■CALENDAR■
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31     
<<前月 2017年10月 次月>>
■NEW ENTRIES■
■CATEGORIES■
■ARCHIVES■
■OTHER■
左のCATEGORIES欄の該当部分をクリックすると、カテゴリー毎に、広津もと子の見解を見ることができます。また、ARCHIVESの見たい月をクリックすると、その月のカレンダーが一番上に出てきますので、その日付をクリックすると、見たい日の記録が出てきます。ただし、投稿のなかった日付は、クリックすることができないようになっています。

2016.8.2 政府の経済政策と日本の産業の低付加価値の問題(2016年8月5、6、7、8、9日追加)
     
  2016.7.5佐賀新聞     2016.6.15西日本新聞        2016.7.29佐賀新聞               

(1)金融緩和・物価上昇と国民生活について
 与野党が参院選の経済論争で挙げたデータでは、*1-1のように、自民党は「2013~2015年の国内総生産(GDP)の名目成長率を年平均1.6%に押し上げた」とし、民進党は「同期間の実質成長率は0.6%に留まる」としていた。

 では、名目と実質のどちらが生活者にとって意味のある数字かと言えば、物価変動による貨幣価値の変化を修正した実質の方である。また、貨幣価値(購買力)が下がったのは、大規模な金融緩和で通貨をジャブジャブにしたからで、これによって雇用環境が改善した理由は、2010年を100とすれば、2015年は94.6というように実質賃金が下がったからだ。つまり、日本では、付加価値の低い仕事をして低い実質賃金を受け取ることにより雇用を増やしているため、働いている人も消費を増やせないのだ。

 なお、*1-2、*1-4のように、「デフレ脱却の目安となる2%のインフレ目標の達成が重要だ」とする論調は多いが、それは、インフレにすれば、①国・企業の債務を目減りさせることができる(逆に債権を持っている人は実質債権額が目減りする) ②額面(名目)の賃金カットをせずに実質賃金を下げることができる という理不尽な目的によるものであるため、生活者は騙されてはいけない。

 さらに、*1-3のように、G20は「構造改革の重要な役割を強調しつつ、財政政策が同様に重要である」とし、財務省同行筋は「まさに日本のやろうとしていることと軌を一にしている」と自信を示したそうだが、G20は構造改革の方を重視しているのに対し、日本は構造改革をせずに選挙協力の報償のような生産性を上げない財政支出をしたがるため、国民が付加価値の高い仕事をできるようにはならず、国の借金だけが積み増されるという悪循環に陥っていることも忘れてはならない。

(2)経済対策としての財政出動について
 安倍首相は、*2-1、*2-2のように、「①財政措置の規模で13兆円、事業規模で28兆円を上回る総合的かつ大胆な経済対策を来週に取りまとめたい」「②しっかりと内需を下支えし、景気の回復軌道を一層確かなものにしなければならない」と表明しておられる。

 しかし、①については、1年間の消費税5.2%分の金額を、何のために、どう使い、それによってどういう効果があるのか についての根拠を明らかにしなければ、従来同様、ここにひそかに潜り込ませた不要な支出を否定できず、②からは、本物の投資や需要ではない景気対策のように思われる。

(3)グローバル化と一体化は異なること
 主権を放棄したいかのようにTPPを進めている日本は、*3のように、「英国の欧州連合(EU)からの離脱は世界経済混乱の原因になる」と主張しているが、英国を批判しているその日本は難民を殆ど受け入れていない上、開発途上国からの正規の労働移動にも消極的だ。しかし、私は、難民の受け入れや労働移動は、国によって状況が異なるため、人権を護りながらも、その国独自の判断をしたい場合は当然あると考える。

 では、英国が欧州連合から離脱すればグローバル化に逆行するのかと言えば、グローバル化は、一体化しなくても独立国の政策決定で決められるため、先進国なら他国と一体化しない方が、より進んだ政策を採ることも可能だ。そして、英国は、日本が鎖国していた17世紀から、東インド会社を通じてグローバルに商取引を行っていた国なのである。

(4)年金について

    
 上場企業の年金債務・資産・未積立額     株価の推移(名目)     非正規社員数の推移
       2016.7.26日経新聞       2015.4.10西日本新聞 

 上場企業の年金債務は、*4-1のように、2015年度末で91兆円と過去最大に膨らみ、マイナス金利で積立不足が26兆円になったそうだ。その理由は、年金債務要積立額は支払い時までプラス金利で運用する前提で現在価値に割り引いてきたが、利率が低いほど要積立額が多くなり、マイナス金利では将来支払う金額よりも大きな金額を現在積み立てておかなければならないからである。

 そのわけは、金利が高くて運用環境がよければ年金積立額は年金支払い時までに運用益でかなり増えるが、金利が低かったりマイナス金利になったりすれば、あまり増えないので企業は割引率を下げてより多く積み立てなければならないからだ。同じことは、公的年金、保険、個人資産などでも起こっているため、付加価値の低い生産しかできず、金融緩和で経済を持たせるのは、多方面に迷惑をかけている。

 さらに、*4-2のように、国民年金の納付率は90~100%ではなく、たった63.4%である。この割合では、日本年金機構の管理に甘さがあると言わざるを得ない。また、非正規労働者の増加も、年金保険料を支払えない人を増やしている。さらに、男女の性的役割分担に固執して女性が働きにくい社会を作った結果、専業主婦として三号被保険者となり、保険料の納付を免除されている人も多い。

 その上、*4-3のように、年金資産の運用を行っている年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2015年度の運用損失は約5兆3千億円で、GPIFは2014年10月に株式(リスク資産)での運用割合を50%に増やし、昨夏や年明けからの株価下落で赤字を出したそうだ。これについて、政府とGPIFは、「累積では約45兆円の運用益を確保しているので問題ない」としているが、年金資産は短期の売り買いが不要であるため、株式などのリスク資産による運用は50%ではなく20%以下にして80%以上は債権で元本を保証しながら、株式などのリスク資産は高くなって利益が出る時に売却し、安くなった時に購入するという方法で、元本割れさせずに利益を出し続けることも可能なのである。

 従って、年金資産の50%という高い割合で、どういう銘柄の株式を買い、本当に年金資産にプラスになる運用をしたのかどうかも検証が必要だ。

 このようにして、年金生活者にも大きな実質収入減があるため、(泥棒でもしない限り)消費を控えざるをえず、いつまでも本物の需要で市場が満たされないわけである。

<金融緩和・物価上昇と国民生活>
*1-1:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/330380 (佐賀新聞 2016年7月5日) 成長率、雇用など経済論争 際立つデータの違い、参院選で与野党、共に実績を強調
 与野党が参院選の経済論争で挙げるデータの違いが際立っている。自民党は安倍政権3年半の成果として、2013~15年の国内総生産(GDP)の名目成長率を年平均1・6に%押し上げたと強調する。民進党は、同期間の実質成長率は同0・6%にとどまり、民主党政権3年3カ月より低いと反論。両者は共に実績を強調し、アベノミクスの評価は正面からぶつかる。2種類の成長率は、物価変動要素を含めた名目値と、除外した実質値の違いだ。名目値は、給料や物・サービスの値段など見掛けの状態を表すため国民の実感に近く、実質値は真の実力を示すとされる。与党が重視するのは名目値だ。民主党政権時の10~12年の名目成長率は年平均0・3%で、安倍政権になり上がったと胸を張る。名目値が高いのは、物価が上がったため。アベノミクス「三本の矢」による大規模な金融緩和を進めた結果と言えそうだ。民進党は実質値に寄った立場だ。10~12年は東日本大震災の発生もあった上で実質成長率が年平均2・0%あったが、13~15年は半分以下に落ち込んだと指摘。アベノミクスが失敗した証拠だと突き付ける。雇用統計でも与野党は対立する。自民党は参院選公約に(1)就業者数が12年から15年に106万人増加(2)有効求人倍率が24年ぶり高水準で47都道府県全て1を超えた-などと明記。雇用環境が改善したと訴える。野党が問題視するのは、雇用形態だ。こちらも公約に、非正規雇用は03年の34・6%から14年に40・5%へ増加したと明示。12年と15年の比較でも、非正規が167万人増え「雇用が不安定になる一方だ」と指摘する。賃金を巡っても、両者の主張は食い違う。与党は、3年連続2%水準で引き上げを実現したと成果を誇る。企業収益が過去最高の70兆8千億円(15年)に達し「政権から経済団体へ賃上げを働き掛けた。労組のお株を奪う実績だ」と自負する。野党は、物価要素を除いた実質賃金で見れば、安倍政権で連続して減少したと切り捨てる。10年を100とすれば15年は94・6と低迷しているのが実態だと示し「格差が広がり、消費も伸びない」と疑問視した。

*1-2:http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20160430_3.html
(京都新聞社説 2016年4月30日) 物価目標先送り  戦略立て直しが必要だ
 強弁を重ねても手詰まり感は誰の目にも明らかだろう。日銀は、デフレ脱却の目安となる2%の物価上昇目標の達成時期をさらに先送りする一方、金融政策は現状維持を決めた。追加金融緩和を予想していた金融市場では失望売りが広がり、日経平均株価が600円以上急落し、大幅に円高も進んだ。黒田東彦総裁は、追加緩和見送りの理由を2月導入のマイナス金利政策の「効果を見極めるため」としつつ、「2%目標は十分達成できる」と繰り返した。だが足元では景気や物価の低迷が浮き彫りで、家庭や企業、市場とも認識のずれは広がる一方ではないか。目標達成時期の先送りは1年間で実に4回目だ。1月に見直した「2017年度前半」を早くも「17年度中」へ最大で半年延ばした。黒田総裁は「2年で達成」を確約して13年4月に大規模緩和を始めた。任期5年内の達成の瀬戸際に追い込まれた形だが、実現は極めて困難との見方が大勢だ。それでも日銀は追加緩和に動けなかった。「奥の手」のマイナス金利導入でも企業、個人向け融資拡大の効果がいまだ見えず、収益悪化を懸念する金融機関や国民からも反発が根強いからだ。さらに短期間での追加緩和は通貨安誘導だと国際的批判を受けかねない。5月下旬の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)を前に、経済政策での国際協調に水を差すとの政治的配慮もあっただろう。黒田総裁はなお、経済の「前向きな循環は持続している」とするが、説得力を欠く。3月の消費者物価は前年同月比0・3%減と約3年ぶりの下げ幅、家計の実質消費支出も同5・3%の大幅減だ。これまで原油安が目標後退の要因としてきたが、「成長率や賃金改定が下振れした」と景気停滞を認めざるを得なくなっている。必要と判断すれば追加緩和すると強調するが、金融政策だけで景気や物価を上げるのに限界があるのは明白だ。日銀には柔軟に戦略を立て直すことが求められよう。実体経済に即して市場との「対話」がより重要だ。予想外の「サプライズ」で政策効果の最大化を図ってきた手法に陰りが出ている。表向きは強気一辺倒で手の内を明かさぬ姿勢が不信を招き、動揺を広げている面は否めない。政策の狙いと効果を系統的かつ丁寧に説明していく必要がある。政府も金融政策頼みから脱し、景気の鍵を握る内需の底上げや新産業の育成を強めねばならない。

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160725&ng=DGKKZO05206710V20C16A7NN1000 (日経新聞 2016.7.25) 財政・金融 相乗効果探る、政府、経済対策決定へ 日銀にじわり圧力
 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を終え、政府・日銀は来月初めにかけて政策決定の大詰めを迎える。安倍政権の経済政策アベノミクスの再点火へ、財政出動と金融緩和の相乗効果をどう高めるかが焦点だ。G20会議が打ち出した政策総動員を早速試されることになり、国際社会の注目を集める。「構造改革の重要な役割を強調しつつ、財政政策が同様に重要である」。24日採択した共同声明はそう強調した。麻生太郎財務相は財政出動について「政府内で検討しているところ」と発言。財務省同行筋は「まさに日本のやろうとしていることと軌を一にしている」と自信を示した。7月10日の参院選勝利を受けて安倍晋三首相は経済対策の策定を指示。政府は来月初めの決定へ調整を進めている。財務省幹部は首相が休暇中の先週も首相官邸や与党に頻繁に足を運んだ。「最大限にふかす」という首相の意向をふまえて、事業規模は総額20兆~30兆円に膨らむとの見方が足元で強まっている。日銀は政府の経済対策と相前後する7月28~29日に金融政策決定会合を開く。黒田東彦総裁は成都で「経済は緩やかな回復過程にある」「賃金・物価が緩やかに上昇していくメカニズムは続いている」と指摘。その上で「必要ならば追加的な金融緩和措置を講じる」と選択の余地を残した。最近の金融市場は政府・日銀の政策の先行きに敏感な展開。先週も黒田総裁の発言で円高が進む場面があった。第2次安倍政権は発足当初に財政出動を膨らませ、黒田日銀による異次元金融緩和を引き出した。「その当時の手法や雰囲気を連想させる」(ある財務省OB)との認識が市場の期待を高めている。財務省や日銀にとって4月の金融政策決定会合が苦い記憶になっている。直前の観測報道で追加緩和の期待が盛り上がったぶん、政策現状維持で市場の失望を誘い円高が加速した。麻生氏の円高をけん制する“口先介入”が米国の反感を買い、日米通貨当局の応酬につながった。4月との大きな違いは財務省の日銀への視線にある。最近は「日銀は今回は何かやるだろう」と観測めかして日銀の追加緩和を促す財務省幹部が複数いる。日銀は市場と財務省からの期待や圧力を背負って決定会合に臨むことになる。

*1-4:http://qbiz.jp/article/91536/1/
(西日本新聞 2016年7月29日) 日銀、追加金融緩和 脱デフレへ政府と協調
 日銀は29日、金融政策決定会合を開き、追加金融緩和を賛成多数で決めた。上場投資信託(ETF)の購入額を現行の年3・3兆円から6兆円に増やす。円高や消費低迷で物価の上昇基調が揺らぎ、デフレ脱却には政策強化が必要と判断した。黒田東彦総裁は、次回の金融政策決定会合で経済・物価動向や政策効果について、総括的な検証を行う準備をするよう日銀執行部に指示した。日銀は会合後、政府の経済対策と「相乗的な効果を発揮する」との認識も示した。決定を受けて金融市場では緩和が小規模だとして失望感が広がり、円相場は一時1ドル=102円台に上昇、日経平均株価も乱高下した。「2年程度で2%の物価上昇目標を達成」を宣言した黒田総裁の就任から3年余りで3回目の追加緩和となる。緩和策の効果を疑問視する見方が広がっており、実際に景気を押し上げて脱デフレを達成する効果があるかは未知数だ。ETF買い入れ増額には、9人の政策委員のうち7人が賛成、2人が反対した。英国の欧州連合(EU)離脱問題などで、金融市場で不安が高まっていることからドル資金供給を120億ドルから240億ドルに拡大することを決めた。民間銀行が日銀に預ける資金の一部に手数料を課すマイナス金利政策は、金融機関の収益悪化につながるとして反発が依然として根強い。このためマイナス金利の一段の引き下げは見送り、年0・1%で据え置いた。この日発表された6月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比0・5%下落と4カ月連続のマイナスで、目標から大きくかけ離れている。英離脱問題で、消費者や企業の心理が慎重になることへの危機感も日銀内で強まった。国内景気の現状判断は「基調としては緩やかな回復を続けている」と据え置いた。2016年度の物価見通しは引き下げた。

<財政出動>
*2-1:http://qbiz.jp/article/91413/1/ (西日本新聞 2016年7月28日) 経済対策 事業規模28兆円超 首相表明、財政措置は13兆円
 安倍晋三首相は27日、福岡市で講演し、近く策定する経済対策について「財政措置の規模で13兆円、事業規模で28兆円を上回る、総合的かつ大胆な経済対策を来週取りまとめたい」と表明した。8月2日にも閣議決定する。一部はその後に編成する本年度第2次補正予算案に盛り込み、秋の臨時国会で成立を目指す。首相はこの日、同市で始まった「一億総活躍・地方創生 全国大会in九州」に出席した。経済対策に関しては「しっかりと内需を下支えし、景気の回復軌道を一層確かなものにするものでなければならない」と指摘。外国クルーズ船が着岸する港湾の整備や農水産物の輸出促進、子育てや介護と仕事の両立などを列挙し、「経済対策のキーワードは未来への投資。力強いスタートを切る」と意欲を語った。熊本地震の復興をめぐっては、参院選の公示日に熊本城前で第一声を上げたことに触れた上で「熊本城が威風堂々たる姿を取り戻す日まで復興に全力を尽くす。その決意を新たにした」と強調。「今後、住まいの復興、なりわいの復興を一層加速させる必要がある」との考えを示した。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/338816 (佐賀新聞 2016年7月29日) 低所得者に1万5000円 対象2200万人、国債増発で公共事業 政府経済対策
 政府、与党は28日、経済対策を大筋で取りまとめ、低所得者に1万5千円を給付する方針を固めた。対象は2200万人。対策全体の追加歳出は地方自治体分を含めて7兆円程度とし、うち2016年度第2次補正予算案への計上額は2兆円台後半で調整する。財源が不足するため借金(建設国債)を積み増して公共事業を行い「アベノミクス」を加速する。金融政策決定会合を29日まで2日間開く日銀と一体で経済の底上げを目指す。年度途中での国債増発は4年ぶり。民間支出や融資をかき集めて事業費を28兆円超に膨らませる苦肉の策となる。財政、金融政策とも限界論が指摘される中、効果に見合わない財政リスクが蓄積されるとの懸念が現実味を増してきた。政府は28日、自民、公明両党に対策案を示し、大筋で了承を得た。この日の提示には事業の規模や予算額を含んでいない。細部を詰めた上で8月2日に閣議決定し、9月召集の臨時国会に補正予算案を提出する。低所得者への現金給付は最低賃金引き上げなどと合わせて家計を支え、消費を底上げするのが狙い。消費税増税の負担軽減策として16年度末までの予定で年6千円を給付した「簡素な給付措置」を引き継ぐ。消費税率10%への増税を2年半延期するのに伴い、2年半分に当たる1万5千円を一括給付する形に改めて消費を喚起する。現行制度と同様、住民税非課税の人を対象とする方針だ。政府は給付額を1万円に抑えることも検討したが、現行水準を下回ることに公明党が反発、1万5千円で決着した。対策案では1億総活躍社会の実現を目指し、保育士や介護人材の処遇を改善。労使が負担する雇用保険料も軽減する。無年金者救済策として、年金受給資格を得られる加入期間を現行の25年から10年へと短縮する。防災対策などの公共事業を行うほか、財政投融資を活用してリニア中央新幹線の大阪延伸を最大8年前倒しし、整備新幹線の建設を加速する。日銀は金融政策決定会合で追加金融緩和の是非を検討し、29日に決定内容を公表する。政府、与党内には経済対策との相乗効果を求め、追加緩和を期待する声がある。

<グローバル化と一体化は異なる>
*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160725&ng=DGKKASDF24H0T_U6A720C1MM8000 (日経新聞 2016.7.25) EU離脱の混乱回避へ連携 G20財務相会議 政策総動員を確認
 日米欧に新興国を加えた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は24日、英国の欧州連合(EU)からの離脱で世界経済が混乱しないように連携していく方針を打ち出した。世界経済の不確実性が高まっており、各国は政策を総動員すると再確認した。為替問題では「通貨の競争的な切り下げを回避する」と改めて指摘した。G20財務相会議は、英国が6月23日の国民投票でEUからの離脱を決めてから初めて。同問題で金融市場も不安定な動きをしており、今回の会議で最大の議題となった。24日公表した共同声明では世界経済について「回復は続いているが、期待していたほどではない。下振れリスクが残る」と分析。その原因として英国のEU離脱のほか、テロ・難民・紛争といった地政学上の問題を挙げた。英国のEU離脱については「G20は積極的に対処する態勢を整えている」と連携を強調。当事者の英国とEUには「緊密なパートナーである姿を望んでいる」と注文を付けた。共同声明の作成には英国も積極的に関わった。会議の主役となった新任のハモンド英財務相は日本、ドイツ、EUなどとの2者会談を重ね、経済の下振れを最小限にとどめたいと説明した。さらに英メディアを通じて秋にも財政政策を景気配慮型に「見直す」と対外発信した。今年2月、同じ中国の上海で開いたG20財務相会議でも景気の不透明感が指摘され、各国が政策を総動員すると表明。今回も持続的な成長に向けて「金融、財政、構造政策を総動員する」と確認したが、世界経済の状況は様変わりした。当時は中国の景気減速に対する懸念が強かったが、いまは政治・地政学リスクに焦点があたっている。財務相らは「テロ資金供与のすべての資金源、技術と戦っていく」と強調。難民問題では米国のルー財務長官が「あらゆるところで難民問題が大きなインパクトを与えている」と懸念を示した。米欧諸国は議長国の中国に対し、鉄鋼の過剰生産能力問題に対応するように迫り、共同声明には「世界的課題」と盛り込まれた。

<年金>
*4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160726&ng=DGKKASGD25H4W_V20C16A7MM8000 (日経新聞 2016.7.26) 金債務最大 上場3600社で91兆円、昨年度末、マイナス金利で膨張 積み立て不足26兆円、重荷に
 上場企業の年金債務(総合2面きょうのことば)が2015年度末で91兆円と過去最大に膨らんだ。年金債務は企業が年金・退職金を支払うために現時点でどれだけ蓄えておくべきかを示す。日銀のマイナス金利政策の影響で金利水準が全般に下がって運用環境が悪化し、年金債務を厳しく見積もらないといけなくなった。この結果、企業年金の未積立額は26兆円に拡大し、業績の重荷になるのが避けられない情勢だ。このほど出そろった有価証券報告書をもとに、3642社(金融含む)を集計した。年金債務は前の年度末比で5.1%増え、91兆2151億円に達した。年金債務を算出する際は金利水準に応じて調整を加える。運用環境の変化を織り込む会計処理だ。金利が高ければ運用で資産を増やしやすいので、将来の年金などの支払額に比べて現時点で用意すべき額は小さく見積もる。反対に金利低下が進むと多めに準備しておく必要があると見なし、年金債務は増加する。年金債務を調整するための利率を「割引率」と呼ぶ。上場企業の割引率は15年度に平均で0.863%と過去最低になった。マイナス金利政策を受けて10年物国債の利回りがマイナス圏まで落ち込み、企業は割引率を下げざるを得なかった。トヨタ自動車は国内年金で割引率を0.5%に下げ、年金債務は1兆9121億円と1909億円増えた。東武ストアなど31社はマイナスまで引き下げた。割引率がマイナスだと年金債務は将来の年金などの支払額よりも大きくなる。年金の運用資産は株安・円高が響いて65兆2380億円と7年ぶりに減った。この結果、年金債務と運用資産との差額である未積立額は25兆9770億円と4年ぶりに増加。日本では未積立額のうち割引率低下や運用悪化による部分は一定期間内に年金費用として計上する必要がある。年金債務の増加は会計上の処理だが、企業業績には実際に悪影響が及ぶ。ヤマトホールディングスは割引率引き下げに伴って30億円費用が増え、17年3月期の営業利益は7%減となる想定だ。東京ガスも割引率を下げたことで240億円の費用を今期に計上する。未積み立て分は負債としても計上する必要があるため、自己資本比率の低い企業などでは年金債務の負担で財務悪化が加速する恐れもある。野村証券の西山賢吾氏は「マイナス金利の長期化で、未積立額は16年度以降も拡大する可能性がある」と分析している。

*4-2:http://mainichi.jp/articles/20160701/k00/00m/040/069000c
(毎日新聞 2016年6月30日) 国民年金、.納付63.4%…15年度 情報流出で伸び鈍化
 厚生労働省は30日、2015年度の国民年金保険料納付率が63.4%となり、前年度より0.3ポイント改善したと発表した。納付率の上昇は4年連続だが、昨年6月に日本年金機構の加入者情報の流出問題が起き、滞納者対策が遅れたため、改善の幅は前年度(2.2ポイント)に比べて鈍化した。年金機構は保険料の収納業務を担い、納付率向上を目指して特別催告状の送付や戸別訪問などによって納付を促している。しかし、情報流出後はこれらの督促業務が一時中断していた。20〜59歳の年代別納付率をみると、20〜24歳は前年度比0.33ポイント減の58.94%、50〜54歳は同0.1ポイント減の67.27%だった。その他の年代は同0.3〜0.9ポイント改善した。また、保険料を滞納した場合、過去2年分の追納ができ、追納分を含めた13年度の最終納付率が70.1%になった。70%台を回復するのは7年ぶり。13年度末時点からは9.2ポイント上昇し、最終納付率の統計を取り始めた02年度以降、過去最高の伸び幅だった。

*4-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/338942
(佐賀新聞 2016年7月29日) 年金運用損失5.3兆円 2015年度
 公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2015年度の運用損失が約5兆3千億円だったことが28日、分かった。GPIFは14年10月に株式の運用割合を増やしており、昨夏や年明けからの株価下落が響き、5年ぶりの赤字となった。損失額はリーマン・ショックを受けた08年度より後では最大。GPIFが29日に発表する。政府とGPIFは、市場運用を始めた01年度から累積では約45兆円の運用益を確保していることを強調。「年金積立金は長期的な視点で運用しており、短期的な変動にとらわれるべきではない」としている。GPIFは14年10月、積立金を株価浮揚に活用したい政府の意向も踏まえて運用資産の構成割合を変更した。国内外の株式の目安を計50%に引き上げたため、15年度は株安の影響を大きく受けて損失が膨らんだ。株式市場は本年度に入ってからも、株価が乱高下するなど不安定な状況。国内債券でも利益を得ることが難しくなっており運用環境は厳しい。今回の運用実績の発表は例年より3週間ほど遅く、野党は「参院選前に損失を明らかにしたくなかった政権の情報隠しだ」と批判している。
■年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 国民年金や厚生年金の保険料収入の余剰分を積立金として管理し、市場に投資して運用する。厚生労働省の所管で2006年に設立された。前身は年金資金運用基金。債券や株式などにどうお金を振り分けるかという資産構成割合は、外部の専門家らで組織する運用委員会で協議して理事長が決める。政府は理事長に権限が集中する体制を改め、重要事項は合議制で決めることなどを盛り込んだ年金関連法案を先の通常国会に提出したが、継続審議となっている。


PS(2016年8月5日追加):これは、低金利と金融緩和が国民資産に悪影響を与えている事例だが、現在、退職給付会計を使って比較的正確に退職給付債務を計算しているのは上場企業だけで、その他の企業や公的年金は不足額の把握すらできていないため、全年金の積立不足額が25兆円超だと考えたら甘い。そのため、まず、その他の企業や公的年金についても退職給付会計を使って退職給付債務を正確に把握すべきだ。

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/341503
(佐賀新聞 2016年8月5日) 年金積み立て不足、25兆円超、マイナス金利響き、15年度末
 年金や退職金を支払うために用意しておくべき「退職給付債務」の上場企業の積み立て不足額が15年度末時点で約25兆6千億円に上り、不足額が前年度末から約7兆7千億円増えたことが、野村証券の集計で5日分かった。日銀が導入したマイナス金利政策の影響で長期金利が下がったり、株価が下落したりして期待できる運用利回りが低くなったことが響いた。積み立て不足が深刻化すれば、企業収益を圧迫し財務体質の悪化につながる。企業が給付水準を保障する確定給付型の年金制度の維持が難しくなり、確定拠出年金など、従業員がより運用リスクを負う方向に企業年金の制度見直しが進む可能性もある。


PS(2016年8月6日追加):佐賀県のJAは、*6のようにアクションが速いのはよいが、年金は、老後確実にもらえるのが最もよいサービスであるため、これを実現するには、(例えば「九州農業者年金」のように)合併などで年金の規模を大きくして上場企業と同じ会計処理や管理を行うのがお薦めだ。それには、農協を担当している監査法人もやり方を熟知しているため相談すればよい。また、「農業に従事すれば、年金も含めて一生困らない」という環境を作れば、質の良い後継者候補が増えることは間違いない。

*6:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/341702
(佐賀新聞 2016年8月6日) JA年金友の会 会員3%増目標、佐賀市で県大会
 年金をJAバンク口座で受給する利用者でつくる「JA年金友の会」の県大会が、佐賀市文化会館であった。2015年度末の会員数は前年同期比1183人増の6万6294人、振込額は同17億4500万円増の639億3千万円で、本年度中に会員を3%増やす目標や会員同士の親睦事業の活発化を確認した。年金受給者が増える中、JAバンク佐賀は地方銀行やゆうちょ銀行などとの競争激化を念頭に、会員増強運動を展開している。大会で中野吉實会長は「会員同士の交流を図るカラオケ大会など、会員になってよかったと言ってもらえるように顧客サービスを充実したい」とあいさつした。会員増加率が高かった支部の表彰もあり、最優秀賞に輝いたJA佐賀市中央・神野支部の会員代表らが表彰状と副賞を受け取った。


PS(2016年8月7日追加):*7に、「①年金を受け取るのに必要な受給資格期間が、現在の25年から10年に短縮される」「②無年金者の救済策として、政権が来年度中に実施する方針を示した」「③年に約650億円が必要になるが、安定した財源が確保できているとは言えない」「④受給資格期間の短縮は社会保障の充実策」「⑤10%への消費増税に合わせて実施予定だったが、増税先送りで実現が不透明」等と記載されている。
 しかし、①については、25年も保険料を支払わなければ受給資格をもらえないのがおかしなルールなのであり、このルールによって被害を受けたのは子育てで退職せざるをえなかった女性や転職を余儀なくされて他の年金制度に移り、一つの年金制度への加入期間が25年や10年に満たない人である。つまり、25年から10年に受給資格取得期間を縮めるだけで、③のように、年に約650億円も必要になるというのは、日本の年金制度が今まで弱者からこれだけの金額を搾取してきたということだ。しかし、本当は、年金保険料を1年しか支払わなくても、それに見合った年金は受け取れるようにするのが公平であるため、この前提で計算すれば国の不当利得は年間1000億円にも達するだろう。
 また、②については、働いている時には少なからぬ年金保険料を納めているため、受給時に「救済」などと言われるのは不本意であり、支払った年金保険料に見合う年金を受け取るのは当然の権利であって、②の救済や④の社会保障と言う言葉を、(生活保護ではなく)年金に使うのは無理がある。
 そして、⑤のように、いつもの消費増税先送りで実現が不透明などと消費税財源論が書かれているが、税金は消費税だけではない上、景気対策と称するヘリコプターマネーの無駄遣いが多く、年金は国民が税金とは別に年金保険料を支払って加入しているものであるため、国民が支払った年金資産を杜撰にではなく的確に管理・運用して増やし、本来の目的である公平・公正な年金を支払うのが年金保険機構(前は社会保険庁)と厚労省の責任なのである。

*7:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12500401.html
(朝日新聞社説 2016年8月7日) 無年金救済 多様な取り組みで
 年金を受け取るのに必要な受給資格期間が、今の25年から10年に短縮されそうだ。無年金者の救済策として、政権が来年度中に実施する方針を示した。今は保険料を納めた期間が25年に満たないと年金を受け取れないが、そうした人のうち約64万人が新たに年金をもらえるようになると見込まれている。高齢になっても働き続ける必要に迫られるなど、厳しい生活を送る無年金の人には朗報だ。ただ、年に約650億円が必要になる。安定した財源が確保できているとは言いがたい。受給資格期間の短縮は税・社会保障一体改革に盛り込まれた社会保障の充実策で、10%への消費増税に合わせてもともとは昨年10月に実施予定だった。増税先送りで実現が不透明になるなか、先の参院選で自民、公明両党が早期の実施を約束していた。いわば見切り発車である。政権は、消費税率を10%にするまでの当面の財源をやりくりすれば乗り切れると考えているようだが、19年10月に消費増税が必ず実施されると本当に言えるのか。増税から逃げ腰のまま財源が続かなくなり、他の社会保障予算を削って捻出するようなことになれば本末転倒だ。関連法案の審議が予定される秋の臨時国会でしっかり議論してほしい。忘れてならないのは、受給資格期間の短縮は、すべての問題を解決してくれる「特効薬」ではないということだ。例えば年金額の問題がある。国民年金は20歳から60歳まで保険料を納めると毎月6万5千円程度の年金がもらえるが、納付期間が10年にとどまれば年金額もその4分の1になる。「10年間保険料を納めれば年金がもらえる」ことばかりが強調され、10年で保険料納付をやめてしまう人が相次ぐようでは、低年金で生活保護に頼らざるを得なくなる人がむしろ増えかねない。受給資格期間が短くなっても、老後に十分な年金をもらうには長期的に保険料を納める必要があることを周知する。未納者には納付をはたらきかける。そんな取り組みも重要だ。生活が苦しく保険料を納められない人には保険料を免除・猶予する制度の利用を促したい。免除や猶予の期間は受給資格期間に数えられる。一定の条件はあるが、経済的に余裕ができてから免除・猶予期間の保険料を納めて年金額を増やすこともできる。さまざまな制度をフルに活用し、重層的な取り組みを通じて老後の安心を守りたい。


PS(2016年8月8日追加):*8のように、日本では資源は高値で輸入しなければならず、外国への資源投資が不可欠だと考えるのは、経産省の暗愚な思考停止だ。何故なら、①日本にはLNGが多く存在し ②LNGは化学工業にも使え ③輸送コストが小さく ④資源を産出する企業も日本に税金を納め ⑤環境にもよく ⑥乗り物も電動か水素燃料に変えれば化石燃料を輸入する必要がないからである。

*8:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/312897
(佐賀新聞 2016年5月18日) 原油安、将来の供給に懸念 エネ白書
 政府は17日、2015年度版のエネルギー白書を閣議決定した。原油価格の低迷で資源開発への投資が減り、将来の安定供給に懸念が強まっていると指摘し、投資促進の必要性を強調した。液化天然ガス(LNG)の市場改革や、省エネにつながるインフラ輸出や制度作りで国際協力を進め、原油依存からの脱却を世界規模で実現するとした。15年の世界の石油や天然ガス開発投資は約65兆円で、14年と比べて約15兆円減少した。16年も落ち込みが続く見通しだ。生産量を維持するためには年約70兆円の投資が必要だが、資源開発を手掛ける企業の財務基盤は弱っている。企業が必要な資源開発に取り組めるよう、政府が投資資金を安定して供給する必要があると分析した。LNGを巡っては、東京電力福島第1原発事故後に原発が停止し、火力発電の燃料に使うため輸入が急増した。一方、余ったLNGを他国に転売できないなどの商慣行があり、調達費の引き下げを難しくしている。日本はLNGの最大の輸入国という立場を生かし、柔軟で透明な取引市場を構築すべきだとした。


PS(2016年8月10日追加):既に国民は、原発は高リスク・高コストで金食い虫であることを認識しており、現に100%安全どころか公害を出し放題であるのに、*9のように、「再稼働はゴールでなく、スタートだ」などとしているのは、当事者の利益中心で周囲の迷惑を考えない利己的な判断だ。なお、日本の電気料金は、原発が自由に稼働していた頃から世界の中で高い方であった上、電力会社が負担する原発のコストは全体のごく一部であることを忘れてはならない。
 
   
         電気料金国際比較(産業用・家庭用)            太陽光発電のコスト

*9:http://digital.asahi.com/articles/ASJ852S5NJ85TIPE003.html
(朝日新聞 2016年8月9日) 川内原発再稼働、11日で1年 九電の対応が焦点に
 九州電力川内原発(鹿児島県)が再稼働してから11日で1年になる。九電の経営への貢献は大きく、業績は黒字に転換、余った電力の販売攻勢に乗り出した。ただ、原発停止を求める三反園訓・鹿児島県知事の就任で風向きは変化しつつあり、九電の対応が焦点になっている。川内原発は昨年8月、東日本大震災後の新しい規制基準のもとで、全国に先駆けて再稼働した。「再稼働はゴールでなく、スタートだ。今後も安全管理の向上に努めていく」。瓜生道明社長は7月29日の会見で淡々と語った。再稼働は九電の経営改善のスタートにもなった。九電によると、火力発電の燃料代が減り、収益改善効果は毎月100億~130億円。純損益は2015年3月期の1146億円の赤字から、16年3月期は734億円の黒字になった。ボーナスや株主への配当を復活し、役員報酬も増やした。一方で、「本格的な収益力回復は途上」(瓜生社長)として電気料金の値下げは見送っている。九電がホームページで公表する「でんき予報」。当日や1週間の電力需給の見通しを示す。最高気温が35度を超える猛暑日もあるなかで電力需給は連日、「安定」のマークが並ぶ。家庭や企業で節電が定着し、他社からの融通などもあるため再稼働前でも供給に大きな支障はなかった。再稼働後の九電の供給力は全国でも高水準の余力を抱え、余るほどの電気をどう売るかが課題だ。東日本大震災後に節電を呼びかけるなかで自粛した「オール電化」の営業を7月に再開した。4月に電力小売りが自由化されたが、原発がつくる電気の比重が高まる夜間に割安で使えるプランは、新電力に対抗する強力な武器になっている。
■新知事誕生、変わる風向き
 一方、今年4月には熊本地震が起き、7月には鹿児島県知事に三反園氏が就いた。熊本地震後には、川内原発の停止を求めるメールや電話が九電に殺到。安全性への不安の高まりは三反園知事への支持と無縁ではない。「誰も予想していなかった事態だ」と九電首脳は言う。昨年の再稼働に同意した伊藤祐一郎前知事には、九電首脳も「恩義を感じている」という。一転して三反園知事は8月下旬から9月上旬をめどに、九電に一時停止を申し入れる考えだ。今後は九電がどう動くかが焦点。「知事としっかり話をしながら適切に対応したい」(世耕弘成経済産業相)とする政府とともに稼働に理解を求める方針で、「知事の考えが知りたい」と水面下で情報収集を進める。川内原発は、もともと1、2号機とも年内に定期検査で止まる予定だが、知事の同意が得られないと再稼働も長くずれこむ可能性がある。川内に続いては玄海原発(佐賀県)を再稼働させ、「原発効果」をさらに高めることが九電の思惑だ。幹部は警戒する。「川内原発が知事の意向で稼働できない事態になれば、全国のほかの原発にも影響が及びかねない」
■川内原発の再稼働後の主な動き
●2015年
・8月 川内原発1号機が再稼働
・10月 2号機が再稼働
・12月 重大事故時の拠点施設を「免震構造」にする方針を撤回
●2016年
・3月 重大事故時の拠点施設を「耐震構造」にする方針を表明。安全は確保と主張
・4月 熊本地震から1週間で停止を求める電話などが約5千件に
・7月 三反園訓氏が鹿児島県知事に就任
・8月下旬~9月上旬? 三反園知事が九電に停止申し入れ
・10月 1号機が定期検査入りの予定
・12月 2号機が定期検査入りの予定

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 11:14 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.6.9 日本における移民・難民の受け入れについて (2016年6月10日《写真等》、16日、2016年11月6日に追加あり)
       
  日本の出生率推移    難民認定率 G20農相会合宣言 佐賀の小麦   宮崎県産木材   
                  2015.9.11   2016.6.4    2016.5.21   2016.6.4 
                   毎日新聞    農業新聞      佐賀新聞    西日本新聞
(1)国内の人手不足
 厚労省が5月31日に発表した4月の有効求人倍率は、*1-1のように、東京で2倍を超し、全都道府県で1倍以上と1991年11月以来の高水準だったそうだが、1991年11月はバブルがはじける前年で、現在も金融緩和でバブル状態になっており、復興事業も多いため、当たり前のことではある。

 そして、正社員の有効求人倍率(季節調整値)は0.85倍であり、完全失業者数(原数値)が減ったとしても、勤労者が悪い条件をのんで就職した結果だ。

(2)日本企業の外国人採用
 しかし、人手不足・海外展開・訪日外国人客向けサービスの拡充などに対応するため、*2-1のように、国内の大企業も外国人を正社員として採用する動きが広がっており、ローソンは新卒採用の1~3割、富士通・日立は2017年度新卒採用予定の約1割を外国人が占めているそうだ。

 なお、海外事業を拡大するにあたっては、社内で対象国出身の人を増やす多国籍化が不可欠だが、採用するのは日本への留学生が多く、優秀な人材を求めて海外の説明会に参加したり、アジアの理系大学生に現地でアプローチしたりなどもされている。

(3)林業と外国人労働者
 また、「中国木材」が、*2-2-1のように、建築材をあらかじめ加工し、建築現場の負担軽減・工期短縮・加工精度向上・廃材削減などを可能にするプレカット工場を伊万里事業所内に新設して生産態勢を強化するそうだが、集成材にすることにより、これまで低質材とされてきた木材も利用可能になり、強度が増すため、堀川社長が「地元雇用と県産材の利用に貢献したい」としておられるのは期待できる。

 また、*2-2-2のように、宮崎県では、製材業界の国産材回帰や輸出増加等が勢いを見せている。現在は、戦後植林された人工林が伐採期を迎え、政府が国産材供給量を2025年までに2014年の約1.7倍にする目標を掲げていることもあって業界関係者が注目しているが、日本は森林面積が国土の約3分の2に当たるにもかかわらず、木材自給率は2014年に26年ぶりの30%台を回復したにすぎない。

 しかし、現在の林業は人手不足で、森林の管理・育成のための間伐、手入れ、伐採が「林道がないからできない」と言われることも多いため、これまで盛んに林業を行っていたが今ではすたれつつある地域から、日本の森の育成のために、*2-2-3のようなゾウ使いをゾウ付で林業従事者として募集し、外国人労働者として受け入れてはどうかと思う。日本人より贅沢を言わず、生産性が上がるだろう。
 
(4)移民・難民の受け入れについて

                             難民
 *3-1のように、アメリカの有望ベンチャーのうち約半数は移民が創業したという調査結果が発表され、「移民は急成長する新興企業の源泉」と結論付けられた。これは、異文化が接触して融合されることにより新しいビジネスが生まれることを考えれば必然性があるため、日本でも、女性活躍と同時に移民・難民の受け入れも始めた方がよいと考える。

 そのうち、シリアについては、*3-2のように、政府は内戦が続くシリアの難民を留学生として来年からの5年間で最大150人を受け入れると発表したそうだが、「日本に憧れるすべてのシリア人の若者に平等にチャンスを与えてほしい」「募集人数を増やしてほしい」という声は、日本の少子高齢化の実情から見ても反映させた方が良く、5年間なら少なくとも15,000人の男女の国費留学生を地方の大学も含めて増やしてはどうかと思う。その理由は、人生に希望が持てればテロリストにはならず、日本のアラビア語圏との貿易(特に農産物の輸出)や、戦争終了後のシリア復興に不可欠な人材となるからだ。

 そのため、留学生に配偶者や子どもがいる場合も、空室が多くなった団地を改修して学生寮にしたり、日本人も入れる国際的な学生寮を建てたりなど、大学が所在する地方自治体の知恵と協力を得ながらやれば良いだろう。

(5)地方自治体の移住者募集
 地方の農業振興に繋げるため、地方自治体の大半が移住促進政策に力を入れており、*4-1のように、鳥取市は、国、県、市、町内会、NPOなどが連携して移住者を呼び込んでいる。そのため、移住者は、日本人の若者だけでなく移民や難民が含まれてもよいと思われ、日本人と外国人が気持ちよく共存できるためのノウハウが必要だ。ただ、信教の自由があり男女平等の日本国内では、郷に入っては郷に従い、女性にどこででもスカーフやブルカのような異様な服を身につけさせるのはやめるという誓約書にサインすることを入国条件にすべきで、そうした方がアラブ女性の今後の地位向上にも役立つと考える。

 また、*4-2のように、長野県と長野県JAグループは、協定を結んで農業者の所得増大を目指した農業振興をはじめ、農村地域の暮らしの維持や人口定着など幅広い範囲で連携して、インフラ維持や移住促進を行い、多様な農業の担い手を支援するとのことである。

 阿部長野県知事は、「農村の活性化は県の活性化と密接不可分」とし、JA長野中央会の大槻会長も「JAの総合事業と地方創生が目指す方向は同じ。当たり前のことをやっていく」と言っておられるため、移住してくる人の国籍が異なっても対応して、農業生産法人やJAが難民の中から農業に従事する人を募集してきてもよいと思われる。

       
                           アジサイ(紫陽花)
<人手不足>
*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160531&ng=DGKKASGC31H05_R30C16A5MM0000 (日経新聞 2016.5.31) 4月の求人倍率、東京で2倍超す、74年以来、全国1.34倍に上昇 就業地別は全都道府県で1倍超
 厚生労働省が31日発表した4月の有効求人倍率(季節調整値)は前月と比べて0.04ポイント上昇の1.34倍だった。1991年11月以来、24年5カ月ぶりの高水準だった。上昇は2カ月連続。幅広い業種で深刻な人手不足が続いており、求人数が押し上げられている。都道府県別の有効求人倍率は東京都が2.02倍となり、1974年6月以来の高い水準となった。有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。雇用の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月より3.9%増の89万4530人だった。訪日外国人客の増加を背景に、宿泊・飲食サービス業や卸売・小売業などで高い伸びとなった。厚労省では「雇用情勢は着実な改善が進んでいる」としている。正社員の有効求人倍率(季節調整値)も0.85倍と、04年11月の調査開始後で最高となった。これまでは非正規社員を中心とした求人数の増加が求人倍率を押し上げてきたが、正社員の雇用環境も一定の改善が進んできた格好だ。また、求人票の就業地別で算出した都道府県ごとの有効求人倍率(同)は05年2月に集計を開始して以来、初めてすべての都道府県で1倍を上回った。求人票を受け付けたハローワークの場所別に見た有効求人倍率は、鹿児島と沖縄で0.9倍台と依然として1倍を下回っている。総務省が同日発表した4月の完全失業率(同)は3.2%で、前月から横ばいだった。4月の完全失業者数(原数値)は前年同月比10万人減の224万人だった。減少は71カ月連続。内訳は勤め先や事業の都合による離職が前年同月比で2万人減った。自己都合の離職は1万人の増加だった。

<日本企業の外国人採用>
*2-1:http://qbiz.jp/article/86126/1/ (西日本新聞 2016年5月3日) 外国人採用、大企業で拡大 ローソン3割、富士通1割…海外展開にらむ
 国内の大企業で外国人を正社員として採用する動きが広がってきた。ローソンはここ数年、新卒採用の1〜3割程度が外国人で、富士通や日立製作所は2017年度新卒採用予定の約1割を占めている。従来は人手不足の中小企業が採用の中心だったが、大企業も海外展開や訪日外国人客向けのサービス拡充に対応するため、社内の多国籍化を迫られている。ただ、あいまいな点が多い日本の雇用慣行に戸惑う外国人は多く、企業が採用を本格化するには、福利厚生や研修の強化、人事・賃金制度の見直しも課題となっている。海外事業拡大をにらむローソンでは、15年春に28人、16年春に16人の外国人が入社し、17年度も増やす。富士通は500人の新卒採用のうち50人程度、JXエネルギーは大卒などの110人の約1割が外国人になる見通し。資生堂は16年度に過去最多の8人を採用し、さらに増やしていく。共同通信が主要企業に実施した採用アンケートでも「将来的に外国人社員を増やす方針か」との問いに対し、回答した28社の半数近い13社が前向きな姿勢を示した。三菱化学や旭化成などのメーカーから高島屋や三井住友海上火災保険、オリックスまで幅広い。採用するのは日本への留学生が多く、ローソンは「日本人と採用プロセスは同じ」とするが、日立のように優秀な人材を求めて海外の説明会に参加する企業も増えている。富士通はアジアの理系の大学生に現地でアプローチし、日本で外国人向けのインターンシップを実施している。今後の課題では、「キャリアに関する(会社側と本人の)考え方のすりあわせ」(川崎重工業)といった人事・処遇面に加え、「在留資格の認定手続きに時間がかかる」(富士通)といった問題を指摘する声が出ている。外国人社員の定着に向けて「職場表記や朝会の英語化」(第一生命保険)といった工夫を凝らす企業もある。

*2-2-1:http://qbiz.jp/article/85577/1/ (西日本新聞 2016年5月10日) 中国木材 佐賀・伊万里に新工場 市と協定、17年2月操業 プレカット増産
 製材大手「中国木材」(広島県呉市)は、佐賀県伊万里市山代町の伊万里事業所内にプレカット工場を新設して生産態勢を強化する。市と4月18日、立地協定を結んだ。2017年2月の操業開始を目指し、21年10月までに計40人を新規雇用する。同社によると、新工場では建築材をあらかじめ加工し、建築現場の負担軽減や工期短縮、加工精度の向上、廃材削減を図る。全国的な建築職人の不足を受けた対応で需要は高いという。新工場は既存のプレカット工場を移転拡大する形で隣接地に建設する。延べ床面積1万6200平方メートルで、投資額は設備機械も含めて18億6400万円。完成後の生産能力は現在の月間150棟分から250棟分以上に増える。17年度は22億円、5年後は37億円の売り上げを見込む。伊万里事業所は2003年に開設。北部九州の原木を使うプレカットや集成材の工場、バイオマス発電施設などがあり、従業員数約220人。伊万里港からの中国、韓国などへの輸出にも力を入れる。堀川智子社長は「事業所を発展させ、地元雇用と県産材の安定利用に貢献したい」と話している。

*2-2-2:http://qbiz.jp/article/88177/1/
(西日本新聞 2016年6月4日) 宮崎のスギ生産、過去最高 国産材に需要、発電用も増
 スギの丸太生産量が25年連続日本一を誇る宮崎県の林業が活気づいている。昨年の生産量は過去最高の約164万立方メートルを記録した。国産材は長らく安い外国産材に押され低迷してきたが、同県では製材業界の国産材回帰や木質バイオマス発電所への燃料供給、輸出増加といった動きが従来にない勢いを見せる。戦後に植林された国内の人工林は伐採期を迎えており、政府は国産材の供給量を2025年までに14年の約1・7倍にする目標を掲げる。国内有数のスギ産地の動きが全国に波及するか、業界関係者も注目している。
●産地へ進出
 同県日向市の臨海部。約34ヘクタールの敷地にスギ丸太を積み上げた小山がびっしり並ぶ。製材の国内最大手「中国木材」(広島県呉市)が15年6月に本格稼働した新工場だ。初年度は約30万立方メートルの丸太を加工し、本年度は約45万立方メートルを予定する。これまで同社は主に北米産のベイマツを輸入・加工してきたが、北米材は近年、中国の需要増で価格変動が大きいため、豊富な国産材に注目。約300億円を投じ、スギ産地の宮崎に国内最大の国産材工場を建設した。石橋正浩九州事業本部長は「国産材は安定供給できれば、国内外が商圏になる。世界の木材会社とも勝負できる」と力を込める。
●低質材活用
 低質材や製材時に出る端材の活用も進み、追い風になっている。
 12年に国の再生可能エネルギー固定価格買い取り制度が始まり、宮崎県内では昨年、バイオマス発電所4カ所が売電を開始。曲がっているなどの理由で山に捨てられていた低質材が燃料として1トン7千円程度で売れるようになった。その結果、高質材の価格が値崩れしにくくなったという。同県西都市の伐採会社「松岡林産」の松岡明彦社長は「立木の値段が上がり、山主は売りやすい状況になりつつある」とみる。海外への輸出も伸びている。同県串間市の南那珂森林組合は12年から、近隣の組合と共同で韓国への輸出を本格化。中国へも販路を拡大し、年間売上高は当初の約9千万円から14年度は約3億3千万円にまで増えた。低質材に加え、太く成長しすぎて加工しにくい丸太も、海外で土木工事の足場材や棺おけに利用される。同組合の清水賢次木材流通促進室長は「国内の住宅着工戸数が減っており、今後は内装材など製材品の輸出が重要になる」と指摘する。
●自給率拡大
 ただ、国産材の復権は緒に就いたばかり。林野庁によると、1970年代に1立方メートル当たり3万円台だった国産スギの丸太価格は、長期的な下落傾向から脱しつつあるが、それでも15年は平均約1万2700円。木材自給率も14年に26年ぶりに30%台を回復したにすぎない。日本の林業政策に詳しい東京大の安藤直人名誉教授(木質構造学)は「伐採期のまとまった量の木材資源を加工して供給する動きが、宮崎県からようやく出てきた。今後は、全国でそうした流れが出てくるはずだ。林業は、きちんと再造林されて持続可能な産業になれば、復活を迎えるのではないか」と話している。
■国内の森林資源 2015年度森林・林業白書によると、国内の森林面積は国土の約3分の2に当たる約2500万ヘクタール。このうち約4割の1千万ヘクタールがスギやヒノキなどの人工林で、多くは戦後の高度成長期に植林され、本格的な利用期を迎えている。立木の体積は年々増加し、半世紀前の約5・4倍の約30億立方メートルに達した。林野庁は「木材産業にとって安定的な経営基盤になり、今後は伐採や製材など供給体制を効率化することが重要になる」としている。

*2-2-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12384665.html (朝日新聞 2016年5月31日) (世界発2016)ゾウは家族、絶滅から守れ ベトナム、森林開発進み140頭に
 ベトナム中部の高原で少数民族と家族のように暮らすゾウが、絶滅の危機にさらされている。ベトナム戦争中の枯れ葉剤に加え、ドイモイ(刷新)政策後の開発で多くの森林が失われたためだ。「ゾウを守ろう」と地元の人々とともに奮闘する日本人女性もいる。褐色の肌に赤い布を羽織ったゾウ使いが、勇ましく雄たけびをあげる。ムチを振り下ろすと、横一線に並んだ6頭のゾウが砂ぼこりをあげ、一斉に駆け出した。3月中旬、ベトナム中部ダクラク省で行われたゾウ祭りの人気イベント、「競ゾウ」だ。祭りはゾウと暮らしてきた少数民族の伝統を伝えるため、2年に1度開かれている。ゾウは川渡りやボールを蹴り合うサッカーも披露し、国内外からの観光客を大いに沸かせた。「でも今後5、6年で、飼育ゾウは絶滅してしまうかもしれません」と地元ヨックドン国立公園のド・クアン・チュン園長は言う。
■戦争で枯れ葉剤
 国営紙によると、ベトナムには1985年、504頭のゾウが飼育・管理され、野生ゾウと合わせて千頭以上いたとされる。ベトナム戦争中に米軍が枯れ葉剤をまいて多くの森林が被害を受ける前は、さらに多かったとみられる。現在、飼育ゾウは約60頭まで激減、野生ゾウと合わせても140頭ほどしかいない。なぜ減ったのか。中国などで高値で取引される象牙目当ての密猟と、「経済発展に伴う開発の影響が大きい」と園長は指摘する。75年のベトナム戦争終結後、政府は86年からドイモイ政策で市場経済に力を入れてきた。中部の高原地帯はコーヒーやコショウ、ゴムなどの農園として開墾することが奨励され、多くの入植者がやってきた。75年に約34万人だったダクラク省の人口は現在、約170万人にまで増えた。その結果、土地の約6割を占めた森林面積が4割以下に減少。ゾウは「1日200キロ必要」とされる食糧を求め、人里近くに現れるようになった。サトウキビやトウモロコシの畑を荒らし、農民らに殺される悪循環も生まれた。
■「繁殖止まった」
 ベトナムではインドやタイなどと比べて群れの規模が小さく、繁殖が滞る。「ゾウの繁殖が止まってしまった」。少数民族ムノン族のゾウ使いのイ・ク・エバンさん(47)は憂える。3歳からゾウに乗り、材木や米など農作物の運搬をゾウと担った。「戦争中は武器も運んだ」。ムノン族や同じく少数民族のエデ族の人々は古くからゾウを調教して飼い、労働力としてきた。人は高床式の家で暮らし、ゾウはその下や近くの木につながれて寝る。エバンさんが飼っているのは31歳のオス象タヌオン。狩猟は禁止されているため、2002年に約15万円で知人から買った。高価だが、観光客を1日乗せれば約7500円の収入になることもある。貴重な生活の糧だ。だが最近、観光客が増え、村のゾウは働く時間が長くなって疲弊気味。オスとメスが森で出合う時間も減った。このため、ダクラク省では80年以降、飼育ゾウの繁殖はほとんど確認されていない。「ゾウは家族。一緒に暮らす伝統を守りたいが、いい解決方法がない」。政府はゾウの環境を守ろうと92年に国立公園を整備し、違法な森林伐採や密猟の取り締まりを強化した。11年には「ゾウ保護センター」を設立し、わなにはまって傷ついたゾウの保護にも乗り出した。だが、センターのスタッフは18人だけ。ゾウの世話のほか、11万5千ヘクタールもある国立公園内のパトロール、野生ゾウの生態調査もしたいが、手が回らない。チュン園長は「ベトナムには動物保護のノウハウが乏しく、遠隔操作できる監視カメラもない」と訴える。
■東京の76歳元教諭、保護団体を立ち上げ
 「人間のせいで動物が絶滅するなんて、見過ごせないでしょ」。東京都国分寺市の元中学校教諭・新村洋子さん(76)は14年間で約40回もベトナムに渡り、森の保護を訴えてきた。定年退職後に趣味で始めた写真撮影のため、02年にベトナムの農村を訪れた。少女を撮っていると、後ろをゾウが横切り、夢中でシャッターを押したが、見失った。近くにいた少数民族の女性が「森に帰ったのよ」と教えてくれた。ゆったりとして優しげな姿に魅了された。ゾウに会いたい一心で、たびたびダクラク省の森を訪れるようになった。写真を撮りため、06年に写真絵本「象と生きる」(ポプラ社)を出した。撮影を通じ、ゾウが減っている実情を知った。09年に「ヨックドンの森の会」という象の保護団体を日本で立ち上げた。支援金を集め、国立公園にゾウの生息状況を監視できるカメラを寄贈したり、「象と生きる」のベトナム語版を作ってベトナムの子どもたちに配ったりしてきた。最近は国立公園のスタッフをタイの大学の研修に参加させるなど、専門家の育成にも力を入れる。今年は、野生ゾウの生態調査や密猟・違法伐採の監視態勢強化のため、他の団体などと協力し、計700万円を集めて国立公園に寄付するつもりだ。国立公園の職員や少数民族のゾウ使いは「ヨーコ」と呼んで慕う。長野県飯田市生まれ。「森に囲まれて育ったので、自然への思い入れが強いのかもしれません。小さな取り組みですが、一歩ずつ広げていきたい」
◆キーワード
<アジアゾウの減少> 世界自然保護基金(WWF)によると、アジアゾウは20世紀初頭に10万頭以上生息していたが、現在は5万頭前後に減っている。国際自然保護連合による国別の推計の頭数(2000年)では、インドが2万~3万、ミャンマー4600~5千、タイ1300~2千、ラオス950~1300、ベトナム109~144。

<移民・難民>
*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/312987
(佐賀新聞 2016年5月18日) 米有望企業、約半数は移民が創業、排斥すれば活力低下も
 米株式市場で上場が見込まれるような有望なベンチャー87社のうち、約半数の44社は移民が創業したとの調査結果を、18日までに米シンクタンクが発表した。移民は「急成長する新興企業の源泉だ」と結論付け、査証(ビザ)の発給要件の緩和を促している。米大統領選でトランプ氏は移民排斥発言を繰り返しているが、移民流入を抑制する政策が採用されれば企業の活力をそぐ恐れがありそうだ。企業価値10億ドル以上で株式上場の可能性がある企業を87社選び、米シンクタンク「ナショナル・ファンデーション・フォー・アメリカンポリシー」が創業者の出身地などを調査した。

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12374632.html (朝日新聞 2016年5月25日) (難民 世界と私たち)日本留学、シリアにともす灯 「150人受け入れ」現地の若者は
 主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)を前に、政府は内戦が続くシリアの難民らを留学生として、来年からの5年間で最大150人を受け入れると発表した。日本が中東の難民を政策的に受け入れるのは初めて。期待に胸を膨らませる現地の若者らの思いを聞き、課題を探った。「日本留学のチャンスが増えるのは、とてもうれしい。留学生に選ばれれば必ず日本に行きます」。アレッポ大3年のアフマド・アスレさん(24)は19日、電話取材に声を弾ませて日本語で答えた。「シリア内戦の最激戦地」と呼ばれる北部アレッポの中心部に住む。政権軍と反体制派の戦闘地域は自宅からわずか数キロ先だ。この日、日本政府によるシリア人留学生受け入れ拡充をフェイスブックで知った。日本に留学中のシリア人の学生が新聞記事をアラビア語に訳してくれた。生活は過酷だ。4月下旬にはアレッポ大の卒業生で、一緒に日本語を学んだ友人女性が迫撃砲弾の直撃を受けて死亡した。アスレさんの自宅はスナイパーの狙撃を避けるため、全ての窓に灰色のシートを張っている。砲撃がひどい時は地下室に避難する。電気を使えるのは1日数時間。食品やガソリンは値上がりする一方だ。でもいつかは内戦が終わると信じ、家族とともに耐えてきた。「世界遺産も市場も住宅地も破壊された。戦争が終わった後、街を元通りにするには高度な技術を持つ日本の助けが必要。私は懸け橋になりたい」。シリア最大の国立総合大学のダマスカス大学には2002年、シリア初の日本語専攻学科ができた。だが、内戦で日本人教師が国外に退避。教員不足で、14年秋から募集を停止した。宮崎駿監督に憧れる2年生のガザル・バラカートさん(20)は日本語学科に入れず、考古学科で学ぶ。今年2月の「停戦」発効で状況が落ち着くまで、迫撃砲弾の着弾におびえながら通学した。初歩的な日本語を話せる先輩から日本語を学び、日本留学の機会を探る。発表は朗報だが、どこに問い合わせればいいか分からない。日本政府は12年3月、在シリア日本大使館を閉鎖した。「日本に憧れるすべてのシリア人の若者に平等にチャンスを与えてほしい」。トルコ・イスタンブールのシリア難民向けの小学校教師イヤード・ダムラヒさん(32)はアレッポ出身。内戦前の10年4月から日本で日本語学校に通い、大学進学を目指した。ところが翌年3月、東日本大震災が発生。両親に戻るよう説得され、アレッポに戻ったが、内戦で国外に逃れた。日本の大学で日本の教育を学びたい。「礼節や、皆で掃除をしたり、給食の配膳をしたりする相互協力は、とてもユニーク。深く学びたいと思った。募集人数を増やしてほしい」
■支援者「新たな一歩」
 留学生受け入れを埼玉県に住むシリア難民のジャマールさん(24)は「素晴らしいニュースだ」と喜ぶ。空爆で家が壊され、ダマスカス大の学生だった13年に母国を脱出。親類を頼って母、妹と来日し、昨年3月に日本が初めて難民と認めたシリア人の一人になった。日本語を学び、東京の大学進学を目指す。「最も大切なのは最初の半年間に日本語をきちんと教えること。日本社会になじみ、働くチャンスもできる」。日本はこれまで紛争から逃れた人を難民とは認めていない。11~15年に難民申請をしたシリア人65人で認められたのは6人。留学生受け入れを政府に提言した学生グループ「P782」メンバーで東工大4年の富重博之さん(24)は「難民が孤立しないよう社会のサポートも重要」と話す。NPO難民支援協会(東京)は「難民を『難民』として受け入れる方針が示されなかったのは残念だが、人道危機に対する責任の分担への新たな一歩を踏み出そうとしていることを歓迎する」とした。
■受け入れ態勢や選考、課題
 日本政府は留学生受け入れの態勢作りを始めた。政府関係者によると、留学生に配偶者や子がいる場合、同伴できるよう検討中だ。課題も多い。留学生の選考はレバノンやヨルダンで難民登録に携わる国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の協力を想定するが、シリア難民の最大受け入れ国のトルコは政府が独自に難民登録しており、UNHCRが選考できるか不透明だ。対象はシリアにとどまっている国内避難民も含むが、選考方法は未定。同伴家族の滞在資格をどうするかも詰める。今回の取り組みは、本格的な難民受け入れにつながるのか。外務省幹部は「今後は未定だが、これで終わりだと考えているわけではない」。欧州では、無制限な流入を抑えようとする動きが進む。UNHCRは難民の受け皿として、難民認定による保護に加え、大学に通う間の奨学金とビザの支給、病気やけがをした難民に医療を提供する間の滞在許可、条約上の難民と認められない人などに一時滞在を認める「人道ビザ」の発行などを呼びかける。人道ビザはブラジルが8450人、スイスが4700人のシリア人にそれぞれ発行した。周辺国に逃れた難民を第三国が受け入れる「第三国定住」の拡充も訴える。4月までに各国が計約16万人分の受け入れを表明。カナダや米国のように数万人規模を受け入れる国もある。
■シリア難民受け入れの枠組み
◇国際協力機構(JICA)の技術協力制度
20人/年→政府の途上国援助(ODA)を活用
◇国費外国人留学生制度
10人/年→文部科学省が実施
(2017年から5年間で最大150人を受け入れ予定。留学生として日本各地の大学で学ぶ)

<移住者募集>
*4-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37444 (日本農業新聞 2016/5/11) 移住者呼び込め 地方創生 連携が鍵 鳥取市の事例調査 農中総研リポート
 農林中金総合研究所は、地方創生をテーマに研究成果をまとめた。地方の農業振興につながる可能性があるとして、官民が連携して移住者を呼び込む鳥取市の事例から移住促進策の可能性と課題を探った。移住者を呼び込む鍵として、国や自治体、民間非営利団体(NPO)などの連携体制を挙げた。地方創生に関する取り組み内容や数値目標などを定めた都道府県版総合戦略が2015年度末までに策定されたことなどを受け、テーマを設定。農中総研は「農業が基幹産業の地域は多い。地方経済が活性化すれば農業にも波及することから、地方創生は重要な動きだ」(編集情報室)とする。このうち、自治体の大半が力を入れているとされる移住促進政策に着目。若者を中心に市外から転入する移住者・世帯数が06年以降増え続けている鳥取市の取り組みを調査した。成功要因について、国や県、市、町内会、NPOなどの連携体制を敷いた点を指摘。関東、関西での開催も含めた相談会の実施に加え、移住前に暮らしを体験してもらう「お試し移住」の機会を設けたり、就業支援・不動産の情報を提供したりするなど切れ目のない支援をしているという。一方、地方創生の動きが加速する中、自治体間での移住者獲得の競争が激化するといった懸念も指摘した。この他、地方財政改革と地方創生の実現に向けた課題の研究や、農業・農山村振興をテーマに1月に行われたシンポジウムでの講演の内容を盛り込んだ。農林中央金庫の『農林金融』5月号に掲載している。『農林金融』は農中総研のホームページでも閲覧できる。

*4-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36291
(日本農業新聞 2016/2/13) 地方創生へ役割発揮 全国初、県と連携協定 JA長野県グループ
 県とJA県グループは協定により、農業者の所得増大を目指した農業の振興をはじめ、農村地域の暮らしの維持や人口の定着など幅広い範囲で連携する。地方創生の県総合戦略には「JA長野県グループと連携・協働する」と明記した。
●インフラ維持、移住促進も
 具体的には、中山間地域でJAの空き店舗を活用した地域住民のふれあいの場づくりや移動購買、移動診療の充実などを想定。また、地域に密着した医療・介護福祉サービスやガソリンスタンドの運営、金融・共済事業の提供など、JAは総合事業を通じて地域のライフラインとしての役割を発揮する。人口減少対策でもJAへの期待が高い。独自の基金を活用した新規就農者への支援の他、「田舎暮らし」や「農ある暮らし」を目指す多様な農業の担い手を支援。定年帰農者やU・Iターン者への直売所への出荷の呼び掛けや、必要な農業研修などをJAに積極的に担ってもらう考えだ。JA県グループも、長野中央会や厚生連などでつくる「JA長野県くらしのセンター」を4月に開設。自己改革として協同活動の推進や高齢者福祉事業への支援を加速するとともに、同協定による地方創生に関わる窓口を設ける。長野市の県庁で12日行った調印式で、阿部守一知事は「農村の活性化は県の活性化と密接不可分。農村の暮らし全般に深く関わっているJAとの連携は大変心強い」とあいさつ。JA長野中央会の大槻憲雄会長は「JAの総合事業と地方創生が目指す方向は同じ。当たり前のことをやっていく」と決意を述べた。全中によると、県とJA県グループが地方創生に関して、農業や暮らしなど広範囲にわたって連携するのは全国でも初めて。「全国大会決議で掲げた地方創生への積極的な参画のモデルとなる事例」(組合員・くらしの対策推進部)と評価する。


PS(2016年6月11日追加):*5のように、佐賀県でも3,200人超の外国人労働者が働いているそうだが、「技能実習生」という名目で労働法規の例外となるような雇用をすると、結局は恨みを買って国益にならない。また、本当に技術移転をし続ければ、日本の技術を無料で新興国に移転することになって技術で差別化できなくなり、日本の競争力が弱まる。そのため、勤務時間短縮や残業代不払いのような馬鹿の一つ覚えの小さなことばかりではなく、時代に合わせて、雇用における女性差別や外国人差別を是正するのが、労働基準監督署の重要な役割であろう。

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/321658
(佐賀新聞 2016年6月11日) 県内企業、外国人労働者3200人超、人手不足で拡大
■法令違反も潜在 雇用環境の改善急務
 人手不足を背景に、佐賀県内でも外国人労働者を受け入れる企業が広がり、1年前より350人増えて3200人を超えている。一方、佐賀労働基準監督署が立ち入り調査した技能実習先企業の7割(2014年)で賃金不払いや上限を超えた長時間労働などの不法行為が見つかっている。外国人労働を巡る問題は表面化しにくく、雇用環境の改善が急務となっている。「他業種よりも賃金など条件面で見劣りするため、社員が集まらない。短期間でも外国人に頼らないと仕事が回らない」。数年前から中国人実習生を雇う県内の縫製会社は打ち明ける。県内の外国人労働者は昨年10月末、留学生を含め3264人。製造業を中心に卸売や小売、飲食業など525社が受け入れている。中国人が千人と最も多く、ネパール人700人、ベトナム人640人と続く。うち外国人技能実習制度で来日した実習生が4割を占める。技能実習制度は本来、新興国への技術移転が目的。ただ、3年前からフィリピン人実習生6人を雇い入れている金属加工業者は「それは建前にすぎない」と言い切る。「うちの実習生も残業をしたがる。日本でお金を稼ぎたい外国人と、低賃金で労働力が確保できる企業の利害で成り立っている側面もある」と制度のほころびを認める。政府は経済界の要請も受け、実習生の受け入れ期間延長や介護にも対象を広げる方針だが、雇用環境の整備は遅れ気味だ。佐賀労基署が14年に立ち入り調査した実習先企業46社のうち、32社で法令違反が見つかった。12社が労使で定めた残業時間の上限を超えて働かせていたほか、残業代を支払っていなかった企業も6社あった。外国人を雇用している企業の半数は30人未満の小規模事業所で、労基署は「人員体制面で管理が行き届いていないことが要因」とみる。労基署への相談は年数件だが、管内に外国語に対応した相談窓口はなく、「表面化していない問題がないとは言えない」という。「休みを取ったら上司に蹴られた」「安全靴を履かずに建設現場で働き、けがをした」-。佐賀市で日本語教室を開く越田舞子さんは実習生からこんな相談を受けることがある。「日本語が十分に話せなかったり、渡航費を親類から借りて来日したりして、誰にも相談できずに我慢して働き続けている人もいる」。問題の根深さを指摘する。
■12日、アバンセで技能実習制度学習会
 技能実習制度の在り方を考える学習会が12日午前10時から、佐賀市のアバンセで開かれる。県内の労働組合でつくる「はたらくものの命と健康を守るネットワークさが」が企画し、越田さんと、外国人労組「首都圏移住労働者ユニオン」書記長の本多ミヨ子さんが課題を語る。参加無料。問い合わせは県労連、電話0952(25)5021へ。


PS(2016年6月16日追加):*6の「①大量の農薬を使って土地が痩せる悪循環が起きた」「②農薬を使いすぎて魚が減った」「③有機栽培で安全な野菜を作っても評価されず、収益向上に役立たなかった」等々は、日本では40年くらい前から指摘され始め、次第に解決されてきたものだ。そのため、佐賀県などノウハウを持つ自治体が有機農法を伝授したり、家畜の糞や下水の現代的な利用法を教えたりするのは良いことで、これらは、JICAが予算を付けて地道なODAとして行うことも可能だ。また、もともと緑だったが砂漠になってしまった地域を元に戻せば、そこに移住できるので多くの紛争が鎮まると考える。
 
*6:http://qbiz.jp/article/88845/1/
(西日本新聞 2016年6月15日) ミャンマー 佐賀の有機農法を伝授(上) 農薬の代わりに木酢液
 戦前は世界最大のコメ輸出量を誇った農業国ミャンマー。国民の7割が農村に住み、潜在性が大きいと期待されるが、近代化の遅れや知識の不足で生産性が上がらない上、海外から流入する農薬で安全も確保できていない。地球市民の会(TPA、佐賀市)はそんな状況を改善しようと、農業が盛んな北東部シャン州南部で長年、有機農法を指導。裾野が広がり始めた。観光地としても有名なインレー湖に近いシャン州南部の主要都市タウンジー郊外に、TPAが運営する「ナウンカ村落開発センター」がある。5月下旬、周辺の村から集まった若者を前に、ベテラン教師ミョー・ミン氏が教壇に立っていた。「インレー湖の水は湖岸や湖上の農業で農薬を使いすぎて飲めなくなり、魚も減った。木酢液で虫を近寄らせなければ、殺す必要はない」。木酢液とは、ここで教える「循環型農業」で要の一つとなる忌避剤のこと。座学の後、ミョー・ミン氏と若者らは外の畑に出て、精米後の籾(もみ)殻から酢液をつくる実技に移った。センターは2005年に完成、2エーカー(約8千平方メートル)ほどの土地に教室や宿泊所のある母屋、畑や養鶏場、精米所などを備える。ここで月1回、農家20人ほどを集めた7日間研修が行われるほか、年に1度は若手10人ほどを対象とする3カ月の長期研修も実施。近隣の村を中心に州内外から集まる研修生はセンターに泊まり込み、寝食を共にしながら学ぶ。研修は延べ80回を数え、受講者は1,000人を超えた。近隣の村への出張研修も行っており、裾野は広がりつつある。TPAのミャンマー国代表、柴田京子氏は「土地が痩せて困って研修を受けにくる農家が多い」と話す。国境を接するタイや中国から安価な化学肥料が大量に流れ込み、農家はビルマ語の使用書もないまま、業者の言いなりに大量の農薬を使い、土地が痩せる悪循環が起きているという。センターで教える農法の柱は、農薬や化学肥料の代わりに、土地に生息する菌を増やして堆肥にする「土着菌堆肥」、鶏糞や油かすを使う「ぼかし肥」、炭焼きなどで出る液を忌避剤にする「木酢液」の3つだ。5月下旬の7日間研修に近隣の村から参加していたウィン・チョンさん(30)は、「ハトマメを植えたら初年はできたが、2年目は減り、3年目は全く実らなくなった。ミカンも昔は何年でも実ったが、いまは実らない。収量があがらないので参加した。肥料を昔の牛糞(ふん)から化学肥料に切り替えたせいかもしれない」。研修で学ぶ循環型農業は「環境にも自分にも良いので、実践しようと決めた」と話した。過去に3カ月研修を受けたというトゥン・ナインさん(29)も、「化学肥料を使うようになって土が硬くなった」として参加した。研修で習った堆肥の作り方やコメの植え方を実践している。ただ化学肥料や農機が普及する一方で牛は減り、堆肥に使う糞なども買わなければならなくなった。
■成果示し悪循環絶つ
 ミョー・ミン氏は自身も農家で、TPAが引き継ぐ以前に別の団体がタウンジーで循環型農業を教えていた1999年から教師を務める。「農家は30年前から化学肥料を多く使っていたが、近年は特に広がった」と危機感を強めている。タイから輸入されるハイブリッド種は化学肥料の使用を前提とした種。在来種・固定種であれば種取りができ、何年でも実るが、ハイブリッド種は毎年、種も買わなければならない。生産コストが上がり続ける一方、収入はなかなか伸びない。一方、ミョー・ミン氏が指導したインレー湖畔のテレーウー村では、土着菌を生かす農法で1エーカー(約4千平方メートル)当たりのコメ収穫量が国内で一、二を争うまでに高まるという成果を挙げた。実績を示すことが農薬や化学肥料に頼る悪循環を絶ち、他の地域への循環型農業の普及を後押しすると期待する。TPAでは、約10の農家からなる農業組合も組織して、有機栽培の振興に取り組む。センターのスタッフの案内で周辺の村を回ると、研修所で学んだ農家が、「隣の農家も循環型農業を実践している」と教えてくれた。研修を受けた人が周囲に広げたり、近隣の村への出張研修に参加した人が実践したり。タウンジー駐在のTPAプロジェクトアドミニストレーター、鈴木亜香里氏も「この広がりには驚いた」と言う。当初は研修に参加しても自分の畑に持ち帰って実践する人ばかりではなかった。有機栽培で安全な野菜を作っても、卸先のブローカーが評価してくれず、収入向上に役立たなかったからだ。ブローカーは見た目重視で、農薬の有無は意に介さない。農家が実践するには、販路が必要だった。


PS(2016年11月6日追加):必要な労働力を確保するのに移民・難民を受け入れると、*7-1のように、海外出身の児童の教育体制を整えなければならないが、移民・難民の大人にも夜の小中学校の校舎などを使って日本における基本的なことを学んで理解する機会を準備した方がよいだろう。しかし、溶け込む(日本人と同じになって目立たなくなる)ことを強制しすぎるのは、日本人とは異なることによって持っている長所を消失させてしまう場合もあるためよくない。むしろ地域の人は、(内容にもよるが)ありのままの相手を受け入れることによって、心のグローバル化が進むと考える。なお、1970年代から増えている日本人帰国子女は、両国語が流暢で両国の文化に通じていることを活かして活躍している人が多く、この場合は、日本人学校に入れられることの多い男の子よりも、現地の学校に放り込まれることの多い女の子の方が、徹底したバイリンガルとして活躍していると言われている。
 また、*7-2のように、2016年の耕地面積(田畑計、7月15日現在)は447万1000ヘクタールで、1961年の608万6000ヘクタールをピークに減り続け、その理由は、耕作放棄や宅地への転用だそうだ。そして、前年と比較しても2016年は田が1万4000ヘクタール、畑が1万1000ヘクタール減少し、我が国は大きな資産を失った。それなら農業人材となる移民を募集し、最初は農業生産法人やJAが雇用して耕作すれば、生産物(小麦・オリーブ・葡萄等)の国内販売や母国への輸出が可能であるため、農地を失いながら農地をつぶして作った住宅も空き家にしているより、ずっとよいと思われる。

    
     2016.11.6、2015.11.30   食料自給率国際比較   2015.6.18朝日新聞 
         日本農業新聞
(図の説明:日本は、他の先進国と比較して食料自給率を著しく減らしながら、農業の就業人口と耕作地の両方を減らし続けてきたため、これは、減反農政の失敗だ。それを回復するに当たっては、大規模化・技術革新・生産性の向上が重要だが、農業従事者としての移民・難民の受け入れも選択肢になる)

*7-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/373899
(佐賀新聞 2016年11月6日) 現場を行く 海外出身児童や帰国子女 「授業」「溶け込み」に課題
 日本語が苦手な海外出身の児童や帰国子女が佐賀県内で増えていることを受けて本年度、日本語指導教員が佐賀市の小学校2校に1人ずつ配置されている。適切な指導方法を探りながら、周りの児童に異なる文化や習慣を受け入れる素地をどう育むか。模索する現場を歩いた。
■佐賀市の日本語指導教員、模索 
 ネパールから来日して2年になる小学4年の女の子が母国を紹介する文章を考えていた。9月下旬の本庄小学校。隣に座る日本語指導教員の西村常裕さん(53)が「てにをは」の誤りを消しゴムで消してあげて、適切な表現を考えさせる。授業を受ける普段のクラスとは別の教室。女の子は数字を漢字で書いているとき「はあ、きつい」と漏らしたが、正しく書き上げて「素晴らしい」と褒められると、笑みを浮かべた。
■周囲の理解促進識者「学校も努力を」
 県教育委員会によると、県内で日本語の指導が必要な小中学生は5月1日現在、37人いる。外国籍が24人、日本国籍が13人で増加傾向にあるという。母国語や得意な言語は中国語、英語、韓国語が多い。指導教員は小学校教諭の免許を持ち、学級担任を補助する。県内の定住外国人の3割が暮らす佐賀市では例年、海外出身者が転入する。指導教員は、児童が比較的に多い本庄小と神野小に県教委が4月に配置した。児童は日常会話ができても学習用語は苦手だ。「辺が平行とか直角に交わる線とか、単語の意味を理解し学習に結びつけるまでは時間がかかる」。神野小の指導教員、伊井喜也さん(43)は話す。来日前に成績が優秀でも、つまずくと自信を失いかねない。教科書に読み仮名を振ったり、絵を使った副教材を活用したりして理解を助けている。1対1の個別授業は、周りの目を気にせず、児童の学習進度に応じて学習できるという利点がある。一方で、在籍するクラスへの帰属意識が薄れないように配慮も必要になる。本庄小では、全校集会で指導教員が児童の母国語のあいさつを教え、教室では外国語でのあいさつも飛び交う。落ち着いた学校生活を送るためには、家庭との意思疎通も欠かせない。担任や指導教員は児童の転入前、保護者と面談し、宗教の儀礼や口にできない食材を確認している。普段の連絡事項は、保護者が日本語が得意ではない場合、来校してもらい、国際交流協会から派遣された通訳やALT(外国語指導助手)を介してやりとりをする。児童に通訳してもらうときもある。「児童が『受け入れられている』と実感できる雰囲気づくりが大切」。海外にルーツを持つ児童生徒に集いの場を提供している松下一世佐賀大学教授(60)=人権教育=は、指導教員の役割をこう強調する。その上で「学校は集会や教室づくりを通して、周りの児童が異なる国や文化に興味を持つように促していく必要もある」と指摘し、共生社会の実現につながるきっかけづくりを求めている。県教委は本年度末に成果をまとめ、日本語指導を必要とする別の学校と情報を共有する考えだ。

*7-2:https://www.agrinews.co.jp/p39379.html (日本農業新聞 2016年11月6日) 耕地0.6%減 447万ヘクタール 山間部中心に荒廃増 前年割れ55年連続
 2016年の耕地面積(田畑計、7月15日現在)は447万1000ヘクタールと、前年より2万5000ヘクタール(0.6%)減ったことが農水省の調べで分かった。前年割れは55年連続。山間部などの条件不利地を中心に、荒廃農地が増えたのが最大の要因となった。九州では熊本地震などの自然災害が響いた。耕地面積は1961年の608万6000ヘクタールをピークに減り続いている。高齢化による耕作放棄や宅地への転用などで、これまでに約3割の農地が失われた。16年も田が243万2000ヘクタールで前年比1万4000ヘクタール減、畑が203万9000ヘクタールで1万1000ヘクタール減と、いずれも前年を割り込んでいる。耕地面積の前年より減少した分(2万5000ヘクタール)の6割を占めるのが荒廃農地だ。16年は1万6200ヘクタールと前年より2700ヘクタール増え、過去10年間で最大を更新した。このうち畑は9170ヘクタールと、田を3割上回った。特に畑に含まれる樹園地の減少が目立っており、高齢化による労働力不足で管理が行き届かなくなっている実態を示した。一方、田の増えた面積は1690ヘクタールで前年の8割にとどまった。畑は4700ヘクタールで3割増。特に熊本県で、熊本地震により水稲の作付けが困難になったことへの対策として、田の畑地化が進んだ。地域別に見ると、田畑の面積が前年より最も落ち込んだのは関東・東山と九州で、ともに5300ヘクタール減った。関東・東山は宅地化の増加、九州は熊本地震などの自然災害が響いた。次いで東北が5200ヘクタール減で、高齢者が多い山間部を中心に田畑が減った。

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 03:31 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.5.30 財務省とメディアの消費税増税自体が目的の政策を中止して国に公会計制度を導入するのが、ギリシャのようにならないために必要な日本の経済・財政政策である (2016年5月31日、6月1、3、4、5日に追加あり)
   
                    2016.5.27日経新聞      2016.5.28    2016.5.25 
                                       日本農業新聞     佐賀新聞

   
    2016.5.27日経新聞   債務残高のGDP比  日本のGDP推移    日本の賃金推移

(1)消費税増税は、国益ではなく財務省の願望だ
 私はギリシャに向かって直進する消費税増税は不要だと思うが、首相が消費税増税延期を選択すると、*1-1のように、日本のメディアは「①消費税増税で得た財源は社会保障の安定や拡充に充てる計画だったので、延期のしわ寄せは社会保障の対象となる高齢者や子育て世帯に真っ先に及ぶ」「②既に深刻な状況にある我が国の財政再建は遠のく」「③大衆迎合や選挙を意識した安易な先送りは許されず、首相は説明責任を厳しく問われる」などと騒ぎ立てる。

 しかし、①②③のような論調こそが、猿芝居の始まりなのだ。首相より前に、財務省とメディアは、①他国にはそのような決まりはないが、日本では社会保障の安定・拡充に充てる財源は消費税でなければならないとする理由 ②実際には消費増税前後の景気対策と称して国民から巻き上げた税金を政府が付加価値の低い投資にばら撒いて経済成長を妨げているのに、消費税増税をすれば財政再建できると唱えている理由 ③算術しかできない消費税増税論者が日本経済を考えており、反対論者は大衆迎合だという誤った自信を持っている理由 などについて、世界が呆れない根拠をもって説明すべきだ。

 なお、首相や多くの国会議員はもともと消費税増税に積極的ではなかったのに、どの党が政権をとっても消費税増税をしなければメディアを使って論理にならない批判をさせ、ついに増税に追い込ませたのは、消費税増税が願望の財務省だ。そして、メディアは財務省の尻馬に乗って騒いでいるにすぎず、「表現の自由」を標榜しなければならないほど芯のある報道をしているわけではない。

 また、東日本大震災や九州大地震の復興で多くの工事が必要になったため、失業率が下がって景気も良くなるのは当たり前であり、実際、上のグラフのように国内需要は東日本大震災の後、急速に伸びている。そのため、金融緩和による物価上昇・消費税増税・社会保障削減などぎりぎりで暮らしている家計にマイナスの影響を与える経済政策の邪魔がなければ、本物の景気回復ができた筈なのである。

(2)景気対策と称する生産性を高めないばら撒き
 日銀が「2%の物価上昇目標を実現するためなら何でもやる」と言っているように、0金利に近い金融緩和でインフレを起こしてデフレを脱却すればよいという発想は、経済学的に誤りである。何故なら、そのような中央銀行の下では、人々は自分の資産と将来の安全を護るために貯蓄を行って家計を護る方向となり、結果として利子率が少なくとも2%程度になるまで物価が下がるからだ。これを、経済学では「ジョンブルも2%の利子率には我慢できない」と表現する。ジョンブルとは、イギリス人の男性に多い名前で、贅沢をせず、文句も言わずに、こつこつと働く人を意味し、そのジョンブルでさえ我慢できないという意味だ。

 そこで、*1-2のように、安倍首相は28日夜、麻生財務相、谷垣自民党幹事長と会談して、来年4月に予定する消費税率10%への引き上げを2019年10月まで延期する方針を伝え、会談で反対する意見も出たため、引き続き政府・与党内で調整することになったそうだ。また、首相は、消費税率10%への増税延期と財政出動を行うために、G7首脳会議で「世界経済は危機に陥る大きなリスクに直面している」「各国の財政出動が必要だ」という合意を取り付けようとしていた。

 しかし、*1-8のように、例えば、道路をより良くするのではなく掘っては埋めるだけのような生産性を上げない工事や合理性のない公共工事によって実際に行われている「ヘリコプターマネー」による財政出動は、役に立つ仕事をせずに給料をもらう人を作って全体の生産性を下げ、円の価値を薄めて所在を変えるだけであるため、我が国の借金を増やして成長に結びつかず、正義でもないのである。
 
 ただし、政府が、当初の契約通りに年金を支払えば必要となる年金資産額を退職給付会計を使って計算し、50年以上の償還期限の0金利長期国債を発行して積み立てたり、教育・医療・社会保障を充実したりするのはヘリコプターマネーではないため、行うべきである。

(3)やはりG7の他国は、日本政府の変な説明には同調しなかった
 *1-3のように、首相はG7で「リーマンショック前に似ている」として消費増税延期への地ならしをしたが、これは日本の特殊事情であるため、G7で話すのは不適切のように思えた。そのため、危機認識が首脳間で差があったのは当然で、既に国に公会計制度を導入しているG7各国の首脳が、「危機、クライシスとまで言うのはいかがなものか」とし、「G7各国は、『それぞれの必要性に応じて経済政策をとるべきだ』というドイツのメルケル首相の意見を支持した」というのは、当たり前のことだった。

 また、*1-4のように、「世界経済に下振れリスク」ともよく言われるが、経済は常に景気循環しながら発展していくため、下振れも上振れも普通に起こる。そのため、一つ一つの投資効果を吟味して生産性を上げる投資をするのではなく、消費税を上げながら「○○兆円規模の景気対策」というヘリコプターマネーを撒く方がよほどまずく、これが通用する理由は、事実を分析し本質や真実を突きとめて報道することができない日本メディアの質の低さと、それを許している主権者の怠慢である。

 つまり、*1-5のように、G7首脳会議(伊勢志摩サミット)で議長を務めた安倍首相は、世界経済のリスクを強調し、G7による危機対応を強く求めたが、G7の他国首脳は日本政府の変な説明に騙されず、首脳宣言は「世界経済の回復は継続しているが、成長は緩やかでばらつきがある」という議長国日本に配慮したあまり意味のない基本認識を示した。しかし今、日本で感じるべき最も大きなリスクは、地震と原発のリスクなのである。

 そのほか、*1-6のように、「アベノミクスが成果を上げていない」とも書かれているが、その最も大きな原因は、金融緩和によるインフレ、消費税増税、医療・福祉の削減によって国民から金を巻き上げ、それを生産性の低い事業にばら撒き、その中には生産性がマイナスの事業すらあることだ。そして、このことはずっとこのブログに書いてきたのでここで長くは書かないが、これまでの一つ一つの政策の総合が日本のマクロ経済に結果として現れているのであり、その責任はアベノミクスのみにあるわけではない。

 なお、*1-7に、「首相は個人消費の低迷を踏まえ、購入額以上の買い物ができるプレミアム商品券の発行といった家計支援策も柱となる2次補正を検討する」と書かれているが、物価上昇、消費税増税・福祉の切り捨てなどで大きくぶんどられた国民に、そこから少額のプレミアム商品券を発行して地元商店街で買い物をするように“支援する”などというのは、あまりにも人を馬鹿にした愚策である。 

(4)G7(伊勢志摩サミット)で議論されたこと
 *2-1のように、G7では世界経済の安定に向け、「G7が世界経済のイニシアチブをとる」と首脳宣言に盛り込み、財政出動、構造改革、金融政策などを総動員して成長を底上げし、そのほか①テロ対策 ②タックスヘイブンを使った課税逃れ対策 ③サイバー対策 ④質の高いインフラ投資 ⑤感染症対策などの国際保健 ⑥女性の活躍推進 などの重点6分野で付属文書をまとめる予定だったそうだ。

 このうち、「財政出動、構造改革、金融政策などを総動員して成長を底上げする」というのは、具体的な意味のないばら撒きを行うという宣言だが、やはりG7の財務相・中央銀行総裁会議は、紳士的に世界経済を下支えするためにあらゆる政策手段を総合的に用いることは確認したものの、各国一斉の財政出動に関しては合意に至らず、健全だった。特に、*2-3のように、独財務相が「目先の効果にこだわり、借金を積み上げるだけになってしまう事態は避けたいと(G7の)みんなが思っている」との認識を示したのはもっともであり、日本もそうすべきである。

 そのような中、*2-4のように、佐賀新聞は「G7、財政出動は各国判断、経済下支えへ政策総動員」という表現をしているが、日本のように「景気対策、景気対策」と言って、具体的な方針のない政府支出(=ばら撒き)を経済下支えと称して行う国はないことを認識しておくべきだ。

 また、*2-5のように、タックスヘイブンをテロ資金と結びつけて禁止しようとする国も日本くらいであり、これが重要な問題として取り扱われなかったのは、世界の正常性と日本の異常性を物語っている。

 なお、①③④⑤はさほど意見の違いの出ない項目だが、⑥の女性の活躍推進は、意見の違いは出ないものの、今頃そういうことを言っている国はG7では日本くらいであるため、G7でそれを言うと、みんな(イギリス、ドイツは既に女性首相を出しており、アメリカも女性大統領が出そうだ)呆れたと思われる。

<財務省とメディアのおかしな思考>
*1-1:http://qbiz.jp/article/87630/1/
(西日本新聞 2016年5月27日) 【解説】増税延期 首相、問われる説明責任
 議論を重ねた末に与野党が合意し法律に定めた消費税率10%への引き上げを、安倍晋三首相が再び延期する道を選んだ。国内外の景気が停滞していることは確かだが、首相が伊勢志摩サミットで訴えた「リーマン・ショック前に似た状況」とは程遠いとの見方が専門家の間では強い。大衆迎合や選挙を意識した安易な先送りなら許されず、首相は説明責任を厳しく問われている。消費税の扱いは、景気への影響にとどまらず、社会保障や国の財政、将来世代も含めた国民負担の在り方といった幅広い観点から論じられるべきテーマだ。増税で得た財源は社会保障の安定や拡充に充てる計画だった。延期のしわ寄せは社会保障の対象となる高齢者や子育て世帯に真っ先に及ぶ可能性がある。既に深刻な状況にある国の財政の再建はさらに遠のくことになる。前回延期時に「再び延期することはない」と約束した首相が前言を翻したことで増税への本気度を疑われ日本国債の格下げを含め市場の信認低下を招く事態も予想される。熊本地震の被災地はなお厳しい状況に置かれており、消費低迷が続く家計にとって増税先送りの恩恵は大きい。ただ、増税を予定通りに実施できる経済環境を整えられなかった安倍政権の責任は重い。「アベノミクス」の限界を露呈したとも言え、政権への批判や経済政策の見直しを求める声が強まるのは必至だ。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12382288.html (朝日新聞社説 2016年5月29日) 首相、増税再延期伝える 「19年10月」麻生氏らに 2次補正を検討
 安倍晋三首相は28日夜、首相公邸で麻生太郎財務相、谷垣禎一自民党幹事長と会談し、来年4月に予定する消費税率10%への引き上げを延期する方針を伝えた。延期期間は2019年10月までの2年半とする考えも示した。だが、会談では反対する意見も出たため、引き続き政府・与党内で調整することになった。複数の政府関係者が明らかにした。会談には菅義偉官房長官も同席した。首相は熊本地震の発生に加え、今後は世界経済の収縮も懸念されることから、来年4月に予定通り消費増税を実施すれば政権が掲げるデフレ脱却がさらに遠のきかねないと判断し、増税時期を先送りする考えだ。首相は、主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)が閉幕した27日の記者会見で「世界経済が危機に陥る大きなリスクに直面している。G7はその認識を共有した」と強調。「アベノミクスのエンジンをもう一度、最大限ふかしていく決意だ。消費税率引き上げの是非も含めて検討する」と述べ、増税を延期する考えを示唆していた。28日夜の会談で、首相は伊勢志摩サミットの議論などをもとに、予定通りの増税を求める麻生氏らに増税延期の方針を伝えた。ただ、麻生氏は延期に反対し、仮に延期する場合は「衆院を解散すべきだ」と主張したという。このため、29日以降も調整を続けることにした。首相は今後、山口那津男公明党代表らとも会談し、増税延期に理解を求める。政府・与党内で合意が得られれば、参院選前に正式に表明する考えだ。首相は14年11月にも15年10月の消費増税を1年半延期しており、今回延期を正式に決めれば2回目となる。一方、首相は公共事業など新たな経済対策を盛り込んだ16年度第2次補正予算案を編成する方向で検討に入った。首相官邸の幹部は「消費増税を先送りし、大規模補正を打つという考え方もある」と主張。規模は与党内で5兆~10兆円との見方が出ており、参院選後の臨時国会に補正予算案を提出する方向だ。

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160527&ng=DGKKZO02843290X20C16A5EA2000 (日経新聞 2016.5.27) 首相「リーマン前に似る」 消費増税延期へ地ならし、危機認識、首脳に差も 伊勢志摩サミット 
 安倍晋三首相は26日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で、世界経済について「危機に陥るリスクがある」と訴えた。政策対応を誤ればリーマン・ショック級の経済危機が発生しかねないとして各国に財政出動を促したが、認識は必ずしも一致しなかった。首相の強い訴えには、2017年4月に予定する消費税増税を再延期する地ならしの思惑が透ける。「リーマン・ショック直前の洞爺湖サミットは危機を防ぐことができなかった。そのてつを踏みたくない」。首相は世界経済に関する討議で、日本が前回議長国を務めた08年の洞爺湖サミットに言及し「将来の危機」への対処を求めた。首相の「危機」へのこだわりには並々ならぬものがある。討議では商品価格や新興国経済に関する指標を並べた4ページの資料も配布。いずれのページにも「リーマン・ショック」という単語を盛り込み、「リーマン前と状況が似ている」と指摘した。前のめりの姿勢の背景にあるのは消費税だ。首相は14年に増税先送りを理由に衆院を解散した際、17年4月の増税を「再び延期することはない」と断言。その後はリーマン・ショックや大震災のような事態が起こらない限り、増税方針は変えないと説明してきた。政権が目指すデフレ脱却や景気の腰折れの可能性を考えると、予定通りの増税は政権運営へのマイナス面がある。だが「いまはリーマン・ショックのような事態とはとてもいえない」(首相周辺)状況。7月の参院選を控え、説得力のある材料をそろえなければ有権者から理解は得られない。首相はすでに増税延期の方針を固め、来週に表明する見通し。国会会期末の6月1日に記者会見を開く案が有力だ。政権内で浮上しているのが経済状況の悪化懸念と、熊本地震の2つの「合わせ技一本」という案。いまはリーマン・ショック級ではないが、将来の下振れリスクはある。G7でそう合意し、財政出動の必要性でもお墨付きを得れば「負の財政出動」ともいえる増税延期の理由になる。だが各国の反応は首相の期待とは微妙に異なる。日本政府関係者は「危機、クライシスとまで言うのはいかがなものか、という意見もあった」と語る。英国政府の説明によると「G7各国は、それぞれの必要性に応じて経済政策をとるべきだというドイツのメルケル首相の意見を支持した」という。首相が各国首脳に提示した討議資料にも、身内である自民党執行部内から「世界からどんな反応が出るか心配だ」との声が漏れた。討議終了後、記者団の質問に答えた首相は「世界経済は大きなリスクに直面しているとの認識については一致できた」と語った。それは「我々は大きな危機に……」と語り始めたのを言い直した表現だった。

*1-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160527&ng=DGKKASFS26H4M_W6A520C1MM8000 (日経新聞 2016.5.27) G7「世界経済に下振れリスク」で一致、サミットで首相「政策対応を」 消費増税延期にらむ
 26日に開幕した主要国首脳会議は初日の討議で、世界経済に下振れのリスクがあるとの懸念を共有した。安倍晋三首相は2008年のリーマン・ショック並みの危機が再発してもおかしくないほど世界経済が脆弱になっているとの認識を表明し、各国に財政出動を含む強力な政策の実施を促した。首相は26日の討議後、記者団に「世界経済が大きなリスクに直面しているとの認識で一致できた。これに基づく(金融・財政・構造政策の)3本の矢を主要7カ国(G7)で展開していくことになった」と語った。首相は26日の討議に「参考データ」を提出し、いまの世界経済がリーマン危機前に似ていると指摘した。「参考データ」によると、最近のエネルギーや食料など商品価格がリーマン危機前後と同じ55%下落。新興国の投資や経済成長はリーマン危機以来の落ち込みを示し、新興国からの資金流出が再び起きた。主要国の成長率見通しの下方修正が繰り返されるのも当時と同じだと主張する。日本政府関係者によると、会議ではある首脳から「『危機』とまで言うのはどうか」と表現ぶりに異論が出たものの「新興国が厳しい」という基本認識では全員一致した。首相は金融産業を抱える米英両首脳と25日に相次いで個別に会い、認識を擦り合わせていた。首相は「G7が金融・財政・構造政策を総動員し、世界経済をけん引する。特に機動的な財政戦略および構造改革を果断に進める重要性を訴えたい」と呼びかけた。インフラや環境・エネルギー、科学技術分野への投資を財政出動の具体例に挙げ「日本が先陣を切っていきたい」と強調した。日本政府関係者によると、複数の首脳が「中間層に対する投資が重要だ」との考えを示した。世界で格差問題が深刻になり、中間層の不満が拡大している。その結果として、各地でポピュリズムが横行しているという共通の危機感がある。日本は「財政出動の重要性で各国が一致した」とし、強固な政策をうたう共同宣言を調整している。金融・財政・構造政策を幅広く活用する政策総動員の議論は、金融市場が不安定だった2月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で浮上した。仙台市で21日閉幕したG7財務相会議でもテーマになったが、財政出動は各国がそれぞれ判断する位置づけにとどめていた。サミットの場で一歩踏み込んだ。安倍首相が「リーマン並み危機」の可能性に言及したことは、来年4月に予定する消費増税の先送りをにらんだものと受け止められている。首相は消費増税について「リーマン・ショックや大震災級の影響のある事態が起こらない限り予定通り行っていく。適時適切に判断していきたい」と対外説明してきたからだ。26日のサミットの討議で日本の消費増税は「話題にならなかった」(日本政府関係者)という。

*1-5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12382162.html
(朝日新聞社説 2016年5月29日) 首相と消費税 世界経済は危機前夜か
 主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)で議長を務めた安倍晋三首相はそのリスクを強調し、G7による「危機対応」を強く求めた。だがその認識は誤りと言うしかない。サミットでの経済議論を大きくゆがめてしまったのではないか。首相は、来年4月に予定される10%への消費増税の再延期を決断したいようだ。ただ単に表明するのでは野党から「アベノミクスの失敗」と攻撃される。そこで世界経済は危機前夜であり、海外要因でやむなく延期するのだという理由付けがしたかったのだろう。首相がサミットで首脳らに配った資料はその道具だった。たとえば最近の原油や穀物などの商品価格がリーマン危機時と同じ55%下落したことを強調するグラフがある。世界の需要が一気に消失したリーマン時と、米シェール革命など原油の劇的な供給増加が背景にある最近の動きは、構造が決定的に違う。足もとでは原油価格は上昇に転じている。リーマン危機の震源となった米国経済はいまは堅調で、米当局は金融引き締めを進めている。危機前夜と言うのはまったく説得力に欠ける。だから会議でメルケル独首相から「危機とまで言うのはいかがなものか」と反論があったのは当然だ。他の首脳からも危機を強調する意見はなかった。にもかかわらず、安倍首相はサミット後の会見で「リーマン・ショック以来の落ち込み」との説明を連発した。そして「世界経済が通常の景気循環を超えて危機に陥る大きなリスクに直面している」ことでG7が認識を共有したと述べた。これは、「世界経済の回復は継続しているが、成長は緩やかでばらつきがある」との基本認識を示した首脳宣言を逸脱している。首相は会見で消費増税について「是非も含めて検討」とし、近く再延期を表明することを示唆した。サミットをそれに利用したと受け止めざるを得ない。財政出動や消費増税先送りは一時的に景気を支える効果はある。ただ先進国が直面する「長期停滞」はそれだけで解決できる問題ではない。地道に経済の体力を蓄えることが必要で、むしろ低成長下でも社会保障を維持できる財政の安定が重要だ。消費増税の再延期は経済政策の方向を誤ることになりかねない。しかも、それにサミットを利用したことで、日本がG7内での信認を失うことを恐れる。

*1-6:http://qbiz.jp/article/87673/1/
(西日本新聞 2016年5月28日) 首相が語らない、消費増税再延期を決断する本当の理由
 安倍晋三首相が消費税増税再延期の方針を固めた背景には、自身の政策アベノミクスが思うような成果を上げていない現状がある。首相は先送りの理由として、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で合意した経済危機回避のため、率先して政策を総動員する必要性を強調するとみられる。だが実際は、政策効果が不十分で消費や設備投資は伸び悩み、構造改革も道半ばのままで、増税できる環境が整わなかったことが最大の要因だ。「アベノミクスのエンジンをもう一度、力強く吹かしていかなければならない」。首相は27日、議長を務めたサミットを締めくくる記者会見で強調、「政策総動員」の一環として、消費税率引き上げ見送りの検討を明言した。増税再延期はアベノミクスの破綻を意味するのではないかとの質問には「決してそんなことはない」と強く否定。雇用状況の改善などの成果を示した上で、先送りはあく、世界経済の危機回避を目指すサミットでの合意に基づく判断との考えを示した。しかし、元財務官の篠原尚之氏(東京大政策ビジョン研究センター教授)が「日本経済に悪影響があるからなのに、世界経済にリスクがあるようにすり替えている」と指摘するように、増税先送りは、足踏みが続く日本経済の危機回避策に他ならない。日本の成長率は現在、先進7カ国(G7)の中で最低。国際通貨基金(IMF)の予測では、消費税率を引き上げると2017年にはマイナス成長に陥るとみられている。景気低迷の一因には社会保障制度の将来不安に伴う消費不振がある。増税を先送りし社会保障の充実が遅れれば、国民の不安はますます強まり、さらなる消費抑制につながりかねない。政府は一方で経済成長と財政健全化の両立を目指すが、20年度黒字化目標を掲げる国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)は、現時点でも6兆5千億円の赤字見通し。増税を先送りすれば、目標達成は絶望的になる。サミットの首脳宣言でうたわれた構造改革の重要性に関しても、日本は欧米諸国から「改革が足りない」と批判されているにもかかわらず、取り組みは進んでいない。首相は会見で、アベノミクスを「世界に展開する」とも語ったが、まず行うべきことは、これまでの政策点検と見直しだ。

*1-7:http://qbiz.jp/article/87713/1/
(西日本新聞 2016年5月29日) 首相、2次補正を検討 サミット受け、参院選後に家計支援策
 安倍晋三首相は、世界経済の危機回避のため機動的な財政戦略の実施で合意した先進7カ国(G7)による主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の議論を踏まえ、新たな経済対策を盛り込んだ2016年度第2次補正予算案の編成に向け検討に入った。自民党の茂木敏充選対委員長が28日、宮崎市の党会合で「参院選後に新たな経済対策に取り組む。補正予算を臨時国会に提出することになる」と見通しを示した。補正予算案の規模は5兆〜10兆円程度との見方が多い。近く閣議決定する「1億総活躍プラン」から先行実施する政策を選ぶ。個人消費の低迷を踏まえ、購入額以上の買い物ができるプレミアム商品券の発行といった家計支援策も柱となる。当初予算の執行前倒しに取り組んでいる公共事業の上積みも検討する。熊本地震の復旧費用は今月成立した1次補正予算で賄えると見ているが、一段の支援が必要になれば対策費を盛り込む。民進党の岡田克也代表は金沢市内で記者団に「アベノミクスは失敗しているから財政出動をせざるを得ない。それが正直な気持ちだろう。従来の古い自民党に戻っただけだ」と指摘した。共産党の小池晃書記局長は「選挙目当ての質の悪いばらまきで、あきれる」と反発を強めた。

*1-8:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/315467 (佐賀新聞 2016年5月25日) デフレ脱却へ「ヘリコプターマネー」、「現金ばらまき」 究極の緩和議論盛ん
 既存の金融緩和策への限界論が高まる中、空から現金をばらまくという意味の「ヘリコプターマネー」に関する議論が世界的に盛り上がっている。国民にお金を直接配る「究極の金融緩和」によって消費を刺激し、デフレ脱却を狙うものだ。財源は政府と中央銀行が協力して生み出すため、国の財政への信認が揺らげば国債価格が暴落するなどのリスクも。実現へのハードルは高いが、将来導入される可能性はゼロではない。ヘリコプターマネーは、バーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長がかつて、たとえ話として示して有名になった考え方だ。実際には、お金をばらまくのではなく、政府が償還期限のない永久国債を発行して日銀が購入しお金を供給。その資金を財源に減税や公共投資といった財政拡張に取り組む手法などが専門家の間では取りざたされている。SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは「物価を押し上げる効果は大きい」と指摘する。ヘリコプターマネーに関し、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は記者会見で「とても興味深い考えだ」と発言。一方、日銀の黒田東彦総裁は4月28日の会見で金融政策と政府の財政政策を一体とすることは「現行の法制度の下ではできない」と慎重な見方を示した。デフレ脱却という目的のために厳格に運用されなければ、国の財政赤字を中央銀行が穴埋めしているとみなされ、国債や通貨の信認が損なわれる危険も大きい。ただ日銀は2%の物価上昇目標を実現するためなら何でもやると言っており、市場では「主要中央銀行の中では日銀が導入する可能性が最も高い」(外資系証券)との見方もある。

<伊勢志摩サミット開催前>
*2-1:http://mainichi.jp/articles/20160525/ddm/001/010/179000c
(毎日新聞 2016年5月25日) 伊勢志摩サミット、あす開幕 G7、世界経済安定へ決意
 主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)は26日、三重県志摩市の志摩観光ホテルを主会場に2日間の日程で開幕する。世界経済の安定に向けた主要7カ国(G7)の決意を示す「世界経済イニシアチブ」を首脳宣言に盛り込み、財政出動と構造改革の推進を打ち出す。また、テロ対策や租税回避地(タックスヘイブン)を使った課税逃れ対策など重点6分野で付属文書をまとめる予定で、世界が直面する課題の解決に向けたG7のリーダーシップが問われる。世界経済では、中国など新興国の成長鈍化や原油安で強まる停滞感を克服するため、実効性のある対策を打ち出せるかどうかが課題だ。イニシアチブはG7各国の事情に配慮しつつ、財政出動▽構造改革▽金融政策−−を総動員して成長を底上げする姿勢を確認する見通しだ。ただ、財政出動には参加国で温度差があり、どこまで強いメッセージを出すかは首脳間の議論にゆだねられた。日本政府は「世界経済が抱えるリスクに対し、財政出動など喫緊の対応が必要との認識で一致したい」(安倍晋三首相周辺)としており、サミットで認識共有を図る考えだ。首相は財政と構造改革、金融政策を「アベノミクス」と共通する「G7版三本の矢」と位置づけている。サミットでこうした戦略をG7が共有することで政策の正当性を裏付け、夏の参院選に向けた政権浮揚につなげる思惑もある。このほかサミットではテロ対策の行動計画▽「パナマ文書」で焦点が当たる課税逃れなど腐敗防止対策▽サイバー対策▽質の高いインフラ投資▽感染症対策などの国際保健▽女性の活躍推進−−の6分野で付属文書をまとめる。8年ぶりのアジア開催にあわせ、中国の岩礁埋め立てや軍事拠点化で緊迫する南シナ海問題に関し、「一方的な現状変更への強い反対」を盛り込む。また、北朝鮮の核・ミサイル問題を巡っても、核拡散防止条約(NPT)体制を堅持し、容認しない姿勢を明記する。サミットは1975年にフランスで第1回会合が開かれ、今回で42回目。国内開催は79年の東京サミット以降6回目となる。協議には日本、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの7カ国の首脳に、欧州連合(EU)の欧州理事会常任議長(大統領)らを加えた9人が参加する。

*2-2:http://qbiz.jp/article/87246/1/
(西日本新聞 2016年5月22日) G7の景気認識にずれ 財務相会議閉幕 欧州は財政出動「不要」
 仙台市で開かれた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、世界経済を下支えするため、あらゆる政策手段を総合的に用いることを確認したが、焦点だった各国一斉の財政出動に関しては合意に至らなかった。為替政策を巡っても日米間の溝は埋まらず、景気の着実な回復に向けた政策協調を目指す主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)での議論に課題を残した格好だ。「揺るぎない連帯、相互理解、協調の精神をあらためて確認した。(サミットでは)さらに積極的な話ができると思う」。麻生太郎財務相は21日、閉幕後の記者会見で、サミット本番への期待を示した。だが景気に対する各国の認識や危機感は異なり、低成長打開へ向け、具体的な政策を打ち出すのは困難な状況だ。日本では中国経済減速などの影響で円高が進行、日経平均株価は一時、1万5000円の大台を割るなど株価は低迷が続く。企業業績も先行き不透明感が強まり、市場からは「アベノミクスは行き詰まりつつある」と懸念の声も上がっている。一方、ユーロ圏は2013年4〜6月期以降丸3年にわたり、プラス成長が続く。大和総研の山崎加津子氏は「ドイツ政府には、緊急的な経済対策が必要との認識はない」と分析。フランスのサパン財務相も21日の記者会見で「フランスは成長が戻っており(財政出動は)必要ない」と、財政政策に対する、日本との立場の違いを強調した。
   ▼    ▼
 年明け以降の急速な円高は落ち着きつつあるとはいえ、金融市場は不安定なまま。日本は為替相場について「投機的な動きがある」と懸念を示したが、ルー米財務長官は「(円ドル相場は)秩序的」と反論するなど、為替を巡る日米間の溝は埋まらなかった。米国が強硬姿勢を崩さないのは、11月に大統領選挙を控えているためだ。米国は円安により日本の景気が回復、世界経済を支えると期待していたが、ドル高が続いたことで米国の輸出企業業績は低迷。選挙戦を有利に進めるには景気の下支えが不可欠で、環太平洋連携協定(TPP)に対する議会の反発を抑えるためにも「米政府は円安誘導をけん制する必要がある」(エコノミスト)という。ルー米財務長官と会談した麻生氏は「(日米ともに)選挙があり、TPPを抱えている。互いに意見を交換し、感情的な話からもつれることのないよう配慮しないといけない」と表明した。ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は「G7の結束をアピールするため(為替政策について)強く出ることは避けたのだろう」と分析。今後については「再び円高が進んでも、日本が円売り介入をするのは難しいのではないか」と話した。サミット議長を務める安倍晋三首相は、世界経済の持続的成長へ向け「明確で力強いメッセージを出したい」と意気込む。ただ財務相会議で浮き彫りになったように各国の思惑が絡み合う中、合意取りまとめへのハードルは高い。

*2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160516&ng=DGKKASGM15H3Q_V10C16A5MM8000 (日経新聞 2016.5.16) 独財務相「財政出動の要請ない」 G7で慎重姿勢表明か
 ドイツのショイブレ財務相は15日、日本経済新聞の書面インタビューに答え、日本政府による追加財政出動の具体的な要請は「ない」と明言した。主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)は財政政策の協調を探るが、ショイブレ氏は慎重な姿勢も示した。26~27日のサミットに先立ち、G7は20~21日に仙台で財務相・中央銀行総裁会議を開く。この会議で財政や景気について合意し、首脳がサミットで確認する段取りを描く。ショイブレ氏は仙台の会議に出席する。ショイブレ氏は「目先の効果にこだわり、借金を積み上げるだけになってしまう事態は避けたいと(G7の)みんなが思っている」との認識も示し、仮に要請があっても追加の財政出動は難しいとの考えをにじませた。G7会議でこうした見解を表明するもようだ。日本政府は、安倍晋三首相が5月のメルケル独首相との会談で「機動的な財政出動が求められており、G7で一段と強いメッセージを発出したい」と語り、政策協調に理解を求めたとしていた。為替政策では米国と日本の温度差も目立つ。

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/314200
(佐賀新聞 2016年5月21日) G7、財政出動は各国判断、経済下支えへ政策総動員
 仙台市で開かれた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は21日、減速する世界経済を下支えするため、各国が必要に応じ財政出動することを確認し閉幕した。国ごとの事情を踏まえ金融政策、構造改革を組み合わせて政策を総動員する。課税逃れやテロ資金対策をG7が主導することで一致。為替を巡っては円高を警戒する日本の為替介入を米国がけん制した。焦点の財政出動は構造改革を重視するドイツなどの慎重論を踏まえ各国判断とし、日本が目指した一斉出動は見送られた。

*2-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/314144
(佐賀新聞 2016年5月21日) G7、税逃れとテロの温床解明、財務相会議閉幕
 仙台市で開かれた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は21日、国際的な課税逃れやテロ資金の拡散を阻止するため、不正の温床となりがちなタックスヘイブン(租税回避地)を使った資金取引の解明に連携して取り組むことを確認し、閉幕した。麻生太郎財務相とルー米財務長官は討議に先立ち2国間で会談し、為替政策を巡り協議した。ルー氏は通貨の切り下げ競争を回避することが重要との認識を強調した。20日の討議で金融・財政政策と構造改革を各国の事情に応じて総動員することで一致したことと併せ、26、27両日開かれる主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に成果として引き継ぐ。

<男性社会の欠陥>
PS(2016年5月31日、6月5日《図表》追加):麻生氏のように生活費の上限など考える必要もなく、自分が保育や介護の担当をすることも想像したことがなく、セメントの売れる方が有難いと思う人が財務大臣になった時点で、我が国の財政への取り組みがどうなるかは推測できた。しかし、男性も家計や家事に主体的に参加し、消費者とは自分や家族のことであることを体感し、消費者の行動はどういうものかという感覚を身につけなければ適切な政策を考えることはできないため、世のお母さん方は男の子にもそのような素養を身につけさせる教育をすべきだ。何故なら、現在の男性中心社会は、そういうことを理解した上で働いている人が少なく、いてもマイノリティーで発言権が小さいのが欠陥だからである。

     
  2014.9.17   2015.4.2    延長時の   社会保障負担増        九州の   
  朝日新聞     西日本新聞  年金支給額                  介護保険料負担増
  年金制度   年金支給額減額

*3:http://qbiz.jp/article/87837/1/
(西日本新聞 2016年5月31日) 麻生氏 増税再延期を容認も、『首相との違い』にじませる
 麻生太郎財務相は31日の閣議後の記者会見で、安倍晋三首相が消費税増税の再延期方針を固めたことに関し「首相の最終的な判断に従う」と容認姿勢を表明した。2020年度に基礎的財政収支を黒字化する健全化目標の達成に向け「最大限努力していく姿勢は変わらない」と強調した。麻生氏は予定通りの増税を求めていた。再延期なら夏の参院選に合わせた衆参同日選をしないと「筋が通らない」とも発言していたが「解散は首相の専権事項だ」と、首相の意向を尊重する考えを示した。30日夜の首相との会談内容に対する言及は避けた。一方、増税分を財源に見込んでいた社会保障の充実策については「給付と負担のバランスを考えていくのは当然だ。そういったものは増収額に応じて措置すべきだ」とし、先行実施は困難との姿勢を示唆した。麻生氏は原油安などで「新興国経済が深刻な事態になっている」と指摘しながらも、増税再延期の背景として「一番の問題は(国内の)個人消費が伸びていない点。世界経済は従の原因だ」と述べ、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で世界経済の「危機回避」を強調した首相の見解との違いをにじませた。

<高齢者の貧困と社会保障>
PS(2016年6月1日追加):「高齢者は金持ちである」という事実に基づかない情報を基に、社会保障改革と言えば高齢者からぶんどり、高齢者への社会保障を削減することを続けてきた結果、*4のように、生活保護受給世帯の50.8%が65歳以上の高齢者となった。このように、事実を調査することなく、事実に基づいた深い考察もせずに、厚労省の怠慢を隠すべく若者と高齢者を対立軸として観念的に行われてきた高齢者いじめは、底が浅く、それこそ人格を批判されるべきことである。しかし、完全失業率が低下傾向にあるため、65歳以上の高齢者も働きやすくして支える側にまわってもらえば、年金支給開始年齢を上げ、医療・介護費を減らすことは可能だろう。

    
 2016.6.1、2016.2.16西日本新聞      賃金の推移        失業率の推移

*4:http://qbiz.jp/article/87933/1/
(西日本新聞 2016年6月1日) 生活保護50%超高齢者 82万世帯 過去最多
●9割単身、貧困深刻
 生活保護を受給する世帯のうち、65歳以上の高齢者を中心とする世帯が3月時点で過去最多の82万6656世帯となり、初めて受給世帯の半数を超え50・8%となったことが1日、厚生労働省の調査で分かった。うち単身世帯が9割に上った。厚労省の国民生活基礎調査では、高齢者世帯は約1221万世帯(2014年6月時点)で、受給世帯は約6%に当たる。高齢化が進行する中、低年金や無年金で老後を迎え、身寄りもなく生活保護に頼る高齢者の貧困の深刻化が鮮明になった。厚労省の担当者は「高齢者が就労できず、就労しても十分な収入を得られていない」と分析。景気回復による雇用改善で現役世代の受給が減る一方、高齢者の伸びが全体の受給者数を押し上げており、この傾向は今後も続くとみている。厚労省によると、全体の受給世帯数は前月より2447世帯増加して163万5393世帯で、過去最多を3カ月ぶりに更新。受給者数は216万4154人で2847人増え、人口100人当たりの受給者数である保護率は1・71%だった。

<税外収入の可能性>
PS(2016年6月3日追加):消費税増税を延期(本当は永久凍結か国税としての消費税は廃止したいが)すると、*5-1のように、「①増税先送り、次の世代より次の選挙」「②ポピュリズムに陥らず増税も唱えてきた税のプロの姿はそこにはない」「③増税から逃げたら社会保障を含め予算を切るしかない」などと批判するメディアが多い。しかし、①は単純な算術しかできていない上、目先しか見えない愚鈍な発想であり、②は“ポピュリズム”“プロ”の定義を(わざと?)取り違えている。また、日本だけ「社会保障の財源は消費税」としているのは、③の論法で消費税増税を国民に受け入れさせるための悪知恵だ。
 しかし、国民に負担をかけずに国富を増やして社会保障財源を捻出するのが本当の知恵であり、日本の排他的経済水域からは、下のようにメタンハイドレート、レアメタル、*5-2の金鉱石なども発見されている。そして、海底は国有財産であるため、国は公会計制度を導入して正確な財務管理を行うと同時に、これらの鉱業を早急に事業化して税外収入を得るべきであり、20年以上も「消費増税を先送りすれば次の世代の負担が大きくなる」などという馬鹿の一つ覚えの虚偽記事をメディアが書いていることこそ、次世代に悪影響を与えているのだ。

    
    日本の    メタンハイドレート  鹿児島湾の海底で     青ケ島沖で金鉱石発見
 排他的経済水域    の分布       レアメタル発見          *5-2より               

*5-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160603&ng=DGKKZO03157310T00C16A6EA1000 (日経新聞 2016.6.3) 決断増税先送り(2)次の世代より次の選挙
 増税先送りを首相の安倍晋三(61)が表明した1日夜。首相公邸に幹事長の谷垣禎一(71)ら自民党役員が顔をそろえた。「批判も含め、参院選で審判を受けたい」。安倍がカリフォルニアワインを振る舞いながら上機嫌であいさつすると、出席者の一人は「こういう説明もあるのかな」とつぶやいた。谷垣らが増税延期を正式に聞いたのはこの数日前。党幹部は「すでに決定事項で議論の余地はなかった」と話す。しかし安倍が早くから増税延期に含みを持たせる中、党側に議論する時間がなかったわけではない。
   □   □
 2月、安倍から消費増税の先送りを考えていると打ち明けられた首相補佐官の衛藤晟一(68)は、同じ安倍側近の政調会長の稲田朋美(57)に「安倍さんの思いは増税延期ですよ」と伝えた。稲田が主宰する党財政再建特命委員会。2月の会合で園田博之(74)は「増税から逃げたら社会保障を含め予算を切るしかない。この場で増税の是非を議論すべきだ」と稲田に迫った。だが同調する声は出ず、特命委が増税延期を議論することは最後までなかった。自民党税制調査会も5月31日、幹部会合を開いたが増税延期は議論しないまま終わった。幹部の一人は「官邸が決めた以上、何もできない」。ポピュリズムに陥らず増税も唱えてきた税のプロの姿はそこにはない。同じ31日の政調全体会議も、政策決定のあり方には異論が出たものの、増税延期自体には目立った反対はなかった。理由は単純だ。参院選を控え、増税を訴える選挙は勝てないと肌で感じているからだ。政党交付金と選挙の公認を握る安倍には刃向かえない。だが不満はくすぶる。「増税を先送りするような安倍政権だ。我々がもっと頑張らなければいけない」。6月1日夜、都内で開いた額賀派会合。消費税を導入した元首相、竹下登を兄に持つ前復興相の竹下亘(69)はこう訴えた。同じ頃、近くで開いていた岸田派会合では、名誉会長の古賀誠(75)が「首相は芯がない。何をしたいのかわからない」と日本酒を口にしながらぶちまけた。ポスト安倍候補の外相、岸田文雄(58)は受け流したが、出席者から「安倍政権の終わりの始まりだ」「官僚は官邸しか見ていない」と不満が漏れた。こうした声が公の会議で出ず、遠ぼえにしか聞こえないのが今の自民党だ。自民党会派を離脱した前参院幹事長の脇雅史(71)は「権力に弱く、言論空間としての国会が死んでいる」と話す。
   □   □
 2月17日の自公党首会談。安倍が「増税はもちろんやります。ただ経済情勢も注視しますが……」と話すと、公明党代表の山口那津男(63)は「経済は生き物ですからね」と応じた。安倍は「山口さんも経済次第で延期はやむを得ないと考えている」と受け取った。山口は谷垣とともに2012年、社会保障と税の一体改革で消費増税を決めた民主、自民、公明3党合意の当事者。だが前回14年の増税先送りに続き、今回も延期を認めざるを得なかった。痛みを分かち合う時代の政治の知恵とされた3党合意はかすむ。3党合意のもう一人の当事者が民進党の前首相、野田佳彦(59)だ。野田は2日、参院副議長の輿石東(80)に電話で安倍批判を展開した。「19年まで延期なんて誰も信じません。世界経済のリスクなどと言ったら絶対にできない」。その野田も苦しい立場にある。「安倍さんは必ず延期すると言いますよ。その前にこちらが表明しないと機会を逸します」。民進党の発足間もない4月上旬、代表代行の江田憲司(60)は代表の岡田克也(62)に促した。先手を打って延期を表明すれば、安倍が増税する場合、争点にできる。安倍が延期を表明すれば「アベノミクスの失敗」と訴えられる。こう踏んだ岡田は5月18日の党首討論に照準を定めた。党首討論の前週、野田は岡田から「2年延期を打ち出したい」と相談を受けた。岡田は野田の下で一体改革に取り組んだ間柄だ。野田は不満を抱きつつ「代表の足を引っ張ることはしない」と岡田を立てた。野田も安倍と同様、衆院解散時の消費税発言を問われる立場にある。解散した12年の記者会見で「民主党は次の選挙より次の世代を考えた候補者がそろう」と話したからだ。自民党の重鎮の一人は嘆く。「今の政治は与党も野党も、次の世代より次の選挙しか考えていない」

*5-2:http://qbiz.jp/article/88036/1/ (西日本新聞 2016年6月2日) 高濃度の金 海底に 東大発見 鉱石1トン中最大275グラム 伊豆諸島・青ヶ島沖
 伊豆諸島・青ケ島(東京都)沖の海底熱水鉱床で高濃度の金を含む鉱石を発見したと、東京大のチームが2日、発表した。最高で1トン当たり275グラムの高濃度の金を含むものもあり、陸地や他の海域の金鉱石と比較しても高い値だったという。東大の浅田昭教授は「金の採掘を事業化するには同様の鉱床を多く見つける必要がある。この海域の調査を進め、今回のような場所をさらに見つけたい」としている。チームは、海中ロボットから音波を出すことで、海底の地形を高い精度で調べられる装置を開発。昨年6〜9月、青ケ島の東方約12キロにある東青ケ島カルデラを調査し、海底から噴出する熱水に含まれる金属成分が沈殿した海底熱水鉱床を複数発見した。そのうち、カルデラ南部の水深750メートルの小さな丘のような場所で採取した鉱石を分析すると、金や銀を多く含んでいた。分析した15個の鉱石のうち、金の最高の濃度は1トン当たり275グラムで、平均値は同102グラムだった。また0・003〜0・09ミリの大きさの金粒子も確認できた。世界の主要金鉱山の金含有量は1トン当たり3〜5グラムとされ、今回見つかった鉱床の金の割合は高い。飯笹幸吉・東大特任教授は「資源としては期待の持てるエリア」と話した。
■海底熱水鉱床…地中から熱水が噴き出す海底の周りで、熱水に含まれる金属成分が沈殿してできた鉱床。煙突のような噴出口や、小高い丘などの地形が特徴で、含有される金属には銅や鉛、亜鉛などのほか、貴金属の金や銀がある。貴重な資源とされるガリウムやゲルマニウムなどのレアメタルも多く含むものもある。日本近海では伊豆や小笠原の周辺や沖縄海域などでの存在が知られ、政府は商業化に向けた探査や技術開発を推進している。鉱床にすむ生物が特殊な生態系を構成していることでも注目されている。

<本当の責任者>
PS(2016年6月4日追加):安倍首相がTPPテキスト分析チームを表明すると、多くのメディアが「社会保障財源が云々」と騒いでいるが、社会保障財源はもともと社会保険料を徴収して賄っているものであるため、まず徴収漏れや積立金の運用方法を批判すべきである。そして、消費税を増税したからといって、それ以上の景気対策を行えば、社会保障が充実するとも財政状態が改善するとも言えないため、消費税増税延期について自民党と野党連合を舌戦させても意味がなく、「敵は厚労省・財務省にあり」なのだ。
 なお、安倍首相が電力自由化を進められたことは誰にでもはできない大きな実績であり、消費税増税問題で票が減ったからといって責任をとる必要はない。何故なら、誰がやっても、消費税増税も増税延期も票が減る論調にされるからだ。しかし、自民党の憲法改正草案はひどすぎるため、これをおかしく思わない集団が憲法改正国会発議に必要な3分の2以上を占める事態は阻止すべきである。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/319269
(佐賀新聞 2016年6月4日) 参院選へ舌戦、初の週末、アベノミクス推進、3分の2阻止
 7月の参院選が事実上スタートして初の週末を迎えた4日、各党幹部らが各地で舌戦を繰り広げた。安倍晋三首相(自民党総裁)は経済政策アベノミクス推進へ意欲を表明。目標とした与党による改選過半数(61議席)獲得に届かなかった場合に退陣する可能性について明言を避けた。一方、民進党の岡田克也代表は、自民党など改憲勢力が憲法改正の国会発議に必要な定数の3分の2以上を占める事態を阻止する決意を示した。

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 04:01 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.5.17 九州大地震の支援と今後の方針について (2016.5.18、19、20、21追加あり)
    
  仮設住宅建設費用     仮設住宅間取り  東日本大震災仮設住宅 九州大震災仮設住宅

     
     九州の断層帯と原発                    益城町(役場を含む)の損壊

    
 復興予算        新しい街づくりへ           現在の熊本市    現在のピョンヤン
2016.5.18朝日新聞

(1)復旧・復興へ総額7,780億円の補正予算
 *1-1、*1-2のように、復旧・復興のため総額7,780億円の補正予算が可決し、地元負担が(費用全体の)0.5%から1%になるそうでよかった。

 しかし、熊本市は、地方分権のための道州制が行われる場合には、九州の州都となる第一候補であるため、復旧・復興のための総額7,780億円の補正予算も、単なる無駄遣いではなく、都市計画のある現代の街づくりを始めることに使ってもらいたい。

 単なる無駄遣いとは、①地震直後に送った支援物資が滞留して使用されなかったことや②短期間で壊すことが明白な仮設住宅の建設に使う災害救助費573億円などだ。上図のように、東日本大震災では仮設住宅に一個当たり500~700万円を支出しているが、その作りは粗末で金額に見合わず、家がないよりはよいという程度で住んでいる人も惨めだった。そして、今回の木造のものでも粗末で金額に見合わず、木材がもったいない。しかし、東日本大震災の場合は津波で広範囲の建物が流され、今後の津波に備えて高台移転やかさ上げを行う必要があったため、仮設住宅の建設もまだ合理的だったのだ。

 一方、九州大地震の場合は、津波はなく断層に近い場所で建物が倒壊しただけであるため、どこを住宅地・公園・農業地帯にするかについての都市計画をたて直し、リスクが高くて住宅地に向かない場所に住んでいる人は、他の安全な場所に引っ越さなければならない。そのためには、罹災した人を中心に考えれば、現在住んでいる土地・家屋を固定資産税評価額で国か県か市町村に引き取ってもらい、家を新築する費用900万円(=見舞金300万円+仮設住宅建設費600万円)を補助してもらって、低金利・利息補助・太陽光発電などを利用して次のステップに進んだ方がよいだろう。そのため、見舞金300万円だけもらって仮設住宅に入るか、900万円もらって終わるかを、本人が選択できるようにすればよい。そして、材木は新しい住宅・学校・福祉施設などの建設に、デザインよく使えばよいと考える。

 そこで、「安全に住めない」と認められる一帯の人には、*1-3の罹災証明書を速やかに発行して立ち退かせるべきであり、市町村職員である素人が住宅被害を調査して危険な家を「半壊」などとケチケチした判定をすべきではない。なお、この罹災証明書の発行は、益城町、西原村、南阿蘇村などで大変遅れていたそうだが、必要なことをするにも財政基盤や人的基盤が小さすぎるのを解決するには、*2のように、合併して市町村再編をすべきだ。

(2)民の支援
 *1-4のように、今回は震災に慣れていて手際がよかったにもかかわらず、熊本県内の拠点が物資で埋まり、自治体職員の仕分けが追いつかない状態だったのは、原発事故で近づけなかったわけではないため、初めから輸送の専門家である日通、ヤマト運輸、佐川急便などの運送会社を使って仕分けし、輸送すればよかったと思われる。また、食品も、普段から弁当作りに慣れている業者を使って調達し、道路が開通するまでヘリコプターで運べば問題はなかった筈だ。

(3)仮設住宅について
 *3に、仮設用地の確保が進まないと書かれているが、(1)で書いたように、最終の住居を建設した方が無駄遣いが少ないため、近くの街まで含めて観光客が減ったホテルの空室、空き家、民間賃貸住宅などを手当てし、必要な新しい住宅団地や福祉施設を早急に建設した方がよいと考える。30分~1時間くらいの通勤は、関東では近い方に入る。そして、こうした方が、人口減時代のコンパクトシティー化と熊本県の将来の両方に資すると思う。

(4)農業の再編と規模拡大
 危険であるため住宅地に向かないと判断された土地でも、自然公園、牧場、*4-1のような規模拡大した農業には利用できる。そのため、農水大臣・環境大臣・国交大臣・観光庁長官は、早急に具体的かつ積極的な支援を県や市町村と協力しながら進めてもらいたい。

 また、大規模化して新しい作物を作る場合には、*4-2のように、イオンやイトーヨーカドーなどの小売店と連携して輸出も視野に生産することが可能であり、そうすると、こういう会社から農業生産法人への出資や人材供給も期待できる。

(5)学校の再編
 壊れた学校も多かったが、地方自治体の合併と合わせ、*5の小中一貫校や中高一貫校への移行を行えば、耐震性の高い校舎を新築するにあたり費用が少なく、税金と空き地を有効に使うことができる。

(6)川内原発は断層の上にある
 鹿児島県知事は、*6-1のように、無責任にも「川内原発周辺で熊本地震のような地震は起きない」と述べているが、川内川は断層(地殻の割れ目)そのものであり、それは川の形からわかる。

 そのため、南日本新聞も、*6-2のように、「原発も鹿児島県知事選の重要な争点では」と書いているが、地震で運転中の高圧配管に損傷が生じて圧力が一気に下がった場合には、水の沸点が一気に下がり、圧力容器内でも水が爆発的に蒸発して衝撃波様の衝撃を発し、更に他の機能や構造も損ねる危険性があるため、私も川内原発稼働の再検討に賛成だ。

*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160516&ng=DGKKASFS16H0J_W6A510C1MM0000 (日経新聞 2016.5.16) 熊本復旧、首相「必要な財政支援」 補正、今夕に衆院通過
 衆院予算委員会は16日午前、安倍晋三首相らが出席して熊本地震の復旧・復興費用を盛り込んだ2016年度補正予算案の基本的質疑を実施した。首相は「必要な財政支援をしっかり行う。各自治体は安心して復旧事業に取り組んでもらいたい」と表明。補正予算案は16日夕に予算委で全会一致で可決、続いて衆院本会議でも可決し、17日の参院本会議で成立する見通しだ。首相は補正予算案について「被災地に必要な支援をするうえで、十二分の備えを整えるものだ。できることは全てやる決意で取り組む」と強調。麻生太郎財務相は被災自治体に起債を認め、起債額のうち95%は地方交付税で補填すると説明し「地元負担は(費用全体の)0.5%から1%になる」と語った。首相は欧州訪問時の首脳会談に関して「世界経済の認識は一致している。ただ処方箋については議論があった」と指摘。26日からの主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で「どういうメッセージを出していくか話し合うのが大切だ」と語った。衆参同日選に関しては「今まで一度も申し上げたことはない。衆院解散の『か』の字も考えていない」と述べた。

*1-2:http://mainichi.jp/articles/20160516/k00/00e/010/151000c
(毎日新聞 2016年5月16日) 総額7780億円の補正予算、午後に衆院通過へ
 衆院予算委員会は16日午前、安倍晋三首相らが出席して熊本地震の被害に対応する総額7780億円の2016年度補正予算案に関する基本的質疑を行った。地震直後に被災地への食料や水などの供給が滞ったことについて、首相は「送ったものが(熊本県庁などに)滞留していたのも事実。どういう課題があったかしっかり精査したい」と答弁した。民進党の岡田克也代表が「より良い制度を考えるべきだ」と指摘したのに答えた。補正審議では野党も早期成立に協力する方針。同日夕に可決され、その後の衆院本会議も通過し、17日に参院での審議を経て同日中に成立する見通しだ。安倍首相は補正について「余震が続き被害状況が拡大する可能性にも配慮しつつ、必要な支援を行ううえで十二分の備えを整えるものだ」と意義を強調。そのうえで「国庫補助の拡充強化や地方負担に対する財政措置の充実も含め、どのような対応が必要になるか検討し、必要な財政支援を行う」と述べ、財政基盤の弱い被災自治体を今後も手厚く支援する考えを示した。自民党の坂本哲志氏への答弁。補正予算案は、事前に具体的な使い道を定めず必要に応じて道路や橋のインフラ復旧などに充てることができる「熊本地震復旧等予備費」に7000億円を計上。仮設住宅建設などに使う災害救助費573億円なども盛り込んだ。

*1-3:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG13HBV_U6A510C1MM8000/
(日経新聞 2016/5/14) 熊本地震、罹災証明発行に遅れ 申請の3割どまり
 熊本地震の被災地で、住宅など建物の被害を証明する「罹災(りさい)証明書」の申請が熊本県内で計9万7741件に上る一方、発行は2万8266件(28.9%)にとどまっていることが14日分かった。証明書は被災者が国などから支援を受ける際に必要となる。国は5月中の発行を求めているが、発行する市町村の人手不足で6月にずれ込む可能性がある。14日で地震発生から1カ月。証明書の発行の遅れは被災者の生活再建の足かせとなっている。罹災証明書は被災者からの申請を受けて市町村が住宅被害を調査し、「全壊」や「半壊」などと判定した上で発行する。熊本県によると、12日までに被災者から県内の30市町村に発行の申請があった。熊本市が5万7244件で最も多く、震度7を2度観測した益城町が9837件。西原村は1793件、南阿蘇村は1548件だった。発行できたのは熊本市が1万8785件(32.8%)などで、益城町、西原村、南阿蘇村など9市町村は発行できていない。益城町は申請の9割の調査を終えたが「電話回線など町役場の設備が整っていない」という。県の災害対策本部は「他県から派遣された応援職員を市町村に割り振って対応しているが、5月中に終了できるか分からない」としている。

*1-4:http://qbiz.jp/article/86900/1/
(西日本新聞 2016年5月17日) 【連続震度7の衝撃・5】「民」の支援、課題あり
 本震発生直後の4月16日午前4時すぎ。九州電力の担当者が電話したとき、相手の四国電力は人員や機材、輸送フェリーなどの手配を、もう済ませていた。
   ◆    ◆
 14日の前震による最大1万6千戸の停電復旧は、自前で15日深夜に完了。数時間後の本震は復旧したばかりの送電網を切り裂き、停電は最大47万戸を超えた。九電は“ミニ発電所”と言える電源車59台を持つが、とても足りない。次々と各社に応援要請を出した。東日本大震災時、東西で周波数が違うため実現しなかったオールジャパン態勢だが、各社はその後、異なる周波数の電源車を配備。「初めて大手10社が集結したミッション」(九電幹部)が実現した。だが、現場は当初混乱した。電源車が向かう避難所の場所が分からない。電源車用燃料を運んだが既に足りていた。優先配備すべき場所をどう判断するか−。それでも20日夜に復旧が完了。九電電力輸送本部計画部の豊馬誠部長(57)は「最大限のスピードだったと思う」と語る。国の電力需給検証小委員会は、22日にまとめた報告書案で「熊本地震の教訓」の項目を急きょ加えた。「電源車の応援は被災地の電力会社の要請を待つことなく関係事業者が先手先手を打って対応すべきだ」。この一文に、九電関係者は複雑な思いでいる。危機の際は、他社や行政機関との連携と統制が原則。非常時とはいえ、そこまで民間が踏み込むべきなのか。物資を載せて出発したトラックが、物資を載せたまま戻ってきた。日本通運久留米支店の福元雅浩業務課長(43)は驚く。同支店が管轄する佐賀県鳥栖市の物流センター。国の要請に基づき、16日夕方から国の物資を自治体ごとに仕分け、配送を始めた。九州では、大規模災害時の物資輸送に関する産官学の協議会で民間の物流施設の活用を想定し、日通の施設もその一つだった。約7万2千平方メートルの敷地、全天候型、24時間稼働で常時数十人の作業員がいる。「作業自体は難しくないので通常業務と並行して続けられた」と現場で指揮した福元氏は語る。ではなぜ「トラックは戻ってきた」のか。熊本県内の拠点は既に物資で埋まり、荷を置いていけず、自治体職員も不足して仕分けが追いつかない状態だったのだ。国は日通に、自治体ごとに必要な物資を割り振っていたが、状況は刻々と変わる。18日、福元氏らは国に「私たちも自治体に情報確認したい」と提案し、認められた。国も19日、物流業者の活用を広げ、熊本県外にあるヤマト運輸や日通の別の施設で仕分けしてから輸送するようにした。物資の滞りは改善されていった。福元氏は「国が現場の裁量に任せてくれたのは大きかった」と話す。熊本市の依頼で物資の仕分けを指揮した熊本県トラック協会の吉住潔専務(61)は「判断の権限は市職員にあるが、物流の知識はこちらの方が豊富。もっと提案型のやりとりをしてもよかった」と振り返る。国は空港や道路などの民営化を進め、公的インフラを担う企業が増えている。東日本大震災を経験し、今年7月に空港民営化第1号となる仙台空港。滑走路などの地震対策も運営企業の責任で行う。契約上、被害が甚大な場合は国が運営を継承する決まりになっているが、この運営企業幹部は「国が引き継ぐ契約だからといって民間がすぐに手を引くわけにはいかない。熊本での大地震連続発生や空港の被災を、民間ができる役割を考える新たな教訓にしたい」と語る。「公」の機能がまひする今回のような大災害時に、ノウハウにたけた「民」がどう主体的に動くか。行政はどこまで任せるのか。仕組みと意識、双方を変えるときがきている。

<地方自治体の再編>
*2:http://www.murc.jp/thinktank/rc/column/search_now/sn090302_01
(三菱UFJリサーチ&コンサルティング 2009/3/2) 自治体再編:市町村合併一巡で次の焦点は道州制、公共経営・地域政策部 主任研究員 大塚敬
 わが国における都道府県制度の見直しとその具体的な方策としての道州制にかかる議論の歴史は古く、昭和32年には第4次地方制度調査会において、都道府県制度を廃止し国と市町村の中間団体として国と地方自治体の両方の性格を併せ持つ「地方」という団体を新設すべきであるとの提案が既になされていた。その後、道州制はさまざまな議論が重ねられつつも実現せずに今日に至っているが近年改めて注目され、平成18年2月の第28次地方制度調査会答申において、広域自治体改革の具体策として道州制の導入が適当であるとの見解が明確に示されたことにより、導入の機運が急速に高まっている。こうした背景には、地方分権の受け皿として地方自治体の抜本的な改革が不可避となったことがある。少子高齢化と人口減少、経済の低成長への移行などにより、すべての地方自治体を現状のまま維持するのは困難であることが明確になった。これに対し、国はまず地域において包括的な役割を担う市町村を、最低限の行財政基盤を確保可能な規模に再編すべく、市町村合併を強力に推進した。この結果、平成10年度末と比較して平成20年12月時点で市町村数は3,232から1,781に減少した。現在、市町村合併は平成の大合併と言われた平成16~17年度から一段落しており、次の焦点は都道府県の再編に移ったと考えられる。合併により市町村の大規模化が進み、政令指定都市数は12から17、中核市数は21から39に急増している。また、各都道府県の市町村数も、平成11年4月1日時点では市町村数30以下の都道府県はなかったが、平成21年1月1日時点では30以下の団体が19に上り、うち9団体は市町村数が20以下となっており、市町村と都道府県のバランスは大きく変わった。また、道州制導入の機運が高まっている背景には、都道府県間の格差の拡大と小規模県の行財政基盤の弱体化もある。平成17年国勢調査の時点で、東京都の約1,260万人を筆頭に、500万人を超える都道府県が9を数える一方で、人口が100万人を下回る県が7県に上る。最も少ない鳥取県の人口は60.7万人で東京都の約20分の1であり、政令指定都市で最も人口が少ない静岡市の71万人をも下回っている。また、人口規模の小さい県ほど人口減少が進展する傾向にあり、国立社会保障人口問題研究所の推計によれば、2035年には人口が100万人を下回る県の数は15に増加し、鳥取県の人口は約49万5千人と政令指定都市の基本要件をも下回ると見込まれている。一方、こうした状況の中、約360万人の人口規模をもつ横浜市は、その人口規模と都市機能の高度な集積に見合った権限を求めて、新たな大都市圏制度を自ら提言している。これは、横浜市や大阪市、名古屋市など特に人口規模の大きな都市に対し、政令指定都市の枠組みを越えて、都道府県や将来の道州の下に組み込まれることなく、広域自治体に委ねていた権限をすべて掌握する自治体としての位置づけを求めるものである。このように地方分権が進展し、その受け皿となる市町村の行財政基盤が強化される一方で、小規模県の人口減少が避け難い状況から見て、自治体再編という大きな流れの中で、市町村合併の次のステップとして都道府県の再編と役割の見直しは必至であり、その具体的方策として、長い間議論されてきた道州制が近い将来ついに実行に移される可能性が非常に高い。平成19年1月に政府が設置した道州制ビジョン懇談会は、平成20年3月に中間報告を公表、道州制の実現に向けた道州制基本法の原案を平成22年内に作成し、平成23年の通常国会に提出、最終的には平成30年までには道州制に完全移行すべきであると明記している。懇談会は、当初想定していた本年1月の基本法骨子案の策定は見送ったものの、予定通り平成23年通常国会への法案提出に向けて審議を続けている。今後は、具体的な制度の枠組みの調整と、受け皿となる広域自治体側の体制整備の両面から、具体化に向けて慎重に、しかし迅速に準備を進める必要がある。前者において課題となるのは区割り調整と国から道州への権限委譲の内容であり、懇談会での議論においてもこれらが大きな焦点になっている。特に区割りについては、有利不利の議論だけでなく、地域の歴史的文化的な背景も含め、都道府県それぞれの思惑もあって今後調整が難航することが予想される。また権限についても、懇談会中間報告では国の役割は国境管理や国家戦略の策定、国家的基盤の維持・整備、全国的な統一基準の制定に限定すると明記されているが、具体的な内容を検討する段階では、これまでも地方分権や規制改革に際して繰り返されてきたように、国と地方の綱引きによる調整難航は必至であろう。さらに課題となるのは道州政府の体制整備であり、中でも特に重要な点は財政運営の中核を担う人材の確保である。現在検討されている案をベースに予想すると、欧州の中規模国に匹敵する人口規模の道州が複数誕生する可能性が高く、その権限も従来の都道府県と比べて大幅に拡大強化される。道州の政府には、従来よりも飛躍的に拡大した財源と権限を駆使して、これまでの都道府県の枠を超えた、まったく新しい視点に立った政策を企画立案し実行する能力が求められる。その中核的な役割を担う幹部となる人材は、従来の都道府県職員の育成や、地方支分部局の廃止など権限縮小によって余剰となる国の職員の活用だけでは十分に確保することは困難である。これを地方行政の人材登用システム改革の好機ととらえて、新卒中心の採用システムや任期付任用など課題が多く指摘されている従来の民間人材登用に係る制度を抜本的に見直し、外部の有能な人材を機動的に登用する仕組みを再構築することが、道州制の成否の重要なポイントとなると考えられる。

<仮設住宅の建設>
*3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12359246.html?_requesturl=articles%2FDA3S12359246.html (朝日新聞 2016年5月16日) 仮設用地、確保進まず 熊本10市町村、地震前「未選定」
 熊本県などでの一連の地震で、応急仮設住宅を必要とする県内15市町村のうち、10市町村が仮設住宅の建設用地を事前に決めていなかった。各市町村への取材でわかった。東日本大震災後、国は用地の事前選定を求めている。今回、用地の確保が遅れている自治体が出た要因の一つとなったとみられ、避難所生活の長期化にもつながる可能性がある。仮設建設に着手したり、建設を検討したりしている15市町村に、用地を事前に選んでいたかどうかを尋ねた。「選定済み」は嘉島(かしま)町や南阿蘇村など5市町村。「未選定」は熊本市や益城(ましき)町、西原村など10市町村だった。このうち、8市町村は地域防災計画で地震の被害想定をしていなかった。 東日本大震災を受け、国土交通省は2012年5月、建設用地の確保を各都道府県に要請。国交省と内閣府は15年3月には「平常時から建設用地の確保に取り組むこと」との通知を出している。熊本県は15年度の地域防災計画で、市町村は「予定地の確保を行っておくもの」としている。選定していない理由では6市町村が「災害後の住民要望に柔軟に対応するため」とし、7市町村が「未選定」は仮設の着工時期に影響していない、とした。だが、選定をせず、必要な用地の確保が見通せない自治体もある。益城町は、地盤が沈下して町有地の適地がなかなか見つからなかった。必要戸数は2千戸だが、着工できているのは約160戸。町の担当者は「着工が予定より2週間遅れている。必要戸数を建てるには公有地だけでは足りない」と話す。総務省が全国168市町を抽出した調査(14年公表)では「選定済み」が118市町で7割を占めた。今回の地震を受け、内閣府は全国の選定状況を調べる方針だ。

<農業の再編と規模拡大>
*4-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37514
(日本農業新聞 2016/5/16) 熊本の農業被害視察 大豆転換、JAが要望書 農相
 森山裕農相は15日、熊本県を訪れ、熊本地震による農業被害を視察した。益城町や南阿蘇村に震災後初めて入り、農家や行政関係者らと意見交換。菊池市では、水稲から大豆への品目転換に必要な環境整備を求める要望書をJA菊池から受け取った。森山農相の熊本地震の視察は3回目。断水が続く南阿蘇村の河陽地区を訪れ、(有)阿蘇健康農園を視察した。地割れと農業施設の破損に加え、断水が続き営農再開はほど遠い状況を確認。生産者や村から支援の拡充を求める声が上った。JA菊池の子会社アグリパートナーきくちでは、JAが森山農相に要望書を提出。三角修組合長は「水稲から大豆への作付け転換により大豆の面積が増大し、播種(はしゅ)や栽培管理、収穫などの支援が必要になる」と指摘し、播種機など農機の調達や人件費の補填(ほてん)に支援を訴えた。阿蘇市の土地改良区や益城町の畜産農家の被害状況も確認した。森山農相は「17日には地震に関する補正予算が成立し、18日から具体的に動きたい」と述べ、積極的な支援を県や市町村と協力しながら進めるとの考えを示した。 

*4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160516&ng=DGKKZO02348020V10C16A5TJC000 (日経新聞 2016.5.16) イオン、有機農家を育成 欧州企業と共同出資会社 専門店展開
 イオンは有機農産物の生産農家を育成する。欧州の専門企業と共同出資会社を設立。生産者から農産物を直接買い取り、新たに展開する国内の専門店で販売する。2020年をめどに首都圏を中心に50店以上にすることを目指す。環太平洋経済連携協定(TPP)の発効による貿易自由化を見据え、農家が付加価値の高い農産物に取り組める環境を整える。フランスで有機専門スーパー約90店を運営するビオセボンと組む。同社の親会社のベルギー企業と6月にも折半出資で新会社を設立。年内に1号店開店をめざす。それまでに専用の農地を約40ヘクタール確保し、当初はニンジンやホウレンソウなど約30品目を扱う。今後5年をめどに農地を25倍の1千ヘクタールに広げ、品目数も3倍程度に増やす。店舗では有機産品の食品のほかに化粧品、日用品も加え、4千品目程度の商品をそろえる。出店はグループの他のスーパーなどから独立した形が中心となる。ビオセボンは農家に有機栽培への転換を促し、契約分を全量買い取る仕組みで事業を拡大している。「有機」の表示をするには化学合成農薬を3年以上使わないなどの規定がある。イオンはグループの販路やビオセボンのノウハウを生かし、転換する農家の経営を支える。世界の有機産品市場は年率1割以上伸びているとされる。日本は12年に約1400億円で世界7位だった。市場規模が30倍の米国や4倍のフランスに比べると、日本の市場はまだ小さい。有機野菜は通常の栽培よりコストが5割程度多くかかるとされる一方、店頭での販売価格は高値で安定している。環境や健康への関心の高まりを受け、日本でも今後の需要の伸びは大きいとみて、イオンは事業を本格化させる。イオングループでは直営農場を持つイオンアグリ創造(千葉市)が有機栽培を広げ、農家との契約も進めている。プライベートブランド(PB=自主企画)の「トップバリュ」でも有機産品を増やしており、一連の事業間の連携も進める。将来は有機農産物の専用物流網も構築する。

<教育の再編>
*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160516&ng=DGKKZO02343760V10C16A5CK8000 (日経新聞 2016.5.16) 義務教育学会の設立を 小中一貫改革広める (前東京都品川区教育長・学校教育研究所理事長 若月秀夫)
 小中一貫教育を行う「義務教育学校」が制度化されたのを受けて、東京都品川区で小中一貫教育を導入した若月秀夫前教育長が「日本義務教育学会(仮称)」の立ち上げを準備している。今年4月、学校教育制度の多様化と弾力化を進めるために、現行の小学校・中学校に加えて、義務教育9年間を一貫して行う「義務教育学校」を新たな学校の種類として規定した改正学校教育法が施行された。文部科学省によると、法改正を受けて4月から全国15市区町村が22校の義務教育学校を設置、2017年度以降に114校の設置が予定されている。東京都品川区が小中一貫教育を導入してから満10年という節目の年に義務教育学校が制度化されたことは、当時の教育長として極めて感慨深い。品川区が小中一貫教育を導入した背景には、戦後続いてきた6―3制が現在の子供達に本当に適しているのかという疑問があった。加えて、教員の意識改革が求められる中で、一向に変わらない小中学校間の“縄張り意識”“ムラ意識”を払拭したいからでもあった。義務教育における学校種間の連携・接続については、中央教育審議会が1971年の答申で、各学校段階の教育を効果的に行うために小中学校の区切り方の変更に言及したが、その後、国レベルの検討は進まなかった。ところが15年ほど前から、一部の自治体が構造改革特区制度などを活用し、小学校と中学校の教育を別々に考えるのではなく、小中を貫く「9年制義務教育の場」という概念で捉え直す学校づくりに取り組み始めた。改革は国の検証作業でも学力の定着・向上や生徒指導上の課題克服に一定の効果があると認められ、05年に中教審は「新しい時代の義務教育を創造する」答申で、義務教育学校設置の可能性やカリキュラム区分の弾力化、学校種間の連携・接続の改善を検討する必要性を指摘した。その後も全国で、施設一体型や施設分離型の小中一貫教育に取り組む自治体が相次いだ。06年には「小中一貫教育全国連絡協議会」が発足し、小中一貫教育法制化に向けた機運が高まった。中教審も、小中間の連携強化や小中一貫教育の制度化に向けた検討を進め、教育再生実行会議は14年の第5次提言に小中一貫教育学校(仮称)の制度化を盛り込んだ。こうして地方が国を引っ張る形で、改正学校教育法施行に至ったのである。
□ □ □
 現在、全国各地で様々な形態で小中一貫教育が展開されている。義務教育学校や施設一体型小中一貫教育学校では、1年生から9年生までの児童生徒が一つの学校に通うという特徴を生かして、9年間の教育課程を「4―3―2」や「4―5」など児童生徒の実態に合わせた柔軟な学年段階の区切りを設定している。さらに教育課程の特例を活用して独自の教科を設けたり、従来は中学校段階で実施していた教科担任制や定期考査、生徒会活動などを小学校高学年段階から導入したりする取り組みも見られる。その一方で、小中一貫教育を標榜しながらも、実際には単なる教員の交換授業や小中学校合同の学校行事など、一過性で表面的な活動に終始奔走している学校も少なくない。職員室や校内の会議が小中学校で別々な学校や、交換授業や合同行事が他の教育活動と関連付けられていないなど、ちぐはぐな実態も散見される。まさに“仏造って魂入れず”である。こうした学校は、小中一貫教育の目的を中1ギャップの解消や不登校対策、学力向上などに矮小(わいしょう)化して語る傾向が強い。確かにどれも重要な問題だが、小中一貫教育本来の目的がそこだけにあるわけではない。なぜなら、それは現行の小中学校でも解決可能だからである。小中一貫教育で大切なことは、「小中一貫した教育」という新しい価値や概念が、教員の学校観や教員観、児童生徒観や指導観などに変化を及ぼし、義務教育に対する教員の認識や意識を新たにすること、そしてそれに基づく教育活動を通して義務教育の質そのものを変えていくことにある。中1ギャップの解消といった個別具体的課題の解決は、教員の意識改革の成果の1つにすぎない。
□ □ □
 一口に小中一貫教育の展開といっても、それぞれの地域や学校によって大きな温度差が見受けられる。それには理由がある。要は、情報不足、連携不足なのである。多くの自治体や学校にとって小中一貫教育は未知なる分野なのに、国が示す標準型や身近な先行事例が存在しない。今のように他地域との情報の交換・共有化が図られず、相互啓発作用も望めない状況下では、孤立無援で不安な試行錯誤を余儀なくされる。大きな混乱や失態を避けようと、当たり障りのない安全運転に陥りかねない。これでは改革は進まない。今、必要なのは、小中一貫教育が目指すべき方向性を示す縦軸と、同じ「志」を共有する自治体や学校の取組状況を示す横軸、という座標軸の設定なのだ。小中一貫教育を巡って各自治体や学校が情報を交換し、共有できる「場」が必要不可欠であり、それを教育現場は望んでいる。そこで、品川区で共に小中一貫教育を推進してきた大学研究者や学校現場の管理職、文部科学省担当者など多くの関係者の理解と賛同を得て、今秋に「日本義務教育学会(仮称)」を立ち上げる準備を進めている。小中一貫教育を巡ってはカリキュラム開発をはじめ、教員養成、教員免許、人事制度など検討すべき課題が山積する。こうした課題に学校現場や大学、行政の関係者が一体となって取り組み、小中一貫教育を真摯に推進する自治体や学校を支え、その広がりをより確かなものにしたい。

<川内原発は断層の上>
*6-1:http://qbiz.jp/article/86800/1/
(西日本新聞 2016年5月14日) 鹿児島知事「川内原発周辺で熊本地震のような地震は起きない」
 熊本地震を受け、全国で唯一稼働する九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の安全性に不安の声が上がっていることについて、同県の伊藤祐一郎知事は13日の定例記者会見で「川内原発周辺で熊本地震のような地震は起きない。文献上、地震が頻発する断層がなく、緊急性は感じなくていい」と述べ、運転停止や事故に備えた避難計画見直しは不要との見解を示した。伊藤知事は、運転継続を認める理由に「原子力規制委員会が『停止する必要はない』と明確に言っている」ことも挙げ、「何かあれば自動停止するので、福島第1原発みたいな事故が発生する可能性はほとんどない」とした。

*6-2:http://373news.com/_column/syasetu.php?ym=201605&storyid=75431
(南日本新聞 2016年 5月 15日) [鹿県知事選] 原発も重要な争点では
 鹿児島県の伊藤祐一郎知事はおとといの定例会見で、熊本地震を巡って運転停止を求める声が出ている九州電力川内原発(薩摩川内市)について、今夏に予定されている知事選の争点にならないとの考えを表明した。知事は「調査・点検はすでに終わり、原子力規制委員会も(停止する必要がないと)太鼓判を押している」と述べた。知事としては、最大震度7が2回発生した熊本地震で、川内原発の揺れは最大8.6ガルで、原発が自動停止する設定値(最大加速度160ガル)を大きく下回ったことなどを踏まえた発言だろう。確かに、一連の地震で川内原発が被害を受けたとは聞かない。仮に大きな揺れがあたったとしても、異常があれば自動停止するシステムになっている。だが、不安の声がやまないのは、熊本を中心に甚大な被害をもたらした活断層の動きが専門家の予測を超えていることがある。余震の多さと震源域が広範囲に及び、発生から1カ月たっても地震は終息していない。川内原発周辺にも活断層はある。仮にそれらが動けば、大きな被害につながるのではないかと不安視するのは自然な感情だろう。知事も「多くの人が心配しているのは確か」と語っている。そうした中で、原発の安全性や今後の在り方などを巡り知事選で論争するのは重要なことだ。知事選には現職の伊藤氏のほか、新人の元テレビ朝日コメンテーター三反園訓氏、ストップ川内原発!3.11鹿児島実行委員会実行委員の平良行雄氏の3氏が立候補するものとみられている。三反園氏は地震後、「原発は一時停止し、点検するべきだ」と主張する。平良氏は「廃炉に向けた川内原発の即時停止」を政策の柱とする方針だ。3氏の原発に対する姿勢は異なる。だからこそ知事選では、原発を含む今後のエネルギー政策についてさまざまな選択肢で論争することが欠かせない。避難計画に疑問や不安があることにも、知事は川内原発周辺では今回のような地震は起きないとした。「緊急性は感じなくていい」と述べ、計画を見直す必要はないとの見解を示した。住民の不安に応えているだろうか。知事は「どういう態勢を取れば安心してもらえるかの作業は必要」とも語っている。今後の具体的な対応が求められる。県政の課題は多岐にわたる。原発問題だけが争点ではない。しかし、原発の論議は避けては通れない。正面から論じるべきだ。


PS(2016.5.18追加):熊本県は全国によい農産物を供給している県であるため、*7-2はよかったと思うが、畜舎や農業用ハウスの再建に対する補助率が5割超でいいかどうかは疑問だ。私は、ここでしっかりした畜舎や農業用ハウスを作った方がよいため、余剰している米ではなく、今後伸ばしたい作物を作っている場合の自己負担率は1割以下にした方がよいと思う。
 なお、*7-1のように、政府が地方創生のための地域特性に応じた政策を支援する方針を出したことは、地方が主体となって考える新しい街づくりに役立つため、よいことだ。しかし、私は、現在の省庁に欠けているのは総合的判断力であるため、文化庁や消費者庁など一部の政府機関を分散した場所に移転して、セクショナリズムの度合いを増すのには反対だ。首都直下型地震も予測され首都機能不全に陥っては困るため首都機能を移転するのなら、まとめて被害が及ばない場所に移転した方がよいと考える。
 しかし、*7-3のように、「米価安定のために2016年産米で34都道府県が減反を達成した」などとしているのは、転作せずに土地を遊ばせている誤った政策で、耕作放棄地予備軍を作っている。

*7-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160518&ng=DGKKASFS17H44_X10C16A5PP8000 (日経新聞 2016.5.18) 地域特性に応じ政策 地方創生、政府が支援方針
 政府がまとめる新たな地方創生の基本方針の素案が17日、明らかになった。人口減少や東京一極集中に伴う地方間の経済格差の是正のため、地域の特性に応じた政策を推進する必要性を明記。自治体独自の戦略にあわせ、国が情報・人材・財政からなる「地方創生版3本の矢」の支援を加速する方針を打ち出した。20日に首相官邸で開くまち・ひと・しごと創生会議で素案を示し、31日に閣議決定する見通しだ。文化庁など政府機関の地方移転の実現や、元気な高齢者が地方に移住する「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」構想の推進も盛り込んだ。2040年までに全体の4割超にあたる705市町村が全国平均の2倍以上のスピードで人口減少に直面すると分析。中核市や中山間地域など地域特性ごとの共通課題を示し、解決のための政策メニューをまとめる必要があるとした。地方就職を支援する奨学金制度の普及や、公共施設の集約などを具体策に挙げた。

*7-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37549
(日本農業新聞 2016/5/18) 農業支援第2弾きょう公表 補助率上げなど柱 熊本地震
 熊本地震に対応する2016年度補正予算の成立に伴い、森山裕農相は第2弾となる被災農業者への支援策を18日に公表する方針を表明した。経営体育成支援事業の補助率引き上げや、作付け困難な水稲に代わる作物の種子代助成が柱。迅速な事業の執行を通じ、農業復興を強く後押しする考えだ。 森山農相が17日の閣議後会見で明らかにした。農水省は既存の事業を活用した第1弾の農業支援策を9日に公表し、営農再開の支援に乗り出している。さらに必要な支援は、補正予算を活用して第2弾を打ち出す方針を示していた。森山農相は補正予算の成立をにらみ「(18日に)具体的なものを現場にお知らせする」との意向を示した。畜舎や農業用ハウスの再建に充てる被災農業者向け経営体育成支援事業について森山農相は、熊本県が補助率を現行の3割から5割超に引き上げるよう要望していたことを踏まえ、「どれくらいかさ上げになるか(示す)」と説明した。この他、被災施設の撤去や共同利用施設と卸売市場の再建、被災した畜産農家の地域ぐるみでの営農再開などにも取り組む方針。森山農相は「農家の皆さんの再生産への意欲を失わせることのないよう、しっかりした取り組みをしたい」と強調した。併せて、被害が大きい熊本市や益城町、南阿蘇村など9市町村に技術職員を二人ずつ派遣したと報告。被害の査定や書類作成に当たらせるとした。

*7-3:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/312985
(佐賀新聞 2016年5月18日) 佐賀など34都道府県、減反達成へ、16年産米 4月末、農水省調査
 農林水産省は17日、2016年産主食用米の生産調整(減反)目標への対応状況を調査した結果、4月末の計画段階で、佐賀など34都道府県が目標を達成する見込みとなったと発表した。前年同時期より3県増え、目標への取り組みが進んでいることから、過剰生産を回避し、米価の安定につながる可能性があるとみている。熊本県は地震の影響で調査の対象外。長年コメ余りが問題となり、農水省や農業団体は飼料用米や麦、大豆への転作を進めている。作付け計画は6月末まで変更が可能なため、今回の調査を受け、さらに転作を促す狙いがある。農水省は昨年秋、16年産主食用米の全国の生産数量目標を前年比8万トン減の743万トンとし、都道府県別に配分した。この目標を北海道や山形、宮城、富山、兵庫、岡山など34都道府県が達成する見込みだ。このうち在庫量などを踏まえ、目標をより厳しくした「自主的取組参考値」に対しては佐賀、福岡、大分など21都府県が達成する見通し。前年同時期より5府県増えた。調査は県やJAなどから農家の計画を聞き取ってまとめた。農水省は実際の作付面積や生産量の推計は公表していない。15年産は目標が751万トンに対し、生産量は744万トンだった。現在と同じ基準で目標設定を始めた04年産以来、初めて目標を達成した。農家やJAなど出荷側と卸売業者間の取引価格は、全国平均で60キロ当たり約1万3千円で推移し、供給過剰で低迷した14年産から千円ほど上がった。


PS(2016年5月19日追加):*8-1のように、将来の農業の担い手は、「佐賀の地から、世界に向けた農業の発信源となるような担い手やリーダーを目指して頑張りたい」「世界に打って出られる農業をしたい」などの頼もしい抱負を持っているので、学校等(農業高校、農業塾、大学の農学部)で、先進農業国の状況を学ばせたり、視察させたりすると、日本でも応用できる沢山のヒントが得られると考える。なお、「父を超える味のイチゴを作る」というのもあるが、品種や栽培方法などの農業技術が進み、農業生産の環境も変わるため、お父さんは当たり前に超えられ、それだけが目標では小さすぎるだろう。
 また、*8-2のように、熊本地震を受けた農業支援策で、いろいろな農産物に対して復興のための助成金がつくことになったため、これを機会に、熊本の自然条件にあった作物に転作したり(米もあっているとは思うが)、農地の集約を行ったりするのがよいと思う。関東でも、熊本、宮崎、沖縄、鹿児島、長崎、佐賀、福岡(何故か、大分はあまり見ない)などの農産物はおなじみだ。

       
*8-2 イチゴの被害  “重機隊”の応援(*9-1)     その他の応援と感謝
  2016.5.19、4               2016.5.19、15、14西日本新聞
  日本農業新聞

*8-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/312899 (佐賀新聞 2016年5月18日) 13日、「未来さが農業塾」入塾式、高校生14人 地域農業のリーダーに
 将来、家業を継いで就農を希望する高校生を対象とする「未来さが農業塾」(塾長・荒木清史高志館高校長)の入塾式が13日、佐賀市川副町の県農業試験研究センターで開かれた。県内の農業系5校の生徒14人を新たに迎え、県内の先進農家での研修や海外の農業事情の視察などを通じて高度な農業経営術を身に付ける。同塾は、農業系高校でつくる県高校教育研究会農業部会が主催。県の農林水産部や研究機関、JAなどの団体が支援に当たる。本年度は12月までに県内の農家に泊まり込んでの研修やオーストラリアへの海外研修などを行い、高度な農業技術や経営ノウハウの取得に努め、3年次には営農計画を策定する。式には1~3年生の塾生45人が出席した。荒木塾長は「これからの農業は若い柔軟な発想が大事になる。立派な地域農業のリーダーとして育ってほしい」と式辞を述べた。入塾生を代表して佐賀農高1年の吉原颯人さん(15)=白石町福富=は「佐賀の地から、世界に向けた農業の発信源となるような担い手やリーダーを目指して頑張りたい」と宣誓した。他の塾生も「父を超える味のイチゴを作る」「世界に打って出られる農業をしたい」と入塾の動機などを語った。

*8-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37570 (日本農業新聞 2016/5/19) 熊本地震で支援策第2弾 種子・苗代を半額助成 農水省
 農水省は18日、熊本地震を受けた第2弾の農業支援策を公表した。2016年度補正予算を活用し、被災した農業者の営農再開に向け、水稲から大豆など作物転換にかかる種子代や作業料金を助成する。畜産クラスター事業を通じた畜産経営の再建などにも乗り出す。第2弾の支援策は、17日の補正予算成立を受けて公表した。森山裕農相は「速やかに営農再開いただけるようにサポートする」と述べ、事業の執行を急ぐ考えを示した。営農再開に向けた支援では、地割れや水利施設の損傷で16年産の稲作が困難になった農業者に対し、代わりに作付ける大豆や野菜などの種子・種苗代を半額以内で助成する。農作業委託や、代替作物の栽培に必要な農業機械のレンタルにかかる経費も支援する。中でも、大豆など経営安定対策の対象作物には交付金合わせて10アール当たり5万5000円が支払われるため、所得の一定確保へ一連の対策で作付けを後押しする考え。畜舎の倒壊や家畜の死亡といった甚大な被害が出ている畜産経営の再建は、畜産クラスター事業で対応。地域ぐるみで収益力向上に取り組む畜産クラスター計画の中心的経営体に、施設整備と家畜導入をセットで支援する。被災地の建設費高騰に備え、施設整備を支援する際の上限単価引き上げなど柔軟に対応する。この他、被災を機に野菜や果樹などに作物転換したり、規模を拡大したりする農業者も支援する。農業機械や施設園芸用機器のリース導入、パイプハウスや果樹棚の設置に必要な資材の共同購入にかかる経費を半額以内で助成する。今回の補正予算は、省庁ごとに予算を積み上げる従来の編成と違い、あらかじめ使い道を定めない予備費を財源とした。同省は現場の要望を聞き取り、事業費を決める方針。農業者が支援を受けるには、JAや市町村などを通じ、同省に意向を伝える必要がある。


PS(2016年5月20日追加):*9-1のように、全国の建設業者のボランティアである“重機隊”が活動を始めて力強い。また、*9-2のように、民間の支援を調整して動くことにより大きな力を出し、それぞれの得意分野を生かして現地のニーズに応えるため、支援組織「佐賀から元気を送ろうキャンペーン」を発足させたそうだが、全国規模や九州規模でニーズに応えれば解決が速やかだろう。

*9-1:http://qbiz.jp/article/87095/1/ (西日本新聞 2016年5月19日) “重機隊”思い出の品救う 建設業者が全国から応援 被災家屋で無償捜索
 熊本地震の被災地では倒壊家屋に埋もれた「思い出の品」を見つけ出そうと、全国の建設業者が重機を使ったボランティア活動を始めている。関係者の思いに応えるため、受け入れ側も万全の環境を整えている。呼び掛けたのは、岐阜県高山市の災害ボランティア団体「Vネットぎふ」代表川上哲也さん(52)。今回の地震後、「本格的な解体作業が始まると、全て撤去されてしまうことが多い」と懸念。「思い出」を持ち主に返してあげたいと、東日本大震災や関東・東北豪雨などで復旧作業した建設業者に協力を募った。活動場所は熊本県西原村。全国から仲間が集まり、ボランティアセンターを開設する村社会福祉協議会に目的を話した。社協側は危険を伴う機器を扱う作業はボランティア活動保険の対象とならないこともあり、一時は難色を示した。しかし「自分の技術を役立てたい」「保険が出なくても構わない」との熱い思いに打たれ、川上さんらの活動を認めた。1階部分がつぶれた川元博美さん(58)宅。社協のビブスを着た作業員らが手慣れた様子でショベルカーやチェーンソーを操ると、小さな貯金箱が見つかった。娘が幼い頃から大切にしていた品。「やっと見つけた。今日で捜し物は終わりだな」。川元さんは目に涙を浮かべながらつぶやく。日記やアルバム、結婚記念のネックレス…。これまで200人以上が携わり、いくつもの「思い出」を見つけた。川上さんは「家族の歴史は一度失うと取り戻せない。それだけは守ってあげたい」と支援を続ける決意を語った。

*9-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/313601
(佐賀新聞 2016年5月20日) 民間25団体が連携 被災地を支援、ニーズ、得意分野で調整
 熊本地震の被災地を連携して支援しようと、佐賀県内外のNPO法人や一般社団法人など25団体が支援組織「佐賀から元気を送ろうキャンペーン」を発足させた。民間の支援を一本化し、調整して動くことでより大きな力につなげる狙い。被災地で活動する他の団体とも連携し、それぞれの得意分野を生かして現地の細かなニーズに応える。支援組織は、東日本大震災発生時にできたネットワークを基に構成。佐賀未来創造基金や地球市民の会などが入っており、佐賀から必要な人材や物資を送る仕組みをつくる。具体的には、被災地で復興支援を行うNPO法人アジアパシフィックアライアンスや日本レスキュー協会などが被災者のニーズを調べ、その情報に沿って活動に適した団体が支援する。主に熊本県益城町と西原村で活動し、期間は約1年を予定。岩永清邦委員長は「行政には対応が難しい細かなニーズに、民間のフットワークの軽さで応えていきたい」と話す。被災地の現状と支援のあり方を考える講演会を21日午後3時半から佐賀市白山の佐賀商工ビルで開く。西原村で災害復旧に当たった県職員の鶴田さゆりさんらが話す。参加無料。申し込みは地球市民の会、電話0952(24)3334。


PS(2016年5月22日追加):大豆に転作すると飼料用米(牧草やとうもろこし等の代替品がある)に転作するよりも補助金が少ないのは前からおかしいと思っていたが、水稲農家の転作に際しては、このような問題が生じているのだ。しかし、本当は足りないものを作る人の方が儲かる仕組みでなければならない。熊本は水がよいため、スイカは適地であるし、そのほか桃・アーモンド・オリーブ・デコポン(ハチミツが副産物)などの水を多く吸い上げる作物にも向いていると思うので、熊本大学・九州東海大学の農学部や九州農政局も協力して、水稲にこだわらず、周囲を彩りながら、土地の長所を活かして儲かる農業を考えたらどうだろうか。

    
   デコポン       オリーブ       桃と菜の花            アーモンド

*10:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37596
(日本農業新聞 2016/5/21) 熊本地震 大豆作「湿田は無理」 水稲並み所得難しく 阿蘇市
 熊本地震の影響で水路を断たれた熊本県阿蘇市の水稲農家が、国が勧める大豆への作付け転換では所得を確保するのは難しいと、不安を抱えている。十分な収量が見込めない湿田地帯で、“大豆不適地”のためだ。国の交付金を含めても主食用米と同等の所得は見込めそうにない。大豆に向かない地域特性を踏まえた支援を求める声も上がっている。「前を向いてやるしかないが、大豆では食っていけないのが現実だ」。同市で稲作を営む内田智也さん(31)は、荒れた水田を前に腕を組む。今期は45ヘクタールで田植えを予定していたが、水路が壊れるなどして3分の1は断念した。大豆への転換も模索するが、「米ほどの所得は確保できない」と言い切る。同市は湿田地帯で雨も多く、大豆には不向きとされる。九州農政局によると、10アール当たり収量は100キロに満たず、全国平均、県平均の半分程度だ。近年は乾田化も進むが、地震で排水施設が破損しているとみられ、収量は減る恐れが強い。阿蘇地域振興局は、管内の大豆の販売代金を60キロ1万円と見込む。10アール収量を100キロとしても、販売代金は1万6000円。畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策、10アール2万円)と水田活用の直接支払交付金(同3万5000円)を合わせても収入は10アール当たり7万1000円にとどまる。担い手加算(同2万3000円)などの交付金もあるが、受けられない農家も少なくない。一方、主食用米の販売代金は60キロ当たり1万3000円で、10アール収量は480キロ。米の直接支払交付金(7500円)を合わせて収入は10アール当たり11万1500円となり、大豆を大きく上回る。九州農政局は「基本的に大豆でも米と同等の所得が確保できる」としつつも、「阿蘇などの地域では所得が米を下回る可能性もある」と認める。阿蘇市などによると、市内で田植えができない水田は約300ヘクタール。農家らによる応急復旧が進んでいるため今後、作付けできる水田が増える可能性もあるが、多くの農家が収入減少の影響を受けるとみられる。阿蘇土地改良区は「生活が厳しくなる農家が出る。前例にとらわれず、所得を補償するなどの支援が必要だ」と訴える。農水省は、地震で営農が困難な農業者の所得確保策として、他の農業法人で働くことも想定する。受け入れ法人に年間最大で120万円を助成する支援策を用意した。

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 03:15 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.5.12 トップランナーをつぶして付加価値を上げさせない日本の護送船団行政とメディア (2016年5月12、13、14、15、16、27日、6月7、13日に追加あり)

        三菱自動車の燃費不正の概要         これまでの不正  三菱自動車のiMiev


   一人当たり        主な自動車メーカーの提携関係         インド、タタ自動車のEV  
GDP成長率の推移                               (*タタのEVの方が、かわいい)

(1)燃料電池車のトップランナーはどうなったか
1)エコカー減税の愚かなルールのせいで、燃料電池車のトップランナーが苦戦した 
 三菱自動車は、*1-1のように、環境性能が良い車の税金を優遇する「エコカー減税」を獲得するために、メーカーが測定して自己申告する仕組みを悪用して、軽自動車4車種の走行抵抗値を意図的に小さく偽装し、燃費を実際より5~10%良くして申告していた。

 このようなことを他の自動車会社も行っていたことは記憶に新しいが、自己申告で監査も行わず、信頼をベースにしたシステムにしていたことが、不正を許した温床である。

 さらに根本的な問題は、「環境性能が良い車(エコカー)」を「燃費がよい車」と定義づけて、自動車取得税や自動車重量税を減免するルールを作ったことである。実際には、エコカーとして減税すべき車は排気ガスで環境汚染をしない車であって燃費がよい車ではない。何故なら、①燃費がよい車は減税などしなくても消費者に選択されるため減税制度は不要であり ②燃費のみを問題にすればゼロ戦のような軽い車を作ればよく、それでは安全性を保てない上 ③環境には排気ガスという公害を出し続けるからだ。

 しかし、このルールのせいで、*1-2のように、(適度な緊張感としてプレシャーは必要なもので、プレシャーがあるから不正をしてよいということはないが)開発のプレッシャーがかかり、ガソリン1リットルあたり29.2キロまで燃費目標を引き上げたのだそうだ。しかし、私は、世界初の燃料電池車を作った三菱自動車が、このようなくだらない燃費競争の枠組みの中で、1リットルあたり数キロを小さく競ったのが間違いだったと考える。それよりも、軽自動車は女性に愛されるデザインのよいEVにし、環境汚染してならないのは船や飛行機も同じであるため、大きな馬力の必要な船やMRJなどの飛行機を燃料電池に換えればよかったのだ。

 なお、蛇足だが、ブレーキはよく効き走行抵抗値の小さな車を作りたければ、タイヤの摩擦は大きくし車体やホイールの形を工夫して、高速走行時には少し浮力が出るようにすればよいと思う。

 また、*1-3のように、三菱自動車は過去にも何度も不祥事を起こしており、1996年に米国子会社内で起きたセクハラ事件は私も眉をひそめながら見ていたので記憶しているが、その頃、日本にはセクハラという言葉すらなく多くの会社で同じことが行われていたが、三菱自動車は、米国でそれをやったため訴訟されて多額の和解金を支払ったもので、これが日本でセクハラ意識が出てくるきっかけになったと記憶している。

2)三菱自動車が生き残るには、長所を活かして組織再編すべき
 米IT大手グーグルは、*1-5のように、欧州自動車大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と自動運転車を共同開発すると発表しているが、燃料はまだハイブリッド車のようだ。そのため、太陽と水があれば走れる燃料電池車や太陽があれば走れる電気自動車は、今後、アジア・アフリカはじめ世界各地で主役になると考える。

 そのような中、*1-3のように、アジア市場を強化したり、「選択と集中」を行って世界市場をめざしたりするとすれば、自社の技術に飛びぬけた価値があるうちに、インドのタタグループや韓国の現代自動車やフィアット・クライスラー組などと提携して、その地域に合うデザインのよいEVや燃料電池車を作り上げる方法がある。

 しかし、*1-4のように、日産自動車が約2千億円を投じて三菱自動車の3割強の株式を取得する方向となり、EVで競合する日産・ルノーと組むのが三菱自動車にとってプラスかどうか私にはわからないが、日産・ルノー組は中国やアジアでのEV販売で数歩進んでおり、ゴーン社長のコメントどおり、日産・ルノー組と三菱自動車が生産・販売で連携すれば技術開発や販売力などでのシナジー効果が高まりそうだ。そして、上図のように、GDP成長率の高い国には、近年、アフリカも入ってきており楽しみである。

 こういう世界戦略をたてて、①販売する場所 ②生産する場所 ③研究開発する場所 ④持ち株会社や本社の所在地 などを決める場合は、①は需要の多い場所 ②は労働力の安価な場所 ③は①と近接した場所に置いて販売地域のニーズに詳しいその地域出身のエンジニアを多く採用し ④は税率の低いタックスヘイブンに置く のがグローバル企業の基本だ。そのため、インド・シンガポール・東南アジア・中東・今後のアフリカなどは、有力な選択肢という結論になる。

 そして、これまでガソリン車の部品を作っていた系列会社も、もう新しいスキームに合った部品を作り、必要な場所には出て行く覚悟もしなければ、世界市場に置いて行かれると考える。

(2)太陽光発電のトップランナーはどうなったか
 *2-1のように、過去と目の前しか見えない経産省が、①原子力・石炭火力 ②水力 ③地熱をベースロード電源とし、太陽光発電は高くて不安定などとする風評被害を流したため、*2-3のように、世界のトップランナーだったシャープは行き詰まり、台湾の企業に買収されて、現在は2000人もの優秀な人材の削減を検討している。しかし、そもそも電源を、ベースロード電源とそれ以外に分けること自体が、過去と現在しか見ていない愚かなことなのだ。

 また、*2-2に、北九州市の響灘で、NEDOを主体とした洋上風力発電設備の実証研究が進んでいると書かれているが、この対象は風レンズ風車でもない普通の風車であり、鳥を巻き込んだり低周波を出したりして環境に悪影響を与える危険性も高いため、私は、特に研究しなければならないほどの高い技術だとは思わない。つまり、何でも適当に混ぜておくのが、バランスがよいわけではないのである。

<燃料電池車のトップランナーはどうなったか>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJ4Q5WP4J4QUTIL04N.html
(朝日新聞 2016年4月22日) エコカー減税分、購入者の負担回避 政府、三菱の不正で
 三菱自動車の燃費偽装問題で、国土交通省は22日、燃費算出の元となるデータをメーカー任せにしていた検査方法を見直すと明らかにした。実際の燃費が悪かった場合、エコカー減税の額にも影響が出るが、政府は購入者に負担させない方針を打ち出した。自動車メーカーが新しい車を発売する前には、国交省の「型式認証制度」に基づき、国交省の外郭団体「自動車技術総合機構」が安全性や環境性能を審査する。燃費性能も試験し、カタログに記される値が確定する。燃費試験では、回転するローラー台の上で車を走らせる。実際の路上を走らせると、タイヤと路面の摩擦や空気の抵抗による「走行抵抗」がかかるため、ローラーにはその分の抵抗を加えて燃費を算出する。この走行抵抗の値はメーカーが測定し、機構に自己申告する仕組みだ。三菱自はこの仕組みを悪用し、軽自動車4車種の走行抵抗値を意図的に小さく偽装して申告した。カタログ上の燃費は、実際よりも5~10%良くなっていた可能性がある。三菱自が出したデータを審査する側がチェックする仕組みがなく、石井啓一国交相は22日の記者会見で「不正が二度と行われないよう検査方法の見直しを検討していく」と表明した。具体的には、メーカーが走行抵抗値を測る試験に国の検査員が抜き打ちで立ち会ったり、測定試験の細かなデータを提出させたりする案が浮上している。型式認証制度に基づき、国交省は2年に1度ほどメーカーを監査している。ただ工場での品質調査が中心で、今回不正のあった設計開発部門までは通常は調べない。また、国が直接、走行抵抗値を測るには手間が掛かりすぎて現実的ではないという。担当者は「検査を迅速に行いつつ、データの信頼性を確保することが必要」と話す。(中田絢子)
■三菱自「税金、差額お返しする」
 三菱自動車がデータを偽装した軽自動車4車種では、環境性能が良い車の税金を優遇する「エコカー減税」が過剰に適用された可能性がある。国や自治体にとっては、税金を「取り損ねた」ことになるが、政府は、減税の恩恵を受けた消費者には負担を求めず、三菱側に負担させる方向で検討に入った。購入時などにかかる自動車取得税(地方税)や自動車重量税(国税)には燃費など環境性能に応じて税を減免する制度がある。三菱の偽装がなければ、税の減免幅が小さくなっていた可能性がある。本来なら購入者に差額の納税義務が生じるが、地方税を所管する高市早苗総務相は22日の会見で「購入者はエコカーだと信じて買ったので、さかのぼって税を負担する必要はない」と述べた。総務省や国税庁など関係省庁は、税収不足が明らかになった場合、本来の納税者に代わって第三者が税金を納める「第三者納付制度」を使うなどして、三菱側に直接支払わせることができないか検討を始めた。たとえば、直前まで販売していた「eKワゴン」の主力車種は、取得税と重量税はいずれも免税になっていた。仮に免税も減税もなければ計約3万円の税負担が発生する。三菱自動車は、税金の額が変わった場合、「関係機関と調整し、当然差額をお返しする」(幹部)としている。

*1-2:http://www.j-cast.com/2016/04/26265363.html
(Jcastニュース 2016/4/26) 副社長「プレッシャーがかかったんだと思う」
三菱自動車は4月26日、国土交通省に社内調査の報告書を提出。併せて、公式サイトでも報告書の概略を発表した。それによると、不正が発覚した『eKワゴン』『デイズ』だけに特定せず、国内向け車両について、1991年から法令に定められた方法とは異なる「高速惰行法」で計測していた。01年1月には、「惰行法」と「高速惰行法」の比較試験を実施し、結果に最大2.3%の差が生じることを確認。07年2月には、試験マニュアルで、「DOM(国内)はTRIAS(惰行法)」と改定したが、実際には、それ以降も「高速惰行法」を継続して使用していたと報告した。また、燃費性能データを高く見せる偽装が発覚した『eKワゴン』『デイズ』については、当初(2011年2月)の燃費目標はガソリン1リットルあたり26.4キロだったが、その後の社内会議で繰り返し上方修正され、最終的には同29.2キロまで引き上げられた。同日行われた記者会見で、中尾龍吾副社長は、「コンセプト会議や役員が出席する商品会議で5回の改定があった。(ダイハツ工業の)ムーヴの値をもとに最終的な数値を設定した」などと説明。競合他社との競争が目標燃費の設定に影響を与えたことを明かした。また、開発現場には、「(目標燃費について)プレッシャーがかかったんだと思う」とも話した。報告書の提出とともに、外部の専門家で構成される調査委員会を設置することも発表。「事実関係の調査」「類似した不正の存否及び事実関係の調査」「原因分析、及び再発防止策の提言」の3点について、3か月を目処に調査を実施する予定とした。

*1-3:http://mainichi.jp/articles/20160427/ddm/008/020/165000c (毎日新聞 2016年4月27日) 三菱自動車燃費不正/上 自浄作用働かず グループ内、突き放す声
 「消費者に対してはおわびしかない。会社存続に関わる問題と認識している」。26日、燃費データ不正に関する国土交通省への報告後、東京都内で記者会見した三菱自動車の相川哲郎社長の言葉には、今回の問題の深刻さがにじんだ。「どうしようもない会社だ。私が知ってる範囲でも5度目ぐらいではないか」。三菱グループのある企業幹部が憤るのは、三菱自動車が過去に繰り返し不祥事を起こしてきたからだ。1996年には米国子会社で起きたセクハラ問題で多額の和解金を支払ったほか、97年の総会屋利益供与事件では社長の辞任につながった。そして、2000年に発覚したのが安全面の根幹を揺るがすリコール(回収・無償修理)隠しだ。車両の欠陥を組織的に隠していたことが発覚し、厳しい批判を浴びた。 さらに04年には同社から分社した三菱ふそうトラック・バス製の大型トラックのタイヤが外れ、母子3人が死傷した事故を巡り、欠陥を隠してリコールを逃れていたことが判明。ふそうの元会長らが逮捕された。2度にわたるリコール隠しで三菱自の信用は失墜し、深刻な経営危機に陥った。そこに手をさしのべたのが三菱グループだ。御三家と呼ばれる三菱商事、三菱重工業、三菱東京UFJ銀行を中心に増資や借り入れなどで5400億円の金融支援を実施。三菱自の元幹部は「グループ支援がなければ破綻していた」と振り返る。三菱3社は三菱商事出身の益子修氏を社長に送り込むなど、人材面でも三菱自を支えた。三菱自は国内は軽自動車とスポーツタイプ多目的車(SUV)などに特化、海外ではアジア市場を強化するなど「選択と集中」により業績を回復。14年6月には生え抜きの相川氏が社長に昇格した。三菱重工の元会長を父に持つ相川氏は「早くから将来の社長候補と目されていたプリンス」(三菱自幹部)とされる人材で、業界内では「危機モードからの脱却」と受けとめられた。しかし、ようやく成長への道のりを歩み始めようとした矢先に再び会社を揺るがす燃費不正問題が勃発した。三菱自に出向経験のある三菱グループ企業幹部は「グループの支えで業績回復していた。だが、企業体質までは変えることはできなかった」と悔やむ。「自浄作用が働かなかった」。相川社長が反省の弁を述べるように、今回の問題発覚は提携先の日産自動車からの指摘がきっかけだった。関係者によると、三菱自は当初、約3カ月間の調査委員会による調査が終わるまで発表を先送りすることを検討していたが、日産などの反対を受けて発表に踏みきった。隠蔽(いんぺい)体質は今なお染みついていると受け止められてもおかしくない。今回の問題に伴う補償金の支払いや、消費者不信による販売への打撃などで、三菱自は再び深刻な経営危機に陥ることも予想される。しかし、三菱グループ内には「これ以上支えるのは無理だ」と突きはなす声も出ており、存続の危機に直面している。
    ◇
 三菱自動車はなぜ不正の再発を防げなかったのか。過去の経緯や今回の問題の背景を追う。

*1-4:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ11IQK_R10C16A5MM8000/?dg=1
(日経新聞 2016/5/12) 三菱自、日産傘下で再建 3割強2000億円出資受け入れ
 日産自動車は約2千億円を投じて三菱自動車の3割強の株式を取得する方向で最終調整に入った。日産が三菱自の第三者割当増資を引き受け実質傘下に入れる案が有力だ。燃費データの改ざんが発覚した三菱自の経営立て直しに協力する。中国やアジアなどでの生産・販売でも連携する。三菱自の不祥事をきっかけに、自動車メーカーの大型再編につながる可能性が出てきた。両社は12日に取締役会を開いて資本提携を決める。日産は三菱自の約20%の株式を所有する三菱重工業を上回る筆頭株主となる。三菱自と日産は2011年に折半出資で軽自動車の共同企画会社を設立している。三菱自の水島製作所(岡山県倉敷市)で生産し、日産に供給している。軽4車種の燃費データの改ざんについて、三菱自は「日産の関与はなかった」としている。三菱自の軽自動車の販売台数は国内全体の6割を占める。同社は16年3月末で自己資本比率が48%あり、現預金も約4500億円ある。当面は財務的な余力があるが、00年以降のリコール(回収・無償修理)隠しなど度重なる不祥事で消費者の不信が深刻になっている。軽以外の車種の販売への影響も必至だ。一方、海外では三菱自は一定のブランド力を保っている。タイやインドネシアでは「パジェロ」などの三菱自の多目的スポーツ車(SUV)の人気は高く、アジアで連結営業利益の5割超を稼ぐ。不正発覚後も海外では目立った販売減は起こっていない。トヨタ自動車やホンダに比べてアジアのシェアが低い日産にとって、三菱のブランド力は魅力だと判断した。両社は電気自動車(EV)の開発でも協力する。ハイブリッド車(HV)に加え、燃料電池車(FCV)を次世代エコカーの柱と位置づけるトヨタやホンダに対し、EV技術でも連携して競争力を高める狙いだ。EVの軽自動車の共同開発も視野に入れる。国内自動車市場で軽の存在感が増すなかで、11年に日産は三菱自との提携を選んだ経緯がある。同社からOEM供給を受ける軽の販売台数は国内の3割近くに達しており、三菱自の経営再建は日産の日本での事業戦略を左右する。今回の不正発覚後も、軽の生産拠点を持たない日産は「できれば三菱自との提携を続けたい」(幹部)との意向を示していた。

*1-5:http://qbiz.jp/article/86165/1/
(西日本新聞 2016年5月4日) 米グーグルが自動車大手と提携 自動運転車を共同開発
 米IT大手グーグルは3日、欧州自動車大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と自動運転車を共同開発すると発表した。グーグルが自動車大手と直接提携して開発するのは初めて。グーグルは、自社設計の試作車やトヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」を独自に改造した車両で試験走行を重ねてきた。各社との開発競争が強まり、FCAの技術を取り込んで早期の実用化を目指す。FCAのハイブリッド車のミニバン「パシフィカ」に、自動運転に必要なコンピューターやセンサー類を組み込む。年末までに導入して公道試験を開始し、100台を製造する。自動運転車を巡っては、米自動車大手フォード・モーターや配車大手ウーバー・テクノロジーズなどが4月、米政府に統一基準づくりを促すための連合を設立するなど、実用化に向けた動きが加速している。

<太陽光発電のトップランナーはどうなったか>
*2-1:http://www.nikkei.com/article/DGKKASGG07H4G_X00C15A8TJM000/
(日経新聞 2015/8/10) ベースロード電源
 季節や天候、昼夜を問わず安定して発電し、電力を供給できる電源のこと。燃料費が安くて運転コストが低いことも重要な条件になる。「ベース電源」と呼ぶこともあるが、国際的にはベースロード電源が定着している。日本では、原子力や石炭火力、水力、地熱の4つの方式がベースロード電源として挙げられている。液化天然ガス(LNG)や石油を燃やす火力発電所は電力需要の増減に合わせて運転するため「ミドル電源」や「ピーク電源」と呼ばれる。ベースロード以外の電源にはこのほか太陽光や風力などがある。政府は昨年4月に閣議決定した「エネルギー基本計画」で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた。

*2-2:http://qbiz.jp/article/85802/1/
(西日本新聞 2016年5月1日) 【エネ相会合の舞台・中】主力産業に洋上風力 北九州・響灘
 青い空と海に高さ約120メートルの白い風車が映える。北九州市若松区沖1・4キロの響灘。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を主体にした洋上風力発電設備の実証研究が進む。15日、ここを船で訪ねる見学会が開かれた。年間を通して安定した風が吹き、同市が洋上風力発電の誘致を進める海域だ。「風力産業は約2万点の部品が必要で自動車産業のように裾野が広い。新たな主力産業にしたいと考えています」。案内役の市エネルギー産業拠点化推進課の伊藤嘉隆主任は約60人の市民や企業関係者に語り掛けた。現在、響灘の洋上風力発電設備はこの1基だけだが、市は周辺海域約2700ヘクタールを「洋上ウインドファーム」とする構想を描く。出力3〜5メガワットの風車が数十基立地できると試算。8月以降に事業者を公募し、2021年度からの建設開始を目指す。
   ■    ■
 石油に替わる再生可能エネルギーの一つとして世界的に注目されている風力発電。北九州市は10年度から響灘周辺に風力発電産業を集積し、アジアをマーケットににらんだ生産拠点化を図る「グリーンエネルギーポートひびき事業」をスタートさせた。11年、ドイツの港湾都市・ブレーマーハーフェン市を訪れた市港湾空港局の光武裕次部長は港の光景に目を見張った。荷積み前の自動車などが並ぶターミナルに隣接して洋上風車の部品ターミナルがあり、発電機部分を収納する「ナセル」や、長さ数十メートルの羽根などが所狭しと並んでいた。港は風力発電所が林立する北海に近い。基幹産業の造船業が衰退した同市は06年以降、洋上風力発電設備の積み出し港化と部品工場などの関連企業誘致で復活を果たした。「北九州市とよく似ている。われわれも同じことができるはず」。光武部長は意を強くした。5月1、2の両日、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の関係閣僚会議の一つとして、同市で開かれるエネルギー相会合。再生可能エネルギーを含む「持続可能なエネルギー」もテーマとなる見通しだ。「地球に優しい風力発電は環境未来都市・北九州市にふさわしい。積極的に発信していきたい」と光武部長。市は会合の歓迎レセプションで各国閣僚に、洋上風力発電と「G7」、響灘のデザインを背にあしらった法被を着てもらい、国内外にアピールする方針だ。
■北九州市と風力発電…北九州市内には陸上12基、洋上1基の大規模風力発電設備が立地。年間で約1万1500世帯分の電気を賄うことができる。若松区には太陽光やバイオマスなども含めたエネルギー産業の集積が進んでおり、昨年7月、同区の響灘地区を電力産業の拠点にしようと、産学官でつくる「響灘エネルギー産業拠点化推進期成会」が発足した。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12337173.html
(朝日新聞 2016年5月1日) シャープ、2000人削減検討 国内社員の1割規模 太陽電池など
 シャープは台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買収されることが決まっているが、中国の景気減速もあって足もとの業績は悪化。2016年3月期は、最終的なもうけを示す純損益が2千億円を大きく超える赤字になりそうだ。12年と15年の希望退職で計約6千人が辞めるなど、人員を減らしてきたが、一層の削減に取り組む。社内には事業活動に影響が出るとして、慎重論もある。複数のシャープ関係者によると太陽電池の販売が落ち込んで、堺市の工場の生産が低迷。鴻海は太陽電池事業の抜本的な見直しを求めており、大幅に縮小するとみられる。本社の土地と建物は3月に売却し、いまは借りて使っている。移転先として、太陽電池の堺工場を活用する。あわせて管理部門の人員は減らし、本社の機能は効率化する。堺工場は、鴻海と共同で運営する液晶工場「堺ディスプレイプロダクト」に隣接しており、鴻海側も移転を求めていた。鴻海はシャープへの出資の契約に際し、既存の従業員の雇用は原則維持することで合意していた。シャープは想定以上の業績悪化で、鴻海から出資を受ける前に、合理化に取り組む。一方、鴻海が重視する液晶部門の技術者らには、業績に応じて高い報酬が得られる仕組みもつくる。
■合理化の主な検討内容
◆社員を2千人規模で削減
◆太陽電池事業を縮小
◆本社を大阪市阿倍野区から堺市の工場に移転
◆本社管理部門を効率化


PS(2016年5月12日追加):このような中、*3のように、目の前の(棚からぼたもちの)金に目がくらんで核のゴミ捨て場になるような後ろ向きで情けないことはしないで欲しい。何故なら、①玄海灘や農林漁業・観光業の盛んな周辺環境を汚す可能性があり ②それらにマイナスのブランドイメージを与える上 ③高レベル放射性廃棄物の最終処分方法はもっと安価で安全な方法がある からである。

*3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10208/310952
(佐賀新聞 2016年5月12日) 経産省、佐賀で核ごみ処分説明会、候補地、今年中に提示方針
 経済産業省は12日、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分方針に関する自治体向け説明会を佐賀市で開いた。処分の候補地に選定された場合、国との協議に応じる姿勢を示す佐賀県玄海町など県内14市町の担当者が参加。経産省側は「国が前面に立って丁寧な対話を重ねていく」とし、処分への理解を求めた。説明会では処分の候補地として適性が高い地域を今年中に提示する方針が改めて示された。終了後、玄海町の担当者は「周辺自治体のこともあるので、選定された場合のことはコメントできない」と話した。


PS(2016.5.13追加):自動車会社のテリトリーは下の地図のようになっており、日産自動車と三菱自動車が提携して販売・生産・研究開発を行えばシナジー効果が大きいと考える。しかし、ゴーン社長が言っておられるとおり、売上高で上位になることを目的とした合併では意味がなく、それでは瞬間的な売上高拡大に終わる。しかし、今後、燃料電池や蓄電池は、自動車だけでなく住宅にも使用していくものであるため、住宅団地の多くの家が、①太陽光発電 ②燃料電池や蓄電池 ③オール電化システム などを標準装備すれば、光熱費を0にした上、街を発電所にすることができる。そのため、ヤマダ電気や住宅会社と連携して、九州大地震や東日本大震災の復興、住宅団地の新規建設に入っていけばよいだろう。

     
   世界への自動車会社進出地図  日産・三菱の生産拠点  世界販売台数  世界の 
                              2016.5.13日経新聞     実質経済成長率


スマートハウスのモデル  スマートシティー            個別のスマートハウス

*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160513&ng=DGKKASDZ12I5Z_S6A510C1MM8000 (日経新聞 2016.5.13) 日産、三菱自に会長派遣 2370億円出資
 日産自動車は12日、2016年内をメドに2370億円を投じて、三菱自動車の株式の34%を取得すると正式発表した。会長を派遣し燃費データの不正問題に揺れる三菱自の再建を支援するほか、車の次世代技術の開発(総合2面きょうのことば)や両社の生産拠点を一体運用するなど連携を強化する。研究開発費の増大などで中堅以下の自動車メーカーの経営環境が厳しさを増すなか、日産は三菱自の不祥事を契機に大型再編に踏み切り規模拡大を狙う。日産と資本業務提携する仏ルノーに、三菱自を加えた15年の世界販売台数は959万台。1千万台前後で競り合うトヨタ自動車や独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズ(GM)の3強に迫る第4極が誕生する。日産と三菱自は規制当局の承認を経て16年5月末をメドに正式契約を結び、16年末までに全ての手続きを終える計画だ。第三者割当増資後の三菱重工業をはじめとする三菱グループの出資比率は現在の約3分の1から4分の1前後まで下がる見通し。12日に共同記者会見した日産のカルロス・ゴーン社長兼最高経営責任者(CEO)は「燃費不正にかかる消費者からの信頼回復に力を注ぐ」と強調した。ルノーとの資本業務提携を通じて構造改革を果たした日産の経験やノウハウを生かし、新たなパートナーとなる三菱自の再建を手助けする考えだ。三菱自の益子修会長は再建に踏み切った背景について「日産との提携は、信頼回復と経営の安定を目指す上で重要な道筋だ」と説明した。日産から技術者を受け入れることで、燃費不正の温床となった「開発部門を大きく変えるきっかけをつくれる点を期待している」と述べた。日産は三菱自に34%出資して株主総会における特別決議の拒否権を持つ。日産の出資後も三菱ブランドや経営の独立性は維持する。東南アジアなど新興国市場の開拓や購買部門の連携によるコスト削減を進めるほか、自動運転技術など幅広い分野で連携する。両社の国内外の生産拠点の相互活用も進める。操業度の低い工場に両社の車両を柔軟に振り向けられる体制にすることで、両社が世界に持つ各工場の稼働率を平準化する。日産は会長を含め3分の1の取締役を派遣する。会長を送り込むことで不祥事が相次ぐ三菱自の企業統治を強化するほか技術系役員も派遣し、長引く業績低迷で脆弱な開発力を底上げする。三菱自は11年に軽自動車で日産と提携後、5年かけて提携関係を深める中で「将来の資本提携を含めた提携拡大をゴーン社長と話し合ってきた」(益子会長)。今回の出資については燃費不正の発覚後、「ごく自然な流れで出てきた」(同)という。日産のゴーン社長も「燃費不正問題が今回の資本提携交渉を加速した面はあるが、継続的な検討の延長線上にあるものだ」と話した。環境規制の強化や自動運転車など次世代車の開発負担の増大から中堅の自動車メーカーは「単独での生き残りは難しくなっている」(益子会長)。日本では昨年にマツダがトヨタと包括提携したほか、海外では自動運転車の共同開発でフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が米グーグルの持ち株会社のアルファベットと提携するなど異業種間での提携も相次いでいる。


PS(2016.5.13追加):*5のように、再生可能エネルギーの導入拡大に向けて、マイクロソフト、フェイスブックなどの米主要企業60社超が、環境問題に取り組むNGOとともに新組織を設立したそうだ。発電ネットワークをうまく作るためには、ソフト企業の参加も不可欠であるため心強く、この傾向は米国だけでは終わらないだろう。

*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160513&ng=DGKKASGM13H1U_T10C16A5MM0000 (日経新聞 2016.5.13) 再生エネ普及へタッグ マイクロソフト・フェイスブックなど米主要60社超が新組織
 風力や太陽光など再生可能エネルギーの導入拡大に向け、マイクロソフトやフェイスブックなど米主要企業60社超が12日、環境問題に取り組む非政府組織(NGO)と新組織を設立した。米国における再生エネの安定調達や、環境問題に積極的なイメージの向上を目指す。新設した「再生可能エネルギー購買者連合(REBA)」には両社のほか、グーグル持ち株会社のアルファベット、アマゾン・ドット・コム、ウォルマート・ストアーズ、ゼネラル・モーターズ(GM)などが参加。環境NGOのBSRや世界自然保護基金(WWF)など4団体も加わった。加盟社はREBAを通じた電力の共同調達や、再生エネを調達しやすくする新技術の開発などに取り組む。米国内の再生エネの発電能力を2025年までに60ギガ(ギガは10億)ワット増やすことを目指す。米国では電力に関する規制が州ごとに異なり、企業の再生エネ調達拡大を妨げているとの指摘がある。REBAは大口需要家の連合として、関連規制の見直しなどを当局に働きかける。マイクロソフトのエネルギー調達戦略の責任者を務めるブライアン・ジャヌス氏は「自社の調達を増やすだけなく、他社と協力して企業が利用可能な再生エネルギーの総量を増やすことを目指す」と述べた。


PS(2016.5.14追加):*6-1、*6-2のような地方自治体の努力にもかかわらず、EVの普及には未だに充電設備の不足が挙げられるが、①自動車の蓄電池の性能を上げ ②駅・高速道路のサービスエリア・スーパー・マンションなどの駐車場におしゃれに太陽光発電の屋根を付け ③駐車場を使う人に低価格で充電させれば、EVの普及は加速されると考える。しかし、太陽光発電の設置に一定の角度をつけなければならないという規制や太陽光発電機器のデザインの悪さはネックになると思う。

   
        充電スタンド                      駐車場の太陽光発電屋根

*6-1:https://www.pref.saga.lg.jp/web/shigoto/_32796/_80473/_68646/_68663.html (佐賀県:EVとは)
 EVとは、“Electric Vehicle”の略で、文字どおり“電気の力で走る車”のことをいいます。従来のガソリン車が、ガソリンをエンジンで燃焼させ、車を駆動させるのに対して、電気自動車は電動モーターで車を駆動させます。
●EVってこんなところがすごい
○「地球」にやさしい
 走行中に二酸化炭素などの温室効果ガスをほとんど排出しないため、地球温暖化防止に役立ちます。
○「家計」にやさしい
 電気自動車は100%電気で走ります。電気代はガソリン代の1/3~1/9!また、減速時にエネルギーを回収できるため、エネルギー効率はガソリン自動車よりも飛躍的に上がります。
○「ひと」にもやさしい
 ガソリンを燃焼させないため、走行中の振動や騒音が少なく静かです。また、加速はガソリン自動車よりもパワフルです。(以下略)

*6-2:http://www.meti.go.jp/policy/automobile/evphv/town/state/saitama.html
(埼玉県HP:http://www.pref.saitama.lg.jp/life/3/14/48/)
 EV・PHVの本格普及は、将来の低炭素モビリティ社会の実現に欠くことのできないものである。今回のEV・PHVタウンの提案は、EV・PHVの県全域への普及と地球温暖化対策としての自動車からのCO2の削減はもちろん、県全体における生活レベルの向上に資するものである。このため、従前から行っているEV等の行政による率先導入や民間への導入支援などに加え、本県の地域特性に根ざした先導性、モデル性のある事業として、さいたま市(大都市)と熊谷市(中都市)を中心とした広域実施地域で、主に次の事業に積極的に取り組む。
  (1) パーク&ライド通勤(駅まで自動車を利用し公共交通機関で通勤)に対応したEV・PHVの
      検証 (熊谷市)
  (2) 晴天率が日本一で夏場の気温が非常に高い地域での太陽光利用の充電設備設置の
      検証(熊谷市)
  (3) カーナビゲーションシステムを活用した充電アクセスビリティの検証
      (さいたま市・熊谷市)
  (4) 産官民連携による駅前EVシェアリングの検証(さいたま市)
  (5) 小型EVや電動バイクによる小口配送の検証(さいたま市)
  (6) EV利用課金システムによるマンション等へのEV促進方策の検証 (県南地域)
  (7) 中山間地域でのEV利用の検証(レール&ライド、高齢者向けEV) (県北地域)
 これらは、県内外へ波及するものであり、既存の低燃費車の普及を目的とした「エコカー・エコドライブ連絡協議会」を発展的改組し、EV・PHVの普及を目的とする「(仮称)次世代自動車普及推進協議会」を設置して、自動車メーカーや県内市町村などと連携して行い、その効果を検証し、EV・PHVの普及につなげる。(以下略)


PS(2016年5月15日追加):*7-2のように、①対人関係をうまく築けず(言っても理解しない人とは話をしない選択もあるだろう) ②限られた対象にこだわる傾向があり(成功する人がそれに集中しているのは当たり前である) ③言語や知能に遅れがない(何の問題もない) 人を、アスペルガー症候群などという精神障害者に仕立て上げ、周囲の普通の人が支援や進路指導を行えば、例えば、最初に大陸移動説を唱えたドイツ人気象学者のウェグナーなどは精神障害者扱いされて重要な発見をすることができなかっただろう。何故なら、武田信玄が「動かざること山の如し」と言っているように、つい最近まで、「大地は動かない」というのが確固たる一般常識だったからである。
 つまり、与えられた過去の知識・ルール・その時点の普通であることに固執する人ばかりでは、(日本の産業界のように)根本の大枠を見直すことなく小さなカイゼン(改善)しかできない国民性になるのだ。そのため、*7-1は、支援と呼ぶ人権侵害で国力を弱める教育となりそうであり、注意すべきだ。

*7-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12357874.html?ref=pcviewpage
(朝日新聞 2016年5月15日) 障害ある子、学校が「カルテ」 小中高通じ支援へ 20年度以降
 個別カルテには子どもの障害や健康の状況、保護者と本人の希望や目標などを書き込む。卒業後は進学先に渡し、これまでの子どもの状況を把握してもらう。いまの学習指導要領では、子どもの目標や支援内容についての「個別の教育支援計画」や、教科ごとの指導状況などを記す「個別の指導計画」を作るよう勧めているが、義務化はしていない。文科省の15年度の調査では、特に支援計画は該当者のいる公立小中の1割、公立高校の4割が作成していなかった。さらにこうした計画を中学や高校に引き継ぐかどうかは各校が独自に判断している。このため新しい学校が障害に応じた最適な指導方針を把握しきれていない恐れがあり、特に高校では適切な進路指導がしにくい状況にあると文科省はみている。個別カルテは、いまの支援計画と指導計画をもとに、小学校から高校まで引き継ぐことを前提とした書式を目指す。文科省は20~22年度に順次始まる小中高校の新学習指導要領での義務化を検討する。義務化は公立小中の特別支援学級の子ども(15年5月で約20万人)と、比較的軽い障害や発達障害で通常学級に在籍しながら一部の授業を別に受ける「通級指導」の子ども(同約9万人)を中心に考えている。高校については18年度から始まる通級指導の生徒らを対象とする見込み。私立校に広げるかは今後検討する。今月中にも政府の教育再生実行会議が提言する見通し。文科省はカルテの詳しい中身や、個人情報が漏れない仕組みを詰める。(高浜行人)

*7-2:http://www.asahi.com/topics/word/発達障害.html (朝日新聞 2013年2月27日)
〈発達障害〉生まれながらの脳の機能障害が原因と考えられ、犯罪など反社会的な行動に直接結びつくことはないとされる。落ち着きがない注意欠陥・多動性障害(ADHD)、読み書きや計算など特定分野が苦手な学習障害(LD)などがある。アスペルガー症候群は対人関係をうまく築けず、限られた対象にこだわる傾向がみられるが、言語や知能に遅れがなく、周囲が障害を見過ごすケースも少なくない。文部科学省の調査(2012年12月)は、小中学校の通常学級の子の6.5%に発達障害の可能性があるとしている。


PS(2016年5月16日追加):*8のように、トヨタはFCV普及のため「主戦場」と位置づける米国市場で700台超のFCVを用意し1台5万7500ドル(約620万円)で販売したそうだが、トヨタのFCVの世界販売目標は「2020年ごろ以降に年3万台以上」で、テスラは2016年3月末に3万5千ドル(約380万円)と安くした新型EVを発表して1週間で30万台を超える販売をし、競争の主導権を握りつつあるそうだ。この値付けと販売目標の違いが、日本及び日本企業の環境車に対する意気込みのなさを表している。

*8:http://digital.asahi.com/articles/ASJ4C65GJJ4COIPE01P.html?iref=recob
(朝日新聞 2016年4月12日) トヨタ「ミライ」、米で完売 燃料電池車の主戦場
 燃料電池車(FCV)の普及に向け、トヨタ自動車が「主戦場」と位置づける米国市場。世界初の市販車「ミライ」は昨年秋の発売直後に用意した台数が完売し、滑り出しは好調だ。ただ日本と同様、燃料の水素を補給できる拠点は少ない。将来のエコカーの主役をめざす競争は、ライバルの電気自動車(EV)の後を追う構図で進みそうだ。米カリフォルニア州北部・ローズビルにあるトヨタの販売店。目立つ場所に深いブルーのミライが展示されていた。昨年10月の発売以降、4台が売れた。「エコで乗り心地も静か。これからのスタンダードになるはず」。同店のジュディ・カニンガムさんは話す。トヨタが米国でミライを売り出したのは日本の1年後。発売日は、1989年公開のSF映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」の中で、車型タイムマシンが訪れた日に合わせ、イベントで「未来が現実になった」とアピールした。米国では今年5月までの分として用意した700台超が、わずか1週間で売り切れた。「新しいもの好き」の富裕層らが買い求め、今も数カ月の納車待ちだ。トヨタ米国法人は17年までに3千台以上の販売を計画。広報担当者は「幅広い人に興味を持ってもらえるよう、米国への割り当てを増やしてほしい」と話す。
■長い走行距離が強み
 トヨタはFCVを「将来のエコカーの本命」と位置づけ、米国を中心に普及させる戦略を描く。最大市場のカリフォルニア州は、売られる車の一定割合を走行中に二酸化炭素を出さない車とする規制を18年モデルから強化し、メーカーも対応を迫られるためだ。トヨタはミライの購入者向けに手厚い支援策を打ち出した。3年間で1万5千ドル(約160万円)を上限に燃料代を肩代わりし、定期点検も無料にした。米国は国土が広く、FCVは一回の水素補給でガソリン車とほぼ同じ距離を走れるのが強み。水素ステーションの建設費は、安全規制が緩いこともあり、日本の半分ほどの200万~300万ドル(2億~3億円余り)で済む。同州エネルギー委員会のジム・マッキニー氏は「利用が増えれば採算性が高まる」と話す。
■EV、値下げで攻勢
 ただ、順調に普及が進むかは見通せない。FCVを米国で販売(リース含む)しているのは、トヨタと韓国・現代自動車のみだ。ほかに具体的な投入計画を示しているのは、「年内」とするホンダに限られる。次世代エコカーでは米テスラ・モーターズや日産自動車などが推進するEVがライバル。充電スタンドはカリフォルニア州に1千カ所以上あるが、一般向けの水素ステーションは昨年末時点で5カ所ほど。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者は「FCVは馬鹿げている」などと批判を繰り返す。ミライは1台5万7500ドル(約620万円)で、購入時に行政の補助も1万3千ドル(約140万円)つく。一方、テスラは3月末、3万5千ドル(約380万円)と大幅に安くした新型EVを発表。予約は1週間で30万台を超え、競争の主導権を握りつつある。これに対し、トヨタのFCVの世界販売は「20年ごろ以降に年3万台以上」が目標。米調査会社IHSオートモーティブは、メーカーの少なさなどから、FCVの浸透に10~20年かかると予想する。水素ステーションの整備と、「値ごろ感」のある新型車の投入を早められるかが、競争を左右しそうだ。

<バイオマスについて>
PS(2016年5月27日追加):*9-2の「輸入ヤシ殻を燃料にしたバイオマス発電を稼働させるのが固定資産税など年間約8千万円の税収増に繋がる」としているのは、理由を説明するのもアホらしいほど先見性のない判断で、これまで給料や報酬をもらって1年中唐津市の仕事をしてきた人たちは何を考えてきたのかと思う。 一方、*9-1の佐賀市ごみ焼却施設や下水浄化施設の処理過程で排出される有機物・二酸化炭素を有効利用するバイオマス(生物資源)事業については、佐賀新聞が「未知の領域なので費用対効果に疑問がある」と記載しているが、既知の領域なら先進性はなく、その先進性ゆえに国の補助がついており、石垣島では既に成功している確実性の高い事業であるため愚かな批判だ。ユーグレナという完全栄養の藻類は、家畜や養殖魚の安価で良質な餌にも使えるため、北部の佐賀県西部広域ごみ処理施設や下水道処理施設でも同様にCO2やユーグレナを生産すればよく、これは、ゴミや下水道が資源に変わる環境・生物の最先端事業であるため大切に育てて軌道に乗せるべきだと、私は考える。ただし、利益を出して市民のために使うべきで、無駄遣いか否かは将来にわたっての収益性で決まるため、投資金額を最小に抑えながら結果を出すのが投資の常識だ。そして、このような状況なら、唐津市の人がふるさと納税すると、返礼品で選べば玄海町、使途で選べば佐賀市になるだろう(笑)。

*9-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/316073
(佐賀新聞 2016年5月27日) 佐賀市の巨額バイオマス事業、未知の領域、費用対効果は?
 佐賀市は、ごみ焼却施設や下水浄化施設の処理過程で排出される有機物や二酸化炭素(CO2)を有効利用するバイオマス(生物資源)事業を次々と打ち出している。自治体として全国初のCO2販売や藻類産業の集積など先進的な取り組みが注目される一方、昨年度は関連事業費に約15億円を投じた。下水施設では今後、約48億円の大型事業が控える。先進分野の半面、「未知の領域」でもあり、巨額投資に費用対効果を問うなど慎重意見も出ている。佐賀市は2014年、国の「バイオマス産業都市」に認定された。市北部のごみ焼却施設などがある清掃工場(高木瀬町)と南部の下水浄化センター(西与賀町)で「省エネ・創エネ」の推進を掲げる。生産可能な資源として注目される藻類培養の研究・実用化に向け企業とも連携している。
▽国の補助前提 
 清掃工場では、今夏から藻類培養などを手掛ける「アルビータ」にCO2を販売する。焼却時の排ガスからCO2を回収し、パイプラインで数百メートル離れた同社の培養施設に直接供給する。「液化CO2の市場相場1キログラム当たり60円の半値近い36円で供給できる」(市担当者)という。市は今後、32年度までの18年間でCO2タンク増設工事などに16億円、維持管理費に7億4000万円の支出を見込む。一方、CO2販売収入は、工場北側の21ヘクタールに藻類企業が進出することを前提に約17億円と算出した。さらに国庫補助約6億円を見込んで収支ゼロになる。市は「既に5億円の補助を受けている。赤字にならないようCO2の価格を設定した」と安定収支に自信を見せる。ただ、この収支には21ヘクタールの用地買収と造成の費用(未定)は含まれていない。清掃工場の耐用年数は32年度までで、その後も同じ場所で稼働できるか、企業側が培養を継続するかなど先行きが不透明な要素もある。市上下水道局の下水浄化センターでも同様の事業が進む。藻類関連の「ユーグレナ」が培養実験を進めている。国土交通省事業と連動し、発酵バイオマスを活用した藻類培養とメタンガス発電の実現を目指す。本年度は設計費約9000万円を計上、今後の総事業費は約48億円に上る。費用は国が約半分負担する。
▽環境負荷低減 
 巨額投資なだけに、市議からは事業の説明不足が指摘されている。収入には置き換えられない環境負荷低減も投資効果として掲げており、予算案を審議した市議会では「費用対効果が分からない」「やる必要があるのか」など批判的な意見が相次いだ。市環境部の喜多浩人部長は「産業集積による雇用や税収、低炭素社会の実現など、単純な販売収入以外のメリットもある」と強調する。市上下水道局下水プロジェクト推進部の橋本翼部長は「市のプラスになる事業だということを丁寧に説明していきたい」と理解を求める。

*9-2:http://qbiz.jp/article/87500/1/ (西日本新聞 2016年5月26日) 取得8億円 3億円で売却 唐津市 宅地造成計画破綻 塩漬け36年 バイオマス発電用地に、議案提出へ
 佐賀県唐津市は25日、宅地造成計画が破綻して36年間塩漬けになった土地を、バイオマス発電用地として民間企業に3億円で売却する議案を発表した。市土地開発公社などから約8億円で取得した土地で差し引き5億円の損失。市は「企業進出で税収を得られ、長期的には利益になる」と説明するが、市民からは疑問の声も上がる。6月1日開会の市議会定例会に提案する。市によると、土地は同市佐志の山林や原野など約7万5千平方メートル。もともと民有地で、公社が宅地分譲を目的に1980年以降に地権者から買い取った土地が大部分を占める。市は当時、近くの国道204号バイパス造成などを背景に約100棟の住宅建設を計画。ところが宅地ニーズが変化して計画は破綻し、ほかの用途も見つからないまま塩漬け状態になり、金融機関への利息が膨らんだ。市は今春までに、公社などから土地を9億5500万円で取得し活用策を検討。このうち約8億円分の土地について、バイオマス発電事業用地として参入企業を公募し、宮崎県の業者の関連会社への売却を決めた。同社は3年後を目標に、輸入ヤシ殻を燃料にした発電所を稼働させるという。今回、土地の売買で発生する損失は約5億円。市財務部は、発電所稼働で固定資産税など年間約8千万円の税収増につながるとし、「差額は5〜6年で回収でき、その後も税収を得られる。塩漬けの土地を有効に活用する投資で、問題はない」と強調する。これに対し、住民団体「唐津をよくする会」の木村真一郎代表は「塩漬けの土地を処分する事情は分かるがしっくりこない。バブル前のこととはいえ、市や市議会はまず、使い勝手の悪い土地を購入した反省を示すべきではないか」と話している。

<EVへの転換>
PS(2016.6.7追加):*10のように、重慶長安汽車は、エコカーの普及拡大を狙う中国政府の国策に沿って、今後10年でEV・PHVなどの新型環境車の開発に総額180億元(約3千億円)を投入し、経営資源を集中して勝ち残りにつなげるそうだ。これが正解であり、これまで化石燃料車を作ってこなかった自動車後発地域ほどEVへの転換はやりやすく、アフリカに普及するのもEVだろう。そのため、日本勢がしがらみに束縛されてEVへの転換を遅らせれば遅らせるほど、新興国に引き離されると考える。

*10:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160607&ng=DGKKZO03293920W6A600C1FFE000 (日経新聞2016.6.7)長安汽車、エコカー開発に3000億円 10年で34車種投入
 中国自動車大手、重慶長安汽車は6日、2025年までに総額180億元(約3千億円)を新型環境車の開発に投じる方針を明らかにした。今後10年間で34車種の電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)を投入し、累計200万台の販売を目指す。エコカーの普及拡大を狙う中国政府の国策に沿った動きで、経営資源を集中して勝ち残りにつなげる。重慶市で開催中の「国際自動車フォーラム」で朱華栄総裁が明らかにした。自主ブランド「長安」でセダンや多目的スポーツ車(SUV)、商用車タイプの新型環境車を投入する。全体の8割はEVとなる見通しだ。朱氏は「自動運転など最新技術の実用化も進めていく」との方針を示した。電池や制御システムなどの基幹技術については合弁を組む米フォード・モーターなどから協力を得るほか、自主開発にも力を入れる。すでに英国や日本、米国にも拠点を設けて「世界規模で環境車の研究開発を加速している」(朱氏)という。日本勢も含めた有力部品メーカーに幅広く協力を呼びかけていく考えだ。長安汽車は低価格の自主ブランド車でシェアを急速に高めている。環境車の拡充をテコに25年には現在の2倍強となる340万台の「長安」車を販売し、世界10強入りを目指す。


<官主主義では成功しない理由>
PS(2016.6.13追加):*11-1のように、税金345億円を無駄にすることを何とも思わず、国民生活に直結する社会保障については、「税と社会保障の一体改革」で「消費税を増税し、社会保障をカットする」としているのが官主主義とそれに便乗している政治家・メディアである。その官主主義は、欧米に見本があり、国を挙げて欧米を模倣して追いつかなければならなかった明治初期には効率的に機能したが、新しい財・サービスを創造していかなければならない現代では、上のように、付加価値を上げるのをむしろ邪魔しているのだ。さらに、せっかく厚生省と労働省を合併して小さな政府を目指していたのに、*11-2のように、分割提言してさらに縦割り行政にするというのもどうかと思うが、結果が出ず効率の悪い仕事をしながら何かと言えば「人が足りない」と言うのも、税金で運営されている官の性癖である。

*11-1:http://www.sankei.com/premium/news/160612/prm1606120009-n1.html (産経新聞 2016.6.12) 凍らない凍土壁に原子力規制委がイライラを爆発「壁じゃなくて『すだれ』じゃないか!」 税金345億円は何のために
 「本当に壁になるのか?壁じゃなくて、“すだれ”のようなもの」。「壁になっているというのをどうやって示すのか? あるはずの効果はどこにあるのか?」。東京電力福島第1原発で汚染水を増やさないための「凍土遮水壁」が運用開始から2カ月たっても、想定通りの効果を示さない。廃炉作業を監視する原子力規制委員会は、6月2日に開かれた会合でイライラを爆発させた。凍らない部分の周辺にセメント系の材料を入れるという東電の提案に対しても、規制委側は「さっさとやるしかない」とあきれ果てた様子。約345億円の税金を投じた凍土壁の行方はどうなってしまうのか。会合は、冒頭からピリピリと緊迫した空気が漂っていた。東電の担当者は2分間程度の動画を用意していた。凍土壁が凍っている証拠を視覚的にアピールするため、地中の温度の変化を動画でまとめていたのだ。ところが、規制委の更田豊志委員長代理は「温度を見せられても意味がない。凍らせてるんだから、温度が下がるのは当たり前。動画とか、やめてください」とバッサリ。東電の担当者は遮られたことに驚いた様子で、「あ、はい、分かりました。はい。それでは…」と次に進むしかなかった。
●セメント注入、それでも「凍土壁」か?
 規制委側から質問が集中したのは、最初に凍結を始めた海側(東側)の凍土壁の効果だ。地中の温度は9割以上で氷点下まで下がったが、4カ所で7・5度以上のままだった。さらに、壁ができていれば減るはずの海側の地盤からの地下水のくみ上げ量が、凍結の前後で変わっていないことも判明した。更田氏は「『壁』と呼んでいるけれども、これは最終的に壁になるのか。壁じゃなくて『すだれ』のようなもので、ちょろちょろと水が通るような状態」と指摘した。地下水のくみ上げ量も減っていないことについて、「あんまりいじわるなことは聞きたくないが、これは当てが外れたのか、予想通りだったのか」と東電の担当者を問いただした。セメント系の材料を注入し、水を流れにくくする追加工事が東電から提案があったものの、これではもはや「凍土壁」ではなくなってしまい、仮に水が止まっても凍土壁の効果かどうかは分からなくなる。検討会はこの日、追加工事に加えて、凍土壁の凍結範囲を拡大し、海側に加えて山側も95%まで凍結する計画も了承した。だがそれは、凍土壁の効果や有用性を認めたというわけではない。「安全上の大きな問題はなさそう」だから、どうせ温度を下げるなら、早いほうがいいという合理的な判断だ。
●遠い「完全凍結」 根強い不要説
 最も注目すべきなのは、更田氏がこの日、山側もすべて凍らせる「完全凍結」について、「今のままでは、いつまでたっても最終的なゴーサインが出せない」と大きな懸念を示したことだ。規制委は当初から、凍土壁にはあまり期待していなかった。むしろその費用対効果などをめぐり「不要説」が出るなど、懐疑的な立場をとっていた。それでも計画を了承したのは、最も大きなハードルだった「安全性」を東電が担保すると約束したからだ。凍土壁のリスクは、完全凍結の状態で発生する。予想を上回る遮水効果が発現し、建屋周辺の地下水が急激に低下した場合、建屋内の汚染水と水位が逆転して汚染水が環境中に漏れ出す危険がある。このため、東電は地下水の流れで下流側にあたる海側の凍土壁から段階的に凍結させ、水位の低下を防ぐ計画だったが、仮に海側の壁が「すだれ」の状態のまま上流の山側を完全凍結すれば、水位がどんどん下がっていく可能性がある。東電は計画で、山側を完全凍結して遮水効果が80%以上になった場合、水位逆転の危険を回避するためいったん凍結をやめるとしているが、この「80%」を正確に判断するすべがないというのが現状だ。「凍土壁の遮水性を示せない限り、このまま膠着状態になる可能性がある」。更田氏は、はっきりとそう指摘している。安全上のリスクを抱え、膨大な国費をかけながら、なぜ凍土壁を推進しなくてはならなかったのか。仮に失敗した場合、どこが責任を取るのか。今後も目が離せない状況に変わりない。(原子力取材班)
《用語解説》凍土遮水壁 凍土壁は、1~4号機の建屋周辺の土壌を取り囲むように長さ約30メートルの凍結管を埋め込み、マイナス30度の冷媒を循環させて地下に総延長約1500メートルの氷の壁をつくる工法。この巨大な「壁」で建屋に流れ込む地下水をせき止め、汚染水の発生そのものを抑えるのが狙い。

*11-2:http://mainichi.jp/articles/20160514/k00/00m/010/037000c
(毎日新聞 2016年5月13日) 分割提言に「あまりにも人が足りない」
 塩崎恭久厚生労働相は13日の閣議後記者会見で、自民党の若手議員がまとめた厚労省を分割する提言について、「議論は歓迎したいが、膨大な業務量を踏まえると根本的に人員を増やさない限り、処理しきれない」と注文を付けた。提言は、厚労省を▽年金・医療・介護を担う「社会保障」▽少子化対策などを担う「子ども子育て」▽雇用や女性支援を担う「国民生活」−−の3省に分割する案などの検討を求めた。昨年7月1日時点で同省の職員数は3473人だが、農林水産省は3568人、国土交通省は4568人いる。塩崎氏は「あまりにも人が足りていない」と述べた。

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 03:53 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.5.9 タックスヘイブン税制に関するパナマ文書と民主主義国の犯罪認定について (2016年5月10、11、17日に追加あり)
   
       2016.4.30西日本新聞               標的にされた人       2016.4.7 
                                                       朝日新聞
(1)租税法律主義とタックス・ヘイブン税制の意味
1)租税法律主義について
 租税法の基本原則は、*3-1に書かれているとおり、租税法律主義と租税公平主義であり、租税法律主義は、憲法84条の「租税を課し、又は現行の租税を変更するには法律又は法律の定める条件によることを必要とする」と規定していることから導かれる。そのため、法律に基づかずに租税を賦課・徴収することは、日本国憲法違反であり不可能だ。

 また、相手によって課税要件や課税手続を変えたり、税務署の判断で新たに税金を創設したりすれば経済活動に混乱が生じるため、租税法律主義の内容には、①課税要件法定主義 ②課税要件明確主義 ③遡及立法の禁止(新しい法律を過去に遡って適用しないこと) などが含まれる。

2)タックス・ヘイブンの本当の意味
 現在、全世界には、*3-2のように、 60以上のタックス・ヘイブン「Tax Haven」の地域・国が存在し、正確に翻訳すると「税金天国」である。また、この制度が創設された趣旨は、小さな島国や開発途上の地域など経済発展に不利な要素を持つ地域に対し、経済活性化を目的として、国や地域政府が徴税優遇制度を実施しているものだ。

 そして、この税制を利用すると、金融資産を低税率で運用できるため、例えば英国領のケイマン諸島には世界の一流とされる金融グループを含めて600あまりの金融機関が拠点を置き、預かり資産残高は、東京、ロンドン、ニューヨーク、香港に次ぐ世界第五位の規模になっているわけである。さらに、欧州、シンガポール、香港、中国はじめ多くの国々に、法人税率を減税して海外投資を受け入れ、自国経済の振興に役立てようと優遇税制を導入している地域もあるので、例えば復帰後の国後島と択捉島はタックス・ヘイブンにするなど、日本でも応用できる場所はある。

3)日本における現在の論調
 しかし、*3-2のように、日本が主導して、2000年にOECD(経済協力開発機構)によるマネーロンダリング対策や公正な課税制度確立に向けた制裁により、英領ケイマン諸島、バミューダ、キプルス、マルタ、モーリシャス、サン・マリノの6カ国・地域はブラックリストから免れ、アンドラ、ジブラルタル、モナコ、リヒテンシュタイン、シンガポール、スイス、ベルギー、ルクセンブルク、オーストリアが国際的な徴税制度に非協力的な地域が名ざしされ、フィリピン、マレーシア、コスタリカ、ウルグアイは要注意国とされた。そのため、これらの国々は、気持ちのよい筈がない。

 また、近年、テロ資金規正(アングラ・マネーへの締め付け)が援用され、富裕層の隠し資産、裏金の解明へと拡大適用されつつある。しかし、上の理由から、合法的に設立されたタックス・ヘイブンに所在する会社に資金を預ける人を、根拠もなく違法行為をしているかのように書くのは、日本国憲法違反である。

(2)法治主義の民主主義国家とは言えない日本メディアの論調
 西日本新聞は、*1-1のように、「①日米欧と新興国のG20が脱税や不当な課税逃れを阻止するため、国際的な監視体制を強化する方向で検討に入った」「②パナマはじめ開発途上国に銀行口座など税務情報を共有する枠組みへの参加を促し、隠し資産に対する包囲網を構築する」「③OECDも13日に税務担当者を集めた緊急会合をパリで開き、具体策を協議する方針だ」「④タックスヘイブンを使った政治指導者らの不透明な資金取引を暴いたパナマ文書問題は、一部の富裕層と大多数の国民の間の格差拡大が深刻化する中、各地で波紋を広げている」と記載している。

 もちろん、①のような脱税や違法な課税逃れはいけないので、②③のように税務情報を共有する枠組みは必要かも知れないが、④のように、その標的がどこかの国にとって不都合な政治指導者で、タックスヘイブンに所在する会社に預金を預けていただけで悪いことをしたかのように書くのは、権力を失えば投獄されるなどのいろいろな政治情勢の国がある現在、適切ではない。

 パナマ文書は南ドイツ新聞が入手して共同通信も参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が分析し、英国のキャメロン首相の父親(故人)が租税回避地のパナマにファンドを開設していたとして非難している。しかし、罪刑法定主義・責任主義が近代国家の基本原則であるため、父親が合法的に開設して遡及効もないファンドの責任を、子であるキャメロン首相が負うことはあり得ず、このような論調は、近代国家の基本原則を無視している。

 また、フランスの大手銀行ソシエテ・ジェネラルやスイスの欧州サッカー連盟(UEFA)などに捜査が拡大しているそうだが、合法的であれば訴訟で罪にはならないだろう。

 そのため、*1-2のように、不法な課税逃れを阻止するための国際的連携はあってもよいが、違法でないことを如何にも悪いことをしたかのように書くと、それこそ名誉棄損・侮辱による人格権の侵害という不法行為になる。

(3)燃え上がったメディアのネットワークが追及した内容の非民主性
 TPPの膨大な文書を、ジャーナリストの国際的なネットワークが翻訳し解明したという話は聞かないが、*1-3のように、共同通信も参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の記者は、タックス・ヘイブンに設立された法人の所有者を示す株主名簿を足掛かりに記者の勘も使って書類を絞り込み、最後は直接取材で裏付けを取りながら報道を続け、「こちらではすごい反応だ」「やったぞ」と成果を喜んでいるそうだ。しかし、タックス・ヘイブンに法人を作ることは違法ではなく、出資した人も違法ではないため、違法行為をしていない人の名簿を提供したモサック・フォンセカ事務所の方がプライバシーの侵害にあたる。

 なお、*1-4のように、南ドイツ新聞の記者がタックス・ヘイブンを利用した不透明な金融取引を暴いたそうだが、その文書には、「①プーチン露大統領の友人」「②中国の習近平国家主席の親族」「③麻薬カルテルなど犯罪組織の関係者も登場した」があったとのことである。100歩譲って①②が違法行為だったとしても、①のような友人の行為の責任を問われることは皆無であるし、②のような親族の行為の責任を問われることも近代法に反しているため、①②を③と並べて記載し、如何にも黒い事象であるかのような示唆を与えるのは名誉棄損であり、政治活動の妨害にあたるだろう。

 なお、モサック社が作ったペーパーカンパニー数千社の代表を務める女性が貧民街に住んでおり、わずかな報酬で名義を貸して「何の会社か、誰に売られたか知らない」などというのは、仮に本当であれば、モサック社とその女性の方に詐欺罪が発生すると考える。

(4)標的は誰で、目的は何なのか
1)標的は政治家と有名人
 朝日新聞・日経新聞は、*2-1、*2-3のように、パナマ文書の影響で英国のキャメロン首相が苦境に立っており、中国の習近平国家主席・ロシアのプーチン大統領・ウクライナのポロシェンコ大統領の親族・知人・本人の名前もあり、10カ国の現旧指導者12人とその親族60人余も浮かび上がり、「納税者の多くが税金の負担に苦しんでいるのに、税金を課す側の統治者やその周辺は特権を使って蓄財に励み、税逃れの手立てを着々と打っているので、納税者の怒りは大きい」と、妬みを煽る報道をしている。

 しかし、違法行為ではないのに、パナマ文書に親族、知人、本人などの名前があるだけで、納税者の不公平に対する怒りや不信感に結びつけて妬みを煽るのは、日本独特の感情論であり、論理的ではない。

 そのため、不法な税逃れという事実もないのに悪役に仕立て上げられた首脳や国々は、G7サミット(伊勢志摩サミット)の議長国を務める日本に、金のためにリップサービスをすることはあるかも知れないが、日本を民主主義の同じ価値観を持つ国と認めることはないだろう。

 なお、*2-2では、クレディ・スイス、ソシエテ・ジェネラル、UBS、HSBCなど欧州・アジアの主要行が挙げられているが、具体的にどういう法律違反をしたのか不明であり、多分、法律違反はしていないと思われるため、名誉棄損かつ営業妨害に当たる。

 また、*2-4のように、パナマ文書には、日本関係者は名誉教授や大手企業役員名もあったとしているが、タックス・ヘイブンを使って合法的に節税するのは、違法行為ではないため罪にならず、これは法人に限らず個人も同様である。それにもかかわらず、*2-5も、思わせぶりな書き方で、佐賀の住所にも3人のパナマ文書関係者がいたと記載しているが、何が違法行為にあたるのかを記載できなければ単なる名誉棄損記事にすぎず、メディアの記者たちの法律知識と見識のなさを露呈している。

2)目的は権力闘争
 佐賀新聞の2016年5月6日、*2-6のように、「クリントン前米国務長官(弁護士)が、在任中に公務で私用メールを使った問題で、CNNテレビは5日、連邦捜査局(FBI)が数週間以内にクリントン氏本人の事情聴取を行う見通しだ」としている。

 しかし、私は、クリントン氏のメール問題は「違法で悪い」とのみ書かれているが、FBIに正面からは言えないとしても、そうした方がむしろ守秘義務が果たせた場合もあっただろうと考える。私は1996~8年頃、アメリカ系のビッグ4でM&Aや組織再編に関する仕事をしていたが、事務所のメールにすべてを添付すると、誰かに見られているらしく情報が漏れるため、わざわざFaxや郵便にも分割して資料を送り、そのすべてを見なければ内容がわからないようにしていた。つまり、よいこととは思わないが、アメリカのIT環境は、20年前からそのくらいシビアなレベルだったのである。

<法治主義の民主主義国家と言えない日本の論調>
*1-1:http://qbiz.jp/article/84693/1/
(西日本新聞 2016年4月13日) G20、税逃れ監視強化 パナマ文書 財務相会議で協議へ
 日米欧と新興国の20カ国・地域(G20)が脱税や不当な課税逃れを阻止するため、国際的な監視体制を強化する方向で検討に入ったことが12日分かった。パナマをはじめ途上国に銀行口座など税務情報を共有する枠組みへの参加を促し、隠し資産に対する包囲網を構築する。経済協力開発機構(OECD)も13日に税務担当者を集めた緊急会合をパリで開き、具体策を協議する方針だ。タックスヘイブン(租税回避地)を使った政治指導者らの不透明な資金取引を暴いた「パナマ文書」問題は、一部の富裕層と大多数の国民の間の格差拡大が深刻化する中、各地で波紋を広げている。仲介した大手金融機関に対する捜査も欧州で相次ぎ、追及の動きはさらに強まりそうだ。G20は14日から米ワシントンで開く財務相・中央銀行総裁会議でこの問題を協議し、15日に採択する共同声明で対処方針を打ち出す。麻生太郎財務相は12日の記者会見で「G20で租税回避や脱税の防止が議論される」との見通しを示した。税務情報を共有する枠組みづくりはOECDが主導して進め、2017年にも各国間の情報交換がスタートする。日本を含め100程度の国・地域が参加予定で、G20として、現時点で未参加のパナマやナウル、バーレーン、バヌアツにも参加を呼び掛ける方向だ。これまで慎重だったパナマが参加の意向をOECDに先週伝えるなど前向きな動きが出始めており、体制強化を急ぐ。G20では、最近の円高進行で日本が関心を寄せる為替問題も協議。「相場の過度な変動は経済に悪影響を与える」との認識を共有する一方、通貨の競争的な切り下げを回避することも確認する。減速気味の世界経済を下支えするため、金融緩和だけに頼らず、財政政策や構造改革を活用した政策総動員の必要性でも一致する見通しだ。パナマ文書は南ドイツ新聞が入手し、共同通信も参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が分析した。
   ◇   ◇
■巨大余波、捜査 首脳やスポーツ界も 
 タックスヘイブン(租税回避地)を経由する金融取引の一端をあぶり出した「パナマ文書」の余波が、さらに広がっている。英国のキャメロン首相は過去に投資で利益を上げたことを認め、批判の矢面に立たされた。大手金融機関やスポーツ界にも捜査のメスが入り、課税逃れへの国際的な非難は高まる一方だ。文書が暴いた巨額投資疑惑で、グンロイグソン首相が辞任に追い込まれたアイスランドに続き、激震に見舞われているのが英国。ロンドンの首相官邸前では9日、キャメロン氏に抗議する千人以上の市民が「キャメロンは退陣しろ」と糾弾するデモで気勢を上げた。2013年の主要国首脳会議(ロックアーン・サミット)は、多国籍企業の課税逃れを防ぐ国際ルール策定が首脳宣言に盛り込まれた。取りまとめに奔走したのが議長を務めたキャメロン氏だ。ところがパナマ文書は、キャメロン氏の父親(故人)が租税回避地のパナマにファンドを開設していたことを明らかにした。当初のらりくらりと追及をかわしたキャメロン氏だが、ファンドに投資して利益を得ていたことを結局認めた。違法性はないと主張しているが、野党や国民から「偽善者」と非難され、納税記録の公表に追い込まれるなど防戦一方。「もっとうまく対処すべきだった」と悔やんでいるというキャメロン氏は、5月の伊勢志摩サミットにも招待されている。南米アルゼンチンでは昨年12月に就任したマクリ大統領が、父親がバハマに設立した会社との関係を問われ、検察が裁判所に捜査許可を求める事態に発展した。
   ■    ■
 神経をとがらせているのは、各国指導者にとどまらない。租税回避地で約千社の法人設立を仲介したフランスの大手銀行ソシエテ・ジェネラルの本社は、当局の家宅捜索を受けた。スイスでは欧州サッカー連盟(UEFA)の本部が捜索を受けるなど、捜査は拡大している。パナマ文書は約1150万通に上り、共同通信などが参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が分析している。出元となった法律事務所モサック・フォンセカがある“震源”パナマでは、バレラ大統領が独立調査委員会の設置を発表、金融制度の信頼回復へ重い腰を上げた。こうした動きは、各国が不透明な金融取引を是正する上で一定の効果をもたらしそうだ。一方、習近平国家主席らの親族や、プーチン大統領周辺の人物の疑惑が浮上した中国やロシアは影響を食い止めようと必死。中国では報道が規制されている。ロイター通信は「非民主的な体制下では、パナマ文書の影響は限定されるだろう」と指摘した。
▼タックスヘイブン 税金を免除したり非常に低く設定したりしている国や地域。タックスは税金、ヘイブンは避難所を表す英語で、日本語では租税回避地と呼ばれる。タックスヘイブンに法人などを設立して海外から金融資産を移せば、本国での課税を大きく免れることができる。産業に乏しい国などが、雇用や外資獲得のために設定している事例が多い。

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/301041
(佐賀新聞 2016年4月16日) G20、課税逃れ阻止へ制裁検討、非協力国を特定、政策総動員
 米ワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は15日閉幕し、国際的な課税逃れを阻止するため連携を強化する声明を発表した。資金の流れの監視を強め、新たな基準で非協力国を特定し制裁も検討する。景気を下支えする政策総動員で合意し、機動的な財政出動の活用を強調した。タックスヘイブン(租税回避地)を使った不透明な取引を明るみに出した「パナマ文書」問題を受け、課税逃れ対策に焦点が当たる異例の会合となった。不正な資産隠しに対し実効性のある国際包囲網を築けるかどうかが今後の課題となる。

*1-3:http://qbiz.jp/article/86029/1/
(西日本新聞 2016年4月30日) 『パナマ文書』、取材活動の舞台裏
 タックスヘイブン(租税回避地)の実態を明らかにした「パナマ文書」は、1日に千通の書類をチェックしても30年以上を要するほどの膨大な量だ。共同通信も参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の記者は、回避地に設立された法人の隠れた所有者を示す株主名簿を足掛かりに、記者の勘も使って書類を絞り込み、最後は直接取材で裏付けを取りながら報道を続けている。「レジスター・オブ・メンバーズ」と題された紙に、個人の実名、住所、そして株数、日付。通常は公開されることのない、回避地法人の株主名簿だ。そこに「イイダ・マコト」の名があったことが、日本の警備大手セコム創業者に関連した法人を発見するきっかけとなった。パナマ文書は回避地法人設立を支援する法律事務所「モサック・フォンセカ」の内部書類で、ICIJが南ドイツ新聞を通じ入手した。書類は約1150万通に及ぶ。ICIJは全資料を電子的に検索できるようデジタル処理し、国名や主要都市名をキーワードとして絞り込んだり、気になる人名や企業名を含む文書を抽出したりする環境を整えた。
▼「記者の勘」駆使
 だが資料にあるのはアルファベットの氏名と住所だけという場合も多い。「あの著名人では」と推測しても空振りとなることが大半だ。回避地に法人をつくること自体は違法ではなく、本人の説明で新たに分かる事情もある。本人や所属組織への直接取材は不可欠で、最後はペンとメモ帳を手にした伝統的取材となった。株主とは別に役員名簿もあるが、その氏名は当てにならない場合も多い。表面的な代表者となり公文書で明らかになる場面があるため、回避地各地にある名義貸し会社を通じて形式上の役員を登録しているケースが多いからだ。一方、モサック事務所と関係者のメールやファクスも多数ある。時には法人設立の本当の動機や、生々しいやりとりも記録されている。日付が直接書かれていない書類でも、メールに添付されたものなら、メールの日付で時期が特定できる場合があった。
▼厳重に秘密管理
 ICIJはパナマ文書を電子的に管理し、不正アクセスできないよう厳重に守られた特別なウェブサイトを通じて参加報道機関の担当記者だけが閲覧できるようにしている。同時に、担当記者限定の電子会議室を用意し、国境や時差を超えて議論も重ねた。その中で各国記者は、分析の手法や政治家らへの質問状のひな型、取材の進め方を固めていった。日本時間4月4日午前3時に報道が開始されると、影響は予想を超えて各国に広がった。「こちらではすごい反応だ」「やったぞ」。参加した記者の書き込みが飛び交った。

*1-4:http://mainichi.jp/articles/20160507/k00/00m/030/066000c?fm=mnm
(毎日新聞 2016年5月6日) 情報流出警戒、ネット遮断 入手の独紙記者
 中米パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した内部文書「パナマ文書」を入手した独大手紙、南ドイツ新聞のバスティアン・オーバーマイヤー(38)と同僚のフレデリック・オーバーマイヤー(32)両記者が初めて日本メディアの取材に応じ、租税回避地(タックスヘイブン)を利用した不透明な金融取引を暴いたスクープの裏側を語った。「データに興味はないか。提供する用意がある」。タックスヘイブンを利用した汚職事件などを長年報じてきたバスティアン記者に暗号通信で連絡が届いたのは1年以上前のことだ。「この文書が報じられることで犯罪行為を明らかにしたい」と提供者は訴えた。バスティアン記者は「連絡が電子メールだったのか、何語で会話したのかは言えない」と情報源の秘匿に努める。独企業の汚職事件にも登場するモサック社を追っていたバスティアン記者は「それまでモサックの実態は全く分からなかった」と話す。フレデリック記者は「とてつもなくセンセーショナルな文書だとすぐに分かった」。文書には、プーチン露大統領の友人や中国の習近平国家主席の親族、麻薬カルテルなど犯罪組織の関係者も登場した。情報が多くの国にまたがり、裏付け取材には人手が必要だった。そして「記者を殺すことなど何とも思わない人物」が含まれるという安全上の問題から、同紙は国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)による共同取材の方針を決めた。ICIJは同紙にデータ取材の専門家を派遣。種類の異なるデータをまとめて検索できるプログラムを導入し、参加する約80カ国、約400人の記者が情報を閲覧できる環境を整えた。同紙に次々と送られてくるデータは最終的に2.6テラバイト(テラはギガの1000倍)に達した。膨大な情報量に対応するため、同紙は約1万7500ユーロ(約230万円)の大型コンピューターを購入。情報流出を防ぐため、コンピューターはインターネットから遮断され、設置場所は極秘にされた。これまでドイツで行われた汚職事件の裁判記録などと提供資料を照合し、信ぴょう性を検証した。裁判記録にあるモサック社が設立した会社の資料と完全に一致する提供資料も多数見つかったという。フレデリック記者はパナマに飛び、モサック社が作ったペーパーカンパニー数千社の代表を務める女性を訪ねた。女性は貧民街に住んでいた。わずかな報酬で名義を貸したとみられる女性は「何の会社か、誰に売られたかは知らない」と語ったという。フレデリック記者は「彼女は国外に出れば逮捕される恐れもある。モサック社のビジネスは貧しい人の搾取そのものだ」と語気を強めた。

<標的は誰か>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12302057.html
(朝日新聞社説 2016年4月9日) パナマ文書 納税者の怒りは大きい
 英国のキャメロン首相や中国の習近平国家主席、ロシア・プーチン、ウクライナ・ポロシェンコ両大統領の親族や知人、本人の名前もある。中米パナマの法律事務所から流出した「パナマ文書」が波紋を広げている。タックスヘイブン(租税回避地)に設立された法人の情報など、膨大な文書や電子メールを非営利組織「国際調査報道ジャーナリスト連合」が分析したところ、10カ国の現旧指導者12人とその親族60人余らが浮かび上がった。納税者の多くが税金の負担に苦しんでいるのに、税金を課す側の統治者やその周辺は特権を使って蓄財に励み、税逃れの手立てを着々と打っている――。そんな不公平に対する怒りと不信は各国共通だろう。08年のリーマン・ショックに端を発した経済危機と財政難を機に、富裕層や大企業への怒りと格差・不平等への危機感が世界中に広がった。米ウォール街の占拠運動が象徴的だ。それを受けて、主要7カ国(G7)は、国境を超えた多国籍企業の税逃れへの対策を強めてきた。その旗振り役でもあるキャメロン英首相の亡父が、パナマに投資ファンドを設立していたと文書で指摘された。取引自体は違法とは言えないかもしれない。だとしても、政治家ら公職者には道義的責任がある。文書に名前がある指導者は説明責任を果たし、疑わしい取引から手を引くべきだ。各国の政府は、まず違法な取引の有無を調べる必要がある。そのうえで過度な節税など「灰色」の経済活動に対し、納税者が納得できる制度を国際的にどう整えていくかが問われる。土台はすでにある。先進国が中心の経済協力開発機構(OECD)の加盟国は昨年、中印両国など新興国の協力も得て、企業の国際的な税逃れを防ぐために15の行動計画をまとめた。計画は多国籍企業を念頭に置くが、資金の流れを解明し、情報を共有しようとする姿勢は税逃れ問題に不可欠だ。租税回避地への監視をはじめ、行動計画の補完と強化が課題になる。日本はOECDの行動計画づくりの際、関係委員会の議長を財務省幹部が務めた。そうした経験を生かし、国際協調に向けた役割を果たしてほしい。5月にはG7サミット(伊勢志摩サミット)の議長国を務める。当面の世界景気の問題だけでなく、国際的な税逃れに切り込む機会にしたい。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160409&ng=DGKKASGM08H9X_Y6A400C1EA2000 (日経新聞 2016.4.9) 節税網、欧州勢が主導 パナマ文書を読む、主要銀、名を連ねる ペーパー会社設立関与か
 パナマの法律事務所から流出し、世界に波紋を広げる「パナマ文書」。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)がホームページ上で公開した資料を読み解くと、欧州を中心に、パナマなどタックスヘイブン(租税回避地)の小国を組み込んだ見えない「節税」ネットワークが構築され、そこに世界の富裕層が顧客に名を連ねる構図が浮かび上がった。ICIJによると、パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」は1977年から2015年にかけて、21カ国・地域に21万のペーパーカンパニーを設立した。ICIJはモサックを「世界で五指に入るペーパーカンパニーの卸売問屋」と皮肉る。21万社のうち、半数以上の約11万3千社は英領バージン諸島にあり、4万8千社がパナマ、1万6千社がバハマ、1万5千社がセーシェルにあった。出資者は200カ国・地域の法人と個人で、政治家や官僚もわかっているだけで140人いる。ペーパーカンパニーの設立をモサックに依頼したのは金融機関や他の法律事務所、コンサルティング会社などだ。金融機関はクレディ・スイスやUBS、HSBC、ソシエテ・ジェネラルなど欧州主要行の系列会社が名を連ねる。500に上る金融機関が1万5600のペーパーカンパニー設立に関わったとみられる。モサックに関わった金融機関の多くはルクセンブルクやスイス、英国に本拠を置き、欧州が節税ネットワークの中心にあったことがうかがえる。モサックもチューリヒに支社を持っていた。これまでのところ、米国や日本の企業や投資家は目立たない。資料によると、モサックが管理する企業数は15年時点で約6万6000社。09年の約8万2000社をピークに、廃業数が新規設立数を上回りだした。09年にUBSによる脱税ほう助問題が米国で浮上。同年の20カ国・地域(G20)首脳会合で租税回避が主要議題になるなど、「徐々に国際的な規制が厳しくなってきたことが背景として考えられる」(国際税務に詳しい弁護士)という。ICIJは5月上旬、パナマ文書に登場する企業や関連人物の全リストをホームページ上に記載する。世界の首脳や著名人の租税回避が新たに明らかになれば、トップ辞任など、波紋がさらに広がる可能性も出てくる。

*2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160412&ng=DGKKZO99531610R10C16A4DTA000 (日経新聞 2016.4.12)「パナマ文書」に市場が揺れる 編集委員小平龍四郎
 英国のキャメロン首相が苦境に立っている。亡父が設立したオフショアファンドに自身も投資し、利益を得ていたことを認めたからだ。租税回避の実態を示す「パナマ文書」の流出から数日たっての釈明だ。本人が言うとおり違法性はないのかもしれないが、説明責任を果たす姿勢として、誠実さに欠けるとの批判が高まっている。
  □  ■  □
 英首相の指導力を揺るがしかねない「パナマ文書」の騒動に、日本の投資家はもっと目を向けたほうがよいかもしれない。あと3日もすれば、欧州連合(EU)にとどまるかどうかを問う国民投票のキャンペーンが英国で正式に始まる。メディアの調査などによれば、残留派と離脱派は拮抗している。残留を訴えるキャメロン首相が国民の信任を失えば、6月23日の投票日に向けて離脱派がにわかに勢いを増す可能性がある。問題が起きる前から、キャメロン首相への逆風は強まり始めていた。国民に高い人気を誇るロンドン市長のボリス・ジョンソン氏は、次期首相を狙う思惑もあり、離脱への支持を打ち出している。3月下旬には、やはり離脱を支持する元保守党党首、イアン・ダンカンスミス雇用・年金相が、社会保障費の削減方針を巡る意見の食い違いを理由に辞任した。こうした保守党の権力闘争が「内乱」(civil war)といわれるほど激しくなっていたときだけに、後手に回った感の強い「パナマ文書」を巡る説明は、首相にとってはなおさらの痛手となる。投資家が英国のEU離脱を意識すべき理由もここにある。EU離脱が選択された場合、何が起きるか。米ゴールドマン・サックスが3月初旬のリポートで示した筋書きはこうだ。英政府はEUと貿易などに関する取り決めを新たに結ぶ必要がある。2年程度とされる交渉期間は不透明感がきわめて強くなる。産業界の投資は延期され、英国の経済活動に重大な悪影響を及ぼす――。米ブラックロックで投資戦略の対外発信を担当するユーイン・キャメロンワット氏は「影響は英国だけにとどまらない」と訴える。今のところポンド相場を除き、市場は総じて英国のEU離脱の可能性に反応していないように見える。だからこそ「パナマ文書」のような不測の事態が再びもちあがり離脱が決まった場合の驚きは大きく、「世界的なリスクオフは避けられない」。逃避通貨としての円が買われ株安が加速する事態もありうる。
  □  ■  □
 経済の面から判断すれば、EU残留は自明の理に思える。けれど、英国にとってはEUから離れ自国の議会だけで物事を決められるようになるという、主権回復の視点も重要なのだ。目先の不利益は主権の回復に必要なコストであり長期ではEU離脱が国益にかなう。ひそかにそう確信する人が英経済界に少なからずいる。市場からは見えにくい英国の断面である。

*2-4:http://qbiz.jp/article/86239/1/
(西日本新聞 2016年5月6日) パナマ文書に名誉教授らの名 日本関係者、大手企業役員も
 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に参加する共同通信のパナマ文書の分析で、大学の名誉教授や大手企業の役員らがタックスヘイブン(租税回避地)につくられた法人に関与していたことが6日、分かった。会社経営者の海外取引を目的とした設立や悪質業者の利用も目立った。パナマ文書には、日本在住者や日本企業の名前が重複を含めて約400あるが、重複を除くと32都道府県の日本人約230人、外国人約80人、企業などが約20となった。租税回避地は税負担を軽くするのに好都合な場所とされるが、法人設立自体に問題はなく、事業が目的の場合もある。

*2-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/309374 (佐賀新聞 2016年5月8日) 佐賀の住所にも3人 パナマ文書の日本関係者、唐津市松南町、伊万里市立花町、太良町多良
 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に参加する共同通信のパナマ文書の分析で、大学の名誉教授や大手企業の役員らがタックスヘイブン(租税回避地)につくられた法人に関与していたことが6日、分かった。会社経営者の海外取引を目的とした設立や悪質業者の利用も目立った。パナマ文書には、日本在住者や日本企業の名前が重複を含めて約400あるが、重複を除くと32都道府県の日本人約230人、外国人約80人、企業などが約20となった。租税回避地は税負担を軽くするのに好都合な場所とされるが、法人設立自体に問題はなく、事業が目的の場合もある。石川県の医系大学の名誉教授は2012年、英領バージン諸島に法人を設立した。中国人投資家に新薬開発を持ち掛けられ、開発に必要な3億円規模の資金の受け皿としてだったという。その後、日中関係悪化の影響からか、連絡がなくなった。名誉教授は「投資家が新薬の収益への税を逃れるつもりだったのだろう」と話した。セーシェルの法人の関係書類には札幌市の大手企業役員の名前があった。役員は企業を通し一部の書類のサインが自らのものと似ているとしたが「記憶がない」と回答した。
■内閣参与の会社名も記載
 パナマ文書の分析で、回避地法人の株主連絡先として、都市経済評論家で内閣官房参与の加藤康子氏が代表取締役を務める会社名が記載されていることが6日分かった。加藤氏は共同通信の取材に「全く心当たりがなく大変驚いている。当時の会社代表者は別の人で、連絡先として名前を使うことを認めた人がいなかったか調査する」と述べた。
■佐賀の住所に3人
 パナマ文書に記載があったタックスヘイブン(租税回避地)利用者で、佐賀県が住所となっていたのは3人だった。ただ該当する住所がなかったり、転居先が不明だったりし、6日までに該当者は見つからなかった。記載があったのは唐津市松南町、伊万里市立花町、太良町多良の3人。

*2-6:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/308654
(佐賀新聞 2016年5月6) FBI、クリントン氏近く聴取か、メール問題で米報道
 クリントン前米国務長官が在任中に公務で私用メールを使った問題で、CNNテレビは5日、連邦捜査局(FBI)が数週間以内にクリントン氏本人の事情聴取を行う見通しだと報じた。FBIは最近になってクリントン氏の側近らを事情聴取したという。複数の当局者の話としている。クリントン氏は大統領選の民主党候補に指名されることが濃厚となっているが、メール問題が再燃すれば、共和党候補となることが確実なトランプ氏が攻勢を強めそうだ。ただ、CNNによると、複数の当局者はクリントン氏らが意図的に違法行為をした証拠は現時点で見つかっていないと明らかにした。

<租税法律主義とタックスヘイブン>
*3-1:http://www.ichirotax.com/gyoumu/2013/03/post_1093.html (加藤一郎税理士事務所)
●租税法の基本原則(租税法律主義)
 租税法の基本原則とは、憲法に規定する原則であり、大きく分けて租税法律主義と租税公平主義の2つの原則があります。今回は租税法律主義について解説します。憲法84条は「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と規定しています。この条文から「法律の根拠に基づかずに、租税を賦課、徴収することはできない」という基本原則である租税法律主義が導かれます。場当たり的に課税要件が変更されたり、税務署の判断で新たに税金を創設されたりすると、国民が経済活動をするにあたり混乱が生じます。そこで、国会があらかじめ制定する法律により課税することで法的安定性と予測可能性を国民に与えることができるようになります。
 租税法律主義は解釈上その内容として、
(1)課税要件法定主義
(2)課税要件明確主義
(3)合法性の原則
(4)手続的保証原則
(5)遡及立法禁止の原則
などを含みます。以下、各原則について見てみます。
(1)課税要件法定主義
 課税要件法定主義とは、納税義務が成立するためには、法律でそのための課税要件(納税義務者、課税物件、課税物件の帰属、課税標準、税率)を規定していなければならず、また、租税の賦課及び徴収の手続は法律によって直接的に規定されていなければならないとする原則をいいます。問題になるのは、例えば「財務省令で定める方法により」などと法律が下位規範である政令や省令に定めを委任する場合です。委任それ自体は租税法律主義に反しませんが、委任する場合には一般的・白紙的委任は許されず、具体的・個別的委任でなければなりません。また、委任の目的、内容及び程度が委任する法律の中で明確にされていなければならないと解されています。
(2)課税要件明確主義
 課税要件明確主義とは、課税要件を法律で規定する場合でも、その内容が一義的でなければならないとする原則をいいます。これは課税庁による自由裁量を排除するために求められる原則です。
(3)合法性の原則
 合法性の原則とは、課税要件が充足されている限り、課税庁は租税を減免し、又は租税徴収を免除することは許されず、法律に定めるところにより税額を賦課徴収しなければならないとする原則をいいます。これは課税庁による恣意的な徴税を排除するために求められる原則です。
(4)手続的保証原則
 手続的保証原則とは、租税の賦課・徴収は公権力の行使であるから、それは適正な手続で行われなければならず、またそれに対する争訟は公正な手続で解決しなければならないとする原則をいいます。更正処分の理由附記の制度(国税通則法74条の14第1項)などはこの原則に由来します。
(5)遡及立法禁止の原則
 遡及立法禁止の原則とは、新法(改正法)を公布日よりも前に施行し、または適用することにより納税者に不利益を与えることを認めないとする原則をいいます。問題になるのは、所得税や法人税のように期間計算が必要な期間税についての遡及立法です。年度の途中で納税者に不利益な改正がなされ、年度の始めに遡って適用されることが許されるかどうかは、そのような改正がなされることが年度開始前に一般的かつ十分に予測できたかどうかにより判断すべきと解されています。問題になるのは、所得税や法人税のように期間計算が必要な期間税についての遡及立法です。年度の途中で納税者に不利益な改正がなされ、年度の始めに遡って適用されることが許されるかどうかは、そのような改正がなされることが年度開始前に一般的かつ十分に予測できたかどうかにより判断すべきと解されています。
(以下略)

*3-2:http://www.g (タックス・ヘブン制度 をめぐる世界の動き)
 現在、全世界には 60以上のタックス・ヘブン地域・国が存在しています。しかし、2000年、OECD(経済協力開発機構)によるマネーロンダリング犯罪対策、公正な課税制度確立に向けた制裁を受け、このうちの 34ヶ国、地域がブラックリスト化されました(下表参照)。英領ケイマン諸島、バミューダ、キプルス、マルタ、モーリシャス、サン・マリノの6カ国・地域は、OECDとの合意により、このブラックリスト掲載を免れています。しかし、合意内容の発効により、これらの国・地域は「透明性高い国際的課税水準の確立」、「預り資産内容等の情報共有」、「公正な課税率の設定」を義務付けられることになりました。こうしたタックスヘブン、マネーロンダリングをめぐる国際間の締め付けはますます強化され、2005年より、スイス金融機関の絶対的匿秘主義にもメスが入れられました(非居住者による書面での口座開設申請不可、犯罪に関わる口座情報の開示義務の制定、など)。特に、欧州諸国の圧力により、顧客情報を提供しない代わりに、居住地国の政府に代わって、その居住者が保有する預金口座から利子税を徴収し、関係各国に代理で納付する、という合意が妥結されました。
   アンドラ グレナダ ガーンジー(英)
   マン島(英) パナマ リヒテンシュタイン
   モナコ バハレーン モルディブ
   マーシャル諸島 ナウル アンギラ(英)
   サモア トンガ バヌアツ
   ニウエ(ニュージーランド) セント・ルシア ヴァージン諸島(英)
   セント・クリストファー・ネイヴィース アンティグア・バーブーダ セント・ビンセント
                                      及びグレナディーン諸島
   ジャージー(英) アルバ(蘭) ドミニカ国
   タークス諸島・カイコス諸島(英) ヴァージン諸島(米) クック諸島(ニュージーランド)
   ジブラルタル(英) モンセラット(英) アンティル(蘭)
   バハマ バルバドス ベリーズ
   セイシェル リベリア ー
              外務省資料 参照
 ここ数年の金融恐慌は、世界各国の財政事情を大きく圧迫しました。税収減と、巨額の財政出動により、各国ともに、徴税制度をますます強化するとともに、さらなる増税も不可避な状況となっております。こうした中で、市民への増税政策の実施前に、その協力を得る目的で、富裕層のキャピタルフライトを狙い撃ちにする方向性が強められています。2009年4月26日のロンドンでの、G20首脳国会合。ここで、タックヘブン諸国・地域に対する対応が協議され、その第一弾として、国際的な徴税制度に非協力的な地域が名ざしされることになりました。
   アンドラ ジブラルタル モナコ
   リヒテンシュタイン シンガポール スイス
   ベルギー ルクセンブルク オーストリア
   要注意国 >> フィリピン マレーシア
   要注意国 >> コスタリカ ウルグアイ
 2009年9月のG20首脳国会合ではさらに、国際景気の動向が議論の大部分を占めたため、特別、突っ込んだ議論は進められなかった模様。しかし、今後の G20での主要テーマの一つになることは確実な情勢です。2008年2月のドイツ税務当局によるリヒテンシュタインのプライベートバンク絡みの脱税者リストの買収、 2009年2月の米国による世界最大プライベートバンクUBS銀行への脱税幇助の指弾と巨額罰金、情報リスト開示命令、そして、同年3月のスイス金融行政による顧客守秘義務規定の変更実施など、近年の先進国政府によるキャピタルフライトに対する締め付けは、加速度的に厳格化しております。2001年米国同時多発テロに端を発するテロ資金規正、すなわち、アングラ・マネーへの締め付けは、さらに援用され、富裕層の隠し資産、裏金の解明へと拡大適用されつつあります。そこへ、金融恐慌が拍車をかけ、財政赤字に苦しむ政府を後押しする格好となっています。そのうち、1998年に改正された日本の外為法も、大幅に見直しが進められ、海外への資金移動が大幅に制限される日が来るかもしれません。 roup-bts.com/OffshoreTax.htm
●タックス・ヘブン制度の概要
 タックス・ヘブン「Tax Haven」とは、日本語に直訳すると「税金避難所」を意味し、一般的には「租税回避地」と訳されます。ちなみに、フランス語では、Paradis fiscaux といい、「会計上の天国」といいます。元来は、中継貿易地として経済を活性化させる目的で、各国・地域政府が徴税優遇制度を実施していましたが、70年代より、海外籍の個人や法人を問わず、その所得に対して、すべての課税を免除(もしくは大幅減額)するようになりました。このようにして同制度は、域内の雇用促進、グローバル経済社会での小国・自治区なりの「生き残り」策として確立されていきます。その発展に伴い、同地域への法人設立や移住手続も簡素化されるようになり、多くの企業や個人、そのマネーを惹きつけることになりました。特に、移動の容易な「マネー」を操る金融ビジネスがここに目を向けるようになりました。こうした背景から、タックスヘブン国や地域はオフショア金融センター(Offshore Financial Center)と呼ばれるようになり、名だたる多国籍企業、金融グループ、投資事業組合、大資本家や政治家らを中心に、多くの資金を集める結果となっています。直接、現地にて居住せずとも、経済活動が許されている、もしくは資産を保管できるという意味で、オフショア=「沖合い」のみでの呼称でも認知されるようになり、これに合わせて、数々の資産保全スキームも考案されていきました。世銀統計によれば、沖縄県 西表島 程度の面積しかない英領ケイマン諸島(270km2、人口4万)は、世界の預かり資産残高において、東京、ロンドン、ニューヨーク、香港に次ぐ世界第五位の規模とされています(約 90兆円)。ここに、世界の一流と目される金融グループを含め、約600あまりの金融機関が拠点を置いています。タックスヘブンとまでは行かずとも、欧州、シンガポール、香港、中国はじめ、多くの国々で今や、法人税率の減税が進んでいます。各国・地域とも、海外投資を受け入れ、自国経済の振興に役立てようと、優遇税制を導入しているわけです。日本も消費税増税と法人税減税の同時実施の必要性が叫ばれていますが、21世紀中盤の国際競争時代に向け、出遅れをとらないように注意すべきでしょう。
●タックスヘブン制度をめぐる近況
 タックスヘブン制度を採用する国・地域では、原則、個人の所得税、利子・配当税、相続税、株式等の譲渡益税、法人の事業税などが免除、もしくは低位に抑えられています。こうした恩恵をねらい、世界中の富裕層、ビジネス・マネーが流入しています。特に、物理的な商品移動等のない、保険、投資業務などの金融ビジネス、さらに各種リース業や、特許・著作権等の知財サービス業には最適な環境といえます。所謂、ペーパーカンパニーという形で法人を設立し、実際のビジネスの運営は別の場所で操作するパターンが圧倒的です。世界の大企業はほぼすべてこうしたペーパーカンパニーを何らかの形で有しています。こうしたタックスヘブン制度を利用し、多くの不正脱税、マネーロンダリン犯罪が行われてきたのは容易に想像できます。諸外国はこのタックスシェルターへの対抗策として、スキーム情報申告・登録制度、資料保存義務規定、移転価格対策、納税者番号制度などを実施し、さらに先進国クラブOECDとして団結し、情報公開に非協力な国々への圧力を強めるなど、あらゆる手段を講じています。日本では、このタックスシェルター制度への対抗策として、移転価格税制、タックスヘブン対策税制という、後追い型の追及手段が主たるものであり、他の先進国に遅れを取っていることは否めません。実際、国内の大手金融グループ、メーカー、サービス事業会社の多くは、ケイマン諸島籍のSPI(特別目的会社)を有しており、株式の増資にともなう第三者割当相手先や、自社の持ち株会社などの形でオフショア・カンパニーを多用しています。これらは、目下の法制度では何ら問題ではございません。こうした日本の外為規制、海外課税体制に関し、G8はじめ先進諸国は批判を強めつつあります。ただし、先進諸国は、実際のところ、自国外のタックスヘブン諸国への富裕層のキャピタル・フライト(資金流出)が大々的に起こっていることを懸念しており、自国内への海外マネーの流入は「歓迎」というのが本音です。その典型的な政策が、「国内非居住者の預金利子や株式等の譲渡益・配当に対する非課税政策」といえます。米国、英国、日本、豪州など、先進諸国はこぞって導入しています。自国のマネーは流出させず、かつまた、海外マネーを積極的に流入させて、国内金融、不動産、その他の市場を活性化させていきたい、という国際競争の激化が、直接的には「タックスヘブン諸国への締め付け」という、近年の国際協調を演出している感があります。(以下略)


PS(2016年5月10日追加):*4に、「日本の政治家は政権交代があっても財産や命を奪われる危険はないので、パナマに資金を隠す必要はないだろう」と書かれているが、現在の日本では、政治家として活動したことによって破産する人はいても、パナマに資金を隠さなければならないほど巨額の資金を溜めた人はいないため(理由:収入より支出の方が多いから)、これは一昔前の古い政治家批判のシナリオにすぎない。また、本当に違法な政治資金、犯罪、暴力団・テロリズム関連団体の資金であれば、タックス・ヘイブンではなく、その違法行為自体を犯罪として摘発すべきだ。
 なお、パナマ文書に関わった記者の一人が、「①タックス・ヘイブンの売りは秘密性なので、秘密を白日の下に晒す私たちの報道はそれに大きなダメージを与えている」「②今回のパナマ文書報道で公職者に焦点を当てた理由は、ジャーナリストとして義務を負っているから公益だ」「③私たちの役割は暴露すべきものを単純に暴露することで、次の段階には関与せず介入しない」と述べているが、①は、銀行預金や非公開会社の株主名簿を公表するのと同様にプライバシーの侵害であり、②は、本当の敵は政治家ではなく官なのに、自分は安全な権力側につき手先として働きながら政治家批判をして権力を批判しているかのようなポーズをしているだけで偽善であり、③は、パパラッチレベルの無責任な見識しか感じられない。そのため、こういう記者は、カレル・ヴァン・ウォルフレンのようなジャーナリストからはほど遠い。
 結論として、何ら違法行為をしていないのに、これらの記事やブログで被害を受けた人は、名誉棄損や政治活動の妨害・営業妨害などで提訴し、民主主義の前提となる公正な報道がなされるよう、一つ一つ正していくしかないだろう。

*4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12348064.html (朝日新聞 2016年5月10日) (耕論)パナマ文書が晒すもの 鳥羽衛さん、黒木亮さん、ジェラード・ライルさん
 タックスヘイブン(租税回避地)の実態を暴露したパナマ文書が世界に衝撃を広げている。税や金融の専門家、文書を暴露した「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)幹部に聞く。
■高度な金融専門家育成を 鳥羽衛さん(弁護士・元東京国税局長)
 税金は主権国家が課税徴収しますが、経済はグローバル化し、国境を超えます。各国で制度が違うため、主権の壁にぶつかり、調査や徴税ができない現実があります。例えば日本企業がその事業で利益を上げれば、法人税や事業税が課税されます。しかし仮に、その企業が、海外のペーパーカンパニーに利益を留保していたり、源泉課税がなされない形で送金していたら、直ちには課税できません。こうしたペーパーカンパニーが大量につくられているのが、タックスヘイブン(租税回避地)です。税金が無税だったり、大幅に軽減されたりするので、税負担を減らせます。この仕組みを利用する動きは古くからありましたし、そこからの情報流出は以前からありました。しかし、パナマ文書は情報量が格段に多く、著名人の名前が報じられていることが衝撃を広げています。特に今回は、いくつかの国の最高指導者がタックスヘイブンを利用していたと報じられています。政権を奪われた時には国外に逃亡しなければ身の危険があるような国の政治家は、国外に財産を隠す動機があるでしょう。本人たちにとっては、ある意味で合理的なのかも知れません。蛇足ですが、日本の政治家は政権交代があっても、財産や命を奪われるといった危険はありません。ですから、パナマに資金を隠す必要がないのではないでしょうか。税金以外で問題なのは、違法な政治資金や犯罪、暴力団やテロリズム関連団体といった資金の受け皿になっているのではないかという点です。税制においては、米国では半世紀以上前から、日本でも1978年から対策が導入されています。国際的には、ここ20年ほど、経済協力開発機構(OECD)が「有害な租税競争」の除去に向けて規制強化に取り組んで来ました。現在は、国際課税全般について、多国籍企業が税制の抜け穴を利用して過度の節税をしている状況を是正するため、「BEPS」(税源浸食と利益移転)というプロジェクトが進行しています。不透明な資金の流れを捕捉するために、各国の当局間の情報交換を密にする方向で世界は動いていると言えます。制度は整いつつありますが、課題は実際の執行面です。特に重要なのは、国際課税に精通した人材の育成と、要所にそうした人材を配置した効果的な体制づくりです。税逃れの仕組みは年々複雑化しており、当局に高度な金融知識を持つ人材を常に育成することが欠かせません。税金は民主主義社会の根本です。財政状況は厳しいですが、税負担の公平さを維持するため、人材育成と体制の整備は避けては通れないと思います。
     *
 とばまもる 52年生まれ。75年旧大蔵省入り。国税庁調査査察部長を経て、2008年から長島・大野・常松法律事務所に勤務。
(中略)
■政治家に焦点を当てた ジェラード・ライルさん(ICIJ事務局長)
 オーストラリアで新聞記者をしていたとき、百億円規模の巨額詐欺事件を取材しました。その犯人がタックスヘイブンを使っていました。それが、私がタックスヘイブン問題に関心を持ったきっかけです。9年前のことです。その詐欺事件について本を書いたところ、匿名の人物が事件の情報を含むタックスヘイブンの秘密の電子ファイルを送ってきてくれました。2011年初めのことです。私はオーストラリアでの仕事を辞め、ICIJに来ました。私には野心がありました。ICIJはグローバルな調査報道チームであり、タックスヘイブンのようなグローバルな問題に取り組める、と。タックスヘイブンは日本、ブラジル、ヨーロッパなど世界中のさまざまな場所とつながりがあります。この種の問題はグローバルに取材しなければならないのです。提供された秘密ファイルに基づき、私たちはタックスヘイブンに関する大きな記事を2013年に出しました。メディアが忘れがちなことですが、最良の情報源は読者や視聴者です。政府の関係者や広報担当者ではなく、周辺にいる普通の人が、記者が知っている以上のことを知っています。記者がやるべきことは、自分が何に関心があるかを人々に知らせることです。それができれば、記事を出すたび、興味深い新たな何かを、その記者に提供してくれる誰かを、見つけられる可能性が高まります。そして、それこそが私たちがいま行っていることです。人々が、私たちを見つけてくれ(情報を提供してくれ)ています。タックスヘイブンの売りは秘密性です。だからこそ、その秘密を白日の下に晒(さら)す私たちの報道は、それに大きなダメージを与えています。今回のパナマ文書報道で、私たちはなぜ公職者に焦点を当てたのか。それは私たちが義務を負っているからです。ジャーナリストとして、こうした文書を入手することは、公益上の特別な義務を負うことになります。公益に資するために最も簡単で最も良い方法は、公職者に焦点を当てることです。だからこそ私たちは、一連のパナマ文書報道で、政治家やその家族、関係者に重点を置きました。ジャーナリストの仕事は記事を出すことです。私たちはおそらく今後も2カ月ほどはパナマ文書の取材・報道を続けるでしょう。社会には役割分担があります。私たちの役割は、暴露すべきものを、単純に暴露することです。そして私たちは一歩下がり、その次の段階には関与せず、介入しないようにする必要があります。これから前面に出て、問題にどう対応するかを決める責任は、政府当局や一般の人々にあるのです。
     *
 Gerard Ryle 65年生まれ。アイルランドと豪州で26年にわたって新聞記者や編集者。2011年にICIJの事務局長に就任。


PS(2016年5月11日追加):フィリピンの次期大統領であるロドリゴ・ドゥテルテ氏は、中国の南シナ海に関する領有権の主張について、大統領選で勝利した後は「経済振興となら引き換えにしてもよい」という発言をしているそうだ。日本政府が、北方領土や尖閣諸島の領有権問題に正面から取り組んでいる時、南シナ海で同じ問題を抱えて協力しているフィリピンを“タックス・ヘイブンの要注意国”と呼び、中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領の遠縁の名をパナマ文書に見つけたなどと熱狂して騒いでいるようでは、外交努力が水泡に帰すだろう。日本の問題点は、各省庁が勝手に異なるベクトルの方向に動き、収拾がつかなくなることだと聞いたことがある。

*5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12349886.html
(朝日新聞社説 2016年5月11日)フィリピン 堅実な新政権運営を
 今週の大統領選で勝利したロドリゴ・ドゥテルテ氏(71)が国民を引き寄せた持ち味は、その剛腕ぶりだろう。ミンダナオ島のダバオ市長を長く務め、治安を改善した功績が知られる。犯罪者を暗殺する組織を操った疑いも取りざたされるが、荒療治でも結果を出す手法が支持を得た。この国では今も海外出稼ぎが経済を支え、貧富の格差が激しい。ドゥテルテ氏が「犯罪者はマニラ湾の魚のえさにする」などと暴言を繰り返しても、むしろ有権者は留飲を下げつつ実行力への期待を高めた。アキノ現大統領が後継指名したエリート政治家の支持は伸び悩み、ドゥテルテ氏は中央政権での経験がないことが逆に有利になった。世界的に広がる既成政治への不満が、フィリピンでも表れたといえる。アキノ政権は決して無策だったわけではなく、むしろ評価に値する。汚職摘発や財政立て直し、規制緩和を進めた。経済成長率は6%前後を維持し、かつての「アジアの病人」の汚名を返上したとも言われる。1人当たり国内総生産が3千ドル水準になった今こそ正念場だ。ドゥテルテ氏は、成長の流れに水を差すことなく、国民への豊かさの分配を実現するためのかじ取りが求められる。人口は1億を突破し、若年層が厚い。全国に目配りしたインフラ整備に注力し、雇用を増やすことが急務だ。日本からの開発援助や民間の投資も、大いに役立つだろう。各国が注目する懸案の一つは南シナ海問題である。スプラトリー(南沙)諸島で中国が埋め立てを進め、フィリピンの漁船は中国公船との緊張に悩まされてきた。これに対しアキノ政権は対米関係を強めるとともに、中国の領有権主張は不当として、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に提訴した。国際法に沿って冷静な解決を探る限り、フィリピンの対応は国際社会から理解される。力まかせの海洋進出がめだつ中国と向き合うのは難題だが、細心の外交努力を続けてもらいたい。目指すべきは平和で自由な南シナ海である。ドゥテルテ氏は選挙運動中、「水上バイクで中国の人工島に旗を立てる」と発言したが、今後は不用意な言動を慎み、堅実な政治指導者として国家運営に臨んでほしい。


PS(2016.5.17追加):*6のように、南シナ海等で共働しているオーストラリアのターンブル首相を、不法行為でもないのに「英領バージン諸島の子会社取締役となっていた」として挙げ、総選挙に影響させようとしているが、これらを日本政府がリードしてやっているのではどの国からも眉をひそめられるだろう。何故なら、「成功者はずるい」などという価値観が通用する市場経済の国は、他にはないからである。

*6:http://www.sankei.com/world/news/160512/wor1605120031-n1.html 
(産経新聞 2016.5.12) 豪首相、租税回避地の法人取締役に名前 「問題はない」と表明も7月2日の総選挙に影響か
 オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー紙は12日、パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」がタックスヘイブン(租税回避地)の英領バージン諸島に設立した法人の取締役に、オーストラリアのターンブル首相が就任前に名を連ねていたと報じた。租税回避地に関する「パナマ文書」で明らかになった。法人はロシア極東・シベリアで金鉱山を開発。ターンブル氏は12日、同法人の役員になっていたことについて問題はないとの認識を示した。同紙も「不適切な行いはなかった」としているが、7月2日の総選挙に影響が出る恐れもある。同紙によると、ターンブル氏は1993年、オーストラリアの鉱業企業取締役になった後、英領バージン諸島の子会社取締役となり95年に両社の取締役を辞任した。ニューサウスウェールズ州のラン元州首相も共に取締役となった。

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 05:41 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.4.14 ふるさと納税に関する批判及び公会計制度について (2016年4月14、15日追加あり)
   
  ふるさと納税の仕組み      上 寄付額の推移     2014年度の上位  2015年度の状況
             (2011年は東日本大震災で増加)     2016.4.12     2016.4.13   
                                         朝日新聞       日経新聞
   
 人口一人当たり税収の偏在    国と地方の財政収支        世界の公会計制度

(1)頑張った地方が多くのふるさと納税(寄付金)を集めるのは当然で、機会は均等だったこと
 朝日新聞が、*1-1、*1-2のように、「2014年度のふるさと納税で地方自治体の純収支を集計すると、上位の10自治体に『黒字』の約24%、100自治体に黒字の7割が集中し、全国1741自治体のうち黒字は1271自治体で計約330億円だった」と記載している。

 また、「①長崎県平戸市の約14億6千万円をはじめ、佐賀県玄海町、北海道上士幌町など地元の肉や魚介類の返礼品を贈る自治体が黒字の上位だった」「②赤字の自治体は都市部に多く、横浜市が約5億2千万円で首位、東京都世田谷区、港区、名古屋、大阪、福岡各市が上位だった」「③地方でも、返礼品競争に慎重な自治体は赤字となり、宮崎市は約90万円しか寄付が集まらず、約2千万円の赤字」「④高所得者ほど寄付の上限が高く、実質2千円の負担で豪華な返礼品がもらえる仕組みになっている」と批判している。

 しかし、私が、このブログの2016年2月14日に記載したとおり、①のように、地域の産品をアピールしつつふるさと寄付金を集めるよう努力した自治体に多くの寄付金が集まるのは自然なことであり、②のように、働き盛りの成人を集めている都市部に赤字が出るのはふるさと納税制度の本来の趣旨であって、③のように、積極的にしなかった地域に寄付金が少ないのも当然であるため、この結果は批判的にではなく、頑張った地域を素直に祝福して記載すべきだと私は考える。

 また、④は、高所得者ほど多くの所得税・住民税を支払うため、控除限度額の計算を行えば所得が多い人ほど上限額が高くなるのは当然で、私は、この限度額計算は細かく言えば欠点もあるが比較的合理的だと考えている。しかし、その欠点については論評できず、「高所得者ほど寄付の上限が高い」などという妬みを煽るような批判は、無知でもできる国益にならないものであり、記事のレベルが低い。

 なお、黒字で上位の自治体は、ネットやテレビでも積極的に宣伝して寄付を集めたそうだが、民間企業と同様、それも努力のうちだろう。さらに「⑤2014年度の赤字が全国2位の約3億円だった東京都世田谷区は、2015年度には赤字が約6億円に倍増し、保育所の新設が妨げられた」などとしているが、東京都世田谷区は2014年度の一般税収が1,239億円、2015年度は1,332億円あり、これに対する⑤の6億円は誤差のうちほどに小さく、これと保育園の待ち行列を結びつけるのは言いがかりにすぎない。

 その一方で、例えば長崎県平戸市は2013年の一般税収が約27億円であり、この規模の自治体への14億円のふるさと納税の効果は絶大だ。また、地方の自治体で税収が小さいのは、企業の本社や職場の都市集中とそれに伴う生産年齢人口の都市集中が原因で、その生産年齢人口にあたる人材を教育してきた地方に、本人の意志で地方税の一部をふるさとに還元できるようしたふるさと納税制度は、見事にその目的を果たしたと言える。

 そのため、日本の国土計画の歪みまで考慮すれば、「⑥お金を出しても見返りを求めないのが本来の寄付文化で、今のふるさと納税制度ではそうした文化が根付かない」とか「⑦本来は住民サービスに回るはずの都市部の財源が目減りした」などとして、頑張った地方自治体を批判するのは、機会均等で差別はないのに頑張らなかった都市のエゴと言える。

 なお、次のように、2014年度の収支が赤字の自治体が記載されているが、東京都世田谷区と同じような大都市で、ふるさと納税によるマイナス額などは誤差のうちに入り、これは、ふるさと納税の意図しているところであって問題はない。
  1 横浜市          ▼5億1966万円
  2 東京都世田谷区    ▼3億 959万円
  3 東京都港区       ▼2億8380万円
  4 名古屋市         ▼2億5231万円
  5 さいたま市        ▼1億5756万円
  6 大阪市          ▼1億2424万円
  7 福岡市          ▼1億2001万円
  8 東京都杉並区      ▼1億1992万円
  9 東京都練馬区      ▼1億1830万円
  10 東京都江東区     ▼1億1734万円

 そのため、私は、*1-3のように、「ふるさと納税で、10町村の2015年度の寄付総額が2014年度の地方税収を上回り、高知県奈半利町では税収に対する寄付額の倍率が4.93倍もあったというのは、「よく頑張った」と素直に祝福すべきだと考える。そして、地方で水揚げされた魚や生産されたコメが、それだけ価値あるものと評価されたことを喜ばしく思っている。

(2)地方自治体への複式簿記による公会計制度の導入と国への導入の必要性
 *2のように、地方自治体には統一的な公会計基準による複式簿記の会計制度が導入され、平成27年度から平成29年度までの3年間で全ての地方自治体がこの基準による財務書類等を作成することとなり、地方自治体の財政は比較可能になった。しかし、この準備は、(私も提唱して)1995年前後から行われており、部分的には既に実施されていたため、上図のように、地方自治体の財政収支は改善してきており、複式簿記による統一会計基準の実施は遅すぎたくらいなのである。

 複式簿記による会計制度では、網羅性・検証可能性が担保されるので都合の悪い取引を隠すことはできない。また、資産・負債が、収入・支出の結果として網羅的に金額で表示されるので、債務だけを見て大騒ぎする必要はなくなる。また、資産の効果的な使い方を工夫し、税収が足りなければ税収を増やす工夫や税外収入を得る工夫をする基礎資料となる。さらに、正確な会計情報が開示され、正規の公認会計士監査が行われるようになれば、公債を発行して市場で資金を集めることも可能だ。

 そのため、今後は、価値の低い支出が多すぎる国の会計に、複式簿記による公会計制度を導入することが必要であり、上図のように、世界では多くの国が既に導入済である。

*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12307236.html
(朝日新聞 2016年4月13日) ふるさと納税、偏る恩恵 「黒字」の24%、上位10市町に
 自治体に寄付すると大半が減税される上に特産品などを受け取れる「ふるさと納税」で、寄付の受け入れ額から減税額を差し引いた地方自治体の収支を集計したところ、2014年度分は上位の10自治体に「黒字」の約24%、100自治体に黒字の7割が集中した。「地方を応援する」ねらいで導入されたが、赤字だった地方都市もある。朝日新聞が情報公開請求で、14年のふるさと納税に伴う自治体ごとの住民税の減税額を入手。総務省が昨年秋に公表した自治体ごとの14年度の寄付受け入れ額から差し引いて、収支を集計した。返礼品にかかる費用は含めていない。全国1741自治体のうち黒字は1271自治体で計約330億円。1位は魚介類の返礼品が人気の長崎県平戸市で約14億6千万円。佐賀県玄海町、北海道上士幌町など地元の肉や魚を贈る自治体が続いた。「赤字」の自治体は都市部に多く、横浜市が約5億2千万円で首位。東京都世田谷区、港区や名古屋、大阪、福岡各市が上位に入った。地方でも、返礼品競争に慎重な自治体が赤字となり、宮崎市は約90万円しか寄付が集まらず、約2千万円の赤字。平戸市のある長崎県では、県内の3割にあたる6市町が赤字だった。ふるさと納税は、寄付額の2千円を超える分を国の所得税と居住する自治体の住民税から減税する。高所得者ほど寄付の上限が高く、実質2千円の負担で豪華な返礼品がもらえる仕組みになっている。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12307210.html
(朝日新聞 2016年4月13日) ふるさと納税、ゆがむ理念 高所得者と一部自治体、もうけ大きく
 生まれ故郷や好きなまちを応援しようと始まったふるさと納税。多くの地方自治体が「まちおこし」に生かそうと熱心に取り組むが、寄付者への返礼品競争が過熱。競争の先頭を行く一部の自治体と高所得者ほど「もうけ」が大きくなる状況になっている。「うまい話にはご注意ください。ここだけの話、本日18:00に再入荷することが決定しました。うまさが話題の『肉と焼酎』がなくなる前にお申し込み頂きますようご注意ください」。3月下旬、宮崎県都城市はそんな新聞広告を出した。紹介された返礼品は「宮崎牛サーロインブロック」や地元でつくる芋焼酎「1年分365本(1本1・8リットル)」など。特集サイトでは、通販のカタログ感覚で豪華商品を選べる。焼酎1年分は、100万円以上を寄付した人が対象だ。この金額が減税対象となるのは、年間の給与収入が3千万円を超え、高額の所得税と住民税を納めている高所得者。100万円を寄付すると、2千円の自己負担を除いた99万8千円が減税され、小売価格で60万円超の焼酎1年分がもらえる。同市によると、「忘年会でふるまいたい」などと、経営者や医師らがこの返礼品を選んだという。朝日新聞の分析では、都城市は2014年度のふるさと納税の「黒字」額で全国9位。黒字上位の自治体は、ネットやテレビでも積極的に宣伝し、寄付を集める。安倍政権は減税される寄付額の上限を15年度の税制改正で倍増させており、寄付受け入れ額と減税額は大幅に増えている可能性が高い。総務省によると15年度の寄付受け入れ額は上半期で約450億円と、14年度の年間より2割多かった。収支が赤字なのは、人口が多く、高所得者が集まる都市部が中心だ。こうした自治体では、不十分な行政サービスが問題にもなっている。14年度の赤字が全国2位の約3億円だった東京都世田谷区は、15年度には赤字が約6億円に倍増した。世田谷区は待機児童数が全国で最も多く、区によると、6億円あれば120人規模の保育所を新設し、1年運営できるという。
■「見返りないのが本来の姿」
 14年度のふるさと納税の黒字は、上位1割に満たない100自治体に約7割が集まる。豪華な返礼品競争はさらに過熱しつつある。千葉県大多喜町は14年末から地元で使える「ふるさと感謝券」を導入した。ネットオークションで換金されており、こうした事例を問題視した総務省は今年4月、商品券や家電などを返礼品としないよう求めた。だが、大多喜町は感謝券の発行を続ける。「すぐにはやめられない」(担当者)。15年度は12億円超の感謝券を発行。町の家電店や旅館など約100店は感謝券で商品を売り、町が換金する。町はネット通販でブランド品を売る業者にも事実上、利用を認めた。こうした動きを見て、となりの千葉県勝浦市も4月から、市内で使える「かつうら七福感謝券」を返礼品に導入。「大多喜町が寄付を集めていたのを参考にした」(担当者)という。今年に入って、14年度の収支が赤字だった宮崎市はノートパソコン、鹿児島市は豚肉、焼酎などの返礼品を拡充した。となりの都城市と黒字額に約50倍の「格差」が生じた宮崎県日南市は今年3月から、60万円以上の寄付者に豪華クルーズ船の旅で「返礼」することにした。ただ、寄付者の「もうけ」部分の財源は、実質的に所得税と住民税という税金で賄われており、高所得者優遇との批判は強い。佐藤主光・一橋大教授(財政学)は「お金を出しても見返りを求めないのが、本来の寄付の文化。いまのふるさと納税の仕組みでは、そうした文化が根付かなくなってしまう」と指摘する。
2014年度に収支が赤字の自治体
 1 横浜市         ▼5億1966万円
 2 東京都世田谷区   ▼3億 959万円
 3 東京都港区      ▼2億8380万円
 4 名古屋市        ▼2億5231万円
 5 さいたま市       ▼1億5756万円
 6 大阪市         ▼1億2424万円
 7 福岡市         ▼1億2001万円
 8 東京都杉並区    ▼1億1992万円
 9 東京都練馬区    ▼1億1830万円
10 東京都江東区    ▼1億1734万円

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160413&ng=DGKKASFB08HCH_T10C16A4MM0000 (日経新聞 2016年4月13日) ふるさと納税額、全国10町村で地方税収超す、返礼品優先、地域還元半ば
 出身地や応援したい自治体に寄付すると居住地での税金が軽減される「ふるさと納税」で、2015年度の寄付総額が少なくとも全国10町村で年間の地方税収を上回った。自治体間では寄付を呼び込もうと返礼品の競争に拍車がかかっており、本来は住民サービスに回るはずの財源が目減りする課題も浮上している。日本経済新聞社が全国の自治体の15年度のふるさと納税の寄付額と、14年度の地方税収(決算ベース)を比較した。税収を上回った10町村のうち、税収に対する寄付額の倍率が最も高かったのは高知県奈半利町の4.93倍(寄付額は13億5400万円)だった。次いで、宮崎県綾町の2.44倍(同13億8000万円)、北海道上士幌町の2.23倍(同15億3700万円)が続いた。15年度から減税対象の寄付額上限が2倍になった影響もあり、15年度上期のふるさと納税総額は前年同期の3.9倍に膨らんだ。自主財源の乏しい小さな自治体には貴重な財源だ。奈半利町は農産物の加工販売所などを建設した。津波対策のため幼稚園や保育園の高台移転も今年度中に完了する予定だ。ただ、多くの自治体は寄付額の半分以上を住民サービスではなく返礼品の購入に充てている。カニ、牛肉など豪華な返礼品で寄付を集める競争が過熱しているためだ。奈半利町の返礼品は地元で水揚げした魚やコメで、購入費総額(約8億6000万円)は地方税収の3倍強となった。地元産豚肉が人気を集めている綾町も返礼品の購入費総額(約7億円)が地方税収を2割上回った。こうした実態を踏まえ、総務省は今月1日、商品券やパソコンなど換金しやすいものや豪華すぎるものを返礼品にしないよう総務相名で全国の自治体に通知。過度な返礼品競争を改めたい考え。総務省によると、14年のふるさと納税は東京、大阪、名古屋の三大都市圏の住民からの寄付額が全体の7割を占めた。財政規模の大きい都市部の自治体にとっては、他の自治体へのふるさと納税によって住民税の税収が減る課題が浮上している。「待機児童や高齢者介護への対応などに使うべき財源が失われ、住民サービスに与える影響は無視できない」(東京都世田谷区)との指摘がある。地方財政に詳しい関西学院大学の小西砂千夫教授(財政学)はふるさと納税について「都市部と地方の税源の偏在を是正する効果はある」と評価。ただ「返礼品競争の過熱など制度のひずみが顕著になれば、制度の存廃問題にも発展しかねない」と指摘する。

<地方自治体への複式簿記による公会計制度の導入>
*2:http://sennich.hatenablog.com/entry/2015/06/17/194708
(千日のブログ 2015/6/17) 【新地方公会計制度1】公会計の複式簿記とストック情報への期待
✱統一的な基準による地方公会計のポイント
 平成27年度から平成29年度までのわずか3年間で全ての地方公共団体が統一的な基準による財務書類等を作成することとされています。
その統一的な基準による財務書類等とは民間企業と同じ複式簿記によるものとされています。
✱統一的な基準による地方公会計マニュアル
 総務省は平成27年1月に『統一的な基準による地方公会計マニュアル』総務省|今後の新地方公会計の推進に関する実務研究会|統一的な基準による地方公会計マニュアルを公開してます。前回の記事では『上手くいくのかな?』という所で終わってました。是非とも上手くいって欲しいです。
  •少子高齢化
  •インフラの老朽化
 今後確実に働き手が減って税収は減り、老人の医療費、インフラを維持するためのコストは増加していきます。先細りとなる税収でインフラを維持していくことが喫緊の課題になっているんです。今後、シリーズとして『統一的な基準による地方公会計マニュアル』の中から制度の重要な部分を中心に記事を書いてみたいと思います。まずはマニュアルの財務書類作成にあたっての基礎知識より、1.単式簿記と複式簿記からです。
✱公会計の複式簿記=ストック情報の蓄積です
  •単式簿記では取引の記帳を現金の収支として一面的に行う=官庁会計
  •複式簿記では取引の記帳を借方と貸方に分けて二面的に行う=企業会計
 従来の地方公共団体の会計は単式簿記でした。その年度の納税額を何に幾ら使ったのかという公金の適正な出納がなによりも優先されたからです。
<1億円を使って建物を増築した>
 単式簿記では現金△1億円という記録になります。建物増築によって建物の価値が増えたことは帳簿上無視されるんです。複式簿記では現金△1億円と建物+1億円という記録になります。取引には常に表裏二つの面があるという考え方です。原因と結果でも良いです。複式簿記によって税金を1億円使ったというフロー情報だけでなく、建物が1億円増えたというストック情報も記録出来ます。
  •フロー情報=税金を1億円使った
  •ストック情報=建物が1億円増えた
 フロー情報はその年度の現金出納です。フローとは流れです。翌年にはまた新たな現金の出納があるのでゼロスタートです。これが今までの官庁会計です。ストック情報は建物の+1億円です。ストックとは蓄積です。これは翌年はゼロになりませんよね。複式簿記ではストック情報も記録出来るのです。
✱新公会計制度の複式簿記は大きな変革です
 ここ迄の説明で従来の官庁会計からとても大きな変革がされるんだということがお分かり頂けたでしょうか。複式簿記によるストック情報。これが大きなポイントで、ストック情報の為にやっているようなものです。
✱ストック情報の把握=固定資産台帳
 例として挙げた建物は『固定資産』です。地方公共団体では道路や水道管などのインフラが大部分を占めるでしょう。先に挙げたインフラの老朽化に対して適切な時期に適切な金額でメンテナンスをしていく為に、
  •何を(固定資産の種類)
  •どこに(住所や位置)
  •いつ(年月日)
  •いくら(金額)
使ったのかという情報を蓄積していく必要があるのです。この機能を有する情報が『固定資産台帳』というものです。
✱ストック情報による検証機能
 また、複式簿記によって作成される財務書類等の一つに貸借対照表があります。貸借対照表は会計年度末の資産、負債及び純資産の一覧表です。例えば、貸借対照表の建物の金額と固定資産台帳の建物の合計額は一致するはずですよね。このように相互を照合することでどちらかの誤りを発見して修正するという検証機能も期待されているんです。従来は公有財産台帳等と現物を照合していたのですが、公有財産台帳には金額情報が無かった。一方、固定資産台帳には金額情報があるので、現物の照合に加えて金額の照合も行えるんです。
✱住民として理解しておきたい部分
 このような取り組みを読者様のお住まいの地方公共団体(都道府県、市町村)で平成29年度までに行うことと決まってます。複式簿記によって蓄積されるストック情報を上手く活用出来るか、無用の長物となってしまうか……なにぶん初めてのことですので誰にもわかりません。しかし、私達の住んでいる地域の今後10年後、20年後の街並みを、良くも悪くも変えて行くかもしれない動きの一つです。大阪市の梅田地下道拡幅工事によって退去の決定した串カツ『松葉』。昭和17年の地下道開通後60年を超す歴史に幕を閉じた。あまり一般ウケするテーマではありませんが、誰にも無関係ではないのでボチボチ更新して行こうと思います。


PS(2016年4月14日追加):*3のように、ふるさと納税が企業まで拡大されると寄付金は増えるだろうが、6割しか税金から引かれなければ、残り4割が寄付者の負担となりおかしい。また、対象事業の選定は、総務省ではなく地方自治体が主体的に行うべきだが、事業を選定するのなら将来性ある事業でなければ共感を呼ばないだろう。その1つには、下の写真のように鉄道や高速道路を高架にし、高架下に商店街を配置して、街の再編を早める方法がある。共働き時代は時間の節約と利便性が一番で、駅の近くで用事が全部済むと助かるからだ。そして、下の写真のうち、パリの高架下は雰囲気がおしゃれで、道が広く、緑が多くて、電線もないのが素敵だ。また、他の目的で建設されたため発電していなかったダムで発電できるようにして再生可能エネルギーを増やしたり、医療・介護システムを構築したり、森林整備や環境維持活動を行ったりなど、共感を得られるような事業は多いだろう。

   
2016.4.14佐賀新聞     パリの高架下      浅草橋の高架下      その他イメージ

*3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/299978
(佐賀新聞 2016年4月14日) ふるさと納税、企業に拡大、夏ごろ対象事業決定
 改正地域再生法が14日成立し、ふるさと納税の企業版が本年度からスタートする。企業が社会貢献の一環として、応援したい地方自治体の地域活性化事業に寄付すると寄付額の約6割分が税金から引かれる仕組み。対象事業の第1弾が夏ごろに決まる見通しだ。企業が多い東京都などに偏る税収を地方に移すことで地方創生を後押しするのが狙い。国は、自治体への企業寄付の総額が現状の年間約200億円から2倍の約400億円に増えると見込む。個人のふるさと納税のように広がるかは未知数で、自治体の取り組みが課題となる。


PS(2016年4月15日追加):奨学金の必要額は地域によって異なり、例えば、東京都内に住宅があって東京の大学に行く人は、寮に入ったりアパートを借りたりせずにすむため住居費はかからないが、北海道や九州から東京の大学に行く人は、住居費がかかる上に、東京は地方より物価水準が高いので、親は余計に苦労するのである。そのため、地方自治体が企業から寄付を集めて、給付型奨学金を作ったり学生寮を整備したりなど、教育関係の事業をするのもよいだろう。

*4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12310786.html
(朝日新聞社説 2016年4月15日) 奨学金制度 格差是正へ改善急げ
 大学生らを対象にした、返済の要らない「給付型奨学金」の仕組みをつくろうという動きが与野党で相次いでいる。共産、民進党などが打ち出し、自民、公明党も安倍首相に提言を渡した。政府も、5月にまとめる「1億総活躍プラン」に支援策を盛り込む方向だ。ぜひ実現へ向けて知恵を絞ってほしい。奨学金はいまや2人に1人の学生が借りている。授業料が増え、親も収入が減ったせいだ。奨学金は出身による格差を改善し、教育の機会均等を実現するためにある。返す必要のない給付型はあって当然のものだ。だが日本の場合、国の奨学金制度は貸与型しかない。先進国の中では異例だ。特に、借りた額に利子を払うものが人数枠の6割を超える。これでは奨学金とは名ばかりの「学生ローン」にすぎない。返済を延滞する人は2014年度末で約33万人に上る。年功賃金と終身雇用の日本型システムが崩れ、非正規労働が広がっていることが背景にある。未来を広げるはずの奨学金が逆に追い詰める結果になっている。これでは家庭が豊かではない子どもが「返す自信がない」と進学をあきらめかねない。無利子の枠を増やすとともに給付型の検討を急ぐべきだ。給付型実現への壁になるのは財源だ。対象となる学生の範囲や給付内容だけでなく、財源の確保についても、各党は具体案を明らかにしてほしい。検討すべきは、給付型だけではない。卒業後の収入に応じて毎月返す額を決める「所得連動返還型」の奨学金制度もだ。文科省の有識者会議が先月、一次まとめを公表している。決まった額を返さねばならない仕組みは、低所得の人にとって厳しい。それだけに、新しい制度が期待されていた。だが今回は、収入がゼロでも、猶予期間から外れると月2千円払わねばならないなど課題を抱えている。よりよい仕組みにするために議論が必要だ。学びを支える制度は何も大学の奨学金に限らない。現在でも「幼児教育の段階的な無償化」や、経済的に苦しい家庭の小中学生が対象の「就学援助」、高校生向けの「奨学給付金」などの政策がある。貧しさが世代間で連鎖し、格差が広がる事態は避けねばならない。幼児から大学生まで切れ目ない支援の仕組みをどう設計するか。検討を進めたい。


PS(2016年4月15日追加):唐津線の40~50年も走っているディーゼル車両は、もう取り替えの時期だと考える。今度は、すっきりした涼しげな色の蓄電池電車に換え、線路は次第に高架にして、市街地では店舗・公園・駐車場、農業地帯では農業用倉庫などに一階部分を貸し出して、そこからも収入を得ればよいと思う。そして、このような面白い事業であれば、賛同してふるさと納税してくれる人も多いだろう。

   
  上 現在の唐津線    日本の蓄電池電車     ロンドンの蓄電池電車   2012.3.22  
(いくら赤字でも色の合わない                                西日本新聞
 車両を繋ぐのは、センス悪
 すぎで見る人にストレス×

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10102/300713
(佐賀新聞 2016年4月15日) JR唐津線 普通列車故障で走行できず
 15日午前8時40分ごろ、佐賀県唐津市のJR唐津線鬼塚駅で、下りの普通列車(1両)が故障で走行できなくなった。乗客6人は下車し、車両は別の列車に結合し移動させた。この影響で普通列車6本が運休、3本が最大2時間以上遅れるなどして200人に影響が出た。JR九州によると、車両内に空気を送り込む装置に不具合が生じたという。

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 11:15 AM | comments (x) | trackback (x) |
2016.3.18 政府の経済政策は、60年1日の如くで正しくないこと ← では、どうすればよいのか? (2016.3.20、22、25、27、29、30、31、4.2に追加あり)
    
学童保育   県別学童保育      県別保育      待機児童の     国立・私立大学
 の推移    待機児童数       待機児童数    多い自治体      年間授業料

    
   人口の推移と        年金支給額       実質賃金の推移     家計収入と
    高齢化率           の推移                      消費支出の推移

(1)保育と学童保育について
 学童保育は、子どもが小学校に入ってから退職せざるをえない女性も多かったため、私や周囲の人の提案で1995年頃できて増えてきた制度だが、まだ待機児童が多く、質も十分ではない。それにもかかわらず、上のグラフで保育園の待機児童数より学童保育の待機児童数の方が少ないのは、学童保育の質が一定レベル以上に保証されておらず、そのため期待が薄く、申し込みが少ないからだろう。

 しかし、子どもができると、母親は退職して収入がなくなり、子育てが一段落しても元の仕事に復職できないリスクが高い上、子育て費用は確実に増えるため、保育料や幼稚園の入園料、大学の授業料などが高いのは打撃だ。そのため、私は、①無償の義務教育を3歳からにして、幼稚園と小学校を連結して幼児教育も行うようにし ②0~2歳の子どもを保育園に預けるようにしたらどうかと考える。何故なら、イ)①により、文科省管轄の教育を一貫して無償で行うことができ ロ)その場合の保育士の不足数がわかり ハ)居心地良く改修すれば、少子化で空いた小学校を使うことができ 二)教育の心配なく子どもを預けられるからである。なお、英国の義務教育は5歳からであるため、5歳からのアレンジも考えられる。

 また、大学授業料の推移を見ると、私立との格差是正として国立大学の授業料を上げた結果、2012年でも授業料が年間50万円を超えており驚くが、これでは普通の親が国立大学に入れられる子どもの数は、やはり1人が限度である。大学は義務教育ではないため無償にまでする必要はないと思うが、国立大学の授業料は1万円/月、12万円/年を限度として、知識と論理に基づいて良い判断ができる人材を増やすべきだ。また、良く教育された質のよい人材の恩恵を受ける財界の寄付や国の拠出で、返還義務のない奨学金を作ることも必要だろう。なお、格差是正を、「(全部を最善にはできないため)全部を最悪にしても差をなくしさえすればよい」と考えているのは、根本的に間違っている。


  自然な英語学習     料理体験        田植え体験       地曳網体験     木登り
  
本物の体験で    ダンス教室      陶磁器教室    植林体験       いちご狩り
発達を助ける            <学童保育だからこそできる活動をしよう>

(2)日本のGDPが上がらない理由は、60年1日の如き経済政策である
1)デフレ脱却(インフレ政策)のための金融緩和とマイナス金利の影響
 *1-1のように、内閣府が3月8日に発表した2015年10~12月期のGDPは、実質0.3%減で、このペースが1年間続くと年率換算では1.1%減だったそうだが、その最も大きな理由は需要の大きな割合を占める個人消費が振るわなかったことだと、私は考える。中国経済の減速はこれまでの経緯から既に織り込んでおかなければならず、原油安は日本にとってはプラスの方が大きいため、これらを理由とするのは変であり、分析して意見を書くような人は、それこそ大学でもっと経済学を勉強しておくべきだ。

2)個人消費が増えない理由
 それでは、何故、個人消費が振るわなかったかと言えば、①金融緩和によるデフレ脱却と呼ばれるインフレ誘導で個人資産、年金受取額、給与を目減りさせたこと ②*1-3のようなマイナス金利や低金利で預金利息を0に近くして個人所得を減らしたこと ③*1-2のように社会保障の負担を増やして給付を減らしたこと ④消費税増税を行ったこと などが理由であり、つまり個人の可処分所得が減ったことが理由なのである。

 ちなみに、私も、消費税増税後、スーパーで前と同じように買い物をしたところ、インフレと増税の相乗効果で支払い額が1.2倍になったため、ただちに買い物する回数を減らし、一回当たりの購入にも気をつけるようして、以前より購買額が減っている。しかし、年金削減やインフレによる預金の目減りなどを考慮すれば、これで適切なのである。

3)何がいけないのか
 戦後すぐの日本は、安い労働力と円安(1ドルは360円だった)を武器に、安価な製品を米国を中心とした外国に輸出することで稼いだ。しかし、現在の日本では、労働力は安くなく、円高であるため、1990年頃からは、新たに市場主義経済に参入してきたアジア諸国や旧共産主義諸国が、安価な労働力で作った製品を輸出する立場を担っている。そのため、日本で物価が下がるのは当たり前で、これは米国でも起こったことだ。

 この変化に対応できず、政府は加工貿易を堅持して工業製品を輸出するスキームを維持し続け、内需で本当に必要とされているサービスを疎かにした。介護、保育、家事サポートサービスは、その中でも本当に必要とされていたにもかかわらず、供給されなかった需要の典型である。

 さらに、景気回復のための役に立たない歳出も多かったため財政が圧迫されると、政府は、自らの責任は全く感じずに、年金原資を株式に投資したり、年金支給額を削減したりして、国民の権利を奪うことによってつじつまを合わせようとした。これにより、高齢化率(高齢者の割合)が25%を超えている日本では、さらに需要が減退し、必要な供給もできなくなったのである。

 なお、金融緩和で景気がよくなったと言われるが、東日本大震災後にはその復興需要があったため、きちんと復興すればニューディール政策と同じになり、金融緩和などしなくても景気はよくなったに違いない。そのため、東日本大震災後の金融緩和はいらぬことだったと、私は考える。

(3)待機児童について
 *2-1のように、東京都23区内で今年4月から認可保育所入所を希望する0~2歳児のうち、杉並区など六つの区では入所倍率が2倍を超え、保育所に子どもを入れられない親たちの不満が噴出しているそうだ。そして、待機児童の7割は東京などの都市部にいるとのことである。
 
 また、*2-2のように、保育や介護は、福祉ではなくサービスと発想を切り替え、同一のサービスを受けるのに、年収で対価が異なるなどというのはやめるべきだ。そして、少子化を問題にするのなら、保育料は1万円/月、12万円/年を上限とし、その中で年齢に応じて栄養バランスのとれた食事やおやつを出すようにすればよく、私は、保育や教育への公的助成は、親が何に使うかわからず、高所得者ほど恩恵の大きな所得税の扶養控除よりも、子ども自身のためになると考える。

(4)介護と介護人材難
 *3-1のように、厚労省は1月23日、介護現場で働く外国人を増やす対策案をまとめたそうだ。介護の人材が不足し、せっかく来てくれた外国人を追い返すようにしていたことから考えると、これは遅すぎたくらいである。

 しかし、それでも、*3-2のように、福岡県介護保険広域連合の65歳以上が支払う介護保険料が、4月の改定で7369円にまで引き上げられ、年金の減額と相まって高齢者の生活を脅かしているのは本末転倒だ。その上、介護サービスは削減されるのだそうで、介護サービスと医師の往診だけで自宅療養ができるという状態から、さらに遠くなった。

 そして、「高齢者人口が増えるから・・」「介護士不足で・・」など、10年1日のように同じことを言って、国民のためになる解決をしないのも、厚労省(官)のやり方である。

<GDP>
*1-1:http://qbiz.jp/article/82214/1/
(西日本新聞 2016年3月8日) GDP改定値年1・1%減 15年10〜12月期
 内閣府が8日発表した2015年10〜12月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)改定値は、物価変動を除く実質で前期比0・3%減、このペースが1年間続くと仮定した年率換算で1・1%減だった。最新の統計結果を反映し、2月に公表した速報値の年率1・4%減から上方修正した。個人消費や輸出が振るわず、2四半期ぶりのマイナス成長となった。中国経済の減速や原油安による市場混乱の影響で、世界経済の先行きへの懸念は根強い。日本経済の景気低迷が続いていることを再確認する結果となったことで、景気対策を求める声が国内外から高まる可能性がある。個人消費は速報値の0・8%減から0・9%減へとやや悪化した。公共投資も2・7%減から3・4%減にマイナス幅が拡大した。設備投資は1・5%増となり、速報値の1・4%増から上方修正した。景気実感に近いとされる名目GDPは前期比0・2%減、年率換算で0・9%減となり、速報値の年率1・2%減から上方修正した。

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/252984
(佐賀新聞 2015年11月24日) 社会保障費、伸び5千億円弱、16年度予算で財政審建議
 財政制度等審議会は24日、2016年度予算編成に関する建議(意見書)を麻生太郎財務相に提出した。財政健全化につなげるため、年金、医療など高齢化に伴う社会保障費の伸びを前年度比5千億円弱に抑えるよう要請。公共事業など他の歳出は人口減少を反映した「自然減」を前提にすべきだと強調した。これを受け、12月下旬の政府予算案決定に向けた作業が本格化する。建議は診療報酬を16年度改定で引き下げるよう提言しており、折衝の行方が大きな焦点になる。

*1-3:http://qbiz.jp/article/82832/1/
(西日本新聞 2016年3月16日) マイナス金利の拡大可能 日銀総裁、0・5%まで
 日銀の黒田東彦総裁は16日、民間銀行が日銀に預けている資金に手数料を課すマイナス金利政策に関して、マイナス0・5%程度まで金利を引き下げることが可能との見方を示した。衆院財務金融委員会で述べた。民主党の宮崎岳志議員が欧州の先行事例を挙げマイナス金利は0・5%ぐらいまで下げることが可能かと質問したのに対し、黒田総裁は「理論的な可能性としては、その通りだ」と応じた。日銀は現在0・1%のマイナス金利を設定している。追加金融緩和の手段に関しては、経済や金融情勢に応じて国債の買い入れ拡大やマイナス金利の引き下げなどを検討すると述べ、「必要に応じてちゅうちょなく行う用意がある」と話した。

<保育と待機児童>
*2-1:http://mainichi.jp/articles/20160313/ddm/001/100/183000c?fm=mnm
(毎日新聞 2016年3月13日) 都内保育所、6区の認可園、倍率2倍超 整備追いつかず
 東京都23区内で、今年4月からの認可保育所入所を希望する0〜2歳児のうち、杉並区など六つの区で入所倍率が2倍を超えることが毎日新聞の調べで分かった。「保育園落ちた」と訴えるブログを機に、保育所に子どもを入れられない親たちの不満が各地で噴出しているが、背景にある厳しい入所事情が浮き彫りになったかたちだ。ほとんどの区で前年よりも受け入れ枠を増やしているが、それを上回る勢いで入所希望者が増加しており、昨年よりも状況は厳しくなっている。23区を対象に、0〜2歳児の2015、16年度4月入所分(1次募集)の申込人数と受け入れ枠などを聞き取った。区によって集計の仕方にばらつきはあるものの、申込人数を受け入れ枠で割った入所倍率は、杉並区が2・2倍で最も高く、世田谷区2・1倍▽台東区2・0倍▽渋谷区2・0倍−−など計6区で2倍を超えた。回答がなかった中野、足立両区を除く21区全体では、約5万人の申し込みに対し受け入れ枠が約2万8000人と、平均でも1・8倍に上り、ほぼ2人に1人が申し込んでも入れない状況となっている。前年比では、2倍を超えた六つの区のうち、四つについては前年は2倍を切っていた。また前年と比較可能な18区のうち、3分の2にあたる12区で入所倍率が高くなっていた。18区だけでも受け入れ枠は約1800人増えたが、申込人数は約4000人増と2倍を上回る伸び。出産後も働き続ける女性が増えているため、対策が現状に追いついていないのが実情だ。保育問題に詳しいジャーナリストの猪熊弘子さんは「この数字や見聞きしていることからも、今年は昨年よりもさらに厳しい状況になりそうだ。保育所は増えたが申し込みも想定以上に増えた、というイタチごっこを20年も繰り返している。自治体任せではなく国が財源を確保し抜本的に変えていかないと、永遠に解決しない」と危機感を示す。保育所に入れない待機児童の対策を巡っては、政府は17年度末までに、50万人分の保育の受け皿を増やす計画だが、最近の騒動を受けて、今月中に新たな緊急対策を取りまとめる方針を固めている。
●待機児童の7割、東京など都市部
 希望しても、認可保育所など国や自治体が基準を定め、補助金を出している保育を利用できない児童は「待機児童」と呼ばれ、東京都など都市部に多い。厚生労働省の調査では、昨年4月時点で0〜5歳児の全待機児童2万3167人のうち、首都圏や近畿圏、政令市などの都市部が約7割を占める。特に東京都は全体の3割を超える7814人と突出している。待機児童を年齢別にみると、保護者が育児休業明けで職場復帰のため、新規に申し込むケースが多い0〜2歳児が全体の9割近くを占めている。待機児童になると、保育スペースが狭かったり、職員数が少なかったりして、認可保育所より質の劣る可能性のある無認可の保育施設やサービスを探さなくてはならない。無認可の施設は補助金がなく、利用料が高額となる場合もある。保育サービスが利用できず、近くに育児を手伝ってくれる祖父母などがいないケースが多い都市部では、親が仕事を辞めざるをえないことも多い。
■認可保育所
 児童福祉法に基づく児童福祉施設。定員20人以上で、子ども1人当たりの保育面積や職員数、給食設備など、国の設置基準を満たした保育施設を指す。公費で運営され、保護者が負担する保育料は、所得に応じて設定されている。15年度に始まった「子ども・子育て支援新制度」では、自治体が基準を定め、公費で運営される、少人数単位の0〜2歳児を預かる小規模保育や家庭的保育(保育ママ)なども新たに認可施設や認可事業に含まれるようになった。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160317&ng=DGKKZO98524530W6A310C1EN2000 (日経新聞 2016.3.17) 保育を福祉からサービスへ
 保育所不足を訴えたブログが政権を揺るがしている。保育所の拡充を政府が約束したのは1994年のエンゼルプランであり、20年以上も前である。なぜそれがいまだ実現できないのかといえば基本的な戦略に誤りがあるからだ。まず待機児童の解消という政策目標自体が間違っている。待機児童とは、認可保育所に入所を希望する子どもの数で、保育所が増えれば諦めていた人が登録する「逃げ水」に等しい。全国で2万~3万人程度の待機児童なら対症療法で済む。しかし、5歳以下の630万人を潜在的な保育需要と見なせば、制度の抜本的な改革が不可欠となる。保育所が需要に見合った数に増えないのは、公立や社会福祉法人主体の児童福祉の枠組みのままだからだ。限られた数の低所得家庭にコストを度外視した料金でサービスを提供する仕組みでは需要超過になるのは当然だ。一般の共働き世帯には、コストに見合ったサービスの対価を支払ってもらう必要がある。数百万人の潜在需要に応えるには企業が主体とならなければ成り立たない。明確な根拠もなしに企業を排除する自治体に対しては、競争政策の視点からの是正策も考えられる。保育所を政府が責任を持って提供する福祉と考えるから財源問題が深刻になる。しかし、これを潜在需要の大きな市場と考えれば、企業にとってはビジネスチャンスだ。子どもの数は減っても1人当たりの支出は増えている。企業が創意と工夫で多様な保育サービスを生み出し、消費者保護の観点から政府が監視するという分担であるべきだ。保育サービスの不足を解消するには乏しい一般財源依存ではなく、独自の財源確保も必要である。2006年の「日本経済研究」で紹介された「育児保険」は、40歳以上が被保険者となっている介護保険の仕組みを応用し、20~39歳層に育児保険の被保険者として保険料を求めるものだ。保育所の充実は安倍晋三政権の掲げる女性の活躍促進のための手段にとどまらない。それ自体が新たな生産活動と雇用を生み出す成長産業となる可能性を秘めている。子育てを社会で支えるという理念を実現するには、児童福祉法を改正し、保育を介護と同じサービスとして位置づける必要性がある。

<介護と介護人材難>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150124&ng=DGKKASFS23H44_T20C15A1PP8000 (日経新聞 2015.1.24) 小手先の対応 限界 介護の人材難、一段と
 厚生労働省が23日、介護現場で働く外国人を増やす対策案をまとめたのは、人材難が今後一段と深刻化するためだ。同省の推計では「団塊の世代」が75歳以上となる2025年度には介護職員は30万人も不足する見込み。人口減少も重なり、日本人だけで労働力を賄うのが難しいとの判断がある。ただ今回の対策案でも政府は「外国人を単純労働力としては受け入れない」という原則は崩していない。技能実習制度の拡大は「介護の技術移転を求めるニーズが途上国側にあるため」(厚労省)というのが建前。不足する労働者の受け入れでなく、あくまで途上国支援との立場だ。こうした対応には国内外で批判が出ている。建設や農業など先行して受け入れている技能実習生は賃金未払いや低賃金の長時間労働が絶えず、諸外国から「都合良く外国人を使っている」などと問題視されている。厚労省と法務省は対策として監督機関を新設する。340人体制で全国約2千の受け入れ団体や約3万の事業所を巡回監視できるようにする。ただ23日の厚労省の検討会では連合の代表から「制度改正を重ねても運用が改善されていない」との指摘が上がった。経済連携協定(EPA)を結んだフィリピンなどから受け入れる仕組みにも課題がある。今年1月までに受け入れた累計1538人のうち481人がすでに帰国した。日本語の専門用語が多い介護福祉士試験に期限内に合格できなかったり、難しさに嫌気がさして他国に渡ったりしたためだ。小手先の対応を続けると、日本は外国人から働く場として見放されかねない。外国人を労働力としてどう位置づけるのか。きちんとした判断が必要な時期に来ている。

*3-2:http://qbiz.jp/article/58480/1/ (西日本新聞 2015年3月22日) 
介護保険料が高騰 福岡・田川など7000円超え 制度開始時の2・5倍
 全国最多の33市町村でつくる福岡県介護保険広域連合の65歳以上が支払う介護保険料(基準月額)が、4月の改定に伴い、田川市郡など8市町村のグループで7369円に引き上げられることが分かった。高齢化が進み、介護サービスの利用が増え続けているためで、現行保険料(6589円)から780円増。介護保険制度が始まった2000年度の2・5倍で、7千円の大台に達する。65歳以上の介護保険料は、保険者の市町村や広域連合が必要なサービス量に応じて決め、3年に1度見直す。福岡県広域連合では05年度から、加盟市町村間の負担と給付をめぐる不公平感を解消するため、構成自治体を高齢者1人当たりの介護サービス給付費の高い方からA、B、Cの3グループに分け、それぞれ保険料を設定している。15年度からAに属するのは田川市、香春町、糸田町、川崎町、大任町、福智町、赤村、東峰村。Bの柳川市など17自治体は5545円(現行比673円増)、Cの志免町など8自治体は4800円(同411円増)で、同じ広域連合内でも最大2569円の開きが生じる。関係者によると、Aの自治体の多くが旧産炭地。炭鉱閉山が続いた1960年代以降、若者が流出し、独居高齢者や高齢夫婦世帯の割合が増す一方で、雇用の場の確保も念頭に特別養護老人ホームなどサービス単価の高い入所施設の開設も続いた。その結果として、給付費が膨らみ保険料アップにつながっているという。Aの15〜17年度の給付費見込み総額は約471億円とされ、12〜14年度の約458億円から2・8%増。高齢者1人当たりのサービス給付費(12、13年度)は、最も低い新宮町(Cグループ)の19万3千円に対し、最も高い赤村(Aグループ)は44万5千円だった。厚生労働省によると、Aの12〜14年度の保険料6589円は、6680円の新潟県関川村に次ぎ全国2番目。09〜11年度の6275円は全国最高額だった。グループ別保険料を4月以降、導入しているのは、福岡と沖縄の広域連合だけで、同省は「1保険者1保険料が原則だが、著しい格差がある場合は、解消に取り組むのを条件に経過的措置として認めている」としている。
▼九州の県庁所在地・政令市は佐賀市除きアップ
 九州の県庁所在地と政令市では、65歳以上が支払う介護保険料(基準月額)が、4月の改定に伴い、佐賀市を除く7市で現行より引き上げられることが西日本新聞の取材で分かった。見直される保険料は、長崎市が現行より591円増の6083円となる他、大分市5994円(542円増)、福岡市5771円(409円増)など。現行からの上げ幅は、鹿児島市が903円増の5766円(23日に決定見込み)で最も大きい。各市は負担増について「高齢化率が高く、介護給付費の伸びも大きい」(長崎市)、「65歳以上の人口比が上がり、基金などを取り崩しても上げざるを得ない」(福岡市)などと説明。佐賀市(佐賀中部広域連合)は、4月からの介護報酬引き下げや、給付費の伸びが予想を下回ったことに加え、基金を2017年度までの3年で9億5400万円取り崩すことで据え置く。宮崎市も基金からの充当で30円増の小幅アップに抑えた。各市とも「団塊の世代が75歳以上になる10年後を見据えると、3年後も下がる要因はない」としている。介護保険料 介護保険を運営するため40歳以上の人が支払う。65歳以上の保険料は保険者の市町村などが決め、所得に応じて軽減される。基準月額の全国平均は現行(12〜14年度)が4972円、介護保険制度の導入当初(00〜02年度)は2911円。40歳〜64歳の保険料は、加入する国民健康保険や健康保険組合などの算定基準に応じて、医療保険料と一括して徴収される。


PS(2016.3.20追加):*4のような記事が、“年金改革”と称して言われる論調の典型で、「①世代間の格差を広げないためには今のうちから我慢することが必要」「②マクロ経済スライドで年金支給額を下げないと子や孫の世代の支給額がさらに減り、厚労省は、デフレ下では発動できないという制約を残しつつ、物価が上がった年にまとめて下げる改革案をまとめた」としている。
 しかし、①は、イ)世代間格差を計算するにあたって、物価上昇を加味しない名目保険料支払額(負担)と名目受給額(給付)を比較している点で論理的でなく結論誘導的であること ロ)年金制度が不備だった時代の働き手は、祖父母や親を直接扶養して負担していた事実が見落とされていること ハ)下の図のように、日本における公的年金の所得代替率はOECD諸国の平均より、かなり低いこと 二)実際に生活できない高齢者が多いこと などから、これまでの年金積立金運用の杜撰さのつけを国民にまわすための屁理屈にすぎない。また、②も、物価上昇時なら下げてもよいとする“改革”案は、下の左のグラフのように、今でさえ公的年金の所得代替率が低い我が国で、目立たぬようにこれまでの年金制度運用の杜撰さのつけを国民に押し付けるもので、正当な理由はない。
 そのため、私は、65歳以上の人や女性の正規労働での労働参加率を上げ、稼働する生産年齢人口と年金の支え手を増やすことが、まず必要な解決策だと考える。さらに、民間企業と同様、退職給付会計を導入して年金資産をきちんと管理するのも当然のことだ。

     
   公的年金による      現在の       人口構造と           女性の       
 所得代替率国際比較   年金改革案    マクロ経済スライド       労働化率

*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160207&ng=DGKKZO97026990X00C16A2PE8000 (日経新聞社説 2016.2.7) 将来世代を考えた年金額の抑制が必要だ
 2016年度の厚生年金や国民年金の支給額が15年度と同じ額のまま据え置かれる。少子高齢化に合わせて支給額を少しずつ抑えていく仕組みが条件を満たせず、発動しないと決まったからだ。今の年金制度では、早めに支給水準を下げておかないと、将来世代の年金額が想定以上に減ることになってしまう。どのような状況の下でも、少しずつ着実に年金額を抑えていけるように早急に制度を見直すべきだ。年金支給水準を毎年小刻みに切り下げていく仕組みは04年度の年金制度改革で導入された。「マクロ経済スライド」と呼ばれる。ただこの仕組みは、高齢者の生活を考慮して、物価や賃金が下がるデフレ状況下では発動できないなど一定の制約が設けられた。その後、日本経済はデフレが続いた。その結果、マクロ経済スライドは発動できず、年金の支給水準は高止まりしたままとなった。脱デフレ傾向が強まった15年度に初めて発動することができたものの、16年度はまた発動できない状況に戻ってしまう。すでに年金を受け取っている人たちにとって、支給額が減らないのは喜ばしいことに違いない。しかし、その代わりに子どもや孫の世代の支給額がさらに減るとしたらどうだろう。世代間の格差を広げないためには、今のうちから少しずつ我慢することも必要ではないだろうか。厚生労働省の審議会は、この問題を解決するために、今ある制約を取り払って、毎年マクロ経済スライドが発動できるような形に制度を改めることを求めていた。これに対し同省は、政治的な配慮からデフレ下で発動できないという制約は残しつつ、発動できなかった分は物価などが上がった年にまとめて下げるという制度改革案をまとめている。しかし、この妥協的な改革案ですら、今夏の参院選を前に高齢者からの反発を恐れる与党には「受け入れ難い」との批判があるようだ。今国会で改革法案を成立させることができるかどうかは不透明な情勢にある。高齢化が急速に進む日本において、なんら手を加えずに年金制度を維持することはできない。給付抑制などの「痛み」を伴う改革を実施し、将来世代に引き継いでいくしかない。政府・与党にはそこをごまかさず、正々堂々と国民に訴えていく姿勢が求められる。


PS(2016年3月22日追加):北海道でも東北でもフル規格の新幹線が開通した現在、*5のように、九州新幹線西九州ルート(終点は長崎)に今さらフリーゲージトレイン(FGT)を投入するのは、FGTの開発費も含めて無駄である。関東在住の人には想像がつかない人も多いかもしれないが、長崎は日本が鎖国していた江戸時代から海外への窓として機能していたため、洗練された独特の文化があり、歴史的価値が高い。そのため、長崎をフル規格の新幹線で結ぶのは、馬鹿な埋め立て工事をするよりもずっと経済合理性が高く、投資価値があり、高架にすればさほど土地の買収費用もかからないと考える。

*5:http://qbiz.jp/article/83138/1/
(西日本新聞 2016年3月22日) 長崎新幹線、フル規格待望論も
 九州新幹線西九州(長崎)ルートの「リレー方式」での開業が確定的になる中、関係者は開業の「その後」に注目している。国土交通省案では、開業から3年後の2025年度にはフリーゲージトレイン(FGT)の量産車が投入される見通し。関西圏から長崎まで乗り換え不要で利便性向上、在来線と新幹線の両区間を走行する新型車両に鉄道ファンが殺到−。当初描いたそんな「夢」が実現する。ただ、これはFGTの開発や走行試験が「順調にいった場合」(国交省)との条件付き。不具合が生じれば投入はさらに遅れる恐れがある。「新技術の開発には、常に予想外の事態が付いて回る」。同省幹部はそう釈明するが、地元はそれでは収まらない。九州選出の国会議員の一人は「本当に完成するのか分からないのに、国の都合に振り回されてはかなわない」と言う。FGTに「見切り」を付ける動きも出てきた。長崎県議会の九州新幹線長崎ルート建設促進議員連盟は、リレー方式での開業の先に全線フル規格化への「計画変更」を見据える。長崎、諫早、大村の沿線3市を含む6市議会は議連と足並みをそろえ、経済界からも同様の声が出るが、財政負担の大きさから国は慎重だ。


PS(2016/3/22追加):*6-1のように、厚労省が理念なき細かな変更を行うことによって、介護事業に参入した事業者やその仕事の担い手は大きな打撃を受ける。また、子を都会に出して一人暮らしをしている老親や子が夫婦で農作業に従事している老親のうち、このサービスを利用している人は生きていけなくなるのに、政府は、*6-2の原発事故賠償を始めとして、あちこちで大きな無駄遣いをしながら何をやっているのか。なお、原発事故の賠償は、初めてだった福島の場合は仕方がないが、二度目以降は、リスク承知で、リスク料をもらって再稼働した地元のみの責任とすべきだ。

*6-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36697
(日本農業新聞 2016/3/22) 要介護1、2の生活援助が保険外に 厚労省が検討、年内に結論
 厚生労働省は介護保険制度で、介護の必要度が軽い「要介護1、2」向け訪問介護のうち、掃除や買い物などの生活援助サービスを保険から外し原則自己負担とする方向で検討に入った。2016年中に結論を出す方針だ。費用の負担感からサービスを利用できなくなる高齢者が増え、訪問介護中心のJA事業などにも影響が出そうだ。
●訪問事業手引けぬ JAも打撃
 「体が動かないから、身の回りのことが思うようにできない。ヘルパーさんが頼り」。新潟県上越市で一人で暮らす金子まちさん(99)は要介護2で、JAえちご上越の訪問介護を週7日利用する。高齢のため足腰が弱り、一度椅子に座ると立ち上がりづらい。自分だけで浴槽に出たり入ったりするのも困難だ。「子どもは近くにいないし、近所に何もかも頼るわけにはいかない」と言い、買い物や調理、掃除などホームヘルパーの日常的な支援を必要とする。金子さんが生活援助にかける費用は1カ月で約10万円。今は自己負担1割の約1万円で済み、安心して毎日利用できる。だが、全て自己負担となると家計を大きく圧迫し、今のような毎日の利用は難しくなる。同JAの訪問介護を受ける利用者約90人のうち、要介護1、2で生活援助を受ける人は3割弱を占める。保険対象から外れれば、利用者の負担が増すのはもちろん、JAも事業収益が減り経営が打撃を受ける。このため、保険から外れた人を対象にしたサービス提供にも乗り出す考えだ。「地域貢献を使命に持つ事業所だから、地域の受け皿として機能しなければならない」(高齢者福祉部)。広島県のJA三次は、訪問介護利用者が約170人。生活援助が5、6割を占め、ほとんどが要介護1、2だ。中山間地のため家から歩いて行ける店は少なく、買い物や調理などのサービスをホームヘルパーに頼る高齢者が多い。JAふれあい課ふれあい福祉センターの吉川順一郎センター長は「介護度の比較的軽いお年寄りの毎日を支えているのは生活援助。これが保険から外されると厳しい。事業収入としても切実な問題で、職員の給料が出るかどうか……。だが、地域に根差すJAとして訪問介護から手を引くわけにはいかない」と頭を悩ませる。介護の必要度が軽い人を多く抱える、熊本県のJA菊池も難局を予想する。訪問介護利用者は約40人、要介護認定平均は1.58だ。「制度見直しで、国は介護給付金をできるだけ抑えようとしている」(福祉課)と、事業継続に厳しさを抱く。
●受け皿なくなる
 JA全中高齢者対策課は「JA訪問介護事業は要介護1、2など軽度の利用者が多く、生活援助の占める割合が高い。保険から外れたら、収入減となる影響は大きい」と指摘。採算割れを見込んで事業自体の引き受け手がなくなり、「地域全体でみれば介護難民が出かねない」と危惧する。

*6-2:http://www.jiji.com/jc/zc?k=201603/2016031800629&g=soc
(時事通信 2016.3.20) 国に5800億円追加申請=原発事故の賠償支払い-東電
 東京電力は18日、福島第1原発事故の賠償金支払いなどのため、原子力損害賠償・廃炉等支援機構に対し、5831億2800万円の追加支援を申請した。認められれば、原発事故の賠償に絡んだ国からの資金援助額は、除染費用も含め合計7兆4695億8633万円に達する。追加支援の申請は昨年6月以来。内訳は、土地や建物の除染費用の支払い分が3101億円、出荷制限や風評被害などの賠償分が2730億円


PS(2016.3.25追加):*7に、日経新聞が「①農業を教育に生かせ」「②浦安市は農地がないため、中学校が人工的な環境で農作物を育てる植物工場を導入した」「③方法は違えど生き物としての農作物から学ぶ目的は同じ」「④機械音が響くが土の匂いはない」「⑤校内の植物工場ならつぶさに植物の生育を観察でき、最新の技術に触れて大きな刺激になる」などと記載している。
 そのうち、①はよいが、②のように農地(農地は人工物であって自然ではない)のないコンクリート造りの都会で育ち、ごく限られた科目の勉強しかしていない人が、地下水の分量も自然の仕組みもわからずにフクイチの汚染水のような呆れた処理をしているのだと思うため、そのような街は子どもにも関わらせて自然の川や海を利用した自然公園を作った方がよいと考える。また、並木の間に花壇を作ったりして、小学校区毎に、特徴ある美しい街づくりの競争をするのも面白いだろう。
 さらに、④の機械音が響くが土の匂いのない人工的な環境で農作物を育てる植物工場は、水槽に空気を出しながら金魚を飼っているようなもので、③の「農作物から学ぶ目的は同じ」とは到底いかない。その理由は、子どもは、収穫時の驚きや喜び、有機農業の土で育ったとれたての作物の味も一緒に覚える必要があるからで、⑤のように、植物の生育を観察する目的なら植木鉢に植えた方が自然に近い上、植物工場の限られた光と栄養素で育った形だけのレタスや、それを喜んで食べている人は憐れだ。

*7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160325&ng=DGKKZO98846190V20C16A3NZBP00 (日経新聞 2016.3.25) 農業を教育に生かせ、千葉・浦安、中学に植物工場
 農業を教育に生かす取り組みが、各地で工夫をこらしながら続いている。市内に農地のない千葉県浦安市の中学校は、人工的な環境で農作物を育てる「植物工場」を導入した。東京都調布市では大人と子供が一緒に田んぼで学ぶ活動が回を重ねる。方法は違えど、生き物としての農作物から学ぶ目的は同じ。良好な環境や食べ物を大切にする気持ちを培う助けになると期待されている。教室の半分ほどを占める巨大な装置の中で、青々としたレタスが葉を広げる。かすかに機械音が響くが土の匂いはない。千葉県浦安市の市立入船中学校は光や水、温度などを制御して農作物を育てる「植物工場」を設置した珍しい中学校だ。生徒の手で実験的な栽培を始めている。同校は昨年9月に可動式の「ワゴン型植物工場」6台を導入。今年1月には幅6メートル、高さ2.5メートル、奥行き2.1メートルの「小型植物工場」も設置した。ワゴン型では昨年10月からリーフレタスを栽培している。世話をするのは各クラスの環境係の生徒たち。養液の補給、苗の間引きなどを週に数回行う。種まきから収穫まで約35日間。とれたレタスは文化祭で配ったり調理実習で使ったりしている。4月からは理科の実験や食育の授業などでも工場の活用を目指す。二酸化炭素(CO2)の濃度や日照時間などを変えて育ち方を比べることで、植物に必要な環境条件などを考察できる。浦安市は全国の市町村で唯一、農地がない。入船中の生徒は農業体験をするのに茨城県の農地まで出向いている。工場を設置したわけを、緒方利昭校長は「校内の植物工場ならつぶさに植物の生育を観察でき、小さな変化に気づける。最新の技術に触れることも生徒にとって大きな刺激になるはずだ」と語る。市から理科教育の推進校に指定されていることも理由の一つという。環境係の一人として栽培に携わる佐々木悠帆さん(13)は「様子を見に来るたび、植物の大きさや色が変化していくのが分かる」と笑顔で話す。同校ではワゴン型植物工場を近隣の小中学校に貸し出すことも検討中。4月からは小型植物工場の試験稼働も始める予定だ。市の教育政策課は「より多くの生徒に、自分で育てたものを食べる経験をしてもらいたい」と意気込んでいる。


PS(2016年3月27日追加):*8の「①少子化対策を進める市の職員は市民の先頭に立って子供を産むべきだ」「②市職員には一定数の子供を育てた人を一部で採用すべきだ」「③職員は少子化対策に積極的なことが望ましく、子育て経験者が採用されれば、若い職員が産休を取得する際などに職場の理解が得やすくなる」というのは、女性職員のみを対象として言われたのだと思うが、もしそうなら、実質的に女性に対してのみ採用や配置にハードルを作って不利な扱いをしているため間接差別である。また、男性職員も含めて言ったのであれば、子どもを奥さんに育ててもらった男性は、自分で育てたわけではなく仕事と子育ての両立の苦労はわかっていないため、「子育てした」というグループから除くべきだ。つまり、直後に撤回したとしても、*8のようなことを考えるのは、その時代の状況に応じて多様な人生を選んだ人(特に女性)に対し、自己決定権を認めていない点で女子差別撤廃条約違反なのである。

*8:http://mainichi.jp/articles/20160327/k00/00e/040/160000c
(毎日新聞 2016年3月27日) 「市職員は子供を産むべき」直後に撤回
 大分市の帆秋(ほあき)誠悟市議(55)=2期=が、18日の市議会一般質問で「少子化対策を進める市の職員は市民の先頭に立って子供を産むべきだ」「市職員には一定数の子供を育てた人を一部で採用すべきだ」などと発言したことが分かった。質問の直後に永松弘基議長から「誤解を招く」と指摘されたため取り消しを申し入れ、25日に議事録から削除されたという。帆秋市議は毎日新聞の取材に「職員は少子化対策に積極的なことが望ましく、子育て経験者が採用されれば、若い職員が産休を取得する際などに職場の理解が得やすくなるという考えで質問した」と説明。一方で「『先頭に立って』の表現は職員の義務と解釈される可能性があるなど、適切でなかった」と話した。


PS(2016.3.29追加):*9に、「①土地デフレが終わり全国平均の地価が8年ぶりに上昇した」「②大都市から始まった地価上昇は着実に広がっている」「③地価の上昇により担保価値が上昇して、中小企業も設備投資資金を手当てしやすくなるため、経済にとって望ましい」「④銀行による不動産融資はバブル期を超えて過去最高になり、不動産業への資金集中が続けば新たなバブルを生む」と書かれている。
 このうち、①②のように、日本の都市部における地価上昇を祝福するのは全くおかしい。何故なら、日本の都市部の地価は収益還元法による価値を大きく上回っており(その場所でビジネスを行ってもなかなか採算が合わないということ)、さらなる地価上昇は、バブル期と同様、まさに④の理由で売買価格が上がったにすぎないからだ。このため、都会ではまともな保育園も作れず、狭いマンションの値段が驚くほど高く、その他のビジネスを行っても地代が高すぎて販売単価や人件費にしわ寄せされ、つけが一般市民の生活にまわされた上、この高コスト構造がバブル期に始まった日本の産業空洞化の原因であるため、何度も同じ失敗を繰り返して学習できていないのは誠に情けないのである。
 さらに、③については、不動産担保型の貸付には(長くは書かないが)ディメリットが多いため、前回のバブル終焉後、企業の返済能力や将来性を評価した貸付をするよう20年以上も前から奨励してきたにもかかわらず、まだできていないのなら不思議と言うほかない。

*9:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160323&ng=DGKKZO98744360S6A320C1EA1000 (日経新聞社説 2016.3.23) 土地デフレの終息はいいが
 リーマン・ショック以降続いた土地デフレが終わった。国土交通省が発表した公示地価(1月1日時点)で全国平均の地価が8年ぶりに上昇した。不動産市場への資金流入に加えて、訪日客の増加も地価を押し上げている。大都市から始まった地価上昇のすそ野は着実に広がっている。都道府県別にみると、商業地では新たに北海道や石川県、広島県などが上昇に転じた。住宅地でも新たに熊本県が上がった。商業地が特に堅調だ。東京の都心部を中心に主要都市でビルの空室率が低下している。社員の採用増や業容拡大に併せてオフィスを移転したり、拡大したりする企業が多い。需給が引き締まり、東京などでは賃料も上がっている。訪日客の増加で大阪の心斎橋や東京の銀座などではブランド店や免税店の出店が相次いでいる。ホテル用地の取得も広がっている。土地デフレが終わり、地価が上昇に転じたことは経済にとって望ましいだろう。担保価値が上がれば中小企業なども設備投資などの資金を手当てしやすくなる。地価が上がったといっても全国平均で0.1%の上昇にすぎない。実需の支えがなければ、持続的に地価が回復するのは難しい。規制緩和などでビジネス拠点としての都市の魅力を高め、内外の投資を呼び込む政策が要る。一方で気になる点もある。銀行による不動産融資は昨年、バブル期を超えて過去最高になった。運用難が背景にあるとはいえ、不動産業への資金集中が続けば、新たなバブルを生みかねない。大阪では上昇率が40%、名古屋でも30%をそれぞれ超えるような地点が出てきた。東京・銀座の一等地ではバブル期よりもすでに地価は高い。マンションの販売価格も全国でかなり上がっている。日銀のマイナス金利政策は住宅投資などを後押しするだろうが、バブルの芽を膨らます可能性もある。地価は上昇への期待感から振れやすいだけに、注意を要する局面に入ったといえるだろう。


PS(2016年3月30日追加):*10の「焼き物に関心がない人に向けた方策や基本理念」は、焼き物作りを小中学校の工作の授業に加えれば一般の関心が高くなると同時に、広い裾野から才能を見い出すことができると考える。私は唐津市出身なので中学校で唐津焼を創る授業があり、私が作ったものを見て母も関心を示していた。そのため、小学校、中学校で陶磁器創りを工作の授業に取り入れ、小学生の部・中学生の部に分けてコンクールを行って、優秀作品を展示すると面白いと思う。


2016.2.14佐賀新聞  鍋島      源衛門     中里太郎衛門   今泉今衛門  酒井田 
子どもの有田焼製作                                           柿右衛門

*10:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/294797
(佐賀新聞 2016年3月30日) 「九陶に語らいの場を」検討委最終会合、提言へ
 佐賀県立九州陶磁文化館(西松浦郡有田町)の機能や施設のあり方を探る検討委員会の最終会合が29日、佐賀市であった。来館者が展示を見た感想を話し合うスペースを設けた「議論できる博物館」などを求める意見が出た。7回の会合で深めた論議を基に近く提言をとりまとめる。県は地元窯業関係者らの意見を含めて今後の運営につなげる。焼き物に関心がない人に向けた方策や基本理念などで意見交換した。世界に開かれた陶磁文化の拠点として、住民を巻き込んだ情報発信などを提言した。ハード面では収蔵施設拡大の必要性を指摘するとともに、収蔵型展示の検討や、展示室を拡充するため館内スペースを見直すことなどの意見が挙がった。委員会は開館から34年が過ぎた九陶の将来を見据え、社会のニーズに対応した展示や今後の役割を考えようと2014年に設置。前九州国立博物館館長の三輪嘉六さんを座長に、九州陶磁文化館の鈴田由紀夫館長と博物館関係者、大学教授ら9人で議論を進めていた。


PS(2016.3.31追加):健康寿命・平均寿命などが伸びたので、定年を延長するのは当然だが、60歳以上の人からは、「働くのはよいが、年齢で差別して非正規にするのではなく、そのまま仕事を続けさせて欲しい」という要望があり、男子若年層には「それではいつまでも役職につけないではないか」という声がある。しかし、時代は速く変わっているので、高齢化かつ共働き時代のニーズに合わせるためには、特に若年層の発想を必要とする事業もあれば、熟年層や高齢者の知識・経験が重要な事業もあり、男子若年層のみの発想では時代のニーズにあったものは作れないと考える。
 
*11:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160331&ng=DGKKASFS30H3E_Q6A330C1MM8000 (日経新聞 2016.3.31)定年引き上げ助成金拡大、支給基準66歳以上に 厚労省
 厚生労働省は意欲のある高齢者が働きやすいように定年退職の年齢引き上げを企業に促す。定年を70歳以上に引き上げないと助成金を出さない制度を改め、4月から支給基準を「66歳以上」に広げて使いやすくする。65歳以上の社員を雇う企業が40~50代の中高年の転職を受け入れた場合、1人あたり40万円を出す助成金制度もつくる。定年を引き上げた企業は就業規則の変更など制度の導入にかかる経費として100万円をもらえる。定年を迎えた正社員が非正規社員として働ける継続雇用制度を導入した場合も助成する。助成金をもらえる企業の数は基準の緩和で大幅に増える見通しだ。2015年の厚労省調査によると、70歳以上まで働ける企業は全体の2割にとどまっている。希望者全員が65歳以上まで働ける企業は7割を超える。40~50代の転職を後押しする助成金は1人当たり40万円を受け入れ企業に出す。1社につき最大500人まで支給する。


PS(2016年4月2日):*12-1の消費税は、人件費をはじめとする付加価値に課税して消費者に転嫁する悪税であるため、凍結した上で次第に廃止すべきだ。そう書くと必ず財源問題や直間比率を言う人がいるが、財源は、*12-2のように、優秀で屈強な人材(強者)を大量に採用した商社が、外国から他国より高い値段で資源を買い付けて代金に比例して手数料を取り、それらを国内産業や国民に負担させるような最も安易で情けないビジネスを行うのではなく、日本産天然ガス・水素・農林水産物などを輸出するような本当に国のために役立つビジネスを行えば、弱者からむしり取るようなことはしなくてすむのである。また、日本が自然エネルギーを中心とする国産エネルギーにエネルギー変換を行なって、エネルギー自給率100%の国になれば、国富を外国に出すことなく国内でまわすことができるため、税収が増える。さらに、直間比率については、アメリカ合衆国には付加価値税はなく、必要と思った州が独自に課税しているのであって、税体系の必須要件ではないのだ。

*12-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/296030
(佐賀新聞 2016年4月2日) 消費税増税再延期は適切に判断、首相、分析踏まえ政治判断
 安倍首相は消費税率引き上げの再延期について、専門的見地の分析を踏まえ政治決断するとした上で「延期には法改正が必要だ。そうした制約条件の中で適時適切に判断する」と述べた。

*12-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160325&ng=DGKKASDZ24I4J_U6A320C1EA2000 (日経新聞201.3.25)次代の経営者に重い宿題 収益の安定化/革新力の向上
 資源ビジネスへの傾斜を深めた総合商社の経営が転機を迎えた。業界の双璧である三菱商事と三井物産がそろって最終赤字に転落するのは、やはり衝撃的だ。資源以外の事業の育成を急ぎ、お得意の「稼ぐ力」を取り戻す必要がある。過去四半世紀、停滞を続けた日本経済だが、個別の業界や企業に焦点を絞ると、飛躍的に成長した例も少なくない。その代表格がいわゆる総合商社だ。三菱商事を例にとると、1990年度から99年度まで10年間の純利益の合計は3700億円にすぎないが、最近は単年度で4千億円以上の純利益を当たり前のように計上してきた。桁違いの収益力の源泉は、以前のモノの売買を仲介するトレーディング(交易)会社の事業モデルから脱却し、天然ガスや原料炭など資源分野で直接投資に乗り出したことだ。1000億円単位の巨額の資本を投下して、地下に眠る資源の所有権を獲得。それを採掘して内外の電力会社や製鉄会社に供給することで、高収益を享受した。中国の需要爆発がもたらした商品市況の高騰が、プラスに働いたことも言うまでもない。逆にいえば、資源価格が下がれば、過去の投資案件の価値が毀損し、大型の損失が出るのも必然だ。大切なのは損切りを短期で終わらせ、なるべく引きずらないことだ。バブル崩壊後の地価下落局面で、一部の商社は「これで最後」と言いながら何度も特別損失を出し、市場の信頼を失った苦い経験がある。商社は過去にも何度か冬の時代を迎えながらも、時代に合わせて自己変革し、よみがえってきた。今必要なのは、非資源分野の充実と顧客といっしょになって価値を創出するイノベーション力の向上だ。ブルネイの液化天然ガス(LNG)プロジェクトのように、商社が海外の石油メジャーや需要家の電力会社とチームを組んで新境地を開いた案件も過去には多い。三井物産で昨年上席役員32人を抜いて、安永竜夫社長が誕生するなど、大手商社の経営陣はいま代替わり期を迎えている。資源価格の乱高下に振り回されない確固たる事業基盤を築けるかどうかが、問われている。

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 04:27 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.2.19 「マクロ経済とミクロ経済は別」という考え方は、翻訳経済学を丸暗記した細切れの知識の集合で、ご都合主義の論理になっているため、日本の経済政策は長く間違っていたのだということ (2016年2月20、21《本文》、22、25、26、28日、3月2日に追加あり)
    
  戦後経済成長率       2015.1.16          2015.7.26     一人当たりGDP
     の推移           日経新聞            日経新聞      (購買力平価) 

   
   名目賃金と実質賃金       平均世帯所得     最低賃金        2016.2.16  
      の推移              の推移        国際比較      西日本新聞(*1-3)

(1)実は、成熟期以降の日本経済は成功していない
 1段目の1番左のグラフのように、日本の経済成長率は、1956年~1973年の平均で9.1%、1974年~1990年の平均で3.8%、1991年~2008年の平均では1.1%となり、次第に下がっている。なお、このグラフは、名目の数値を単純平均しており、その間の物価上昇率はたいへん大きかったため、実質成長率はもっと低く、高い経済成長率を示したのは、国民が戦後の廃墟に家を建て、先進国を手本にして家電などを揃えた1956年~1973年の開発期のみである。

 なお、1974年~1990年はバブル期の狂乱物価時代を含むため、実質成長率は1991年~2008年とあまりかわらず低いと思われる。つまり、日本は、欧米に追いつくため真似をして、安い人件費で大量生産した時代には成長率が高かったが、自ら必要なものを開発して販売しなければならない成熟期段階になると、振るわなかったのだ。

 そのような中、日本政府は、景気対策と称して財政支出を繰り返し、GDPと比較して異常な額の財政赤字を作ったが、その多くが生産性を上げない(下げる場合もある)支出であったため、上の3番目のグラフのように、日本の実質成長率はどんどん下がって0に近くなった。また、上の1番右のグラフのように、購買力平価による一人当たりGDPは、アジアの中でも順位が落ちている。

 また、1段目の左から2番目のグラフのように、景気対策と称して貨幣を過剰に供給もしたが、必要以上の貨幣供給は(デフレ脱却と呼ばれる)インフレを起こしたと同時に、貨幣の流通速度を落とし、2段目の左から1番目、2番目、3番目のグラフのように、実質賃金を落とした。それと同時に、年金が減額され、利子率も低くなって高齢者の実質収入が減ったため、1世帯当たりの消費支出が減少したのである。

 そして、これらは、*1-4のアベノミクスの窮地というよりも、また暖冬や中国経済の鈍化という小さな理由でもなく、金を民から官に巻き上げて生産性を高くしない支出に充ててきたという一貫して日本政府(行政が主?)が採ってきた政策の結果であり、気分で消費が伸びないなどという気楽な話ではない。

(2)成熟期以降の日本経済が成功しなかった理由

        
   日本の財政収支    消費税率の推移   社会保障給付国際比較   人口ピラミッド 

1)社会保障の削減とそのアピール
 *1-1のように、「財政赤字の主因は、高齢化に伴う医療・年金・介護といった社会保障費の増加であるから、世代間の不均衡是正のためには『社会保障と税一体改革(=高齢者向け社会保障の削減+消費税増税)』が必要だ」という論調は多い。しかし、上の1番左と左から2番目のグラフのように、実際には消費税を上げても財政収支は改善せず、財政収支の改善は政府の意志の問題であることがわかる。

 そして、*1-1は、「①社会保障費を賄う安定財源としての消費税を10%超上げる必要がある(「社会保障費の財源は消費税」と決めつけている点が罠である)」「②所得や資産にゆとりのある高齢者に負担を求める(“ゆとりがある”の定義が問題)」「③診療報酬を下げる(既に世界でも低い方であり、赤字病院や倒産する病院が少なくない)」「④高齢者向けの歳出を抑える(保険料を支払ってきた人が給付を受ける段になって給付削減を連呼する点が問題)」「⑤浮いた財源を子ども・子育て支援に振り向ける(高齢者と若者を分断して本当の問題点を隠す議論)」などとする。

 しかし、実際には、上の左から3番目のグラフのように、日本の社会保障はヨーロッパに比べて高くはなく、年金についても、その年の12月31日には出生数が決まり、一番右の人口ピラミッドのように次第に高齢化率が高くなっていくことがわかっていたのに、厚労省は真摯に変化に対応せず、年金資産の無駄遣いが多いなど管理も杜撰であったこと等々が、現在の年金資産不足の原因なのだ。そのため、これこそ国が責任を採るべきであり、身を切る改革と称して国会議員数を減らしても消費税増税の根拠にも何にもならず、民の代表を減らせば官が喜ぶだけである。

 なお、上の1番右の人口ピラミッドを見ればわかるように、高齢者の生まれた時代も次第に変わるため、「高齢者は消費しない」というアピールも事実ではなく、世代毎にコホート分析すれば、その消費行動がさらに明らかになるだろう。そして、人口に占める高齢者の割合はますます増えるため、変な意図を持って年金削減や高齢者の社会保障削減をすることがなければ、高齢世代はフロンティアで重要な新しいマーケットとなり、高齢化社会でクールに暮らすための本物の需要と供給が創出されていく筈だ。

 それにもかかわらず、高齢者が多いのが困るかのような議論やアピールばかり行った結果、*1-2のように、勘違いした福祉系の若者が、介護付き有料老人ホームで入所者を殺害したり、入所者に暴力をふるったりしている。これらの事件の大きな理由は、福祉施設を雇用の場(労働供給の場)としてしか捉えず、ケアされる高齢者の需要にあった福祉を行うという姿勢が疎かにされていることである。

2)遅れている行政の感覚と経済を妨害する政策
 日本経済が、欧米の真似をし、安い人件費で大量生産できた開発期には成長率が高かったものの、自ら必要なものを開発して販売しなければならない段階になって振るわなくなった理由は、他国でも安い人件費を使っての製造業が振興されてきたこと、経産省をはじめとする行政が世界の変化・需要構造の変化・技術の変化などを織り込めないことにある。そして、経済学も、これらを与件として考慮していない。

 その具体例は、環境でも自給率でも文句のない再生可能エネルギーや水素があるのに無理に原発を残すエネルギー政策を行ったり、電気自動車や燃料電池車ができたのにガソリン車に固執したり、福祉サービスはフロンティアの大きな需要になるのに意図的に疎かにしたり削ったりするようなことである。このようなことをすれば、本来は起こるべき投資行動も起こらなくなるのが当たり前なのだ。

(3)年金は保険料を支払い、積み立てしてきているもので、社会保障のお恵みではない ← 元の積立方式に戻すべきで、賦課課税方式への変更は厚労省のサボリをごまかすためのものである
 年金は途中で一方的に賦課課税方式に変更されたものの、もともと積み立て方式で行って来たものであるため、元の積立方式に戻し、一般企業と同様に退職給付会計を取り入れて積立必要額を計上すべきだ。そして、現在の積立額とあるべき積立額との差額は、今のうちに国債(0金利かマイナス金利)を発行して、債務として計上すべきである。

 そして、年金(老後資金)を特定の世代に2重負担させることなく、その国債は地下資源による収益で返済するか、50年くらいに渡って地道に返済するかすべきで、これが最もまともな景気対策になる。

<誤った政策のオンパレード>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151225&ng=DGKKZO95520520V21C15A2EA1000 (日経新聞社説 2015.12.25) 縦割り排し社会保障・税一体改革を
 政府が2016年度予算案を決めた。予算総額は96兆7千億円程度と過去最高を更新した。税収増を見込み、新規国債発行額を抑える結果、借金で歳出をどれくらい賄うかを示す国債依存度は35.6%まで下がる。日本の借金残高は国内総生産(GDP)の2倍を超え、財政は先進国で最悪の状態にある。単年度の財政赤字を前年度より小さくしたのは前進だが、財政健全化の道筋が整ったとはいえない。 
●世代間の不均衡是正を
 財政赤字の主因は、高齢化に伴う医療や年金、介護といった社会保障費の増加だ。16年度は前年度比の増加額を4400億円強にとどめた点はひとまず評価できるものの、歳出は切り込み不足だ。医療の公定価格である診療報酬は8年ぶりに引き下げられる。しかし、診療報酬のうち、医師、歯科医師、薬剤師の技術料部分、いわゆる本体は引き上げられた。診療所の収益は増えているのに本体部分をプラス改定したのは、来年の参院選を意識して医師会などに配慮した結果と疑わざるを得ない。地方財政も、国からの自立を促す改革を素通りしている。政府は国と地方をあわせた基礎的財政収支を20年度に黒字にする目標を掲げている。金融市場で日本の国債への信認が疑われると長期金利が上昇し、事実上の財政破綻につながるリスクが高まる。経済成長を確保しつつ堅実な財政運営が求められるのは、この心配をなくすためだ。社会保障費を賄う安定財源としての消費税はいずれ10%を超えて上げる必要があるだろう。ただ、社会保障費の膨張に歯止めをかけなければ、際限のない増税を強いられかねない。だからこそ社会保障制度の効率化は急務となる。こうした観点からみると、16年度予算案は及第点に達しない内容だ。3つ問題がある。第1は所得や資産にゆとりのある高齢者に負担を求める改革に踏み込んでいないことだ。医療では、70歳以上の高齢者の窓口自己負担が原則1~2割にとどまり、現役世代の3割より低く抑えられたままだ。年金では、受給者が現役世代の所得控除より手厚い税制優遇措置を受けている。そのうえ高所得の年金受給者についても、基礎年金の半分に税金が投じられている。所得や資産が比較的豊かな高齢者にも優遇措置を続ければ、世代間の給付と負担の不均衡はいっこうに是正されない。今回も痛みを伴う改革を先送りし、この点では「決められない政治」が続いた。第2は子ども・子育て支援だ。幼児教育無償化の対象を広げたりひとり親家庭に配る児童扶養手当を増やしたりするのは妥当だ。しかし、安倍晋三政権が合計特殊出生率をいまの1.4台から1.8に上げる目標を掲げている割には小粒な内容だ。少子化への対応は息の長い取り組みが要る。そのためには高齢者向けの歳出を抑え、浮いた財源を思い切って子ども・子育て支援に振り向ける、といった歳出の抜本的な組み替えが必要だ。今回の予算案はその難題を避けた。15年度補正予算案では低所得者のうち年金受給者だけを対象に給付金を大盤振る舞いする。高齢の有権者が増えるほど、高齢者を優遇する政策がまかり通る「シルバー民主主義」の弊害は目に余る。
●勤労税額控除も一案
 第3に、真に支援が必要な低所得者向けの対策だ。17年4月の10%への消費増税時には軽減税率を導入することが決まった。それでも、国民年金や国民健康保険(国保)といった社会保険では、税以上に低所得者の負担が相対的に重い「逆進性」の問題が残っている。改善策として例えば、税と社会保障の共通番号(マイナンバー)を使い、勤労税額控除のようなしくみを導入するのは一案だ。働いても所得が低い間は社会保険料負担を減免し、手取りの所得を増やせるような誘因策はあっていい。働く意欲を持つ人々を下支えする施策は、生活保護の改革などとあわせ安全網を再構築するうえで重要になる。日本では、税は自民党税制調査会と財務省、社会保険は厚生労働省と縦割りでバラバラに制度設計をしてきた結果、効率性や効果に乏しい制度を温存してきた。社会保障制度を持続可能にするとともに、財政健全化の道筋を固める。そのためには社会保障制度と税制を一体的に抜本改革する必要がある。安倍政権はその課題から逃げてはいけない。

*1-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG15HHG_V10C16A2000000/
(日経新聞 2016/2/16) 転落死事件で元職員を逮捕 殺人容疑、川崎老人ホーム
 川崎市の介護付き有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で2014年11月、入所者の男性(当時87)をベランダから突き落として殺害したとして、神奈川県警は15日、殺人の疑いで、横浜市神奈川区、施設元職員、今井隼人容疑者(23)を逮捕した。施設では同年12月、他の入所者2人もベランダから転落死した。今井容疑者はいずれの時間帯にも勤務していた。逮捕容疑は14年11月3日午後11時ごろから同4日午前1時50分ごろまでの間、入所者の男性を4階ベランダから突き落とし、内臓破裂で殺害した疑い。今井容疑者は昨年9月、取材に「自分が(関与を)疑われているなという自覚はあったが、突き落としてはいない」と話していた。「Sアミーユ川崎幸町」では4階で暮らしていた当時87歳の男性が14年11月に死亡したほか、同年12月9日には4階にいた女性(同86)、同月31日にも6階に入所していた女性(同96)がそれぞれ転落して死亡した。いずれも認知症や記憶障害があったという。川崎市は昨年、職員から暴力を振るわれたとする入所者家族からの訴えで施設を監査。職員4人が暴言を吐き、頭をたたいていたことが判明した。入所者の女性(86)が暴行を受ける様子を家族が撮影して公開し、問題となった。神奈川県警は昨年12月、転落死した女性とは別の女性入所者に暴行したなどとして、元職員3人を暴行や業務妨害の疑いでそれぞれ書類送検している。施設は11年11月に開設した。6階建てで居室は80室あり、支援や介護が必要な高齢者が入所。介護事業大手「メッセージ」(岡山市)と系列会社が運営しており、同社は居住者の転落死や虐待を受け、昨年12月に第三者調査委員会による報告書を公表している。

*1-3:http://qbiz.jp/article/80812/1/
(西日本新聞 2016年2月16日) 昨年の家計消費支出2・7%減 2年連続でマイナス
 総務省が16日発表した2015年の総世帯の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は1カ月平均24万7126円で、物価変動を除いた実質ベースで前年比2・7%減となった。14年に続き2年連続の減少となり、消費の回復が鈍いことが裏付けられた。14年1〜3月期は消費税増税前の駆け込み需要でかさ上げされており、15年はその反動が出た。暖冬で冬物衣料への支出が減ったことも響いた。マイナス幅は消費税増税の影響が長引いた14年の3・2%減よりは縮小した。単身世帯を除く2人以上の世帯の消費支出は28万7373円となり、実質で2・3%減少した。2人以上世帯では、全10費目のうち9費目が減少した。被服・履物が7・2%減と大きく落ち込んだ。パソコンや外国パック旅行などの教養娯楽のほか、食料も減った。一方、光熱・水道は増えた。
 
*1-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201602/CK2016021502000054.html (東京新聞 2016年2月15日) アベノミクスの窮地鮮明 GDP年1.4%減
 内閣府が十五日発表した二〇一五年十~十二月期の国内総生産(GDP、季節調整値)の速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0・4%減、この成長が一年続くと仮定した年率換算で1・4%減となり、二期(六カ月)ぶりにマイナス成長に転じた。GDPの約六割を占める個人消費が落ち込んだことが響いた。政府は一五年度の実質成長率の目標(経済見通し)を1・2%としているが、実現には一六年一~三月期で前期比年率8・9%の大幅な伸びが必要になり、達成は極めて困難な状況だ。一五年十~十二月期は個人消費が前期比0・8%減と二期ぶりにマイナスに陥り、成長率全体を押し下げた。物価上昇に賃金の伸びが追いつかず、消費者心理が冷え込んでいる。暖冬で冬物衣料や灯油などの販売が振るわなかったことも響いた。住宅投資は1・2%減。一四年四月の消費税増税で大きく落ち込んだ後は回復基調が続いていたが、住宅価格の高騰で再び買い控えの傾向が強まった。企業の設備投資は1・4%増で二期連続のプラスとなったが、公共投資は二期連続マイナスの2・7%減と大幅に落ち込んだ。輸出は船舶や半導体製造装置などが伸びず0・9%減とマイナスだった。物価変動をそのまま反映した名目GDP成長率は前期比0・3%減、年率換算で1・2%減だった。同時に発表した一五年一年間の実質GDP成長率は、前年比0・4%増と二年ぶりにプラスに転じた。名目成長率は四年連続プラスの2・5%増。
◆個人消費・輸出不振 「好循環」回らず
<解説> 二〇一五年十~十二月期の実質国内総生産(GDP)成長率がマイナスに転じたのは、GDPの約六割を占める個人消費が低迷。輸出や民間住宅投資など主要項目が軒並み悪化したためだ。安倍政権の経済政策「アベノミクス」は金融緩和で円安・株高を誘導、企業収益を上げて設備投資や賃上げにつなげる経済の好循環を狙ったが、導入から三年近くを経て「日本経済の成長を押し上げる」という最も重要な効果は上がっていないことがはっきりしてきた。個人消費は、暖冬という特殊要因も押し下げたが、物価上昇分を差し引いた昨年の実質賃金は四年連続のマイナス。消費税増税などで家計の負担が増す中、賃金の伸びが生活必需品などの物価上昇のペースに追いつかず、消費者の節約志向はなお根強い。企業業績は過去最高の水準に達し、設備投資は持ち直しつつあるものの、内需も先細る中で「企業は今後も大掛かりな投資はしにくい」(エコノミスト)状況だ。輸出もアジアや米国向けなどが振るわず、二・四半期ぶりに減少した。さらに、年明けからは中国経済の減速や原油安など、世界経済の不透明感から円高・株安が急激に進行。先行き不安が増す中で個人消費の回復のカギを握る賃上げは企業が慎重な姿勢を示しており、暗雲が立ち込めている。日銀のマイナス金利政策の効果も不透明で、このまま円高・株安が進むと企業の業績に冷や水を浴びせかねない。安倍政権は今年も企業側に賃上げを求めたが、賃上げムードが停滞すれば個人消費の回復は一層遠ざかる可能性がある。

<インフレ政策による所得再配分>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150501&ng=DGKKASDF30H25_Q5A430C1MM8000 (日経新聞 2015.5.1) 物価2%達成、後ずれ、日銀展望、16年度前半ごろ 総裁「基調改善は着実」
 日銀は30日に開いた金融政策決定会合で、消費者物価指数(CPI)の見通しを引き下げた。原油価格の低迷に加え、個人消費の回復が遅れているためだ。2015年度と16年度の予想を下方修正し、目標に掲げるCPI上昇率2%の達成時期を従来の「15年度を中心とする期間」から「16年度前半ごろ」に後ずれさせた。ただ黒田東彦総裁は会合後の記者会見で「物価の基調は着実に改善している」と強調し、デフレ脱却と2%目標の実現に改めて自信を見せた。日銀は30日の金融政策決定会合で現状の金融緩和の継続を賛成多数で決め、半年ごとにまとめる「経済・物価情勢の展望」(展望リポート=総合2面きょうのことば)を公表した。生鮮食品を除いたCPIの前年度比上昇率と実質経済成長率の今後3年の見通しを政策委員9人の中央値として示した。15年度のCPIは0.8%、16年度は2.0%で、従来の見通しからそれぞれ0.2%分引き下げた。新たに公表した17年度は消費税率を10%に引き上げる影響を除いて1.9%と見込んだ。黒田総裁は物価見通しを下方修正した理由について、「個人消費の改善に若干鈍さがみられ、(物価の基調に影響する)需給ギャップの改善がやや後ずれしている」と発言。「2年程度」と説明していた物価上昇率2%の達成時期も、就任当初となる13年4月の量的・質的緩和の導入以降で初めて明確に後退させた。日銀は2%の達成が多少遅れても、日本経済がデフレから脱却しつつある状況は変わらないとみる。総裁は「15年度後半にかけて物価が再び上昇していく」とし「物価の基調は着実に改善しているうえ、これからも改善する」と明言した。原油価格の低迷で物価上昇率がしばらく0%前後に押し下げられても、好調な企業業績や人手不足を背景に賃上げや商品の値上げが進むため、緩やかに物価が上がっていくとみる。日銀は13年4月に量的・質的緩和を導入した際に「物価上昇率2%を2年程度の期間を念頭に置き、できるだけ早期に実現する」との大目標を掲げた。強気の目標をあえて示し、約15年続いたデフレから脱却できるとの意識を企業や家計に植え付ける狙いだった。日銀は2%の達成時期は後ずれさせるが、この目標は堅持する。見直してしまえば、デフレ脱却が危ういとの誤解を与え、高まり始めた企業や家計の脱デフレ期待を揺るがす恐れがあるからだ。総裁は物価の基調が崩れたら「ちゅうちょなく政策の調整を行う」と繰り返し、追加緩和の可能性も示唆する。「予測は前に行ったり後ろに行ったりするもの」と言うが、脱デフレのシナリオが揺らがないようにするためにもより丁寧な説明が問われそうだ。物価目標の達成時期を巡っては政策委員の間でも見方が割れている。30日の会合でも9人のうち3人が反対を表明した。木内登英、佐藤健裕の両委員は17年度までに2%に達しないと主張した。白井さゆり委員は「16年度を中心とする期間」と範囲を広げるように訴えた。

*2-2:http://qbiz.jp/article/59995/1/
(西日本新聞 2015年4月10日) 株価2万円、その先は。「金融緩和バブル」懸念も
 日経平均株価が約15年ぶりに2万円の大台を一時回復した。円安による大企業の業績改善が主因だが、急激な株価上昇の背景には世界的な金融緩和によるバブルが発生しているとの懸念もある。景気の先行指標とされる株価に経済実態が追いついてくるのか、予断を許さない状況だ。日本経済は過去最高益を更新する勢いの上場企業がけん引し、昨年4月の消費税増税による落ち込みから回復しつつある。ただ、個人消費は足踏みが続き、地域経済も回復の実感は乏しい。金融緩和は経済を下支えするのに不可欠な政策手段だが、行き過ぎると大量のマネーが市場に流れ込んでカネ余りを生む副作用がある。1980年代後半にはこうしたカネが泡(バブル)のように膨らみ、株価を史上最高値に押し上げた。現在、世界の主要な中央銀行は金融緩和で大量の資金を供給し、国債の価格で決まる金利は歴史的な低水準となった。国債運用よりも高い利益を求める世界の機関投資家のマネーが、比較的状況の良い日本市場に流れ込む構図になっている。原油市場ではこうした投資マネーが一気に流出し、価格急落を招いた。日本から資金流出が起きる前に景気を本格的な回復軌道に乗せられるかが、経済再生の行方を左右しそうだ。
●三菱UFJモルガン・スタンレー証券の嶋中雄二景気循環研究所長の話
 株価は景気の先行指標とされ、実体経済は後から追いついてくるはずだ。中期的には株高が続き、年末には2万3000円台に乗せる可能性もある。ただ、今の株価上昇は、日銀の追加金融緩和を期待した外国人投資家により支えられている面が大きい。追加緩和がなければ失望売りが広がって、急激に株安、円高となるリスクもはらんでいる。中国経済が失速気味で、自動車などの輸出が伸びない可能性がある。米国経済も弱い。5月にかけては調整局面になるとみられ、短期的な取引の動きにも注意する必要がある。
■10日、終値は前日比30円09銭安の1万9907円63銭

*2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151225&ng=DGKKASFS25H0F_V21C15A2MM0000 (日経新聞 2015.12.25) 雇用堅調、消費は低迷 求人倍率1.25倍、23年ぶり水準、11月家計支出は2.9%減、基調判断下げ
 雇用が底堅い動きを続けるなか、個人消費の低迷が続いている。厚生労働省が25日発表した11月の有効求人倍率は1.25倍と23年10カ月ぶりの高い水準となった。一方、総務省の11月の家計調査は物価変動の影響を除いた実質の消費支出が前年同月比2.9%減と3カ月連続のマイナスだった。冬物衣料や耐久財の消費が振るわず、総務省は基調判断を「弱い動き」に引き下げた。11月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は値動きの激しい生鮮食品を除く総合指数が103.4と前年同月から0.1%上昇して5カ月ぶりのプラスとなったものの、ゼロ付近で伸び悩んでいる。有効求人倍率(季節調整値)は前月より0.01ポイント上昇した。1.25倍は1992年1月以来の高い水準だ。有効求人数は前月比1.2%増の246万4485人だった。有効求職者数も186万8567人と0.2%増えたが、求職者の増加を上回って企業の求人が増えた。業種別の新規求人数では宿泊・飲食サービス業(前年同月比19.6%増)、教育・学習支援業(同14.2%増)が大きく伸びた。11月の完全失業率(季節調整値)は3.3%だった。条件の良い仕事を求めて自発的に離職する人が増えた結果、前月より0.2ポイント上昇したが、およそ20年ぶりの低い水準が続く。さえないのは個人消費だ。2人以上世帯の実質消費支出は27万3268円で、前年同月比2.9%減だった。テレビやパソコンなど教養娯楽が5.8%減、4月の軽自動車の増税が響く自動車購入費など交通・通信が1.9%減となり全体を押し下げた。暖冬の影響で冬物商品が売れず、洋服などの被服及び履物は13.8%と大幅に減った。実質消費支出の季節調整値は91.8と比較可能な2000年以降で最も低くなった。前月と比べても2.2%減で、総務省は基調判断を「横ばいの状況」から「弱い動き」に下げた。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは、「耐久財の買い替え需要が出ておらず、消費の弱さは暖冬という天候要因だけでは説明できない」と指摘する。消費者心理に影響する物価はゼロ近辺の動きが続く。生鮮食品を除く総合指数が5カ月ぶりのプラスとなったのは食料などが上昇したため。ただ原油価格は下落が続いており、この先も弱含みで推移する可能性が高い。生鮮食品を除く食料は前年同月に比べ2.3%上昇した。新米の売れ行きが好調で、コメ類が0.3%上昇した。牛肉、フライドチキンなど肉類、チョコレートなど菓子類が上がった。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は101.7と、前年同月から0.9%上昇した。

*2-4:http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=332297&nwIW=1&nwVt=knd
(高知新聞 2015年1月23日) 【異次元緩和】功罪の点検が欠かせない
 日銀が2015年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率見通しを従来の1・7%から1・0%へと大幅に引き下げた。黒田総裁の下で13年4月から始まった大規模な量的緩和が目指した2年程度で2%の物価上昇は事実上、達成が困難になった格好だ。最近の原油価格の急落が物価を下押ししていることは否めない。しかし開始から2年近くたっても目標達成のめどが立たないことは、「異次元緩和」という政策が正念場を迎えていることを示している。15年度の消費者物価指数の上昇率について、日銀は昨年7月時点では1・9%と見通していた。それを3カ月後に1・7%に下方修正し、今回の金融政策決定会合でさらに下げた。修正の要因は原油安で、日銀は物価を15年度は0・7~0・8ポイント程度押し下げるとみている。それでも原油安の影響は一時的とし、大規模な金融緩和の現状維持を賛成多数で決めた。黒田総裁も2%の物価上昇の達成は「15年度を中心とする期間」との基本姿勢は変えていない。原油安さえなければ所期の目標達成も可能だった、とのニュアンスもあるが、今、求められるのは量的緩和の功罪を点検することではないか。日銀が市場を通じて長期国債を購入し、潤沢な資金を供給する量的緩和に初めて踏み切ったのは2001年3月のことだ。当時の速水総裁はデフレ対策であることを強調し、「通常なら踏み込まない政策。目標を達成したらやめる」とも述べている。そんな非常手段を大掛かりに展開するのが異次元緩和だ。物価上昇につながる可能性がある一方、円安による材料費の高騰、低く抑え込んだ長期金利の反転上昇、国の財政赤字を中央銀行が支える財政ファイナンスの懸念などの負の要素もある。そんなリスクを内包しながら異次元緩和は1年9カ月続いてきたが、日銀が目標とする2%の物価上昇の道筋は見えていない。リスクに見合う政策なのか点検が欠かせない。黒田総裁は「企業や個人のデフレ意識の転換は着実に進展している」との認識も示した。確かにそんな傾向があるかもしれないが、大半の中小企業や地方にそうした実感は乏しい。賃上げはないのに物価は上昇、という現実に不安を抱く人は少なくない。

<消費税増税とGDP>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151116&ng=DGKKZO94049840W5A111C1MM0000 (日経新聞 2015.11.16) GDP実質年0.8%減、7~9月、2期連続マイナス 設備投資が低調
 内閣府が16日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.2%減、年率換算で0.8%減となった。年率0.7%減だった4~6月期に続くマイナス成長となった。世界経済の不透明感から企業が投資を先送りし、設備投資が2四半期連続で減少した。輸出や個人消費も力強さを欠き、景気の足踏みが長引いていることを示した。2四半期連続のマイナス成長は、8%への消費増税の影響が色濃く出た2014年4~6月期と7~9月期以来。市場の事前予測の中央値(年率0.3%減、QUICK調べ)を下回った。個人消費は実質で前期比0.5%増と2四半期ぶりのプラス。夏場の猛暑でエアコンや夏物衣料の販売が伸びたほか、好天に恵まれた大型連休には旅行や外食などサービス消費も活発だった。ただ4~6月期に0.6%減った分を取り戻すほどの力強さはなかった。企業の設備投資は1.3%減と、4~6月期からマイナス幅が0.1ポイント拡大した。8月に中国発の世界同時株安が起きたことなどをきっかけに、企業心理が弱気に傾いた。計画している設備投資の実行をいったん見送る動きが出て、工場に新しい機械を導入したり、オフィスビルを新築したりするための投資などが低迷した。住宅投資は1.9%増と3期連続のプラスだった。14年度の補正予算の効果が小さくなり公共投資は0.3%減と2期ぶりにマイナスになった。個人消費や設備投資といった国内需要は前期比でGDPを0.3ポイント押し下げ、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の登場以降、国内景気を支えてきた内需の勢いは弱くなっている。財・サービスの輸出は2.6%増と、2期ぶりのプラスだった。中国やアジア向けが低迷する一方、欧米向けの輸出額が上向いた。ただ数量ベースではいずれの主要地域向けも減少しており、世界経済の減速の影響が及んでいる。訪日外国人客の増加でサービスの輸出は増え、訪日客の消費はGDPを0.1%分押し上げた。輸入は国内消費の持ち直しを背景に1.7%増えた。企業が手元に抱える在庫の増減を示す民間在庫はGDPを0.5ポイント押し下げた。消費持ち直しで小売店が抱える在庫がはけたことが背景にある。在庫減少はGDP統計上は押し下げ要因になる。物価の影響を加味した名目GDPは前期比0.01%増、年率で0.06%増で、実質GDPを上回った。全体の物価動向を示すGDPデフレーターを算出する際、輸入品の価格の変化は差し引かれる。原油安で輸入品の価格が低下したため、GDPデフレーターが押し上げられた形だ。

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151124&ng=DGKKASFS24H0T_U5A121C1MM0000 (日経新聞 2015.11.24) 軽減税率、生鮮食品軸に、消費増税時 首相、財源4000億円念頭 公明と詰めの調整へ
 安倍晋三首相は24日午前、自民党本部で谷垣禎一幹事長や宮沢洋一税制調査会長と会談し、消費増税時に導入する軽減税率の財源について「安定財源の観点から社会保障と税の一体改革の枠内で議論するように」と指示した。財源は4000億円程度が念頭にあり、対象品目は生鮮食品などが軸になる。谷垣氏らは首相指示をもとに公明党との協議に臨む。首相は軽減税率に関して(1)国民の理解が得られる制度設計をする(2)事業者の混乱を招かないように配慮する(3)財源は社会保障と税の一体改革の枠内で議論する――の3点を指示した。谷垣氏は24日の記者会見で、一体改革の枠内で捻出できる財源は4000億円が限度かと問われ「基本的に首相もそういう考えだ。ない袖は振れないからその枠内で議論してほしいということだ」と答えた。約4000億円の財源は消費増税にあわせた社会保障の充実策の一部を見送ることで捻出する。低所得者世帯向けの総合合算制度が対象に決まっている。自民党は12月10日にまとめる来年度税制改正大綱に軽減税率の制度内容を盛り込む。軽減税率を消費税率2%分とすると、コメや精肉、鮮魚などを含む生鮮食品が対象なら約3400億円で済む。公明党はパンや麺類など加工食品も加えるよう主張。少なくとも約8200億円の財源が必要で、両党の溝は埋まっていない。自民党執行部の一人は「軽減税率の導入で財政再建の目標にしわ寄せがあってはいけない」と語り、公明党に大きな譲歩はできないとの考えを示した。谷垣、宮沢両氏は公明党の井上義久幹事長、斉藤鉄夫税調会長と週内に会談し、詰めの調整に入る。谷垣氏は記者会見で、首相と公明党の山口那津男代表の党首会談の可能性について「上にあげていけばいいということではない」と述べ、幹事長レベルで決着をめざす考えを強調した。

*3-3:http://qbiz.jp/article/59186/1/
(西日本新聞 2015年3月31日) 増税は「炭素税にすべきだった」 日本にスティグリッツ氏
 ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ米コロンビア大教授は30日、ニューヨークの国連本部で開かれた討論イベントで昨年4月の日本の消費税増税は「時期尚早」だったと述べ、安倍晋三首相は増税するなら「炭素税を導入すべきだった」との見方を示した。炭素税は、温暖化の原因となる温室効果ガスの排出に対する課税。スティグリッツ氏は「(炭素税なら)炭素排出削減への投資を刺激し、最終的には需要増につながっていただろう」と語った。「アベノミクス」の「三本の矢」にも言及、金融緩和については「非常に良く機能し、非常に迅速だった」と評価した。質疑応答の際、日本国連代表部幹部からの質問に答えた。スティグリッツ氏は「(日本には)非常によく教育された女性たちがいる。しかし、女性の労働参加状況は他の国ほど良くない」とも語った。イベントは雇用と経済成長などをテーマに、経済社会理事会が開いた。

<年金の減額>
*4:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/191984
(佐賀新聞 2015年5月29日) 年金減額「違憲」と一斉提訴、13地裁に1500人超
 2013年10月に始まった年金額の引き下げは生存権を侵害し違憲だとして、年金受給者1549人が29日、国の減額決定取り消しを求め13地裁に一斉提訴した。今後も各地で提訴し、原告は45都道府県の計3千人に上る見通し。訴状によると、年金額は物価変動を反映するが、前年に物価が下落した00~02年度は特例で据え置かれた。12年の改正法により特例措置がなくなり、13年10月~今年4月、段階的に2・5%減額された。原告側は、介護保険や国民健康保険の保険料が増えているのに受給額が減ると、憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」は送れないと主張している。


PS(2016年2月20日):原発に途方もない金をつぎこまず、日本にある地熱、太陽光、風力、潮流などの自然エネルギーやメタンハイドレートを使えば、福祉はいくらでもできる上、環境にも自給率にも適合した筈だ。そのため、*5のようなのを「馬鹿につける薬はない」と言う。

*5:http://www.saga-s.co.jp/column/genkai_pluthermal/20201/279796 (佐賀新聞 2016年2月17日) 原子力機構、もんじゅ廃炉に3000億円、12年に試算 作業30年と想定
 高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)を運営する日本原子力研究開発機構が、もんじゅを廃炉にするには30年間で約3千億円の費用が必要との試算を2012年にまとめていたことが16日、分かった。馳浩文部科学相が閣議後の記者会見で明らかにした。原子力機構はこれまで廃炉費用を公表していなかった。1兆円を超える費用を投入しながらトラブル続きで運転実績がほとんどないもんじゅの維持には今後も年間200億円程度が掛かるとされ、廃炉を選択する場合でも巨額の費用が発生することになる。文科省によると、内訳は解体に約1300億円、原子炉からの燃料取り出しに約200億円が掛かるほか廃炉の作業期間となる30年間の維持管理費を約1500億円と見込んでいる。経済産業省の資料では、通常の原発の廃炉費用は360億~850億円程度。関西電力は美浜原発1、2号機(福井県美浜町)の廃炉に計約680億円を見込む。もんじゅは冷却材にナトリウムを使うほか、施設が大型なことなどから、通常の原発より割高となる。馳文科相は「過去の試算であり、さまざまな前提条件を含んだ不確かな数字」と説明したが新たな試算を求める考えはないとした。もんじゅをめぐっては、原子力規制委員会が昨年11月、原子力機構について「運転を安全に行う資質を有していない」として運営主体の変更を馳文科相に勧告。文科省の検討会で議論が続いている。
■ズーム
 もんじゅ プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使い、高速の中性子で核分裂を起こし、発電しながら消費した以上のプルトニウムを生み出すことから高速増殖炉と呼ばれる。出力は28万キロワット。政府は「夢の原子炉」として、使用済み核燃料の再処理工場とともに核燃料サイクルの両輪と位置付け、多額の国費を投入して研究開発を続けてきたが、事故やトラブルが後を絶たず運転実績はほとんどない。2012年には大量の機器の点検漏れが発覚、原子力規制委員会が13年5月、事実上の運転禁止命令を出した。


PS(2016年2月22日):*6のように、「電力自由化の競争の先はバラ色か?海外では失敗例」という題名になること自体、市場経済に反して経産省主導の独占や寡占を奨励しており、日経新聞は今から共産主義を奨励する気かと問いたい。そして、「1990年代に自由化の先陣を切った英国では、新規参入が増え料金が下がったのは当初だけで、2000年代に入るとM&A(合併・買収)で発電、小売市場の寡占化が進み、各社は燃料高騰を理由に値上げを繰り返して、2015年の一般家庭の電気料金は2004年の2.4倍に急騰し、企業向け料金も欧州全体の平均より6割高となった」と記載されているが、それは何の市場にも起こりうることで、そのために独占禁止法があるのだ。さらに、電気料金は、政府主導の地域独占を貫いた日本の方が、その間の殆どの期間で英国より高く、エネルギー自給率は低いのである。
 また「天候頼みの再生エネの発電量は不安定で安定確保への費用増で電気料金は上昇傾向。料金、安定供給、電源の構成のバランスはどこにあるのか」とも書かれているが、消費者のニーズに合った物を供給せず、技術進歩もさせずに、同じ問いを何年も繰り返して政府が勝手な電源バランスを決めようとするのが、政府主導の最も大きな弱点であり、これが共産主義経済がうまくいかなかった理由である。
 しかし、(私の提案で実現しつつある)電力自由化により消費者の選択を徹底させるためには、公正中立な配電系統が複数ある方がよいのは確かだ。

    
2016.2.22日経新聞  電気料金の国際比較    家庭用・産業用国際比較   エネルギー自給率

*6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160222&ng=DGKKZO97533350S6A220C1MM8000 (日経新聞 2016.2.22) 電力自由化(下)競争の先はバラ色か 海外では失敗例
 電力の小売り自由化をにらみ17日、経済産業省が開いた説明会。市場の番人の大役を担う電力取引監視等委員会の稲垣隆一委員は8兆円市場の開放に沸く関連産業に言い含めるように強調した。「消費者の主体的な選択こそが、電力改革の重要な推進力だ」。戦後60年以上続いた大手電力による小売市場の独占。それを崩す制度改正のきっかけは、2011年の東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故だ。震災直後の東電の計画停電は利用者に不自由を強いた。原発停止で全国の家庭向け電気料金も震災前より25%上がった。自由化による競争で料金を下げ利用者の負担を減らさねば――。世論を意識する政府はそう判断した。「消費者の約8割が電力会社の切り替えを検討していると聞く」。安倍晋三首相は成果に自信を示すが、自由化後の世界はバラ色なのか。
●不当な契約監視
 政府は自由化を進めるにあたり2つの補助輪をはかせた。一つが電力監視委で、消費者に不利益を与えかねない契約などに目を光らせる。もう一つが電力広域的運営推進機関。大規模な災害時の停電などを防ぐため、電力各社による電力の融通を促す調整役だ。これで公正な競争と安定供給への「器」がまずは整ったが、これで安心とは言い切れない。1990年代に自由化の先陣を切った英国。新規参入が増え、料金が下がったのは当初だけ。00年代に入るとM&A(合併・買収)で発電、小売市場の寡占化が進んだ。各社は燃料高騰を理由に値上げを繰り返し、15年の一般家庭の電気料金は04年の2.4倍に急騰。企業向け料金も欧州全体の平均より6割高となった。「もう英国で鉄はつくれない」。電力を多く消費する鉄鋼業界からは悲鳴があがる。自由化はコストを電気料金に転嫁できた寡占市場のぬるま湯体質を変えるきっかけとなる。だが市場の監視を抜かれば、大手業者の逆襲で寡占がむしろ進みかねない。
●米企業から忠告
 電力の安定供給が脅かされたのは米国だ。「エンロンのような業者に気をつけろ」。1月下旬、米カリフォルニア州。日本の電力市場への進出を促そうと電力関係者を回った経産省幹部は逆に忠告を受けた。90年代後半に電力自由化を進めた同州。猛暑で需要が増えると、後に破綻することになるエンロンなどの電力卸売業者は価格つり上げを狙い電気を売り渋った。これが00年から01年にかけて大規模な停電が相次ぐ原因となった。その後、ニューメキシコやアーカンソーなど多くの州が自由化の計画を撤回。米国で自由化の機運は急速にしぼんた。自由化と両立させるべき課題はまだある。例えば国際公約となった温暖化ガスの排出削減だ。ドイツ第3の都市、ミュンヘン市。風力など再生エネルギーを主体とする新興勢力のシェアは2割を超えた。こうした例はドイツ全土で広がる。ただ天候頼みの再生エネの発電量は不安定。安定確保への費用増で電気料金は上昇傾向だ。料金、安定供給、電源の構成――。そのバランスはどこにあるのか。電力自由化の号砲とともに利用者と国と業者の大いなる実験が始まる。


<研究開発は予算さえつければよいのではなく、研究環境づくりが大切>
PS(2016年2月25日追加): *7-1に、「STAP細胞論文の共著者チャールズ・バカンティ氏が、論文撤回後もSTAP細胞作製に向けた再生医療の研究を続けており、万能性を示す遺伝子の働きを確認したものの、まだ細胞作製には成功していない」ということが小馬鹿にしたように書かれているが、アメリカは、その研究を続けさせるところが偉いのである。一方、日本では、「ヒト幹細胞、再生医療=iPS細胞」と決めつけたような論調で他の再生医療法を排除して、イノベーションに繋がる研究や新発明の機会を奪っているが、こういう害になる人(文系?)こそ、いらないのだ。
 その上、*7-2のように、「企業における発明は経営リスクをとって研究を進め、情報を蓄積し、事業化する企業が存在して初めて可能になる」として企業が特許法の改正を訴えているが、新発明をする人の多くは、企業の中でも結果が出なければ大変なことになるリスクをとって逆風の中で研究していることが多いため(理由:新しいことに賛成する人は多くないから)、「職務発明は法人帰属」となれば、企業内でリスクをとって新しい研究をする人よりも、周囲に迎合し組織にぶら下がって言われたことだけをやる人の方が有利で賢いということになり、イノベーションに繋がる研究や新発明を阻害して生産性が低くなる。
 そして、それらを含めた総合的な結果が、一番上の右のグラフにおけるシンガポールの購買力平価による一人当たりGDPの伸びと、日本の低迷の差になっているのだ。

      
 世界の人口百万当たり論文数  日本は頭打ちの論文数  「再生医療=iPS細胞」のような説明

*7-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160224&ng=DGKKASDG23H6T_T20C16A2CR8000 (日経新聞 2016.2.24) STAP細胞研究、論文撤回後も継続 共著者のバカンティ氏
 STAP細胞論文の共著者チャールズ・バカンティ氏が、論文撤回後もSTAP細胞作製に向け、研究を続けていたとの記事を米誌ニューヨーカー電子版が22日、掲載した。同誌の取材に対し「(STAP細胞は)正しいと確信したまま墓場に行くだろう」と話したという。記事によると、論文に不正があるのではないかと問題になった際、バカンティ氏は著者の小保方晴子氏に「データの捏造(ねつぞう)はしてないのか」と尋ね、「それならこんなに時間をかけて実験はしない」との回答を得たという。バカンティ氏は論文の問題が指摘された後、2014年夏から1年間米ハーバード大を休職。大学は「復職後も再生医療の研究を続けている」としていた。記事によると、同誌は昨年7月にバカンティ氏に取材。共著者の小島宏司医師と実験を続けていると説明。既に分化を終えた細胞にさまざまな刺激を与える手法で、どんな細胞にも分化できる万能性を獲得できるかどうかを検証した。万能性を示す遺伝子の働きを確認したが、実際に万能性がある細胞の作製には成功していないという。

*7-2:http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/etc/20130807.html
(日経BP 2013.8.7) 「職務発明は法人帰属にすべき」、特許法第35条改正に向けた取り組み
 青色LEDの特許をめぐる2004年の中村裁判の東京地裁判決は衝撃的だった。東京地裁は、企業に所属する研究者の発明に対して200億円の支払いを命じた。その判決は、特許法第35条に基づいている。その後、中村氏と日亜化学工業は東京高裁に控訴したが、日亜化学工業が中村氏に対して特許対価約6億円を含む8億4000万円を支払うことで2005年1月11日に和解が成立した。中村裁判の後も、研究者が出身・所属企業を相手に訴訟を提起し高額な職務発明対価を獲得していった。こうした中で、企業は特許法第35条改正の必要性を訴え、職務発明は誰のものかといった問題を提起している。発明は個人によって行われる行為だが、企業における発明は経営リスクをとって研究を進め、情報を蓄積し、事業化している企業が存在して初めて可能になる。現在、特許庁は知的財産研究所において「職務発明制度に関する調査研究委員会」を立ち上げ、特許法第35条の改正を視野に議論を進めている。同委員会の委員でもある日本経済団体連合会知的財産委員会企画部会部会長代行(三好内外国特許事務所副所長)澤井敬史氏、日本製薬工業会知的財産委員会委員長(武田薬品工業知的財産部長)奥村洋一氏、日本知的財産協会職務発明タスクフォースリーダー(新日鐵住金知的財産部企画室主幹)清水尚人氏が、職務発明制度の現状や特許法第35条の問題点に関して議論した。(以下略)


PS(2016年2月26日追加):JR九州が無人駅を増やすのは仕方ないかもしれないが、自動券売機に多言語で音声案内をつけたり、多言語の会話ロボットを置いたりすれば、ロボットと会話するために駅に人が集って無人駅の安全性も高まるのではないだろうか。また、蓄電池電車や燃料電池車の自動運転車両を使ってコストダウンを図り、九州を「先端ロボットワールド」にするのも面白い。

   
  MIRATA  その他人型ロボ   受付ロボット(東芝製)      小田急新宿駅のペッパー

*8:http://qbiz.jp/article/81500/1/
(西日本新聞 2016年2月26日) JR九州 過半数が無人駅へ
 JR九州は25日、在来線9駅を3月26日付で無人化すると発表した。全567駅のうち計291駅が無人となり、初めて無人駅の数が有人駅を上回ることになる。同社は昨年3月にも計32駅を無人化した。無人駅を増やす理由について同社は「鉄道事業の環境が厳しく、長期的にネットワークを維持するため」と説明。各駅では自動券売機や遠隔放送装置、防犯カメラなどを整備するという。無人化される駅は、鹿児島線西牟田駅(福岡県筑後市)▽筑肥線加布里駅(同糸島市)▽日田彦山線石田駅(北九州市)▽日豊線幸崎駅(大分市)、豊前善光寺駅(大分県宇佐市)▽豊肥線緒方駅(同豊後大野市)▽長崎線肥前白石駅(佐賀県白石町)▽佐世保線三間坂駅(同武雄市)▽指宿枕崎線山川駅(鹿児島県指宿市)。


PS(2016年2月28日追加):*9-1、*9-2のように、海底資源はこれまで「掘り出すのが困難」として採掘してこなかったため有望である上、海底は国有地で採掘料を徴収して歳入に加えることができるため、研究するだけではなく迅速に商業採掘を始めるべきだ。また、日本には、国際会計基準にある“鉱業に関する会計基準”がないので、国際会計基準を参考にして“鉱業に関する会計基準”を導入すべきである。このように、歴史は単に繰り返すものではなく、技術や文明の進歩でステージが進むものであるため、実現できるように方針を立てて、環境への悪影響が少ない場所で進めることが重要だ。

*9-1:http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1601/27/news041.html 
(スマートジャパン 2016年1月27日) 夢の天然ガス資源「表層型メタンハイドレート」、日本近海700カ所以上に存在か
 国産の天然ガス資源として注目を集める「メタンハイドレート」。資源エネルギー庁は日本近海に眠る表層型メタンハイドレートの埋蔵量の把握に向けて調査を進めている。島根県・新潟県沖で調査を行った結果、表層型メタンハイドレートが存在する可能性がある海底部の特異構造を700カ所以上発見したという。資源エネルギー庁は「海洋基本計画」に基づき、表層型メタンハイドレートの資源量把握に向けて、2014年度から約3年にわたって日本近海の調査を実施している。2015年度は、表層型メタンハイドレートが存在する可能性がある特異的な構造(ガスチムニー構造)の内部におけるメタンハイドレートの様子をより詳しく把握するため、島根県隠岐周辺および新潟県上越沖で、合計約30カ所の掘削調査を行った。この調査により取得した地質サンプルを観察した結果、メタンハイドレートは、厚さ数十cm(センチメートル)~数m(メートル)以上の柱状で採取された部分がある一方、泥に混ざって、直径1cm未満~数cmの粒状で存在している部分もあるなど、さまざまな形状を示すことが分かった。また、同一のガスチムニー構造から取得されたサンプルであっても、サンプル毎のメタンハイドレートの存在の形態(深度、形状、量)は、取得された場所によって大きく異なることも明らかになった。さらに隠岐周辺、上越沖、秋田・山形沖で実施した詳細地質調査では、自律型巡航探査機(AUV)に設置された機器から音波を発信し、より精緻な海底地形や海底下浅層部の地質構造、海底面の状態のデータを取得している。詳細地質調査と同じ海域で行った環境データ取得のための基礎調査では、無人探査機による海底観察により、海底付近の微地形、表層型メタンハイドレートの産状、海底付近の生物の生息状況などを解明するとともに、海水や海底表層の堆積物を採取して成分を分析した。また、以前設置した長期モニタリング装置を回収している。今後の予定としてはこれまでに収集したさまざまな測定データや地質サンプルなどを利用し、専門家による分析作業、解析作業を加速する。これによりメタンハイドレートの商業化に最低限必要となる埋蔵量および分布状況などの検証を行うとともに、その結果を踏まえて表層型メタンハイドレートを回収する技術の調査や技術開発手法を検討していく計画だ。メタンハイドレートとは、メタンと水が低温・高圧の状態で結晶化した物質。日本の周辺海域には相当の量が存在していることが見込まれており、将来の天然ガス資源として期待されている。

*9-2:http://mainichi.jp/articles/20160227/k00/00e/040/233000c?fm=mnm
(毎日新聞 2016年2月27日) 海底の金銀、採取成功 沖縄沖の熱水鉱床
●1トン当たり金1.35グラム、銀数百グラム、銅45キロ
 海洋研究開発機構などの研究チームは25日、国内最大規模の熱水鉱床が広がっている沖縄本島沖の海底を掘削し、金や銀の採取に成功したと発表した。海底下の資源は掘り出すのが困難とされていたが、チームは「人工的に噴出口を作ることで、極めて低コストで資源回収を実現できる可能性が開ける」としている。同日の英科学誌サイエンティフィック・リポーツに成果が掲載された。熱水鉱床は、岩石中の金属などが海底下で熱せられた海水に溶け込んだ鉱脈。海底までの裂け目があると熱水とともに噴出して金属などが海底に煙突状に沈殿する。銅、亜鉛などのほか、ガリウムやビスマスなどレアメタルを含むため、次世代の海洋資源として各国の探査が活発化している。同機構が掘削したのは、那覇市の北北西約190キロの海域「伊平屋北海丘」。2010年、地球深部探査船「ちきゅう」で水深約1000メートルの海底に直径50センチの穴を掘り、定期的に観察した。その結果、約310度の熱水が噴き出して人工的にできた鉱床は1日0.11トンのペースで高さ7メートル以上に成長し、13年の成分解析では1トン当たり金1.35グラム、銀数百グラム、銅45キロを含んでいた。今井亮・秋田大教授(鉱床学)によると、今回の金の含有量では採算を取るのは難しいが、銅やレアメタルも多く含まれれば価値は上がるといい「日本の領海内で資源を確保しておく意義は大きい」と話す。同機構は3月17日まで、再び近海を採掘して観測装置を設置し、高濃度の金属を含む鉱床を効率よく形成させる実験をする。川口慎介研究員は「実験を通して金属がどのように沈殿し蓄積して鉱床を作るのかを調べたい」と話す。


PS(2016年3月2日追加):「燃油代が高くて漁に行けない」と言われて10年以上経つが、それを解決するのが自然再生可能エネルギー由来の電気船や燃料電池船であり、自然再生可能エネルギーを使えば環境負荷が小さく、エネルギー自給率も高まる。それにもかかわらず、*10のように、燃料電池船はまだ開発段階とのことで、このように、いつまでも過去の技術にしがみついて新しい技術による根本的解決をしなかったのが、日本の経済敗戦(ゼロ金利やマイナス金利にしなければ投資が起こらないほど利益率が低かったり、インフレを起こして国債の実質価値を目減りさせたり、実質賃金や実質年金支給額を減らしたりしなければならないような状態)の理由だ。

*10:http://qbiz.jp/article/81837/1/
(西日本新聞 2016年3月2日) 燃料電池船を長崎県が開発へ 五島市での国事業を継承
 長崎県は2016年度、県内の造船事業者などと連携して水素を燃料とする燃料電池船の研究開発に取り組む。環境省が五島市の椛島(かばしま)沖で実施してきた国内初の実証事業が15年度で終了するため、県が福江島の崎山漁港に水素ステーションを移設(一部新設)し、新たな燃料電池船の開発と実用化を目指す。16年度一般会計予算案に8216万円の事業費を盛り込んだ。環境省の実証事業は、戸田建設と長崎総合科学大、日本海事協会が受託して船を開発した。同じく椛島沖で進めてきた「浮体式洋上風力発電実証事業」による余剰電力を使って水素を製造。船内のタンクに詰め、外気の酸素と反応させて発電し、モーターを動かして走らせる。船は全長12・5メートル、航行速度は20ノット。450リットルの水素を補充でき、2時間航行できる。二酸化炭素(CO2)の排出削減と海洋再生可能エネルギーの普及促進が期待されている。県は県内の造船事業者とプロジェクトチームをつくり、譲り受けた船を走らせてデータを集める方針。県グリーンニューディール推進室の担当者は「環境配慮型の船はこれから必要とされる。燃料電池船の開発で、新しい産業の創出と県の基幹産業である造船業の振興につなげたい」と話している。

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 11:45 AM | comments (x) | trackback (x) |
2015.11.15 日本の労働力(質を維持する教育、量を維持する一億総活躍と移民・難民の受け入れ)   (2015年11月16日、17日、19日、20日、12月4日、6日に追加あり)
          
2015.11.13  2015.5.28   2015.6.9      原発団体への国費流入
  朝日新聞    毎日新聞    西日本新聞
      フリースクール制度のイメージ

(1)善意の衣を着た同情では、教育はできない
 *1-1のように、義務教育の場を、フリースクールや家庭学習などの学校以外にも広げる制度を創設する動きがあるそうだが、私も、不登校の子どもに「多様な学びの機会」が与えられるよりも、義務教育を骨抜きにする可能性が高いため、これはよくないと思う。何故なら、教育は自分で生きられる人間を作るために、多面的な知識や考え方を教え、社会的経験もさせるものであるため、同情(自分より不幸な人への憐れみ)を基盤とするフリースクールや保護者に依る家庭内学習だけでは達成できないからである。

 また、不登校の小中学生が2013年度に約12万人に上るとされているが、「だから学校に行かなくても義務教育を終えたと認める」というのは、問題の本質から目をそらさせ、教育の質や労働力の質を落とす。何故なら、いじめなどで不登校になる子どもの保護者は、教育力も生活力も乏しい場合が多く、保護者がよい教育を与えられることは望めないため、格差の世代間承継を促してしまうからだ。そのため、不登校は、その本質的な原因を解決すべきなのである。

 さらに、「学校に行かないことで家族に責められたり、学校の先生との間で軋轢が生じたりすることがなくなったりする」というのは、子どもに教育を行うにあたって目先の安易さに偏りすぎており、子どもの可能性を引き出すことができずにつぶしてしまうため、子ども本人を不幸にする。いわゆる教科学習以外の農業体験などは、教育の一環として、又は学童保育などで行うべきであり、文字が読めなかったり、計算ができなかったりする基本的学力の不足は、日のあたる職業に就くことを不可能にしてしまうのだ。

 そのため、私は、*1-2の「フリースクール、まず学校をしっかりせよ」という記事に賛成で、学校は、どんな子どもでも登校するのが楽しい場所になるようにしなければならないし、それは学校の仕事であり、先生の実力の一部であると考える。

 それでは、デキが良いとされる方は本当にデキがよいのか検証すると、*1-3の論調は、政治・行政・メディアが常に連呼していることだが、怠惰や誤った政策の結果生じたことを、こねくりまわして国民にしわ寄せするのを合理化しているにすぎない。

 具体的には、「①政府は暮らしに関わる社会保障予算に過去最高となる31.5兆円をあてることを決め、子育て支援に5200億円を計上し、高齢者が増えるため費用の膨張が止まらない年金、医療、介護分野で抑制策を実施する」「②子育て予算の増額は、女性が働きやすい環境づくり」「③年金は14年度より1%しか増えず、2.8%の物価上昇分には届かないため実質減額」「④介護は国が決める単価を平均で2.27%下げ、利用者の自己負担も同率で下がるが、高齢化で利用者が増えるため、全体では2.6%増の2.8兆円」「⑤医療も2.6%増の11兆円」「⑥高齢化や高度医療の普及による社会保障の自然増は毎年1兆円程度だが、抑制策の実施で4200億円増に留めた」「⑦610億円使って自営業者や非正規社員が入る国民健康保険の保険料が割り引きになる対象者を500万人増やす」「⑧社会保障制度の持続性を高めるには、歳出削減と高齢者向け給付の現役世代への組み替えが必要」などである。

 このうち、①③④⑤⑥⑧は、高齢者が増えれば増加することが前からわかっていた社会保障費用を削減する政策であるため、物価上昇と合わせ考えれば、現役時代に保険料を支払ってきた高齢者に二重、三重の負担を押し付けるもので、これにより生活設計が変わったり、まともな医療介護を受けられなくなったりする高齢者が続出するものである。そのため、景気対策、原発、不必要な埋め立て工事などに膨大な浪費をしつつ、高齢者向け給付を現役に組み替えることが必要などとしているのは、人生のサイクルや自分が言っていることの意味が理解できていない人だ。

 また、②については、女性が働きやすくなるためには、子育てだけではなく介護負担もなくす必要があるため間違いで、介護保険料は、働く人すべてから徴収するのが筋である。さらに、⑦については、企業が社会保障関係費を負担せず、高齢期に生活保護予備軍となる非正規社員を増やすことに問題があり、現在は、これらが疑問も感ぜずに促進されているという意味で、教育の失敗があると考える。

(2)一億総活躍と女性の活躍
 一億総活躍の中には、女性の活躍が重要な要素として含まれるが、女性が活躍できるためには、女性が遣り甲斐を持って自己実現できる働き方をバックアップし、働く女性の足を引っ張ることがないようにしなければならない。それには、*2-1のように、男女雇用機会均等法が守られ、女性役員の誕生がニュースにならず、当たり前と感じられる社会であることが必要だ。

 なお、私自身は、男女雇用機会均等法施行前に公認会計士として外資系監査法人・税理士法人で働き始め、男女平等にするために不足している要素について、男女雇用機会均等法改正などで改善してきたため、男女雇用機会均等法施行後に入社した人は、むしろ障害が少なかっただろうと思っている。

 そのような中、*2-2を見ると、首相が「一億総活躍社会」を掲げて女性の活躍推進をしておられるため、現在はかなり恵まれた状況になったものの、ここで①少子高齢化だから出生率の回復と高齢者向けに偏っている配分を子ども・子育てに振り向ける議論を始めるべき ②出生率回復が大局的な視野で、高齢者向け施策は人気取りにすぎない などと豪語しているのは、女性や高齢者を含む国民全体の人権や福利を無視した思考停止である。

 そして、そのような考え方で政策が作られる国では、誰でも働いて老後の蓄えを持つことが必要なので、出生率はむしろ下がるだろう。何故なら、現代日本では、子に老後の扶養を期待する人は稀であり、子育ては単なる出費となるからだ。そのような中、*2-5に書かれている団塊世代の「2015年問題」及び「2025年問題」については、定年を70歳に延長するか、定年制度をなくすかすれば、支える側になる人が増え、それと同時に働いている人は医療・介護の必要性が低くなるため、一石二鳥だと考える。

 *2-3には、一億総活躍社会の実現に向け、介護離職ゼロを達成するため、介護休業を分割して取得できるようにし、休業中の給付水準の引き上げも検討すると書かれているが、介護は数年単位のものであるため、介護サービスの充実こそ必要なのであり、それは、社会保障制度内で小さなやりくりをして高齢者向け給付を現役世代に組み替えるような政策を行っていては実現しない。

 さらに、*2-3、*2-4で、1億総活躍担当の加藤大臣が、少子化対策の一環として国の補助金で自治体が実施する婚活イベントについて、「子どもが生まれやすい環境をつくる。結婚や出会いの支援をしっかりやっていかなくてはならない」と述べて必要性を強調されたそうだが、「出会いがないから結婚できない」などと言っているような消極的な男性の子を産んで育てたいと思う女性はあまりいないため、目標の置き方が違っており、無駄遣いになると考える。

 なお、*2-5のように、「安倍首相は一億総活躍の目標として出生率1.8を掲げているが、第1子に、1000万円支給すれば、少子化問題は解決する」という記事を、現代ビジネスが書いている。そして、「シルバー民主主義」が悪く、「高齢者が幅を利かすのは貯蓄率が高く政治・経済的影響力を持つからに他ならない」としているが、これを書くにあたり、経済的にゆとりがあって政治的影響力を持つ高齢者が全高齢者のうち何%いるのかについて定量的に調査した形跡はなく、驚くほど感情的な結論ありきの議論に終始している。さらに、「1000万円支給されたから子どもを産む」という親が、どういう倫理観を持って子育てするのかは恐ろしい程で、日本は上から下までこのようになってしまったのが問題なのであり、こうした日本人労働者よりも、誠実で真面目な外国人労働者の方がよほど労働者としての質が高いのだ。

(3)高齢者の活躍について
 *3のように、「1億総活躍社会」のテーマの一つに「生涯現役社会の構築」を掲げて、政府は65歳以上で働く人を増やすため、新規・継続雇用を行う企業への助成金を拡充する方針を固めたそうだが、これは、(2)で記載したとおり、定年年齢の70歳への延長や定年制の廃止などと組み合わせて行うと効果的だと考える。

(4)外国人労働者について
 *4のように、少子化で日本の労働力人口は減るため、女性、高齢者、若者の就労促進、ロボットの導入、外国人の雇用に頼ることは必要だ。しかし、外国人を雇用するには、「①総合的な政策で受け入れを拡大して留学生には就業機会を増やす」「②外国人の保険・年金加入などを日本人と平等にする」「③研修・技能実習制度による搾取を止め、労働基準法に適合した待遇にする」「④職場における語学対応」「⑤生活環境整備(例えば市役所、学校、病院、郵便局等での対応)」などの課題がある。

 ただ、外国人の生活環境整備は、「外国人=全員英語」ではなく、ポルトガル語、フランス語、イタリア語、中国語、アラビア語などの多言語に対応しなければならないため、同じ言語を使う外国人はまとまって居住してもらうのが、生活環境整備のコストが削減できるとともに、定住する外国人にとっても情報が入手しやすいと言われている。そのため、どの言語の外国人を積極的に雇用し、その人たちのための生活環境整備をどうするのかについては、それぞれの地域が主導して企画するのがよいだろう。

(5)難民の受け入れ
 *5のように、日本で難民認定を申請した外国人は、2015年10月半ばで5500人を超え、年末には7千人に達する見込みだそうだ。内訳は、ネパール、アジア諸国からの申請が多く、難民として認定されたのは11人とのことで、これは人権を護るという視点から考えて少なすぎだろう。難民条約では「人種や宗教、政治的意見などを理由に迫害を受ける恐れがある人」を難民と定めている。

 日本政府は、紛争から逃れた人は難民とは認めず、「待避機会」として保護対象に位置づけたそうだ。日本が積極的平和主義と称して連合国と一緒に中東・シリアに軍を派遣すれば、アメリカ、ロシア、フランスと同様、どうしても恨みを買うことになる。そのような中、日本の原発は無防備のまま再稼働し、シリア人などの難民を受け入れては危なすぎるため、紛争が終結するまでの一定期間、待避機会を与えて保護対象にする(その間、日本で勉強や仕事をしながら紛争後に帰国して復興する準備をしていればよいと思う)のが妥当だと、私も考える。

<労働力の質と教育について>
*1-1:http://qbiz.jp/article/64071/1/
(西日本新聞 2015年6月9日) 義務教育を多様化 フリースクール認定法案提出へ
 義務教育の場を、フリースクールや家庭学習など学校以外にも広げる制度の創設に向けた動きが出てきた。超党派の議員連盟が、法案を今国会に提出する方針を決めた。実現すれば、日本の教育制度の大転換となる。不登校の子どもたちにとって「多様な学びの機会が認められる」と歓迎する声が上がる。一方で、教育の質をどう保証するのかなど課題も多い。不登校の小中学生は1997年度に10万人を超えてから増加傾向が続いており、2013年度は約12万人に上る。受け皿になっているフリースクールは全国に推計で400カ所余り。計約2千人が学んでいるとされ、全体の7割程度は不登校の子どもたちが占めているとみられる。子どもたちは居住区域の公立小中学校に籍を置きながら、活動内容を随時、学校側に報告。実際に登校していなくても、校長の裁量によって卒業が認められている。超党派の議連が今国会に提出予定の「多様な教育機会確保法案」(仮称)は、対象を不登校の子どもに限定。法案の概要によると、保護者が学校などの助言を受けて「個別学習計画」を作成し市町村の教育委員会に申請。計画が認定され、計画を修了したと認められれば、フリースクールや家庭内での学習でも、義務教育とみなされるようになる。法案に期待を寄せる関係者は多い。NPO法人「フリースクール全国ネットワーク」の江川和弥代表理事は「学校に行かないことで家族に責められたり、学校の先生との間であつれきが生じたりすることは少なくなるのではないか。小中学校以外での学習が公に認められることで、フリースクールにも通っていない不登校の子どもたちが表に出るきっかけにもなる」と強調する。公立小中学校の授業料が無料なのに対し、フリースクールは安いところで2万〜3万円、高いところでは7万〜8万円の月謝がかかる。法案には「国や自治体は必要な財政上の支援に努める」と記す予定で、経済的に通うことが困難な家庭にとっても助かる。義務教育制度に一石を投じる法案だが、課題を指摘する声も多い。フリースクールといっても現行では千差万別。数十年の歴史を持ち、100人を超える子どもたちが学ぶところもあれば、個人が数人規模で開いているところもある。質や教育の内容にばらつきがあり、埼玉大の高橋哲(さとし)准教授(教育行政学)は「学校にもフリースクールにも籍を置く『二重学籍』が解消されるのは画期的」としつつも、「教員免許の所持を教える条件にしたり、1人当たりの教えられる子どもの数を定めるなど、一定の学習環境を整備する必要はある」と話す。共栄大の藤田英典教授(教育社会学)は「少子化が進む中で、塾産業は学校教育への参入を狙っている。もともと学習指導要領の枠をはずれているフリースクールに、不登校の支援とは別の意味で塾産業が入り込んでくる恐れがあり、非常に危険」と懸念する。議連は今国会での法案成立を目指し、早ければ17年度から制度をスタートさせたい考えだ。高橋准教授は「不登校を生み出している現在の学校の状況をまず改善するべきだ」とする。「画一的な学習指導要領に拘束されるのではなく、多様な教育が認められるようにしないといけない。一人一人に目が届くよう、1クラス当たりの子どもの数を減らしたり、教師を増やすといった、根本的な施策が必要だろう」
●「社会性獲得に配慮を」福岡県内の関係者
 福岡県内のフリースクール関係者からも期待と懸念の声が聞かれた。NPO法人「青少年教育支援センター」(福岡県久留米市)の古賀勝彦理事長(67)は「学びの場として公的に認められ、フリースクールに通う子どもと保護者の安心につながる」と評価。その上で「教科学習のほか農業体験など自由活動のような教育環境も整えているか、義務教育と認める基準を明確にする必要がある」と注文する。卒業生約200人を送り出したNPO法人「フリースクール玄海」(福岡市東区)の嶋田聡代表(62)は「不登校生は、学校でテストを受けないことで内申の評価が下がり進学で不利になる場合がある。今後、フリースクールでの成績が評価の対象になれば進路の選択肢が増えることになる」と期待。一方で「フリースクールを学校に通えるようになるためのステップとして捉える考えもある。学校や本人が『通学しなくても良い』と受け止めてしまうと社会性を身に付ける機会を失いかねない」と懸念した。 

*1-2:http://www.sankei.com/column/news/150603/clm1506030002-n1.html
(産経新聞 2015.6.3) フリースクール まず学校をしっかりせよ
 「学校に行かない」という子が増えないか。そう心配する。超党派の議員連盟が不登校の子供たちが通うフリースクールなど学校以外の教育機会を義務教育として認める法案の提出を検討している。多様な学びの機会を尊重することはいい。だが学力のほか、ルールを守り社会性を身につける学校教育の意義を十分に踏まえ、慎重に議論してもらいたい。まず、学校を良くする施策こそ優先すべきだ。学校教育法で義務教育の場である学校は、小、中学校と中等教育学校、特別支援学校と定められている。超党派議連が提出を検討している「多様な教育機会確保法(仮称)」案は、保護者が作成した学習計画を市町村教育委員会が認めれば、フリースクールや家庭での学習などを義務教育の場とみなし、就学義務を果たしたとするものだ。教育機会多様化の一環として、文部科学省も有識者会議を設け、フリースクールを公的にどう位置づけ、支援するか、検討を進めている。フリースクールは全国に400~500あるといわれ、NPO法人(特定非営利活動法人)が運営するものや、個人の家庭で受け入れるものなどさまざまだ。活動内容も体験活動などを通して学校復帰を促す所がある一方で、学校不信が強く、「学校に行かなくてもいい」との考え方で運営する所もある。フリースクール側には「国に縛られたくない」という声もあるようだが、実態不明の教育に公費助成はできない。不登校の児童生徒は約12万人で中学校ではクラスに1人、小学校では学校に1人いる割合だ。どの学校も抱える課題として対策が進められてきた。学校外の民間施設で学んだ場合、校長の判断で出席扱いにする制度もある。あえて新法案が必要なのか疑問だ。不登校には、早期の適切な指導が欠かせない。この法案が、学校復帰への指導をためらわせる、学校否定の誤った風潮を助長する可能性すらある。不登校には学校や家庭など複数の問題がからむ。子供の痛みが分かり、保護者や関係機関と日頃から信頼し合い連携する教師の力をまず高めてほしい。全国ではフリースクールがない地域の方が多い。学校は、朝起きて登校するのが待ち遠しくなるようなところでありたい。

*1-3:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS14H7Z_U5A110C1EA1000/
(日経新聞 2015/1/15) 社会保障費、止まらぬ膨張 15年度予算案
 政府は14日、暮らしに関わる社会保障予算に過去最高となる31.5兆円をあてることを決めた。保育施設の増設など子育て支援に5200億円を計上し、14年度から2100億円上積みしたのが特徴だ。年金、医療、介護分野では抑制策を実施するが、高齢者が増えるため費用の膨張が止まらない。子育て予算の増額は、女性が働きやすい環境づくりに軸足を置いたことに特徴がある。政府は2017年度末までに40万人分の保育施設を整備して、待機児童を解消する目標を掲げている。15年度は定員を8万人増やし、28万人分を確保する。小学生を放課後に預かる学童保育の定員も20万人分増やす。保育士の人手不足にも対策を講じる。保育士の給与は全産業平均より月平均で10万円近く低い。民間の保育所で働く保育士の賃金を平均で3%上げるため、その原資を保育所を経営する会社に配る。子育てを含む福祉分野は、14年度比5%増と高い伸び率になった。年金、医療、介護に充てる費用も3%前後伸びる。年金は物価上昇に連動して支給額を決める仕組みがある。15年度は抑制策を初めて実施するので、年金額は14年度より1%しか増えない。2.8%の物価上昇分には届かず、実質減額となる。団塊世代が既に年金を受け取る65歳に達しており、年金予算は14年度比3%増の11兆円に膨らむ。介護サービスは国が決める単価を平均で2.27%下げることを決めた。利用者の自己負担も同率で下がる。特別養護老人ホームやデイサービス(通所介護)の料金は大幅に下がる見込みだ。介護でも人手不足が深刻なので、780億円を使って介護職員の賃金を月1万2千円上げるための原資を事業者に配る。介護の単価は下がるが高齢化で利用者は増えるため、全体では2.6%増の2.8兆円となる。医療も2.6%増の11兆円だ。610億円を使い、自営業者や非正規社員が入る国民健康保険の保険料が割り引きになる対象者を500万人増やす。国保そのものにも1800億円の財政支援を行う。一方で、大企業の健康保険組合の負担を増やして財源を捻出する。会社員の保険料負担が増える可能性がある。高齢化や高度な医療の普及などによる社会保障の自然増は、毎年1兆円程度増えてきた。15年度は抑制策の実施で、4200億円増にとどめた。社会保障費全体の伸び率を7年ぶりに3%台にしたが、経済成長率をはるかに上回っている。社会保障制度の持続性を高めるには、歳出削減と同時に、高齢者向け給付を現役世代向けに組み替える改革が必要となる。

<女性の活躍>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150328&ng=DGKKZO84890120W5A320C1TY5000 (日経新聞 2015.3.28) ともに学び磨き合う
 女性活躍推進の流れが企業で定着し、今春も女性役員・執行役員の誕生が相次いでいる。男女雇用機会均等法施行前後に入社した生え抜き女性が昇進・昇格時期を迎えているほか、2015年度から有価証券報告書で女性役員比率などの情報開示が各社に義務付けられた影響もある。役員クラスへの女性登用を急ぎ、女性活躍先進企業であることを社内外にPRする狙いだ。女性役員らの交流も始まっている。「Women Corporate Directors」(WCD)日本支部もその1つ。欧米やアジアなど世界約50カ所に支部を持つ女性取締役らの交流組織だ。ともに学び合い、経営者にふさわしい資質を身につけるのが目的だ。日本支部は12年発足。現在上場企業の女性役員・監査役ら約100人が参加する。共同幹事を務める小林いずみANAホールディングス取締役は「役員クラスへの女性登用がここ2年で目覚ましく、発足から瞬く間に会員が急増した」と話す。主な活動は毎月開く勉強会。コーポレートガバナンス(企業統治)のあり方や社外取締役の役割など経営層に必要な知識の習得を目指している。現在の役員クラスは入社以来の配置転換や人材育成手法に男女差があった世代だ。一般的に男性と比べて女性は役員ポジションに就く前の学習機会が少ない。勉強会でそれを補う。小林さんは「せっかく登用されたのに知識不足から『やっぱり女性は…』と言われては残念。与えられたチャンスをつかみ、成功できるように女性役員の育成を進めていきたい」と説明する。

*2-2:http://www.nikkei.com/article/DGXKZO93435400Q5A031C1EA1000/
(日経新聞 2015/10/30) 言葉だけが踊る「一億総活躍」では困る
 安倍晋三首相が掲げる「一億総活躍社会」の実現に向け、首相を議長とする国民会議の議論が始まった。11月中に緊急対策を、来年5月をめどに総合的な策を打ち出すという。安心して産めない、思うように働けない、介護が不安……。日本社会の現実は厳しい。この流れを変えるには、対策のメニューを並べるだけでは不十分だ。実効性のある対策になるよう、社会保障制度などの抜本改革を恐れない、踏み込んだ議論を求めたい。少子高齢化とそれに伴う労働力の減少という課題に日本は直面している。このままでは経済は勢いを失い、社会保障制度の維持は難しくなる。社会全体で子育てを支えるとともに、年齢・性別にかかわらず意欲ある人が働けるようにすることが、重要だ。働き方を見直し、家庭と両立できるようにすることが欠かせない。具体的な施策を詰めるうえで特に大事な視点は、ふたつある。ひとつは財源、とりわけ子育て支援の財源をどう確保するかだ。日本の国内総生産(GDP)に占める家族関係の政府支出の割合は1%程度だ。女性の高い就業率と出生率の回復を両立させているフランスやスウェーデンでは3%前後と、大きな違いがある。良質な保育や教育は、子どもが健やかに成長し社会で力を発揮するための基礎ともなる。子育て支援は未来への投資だ。高齢者向けに偏っている配分を、思い切って子ども・子育てに振り向ける議論を始めるときだ。もうひとつは「介護離職ゼロ」に向けた人材確保だ。政府は介護施設の整備などを急ぐというが、人手不足は深刻だ。介護ロボットなどの活用や、介護保険外の付加価値の高いサービスの提供などを通じ処遇を改善することが、必要だろう。外国人材をどう位置づけるかについても、改めて議論を深める必要があるのではないか。「一億総活躍」という言葉は間口が広く、絡めようと思えばどんな施策にも絡めやすい。最も避けなければならないことは、大局的な視野なしに、省益ねらいや人気取りの施策が乱立することだ。国民会議のメンバーは、政府の他の会議のメンバーと一部、重なっている。だからこそ、横断的で国民的な議論をしやすい面もあるだろう。首相はリーダーシップを発揮しなければならない。

*2-3:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151108/k10010298611000.html
(NHK 2015年11月8日) 一億総活躍相 “介護休業見直し 給付引き上げも検討”
 加藤一億総活躍担当大臣は津市で講演し、一億総活躍社会の実現に向けて安倍総理大臣が掲げる介護離職ゼロを達成するため、介護休業を分割して取得できるように制度を見直し、休業中の給付水準の引き上げも検討する考えを示しました。この中で加藤一億総活躍担当大臣は、安倍総理大臣が掲げる介護離職ゼロの目標達成に向けて、「介護サービスをしっかり充実していかなければならない。在宅介護のサービスを使いやすくするとともに、都心部では、国有地を貸すだけではなく、賃料も下げて、施設整備が進むよう促進したい」と述べました。そのうえで加藤大臣は、「介護休業は93日間休めるが、連続して取らなければいけない。区切って取ったほうが使い勝手がいいという場合もあり、制度を見直す必要がある。介護休業中の給付はふだんの4割で、育児休業と比べても3分の2ほどになっており、引き上げも議論になる」と述べ、介護休業を分割して取得できるように制度を見直し、休業中の給付水準の引き上げも検討する考えを示しました。また、加藤大臣は少子化対策として、「分析をすると、なかなか男女の出会いがない。三重県でも出会いの場を作ってもらっていると思うが、そういった市町村の取り組みをしっかり後押しをしていくことも必要だ」と述べました。

*2-4:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151114-00000117-jij-pol
(時事通信 11月14日) 婚活支援で閣内不一致=加藤1億相「必要」、河野行革相「疑問」
 加藤勝信1億総活躍担当相は14日、テレビ東京の番組で、少子化対策の一環として国の補助金で自治体が実施する「婚活」イベントについて、「子どもが生まれやすい環境をつくる。結婚や出会いの支援をしっかりやっていかなくてはならない」と述べ、必要性を強調した。婚活イベントへの公的助成をめぐっては、河野太郎行政改革担当相が11~13日に実施した行政事業レビューで検証対象の一つに取り上げ、「効果が上がっているのか」と疑問を呈したばかり。これに対し、加藤氏は「婚活のさまざまな経費への公費(投入)には、それなりに(国民の)理解があるのではないか」と反論。歳出カットと少子化の解決をそれぞれ追求する立場から、閣内不一致が浮き彫りとなった。 

*2-5:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151114-00046363-gendaibiz-pol
(現代ビジネス 11月14日) 「第1子に1000万円支給」少子化問題はこれで解決する! ~予算的には問題なし。問われるのは総理の本気度だ。毎年5兆円の予算で「第3次ベビーブーム」は確実
 安倍晋三首相インタビューが『文藝春秋』(12月号)に掲載されている。「アベノミクスの成否を問う『一億総活躍』わが真意」と題した記事中で、安倍首相は「出生率1.8」を目指すとして、以下のように語っている。〈 第二の矢は「夢をつむぐ子育て支援」で、その矢の的は、2020年代半ばまでの「希望出生率1.8の実現」です。しかしながら現在の出生率は約1.4です。産みたいのに何らかの事情で産めない方の事情を取り除いていくことで、実際の出生率が、希望出生率と同じ1.8になるようにしたいというのが基本的考え方です。 〉ここで、出生率を上げる具体的な方法について提言したい。「シルバー民主主義」という言葉がある。主要民主主義国家の中で日本のように凄まじいスピードで少子高齢化が進む国は他にない。そして世代間格差という点で高齢者が幅を利かすのは、貯蓄率が高く政治・経済的影響力を持つからに他ならない。国民総生産(GDP)の2倍に及ぶ1,000兆円超に膨れ上がった国家債務。加えて年金・医療費の世代間格差など深刻な財政・社会保障問題の解が見当たらない中で、このシルバー民主主義が、老齢・引退世代の依然として強い社会的影響力によって若年・将来世代に過剰な負担を押し付けている現実がある。ここで想起すべきは、フランスの「国が子供を育てる」という画期的な少子化対策であろう。「女性活躍」社会を制度化して出生率1.8を達成した。荒っぽい試算ではあるが、日本でも仮に第1子に対する子育て支援として1,000万円を供与すれば、5兆円の予算で新生児が約50万人増えることになる。少子化対策は究極の経済対策であり、乗数効果で言えば公共事業などに数兆円規模の補正予算を毎年度計上するよりはるかに大きな政策効果が期待できる。向こう3年間、5兆円の少子化対策予算を付けて、毎年新生児50万人、3年間で150万人の人口増加を促せば「第3次ベビーブーム」の到来は確実である。そんなことすれば、地方都市の超若年ヤンキー・カップルだけが「カネ欲しさ」で“産めよ、増やせよ”に励むことになる、と皮肉る向きがいるはずだ。だが、団塊の世代(1947~49年生まれの約800万人)が65歳になり年金の支払い側から受け取り側になった「2015年問題」と、同世代が高期高齢者医療の対象75歳になる「2025年問題」を克服しなければならない。しかし、同世代の現役引退による技術者不足と高賃金の製造業従事者の減少、一方で介護・福祉や小売り・飲食など低賃金のサービス産業若年就業者が増える労働構造の変化が景気回復を阻害しつつある。つまり、経済を活性化し成長力を底上げしてカネ回りを良くして景気回復に繋げるアベノミクスのための「トリクルダウン効果」を相殺しているということである。ヤンキー・カップルでもいいのではないか。高賃金の製造業従事者が減り、低賃金の若年中心の就業者が増え続けているのだから。

<高齢者>
*3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/248133
(佐賀新聞 2015年11月10日) 政府、65歳以上の雇用支援強化、緊急対策で企業助成金を拡充へ
 政府は10日、65歳以上の働く人を増やすため、新規に雇用したり、継続雇用したりする企業への助成金を拡充する方針を固めた。「1億総活躍社会」のテーマの一つに「生涯現役社会の構築」を掲げており、11月末にまとめる緊急対策に盛り込む見通しだ。企業は社員が希望すれば65歳まで雇用することが義務付けられている。しかし年金だけでは老後の生活に不安を抱く人も多く、65歳以上の雇用環境を整える狙いがある。ハローワークや民間の人材紹介業者を通じて65歳以上の人を雇用した企業は現在、「高年齢者雇用開発特別奨励金」を利用できる。政府は、助成金の額を引き上げることを検討。

<外国人労働者>
*4:http://www.asahi.com/strategy/0829a.html
(朝日新聞 2015.8.29) 人材の確保、外国から 受け入れ政策、長期的視野で
 少子化の進行で、日本の労働力人口は減っていく。日本総合研究所の試算によると、経済成長率を1%台半ばと想定した場合、15年に見込まれる日本での人手不足は520万人にのぼる。不足分は女性、高齢者、若者の就労促進などで対応するのが最良だが、外国人の労働力にも頼らざるをえない。グローバル化の中で、優秀な人材、留学生に来てもらうことは日本経済にとってプラスにもなる。長期的な視点から、外国人受け入れ戦略を練り直す時がきている。
●日本の課題
・外でグローバル化、内で人口減少に直面する日本にとって、外国人労働力の活用は重要な選択肢だ。
・総合的な政策をつくり、受け入れを拡大する。留学生には日本で就職する機会を増やしていく。
・自治体は外国人の保険・年金加入などを促す。国は財政支援を進める。
 日本は、人口の割には外国人の受け入れが少ない国だ。「単純労働者<注1>は受け入れない」というのが政府の基本方針で、図のように限られた形でしか、入国・定住を認めてこなかった。その一方で、研修・技能実習制度や日系人受け入れによって、部分的ながら単純労働にも門戸を開けてきた。研修・技能実習は「途上国への技術移転」という趣旨でつくられ、日本企業で技術を学ぶ3年間はその企業で働きながら稼ぐことが認められている。出稼ぎを送りたい途上国からの「送出圧力」にも応えた形だ。狭き門だが、日本で働く機会を得ようと次々に外国人がやってくる。人手不足の日本企業にとっても、貴重な働き手になることが少なくない。群馬県太田市の自動車部品メーカー、京和装備ではインドネシア人55人が働く。工場にはインドネシア語で段取りが書かれている。社員が現地まで面接に行き、選んできた。「地方の工場では日本の高卒者の半分が3年と根付かない。技術移転が主な目的とはいえ、外国人はまじめで貴重な人材です」と吉野明俊専務は語る。首都圏の鋳物業界でつくる東京合金鋳造工業協同組合も加盟11社で計68人の中国人を受け入れている。「求人しても、日本人は未経験の定年者しか集まらない」。だが、この制度は弱点を抱える。対象職種が限定されるうえ、受け入れに複雑な手続き、手間がかかり、小さな企業は対応しにくい。悪質なあっせん業者もまかり通り、研修は名ばかりで人手だけがほしい企業は脱法行為に走りやすい。「研修期間」中は残業が禁止されているのに低賃金でこき使われ、未払いなどを理由に途中で失踪(しっそう)する例が多い。最大の受け入れ窓口になっている国際研修協力機構には04年度、約1200件の失踪報告があった。
■単純労働者──産業基盤保つ力に
 日本国内で外国人労働力の需要があるのに、受け入れ制度が未整備なままでいいのか。法務省や自民党、経済界、自治体などで改革論議が動き出している。日本には現在、約200万人の外国人が登録されている。このうち、論議の対象になっているのは特別永住者<注2>らを除く約87万人だ。医療、研究などの専門職、研修・技能実習、日系人の在留資格を持つ人々、一定時間のアルバイトが認められた留学生、不法滞在者を含めた人数だ。改革案の多くが外国人受け入れ拡大を求めている。法務省は河野太郎副大臣が主査を務める中間報告で「総人口の3%(現在は1.2%。特別永住者を除く)を上限に拡大」する案を示した。製造業などの需要に応じるため、日本語力のある労働者を企業が雇用契約を結んで受け入れる新制度の導入も促している。「研修・技能実習は単純労働者を入れる隠れみのになっている。むしろ、量的な枠などを設けて受け入れるべきだ」(河野副大臣)という。自民党の外国人労働者等特別委員会の中間報告は、3年間の研修・技能実習の終了後もさらに2年間、実習の形で滞在できるよう提案している。違法な残業などの不正行為については、受け入れ企業への処分を強めることも求めている。少子化の中、特に人手不足が予想されるのは工場や建設、運輸、農林業など力仕事、時間外労働の多い分野だ。人手不足で産業基盤がほころぶのを防ぐ戦略は、日本の未来にとって不可欠である。日本の発展モデルを描く中で、必要に応じて単純労働職も含めて一定の条件のもとで、受け入れを増やしていくべきである。ただ、受け入れ枠を広げるにしても、誰でも歓迎というわけにはいかない。二国間協定を結んで、送り出し国の政府に身元保証や就労実績の確認などで協力を求めるのも一案だろう。
■留学生──就職・登用の促進を
 21世紀の日本は産業の高度化が大きな課題だ。にもかかわらず、高度な知識や技術を持つ外国からの人材流入は伸び悩んでいる。韓国やシンガポールも少子化時代に入り、国際的な人材獲得競争が起きている。この面でも外国人受け入れ政策を練り直さないと、優秀な人材は集まらない。力を発揮してくれる人材は身近にいる。日本への留学生で、企業は獲得に動き出している。大分県別府市の立命館アジア太平洋大学では、企業の人事担当者による採用説明会が頻繁に開かれている。大学も面接に役立つ講座を設けて後押しする。留学生は学生の4割の約1900人で、日本語と英語が必修だ。今春卒業の留学生のうち、143人が日本企業に就職した。採用したのは国際展開をしている大企業が多い。富士通の場合、03年度から同大を含めて年間20~30人の新卒の留学生を定期採用している。すぐに海外戦略に使うわけでなく、まず「総合職」として日本人社員と競わせる。「高い志と挑戦者魂があり、ぬるま湯育ちの日本人の模範になる」と人事担当者。留学生は年間12万人にのぼるものの、日本での就職を後押しする助言制度などが手薄だった。政府は就職促進に役立つ講座開設などを来年度から支援する方針だが、今後さらに拡充すべきだ。留学で育った「知日派」に日本、あるいは日本企業で活躍してもらい、より開かれた日本にする。企業の意識転換も必要で、採用や研修受け入れの枠を増やし、管理職登用も進める。そうした努力が、グローバルな競争が加速する時代を生きる日本企業の力を強めることになる。
■受け皿──「生活環境整えよ」
 外国人の受け入れ拡大には、生活者として迎え入れる受け皿の整備も必要だ。静岡県浜松市は、外国籍住民が3万人を超える外国人集住都市。市人口のうち3.8%が外国人。ブラジル(約1万8千人)、ペルー(約2200人)など南米の日系人が多い。スズキ、ヤマハなど大企業のすそ野で多くが働く。集住都市が直面しているのは、外国人社員の社会保障制度への加入問題だ。厚生年金や国民年金は外国人も加入でき、25年積み立てれば65歳から受給できる。しかし、3年ほどの出稼ぎのつもりで来た外国人は切実さがない。短期間だけ加入して帰国したら、一部しか払い戻されないこともあり、未加入が多い。他方、90年の出入国管理法の改正で入国しやすくなった日系2世・3世は、滞在が長期化し、「新移民」ともいわれる。将来、年金もないまま高齢化すると、生活支援の社会負担は重くなってくる。教育支援も大きな課題だ。市立遠州浜小学校では、夏休み中もボランティア27人が外国人児童の補習を手伝っている。教員2人を増やし、通訳1人を置いて親への通信簿などを翻訳する。「進学の基礎をつくる必要があるが、教員の不足は明らか」(釈精子校長)だ。 市役所窓口の通訳配置などの費用もかさみ、浜松市の外国人向け施策の財政負担は年に約8億6500万円。一般会計予算の0.4%にあたり、北脇保之市長は「社会的コストをどうしていくか。政府は検討しないまま日系人を受け入れ、自治体の負担ばかり増している」と指摘する。外国人が集まる自治体の悩みは同じだ。静岡、愛知、岐阜、三重、群馬、長野6県の18市町でつくる「外国人集住都市会議」は政府に改革案を示している。年金加入を増やすために受給までの加入年限を15年程度に短くすることや、外国人登録制度の改善と「外国人データベース」作成などを求めている。今の登録制度は、法務省が自治体に事務を委託する形だが、どんな在留資格でどこに住んでいるかについて断片的な情報しか分からない。自治体が生活者としての外国人と接するには、本人の就労や子供の就学、保険・年金の加入状況も含めて総合的に知っておくことが必要だ。外国人が自治体の窓口に寄れば、生活者としての権利と義務の両方について情報を得られるようにする。そのために「外国人データベース」ができれば、自治体は外国人住民の相談に乗りやすくなる。人権や個人情報の保護が前提だが、不法就労や不法滞在、外国人の犯罪組織の潜入を防ぐ基礎にもなる。仕方ないから外国人を受け入れるという発想は時代遅れだ。異国からの人たちが暮らしてみようか、働いてみようかと思うような日本をめざして、総合的な受け入れ政策を備えていかないと、加速する国際的な「人流」の中で日本は孤島になりかねない。
注1 単純労働者 専門的技能を持たない未熟練労働者。製造、運送、建設、サービス業など、初心者でも始めやすい簡単な作業の従事者。「日本人が働きたがらない職種を固定化する」「産業の合理化を遅らせることになる」などの理由で、この分野への外国人受け入れ反対論が強い。
注2 特別永住者 日本の旧植民地出身者やその子孫のための特別な法的地位。朝鮮半島、中国の出身者が多い。約46万6000人(04年)いるが、高齢化などで人数は減少傾向にある。

<難民>
*5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12040225.html
(朝日新聞 2015年10月29日) 難民申請すでに5500人 10月半ば現在 今年、過去最多に
 日本で今年、難民認定を申請した外国人が10月半ばまでに5500人を超え、5年連続で過去最多を更新したことが法務省への取材でわかった。このペースで増加すれば、年末には7千人に達する。アジア諸国からの申請が増加しているという。国際的に大量の難民が発生する中で、日本も対応を迫られている。法務省によると、昨年に申請した人は前年より1740人多い5千人だった。今年は6月末に3千人を突破。7月以降、増加のペースが上がったという。国別では昨年はネパール、トルコ、スリランカ、ミャンマーの順に多く、この4カ国で6割を占めた。今年もネパールが最も多く、アジア諸国が中心。欧州に難民が大量に流入しているシリアからの申請は、数人にとどまっている。増加の背景として法務省は、申請中は強制送還されないほか、在留資格があれば申請の半年後から働けるよう2010年に運用を変えたことがあると分析する。申請が急増しているにもかかわらず、難民と認める例は増えていない。昨年はわずか11人。「人道的配慮」で在留を認めた人を含めても121人だった。難民の支援団体などは「法務省は就労目的の申請を強調し、保護すべき人が見落とされかねない」として、受け入れの拡大を強く求めている。入管行政に詳しい安冨潔・慶応大名誉教授は「保護する人数を増やすだけでなく、受け入れた後の支援策が大切。政府を挙げて取り組むべき課題だ」と指摘する。
◆キーワード
<日本の難民認定> 難民条約は「人種や宗教、政治的意見などを理由に迫害を受ける恐れがある人」を難民と定め、これに従っていると法務省は説明する。難民認定されると、国民年金や児童扶養手当など日本国民と同じ待遇を受けられる。法務省は9月に運用の見直しを公表。明らかに難民に当たらない人は本格審査の前に振り分けて就労を認めない一方、アフリカで虐待を受ける女性など「新しい形態の迫害」を難民と認める方針。紛争から逃れた人は難民とは認めないが、「待避機会」として保護対象に位置づけた。

<同時多発テロについて>
PS(2015年11月16日追加): *6-1のように、パリ市とその近郊で、11月13日金曜日の夜、同時多発テロが発生し、*6-2のように、15日午後(休日である土曜日を挟んで日曜日の午後)からトルコで開催されるG20で主要国首脳が一堂に会してテロ対策を協議し、テロに関するG20声明を発表するというのは、偶然とは思えない完璧なタイミングだ。そのため、「本当にイスラム国の犯行だろうか」と思えてしまうのだが、このG20声明の内容は13日以前からドラフトができていたのではないでしょうね。
 なお、空爆も、される側から見れば空襲で、街を破壊して無差別殺人を行うものであるため、「イスラム国」側に言わせれば「目には目を」の闘いではないかと思われる。そのため、この闘いを終わらせるには、「文明世界への攻撃」と非難するだけでなく、テロが頻発し始めた本質的な原因を検証すべきだ。

    
                 2015.11.15日経新聞より

*6-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151115&ng=DGKKASGM14H7G_U5A111C1MM8000 (日経新聞 2015.11.15)パリ同時テロ 「イスラム国」が犯行声明、仏大統領「戦争行為だ」 死者128人に
 パリ市とその近郊で13日夜に発生した同時テロについて、オランド仏大統領は14日の演説でイスラム過激派(総合2面きょうのことば)「イスラム国」(IS=Islamic State)による犯行だと断定し、ISは犯行声明を発表した。テロによる死者は少なくとも128人に達し、仏治安当局はパリを中心に多くの施設を閉鎖した。主要国はテロへの危機感を強めており、15日にトルコのアンタルヤで開幕する20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)でもテロ対策が主要議題になる。オランド氏は14日、国防に関する関係閣僚会議に出席した後、テレビ演説した。今回のテロを「テロリストによって起こされた戦争行為だ」と語り、仏国外で組織・計画されたと強調した。AFP通信によると、けが人は250人以上でうち約100人が危険な状態にある。死者数はさらに増える可能性がある。フランスにとっては1945年以降、最大のテロ事件となった。フランスは2014年にイラク領内のISに対する空爆を始め、今年9月にはシリアに対象を広げた。ISは14日、インターネット上に出した声明で「オランドがシリアへの攻撃をやめない限り、フランス国民に安全はない」とした。G20首脳会議は16日まで2日間の日程で開く。首脳らは「テロとの戦い」で一致するとともに、具体的な協力策を議論する。オランド氏は欠席することを決めており、代理として出席するファビウス外相は14日、滞在先のウィーンで「テロに対して国際的な協調が必要だ」と述べた。テロが起きたのは、パリ市内東部に位置する10区と11区のレストランや劇場、パリ近郊の国立競技場など計6カ所とみられる。レストランでは自動小銃が乱射されたほか、競技場では爆発が起きた。自爆テロもあったとみられる。劇場では人質をとって立てこもった3人を治安当局が射殺し、市民にも約80人の犠牲者が出たもようだ。AFP通信などによると、一連のテロで8人の実行犯が死亡し、うち1人はフランス人だった。共犯者が逃亡している可能性もあるという。ロイター通信などによると、競技場の犯人とみられる遺体の近くでシリアとエジプトのパスポートがみつかった。オランド大統領は13日深夜、非常事態を宣言した。フランスでは1500人の兵士が治安維持に投入されたほか、国境審査が強化された。パリ市は14日、美術館などの施設を閉鎖し、集会やデモの許可を取り消した。住民には不急の外出は避けるよう呼びかけている。メルケル独首相は14日、「パリだけへの攻撃ではなく、我々全員への攻撃だ」とフランスとの連帯を表明、ベルリンの仏関連施設の警備を強化した。

*6-2:http://qbiz.jp/article/74950/1/
(西日本新聞 2015年11月16日) トルコG20、対テロ声明へ 首脳会合開幕国境管理を厳格化
 日米欧に中国など新興国を加えた20カ国・地域(G20)首脳会合が15日午後(日本時間同日夜)、トルコ南部アンタルヤで開幕した。パリ同時多発テロ後、主要国首脳が初めて一堂に会しテロ対策を協議。議長国トルコのエルドアン大統領は、通常の首脳宣言と別にテロに関するG20声明を発表する方針を表明した。ロイター通信によると、過激派組織「イスラム国」などに流入する外国人戦闘員増大に懸念を示し、国境管理の厳格化を盛り込む方向だ。オバマ米大統領は15日、パリ同時多発テロを「文明世界への攻撃」と非難し、実行したとみられる「イスラム国」の打倒に向けた行動を訴えた。各国首脳もテロを一斉に糾弾。安倍晋三首相は首脳会合で、同時多発テロに「強い衝撃と怒りを覚える。日本政府、国民を代表して犠牲者に哀悼の意を表し、フランス政府、国民との連帯の意を表明する」と述べた。首脳らは会合の冒頭、パリのテロ犠牲者に対し、黙とうをささげた。ロシアメディアによると、ロシアのプーチン大統領は国際社会の団結がなければテロの脅威に対処するのは不可能だと指摘。中国の習近平国家主席もテロを「断固非難する」と述べ、対策強化を表明した。パリ同時多発テロでは、シリア、イラクを拠点とする「イスラム国」が遠隔地で大規模な攻撃を仕掛けた可能性が指摘される。国際社会がテロ包囲網の再構築を迫られる中、G20各国は過激派組織に流入する外国人戦闘員やテロ資金の途絶に向けた措置を強化する方針。過激派組織の関与が指摘されるロシア機墜落を念頭に、航空の安全確保でも合意する見通しだ。日米欧と新興国、中東諸国は、今回の同時多発テロで迅速な行動が必要との認識で一致。各国に国内法の早急な整備などを促すとみられる。フランスのオランド大統領はG20首脳会合を欠席した。各国はフランスへの支援も表明する。会合は2日間の日程で開かれ、16日午後に議論を総括した首脳宣言を採択して閉幕する。


<辺野古の埋め立てについて>
PS(2015年11月17日追加):既に空港のある人口の少ない離島など、埋め立て不要でもっと安価な他の選択肢は多いにもかかわらず、「普天間の危険除去=辺野古の埋め立てが唯一の選択肢」などと屁理屈をつけ、埋め立て費用や経済効果の小さな地元対策費を使うのも税金の無駄遣いだ。そして、こういうことをする大人を作ったのも、(理由を長くは書かないが)教育の失敗である。

   
    辺野古の海      ジュゴンのはみ跡      工事の開始   2015.10.28佐賀新聞

       
  沖縄の殆どの人が反対しているのに、「反対派はテロリストの仲間」「無責任な市民運動」
      などと言っている人がいるが、無責任に思考停止しているのは誰だろうか?

*7-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/250588
(佐賀新聞 2015年11月17日) 辺野古、国交相が沖縄知事を提訴、取り消し撤回要求、法廷闘争へ
 政府は17日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設計画をめぐり、翁長雄志知事による名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消し処分を撤回する代執行に向けた訴訟を福岡高裁那覇支部に起こした。政府の勝訴が確定すれば、知事に代わって処分を撤回し、埋め立てを進める構えだ。沖縄県民が強く反対する辺野古移設をめぐる政府と県の対立は、異例の法廷闘争に発展した。埋め立て承認は公有水面埋立法に基づき、国が事務を都道府県知事に委託している地方自治法上の「法定受託事務」。この規定に基づいて知事を提訴するのは初めて。

*7-2:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=141851 (沖縄タイムス 2015年11月17日) 絶妙? 「辺野古」代執行前の人事に憶測飛ぶ 高裁那覇支部の裁判長
 名護市辺野古の埋め立て承認取り消しをめぐり、代執行訴訟に向けて国が動き始める中、提訴先とみられている福岡高裁那覇支部の支部長が10月30日付で代わる人事があった。全国的に注目される訴訟を前に、沖縄県側は「国が介入した対抗策の一環か」と警戒している。就任した多見谷寿郎氏は名古屋地裁や千葉地裁勤務を経て、2013年に成田空港用地内の耕作者に、土地の明け渡しと建物撤去などを命じた成田空港訴訟で裁判長を務めた。最高裁は、他県の裁判所で依願退官者が出たことに対応する人事で、「退職者が出た場合は必要に応じて適時発令する」と説明。この時期の人事発令が異例でないことを示唆した。県の幹部は「玉突き人事とはいえ、タイミングが“絶妙”すぎて意図的なものを感じる」と顔をしかめる。「国寄りの強権派から選抜したのではないか」との臆測も飛び交う。

*7-3:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=141839
(沖縄タイムス 2015年11月17日) 米のアジア系労組、辺野古反対の沖縄支援を決議 
 米国で影響力を持つアジア太平洋系アメリカ人労働組合(APALA)は15日、米カリフォルニア州オークランド市で開いた幹部会議で名護市辺野古の新基地建設計画に反対する沖縄を支援する決議を採択した。幹部会議には島ぐるみ会議のメンバーらも参加。ワシントンDCに本部を持ち、全米に18支部と会員数約66万人の大組織の協力を取り付け、訪米団は初日に大きな成果を手にした。決議は、沖縄県民の大半が辺野古の米軍基地拡張に反対していると指摘。新建設計画阻止へ向けた行動計画として、(1)米軍基地拡張に反対する沖縄の人々と連携する(2)オバマ大統領や米連邦議会の有力議員らに書簡で沖縄の米軍基地拡張をめぐるわれわれの反対を伝える(3)全米の労働組合の幹部らに沖縄の軍事拡張計画反対を支援するよう伝える-など、今後の具体的な協力内容を明記した。幹部会では、島ぐるみから渡久地修県議や宮城恵美子・那覇市議、連合沖縄の大城紀夫会長らが出席。約1時間にわたり、新基地計画をめぐる現状などを訴えた。

PS(2015年11月19日追加):法治国家(国民の意思によって定められた法に基づいて国政が行われる国)では、法の解釈や運用の仕方を相手によって変えることなく、憲法14条の「法の下の平等」は必ず守られなければならない。そのため、*8のとおり、政府(司法も同じ)が都合のよい結論ありきの結果を出すために法律を適当に運用してはならないが、日本の法学部教育はそうであるため、世界(国際訴訟)では通用しないと言われている。

*8:http://www.shinmai.co.jp/news/20151118/KT151117ETI090006000.php
(信濃毎日新聞 2015年11月18日) 辺野古訴訟 これが法治国家なのか
 沖縄の民意や地方自治を、国家権力がねじ伏せている。そうとしかみえない。米軍普天間飛行場の移設をめぐり、翁長雄志知事が先月、辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。政府はきのう、これを撤回する代執行に向けた訴訟を福岡高裁那覇支部に起こした。政府は訴状で「航空機事故や騒音被害といった普天間飛行場周辺住民の生命・身体に対する重大な危険は現実化している」と移設の必要性を訴えた。移設できない場合、「米国との信頼関係に亀裂を生じさせ、わが国の外交、防衛上の不利益は極めて重大」とした。安倍政権が対話での解決を放棄したことを意味する。翁長氏も争う構えで、政府と沖縄の対立は決定的となった。沖縄の各種選挙で示された民意は普天間の県外移設だ。辺野古への移設を「唯一の解決策」とする政府は他の選択肢を真剣に考えず、米国と話し合おうともしなかった。地元の理解がないまま、安倍政権はなりふり構わぬ姿勢で新基地を造ろうとしている。移設をめぐっては、2013年に仲井真弘多前知事が埋め立ての承認を決定した。政府は沖縄振興策をちらつかせたり、沖縄選出の国会議員らに辺野古容認を迫ったり「アメとムチ」をフルに利用した経緯がある。知事選で辺野古移設反対を掲げて仲井真氏を破った翁長知事は、承認には「瑕疵(かし)がある」として取り消し処分を決めた。沖縄防衛局は行政不服審査法に基づき、国土交通相に処分の効力停止を求め、認められた。これを受け、いったん止まった移設作業が再開されている。本来、この法律は国や自治体の行政処分で不利益を被った国民を救済するためにある。防衛局は行政機関なのに、工事の事業者であることを理由に、国民と同じ「私人」と主張したのだ。3月に海底調査でサンゴ礁を傷つけた可能性があるとして県が作業停止を指示した際にも同じ手法を使っている。「我田引水」との批判は免れない。そして、今回は国による代執行を求める提訴だ。私人と国の立場を都合よく使い分けている。菅義偉官房長官は「わが国は法治国家であり、普天間の危険除去を考えたときにやむを得ない措置だ」と述べた。政権が移設を進めるために法の趣旨に反しても構わないと考えているとしたら、法治国家とはとても呼べない。

PS(2015年11月20日追加):*9-1、*9-2に書かれているように、沖縄の民意は、一貫して全体的に「辺野古埋め立て反対」で明確になっており、その民意を金で分断して賛成にまわった一部の人の存在を重視して報道する本土メディアの報道内容は、バランスを欠いており公平中立でない。また、政府が「①普天間飛行場の周辺住民への危険が除去できなくなる」「②日米両国の信頼関係に亀裂が入り、外交、防衛などの不利益が生じる」「③移設作業で支払った約473億円が無駄金になる」と訴えていることについては、訴訟になったからこそ、この程度の政府自身に起因する根拠しかないことが書面に書かれて公になったとも言えるため、既に損害を出している沖縄県は①②③を一つ一つ根拠を持って否定して反訴するのがよいと考える。その結果、どういう司法判断が出るかは、市民とメディアが司法を見守ってチェックしておくしかない。

*9-1:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/251597
(佐賀新聞 2015年11月20日) 「辺野古」提訴、対話の扉は開き続けよ
 国と沖縄県の対立はついに法廷闘争に発展した。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古沿岸部への移設計画をめぐって、翁長雄志(おながたけし)知事が埋め立て承認を取り消したことに対して、国が福岡高裁那覇支部に提訴した。国が知事に代わって取り消し処分を撤回できる「代執行」を求めている。県側も、国交相が知事の処分の効力を停止した決定の取り消しを求めて提訴する方針で、泥仕合の様相を呈してきた。政府は、こうした事態に陥る前に話し合いによる解決を探る余地はなかったのか。沖縄の民意は明らかだ。昨年1月の名護市長選から同市議選、知事選、12月の衆院選まで移設に反対する候補が当選してきた。国内の米軍関連施設の74%が集中する沖縄の意向をくみ取らずに移設に突き進むことが安全保障政策上、プラスになるのか。基地の足元で反基地感情がさらに高まることは安保体制の不安定要素になるのではないか。知事の権限を取り上げることにもなる「代執行」の提訴は、国と地方を「対等・協力」関係と位置づけた2000年の改正地方自治法の施行後、初めてとなる。地方分権の流れに逆行していると見ることもできるのではないか。訴状で政府は「普天間飛行場の周辺住民への危険が除去できなくなる」「日米両国の信頼関係に亀裂が入り、外交、防衛などの不利益が生じる」「移設作業で支払った約473億円が無駄金になる」などと訴えた。ただジョエル・エレンライク駐沖縄米総領事は、共同通信のインタビューに対し「(移設計画が滞った場合でも日米関係に)影響は全くない」と答えている。日本政府が訴える日米の信頼関係への亀裂を、米国側が否定した格好だ。さらに無駄金の主張は、走りだしたら止まらない公共事業の理屈そのものだ。その主張の正当性については司法が判断するだろう。訴訟では、前知事による法律的な瑕疵(かし)があったかどうかが最大の争点となる。沖縄県は、辺野古移設の根拠の乏しさなどを指摘した県有識者委員会の報告書を基に前知事の承認に「法的瑕疵がある」と主張、国は「前知事から行政判断は示されており、承認に瑕疵はない」との立場だ。米軍基地をめぐる国と沖縄県の法廷闘争は、1995年に米軍用地の強制使用の手続きを拒否した当時の大田昌秀知事に対して国が提訴して以来となる。翌年に国の勝訴が確定するスピード審理だった。国は今回も同様の決着を期待し、司法判断を盾に移設を進めたい考えだ。「提訴は沖縄県民にとって『銃剣とブルドーザー』による強制接収を思い起こさせる。県民の自己決定権のなさは70年前も今回も変わりはない」。翁長知事は、沖縄に負担を強い続ける歴史をこう表現した。政府が強硬姿勢を続ける限り沖縄の怒りは蓄積され続け、地方自治法が位置づける「対等・協力」関係を築くことなど到底できない。司法判断に委ねることは、政府の当事者能力のなさを示すことにほかならない。対話の扉を開き続け、あくまでも法廷外での政治決着を目指してほしい。

*9-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-174859.html
(琉球新報社説 2015年11月20日) 座り込み500日 驚異的な非暴力の闘い
 人々の「思い」の総量は、いったいどれほどに達するだろう。辺野古新基地建設に反対する市民のキャンプ・シュワブゲート前の座り込みが500日を超えた。18日は千人もの人が参加した。行ったことのない政府の人には分からないだろうが、例えば県庁前からあそこまで行くには相当な時間を要する。平日に行くからには無理を重ねてのことだ。よほどの思いがなければできない。そしてその背後には体力その他の事情でどうしても行けなかった人が膨大にいるはずだ。それが500日にも及ぶのである。市民が選挙で示した意思を、その通り実行してほしい。ただそれだけの、ほんのささやかな望みを実現するために、これほどの努力と犠牲を払わなければならない地域がどこにあろう。しかもその努力はゲート前だけではない。辺野古漁港近くのテントでの座り込みは11年7カ月、4232日にも及ぶ。それでもなお政府は強権的に民意を踏みにじるのである。どこにそんな「民主国家」があるだろうか。驚異的なのは、その膨大な時間の中で市民の側は徹底的に非暴力を貫いていることだ。やむにやまれぬ思いを抱えて、途方もない時間をかけて抗議してもなお踏みにじられれば、過激な行為に走るものが現れる例は、世界各地ではままある。それと対照的な沖縄の徹底した非暴力・不服従の闘いは称賛に値しよう。むしろ暴力的なのは日本政府の方である。市民が道路に倒されてけがをしたり、頭を水中に沈められたりといった行為が頻発している。救急車の出動は何度もある。いずれも運ばれるのは市民の方だ。18日も海上保安官に押さえられた際に意識もうろうとなった市民がいた。何と野蛮な政府であろうか。だがそれは、むしろ政府の側が追い詰められた結果とも見える。政府が県を提訴し、政府の勝訴必至と言い立てる言説が多いが、承認取り消しをめぐる政府の対応には矛盾があり、訴訟の行方は分からない。県の提訴も予定される。文化財保護法に則して工事中止に至る可能性も高い。知事と名護市長が「あらゆる手段」で阻止を図れば、工事を完遂することはまず不可能だ。何より国内世論が沖縄に味方しつつある。国際社会も見ている。政府の野蛮はその焦りなのではないか。理は沖縄にある。

PS(2015.12.4追加):辺野古の埋め立てが公共工事として進捗していることは推測していたが、*10-1、*10-2は、「やはりそうだったか」と思った。しかし、この工事は、①沖縄の自然という大きな財産を壊し ②他の地域から土砂を持ってくることで生態系を壊す危険があり ③より安価な方法を選択しなかったことで税金の無駄遣いであるため、公益にならない。そのため、このような工事は早々に止め、工事の喪失分は、本当に工事を必要とし、人手不足の東日本大震災被災地に沖縄からも行けばよい。

*10-1:http://digital.asahi.com/articles/ASHD302FJHD2UTIL05W.html
(朝日新聞 2015年12月4日) 辺野古工事「目もくらむ数字」 寄付、衆院選も地方選も
 米軍普天間飛行場の移設関連工事を受注した沖縄県の建設会社は、衆院選や地元首長選で候補者側へ寄付を重ねていた。沖縄の建設会社にとっては公共工事が「命綱」とされる。総額3500億円の移設工事も、逃せない事業だったという。「辺野古移設は公共工事の一つ。会社の売り上げを上げたいという思いはあった」。2014年衆院選の時に寄付した建設会社の関係者は打ち明ける。衆院選投開票を前にした14年12月、沖縄県浦添市の建設会社が県内地盤の国場幸之助、宮崎政久、西銘恒三郎(以上自民)、下地幹郎(おおさか維新)の4衆院議員側に計80万円を寄付。同市の別の建設会社も12月、西銘議員側に50万円を寄付した。この2社は15年に入ってから、護岸工事などを国から受注した。寄付した後の契約のため、公職選挙法の特定寄付には該当しないが、寄付はいずれも解散から投開票日までの期間内だった。14年にこのほかの寄付はなかった。14年衆院選では、沖縄市の建設会社が国からの工事受注後、11~12月に議員6人に計90万円を寄付。公選法が禁止する特定寄付の可能性があるなど、選挙時の寄付が広がっている。別の建設会社社長によると、衆院選の投開票日の1カ月ほど前になると毎回、自民を中心に候補者側から集会への動員を求める文書がファクスや郵送で送られてくる。14年衆院選の時に参加したところ、事務所で陣営担当者から寄付の要請があったという。この時期の寄付計220万円について、5議員は「誤解を受けないため」として、朝日新聞の取材後に計160万円を返金した。もう1人も返金について検討している。地方選挙も似た構図だ。2013年12月に仲井真弘多・前知事が辺野古移設容認を表明し、移設の是非が争点になった14年1月19日投開票の沖縄県名護市長選。移設関連工事を受注した県内5社は12月16日から1月16日にかけ、移設容認派の元自民県議の候補者側に計110万円を寄付していた。「資金が厳しいので支援して欲しい」。名護市長選挙を控えた13年12月、建設会社社長の男性は、顔見知りの建設会社役員らを通じて頼まれ、移設を容認する候補者側に寄付した。男性は「3千億円超という辺野古工事は目もくらむ数字。でも、地元で受注できるのは一部。(移設容認候補の落選で)政府と話ができなくなることの方が心配だった」と振り返る。同様に寄付した別の建設会社の経営者の男性も「期待するのは国とのパイプ。国に見放されたら誰が仕事を持ってきてくれるのか」と語気を強めた。07年、移設先のV字形滑走路案を進める国に地元が反対して移設交渉が中断した際、国の北部振興予算が一時凍結され、同業者が何社か倒産した。「政府は恐ろしい。移設反対と言うと、いろんな予算が減らされる」。候補者の元県議は「私の政治活動への寄付だ。私からお願いもしていない」と話した。14年11月16日の沖縄県知事選では、告示1カ月ほど前から、工事を受注した県内の4社が計270万円を自民党県連と自民名護市支部に寄付した。県連と市支部は同年10~11月に、立候補した仲井真氏を支援する二つの政治団体に計1億5300万円を寄付していた。仲井真前知事は「ノーコメント」としている。
     ◇
《特定寄付の禁止》 公職選挙法は、国と請負契約を結ぶ個人や企業が国政選挙に関して寄付してはならず、政治家側も要求してはならないと定める。政策が寄付者の影響を受ける事態などを防ぐためと解釈されている。地方自治体の首長や議員の選挙でも同様の規定がある。違反した場合は3年以下の禁錮または50万円以下の罰金に問われる。

*10-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12100286.html
(朝日新聞 2015年12月4日) 辺野古受注業者が寄付 沖縄6議員に90万円 14年衆院選
 6人は国場幸之助、宮崎政久、比嘉奈津美、西銘恒三郎(以上自民)、下地幹郎(おおさか維新)、玉城デニー(生活)の各議員。玉城氏は沖縄3区で当選、他の5人は沖縄県の小選挙区で落選し、比例九州ブロックで復活当選した。寄付したのは同県沖縄市の中堅建設会社。14年10月29日の入札で辺野古移設に関連する護岸新設工事を落札し、約2億9千万円で沖縄防衛局と契約した。衆院は11月21日に解散し、12月14日が投開票だった。同社は11月27日~12月2日、6人の政党支部にそれぞれ10万~20万円を寄付した。14年にこの時期以外の寄付はなかった。同社は12年衆院選時も解散から投開票日までに、自民3人と下地氏に計150万円を寄付。衆院選のなかった10、11、13年は6人への寄付はなく、比嘉氏のパーティー券20万円を購入しただけだった。6人は「日頃から支援を受けており(寄付は)特別ではない」と答える一方、5人が「誤解を受けてはいけない」と返金した。同社は「通常のお付き合いの範囲で、選挙に関する寄付ではない」としている。沖縄防衛局によると、飛行場移設予算は3500億円以上を見込み、14年から護岸工事など約500億円分が順次発注されている。
■影響力に懸念
 日本大学法学部の岩井奉信教授(政治学)の話:衆院解散後が「選挙期間」なのは明らかで、寄付が選挙目的と指摘されても仕方ない。業者が気をつけるべきだが、政治家側も選挙期間の寄付は特にチェックしないといけない。今回の事例は、公共事業を受注する業者が寄付することで、政治家が選挙後に公共事業への影響力を発揮するのではという懸念を生じさせ、返金は当然だ。

PS(2015年12月4日追加):「辺野古移設は、沖縄県の基地負担軽減だ」と主張する人が少なからずいるが、それなら、“軽減”後の基地負担が全国平均と比較してどうかについても言及すべきだ。もちろん、“軽減”後も、沖縄県の基地負担割合は突出して高く、この裁判は、次の100年の計のためにも、沖縄県を勝たせなければならない。なお、この辺野古埋め立て訴訟は、民主主義、三権分立、国と地方の関係、地方自治、安全保障、領土・領海・領空の保全、環境、日本史と世界史など、多くの問題を含むため、高校生の授業でテーマとして取り上げ、役割分担して調査し、議論すると有意義だと考える。

*11-1:http://mainichi.jp/select/news/20151203k0000m040072000c.html
(毎日新聞 2015年12月2日) 辺野古:知事「国民に問う」…代執行、法廷闘争始まる
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設計画を巡り、国が翁長雄志(おなが・たけし)知事に対し、名護市辺野古沿岸部埋め立ての承認取り消し撤回を求めた代執行訴訟の第1回口頭弁論が2日、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)であった。翁長知事は意見陳述で「沖縄県にのみ負担を強いる今の日米安全保障体制は正常といえるのか。国民の皆様すべてに問いかけたい」として過重な基地負担と移設計画の不当性を訴え、請求棄却を求めて争う姿勢を示した。次回の口頭弁論は来年1月8日に開かれる。米軍基地問題を巡る国と沖縄県の法廷闘争は、1995年に軍用地の強制使用を巡って首相が当時の知事を訴えた「代理署名訴訟」以来、20年ぶり。弁論で翁長知事は冒頭、米国統治下で米軍から土地を強制接収されて過重な基地負担を背負わされた沖縄県の戦後史を踏まえて意見陳述。「今度は日本政府によって(米軍の)銃剣とブルドーザーをほうふつさせる行為で美しい(辺野古の)海を埋め立て、基地が造られようとしている」と述べ、「米軍施政権下と何ら変わりない」と訴えた。国側と県側の争点の主張確認も行われ、弁論は翁長知事の承認取り消しの適法性に集中した。国側は「国防に関わる基地の設置場所について知事に審査権限は与えられていない」と主張。県側は「県内移設しかないという地理的・軍事的根拠は無い」として、承認を取り消した判断の正当性を訴えた。国側は訴状で最高裁判例から、今回のケースで取り消しが認められる要件は「取り消す不利益と維持する不利益を比較し、維持することが著しく不当な場合」と指摘。取り消しで「普天間飛行場の危険性が除去できず、日米の信頼関係にも亀裂が入る」などと主張し「承認維持の場合と比べて不利益が極めて大きい」と強調している。県側は「国側が主張するのは個人に対する処分の判例で、国の機関が処分の相手である今回のケースには当てはまらない」などとした。県側は翁長知事の当事者尋問と、移設に反対する名護市の稲嶺進市長や環境、安全保障の専門家など計8人の証人尋問を申請している。国側は「必要性がない」と意見を述べた。多見谷裁判長は次回期日とともに次々回期日を来年1月29日に指定。次回は引き続き争点を確認し、次々回で証人申請の採否を決定する。
◇代執行◇
 都道府県が国の仕事を代行する「法定受託事務」について、知事による管理や執行に法令違反などがあり、他にそれを改めさせる方法がなく、放置すれば公益を著しく害する場合に担当相が知事に代わってその事務の手続きを行うこと。地方自治法の規定による。知事が担当相の是正勧告や指示に従わず、高等裁判所が国の請求を認めることが前提になる。

*11-2:http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201512/0008618262.shtml
(神戸新聞 2015/12/4) 翁長知事陳述/国民全てへの問い掛けだ
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設計画をめぐる、国と県による異例の法廷闘争が始まった。移設先の名護市辺野古の埋め立て承認を取り消した翁長(おなが)雄志知事による処分について、国が撤回を求めた代執行訴訟の第1回口頭弁論が、福岡高裁那覇支部で開かれた。訴訟で争われるのは知事による取り消し処分の是非である。安全保障や外交分野で、知事に判断権があるのかどうかも争点だ。だが、法廷で意見陳述した知事が重きを置いたのは、国が掲げる法律論ではなく、「魂の飢餓感」と表現する沖縄の心情だった。国土のわずか0・6%に73・8%の米軍専用施設が集中している。過重な基地負担を強いられてきた歴史をたどりながら、地元民意に反して進められようとする辺野古移設の不条理を訴えた。裁判の原告である国だけに向けられたものではない。国民全てに対する問い掛けと受け止めるべきだ。私たち一人一人が、沖縄の声にしっかりと耳を傾け、解決への道筋を考えることが重要だ。訴訟で県側は移設を憲法違反と位置付ける新たな論点も持ち出した。移設先周辺の住民の自治権が大幅に制約されるにもかかわらず、地元の承認も国会審議もなしに計画を進めるのは、憲法が定める地方自治の原則に反するとの主張だ。複数の選挙で反対の民意が示されたにもかかわらず、国が強硬に進める辺野古移設を、翁長知事は地方自治の危機と訴えてきた。沖縄だけの問題ではないと他の自治体の理解を求めてきた。しかし、わがこととして考えた自治体はどれほどあったか。国が進める事業を止められるわけがない、という姿勢では、自治権が揺らぐのを傍観することになる。1999年の地方自治法改正で、国と地方の関係は「上下・主従」から「対等・協力」へと変わった。「日本に地方自治や民主主義は存在するのか」という知事の問い掛けを、正面から受け止める必要がある。菅義偉官房長官は「対話の余地がなかった」とし、やむを得ず訴訟に踏み切ったと強調する。しかし、県との接点を見いだせず、解決を図れなかった責任は重い。国は対話による解決を望む世論に応え、事態を打開する努力を続けるべきだ。

*11-3:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/210993
(西日本新聞 2015年12月4日) 辺野古訴訟 国民への問い掛けの重さ
 米軍基地の移設計画をめぐって、国と地方自治体が争う異例の裁判が始まった。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先の埋め立て承認を翁長雄志(おながたけし)知事が取り消したのは違法だとして、国が撤回を求めた代執行訴訟の第1回口頭弁論が、福岡高裁那覇支部で開かれた。弁論で国は「行政処分の安定性は確保されなければならず、例外的な場合しか取り消せない」と翁長知事の承認取り消しを批判し、迅速な審理終結を求めた。一方、翁長知事は意見陳述で、沖縄の過重な基地負担の実態を訴えた。「政府は辺野古移設反対の民意にかかわらず移設を強行している」として、移設強行は自治権の侵害で違憲だと主張した。国が行政処分の法律論に絞って訴訟を進めようとするのに対し、知事は日米安保における沖縄の位置付けや、国と地方の関係にまで論点を広げ、辺野古移設の是非そのものの審理を目指している。注目したいのは、意見陳述で翁長知事が、重い意味を持つ根本的な問いを投げ掛けたことだ。「沖縄県にのみ負担を強いる今の日米安保体制は正常と言えるのでしょうか」。「日本に、本当に地方自治や民主主義は存在するのでしょうか」。「沖縄が日本に甘えているのでしょうか。日本が沖縄に甘えているのでしょうか」。今後の展開は予断を許さないが、高裁那覇支部が「基地の在り方を議論する場ではない」とする国側の主張を認め、直接の争点である承認取り消しの是非に限定した訴訟指揮を取る可能性は高い。しかし、どのような裁判の展開となるにせよ、翁長知事が提起した問いへの答えがない限り、沖縄の住民の納得は得られず、基地問題も解決しないだろう。翁長知事は意見陳述の最後にこう述べた。「国民の皆さますべてに問い掛けたいと思います」。この裁判を単に「国と沖縄の争い」と捉えるのではなく、沖縄の基地負担を国民すべての問題として考える契機にしたい。

*11-4:http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=348404&nwIW=1&nwVt=knd
(高知新聞 2015年12月4日) 【辺野古訴訟】形式的審理に終わらすな
 沖縄県の基地問題の将来を問う法廷闘争が始まった。米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐり、埋め立て承認を翁長知事が取り消したのは違法だとして、国が撤回を求めた代執行訴訟の第1回口頭弁論が福岡高裁那覇支部で開かれた。国が県を訴えた異例の裁判であり、背景も疑問を拭えない。市街地にある普天間飛行場の危険性の除去という課題に対し、政府は辺野古移設が「唯一の解決策」と強硬姿勢を貫き、沖縄県は基地の県内たらい回しに強く反発する民意を背景に移設を拒否している。「日本に地方自治や民主主義はあるのか。沖縄にのみ負担を強いる安保体制は正常か。国民に問いたい」。意見陳述での翁長知事の訴えは重い。裁判をきっかけに、政府も国民もいま一度、基地問題の本質に向き合う必要がある。司法も形式的な審理に終わらせてはならない。裁判は、承認取り消しは可能か、前知事の承認に瑕疵(かし)はあるかなどが大きな争点だ。翁長氏は意見陳述で、住民を巻き込んだ沖縄戦や米軍による土地の強制接収、過重な基地負担といった沖縄の犠牲の歴史を強調した。承認取り消しの是非だけでなく、基地問題の本質への理解を求めたといえる。これに対し国側は、基地のありようを「(法廷は)論議する場ではない」と切り捨て、「行政処分の安定性は保護する必要があり、例外的な場合にしか取り消せない」などと手続き論で勝負する構えを見せている。基地問題は沖縄の歴史や現状を抜きにしては論議できない。国と沖縄県は1995年にも、米軍用地の強制使用に必要な代理署名をめぐって法廷で争ったことがあり、沖縄の深刻さを物語っている。安倍政権の姿勢は明らかだ。オスプレイ訓練の拠点を佐賀県に移転する計画は地元の反対などから取り下げたが、辺野古移設は裁判に持ち込んだ。日米安保の重要性を強調し、沖縄県側とは「対話の余地はなかった」(菅官房長官)と提訴を正当化するが、「沖縄の人々に寄り添う」と発言してきたのではなかったか。裁判を単なる国と地方の争い、手続き論で片付けることは政府の姿勢にお墨付きを与えることになりかねない。本質を踏まえた審理が求められる。

*11-5:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2015/151013.html (日本弁護士連合会 会長 村越進 2015年10月13日) 普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立ての承認の取消しに関する会長声明
 本日、沖縄県知事は、前知事が2013年12月27日に行った普天間飛行場代替施設建設事業(以下「本事業」という。)に係る公有水面埋立ての承認(以下「本件承認」という。)を、公有水面埋立法第4条第1項の承認要件を充足していない瑕疵があるとともに、取消しの公益的必要性が高いことを理由として、取り消した。本事業で埋立ての対象となっていた辺野古崎・大浦湾は、環境省レッドリスト絶滅危惧ⅠA類かつ天然記念物であるジュゴンや絶滅危惧種を含む多数の貴重な水生生物や渡り鳥の生息地として、豊かな自然環境・生態系を保持してきた。当連合会は、2000年7月14日、「ジュゴン保護に関する要望書」を発表し、国などに対し、ジュゴンの絶滅の危機を回避するに足る有効適切な保護措置を早急に策定、実施するよう求めた。また、当連合会は、2013年11月21日に、「普天間飛行場代替施設建設事業に基づく公有水面埋立てに関する意見書」を発表し、国に対し「普天間飛行場代替施設建設事業」に係る公有水面埋立ての承認申請の撤回を、沖縄県知事に対し同申請に対して承認すべきでないことをそれぞれ求めるなどした。その理由は、この海域は沖縄県により策定された「自然環境の保全に関する指針」において自然環境を厳正に保全すべき場所に当たり、この海域を埋め立てることは国土利用上適正合理的とはいえず(公有水面埋立法第4条第1項第1号)、環境影響評価書で示された環境保全措置等では自然環境の保全を図ることは不可能であるなど(同第2号)、同法に定める要件を欠いているというものである。そして、沖縄県知事が2015年1月26日に設けた「普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認手続に関する第三者委員会」(以下「第三者委員会」という。)においても、本件承認について、公有水面埋立法第4条第1項第1号及び同条第2号の要件などを欠き、法律的な瑕疵があるとの報告が出されるに至った(2015年7月16日付け検証結果報告書)。以上のとおり、本件承認には、法律的な瑕疵が存在し、瑕疵の程度も重大であることから、瑕疵のない法的状態を回復する必要性が高く、他方、本件承認から本件承認の取消しまでの期間が2年足らずであり、国がいまだ本体工事に着手していない状況であることからすれば、本日の沖縄県知事による本件承認の取消しは、法的に許容されるものである。当連合会は、国に対し、沖縄県知事の承認取消しという判断を尊重するよう求める。

PS(2015年12月6日追加):私は、*12-1の記事を見た時は、まるで子ども騙しのような返還だと思ったが、*12-2の記事で背景がよくわかると、やはりひどいと思う。また、「外交・防衛は国の専権事項」ということもよく言われるが、それはどういう法的根拠に基づいているのだろうか?日本国憲法には「外交・防衛は国の専権事項」という規定はなく、「民主主義」が定められており、地方自治体の納得と協力なくしては外交・防衛もできないのだから。

*12-1:http://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/
(新潟日報社説 2015年12月6日) 辺野古法廷闘争 民主主義が問われている
 問われているのは、基地移設の是非だけではなく、日本の民主主義である。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先、名護市辺野古の埋め立て承認を翁長(おなが)雄志(たけし)知事が取り消したのは違法として国が撤回を求めた「代執行訴訟」が始まった。国と県の異例の法廷闘争だ。翁長氏は「日本には本当に地方自治や民主主義は存在するのか。沖縄にのみ負担を強いる、今の日米安保体制は正常といえるのか。国民全てに問い掛けたい」と意見陳述した。沖縄県では昨年の各種選挙で辺野古移設反対の候補が当選した。戦後70年を経ても国土の0・6%の県土に在日米軍専用施設の74%が集中している。日米両政府は普天間飛行場の1%にも満たない約4ヘクタールを2017年度中に返還すると発表したが、根本的な解決には程遠い。翁長氏の言葉は、原告の国だけでなく、全国民に向けて発せられたものとして、私たちも重く受け止めなければならない。国側は「基地のありようにはさまざまな意見があるが、法廷は議論の場ではない」と主張した。「沖縄県の質問に丁寧に答え、前知事から承認をもらった」と手続き論を繰り返す戦術だろう。翁長氏の訴えに正面から向き合おうとする姿勢は見られなかった。そのかたくなな態度こそ、ここまで問題を深刻化させた原因なのだと自覚するべきだ。沖縄県は今回の訴訟で「移設強行は憲法に違反する」との新たな主張を加えた。助言した学者は「辺野古移設で住民は敷地内の通行ができなくなるなど、自治権が奪われる。憲法は自治権を制約する場合、そのルールを法制化するよう定めているが、政府はしていない」という。政府が必要な手順を踏まずに移設しようとしているとすれば、重大な問題である。国側は「国家存亡に関わることを知事が判断できるはずがない」とも述べた。確かに防衛は国の専権事項だ。だが、移設に伴って県民は事故や自然破壊など、さまざまな不利益を被る恐れがある。知事に判断する権限が全くないとはいえないはずである。国は基地の必要性などについて根拠を示し、県の疑問に十分に答えなければならない。裁判所はそれぞれの主張を尽くさせた上で、厳正に判断してもらいたい。県側が申請した稲嶺進名護市長ら8人の証人尋問を実施し、地元の声を直接聞くことは必要だ。県側は辺野古移設阻止に向け、今月中に国を相手に訴訟を起こす。二つの裁判が同時進行する、複雑な事態となる。訴訟で県側は、翁長氏による承認取り消しの効力を停止した国土交通相の決定を違法と訴え、取り消しを求める。同時に、判決を待たずに埋め立て工事を止めるため、国交相決定の効力を停止するよう裁判所に申し立てる方針だ。国は裁判中も工事を続ける考えだが、停止するのが筋である。

*12-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-183738.html
(琉球新報社説 2015年12月6日) 普天間0.8%返還 5年以内停止、全面返還を
 在沖米軍専用施設面積2万2370ヘクタールの0・031%(7ヘクタール)の返還。これが果たして「目に見える成果」(菅義偉官房長官)と言えるだろうか。菅官房長官とケネディ駐日米大使は首相官邸で会談し、キャンプ瑞慶覧インダストリアル・コリドー地区の一部共同使用と、米軍普天間飛行場の東側約4ヘクタール、牧港補給地区の国道58号と隣接する部分の約3ヘクタールについて、2017年度中の返還を目指すことに合意し、共同記者会見で発表した。官房長官と駐日米大使がそろって記者会見したのは、沖縄の基地負担軽減策に取り組む姿をアピールする狙いがあるとみられる。しかし普天間飛行場について言えば全体の0・8%の返還にすぎない。直接危険性除去につながるものではなく「針小棒大」のそしりは免れまい。5年以内の運用停止、全面返還こそ危険性除去だ。米軍普天間飛行場の東側沿いの土地4ヘクタールの返還は1990年6月の日米合同委員会で確認されていた。同じく早期返還を発表した牧港補給地区の国道58号沿いの土地約3ヘクタールも96年のSACO(日米特別行動委員会)合意で国道拡幅を目的に返還が合意されていた。いずれの米軍施設も主要幹線道路の渋滞緩和やアクセス道路確保のために地元自治体から早期の返還などが求められていた。返還は当然であり、本来なら20~25年前に解決すべき懸案事項だ。内容に目新しさはないのに、なぜこのタイミングの発表なのか。菅氏は会見で日本政府が米国と交渉した経緯を示し「宜野湾市が要望してきた」などと何度も述べ、宜野湾市の要望に応えたことを強調した。来年1月の宜野湾市長選挙をにらみ、現職を後押しする狙いがあるのだとすれば、政治の劣化でしかない。もう一つ。日米両政府の合意文の狙いは辺野古新基地建設を「唯一の解決策」と再確認した点だ。政治折衝とは本来、争点解決に向け努力することである。「唯一」という言葉を使うことは、「交渉する気がない」「思考停止」と言っているに等しい。沖縄に70年間も米軍基地を押し付けた上、代執行訴訟で知事を提訴してまで新基地建設を強行する。そして恩着せがましく細切れ返還の成果を強調する。これはもう翁長雄志知事が指摘する「政治の堕落」そのものだ。

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 03:39 PM | comments (x) | trackback (x) |

PAGE TOP ↑