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2017.1.13 武器の高度化に合わせて強化されるわけではない人類に本能として組み込まれた抑制機能の限界と安全保障 (2017年1月14、17、20、23日、2月2、3、6日に追加あり)
     
安保法制で広がる 今回の共謀罪法案        共謀罪導入の効果          共謀罪の
 自衛隊の活動  2016.8.25朝日新聞                           これまでの経緯

(図の説明:「自衛のための戦争」という理屈はどうにでもつくだろうが、行き過ぎた集団的自衛権の行使や他国軍の後方支援は、実際には自衛の範囲ではなく憲法9条違反だ。また、“テロリスト”と呼ばれている人たちの中にも、自分の領域を護るための闘いをしている人もいるため、双方の事情を公正に見ることなく外国で戦争をすれば、恨みを買って日本国内も危なくなる。そして、“テロリスト”を未然に逮捕するためとして何度も国会に提出されている“共謀罪”は、刑法や日本国憲法の理念に反しており、人権侵害を引き起こす可能性が高い)

(1)人間(動物の一種)に備わっている攻撃本能と抑制本能について
 動物(特にオス)には、縄張りを護ったり、自分のDNAを遺すためにメスを獲得したりするため、攻撃の本能を持つものが多い(「攻撃」:コンラート・ローレンツ《動物行動学者》著 参照)。そのうち、ライオンのように強い動物のオスは、種を滅亡させないための淘汰圧も働くので、負けた相手が逃げれば追わない抑制本能も兼ね備えている。

 一方、人間は、進化の上では、こぶしや石斧・剣程度の武器にしか攻撃抑制本能が対応していないのに、*3-3のように、強力な武器を使うようになったため、進化で獲得された攻撃本能や抑制本能が武器についていっていない。そのため、空爆のように、攻撃している相手が見えなくなれば攻撃しやすく、近代戦争ほど悲惨さの度合いが大きくなった。

 そして、核兵器はボタンを押すだけで相手の苦しみを見ずに多くの人を殺せるため、その極致なのだが、地球を汚染して自分をも苦境に陥らせる。しかし、攻撃している最中はそれに気づかず、気がついた時には自分も人類も終わっていることになりかねない。また、核兵器が抑止力になるというのも、私には信用できないため、そのような危険すぎる武器は、唯一の被爆国である日本が率先して廃絶に持って行って欲しいと願っている。

(2)世界と日本の核政策
 そして、2016年8月、*1-1のように、国連核軍縮作業部会が、核兵器禁止条約の交渉を来年中に開始するよう国連総会に勧告する報告書を採択し、*1-2のように、米国のオバマ大統領が「核なき世界」訴えたが、被爆国としてリーダーシップを取るべき日本は、*1-3のように、後ろ向きだった。

 しかし、国連総会第1委員会(軍縮)は、2016年10月27日、核兵器禁止条約に向けた交渉を2017年に開始するよう求める決議案を賛成多数で採択し、123カ国が賛成したが、日本や核兵器保有国の米英仏露など38カ国が反対し、中国を含む16カ国が棄権したそうだ。その決議案は、オーストリアやメキシコなどの57カ国が共同提案し、総会本会議で採択される見通しだそうで、これらの国々は立派だ。

 日本は北朝鮮の核・ミサイル開発を理由として反対したそうだが、北朝鮮の敵は本来は日本ではない筈で、核兵器廃絶にリーダーシップを取るべき日本が北朝鮮を理由に反対するのはどうかと思う。

(3)他の国は・・
 北朝鮮は、*2-1のように、使用済核燃料を再処理して核兵器の原料となるプルトニウムを新たに生産したことを明らかにし、弾頭の「小型化、軽量化、多種化」を達成して水爆保有に至ったと主張し、「米国が核兵器でわれわれを恒常的に脅かしている条件下では核実験を中断しない」としており、言っていることはわかるが、何度も日本海に落下させられると日本海が汚染されるので困る。また、電力不足を解決するため軽水炉原発の建設も進めるとしているが、北朝鮮が発電に原発を使う必要はないだろう。

 そして、日本海は狭くて湖のような海である上、食料となる魚介類の宝庫でもあるため、環日本海諸国で「日本海汚染防止条約」を結ぶのがよいと考える。

 なお、*2-2のように、パキスタンは、「包括的核実験禁止条約の署名や批准が求められれば、インドとともに検討せざるを得ない」と述べ、パキスタンとインドが包括的核実験禁止条約の署名に応じれば、核兵器なき世界へと大きく前進するそうだ。

(4)シリア等の空爆
 *3-1のように、シリアの空爆で顔中が血とほこりにまみれた5歳の少年が、茫然と前を見つめている姿に動揺と非難が沸き起こったそうだが、助けられずに建物の下敷きになっている人は無数にいる筈だ。そして、空爆している国は、*3-2のように、ロシアだけではなく、米国や有志連合もだ。

(5)日本の武器輸出
 経団連は、*4-1のように、安全保障関連法の成立で自衛隊の役割が拡大し、「防衛産業の役割は一層高まるので武器輸出推進を」と提言したそうだ。しかし、「Made in Japan」の武器が世界に出回れば、日本の平和ブランドがなくなり、その武器で攻撃された国から恨みを買うという大きなつけを支払わされる。そのため、*4-2のような武器輸出は控えるべきで、儲かるからやってよいというものではない。

(6)安保法と共謀罪
 日米両政府は、*5-1のように、2015年4月27日に防衛協力のための指針(ガイドライン)を改定し、自衛隊の活動を制限してきた日米協力は転機を迎えて、沖縄県の尖閣諸島も日米安全保障条約5条の適用範囲にあるとしたそうだが、これは大統領が変わっても確かだろうか。

 また、*5-2のように、集団的自衛権を行使できるようにする安全保障関連法を2015年3月29日に施行し、日本が専守防衛を転換して世界のどこへでも行けるようにしたのは日本国憲法違反だ。

 さらに、どちらにも理があるのに、どちらかについて外国で戦争をすると、恨みを買うことになる。そうすると、日本でもテロが起きる可能性が増して、*5-3のように、「共謀罪」などを整備せざるを得ないことになる。そのため、安全保障法制の強化は抑止力を増したのではなく、リスクを上げたのである。

 そして、日本政府は、テロ対策を口実に、「共謀罪」又は「テロ等準備罪」をしつこく提出しているが、「共謀罪」関連法案は過去3回にわたって提出され、捜査当局の拡大解釈で「一般の市民団体や労働組合も対象になる」「内心や思想を理由に処罰される」との批判を浴びて廃案になったものだ。

 今回は676の罪(テロ関連は167件)に対象を絞り込んだそうだが、「その他」というジャンルもあり、捜査当局が拡大解釈して共謀罪の範囲だと強弁することは容易であるため、実際に犯行が行われていないのに罪とするのは、刑法の理念にも日本国憲法の内容にも反する。また、*5-4のように、「共謀罪」を東京五輪対策とするのは、幼稚な口実だ。

<世界と日本の核政策>
*1-1:http://mainichi.jp/articles/20160820/k00/00e/040/245000c (毎日新聞 2016年8月20日) 核禁止条約:.広島の被爆者「核廃絶への一歩」 報告書採択
 国連核軍縮作業部会が、核兵器禁止条約の交渉を来年中に開始するよう国連総会に勧告する報告書を採択したことについて、広島の市民団体や被爆者らは「核廃絶への一歩」と歓迎。今後の議論が前進するよう後押しする構えだ。市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」共同代表の森滝春子さん(77)は「核拡散防止条約(NPT)の枠組みでは核兵器廃絶は前進しないと分かってきた中で、報告書の採択は今後に展望が持てる」と歓迎し、「秋の国連総会でどう取り入れるかが重要。志のある国、市民、NGOが連携してここまできた。さらに連携を強めたい」と話した。一方、広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧智之副理事長(74)は「一歩前進だが、安心はできない」と複雑な表情。米ニューヨークで昨年あったNPT再検討会議で最終文書案が採択できなかった経緯があり、核保有国と非保有国との溝は深いと感じているからだ。「本来、被爆国としてリーダーシップを取るべき日本政府が後ろ向きな態度なのが、被爆者としてとてもはがゆい。『核の傘』への依存からチェンジする勇気を持ってほしい」と求めた。 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(71)は「核保有国と非保有国の溝を埋めるため、私たち市民も世論という形でこの動きを後押ししたい」と話した。

*1-2:http://mainichi.jp/articles/20160921/k00/00m/030/141000c (毎日新聞 2016年9月21日) オバマ大統領、「核なき世界」訴え 最後の国連演説
 国連総会の一般討論演説が20日午前(日本時間同日夜)、ニューヨークの国連本部で始まり、オバマ米大統領が任期中最後の演説に臨んだ。オバマ氏は「分断された世界に後退するのか、より協調的な世界に進むのか岐路にある」と述べた。地球温暖化や、難民問題など、地球規模で取り組む課題が増えており、解決するためには国際協調がさらに重要になると訴えた。オバマ氏は2009年1月の就任から7年半に及ぶ外交を総括し、「核兵器のない世界を追求しなければならない」と改めて主張。米国をはじめとする核保有国は「核兵器を削減する必要があり、核実験を二度としないという国際的な約束を確認しなければならない」と主張した。今月9日に5回目の核実験を強行した北朝鮮については「報いを受ける必要がある」と圧力強化の必要性を強調した。ただ、今年5月に被爆地・広島を訪問した以外は「核なき世界」に向けた具体的な実績がなく、道半ばでの最後の演説となった。また、原理主義的な考えや人種差別を拒否し、人権にもとづいた国際協力を進めることが重要と指摘。南シナ海の権益をめぐる問題については、平和的に解決する必要があると訴えた。経済分野では、国際化の進展で貧困率が下がる効果があったことを紹介し、経済のグローバル化を否定する動きをけん制した。環境規制の強化や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の実現、経済的格差の縮小が必要と訴えた。

*1-3:http://mainichi.jp/articles/20161028/k00/00e/030/166000c (毎日新聞 2016年10月28日) 国連:核兵器禁止交渉決議を採択 日本は反対
 国連総会第1委員会(軍縮)は27日(日本時間28日)、核兵器禁止条約に向けた交渉を2017年に開始するよう求める決議案を賛成多数で採択した。123カ国が賛成し、日本や核兵器保有国の米英仏露など38カ国が反対した。中国を含む16カ国は棄権した。同案を推進してきた非核保有国は保有国の反発を押し切り、核兵器を禁止する国際的な法的枠組み作りを目指して一歩を踏み出した。決議案はオーストリアやメキシコなど少なくとも57カ国が共同提案した。今年中にも総会本会議で採択される見通し。核兵器の非人道性を強調し法的に禁止する国際条約を作って、核兵器廃絶への動きの推進を図る。交渉は、来年3月27~31日と6月15日~7月7日に、ニューヨークの国連本部で実施。核兵器の開発や実験、製造、保有や使用など、具体的に何を禁じるかも討議する。国際機関や非政府組織(NGO)も参加できる。日本の岸田文雄外相は28日午前の記者会見で、反対理由について、北朝鮮の核・ミサイル開発の深刻化に言及しつつ、「核兵器国と非核兵器国の対立を一層助長する」と説明。ただ、交渉には積極的に参加する意向も示した。今回の決議が採択された背景には、米国やロシアなど核兵器保有国による核軍縮の停滞がある。この10年、核軍縮交渉の後押しを目指す一部の非核保有国は、核兵器の非人道性を強調して使用に法的な歯止めをかける「人道的アプローチ」を推進し、世界的な潮流の形成を図ってきた。こうした中、15年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で最終文書を採択できなかったことから、現状の核軍縮への取り組みに対する不満がさらに強まっていた。核兵器の法的禁止を目指す非核保有国の動きに対し、保有国は激しく反発。米国は、米国の「核の傘」が持つ抑止力に悪影響を及ぼすと主張。同盟国である北大西洋条約機構(NATO)諸国やアジア諸国に、採決での反対投票と交渉不参加を呼びかけた。一方、日本が提出した核兵器廃絶決議案も27日、賛成多数で採択された。

<他の国は・・>
*2-1:http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2016081802000055.html
(中日新聞 2016.8.18) 北朝鮮、核再処理認める 核兵器増産可能に
 北朝鮮の原子力研究院は十七日、共同通信に対し「黒鉛減速炉(原子炉)から取り出した使用済み核燃料を再処理した」と表明、寧辺(ニョンビョン)の核施設で核兵器の原料となるプルトニウムを新たに生産したことを明らかにした。北朝鮮が六カ国協議合意に基づき停止していた原子炉の再稼働を二〇一三年に表明して以降、再処理実施を公式に認めたのは初めて。核兵器増産が可能になったことを意味する。核実験は中断しないとし、濃縮ウランの核兵器利用も明言した。共同通信の取材に書面で回答した。核開発を担当する原子力研究院が外国メディアの取材に応じたのは初めて。国際社会の制裁下でも、核兵器開発を加速させる姿勢をアピールする狙いがあるとみられる。北朝鮮は六カ国協議合意に基づき〇七年七月に原子炉や再処理施設の稼働を停止。その後、主要部品を取り外すなどの「無能力化措置」に応じたが、今回の再処理再開で合意は完全に白紙に戻ったことになる。原子力研究院は、核弾頭の「小型化、軽量化、多種化」を達成、水爆保有に至ったとも主張。プルトニウムや濃縮ウランの生産量については明らかにしなかった。「米国が核兵器でわれわれを恒常的に脅かしている条件下で、核実験を中断しない」と強調し、五回目の核実験をいずれは行う立場を表明。ウラン濃縮については「核武力建設と原子力発電に必要な濃縮ウランを計画通りに生産している」と述べ、核兵器に使われる高濃縮ウランを生産していることも認めた。また、電力不足を解決するため軽水炉原発の建設を進めるとし、出力十万キロワットの実験用軽水炉の建設を推進していると明らかにした。クラッパー米国家情報長官は今年二月、衛星写真の分析などに基づき、北朝鮮が数週間から数カ月内にプルトニウム生産が可能な段階にあるとの分析を明らかにしており、これが裏付けられた。米専門家らは一年間で核兵器一~三個分に相当するプルトニウム約六キロ前後を追加生産することが可能とみている。
◆原子力研究院の回答骨子
▼プルトニウム生産のため使用済み核燃料を再処理した
▼米国が核兵器でわれわれを脅かしているため、核実験を中断しない
▼核武力建設と原子力発電に必要な濃縮ウランを生産している
▼核弾頭は既に小型化、軽量化、多種化されており、水爆まで保有
▼電力問題の解決のため出力10万キロワットの実験用軽水炉の建設を推進
<原子力研究院> 北朝鮮で原子力関連の研究や実験などを行う国家機関。核開発と経済建設を並行して推進する「並進」路線が国家方針とされたのを受け、2013年4月の政令で内閣に設けられた原子力工業省に所属する。核燃料棒工場や、プルトニウム生産に使われる黒鉛減速炉などの施設を管轄する。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/355958
(佐賀新聞 2016年9月15日) パキスタン、核実験禁止署名検討、NSG加入で「インドとともに」
 核拡散防止条約(NPT)未加盟国パキスタンのアハタル外務省軍縮局長は14日、核技術などの輸出を管理する「原子力供給国グループ」(NSG)の加入条件として、包括的核実験禁止条約(CTBT)の署名や批准が求められれば「インドとともに検討せざるを得ない」と述べた。共同通信とのインタビューで語った。オバマ米政権は、あらゆる国に爆発を伴う核実験の自制を求める国連安全保障理事会決議の草案を全理事国に配布。北朝鮮の核実験が脅威となる中、NSG加入を目指すNPT未加盟国パキスタンとインドがCTBTの署名などに応じれば「核兵器なき世界」へ大きく前進する。

<空爆>
*3-1:http://jp.reuters.com/article/syria-boy-video-idJPKCN10U091
(ロイター 2016.8.18) シリア空爆で流血の5歳男児映像、SNSで動揺と非難広がる
 顔中が血とぼこりにまみれた小さな少年が、静かに腰かけ、ただぼう然とまっすぐに前を見つめている。シリアの都市アレッポで、空爆とみられる攻撃が起きた後のことだ。救急車の中にたった1人で座っているこの少年は、医師らが確認したところによると、オムラン・ダクニシュちゃん(5)で、頭から流れる血をぬぐおうとしている。受けたけがには気づいていない。空爆に直撃された建物のがれきから救出された子どもたちの動画がソーシャルメディアで拡散し、5年にわたるシリア内戦の悲惨な現実に動揺と非難が沸き起こっている。アレッポは反体制派と政府が支配する地域に分かれており、激戦地となっている。2週間前に奪われたアレッポ南西の地域を奪還すべく、政府軍は連日のように反体制派が支配する地域を激しく空爆している。動画は17日、市内の反体制派が支配する地域で撮影された。動画には、救急隊員が建物から少年を救出し、救急車の座席に座らせる様子が映し出されている。2人の子どもがさらに救急車に乗ってくるまで、少年は放心した様子で1人座っている。その後、救急車には顔中血だらけの男性も乗ってくる。昨年は、溺死したシリア難民のアイラン・クルディちゃん(当時3歳)の写真がソーシャルメディアを駆け巡り、シリア内戦の犠牲者に対する同情が世界的に高まった。

*3-2:http://www.cnn.co.jp/special/interactive/35074449.html
(CNN 2015年11月) ISISを空爆している国はどこか
 パリ同時多発テロの発生後、米国と有志連合は過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の掃討作戦の強化に向けた動きを見せている。米国と有志連合は2014年8月以来、ISISへの攻撃を続けている。ロシアなど有志連合に参加していない国も空爆を行っている。トルコやヨルダン、サウジアラビアといったアラブ諸国も規模は小さいが空爆を実施している。
●米国と有志連合
 米国防総省のカーター長官は下院の委員会で、イラクでの攻撃を増やすため特殊遠征部隊を派遣する方針を示している。米当局者によれば、この決断は、イラクでISISと戦うために展開している米特殊部隊が増強されることを意味している。オバマ米大統領は10月、シリアでの対ISIS作戦の支援に向けて、「50人未満」の特殊部隊を派遣することを承認していた。米国防総省によれば、11月19日までに、米国と有志連合はISISを標的に、イラクで5432回、シリアで2857回、計8289回の空爆を行っている。両国に対する空爆の多くは米国が単独で行った。その数は6471回に上る。米国以外がイラクとシリアで1818回の空爆を行った。有志連合には、英仏のほかにもオーストラリアやベルギー、カナダ、デンマーク、オランダ、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)も参加している。有志連合による空爆の大部分(約66%)はイラクの目標に向けて行われた。イラクとシリアで現在行われている有志連合による空爆について知っていることの多くは、米軍からの情報提供による。空爆は米中央軍(CENTCOM)によって実施されている。米国以外の各国がISIS掃討のための空爆をどれだけ行っているのか正確に知ることは難しい。各国がそれぞれに報告を行い、そのタイムテーブルもばらばらなためだ。有志連合を率いる米国は、情報公開について各国の裁量に任せている。例えば、カナダは、シリアで実施した全ての空爆について報告を行っている。空爆の情報を集めている非営利組織「エアウォーズ」によれば、オーストラリアは毎月報告を行っているが、イラクの正確な目標については情報提供していない。エアウォーズによれば、2014年の晩夏に空爆が始まった当初、フランスの空爆に関する透明性はかなりの水準を目指していたという。仏国防省は24時間以内に空爆について報告を行い、使われた戦闘機や武器、目標などの詳細を明らかにしていた。フランスは現在、週ごとの報告となり、標的の場所もほとんど明らかにされなくなったという。
●ロシアがISISを標的に
 ロシアは今秋、シリアで空爆を開始した。しかし、トルコがロシア機を撃墜した後は複雑な状況となっている。トルコのエルドアン大統領はロシア機は領空を侵犯したと主張。一方、ロシアのプーチン大統領は、ロシア機撃墜について、ISISとの石油密輸を守るためだったとトルコを非難している。プーチン氏によれば、撃墜されたロシア機はシリアでISISへの攻撃を実行しようとしていた。ロシアは9月下旬から10月上旬にかけて、戦闘機や戦車、戦闘ヘリなどをシリアに移送した。ロシア海軍はまた、10月上旬にシリアの目標に対する攻撃を開始した。ロシアはISISを標的に攻撃を行っているとしているが、米国などは、空爆の多くは、ロシアの友好国であるシリアの政府軍と戦う反体制派を攻撃したものだとみている。10月31日、ロシアの旅客機がエジプトで墜落し乗客乗員224人が死亡した。ISISが旅客機を爆破したと犯行声明を出した。パリ同時多発テロの5日後、ロシアはラッカを爆撃した。

*3-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12550433.html (朝日新聞 2016年9月9日) (インタビュー)戦場に立つということ 戦場の心理学の専門家、デーブ・グロスマンさん
 戦場に立たされたとき、人の心はどうなってしまうのか。国家の命令とはいえ、人を殺すことに人は耐えられるものか。軍事心理学の専門家で、長く人間の攻撃心について研究してきた元米陸軍士官学校心理学教授、デーブ・グロスマンさんに聞いた。戦争という圧倒的な暴力が、人間にもたらすものとは。
――戦場で戦うとき、人はどんな感覚に陥るものですか。
 「自分はどこかおかしくなったのか、と思うようなことが起きるのが戦場です。生きるか死ぬかの局面では、異常なまでのストレスから知覚がゆがむことすらある。耳元の大きな銃撃音が聞こえなくなり、動きがスローモーションに見え、視野がトンネルのように狭まる。記憶がすっぽり抜け落ちる人もいます。実戦の経験がないと、わからないでしょうが」
――殺される恐怖が、激しいストレスになるのですね。
 「殺される恐怖より、むしろ殺すことへの抵抗感です。殺せば、その重い体験を引きずって生きていかねばならない。でも殺さなければ、そいつが戦友を殺し、部隊を滅ぼすかもしれない。殺しても殺さなくても大変なことになる。これを私は『兵士のジレンマ』と呼んでいます」「この抵抗感をデータで裏付けたのが米陸軍のマーシャル准将でした。第2次大戦中、日本やドイツで接近戦を体験した米兵に『いつ』『何を』撃ったのかと聞いて回った。驚いたことに、わざと当て損なったり、敵のいない方角に撃ったりした兵士が大勢いて、姿の見える敵に発砲していた小銃手は、わずか15~20%でした。いざという瞬間、事実上の良心的兵役拒否者が続出していたのです」
――なぜでしょう。
 「同種殺しへの抵抗感からです。それが人間の本能なのです。多くは至近距離で人を殺せるようには生まれついていない。それに文明社会では幼いころから、命を奪うことは恐ろしいことだと教わって育ちますから」「発砲率の低さは軍にとって衝撃的で、訓練を見直す転機となりました。まず射撃で狙う標的を、従来の丸型から人型のリアルなものに換えた。それが目の前に飛び出し、弾が当たれば倒れる。成績がいいと休暇が3日もらえたりする。条件付けです。刺激―反応、刺激―反応と何百回も射撃を繰り返すうちに、意識的な思考を伴わずに撃てるようになる。発砲率は朝鮮戦争で50~55%、ベトナム戦争で95%前後に上がりました」
    ■     ■
――訓練のやり方次第で、人は変えられるということですか。
 「その通り。戦場の革命です。心身を追い込む訓練でストレス耐性をつけ、心理的課題もあらかじめ解決しておく。現代の訓練をもってすれば、我々は戦場において驚くほどの優越性を得ることができます。敵を100人倒し、かつ我々の犠牲はゼロというような圧倒的な戦いもできるのです」「ただし、無差別殺人者を養成しているわけではない。上官の命令に従い、一定のルールのもとで殺人の任務を遂行するのですから。この違いは重要です。実際、イラクやアフガニスタン戦争の帰還兵たちが平時に殺人を犯す比率は、戦争に参加しなかった同世代の若者に比べてはるかに低い」
――技術進歩で戦争の形が変わり、殺人への抵抗感が薄れている面もあるのでは?
 「ドローンを飛ばし、遠隔操作で攻撃するテレビゲーム型の戦闘が戦争の性格を変えたのは確かです。人は敵との間に距離があり、機械が介在するとき、殺人への抵抗感が著しく低下しますから」「しかし接近戦は、私の感覚ではむしろ増えています。いま最大の敵であるテロリストたちは、正面から火砲で攻撃なんかしてこない。我々の技術を乗り越え、こっそり近づき、即席爆弾を爆破させます。最前線の対テロ戦争は、とても近い戦いなのです」
――本能に反する行為だから、心が傷つくのではありませんか。
 「敵を殺した直後には、任務を果たして生き残ったという陶酔感を感じるものです。次に罪悪感や嘔吐(おうと)感がやってくる。最後に、人を殺したことを合理化し、受け入れる段階が訪れる。ここで失敗するとPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症しやすい」「国家は無垢(むく)で未経験の若者を訓練し、心理的に操作して戦場に送り出してきました。しかし、ベトナム戦争で大失敗をした。徴兵制によって戦場に送り込んだのは、まったく準備のできていない若者たちでした。彼らは帰国後、つばを吐かれ、人殺しとまで呼ばれた。未熟な青年が何の脅威でもない人を殺すよう強いられ、その任務で非難されたら、心に傷を負うのは当たり前です」「PTSDにつながる要素は三つ。(1)幼児期に健康に育ったか(2)戦闘体験の衝撃度の度合い(3)帰国後に十分なサポートを受けたか、です。たとえば幼児期の虐待で、すでにトラウマを抱えていた兵士が戦場で罪のない民を虐殺すれば、リスクは高まる。3要素のかけ算になるのです」
――防衛のために戦う場合と、他国に出て戦う場合とでは、兵士の心理も違うと思うのですが。
 「その通り。第2次大戦中、カナダは国内には徴兵した兵士を展開し、海外には志願兵を送りました。成熟した志願兵なら、たとえ戦場体験が衝撃的なものであったとしても、帰還後に社会から称賛されたりすれば、さほど心の負担にはならない。もし日本が自衛隊を海外に送るなら、望んだもののみを送るべきだし、望まないものは名誉をもって抜ける選択肢が与えられるべきです」「ただ、21世紀はテロリストとの非対称的な戦争の時代です。国と国が戦った20世紀とは違う。もしも彼らが核を入手したら、すぐに使うでしょう。いま国を守るとは、自国に要塞(ようさい)を築き、攻撃を受けて初めて反撃することではない。こちらから敵の拠点をたたき、打ち負かす必要がある。これが世界の現実です」
――でも日本は米国のような軍事大国と違って、戦後ずっと専守防衛でやってきた平和国家です。
 「我々もベトナム戦争で学んだことがあります。世論が支持しない戦争には兵士を送らないという原則です。国防長官の名から、ワインバーガー・ドクトリンと呼ばれている。国家が国民に戦えと命じるとき、その戦争について世論が大きく分裂していないこと。もしも兵を送るなら彼らを全力で支援すること。これが最低限の条件だといえるでしょう」
     ■     ■
――気になっているのですが、腰につけたふくらんだポーチには何が入っているのですか。
 「短銃です。私はいつも武装しています。いつでも立ち上がる用意のある市民がいる間は、政府は国民が望まないことを強制することはできない。武器を持つ、憲法にも認められたこの権利こそが、専制への最大の防御なのです」
――でも銃があふれているから銃撃事件が頻発しているのでは?
 「日本の障害者施設で最近起きた大量殺人ではナイフが使われたそうですね。我々は市民からナイフを取り上げるべきでしょうか」
――現代の戦争とは。
 「戦闘は進化しています。火砲の攻撃力は以前とは比較にならないほど強く、精密度も上がり、兵士はかつてなかったほど躊躇(ちゅうちょ)なく殺人を行える。志願兵が十分に訓練され、絆を深めた部隊単位で戦っている限り、PTSDの発症率も5~8%に抑えられます」「一方で、いまは誰もがカメラを持っていて、いつでも撮影し、ネットに流すことができる時代です。ベトナム戦争さなかの1968年、ソンミ村の村民500人を米軍が虐殺した事件の映像がもしも夜のニュースで流れていたら、米国民は怒り、大騒ぎになっていたでしょう。現代の戦争は、社会に計り知れないダメージを与えるリスクも抱えているのです」
     *
 Dave Grossman 1956年生まれ。米陸軍退役中佐。陸軍士官学校・心理学教授、アーカンソー州立大学・軍事学教授をへて、98年から殺人学研究所所長。著書に「戦争における『人殺し』の心理学」など。
■戦闘がもたらすトラウマ深刻 一橋大学特任講師・中村江里さん
 米国では、戦場の現実をリアルな視点からとらえる軍事心理学や軍事精神医学の研究が盛んで、グロスマンさんもこの観点から兵士の心理を考えています。根底にあるのは、いかに兵士を効率的に戦わせるかという意識です。兵士が心身ともに健康で、きちんと軍務を果たしてくれることが、軍と国家には重要なわけです。しかし、軍事医学が関心を注ぐ主な対象は、戦闘を遂行している兵士の「いま」の健康です。その後の長い人生に及ぼす影響まで、考慮しているとは思えません。私自身、イラク帰還米兵の証言やアートを紹介するプロジェクトに関わって知ったのですが、イラクで戦争の大義に疑問を抱き、帰還後に良心の呵責(かしゃく)に苦しんでいる若者は大勢います。自殺した帰還兵のほうが、戦闘で死んだ米兵より多いというデータもある。戦場では地元民も多く巻き添えになり苦しんでいるのに、そのトラウマもまったく考慮されない。軍事医学には国境があるのです。一方で、日本には戦争の現実を直視しない傾向がありました。戦後、米軍の研究に接した日本の元軍医は、兵士が恐怖心を表に出すのを米軍が重視していたことに驚いていた。旧日本軍は「恥」として否定していましたから。口に出せず、抑え込まれた感情は結局、手足の震えや、声が出ないといった形で表れ、「戦争神経症」の症状を示す兵士は日中戦争以降、問題化していました。その存在が極力隠されたのは、心の病は国民精神の堕落の象徴と位置づけられたためです。こうした病は「皇軍」には存在しない、とまで報じられた。精神主義が影を落としていたわけです。戦争による心の傷は、戦後も長らく「見えない問題」のままでした。トラウマやPTSDという言葉が人々の関心を集め始めたのは1995年の阪神・淡路大震災がきっかけです。激戦だった沖縄戦や被爆地について、心の傷という観点から研究が広がったのもそれ以降。戦争への忌避感がそれほど強かったからでしょう。昨年の安保関連法制定により、自衛隊はますます「戦える」組織へと変貌(へんぼう)しつつあります。「敵」と殺し殺される関係に陥ったとき、人の心や社会にはどんな影響がもたらされるのか。私たちも知っておくべきでしょう。暴力が存在するところでは、トラウマは決してなくならないのですから。
     *
なかむらえり 1982年生まれ。専門は日本近現代史。旧日本軍の戦争神経症を題材にした新著を執筆中。
■取材を終えて
 戦場に立つということは、これほどまでに凄(すさ)まじいことなのだと思った。ただ、米国民がこぞって支持したイラク戦争では結局、大量破壊兵器は見つからず、「イスラム国」誕生につながったことも指摘しておきたい。日本が今後、集団的自衛権を行使し、米国と一心同体となっていけば、まさに泥沼の「テロとの戦い」に引き込まれ、手足として使われる恐れを強く感じる。やはり、どこかに太い一線を引いておくべきではないだろうか。一生残る心の傷を、若者たちに負わせないためにも。

<日本の武器輸出>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11958784.html
(朝日新聞 2015年9月11日) 経団連「武器輸出推進を」
 提言では、審議中の安全保障関連法案が成立すれば、自衛隊の国際的な役割が拡大するとし、「防衛産業の役割は一層高まり、その基盤の維持・強化には中長期的な展望が必要」と指摘。防衛装備庁に対し、「適正な予算確保」や人員充実のほか、装備品の調達や生産、輸出の促進を求めた。

*4-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11994297.html
(朝日新聞社説 2015年10月2日) 防衛装備庁 なし崩し許さぬ監視を
 防衛省の外局となる防衛装備庁がきのう発足した。これまで陸海空の自衛隊などがバラバラに扱っていた武器の研究開発から購入、民間企業による武器輸出の窓口役まで一元的に担うことになる。とりわけ気がかりなのが、武器輸出の行方だ。安倍政権は昨春、「武器輸出三原則」を撤廃し、「防衛装備移転三原則」を決定した。一定の基準を満たせば、武器輸出や国際的な共同開発・生産を解禁するもので、装備庁はその中心となる。安保法制の成立で自衛隊の活動範囲を地球規模に拡大したことと合わせ、戦後日本の平和主義を転換させる安倍政権の安保政策の一環といえる。問題は武器購入や輸出という特殊な分野で、いかに監視を機能させるかだ。技術の専門性が高いうえに機密の壁もあり、外部からの監視が届きにくい。輸出した武器がどう扱われるか、海外での監視は難しい。新原則では「平和貢献や日本の安全保障に資する場合などに限定し、厳格に審査する」としているが、実効性は保てるのか。米国製兵器の購入をめぐる費用対効果も問われる。今年の概算要求でも、新型輸送機オスプレイや滞空型無人機グローバルホークなど高額兵器の購入が目白押しだ。米国への配慮から採算を度外視することはないか。かねて自衛隊と防衛産業は、天下りを通じた「防衛ムラ」と呼ばれる癒着構造が指摘され、コスト高にもつながってきた。そこに手をつけないまま、2兆円の予算を握る巨大官庁が誕生した。高額の武器取引が腐敗の温床とならないように、透明性をどう確保していくか。装備庁には「監察監査・評価官」を長とする20人規模の組織ができたが、いずれも防衛省の職員である。身内のチェックでは足りないのは明らかだ。武器の購入や輸出は装備庁だけでなく、政府全体の判断となる。ビジネスの好機とみた経団連は先月、「防衛装備品の海外移転は国家戦略として推進すべきだ」との提言をまとめ、政府に働きかけている。しかし、戦後の歴代内閣が曲がりなりにもとってきた抑制的な安保政策は、多くの国民の理解にもとづくものだ。経済の論理を優先させ、日本の安保政策の節度をなし崩しに失う結果になってはならない。何よりも国会による監視が、これまで以上に重要になる。

<安保法と共謀罪>
*5-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150428&ng=DGKKASFS27H6F_X20C15A4MM8000 (日経新聞 2015.4.28) 日米、世界で安保協力 指針18年ぶり改定、新法制も与党実質合意
 日米両政府は27日午前(日本時間28日未明)、防衛協力のための指針(ガイドライン)を改定した。中国による海洋進出など安全保障環境の変化を受け、日米がアジア太平洋を越えた地域で連携し、平時から有事まで切れ目なく対処する。与党はこれを裏付ける新たな安保法制で実質合意。自衛隊の活動を制限してきた日米協力は転機を迎えた。日米両政府がニューヨーク市内で開いた外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)で合意した。日本側から岸田文雄外相と中谷元・防衛相、米側はケリー国務長官、カーター国防長官が出席。指針改定は18年ぶり。関連の共同文書も発表した。指針改定は「アジア太平洋地域およびこれを越えた地域が安定し平和で繁栄したものになる」ことを目的とし、日米の安保協力を拡大。自衛隊による米軍支援をさらに大幅に広げる。ケリー氏は協議後の共同記者会見で、指針改定を「歴史的な転換点」と指摘。沖縄県・尖閣諸島が日米安全保障条約5条の適用範囲にあると強調した。岸田文雄外相は「内外に日米の強い同盟関係を示すことができた」と述べた。日米同盟は1951年締結の安保条約で始まり、60年の改定で米国の日本防衛義務を明記。日米指針は冷戦下に旧ソ連への対処、97年改定で北朝鮮の脅威などに対応するものに変わってきた。ただ、活動地域や協力内容を厳しく制約した。今回の指針改定は安保法制をめぐる与党協議が先行。与党合意を反映した協力項目を列挙し、制約を大幅に緩和した。たとえば「日本周辺」としていた後方支援の範囲を日本の平和や安全に重要な影響を及ぼすようなケースと再定義。日本周辺以外で他国軍への給油などの後方支援ができる。米軍による日本防衛に重点を置いた協力から地理的制約を設けずに共同対処や国際貢献を可能にする協力体制を築く。日本が直接攻撃を受けていなくても米国などへの攻撃に対処できるようにする集団的自衛権の行使にあたる協力も、安保法制の与党合意に沿って盛り込んだ。直接の武力攻撃を受けた際に最小限度の武力行使を認めていた戦後の安保政策の転換を一段と進めた。集団的自衛権行使の具体例では、中東・ホルムズ海峡や南シナ海など海上交通路での機雷掃海、強制的な船舶検査を明示。武力攻撃事態対処では尖閣諸島などを念頭に、日米共同で島しょ防衛にあたるとした。与党は27日、武力攻撃事態法改正案など法改正案10本と新法案1本を実質合意。政府は5月半ばに関連法案を国会提出し、早期成立を目指す。

*5-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJ3X5VM0J3XUTFK00P.html
(朝日新聞 2016年3月29日) 安保法が施行 集団的自衛権容認、専守防衛を大きく転換
 集団的自衛権を行使できるようにする安全保障関連法が29日、施行された。自衛隊の海外での武力行使や、米軍など他国軍への後方支援を世界中で可能とし、戦後日本が維持してきた「専守防衛」の政策を大きく転換した。民進、共産など野党は集団的自衛権の行使容認を憲法違反と批判。安保法廃止で一致し、夏の参院選の争点に据える。安保法は、昨年9月の通常国会で、自民、公明両党が採決を強行し、成立した。集団的自衛権行使を認める改正武力攻撃事態法など10法を束ねた一括法「平和安全法制整備法」と、自衛隊をいつでも海外に派遣できる恒久法「国際平和支援法」の2本からなる。戦後の歴代政権は、集団的自衛権行使を認めてこなかった。しかし安保法により、政府が日本の存立が脅かされる明白な危険がある「存立危機事態」と認定すれば、日本が直接武力攻撃されなくても、自衛隊の武力行使が可能になった。自衛隊が戦争中の他国軍を後方支援できる範囲も格段に広がった。安倍晋三首相は日本の安全保障環境の悪化を挙げて法成立を急いだ。しかし、国連平和維持活動(PKO)での「駆けつけ警護」や平時から米艦船などを守る「武器等防護」をはじめ、同法に基づく自衛隊への新たな任務の付与は、夏以降に先送りする。念頭にあるのは、今夏の参院選だ。世論の反対がなお強いなかで、安保法を具体的に適用すれば、注目を集めて参院選に影響する。そうした事態を避ける狙いがある。その一方で、安保法を踏まえた日米防衛協力のための指針(ガイドライン)に基づき「同盟調整メカニズム」が始動。自衛隊と米軍の連絡調整は一層緊密化した。今年1月以降の北朝鮮の核実験やミサイル発射を受け、首相は「日米は従来よりも増して緊密に連携して対応できた」と安保法の効果を強調した。ただ、日米の現場で交わされる情報の多くは軍事機密に当たり、特定秘密保護法で厳重に隠されている。中谷元・防衛相は28日、防衛省幹部に「隊員の安全確保のため、引き続き慎重を期して準備作業、教育訓練を進めてほしい」と訓示した。自衛隊は今後、部隊行動基準や武器使用規範を改定し、それに従った訓練を行う。民進党に合流する前の民主、維新両党は2月、安保法の対案として「領域警備法案」などを国会に提出。共産党など他の野党とは「集団的自衛権の行使容認は違憲」との点で一致し、安保法廃止法案も提出している。首相は野党連携に対し、「安全保障に無責任な勢力」と批判を強める。安保法をどう見るかは、今夏の参院選で大きな争点となる。
■安全保障関連法の主な法律
・集団的自衛権の行使を認める改正武力攻撃事態法
・地球規模で米軍などを後方支援できる重要影響事態法
・平時でも米艦防護を可能とする改正自衛隊法
・武器使用基準を緩め、「駆けつけ警護」や「治安維持任務」を可能とする改正PKO協力法
・他国軍の後方支援のために自衛隊をいつでも派遣可能にする国際平和支援法(新法)

*5-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12740997.html (朝日新聞 2017年1月11日) 「共謀罪」絞り込み、焦点 676の罪対象、テロ関連は167件 通常国会で議論へ
 菅義偉官房長官は10日、衆参両院の議院運営委員会理事会で、通常国会を20日に召集する方針を伝えた。犯罪の計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する法案が大きな焦点で、政府の原案で676に上る対象犯罪の数が与党協議や国会審議の論点となりそうだ。自民党の二階俊博幹事長は10日の記者会見で、法案成立への意欲を見せた。「テロに対する対策をしっかり講じておかないといけない。提案する以上は、できれば今国会で(成立)ということになる」。「共謀罪」関連法案は過去3回にわたり提出されたが、捜査当局の拡大解釈によって「一般の市民団体や労働組合も対象になる」「内心や思想を理由に処罰される」との批判を浴び、廃案になっていた。政府は当初、昨年の臨時国会に提出する方針だった。結局は環太平洋経済連携協定(TPP)の国会承認に万全を期すとして見送ったが、長年の懸案である国際組織犯罪防止条約を締結する上で、国内法の整備が必要だとして法案の成立にこだわる。条約を結べば、テロの計画段階で処罰する法律を持つ締結国と同じレベルで、日本でも準備行為での取り締まりを行うことや、国際的な組織犯罪に対する捜査協力が可能になる。法務省幹部は「今のままでは国際的な信頼を欠く」と話す。今回の法案では、過去の法案で適用対象とした「団体」から、テロ組織や暴力団、振り込め詐欺グループなどを想定した「組織的犯罪集団」に限定。さらに、犯罪を実行するための「準備行為」をすることを、法を適用する要件に追加した。具体的には、凶器を買う資金の調達や犯行現場の下見などが当たるという。適用の条件を厳しくしたといえるが、対象犯罪は「懲役・禁錮4年以上の刑が定められた重大な犯罪」としたため、犯罪の数は676になった。政府内部では「テロに関する罪」や「組織的犯罪集団の資金源に関する罪」などに分類されているが、「テロに関する罪」と位置付けられたのは167で、全体の4分の1にすぎない。法案に反対する日本弁護士連合会は昨年に発表した会長声明で「条約の締結のために新たに共謀罪を導入する必要はなく、条約は経済的な組織犯罪を対象とするもので、テロ対策とは無関係だ」と指摘している。
■提出時期も難題
 国会審議は夏の東京都議選の直前の時期に重なる。公明党はテロ対策としての法整備の必要性は認めているが、「対象はまだかなり広い。テロに限定するなら600超も必要はない」(党幹部)との立場。法案提出前の与党協議で対象を絞り込みたい考えだ。だが、外務省幹部は対象犯罪を限定すれば、条約締結自体ができなくなる恐れがあるとみて、「世界基準に日本だけ合わせなくてもいいのか」と絞り込みに難色を示している。一方、民進党の蓮舫代表は8日のNHK番組で「3回も廃案になった法案がほとんど中身を変えずに出てくるのは立法府の軽視だ」と指摘したが、党内の論議はこれからだ。民主党時代は「5年を超える懲役・禁錮」で国際的な犯罪に限定するよう修正提案をした経緯があり、党内に一定の賛成派を抱える。党の意見集約とともに、与党との修正協議に応じるかが課題となる。共産党の小池晃書記局長は10日の記者会見で「治安維持法の現代版とも言える大悪法」と批判、反対を鮮明にしている。国会の会期は国会法に定める150日間で、6月18日まで。直後に都議選を抱えるため大幅延長は難しい。天皇陛下の退位をめぐる法整備を抱える国会でもあるため、政府与党にとっては衣替えした「共謀罪」法案の提出時期や審議の進め方の見極めも難しそうだ。
■テロ等準備罪の対象となる676の「重大な犯罪」
◇組織的犯罪集団の資金源に関する罪(339)
 強盗、詐欺、犯罪収益等隠匿など
◇テロに関する罪(167)
 殺人、放火、化学兵器使用による毒性物質等の発散、テロ資金の提供など
◇薬物に関する罪(49)
 覚醒剤の製造・密輸など
◇人身に関する罪(43)
 人身売買、営利目的等略取・誘拐など
◇司法の妨害に関する罪(27)
 偽証、組織的な犯罪における犯人蔵匿など
◇その他(10)
〈政府資料などによる。このほか、「組織的犯罪集団」による犯罪の計画にはあたらないものの、「懲役・禁錮4年以上の刑」にあたるために対象に数える罪(過失犯など)が41ある〉

*5-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/392819 (佐賀新聞 2017年1月6日) 「共謀罪」通常国会提出 首相、東京五輪対策へ、捜査機関の乱用で人権侵害も不安視
 安倍晋三首相は5日、テロ対策強化に向けて「共謀罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を、今月20日召集の通常国会に提出する方針を固めた。2020年の東京五輪・パラリンピックを見据え、国際的なテロに備えるためにも法整備が必要だと判断した。官邸は自民党幹部に提出方針を伝達。共謀罪を巡っては、捜査機関の職権乱用による人権侵害を不安視する声があり、日弁連などが反対している。共謀罪は国会で過去に3度、廃案になった経緯がある。当初は重大犯罪の謀議に加わると罪に問われる内容だった。政府は昨年秋の臨時国会提出を見送り、罪の名称や構成要件の見直しを進めていた。罪名は「テロ等組織犯罪準備罪」に変更した上で、対象を「組織的犯罪集団」に限定し、単なる共謀だけでなく「準備行為」も要件に加える案で調整している。菅義偉官房長官は5日の記者会見で、東京五輪が3年後となることに触れ、国際組織犯罪防止条約に基づいて各国と連携するため、法整備が不可欠と訴えた。「テロを含む組織犯罪を未然に防ぐため、万全の体制を整えることが必要だ」と述べた。民進党や共産党は反対するとみられ、国会審議で議論となりそうだ。首相は政府与党連絡会議で、通常国会での重要法案成立に向けて万全を期すよう与党側に要請した。自民党の二階俊博幹事長は会見で改正案について「政府は名称も変更し、極端な誤解を生まないよう配慮している」と指摘し、成立へ努力する考えを示した。
=ズーム 国際組織犯罪防止条約=
 国際組織犯罪防止条約 複数の国にまたがる組織犯罪を防ぐため、各国が協調して法の網を国際的に広げるための条約。重大犯罪の共謀や、犯罪で得た資金の洗浄(マネーロンダリング)の取り締まりを義務付けている。国連総会で2000年11月に採択。12月にイタリア・パレルモで条約署名会議が開かれ、日本も署名した。政府は「共謀罪」の法整備が条約締結の要件だとして組織犯罪処罰法改正を目指すが、成立に至っていない。世界180以上の締結国全てが法整備したわけではないとの指摘もある。


PS(2017年1月14日追加):*6の琉球新報社説記事に、論点が網羅されていた。私も、国民のプライバシーに土足で政府が侵入し、戦前の治安維持法のような監視社会になることを危惧している。

*6:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-423394.html
(琉球新報社説 2017年1月7日) 共謀罪提出へ 監視招く悪法は必要ない
 罪名を言い換える印象操作をしても悪法は悪法だ。思想・信条の自由を侵す危うさは消えない。安倍晋三首相はテロ対策強化を名目に「共謀罪」の新設を柱とする組織犯罪処罰法改正案を今月20日召集の通常国会に提出する方針を固めた。2020年の東京五輪・パラリンピックを見据え、国際的なテロに備えるために法整備が必要だと説明する。しかし、現行刑法でも予備罪や陰謀罪など処罰する仕組みはあり「共謀罪」の新設は必要ない。治安維持法の下で言論や思想が弾圧された戦前、戦中の反省を踏まえ、日本の刑法は犯罪が実行された「既遂」を罰する原則がある。しかし共謀罪とは、実行行為がなくても犯罪を行う合意が成立するだけで処罰する。日本の刑法体系に反するものである。通常は共謀が密室で誰も知らないところで行われることを考えると、合意の成立を認定することは難しい。いかなる場合に合意が成立したのかが曖昧になり、捜査機関の恣意(しい)的な運用を招く恐れがある。捜査機関の拡大解釈で市民運動や労働組合が摘発対象になる可能性もある。共謀罪を摘発するための捜査手法として尾行のほか、おとり捜査や潜入捜査が考えられる。それだけでなく2016年5月に通信傍受法を改正して、組織犯罪だけでなく一般犯罪まで傍受対象範囲を広げている。15年6月には裁判官の令状があれば、捜査機関が本人が知らないうちにGPS機能を利用した位置情報を取得できるようになった。法制審議会では室内に盗聴器を仕掛ける室内盗聴の導入についても議論している。法務省は「共謀段階での摘発が可能となり、重大犯罪から国民を守ることができる」と必要性を訴えるが、むしろ国民のプライバシーが根こそぎ政府に把握される恐れがある。政府は今回、罪名を「共謀罪」から「テロ等組織犯罪準備罪」に言い換え、対象を「組織的犯罪集団」に限定したと説明する。しかし、合意の成立だけで犯罪が成立するという点は変わらない。組織犯罪処罰法案が成立すれば、既に成立している特定秘密保護法などと組み合わせて、戦前の治安維持法のように運用される恐れがある。戦前のような監視社会に逆戻りさせてはならない。


PS(2017年1月17日追加):*7-1のように、「共謀罪の構成要件を変えた“テロ等準備罪”を新設する法案について、政府が対象犯罪の数を300程度に絞り込む方向で検討している」とのことだが、*7-2のように、日弁連共謀罪法案対策本部は「どのような修正を加えても、共謀罪を新設すれば刑事法体系を変えてしまう」としており、私もそのとおりだと考える。また、*7-1で、菅官房長官は「共謀罪で一般の方々が対象になることはない」としているが、*7-2のように、実行されていない共謀罪を取り締まるためには、司法取引による刑事免責、おとり捜査(潜入捜査)、通信傍受等を行うため、一般の人が捜査に巻き込まれることが普通になる。また、「政府に反対表明している人は、“一般の人”には入らない」という運用もありうる。そのため、*7-2に書かれているとおり、国連越境組織犯罪防止条約締結のために刑法の理念や日本国憲法を無視する「共謀罪」を設置してはならないと考える。

*7-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK1J7X5JK1JUTIL047.html?iref=comtop_list_pol_n02 (朝日新聞 2017年1月17日) 「共謀罪」対象、約300に 政府検討、原案の半数以下
 犯罪の計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する法案について、政府が対象犯罪の数を原案の676から半数以下の300程度に絞り込む方向で検討していることが16日、分かった。与党内の協議で今後さらに調整した上で、政府は20日召集の通常国会に法案を提出する方針。
●共謀罪「一般の方々が対象、あり得ない」 菅官房長官
 政府は、日本が「国際組織犯罪防止条約」を締結するために必要な国内法整備として、法案の成立を目指している。条約は「懲役・禁錮4年以上の刑が定められた重大な犯罪」を対象とするよう求めており、対象犯罪数は676に上った。これに対し、与党・公明党からも対象犯罪数の絞り込みを求める声が上がり、政府は「組織的犯罪集団」によって行われることが想定される犯罪を中心に、対象犯罪を絞り込む方向で調整を始めた。

*7-2:http://www.nichibenren.or.jp/activity/criminal/complicity.html (日弁連共謀罪法案対策本部) 日弁連は共謀罪に反対します
 「共謀罪」が、国連越境組織犯罪防止条約を理由に制定されようとしており、法案は、2003年の第156回通常国会で最初に審議されました。その後二度の廃案を経て、2005年の第163回特別国会に再度上程され、継続審議の扱いとなり、第165回臨時国会においても、幾度とない審議入り即日強行採決の危機を乗り越えて継続審議となり、第170回臨時国会においても継続審議となりました。そして、2009年7月21日の衆議院解散で第171回通常国会閉幕により審議未了廃案となりました。今後も予断を許さない状況が続くことが予想されます。日弁連は、共謀罪の立法に強く反対し、引き続き運動を展開していきます。詳細はこちらのページをご覧ください。
・パンフレット「合意したら犯罪?合意だけで処罰?―日弁連は共謀罪に反対します!!―」
●共謀罪なしで国連越境組織犯罪防止条約は批准できます
 日弁連は、2006年9月14日の理事会にて、「共謀罪新設に関する意見書」を採択し、2012年4月13日の理事会にて、新たに「共謀罪の創設に反対する意見書」を採択いたしました。
・共謀罪の創設に反対する意見書(2012年)
・共謀罪新設に関する意見書(2006年)
●共謀罪の基本問題
 政府は、共謀罪新設の提案は、専ら、国連越境組織犯罪防止条約を批准するためと説明し、この立法をしないと条約の批准は不可能で、国際的にも批判を浴びるとしてきました。法務省は、条約審議の場で、共謀罪の制定が我が国の国内法の原則と両立しないことを明言していました。刑法では、法益侵害に対する危険性がある行為を処罰するのが原則で、未遂や予備の処罰でさえ例外とされています。ところが、予備よりもはるかに以前の段階の行為を共謀罪として処罰しようとしています。どのような修正を加えても、刑法犯を含めて600を超える犯罪について共謀罪を新設することは、刑事法体系を変えてしまいます。現在の共謀共同正犯においては、「黙示の共謀」が認められています。共謀罪ができれば、「黙示の共謀」で共謀罪成立とされてしまい、処罰範囲が著しく拡大するおそれがあります。共謀罪を実効的に取り締まるためには、刑事免責、おとり捜査(潜入捜査)、通信傍受法の改正による対象犯罪等の拡大や手続の緩和が必然となります。この間の国会における審議とマスコミの報道などを通じて、共謀罪新設の是非が多くの国民の関心と議論の対象となり、共謀罪の新設を提案する法案を取り巻く環境は、根本的に変わっています。
●国連越境組織犯罪防止条約は締約国に何を求めているのでしょうか
 国連越境組織犯罪防止条約第34条第1項は、国内法の基本原則に基づく国内法化を行えばよいことを定めています。国連の立法ガイドによれば、国連越境組織犯罪防止条約の文言通りの共謀罪立法をすることは求められておらず、国連越境組織犯罪防止条約第5条は締約国に組織犯罪対策のために未遂以前の段階での対応を可能とする立法措置を求められているものと理解されます。
●条約の批准について
 国連が条約の批准の適否を審査するわけではありません。条約の批准とは、条約締結国となる旨の主権国家の一方的な意思の表明であって、条約の批准にあたって国連による審査という手続は存在しません。国連越境組織犯罪防止条約の実施のために、同条約第32条に基づいて設置された締約国会議の目的は、国際協力、情報交換、地域機関・非政府組織との協力、実施状況 の定期的検討、条約実施の改善のための勧告に限定されていて(同条第3項)、批准の適否の審査などの権能は当然もっていません。
●国連越境組織犯罪防止条約を批准した各国は、どのように対応しているのでしょうか
 第164回通常国会では、世界各国の国内法の整備状況について、国会で質問がなされましたが、政府は、「わからない」としてほとんど説明がなされませんでした。この点について、日弁連の国際室の調査によって次のような事実が明らかになりました。新たな共謀罪立法を行ったことが確認された国は、ノルウェーなどごくわずかです。アメリカ合衆国は、州法では極めて限定された共謀罪しか定めていない場合があるとして国連越境組織犯罪防止条約について州での立法の必要がないようにするため、留保を行っています。セントクリストファー・ネーヴィスは、越境性を要件とした共謀罪を制定して、留保なしで国連越境組織犯罪防止条約を批准しています。
●新たな共謀罪立法なしで国連越境組織犯罪防止条約を批准することはできます
 我が国においては、組織犯罪集団の関与する犯罪行為については、未遂前の段階で取り締まることができる各種予備・共謀罪が合計で58あり、凶器準備集合罪など独立罪として重大犯罪の予備的段階を処罰しているものを含めれば重大犯罪についての、未遂以前の処罰がかなり行われています。刑法の共犯規定が存在し、また、その当否はともかくとして、共謀共同正犯を認める判例もあるので、犯罪行為に参加する行為については、実際には相当な範囲の共犯処罰が可能となっています。テロ防止のための国連条約のほとんどが批准され、国内法化されています。銃砲刀剣の厳重な所持制限など、アメリカよりも規制が強化されている領域もあります。以上のことから、新たな立法を要することなく、国連の立法ガイドが求めている組織犯罪を有効に抑止できる法制度はすでに確立されているといえます。政府が提案している法案や与党の修正試案で提案されている共謀罪の新設をすることなく、国連越境組織犯罪防止条約の批准をすることが可能であり、共謀罪の新設はすべきではありません。
●法務省ホームページに掲載されている文書について
 法務省ホームページ上に「『組織的な犯罪の共謀罪』に対する御懸念について」と題するコーナーがあります。同コーナーの文書で挙げられている点に絞って、疑問点を指摘します。
「共謀罪」に関する法務省ホームページの記載について(2006年5月8日)(PDFファイル;129KB)
日弁連が意見書などで指摘している点について、法務省が2006年10月16日付けで以下文書をホームページに掲載しています。
・「組織的な犯罪の共謀罪」の創設が条約上の義務であることについて
・現行法のままでも条約を締結できるのではないかとの指摘について
・条約の交渉過程での共謀罪に関する政府の発言について
・条約の交渉過程における参加罪に関する日本の提案について
・参加罪を選択しなかった理由
これらの文書で挙げられている点に絞って、疑問点を指摘します。
●外務省ホームページに掲載されている文書について
 日弁連などの調査により、アメリカ合衆国は、州法では極めて限定された共謀罪しか定めていない場合があるとして国連越境組織犯罪防止条約について州での立法の必要がないようにするため、留保を行っているということがわかりました。この点について、外務省が2006年10月11日付けで「米国の留保についての政府の考え方」と題する文書を掲載しています。この文書で挙げられている点に絞って、疑問点を指摘します。10月11日に外務省ホームページに掲載された米国が国連越境組織犯罪防止条約に関して行った留保に関する文書(「米国の留保についての政府の考え方」)について(PDFファイル;26KB)
●意見書、会長声明等
・いわゆる共謀罪法案の国会への提出に反対する会長声明(2016年8月31日)
・共謀罪の創設に反対する意見書(2012年4月13日)
・「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008」に関する意見書(2009年1月16日)
・共謀罪新設に関する意見書(2006年9月14日)
・「共謀罪」に関する与党再修正案に対するコメント(2006年5月15日)
・共謀罪与党修正案についての会長声明(2006年4月21日)
・共謀罪が継続審議とされたことについての会長談話(2005年11月1日)
・国連「越境組織犯罪防止条約」締結にともなう国内法整備に関する意見書(2003年1月20日)
 (以下略)


PS(2017年1月20日追加):政府は「国際組織犯罪防止条約の締結のため、国内法の整備が必要だ」としてきたが、*8のように、外務省は「既に条約を結んでいる国・地域のうち、条約締結のため新たに『共謀罪』を設けたことを把握しているのはノルウェーとブルガリアだけで、自信を持って説明できる国は限られる」としている。消費税増税や年金・医療などの社会保障削減も含め、政府は根拠なきことを理由にやりたい政策を推進しようとし、メディアもその片棒を担いでいるが、その基にあるのは、「何を言ってもわからないだろう」という国民を馬鹿にした態度だ。しかし、実際には、現在の日本国民は、政治家や行政官の経験しかないジェネラリストよりも専門性や経験を持ち、それぞれの分野で深く分析できる人が多くなっているため、それらの意見を“ポピュリズム(衆愚)”として無視することこそが問題なのだ。

*8:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12755902.html (朝日新聞 2017年1月20日) 「共謀罪」新設、2国だけ 外務省説明、条約締結に必要なはずが
 犯罪の計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する法案をめぐり、外務省は19日、他国の法整備の状況を明らかにした。政府は「国際組織犯罪防止条約の締結のため、国内法の整備が必要だ」としているが、すでに条約を結ぶ187の国・地域のうち、締結に際して新たに「共謀罪」を設けたことを外務省が把握しているのは、ノルウェーとブルガリアだけだという。民進党内の会議で外務省が説明した。英国と米国はもともと国内にあった法律の「共謀罪」で対応。フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、中国、韓国は「参加罪」で対応した。カナダはすでに「共謀罪」があったが、条約の締結に向けて新たに「参加罪」も設けたという。民進党は187カ国・地域の一覧表を出すよう求めていたが、外務省の担当者は会議で「政府としては納得のいく精査をしたものしか出せない。自信を持って説明できる国は限られている」と述べた。政府はこれまで、条約締結のためには「共謀罪」か、組織的な犯罪集団の活動への「参加罪」が必要だと説明してきた。20日召集の通常国会に法案を提出する方針だ。


PS(2017年1月23日追加):パレスチナは、紀元前12世紀前後から闘いの続いてきた古い地域で(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A4%E4%BB%A3%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%AB 参照)、どちらも強く権利を主張するため、*9-1の“和平”は大変だろう。しかし、現代だからこそできる解決法もあり、それは砂漠を豊かな土地に変え、実質的に領土と認められる地域を増やすことだ。それには、*9-2のサウジアラビアのやり方が参考になるが、イスラエルは面積の小さいことがネックであるため、日本やアメリカがエジプトかサウジアラビアの砂漠地帯の農業開発を援助することにより、面積の広いエジプトかサウジアラビアからイスラエルへの土地の一部割譲を取りつけたらどうかと考える。それにより、世界の食糧安全保障と中東紛争の解決ができればよいのではないだろうか。


   中東の地図           *9-2サウジアラビア大使館より      サウジアラビアの畜産

*9-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK1R25N5K1RUHBI004.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2017年1月23日) トランプ氏、イスラエルの安全保障に「空前の取り組み」
 イスラエル首相府によると、両首脳はトランプ氏が「破棄する」と主張したイランとの核合意や、パレスチナとの和平などについて協議した。ホワイトハウスによると、トランプ氏はイスラエルの安全保障に対して「空前の取り組み」を明言した。パレスチナとの和平についてはイスラエルとパレスチナが直接交渉することでのみなされると強調。米国はイスラエルと緊密に協働していくとした。トランプ氏が選挙戦で表明した米大使館のエルサレム移転について協議されたかは明らかになっていない。AP通信によると、ホワイトハウスは会談前、国内での議論がまだ初期段階だとの認識を示した。これに先立ち、エルサレム市当局は22日、イスラエルが占領する東エルサレムの入植地で約560軒の住宅を建設することを承認した。入植活動を批判するオバマ前政権の圧力で延期していたが、イスラエル寄りの姿勢を示すトランプ氏の就任を待って判断した。一方、パレスチナ自治政府のアッバス議長は22日、ヨルダンの首都アンマンでアブドラ国王と会談した。AP通信によると、米大使館がエルサレムに移転した場合の対抗策などを話し合ったという。

*9-2:http://www.saudiembassy.or.jp/Jp/SA/7.htm (サウジアラビア大使館)
 サウジアラビア王国は、食糧の安全保障確保と国内で生産される農産物及び牛乳、鶏卵、食肉など畜産物の食料の自給自足実現を目的とした農業政策を採用してきました。王国政府は、初期の段階から、政策の優先事項の筆頭にこの目的を置き、その実現に最大限の努力を傾けてきました。アブドルアジーズ国王が王国建国時に実施した最初のステップは、国民の農地開発投資の活性化支援と、その活動に完全な自由を与え、必要な機械器具を購入する場合、それを無税扱いにすることでした。また、王国政府は、政府の経費で農業機械器具を輸入し、それを購入した農民には無利子月賦で政府に返済する制度を確立しました。アブドルアジーズ国王は、1948年、農政局の設置を命じ、これを財務省とリンクさせることによって、同局が灌漑設備の改善、水ポンプの設置、ダムや運河の建設、泉や井戸などの水資源の開発、農民宛資金貸付けなどの事業が実施できるようにしました。農政局は活動の幅を広げたことによって、必然的に重い職責を担うようになり、その結果、1953年、同局は「農業・水資源省」に格上げされ、スルターン・ビン・アブドルアジーズ殿下が初代の大臣に就任しました。同省は創設以来、水資源の開発とともに、農産・畜産部門の振興に貢献する研究と計画立案をおこなってきました。王国の地勢については、国土の大半が砂漠気候であり、厳しい環境であることはよく知られています。さらに、水資源に乏しく、降雨量もきわめて限られています。しかし、王国はアッラーのご加護と王国の固い決意の下に近代農業の技法と技術を駆使することによって、こうした環境的な問題を克服してきました。サウジアラビア王国は、短期間において食糧輸入国から農業生産国へ、さらに、輸出国になったのです。農産物の生産高も増大し、農業部門は、生産経済部門の一部門として重要な役割を果たすようになりました。
●奨励政策
 政府は、農業振興のため農業部門の奨励政策を実施してきました。その中でも特に重要な政策は、農民と農業会社に未開墾地を無償で分配してきたことであり、この政策は現在も継続しておこなわれています。また、政府は1962年に設立した、農業銀行を通じ、長期ローンの貸付けと補助金を農民に提供しています。政府は、農業機械と灌漑用ポンプの購入費用の50%を負担し、農業器具と用品、国内産と輸入肥料購入費用の45%を負担しています。種や苗などは、きわめて低い価格で配布されています。さらに、王国各地に設置されている農業局、農業試験場、農業事務所を通じて農業指導、獣医の派遣、農業災害対策などのサービスが提供されています。国は農業生産物を買い上げており、とりわけ、小麦、大麦は、1972年に設立されたサイロ・製粉公団を通して奨励価格で買い上げています。
●農業道路
 国家は、農業道路に多大な関心を払ってきました。これは、農民の足を確保することによって市場中央センターへの農業生産物の運送を容易にすることを目的としています。交通省は、主要な道路建設プログラムとの調整をおこないながらバランスの取れた農業道路建設プログラムを実行してきました。農業道路の全長は、1970年の時点では3,600キロメートルだったものが、1998年末には10万キロメートルに達しました。
●農地の拡大
 政府は、農業部門に対する継続的な支援をおこなってきました。その結果、王国では、国民による農業部門の投資が促進され、大手農業企業が数社設立されました。1980年の時点では60万ヘクタールだった農地面積は、1992年には160万ヘクタールにまで拡大しました。また、政府は、約250万ヘクタールの未開墾地を国民に分配しました。農業銀行が農民と農畜産部門の投資会社に提供した資金貸付額は、1998年末で304億リヤール強に達しました。これらの貸付けは、3,000以上もの野菜、果物、酪農、畜産の農業プロジェクトに使われました。農業銀行はまた、生産に必要な農業機械、器具、道具購入の資金を貸し付けています。1973年から始まったこうした貸付け金は、1998年(イスラム暦1418年から1419年)末で111億リヤールに達しています。サイロ・製粉公団は、王国内に穀物貯蔵と製粉、飼料生産のため10の工業団地を建設しました。同公団の貯蔵能力は、238万トンに達し、製粉の生産能力は、年間161万トンに達しています。
●小麦生産
 サウジアラビア王国は、小麦の生産分野において輝かしい成果を収めました。1985年、小麦の生産量は、国内需要を満たし、自給自足が実現しました。そして1986年以降は、余剰分を国際市場に輸出できるようになりました。1992年(イスラム暦1412年)、王国の小麦生産高は、420万トンにまで増加し、最高レベルに達しました。しかしながら、水資源利用の指導と地下水の保全という観点から、生産削減が段階的に実施されました。この措置は、1993年(イスラム暦1413年)の農作期から始まり、1997年(イスラム暦1417年)まで継続され、小麦の生産量は180万トンに減少しました。これは、国内の自給自足に必要な量であり、輸出はおこなわれなくなりました。小麦が最後に輸出されたのは、1995年5月(イスラム暦1415年ズール・ヒッジャ月20日)でした。大麦の生産においても同じような生産削減措置がとられ、1994年(イスラム暦1414年)に182万2,950トンだった大麦の生産高は、1996年(イスラム暦1416年)には46万4,000トンまで減少しました。
●野菜と果物
 王国の野菜の生産高は、1998年には約270万トンに達し、種類によっては近隣諸国に輸出できるほどの生産量を記録しました。果物の生産は約120万トンに達しました。そのうち、ブドウの収穫量は14万トン、かんきつ類は8万7,000トンに達しました。王国は年間約64万9,000トンのナツメヤシの実(王国内のナツメヤシの木は1,300万本)を生産しています。王国内におけるナツメヤシの実の瓶詰め・包装工場は24を数え、王国の内外に製品を送り出してします。世界の食糧生産プログラムにておいて王国がナツメヤシの実の生産で大きな貢献をしていることは広く知られています。
●畜産
 王国の家畜数は、1997年には、牛28万頭、羊100万頭、山羊62万6,400頭、ラクダ75万頭、家禽3億9,520万羽にまで増加しました。王国の畜産生産物は、年を追うごとに増加しており、その増加率は急カーブを描いて上昇しています。同年の生産高では、牛乳88万3,000トン、食用鶏卵25億個、食用鶏肉45万1,000トン、赤肉15万7,000トンに達し、魚肉の生産高も5万5,000トンに達しました。この結果、王国は、農業生産部門の穀物生産と畜産において自給自足を達成し、余剰生産物を国外に輸出できるようになりました。こうした実績に基づき、国際食料農業機関(FAO)は、ファハド国王の農業部門の指導的役割を称えるとともに、発展途上国の貧困と餓えの一掃に貢献したことを評価し、1997年、国王にFAO賞を授与しました。
●高い成長率
 王国がたどった農業政策は実を結び、農業部門は高い成長率を実現しました。1969年から1996年の期間における同部門の年間平均成長率は8.4%を記録しました。農業部門は国内総生産に大きく貢献しており、総額は340億リヤールに達しています。
●水資源開発
 農業・水資源省は、水資源開発のため王国全土の水資源調査を実施しました。また、王国内の市町村への十分な飲料水の供給に努力を傾注しました。同省は、飲料用・監視用・探査用の水井戸を5,500本以上採掘しました。民間によって管理されている井戸の数は10万3,118に達していますが、その多くは農業に使用されています。同省が実施した市町村への飲料水供給プロジェクト数は1,290を数えており、国営企業・公的機関がその運営と保守を担当しています。同省は、雨水と河川の水を有効利用するため1998年末までに189のダムを王国の各地に建設しました。その貯水能力は、総計約7億8,000万立方メートルに達しています。王国は、戦略的な見地から飲料用の水資源を恒常的に確保するため海水淡水化計画を採用し、その実現のため海水淡水化公団を設立しました。淡水化プロジェクトは短期間のうちに多大の実績を達成し、王国は西部・東部海岸沿いには27の海水淡水化プラントが建設されており、これらのプラントで生産された飲料水は、40を越える市町村に供給されています。これらのプラントの一日あたりの生産量は、淡水は、250万立方メートル(6億6,700万ガロン)、電力は、3,600メガワットに達しています。現在建設中のプラントが完成すると、同公団の一日当たりの生産能力は、淡水は、300万立方メートル(8億ガロン)、電力は5,000メガワットに達する予定です。現在、海水淡水化プラントで生産されている飲料水は、王国の主要都市の総需要量の70%を満たし、電力は、消費電力の30%を満たしてします。


PS(2017年2月2日追加):*10-1のように、「テロ等準備罪」の「等」は、範囲を無限に広げることができ、むしろ「等」の方が中心ではないかと思われる法律もあるくらいなので反対だ。また、*10-2のように、「テロ」の範囲も限定列挙しなければ、市民団体・労組・政治団体などの正当な活動も政府に不都合な場合には適用される可能性があり、安心できない。その上、「共謀罪」や最近言っている「合意罪」が成立するか否かは、*10-3のように、一般市民を監視・盗聴して立証する必要があるため、容疑者だけでなく一般市民も、通信の秘密が犯されたり、人権侵害されたりする。そして、*10-4の通信傍受法も、小さく産んで大きく育てる方法が使われているのだ。

*10-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12776820.html
(朝日新聞 2017年2月2日) 「共謀罪」対案、維新が策定へ
 日本維新の会の松井一郎代表(大阪府知事)は1日、政府が検討する「共謀罪」の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する法案への対案として、「テロ防止法案」を策定すると表明した。記者団に「テロ『等』は駄目だ。広すぎる。テロ等準備罪ということであれば、我々としては『はいそうですか』と言うわけにいかない」と語った。

*10-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201701/CK2017012602000125.html (東京新聞 2017年1月26日) 「共謀罪」法案 テロ「等」範囲拡大の恐れ 市民団体、労組、会社にも
 安倍晋三首相の施政方針演説などに対する参院の各党代表質問が二十五日行われた。首相は「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案について、共謀罪を言い換えた「テロ等準備罪」の「等」が示す犯罪の範囲を問われ「テロ組織をはじめとする組織犯罪集団に限定し、一般の方々が対象となることはあり得ないことがより明確になるよう検討している」と述べた。これに対し、渕野貴生・立命館大教授は「一般市民も対象になり得る」と懸念した。自由党の山本太郎共同代表は「『等』とはどういう意味か。テロ以外にも適用される余地を残す理由を教えてほしい」と尋ねた。首相は、テロと関連が薄い犯罪も対象に含める意図があるかどうかは、明確にしなかった。首相は国連の国際組織犯罪防止条約の締結のために必要だと強調し、テロ対策を前面に押し出す。今後、対象犯罪を絞り込む方針だが、条約が共謀罪の対象に求める死刑や四年以上の禁錮・懲役に当たる犯罪は六百七十六。このうち政府が「テロに関する罪」と分類するのは百六十七(24・7%)にとどまり、大多数が「テロ以外」という矛盾をはらむ。組織的犯罪集団に限定しても、警察の恣意(しい)的な捜査で市民団体や労組、会社も対象になりかねない。政府は二〇一三年に成立した特定秘密保護法で「特定秘密の範囲を限定した」と説明したが、条文に三十六の「その他」を盛り込み、大幅な拡大解釈の余地を残した前例もある。刑事法が専門の渕野教授は「テロと無関係の犯罪も多く、名称と実体が一致していない。一般市民の犯罪も対象になり得るのに、あたかもテロだけを対象とするかのように説明するのは、国民を誤解させる表現だ」と指摘。「組織的な犯罪集団に限定しても、捜査機関による恣意的な解釈や適用を適切に規制できない」と危ぶむ。

*10-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2017012602000184.html (東京新聞 2017年1月26日) 監視社会の脅威 映画「スノーデン」あす公開
 ベトナム戦争や歴代の米大統領を題材にした骨太の作品で知られるオリバー・ストーン監督(70)の最新作「スノーデン」が二十七日公開される。あらゆる個人さえも対象とする米政府の監視プログラムを暴露した情報機関職員エドワード・スノーデン氏の内部告発は、誰もがプライバシーの危機にさらされている事実を明るみに出した。トランプ大統領誕生の過程でも、さまざまな真偽不明の情報に世界は踊らされている。いまスノーデン事件から何が見えるのか。「スノーデンとは亡命先のモスクワで、この二年間に九回会って話を聞いた。彼の視点から語られる物語を映画にしようと思った」。二〇一三年六月、英ガーディアン紙などが報じたスノーデン氏の告発に監督は拍手喝采を贈ったという。「その半年ほど前、私はドキュメンタリー作品でオバマ政権で強化されてきた監視社会を取り上げた。まさに、その通りのことが起きていたわけです」。本作では、米国防総省の情報機関である国家安全保障局(NSA)に勤務するスノーデン(ジョセフ・ゴードン=レビット)が、赴任先のジュネーブや東京で世界中のメールやSNS、通話を監視し、膨大な情報を収集している実態を目の当たりにする。同盟国である日本も例外ではなく、インフラ産業のコンピューターにはマルウェア(悪意のあるソフト)が既に埋め込まれており、もし日本が米国に敵対したら、インフラがダウンするようになっていることが明かされる。「私個人の考えは作品に一切入れていない。すべてスノーデンが私に語った内容です。NSAからも話を聞こうとしたが、答えてもらえなかった。私の経験からいって彼の言っていることは真実だと思う」。スノーデン事件に関しては、香港のホテルでスノーデン氏が告発する場面に密着し、アカデミー賞を受賞したドキュメンタリー映画「シチズンフォー スノーデンの暴露」がある。ストーン監督は本作で、スノーデン氏の内面を描こうと思ったと打ち明ける。「若い愛国者である彼がなぜNSAの任務に疑念を抱くようになったのか。それは対テロの戦いではなかったわけです。世界中の情報を監視することで政治、経済を含むあらゆる力関係で米国が優位に立てる。スノーデンはその危険に気づいた。そして彼が人間性を保てたのは恋人の存在が大きかったと思います」。米政府に不都合な本作は米国企業の支援が受けられず、フランスやドイツ企業の出資で製作されたと監督は付言する。「米国では自己規制や当局に対する恐怖があるのかもしれない。米政府や主要メディアが伝えることが真実だと思わないでほしい」と話す。
◆主要メディアに一石 トランプ氏を評価
 過激な発言で物議を醸すトランプ米大統領だが、ストーン監督は米情報機関と主要メディアへの不信感から、トランプ氏に「奇妙な形で新鮮な空気を持ち込んだ」と期待をにじませる。「トランプに対するヒステリックな報道は、冷戦時代の赤狩り(共産主義者への弾圧)のようだ。ロシアとつながりがあるかのような報道も、彼を大統領にしたくない力が働いたのだと思う。米メディアも新保守主義の権力側にある。トランプは主要メディアに対し新しい見方をしているのは確かだ」と断言する。その上で「米国は今、帝国化している。日本は米国をそこまで信頼していいのか。米国はそれほど日本を大切に思っていないかもしれない。日本をどうするかはみなさんが考えることだ」とアドバイスする。
◆オリバー・ストーン監督
 米ニューヨーク生まれ。ベトナム戦争に従軍後、ニューヨーク大学で映画製作を学ぶ。1978年「ミッドナイト・エクスプレス」でアカデミー賞脚本賞。86年「プラトーン」で同作品賞や監督賞など4部門を制し、89年「7月4日に生まれて」で2度目の同監督賞に輝いた。ほかに「JFK」「ニクソン」など。

*10-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201702/CK2017020202000247.html (東京新聞 2017年2月2日) 【政治】「共謀罪」捜査に通信傍受も 法相「今後検討すべき」
 衆院予算委員会は二日午前、安倍晋三首相と全閣僚が出席して、二〇一七年度予算案に関する基本的質疑を続けた。金田勝年法相は、犯罪に合意することを処罰対象にする「共謀罪」と趣旨が同じ「テロ等準備罪」の捜査を進めるため、電話の盗聴などができる通信傍受法を用いる可能性を認めた。通信傍受法は、憲法が保障する通信の秘密を侵す危険が指摘され、捜査機関が利用できる対象犯罪が限定されている。金田氏は、テロ等準備罪を対象犯罪に加えるかどうかについて現時点では「予定していない」としつつ、「今後、捜査の実情を踏まえて検討すべき課題」と将来的には否定しなかった。これに対し、質問した民進党の階猛氏は「一億総監視社会がもたらされる危険もある」と懸念を示した。政府はテロ等準備罪について、犯罪の合意だけでなく、準備行為がなければ逮捕・勾留しないと説明しているが、準備行為については捜査機関が判断するため、拡大解釈の恐れが指摘されている。通信傍受法は、犯罪捜査のために裁判所が出す令状に基づき、電話や電子メールの傍受を認める法律。一九九九年の成立時には、通信の秘密を侵害する懸念を受け、薬物・銃器犯罪、集団密航、組織的殺人の四類型に限定されていた。しかし昨年十二月、殺人や放火、詐欺、窃盗、傷害、児童買春など対象犯罪が大幅に増えた改正法が施行された。さらに幅広い犯罪の合意を処罰するテロ等準備罪が対象犯罪に加われば、通信傍受の件数が大幅に増えることが予想される。テロ等準備罪の捜査では捜査当局が犯罪の話し合いや合意、準備行為を把握し、ある特定の団体の構成員を日常的に監視する必要がある。テロ等準備罪の捜査で通信傍受を活用することになれば、捜査当局が監視できる市民生活の範囲が大幅に広がる恐れがある。
<通信傍受法> 通話開始から一定時間聴き、犯罪関連の通話と判断した場合に限って継続して傍受できる。令状の容疑でなくても対象犯罪などに関する通信は傍受できる。2000年の法施行から15年までに傍受した10万2342件のうち82%が犯罪に関係のない通話。傍受したことや、記録の閲覧や不服申し立てができることを本人に通知するが、犯罪に関係のない通話相手には通知されない。


PS(2017年2月3日追加):*11のGPS捜査や移動追跡装置は、本当に犯罪の疑いや危険性が高い場合だけに使われているのではなく、他の意図や興味本位でも使われていると、私は考えている。そして、GPSは携帯電話にもついているため、一般の人もプライバシーの侵害には要注意だ。

*11:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/401561
(佐賀新聞 2017年2月2日) GPS捜査の秘匿指示 警察庁06年、都道府県警に
 捜査対象者の車などに衛星利用測位システム(GPS)端末を取り付けて尾行する捜査を巡り、警察庁が2006年6月に都道府県警に出した通達で、端末使用について取り調べの中で容疑者らに明らかにしないなど秘密の保持を指示していたことが1日、警察当局への取材で分かった。捜査書類の作成に当たっても、記載しないよう徹底を求めていた。警察庁はGPS捜査を「任意捜査」と位置付けているが、各地の裁判所で「プライバシーを侵害する」として、令状のない捜査の違法性が争われている。判断は割れており、最高裁大法廷が春にも統一判断を示すとみられる。日弁連は1日、GPS捜査の要件や手続きを定めた新たな法律をつくり、裁判所の出す令状に基づき行うべきだとする意見書を警察庁に提出した。警察当局によると、通達はGPS捜査のマニュアルである「移動追跡装置運用要領」の運用について説明。「保秘の徹底」として、取り調べで明らかにしないほか、捜査書類の作成においても「移動追跡装置の存在を推知させるような記載をしない」と求めた。都道府県警が報道機関に容疑者逮捕を発表する際も「移動追跡装置を使用した捜査を実施したことを公にしない」と明記していた。警察庁は、こうした通達を出した理由を「具体的な捜査手段を推測されると、対抗手段を講じられかねないため」と説明している。警察庁の運用要領は、裁判所の令状が必要ないGPS端末の設置について、犯罪の疑いや危険性が高いため速やかな摘発が求められ、ほかの手段で追跡が困難な場合の任意捜査において可能と規定している。日弁連は、GPS捜査は「強制捜査」に当たり「令状なしの捜査は憲法に反する」として、即時中止を求めている。


PS(2017年2月6日追加):*12-1のように、一橋大の葛野教授や京都大の高山教授が呼び掛け人となり、刑事法学者ら約140人が、「①日本の法制度は『予備罪』『準備罪』を広く処罰してきており、国際組織犯罪防止条約の締結に新たな立法は必要ない」「②日本は世界で最も治安のいい国の一つで、具体的な必要性もないのに条約締結を口実として犯罪類型を一気に増やすべきではない」として「共謀罪」の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する法案に反対する声明を出したそうだ。私は、「テロ等準備罪」の本当の目的は条約締結ではなく、*12-2のような盗聴・通信傍受やGPSを使った捜査の正当化だと思うので、法学者等の専門家の参戦に賛成だ。

*12-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/402452
(佐賀新聞 2017年2月5日) 法学者ら140人、「共謀罪」反対声明、現制度でテロ対策可
 刑事法学者ら約140人が4日までに、組織犯罪を計画段階で処罰できる「共謀罪」の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する法案に反対する声明を出した。呼び掛け人は葛野尋之一橋大教授、高山佳奈子京都大教授ら。声明では、日本は「テロ資金供与防止条約」などテロ対策に関する13の条約を締結し、国内の立法も終えていると指摘。日本の法制度は「予備罪」や「準備罪」を広く処罰してきた点に特徴があるとし、国際組織犯罪防止条約の締結に新たな立法は必要ないと強調している。さらに「日本は世界で最も治安のいい国の一つで、具体的な必要性もないのに条約締結を口実として犯罪類型を一気に増やすべきではない」としている。呼び掛け人と賛同者は3日現在で計146人。

*12-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020302000125.html (東京新聞 2017年2月3日)「共謀罪」捜査に通信傍受も 無関係な「盗聴」拡大の恐れ
 犯罪に合意することを処罰対象とする「共謀罪」と趣旨が同じ「テロ等準備罪」を設ける組織犯罪処罰法改正案について、金田勝年法相は二日の衆院予算委員会で、捜査で電話やメールなどを盗聴できる通信傍受法を使う可能性を認めた。実行行為より前の「罪を犯しそうだ」という段階から傍受が行われ、犯罪と無関係の通信の盗聴が拡大する恐れがある。テロ等準備罪を通信傍受の対象犯罪に加えるかどうかについて、金田氏は現時点では「予定していない」としながらも、「今後、捜査の実情を踏まえて検討すべき課題」と将来的には否定しなかった。質問した民進党の階(しな)猛氏は「一億総監視社会がもたらされる危険もある」と懸念を示した。通信傍受法は、憲法が保障する通信の秘密を侵す危険が指摘され、捜査機関が利用できる対象犯罪が限定されている。テロ等準備罪の捜査は、犯罪組織による話し合いや合意、準備行為を実際の犯罪が行われる前に把握する必要があり、通信傍受が有効とされる。関西学院大法科大学院の川崎英明教授(刑事訴訟法)は「盗聴は共謀罪捜査に最も効率的な手法。将来的には対象拡大を想定しているはずだ」とみる。川崎教授は「テロ等準備罪に通信傍受が認められれば、例えば窃盗グループが窃盗をやりそうだという段階から傍受できる。犯罪と無関係の通信の盗聴がもっと広く行われるようになる」と指摘。傍受したことは本人に通知されるが、犯罪に関係ない通話相手には通知されないため、「捜査機関による盗聴が増え、知らないうちにプライバシー侵害が広がる」と危ぶむ。沖縄の新基地建設反対運動に対する警察の捜査に詳しい金高望弁護士は「警察は運動のリーダーを逮捕した事件などで関係者のスマホを押収し、事件と関係ない無料通信アプリLINE(ライン)や、メールのやりとりも証拠として取っている。将来的には、通信傍受で得られる膨大な情報を基に共謀罪の適用を図ることも考えられる。テロ対策の名目で、あらゆる情報や自由が奪われる恐れがある」と話す。
<通信傍受法>犯罪捜査のために裁判所が出す令状に基づき、電話や電子メールの傍受を認める法律。2000年の施行時には薬物、銃器、集団密航、組織的殺人の4類型に限定されていたが、昨年12月、殺人や放火、詐欺、窃盗、児童買春など対象犯罪を9類型に増やす改正法が施行された。00年から15年までに傍受した10万2342件のうち、82%が犯罪に関係のない通話だった。

| 外交・防衛::2014.9~ | 10:24 AM | comments (x) | trackback (x) |
2016.9.13 テロと難民は、どうして発生したのか? (2016年9月14日、17日に追加あり)
 
 2001年9月11日  イラク戦争 イラク戦争の検証   2014.10.12     シリア爆撃      
アメリカ同時多発テロ        2016.7.7朝日新聞   東洋経済     

      
     2016.3.17        難民          難民             難民
国境なき医師団の病院爆撃   

(1)今、テロと戦争の境界はどうなっているのか
 日本政府は、*1-1のように、2015年12月4日、過激派組織「イスラム国(IS)」のテロ活動を照準に、中東などでの情報収集と分析能力を強化して、「パリ同時テロ」を受けたテロ対策を決めたそうだ。

 また、オバマ米大統領も、2016年4月1日、第4回核安全保障サミットで、*1-2のように、①ISによる核テロの可能性を強く警告し ②ISの壊滅を誓うとともに ③核物質の管理強化へ向けた機運維持を訴え ④核物質や核施設の防護・保安は国家の根本的な責任だとして ⑤核テロ阻止の取り組みを「永続的な優先課題」と位置付けるコミュニケを採択したとのことである。

 しかし、*3のように、日本の特定秘密保護法12条は、テロを「政治上その他の主義主張に基づき、国家もしくは他人にこれを強要し、または社会に不安もしくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、または重要な施設その他の物を破壊するための活動」と規定しており、日弁連の江藤氏が「法案は言論弾圧や政治弾圧に利用される恐れがある」と指摘したほど、「テロ」と認定される範囲は広い。そして、国家ぐるみでない核テロの可能性というのは考えにくく、むしろ環境省や原子力規制委員会の了承の下に行われている*5-1、*5-2のフクイチの大量の核物質の拡散の方が、国家ぐるみの核テロに当たると言えそうだ。

 なお、*1-3のように、「イスラム国」は本当に「国」を造ろうとしている人たちの集まりで、イラク戦争で米国に敗れたサダム・フセイン政権下の旧軍人や当時与党だったバース党の党員らが中核として支えており、米軍がバグダッドに進攻した時にいなくなったフセイン大統領の防衛隊と民主化の過程で追放されたバース党員が、イスラム国の指導者と反米で一致して共闘を組み、強力になったと考えられるそうだ。

 また、米国は、独裁的であるとしてシリアのアサド政権とも敵対しており、アサド政権を支援するわけにはいかないため、サウジアラビアをはじめとする湾岸諸国や米欧が支援してきた反アサド政権組織の自由シリア軍を中心に武器を与え、戦術・戦略も教えて支援していくことになるのだそうだ。

 しかし、日本は、イラク戦争ではイラクに自衛隊を派遣して学校や道路の修復を行ったが戦争には参加していないため、日本人がテロの直接ターゲットにされる可能性は低く、空爆を行った米国・フランス、武器供与や人道支援をした英国・ドイツ、軍事作戦に参加表明した豪州・カナダ・オランダ、空爆に参加したサウジアラビア・アラブ首長国連邦・カタール・バーレーン・ヨルダンの人や石油を中心とする経済施設、欧米の外交施設、欧米系のホテル・ショッピングモールなどがテロの対象となり、警戒を要するそうである。

 海外では政府から独立した機関の検証が進み、オランダの独立調査委員会は、2010年、「イラク戦争は国際法違反だった」との報告書を出した。また、英国でも*1-5のように、ブレア元首相をはじめ120人以上を喚問して、「平和的な解決手段を尽くす前に侵攻した」と断定し、英ブレア政権だけでなく、米ブッシュ政権をも厳しく批判する260万語に及ぶ報告書を、2016年7月6日に公表した。

 さらに、米国では、2004年に中央情報局(CIA)主導の調査団が、2005年には独立調査委員会が、それぞれ情報収集の誤りを全面的に認める報告書を公表し、2014年の上院委員会による報告書は、拷問や過酷な尋問など、イラク戦争を含めた「テロとの戦争」時の問題点を指摘している。

 米国主導の2003年のイラク戦争とそれへの日本政府の支持が正しかったかどうかについては、私も当時の事情説明の報道を聞いて疑問に思ったが、やはり大量破壊兵器は見つからず、現在、*1-4のように、日本でも検証を行う市民グループの公聴会が始まっている。しかし、米英軍の侵攻の後、イラク戦争で民間人が16万人超も亡くなり、フセイン大統領も処刑され、現在も空爆で民間人の虐殺と難民化が続いていることに対しては、どういう賠償がなされるのか疑問だ。

 それにもかかわらず、イラク戦争をいち早く支持した日本では、2012年12月に外務省内の政策決定過程に関する4ページの「検証結果」が発表されたのみで、聴取した個人名も公表されず、大量破壊兵器が確認できなかったことについては「厳粛に受け止める」とするに留まっている。これについて、上智大学の中野教授は、「日本では国家は間違わないという神話が根強く、官僚も政府の過ちを認めない」と説明しておられるが、これはあらゆることに当てはまり、国家が責任を認めなかった分は被害者の責任になっているのである。

(2)民主主義を抑え込むツールになる「共謀罪」について
 このように「テロ」の定義がどうにでも拡大解釈できる中、*2-1のように、「共謀罪(犯罪を実行する前に相談しただけで処罰できるとする法律)」は、過去3回、国会に提出して廃案になったにもかかわらず、与党が罪名を「テロ等組織犯罪準備罪」に変えて国会提出を検討している。どちらが最初の加害者かわからないのに、我が国でイスラム国の「テロ」を口実にして、テロ防止のためとして人権侵害にあたる法律制定が続いているのは問題だ。

 この点、共産党の機関紙である赤旗は、*2-2のように「共謀罪はテロ対策口実の市民弾圧法であり、名前を変えても本質は変わらない」と明確に述べており、南日本新聞も、*2-3のように「共謀罪の提出は監視社会への不安がある」という識者の意見を掲載している。また、琉球新報は社説で、*2-4のように「共謀罪は罪名を変えたところで市民活動を抑え込み、思想・信条の自由を侵す危うさは民主主義を崩す悪法だ」として、「共謀罪の新設は必要ない」という正論を書いている。

 さらに、法律の専門家集団である日本弁護士連合会も、2006年9月14日、*2-5-2の「共謀罪新設に関する意見書」で「政府と与党が導入を主張している共謀罪の規定は我が国の刑事法体系の基本原則に矛盾し,基本的人権の保障と深刻な対立を引き起こす恐れが高く、導入の根拠とされている国連越境組織犯罪防止条約の批准にも、この導入は不可欠とは言い得ない。よって「共謀罪」の立法は認めることができない」としており、さらに2016年8月31日には、*2-5-1の「いわゆる共謀罪法案の国会への提出に反対する会長声明」を公開している。

(3)難民について
 爆撃や内戦が続くシリアなどから、*4のように、難民・移民が欧州に押し寄せる中、極寒の北極圏を経由して自転車で北欧に流入するルートが急増しているそうだ。ロシアは、シリアのアサド政権と親密な関係で、シリア人にとってビザが比較的手に入りやすいほか、地中海を渡る従来のルートは船の遭難が続発しているため、より安全な行き方として選ばれているとのことである。

 しかし、難民となっている人たちも、もともとはりっぱな街で市民生活を送っていた人たちであり、難民の製造責任はイラクやシリアの爆撃にある。そのため、戦争を終息させ、ここに現代産業を起こして男女とも教育を徹底するのが、難民・戦争・テロをこれ以上増やさない方法だと考える。

<テロと戦争の違い>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151205&ng=DGKKASFS04H4T_U5A201C1PP8000 (日経新聞 2015.12.5)「イスラム国」念頭、テロ対策を強化 官邸に情報集約/中東に人材配置
 政府は4日、パリ同時テロを受けたテロ対策の具体案を決めた。各地で頻発している過激派組織「イスラム国」(IS)によるテロ活動を意識し、中東などで情報収集体制を大幅に強化する。首相官邸が中心となり、外務、防衛両省や警察庁などの情報を円滑に共有できるかが重要になる。菅義偉官房長官は4日の記者会見で「情報収集と分析能力を強化し、テロの未然防止に必要な措置をとった」と強調した。中東やアフリカなどの在外公館で語学が堪能な職員を約20人増やし、現地の治安機関や事情に通じた部族長・宗教指導者とのパイプづくりに努める。情報網の構築でテロの未然防止と発生時の迅速な対応につなげる。警察庁はサイバー空間のテロ関連情報を専門的に収集・分析する組織を来年度中に新設する。ネット動画を活用した広報・宣伝活動に力を入れるISを念頭に置いた。約20人の「国際テロ情報収集ユニット」を外務省に置き、官邸の「国際テロ情報集約室」の要員を兼務させて情報共有を進める。政府高官は「官邸に直接、情報が入るよう工夫した」と話す。外務省や防衛省、警察庁、公安調査庁は連携があまりない。危機管理に詳しい小川和久・静岡県立大特任教授は「情報を束ねるトップが各省から情報を吸い上げられる体制が重要だ。努力の跡がみられるが、縦割りの排除には時間がかかる」とみる。

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/295997
(佐賀新聞 2016年4月2日) 核テロ阻止、永続的な課題、最後の安保サミット閉幕
 50カ国以上の首脳らが参加してワシントンで開かれた第4回核安全保障サミットは1日、核物質や核施設の防護・保安は国家の根本的な責任だとし、核テロ阻止の取り組みを「永続的な優先課題」と位置付けるコミュニケを採択、閉幕した。オバマ米大統領の提唱で2010年に始まったサミットは今回が最後。オバマ氏はこの日の会合で、過激派組織「イスラム国」(IS)による核テロの可能性を強く警告。IS壊滅を誓うとともに核物質の管理強化へ向けた機運維持を訴えた。

*1-3:http://toyokeizai.net/articles/-/50287 (東洋経済 2014年10月12日) 「イスラム国」との戦いは第3次イラク戦争だ、畑中美樹・インスペックス特別顧問に聞く(上)
●フセイン時代の共和国防衛隊やバース党員が共闘
――「イスラム国」とはどのような組織か。
 イスラム国の全容はまだはっきりとはわかっていないが、イスラム国の元メンバーのインタビューなどが先進国の専門機関を通じて行われており、多少輪郭がわかってきている。一般のマスメディアでは、アルカイダと同様、イスラム原理主義の過激な国際テロ組織ととらえられているが、実態はそうではなく、本当に「国」をつくろうとしている人たちの集まりである。イラク戦争で米国に敗れたサダム・フセイン政権下の旧軍人や、当時イラクの与党であったバース党の党員らが中核としてイスラム国を支えている。6月に(イラク北部の都市)モスルを制圧した時などの軍事作戦を見ていると、どう考えても素人による作戦ではない。モスル制圧の後、首都バグダッドに進軍するが、落とせないとなると今度は北部のクルド人地域を攻撃。その過程で油田や製油所、ダムといった、国家にとってのライフライン、収入源になる施設をしっかり押さえている。こうした組織的、計画的な動きは、単なるテロリスト、過激派集団が行っているのではなく、軍事的経験のある旧軍人や政権を担ってきたバース党員たちがバックにいることを示している。そのため、私は今のイスラム国の動きを「第3次イラク戦争」と呼んでいる。第1次が1991年1~3月の湾岸戦争。米国はこれでサダム・フセイン政権を叩いたが、大量破壊兵器を持ったまま生き残ったという疑いを理由に2003年3~5月にイラク戦争を行った。これが第2次。結果としてサダム・フセイン政権は崩壊し、フセイン大統領も処刑された。しかし、米軍がバグダッドに進攻した時に、フセイン大統領を守る強力な軍隊と言われていた共和国防衛隊の大半が忽然と消えてしまった。一方、バース党員はイラク民主化の過程で追放された。彼らが、台頭してきたイスラム国の指導者と嫌米、反米で一致し、戦術的な共闘を組んだ。したがって強力になったと考えられる。米国のヘーゲル国防長官の議会証言などを聞いていても、イスラム国は単なるテロ組織ではなく、準国家組織のような言い方をしている。米国はその辺をよくわかっているのだと思う。空爆だけでは解決できず、数年以上かかると言っているのは、最終的には地上での戦闘で駆逐しない限り勝てないと考えているからだ。
●問題はシリア、自由シリア軍はあてにできない
 空爆だけでは終わらないことはわかっている。したがって、イラクについては、イラクの正規軍を米国の軍事顧問団によって訓練し、新たな軍備も供与して、イスラム国と地上で戦闘させている。
問題はシリアだ。米国はシリアのアサド政権とも敵対しており、同政権を支援するわけにはいかない。となると、サウジアラビアをはじめとする湾岸諸国や米欧が支援してきた反アサド政権組織の自由シリア軍を中心に、やはり武器を与えて、戦術・戦略も教えて支援していくことになろう。ただ、イラク正規軍とは違い、自由シリア軍は過激派組織で、人数も少数なので、イスラム国と対等に渡り合える戦力になるかははなはだ疑問だ。
――最終的に米国自身が地上軍を派遣する可能性は。
 オバマ政権が続く2016年までは米兵の地上軍派遣はないだろう。ただ、イラクにはすでに1600人の軍事顧問団が入っており、イラク正規軍が最前線で戦っている時にその一部が後方で指示を出したり作戦を供与したりすることはあるだろう。それでもイスラム国は駆逐されないと見られ、次の大統領が就任する17年以降に米国の世論がどうなっているかによって、場合によっては地上軍派遣がありうるかもしれない。オバマ大統領は、本心としては中東にあまり手を染めたくないと考えているようだ。それよりも、国内の経済問題を中心に政策努力を集中し、米国経済を再生することに最大の関心がある。ただ、今年の中間選挙を控え、中東問題でこのまま何もしないと選挙に大敗しかねない。それを食い止めるためにも、空爆の決断をしたということだろう。11月の中間選挙後にオバマ政権がどう動くかはよく見ていく必要がある。
●日本人はテロに巻き込まれないよう警戒を
――米国などの世論を動かしたイスラム国による欧米人の公開処刑や無差別テロ、諸外国からイスラム国への大量参加といった動きがさらにエスカレートする恐れは。
 空爆が始まったことにより、イスラム国は逆に自分たちは被害者だと広報宣伝活動を強めるだろう。彼らが主張しているのは、今のイラクやシリアの国境線は20世紀初頭に当時の大国が勝手に引いたものであり、そうした外国勢力の庇護下にある政権を倒し、すべてをイスラム国にすべきだというものだ。そうした主張に共鳴する人たちの間では、空爆開始を機に、イラクやシリアに入ってイスラム国に加わろうという動きが強まるかもしれない。また、欧米で、あるいはアジアも含めて、欧米系の経済権益や人々に対するテロ攻撃が起きる可能性がある。
――日本人がターゲットになる可能性も高まっているといえるか。
 彼らの考える費用対効果から言えば、日本人を直接ターゲットにする可能性は低いだろう。彼らのいちばんのターゲットは、空爆を始めた米国や、イラクで空爆に加わったフランス、武器供与や人道支援をしている英国やドイツ、軍事作戦参加を表明した豪州やカナダ、オランダなどの人たちだろう。欧米以外では、今回の空爆に参加したサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、カタール、バーレーン、ヨルダンの人たちや石油を中心とした経済施設、さらには欧米の外交施設、欧米系のホテル、ショッピングモールなどでテロの警戒を要する。日本人はおそらく直接の対象というより、昨年9月にケニアのショッピングモールで起きたように、テロに巻き込まれる二次被害のほうが可能性として高いのではないか。
――中東に展開する日本企業のビジネスマンたちへのアドバイスは?
 これまで比較的安全と思われていた湾岸の産油国もこれからは報復の対象になるため、これまで以上にテロの発生を意識した警戒的行動をとる必要がある。特に気をつけなければならないのは、米国、英国、フランス、ドイツなどの外交施設やそれらの国の公共施設に行くときには細心の注意が必要だ。また、欧米系のホテルやショッピングセンターに行くときも気をつけなければならない。さらに、産油国なので油田施設などへの出入りも注意を要する。
●現地のホテルでチェックすべきこと
――畑中さんご自身が中東にいるとき、心がけていることは?
 なるべく欧米系のホテルは避けるようにしている。特にユダヤ系の資本が入っていないホテルを選ぶ。ホテルに泊まる時も、なるべく3階から7階ぐらいの部屋にしている。なぜなら、自動車爆弾が地下の駐車場や1階で爆発したときに、大きな影響を避けられるからだ。7階ぐらいまでというのは、消防車のはしご車が届く範囲を考えてのものだ。また、部屋では二重にロックをするのに加え、窓のカーテンは二重に閉めておく。爆破されても、ガラスの破片が飛んでこないようにするためだ。寝るときにも、枕元にパスポートや現金などを入れたビニール袋を置いておき、緊急時にさっと持って逃げられるようにしている。また、部屋に入ったら必ずホテル内の案内図を見て、自分の部屋の位置や逃げる経路を頭に入れておくよう心がけている。

*1-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12444314.html
(朝日新聞 2016年7月6日) (ニュースQ3)イラク戦争の政府対応検証、今なぜ必要?
 米国が主導した2003年のイラク戦争。日本政府の戦争支持は正しかったのか――。そんな検証を行う市民グループの公聴会が始まっている。10年以上がたった今、検証が必要な理由とは?
■市民グループ動く
 「組織で働く人間はみんな米国のやり方は変だと思っていたが、『これは米国の話だから』と思考停止した」。5月末、東京・永田町の衆院議員会館。市民グループ「イラク戦争の検証を求めるネットワーク」主催の「イラク戦争公聴会」の初会合があった。小泉内閣などで内閣官房副長官補を務めた元防衛官僚の柳沢協二氏(69)がイラク戦争当時の経緯について証言し、学者や野党議員ら約80人が聴き入った。「北朝鮮の核開発が大きな心配事で、守ってくれるのは米国しかないという判断があったのだろう」。柳沢氏は振り返った。米英軍は03年3月、大量破壊兵器を持っているとしてイラクに侵攻。当時の小泉首相はいちはやく支持を表明した。だが大量破壊兵器は見つからなかった。日本はイラクに自衛隊を派遣し、学校や道路の修復を担った。戦争の犠牲は大きかった。国際NGOの推計では、米英軍の侵攻後に亡くなった民間人は16万人を超す。なぜ開戦の根拠がない戦争をおこしたのか。海外では、政府から独立した機関の検証が進む。オランダの独立調査委員会は10年、イラク戦争が国際法違反だったとの報告書を出した。英国ではブレア元首相ら120人以上を喚問し、260万語に及ぶ報告書を6日に公表する。こうした海外の動きに比べ、日本はどうか。外務省は12年12月、省内の政策決定過程に関する「検証結果」を発表したが、たったの4ページ。しかも聴取した個人名も公表していない。大量破壊兵器が確認できなかったことを「厳粛に受け止める」とするにとどまった。中野晃一・上智大教授(46)は「日本では国家は間違わないという神話が根強く、官僚も政府の過ちを認めない」という。
■安保法成立が背景
 では、なぜ市民が検証を始めたのか。公聴会事務局のジャーナリスト志葉玲さん(40)は安倍政権による「安保法制の成立」と「憲法改正の動き」を挙げる。「日本が米国の戦争に世界中で協力を強いられる危険性が高まっている今こそ、検証が必要だ」。柳沢氏も「安保法制によって戦争の当事者になる可能性はとても高くなった」と警鐘を鳴らす。1~2年以内に報告書にまとめる。
■語り始めた元重鎮
 政界の元重鎮も語りはじめた。小泉政権時の自民党幹事長だった山崎拓氏(79)は7月下旬に出版する著書「YKK秘録」(講談社)で、当時の経緯を紹介する。03年2月、来日したパウエル米国務長官の「イラクの大量破壊兵器保有は疑いようがない」との言葉を信じ、小泉首相に開戦を支持するよう進言した。「米国の同調の求めに、日本は断る術(すべ)がなかった。問題なのは、日本の外交は国連中心主義よりも日米同盟堅持の方が優位にあることだ」。イラク戦争後の混乱は過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭も招いた。山崎氏はこう話す。「ISの製造責任は、イラク開戦に賛成した日本にもある。その意味では検証は必要だ」

*1-5:http://mainichi.jp/articles/20160708/ddm/005/070/028000c
(毎日新聞社説 2016年7月8日) イラク戦争報告 英国の検証を評価する
 イラク戦争に関する7年越しの調査である。2003年3月の米英軍による開戦について、英国の元内務省高官ら5人で構成する独立調査委員会は「平和的な解決手段を尽くす前に侵攻した」と断定した。当時のブレア政権だけでなく、戦争を主導した米ブッシュ政権への厳しい批判であるのは言うまでもない。イラク戦争に関する英国の報告は今回が4回目だ。同戦争で179人の兵士を失った英国民は以前の報告に満足せず、09年から再調査が始まった。新たな報告書は260万語に達する。イラク戦争にまつわる問題を置き去りにせず、徹底検証しようとする英国の姿勢を評価したい。報告書はイラク戦争が招く結果を軽く見ていたと指摘し、戦後イラクにおける英国の施策も不適切だったと結論づけた。フセイン政権崩壊に伴う宗派対立やイスラム過激派のテロに加え、過激派組織「イスラム国」(IS)が台頭して大きな勢力となったことを指していよう。また、ブレア首相が開戦前、一蓮托生(いちれんたくしょう)を意味する書簡をブッシュ大統領に送ったことを明らかにした上で、英米は国益が異なるので無条件の支持は必要なかったと指摘した。イラク戦争をいち早く支持した日本も耳を傾けるべき意見だろう。日本政府は12年、「対イラク武力行使に関する我が国の対応」という短い報告書を公表し、開戦の大義名分とされた大量破壊兵器(WMD)が発見されなかったことを「厳粛に受け止める」としたが、徹底検証とはほど遠い。オランダの独立調査委員会は10年、イラク戦争は国際法違反とする報告書をまとめている。米国では04年に中央情報局(CIA)主導の調査団が、翌年には独立調査委員会が、それぞれ情報収集の誤りを全面的に認める報告書を公表した。14年の上院委員会による報告書は、拷問や過酷な尋問など、イラク戦争を含めた「テロとの戦争」時の問題点を指摘している。だが、ブッシュ政権にとってWMDは方便に過ぎず、「戦争ありき」が本音だったとの見方が強い。そもそもイラクのWMD保有には多くの中東専門家が懐疑的だった。1991年の湾岸戦争後、イラクのWMDは国連が廃棄を進めた。経済制裁で疲弊したイラクが、あえてWMDを持つ意義があるとも思えない。湾岸戦争は父親のブッシュ大統領の時代であり、息子の大統領はイラクの実情を知りつつWMDを大義名分としたように見える。では、そんなにフセイン政権を倒したかったのはなぜか。それがイラク戦争最大の謎ともいえよう。この疑問を「ヤブの中」とせず、今度は米国が新たな徹底調査を始めるべきではないか。

<共謀罪について>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12530121.html
(朝日新聞 2016年8月27日) 「共謀罪」案にらみ合い 政権、対テロ強調 野党「人権保障を」
 菅氏は「国際組織犯罪防止条約の締結に伴う法整備は進めていく必要がある」としたうえで、法案の提出時期については「現段階で結論を得ているということではない」と語った。共謀罪は、重大な犯罪を実行に移す前に、相談しただけで処罰できるもので、過去3回の国会提出は廃案に。安倍政権は適用範囲を絞るなどした新たな法改正案をまとめ、罪名を「テロ等組織犯罪準備罪」に変えて国会提出を検討している。安倍政権が法整備の必要性を訴える根拠は、テロ防止のための国際的な情報コミュニティーとの連携だ。国際組織犯罪防止条約は187カ国が締結しており、政権は「締結には共謀罪を含む法整備が必要」とする。首相官邸の幹部は「他国から捜査共助の要請があっても、現状では応じられない。他国に協力できなければ、テロ防止に必要な情報は集まらない」と言う。これに対し、共産党の小池晃書記局長は「日本の刑法の大原則は、実行行為があって初めて処罰されるということ。行為なしの処罰は許されず反対だ」と主張。民進党の山尾志桜里政調会長は「捜査の必要性と人権保障のバランスをとる必要がある。中身を見極めたい」と述べた。

*2-2:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-08-28/2016082801_01_1.html (赤旗 2016年8月28日) テロ対策口実の市民弾圧法、共謀罪 名前変えても本質変わらず
 自民党政権が過去3度にわたり国会に提出しながら世論の強い批判をあびて廃案となった共謀罪。安倍政権は、名称を変えて秋の臨時国会に提出しようとしています。「テロ対策」のための法案と強調していますが、実態は最悪の市民弾圧法です。

*2-3:http://373news.com/_column/syasetu.php?ym=201608&storyid=78298
(南日本新聞 2016/8/28) [「共謀罪」提出へ] 監視社会への不安拭え
 「目配せや相づちも共謀になるのか」「酒席で『上司を殺そう』と盛り上がれば適用されるのか」
 そんな懸念が消えず、過去3回廃案になった「共謀罪」法案が組織犯罪処罰法改正案として、9月の臨時国会に提出される方向だ。評判の悪い罪名は「テロ等組織犯罪準備罪」に変えた。捜査機関の拡大解釈と乱用への批判をかわすため、適用対象をこれまでの単なる「団体」から「組織的犯罪集団」に限定した。犯罪の構成要件も共謀だけでなく「準備行為」を加えた。それでも識者は「犯罪集団や準備行為の定義が曖昧で、捜査当局の恣意(しい)的な判断の余地がある。『監視社会』になってしまう危うい構造は変わっていない」と警鐘を鳴らす。政府はこうした危惧を真摯(しんし)に受け止め、国家による市民監視強化への不安を払拭(ふっしょく)すべきである。政府が法整備を急ぐのは、昨秋のパリ同時多発テロなど、世界各地でイスラム過激派らによるテロが続発しているからだ。2020年の東京五輪を控え、テロの未然防止に取り組む必要もある。さらに政府は国際社会からの要請も挙げる。日本政府は2000年に国際組織犯罪防止条約に署名したが、条約を締結するには共謀罪など法整備が必要との立場だ。2年前のテロ資金根絶を目指す国際会合では、日本を名指しして国内法の不備を非難する声明が出されたこともある。国際テロの防止や、資金源を断つための政策は当然進めなければならない。だからと言って、市民団体や労働組合などの健全な活動を萎縮させかねない法整備は最大限慎重を期すべきである。法案が国会に提出されたら徹底した審議を求めたい。これまで日弁連内からは「現行法でも予備罪や陰謀罪など、未遂以前の段階で処罰できる仕組みがある」との指摘があった。実際、14年に施行された特定秘密保護法も共謀を処罰する規定を盛り込んだ。今年5月には刑事司法改革関連法が成立し、捜査で電話やメールを傍受できる対象犯罪が大幅に増えた。捜査機関にとって共謀罪はさらなる権限拡大につながる「悲願」とされる。だが危うさもはらむ。改正案に直接関係はないが野党の支援団体が入る建物敷地に、無断で隠しカメラを設置したとして大分県警の署員らが建造物侵入の疑いで書類送検された。改正案の「乱用の危険はない」と言う検察内の声はうつろに響く。

*2-4:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-346152.html
(琉球新報社説 2016年8月29日)「共謀罪」提出へ 民主主義崩す「悪法」だ
 罪名を変えたところで、市民活動を抑え込み、思想・信条の自由を侵す危うさは消えない。「共謀罪」の新設は必要ない。安倍政権は、国会で3度も廃案を重ねてきた「共謀罪」をつくろうとしている。罪名を「テロ等組織犯罪準備罪」に変える組織犯罪処罰法の改正案を、9月の臨時国会に提出する見通しだ。2020年の東京五輪に向けたテロ対策を前面に押し出す構えだ。昨年11月のパリ同時多発テロ後、自民党内からテロの不安に便乗し、「共謀罪」創設を求める声が出たが、首相官邸は火消しに走った。なぜか。国民生活を縛る「悪法」との印象が根強く、今年夏の参院選への悪影響を懸念したからだ。7月の参院選で大勝した後、政府は「共謀罪」創設に走りだした。国民受けの悪い施策を封印し、選挙後になって推し進める。安倍政権お決まりのやり方である。「共謀罪」とは何か。具体的な犯罪行為がなくとも、2人以上が話し合い、犯罪の合意があるだけで処罰対象となる。これまで「団体」としていた適用対象が「組織的犯罪集団」に変わった。市民団体や労働組合を標的にした乱用の恐れがあるとの批判をかわしたつもりだろう。一方、謀議だけでなく、犯罪実行の「準備行為」も罪の構成要件に加えた。犯罪集団や準備行為の定義はあいまいで、捜査当局が組織的犯罪集団か否かを判断する構図は変わらない。恣意(しい)的な判断による立件の恐れがある。謀議や準備行為を巡り、盗聴や密告奨励など監視社会が強まる危険性は拭えない。治安維持法の下で言論や思想が弾圧された戦前、戦中の反省を踏まえ、日本の刑法は犯罪が実行された「既遂」を罰する原則がある。政府は「共謀罪」をテロなどに対処する国連の「国際組織犯罪防止条約」への加入条件とするが、現行刑法でも予備罪や陰謀罪など、未遂以前の段階で処罰する仕組みはある。特定秘密保護法、集団的自衛権行使に道筋を開く安全保障関連法の成立など、安倍政権は立憲主義を軽んじてきた。名護市辺野古や東村高江では、新基地にあらがう市民を力ずくで排除している。政権への批判に対し、度を越えた反発を示して威圧する狭量が色濃い。この政権が「共謀罪」を手中にする危うさも考えたい。民主主義を掘り崩す制度は要らない。

*2-5-1:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2016/160831.html (2016年8月31日 日本弁護士連合会会長 中本 和洋)いわゆる共謀罪法案の国会への提出に反対する会長声明
 今般、政府は、2003年から2005年にかけて3回に渡り国会に提出し、当連合会や野党の強い反対で廃案となった共謀罪創設規定を含む法案について、「共謀罪」を「テロ等組織犯罪準備罪」と名称を改めて取りまとめ、今臨時国会に提出することを検討している旨報じられている。政府が新たに提出する予定とされる法案(以下「提出予定新法案」という。)は、国連越境組織犯罪防止条約(以下「条約」という。)締結のための国内法整備として立案されたものであるが、その中では、「組織犯罪集団に係る実行準備行為を伴う犯罪遂行の計画罪」を新設し、その略称を「テロ等組織犯罪準備罪」とした。また、2003年の政府原案において、適用対象を単に「団体」としていたものを「組織的犯罪集団」とし、また、その定義について、「目的が4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体」とした。さらに、犯罪の「遂行を2人以上で計画した者」を処罰することとし、その処罰に当たっては、計画をした誰かが、「犯罪の実行のための資金又は物品の取得その他の準備行為が行われたとき」という要件を付した。しかし、「計画」とはやはり「犯罪の合意」にほかならず、共謀を処罰するという法案の法的性質は何ら変わっていない。また、「組織的犯罪集団」を明確に定義することは困難であり、「準備行為」についても、例えばATМからの預金引き出しなど、予備罪・準備罪における予備・準備行為より前の段階の危険性の乏しい行為を幅広く含み得るものであり、その適用範囲が十分に限定されたと見ることはできない。さらに、共謀罪の対象犯罪については、2007年にまとめられた自由民主党の小委員会案では、対象犯罪を約140から約200にまで絞り込んでいたが、提出予定新法案では、政府原案と同様に600以上の犯罪を対象に「テロ等組織犯罪準備罪」を作ることとしている。他方で、民主党が2006年に提案し、一度は与党も了解した修正案では、犯罪の予備行為を要件としただけではなく、対象犯罪の越境性(国境を越えて実行される性格)を要件としていたところ、提出予定新法案は、越境性を要件としていない。条約上、越境性を要件とすることができるかどうかは当連合会と政府の間に意見の相違があるが、条約はそもそも越境組織犯罪を抑止することを目的としたものであり、共謀罪の対象犯罪を限定するためにも、越境性の要件を除外したものは認められるべきではない。当連合会は、いわゆる第三次与党修正案について、我が国の刑事法体系の基本原則に矛盾し、基本的人権の保障と深刻な対立を引き起こすおそれが高く、共謀罪導入の根拠とされている、条約の締結のために、この導入は不可欠とは言えず、新たな立法を要するものではないことを明らかにした(2006年9月14日付け「共謀罪新設に関する意見書」)。また、条約は、経済的な組織犯罪を対象とするものであり、テロ対策とは本来無関係である。そして、以上に見たとおり、提出予定新法案は、組織的犯罪集団の性格を定義し、準備行為を処罰の要件としたことによっても、処罰範囲は十分に限定されたものになっておらず、その他の問題点も是正されていない。よって、当連合会は、提出予定新法案の国会への提出に反対する。

*2-5-2:http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/060914.pdf
(2006年9月14日 日本弁護士連合会) 共謀罪新設に関する意見書
意見の趣旨
 政府と与党が導入を主張している「共謀罪」の規定は我が国の刑事法体系の基本原則に矛盾し,基本的人権の保障と深刻な対立を引き起こすおそれが高い。さらに導入の根拠とされている国連越境組織犯罪防止条約の批准にも,この導入は不可欠とは言い得ない。よって「共謀罪」の立法は認めることができない。(以下略)

<特定秘密保護法>
*3:http://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=19193 (中国新聞社説 2013年12月4日) 特定秘密保護法案 テロの定義があいまい
 多くの国民が不安を感じたことだろう。自民党の石破茂幹事長が自身のブログで、特定秘密保護法案に反対するデモをテロになぞらえた問題である。法案が定める特定秘密4分野の一つがテロ防止だ。もしデモをテロとみなすのであれば、幅広い国民が監視の対象となる可能性があろう。言論や表現の自由が脅かされかねない。石破氏はブログでの発言を陳謝し一部を撤回した。これを受け、菅義偉官房長官はきのう、秘密保護法案を今国会の会期末である6日までに成立させたい意向を重ねて示した。しかし法案への懸念を広げたのは、ほかならぬ与党の幹部である。審議時間を一方的に区切る強引な姿勢は許されない。もともと法案が定めるテロの定義はあいまいと批判されてきた。「政治上その他の主義主張に基づき、国家もしくは他人にこれを強要し、または社会に不安もしくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、または重要な施設その他の物を破壊するための活動」。12条はこう規定する。森雅子内閣府特命担当相はこれまでの国会審議で、人を殺傷したり施設を破壊したりしなければテロには当たらないと答弁してきた。だが「または」という接続詞につながれた条文の文言だけを読めば、主張を強要するだけでテロになるとも受け取れる。これではデモに限らず、さまざまな言論活動もテロになってしまうと指摘されていた。疑義が深まる中で出てきたのが、石破氏のブログ発言である。特定秘密を決める側の本音ではないのかと、国民がいぶかるのは当然だろう。法案の中身があいまいなのはテロの定義に限らない。衆院から審議の場を移した参院の特別委員会でも、政府の答弁はぶれ続けている。例えば、秘密指定の妥当性をチェックする第三者機関をどこに設けるかである。森担当相が行政機関の内部と外部の両方の可能性に言及しているのに対し、礒崎陽輔首相補佐官は「行政から完全な独立ではない」とちぐはぐだ。透明性を確保するための重要な論点であるにもかかわらず、政府内で方針がまとまっていない証拠だろう。法案自体が生煮えと言わざるを得ない。きのうの参院特別委の参考人質疑で、招かれた3人全員が法案の慎重な審議や廃案を求めたことも重く受け止めなければならない。日弁連の江藤洋一氏は石破氏の発言に触れ、法案が言論弾圧や政治弾圧に利用される恐れがあると指摘した。石破氏は発言の撤回後、大音量のデモについて「本来あるべき民主主義の手法とは異なる」との見解をあらためて示した。ただ、それを言うのなら、国民が抱く疑念が払拭されていないのに秘密保護法案の成立を急ごうとする政府・与党の姿勢ではないか。野党7党は法案の慎重審議を求める共同声明をまとめた。与党が何もなかったように、数の力で法案を押し通すことがあってはなるまい。国民が全てを白紙委任しているわけではないことを忘れてもらっては困る。少数意見でも、しっかり耳を傾けるのが民主主義だろう。政府・与党は今国会での法案成立にこだわるべきではない。

<難民>
*4:http://qbiz.jp/article/75055/1/ (西日本新聞 2015年11月17日) 難民 自転車で北欧流入、極寒の北極圏経由でルート急増
 内戦が続くシリアなどから難民や移民が欧州に押し寄せる中、ロシアの北極圏を経由して北欧ノルウェーに自転車をこいで入る新ルートが注目されている。ロシアはシリアのアサド政権と親密な関係で、シリア人にとってビザが比較的手に入りやすいほか、地中海を渡る従来のルートは船の遭難が続発しているため、より安全な行き方として選ばれている。欧米メディアによると、新ルートの主なものはシリアなどからレバノンに抜け、空路でモスクワ入り。その後、列車でロシア北極圏ムルマンスクに入り、車や購入した自転車でノルウェーへ。ビザや交通費は総額で約2500ドル(約30万円)かかり、出発から3日でノルウェーに着いた人もいるという。自転車使用は当局の規制をかいくぐるのが目的。ロシアは徒歩での国境越えを認めていない一方、ノルウェー側では人を運ぶ車の運転手は必要書類の提出を求められ、ロシアのタクシーは難民らを乗せて国境を越えられない。苦肉の策として自転車が使われており、国境付近では難民らが乗り捨てた自転車が山積み状態になっている。米紙ニューヨーク・タイムズによると、このルートを使った難民らは昨年、5人だけだったが、今年は9月に400人以上、10月には1週間で250人以上がノルウェーに入っているという。今年2月にこのルートを使ったシリア人難民らがノルウェー政府から手厚い対応を受け、その様子をソーシャルメディア上で公開したことで人気に拍車が掛かった。ただ、今後は本格的な冬入りを迎えて国境近くの北極圏は極寒の地と化すため、新ルートも危険との指摘も出ている。


PS(2016年9月14日追加):*5-1のように、プール内の燃料は2020年度から取り出し始める方針で、その核燃料の搬出も見通せないのに、早々とフクイチ1号機の建屋壁カバーを撤去し始め、その後は大量の核燃料が空中にむき出しの状態になるとのことである。これは、作業員の体が汚染されるという問題だけでなく、人工の核種が環境に飛散するという問題だ。また、*5-2のように、環境省は、福島県内の除染で出る2千万立方メートル超の汚染土のうち「3千ベクレルもしくは8千ベクレル」を下回るものは、日本全国の公共事業の資材に活用して再利用する検討をしているそうである。つまり、日本全国に大量の放射性物質をばら撒くということだ。君たちならやりかねないのであらかじめ言っておくが、まさか豊洲市場の地下をこれで埋めるのではないでしょうね。 

*5-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12557543.html
(朝日新聞 2016年9月14日) 核燃料搬出、見通せず 建屋壁カバー撤去開始 福島第一1号機
 東京電力は13日、水素爆発した福島第一原発1号機に残る核燃料の取り出しに向け、建屋を囲う壁カバーの撤去を始めた。燃料をつり上げるクレーンなどを設置するため、使用済み燃料プールを覆うように崩落した屋根などを取り除く準備を本格化させる。プール内の燃料を2020年度から取り出し始める方針だが、建屋内の状況は詳しく分かっておらず計画通りに進むかは見通せない。13日早朝。大型クレーンが、長さ23メートル、幅17メートル、重さ約20トンの壁カバーをつり上げ、ゆっくりと地面に下ろした。作業は前日に行う予定だったが、弱い風のため延期になった。東電が極めて慎重になるのは、撤去作業により放射性物質を含むほこりが舞い上がる恐れがあるからだ。3号機でがれきを撤去していた13年には、作業員の体が汚染される事故があった。同年秋には、約20キロ北で収穫されたコメの一部が基準値を超え、原子力規制委員会が関連を調査した。それでも東電がカバーの撤去に踏み切ったのは、1号機のプールに392体の燃料が残っているからだ。水を循環させて冷やし続けないと、燃料自らの発熱で水が蒸発し、燃料が溶ける恐れがある。安全に冷却するには、クレーンで安定した場所に移し替えなければならない。クレーンを設置するには、建屋上部のがれきを撤去する必要がある。東電は残る17枚の壁カバーを年末までに取り外し、がれきがどう重なっているかなどを調べる計画だが、放射線量が高いため、まずはカメラを使った調査に頼ることになりそうだ。がれきを撤去する重機の搬入やクレーンの設置については「がれきの散乱状況などを見て今後決めていく状況」(東電担当者)という。プール内の燃料の取り出しについては、4号機ではすでに終了している。3号機はがれきの撤去は完了したものの、建屋上部の放射線量が高すぎ、その後の段階に入れないでいる。水素爆発を免れた2号機は、そのまま残る建屋上部を切り取らなければならず、作業方針の決定はこれからだ。一方、1~3号機の原子炉格納容器内には溶けた燃料も残る。東電と政府は21年から取り出し始める方針。現在、格納容器を水で満たすなど取り出す方法を検討しているが、燃料が溶け落ちている場所すら分かっておらず、作業は難航が予想される。

*5-2:http://blog.goo.ne.jp/flyhigh_2012/e/73a3312fb2b4f05f6458eb5a664db9da
(朝日新聞 2015年12月22日) 原発汚染土、最大で99・8%再利用可能 環境省が試算
 環境省は21日、福島県内の除染で出る2千万立方メートル超の汚染土のうち、最大で約99・8%は再利用できるとの試算を明らかにした。公共事業の資材に活用する方針で、来年度以降、技術開発や再利用のモデル事業を進める。汚染土の活用を議論する同省の検討会で示した。試算では、土に含まれる放射性セシウムの濃度を、災害廃棄物の再利用基準「1キロあたり3千ベクレル以下」と、国が処分する指定廃棄物の基準「同8千ベクレル超」を下回る場合を仮定。自然減衰で基準を下回るまで待つ場合や、化学的な処理、土の粒の大きさでより分けるなどの手を加えた場合の利用可能量と最終処分量を算出した。その結果、いずれの基準でも、手を加えた場合、ほとんどが再利用できるとなった。最終処分する量は最も少ない場合、3千ベクレルを基準にすると約10万立方メートル、8千ベクレルだと約4万立方メートルで済むという結果になった。再利用が進めば、福島県外での最終処分が必要な廃棄物が減り、処分場の受け入れ先を探しやすくなる。ただ、一度放射性物質に汚染された土への不安が残ったり、処理費用がかさんだりする懸念もある。検討会の委員からは「使い先がなければ、再利用は絵に描いた餅だ」「処理にかかるコストと得られる利益を示してほしい」などの意見が出た。


PS(2016年9月17日追加):*6のように、「共謀罪」の構成要件を少し変更しただけの組織犯罪処罰法改正案は臨時国会に提出されないことになったが、来年の通常国会での成立を目指すそうだ。しかし、この法律は、捜査機関のレベルが低く(時代についていっていない上、見識にも不安がある)、見立てが政治的理由で歪められることも多いため、乱用によって人権侵害や思想信条の自由・表現の自由の侵害が生じる可能性は高いと考える。

*6:http://qbiz.jp/article/94287/1/
(西日本新聞 2016年9月17日) 「共謀罪」臨時国会見送り
 菅義偉官房長官は16日の記者会見で「共謀罪」の名称や構成要件を変更した組織犯罪処罰法の改正案について、26日召集の臨時国会に提出しない方針を明らかにした。審議日程が窮屈な中、2016年度第2次補正予算案や、環太平洋連携協定(TPP)の承認案件と関連法案の審議を優先すべきだと判断した。政府は、来年の通常国会での同改正案成立を目指す。萩生田光一官房副長官は、16日の衆院議院運営委員会理事会に出席し、改正案を臨時国会に提出しない方針を与野党に伝えた。これに先立ち、自民、公明両党の幹事長と国会対策委員長は都内で会談し、臨時国会では補正予算案とTPP法案の早期成立を目指すことを確認した。同改正案を巡っては、捜査機関による乱用で人権侵害が生じるとの懸念が指摘されている。与党内からも「十分な議論が必要」と慎重な対応を求める声が上がっていた。

| 外交・防衛::2014.9~ | 04:23 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.7.24 南シナ海、東シナ海の問題について
 
  中国の行動     中国が主張する管轄権    中国が作った人工島    国際法の規定 
2016.7.15日経新聞                   2016.7.13日経新聞

 TVではNHKまでポケもんの宣伝をしているが、一億総幼児化の企みだろうか。そして、ポケもん(このブログでは、ポケットモンスターのことではなく、ポケッとした人のことを言う)キャスターやポケもんコメンテーターが、南シナ海問題に関して意味のない曖昧なコメントをしているため、法的筋道を明確に書く。

(1)南シナ海問題の性質と仲裁裁判所判決の内容
 南シナ海の問題とは、*1-1、*1-3のように、天然ガスや漁業など豊富な資源が眠る海域で、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイなどが領有権を主張しているが、中国は国連海洋法条約に違反して、中国独自で定めた「9段線」を根拠とし、南シナ海のほぼ全域で管轄権を主張し実効支配しているのが問題なのである。

 そして、軍備や経済力に大きな差のある中国とフィリピンが1対1で交渉してもFairな交渉にならないため、*1-2、*1-3のように、フィリピンが、「中国が人工島を造成したミスチーフ礁などは満潮時に水没する『低潮高地(暗礁)』であり、領海を設定できない」とオランダ・ハーグの仲裁裁判所に訴え、2016年7月12日、オランダ・ハーグの仲裁裁判所が「①中国が南シナ海に設定した独自境界線『九段線』には主権、管轄権、歴史的権利を主張する法的根拠はない」「②南沙諸島には中国が排他的経済水域(EEZ)を設けられる国連海洋法条約上の『島』はないため、中国はEEZを主張できない」「③中国がスカボロー礁でフィリピン漁民を締め出したのは国際法違反である」「④ミスチーフ礁とセカンドトーマス礁はフィリピンのEEZ内である」「⑤中国は南沙諸島で人工島を建設するなどして国連海洋法条約の環境保護義務に違反した」という法的に筋の通った判決を出したものだ。

 この判決について、フィリピンのヤサイ外相は「フィリピンは画期的な判決を尊重し強く支持する」と述べたが、中国の習近平国家主席は「南シナ海の島々は昔から中国の領土であり、領土、主権、海洋権益はいかなる状況でも仲裁判決の影響を受けない。判決に基づくいかなる主張や行動も受け入れない」と強調したそうだ。しかし、(国連海洋法条約という)国際法が(中国の)国内法に優先するというのは世界のルールであるため、国際法上の根拠を明確に示せなかった中国が「国際法違反」と結論づけられたのは当然のことである。

 そして、同じ状況は東シナ海でも起こっているため、日本も尖閣諸島の領有権を曖昧にして「武力による一方的な現状変更に抗議する(これでは、「武力ではなく合意の下で領有権を変更するのならよい」ということになる)」と唱えるだけでなく、領有権の所在を明確にした上で、次の交渉を行うべきなのだ。

(2)仲裁裁判所の公正性について
 *2-1のように、中国外務省の劉次官は「①仲裁裁判所は合法的な国際法廷ではない」「②裁判官5人のうち4人が欧州出身者である」「③国際法廷は世界各種の文化と主要法体系を代表して構成するという国連海洋法条約の定めに反する。彼らがアジアの文化を理解しているのか」「④国際司法裁判所や国際海洋法裁判所の判事の報酬は国連が支給しているが、5人はフィリピンから金を稼いでいる」「⑤5人の裁判官のうちフィリピンが指名した1人を除く4人はすべて日本人の柳井国際海洋法裁判所所長(当時)が指名した」などと批判したそうだ。

 しかし、日本も東シナ海で同様の問題をかかえているものの、誰が裁判官であったとしてもこの判決は国際法を根拠として筋が通っているので、覆らないと考える。そのため、*2-2のように、戦争をせずに領土問題を解決するためには、国際法を根拠とするハーグ仲裁裁判所の判決を尊重することが必要不可欠だろう。

(3)尖閣諸島について

    
    東シナ海の状況      東シナ海の資源開発        新安全保障法制について

 *3-1のように、日本の2016年版防衛白書で、6月上中旬に中国の軍艦が沖縄県・尖閣諸島周辺や鹿児島県沖などの接続水域、領海に3度にわたり航行した事例について、東シナ海や南シナ海などの海洋進出について「高圧的」との認識を示すそうだ。しかし、他国の接続水域や領海に入るのは、高圧的か否かが問題ではなく国際法違反か否かが問題であるため、2016年版防衛白書もポケもんである。

 また、新安全保障関連法が成立して周辺事態法が重要影響事態法に変更されたが、尖閣諸島など周辺の警備については図のように電話閣議になっただけであるため、地球規模で他国軍を支援して弾薬提供などを行うことになった上、尖閣諸島付近への中国船出没の抑制にはなっていない。従って、新安全保障関連法は、「国際社会からは(助かるので)高く評価する」とされたとしても、日本国民を前より守ることになったわけではないのだ。

 なお、*3-2のように、翁長沖縄県知事が、2016年6月9日に、中国海軍のフリゲート艦が尖閣諸島(同県石垣市)周辺の接続水域に侵入したことなどを受け、地域住民の安全確保に向けて万全の態勢で取り組むよう菅官房長官らに要請したのは的を得ている。しかし、日本政府の菅官房長官らは、いつものとおり情報収集・監視活動に取り組んでいることを説明したのみで、結果を出していない。そのため、「何のためにやっているのか」と言われて当然なのである。

*1-1:http://www.asahi.com/topics/word/%E5%8D%97%E3%82%B7%E3%83%8A%E6%B5%B7.html (朝日新聞 2016年7月15日) 南シナ海問題
 豊富な天然資源が眠るとされる海域で、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが領有権を主張している。対立回避のため東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国は2002年に行動宣言を結んで自制と協調を目指した。だが中国は、独自の「9段線」を根拠にほぼ全域での管轄権を主張。軍事力や経済力を背景に、監視船を派遣するなど実効支配を強めてきた。フィリピンはスプラトリー(南沙)諸島ミスチーフ礁を奪われた経緯から中国と激しく対立。国連海洋法裁判所に仲裁を申し立てている。中国はベトナムとも漁船妨害などで衝突してきたが、最近はフィリピンを孤立させる戦略もあって、友好を保っていた。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160713&ng=DGKKZO04779730T10C16A7MM8000 (日経新聞 2016.7.13) 仲裁裁判所判決の骨子
 ○中国が南シナ海に設定した独自境界線「九段線」には主権、管轄権、歴史的権利を主張する
   法的根拠はない
 ○南沙諸島には、排他的経済水域(EEZ)を設けられる国連海洋法条約上の「島」はなく、中国は
   EEZを主張できない
 ○中国がスカボロー礁でフィリピン漁民を締め出したのは国際法違反
 ○ミスチーフ礁とセカンドトーマス礁はフィリピンのEEZ内にある
 ○中国は南沙諸島で人工島を建設するなどして国連海洋法条約の環境保護義務に違反

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160713&ng=DGKKZO04779680T10C16A7MM8000 (日経新聞 2016.7.13) 南シナ海 中国の主権認めず 国際司法が初判断、人工島「島ではない」 中国「受け入れない」
 国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所は12日、南シナ海での中国の海洋進出(総合2面きょうのことば)を巡り、中国が主権を主張する独自の境界線「九段線」に国際法上の根拠がないと認定した。中国が人工島造成など実効支配を強める南シナ海問題に対し、初めて国際的な司法判断が下された。中国は判決を受け入れないとしており、国際社会との緊張が高まるのは必至だ。裁判はフィリピンが提訴した。判決文は九段線の海域内で中国が主張する主権や管轄権、歴史的権利に関して根拠がないと指摘。国連海洋法条約を超えて主権などを主張することはできないとした。中国は1996年に同条約を批准している。中国が造成する人工島も「島」と認めなかった。フィリピンが訴えた「中国が人工島を造成したミスチーフ礁などは満潮時に水没する『低潮高地』(暗礁)であり、領海を設定できない」との指摘を認めた。スカボロー礁やジョンソン礁などは「岩」であると認定し、沿岸国が漁業や資源開発などの権利を持つ排他的経済水域(EEZ)は設けられないと判断。スカボロー礁周辺の海域は中国、フィリピン、ベトナムの伝統的な漁場で、中国がフィリピン漁船にたびたび妨害を加えていたことも国際法違反だとした。フィリピンのヤサイ外相は判決を歓迎するとした上で「フィリピンは画期的な判決を尊重し、強く支持する。紛争の平和的解決のため、引き続き努力する」と述べた。一方、中国の習近平国家主席は北京訪問中のトゥスク欧州連合(EU)大統領との会談で「南シナ海の島々は昔から中国の領土であり、領土、主権、海洋権益はいかなる状況でも仲裁判決の影響を受けない。判決に基づくいかなる主張や行動も受け入れない」と強調した。国連海洋法条約に基づく仲裁裁判は、相手国の同意がなくても一方の国の意思だけで始められる。中国の海洋進出を脅威に感じたフィリピンは2013年1月に裁判の開始を申し立てた。中国は拒否したが、同条約の規定に従い裁判官に当たる5人の仲裁人が審理した。中国は1950年前後に九段線を示し、海域のほぼ全域での主権と管轄権を主張してきたものの、国際法上の根拠を明確には説明してこなかった。今回の判決で「国際法違反」と明確に結論づけられ、中国の主張が根底から覆された。中国とフィリピンは判決に従う義務を負うが、罰則や強制する仕組みはない。南シナ海は国際航路の大動脈である上、天然ガスや漁業などの資源が豊富。中国とフィリピンのほか、台湾、ベトナム、マレーシアなどが領有権を争っている。

<仲裁裁判所の公正性>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJ7F5WTWJ7FUHBI01J.html (朝日新聞 2016年7月13日) 南シナ海判決、中国が批判に躍起「日本人裁判所長が…」
 中国政府が、南シナ海での中国の権利を否定した常設仲裁裁判所の判決を「無効」と批判するキャンペーンを展開している。裁判官の国籍も問題視し、判決を拒否する正当性を強調。批判の矛先は日本にも向けられている。中国政府は13日午前、予定していた貿易統計の会見を延期し、判決への反論会見に差し替えた。会見では中国の立場を説明する「白書」を発表。歴史的経緯から「中国の領土だという基本的事実を変えることはできない」とし、判決を無効と主張した。白書は中国語のほか英語、ロシア語、アラビア語など計9言語で出版された。会見で外務省の劉振民次官は「仲裁裁判所が合法的な国際法廷ではないことを説明したい」とし、裁判官5人のうち4人が「欧州出身者だ」と指摘。「国際法廷は世界各種の文化と主要法体系を代表して構成するという、国連海洋法条約の定めに反する。彼らがアジアの文化を理解しているのか」などと批判した。さらに、5人の給与にも言及し、「国際司法裁判所や国際海洋法裁判所の判事の報酬は国連が支給しているが、5人は金を稼いでいる。フィリピンのカネだ」などと述べた。判事の選定方法や適性も含めて手続きの「違法性」を主張した形で、「国際法史上、悪名高い判例となった」とも断じた。また、仲裁裁判の審理の過程で十分な海域調査をしていないとし、技術的な観点からも判決には問題があると強調した。中国政府は日本にも批判の矛先を向けた。劉氏は会見で、5人の裁判官のうちフィリピンが指名した1人を除く4人は「すべて日本人の国際海洋法裁判所の柳井俊二所長(当時)が指名した」と指摘。柳井氏が安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の座長だったことに触れ、「裁判手続きの過程で影響を与えた」と述べた。中国外務省は12日夜、岸田文雄外相が出した「当事国は今回の判断に従う必要がある」との声明に対する反論コメントで、同様の批判を展開。判決に日本の政治的な意図が関わっていると強調することで、国内世論の不満を日本に向けさせる狙いとみられる。中国国内では12日夜から13日にかけて判決のニュースが駆け巡り、反発が強まっている。中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」では「中国の領土は一点たりとも譲るな」「強軍こそが中華民族が屈辱から抜け出す唯一の道」などと強硬な発言が目立つほか、「外務省には人材がいないのか」「裁判で反論すべきだった」などと政府の対応を批判する声も上がる。中国政府の強硬姿勢の背景には、判決を「座視」すれば、批判の矛先が指導部に向かいかねない懸念もあるとみられる。新華社通信は13日、南沙諸島の二つの滑走路で民間機2機が試験飛行に成功したと伝え、中国が今後も実効支配を進める姿勢をアピールした。共産党機関紙・人民日報も1面で「中国は将来、領土主権を守り、海洋権益の侵犯を受けないために必要なあらゆる措置を取る」と強硬な姿勢を示した。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12460913.html
(朝日新聞 2016年7月15日) 比、判決の尊重訴える方針 ASEMで 南シナ海問題
 フィリピンのドゥテルテ大統領は国内執務のため出席しないが、代理でヤサイ外相が参加する。ドゥテルテ氏は14日、マニラであった会合で「戦争は望まない」と述べ、中国と対話で解決したい考えを示した。また、ラモス元大統領に対し「中国と対話を始められるように」と相談していることも明らかにした。これを受け、ASEMでヤサイ外相がどこまで判決について訴えるかに関心が集まっている。

<尖閣諸島>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJ7N6KS1J7NUTFK00D.html
(朝日新聞 2016年7月21日) 中国の海洋進出「高圧的」 防衛白書原案、認識示す
 2016年版の防衛白書の原案が明らかになった。中国の動向について、6月上中旬に軍艦が、沖縄県・尖閣諸島周辺や鹿児島県沖などの接続水域、領海に3度にわたり航行した事例を盛り込み、東シナ海や南シナ海などの海洋進出について、「高圧的」だとの認識を示した。白書は8月上旬にも閣議報告される。航空自衛隊による対中国機の緊急発進(スクランブル)について、「急激な増加傾向」にあると指摘し、尖閣周辺の東シナ海での中国機の動きが南下しているとも分析した。北朝鮮を巡っては、1月に強行した4度目の核実験や2月以降の相次ぐ弾道ミサイル発射などを示し、「軍事的な挑発的言動」を繰り返していると強調。「既に核兵器の小型化、弾頭化の実現に至っている可能性も考えられる」とし、「北朝鮮のミサイル開発全体が一層進展しているとみられる」とした。また、安全保障関連法が成立した後、初めての白書となる。同法については章をたてて説明し「歴史的な重要性」があると強調した。「国際社会からも高く評価、支持」されているとも明記した。

*3-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160721-00000566-san-pol (産経新聞 2016年7月21日)翁長雄志沖縄県知事が政府に初めて安全確保要請 尖閣周辺海域の中国軍艦侵入
 沖縄県の翁長雄志知事は21日、首相官邸で開かれた「政府・沖縄県協議会」で、今年6月9日に中国海軍のフリゲート艦が尖閣諸島(同県石垣市)周辺の接続水域に侵入したことなどを受け、地域住民の安全確保に向けて万全の態勢で取り組むよう菅義偉官房長官らに要請した。翁長氏が中国船への対応を政府に要請するのは初めて。協議会で菅氏らは翁長氏の要請に対し、情報収集や監視活動に取り組んでいることを説明した上で、「政府としては引き続きわが国周辺海域での警戒監視活動に万全を期す」と応じた。政府への要請については、石垣市の中山義隆市長らが県に求めていた。

| 外交・防衛::2014.9~ | 03:47 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.7.21 集団的自衛権の行使が違憲なのではなく、自国防衛以外での武力行使が違憲なのである (2015.7.23追加あり)
    
  概略図        2015.7.18東京新聞      2015.6.21 2015.7.12東京新聞 
                                   日経新聞
            (図は、クリックすると拡大します)
(1)日米安全保障条約は集団的自衛権そのものであること
 *2の1960年にワシントンで締結された日米安全保障条約(以下、“日米安保条約”)に、「日米は、(中略)両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、両国が極東における国際平和と安全の維持に共通の関心を有することを考慮して日米安保条約を締結する」と書かれており、当時から、日本が個別的・集団的自衛権の両方を有していると認識していたことが明らかだ。そして、砂川事件判決は、安保条約の合憲性を争った違憲立法審査権の行使において、最高裁が地裁判決を覆して出した判決である(つまり、裁判所も判断が分かれた)。

 その日米安保条約は、5条で「①締約国は、日本国の施政下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃は自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて(重要)、共通の危険に対処するように行動することを宣言する」「②前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第51条に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない」「③その措置は、安全保障理事会が国際平和と安全を回復・維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない」としている。

 また、6条で、「①日本の安全と極東の平和・安全の維持に寄与するため、アメリカは、その陸・海・空軍が日本で施設や区域を使用することを許される」「②施設や区域の使用、日本におけるアメリカ軍の地位は、1952年2月28日に東京で署名された日米間の安保条約第三条に基く行政協定に代わる別個の協定及び合意がなされれば、その取極により規律される」としている。つまり、日米安全保障条約の双務性は、日本の基地提供によって果たされており、日米の地位協定は、今後、変化する可能性もあるのだ。

 このほか、日米安保条約は、「2条:締約国は、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する」「3条:締約国は、継続的かつ効果的な自助・相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として(重要)、維持発展させる」「4条:締約国は、日本の安全や極東の平和・安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する」「7条:この条約は、国際連合憲章(以下、“国連憲章”)に基づく締約国の権利・義務や国際平和・安全の維持を行う国際連合の責任に対し、どのような影響も及ぼすものではない」、「8条:この条約は、日米のそれぞれの憲法上の手続に従つて批准されなければならない」「10条:この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も他の締約国に対して条約終了の意思を通告することができ、その場合はそのような通告が行なわれた後一年でこの条約は終了する」等を定めている。

(2)国連憲章と日本国憲法による戦争放棄の関係
 *3の国連憲章により、国際法上、日本が個別的及び集団的自衛権を有していることは、疑う余地もない。そして、国連憲章と国際司法裁判所は不可分であるため、国際司法裁判所に行っても、日本の集団的自衛権は認められる。そして、国際法は地球上に存在する国間のルールであるため、個別国の憲法や一般法より優先するが、個別的及び集団的自衛権は権利であるため、日本国憲法で放棄することが可能なのである。

 一方、日本国憲法は9条で、「①日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」「②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」として戦争放棄しているが、自衛のみは認められると解釈されているため、「どこまでが自衛か」がポイントであり、「個別的」か「集団的」かという区別がポイントなのではない。

 そして、国連憲章51条に、「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際平和と安全維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない」と国際的に定められているため、個別的自衛権と集団的自衛権の境目を日本のみで通じる定義にすることはできない。

(3)安保関連法案衆院通過の経緯とその違憲性
 *1-1のように、政府・与党は「砂川事件の最高裁判決や過去の政府見解を踏まえたものであるため、安保関連法案は問題ない」と主張しているが、私も委員会質問や答弁を聞いていて、それぞれの事態における行使要件や行使内容が曖昧で国際基準からも外れている思った。その上、今回の安保関連法案に合わせるように、憲法改正を準備しているのは要注意だ。

 また、*1-3に書かれているとおり、その場限りの慰めで真面目に答えていない答弁も多く、内容を正確に説明しようという意欲に欠けていた。しかし、現在は、専門家を含む多様な人がインターネットで国会質問を視聴しているため、TVなどのマスメディアさえコントロールしておけばよいというのは甘い。TVの方は、国民を腑抜けにするのが目的であるかのように、スポーツ、事件、台風ばかりに長時間を割き、まともに安保関連法案を分析した局は少なく、編集者のレベルが疑われる程だったが、これにより、インターネットで国会中継を視聴できたか否かで国民の間に大きな情報格差が生まれただろう。

 もちろん、*1-2のように、「○○事態で地球の裏側まで武力行使が可能」というのは、国連憲章では認められていても日本国憲法で認められていないため違憲だ。また、本当に差し迫った国境警備についてはグレーゾーン事態とされ、変化がない。そのため、国民が安保法案の必要性を認めるには、逐条で従来の法律と新法案の比較、変更理由、上位法や国際法との整合性を一覧表にして議論すべきだ。

 しかし、全体として、私は、戦争に懲りて平和の理念に基づき文章が練られた国連憲章や日本国憲法と異なり、今回の安保関連法案は、筋が悪すぎて欠点を指摘して修正すれば済むというものではないため、*1-4、*1-5に書かれているとおり、廃案にして出直すしかないと思う。

<安保関連法案衆院通過の経緯>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150621&ng=DGKKZO88335600Q5A620C1TZJ000 (日経新聞 2015.6.21) 合憲性巡る議論再燃、集団的自衛権の行使容認 与野党、判決・学説挙げ激突
 集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案の国会審議で、合憲性を巡る議論が再燃している。政府・与党は過去の最高裁判決や政府見解を踏まえたもので問題はないと主張、民主党などは行使できる要件が曖昧なことや立憲主義の観点から憲法違反とみる。戦後、自衛権と9条の整合性が論じられてきたのを踏まえ、論争の構図を点検した。法案で認める集団的自衛権の限定行使を「合憲」とする政府・与党の主張は、1972年の政府見解を根拠とする。(1)憲法の下で自衛権を有する(2)国民の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態に対処するため必要最小限度の範囲に限る――との内容だ。
●立憲主義で反論
 ただ、72年見解の結論は集団的自衛権の行使が「憲法上許されない」。政府は法案の下敷きとなる2014年7月の閣議決定で解釈を変えた。安保環境の変化を理由に、密接な関係にある他国への攻撃でも国民の権利が根底から覆される明白な危険があれば、自衛権を行使できるとの結論を導いた。見解の(1)と(2)の基本的論理も維持し、合憲と主張する。閣議決定時から憲法学者や野党から「立憲主義」の観点で違憲論が相次ぐ。立憲主義は憲法で国家権力を制限する考え方で、時の政権が憲法の解釈を大幅に変えるのに否定的だ。4日の衆院憲法審査会で自民党推薦で発言した長谷部恭男・早大教授は「従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかない」と指摘。民主党も岡田克也代表が17日の党首討論で安保法案を「違憲だ」と断じた。そもそも終戦直後は自衛権を持つかが焦点だった。1946年、吉田茂首相は国会で、自衛権は一切ないとの立場を表明した。だが50年に「自衛権は存する」と軌道修正。この年、朝鮮戦争が起こり米国の求めに応じて警察予備隊が発足した。54年には自衛隊が創設され、政府は憲法9条の禁じる「戦力」にあたらないとの論理を採用したが、その合憲性は問われ続けた。最高裁が自衛権に関する判断を示したのが砂川事件判決だ。都内の米軍立川基地へのデモ隊乱入を契機に、米軍駐留の違憲性が争点となった。59年の最高裁判決は違憲とした第一審判決を破棄。自衛権については「自国の存立を全うするために必要な自衛の措置をとり得るのは当然」とした。
●砂川判決で補強
 安保関連法案の集団的自衛権行使容認で、政府・与党は砂川判決を根拠の補強材料とする。「自衛の措置」は個別的、集団的を明記せず「集団的自衛権行使が認められないと言っていない」(高村正彦自民党副総裁)とみる。田中耕太郎最高裁長官が補足意見で「厳格な意味での自衛の観念は存在せず、自衛はすなわち『他衛』、他衛はすなわち自衛という関係がある」と述べたのを、集団的自衛権行使の容認発言とみる向きもある。憲法学者の多くは批判する。長谷部氏は15日の記者会見で「問題とされたのは日米安保条約で、集団的自衛権の行使は争点になっていない」と強調した。これに対し、安保法案の合憲性を主張する百地章・日大教授は「(判決は)集団的自衛権を射程に入れていた」と指摘している。冷戦後は国際協力での自衛隊活動の範囲拡大の合憲性が論じられた。イラク派遣差し止めを巡る名古屋高裁判決で、航空自衛隊の空輸活動を違憲と判断した。安保関連法案も後方支援活動で「武力行使との一体化」を巡る議論がある。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015071202000124.html
(東京新聞 2015年7月12日) 自民「違憲」批判ショック 憲法審査会ブレーキ
 衆院憲法審査会の審議がストップしている。先月の審査会で、自民党推薦を含む参考人の憲法学者三人全員がそろって安全保障関連法案を「違憲」と批判したため、党執行部が安保法案審議への影響を懸念して、審査会開催にブレーキをかけたからだ。憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使を可能にする安保法案の今国会成立を目指すと同時に、改憲に向けた審議も急ぐ両にらみの国会運営は進んでいない。六月四日の審査会で、参考人として出席した自民推薦の長谷部恭男・早稲田大教授のほか、民主推薦の小林節・慶応大名誉教授、維新推薦の笹田栄司・早稲田大教授の三氏全員が安保法案を「違憲」と指摘。法案の問題点がさらに鮮明になった。自民党執行部は、審査会の審議に関し「安保法案に影響のないやり方をしてほしい」(佐藤勉国対委員長)と求めた。審査会幹事を務める船田元・党憲法改正推進本部長は「審査会はしばらく休む予定だ」と明言。その時点で開催が決まっていた六月十五日の地方公聴会を最後に、審査会は開かれていない。昨年末の衆院選で、与党は衆院での改憲発議に必要な三分の二以上の議席を維持した。自民党は緊急事態条項や環境権の新設に絞った改憲なら各党の賛同を得やすいとみて、審査会の審議を急ごうとした。来年夏の参院選で、次世代などを含めた改憲勢力で三分の二以上の議席を参院でも確保して最初の改憲を実現し、二回目以降の改憲で九条見直しを視野に入れる。これに対し、審査会委員がいる党のうち、民主党は「安倍晋三首相の下での憲法論議は危ない」(岡田克也代表)と慎重。護憲を掲げる共産党は審議自体に反対で、公明党も審議を急いでいなかった。一方、世論の反対にもかかわらず、政府は五月に安保法案を国会に提出した。首相は提出に先立つ訪米時に「この夏までに成立させる」と表明。「国会無視だ」と野党が反発する中、法案審議が始まった。法案をめぐる与野党対立の余波が、審査会に及ぶのは時間の問題だった。参考人の違憲発言で当面は審査会を開けなくなり、首相周辺は「安保法案と改憲を同時に進めようとして、改憲スケジュールに影響が出てしまった」と悔やむ。自民党に改憲論議をせかされていた公明党幹部は「改憲、改憲と急ぐから、回り道する結果になるんだ」と皮肉った。
<憲法審査会> 憲法に関する総合的な調査や改正原案を審査する国会の機関。憲法改正手続きを定めた国民投票法に基づき2007年8月、衆参両院に設置された。委員数は衆院50人、参院45人で、各党の議席に基づき配分される。11年11月から実質的な審議が始まり、現在は改正が必要と主張する項目などをめぐる議論に入っている。改憲原案が提出された場合、両院の憲法審査会が審査後、両院でそれぞれ総議員の3分の2以上が賛成すれば60~180日の間に国民投票が実施される。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11867903.html (朝日新聞 2015年7月19日) (審議検証 安保法制:4)答弁あいまい、議論平行線 政府の裁量、確保狙う
 安倍政権は16日の衆院本会議で、安全保障関連法案を可決、通過させた。論戦の舞台が参院に移るのを前に、国会審議を検証する最終回は、首相らが詳細な説明を避けたり、はぐらかしたりする場面がなぜ多かったのか、議論が深まらなかった原因を考える。「残念ながら国民が十分に(法案を)理解している状況ではない」。今月15日。衆院特別委員会の最後の質疑で安倍晋三首相はこう認めつつ、その直後に採決に踏み切る正当性を強調した。「しかし国会議員は国民から責任を負託されている。国会議員は法案を理解したうえで議論をし、100時間を超える議論を行ってきた」。だが、特別委で116時間半を重ねた審議では、首相ら政府側が同じ答弁を繰り返したり、抽象的な表現でぼやかしたりする場面が目立った。正面から説明しない姿勢は、法案審議の初日から始まっていた。5月26日の衆院本会議。集団的自衛権の前提となる「存立危機事態」とは何か。自民の稲田朋美政調会長が「典型例とはどんな事態か」と問うと、首相はこう答えた。「典型例をあらかじめ示すことはできないが、国民生活に死活的な影響を生じるか否かを総合的に評価して判断する」。首相はその後も具体的な説明を求められると、「総合的に」「全般的に見て」「客観的に」判断するといった言い方を繰り返した。6月17日の党首討論では、民主の岡田克也代表が「どういう時に存立危機事態になるのか」とただした。だが、首相は「政策的な中身をさらすことにもなるから、そんなことをいちいち述べている海外のリーダーはほとんどいない」などと説明を拒んだ。岡田氏はこれに対し「今の答弁を聞いて、やはり(法案は)憲法違反と思った。何が憲法に合致し、何が違反するのか、法律できちんと決めなければいけない」「『客観的、合理的に判断』と言うのは判断の丸投げと一緒。白紙委任だ」などと激しく批判した。政府側が、法案の条文を読み上げて質問をやり過ごそうとする場面も目立った。野党は、後方支援での活動範囲を「非戦闘地域」から「戦闘が行われていない現場」に広げる危険性を再三ただしたが、中谷元・防衛相は、「戦闘現場となる場合はただちに活動を休止、中断する」との法案のくだりを繰り返した。なぜ、あいまいな答弁を繰り返すのか。今回の安保関連法案は集団的自衛権の行使も含め自衛隊の活動を飛躍的に拡大させる。米軍など他国軍による戦争に後方支援という形で関わる可能性も格段に増える。防衛省幹部は「将来、どんな事態が起きるのかは分からない。政府が裁量する幅はできるだけ広くしておきたい」と語る。そんな政権の姿勢が、詳しい説明を拒む首相らの答弁につながっている。具体的な説明を求める野党との議論は平行線のままだった。政府には、反対意見と向き合い、議論を深めようという態度も欠けていた。6月4日の憲法審査会で、参考人意見を述べた憲法学者3人から法案は「違憲」と指摘されると、菅義偉官房長官は会見で「『違憲じゃない』という著名な憲法学者もいっぱいいる」と反論。具体的な人数を問われると「数(の問題)ではない」とはぐらかした。首相の答弁にもこうした姿勢がにじんだ。5月28日の特別委では、民主議員に「早く質問しろ」とヤジを飛ばし、陳謝に追い込まれた。今月15日の特別委では、首相は法案への「国民の理解が進んでいない」と認めつつ、現時点での「無理解」は問題ではないとも取れる言葉が飛び出した。「60年安保(条約)改定時、PKO法案の時も国民の理解はなかなか進まなかった。しかしその後の実績を見て、多くの国民から理解や支持を得ている」。
■「邦人救出」語られず
 衆院では、ほとんど論じられなかった法案や論点も多い。特別委の浜田靖一委員長(自民)が採決後に「法案を10本束ねたのはいかがなものか」と漏らすほど、一括で質疑するには内容が多岐にわたっていたためだ。海外でテロリストや武装集団などに拘束された日本人を救出する「邦人救出」については、衆院特別委でほとんど議論されなかった。過激派組織「イスラム国」(IS)による人質事件などで紛争地のリスクに関心が高まったが、新たな安保法案でどこまで対処できるのかは語られなかった。法案では、国連平和維持活動(PKO)での自衛隊任務も拡大し、武器の使用基準も緩和される。これについても、踏み込んだ議論は少なかった。特別委の参考人質疑で、伊勢崎賢治・東京外大大学院教授は「停戦合意が破られても撤退できない」と、PKOの現場の危険性を指摘した。しかし、首相は野党の質問にも「停戦合意をはじめ参加5原則が前提」と原則論を述べるにとどまっている。安保法案と連動する形で、18年ぶりに改定された日米防衛協力のための指針(ガイドライン)をめぐる議論も乏しかった。自衛隊は米軍にどこまで協力するのか。なぜ米軍以外にオーストラリア軍なども連携対象に追加するのか。安保政策と密接不可分な外交政策についても参院での論戦が期待される。

*1-4:http://www.y-mainichi.co.jp/news/27887/
(八重山毎日新聞社説 2015年7月18日) 首相「国民の理解進まず」も採決強行
■黒塗りされた内部文書
 16日、衆議院平和安全法制特別委員会で審議中の安全保障関連法案が怒号が飛び交うなか、自公両党の賛成多数で強行採決され17日参議院へ送られた。「安全保障法案」は憲法学者やマスコミの世論調査、自民党きっての防衛問題のエキスパートで、内閣の一員である石破茂地方創生担当大臣までが国民の理解を得られていないと発言するなかでである。安倍総理自身も委員会の答弁で「残念ながら国民の理解は進んでいる状況ではない」と述べ、浜田委員長は「法律を10本束ねたというのはいかがなものかと私も思っている」と述べるなど国民の理解を得られていないとしながら、なぜ強行採決をするのか。16日安倍首相は衆議院本会議での可決後「日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。この認識のなかにおいて、日本国民の命を守り、戦争を未然に防ぐため絶対必要な法案だ」と述べた。参議院でも審議が行われるが、与党の賛成多数と「60日ルール」で法案成立は確実の情勢だ。戦後日本の安全保障政策は大転換し、積極的に戦争できる国になる。憲法を完全に空洞化させるこの法案が、国民を戦争に巻き込む危険極まりない法案であることは明白だ。15日の審議中、「陸上自衛隊イラク復興支援活動状況について」の黒塗りされた内部文書が問題とされ、取り上げられたが強行採決であいまいにされた。これは重大な問題である。秘密保護法を盾に議員や国会への報告書などが、黒塗りされ提出されたら、自衛隊の行動は全て秘密にされ主権者である国民の知る権利を奪うもので到底容認できない。秘密保護法も廃止すべきである。
■世論に背を向けた市議会決議
 強行採決の前日、石垣市議会が「安全保障関連法案」の早期成立を求める意見書を可決し百田尚樹氏や自民党議員などの報道圧力への抗議決議は否決した。石垣市は異常ではないか。中山市長が誕生して以来、尖閣問題を背景に中国脅威論をばらまき、市議会議員が魚釣島に上陸し、ナショナリズムをあおり、辺野古基地建設賛成を叫ぶなどどう考えても尋常ではない。基地の騒音被害など議員の目には映らないのだろうか。法が成立すれば沖縄の基地が強化され基地被害が拡大するのは目に見えているではないか。意見書は「わが国の安全を守るためには、日米間の安全保障、防衛協力体制を強化することが求められており、そのためには、平時からあらゆる事態に対処できる切れ目のない法制を整備する必要がある」「わが国の安全と国民の生命、そして国際社会の安全を確保するための平和安全法制について徹底した議論を進め、平和安全法制の今国会での成立を図るよう要望する」と結んでいる。危険極まりない法案を「平和安全法制」と呼べるだろうか。国民は「戦争法案」と呼んでいるのだ。石垣市議会が「徹底した議論を」と採択した翌日、衆議院特別委員会で強行採決した。議論は一夜で徹底したと市議会は思っているのだろうか。
■沖縄屈辱も抗議決議否決
 それとも、もう一度徹底した議論をと意見書を出すのだろうか。「報道機関への言論圧力および沖縄県民侮辱発言への抗議」が否決された。反対意見を述べた議員は「決議文の内容は作家の百田尚樹氏の発言を問題視しすぎており、表現の自由に対する抗議決議だ」と述べている。表現の自由なら何でも許され、抗議もできないというのか。県民や県紙への侮辱を侮辱と感じない議員たちが、平和憲法を空洞化させ、世論に背を向けた時代錯誤の決議や否決愚行では議会史上最大の汚点であろう。

*1-5:http://www.asahi.com/paper/editorial.html
(朝日新聞社説 2015年6月16日) 「違憲」の安保法制―廃案で出直すしかない
 国会で審議されている法案の正当性がここまで揺らぐのは、異常な事態だ。安倍内閣が提出した安全保障関連法の一括改正案と「国際平和支援法案」は、憲法違反の疑いが極めて濃い。その最終判断をするのは最高裁だとしても、憲法学者からの警鐘や、「この国会で成立させる必要はない」との国民の声を無視して審議を続けることは、「法治への反逆」というべき行為である。維新の党が対案を出すというが、与党との修正協議で正されるレベルの話ではない。いったん廃案とし、安保政策の議論は一からやり直すしかない。
■説明つかぬ合憲性
 そもそもの間違いの始まりは集団的自衛権の行使を認めた昨年7月1日の安倍内閣の閣議決定である。内閣が行使容認の根拠としたのは、集団的自衛権と憲法との関係を整理した1972年の政府見解だ。この見解は、59年の砂川事件最高裁判決の一部を取り込み、次のような構成をとっている。
 ①わが国の存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを9条は禁じていない。
 ②しかし、その措置は必要最小限の範囲にとどまるべきだ。
 ③従って、他国に加えられた武力攻撃を阻止する集団的自衛権の行使は許されない。
 歴代内閣はこの考え方をもとに次のように説明してきた。日本は国際法上は集団的自衛権を持っているが、憲法上は集団的自衛権を行使できない。行使できるようにするためには、憲法の改正が必要だ――。ところが閣議決定は、①と②はそのままに、③の結論だけを必要最小限の集団的自衛権は行使できると改めた。前提となる理屈は同じなのに結論だけを百八十度ひっくり返す。政府はその理由を「安全保障環境の根本的な変容」と説明するが、環境が変われば黒を白にしてよいというのだろうか。この根本的な矛盾を、政府は説明できていない。入り口でのボタンの掛け違いが、まっとうな安全保障の議論を妨げている。
■安保政策が不安定に
 この閣議決定をもとに法案を成立させるのは、違憲の疑いをうやむやにして、立法府がお墨付きを与えるということだ。その結果として可能になるのが、これまでとは次元の異なる自衛隊の活動である。限定的とはいいながら、米国など他国への攻撃に自衛隊が反撃できるようになる。政府の判断次第で世界中で他国軍を後方支援できるようになる。弾薬を補給し、戦闘機に給油する。これらは軍事的には戦闘と表裏一体の兵站(へいたん)にほかならない。9条のもと、私たちが平和国家のあるべき姿として受け入れてきた「専守防衛の自衛隊」にここまでさせるのである。リスクが高まらないわけがない。世界が日本に持っていたイメージも一変する。その是非を、国民はまだ問われてはいない。昨年の衆院選は、間違いなくアベノミクスが争点だった。このとき安倍氏に政権を委ねた有権者の中に、こんなことまで任せたと言う人はどれだけいるのか。首相が国民の安全を守るために必要だというのなら、9条改正を提起し、96条の手続きに従って、最後は国民投票で承認を得なければならない。目的がどんなに正しいとしても、この手続きを回避することは立憲主義に明らかに反する。数を頼みに国会を通しても、国民の理解と合意を得ていない「使えない法律」ができて、混乱を招くだけだ。将来、イラク戦争のような「間違った戦争」に米国から兵站の支援を求められた時、政府はどう対応するのか。住民への給水などかつて自衛隊が実施した復興支援とは訳が違う。派遣すれば国民は反発し、違憲訴訟も提起されるに違いない。断れば、日米同盟にヒビが入る。かえって安全保障体制は不安定になる。憲法学者から「違憲」との指摘を受けた後の対応を見ると、政権の憲法軽視は明らかだ。砂川事件で最高裁がとった「統治行為論」を盾に、「決めるのは我々だ」と言い募るのは、政治家の「責任」というより「おごり」だ。
■憲法の後ろ盾は国民
 先の衆院憲法審査会で、小林節慶大名誉教授がこんな警告を発している。「憲法は最高権力を縛るから、最高法という名で神棚に載ってしまう。逆に言えば後ろ盾は何もない。ただの紙切れになってしまう。だから、権力者が開き直った時にはどうするかという問題に常に直面する」。権力者が開き直り、憲法をないがしろにしようとしているいまこそ、一人ひとりの主権者が憲法の後ろ盾となって、声を上げ続けるしかない。「憲法を勝手に変えるな」。

<日米安全保障条約>
*2:http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/jyoyaku.html
(1960年1月19日@ワシントン) 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
 日本国及びアメリカ合衆国は、両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、また、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的安定及び福祉の条件を助長することを希望し、国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、よつて、次のとおり協定する。
第一条
 締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。
第二条
 締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。
第三条
 締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。
第四条
 締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。
第五条
 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。
第六条
 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。
第七条
 この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。
第八条
 この条約は、日本国及びアメリカ合衆国により各自の憲法上の手続に従つて批准されなければならない。この条約は、両国が東京で批准書を交換した日に効力を生ずる。
第九条
 千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約は、この条約の効力発生の時に効力を失う。
第十条
 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。もつとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。
 以上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。
 千九百六十年一月十九日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。
日本国のために
 岸信介
 藤山愛一郎
 石井光次郎
 足立正
 朝海浩一郎
アメリカ合衆国のために
 クリスチャン・A・ハーター
 ダグラス・マックアーサー二世
 J・グレイアム・パースンズ

<国連憲章>
*3:http://www.unic.or.jp/info/un/charter/text_japanese/ (国連憲章)
<序>
 国際連合憲章は、国際機構に関する連合国会議の最終日の、1945年6月26日にサンフランシスコにおいて調印され、1945年10月24日に発効した。国際司法裁判所規程は国連憲章と不可分の一体をなす。国連憲章第23条、第27条および第61条の改正は、1963年12月17日に総会によって採択され、1965年8月31日に発効した。1971年12月20日、総会は再び第61条の改正を決議、1973年9月24日発効した。1965年12月20日に総会が採択した第109条の改正は、1968 年6月12日発効した。第23条の改正によって、安全保障理事会の理事国は11から15カ国に増えた。第27条の改正によって、手続き事項に関する安全保障理事会の表決は9理事国(改正以前は7)の賛成投票によって行われ、その他のすべての事項に関する表決は、5常任理事国を含む9理事国(改正以前は7)の賛成投票によって行われる。1965年8月31日発効した第61条の改正によって、経済社会理事会の理事国数は18から27に増加した。1973年9月24日発効した2回目の61条改正により、同理事会理事国数はさらに、54に増えた。第109条1項の改正によって、国連憲章を再審議するための国連加盟国の全体会議は、総会構成国の3分の2の多数と安全保障理事会のいずれかの9 理事国(改正前は7)の投票によって決定される日と場所で開催されることになった。但し、第10通常総会中に開かれる憲章改正会議の審議に関する109条 3項中の「安全保障理事会の7理事国の投票」という部分は改正されなかった。1955年の第10総会及び安全保障理事会によって、この項が発動された。
<国際連合憲章>
 われら連合国の人民は、われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し、正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進すること、並びに、このために、寛容を実行し、且つ、善良な隣人として互いに平和に生活し、国際の平和及び安全を維持するためにわれらの力を合わせ、共同の利益の場合を除く外は武力を用いないことを原則の受諾と方法の設定によって確保し、すべての人民の経済的及び社会的発達を促進するために国際機構を用いることを決意して、 これらの目的を達成するために、われらの努力を結集することに決定した。よって、われらの各自の政府は、サン・フランシスコ市に会合し、全権委任状を示してそれが良好妥当であると認められた代表者を通じて、この国際連合憲章に同意したので、ここに国際連合という国際機構を設ける。
 第1章 目的及び原則    第2章 加盟国の地位    第3章 機 関    第4章 総 会  
 第5章 安全保障理事会    第6章 紛争の平和的解決    
 第7章 平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動   第8章 地域的取極
 第9章 経済的及び社会的国際協力    第10章 経済社会理事会    
 第11章 非自治地域に関する宣言   第12章 国際信託統治制度   第13章 信託統治理事会
 第14章 国際司法裁判所   第15章 事務局   第16章 雑則   
 第17章 安全保障の過渡的規定   第18章 改正    第19章 批准及び署名  
第1章 目的及び原則  
第1条
国際連合の目的は、次のとおりである。
1.国際の平和及び安全を維持すること。そのために、平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること並びに平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整または解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること。
2.人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること並びに世界平和を強化するために他の適当な措置をとること。
3.経済的、社会的、文化的または人道的性質を有する国際問題を解決することについて、並びに人種、性、言語または宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成すること。
4.これらの共通の目的の達成に当たって諸国の行動を調和するための中心となること。
第2条
この機構及びその加盟国は、第1条に掲げる目的を達成するに当っては、次の原則に従って行動しなければならない。
1.この機構は、そのすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている。
2.すべての加盟国は、加盟国の地位から生ずる権利及び利益を加盟国のすべてに保障するために、この憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならない。
3.すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない。
4.すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。
5.すべての加盟国は、国際連合がこの憲章に従ってとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ、国際連合の防止行動又は強制行動の対象となっているいかなる国に対しても援助の供与を慎まなければならない。
6.この機構は、国際連合加盟国ではない国が、国際の平和及び安全の維持に必要な限り、これらの原則に従って行動することを確保しなければならない。
7.この憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく、また、その事項をこの憲章に基く解決に付託することを加盟国に要求するものでもない。但し、この原則は、第7章に基く強制措置の適用を妨げるものではない。
第2章 加盟国の地位
第3条
国際連合の原加盟国とは、サン・フランシスコにおける国際機構に関する連合国会議に参加した国又はさきに1942年1月1日の連合国宣言に署名した国で、この憲章に署名し、且つ、第110条に従ってこれを批准するものをいう。
第4条
1.国際連合における加盟国の地位は、この憲章に掲げる義務を受託し、且つ、この機構によってこの義務を履行する能力及び意思があると認められる他のすべての平和愛好国に開放されている。
2.前記の国が国際連合加盟国となることの承認は、安全保障理事会の勧告に基いて、総会の決定によって行われる。
第5条
安全保障理事会の防止行動または強制行動の対象となった国際連合加盟国に対しては、総会が、安全保障理事会の勧告に基づいて、加盟国としての権利及び特権の行使を停止することができる。これらの権利及び特権の行使は、安全保障理事会が回復することができる。
第6条
この憲章に掲げる原則に執拗に違反した国際連合加盟国は、総会が、安全保障理事会の勧告に基いて、この機構から除名することができる。
第3章 機関
第7条
1.国際連合の主要機関として、総会、安全保障理事会、経済社会理事会、信託統治理事会、国際司法裁判所及び事務局を設ける。
2.必要と認められる補助機関は、この憲章に従って設けることができる。
第8条
国際連合は、その主要機関及び補助機関に男女がいかなる地位にも平等の条件で参加する資格があることについて、いかなる制限も設けてはならない。
第4章 総会
【構成】
第9条
1.総会は、すべての国際連合加盟国で構成する。
2.各加盟国は、総会において5人以下の代表者を有するものとする。
【任務及び権限】
第10条
総会は、この憲章の範囲内にある問題若しくは事項又はこの憲章に規定する機関の権限及び任務に関する問題若しくは事項を討議し、並びに、第12条に規定する場合を除く外、このような問題又は事項について国際連合加盟国若しくは安全保障理事会又はこの両者に対して勧告をすることができる。
第11条
1.総会は、国際の平和及び安全の維持についての協力に関する一般原則を、軍備縮小及び軍備規制を律する原則も含めて、審議し、並びにこのような原則について加盟国若しくは安全保障理事会又はこの両者に対して勧告をすることができる。
2.総会は、国際連合加盟国若しくは安全保障理事会によって、又は第35条2に従い国際連合加盟国でない国によって総会に付託される国際の平和及び安全の維持に関するいかなる問題も討議し、並びに、第12条に規定する場合を除く外、このような問題について、1若しくは2以上の関係国又は安全保障理事会あるいはこの両者に対して勧告をすることができる。このような問題で行動を必要とするものは、討議の前または後に、総会によって安全保障理事会に付託されなければならない。
3.総会は、国際の平和及び安全を危くする虞のある事態について、安全保障理事会の注意を促すことができる。
4.本条に掲げる総会の権限は、第10条の一般的範囲を制限するものではない。
第12条
1.安全保障理事会がこの憲章によって与えられた任務をいずれかの紛争または事態について遂行している間は、総会は、安全保障理事会が要請しない限り、この紛争又は事態について、いかなる勧告もしてはならない。
2.事務総長は、国際の平和及び安全の維持に関する事項で安全保障理事会が取り扱っているものを、その同意を得て、会期ごとに総会に対して通告しなければならない。事務総長は、安全保障理事会がその事項を取り扱うことをやめた場合にも、直ちに、総会又は、総会が開会中でないときは、国際連合加盟国に対して同様に通告しなければならない。
第13条
1.総会は、次の目的のために研究を発議し、及び勧告をする。
a.政治的分野において国際協力を促進すること並びに国際法の斬新的発達及び法典化を奨励すること。
b.経済的、社会的、文化的、教育的及び保健的分野において国際協力を促進すること並びに人種、性、言語又は宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を実現するように援助すること。
2.前記の1bに掲げる事項に関する総会の他の責任、任務及び権限は、第9章及び第10章に掲げる。
第14条
第12条の規定を留保して、総会は、起因にかかわりなく、一般的福祉または諸国間の友好関係を害する虞があると認めるいかなる事態についても、これを平和的に調整するための措置を勧告することができる。この事態には、国際連合の目的及び原則を定めるこの憲章の規定の違反から生ずる事態が含まれる。
第15条
1.総会は、安全保障理事会から年次報告及び特別報告を受け、これを審議する。この報告は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を維持するために決定し、又はとった措置の説明を含まなければならない。
2.総会は、国際連合の他の機関から報告を受け、これを審議する。
第16条
総会は、第12章及び第13章に基いて与えられる国際信託統治制度に関する任務を遂行する。この任務には、戦略地区として指定されない地区に関する信託統治協定の承認が含まれる。
第17条
1.総会は、この機構の予算を審議し、且つ、承認する。
2.この機構の経費は、総会によって割り当てられるところに従って、加盟国が負担する。
3.総会は、第57条に掲げる専門機関との財政上及び予算上の取極を審議し、且つ、承認し、並びに、当該専門機関に勧告をする目的で、この専門機関の行政的予算を検査する。
【表決】
第18条
1.総会の各構成国は、1個の投票権を有する。
2.重要問題に関する総会の決定は、出席し且つ投票する構成国の3分の2の多数によって行われる。重要問題には、国際の平和及び安全の維持に関する勧告、安全保障理事会の非常任理事国の選挙、経済社会理事会の理事国の選挙、第86条1cによる信託統治理事会の理事国の選挙、新加盟国の国際連合への加盟の承認、加盟国としての権利及び特権の停止、加盟国の除名、信託統治制度の運用に関する問題並びに予算問題が含まれる。
3.その他の問題に関する決定は、3分の2の多数によって決定されるべき問題の新たな部類の決定を含めて、出席し且つ投票する構成国の過半数によって行われる。
第19条
この機構に対する分担金の支払が延滞している国際連合加盟国は、その延滞金の額がその時までの満2年間にその国から支払われるべきであった分担金の額に等しいか又はこれをこえるときは、総会で投票権を有しない。但し、総会は、支払いの不履行がこのような加盟国にとってやむを得ない事情によると認めるときは、その加盟国に投票を許すことができる。
【手続】
第20条
総会は、年次通常会期として、また、必要がある場合に特別会期として会合する。特別会期は、安全保障理事会の要請又は国際連合加盟国の過半数の要請があったとき、事務総長が招集する。
第21条
総会は、その手続規則を採択する。総会は、その議長を会期ごとに選挙する。
第22条
総会は、その任務の遂行に必要と認める補助機関を設けることができる。
第5章 安全保障理事会
【構成】
第23条
1.安全保障理事会は、15の国際連合加盟国で構成する。中華民国、フランス、ソヴィエト社会主義共和国連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及びアメリカ合衆国は、安全保障理事会の常任理事国となる。総会は、第一に国際の平和及び安全の維持とこの機構のその他の目的とに対する国際連合加盟国の貢献に、更に衡平な地理的分配に特に妥当な考慮を払って、安全保障理事会の非常任理事国となる他の10の国際連合加盟国を選挙する。
2.安全保障理事会の非常任理事国は、2年の任期で選挙される。安全保障理事会の理事国の定数が11から15に増加された後の第1回の非常任理事国の選挙では、追加の4理事国のうち2理事国は、1年の任期で選ばれる。退任理事国は、引き続いて再選される資格はない。
3.安全保障理事会の各理事国は、1人の代表を有する。
【任務及び権限】
第24条
1.国際連合の迅速且つ有効な行動を確保するために、国際連合加盟国は、国際の平和及び安全の維持に関する主要な責任を安全保障理事会に負わせるものとし、且つ、安全保障理事会がこの責任に基く義務を果すに当って加盟国に代って行動することに同意する。
2.前記の義務を果すに当たっては、安全保障理事会は、国際連合の目的及び原則に従って行動しなければならない。この義務を果たすために安全保障理事会に与えられる特定の権限は、第6章、第7章、第8章及び第12章で定める。
3.安全保障理事会は、年次報告を、また、必要があるときは特別報告を総会に審議のため提出しなければならない。
第25条
国際連合加盟国は、安全保障理事会の決定をこの憲章に従って受諾し且つ履行することに同意する。
第26条
世界の人的及び経済的資源を軍備のために転用することを最も少くして国際の平和及び安全の確立及び維持を促進する目的で、安全保障理事会は、軍備規制の方式を確立するため国際連合加盟国に提出される計画を、第47条に掲げる軍事参謀委員会の援助を得て、作成する責任を負う。
【表決】
第27条
1.安全保障理事会の各理事国は、1個の投票権を有する。
2.手続事項に関する安全保障理事会の決定は、9理事国の賛成投票によって行われる。
3.その他のすべての事項に関する安全保障理事会の決定は、常任理事国の同意投票を含む9理事国の賛成投票によって行われる。但し、第6章及び第52条3に基く決定については、紛争当事国は、投票を棄権しなければならない。
【手続】
第28条
1.安全保障理事会は、継続して任務を行うことができるように組織する。このために、安全保障理事会の各理事国は、この機構の所在地に常に代表者をおかなければならない。
2.安全保障理事会は、定期会議を開く。この会議においては、各理事国は、希望すれば、閣員または特に指名する他の代表者によって代表されることができる。
3.安全保障理事会は、その事業を最も容易にすると認めるこの機構の所在地以外の場所で、会議を開くことができる。
第29条
安全保障理事会は、その任務の遂行に必要と認める補助機関を設けることができる。
第30条
安全保障理事会は、議長を選定する方法を含むその手続規則を採択する。
第31条
安全保障理事会の理事国でない国際連合加盟国は、安全保障理事会に付託された問題について、理事会がこの加盟国の利害に特に影響があると認めるときはいつでも、この問題の討議に投票権なしで参加することができる。
第32条
安全保障理事会の理事国でない国際連合加盟国又は国際連合加盟国でない国は、安全保障理事会の審議中の紛争の当事者であるときは、この紛争に関する討議に投票権なしで参加するように勧誘されなければならない。安全保障理事会は、国際連合加盟国でない国の参加のために公正と認める条件を定める。
第6章 紛争の平和的解決
第33条
1.いかなる紛争でも継続が国際の平和及び安全の維持を危うくする虞のあるものについては、その当事者は、まず第一に、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機関又は地域的取極の利用その他当事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない。
2.安全保障理事会は、必要と認めるときは、当事者に対して、その紛争を前記の手段によって解決するように要請する。
第34条
安全保障理事会は、いかなる紛争についても、国際的摩擦に導き又は紛争を発生させる虞のあるいかなる事態についても、その紛争または事態の継続が国際の平和及び安全の維持を危うくする虞があるかどうかを決定するために調査することができる。
第35条
1.国際連合加盟国は、いかなる紛争についても、第34条に掲げる性質のいかなる事態についても、安全保障理事会又は総会の注意を促すことができる。
2.国際連合加盟国でない国は、自国が当事者であるいかなる紛争についても、この憲章に定める平和的解決の義務をこの紛争についてあらかじめ受諾すれば、安全保障理事会又は総会の注意を促すことができる。
3.本条に基いて注意を促された事項に関する総会の手続は、第11条及び第12条の規定に従うものとする。
第36条
1.安全保障理事会は、第33条に掲げる性質の紛争又は同様の性質の事態のいかなる段階においても、適当な調整の手続又は方法を勧告することができる。
2.安全保障理事会は、当事者が既に採用した紛争解決の手続を考慮に入れなければならない。
3.本条に基いて勧告をするに当っては、安全保障理事会は、法律的紛争が国際司法裁判所規程の規定に従い当事者によって原則として同裁判所に付託されなければならないことも考慮に入れなければならない。
第37条
1.第33条に掲げる性質の紛争の当事者は、同条に示す手段によってこの紛争を解決することができなかったときは、これを安全保障理事会に付託しなければならない。
2.安全保障理事会は、紛争の継続が国際の平和及び安全の維持を危うくする虞が実際にあると認めるときは、第36条に基く行動をとるか、適当と認める解決条件を勧告するかのいずれかを決定しなければならない。
第38条
第33条から第37条までの規定にかかわらず、安全保障理事会は、いかなる紛争についても、すべての紛争当事者が要請すれば、その平和的解決のためにこの当事者に対して勧告をすることができる。
第7章 平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動
第39条
安全保障理事会は、平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、又は第41条及び第42条に従っていかなる措置をとるかを決定する。
第40条
事態の悪化を防ぐため、第39条の規定により勧告をし、又は措置を決定する前に、安全保障理事会は、必要又は望ましいと認める暫定措置に従うように関係当事者に要請することができる。この暫定措置は、関係当事者の権利、請求権又は地位を害するものではない。安全保障理事会は、関係当時者がこの暫定措置に従わなかったときは、そのことに妥当な考慮を払わなければならない。
第41条
安全保障理事会は、その決定を実施するために、兵力の使用を伴わないいかなる措置を使用すべきかを決定することができ、且つ、この措置を適用するように国際連合加盟国に要請することができる。この措置は、経済関係及び鉄道、航海、航空、郵便、電信、無線通信その他の運輸通信の手段の全部又は一部の中断並びに外交関係の断絶を含むことができる。
第42条
安全保障理事会は、第41条に定める措置では不充分であろうと認め、又は不充分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍または陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる。
第43条
1.国際の平和及び安全の維持に貢献するため、すべての国際連合加盟国は、安全保障理事会の要請に基き且つ1又は2以上の特別協定に従って、国際の平和及び安全の維持に必要な兵力、援助及び便益を安全保障理事会に利用させることを約束する。この便益には、通過の権利が含まれる。
2.前記の協定は、兵力の数及び種類、その出動準備程度及び一般的配置並びに提供されるべき便益及び援助の性質を規定する。
3.前記の協定は、安全保障理事会の発議によって、なるべくすみやかに交渉する。この協定は、安全保障理事会と加盟国との間又は安全保障理事会と加盟国群との間に締結され、且つ、署名国によって各自の憲法上の手続に従って批准されなければならない。
第44条
安全保障理事会は、兵力を用いることに決定したときは、理事会に代表されていない加盟国に対して第43条に基いて負った義務の履行として兵力を提供するように要請する前に、その加盟国が希望すれば、その加盟国の兵力中の割当部隊の使用に関する安全保障理事会の決定に参加するようにその加盟国を勧誘しなければならない。
第45条
国際連合が緊急の軍事措置をとることができるようにするために、加盟国は、合同の国際的強制行動のため国内空軍割当部隊を直ちに利用に供することができるように保持しなければならない。これらの割当部隊の数量及び出動準備程度並びにその合同行動の計画は、第43条に掲げる1又は2以上の特別協定の定める範囲内で、軍事参謀委員会の援助を得て安全保障理事会が決定する。
第46条
兵力使用の計画は、軍事参謀委員会の援助を得て安全保障理事会が作成する。
第47条
1.国際の平和及び安全の維持のための安全保障理事会の軍事的要求、理事会の自由に任された兵力の使用及び指揮、軍備規制並びに可能な軍備縮小に関するすべての問題について理事会に助言及び援助を与えるために、軍事参謀委員会を設ける。
2.軍事参謀委員会は、安全保障理事会の常任理事国の参謀総長又はその代表者で構成する。この委員会に常任委員として代表されていない国際連合加盟国は、委員会の責任の有効な遂行のため委員会の事業へのその国の参加が必要であるときは、委員会によってこれと提携するように勧誘されなければならない。
3.軍事参謀委員会は、安全保障理事会の下で、理事会の自由に任された兵力の戦略的指導について責任を負う。この兵力の指揮に関する問題は、後に解決する。
4.軍事参謀委員会は、安全保障理事会の許可を得て、且つ、適当な地域的機関と協議した後に、地域的小委員会を設けることができる。
第48条
1.国際の平和及び安全の維持のための安全保障理事会の決定を履行するのに必要な行動は、安全保障理事会が定めるところに従って国際連合加盟国の全部または一部によってとられる。
2.前記の決定は、国際連合加盟国によって直接に、また、国際連合加盟国が参加している適当な国際機関におけるこの加盟国の行動によって履行される。
第49条
国際連合加盟国は、安全保障理事会が決定した措置を履行するに当って、共同して相互援助を与えなければならない。
第50条
安全保障理事会がある国に対して防止措置又は強制措置をとったときは、他の国でこの措置の履行から生ずる特別の経済問題に自国が当面したと認めるものは、国際連合加盟国であるかどうかを問わず、この問題の解決について安全保障理事会と協議する権利を有する。
第51条
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。
第8章 地域的取極
第52条
1.この憲章のいかなる規定も、国際の平和及び安全の維持に関する事項で地域的行動に適当なものを処理するための地域的取極又は地域的機関が存在することを妨げるものではない。但し、この取極又は機関及びその行動が国際連合の目的及び原則と一致することを条件とする。
2.前記の取極を締結し、又は前記の機関を組織する国際連合加盟国は、地方的紛争を安全保障理事会に付託する前に、この地域的取極または地域的機関によってこの紛争を平和的に解決するようにあらゆる努力をしなければならない。
3.安全保障理事会は、関係国の発意に基くものであるか安全保障理事会からの付託によるものであるかを問わず、前記の地域的取極又は地域的機関による地方的紛争の平和的解決の発達を奨励しなければならない。
4.本条は、第34条及び第35条の適用をなんら害するものではない。
第53条
1.安全保障理事会は、その権威の下における強制行動のために、適当な場合には、前記の地域的取極または地域的機関を利用する。但し、いかなる強制行動も、安全保障理事会の許可がなければ、地域的取極に基いて又は地域的機関によってとられてはならない。もっとも、本条2に定める敵国のいずれかに対する措置で、第107条に従って規定されるもの又はこの敵国における侵略政策の再現に備える地域的取極において規定されるものは、関係政府の要請に基いてこの機構がこの敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする。
2.本条1で用いる敵国という語は、第二次世界戦争中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国に適用される。
第54条
安全保障理事会は、国際の平和及び安全の維持のために地域的取極に基いて又は地域的機関によって開始され又は企図されている活動について、常に充分に通報されていなければならない。
第9章 経済的及び社会的国際協力
第55条
人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の平和的且つ友好的関係に必要な安定及び福祉の条件を創造するために、国際連合は、次のことを促進しなければならない。
a.一層高い生活水準、完全雇用並びに経済的及び社会的の進歩及び発展の条件
b.経済的、社会的及び保健的国際問題と関係国際問題の解決並びに文化的及び教育的国際協力
c.人種、性、言語または宗教による差別のないすべての者のための人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守
第56条
すべての加盟国は、第55条に掲げる目的を達成するために、この機構と協力して、共同及び個別の行動をとることを誓約する。
第57条
1.政府間の協定によって設けられる各種の専門機関で、経済的、社会的、文化的、教育的及び保健的分野並びに関係分野においてその基本的文書で定めるところにより広い国際的責任を有するものは、第63条の規定に従って国際連合と連携関係をもたされなければならない。
2.こうして国際連合と連携関係をもたされる前記の機関は、以下専門機関という。
第58条
この機構は、専門機関の政策及び活動を調整するために勧告をする。
第59条
この機構は、適当な場合には、第55条に掲げる目的の達成に必要な新たな専門機関を設けるために関係国間の交渉を発議する。
第60条
この章に掲げるこの機構の任務を果たす責任は、総会及び、総会の権威の下に、経済社会理事会に課せられる。理事会は、このために第10章に掲げる権限を有する。
第10章 経済社会理事会
【構成】
第61条
1.経済社会理事会は、総会によって選挙される54の国際連合加盟国で構成する。
2.3の規定を留保して、経済社会理事会の18理事国は、3年の任期で毎年選挙される。退任理事国は、引き続いて再選される資格がある。
3.経済社会理事会の理事国の定数が27から54に増加された後の第1回の選挙では、その年の終わりに任期が終了する9理事国に代って選挙される理事国に加えて、更に27理事国が選挙される。このようにして選挙された追加の27理事国のうち、総会の定めるところに従って、9理事国の任期は1年の終りに、他の9理事国の任期は2年の終りに終了する。
4.経済社会理事会の各理事国は、1人の代表者を有する。
第62条
1.経済社会理事会は、経済的、社会的、文化的、教育的及び保健的国際事項並びに関係国際事項に関する研究及び報告を行い、または発議し、並びにこれらの事項に関して総会、国際連合加盟国及び関係専門機関に勧告をすることができる。
2.理事会は、すべての者のための人権及び基本的自由の尊重及び遵守を助長するために、勧告をすることができる。
3.理事会は、その権限に属する事項について、総会に提出するための条約案を作成することができる。
4.理事会は、国際連合の定める規則に従って、その権限に属する事項について国際会議を招集することができる。
第63条
1.経済社会理事会は、第57条に掲げる機関のいずれとの間にも、その機関が国際連合と連携関係をもたされるについての条件を定める協定を締結することができる。この協定は、総会の承認を受けなければならない。
2.理事会は、専門機関との協議及び専門機関に対する勧告並びに総会及び国際連合加盟国に対する勧告によって、専門機関の活動を調整することができる。
第64条
1.経済社会理事会は、専門機関から定期報告を受けるために、適当な措置をとることができる。理事会は、理事会の勧告と理事会の権限に属する事項に関する総会の勧告とを実施するためにとられた措置について報告を受けるため、国際連合加盟国及び専門機関と取極を行うことができる。
2.理事会は、前記の報告に関するその意見を総会に通報することができる。
第65条
経済社会理事会は、安全保障理事会に情報を提供することができる。経済社会理事会は、また、安全保障理事会の要請があったときは、これを援助しなければならない。
第66条
1.経済社会理事会は、総会の勧告の履行に関して、自己の権限に属する任務を遂行しなければならない。
2.理事会は、国際連合加盟国の要請があったとき、又は専門機関の要請があったときは、総会の承認を得て役務を提供することができる。
3.理事会は、この憲章の他の箇所に定められ、または総会によって自己に与えられるその他の任務を遂行しなければならない。
【表決】
第67条
1.経済社会理事会の各理事国は、1個の投票権を有する。
2.経済社会理事会の決定は、出席し且つ投票する理事国の過半数によって行われる。
【手続】
第68条
経済社会理事会は、経済的及び社会的分野における委員会、人権の伸張に関する委員会並びに自己の任務の遂行に必要なその他の委員会を設ける。
第69条
経済社会理事会は、いずれの国際連合加盟国に対しても、その加盟国に特に関係のある事項についての審議に投票権なしで参加するように勧誘しなければならない。
第70条
経済社会理事会は、専門機関の代表者が理事会の審議及び理事会の設ける委員会の審議に投票権なしで参加するための取極並びに理事会の代表者が専門機関の審議に参加するための取極を行うことができる。
第71条
経済社会理事会は、その権限内にある事項に関係のある民間団体と協議するために、適当な取極を行うことができる。この取極は、国際団体との間に、また、適当な場合には、関係のある国際連合加盟国と協議した後に国内団体との間に行うことができる。
第72条
1.経済社会理事会は、議長を選定する方法を含むその手続規則を採択する。
2.経済社会理事会は、その規則に従って必要があるときに会合する。この規則は、理事国の過半数の要請による会議招集の規定を含まなければならない。
第11章 非自治地域に関する宣言
第73条
人民がまだ完全に自治を行うに至っていない地域の施政を行う責任を有し、又は引き受ける国際連合加盟国は、この地域の住民の利益が至上のものであるという原則を承認し、且つ、この地域の住民の福祉をこの憲章の確立する国際の平和及び安全の制度内で最高度まで増進する義務並びにそのために次のことを行う義務を神聖な信託として受託する。

1.関係人民の文化を充分に尊重して、この人民の政治的、経済的、社会的及び教育的進歩、公正な待遇並びに虐待からの保護を確保すること。
2.各地域及びその人民の特殊事情並びに人民の進歩の異なる段階に応じて、自治を発達させ、人民の政治的願望に妥当な考慮を払い、且つ、人民の自由な政治制度の斬新的発達について人民を援助すること。
3.国際の平和及び安全を増進すること。
4.本条に掲げる社会的、経済的及び科学的目的を実際に達成するために、建設的な発展措置を促進し、研究を奨励し、且つ、相互に及び適当な場合には専門国際団体と協力すること。
5.第12章及び第13章の適用を受ける地域を除く外、前記の加盟国がそれぞれ責任を負う地域における経済的、社会的及び教育的状態に関する専門的性質の統計その他の資料を、安全保障及び憲法上の考慮から必要な制限に従うことを条件として、情報用として事務総長に定期的に送付すること。
第74条
国際連合加盟国は、また、本章の適用を受ける地域に関するその政策を、その本土に関する政策と同様に、世界の他の地域の利益及び福祉に妥当な考慮を払った上で、社会的、経済的及び商業的事項に関して善隣主義の一般原則に基かせなければならないことに同意する。
第12章 国際信託統治制度
第75条
国際連合は、その権威の下に、国際信託統治制度を設ける。この制度は、今後の個々の協定によってこの制度の下におかれる地域の施政及び監督を目的とする。この地域は、以下信託統治地域という。
第76条
信託統治制度の基本目的は、この憲章の第1条に掲げる国際連合の目的に従って、次のとおりとする。
1.国際の平和及び安全を増進すること。
2.信託統治地域の住民の政治的、経済的、社会的及び教育的進歩を促進すること。各地域及びその人民の特殊事情並びに関係人民が自由に表明する願望に適合するように、且つ、各信託統治協定の条項が規定するところに従って、自治または独立に向っての住民の漸進的発達を促進すること。
3.人種、性、言語または宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を尊重するように奨励し、且つ、世界の人民の相互依存の認識を助長すること。
4.前記の目的の達成を妨げることなく、且つ、第80条の規定を留保して、すべての国際連合加盟国及びその国民のために社会的、経済的及び商業的事項について平等の待遇を確保し、また、その国民のために司法上で平等の待遇を確保すること。
第77条
1.信託統治制度は、次の種類の地域で信託統治協定によってこの制度の下におかれるものに適用する。
a.現に委任統治の下にある地域
b.第二次世界大戦の結果として敵国から分離される地域
c.施政について責任を負う国によって自発的にこの制度の下におかれる地域
2.前記の種類のうちのいずれの地域がいかなる条件で信託統治制度の下におかれるかについては、今後の協定で定める。
第78条
国際連合加盟国の間の関係は、主権平等の原則の尊重を基礎とするから、信託統治制度は、加盟国となった地域には適用しない。
第79条
信託統治制度の下におかれる各地域に関する信託統治の条項は、いかなる変更又は改正も含めて、直接関係国によって協定され、且つ、第83条及び第 85条に規定するところに従って承認されなければならない。この直接関係国は、国際連合加盟国の委任統治の下にある地域の場合には、受任国を含む。
第80条
1.第77条、第79条及び第81条に基いて締結され、各地域を信託統治制度の下におく個々の信託統治協定において協定されるところを除き、また、このような協定が締結される時まで、本章の規定は、いずれの国又はいずれの人民のいかなる権利をも、また、国際連合加盟国がそれぞれ当事国となっている現存の国際文書の条項をも、直接又は間接にどのようにも変更するものと解釈してはならない。
2.本条1は、第77条に規定するところに従って委任統治地域及びその他の地域を信託統治制度の下におくための協定の交渉及び締結の遅滞又は延期に対して、根拠を与えるものと解釈してはならない。
第81条
信託統治協定は、各場合において、信託統治地域の施政を行うについての条件を含み、且つ、信託統治地域の施政を行う当局を指定しなければならない。この当局は、以下施政権者といい、1若しくは2以上の国またはこの機構自身であることができる。
第82条
いかなる信託統治協定においても、その協定が適用される信託統治地域の一部又は全部を含む1又は2以上の戦略地区を指定することができる。但し、第43条に基いて締結される特別協定を害してはならない。
第83条
1.戦略地区に関する国際連合のすべての任務は、信託統治協定の条項及びその変更又は改正の承認を含めて、安全保障理事会が行う。
2.第76条に掲げる基本目的は、各戦略地区の人民に適用する。
3.安全保障理事会は、国際連合の信託統治制度に基く任務で戦略地区の政治的、経済的、社会的及び教育的事項に関するものを遂行するために、信託統治理事会の援助を利用する。但し、信託統治協定の規定には従うものとし、また、安全保障の考慮が妨げられてはならない。
第84条
信託統治地域が国際の平和及び安全の維持についてその役割を果すようにすることは、施政権者の義務である。このため、施政権者は、この点に関して安全保障理事会に対して負う義務を履行するに当って、また、地方的防衛並びに信託統治地域における法律及び秩序の維持のために、信託統治地域の義勇軍、便益及び援助を利用することができる。
第85条
1.戦略地区として指定されないすべての地区に関する信託統治協定についての国際連合の任務は、この協定の条項及びその変更又は改正の承認を含めて、総会が行う。
2.総会の権威の下に行動する信託統治理事会は、前記の任務の遂行について総会を援助する。
第13章 信託統治理事会
第86条
1.信託統治理事会は、次の国際連合加盟国で構成する。
a.信託統治地域の施政を行う加盟国
b.第23条に名を掲げる加盟国で信託統治地域の施政を行っていないもの
c.総会によって3年の任期で選挙されるその他の加盟国。その数は、信託統治理事会の理事国の総数を、信託統治地域の施政を行う国際連合加盟国とこれを行っていないものとの間に均分するのに必要な数とする。
2.信託統治理事会の各理事国は、理事会で自国を代表する特別の資格を有する者1人を指名しなければならない。
【任務及び権限】
第87条
総会及び、その権威の下に、信託統治理事会は、その任務の遂行に当って次のことを行うことができる。
1.施政権者の提出する報告を審議すること。
2.請願を受理し、且つ、施政権者と協議してこれを審査すること。
3.施政権者と協定する時期に、それぞれの信託統治地域の定期視察を行わせること。
4.信託統治協定の条項に従って、前記の行動その他の行動をとること。
第88条
信託統治理事会は、各信託統治地域の住民の政治的、経済的、社会的及び教育的進歩に関する質問書を作成しなければならない。また、総会の権限内にある各信託統治地域の施政権者は、この質問書に基いて、総会に年次報告を提出しなければならない。
【表決】
第89条
1.信託統治理事会の各理事国は、1個の投票権を有する。
2.信託統治理事会の決定は、出席し且つ投票する理事国の過半数によって行われる。
【手続】
第90条
1.信託統治理事会は、議長を選定する方法を含むその手続規則を採択する。
2.信託統治理事会は、その規則に従って必要があるときに会合する。この規則は、理事国の過半数の要請による会議招集の規定を含まなければならない。
第91条
信託統治理事会は、適当な場合には、経済社会理事会及び専門機関がそれぞれ関係している事項について、両者の援助を利用する。
第14章 国際司法裁判所
第92条
国際司法裁判所は、国際連合の主要な司法機関である。この裁判所は、付属の規程に従って任務を行う。この規定は、常設国際司法裁判所規程を基礎とし、且つ、この憲章と不可分の一体をなす。
第93条
1.すべての国際連合加盟国は、当然に、国際司法裁判所規程の当事国となる。
2.国際連合加盟国でない国は、安全保障理事会の勧告に基いて総会が各場合に決定する条件で国際司法裁判所規程の当事国となることができる。
第94条
1.各国際連合加盟国は、自国が当事者であるいかなる事件においても、国際司法裁判所の裁判に従うことを約束する。
2.事件の一方の当事者が裁判所の与える判決に基いて自国が負う義務を履行しないときは、他方の当事者は、安全保障理事会に訴えることができる。理事会は、必要と認めるときは、判決を執行するために勧告をし、又はとるべき措置を決定することができる。
第95条
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国が相互間の紛争の解決を既に存在し又は将来締結する協定によって他の裁判所に付託することを妨げるものではない。
第96条
1.総会又は安全保障理事会は、いかなる法律問題についても勧告的意見を与えるように国際司法裁判所に要請することができる。
2.国際連合のその他の機関及び専門機関でいずれかの時に総会の許可を得るものは、また、その活動の範囲内において生ずる法律問題について裁判所の勧告的意見を要請することができる。
第15章 事務局
第97条
事務局は、1人の事務総長及びこの機構が必要とする職員からなる。事務総長は、安全保障理事会の勧告に基いて総会が任命する。事務総長は、この機構の行政職員の長である。
第98条
事務総長は、総会、安全保障理事会、経済社会理事会及び信託統治理事会のすべての会議において事務総長の資格で行動し、且つ、これらの機関から委託される他の任務を遂行する。事務総長は、この機構の事業について総会に年次報告を行う。
第99条
事務総長は、国際の平和及び安全の維持を脅威すると認める事項について、安全保障理事会の注意を促すことができる。
第100条
1.事務総長及び職員は、その任務の遂行に当って、いかなる政府からも又はこの機構外のいかなる他の当局からも指示を求め、又は受けてはならない。事務総長及び職員は、この機構に対してのみ責任を負う国際的職員としての地位を損ずる虞のあるいかなる行動も慎まなければならない。
2.各国際連合加盟国は、事務総長及び職員の責任のもっぱら国際的な性質を尊重すること並びにこれらの者が責任を果すに当ってこれらの者を左右しようとしないことを約束する。
第101条
1.職員は、総会が設ける規則に従って事務総長が任命する。
2.経済社会理事会、信託統治理事会及び、必要に応じて、国際連合のその他の機関に、適当な職員を常任として配属する。この職員は、事務局の一部をなす。
3.職員の雇用及び勤務条件の決定に当って最も考慮すべきことは、最高水準の能率、能力及び誠実を確保しなければならないことである。職員をなるべく広い地理的基礎に基いて採用することの重要性については、妥当な考慮を払わなければならない。
第16章 雑則
第102条
1.この憲章が効力を生じた後に国際連合加盟国が締結するすべての条約及びすべての国際協定は、なるべくすみやかに事務局に登録され、且つ、事務局によって公表されなければならない。
2.前記の条約または国際協定で本条1の規定に従って登録されていないものの当事国は、国際連合のいかなる機関に対しても当該条約または協定を援用することができない。
第103条
国際連合加盟国のこの憲章に基く義務と他のいずれかの国際協定に基く義務とが抵触するときは、この憲章に基く義務が優先する。
第104条
この機構は、その任務の遂行及びその目的の達成のために必要な法律上の能力を各加盟国の領域において亨有する。
第105条
1.この機構は、その目的の達成に必要な特権及び免除を各加盟国の領域において亨有する。
2.これと同様に、国際連合加盟国の代表者及びこの機構の職員は、この機構に関連する自己の任務を独立に遂行するために必要な特権及び免除を亨有する。
3.総会は、本条1及び2の適用に関する細目を決定するために勧告をし、又はそのために国際連合加盟国に条約を提案することができる。
第17章 安全保障の過渡的規定
第106条
第43条に掲げる特別協定でそれによって安全保障理事会が第42条に基く責任の遂行を開始することができると認めるものが効力を生ずるまでの間、 1943年10月30日にモスコーで署名された4国宣言の当事国及びフランスは、この宣言の第5項の規定に従って、国際の平和及び安全の維持のために必要な共同行動をこの機構に代ってとるために相互に及び必要に応じて他の国際連合加盟国と協議しなければならない。
第107条
この憲章のいかなる規定も、第二次世界大戦中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動でその行動について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は許可したものを無効にし、又は排除するものではない。
第18章 改正
第108条
この憲章の改正は、総会の構成国の3分の2の多数で採択され、且つ、安全保障理事会のすべての常任理事国を含む国際連合加盟国の3分の2によって各自の憲法上の手続に従って批准された時に、すべての国際連合加盟国に対して効力を生ずる。
第109条
1.この憲章を再審議するための国際連合加盟国の全体会議は、総会の構成国の3分の2の多数及び安全保障理事会の9理事会の投票によって決定される日及び場所で開催することができる。各国際連合加盟国は、この会議において1個の投票権を有する。
2.全体会議の3分の2の多数によって勧告されるこの憲章の変更は、安全保障理事会のすべての常任理事国を含む国際連合加盟国の3分の2によって各自の憲法上の手続に従って批准された時に効力を生ずる。
3.この憲章の効力発生後の総会の第10回年次会期までに全体会議が開催されなかった場合には、これを招集する提案を総会の第10回年次会期の議事日程に加えなければならず、全体会議は、総会の構成国の過半数及び安全保障理事会の7理事国の投票によって決定されたときに開催しなければならない。
第19章 批准及び署名
第110条
1.この憲章は、署名国によって各自の憲法上の手続に従って批准されなければならない.
2.批准書は、アメリカ合衆国政府に寄託される。同政府は、すべての署名国及び、この機構の事務総長が任命された場合には、事務総長に対して各寄託を通告する。
3.この憲章は、中華民国、フランス、ソヴィエト社会主義共和国連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国、アメリカ合衆国及びその他の署名国の過半数が批准書を寄託した時に効力を生ずる。批准書寄託調書は、その時にアメリカ合衆国政府が作成し、その謄本をすべての署名国に送付する。
4.この憲章の署名国で憲章が効力を生じた後に批准するものは、各自の批准書の寄託の日に国際連合の原加盟国となる。
第111条
この憲章は、中国語、フランス語、ロシア語、英語及びスペイン語の本文をひとしく正文とし、アメリカ合衆国政府の記録に寄託しておく。この憲章の認証謄本は、同政府が他の署名国の政府に送付する。
以上の証拠として、連合国政府の代表者は、この憲章に署名した。
1945年6月26日にサン・フランシスコ市で作成した。


PS(2015.7.23追加):*4-1のように、東シナ海で中国がガス田開発を行っている。これについて、外務省が写真を公表し、日本政府は、「一方的な資源開発は極めて遺憾だ」として中止を求め、「中国による一方的な現状変更に対する関心の高まりを総合的に勘案して公表した」とのことだが、中国は、*4-2のように、「中国が管轄する争いのない海域でのガス田開発は全く正当かつ合法だ」としている。
 しかし、①2003年(今から12年前)に問題点が明らかになり、②2008年(今から7年前)に日中両政府がガス田の共同開発で合意した(条約はない)が、③日本がいつまでもガス田開発を行わず、④「一方的な現状変更だ」と中国にクレームをつけるだけであったため、中国が争いのない海域でのガス田開発を行うのは、私も正当で合法的だと考える。
 日本の態度を隣組に例えれば、清らかな地下水に恵まれた住宅地で、井戸を掘る手間と費用を惜しんで飲料水を取りよせて購入している人が、境界近くの自分の敷地に井戸を掘った隣家に対して、「地下水脈は繋がっているのに勝手に現状変更するな。井戸を掘るなら共同でしか許さない」とクレームを言っているのと同じで、日本の主張の方がおかしい。必要な資源であれば、速やかに問題を解決して自分も掘るべきだったのだが、私が衆議院議員だった時、経産省にそう言っても、経産省は「中東から輸入した方が安い」と短期的かつ狭窄な視野でたかをくくっていて何もしなかったのである。ちなみに、小笠原の赤サンゴ事件の時でさえ、日本政府は、公式な抗議や逮捕など大したことは行っておらず、環境に対して中国よりも見識の低い不作為があった。
 なお、*4-3のように中国が主張している大陸棚説は、隣家が「うちと同じ地層の上にある場所はうちの敷地だ」と言っているのと同様に理不尽であるため、放っておかず速やかに交渉して問題解決すべきだったのであり、それは外務省の仕事であるから外務省の不作為だ。

   
                2015.7.22、23日経新聞

*4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150723&ng=DGKKASDE22H0J_S5A720C1MM8000 (日経新聞 2015.7.23) 中国ガス田開発12基増 東シナ海、写真公表
 政府は22日、東シナ海での中国によるガス田開発の現状を示す航空写真や地図を外務省のホームページで公表した。菅義偉官房長官は記者会見で、「日中中間線」の中国側で2013年6月以降に新たに12基の構造物が確認され、すでに確認済みの4基と合わせて16基になったと発表。「一方的な資源開発は極めて遺憾だ」と批判し、中止を求めた。公表した写真は海上自衛隊機が上空から撮影。天然ガスを掘削するプラットホームで、多くはヘリポートが付いている。菅長官は公表の理由について「中国による一方的な現状変更に対する関心の高まりを総合的に勘案した」と説明。政府内には「ヘリや無人機の展開拠点として利用する可能性もある」(中谷元・防衛相)との見方が出ている。

*4-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDE22H0G_S5A720C1000000/
(日経新聞 2015/7/22) 政府、中国ガス田開発の証拠写真を公表 計16基の構造物
 政府は22日、中国が日中間の合意に反し、東シナ海の「日中中間線」付近で一方的に新たなガス田開発を進めていると指摘し、証拠として航空写真などを公表した。周辺海域で中国がガス田開発のために設けた構造物は計16基で、いずれも日中中間線の中国側で建設されている。政府は各施設が中国の軍事活動の拠点となる可能性も念頭に、警戒を強めている。菅義偉官房長官は同日の記者会見で「日中中間線の中国側においてとはいえ、中国側が一方的な開発行為を進めていることは極めて遺憾だ」と抗議した。外務省が同日、ホームページで構造物や構造物の土台の写真と、構造物の位置を示した地図を発表した。証拠写真を公表することで、境界が画定していない海域で中国が一方的に開発を進めている実態を国内外にアピールし、中国をけん制する狙いがある。中国が「ヘリや無人機の展開拠点として利用する可能性もある」(中谷元・防衛相)などの指摘も多く、今後は米国などと連携して警戒態勢を強める考えだ。中国側は「中国が管轄する争いのない海域でのガス田開発は全く正当かつ合法だ」(中国外務省の陸慷報道局長)と繰り返し反論している。東シナ海のガス田開発を巡っては、2008年6月に日中両政府がガス田「白樺」(中国名・春暁)の共同開発で合意。具体化に向けた交渉を進めていたが、10年の沖縄県尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件を機に中国側が交渉を一方的に延期した。その後、13年6月に中国による新たな掘削施設の建設が明らかになり、政府が抗議していた。

*4-3:http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/higashi_shina/tachiba.html
(外務省 平成27年7月22日) 中国による東シナ海での一方的資源開発の現状
1 近年,中国は,東シナ海において資源開発を活発化させており,政府として,日中の地理的中間線の中国側で,これまでに計16基の構造物を確認している。
2 東シナ海の排他的経済水域及び大陸棚は境界が未画定であり,日本は日中中間線を基にした境界画定を行うべきであるとの立場である。このように,未だ境界が画定していない状況において,日中中間線の中国側においてとは言え,中国側が一方的な開発行為を進めていることは極めて遺憾である。政府としては,中国側に対して,一方的な開発行為を中止するとともに,東シナ海の資源開発に関する日中間の協力について一致した「2008年6月合意」の実施に関する交渉再開に早期に応じるよう,改めて強く求めているところである。
1 日中双方は、国連海洋法条約の関連規定に基づき、領海基線から200海里までの排他的経済水域及び大陸棚の権原を有している。東シナ海をはさんで向かい合っている日中それぞれの領海基線の間の距離は400海里未満であるので、双方の200海里までの排他的経済水域及び大陸棚が重なり合う部分について、日中間の合意により境界を画定する必要がある。国連海洋法条約の関連規定及び国際判例に照らせば、このような水域において境界を画定するに当たっては、中間線を基に境界を画定することが衡平な解決となるとされている。
 (注:1海里=1.852キロメートル、200海里=370.4キロメートル)
2 (1)これに対し、中国側は、東シナ海における境界画定について、大陸棚の自然延長、大陸と島の対比などの東シナ海の特性を踏まえて行うべきであるとしており、中間線による境界画定は認められないとした上で、中国側が想定する具体的な境界線を示すことなく、大陸棚について沖縄トラフまで自然延長している旨主張している。
(2)他方、自然延長論は、1960年代に、隣り合う国の大陸棚の境界画定に関する判例で用いられる等、過去の国際法においてとられていた考え方である。1982年に採択された国連海洋法条約の関連規定とその後の国際判例に基づけば、向かい合う国同士の間の距離が400海里未満の水域において境界を画定するに当たっては、自然延長論が認められる余地はなく、また、沖縄トラフ(海底の溝)のような海底地形に法的な意味はない。したがって、大陸棚を沖縄トラフまで主張できるとの考えは、現在の国際法に照らせば根拠に欠ける。
3 このような前提に立ってこれまで、我が国は、境界が未画定の海域では少なくとも中間線から日本側の水域において我が国が主権的権利及び管轄権を行使できることは当然との立場をとってきた。これは中間線以遠の権原を放棄したということでは全くなく、あくまでも境界が画定されるまでの間はとりあえず中間線までの水域で主権的権利及び管轄権を行使するということである。したがって、東シナ海における日中間の境界画定がなされておらず、かつ、中国側が我が国の中間線にかかる主張を一切認めていない状況では、我が国が我が国の領海基線から200海里までの排他的経済水域及び大陸棚の権原を有しているとの事実に何ら変わりはない。

| 外交・防衛::2014.9~ | 04:27 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.6.7 まとめて法案を出すのは、国民や議員の検討・理解を妨害するもので、この方法は “憲法改正”にも使われようとしているため、注意すべきである。(2015年6月9、11、12、14日に追加あり)
    
     体系       全体像    新しい日米防衛協力指針と安保法制  集団的自衛権  

(1)安保法案に関する報道について
 *1のように、集団的自衛権の行使を認めた閣議決定で、武力行使の3要件が新しくなり、一定の「歯止め」はあるものの、日米両政府は防衛協力のための指針を改定し、自衛隊と米軍の地球規模の協力を打ち出した。 ぎょ

 これらの安保関連法案に関する衆院での質疑は一部TV中継されたが、重要な安全保障政策を転換しそうな局面であるため、それぞれの言葉の定義と法律の変更理由、外交防衛委員会等の関連質疑などもTV中継して国民に報道すべきだ。これは、公共の電波を使って、一日中、野球・アメフト・サッカーの試合を中継したり、商業スポーツの不正を暴く報道ばかりしているより、よほど重要なことである。

 その理由は、①各党の方針 ②議員個人の意見 ③質疑内容 ④政策決定過程等を国民が知っておかなければ、国民が選挙で自らの意志に沿う選択をすることはできず、少数の人の意志で政治が動かされてしまうからである。つまり、*5のように投票率の向上のみを叫んでみても、政策内容やそれを主張している議員を正確に把握しておかなければ、主権在民や民主主義は有効に機能しないのだ。

 なお、私も現在は、報道からしか安保関連法案の内容を知ることができないため、これまで法案の全体像や用語の定義が明確でなく論理的に議論できないため、このブログに自分の見解を書かなかった。しかし、このようにして国民の目をくらますことが、大量の法案を一括して提出した本当の意図だろう。

(2)日本政府の説明における集団的自衛権について
1)「存立危機事態で集団的自衛権の行使が可能」というのは正しいか?
①国際法から見た日本政府の説明
 集団的自衛権は、*4で示される国際法上の権利で、その性質は、i)他国の権利を防衛する正当防衛、ii)個別的自衛権の共同行使を行う自己防衛、iii)攻撃を受けた他国の安全と独立が自国にとって死活的に重要な場合に防衛行為をとることが可能 とする3つがあり、現在の通説はiii)だが、国際司法裁判所は、1986年のニカラグア事件判決において、集団的自衛権を行使するためには、iv)攻撃を受けた国による攻撃事実の宣言、v)他国に対する援助要請 が必要としており、これはもっともなことである。

 一方、日本政府は、*2-2のように、2015年5月11日に法案の全体像が示された安全保障法制の中で、i)、ii)、iii)の3要件を満たせば、集団的自衛権による武力行使が憲法上も認められるとしている。しかし、国際法上、集団的自衛権の行使と認められるためには、これに加えて攻撃を受けた国による攻撃事実の宣言と日本への援助要請が必要だ。

②存立危機事態の定義とその妥当性
 日本政府は、存立危機事態を、「i)日本と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、ii)日本の存立が脅かされ、iii)国民の生命・自由・幸福追求権が根底から覆される明白な危険がある事態」と定義し、この場合、iv)他に適当な手段がなく、v)必要最小限の武力行使に留まる範囲で、武力による反撃を可能とした。
 
 しかし、日本と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生して、日本の存立が脅かされたり、日本国民の生命・自由・幸福追求権が根底から覆されたりする危険性は考えにくく、日本政府は、ホルムズ海峡の機雷除去を例として挙げた。そして、*2-3のような電力不足や、*2-4のような天然ガス、原子力発電の燃料、食料、生活物資の不足なども含まれるのだとも言うが、もしそうなら、自国のための物資確保を目的として他国に侵略した太平洋戦争と同じであり、それから進歩も改善もなかったことになる。

 そもそも、*2-5のように、ホルムズ海峡への機雷敷設や食料輸入のストップなどで日本の存立が脅かされ、国民の生命や幸福が覆されたりすることがないように、普段から食料自給率や再生可能エネルギーの割合を高めておくのが、本当の危機管理であり、安全保障だ。

2)政府が説明する集団的自衛権は、日本国憲法の前文や9条の平和主義に適合しているか?
 *3-1のように、我が国は、日本国憲法の前文及び9条で平和主義を定めており、これまで海外での武力行使はせず、平和主義を実行してきた。そして、私は、日本国憲法が健在である限り、自衛隊は、個別的自衛権の行使であれ集団的自衛権の行使であれ、自国の領土・領海・領空を守ることがあっても、外国の領土・領海・領空で武力行使を行うことはできないと考える。

 そのため、*3-2に書かれているとおり、衆議院の憲法審査会で、6月4日に招かれた憲法学者3人の参考人は、今回進められている安全保障法制について全員が憲法違反だと明言したそうだ。そのうち小林氏は「憲法9条2項で軍隊と交戦権が与えられていない。仲間の国を助けるために海外に戦争に行くことは憲法9条違反だ」と強調し、9条改正を訴えたとのことである。

 しかし、札幌弁護士会は、*3-3のように、会長声明で「新安保法制は、我が国が攻撃されていない場合でも、自衛隊による実力行使を認め(自衛隊法、武力攻撃事態及び存立危機事態安全確保法)、周辺事態に当たらない場合でも米軍及び米軍以外の他国軍隊に対する支援を可能とし(重要影響事態安全確保法)、一部の活動については現に戦闘行為が行われている現場での実施も可能にする(国際平和支援法等)ため、恒久平和主義を定める憲法前文や第9条及び立憲主義に反するもので違憲無効であると明確に述べている。

 自民党は、*3-4のように、日本国憲法の変更に関し、緊急事態条項(定義不明)、環境権(現行憲法で読めるため不要であり、実行が必要なのである)、財政規律条項(同)の中で緊急事態条項を衆院憲法審査会などで最優先に議論する方針を固めて違憲状態を合憲にするつもりだが、憲法の前文や9条は、我が国が先の大戦や侵略・植民地支配で国内外に多大な惨禍を与えたことに対する反省と教訓に基づいて戦争や武力行使を放棄しているものであるため、このような戦争を可能にすることが本音の憲法変更は改正ではなく改悪であると、私は考える。

 なお、日本政府は「後方支援は戦争行為ではない」とも説明しているが、後方支援の定義は「兵站=Military logistics」であり、戦闘地域の後方で物資の配給、兵員の展開、施設の構築・維持などを行うものであるため、戦争の重要な一部だというのが国際常識だ。

<安保法制と憲法>
*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150528&ng=DGKKASFS27H4L_X20C15A5EA2000 (日経新聞 2015.5.28) 安保法案攻防、首相が歯止め強調
 自衛隊の海外活動を拡大する安全保障関連法案の実質審議が27日、衆院平和安全法制特別委員会を舞台にはじまった。法案成立後に行使可能になる集団的自衛権を使い、自衛隊はどこまで行動できるのか。武力行使の「歯止め」をめぐり、各党の党首級が論戦を繰り広げた。(1面参照)
■海外派兵の例外「中東の機雷掃海のみ」
●自民党の高村正彦副総裁「海外派兵の例外にあたるのはペルシャ湾の機雷掃海くらいだ」
●安倍晋三首相「現在、他の例は念頭にない」
 海外派兵とは、武力行使の目的で武装部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することだ。一般に自衛のための必要最小限度を超えるため、憲法上許されない。横畠裕介内閣法制局長官は見解に変更がないと答弁した。ただ、憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を認めた昨年7月の閣議決定で、武力行使の3要件は新しくなっている。密接な関係国が攻撃されて日本の存立を脅かす状況にあり、必要最小限度の実力行使にとどまる、などだ。安保法案にも3要件は明記されている。3要件を満たす「例外」の海外派兵が今後増えていくかもしれない。首相はかねて中東のホルムズ海峡での機雷掃海を挙げるが、野党側は例外の拡大を警戒する。高村氏の質問にはそんな疑念を晴らす狙いがあった。首相がさらに「歯止め」を強調したのが、安保法案の採決時の協力を期待する維新の党、松野頼久代表への答弁だ。「相当な危険を伴う。実際のオペレーションは戦闘行為がないときしか行わない」。機雷掃海の実施は事実上の停戦合意後だとして理解を求めた。しかし、海外派兵の例外拡大がなくなったとはいえない。首相は日本人を輸送している米艦を防護するような場合、他国領域で集団的自衛権を行使するかと問われ「慎重な当てはめをしていく」と含みを持たせた。横畠長官も「誘導弾等の基地をたたく以外に攻撃を防ぐ方法がない場合、他国の領域における武力行動は許されないわけではない」と、敵基地攻撃の可能性に触れた。
■「先制攻撃、支援せず」国際法に反すると指摘
 民主党の岡田克也代表「米国が先制攻撃をするとき(日本が)集団的自衛権を行使することはないか」
 首相「ある国がなんら武力攻撃を受けていないのに違法な武力行使をするのは国際法上、認められていない。日本が支援することはない」
 日米両政府は4月に防衛協力のための指針(ガイドライン)を改定し、自衛隊と米軍の地球規模の協力を打ち出した。岡田氏は、日米同盟が深まった結果、米国のしかけた戦争に巻き込まれるのでは、と疑問を投げかけた。「米国は先制攻撃を否定していない国だ。ある国と戦争状態になったとき集団的自衛権行使を認めるのか」。こう迫る岡田氏に、岸田文雄外相は「先制攻撃は国際法に違反する。集団的自衛権で支援することは全くありえない」と答えた。その直後の首相答弁とはニュアンスに若干の違いが出た。首相は「国連憲章上、違法とされる先制攻撃」を支援しないとした。先制攻撃が違法とみなされるかどうかで判断が変わることを示唆したかのようにみえる。岡田氏は「新3要件さえ満たしていれば先制攻撃でも侵略行為でも認めるのか」と詰めた。首相は「違法行為を支援することはない」と繰り返した。

<存立危機事態と武力攻撃切迫事態の定義>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11779496.html (朝日新聞 2015年5月29日) 「事態」論議、答弁あいまい 存立危機・攻撃切迫・重要影響 安保法制
 民主党の辻元清美氏は、日本の存立が脅かされる「存立危機事態」と、日本への直接攻撃が差し迫る「武力攻撃切迫事態」との違いなどを追及。他国への武力攻撃であっても政府が存立危機事態と認定すれば武力行使を認める一方で、武力攻撃切迫事態では武力行使を認めない法律上の根拠を問いただした。中谷元・防衛相は「他国に武力攻撃が発生したかどうかと、我が国が直接武力攻撃を受けたときの判断基準に違いがある」といった説明を繰り返した。辻元氏が中谷氏に同じ質問をたたみかけると、安倍晋三首相が自ら答弁席へ。「総理待って、中谷大臣に聞いている。ダメです」と遮る中、首相がそれぞれの事態を説明。辻元氏はなお、「基準があいまいで、時の政府によって何とでも判断できる」と問題点を指摘した。また、同党の緒方林太郎氏は、政府が他国の領域では集団的自衛権の行使を一般に認めないとする根拠について質問。「武力行使の新3要件」のうち存立危機事態に該当しないためか、それとも自衛のための必要最小限度を超えるためかと問うと、中谷氏は「新3要件から論理的に導かれている」などと答弁。緒方氏は「質問に答えていない」として再度、説明を求めた。日本のために活動する米軍などを地球規模で支援するという「重要影響事態」について、公明党の北側一雄副代表は「どんな基準で判断するのか」と質問。首相は、日本に戦禍がおよぶ可能性など状況に応じて「客観的、合理的に判断する」と答えた。維新の党の江田憲司前代表は、重要影響事態の具体例を迫った。だが、首相は具体的には答えず、江田氏は「地球の裏側まで行けるようにしたいのか。国民が納得しない」と批判した。
■<視点>定義、分かりやすい説明を
 国会論戦で定義があいまいな「事態」が飛び交うのは、安全保障法制の分かりにくさを象徴している。これまで自衛隊に出動を命じる前提となる「事態」は、日本有事を起点に考えられてきた。安倍政権が集団的自衛権の行使を認め、自衛隊の海外派遣の拡大を決めたことで、武力を行使したり他国の戦争を支援したりできる範囲が広がり、それぞれの事態が重なり合うことで、その線引きが不明確になっている。政府与党は状況に応じて判断基準や手続きを定めようと事態を細分化したが、その定義をめぐり混乱が生じることは与党協議の時から懸念されてきた。政権側にあえて事態の定義を明確にせず、政策の選択肢を広げようとする思惑があるとすれば許されない。事態の認定は日本が戦争に関わるかどうかを決める重大な判断であり、国会のチェックや国民の理解が欠かせない。国会論戦で浮上した矛盾や疑問点に対して、政府は具体的な事例で答え、国民に分かりやすい定義を示すべきだ。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11748068.html (朝日新聞 2015年5月12日) 行使、政権の裁量次第 集団的自衛権 国会事前承認、あくまで「原則」
 11日に法案の全体像が示された安全保障法制の中で、中核的な柱のひとつが、武力攻撃事態法改正案に盛り込まれた集団的自衛権の行使だ。改正法案には、安倍内閣が昨年7月に閣議決定した、行使の前提となる新3要件が明記された。与党幹部は厳しい「歯止め」をかけたと自賛するが、行使の判断基準にはあいまいさが残る。政権の裁量次第で、海外での武力行使に道を開くものだ。そもそも集団的自衛権の行使は、国連憲章が加盟国に認めている国際法上の権利だ。日本政府はこれまで「持っているが、使えない」との立場を取ってきた。だが、憲法解釈を変えて行使を可能にしたことで、他国の戦争にどう関わるか、新たな判断が問われることになる。世界的に見れば、集団的自衛権の行使が、後にその是非を問われたケースも多い。米国がベトナム戦争に参戦したり、北大西洋条約機構(NATO)がアフガン戦争に加わったりした根拠も、集団的自衛権の行使だった。個別的にせよ、集団的にせよ、自衛権は各国の判断で行使できる。つまり自衛権を掲げて戦争に加わるかどうかについては、国連決議などは必要ない。今回の安全保障法制では、米軍など他国軍を後方支援する国際平和支援法案や国連平和維持活動(PKO)協力法改正案については、国連決議など国際法上の正当性を保つ「歯止め」が取り入れられた。しかし、武力攻撃事態法改正案による集団的自衛権の行使には、国連決議などは必要とされず、国会の事前承認もあくまで「原則」とされている。
■3要件、判断基準あいまい
 与党協議をリードした両党のトップは11日の会見で、集団的自衛権の行使を可能にした武力攻撃事態法改正案にも触れた。だが、法制化を成し遂げた責任者の言葉としては、奇異なものだった。「集団的自衛権行使の局面が、世界中であるかというと、あるとはとても思えない」。公明党の北側一雄副代表が強調すると、自民党の高村正彦副総裁も「思い浮かばない」と歩調を合わせた。法案に盛り込んだのに「行使の局面はほぼない」と口をそろえたのだ。その念頭にあるのは、今回の改正案に明記された、自衛隊の武力を使う際の「新3要件」の存在だ。日本にとって密接な関係にある他国が攻撃された時に、自衛隊が集団的自衛権を使って侵略国などに反撃する際も、日本の存立に関わるような明白な危険がある事態(存立危機事態)▽外交努力など他に手段がない▽必要最小限度の行使にする――の3点の成立を前提条件とするものだ。昨夏の閣議決定に書かれた文言が、そのまま法案にも踏襲された。2人が強調したかったのは、この3要件を厳格に適用すれば、自衛隊が海外で武力を使えるような事態はめったに発生しないという理屈だ。しかし、自公両党や外務・防衛両省に加え、憲法解釈を担う内閣法制局も絡んで、その利害や思惑を積み木細工のように重ねた新3要件と、それを反映した改正案の条文表現は、様々な解釈が成り立つ。「密接な関係にある国」とはどこか、「存立が根底から覆される事態」とはどんな事態か、「他の手段がない」とはどう判断するのか……。安倍晋三首相はこれまで、中東のホルムズ海峡が機雷で封鎖されたケースを想定例として再三言及。中東に多くを頼る原油輸入がストップするような事態になれば、国民の生活が行き詰まり、集団的自衛権を使える「存立危機事態」に当たるとの見解を示している。公明党はこの見解に一貫して反発している。だが、存立危機事態という法の根幹をめぐる解釈が一致しないまま法制化されることこそ、集団的自衛権を使う判断基準が、時の政権に委ねられた実態を示している、と言えそうだ。
■「存立危機」微妙な定義
 存立危機事態をどの法案に反映させるかについても、ご都合主義的な対応が目立つ。これまで認められてきた個別的自衛権では、日本が直接攻撃にさらされ、国民が少なからず被害を受ける武力攻撃事態が前提だった。このため、武力攻撃事態法と合わせて、国民の権利を制限しても緊急時の避難などを優先する国民保護法がセットで適用されることになっている。一方、今回の存立危機事態については、国民の権利を制限するまでの状況とは考えられないとして、それに合わせた法改正は見送られた。「国民の権利が根底から覆される」ほど危険な状況だから集団的自衛権を行使すると言いつつ、国民の権利制限が必要なほど切迫はしていない、というわけだ。存立危機事態は、そんなあいまいで微妙な定義の上に成り立っている。
◆キーワード
<集団的自衛権> 同盟国などが攻撃されたとき、自国への攻撃と見なし、反撃できる権利。国連憲章など国際法で認められている。日本の歴代内閣は「保有しているが、憲法9条との関係で行使できない」との解釈を示していたが、安倍内閣は昨年7月の閣議決定で、解釈を変更。(1)日本と密接な関係にある他国が武力攻撃され、日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態(存立危機事態)(2)我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない(3)必要最小限度の実力行使――の新たな3要件を満たせば、集団的自衛権による武力行使を憲法上可能とした。

*2-3:http://qbiz.jp/article/62377/1/
(西日本新聞 2015年5月18日) 電力不足も危機事態の要件に該当 首相、参院本会後で表明
 安倍晋三首相は18日の参院本会議で、集団的自衛権の行使要件である存立危機事態について、日本と密接な国が攻撃を受け、国内で電力不足などが発生した場合も該当し得るとの見解を示した。存立危機事態の例として「生活物資の不足や電力不足によるライフラインの途絶が起こるなど、国民生活に死活的な影響が生じる場合」を挙げた。日本の原油輸送ルートである中東・ホルムズ海峡が機雷により封鎖された場合の、機雷掃海のための自衛隊派遣が念頭にあるとみられる。維新の党の小野次郎氏に対する答弁。

*2-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015052002000120.html
(東京新聞 2015年5月20日) 集団的自衛権 「原発燃料不足でも」 防衛相、適用拡大狙う
 中谷元・防衛相は十九日の参院外交防衛委員会で集団的自衛権の行使要件となる「存立危機事態」に関し、日本と密接な他国への武力攻撃で「天然ガスや原子力(発電の燃料)」の輸入が途絶する状況も該当する場合があるとの考えを示した。「食料が確保されない」場合も例に挙げた。安倍晋三首相は十八日の国会答弁で「電力不足」や「生活物資の不足」による影響が要件になり得ると表明した。中谷氏の発言は、首相答弁に沿った形で集団的自衛権の適用範囲を幅広く確保しておきたい狙いがありそうだ。維新の党の小野次郎氏が首相答弁に即して「生活物資」の対象を質問。中谷氏は「日常生活や生命に関する」ものと説明した。「食料も含まれるのか」との問いには「食料が確保されない事態も起こり得る」と答えた。小野氏が「石油以外の電力原料も考えているか」とただすと、中谷氏は「天然ガスや原子力とかそういった部分」と応じた。「天然ガスとかウラニウム(ウラン)もプルトニウムも含まれるのか」と畳み掛けると「その通りだ」と答えた。一方で、中谷氏は、経済活動や通信活動の途絶が該当するかには「金融措置などで国民生活や国家経済に打撃を受けても(要件に)当たらない」と述べた。

*2-5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015060702000158.html (東京新聞社説 2015年6月7日) 週のはじめに考える 原発と二つの安保
 安保論議が盛んです。今は安全保障法案が注目ですが、少し前はエネルギー安保でした。どちらも原子力が関係しますが、原発ゼロが国益のようです。安倍晋三首相は安保法案提出の理由として「北朝鮮は弾道ミサイルを数百発、持っている」「緊急発進が十年前に比べて七倍も増えている」と、日本を取り巻く安全保障環境が厳しくなったとの認識を繰り返し説明しています。エネルギー安保に関しては、安倍首相は「電力不足も存立危機事態」とし、中谷元・防衛相は「石油だけでなく、ウランやプルトニウムの輸送も含まれる」と述べています。
◆余る核燃料
 古い話になりますが、安全保障と原発に関して岸信介首相(当時)は一九五七年、国会答弁で「自衛のための核保有は合憲」との考え方を示しました。福島第一原発事故後、保守派の論客とされる人たちは「原発は安全保障上、必要だ」として再稼働を求めています。残念なことに、これらの話には誤解や矛盾があります。まず、エネルギー安保からみてみましょう。政府は原発が停止し、エネルギーの自給率が5%程度であることを問題にしています。最近、決めた二〇三〇年の電源構成では、純国産エネルギーである再生可能エネルギーを22~24%とし、準国産エネルギーともいわれる原発を20~22%にしました。三〇年には40%程度まで“自給”できるというのです。中谷防衛相が心配した燃料はどうでしょうか。関西電力のホームページには「万が一ウランの輸入がストップしても、原子力発電所に加え、国内の燃料加工工場にあるウランを使えば、約二・四年間原子力発電所の運転を継続できます」と説明があります。
◆世界一危険な原発
 東京電力は先月十九日、新潟県の柏崎刈羽原発にウラン燃料を運び込みました。理由は「燃料メーカーの倉庫がいっぱいになったから」と報道されています。政府は電力にこだわりますが、すでにウラン燃料が国内で余っていることはご存じないようです。次に原発と安全保障の問題を考えてみましょう。その前にクイズを一つ。世界で一番危険な原発はどこでしょう。答えはイランです。理由は、いつ空爆されるか分からないからです。荒唐無稽な話ではありません。イスラエルは一九八一年、イラクにあった完成間近の原発を空爆したことがあります。一方、イスラエルの原発は昨年、パレスチナからロケット弾攻撃を受けました。原発は狙われやすいのです。常に核兵器の開発が疑われるイランですが、自らは「平和利用」と言い続けています。攻撃の口実を与えないためです。直接の攻撃だけではありません。イランでは二〇一〇年、原発などのコンピューター約三万台が「スタックスネット」というウイルスに感染しました。このウイルスはインターネットに接続していないコンピューターにも感染する新種で、米国とイスラエルの共同開発とうわさされています。「科学」四月号によると、ヤツコ元米原子力規制委員会委員長は「アトムズ・フォー・ピース(平和のための原子力)から、今はピース・フォー・アトムズ(原子力のための平和)になった。最大の脅威はサイバーテロだ」と話しているそうです。サイバーテロについては、日本年金機構のお粗末な対応が明らかになったばかりですが、電力会社も意識が高いとは言えません。東電は昨年、経費節減を理由に、危険だと警告されていたウィンドウズXPを使い続けると発表。その後、会計検査院の指摘を受けて、更新計画を前倒ししました。実質国営企業で黒字経営、しかも首都圏の電力供給を担う会社でこれです。東電に対しては福島第一原発事故直後、国際ハッカー集団「アノニマス」がサイバー攻撃を呼び掛けたこともあります。こういう相手には、日米同盟をいくら強化しても抑止力にはなりません。万一、日本が攻撃対象になるような事態が起きたら、国内に原発があるのは、国民の生命や財産にとって明白なリスクです。原発は全基停止を強いられ、一挙に20%もの電源を失うことになります。
◆安保には再生エネ
 二つの安保を重視するなら、原発ではなく、再生可能エネルギーを推進すべきです。コストが問題になりますが、太陽光や風力は原発と同じで、初期投資が大きく、ランニングコストは比較的小さいのです。安全保障のためですから、建設費に防衛費の一部を充てればどうでしょう。反対する国民はあまりいないと考えますが。

<日本国憲法との関係>
*3-1:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html (日本国憲法 要点のみ)
前文
 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
第二章 戦争の放棄
第九条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
02  前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

*3-2:http://www.jiji.com/jc/zc?k=201506/2015060400318&g=pol
(時事ドットコム 2015/6/4) 集団的自衛権行使「違憲」=憲法学者3氏が表明-衆院審査会
 衆院憲法審査会は4日午前、憲法学者3氏を参考人として招き、立憲主義などをテーマに意見聴取と質疑を行った。民主党委員から集団的自衛権の行使容認について見解を問われた3氏全員が「憲法違反だ」と明言した。招かれたのは早大教授の長谷部恭男氏と笹田栄司氏、慶大名誉教授の小林節氏。長谷部氏は、安倍政権が進める安全保障法制整備について「憲法違反だ。従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかないし、法的な安定性を大きく揺るがすものだ」と批判した。小林氏も「憲法9条2項で軍隊と交戦権が与えられていない。仲間の国を助けるために海外に戦争に行くことは憲法9条違反だ」と強調し、9条改正を訴えた。笹田氏は、従来の憲法解釈に関し「ガラス細工で、ぎりぎりのところで保ってきていた」とした上で、集団的自衛権行使については「違憲だ」と述べた。

*3-3:https://www.satsuben.or.jp/info/statement/2015/01.html (札幌弁護士会会長声明 2015年5月3日)集団的自衛権行使等を定めるいわゆる新安保法制に反対する会長声明
 政府・与党は、今通常国会において、集団的自衛権の行使を可能とするために、自衛隊法等を改正するとともに、新法を制定しようとしている(以上を包括して「新安保法制」という。)。新安保法制は、これまで憲法に違反するとして認められていなかった自衛隊の活動を可能とするものである。すなわち、新安保法制は、我が国が攻撃されていない場合にも自衛隊による実力の行使を認め(自衛隊法、武力攻撃事態及び存立危機事態安全確保法)、周辺事態に当たらない場合であっても米軍及び米軍以外の他国軍隊に対する支援を可能とし(重要影響事態安全確保法)、一部の活動については現に戦闘行為が行われている現場での実施も可能にするものである(国際平和支援法等)。そもそも、憲法前文及び第9条は、我が国が先の大戦とそれに先行する侵略と植民地支配によりアジア諸国をはじめ内外に多大な惨禍を与えたことに対する深い反省と教訓に基づき、戦争及び武力行使を放棄し、軍隊を保持せず、交戦権も認めないという徹底した恒久平和主義に立脚している。当会は、昨年7月1日になされた「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」との閣議決定(以下「本閣議決定」という。)について、恒久平和主義を定める憲法前文や第9条及び立憲主義に反するもので違憲無効であるとの会長声明を発し、本閣議決定を前提とする立法の成立阻止に向け取り組むことを表明した。新安保法制は、集団的自衛権の行使を認め、周辺事態以外の事態においても米軍及び米軍以外の他国軍隊の支援を可能にし、自衛隊による戦闘現場での活動などを可能にする点で、まさに本閣議決定を前提とし、その具体化を図るものである。したがって、新安保法制は、これらの点において、本閣議決定と同様、憲法前文や第9条に反し、許されないものである。68回目の憲法記念日に当たって、当会は、社会正義の実現と基本的人権の尊重を使命とする弁護士会として、人権保障の前提である恒久平和主義に抵触する新安保法制の制定に強く反対し、戦後70年を迎えた今、政府・与党が深い反省と教訓に基づき、平和憲法の理念の下に、他国との対話による平和構築に向けた積極的な取り組みをなすことを強く求めるものである。

*3-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015052301001447.html
(東京新聞 2015年5月23日) 緊急事態条項を最優先 憲法改正、自民党方針 
 自民党は憲法改正に関し、他党の賛同が得やすいとみる緊急事態条項、環境権、財政規律条項の中で緊急事態条項を衆院憲法審査会などで最優先に議論する方針を固めた。自民、公明両党内に慎重論がある他の2項目に比べ、合意形成が見込めると判断した。自民党幹部が23日、明らかにした。26日に審議入りする安全保障関連法案をめぐり与野党対立の激化が予想され、審査会での改憲議論は停滞する可能性もある。緊急事態条項は、大災害や他国からの武力攻撃の際、首相の権限を強化することなどが柱。

<国際法>
*4:http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/refer/200901_696/069604.pdf#search='%E9%9B%86%E5%9B%A3%E7%9A%84%E8%87%AA%E8%A1%9B%E6%A8%A9+%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%B3%95'
(松葉 真美) 集団的自衛権の法的性質とその発達
―国際法上の議論―
① 我が国政府は、集団的自衛権(right of collective self-defense)を「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」としている。これまで政府は、日本が集団的自衛権を保有していることを
認めつつ、その行使は日本国憲法第9条により禁じられていると解釈してきた。
② 集団的自衛権は、国際連合憲章第51条に規定された国家の国際法上の権利である。国連憲章は、集団安全保障体制の構築を規定する一方で、個別的又は集団的自衛権の規定を置
いている。集団的自衛権は、国連憲章において初めて認められた権利であるが、国連憲章はその意味については特に規定しておらず、学者や各国の間に一定の共通理解が確立して
いるものの見解は分かれる。
③ 集団的自衛権の制定経緯を振り返ってみると、この権利が、大国の拒否権によって集団安全保障機能が麻痺し、地域的機構の自立性が失われることに対する中小国の危惧から生
み出された権利であることがわかる。集団的自衛権が国連憲章に規定されて以来、これに基づいて数多くの二国間または多国間の集団防衛条約が締結され、集団防衛体制が構築さ
れてきた。
④ 集団的自衛権は、しばしば集団安全保障と混同される。集団安全保障が1つの集団の内部の秩序維持に向けた制度であるのに対し、集団的自衛権は外部の敵による攻撃から自ら
を防衛する権利である。国連憲章下で、集団安全保障と集団的自衛権は、本質的に異なる概念ながら密接な関係を有している。
⑤ 集団的自衛権の法的性質については、⑴他国の権利を防衛するとする正当防衛論、⑵個別的自衛権の共同行使とする自己防衛論、⑶攻撃を受けた他国の安全と独立が自国にとっ
て死活的に重要な場合に防衛行為をとることができるとする議論の3つに分けられる。現在の通説は⑶であるといえるが、攻撃を受けた国と集団的自衛権を行使する国の関係が具
体的に明らかではなく、軍事介入を幅広く認める結果となる恐れがある。
⑥ その点、国際司法裁判所が、1986年のニカラグア事件判決において、集団的自衛権を行使するためには、攻撃を受けた国による攻撃事実の宣言及び他国に対する援助要請が必要
であると判断したことは注目される。
⑦ 実際に集団的自衛権が行使された事例を見てみると、やはりその濫用が疑われてきたことは否めない。そこでは、外部からの武力攻撃の発生の有無と、被攻撃国による援助要請
の正当性が常に論点となってきた。国際秩序の維持のためには、これらを正しく見極めた上での集団的自衛権の行使が必要であり、我が国も集団安全保障体制との整合性を意識し
て今後の議論を進めていくことが望まれる。

<投票率とメディア>
*5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/135854
(佐賀新聞 2014年12月15日) 推定投票率52%、戦後最低に、前回から7ポイント低下
 衆院選の投票率は、共同通信の15日午前1時現在の推計で52・38%となり、戦後最低だった2012年の前回衆院選(小選挙区59・32%、比例代表59・31%)を7ポイント程度下回る見通しだ。期日前投票者数は前回から9・23%増の1315万1966人だったが、14日に投票した有権者が大幅に減った。北日本から西日本の日本海側を中心に大雪が降った影響もあるとみられる。都道府県別の投票率(推定を含む)で最高は島根の59・24%。2位以下は山梨59・18%、山形59・15%が続いた。最低は青森の46・83%で、徳島47・22%、富山47・46%の順だった。


PS(2015.6.9追加):日米安全保障条約は集団的自衛権の行使ではないのか調べたところ、*6-1のように、3条に「締約国は、個別的及び相互に協力して武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる」等が書かれており、まさに個別的自衛権・集団的自衛権双方の行使だった。また、日米安全保障条約には、自国の憲法に従つて共通の危険に対処することも明記されているが、*6-2のように、早急な憲法改正を主張するグループもあるため、平和主義国家の日本を維持するためには、憲法を護るための活動をすることが必要であることを強く認識した。

<日米安全保障条約>
*6-1:http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/jyoyaku.html (外務省)
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
 日本国及びアメリカ合衆国は、両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、また、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的安定及び福祉の条件を助長することを希望し、国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、よつて、次のとおり協定する。
第一条
 締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。
 締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。
第二条
 締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。
第三条
 締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。
第四条
 締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。
第五条
 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
 前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。
第六条
 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。
 前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。
第七条
 この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。
第八条
 この条約は、日本国及びアメリカ合衆国により各自の憲法上の手続に従つて批准されなければならない。この条約は、両国が東京で批准書を交換した日に効力を生ずる。
第九条
 千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約は、この条約の効力発生の時に効力を失う。
第十条
 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。
 もつとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。

 以上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。千九百六十年一月十九日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。
日本国のために
 岸信介
 藤山愛一郎
 石井光次郎
 足立正
 朝海浩一郎
アメリカ合衆国のために
 クリスチャン・A・ハーター
 ダグラス・マックアーサー二世
 J・グレイアム・パースンズ

*6-2:http://www.sankei.com/region/news/150609/rgn1506090009-n1.html
(産経新聞 2015.6.9) 早急な憲法改正を 新潟市で300人集まり結成式
 憲法改正を進める「美しい日本の憲法をつくる新潟県民の会」の結成式が新潟市中央区下大川前通の新潟グランドホテルで開かれた。式には国・県会議員ら約300人が参加。活動方針として、(1)平成28年参院選に合わせた国民投票を目指す(2)県内の賛同者を28年3月末までに12万人集める(3)県市町村議員の賛同署名を総議員の過半数を目指す(4)「国会に憲法改正の早期実現を求める」地方議会議決を目指す-などを決めた。代表委員となった石崎徹衆院議員(自民)は「憲法改正に過半数の賛同を得るには啓蒙(けいもう)・普及活動が大切だ」、塚田一郎参院議員(同)は「現在の北東アジア情勢下で美しい日本を残すには憲法改正しかない」と呼びかけた。式後、杏林大名誉教授の田久保忠衛氏が「憲法改正、最後のチャンスを逃すな!」と題する記念講演を行った。田久保氏は、中国が膨張主義を取る一方、オバマ米大統領は軍事力を使いたくないと考えていると指摘。この状況下では、アメリカと協調しながら、「憲法9条の枠内でできることはやった。憲法を改正して軍の保持を明記しなくてはならない」と訴えた。


PS(2015.6.9追加):*7のように、自民党の村上衆院議員と木村参院議員が自民党内で反対しておられるのは立派であり、他にも同じような考えの人は多いと思われる。私も、「景気回復」「電力自由化」「女性の活躍」などを前面に出して多数を得た政党が、この安保法案で党議拘束をかけるのは、別のテーマで支持されて得た多数の力を使った強引な行為であり、筋が通らないと考える。

*7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015060902000250.html
(東京新聞 2015年6月9日) 自民内部からも異論 憲法学者「違憲」「無視は傲慢」
 自民党総務会で九日、衆院憲法審査会に参考人として出席した憲法学者三人がそろって他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を「憲法違反」と明言したことをめぐり、安全保障関連法案に対してあらためて疑問の声が上がった。谷垣禎一幹事長は、法案採決にあたっては党議拘束をかける意向を示した。総務会では、村上誠一郎衆院議員が「憲法学者の言うことを自民党だけは聞かなくていいという傲慢(ごうまん)な姿勢は改めるべきだ」と指摘。法案採決では党議拘束を外すよう、執行部に求めた。木村義雄参院議員は、砂川事件の最高裁判決を根拠に集団的自衛権の行使を認めるという憲法解釈に対して「短絡的すぎる。そういう主張をしていると傷口を広げるので、これ以上言わない方がいい」と忠告した。一方、谷垣氏は安保法案が国会提出に先立つ事前審査で了承されていることを踏まえ、「党としてばらばらの対応は取れない」と強調した。二階俊博総務会長はその後の記者会見で、党議拘束をかけるかどうかについて、「大きな問題でもあり、国会審議の状況を見ながら方向を定めていきたい」と述べるにとどめた。


PS(2015.6.9追加):*8-1のように、政府・自民党は、「集団的自衛権行使を可能とする安全保障関連法案は、これまでの政府の憲法解釈との論理的整合性や法的安定性を保っており、憲法違反ではない」とする見解を文書で野党に提示したそうだが、日本弁護士連合会は、会長声明で、*8-2のように、「自衛隊が、地理的限定なく、武力の行使、戦争国の支援、停戦処理活動等を行うことの問題点は多岐にわたるが、次に指摘する点は特に重大だ」として、ポイントをついた指摘をしている。

*8-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/195798
(佐賀新聞 2015年6月9日) 政府「合憲」見解を提示、安保関連法案
 政府は9日、集団的自衛権行使を可能とする安全保障関連法案について「これまでの政府の憲法解釈との論理的整合性や法的安定性は保たれている」として、憲法に違反しないとする見解を文書で野党に提示した。4日の衆院憲法審査会で参考人の憲法学者全員が「違憲」と指摘したことに反論した。政府は違憲論争の収束を図り、審議を促進したい意向。だが見解は行使容認へ憲法解釈を変更した昨年7月の閣議決定の論理構成の踏襲にとどまり、野党の理解が得られるか見通せない。政府見解は民主党が要求した。

*8-2:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2015/150514.html (日本弁護士連合会会長 村越進 2015年(平成27年)5月14日)
安全保障法制改定法案に反対する日弁連会長声明
 本日、政府は、自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態法、国連平和維持活動協力法等を改正する平和安全法制整備法案及び新規立法である国際平和支援法案(以下併せて「本法案」という。)を閣議決定した。本法案は、昨年7月1日の閣議決定を受け、また本年4月27日の新たな日米防衛協力のための指針の合意に合わせて、自衛隊が、平時から緊急事態に至るまで、地理的限定なく世界のどこででも、切れ目なく、自らの武力の行使や、戦争を遂行する他国の支援、停戦処理活動等を広汎に行うことを可能とするものである。本法案の問題点は極めて多岐にわたるが、次に指摘する点は特に重大である。まず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされる等の要件を満たす事態を「存立危機事態」と称し、この場合に、世界のどこででも自衛隊が米国及び他国軍隊とともに武力を行使することを可能としている。しかし、これは、憲法第9条に違反して、国際法上の集団的自衛権の行使を容認するものである。次に、我が国の平和と安全に重要な影響を与える「重要影響事態」や、国際社会の平和と安全を脅かす「国際平和共同対処事態」において、現に戦闘行為が行われている現場でなければ、地理的限定なくどこででも、自衛隊が戦争を行っている米国及び他国軍隊に、弾薬の提供等まで含む支援活動を行うことを可能としている。これでは、従前禁止されてきた他国との武力行使の一体化は避けられず、憲法第9条が禁止する海外での武力行使に道を開くものである。さらに、これまでの国連平和維持活動(PKO)のほかに、国連が統括しない有志連合等の「国際連携平和安全活動」にまで業務範囲を拡大し、従来PKOにおいてその危険性故に禁止されてきた安全確保業務や「駆け付け警護」を行うこと、及びそれに伴う任務遂行のための武器使用を認めている。しかし、この武器使用は、自己保存のための限度を超えて、相手の妨害を排除するためのものであり、自衛隊員を殺傷の現場にさらし、さらには戦闘行為から武力の行使に発展する道を開くものである。その危険性は、新たに自衛隊の任務として認められた在外邦人救出等の活動についても同様である。これらに加え、本法案は、武力攻撃に至らない侵害への対処として、新たに他国軍隊の武器等の防護を自衛官の権限として認めている。これは、現場の判断により戦闘行為に発展しかねない危険性を飛躍的に高めるものである。以上のとおり、本法案は、徹底した恒久平和主義を定め、平和的生存権を保障した憲法前文及び第9条に違反し、平和国家としての日本の国の在り方を根底から覆すものである。また、これらの憲法の条項を法律で改変するものとして立憲主義の基本理念に真っ向から反する。さらに、憲法改正手続を踏むことなく憲法の実質的改正をしようとするものとして国民主権の基本原理にも反する。よって、当連合会は、本法案による安全保障法制の改定に強く反対するとともに、基本的人権の擁護を使命とする法律家の団体として、本法案が成立することのないよう、その違憲性を強く訴えるものである。


PS(2015.6.11追加):与党は、*9-1のように、安全保障関連法案の整備理由を「国際情勢の変化」と説明しているが、それは具体的に何か? テロへの対応なら、相手は国でないため、その国の警察が主体となるべきで、それで足りない場合にのみ依頼された国が応援することになる。また、テロと原発を同時に考えれば、危機管理意識の低い日本が戦争に参加して敵を作れば作るほど、国民のリスクは高まる。さらに、ITの進歩による変化では、*9-2のように、インターネットに繋いだパソコンで守秘義務のある情報を扱い、事故が起きてもトップが頭を下げれば水に流すという日本人の甘さが問題なのだ。つまり、技術進歩への対応や危機管理の甘い日本政府とその関係機関が、最も国民の人権や幸福追求の権利を害しているのであり、そういう人権意識の低さを残す“文化”を持つ日本政府の武力行使を安易化するのは非常に危険なことなのである。

*9-1:http://www.sankei.com/politics/news/150517/plt1505170006-n1.html
(産経新聞 2015.5.17) 安保法案 稲田政調会長「必要な法整備」 
 与野党幹部は17日のNHK番組で、自衛隊の役割拡大を図る安全保障関連法案について議論した。自民党の稲田朋美政調会長は、国際情勢の変化に伴う必要な法整備だとした上で、歯止め策も明記されていると強調。一方、民主党の細野豪志政調会長は、自衛隊の安全確保に問題点があると懸念を示した。稲田氏は集団的自衛権について「憲法9条の中で、日本の存立が根底から脅かされている時に行使する。海外でどこへでも行って武力行使できるというのは違う」と指摘。他国軍への後方支援を随時可能とする恒久法「国際平和支援法案」をめぐり、自衛隊が戦闘に巻き込まれるとの批判に対しても「危険だということになれば中止する。自衛隊員の安全確保が規定されている」と述べた。公明党の石井啓一政調会長は「政府は丁寧な説明をしてほしい。今国会成立を期す」とした。

*9-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150609&ng=DGKKZO87851170Z00C15A6EA1000 (日経新聞 2015.6.9) 狙われた年金情報(1)何でこんなに遅いんだ
 6日午後、東京都心のオフィス街にある日本年金機構の年金事務所。明かりを半分だけつけた部屋で、休日出勤の職員が自分の年金情報が漏れていないか、確認に来た人の対応に追われていた。「あまりにずさんだ。インターネットにつないだ端末で個人情報を扱うなんてあり得ない」。怒鳴る男性に職員は「その通りです。申し訳ありません」と頭を下げた。旧社会保険庁時代から約30年働くこの職員はぼやく。「人事交流も少なく、本部のことはよく分からない。でも本部のミスでも謝るのはいつも我々現場の職員だ」。125万件もの個人情報が流出する非常事態にあっても、本部と現場の一体感は見えない。
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 発端は福岡市だった。5月8日、JR博多駅近くにある機構の九州ブロック本部。午前10時半ごろ、公開メールアドレスに1本のメールが届いた。「厚生年金基金制度の見直しについて(試案)に関する意見」。実在する文書と同じ表題に職員は疑いを抱かず、メールの末尾にあったアドレスをクリックした。その直後、首相官邸に近い内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の室内は慌ただしくなった。「厚生労働省が関係するサーバーから異常な量のデータが通信されています」。NISCは同省に「不審通信あり」と通報。ウイルス感染が確認された。機構が解析を依頼したウイルス対策会社は15日に「外部に情報漏洩するタイプではない」と報告。だがその後も攻撃は続いた。18日に東京を中心に大量の不審メールが届き、22日には九州で不審な通信をしているパソコン2台が発覚。NISCは厚労省に2度目の通報をした。それでも機構がネット接続を遮断したのは該当地域だけだった。19日時点で機構は都内の高井戸警察署に捜査を依頼したが、厚労相の塩崎恭久(64)に一報が入ったのは警視庁が情報流出の可能性を指摘した28日になってからだった。「なんでこんなに遅いんだ」。29日昼、個人情報流出の報告を受けた塩崎は周囲にいらだちをぶつけた。「原因究明と再発防止策をしっかりやれ」との号令が国会内の控室にむなしく響く。首相官邸に報告し、NISCから情報セキュリティ緊急支援チームの派遣を受け入れた塩崎は6月1日夕、記者会見を開き、事実を公表した。
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 「警告」は実は4年前から発せられていた。2011年6月、東京都杉並区の日本年金機構本部。有識者でつくる運営評議会で、ネットを通じた個人情報の漏洩対策が議題になった。「(国内外の組織で)最近、外部からの攻撃で個人情報が流出した例が相次いでいる。セキュリティー対策にご尽力いただきたい」。座長で東大教授の岩村正彦(58)らの問題提起に、機構本部の幹部は「考え得るリスクにしっかり対策を取っていく」と応じた。だがこの後、本部が約1万人の職員に厳しく注意喚起した形跡はない。機構を監督する厚労省にも、対策を強化する機会はあった。今年3月18日、政府は12省庁対抗のある競技会を都内で開いた。サイバー攻撃を想定し、情報漏洩の有無や被害端末特定の優劣を競う。厚労省は目標をクリアできなかった6省庁の中でも見劣りし、表彰式で「残念な結果だった役所は猛省してほしい」と官房長官の菅義偉(66)にくぎを刺された。その1カ月半後、今回の問題は起きた。4年前からの警告を素通りし、場当たり的な対応を繰り返した年金機構。政府首脳や自民党の幹部には、持ち主が分からない約5000万件もの年金記録が見つかった07年の第1次安倍政権での悪夢がよぎる。ずさんな実態がさみだれ式に判明。追及を強める民主党に押され、09年の政権交代につながった。「年金機構は旧社会保険庁そのもの。そこを議論しないと根本的な解決にならない」。6月4日、自民党本部で開いた会議で元厚労相の尾辻秀久(74)は力説した。記録問題に直面した当時の首相、安倍晋三が社保庁を「解体」して年金機構をつくったように、今回も怒りをぶつけるような組織論が浮上するのか。塩崎は8日、衆院決算行政監視委員会でこう宣言した。「機構の組織を徹底的に見直す。そのために厚労省の監督も強化する」(敬称略)。
 ◇
 125万件もの個人情報が政府機関から流出した。その舞台裏を探る。


PS(2015年6月12日追加):現在62歳の私は、1992年(39歳)頃から、外国のオフィスと英語でメール会議をしていたので、2005年に唐津でスタッフを雇おうとしたら、パソコンを使えない人が多かったのにはまいった。しかし、ネットを使えるか使えないかという話をしているようでは、*9-2のように、セキュリティーの話にはならず、*10が本当なら日本人ホワイトカラーの生産性が低い理由の一つである。

*10:http://qbiz.jp/article/64351/1/
(西日本新聞 2015年6月12日) 60歳以上、ネット未利用67% 高齢社会白書
 政府は12日午前の閣議で、2015年版「高齢社会白書」を決定した。60歳以上の日常生活に関する調査では、インターネットやスマートフォンなどの情報端末を「全く利用していない」「あまり利用していない」が合わせて67.2%に上り、高齢世代には浸透していない実態が浮き彫りになった。情報端末を「利用したい」と答えた人は60〜64歳が59.2%。70〜74歳は30.4%、80〜84歳は16.2%で、年齢が高くなるにつれて割合が下がる傾向にあった。調査担当者は「現役時代にネットを利用したことのない世代は、なじみがないのではないか」と分析している。


PS(2015年6月14日追加): 警察が行ってよいとされる通信傍受は、これまで組織ぐるみの薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的殺人の4分野に限られていたが、現在の国会で審議中の改正案で、詐欺、傷害、放火、児童ポルノ事件などの9分野を加えるそうだ。しかし、本当にそれしか傍受しないという保証などなく傍受結果も何とでも言えるため、政府に都合の悪い主張をする人を戦前のように変な罪で陥れることが容易になる。そのため、全体の流れとしての戦前回帰に注意が必要だ。

*11:http://qbiz.jp/article/64440/1/ (西日本新聞 2015年6月14日) 通信傍受、当事者への通知は半数どまり 291人中150人「人物特定できぬ」
 2014年に全国の警察が犯罪に関係する電話を傍受したのは291人で、このうち傍受の事実を通知したのは約半数の150人にとどまることが、警察庁への取材で分かった。通信傍受法は捜査機関に対し、犯罪と関係があった場合は傍受した当事者への通知を義務付けている。警察庁によると、通知しなかった理由の9割は「人物が特定できない」だった。通知を義務付けているのは、行き過ぎたプライバシー侵害を防ぐため。当事者は通知によって傍受された事実を知り、裁判所に記録の消去を求める不服申し立てができる。警察庁によると、14年に傍受した事件は薬物7件、銃刀法違反3件で、いずれも携帯電話のやりとりだった。この10事件の今年4月1日時点の通知状況を集計したところ、未通知だった141人のうち、人物が特定できなかったのは129人。特定できたものの所在不明だったのは5人、捜査の妨げになるため通知を延期したのは7人だった。警察庁刑事企画課は「未通知者の大半は、容疑者と電話をしていた相手。他人名義の携帯電話が使われていることもあり、個人の特定が難しい」と説明した。13年以前の通知状況は集計していないという。法務省は通信傍受の件数や容疑の罪名などを毎年国会に報告しているが、通知状況の報告義務はない。通信傍受法が施行された2000年以降、傍受の実績は約8万8千回に上るが、85%は事件と無関係だったことが判明している。犯罪と無関係の場合は当事者に通知されない。通信傍受法は傍受の対象を組織ぐるみの薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的殺人の4分野に限定しているが、国会で審議中の改正案が可決すれば、詐欺、傷害、放火、児童ポルノ事件など9分野が加わる。
▼第三者チェックを
 内田博文九州大名誉教授(刑事法)の話 法改正によって通信傍受の対象犯罪が詐欺などの身近な犯罪に広がれば、市民のプライバシーが侵害される恐れは格段に高まる。通知するかどうかを捜査機関が恣意(しい)的に判断することがないように、第三者がチェックする仕組みを導入すべきだ。

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2015.5.18 オスプレイ配備の目的と財政規律 (2015年5月18日、23日、24日に追加あり)
      
2015.5.13佐賀新聞        横田基地                 普天間基地
                     (基地所在地の目的適合性も考えるべき)

   
   オスプレイ          軍用ヘリ       ドクター・ヘリ     農業用無人ヘリ
     (騒音・振動の低下、安全の徹底、価格の妥当性は、どれもやってもらいたい)

(1)オスプレイの横田基地配備と佐賀空港配備について
 *1-1の米軍オスプレイの横田基地への配備については、そもそも朝鮮半島や中国有事に備えるのならば、発進した時に騒音と墜落のリスクをまき散らして日本を横断しなければならないような大都会の真ん中に空軍基地が存在すべき理由はない。むしろ横田基地(*3参照)を、日本海側の半島か離島、もしくは日本アルプスの高い場所に移動した方が目的適合的だと考える。また、「具体的な訓練空域や運用の説明が米側からない」などというのは、日本の上空を飛行する以上、あり得ない。

 さらに、*1-3のように、佐賀空港への配備が取り沙汰されている自衛隊の新型輸送機オスプレイ17機についても、「海洋進出を図る中国への抑止力を高める」という説明しかなく、それではオスプレイがそのためにどういう役割を果たすのか、それを佐賀空港に配備しなければならない理由は何かという合理的な説明がないため、地元の納得もない中で、勝手に日米間で約束を交わすのは、民主主義の国とは言えない。

 私は、航空機の利用が多くなり空港が手狭になっているため、次世代の航空機は滑走距離を半減するか滑走なしで飛びあがれるようにすべきだと思う。そのため、垂直離着陸でき、固定翼機並みの速度で長距離飛行ができるオスプレイはよいアイデアだとは思うが、*1-3のように、現在のオスプレイは米政府が売却総額を17機で約3600億円と見込んでいるように、機能の割に高価すぎる。その上、*1-4のように、まだ事故が多い。そのため、まず騒音や墜落などのリスクについては文句なしの機体を作った上で、何に使うのか、どこに配備するのか、目的適合的か、価格は妥当かなどの検討をすべきである。

(2)オスプレイの飛行について
 *1-1で、中谷防衛相が「具体的な訓練空域や運用の説明が米側からないため、防衛省幹部が情報収集に努める」としており、*1-2に「低空飛行や夜間訓練をする」と書かれているが、騒音の問題だけでなく、軍用機が住宅地の上空を低空飛行で飛んで何をするのかは重要な問題である。そのため、「米軍から説明がない」とか「情報収集に努める」というような感覚では、日本の防衛相は任せられない。

(3)財政規律とオスプレイの必要性
 *2のように、陸上自衛隊への新型輸送機オスプレイ売却について、米政府の通知文書は「陸上自衛隊の人道支援、災害復旧活動、水陸両用作戦の能力を大幅に強化する」としており、これと尖閣諸島をめぐる中国との緊張の高まりを踏まえた離島防衛態勢強化の関係については明記されていない。

 さらに、本当に尖閣諸島離島防衛の「水陸機動団(離島奪還作戦を担う部隊)」の輸送手段だとすれば、その部隊が長崎県佐世保市におり、輸送手段であるオスプレイの配備先が佐賀空港というのは、あまりにも悠長であるし、国の借金が1千兆円を超す厳しい財政下で、利用価値の低い高額な輸送機を導入する妥当性も問われるべきである。

*1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/186005 (佐賀新聞 2015年5月13日) 夜間、低空訓練も実施 米軍オスプレイ横田配備、正式発表 自衛隊と一体運用へ 
 日米両政府は12日、米空軍が新型輸送機CV22オスプレイ10機を2017年から横田基地(東京都福生市など)に配備すると正式発表した。17年後半に3機、21年までに7機を追加配備する。夜間や、原則として上空150メートル以上の低空飛行訓練も実施される見通し。国内では、米海兵隊が普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)にタイプの違うMV22オスプレイ24機を配備済みで、沖縄以外では初めてとなる。外務、防衛両省は福生市など5市1町と東京都を順次訪れ、配備計画を説明したが、住民らの反発が予想される。福生市の加藤育男市長は「不安を払拭してもらわないと受け入れ難い」と反対の姿勢を示した。国内では、海洋進出を図る中国への抑止力を高めるため、自衛隊も佐賀空港(佐賀市)に17機のオスプレイ配備を計画。日米が一体となって運用を拡大する方針だ。普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古移設への理解を求めるため、沖縄の基地負担軽減をアピールする思惑もありそうだ。岸田文雄外相は記者会見で、オスプレイの横田配備に関し「日米同盟の抑止力向上につながり、アジア太平洋地域の平和に資する。周辺自治体に丁寧に説明し、理解を得たい」と強調した。中谷元・防衛相は、機体の安全性について「十分に確認されている」と述べた。ただ具体的な訓練空域や運用の説明が米側からないため、防衛省幹部は「情報収集に努める」とした。米国防総省は日本時間12日、オスプレイの安全性を強調した上で、横田配備は日本防衛への「不動の決意」を反映したものだと表明した。米空軍は当初、嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)への配備を検討した。だが、日米両政府は普天間飛行場の辺野古移設をにらみ、沖縄の負担増は避けるべきだと判断。横田配備を決めた。
■CV22オスプレイ 主翼両端にあるプロペラの角度を変えることでヘリコプターのような垂直離着陸と、固定翼機並みの速度での長距離飛行ができる。CV22は特殊作戦用のため、主に輸送機として使用する海兵隊仕様のMV22に比べ、夜間や低空飛行など過酷な条件下での運用が多い。防衛省によると、最新の事故率はMV22が10万時間当たり2.12、CV22は7.21と約3倍。日本政府は、CV22の飛行実績がまだ少ないため事故割合が高くなっていると指摘。任務の違いによって装備機器は異なるが、機体構造や基本性能はMV22と同一で、問題はないとの立場だ。
◆「安全」前面に既成事実化
 米政府は、米軍横田基地(東京都福生市など)への配備を正式発表した新型輸送機オスプレイについて「優れた安全性」を前面に打ち出し、オスプレイへの抵抗感が根強い日本での配備と運用の既成事実化を進める狙いだ。米軍関係者は「オスプレイは米軍が通常使用している安全な機材だ。危険だと言っているのは日本ぐらいだ」と日本の世論に不満を隠さない。米政府は今月5日、オスプレイ17機を日本に売却する方針を議会に通知した。東日本大震災での救助活動などが評価され、今年1月の内閣府世論調査で好感度が92%に達した自衛隊が運用を始めれば「オスプレイへの信頼は確実に高まる」(関係筋)と期待を込める。沖縄県の米軍普天間飛行場に配備された海兵隊のオスプレイをめぐっては、米側は沖縄県内の飛行訓練を半減させる安倍政権の目標に協力する意向を示してきた。だが、沖縄県以外の自治体は訓練の受け入れに消極的で、訓練の県外移転は思うように進んでいない。このため首都圏の横田基地周辺でオスプレイが飛行することになれば、日本各地での飛行訓練がしやすくなるとの計算もありそうだ。

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/186008
(佐賀新聞 2015年5月13日) 夜間や低空飛行、住民不安-米オスプレイ、横田配備計画
 米軍はCV22オスプレイの横田基地配備後、低空飛行や夜間の訓練をする方針だ。沖縄に配備されたMV22の低空飛行訓練に想定されているルートは全国に七つあり、CV22でも同様の訓練が行われる可能性もある。直下の自治体や住民からは不安の声が上がった。山形県上山市はルートの一つ「グリーンルート」が通る。地元の観光協会関係者は「オスプレイがどのくらいの大きさで、どの程度の音量で飛ぶのか想像もできない」と困惑。観光への打撃も不安視されるが「訓練によって影響が出るかも全く分からない」と話した。「ブルールート」下に位置する群馬県。以前から米軍機の騒音で住民から苦情が寄せられ、昨年度は731件に上った。県担当者は「オスプレイ配備で飛行が増えればさらに苦情が増える。低空飛行訓練は自粛してほしい」と要望する。岐阜県高山市の田中知博・危機管理室主査は「富山県から山岳地帯を南北に縦断するルートになっており、万一のことがあれば地元住民に加え登山客にも影響する可能性がある」として「訓練は安全を確保した上で行ってもらいたい」と話す。新潟県では村上市の女性会社員(29)が「オスプレイに限らず米軍機が地元を飛ぶ光景は想像したくない。国にとって本当に必要なら我慢するが、納得できる説明を誰もしない」と不満げな様子。同県糸魚川市の自営業の男性(60)も「沖縄の負担軽減と言われれば反対しにくいが、戦争が身近になってきているような気がする」と話した。「オレンジルート」が設定されている高知県の中岡誠二危機管理・防災課長は「南海トラフ巨大地震などの大災害時に負傷者の搬送がより効率的にできるなど、防災の備えにもなるのではないか」とプラス面にも評価しながら「危険のない訓練を」と注文を付けた。

*1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/184321
(佐賀新聞 2015年5月8日) 日本にオスプレイ17機 佐賀県反応
◆「頭越し」市民不信感                
 佐賀空港への配備が計画されている自衛隊の新型輸送機オスプレイ17機に関し、米政府が日本への売却方針を議会に通知したことを受け、佐賀県の山口祥義知事は7日、「それぞれでお考えになること。どういう考えでやっているのかについて申し上げることはない」と報道陣に語った。山口知事は、米政府による日本への売却方針について「(県として)申し上げることはない」とし、「この問題では防衛省に配備計画の全体像と将来像を明確にしてほしいと求めていて返事を待っている。これに尽きる」と従来の姿勢を強調した。佐賀市の御厨安守副市長も、「あくまでも米政府内の手続きの話であり、市としてコメントする立場にない」と述べた。冷静な反応の県や市に比べ、地元住民らは困惑した表情を浮かべた。佐賀空港のある佐賀市川副町の男性(74)は「(4月下旬の)代用機のデモフライトが終わったばかりで、詳しい結果も知らされていないのに…」と首をかしげる。「オスプレイの騒音さえ実感できないでいるのに、売却話なんて時期尚早。政府は、佐賀県や地元を軽視しているんじゃないか」。日米で交わされる「頭越し」のやりとりに不信感を募らせた。
■「いい買い物と思えぬ」基地問題に詳しい植村秀樹流通経済大学教授(安全保障論)の話
 米側は、オスプレイの開発費が高かったので純粋に売りたい。ヘリに比べて割高でも、日本側は新しいものを欲しがる。新型機で機体には改良の余地があり、実際の使い勝手はよくないだろう。必要性を含めて、いい買い物とは思えない。日本側は防衛費を押し上げるような高い買い物をして、もてあますわけにはいかない。関連部品の供与を求めているのは、稼働率まで計算しているのではないか。代替エンジンなどの保管場所は佐賀空港ではなく、整備拠点化の構想がある陸自の木更津駐屯地(千葉県)と考えた方が自然だ。沖縄の民意が示したように、日米政府で決めたことを自治体に通告するだけでは理解は得られない。こうした売却話も検討段階から情報を公開し、決定の主体に国民を加えるべきだ。

*1-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/187815
(佐賀新聞 2015年5月18日) ハワイでオスプレイ着陸失敗、12人が病院搬送
◆米海兵隊の訓練中 
 米ハワイ州オアフ島で海兵隊の新型輸送機MV22オスプレイが17日、着陸に失敗し炎上、隊員12人が病院に搬送された。AP通信が報じた。当時21人が乗っていたとみられ、米テレビは少なくとも2人が重傷と伝えた。事故はオアフ島の基地で発生。カリフォルニア州に拠点を置く海兵隊の遠征隊が訓練中だった。MV22は物資や人員の輸送が主な任務で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)にも配備されている。

<必要性と財政規律>
*2:http://www.shinmai.co.jp/news/20150510/KT150508ETI090009000.php
(信濃毎日新聞 2015年5月10日) オスプレイ 自衛隊に必要な装備か
 陸上自衛隊への新型輸送機オスプレイ導入に向けた動きが日米間で進んでいる。米政府は先ごろ、17機を日本に売却する方針を議会に通知した。必要な装備なのか、疑問が拭えない。配備先に考えている自治体の合意も得ていない段階だ。十分な説明や議論がないまま、既成事実にするわけにはいかない。米政府の通知文書は「陸上自衛隊の人道支援・災害復旧活動や水陸両用作戦の能力を大幅に強化する」としている。安全保障に関する「負担の共有」が進むとの期待感も示した。外国への売却例はなく、このまま決まれば初の輸出先となる可能性が高い。防衛省は、2018年度までの中期防衛力整備計画(中期防)にオスプレイ17機の調達を明記している。沖縄県・尖閣諸島をめぐる中国との緊張の高まりを踏まえた離島防衛の態勢強化の一環に位置付けられる。運用について、長崎県佐世保市に設ける「水陸機動団」の輸送手段とする方針を示している。離島奪還作戦を担う部隊で、米海兵隊のような機能を持つ。米軍では陸海空と並ぶ4軍の一つで、主として敵の支配地域に乗り込む先遣隊の役割を担う。自国の守りに徹する専守防衛を旨とする日本が持つべき部隊、装備なのか。他国に攻め込める装備として周辺に脅威を与えることにならないか。本来、しっかり吟味する必要がある。場合によっては軍拡競争を助長しかねない。オスプレイの配備先は佐賀空港を考えている。昨年7月、地元に計画を提示した。当時の古川康知事が受け入れに前向きだったのに対し、1月に就任した山口祥義知事は「白紙」の姿勢だ。米政府の売却方針に地元では「話が勝手に進んでいる」との声もある。開発段階で事故が相次いだ輸送機だ。安全性について米政府は実証済みとの認識を示すものの、国民の不安は解消していない。住民にとっては騒音や風圧などの不安もある。地元を置き去りにして先を急ぐ事柄ではない。日本政府はオスプレイ本体のほか、エンジンやミサイル警戒システムといった関連装備や部品の供与も求めているという。米政府は売却総額を30億ドル(約3600億円)と見込んでいる。国の借金が1千兆円を超す厳しい財政下、高額な輸送機を導入する妥当性も問わねばならない。

<横田基地について>
*3:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%AA%E7%94%B0%E9%A3%9B%E8%A1%8C%E5%A0%B4 (ウィキペディア 2015.5.13要点のみ抜粋) 横田飛行場
 横田飛行場は、日本の東京都多摩地域中部にある飛行場。アメリカ空軍と航空自衛隊の横田基地(よこたきち、Yokota Air Base)が設置されている。
●概要
 福生市域の衛星写真。右側が横田基地。左側が多摩川。下部左から合流しているのが秋川。在日アメリカ軍司令部及び第5空軍司令部が置かれている、極東におけるアメリカ軍の主要基地であり、極東地域全体の輸送中継ハブ基地(兵站基地)としての機能を有している。また朝鮮戦争における国連軍の後方司令部も置かれている。2012年3月からは、移転再編された航空自衛隊の航空総隊司令部なども常駐するようになり、日米両国の空軍基地となった。拝島駅の北側で東福生駅の東側に位置し、福生市・西多摩郡瑞穂町・武蔵村山市・羽村市・立川市・昭島市(構成面積順)の5市1町にまたがる、沖縄県以外の日本では最大のアメリカ空軍基地であり、事実上、日本の行政権の及ばない治外法権地区である。沖縄県の米軍基地のように民有地がなく、そのほとんどが国有地で占められている。軍用機に混じり、軍人及びその家族の本国帰省用に定期チャーター便(パトリオット・エクスプレス)の民間旅客機が飛来する。また、ユナイテッド航空やデルタ航空などアメリカの航空会社の定期便のダイバートや米本国間米軍チャーター (MAC) などで使用されることがある(通常は発着しないものの、何らかの理由によるチャーター便運行時やダイバート発生時に着陸できる許可を得ているため)。貨物便はエバーグリーンインターナショナル航空など複数の航空会社が乗り入れている。さらに、近年は北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるフランス空軍輸送機(エアバスA340-200型機)の、フランス本国からニューカレドニアなどの海外県への移動の際のテクニカルランディング地として使用されることもある。東京都調べによる2005年5月時点の基地関係者数は、軍人3,600人、軍属700人、家族4,500人、日本人従業員2,200人の、合計約11,000人である。なお、日米地位協定により米軍人、軍属、家族は出入国の手続きを必要としない。このため、アメリカの高位高官が出入国してもそれが日本側に告知されない限り、日本はその事実を知ることができない。
●沿革
 1943年、多摩飛行場(現・横田基地)において陸軍航空審査部により試験中のキ84増加試作機(のちの四式戦「疾風」)。基地南東、立川方。分断されたかつての五日市街道。1940年、帝国陸軍航空部隊の立川陸軍飛行場(立川飛行場)の付属施設として建設された、多摩陸軍飛行場(たまりくぐんひこうじょう、多摩飛行場)が前身。同年4月1日、新鋭戦闘機を筆頭とする各種航空兵器の審査を行う官衙である飛行実験部が立川より多摩に移転、太平洋戦争(大東亜戦争)中の1942年10月15日には、飛行実験部は拡充改編され陸軍航空審査部となり審査業務を行いつつ、末期の本土空襲時には部員と器材を使用し臨時防空飛行部隊(通称・福生飛行隊)を編成し戦果をあげた。敗戦後は1945年9月4日に米軍に接収された。戦中、米軍は偵察機から従来把握していなかった日本軍飛行場の報告を受け、その基地を横田飛行場と名づけたため、また横田基地と呼ばれるようになった。接収後に基地の拡張工事が行われ、1960年頃にはおおむね現在の規模となった。拡張に際しては、北側で国鉄八高線や国道16号の経路が変更され、南側で五日市街道が分断された(この為、この周辺では常時渋滞している)。朝鮮戦争当時はB-29爆撃機の出撃基地として機能し、ベトナム戦争時も補給拠点として積極活用されていた基地である。2012年3月26日に航空自衛隊の航空総隊司令部などが府中基地より移転し、航空自衛隊横田基地の運用が開始された。(基地の沿革についての詳細は、瑞穂町の資料等を参照)


PS(2015年5月18日追加):*4のように、ドローンは、高画質の4K動画やタブレット端末を使った細かいカメラの装備も可能であるため、プライバシーの侵害を防止するための規制が必要だ。何故なら、盗聴器も盗撮機も売りたい放題・買いたい放題では、安全で安心して暮らせる国に程遠いからである。

*4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/187907
(佐賀新聞 2015年5月18日) ドローン操縦安全に 販売店が体験会
■性能や整備、法令解説
 急速に普及する無線操縦の無人航空機「マルチコプター(ドローン)」への理解を深めてもらおうと15日、鳥栖市の都市広場で操縦体験会があった。空撮、測量などの業務使用を検討中の民間業者社員ら約20人が参加し、操作方法と安全に飛ばすためのマナーを学んだ。全世界で6~7割のシェアを誇る大手メーカー「DJI」(本社・中国)の日本支社が主催した。同社の代理店で、国内での販売などを行っている「快適空間FC」(福岡市)の岡田信一氏(45)が性能などを解説。最新鋭機では高画質の4K動画が撮影できるほか、タブレット端末を使った細かいカメラの設定も可能であることを紹介した。安全面では、バッテリー残量など飛行前の整備の重要性や、航空法、電波法など順守すべき法令などを例示。業務使用時の対人、対物の賠償責任保障の保険にも触れ、「操縦には必ずリスクが伴う。何かあっても安全に対応できる場所でのみ飛ばして」と注意を促していた。屋外での操縦体験では、上昇や下降、前後左右への移動、旋回など、基本的な操作を確認。操作しやすさと、画面に映し出される鮮明な映像に参加者からは驚きの声が上がっていた。宮崎県から参加した測量会社社員の男性(39)は「これまで有人飛行機を飛ばして行っていた業務が、マルチコプターを使えばより迅速、安価にできる」と期待を寄せていた。ドローンをめぐっては、4月に首相官邸の屋上で見つかった事件を受け、政府が飛行範囲の規制などを検討している。その一方で、さまざまな業界が利活用に向けた動きを本格化させている。


PS(2015.5.23追加): *5のように、市議会報告会を開いて住民が質問や意見を言うのは、まさに民主主義であるため、いろいろなテーマについて他地域でもやればよいと思う。住民が情報を共有することで、名案が出ることもあるし、どちらかに意志決定した際の対応が主体的かつ整合的になる。なお、私自身は、オスプレイの佐賀空港配備については、安全性の問題のみならず目的適合性も乏しく、佐賀空港の活用は、観光や農水産物・食品輸出など、より産業に役立つ解決策の方がよいと考えている。

   
    *5より          佐賀県産麦          同大豆      佐賀県の田植え

   
         有明海の海苔養殖(養殖海域及び種付けから収穫まで)

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/189782
(佐賀新聞 2015年5月23日) 住民「オスプレイ安全なのか」 米で墜落事故、揺れる川副町
■市議会報告会 住民から疑問の声
 佐賀空港への自衛隊新型輸送機オスプレイ配備計画で揺れる地元の佐賀市川副町で22日、市議会報告会があった。ハワイで米軍機のオスプレイ墜落事故があった直後でもあり、住民からは「オスプレイは安全なのか」「情報がない中で(市議会の)特別委員会は一定の方向性を出すことができるのか」など次々と疑問の声が上がった。市議会特別委の審議報告では、「参考人招致した防衛省担当者の説明は歯切れが悪く、十分な情報がない状況」としつつ、特別委として約3カ月後に一定の見解をまとめる方針を伝えた。住民からは「ハワイで墜落したばかりで、機体は安全なのか」「十分な情報がない中で、特別委は見解を示せるのか」「オスプレイ以外に(陸上自衛隊)目達原ヘリの移駐もある。地元へのメリット、デメリットを教えてほしい」などの質問が出た。市議側は「個人的な考え」と前置きした上で、「特別委は計画を受け入れる、受け入れないという答申をするものにはならないと考えている。両論を入れる形になる可能性もあり得る」と説明した。オスプレイの安全性は、「大前提の部分で、しっかり確認していく」と述べるにとどめた。ノリ漁業者の男性が「この前ハワイで墜落があったばっかりで、海に落ちたらどうなるのか」と語気を強める場面もあった。報告会は4人の市議が説明、住民ら23人が参加した。6月20日までに16カ所で開く。


PS(2015.5.24追加):*6のように、農業にドローンを使うのは、人の多い街中や住宅地ではなく敷地内の飛行であるためよいと思う。また、農業への利用を研究をするのなら、北海道・東北・九州等で放牧している家畜の見張り・誘導、害獣の追い払いなどもできるようにすると、その機械は輸出も可能だ。

   
                    放牧(肉牛、乳牛、羊、豚)
*6:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=33428 (日本農業新聞 2015/5/23)生育調査 農薬散布 農業利用へ 操縦自動化めざす JAXAなど研究着手
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの研究グループが今年度から、無人航空機のマルチコプター(ドローン=ことば)の農業利用に向けた研究に着手する。生育状況の調査や農薬散布などの試験を重ね、それぞれの用途に適した機体を開発。離陸から着陸までの操縦を自動化し、誰でも簡単に使えるシステムにする。精密農業を身近なものにし、省力化や生産性向上につなげる。
●誤差1メートル以内に改善
 農業利用への研究は、JAXAの長谷川克也研究員と九州大学農学研究院の岡安崇史准教授、農研機構・九州沖縄農業研究センターの深見公一郎主任研究員が共同で取り組む。3年間の計画で、文部科学省の科学研究費助成事業に採択された。無人航空機として農業で利用するヘリコプターは、価格が1000万円以上と高い。操縦にも高度な技術と免許が必要になる。これに対し、市販のドローンは数万円程度からあり、比較的簡単に操縦できる。JAXAは5年ほど前からドローン研究に取り組んでおり、強風時でも安定飛行できる機種や積載重量50キロ(一般的な市販機は1~5キロ)の機種などを開発。福島県での放射線測定などにも活用した。こうした実績を踏まえ、農業利用の研究に入る。長谷川研究員は「農作業に応じて求められる性能が異なる。農業用の専用設計が必要であり、JAXAの技術を活用していく」と説明する。基盤となる技術の一つは、JAXAが運用する準天頂衛星。既存の衛星利用測位システム(GPS)では5メートル程度の精度だったものが、1メートル以内になり、精密な作業に対応できる。研究グループは安全性や機能面だけでなく、コストも重視する。モーターやバッテリーなど多くの部品は市販品を活用するため、実験機の部品代は積載重量5キロのもので約5万円、50キロのタイプでも20万円を上回る程度で済む。農作業は、農薬散布や生育状況調査が中心。生育調査には葉色センサーや放射温度計などを利用する。作物は水稲や麦、大豆などを想定。上空から見ることで、生育のばらつきや病虫害の被害も早期に気付き、対処ができる。これまでも人工衛星や航空機による測定はあったが、岡安准教授は「農家が自分たちだけで、安く、必要な時に飛ばせるようになればメリットは大きい」と指摘する。自然災害時の情報収集や物資輸送といった利用も検討する。長谷川研究員は「農村部でさまざまな用途に活用できる。農家をはじめ全ての人が簡単に使えるものを開発したい」と意気込む。
<ことば> ドローン
 3枚以上の複数の回転翼を持つ無人航空機。近年、空中撮影の用途を中心に急速に普及が進んでいる。現行の法規制では、空港の付近や高度250メートル以上の空域以外では、届け出をしなくても飛行できる。

| 外交・防衛::2014.9~ | 11:40 AM | comments (x) | trackback (x) |
2015.5.5 「アジア投資銀行」に関するメディアの論調について
   
  ADBとAIIB     AIIB     2015.3.24NHKより     2015.4.18日経新聞より
   の比較    参加表明国       *1-1               *3-3

(1)最初は、AIIBの不透明性と中国の駆け引きに繋げる論調だった
 *1-1のように、中国が新しい国際金融機関AIIBの構想を発表した時、中国がAIIBの設立を目指す理由を、日本のメディアは、「①中国は自らを含む途上国の国際社会での発言権が拡大しないことに不満を強めている」「②そのため国際的な発言権の拡大と経済成長の後押しが中国の狙い」「③AIIBを通じてアジアでインフラ事業を進めることで中国企業の輸出を後押しし、自国の経済成長を図る狙いがある」とし、「④参加国を増やし、銀行の国際的な地位を高めたい中国は“時限戦術”に出た」「⑤国際金融をリードしてきた欧米や日本とこれに風穴を開けようという中国のAIIBを巡る駆け引きが激しさを増している」という報道ぶりで、中国を蔑みながら悪く言う論調が主流だったが、これは中国に対して失礼だ。

 もちろん尖閣諸島の領有権問題で日本は中国と対立しているが、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という感情論は、敵国を「鬼畜米英」としていた時代から進歩がなく、他国を説得することができないため、日本のためにもならない。

 そのような中、*1-2で、麻生財務相が「(日米が主導する)アジア開発銀行(ADB)の金で開発をやる場合でも日本企業が受注する比率は0.5%ぐらい」「AIIBへの参加・不参加にかかわらず、中国主導になった場合の比率はもっと下がり、AIIB関連の入札で日本企業が受注するのは難しい」と言っているのは、私もそのとおりだと思う。何故なら、日本も自らが主導するADBではできるだけ日本企業にチャンスを与えようとするが、それでもADBが資金協力した工事契約でさえ日本企業の受注割合は2013年で0.21%で中国企業の受注割合は20.9%であり、この差は価格競争で敗れた結果だからである(従って、物価上昇・賃金上昇は、日本企業の輸出競争力を落としていることがわかる)。

 また、*2-1のように、日米は、アジアの発展途上国の経済発展を支援する国際金融機関ADBを主導しており、同じように重要性を感じた場合には、ADBがAIIBと協調融資することができ、「創設メンバー」になっても多くの国が参加している中国中心のAIIBで日本企業に有利な融資をすることなどできるわけがないため、英国、オーストラリア、ドイツが続々とAIIBに参加表明したからといって、「孤立」や「裏切り」などと考える必要はなく、意見が一致する場合は協調融資すればよいと考える。

 なお、*1-3に、「AIIBはいかにして運営ルールの懸念に答えるか、中国の能力不足を疑う声も聞こえてくる」と書かれており、「①AIIB運営で透明性が保たれるか?」「②投資対象となるインフラプロジェクトは、環境保護の面で厳しい融資条件を満たすことが可能か?」「③管理能力を備え、合理的な制度設計や管理体制を実現し、リスク管理の水準を保つことができるのか?」といった点に疑問が集中しているとのことだが、日米が中心となっているADBは①②③を満たしているのか、「Time is money(だから利子がある)」の金融分野で、時間稼ぎや不作為の弁解として“環境影響評価”を使っており、本当に環境を大切にしているのではないのではないかなどを、*4-1、*4-2から、しっかり反省すべきである。

(2)融資の内容について
 (1)でも述べたように、また*2-1のとおり、アジア開発銀行(ADB)とアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、意見の一致する融資については協調融資を行えばよい。これは、日本国内でも、日本政策投資銀行、日本輸出入銀行、国際協力銀行、農林中央金庫、一般金融機関等があり、それぞれ目的に応じた融資を行いつつ、融資に関する意見が一致する場合は協調融資をしているのと同じであり、一行しか存在してはいけないということはないのである。

 また、*2-2のように、政治リスクのある国にも日本からのインフラ投資を拡充するのは必要なことで、その場合は官民一体で行わなければ政治リスクに対応できず、国際協力機構(JICA)とアジア開発銀行(ADB)との協力は、これまでもやってきたことである。そして、中国の現代版シルクロードを構築する「一帯一路」構想も、アジアの魅力を増すのに面白く、その東端は日本なのだ。

 なお、*2-3のように、日本のトップランナーである北九州市は、ベトナムのハイフォン市で環境マスタープランを策定し、「工場の排熱を利用した発電」など3事業については環境省が「国際協力枠」として本年度予算で調査費を計上し、北九州市は設備納入やメンテナンスで地場企業の「インフラ輸出」を期待しているそうだ。

 その経緯は、ベトナム政府が2020年までに二酸化炭素(CO2)の排出量を「2010 年比20%削減」を目指しており、人口約190万人のハイフォン市は環境マスタープラン策定の協力を北九州市に要請し、①セメント工場の排熱を回収して蒸気タービンを回す発電 ②鋳物工場団地で金属を溶かす石炭炉の電炉化 ③世界遺産登録を目指す離島カットバ島での太陽光発電の導入と電気バス20台の運行 など、CO2削減効果が期待される3事業に環境省が調査費として4,500万円を計上することになったことである。そして、このような新しいインフラの敷設事業は、日本の他の都市や民間企業もできそうだ。

(3)欧州諸国が参加表明すると、「バスに乗り遅れる」という論調に変わった
 *1-1、*3-1に、「イギリスの参加表明で世界に衝撃が走った」と記載されているが、その後、同じG7のドイツ、フランス、イタリアが相次いでAIIBへの参加を表明し、さらに金融立国のルクセンブルクやスイスも追随し、日本政府はようやく事態の深刻さに気づいたと書かれている。しかし、「他国が参加したのに、日本が参加しなかったから事態が深刻だ」とするのは、単なる「バスに乗り遅れてはいけない」という論理にすぎず、反省点が的を外れている。

 一方、*3-2に、日米がAIIBを牽制し、日米欧と新興国の20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議で、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)と世界銀行などの既存の国際機関による協調融資が重要との認識で一致したと書かれているが、それでよいだろう。また、*3-3のように、「新興国の発言権を高める国際通貨基金(IMF)改革の実現に米国の批准を強く促す」と明記し、AIIBに新興国の期待が集まる背景には、経済が急伸した新興国の既存の国際機関での発言権が低く据え置かれていることへの不満があるそうで、聞けばもっともなことである。

(4)日本人は「本質は何だから、どうすべきか」という真の議論をしない人が多い
 このように、日本人は、「本質は何だから、どうすべきか」という真の情報に基づいたまともな議論をせずに、感情論や廻りがどうしているかを基準として物事を決めようとする人が多いのが欠点である。それが欠点である理由は、それでは自分の行動や立ち位置を論理的に説明することができず、集団的に意思決定を誤りがちである上、誰も納得させることができないからだ。

*1-1:http://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2015_0324.html
(NHK 2015年3月24日) AIIBを巡る駆け引き
 最近、このことばをニュースで見かける機会が増えたと感じる方も多いと思います。中国が提唱する新しい国際金融機関の構想ですが、この銀行に参加するかしないか、世界の国々の判断が、今注目を集めているのです。とりわけ、これまで一貫して参加に慎重だったヨーロッパの国々の間で”異変”が起きています。中国が目指す銀行設立のねらいと日本をはじめ各国の思惑を、経済部・財務省担当の中山俊之記者と中国総局の井村丈思記者、ロンドン支局の下村直人記者が解説します。
●イギリス参加表明の衝撃
 3月12日、世界に衝撃が走りました。イギリス政府が、G7=先進7か国で初めて、AIIBへの参加を表明したのです。オズボーン財務相は声明で「世界最速の成長市場であるアジア・太平洋地域との結び付きを強める」と強調しました。
●“アジア支援”の大義名分
 イギリスが突然、参加を表明したAIIB。中国が設立を提唱し、アジアの発展途上国のインフラ整備を支援するため、鉄道や高速道路などの投資や融資を行うとされています。アジアは世界経済のけん引役として成長が期待されていますが、各国のインフラ整備の資金が足りないと言われています。2020年までに年間100兆円近い投資の需要があるとの試算もありますが、アジアの開発支援をリードしてきた「ADB=アジア開発銀行」など、既存の機関だけでは、その膨大な資金需要に応えきれていないという指摘が出ています。このため、AIIBが資金を提供すること自体は、既存の国際機関も評価しています。問題は運営の方法です。中国側の説明では、AIIBは本部を北京に置く計画で、12兆円余りの資本金の出資比率は、GDP=国内総生産の大きさに応じて、中国が50%まで出資できるとしています。具体的な銀行の枠組みは今後の交渉次第ですが、設立を提唱する中国が大きな影響力を持つのは間違いありません。
●AIIB主導、中国のねらいは
 中国がAIIBの設立を目指す理由は大きく2つあります。1つは、国際的な発言権の拡大です。中国は今や世界第2の経済大国ですが、アメリカが主導する国際的な金融秩序の下、みずからを含む途上国の国際社会での発言権が思うように拡大しないことに不満を強めています。習近平指導部は、中国の影響力を強めようと、新しい国際的な枠組み作りに力を入れていて、なかでも各国の賛同を得やすいAIIBは重要な枠組みと位置づけられています。もう1つは、経済成長の後押しです。中国はこのところ景気が減速しています。ただ、成長の速度より質を重視する方針を掲げる中国政府としては、巨額の財政出動で景気を刺激する政策をとるのは難しいのが現状です。こうしたなか、AIIBを通じてアジアでのインフラ事業を進めることで、中国企業の輸出を後押しし、自国の経済成長を図るねらいがあるとみられます。
●歓迎する途上国、慎重な先進国
 去年10月、AIIBへの参加を希望する国々の代表が北京に集い、設立に向けた覚書を交わしました。東南アジアや中東などの21か国。南シナ海で中国と島々の領有権を争うフィリピンとベトナムも加わりました。しかし、日本とアメリカは、銀行をどう運営するのか明確になっていないなどとして参加に慎重な立場を表明しました。日本とアメリカが中心となって運営してきたADBとの役割分担がはっきりしない点も懸念されているのです。オーストラリアと韓国も、この時点では参加を見送り。中国が経済力を背景に、領土問題などで外交的な圧力を強めることをおそれた日米が、水面下で働きかけを行ったためとみられています。財務省の幹部は安どの表情を浮かべました。
●中国の一手は
 参加国を増やし、銀行の国際的な地位を高めたい中国は“時限戦術”に出ます。楼継偉財政相は3月6日の会見で「3月31日までに参加表明した国が創立メンバーだ」と発言。銀行の枠組み作りに加わるには、3月中に参加の意志を表す必要があるとして、各国に決断を迫ったのです。
●イギリスはなぜ決断?
 これに反応したのがイギリスでした。そのねらいは中国の通貨・人民元の取り引きの囲い込みだとみられています。国際金融センターである「シティー」を抱えるイギリスは、貿易などで急速に存在感を増す人民元の海外取引の拠点になろうと、中国と金融面の協力を強化してきました。ただ、現実にはドイツやルクセンブルクなどと、その座を激しく争っています。イギリスの金融関係者は「この争奪戦に敗れれば、国際金融センターの地位を失いかねない」と、危機感をあらわにしていました。そこで、いち早く参加を表明することで中国に恩を売り、ライバルに差をつけたいというねらいがあったとみられます。
●雪崩を打つヨーロッパ
 イギリスの決定は、ヨーロッパの流れを一気に変えました。17日には、同じG7のドイツ、フランス、イタリアが相次いでAIIBへの参加を表明したのです。さらに金融立国のルクセンブルクとスイスも追随しました。大手自動車メーカーなどを抱えるドイツとフランス。高級衣料品などの輸出産業が経済の柱となっているイタリア。ともに中国は重要な貿易相手であり、出遅れるわけにはいかない事情がありました。
ヨーロッパの景気低迷が続くなかで、各国の経済成長にとって重要な、いわゆるチャイナマネーを呼び込み、インフラ分野でのアジア市場への参入につなげたいというねらいもあったようです。
この“ドミノ現象”を、ある外交筋は「地理的に中国と離れているヨーロッパは、安全保障上の懸念も薄く、実利を重視した」と分析しました。また、中国にとっても、信用力のあるヨーロッパ各国が加わることで、AIIBが市場から資金を調達する際に高い格付けが得られる可能性が高まったという点で、大きな援軍になったと言えそうです。
●揺らぐ日本
 ヨーロッパの変化に頭を悩ませるのが日本です。AIIBが手がける投資に携われるのは参加国にかぎられるという見方もあり、日本が参加しなければ、日本企業が将来、工事に入札できないなど不利な扱いを受けるおそれもあるからです。24日、麻生副総理兼財務大臣は会見で、日本の参加には慎重な考えを改めて示すと同時に、組織運営の透明性が確保されればADBと協調していくことが望ましいという認識を示しました。これも、日本が置かれた微妙な立場を反映したものといえるかもしれません。それでも、今の支配的な見方は「仮に日本が参加しても、恩恵を受けることは現実的に難しい」というものです。銀行内での発言権を確保するためには一定の出資が必要ですが、国と地方を合わせて1000兆円に達する巨額の債務を抱える今の日本には、財政的な余力がかぎられているからです。日本は今後、アメリカと連携して対応を検討していくことになりますが、財務省の幹部はAIIBを巡る一連の動きについて、悲哀を込めてこう話しました。「第2次世界大戦後の、アメリカを中心とする世界の金融体制の1つの転換点とも言えるものだ。日本の国際的な影響力の低下は明らかだ」
●新銀行に支持は広がるか
 AIIBへの参加を表明した国は、3月23日現在で33か国まで増えました。当面の節目である3月末に向けて、ほかの国々の対応が焦点となります。国際金融をリードしてきた欧米や日本と、これに風穴を開けようという中国。AIIBを巡る駆け引きが激しさを増しています。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASH434QW7H43ULFA01J.html
(朝日新聞 2015年4月4日) アジア投資銀参加見送り「マイナスない」 麻生財務相
 日本が不参加の場合、AIIBが融資する案件の入札で日本企業が不利になるとの見方がある。これに対し、麻生氏は日米が主導するアジア開発銀行(ADB)を引き合いに出し、「ADBの金で開発をやる場合でも、日本企業が受注する比率は0・5%ぐらいだろう」と指摘。「中国資本になった場合、比率はもっと下がる」と語り、AIIBへの参加・不参加にかかわらず、AIIB関連の入札で日本企業が受注するのは難しい、との見方を示した。ADBが資金協力した工事などの契約を日本企業が受注した割合は、2013年で0・21%。一方、中国企業が受注した割合は20・9%で、日本企業が主に価格競争で敗れている。一方、麻生氏は「国際会議の場でAIIBが話題になることはあると思う」とし、5月にドイツで開かれる主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議の場などで協議するとの見通しを示した。

*1-3:http://qbiz.jp/article/60490/1/ 
(西日本新聞 2015年4月17日) AIIB、いかにして懸念に答えるか
 15日、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設メンバーの顔ぶれが最終的に確定した。米国と日本の参加をめぐる論議や分析、動向が世界中から注目されたが、国際世論の注目が徐々に、今後のAIIBの運営ルールにシフトしていることは明らかだ。まさに「準備は整った。後は東風が吹く(最後の重要な条件が整う)のを待つのみ」という状態で、後はメンバー国がいかにAIIBを運営していくかにかかっている。国際世論はAIIBについて、「中国にとって大きな挑戦となる」と見なしている。さらには、中国の能力不足を疑う声も少なからず聞こえてくる。これらの疑問は、「今後のAIIBの運営において、透明性が保たれるのか?」「投資対象となるインフラプロジェクトは、環境保護の面で、厳しい融資条件を満たすことが可能なのか?」「管理能力を備え、合理的な制度設計や管理体制を実現し、リスク管理の水準を保つことができるのか?」といった点に集中している。確かに、中国にとって、AIIBのような多国で構成される国際金融機関を主導するのは今回が初めてだ。初めてのことに挑戦する時には、当然、さまざまな壁にぶつかる。だが中国には「克服できない困難はない」ということわざがある。ピンチはチャンス、成果を得るためには、挑戦を避けては通れない。挑戦は改革を後押しし、各方面がAIIB規約の制定を首尾よく行うことを促す。透明性は、中国がAIIB設立を提唱した当初から、最も多く、最も頻繁に取り上げられた問題のひとつだ。だが、注意深く見てみると、米国と日本が参加を見送った以外は、ほぼ全ての先進国が創設メンバーとなっている。このような多国で構成される国際金融機関が、不透明な状態でいることは難しく、もし不透明ならば、多くの先進国が自ら「自国は不透明」と宣言するようなものだ。また、広く関心が集まったのは環境問題だ。確かに、中国はこれまで「まず汚染、対策は後回し」という遅れた発展プロセスを経てきた。だが、今の中国は持続可能な発展を可能とする理論と実践を備えており、「金山銀山を求め、さらに、青山緑水(セイザンリョクスイ)を求めるのではない。「青山緑水こそが金山銀山だ」の言葉の通り、環境保護に対する理念は、人々の心に深く浸透しており、どのようなインフラ建設プロジェクトも、スタートする際には、厳しい環境保護基準をクリアしなければならない。ましてや、AIIB創設メンバーには、ドイツのような世界トップの環境保護の「達人」が入っており、今後、インフラ建設プロジェクトが環境を汚染する恐れがあるといった悩みが生じる可能性など有り得ない。環境保護を疎かにすることは、中国やドイツはもちろん、全参加国にとって断じて許されないことだ。このような状況から、AIIBの初のインフラ建設プロジェクトが高く注目されることは間違いなく、AIIBの「試金石」と言っても差し支えない。互いに力を合わせれば、必ず良い結果が生まれる。世界はひとつの「地球村」で、誰もが「運命共同体」だ。みんなに関わることは、一緒に相談して対処すれば良い。「大国」とは、地域ひいては世界の平和と発展に対して、大きな責任を担う国家のことで、決して地域や国際社会で「大きなシェア」を占めているという意味ではない。これらのことから、AIIBメンバーが平等な話し合いを通じ、叡智を集結し、知恵を最大限活かし、公正かつ合理的な運営規則を確立することは、間違いないと思われる。規則の制定にあたっては、世界銀行(世銀)、国際通貨基金(IMF)、アジア開発銀行(ADB)、欧州投資銀行(EIB)、米州開発銀行(IDB)など各種国際金融機関の有益な経験と教訓を参考とし、AIIBの投資特色にもとづき、きめ細やかな配慮と力を結集し、正確な位置づけを意図して行われるであろう。AIIBは、既存のADBに取って代わることはできない。ADBや世銀などの国際金融機関と共に歩み、それらに花を添え、互いに補い合い、歩調を合わせて発展し、アジア金融協力体制の構築を推進する役割を担っている。アジア金融体制プラットフォームの構築を探求し、アジアの相互連携・疎通を加速させ、アジアの経済・社会発展を促し、各方面の相互利益とダブルウィン実現を目指す。

*1-4:http://qbiz.jp/article/60013/1/
(西日本新聞 2015年4月10日) AIIB、米が日本の参加疑う 「裏切り」続出で孤立感
 中国が設立を主導している国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)をめぐり、米国が「日本が参加を決めたのでは」と疑い、日本側に不信感を伝達していたことが10日、分かった。日本政府は参加見送りの方針を伝えたが、英国をはじめオーストラリアなど同盟国が続々と参加表明する「裏切り」を目の当たりにし、米国が孤立を懸念していたことが浮き彫りとなった。複数の日米関係筋が明らかにした。日本と米国はアジアの発展途上国の経済発展を支援する国際金融機関、アジア開発銀行(ADB)を主導。ADBはAIIBと協力関係を模索するとみられるが、既存の枠組みに挑戦する中国の動きに対し日米両国は今月26日から予定されている安倍晋三首相の訪米などを通じ、戦略の立て直しを迫られそうだ。米関係筋によると、米側が日本側の意向を確認するきっかけになったのは「数カ月以内に日本がAIIBに参加する可能性がある」と報じた3月31日付の英紙フィナンシャル・タイムズの記事。木寺昌人駐中国大使への取材に基づいた内容としている。同日はAIIBの「創設メンバー」になるための申請期限。報道を受け、米政府関係者は日本側に「記事の内容は事実なのか。日本はAIIBに加入しないはずだったのではないか」と真意を尋ねた。日本側は「記事の内容は誤りだ。特定の期限を念頭に置いていることはない」と説明し、米側は最終的に理解を示した。日本側は以前にも、参加表明を見送る方針を米側に伝えていた。菅義偉官房長官は同日の記者会見で報道は「全く違う」と否定。岸田文雄外相も「木寺大使が日本の参加見通しについて発言した事実はない」と述べた。政府筋は「日米の強固な関係にくさびを打ち込もうとする意図的な報道だ」と批判した。AIIBの参加国は50以上の国・地域となる見通し。

<資金利用について>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150503&ng=DGKKZO86418560T00C15A5MM8000 (日経新聞 2015.5.3) 
アジア開銀、アジア投資銀と協調融資 国際基準の尊重で一致
 アジア開発銀行(ADB)=総合・経済面きょうのことば=の年次総会が2日、アゼルバイジャンの首都バクーで開幕した。中尾武彦総裁は記者会見で、中国主導で創設されるアジアインフラ投資銀行(AIIB)と協調融資を実施する考えを表明した。AIIB側と融資の際に国際基準を尊重することで一致したためだ。ADBの増資についても前向きに検討する考えを示した。中尾総裁はAIIB総裁に就任する見通しの金立群・中国元財政次官と1日に会談した。中尾氏は「社会環境保全などの基準の重要性について意見が一致した」と述べた。ADBは自行と同等の国際基準を満たすことを協調融資の条件と表明しており、AIIB側がこれを受け入れた形だ。アジアでは年間8000億ドル(約96兆円)のインフラ需要が見込まれる。ADBだけ満たすのは難しいため、中尾総裁はAIIBとの協調融資に「様々な相乗効果が期待できる」と語った。ADBは2日、自己資本と低所得国向け基金を2017年に統合し、融資枠を1.5倍の200億ドルに拡大することで正式に合意した。総裁は「近い将来の増資や出資比率の見直しについても引き続き検討する」と述べた。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/183267
(佐賀新聞 2015年5月3日) 日本のアジア向け投資拡充、麻生氏表明、官民一体で
 麻生太郎財務相は3日、アゼルバイジャンの首都バクーで開かれたアジア開発銀行(ADB)のセミナーで演説し、日本からアジア向けのインフラ投資を官民一体で拡充する方針を表明した。国際協力機構(JICA)とADBとの協力枠組みを創設し、人材、資金面などで一段と貢献するとした。一方、中国の楼継偉財政相もセミナーで、現代版シルクロード経済圏を構築する「一帯一路」構想への参加を各国に呼び掛けており、アジアでの日中の主導権争いが本格化してきた。アジアの開発支援をめぐっては、中国がアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立作業を本格化させている。

*2-3:http://qbiz.jp/article/61301/1/
(西日本新聞 2015年4月30日) 越・ハイフォン市依頼の環境総合計画、全容判明 北九州市策定
 北九州市が、ベトナム第3の都市・ハイフォン市の依頼で策定した環境マスタープラン(総合計画)の内容が分かった。大気汚染の自動観測など15事業から成り、このうち「工場の排熱を利用した発電」など3事業について、環境省が「国際協力枠」として本年度予算で調査費を計上する方針だ。北九州市は同プランに関連し、設備納入やメンテナンスで地場企業の「インフラ輸出」を期待する。ベトナム政府は2020年までに二酸化炭素(CO2)の排出を「10年比で20%削減」を目指している。人口約190万人のハイフォン市は政府方針を踏まえ、環境マスタープラン策定のため、浄水場の技術支援などで関係が深い姉妹都市の北九州市に協力を要請、市が昨年4月から着手していた。プランは交通▽上下水・雨水排水▽環境保全▽(生ごみ堆肥化による有機野菜栽培など)グリーン生産−など7分野15事業で構成。このうち(1)セメント工場の排熱を回収し蒸気タービンを回す発電(2)鋳物工場団地で金属を溶かす石炭炉の電炉化(3)世界遺産登録を目指す離島・カットバ島での太陽光発電の導入と電気バス20台の運行など、CO2削減が期待できる3事業に環境省が調査費として4500万円を計上する見通し。北九州市によると、現地企業は省エネによる生産コスト削減につながるため「導入に前向き」という。市は高温・高圧用バルブやリチウムイオン電池の性能検査機、バス運行システム開発といった関連製品の納入や技術指導などで地場企業の受注を見込んでいる。マスタープランは、北橋健治市長が5月8〜12日の日程でハイフォン市を訪ねて説明する予定。

<ヨーロッパ諸国の参加>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/ASH4B3SV5H4BULFA00V.html?_requesturl=articles%2FASH4B3SV5H4BULFA00V.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASH4B3SV5H4BULFA00V (朝日新聞 2015年4月12日) ドイツ参加、官邸に衝撃 アジア投資銀ショックを検証
 3月17日朝、首相官邸に衝撃が走った。英紙フィナンシャル・タイムズ電子版が、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)にドイツ、フランス、イタリアが参加を決めた、と伝えていた。正午過ぎ、慌ただしく官邸に駆けつけた財務、外務両省の幹部は、首相の安倍晋三に「これはアプローチだけの違いです」と説明した。官邸には、両省から当初、「主要7カ国(G7)から参加はない」との情報が伝えられていた。G7では、英国が12日に参加を表明していた。だが、5月の総選挙を控え、経済的メリットを打ち出したい英政府の特殊事情と分析し、危機感は乏しかった。欧州連合(EU)のリーダーであるドイツの参加で、日本政府はようやく事態の深刻さに気づいた。G7各国は、AIIBの組織の運営方法や融資基準の不透明さに対して懸念している。英独仏伊がAIIBの内部から中国に疑問をぶつけるならば、日米は外からただせばよい――。財務省幹部らのそうした説明に安倍は理解を示しながらも、ドイツの参加が腑(ふ)に落ちない様子だった。その8日前の3月9日、安倍はドイツ首相のメルケルと会談した。夕食会を含め5時間余りを一緒に過ごした。「AIIBは一緒に条件をきちんと見ていきましょう」。政権幹部によると、2人はそう確認し合ったという。メルケルは参加の意向は示さなかった。「まずかった。官邸に早めにチームを作っておけば、メルケルに伝えるメッセージも違っただろう」(官邸幹部)。政府の甘い見通しによる楽観的な想定は、音を立てて崩れていった。
     ◇
 約50の国・地域が参加を表明したAIIB。中国が提唱する新たな金融の枠組みによって、米国が築いてきた戦後の国際的な秩序が揺さぶられている。米国とともに表明を見送った日本政府の対応を検証する。
     ◇
■不参加ありき、G7の「雪崩」読み切れず
 日本政府が事態の重大さに気づくのは遅かった。「英国が西側主要国で初めてAIIBの創設メンバーになることを発表できて喜ばしい」。北京で開会中の中国の全国人民代表大会(全人代)に花を添えるように、英財務相のオズボーンは3月12日、英語と中国語の声明を発表した。日本政府が英国から連絡を受けたのはその直前だった。官邸幹部は「えっと思った。あれでG7の共同歩調が乱れた」と振り返る。だが、それでも政府全体で参加の是非を検討する動きはなかった。その後の「雪崩」につながる大きなうねりをつかみきれていなかった。なぜ読み間違えたのか。「我々はあくまでも、AIIBの中に入らないつもりで来た」。財務省幹部は初めから「不参加ありき」だったことを明かす。関係者によると、2013年10月にAIIB構想をぶち上げた中国政府が、日本に参加の働きかけを始めたのは昨年初めだった。ただ、歴代総裁をアジア開発銀行(ADB)に送り込んできた財務省は、中国主導のAIIBは戦後の国際金融秩序への「挑戦」と受け止めた。昨夏に来日した中国財務省の国際局長に対しても、AIIBの組織や融資基準が不透明だとして「これでは参加できない」とつっぱねた。米国の存在も大きい。中国の影響力増大を警戒するオバマ米政権は慎重姿勢で、米議会も出資を認める可能性は低い。日本に直接、不参加を求めることはなかったが、「お互いがどういう問題意識を持っているか当然共有しているし、認識は一致している」(外務省幹部)。対米関係を重視する外務省も「不参加」で財務省と足並みをそろえていた。そうした前提のもと、情勢分析が甘かったことは否めない。17日の「ドイツ・ショック」を境に、両省への不信感が噴出し、官邸主導色が一気に強まる。財務省は急きょ、参加の利点や懸念をまとめた表をつくって官邸に説明するなど対応に追われた。「完全に政治の話になった」。財務省幹部はつぶやいた。
■中国、日本の懸念に「一切答えず」
 官邸主導になっても、打てる手は限られていた。「理事会が案件の審査をするのか」「環境や社会への配慮は確保されるのか」――。政府はこうした懸念への回答を中国に求めてきたが、「答えをいただいていない」(財務相の麻生太郎)まま時が過ぎた。3月24日にオーストラリア、26日には韓国。アジアにおける米国の同盟国の参加報道も続いた。しかも、正式発表に際して、韓国は「中国が前向きな意思を表明した」、オーストラリアも「運営、透明性で良い進展があった」とそれぞれ説明。日本は「中国は日本の問い合わせには一切、答えていない。日本だけ排除しようという意図が明確だ」(経済閣僚)と疑いを募らせた。政府は「米の意向を無視して日本単独の判断はあり得ない」(経済閣僚)と対米協調路線に一段と傾くことになる。オバマ政権が土壇場で方針を変えても、対中強硬派が多い米議会が承認しないとの判断が支えだった。それでも疑念がなかったわけではない。「米国はぽきっと折れることがある」(財務省幹部)、「米国が入れば日本も入る」(官邸幹部)との声が漏れていた。北京で30日にあった米財務長官のルーと中国首相の李克強(リーコーチアン)との会談の行方を不安げに見守った。そして迎えた創設メンバーの参加期限の31日。午後2時すぎから官邸で、安倍晋三は財務、外務両省の幹部とふたたび向き合った。「中国から答えは返ってきていません」との報告に耳を傾けていた安倍は答えた。「慌てることはない」。ただ、安倍は一方で、同じ日、自民党外交部会長の秋葉賢也らに「大いに活発に議論してほしい」と党に指示した。アジアでAIIBに参加表明していないのは、北朝鮮、アフガニスタン、ブータンなどわずかにとどまる。参加国が設立協定に署名する6月末を見据え、参加も含めた政治判断ができるようにしておくため、とみられている。(敬称略)
     ◇
■日米抜きで主導 中国、見せつけた影響力
 AIIBに参加するかしないかで、どんな利益、損失があるのかは、いまだ不透明だ。参加すれば、AIIBが融資するインフラ事業の入札で、自国企業に有利に働く期待があり、政府内にも「早く入った方がよい」との声もある。ただ、運営ルールはまだ決まっていない。日本企業が13年にADB関連事業で受注した割合はわずか0・21%で、参加で有利になるとも言い切れない。不参加だと日本企業が中国国内のビジネスで不利に扱われかねないとの懸念もあるが、根拠があるわけではない。政府は参加する場合に払う出資金額を最大30億ドル(約3600億円)と試算する。財務省は「巨額の財政負担とメリットが見合わない」(幹部)と慎重だ。ただ、中国主導の枠組みに約50の国や地域が賛同し、日米抜きで話が進んだという事実は、AIIBの成否を超えた衝撃がある。中国は新たな経済秩序づくりで影響力を見せつけた。AIIBは、中国が掲げる陸路と海路のインフラ整備を通じて欧州と結ぶ「一帯一路(二つのシルクロード経済圏)」構想の中核だ。日本政府はAIIBの「中国による独自の影響力拡大のための恣意(しい)的な利用」を懸念するが、インフラ資金の不足に苦しむ途上国は歓迎した。商機を期待する欧州諸国も、中国と地理的に離れていて安全保障上の脅威にならないうえ、出資金もアジアの日本よりも少ないため、相次いで参加を表明した。アジア太平洋に軸足を移すリバランス(再均衡)政策を掲げてきたオバマ米政権は、指導力や求心力の衰えを内外に印象づけた。カーター米国防長官が8日、日米主導の環太平洋経済連携協定(TPP)が戦略的に「空母と同じくらい重要だ」と語った言葉には、失地回復への焦りもにじむ。「AIIBの失態で、米国はTPPを形にしたい思いが強くなっているはずだ」と日本の経済閣僚は言う。日本も、新しい現実を踏まえた外交戦略の練り直しを迫られている。
     ◇
 〈アジアインフラ投資銀行(AIIB)〉 中国が提唱し、途上国で道路や鉄道などのインフラ整備の資金を貸し出す銀行。年内の設立を目指し、50以上の国・地域が参加を表明した。法定資本金は1千億ドル(約12兆円)。出資比率などは6月末までに決める。中国が過大な発言権を持つことへの懸念などから、日米は参加に慎重な姿勢をとる。

*3-2:http://qbiz.jp/article/60531/1/
(西日本新聞 2015年4月18日) 日米がAIIBけん制、G20  「既存機関と協調融資を」
 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が16日午後(日本時間17日午前)、米ワシントンで開幕した。開幕に先立ち麻生太郎財務相はルー米財務長官と会談し、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)と世界銀行など既存の国際機関による協調融資が重要との認識で一致した。G20は17日午後(同18日未明)に共同声明を採択して閉幕する。G20は、世界経済の成長力強化に向け、民間資金を活用して道路や鉄道などのインフラ投資を拡大することが重要との認識で一致。9月までに各国が投資戦略を取りまとめ、議長国トルコの南部アンタルヤで11月に開かれるG20首脳会合に提出する。創設メンバーが57カ国に上るAIIBには投資拡大への貢献で期待が高まっている。日米の両財務相は中国の恣意的な運営をけん制するため、協調融資を通じてAIIBに融資や組織運営などの面で国際基準を守らせる狙いとみられる。日米欧の先進7カ国(G7)の財務相らも非公式会合を開催。AIIBへの対応を協議したもようだ。日米はAIIBへの参加を見送り、ドイツなどは創設メンバーに加わって対応が分かれたが、透明性のある組織運営が必要との認識では一致している。G20は、日本と欧州の経済の改善を歓迎したが、一部の新興国に景気減速懸念があるため、財政政策や金融政策で景気を下支えすることが必要であることを確認。米国が年内に予定する利上げで金融市場が混乱する可能性があることから、影響を最小限に抑えるため市場動向を注意深く観察し、各国で情報共有を進めることでも一致した。

*3-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150418&ng=DGKKZO85860950Y5A410C1MM0000 (日経新聞 2015.4.18) G20、米にIMF改革批准促す、共同声明、新興国の発言権に配慮 主要国経済の回復を歓迎
 日米欧と新興国の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は17日午後(日本時間18日未明)、主要国経済の回復を歓迎する共同声明を採択して閉幕した。新興国の発言権を高める国際通貨基金(IMF)改革の実現へ、米国の批准を「強く促す」と明記。焦点となっていた中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)はG20会議そのものでは大きく扱わなかった。中国が年内発足を目指すAIIBは英独仏の欧州勢を含む57カ国が創設メンバーで、日米は参加を見送っている。インフラなどへの投資を扱った17日のG20会議では、中国がAIIBの計画を紹介し話題には上った。ただ、本格的なやり取りには至らず、共同声明でAIIBには直接言及しなかった。AIIBに新興国の期待が集まる背景に、経済が急伸した新興国の既存の国際機関での発言権が低く据え置かれていることへの不満がある。中国など新興国のIMFへの出資比率を引き上げる2010年の改革案について、共同声明は「引き続き、米国に対し可能な限り早期に批准することを強く促す」と明記。改革の遅れが改めて関心を集める中で、拒否権をもつ米国の行動を求めた。共同声明は主要国経済の回復を歓迎し「特にユーロ圏と日本で最近改善している」と言及した。新興国は国によってばらつきがあると指摘。石油価格下落の影響は「全体としてプラスと見込まれる」とした。米利上げが近づいているとの予測を念頭に、金融政策の「負の波及効果を最小にするため、明確にコミュニケーションが行われるべきだ」と盛り込んだ。

<開発途上国の意見>
*4-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM17H1U_X10C15A4EAF000/
(日経新聞 2015/4/17) アジア投資銀を歓迎 発展途上国の財務相らが声明
 アジアやアフリカ、南米などの比較的経済力が高い発展途上国(G24)は16日、米ワシントンで財務相らの会議を開き、経済成長にはインフラ投資が極めて重要で、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を歓迎するとの声明を採択した。G24のメンバーには中国のほか、AIIBに参加するインドやフィリピン、エジプトが含まれている。声明では「インフラを含めた長期投資には効果的な手法と革新的な機関が必要だ」と指摘した。このほか、世界銀行グループの国際開発協会(IDA)や国際通貨基金(IMF)に対し、最貧国への柔軟な融資を求めた。

*4-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM22H6C_S5A420C1FF2000/
(日経新聞 2015/4/23) インドネシア、「大国」誇示 バンドン会議主宰
 22日に開幕したアジア・アフリカ会議(バンドン会議)記念首脳会議を主宰するインドネシアのジョコ大統領が、勢ぞろいした新興諸国を前に「大国」としての威信誇示に力を注いでいる。国連や世界銀行など欧米主導の既存体制を批判し、新興勢力による新しい秩序の構築を主張。首脳会談の合間を縫った2国間会談でも、影響力を見せつけようと躍起だ。「アジア・アフリカ諸国は国連に改革を迫らなければならない」。ジョコ大統領が開会の演説でこう述べると、会場から拍手が起こった。パレスチナ自治政府による国家樹立の苦闘などに触れ「世界は不正義にあふれ強国とのギャップはなお大きい」と語気を強めた。ジョコ氏はまた「3億人の富める人々の陰で12億人が飢えている」とし、貧困や開発の問題を提起。「世界銀行や国際通貨基金(IMF)、アジア開発銀行(ADB)で解決できるという考え方は時代遅れで捨て去るべきだ」と切って捨てた。「新興国の盟主」を意識して振る舞うジョコ氏。昨年10月の就任後、アジア太平洋経済協力会議(APEC)や東アジア首脳会議、20カ国・地域(G20)首脳会議など国際会議に出席してきたが、居並ぶ先進国や中国、インドなどの間で埋没感は否めなかった。今回は大きな国際会議で初のホスト役を務めると同時に、参加約100カ国の大半はインドネシアが主導的な立場を示しやすい後発新興国だ。1955年のバンドン会議は当時のスカルノ大統領や中国の周恩来首相、インドのネール首相ら、新興独立国の「雄」が集まって結束を呼び掛けた。今回はインドのモディ首相、南アフリカのズマ大統領らが欠席し、インドネシアの存在感は際立つ。国内の財政改革やインフラ整備など内向きな政策ばかり注目されてきたジョコ氏が、外交でも指導力を発揮できることを内外に見せつける絶好の機会だった。こうした好機を生かし、ジョコ氏は首脳会議の合間を縫って2国間会談も積極的にこなした。安倍晋三首相との会談では、インドネシアと日本が人材や技術、資金面で連携するかたちでアジア・アフリカ開発に取り組むことで合意。母子保健や農業、理数科などの教育、産業人材育成の4分野を指定した。中国が強硬姿勢をみせる南シナ海問題でも責任を果たしていくことを確認した。約1時間後には中国の習近平国家主席とも会談した。インドネシアは中国が主導して設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加するだけでなく、本部の誘致も狙ってきた。会談では日本が事業化調査で先行しているジャカルタが起点の高速鉄道計画について、中国とも「具体的な協議をした」(政府筋)という。同計画は安倍首相も同日の会談で売り込んでいた。日本をてんびんにかけつつ「新たなグローバル経済の秩序」(ジョコ氏)づくりで意見交換したものとみられる。一方、アジア・アフリカ諸国に対しては、工業製品の輸出拡大などを呼びかけた。ジョコ氏は21日、カンボジアのフン・セン首相と会談し、インドネシア製の兵器や輸送機を熱心に売り込んだ。ジョコ大統領は「我が国の人口はイスラム教徒数で世界最多、民主主義国としても世界3位であり、グローバルな役割を演じる用意がある」とも強調した。中東ヨルダンのアブドラ国王とも会談し、世界のイスラム教徒の連帯で歩調を合わせることで一致した。

| 外交・防衛::2014.9~ | 04:01 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.9.28 イスラム教とイスラム圏、「イスラム国」について (2014.10.2に追加あり)
  
                現代のイスラム女性の服装
(1)イスラム教と現代文化の親和性について
 *1-1のように、オバマ米大統領が、ニューヨークの国連総会で中東の過激派「イスラム国」の打倒に向けた国際的な有志連合に加わるよう各国に求めたそうだ。私は、イスラム教徒が世界のあちこちで過激化する理由やシリア空爆と過激派「イスラム国」打倒の関係については、わからない点が多いため、常々、説明してもらいたいと思っていた。

 しかし、*1-2のように、米軍の軍事作戦には、サウジアラビア、ヨルダン、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、カタールなどのイスラム諸国も参加しており、「イスラム国」の本拠地、ラッカやハサカ、デリゾール、アブカマル、アレッポの司令部施設、訓練施設、武装車両、補給トラックなどを対象に空爆したそうだ。また、「欧米への差し迫ったテロ計画があった」として、米軍は国際テロ組織アルカイダ系グループ「ホラサン」の施設も空爆し、シリア政府にも空爆方針を直接伝えて、アサド政権に敵対行為を取らないよう警告していたそうである。

 アルカイダや「イスラム国」過激派の行動には、時代錯誤ではないかと思われる論理が多いため、調べてみたところ、*1-3のように、イスラム教は、中国には「隋」があり、日本では小野妹子が遣隋使として隋へ派遣された607年と同時期の610年にマホメットがアラーの神から啓示を受けて始まった。そして、イスラム教の内容は、①唯一神アラーの前で人は平等 ②女性は肌を見せてはならない ③豚を食べてはいけない ④男性は妻を4人まで持つことが出来るが、平等に愛することが条件 ⑤弱者には無条件で手をさしのべる などが基本で、時代の変化に沿って変化していない部分が多いのである。

 今回、「イスラム国」に入った若者には、欧米に移住したイスラム圏の人の子どもも多いそうだ。彼らは、欧米に住み欧米の高等教育を受けたが、欧米文化とイスラム教文化の間で違和感を感じ、就職も閉ざされて行き場がなく、アイデンティティーを求めて「イスラム国」に入っているように見える。しかし、それでは、貧しい国から移民を受け入れた欧米諸国が危険に晒されることになり不公正である。例えば、日本では、どんなに人手が足りなくても、女性が学校や職場にいる時でさえ必ずスカーフやヒジャブを身につけ、中世のように何をするかわからない恐ろしいイスラム教徒だけは願い下げということになるのだ。

(2)イスラム教のハラールと現代の公衆衛生について
 日本からイスラム教国に食品を輸出しようとする場合、イスラム教の戒律にのっとったハラール認証の取得が必要だが、これはイスラム教徒以外の人が現在の公衆衛生学の視点から見れば、不合理な点が多い。何故なら、現在は、紀元600~700年頃には想定されなかった科学的知見や技術がふんだんに使われており、当時は予想だにされなかった汚染もあるからである。

 もちろん、*2-1のように、ハラールの市場開拓の支援にハラールの専門家を使う方法もあるが、それでは本当に必要な規制が行われず、意味のない規制が続けられて、イスラム教徒自身が不幸である。そのため、イスラム教も、現在の公衆衛生学に基づいて世界標準に近い食品衛生規制への改革をした方が良いと考える。それには、*2-2のような公衆衛生に関するハラールの取り決めを、できるだけ世界基準に合わせる方法があるだろう。

(3)イスラム教における女性の地位と世界基準(女子差別撤廃条約)における女性の地位について
 *3-1に書かれているように、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」がイラク人の著名な人権活動家で女性弁護士のサミラ・ヌアイミさんを拘束して拷問した後、公開で殺害したそうだ。これは酷すぎて理解しかねるが、日本も太平洋戦争に負けて日本国憲法が施行されるまでは、女性の権利はかなり制限されたものだったし、男女とも人権侵害されることは多かった。

 また、*3-3には、イスラム国であるスーダンの女子割礼の解説があるが、女子割礼は、女性が力を持ってはならない男性優位の世界で行われているもので、女子割礼を行う理由は、宗教や習慣という理由だけではなく、女子割礼によって女性の性欲をなくして、ほかの男に走らないようにしようとしているのだそうである。

 しかし、*3-2に書かれているように、世界では「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)」が締結されており、その女子差別撤廃条約は、1979年12月18日に第34回国連総会で採択され、女性に対するあらゆる差別を撤廃し、固定的な性別役割分業を打破することを目的とする女性の人権に関する包括的な条約で、国連に加盟する殆どの国が批准しているのだ。

 それにもかかわらず、実際には、国際人権基準は「留保」という手段で差別の撤廃が形骸化・無力化され、イスラムの女性は、国際人権基準(特に女子差別撤廃条約)に照らして、その地位の低さが問題となる。例えば、イスラム教の聖典コーランでは、「女性は男性より劣位にあって保護されるべき存在」として家族の中で低い地位が与えられ、「弱い女性を保護する」という名目で一夫多妻制が維持されている。また、女性は男性を誘惑するものとされ、その害悪を予防するためにヴェールやブルカなど種々の習慣ができたのだそうで、そのほか、一夫多妻制、結婚と離婚、子の親権、後見、女性に対する暴力(夫による暴力、姦通罪に対する刑罰、名誉の殺人、女子割礼)など、世界基準から見れば驚くほどの状況である。

 もともとイスラム教が一夫多妻を許している理由は、中世の戦争下で寡婦となった多くの女性の経済的扶助目的と社会的再生産目的があったからだとされているが、それは、現在の世界では通用しない。つまり、イスラム教国も信仰の自由を保障し、イスラム教自体も改革を行わなければ、欧米文化とイスラム教文化の間で違和感を感じて就職が閉ざされ、行き場がなくなって過激なイスラム教徒になる若者が出るという悪循環は止まらないと考える。また、人手が欲しい国があっても、イスラム教徒だけは御免だということになるだろう。

*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11367885.html
(朝日新聞 2014年9月25日) 米、「イスラム国」打倒訴え 国連でオバマ氏 各国に連携促す
 オバマ米大統領は24日、ニューヨークで開催中の国連総会で演説し、中東の過激派「イスラム国」の打倒に向けた国際的な有志連合に加わるよう各国に求めた。米国が「自衛権」を根拠にシリアで開始した軍事行動への支持や、イラク政府への支援を各国に呼びかけた。
■シリア空爆、自衛権を主張
 オバマ氏は「『イスラム国』は最終的には打倒されなければならない」と表明し、「米国は幅広い有志連合と共に、死のネットワークの廃棄に取り組む」と軍事行動を続ける決意を示した。「米国は単独では行動しない」と述べ、「すでに40カ国以上がこの連合に加わる意向を示した。この取り組みに参加することを世界に求める」と呼びかけた。オバマ氏の国連演説に先立ち、米国のパワー国連大使は23日、「イスラム国」への空爆をシリア領内で実施したことについて、「国連憲章51条に基づく自衛権行使」だとする文書を国連の潘基文(パンギムン)事務総長に提出した。米国はイラク在住の自国民保護などを理由にイラク空爆を続けてきたが、今回、新たな法的根拠を示し、シリア空爆の正当化を図った形だ。文書によると、「イスラム国」の攻撃にさらされているイラクから空爆を主導するよう要請を受けたとして、他国が攻撃された場合に反撃する「集団的自衛権」を行使したとしている。さらに、米国人記者2人が「イスラム国」に殺されたことや、シリアにいるアルカイダ系武装組織「ホラサン・グループ」の米国などへのテロ計画が最終段階に入っていたとの情報を踏まえ、米国は自国民を守る「個別的な自衛権」を行使したと主張している。シリア領内での軍事作戦には、隣接するトルコのエルドアン大統領が23日、「軍事行動に必要な支援を提供する」と表明。英国も軍事支援を検討するなど国際社会で空爆への支持や容認の空気が広がっている。背景には、「イスラム国」が国際社会全体の脅威であるとの認識が強まっている事情がある。中国やロシアも、自国の反政府勢力の一部が海外のイスラム過激派組織と合流したり、「イスラム国」と関係を持つ過激派が自国内でテロに関与したりする事態への危機感を強める。米国が各国への根回しを進めるなか、当事者のシリアのアサド大統領が「テロと戦う国際社会の努力を支持する」と事実上容認する考えを示したことで、反対論は急速にしぼんだ。だが、温度差もある。フランスはシリアからは支援要請を受けていないことを問題視し、シリアには軍事介入しない姿勢を鮮明にしている。ロシアやイランも「シリア政府の同意か国連安全保障理事会の決議が必要だ」などとして、米国に釘を刺した。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140924&ng=DGKDASGM23H1T_T20C14A9MM8000 (日経新聞2014.9.24) 米、シリア領で空爆 対「イスラム国」 サウジなど参加
 【ニューヨーク=吉野直也】米政府は22日、米軍と複数の有志国が過激派「イスラム国(総合・経済面きょうのことば)」を標的にシリア領内で空爆を始めたと発表した。米中央軍によると、サウジアラビア、ヨルダン、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、カタールの中東5カ国が軍事作戦に参加した。オバマ米大統領は23日、国連総会への出発前にホワイトハウスで声明を読み上げ「米国に危害を加えようとする者に安住の地はない」とテロとの戦いへの決意を表明。「米国単独の戦いではない。一定の時間はかかる」と力説した。米メディアは軍や有志国の空爆の開始時間は米東部時間22日午後8時半(日本時間23日午前9時半、現地時間同日午前3時半)ごろと報じた。イスラム国の本拠地、ラッカやハサカ、デリゾール、アブカマル、アレッポの司令部施設や訓練施設、武装車両、補給トラックなどを対象に14回、空爆した。アレッポ近郊には日本人男性がイスラム国に拘束されているとみられている。戦闘機や爆撃機による攻撃だけでなく、紅海とペルシャ湾に展開した複数の艦艇から巡航ミサイル「トマホーク」を47発発射した。「欧米への差し迫ったテロ計画があった」として米軍は国際テロ組織アルカイダ系グループ「ホラサン」の施設も空爆した。米国防総省のカービー報道官は23日の記者会見で、空爆は「大きな成功を収めた。これは始まりにすぎない」と語った。米統合参謀本部のメイビル作戦部長は空爆にステルス戦闘機F22が初めて参加したと述べるとともに、攻撃の96%が高い命中精度を持つ精密誘導弾だったと指摘した。米国務省のサキ報道官は声明を出し、シリア政府に空爆方針を直接伝えていたと明らかにした。アサド政権には敵対行為を取らないよう警告。「同意は求めていない。軍レベルで攻撃の具体的な時期についても一切知らせていない」と強調した。

*1-3:http://www.uraken.net/rekishi/reki-westasia15.html
第15回 イスラム教の基礎はこうして誕生した
○今回の年表
 570年頃 ムハンマドが生まれる。
 581年 中国で隋が建国される。
 607年 小野妹子が遣隋使として日本から隋へ派遣。
 610年頃 ムハンマド、預言者アラーから啓示を受ける。
 618年 唐が建国され、隋が滅亡。
 622年 ムハンマド、メディナに移住(ヒジュラ)。
○ムハンマド、現れる
 ササン朝ペルシアと東ローマ帝国の抗争が激化すると、アラビア半島西部と海を組み合わせた交易路が発達し、その交易路の中継都市として大きく発展したアラビア西部の都市がメッカです。メッカには、遊牧民の信仰の対象であるカーバの神殿もあり、多くの人を集めていました。この都市を5世紀以降支配していたのが、クライシュという部族です。クライシュ族は更に、カーバ神殿周辺に住む身分の高い部族、その周辺の山麓に住む身分の低い部族ら12の部族に分かれます。570年頃、このクライシュ12部族の名門ハーシム家に生まれたのが、ムハンマド(マホメット)です。ムハンマドは、イスラム教の基礎を作り上げた預言者で、6歳で孤児となった彼は、祖父と叔父に養育され、隊商貿易に従事し、誠実な人柄だったらしく大富豪で未亡人のハディーシャに仕事を任され、これが縁で結婚します。当時ムハンマドは25歳、ハディーシャは40歳でした。二人の間には、三男二女が生まれ(ただし男子はいずれも早世)、幸せ一杯のムハンマドは、メッカ近郊の山中で瞑想をするのが趣味で、よく通っていましたが、610年頃、天使を通じて唯一神アラーの啓示を受けます。驚いた彼が妻ハディーシャに相談すると、励まされ、預言者として活動することになります。
○イスラム教の基本
 さて、唯一神アラーの預言者として活動を開始したムハンマド。その後もアラーからの啓示を受け、次のような教えを大成します。特徴は以下の通り。
・偶像崇拝の禁止&多神教への批判・・・人々の精神の堕落を招くから。
・唯一神アラーの前では、人は種族・階級・貧富・関係なく平等である・・・このため、既得権益からは目の敵にされる。
・六信五行(アラー・天神・経典『コーラン』・預言者・来世・天命&信仰告白・礼拝・断食・喜捨・巡礼)
 ★預言者・・・予言ではなく預言。神の意図を伝えるために送られた存在のこと。 アダムやモーセ、イエス=キリストも含まれるが、ムハンマドがその中で最大とされる。
 ★天命・・・自然界で起こる全ての事象はアラーの意志によって起きる。
 ★信仰告白・・・アラーの他に神はなく、ムハンマドはアラーの使徒である、と唱えること。
 ★断食・・・イスラム暦の9月において、1ヶ月間日の出から日没まで一切飲食を絶つこと。飢えを我慢することによって普段飲食できることを神に感謝するとか。なお、日没後は飲食可能。
 ★喜捨・・・収入に応じた税金。
 ★巡礼・・・なるべく一生に一度、メッカのカーバ神殿にお参りに行くこと。
・ムスリム(六信五行の実践と神に身を捧げた者)の存在。
・経典『コーラン』・・・コーランとは、読誦すべきもの、という意味。7世紀半ばに今の形に。
・安息日は金曜日
・女性は肌を見せないように。
・豚は食べてはいけない。
・男性は妻を4人まで持つことが出来る。ただし、平等に愛することが条件。
・弱者には無条件で手をさしのべる。
ムハンマドが考えたものもあれば、その後少しずつ変容したものもあるかも知れませんが、これがイスラム教の基本のようです。

<ハラールと現代の公衆衛生について>
*2-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30010
(日本農業新聞 2014/9/26) ハラール認証に注目 茶で初の取得 鹿児島・JAあおぞら
 鹿児島県のJAあおぞらは、海外向け販売戦略としてイスラム教の戒律にのっとった「ハラール」認証を特産の茶で取得し、26日から日本国内や東南アジア諸国連合(ASEAN)、中東諸国で販売を始める。茶でのハラール認証取得はJAで初めて。国内で茶の消費が伸び悩む中、世界的な健康志向や和食の世界遺産登録を追い風に、新たな市場開拓に乗り出す。
●国内外 きょうから販売
 JAはリーフ茶を手始めに、黒糖と混ぜたタイプや粉末タイプ、抹茶などの商品も展開していく。イスラム圏での販売や、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け土産用に国内での販売を進める。26日には、内村常夫会長らが東京都内で会見を行う。JAは世界への輸出を視野に、国際標準化機構(ISO)9001やJGAPの取得、総合的病害虫・雑草管理(IPM)などにも積極的に取り組んでいる。JA指導購買課の取違弘一茶業センター長は「東京のハラール認証レストランで提供される他、羽田、成田空港やイスラム諸国で販売できれば、鹿児島県産茶、国産茶の可能性が広がる」と期待する。JAは、ハラールの市場開拓の支援事業を手掛ける非営利一般社団法人ハラル・ジャパン協会の一般会員となっており、海外販路拡大や国内販売のサポートを受ける。同協会は「世界人口の4分の1がイスラム市場。日本食に欠かせない茶が今後、イスラム市場にどのように入っていくのか注目している」としている。今回、認証した機関は、日本国内で認証やハラール関連の支援事業を行うマレーシアハラルコーポレーション(MHC、東京都港区)。アクマル・アブ・ハッサン社長は「来日したイスラム教徒が困るのはハラール認証の食品や商品、飲食店などが少ないこと。東京オリンピックも控え、ハラールはビジネスチャンス」と強調する。ハラール認証は、各国の認証機関などが付与する。認証取得の難易度や期間は国や地域で異なり、中でもサウジアラビアやマレーシアの規格が厳しいという。国内では、社団法人日本ムスリム協会など複数の機関が認証を行っている。
●百貨店はネット使い売り込み
 三越伊勢丹ホールディングス(東京都新宿区)は、「ハラール」認証を取得した食品を取り扱うオンラインショップ「ハラール・フードセレクション」を24日にオープンした。扱う商品は、ステーキ用黒毛和牛や、熊本県の地鶏「天草大王」のローストチキン、しょうゆなど26点。販売動向をみて、さらに商品を増やすか検討する。10月1~7日には、伊勢丹新宿本店の食品売り場で、期間限定でハラール認証商品のコーナーを設ける予定だ。同社は「イスラム圏からの観光客と日本在住者が増え、ハラール認証商品のニーズが高まっている」(広報)と需要に期待する。

*2-2:http://www.maff.go.jp/j/chikusan/shokuniku/lin/l_yusyutu/pdf/j1.pdf
アラブ首長国連邦 行政事務局(GSM) 公衆衛生・環境部 決定第 GSM/32 号 2005 年5 月1 日付
海外においてアラブ首長国連邦を対象とするハラールと畜を監督するイスラム協会又は機関の認証に関する条件及び手順について
・GSM の組織構成については、1980 年改正の連邦最高評議会(FSC)決定第2号に従うこととする。
・食品安全委員会及び獣医学的統制委員会の行う組織規制に従うこととする。
・以下の内容について GSM 評議会の決定に従う。
-海外においてアラブ首長国連邦を対象としたハラールと畜を監督するイスラム協会又は機関の認証規制及び規則に関する決定第3/33/92-3 号(1992 年5 月12 日付)及び第26/33/92-2 号(1992 年5 月26 日付)。
-ハラールと畜証明書の範例(様式)の認証に関する決定第3/33/92-2 号(1992
年5 月12 日付)。
-衛生要件の認証及び UAE におけるイスラム法に関する決定第8/52/2000 号(2000 年2 月9 日付)(食肉処理場の設立及び運用に関する法的及び衛生的要件の指針について)
・イスラム法に従った動物のと畜についての UAE の基準第993/1993 号に従うこととする。
・GSM の関係委員会の勧告に従うこととする。
・GSM 評議会の決定第37/53/2000 号(2000 年4 月19 日付)に従うこととする。
・GSM 評議会の第65 回会合議長と後ほど協議することとする。
・公衆の利益の要求に従うこととする。
第1章
海外においてアラブ首長国連邦を対象とするハラールと畜を監督するイスラム協会又は機関の認証に関する条件について
決定第3/33/92-3 号(1992 年5 月12 日付)及び第26/33/92-2 号(1992 年5 月26 日付)における条件は以下の通り改正する。海外においてアラブ首長国連邦を対象とするハラールと畜を監督することについて、GSM より認証を受けようと希望するイスラム協会又は機関(センター、組織、連盟又はその他類似名称)は、以下の条件を満たすこととする。
1.ハラールと畜を監督するイスラム協会又は機関は、当該機関が存在する国内において、認知又は周知されており(設立されており)、又国内の全ての法的要件に合致していなければならない。
2.起源となる国に永住権を持ち、従業員の責任及び義務、ハラールと畜証明書の署名権限者及び実行者(acting person)の氏名及び役職を記載した業務諸表を有し、自らのロゴマークの入った公的用紙を所有すること。
3.輸出国におけるハラールと畜を実行する食肉処理場の効果的なコントロールに必要な技術及び人的資源のある施設を有すること。
4.イスラム法に従った動物のと畜についての UAE の基準第993/1993 号及び、GSM による動物のと畜について合法的(正当な)要件(決定第8/52/2000 号(2000 年2 月9 日付))に従うこと。
5.決定第 3/33/92-3 号(1992 年5 月12 日付)に従い、UAE により認証されている範例に類似したハラールと畜証明書を発行し、証明書にはシリアル番号を付すこと。
6.当該イスラム協会又は機関はハラールと畜を所管する部局を有し、その部局は業務に関して必要なすべての記録(ハラールと畜の監督者、と畜者、監督されたと畜場、発行されたと畜証明書、必要な時又はGSM の関係委員会から求め
られた時に紹介する関連文書等)についての文書管理システムを有すること。
7.当該イスラム機関はと畜場の検査員及び監督者を独自に有し、それぞれの検査員により監督されると畜場の数は3 を超えてはならない。
8.いかなる営利企業又は個人も、UAE に関連したハラールと畜の監督を任命されてはならない。
9.当該イスラム協会は、検査員及び監督者の選定についてのシステムを有し、彼らに対して労働カード(労働許可)を発行すること。
10.当該イスラム協会は、検査員及び監督者の効率性及び技能向上のためのトレーニングのシステムを有すること。
11.当該協会又は機関は、イスラム教徒に対する慈善、人道支援、援助又はその他の奉仕活動に従事していること。
12.証明書を発行するシステムを有し、スタンプ及びその他の認証のサインを保持(keep)すること。
13.GSM に対してハラール証明書にサインする権限者署名のコピーを送付すること。実行者も同様。
14.当該協会又は機関は、GSM に対し、その活動、業績及び発行したハラール証明書の枚数について記した年次レポートを提出すること。
15.いかなる協会又は機関も、上記条件に同意しない限り認証されず、認証については下記第2章の手続きに従って行われる。
第2章
海外においてアラブ首長国連邦を対象とするハラールと畜を監督するイスラム協会又は機関の認証に関する手順について
海外においてアラブ首長国連邦を対象とするハラールと畜を監督することについて、GSM より認証を受けようと希望するイスラム協会又は機関(センター、組織、連盟又はその他類似名称)は、以下の認証条件及びそれに伴う義務に従うこと。
1.当該イスラム協会又は機関は、第1章で述べた、海外においてアラブ首長国連邦を対象とするハラールと畜の監督をするイスラム協会又は機関の認証についての全ての条件を満たすこと。
2.当該イスラム協会又は機関が要件を順守していることを証明するために必要なすべての書類を添付した上で、公的ルートにより(official channels)GSM に対して申請書類を提出すること。さらに、GSM の関係委員会の代表団が必要とあれば、その協会又は機関のコンプライアンスを確認するために必要となる旅費、宿泊費及び移動に係る経費について全額を支払うことを確約する文書を提出すること。
3.もし申請が要件を満たさない場合、当該イスラム協会又は機関の要求は GSMの関係委員会により、受理するか拒否するかが評価される。
4.もし関係委員会が承認を勧告した場合、本件はGSM 評議会に送付され、当該イスラム協会又は機関が認証されるか、訪問してそのコンプライアンスを確認するための現地訪問が勧告される。その認証については、訪問調査の結果及び訪問した代表団の勧告に基づいて決定される。
5.もし関係委員会の勧告に基づき(3)、又は訪問代表団の調査結果に基づき(4)申請が否認(拒否)された場合、当該イスラム協会又は機関は、公的ルートを通じて、否認または拒否の理由を知らされるものとする。当該イスラム協会又は機関は、拒否の原因を訂正し、要件に合致するようになれば、同様の手順に従って再申請することができる。
6.もし申請が受理された場合、当該イスラム協会又は機関は、GSM 評議会の定める一定期間認証され、GSM から該団体に対し、当該国内でUAE 向けのハラールと畜を監督する権限を付与する認定証が発行される。必要とあれば、GSMの関係委員会は当該団体に対し、当該団体が正当に責務を果たしているかを確認し、又は再評価や認証の更新を行うため、調整又は監督のための現地訪問を行う。
第3章
本決定は、在UAE の在外公館及び海外のUAE 大使館で配布するため、行政当局及び外務省に回付されるべきである。
第4章
本決定は、施行日より発効する。
(署名)
事務総長 ヤシン・モハメド・ビン・ダルビッシュ

<イスラム教における女性の地位と世界基準(女性差別撤廃条約)について>
*3-1:http://www.asahi.com/articles/ASG9V34VWG9VUHBI00M.html?iref=comtop_6_04 (朝日新聞 2014年9月26日) イスラム国、イラクの女性人権活動家を公開殺害
 国連イラク支援団(UNAMI)は25日、イラク北部の主要都市モスルで、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」がイラク人の女性弁護士を拘束、拷問後に公開で殺害したとして、「おぞましい犯罪」と非難する声明を出した。声明によると、殺害されたのは著名な人権活動家でもあるサミラ・ヌアイミさん。「イスラム国」による宗教文化施設の破壊に批判的なコメントをフェイスブックに書き込んだことを理由に、17日に自宅で拘束された。「背教行為」で有罪とされ、5日間の拷問を受けた末、殺害されたという。AP通信によると、ヌアイミさんは、夫と子ども3人と自宅にいたという。「イスラム国」は6月にモスルを制圧後、国家樹立を一方的に宣言するなど、イラクやシリアで勢力を急速に拡大している。

*3-2:http://daigakuin.soka.ac.jp/assets/files/pdf/major/kiyou/19_houritsu4.pdf (法学研究科法律学専攻博士前期課程修了 岩本珠実)イスラムと女性の人権 国連での討議をとおして
はじめに
 本論文では、イスラムにおける女性の人権に関して、国際社会はいかに考え、行動すべきか、国連、特に女性差別撤廃委員会(Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women、CEDAW)における留保に関する議論をとおして考察する。「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(以下、「女性差別撤廃条約」ないしは「条約」と称する)は、1979年12月18日に第34回国連総会で採択された。本条約は女性に対するあらゆる差別を撤廃し、固定的な性別役割分業を打破することを目的とした女性の人権に関する包括的な条約である。現在までに国連加盟国のほとんどが加盟している。その加盟国の多さから、国際社会全体がこの条約の趣旨を支持しているようにみえる。しかし実際は、国際人権基準、ひいては西欧的な価値観に嫌疑を抱く諸国によって留保という手段で本条約は形骸化され、無力化されている。この条約の抱える問題点こそ、多様な宗教観の共存する国際社会において、いかにして共通の人権概念を構築するか、という今日の国際社会が抱える課題なのである。留保問題を考えることが、多文化・多宗教社会の相互理解を見出す糸口になると考える。本稿では、女性観の違いから対立するイスラムと非イスラムの主張を考える。まず第1章では、イスラムにおける女性の状況を述べ、国際人権基準、特に本稿で扱う女性差別撤廃条約の基準に照らして、家族関係における女性の地位の低さが問題となることを指摘する。第2章は、「女性差別撤廃条約におけるイスラムとの衝突」と題し、条約に抵触するイスラムの主張についての委員会の反応とイスラム諸国の対応を見る。第3章では対立の分析と若干の考察を試みることにしたい。
Ⅰ.イスラムにおける女性の人権
 本章では、イスラム女性の人権について、イスラム各国の制度を検討した上で、女性差別撤廃条約との関係で問題となる点を指摘する。
1.イスラム女性の現状、制度
 イスラム教の聖典『コーラン』と『ハディース』では、女性は男性より劣位にあり、保護されるべき存在であるとされている。そのため家族においては低い地位が定められ、弱い女性を保護するという目的で一夫多妻制ができた。また、女性は男性を誘惑するものとされたため、その害悪を予防するためにヴェールやブルカに代表される種々の男女隔離の習慣ができたのである。このように女性に関するイスラム法の記述がある一方で、実際のイスラム諸国の女性に対する地位はいかに規定され、認識されているのだろうか。イスラム国といってもその地域は広く、女性に対する扱いも一様ではない。女性解放が進む地域がある一方で、いまだに慣習に縛り付けられている地域がある。本節では、イスラム法の教えを各国は現在どの程度守り、または改革しているのか、イスラムと女性との問題で特に議論の的となる(1)一夫多妻制、(2)結婚、離婚、後見、(3)女性に対する暴力について、それぞれ述べる。
(1)一夫多妻制
一夫多妻制はイスラム諸国の間でもその是非が分かれる問題である。一夫多妻制について、『コーラン』「女人の章」第3節はこう規定する。「気に入った女性を二人なり三人なり、あるいは四人なり娶れ」。これは、妻を四人まで持つことを肯定しているかのようにみえる。しかし、この後以下の記述がある。「もし妻を公平に扱いかねることを心配するなら、一人だけを娶っておけ。お前たちがいかに切望しても、女たちを公平に扱うことはできない」(第129節)。近代主義者の解釈によれば、この第129節を重視して一夫多妻制は原則的に禁止とされている。しかし、伝統的な解釈を支持する者も多く、いまだひとつの選択肢となっている。現在、中東、北アフリカ諸国で一夫多妻制を明文で禁止しているのは世俗化が進むトルコとチュニジアだけである。トルコ、チュニジアほどではないが、一夫多妻制を制限しようとしている国は多い。二人目以上の妻を娶る際には裁判官の許可を条件としているのは、シリア、イラク、パキスタン等である。すでに結婚している妻の了承を条件とするのはモロッコ、ヨルダン、エジプト、アルジェリアなどである。このように一夫多妻制に関するイスラム法の適用が制限される潮流のなかで、逆にイスラム回帰が進む国もある。イランは1979年のイスラム革命によって、妻は夫の重婚に対して異議を挟むことはできなくなった。ただし、法的に一夫多妻制が認められている国でも複数の妻を持つ男性はきわめて少ない。それには経済的、倫理的規制があるからである。結婚の際には、男性は結納金と住居を用意しなければならないため、一般の男性にとっては一人の女性と結婚することも高いハードルである。複数の妻を持つことができるのは、結納金と住居を用意することのできる裕福な男性だけである。また、倫理的規制としては、イランやサウジアラビアのように法的、社会的に一夫多妻が認められている国でも、重婚をした男性に対する周囲、特に女性の反応は冷ややかである。以上のように、一夫多妻制を法的に規制しようとする国が増えており、また、一夫多妻制に関する法的な規制のない国でも、経済的、倫理的な理由から実質的には一夫一妻制がほとんどである。しかし、一夫多妻制を法的に規制していても二番目の妻との結婚が無効にならない、社会的慣例から使用されない、法的規制のない国では経済的に強みのある男性にとって一夫多妻は自由など、女性にとっては厳しい状況が続いている。
(2)結婚、離婚、後見
① 結婚
 まず、結婚に当たって問題になったのが幼児婚である。イスラム法では男性は12歳、女性は9歳という年齢での結婚が可能である。そしてその場合、自分の意思が反映されることは少なく、親族同士が後見人や代理人として結婚を決めてしまう。嫁ぎ先での女児の権利や発言力はほとんど期待できない。ただし、現在では近代法が取り入れられつつあり、幼児婚も否定されるようになってきている。エジプトでは1924年に女子の最低結婚年齢を16歳にまで引き上げた。また、就学率の上昇と共に婚姻適齢とされる年齢は上がってきている。イランは法律上の最低結婚年齢は女性が9歳だが、実際の平均婚姻年齢は1996年時点で都市で22.5歳、農村部で22・3歳であった。
② 離婚
 コーランの規定によると、離婚は夫が三度離縁を宣言すれば成立する。ムハンマドは身勝手な理由での離縁は戒めていたとはいえ、夫の力は絶大であった。そのため、法改革でこのような夫の一方的な離縁権を規制する国が多い。シリアは1953年、三度の離婚宣言だけの離婚の成立を否定し、チュニジアは1956年、法廷外の離婚はすべて無効となった。一方、妻からの離婚請求は厳しい状態が続いている。イランではイスラム革命により女性からの離婚請求がほとんど不可能になった。エジプトでも、ほとんどの場合、離婚を決めるのは男性である。女性は夫が別の女性と結婚した場合、離婚を請求する権利があるが、離婚後の女性は貧困と戦うことになるため、容易に離婚を請求することはできないのが実情である。
③ 離婚後扶養
 コーランは婚姻にあたって、夫に扶養義務があり、妻に扶養される権利があると規定している。よって、女性は一般的に自活手段をもっていない。そのため、女性だけでは経済的自立が困難で、離婚の際には女性の扶養義務が大きな問題となる。夫からの離婚請求に対して、シリアやチュニジアでは、法律でしかるべき補償を定めている。また、多くの国で慰謝料が支払われることになっている。しかし、ナワル・エル・サーダウィは「一時的な乏しい資格に過ぎず、ちょっとした口実でまもなく停止されるものだ」と指摘している。また、女性の側から離婚を請求するには、逆に夫に多額の慰謝料を払う必要がある。よって経済的にゆとりのある女性以外は、自分から離婚をするのは実質的に不可能である。
④ 子の親権
 イスラム法では、12歳以上の子どもの親権は男親にある。さらに、シーア派の解釈によると男児の場合は2歳まで、女児の場合は7歳までしか女性の親権が認められない。革命後のイランではこのシーア派の解釈がそのまま適用されることになった。ところが、イラン・イラク戦争の激化に伴い、夫の戦死と共に子どもの親権を喪失する母親の問題が深刻化したため、1985年、殉教者の妻には子の養育権が認められることになった。しかし、財産、教育、その他重要な事柄に対する決定権を全て含んだ親権は認められていない。
(3)女性に対する暴力
 イスラム法で規定されている、もしくは規定されていると思われている行為で、女性に対する暴力として特に問題になっているのが、①夫による暴力、②姦通罪に対する刑罰、③名誉の殺人、④女子割礼、である。それぞれについての現状と取り組みを概観する。
① 夫による暴力
 女性に対する暴力を正当化する根拠に挙げられるのは、『コーラン』「女人の章」の「逆らう心配のある女たちにはよく説諭し、寝床に放置し、また打ってもよい」との記述である。家庭内暴力に関する英国の研究によると、ムスリム社会の出身者、生活者であった男性と結婚している女性は、英国の他の女性よりの8倍も配偶者によって殺害される可能性が高いという。また、有川によると、バングラディシュ農村において、既婚女性の約半数が夫による身体的暴力を受けたとしている。また、女性に対する暴力は、イスラムの教えに則ったものとして、被害者である女性自身によってかなりの程度正当化されている。
② 姦通罪に対する刑罰
 イスラム法では既婚者以外の性的関係は厳重に禁じられており、罰則も厳しい。イランやサウジアラビアでは、既婚者の姦通には石打ちによる死刑が行われる。女性への暴力として特に問題となっているのが、レイプ被害者の処刑の問題である。姦通罪を成立させるには四人の男性の証言か、本人の自白が必要である。姦通罪が成立しない場合、逆に訴えた側が中傷罪として処刑されるのである。レイプ被害者が処刑される規程に関しては、反撥が多く、法改正に向けて動き出す国も見られる。パキスタンではこのほど、レイプ被害者が姦通罪に問われてしまう「ハッド法令」を見直す改正案が、賛成多数で下院を通過した。しかし、イスラム原理主義政党は猛反発をし、全議員の辞職を打ち出す等、改革への道のりは容易ではない。
③ 名誉の殺人
 家族の名誉を傷つけたという理由で婚前の若い女性が家族や親族の男性に殺害されるという「名誉の殺人」は、今日でも世界の広範囲で起こっている。イスラエル、パレスチナ、レバノン、トルコ、エジプト、モロッコ、ウガンダ、ブラジル、ヨルダン、サウジアラビア等で報告されている。全世界に広がるこの慣習は、秘密裏に行われ、自殺や事故とされることが多いため、正確な数は把握されていないが、年間5000人とも、6000人とも言われている。「名誉の殺人」はイスラム教と関連付けて考えられていることが多いが、実際はイスラムが広まる以前からの慣習と考えるのが妥当だろう。それは、「名誉の殺人」がイスラム国以外でも見られることから推測できる。また、教義にてらせば、イスラム教では、刑の執行はカリフの権限であり、「名誉の殺人」に見られるような家族による処刑は認められていない。また、婚外交渉は禁止されているが、それは男女を問わず、若い女性だけを狙い打ちにする「名誉の殺人」とは相容れない。このように、多くの点でイスラムの教義と矛盾する。しかし、この慣習のある地域では、「名誉の殺人」をイスラム教徒自身を含め、イスラム教の教義と考えている。
④ 女子割礼
 女性に対する割礼は、広くアジア、アフリカ、中東の各地で見られ、その数は8000万人にも達するとの統計がある。ただ、1982年のレポートでは約8400万人、1993年の調査によれば約1億1400万人と、女児が誕生する限り女子割礼人口は増え続けている。預言者は「割礼せよ」と述べたわけではないのだが、多くのイスラム地域の人々は、女子割礼がコーランに書かれていると思い込んでいる。国際的なキャンペーンによって女子割礼の有害性が指摘されるようになり、法的に規制する国も増えている。しかし、女子割礼が禁止されたとしても、人々の間で意識が変わらなければ密かに続行される可能性は高い。エジプトでは自らの意思で隠れて割礼を受ける女性が増えていると言われている。それは、娘が外に出ることを心配する両親に対して、きちんと割礼を受けたのだから教育を受けさせてほしいとか、外で働かせてほしいとか、自分の決めた人と結婚させてほしいという交渉の切り札として使うためだという。女性を縛るための割礼が逆に女性の解放をもたらすという逆説的な状況が生まれているといえる。
2.女性差別撤廃条約との抵触点
 以上述べたイスラムの慣習については女性差別撤廃条約のレポート審議で女性差別として問題となったものが多くある。前述のとおり、イスラムにおける女性の人権観については各国対応が分かれており、一様ではない。それでも概して、イスラムでは結婚や家族に関する権利の考え方が西欧諸国とはかなり異なっている。よって西欧諸国主導で作成された女性差別撤廃条約の条文とイスラムの価値観の抵触が生まれるのである。本節では前節であげたイスラム法的慣習の女性差別撤廃条約との抵触点を指摘する。まず、一夫多妻制は、第16条1項(a)「婚姻をする同一の権利」に抵触する。親が子の意思に関係なく結婚相手を決める幼児婚は、第16条1項(b)「自由に配偶者を選択し及び自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利」、第16条2項「児童の婚約及び婚姻は、法的効果を有しないものとし、また、婚姻最低年齢を定め公の登録所への婚姻の登録を義務付けるためのすべての必要な措置がとられなければならない」と対立する。男性からの離婚が容易である点は、第16条1項(c)「婚姻中および婚姻の解消の際の同一の権利及び責任」に触れる。子の監護が父親に有利な点は、第16条1項(d)「子に関する事項についての親(婚姻をしているかしていないかを問わない。)としての同一の権利及び責任」、同項(f)「子の後見及び養子縁組又は国内法令にこれらに類する制度が存在する場合にはその制度に関る同一の権利及び責任」に抵触する。女性への暴力については、女性差別撤廃条約に直接の言及はない。しかし、第12条1項「保健の分野における女子に対するあらゆる差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとる」などとの関係により、割礼のように女子の健康に有害となる伝統的慣習を根絶するための「一般的勧告第14」が、1990年第9会期において採択された。また、夫による暴力や名誉の殺人など、女性に対する暴力全般については、1987年に「一般的勧告第12」が、1992年に「一般的勧告第19」が採択された。これにより、女性に対する暴力も、女性差別撤廃条約で禁止されているとの解釈がなされたのである。また、委員会は、締約国に、あらゆる性に基づく暴力を撤廃するために適切かつ実効的な措置をとることを勧告している。この一般的勧告は、委員会による条約解釈の意味を持ち、各国のレポート審議やコメントに当たっての解釈原理となる。このように、特に婚姻・家族関係における差別撤廃を定める第16条に、多くのイスラム法及びイスラム法的慣習が抵触していることがわかる。そしてこの16条こそ、女性差別撤廃条約が最重要視する条項なのである。(以下略)

*3-3:http://www.jca.apc.org/praca/back_cont/02/02Sudan.html 
スーダンにおける女子割礼
 私はレイラ。モスクワ生まれです。父はスーダンの北部出身ですが、母はモスクワ近郊の出身ですので、私の国籍はロシアです。私は、モスリムの女性割礼についてのリサーチャーとしての仕事をしています。特にヨーロッパに在住のモスリム女性の文化的アイデンティティーや、割礼にたいする意識の調査などをおこなっています。昨年、米国ワトソン基金奨学金留学生に選ばれ、今年6月には、米国に向かいます。女子割礼について日本の方はあまりご存じないと思いますので、少し説明させてください。
 割礼そのものは、イスラム教以前からすでにアフリカに存在していました。男子の割礼と異なり、女子割礼は、男性優位の世界の中でおこなわれています。女性は力を持ってはいけないのです。それなのに男性性器の名残として、クリトリスがあります。だからクリトリスは悪魔のシンボルといわれています。出産の時、赤ん坊がクリトリスに触れると、死んでしまうという言い伝えまであります。割礼には約4種類のタイプがあります。スンナ割礼、陰部摘出、陰部封鎖、陰部刺切です。スンナ割礼は、陰核包皮を円周状に切除することです。陰部摘出は、包皮のみでなくその他の部分まで含めて切除します。陰部封鎖は、切除する部分の大きさは地方によって異なりますが、切除した後、膣下端を完全には塞がらないようにしながら、切除部分を縫いあわせたり、癒着させたりします。癒着させるためには割礼を受けた子どもの太股を縛り、何日間かそのままにしておきます。陰部刺切は会陰部を裂いたりもします。女子割礼をおこなうことは、なぜ男にとって必要なのでしょうか。宗教上のこととか、昔からの習慣だともいわれていますが、それだけではありません。男性にとって女性は性欲を持ってはいけないのです。割礼により女性の性欲をなくし、ほかの男に走らないようにしようとしているのです。女性は女性で、男性に快楽を与えるためはこの行為が必要だと思っています。つまり、男はいつでも自由であるのに、女は小さいときから男に従属しなければならないという考え方なのです。割礼を受ける年齢はまちまちで決まってはいません。ただ、女の人がその行為をおこなうので、あまり大きくなると、女では抵抗できないよう体を押さえることができないので、小さいときにおこなうのが普通です。私の従姉妹二人は、12才と14才で受けました。フランスのスーダン人の子供の例ですが、生後3週間で受け、出血多量で死亡したこともあります。また、妊娠後割礼を受ける場合もあります。割礼により死亡する場合もたくさんあります。消毒もしていない剃刀によって感染症となったり、炎症を起したり、出血多量によったりです。あるいは、生理の血が体外に出なくなったためという場合もあります。ただ、割礼後何年も経ってから死亡するようなケースは、それが割礼のためなのかどうかはっきりしないこともあります。割礼による内面的な問題として、母親が娘にそれをおこなうことにあります。そのために、母子関係に精神的苦痛をおよぼし、そのことを引きずっていかなければなりません。そういった意味で、女性同士の友人関係は、表面的になってしまいます。心の奥では相手を信用してはいないのです。はじめにもお話しましたように、私はヨーロッパでモスリムの女性の割礼についてのリサーチをおこなってきました。その結果、ヨーロッパと、スーダン本国との割礼にたいする考え方の興味深い相違についてはっきりしました。ヨーロッパのスーダン人は、貧しい人たちはこの習慣をやめたいと思っているのですが、裕福な人たちは続けたいと望んでいます。その理由として彼女達は、経済的には不自由がなくても、差別されていることをはっきりと感じているのです。そのため、伝統的なほこりを捨てないためにも、割礼をおこなっているのです。それにたいし、スーダン国内では、貧しい人たちは習慣として続けようとしていますが、裕福な上層階級は悪い習慣としてやめたいと思っています。つまり、ヨーロッパ在住の人と、国内にいる人では、とらえかたが全く逆になっているのです。直接ヨーロッパの内にいるか、ヨーロッパの目を気にするかの違いです。ですから、スーダンはイスラム法による政策をおこなっていますが、割礼を法的に認めている場所と、認めていないところとがあります。男優位の世界が割礼をおこなわせているのです。スーダンでは、常に男が一番で女はその次でしかありません。そして子どもたちは一番最後です。ですから子どもたちはいつでも飢えています。兵隊が、ノートや本を買いに行く子どもたちに銃をあて、金を奪うような状態なのです。外国からの援助にかんしてですが、スーダンにいる国連の人たちは、ベンツを乗り回しています。そのベンツのガソリンで、1年分の村の食料がまかなえるのです。彼らはただ、金をつかうだけです。割礼は大嫌いです。でも、日本人にとってスーダンは遠すぎます。スーダンだけではなく、第三世界すべてがそうです。援助はとても難しい問題です。


PS(2014.10.2追加):*4-1のように、インドのタタグループはアフリカの若者を対象に奨学金を実施して、アフリカの大学や大学院に送っており、その中には女子学生も多く、アフリカ女性の社会進出を後押ししているそうだ。また、タタグループは、これを世界で展開する企業の社会的責任と考え、女性の人材育成や登用も行っている。一方、日本では、*4-2のように、何とかかんとか言って女性を待遇の悪い非正規社員や派遣社員とし、女性から搾取してきたが、これは経営者が持っている理念の違いだ。

  
 取締役の女性比率         就業者・管理職の女性比率  

*4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141002&ng=DGKDZO77830500S4A001C1FFE000 (日経新聞 2014.10.2) 世界で社会貢献 「清廉」の信頼感、活力に
 インドのタタグループがアフリカの若者を対象に実施している奨学金。2006年から年間30人程度を奨学生として選び、ネルソン・マンデラ・メトロポリタン大学などアフリカの大学や大学院に送り込む。女子学生も多く、アフリカの女性の社会進出を後押しする。タタが世界で展開する企業の社会的責任(CSR)活動の一環だ。
●慈善財団が株
 タタグループの統括会社であるタタ・サンズ株の66%を握るのはタタ一族の慈善財団。「利益を社会に還元する」という理念に沿い、巨額の配当収益を農村支援や教育、医療、文化などに投じている。この10年で財団や傘下企業が投じたCSR費は800億ルピー(約1400億円)に上る。利益を追うだけでなく、社会貢献を重視する姿勢は、例えば、汚職が横行するインドにあって「清廉なタタ」という評価につながる。タタ製鉄の企業城下町である東部ジャムシェドプールでは、街の整備や水道、電力供給などをタタ自らが手掛け、地域や従業員の求心力を高めてきた。ムンバイにあるタタグループの本拠「ボンベイハウス」。今年で生誕175年となる創業者ジャムセトジー・タタ氏の肖像画とともに同氏の言葉を示した記念の盾が置いてある。「企業にとって、社会はステークホルダーの一つではなく、存在目的そのものだ」。タタグループ総帥のミストリー氏が昨年立ち上げたタタ・サンズの経営諮問機関のメンバーの一人でもあるムクンド・ゴビンド・ラジャン氏は「タタはいまや世界企業だ。良き企業市民であり続けてきたタタの理念とインドで得てきた信頼を世界に広めたい」と言う。今年8月には米国の広告大手JWTと契約し、世界で独自の社会貢献活動を進めようとしている。
●女性登用目立つ
 社会との共生を目指す理念は人材育成にも表れている。タタ・サンズが運営する経営者育成プログラム「タタ・アドミニストレーティブ・サービシズ(TAS)」はグループ総力で“英才教育”を施す取り組みだ。毎年、20歳代の40人程度を選び、100社超の傘下企業のなかで多様な事業や部門を経験させていくが、最近は女性の登用が目立つ。象徴はインドで話題の34歳の女性経営者、アバニ・ダブダさん。米スターバックスとのインド合弁の最高経営責任者(CEO)だ。合弁は12年の事業開始以来、50店以上を開設し、業績も好調で評価も高まっている。タタグループは20年までに少なくとも1千人の女性幹部を育てるという。タタが創業140年余りインドで育んできた独特の企業理念は成長の活力ともなってきた。今後、グローバルな事業展開で国外企業との連携も増える中で、独特の企業文化をいかに生かしていくかも課題になりそうだ。

*4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141002&ng=DGKDASFS01H25_R01C14A0PP8000 (日経新聞 2014.10.2) 女性活躍本部、10日にも初会合
 政府は3日の閣議で、女性の活躍推進の司令塔となる「すべての女性が輝く社会づくり本部(本部長・安倍晋三首相)」の設置を決める。10日にも初会合を開き、非正規社員の待遇改善を後押しする行動計画の策定や母子家庭への支援体制の強化など、来春までに実施すべき女性に関する具体策の骨子案をまとめる。女性の再就職を後押しする行動計画も年内にまとめる方針だ。


PS(2014.10.2追加):イスラム圏からの留学生に、「学生食堂でイスラム教の戒律に沿ったハラル食を出す」「授業の合間にお祈りができる礼拝スペースを設ける」という教育方針は正しいだろうか?私は、イスラム圏からの留学生も、グローバルな人材として、日本を始め世界のどこへ行っても活動できるようになることが留学の目的であるため、ハラール食に固執したり、礼拝スペースがなければやっていけないことを薦めるのではなく、多様な文化があることを学ばせる方が価値があると思う。つまり、「それをしなくても罰は受けないし、より合理的なこともある」ということを学ぶのも、留学の意味なのだ。

*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141002&ng=DGKDZO77824640R01C14A0TCQ000 (日経新聞 2014.10.2) ハラル対応学食、留学生に安心感 イスラム圏から急増、神田外語大、土日は学外に開放 埼玉大、弁当の開発も検討
 学生食堂でイスラム教の戒律に沿った「ハラル食」を提供したり、授業の合間などにお祈りができる礼拝スペースを設けたりする大学が増えている。インドネシアやマレーシアなどイスラム圏からの留学生が急増しているためだ。生活の基本である食について安心できれば留学は充実する。留学生の声を拾い、今どきのキャンパス事情を探った。「どんな調味料なのかわからないからコンビニで食品を買えないし、自炊もできない。食堂でハラルメニューが食べられて、とても助かる」。9月にインドネシアから神田外語大学(千葉市)へ留学に来たフェルリアンディ・ロッビさん(21)はこう話す。この日食べたのはハラル対応のうどんとエビの天ぷら。調味料や調理器具まで、すべてイスラム教徒の戒律に配慮したものだ。食堂を利用するまでは「外食はパンだけだった」といい、ハラル食が食べられることに安堵の表情を浮かべる。神田外語大は今春、学生食堂を改装オープンした。東南アジア各国の食文化を体験できるメニューや内装にしたほか、国内の大学施設では初となる「ムスリムフレンドリー・ハラール認証」を日本アジアハラール協会(千葉市)から取得。「ハラル食」を提供したり、礼拝スペースを設けたりして、イスラム圏からの留学生に配慮した。9月6日からは土日限定で学外の市民にも食堂の開放を始めた。東南アジア各地のセット料理やビールなどを提供するほか、ハラル食が食べられるプレートも用意した。オープン初日には開店前から行列ができ、約420席はほぼ満席の状態。土日の2日間、家族連れなど計1320人が来店した。「想像以上に注目度が高くて驚いている」(神田外語大)。名古屋工業大学(名古屋市)の生協は5月、イスラム教徒の留学生の要望を受け「ハラール推奨メニュー」をつくった。イエローチキンカレーなど2品を日替わりで提供し、毎日約20食が売れる。厳密にハラル食と認定されるためには、食材の加工工場の機械を洗う際にアルコールを使っていないなど、数多くの条件をクリアする必要がある。しかし、学食で実現するには不可能な条件も数多くあったため、チェックリストを作成。留学生にはハラル食の条件を満たしていない項目もあることを理解してもらったうえで、提供している。大学院の博士課程で道路の設計などの創成シミュレーション工学を専攻しているカン・モハマダ・ハンナンさん(26)は2011年にバングラデシュから来日。ハラール推奨メニューが登場するまでは「昼食に食べられるものがなく、シーチキンのおにぎりばかり食べていた」という。5月以降は週に2、3回、食堂でハラール推奨メニューを食べているといい、特にイエローチキンカレーがお気に入り。500円を超える価格だけは「もう少し安くしてほしい」と苦笑いする。埼玉大学は5月、第2食堂部のハラル対応のメニューを扱うコーナーを新設した。真新しい食堂の奥に「食べてみたい ハラールメニュー」と書かれた張り出しがあり、他のメニューと同様、カウンターで注文できる。埼玉大にはイスラム圏からの留学生が50人程度いる一方、ハラルに対応した食べ物が少なく、留学生は食事に苦慮していた。イスラム圏出身の留学生に調理器具や食材などを確認してもらい、カレーや竜田揚げ、しょうが焼きなど、週替わりで3品ずつ販売している。食材が限られるため平均単価は500円前後で、一般メニュー(390円程度)よりやや高い。食堂を運営する埼玉大学生協によると、ハラル食は1日30食程度売れており「一定のニーズがある」(大木島誠専務理事)。メニューを飽きさせない工夫として、9月下旬からはうどんやそばも始めた。食堂の営業時間外でもハラル対応食を食べられるよう、今後は弁当の開発も検討する。

| 外交・防衛::2014.9~ | 05:11 PM | comments (x) | trackback (x) |

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