進め、「交渉が難航したのは欧州産チーズと日本産乗用車で、日本車にかける関税を協定発効後7年かけて撤廃する方針」などと、いつまでも日本車に競争力があるかのようなことを言っているが、7年後に物価と賃金の高い日本で製造された車が欧州に輸出されているわけがなく、日本は輸入だけ増えて輸出は減っているだろう。
 何故なら、太陽光発電やEVは、(私の提案で)1995年頃から世界で最初に日本が手をつけていたのだが、経産省や産業界が変なことばかり言って逆噴射したため、*7-2のように、ボルボが2019年以降に発売するすべての車を電動車にすると発表し、*7-4のように、独ダイムラーが中国の北京汽車集団と中国でEV生産するため50億元(約835億円)を投資する発表し、*7-5のように、テスラがEV・太陽光・安い蓄電池のセット売りで日本に攻勢をかけているのに、日本ではまだ、*7-3のように「ガソリン車に必要な部品が約3万個とすればEVでは約1万8900個ですむので、(20年経っても)急激な事業構造の転換はできない」などと言っており、日本車は高くてうるさく排気ガスの出る環境に悪い車になるからである。
 そして、このような状況では、日本車を輸出するどころか、日本人も中国製のベンツやテスラを買う時代になって日本車に競争力がなくなる日は近く、リーダーが馬鹿で方針を間違うと大きな負の影響があるということで、家電も輸出どころではなくなっているだろう。
 なお、*7-6のように、フランスは、「パリ協定」の目標達成に向けてCO2排出削減計画を発表し、その柱の一つに2040年までのガソリン車・ディーゼル車などのCO2排出車の販売禁止方針を明らかにしたそうだが、これはオランダやノルウェーなどの欧州各国に広がりつつあり、都市の空気をきれいにする。また、インドも2030年までに販売する車をすべてEVにする計画で、これらによってEVの購入コストがガソリン車より安く、デザインも豊富になるのは、部品の数と仕組から考えて当然だ。また、EVを含めた再生可能エネルギーによる分散発電も進むと思われる。日本には、大量の燃料を輸入して多額の燃料費を外国に支払いながら、消費税率を引き上げるのが財政健全化策だと主張している人が多いが、これらの人々は消費税率引き上げを自己目的化しているとともに、思考停止が甚だしいのである。

   
   2017.7.6      2017.7.6    2017.7.6       2017.7.6   
   読売新聞       毎日新聞     日経新聞        日経新聞

(図の説明:日本は乗用車・家電の輸出を増やすために食品を犠牲にしているが、これは1980~90年代の新興国が十分に工業化されていなかった時代のスキームだ。今後は、世界では食品が不足し、エネルギーに化石燃料は使わなくなるのだが、このように何十年も止まったままのカビが生えたような古い発想しかできないのが、日本の行政の致命的欠陥なのである)

*7-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170706&ng=DGKKZO18529550W7A700C1MM8000 (日経新聞 2017.7.6) 日欧EPA、閣僚級協議で大枠合意、首脳きょう宣言
 日本政府と欧州連合(EU)は経済連携協定(EPA)交渉の大枠合意を6日の首脳協議で宣言すると決めた。岸田文雄外相は5日午後(日本時間同日夜)、訪問先のブリュッセルでマルムストローム欧州委員(通商担当)との協議後、「閣僚間で大枠合意の達成を確認できた」と表明した。日欧間で関税がなくなる品目は全体の95%超に達する見込み。世界の経済・貿易の3割を占める大経済圏が誕生する。大枠合意した内容は、6日の安倍晋三首相とトゥスクEU大統領との首脳協議で正式に決める。EU高官は「最終的な合意には数カ月かかる」と語り、今回の大枠合意で詰めきれなかった部分を含めた最終合意は、年内に実現できるとの見通しを示した。首相は5日の欧州歴訪出発前に「日欧EPAはアベノミクスの重要な柱だ」と強調。日欧EPAの大枠合意をテコに、米国を除く11カ国での環太平洋経済連携協定(TPP)の発効を目指す「TPP11」の交渉進展にもつなげたい考えだ。欧州側も7日から独ハンブルクで始まる20カ国・地域(G20)首脳会議を前に、自由貿易を重視する姿勢を強調するため大枠合意を急いでいた。岸田氏は協議後、記者団に「大枠合意によって保護主義的な動きのなかで世界に前向きで大きなメッセージを送ることができる」と意義を強調した。「日・EUが世界に範を示すに足る内容だと自負している」とも述べ、日欧が自由貿易を主導していく考えを示した。大枠合意の内容は首脳協議後まで明らかにされない。これまでの交渉で日欧が貿易品目の95%超で関税を撤廃することになった。これはTPPと同程度の自由化水準だ。関税撤廃する品目のうち、交渉が難航したのは欧州産チーズと日本産乗用車の扱いだったが閣僚級協議でメドがついた。欧州側が市場開放を求めたチーズは、日本側が欧州産チーズに低関税で輸入する新たな枠を設け、枠内の税率を15年かけてゼロにする見通し。欧州側は、日本車にかける関税(最高10%)を協定発効後7年かけて撤廃する方針となった。このほか、日本側は欧州産ワインにかかる関税(ボトルワイン1本で約93円)を即時撤廃する方針。欧州産の豚肉やパスタ、木材などの関税も削減・撤廃でほぼ決着し、欧州側も日本産の緑茶・日本酒にかける関税を即時撤廃する。大枠合意後も、引き続き日欧間で協議を続け、年内には最終合意する方向。協定が発効すれば日本の消費者にとっては欧州産ワインやパスタ、チョコレートを今よりも安く買えるようになる。一方、日本から欧州には自動車や日本酒を売りやすくなる。

*7-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170706&ng=DGKKASDZ05IDT_V00C17A7TI1000 (日経新聞 2017.7.6) ボルボ、全車種電動に 有力メーカー初、19年、環境対応でEV・ハイブリッド集中
 スウェーデンの高級車メーカー、ボルボ・カーは5日、2019年以降に発売するすべての車を電気自動車(EV)やハイブリッド車などの電動車にすると発表した。世界中で厳しさを増す環境規制や消費者ニーズの変化に応える。世界の自動車大手が進めるガソリンやディーゼルなど既存エンジンの搭載車からEVなどへの移行がさらに加速しそうだ。ボルボ・カーのホーカン・サムエルソン最高経営責任者(CEO)は声明で「(ガソリンやディーゼルなどの)内燃機関の時代の終わりを意味する」と述べた。有力自動車メーカーで、長期目標を除いて「脱内燃機関」を表明したのはボルボ・カーが初めて。5日の記者会見で同CEOは「ボルボ・カーにとって非常に重大な決断であり、戦略的な転換」と強調した。25年までに電動車両を累計で100万台販売する計画。16年の世界販売台数は53万台。既存のエンジンを搭載しない純粋なEVは、19~21年までに5車種を発売する。EVや家庭などで充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)、バッテリーとモーターを補助に使う「マイルドハイブリッド」と呼ばれるタイプなどすべての品ぞろえを構成する。価格は高級車と同水準になるが「ディーゼル車とは勝負になるレベル」という。サムエルソンCEOは「電動車両へのニーズは強い。消費者の現在と将来の需要に応える必要がある」と強調した。背景にあるのは米テスラの台頭だ。ドイツでは1~6月の販売台数は前年同期の約2.4倍。月末からは400万円程度の廉価版EVの納車を始める。ボルボ・カーは対抗策として6月、傘下の高性能車部門「ポールスター」をEV専用ブランドとして立ち上げると発表。21年までに投入する5車種のうちポールスターのEVは2車種含まれる。EVのネックとされていた航続距離が短いという課題は、電池技術の進化でクリアされつつある。価格面でも18年に欧州でのEV保有コストはディーゼル車と並ぶとスイス金融大手UBSが試算している。充電インフラ不足という課題は残るが、数年前に業界で予測されていたより早く普及の条件はそろいそうだ。すでに最大のEV市場となっている中国の攻略も狙いの一つだ。ボルボ・カーは現在は商用車主体のボルボから分離され、米フォード・モーターによる買収を経て10年に中国の浙江吉利控股集団の傘下に入っている。中国は近く「NEV規制」と呼ばれる規制を導入する。EVやPHVの市場は急拡大するとみられ、親会社と連携して中国での販売拡大を狙う。フォルクスワーゲン(VW)やダイムラー、BMWの独大手3社も、25年に販売台数の最大25%をEVなどの電動車両にする計画を掲げる。ただ、独大手の現在の事業の柱はディーゼル。EVへの移行はエンジンや変速機をつくる工場の雇用問題に直結するため、急激な移行は難しい。

*7-3:http://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20170706&c=DM1&d=0&nbm=DGKKASDZ05IDT_V00C17A7TI1000&ng=DGKKZO18527410V00C17A7TI1000&ue=DTI1000 (日経新聞 2017.7.6) 大手、構造転換に時間 部品産業への影響懸念
 日欧米の自動車大手は動力機構について、当面は全方位で開発を進める。トヨタ自動車は2050年をめどにエンジン車をほぼゼロに、ホンダは30年に3分の2をハイブリッド車(HV)を含む電動車に置き換える構想を描くが、ボルボ・カーと比べると転換のペースは遅い。構造転換に二の足を踏む背景には産業の裾野の広さがある。経済産業省はガソリン車に必要な部品点数が約3万個としたときに電気自動車(EV)では約4割の部品が不要となり、約1万8900個で構成すると試算する。トヨタやホンダでは「ティア1」と呼ばれ自動車メーカーと直接取引する1次部品メーカーが数百社にのぼるとみられる。急激な事業構造の転換が部品メーカーの収益に与える影響は大きい。エンジン部品を手掛ける大手メーカー首脳も「自動車分野に限らず新たな収益源を育成しなくてはならない」と身構える。トヨタやホンダなどは燃料電池車(FCV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、HV車などの開発も進める。新興国市場での展開などを踏まえると、幅広い動力機構を持つことも成長につながるためだ。独フォルクスワーゲン(VW)は今後5年間に電動化技術に90億ユーロ(1兆1000億円)を投じ、25年のEV比率を20~25%にする計画。米ゼネラル・モーターズ(GM)もEVを投入しているが世界販売における電動化比率など中長期的な目標は明示していない。

*7-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170706&ng=DGKKASDZ05IBS_V00C17A7TI1000 (日経新聞 2017.7.6) EV中国生産へ800億円投資 ダイムラーと北京汽車
 独ダイムラーは5日、中国国有自動車大手の北京汽車集団と共同で中国で電気自動車(EV)を生産するため50億元(約835億円)を投資すると発表した。このうち数百億円規模をEVの肝となる電池の工場建設にあてる。世界に先駆けてEV市場の拡大が見込まれる中国で、存在感を高める狙いだ。高級車「メルセデス・ベンツ」を生産する合弁会社、北京ベンツで2020年までにEV生産を始める。ダイムラーがドイツ国外に電池工場を造るのは初めて。研究開発のための施設も用意する。

*7-5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170706&ng=DGKKASDZ05HU0_V00C17A7TI1000 (日経新聞 2017.7.6) 太陽光再生、起点はテスラ 売電偏重、市場にゆがみ
 太陽光発電の国内最大級の見本市「PV Japan」が5日、横浜市内で開幕した。目玉の一つが米テスラの出展だ。日本の太陽光市場は固定価格買い取り制度の機能不全で低迷が続く。自動車のほかエネルギー分野でも世界の産業秩序を壊しつつあるテスラの上陸は、日本市場再生の起爆剤になるか。
太陽光パネルが立ち並ぶ見本市会場のど真ん中。電気自動車(EV)が置かれたテスラのブースには終日、人だかりができていた。ブースを訪れた大手電機メーカーの担当者が驚いたのはテスラが提示した家庭用蓄電池の価格だ。販売時期は未定だが、予定価格は約70万円。国内で現在普及する製品の4分の1の水準になる。住宅などの屋根に取り付けた太陽光発電が機能するのは日中のみ。雨の日や夜間に家庭の電力を賄うには蓄電池が欠かせない。テスラの説明員は「太陽光発電を自家消費や地産地消のために使う動きが日本でも始まる」と話した。米国ではエネルギー分野でもテスラの存在感が高まっている。昨年は太陽光パネルメーカーのソーラーシティを買収。EVと太陽光、蓄電池のセット売りで攻勢をかける。太陽光や蓄電池は環境意識の高いユーザーが多い点でEVに近い商品だ。EVの本格普及後に、充電の時間帯が集中し電力不足を引き起こすリスクも蓄電池があれば緩和できる。3つの商品をEVの販売店で直販するのもテスラの特徴。機器の設置工事はソーラーシティの社員が担当する。無駄なコストを徹底して省き、蓄電池の価格を米国の競合品と比べ半分以下に抑えた。デザインにこだわった太陽光パネルは投資回収に約10年かかる価格設定ながら、予約が殺到し今注文しても納入は来年以降という。一方、日本市場は個人の需要がけん引する米国とまったく違う景色になっている。その原因が2012年に始まった太陽光による電力を一定価格で買い取る制度。高い価格が設定され、売電目当てのメガソーラーが急増した。パネルの市場は急拡大したが、一般家庭や工場、ビルの自家消費向けの需要の開拓が遅れるゆがみが生じた。その後、制度への批判が高まり買い取り価格が下落。発電所の設置基準も厳しくなり、市場は一気に冷え込んだ。16年は米国や中国、欧州など世界の主要国が軒並み成長するなか日本だけが前年割れ。太陽光発電協会の増川武昭事務局長は「20年ぐらいまで下降トレンドは続く」と話す。世界を追いかけるには政策頼みでない地道な需要の開拓が欠かせない。見本市では三菱電機が自家消費用にEVの蓄電池を使うシステムを提案。京セラは太陽光で発電した電気の需給を効率的に調整するシステムを展示した。テスラが運営する日本の店舗は東京、大阪など6カ所のみ。蓄電池や太陽光の販売を広げるにはまだ手薄な体制だ。しかしテスラが本気で開拓に乗り出せば市場の再生にも弾みが付く。そのためにも買い取り制度に依存しない市場環境の構築を急ぐ必要がある。

*7-6:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ07HHP_X00C17A7000000/?n_cid=NMAIL002 (日経新聞 2017/7/7)フランス、EV社会へ大転換 ガソリン車禁止の余波
 フランス政府が6日、2040年までに国内のガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針を明らかにした。自国に世界大手のメーカーを抱える国が、ガソリン車禁止を明確に打ち出したのは初めて。実はフランスに似た動きは欧州やアジアでも相次ぐ。同日には40年時点で全世界の新車販売に占める電気自動車(EV)比率が5割を超えるとの予測も出た。電動化の流れが一段と加速する。
■G20直前、マクロン流のエコアピール
 仏のユロ・エコロジー相が6日に記者会見し、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」の目標達成に向けた、二酸化炭素(CO2)排出削減の計画を発表した。柱の一つが、40年までのガソリン車など走行時にCO2を排出する車の販売禁止。さらに22年までに予定する石炭火力発電所の停止なども着実に進め、50年までに国全体のCO2排出量を差し引きゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すという。7日からはドイツで20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれる。マクロン仏大統領は就任以降、パリ協定からの離脱表明や保護主義的な主張を続けるトランプ米大統領に対抗し、メディアを意識し情報発信をしてきた。トランプ氏も参加するG20を前にした、「マクロン流」の広報戦略の一環とみるのが自然だ。産業界への影響は大きい。フランスはルノーとグループPSAの二大メーカーが本社を置き、トヨタ自動車や独ダイムラーも工場を構える。16年の乗用車販売台数は約200万台と、ドイツ、英国に次ぐ欧州第3の規模だ。仏自動車工業会(CCFA)によると、自動車産業に従事するのは約20万人、関連産業も含めると約230万人に達する。フランスは欧州ではEV普及に熱心なことで知られるが、限界がある。17年上半期の新車販売ではガソリン車・ディーゼル車が95.2%を占めた。ハイブリッド車(HV)は3.5%、EVは1.2%にとどまるのが実情だ。ルノーのEV「ゾエ」は欧州市場のEV販売ランキングで常に上位に位置する。だが、市場全体に占める存在感は小さく、収益貢献もまだ先だ。ユロ氏も、国内自動車メーカーなどへの影響は「厳しい」と認めた。同時に、国内メーカーは他社に先駆け変革をすることができると期待を示した。仏政府はルノーとPSAの大株主で、官民連携で戦略転換を進めやすい面はある。
■各国に広がるガソリン車販売禁止
 欧州ではCO2排出抑制と、都市部の大気汚染対策の両面からディーゼル車などへの逆風は強まる。オランダやノルウェーでは、25年までにガソリンやディーゼルを燃料にする内燃機関の車の販売を禁止する動きがある。ドイツも同様のうねりがある。連邦参議院(上院)は昨秋、30年までにガソリン車などの車の販売を禁止する決議を採択した。連邦議会(下院)で法案が成立したわけではなく、ドブリント運輸相も決議を「非現実的」と評した。決議に拘束力はないが、欧州最大の自動車大国でさえこうした議論が公にされるのが現実だ。アジアにもこの波は及ぶ。代表がドイツを抜き世界4位の自動車市場になったインド。ゴヤル電力・石炭・再生可能エネルギー相は4月、「30年までに販売する車をすべてEVにする」と野心的な計画を表明した。EVに一気にシフトして自国産業を育成しようという狙いで、中国でも似た政策が打ち出されている。メーカー側の動きも急だ。米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は2日、初の量販EV「モデル3」の納車を今月末から始めると表明。ボルボ・カー(スウェーデン)は5日、19年以降に販売するすべての車をEVかHVにすると発表した。すでにルノーは充電1回の航続距離を400キロメートル(欧州基準)に伸ばしたEVを発売。18年には独フォルクスワーゲン(VW)傘下の独アウディと独ポルシェが500キロメートルを走れるEVを投入する予定だ。
■「20年代後半、ガソリン車より安く」
 調査会社のブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンス(BNEF)は6日、40年時点の世界の乗用車販売に占めるEV比率は54%に達するとの見通しを発表した。従来予想の35%から大幅な上方修正だ。新たな予測では20年時点のEVは全体の3%、25年では8%。その間に電池価格の下落と容量の増加が進み、「25~29年までにはEVの販売価格が内燃機関の車より安くなる」とみる。5月にはスイス金融大手UBSが、欧州では18年時点でEVを購入した場合のトータルコストが、ガソリン車と対等になるとのリポー