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2020.3.28~31 予防と治療の重要性、病人を差別する国民性、法律に基づく差別について (2020年4月1、2、3、4、6、8、9、10、11、12、13、15、16、17日追加)

 2020.3.27   2020.3.16     2020.3.12       2020.3.21
 東京新聞     毎日新聞      中日新聞        毎日新聞

(図の説明:1番左の図は、2020年3月の世界における新型コロナウイルス感染者数推移で、左から2番目の図のように、中国では感染者数が頭打ちになったのに対し、中国以外では感染者数が等比級数的に増えている段階だ。右から2番目の図は、3月11日の世界の感染者が多い10ヶ国だが、検査数も影響しているようだ。1番右の図は、3月21日時点の日本国内の県別感染者数で、人口密集地帯に多いことがわかる)

   
2020.2.28   2020.3.23     2020.3.25      2020.3.8西日本新聞
東京新聞    朝日新聞       四国新聞       *1-2-5より

(図の説明:1番左の図は、2020年3月27日時点の新型コロナウイルス感染者が多い国・地域の感染者数と死者数だ。日本では、左から2番目の基準で学校を再開するが、右から2番目のチェックリストに従ってチェックすることになった。このように、連日、新型コロナウイルスの予防策が報道され浸透した結果、1番右の図のように、インフルエンザ患者数も前年より6割減少するという効果があったそうだ)

(1)新型コロナの感染・予防・治療について
1)欧米の感染者とその対応
 新型コロナは、*1-1-4のように、中国で始まって多数の死者を出したため、世界でアジア人やマスク姿の人が差別されていたが、現在は、*1-1-1・*1-1-2のように、欧米で蔓延している。日本でも、武漢ウイルスと呼んで中国人を差別する論調が多かったが、人種差別だけでなく病気にかかった人(感染源という加害者である以前に感染させられた被害者)を差別するのも、知識と教養の欠如による人権侵害だ。

 世界では、*1-1-1のように、3月26日20時現在、感染者47万人超、死者2万人超(イタリア7,500人超、スペイン3,600人超、米国1,000人超、フランス1300人超、英国460人超、オランダ350人超)であり、さらに、米国は、*1-1-2のように、3月下旬から感染者が急増して3月27日までに感染者が85,000人超となり、*1-1-3のように、全米の感染者数の3割がニューヨーク市に集中して病床や人工呼吸器が不足し、医療崩壊が懸念されているそうだ。

 米国でマスクが普及しなかったのはドレスコードになかったからだそうだが、欧米は難民や外国人労働者の流入も多く、貧しくて栄養が十分でなかったり、予防の知識・意識・ツールが乏しかったり、医療へのアクセスが悪かったりする人も多いと思われる。そのため、今後は、年齢や持病の有無だけでなく、感染して亡くなった方の背景も調査した方が良いだろう。

 このような中、日本では、花粉症を起こす杉花粉やフクイチ由来の放射性物質から防護する目的でマスクを常用している人が多く、栄養状態も全体としては悪くなく、予防の知識やツールもあるため、新型コロナやインフルエンザが流行しても、よほど意識の低い人でなければ一定の抵抗力はあると考える。

2)新興国(開発途上国)での感染と強制的対応
 インドネシアのジャカルタでは、*1-1-5のように、3月20日までに369人が感染して32人が死亡し、感染者の6割が首都ジャカルタに集中しているため、州知事が3月20日に非常事態宣言を出して州内の全企業にオフィス利用の停止を強く求めたほか、娯楽施設の営業を禁止し、非常事態宣言中は州内に軍や警察が展開して住民の外出を事実上制限するそうだ。

 また、インドでも、*1-1-6のように、3月24日、首相が国民向けにテレビ演説して、新型コロナの感染防止策として、3月25日から21日間、全土を封鎖すると表明している。インドやインドネシア等の新興国は、人口当たりの医師数や医療資源が乏しく、一般の衛生環境や教育・意識にもバラツキが大きいため、家にいる以外に予防手段がないというのは本当だろう。

3)日本での感染と対応
 日本の感染症のわかりやすい歴史は、1822年に世界的大流行が九州(長崎?)から日本に及んで初めてコレラが日本で発生し、1858年や1862年にも大流行が発生し、1879年と1886年に死者が10万人の大台を超えたものだ。コレラの予防には、衛生の改善と清潔な水へのアクセスが必要なのだが、江戸(東京)や大阪に人口が集中し、上下水道等の衛生関係インフラが整っていなかった時代に、免疫のないところに外国からコレラ菌が入ってきて大流行になったのである。

 現在の日本は、上下水道・衛生意識・医療などのインフラが整ってきている上、東大医科研のチームがコメに遺伝子組換技術を用いてコレラ毒素B鎖を発現させたコレラワクチン米を開発して常温保存可能な経口ワクチンを作っており、まだ臨床に応用されていないのが残念ではあるものの、よい技術を見つけているので、他の感染症にも応用が利きそうである。

 つまり、人口が密集して衛生環境の良くない大都市で、開国やグローバル化により一般人が免疫を持っていない菌が入った場合に感染症が大流行しているのであり、新型コロナも似ているため、開発途上国や先進国大都市の衛生弱者にリスクが高いと思われる。

 従って、外国で非常事態宣言を出したり、都市封鎖をしたりしたから、日本でも同様にしなければならないというわけではなく、*1-2-3のように、日本国内の感染者が3月25日午後10時までに1,269人に上り、東京都の感染者数が210人になって都道府県で初めて200人を超えたと書かれているものの、東京都の人口が13,935,645人(2019年9月1日現在)であることを考えると、感染者割合は(あまり検査していないせいかもしれないが)0%に近いのである。

 また、*1-2-4のように、「新型コロナの感染拡大が、重大局面を迎えつつある」「爆発的な急増を防ぐ措置として、東京都と関東近県が週末の往来を自粛するよう住民に求めたのはやむを得ない」「緊急事態宣言を出す」「首都封鎖」などと言うのは、騒ぎ過ぎだろう。ただし、東京都は下水道が古くて容量が足りず、上水道も節水しすぎて不潔なくらいであり、通勤・通学で近県から満員電車という密閉空間で1日300万人近くが往来するため、日本国内では感染リスクが高い方にあたる。 そのため、東京や大阪などの大都市で新型コロナが蔓延しているからといって、全国一斉に休校や自粛をする必要はないと思う。

 その新型コロナの感染が広がる一方で、*1-2-5のように、インフルエンザの患者数は前年と比較して6割減少しているそうだ。これは、新型コロナの感染予防で、手洗い・マスク着用・せきエチケットなどの取り組みが全国に浸透していったことが奏功しているそうで、これは、新型コロナの感染拡大防止にも繋がるものである。 

 なお、東京慈恵会医科大学の浦島教授が、*1-2-6のように、日本で新型コロナが感染爆発しない理由を挙げておられる。私は、これに加えて、ウイルスの弱毒化への変異があると思うが、その理由は、宿主を殺してしまえばウイルスは増殖できず、宿主を殺さない方向に変異したウイルスだけが次に感染する機会を得て増殖するからである。つまり、油断や楽観視は禁物だが、人権侵害になるほど騒ぎ過ぎる必要はないと思われるウイルスだ。

4)感染源特定と病人差別
 *1-2-1のように、医師の新型コロナ感染が判明した和歌山県有田病院の病棟内をドローンで撮影しようとしたり、ふるさと納税に対する有田町の返礼品を拒んで“地元いじめ”をしたり、感染者が悪いことをした犯人であるかのように追跡したり、感染者を見下すような報道をしたり、患者の住所を教えてほしいという要求をしたりして、新型コロナ感染者いじめをしたのは、(自分は“普通”だから上だと思っている)日本人の知識や教養に欠ける病人差別だ。

5)治療差別
 政府が、*1-2-2のように、(どのような病気であれ、病室に複数の人を収容するのは治療環境が悪すぎるが)感染症指定医療機関などに個室管理可能なベッドを1万2千床確保するのはよいことだ。ただ、厚労省は「爆発的感染拡大が起きれば、最悪で東京だけで1日4万5千人の感染者が出る」としているが、そもそも無症状や軽症者を病院に入院させておくことは他の病気ではありえない。感染防止のためなら、自宅やホテルなどの借り切りで、徹底して衛生管理すればよいと考える。

 しかし、重症化した人には治療するのが医療先進国であり、ここで“トリアージ”と呼んで年齢による治療差別を行うのはよくない。さらに、コロナ感染については、その重症化しやすさについて、必要以上に年齢差別して報道しているように見える。

(2)ハンセン病差別

   

(図の説明:左図のように、ハンセン病は1947年に治療薬ができた後も隔離政策が続き、本人だけでなく家族も著しい差別を受けた。国の隔離政策の根拠となった「らい予防法」は1996年にやっと廃止されたが、その後も元患者や家族に対する差別は続いている。中央の図は、ハンセン病への対処の歴史であり、人権よりも国家の対面を重んじるために隔離政策をとったことがわかる。そして、右図のように、その判断には科学的根拠がなく、それこそ国家の恥である)

 完治する病となり科学的根拠がなくなっても長く続いた隔離政策で、ハンセン病の元患者は、*2-2のように、社会からだけでなく家族からの偏見・差別・人権無視にも苦しんだ。例えば、元患者は家族に迷惑がかかるからと療養所内で偽名を使わせられ、隔離政策の誤りを国が認めた2001年の熊本地裁判決を機に実名に戻って故郷に帰ろうとしても家族が受け入れず、死んでも実家の墓に骨を引き取ってもらえないという状況があった。

 しかし、これは、家族が率先して社会復帰の壁になったわけではなく、長く引き離された上に日本社会から受けたすさまじい家族差別もあったため起こったことである。そのため、国の責任が認められ、元患者に補償がなされ、差別されながら顧みられかった元患者の家族に対しても、2019年11月22日に「ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律」が公布・施行され、名誉回復にも言及されたのは遅すぎたとしてもないよりはずっとましだったのである。

 ハンセン病の元患者と家族は国の誤った政策により、*2-1のように、熊本地裁が指摘したとおり、人格形成や自己実現の機会が失われ、家族関係の形成を阻害されるという人生を台無しにされて取り返しのつかない「人生被害」を受けたのだから、国が賠償をするのは当然である。さらに、らい予防法廃止後も偏見や差別を除去しなかったことは驚きであると同時に憲法違反でもあるのに、この当たり前の判決が“画期的”なのである。

(3)「犯罪者≒精神障害者」とする精神障害者差別
1)責任能力の有無は本当の争点だったのか? ← 犯罪者を精神障害者に仕立て上げる日本の刑法の非科学性と精神障害者差別
 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者45人を殺傷して殺人罪などに問われた植松被告の裁判員裁判が横浜地裁で開かれた。日本では、殺人が明白な場合の弁護側の方針は、*3-1のように、「精神病で判断力がなかった」という精神鑑定結果を出すことが多いが、ここで言われた大麻精神病などという精神病を私は聞いたことがない。

 それにもかかわらず、弁護士がこういう弁護方針を採用する理由は、*3-5のように、刑法第39条に「心神喪失者の行為は、罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」と規定されているからで、その前提として、違法行為を行った者の責任を問うためには、責任能力(①事理弁識能力:物事の善し悪しが判断できる能力) ②行動抑制能力:自身の行動を律することができる能力)が必要とされているからだ。

 そして、“心神喪失者”とは「精神障害者の中でも行為の善悪の判断が全くつかない人」、“心神耗弱者”とは「精神障害者の中で判断能力が著しくつきにくい状態の人」とされているが、現在の精神病に“心神喪失”や“心神耗弱”という医学的症状はない。つまり、刑法第39条は、1907年に施行された刑法の枠組みのまま使われており、そこには現在の精神病医学の概念は入っておらず、医学的に正しくないのである。

 その上、刑法第39条は、「精神病者を、“平均人ならざる”ものであるため、“反社会的”で“危険な個人”である」と、精神医学とは全く関係なく位置付けており、法律で精神病患者を差別することになっている。そのため、“心神喪失”“心神耗弱”という言葉は正確に定義しなおし、そこに入れるべき人も検討し直すべきだ。さらに、「泥酔していたから」「薬物中毒だったから」というのは、「判断能力がなかった」等として責任を問わない理由にはならないと考える。

 植松被告の弁護側は、*3-1のように、「植松被告は2015年頃から大麻を乱用するようになって問題行動が増え、『障害者は不幸をつくるから殺す』という考えに至ったのは大麻乱用による飛躍や病的高揚感があったからだ」と指摘しているが、横浜地裁判決は、差別的な主張を繰り返した植松被告の事件当時の刑事責任能力を認めて、求刑通りの死刑判決を言い渡した。

 しかし、その裁判の進行中、検察側・弁護側・裁判所・メディアの報道は、「被告の障害者に対する差別的な考えが犯行を引き起こした」としていたが、その基になっている考え方が、非科学的な精神障害者差別そのものであることには、全く気を止めていなかった。

 一方、*3-3の埼玉県熊谷市の強盗殺人事件では、罪に問われたペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告に対して、東京高裁が「統合失調症の影響で心神耗弱状態だった」と判断して一審の死刑判決を破棄したが、「統合失調症による被害妄想→心神耗弱→強盗殺人」という論理にはそれこそ飛躍がある。そのため、東京高裁が被告の供述を持ち出して行動制御能力がないと結論づけたのは、真犯人ではないと気付いたからではないかと思うが、それなら真犯人を捕まえて罰すべきであり、刑法39条をこのように使えば、統合失調症患者にとってはいわれなき差別を助長されることになるわけだ。

 そして、このような裁判や報道が繰り返された結果、*3-4のように、全国には首長部局に知的・精神障害者を1人も雇用していない自治体が少なくとも41%あり、全体の13%は一般職員(短時間を含む)の募集条件からも知的・精神障害者を除外するという雇用差別を行うことになり、知的障害者や精神障害者に雇用の機会が与えられないという実害が生じているのである。

2)本当の論点は、家族や社会のためではなく、本人が主体として差別されず尊厳を持って幸福に生きられるか否かである
 裁判で「意思疎通のとれない人は社会の迷惑」「重度障害者がお金と時間を奪っている」等と語った「津久井やまゆり園」事件の本当の論点が、植松被告の責任能力でないことは確かだ。しかし、本当の論点を語るのは難しい上に、いわれなき非難を浴びる可能性も高い。そのため、「気の毒だが、距離を置こう」と考えるのが普通の人だが、それでは何も解決せず、誰も今より幸福にすることができない。

 そのような中、*3-4のように、重度身体障害があって18歳までの大半を施設で暮らした、れいわ新選組の木村参院議員が、障害者本人の立場から「津久井やまゆり園」事件について述べられたのは、参考になる。木村議員が、「①彼が言っていることは皆さんにとっては耳慣れなくて衝撃的でしょうが、同じような意味のことを、私は子どもの頃、施設の職員に言われ続けました」「②19歳で地域に出ていなければ、津久井やまゆり園に入所していたかもしれず、殺されていたのは私かもしれません」「③親が頼れるのは施設だけでしたが、私にとっては牢獄のような場所でした」「④食事を食べさせてもらえないこともありました」「⑤自由もプライバシーも制限され、希望すら失って決まった日常を過ごす利用者を見た人に偏見や差別の意識が生まれても不思議ではありません」と語っておられるのは、施設で人間としての尊厳を失って過ごすことを余儀なくされた経験のある本人にしか言えないことだろう。

 また、「⑥私は、被告だから事件を起こしたとは思えません」「⑦私は親から施設に捨てられた歓迎されない命だという思いを抱いて生きてきました」「⑧公園デビューをした時、息子と子どもたちが砂場で遊んでいて、車いすに乗った私が息子に声をかけ、私が母親だとわかった瞬間、周りのお母さん方が自分の子どもを抱き上げて帰ってしまいました」「⑨小学校の授業参観で教室が狭くて他のお母さんたちが入れないので『詰めていいですよ』と言っても、半径1メートル以内には近寄ってきません」「⑩社会から排除することそのものが差別です」というのは、「津久井やまゆり園」事件で如何にも人道主義者であるかのように植松被告を批判している多くの人が無意識に行っている行為だ。

 そして、「⑪福祉サービスは増えたが、重度訪問介護が就労中などに公的負担の対象外」「⑫移動支援が自治体により差がある」「⑬重度障害を理由に普通学校への入学が認められない例もある」については、高齢者のみに偏らない訪問介護が必要であり、尊厳を失わずに生きられるための普通教育も重要で、こうした課題を解決できた時に、「津久井やまゆり園」事件は意味を持てるのである。

 なお、重度障害者を家族や社会の都合ではなく、本人の幸福のためにどこまで治療して助けられるか、どこから本当の安楽死を認めるべきかという難しい論点も見逃されているが、これは、森鴎外の「高瀬舟」以来、日本では解決できていない重たすぎる課題である。

(4)後見制度について
 税理士は、事業承継が困難な中小企業や相続が発生しそうな事業主に普段から接し、税務に関する代理・税務書類の作成・アドバイスなどをしているため、成年後見や任意後見のニーズを知る機会の多い専門職だ。また、税理士法の1条、2条に基づき、独立・公正な立場で税務代理や税務書類の作成を行い、顧客の求めに応じて財務書類の作成や記帳代行も行うため、税理士が蓄積してきた知識・経験は成年後見人や成年後見監督人にも役立つものである。そのため、関東信越税理士会が、2019年11月、「成年後見人等養成研修」を行い、私もそれに参加したが、内容や資料が充実して気合いの入ったものだった。

 このような中、西日本新聞が、2019年11月26日、*4のように、「適正な類型をどう判断するか」「後見偏重の修正はこれからだ」と記載しており、私もそれに賛成だ。また、90代の父親から金を搾り取っている息子には呆れるが、そのように育てた父親にも責任の一部はあるし、他の兄弟とは異なる事情があるのかもしれないため、父親の本心をよく聞いた上で、遺産分割についての遺言を作っておいたらどうかと思う。

 なお、私は、本人の意思を尊重する指針が出て、法定後見が本人の意向が尊重される方向に改正されたのは、日本国憲法も「第11条:国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」「第13条:すべて国民は個人として尊重され、生命・自由及び幸福追求に対する権利は、公共の福祉に反しない限り、最大の尊重をする」と定めていることから、よかったと考えている。

 従来の禁治産・準禁治産制度は、1898年に明治憲法下の明治民法で定められたもので、禁治産者・準禁治産者になると、その事実が公示され戸籍に記載されてプライバシーが侵害され、呼称が偏見や差別を生み、障害者本人の権利や利益の擁護はしておらず、障害者と取引を行った相手の取引の安全性も図られていなかったため、2000年の民法改正で本人の意思や自己決定権の尊重、ノーマライゼーションを理念として民法の成年後見制度が施行されたことはよかったのだ。しかし、これまで後見に慣れてきた専門家は、「後見にしておけば間違いない」という意識が強く、制度の利用が後見に偏りがちという欠点があるそうだ。
    
 関東信越税理士会の「成年後見人等養成研修」の研修の終わりに課せられ、研修内容を基にして私が書いたレポートの一部が下のとおりだが、ここでも「精神障害」を一括して後見の必要な人と定義しているため、医学的症状と整合性がとれ人権に配慮した用語への修正が必要だ。

1)現在の後見制度の種類
(イ)法定後見制度(民法838条~876条の10)
 従来の禁治産・準禁治産制度を、各人の判断能力や保護の必要性の程度に応じて、補助(新設)、保佐(準禁治産の改正)、後見(禁治産の改正)に改めたもので、被補助人・被保佐人・成年被後見人を支援するために、家庭裁判所が適当と認める者(補助人・保佐人・成年後見人)を選任して権限を付与するもので、開始時には裁判所が監督人を選任する。

①補助(民法876条の6~876条の10)
 「補助」は、比較的軽度な精神障害(認知症・知的障害・精神障害)がある人のための制度で、本人の重要な財産に影響を与える行為について、状況に応じて補助人に同意権や代理権を付与して保護を図るもので、本人・配偶者・四親等内の親族・後見人・後見監督人・保佐人・保佐監督人又は検察官が、裁判所に「補助開始の審判」を申立てることにより開始される。本人以外の者の申立てによって「補助開始の審判」を行う場合は、本人の同意を要する。申立により、家庭裁判所は、補助人を選任したり、当事者が選択した特定の法律行為に関して代理権や同意権を付与したり、代理権の追加・取消をしたり、補助の終了を行ったりする。

②保佐(民法876条~876条の5)
 「保佐」は、精神障害(認知症・知的障害・精神障害)により「事理を弁識する能力が著しく不十分な者」を対象とする制度で、一定の「重要な行為」について保佐人の同意を必要とすることで、本人が不利益を受けるのを防ごうとするものだ。保佐の開始も、本人・配偶者・四親等内の親族・後見人・後見監督人・補助人、補助監督人又は検察官・任意後見受任者・任意後見人・任意後見監督人・市町村長が、裁判所に「保佐開始の審判」を申立てることによって行われ、補助とは異なり本人の同意は不要で精神鑑定が必要である。

 これにより、家庭裁判所は本人のために保佐人を選任し、「重要な行為」を行うには保佐人の同意が必要となり、「重要な行為」でなくとも同意権付与の審判を経れば保佐人に同意権を付与することができ、特定の法律行為については、当事者が選択したものについて保佐人に代理権を付与することができる。本人の判断能力の回復により保佐開始の原因が止んだ時は、家庭裁判所は本人・配偶者・四親等内の親族・保佐人・保佐監督人等の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない。また、判断能力の減退又は回復により、後見開始又は補助開始の審判に移行する時は、審判の重複を避けるため、家庭裁判所は職権で保佐開始の審判を取り消す。

③後見(民法843条~875条)
「後見」は、精神障害(認知症・知的障害・精神障害)により「事理を弁識する能力を欠く状況にある者」を対象とする制度で、自分の行動の意味や結果を理解できないため、単独で契約などを行った場合に不利益を被る恐れがある場合に、成年後見人が代わって契約等を行い、本人を保護する制度だ。後見の開始は、本人・配偶者・四親等内の親族・後見人・後見監督人・補助人、補助監督人又は検察官・任意後見受任者・任意後見人・任意後見監督人・市町村長が、裁判所に「後見開始の審判 」を申立てることによって行われ、本人の同意は不要だが、精神鑑定が必要である。

 家庭裁判所は後見開始の審判において、本人(成年被後見人)のために成年後見人を選任し、成年後見人には幅広い権限が付与される。本人の判断能力回復により後見開始の原因が止んだ時は、家庭裁判所は本人・配偶者・四親等内の親族・成年後見人・後見監督人等の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。また、判断能力の回復により、保佐開始又は補助開始の審判に移行する時も、審判の重複を避けるため、家庭裁判所は職権で後見開始の審判を取り消す。成年後見人は、本人の財産に関する法律行為について代理権、同意権又は取消権を付与され、本人のためにその職務を行うとともに、善管注意義務を負う。具体的には、その職務を行うにあたり、「意思尊重義務」「身上配慮義務」が求められる。

④成年後見監督人等
 2000年の改正により、成年後見人・保佐人・補助人の権限乱用に配慮し、成年後見制度の信頼性や安全性をより確実なものにするため、法定後見制度で家庭裁判所が必要と認めた場合は、成年後見人の職務を監督する者(個人・法人とも可)を選任できる旨の規定が設けられた。そのため、成年後見監督人等の職務は、i)成年後見人等の事務を監督する ii) 成年後見人等が死亡で欠けた場合に、遅滞なく後任者の選任を家庭裁判所に請求する iii)急迫な事情がある場合は、成年後見人等に代わって必要な処置をする iv) 成年後見人等と本人の利益が相反する場合は本人を代理する などだ。そのほか、成年後見監督人等は、いつでも成年後見人等の事務に関する報告を求めて成年後見人等の事務や本人の財産状況を調査することができ、本人の財産の管理、その他後見等の事務について必要な処分を命ずることを家庭裁判所に請求したり、監督過程で不正行為を知った場合には、成年後見人等の解任を家庭裁判所に請求したりすることができる。

(ロ)現在の任意後見制度(任意後見契約に関する法律)
 任意後見制度は、2000年に施行された「任意後見契約に関する法律」で新設された制度で、本人が契約締結に必要な判断能力を有しているうちに、将来の判断能力低下に備えて任意後見人や支援の範囲等に関して公正証書により契約を行い、実際に判断能力が低下した時に、家庭裁判所による任意後見監督人の選任によってその契約の効力が生じる制度である。

①任意後見制度の特徴
 任意後見制度の特徴は、自らの意思で決める自己決定権の尊重と任意後見監督人の選任による信頼性の確保だ。

②任意後見契約の締結
 任意後見契約は、法務省令で定める公正証書によって代理権の有無・範囲を明確にして作成し、公証人が直接関与することによって委任者の真意による適法で有効な契約締結が担保することが意図され、登記所へは公証人が遺漏なく登記する。

③任意後見契約の開始と任意後見監督人の選任
 任意後見契約の締結後、本人の事務弁識能力が不十分な状態になった時は、本人の住所地を所管する家庭裁判所に対して、任意後見監督人の候補がいる場合にはその旨を記載し、通常は書面で審判の申立を行い、家庭裁判所が任意後見監督人を選任して任意後見契約が開始される。この申立ができるのは、本人・配偶者・四親等内の親族・任意後見受任者のみである。

④法定後見と任意後見契約の関係
 任意後見契約が登記されている場合には、本人の自己決定権を尊重する観点から、法定後見の開始の申立がなされた時は、任意後見を優先して裁判所は原則として法定後見開始の申立を却下する。ただし、任意後見に与えられている代理権の範囲が狭すぎ、悪質な訪問販売による被害の恐れが強い場合など、本人の利益のために特に必要があると認められる場合には、例外的に法定後見開始の審判をすることができる。

⑤任意後見制度の利用形態
 任意後見制度の利用形態には、i) 本来型(任意後見契約を単独で結び、本人の判断能力が低下してから任意後見を開始するもの) ii) 移行型(任意後見契約と民法の委任契約・代理権授与契約による財産管理等に関する契約を同時に締結し、本人の判断能力が低下してから任意後見を開始するもの) iii) 即効型(判断能力が多少不十分だが契約締結時に意思能力はある者が、任意後見契約の締結と同時に任意後見監督人の選任を申立て、直ちに契約を発効させるもの) がある。

(ハ)後見登記制度
 成年後見登記制度は、法定後見(補助・保佐・後見)及び任意後見に関する事柄を公示するための制度で、従来の禁治産宣告・準禁治産宣告の戸籍記載に代わる新たな方法として「後見登記に関する法律(平成11年法律152号)」に基づいて創設されたものだ。これは、後見に関する情報を「登記」という方法によって管理・証明し、この登記情報の開示を求めることができる者を限定することによって、取引の安全性と本人のプライバシー保護の両立を図ったものである。登記は、原則として裁判所書記官又は公証人の嘱託に基づいて行われ、申請に基づいて行われる登記は、変更又は終了の登記等の一部に限られる。

(二)2016年(平成28年)度の改正による影響
 ①成年後見人が、家庭裁判所の審判を得て、成年被後見人宛の郵便物の転送を受けることが
  できるようになった(郵便転送。民法第860条の2,第860条の3)
 ②成年後見人が、成年被後見人の死亡後にも行うことができる事務(死後事務)の内容と
  その手続が明確化された(民法第873条の2)

・・参考資料・・
*1-1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN3V6SR3N3VUHBI01J.html (朝日新聞 2020年3月26日) 新型コロナ、死者2万人超 イタリアとスペインで半数に
 世界で感染拡大する新型コロナウイルスによる死者数が26日、2万人を超えた。世界保健機関(WHO)や各国政府の発表をもとに集計している米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センターによると、イタリアが7500人超、スペインが3600人超で全体の半数以上を占めた。感染が急増している米国でも1千人を突破。世界の感染者数は同日午後8時現在で47万人を超えている。欧州での感染の中心となっているイタリア政府は25日、死者数が前日比で683人増え、7503人になったと発表した。感染者も7万4386人に達し、8万1千人超の中国に迫る勢いだ。イタリアでは移動の制限や公園の閉鎖などの措置が全土に広がっている。14日に政府が警戒事態を宣言したスペインでは死者数が前日より738人増えた。感染者数も4万9千人超となった。首都のあるマドリード州で被害が集中している。そのほかの死者数はフランスが1300人超、英国が460人超、オランダが350人超で、イタリア、スペインを含む欧州5カ国で計1万3千人超となり世界の死者数の6割を占める状況だ。

*1-1-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202003/CK2020032702000301.html (東京新聞 2020年3月27日) <新型コロナ>世界感染50万人超 米が中国抜き最多
 米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、新型コロナウイルスの感染者が二十六日、世界全体で五十万人を超えた。二十四日に四十万人に達したばかりで、二十日の二十五万人から一週間足らずで倍増。米国が初めて中国、イタリアを上回って世界最多となり、流行の拡大は新たな局面に入った。勢いは衰えず、終息の気配は見えない状態が続いている。三月は欧州で感染拡大が続いてきたが、下旬からは米国での感染者が急増し、二十七日までに八万五千人を超えた。中国は横ばいで推移、欧州ではイタリアで被害が最も大きい。世界全体の死者は二十五日に二万人を超え、二十六日時点で二万三千人に上っている。世界保健機関(WHO)の二十六日付状況報告によると、感染者の54%、死者の67%は欧州地域事務所管内(旧ソ連諸国を含む)に集中しており、三月に入り「パンデミック(世界的大流行)の中心地」(テドロスWHO事務局長)となったことを如実に反映している。同報告によると、前日からの新規感染者についても、欧州は世界全体の61%と多いが、単独で24%に上っているのが米国で、ここ数日は一日当たり一万人前後の増加が続いている。三億六千六百万人の人口を抱える米国での感染拡大防止策が効果を上げるか否かが、今後の世界的流行の情勢を左右することになる。二十一世紀に入ってからのコロナウイルスによる新たな感染症では、重症急性呼吸器症候群(SARS)が感染者約八千人で死者約八百人、中東呼吸器症候群(MERS)が感染者約二千五百人で死者約八百六十人の被害が出ている。

*1-1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14418428.html (朝日新聞 2020年3月27日)  感染集中、NYの医療窮地 病床、14万床必要なのに5万床 新型コロナ
 全米最大の都市、ニューヨーク(NY)市で新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。全米の感染者数の3割が集中。病床や人工呼吸器の数が不足しており、医療崩壊が懸念されている。25日昼、NY市のジョン・F・ケネディ空港の出発ロビーには、感染を避けようと防護服に身を包んだり、大型ゴーグルを着けたりする乗客たちの姿があった。「NYで暮らすリスクはあまりにも高すぎる」。市内の金融機関勤務のアジア系男性がマスクを押さえながら語った。「NYからの逃避」という言葉が、たびたび報じられている。
市内で感染者が最初に確認されたのは今月1日だが、3週間あまりで約2万人まで増え、死者も280人に達した。デブラシオ市長は25日夕、会見で「NY市はこの危機の中心地だ」と危機感をあらわにし、「4月は、3月より厳しい状況になる」と語った。感染者が次々と確認される中、医療態勢の不備が懸念されている。NY市によると、最も多くの感染者が出ているクイーンズ地区の公立病院「エルムハースト・ホスピタル・センター」(545床)では24時間のうちに感染患者13人が死亡した。集中治療室がいっぱいになり他の病気の患者を別の医療機関に移し始めた。NY州のクオモ知事によると、州内では今後2~3週間で感染者数がピークを迎え、最大で推計14万床必要だが、州内には約5万3千床。NY市内の大型会議場を含む4カ所に仮設病院を作っているが、まだ足りない。人工呼吸器も、NY市だけで1万5千個必要だが、その6分の1しかないという。NY市当局の初期対応にも注目が集まる。デブラシオ氏は今月2日時点で「1200床のベッドを確保している」と強調し、「我々には対処する能力がある」と封じ込めに自信を見せていた。12日に緊急事態宣言。その後も、1866校ある市内の公立校は「給食に頼っている子どもも多い」と続けており、保護者や教員の要請を受け、16日に休校した。ニューヨーク・タイムズ紙は「デブラシオ氏は、日常生活を送るよう市民を促し続けた」と批判し、保健当局の複数の担当者が「市長が態度を改めない限り、辞任する」としていると伝えた。市の対応が後手に回った感は否めない。

*1-1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55420100Y0A200C2000000/ (日経新聞 2020/2/8) 新型肺炎、各地で広がるアジア人差別 NYで暴行被害
 中国で多数の死者を出している新型コロナウイルスの拡大を受けて、世界各地でアジア人への差別が問題となっている。米ニューヨークの地下鉄の駅では男がマスクをつけたアジア系の女性に暴行を加える事件が発生した。SNS(交流サイト)の普及で差別的な発言やヘイトスピーチ(憎悪表現)が拡散しやすくなっており、冷静な対応が求められている。「マスクの中国人女性が暴行された」。ニューヨーク在住のトニー・ホー氏は4日、ツイッターに事件の様子をとらえた動画を投稿した。マンハッタンの地下鉄の駅内を走る女性の前に突然、男が立ちはだかり「俺に触るな」などと罵りながら傘や手でたたく様子が映っていた。ホー氏は「多くのアジア人は新型ウイルスが流行する前からマスクをつけているのに、急に脅威と感じるようになった」と嘆く。「アジア人が事件に巻き込まれても、その情報は広まらない。アジア人は従順で気が弱いと思っている」とも書き込んだ。移民に寛容なイメージの強い隣国カナダも例外ではない。トロント近郊の中国系住民が多く住む地区では、最近中国を訪れた家族のいる子どもをしばらく通学させないよう学校に求める署名運動が起きた。インターネット上で約1万人の署名が集まったが、学校側は「安全の確保という善意に基づいていたとしても、隔離を求めるのは人種差別だ」として要求を却下した。中国料理店のサイトへの人種差別的な書き込みや学校でのいじめなども報告されているという。欧州で初の感染者が確認されたフランスでも「アジア人には近づかないほうがいいと露骨に避けられた」などの声が上がっている。ジャーナリストのリンラン・ダオ氏はツイッターで「アジア人だからと侮辱され、公共交通機関から蹴り出される。これは冗談やネット上のヘイトではなく、現実に起こっていることだ」と訴えた。差別の対象となっているのは中国系住民だけではない。仏高級ブランド「ルイ・ヴィトン」の公式アカウントがSNSに掲載した日本人女優の広告には「コロナウイルスか?」といった差別的なコメントが多数寄せられた。問題のコメントは現在は削除されているが、ルイ・ヴィトン側が1週間近く対応を怠ったとしてネット上では非難の声が上がっている。仏紙パリジャンは「中国人か韓国人かなんて分からないから、アジア人の横には座らない。差別ではなく予防だ」という市民の意見も紹介した。米紙ニューヨーク・タイムズは、日本でもツイッターで「中国人は日本に来るな」がトレンド入りしたことを取り上げた。同紙は「中国の経済・軍事力の成長がアジアの隣国や西欧諸国を不安にさせる中で、新型コロナウイルスが中国本土の人に対する潜在的な偏見をあおっている」と分析している。フランスでは「私はウイルスではない(#JeNeSuisPasUnVirus)」として、ツイッターで人種差別をやめるよう訴える投稿が相次いでいる。仏国立人口学研究所のヤーハン・チャン氏は地元メディアの取材に対し「学校や公共機関での教育活動が必要だ。アジア人への人種差別を止めるため、やるべきことがたくさんある」と述べた。国連のグテレス事務総長は4日に新型肺炎を巡り「人種を理由にした差別や人権侵害を懸念している」と発言した。

*1-1-5:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57057480R20C20A3I00000/ (日経新聞 2020/3/21) ジャカルタ、新型コロナで非常事態宣言 オフィス利用中止を要請
 インドネシアの首都ジャカルタのアニス州知事は20日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて非常事態宣言を出した。州内の全企業にオフィス利用の停止を強く求めたほか、娯楽施設の営業を禁止した。人の移動を制限して感染拡大を食い止める狙いだが、ジャカルタには企業が集中していて、ビジネスに大きな影響が出ることは避けられない。当面、4月2日までの2週間を「災害非常事態」として、州内の全企業に原則としてオフィスを利用しないよう要請するほか、市内の映画館やバー、カラオケ店などの営業を禁止する。公共交通機関の運行も減らす。アニス氏は「責任のある態度とは、外での活動をすべてやめることだ」と述べ、住民に対して、仕事以外でも外出をしないよう求めた。インドネシアでは20日までに369人が感染し、32人が死亡した。感染者の6割がジャカルタに集中する。州政府は14日、全住民に対して外出しないように要請したが、強制力を伴わず、出勤を続ける住民も多かった。感染拡大が続くため、より強い対応が必要と判断した。非常事態宣言中は州内に軍や警察が展開して、住民の外出を事実上制限するという。周辺自治体も含めたジャカルタ首都圏には約3000万人が住む。ジャカルタ特別州だけでも個人企業もあわせて120万の企業が集まるインドネシアの経済の中心だ。首都の人の移動が大きく制限されることで、経済に大きな影響が出そうだ。

*1-1-6:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57193700V20C20A3000000/ (日経新聞 2020/3/25) インド、新型コロナで全土封鎖 25日から21日間
 インドのモディ首相は24日、国民向けにテレビ演説し、新型コロナウイルスへの感染防止策として全土を25日から21日間、封鎖すると表明した。モディ氏は「ウイルスと戦うには社会的な距離を保つしかない。人々は外出が禁じられ、安全のため家で過ごしてほしい」と述べ、国民に外出を控えるよう呼びかけた。インドは22日に全土で外出禁止を命じ、その後は感染者が確認されていたデリーなどの75地区を31日まで封鎖する方針を示していた。モディ氏は「医療サービスが世界最高級とされたイタリアや米国でも感染拡大が防げていない。家にいる以外は手段がない」と強調し、一段と厳しい措置に踏み込むことを決めた。病院や検査機器などの医療インフラに対し、1500億ルピー(約2200億円)を拠出する考えも表明した。インドでは既に工場や航空便などが停止している。モディ氏は「経済的なコストが伴うが、ウイルスと戦うには断固とした措置が欠かせない」と言及。シタラマン財務相を中心に景気対策を検討しており、近く公表するとしている。


*1-2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020021601001755.html (東京新聞 2020年2月16日) “地元いじめ”に和歌山知事怒り ドローン撮影、返礼品拒否
 外科医らの新型コロナウイルス感染が判明した和歌山県湯浅町の済生会有田病院の病棟内をドローンで撮影しようとしたり、ふるさと納税に対する町の返礼品を拒んだりするなどの“地元いじめ”が相次ぎ、仁坂吉伸知事が16日の記者会見で怒りをあらわにした。県によると、感染した外科医の担当病棟がある3階付近を飛ぶドローンが14日から連日確認されているほか、「ふるさと納税の返礼品の受け取りは拒否できるか」との問い合わせが町にあった。本来は健康上の不安を相談するための県の電話窓口に「病院の患者の住所を教えてほしい」との要求まで来たという。仁坂知事は「怒りを感じる」と訴えた。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200326&ng=DGKKZO57239130V20C20A3EA2000 (日経新聞 2020.3.26) 入院 患者の選別カギに
 世界の感染者数は3日間で10万人増えるなどペースが加速している。東京都も25日、41人の新規感染を確認し、今週末の不要不急の外出自粛を求めた。患者が急増した場合、数が限られる病床を重症者に優先的に振り向ける対応が求められる。政府は感染症指定医療機関などで個室管理可能なベッドを1万2千床確保する。ただ爆発的な感染拡大が起きれば、厚生労働省の最悪の想定では東京だけで1日4万5千人の感染者が出ると推計される。そうした場合、政府は病床は重症者などに使い、無症状や軽症者には自宅療養を求める方針。もっとも、こうした「トリアージ」が円滑にいくかは不透明だ。都内の新型ウイルス専門外来の医師は「レントゲンでは明らかに肺炎なのに、本人は元気なことがある。見極めは簡単ではない」と話す。都の担当者も「入院している軽症者に『帰ってください』と説得できるのか。都で宿泊施設を確保するなど対応が必要になるかもしれない」と悩む。愛知県は24日、医療機関外で無症状や軽症の約100人を受け入れられる施設を月内にも開設すると発表した。相模原市も重症者に向けた病床を確保しておくため、一部の軽症患者らに自宅待機を要請しているという。
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 国内で25日に新型コロナウイルスの新規感染が確認されたのは午後9時現在78人で、感染者は41都道府県の1256人となった。東京都と北海道、愛知県でそれぞれ高齢者1人が死亡した。

*1-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55811680Z10C20A2I00000/ (日経新聞 2020.3.25) 新型コロナ、41都道府県で1269人感染 都で新規41人 (3月25日午後10時現在)
 新型コロナウイルスの感染が国内で広がっている。各自治体などによると、国内での感染者は25日午後10時までに1日の感染確認として最多の91人の感染が新たに確認されて計1269人に上っている。東京都の感染者数は210人で、都道府県で初めて200人を超えた。感染確認は計41都道府県。このほか海外から入国して空港検疫で確認されたのは23人(25日正午現在)。手洗いの徹底など一人ひとりの感染症対策が重要となる。なお、前日午後10時より後に明らかになるなどした感染者や退院患者、死者は当日の新規分には含めていない。

*1-2-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200327&ng=DGKKZO57276430W0A320C2EA1000 (日経新聞 2020.3.27) 「首都封鎖」を防ぐために行動を見直そう
 新型コロナウイルスの感染拡大が「重大局面」を迎えつつあるのは間違いない。感染者が急増している東京都と関東近県が週末の往来を自粛するよう住民に求めた。感染者の爆発的な急増(オーバーシュート)を防ぐ措置として、やむを得ない。今週に入り、東京都内の新たな感染者の報告数は24日から25日にかけて、2倍以上に急増した。海外渡航者を起点にした感染者集団(クラスター)が、すでにいくつも形成されている恐れがある。外務省は全世界を対象に不要不急の渡航中止を求めた。北海道は外出自粛の効果もあり爆発的な増加を免れた。首都圏もこれをモデルに感染者集団を抑え込む努力が不可欠だ。しかし、東京は通勤・通学で近県から1日300万人近くが行き来する。感染経路の特定が難しく、封じ込めは容易ではない。政府は26日、改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく対策本部を設置し、いつでも緊急事態宣言を出せるようにした。緊急事態宣言の目的は医療の機能不全を防ぐことだ。感染者の増加を遅らせ、その間に医療態勢を整えて死者を増やさないようにする。そのための措置が、厳しい外出制限だ。緊急事態を宣言すれば各国の「都市封鎖」に近い状態になり、社会や経済の活動が一段と制約される。今はその一歩手前だ。「首都封鎖」という最悪の事態を招かないためにも、一人ひとりが今の状況を自覚し、外出や飲食を伴う集まりを自粛するなど行動を見直すことが重要だ。住民に協力を求めるには、国や自治体が情報開示を徹底して信頼を得る必要がある。最悪の場合、感染はどこまで広がりうるのか、行動制限や外出自粛でどの程度抑制できるのか、どんな条件を満たせば普段の生活に戻れるのか。明確でわかりやすい説明が信頼を育み、対策の効果を上げる。政府の専門家会議は19日に大都市圏で感染者の爆発的な急増が起こる可能性が高いと指摘していたが、そのメッセージが浸透していたとは言い難い。政府が学校の休校を解除すると決めたのも、誤った安心感を与えた可能性がある。特に若い世代に危機感が薄い傾向があり、伝え方に工夫が必要だ。危機対応では専門家の知見を踏まえて国民に行動を促すのが、政治家の役割だということを改めて肝に銘じてほしい。

*1-2-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/590238/ (西日本新聞 2020/3/8) インフル患者、前年から6割減 新型コロナで予防浸透
 新型コロナウイルスの感染が広がる一方で、インフルエンザの患者数が急減している。医療機関の報告を基にした厚生労働省の推計によると、2020年の全国の累計患者数(3月1日時点)は、前年同期(約1024万人)の4割を切る約397万人で、600万人以上減少した。新型コロナウイルスの感染予防で手洗いやマスク着用などが徹底されたことが奏功しているようだ。厚労省がまとめた約5千の定点医療機関からの報告によると、20年の患者数のピークは1月6~12日の週で1医療機関当たり平均18・33人。前年ピークの週(1月21~27日)の57・09人を7割近く下回った。九州各県も同様の傾向で、今年ピークとなった週の患者数は、熊本県が15・99人で前年ピークより約7割減少。福岡(23・55人)や大分(26・59人)なども約6割減った。厚労省は昨年11月15日、例年並みだった前年より1カ月ほど早く全国的な流行が始まったと発表した。昨年9月~12月末までの患者数は約315万人で、前年同期の約106万人を大きく上回る勢いだった。だが、昨年12月以降、中国・武漢市で新型コロナウイルスの感染が急拡大。1月15日には国内初の感染者が確認され、マスク着用やせきエチケットなどの感染予防の取り組みが全国に浸透していったとみられる。厚労省感染症情報管理室の梅田浩史室長は「一人一人の感染予防意識が高まったことが要因で予防対策の効果が示された。新型コロナウイルスの感染拡大防止にもつながるだろう」と分析した。 

*1-2-6:https://forbesjapan.com/articles/detail/33158 (Forbs JAPAN 2020/03/19) 日本で新型コロナが「感染爆発」しない理由 浦島充佳:東京慈恵会医科大学教授
 3月11日、ドイツのメルケル首相は、「ドイツ国民の60%から70%が新型コロナウイルスに感染する可能性がある」と警戒を呼びかけた。こんなことが本当に起こりえるのだろうか?これが現実になった場合、感染者のうち1~2割が重症化し、入院治療が必要になること考えると、医療崩壊は免れないだろう。しかし、私はそうはならないと考える。その理由は新型コロナの感染拡大パターンにある。
●新しい感染症が入ってくるとどうなる?
 メルケル首相の言葉は、新しい感染症に対する基本モデルに基づいている。ある感染者がその感染症に対する免疫を持たない集団に入ってきた場合、かなりの勢いで広がっていく。しかし、集団免疫という考え方がある。感染から回復し免疫を得た人々が「免疫の壁」として立ちはだかるようになり、未感染者が感染者から感染するのを阻止する形となるのだ。すると、一定の未感染者を残しながらも、感染拡大は停止する。ウイルスの感染力が弱まって感染拡大が止まるわけではない。
●60%から70%が感染のカラクリ
 ある感染者がその感染症に免疫を全く持たない集団に入ったとき、感染性期間に直接感染させる平均の人数を「基本再生産数」と呼ぶ。これが1より大きければ感染は拡大し、1であれば感染は定常状態となり、1未満になれば感染は終息に向かう。新型コロナ、インフルエンザ、SARS の基本再生産数はだいたい2~3といわれている。計算式に当てはめると、基本再生産数が3のとき、集団免疫による感染拡大停止までに67%が感染することになる。メルケル首相が、「国民の60%から70%が新型コロナウイルスに感染可能性」を示唆した背景には、この計算があるのだろう。しかし、これは集団が新型コロナに対して全く免疫を持っていないという仮定に基づいている。
●私たちは新型コロナウイルスへの免疫を持っている?
 2009年にパンデミック化した新型インフルエンザを思い出してほしい。基本再生産数が3だったとしても国民の6~7割が感染するようなことはなかった。季節性インフルエンザに対する免疫が、新型インフルエンザにもある程度有効だったと私は考える。そもそも「新型」ではない「コロナウイルス」は、主に子供の風邪のウイルスとしてありふれたものである。これは「新型コロナウイルス」とは別物であり、多くの人が年に1,2回は感染している。そのため、子ども、子育て世代、小児科医などは新型コロナに対しても免疫を持っているかもしれない。また、新型コロナは8割が軽症である。無症状で経過する人も相当数いる。日本には春節前から多くの中国人が訪れていた。あくまで推測の域をでないが、既に日本人の多くが自分でも知らない間に感染しているかもしれない。そうであれば、先に示した集団免疫の作用で感染爆発は起こり難い。またメルケル首相の発言には「仮に政府が何も対策をとらなかったら」という仮定も入っている。しかし、日本も含め多くの国が既に強い対策に打って出ており、また人々は行動変容を起こし、大勢の人が集まるところに出かけることを控えている。よって、無防備に感染が拡大するとは考えにくい。新型コロナの感染拡大パターンは、次のようなものである。
●新型コロナの感染パターン
 3月9日夜、新型コロナ対策専門家会議の記者会見があり、新型コロナ対策専門家会議・尾身茂副座長が疫学的知見を発表している。感染症が進行中の集団の、ある時点における、1人の感染者から発生した二次感染の平均の数である、「実効再生産数」について述べている部分を引用する。「現時点において、感染者の数は増加傾向にあります。また、一定条件を満たす場所において、一人の感染者が複数人に感染させた事例が、全国各地で相次いで報告されています。しかし、全体で見れば、これまでに国内で感染が確認された方のうち重症・軽症に関わらず約80%の方は、他の人に感染させていません。また、実効再生産数は日によって変動はあるものの概ね1程度で推移しています」。新型コロナの基本再生産数は2〜3である。対して、実効再生産数は1。要するに、日本国内で感染が広がっている速さを示す実効再生産数は、現在、ウイルスの持つ感染力を示す基本再生産数を下回っているということだ。
●新型コロナの感染状況をビジュアル化
 実効再生産数が1ということは、10人の患者から新たに10人の二次感染患者が再生産されることになる。しかし、専門家会議は「80%が誰にも感染させていない」としている。例えば、新型コロナウイルス感染患者が10人いたとする。そのうち8人は誰にも感染させず、2人が感染させる。一旦感染すると2週間など長期にわたって咽にウイルスをもち感染力を保ったまま活動できてしまうので感染が拡大する。そのため実効再生産数が1であっても、患者数は増加し得る。では、感染を終息に向かわせるにはどうするべきか?図3のように、例えば2つのライブハウスでの感染をブロックできれば、10人から3人の患者しか発生しないので、やがて患者数は減っていく。だれがウイルスをもっているか判らなく、感染力も強く、致死率が高い。このような場合で、かつ感染拡大パターンを最初に示した基本モデルで考えると、感染拡大を止めるにはどうしても外出自粛、休校、移動制限、地域封鎖となってしまう。新型コロナの場合、確かにだれがウイルスをもっているか判らないことが、人々に大きな恐怖心を植え付けている。しかし、私達は今までの経験からクラスター(集団感染)を形成しやすい条件を知っている。それは、換気の悪い室内で、不特定多数と長時間会話したり、食事をしたときだ。
●エアロゾル感染のリスクは「換気」で減らす
 3月9日の専門家会議の記者会見で「みなさまにお願いしたいこと」として以下の点が指摘された。1. 換気の悪い密閉空間、2. 多くの人が密集、3. 近距離(互いに手を伸ばせば届く距離)での会話や発声 という3つの条件が同時に揃う場所や場面を予測し、避ける行動をとってください。これを多くの市民が実施できれば、クラスター発生を予防でき、国が強権を発動せずとも感染は終息に向かうであろう。実際、諸外国と比べて日々の感染者数は数十人で収まっている。ただ、人は同じ説明を聞いても、何も気にせず日常生活を送れる人もいれば、家から一歩も出られない、仕事にも行けない人まで様々であろう。レストランで外食したり、会社で仕事をしたりというのは上記1・2・3にあてはまるからだ。そこで、人々の不安を少しでも解消し、対策の一助になればと思い、感染のメカニズムを解説したい。会話やくしゃみで飛沫が飛び散る。大きな飛沫は放物線を描いて地面に落ちる。しかし、目に見えないくらいの小さな飛沫粒子、いわゆるエアロゾルは数時間室内を空気のように浮遊する。大きな飛沫による感染は(3)の近距離での会話や発声に対応する。これは、お互いにマスクをしていれば予防できるし、マスクがない場合には1~2メートルなど距離を開ければ解消できる。エアロゾルによる感染は(1)の換気の悪い密閉空間に対応する。新型コロナウイルスは1時間で半減するものの、数時間は感染性を保ったままエアロゾルとして空中を浮遊することが最近アメリカの研究チームにより報告された。これは窓を開けて空気を入れ替えれば、解消される。外であれば、まず問題にならない。人数が数十人、数百人と多くなればなるほど、その中にウイルスをもった人がいる確率があがる。(2)の多くの人が密集というのは、このことを指している。しかし、新型コロナの発生がほとんどない地域では気にしなくてもよいかもしれない。「3つの条件が同時に揃う場所」を言い換えれば「1つの条件が解消されていれば避ける必要はない」ということである。例えば十分な換気をはかれればよいことになる。また十分な換気ができなければ、マスクをするか、距離をとればよいことになる。
●今後の日本は如何に?
 2月後半、1日の報告件数が10人、20人と増えだした。これに対して、日本政府は在宅勤務の推奨、大型のイベント自粛、休校を要請した。患者数の推移を海外と比較すると、日本は地域を封鎖したり、移動制限や外出自粛を強要したりすることもなく、何とかよく持ちこたえていると思う。これは政治決断の効果でもあり、日本人1人1人ができることをやっている成果であるとも思う。今後は、患者数の推移を慎重にみながら、屋外や換気を十分するといった条件で、社会活動を少しずつ再開してもよいのではないだろうか。とはいえ、大規模イベントや、今までクラスターのあった場所での活動の再開は慎重にするべきである。危機管理の基本は、初動において厳しい対応をして、様子を観ながら徐々に緩めるのが鉄則だ。

*1-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200315&ng=DGKKZO56809510U0A310C2MM8000 (日経新聞 2020.3.15) 米欧、新型コロナ対策総動員 検査拡充や企業支援、米、非常事態で5兆円
 新型コロナウイルスの感染が拡大する米国や欧州で、各国政府が緊急対策に動いている。トランプ米大統領は13日に国家非常事態を宣言し、最大5兆円超を投じてウイルス検査などを拡充することを決めた。欧州各国では医療体制の強化や企業の資金繰りの支援が広がる。感染拡大による社会の混乱や景気の失速を防ぐために、政策を総動員して対応にあたる。トランプ氏は13日、非常事態宣言によって「連邦政府の力を最大限に引き出す」と力説した。災害対策基金など最大500億ドル(約5兆4千億円)を地方政府に振り向ける。最大の柱はウイルス検査の見直しだ。米政権は規制を一時的に緩和し、スイス製薬大手ロシュが開発した24時間以内に4千件超を検査できるシステムを緊急で承認した。スーパーや薬局の駐車場での「ドライブスルー検査」も全米に広げる。米ジョンズ・ホプキンス大の集計では米の感染者は2100人を超え、死者は47人に達した。感染者は46州と首都ワシントンで確認し、ほぼ全米に広がっている。新型コロナで打撃を受けた企業や個人の支援も強化する。非常事態宣言により、新たに中小企業の支援に70億ドルのローンを提供できるようにした。戦略石油備蓄を積み増すため大量の原油を購入し、エネルギー会社も支援する。個人には学生ローンの利息支払いを免除する。14日には議会下院が野党・民主党の経済支援策も可決した。新型コロナの無償検査、有給の病気休暇、失業保険の拡充、低所得者向け食糧支援などを盛り込んだ。トランプ氏も法案に署名する考えで、近く成立する公算が大きい。感染者の広がりでは、欧州の置かれた状況はより深刻だ。感染者はイタリアが1万7千人超と中国に次いで多い。同国政府は最大250億ユーロ(約3兆円)程度の経済支援策を用意する計画だ。売り上げが大きく減った企業の支援、医療体制の拡充などに充てる。スペインでも感染者が5千人を超え、サンチェス首相は13日に非常事態を宣言した。政府が強制力を持って人の往来を制限したり、一定の物資を管理下に置いたりすることができるようになる。ドイツ政府は13日、新型コロナの感染拡大の影響を受けた企業の資金繰りを支援するため、総額に上限を設けない無制限の信用供与を実施すると発表。メルケル首相は同日「必要なことは何でもやるつもりだ」と語った。フランスは休校中の子供の世話などで欠勤せざるをえない従業員への給与補償、企業の納税の延期・一部免除などを順次実施する。こうした措置で数百億ユーロ(数兆円)の予算が必要になるとみられる。英国は2020年度の政府予算で300億ポンド(約4兆円)規模の経済対策を講じる方針だ。医療体制の強化や休業補償などにあてる。米国を中心に人の移動制限に加えて、財政政策も打ち出すことで、感染拡大と景気の落ち込みを食い止める狙いがある。

*1-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200326&ng=DGKKZO57209430V20C20A3MM8000 (日経新聞 2020.3.26) 現金給付、所得減世帯に 5月にも実施、経済対策50兆円超 GDPの1割
 政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策で、5月にも所得が大幅に減少した世帯に現金を給付する検討に入った。条件が当てはまる1世帯に20万~30万円程度とする案がある。売り上げの急減が予想される飲食業や観光業は割引券や商品券を発行して支える。経済対策の事業規模(総合2面きょうのことば)は名目国内総生産(GDP)の1割にあたる56兆円超をめざす。海外でも米国やオーストラリアなどは新型コロナを巡る経済対策でGDPの1割近い財政出動に踏み切る構えで、日本も足並みをそろえる。リーマン・ショック後の事業規模56兆8000億円を上回る過去最大とする方針だ。海外では事業規模を先に表明することが多いが、日本が目標値を先行させるのは異例となる。日本は個別の政策を積み上げ、積算した規模を公表してきたためだ。新型コロナに伴う株安をにらみ、市場の動揺を抑える狙いがある。安倍晋三首相は2020年度予算案が成立する27日にも経済対策の編成を指示する。裏付けとなる補正予算案を4月上旬にも閣議決定し、下旬の成立を見込む。5月にも給付を始める。事業規模は国による直接支出に加え、融資に伴う金融機関の貸し出し分などを含めた額だ。給付の仕組みは今後詰める。新型コロナの感染拡大を理由とした所得減かを見極めるのは簡単ではない。所得をどの程度減らした世帯を対象にするかや所得制限をかけるかが制度設計の論点だ。フリーランスといった所得の把握が難しい人への対応も課題となる。日本の世帯数は約5300万あり、一定の所得水準を設けて約1000万世帯に絞り込むことも検討する。給付の手法は緊急小口資金の制度を参考にする。同制度は自治体の社会福祉協議会に申請書を出せば、個人の口座に現金が振り込まれる。全国民に配った定額給付金は総額2兆円規模に膨らんだ。多くが貯金に回り消費下支えの効果は乏しかったとの反省がある。雇用確保に向けては従業員を休ませるなどして雇用を維持する企業に支給する「雇用調整助成金」を拡充する。中小企業の場合、賃金相当額の3分の2の助成率を5分の4に引き上げる案が軸となる。従業員を解雇しなかった例では9割の助成も考える。新卒で入社する社員など雇用期間が短いケースでも助成の対象になるよう要件を緩め、内定取り消しが広がらないよう目配りする。飲食業や観光業の支援は消費者が外食や旅行などに支払う料金の一部を国が助成する制度を設ける。日本政府が19年末にまとめた26兆円規模の経済対策は公共事業を中心に執行が進んでいない。緊急的な対応として未執行分の一部も新型コロナ対策に活用する。これに今後編成する30兆円超の対策費を上乗せする。海外では米国はGDP比9.3%にあたる2兆ドル(約220兆円)規模の対策をとりまとめる。

*1-3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200322&ng=DGKKZO57075100R20C20A3MM8000 (日経新聞 2020.3.22) 外食・旅行消費に助成 売り上げ急減で重点支援 緊急経済対策
 政府は4月にまとめる新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策で、売り上げが急減している飲食業や観光業などを重点的に支える。消費者が外食や旅行に支払う料金の一部を国が助成する制度を検討する。この個人消費への助成策(総合2面きょうのことば)の関連予算は1兆円規模になる可能性がある。新型コロナが直撃している産業に的を絞って強力な支援を実施し、関連業界の雇用を維持する。訪日外国人の減少に加え、政府が要請している大規模イベントの自粛でスポーツ行事やコンサートなどを中止・延期する措置が相次ぐ。旅行や外食を控える動きも広がっており、関連業界は大きな打撃を受けている。政府は観光や飲食のほか、イベント関連支出なども助成の対象にする方向で検討する。飛行機や新幹線など公共交通機関も対象に含める可能性もある。利用者の国籍は問わない。焦点となる国の助成率は今後詰める。たとえば20%を助成することになった場合、飲食店で一定の条件を満たして1000円の食事をしたら800円を消費者が負担し、残りを国が助成することを想定する。助成の仕組みは、政府が各店舗や宿泊施設などで割引となるクーポンを発行したり、インターネット上のホテルや飲食店などの予約サービスを使って支払いをした際に、一部をポイントで還元したりする案がある。高齢者はお金と時間に余裕がある人も多く、高齢者に限って通常より高い補助率を設定して、消費を一段と促すことも想定している。実施期間などは新型コロナの状況をみて判断する。飲食業や観光業などでは、赤字に転落する中小企業が続出することが予想される。そうした中小企業は赤字の規模に応じ、前年度までに支払った法人税の一部を還付してもらうことができるようにもする。「繰り戻し還付」と呼ばれる制度で、災害時には還付対象の企業を広げる規定もある。国税庁は大規模感染症も災害に該当しうると判断している。

*1-3-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57269620W0A320C2MM8000/?n_cid=NMAIL006_20200326_Y (日経新聞 2020/3/26) G7、新型コロナワクチン開発支援へ 研究機関に拠出
 日米欧の主要7カ国(G7)の各政府は、新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を受け、ワクチン開発支援で実績のある国際研究機関に数十億ドル規模を拠出する方向で調整に入った。民間では巨額の資金を出しにくいため、公的な資金を国際協調で集中させて早期の開発・実用化をめざす。中国やインドなど20カ国・地域(G20)に加盟する新興国にも参加を呼びかける。資金拠出の対象として検討しているのは、ノルウェーに拠点を置く官民連携でワクチン開発を推進する国際機関、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)。日欧などの政府の拠出で2017年に発足した。エボラ出血熱のような世界規模の流行が生じる恐れのある新興感染症に対するワクチン開発推進を主な活動目的としている。今週実施したG20財務相・中央銀行総裁やG7財務相の電話やテレビの会議では、ワクチン開発を効率的に進めるため、先進国を中心に共同で財政支出する必要性で合意していた。日本政府も数百億円を軸に拠出を検討する。中国やインドなどG20加盟国にも協力を求めていく。CEPIは少なくとも20億ドルが必要と試算している。今回のような未知の感染症は流行が続くのか短期で終息するのか判断がつきにくいため、民間企業はワクチンの開発に巨額の資金を投じにくい。このため各国の政府が出し合ったお金をもとに、CEPIが企業や研究所、大学の開発を援助し、治験を加速する考えだ。コロナウイルスが原因の中東呼吸器症候群(MERS)のワクチン開発を支援した実績があり、技術転用も期待できる。ワクチンは有効性を確認するための期間が治療薬よりも長く、開発に時間を要する。年単位の時間がかかることが一般的だ。CEPIが主体となって開発に成功した場合でも、日本で使うためには厚生労働省から承認を得ることが必要になるが、弾力的な運用も可能となりそうだ。厚労省は新型インフルエンザが流行した10年、輸入ワクチンについて手続きを簡略化する特例を承認した。

<ハンセン病差別>
*2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM6X56YGM6XUTIL02G.html (朝日新聞 2019年6月29日) らい予防法違憲判決から18年、家族の被害にようやく光
 ハンセン病の元患者の家族らが起こした訴訟で、熊本地裁はその苦しみを「人生被害」と指摘し、国に賠償を命じた。原告弁護団は高く評価し、今も消えない差別や偏見をなくす契機になればと期待する。一方、国側は今後の対応について明言を避けた。「画期的な判決だ。らい予防法廃止後も偏見と差別を除去しなかったことについて違法性を認めた」。判決後の記者会見で、弁護団の八尋光秀共同代表の表情は硬いままだったが、言葉は力強かった。就学拒否、結婚差別、就労拒否……。判決は、ハンセン病患者の家族について「人格形成や自己実現の機会が失われ、家族関係の形成が阻害された」と指摘した。国が患者の隔離政策を続けたことによって、家族までもが平穏に生活をする権利を侵害されたとして、明確に国の責任を認めた。ハンセン病は、らい菌による感染症。感染力は極めて弱いが、進行すると手足や顔に変形が起きうる。国は1931年に癩(らい)予防法を成立させ、患者の強制隔離政策を推進。戦後「らい予防法」と名を変えた法が廃止されたのは、半世紀以上が経った後の96年だった。元患者が起こした訴訟で熊本地裁は2001年、「予防法の違憲性は明らか」と断じたうえで、「60年以降、96年の法廃止まで、隔離の必要性が失われたことに伴う政策の抜本的な変換を怠った」と厚生相(当時)や国会の責任を認めた。28日の判決はこの判断を踏襲しつつ、96年以降も「偏見差別を取り除くため、正しい知識を普及する活動を行うべき義務を尽くさなかった」と、国の新しい責任を認定した。28日の判決は、人権啓発を担う法務相と、教育を担う文部相・文部科学相の責任に踏み込んだ点でも、01年の判決と異なる。予防法の廃止後も、法務相は「住戸や職場などへの働きかけがなく、活動として不十分だった」と判断。文部相は「教員に対し、誤った教育をしないよう適切な指導」や「差別の是正を含む人権啓発教育」が必要だったのに、怠ったと述べた。判決は一方で、02年以降は「不十分ながら、国などの人権啓発活動の効果が一定程度生じた」として、国の責任を認めなかった。01年の判決や政府の控訴断念、国会謝罪決議などの動きがあったことで、「02年以降は差別被害があっても、隔離政策が原因だったとはいえない」とした。今回の訴訟では、「不法行為を知ってから3年以内に提訴したか」という時効の起算点も争点だった。判決は、元患者の家族が鳥取地裁に起こした訴訟の判決が言い渡された15年を起算点とすることで、原告側の訴えを有効と認めた。鳥取地裁判決は請求を棄却しつつ、差別への対策を怠った国の過失に言及しており、熊本地裁への集団提訴のきっかけとなっていた。
●救済への課題これから
 元患者について国の責任を認めた、01年の判決確定から20年近く。なぜ、家族たちの苦しみに光が当たらなかったのか。「元患者に対する差別や偏見をどうなくしていくかが、あまりにも大きな課題だった。家族の問題までたどり着けなかった」。01年当時に厚生労働相で、控訴断念を決めた協議にも加わった坂口力さん(85)はこう振り返る。28日の判決の後には「家族に被害があったのは事実。裁判の結果にかかわらず、どう解決するかは、我々の大きな課題だ」と話した。家族訴訟弁護団共同代表の徳田靖之弁護士も、「差別と偏見に包まれ生きてきたから、元患者の家族であるという声を非常に上げづらかった」と説明する。元患者の訴訟に加わった遺族はわずかで、実名を公表できた人はほとんどいなかった。元患者の中には、「家族が悲惨な目に遭った。だからこの裁判をするんだ」と訴えた人がおり、弁護団も家族の被害は認識していたが、徳田弁護士は「自分たちが正面から採り上げ、提訴することを怠った」と悔やむ。ハンセン病に対する差別や偏見は根強く残る。13年には誤った認識を持った教員の授業を受けた小学生らが、「骨が溶ける病気」などと感想文を書き、教育委員会が翌年に謝罪したこともあった。28日の判決もこのことに触れ、「正確な知識に基づいた指導がなければ、社会から差別を除去することは困難だ」と指摘した。徳田弁護士は判決後の記者会見で、「国が総力を挙げて差別と偏見の解消に取り組まなければならないと認めたことは大きな前進」と述べ、こう強調した。「国に控訴させないという、大きなうねりを起こすことで、家族が置かれている状況を本質的に変えることが可能になるのでは」
●求められる政治判断
 ハンセン病について正しい情報を発信し、患者の家族への差別や偏見をなくすための義務を怠ったと認定された3省には、動揺が広がった。根本匠厚生労働相は記者団の取材に応じ、「国の主張が認められなかったと聞いている。今後の対応については、判決内容の詳細を確認した上で、各省庁と協議していきたい」と述べた。さらに質問を受けても「関係省庁と協議していきたい」と繰り返し、明言を避けた。厚労省内でも判決直後、担当部署の職員が慌ただしく出入りした。控訴するかどうかについて、ある職員は「判決は法務省や文科省の違法性にも触れている。我々だけでは決められないだろう」と話した。山下貴司法相は判決後、「判決内容を十分精査し、関係省庁と協議した上で、適切に対応する。ハンセン病をめぐる偏見・差別をなくし、理解を深めるための啓発活動を適切に実施する」とコメントした。一方、ある法務省幹部は「ここまで踏み込んで来るとは予想していなかった」と驚きを隠さない。「あまたある差別の中からハンセン病に的を絞った人権啓発を求めるのは、要求が高すぎる」と話した。文部科学省によると、人権教育を担う教師を対象とした研修会でハンセン病について説明するなどしてきた。担当者は「取り組みは裁判で示しているが、その上での判決。判決文をよく読んでみないと何とも言えない」と語る。元患者の裁判では原告の勝訴後、小泉純一郎首相(当時)が政治判断で控訴を断念し、判決を元に被害者の補償立法がなされた。元患者の家族についてはどうか。首相官邸関係者の一人は「まだ政治判断の段階ではない」と語る。菅義偉官房長官は28日午後の記者会見で「国の主張が認められなかったと報告を受けている。関係省庁で判決内容を精査した上で対応する」と述べるにとどめた。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASMCB6GNCMCBUTIL1MP.html (朝日新聞 2019年11月16日) 加害者でなく被害者だった家族 ハンセン病差別の根深さ
 長年にわたる国の隔離政策で、ハンセン病の元患者は社会からの偏見や差別に苦しんできた。裁判で国の責任が認められて元患者に補償がされた一方、差別にさらされながら顧みられてこなかったのが、元患者の家族たちだ。家族たちが起こした訴訟で、国に賠償を命じた熊本地裁の判決をきっかけに、家族への補償金支給を定めた補償法が15日に成立し、名誉回復に取り組むための法改正が実現した。元患者たちの取材を長く続けてきた北野隆一編集委員は、家族が起こした訴訟に当初、ある違和感を持っていた。それが「認識の浅さ」だったと思い知らされた経緯を振り返った。
●「家族が社会復帰の壁」という思い違い
ハンセン病の隔離を定めた「らい予防法」が1996年に廃止される前から、元患者への取材を続けてきたが、2016年に提訴された家族訴訟の取材は、初めは気が進まなかった。複数の元患者から「家族が社会復帰の壁になっている」と聞いていたからだ。元患者らは家族に迷惑がかかるからと療養所内で偽名を使っていたが、隔離政策を誤りとして国の責任を認めた01年の熊本地裁判決を機に実名に戻り、故郷に帰ろうとした。だが家族が受け入れず、死んでも実家の墓に骨を引き取ってもらえない――。そんな話だった。だが家族訴訟が結審した後の今年3月、東京で開かれた集会で原告らの話を聞き、私は自分の認識の浅さを思い知った。家族らがときに元患者に冷たく接したのは、日本社会から受けてきたすさまじい差別から身を守るためだった。家族は加害者というより、被害者だったということだ。社会の片隅で息を潜め、沈黙を続けていた家族の心を解きほぐすきっかけは、家族らが定期的に集まる「れんげ草の会」を、熊本で国宗直子弁護士が続けてきたことだった。その会で10年以上かけて家族らの話を聞いた福岡安則・埼玉大名誉教授と黒坂愛衣・東北学院大准教授が聞き書きを本にまとめたことで被害が可視化され、家族らの提訴に結びついた。成立したハンセン病家族補償法は前文で、家族が強いられた「苦痛や苦難」の重大性が認識されず、取り組みがされなかったことについて国会と政府が「深くおわびする」と明記した。知らなかったから許されるわけではないが、家族らが自ら差別の被害を語り始めた今は、もう見ぬふりはできない。補償法にうたわれた日本社会の偏見・差別を「根絶する決意」が問われているのは、国だけではない。

<「犯罪者≒精神障害者」とする精神障害者差別>
*3-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202002/CK2020021102000137.html (東京新聞 2020年2月11日) 相模原殺傷公判 「大麻精神病が影響」弁護側の医師、鑑定否定
 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら四十五人が殺傷された事件で、殺人罪などに問われた元施設職員植松聖(さとし)被告(30)の裁判員裁判の第十三回公判が十日、横浜地裁(青沼潔裁判長)で開かれた。被告の精神状態を調べた工藤行夫医師が弁護側証人として出廷し「被告は大麻乱用による大麻精神病で、判断力が著しく低下していた」と述べ、大麻の影響はないとした精神鑑定結果を否定する考えを示した。工藤医師は、関係者の供述調書や植松被告との面接などを踏まえ、事件一年前の二〇一五年ごろ、被告が大麻を乱用するようになり、信号無視や速度違反、けんかなどの問題行動が増えた点に注目。「障害者は不幸をつくる」との思考から「殺す」という考えに至った点には大麻乱用による「飛躍や病的な高揚感」があったと指摘。短時間に四十三人の入所者を殺傷した犯行そのものが「並外れたエネルギーと驚異的な行動力がなくてはできない。全ての行程に異常な精神状態が認められる」と話した。前回七日の公判での尋問で「大麻による行動への影響はなかったか、あっても小さかった」とした大沢達哉医師の鑑定結果について、工藤医師は「大麻による影響を著しく低く評価している」と否定した。公判の争点は刑事責任能力の有無や程度。検察側は「大麻の使用は犯行の決意が強まったり時期が早まったりしたにすぎず、完全な責任能力がある」と主張。弁護側は無罪を主張している。 

*3-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/500533 (佐賀新聞 2020.3.16) 相模原殺傷、植松被告に死刑判決、責任能力認定、横浜地裁
 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年7月、入所者ら45人が殺傷された事件の裁判員裁判で、横浜地裁(青沼潔裁判長)は16日、殺人罪などに問われた元職員植松聖被告(30)に求刑通り死刑判決を言い渡した。障害者が狙われ、19人もの死者を出した事件。判決は、差別的な主張を繰り返した植松被告の事件当時の刑事責任能力を認めた。被告は初公判で起訴内容を認めたが、弁護側は、心神喪失状態で責任能力がなかったとして無罪を主張していた。争点となった責任能力について、検察側は「パーソナリティー障害」と判断した精神鑑定結果を引用し、特異な考えは人格の偏りにすぎず、正常心理の範囲内と述べた。大麻の影響も少なく、完全責任能力があったとして死刑を求刑していた。弁護側は、大麻による精神障害と反論。乱用によって人格が急変したと強調し、差別的な考えが事件にまで発展したのは「病的な飛躍」で、大麻の高揚感で引き起こしたと訴えていた。公判で被害者は1人を除き匿名で審理。傍聴席内に設けた遺族らの席はついたてで遮蔽する異例の措置を取った。起訴状によると、16年7月26日未明、入所者の男女を刃物で突き刺すなどして19人を殺害、24人に重軽傷を負わせたとされる。また職員5人を結束バンドで廊下の手すりに縛り付け、2人を負傷させたとしている。 

*3-3:https://digital.asahi.com/articles/ASMD54FDFMD5UTIL013.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2019年12月5日) 「生きる気力なくなった」遺族落胆 熊谷6人強殺の判決
 埼玉県熊谷市で2015年、7~84歳の6人を相次いで殺害したなどとして、強盗殺人罪などに問われたペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(34)に対し、東京高裁は5日、統合失調症の影響で心神耗弱状態だったと判断し、一審の死刑判決を破棄。改めて無期懲役の判決を言い渡した。判決後、殺害された加藤美和子さん(当時41)ら妻子3人をなくした男性(46)らが都内で会見を開いた。「死刑がひっくり返ることはないと思っていた。裁判官は都合のいいところだけを見て判断した。やりきれないし、納得がいかない」と憤りをあらわにした。法廷で判決を聞いた瞬間、「何も言葉が出なかった」という。男性は「家族を失ってから、どうにか生きていこうと踏ん張ってきた。家族にどう報告したらいいのか……生きる気力がなくなったというのが今の気持ちです」と話した。会見に同席した遺族側代理人の高橋正人弁護士は「一審判決は被害妄想への影響を認めつつも、被告の行動は合理的で説明がつくと判断した。高裁は、被告の供述をことさらに持ち出し、行動制御能力がないと結論づけている。明らかに見誤っている」と批判。検察側に上告するよう求めたことを明らかにした。

*3-4:https://digital.asahi.com/articles/ASN3B5WR9N32UTFL01G.html?ref=weekly_mail_top (朝日新聞 2020年3月15日) 障害ある子生まれ「おめでとう」と言えますか 木村議員
 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で利用者19人の命が奪われるなどした事件の判決が、16日に予定されている。元職員である被告の言葉をどうみるか。事件が繰り返されないためには――。重い身体障害があり、18歳までの大半を施設で暮らした、れいわ新選組の木村英子参院議員(54)は、障害のある子の誕生に「おめでとう」と言える社会かどうかを問う。どういうことなのか。
●殺されていたのは私かも
 彼の言葉は心の傷に触れるので、集中して公判の報道を見ることができませんでした。施設にいたころの傷ついた自分の気持ちに戻っていくのです。
(裁判で被告は「意思疎通のとれない人は社会の迷惑」「重度障害者がお金と時間を奪っている」などと語った)
彼が言っていることはみなさんにとっては耳慣れなくて衝撃的なのでしょうが、同じような意味のことを私は子どものころ、施設の職員に言われ続けました。生きているだけでありがたいと思えとか、社会に出ても意味はないとか。事件は決してひとごとではありません。19歳で地域に出ていなければ、津久井やまゆり園に入所していたかもしれない。殺されていたのは私かもしれないという恐怖が今も私を苦しめます。私は横浜市で生まれ、生後8カ月のときに歩行器ごと玄関から落ち、首の骨が曲がる大けがをして重い身体障害を負いました。小学5年から中学3年の5年間を除き、18歳までの大半を施設で暮らしました。入所は親が決めました。重い障害のある私に医療や介護を受けさせたいという責任感と、施設に預けなければ家族が崩壊しかねなかった現実からです。私には24時間の介護が必要です。親は疲弊し、一家心中をしようとしたことも何度かあった。親が頼れるのは施設でした。やさしい職員もいましたが、私にとっては牢獄のような場所でした。施設が決めた時間に食事をしてお風呂に入って、自分の暮らしを主体的に決めることがない。食事を食べさせてもらえないことも。一番嫌だったのは「どうせ子どもを産まないのに生理があるの?」という言葉です。全ての施設がそうだとは思いませんが、私がいたのはそういう施設でした。時代が変わっても施設とはそういうものだと私は思っています。プライバシーも制限され、自由のない環境で希望すら失い決まった日常を過ごす利用者を見た人たちが、「ともに生きよう」と思えるでしょうか。偏見や差別の意識が生まれたとしても不思議ではありません。私は、被告だから事件を起こしたとは思えない。
●公園で浴びた排除の視線
(裁判では、新たな事実が明るみに出たものの、事件に及んだ動機や真相は十分には解明されなかった。同じような事件を繰り返さないためにどうすればいいのか)
 被告を罰しただけでは社会は変わらない。第2、第3の被告を生まないためには、子どものころから障害者とそうでない人が分け隔てなく、地域で暮らせる環境をつくることが必要です。私が望むのは、障害のある子どもが生まれたとき、「おめでとう」と言える社会。私は親から施設に捨てられた、歓迎されない命だという思いを抱いて生きてきました。うしろめたい存在だと思うことも、絶望感のなかで仕方のないことだとあきらめていた。歓迎されない命などない、と気づいたのは19歳で地域に出てからです。23歳で結婚し、息子を出産しました。不安だったのは、子どもをかわいいと思えるかでした。母に抱かれた記憶があまりない私は、母に対する愛情が持てなかった。でも出産した時は、子どもへのいとおしさがこみあげました。公園デビューをしたときのことです。息子と子どもたちが砂場で遊んでいるのを、車いすに乗った私が近くで見ていました。だれも私が母親だとは思っていない。私が息子に声をかけ、私が母親だとわかった瞬間、周りのお母さん方が自分の子どもを抱き上げて帰ってしまった。自分の子どもが私に近づくと「そっち行っちゃダメ」。小学校の授業参観でも教室が狭くて、他のお母さんたちが入れないので「詰めていいですよ」と言っても、半径1メートル以内には近寄ってこない。私と関わると厄介なことになる、巻き込まれたくない、といった意識が働くのでしょう。本人たちは差別とは思っていませんが、あからさまな差別です。障害のある人とそうでない人を分けることによってお互いが知り合う機会を奪われることから差別は生まれます。社会から排除することそのものが差別なのです。地域で暮らして35年。福祉サービスは増えましたが、重度訪問介護が就労中などに公的負担の対象外だったり、移動支援が自治体により差があったり。普通学校への入学が重度障害を理由に認められない例もある。こうした課題をみんなで解決できたとき、障害のある子が生まれて「おめでとう」と言える社会になる。それが事件を乗り越えることになるのではないでしょうか。

*3-4:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020032201001730.html (東京新聞 2020年3月22日) 知的・精神障害者は雇わず41% 自治体調査、13%は募集除外
 全国の自治体(1788)を対象とした共同通信アンケートで、首長部局に知的、精神障害者を一人も雇用していないと回答した自治体が少なくとも41%の731自治体に上ることが22日、分かった。全体の13%に当たる230自治体は、一般職員(短時間を含む)の募集条件から知的、精神障害者を除外していた。障害者雇用を巡っては、中央省庁で2018年夏に採用人数の水増しが発覚。厚生労働省は同年12月、特定の障害種別によって応募を制限しないよう自治体に通知した。しかし知的、精神障害については、体調管理や仕事の創出が難しいことを理由に、障壁が解消されていない実態が浮かんだ。

*3-5:https://keiji-pro.com/columns/164/ (弁護士法人プラム綜合法律事務所、梅澤康二弁護士より抜粋) 刑法第39条の概要|責任能力有無の判断基準と39条が適用される対象
 刑法第39条には『刑事責任能力のない人は処罰の対象外とする、または、処罰を軽減する』という記述がされています。法律に違反したなら処罰されるのが当然に思えますが、なぜこうした犯罪者をかばうような法律があるのでしょうか。それは、違法な行為を行った者に対して責任を問うために、事理弁識能力(物事の善し悪しが判断できる能力)と行動抑制能力(自身の行動を律することができる能力)が必要とされているからです。例えば、事情のわからない赤ん坊が誤って機械のスイッチを押してしまい、それによって被害者を負傷させたとします。この場合、赤ん坊を罪に問えません。しかし、責任能力がなかったとしても罪を犯したことには変わらないので、納得がいかない人も多いかと思います。この記事では、刑法第39条についてみていきましょう。
●刑法第39条とは
 以下が刑法39条です。
(心神喪失及び心神耗弱)
第三九条 心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。(引用元:刑法第39条)
●刑法第39条の対象になる人
 刑法第39条が適用されるのは、次のような人たちです。
●精神障害者
 精神障害者の中でも、行為の善悪の判断がまったくつかない人は“心神喪失者”として、判断能力が著しくつきにくい状態の人は“心神耗弱者”として扱われます。
●泥酔状態者・薬物乱用者
 精神障害を持っていなくても、上と同様に、行為の善悪の判断がまったくつかない人や判断能力が低い人ならば、刑法39条の適用対象になります。しかし、自らの意思で泥酔状態に陥ったような場合は、完全な刑事責任を問われる可能性もあるでしょう。
●刑法第39条が適用された事例
心神喪失が認められ、無罪・不起訴となった事例
 睦沢町で2014年2月、井戸掘削会社社長の男性=当時(61)=が自宅に侵入してきた男に刺殺された事件で、殺人などの罪に問われた無職の男(64)に対し、心神喪失として無罪を言い渡した千葉地裁判決について、千葉地検は30日、控訴を断念したことを明らかにした。控訴の期限の同日が過ぎれば、男の無罪が確定する。地検は「判決の内容を精査、検討したが、原判決を覆すことは困難と判断した」とコメント。今後、心神喪失者等医療観察法に基づく措置を地裁に申し立てる。千葉地裁は16日、男の殺害行為を認めたうえで、「統合失調症の影響を強く受けており、行動を制御することが困難だった。心神喪失状態だったとの合理的な疑いが残る」と述べ、男を無罪とした。検察側は「男は心神耗弱の限度で責任能力はある」と主張し、懲役10年を求刑していた。(引用元:睦沢男性刺殺事件 検察側が控訴断念 心神喪失で無罪判決 | 千葉日報オンライン)
●心神耗弱が認められ、減軽された事例
 東京都世田谷区の自宅で今年1月、生後3カ月の長女を浴槽に沈めて殺害したとして、殺人罪に問われた無職、鈴木由美子被告(39)に対し、東京地裁の裁判員裁判は30日、懲役3年、執行猶予5年(求刑・懲役4年)の有罪判決を言い渡した。島田一裁判長は「子を守るべき立場にありながら、水に沈めるなど犯行態様は悪い」と非難する一方、事件当時は心神耗弱状態だったと認め「治療の必要性が高い」として執行猶予を付けた。(引用元:東京地裁:乳児殺害 母に猶予判決 心神耗弱認める - 毎日新聞)

<法定後見制度>
*4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/562768/ (西日本新聞 2019/11/26) 適正な類型、どう判断 「後見偏重」修正これから
 【成年後見はいま・3】90代の男性が、質問によどみなく答えていく。「息子さんは来ます?」「全く。来ませんね」。福岡県内の高齢者施設。面会に訪れた50代の男性司法書士に「でも、そろそろ来るんじゃないかな。プレゼントをあげたから」。数年前の出来事を口にした。男性は成年後見制度を利用する。法定後見にある三つの類型のうち、判断能力の低下が中間程度の「保佐」とされた。この司法書士が保佐人として生活支援や財産管理に当たる。制度の助けを借りたのは、息子にたびたびお金を渡していたため。施設に来た息子と銀行に向かい、多い日は80万円ほど。渡した額が計400万円近くになった時、施設側が専門家に相談した。司法書士が保佐人になっても要求は続く。1回20万~30万円。男性本人に伝えると「あげてください」。数日空けて「この前の件、本当に振り込んでいいんですか」と尋ねると、理解できていないことがある。貯金は減っている。息子に一度、「お金は親族の体調不良のため」と言われ、親族に確認してみた。返ってきた言葉は「連絡は取っていません」だった。
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 法定後見は、判断能力が低い順に「後見」「保佐」「補助」の3類型がある。後見になると最も広い範囲で法的な手助けを受ける。保佐はこれが後見より狭くなり、逆に本人の意向がより尊重される。司法書士は、この本人の意思の尊重と、保佐人に課せられた財産管理の間で悩む。もし息子のきょうだいに「なぜ1人にだけ財産を渡すのか」と問われたら、責任を取れないとも思う。歯止めをかける方法はある。「類型を後見に変更する」「息子に一定額を送金する際は保佐人の同意を必要とする」ことを家庭裁判所に認めてもらえばいい。しかし、本人は一定の認知機能があり、息子のことを悪くは思っていない。自己決定権の尊重という制度の理念に、それは反しないか-。家裁に相談したが、納得いく答えはなかった。国は今、制度を普及させるため保佐と補助を増やす考えを示す。利用者の約8割を後見が占めている現状は、保佐や補助相当の人が手を挙げていないと見ているためだ。今月は、後見人らが勝手に判断せず、本人の意思を尊重する指針案を公表した。利用者に合った類型を当てはめ、意思も重視するという基本があらためて注目されている。ただ、司法書士は思う。「単に保佐や補助を増やすだけでいいのか疑問だし、意思を尊重するにも男性のような例がある。そんな時の対応も考えるべきだ」。後見に慣れた現場を変えるのも容易ではない。後見人は保佐人や補助人より強い権限で、本人を手厚く守ることができる。家裁や専門家、どの類型が適当か診断する医師の間には「後見にしておけば間違いはない」という意識が強い。九州のある司法書士は「保佐や補助は本人ができることと、できないことの見極めが難しい。ほぼ全てを任される後見の方が正直、仕事は楽」と打ち明けた。
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 その類型を巡り現場で意見が食い違うこともある。福岡県の女性(69)は頭の病気で倒れ、保佐を申し立てることにした。しかし、医師の診断書は「後見相当」。担当した40代の男性司法書士は「本人の状態に合わない」と、そのまま保佐を申し立てた。家裁が鑑定を行い、出した結論は保佐。鑑定費用約7万円は女性の負担になった。司法書士は「後見になると、本人ができることでも後見人が代わりにしてしまう。本人の能力を生かす類型は何か、もっと考える仕組みが必要」と語る。こうしたこともあり、国は今年4月、類型が記憶力や理解力を反映したものになるよう診断書の様式を改めた。福祉関係者が生活状況などを書く「本人情報シート」も作り、判断する材料を増やした。個人に合う類型を選び、意思を尊重する理念に立ち返ろうとする国と、後見偏重が染み付いた現場。理念とかみ合わぬ運用の修正はこれからになる。
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【ワードBOX】法定後見の3類型
 法定後見は、判断能力がほとんどない人は「後見」▽著しく不十分な人は「保佐」▽不十分な人は「補助」-の3類型がある。支援するのは後見人、保佐人、補助人。本人に代わって契約を結ぶ「代理権」、本人が結んだ不当な契約を取り消す「取り消し権」、本人が契約をする際、同意できる「同意権」があり、類型ごとに与えられる権限は異なる。後見人は代理権と取り消し権があり、日常生活に関する行為を除いて幅広い法的権限が与えられる。

<緊急事態宣言から緊急事態条項にならないために・・>
PS(2020年4月1、2、4、6、9、11日):メディアには「緊急事態宣言を出して欲しい」という論調のものが多いが、その原因は、*5-1のように、諮問委員会メンバーの釜萢日本医師会常任理事による「緊急事態宣言を出す時期だ」という発言や指示待ち族が多い国民性だろう。しかし、東京・大阪で患者数が増加しても、院内感染による多数の患者発生もあり、他の地域に患者の急増はないため、新型コロナにかこつけた「何でもあり」は危なすぎる。むしろ過度の外出自粛要請・指示は経済をストップさせ、消費税増税による消費減退に加えて経済活動をストップさせ、企業の倒産や雇用の消滅により別の意味で生命の危険に遭遇する人を増やしそうだ。
 WHOは、*5-3のように、世界各地で導入が進む移動制限について、「都市封鎖などの措置は、移動の自由を侵害するため慎重にやらなければならない」と指摘し、安易な運用を戒めている。実際に、*5-4・*5-5のように、新型コロナによる制限が実体経済に与えた影響は大きく、観光業界やイベント業界だけでなく、美容業界はじめ不特定多数の客を扱う店舗へのマイナスの影響が大きい。そのため、*5-6の治療薬アビガンなどはとっくに治療に使っているべきなのに、今から治験とは驚きだし、治療の前提となる検査も十分に行われていないので、「本当に治療する気があるのか?」と思うくらいだ。
 また、政府は、*5-2のように、新型コロナをきっかけとして携帯電話会社やIT大手に利用者の位置情報や検索ワード履歴を集めた統計情報の提供を要請したそうだが、これも新型コロナにかこつけたプライバシーの侵害であり、これは興味本位や営業目的にも使えるものだ。
 さらに、「医療崩壊・・」という言葉も何度も聞いたが、*5-5のように、観光客の急減で破綻しそうなほど客が減っているホテルなどを軽症者の隔離に利用し、きちんと管理して入院施設の不足を防げばよいだろう。
 安倍首相が、*5-7のように、新型コロナ感染拡大防止のため布マスクを全世帯に2枚ずつ配る方針を示されたことについて、私は賛成だ。50年前の日本は、ガーゼを重ねたマスクが普通で、洗って何度も使うのが常識だった。現在は、中国製の紙マスクを使い捨てにするのが普通であるため、それしか知らない人は「布マスクは防護機能が低い」と言って品不足になっているが、布マスクも生地の選び方や重ね方で機能は変わり、紙マスクのように隙間ができないため防護機能をより高くできるかもしれない。また、*5-8のように、高級ファッションブランドのバレンシアガとサンローランが、同ブランドでマスクの生産を開始すると発表し製造に向けて準備中で、グッチもトスカーナ地方のファッション企業から要請を受けて数週間以内に110万枚のサージカルマスクと5万5000着の医療用オーバーオールを寄付する予定だそうだ。そのため、せっかくなら機能的でおしゃれなマスクや医療用オーバーオールができればよいと思う。さらに、*5-9のように、政府が自動車メーカーに人工呼吸器の部品を生産するよう求める動きが相次いでおり、米国はGMに生産を指示し、英国はマクラーレンが生産を計画しているそうだ。また、重症患者には「体外式膜型人工肺」が使われるが、数が少ないためニプロが増産準備を進めているとのことである。一般に、医療機器は、自動車や家電と比較して構造が簡単であるにもかかわらず、(顧みられることが少なかったためか)ちゃちな製品が多い。そのため、外国メーカーの臨機応変の対応に感心するとともに、改良に期待するわけだ。このような中、感染防止のために常時マスクをつけている医師が、メディアで「マスクは感染防止効果がない」などと言っているのは、自己矛盾であるとともに知識と見識が疑われる。
 厚労省が、*5-10のように、病院は重症者の治療に専念できるよう、軽症者や無症状の感染者は自治体の用意する施設・ホテル・自宅での療養を検討するよう、4月2日付で都道府県などに通知したことを受けて、東京・大阪だけでなく福岡でもホテル等の確保に向けた動きが出ているそうだ。私は、自宅療養すれば家族や周囲に感染させそうであるため、14日間くらいならホテル等できちんと管理しながら療養できる体制にした方が、皆にとって負担が少ないと考える。
 なお、*5-11のように、埼玉県では病床不足でホテル等での療養も検討しているが、そのホテルがまだ決まらないそうだ。しかし、自宅待機している間に重症化しては困るので、これは一刻を争うことで、診断がついて軽症の人を移すホテルを早々に決めるべきだ。そして、オリンピックが延期になり、ビジネスや観光もストップしているため、これは比較的容易な筈で、他の都道府県でも同じだろう。
 2020年4月11日、佐賀新聞が、*5-12のように、イリノイ大の研究者が「布マスクはウイルスの拡散や取り込みを防ぐには不十分で、感染防止効果が低い」という調査結果を発表し、厚労省は軽症者らが自宅療養する場合は感染対策として「サージカルマスク等の着用」を挙げたと記載している。しかし、サージカルマスクが手に入らなければ布マスクを使うしかない上、布マスクも下の図のように工夫次第であるため、厚労省は、PCR検査を待っている間に軽症者を重傷者にすることなく、速やかに検査を行って治療を開始できるよう、検査が必要な人に過度に待機させる帰国者・接触者相談センターや保健所を通させるのをやめるべきである。
 帰国者・接触者相談センターや保健所が検査のネックになっていることは、*5-13のように、さいたま市の西田保健所長が、「病院があふれるのが嫌で(検査対象の選定を)厳しめにやっていた」と言っていることから明らかだ。そして、これは、さいたま市だけの問題ではなく、厚労省の考え方そのものであり、軽症者を重傷化させたり、感染者を増やしたりすることに大きく“貢献”しているため、本末転倒も甚だしいわけである。



(図の説明:1番左は、広島県の下着メーカーが伸縮性のある生地で作ったマスク、左から2番目は、今治産タオルのマスクだ。また、右の2つは、手作りマスクで、特に子供用にはかわいい柄付きや動物の鼻付きマスクも面白く、喜んで使ってもらえそうだ。なお、下のように工夫された生地もあるので、三密になりがちな国会議員は、気の利いたマスクをして議論したらどうか?)

   

(図の説明:1番左は、丹後ちりめんに鳥インフルエンザの抗ウイルス加工を施したマスク用生地で、左から2番目は、抗ウイルス加工を施した材料を使う事例だ。そのため、鳥インフルエンザに限らない抗ウイルス加工した資材を、特に駅・病院・ホテル・バス・列車などの公共空間に使ったらどうかと思う。右から2番目は、抗ウイルス加工した丹後ちりめんの説明で、一番右は、綿布に同じ加工を施した説明で、織物はじめ資材も進歩させることができるわけだ)

*5-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/202003/CK2020033102000172.html (東京新聞 2020年3月31日) <新型コロナ>「緊急事態宣言 出す時期」 政府諮問委の日医幹部
 新型コロナウイルス感染症の急拡大で緊急事態宣言を出す際に政府が判断を仰ぐ諮問委員会のメンバーを務める釜萢敏(かまやちさとし)日本医師会常任理事は三十日の記者会見で、宣言について「個人的には発出し、それに基づき対応する時期ではないかと思う」と話した。政府は、東京都を中心とした感染拡大の現状を踏まえ、発令の要件に適合するかどうか本格的な検討に入った。釜萢氏は、新型コロナウイルスの流行状況などの分析を行い、見解を示す政府の専門家会議と、緊急事態宣言に関する諮問委のメンバーを兼務している。釜萢氏によると、この日の専門家会議メンバーらによる非公式の電話会議でも「もう宣言をした方が良いのではないか」という意見がほとんどだったという。患者が急増する東京では、感染経路が不明の症例が相次ぎ、封じ込め対策が難航。医療機関では防護服やマスクといった必要な物資が不足し、病床(ベッド)が足りなくなる恐れも高まっている。菅義偉(すがよしひで)官房長官は会見で、「ぎりぎりの状態にある。各方面の専門的な知見に基づき、慎重に判断することが必要だ」と強調した。政府は宣言を出した際の経済的な悪影響を懸念してきた。だが、専門家から発令を求める意見が出始めてきたこともあり「そんなことを気にしている場合じゃない」(高官)と急速に危機感を強めている。立憲民主党の枝野幸男代表も「フェーズが変わりつつある。補償とセットになった緊急事態宣言を真剣に検討しなければならない段階に入った」と指摘した。特措法は「国民の生命、健康に重大な被害を与える恐れがある」「全国的かつ急速なまん延により国民生活と経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある」の二つの要件を満たせば、首相が宣言を出せる。政府は既に「生命、健康に重大な被害」は該当するとしている。発令されれば、対象となった都道府県の知事が外出自粛の要請や、百貨店など大人数が集まる施設の使用制限、学校の使用制限を要請・指示することなどができる。

*5-2:https://mainichi.jp/articles/20200331/k00/00m/010/347000c (毎日新聞 2020年3月31日) 政府、通信事業者に任意で位置情報提供を要請 「クラスター」早期発見狙う プライバシー侵害懸念も
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は31日、携帯電話会社やIT大手に対し、利用者の位置情報や検索ワードの履歴などを集めた統計情報の任意での提供を要請した。人の流れをビッグデータで把握することにより、クラスター(感染者集団)の早期発見につなげる狙いがある。要請先には、NTTドコモなど携帯電話大手3社のほか、ヤフーや楽天、「GAFA」と呼ばれる米IT大手4社も含まれる。これらの企業の統計データを使い、人が密集しやすい地域を早期に把握して注意を喚起したり、特定の検索語の増加と感染者の増加との関連性を見いだすことで、早期に医療体制を整えたりするといった活用法が期待されている。情報は企業側で匿名化するため「プライバシーの問題はない」(総務省総合通信基盤局)としている。同局は「単にデータだけもらっても政府で分析するのは難しい。データをどう使うか企業に提案してもらい、有効となれば施策に生かしたい」としている。ただ、要請に法的な根拠はなく、強制力はない。ヤフーは取材に対し、「顧客のプライバシー保護が大前提。ビッグデータの力で新型コロナの感染拡大防止に貢献できる方法が無いか検討したい」とコメント。携帯電話大手のKDDI(au)は「個人情報保護法などの法律の範囲内で対応したい」としており、アプリを通じて得られる位置情報の提供などを想定しているという。ITを使った感染防止策を巡っては、欧州各国で外出禁止措置の順守状況を確認するため、政府が通信会社と携帯電話の位置情報を共有する動きが出ている。シンガポールでは、一定の距離で接触した人の履歴を記録し、感染者が出た場合に濃厚接触者を割り出すスマートフォンアプリも開発され、感染源や感染先の特定に使われている。個人情報保護に詳しい日本情報経済社会推進協会の坂下哲也常務理事は「感染拡大防止のためにデータ活用するという方向性は理解できる。企業が政府の要請に応じる場合は、集めたデータをどのように匿名化するかを公表しプライバシー侵害の懸念の払拭(ふっしょく)に努めるべきだ」と話す。

*5-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202003/CK2020033102000276.html (東京新聞 2020年3月31日) <新型コロナ>「移動制限」丁寧な説明が必須 WHO、安易な運用警鐘
 世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するライアン氏は三十日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて世界各地で導入が進む移動制限措置について「各国政府は国民に対し、なぜ必要なのかを隠し立てせず、分かりやすく伝えることが肝要だ」と述べ、安易な運用を戒め、丁寧な説明が必須と強調した。ライアン氏は、都市封鎖などの措置は「移動の自由を侵害するので、非常に慎重にやらなければならない」と指摘。また「都市封鎖だけではウイルスを撲滅できない」と述べ、感染疑い例へのウイルス検査や感染経路の特定、隔離といった対策を決して怠らないようくぎを刺した。またテドロス事務局長も、都市封鎖などは感染拡大を遅らせ、医療体制崩壊を防ぐ「時間稼ぎ」には使えるとしながらも「社会保障制度が整っていない国もある」と指摘。「日々の糧を得るために、毎日働かなければならない人がいることを忘れてはならない」と強調し、移動制限や営業停止措置に伴って収入源を失う人々に配慮した対策を取るよう各国に求めた。ライアン氏は「社会が受け入れられるものであるかどうかを、各国政府は最重視しなければならない」と言明。移動制限を導入する場合、人々が順守して実効性のあるものにするためにも「影響を受ける国民の人権や尊厳が尊重されなければならない」と訴えた。

*5-4:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020032401260&g=eco (時事 2020年3月24日) 自粛による損害、助成を イベント業界、政府に要望―経済対策・新型コロナ
 政府は24日、新型コロナウイルス感染症の実体経済への影響に関する集中ヒアリングを首相官邸で開いた。同日はイベント業界の代表者らが出席。中止や延期で影響を受けているイベント主催者らから、自粛で生じた損害への助成や、再開時に必要となる消毒液やマスクなどの費用負担の要望が相次いだ。チケット販売大手「ぴあ」の矢内広社長は感染拡大の影響でコンサートやスポーツなどの国内イベントが中止・延期となった結果、既に1750億円の損失が生じていると指摘。矢内社長は終了後、報道陣に対し、「自粛要請を受けて自らの判断で中止・延期した人たちへの補助をきちんとしてほしい」と訴えた。

*5-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/596774/ (西日本新聞 2020/3/31) 九州初、福岡と佐賀の宿泊施設が経営破綻 新型コロナで観光客急減 
 新型コロナウイルスの感染拡大による観光客の急減などを受け、九州の2宿泊施設の経営破綻が31日、相次ぎ明らかになった。福岡県うきは市の旅館「原鶴温泉咸生閣(かんせいかく)」は福岡地裁久留米支部に破産を申請。佐賀県武雄市の「武雄センチュリーホテル」の運営会社も破産申請の準備に入り、営業を停止した。東京商工リサーチ福岡支社によると、咸生閣の負債総額は約2億円。新型コロナ感染拡大でキャンセルが相次ぎ、3月中旬から休業していた。創業50年を超える老舗で1998年5月期は売上高約2億5千万円を計上したが施設の老朽化などで集客力が低下。2019年5月期は売上高約7500万円と低迷していた。武雄センチュリーホテルによると、昨夏の記録的大雨や韓国人客の減少で売り上げが減少。新型コロナの感染拡大が追い打ちをかけた。運営会社は瑞穂商事(島根県)で、ホテル従業員約70人は3月31日付で解雇。ホテルを所有する静岡県の宗教法人は「新たな運営会社を早く見つけ、存続させたい」としている。帝国データバンクによると、瑞穂商事などグループ3社はスキー場やリゾートホテルも運営。負債は計約30億円が見込まれる。

*5-6:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020033001002562.html (東京新聞 2020年3月30日) 富士フ、アビガン治験開始へ 新型コロナで、増産も
 富士フイルムホールディングス(HD)が、新型インフルエンザ治療薬「アビガン」について、新型コロナウイルス治療のための臨床試験(治験)を近く始めることが30日、分かった。増産も進める。アビガンについては、安倍晋三首相が28日の記者会見で、正式承認に向けた手続きを始める考えを示していた。アビガンを開発した富士フイルムHD傘下の製薬会社、富士フイルム富山化学(東京)が病院と連携して行う。感染拡大が深刻化している状況を踏まえ、治験後は早期に承認される可能性がある。生産能力拡大のため他社への生産委託も検討している。

*5-7:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14426289.html (朝日新聞 2020年4月2日) 1世帯2枚ずつ、政府が布マスク 新型コロナ
 安倍晋三首相は1日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、洗濯して繰り返し使える布マスクを5千万余りある全世帯に2枚配る方針を示した。再来週以降、感染者数の多い都道府県から順次配る。首相官邸で開かれた政府対策本部の会合で明らかにした。

*5-8:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200323-00010002-ampreview-bus_all (AMP 2020/3/23)バレンシアガとサンローラン、マスク生産 グッチは医療用衣類寄付
 高級ファッションブランドのバレンシアガとサンローランの親会社であるフランスのケリングが、同ブランドでマスクの生産を開始することを発表した。現在フランスに本拠地を置く同ブランドは、従業員に対して新型コロナウイルスへの十分な対策を行いながら、マスクの製造に向けて準備をしているという。生産工程と原料について正式に認可され次第、すぐに生産を開始するとのことだ。また同社は今回の新型コロナウイルスのパンデミックを受け、中国やイタリアに寄付を実施。さらに同社が運営するファッションブランド・グッチはトスカーナ地方のファッション企業からの要請を受け、今後数週間以内に110万枚のサージカルマスクと5万5,000着の医療用オーバーオールを寄付する予定だという。

*5-9:https://www.nikkei.com/article/DGXKZO57384230Z20C20A3NN1000/ (日経新聞 2020/3/30) 人工呼吸器とは 新型コロナで自動車メーカーも生産
 海外では、政府などが自動車メーカーに人工呼吸器の部品を生産するよう求める動きが相次いでいる。米国がゼネラル・モーターズ(GM)に生産を指示したのは、非常時に企業活動を指示できる「国防生産法」に基づく措置。英国ではマクラーレンが生産を計画しているという。重症の患者には「体外式膜型人工肺」と呼ばれる装置が使われる。血液をいったん患者の体外に取り出し、酸素を供給し二酸化炭素を排出してから体内に戻す。日本呼吸療法医学会などが調べた1558施設の設置台数は約1400台で、ほかのタイプより少ない。このためニプロが増産準備を進めている。取り扱いに高度な技量が必要で、扱える医療従事者の不足も懸念されている。
▼人工呼吸器 自力で呼吸できなくなったとき、肺への空気の出入りを補助する。息を吸う時は装置で圧力を高めて空気を肺に送り込む。吐く時は、圧力を低くして空気を排出しやすくする。気管にチューブを挿し込む一般的なタイプのほかに、口や鼻を覆うマスクタイプがある。使われていない装置が多かったが、新型コロナウイルスの感染拡大で不足する懸念が出てきた。

*5-10:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/597841/ (西日本新聞 2020/4/4) ホテルや自宅療養、福岡も 軽症者対象 厚労省通知受け施設確保急ぐ
 厚生労働省は3日、新型コロナウイルスの感染拡大状況に応じて、軽症者や症状がない感染者については自治体の用意する施設やホテル、自宅での療養を検討するよう都道府県などに通知したと発表した。大都市圏では感染が急拡大し、入院患者を受け入れる病床が逼迫(ひっぱく)しつつある。重症者に対する治療を優先し、医療崩壊が起きるのを防ぐ狙い。通知は2日付。これを受けて、病床数不足が懸念されている福岡県内では施設確保に向けて個別のホテルなどと調整する動きが出ている。福岡市の高島宗一郎市長は3日の会見で「ホテルを借り切って軽症者に入ってもらったり、自宅で療養してもらったりする準備を進めている」と述べた。既に、宿泊施設側に意向や予約状況などの聞き取りを進めており、状況が整い次第、重症者以外は原則、病院外で療養させる医療体制に移行する考えを明かした。同県内では、同市や北九州市でクラスター(感染者集団)が相次いで発生。県や福岡市によると、2日現在、同市内の感染症病床8床は満床で、県内の66床も3分の2が埋まっている。感染者を受け入れられる一般病床の確保数は「数十床」で、感染が判明しても入院先がすぐに決まらず自宅待機を余儀なくされているケースが頻発している。新小文字病院の医療スタッフ19人が院内感染した北九州市では、21人の自宅待機が続く。入院先を調整していたさなかの厚労省の通知に担当者は「急激な感染者の増え方を見ると自宅療養など次の準備をしなければならない」と話した。同県の小川洋知事は3日の会見で、「今までも民間宿泊施設の活用ができないかという話はしていて、既に検討している。作業を加速させたい」と述べた。現時点で、感染者を受け入れられる病床に余裕がある大分県も医療体制の移行について検討を始める方針だ。3日までの感染者は31人だが、感染症病床と一般病床を合わせた118床を確保。県の担当者は「病床は重症者を優先しなければならない」と感染拡大期に向けた備えを万全にする構えを示した。

*5-11:https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20200409-00130247-fnn-soci (FNN 2020.4.9) 埼玉の軽症者ら78人入院できず 病床不足でホテルなどでの療養も検討
 埼玉県で、新型コロナウイルスの感染者のおよそ3割が、入院できずに自宅などで待機していることがわかった。埼玉県では、これまでに253人の感染者が出ているが、8日の時点で、78人が入院できずに自宅などで待機していて、さらに増える見通し。埼玉県・大野知事「当初から感染者病棟と一般病棟、さらに難しいときは、ホテルだけでなく、病院以外の施設や自宅待機と段階的にやっていく計画を当初から立てていた。正直、受け入れ表明した病院が入れられない状況がある」。埼玉県によると、自宅で待機している感染者は、主に無症状や軽症者で、地元の保健所が1日2回程度健康状態を確認しているという。埼玉県は、今後、ホテルなどでの療養も選択肢として検討するとしている。

*5-12:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/511015 (佐賀新聞 2020.4.11) 米専門家、布マスクの防御力低い、限界指摘「理解し使用を」
 布マスクはフィルターとしての機能が弱く、新型コロナウイルス感染を防ぐ効果は低いとする見解を、感染防御などが専門の米イリノイ大の研究者らが11日までに公表した。日本では安倍晋三首相が全世帯に2枚配布する方針を表明。今後、無症状の感染者や軽症者らの自宅療養も想定され、専門家は「布マスクで感染を完全には予防できないことを理解して使ってほしい」と呼び掛ける。見解は過去の複数の研究成果に基づく。その一つが、ウイルスのような微粒子に対し、マスクや布製品がどの程度フィルター効果を発揮するかを調べた米国立労働安全衛生研究所の実験だ。医療現場などで使うN95マスクが最も効果が高く、微粒子の95%以上を捉えた。タオルが40%前後、スカーフが10~20%程度、Tシャツが10%前後、布マスクは10~30%程度だった。ベトナムの医療現場で働く人を対象にした別の研究では、不織布のサージカルマスクに比べ、布マスクを着けた医療関係者の方が感染してしまう割合が高かった。こうした結果からイリノイ大の研究者は、布マスクはウイルスの拡散や取り込みを防ぐには不十分で「感染防止には効果がないだろう」とした。厚生労働省は軽症者らが自宅療養する場合の考え方の中で、家族ら周囲の人の感染対策として「サージカルマスク等の着用」を挙げた。不織布のマスクを入手できない場合に布マスクを代用で使うよう呼び掛ける。布マスクでも、くしゃみやせきでしぶきが飛ぶのをある程度は抑えられる。ウイルスが付いた自分の手が口や鼻に触れるのも防ぐため、政府は「感染拡大防止に一定の効果がある」とする。全世帯配布の経費は466億円と見積もる。聖マリアンナ医大の国島広之教授は、不織布のマスクの方が有効だとした上で、入手困難なら布マスクでしのぐのが妥当だと指摘。「自宅療養などの際は、換気や消毒と併せて予防効果を高めてほしい」と話した。

*5-13:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200410-00000195-kyodonews-soci (共同通信 2020/4/10)保健所長「病院あふれるのが嫌」、さいたま市の検査数少ない理由
 新型コロナウイルス感染の有無を調べるPCR検査が、さいたま市では2カ月で171件にとどまったことについて、市の西田道弘保健所長は10日、記者団の取材に「病院があふれるのが嫌で(検査対象の選定を)厳しめにやっていた」と明らかにした。さいたま市は2月に検査を開始し、今月9日までに171件。同市より人口、感染者ともに少ない千葉市は同日時点で4倍以上の700件を超えた。西田氏は、軽症や無症状の患者で病床が埋まるのを懸念したと説明。「検査を広げるだけでは、必要がないのに入院せざるを得ない人を増やすことになる」と述べ、滞在先施設の確保が必要だと強調した。

<感染症も考慮に入れた病院再編のあるべき方向性は?>
PS(2020年4月3日追加):*6-1のように、日本医師会が「①一部地域で病床不足になりつつある」として医療危機的状況宣言を発表したが、①については、*6-3の東京都内で97人の感染が確認されたという一部地域の問題で多くの院内感染を含むため、医師会はホテル借り上げなどの意思決定はできないことを考慮して、政治は国民に犠牲を強いない政策を考えるべきだ。
 また、医師会常任理事の釜萢氏は、*6-2に「②比較的症状が軽い患者を受け入れる“コロナ専門病院”を決めておくことを各地の医師会や行政に求めたい」としておられるが、②については、病名のわからない患者がコロナ専門病院を自ら選んで受診することは不可能であるため、地域の基幹病院が検査して振り分ける必要がある。
 そして、横浜市立市民病院感染症内科部長の立川氏は、「③新型コロナはいきなり呼吸不全に陥るのではなく、症状の軽い時期が数日続くため、この間に感染がわかれば重症化を防げる。疑わしきは検査し、重症度を判定して早めに治療すれば、入院患者も人工呼吸器の使用も減らせ、十分ウイルスと戦える。治療薬は別の病気の薬で新型コロナに効きそうなものが4種類はあり、当院でもこれらを組み合わせて効果が出ており、早期の検査と治療がカギだ」「④現在は、PCR検査で陽性なら入院となるため感染しても元気な人が入院し、その分、治療が必要ながん患者が入れないのでは本末転倒だ」「⑤軽症者は別の施設で経過を見て、病院には重症者だけを残す形に早く移行するのがよい」「⑥退院には2度のPCR検査で陰性になることが必要だが、これも見直すべきだ」としておられ、③⑤が治す気がある場合の正攻法である。
 一方、日経新聞は、*6-4のように、「⑦新型コロナの院内感染を防ぐため、ビデオ通話によるオンライン診療の活用を広げる規制緩和が、限定的な範囲に留まる恐れが出ている」「⑧これは、オンライン診療の拡大を恐れる日本医師会への配慮だ」などと記載している。しかし、医師は初診の患者が入ってきた時は、その愁訴を聞くだけではなく、服装・歩き方・顔色・匂い・触診・愁訴内容などのすべての情報から検査項目を決め、検査の結果によって病名を特定しているため、「⑨初診からオンライン診療では、対面に比べて診察時に得られる情報が限られる」という医師会の主張や「⑩受診歴のある慢性疾患の患者であれば可能」という厚労省の主張は正しい。そのため、⑦⑧のように、新型コロナにかこつけてオンライン診療を解禁させようとするのは、日本の医療水準を落として国民のためにならず、大きな問題である。
 さらに、厚労省は、公的病院のうち「急性期」「高度急性期」の病床を持つ1455施設に、2017年時点の手術実績で手術数の少ない病院に再編・縮小に向けた検討を求めて、*6-5のように、2019年9月にリストを発表したが、これには感染症が考慮されていなかったのだそうだ。しかし、インフルエンザ・肝炎・肺炎・結核・風疹・はしかなどの感染症は最も多い基礎的疾患であるため、これを考慮しないというのはあり得ず、金銭に関する稚拙な算術だけで医療を考えることの危うさをあらためて浮き彫りにした。


     死因別死亡率        人口10万対病床数   2019.10.3 2019.11.12 
                               朝日新聞  毎日新聞

(図の説明:1番左の図のように、日本の人口10万対死亡率は2011年から肺炎が3位に浮上している。しかし、左から2番目の図のように、日本は一般病床・精神病床が多すぎる割に感染症病床が殆どない。にもかかわらず、右の2つの図のように、厚労省は手術実績のみを基準として手術数の少ない病院に再編・縮小に向けた検討を求めており、改悪の方向になっている)

*6-1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200401/k10012362941000.html (NHK 2020年4月1日) 日本医師会が「医療危機的状況宣言」 病床不足の地域も
 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、日本医師会は、一部の地域では病床が不足しつつあるとして、「医療危機的状況宣言」を独自に発表し、国民に感染を広げない対策や適切な受診行動を呼びかけました。新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」をめぐって、安倍総理大臣は1日の参議院決算委員会で「今、この時点で、出す状況ではない」と述べていて、政府は今後の感染者数の推移や経済への影響などを見極めながら、引き続き慎重に判断していく方針です。こうした中、日本医師会の横倉会長は記者会見で、「国の宣言は国民の生活や経済の影響を踏まえて発令をされるのだろうが、一部の地域では病床が不足しつつあり、感染爆発が起こってからでは遅い。今のうちに対策を講じるべきだ。現場は『医療危機的状況宣言』と言える状況だ」と述べました。そして医療提供体制を維持するために、国民に対し、みずからの健康管理や、感染を広げない対策、そして適切な受診行動をとるよう呼びかけました。一方で横倉会長は政府の新型コロナウイルス対応について、「今、物資の不足とか、体制が十分にとれていないという現実からみれば、もっと対応を加速してほしい」と述べました。

*6-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200402&ng=DGKKZO57515920R00C20A4TCS000 (日経新聞 2020.4.2 より抜粋) 「感染爆発」 社会をどう守る
 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が止まらない。国内でも東京都の小池百合子知事が「感染爆発の重大局面にある」と述べ、外出の自粛を呼びかけるなど、危機感が広がっている。救える命を救い、社会を守るために今何が必要なのか。専門家に聞いた。
   ◇  ◇
■地域ごとに「専門病院」を 日本医師会常任理事 釜萢敏氏
 体調を崩した人が真っ先に受診するかかりつけ医は感染症対応でも最前線に立つ。日ごろからインフルエンザや溶連菌などの検査を行っている所も多く、試料を採取する際に思いがけず新型コロナウイルスにさらされるリスクをはらむ。医療の現場を守りながら新型コロナに対応するためには、かかりつけ医はなるべく日常通り稼働してもらうことがよいと考えている。かかりつけ医の現状は厳しい。全国の診療所では目下、マスクが足りない。日本医師会は国に要望して計1700万枚ほどを配布したが、交換する頻度を減らすなどして何とかしのいでもらっている。新型コロナウイルスの検査に必要なだけの性能の防護服が十分にそろわない診療所もあるだろう。北海道の診療所で受診者のなかに感染者がいたため、内科医が感染した例もある。最大の問題は日本ではこれ以上、医師や病床などの医療資源を拡充するのが難しいことだ。イタリアは医療費削減のために医師の定年制を敷いてきたが、結果的に多くの医師経験者が再雇用された。ドイツでは医療資源が十分に確保できており死者が少ない。日本は高齢の医師が現役で働いているほど日ごろから医師が不足しており、急に増員する余裕はない。人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)を増産しても使いこなせる人材がすぐには出てこない。オーバーシュート(爆発的な感染拡大)が起こり、患者を選ばなければならない事態になりかねない。医療の現場を守りながらコロナに対応するには、現存する医療資源をフル活用する方策を考えるしかない。具体策として、比較的症状が軽い患者を受け入れる「コロナ専門病院」を決めておくことを各地の医師会や行政に求めたい。かかりつけ医が疑わしい患者から電話相談をあらかじめ受けるようにし、必要に応じて「専門病院」を案内する。患者の動きを分けることで、かかりつけ医が感染したり長期の休診に陥るのを防ぎ、透析などで日常的に通院が必要な患者の受け皿を維持したい。「専門病院」には、たとえば夜間や休日に診療できる施設や、都道府県の公立病院などの施設になってもらうのが理想だ。人工呼吸器が必要かどうかという程度の患者まで診てもらい、さらに重度の患者は国立国際医療研究センターなどの病院で受ける。数段構えのイメージだ。都市ごとに各地の医師会と話し合い全国の整備状況を把握しようとしている。それでも病床は足りそうにない。まん延期を見据え、入院中だけれども症状が重くはない人に退院してもらい、なるべく病床を空けることが喫緊の課題だ。基本的には自宅にとどまってもらい、ハイリスクな家族への家庭内感染のおそれがある患者には滞在施設を設けて入ってもらう。宿泊施設などと調整を急ぐ。必要な情報が各診療所にすぐに届くような仕組みも必要だ。「感染者情報が遅い」「発症日ベースで感染者情報を出してほしい」という要望を受けているので、改善すべきだ。かまやち・さとし 78年日本医科大学卒。88年から群馬県の小泉小児科医院院長。高崎市医師会会長などを経て14年から現職。地域医療や感染症危機管理対策などを担当。66歳
   ◇  ◇
■早期の検査・治療カギ 横浜市立市民病院・感染症内科部長 立川夏夫氏
 これまで計30人近くの新型コロナ感染症患者を受け入れた。半数はクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船していた人たちだ。3人は集中治療室で処置した。現在も数人が入院している。第一種感染症指定医療機関として、エボラ出血熱など1類感染症の患者を受け入れられる態勢がある。それでも、クルーズ船の患者が数日の間に10人以上搬送されてきたのは想定外だった。感染症病床は一時すべて埋まり、それ以上は連携先の別の病院で受け入れてもらった。恐怖心がなかったわけではないが、中国のデータでは若い人の重症化例は少ない。当院の若手スタッフに万が一うつっても即、致死的とはならないのは救いだと感じた。一番の問題は、看護師の負担が増えたことだ。学会の推奨を上回る水準まで感染防護を強化しており、防護服で普段通りのケアをするのは大変だ。脱ぐときに接触感染が起きやすいため、別の人に見てもらう必要もある。他の診療科からも応援を頼み、その場で教えながら対応した。人工呼吸器を使った例はあるが、体外式膜型人工肺(ECMO)は患者の年齢、基礎疾患、家族の希望などを踏まえ使用していない。急に多数の患者が来れば機器が不足する心配はある。近隣病院ではマスクが悲劇的に不足している。市が優先的に回してくれる当院でも、できるだけ1日1枚の使用にとどめている。政府は国内感染者発生のピークを遅らせることに、ある程度成功してきた。受け入れ可能な病床数から逆算してPCR検査をしている結果、感染判明者が少ないのだろう。増加ペースが今くらいで、人材や機器の準備期間がとれれば対応はできる。だが、今後どうなるかはわからない。入退院に関しては課題がある。現状ではPCR検査で陽性なら入院となる。感染していても元気な人が入院し、その分、たとえば治療が必要ながん患者が入れないのでは本末転倒だ。政府は新型コロナのまん延期には、軽症者は自宅や別の施設で経過をみて、病院には重症者を残す形に移行するとしているが、まだその時期ではないという。早く移行すべきだ。また、退院するには2度のPCR検査で陰性になり、ウイルスがいなくなったのを確認できなければならない。これも状況に応じて柔軟に見直すべきだ。入退院の判断は医療者がするのがよい。新型コロナはいきなり呼吸不全に陥るわけではなく症状が軽い時期が数日続くので、この間に感染がわかれば重症化を防げる可能性がある。疑わしきはまず検査し、重症度を判定して早めに治療する。こうすれば入院患者も人工呼吸器の使用も減らせ、十分ウイルスと戦える。治療薬は別の病気の薬で新型コロナに効きそうなものが4種類はあり、当院でもこれらを組み合わせて効果が出ている。検査で感染の有無を確定させ、必要に応じて有望な薬を使う症例を積み重ねて、一刻も早くよい治療法にたどり着きたい。それが医療者の安心にもつながる。たちかわ・なつお 1990年佐賀医科大(現・佐賀大医学部)卒。国立国際医療センター(現・同研究センター)などで感染症治療にあたってきた。2008年から現職。60歳

*6-3:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200402/k10012364551000.html (NHK 2020年4月2日) 東京都内で97人の感染確認 これまでで最多に
 東京都の関係者によりますと、2日都内で新たに97人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたということです。都が、1日に発表する数としては、3月31日の78人を上回ってこれまでで最も多くなりました。97人のうち、患者や医療従事者などすでに100人以上の院内感染が疑われている東京 台東区の永寿総合病院の関係者が21人いるほか、新宿区の慶応義塾大学病院の関係者も15人いるということです。これで都内で感染が確認されたのは合わせて684人になります。

*6-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200403&ng=DGKKZO57597170S0A400C2EA2000 (日経新聞 2020.4.3) オンライン診療、壁は厚労省、「初診解禁」かかりつけ医の紹介条件 医師会へ配慮にじむ
 新型コロナウイルスの病院内での感染を防ぐため、ビデオ通話などによるオンライン診療の活用を広げる規制緩和が限定的な範囲にとどまる恐れが出ている。焦点は受診歴のない患者でも初診からオンライン診療を認めるかどうか。厚生労働省は対面で得る情報の重要さを理由に、かかりつけ医から情報提供を受けた別の医療機関などに絞る方針だ。拡大を恐れる日本医師会への配慮がにじむ。「人類が経験したことのないようなことが起きている。あまりに生ぬるいというのが私の感覚だ」。2日、政府の規制改革推進会議の小林喜光議長(三菱ケミカルホールディングス会長)は落胆を隠さなかった。作業部会が提案した「受診歴のない患者にも初診からオンライン診療を可能とすべきではないか」との意見に対し、厚労省からの回答は「非常に距離があるものだった」(小林議長)。オンライン診療は、風邪や発熱といった軽症の人が自宅にいながら診断してもらえるようにするなど医療の利便性を高める力を持つ。新型コロナの感染が拡大してからは、通院先での感染を防ぐ手段としても期待が高まっている。3月31日の経済財政諮問会議で、安倍晋三首相は「現状の危機感を踏まえた緊急の対応措置を規制改革推進会議で至急取りまとめてほしい」と指示を出していた。規制改革推進会議の主張は、受診歴のない患者でも初診からオンライン診療を認めれば、通院を省け、患者も医療従事者も院内感染から守れるというものだ。一方、厚労省は受診歴のある患者で高血圧などの慢性疾患であれば可能だが「受診歴のない患者は認められない」と説明したという。厚労省がオンライン診療の拡大を阻もうとする背景には日本医師会の存在がある。オンライン診療は「対面に比べ診察時に得られる情報が限られる」というのが医師会の主張だ。通院にかかる時間をあまり気にしなくて済むため、評判のよい病院に人気が集中し、淘汰が進むのを恐れていることも抵抗の裏側にある。オンライン診療はあくまで対面診療を補完するものと位置づけられ、生活習慣病など慢性疾患に限られてきた。医療サービスの対価として受け取る「診療報酬」も対面より少なく、対面の場合と比較して半分以下となることもある。加藤勝信厚労相は3月31日、オンライン診療の初診解禁を検討すると表明した。だが、厚労省が4月2日に開いたオンライン診療の指針を議論する有識者検討会は、限定的な範囲にとどめる方向性で一致した。言葉のイメージ通り、受診歴のない患者に対して、初診でオンライン診療を認めるのは重症化の徴候を見逃すリスクなどがあるため難しいと判断した。患者が急増し、外来医療が危機的な状況にあるなど極めて限定された場合だけに認める方向で、具体的な条件を引き続き検討する。かかりつけ医から情報提供を受けた別の医療機関で、風邪などの症状をオンラインで診てもらうことは認めることになった。ただこれも、かかりつけの医療機関で院内感染が起き、普段と異なる医療機関を受診しなければならないケースを想定したものだ。オンライン診療は18年度に保険適用されたが、18年7月時点でオンライン診療を実施する医療機関は1000カ所程度で全国の医療機関の1%に満たない。オンライン診療に積極的な医師もいるが、規制の厳しさが利用拡大を阻む。オンライン診療に移行するには原則、事前に3カ月以上の対面診療が必要だ。新型コロナ感染症の広がりをうけ、厚労省はオンライン診療のルールを特例・臨時的に2度緩和してきたが、その範囲は限られている。

*6-5:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54489680W0A110C2EE8000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2020/1/16) 公立病院の再編リストを修正へ 厚労省
 厚生労働省は再編や縮小を促す目的で昨年9月に実名公表した全国424の公立・公的病院のリストを一部修正する。データを精査した結果、新たに対象に加わったり、今のリストから外れたりする病院が出てくるためで、全体では増える見通しだ。17日に公表する方向で調整している。今回の修正でリストから外れる場合、病院の希望に応じて病院名を公表する。一方、新たにリストに加わる病院名は公表しない方針だ。厚労省は、自治体が運営する公立病院と、日本赤十字社などが運営する公的病院のうち、病気が発症した直後の「急性期」や「高度急性期」の病床を持つ1455施設に対し、2017年時点での手術実績などを分析。実績が乏しい病院もあり、再編や縮小に向けた検討を求める狙いで19年9月にリストを発表した。当時は「資料は暫定版で、今後精査した後に都道府県に確定版を通知する」としていた。近く公立・公的病院との競合状況を示す民間病院のデータも各都道府県に提供し、議論を促す考えだ。

<これを機会にステップアップしたら?>
PS(2020年4月4、8、12日追加):*7-1のように、新型コロナ感染拡大の影響で非正規を中心として職を失っており、会社の寮にいるため仕事を失えば住居もなくなる人もいる。そのため、政府は、企業の従業員解雇防止のために雇用調整助成金を拡充し、休業手当を払って従業員を休ませた企業には助成金を出すことにしたが、休業手当は一定割合を企業が負担するため、企業はコスト負担を敬遠して非正規の雇い止めを優先させる恐れがあるのだそうだ。一方、米国では、*7-2のように、新型コロナの感染拡大で経済活動が大きく制限され、ホテル・飲食店・小売店等が営業を大幅に縮小して従業員をレイオフ(解雇・一時帰休)した結果、失業保険の申請が664万件に上ったそうだ。日本では、(企業から見れば)終身雇用・年功序列制度の下で解雇が難しいため、従業員を正規と非正規に分けて非正規を雇用の調整弁として使っているが、米国は、正規と非正規の差別がないかわりに正規でも簡単にレイオフされて失業給付を受け取る。米国の方が、平等で雇用調整も速やかだが、これができるためには、労働市場が流動的で中途採用でも不利にならないことが要件になる。
 しかし、新型コロナの感染拡大はすべての業種で人手を余らせたわけではなく、*7-3のように、外国人技能実習生の入国見通しが立たないため、労働力確保の支援を求めている業種もある。そのため、企業は雇用調整助成金をもらった上で従業員を人手が足りない職種に派遣すれば、従業員が感染リスクの小さな農業地帯で農業に従事することによって、今まで見ていなかったICTやロボット技術のニーズを見て新製品を作ったり、*7-4のようなスマート農業が本格化する中、非正規という雇用の調整弁に甘んじるよりはスマート農業の担い手になったりなど、企業・従業員・地域のすべてに新しい閃きが生まれてプラスになると思う。現在、農業への転職については、*7-5のように、全国の農地情報がデジタル地図に集約されつつあり、*7-6のように、後継者のいない多くの集落営農組織が集落外から若者を受け入れて、地域全体で若い農業者を育てて経営刷新するという雰囲気になっている。
 さらに、国を挙げての再エネへのエネルギー変換には、*7-7のような徹底した発送電分離が必要で、それには21世紀型送電線の敷設が不可欠であり、農業地帯は副産物として電力を産出することが可能であるため、農業はやり方によっては21世紀の先端産業になり得るのだ。
 なお、非正規で最初に雇用を打ち切られる人がステップアップするには、*7-8のような農林業経営のプロと地域のリーダーを育てる農林環境専門職大学に入学する方法もあるし、地域の農協で募集する農業の仕事に応募する方法もある。ただ、*7-9のように、都市部の新型コロナ感染者が地方に移動すると感染を広げるリスクも大きいため、移動して14日間は外出を控え、寮などで仕事内容や地域に関する研修を受けられる仕組みにするのがよいと考える。
 新型コロナの影響で営業を縮小せざるを得ない観光業・飲食サービス業等から、*7-10のように、JAや行政が人材を仲介して農業に労働力を回す取り組みが始まっているそうだが、これは、人材の融通に留まらず、お互いの理解と関係を深める上でも良いと思う。



(図の説明:1番左は、スマート農業の説明、左から2番目は、無人田植機を使った田植えの様子、中央は、ドローンを使った消毒作業《あらかじめ害虫の多い場所を把握して効率化している》、右の2つは、収穫ロボットを使ったトマトとブドウの収穫作業だ。収穫ロボットは、色・糖度・大きさ等を測って収穫し《人間より確実かも》、分類してパック詰めする)

*7-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/202003/CK2020033102100017.html (東京新聞 2020年3月31日) <新型コロナ>非正規の雇い止め増加 雇用構造のもろさ露呈 現金給付で救済急務
 新型コロナウイルスの感染拡大で、非正規を中心に多くの人たちが職を失う危機に直面している。有効求人倍率の高さなど雇用をアベノミクス成功の証拠とアピールしてきた安倍晋三首相だが、労働市場の中身は、非正規割合が高まり景気悪化のショックには極めてもろい構造が露呈している。人々の仕事と暮らしをどう守るかは重い課題だ。
◆突然の契約終了通告
 「もう雇い止めも覚悟している」。日産自動車の栃木工場(上三川町)で、期間工として働く男性(47)が言う。コロナの影響による世界的販売不振と中国などからの部品供給の減少のダブルパンチの自動車業界。トヨタ、日産など大手各社は工場の一時停止による減産を発表。男性の働く栃木工場も四月六日から二十二日までの長期間、操業が止まる。昨春から三カ月ごとの契約で一年働いてきたが、「今の契約が切れる五月末で終わりになるだろう」。会社の寮にいるため、「仕事を失えば住まいもなくなる」と不安にさいなまれる。大阪府内の不動産会社で、住宅の設計をしていた二十代の派遣社員の女性は先週、四月末で契約終了と告げられた。昨年末にマンションを購入、ローンは夫と二人で払う。「いま仕事を失うとローンも返せない。この時期、職がすぐみつかるとも思えない」。働く人々の生活が揺らいでいる。
◆収入途絶えれば即生活危機に
 二〇〇八年の年末。東京・日比谷公園にはリーマン・ショックで雇い止めや派遣切りにあった人々があふれ、支援団体の提供する炊き出しやテントで暖をとった。この「年越し派遣村」の出現を機に、非正規労働の多さは問題化。民主党政権では製造業への労働者派遣を禁止する議論もあったが、企業の立場を重視する自民党の安倍政権は非正規を一段と増やす政策を推進した。一五年の派遣法改正では、それまで企業が派遣社員を使える上限が三年だったのを、働き手を代えればずっと派遣に任せられるようにし、正社員を派遣に置き換える流れを助長した。雇用されないフリーランスや個人事業主としての働き方も奨励。企業を人件費コストから解放する半面で安全網のない不安定な働き手が増加した。一方、非正規の低賃金労働は「貯蓄ゼロ」世帯を増加させた。昨年時点で23%と、二十年間でほぼ倍増。非正規切りで収入が途絶えれば、生活危機に直結する。
◆「正社員だけ守る差別やめて」
 政府は、企業が従業員を解雇するのを防ぐため、雇用調整助成金を拡充、休業手当を払って従業員を休ませた企業に助成金を出す。だが、雇用助成金は、あくまでも企業が自分から申請しないと支給されず、休業手当の一定割合は企業が負担するルール。このため企業がコストを敬遠し、非正規は雇い止めを優先させる恐れがある。労働問題に詳しい宮里邦雄弁護士は「正社員だけを守るような差別はしないよう企業に指導し、助成金支出にもそのような条件を付けるべきだ」と指摘する。
◆モノ言えない非正規への対策を
 働く人々に直接渡る現金給付など、所得補償も不可欠となりそうだ。リーマン時は金融危機が消費不振を招くまで一定の時間があったのに対し今回は需要が短期間で蒸発、所得の大幅低下などで人々の暮らしをすでに脅かしている。関根秀一郎派遣ユニオン書記長は「非正規は企業にモノを言えない弱い立場。現金給付や減税など直接生活を助ける対策が急務だ」という。

*7-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57597950S0A400C2MM8000/ (日経新聞 2020/4/2) 米の失業保険申請、最大の664万件 解雇・一時帰休で
 米労働省が2日発表した失業保険の新規申請件数(季節調整済み)は、3月28日までの1週間で664万8千件となり、過去最大だった前週(330万件)からさらに2倍に膨らんだ。新型コロナウイルスで経済活動が大幅に制限され、飲食店や小売店などでは従業員の解雇や一時帰休が急増している。トランプ政権は給与補填などの経済対策を決めたが、迅速な執行が求められる。失業保険の申請数は市場予測(260万件)を大幅に上回った。新型コロナが発生する前は1982年10月の69万件が最大で、リーマン・ショック後でも2009年3月の66万件が最多だった。米経済は長く好況が続いていたが、ホテルや飲食店、小売店などは一気に営業を大幅に縮小。飲食業界では、3カ月で500万~700万人が失業する可能性があるとの試算もあった。米国の労働力人口は1億6500万人。2月時点の失業者数は580万人で、失業率も3.5%と50年ぶりの低水準にあった。失業保険の申請数は2週間で1000万件弱に膨らみ、失業率は6月には10%を超えるとの予測も浮かんでいる。米国の急激な雇用悪化は、従業員を一時的に解雇したり帰休させたりする「レイオフ」制度の影響もある。宿泊業などは3カ月などと期限を区切って従業員の一時解雇・帰休を決め、労働者の多くは失業給付を受け取って職場復帰を待つ。日欧は給与カットなどで労働者の維持を優先するが、米経済は雇用そのものの調整幅が大きくなる。ただ、経済活動が再開すれば職場復帰も加速するため、失業率は20年後半には低下軌道に戻ると分析される。トランプ政権も雇用維持を狙い、中小企業の給与支払いを事実上肩代わりする資金支援策を発表した。中小企業の半数は手元の運転資金が15日分以下しかないとされ、迅速な資金供給が不可欠だ。

*7-3:https://www.agrinews.co.jp/p50436.html (日本農業新聞 2020年4月1日) [新型コロナ]消費喚起、人手対策を 農家らが窮状訴え
 農水省は31日、新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急経済対策の策定に向け、農家らから意見を聴取した。需要減退で価格が下落している和牛や果実、野菜の生産者らが窮状を訴えた。外国人技能実習生の入国見通しが立たない問題を受け、労働力確保に向けた支援を求める声も出た。江藤拓農相は、生産現場の支援へ「強大な対策」を講じる考えを示した。感染拡大の情勢を踏まえ、テレビ会議方式で意見聴取した。江藤農相の他、伊東良孝、加藤寛治両副大臣、河野義博、藤木眞也両政務官ら同省幹部が同席。江藤農相は「現場の意見をしっかり聞いた上で経済対策案をまとめなければならない」と強調。安倍晋三首相の指示を踏まえ「前例にとらわれず強大な対策をやる」と述べた。農家らは、インバウンド(訪日外国人)やイベント自粛などの需要減退で打撃を受けている実態を報告。消費喚起策を求める意見が相次いだ。宮崎県高千穂町で和牛を一貫経営する興梠哲法氏は、地元家畜市場の3月の子牛相場が「前回比15万円の値下がりになった」と説明した。枝肉価格の下落で肥育経営が悪化、それに伴い子牛価格も下落し繁殖経営も「危機的状況」と訴えた。過剰の国産牛肉在庫の対策に向け「国の支援で消費者に求めやすい形で流通」するよう要望。ふるさと納税制度の活用やインターネット販売の運賃・手数料の支援などを求めた。温室メロン専門農協、静岡県温室農業協同組合の鈴木和雄組合長は、同組合が出荷したメロン価格が2月は前年比71%、3月は同67%に落ち込んだと説明。「原価を割っている」と訴え「前例のない対応」を求めた。長野県佐久市で野菜を栽培する小松園芸の小松真知子氏は、中国人実習生が「入国できなくなっている」と報告した。「どれだけ作付けられるのか悩み、苦労している」と明かした。今季に実習生が入国できなければ生産量と売り上げが「30%減になる」と説明。「いくらかでも労働力を送ってもらえるような方策をお願いしたい」と訴えた。

*7-4:https://www.sankei.com/economy/news/191223/ecn1912230002-n1.html (産経新聞 2019.12.23) いきなり特等米を獲得 スマート農業の実力は…
 担い手の高齢化や労働力不足に悩む日本の農業の課題解決に向け、ICT(情報通信技術)やロボット技術を使ったスマート農業の導入が加速している。リモコン一つで農機を遠隔操作、熟練農家の経験と勘を目に見えるデータに落とし込む-。誰もが高品質な作物を生産できる農業の時代はすぐそこまできているのかもしれない。兵庫県北部の養父市、山間部に急斜面の棚田が広がる能座地区は、65歳以上人口が57・65%と高齢化、過疎化が急速に進む集落だ。日本の農業の課題を抱え込んだようなこの土地で、先進技術を活用した農業を目指して農林水産省が採択した「スマート農業実証プロジェクト」が4月から進んでいる。「ハンドル操作の難しいぬかるんだ所も驚くほど真っすぐ進む」。同地区で酒米を作る「アムナック」の社員、大内良平さん(45)が驚くのはクボタが開発した無人運転のロボットトラクター。準天頂衛星「みちびき」による高精度の位置情報を活かして誤差数センチ以内でルートを正確に耕していく。また、人力で行えば半日以上かかる草刈りも、ラジコン操作によってわずか44分で済ませている。作業データはクラウド上で一括管理、手間取った作業とその解決法を“見える化”することで誰もがどこでもその経験を次に生かすことができるという。
●全国モデルに
 アムナックは兵庫県三木市に本社を置く建設会社の農業事業を行う子会社として平成27年に設立。今年4月からは京都大学やクボタ子会社、ソフトバンクなどと作る共同事業体で、スマート農業の技術開発のために角度30度超の、全国有数のきつい傾斜を持つ養父市能座地区の棚田11ヘクタールで稲作に挑んでいる。

*7-5:https://www.agrinews.co.jp/p50428.html (日本農業新聞 2020年3月31日) 全国の農地情報 デジタル地図へ集約 農水省22年度から一部運用
 農水省は、全国の農地情報のインターネット上での一元管理に乗り出す。行政機関や農業団体がばらばらに管理してきた農地情報を集約し、同省の地図データと組み合わせて「デジタル地図」を作成。2022年度から一部機能の運用を始める。生産者は補助金などの申請にかかる労力が大幅に減る他、将来的には農業機械の自動運転の活用などにもつなげる。「デジタル地図」は、各機関が持つ情報をひも付けして一元管理する。21年度から運用する「農林水産省共通申請サービス(eMAFF)」と組み合わせ、申請の窓口を一本化。農業者が申請した基本情報は保存され、再入力が省略でき、事務作業が軽減される。オンラインで自宅から申請でき、パソコンやスマートフォンの画面上の地図を見ながら作業が可能になるという。行政機関は、紙の申請書の打ち直しなど事務負担が省力できる。将来的には「デジタル地図」の情報と、人工衛星による位置予測を組み合わせ、トラクターやドローン(小型無人飛行機)の自動運転に活用できる可能性もある。衛星画像と人工知能の画像解析技術を組み合わせ、台風などの災害時に速やかな被災地域特定につなげることも期待される。20年度は、既存のデジタル区画情報と各機関の情報をひも付けすることや、農地関連データの標準化を検討する。農地情報は現状、各機関が農地情報を紙の地図で管理し、手続きに多くの労力がかかっている。例えば、農業委員会に農地の権利設定を申請する場合、農業者は土地の地番や面積などを記載した10枚程度の書類を提出する必要がある。同じ土地でも農業委員会、地域農業再生協議会、農業共済組合が別々に情報をまとめており、重複する情報提出に負担が掛かる。情報を管理する機関も、データ入力や現地調査に多大な労力を費やしている。

*7-6:https://www.agrinews.co.jp/p50404.html (日本農業新聞 2020年3月28日) [ゆらぐ基 問われる実効性](3) 農山村の再生 “よそ者” 継承に活路
 福井県あわら市。集落営農組織「グリーンファーム角屋」の代表、坪田清孝さん(69)が、誇らしげに胸を張る。集落外から若者を組織の代表候補として迎え入れ、米だけでなく、タマネギやイチゴの栽培に乗り出す新しい組織に、生まれ変わろうとしているためだ。「全国に水田農業に夢を描く若者はたくさんいる。継承がうまくいけば担い手不足に困る各地の集落営農組織の希望になる」と坪田さん。同組織には3年後、集落とは縁がなかった斎藤貴さん(43)に経営をバトンタッチする予定だ。今は継承に向かう並走期間。集落の住民らと斎藤さんが共同作業を積み重ね、信頼関係を紡いでいる。後継者がいない、高齢化、もうかりにくい米経営……。多くの集落営農組織が抱える課題に、同法人は集落外から若者を受け入れ、経営を刷新することで立ち向かう。
●人手の確保組織で議論
 農水省の調査によると、離農する小規模経営体の農地の受け皿で地域を支える集落営農組織数は、2019年2月時点で1万4949。2年連続で減少した。次期食料・農業・農村基本計画案では30年の農業者数は15年比33%減の140万人と見通しており、生産基盤の要である人材の育成・確保は、農業の最重要課題だ。グリーンファーム角屋は1999年、集落の兼業農家が共同で農業を守ろうと発足。設立から20年を前に後継者不在で組織の継続が危ぶまれた。坪田さんらは16年、全戸に意向調査。88%で「後継者がいない」「割り当てられた農作業が将来的に難しい」など課題が鮮明になった。合意形成に2年かけ、集落外から若者を呼び込むことにした。知人のつてや就農フェアに参加するなどして探し、知り合ったのが斎藤さんだ。埼玉県生まれの斎藤さん。農業に興味を持ち、石川県の農業法人に長年勤めていた。独立して稲作を模索する中、後継者を探す同組織の存在を知った。斎藤さんを迎え入れるため、18ヘクタールの米が中心だった経営にイチゴやダイコン、タマネギなど園芸作物を加え、農閑期の仕事を確保。継承を踏まえ株式会社化した。斎藤さんは「決算書も見て、信頼できると思った。地域の人と一緒に経営を発展させたい」と意気込む。集落の女性らに手伝ってもらって冬は加工にも取り組む考えだ。坪田さんは「代表が代わっても農業を地域から分断させるのではなく、地域と発展する集落営農の基本理念は変わらない。高齢者ばかりの集落に若い人が来たと歓迎されている」と笑顔だ。
●多様な主体活性化の鍵
 信州大学の小林みずき助教は「水田農業の若者の継承は、農村や農業の持続性を左右する」と強調する。預ける農地の選定も含め、地域全体が若い農業者を育てる意識を持つことが重要という。次期食料・農業・農村基本計画でも「多様な主体」を農業の持続的発展のポイントの一つに挙げる。小林助教は「米の消費が減り水田活用の方法が課題となる中、高齢者に比べ、母数が少ない農村の若い力を生かすことが課題解決の鍵を握る。そのための仕組みが必要だ」と指摘する。

*7-7:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020040202000168.html (東京新聞社説 2020年4月2日) 発送電分離 電力改革はまだ途上だ
 昨日スタートした発送電分離。発電と送配電事業を切り分けて、大手電力による独占の壁を取り払う-。電力システム改革の“総仕上げ”とされているのだが、現状では劇的効果は期待できない。日本の電力供給は長らく、大手十社がそれぞれの“縄張り”で、発電と送配電、小売りを一手に担う「地域独占」だった。原発のような大規模集中型電源で大量の電気を一気につくり、決められた地域へ送り込むというやり方を続けてきた。福島第一原発事故で、その弱点があらわになった。他地域からの電力融通が思うように進まず、大消費地の首都圏は、計画停電を余儀なくされた。そんな地域独占の壁に風穴を開けるべく、政府による電力システム改革が加速した。大手電力会社を発電、送配電、小売りなどに分社化、つまり解体し、「新電力」と呼ばれる中小事業者の参入を図り、大規模集中から小規模分散に移行させる狙いがあった。二〇一六年、家庭向けも含めた電力小売りが自由化された。改革の「総仕上げ」とされるのが、発送電分離である。しかし、分離と言っても、送配電網の所有権を大手から切り離す「所有権分離」には踏み込めず、小売り同様、既存の大手が送配電会社を設立し、それぞれ子会社にするだけの「法的分離」にとどまった。送配電は従来通り、大手の支配下に残された。これまでも、大手が持つ原発の電力が優先的に接続されてきたように、「新電力」からの接続が、理由を付けて抑制される懸念はぬぐえない。分離による効果は恐らく限定的だ。「新電力」には、風力や太陽光を扱う事業者が多い。政府がエネルギー基本計画にうたう、再生可能エネルギーの主力電源化にも支障を来す恐れは強い。地域ごとに送配電子会社が残るのも非効率。欧米では、送配電網の運用そのものを電力会社から切り離し、「独立系統運用機関」(ISO)に委ねるシステムが主流という。そうなれば、全国規模での電力融通もスムーズになるだろう。接続の公平性が保たれて、再生エネの普及にとっても、強い追い風になるはずだ。発電量が天候に左右されやすいという再生エネの弱点を、例えば日照が豊富な九州と、風力の適地が多い東北・北海道などが、補完し合えるようにもなるだろう。送配電網の中立性が保証されるまで、電力改革は終われない。

*7-8:https://www.agrinews.co.jp/p50496.html (日本農業新聞 2020年4月8日) 農林専門職大が始動 コロナ禍でビデオ入学式 静岡
 農林業経営のプロと地域社会のリーダーを育てる静岡県立農林環境専門職大学・短期大学部(愛称・アグリフォーレ)が同県磐田市に1日開校し、7日に入学式を行った。同校は全国に11ある専門職大学の中で初めての農林系で、大学と短大合わせて104人が入学。学生生活のスタートを切った。専門職大学は2019年4月に始まった新しい大学の制度。特定の職業に必要な講義と、豊富な実習で実践的な技能を学ぶ。静岡では県立農林大学校に替わり開校した。入学生の内訳は、4年制の大学生産環境経営学部が県内外の27人、2年制の短期大学部が77人。入学式は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、保護者と来賓は招かず、入学生と教職員だけが出席。講義室に分かれて学内放送とビデオで行う異例の式となった。鈴木滋彦学長は「農は生活に不可欠で、しかもエネルギーを生み出す。自信と誇りを持ち、プロフェッショナルを目指してほしい」と期待した。川勝平太知事は「実学の日本のモデルにし、みなさんを日本の宝として育てたい」と祝いの言葉をビデオで寄せた。入学した同県富士宮市出身の山本琢寛さん(18)は「静岡県の良い環境を生かした仕事に将来就きたいと考え入学した」と話した。来年完成予定の新校舎には学外からも利用できるレストランを併設。再来年には新寄宿舎が完成する。

*7-9:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200407/KT200406ETI090007000.php (信濃毎日新聞 2020年4月7日) コロナ「疎開」 排除や対立招かぬように
 都市部で新型コロナウイルス感染者が急増する中、帰省したり別荘に移ったりして地方に生活の拠点を替える人が目立つ。長野県内の別荘地への「疎開」も進んでいる。政府が東京や大阪に緊急事態宣言を出すことで、不安や不便を感じる人の地方への移動がさらに活発になる可能性が出ている。若い世代は感染していても無症状か軽症が多い。移動先で、気づかないうちに人にうつしてしまう恐れがある。地方での感染拡大につながらないよう、各自治体は移動する人も意識した呼び掛けを強めたい。県内では、都内から帰省中の20代男性に感染が判明した。一緒に外出した県内の20代男性も陽性が確認されている。高齢者が感染すると重症化するリスクが高い。一方、地方では新型コロナへの医療体制が整っていない地域も少なくない。感染が広がると、病床が足りなくなる事態が想定される。都市部から地方への移動は危険を伴っていることを、当事者も周辺も自覚してほしい。移動した後も一定期間は健康観察が不可欠だ。症状がある場合は、人との接触を避けるなど一層の注意を払う責任がある。約1万6千戸の別荘がある軽井沢町の藤巻進町長は、町のホームページで「東京の危機感を共有して」と訴え、別荘住民らにも不要不急の外出自粛を求めた。茅野市も、市内の別荘約7千戸に同様の自粛要請を記したチラシを配布。今井敦市長は「開放的な気分にならず、できるだけ別荘にいて」と呼び掛けている。佐久市の柳田清二市長が「できれば首都圏の皆さんも自宅で過ごしてもらいたいと思います」と書き込んだツイッターは、賛否両論を呼んだ。不要不急の来訪が、県内での感染拡大につながってしまうとの危機感から発信したという。重要な注意喚起ではある。「怖さを感じる」と賛同する住民の気持ちも分かる。一方で、命を守る選択として来訪する人たちの事情も大切にするべきだろう。個人の移動の自由は尊重しなければならない。その上で、地域の安全や安心をどう守っていくかを考えたい。自治体は、地域の実情を詳しく知らせ、守るべきことをきちんと分かってもらう努力が必要だ。住民も移動してくる人たちを排除せず、感情的な対立を招かないように心掛けたい。

*7-10:https://www.agrinews.co.jp/p50535.html (日本農業新聞 2020年4月12日) コロナ禍の観光・飲食業 農家が人材受け入れ JAや行政が就労を仲介
 農業の人手不足が深刻化する中、新型コロナウイルスの影響で営業を縮小する観光業や飲食サービス業などから農業分野に労働力を回す取り組みが始まっている。観光業などは訪日外国人の減少に外出自粛も加わって経営が厳しく、従業員の雇用継続が難しい。そこでJAや行政が人材を仲介し、互いの労働力の課題解決につなげようとしている。(高内杏奈、藤川千尋)
●長野・JA佐久浅間 旅館組合と協力
 長野県のJA佐久浅間は、地元の軽井沢旅館組合と協力し人材のマッチングを始める。宿泊施設は、各従業員に農家での就労希望の意向を尋ね、希望する場合は出勤可能日などの情報をJAに提出。JAは農家にその情報を示し、条件が合えば面接などを経て農家が雇用する仕組みだ。今回の人材マッチングをJAに提案、相談したのは、JA軽井沢事務所野菜部会の前部会長でJA野菜専門委員会常任委員の片山修さん(48)。片山さんは人材不足に悩み、今季は収穫の手間がかかるレタスの一部をキャベツに転換した。片山さんは「労働力として来てもらえればありがたい。これを機に軽井沢の野菜のおいしさを再認識し、宿泊施設で利用が広がればいい」と期待する。旅館組合の鈴木健夫組合長も「軽井沢の観光客は野菜のおいしさに感動する。感染終息後の集客につなげたい」と話す。JAは全国にリゾートホテルを展開する星野リゾートとの連携も検討する。同社も仕事量が減少する見込みで、従業員の雇用確保が課題。JAは農家や選果場などの仕事を紹介する。JAと同社は、雇用条件面や希望人数などを協議中だ。JAでは新型コロナウイルスの影響で、94人の中国人技能実習生が来日できていない。実習生は5月以降にピークを迎えるレタスやキャベツなどの収穫作業を担う。JA営農経済部の内藤浩部長は「産地には安全で安心できる、おいしい農産物を届ける使命がある。生産基盤を守ることにつなげたい」と強調する。
●マッチング支援 青森県が窓口設置
 青森県は10日、営業自粛する観光業や飲食サービス業から労働力を農業分野に回す人材マッチング事業を始めた。青森市の無料職業紹介事業・あおもり農林業支援センターに窓口を設置。JAグループやハローワークと連携して、農業法人などの求人情報を集約する。センター職員が観光業、飲食サービス業、運送業を巡回し声掛けして、短期労働力のマッチングを後押しする。県農林水産部は「労働力不足は加速する。利用者を増やしたい」と説明する。同県はナガイモや露地野菜の出荷最盛期を迎えるが、中国を中心とする技能実習生が来日できず、人手不足が深刻化している。東北町でナガイモを3・5ヘクタール栽培する甲地武彦さん(64)さんは「人手不足で作付け縮小を検討する農家も出てきた。短期でも労働力が増えるのはありがたい」と期待する。

<新型コロナは、社会保障を節約するのに都合のよいウイルスだが、まさか・・>
PS(2020年4月4日追加):*8-1・*8-2のように、安全保障や感染症の研究で知られる米ジョンズ・ホプキンス大学が、2018年にまとめた報告書で新型コロナの登場を予見するような分析をし、中でも最大の脅威は呼吸器系に悪さするRNAウイルスで、潜伏期間中・軽い症状の間でも感染してしまうタイプが特に危ないとしていた。そして、これは、新型コロナの性格と一致しており、現在は遺伝子操作したウイルスを使ったバイオテロもできる時代であるため、主たる被害者が高齢者と基礎疾患保有者であれば、新型コロナは社会保障を節約するのに都合よく作られたウイルスのように見える。そう考えると、*8-3のように、コロナ治療薬の有望候補が4つもあるのに、非科学的なことを言って検査も治療も行わず(犯人は政治ではないだろう)、保健所の人員増強等を主張していることと整合性があるわけだ。
 そのような中、国民を犠牲にすることしか考えつかない行政はあてにならないため、*8-4のように、国民が手洗いを徹底し、人混みを避け、マスクをつけて予防した結果、インフルエンザ患者数も昨シーズンに比べて4割減ったそうだ。そのため、予防方法が同じ新型コロナも、同じ効果が出ていると思われる。

  

(図の説明:左図のように、日本は新型コロナの検査数が著しく少ないため患者数も少なく出ているが、これは実態を反映していない。また、治療薬はあるのに、できない理由を並べて使っていないが、検査しなければ使うこともできない。そのため、日本で新型コロナの致命率が低く出ているのは、単なる肺炎に入れられているケースが多いからだと思われる)
 
   
    2020.3.30東京新聞

(図の説明:何の治療もしないうちから、メディアが医療崩壊・医療崩壊と1カ月以上も騒いでいるため、「政府も医療もあてにならない」と感じて国民が予防を徹底した結果、左図のように、インフルエンザが昨年より4割減った。そのため、予防方法が同じ新型コロナも本来より4割減ったと考えるのが妥当だ。このまま、医療崩壊・医療崩壊と叫んで検査も治療もせず、対症療法も年齢でトリアージすれば、右図の日本の人口のうち団塊の世代より上の致死率が上がり、年金・医療・介護等の社会保障費が節約されるが、このやり方はあまりにあくどい)

*8-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57636680T00C20A4I00000/ (日経新聞 2020/4/4) 新型コロナを予見 示唆に富む米大報告書
 地球規模の脅威となる感染症を引き起こす病原体とは、どんなものか。安全保障や感染症の研究で知られる米ジョンズ・ホプキンス大学が2018年にまとめた報告書は示唆に富む。いま世界を苦しめている、新型コロナウイルスの登場を予見するような分析がみられるからだ。今後の感染症対策にも役立つはずだ。報告書は同大の健康安全保障センターが120人以上の専門家への聞き取りをもとに作成した。様々な病原体の特徴、感染が引き起こす症状、病気の広がり方などに関する科学的知見を踏まえ、注意点や対策にあたっての勧告をまとめた。このなかで、最大の脅威に挙げたのが呼吸器系に悪さをするRNAウイルスだ。インフルエンザウイルスに比べ、コロナウイルスなどには十分な注意が向けられていないと警鐘を鳴らした。潜伏期間中や、軽い症状しかないときでも感染してしまうタイプが特に危ないと指摘しており、まさに新型コロナウイルスの場合と一致する。勧告は8項目ある。まず、呼吸器系に感染するRNAウイルスに焦点を当てつつも、幅広い種類の微生物に目配りする必要性を説いた。過去に経験し、要注意ウイルスなどとして記録されているものにとらわれすぎるべきではないという。コロナウイルスに関しては疫学的調査が重要だとした。抗ウイルス薬が極めて少ない現状に懸念を示し、治療薬やワクチン開発の加速を促している。製薬企業、政府、医療機器メーカーが資金を出し合い臨床試験を円滑に進める工夫をすべきだとした。さらに、新たなパンデミック(世界的大流行)の兆候をいち早くつかむため、全世界で診断に力を入れるよう提案。コストの問題はあっても、それに見合う効果が得られるはずだと指摘した。今となれば、どれももっともな内容だ。国境を越えたヒト、モノの移動が増えパンデミックが起きやすい状況なのは世界の共通認識だった。にもかかわらず、勧告は十分に生かされず備えは進まなかった。将来、より致死率の高い病原体が広がるかもしれない。新型コロナ対策の一つ一つの経験を確実に「次」への戦略づくりに生かしたい。ジョンズ・ホプキンス大学の報告書で指摘した8つの「勧告」の要約は以下の通り。
(1)脅威となるウイルスへの備えに投資を
 パンデミック(世界的大流行)を引き起こす可能性が最も高い病原体はRNAウイルス(注1)で、特に鼻やのど、肺などの呼吸器系に感染するタイプだ。この種のRNAウイルスは地球規模で壊滅的な被害をもたらす危険性が高く、調査・監視、科学研究、対策の開発に資源や資金を大規模に投じるべきだ。だが、インフルエンザと一部のコロナウイルスを除けば、ほとんど対策は講じられていない。あらゆる病原体の専門的な知識を育成・維持するとともに、動物から人間に感染する病気の情報を集めることで、パンデミックへの備えや研究につながる。
(2)過去の経験に基づく対策では不足
 過去の感染症の事例とバイオテロ対策にもとづき、米国や世界はパンデミックに備えてきた。しかし、取り上げられていない病原体への備えは早々に打ち切られてしまい、対策が硬直的になりがちだ。こうした従来型のやり方から決別し、病原体の性質に基づいてパンデミックのリスクを評価する必要がある。また評価については、綿密な医科学的分析の結果にもとづくべきだ。こうした改善に取り組むことで、パンデミックへの備えや病原体による地球規模のリスクに対する考え方を根づかせる。
(3)呼吸器系に感染するRNAウイルスを優先
 呼吸器系に感染するタイプのRNAウイルスはパンデミックを引き起こす可能性が高い。現時点で優先度が高いのは、インフルエンザと一部のコロナウイルスだ。重症急性呼吸器症候群(SARS)と中東呼吸器症候群(MERS)の流行をきっかけに、コロナウイルスへの理解を深める動きは出ているが、実験室で体系的に調べる取り組みは進んでいない。肺炎や気管支炎の原因となるライノウイルスやパラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSウイルス)、メタニューモウイルスなどでも同様に動きはない。この種のウイルスは将来、パンデミックを引き起こす危険性が高く、インフルエンザと同様の調査・監視体制を確立すべきだ。
(4)効果がある抗ウイルス薬の開発に重点
 呼吸器系に感染するRNAウイルスの治療薬として、現時点で米食品医薬品局(FDA)の承認を受けているのは、抗インフルエンザ薬としては「アマンタジン」や「リマンタジン」、「ザナミビル」、「オセルタミビル」、「ペラミビル」の5種類がある。いずれもインフルエンザウイルスだけに作用し、他のウイルスには効果がない。抗インフルエンザ薬以外では、C型肺炎などの治療に使われる「リバビリン」しかない。RSウイルスの治療で承認を受けているが、効果が弱く、強い副作用が懸念される。特定のウイルスに効く治療薬が開発できれば、パンデミックを抑えられる可能性は高まる。
(5)RNAウイルスのワクチン開発を優先
 呼吸器系RNAウイルス向けのワクチンも優先すべき課題だ。インフルエンザ向けはあるが、呼吸器系RNAウイルスのワクチンは存在しない。いくつかの重要な取り組みが存在する。例えば、官民連携でワクチン開発に取り組む感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)はMERSを引き起こすコロナウイルスとパラミクソウイルス(ニパ)向けワクチンの開発を支援している。米国立衛生研究所(NIH)は、どんな型のインフルエンザにも効く汎用ワクチンの開発に資源を振り向けるようになった。最も怖いのが鳥インフルエンザウイルスの一種だ(注2)。汎用的なインフルエンザワクチンは、こうした地球規模で脅威となるウイルスに対して大きな予防策となりうる。
(6)科学的根拠にもとづいた治療法を官民医の連携で
 インフルエンザを除くと、呼吸器系ウイルスに対する治療は科学的根拠に乏しい。どのような治療が有効なのか、合併症で気をつける必要のある感染は何か、どの段階で人工呼吸器を使うのが適切なのか、といった疑問がある。こうした疑問への答えを見つけることで、パンデミックが起きたときに医師の対応力を高められるだろう。インフルエンザについて、抗ウイルス薬と炎症を抑える抗炎症薬、抗生物質を併用する治療法の報告が増えている。明確な治療指針を作るために、これらの治療効果がはっきりとわかれば、地球規模の脅威となるウイルスへの対応力につながる。
(7)RNAウイルスの研究には特別な注意を
 パンデミックを引き起こすウイルスに関する研究には特別な注意を払う必要がある。多くは低リスクだが、例えば抗ウイルス薬への耐性、ワクチンに対する抵抗性、感染力の増強といった実験は、国際的な基準である「バイオセーフティー」上の違反が起これば重大な問題を引き起こす。1977年に出現した「N1H1型」インフルエンザ(ソ連かぜ)は、なんらかのミスで研究所から漏れ出た可能性が指摘されている。こうしたウイルスを扱う実験については、リスクに見合った形で承認するプロセスが必要になる(注3)。
(8)診断法や診断装置の実用化を世界で
 診断技術と診断装置は適用できる病気の対象、診断速度、使いやすさで改良が進んでいる。普及が進めば、感染症に対する状況認識を高めるきっかけになるはずだ。呼吸器系に感染するRNAウイルスへの調査の強化と組み合わせることで、パンデミックを引き起こす病原体の初期のシグナルを捉える能力は大幅に高まる。コストや治療効果のほか、隔離病床など病院の資源の制約によって、こうした診断装置の採用が制限されている。しかし、パンデミックへの備えという観点から、費用対効果の見積もりも変わるはずだ。人工呼吸器やワクチン、抗ウイルス薬、抗生物質と同じように考えるべきだ。
(注1)ウイルスには、遺伝子がDNAだけのタイプとRNAだけのタイプがあり、RNAウイルスの方が突然変異しやすいため危険性が高いとされる。危険性の高いRNAウイルスには、コロナウイルスの一部のほか、インフルエンザやエボラ出血熱、デング熱などがある。
(注2)鳥インフルエンザの中で毒性が高い「H5N1型」が最も危険性が高いとされる。
(注3)バイオセーフティーは病原体を扱う施設の基準で、世界保健機関(WHO)が定めている。危険度に合わせて4段階ある。最も高いレベル4については、病原体が外に漏れ出ないような対策を講じている。例えば、施設内の気圧を低くし、空気が外に漏れないようになっている。

*8-2:https://iwj.co.jp/wj/open/archives/469833 (IWJ 2020.3.13より抜粋) IWJ調査レポート!新型コロナは「地球規模の破滅的な生物学的リスク(GCBR=Global Catastrophic Biological Risk)」!? ジョンズ・ホプキンス大学の『パンデミック報告書』が、2年前にコロナの出現を予見し、警告!
 2020年3月12日、WHOが正式に新型コロナウイルスの感染拡大を「パンデミック」であると発表した。こうした事態に至る約2年前、2018年5月10日に、世界最古の公衆衛生大学院と世界屈指の医学部を有する米国ジョンズ・ホプキンス大学の公衆衛生大学院、健康安全保障センターが、『パンデミック病原体の諸特徴』と題する報告書(以下『パンデミック報告書』)を発表した。この報告書の中で「地球規模の破滅的な生物学的リスク(GCBR=Global Catastrophic Biological Risk)という新しい概念を提示して、ウイルス、細菌などの病原体が近い将来、人間社会に破滅的な影響を及ぼす可能性を予見し、警告している。GCBRを引き起こす病原体の特徴として、高い感染力、低い致死率、呼吸器系疾患を引き起こすなど、7つの特徴を列挙している。これらの特徴は、ほとんど、現在流行中の新型コロナウイルスの特徴と一致するものである。さらに、驚くべきことは、GCBRを定義する中で、『パンデミック報告書』は、GCBRを引き起こす病原体が、自然由来ばかりでなく、人為的な操作によって生み出され、広がるリスクをも想定していたことである。『パンデミック報告書』からわかるのは、陽性ながら無自覚・無症状のまま日常生活を送り、周囲を感染させてゆく「ステルス・キラー」の対策と、その主な被害者になる高齢者と基礎疾患者への対策が、今後、非常に重要になる、ということである。

*8-3:https://toyokeizai.net/articles/-/340641?page=4 (東洋経済 2020/03/29より抜粋) コロナ治療薬「世界の救世主」探る臨床の最前線、有望候補薬は4つ、東大で感染阻止の研究も進む
 クロロキンは、アメリカのトランプ大統領が、「新型コロナウイルス感染症の治療に有効」と発言して注目を集めたものの、その後は服用者の中毒例や体調悪化が報道され混乱気味。日本でも過去、クロロキンによる網膜症が問題で訴訟になった経緯があり、効くとしても扱い方には注意が必要になりそうだ。また、治療薬の開発には大学、企業も乗り出している。東京大学医科学研究所は3月18日、急性膵炎治療薬「ナファモスタット」が新型コロナウイルスの感染を阻止する可能性を突き止めたと発表した。ナファモスタットは30年近く国内で使われている薬剤で、安全性のデータが十分あるなどメリットは大きい。日本では日医工が「フサン」の製品名で販売しているのをはじめ、各社が後発品を出している。安倍首相は3月28日の会見で、「観察研究として、患者の同意を得て投与を開始する予定」と述べた。このほかに、C型肝炎治療薬である「リバビリン」や「インターフェロン」も候補薬になると見られている。
●国は早期承認制度の適用も検討
 さらに日本の製薬会社も、続々と開発に乗り出している。武田薬品は3月4日に、感染し回復した人の血液成分を使用した新薬(高免疫グロブリン製剤)をつくる。早ければ9カ月程度で実用化するという。また、スイス・ロシュグループ傘下の中外製薬は、関節リウマチ治療薬「アクテムラ」で、新型コロナウイルスを対象とした臨床試験を検討中だ。さらに、塩野義製薬やエーザイも、それぞれ開発を表明している。ただ、医薬品の開発は通常、人に対する安全性、有効性を確認する検証的な臨床試験だけで3~7年かかる。承認申請に必要な臨床試験がすべて終わるのを待っていては、今回の流行に間に合わない。このため加藤勝信厚生労働大臣は、製薬会社からの承認申請があれば、新たに導入した「医薬品の条件付き早期承認制度」を適用し、「可及的速やかに審査を行っていきたい」(3月26日・参議院予算員会)と答弁している。この制度を使えば、致死的な疾患で検証的な臨床試験に時間がかかる疾患であっても、一定の有効性、安全性が示されれば承認でき、早く国民に治療薬を届けることが可能となる。大曲氏は、臨床試験に関しても効果が見えそうなデータが揃った段階で、「(終わるのを)待たずに知見が出る可能性はある」と見る。開発に数年かかると見られる新型コロナウイルスの治療薬だが、臨床試験の状況によっては早期承認もありそうだ。

*8-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202003/CK2020033002000209.html (東京新聞 2020年3月30日) 手洗い効果? インフル最少 昨季比4割減、流行ほぼ収束
 新型コロナウイルスの感染が広がる一方で、インフルエンザの患者数が昨シーズンに比べて激減している。医療機関の報告を基にした厚生労働省の推計で、今年第十二週(三月十六~二十二日)までの累計患者数は前年同期(千百六十四万人)より約四割少ない七百二十七万人。同省担当者は「一人一人が新型コロナ対策にもなる手洗いの徹底などに努めた結果」と受け止めている。厚労省は全国約五千カ所の定点医療機関からの報告を基にインフルエンザ患者数の推計値を毎週発表している。二十七日発表の第十二週までの累計は、比較可能な二〇一一~一二年シーズン以降で最少となった。今後も流行が続く可能性があることを示す「注意報」は全保健所管内で解除され、流行はほぼ収束したとみられる。ただ、過去には五月の大型連休前後に再流行した地域の例もあり、同省は「決して油断はしないで」と呼び掛ける。今シーズンの特徴は、昨年十二月まで例年を上回るペースで増加していた患者数が、ピーク時期になることが多い一月下旬~二月上旬にほとんど増えなかったことだ。一方、新型コロナウイルスは一月十五日に国内で初めて感染者が確認され、一月下旬以降、各地で感染が広がった。このため、例年以上に手洗いを徹底したり、人混みを避けたりして感染症の予防を心掛ける人が増えたとみられる。今シーズンは子どものインフルエンザ患者も少なかった。厚労省が自治体の報告を基にまとめた学校や保育所などの休校や学年・学級閉鎖の状況では、第十二週までの累計は昨シーズンに比べて全国で約二割少なかった。

<病院やオフィスの設備・休業補償など>
PS(2020年4月10日追加):新型コロナの感染拡大で緊急事態宣言が出された福岡県では、*9-1のように、感染症指定医療機関でない一般病院も患者の受入を増やす必要があり、院内感染を起こさないための準備をしているそうだ。この病院は、140床全てが個室で陰圧装置を備え、陰圧を強化した部屋もあるので比較的恵まれているが、本来はどの病院も全室個室で陰圧装置を備えてもらいたい。その理由は、複数の人が入る病室は不自由な団体生活になる上、感染症が広がる可能性もあり、他の病気の人と同じ部屋では気分がさらに落ち込むからである。そのため、コロナ後のV字回復には、病院設備の充実(原則として、全室個室で陰圧室)と感染症を受け入れる基幹病院が感染症病棟を備えるための補助金を出すのがよいと思う。
 また、*9-2のように、北九州市は、新型コロナ感染拡大を受けて、福岡県の無症状者・軽症者を受け入れる療養施設として「東横イン北九州空港」をホテルごと借り上げ、約200床用意するそうだ。空港近接のホテルも航空機の客室乗務員も今は空いているので、現在のニーズに合ったサービスをするのはよい考えだ。また、通常は航空機の食事を作っている会社も療養食を提供すれば業務を続けられ、新型コロナが収まった後には病院食・介護食という新しい分野に進出することが可能になるため、臨機応変に事業を行うべきである。
 さらに、日田市役所は、*9-3のように、飛沫感染防止のため、住民課と税務課の窓口に下部に隙間のある透明シートを使った間仕切りを設置したそうだ。確かに、日本の役所や会社のオフィスは、間仕切りもなく、机をつけて仕事をしており、人ばかり多くて集中できないだろうと前から思っていた。そのため、これを機会に、透明でもよいので適切な高さの間仕切りを付け、人と人との間にはパソコンや書類棚を設置して、一定の距離を確保したオフィスを作ったらどうかと思う。ちなみに、外資系会社のオフィスは、1980年代からそうだ。
 最後に、*9-4のように、新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言に関して、西村経済再生担当相は対象地域となった知事とのテレビ会議で、「外出自粛の効果を見極めてから」として休業要請を2週間程度見送るよう打診し、地方は休業要請の損失補償を求めているそうだ。私は、休業要請の判断は地域毎に知事の責任で行うべきだと思うが、「行政から営業自粛を求める以上、補償は表裏一体だ」「補償とセットでなければ理解いただけない」というのは賛成できない。何故なら、新型コロナ感染者を出せば大変なことになる中で、休業は自分や事業の生命を護るために行うものであり、行政から求められて仕方なくやるものではないからだ。さらに、休業によって収入が減少した事業者には、簡素な手続きで速やかに給付金を出せばよいからである。

*9-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/599382/ (西日本新聞 2020/4/10) 感染者受け入れへ一般病院「逃げられない」 対策徹底、風評の懸念も
 新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が出された福岡県では、感染症指定医療機関ではない一般病院に入院する患者が増えている。一般病院での指定感染症の受け入れは異例の事態。各病院は感染対策の徹底に腐心し、風評被害の懸念も募る。県の受け入れ要請に備える同県広川町の姫野病院を9日に訪ねた。病院が感染者の受け入れに備えて用意した個室は3部屋。ベッドが一つ置かれ、冷蔵庫やトイレもあり見た目は普通の病室と同じだが、重症化した際に人工呼吸器を置くためのスペースを確保しておくなど細部に気を使う。「室内には陰圧装置を備えており、廊下に空気が漏れる心配はありません」。病院で感染対策室長を務める感染管理認定看護師の中西穂波さんが説明してくれた。陰圧とは室内の気圧を下げ空気を室外に漏らさない機能。フロアの一部は扉で仕切られ、ほかの入院患者とは動線が交わらないように工夫している。病院は全140床が個室。指定医療機関ほどの機能ではないが、全室に陰圧装置を備える。当面は陰圧を強化した3部屋の使用を想定し、県からの要請次第では、最大35人が入院できる1フロア全てを感染者専用にする方針だ。受け入れ態勢の検討を具体化させたのは1週間ほど前。約500人いる職員には院内感染や風評被害の懸念も根強いが、姫野亜紀裕院長が「医療機関としての使命。ウイルスから逃げてばかりはいられない」と決断した。感染者に対応するスタッフは、使い捨ての医療用長袖ガウンにキャップ、マスク、ゴーグルなどを着ける。着脱は急きょ設けた隔離エリア内に限定し、その都度、アルコール消毒するなどマニュアルも策定。スタッフが帰宅する際はシャワーを浴びることも厳守させる。看護師などを対象に研修を繰り返すという。ただ、十分な対策を講じても病院スタッフの不安は尽きない。感染患者に対応する人員の選定も課題で、中西さんは「精神的なケアも必要になるだろう」と話す。感染者の受け入れによる風評被害も拭えない。電話やインターネットでの診療も実施しているが、姫野院長は「外来診療の患者は減るだろう」と覚悟する。福岡県内の感染者数は累計で250人。県内12の指定医療機関にある感染症病床は66床しかなく、自宅待機を余儀なくされる軽症者や無症状者もいる。重症者らのために感染症病床を空けておく必要があり、県は受け入れ先を一般病院にも拡大し、週内に300床を確保する方針だ。姫野病院では9日、医師や看護師向けの訓練を実施した。中西さんは「いざ感染者が来た時に慌ててミスをしないよう事前にやれることはやっておく」と表情を引き締めた。

*9-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/599334/ (西日本新聞 2020/4/9) 福岡県が軽症者を週明け移送へ 新型コロナ、北九州のホテル200床確保
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、福岡県が無症状者や軽症者を受け入れる療養施設として、ホテル「東横イン北九州空港」(北九州市小倉南区)を確保したことが分かった。ホテルごと借り上げ、約200床を用意できる見通し。13日にも感染者の移送を始める。厚生労働省は感染拡大状況に応じ、軽症者や無症状者について、高齢者や基礎疾患がある人、妊婦などを除き、自治体が用意した民間宿泊施設や自宅での療養を検討するよう都道府県などに通知。県内では感染者が急増して病床が逼ひっ迫ぱくしており、厚労省と協議して医療機関以外での療養に移行を決めた。関係者によると、ホテルには医療機関に入院中や自宅待機中の感染者を移送するほか、新たな感染者にも入ってもらう。1人1室での療養が原則で、感染防護の訓練を受けた看護師や保健師が常駐して健康観察し、医師も適時対応する。ホテル内での感染拡大を防ぐため、清潔な区域と、ウイルスによる汚染区域を明確に分けるゾーニングを徹底。搬送は感染予防を施した公用車などを使い、保健所職員らが対応することを検討している。ホテル従業員は一切関与しない。厚労省によると、滞在中のPCR検査で2回陰性となることが退所基準だ。福岡県内の感染者数は累計で250人。県内12の感染症指定医療機関にある感染症病床は66床しかなく、自宅待機を余儀なくされる軽症者や無症状者もいる。重症者らのために感染症病床を空けておく必要があり、県は受け入れ先を一般病院にも拡大し、週内に300床を確保する方針。

*9-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/599375/ (西日本新聞 2020/4/10) 飛沫感染防止へ手作り間仕切り 日田市役所の窓口、下部に隙間も
 新型コロナウイルスの飛沫(ひまつ)感染を防ぐため、大分県日田市役所の住民課と税務課窓口に9日、透明シートなどを使った職員手作りの間仕切りが設置された。間仕切りは、財政課職員が製作。ホームセンターで農業用のマルチシートなど材料を購入し、縦横90センチの15個を完成させた。窓口担当職員の意見も聞き、下部には書類のやりとりができる15センチの隙間を作った。設置した両課は、市民との接触が最も多い部署。出生届を提出しに訪れた同市日ノ隈町の河津大輔さん(25)は「ウイルスは目に見えないのでこういう対策は安心する」と話していた。隣接する福岡県が緊急事態宣言の対象地域となった7日に同市で初めての感染が確認され、市民の危機感も高まっている。財政課の担当者は「業務が滞ることなく感染防止に役立てれば」と話し、今後は他の部署用も検討するという。

*9-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/510015 (佐賀新聞 2020.4.8) 休業要請2週間見送り打診、西村担当相、7都府県に
 新型コロナウイルスの感染拡大に備える改正特別措置法(新型コロナ特措法)に基づく緊急事態宣言を巡り、西村康稔経済再生担当相が対象地域となった7都府県知事とのテレビ会議で、休業要請を2週間程度見送るよう打診したことが8日、関係者への取材で分かった。感染者数の多い東京都の小池百合子知事は異論を唱えた。地方が休業要請を受けた損失補償を求めるのに対し国は拒否。双方の足並みの乱れが表面化しており、終息に向けて宣言が期待通りの効果を上げられるかどうか問われそうだ。関係者によると、特措法を担当する西村氏は8日昼、東京、大阪、千葉、神奈川、福岡など7都府県知事とテレビ会議で会談。休業要請に関し「外出自粛を第1段階として、その効果を見極めてから」として2週間程度の見送りを求めた。安倍晋三首相が7日の緊急事態宣言に伴い「2週間後には感染者の増加をピークアウト(これ以上は上昇しないという段階に)させ、減少に転じさせることができる」と述べたのを受けた対応とみられる。これに対し、小池氏は「東京は感染のスピードが速く、待てる状態ではない。統一的にではなく地域の実情に沿う対応ができるようにしてほしい」と反論。休業要請の判断を地域ごとに知事の責任で行うべきだとの意見は別の知事からも出たという。政府は7日に改正したコロナ対策の「基本的対処方針」で、宣言対象地域の知事に対し、まず住民に外出自粛を要請し、その効果を見極めた上で休業要請などを行うよう求めた。対象7都府県のうち、東京都が独自に休業要請に踏み切る考えを示す一方、6府県は「外出自粛の効果を見たい」(小川洋福岡県知事)などと当面、休業要請しない方針を示している。ただ8日の全国知事会会合で、吉村洋文大阪府知事は「行政から営業自粛を求める以上、補償は表裏一体だ」と強調。小池氏も含め賛同の声が相次いだ。背景には、地域経済や住民生活に大きく影響する休業要請を知事が出すには「補償とセットでなければ理解いただけない」(黒岩祐治神奈川県知事)との事情がある。知事会は同日、国に損失補償を強く求める緊急提言をまとめた。政府は、休業要請の対象となっていない分野でも影響があることを理由に個別補償を否定し、収入が大幅に減少した事業者に給付金を出すとの立場を崩していない。

PS(2020年4月13日追加):*10-1のように、新型コロナの感染防止対策で一斉休校していた全国の小中高校が4月6日以降は新学期をスタートさせているが、「3密」の回避には限界があるとされている。しかし、「3密の回避」や「ドアノブ・手すりの消毒」は、新型コロナ以外の感染症防止にも必要なことなので、これを機会に30人学級にして座る間隔を空けたらどうか。パソコンを置いても不自由のない大きさの机にして間隔を空けることも、子どもの数が減っており、新学期の現在なら可能だろう。
 また、「新型コロナの治療薬はない」といつまでも言われているが、実際には、*10-2のように、インフルエンザ治療薬の「アビガン」が効くことが明らかになり、日本には200万人分の備蓄があるそうだ。そのため、(他国に無償供与する前に)国内の患者に速やかに投与して治せばよいと思われる。「アビガン」は、RNAウイルス全般に効くと見られており、動物実験で催奇形性が確認されたため妊婦への使用を禁じているとしているが、それは、全員に使ってならない理由にはならない上、軽いうちに使わなければ効果が薄くなるからだ。
 そして、検査して治療することを選ばず、緊急事態宣言による外出禁止に頼った結果、*10-3のように、観光業界が「コロナで死ぬか、経済で死ぬか」という事態になっている。観光バス駐車場の利用は、前年同月と比べて99.5%減で、観光バスで働く人は職を失って再起不能になりそうなのだ。私は、動いていない観光バスを借り上げて内装を変え、駐車場に止めておけば、発熱外来や検査室として使え、テントより余程居心地が良く、一石二鳥になると思う。
 なお、ネットカフェが宿泊施設とはとうてい思えないが、*11-1のように、緊急事態宣言によるネットカフェの営業自粛で多くの人が行き場を失うので、埼玉県は県内にある73か所のネットカフェに寝泊まりしている300人ほどに上尾市のスポーツ総合センターを一時的滞在場所として開放するそうだ。しかし、ITやネットとつけば先端という時代は1990~2000年代始めに終わっているため、住居にゆとりのある地方で、*11-2のようなアルバイトをしながら、今後の生き方を考えたらいかがかと思う。

  

(図の説明:左は、現在の典型的な教室で、中央は机の間を離して配置した写真だ。どちらも、机が粗末すぎて荷物を置く場所もなく、パソコンを置けば書く場所がないという状況だ。そのため、右の写真のように、(色は白でなくてもよいが)机の幅を120cmくらいにしてパソコンを標準装備とし、生徒同士が間隔をあけて座れるよう、30人学級にすればよいと思う)

*10-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/599942/ (西日本新聞 2020/4/12) 手探りの教室「3密」回避限界も 学校再開、リスク拭えず「悩ましい」
 新型コロナウイルスの感染防止対策で一斉休校していた全国の小中高校が6日以降、続々と新学期をスタートさせている。国内では都市部を中心に感染が収まらず、今後も予測不能な中での学校再開。文部科学省は再開に際して留意点の大枠を示すが、再休校の判断など対応の多くを委ねられた教育現場は難しいかじ取りを迫られている。「今は教室内で大声を出さない方が良い、となっていますので普通の声であいさつをしましょう」。始業式を各教室で迎えた子どもたちは、校内放送で流れる教師の呼び掛けに少しくぐもった声で応じた。6日、佐賀県伊万里市の伊万里小。マスク姿の子どもたちは家庭で検温して登校、結果を記入した健康観察カードを学校に提出した。長谷川晃三郎校長は「子どもたちの心身安定のためにも始業式があって良かった」とまずは安堵(あんど)した。3月下旬に学校再開の指針を示した文科省は、毎朝の検温、マスクの全員着用を原則とし、ドアノブや手すりなどの小まめな消毒を学校に要請。特に(1)換気の悪い密閉空間(2)多くの人が密集(3)近距離での会話や発声(密接)-の3条件が重なることを徹底して回避するよう求めた。伊万里小では教室の机の間隔を空け、授業でのグループ討論は行わない。音楽では当面、歌う時間を減らし、鑑賞を中心とする。体育館で行う体育のマット運動や跳び箱も先送りし、1学期は運動場で接触の少ない授業を優先するという。長谷川校長は「学校再開のメリットデメリットはあるが、今後もどうなるか分からない」と、できる範囲での対応を強調した。それでも、同じ6日に始業式のあった同県唐津市の小学校の女性教諭(26)は「3密(密閉、密集、密接)を避けたいが、児童はくっついて遊ぶことも多く悩ましい」と困惑顔だった。
      ◇        ◇
 「3密」対策の必要性は浸透するが実際のハードルは高い。給食の時間、飛沫が飛ばないよう机を向かい合わせにせず、会話を控えるようにしても配膳などの段階で接触はある。40人近い学級であれば確保できる机の間隔はわずかだ。休校が続く福岡市の中学校に勤務する40代の女性教諭は「どんなに工夫しても問題は残る。今、学校が再開されずにむしろほっとしている」と打ち明けた。文科省も指針の中で「多くの学校においては人の密度を下げることには限界がある」とし、学校教育活動上、近距離での会話や発声が必要な場面も生じることを認める。では、どうすべきか。学校によっては、学級を二つに分けて授業をしたり、登校日を分散させたりするといった案もあるが「授業時間数や教育の質を十分に確保できるのかという課題はある」(福岡県の中学校長)。現実的にはマスクの着用と換気の徹底で乗り切るしかないのが実情だ。
      ◇        ◇
 こうした学校の状況に、大分県では「勉強の遅れは取り返せても、命は取り返せない」と、県立高校生2人が休校の延長を求め、インターネットで集めた約1600件の署名を添えた要望書を県教育委員会に提出した。しかし県教委は「意見は受け止めたが、県内の感染状況は落ち着いている」として、予定通り県立学校を8日に再開している。一方、政府の緊急事態宣言を受けて対象の福岡県内をはじめ九州の一部自治体は再休校を決めたり、学校再開の方針を転換したりしている。実は新型コロナウイルスを巡る対応で安倍晋三首相の唐突な一斉休校要請も、文科省の学校再開の指針も、科学的根拠や効果は今なお示されていない。その中で選択を迫られる教育現場からすれば「地域事情を踏まえて総合的に判断するとしか言いようがない」(宮崎県教委)と歯切れも悪くなる。過去に例のない事態と向き合う現状では、学校を休校するか、再開するか、また再開した場合に感染をどう防ぐのか、完璧な答えは見えない。教育研究家の妹尾昌俊さんは「学校は本来、安全に楽しく学べる子どもたちの居場所。しかし大勢が教室に密集する日本の学校で感染リスクを大きく低下させるのは限界がある。感染が続く地域では子どもや保護者の意思を尊重できる選択肢があってもいい。いずれにせよ全ての子に学習の遅れが生じない手だては不可欠だ」と話した。

*10-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202004/CK2020041302100024.html (東京新聞 2020年4月13日) 「命救う薬に」コロナへの効果期待 アビガン開発者に聞く
 新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言を発令した七日、安倍晋三首相は治療候補薬として、インフルエンザ治療薬「アビガン」を増産する方針を表明した。開発に携わった富山大名誉教授の白木公康さん(67)は「命を救う薬として貢献できればうれしい」と語る。
◆世界も注目 30カ国が提供申し込み
 「すでに百二十例を超える投与が行われ、症状改善につながったという報告も受けている」。首相は会見でアビガンへの期待を前面に押し出し、開発企業と協力して臨床研究を進めることを表明。世界三十カ国から提供の申し入れがあり、政府は無償供与も始める。アビガンはインフルエンザ治療薬として白木さんと富山化学工業(現富士フイルム富山化学)が開発。二〇一四年に治療薬として承認され、現在は政府が新型インフルエンザ対策として二百万人分を備蓄する。
◆ウイルスに効くと直感
 岐阜市出身の白木さんは一九九一年に富山大のウイルス学研究室教授に就任。当初は帯状疱疹などを起こすヘルペスウイルスの治療薬を研究したが、既存の薬より効くものはできなかった。違うテーマでの再出発を目指していた九八年、富山化学の研究者が、同社が持つ三万個の化合物の中から試験管での実験でインフルエンザに効きそうな結果が出た物質として、アビガンを持ってきた。「構造の化学式をみた瞬間、インフルエンザなどのRNAウイルスに効くなと思った」と、白木さんは振り返る。インフルエンザや新型コロナウイルスは、遺伝子としてDNAではなくRNAを持つ。アビガンは、細胞内に侵入したウイルスが、RNAをコピーして増殖するのに必要な部品によく似た構造をしていた。ウイルスが部品と間違えてアビガンを取り込めば、RNAのコピーができなくなり増殖が止まると白木さんはみた。長年研究したヘルペスの場合、DNAで同じような働きをする薬が特効薬になっている。アビガンにはこの薬と共通点があると見抜いた。失敗経験が生きた。
◆3月に臨床試験開始
 動物実験を始めると、マウスでもインフルエンザに効くことを示せた。しかし、富山化学の経営状況が悪化したことや、既にインフルエンザ治療薬があったことなどから治験は停滞。それでも、既存の薬が効かない新型インフルエンザが出現した場合の切り札として一四年に承認された。アビガンはRNAのコピーという、ウイルス増殖の基本的な仕組みを妨げるため、白木さんは「インフルエンザ以外のRNAウイルス全般に効く」とみていた。実際、一四年からアフリカで猛威を振るったエボラ出血熱にも使用された。標準的な治療薬には選ばれなかったが、ギニアでは死亡率を低下させたとの研究成果もある。コロナウイルスでも同様の効果を期待して、藤田医科大(愛知県豊明市)が三月に臨床研究を開始。首相はこうした研究成果を念頭に「効果が出ている」と発言したとみられる。富士フイルム富山化学も今月三日にアビガンの治験を始め、六月末までに結果をまとめる。既に増産にも乗り出した。
◆「緊急事態に使う薬に」
 ただ、アビガンは動物の試験で、胎児に奇形を生じる催奇形性が確認された。人での治験では大きな副作用は確認されなかったが、インフル治療薬として妊婦への使用を禁じている。日本医師会の横倉義武会長もアビガンの治験への協力を表明する一方で「生殖期への影響が強い。注意しながら使うことが重要だ」と強調する。白木さん自身、コロナウイルスへの有効性が確認されたとしても「いつでも広く使うのではなく、現在のような緊急事態に命を救う薬という位置付けになる」とみる。一方で「肺の炎症は、高齢になってから後遺症が出ることもある。肺で炎症のある患者には早い時期から投与する必要がある」と指摘する。

*10-3:https://digital.asahi.com/articles/ASN475T44N47IIPE01F.html (朝日新聞 2020年4月9日) 「コロナで死ぬか、経済で死ぬか」北海道・小樽のいま
 新型コロナウイルスの影響が長期化し、観光業界が苦境に立たされている。政府は7日に緊急事態宣言を出し、新たな経済対策をまとめたが、事態の収束は見通せない。国内有数の観光地、北海道小樽市では「もう限界に近い」との声が上がる。
●観光バス99.5%減の衝撃
 今月初旬、小樽市が集計した数値が地元関係者に衝撃を与えた。2月まで多くの人が行き交っていた小樽運河近くの観光バス駐車場の利用が、3月は6台にとどまった。前年同月(1343台)と比べると99・5%減。「観光客が消えた」と市の担当者は表現する。緊急事態宣言の対象は東京や大阪、福岡など7都府県で、北海道は含まれなかったが、観光需要の回復は当面見込めない。約100店舗が軒を連ねる小樽堺町通り商店街では、厳しい現状を訴える声があふれる。「コロナで死ぬか、経済で死ぬか」。昆布専門店「利尻屋みのや」の社長、簑谷和臣さん(50)はそう話す。3月の売り上げは前年の24%。例年、観光客が増える夏に向けて売り上げが伸びるため、このままでは4月の売り上げは前年の10%、5月は5%になる恐れがあるという。31人の従業員の雇用は最後まで維持する考えだが、「あと何カ月、給料を払えるだろうか」と苦しい胸の内を明かす。政府の経済対策、とりわけ即効性がある現金給付に期待を寄せるが、事態が長期化すれば焼け石に水になってしまう。「収束が最大の経済対策だ」と簑谷さんは話す。
●海鮮丼専門店、アルバイトは全員休み
 海鮮丼の専門店「どんぶり茶屋」では、3月の売り上げが前年の2~3割という。十数人のアルバイトは全員休んでもらい、他に仕事が見つかればそちらを優先してほしいと伝えたという。運営会社の外食部門の責任者、大野大輔さん(43)は「先が見えないのが一番不安。打つ手がない。今は耐えるしかない」と話す。アクセサリー店「3Ring(サンリング)」では、3月の売り上げが半減した。運営会社の副社長、淡路祐介さん(39)は「他のお店と比べれば、うちはまだマシかもしれない」。それでも、運転資金を確保するために数百万円の融資を受ける検討をしている。当初は5月までの収束を期待していたが、緊急事態宣言であきらめざるを得ない状況だ。「このままでは、また融資、また融資となりかねない。夏までに収束しないと、商店街でも事業を縮小するお店が増えてくるかもしれない」と淡路さんは言う。

*11-1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200412/k10012383281000.html (NHK 2020年4月12日) ネットカフェ営業自粛で行き場失う人に県施設を無料開放 埼玉
 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言を受けて、埼玉県は人が集まりやすい施設などに13日からの休業を要請していますが、インターネットカフェの営業自粛で多くの人が行き場を失うおそれがあるため、一時的な滞在場所として、県の施設を12日夜から開放することを決めました。緊急事態宣言を受け、埼玉県は人が集まりやすい施設などに13日午前0時からの休業を要請していて、対象の施設には24時間営業のインターネットカフェも含まれています。しかし、県によりますと、県内にある73か所のインターネットカフェには、300人ほどが寝泊まりを続けているとみられるということで、こうした人たちが行き場を失うおそれがあるため、上尾市にある県のスポーツ総合センターを一時的な滞在場所として、12日夜から開放することを決めました。和室と洋室合わせて30部屋におよそ200人が宿泊でき、県内のインターネットカフェを利用していた人は、原則、無料で1週間、滞在できるということです。施設の開放は12日午後8時から来月6日まで行われ、利用する場合は午前9時から午後6時までは「048-830-8141」、午後6時以降は「048-774-5551」まで連絡が必要だということです。

*11-2:https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/politics/206266 (上毛新聞 2020/4/13) 嬬恋キャベツに人手を 新型コロナで宿泊や飲食の余剰人材へ募集
 新型コロナウイルス拡大防止の水際対策強化に伴う入国制限などの影響で、外国人技能実習生らが来日できず深刻な人手不足が懸念される中、群馬県嬬恋村のキャベツ農家でつくる嬬恋キャベツ振興事業協同組合(干川秀一理事長)は12日までに、客数の落ち込みで人手余剰感がある宿泊施設や飲食店の従業員を一時的に雇い入れる農家を紹介しようと募集を始めた。村内の農家に必要な計約220人の確保を目指す。新型コロナ問題による労働者の不足と余剰を結び付け、非常時を乗り切りたい考えだ。
◎収穫終える10月まで 繁忙期などは配慮
 政府は中国やベトナムなど73カ国・地域からの入国制限をしており、同組合は実習生の入国遅れが長期化すると判断し、対応を協議してきた。キャベツの栽培管理や収穫作業は人手が必要のため実習生に頼っている。それぞれの農家は当初、今月20日ごろから栽培作業を実習生に始めてもらう段取りを取っていたという。入国制限が解除された場合でも、入国手続きには1カ月以上かかる見込み。このため今年の入国調整を見送り、収穫を終える10月ごろまでを他業種に従事する日本人や在日外国人らの一時的な雇い入れで補いたい方針だ。農家で人手不足が深刻となる一方、宿泊や飲食といった業界では外出自粛などのあおりで来客数が大幅に減少し稼働率が低下しているほか、製造業などでも海外からの部品調達が滞るなどして工場が停止し、従業員が自宅待機となるケースもあるという。同組合は、一時的に余剰感が生じたこうした業界で働く人を、キャベツ栽培農家が雇えるよう橋渡しをする。村内の観光業者や商工業者にチラシを配り、雇い止めや一時休業を考えている経営者に対して従業員の雇用確保策としても呼び掛ける。同組合はJA系統外の農家などでつくる団体だが、JA嬬恋村に支援を求める農家に対しても応募者をつなぎ、村全体のキャベツ農家に人材を提供していく考え。村内では約120戸が計約220人の人員を求めているという。新型コロナウイルスの状況次第だが、同組合事務局は「夏休みなどに繁忙期となるホテル従業員には配慮したい。短時間でもいいので村内外から一緒に頑張りたい人に来てほしい」としている。問い合わせは同組合の電子メール(fhashi18@gmail.com)へ。

<検査・治療に帰国者・接触者相談センターや保健所を通すのが誤りだ>
PS(2020年4月15、16、17日追加):*12-1のように、「新型コロナの感染が拡大し、クラスター追跡が遅れて保健所がパンクしているのが危機だ」と記載されているが、“積極的疫学調査”と称するクラスターの追跡は、(原爆症の調査を思い出すが)疫学調査のための調査であって、治療のための迅速な検査になっていない。さらに、東京都の感染者の約7~8割が感染経路不明というのも、公共交通機関・職場・歓楽街などで接した不特定多数の人の全てを報告することなどできるわけがないため当然で、有用な疫学調査にもなっていない。現在は、クラスターを追跡して無症状の人を隔離するよりも、症状の出た人を素早く検査して治療し、重症化する前に治すことが必要な段階なのである。
 京都大付属病院と京都府立医科大付属病院が、*12-2のように、新型コロナの院内感染を防ぐために、手術や救急医療を受ける患者に対して症状がなくてもPCR検査を公費で行うか保険適用するよう求める共同声明を発表し、対策が遅れれば医療崩壊に繋がると訴えている。他の病気で病院を訪れる人でも新型コロナに感染していないという保証はないため、手術や救急医療などの治療を受ける患者に検査を行うのは当然だ。そのため、治療の一環として検査を保険適用にすればよく、*12-4のような15分で判定できる高価すぎない検査キットをクラボウの中国の提携先が開発し、4月16日以降、1日1万テスト分を供給するそうだ。
 さらに、*12-3のように、北海道新聞も社説で「新型コロナの検査態勢拡充に手を尽くしたい」と記載しているが、検査方法はPCR検査だけではないため要注意だ。確かに、医師が感染を疑って検査を求めても保健所などが拒否するケースが多すぎ、まだ「感染者や渡航歴がある人などとの濃厚接触」を条件にしているのは現実に合っていない。そのため、先行事例や提言を参考にして工夫すべきだが、専門技師が不足しているからといって、「感染したら重症化するリスクが高いのは高齢者」などと年齢差別的な報道を繰り返しながら、停年退職者に検査を担わせようと考えるのは筋が違うため、リスクが低いと言わている人が対応すべきだ。
 新型コロナの国内感染者数は、*12-5のように、「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客乗員分を合わせて1万2人となり、三重県四日市市では発熱して自宅療養中だった50代男性が死亡し、感染していたことが判明したそうだ。これは、東京在住の私のいとこ(40代男性)が、①微熱が続くのでかかりつけ医に行ったら「保健所に相談して」と言われ ②保健所は「軽症だから検査しない」と言い ③最初は37.5 度だった熱が4日後には40度になって ④苦しいので保健所に電話したら電話が通じず ⑤やっとPCA検査を受けたら結果が出るまで3日かかると言われ ⑥状態が著しく悪化したためPCA検査の結果を待たずに救急車で病院に行ったら ⑦「軽症だから公共交通機関で帰ってくれ」と言われ ⑧救急車の中で6時間も待たされた後にやっと入院できて酸素吸入を受け ⑨後でPCA検査の結果が陽性だったことがわかった というのと同じケースだと思うが、私のいとこも救急車で病院に行かなかったら「発熱して自宅療養中だった40代の男性が死亡し、死亡後に陽性だったことが確認された」などというくだらない報告になっていたところだった。つまり、日本は、とんでもない医療放棄国になってしまったのだが、①の段階で直ちに検査し、③になる前にアビガンを投与していれば、とっくに治って救急車や救急救命室を占有する必要もなかったのである。また、⑤については、結果が早く出る検査方法を使った方がよく、新型コロナの症状を出している人が⑦のように公共交通機関を使えば、東京で新型コロナが蔓延するのは当然で、どこかおかしい。
 なお、新型コロナの治療効果が期待されるアビガン(対症療法ではなく根本的治療薬である)は、*12-6のように、⑩政府は備蓄を3倍の200万人分へ増やす計画を掲げているが ⑪通常であれば中国に依存していた原料の国内生産切り替えには時間がかかる(何でも時間がかかるが、時間をかければ勝負は終わっている) ⑫緊急事態の対応で規制緩和など官民を挙げた取り組みを加速する必要がある そうだ。しかし、日本で開発された付加価値の高い医薬品でも国内で生産すればコストが高いため中国に依存していたのは情けないし、政府は今が必要な時なのだから備蓄を迅速に提供すべきだ。そして、政府が短期間で承認したいのに、厚労省が「条件付き承認でも審査に数カ月がかかる」等と言っているのは、厚労省の怠慢である。

     
 2020.4.6東京新聞   2020.4.10Yahoo  2020.3.6東京新聞

(図の説明:1番左と左から2番目のグラフのように、東京始め日本で新型コロナ感染者が等比級数的に増え、いくつかの都府県で緊急事態宣言が出された。しかし、右から2番目の図のように、37.5度以上の発熱が4日以上続き、患者が崩壊しそうになって初めて保健所や帰国者・接触者相談センターに電話相談することができ、そこの電話は繋がりにくい上に繋がっても事務的な説明をして検査を断られるケースが多く、新型コロナ感染者がやむなく自宅待機してさらに感染者を増やしている状況だ。が、1番右の図のように、迅速に検査して治療しなければアビガン等の治療薬は効かないため、保健所や帰国者・接触者相談センターへの事前相談はやめて迅速な検査と投薬で治す体制に変えるべきだ。そして、そのための準備は、ダイヤモンド・プリンセス号の経験以来、2月~3月中旬までの時間稼ぎをしている期間にやっておくべきだったのに、いつまで同じことを言って経済を停滞させ、無駄遣いばかりしているのか)

*12-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58024420U0A410C2EA1000/ (日経新聞 2020.4.15) クラスター追跡に遅れ 感染拡大、駅な保健所パンクの危機
 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、感染経路の調査を担う保健所の負担が急激に重くなっている。感染者や濃厚接触者が加速度的に増え続け、調査に非協力的な人も多い。保健所がパンクすると、クラスター(小規模な感染者集団)の発見が困難になり、感染が一段と拡大しかねない。態勢増強や業務分散が急務だ。「保健所は今、新型コロナとの闘いの主戦場だ。現場は疲弊しており、何とかしなければならない」。政府の専門家会議の尾身茂副座長は窮状を訴える。保健所は都道府県や政令市、中核市などが設置主体で、医師や看護師、保健師らが配置されている。聞き取りなどを通じ濃厚接触者を捜し出したり、体調を確認したりする「積極的疫学調査」を担う。全国に472カ所(2019年度)ある。国は感染拡大防止のため、クラスター追跡を重要施策に掲げる。尾身氏が危機感を隠さないのううは、感染者や濃厚接触者の急増で、保健所によるクラスター追跡に遅れが生じているためだ。このところ東京都で見つかる感染者のうち、約7~8割は感染経路が不明だ。都の担当者は「保健所からの情報がほとんどなく、背景がよく分からない。受診者が増えて聞き取り調査が十分できていない可能性がある」と明かす。厚生労働省によると、感染者1人あたりの濃厚接触者数はゼロから100人近くと大きな幅がある。自宅で安静にしていたか、外出していたかで大きく異なる。保健所は感染者の行動履歴から濃厚接触者を割り出すが、行動範囲の広い若者や中高年の感染者が増え、追い切れなくなっているという。歓楽街でのクラスターの関係者は聞き取りにも非協力的なことが少なくない。

*12-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020041501037&g=soc (時事 2020年4月15日) 無症状でもPCR検査を 京大病院など共同声明―新型コロナ
 京都大付属病院と京都府立医科大付属病院は15日、新型コロナウイルスの院内感染を防ぐため、手術や救急医療を受ける患者に対し、症状がなくてもPCR検査を公費で行うか保険適用するよう求める共同声明を発表した。対策が遅れれば医療崩壊につながると訴えた。声明は無症状であっても感染者に手術や分娩(ぶんべん)、内視鏡検査をすれば、医師や周囲の患者らに感染させる可能性があると指摘。現在は症状がある患者だけに保険が適用され、無症状のケースで実施した場合に病院側が費用を負担すれば経営を逼迫(ひっぱく)させるとした。また、PCR検査に必要な試薬や、感染を防ぐ防護具の確保も求め、厚生労働省に要望書を提出するという。京大病院の宮本享病院長は記者会見で、「臨床現場の悲鳴でもあり、この危機感は日本中の医療関係者が共有している」と話し、他の医療団体に賛同を求めた。

*12-3:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/412751 (北海道新聞社説 2020.4.16) コロナ検査態勢 拡充に手を尽くしたい
 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐには、PCR検査の拡充が不可欠だ。なのに、遅々として進まない現実がある。道内の帰国者・接触者相談センターの健康相談は2、3月で1万8544件に上ったが、検査に至ったのは1・8%の349件で全国3番目の低さだった。検査ができないと、感染に不安を感じる人たちが医療機関を受診して、ウイルスをうつしたり、うつされたりする恐れがある。安倍晋三首相は今月6日、検査の可能数を1日2万件にすると述べたが、実施は8千件を下回っており、目標にはほど遠い。国は地方任せにせず、財政措置を講じて検査態勢を整え、加速させるよう手を尽くすべきだ。北海道保険医会の調査では、会員の医師が感染を疑い検査を求め、保健所などに拒否されたケースが111例あった。「感染者や渡航歴がある人などとの濃厚接触がない」などが理由である。国は感染経路から濃厚接触者を追って検査し、感染爆発を抑える手法を取ってきた。検査数の少なさは国の方針に従ったためだ。だが、感染経路が不明な人が増え、段階は変わった。検査の拡充に重点を移す必要がある。検査数という分母が感染の実態を反映していないと、科学的な統計と知見に基づいた対策を打つこともできない。感染の有無が分かれば、重症者に対して感染症指定医療機関で優先的に治療を行い、軽症者は自宅や宿泊施設で療養してもらうトリアージもしやすくなろう。それにしても日本の検査数は驚くほど少ない。ドイツの検査数は日本の約30倍に上るという調査結果もある。大量検査で早期発見に努め、重症化を阻止している。ドライブスルー方式や訪問型の検査などで院内感染を防ぎ、民間の協力を得て24時間態勢でスピードアップを図っているという。韓国で普及しているウオーキングスルー方式も有効だ。野外にブースを設けて検体を採取するため、車を持たない人でも検査ができ、飛沫(ひまつ)感染のリスクも低い。日本医師会は採血で行う抗体検査を要請している。医療従事者の感染リスクが減り、免疫獲得の確認などに適しているそうだ。こうした先行事例や提言を参考に工夫を凝らしてほしい。検査数が伸びないのは専門技師らが不足していることもある。退職者ら検査を担える人に応援を求めることも必要だろう。

*12-4:https://www.chemicaldaily.co.jp/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%9C%E3%82%A6%E3%80%80%EF%BC%91%EF%・・ (化学工業日報 2020年3月13日) クラボウ 15分で判定 新型コロナ検査キット
 クラボウは12日、新型コロナウイルスの検査キットを16日に発売すると発表した。イムノクロマト法を用い、15分で感染の有無を目視で判定できる。衛生研究所や臨床検査会社などに、1日当たり1万テスト分を供給する計画。イムノクロマト法による新型コロナの迅速検査キットは国内初とみられる。保険適用を視野に入れている。検査キットはクラボウの中国提携先が開発。これまでに1000例以上の臨床データがあり、同国では4日に標準診断法のガイドラインに採用された。10マイクロリットルの血液をキットに滴下するだけで診断でき、PCR法と比較して時間、コストなどを削減できる。血液検査のため、検査作業者への2次感染のリスクも軽減できる。キットは感染時に体内で生成される特定の抗体を検出する。PCR法で検出が難しいとされている感染初期でも判定できる。PCR法は検体中のウイルス量の影響を受けやすいが、同キットは血液中に抗体が存在すれば判定可能。サンプル採取の方法や部位による偽陰性も出にくい。感染の初期段階で生成される抗体「IgM」用と感染後長期間にわたり最も多く生成される抗体「IgG」用の2種類を用意し、正診率はそれぞれ95・72%、94・24%。陰性判定率については、ともに100%。併用することで検査精度は高まる。2種ともに価格は税別で2万5000円。同社環境メカトロニクス事業部バイオメディカル部は、イムノクロマト法などを用いた食品中の成分や食中毒菌などのDNAを判定する試薬キットを開発・販売している。今回、新型コロナの感染拡大を受けて、中国の提携先が開発したキットの輸入、販売に踏み切った。

*12-5:https://mainichi.jp/articles/20200416/k00/00m/040/248000c?cx_fm=mailsokuho&cx_ml=article (毎日新聞 2020年4月16日) 国内感染者1万人超え、クルーズ船含め 死者203人に
 新型コロナウイルスは16日、東京都の149人など新たに576人の感染が判明した。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客乗員を合わせた国内の感染者数は計1万2人になった。13人が亡くなり、死者は計203人になった。三重、大分、沖縄の3県での死亡は初めて。大阪府では52人の感染が確認され、感染者数は1000人を超えた。和歌山県では両親の感染が既に判明していた0歳女児の陽性が新たに確認された。三重県四日市市では発熱して自宅で療養中だった50代男性が死亡し、感染していたことが判明した。

*12-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200417&ng=DGKKZO58155130W0A410C2EA1000 (日経新聞 2020.4.17) アビガン原料、中国頼み、政府、備蓄3倍の200万人分めざすが…国内生産移行へ総力戦
 新型コロナウイルスに対する治療効果が期待される富士フイルムホールディングスの抗インフルエンザ薬「アビガン」。政府は備蓄を3倍の200万人分へ増やす計画を掲げるが、通常であれば中国に依存していた原料の国内生産切り替えには時間がかかる。緊急事態の対応で規制緩和など官民を挙げた取り組みを加速する必要がある。
●特許切れ後発薬
 アビガンはウイルスが体内で増殖するのを防ぐ仕組みで、コロナ治療に効果があったという報告がある。政府はパンデミック(世界的な大流行)に備えてアビガンを備蓄していたが、1人の治療にインフルの3倍量が必要ということが分かり、現在の200万人分は70万人分にしかならず、富士フイルムに増産を指示した。アビガンは海外で基本特許が切れており、原料を製造する中国では同じ成分の後発薬の生産も始まった。国内への原料輸入が難しい状況となり、富士フイルムは国内で原料を製造する能力があるデンカに委託し、国内生産にシフト。7月から本格的な増産を始める計画を公表した。本来、医薬品の原材料を変更するには時間がかかる。原料の調達先変更を申請する場合「通常なら品質の確認や登録手続きに1年程度かかる」(国内の中堅製薬)という。今回は特例的な措置で、こうした手続きが1~2カ月程度に短縮されたようだ。ただ本格的な増産は7月以降とみられ、3カ月程度を要する。コストもかさむ。製薬会社が海外から原料を調達するのは製造原価を下げるためだ。錠剤など一般的な医薬品は化学合成でつくられ、化学物質に溶媒や材料を加えて化学反応を起こす。有毒なガスや排水が発生するため処理コストもかかる。種類や濃度にもよるが日本の医薬品の排水処理費用は1キログラムあたり数十円から数百円とされ、中国やインドなど海外の10倍ともいわれる。国内で原料から製造すると薬価50円の薬に、100円以上のコストが発生することも考えられる。原料生産を内製化できれば、200万人分の目標は達成できる。ただ国内製造だと製造原価も高くなる。製造コストに見合う薬価を設定し、その価格を維持していく支援も必要だ。インフルエンザの代表的な治療薬タミフルは1日2回、5日間の服用で2700円程度かかる。仮にアビガンがタミフルと同価格で3倍量が必要とすると、1人分の薬剤費は8100円。200万人分なら162億円となる計算だ。原薬の海外依存は日本の構造的な問題だ。厚生労働省が2013年に実施した後発薬の調達状況に関する調査によると、原薬をすべて国内で調達しているものは金額ベースで3割にとどまっている。残る7割は原薬の全部もしくは一部を海外から輸入。調達先を金額で比較するとインド(30%)、韓国(26%)、中国(24%)となっていた。薬価の引き下げ圧力は強まっており、現在は海外調達の比率はさらに高まっているとみられる。
●審査には数カ月
 アビガンについては実用化の時期も注目される。政府は短期間でアビガンを承認したい考えだが、厚労省は慎重な姿勢を崩さない。一般的に医薬品は申請から承認まで半年以上。アビガンの臨床試験(治験)は6月末に終了する見通しだ。「副作用などデータの評価、専門家の意見といったプロセスは必須。条件付きの承認でも審査に数カ月がかかるだろう」(元厚労省の薬事担当者)。今回は日本の製薬会社が開発した薬であっても、原料の多くを中国に依存していたため、機動的に増産することができない現実が露呈した。デンカは原料となるマロン酸の製造から17年に撤退していたが、製造設備を残しており、人員の手当てで再生産できることが分かった。デンカが生産できるのは幸運にすぎず、原料を海外に頼る日本の医薬品製造に対する構造的な問題は依然として残ったままだ。新型コロナで浮かび上がった日本の医薬品の供給体制の危うさを解消するためにも、国内生産に対する価格評価や緊急時の審査の仕組みなど柔軟な制度を今こそ再構築する必要があるだろう。

| 日本国憲法::2019.3~ | 02:39 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.11.25 自民党の改憲案と護憲論について ← 護憲が保守で改憲が革新の筈だが・・ (2019年11月27、28、29日、12月1、2、3、5、6、9、10、12日に追加あり)
 
                大日本帝国憲法との比較 2018.3.22朝日新聞

(図の説明:1番左は、日本国憲法成立時の原本で、左から2番目は、大日本帝国憲法との要点の比較である。また、右から2番目は、2018年の自民党改憲案で、1番右は、日本国憲法が成立から72年間改憲していないとする図だが、「長く改憲していないから」というのは「連合国から押し付けられた憲法だから」というのと同様、改憲する理由にはならない)

 私が表題に、「護憲が保守で憲法変更勢力が革新の筈だが・・」というコメントをつけたのは、現在、「保守」を標榜する人々が改憲を主張し、現行憲法を護ろうとする人々を「革新」と呼ぶ逆の事態になっているからで、これは、現在では、「保守」「革新」という言葉で国民を色分けすることが無意味になっていることを意味すると同時に、現行憲法が少なからず無視されてきたことを意味している。

(1)自民党改憲案について
1)憲法9条(戦争放棄)に、9条の2を創設する案
 *1-1の自民党改憲案は、9条全体を維持した上で、次に9条の2を追加して、「①1項:前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する」「②2項:自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する」としている。

 しかし、①は9条と比較して冗長で、目的と行動に論理的整合性があるとは言えない。また、②は、内閣総理大臣が戦争を始めてしまった後では、戦争反対や自衛隊の行動制限は国益に反するため国会も言い出しにくくなり、追認せざるを得ないだろう。

 太平洋戦争の時は、戦争に反対する内閣総理大臣は殺されたり、失脚させられたりして、戦争に反対しない人が内閣総理大臣になるまで交替させられた。外務省の重要ポストも、戦争推進派が占めるまで人事異動が続いたそうだ。つまり、それらの反省の上に立っている現行憲法の方が、より平和を担保している上に、文章としてもずっとスマートなのである。

 そのため、「時代とともに状況が変わったから」「現行憲法は外国の押し付けだから」などとして改憲を主張するだけでなく、*1-2-1・*1-2-2・*1-2-3・*1-2-4・*1-2-5等の根源的な問いに論理的に答えた上に、現行憲法よりも改憲案の方が優れている理由を明快に説明できなければ、改憲の提案はできないと考える。

2)73条(内閣の職権)に、73条の2・第64条の2の緊急事態条項を新設する案
 *1-1の自民党改憲案は、内閣の事務を定める第73条の次に第73条の2「①1項:大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる」「②2項:内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない」を追加している。

 しかし、①は、「特別の事情がある時は、内閣は国会による法律の制定によらずに、政令を制定することができる」としているのであり、自然災害によるものだけに限定される保証はない。これは、*1-3-1のように、緊急事態条項が、大規模災害や戦争など国家そのものの存立が脅かされる可能性がある場合に、全体の利益のために個人の権利を抑制する考え方である「国家緊急権」の思想に基づいていることから明らかだ。

 緊急時とは、2012年の自民党改憲案では「外部からの武力攻撃」「内乱」なども入っていたため、次第に拡大解釈されたり、強制になったりすることが想定内だ。これは、*1-3-2のマイナンバーカードが、最初は個人情報保護の観点から「取得は自由だ」と言って導入されながら、今では国民監視の目的を現し始めて次第に取得を強要しだしており、同じような流れであるため要注意なのである。

 さらに、*1-1の自民党改憲案は、国会の章の末尾に、特例規定として64条の2「③大地震その他の異常かつ大規模な災害に議員より、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議院の出席議員の3分の2以上の多数で、その任期の特例を定めることができる」を追加している。

 しかし、*1-3-1のように、2011年の東日本大震災では被災地の地方選を延期した経緯があり、改憲しなくても災害時には臨機応変に対応できる。それよりもむしろ、国会の審議を経ない緊急の政令により、国民の権利が堂々と損なわれる状況を作る方が危いのである。

3)参院選「合区」解消のために、47条を変更する案
 *1-1の自民党改憲案は、「参院選における合区を解消するため」として、47条を「①1項:両議院の議員の選挙について、選挙区を設けるときは、人口を基本とし、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案して、選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数を定めるものとする。参議院議員の全部又は一部の選挙について、広域の地方公共団体のそれぞれの区域を選挙区とする場合には、改選ごとに各選挙区において少なくとも1人を選挙すべきものとすることができる」「②2項:前項に定めるもののほか、選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める」と変更しようとしている。

 しかしながら、現行憲法の47条は、「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める」としか書かれておらず、詳細は公職選挙法で定められているため、改憲ではなく公職選挙法を変更すれば済む上、憲法としては現行憲法の方が簡潔で読みやすく、スマートでもある。また、選挙制度の変更なら、民主主義を実効あるものにするために、参議院議員の合区解消だけでなく、衆参両議院の選び方を総合的に考慮する必要があると考える。

4)地方自治の基本原理である第92条を変更する案
 *1-1の自民党改憲案では、92条を「地方公共団体は、基礎的な地方公共団体及びこれを包括する広域の地方公共団体とすることを基本とし、その種類並びに組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める」と変更することになっているが、この文章にも憲法にそぐわない稚拙さがある。

 現行憲法の92条は「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める」とだけ書いてあり、その法律が地方自治法であるため、変更した方がよい点があるのなら地方自治法を変更すればよい。そして、現在では、重要なことは、既に定められている憲法や地方自治法を護っているかどうかになっているのだ。

5)教育の充実のためとして、26条3項、89条を変更する案
 *1-1の自民党改憲案は、教育の充実のため、26条1、2項は現行のまま、3項を加えて「①3項:国は、教育が国民一人一人の人格の完成を目指し、その幸福の追求に欠くことのできないものであり、かつ、国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担うものであることに鑑み、各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保することを含め、教育環境の整備に努めなければならない」と変更し、さらに89条を「②公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の監督が及ばない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」となっている。

 しかし、①は、憲法には書かれていないが、教育基本法には既に書かれていることであり、それでも足りない部分があれば教育基本法を変更すればよいため、改憲する必要はない。さらに、②は、現行憲法では「公の支配に属しない」とされている文言を「公の監督が及ばない」としてむしろ支出の制限を甘くしており、これは私立学校や私立の幼稚園・保育所に補助するための変更だろうが、その意図とそれによって生じる結果をしっかり議論して明確にすべきだ。

(2)主権在民を徹底するために、やるべき改憲はこれである
 *2の日本国憲法の第7章の財政を見ればわかるとおり、予算に関しては、第83条~第89条まであるが、決算に関しては、90条の「①国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める」と91条の「②内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない」しかない。

 そして、①によれば、毎年会計検査院が検査し、内閣が次年度に検査報告とともに国会に提出しなければならないのは国の収支だけで、国の財政状況については提出する必要がなく、国民への報告も義務付けられていない。また、②によれば、内閣は、国会や国民に対して少なくとも年に1回、国の財政状況について報告しなければならないが、会計検査院の検査は義務付けられておらず、収支の報告はしなくてよい。つまり、これは、条文数の問題ではなく、内容の不十分さの問題であり、政府の非効率な支出(無駄遣い)と国民負担増の温床となっているものだ。

 そのため、90条は「1項:国の財政状態及び収支の状況は、複式簿記で記帳した上で、毎年決算を行って財務諸表を作成し、会計検査院が検査するとともに、監査法人がこれを監査しなければならない。」「2項:会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。」と変更し、91条は「内閣は、国の財政状態及び収支の状況を示す財務諸表を、その検査報告書、監査報告書とともに、次年度には国会及び国民に提出しなければならない。」と変更すべきだ。これに伴って、*2-2の財政法も、当然、現金主義・単年度主義から発生主義に変更しなければならない。

 これを一般企業に例えれば、会計検査院は内閣総理大臣の支配下にあるため内部監査人の位置づけで、監査法人が外部監査人の役割を果たすことになり、国の会計情報に本物のチェックが働いた後に、毎年、納税者である国民に開示されることになる。そして、予算は、前年度の決算書を見ながら議論すべきであり、それは可能だ。

・・参考資料・・
<自民党改憲案>
*1-1:http://www.sankei.com/politics/news/180325/plt1803250054-n1.html (産経新聞 2018.3.25) 【自民党大会】「改憲4項目」条文素案全文
【9条改正】
第9条の2
(第1項)前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
(第2項)自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
(※第9条全体を維持した上で、その次に追加)
【緊急事態条項】
第73条の2
(第1項)大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。
(第2項)内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない。
(※内閣の事務を定める第73条の次に追加)
第64条の2
 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議院の出席議員の3分の2以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。
(※国会の章の末尾に特例規定として追加)
【参院選「合区」解消】
第47条
 両議院の議員の選挙について、選挙区を設けるときは、人口を基本とし、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案して、選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数を定めるものとする。参議院議員の全部又は一部の選挙について、広域の地方公共団体のそれぞれの区域を選挙区とする場合には、改選ごとに各選挙区において少なくとも1人を選挙すべきものとすることができる。
 前項に定めるもののほか、選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
第92条
 地方公共団体は、基礎的な地方公共団体及びこれを包括する広域の地方公共団体とすることを基本とし、その種類並びに組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める。
【教育の充実】
第26条
(第1、2項は現行のまま)
(第3項)国は、教育が国民一人一人の人格の完成を目指し、その幸福の追求に欠くことのできないものであり、かつ、国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担うものであることに鑑み、各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保することを含め、教育環境の整備に努めなければならない。
第89条
 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の監督が及ばない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

*1-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180503&ng=DGKKZO30115360S8A500C1M10900 (日経新聞 2018年5月3日) 自衛隊明記、与野党で対立、自民改憲案、衆参憲法審へ
 与野党による今後の憲法改正論議は、自民党が3月にまとめた改憲案がたたき台になる。柱は(1)自衛隊の明記(2)緊急事態条項(3)参院選の「合区」解消(4)教育充実――の4項目。自民党は衆参両院の憲法審査会で説明し、各党と議論する。自衛隊の明記などで与野党が対立する構図だ。自民党案のポイントを読み解いた。自民党憲法改正推進本部がまとめた9条の改正条文案は、現在の9条を維持して、「9条の2」を新設する内容だ。新たな条文を追加する「加憲」とすることで、公明党の理解を得たい考えだ。自民党にとっての最大のポイントは「自衛隊」の保持を明記することだ。憲法に「自衛隊」を明確に位置付けて、自衛隊違憲論を解消する狙いがある。政府はこれまで、自衛隊は国の自衛に必要な必要最小限度の実力組織であり、2項で保持を禁じる「戦力」には当たらないと解釈してきた。しかし、一部の憲法学者はこの解釈を疑問視し、安倍晋三首相は「ほとんどの教科書に自衛隊は違憲の疑いがあるという記述がある」と指摘する。自衛隊については「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織」と定義した。首相が自衛隊の「最高の指揮監督者」と明記。自衛隊の行動は「国会の承認その他の統制に服する」とも記し、自衛隊の任務や予算が国会の管理の下にあることも盛り込んだ。自衛隊法の規定を引用する形で、文民統制(シビリアンコントロール)の考え方を明示した。今後の与野党協議では、自衛隊の任務と活動範囲が論点になりそうだ。首相は自衛隊を明記しても、これまでの自衛隊活動に関する憲法解釈を変える考えはないと説明する。野党は自民案にある「自衛の措置」との表現が曖昧であり「集団的自衛権の行使拡大につながる」と懸念する。「後法は前法に優越する」という法解釈の基本原則を念頭に、戦争放棄や戦力不保持の今の規定が「空文化する可能性は排除できない」(立憲民主党の福山哲郎幹事長)との批判もある。そもそも自民党改憲推進本部が当初示した条文案は「必要最小限度の実力組織」として「自衛隊を保持する」と表現していた。党内から「誰が『必要最小限度』を判断するのか」などと異論が相次ぎ、最終案では「必要最小限度」の文言を削った経緯がある。これまでの政府解釈を踏襲した表現を削除したことで「公明党が乗りづらい案になった」(党幹部)との見方も出ている。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180503&ng=DGKKZO30115480S8A500C1M10900 (日経新聞 2018年5月3日)9条の扱い焦点 問われる専守防衛
 自民党がまとめた4項目の憲法改正案のうち焦点となるのが9条だ。条文の書きぶり次第で、自衛隊に認められる武力行使の範囲や保有できる防衛装備品が際限なく広がりかねないからだ。日本が掲げる「専守防衛」との整合性が問われる。政府は現行の9条に基づく専守防衛のもと、防衛力を自衛のための必要最小限度に限っていた。自衛権は、日本が直接攻撃を受ける「個別的自衛権」だけを認めてきた。2015年成立の安全保障関連法で、日本が直接攻撃を受けていない場合の「集団的自衛権」も使えるようにした。年末に改定する防衛大綱の議論も絡む。自民党案は「必要な自衛の措置をとることを妨げず」と明記する。これまで保有していなかった空母や爆撃機といった攻撃型兵器も「必要な自衛の措置」とみなして解禁する可能性を野党は警戒する。政府は護衛艦を事実上の空母として使えるよう改修する案を検討する。防衛省幹部は「防御目的の空母なら専守防衛の範囲内。現行の9条のままでも保有は認められる」と語る。

*1-2-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/561422/ (西日本新聞 2019/11/21) 憲法と安保法  司法は逃げずに判断示せ
 安全保障法制の大転換、それも違憲性を帯びた政策の是非を問う訴訟である。裁判所が内閣や国会の立場を忖度(そんたく)して及び腰になる必要はなかろう。正面から憲法判断に踏み込み、司法の独立性を示してこそ、国民の信頼が得られるのではないか。集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法は違憲として、市民約1500人が国家賠償を求めた訴訟で東京地裁は請求を全面的に棄却した。原告側はきのう、これを不服として東京高裁に控訴した。九州を含め全国22地裁・支部で提起された同種訴訟では、今春に札幌地裁で初の判決(原告敗訴)が示され、原告側が同じく控訴している。残念なのは東京、札幌両地裁が肝心の憲法判断を避けたことだ。原告側は3年前に施行された安保関連法により(1)憲法の前文や9条に基づく平和的生存権が侵害された(2)自衛隊の活動領域の拡大でテロや戦争に巻き込まれる危険も増した‐ことで精神的苦痛を受けたとして、1人10万円の賠償を求めていた。判決は、平和について「抽象的概念で個人の思想や信条で多様な捉え方が可能」「手段も国際情勢に応じて多岐多様にわたる」とし、平和的生存権は国民に保障された法的権利とは言えないと断じた。また「戦争やテロの切迫した危険は認め難い」「原告の苦痛は受忍限度内で義憤ないし公憤とみるほかない」と述べ、安保関連法の違憲性に関する判断は示さなかった。日本の司法は違憲審査について消極的といわれる。一般に具体的な権利の侵害がない場合や外交・防衛などの統治行為に関しては判断を避ける例が多い。国民の代表で構成する立法府の決定は民意の反映でもあり、極力介入しないという立場だ。しかし、今回の訴えをこの論理で退けるのは疑問だ。安保関連法は一内閣の独断による憲法解釈の変更に端を発し、国会では与党が憲法学者らの違憲の指摘を半ば無視するように成立させた。その結果、専守防衛の理念は揺らぎ、国の行く末に不安を抱く人は原告だけにとどまらない。であれば、司法がここで厳しいチェック機能を果たしてこそ、三権分立は成り立つ。判決は、戦争やテロの恐れを否定したが、仮に危険が切迫した段階で司法が機能しても、もはや手遅れになりかねない。全国の訴訟原告7千人余りの中には多くの戦争体験者や自衛官を家族に持つ人も含まれている。憲法前文は「政府の行為で再び戦争の惨禍が起こることがないよう決意し、主権が国民に存することを宣言する」としている。司法はこの重みを踏まえ、今後も続く審理や判決で、真摯(しんし)に役割を果たしてほしい。

*1-2-4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/562371/ (西日本新聞 2019/11/25) ローマ教皇、長崎で核廃絶訴え 「核なき世界は実現可能」
 ローマ・カトリック教会の頂点に立つ教皇(法王)フランシスコが24日、被爆地・長崎市を訪れた。教皇として初めて爆心地に立ったフランシスコは原爆落下中心地碑を背に演説し「核兵器のない世界は実現可能であり、必要不可欠であると確信している」と発言。各国の指導者に対し「核は安全保障への脅威から守ってくれるものではないと心に刻んでください」と訴え、長崎を最後の被爆地にするため、核廃絶に向けて動くよう求めた。教皇の長崎訪問は38年前の故ヨハネ・パウロ2世以来2度目。24日午前、教皇は爆心地公園に到着し、被爆者から受け取った花輪を碑にささげた。演説では長崎を「核が破滅的な結末をもたらすことの証人である町」と表現。核兵器の製造や改良を「テロ行為」と非難し、大量破壊兵器によって実現させようとする平和や安全を「恐怖と相互不信を土台とした偽り」と言い表した。元首を務めるバチカンが批准した核兵器禁止条約を挙げて「国際法の原則にのっとって迅速に行動し、訴えていく」と宣言、米国の「核の傘」に依存し条約に参加しない日本などをけん制した。歴代教皇と同様に、フランシスコも核について繰り返し発言してきた。これまでにも広島と長崎の被爆の歴史から「人類は何も学んでいない」と述べ、2017年末には被爆後の長崎での撮影とされる写真「焼き場に立つ少年」を広めるよう教会関係者に指示。この日も教皇のそばにはこの写真のパネルが置かれた。激しく雨が降る中、参列者約千人は雨がっぱ姿で教皇の声に耳を傾けた。爆心地に続き、国内でキリスト教信仰が禁じられた時期に宣教師や信者が処刑された日本二十六聖人殉教地に足を運び、午後は長崎県営野球場で3万人規模のミサを執り行った。夕方からは、もう一つの被爆地・広島市に移動し、平和記念公園で集いに出席。原爆ドームの前で、戦争を目的とした原子力の利用を「犯罪以外の何ものでもない」と指弾した。教皇は26日までの滞在中、東京都内で東日本大震災被災者との交流を行い、天皇陛下との会見や安倍晋三首相との会談を予定している。

*1-2-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14269133.html?iref=comtop_shasetsu_01 (朝日新聞社説 2019年11月25日) ローマ教皇 被爆地からの重い訴え
 平和の実現にはすべての人の参加が必要。核兵器の脅威に対し一致団結を――。核軍縮の国際的な枠組みが危機にある中、被爆地から発せられた呼びかけをしっかりと受け止めたい。13億人の信者を抱えるローマ・カトリック教会のトップ、フランシスコ教皇が長崎と広島を訪れ、核兵器廃絶を訴えた。教皇は2年前、原爆投下後の長崎で撮られたとされる写真「焼き場に立つ少年」をカードにして教会関係者に配った。今回、長崎の爆心地に立って「核兵器が人道的にも環境にも悲劇的な結末をもたらすと証言している町だ」と語り、「記憶にとどめるこの場所はわたしたちをハッとさせ、無関心でいることを許さない」と力を込めた。ローマ教皇の来日は1981年以来、38年ぶり2度目だ。前回来日したヨハネ・パウロ2世が平和外交を展開して東西冷戦の終結に影響を与えるなど、教会は核廃絶を含む平和への取り組みを重ねてきた。フランシスコ教皇も米国とキューバの国交回復で仲介役を務める一方、自らが国家元首であるバチカンは、核兵器の製造や実験、使用を禁じる核兵器禁止条約が2年前に国連で採択された後、いち早く条約に署名・批准した。ただ、国際協調より自国第一主義が優先される現実のなかで、核軍縮への取り組みは後退している。米ロの中距離核戦力(INF)全廃条約は8月に失効。2021年に期限を迎える両国間の新戦略兵器削減条約(新START)も存続が危ぶまれる。来年には核不拡散条約(NPT)再検討会議が開かれるが、核保有国と非保有国の溝は深まる一方だ。「わたしたちの世界は、手に負えない分裂の中にある」「相互不信の流れを壊さなければ」。そう危機感を訴え、世界の指導者に向かって「核兵器は安全保障への脅威から私たちを守ってくれるものではない」と説いた教皇の思いにどう応えるか。唯一の戦争被爆国である日本の責任と役割は大きい。安倍政権は、日本が米国の「核の傘」に守られていることを理由に核禁条約に背を向け続けているが、それでよいのか。核保有国と非保有国の橋渡し役を掲げるが、成果は見えない。政府の有識者会議は10月、日本がとりうる行動を記した議長レポートをまとめたが、非保有国が多数賛同した核禁条約を拒否するだけでは実践は望めまい。教皇は広島でのスピーチで「戦争のために原子力を使用することは犯罪」「核戦争の脅威で威嚇することに頼りながら、どうして平和を提案できようか」と述べた。この根源的な指摘を無駄にしてはならない。

*1-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180503&ng=DGKKZO30115540S8A500C1M10900 (日経新聞 2018年5月3日)緊急事態条項 災害時、内閣が政令
 緊急事態条項は「国家緊急権」の思想に基づく。大規模災害や戦争など国家そのものの存立が脅かされる可能性がある場合に、全体の利益のために個人の権利を抑制できるとする考え方だ。緊急時とは「大地震その他の異常かつ大規模な災害」を想定する。2012年の自民党改憲案に盛った「外部からの武力攻撃」「内乱」などは外し、対象を絞った。64条の2で国会議員の任期延長、73条の2で政府の緊急政令を規定する。国会議員の任期延長は、選挙の「適正な実施が困難であると認めるとき」が対象。11年の東日本大震災では被災地の地方選を延期した経緯があり、国政選挙でも同様の事態を想定したものだ。緊急政令の制定は供給が不足する生活物資の買い占めを禁じて配給制にしたり、災害復旧に必要な物資の価格を統制したりすることを想定する。野党からは憲法改正をしなくても緊急時に対応できるとの指摘が出ている。緊急政令で国民の権利が損なわれる可能性を懸念する。

*1-3-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14269201.html (朝日新聞 2019年11月25日) マイナンバーカード「取得強要だ」 省庁全職員の家族まで調査
 国家公務員らによるマイナンバーカードの取得を進めるため、各省庁が全職員に対し、取得の有無や申請しない理由を家族(被扶養者)も含めて尋ねる調査をしている。内閣官房と財務省の依頼を受け、氏名を記入して上司に提出するよう求めている。職員からは、法律上の義務でないカード取得を事実上強要されたと感じるとの声が出ている。政府はカードを2021年3月から健康保険証として使えるようにする計画で、6月に閣議決定した「骨太の方針」に、公務員らによる今年度中のカード取得の推進を盛り込んだ。22年度末までに国内のほとんどの住民が保有するとも想定し、「普及を強力に推進する」としている。朝日新聞は各省庁などに送られた7月30日付の依頼文を入手した。内閣官房内閣参事官と国家公務員共済組合(健康保険証の発行者)を所管する財務省給与共済課長の役職名で、各省庁などの部局長から全職員に、家族も含めてカード取得を勧めるよう依頼。10月末時点の取得状況の調査と集計・報告、12月末と来年3月末時点の集計・報告を求めている。調査用紙には個人名の記入欄、家族を含む取得の有無や交付申請の状況、申請しない場合は理由を記す欄があり、「部局長に提出してください」ともある。財務省給与共済課によると、調査対象は国家公務員ら共済組合員約80万人と被扶養者約80万人。同課は「回答に理由を記載するかは自由で、決して強制ではない。人事の査定に影響はない」と話している。調査は取得に向けた課題を洗い出すためで、今後は各省庁などを通じて取得率の低い部局に取得を促すという。マイナンバー法で、カードを取得するかは任意だ。経済産業省の関係者は「公務員は政府の方針に従い、カードを持つべきだというのは分かるが、記名式で家族の取得しない理由まで聞かれ、強要と感じた」。財務省の関係者は「取得を迫るようなやり方に違和感を覚える。ほぼ全住民が保有すると閣議で風呂敷を広げたせいで、普及に必死になっている」と漏らす。マイナンバーカードは16年1月に交付が始まった。利便性の低さや個人情報の漏洩(ろうえい)への懸念などから、交付枚数は約1823万枚、取得率は14・3%にとどまる。総務省所管の団体は7月、普及が進むとの政府の想定に基づいて5500万枚分の製造を発注している。

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180503&ng=DGKKZO30115600S8A500C1M10900 (日経新聞 2018年5月3日) 「合区」解消 参院、都道府県単位で
 参院選の「合区」は、隣接県を1つの選挙区にすることだ。「1票の格差」を是正するため、2016年から「鳥取・島根」と「徳島・高知」で導入した。地元出身者を送り出せない県ができ地方の声が国政に届きにくくなったとして改憲による解消をめざす。衆参両院議員の選挙の選挙区や投票の方法の根拠となっている47条に新たな規定を追加した。参院の選挙区は改選ごとに各都道府県から少なくとも1人を選出できるように改める。参院議員を「都道府県代表」と位置づければ国会議員を「全国民の代表」と定めた43条と矛盾しかねないという指摘もある。公明党は「参院の大幅な権限見直しにつながる」と慎重だ。

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180503&ng=DGKKZO30115660S8A500C1M10900 (日経新聞 2018年5月3日) 教育充実 環境整備に努力義務
 自民党の改憲案は「教育充実」について、教育を受ける権利を定めた憲法26条に3項を設け「国は教育環境の整備に努めなければならない」とする努力義務を明記した。「各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保する」と書き込み、家計負担の軽減を打ち出した。かねて憲法への「教育無償化」明記を目指してきた日本維新の会への配慮がにじむ。同党の改憲原案の一部を取り込むことで改憲に賛同を得たい考えがある。ただ、財源確保が難しいことなどから自民党案は「無償化」の明記は見送った。幼児教育から大学までの教育無償化を訴える維新の協力が得られるかは不透明な状況だ。私立学校に補助金を出す「私学助成」が合憲であることも明確にする。憲法89条が公の財産の支出を禁じる「慈善、教育、博愛の事業」の対象について「公の監督が及ばない」事業とする。

<財政>
*2-1:http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail_main?id=174 (日本国憲法 昭和21年11月3日 抜粋)
第七章 財政
第八十三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければ
      ならない。
第八十四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の
      定める条件によることを必要とする。
第八十五条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを
      必要とする。
第八十六条 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け
      議決を経なければならない。
第八十七条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、
      内閣の責任でこれを支出することができる。すべて予備費の支出については、
      内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。
第八十八条 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して
      国会の議決を経なければならない。
第八十九条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益
      若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の
      事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
第九十条  国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、
      次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
      会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。
第九十一条 内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政
      状況について報告しなければならない。

*2-2:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000034 (財政法  昭和二十二年法律第三十四号)
第一章 財政総則
第一条 国の予算その他財政の基本に関しては、この法律の定めるところによる。
第二条 収入とは、国の各般の需要を充たすための支払の財源となるべき現金の収納をいい、
    支出とは、国の各般の需要を充たすための現金の支払をいう。
○2 前項の現金の収納には、他の財産の処分又は新らたな債務の負担に因り生ずるものをも
   含み、同項の現金の支払には、他の財産の取得又は債務の減少を生ずるものをも含む。
○3 なお第一項の収入及び支出には、会計間の繰入その他国庫内において行う移換による
   ものを含む。
○4 歳入とは、一会計年度における一切の収入をいい、歳出とは、一会計年度における一切の
   支出をいう。
第三条 租税を除く外、国が国権に基いて収納する課徴金及び法律上又は事実上国の独占に
   属する事業における専売価格若しくは事業料金については、すべて法律又は国会の議決に
   基いて定めなければならない。
第四条 国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。
   但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内
   で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
○2 前項但書の規定により公債を発行し又は借入金をなす場合においては、その償還の計画を
   国会に提出しなければならない。
○3 第一項に規定する公共事業費の範囲については、毎会計年度、国会の議決を経なければ
   ならない。
第五条 すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入に
   ついては、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合に
   おいて、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。
第六条 各会計年度において歳入歳出の決算上剰余を生じた場合においては、当該剰余金の
   うち、二分の一を下らない金額は、他の法律によるものの外、これを剰余金を生じた
   年度の翌翌年度までに、公債又は借入金の償還財源に充てなければならない。
○2 前項の剰余金の計算については、政令でこれを定める。
第七条 国は、国庫金の出納上必要があるときは、財務省証券を発行し又は日本銀行から一時
   借入金をなすことができる。
○2 前項に規定する財務省証券及び一時借入金は、当該年度の歳入を以て、これを償還しな
   ければならない。
○3 財務省証券の発行及び一時借入金の借入の最高額については、毎会計年度、国会の議決を
   経なければならない。
第八条 国の債権の全部若しくは一部を免除し又はその効力を変更するには、法律に基く
   ことを要する。
第九条 国の財産は、法律に基く場合を除く外、これを交換しその他支払手段として使用し、
   又は適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない。
○2 国の財産は、常に良好の状態においてこれを管理し、その所有の目的に応じて、最も
   効率的に、これを運用しなければならない。
第二章 会計区分
第十一条 国の会計年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終るものとする。
第十二条 各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければ
   ならない。
第十三条 国の会計を分つて一般会計及び特別会計とする。
○2 国が特定の事業を行う場合、特定の資金を保有してその運用を行う場合その他特定の
   歳入を以て特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に
   限り、法律を以て、特別会計を設置するものとする。
第三章 予算
第一節 総則
第十四条 歳入歳出は、すべて、これを予算に編入しなければならない。
第十四条の二 国は、工事、製造その他の事業で、その完成に数年度を要するものについて、
   特に必要がある場合においては、経費の総額及び年割額を定め、予め国会の議決を経て、
   その議決するところに従い、数年度にわたつて支出することができる。
○2 前項の規定により国が支出することができる年限は、当該会計年度以降五箇年度以内と
   する。但し、予算を以て、国会の議決を経て更にその年限を延長することができる。
○3 前二項の規定により支出することができる経費は、これを継続費という。
○4 前三項の規定は、国会が、継続費成立後の会計年度の予算の審議において、当該継続
   費につき重ねて審議することを妨げるものではない。
第十四条の三 歳出予算の経費のうち、その性質上又は予算成立後の事由に基き年度内に
   その支出を終らない見込のあるものについては、予め国会の議決を経て、翌年度に繰り
   越して使用することができる。
○2 前項の規定により翌年度に繰り越して使用することができる経費は、これを繰越明許費
   という。
第十五条 法律に基くもの又は歳出予算の金額(第四十三条の三に規定する承認があつた金額を
   含む。)若しくは継続費の総額の範囲内におけるものの外、国が債務を負担する行為を
   なすには、予め予算を以て、国会の議決を経なければならない。
○2 前項に規定するものの外、災害復旧その他緊急の必要がある場合においては、国は毎会計
   年度、国会の議決を経た金額の範囲内において債務を負担する行為をなすことができる。
○3 前二項の規定により国が債務を負担する行為に因り支出すべき年限は、当該会計年度以降
   五箇年度以内とする。但し、国会の議決により更にその年限を延長するもの並びに外国人
   に支給する給料及び恩給、地方公共団体の債務の保証又は債務の元利若しくは利子の補
   給、土地、建物の借料及び国際条約に基く分担金に関するもの、その他法律で定めるもの
   は、この限りでない。
○4 第二項の規定により国が債務を負担した行為については、次の常会において国会に報告
   しなければならない。
○5 第一項又は第二項の規定により国が債務を負担する行為は、これを国庫債務負担行為
   という。
第二節 予算の作成
第十六条 予算は、予算総則、歳入歳出予算、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為
   とする。
第十七条 衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官及び会計検査院長は、毎会計年度、その
   所掌に係る歳入、歳出、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為の見積に関する書類を
   作製し、これを内閣における予算の統合調整に供するため、内閣に送付しなければなら
   ない。
○2 内閣総理大臣及び各省大臣は、毎会計年度、その所掌に係る歳入、歳出、継続費、繰越
   明許費及び国庫債務負担行為の見積に関する書類を作製し、これを財務大臣に送付しな
   ければならない。
第十八条 財務大臣は、前条の見積を検討して必要な調整を行い、歳入、歳出、継続費、繰越
   明許費及び国庫債務負担行為の概算を作製し、閣議の決定を経なければならない。
○2 内閣は、前項の決定をしようとするときは、国会、裁判所及び会計検査院に係る歳出の
   概算については、予め衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官及び会計検査院長に
   対しその決定に関し意見を求めなければならない。
第十九条 内閣は、国会、裁判所及び会計検査院の歳出見積を減額した場合においては、国
   会、裁判所又は会計検査院の送付に係る歳出見積について、その詳細を歳入歳出予算
   に附記するとともに、国会が、国会、裁判所又は会計検査院に係る歳出額を修正する場合
   における必要な財源についても明記しなければならない。
第二十条 財務大臣は、毎会計年度、第十八条の閣議決定に基いて、歳入予算明細書を作製
   しなければならない。
○2 衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官、会計検査院長並びに内閣総理大臣及び
   各省大臣(以下各省各庁の長という。)は、毎会計年度、第十八条の閣議決定のあつた
   概算の範囲内で予定経費要求書、継続費要求書、繰越明許費要求書及び国庫債務
   負担行為要求書(以下予定経費要求書等という。)を作製し、これを財務大臣に送付しな
   ければならない。
第二十一条 財務大臣は、歳入予算明細書、衆議院、参議院、裁判所、会計検査院並びに
   内閣(内閣府を除く。)、内閣府及び各省(以下「各省各庁」という。)の予定経費
   要求書等に基づいて予算を作成し、閣議の決定を経なければならない。
第二十二条 予算総則には、歳入歳出予算、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為に
   関する総括的規定を設ける外、左の事項に関する規定を設けるものとする。
一 第四条第一項但書の規定による公債又は借入金の限度額
二 第四条第三項の規定による公共事業費の範囲
三 第五条但書の規定による日本銀行の公債の引受及び借入金の借入の限度額
四 第七条第三項の規定による財務省証券の発行及び一時借入金の借入の最高額
五 第十五条第二項の規定による国庫債務負担行為の限度額
六 前各号に掲げるものの外、予算の執行に関し必要な事項
七 その他政令で定める事項
第二十三条 歳入歳出予算は、その収入又は支出に関係のある部局等の組織の別に区分し、
   その部局等内においては、更に歳入にあつては、その性質に従つて部に大別し、且つ、
   各部中においてはこれを款項に区分し、歳出にあつては、その目的に従つてこれを項に
   区分しなければならない。
第二十四条 予見し難い予算の不足に充てるため、内閣は、予備費として相当と認める金額を、
   歳入歳出予算に計上することができる。
第二十五条 継続費は、その支出に関係のある部局等の組織の別に区分し、その部局等内に
   おいては、項に区分し、更に各項ごとにその総額及び年割額を示し、且つ、その必要の
   理由を明らかにしなければならない。
第二十六条 国庫債務負担行為は、事項ごとに、その必要の理由を明らかにし、且つ、行為を
   なす年度及び債務負担の限度額を明らかにし、又、必要に応じて行為に基いて支出を
   なすべき年度、年限又は年割額を示さなければならない。
第二十七条 内閣は、毎会計年度の予算を、前年度の一月中に、国会に提出するのを常例
   とする。
第二十八条 国会に提出する予算には、参考のために左の書類を添附しなければならない。
一 歳入予算明細書
二 各省各庁の予定経費要求書等
三 前前年度歳入歳出決算の総計表及び純計表、前年度歳入歳出決算見込の総計表及び
   純計表並びに当該年度歳入歳出予算の総計表及び純計表
四 国庫の状況に関する前前年度末における実績並びに前年度末及び当該年度末における
   見込に関する調書
五 国債及び借入金の状況に関する前前年度末における実績並びに前年度末及び当該年度
   末における現在高の見込及びその償還年次表に関する調書
六 国有財産の前前年度末における現在高並びに前年度末及び当該年度末における現在高
   の見込に関する調書
七 国が、出資している主要な法人の資産、負債、損益その他についての前前年度、前年度
   及び当該年度の状況に関する調書
八 国庫債務負担行為で翌年度以降に亘るものについての前年度末までの支出額及び支出
   額の見込、当該年度以降の支出予定額並びに数会計年度に亘る事業に伴うものについ
   てはその全体の計画その他事業等の進行状況等に関する調書
九 継続費についての前前年度末までの支出額、前年度末までの支出額及び支出額の見込、
   当該年度以降の支出予定額並びに事業の全体の計画及びその進行状況等に関する調書
十 その他財政の状況及び予算の内容を明らかにするため必要な書類
第二十九条 内閣は、次に掲げる場合に限り、予算作成の手続に準じ、補正予算を作成し、
   これを国会に提出することができる。
一 法律上又は契約上国の義務に属する経費の不足を補うほか、予算作成後に生じた事由に
   基づき特に緊要となつた経費の支出(当該年度において国庫内の移換えにとどまるものを
   含む。)又は債務の負担を行なうため必要な予算の追加を行なう場合
二 予算作成後に生じた事由に基づいて、予算に追加以外の変更を加える場合
第三十条 内閣は、必要に応じて、一会計年度のうちの一定期間に係る暫定予算を作成し、
   これを国会に提出することができる。
○2 暫定予算は、当該年度の予算が成立したときは、失効するものとし、暫定予算に基く
   支出又はこれに基く債務の負担があるときは、これを当該年度の予算に基いてなした
   ものとみなす。
第三節 予算の執行
第三十一条 予算が成立したときは、内閣は、国会の議決したところに従い、各省各庁の長に
   対し、その執行の責に任ずべき歳入歳出予算、継続費及び国庫債務負担行為を配賦する。
○2 前項の規定により歳入歳出予算及び継続費を配賦する場合においては、項を目に区分
   しなければならない。
○3 財務大臣は、第一項の規定による配賦のあつたときは、会計検査院に通知しなければ
   ならない。
第三十二条 各省各庁の長は、歳出予算及び継続費については、各項に定める目的の外に
   これを使用することができない。
第三十三条 各省各庁の長は、歳出予算又は継続費の定める各部局等の経費の金額又は
   部局等内の各項の経費の金額については、各部局等の間又は各項の間において彼此
   移用することができない。但し、予算の執行上の必要に基き、あらかじめ予算をもつて
   国会の議決を経た場合に限り、財務大臣の承認を経て移用することができる。
○2 各省各庁の長は、各目の経費の金額については、財務大臣の承認を経なければ、目の
   間において、彼此流用することができない。
○3 財務大臣は、第一項但書又は前項の規定に基く移用又は流用について承認をしたときは、
   その旨を当該各省各庁の長及び会計検査院に通知しなければならない。
○4 第一項但書又は第二項の規定により移用又は流用した経費の金額については、歳入
   歳出の決算報告書において、これを明らかにするとともに、その理由を記載しなければ
   ならない。
第三十四条 各省各庁の長は、第三十一条第一項の規定により配賦された予算に基いて、
   政令の定めるところにより、支出担当事務職員ごとに支出の所要額を定め、支払の計画に
   関する書類を作製して、これを財務大臣に送付し、その承認を経なければならない。
○2 財務大臣は、国庫金、歳入及び金融の状況並びに経費の支出状況等を勘案して、適時に、
   支払の計画の承認に関する方針を作製し、閣議の決定を経なければならない。
○3 財務大臣は、第一項の支払の計画について承認をしたときは、各省各庁の長に通知する
   とともに、財務大臣が定める場合を除き、これを日本銀行に通知しなければならない。
第三十四条の二 各省各庁の長は、第三十一条第一項の規定により配賦された歳出予算、
   継続費及び国庫債務負担行為のうち、公共事業費その他財務大臣の指定する経費に
   係るものについては、政令の定めるところにより、当該歳出予算、継続費又は国庫債務
   負担行為に基いてなす支出負担行為(国の支出の原因となる契約その他の行為をいう。
   以下同じ。)の実施計画に関する書類を作製して、これを財務大臣に送付し、その承認を
   経なければならない。
○2 財務大臣は、前項の支出負担行為の実施計画を承認したときは、これを各省各庁の長
   及び会計検査院に通知しなければならない。
第三十五条 予備費は、財務大臣が、これを管理する。
○2 各省各庁の長は、予備費の使用を必要と認めるときは、理由、金額及び積算の基礎を
   明らかにした調書を作製し、これを財務大臣に送付しなければならない。
○3 財務大臣は、前項の要求を調査し、これに所要の調整を加えて予備費使用書を作製し、
   閣議の決定を求めなければならない。但し、予め閣議の決定を経て財務大臣の指定する
   経費については、閣議を経ることを必要とせず、財務大臣が予備費使用書を決定すること
   ができる。
○4 予備費使用書が決定したときは、当該使用書に掲げる経費については、第三十一条
   第一項の規定により、予算の配賦があつたものとみなす。
○5 第一項の規定は、第十五条第二項の規定による国庫債務負担行為に、第二項、第三項
   本文及び前項の規定は、各省各庁の長が第十五条第二項の規定により国庫債務負担
   行為をなす場合に、これを準用する。
第三十六条 予備費を以て支弁した金額については、各省各庁の長は、その調書を作製して、
   次の国会の常会の開会後直ちに、これを財務大臣に送付しなければならない。
○2 財務大臣は、前項の調書に基いて予備費を以て支弁した金額の総調書を作製しなけれ
   ばならない。
○3 内閣は、予備費を以て支弁した総調書及び各省各庁の調書を次の常会において国会に
   提出して、その承諾を求めなければならない。
○4 財務大臣は、前項の総調書及び調書を会計検査院に送付しなければならない。
第四章 決算
第三十七条 各省各庁の長は、毎会計年度、財務大臣の定めるところにより、その所掌に係る
   歳入及び歳出の決算報告書並びに国の債務に関する計算書を作製し、これを財務大臣に
   送付しなければならない。
○2 財務大臣は、前項の歳入決算報告書に基いて、歳入予算明細書と同一の区分により、
   歳入決算明細書を作製しなければならない。
○3 各省各庁の長は、その所掌の継続費に係る事業が完成した場合においては、財務大臣
   の定めるところにより、継続費決算報告書を作製し、これを財務大臣に送付しなければ
   ならない。
第三十八条 財務大臣は、歳入決算明細書及び歳出の決算報告書に基いて、歳入歳出の
   決算を作成しなければならない。
○2 歳入歳出の決算は、歳入歳出予算と同一の区分により、これを作製し、且つ、これに
   左の事項を明らかにしなければならない。
(一) 歳入
一 歳入予算額
二 徴収決定済額(徴収決定のない歳入については収納後に徴収済として整理した額)
三 収納済歳入額
四 不納欠損額
五 収納未済歳入額
(二) 歳出
一 歳出予算額
二 前年度繰越額
三 予備費使用額
四 流用等増減額
五 支出済歳出額
六 翌年度繰越額
七 不用額
第三十九条 内閣は、歳入歳出決算に、歳入決算明細書、各省各庁の歳出決算報告書及び
   継続費決算報告書並びに国の債務に関する計算書を添附して、これを翌年度の十一月
   三十日までに会計検査院に送付しなければならない。
第四十条 内閣は、会計検査院の検査を経た歳入歳出決算を、翌年度開会の常会において
   国会に提出するのを常例とする。
○2 前項の歳入歳出決算には、会計検査院の検査報告の外、歳入決算明細書、各省各庁
   の歳出決算報告書及び継続費決算報告書並びに国の債務に関する計算書を添附する。
第四十一条 毎会計年度において、歳入歳出の決算上剰余を生じたときは、これをその翌年
   度の歳入に繰り入れるものとする。
第五章 雑則
第四十二条 繰越明許費の金額を除く外、毎会計年度の歳出予算の経費の金額は、これを
   翌年度において使用することができない。但し、歳出予算の経費の金額のうち、年度内に
   支出負担行為をなし避け難い事故のため年度内に支出を終らなかつたもの(当該支出
   負担行為に係る工事その他の事業の遂行上の必要に基きこれに関連して支出を要する
   経費の金額を含む。)は、これを翌年度に繰り越して使用することができる。
第四十三条 各省各庁の長は、第十四条の三第一項又は前条但書の規定による繰越を必要
   とするときは、繰越計算書を作製し、事項ごとに、その事由及び金額を明らかにして、
   財務大臣の承認を経なければならない。
○2 前項の承認があつたときは、当該経費に係る歳出予算は、その承認があつた金額の
   範囲内において、これを翌年度に繰り越して使用することができる。
○3 各省各庁の長は、前項の規定による繰越をしたときは、事項ごとに、その金額を明らか
   にして、財務大臣及び会計検査院に通知しなければならない。
○4 第二項の規定により繰越をしたときは、当該経費については、第三十一条第一項の規定
   による予算の配賦があつたものとみなす。この場合においては、同条第三項の規定に
   よる通知は、これを必要としない。
第四十三条の二 継続費の毎会計年度の年割額に係る歳出予算の経費の金額のうち、その
   年度内に支出を終らなかつたものは、第四十二条の規定にかかわらず、継続費に係る
   事業の完成年度まで、逓次繰り越して使用することができる。
○2 前条第三項及び第四項の規定は、前項の規定により繰越をした場合に、これを準用する。
第四十三条の三 各省各庁の長は、繰越明許費の金額について、予算の執行上やむを得ない
   事由がある場合においては、事項ごとに、その事由及び金額を明らかにし、財務大臣の
   承認を経て、その承認があつた金額の範囲内において、翌年度にわたつて支出すべき
   債務を負担することができる。
第四十四条 国は、法律を以て定める場合に限り、特別の資金を保有することができる。
第四十五条 各特別会計において必要がある場合には、この法律の規定と異なる定めを
   なすことができる。
第四十六条 内閣は、予算が成立したときは、直ちに予算、前前年度の歳入歳出決算並びに
   公債、借入金及び国有財産の現在高その他財政に関する一般の事項について、印刷物、
   講演その他適当な方法で国民に報告しなければならない。
○2 前項に規定するものの外、内閣は、少くとも毎四半期ごとに、予算使用の状況、国庫の
   状況その他財政の状況について、国会及び国民に報告しなければならない。
第四十六条の二 この法律又はこの法律に基づく命令の規定による手続については、行政
   手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成十四年法律第百五十一号)
   第三条及び第四条の規定は、適用しない。
第四十六条の三 この法律又はこの法律に基づく命令の規定により作成することとされている
   書類等(書類、調書その他文字、図形等人の知覚によつて認識することができる情報が
   記載された紙その他の有体物をいう。次条において同じ。)については、当該書類等に
   記載すべき事項を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚に
   よつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報
   処理の用に供されるものとして財務大臣が定めるものをいう。次条第一項において
   同じ。)の作成をもつて、当該書類等の作成に代えることができる。この場合において、
   当該電磁的記録は、当該書類等とみなす。
第四十六条の四 この法律又はこの法律に基づく命令の規定による書類等の提出については、
   当該書類等が電磁的記録で作成されている場合には、電磁的方法(電子情報処理組織を
   使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて財務大臣が定めるものを
   いう。次項において同じ。)をもつて行うことができる。
○2 前項の規定により書類等の提出が電磁的方法によつて行われたときは、当該書類等の
   提出を受けるべき者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に
   当該提出を受けるべき者に到達したものとみなす。
第四十七条 この法律の施行に関し必要な事項は、政令で、これを定める。
附 則 抄
第一条 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。但し、第十七条第一項、
   第十八条第二項、第十九条、第三十条、第三十一条、第三十五条並びに第三十六条の
   規定は、日本国憲法施行の日から、これを施行し、第三条、第十条及び第三十四条の
   規定の施行の日は、政令でこれを定める。
○2 第四条及び第五条の規定は、昭和二十三年度以後の会計年度の予算に計上される
   公債又は借入金について、第七条、第三章の規定(第十七条第一項、第十八条第二項、
   第十九条、第二十八条、第三十条、第三十一条並びに第三十四条乃至第三十六条の
   規定を除く。)及び第四章の規定は、昭和二十二年度以後の会計年度の予算及び決算
   について、これを適用する。
第一条の二 内閣は、当分の間、第三十一条第一項の規定により歳入歳出予算を配賦する
   場合において、当該配賦の際、目に区分し難い項があるときは、同条第二項の規定に
   かかわらず、当該項に限り、目の区分をしないで配賦することができる。
○2 前項の規定により目の区分をしないで配賦した場合においては、各省各庁の長は、
   当該項に係る歳出予算の執行の時までに、財務大臣の承認を経て、目の区分をしな
   ければならない。
○3 財務大臣は、前項の規定により目の区分について承認をしたときは、その旨を会計
   検査院に通知しなければならない。
第三条 この法律施行前になした予備費の支出並びに昭和二十年度及び同二十一年度の
   決算に関しては、なお従前の例による。
第四条 従来予算外国庫の負担となるべき契約に関する件として帝国議会の協賛を経た
   事項は、日本国憲法施行後においては、国庫債務負担行為となるものとする。
   但し、この場合においては、改正後の第十五条第三項の規定は、これを適用しない。
第五条 左に掲げる法令は、これを廃止する。
明治四十四年法律第二号(公共団体に対する工事補助費繰越使用に関する法律)
明治五年太政官布告第十七号(政府に対する寄附に関する件)
附 則 (昭和二四年四月一日法律第二三号) 抄
1 この法律は、昭和二十四年四月一日から施行する。但し、第二十三条及び附則第一条の
   二の改正規定は、昭和二十四年度の予算から適用する。
附 則 (昭和二四年五月三一日法律第一四五号) 抄
1 この法律は、昭和二十四年六月一日から施行する。
附 則 (昭和二五年三月三一日法律第六〇号) 抄
1 この法律は、公布の日から施行し、昭和二十五年度の予算から適用する。
附 則 (昭和二五年五月四日法律第一四一号) 抄
1 この法律は、公布の日から施行する。
附 則 (昭和二六年六月一日法律第一七三号) 抄
1 この法律は、公布の日から施行する。
附 則 (昭和二七年三月五日法律第四号) 抄
1 この法律中継続費、歳出予算及び支出予算の区分並びに繰越に係る部分は、公布の日
   から、その他の部分は、昭和二十七年四月一日から施行する。但し、改正後の財政法、
   会計法等の規定中継続費、歳出予算及び支出予算の区分並びに支出負担行為の
   実施計画に係る部分は、昭和二十七年度分の予算から適用する。
附 則 (昭和二七年七月三一日法律第二六八号) 抄
1 この法律は、昭和二十七年八月一日から施行する。
附 則 (昭和二九年五月八日法律第九〇号) 抄
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 改正後の財政法の規定は、昭和二十九年度分の予算から適用する。
附 則 (昭和三七年五月八日法律第一〇八号) 抄
1 この法律は、公布の日から施行する。
附 則 (昭和四〇年四月一二日法律第四六号)
   この法律は、公布の日から施行し、改正後の附則第七条の規定は、昭和四十年度分の
   予算から適用する。
附 則 (昭和五三年五月二三日法律第五五号) 抄
(施行期日等)
1 この法律は、公布の日から施行する。
附 則 (平成三年九月一九日法律第八六号) 抄
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
附 則 (平成九年一二月五日法律第一〇九号) 抄
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
附 則 (平成一一年七月一六日法律第一〇二号) 抄
(施行期日)
第一条 この法律は、内閣法の一部を改正する法律(平成十一年法律第八十八号)の施行の
   日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 略
二 附則第十条第一項及び第五項、第十四条第三項、第二十三条、第二十八条並びに
   第三十条の規定 公布の日
(委員等の任期に関する経過措置)
第二十八条 この法律の施行の日の前日において次に掲げる従前の審議会その他の機関の
   会長、委員その他の職員である者(任期の定めのない者を除く。)の任期は、当該会長、
   委員その他の職員の任期を定めたそれぞれの法律の規定にかかわらず、その日に
   満了する。
一から十三まで 略
十四 財政制度審議会
(別に定める経過措置)
第三十条 第二条から前条までに規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要となる
   経過措置は、別に法律で定める。
附 則 (平成一一年一二月二二日法律第一六〇号) 抄
(施行期日)
第一条 この法律(第二条及び第三条を除く。)は、平成十三年一月六日から施行する。
   ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 第九百九十五条(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を
   改正する法律附則の改正規定に係る部分に限る。)、第千三百五条、第千三百六条、
   第千三百二十四条第二項、第千三百二十六条第二項及び第千三百四十四条の規定 
   公布の日
附 則 (平成一四年一二月一三日法律第一五二号) 抄
(施行期日)
第一条 この法律は、行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成
   十四年法律第百五十一号)の施行の日から施行する。
(その他の経過措置の政令への委任)
第五条 前三条に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で
   定める。
附 則 (平成一八年六月七日法律第五三号) 抄
(施行期日)
第一条 この法律は、平成十九年四月一日から施行する。

<主権在民を侵害する報道とその理由>
PS(2019年11月27、28、29日、12月1日追加):これだけ多くの政治的事象が起こっているのに、TVは全局で、*3-1の「桜を見る会」を政治家のスキャンダルに仕立てあげ、*3-2の沢尻エリカさんの「大麻中毒」もまた、全局でしつこく報道している。しかし、「桜を見る会」の予算は、過去5年間は約1766万円、来年度予算の概算要求も約5700万円と、他の無駄遣いに比べると重箱の隅をつついたような数字で重要性が低い。野党は、国会議員70人余りからなる追及本部を立ち上げ、不法行為にはならないことについて「安倍首相や昭恵夫の推薦だった」と追求しようとしているが、「お友達だけを大切にしている」と言うのは、生徒が「先生がえこひいきする」と言っているのと同じレベルで情けない。それとも、政策に関する議論もしているのだが、TVがスキャンダルしか取り上げないのだろうか?さらに、沢尻エリカさんたちの薬物中毒のしつこい報道も「国民がいかにくだらないか」を国民に印象付けている。
 しかし、それらは、「国民が選挙で選んだ政治家はろくなことをせず、国民も愚かなので、民主主義(主権在民)はやめて天皇を元首とし、官が主導するのがよい」という結論を導き出す前哨戦となるため、メディアが真に民主主義の媒体として機能しなかった代償は大きい。だから、メディアは真実かつ倫理的でまともな報道をすることが求められるのである。
 また、*3-3のように、週刊文春が「安倍首相の事務所スタッフが『桜を見る会』のツアーに参加する地元支援者らに同行して上京する旅費を政治資金で支払った疑いがあり、事実なら事務所や後援会に『収支が発生していない』と説明した首相の説明と矛盾する可能性がある」などと報じているが、事務所スタッフが後援会の人に付き添って同行するのは仕事による出張であるため、これらのスタッフに政治資金から出張旅費を支払うのは何の問題もなく、むしろ必要なことで、いちゃもんが過ぎるのである。なお、事務所スタッフが後援会の人に付き添っても、後援会の人は旅行会社やホテルに旅費等の支払いをしているため、何ら問題はない。
 このような中、*3-4のように、佐賀新聞が「10兆円規模の経済対策は過剰だ」と指摘しているが、私は、これらの中身を精査して災害対策や景気対策名目のその場限りの支出を排除したり、より低コストで将来性の高いものに変更したりする必要があると考える。何故なら、これらは、結局は、さまざまな形で国民負担に繋がるからである。
 さらに、東京新聞はじめメディアが、*3-5のように、内閣府が共産党の宮本衆議院議員による関連資料要求の後に安倍首相主催の「桜を見る会」の招待者名簿を廃棄したと書いているが、①どこに行ったか ②選挙で誰を応援したか については個人情報であるため、名簿を廃棄していなかったとしても本人の同意なく開示すれば個人情報保護法(https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=415AC0000000057)違反になる。にもかかわらず、しつこく廃棄の時間を調べたり、「デジタルデータを復元せよ」「情報開示は・・」などと言っているのは、与野党・メディアとも個人情報保護の意味がわかっていない。さらに、招待者の中に“反社会的勢力(定義が疑問)”が入っていたそうだが、首相が招待者の1人1人をチェックするわけもなく、首相はもっと大きな仕事をするものだ。
 なお、*3-6に、佐賀新聞が既に私が上記で答えたこと以外に、「①後ろめたいことがないのなら、なおさら国会に出て可能な限り関係書類を示して野党の質問に答えるべき」「②安倍首相が、各界において功績・功労のあった方々という招待基準を無視し、後援会関係者というだけで招いていたとすれば公費を使って後援会関係者をもてなしたことになる」「③できるはずの潔白の証明をしようとしないのは、自ら潔白ではないと認めたことになる」などを記載しているが、このうち①③については、安倍首相を辞めさせるために野党が追及しているため、いろいろ説明して合理的であったとしても、別の事案を探して汚いかのように言うと思われる。また、②についても、叙勲(これにはおかしな基準が多いと思うが)ではあるまいし、「(どこにでも咲いている)桜を見る会」に、それほど厳格な招待基準が必要とは思われず、招待客に会を主催するホストの好みが入るのは自然だろう。また、価格はホテル側と合意していれば問題なく、立食パーティーなら人数分の食事を準備しているケースの方がむしろ少ない上、価格交渉するのも普通だ。つまり、国の正確な財務諸表やその明細書がないため、金額や性格の重要性に応じて予算委員会・決算委員会で質問時間を割り当てることができず、重箱の隅をつついて政権闘争するのが野党ということになっているのが国民にとって最大の不幸なのである。

*3-1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191125/k10012190551000.html (NHK 2019年11月25日) 「桜を見る会」野党側が追及本部立ち上げ 山口県訪問し調査へ
 総理大臣主催の「桜を見る会」をめぐり、野党側が追及本部を立ち上げ、ことしの招待者のうち1000人程度が安倍総理大臣からの推薦だったことなどについて、地元の山口県下関市を訪れるなどして調査を進めることになりました。立憲民主党、国民民主党、共産党など野党側は25日、「桜を見る会」の追及チームの体制を強化して国会議員70人余りからなる「追及本部」を立ち上げ、初会合を開きました。本部長に就任した立憲民主党の福山幹事長は、「真相究明を進め、倒閣に向けた運動を進めていく。安倍政権は、自分たちのお友達だけを大切にして、国民生活はほったらかしだ。追及の手を緩めず一致結束して頑張りたい」と述べました。
そして、ことしの招待者のうち1000人程度が安倍総理大臣からの推薦だったことや、昭恵夫人からの推薦もあったこと、それに招待者名簿が野党議員が資料請求したのと同じ日に廃棄されたことなどについて、8つの班に分かれて調査を進めることを決めました。今後は、安倍総理大臣の地元の山口県下関市などを訪れて関係者から話を聞きたいとしているほか、引き続き安倍総理大臣に国会で説明責任を果たすよう求めていくことにしています。

*3-2:https://www.chunichi.co.jp/chuspo/article/entertainment/news/CK2019111602100052.html (中日新聞 2019年11月16日) 過去に「大麻中毒」など薬物使用疑惑報道 逮捕された“エリカ様“沢尻エリカ容疑者の横顔
 東京都内の自宅で合成麻薬MDMAを所持したとして、警視庁は16日、麻薬取締法違反容疑で女優の沢尻エリカ容疑者(33)を逮捕した。沢尻容疑者は、2005年に出演した映画「パッチギ!」で日本アカデミー新人賞をはじめ、映画賞に多数輝き、フジテレビ系ドラマ「1リットルの涙」での演技も高く評価され、一躍人気女優の座に上り詰めた。だが、07年9月、自身が主演した映画「クローズド・ノート」の舞台あいさつで、「別に…」と答え、自由奔放な振る舞いが批判されるなど話題になり、“エリカさま”と呼ばれた時期もあった。小学6年でモデルとして芸能界デビュー、少女ファッション誌「ニコラ」のモデルも務めた。03年、TBS系「ホットマン」で連続ドラマに初出演し、04年に「問題のない私たち」で映画初出演を果たした。演技力が買われ、以降映画出演が続き、「シュガー&スパイス 風味絶佳」(06年)「手紙」(同)、「新宿スワン」(15年)、「不能犯」(18年)などで主演した。12年の主演作「ヘルタースケルター」ではヌードを披露。転落していく女優を演じ話題になった。「億男」(18年)、「人間失格 太宰治と3人の女たち」(19年)でも存在感のある役を演じたばかりだった。プライベートでは、09年にはクリエイター高城剛さんと結婚したが、その後、夫婦関係をめぐり、迷走の末、13年に離婚した。女優としてのキャリアを重ねていく一方、薬物との接点もこれまで指摘され、「大麻中毒」など薬物使用疑惑が週刊誌などで報じられていた。

*3-3:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/369062 (北海道新聞 2019/11/27) 首相事務所、桜見る会旅費を政治資金から支出か 週刊文春報道
 2015年の「桜を見る会」を巡り、安倍晋三首相の事務所スタッフがツアーに参加する地元支援者らに同行して上京する旅費を、政治資金で支払った疑いがあると、週刊文春が27日、ウェブサイトで報じた。事実なら事務所や後援会に「収支が発生していない」とする首相の説明と矛盾する可能性があり、野党が追及を強めそうだ。ウェブサイトなどによると、ツアーには地元事務所のスタッフが多数同行しており、約89万円はスタッフの旅費だった疑いがあるとしている。首相はこれまで、旅費や宿泊費などは参加者が直接旅行代理店に支払ったと説明。違法ではないとの考えを示している。

*3-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/458775 (佐賀新聞 2019年11月27日) 経済対策:10兆円規模は過剰だ
 政府は来週にも経済対策を取りまとめ、2019年度補正予算、20年度当初予算にその経費を計上する。20年早々から切れ目なく執行する「15カ月予算」として、自然災害からの復旧・復興を加速させ、海外経済の下振れリスクへ備える方針だ。与党幹部らの要請も背景に、総額は10兆円規模に膨らむ見通しとなっている。堤防の強化や被災者の生活再建に向けたケアなど台風などによって大規模な被害を受けた地域への迅速な支援は必要だ。日米貿易協定による米国産牛肉の輸入増に直面する畜産農家への補助なども、一定程度は考えなければならないだろう。米中貿易摩擦による企業業績への圧力も高まってきた。英国の欧州連合(EU)離脱問題も企業活動を萎縮させている。こうした情勢に対する警戒は強めなければならない。しかし、広範囲に景気を喚起する大型対策が急務となっている局面ではない。実際、政府の景気認識も「緩やかに回復している」との判断を維持している。そんな中で、経済対策に10兆円を費やすのは過剰と言うしかない。むしろ、景気の安定を利用して、後退を続けてきた財政再建に向けた取り組みを立て直す方が、政策の方向性としては合理性があるだろう。消費税増税の負担軽減に向けた追加対策は既定路線だが、そのほかの対策は、対策名目の「間口」の広さに乗じて、詰め込んでいる感さえある。自動ブレーキなどの先端的な安全機能を備えた「安全運転サポート車(サポカー)」普及に向けた助成、小学5年生から中学3年生がパソコンを1人1台使える環境の整備、ドローンなど先端技術を使ったスマート農業の促進など、政府が盛り込もうとしている対策は、政策自体としては今の経済社会情勢に合致したものだろう。反対する理由はない。しかし、経済対策として直ちに予算計上して迅速に実施していく必要性については首をかしげざるを得ない。この間、幹事長ら自民党幹部らが相次いで補正予算を巡り10兆円規模を求めて発言、不要不急と思える事業が次々と対策に紛れ込んでいった。2閣僚辞任や「桜を見る会」問題で政権に対する逆風が強まっていることが背景にあると見るのは、うがちすぎだろうか。政府は対策に盛り込む予定の全ての政策について、早急な予算計上が必要かどうか改めて点検し、必要性が薄ければ採用を見送り、規模を絞り込むべきだろう。経済対策を盛り込む19年度補正、20年度当初予算は国会で審議に付される。政府が説明責任を果たすのは当然だが、政府を追及する野党の責任も重いことは指摘しておきたい。今回の対策では、財政投融資も活用される。成田空港の新滑走路や新名神高速道路の6車線化などに少なくとも3兆円を投じるという。財投は一般会計予算と違い、政府が財投債を発行して市場から資金を調達、それを長期間、低利で貸し付ける制度だ。国債のように税収で償還する仕組みではなく、国の借金には含めないため、対策規模を拡大する手段としては使い勝手がいいのかもしれない。だが、資金が計画通りに返済されなければ、国民負担につながることは言うまでもない。

*3-5:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201911/CK2019112702000148.html (東京新聞 2019年11月27日) 桜を見る会 名簿廃棄、資料要求後 「別の担当課、知らず」
 安倍晋三首相が主催した「桜を見る会」の今年の招待者名簿を巡り、内閣府は二十六日、野党の追及本部が国会内で開いた会合で、五月九日に名簿を廃棄した時間帯が、共産党の宮本徹衆院議員による関連資料要求よりも後だったことを明らかにした。廃棄と資料要求を担当した課が別だったため「廃棄の時点で、資料要求は知らなかった」と説明した。野党は「証拠隠滅だ」と改めて批判した。内閣府によると、名簿の廃棄は大臣官房人事課が担当し、五月九日午後の早い時間帯に行った。一方、宮本氏の資料要求は同日正午すぎに大臣官房総務課が把握した。総務課は資料要求について速やかに人事課に伝えず、人事課の担当者が要求を知らないまま名簿を廃棄したという。今年の招待者名簿については、内閣府が宮本氏から資料要求があった五月九日に廃棄したことを明らかにしていたが、廃棄の時間帯が資料要求よりも前か後かには言及していなかった。自民党の二階俊博幹事長は二十六日の記者会見で招待者名簿について「後々の記録、来年の参考にもなるから、いちいち廃棄する必要はない」と苦言を呈した。菅義偉(すがよしひで)官房長官は記者会見で、桜を見る会の招待客を巡り、首相や官房長官らの推薦が二〇一四年の約三千四百人から今年は約二千人に減っているのは過少説明との野党の指摘に対し「招待者名簿を既に廃棄しており、確認できていない」と釈明した。菅氏は、首相や官房長官らの推薦について「自民党関係者からの推薦も多く入っていたのではないか」との見方も示した。 

*3-6:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/460110 (佐賀新聞 2019年11月30日) 桜を見る会、首相は国会で説明を
 安倍晋三首相主催の「桜を見る会」を巡る問題がなかなか収束しない。新たな疑問点が次々と指摘される一方、政府側の説明は納得できるものではなく、公的行事を私物化していたのではないかという疑いは深まる一方だ。特に、真相解明に必要な招待者名簿が、共産党議員から提出を求められると、開催から1カ月もたっていないのにもかかわらず、大型シュレッダーで細断、破棄された事実は、公的行事私物化の事実を隠そうとしたのではないかとの深刻な疑念を生んでいる。招待者推薦の内訳から後援会が「桜を見る会」の前日に開いた前夜祭の収支、そして名簿破棄に至るまでの詳細を把握でき、また説明する責任があるのは当事者でもある安倍首相以外にいない。後ろめたいことがないのであれば、なおさら国会に出て、可能な限り、関係書類を示して野党の質問に答えるべきだ。次から次に疑わしい新事実が出てきて、「桜を見る会」を巡る問題は拡散気味だが、大きく三つに分類することができる。まず焦点になったのは安倍首相が「各界において功績、功労のあった方々」という招待基準を無視して、後援会関係者を招いていたのではないかという問題だ。桜を見る会は公費で賄われ、酒食も振る舞われる。仮に後援会関係者というだけで招いていたのだとすれば公費を使って後援会関係者をおもてなししていたことになり、まさに私物化に当たる。次が、桜を見る会前日に後援会関係者向けに開いた「前夜祭」の夕食会とその会費の金額だ。会場が東京都内の高級ホテルだったにもかかわらず会費が相場より安い5千円だったことから、安倍首相の議員事務所が実費不足分を補った公選法違反の可能性や政治資金収支報告書への不記載の疑いが指摘されている。桜を見る会を私物化したとの批判に対して安倍首相は11月20日の参院本会議での答弁で、「招待者の基準が曖昧で、結果として招待者の数が膨れあがった」と主張したが、厳格に解釈すべき基準を曖昧に解釈していたのが実態で、答弁は論点をすり替えている。また、前夜祭については「夕食会を含め、旅費、宿泊費など全ての費用は参加者の自己負担で支払われている。安倍事務所や後援会としての収入、支出は一切ないことを確認した」と強調。金額に関しては「(参加者の)大多数がホテルの宿泊者という事情を踏まえ、ホテル側が設定した価格との報告を受けている。毎年使っているとか、規模であるとか、宿泊をしているかをホテル側が総合的に勘案して決めることだ」と述べたが、根拠となる資料は示されなかった。さらに深刻で、説明に説得力がないのは招待者名簿を破棄してしまったことだ。共産党議員の提出要求の1時間後に大型シュレッダーで細断されており、名簿に安倍首相にとって都合の悪い部分があり、国会に提出されないよう「証拠隠滅」したのではないかとみられている。通常は可能なはずの電子データの復元についても菅義偉官房長官は「事務方からできないと聞いている」と説明にならない答弁を繰り返すだけだ。できるはずの潔白の証明をしようとしないのでは自ら潔白ではないと認めていることになる。

<憲法が守られていない事例(その1)-健康で文化的な生活>
PS(2019年11月28日追加): *4-1・*4-2のように、パートなど非正規で働く人たちの厚生年金の加入要件は、現在は「従業員501人以上の企業に勤務し、週20時間以上働いて、月給8万8千円以上」に限られているが、2022年10月に「101人以上の企業」、2024年10月に「51人以上の企業」に順次引き下げる案が有力だそうだ。対象拡大を目指す背景には、国民年金だけの人が低年金に陥らないようすることと、現在の年金保険料収入を増やす狙いがあるが、労働時間や賃金要件は現状を維持し、50人以下の企業も対象から外れ、政府は「中小企業の負担感や生産性向上に配慮し、助成金等の支援策も検討する」としている。
 しかし、*4-3のように、日本国憲法では「25条:すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」「27条:すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と規定されており、要件に満たない労働者は不十分な社会保障でよいとしてきたのが誤りである上、いつまでも専業主婦世帯をモデルとするのも、憲法27条及び男女雇用機会均等法違反だ。
 さらに、中小企業(定義不明)の生産性が低いとは限らず、むしろ厚労省始め役所の生産性の方が低そうで、社会保険料くらいは負担できるシステムにするのが筋であるし、その方が誰にとっても福利が増すわけである。

*4-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/458871 (佐賀新聞 2019年11月27日) 厚生年金加入要件、2段階で拡大、22年に101人以上の企業
 パートなど非正規で働く人たちの厚生年金で、政府、与党が加入対象となる企業要件を2段階で拡大する検討を始めたことが27日、分かった。現在、加入が義務付けられている企業の規模は「従業員501人以上」。これを2022年10月に「101人以上」、24年10月に「51人以上」に順次引き下げる案が有力だ。厚生年金の保険料は労使折半。51人以上に引き下げれば新たに65万人が加入対象となる一方、企業の保険料負担は1590億円増える見通し。政府は将来的な企業要件の撤廃を目指しているが、中小企業の経営面への配慮などから、今回の制度改正では撤廃の時期は明記しない方向。これまで一度に51人以上に引き下げる方向で検討してきたが、経営への打撃を最小限に抑えたい中小企業が慎重な対応を求めていた。来年の通常国会に関連法案を提出する。対象拡大を目指す背景には、国民年金だけの人が将来、低年金に陥らないよう年金額を手厚くする狙いがある。パートやアルバイトで働く人は現在、(1)従業員501人以上の企業に勤務(2)労働が週20時間以上(3)月給8万8千円以上―などの要件を満たせば、厚生年金の加入対象となる。今回の制度改正では企業要件を引き下げる一方、労働時間や賃金の要件は現状を維持する。26日に開かれた政府の全世代型社会保障検討会議では、議長を務める安倍晋三首相が「中小企業の負担感や生産性向上に配慮しつつ、厚生年金の適用範囲を考える」と述べていた。

*4-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14274047.html (朝日新聞 2019年11月28日) パート厚生年金、2段階拡大 従業員51人以上に 厚労省調整
 厚生労働省は、厚生年金が適用されるパートらの範囲を2段階で広げる方向で調整に入った。今は勤め先の企業規模が「従業員501人以上」であることが条件だが、2022年10月に「101人以上」、24年10月から「51人以上」に引き下げる。新たな保険料負担が生じる中小企業に配慮し、一定の準備期間を設けて理解を得たい考えだ。厚生年金には、正社員などフルタイムで働く人のほか、「501人以上の企業で週20時間以上働き、月収8万8千円以上」などの条件を満たすパートらも加入できる。今は約40万人だが、厚労省の試算では、適用対象の企業規模を51人以上にすると約65万人増える。政府は、厚生年金の方が国民年金よりも年金額が高いため、適用拡大によって低年金・無年金になる人を減らせるとしている。保険料収入が増え、年金財政が改善する効果も見込む。厚労省によると、企業規模を51人以上にした場合、モデル世帯の将来の年金水準は0・3ポイント上がる。一方、厚生年金の保険料は労使折半で払う。パートの加入者が1人増えると、一緒に生じる健康保険料とあわせて、年約25万円の負担増になるとの厚労省の試算もある。中小企業側は、最低賃金の引き上げなども課題になる中、保険料負担まで増えれば「経営に大きなインパクトを及ぼしかねない」などと慎重論を展開。また、パート自身が保険料負担を避けようと働き方を調整すれば、人手不足が加速する恐れもあると指摘している。ただ、政府は来年の通常国会に適用拡大の法案を提出する方針。中小企業側の理解を得るため、助成金などの支援策も検討している。

*4-3:http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail_main?id=174
(日本国憲法より抜粋)
第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
     国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上
     及び増進に努めなければならない。
第27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
     賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

<憲法が守られていない事例(その2)-違憲立法審査権>
PS(2019年11月29日、12月5日追加):日本国憲法は、「81条:最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と定めており、これは最高裁判所が違憲法令審査権を有する終審裁判所であることを規定したものであるため、違憲立法か否かを判断するには、(よく必要と言われる)憲法裁判所は不要だ。
 さらに、民事訴訟・行政訴訟など下部の法律で要求される当事者適格(特に原告適格)や訴えの利益などの訴訟要件を満たした訴訟でなければ違憲立法を提訴する資格がないとし、訴えの利益を狭く解釈しているのも、実質的に国民が違憲立法審査権を行使するのを困難にしている。
 そのような中、*5-1のように、戦後の憲法裁判記録が多数廃棄され、自衛隊や基地問題に関する当初の議論が検証不可能になったのは、大きな問題だ。
 また、日本政府は、*5-2のように、米国主導の「有志連合」には参加しないが、国会承認がいらず防衛大臣の判断のみで派遣可能な「調査・研究」という名目で、もともとは日本と友好関係を持っていた中東イランに自衛隊を派遣するそうだ。しかし、危機の迫った日本の船舶を護衛するわけでもないのに、単なる情報収集態勢強化のために自衛隊を遠方に派遣するのは、違憲の可能性が高い安全保障関係法令からもはみ出している。そのため、敵を増やす結果しか招かなそうなこの自衛隊派遣について、国会はその理由・目的・結果をよく検討すべきだが、この件に関しては「桜を見る会」ほどにも議論できないのが、我が国の深刻な問題なのである。

*5-1:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019080401001662.html (東京新聞 2019年8月4日) 戦後憲法裁判の記録を多数廃棄 自衛隊や基地問題、検証不能に
 自衛隊に一審札幌地裁で違憲判決が出た長沼ナイキ訴訟や、沖縄の米軍用地の強制使用を巡る代理署名訴訟をはじめ、戦後の重要な民事憲法裁判の記録多数を全国の裁判所が既に廃棄処分していたことが4日分かった。代表的な憲法判例集に掲載された137件について共同通信が調査した結果、廃棄は118件(86%)、保存は18件(13%)、不明1件だった。判決文など結論文書はおおむね残されていたが、歴史的裁判の審理過程の文書が失われ検証が不可能になった。裁判所の規定は重要裁判記録の保存を義務づけ、専門家は違反の疑いを指摘する。著名裁判記録の廃棄は東京地裁で一部判明していた。

*5-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14281400.html (朝日新聞社説 2019年12月4日) 中東へ自衛隊 国会素通りは許されぬ
 緊張が高まり、不測の事態も想定される中東に自衛隊を派遣することの重みを、安倍政権はどう考えているのか。政府・与党だけの手続きで拙速に決めることは許されない。国会の場で、派遣の是非から徹底的に議論すべきだ。中東海域への自衛隊派遣について、政府が年内の閣議決定をめざしている。早ければ年明けにも、護衛艦1隻を向かわせるほか、海賊対処のためソマリア沖で活動中のP3C哨戒機1機の任務を切り替える。米国のトランプ政権が核合意から一方的に離脱し、米国とイランの対立は深まるばかりだ。政府は米国が主導する「有志連合」への参加を見送り、独自派遣を強調することで、イランを刺激しまいとしている。だが、有志連合とは緊密に情報共有を進める方針であり、状況次第で、米国に加担したと見られても仕方あるまい。朝日新聞の社説は、関係国の対話と外交努力によって緊張緩和を図るべきだと、繰り返し主張してきた。米国の同盟国であり、イランとも友好関係を保つ日本が、積極的に仲介役を果たすことも求めてきた。こうした取り組みに逆行しかねない自衛隊派遣には賛同できない。法的根拠にも重大な疑義がある。日本関係の船舶を護衛するわけではなく、情報収集態勢の強化が目的として、防衛省設置法の「調査・研究」に基づく派遣だという。国会承認がいらないだけでなく、防衛相の判断のみで実施可能だ。自衛隊の活動へのチェックを骨抜きにする拡大解釈というほかない。政府が今回、閣議決定という手続きをとることにしたのは、公明党などにある懸念に応え、政府・与党全体の意思統一を図る狙いがあるのだろう。しかし、先に派遣ありきの議論で、数々の問題が解消されるとは思えない。政府は現地の情勢について、船舶の護衛がただちに必要な状況ではないと説明している。それなのに、派遣の決定を急ぐのはなぜか。活動を始めた有志連合と足並みをそろえ、米国への協力姿勢をアピールする狙いがあると見ざるをえない。だが、いったん派遣すれば、撤収の判断は難しくなる。立ち止まる機会は、今しかない。この節目に、国会論議を素通りすることは許されない。9日に会期末を迎える今国会では、いまだ中東派遣を巡る突っ込んだ質疑が行われていない。だとすれば、国会の会期を延長し、日本が採るべき選択肢を議論すべきではないか。そのことこそ、政治に課せられた国民への責任である。

<無駄のない安価で本質的な公共事業をすべき>
PS(2019年12月1、2、3日追加):*6-1のように、気候変動による海面上昇で、ガンジス川下流のインド・バングラデシュ国境地帯にある汽水域のマングローブが浸食され、この地域の鹿が減ってベンガルトラも姿を消す恐れがあるそうだ。また、人間も海面上昇で海辺の自宅に海水が入ってくるようになり、人間を含む生態系全体が内陸に移動せざるを得なくなった。しかし、*6-2のように、日本の標高は東京湾の平均海面が基準となっており、日本水準原点の高さは明治6年6月(1931年)から明治12年12月(1937年) までの東京湾の平均海面を見て決められたままだそうで、標高は海面上昇とともに一律に下がった筈なので、“歴史”“伝統”“前例”と称して惰性で同じことをやり続けるのは、日本の非科学的な点である。
 なお、近年は、*6-3のように、気候変動によって豪雨が増加し、水位超過が年を追うごとに増えて「氾濫危険水位」を超える事例が、2018年に日本全国で474件に達するそうだ。この原因には、海面上昇・気温の上昇による頻繁で強い豪雨・長期にわたる河川管理の不適切・住宅適地選定の誤りなどが考えられ、さんざん無駄遣いをしてきた上げ挙句の予算不足は言い訳にならない。そのような中、日頃からの治水対策はもちろん重要だが、人口減にもかかわらず海に面した大都市に人口を密集させ、土地価格の高騰から地下鉄・地下街さらには地下貯水池などの地下施設を作り、浸水すれば莫大な被害が生ずるという都市計画自体を考え直す必要がある。
 では、どういう土地の使い方をするのが合理的かと言えば、*6-4及び東日本大震災の津波被害を参考にすれば、「①人は高台に住む」「②工場もゆとりを持つ高台に移動する」「③農地を低い土地に作って遊水地の働きを持たせ、遊水地部分には水害にあっても1年で回復できる作物を植え、水害復旧には国から補助をする。トラクター・コンバイン・大型乾燥機などの農機具は十分な高さのある場所に保管する」などが考えられる。そのため、以前どおりに復旧したり、むやみに仮設住宅を立てたりするのは、無駄遣いの中に入るわけだ。
 ただ、*6-4に書かれている大町町の灰塚さんの場合は、順天堂病院周辺の農地約6haであるため、県・町・順天堂病院・その他の適切な会社が買い取って介護等のサービスを受けやすいマンションや公営住宅を建て、高齢者や病院のスタッフはじめそのような住宅に住みたい人を住まわせるのが便利だと思う。そのため、灰塚さんは、この土地を耕作者のいなくなった他のよい土地と交換すればよいのではないか?
 佐賀県には、*6-5のように、九州新幹線長崎ルートが開業すると並行在来線が不便になるという問題があるが、これはJR九州に依存しすぎているからかもしれない。何故なら、埼玉県ふじみ野市(私の自宅)は、東武東上線・有楽町線(地下鉄)・東急東横線・みなとみらい線が相互乗り入れして直通運転になったため、池袋・永田町・有楽町がもともと直通だったのに加えて新宿・渋谷・横浜・元町中華街などが直通で繋がり、便利になった。*6-5のケースなら、並行在来線の運行を他の鉄道会社に移管してJR九州と相互乗り入れさせたり、ディーゼル車両ではなく蓄電池電車や燃料電池電車にしたりなど、もっと希望が持てる前向きな案が考えられる筈で、私鉄は九州にこだわらず東急など沿線の街づくりが得意な会社の方がよいかもしれない。

*6-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14274014.html (朝日新聞 2019年11月28日) (世界発2019)気候変動、ベンガルトラ窮地 200頭生息のガンジス川下流、海面上昇
 絶滅が心配されるベンガルトラの最大の生息地の一つで、インドとバングラデシュの国境地帯にあるマングローブが、気候変動による海面上昇の打撃を受けている。50年後にはベンガルトラが姿を消してしまう恐れがあるという。
■飲み水・えさピンチ、絶滅危惧に追い打ち
 野生生物の宝庫と言われ、ベンガル語で「美しい森」を意味するシュンドルボン。青森県とほぼ同じ総面積、約1万平方キロメートルのマングローブは世界最大級で、ガンジス川下流のデルタ地帯にある。数千の川や入り江が複雑に入り組む。海水の混じった汽水がマングローブの生育に適し、ベンガルトラのほか、ワニや鹿、カワイルカなど様々な生物が生息する。主要部分は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産に登録されている。だが、約100の島からなる現地を小型船でめぐると、豊かだったはずの自然環境は変わり果てていた。岸辺の木々は消え、泥が積み上がっている。高さ2メートルほどの急ごしらえの堤防も、少しずつ浸食されている。海面上昇が進んでいるのだ。「年間約550ヘクタールの土地が失われている。海面上昇で土中に海水が混じり降雨量の減少も加わって、土中の塩分の濃度が上がっている。ベンガルトラの飲む淡水が少なくなってしまう」。ベンガルトラの保護活動に取り組んでいる地元NGOのアニル・ミストリ代表はそう心配する。すでに二つの島が沈んだ。えさとなる鹿にも影響が出ている。世界自然保護基金(WWF)によると、世界で生存するトラは1900年からの100年間で密猟の影響などで95%減り、4千頭を切った。インドやバングラデシュ、中国などに生息するベンガルトラは、昨年時点でシュンドルボンに202頭いることが確認されている。バングラデシュ・インディペンデント大学のシャリフ・ムクル氏は、環境変化で「2070年までにベンガルトラはシュンドルボンから完全に姿を消してしまう可能性がある」と予測している。
■家・田畑に海水、1万人移住/トラ襲撃被害
 シュンドルボンには人が住む集落が50カ所ほどあるが、海面上昇で生活も脅かされている。農家のブロゲン・マンダルさん(44)は「米の収量は昨年の600キロから180キロも減った」と嘆いた。海水が森林や田畑に入り込み、土壌を変えてしまったためだ。一帯の水も海水が混じる量が増え、取れる魚の量が減っている。モハン・マンダルさん(56)一家は、海辺の自宅に海水が入ってくるようになったため、地元政府がつくった堤防の内側に移住した。「5年後には堤防が壊れてしまうかもしれない。そうなったらどこに住めばいいのか」。この数年、暑い夏が長くなり、冬が来るのが遅く短くなったと感じる。「夏は暑すぎて、太陽が地上にあるようだ」。地元報道によると、一帯では海面上昇などですでに約1万人が移住を余儀なくされている。シュンドルボン一帯は雨期になるとベンガル湾の方角からサイクロンが直撃する。島の一つで、約4万人が暮らすバリ島にはサイクロンによって大量の海水が流入することもしばしばで、土壌の塩分が多くなってしまった。住民は生活や農業のため地下30メートルほどから水をくみ上げ続け、すでに枯渇してしまった地域が相次いでいる。シュンドルボンの巨大マングローブは、04年のインド洋大津波で大きな被害を防いだこともあり、自然災害から人間を守る天然のフェンスだった。マングローブが失われれば、植物や野生動物だけでなく、人間の生活も危うい。地元NGOのミストリ氏は「人間もこの自然の一部だという認識で生態系を守らなければならない」と話す。トラが人間を襲う事故も頻発する。生息域が狭まり、えさが減っているのが原因とみられている。インド・西ベンガル州政府はトラの生息地にネットを張り巡らせ、トラの封じ込めに努めている。それでも事故は起きてしまう。蜂蜜を採集していた夫をベンガルトラに殺されたというコイシャラさん(60)は「トラは私たちにとって恐ろしい存在だったが、安全を願って共に生きてきた。その調和が壊れてしまった」と話す。

*6-2:https://www.jk-tokyo.tv/zatsugaku/107/ (東京さんぽ) 日本の標高を決める水準原点
 日本の標高は東京湾の平均海面が基準となり、それが標高ゼロメートルと決まっているそうです。その正確な高さを定めた水準原点は東京湾にあるのではなく、湾岸より地盤のよい国会議事堂前の憲政記念館(東京都千代田区永田町1-1)の庭にあります。この日本水準原点の高さは、明治6年6月(1931年)から明治12年12月(1937年) までの東京湾霊岸島で測定した東京湾の平均海面を見て決められました。水準原点は小豆島産の花崗岩でつくられた原点標石に水晶板が埋め込んであり 、この水晶板の目盛ゼロの線(法令では零分画線の中点)が基準となります。
○標高は24.4140m。
 明治24年(1891年)この場所に日本水準原点が初めて設置されたときの標高は 24.5mでしが、1923年の関東大震災によって日本水準原点の地盤が86.0mm沈下したため、その標高が24.4140mと改められました。水準原点を保存している建物は工部大学校(東京大学工学部前身)。第1期生佐立七次郎(さたち・1856~1922)さんの設計で、建物は石造りで平屋建になります。建築面積は14.93㎡で軒高4.3mローマ風神殿建築にならい、トスカーナ式 オーダー(古典建築の構成原理)をもつ本格的な模範建築で、明治期の数少ない近代洋風建築として貴重なものだそうです。また、建物正面には「大日本帝国」「水準原点」の凝った文字が右から横書きで書かれてあり、「大日本帝国」の文字が残っている建物としても貴重であり 、現在は東京都指定有形文化財(建造物)に指定されています。

*6-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/563324/ (西日本新聞 2019/11/28) 「氾濫危険水位」超過河川4年で5.7倍 18年474事例、28%が九州
 河川の水位がいつ氾濫してもおかしくない「氾濫危険水位」を超える事例が2018年に全国で474件に達し、うち3割近い136件を九州7県が占めたことが、国土交通省への取材で分かった。水位超過はこの数年で顕著に増加しており、都道府県が管理する河川での発生が大半を占めた。台風の強大化や豪雨の頻発が背景にあるとみられ、国交省は気候変動を見据えた治水対策の検討に乗り出した。国交省によると、水位超過は年を追うごとに増えており、全国の件数は14年(83件=うち九州8件)の5・7倍に増え、九州7県が28%を占めた。国交省は「気候変動による豪雨の増加で、河川の安全度が相対的に低下している恐れがある」と分析。九州は他地域より豪雨が多かったため、全国に占める割合が高まった可能性が高い。河川の管理主体別では、都道府県が全国で86%(412件)、九州7県で82%(112件)を占めた。九州の県別の内訳は、福岡29件▽佐賀14件▽長崎4件▽熊本16件▽大分25件▽宮崎18件▽鹿児島6件。都道府県管理は、洪水時などに甚大な被害が想定されている国管理と比べ、氾濫対策が遅れているとみられる。関東や東北で甚大な被害が出た今秋の台風19号でも、堤防が決壊した71河川140カ所のうち64河川128カ所が都道府県管理だった。群馬大大学院の清水義彦教授(土木工学)は「都道府県管理河川は予算不足などで対策が遅れがちで、(降雨時間や範囲の)規模が小さい豪雨であふれる河川もある」と指摘。水位低下につながる遊水池の設置や河道の掘削といった対策について「早急に進める必要がある」と訴える。気象庁によると、1時間に50ミリ以上80ミリ未満の降雨量を示す「非常に激しい雨」の回数は、約30年前の約1・4倍に増えた。気候変動が豪雨増加の要因と指摘され、国交省の有識者検討会は気温が2度上昇すれば洪水頻度が2倍になるとの試算をまとめ、7月末に対策強化を提言した。国交省は、社会資本整備審議会(国交相の諮問機関)の小委員会で気候変動を踏まえた治水対策の見直しの検討に入っており、国管理河川の治水計画を改定する方針。自治体にも温暖化の影響を考慮するよう促しており、都道府県管理河川の計画見直しにつながる可能性がある。

*6-4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/563318/ (西日本新聞 2019/11/28) 「つらい」臭う田畑、油に奪われた実り…農家の無念 九州大雨3カ月
 九州北部を襲った8月の記録的大雨から28日で3カ月。鉄工所から流れ出た油混じりの水に田畑が漬かった佐賀県大町町の農家灰塚晃幸さん(64)は今季、収穫と作付けを断念した。県は土壌調査を終えて来春の営農再開を目指す方針を打ち出したが、灰塚さんの田畑には油の臭いが残り、農機具修復の見通しも立たない。「精魂込めて長年向き合った農業を奪われた」と無念さを募らせる。「今ごろは田んぼを耕して、麦をまく時期やったのに」。灰塚さんは、稲の切り株が残る田んぼを見つめた。近くのブロッコリー畑には雑草が生い茂る。4トンの収量を見込んでいた大豆は立ち枯れしたままだ。会社勤めから専業農家になって約35年。亡くなった父、安清さんが広げた順天堂病院周辺の農地約6ヘクタールを耕してきた。この夏、病院周辺の田畑の大半が大雨で冠水し、油が作物と土に付着した。自宅も床上1・3メートルまで浸水。大雨から1カ月間、避難所に暮らしながら、いても立ってもいられずに田畑を回った。10月、茶色に変色した稲穂を廃棄するために刈り取った。トラクターとコンバイン、大型乾燥機など農機具は全て修復不能に。「米に触れる部分は油が付着したらだめ。使ったら風評被害を生む」と諦めた。今月25日、大町町役場で開かれた被災農家の説明会。県と町の土壌調査では、農地153カ所のうち4カ所で水稲の生育に影響を及ぼすレベルの油を検出したと報告を受けた。灰塚さんの農地15カ所は、自然分解や石灰散布で営農再開できるレベルだった。それでも不安は消えない。「油はゼロではなく今も臭いがする。来年6月に田植えができるかどうか」。農機具の損失は4千万円相当に上る。国などの補償を受けても4割程度は自己負担になる。自宅の再建も見通しは立っていない。「全壊」判定の母屋には住めず、隣の農業小屋2階に家族3人で寝泊まりしている。いつもなら年末が近づくと自家栽培のもち米を蒸して、餅をつき、親戚に配っていた。今年のもち米は、捨てるしかなかった。正月には親戚一同が自宅に集まってカラオケ大会でにぎやかに過ごしてきたが、すでに断りを入れた。「3カ月たっても、状況は何も変わらん。何の作業もできんのがつらい」。農家の営みを失った重さが日々のしかかる。
   ◇    ◇
●罹災証明受け付け2300件
 8月の記録的大雨で被災した佐賀県。全20市町にあった避難所は10月20日までに全て閉鎖されたものの、自宅の浸水被害で戻れない人々が公営住宅67戸で仮住まいを続け、民間物件を借り上げて公費負担する「みなし仮設住宅」14戸の入居も決まっている。罹災(りさい)証明書の申請受け付けは13市町で2302件に上る。県によると、県内6市町に設置された災害廃棄物の仮置き場のうち、大町町と白石町は廃棄物を全て搬出。福岡、長崎両県の施設などと連携して広域処理が進んでいる。今月26日時点で住宅被害は全壊87棟、大規模半壊106棟など。農林水産関係や商工業など被害総額は約355億円に上る。

*6-5:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/461153 (佐賀新聞 2019年12月3日) 並行在来線ディーゼル化、速度遅く長崎線に乗り入れできず? <新幹線長崎ルート>肥前山口で乗り換えか
 九州新幹線長崎ルートの2022年度暫定開業に伴い、並行在来線となる肥前山口-諫早間を走る普通列車が、佐賀方面の長崎線に乗り入れできない可能性があることが分かった。並行在来線の一部区間は経費削減で非電化となり、速度が遅いディーゼル車両で運行するため、肥前山口駅での乗り換えが必要になる見通し。佐賀県は利便性が損なわれるとして、JR九州との協議で現行の乗り入れ本数の維持を求めている。肥前山口-諫早間は、佐賀、長崎両県が鉄道施設を維持管理し、JR九州が運行を担う「上下分離」方式を採用する。2016年の6者合意で、長崎ルートの暫定開業から23年間は普通列車を「現行水準維持」することが決まった。ただ、特急が走る肥前鹿島までは電車で運行できるが、肥前鹿島-諫早は経費を抑えるため、非電化区間となる。普通列車はディーゼル車両になり、肥前山口-諫早間で運行する。県によると、JR九州は速度が遅いディーゼル車両の長崎線への乗り入れはダイヤ編成上、困難との見方を示しているという。現行で1日に上下約30本程度の普通列車が運行し、半数以上が乗り換えを必要とせずに佐賀駅や鳥栖駅まで走っている。沿線住民の通勤通学の足として重要な役割を果たしているが、暫定開業後は一切乗り入れできなくなる可能性が出てきた。佐賀県は、JR九州や長崎県と進めている並行在来線の協議の中で、普通列車の在り方について問題提起している。JR九州が試験走行しているスピードが出る新型ディーゼル車両の導入を提案するなどしている。県交通政策課は「6者合意の『現行水準維持』は本数だけでなく、利便性も含まれる。通勤通学の時間帯の乗り入れを実現できるよう申し入れていきたい」と話す。JR九州は取材に対し、「ダイヤは需要や経営資源を考慮し、可能な限り利便性を確保するよう開業直前に決めるもので、現時点のコメントは差し控える」と回答した。

<発生主義会計採用の必要性を示す重大な事例(その1)-年金>
PS(2019/12/6追加): 政府は、公的年金制度に関し、消費税を引き上げ、金利を下げてマネーサプライを増やすというインフレ政策をとりつつ、物価スライド制を導入して、公的年金の実質受給額を減らすことに熱心だった。長寿命化により、*7-1のような中小企業で働く非正規労働者の厚生年金加入や高齢者の就業促進のための改革は必要だが、メディアや日本総研の西沢氏が、「①将来世代に目配りする改革が不十分」「②高齢者から反発が出るような制度改革がなければ、若年層からの信任は得られない」「③マクロ経済スライドの強化策を見送ったので、世代間の格差縮小という点で課題が多い」などとしているのは不適切だ。
 何故なら、③は、年金や介護保険制度が不十分だった時代に親の生活の世話や介護を行った現在の高齢者とそれを社会に任せることのできる若者との世代間格差の方がずっと大きいことを無視しており、①②は、現在の日本を造ってきた高齢者に感謝するどころか高齢者を馬鹿にする発言で、このような良識のない発言が「オレオレ詐欺」のような高齢者にたかる若者を作る温床となっているからだ。そして、現在の高齢者に対するこのような扱いが続けば、将来の年金制度は、制度が持続しても価値の小さなものになるだろう。なお、介護保険制度も介護保険料の支払者・受給者とも、全世代の働く人にすべきだ。
 それでは、「年金については、どうすればよかったのか」と言えば、厚生省(当時)が積立方式だった年金制度を1985年に賦課課税方式とし、単年度主義にしてその年の収支しか気にしなくなったため、*7-2のように、公的年金の給付水準が現役世代の負担に依存することとなり、散々、無駄遣いした上で「積み立てられた厚生年金の運用資産総額が200兆円に達している」などと呑気なことを言うようになったのが問題なのである。従って、積立方式を変更する必要はなかったのだが、今からなら発生主義に基づいた積立金を準備する必要があり、その金額の計算方法は民間企業が使っている退職給付会計と同じだ。現在の積立金と発生主義に基づいて計算された積立金の差額については、国民には全く責任がないため痛み分けする必要はなく、国債を発行して長期間で返済するしかない。

*7-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52982720V01C19A2EA1000/ (日経新聞 2019/12/5) 75歳から受給も可能 政府の改革案まとまる
 政府が検討を進めてきた公的年金制度の改革案が5日、固まった。中小企業で働くパート労働者も厚生年金への加入を義務づけるほか、75歳から受け取り始めると月あたりの年金額を最大で84%増やせる仕組みに変える。制度の支え手拡大や高齢者の就業促進に重点を置く。ただ現在の高齢者への給付を抑え、将来世代に目配りする改革はなお不十分だ。自民党が5日開いた社会保障制度調査会を受け、まとめた。2020年1月から始まる通常国会への改正法案の提出をめざす。公的年金改革は5年に1度実施する将来見通し(財政検証)を受け、19年夏から本格的な議論が始まった。議論の土台になる財政検証で示されたのは経済が順調に推移しても、将来の給付水準は今より2割弱下がるという先細りの将来像だ。政府は厚生年金の支え手拡大で、年金制度の持続性を高めることを重視した。高齢になるとパートや嘱託など短時間勤務に切り替える人も多く、働き方が変わっても厚生年金に加入できるようにする。現状は(1)従業員501人以上の企業に勤務(2)週20時間以上働く(3)賃金が月8.8万円以上――などの条件を満たす短時間労働者が対象。政府案では企業規模の要件を見直し、まず22年10月に従業員101人以上の企業に対象を拡大。24年10月には51人以上まで基準を下げる。厚生年金には18年度末で4440万人が加入するが、厚生労働省の試算では新たに65万人が加入する見通しだ。企業規模の要件を101人以上に見直すと、将来世代の所得代替率(現役会社員の手取りに対する高齢夫婦世帯の年金額の割合)は約0.2%改善する。対象を51人まで拡大すると改善幅は約0.3%まで広がる。将来不安に備えるには65歳を過ぎても健康な間はできるだけ長く働いて、公的年金はいざという時まで取っておけるようにもする。その中核になるのが年金の受け取り開始年齢の引き上げだ。今は原則65歳が受給開始年齢で、60~70歳の間で時期を選べる。これを75歳まで延ばす。受取時期を1カ月遅らせるごとに月あたりの年金額は65歳で受け取るより0.7%増える。75歳まで遅らせると84%増だ。19年度の厚生年金は夫婦2人のモデル世帯で月22万円。賃金や物価などの変動を考慮しなければ、75歳まで繰り下げた際の年金額は40万円強に増える。海外では平均寿命の延びに合わせて支給開始年齢を遅らせる国もあるが、選択肢の拡大で対応する。働く高齢者の年金を減らす「在職老齢年金」も見直す。今は60~64歳の場合、厚生年金と賃金の合計が月28万円を超えると年金の一部が支給停止になる。働いても収入が変わらず、就労意欲をそぐとの批判があった。この基準額を47万円に上げる。19年度末の試算では、新たに46万人に対して約3000億円の財源が必要だ。公的年金の支給額を抑えて制度の持続性を高める「マクロ経済スライド」の強化策は見送った。物価や賃金が低迷している時は機能せず、04年の導入から発動したのは2回のみ。調整が機能しなければ、高齢者の年金は維持されるが将来世代の給付水準は下がる。日本総合研究所の西沢和彦氏は「高齢者から反発が出るような制度改革をしなければ、若年層からの信任は得られない」と指摘する。世代間の格差縮小という面でみると課題は多い。

*7-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191204&ng=DGKKZO52929710T01C19A2EN2000 (日経新聞 2019.12.4) 厚生年金のあるべき資産構成
公的年金について、5年に1度の財政検証が行われた。これに伴い、厚生年金の運用資産構成の見直し、すなわちモデルポートフォリオの新たな検討が進んでいる。現在、厚生年金の運用資産総額は200兆円に達しつつある。公的年金の給付水準維持が現役世代の負担に依存するとはいえ、現時点で積み立てられた膨大な資産とその運用収益がクッションとなる。この意味で、資産運用の枠組みとしてのモデルポートフォリオは重要である。それにもかかわらず、モデルポートフォリオに関する議論が密室で行われているようだ。専門家にしか理解できない議論なのか。そうだとしても、素人からも意見がある。第1に、各資産の収益率に関して。今後の国内債の利率がほぼゼロであり、当面その上昇は期待薄だ。だとすれば、ポートフォリオでの国内債割合を低くし、その分を他の資産に移すべきだろう。第2に、資産を移管する先としての株式について。ひとつに、株式を国内と海外に分ける意味である。国内で元気な企業は、海外でも元気であり、利益の相当部分を外で稼いでいる。これは国内企業の海外化であり、株式を内外に分ける合理性を消滅させている。さらに、海外株の投資パフォーマンスが国内株を上回って久しい。海外経済の成長率が日本を上回っているためである。以上からすれば、内外の株式の区分をなくし、株式全体としての資産配分を考えるのが正しい。第3に、株式投資のベンチマークとしてのインデックスの再考である。国内株式について、上場区分とともに、インデックスの構成企業を見直そうとの議論が本格化する。これまで公的年金が信奉してきた東証株価指数(TOPIX)が絶対ではなくなった。第4に、50年、100年に一度のリスクへの対応である。公的年金のそもそもの目的は国民の安定的な老後生活にある。このことから、経済的な変動だけではなく、自然災害への目配りが必須となる。とくに、間近に迫っていると政府が注意喚起している南海トラフ大地震である。ポートフォリオの基本は分散投資である。大地震のリスクにさらされた日本に置くべき資産を調整するのは当然だろう。密室であってもいいが、以上に留意した議論を期待したいものだ。

<発生主義会計採用の必要性を示す重大な事例(その2)-固定資産>
PS(2019/12/9追加):*8-1・*8-2のように、国や地方公共団体のインフラ老朽化が進んだとして、事故が起きてからあわてて維持・管理を議論し、予算の獲得合戦をし、原因を専門スタッフの不足・無駄な公共事業の削減・人口減などに結び付けて誤った“解決策”に導かないためには、固定資産台帳を整備して存在する固定資産は網羅的に取得価額・耐用年数・減価償却・修繕等の状況を把握し、物理的・金額的に管理しておく必要があった。しかし、地方公会計の統一基準が採用された地方公共団体の固定資産台帳でさえ、現在は整備済17.9%、整備中35.9%、未整備46.2%であり(新地方公会計統一基準の完全解説P51~93など参照)、国はもちろん未整備である。そして、漏れなく重複なく金額の重要性に応じて必要な維持管理を行うには、複式簿記による会計を行って資産・負債・引当金などを正確に把握していることが必要であり、民間企業は、皆そうしているのだ。そして、それらの正確な資料を基に、例えば上下水道・ごみ処理・道路・橋などのインフラの維持管理をどう効率化するか、広域化して地方公共団体が所有するか、民営化するか、どのくらい国の助成を求めるかなどを議論する必要があるわけだ。
 なお、中央自動車道笹子トンネルで、ずさんな点検により老朽化を見落とし、天井板が崩落して9人が死亡した事故は、目視や音で老朽化の診断をしていたというので驚いた。医療に例えれば、年齢も考えず、顔色を見て聴診器で音を聞いただけで、検査はしなかったのと同じで、21世紀の維持管理や検査からはほど遠い。つまり、固定資産のメンテナンスは、鉄道会社や工場と同様、それを獲得した瞬間から効率的に行っておくべきものなのである。


  地方公会計の導入経緯     地方公会計の完成度       国の会計

(図の説明:左図のように、2020年3月末までに、統一基準による地方公会計が全国の地方公共団体で適用されるが、中央の図のように、複式簿記による発生主義会計は、単式簿記による現金主義会計の補完という位置づけだ。その理由は、日本国憲法及び財政法が、単式簿記による現金主義会計を前提としているからだそうで、これが計画性のない無駄遣いの原因になっている。しかし、膨大な資産・負債や収支を伴う国の会計基準は、右図のように、未だ単式簿記による現金主義会計のみであり、税金と保険料や収入と借入金などをごっちゃにしている状況だ)

*8-1:https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20190718-OYT1T50341/ (読売新聞 2019/7/19) 地方のインフラ 進む老朽化への対策急ぎたい
 老朽化が進む地方のインフラ(社会基盤)をどのように維持・管理していくか。重い課題の克服へ有効策を探りたい。全国の道路や橋、トンネル、水道管などは高度成長期に集中的に整備された。このため、多くが一斉に耐用年数を迎えつつある。地方自治体は人口減などで財政が厳しく、更新や補修に十分対応できていない。自民党は参院選の公約で、防災や減災のための「国土強靱きょうじん化」を掲げる。ただ、老朽化への対応策は具体性を欠く。立憲民主党や国民民主党は、地方インフラの維持に言及していない。喫緊の問題で論戦が低調なのは残念だ。2012年に起きた中央自動車道・笹子トンネルの天井板崩落事故を受け、国と自治体はインフラの点検を強化している。読売新聞が今年、国と自治体に行った調査では、点検で損傷度合いが最も深刻だと判定された580か所のうち、4割近くで修繕や撤去の見通しが立っていない。大きな事故が起きてからでは遅い。優先順位を付け、効率的に改修したい。損傷前にこまめに補修する「予防保全」が有効となる。ドローンなどの先端技術による点検の省力化も進めるべきだ。水道管は、総延長の約15%が40年の耐用年数を過ぎている。多額の更新費用が重荷となる。現状でも、水道事業の経営は危機的だ。全国の公営上水道事業は、約3割が赤字である。さらに人口が減れば収益は先細りとなる。水道法改正で、今秋から運営権を民間に売却する「コンセッション方式」が導入しやすくなる。民間ノウハウを活用して効率化を図る狙いだが、安全面の不安などを理由に自治体は消極的だ。利用者の理解なしには実施できまい。事態を打開する方策として、公営事業の広域連携がある。給水人口の少ない公営事業者が、施設の共有や工事の一括発注などを進めれば、経費を削減できる。積極的に取り組んでもらいたい。すでにゴミ処理や消防、公立病院の再編などで広域化の動きが広がっている。利害を調整しつつ、共助の動きを広げるには、都道府県の役割が重要になる。人口減少への対策では、中心部に都市機能を集約する「コンパクトシティー」の推進も有力な選択肢といえる。住居や商業施設などに加え、公共施設などのインフラも集中させることで、行政のコストを抑えることができる。各地方の実情に合わせ、具体策を練り上げる必要がある。

*8-2:https://www.sankei.com/west/news/170710/wst1707100006-n1.html (産経新聞 2017.7.10) 迫りくる崩壊(1)老朽化「いずれ橋は落ちる」20年後、7割が建設50年超
 高度経済成長期に整備が進んだインフラが老朽化している。人命に関わるこの危機に国や自治体などがどう立ち向かおうとしているのか、その現状を探る。1967(昭和42)年12月、米国のウェストバージニア州とオハイオ州を結ぶ吊り橋「シルバー橋」が突然崩壊し、46人が犠牲となった。約40年前に建設されたこの橋は補修や点検が十分に行われず、老朽化に伴う金属疲労が進んだことが原因だった。日本より30年早く1920~30年代に急速に道路や橋の整備が進んだ米国。しかし、十分な維持管理費が投入されなかった結果、耐用年数の目安とされる50年が経過した80年代には道路や橋の老朽化によって事故が相次ぐようになる。「荒廃するアメリカ」といわれ、社会問題になった。「米国再興のためインフラ整備に1兆ドル(約113兆円)を投じる」。昨年の大統領選では、そんな公約を掲げたドナルド・トランプ氏が当選を果たした。
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 日本でも平成24(2012)年12月、恐れていた事故が起きた。山梨県の中央自動車道笹子(ささご)トンネルで、ずさんな点検によって老朽化を見落とした結果、約140メートルにわたって天井板が崩落。車3台が下敷きとなり、9人が死亡した。米国での事故と日本での惨事。国土交通省の徳山日出男・道路局長(26年当時)は部下にこう檄を飛ばした。「いずれ必ず橋も落ちる。住民が巻き込まれて自分が刑事被告人になったつもりで書け」。26年4月、国交省の社会資本整備審議会道路分科会で「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」がとりまとめられた。「最後の警告-今すぐ本格的なメンテナンスに舵(かじ)を切れ」との副題がついたこの提言の前文にはこうある。「今や、危機のレベルは高進し、危険水域に達している。ある日突然、橋が落ち、犠牲者が発生し、経済社会が大きな打撃を受ける…そのような事態はいつ起こっても不思議ではない」。戦後から高度成長期にかけて多くの整備が進んだ道路や橋、トンネル、上下水道。それらのインフラが耐用年数の目安である50年を経過しつつある今、かつて米国で起きた落橋事故も現実味を帯びる。もし、同様の重大事故が発生すれば一体誰が責任を負うのか。
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 笹子トンネルの事故では、責任追及の矛先は道路を管理する中日本高速道路と子会社に向けられた。犠牲者9人のうち20代の男女5人の遺族らが原告となった訴訟では、横浜地裁が「目視だけの点検を選択した過失があった」として会社側の過失を認め、総額4億4千万円余りの賠償を命じる判決を言い渡した。この事故では高速道路会社が責任を負ったが、国道や都道府県道、市町村道などの道路や、それらにかかる橋の場合、管理者の国や自治体が責任を負うことになる。
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 危機感を募らせた国交省は、26年から自治体などに対し5年に1度の定期点検を義務づけた。その結果、28年3月までに点検を終えたもののうちトンネルの46%、橋の12%で修繕が必要と判断された。建設50年を超える割合は、今から20年後にはトンネルが57%、橋が71%にまで達する。昭和45年の大阪万博前後にインフラ整備が進んだ近畿地方でも今から20年後には橋の約7割(約4万4千橋)が建設50年を超えるが、全国の橋の7割以上を管理する市町村では慢性的な財政難に陥っている。同省が平成28年、全国の自治体に現在の予算規模で修繕が可能か尋ねたところ、約6割の市町村が「不可能」と答えた。さらに、人口減に伴う技術者不足が追い打ちをかける。同省の調査では、市町村の土木部門の職員数は8年度から25年度までに約3割減少。特に道路の維持・管理業務を担当する職員が「5人以下」の市は全体の約2割、村では9割以上にも及んでいる。「このままでは対応しきれない」。衝撃的な数字に同省幹部らは頭を抱えた。

<発生主義会計採用の必要性を示す重大な事例(その3)-原発>
PS(2019/12/10、12追加):*9-1のように、原発の本当のコストは、電力会社が支払う建設費のほかに、フクイチ事故後の損害賠償・廃炉・除染等の費用を国が支えて国民負担になっているが、一般企業の場合は、汚染物質は外に出さず、外に出したらその企業が回収するのが原則だ。さらに、汚染土の放射能濃度が8千ベクレル/kg以下なら公共事業の盛り土などに使えるようにするというのも、該当する地域の住民を犠牲にする行為だ。また、原発立地地域には、電源三法交付金制度(1974年制定:電源開発促進税法・電源開発促進対策特別会計法・発電用施設周辺地域整備法、https://www.fepc.or.jp/nuclear/chiiki/nuclear/seido/index.html)により、国民から集められた資金が政府から約3500億円(2015年のケース)配賦されており、使用済核燃料の保管場所も未だ決まっていないが、いずれも国民負担になるものだ。なお、これらは、本来は発生主義で費用を認識し、負債性引当金を積んでおかなければならないものである。
 一方、*9-2のように、2020年に「パリ協定」の本格始動を控える中、日本はCO₂を排出する石炭火力発電所の建設計画が10基以上あり、開発途上国に石炭火力発電所の輸出も行っているため、「化石賞」を贈られる事態となっている。しかし、「化石燃料を燃やす代わりに原発にする」というのは、海水温の上昇を促進させる上、原発事故による深刻な環境汚染とも隣り合わせであるため、薦められないわけだ。
 そのため、環境問題解決のためのエネルギー革命期を迎えている現在、*9-4のノーベル化学賞受賞者の吉野さんが記念講演で述べられたとおり、再生可能エネルギーと電池がエネルギー革命の中心になることは明らかだ。日本は、化石燃料もウランも乏しい国だが、再生可能エネルギーは豊富で、これに電気自動車を組み合わせれば、環境・経済・利便性・エネルギー自給率の向上という要件をすべて満たして発展することが可能で、いずれも日本発の技術なのである。
 なお、水素はロケット燃料として使われているエネルギーで、再生可能エネルギー由来の電力で水を電気分解すればCO₂を出さずにいくらでもできるので、*9-3のように、「①川崎重工が世界初の液化水素運搬船の進水式を実施し」「②オーストラリアで採った安価な石炭から水素をつくって日本に輸入する予定で」「③JXTGホールディングスはLPGを原料に水素を生産してFCV向けに水素を供給している」「④水素で発電するよりLNGや石炭で発電した方がコストが安い」などと言っているのには呆れる。何故なら、日本は水と再生可能エネルギーは豊富な国で、海の水を電気分解すれば水素・酸素・塩が同時にでき、その時にCO₂その他の排気ガスは全く出さず、液化水素運搬船は水素の輸出用に使った方がよいくらいだからだ。なお、水素による燃料電池も、自動車だけでなく航空機・船舶・列車等々に応用可能な日本発の技術である。

  

(図の説明:左図のように、2017年の日本のエネルギー自給率は7.4%で、他の先進国と比較して著しく低い。また、中央の図のように、世界の発電コストは、2018年には原子力が最も高く、風力・太陽光が安くなっている。このほか、日本は、右図のような地熱も豊富だ)

*9-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM1L4W0PM1LULFA013.html (朝日新聞 2019年1月23日) 原発の本当のコストは? 経産省の「安い」試算に異論
●エネルギーを語ろう
 日立製作所が英国での原発計画を凍結したことは、原発がもはや安い電源と言えなくなった現実を私たちに突きつけました。原発や事故処理のコストをどう考えたらいいのでしょうか。電力のコスト分析に詳しい大島堅一・龍谷大教授に聞きました。
●経産省のコスト試算「甘すぎ」
―経済産業省が2015年に示した2030年時点の発電コスト(1キロワット時)で、原発は10・3円となっていて、天然ガス火力(13・4円)や石炭火力(12・9円)より安く試算されていました。
 「原発の建設費の想定が甘すぎます。福島の事故以前に建設されたような原発を建てるという想定で建設費を1基4400億円とし、そこに600億円の追加的安全対策を加算するというものです。設計段階で安全性の高い原発を想定しないという非常に奇妙な試算です」
―試算に使われた事故の発生確率にも疑問を呈していますね。
 「経産省の試算では、追加的な安全対策を施すので、(福島第一原発のような)『過酷事故』が起きる発生確率は半分になるとしています。素朴な疑問ですが、なぜ、半分になるのでしょうか?」
●原発建設費 2基で3・5兆円も
―原発の建設費は世界的にみても高騰しています。
 「英国で計画中の『ヒンクリーポイントC原発』(160万キロワット級×2基)の建設費245億ポンド(欧州委員会の14年の想定。直近の為替レートで日本円に換算すると約3・5兆円)です。それが大事なファクトです。メルトダウンした核燃料を受け止めるための『コアキャッチャー』や、大型航空機の衝突に耐える二重構造の格納容器など、安全性能を高めたためです。経産省の試算のように安くできるはずがありません」
―こうした状況を踏まえた場合、原発の発電コストはいくらになるのですか?
 「私は、原発の1キロワット時あたりの発電コストは17・6円になると試算しています。米電力大手エクセロンの経営幹部は昨年4月、『新しい原発は米国内では高くてもう建てられない』と発言しています。日立製作所も想定した収益が見込めないとして、英原発輸出計画を凍結しました。そんな現実からしても17・6円は外れていないと思います。もはや原発にコスト競争力はありません。斜陽産業として、いかに『たたむか』を考える時です」
●重い国民負担 東電の責任は
―福島第一原発事故後、当時の民主党政権は東京電力を潰さずに国有化し、損害賠償の支払いなどを国が支える枠組みをつくりました。この枠組みをどうみますか?
 「残念なのは、東電の責任について議論を尽くさず、あいまいにしてしまったことです。それで国がずるずると事故費用を出す形になり、結果的に国民負担を大きくしています。環境汚染の費用は汚染者が負担する『汚染者負担原則』がありますが、それから逸脱しており、大問題だと思います」
―損害賠償に加え、廃炉や除染などの費用が膨らんだ結果、事故費用の総額が21・5兆円に倍増したとして、経産省は16年に新たな負担の割り振り策をまとめました。
 「これも大問題です。経産省は賠償費用の新たな増大分についても電気料金から払うことにしました。福島の事故以前に電気料金の中にその費用を組み込んでいなかったので、国民にはそのツケがある、という理屈ですが、それは違います。東電のツケですよ。もしJRが事故を起こしたら、国民にツケがあるといって運賃から事故費用を徴収しますか?」
―廃炉費用は東電の送電部門の合理化益を充てる、除染費用は東電株の将来の売却益を充てる、ということになりました。
 「これもおかしな仕組みです。(電力会社がコストを電気料金に上乗せする)『総括原価方式』の理念からすれば、仮に送電部門で合理化益が出たら、料金を下げるべきです。除染費用でアテにする東電株の売却益も、元々は国費を使っているので、売却益が出たら国庫に戻すべきです」
―では、どのように事故費用を捻出すればいいのでしょうか。
 「『汚染者負担』が原則ですが、もしそれでは対応できないということなら、国会で東電の責任問題をしっかり議論し、『国にも責任があった』と見える形にして、税金でまかなうという判断はあってもいいと私は考えます。しかし今の負担の割り振り策では、事故費用を電気料金から、『こっそり』取るようなやり方だと言わざるを得ません」
●実態に合ってない「復興」
―一方、政府は放射能濃度が1キロあたり8千ベクレル以下となった汚染土を公共事業の盛り土などに使えるようにしました。
 「汚染土の最終処分の量を減らしたいからでしょう。それは、ひいては東電の費用負担を減らすことになります。さらに新たな除染を国の公共事業とみなす措置もできました。これも東電が支払うべき費用を軽くしているのです」
―政府が進めている避難者の帰還政策をどう見ていますか。
 「避難指示の解除を受けて避難者が帰ったかというと、実際には様々な理由で帰れない方が多いのです。でも解除したので賠償は打ち切ります、と。実態に合っていないのです。復興の実態が伴っていないのに『問題はもうなくなりました』とされてしまうことを私は恐れています」
     ◇
大島 堅一(おおしま・けんいち)龍谷大学教授(環境経済学)。1967年福井県生まれ。一橋大大学院経済学研究科博士課程単位取得。著書に「原発のコスト」(岩波新書)、共著に『原発事故の被害と補償』(大月書店)など。脱原発社会に向けた政策提案を続けるシンクタンク「原子力市民委員会」の座長も務める。

*9-2:https://www.fnn.jp/posts/00049284HDK/202001311454_reporter_HDK (FNN PRIME 2019年12月6日) 「地球は大幅に温暖化」の衝撃報告書!日本は“批判の的”…小泉大臣は何を語る?COP25開幕 
・「パリ協定」の本格始動を2020年に控える中、「COP25」開幕
・各国の削減目標では大幅な気温上昇は不可避
・石炭火力推進の日本は批判の的…積極的な発信ができるか
●「大幅な気温上昇不可避」報告書 国連事務総長は危機感あらわ
 地球温暖化対策を話し合う国連の会議「COP25」が12月2日からスペイン・マドリードで開幕した。
△国連 グテーレス事務総長;今のままの努力では不十分なのは明らかだ
 国連の事務総長は、開幕を前にした記者会見で各国に対し、温室効果ガスの削減目標を引き上げるなど対策の強化を表明するよう求めた。この発言のもととなったのは、COP25開幕前に公表された、国連環境計画(UNEP)の衝撃的な報告書。各国が、パリ協定で目標として現在提出している温室効果ガスの排出削減量を達成したとしても、『世界の気温は産業革命前から3.2度上昇する』というのだ。つまり現在の各国の削減目標では、大幅な気温上昇は避けられない危機的な事態だという。仮に、気温を1.5度上昇に抑えるためには、現在年1.5%ほど増えている排出量を、毎年7.6%減らす必要があると分析している。パリ協定では各国に対し、2020年2月までに、現在提出している削減目標を引き上げたうえでの再提出、もしくは更新することを求めている。一方で、数値目標の引き上げも再提出も義務ではなく、求められているだけという状況がある。そのためグテーレス事務総長は、COP25の会合のなかで、各国が温室効果ガスの削減目標の引き上げを表明することで、気候変動問題の機運を世界全体で高めていくことを求めているのである。
●”日本は温暖化対策に消極的”国際的な批判も・・・
では、日本はどうなのか。国連環境計画の報告書では、各国の取り組みに対しても言及していて、日本についての記述もある。「石炭火力発電所の建設を中止するほか、再生可能エネルギーを利用することで石油の利用を段階的にやめていくこと」。日本では、二酸化炭素を排出する石炭火力発電所の建設計画が現在も10基以上ある。そのうえ、途上国へ石炭火力発電所の輸出を行っていることで、国際的な批判を受けている。しかし、梶山経済産業大臣はCOP25が開幕した後の12月3日の会見でこう述べた。
△梶山経済産業大臣;石炭火力発電など、化石燃料の発電所は選択肢として残していきたい
 国際的な環境NGOのグループは、温暖化対策に消極的だと判断した国や地域に、皮肉をこめて「化石賞」を贈っている。梶山大臣の発言を受けて、早速 日本は12月3日、COPの会場内で「化石賞」を贈られる事態となってしまった。
●日本の発信に世界が注目 ギリギリの調整続く
 日本は、国際的な批判をどのように巻き返せるのか。「気候変動問題は、クールでセクシーに取り組むべきだ」と発言して、国内外から注目された小泉進次郎環境大臣もCOP25に出席する。そして、11日には閣僚級会合でスピーチを行う予定だ。ここで日本の石炭火力発電所に対する姿勢、そして数値を引き上げたうえでの削減目標の再提出について言及があるのか、世界は注目している。小泉大臣はこれまで、会見で「数値目標の引き上げは検討していきたい」としながらも、「関係機関の調整があるので、数値の引き上げ以外の方法も考えたい」とも話している。11日のスピーチについても、石炭火力発電についても言及する方向で調整しているが、どこまで発言できるのか。政府内の調整がギリギリまで行われているのが現状だ。2020年からパリ協定が本格的に始まるのを前に、アメリカは正式に離脱を通告。世界的な機運に水を差しかねない状況の中、気候変動問題で日本が孤立しないためにも、今回のCOP25で積極的な発信・行動力を求めたい。

*9-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191212&ng=DGKKZO53243570R11C19A2TJ2000 (日経新聞 2019.12.12) 川重、世界初の水素運搬船 進水 来秋に完成 豪で液化し日本に
 川崎重工業は11日、世界初となる液化水素運搬船の進水式を実施した。2020年秋に完成させる。同社は丸紅やJパワー、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルなどと組み、オーストラリアで採った安価な石炭から水素をつくり、日本に輸出するプロジェクトに取り組んでいる。今回の運搬船を使い、オーストラリアで生産した水素を日本に運ぶ実証を20年度に始める。11日、川重の神戸工場(神戸市)で行われた進水式にはリチャード・コート駐日オーストラリア大使や、トヨタの内山田竹志会長らの関係者を含め計4千人程度が出席。「すいそ ふろんてぃあ」号と名付けられた全長116メートルの運搬船は今後、水素を格納するタンクなどをつける。水素はセ氏マイナス253度まで冷して液化すれば体積を800分の1に圧縮でき、大量に輸送できる。水素はこれまでロケットの推進燃料などとして使われてきたが、用途は広がっている。トヨタ自動車は10月に水素を使う燃料電池車(FCV)「ミライ」の新モデルを公開。国内石油元売り最大手のJXTGホールディングスは横浜市の拠点で液化石油ガス(LPG)を原料に水素を生産。全国41カ所のステーションでFCV向けに水素を供給している。調査会社の富士経済は、30年度の水素関連市場は18年度比50倍以上の4085億円に膨らむと試算。燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しない水素は、低炭素社会を実現する切り札として期待が高まっている。中東情勢が緊迫化する中、化石燃料に依存するリスクが浮き彫りになっていることも背景にある。課題はコストだ。現状では水素で発電するよりも、液化天然ガス(LNG)や石炭で発電した方が大幅に安い。LNGと同じくらいのコスト競争力を実現するには、国際的な供給網(サプライチェーン)の確立と大量輸送の実現がカギを握る。川重は30年ごろの商用化を目指し、大型船の開発も進める方針だ。

*9-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53100260Y9A201C1I00000/ (‪日経新聞 2019/12/8) ノーベル賞吉野彰さん講演 「電池がエネ革命の中心に」
 ノーベル化学賞を受賞する吉野彰・旭化成名誉フェローは8日午前(日本時間8日夜)、ストックホルム大学で記念講演した。授賞理由となったリチウムイオン電池の開発経緯や展望を紹介。環境問題解決のためのエネルギー革命の時代を迎えていると説明し、「リチウムイオン電池がその中心になる」と話した。記念講演は「ノーベルレクチャー」と呼び、10日夕に開く授賞式の関連行事になっている。吉野氏は「リチウムイオン電池の開発経緯とこれから」というタイトルで、化学賞を同時に受賞する3氏の中で最後に講演した。吉野氏は、過去の発火の危険を調べる実験の映像などを映し出しながら、「電極に炭素を使う実験がうまくいき、安全な電池として市場に出せると確信した」と語った。リチウムイオン電池は環境問題の解決に重要な役割を果たすとし「特に電気自動車が世界の市場を大きく変えていく」と力を込めた。「環境、経済、利便性が同じように発展していくことが重要だ」と訴え、電気自動車や人工知能(AI)が人々の生活を支える未来社会の映像を流した。「これからのエネルギー革命にリチウムイオン電池が中心的な役割を果たす」という言葉で講演を締めくくると、会場からは大きな拍手が起こった。終了後にはノーベル化学賞を受賞する3氏が壇上に並び、会場からの祝福に応えた。

| 日本国憲法::2019.3~ | 09:45 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.3.12 日本は人権を大切にしない国である ← 災害後は速やかな復興と災害前以上の生活水準にすることが必要なのに、時間ばかりかけて「心のケア(心の問題)」としていることから (2019年3月14、15、16、18、25日に追加あり)
 

(図の説明:左図のように、東日本大震災の津波遡上高は地形が狭くなるところで高くなるので、地域によって異なる。中央は宮城県女川町、右は岩手県陸前高田市を襲った津波の様子だ)

 

(図の説明:左の2つは、東日本大震災被災地の地形と被災状況、右の2つは、南三陸町と宮古市の津波後の状況である)

(1)東日本大震災と原発事故から8年後の復興状況
 2011年3月11日2時46分、私が埼玉県の自宅マンション倉庫にあるゴミ置き場でゴミの分別をしていたところ、激しい揺れが来てそれが長く続いたため、倉庫にいては危ないと思って駐車場に出て座り込み、このような激しい地震の中で10階建てのマンション全体がどう揺れるかを、しっかり見ることとなった。その結果、当たり前だが、中央部はあまり揺れず端が激しく揺れて、その揺れは上階に行くほど著しかった。

 揺れが収まってからマンションの自室に戻ってTVをつけると、津波の恐れはあるが6m程度だと言っていた。これが、津波を過小評価して避難を遅らせた原因だろう。くぎ付けになってTVを見ていると、津波は15時過ぎから到達し始め、地形によって遡上高が変わり、居住地の最大遡上高は宮古市の40.5mというすごいものだったことを、決して忘れてはならない(https://news.yahoo.co.jp/byline/nyomurayo/20170311-00068495/参照)。

 復興庁は、このブログで私が提案してできた省庁だが、①1カ所で総合的復興計画を立てて速やかに復興を進めること ②復興にかかった費用をすべて集計すること がその目的だった。そのうち、①については、*1-1-1・*1-1-2のように、東日本大震災から8年経ってもまだ復興途上で避難生活を強いられ、仮設住宅で暮らす人が現在でも岩手県2,156人、宮城県453人、福島県809人もおり、他県も含めると全体で5万2千人に上るというので、決して速やかとは言えない。原発事故で戻れない人には、帰還を無理強いするのではなく、1~2年以内に「できないことは、できない」と明らかにして移住してもらうべきだったのだ。また、②については、本来は毎年集計して費用対効果を開示すべきだったが、今からでもやってもらたい。

 もし復興庁を作らず各省庁が別々に関与していれば、復興がもっと速かったとは思わないが、仮設住宅で我慢させるのはせいぜい1~3年にしなければ、健康を害したり気力を失ったりするのは当然だ。そして、これは誰かが話を聞いたり、心のケアをしたりすればすむ心の問題ではなく、解決すべき実在する問題なのである。

 さらに、「福島県の農水産物の風評被害・・」などと書かれているが、風評被害と強弁して無理に食べさせようとしたり、除染土が置きっぱなしになっていたりする限り、安全を第一に考える人は福島県に寄り付けないだろう。つまり、災害後の誤った意思決定の一つ一つが、すべて人災となって加わっているのである。

 なお、*1-1-2には、「津波被害を受けた3県の沿岸部を中心に人口減少が加速し、地域コミュニティーの再生どころか、存続の危機を迎えているところも少なくない」と書かれているが、津波被害を受けた同じ場所に前と同じ街を造って地域コミュニティーを復活すればよいわけではなく、安全性を考えて産業を含めた再配置を行うのが当たり前である。

 また、*1-1-3に、「i)被災者の生活再建にめどが立ったわけではない」「ii)原発事故に見舞われた福島県で、政府は一通りの除染で帰還を促すが殆どの避難者が被曝の不安、医療・介護、商業施設再開見通しのないことで帰れない」「iii) 福島県沿岸部でイノベーション・コースト構想があり、帰還者でも避難者でもない新たに来る人たちを対象に年700億〜900億円が投じられている」などが書かれているが、どの地域であっても働く場所や収入がなければやりがいを持って生きられないため、いつまでも「可哀想の論理」で被災者を支援するだけでは、被災者も救われないし、国の財政も破綻するわけである。

 なお、*1-1-4に、「復興住宅で高齢者の孤独死が急増した」と書かれているが、これは災害公営住宅(復興住宅)に、誰でも来やすいレストランやショートステイ・診療所・訪問介護などを付設する方が、ボランティアが時々訪問するより効果的だろう。そして、現在50~70代くらいの男性が「復興期弱者」になっているのは、いつまでも生活の目途が立たず、仕事がないから(つまり、復興が遅すぎるから)ではないかと考える。

(2)原発事故のあった福島の復興状況
 *1-2-2のように、東日本大震災から8年経っても避難者が5万人超もいるのは、事故を起こしたフクイチの立地自治体付近が、避難指示区域だったり、帰還困難区域だったりするという理由も大きい。

 そのフクイチは、8年経ってもまだ原子炉内の燃料デブリが取りだされていないばかりか、取り出す目途もたっておらず、100万トンを超える汚染水処理もまた見通しが立たない。*1-2-1によれば、原発事故対応費は総額81~35兆円になるとの試算を「日本経済研究センター」がまとめており、これは経産省の約22兆円という試算を大きく上回っているが、経産省との違いは、汚染水の浄化処理費用を約40兆円と大きく見積もり、除染で発生する土壌などの最終処分費用を算入したことなどだそうだ。

 そもそも、「水で冷やしさえすればよい」というのは平時の発想で甘すぎると、私は事故当時から思っており、ロシアのように最初から石棺方式を採用すれば汚染水も出なかった筈だが、本当に「復興やふるさとへの帰還をあきらめることに繋がる」という声だけで40兆円の国民負担をさせることになったとすれば誤った意思決定も甚だしい。むしろ、空いた農地も多い中、移住すべき人たちにはその費用を出した方がずっと賢く、この誤った意思決定による損失は、本当に全国民が負担すべきものなのか疑問に思う。

 そして、このように国民負担を増やすが生産性は増さない変な意思決定を続けている人たちの予測は全く当てにならないため、*1-2-3のとおり、史上最悪の原発事故を起こした日本は、原発をベースロード電源などにするのではなく、早々にゼロにすべきである。これは、単なる不安ではなく、正当なリスク管理だ。

(3)戦中・戦後の日本
 女学校の前半まで満州で育ち、戦争中に佐賀市に引き上げてきて女学校(佐高女)の後半は飛行機の尾翼を作らされていた私の母が、「長崎に原爆が落ちた時は、佐賀からもキノコ雲が見えて新型爆弾だと言われていた」「飛行機の尾翼を作っていた工場に低空飛行の米軍戦闘機から機銃掃射を受け、逃げ回りながら見上げたら米軍機のパイロットが笑いながら撃っていた」と語っていた。現在は、パイロットも乗らないミサイルのボタンを押すだけで攻撃できるため、攻撃して人を殺すことに対する抵抗はもっと小さい(攻撃:ローレンツ《行動学者》著 参照)。

 そして、日本では、太平洋戦争中に、*2-1・*2-2のように、無差別爆撃が行われ、1945年3月10日未明の東京大空襲では、約300機のB29が33万発の焼夷弾を投下して10万人近くが犠牲になったと言われるが、既に70年以上も前のことなので、身内からこういう体験談を聞ける人は私たちの世代が最後なのかもしれない。そのため、早くそれぞれの学校で同窓会HPを立ち上げ、戦中・戦後に生徒だった人のエッセイを掲載すると、生きた資料になると思う。

 東日本大震災の後、その母が「私たちは、焼け出されても誰も何もしてくれないから自分たちで立ち上がったのに、ふるさとを失ったって贅沢ね。大災害の後、あれだけやってもらえばいいでしょう」と言っていた。私も「災害で失ったものは仕方がないので、(復興に国の力は借りても)故郷やコミュニティーは新しく作るしかないじゃない」と思う次第だ。

 なお、第二次世界大戦では、*2-3のように、国策として満州開拓に出ていた人たちも多くが棄民され、日本に帰りついた人はむしろ幸運な方だったそうだ。私の祖母は、叔母を妊娠していた昭和7年(1932年)に上海事変が起こり、鉄砲の玉が家の中に飛び込んでこないように窓に布団をぶら下げていたという壮絶な経験をしており、(それと比べる必要はないが)生きていくのに心配のない現在の日本の礎を作った人々を、決して疎かにしてはならないと思っている。

・・参考資料・・
<東日本大震災と原発事故から8年後の復興進捗状況>
*1-1-1:https://www.kahoku.co.jp/editorial/20190311_01.html (河北新報 2019年3月11日) 東日本大震災8年/歳月を経ても復興は途上だ
 突如としてあの日、私たちはすさまじい揺れに突き動かされた。異常なほど長くそれは続き、やがて、真っ黒な巨大津波が沿岸を覆い尽くすように襲った。濁流が家々をきしませ、押し流し、瞬く間にがれきに変えていく。陸では打ち上げられた大小の船が転覆し、数え切れない車が横転し、自販機や家電品が散らばっている。ささくれ立った無数の家屋の柱、引きちぎられた防潮林の木々。見渡す限り、どれもが汚泥にまみれていた。破壊の限りを尽くした津波が引いた直後の惨憺(さんたん)たる光景-。かけがえのない生命を救い得なかった悔恨、あるいは不条理な自然災害への痛憤。家族や友人を亡くした人たちはもろもろの思いにさいなまれながら、感情を覆い隠すようにして生きてきた。そうした日々を重ね、被災地は東日本大震災から8年を迎える。ひと頃に比べると先細りした支援の中で、孤立感に耐えながらプレハブの応急仮設住宅で暮らす人は、今でも岩手県が2156人、宮城県453人、福島県809人。借り上げ住宅など、みなし仮設住宅に住む人を加えると、3県で1万人を超える。応急仮設住宅で生活しなければならない被災者がこれほど多いという事実だけで、震災がまだ進行中なのは明らかである。震災からの復興は文字通り道半ばである。8年という歳月を数えてなお、復興は途上である。次の数字も忘れてはならないだろう。他県への避難者数は47都道府県に広がり、約5万2000人に迫る。最多は福島県から他県への避難者で3万2631人、さらに福島では、県内避難者が9322人。避難先不明者も含め、福島は計4万人以上が震災時の居住地を離れたままだ。それを余儀なくさせている東京電力福島第1原発の廃炉作業は、最難関とされる溶融核燃料(デブリ)の取り出しにようやく一歩を踏み出したばかり。廃炉完了までに要する時間はどれほどなのか、予測はつかない。震災から8年の歳月を経るこれが被災地の惨たる現状である。被災3県、特に福島の農水産物の風評被害は依然として残る。かつて年間70万人の子どもたちが修学旅行などで宿泊した福島は、震災で激減し、徐々に回復してはいるが、まだ7割にすぎない。冒頭に書いたような震災直後の風景は、じかに体験した人々にとっては、忘れようにも忘れられない。あの被災体験は生々しく記憶に突き刺さったまま、心に深く負った痛みとして残り続ける。この震災は言語に絶する被害を受けた災厄であり、いずれ自力で歩み続けなければならないとしても、まだ被災地は病んだ状態にある。時の経過とともに各種の支援が途絶え、厳しい現実が忘れられるような事態だけは、どうしても避けなければならない。

*1-1-2:https://kumanichi.com/column/syasetsu/898828/ (熊本日日新聞 2019年3月11日) 東日本大震災8年 地域再生はまだ道半ばだ
 東北地方を中心に死者1万5897人、行方不明者2533人、関連死3701人という甚大な被害を出した東日本大震災はきょう、発生から8年を迎えた。国が想定している復興期間の終了が2年後に迫る中、インフラの整備などは進んだが、被災地の人口減少は止まらず、最大の課題である地域コミュニティーの再生はまだ道半ばだ。津波や東京電力福島第1原発の事故により避難生活を余儀なくされている人は、ピーク時の約47万人から減ったもののなお約5万2千人に上る。被害が大きかった岩手、宮城、福島3県での、プレハブ仮設住宅への入居世帯も1573戸を数える。一方で、災害公営住宅は約3万戸の計画戸数のうち95%以上が完成した。道路、港湾、鉄道といった交通インフラの復旧もほぼ完了。農地の92%、水産加工施設の96%で、営農・業務の再開が可能となった。
●加速する人口減少
 しかし、3県では津波被害を受けた沿岸部を中心に人口減少が加速し、地域コミュニティーの再生どころか、存続の危機を迎えているところも少なくない。3県のまとめなどによると、42市町村のうち25市町村で震災前から10%以上人口が減少。仙台市周辺などの一部を除き高齢化率も30%超となっている。人口減少は学校、病院など住民の生活基盤にも影響を及ぼし、今後の復興の行方を左右する大きな課題だ。産業面では、3県の製造品出荷額はおおむね震災前の水準まで回復した。しかし、グループ補助金を受けて事業再開した企業を対象に、東北経済産業局が行ったアンケート(2018年6月)によると、売り上げが震災直前の水準以上にまで回復していると回答したのは46・4%にすぎない。人口減少は地元での売り上げや人手確保の面でも影を落としている。
●福島はさらに深刻
 原発事故に見舞われた福島県の状況はさらに深刻だ。県全体で人口は震災前から1割近く減少。避難者数は約4万2千人と全体の約8割を占める。農地の復旧もまだ67%にとどまる。福島第1原発から北西方面に広がる帰還困難区域では、今も立ち入りが原則禁止のまま。このうち同区域面積の約8%の地区を再び人が住めるようにする「特定復興再生拠点区域」(復興拠点)として整備しているが、復興拠点の避難解除は早くても22年春。古里に戻れる日は遠い。さらに、原発に近い双葉、浪江、富岡3町では、40代以下の住民の半数以上が帰還しない意向を示していることが、昨年の復興庁などの調査で判明した。避難生活が長引き、原発事故の収束も見通せず、若い世代が帰還に見切りをつけた状況が読み取れる。政府は8日、復興期間が終了する21年度以降も復興庁の後継組織を置くことを盛り込んだ復興基本方針の見直しを閣議決定した。残り2年の復興期間内で、津波被災地の「復興の総仕上げ」に取り組みながら、21年度以降に必要な支援事業についても詳細な検討を進めるという。原発事故の対応も中長期的に国が責任を持つとした。
●意見踏まえ方針を
 地域再生がなお見通せない現状からいって、後継組織設置は当然の判断だろう。共同通信が2月に実施した被災3県の市町村長アンケートでも9割が後継組織が必要と答え、中でも人口減少対策を求める声が多かった。期限付きの増税などで賄っている財源確保策が課題となるが、被災地の意見を十分に踏まえた上で、後継組織の在り方など復興基本方針の見直しを急ぎ、詳細を示してもらいたい。同時に10年間で総額約32兆円を費やす復興関連事業効果の検証も求めておきたい。

*1-1-3:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190312/KT190311ETI090010000.php (信濃毎日新聞 2019年3月12日) 復興基本方針 形よりも大切なことが
 形にとらわれて国が先走る構造こそ変えなくてはならない。安倍晋三政権が、東日本大震災被災地の復興基本方針を改めた。2020年度で廃止となる復興庁の後継組織の設置を明記。21年度からは、被災者の心のケアといったソフト事業を中心に展開するという。震災からの8年で防潮堤や災害公営住宅の整備は進んだものの、被災者の生活再建にめどが立ったわけではない。国は当事者の声をしっかりくみ取り、事業の中身を固めるべきだ。首相直属の復興庁の後継組織は形態が定まっていない。内閣府に移管する案、金融庁や消費者庁のような外局とする案、「防災省」への改編を求める声が政府・与党内で上がっている。検討が遅れていたのに方針に盛ったのは、統一地方選や参院選を意識してのことだろう。政府は11〜15年度を「集中復興期間」、16〜20年度を「復興・創生期間」とし、10年間で32兆円の予算を確保した。道路や鉄道、住宅、堤防などの復興工事はほぼ終える見通しとなっている。半面、なお5万2千人が避難生活を強いられている。この4月以降もプレハブの仮設住宅に残る被災者がいる。賠償も住宅支援も仮設の提供さえも打ち切られ、生活保護を受けざるを得ない人たちも増えている。原発事故に見舞われた福島県の状況は特に深刻だ。政府は一通りの除染で帰還を促すものの、ほとんどの避難者が「帰れない」。被ばくの不安に加え、医療や介護、商業施設に再開の見通しのないことが妨げになっている。心のケアは大切だけれど、未解決の問題は山積している。それなのに基本方針は、21年度からの財源に言及さえしていない。被災地の懸念をよそに、国は一方的な「復興策」を続ける。象徴的なのが、福島県沿岸部での「イノベーション・コースト構想」だろう。ロボットや自然エネルギーの開発、廃炉研究の拠点化を図っている。帰還者でも避難者でもない、新たに来る人たちを対象にした構想に年700億〜900億円が投じられている。人口が流出し、高齢化が速まっている被災自治体の多くが、合併や広域連携の強化を模索し始めている。国がなすべきは、多様な状況に置かれた被災者個々を支援しながら、地域の立て直しに取り組む自治体の下支えだ。復興のあり方を決めるのは地元であることを忘れてはならない。

*1-1-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13929196.html (朝日新聞 2019年3月12日) 復興住宅、孤独死が急増 昨年68人、仮設の最多年の倍以上 東日本大震災
 東日本大震災で被災した岩手と宮城両県で、災害公営住宅(復興住宅)での孤独死が仮設住宅と比べて大幅に増えている。2018年は前年の47人から68人となり、仮設住宅での孤独死が最多だった13年(29人)の倍以上に。復興住宅は被災地の住宅政策のゴールとされてきたが、新たな課題に直面している。朝日新聞が、復興住宅の独居世帯でみとられず亡くなった人数を集計していた両県を取材し、分析した。復興住宅は年度内にほぼ完成予定で、孤独死対策の強化が求められそうだ。復興住宅(計画戸数2万1677戸)での孤独死(岩手は自殺を除く)の数は13~18年の6年間で、宮城120人、岩手34人の計154人。16年19人、17年47人、18年68人と急速に増えている。仮設住宅の孤独死は11~18年の8年間で、宮城109人、岩手46人の計155人。仮設入居戸数が3万940戸と多かった13年は29人で、18年(1385戸)は6人だった。孤独死は全国的に懸念されている。例えば宮城県内全体の18年の孤独死数は982人で、前年比で1割増だった。ただ県内の復興住宅では18年に50人で前年と比べ、2割増えている。また男女別でみると、岩手、宮城両県では昨年までの6年で男性の孤独死が113人と女性の41人の3倍近い。特に50代以上の男性が全体の7割。一部の専門家はこうした層を「復興期弱者」と呼び、支援の必要性を訴えている。

*1-2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13926965.html (朝日新聞 2019年3月10日) 原発事故の費用「最大81兆円」 経産省公表は22兆円 民間シンクタンク試算
 東京電力福島第一原発事故の対応費用が総額81兆~35兆円になるとの試算を民間シンクタンク「日本経済研究センター」(東京都千代田区)がまとめた。経済産業省が2016年に公表した試算の約22兆円を大きく上回った。81兆円の内訳は、廃炉・汚染水処理で51兆円(経産省試算は8兆円)、賠償で10兆円(同8兆円)、除染で20兆円(同6兆円)。経産省試算との大きな違いは、汚染水の浄化処理費用を約40兆円と大きく見積もったことや、除染で発生する土壌などの最終処分費用を算入したことなど。また、この汚染水を、水で薄めたうえで海洋放出する場合は、廃炉・汚染水処理の費用が11兆円になり、総額も41兆円になるとした。これに加えて事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)を取り出さずにコンクリートで封じ込める、いわゆる「石棺」方式を採用した場合は、廃炉・汚染水の費用が4・3兆円になり、総額も35兆円になるとした。ただ、「石棺」方式は、かつて「復興やふるさとへの帰還をあきらめることにつながる」などと問題になったことがある。同センターは2年前、総額70兆~50兆円に膨らむとの試算を出したが、その後の汚染水処理や除染などの状況を踏まえ、再試算した。試算を示したリポートはこの費用の増加を踏まえ、「中長期のエネルギー計画の中で原発の存否について早急に議論、対応を決めるときではないか」と指摘した。

*1-2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13928097.html (朝日新聞 2019年3月11日) 東日本大震災8年 避難なお5万人超、原発廃炉難題
 死者、行方不明者、関連死を含め、2万2131人が犠牲になった東日本大震災から11日で8年になる。今も約3100人がプレハブ仮設住宅で過ごし、約5万2千人が避難生活を続ける。東京電力福島第一原発事故が起きた福島県では今春、原発立地自治体の避難指示が一部の地域で初めて解除される。復興庁によると、新たな宅地を造る「高台移転」は93%、災害公営住宅は98%が完成した。住宅再建が進み、最大47万人いた避難者は5万2千人まで減った。ただ津波被害が甚大だった地域は遅れており、今も仮設住宅が残る。震災前から進んでいた人口減も歯止めがかからず、岩手、宮城、福島3県の人口は8年で計30万人減少した。福島県ではこれまで、10市町村で避難指示が解除され、原発が立地する大熊町の一部で4月にも解除される見通し。住民の帰還や定住を促す施策が進められることになる。原発の廃炉作業は、100万トンを超える汚染水や原子炉内の燃料デブリ処理など、難しい工程が控える。東日本大震災の復興期間は10年と定められ、復興庁は21年3月末に廃止されるが、原子力災害への対応や産業の再生といった課題が残る。政府は8日、復興庁の後も新たな組織を設置する方針を示した。平成の30年余、列島は阪神・淡路大震災、東日本大震災という峻烈(しゅんれつ)な災害に見舞われた。次世代に向け、教訓をいかす取り組みが求められている。

*1-2-3:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/493257/ (西日本新聞 2019年3月11日) 原子力政策 国民的議論から逃げるな
 東日本大震災の発生から8年の節目を迎えた。避難者はなお5万人を超える中、東京電力福島第1原発事故の後始末が被災地復興の足かせとなっている。史上最悪レベルとされる原発事故の反省と教訓は、国の原子力政策に十分に生かされているのか。国民の間では、原発を減らして将来的にはゼロを目指すべきだとの意見が多い。なし崩しの「原発回帰」は許されない。安倍晋三政権は、原子力規制委員会が新規制基準に適合したと判断した原発は再稼働させる方針を堅持している。原発への不安がぬぐえない中で、これまでに九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)1、2号機、玄海原発(佐賀県玄海町)3、4号機など9基が再稼働した。新規制基準は、「安全神話」に陥り過酷事故を防げなかった反省から、地震や津波、テロなどに備え安全対策の強化を求めている。九電の場合、再稼働した原発4基に投じる安全対策費は九千数百億円に達する見通しだ。「想定外」の事故を再び起こさないための費用が膨らむ。
●「玉虫色」の基本計画
 政府は既存原発の活用には積極的なのに、原子力政策を正面から語りたがらない。昨年7月に閣議決定したエネルギー基本計画も、原発については「玉虫色」の取り扱いとなった。同計画はエネルギー政策の基本的な方向性を示している。風力や太陽光など再生可能エネルギーの主力電源化を打ち出した。原発については「可能な限り原発依存度を低減する」としつつも、安定性や地球温暖化対策の視点から「重要なベースロード電源」と位置付けた。2030年度の電源構成は再生エネ22~24%に対し、原発は20~22%とした。この実現には30基程度の再稼働が必要とされる。運転期間が原則40年と定められた原発を延命して再稼働させなければ達成できない。ベースロード電源として活用するなら新増設が必要なのに、政府は中長期的な議論を避けてきた。新増設問題が選挙の争点になるのを嫌って課題を先送りしているのなら、この国の将来に責任ある姿勢とは言い難い。原発について政府が幅広く国民の声を聴いたことがある。原発事故でエネルギー政策の仕切り直しを迫られた当時の民主党政権は、12年に討論型世論調査や意見聴取会を実施した。30年の原発比率について0%、15%、20~25%の3案を示し意見を求めたところ、0%支持が最多だった。これを受けて政府は「2030年代に原発稼働ゼロを可能とする」とする、革新的エネルギー・環境戦略を打ち出した。安全確認を得た原発は重要電源として活用しつつ、新増設は認めないとの原則を明示して、「脱原発」にかじを切った。それを見直し「脱原発依存」に転換したのが、その年の12月に誕生した安倍政権だ。以来、「可能な限り低減する」との曖昧な態度を貫いている。官民一体で進めた原発輸出も行き詰まっている。安全対策費がかさんだこともあり、ベトナムや英国への輸出計画が頓挫した。しかし、政府は原発技術輸出の旗を振り続けている。国内と海外で態度を使い分けるようでは、国民の信頼は得られない。
●経済界もメッセージ
 原発について幅広い議論を求める声は、経済界からも上がっている。経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は1月の記者会見で、エネルギー全体に対する国民的議論が必要との認識を示した。なかなか再稼働が進まない現状への危機感が背景にあるが、原発の将来像を語らない政府へのメッセージとも受け取れる。産業界には、エネルギー安全保障や地球温暖化対策の観点から原発活用を求める声もある。確かに原発は二酸化炭素(CO2)は出さないが、廃炉や使用済み核燃料の再処理で放射能を帯びた核のごみが出る。危険物は地下に埋めて隔離しなければならないが、そうした処分場所の選定は手付かずだ。安全対策費や廃炉費用を考えれば、原発は低コストとの説明には疑問が生じている。私たちは、再生エネの開発と導入をもっと積極的に進め、「脱原発」への道筋を具体的に描くべきではないかと主張してきた。ここで改めて、原発事故で古里を奪われた人たちのことを心に刻み、必要十分な判断材料を示した上で国民的議論を始めるよう、政府に求めたい。

<戦後復興期の日本>
*2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM2W7292M2WUEHF00S.html (朝日新聞 2019年3月8日) 「負の連鎖」エスカレートした無差別爆撃 空襲とは何か
太平洋戦争末期、日本全土が標的となり、大規模な無差別爆撃が繰り返された。空襲による民間人の死者は少なくとも40万人以上、米軍が本土に投下した爆弾は約16万トンとされる。
●じゅうたん爆撃、東京大空襲を皮切りに
 広島、長崎と並ぶ大きな被害となったのが、1945(昭和20)年3月10日未明の東京大空襲だ。約300機のB29爆撃機が33万発の焼夷(しょうい)弾を投下。人口密集地帯だった東部の下町は火の海となり、10万人近くが犠牲になった。被害家屋は約27万戸、推計100万人が焼け出されるなどした。編隊を組んだB29が低空から隙間なく焼夷弾を落として街全体を焼き払う「じゅうたん爆撃」の始まりだった。3月12日には名古屋、13日には大阪、17日は神戸と、大都市が軒並み空襲を受けて壊滅状態に。次第に地方都市も標的となり、空襲は全土へと広がっていった。
●真珠湾攻撃から4カ月、初の本土空襲
 米軍による初めての日本本土空襲は、日米が開戦した真珠湾攻撃からわずか4カ月後の1942年4月18日にあった「ドーリットル空襲」だ。空母から飛び立ったB25爆撃機16機が東京、横須賀、川崎、名古屋、神戸などを襲った。その後、米軍は「超空の要塞(ようさい)」と呼ばれた、当時としては最大級の爆撃機B29を完成させ、1944年に実戦投入。6月16日、中国・成都の基地を飛び立ったB29が初めて日本本土を爆撃した。北九州の八幡製鉄所を狙って高高度から爆弾を落とし、300人以上が犠牲になった。米軍は7月、マリアナ諸島のサイパン島を日本から奪い、周辺の各島に飛行場の建設を進めた。B29の航続距離は6千キロ。成都からだと九州北部までが限界だったが、東京から約2400キロのサイパンを拠点にすれば、日本全域を攻撃目標にできた。11月から、本土空襲が本格化していった。
●精密爆撃から無差別爆撃へ
 当初の空襲は、軍需工場や港などの軍事拠点を狙った「精密爆撃」。昼間に、高射砲を避けて1万メートルの高高度から爆弾を落としたが、風で流されるなどして攻撃目標を外れることが多く、目立った戦果は挙げられなかった。45年1月、欧州戦線でドイツの都市への爆撃を指揮したカーチス・ルメイ少将がマリアナ諸島を基地とする第21爆撃機軍団の司令官になる。早期終戦を目的に、日本の厭戦(えんせん)気分を高めるため都市への焼夷弾攻撃を求める軍上層部の意向を受けて着々と準備を進めていった。そして、3月10日の東京大空襲をきっかけに、民間人を巻き込む「無差別爆撃」が繰り返されるようになった。硫黄島や沖縄の占領後は戦闘機による銃爆撃も始まり、空襲は、北海道を含む全土が対象になっていった。このうち、広島と長崎の原爆を除く通常爆弾や焼夷弾、銃撃による空襲の死者は20万人を超えるという。ただ、正確な数字を把握している自治体は少なく、国による実態調査も不十分なため、全容はいまだ明らかになっていない。
●日本の対中戦術「米が進化させた」
 軍事評論家の前田哲男さん(80)は6歳の頃、現在の北九州市戸畑区に住み、空襲を体験した。夜に警戒警報が鳴り、家族と庭に掘った防空壕(ごう)に飛び込んだ。外を見ると、八幡製鉄所が狙われているのだろうか、探照灯の光が夜空を切り裂き、高射砲の音が聞こえた。「B29だ」。防空壕の湿った土の臭いとともに記憶に残る。長崎の民放記者を経て、核問題への関心を深めた。フリーとなり、マーシャル諸島の核実験場を取材。その後、著した「戦略爆撃の思想」では、空からの無差別大量殺戮(さつりく)という視点にこだわった。スペイン内戦に介入したナチス・ドイツによる1937年のゲルニカ爆撃、そして38年から日本軍が始めた中国・国民党政府の臨時首都・重慶を狙った爆撃を、東京大空襲につながる都市への無差別爆撃の先例と位置づけた。特に、重慶爆撃は43年まで続き、200回以上の空襲で約1万2千人が犠牲になったとされる。「都市そのものを爆撃対象とみなし、戦闘員と非戦闘員の境界を取り払った戦略爆撃の思想を確固たるものにしたのが日本軍で、その戦術を進化させたのが米軍だった」。ボタン一つで爆弾を落とせる空からの攻撃は、肉体と肉体のぶつかり合いを伴わない分、人を殺したという実感がわきにくい。爆弾を落とされた側への想像力の欠如が、行為をエスカレートさせたとみる。
●ドローン爆撃、戦争はより無機質に
 焼夷弾によるじゅうたん爆撃は、やがて原子力爆弾の投下へとつながる。そして今、ドローン(無人機)の登場によって兵士は画面越しに爆弾を落とすようになり、戦争はより無機質なものへと変容した。無差別爆撃の負の連鎖は、戦後70年余を経ても止まらずにいる。
【キーワード】「超空の要塞」B29爆撃機
 太平洋戦争末期、日本上空に飛来し、多くの焼夷(しょうい)弾や爆弾を投下した米軍の大型戦略爆撃機。全長約30メートル、幅約43メートルあり、エンジン4基を備え、「超空の要塞(ようさい)」と呼ばれた。高度1万メートル以上を飛行でき、航続距離は6000キロ以上で、最大約10トンの爆弾を搭載。広島に原爆を落としたエノラ・ゲイ、長崎に原爆投下したボックス・カーも同じB29だった。

*2-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201903/CK2019031102000119.html (東京新聞 2019年3月11日) 東京大空襲74年 命の尊さ語り継ぐ
 一九四五年三月の東京大空襲から七十四年となった十日、犠牲者の遺骨が納められている東京都墨田区の都慰霊堂で法要が営まれた。秋篠宮ご夫妻も参列され、遺族ら約六百人が犠牲者の冥福と平和を祈った。遺族らは慰霊堂の前で献花し、手を合わせて犠牲者を追悼。参列した練馬区の鈴木美津恵さん(77)は、空襲で造船所に勤めていた父親を亡くした。当時の記憶はほとんどないが「空襲後、吾妻橋も隅田川も死体の山だったと聞く。母が父を捜したが結局見つからなかった」と振り返り、「父の顔も全然覚えていないのに、今でも突然帰ってくる夢を見る。もう七十年以上も前のことなのにね」と言葉を詰まらせた。小池百合子知事は「戦後生まれの世代が大半を占めるようになった今、私たちには戦争の悲惨さを風化させず、命の尊さや平和の大切さを語り継いでいく使命がある」と誓った。東京大空襲は太平洋戦争末期の四五年三月十日未明、米軍のB29爆撃機三百機以上が現在の東京都江東区、台東区、墨田区などに大量の焼夷(しょうい)弾を無差別に投下。十万人以上が犠牲になったとされる。

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13844038.html (朝日新聞社説 2019年1月11日) 引き揚げの苦悩は消えぬ 中野晃
 昭和の戦争は敗戦で終わったわけではない。戦争の取材を続けるなか、植民地朝鮮や旧満州(中国東北部)など海外からの引き揚げ者や遺族の話を聞くたびにそう思う。「私の心の中で、それまでの人生がまるでがれきのように音を立てて崩れました」。富山市の杉山とみさん(97)は釜山(プサン)港で引き揚げ船に乗った時の心情をこう話す。朝鮮半島の全羅南道で生まれ、1941年、大邱(テグ)の国民学校の教師になった。新入生の胸に創氏改名した日本名の名札をつけ、朝鮮語を禁じ、「皇国臣民ノ誓詞(せいし)」を復唱させた。給与は朝鮮人の先輩より高く、町の中心街は自宅をはじめ日本人家屋が占めた。45年夏。「植民地という幻」は砕け境遇は一変する。杉山さんが停留所でバスを待っていると、「もうここは日本じゃない」と列から追い出された。路上で会った教え子と話していると、朝鮮語で怒声を浴びた。「日本語を使うな」という意味だった。両親の郷里の富山に引き揚げ、教員生活を送った杉山さん。何度も訪韓して教え子と再会し、恩師を慕う手紙も届くが、子どもたちへの申し訳なさが今も心をさいなむ。明治期以来、日本はアジアで戦争を重ねて支配域を広げた。「内鮮一体」「五族協和」など融和を掲げる国策の内実は日本人優遇だった。収奪に苦しんだ地元の人々の憤怒は戦後、取り残されて逃げ惑う非力な民衆に向かう。岐阜県の山あい、旧黒川村(現白川町)に「乙女の碑」という石像が立つ。82年に建立されたが、由来を記すものが長年なかった。昨年、旧満州に渡った開拓団での「犠牲」を伝える碑文ができた。吉林省陶頼昭に入植した黒川開拓団。現地住民の蜂起におびえ、集団自決の声もあがるなか、生きのびるために団幹部はソ連軍に警護を依頼。見返りとして、数えで18歳以上の未婚女性15人が差し出され、将校の「性接待」を数カ月間強いられた。うち4人は性病などで命を落とし、日本に生きて帰った女性たちも誹謗(ひぼう)中傷に苦しんだ。黒川分村遺族会長の藤井宏之さん(66)は「つらい歴史を埋もれさせず、その上に私たちの今の暮らしがあるとの思いを共有し、二度と繰り返してはならない戦争の悲劇を後世にも伝えたい」と話す。満蒙開拓団をはじめ大勢の弱き民が戦後に死んだ。国策がうんだ「棄民」の惨禍を記録に刻む取り組みは続く。

<土地利用の変更や浚渫で解決すべき災害>
PS(2019.3.14追加): *3-1の岡山県倉敷市真備町で発生した水害も、天井川に近い小田川を浚渫し、高さのゆとりを持って水が住宅地より下を流れるようにするか、より高い場所を住宅地にしておくかするのが当たり前で、川底の方が高いのに堤防だけで住宅地を護れると考えていた点が甘すぎるという意味で重大なミスである。
 さらに、大量の水が流れれば、川が合流する地点で水が氾濫するのも当たり前であるため、今回の住宅地の水没は起こるべくして起こったと言わざるを得ない。そのため、高架鉄道が被害を受けなくて済んだのはよかったが、吉備真備を由来とする真備町にふさわしい先進的な減災型の街づくりに変更すべきで、復旧で終わらせるべきではない。
 また、浚渫が必要な川やダムは、実は日本全国に存在し、人口減するのなら考え直せる街づくりも多いため、無駄遣いなどせずに本当に必要なことに使って欲しいわけである。なお、*3-2のように、積水ハウスが、屋上に設置した太陽光パネルや家庭用燃料電池で発電し、断熱効果の高いサッシなどを使って、各戸のエネルギー消費と発電量が均衡した全戸ゼロエネのマンションを作ったそうだが、どうせ新しい街づくりをするのならゼロエネを標準にしたい。


   2018.7.14毎日新聞     2018.7.9朝日新聞    2018.7.10News24

(図の説明:左図のように、今回浸水に遭った場所は、ハザードマップで浸水想定エリアとされていた地域だが、それに対して根本的対処をしていなかったというのは、江戸時代以下ではないか? そして、中央と右図のように、想定どおり浸水したわけである)

*3-1:https://blog.goo.ne.jp/kokakuyuzo/e/6d60d424cafc3d7c30baf921ec457bd7 (Goo 2018.7.7) 水害に襲われている岡山県倉敷市真備町について
 広大な地域が水没した真備町です。WIKIをお読みください。真備町がこのような規模の災害に見舞われたことは記憶にありません。テレビの映像に出てくる高架線路は、井原鉄道井原線です。国鉄が建設を進めていたのですが中断したため、第3セクターとして建設しました。総社駅〜神辺駅(広島県)間を、今回決壊した小田川沿いに走っています。高架のため大きな被害を受けなくて済みそうです。真備町の町名の由来は、遣唐使の吉備真備です。小説家の横溝正史も滞在していました。岡山県の三大河川は、東から吉井川、旭川、高梁川です。北の中国山地に源流がある三川です。ただ、小田川は西から東に流れ高梁川に合流する県下では珍しい流れを持つ川です。その合流地点が今回の水没地域となります。小田川は天井川に近かったのだと思います。そのため水が掃けにくい土地ですが、近年開発が進んで、ロードサイドショップも増えました。それが被害を大きくしてしまったと思います。隣接する総社市の経済圏です。なぜ倉敷市と合併したのか理解できないところがあります。簡単に紹介させていただいた真備町、住民の皆様の無事をお祈りいたします。

*3-2:http://qbiz.jp/article/150297/1/ (西日本新聞 2019年3月14日) 全戸ゼロエネのマンション公開 積水ハウス、全国で初めて
 積水ハウスは14日、太陽光発電や省エネなどを組み合わせ、各戸のエネルギー消費と発電量が均衡した「ゼロエネルギー」の分譲マンション「グランドメゾン覚王山菊坂町」(名古屋市)を報道陣に公開した。全戸で国のゼロエネルギー基準を満たす全国初のマンションとなる。屋上に設置した太陽光パネルや、家庭用燃料電池(エネファーム)で発電し、断熱効果の高いサッシなどでエネルギー消費を約3割減らす。余剰電力は中部電力に販売する。光熱費は平均的な使い方で年間約6万円と通常の約3分の1になる見通し。地下1階地上3階建てで全12戸。全戸売約済みで、価格は約7千万〜1億8千万円。4月に入居が始まる。電気やガスなどのエネルギー収支が実質ゼロになる住宅は「ゼロエネルギーハウス(ZEH)」と呼ばれる。積水ハウスはZEHの一戸建てや賃貸アパートを手掛けてきた。マンションは戸数に対し太陽光パネルを置ける屋根面積が小さく、国の基準を満たすことが困難とされていた。発電効率を高めるなどして実現した。

<本質を見失うのは何故か?>
PS(2019/3/14追加):*4-1のように、東日本大震災後8年が過ぎても仮設住宅で約5千人が暮らしているそうだが、阪神・淡路大震災でも仮設は復興住宅の整備等により約5年で役割を終えた。それから16年後に起こった東日本大震災は、震災にも慣れた後の出来事であるため、3年以内に仮設を出られるようにすべきだったと思う。なお、原発事故後に帰還困難になるのは仕方ないが、移住できる土地も多いため、なるべく早く終の棲家を見つけて正常な生活に入るのが、身体的・精神的健康のためである。
 また、*4-2のフクイチ事故を東電の経営者が本当に予見できなかったかについては、元原子力規制委員の島崎東大名誉教授(地震学)が証人として出廷し、「①長期評価は福島県を含む太平洋岸に大津波の危険があるとしていた」「②長期評価を受けて東電が津波対策をしていれば、原発事故は起きなかった」等を明言しておられる。そして、歴史上も、大地震や大津波が一定周期でこの地域を襲っているという記録が残っており、東電の経営者は「予見できたが、リスクを甘く見て不都合なことには目をつぶっていた」というのが本当のところだろう。実際には、*4-3のように、福島第1原発を襲った津波は高さ14~15メートルで、5.7メートルという設計当初の想定の3倍だった。仮に直ちに原発を移転したり、防潮堤を高くしたりする余裕がなかったとしても、非常時の電源は濡れない高い場所に置き、使用済核燃料はよそにもっていくくらいの工夫があってよかったと思われる。

*4-1:https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201903/0012144851.shtml (神戸新聞 2019/3/14) 住まいの再建/誰も取り残さない支援を
 丸8年が過ぎても、東日本大震災の被災地では、プレハブ仮設住宅で約5千人が暮らす。自治体は早期の解消を目指すが、4月以降も597世帯、1300人が残る見通しだ。阪神・淡路大震災では、仮設に約4万7千世帯が入居し、復興住宅(災害公営住宅)の整備などに伴い5年で役割を終えた。原発災害にも見舞われた東日本はより多くの困難を抱える。住まい再建も同様だ。時間がたてば、はさみを開いたように被災者間でさまざまな格差が開く。阪神・淡路でも指摘された教訓を踏まえ、一人一人に寄り添った支援を今後も息長く続ける必要がある。とはいえ支援制度にも隙間がある。枠組みから漏れる人がいないよう、目を凝らし、絶えず見直しを進めねばならない。東日本では、計画された災害公営住宅約3万戸の9割以上が完成した。ハード面の事業は「完了」に近づいている。にもかかわらず仮設に残る人がいるのは、失った家に代わる「ついのすみか」がいまだに見つからないからだろう。津波被害の地域では、土地かさ上げや区画整理などで住宅再建が遅れがちだ。仮設入居者の3割は高齢者で、その間の生活に窮する人もいる。希望を失わないよう、きめ細かなサポートや見守りが欠かせない。一方、損壊した自宅に住み続ける「在宅被災者」も、支援制度の隙間に置かれた存在だ。今もガスや水道が止まった状態で生活している人がいる。だが「一部損壊」の判定では、住宅再建に公費を支給する被災者生活再建支援法の対象とされず、改修もままならない。年金暮らしの高齢世帯などは自力での対応が困難だが、損壊しても自宅があるので災害公営住宅には入れない。そうした状況を放置すれば、復興の流れに取り残される恐れがある。兵庫県は、災害の規模などに応じて一部損壊に支援金を支給している。東日本でも独自で支援制度を導入する動きが見られたが、自治体間で対応にばらつきがある。国レベルの法制度見直しは大災害のたびに課題とされてきた。国会で真剣に議論すべきだ。

*4-2:https://www.kahoku.co.jp/editorial/20190314_01.html (河北新報 2019年3月14日) 東電公判が結審/本当に予見できなかったか
 東京電力福島第1原発事故を巡って、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力の旧経営陣3人の刑事裁判が、東日本大震災から8年を経た12日、東京地裁で結審した。判決公判は9月19日に開かれる。最終弁論で弁護側は「事故の予見可能性はなかった」として、被告の勝俣恒久元会長(78)、武黒一郎元副社長(72)、武藤栄元副社長(68)の無罪を主張した。検察官役の指定弁護士は3人に禁錮5年を求刑している。弁護側が主張してきたように、果たして東日本大震災の巨大津波を東電は予見できなかったのだろうか。37回を数えた公判を通じて、最大の争点となったのはこの点だ。検察の不起訴、検察審査会の議決、再議決を経て2017年6月、この裁判は始まった。公判には東電社員や学者ら計21人が出廷。指定弁護士側、弁護側が事故の予見可能性などを巡って激しく対立した。その過程でさまざまな事実が明らかになっている。18年5月に開かれた第12回公判には、元原子力規制委員の島崎邦彦東大名誉教授(地震学)が証人として出廷。02年、国の地震調査研究推進本部(地震本部)が公表した長期評価と、その後の研究成果を反映させた改定作業について詳細に述べた。長期評価は福島県を含む太平洋岸に大津波の危険があるとし、島崎氏は「長期評価を受けて東電が津波対策をしていれば、原発事故は起きなかった」「長期評価は当然津波に備える必要があると示している」と明言した。1年8カ月余り続いた公判で証言などから浮き彫りになったのは、電力事業者として東電が安全に細心の注意を払っていれば、やはり事故は防ぎ得たという当然すぎる事実だろう。では、なぜ津波対策は先送りされたのか。地震や津波に対応する部門を担当していた東電関係者が病気のため公判で証言できなかったのが惜しまれる。第24回公判で検察側が読み上げたこの関係者の調書には、経営を優先させ津波対策を先送りさせたと受け取れる記述があったからだ。もちろん、こうした証言の数々が被告3人の刑事責任に直ちに結びつくとは容易には言えない。巨大津波や原発事故の予見可能性、結果の回避可能性の有無などを含め今回の裁判の行方に関しては、法律の専門家でも評価は大きく分かれる。東日本大震災で福島県は他県より格段に多い2250人の震災関連死を数えた。同県内、県外への避難者は今も4万1000人を超える。福島第1原発事故は豊かな海と県土を汚染し、住民にこれほど悲惨な犠牲を強いている。裁判の結果はともかく、最終意見陳述で被告3人のいずれからも真摯(しんし)な謝罪や反省が聞かれなかったのは、極めて残念だと言っておきたい。

*4-3:https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0904K_Z00C11A4000000/ (日経新聞 2011/4/9) 福島第1原発を襲った津波、高さ14~15メートル 想定の3倍
 東京電力は9日午後、東日本大震災で福島第1原子力発電所を14~15メートルの津波が襲ったことを明らかにした。高台に設置された1号機から4号機までの原子炉建屋やタービン建屋を含む主要建物エリアのほぼ全域で高さ4~5メートルまで浸水しており、その状況などから判断したという。同社は、土木学会の津波の評価指針に基づいて津波の高さを想定。福島第1原発に到達する波の高さを5.7メートルとして原発を設計していたが、震災に伴う津波は約3倍の高さに到達していたことになる。一方、福島第2原発には6.5~7メートルの津波が到達したが、第1原発よりも敷地自体の高さが約2メートル高く、主要建物エリアの浸水高は最大でも2~3メートルにとどまった。第1原発の5、6号機も1~4号機の主要建物エリアに比べ、約3メートル高台にあり、比較的被害は少なかった。同日、記者会見した同社の武藤栄副社長は「土木学会の評価に基づいて津波の高さを想定したが、結果として想定以上の津波が来た」と説明。「今回の経験を踏まえ、津波の評価を再度検証する必要がある」と述べた。

<現場からの多くの記録の重み ← リケジョは感傷に終わらない>
PS(2019年3月15日追加):*5-1のように、沖縄では、沖縄戦で亡くなった沖縄県内の旧制師範学校・中等学校21校の学徒の人数を記した説明板が摩文仁の平和祈念公園内に完成したとのことだ。沖縄県では、*5-2のように、1945年3月に沖縄師範女子部と沖縄県立第一高等女学校の生徒222人、教員18人の計240人が陸軍病院に動員されて負傷兵の看護に当たり、3カ月間で136人が犠牲になったことを、1989年に両校の同窓会が「ひめゆり平和祈念資料館」を設立し、2004年からは元学徒の証言映像も加えて説明している。私は、他地域でも、亡くなった理由とその背景をできるだけ正確に記載することによって、単なる慰霊ではなく統計データとして政策や意思決定過程の欠陥に関する分析を可能にすると考える。

*5-1:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-888960.html (琉球新報 2019年3月15日) 戦没全学徒 人数説明板除幕 1984人の実相 次世代へ
 沖縄戦で犠牲になった県内旧制師範学校・中等学校21校の学徒の人数を記した説明板が糸満市摩文仁の平和祈念公園内に完成し、14日に除幕された。10代の学徒が戦場に駆り出され、多くが犠牲となった事実を伝える「全学徒隊の碑」の横に設置した。21校の元生徒らでつくる「元全学徒の会」のメンバーらは、亡き学友をしのび「戦争の実相を伝える指標になる」と次世代への継承に思いを新たにした。説明板には同会の調査によって各校の戦没者数がそれぞれ記されており、21校で計1984人に上る。縦約90センチ、横約120センチで、約2メートルの2本の柱に支えられている。「学徒の戦没者数を記し、恒久平和を祈念する」などと記した。除幕式には約100人が参加した。平和宣言で同会共同代表の與座章健さん(90)は「(説明板は)沖縄戦の実相を如実に伝える効果的な指標となり、恒久平和のとりでとなるだろう」と完成を喜び「戦争の惨劇を二度と繰り返してはならない」と述べた。県子ども生活福祉部の大城玲子部長は「多くの方々の目に留まり、平和を希求する沖縄の心を深く理解する契機となることを切に願う」とする玉城デニー知事のあいさつを代読した。県は2017年3月14日に平和祈念公園内に「全学徒隊の碑」を建てた。石碑には21校の名前などが刻まれているが、犠牲者数には触れていない。21校の元生徒が18年4月に「元全学徒の会」を結成し、犠牲者数も記すよう県に求めていた。

*5-2:https://kotobank.jp/word/%E3%81%B2%E3%82%81%E3%82%86%E3%82%8A%E5%AD%A6%E5%BE%92%E9%9A%8A-612562 (朝日新聞 2016.5.3) ひめゆり学徒隊
 1945年3月、沖縄師範学校女子部と県立第一高等女学校の生徒222人、教員18人の計240人が陸軍病院に動員され、負傷兵の看護に当たった。米軍の攻撃を受け、本島南部に撤退。約3カ月間で136人が犠牲になった。両校の同窓会は89年、ひめゆり平和祈念資料館を糸満市に設立。2004年に展示内容を一新し、元学徒の証言映像の上映が加わった。

<高齢者の見守りついて>
PS(2019年3月16、18日追加):*6-1の集合住宅が高齢化するのは、災害公営住宅が先を行っているかもしれないが、そこに限らず日本中どこにでもあることだ。その中で高齢者の閉じこもりや孤立を防ぐためには、共同食堂で安くて充実した朝・昼食を出し、出て来ない人にだけ連絡する方が効率的で、身体的・精神的に来ることができなくなった人は「要支援」になるだろう。しかし、洗濯機を皆で使うと免疫力が低下している高齢者は特に感染が起こったり、それを防ぐためのマナーが大変だったりするため、洗濯機を共有するのに私は反対で、江戸時代の長屋でもたらいは共有ではない。そのため、いろいろな背景の高齢者が楽しめるよう、国会中継から映画・芸能まで幅広く受信できる複数のテレビや新聞・雑誌を置くなど、人が行きたくなる交流スペースを作るのがよいと考える。そして、これらを「○○社寄贈」「○○社協賛」等と書いて企業の寄付で行えば、その企業は社会的貢献をする企業だというイメージを作れるわけだ。
 なお、いろいろなことを実現するには労働力が必要だが、*6-2のように、外国人労働者の健康や報酬などの条件が決まり、受入準備はできつつある。
 さらに、信濃毎日新聞が、*6-3のように、「①人手不足に対処するため、外国人労働者の新たな在留資格が設けられ、運用の詳細を定めた政省令が公布された」「②各地の説明会で詳細について『検討中』とする場面が目立った」「③新制度では業務内容に共通性がある場合は転職を認めているので、賃金の高い都市部に集中する可能性がある」「④外国人労働者受入は、現状の検証と改善が先だ」等を記載している。このうち④については、1995年前後に私が経産省に外国人労働者受入を提案したが、高度専門職以外は技能実習生か留学生か日系人という中途半端な形でしか受入が実現しなかったため、今回の労働者としての受入拡大は一歩前進だと考える。そして、2005~2009年の衆議院議員をしていた期間に、私は佐賀県を廻って人手不足について陳情を受けたり、実際に見て納得したりしていたため、新たな在留資格を作る前に立法事実があるのだ。また、長野県も農業等に多くの外国人労働者を雇用していると聞いている。③については、外国人といえども過度の拘束をするのは人権侵害である上、母国に送金することが目的であれば所得から生活費を差し引いた残額が重要で、求められている場所にしか仕事がないため、平均賃金が高いからといって都市部に集中するとは限らず、地域の本気度によるところが大きい。そして、②については、何でも最初から唯一の完全な解があるわけではなく、地域の実情に応じた工夫もあるため、使い勝手の悪い点は次第に改善していけばよいと思われる。


   2018.11.14      2018.7.23      2019.1.24    2019.3.15
    朝日新聞       東洋経済       朝日新聞     ロイター

(図の説明:現在は、左図のような資格で、2017年に128万人の外国人労働者が就労していた。しかし、人手不足のため、左から2番目の図のように「特定技能」という資格を作って5年間で35万人まで新たに受け入れることとなり、詳細を定めた法務省令・政令が右図のように公布された。なお、右から2番目の図のように、外国人労働者が大都市に集中することを懸念する声が多いが、仕事や住居がなければ外国人も生きていけないため、大都市が受け入れを自粛しなくても、外国人労働者はよい仕事や住居のある地域に住むことになると思われる)

*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190316&ng=DGKKZO42556560W9A310C1CC1000 (日経新聞 2019年3月16日) 復興の実像(2)介助・共助、需要高まる 東北3県、復興住宅の高齢化率42.9%
 2月中旬、宮城県南三陸町。災害公営住宅「志津川東復興住宅」に隣接する施設「結の里」にはひきたてのコーヒーの香りが漂い、恒例のパン販売に人々が集まっていた。「ここで皆とおしゃべりするのが日課。楽しいね」。同住宅で一人暮らしをする女性(84)は笑う。結の里と同住宅はウッドデッキで結ばれ、住民が毎日気軽に立ち寄る。同住宅は住民の6割近くが65歳以上。孤立を防ごうと2018年4月、町の社会福祉協議会が結の里を開いた。デイサービス施設、交流スペースや芝生広場を併設し、周辺の復興住宅の住民や親子連れも集まる。一般に若い世代は自宅を再建できるため、復興住宅の住民は高齢者が多い。岩手、宮城、福島3県で500戸以上の復興住宅を整備した自治体を対象に入居者に占める65歳以上の人の割合(高齢化率)を調べた。18年10月~今年3月時点で岩手46.2%、宮城42.2%、福島42.6%。3県の平均は42.9%だった。18年版「高齢社会白書」によると、日本の総人口の高齢化率は27.7%。3県も人口全体では27.2~31.9%だ。復興住宅は県全体より10ポイント以上高い。高齢者が多いほどきめ細かなケアが必要になる。だが、志津川東復興住宅の自治会役員、佐竹一義さん(70)は「イベントがあっても全員が出てくるわけではない。高齢化がさらに進めば自治会活動もどこまでできるか不安だ」と語る。同住宅では平日の昼間、社協の生活援助員(LSA)4人が見回りをする。入居開始当時は6人常駐していたが、18年から2人減った。郵便物はたまっていないか、定期的に外出しているかなどに気を配る。「私たちがいなくなっても住民にバトンを渡し、支え合えるようにしたい」とLSAの三浦美江さん(53)。宮城県がまとめた17年度の調査では、復興住宅に入居する要介護・要支援認定者に占める介護サービス利用者の割合は72%。2年前から10ポイント上昇し、生活介助のニーズも高まっている。福島県では高齢化率の高さを逆手にとった試みが軌道に乗る。相馬市が市内4カ所に建設した「相馬井戸端長屋」の入居者平均年齢は78歳。「助け合って暮らせるように」と入居対象をあえて60歳以上とした。各棟の12世帯それぞれにトイレと風呂、台所があるが、洗濯機を置くスペースはない。昔の長屋の井戸のように洗濯機を皆で使うようにし、畳や共同食堂も備えた。毎日昼時には地元NPOが配達する弁当を食堂で食べる。NPOスタッフの反畑正博さん(68)は住民が体調を崩した人のため病院を手配する姿を見た。「日々コミュニケーションを取り、励まし合って暮らしている」と説明する。復興住宅で孤立死が相次いだ阪神大震災などの教訓を踏まえ、東日本大震災の復興住宅では様々な工夫がこらされた。それでも安心な暮らしには住民の共助が欠かせない。国立研究開発法人・建築研究所の上席研究員で、復興住宅に詳しい米野史健さんは「復興予算でLSAなどが手助けできるうちに、住民同士で支える仕組みの下地を作ってほしい」と話す。

*6-2:http://qbiz.jp/article/150394/1/ (西日本新聞 2019年3月16日) 外国人就労、報酬は日本人と同等以上 政令・省令公布
 政府は15日、特定技能の在留資格を創設し、外国人労働者受け入れを拡大する新制度の運用の詳細を定めた法務省令や政令を公布した。健康であることを資格取得の要件とし、受け入れ先に日本人と同等以上の報酬とする雇用契約を結ばせることなどを定めた。施行は新制度を盛り込んだ改正入管難民法と同じ4月1日。新制度に関する全ての法規定が整備された形となった。新制度は一定技能が必要な特定技能1号、熟練技能が必要な同2号の在留資格を創設。1号は介護など14業種、2号は建設と造船・舶用工業の2業種で受け入れる。新設の特定技能基準の省令では、報酬は日本人と同等以上の額とし、不正を防ぐために預貯金口座に振り込むと規定。法務省によると、報酬額は受け入れ先の賃金規定に基づく。規定がない場合、受け入れ先で同じ業務に就いている日本人の報酬額を証明する資料を使ったり、似たような業務をしている日本人と比較したりして、報酬額の妥当性を判断する。上陸基準の省令を改め、特定技能の外国人は18歳以上で、健康状態が良好であることを基準とした。母国で血液や胸部エックス線などの検査を受けてもらい、安定的に働けると医師が診断したかどうかを確認する。

*6-3:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190318/KT190315ETI090002000.php (信濃毎日新聞 2019年3月18日) 外国人受け入れ 現状の検証と改善が先だ
 円滑に始められるのか、不安が残る。外国人労働者の受け入れを拡大する新制度は、運用の詳細を定めた政省令がようやく公布された。4月の施行まで半月を切っている。準備の遅れは明らかだ。人手不足に対処するため、新たな在留資格を設けた。高度な専門人材に限ってきた受け入れを単純労働分野にも広げる。建設や介護など14業種を対象に5年間で最大約34万5千人を想定する。政省令では、報酬を日本人と同等以上の額とし、不正を防ぐため預貯金口座に振り込むことなどを定めている。各地での説明会では詳細について「検討中」などとする場面が目立った。県内でも、新たな資格で従事できる宿泊業の業務に「客室清掃は含まれるのか」との質問に国土交通省の担当者が「関係省庁で取り扱いを協議している」と述べるにとどまった。心配な点は多い。一つには、賃金の高い都市部に集中する可能性がある。新制度では、同一業務や業務内容に共通性がある場合は転職を認めているからだ。政府は1月の国会の閉会中審査で、受け入れの少ない地域があれば原因を調べ、要因に応じて調整を図るとした。今国会で山下貴司法相は安価な生活費や職場環境など地方のメリットを周知していくと述べている。どこまで効果があるか、心もとない対応である。適正な処遇も課題だ。現行の技能実習制度では劣悪な労働環境が問題になっている。政府は事業所向けの「外国人雇用管理指針」を改定するものの、差別的待遇の禁止など現在の法令に合わせて適切な対応を求める内容である。共同通信が全国の自治体を対象に行ったアンケートでは、市区町村の半数近くが懸念を示した。報酬水準の確保について「受け入れ企業の経営が厳しい」など否定的な見方が多い。生活支援も欠かせない。政府は外国人への情報提供や相談を一元的に行う窓口を全国100カ所に設けることにしている。これで十分か。国からの交付金は、英語や中国語など原則として11言語以上での対応を条件とする。通訳の確保にも懸念が残る。新たな資格への移行を見込む技能実習生についての調査結果もまとまっていない。日本で働く外国人は昨年10月時点で146万人に達し、過去最多を更新した。受け入れ拡大を急ぐより、現状をつかんだ上で必要な対策を検討、実施していくことが先決である。

<河道掘削などで出た土砂の活用>
PS(2019年3月25日追加):*7のように、福岡県を流れる遠賀川で過去最大規模の河道掘削が行われて約400万m₃の掘削土が出るそうだが、このような非汚染の土砂を船舶で運び、原発事故被害を受けた地域で土地を造成をした上に、徹底して1~2mかぶせれば、農地として使ったり、居住したりすることもできるようになると思われる。そして、このような工事を必要とする河川やダムは多く、工事中に水辺の環境は一時的に壊されるが、全体を同時に掘削するわけではないため、完成時の生態系を考えて仕上げをすれば植生・コイ・ナマズ・メダカ・フナ等の生物は次第に戻ってくると思う。なお、現在は無思慮に作っている河川内の堤をなくし、サケやウナギのように河川と海を往来する生物が住みやすくすることも、水産業と環境のために必要だ。

*7:http://qbiz.jp/article/150430/1/ (西日本新聞 2019年3月25日) 東京ドーム3・2杯分の土砂どうする 遠賀川で防災対策、全長18キロ 採石場跡などに搬入、河川の環境保全にも配慮
 福岡県直方市の国土交通省遠賀川河川事務所が、遠賀川で過去最大規模の「河道掘削」を進めている。川岸を削り、大雨が降っても水位が上がりにくくする防災対策の一環だ。範囲は直方市や小竹町、飯塚市などにまたがる計約18キロに及び、工事により東京ドーム3・2杯分の掘削土が出る見通しという。その大量の土砂をどう処分し、水辺の環境をどのようにして守るのだろう。河道掘削は昨年4月、遠賀川下流の中間堰(中間市)付近から上流に向かって始まった。飯塚市鯰田地区までの約17キロと、支流・彦山川の一部約1キロが対象。昨年7月の西日本豪雨で、堤防決壊の恐れがあるところまで水位が上昇した観測所が複数あったことから、工事を前倒しで進めようと、中間地点の日の出橋(直方市)からも掘削に着手した。事業は2028年度ごろまで続く予定という。遠賀川河川事務所は、工事で発生する約400万立方メートルもの掘削土を有効活用する方針で、受け入れ候補の一つになっているのが宮若市龍徳地区の採石場跡だ。土地を所有する宮若市が跡地を山林に戻す考えだったことから、打診した。河川事務所は、この採石場跡に約170万立方メートルの土砂の搬入を検討している。大雨の時などに土砂の崩落は起きないのだろうか−。担当者によると、土砂を積み上げてできるのり面は崩落を防ぐため、段々畑のように段差を設け、植林する。斜面下部にも擁壁を設けるなど安全対策を講じる。有吉哲信市長は、開会中の市議会3月定例会で「市の方針に合致しており、受け入れを前提に協議を進めたい」と報告。近くに住む70代男性も「特に心配はしていない」と話す。河川事務所は残りの土砂の活用方法について、直方市とも協議に入る予定という。
    ◆ ◆ ◆
 河道掘削により、水辺の環境がどう変わるのかも気になる。遠賀川の中流域にはコイやナマズなどが生息しており、下流域の水辺ではメダカなどの小魚やフナの稚魚が確認されている。魚の産卵場にもなっている水辺では、市民団体が子どもたちに生物や環境を教える活動も行っている。河川事務所は、工事後も多くの生物が生息できるよう、河道掘削を実施した後は、川岸に自然石を置いて凹凸をつくる「寄せ石」工法を用いる計画という。西日本豪雨では、遠賀川流域10カ所の観測所で史上最高水位となり、うち5カ所で堤防が耐えられる限界の「計画高水位」を超えた。堤防の決壊は起きなかったが、支流の水が本流に流れにくくなり、内水氾濫が起きて各地で浸水した。遠賀川河川事務所工務課の川辺英明課長は「河道掘削で豪雨時の河川の水位を下げられ、住宅側に降った雨水も川に長時間流すことができるようになり、浸水被害が軽減できる」と説明。その上で「土砂を安全に処理し、河川の生態系に影響が出ないよう十分な対策を取っていく」と話している。

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