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2018.1.29 高齢化した成熟国家では、医療・介護などの福祉サービスは実需であること (2018年1月30、31日、2月1、2、3、4、7、10日に追加あり)
   
      日本の人口構成の変化               *3-3より

(図の説明:日本の年齢階層別人口は、1番左と左から2番目のグラフのとおり、高齢者の割合が増えて、収入構造《賃金・年金》と需要構造が変わった。つまり、全収入に占める年金収入の割合が増え、高齢者向けサービスの実需が増加したのだ。にもかかわらず、政府は、高齢者向けサービスを削減し、インフレによって高齢者の資産移転を行ったため、不要な需給ギャップが生じ、GDPの伸びも抑制された。こういう不要なことをしなければ、高齢化社会で真に必要とされる財・サービスの開発と供給が進み、それは今後、世界で必要とされた筈である。なお、何歳まで健康かという問題については、左から2番目のグラフで同年齢の人口が急カーブで減り始める頃までと思われ、健康状態は人によって異なるため階段状になっているわけである)

  
  購買力平価による各国GDPの推移    日本の実質・名目賃金と消費者物価指数

(図の説明:その需給ギャップを解消するためとして、インフレ政策を行い、生産性の低い政府支出に多くの予算を配分し、実需を抑制したため、購買力平価で比較して日本のGDPの伸びは先進国・開発途上国を合わせて最低になった。また、インフレ政策で実質賃金の伸びもマイナスになっている《年金支給額は当然マイナス》が、これは国民を主体としない政策の結果である)

(1)医療について
1)医師の長時間労働と医師の時給
 *1-1、*1-2のように、杏林大学医学部付属病院が36協定を超えて医師に残業させ、残業した時の割増賃金も不十分だったとして三鷹労基署から是正勧告・改善指導を受けたり、北里大学病院の36協定の結び方が不適切で「協定が無効だ」と労基署から指摘されたりしているが、医師には応召義務があり、(役所と違って)9時~5時の勤務時間には入らないことも多々ある職種であるため、これに近いことはどの病院でも行われていると思われる。また、残業代を請求できる医師ばかりではないため、医師の時給はかなり低くなるだろう。

 それでは、労働基準法を順守する上で必要な医師数は確保できるのかと言えば、例えば、*1-3のように、正常出産でも「9時~5時」の間に子どもが生まれるとは限らない産婦人科で、医師数を確保できていない。産婦人科医を増やすことも必要だと言われているが、*1-6のように、地域や診療科間で医師数は偏在しており、外科系や産婦人科は医師数が減っている診療科なのである。

 外科の医師数が減る理由は、手術が長引いたり、重篤な患者の治療を行ったりするため、医師の労働が過重になるからだが、だからといって、*1-4のように、救急患者が「たらい回し」にされて治るものも治らないという事態になってはならない。これを解決するには、医師個人の善意に依存して医師に重労働を課し命を削らせてきた現在の医療政策を改め、十分な数の医師を配置して無理なく診療できる組織体制を作ることが必要で、そのためには、診療報酬削減一辺倒の現在の医療政策を改めなければならない。

2)女性医師割合の増加で起こったこと

  
     2018.1.28東京新聞    女性の医師割合及び医師国家試験合格者割合の推移

 医師国家試験合格者に占める女性割合は次第に増加し、2014年は31.8%となり、これに伴って医療機関で働く2016年末の女性医師数は、*1-5のように、6万4305人で全体の21%となった。男女比は年齢層が若いほど女性の割合が高く、29歳以下は35%、30代は31%を占め、20年前と比べると29歳以下も全世代で8%高くなったそうで、私はよいことだと考える。

 また、私は、女性だからといって妊娠・出産を機に離職して職場復帰しない人はむしろ少なく、そのために男女雇用機会均等法で育児休業等が定められているのだと思うが、女性医師は結婚後のことも考えて過重労働を強いる診療科を敬遠し、無理の少ない診療科に集まる傾向があるそうだ。それもあって、地域や診療科による医師の偏在が起こっているため、希望者の少ない地域や診療科は、担当する医師を厚遇する必要があるだろう。

(2)介護について

  

(図の説明:介護保険制度は、導入されて17年しか経過しておらず、全世代型になっていないため不完全だが、著しい伸びが見込まれている。これは、核家族化した高齢化社会を迎えた日本で、本当に必要とされている実需だからだ)

   
  2018.1.27日経新聞   2017.6.27読売新聞     2018.1.27東京新聞 

(図の説明:政府は、その実需を無駄遣いであるかのように抑制することに努めているが、身体が動かなくなった人が自宅で暮らすには家事支援も必要であるため、少なくとも混合介護を認めるべきであろう)

 介護保険制度は、1995年前後に私が提案し、1997年の国会で制定された介護保険法に基づいて、2000年4月1日に施行され、2000年時点で184万人だった介護保険制度の利用者は、2025年には657万人になると予想されている。これだけ利用者が増加するのは、核家族の多い成熟した高齢化社会の日本で、合理的な介護サービスは必要性の高い実需だからにほかならない。

 厚労省は、*2-1のように、自立支援や重度化を防ぐ取り組みに報酬を手厚くし、医療との連携拡大を促すそうだが、このうち医療と介護の連携は当然のことで、自立支援に頑張った事業者が報われる仕組みは必要であるものの、どうしても自立できないから介護サービスを利用している人も多いため、*2-2、*2-3のように、介護報酬の改定は、利用者の生活の質の向上に資する利用者本位のもので、無理に自立を押しつける改定であってはならないと考える。

 日経新聞は、「介護サービスは生産活動ではなく無駄遣い」と見做しているせいか、*2-5のように、「給付の効率化、給付削減が不十分」という記載が多い。しかし、核家族化した高齢化社会の日本で、介護サービスは必要性の高い実需であるため利用者の増加があるのであり、やみくもな介護費の抑制はむしろGDPを落とす。

 そのため、私は、医療・介護は保険適用分と自己負担分を作って混合でサービスを受けることを可能にし、自己負担でも多くの人が購入するサービスは、順次保険適用にしていくのがよいと考える。そうすれば、保険適用を前提とした日本だけ不当に高い価格付けはなくなるだろう。

 なお、東京新聞は、*2-4のように、「介護の見直しに、必要性を増す担い手の確保策が十分か疑問が残る」という記事を書いており、これらはしっかりと考慮されなければならない。

(3)年金と高齢者雇用
 日本老年学会などは、*3-1のように、医療の進展や生活環境の改善により、10年前に比べて身体の働きや知的能力が5~10歳は若返っていると判断し、現在65歳以上とされている高齢者の定義を75歳以上に見直すよう求める提言を発表した。

 そのため、75歳まで働ける人は、*3-2のように、年金受給開始を75歳からに選択することもでき、年金支給開始年齢を遅らせた人は毎月の受給額が増える制度を拡充し、定年延長など元気な高齢者が働ける仕組み作りも進めるのはよいと考える。働いている人の方が認知症にならず、身体も元気でいられるので、介護サービスを使わずにすみ、多面的なメリットがある。

 そのような中、*3-3に、日経新聞が、「2008年のリーマン・ショック以降、先進国を苦しめてきた『需要不足』と呼ばれる状態が約10年ぶりに解消される見通しとなり、米国の景気回復を追い風に貿易や投資が刺激され、需要が増えている」としているのには驚いた。

 何故なら、未だに日本の需要を米国輸出とそのための投資に頼っているが、これは先進国ではなく低賃金を使った製造業による輸出に頼る開発途上国の発想であり、この前提は戦後すぐの日本には正しかったかも知れないものの、現在には全く当てはまらないからである。現在は、福祉サービスなどの内需を満たす方向で需要を作り出すのが、国民を豊かにするための正道だ。

 なお、東日本大震災の復興需要があり、福祉サービスの担い手も足りないため、金融緩和しなくても失業率を最低水準にし、さらに人手が足りない状態を作ることはできたと思われる。にもかかわらず、金融緩和とインフレ政策で実質賃金を下げたことは、不問に付されるべきでない。

 また、「失業率が下がるほど物価が上がるという相関関係は、右肩下がりの“フィリップス曲線”に示されるが、日本や米国は失業率が完全雇用と考えられている水準を下回っている割に物価の反応が鈍い」とも書かれているが、過去に米国で観測されたフィリップス曲線を出すまでもなく、実質賃金や実質年金が下がれば需要が減る上、現在の需給は国内だけでなく開発途上国も含めた世界市場で調整されているため、安い賃金で働く開発途上国が市場経済に参入してくる限り、物価は上がらない。これは、1990年以降の米国でも観測されていることであり、賃金の高い先進国は別の豊かさを考えるべきなのである。

<医療>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13322983.html (朝日新聞 2018年1月20日) 杏林大の医師、長時間労働 月100時間超の例も 労基署が是正勧告
 東京都三鷹市の杏林大学医学部付属病院が、労使間の時間外労働の取り決め(36協定)を超えて医師に残業させ、残業した時の割増賃金も不十分だったとして、設置者の杏林学園が三鷹労働基準監督署から是正勧告と改善指導を受けていたことが分かった。杏林大は「勧告を真摯(しんし)に受け止める」としており、働き方の見直しに着手。医師数百人に不足分の賃金数億円を支払ったとしている。杏林大などによると、勧告と指導は昨年10月26日付。杏林大は就業規則と協定で、医師について週39時間の所定労働時間、月最大70時間の残業時間を定めているが、労基署の調査では約700人の医師のうち約2%が「過労死ライン」とされる残業80時間を超え、100時間を超える医師も数人いたという。労働基準法が定める、残業に対する割増賃金も一部の医師について法定の割増率を下回っていた。杏林大は昨年末、同年4~9月の不足分を対象者に支払ったという。長時間労働の理由について、杏林大は朝日新聞の取材に「医師には(治療を求められたら拒めない)応召義務があり、患者側に立って丁寧な診療をしたり、手術が予想以上に長引いたりすることがある」などと説明している。割増賃金については、法定割増率を下回る別の手当を支払っていたという。同病院は高度な医療を提供する施設として国が承認する全国85の「特定機能病院」の一つ。2016年度の外来患者は約64万9千人、入院患者は約29万5千人に上る。医師の長時間労働や勤務管理を巡っては、聖路加国際病院(東京都中央区)や北里大学病院(相模原市)なども労基署から是正を求められていることが明らかになっている。厚生労働省は有識者会議で医師の働き方についての議論を進めており、18年度末までに具体案を取りまとめる予定だ。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13318146.html (朝日新聞 2018年1月18日) 北里大病院、勤務ずさん管理 医師の労働時間定めず、36協定不適切
 北里大学病院(相模原市)が、医師らを残業させるために必要な労使協定(36〈サブロク〉協定)の結び方が不適切で、協定が無効だと相模原労働基準監督署(同)から指摘されていたことがわかった。医師の勤務時間を就業規則で定めずに違法な残業をさせていたなどとして、労働基準法違反で是正勧告や改善指導も受けており、大病院のずさんな労務管理の実態が明らかになった。勧告や指導は昨年12月27日付。法定労働時間を超えて病院職員を働かせるには、労働者の過半数で組織する労働組合か、労働者の過半数代表者と36協定を結び、残業の上限時間などを定める必要がある。北里大病院の関係者によると、病院には労組がなく、各部門の代表が集まる「職員代表の意見を聴く会」で過半数代表者を選び、残業の上限を「月80時間」などとする36協定を代表者と結んでいた。だが、各部門の代表になるには所属長の推薦が必要なうえ、人事担当の副院長ら幹部が過半数代表の選出に関わっていた。このため選出の手続きが労基法の要件を満たさないと指摘されたという。2千人以上いる職員の残業が違法状態にあったことになり、この点でも是正勧告を受けた。また、同病院は「勤務時間管理規程」に従って職員の勤務を管理し、所定労働時間は週38時間とする▽残業させる場合は責任者の承認を必要とする――ことなどを定めているが、医師や管理職をこの規程の「適用除外」にしていた。北里大病院は全国に85ある、高度な医療を提供する「特定機能病院」の一つ。2016年10月時点で医師約600人が勤務しているが、始業・終業の時刻や所定労働時間、休日についてのルールがない状態で働かされていたことになる。同病院の職員によると、職員の出退勤時間を打刻するタイムカードはあるが、医師の多くは出勤か退勤のどちらか一方のみを打刻するよう病院側から指導されていたという。長時間労働が長年常態化していたとの声もある。医師がどれだけ残業したかの十分な記録がないため、違法残業の時間や未払い残業代の規模の把握も難しいとみられる。残業時間の上限規制の導入を目指す政府は、医師への規制適用を5年をめどに猶予する方針だ。だが、組織ぐるみともみられかねない大病院の不適切な労務管理が明るみに出たことで、勤務医の労働環境の改善を急ぐよう求める声が強まるのは必至だ。

*1-3:https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20171108-OYTET50038/ (読売新聞 2017年11月8日) リスクの高い出産に対応する病院、6割が産科医不足
 リスクの高い出産に対応する総合周産期母子医療センターの約6割が労働基準法を順守する上で必要な産婦人科医を確保できていない、とする初の推計を日本産婦人科医会がまとめた。宿直や休日の日直の限度回数を超えた勤務が常態化している恐れがあるという。労基法では、労働基準監督署の許可があれば、労働時間の規制外となる宿直や日直を認めている。厚生労働省は通知で、1人につき宿直は週1回、日直は月1回が限度としている。同センターは、合併症のある妊産婦や新生児の集中治療を行う医療機関で、全国に107施設が指定されている。原則24時間、複数の産婦人科医の勤務が要件だ。同医会では、通知と要件に従った場合の宿直・日直体制には16人が必要と試算。今年6月、同センターの人員体制を調査したところ、107施設中66施設(62%)で産婦人科の常勤医が16人未満だった。非常勤医を加えても56施設(52%)が16人に達しなかった。実際は、高齢や妊娠・育児中などで宿直・日直を免除、軽減される医師も多い。16人以上いても、限度回数を超えている医師がいる可能性がある。産婦人科医不足を巡っては、同センターなど地域の基幹病院に医師を集めて、勤務負担を減らす対策が進む。同医会の中井章人常務理事は「さらに集約化を図るとともに、産婦人科医を増やす方策も必要だ。地域や診療科間での医師の偏在解消が急務だ」と話している。

*1-4:https://dot.asahi.com/dot/2017112200086.html?page=1 (AERA 2017.11.24) 救急患者「たらい回し」の裏側 断らざるを得ない当直医の窮状とは、連載「メディカルインサイト」
 11月7日、香川県内の県立病院で昨年度、時間外労働が2千時間を超える勤務医がいたことが報じられた。県は背景に医師不足があるとし、医師確保に努めているという。だが、「妙案はない」とも。現役の医師であり、東京大学医科学研究所を経て医療ガバナンス研究所を主宰する上昌広氏は、著書『病院は東京から破綻する』で、医師不足が原因で患者を受け入れられない病院側の実情を、自身の経験をもとに打ち明けている。
     *  *  *
 2013年1月、埼玉県久喜市で救急車を呼んだ75歳(当時)の男性が、県内外の25病院から合計36回、受け入れを断られ、最終的には県外の病院で死亡しました。典型的な「救急患者のたらい回し」です。亡くなった患者さんのご冥福をお祈りすると同時に、医師も患者受け入れが嫌で断っているのではないことをお伝えしたいと思います。埼玉県は日本で最も人口あたりの医師の少ない地域の一つです。私自身の経験から考えても、埼玉県の病院の当直医師が、全ての救急車を受け入れることは不可能です。私は1995年から2001年まで、大宮赤十字病院(現さいたま赤十字病院)の内科・循環器科に常勤、非常勤医師として勤務しました。06年から現在に至るまで、埼玉県北部に存在する行田総合病院に内科非常勤医師としても勤務しています。大宮赤十字病院に勤務していた頃、私は20代でした。1人でも多くの患者を診ようと、先輩医師に当直業務をかわってもらうことも珍しくありませんでした。当時の大宮赤十字病院では、内科は一般内科1人と循環器科1人の2人当直体制でした。周辺の医療機関と比較して、恵まれていたと思います。三次救急を受け入れる地域の基幹病院だったため、次から次に救急車がやってきました。一睡もできないことも珍しくありませんでした。その後、都内の虎の門病院や国立がんセンター中央病院(当時)に勤務し、当直業務をこなしましたが、大宮赤十字病院との違いに啞然としたことを覚えています。大宮赤十字病院では、心肺停止から急性心筋梗塞、脳卒中までの患者を引き受けていました。こうした患者は早期の対応が求められます。たとえば、心筋梗塞の患者が来たら、すぐに検査や治療を指示し、同時に緊急カテーテル検査を行うか判断しなければなりません。判断に困るときは、先輩医師に電話して、指示を仰ぎました。心臓カテーテル検査を実施すると決めれば、他の先輩医師にも電話して、緊急来院をお願いしました。彼らが来てから検査に入ることもありました。このような重症患者に対応している間は、別の患者を診ることは不可能です。脳卒中や心筋梗塞など、迅速な対応が必要な患者の場合は、救急隊から連絡を受けても、「申し訳ない」と思いながら、お断りしたことが何度もあります。これが、当直医の立場から見た「救急患者のたらい回し」の実態なのです。
■「緊急受け入れ病院」制度の限界
 埼玉県は、救急車の「たらい回し」を防止するため、14年4月には全ての救急車にタブレット端末を設置し、15年2月には「緊急受け入れ病院」を4ヵ所から12ヵ所に増やすことを決定しました。「緊急受け入れ病院」制では、埼玉県が認定する施設で、受け入れを2回断られた患者に対し、3回目で必ず対応することが義務づけられます。埼玉県によれば、タブレット端末の導入により、受け入れ照会が4回以上の「たらい回し」患者は14%減少したそうですが、この程度では問題は解決するとは思えません。「緊急受け入れ病院」を指定し、補助金と引き替えに救急車を引き受けさせても、他の患者を治療している間、病院のベッドで待ってもらうことになります。結局、救急隊の代わりに当直医に責任をなすりつけるだけです。脳卒中や心筋梗塞の治療は時間との戦いです。こうした形骸的な対応は患者にとって決していいことではありません。医師不足が深刻な千葉県や埼玉県で、「救急患者のたらい回し」を減らすには、医師を増やすしかありません。ところが、それが困難です。医師会や医学部経営者など既得権者の思惑が絡むからです。既得権を打破するには、市民が問題を認識し、既得権者を批判する必要があります。そうすれば行政や政治は動かざるを得なくなります。
※『病院は東京から破綻する』から抜粋

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180129&ng=DGKKZO26119940V20C18A1TY5000 (日経新聞 2018.1.29) 女性医師、働き続けやすく、東京女子医大 育児での離職者再研修/総合メディカル モール設立開業を支援
 遅れていた女性医師のキャリアと出産・育児との両立を後押しする動きが広がっている。20代では医師の3割超が女性になった。日本の医療を支えるために女性の活躍は不可欠で、復職支援や働き続けやすい環境づくりを進める。「この1、2年で症状が変わったことはありますか」。東京女子医科大学病院(東京・新宿)の総合診療科で1月上旬、山口あけみ医師(40)が精密検査に訪れた男性を診察していた。山口さんは2017年秋、約10年間の専業主婦生活から、非常勤医師として医療現場に復帰した。同大学卒業後、付属の医療機関に勤めていたが、4年目に夫の仕事の都合で米国に引っ越すため離職した。現在4~10歳の2男2女を育てている。17年1月の帰国を機に、医師の仕事を通じて社会に役割を持ちたいと復帰を願ったものの、長く現場を離れ不安があった。「仕事を忘れているのでは」「ミスを起こしてしまったら」。後押ししたのが同大の女性医師再研修部門が提供する「再研修―復職プロジェクト」だった。原則3カ月で希望者の要望に沿った頻度、内容の研修をする。制度は06年度に始まり、結婚や育児などで医療現場から離れた女性医師が対象だ。卒業校は問わない。17年1月までに233人が相談し、96人が研修を受けた。休職していた相談者のうち75%が復職した。山口さんは子育てとの両立を考え週1度、総合診療科で研修した。指導医にアドバイスをもらいながら実際に診療をして「自分にもできる役割がある」と前向きになれたという。再研修部門の唐沢久美子部門長は「キャリアが多様化し、一旦離職する医師も増えた。復職したいときに相談できる人がいないことが課題。人材という宝を掘り起こす必要がある」と話す。厚生労働省によると医療機関で働く16年末の女性医師数は6万4305人で全体の21%。ただ男女比は年齢層が若いほど女性の割合が高く、29歳以下は35%、30代は31%を占める。20年前と比べると29歳以下も、全世代でみても8ポイント高くなった。日本医師会の今村定臣常任理事は「女性には妊娠・出産など男性と異なるライフステージがあるが、女性に働いてもらわなければ医療現場は立ちゆかなくなる」と指摘。医師会は厚労省から委託を受け、就業希望者に医療機関を無料で紹介する「女性医師バンク」をつくった。一方、08年から子育てや介護中の医師らに基本3年間の「キャリア支援制度」を提供するのが岡山大学病院(岡山市)。それまでの定員と別に応募医師を配置する。勤務時間や頻度が比較的自由になる。制度利用後は大学病院で常勤復帰したり、地域の病院に就職したり。希望者が増え、来年度からは受け入れ可能時間を増やす予定だ。働き方改革も進む。久留米大学病院(福岡県久留米市)は18年度、小児科のワークライフバランスを進める取り組みを、他科に紹介し広げる意向だ。ママさん医師が活躍中の小児科は13年末から土日にしっかり休めるよう体制を整備。休日にも主治医が担当患者の見回りやガーゼ交換をしていたのを、基本的に全て当直医が対応するよう変更した。入院患者らに対応する医師約20人の土日の平均勤務時間は、1日平均3.5時間から2.7時間に減少。患者から大きな不満はないという。キャリア支援を担当する一人、守屋普久子医師は「結婚出産を控える若手の女性医師が増える中、働き続けやすい環境作りが必要。大学病院で人材が不足すれば地域に医師を派遣できなくなる可能性もあり、地域医療に影響を及ぼしかねない」と話す。働く場を自ら作ることで子育てとの両立を図ろうとする試みもある。医療コンサルティング大手の総合メディカルは開業を希望する女性医師向けに19年4月に複数のクリニックが集まる「女医モール」の開業を都内2カ所で目指す。社内に女性社員主体の「JOY☆Working Team」を設け、医師の募集や開業地の選定に当たる。将来は子育て中の女性がワークシェアできる体制の医療モール開設も目指す。保育園と小学校に通う3人の子を育てながら首都圏の病院に勤める40代女性医師は開業を検討中だ。同医師は「自宅近くで開業できれば、子どもの下校後にクリニックで宿題をさせるなど、そばにいられる」と話す。今は父母の力も借りながら午前8時半~午後5時半を定時として働くが、緊急時には突如の時間外勤務や深夜の対応が必要なことがある。いつまでこの生活を続けられるか不安を感じるそうだ。ただ、「これまで約20年キャリアを積んで来られたのは、大学や患者さんから多くの機会を与えられてきたから。医師として返し続けることが使命」と強調する。医療に携わり続ける気持ちは変わらない。

*1-6:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018012801001532.html (東京新聞 2018年1月28日) 専門医研修、地方は低迷 外科「10人未満」27県
 若手医師に分野ごとの高度な知識や技術を身に付けてもらうため、4月から新たに始まる専門医養成制度で、医師が希望する研修先が大都市に集中し、地域に大きな偏りがあることが28日、分かった。外科は東京での研修希望者が170人に上る一方、青森、高知など27県は10人未満、内科でも9県が15人以下だった。指導医の数など、研修機関としての基準を満たす病院が地方に少ないことが背景にある。新たな制度は大学の医学部教授や公的機関の代表で構成する一般社団法人「日本専門医機構」(2014年設立)が運営。研修先登録結果は同日までに機構が公表した。

<介護>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180127&ng=DGKKZO26194380W8A120C1EA3000 (日経新聞 2018.1.27) 介護自立支援、報酬手厚く、重度化防止も対象 医療と連携拡大促す
 厚生労働省は26日、4月から適用する介護保険サービスの新しい料金体系(介護報酬)を公表した。介護を受ける人の自立に向けた支援や、重度化を防ぐ取り組みに報酬を手厚く配ることが特徴だ。効率化に向け残された課題は多い。介護報酬全体の改定率は、昨年末の2018年度予算編成の過程でプラス0.54%と決まった。保険料などを除く国費ベースでは支給額が約140億円増える。同日の社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の分科会では、報酬の増額分をどこに配分するかや、どのサービスを効率化するかの詳細を固めた。柱の一つである自立支援は、食事や入浴、歩行といった日常動作が通所介護(デイサービス)を通じて改善できた事業所に対して報酬を加算する。外部のリハビリ専門家や医師と協力した重度化防止の取り組みにも報酬を厚くする。適切な支援を通じ、服の脱ぎ着が自分でできるようになったり、不安定だった歩行がしっかりとした足取りになったりする例がある。介護事業者の間でも「やり方次第で要介護度が改善する人は多い。頑張った事業者が報われる仕組みが必要」との声が根強くある。要介護度が改善すれば生活の質が向上し、給付費も少なくて済む。今回の取り組みはその第一歩だが、加算額はわずかなため「自立支援のインセンティブとしては不十分」(介護事業者)との指摘が早くも出ている。自立支援などを重視する背景にあるのは、逼迫する介護保険財政だ。制度を施行した2000年度と15年度を比べると給付額は約3倍の9兆円、要介護認定者数は倍近くの445万人まで増えた。自立支援を通じて状態改善を促し、給付額の増加幅を抑える。今回の報酬改定では医療との連携拡大への評価も盛り込んだ。特別養護老人ホームでは終末期のみとりに対応するため、夜間や早朝に医師が駆け付ける態勢を充実させた施設への報酬も増やす。みとり対応が特養で可能になれば、病院への救急搬送などが必要なくなる。高齢者の「薬漬け」が問題となる中、かかりつけ医と連携した「減薬」への加算も新設する。介護施設と病院間で、利用者の状態について緊密に情報を共有することも促す。今回は報酬全体が増額となるため、事業者にとっては収益上プラスとなる面があるが、利用者の負担は増える場合がある。厚労省の試算によると、通所介護を週3回、訪問介護を週2回利用している場合、1カ月あたりの総費用は訪問介護分で5万2900円から5万5290円へと5%弱増える。自己負担を1割とすると200円超負担が増える。通所介護では自己負担は50円ほど増える。特養のモデルケースの場合、総費用は1カ月28万1040円から28万8730円へと8000円程増える。自己負担も800円近く増えることになる。今回は介護職員の負担軽減につながる情報通信技術(ICT)の活用促進策は一部にとどまった。特養の見守りセンサー導入で夜勤対応に関する加算を取りやすくするほかには目立った施策はない。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13335157.html (朝日新聞社説 2018年1月29日) 介護報酬改定 利用者本位を忘れずに
 介護保険サービスで、事業者に支払われる介護報酬の4月からの改定内容が決まった。大きな特徴は、利用者の自立支援や重度化防止につながる取り組みに対し、重点的に報酬を手厚くしたことだ。リハビリを強化・充実するほか、通所介護(デイサービス)で、日常生活で使う身体機能が維持・改善される利用者が多い場合に「成功報酬」を加算する仕組みを入れる。特別養護老人ホームなどでは、排泄(はいせつ)で介助が必要な人の「おむつ外し」を支援する取り組みも評価する。身体機能が改善したり、自分でトイレに行ったりできるようになれば、利用者の生活の質の向上につながるだろう。一方で、利用者が望まないサービスを事業者が強いたり、改善が見込めそうな軽度の人ばかり選んだりしないかという懸念もある。十分留意したい。今回の改定には、高齢化が今後ピークを迎えるなかで、介護費用の伸びを抑える狙いもある。経済界などからは、給付の抑制策が不十分だとの不満も聞かれる。厳しい介護保険財政への目配りは必要だ。ケアプランを作るケアマネジャーの能力と中立性を高める工夫など、無駄をなくす努力も続けねばならない。同時に、利用者が自分らしく暮らすことを支えるという、介護保険の理念を見失ってはならない。調理や掃除といった生活援助サービスについて、財務省などは利用回数に上限を設けるよう求めていたが、導入は見送られた。利用が平均を大きく上回る場合は自治体が設ける専門職らの会議で検証し、必要があれば改善を促すことになった。利用回数が多い人には、ひとり暮らしや認知症の人も少なくないとされる。個々の事情をよく考慮してほしい。介護人材の待遇改善も、引き続き待ったなしである。今後の消費増税分を活用した改善策が検討されているため、今回の改定では具体策は限られる。しかし、介護報酬が全体として6年ぶりにプラス改定とされたのは、待遇改善による人手不足解消が喫緊の課題であることに配慮したからだ。事業者は肝に銘じてほしい。利用者のニーズにあった質の高い介護サービスを提供することは、「介護離職ゼロ」を実現するための基本である。そのためには、サービスのあり方だけでなく、税金投入や保険料を納める制度の担い手拡大など、負担増を視野にいれた議論も避けるべきではない。

*2-3:https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=89990 (南日本新聞社説 2018年1月28日) [介護報酬改定] 自立の「押しつけ」懸念
 利用者の意思に関係なく、自立を押しつけるようなことがあってはならない。厚生労働省が2018年度からの3年間、介護保険サービス事業所に支払う介護報酬の改定方針をまとめた。事業所が外部の医師らと連携して身体機能の回復に取り組んだ際の報酬を手厚くするほか、通所介護(デイサービス)で利用者の状態が改善すると加算する「成果型」の報酬が新設される。身体機能が回復すれば、生活の質の向上が期待できる。手厚いケアが必要な高齢者の増加を抑えられれば、増大する介護費用の抑制にも効果があるだろう。介護の総費用は18年度予算ベースで11兆円超に上る。団塊世代が全員75歳以上になる25年、日本は全人口の3人に1人が65歳以上という超高齢化社会に突入する。持続可能な制度とするために、費用の抑制は不可欠である。今回の改定は、医療機関に支払われる診療報酬との同時改定だ。夜間や早朝に医師が駆けつける態勢を整えた特養への加算を新設するなど、医療、介護の連携強化を目指すのも理解できる。ただ、介護保険制度の原点は利用者が目指す生活を補助することなはずだ。治すことを目的とする医療とは異なることも忘れてはならない。要介護度が重度の高齢者の増加を防ぐのは、厚労省のここ数年の方針だ。昨年の法改正では住民の要介護度の維持・改善に取り組み、成果を上げた自治体に財政支援をする交付金創設が決まった。事業所への成果報酬もこの一環といえる。利用者の要介護度が上がれば、事業所への介護報酬は上がる。逆に高齢者の状態が改善すれば、事業所の収入は減ることになる。事業所の努力が報われない今の仕組みは、確かに改善した方がいい。だが、成果報酬目当てで利用者にリハビリを強制する事業所が出ないとは限らない。国や事業所が機能回復に重点を置きすぎて、利用者の希望や実情が置き去りになるようでは本末転倒だ。訪問介護のうち掃除や調理などの「生活援助」については、市町村がケアプランを検証する仕組みを設けるなどの利用抑制策が盛り込まれた。軽度の利用者がヘルパーを家政婦代わりに使っている一部の例が問題視されているのは確かだ。しかし、定期的なヘルパー訪問は高齢者の見守りという意味合いも大きい。離れて暮らす家族の安心につながる役割に十分配慮する必要がある。

*2-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018012702000132.html (東京新聞社説 2018年1月27日) 介護の見直し 担い手の確保忘れずに
 三年に一度の介護報酬の見直しの内容が公表されサービスメニューが出そろった。超高齢社会を支えるための改定が行われるが、必要性を増す担い手の確保策が十分なのか、疑問が残る。介護報酬は、事業者に介護保険などから支払われる報酬で、いわばサービスの価格表だ。公的価格で国が定め、二〇一八年度から実施される。増やしたいサービスは価格を上げ取り組む事業者を増やすことを狙う。増える高齢者の在宅生活を支えるためのサービスの充実、自立した生活を支える介護予防やリハビリテーションの強化を図る。特に、今回は二年に一度の医療の診療報酬も改定される。同時改定を利用した医療と介護の連携メニューも並ぶ。在宅での医療ケアを担う看護職員の活躍の場が広がる。介護職員が医療機関や主治医との利用者情報の共有を進める。メニュー充実の方向はいいが、介護を担う人材の確保の視点を忘れてはならない。今改定では、訪問介護のうち生活援助について、研修を受けた幅広い人材の参入を図る。今担っている介護福祉士など専門性のある職員は身体介護に集中してもらうためだ。元気な高齢者が新たな担い手になれるが、介護の質を維持するため研修内容の十分な検討は欠かせない。人材確保が難しく地域のニーズに合わないなどの理由で広がらないサービスがある。一二年度に在宅を二十四時間支える訪問介護・看護サービスが始まった。在宅介護の“切り札”と期待されたが、一六年度で利用者は一日当たり一万三千八百人。今改定でも要件を緩和して事業者の参入を促すが、当初見込みの二五年度に一日当たり十五万人の達成は厳しいのではないか。サービスをつくっても担い手がいなければ普及しない。厚生労働省によると、一六年の介護職員の月給は全産業平均より約十万円低い。待遇改善は報酬改定の中でも進められているが、十分なのか。今改定では実施されない。春闘で賃上げが決まれば他産業とさらに差が開く。今後は、一九年秋に消費税率が10%に引き上げられた際、増税分を活用して一千億円を充てる予定でそれを待たなければならない。二五年度には三十八万人の介護職人材が不足するといわれる。介護ロボットの活用による負担軽減策も同時に広げながら、人材確保を進める必要がある。

*2-5:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20180127&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO26194380W8A120C1EA3000&ng=DGKKZO26194110W8A120C1EA3000&ue=DEA3000 (日経新聞 2018.1.27) 給付の効率化は不十分
 介護報酬全体の改定率が6年ぶりのプラス改定となった。大規模な通所介護事業所や家事援助サービスの報酬引き下げ、福祉用具レンタルへの上限価格設定など複数の効率化策をそろえたが、給付のムダを抑える半歩にすぎない。医療や年金を上回るスピードで増える介護費の抑制には力不足だ。焦点の一つとなっていたのが、利用者の自宅で調理や掃除を手掛ける「生活援助」と呼ばれるサービスの効率化だ。財政制度等審議会で月100回を超えるような頻繁な利用が問題視され、上限回数を設けるなど何らかの制限をかけるべきだとの声が上がった。最終的には上限設定は見送られ、代わりに平均を大きく上回る利用には市町村による一定のチェックが働く仕組みになったが、どこまで機能するかわからない。比較的収益率が高いとされる大規模な通所介護事業所の報酬も減らされる。ただ、これについては事業者から「規模拡大による経営効率化の動きを妨げる」との指摘も出て、改定にちぐはぐな面が否めない。介護給付費は2025年度に現在の2倍の約20兆円まで増えるとの推計もある。「どこまで社会保険で面倒を見るかの議論をしないと、際限なく給付が増えかねない」(大和総研・鈴木準政策調査部長)との懸念が広がっている。

<年金と高齢者雇用>
*3-1:https://www.nikkei.com/article/DGXLAS0040011_V00C17A1000000/ (日経新聞 2017/1/5) 75歳で高齢者、65歳は「准高齢者」 学会提言
 日本老年学会などは5日、現在は65歳以上と定義されている「高齢者」を75歳以上に見直すよう求める提言を発表した。医療の進展や生活環境の改善により、10年前に比べ身体の働きや知的能力が5~10歳は若返っていると判断した。前期高齢者とされている65~74歳は、活発な社会活動が可能な人が大多数だとして「准高齢者」に区分するよう提案。社会の支え手と捉え直すことが、明るく活力ある高齢化社会につながるとしている。65歳以上を「支えられる側」として設計されている社会保障や雇用制度の在り方に関する議論にも大きな影響を与えそうだ。平均寿命を超える90歳以上は「超高齢者」とした。提言をまとめた大内尉義・虎の門病院院長は「高齢者に対する意識を変え、社会参加を促すきっかけになってほしい」と述べた。学会は、お年寄りの心身の健康に関するさまざまなデータを解析。身体の働きや知能の検査結果、残った歯の数などは同一年齢で比べると年々高まる傾向にあり、死亡率や要介護認定率は減少していた。内閣府の意識調査でも、65歳以上を高齢者とすることに否定的な意見が大半で、男性は70歳以上、女性は75歳以上を高齢者とする回答が最多だったことも考慮した。准高齢者は、仕事やボランティアなど社会に参加しながら、病気の予防に取り組み、高齢期に備える時期だとした。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180117&ng=DGKKZO25752900W8A110C1MM8000 (日経新聞 2018.1.17) 年金受給開始 70歳超も、政府検討 選択制、額は上乗せ 高齢者に就労促す
 政府は公的年金の受け取りを始める年齢について、受給者の選択で70歳超に先送りできる制度の検討に入った。年金の支給開始年齢(総合2面きょうのことば)を遅らせた人は毎月の受給額が増える制度を拡充し、70歳超を選んだ場合はさらに積み増す。高齢化の一層の進展に備え、定年延長など元気な高齢者がより働ける仕組みづくりも進める方針だ。2020年中にも関連法改正案の国会提出を目指す。政府が近くまとめる高齢化社会に関する大綱に「70歳以降の受給開始を選択可能とする制度を検討する」と盛り込む。政府が70歳超を選択肢として明示するのは初めて。大綱には、ハローワークに高齢者の再就職支援の窓口を増やしたり、起業をめざす高齢者を事務手続きや融資の面で支援したりする方針も示した。定年延長や継続雇用をする企業への助成制度の活用も明記した。現在の公的年金制度では、受け取り開始年齢は65歳が基準だ。受給者の希望に応じて、原則として60~70歳までの間で選択できる。受け取り開始を65歳より後にすれば毎月の受給額が増え、前倒しすれば減る仕組みだ。現行制度では、受給開始を65歳より後にすると、1カ月遅らせるごとに0.7%ずつ毎月の受給額が増える。例えば66歳で受け取り始めた場合、65歳から受け取るよりも月額で8.4%上乗せされる。いまの上限の70歳まで遅らせた場合は、受給額は同42%増える。70歳を超えてから受け取り開始を認める制度にする場合、70歳超の部分は65~70歳で受け取り始める場合の上乗せ(いまは0.7%)よりも高い上乗せ率にする方針だ。現行制度でも70歳超で受け取り始めることはできるが、70歳超の受給額の加算は対象外だった。受給開始年齢の上限は、いまの70歳から75~80歳程度に引き上げることを想定している。上限を定めた国民年金法と厚生年金保険法を改正する方針だ。制度が発足した当初、厚生年金の受給開始年齢は55歳(国民年金は65歳)だった。政府は高齢化に伴い、徐々に引き上げてきた。さらに開始年齢の上限を上げる場合、年金財政に影響が及ばないよう設計する方針。先送りで支給が不要になる分を、その後の受給額上乗せの財源に充てる。年齢の上限や増額率などは、厚生労働省の社会保障審議会年金部会で議論し、19年中に具体化する。受け取り開始年齢をめぐっては、17年に内閣府の有識者会議が引き上げを提言。自民党のプロジェクトチームも同様の方針をまとめていた。大綱にはこのほか、20年代初頭までに介護施設やサービスの受け皿確保を通じて介護離職をゼロにする目標などを盛り込んだ。安倍晋三首相をトップとする高齢社会対策会議の議論を経て、月内にも閣議決定する。

*3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180128&ng=DGKKZO26238120X20C18A1MM8000 (日経新聞 2018.1.28) 先進国、需要不足解消へ、今年、10年ぶり 経済、なお浮揚力欠く
 2008年のリーマン・ショック以降、先進国を苦しめてきた「需要不足」と呼ばれる状態が今年、約10年ぶりに解消される見通しとなった。米国の景気回復を追い風に貿易や投資が刺激され、需要が増えている。だがデジタル経済化に伴う経済の変質などの構造問題で物価の伸びも鈍い。金融緩和に頼らず、浮揚力を高めていけるか。主要国の経済運営は、なお難しいかじ取りを迫られている。国際通貨基金(IMF)の推計によると、日米欧などの先進39カ国はリーマン危機直後の09年、国内総生産(GDP)の3.9%にあたる1.5兆ドル(約163兆円)の需要不足に陥った。急激な需要減は大量の失業を招き、企業の設備投資も急減。だが、先進各国の経済対策で需要不足は徐々に解消に向かい、18年には0.1%と小幅ながらプラスに転じる見通しだ。
●失業率も最低水準
 経済は何年もかけて大きな波を打つように変動しており、この「景気循環」と呼ぶ流れを判断する目安が「需給ギャップ(総合2面きょうのことば)」だ。需要が不足すると経済活動が停滞して物価を下押しするデフレ圧力が強まるため、各国は金融緩和や財政出動で需要を喚起する。リーマン・ショック後の危機対応に伴う相次ぐ追加財政支出で、17年の先進国の政府債務残高は50兆ドル(約5500兆円)強と10年間でおよそ7割も増えた。13年には主要7カ国(G7)の全てが需要不足だったが、18年にはドイツが1.0%、米国が0.7%の需要超過になる見込み。専門家の間では超過の幅も順調に広がるとの分析が多い。日本は09年に7.3%だった需要不足が0.7%まで縮小しており、日銀の試算ではすでにプラスに転じている。背景には世界経済の同時成長がある。米国は3次にわたる大規模な量的金融緩和や減税で回復の足取りを強め、景気拡大は9年に及ぶ。数年前まで停滞感のあった欧州や中国も持ち直し、建設機械や電子部品の貿易も急回復中だ。17年の世界の貿易量は4.7%増と16年(2.5%増)から勢いを増し、危機から10年を経て世界経済の現状は「大いなる安定」ともいわれる。経済の活動水準が上がって雇用が逼迫し、先進国の失業率も5%台半ばと00年以降の最低レベルだ。IMFは22日、18年と19年の世界成長率見通しをともに3.7%から3.9%へと上方修正した。過去5年、先進国の物価上昇率の平均は中央銀行が目標とする2%を下回ってきた。経済学のセオリー通りなら、需要超過の下で物価や賃金にも上昇圧力がかかってきてもおかしくない。実際、欧米では物価が少しずつ上向く兆しが出ており、IMFは19年に2%を上回るとの見通しを立てるなど強気だ。米連邦準備理事会(FRB)は18年のシナリオとして3回の利上げを見込む。欧州中央銀行(ECB)も今月から資産購入を減らし、正常化を探り始めた中銀の一挙一動に市場は敏感に反応している。米長期金利は年明け以降、米税制改革や原油高に伴うインフレ期待を先取りするように上昇傾向をたどった。もし物価が予想以上のペースで上がり始めれば、利上げのテンポも速めざるを得なくなる。問題は、経済がそうした引き締めに耐えられるほど強固になったのかどうかだ。世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツ創業者のレイ・ダリオ氏は「FRBが1~1.25%の(追加)利上げをすれば資産価格は下落する」と話す。米国の株価や不動産には過熱感もみえ、調整が始まれば世界に波及する恐れがある。低金利で均衡を保っているグローバル経済が、一瞬にして変調を来すリスクと背中合わせだ。
●構造問題には課題
 物価上昇には懐疑的な見方も多い。世界的なデジタル経済の拡大と人口の高齢化、政府債務の増大――。「循環的な面では危機の後遺症がほぼなくなるものの、構造的な成長力の弱さは払拭されていない」。みずほ総合研究所の門間一夫氏はこう語る。失業率が下がるほど物価が上がるという負の相関関係は、右肩下がりの「フィリップス曲線」に示される。危機後はこの連動性が薄れ、日本や米国は失業率が完全雇用と考えられている水準を下回っている割に物価の反応が鈍い。オンラインショッピングの普及や機械化で賃金が抑えられるといった歴史的な構造変化が進んでいるためで、2000年に3%弱だった先進国の潜在成長率は金融危機後に1%強に低下し、いまも1%台半ばだ。経済の実力が弱いままだと、次の景気後退期が来るのが早まる恐れがある。需給ギャップが10年ぶりプラスとはいえ、中国や新興国との競争激化などで先進国がかつてのような成長トレンドを描くのは難しい。サマーズ元米財務長官が唱えた「長期停滞論」に重なるもので、各国当局者の戸惑いは消えない。この先、需要超過の勢いや物価、利上げテンポなど様々な景気の変数がどう推移するのか。世界経済が安泰といえる状況にはまだ遠い。

<サービス付高齢者住宅>
PS(2018.1.30追加):*4のように、三菱地所が老人ホームを開発したり、東急不動産・東京急行電鉄などが共同で高齢者住宅の複合開発に着手したり、野村不動産がシニア住宅を供給する目標を掲げたりしているのは、アクションが速くて感心する。しかし、有料老人ホームはマンション用地より手狭でよいというのは疑問が残るし、高齢者住宅は、サービスも付けられるようにした方がよいと考える。

*4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180130&ng=DGKKZO26271860Z20C18A1TJ2000 (日経新聞 2018.1.30) 三菱地所、老人ホーム開発、大手各社、高齢者住宅に的 狭い敷地を有効活用
 三菱地所が有料老人ホーム開発に参入する。主に東京23区で物件を開発して運営会社に賃貸する。東急不動産も東京急行電鉄などと共同で横浜市で分譲マンションと高齢者向け住宅の複合開発に着手した。不動産大手は市況の見通しが不透明になる2020年の東京五輪以降も見据え、安定した収益が見込める高齢者向け住宅事業を強化している。三菱地所はグループで住宅事業を担う三菱地所レジデンスを通じて参入する。有料老人ホームはマンション用地としては手狭な約1千平方メートル前後の敷地でも建てられることから、開発の柔軟性と収益性は高いと見ている。第1弾として老人ホーム運営のチャーム・ケア・コーポレーションが東京都区部で展開する物件を開発。チャーム社が物件を賃借して2019年春に開業する。物件は地上5階建てで、48室規模となる予定だ。当面は年間1~2棟の老人ホームを開発し、物件の賃貸や売却で15億~20億円規模の売り上げを目指す。地所レジは16年春に開発チームを発足させ、今年度から専属の社員を置いた。東急不動産は昨年、東京都世田谷区で分譲マンション「ブランズ」やシニア住宅「グランクレール」を複合開発した「世田谷中町プロジェクト」を開業したが、第2弾として横浜市緑区の十日市場で同様のプロジェクトを進める。東急電鉄やNTT都市開発の3社共同事業として展開。19年内の開業を目指し、分譲マンションと高齢者住宅を複合開発する。東急不は世田谷や横浜に次ぐ案件開発も模索している。政府は25年に高齢者人口に対する高齢者住宅の整備率を4%、146万人に高める目標を掲げているが、足元では2%程度にすぎない。野村不動産はシニア住宅の供給拡大が不可欠とみて、昨年10月に千葉県船橋市で介護が必要な人や健康な高齢者を対象にした住宅「OUKAS(オウカス)」の1号案件を開業。今後も千葉市や横浜市などでも順次施設を開業する方針で、向こう10年間で40棟、5千戸規模のシニア住宅を供給する目標を掲げている。

<ド阿保の発想>
PS(2018年1月31日、2月2日追加):日経新聞記者がどういう話の持って行き方をしたのかが疑問だが、*5-1のように、「原油から水素を取り出し、燃料を使って船で運んでくる」というのは、発想が悪すぎる。その上で、「石炭火力で作った電力や原油から作った水素でEVやFCVを動かしたら環境への負荷は減らない」などと言う人がいるが、これにはサウジアラムコのアミン社長も唖然とするだろう。サウジのムハンマド皇太子が原油の販売収入に頼った経済を見直す改革を進めているのは、サウジに石油化学製品などを作る会社や技術を誘致するという意味であり、原油から水素を作ることではないのである。なお、日本は、自然エネルギー由来の電力が余り始めて水も豊富であるため、その電力で水を電気分解すれば100%クリーンな水素と酸素が容易に得られる状況であり、このようにして国富をサウジに移転する必要はない。
 また、今日の予算委員会の質問で、「再エネを接続すると再エネ賦課金がかかり、電力消費者に負担になる」と言っていた委員がいたが、私の家の2018年1月の東電の再エネ賦課金は1,950円(10.0%)で、その他の部分が17,429円(90%)であり、17,429円の中には、①火力発電の燃料費 ②稼働していない原発や稼働率の低い発電所を含む従来の発電設備の減価償却費 ③種々のメンテナンス費用 ④事務費 ⑤原発事故処理費 等が含まれているのであり、従来の発電コストは決して安くない。そして、そもそも発電コストを正しく比較するには、発電方法毎に発生した原価の実績を正確に計算する必要がある。
 上のような理由で日経新聞記者のド阿保ぶりにはまいったが、*5-3のように、「九州水素・燃料電池フォーラム&水素先端世界フォーラム2018」が福岡市であり、九大の佐々木副学長が「経済と環境を両立させるキーテクノロジーが水素だ」と語られたり、九州の自治体や民間企業が水素社会の実現に向けた取り組みをしたりしているのは期待を持つことができる。2020年の東京オリンピックは、世界の人々を水素社会の幕開けに招待したいので、是非、オリンピック前に花開かせてもらいたい。

*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180131&ng=DGKKZO26352050R30C18A1MM8000 (日経新聞 2018.1.31) サウジアラムコ、次世代エネで日本と協力、社長会見 脱・原油へ水素製造
サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコのアミン・ナセル社長兼最高経営責任者(CEO)は都内で日本経済新聞記者と会見した。原油販売への依存を減らすため、原油から水素を取り出す技術で日本企業と協議に入ったと明らかにした。アジアで石油化学工場などへの投資も加速する。史上最大規模となる新規株式公開(IPO)は「2018年後半をめどに実行する」と言明した。サウジはムハンマド皇太子が旗振り役となり原油の販売収入に頼った経済を見直す改革を進めている。アラムコ株を最大5%上場して1000億ドル(約11兆円)を調達し、民間企業の育成に投じる計画だ。アラムコは世界の原油生産の1割近くを握り、売り上げの大半を原油販売に依存する。ナセル氏は「原油相場は健全な需要に支えられている」と話し、年内に供給過剰が解消するとの見通しを示した。だが英仏が将来のガソリン車販売を禁じる方針を打ち出すなど脱化石燃料の流れは加速している。このため将来の柱の一つとして温暖化ガスを排出しない水素の利用拡大に向け「原油から水素を取り出す技術の実用化を日本企業と議論している」と述べた。水素は環境への負荷が低い次世代エネルギーの中核となると期待されている。燃料電池車や発電への利用が見込まれ、水素関連のインフラ市場規模は50年に約160兆円になるとの試算がある。アラムコは豊富な埋蔵量を誇る原油から水素をつくることで、将来も原油から収益を得ると同時にエネルギー大国としての地位の維持を目指す。関係者によると、経済産業省系の日本エネルギー経済研究所が日本側の窓口になる。日本は官民を挙げて水素産業の育成を進め、トヨタ自動車や川崎重工業、千代田化工建設などが水素ビジネスの実用化をリードする。アラムコと日本側はすでに実務者級の協議を複数回実施。年内にサウジ国内の試験プラント設置に向けた事業化調査で合意を目指している。足元では原油をガソリンや化学製品に加工して販売する体制の整備を急ぐ。ナセル氏は「エネルギーと化学の複合企業となる」と強調。需要が拡大するアジアに照準を絞り、マレーシアやインドネシアで石油化学工場や製油所に投資する。「インドは重要な市場だ」とも強調した。同国の石油需要は40年まで年率3.3%成長を続ける見通しで「複数の企業と製油所開設に向けて協議中だ」と明かした。今年後半を目指すIPOによる資金調達額は過去最大だった中国のアリババ集団(約250億ドル)を大幅に上回る見通し。ニューヨークやロンドン、香港に加え東京市場も誘致に名乗りをあげる。ナセル氏は「上場市場は政府が最終的に決める」と述べるにとどめた。
*アミン・ナセル氏 1982年キングファハド鉱物資源大学を卒業、サウジアラムコ入社。開発・生産担当の上級副社長を経て、2015年から現職。

*5-2:http://qbiz.jp/article/127215/1/ (西日本新聞 2018年1月31日) 電力7社、燃料高で減益 市場の自由化で顧客流出も
 電力大手10社の2017年4〜12月期連結決算が31日出そろい、北陸、四国、沖縄3電力を除く7社の経常利益が前年同期比で減少した。火力発電の燃料となる原油や液化天然ガス(LNG)の価格が上昇し、利益を押し下げた。市場の自由化に伴う顧客の流出も響いた。燃料費は関西電力を除く9社で上昇し、東京電力ホールディングスなど2割程度増える企業が目立った。北海道電力は経常利益が半減し、中部電力は26・2%、東北電力は18・2%、東電は10・4%それぞれ減少した。一方、関電は3・1%の減益にとどまった。高浜原発3、4号機(福井県)の稼働で火力燃料費を抑制できた。四国電力は伊方原発3号機(愛媛県)の運転によって他の電力への販売が増え、経常利益は約3・4倍となった。沖縄電力は修繕費の低減などで17・0%増益。北陸電力も増益だったが、燃料費がかさんだため純損益は2年続けて赤字となった。売上高は、燃料高騰に伴う料金単価の上昇により10社全てで増えた。18年3月期予想は北海道、中国、四国3電力を除く7社が経常減益を見込む。

*5-3:http://qbiz.jp/article/127324/1/ (西日本新聞 2018年2月2日) 「水素社会」実現へ福岡でフォーラム
 水素エネルギーの普及促進策などを考える「九州水素・燃料電池フォーラム&水素先端世界フォーラム2018」(九州経済産業局、九州大など主催)が1日、福岡市であり、水素関連企業や大学関係者など約460人が参加した。九州大の佐々木一成副学長が「脱炭素・水素エネルギー社会実現への産学官地域連携と将来展望」と題して基調講演。「経済と環境を両立させるキーテクノロジー(主要技術)が水素だ」と語り、低コストで水の電気分解ができる技術や燃料電池の発電効率化に向けた開発が進んでいる現状などを紹介した。自治体や民間企業などの担当者による講演もあり、水素社会の実現に向けたさまざまな取り組みが報告された。

<外国人労働者>
PS(2018年2月1、3日追加):人口減少を問題視する論調が多いが、団塊の世代が働き盛りだった昭和50年代には、生産年齢人口の男女に対して十分な職場を作れなかったため、女性には仕事での達成を遠慮してもらって家事・育児に専念させていた経緯がある。そのため、昭和50年代の女性の労働力率は低く、1979年に国連総会で国連女子差別撤廃条約が採択され、日本も1985年に批准し、我が国でも男女雇用機会均等法が制定されて後、次第に女性の労働力率が上がってきたのである。従って、生産年齢人口の減少で女性や高齢者がフルに働いても失業率が低くなったのは一つの進歩と言わざるを得ず、*6-1の「動員型」の達成は、憲法27条1項の「すべて国民は勤労の権利を有し義務を負う」という条文から当然やらなければならないことである。しかし、労働力生産性(労働力人口1人当たりの生産性)も上げなければ、賃金や報酬を上げることはできないため、教育・訓練による労働の質の向上、技術革新の導入等が必要で、これも生産年齢人口の減少に伴う機械化・大規模化や教育水準の上昇で可能になった面がある。
 しかし、日本は、まだ外国人労働者を締め出している国だ。例えば、*6-2のようなフィリピン人女性が家政婦として働いているような国では、*1-5のように女性医師が仕事を辞める必要はなく、複数の家政婦を雇って子育て期を乗り切っている。これを、「女性間の不平等」などと馬鹿なことを言って高度専門職の女性も社会的に家に閉じ込めようとしたのが日本であるため、その原因を追究して猛省するところから始めなければ論点がずれ続けるのである。
 なお、*6-3のように、農業はロボット化やICT化などスマート農業による労働力軽減を行っても労働力不足が深刻になるそうで、外国人労働者を受け入れることが必要だ。そのためには、農協や農業法人を受け皿にすることができ、外国人の人権や権利を守りながら、異なる文化の接触で今までなかった製品が生まれるような形で外国人労働者を受け入れるのが望ましい。

 

(図の説明:1番左のグラフのように、日本は世界の中で失業率の低い国である。また、左から2番目のグラフのように、国内の失業率には変化があるが、正規雇用に適用される改正男女雇用機会均等法《1999年4月1日施行》、介護保険法《2000年4月1日施行》が導入された後、2000年代前半に失業率が5%代に上がり、非正規雇用《=非常勤》が増えた。さらに、左から3番目のグラフのように、女性の労働力率は次第に上がり、M字カーブは薄くなったが、今でも女性は非正規が多い。また、1番右の図のように、現在、日本は外国人の単純労働者を受け入れていない)

*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180127&ng=DGKKZO26189740W8A120C1EN2000 (日経新聞 2018.1.27) 人口オーナス第2幕に備えよ
 少子化・人口減少が進むと、経済・社会を支える生産年齢人口(15~64歳)が絶対数でも、人口に占める比率としても減少・低下する。いわゆる「人口オーナス(重荷)」現象である。この人口オーナスの中にあって、持続的な成長を維持するためには「生産年齢人口1人当たりの生産性(生産年齢人口生産性)」を高めるしかない。生産年齢人口が5%減っても、生産年齢人口生産性が5%上昇すれば、人口オーナスの負の影響を帳消しにできる。実際はどうだったか。2012年度と、政府見通し数値を用い17年度を比較してみよう。この間、生産年齢人口は5.3%も減少したが、実質GDPは7%増大した。生産年齢人口生産性が13%も上昇したからだ。すると、日本経済は人口オーナスを生産性の上昇で克服してきたことになる。しかし話はそう簡単ではない。この生産年齢人口生産性を引き上げるには2つの道がある。一つは、生産年齢人口との対比でみた労働力人口の比率(労働力率)を引き上げることであり、もう一つは、「労働力人口1人当たりの生産性(労働力生産性)」の引き上げである。前者は働いていなかった女性、高齢者が働くようになることであり、いわば動員型の道である。後者は、働く人がより効率的に働くようになることであり、教育・訓練による労働の質向上、技術革新の導入、生産性の高い分野への労働移動などによってもたらされる効率性向上型の道である。再び12~17年度を振り返ると、女性や高齢者の参入増で労働力率は8.4%上昇した一方、労働力人口生産性は4.1%の上昇にとどまった。つまり、近年、人口オーナスの悪影響を克服できたのは、主に動員型によるものだったわけだ。人口オーナス第1幕は動員型による生産年齢人口生産性の上昇で乗り切ってきた。だが、女性や高齢者の参入は近く限界に達するだろう。女性労働力のM字カーブは解消傾向だし、もともと高水準だった高齢者の就業率をさらに引き上げることは次第に難しくなる。動員型が限界に達した後の人口オーナス第2幕においては、効率性向上型による労働力生産性の上昇が必須となる。今からそれが実現できるような働き方改革を進めていくべきである。

*6-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180130&ng=DGKKZO26271910Z20C18A1MM8000 (日経新聞 2018.1.30) 共生への鍵(1)いずれ誰も来ない国に、競争力 見つめ直そう
 人口減で日本の働き手が減る構図が続く限り、年々増える外国人労働者は存在感を高める。国際的な人材獲得競争を見据えてどのように受け入れていくべきか。共生の輪を紡ぐ方策を探る。中国・上海市内には多くのフィリピン人女性が家政婦として働く。マリア・トマスさん(仮名、38)は「子供たちと離れるのはつらいが、家族を支えなくてはいけない」。月収は約8千元(約14万円)。日本で働いた経験があるが「日本よりも2割多い。中国の方が条件がずっと良い」。中国の平均年収(2015年)は6万2千元と20年前の12倍。就労を認めない中国に旅行ビザで入国する不法滞在の状態だ。地元メディアによると中国本土のフィリピン人家政婦は約20万人。あっせん業の男性は「ビザなど規制が緩和されれば殺到するだろう」と話す。中国93%増、韓国444%増――。国連統計によると00年から15年間で外国出身者の人口は日本で21%増だが近隣国も軒並み増えた。経済成長によりアジアで働く労働者の賃金もうなぎ登りだ。日本貿易振興機構の16~17年の調査を10年前と単純比較すると、一般工職の月給はインドネシア・ジャカルタが2倍近く増え、ベトナム・ハノイも3割上昇。日本の半分に満たない都市も多いが、格差は徐々に縮まる。いわゆる単純労働でも受け入れに制約ばかりが目立てば、いずれ選ばれない国になりかねない。日本に技能実習生を最も多く送り出すベトナム。ルオン・バン・ベトさん(27)は実習生として日本に行くのをやめ、台湾を出稼ぎ先に選んだ。技能取得が名目の実習制度では滞在が原則3年間で、台湾の方が長く滞在できると考えた。実習生を日本に派遣する機関の代表、レ・チューン・ソンさん(32)は「今後5年は日本に行きたがる若者が伸びるだろうが、その先はどうなるか」。こんな思いを日本側に伝えている。日本は15年から25年までの10年間で15~64歳の男性人口が270万人減る。これを補う高齢者や女性の就労も限界が近い。25年には団塊の世代が全て75歳以上になる。各年齢層の労働参加率の上昇ペースが2倍に速まり、女性の参加率が男性並みになっても、就業者数は25年をピークに減少に転じるとの試算もある。外国人材に三顧の礼で来てもらわなければいけない時代が現実味を帯びる。待っていても経済力が引き寄せるというのはもはや幻想だ。官民ともに外国人の立場になって魅力を売り込む知恵を練り上げる必要がある。起業をめざす人材にビザを認める特区となった福岡市では、手厚い支援体制で20人超が会社を起こした。「起業の準備期間が半年というのは短い。1年にしてくれれば」。フランス人のトマ・ポプランさん(29)の注文にも国が対応を検討中だ。受け入れ分野を一気に広げるのが難しくても、こうした取り組みは日本の競争力を引き上げる。意欲と質の高い外国人材を得るために、残された時間は少ない。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p43091.html (日本農業新聞論説 2018年1月24日) 農業労働力不足 施策総動員で対応急げ
 空前の人手不足が、農業生産基盤の弱体化に拍車を掛けている。この先、日本の食と農を誰が支え、担うのか。主役は若い就農者。新技術活用や広域での農作業受委託も欠かせない。外国人材の位置付けも課題だ。施策、人、IT、先進ノウハウを総動員して、労働力不足に対応しなければ農業に未来はない。政府は「農業の成長産業化」を目指すが、担い手や労働力不足という構造問題抜きには語れない。今国会の柱「働き方改革」論戦の重要テーマだ。わが国の基幹的農業従事者数は160万人弱(2016年)。10年で3割約65万5000人減った。しかも65歳以上が65%を占め減少は加速していく。半面、明るい兆しも。新規就農者は2年連続で6万人(16年)を超え、49歳以下は3年連続で2万人超えとなった。法人経営体の増加を受け、雇用就農者の伸びが堅調だ。だが減少には全く追い付いておらず、絶対数の不足は深刻さを増す。それを端的に表すのが有効求人倍率(16年)。米麦や園芸で1・63、畜産で2・34。全産業平均の1・25を上回り、求人しても人が集まらない状況だ。特に法人経営の従業員や実習生、個人経営では農繁期のパート、農作業受託組織はオペレーターなどの人材が不足している。経営形態が個人経営から法人経営へと移行していく中で、雇用問題は経営問題に直結する。地域農業にとっても生産基盤を維持できるかの瀬戸際にある。日本農業法人協会、JA全中など全国連と全国農業会議所で組織する農業労働力支援協議会が昨年末、農業人材・労働力不足への対策を提言にまとめたのは、こうした危機感が背景にある。提言は「労働力不足解消に向けた対策の拡充」と、外国人技能実習制度の改善など「外国人の活用」に大別される。対策では就農環境の整備、広域での農作業受委託の仕組み作り、省力化技術の開発などを挙げ、行政や各団体の役割、関係機関との連携を明記。新規就農者増加の流れを着実なものにし、将来が見通せる経営の安定化を図ることが、問題解決の本筋である。併せて、ロボット農業技術や情報通信技術(ICT)などスマート農業による労力軽減、省力化を急ぐべきだ。外国人技能実習生については、昨年末施行の技能実習法で監理団体の許可制や実習生の保護強化など適正な運用を求めており、提言でも新制度の定着をうたう。併せて、複数の経営体や通年実習など運用面の改善を要望するが、技術移転の本旨に沿った運用に徹するべきだ。国家戦略特区を活用した外国人材の受け入れ拡大も提言したが、体制や法制度整備などを課題に挙げる。コスト優先の単純労働拡大に安易に走ることなく、外国人の権利保護、人権尊重など社会的・文化的側面も含め、この課題に向き合うべきだ。労働力問題は社会と農業の持続可能性を問い掛けている。


<惨めで悲しすぎる最期>
PS(2018.2.4追加):*7-1、*7-2の札幌共同住宅で入居者の男女11人が亡くなった火災では、建物の1階中央部に灯油ポリタンクが置いてあり、各部屋に灯油ファンヒーターが設置されていたそうだが、これなら高齢者の多い居住者のうち誰が失火してもおかしくないため、周辺住民を含む全員にとって危険な造りだったと言わざるを得ない。また、これは旅館だった建物を借りて生活保護受給者らを受け入れ、住居や就職先が見つかるまで一時的に居住させていたもので月3万6千円だったとのことだが、生活困窮者は家賃の安い公営住宅に入れて必要な人には介護や生活支援を行ったり、老人ホームに収容したりするくらいのことはすべきだ。

*7-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/161078 (北海道新聞 2018.2.2) 札幌の共同住宅火災、火元は1階か 付近に灯油ポリタンク
 1月31日午後11時40分ごろ、札幌市東区北17東1、生活困窮者の支援を目的とした木造2階建て共同住宅「そしあるハイム」(16人入居)から出火し、入居者とみられる男女計11人が死亡した火災で、階段のある1階中央部分の燃え方が激しく、階段付近には暖房用の灯油入りポリタンクが置かれていたことが2日、関係者への取材で分かった。札幌市消防局などは何らかの火が灯油に引火し、短時間のうちに住宅全体に燃え広がったとみて出火原因を慎重に調べている。共同住宅は路上生活者らを支援する札幌の合同会社「なんもさサポート」(藤本典良代表)が運営。生活困窮者が新たな住居や就職先を見つけるまで一時的に受け入れていた。同社などによると、共同住宅は元旅館で築約50年が経過していたという。消防は老朽化に加え、厳冬下の空気の乾燥なども重なり、火の勢いが増したとみている。道警は1日午後から現場検証を開始。消防によると、燃え方が激しい1階中央部分の付近には調理場があるが、当時、火を使っていなかった。藤本代表によると、各部屋には灯油ファンヒーターが設置されていた。同社関係者によると、1階中央部分の階段付近には普段、ヒーターへの給油用の灯油入りポリタンクが置かれていたという。1階東側の物置でも複数の灯油入りタンクが保管され、火災現場からは焼けたポリタンクが数個見つかったという。
■安否確認ができていない方々
 道警は1日、札幌市東区の「そしあるハイム」の火災で、安否の確認ができていない40~80代の住人11人を発表した。名前と年齢は次の通り。
▽竹内正道さん(85)▽森ハナエさん(82)▽渡辺静子さん(81)▽大友靖男さん(78)▽沢田昌子さん(76)▽今井栄友(えいとも)さん(72)▽渋谷新一さん(72)▽川勝正幸さん(67)▽湯浅隆之さん(66)▽白府幸光(しらふゆきみつ)さん(61)▽西山被佐雄(ひさお)さん(48)

*7-2:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/177275 (佐賀新聞 2018.2.4) 札幌共同住宅火災、より踏み込んだ支援を
 生活保護受給者らの自立支援を目的とする札幌市の共同住宅が全焼し、11人が死亡した。築50年ほどの老朽化した木造の建物はあっという間に炎にのまれた。16人いた入居者の大半は高齢で身寄りもなく、中には介護を必要とする人もいた。1人1部屋で各部屋には火災報知機があったが、スプリンクラーは設置されていなかったという。厚生労働省によると、生活困窮者向けの「無料・低額宿泊所」は、全国で530カ所以上が自治体に届け出て、約1万5千人が利用している。一方、無届けの施設も1200カ所余りが確認されており、約1万6500人が身を寄せている。火災が起きた札幌の住宅は無届けの一つだった。近年、こうした施設で火災が相次ぎ、犠牲者が後を絶たない。支援団体などが築40~50年の木造の建物を改装し、安い家賃で困窮者らを受け入れることが多いが、防火対策を充実させるのが難しいという。資金的余裕がなく、夜間に人を配置するといった対策を取れば家賃に跳ね返り、住まいを必要とする人たちが住みにくくなるからだ。厚労省は宿泊所について、防火態勢や個室面積の最低基準を定めるなど規制を強化する方針を固めている。無届け施設の実態把握も急がなければならない。さらに多くの施設に対して資金的にも人的にも、より踏み込んだ支援を行う必要がある。火災で11人が亡くなったのは札幌市東区の「そしあるハイム」。市内にある合同会社が以前は旅館だった建物を借りて運営。住居や就職先が見つかるまで一時的に生活保護受給者らを受け入れ、16人が保護費などから月3万6千円を支払っていた。各部屋に石油ファンヒーターがあった。昼間は職員が常駐しているが、火災が発生した深夜の時間帯は不在だった。ハイムでは入居者に食事を提供していたことなどから、市は無届けの有料老人ホームに当たる可能性があるとみて調査する。法律で定められる防火対策は建物の用途や規模により異なるが、有料老人ホームであれば誘導灯などの設置を求められ、自力避難の難しい入所者が一定割合を超える場合はスプリンクラーの設置も義務付けられる。市はこれまで4回にわたりハイムに調査票を送付した。だが回答はなく、実態を把握できなかったという。運営会社が防火対策の費用がかさむのを懸念し、応じなかったとの見方も出ている。秋田県横手市では昨年8月、精神障害者を多く受け入れていた木造アパートが全焼し、5人が死亡。2015年5月には、宿泊者の大半が生活保護受給者だった川崎市の簡易宿泊所の火災で11人が亡くなるなど、惨事が相次いでいる。建物が古く、狭い居室が密集する構造であるため、火災に見舞われると、被害が拡大しやすいとされる。ただ困窮者向け施設を必要とする人はこれからも増えるだろう。厚労省が16年に実施した調査では、住まいのない困窮者は首都圏を中心に03年の2万5千人余りから約6200人にまで減少したが、高齢化と長期化という傾向が見て取れる。そうした人たちの住まいの安全をどう確保していくか。規制強化の一方で、施設への財政支援はもとより、施設の職員がいなくなる夜間に地域の協力を得て人員を派遣するような仕組みを整えることも求められよう。

<防衛の無駄遣い>
PS(2018年2月7日追加):*8-1のように、佐賀県神埼市の住宅に陸自攻撃ヘリが墜落し、原子力燃料も飛散そうだが、政府は「佐賀空港の西側に陸自オスプレイ17機・ヘリ50機を移駐する計画を基本的に変えない」としているそうだ。しかし、この計画は、①田畑をつぶし ②海苔養殖が盛んな有明海を汚す危険性がある上、 ③佐賀空港に配備する機体は、長崎県佐世保市の陸自相浦駐屯地に新設する離島防衛部隊「水陸機動団」と連携運用を予定しているそうで、無駄遣いにも程がある。特に、③については、尖閣諸島を中心とする離島防衛部隊を長崎県と佐賀県という離れた場所で運用し、離島防衛に海自・空自ではなく陸自の水陸機動団とこのようなヘリを使って“攻撃する”という設定自体が合理的でない。また、戦争の道具に原子力を使用すれば墜落・撃沈時に周囲を汚染するため(まさか、想定外ではあるまい)、離島防衛の旗を掲げても必要最小限の費用で環境を汚さない有効な方法を考えるべきである。しかし、NHKは、このような議論も行われている予算委員会を放送せず、よくあることなのでとっくの昔に解決していなければならない*8-2のような積雪被害と角界のゴシップ(??)ばかりをしつこく報道し、重要な論点を国民の目から隠しているのが問題だ。そして、以上のような政策をとりながら、国民の生命・財産を護ることを大切にしているとは、とても言えないのである。

*8-1:http://qbiz.jp/article/127598/1/ (西日本新聞 2018年2月7日) 墜落「最悪のタイミング」 防衛省、オスプレイへの影響懸念
 佐賀県神埼市の住宅に陸上自衛隊AH64D攻撃ヘリコプターが墜落した事故で、小野寺五典防衛相は6日、佐賀空港への陸自オスプレイ配備計画への影響について「予断することは差し控える」と述べるにとどめた。政府筋は「計画は基本的に変えない」とするが、影響が出るのは必至とみられる。防衛省内には「最悪のタイミングだ」と嘆く声が広がっている。計画では、佐賀空港の西側に2019年度以降、陸自オスプレイ17機や今回墜落した機体が所属する陸自目達原(めたばる)駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)のヘリ50機が移駐する。佐賀県の山口祥義知事は昨年7月に計画受け入れに前向きな姿勢を示したが、米軍オスプレイの相次ぐ事故で判断を保留している。防衛省幹部は「米軍ヘリの不時着問題があった沖縄県名護市長選を乗り越えたので、佐賀県の陸自オスプレイ配備も進められると思っていたが、最悪のタイミングだ」。その上で「地元は反発ムードが高まるだろう」と声を落とした。佐賀空港配備の機体は、3月に陸自相浦駐屯地(長崎県佐世保市)に新設する離島防衛部隊「水陸機動団」と連携運用を予定しており、計画見直しは考えていない。「ただでさえ理解が進んでいないのに、丁寧に説明していくしかない」(政府高官)と、引き続き理解を求めていく方針だ。
   ◇   ◇
●目達原の全ヘリが飛行見合わせ
 陸上自衛隊は6日、墜落、炎上したAH64D攻撃ヘリコプターが所属する目達原駐屯地の約50機の全ヘリについて、5日夕の事故後、飛行を見合わせていることを明らかにした。事故を受けて、自衛隊が運用する全てのヘリを整備点検しているためという。佐賀県で唯一の陸自駐屯地で、陸自西部方面航空隊や第4師団第4飛行隊が所属している。
   ◇   ◇
●佐賀県知事が現場視察 「けがの女児支える」
 佐賀県の山口祥義知事は6日午前、陸上自衛隊ヘリコプターが墜落した同県神埼市千代田町の事故現場を視察した。同市の松本茂幸市長も同行した。山口知事は「ここは住宅地で小学校や幼稚園もあり、憂慮すべき状況」と述べた。墜落した民家の家族と面会後、けがをした女児について「かなりショックを受けていると聞いた。全力で支えていくと話した」と記者団に明かした。これに先立ち、6日未明、現地派遣された大野敬太郎防衛政務官は県庁で副島良彦副知事と会談し「心からおわび申し上げる。原因究明、再発防止に全力を挙げたい」と陳謝。副島副知事は「県民の不安が高まっている」と述べ、原因調査に万全を期すよう求めた。

*8-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL272JM7L27PTIL004.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2018年2月7日) 真っ白な世界、立ち往生する大型車 記者が見た雪の福井
 目の前は、空と地上との境界がわからないほど真っ白な世界が一面に広がっていた。7日午前7時ごろ、通行止めの国道8号を迂回(うかい)し、福井県あわら市の県道周辺の光景を見た。点在する住宅は、1階の半分くらいまで雪に埋もれていた。他は雪のじゅうたんがぎっしり。田畑か道路か、駐車場か。大阪出身で土地勘のない私には見当もつかない。福井市内に向かう主要な県道はある程度除雪され、車道と歩道の間に積み上げられた雪が巨大な壁となり、歩行者の姿が見えない。車はゆっくり進んだが、路上の雪の塊に乗り上げると、車体は身体が浮き上がるほど上下左右に大きく揺れた。道路脇には、大型トラックがあちこちで立ち往生。屋外駐車場の車は雪にすっぽり包まれ、巨大な蚕の繭が並んでいるようだ。車の窓越しにみると、除雪作業の住民たちの姿がある一方、完全に玄関が開かないほど雪に埋もれている民家もある。高齢者が除雪できる積雪量ではない。自然の脅威をまざまざと見せつけられる光景だった。福井市のえちぜん鉄道職員の鈴木和緒(かずお)さん(66)は7日午前8時半から、自宅前の除雪作業をしていた。高齢の母と妻と3人暮らし。「子ども3人は県外にいるから除雪作業は1人でやるしかない。(最大196センチの積雪を記録した1981年の)『56豪雪』も経験したが、それ以来の雪の量だ」と驚いていた。「福井の国道で1千台の車が立ち往生している」との一報で、私は6日午後2時、大阪市内を四輪駆動車で出発した。同日夕には福井県鯖江市の北陸自動車道の鯖江インターチェンジを降り、国道や県道を通って福井市内を北上し、あわら市にたどり着いた。福井市内は車が流れず、約20キロの道のりを進むのに3時間半。北陸道を降りた直後の国道8号では、30分ほど車が前に進まず、「立ち往生してしまったのではないか」とひやひやした。福井市内のコンビニエンスストアにも立ち寄ったが、パンやおにぎりといった食料品はほぼ完売。ガソリンスタンドではタンクローリーが来ないため、1台につき給油は20リットルまでという制限を設けていた。

<服育について>
PS(2018年2月10日追加):*9の銀座の中央区立泰明小で、8万円超のアルマーニ監修の服を標準服に決めたそうだが、小学生はすぐ大きくなるため、何回も買い変えなければならず、保護者には負担ではないだろうか。私は服育もある程度は大切だと思うが、下の1番左のアルマーニの標準服は、真ん中の学習院や右端の星野学園の制服と比較して特にデザインが優れているようには見えない。それより銀座の小学校なら、卒業生や保護者にもデザイナーがいる筈なので、かわいい夏服・冬服のデザインをいくつか出してもらい、その中から一番良いものを選んで、銀座ユニクロを通して日本の季節や子どもに適した生地で安く縫製してもらう方が賢いと考える。いくつかの区立小学校で同時に採用すれば、さらに安くなるし・・。

       
  2018.2.10佐賀新聞  学習院小学校 お茶大附属小学校     星野学園 

*9:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/180125 (佐賀新聞 2018年2月10日) アルマーニ制服校長「変えない」、銀座の区立小
 高級ブランド「アルマーニ」が手掛けた制服を標準服として今春から採用することにした東京・銀座の中央区立泰明小学校の和田利次校長は9日、区役所で記者会見を開き「これまでより高額になるが、ご理解いただき購入してほしい。(採用を)変える考えはない」と述べた。一方で「各家庭に相談して進めてくれば良かったと反省点を持っている」とも話した。和田校長は採用した理由について「銀座の町の学校として発展していくために、ブランドの力をお借りするのも一つの方法と思った」と説明。「学校として統一性ある服を着ながら、同じ学舎で子どもたちが過ごすこともいいのではないかと考えた」と強調した。アルマーニが制服のデザインを監修しており、上下の服にシャツ、帽子、バッグなどを含めると、保護者の負担は8万円を超える場合もある。和田校長は高額な価格に「本校の保護者ならそれぐらいは出せるのではないかと思った。泰明小でなければこういう話は進めない」と語った。

| 経済・雇用::2018.1~ | 05:43 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.1.15 新エネルギーと新技術 (2018年1月15、16、17、18、19、21、22、23、24、27、28、29日に追加あり)
 太陽 あけまして、おめでとうございます。今年も、よろしくお願いします。 

(1)即時脱原発の必要性
 経産省が原発新設の議論に着手し、東京電力は原子力事業を安定的に続けるため、国に経営環境の整備を求めているそうだ。しかし、原発ほど金のかかるエネルギーはなく、著しい公害を垂れ流した企業自身が責任を持たないビジネスは他にない。そのため、これでも目が覚めずに原発の再稼働や新設を進めるのであれば、ビジョンなき日本は世界の敗者になるという*1-2の見解に、私は、全く同感だ。エネルギー基本計画で、原発を「重要なベースロード電源」としている経産省の先見の明のなさこそが、日本経済の重大なリスクである。

 そのような中、*1-1のように、脱原発・自然エネルギー推進の民間団体「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)」が、国内原発の即時廃止を目指す「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」の骨子を発表し、顧問の小泉元首相と同じく顧問の細川元首相が、国会内で記者会見された。私も、原自連会長で城南信用金庫顧問の吉原毅氏と同様、「自然エネルギーへの転換は経済界にとってもビジネスチャンスであり、テロで原発が狙われることもなくなる」と考える。さらに、日本国内で自然エネルギー技術を磨いておくことは、今後、東南アジア、アラビア、アフリカ諸国が、自由主義経済の中に新興プレイヤーとして参加してくる時に、売れるものができるという意味で重要である。

 なお、経団連の次期会長に内定した原発メーカー日立製作所の中西会長は、日立製作所が英国で進める原発事業に融資額1兆1千億円に対する債務保証(=問題が起こったら日本国民の税金を投入するということ)を日本政府からしてもらうため、「再稼働は必須」などと日本政府の言いなりになるだろう。しかし、日立は、みやぎ生活協同組合・宮城県富谷市と水素社会構築を推進する実験を行い、太陽光発電由来の電力で水を電気分解して水素を製造するサプライチェーン構築に向けた実証をするそうで、これは環境省の「平成29年度地域連携・低炭素水素技術実証事業」に採択されているのだ。つまり、エネルギーに関しては、過去と決別した選択と集中を行うべき時が来ているのである。

(2)持たざる人々にとっての太陽光発電とゼロエネルギー住宅



(図の説明:一番左のグラフのように、世界の太陽光発電導入量は自然な等比級数を描いて増加しているが、日本の太陽光発電導入量は自然でない低迷を続けており、恣意的に導入が抑えられていることがわかる。また、太陽光発電の発電コストも、他国と比較して2倍前後の高止まりで、日本の太陽光発電システムのコストはヨーロッパの1.8倍に近い。しかし、太陽光発電は、先進国だけでなく、電気が引かれていなかった地域でも容易に取り入れることができ、生活を一変させることができるものであるため、日本も決して疎かにすべきではない)



(図の説明:著しい省エネを実現する方法に地中熱を利用したヒートポンプがあり、これは世界で使用可能だ。そして、これは、住宅のみならず施設園芸《ハウス栽培》にも使うべきである)

 昼は太陽が照りつけ、夜は漆黒の闇が訪れていたタンザニアの農村地帯で、*1-3のように、日本で技術開発された太陽光発電とLEDが活躍し、住民の生活を変えた。次に新興国となる11億人の人口を擁するアフリカやインド北部のピパルガオン村で、大規模発電所を飛ばして太陽光発電等の自然エネルギーが使われるのは、これまで先進国と言われていた国を追い越す可能性さえ秘めている。しかし、日本も、既得権益者の妨害によって、これまで“持たざる国”だった地域よりも遅れるのは避けるべきである。

 なお、その気になれば、太陽光発電装置で充電したランタンを25円で貸し出すことができるのに、日本では太陽光発電による電力は高いと言われ続け、太陽光発電装置の価格が高止まりしているのは恣意的だろう。

 さらに、*1-4のように、アルジェリアは、東京大学の鯉沼客員教授らが提唱したサハラ砂漠の砂から生産した結晶シリコンを太陽電池パネルに利用して、日照の豊富な北アフリカで大規模な太陽光発電を展開する「サハラ・ソーラー・ブリーダー(SSB)」に軸足を移すそうだ。確かに、その国に豊富にある資源を使って開発するのが最も賢い。SSBには、アルジェリアの国営電気ガス公社傘下の関連企業など複数の現地企業が参加の意向を表明し、ドイツの関連企業や日米欧の金融機関が関心を寄せているそうだが、こういうベンチャー企業は将来性があるだろう。

 他に、日本の技術のうちインド・アラビア・アフリカ等で人気が出そうなのは、*1-5のゼロエネルギー住宅だ。これらの地域では、太陽光発電による電気エネルギーから家庭の消費量を引いても、エネルギー収支はゼロどころかプラスになると思われる。しかし、日本製は、ちょっといいと非常に高価なため、輸出では外国製に負けるのが問題だ。

(3)これまで持たなかった人々が選択するEV
 世界の自動車市場で新興国が台頭し、*2-1のように、インドの2017年の新車販売台数は401万台となってドイツを抜き、世界第4位に浮上したそうだ。これは、インドの人口が世界第2位の約13億4,000万人であることを考えれば当然で、インドの自動車保有台数は今後も増え続けるだろう。そして、2020年には日本も抜くとみられており、これらの国が大気汚染を引き起こす化石燃料車を使う選択肢はない。

 また、世界最大の中国市場も、2017年の新車販売台数が2,887万8,900台で電気自動車(EV)などの販売が約5割伸びたそうだが、中国もインドと同様に化石燃料車を使用する選択肢はない。ちなみに、2017年の世界全体の自動車販売台数は9,451万台で、中国・インドの2カ国で世界の1/3を占めるそうで、中国政府は、購入補助金・ナンバープレートの発給・メーカーへのEV販売の義務付けなどでEVを優遇して新エネルギー車を伸ばし、今後は、EVの購入者が充電切れを心配する「走行距離不安症」にならないよう、*2-2のとおり、2020年までにEV充電施設を480万カ所設置するそうだ。私は、駐車場に、デザインよく太陽光発電Roofを取り付けて、EVの充電施設と連結すれば、無料に近い安さでEVに充電できると考える。

 さらに、自動車先進国のアメリカでも、北米国際自動車ショー(通称デトロイトショー)で、*2-3のように、EV化・自動運転化の波がショーの雰囲気を変えつつあるそうだ。

 EVの「走行距離不安症」を煽った張本人の日本でも、*2-4のように、トヨタとマツダが設立したEVの基盤技術を開発する新会社にスズキ、スバル、ダイハツ、日野自動車の4社が参加し、各社の知見を共有して開発を加速しつつ、コストを抑えるそうだ。しかし、自動車のEV化は、1995年前後に夫の学会に同伴してインドに行き、当時のインドを見て私が経産省に提言したものであるため、海外勢の方が先行して今頃あせっていること自体がおかしく、その原因を改めなければ他の先進技術でも同じことが起こるのである。なお、*2-5のように、三菱自動車もEVを大幅に拡充することにしたのは、移動手段を徹底してEVか燃料電池に変更し、その動力を国産の自然再生可能エネルギー由来に変えるにあたって選択肢が増えるため良いことだ。

(4)電力自由化とエネルギー新時代



(図の説明:農業も太陽光発電とハイブリッドで収益を上げることができ、地域によっては風力発電も使えるだろう。風力発電を使う際は、3枚羽の大型発電機より、大型発電機と同等の力を出す小型で安価な製品を作るのがよく、これは理論的に可能だ)



(図の説明:九州大学は、一番左の図のように、輪の中を風が通ると強くなる風レンズ風車を開発した。真ん中の図のように、養殖場などに設置し、漁船も電動化して、漁業は発電とハイブリッドで収益を挙げられるようにすれば、いろいろな問題が同時に解決するだろう。なお、洋上風力発電も、コスト削減を行い、環境を考えながら行うべきであることは他と同じだ)

 日本でも、電力自由化により、誰でも電力を販売することができるようになったため、*3-1のように、久留米商工会議所の若手経営者が新電力会社「くるめエネルギー」を設立して、2018年春のサービス開始を目指しているそうだ。私も、大手電力会社に電気料金を払って資金が地域外に流れるよりも、市内の電力会社に電気料金を払って地域内で資金を循環させ、市の税収増に繋げた方が地域にとってよいに違いないと考える。また、商工会議所青年部なら、付随サービスに関する工夫にも長けていそうであるため、社長が「一番の目的は地方創生。各地の青年部からも注目されており、全国のモデルケースになりたい」と語っておられるのは楽しみだ。

 それでは、どうやって発電するのかと言えば、太陽光発電はもちろんのこと、*3-2のように、北九州市は、響灘地区に洋上風力発電の風車組み立てや専用積み出し岸壁などを整備する方針を固めたそうだ。しかし、私は、3枚羽の大型風車は効率が悪い上に景観を害するため、上の図のように、3枚羽の数倍のパワーが出る小型風車を開発した方が賢明だと考えている。また、魚や海苔の養殖施設に合わせて建設すれば、漁業者が船を電力船にして充電した上、ハイブリッドで収入を得ることが可能になるため、多くの問題が解決するだろう。

 しかし、*3-3、*3-4のように、日本では、経産省が「①同じ地域で複数の事業者が巨額の投資で送電線を作るのは社会全体として非効率なので、送配電事業は大手電力会社の独占が今後も続く」「②東日本と西日本をまたぐ送電は、電力の周波数が異なる」「③再生可能エネルギーの発電量の変動が・・・」などと言っている。しかし、②③のように、技術的にはすぐ解決できることを長期間解決しないのは、まさに①のように、大手電力会社の独占状態で甘えているからであり、独占や寡占など競争のない状態が経済を非効率にして悪影響を与えるというのは経済学の常識だ。日本の経産省はそんなことを知ってか知らずか(私は前者だと思うが)、日本経済の正常な発展を邪魔するので、困るわけである。

(5)伊方原発差止仮処分に関する広島高裁決定について
1)伊方原発差止仮処分
 広島高裁は、*4-1のとおり、四電に対し、周辺住民の人格権侵害に基づいて、2018年9月30日まで伊方原発3号機原子炉の運転差止を命じる仮処分決定を言い渡し、これは初めての高裁での原子炉運転停止を命ずる決定で意義深いそうだ。そして、この決定の根拠は、阿蘇の噴火は過去最大の噴火(約9万年前)規模を想定すべきで、その時は火砕流が伊方原発敷地に到達した可能性が小さいとは言えず、より小さな規模の噴火の際の降下物の層厚や大気中濃度の想定も過小評価であると認め、伊方原発の立地は不適であるとしている。

 また、この決定は、国民の人格権に基づき、国民を放射性物質の危険から守るという観点から司法の果たすべき役割を見据えてなされた画期的なものでもあり、ここで示された火砕流噴火に関する判断は九州、四国、北海道、東北の原子力施設に、降下火砕物に関する判断は、他の全ての原子力施設に当てはまるため、政府はこの決定を受けて速やかに原発を廃止して再生可能エネルギーを普及させ、これまで原発が立地してきた地域は原発に依存することなく自律的発展ができるように必要な支援を行うことを求めるとしており、私も全く同感だ。

 この決定に対しては、*4-2の東京新聞は、仮処分の効力が2018年9月末で切れることを指摘しつつ好意的であり、*4-3の西日本新聞は「九州にも警鐘鳴らす判断」としており、*4-4の南日本新聞(川内原発の地元)も「火山噴火は、九電川内原発の近隣住民も共通して抱く懸念材料だ」としており、*4-5の愛媛新聞は社説で「ある程度の安全で許されるといった、住民の不安に向き合わない乱暴な論理は決して容認できない」としている。

 それでも、*4-6で西日本新聞が記載しているように、九電玄海原発の再稼働を巡って、「神戸製鋼の製品データ改ざんがあっても玄海再稼働に問題はない」と九電社長が佐賀県知事に報告しているが、いくら細かな安全対策を積み重ねても、原発が事故を起こしたら終わりであることを、地元住民は忘れてはならない。

<脱原発と世界の潮流>
*1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201801/CK2018011102000129.html (東京新聞 2018年1月11日) 【政治】原発即時ゼロ法案 小泉元首相ら野党連携へ
 脱原発や自然エネルギーを推進する民間団体「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)」は十日、国内原発の即時廃止を目指す「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」の骨子を発表した。国会内で記者会見した顧問の小泉純一郎元首相は「安倍政権で原発ゼロを進めるのは難しい」と断言し、他の勢力を結集し脱原発を進める意欲を強調した。同様の法案提出を目指す立憲民主党など野党も連携する意向で、国会内外で脱原発に向けた法案提出の機運が高まった。法案の「基本方針」には、運転中の原発を直ちに停止し、停止中の原発は今後一切稼働させないと明記。原発の新増設も認めず、核燃料サイクル事業からの撤退も盛り込んだ。今後は太陽光や風力などの自然エネルギーに全面転換し、二〇三〇年までに全電力の50%以上、五〇年までに100%を目標に掲げる。国には「責務」として、目標の達成に必要な措置を求めた。今後、各政党に法案への賛同を促し、二十二日に召集予定の通常国会への提出を目指す。脱原発を巡っては、立憲民主党が同様の法案提出を目指す。原自連は法案発表後、立憲民主幹部らと意見交換して連携を確認。今後、希望の党など野党各党との意見交換も予定する。安倍政権は原発再稼働を進めてきたが、東京電力福島第一原発事故から三月で七年を迎えるのを前に、政党と民間との間で脱原発を目指す連携が再び強まる。小泉氏は十日の会見で、「自民党には安倍晋三首相が(原発政策を)進めているから仕方ないなという議員が多いだけ。来るべき首相が原発ゼロを進める方針を出せば、がらっと変わる。野党がどう出るかだ」とも指摘し、自民党総裁選や国政選挙での原発政策の争点化に期待を寄せた。原自連会長で城南信用金庫顧問の吉原毅氏も会見で自然エネルギーへの転換に関して「経済界としても大ビジネスチャンス。テロで原発が狙われることもなくなる」と訴えた。原自連は昨年四月に発足し、二百以上の民間団体や企業などが加盟。十日の会見には小泉氏とともに顧問を務める細川護熙(もりひろ)元首相らも出席した。
◆経団連次期会長「再稼働は必須」
 国内の原発四十基のうち、現在稼働しているのは関西電力高浜原発3、4号機(福井県)と、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の計四基。政府は原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、他の原発も再稼働させる方針。経済界も「再稼働は必須」と安倍政権に歩調を合わせる。稼働中とは別の十基について、原子力規制委員会が新規制基準に適合していると判断し、このうち関電大飯原発3、4号機(福井県)と九電玄海原発3、4号機(佐賀県)が三月以降に再稼働する見通し。一方、適合と判断された四国電力伊方原発3号機(愛媛県)については先月、広島高裁から今年九月末までの運転を禁じる仮処分命令が出された。伊方を含めて全国十四の原発を巡り、運転差し止めを求める訴訟が起こされている。菅義偉(すがよしひで)官房長官は十日の記者会見で「安全性の確認された原発のみ、地域の理解を得ながら再稼働を進める政府の一貫した方針は変わらない」と強調した。経団連の次期会長に内定した原発メーカー日立製作所の中西宏明会長も九日、再稼働は必須との考えを記者団に示した。

*1-2:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171216-00096494-playboyz-pol (Yahoo、週刊プレイボーイ 2017.12.16) 「原発の新設」で日本は世界の敗者になる──安倍政権と原子力ムラの呆れたやり口とは?
 国民に原発への根強い抵抗感があるなか、安倍政権が原発の新設に動き出したという。『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が落胆する、安倍政権や原子力ムラのやり口とは――?
     * * *
 慌ただしい年の瀬に、目立たないが気になるニュースがふたつ流れた。ひとつは国の「エネルギー基本計画」見直しのなかで、「経産省が原発新設の議論に着手した」というニュース。もうひとつは「東京電力が原子力事業を今後も安定的に続けるため、国に経営環境整備を求めた」というニュースだ。まず原発新設のニュースについて。安倍政権は2014年に「エネルギー基本計画」を策定し、原発を国の「重要なベースロード電源」と位置づけた。それを前提に、翌15年には30年度の電源構成で、原発の比率20~22%を目指すことを決めた。この数字の意味することは原発の新・増設である。なぜか? 原発は運転期間40年で廃炉にするというのが基本原則だ。これを忠実に実行すると、30年の原発シェアは15%までに下がる。20~22%のシェアを死守するには、40年廃炉をやめて、古い原発をどんどん運転延長することが必要だが、安全対策などの費用がかさむので、延長できない原発も多く、どうしても原発の新・増設が必要となるのだ。ただ、国民に根強い抵抗感があるなかで原発の新設を言いだせば、内閣支持率が急落する恐れがある。そのため、安倍政権はこの議論を封印し、「原発を新設するのか?」と問われても「現時点では考えていない」などと、うやむやにやり過ごしてきた。そして、ふたつ目の東電のニュース。「経営環境整備を求めた」とは、つまり原発ビジネスで東電に赤字が出ないように様々な支援措置を講じてくれということだ。具体的には、固定価格買取制度や赤字補填(ほてん)制度のように絶対に損をしない仕組みや、事故を起こしたときの損害賠償を1兆円程度に抑えて、あとは国が責任を取る仕組みなどが考えられる。その財源はもちろん税金。とんでもない話だ。そもそも、発電コストが安いという理由から、原発は「重要なベースロード電源」に選ばれたはずだった。しかし、安全対策コストの増加などで、その神話は崩れ去っている。廃炉費用なども含めれば、原発の発電コストは火力などのほかの電源に比べると、逆に割高になっているというのが実情だ。本来なら、エネルギー基本計画見直しのプロセスで、原発を「重要なベースロード電源」から外すのが妥当なのだが、安倍政権も原子力ムラも、どうしても原発を維持したい。そこで「原発はベースロード電源を担う大切な存在だから、たとえコスト高でも国が税金を投入して守るべき」という倒錯した論理をひねり出し、東電に政府支援を要請させたというわけだ。このふたつのニュースは、安倍政権の支持率を下げる要因となる可能性が高い。だが、10月の総選挙で大勝し、安倍政権の基盤は再び強化された。しかも、19年の参院選まで2年間、国政選挙がない。今なら不人気政策を決めても選挙までに国民は忘れるーーおそらくそんな判断が働いたのだろう。原発から再生可能エネルギーへと急速にシフトする世界の潮流のなかで、いまだに原発にこだわる日本。ビジョンなき国家は没落する。このままだと日本は近い将来、世界のエネルギー産業市場で敗者になることは確実だ。安倍政権や原子力ムラのやり口には、本当に呆れ果てるばかりだ。
●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。新著は『日本中枢の狂謀』(講談社)。ウェブサイト『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中

*1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180103&ng=DGKKZO25284640S8A100C1MM8000 (日経新聞 2018.1.3) (2)持たざる11億人、市場に 技術と低価格の「光」
 昼は太陽が照りつけても、夜は漆黒の闇が訪れるタンザニアの農村地帯。ワッシャ(東京・台東)の秋田智司最高経営責任者(CEO)は充電した発光ダイオード(LED)ランタンを手に村々を回る。「ランタンの使い心地はどう?」。「生活が変わったよ。料金がもっと下がるとよいね」
●25円で貸し出し
 個人商店に設置した太陽光発電装置で充電したランタンを1泊2日で貸し出すレンタルの料金は500タンザニアシリング(約25円)。この地域の低所得者層の平均月収である60ドル(約6800円)でも何とか払える額だ。人々は明かりのほか、携帯電話の充電などに使う。低料金を実現したのはインターネットなどの技術を活用したからだ。太陽光発電には制御装置を付け、ネットを通じて発電量や充電回数を遠隔管理。使った電気代は商店からモバイル送金サービス「Mペサ」で受け取る。これまで150万人に電力を提供している。独シーメンスの創業者、ヴェルナー・フォン・ジーメンスが実用的な発電機を発明してから150年あまり。これまでの多くの技術と同様に電気も先進国から世界に広まってきた。だが現実には電気のない生活をする人が世界に11億人もいる。その“持たざる人たち”の状況が変わりつつある。ネットなど新技術を駆使し、新しい発想を取り入れ、商品やサービスの価格を大幅に低下。所得の低い新興国でも使いやすくすることで、これまで世界とつながっていなかった人たちも世界市場に入るようになった。インド北部のピパルガオン村で電力を供給するのはOMCパワーだ。小型太陽光装置が携帯電話の基地局に電力を供給。加えて周辺1~2キロメートルに住む住民にも一部電力を供給する。主力の基地局向けが安定しているため、近隣住民には電力料金を安く提供できる。「物理的な分散化とデジタル的な統合化が同時進行する新しいグローバリゼーションの動きが加速している」とボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の木山聡パートナーはみる。電気だけではない。ネットを使えない人は40億人、金融サービスを利用できない成人は20億人いる。ケニアで生まれたMペサは携帯電話で送金できる利便性が受け、利用者は3千万人を超えた。欧州にも広がる。基礎インフラがないからこそ、困難を乗り越える技術が生まれ、これまでとは逆に先進国にも普及する。
●緑の革命めざす
 シンガポールの大手商社オラム・インターナショナルが目指すのは創業の地アフリカでの「緑の革命」。ガボンの農園でドローンを飛ばし、農作物の発育を監視するほか、ビッグデータを使って肥料散布などをアドバイスするIT支援を実施。食料自給率が低いアフリカを変え、世界の農業も変革するかもしれない。技術と低価格が灯(とも)す「光」。持たざる人が市場に加われば、世界の経済成長をけん引する大きな力になる。

*1-4:http://www.arsvi.com/i/2alg2012.htm#20120725 (日経ビジネス 2012年7月23日号) サハラで発電、日本が存在感
 サハラ砂漠の再生可能エネルギー計画が転機を迎えている。アルジェリアは、日本提唱の太陽光発電構想に軸足を移す。砂漠の砂から太陽電池用のシリコンを作る技術に注目した。
「国力のある我々は、自由にパートナーを選べる立場にある。デザーテックのようなプロジェクトに加わるには細心の注意が必要だ。歴史的な軋轢がなく、技術力を持つ日本と協力したいというのが国内の共通認識だ」。こう明言するのは、シド・アリ・ケトランジ駐日アルジェリア大使だ。デザーテックは、欧州が提唱する巨大な再生可能エネルギープロジェクト。アフリカの砂漠地帯に太陽熱や風力による大規模な発電施設を建設し、欧州など近隣地域の電力需要を賄おうとする壮大な構想だ。2050年までの総投資額は40兆円とも言われる。国土の大半がサハラ砂漠で石油、ガスなどの資源に恵まれるアルジェリアは、立地的にも財源的にもデザーテック構想の“カギ”を握る。そのアルジェリアが現在高い関心を寄せるのが、東京大学の鯉沼秀臣客員教授らが提唱した太陽光発電計画「サハラ・ソーラー・ブリーダー(SSB)」だ。SSBは、サハラ砂漠に無尽蔵に存在する砂から生産した結晶シリコンを太陽電池パネルに利用し、日照の豊富な北アフリカ地域で大規模な太陽光発電所を展開する構想。将来的には、超電導ケーブルを使って欧州など周辺国に送電することも視野に入れている。最大の売りは、太陽電池用のシリコンを潤沢に確保できることなどから、低コストでの発電が可能になることだ。アルジェリアにとっては、材料やプラントなど関連産業への波及効果が大きいという利点もある。日本からは東大などが研究チームに参加し、2010年から科学技術振興機構(JST)と国際協力機構(JICA)が資金助成を始めた。アルジェリアは現在、オラン工科大学など3拠点でSSB向けに1000平方メートル級の実験施設を建設中だ。砂に含まれるシリコン成分を高純度化する実験も始めた。SSBには、アルジェリアの国営電気ガス公社傘下の関連企業など複数の現地企業が参加の意向を表明。ドイツの太陽電池関連企業や、日米欧の金融機関も関心を寄せている。
●周辺国でも高まる関心
 アルジェリアは、民間や海外の資金を合わせ、2030年までに再エネ関連に10兆円弱を投じる計画。だが、独シーメンスなど欧州が旗を振るデザーテックに対しては、資金拠出だけを担わされかねないとの警戒感が根強く、不参加の方針だ。一方、SSBで日本と組めば、アルジェリアはシリコンの精製技術や太陽電池パネルの生産技術などを導入できるとの思惑がある。同国の世論も変わりつつある。今年5月、現地の有力紙リベルテは、「SSBがデザーテックに取って代わる」と題した記事を掲載。「デザーテックを拒否した我が国の関心は、日本との共同プロジェクトであるSSBに向かっている」と論じた。「太陽熱」から「太陽光」に軸足を移す流れは、アルジェリアに限らない。アフリカ諸国では先進国の協力で多くの太陽熱発電事業が動いているが、技術やコストの面で予想以上に問題が多く、壁にぶつかっている。SSBの関係者は「(日本と共同で太陽熱発電を展開する)チュニジアでもSSBへの切り替えを探る動きがあるほか、エジプトやモロッコでも関心が高い」と話す。ただ、SSBにも課題はある。アルジェリアは、シリコン生産から太陽電池の製造まで一貫して手がけるため、日本の大手プラント会社やシリコンメーカーに協力を要請中。しかし、今のところ日本企業の参加意欲は高まっていないようだ。民間の資金や技術を呼び込めるかどうかが、砂漠の一大構想の成否を分けそうだ。

*1-5:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO09713420Y6A111C1L31000/ (日経新聞 2016/11/19) ゼロエネルギー住宅(ZEH)とは
▼ゼロエネルギー住宅(ZEH) 家庭のエネルギー消費量から太陽光パネルなどで発電したエネルギーを差し引き、エネルギー収支を実質ゼロにした住宅。断熱性の高い窓や壁などの外皮性能を高めることで省エネ化を実現する。屋根の面積が狭いなど制約のある場合に実質ゼロに近づけた住宅は「ニアリーZEH」と呼ばれる。政府は20年までに新築住宅の半数以上をZEHとする目標を掲げる。

<EV>
*2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25570090R10C18A1MM8000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2018/1/11) インド車市場、独を抜き中米日に次ぐ 17年400万台
 世界の自動車市場で新興国が台頭している。インドの2017年の新車販売台数は401万台となり、ドイツを抜き世界4位に浮上した。20年にも日本を抜くとみられる。世界最大の中国市場では17年、電気自動車(EV)などの販売が約5割伸びた。新興国の自動車市場は台数増加だけでなく技術革新でも世界の主戦場となりつつある。インド自動車工業会(SIAM)が11日発表した17年12月の販売は前年同月比14%増の32万2074台だった。17年通年は前年比10%増の約401万台となり過去最高を更新した。インドの人口は世界2位の約13億4000万人で若年層比率も高い。英IHSマークイットの予想ではインド市場は今後も年率1割近い成長が続き、20年にも日本を抜き世界3位に浮上する。インドの自動車市場は10年で2倍になった。背景には経済成長に伴う所得の拡大がある。世界銀行によるとインドの16年の1人当たり国内総生産(GDP)は約1700ドルで07年(約1020ドル)に比べ7割増えた。中国で車の需要が爆発的に伸びたのは1人当たりGDPが3000ドルを超えてから。インドは3000ドルに満たないものの、農村部を中心に増えている初めて車を買う層が全体の約3割を占めるとされる。全体の8割を占める乗用車では、最大手マルチ・スズキが前年比15%増の160万台超となりシェアは49.6%と前年より2.6ポイント高まった。インドでは14年のモディ政権発足以来、16年度(16年4月~17年3月)まで実質GDPは7%台の高成長が続いた。17年度は新税導入の影響などで5~6%台の成長率にとどまったが、18年度は成長率が高まるとの見方が強い。インフレ率も足元で1~4%台の低水準で推移しており消費者の購買力が高まっている。ただ道路の整備が追いつかず首都ニューデリーなどでは渋滞が慢性化している。今後の成長にはインフラの整備が課題になる。一方、中国汽車工業協会は11日、17年の新車販売台数が前年比3.0%増の2887万8900台だったと発表した。英IHSマークイットの予想では17年の世界全体の販売台数は9451万台。中印2カ国で世界販売の3分の1を占める。中国ではEVを中心とする新エネルギー車が53.3%増の77万7千台と大きく伸びた。北京や上海などの大都市が渋滞緩和のためにナンバープレートの発給制限を強化しており、ナンバープレートを取得しやすい新エネ車の購入に向かう消費者が多い。購入補助金もプラスに働く。新エネ車で中国1位の比亜迪(BYD)のEV「e5」は北京で価格の3割に相当する補助金を得られる。中国政府は19年から一定比率の新エネ車の製造・販売をメーカーに義務付ける制度を導入し、20年に200万台の販売を計画する。日米欧の自動車メーカーが相次いで中国でのEV投入計画を発表しており、需要拡大を見込んで現地の車載電池メーカーによる開発や増産の投資が活発になっている。

*2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24215740U7A201C1000000/ (Financial Times、日経新聞 2017/12/4) 中国、20年までにEV充電施設480万カ所設置
 中国政府は、電気自動車(EV)の購入者がEVの充電切れを心配する「走行距離不安症」にならないようにするため、2020年までに車両数に見合った充電ステーションを設置する。中国は20年までに480万の充電設備や充電ステーションを設置する予定。中国国務院(政府)は先月、巨額の投資を行うことを改めて表明した。平安証券のアナリストは、この計画を達成するには総額1240億元(約2兆1000億円)の投資が必要となり、その全てでなくても大半を国の財源に頼ることになると話す。これはキプロスの国内総生産(GDP)にほぼ匹敵する。中国の充電設備・充電ステーションの数は9月末時点で19万ほどで、これでも世界のどの国よりも多いが、3年後の目標設置数に比べればほんのわずかでしかない。米国には4万4000の充電設備と1万6000の充電ステーションが設置されている。十分な数の充電ステーションを設置することは、EVの購買意欲を高めるカギと考えられている。EVは「中国製造2025」として知られる産業振興策の柱でもある。中国はEVを含む10のハイテク経済部門を指定し、それらの部門で25年までに世界市場を支配するか、市場の中心的存在になることを目指している。米ゴールドマン・サックスによると、中国は16年に世界のEVの45%を生産したが、30年までにその比率を60%に拡大するとみられている。
■ハイブリッド車に充電せず
 中国では今年、政府が車1台あたり最大6万元という多額の補助金を支給していることが寄与してEVの販売が急速に伸びているが、今後は補助金の引き下げが予想される。EV購入を検討する際の懸念事項として消費者から最も多く聞かれるのが、走行途中で充電切れになってしまうことへの不安だ。米コンサルティング会社アリックスパートナーズの関係者は、出身地の上海では多くの人々がバッテリーとエンジンの両方で走るハイブリッド車を買っているが、購入者が充電することはめったにないと話す。上海ではEVを購入すると補助金が得られ、ナンバープレートも無料で入手できるが、エンジン車の場合はこれが制限される。また、この関係者は「ハイブリッド車を持つほとんどの人が実際には従来のエンジンで走っている」とした上で、「上海でもまだ充電ステーションを探すのに苦労する。個人で駐車スペースかガレージを確保し、充電設備を自分で設置しなければならない状況だ」と話した。(2017年12月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

*2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25667900U8A110C1000000/ (日経新聞 2018/1/14) 「大型車の祭典」にも自動運転の波 北米自動車ショー
 15日に本格的な開幕を控える北米国際自動車ショー(通称デトロイトショー)でプレス発表会が米ゼネラル・モーターズ(GM)を先陣に始まった。自動車メーカーは通常、年初の世界最大の家電見本市CESで自動運転などの近未来技術、長期のサービス戦略を発表し、その翌週のデトロイトショーでは北米市場向けの大型車やスポーツ車のコンセプトモデルなど直近の戦略を発表する。だが、EV・自動運転化の波がショーの雰囲気を変えつつある。米ゼネラル・モーターズのメアリー・バーラCEOは13日、「2019年にハンドルのない自動車を出すことは完全自動運転への大きな一歩になる」と述べた。米ミシガン州デトロイト市で国際自動車ショーが開幕するのに先立ち、報道陣に語った。

*2-4:http://qbiz.jp/article/125498/1/ (西日本新聞 2017年12月31日) トヨタEV新会社に4社が参加 スズキ、スバルなど
 トヨタ自動車とマツダなどが設立した電気自動車(EV)の基盤技術を開発する新会社に、スズキとSUBARU(スバル)、トヨタグループのダイハツ工業、日野自動車の計4社が参加を決めたことが31日、分かった。各社の知見を共有して開発を加速し、コストも抑える狙い。EVで先行する海外勢に対抗する。4社は2018年1月以降に各5人程度を派遣し、新会社の技術者は計約60人となる。4社は当面出資せず、開発状況によって資本参加を検討するという。新会社にはトヨタが90%、マツダとトヨタグループの自動車部品大手デンソーが5%ずつ出資している。スズキとダイハツは小型車、スバルは中型車が主力。日野は商用車を手掛けている。新会社は幅広い車種に活用できる技術開発を図る。新会社はEVの車体の基本骨格や制御システムなどを20年ごろに確立することを目指しており、各社がそれぞれ市販車に応用する。

*2-5:http://qbiz.jp/article/125509/1/ (西日本新聞 2018年1月2日) 三菱自動車、EVを大幅拡充へ SUVや小型車、世界展開
 三菱自動車が電気自動車(EV)を大幅拡充する方針を固めたことが2日分かった。2020年以降に発売することを既に決定している軽自動車とスポーツタイプ多目的車(SUV)「RVR」の2車種に加え、別のSUVや小型車のEV発売を検討。中国や東南アジアでも売り出し、電動車両を世界で展開する。三菱自は09年、他社に先駆けてEVの軽自動車「アイ・ミーブ」の量産を始め、電動車両で先行している。欧州や中国をはじめ各国で環境規制が強まっている状況を踏まえ、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)の車種を増やす。同社幹部は、各国の環境規制への対応には「EVが2車種では足りない」と指摘した。大型車はEVにすると大量の電池が必要になり価格も高くなるため、小型で短距離の移動に適した車両を中心に拡大する方向だ。三菱自は日本や欧州、米国で既に電動車両を販売している。成長が見込まれる中国にはEVを2車種以上投入し、東南アジアではPHVやEVを売り出す。時期は未定だが、できるだけ早期に発売したい考えだ。企業連合を組む日産自動車やルノーとの協力も広げ、EVの性能向上の鍵を握る電池開発などでも連携する。

<電力自由化と電力新時代>
*3-1:http://qbiz.jp/article/125592/1/ (西日本新聞 2018年1月5日) 電力新時代:電力で久留米を活性化 若手経営者ら結集し新会社 収益の一部で公園や防犯整備
 福岡県久留米市の久留米商工会議所青年部の若手経営者たちが、新電力会社「くるめエネルギー」(安丸真一社長)を設立、2018年春のサービス開始を目指している。地域活性化の観点から、収益の一部をインフラ整備に充てたり、契約者に還元したりする「地域還元型」経営が特徴。商議所青年部を母体とする新電力は全国初という。くるめエネルギーは、青年部の有志14社が共同出資して17年6月に設立。九州電力や卸電力市場から安価な電力を仕入れ、市内の一般家庭や事業所に、九電より2〜5%安く提供する。久留米市内で支出される電力料金は年200億〜250億円で、多くが九電や大手の新電力に支払われているという。くるめエネルギーに契約を切り替えることで「流出していたお金を市内で循環させ、市の税収増にもつなげたい」(安丸社長)との狙いがある。年明けから、市内の事業所を対象に小口の出資を募集。飲食店や宿泊施設といった出資事業所を利用した電力契約者が、割引などを受けられるサービスを展開する。出資事業所の負担にならないよう、サービス分は同社が広告費などの形で穴埋めするという。収益を公園や街灯、防犯カメラなどのインフラ整備に充てるほか、電力使用状況を活用した高齢者見守りサービスの計画もある。1年目の契約目標は、工場やオフィスなど消費電力が多い「高圧」200件、主に家庭、商店向けの「低圧」2千件。安丸社長は「一番の目的は地方創生。各地の青年部からも注目されており、全国のモデルケースになりたい」と語った。

*3-2:http://qbiz.jp/article/125593/1/ (西日本新聞 2018年1月5日)電力新時代:北九州市を洋上風力の製造・搬出拠点に 響灘地区に基地港湾整備 アジア初、海外市場視野
 北九州市が響灘地区(若松区)に、洋上風力発電の風車の組み立てや専用の積み出し岸壁などを整備する方針を固めたことが分かった。2021年度までの完成を目指す。洋上風力発電に特化した「基地港湾」はアジアで初めてで、市は製鉄や自動車に次ぐ北九州の主力産業に育てたい考え。欧州で先行している洋上風力発電はアジアでも普及が見込まれ、韓国や台湾などの海外市場もにらみながら整備を急ぐ。市によると、約40ヘクタールの用地を埋め立て中で、工事は18年度末に完了する。その後、発電事業者や部材メーカーなどの意見を踏まえ、100メートルを超える部材を置く保管場▽数百トンの重みに耐えられる組み立て作業場▽風車を洋上に設置する特殊作業船が横付けできる岸壁−などを整備する。隣接地に関連企業の事業用地も用意する方針。欧州で主力の出力5千キロワットの風車は羽根を含めた全長が約150メートルで、本体と羽根、発電機を合わせた総重量は千トンを超える。風車は陸上で組み立ててから洋上に運ぶため、海に近い場所に広い用地が必要になる。響灘地区には、風車の部材メーカー「日本ロバロ」(東京)やメンテナンス会社「北拓」(北海道)が既に進出。市は特殊作業船を持つ建設会社の誘致に向けて交渉を進めており、風力発電の製造から国内外への搬出までを一貫して担う拠点化を目指す。響灘の洋上では、九州電力子会社の九電みらいエナジーなどが、5千キロワットの風車を最大44基設置する事業に近く着手する予定もある。国内の風力発電の総出力は17年3月時点で、計画段階を含め1410万キロワット。市は、30年に国内のエネルギー需要の5%に当たる2930万キロワットが風力で賄われ、うち4割近い1040万キロワット(5千キロワットの設備で2080基)が洋上機になると見込み、全国に先駆けて「基地港湾」の整備に乗り出す。洋上風力発電の部品は自動車並みの2万〜3万点あり、産業としての裾野が広く、市は「地元企業が持つ技術が生かせ、波及効果も大きい」とメリットを強調している。

*3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171222&ng=DGKKZO24945640S7A221C1EA2000 (日経新聞 2017.12.22)電力自由化 送配電は大手独占続く
▽…大手電力会社が地域独占していた電力制度を見直し、新規参入者などが自由に発電したり電力を売ったりするようにすること。国際水準から比較して割高だった日本の電力料金の低下などをめざし、政府は1990年代半ばから段階的に自由化を進めてきた。発電事業への参入は95年に認めた。▽…小売事業は2000年から工場など大規模な需要家への販売を対象に解禁。16年4月には家庭向けの販売にも広がり、全面自由化した。現在は発電事業には約600社・団体、小売事業には約450社・団体が参入している。一方、電力を需要家に届ける送配電事業は電力大手の独占が今後も続く。同じ地域で複数の事業者が巨額の投資で送電線を作るのは社会全体として非効率だからだ。▽…東日本と西日本をまたぐ送電は、電力の周波数が異なるため変換装置を通す必要がある。東日本大震災の際は装置の容量不足で送電が滞ったが、設備増強が進んでいる。再生可能エネルギーの発電量の変動を補う電力は災害時より少なく、融通に支障はない。

*3-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180109&ng=DGKKZO25434160Y8A100C1NN1000 (2018.1.9) 電力融通へ新市場、地域越え入札可能 経産省、20年度開設めざす
 電力会社が送配電の際、需給に応じて必要な予備の電力を融通し合える新市場をつくる。大手電力が地域ごとに入札で購入していたが、全国から入札で安く買えるようにする。東京電力ホールディングスなど大手4社が連携を決めており、経済産業省は基盤となる市場整備を後押しし、他の電力大手を含む連携拡大を促す。2020年度の開設をめざしている。地域を越えた電力融通を巡っては、東電、関西電力、中部電力、北陸電力が大筋で合意済み。新市場づくりには、この4社に加え他の大手6社も参画する方向で調整している。沖縄電力は地理的に融通できないため、経産省は最終的に9社に連携が拡大することをめざす。電力会社が送配電をする際、需給の変動によって送る電力の品質にあたる「周波数」にぶれが生じる。質の良い電気を維持するには周波数を安定させる必要があり、ぶれを調整するために予備の電力を使っている。いまは大手電力が域内で個別に入札を実施し、自前の電源(発電)会社や新規参入の事業者(新電力)などから調達している。政府はエネルギー基本計画で、再生可能エネルギーの導入拡大をめざしている。16年度に発電量全体の15%程度だった比率を30年度に22~24%に高める計画。時間帯や天候で発電量が変動しやすい太陽光や風力発電の普及が進めば、予備電力の必要性が高まる。経産省は電力会社が相互に融通できる市場をつくり、再生エネ事業拡大の基盤整備にもつなげる。新設する「需給調整市場」では、例えば関電が管内で電力の必要性が高まれば、管内か管外かに関係なく価格などの条件が良い会社から予備電力を調達できるようになる。他の大手だけでなく新電力からも調達できる。全国的な入札で安く調達できれば、購入者側のコスト削減につながる。市場で融通できる予備電力の種類や量は段階的に増やしていく。市場の運営は電力会社が主体的に担うしくみを検討。代表会社を選び、システムの整備を始める。システムの仕様やどういった種類の予備電力を扱うかなど市場運営の詳細については、国が関与する電力広域的運営推進機関などに逐次報告しながら、協議を進める。同機関は市場開設後に運用を点検する役割も担う。これまで必要な予備電力の把握や、それに応じた調達を細かく決める機能は、大手電力会社の「中央給電指令所」と呼ばれる司令塔が地域ごとに担ってきた。経産省は市場を通じて、瞬時に全国的に需給を調整できる体制の構築をめざす。送配電事業の連携をテコに、大手各社に他の事業での協力拡大も促す。

<伊方原発差止仮処分広島高裁決定>
*4-1:https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2017/171213.html (2017年12月13日 日本弁護士連合会会長 中本和洋) 伊方原発差止仮処分広島高裁決定に対する会長声明
 本日、広島高等裁判所は、四国電力株式会社に対し、伊方原子力発電所(以下「伊方原発」という。)3号機の原子炉について、周辺住民の人格権侵害に基づき、運転の差止めを命じる仮処分決定を言い渡した。
これまで、福井地方裁判所が、2014年5月に大飯原子力発電所3、4号機の運転差止めを命じる判決を言い渡し、2015年4月には高浜原子力発電所(以下「高浜原発」という。)3、4号機の運転差止めを命じる仮処分決定を言い渡した。また、大津地方裁判所でも2016年3月に高浜原発3、4号機の運転差止めを命じる仮処分決定を言い渡している。これらはいずれも地方裁判所での判決・決定であり、今回、初めて高等裁判所において仮処分の請求を認容し、2018年9月30日まで原子炉の運転の停止を命ずる決定を言い渡したことは、極めて意義のあることである。今回の決定は、原子力規制委員会の定めた火山ガイドの評価手順に従い、伊方原発から130キロに位置する阿蘇カルデラについて原子炉の運用期間中に火山の活動性が十分小さいと判断することはできず、噴火規模を推定することもできないから、過去最大の阿蘇4噴火(約9万年前)の噴火規模(火山噴火指数7)を想定すべきで、阿蘇4噴火時の火砕流が伊方原発敷地に到達した可能性が十分小さいと評価することはできないから、伊方原発の立地は不適であると判断したものである。同様の事実は、川内原子力発電所に関する福岡高等裁判所宮崎支部決定(2016年4月6日)や、本決定の原決定である広島地方裁判所決定(2017年3月30日)においても認定されていたが、原子力発電所(以下「原発」という。)の運用期間中に破局噴火が発生する可能性が示されない限り、これを停止させることは社会通念に反すると判断して、住民の請求を認めなかった。しかし、本決定は、原子力規制委員会が最新の科学技術的知見に基づいて定めた火山ガイドが考慮すべきと定めた自然災害について、社会通念を根拠に限定解釈をして、判断基準の枠組みを変えることは、原子炉等規制法及びその委任を受けて制定された新規制基準の趣旨に反すると判断した。さらに、火砕流噴火よりも小さい規模の噴火の際の降下火砕物の層厚と、大気中濃度の想定も過小評価であると認め、運転の差止めを認めたものである。本決定は、国民の生存を基礎とする人格権に基づき、国民を放射性物質の危険から守るという観点から、司法の果たすべき役割を見据えてなされた、画期的決定であり、ここで示された火砕流噴火に関する判断は九州、四国、北海道、東北の原子力施設に、降下火砕物に関する判断は、他の全ての原子力施設に当てはまる。当連合会は、2013年の人権擁護大会において、いまだに福島第一原発事故の原因が解明されておらず、同事故のような事態の再発を防止する目処が立っていないこと等から、原子力発電所の再稼働を認めず、速やかに廃止すること等を内容とする決議を採択している。本決定は、この当連合会の見解と基本的認識を共通にするものであり、高く評価する。当連合会は、四国電力株式会社に対し、本決定を尊重することを求めるとともに、政府に対して、本決定を受けて従来のエネルギー政策を改め、できる限り速やかに原発を廃止し、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させ、これまで原発が立地してきた地域が原発に依存することなく自律的発展ができるよう、必要な支援を行うことを求めるものである。

*4-2:http://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/631 (東京新聞 2017年12月14日) 伊方3号に高裁が停止命令 「阿蘇噴火、火砕流の危険」 広島地裁判断を覆す
 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、広島市の住民らが申し立てた仮処分の抗告審で、広島高裁は13日、運転を差し止める決定をした。直ちに効力を持ち、対象期間は来年9月30日まで。3号機は定期検査中で、四国電が来年1月に稼働を再開する計画は事実上不可能となり、政府や電力会社の原発再稼働方針には再び大きな打撃となった。
●解説/巨大リスクに重い判断 火山以外にもリスク山積の伊方原発
 原発が高温の火砕流に巻き込まれればたちまち危機に陥り、想定以上に火山灰が積もれば非常用設備や事故収束作業にも大きな支障が出る。ひとたび原発で重大事故が起きれば、その被害は広範囲かつ長期間にわたる。広島高裁が原発の巨大な潜在リスクに向き合い、来年九月末までの期間限定ながら四国電力伊方原発3号機の再稼働にストップをかけた。新規制基準「適合」と判断し、再稼働を認めた原子力規制委員会にも「不合理」を突きつけた。伊方原発が抱えるリスクは火山ばかりではない。日本一細長いとされる佐田岬半島を分断する立地そのものがリスクだ。切り立った崖に囲まれた半島だけに、原発敷地は狭く、四国電は非常用資材の置き場に苦労し、対策拠点も新基準を満たすぎりぎりのスペース。万一の際、応援を送ろうにも国道から原発へは急傾斜地で、拡幅工事中の県道はいまだ狭い地点が残る。半島各地の集落を訪ねたが、尾根筋の国道からは、もろい岩肌の細い山道しか通じていない集落が多かった。漁師からは「地震と原発事故が同時に起きたら、取り残されるだろう」との声が聞かれた。そんな状況は置き去りのままだ。
●今後の展開は?
 広島高裁は、四国電力伊方原発3号機の運転禁止の仮処分決定の効力を来年9月30日までと区切った。今後どのような展開が予想されるのでしょうか。四国電力は近く、同高裁に異議を申し立てると同時に、仮処分の執行停止も求める方針。今回の判断を決めた野々上友之(ののうえ・ともゆき)裁判長は今月下旬に定年退官となり、別の裁判長が審理する見通しだ。異議が認められない場合、四国電は最高裁まで争う機会がある。運転禁止の仮処分を勝ち取った住民たちは、運転差し止め訴訟も広島地裁に起こしている。仮処分の効力が続いている間に、地裁でどんな判決が出ても、判決が確定しない間は原則として仮処分の効力は続く。この間、四国電は伊方3号機を再稼働できない。しかし四国電力が勝訴した場合、「仮処分の決定時とは事情が変わった」ことを理由に、広島高裁に仮処分の取り消しを求めることができる。いずれにしても、仮処分の効力は来年9月末で切れる。その後、住民側が引き続き運転禁止の司法の命令を得たい場合は、あらためて地裁に仮処分を申し立てることになる。

*4-3:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/380222/ (西日本新聞 2017年12月14日) 伊方原発差し止め 九州にも警鐘鳴らす判断
 数多くの活火山を擁する火山国に立地する原発の安全性を、厳しく問う司法判断といえよう。
四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求めて、広島市の住民らが申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁が申し立てを却下した広島地裁の決定を覆し、来年9月30日まで運転を差し止める決定をした。定期検査中の伊方3号機は現在停止中で、来年1月の運転再開に影響が出るのは必至の情勢だ。四国電は高裁に異議申し立ての手続きを取る方針という。東京電力の福島第1原発事故後、仮処分で原発を止める司法判断は3件目だが、高裁段階では今回が初めてだ。他の原発訴訟にも影響を与えるだろう。抗告審では、福島原発事故後に原子力規制委員会が策定した新規制基準や地震、火山噴火時の影響などが主な争点になった。決定理由で特筆すべきは、規制委が火山の危険性について新規制基準に適合するとした判断を不合理とした点だ。原発が熊本県・阿蘇山から約130キロの距離にある点を重視し、大規模噴火が起きた際に「火砕流が到達する可能性が小さいとは評価できず、立地には適さない」と判断した。阿蘇や桜島などの活火山を抱え、九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)と同川内原発(鹿児島県薩摩川内市)が立地する九州にも、改めて警鐘を鳴らした形だ。原発立地自治体以外の住民による差し止め請求を認めた点にも注目したい。高裁は伊方原発で重大事故が起きれば、広島市など海を挟んだ近隣の市民も放射性物質によって生命身体に重大な被害を受ける恐れがあると結論付けた。ひとたび福島原発のような重大事故が起きれば、その被害は想定を超えて広範囲に及ぶことを私たちは思い知らされた。原発周辺に暮らす人々の懸念や不安に応える住民目線の判断ともいえよう。政府や電力会社は今回の広島高裁決定を真摯(しんし)に受け止め、火山噴火に対する原発の安全対策についてもさらなる充実を図るべきだ。

*4-4:http://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=89073 (南日本新聞 2017年12月14日) [伊方差し止め] 火山を巡る議論に一石
 東京電力福島第1原発事故後、原発の再稼働や運転を禁じる高裁段階の判断は初めてである。四国電力と政府は、上級審の決定を重く受け止めるべきだ。四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、広島市の住民らが申し立てた仮処分の即時抗告審で広島高裁は、運転を差し止める決定をした。期間は来年9月30日までで、現在定期検査中の3号機が来年1月に再開する計画は、事実上不可能となった。福島原発事故の原因解明が十分とは言えない中、住民の不安を受け止め、原発再稼働に前のめりな政府の方針にも疑問を突きつけた司法判断といえる。注目は、火山と原発の立地を巡る議論に一石を投じたことだ。野々上友之裁判長は、熊本県・阿蘇カルデラで大規模噴火が起きた際に約130キロの距離にあることを重視し「火砕流が到達する可能性が小さいとは評価できず、立地には適さない」と判断した。その上で、原子力規制委員会が新規制基準に適合するとしたのは不合理で「住民らの生命、身体に対する具体的な危険の恐れが推定される」と結論づけた。火山以外は新基準や規制委の適合性判断に合理性があるとした。火山噴火は、九州電力川内原発の近隣住民も共通して抱く懸念材料である。高裁は、原発の火山対策について規制委に再考を求めたといえよう。伊方3号機の運転差し止めを求める仮処分の申し立ては、立地する愛媛県にとどまらず、広島、大分、山口県にも広がった。背景にあるのは、稼働中の関西電力高浜3、4号機を停止させた大津地裁決定だ。その後、大阪高裁で取り消されたが、広域被害の恐れを指摘したことで、立地県外の住民の主張でも認められることが広く知られた。福島原発事故を顧みれば、広い地域の住民が事故時の影響を心配する声を上げるのは当然だろう。伊方原発周辺では、南海トラフ巨大地震や、長大な活断層「中央構造線断層帯」が近くを通っていることを懸念する声もある。さらに、細長い半島の付け根に原発が立地し、事故時の避難計画の実効性への不安も根強い。松山地裁の却下決定を受けた高松高裁の即時抗告審と大分地裁、山口地裁岩国支部が今後どんな決定を下すか、注目される。四国電は広島高裁に異議申し立ての手続きを取る方針だ。だが、決定を軽視することなく、住民の疑念とあらためて誠実に向き合うところから始めるべきだ。

*4-5:https://www.ehime-np.co.jp/article/news201712148763 (愛媛新聞社説 2017年12月14日) 伊方3号機差し止め 噴火の危険重視した司法の警告
 危険性の評価に不十分な点がある限り、原発を動かしてはならない―。高裁の全国初の差し止め決定が発した「警告」は、極めて重い。松山市と広島市の住民が四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを求めた仮処分申請の即時抗告審で、広島高裁は火山の及ぼす危険性を重く見て、運転を差し止める決定をした。3月の広島地裁決定は、原発には「極めて高度な安全性」は求められておらず、最新の科学的知見を基にした災害予測で安全を確保すれば「社会が容認する」とした。ある程度の安全で許されるといった、住民の不安に向き合わない乱暴な論理は決して容認できない。7月の松山地裁決定でもその論を踏襲、司法の独立性が危惧されていた。流れを変え、命を守る司法の責務を果たす決定を評価する。判断の焦点は、火山の危険性だった。野々上友之裁判長は、熊本県・阿蘇カルデラで大規模噴火が起きた際に「火砕流が到達する可能性が小さいとは評価できず、立地には適さない」と判断。四電の想定を過小と指摘し「原子力規制委員会の判断は不合理」で「住民らの生命、身体に対する具体的な危険の恐れが推定される」と断じた。規制委の火山影響評価が不合理だという点については、昨年の九州電力川内1、2号機差し止め仮処分を巡る福岡高裁宮崎支部の決定でも示されていた。火山灰が及ぼす危険についても九電玄海3、4号機など各地の原発で指摘されている。安全性が立証されない以上、運転を差し止めると踏み込んだことで、他の原発にも多大な影響を及ぼそう。決定は、予測不可能な自然災害に対しても可能な限りの安全策を求めたもので、基本姿勢を問うたと言える。国や電力会社は指摘を肝に銘じ、つぶさに検証し直さなければならない。また、原発から約100㌔離れた広島市の住民にも広域被害の恐れを認めた点も意義深い。関西電力高浜3、4号機に関して昨年、大津地裁が半径70㌔圏に当たる滋賀県の住民の申し立てを認めた決定より、さらに範囲が拡大した。立地自治体以外でも事故の当事者であることは東京電力福島第1原発事故で明らかになっており、「地元」の同意があれば再稼働できる仕組みや避難計画も早急に再検討する必要がある。伊方原発に関しては愛媛、香川、大分、山口の4県の地裁や高裁で仮処分申請や訴訟を審理中だ。丁寧に審理し、全国の原発をも見直す契機にしたい。福島の取り返しのつかない事故で「想定外の事態」という言い訳が通用しないことを思い知って、6年9カ月。原点に立ち返るべき時機である。被爆地広島で、放射性物質に苦しむ人々をこれ以上出さないための判断が下された。その重みを、国と電力会社は胸に刻み、原発ありきのエネルギー政策を根本から転換しなければならない。

*4-6:http://qbiz.jp/article/126001/1/ (西日本新聞 2018年1月12日) 神鋼データ改ざんでも玄海再稼働「問題なし」 九電社長が知事に報告
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働を巡り、山口祥義知事は11日、県庁で瓜生道明社長と会談した。瓜生社長は、神戸製鋼所の製品データ改ざん問題について「問題ない」と述べ、3号機が3月、4号機が5月とする再稼働時期に影響はないとの考えを示した。瓜生社長は、玄海原発で使われている製品の安全性や神鋼側の検査工程を確認したことを報告。「再稼働に向けた工程にとらわれず、安全性を確認しながら対応する」と述べた。山口知事は、継続的な安全対策や情報開示を要請し「県民の厳しい目が注がれているという意識を持っていただきたい」と話した。瓜生社長は、玄海町の岸本英雄町長と唐津市の峰達郎市長とも会談した。


PS(2018.1.15追加):*5-1のように、欧州勢も鮮明にEVシフトしているのに、*5-2のように、ベトナム政府が、せっかく三菱自動車とEVを共同開発して車産業の成長を狙っている時に、今更プラグインハイブリッド車をベトナム側に提供するというのは、三菱自動車はベトナム政府を舐めすぎている。こういう提案しかしないのであれば、私がベトナム政府の高官だったら、組む相手を欧州勢に変更して、電力は豊富な自然エネルギーを開発する。

*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXLASDC12H2T_S7A910C1EA1000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2017/9/12) 欧州勢のEVシフト鮮明 独自動車ショー開幕
 ドイツでフランクフルト国際自動車ショーが12日、開幕した。欧州最大手、独フォルクスワーゲン(VW)は約300ある全車種に電気自動車(EV)かハイブリッド車(HV)のモデルをそろえることを表明した。ガソリン・ディーゼル車禁止の方針を打ち出す国が増えるなか、EVが主役になる時代の到来を印象づけた。何本もの電気ケーブルをつなぐパフォーマンスのあとに、舞台に音もなく現れたのは独ダイムラーの「EQA」。現在のメルセデス・ベンツブランドの入門車「Aクラス」に相当するEVだ。ディーター・ツェッチェ社長は「すべての車種で電動化モデルを選べるようにする」と強調した。傘下の小型車ブランド「スマート」では欧州と北米で全ての車種をEVに切り替えるほか、2018年には主力の中型車「Cクラス」に相当するEQCも発表する。独BMWは電動車専用シリーズで3車種目となる「iビジョンダイナミクス」を発表した。小型車「i3」とスポーツ車「i8」の中間に位置する中型クーペで、1回の充電で走れる距離は600キロメートルに達する。19年に発売する「ミニ」のEV版も公開し、EVの品ぞろえを25年までに12車種に広げる。排ガス不正で世界のEVシフトの引き金を引いたVWは、25年までに独アウディなどグループ全体で50車種以上のEVを投入する。これまで表明していた30車種から一気に増やした。HV化とともに、全ての車種の電動化を進める。30年までの開発などにかかる投資は200億ユーロ(約2兆6千億円)で、これとは別に電池の調達に500億ユーロ規模を費やす。日本勢ではホンダが量産型EV「アーバンEVコンセプト」を世界初公開した。欧州で販売している小型車「ジャズ(日本名フィット)」よりも小さく、都市部での移動に向く。八郷隆弘社長は「このモデルをベースにしたEVを19年に欧州で発売する」と語った。ホンダは今後、欧州で発売する全ての新型車にはEVやHVなど電動車モデルも用意する。30年までに世界販売の3分の2をEVやHVなどの電動車にする方針だ。各社がEV強化をアピールする背景には温暖化や大気汚染の防止へガソリン車やディーゼル車の規制強化を各国が考えていることがある。欧州各国だけでなく中国政府もガソリン車やディーゼル車の製造・販売を禁止する方針で導入時期の検討に入った。英調査会社IHSマークイットのラインハルト・ショールシュ氏は「EVに投資するかどうかではなく、どのように投資するかの段階に入っている」と話す。従来の自動車と同様に、いかに使いやすく魅力的なEVを安い価格で提供できるかの勝負になってきた。ただ日米欧大手への対抗が難しかった中国が自動車産業を育成しようとEVシフトに傾くのとは異なり、長くディーゼルを主力販売車種に据えていた欧州勢にとっては、急速なEVシフトは簡単ではない。これまで内燃機関に多額の投資をし、多くの関連資産を持つ。ダイムラーのツェッチェ社長は「一晩で1つの技術を禁止するのは、環境に対しても悪影響」と規制強化の流れをけん制した。VWのマティアス・ミュラー社長は「ガソリン・ディーゼル車からEVまですべてを手がける」と強調した。

*5-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25678240V10C18A1MM0000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2018/1/15) ベトナム政府、三菱自とEV共同開発 車産業成長狙う
 ベトナム政府と三菱自動車は電気自動車(EV)の研究開発で提携する。ベトナム政府は国内自動車産業の育成、三菱自は今後拡大するエコカー市場の取り込みにそれぞれつなげたい考えだ。ベトナムは中間所得層の増加で自動車販売が伸びる一方、排ガスや石炭火力発電所の増加で大気汚染も進んでおり、環境負荷の小さいEVの生産拡大をめざす。15日午後、ベトナム商工省と三菱自が覚書を結ぶ。現地の道路や渋滞状況、充電インフラの実情に合ったEVを共同で研究する。三菱自は現地生産も視野に入れているもようだ。同社は共同研究に先立ち、プラグインハイブリッド車(PHV)の「アウトランダー」をベトナム側に提供する。ベトナムでは足元でEVやハイブリッド車はほとんど普及していない。ただ、電圧が200ボルト以上で家庭での充電が容易という。道が狭いため三菱自の「アイ・ミーブ」のような小型のEVが適しているとみている。ベトナム電力公社はこのほど中部ダナンに初のEVの充電ステーションを設置した。初の国産車製造に取り組む不動産最大手ビングループも、EVの開発を進めている。ベトナムは2020年の工業立国を国家的目標に掲げ、自動車産業を柱の一つとしている。17年の新車販売は過去最高だった前年に比べ10%減の27万2750台となったが、18年1月の輸入関税撤廃を前に買い控えが広がるという特殊要因があったためだ。富裕層や中間層の自動車購入は確実に高まっており、ベトナム商工省は25年には新車販売が現在の2倍超の年60万台に達すると予想している。ベトナムでは自動車のほか、4000万台以上普及しているバイクの排ガスで大気汚染が悪化。近い将来の電力不足が見込まれ、ベトナム政府は石炭火力発電所の建設を急いでおり、大気汚染のさらなる悪化が懸念されている。


PS(2018年1月16、17《図》、18《図》、19、21、22日追加):豪雪地帯で高齢者が雪おろしをして命を落としたり、雪おろしをする若者がいなかったりする事態は、私が衆議院議員をしていた2005~2009年の間にも起こり、国の予算から除雪費を出していたが、それから10年経過した今でも同じことが言われ、改善されていないことに驚きを感じる。雪おろしは生産性の低い危険な仕事で、国が毎年多額の除雪予算をつけるのももったいないため、除雪をしなくてもよいシステムにすべきだ。例えば、雪が一定の重さになると屋根が温まり屋根に接している部分の雪を溶かして積もった雪をすべり落としたり、その雪が通路などの危険な場所に落ちないよう屋根の傾斜を変えたりすれば、一回の支出で積雪の悩みがなくなる。そのため、*6-1のように、HPに積雪重量を示しても対応する人がいなければあまり意味がなく、電熱システムを人が住む家の屋根に取り付けた方が効果的だと思われた。
 なお、*6-2のように、「草刈りは何も生み出さないのに、時間ばかり奪われる」として、草刈りロボが開発されるそうだが、できれば何かを生み出した方が生産性が上がるため、耕作放棄地に、*6-3のような牧草を作って酪農家に放牧させるシステムにし、それ用のロボットを作った方がよいと思われる。そうすれば、飼料を100%自給でき、餌代が少ないため優良経営になり、製品が脂質過多にならない。また、*6-4の、水田の除草に機械を使うか、アイガモを使うかの選択は、どちらが生産性が上がるかの問題だが、私は、アイガモを使った方が副産物もでき、生産性が高いのではないかと考える。

    

(図の説明:「電熱システムにしたら電気代が高い」と言う人が必ずいるので、ここで片屋根大容量太陽光発電を備え付けた家(1番左)と天窓のある家(左から2番目、3番目)を紹介しておく。家は、太陽光の欲しい場所もあり、片屋根の向こう側は天窓に使えそうだ。また、1番右のように、道路に太陽光発電を設置している国もある)


    光ファイバー照明とその原理   「ひまわり」による自然光の採取方法と使用

(図の説明:1番左と左から2番目のように、光ファイバーで自然の太陽光を照明したい場所に導くこともでき、左から3番目の図のように、「ひまわり」で太陽光を室内に導いて、1番右と右から2番目の写真のように、室内でサンゴや植物を育てることも可能だ。そのため、建築学科の学生は、諸外国の例も参考にし、新しい技術を使って《もしくは作って》、雪国や暑い国の街づくりを設計し、卒論や修論の題材にしたらどうだろうか?)

*6-1:https://www.agrinews.co.jp/p42964.html (日本農業新聞 2018年1月10日) 除雪 今でしょ 「雪おろシグナル」 運用開始 新潟県 HPに
 新潟県は9日、積雪時に屋根の雪下ろし作業をするかどうかの判断に役立つ積雪重量計測システム「雪おろシグナル」の運用を始めた。ホームページ(HP)上の地図に県内の積雪状況を「重さ」で表示する仕組みで、防災科学技術研究所と新潟大学、京都大学が共同開発した。建物が倒壊する危険性を赤、黄、緑などの色別に示し、除雪の適時を判断できる。システムは県のHPから閲覧できる。現在の積雪重量の度合いに応じて色分けして示し、最小値と最大値も表示する。建物倒壊の可能性がどの程度か、雪下ろしの基準となる積雪深1メートル以上になるのか、建築基準法に沿った積雪深を下回る量かなどを判断できる。直近30日間の重量データも確認できる。同研究所は今後、全国の降雪地域での活用も目指す。総務省消防庁の調べでは、2016年11月~17年3月末に全国で140棟の空き家が雪による全壊、半壊、一部破損などの被害を受けており、県は降雪による空き家の損壊事故を憂慮。「空き家の所有者がこのシステムで雪下ろしの必要な時期を把握し、対応してもらいたい」と期待する。

*6-2:http://qbiz.jp/article/126424/1/ (西日本新聞 2018年1月19日) 農地守れ!草刈り ロボ 福岡の企業と産総研開発へ 自動走行、放棄地増加防ぐ
 国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は農機メーカー「筑水キャニコム」(福岡県うきは市)などと共同で、自動走行して草刈りをする電動ロボットの研究開発に乗り出した。人手が足りない中山間地で耕作放棄地が増えており、草刈りの効率化で農地を守る狙い。2019年度に試作機を完成させ、実用化を目指す。中山間地では耕作放棄地に草が茂り、そこにすみついたイノシシなどが周辺の田畑を荒らしている。農業者の耕作意欲が奪われ、さらなる放棄地を生む悪循環に陥っているという。こうした状況を受け、産総研が、草刈り機の製造技術や販売ルートを持つ筑水キャニコムに研究開発の協力を呼び掛けた。ロボットは、周囲360度を撮影できる搭載カメラの映像を解析し、独自の周辺地図を作製する技術を活用。この地図に草刈りの範囲を指定すると、自動的に経路を決め、車輪で移動しながら草を刈る仕組み。中山間地特有の小規模な農地でも使えるように、縦、横、高さとも50センチ以下と小型化を図る。1回の充電で2時間程度の作業時間を目指し、価格も50万円以下に抑える。現段階では、不整地でも横転せずに移動し、安定的に草刈り作業ができるようになったが、リモコンでの操作が必要。今後、産総研を中心に自律制御装置の開発を進め、この装置を搭載したロボットを岡山県の棚田で実証する。筑水キャニコムの開発担当者は「草刈りは何も生み出さないのに、時間ばかりが奪われると農業者のぼやきを聞いている。作業の負担を軽くしたい」としている。

*6-3:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-650298.html (琉球新報 2018年1月21日) 小谷あゆみの「はいたいコラム」:太陽は仕事仲間
 島んちゅの皆さん、はいたい~! 北海道中標津町の酪農のカリスマ!三友盛行さん(72)のお話を聞いてきました。三友さんは牧草地の面積に見合う頭数だけ牛を放牧する「マイペース酪農」を提唱する酪農家で、同名の著作をお持ちです。現在、三友牧場の搾乳牛は30頭。何千頭規模のメガファームもある北海道で、なぜこの小さな牧場主がカリスマと呼ばれるのでしょう。答えはズバリ優良経営! 放牧なので購入飼料は使わず、設備投資も極力控える方法で、他の牧場を圧倒する利益率を上げているのです。酪農教室が開かれた茨城の新利根牧場で三友さんは、牛たちの体型から健康状態を読み取り、草地に点在する牛糞(ふん)の分解度合いから微生物の働きを推察し、生き物の声を人間の言葉に変えて解説してくれました。中でも私が感動したのは、三友さんが太陽のことを何度も「太陽さん」と呼んだことです。牧場内の「土、草、牛」の生命循環に太陽光は欠かせません。太陽は牧場経営にとって、日照・乾燥部門を請け負う「仕事仲間」なのです。私たちが取引先の社名をさん付けで呼ぶように、放牧酪農家は太陽を呼び捨てにせず、敬意を払って呼ぶのでした。取引先が太陽さんだなんて、すてきじゃありませんか。おおらかで太っ腹で明るい太陽さんは、納品が遅れることも、他社に乗り換えることもないどころか、請求書もありません。ときどき連絡なく引きこもることはありますが、そのときは雨さんが別の恵みを牧場にもたらします。三友さんいわく、太陽さんによく働いてもらえるようにするのが人間の仕事。雨を恨まず恵みの雨にするために人の仕事はあるとのことでした。予定を前倒しして次の草の種まきを終えてさえいれば、降る雨は恵みになります。管理できない自然界の力を最大限生かせるよう段取りすることが、人間に残された仕事。そうすれば土も草も牛も、みんな生き生き、健やかに成長します。マイペース酪農とは、みんなが力を発揮し合うサステイナブルな連携! 持続可能な生産と消費が求められる時代、これはあらゆる仕事や人間関係に共通した考えです。仲間が力を発揮しやすいように私はどれだけ努力できているか。少なくとも締め切りを守らなくちゃ。琉球新報さ~ん、いつもありがとう~!
*小谷あゆみ:農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ・高知県育ち。NHK介護百人一首司会。介護・福祉、食・農業をテーマに講演などで活躍。野菜を作るベジアナとして農の多様性を提唱、全国の農村を回る。

*6-4:http://qbiz.jp/article/126526/1/ (西日本新聞 2018年1月22日) アイガモに強力ライバル? 稲だけ残す水田除草機 福岡の企業開発
 アイガモに強力なライバル登場? 水田の稲は傷めず、雑草だけを一掃する水田除草機を農業機械メーカー「オーレック」(福岡県広川町)が開発した。広い面積を短時間で処理でき、除草剤を使わなくて済む。有機栽培で除草を担ってきたアイガモに代わる新たな戦力となりそうだ。日光を遮り土中の養分も奪う雑草は、米の収穫量や品質を左右する。夏の除草は重労働で農家の高齢化とともに大きな課題となっている。従来の機械は稲が並ぶ列の間はある程度除草できたが、稲と稲の間まで取り去るのは難しく、ほとんどの農家は除草剤を利用。無農薬や有機栽培では、手作業やアイガモの働きに頼るしかなく、規模拡大の障壁にもなっていた。同社は「農家の負担軽減と食の安全安心」のため、15年前に水田除草機の開発を始めた。昨年完成した「ウィードマン」は、雑草が稲より地表近くに根を張ることに着目。回転式の棒で深さ約1センチの土中をすくって雑草だけをからめ取り、土に混ぜ込む業界初のシステムで特許出願している。1反(約990平方メートル)の作業時間は約25分で、収穫までに2、3回の除草で済むという。雑草が成長しすぎた状態でも除草でき、作業時期に幅を持たせられるため、複数の農家で機械を共有してコストを抑えることも可能。既に試験販売を始めている。開発チームリーダー鈴木祥一さん(37)は「有機栽培の手間を減らして規模拡大を後押しできる。大規模農家の省力化や、除草剤をやめることで米の付加価値アップにもつながる」と期待している。


PS(2018年1月19、21日追加):*7-1のように、九州の離島(長崎県の壱岐・対馬、鹿児島県の種子島・徳之島・沖永良部島・与論島など)では、2014年の半ばに送配電網に接続できる連系可能量を上回る規模の発電設備が稼働したため、九電は再エネ発電設備の送配電網への接続申し込みを約1年間保留し、蓄電設備の増強はしなかった。そして、現在も、接続可能量を超えるとして、再エネ発電設備の送配電網への接続申し込みの2/3程度しか接続していない(http://www.kyuden.co.jp/effort_renewable-energy_ritou.html 参照)。しかし、九州の離島は太陽光・風力発電の適地が多いので、クリーンな再エネだけで100%以上の電力を賄って経済を潤すことができると同時に、再エネ電力の供給を増やすこともできるため、経産省や大手電力会社は再生エネ発電を進めるべく工夫すべきなのだが、現在はその反対で公共の利益に反している。そのため、*7-2のような電力会社が、電力小売りに参入して再エネを使った新電力への切り替えを進めるのはよいことだ。
 また、*7-3のように、長崎県佐世保市が、福岡県みやま市の電力会社「みやまスマートエネルギー」に続いて、周辺市町と連携した広域の新電力会社設立を進めているそうだ。今後、農漁業において自然再生可能エネルギーによる発電が増えることが予想され、地方自治体自身もゴミ焼却などの電源を持つため、自治体が率先して(水道料金並みの)安い電力を供給することは、その地域の住みやすさや産業集積に繋がる。

 
     *7-1図1        *7-1図2       2015年の状況
(図の説明:九電は、長崎県・鹿児島県の離島6島で、自社の火力発電所の最低出力を確保するため、太陽光・風力による発電設備の接続申し込みを保留し、離島の再生可能エネルギー普及にブレーキをかけている)

 
    ゴミ焼却発電       地中熱の利用      各種の太陽光発電
(図の説明:地方自治体は、1番左の図のようなゴミの燃焼発電、真ん中の図のような地中熱発電、1番右のようなさまざまな太陽光発電、その他の自然エネルギーによる発電のツールを持っており、これらを有効利用して税外収入を得れば、地方税の税率を下げたり、教育・福祉を充実したりすることができ、その地域の住みやすさや産業集積に影響する)

*7-1:http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1407/30/news018.html (スマートジャパン 2014年7月30日) 電力供給サービス:太陽光や風力の接続申し込みを1年間保留、九州の離島に大きな制約
 九州電力は長崎県と鹿児島県の離島6島を対象に、太陽光や風力による発電設備の接続申し込みを約1年間にわたって保留することを決めた。島内の主力電源である内燃力発電所の最低出力を確保するためで、離島における再生可能エネルギーの普及に大きなブレーキがかかることは確実だ。対象になる6島は長崎県の壱岐と対馬のほか、鹿児島県の種子島、徳之島、沖永良部島、与論島である。再生可能エネルギーによる発電設備を送配電網に接続するための事前相談・事前検討・接続契約申し込みの回答が、7月26日から約1年間にわたって保留される。住宅用の太陽光発電設備も含む厳しい措置になる。6島のうち、すでに種子島では送配電網に接続できる連系可能量を上回る規模の発電設備が稼働している。さらに今後の予定量を加えると連系可能量を3700kWも超過してしまう(図1)。九州電力は種子島をはじめ連系可能量が限界に近づいている6つの島で、既存の発電設備の出力状況と島内の需要変動を検証しながら、今後1年程度をかけて連系可能量の引き上げを検討することにした。種子島を例にとると、主力の電源として島内の2カ所に内燃力発電所が稼働中で、合計出力は最大で4万500kWになる。このうち最低でも9000kWの出力を維持する必要がある。一方で太陽光の発電量が最大になる昼間の電力需要は、最も少ない場合には1万6000kW程度しかない(図2)。需要と供給のバランスをとるためには、太陽光や風力の出力を7000kW程度に抑える必要があるが、2014年5月末の時点で9000kWを超える発電設備が送配電網に接続されている。実際にはすべての設備が同時に最大の出力を発揮することはなく、九州電力の想定では8500kW程度までならば接続して問題なく運用できる。種子島の送配電網には国の実証事業で出力3000kWの蓄電池が設置されていて、天候による太陽光や風力の出力変動を吸収することは可能だ。ただし定常的に余剰電力を調整するには容量が足りない。今のところ九州電力には蓄電池を増強する計画はなく、発電事業者に依存しているのが現状である。離島では電力需要が小さいために、石油を燃料にしてディーゼルエンジンで発電する内燃力を採用するのが一般的だ。発電コストが高く、CO2のほかに有害物質の排出量も多いことから、自然環境を保護するうえでも再生可能エネルギーの導入拡大が求められている。九州電力が1年間も接続申し込みを保留することは、企業や家庭が再生可能エネルギーを導入する機運を大きく損ねかねない。こうした状態になるまで対策を実施しなかった国の責任も問われる。国民が賛同しない原子力発電所の安全対策に多大な時間とコストをかけるよりも、再生可能エネルギーの導入が必要な地域の送配電網の増強を優先すべきではないか。

*7-2:http://qbiz.jp/article/126415/1/ (西日本新聞 2018年1月19日) 自治体支援のホープが電力小売りに参入へ
 自治体向けサービスなどを展開する「ホープ」(福岡市)は、電力販売事業に参入すると発表した。経費削減を目指す自治体や取引企業向けに電力を供給し、収益力の向上を図る。ホープは、自治体の広報紙やホームページなどの広告枠販売や、情報冊子の作成などを手掛ける。2017年6月期には800程度の自治体と契約実績があり、新電力への切り替えを検討する自治体に売り込む。取引企業には広告とセットで販売する。日本卸電力取引所から調達した電力を供給する。昨年11月、経済産業省に小売電気事業の登録を申請した。手続き完了後に本格的に事業を始める。ホープの17年6月期の売上高は17億7400万円。約5年後には売上高100億円規模を目指しており、今後も自治体に特化した新規サービスを打ち出す方針。

*7-3:http://qbiz.jp/article/126270/1/ (西日本新聞 2018年1月21日) 長崎・佐世保市、新電力会社を検討 県境越え連携、参入へ 行政サービス相乗効果期待
 電力小売り自由化で自治体の電気事業参入が進む中、長崎県佐世保市は県境を越えた周辺市町と連携し、2019年4月の発足を目指す「連携中枢都市圏」をにらみ、広域での新電力会社(PPS)設立を検討している。市は既に会社設立に向けた動きを進めており、今後、中枢都市圏からどの程度の賛同が得られるかが課題となる。広域化で行政サービスの向上を目指す中枢都市圏の協議には中核市の佐世保市をはじめ県北と佐賀県西部の14市町が参加している。佐世保市はPPS設立で自然エネルギーなどで生み出した電力の小売りを圏域内で行い、エネルギーの地産地消や他の行政サービスとの相乗効果などを期待。市によると、これまで2県の11市町がPPS設立に向けた協議に参加しており、中枢都市圏での設立参入は前例がないという。中枢都市圏での協議を促進しようと、市は9日、先進的に取り組む福岡県みやま市の電力会社「みやまスマートエネルギー」の磯部達社長らを招いて講演会を開いた。同社は同市が55%出資し設立。市内の大規模太陽光発電所(メガソーラー)などで発電した電力を買い取り、公共施設や家庭向けに販売している。磯部社長は、売電契約を結んだ家庭に配布したタブレット端末を活用し、電気の利用状況から高齢者の見守りを行ったり、地域の行事や防災情報を配信したりしている事例を紹介。収益をコミュニティー施設の運営に充てるなど「電力料金の低減やエネルギーの地産地消だけでなく、収益を地域の課題解決に活用できる」と利点を訴えた。佐世保市はPPS設立に向け、同社などにコンサルティング業務を委託。今後、各市町の電力利用状況の分析や収益の活用方法の検討などを進める。


<地熱の利用>
PS(2018年1月23日追加):*8-1のように、日本には火山が多く、今日、草津の白根山が噴火した。また、*8-2のように、熊本県水俣市では、茶園跡約3.3ヘクタールに出力約1.8メガワットのメガソーラーを設置し、ご当地エネルギーの売電収益で熊本地震の復興や水俣地域の振興を後押しするそうだが、私は、農地として使いながらソーラー発電した方がよいと考える。また、日本は、地震・津波・断層・火山の多い国で原発には全く向かないが、草津のように地熱は豊富であるため、熊本県も阿蘇山を利用して地熱発電すればいいのではないだろうか?

   
      西日本新聞2018年1月23日(*8-1)より         阿蘇噴火

*8-1:http://qbiz.jp/article/126647/1/ (西日本新聞 2018年1月23日) 草津白根山が噴火、十数人負傷 スキー場で雪崩発生か
●訓練中の自衛隊員も6人けが
 23日午前9時59分ごろ、群馬県と長野県の境にある草津白根山の本白根山(2171メートル)が噴火した。草津白根山で噴火が確認されたのは1983年以来。消防によると、噴石などにより10人が負傷した。けがの程度は不明。雪崩も発生したとの情報もあり、陸上自衛隊は、現場付近で訓練していた6人が巻き込まれて、けがをしたとしている。一方、捜査関係者によると、群馬県草津町にある草津国際スキー場付近でのけが人は12人に上り、うち2人が重体としており、県や警察などが詳しい状況を調べている。同町役場によると死者や行方不明者は確認されていないとしている。消防によると、草津白根山の麓にある草津国際スキー場で、噴石がゴンドラに当たり、割れたガラスで乗客4人がけがをしたと通報があった。レストハウスの一部の屋根も噴石で突き破られているという。スキー場の事務所には、職員から「雪崩が発生したようだ」とする連絡もあり、スキー客約80人がレストハウスに避難したとしている。山頂で孤立している人がいるとの情報もあり、救出に向かっている。陸自は、群馬県の相馬原駐屯地に司令部を置く第12旅団所属の複数の隊員が、スキー訓練中に雪崩に巻き込まれた。このうち4人が骨折し、2人が重傷を負った。雪崩に埋まった民間人1人を救出したという。草津観光公社によると、スキー場のロープウエーの山頂駅と山麓駅に複数のけが人を含むスキー客や従業員が避難している。東京電力によるとスキー場周辺の11戸が停電した。気象庁は23日、火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを3(入山規制)に引き上げ、本白根山の鏡池付近から2キロの範囲では飛散する大きな噴石などに警戒するよう呼び掛けた。草津白根山では、2014年に火山性地震が増加し山体の膨張が観測されるなど火山活動が活発化したが、活動は低下したとみられていた。首相官邸は、危機管理センターに官邸連絡室を設けて、情報収集に当たった。
●スキー施設の屋根にも穴
 噴石が屋根を突き破り、避難を迫られたスキー客らは不安を募らせた。噴火した草津白根山に近く雪崩も発生した群馬県草津町の草津国際スキー場では23日、スタッフらが、けが人の有無といった情報収集や避難誘導などの対応に追われた。警察の誘導を受け、スキー客ら約100人が麓にあるレストハウスに避難した。レストハウスの責任者によると、客が「山頂の方で噴火があったようだ」と話していたという。別の建物には飛んできた噴石が屋根を突き破った。スキー客を乗せたロープウエーのゴンドラも噴石で窓ガラスが割れ、けが人も出たという。草津観光公社によると、ロープウエーの山頂駅と山麓駅にはスキー客や従業員が逃げ込んだ。取材に応じたスキー場の男性スタッフは雪崩が発生した直後からリフトを全て止め、客には避難を促したと説明。停電も発生し、ロープウエーも止まったが、予備電源を利用して動かし、乗客を運んだという。この日は関東地方を襲った大雪の影響で例年よりもスキー客は少なかったという。「けが人がいるというが、まだ状況が分かっていない。午前9時から通常営業をしていたので、お客がいたと思う」と慌てた様子だった。群馬県の草津町や嬬恋村には対策本部が設置され、職員らが情報収集に当たった。草津白根山の麓にある草津温泉の協同組合によると、今のところ噴火の影響はなく、宿泊客は落ち着いているという。西吾妻福祉病院(群馬県長野原町)には、県内の他の病院から派遣された災害派遣医療チーム(DMAT)も待機。病院の担当者は正午すぎに「搬送されたのは今のところ1人だけだが、医師約20人態勢で受け入れ準備を整えている」と話した。
■草津白根山 群馬県と長野県の境にあり、全国に50ある常時観測火山の一つ。西端部に白根山(2160メートル)、本白根山(2171メートル)などが南北に並ぶ。気象庁によると、近年の噴火活動はすべて水蒸気爆発で、泥流を生じやすい。2014年以降、湯釜火口の湖水で火山ガス由来の成分の濃度が上昇していたが、17年に入り低下傾向が続いていた。

*8-2:http://qbiz.jp/article/126607/1/ (西日本新聞 2018年1月23日) 太陽光売電 水俣に基金 今秋創設 ご当地エネ協など参加 復興や地域振興 後押し
 大規模太陽光発電所(メガソーラー)などの売電収益で、熊本地震からの復興や水俣地域の振興を後押しする「熊本水俣再生基金(仮称)」の設立に向けた発起人集会が22日、熊本県水俣市であった。地域主体の再生可能エネルギー導入を支援する「全国ご当地エネルギー協会」(東京)やグリーンコープ生協くまもとなどが参加。今年秋ごろの基金創設を申し合わせた。同協会は同市薄原の茶園跡約3・3ヘクタールに出力約1・8メガワットのメガソーラーを設置し、21日に稼働を始めた。協会によると、年間約1千万円の売却益が見込まれ、このうち200万〜300万円を基金の原資にする。これとは別に、グリーンコープが配送センターの屋根などに設置した太陽光発電の売却益も年間約90万円を基金に繰り入れる予定。集会では「地域の再生に役立てていく」とする設立趣意書を採択。地域活性化や、再生可能エネルギーの普及に取り組む住民や団体に交付する目的で基金を運用することを確認した。今後、準備委員会で本格的に検討する。出席した認定NPO法人「環境エネルギー政策研究所」の飯田哲也所長は、水俣病と東京電力福島第1原発事故の経験を踏まえ、「日本の影の歴史に光を当てていく事業にしたい」と話した。

<電源構成の見直し>
PS(2018年1月24日追加):*9-1、*9-2に書かれているとおり、再生可能エネルギーは、機器の大量生産と進歩で発電コストが急速に低下して普及している実績があるため、エネルギー基本計画に定められた恣意的で先見の明のない“電源構成バランス”は速やかに見直すべきだ。また、2016年度の原発比率は2%であるため、ただちに原発比率を0にすることも容易である。にもかかわらず、国がなかなか動かない場合は、地方自治体や農協・漁協が、「ご当地エネルギー」で地域創成を行いながら、動き始めて実績を重ねるのがよいだろう。

*9-1:https://kumanichi.com/column/syasetsu/310164/ (熊本日日新聞 2018年1月18日) エネルギー基本計画 電源構成の見直し必要だ
 経済産業省の有識者会議は2014年に閣議決定された現行のエネルギー基本計画の見直し作業を進めている。今春にも改定案がまとまる予定だ。いまだに収束の見通しさえない東京電力福島第1原発事故から間もなく7年。世界のエネルギーを巡る情勢が激しく変化する中、時代と世論の要請に応えるものとしなければならない。問題点の一つは、現行計画に基づいて15年に決められた電源構成の扱いだ。電源構成では、30年度の原子力による発電比率を20~22%とすることを目指すとしている。16年度の原発比率は2%なので大幅な引き上げになる。だが、原発事故以降、安全対策や維持管理のコストが高騰する中で廃炉が進んでいるため、運転期間の延長や新増設を行わないと達成できないとする専門家が多い。安倍晋三首相はことあるごとに原発依存度の低減を口にし、基本計画も依存度の可能な限りの低減が「エネルギー政策を再構築するための出発点」だとしている。そうであれば、原発の新増設まで行わないと達成できないとの見方もある現在の目標は過大すぎる。一方、再生可能エネルギーは、総発電量に占める割合が16年度に13%程度にまで増えたことを考えれば、30年度に22~24%にするとの目標は小さすぎる。地球温暖化防止のためのパリ協定が採択され、世界で石炭火力削減が急速に進み、日本も大幅な排出削減を迫られている。26%という石炭火力の比率も見直しが必要だろう。そもそも電源構成では今後、電力消費量が大きく増えると見込んでいるが、日本の電力消費量は原発事故以降、減少傾向にあり、現実と目標の隔たりも大きい。改定に際しては、電源構成が時代の流れに沿っているかの検討が欠かせないはずだが、残念ながら経産省は早々に電源構成は見直さないと表明している。しかも議論は経産省が選んだ委員による審議会の場に限られている。メンバーは経産省に近い研究者や大企業、経済団体の代表が中心で、環境保護団体などを含めて多くの利害関係者の意見が反映される形には程遠い。確かに再生可能エネルギーの割合を増やすのは簡単ではない。現在は大半が水力発電で、太陽光や風力は原発の代替電源として期待を集めるものの、天候に発電量が左右される。国際水準と比べて割高な発電コストの引き下げも課題だ。小泉純一郎元首相らが発表した「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」も、「再生可能エネルギーの発電を50年までに100%に」を掲げているが、具体的な工程表づくりは今からだ。地球温暖化対策と表裏一体であり、今後の社会や経済の在り方に大きな影響を与えるエネルギー基本計画の見直しを、限られた人々だけでの議論による小手先の修正に終わらせてはならない。国会だけに任せるのではなく、多くの市民が参加できるような議論と意思決定の場も必要ではないか。

*9-2:http://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_30321.html (宮崎日日新聞社説 2018年1月24日) エネルギー計画改定
◆原発比率引き上げは疑問だ◆
 2014年に閣議決定された現行のエネルギー基本計画の見直し作業が進んでいる。いまだに収束の見通しさえない東京電力福島第1原発事故から間もなく7年。世界のエネルギーを巡る情勢が激しく変化する中、時代と世論の要請に応えるものとしなければならないが、現在の議論はその進め方も内容もそれには程遠い。国の将来を左右する重要なエネルギー政策の議論を通り一遍のものに終わらせることなく、透明性の高い形で計画をまとめることが必要だ。
●現実と大きな隔たり
 問題点の一つは、現行計画に基づいて15年に決められた電源構成の扱いだ。電源構成では、30年度の原子力による発電比率を20~22%とすることを目指すとしている。15年の原発比率は1%強なので、大幅な引き上げとなる。だが、原発事故以降、廃炉が進んでいるため、運転期間の延長や新増設まで行わないと達成できない、とする専門家が多い。安倍晋三首相はことあるごとに原発依存度の低減を口にし、基本計画も冒頭で依存度の可能な限りの低減が「エネルギー政策を再構築するための出発点」だとしているのだから、この過大な目標は見直すべきだろう。逆に発電コストの急速な低下を背景に再生可能エネルギーの比率が15%程度まで増えたことを考えれば、30年度に22~24%にする目標は小さすぎる。地球温暖化防止のためのパリ協定が採択され、世界各国で石炭火力削減が急速に進み始め、日本も大幅な排出削減を迫られている。26%という石炭火力比率も見直しが必要だろう。そもそも電源構成では今後、電力消費量が大きく増えると見込んでいるが、日本の電力消費量は原発事故以降、減少傾向にあり、現実と目標との隔たりも大きい。
●市民参加の議論必要
 時代の流れにそぐわなくなった電源構成を見直すことが必要だが、経済産業省は早々に電源構成は見直さないことを表明。現在の議論はこの目標を達成するために何が必要かという矮小(わいしょう)化されたものに終始している。しかも議論は、経産省が選んだ委員による審議会の場に限られている。安倍首相のエネルギー問題や地球温暖化に関する発言もほとんどなく、政治的なリーダーシップが示されているとも思えない。一方で、立憲民主党は通常国会に30年までの全ての発電用原子炉廃止を政府目標とする法案の提出を目指しており、小泉純一郎元首相が顧問を務める民間団体が「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」の骨子を発表するなどの動きもある。今後の社会や経済の在り方に大きな影響を与えるエネルギー基本計画の見直しを、限られた人々だけでの議論による小手先の修正に終わらせることは許されない。国会での真剣な論争が欠かせない。多くの市民が参加できるような議論と意思決定の場も早急につくる必要がある。


PS(2018年1月27日追加):*10-1のように、中国は、英仏と同様、ガソリン車やディーゼル車の製造・販売を禁止してEVにシフトし、*10-2のように、韓国の現代自動車が航続距離を39%増やした新型燃料電池車(FCV)を欧米でも2018年に投入しようとしている時に、*10-3のように、JR九州が省エネ近郊型交流電車と蓄電池搭載のハイブリッド車両走行試験を2018年度から始めるのは遅れすぎている。何故なら、①鉄道をFCVかEVにすれば、架線のない場所でも排気ガスフリーで走れる上 ②これまで架線があった場所でも架線やパンタグラフのメンテナンスコストが節約でき ③連続した広い敷地を持つ鉄道会社が自家発電するのは容易であるため燃料代を0にできる からだ。なお、JR九州は列車の色に赤や橙をよく使っているが、これは、ただでさえ暑い九州の夏に極めて暑苦しく見えるため、世界に通用する爽やかなデザインにした方がよい。


        *10-3より           日本初のEV(左)とFCV(右)

*10-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170912&ng=DGKKZO21011180S7A910C1MM8000 (日経新聞 2017.9.12) 中国、ガソリン車禁止へ、英仏に追随、時期検討 最大市場、EVシフト
 中国政府はガソリン車やディーゼル車の製造・販売を禁止する方針だ。英仏が7月に2040年までの禁止を表明したことに追随し、導入時期の検討に入った。電気自動車(EV)を中心とする新エネルギー車(NEV)に自動車産業の軸足を移す。世界最大の自動車市場である中国の動きは、大手自動車メーカーの成長戦略や世界のEV市場に影響を与えるのが確実だ。中国天津市で開かれた自動車産業のフォーラムで、工業情報化省の辛国斌次官が9日に「複数の国がガソリン車やディーゼル車の製造販売のロードマップを明らかにしたが、工業情報化省も研究に着手した。将来は関係部門と一緒に我が国のロードマップを作っていくだろう」と述べた。中国政府はEVやプラグインハイブリッド車(PHV)を中心とするNEVに注力する方針を示しており、その一環とみられる。4月に発表した中長期計画では16年に50万台にとどまったNEVの販売を25年に従来計画の2倍弱にあたる700万台に上方修正した。中国政府がガソリン車などの製造・販売の禁止検討に着手する背景には、北京など多くの都市で大気汚染が深刻になっている事情がある。さらに、ガソリン車などでは日米欧の大手メーカーに対抗することが難しいため、NEVで世界を代表する中国企業をつくり出す思惑も透ける。中国の自動車メーカーの業界団体幹部はNEVの振興策について「国内企業の保護が目的ではない」と指摘する。中国政府が最大で1台当たり100万円程度の補助金を出しても、16年の販売台数は全体の2%にも満たなかった。NEVのテコ入れを狙い、中国政府は外資大手にNEVに限り従来認めていなかった3社目の合弁を解禁しブランド力を持つNEVを開発させる方針。18年からは自動車メーカーに、一定比率のNEVの製造販売を義務付ける規則を導入する方向で調整を進めている。中国の16年の新車販売台数は2800万台。米国の1.6倍、日本の5.6倍に達するため、世界の大手メーカーもNEV分野に力を入れる方針だ。中国市場でシェアを争う独フォルクスワーゲン(VW)と米フォード・モーターはNEVの3社目の合弁を決めた。米EV大手のテスラも中国での現地製造を検討している。日本勢も日産自動車やトヨタ自動車が現地生産や新型車の投入など対応を加速する構えだ。中国政府は4月に外資系自動車メーカーが同国で製造合弁する際の出資規制を緩和する方針を表明した。25年を目標に50%と定めた出資上限を引き上げる方針。ガソリン車の製造販売規制が新たな中国企業の優遇策とならないように、自動車分野の外資規制緩和の確実な実行が求められることになりそうだ。

*10-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170818&ng=DGKKASDX17H0I_X10C17A8FFE000 (日経新聞 2017.8.18) 現代自が新型燃料電池車 航続距離39%増 欧米でも来年投入
 韓国の現代自動車は17日、新型の燃料電池車(FCV)を公開した。2018年の第1四半期(1~3月)に韓国で発売するのを皮切りに、欧米市場などにも投入する。現行モデルと同じ多目的スポーツ車(SUV)型で、航続距離は現行比39%延びるという。18年に航続距離を2倍にした電気自動車(EV)を発売することも公表した。現代自にとって2代目になるFCVは、水素と酸素を化学反応させて電気をつくる燃料電池スタックや水素供給装置などの中核部品を全面的に見直した。化学反応から推力を得るシステムの効率を60%と現行比約5ポイント上げ、1回の水素充填で走る距離を580キロメートルに延ばす。モーターの出力は163馬力でトヨタ自動車のFCV「ミライ」(154馬力)を若干上回る。欧米とオーストラリアで「18年後半の発売を見込み、中国販売も検討する」(現代自幹部)とする。FCV市場で先行するトヨタなどを追撃する。ハイブリッド車(HV)などを含む環境対応車を20年までに現在の14車種から31車種に増やす方針も明らかにした。EVは1回のフル充電で390キロメートル走るSUV型を来年前半に出す。また、現代自は航続距離が500キロメートルのEV開発に着手したことも明かした。

*10-3:http://qbiz.jp/article/126930/1/ (西日本新聞 2018年1月27日) JR九州が省エネ新車両の走行試験へ 福岡、長崎で2車種
 JR九州は26日、省エネ型の近郊型交流電車と、蓄電池を搭載したハイブリッド車両の2車種の走行試験を2018年度から始めると発表した。6カ月以上の走行試験を行い、2019年の営業運転を目指す。近郊型電車の821系は高性能の半導体SiC(シリコンカーバイド)を搭載。旧国鉄時代から使用している415系と比べ、消費電力量を約7割低減できるという。福岡県を中心に3両2編成を導入する。ハイブリッド車両のYC1系はディーゼルエンジンで発電機を動かし、蓄電池も併用してモーターで走行する。ブレーキ時に発生する電力を蓄えることで、エネルギーを有効に活用できるという。従来の気動車と比べて燃料消費量を約2割低減する。長崎県を中心に2両1編成を入れる。青柳俊彦社長は「ハイブリッド車両はメンテナンスのコストも削減できると思う」と期待を込めた。


PS(2018年1月28、29日追加):*11-1のように、工学分野での九大の研究はめざましいため、糸島市と九大が「サイエンスパーク構想」を発表したのは大変良い。また、*11-2の癌の免疫療法のように、副作用が殆どなく確実に癌を消去できる方法を開発し、早々に合理的な価格で実用に供することが望まれる。そのため、研究所を集積するにあたっては、シンガポール等の事例を参考に、日本人研究者や日本企業の研究所に限らず、世界からよいものを集めるのがよいだろう。

      
          免疫療法が癌に効く原理        *11-2 *11-3

(図の説明:一番左の図のように、癌細胞は細胞分裂の失敗などで常にできているが、免疫が強いうちは免疫細胞に攻撃され除外されるため問題にならず、これが若い人に癌が少ない理由である。また、癌細胞は自らの細胞が変異したものであるため、正常細胞と区別がつきにくかったり、免疫細胞の攻撃をかわす仕組みを備えていたりする。そのため、癌細胞の特徴を覚えさせ癌細胞のみを攻撃するようにした樹状細胞療法ができたわけだが(左から2番目、3番目の図)、このように少し変異した自分自身の細胞を見逃すことなく攻撃し、正常細胞は攻撃しないという性質が必要であるため、私は、*11-3のように、他人の免疫細胞や化学療法で副作用なく癌細胞を殺すのは難しいと考えている)

*11-1:http://qbiz.jp/article/126562/1/ (西日本新聞 2018年1月28日) 【点検 糸島の課題】1.28 市長・市議選(2) 九大連携 研究所集積へ本格始動
 若いパワーと頭脳の集積を地域の未来につなげる時が来た。九州大学の伊都キャンパス(糸島市東部と福岡市西区)への移転は今秋に完了予定。約1万9千人の学生と教職員が集う「知の拠点」が整い、本格的に動きだす。糸島市は2010年に九大と連携協力協定を結び、九大の研究に1件最大100万円を助成する事業を始めた。テーマは市民や九大、市職員から募集。糸島観光ガイドブックの英語版作成では、九大の留学生の視点を取り入れた。市内にある「白糸の滝」での小水力発電導入では、施設の構造などの助言を受けた。市地域振興課の浦志素彦課長は「九大の知的、人的資源は『宝』だ」と話す。連携事業は今では年間100件以上。15年度には小学校の土曜授業で、学生が研究テーマを分かりやすく伝える「九大寺子屋」が始まった。児童の学習意欲向上を期待し、本年度は5校で実施している。一方で課題もある。市職員からは「九大の研究を事業化して雇用を生みだすなど、地元経済の活力につなげる点では足りていない」との声が漏れる。市と九大が1月に発表した「サイエンスパーク構想」は、そんな課題の克服につながる可能性を秘める。キャンパス近隣に、九大の基礎研究を応用する民間研究所群を誘致し、企業や工場の集積を図る構想だ。うまくいけば卒業生や市民の雇用も期待できる。九大の若山正人副学長は会見で「最初に糸島市が構想に興味を示してくれた」と語った。一方で「企業が来ないと成立しない」とも。九大や糸島市の魅力を国内外に発信できるかが成功への鍵になる。サイエンスパークは国内に20超ある。山形県鶴岡市は01年に慶応大先端生命科学研究所を誘致し、人工繊維などの6社が起業した。市の貸し研究室は満室だ。企業関係者は「行政が長期的視点で基礎研究に投資を続けたことや、失敗を恐れず挑戦する雰囲気が成功につながった」という。市と九大は18年度末までに、構想実現の可否や企業の進出可能性などを見極める。新たな活力を呼び込めるか、手腕が試される。

*11-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180128&ng=DGKKZO26182150W8A120C1MY1000 (日経新聞 2018年1月28日) がんVS免疫療法 攻防100年、高コストや副作用が課題
 ウイルスや細菌などの病原体から身を守る免疫の仕組みを利用する「がん免疫療法」が注目されている。免疫をがん治療に生かす研究は100年を超す歴史があるが、科学的に治療効果を認められたものはほとんどなく、これまでは異端視されていた。状況を変えたのは2つの新しい技術の登場で、手術、放射線、抗がん剤などの薬物治療に次ぐ「第4の治療法」として定着しつつある。19世紀末、米ニューヨークの病院で、がん患者が溶血性連鎖球菌(溶連菌)に感染し高熱を出した。熱が下がって一命をとりとめると、不思議なことが起きていた。がんが縮小していたのだ。外科医ウィリアム・コーリーは急性症状を伴う感染症にかかったがん患者で似た症例があると気づき、殺した細菌を感染させてみたところ、がんが消える患者もいた。毒性の強い細菌に感染することで免疫が刺激され、がん細胞も攻撃したとみられる。コーリーの手法はがん免疫療法の先がけといわれる。だが副作用で命を落とす患者も多く、定着しなかった。免疫が再び注目されるのは1950年代後半だ。ノーベル生理学・医学賞を受賞したフランク・バーネット氏が「免疫が日々発生するがん細胞を殺し、がんを未然に防いでいる」という説を提唱。60年代以降、結核予防ワクチンのBCGを使う治療法や丸山ワクチンが登場した。その後、免疫細胞にがんを攻撃するよう伝えて活性化するサイトカインという物質や免疫の司令塔となる樹状細胞を利用する方法、ペプチドと呼ぶたんぱく質断片を使うワクチンなども試みられた。効果があると科学的に認められるには、いずれも数多くの患者を対象にした臨床試験(治験)が必要だ。しかも、抗がん剤など従来の治療を受けた患者らと比べて、治療成績がよくなることを示さなければならない。免疫療法でそうした効果を証明できたものはほとんどなかった。「がん細胞は免疫を巧妙にかいくぐっているからだ」と長崎大学の池田裕明教授は説明する。「免疫を活性化する手法ばかり研究していた」ことが失敗の原因とみる。20世紀末、がんが免疫の攻撃を逃れる仕組みの研究が進んだ。その中で見つかったのが「免疫チェックポイント分子」と呼ぶたんぱく質だ。免疫は暴走すると自身の正常な細胞も攻撃してしまうため、普段はアクセルとブレーキで制御されている。がん細胞はこの仕組みを悪用し、免疫にブレーキをかけて攻撃を中止させる。チェックポイント分子の「CTLA―4」や「PD―1」の働きが解明され、2010年代前半にその働きを阻害する薬が開発された。免疫細胞は攻撃力を取り戻してがん細胞を殺す。皮膚のがんの一種の悪性黒色腫で高い治療成績を上げ、肺がんや腎臓がんなどでも国内承認された。CTLA―4を発見した米テキサス州立大学のジェームズ・アリソン教授、PD―1を突き止めた京都大学の本庶佑特別教授はノーベル賞の有力候補といわれる。注目を集める新しい治療法はもうひとつある。「遺伝子改変T細胞療法」だ。患者から免疫細胞のT細胞を取り出し、がん細胞を見つけると活性化して増殖する機能を遺伝子操作で組み込む。増やしたうえで患者の体内に戻すと、免疫細胞はがんが消えるまで増殖する。大阪大学の保仙直毅准教授は「免疫のアクセルを踏みっぱなしにする治療法だ」と説明する。がんを見つけるセンサーに「キメラ抗原受容体(CAR)」を使うタイプはT細胞と組み合わせて「CAR―T細胞療法」とも呼ばれる。新潟大学の今井千速准教授らが米国留学中の04年に論文発表し、スイスの製薬大手ノバルティスが実用化。17年8月、一部の白血病を対象に米国で承認された。治療効果は抜群で、1回の点滴で7~9割の患者でがん細胞が消え、専門家らを驚かせた。日本でも近く実用化される見通しだ。2つのがん免疫療法にも課題はある。免疫チェックポイント阻害剤が効くのは承認されたがんのうちの2~3割の患者で、数百万円という高い投薬費も問題になった。CAR―T療法は塊を作る「固形がん」には効果が薄いとされる。過剰な免疫反応による発熱や呼吸不全などの副作用もある。遺伝子操作や細胞の培養にコストがかかり、治療費は5000万円を超す。課題の克服を目指す研究も国内外で進んでいる。がん免疫療法はこれからが本番だ。

*11-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180128&ng=DGKKZO26238720X20C18A1EA4000 (日経新聞 2018年1月28日) がんゲノム医療、企業が地ならし 遺伝子調べ最適治療選ぶ、中外やコニカミノルタ、支援サービス相次ぎ参入
 日本の製薬会社や医療機器メーカーがゲノム(全遺伝情報)を調べて最適な治療法を選ぶ「がんゲノム医療」の関連事業に相次ぎ乗り出す。政府ががん対策の指針でがんゲノム医療を柱に据えたことで、医療機関向けにサービスを始める動きが広がり始めた。保険適用が進めば一般的な医療として普及する環境が整う見込みだ。がんのゲノム医療は患者のがん組織などを採取してがん関連遺伝子を大量に調べる。その異常に合わせ、どんな薬を投与すれば効果的な治療となるかを選択する。国内では2015年から大学病院で順次始まった。技術を持つ企業も限られてきたが、大手の参入意欲が高まることで医療機関も利用しやすくなる。中外製薬は2018年中にがん診断事業に参入する方針。親会社のスイス・ロシュの診断子会社ファンデーション・メディシンの固形がん診断サービスの提供を目指す。17年11月、米食品医薬品局(FDA)からゲノム解析サービスとして初の承認を得ている。日本で医師が患者から採取したがん組織を米国に送り、ファンデーション・メディシンで遺伝子を調べる。がんは遺伝子が傷ついて変異すると発症する場合がある。変異した遺伝子の種類により同じがん種でも効果がある薬が変わる。約320種の遺伝子変異を一度に調べ、医師に効果的な薬の情報を届ける。日本政府内ではがんのゲノム遺伝子解析サービスを18年にも薬事承認の対象にするための議論が進んでいる。投薬で効果が得られる確度が上がれば余分な治療薬の使用も減るため、保険適用となる公算が大きい。中外が提供するサービスも米国では1回50万円以上かかるとみられる。日本では自由診療により患者負担が大きいままでは浸透させるのは難しく、中外は適用取得を最優先する。コニカミノルタも18年度に国内でがんの遺伝子診断事業を始める。乳がんや大腸がんの最適な治療や予防方法を血液や唾液から分析する。17年10月に産業革新機構と共同で約900億円を投じて買収した米アンブリー・ジェネティクスの技術を活用する。化学品メーカーのJSRはがんゲノム医療市場の拡大をにらみ、400億円で創薬支援の米社を買収する。18年6月をメドに完全子会社にするクラウン・バイオサイエンス・インターナショナルは、がん患者の遺伝子情報を約3000件集めたデータベースを持つ。この中から製薬会社の求めに応じて遺伝子情報を提供する。がんの種類や患者の遺伝子に応じた最適な新薬を作る際に活用してもらう。政府は昨秋、17~22年度までのがん対策の指針である「第3期がん対策推進基本計画」を閣議決定した。遺伝情報に基づく診断・治療をがん対策の中心にすると位置づけた。これまでのように臓器ごとのがん種に対応するのではなく、患者の遺伝子の異常に応じて治療法を決めることを目指している。これによって大手企業の参入が相次げばサービス価格が低下し、精度も高まることが期待される。

| 資源・エネルギー::2017.1~ | 11:48 AM | comments (x) | trackback (x) |

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