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2016.10.2 良い人材がすべての基本だが、今、そのために足りないのは学力である。 (2016年10月4、6、7、11、18、30日に追加あり)
  
2016.2.10 2016.10.1goo   各国の削減目標      2016.9.30東京新聞(原発の現状)  
 朝日新聞                (日本は情けない)

   
2016.9.30  2016.9.30毎日新聞(公立学校の全国学力テストの結果)      上位県
 日経新聞

(1)無知と不見識による政策判断ミス
 *1-1のように、欧州連合(EU)は、2016年9月30日に「パリ協定」への締結を決め、インドも発効の条件を満たして締結する予定であるため、「パリ協定」は10月に発効する見込みだそうだ。日本は、(私の提案で)1997年に採択された京都議定書をまとめた国なのだが、その後、無知で不見識なバックラッシュによって環境政策は後戻りし、パリ協定もこの臨時国会でやっと審議する予定だ。つまり、形だけ決めても実行するまでに時間をかけることで形骸化させる政策によって、日本は存在感を示すどころか、日本とは関係なくパリ協定の発効が決まったのである。

 一方、*1-2のように、今世紀後半に温室効果ガス排出の「実質ゼロ」を目指すパリ協定を、米中は9月3日に締結し、「国際的信用にかかわる(ユンケル欧州委員長)」として欧州連合(EU)も、9月30日にEUと一部加盟国が先行締結する「例外的措置」を決めた。日本は、「締結は米中の動きを見てから」などと、いつものとおり他に遅れて初めてあわてて追随する姿勢であるため(これが官主主義の限界)、そのような国が意思決定に参加できずに蚊帳の外に置かれて存在感がなくなるのは当然のことなのである。

1)EVの例
 *2-1のように、欧州の自動車大手はディーゼル車から電気自動車(EV)へのシフトを強め、独フォルクスワーゲン(VW)は2016年9月29日に開幕したパリ国際自動車ショーで、1回の充電で最長600キロメートルを走れるコンセプト車を発表した。また、独ダイムラーはEV向け新ブランド「EQ」を立ち上げると表明し、第1弾として1回の充電で最長500キロメートルを走れるコンセプト車を公開した。

 しかし、トヨタをはじめ日本車はプラグインハイブリッド車(PHV)が中心で、電気だけで走れる距離は現行車の60キロメートルにすぎず、PHVはガソリン車でもあるため、EV車の長所を活かした設計ができない。また、日本では、電池の容量が小さいというEVに関する悪い宣伝が行き過ぎていたため電池の改良が進まず、次世代エコカーの本命を乗用車まで燃料電池車(FCV)とし、水素燃料の供給施設はコスト高で少なく、大いに出遅れている。そのため、科学的に正しい判断に基づいて迅速な行動をとる欧州勢が、先端技術の標準づくりをするのは当然のこととなる。

 EVへの転換も私の提案で始まったのでよく知っているのだが、EVへの転換の目的は新興国まで含めた排気ガスの抑制であり、それを燃費さえよければよいと考えて燃費規制(排ガス規制ではない)にした政治・行政や不正をしてまでディーゼルエンジンで乗り切ろうと考えた自動車会社は不見識だったのだ。

 なお、*2-2のように、北京モーターショーの会場もEVのオンパレードとなり、中国が日本企業を巻き込んで世界ナンバーワンのEV大国になる可能性が極めて高くなったそうだ。中国は、アメリカのZEV法(ゼロ・エミッション・ヴィークル規制法:排気ガス規制法)の中国版を作ったそうで、燃費規制ではなく排ガス規制があるべき規制であるため、これが世界に受け入れられるのは時間の問題だ。日本政府(経産省)や日本のメーカーは、自動車の排気ガスでいぶされて気分が悪くなっている人や排気ガスで汚れた道路をよく見るべきだったのである。

 また、三菱自動車は最初の燃料電池車を創ったにもかかわらず日の目を見ることなく、*2-3のように、燃費規制に合わせるため、ディーゼルエンジン車の燃費測定で不正を行っている。さらに、再測定でも不正があり、統計データのとり方すら知らない人が都合のよいデータを集めて結果を出しているのではないかと思われるほどだ。もしそうなら、統計学や数学などの基礎学力に問題がある。

2)エネルギーの例
 *3-1のように、他のエネルギー源と比較してコスト高で事故時の環境汚染が大きすぎる原発市場は世界でしぼむ。そのため、日立、東芝、三菱重工は核燃事業を統合することで調整している。
 
 にもかかわらず、*3-2のように、原発再稼働を進める経産省の意向を追い風に、国民負担を求めたい電力会社側の理屈で、内閣府の専門部会が議論を本格化させるとのことだ。そして、経団連でエネルギー対策を担当する加藤氏が、「原子力を積極的に推進してきたことに基づき、国の補償を求める」と述べたそうだが、原子力を推進していた時には、国民は「原発は安全でコストの安い夢の電源だ」と聞かされていたのだから、事実と異なる説明をして原子力を推進した者が正しい責任者である。

 なお、国は、東京電力福島第一原発の事故後に見直したエネルギー基本計画で、原子力を「重要なベースロード電源」と位置づけ、廃炉費用を電力自由化で新規参入した小売業者にも負担させる方針だ。しかし、これは、電力自由化を骨抜きにして原発より優れた電源が普及するのを邪魔し、新しい技術や新規企業の発展を阻害するやり方であって、経済学の基礎知識がなく、日本の再生可能エネルギーをEVと同じ運命にするものだ。

(2)教育における学力の軽視
 なぜ我が国で、(1)のような驚くべき判断が続くのかについては、書くと反感を感じる人がいるだろうが書かなければわからないので書くと、*4-3で代表されるように、全国学力テストをすることにさえ反対する人がいるくらい、学力を軽視しているからである(ただし、この程度の調査に数十億円かかるというのは、豊洲市場や東京オリンピックの経費と同様、高すぎる)。そのため、私は運動や芸術と同様、英・数・国・社・理くらいの「学力コンクール」はしばしばやるべきで、学校のみならず個人の上位者も氏名を発表して遣り甲斐を出すべきだと考える。何故なら、(1)で書いたことは、大学教養レベルの物理・数学・経済学の範囲内であり、これらがわかっていれば直ちに理解でき、わかっていなければ理解できないことだが、それを支えているのは小学校から高校までの学力だからだ。

 また、*4-1には、「①国語と算数・数学しかテストしていないこと」「②各地で学力の底上げが続いたという文科省の分析」「③国語では目的に応じて自分の考えを明確にしながら読んだり、根拠を示して書いたりする問題に課題があり、算数・数学でもグラフから情報を読み取って記述する問題などに間違いが目立った」と書かれている。

 しかし、①については、国語と算数・数学しかテストしないということは、国語と算数・数学しか重要科目として真剣に勉強していないということだろうが、それでは③のように自分の考えを明確にしながら読んだり、根拠を示して書いたりすることはバックグラウンドの知識がないためできないのが当たり前であり、グラフから情報を読み取って記述することもまた同じである。②は、その範囲では各地で頑張ったということなので、全国学力テストは無駄ではなかったということだ。

 なお、*4-2にも、やりとりや表現を理解する力や根拠を示して書く力などに引き続き課題が残ったと書かれているが、やりとりや表現を理解する力は国語だけの問題ではなく背景の知識が必要であり、根拠を示して書くことは(根拠にならないことを根拠のように書いているメディアも含めて)日本人の多くが不得意とすることだが、本来は普段から大人とのコミュニケーションの中で訓練されていくべきものである。

 そのような中、*4-4のように、沖縄県内の公立小学校は、国語A、算数Bの平均正答率が初めて全国平均を上回り、4教科全てで全国平均を超え、算数Aは、都道府県別で4位になったそうだ。公立中学校は、全教科の平均正答率で全国平均との差を縮め、国語Bは都道府県別で45位と、初めて最下位から抜け出すなどの改善傾向がうかがえたそうで、頑張ったことに敬意を表したい。

<政策における致命的な判断ミス>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12586084.html
(朝日新聞 2016年10月1日) パリ協定、来月発効 温暖化対策 EUが締結決定
 地球温暖化対策の新しい国際ルール「パリ協定」が11月に発効する。欧州連合(EU)が30日、環境相理事会で協定締結を決めた。3日に始まる欧州議会で承認する。インドも締結する予定で発効の条件を満たし、30日目に自動的に発効する。日本は開会中の臨時国会で審議する予定だが、日本を待たずに発効が決まった。協定は、すべての国が二酸化炭素(CO2)などの削減にとりくむことを定めた温暖化対策のルール。産業革命以降の気温上昇を2度未満に抑え、今世紀後半の温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にすることを目指す。55カ国以上が締結し、総排出量が全体の55%以上になることが発効の条件だった。国連によると、9月30日時点の締結国は米国や中国、ブラジル、北朝鮮など61カ国、排出量の割合は47・8%。EUは国内手続きを終えた加盟国とともに締結する。現時点では独仏など7カ国で排出量は4・6%、2日に締結する世界第4位の排出量国インドの4・1%を加えると排出量の条件を満たす。11月7日までに発効する可能性が高く、この日からモロッコで開かれる国連気候変動会議(COP22)で、パリ協定の第1回締約国会合が開かれ、実施ルールづくりなどを協議する。日本は温室効果ガス排出量が世界の約3・8%を占め、世界5位の排出国。5月にあったG7伊勢志摩サミットで議長国を務め、協定の年内発効を目指すことを首脳宣言に盛り込んだ。だが、締結の国内手続きが遅れており、存在感を示せていない。安倍晋三首相は29日、参院代表質問で協定締結について開会中の臨時国会で審議する方針を示したが、審議日程は決まっていない。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12585975.html
(朝日新聞 2016年10月1日) パリ協定、日本出遅れ 早期発効、審議追いつかず
 今世紀後半に温室効果ガス排出の「実質ゼロ」を目指すパリ協定が、11月に発効する。採択から1年足らずという国際条約としては異例の早さとなった。まだ締結できていない日本の存在感は薄れるばかりだ。1997年に採択された「京都議定書」は発効までに7年かかった。昨年12月に採択されたパリ協定は当初、各国の国内手続きと、実施ルール作りの時間を考えて、2018年ごろの発効が見込まれていた。しかし、世界の排出量の約38%を占める米中が9月3日に締結し、各国の動きが加速。欧州連合(EU)も、「国際的信用にかかわる」(ユンケル欧州委員長)として、30日にEUと一部の加盟国が先行締結する「例外的な措置」を決めた。国連のナバロ事務総長特別顧問は「各国が競っている。これだけ加盟国の多い協定では最速の発効だ」。パリ協定が、各国が自主目標に向けて対策を取る仕組みのため、先進国に削減目標を課して達成を義務づけた京都議定書よりも緩い枠組みだったことも、締結のハードルを下げた。「締結は米中の動きを見てから」と、承認案の審議を来年の通常国会で行う構えだった日本政府。想定外の早さに開会中の臨時国会に提出を前倒しするが、審議日程は決まっていない。早期発効で、11月7日に始まる国連気候変動会議(COP22)では、パリ協定の第1回締約国会合が開かれ、実施ルール作りを議論する。日本の締結が間に合わなければ、意思決定に参加できず、蚊帳の外に置かれる。

<EVの事例>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160930&ng=DGKKZO07807540Z20C16A9TI1000 (日経新聞 2016.9.30) VW、背水のEVシフト パリ自動車ショー開幕、排ガス不正/燃費規制強化 欧州、脱ディーゼルの波
 欧州自動車大手がディーゼル車から電気自動車(EV)へのシフトを強めている。先頭を行くのが排ガス不正問題で揺れた独フォルクスワーゲン(VW)だ。29日に開幕したパリ国際自動車ショーでは1回の充電で最長600キロメートルを走れるコンセプト車を発表。燃費規制強化も受け、背水の陣でEV開発を急ぐ。独ダイムラーなども同じ波に乗り、欧州発の新たなエコカー競争が始まる。「20世紀のベストセラーとなった『ビートル』や『ゴルフ』と同様、自動車産業に次の変革をもたらすモデルになる」。VWブランド乗用車部門トップのヘルベルト・ディース氏が会場で胸を張り、世界で初めて披露したのがコンセプトEV「I.D.」だ。開発中のEV専用プラットホーム(車台)「MEB」を採用し、2020年に生産を始める。電池など主要部品の配置を柔軟に組みかえられ、様々な派生モデルを造れる。部品共通化で量産効果を引き出し、「発売時にはゴルフ並みの価格に抑える」(ディース氏)。
●販売比率25%へ
 VWは25年までに30車種以上のEVを投入し、グループ年間販売台数に占めるEV比率を現状の1%から最大25%に引き上げる計画だ。かつてはクリーンディーゼルでエコカー競争を主導しようとしたが、1年前に発覚した排ガス試験の不正問題が歴史的な方針転換の引き金を引いた。だが欧州勢のEVシフトはVWにとどまらない。背景にあるのは燃費規制の強化だ。欧州連合(EU)は最も厳しく、21年に走行距離1キロメートルあたりの二酸化炭素(CO2)排出量を15年規制値より約3割減らす必要がある。三井物産戦略研究所の西野浩介産業調査第一室長は「ディーゼル車の進化だけで数値目標を達成するのは困難だ」と指摘する。
●新ブランド公開
 独ダイムラーはEV向け新ブランド「EQ」を立ち上げると表明。第1弾として1回の充電で最長500キロメートルを走れるコンセプト車を公開した。独オペルや仏ルノーも新型EVを披露した。欧州勢は部品生産や充電インフラの投資も急ぐ。ダイムラーは独化学大手と共同出資した電池企業を14年に完全子会社にし、今年3月には5億ユーロ(約570億円)で第2工場を建設することを決めた。ドイツではEV普及のために官民が折半出資で総額10億ユーロを拠出し、うち3億ユーロで17~20年に計1万5千カ所の充電スタンドを整備する。日本車大手は欧州でのEVシフトにやや距離を置く。トヨタ自動車が披露したのは今冬に日本で売り出すプラグインハイブリッド車(PHV)「プリウスPHV」。ガソリンを使わず電気だけで走れる距離は現行車の2倍強の60キロメートル。日常生活ではほぼEVとして利用できる点を訴えるが、純粋なEVとは異なる。そもそもトヨタ、ホンダは燃料電池車(FCV)を次世代エコカーの本命に据えている。「電動化」という点では一致するものの、水素をエネルギーとするためEVとは違うインフラが必要だ。欧州は現在、新車販売の約5割をディーゼル車が占めるが、次世代車はEV、PHV、FCVの三つどもえの競争となりそうだ。欧州勢は先端技術のデファクトスタンダード(事実上の標準)づくりにたけている。そのEVシフトのスピード感を甘く見ていると、日本車大手は思わぬ劣勢に立たされる可能性がある。

*2-2:http://autoc-one.jp/special/2695104/ (オートックワン 2016年5月3日)
電気自動車(EV)で日本の自動車メーカーが中国メーカーに負ける日が近い!?
●北京ショーが再びEVで大盛り上がり
 北京モーターショーの会場内は、EVのオンパレードになった。事態をよく呑み込めていない、口の悪い日本メディアは「どうせ、欧米や日本の技術のパクリでしょ」と嘲笑う。しかし、今回の中国でのEV盛況ぶりは、そんないい加減なものではない。それどころか、中国が日本企業を巻き込み世界ナンバーワンのEV大国にのし上がる可能性が極めて高くなってきた。「ちょっと、それって、言い過ぎじゃない?」と思われる方も多いかもしれない。だが、これが現実。筆者の個人的な観測ではなく、日系自動車メーカーの幹部や技術者たちの「本音」なのだ。中国でのEV事情を振り返ってみると、最初に盛り上がりを見せたのは2000年代後半だった。この頃は、中国は新興国のBRICs(ブラジル、ロシア、インド、チャイナ)の一角として、GDP(国民総生産)の伸び率が毎年二桁となる、急激な経済成長を続けていた。それに伴い、沿岸部の大都市圏を中心として、自動車の需要が急増。あと一歩で、アメリカを抜いて生産、販売それぞれで世界ナンバーワンの座につきそうな勢いだった。この時期、筆者は中国各地で日系や中国地場の自動車メーカーや部品メーカーを取材して回ったが、どこも「作っても作っても間に合わないほど売れる」と嬉しい悲鳴を上げ、工場の増設や新設が相次いでいた。
●中国が新EV政策でアメリカと手を組む?
 そうした国の成長を象徴するように、国際的なイベントが目白押しだった。2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博、そして同年に広州で開催されたアジア競技大会の3イベントで、中国政府は「新しい中国」のイメージアップを繰り広げた。その一環として、EVがあった。「十城千両」と呼ばれる施策によって、10の大都市でそれぞれ1000台以上のEVを数年間で普及させるとした。その後、対象の都市の数は25まで拡大した。北京オリンピックや上海万博では、電池交換式のEVバスが走り、広州にほど近い深センを本拠とするEVベンチャーのBYDが脚光を浴びた。しかし、「十城千両」は2013年頃、突如終わってしまった。その理由は、地方都市の官僚がEV普及の重要性をよく理解しておらず、EVに関する規制緩和や事務手続きで大幅な遅れが生じ、普及台数が伸び悩んだためと言われている。ところが、2014年秋になると、中国政府は何の前触れもなく、「新たなるEV政策」を発表。以前は、販売奨励金の対象が地方自治体や企業を中心としていたが、それを個人向けに拡大したのだ。さらに、「アメリカと手を組む」という大胆な行動に出た。これには、それまでEV技術で世界をリードしてきた日系自動車メーカーも強烈な衝撃を受けた。
●中国でついに始まる「NEV」ってなんだ?
 「アメリカと手を組んだ」とは、どういう意味か?それは、アメリカのZEV法の中国版を作ったということだ。ZEV法とは、ゼロ・エミッション・ヴィークル規制法。米カリフォルニア州の環境局による大気保全委員会(CARB)が規定する法律だ。カリフォルニア州は南部のロサンゼルス周辺の大気汚染が酷く、その改善策として、世界一厳しい排気ガス規制の一環として、1990年にZEV法を施行した。ここでは、EVやプラグインハイブリッド車、さらに燃料電池車などの電動車の普及台数を、同州内でガソリン車の販売台数の多い自動車メーカー毎に指定した。もし、この指定台数を達成できないと、各自動車メーカーのガソリン車の販売台数1台あたり、30万円程度と推測される巨額のペナルティが課せられる。こうした厳しいZEV法は、アメリカの他の州にも影響を与えている。自動車メーカーにとっては、アメリカは90年代~2000年代にかけて、世界ナンバーワンの自動車販売国。そのなかで、州別売上ランキングナンバーワンがカリフォルニア州だ。そのため、日系メーカーにとっても、EVや燃料電池車を開発する際、まずは「ZEV法ありき」で開発を進めてきたというのがEV開発の実態だ。そうした世界自動車産業の図式を、中国が参考にしたのだ。
●日本メーカーは当面は「プラグインハイブリッド」
 具体的にどうしたかというと、CARBに対する学術的なサポートをしている、カリフォリニア大学デービス校(UCD)に対して、中国の国立自動車研究所(CATARC)と一緒に中国版のZEV法を作って欲しいと、中国政府がアメリカ政府に持ち掛けたのだ。そうして生まれたのが、NEV法(ニュー・エネルギー・ヴィークル規制法)だ。そのNEV法が2016年に入って、具体的な内容が徐々に明らかになり、自動車メーカー各社は情報収集に躍起になっている。つまり、EVや燃料電池車などの電動車について、自動車メーカーが気にするのは、世界一の自動車製造・販売国の中国と、第二位のアメリカだ、ということ。この2国のみが、電動車の販売台数に対する厳しいペナルティを課すからだ。一方、日本の場合、こうした厳しい規定がない。あるのは、経済産業省が自動車産業界と連携してまとめた「次世代戦略2014」のなかで、ざっくりとした「達成目標」を提示しているだけだ。日本政府としては、自動車産業の自主性に任せるものであって、政府が強制的に指導するのは“いかがなものか”と「逃げ腰」である。そんな弱気の日本を尻目に、中国はアメリカとタッグを組んで、EVの本格普及に乗り出す構えだ。だが、日系メーカーの一部では「前回の十城千両で痛い目にあったから、少し様子を見たい」という声が聞かれる。 その結果として、日系メーカーは当面は「プラグインハイブリッド車止まり」の事業戦略しか公表していない。こんな弱腰で、本当に大丈夫なのか?気がつけば、EV産業界は中国とアメリカに牛耳られてしまうのではないのか?そんな強い危機感を、北京で感じた。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12586093.html (朝日新聞 2016年10月1日) 再発防止策を公表 三菱自燃費再測定不正
 三菱自動車は9月30日、燃費不正発覚後にデータを再測定した際にも不正があったと国から指摘された問題について、再発防止策を公表した。相次ぐ不祥事のたびに講じてきた再発防止策はうまくいかなかっただけに、資本業務提携を結んだ日産自動車の支援の下で、実効性を持たせられるかが問われる。三菱自の益子修会長兼社長が30日、国土交通省を訪れ、再発防止策を報告した。報告後、報道陣に「長い道のりだが、信頼を回復したい」と述べた。再測定をめぐる問題で8月末から販売を自粛していた8車種は10月1日から売り出す。三菱自は4月に軽自動車4車種の燃費不正が発覚した後、軽以外の9車種の燃費を再測定した。その際、法令の「グレーゾーン」を突く形で、有利な数値を選び出すプログラムを使って燃費を計算。その後、国交省の測定で、9車種のうち8車種で燃費がカタログより最大8・8%悪いことがわかり、国交省は「常軌を逸する事態」と批判した。三菱自は6月に23項目の再発防止策を公表したが、今回、8項目を追加した。不正の温床となった「開発本部」の見直しが柱で、開発本部の中間管理職を減らして風通しをよくし、燃費計算に使うプログラムの改訂に当たる専門委員会も新設することにした。三菱自は2000年、04年にリコール隠しが発覚。経営危機に陥り、三菱グループの資金支援で再建を図った。専門性の高い多くの技術者が退職し、組織が「たこつぼ化」した。燃費不正を受けて設けられた特別調査委員会は、こうした閉鎖性が「不正行為が法規に違反していることへの意識が極めて希薄」な企業文化を生んだと分析した。三菱自は10月、日産の出資を受けて傘下に入る。仏ルノーから送り込まれた日産のカルロス・ゴーン社長は、たこつぼ化した部門を横断するチームをつくって再建に成功した。経験を生かせるかが、再建のカギを握る。

<エネルギーの事例>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201609/CK2016093002000126.html (東京新聞 2016年9月30日) 世界でしぼむ原発市場 日立、東芝、三菱重が核燃事業統合へ
 日立製作所と東芝、三菱重工業の三社が原発の燃料製造事業を統合することで調整していることが二十九日、分かった。東京電力福島第一原発の事故の影響で国内の原発はほとんど稼働せず財務が悪化しており、来春を目指した統合で経費節減などを目指す。しかし、原発産業をめぐる経営環境は国内外で厳しさが増しており、狙い通りの効果を上げるのは難しい状況だ。統合を検討している三社は、日立、東芝、三菱重が直接出資する二社と、東芝傘下の米ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)などが出資する一社。安倍政権は原発の再稼働を急ぐが、国民負担を増やす議論が始まるなど矛盾や課題が山積している。安倍首相はインドやトルコなど海外に原発を売り込むが、原発産業は世界でも厳しさを増している。欧州ではドイツが脱原発の方針を決定。フランスは原発大手アレバが開発した原子炉に相次いでトラブルが発生し、二〇一五年度まで五年連続で純損益が赤字になり、政府が支援に乗り出している。英国は二酸化炭素(CO2)の排出を抑えるため原発の新設を決めたが、事業者の採算割れを防ぐため一キロワット時当たり一二・二一円(一ポンド=一三二円換算)の収入を保証する仕組みを導入。市場で取引される電力価格(一キロワット時当たり五・五円程度)の二倍を超え、足りない分は国民が負担する状態だ。米国では採掘困難な地層から石油や天然ガスが得られるようになったシェール革命で火力発電が安くなり、コストに劣る原発の廃炉が相次ぎ決まっている。新興国では原発の増加が見込まれている。だが、世界の原子力産業を調査する市民グループによると、中国では原発への投資額は再生可能エネルギーの二割弱。インドでも一二年以降、風力の発電量が原発を上回る傾向が続いている。加えて、原発には金銭以外のリスクもある。使い終わった核燃料など「核のごみ(高レベル放射性廃棄物)」は数万年におよぶ長期の管理が必要なため、民間企業は責任を負いきれず、各国とも処分に頭を悩ませている。名古屋大情報文化学部の高村ゆかり教授は「採算面や金銭に換算できないリスクがあるという側面を見ると、原発産業を民間ビジネスとして成り立たせるのは難しい」と話している。

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12587832.html
(朝日新聞 2016年10月2日) 原発事故、責任負うのは 事業者賠償に上限案
 原発事故の賠償責任を国民も負うべきか――。内閣府の専門部会が議論を本格化させる。背景には、原発再稼働を進める政権の意向を追い風に、国民にも負担を求めたい電力会社側の理屈がある。だが、事業者が「有限責任」になったら安全への意識が薄れ、対策が手薄になりかねないと指摘する専門家もいる。
■賛成派「国策、国も負担を」
 「原子力を積極的に推進してきたことに基づき、国の補償を求める」。5月の専門部会で、経団連でエネルギー対策を担当する加藤泰彦氏(三井造船会長)が述べた。オブザーバー参加の電気事業連合会も同調しつつ、自由化が進んで原発費用のすべてを電気料金でまかなえる総括原価方式がなくなったら、原発事故時の負担額を予測できない懸念を示した。これまで電力業界は「原発のコストは安い」と主張してきたが、賠償負担が重くなったらコストがどれだけ高くなるかの言及はなかった。国は、東京電力福島第一原発の事故後に見直したエネルギー基本計画で、原子力を「重要なベースロード電源」と位置づけた。いずれの意見も、これらを理由に国も事故の補償を担うべきだとの考えだ。部会では業界以外からも、テレビ番組のコメンテーターとしても知られる住田裕子弁護士が「(事業者への)絶大な許認可権限や監督権が国にはある。国の責任を一歩進めるべきだ」と主張。いまの原子力損害賠償法では国の援助があいまいで、具体化すべきだとの考えに立った。
■慎重派「安全おろそかに」
 ただ、事業者の有限責任化には慎重論も根強い。環境法や賠償制度に詳しい大塚直・早大教授は、無限責任の維持を強調した。国も負担する制度を採り入れると「安全に対する事業者の投資がおろそかになる可能性がある」というのが主張の柱だ。また、消費者団体役員の辰巳菊子氏は、原発事業について「利益はすべて事業者にいき、事故時だけ国に負担を求める話は納得しがたい」と指摘した。法曹界も有限責任に反対の立場だ。日本弁護士連合会は8月、賠償制度の見直しについて「そもそも(事故を起こすなどの)不法行為の法制度で賠償の責任が限定されることはない」とする意見書を公表した。事業者負担を限定すると、賠償制度が持つ「事故の再発を防ぐ機能」も失われるとしている。
■無限責任の原則、なし崩しの恐れ
 一方、福島の事故をみると、無限責任がなし崩しになる恐れがある。
 国は2013年度末、賠償や除染にかかる費用として、東電への貸し付けを5兆円から9兆円に増額した。しかし、その後も費用がかさみ、当面の廃炉費用を含めると計20兆円近くに膨らみそうだ。東電は7月、今後も増える廃炉費用を負担しきれないとして、国にさらなる支援を求めた。経済産業省も具体的に支援策の検討を始め、電力自由化で新規参入した小売業者にも負担を求める方針だ。全国の消費者の負担が重くなれば、福島事故が有限責任の先行例になり、賠償制度の見直しにも影響しかねない。
■原発事故の事業者責任の論点
<有限責任>
・事業者の安全意識が低下しないか
・過失度合いで負担額を決めると賠償手続きが煩雑化
・国の負担割合をあらかじめ決めるのは困難
・国民の理解が得られるか
<無限責任>
・現行の民間保険や政府補償では備えが過小
・事業者が巨額債務を抱える問題が残る
・国の援助のあり方

<教育―学力の軽視>
*4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160930&ng=DGKKASDG22H5H_Z20C16A9EA2000 (日経新聞 2016.9.30) 学力テスト、地域差縮小続く 下位県の成績向上 応用力に課題
 文部科学省は29日、全国の小学6年と中学3年を対象にした2016年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト、学テ)の結果を公表した。平均正答率で、下位自治体と全国平均や上位との差は初回だった07年度と比べて縮まっており、文科省は「各地で学力の底上げが続いた成果」と分析している。 今年4月、全国の国公私立の小中学校2万9千校に在籍する207万人が国語、算数・数学で受け、それぞれに知識を問うA問題と活用力を測るB問題が出題された。各回の全国平均を100として正答率が低い3県と比較したところ、07年度に3.7ポイントあった中学数学Bの差が今回は2.0ポイントに改善。上位と下位の差も縮まった。小学校の算数Bを除く小中7科目で07年度より数値が向上し、15年度と比べても5科目で改善した。平均正答率はこれまでと同様、B問題で低かった。国語では目的に応じて自分の考えを明確にしながら読んだり、根拠を示して書いたりする問題に課題があり、算数・数学でもグラフから情報を読み取って記述する問題などに間違いが目立った。都道府県別の平均正答率(公立)では、小学校の4科目のうち3科目で石川が最も高かった。中学では秋田と福井がそれぞれ2科目でトップとなり、上位の顔ぶれは例年と大きく変わらなかった。低迷が続いていた沖縄は、初めて小学校の全科目で全国平均を上回った。学テは教育委員会や学校現場が結果から子供の課題を把握し、指導改善につなげることを目的に07年度に始まり、今回で10年目。当初は全員参加方式で民主党政権下に抽出方式となり、自民党の政権復帰に伴い13年度から全員参加に戻った。全員参加は今回で4年連続だが、今年4月の熊本地震の影響で熊本県の全小中学校と宮崎、大分両県の一部は後日実施となり、結果は全国集計に反映されなかった。文科省は当初8月25日に今回の結果を公表する予定だったが、中学校分の採点などを受託した業者の集計にミスがあり公表が1カ月以上遅れた。

*4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160930&ng=DGKKZO07808290Z20C16A9M13300 (日経新聞 2016.9.30) 「深い学び」なお途上 小6・中3学力テスト結果
 2016年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト、学テ)は基礎知識の定着に一定の改善がみられたものの、やりとりや表現を理解する力や根拠を示して書く力などに引き続き課題が残った。次期学習指導要領で掲げられる「深い学び」の実践に向け、各教科の専門家からは指導のさらなる工夫を求める声が上がっている。

*4-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161002&ng=DGKKZO07902070S6A001C1PE8000 (日経新聞社説 2016.10.2) 学力テスト10年の総括を
 年中行事のように漫然と続けるのではなく、その功罪を総括して今後のあり方を考えるべきだ。導入から10年目を迎えた全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)のことである。調査は小学校6年生と中学校3年生を対象に、文部科学省が2007年度から始めた。国語、算数・数学は毎年実施。12年度からは理科が3年に1度行われ、19年度をめどに中3の英語も加わる。民主党政権下の一時期は抽出調査だったが、基本的には「毎年・全員参加」で調査は繰り返されてきた。学習成果の検証を通して授業改革や制度見直しに役立てるのが大きな目的だという。小6、中3の子どもの大半が取り組むテストを続けてきたことで詳細な学力データが積み重なり、学校での指導に生かす試みが広がってきたのは確かである。学力と家庭状況との関連もくっきり浮かび上がっている。そうした意義は理解できるが、だからといって数十億円もの費用をかけた悉皆(しっかい)調査が本当に毎年必要かどうか、当初からの疑問は拭えていない。「基礎的な知識は身についているが応用力には不十分」といった調査結果が示す課題は、毎年ほとんど同じだ。先日公表された今年度のテスト結果をみても、同様の傾向が浮かび上がっている。調査の本来の目的である全体的な学力傾向を把握するには抽出調査でこと足りよう。全数調査を実施するにしても数年に1度にする手もあるはずだ。実際に理科は3年に1度の実施である。「毎年・全員参加」の大きな弊害は、過去問題を勉強させるなど「学力コンクール」化が止まらないことである。このため文科省は今回から、都道府県別の平均正答率について表向きは小数点以下の数値を四捨五入して示した。弥縫(びほう)策を講じるよりも、この10年を検証して制度を見直すのが本筋だろう。このままでは走り出したら止まらない公共事業と同じではないか。

*4-4:http://ryukyushimpo.jp/news/entry-366771.html
(琉球新報 2016年9月30日) 小6 全教科平均超え 全国学力テスト 中3も差縮める
 全国学力テスト全国学力・学習状況調査文部科学省  文部科学省は29日、小学6年生と中学3年生を対象に4月19日に実施した2016年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表した。県内の公立小学校は、国語A、算数Bの平均正答率が初めて全国平均を上回り、4教科全てで全国平均を超えた。算数Aは、都道府県別で4位となった。県内公立中学校は、全教科の平均正答率で全国平均との差を縮め、国語Bは都道府県別で45位と、初めて最下位から抜け出すなど改善傾向がうかがえる。県内小学校の平均正答率は、国語Aが73・4%(全国平均72・9%)で、都道府県別では21位。国語Bは58・1%(同57・8%)で21位。算数Aは80・7%(同77・6%)で4位。算数Bは47・7%(同47・2%)で11位だった。前年度の平均正答率と比べると、国語Aで4・1ポイント、算数Aで3・0ポイント、算数Bで3・0ポイント上がった。国語Bは9・2ポイント下がった。県内中学校の平均正答率は、国語A71・3%(同75・6%)、国語B63・1%(同66・5%)、数学A54・3%(同62・2%)、数学B37・0%(同44・1%)。全国平均との差は国語Aでマイナス4・3ポイント(前年度マイナス5・8ポイント)、国語Bがマイナス3・4ポイント(同マイナス4・5ポイント)、数学Aでマイナス7・9ポイント(同マイナス8・6ポイント)、数学Bがマイナス7・1ポイント(同マイナス7・6ポイント)と、いずれも差を縮めた。都道府県別の平均正答率は国語Bが45位、残り3教科は最下位だった。前年度の平均正答率と比べると国語Aで1・3ポイント、国語Bで1・8ポイント、数学Bで3ポイント上昇した。数学Aは1・5ポイント減だった。今回の調査には、県内の公立小学校260校1万5109人、公立中学校147校1万4751人が参加した。熊本地震の影響により4月19日の実施を見送った熊本県の全小中学校と宮崎、大分両県の一部学校は結果集計を見送った。


<人材育成のための教育環境整備>
PS(2016年10月4日):東京都は、オリンピックや豊洲市場に相場以上の金をかけているが、*5-1のように、人材を育てる教育施設(保育・公教育・学童保育を含む)の整備は疎かで、未だに待機児童が多い上、現在の施設は子どもの居場所として質が悪すぎる。そのため、私は、0~2歳児を保育の対象とし、3歳児以上は義務教育として小学校で教育しながら育てるのが、今後の人材育成のためによいと考える。なお、保育の質は、佐賀県の*5-2の事例のように、居場所としての施設もケアの内容も工夫されている質の良い保育園ができている反面、東京都は、*5-3のようにその両方が欠けている。そして、オリンピックなどの一時的なイベントで相場以上の予算をかけて無駄遣いするよりも、教育施設を整備する方がよほど重要であり、将来への投資になるにもかかわらず、このような予算の使い方になる理由が最も重要な問題なのである。

 
       豊洲市場の建設費              オリンピック会場建設費の国際及び国内比較上
      2016.9.16朝日新聞                               2015.7.10Yahoo  

*5-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201607/CK2016072002000135.html (東京新聞 2016年7月20日) 都内の待機児童8466人 減少から再び増加
 東京都内で認可保育所に入れず、行政のほかの保育サービスでも預け先が見つからない待機児童は、今年四月一日時点で前年より六百五十二人増え、八千四百六十六人に上ることが分かった。現行基準で統計を取り始めた二〇〇二年以降、最多だった一四年(八千六百七十二人)に次ぐ多さ。都が十九日、各区市町村の集計を基に発表した。都によると、四月現在で認可保育所は前年より百五十八カ所増え、定員も一万三千六百三十五人増の二十三万三百三十四人だった。前年は減少した待機児童数が再び増加したことは、施設整備などの対策が、保育ニーズの伸びに追いついていないことを示している。都は主な要因として、人口増加や共働き家庭が増えていることを挙げる。認可保育所などの利用申込者数は二十六万三千五百十八人で、就学前児童人口に占める割合が41・3%と、初めて四割を超えた。認可以外も含めた保育サービスを利用する児童数は、前年より一万四千百九十二人増え、二十六万千七百五人で過去最多だった。年齢別の待機児童数は一歳児が四千四百四十七人と最も多く、ゼロ歳児が二千七十二人、二歳児が千四百八十五人と続く。区市町村別では、世田谷区の千百九十八人が最多。続いて江戸川区の三百九十七人、板橋区の三百七十六人。前年からの待機児童の増加数が大きかったのは、中央区の百四十四人、荒川区の百十六人、江東区の百十人の順だった。待機児童 保護者の仕事や病気で、認可保育施設に入れる条件を満たしているのに、定員超過などで入所できない乳幼児のこと。都市部に集中し、0~2歳児が多い。昨年4月時点で2万3000人を上回り、5年ぶりに増加した。保護者が育児休業中などの理由で、自治体が計上していない潜在的な待機児童はさらに約6万人いる。用地不足などで施設整備が追い付かず、保育士の確保も課題となっている。

*5-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/359511 (佐賀新聞 2016年9月25日) 待機児童問題改善へ 保育園起工式、定員75人
 人口増加が続き、保育所の入所待ちをする「待機児童」が県内で最も多い鳥栖市で23日、保育所の起工式があった。社会福祉法人健翔会(門司健理事長)が同市田代本町に建設する「あいりす保育園」で、定員は75人。鳥栖市内では来春までにあと2保育所の建設が予定されており、待機児童問題の改善を目指す。あいりす保育園は敷地面積3300平方メートルに、木のぬくもりが感じられる木造平屋建て園舎(建物面積740平方メートル)を建設し、園庭810平方メートルなどを整備する。園舎には未就園の子どもと保護者の交流の場となる子育て支援センターや学童保育を併設する。総事業費は2億3千万円。式には市や福祉、園の関係者らが出席した。門司理事長(83)は「100年先を見るとまず教育が大事になる。教育と保育の両方に力を入れ、たくましい子どもを育てたい」とあいさつした。同法人はすでにレインボー保育園(同市桜町)と虹の子保育園(同市古野町)を運営しており、今回が3園目になる。建設地に隣接して同法人のデイサービス施設やケアハウスがあり、利用者のお年寄りや地元と交流を図りながら運営する。同園では今後、保育士の確保を急ぐ。市によると、今春の待機児童は5人で、希望の保育所に入れないなどの理由による「隠れ待機児童」は約180人とみている。あいりす保育園の他に、来春までに鳥栖西中校区に定員71人と80人の保育所が建設され、市内の定員は226人増える予定。

*5-3:http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/243476.html
(NHK 2016年4月22日) 日本総研 主任研究員 池本 美香
 保育園に落ちたというブログが国会で取り上げられたことをきっかけに、待機児童問題がこれまでになく注目を集めています。待機児童数は7年連続で2万人を超えています。政府は2001年に「待機児童ゼロ」を打ち出し、この10年で保育所の定員は50万人も増えました。しかし、それ以上に、共働きや一人親など、保育所を必要とする子どもが増えています。政府は先月末、緊急的な待機児童解消策を打ち出しましたが、その内容は、国の基準より手厚い保育を行っている自治体に、基準を緩和して一人でも多く子どもを受け入れるよう要請する、といったもので、安全の確保や活動の豊かさといった「質」の低下が懸念されています。ただでさえ、短期間に保育所を増やしてきたため、現場では経験の浅い保育士が増えていて、保育士による虐待や保育所での死亡事故など、深刻な事例も報道されています。毎年10数人の子どもが保育施設で亡くなっており、この10年間に死亡した子どもはあわせて150人近くに上っています。特に国や自治体が認可も補助もしていない認可外保育施設において、死亡事故が多くなっています。私自身も5年前に息子が待機児童となり、認可外保育施設に預けるしかなく、その質が本当に心配でした。その後認可保育所に入ることができましたが、階段から落ちて頭を打ったり、アレルギーのある食材を食べてじんましんがでたりと、認可保育所なら安心というわけではありません。認可保育所でも、治療に要する期間が30日以上の重篤な事故が、昨年4月から12月の間に342件も報告されています。保育所に入れても、その質に不安があれば、親は安心して働けません。入れる保育所があっても、預ける気になれないと職場復帰をあきらめる人もいます。待機児童問題については、量の拡大だけでなく、保育の「質」の維持、向上に向けた検討が不可欠です。海外ではすでに、保育の質を確保するための取り組みが活発化しています。その背景には2つのきっかけがあります。一つは、国連で子どもの権利条約が採択されたこと、もう一つはノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のヘックマン教授が「保育への投資はリターンが大きい」という研究結果を出したことです。一つ目の子どもの権利条約は、安全・安心に加え、教育、遊びやレクリエーション、意見表明など、子どもに幅広い権利を認めるものです。海外ではこの条約に沿って政策が検討されているため、保育政策についても「働く親が子どもを預ける場所があるか」ではなく、まず「保育が子どもにとってふさわしいものとなっているか」が検討されます。すべての乳幼児に質の高い教育を保障するという観点から、保育所を学校と同列の教育機関と位置づけ、学校を担当する省庁が保育所を所管する国も増えています。親の仕事の有無にかかわらず、すべての子どもに保育所を利用する権利があり、親の所得にかかわらず利用できるように、幼児教育の無償化を進める国もあります。保育の質が重視されることとなったもう一つのきっかけは、幼児期の教育の質が、学校教育の効率性を左右するというヘックマン教授の研究です。質の高い幼児教育を受けた子どもは、その後の学力が高いことや、成人したあとの所得が高いことなどがわかりました。これは幼児教育を通じて意欲や自尊心、創造性などの非認知能力が高まるためだと考えられています。成人になってから事後的に補助するよりも、予防的に幼児期に投資する方が、財政への負担が少ないと考えられるようになっています。ヘックマン教授の研究を背景に、海外では保育の質向上のための財源の確保に国民の合意が得られ、幼児教育への公的投資が増えています。では、具体的に、海外ではどのようにして保育の質を確保しているのでしょうか。日本ではあまり検討されていない取り組みを3つご紹介します。第一に、保育士の処遇です。日本の保育士の平均賃金(認可保育所の保育士の約3分の1を占める公立保育所を除く)は、小学校教員の7割弱と少なく、月額で10万円以上も差があります。全産業平均と比べても、大きく下回っています。これに対して海外では、保育士も教育者としての専門性や、子どもの安全に対する責任といった高度な役割を果たしているとみなされ、幼児期と小学校で教員の賃金格差が小さくなっています。こうした高度な役割を果たせる保育士の育成に向けて、保育士に免許の更新を義務付けたり、保育士養成校の質をチェックする国もあります。第二に、園の運営についての評価です。日本では国が自治体に対して、年に一度は園を訪問して質をチェックするよう求めていますが、施設数が急増している自治体では数年に一度の訪問しか行われていません。外部の専門家による第三者評価も、義務付けではないため、2013年度に第三者評価を受けた保育所は5%にすぎません。これに対して海外では、国の評価機関が全国すべての施設を定期的に訪問して評価し、その結果をホームページで一元的に公表する取り組みがあります。たとえばイギリスでは、すべての園の評価レポートがホームページに掲載されていて、親にとって、保育所選びの際の貴重な情報源となっています。全国の園の評価結果が国に集約されるため、全国の保育の質の変化や地域別の状況も把握でき、政策の見直しにも役立ちます。好事例もホームページで紹介されるので、各園がそれを見て自らの運営の改善を図ることもできます。第三に、親の参画です。海外では、国の評価機関による訪問だけで質を確保することは難しいため、保育の質にもっとも関心が高い親に、日常的に保育の質をチェックしてもらうという考え方が見られます。親の役割として、気になることがあればすぐに園と相談すること、それでも気になることがあれば、自治体や評価機関に伝えることが期待されています。親の代表と職員の代表が定期的に集まる運営委員会を、すべての園に設置するよう求め、親の意見やアイディアを質の向上に活かそうとする国もあります。さらには、保育士不足や財源不足を補うために、親が交替で保育士の補助をしたり、大掃除や施設の修繕を親たちで行う例もあります。こうした親の参画は、親同士が親しくなるきっかけにもなっています。日本は保育の質を、保育士の努力だけで確保しようとする傾向も見られますが、海外の動向をふまえれば、保育の質を高めるためには、保育士の養成の在り方や賃金水準を見直すことが必要です。さらには、実質的に子どもにふさわしい保育が提供されているか、外部の専門家による評価をすべての園に義務付けることや、保育の質の向上に親の力を積極的に活かすことも期待されます。海外では、保育を子どもにとってふさわしいものとするために、実にきめ細かな配慮が見られます。保育士を採用する際に、過去の犯罪歴などをチェックすることが、多くの国で義務付けられています。園の活動に対して、子どもが意見を表明する権利を、法律に記載する国まであります。財源の制約から質の話を後回しにして、目先の待機児童解消に取り組むより、より長期的な視野を持って、子どもの権利や効果的な公的投資の視点から、すべての子どもに質の高い保育を保障する方向に、舵を切ることが求められます。また、その方がむしろ、財源確保に向けた合意を得やすいという面もあると思います。


PS(2016年10月6日追加):*6-1のような化学メーカーで出る水素の活用はよいが、*6-2の三菱重工MRJの5度目の納入延期は情けない。そして、ライバルはブラジルのエンブラエル社だそうだが、三菱重工がMRJを水素燃料で設計していればonly oneであり、他国の飛行機と同列の競争をせず引っ張りだこになった筈である。現在の飛行機は大量の排気ガスと大きな騒音を出すため、これを出さない燃料電池飛行機を作れば競争の土俵が変わったのだが、技術力だけでなく先見の明もないのだろう。

*6-1:http://qbiz.jp/article/95324/1/ (西日本新聞 2016年10月6日) 水素活用へ実証実験 山口・下関市、化学メーカーと連携
 山口県下関市は本年度から、同県周南市の化学メーカーや同市、県などと連携し、水素を使った燃料電池自動車などの実証実験「低炭素水素技術実証事業」に取り組む。年末までに下関水産会館跡地(下関市大和町)に簡易型水素供給設備(水素ステーション)の設置工事に着手し、2017〜19年度に実証実験を実施する予定。市環境政策課によると、周南市の化学メーカー「トクヤマ」「東ソー」などから発生する未利用分で高純度の水素を液化し、下関市内に輸送。水素ステーションに貯蔵し、市の燃料電池車や、下関漁港内のフォークリフト用に使用。純水素型燃料電池にも水素を供給し、漁港内の入浴施設や食堂にも活用する。環境省の委託事業で事業費は15億円で、このうち市の負担は約3億円。市環境政策課は「水素社会の到来を見据え、温室効果ガス削減とエネルギー問題を同時に解決できる水素技術の普及に向けて、取り組みを進めたい」としている。

*6-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161005-00000004-wordleaf-bus_all (Yahoo 2016年10月6日) 三菱重工のMRJが5度目の納入延期になる公算、プロジェクトは大丈夫?
 初の国産ジェット旅客機である三菱重工のMRJが5度目の納入延期になる公算が高まってきました。これ以上、納入が遅れると、収益面でかなり厳しい状況に追い込まれます。MRJのプロジェクトは大丈夫なのでしょうか。
●5度目の納入延期を検討
 三菱重工の航空機製造子会社である三菱航空機は、MRJについて5度目の納入延期を検討しています。当初は2013年の納入を目標としていましたが、初飛行の前に3回ほど開発スケジュールが延長され、初飛行に成功した2015年11月時点では2017年の納入を目指していました。しかし、開発スケジュールはさらに遅れ、その後は2018年半ばをメドに開発を進めてきました。2016年8月には、米国での試験飛行のため日本を飛び立った同機が空調システムの不具合などで2度日本に引き返すというトラブルが発生。3度目のトライでようやく米国への移送を完了しています。MRJは今後、機体の型式証明を取得するため、累計で2500時間に及ぶ飛行試験を実施する必要があります。この試験をクリアすれば、晴れて2018年半ばの納入にこぎ着けることができたはずなのですが、今度は別の問題が浮上してきました。量産に際して設計変更が必要なことが明らかとなり、開発スケジュールがさらに伸びる可能性が出てきたのです。
●ライバルはブラジル・エンブラエル社
 新しい航空機を開発するにあたってトラブルはつきものであり、何度も遅延すること自体に問題があるわけではありません。しかしビジネスにおける収益面を考えるとそうも言っていられません。MRJの開発費は当初1800億円程度を見込んでいましたが、金額は大幅に膨らみ、現在では4000億円に達しているともいわれています。MRJの現時点における目標販売数は1000機となっており、仮予約を含めても約400機の受注しか取れていません。1000機を販売することができても収益的には厳しいといわれていますから、受注がこれ以上伸びないという状況になった場合には、かなりの赤字を覚悟する必要も出てきます。スケジュールが遅れることの最大の問題は、ライバルであるブラジル・エンブラエル社の最新鋭機納入のタイミングが刻々と近づいていることです。同社はMRJの競合となる機体の納入を2020年に開始する予定ですが、MRJはエンブラエルより2年納入が早いことがセールスポイントでした。しかし、このアドバンテージがなくなってしまうと、MRJはエンブラエルと直接戦わなければなりません。エンブラエルは新規参入の三菱と異なり、豊富な納入実績がありますから、直接、競合するという状況になった場合には、三菱の苦戦が予想されます。三菱重工の経営陣は、当初から黒字化には10年かかるとの見通しを示しています。5度目の納入延期となった場合には、さらに長期戦を強いられることになります。


PS(2016/10/7追加):東京オリンピックと同様、*7の大阪万博にも呆れてモノが言えない。何故なら、日本(特に東京、大阪)は、施設が整っておらず外国での認知度も低い開発途上国ではないため、このようなイベントで無駄遣いをし、国民をないがしろにして国威発揚すべき段階ではなく、本物の豊かさを実現していく段階だからだ。また、東京オリンピックと大阪万博の組み合わせも50年前と同じことの繰り返しで呆れる。そのうち、江戸時代や明治維新をもう一度やろうということになるのではないか?

*7:http://www.nikkei.com/article/DGXLASHC21H7F_R20C16A9AC8000/
(日経新聞 2016/9/22) 大阪万博へ100ヘクタール確保 府・市、夢洲集約を正式決定
 大阪府が2025年の誘致を目指す国際博覧会(万博)の会場候補地について、府と大阪市は21日、人工島の夢洲(ゆめしま、大阪市此花区)に集約すると正式に決めた。埋め立て済み用地のほか、西側の廃棄物埋立処分場などを活用し会場に必要とされる100ヘクタールを確保。府・市が誘致するカジノを含むIR(統合型リゾート)用地も最大70ヘクタール生み出せるとした。現在は工事が進んでいない南側の約100ヘクタールについては、IRの進出動向をにらみ最大30ヘクタール程度埋め立て可能とした。目標とする3千万人の来場者を会場に輸送するため、大阪市営地下鉄中央線の延伸を開催に間に合わせる。シャトルバスなどの往来のため、夢洲に渡る橋も拡幅する。松井一郎府知事は方針決定後、記者団に「エンターテインメントを柱に大阪のにぎわいを実現できる」と強調。吉村洋文市長は「万博とIRで相乗効果が出せるようにしたい」と話した。


PS(2016年10月7日追加):道路際の住民や車に乗っている人は、もともと車両通行時の騒音や振動に悩まされてきたため、*8のように、せっかく静かに走れるようになったEV・HVに「車両接近通報装置」の設置を義務付ける規制は全く愚かで、日本でしか通用しないガラパゴス規制になるだろう。障害者・高齢者・一般人及び自転車が事故に巻き込まれないようにするためには、①道を広くして歩道・自転車道を設置する ②車に自動停止装置を付ける ③車の運転者が気をつける などが有効で、日本の街づくりにおける道路計画のなさは、国土交通省及び地方自治体の思考停止に依るところが大きい。

*8:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/364063
(佐賀新聞 2016年10月7日) HV接近音、装置義務付け、18年以降の新型車対象
 国土交通省は7日、道路運送車両法の保安基準を改正し、走行音が静かなハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の接近を歩行者に音で知らせる「車両接近通報装置」について、2018年3月以降の新型車への設置を義務付けた。視覚障害者やお年寄りが接近に気付かず、事故に巻き込まれるケースがあるためで、現在は認められている通報音の停止機能も禁止する。現在販売されている車種は、20年10月から適用する。中古車は対象外となる。通報装置は、市販されているHVやEVに標準装備されているが、メーカーごとに音量や音質が異なり、歩行者に分かりづらいといった問題もあった。


PS(2016年10月11日追加):いつものとおり廻りを見てバスに乗り遅れないようにあわてて行動するパターンで遅れ馳せだが、*9のように、「パリ協定」の批准案を閣議決定したのはよかった。今後は、これに沿って自然エネルギーによるCO2削減計画を作ることが必要で、乗り物は速やかに電動か燃料電池に変えれば、環境と資源の課題が同時に解決する。例えば、2020年の東京オリンピック開催時以降は、東京23区内などの都市部はEVか燃料電池車しか走らせないようにする思いきった施策を行えば、大きくCO2を削減でき、都市のヒートアイランド現象を緩和でき、次の技術に繋がって、景気もよくなる。

*9:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/364925
(佐賀新聞 2016年10月11日) パリ協定批准を閣議決定、国会審議で承認目指す
 政府は11日、地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」の批准案を閣議決定した。近く国会提出し、衆参両院の承認を得て、モロッコで国連の気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)が始まる11月7日までの批准を目指す。ただ環太平洋連携協定(TPP)を巡る与野党攻防のあおりを受けて審議が後回しになる懸念もある。パリ協定はすでに米国や中国、欧州連合(EU)諸国、カナダ、ブラジルなどが批准。批准55カ国以上、世界の温室効果ガス排出量に占める比率が55%以上という発効要件をクリアし、11月4日の発効が決まっている。


<太陽光発電の例>
PS(2016.10.18追加):太陽光発電の開発も、公認会計士の携帯品であるシャープの電卓をヒントに、私が経産省に提案して1995年頃に始まったもので、一直線に進んでいれば日本がトップになって多くの特許を得ていた筈だが、日本では太陽光発電に対するいちゃもんや妨害が多くて進展せず、シャープは鴻海に買収され、パナソニックも、*10-1のように国内不振を補うために米テスラと共同生産して海外に活路を見出すこととなった。これにより、日本発の技術も中国とアメリカで発展することになったが、こういうことの積み重ねが日本企業の利益率を低くし、イノベーションによる経済発展を邪魔しているのだ。
 こうなる理由は、政治・行政・経営・メディアに多い文系の人材が科学に弱すぎる上、私がこのようなことを書くと「女のくせに謙虚でなく生意気だから、あいつの言うことは絶対やらない」と考える人が少なからずいることで、このように科学的でも公正でもない判断基準で物事を決める人がリーダーになっていることが重大な問題なのである。そのため、文系学部も大学入試や大学教育において、数学・物理学・化学・生物学をはじめとする科学の科目を増やすことが、有能なリーダーを育成するにあたって必要不可欠だ。
 なお、*10-2のように、インドネシアでは、新エネ振興補助金は既存の電力会社ではなく政府が出しており、来年も継続する方針だそうで、インドネシアの方が着実に新エネルギーが伸びそうだ。

*10-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161018&ng=DGKKZO08478550X11C16A0TJC000 (日経新聞 2016.10.18) 太陽光パネル、海外に活路  パナソニック、米テスラと共同生産 販売網活用、国内不振補う
 パナソニックが太陽電池事業の立て直しを目指し、電気自動車(EV)メーカーの米テスラモーターズと協業することが17日分かった。2017年にも米国で太陽光パネルを共同生産する方針だ。テスラが買収予定の米住宅用太陽光パネル最大手、ソーラーシティの全米に広がる販売網を活用する。海外に活路を求め、販売減が続く国内を補う狙いだ。協業はテスラが同日発表した。テスラが買収を公表しているソーラーシティが建設中の工場(ニューヨーク州)で、パナソニックが開発した太陽光パネルを生産するほか、生産技術の指導などでも協力する見通し。投資額は数百億円に上るもようだが、パナソニックはその一部も負担するとみられる。17年の生産開始を目指す。パナソニックにとってテスラグループの販路を使って太陽光パネルを拡販できる利点がある。パナソニックは16年度の海外での販売量を前年度の約2倍の10万キロワットと全販売量の2割にまで引き上げる目標を掲げる。米国では太陽光パネルの販売代理店と相次いで提携している。背景には国内での不振がある。パナソニックが住宅向けでシェア首位に立つ国内市場は、太陽光発電の買い取り価格の下落で市況が悪化。同社の太陽電池を含むエネルギー事業の15年度の売上高は14年度比11%減の3671億円に落ち込んだ。1~8月の太陽電池事業の売上高も前年同期比4~5割減ったもようだ。販売減は生産にも影を落とす。16年2月から稼働を停止する二色の浜工場(大阪府貝塚市)は今秋の再開を予定していたが、来春にずれこみそうだ。海外市場の開拓が不可欠の中、太陽光発電事業に注力するテスラとの協業はパナソニックにとって設備投資の資金負担などが見込まれ、リスクを抱える面もあるが起爆剤となる可能性もある。両社はEVに使うリチウムイオン電池の工場も共同建設しており、11月にも量産を始める予定だ。テスラの新型車の受注が好調で、投資計画を前倒しにするなど、関係は深い。

*10-2:http://qbiz.jp/article/96151/1/
(西日本新聞 2016年10月18日) インドネシア 新エネ振興補助金、政府は来年も継続方針
 インドネシアのエネルギー・鉱物資源省は、新・再生可能エネルギー振興に向けた補助金の拠出を来年も継続する方針を固めた。補助金額は、約1兆1,000億ルピア(約88億2,600万円)。17日付インベストール・デイリーが伝えた。同省新・再生可能エネルギー局のリダ局長は、補助金には新・再生可能エネルギーの買い取り価格と国営電力PLNの電力生産コストとの差額分を補うことで、PLNによる買い取りを促進する重要な目的があると説明。国会は先に、企業に対する支援は補助金にふさわしくないとして却下する方針を示していた。国会第7委員会(エネルギー鉱物資源関連)との会合では、同補助金を通常の電力補助金と合算することにも同意し、合算しない場合でも同補助金の運用はPLNが行うことを確認した。同補助金の内訳は、小水力発電が5,200億ルピア(電力供給量30万2,420キロワット)、太陽光発電が2,050億ルピア(12万5,000キロワット)、バイオマス発電が3,020億ルピア(4万2,800キロワット)、バイオガス発電が383億ルピア(6,200キロワット)、ごみ焼却発電が77億ルピア(1,600キロワット)となっている。リダ局長は、今月25日付で電力価格と太陽光発電事業入札に関するエネ鉱相令『16年第19号』を公布する予定と表明。同相令の公布後に、全国で発電容量が合計25万キロワットとなる太陽光発電事業の入札を実施する計画とした。


PS(2016.10.30追加):*11に、都道府県立などの公立中高一貫校で学年を超えた前倒し学習などの学力対策が広がっており、約6割が中学で高校の学習内容を教え、進学率も一般の公立高より高いそうでよいことである。何故なら、私立の進学校は前からそうで、東大の場合、入学する時に東大教養レベルの知識を持っている人も少なくなく、授業料の高い私立でなければそれができないとすれば、経済的事情で進学の可能性が左右されたり、男女別学しかなかったり、中高一貫の私立校がない地方の生徒は不利になったりするからだ。しかし、そのように勉強すると「“ゆとり”ある楽しい学校生活ができない」と主張する人もいる。私は経験があるが、そのように勉強しても読書・習い事・遊び・スポーツなどをする時間は十分あり、暇の多い時期から必要な学識を身につけ始めることで、むしろゆとりを持って学ぶことができ、さらに大人になって使用する考え方や知識を短期間で詰め込むことなく、身につけることができる。そのため、下のように、近年は公立中高一貫校だけでなく、公立小中一貫校も増えており、歓迎だ。

 
    2013.10.25朝日新聞

*11:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12633538.html (朝日新聞 2016年10月30日) (教育考差点)公立一貫校、進む前倒し学習
 都道府県立など公立の中高一貫校で、学年を超えた前倒し学習などの学力対策が広がっている。朝日新聞が全国の一貫校にアンケートした結果、約6割が中学で高校の学習内容を教えていた。進学率も一般の公立高より高く、学校数はこの10年で2倍に増えている。公立中高一貫校は、(1)一つの学校で6年の一貫教育を行う中等教育学校(2)同じ自治体が設置した中高を接続し、中学から高校に入試なしで進める併設型(3)中高で生徒間の交流などをする連携型――に分類できる。アンケートは9~10月、一貫教育を進めやすい中等教育学校と併設型の計118校を対象に行い、105校(89・0%)が回答。このうち中学段階で高校の学習内容を教え始める学校は65校(61・9%)だった。前倒し学習は私立では進学校を中心に一般的に行われているが、公立の一貫校でも広がっている実態がわかる。中等教育学校と併設型は学校教育法施行規則に基づき、中高の学習内容の入れ替えが可能だ。中学3年時に高校の内容を教える例が多いが、鹿児島県立楠隼(なんしゅん)中学・高校は中1の11月から国数英で高校の内容に触れていた。1週間の平均的な授業時間数も一般の公立校より多い。高校でみると、一貫校は1コマ50分換算で33~35コマが72校(68・6%)で最多だったが、公立高全体では30~32コマが69・2%(昨年度の文部科学省調査)で最も多い。一貫校の今春の卒業生のうち、大学・短大に現役で合格して進学した割合は平均77・9%。公立高全体の平均50・1%(文科省調査)を大きく上回った。公立中高一貫校は旧文部省が1999年、ゆとりある6年間の学校生活の実現や進路の選択肢を増やすことなどを目的に、自治体が設置できる制度を開始。中等教育学校と併設型は2000年度には3校だったが06年度には59校、今年度は計118校になっている。10校を設置した東京都教育委員会の担当者は「経済的事情などから公立を選びたい人はおり、一貫校の門戸を広げる必要があると考えた。将来のリーダーを育成したい」と話す。

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2016.8.31 21世紀の医療へ (2016年9月2、6日に追加あり)

 ドクターヘリ(埼玉県)  ドクターヘリ(神奈川県)  ドクターヘリ(宮崎県)  ドクターヘリ(沖縄県)
   電線が危険
 
 ドクターヘリの    ドクターヘリの関東での広域連携      パイロット不足    熊本地震での      
出動状況(群馬県)                          2015.7.22公明新聞 高速道路通行止め   
                                           上         *1-3より 
                                (*パイロットは、自衛隊をリタイアした
                                  経験者に研修すればいいのでは?)
(1)ドクターヘリについて
 私が衆議院議員をしていた2005年~2009年の間に地元佐賀三区で有権者の意見を聞いて廻ったところ、特に離島の人に医療へのアクセスに関する心配が多かったことや、いざという時には誰でも短時間で先端医療にアクセスできるようにしたかったことから、前半の2006~2007年に、*1-1のドクターヘリによる救急医療体制を作った。

 しかし、*1-2のように、福岡、長崎両県のヘリを共同運航してきて、佐賀県独自のヘリが導入されたのが2014年1月というのは、佐賀県が他県に一方的に頼っており情けない。

 また、*1-2によれば、ドクターヘリが要請を受けたにもかかわらず出動できなかったケースが49件あり、その理由は、①要請の重複14件 ②時間外11件(運航時間:午前8時半~日没30分前まで) ③天候不良10件だったそうだ。

 このうち①はヘリ不足で仕方がないとはいうものの、*1-4で国立病院機構長崎医療センター救命救急センター長の髙山氏が提言されているとおり、北関東のように、まず他県と広域連携してこのようなことが少なくなるようにするのがよいと考える。

 ②③については、晴れの日の昼間以外は危険だから飛べないということで、それはヘリの操縦が人の視界のみに頼っているからだろうが、航空機だけでなく自動車でさえ自動運転できる時代に遅れている。また、フライトドクターやフライトナースはヘリに乗っている時間に比例して墜落に遭遇するリスクも高くなり、ドクターヘリに乗る重篤な患者はじめ乗る時間が長くなるドクターやナースにもヘリの振動や騒音は身体に悪いため、ヘリの性能を向上させるべきである。

 さらに、*1-3のように、ドクターヘリは災害時に「隠れた医療ニーズがあった」と、熊本地震の道路状況が悪くなった地域で災害医療派遣チーム(DMAT)の一員として活動し、患者の受け入れやその後の支援活動で指揮を執った久留米大病院高度救命救急センター教授の山下氏が証言しておられる。
 
 このように、ドクターヘリを使った医療システムは、比較的少ない拠点病院と少ない医師で広域をカバーできるため、ドクターヘリを使う広域医療ネットワークを構築すれば、最も安あがりで高品質の医療システムをつくることができるだろう。そして、それは、日本国内だけでなく、アジア・アフリカのように離島や山間部が多く医師の数が少ない地域で必須アイテムになると思われる。

(2)再生医療について
 
     2014.10.24日経新聞(癌治療)        毛髪の再生医療     皮膚の再生医療

 私は、1995年前後にJETROが開いた会合で、ヨーロッパのDNAに関する研究成果に触れる機会があり、遅れていた日本での再生医療の可能性について通産省(当時)に言って進めた経緯がある。そして、衆議院議員をしていた2005年~2009年の間に、日本は、文科省・厚労省・経産省が協力して再生医療の研究と産業化を進める体制になった。しかし、その後、日本では、iPS細胞以外は再生医療と認めないようなところがあったため、iPS細胞以外では外国に抜かれたように思う。

 つまり、新しい研究をしている時には何が成果を上げるかわからないため、既にノーベル賞をもらったか否かにかかわらず、あらゆる可能性を排除せずに筋の良いものは残してバックアップしていくべきで、国内で邪魔されながら世界で勝つことなどは到底できないということを、政治家も官僚もメディアも肝に銘じておくべきなのだ。

1)免疫療法
 小野薬品は、*2-1のように、免疫を使って癌細胞を攻撃する新たな治療薬「抗PD―1抗体」を実用化したが、仕組みがわかってから治療薬候補が完成し治験が始まったのは、米国で抗PD―1抗体の治験が始まった2006年からで、開発から実用化までに15年もかかっており、その間に亡くなった方は多い。また、メルク、ロシュなども、既に同じ仕組みの抗PD―1抗体の治験を拡大している。

 しかし、厚労省は、今でも公的医療保険が適用される標準治療は、外科療法(手術)・放射線療法・化学療法(抗癌剤)として免疫療法(http://camiku.kyushu-u.ac.jp/about/clinic/immune-cell-therapy 参照)は公的医療保険外というスタンスをとっている。この鈍さも、チャレンジして研究開発した先端企業にロイヤルティー収入を得にくくして、日本を研究開発に向かない国にしているのだ。

2)幹細胞を利用した再生医療
 再生医療に利用できる細胞には幹細胞もあり、加工していない本人の細胞であれば、自らの免疫で攻撃されることがなく癌化もしないという意味で、他人の細胞やiPS細胞を使うより優れている。

 そのような中、*2-2のように、「外傷性脳損傷」の患者に加工した他人の骨髄由来の幹細胞(細胞医薬品)を脳に直接注入して機能回復を試みる治験を東京大病院が近く始め、これは米国では先行して進められて脳梗塞患者の治験で運動機能や言語機能の向上が既に報告されており、回復が難しい脳損傷の新たな治療法になるそうだ。

 この幹細胞は、健康な他人の骨髄から採取した間葉系幹細胞を加工・培養したもので、移植した細胞は、約1カ月で脳内から消えるそうだ。米スタンフォード大などの研究チームが、この医薬品の安全性確認のために脳梗塞患18人に実施した治験結果を米医学誌に発表したが、それによると、ほぼ全員の運動機能が回復して目立った副作用はなかったとのことである(すごい!)。

 そのほか、外国では自分の脂肪由来の幹細胞で脊髄損傷を治したという報告もあったが、*2-3のように、日本では札幌医大が幹細胞で脊髄損傷を治療する国内初の治験をしており、これを適用すると自民党の谷垣元幹事長の頸髄損傷も治すことができそうだ。

 つまり、何にでも分化できる幹細胞はKeyであり、保険適用にして治せば患者の福利が増すのはもちろんのこと、介護がいらなくなり社会復帰できるため、社会全体では医療・介護のコストが節減できる。

3)毛髪・皮膚・心臓の再生医療
i)毛髪の再生
 命にかかわる病気ではないが、*2-4のように、京セラが理研と組み、患者から採取した健康な毛髪細胞を加工・増殖して患者に移植し、毛髪再生装置の試作機を開発するそうだ。事業化には細胞の精密加工技術や大量に培養する量産技術が必要で、これは日本のお家芸だ。毛髪の再生医療も公的保険が適用されない自由診療での実用化になるそうだが、この需要は多いと思われる。

ii)肌の若返り
 *2-5のように、自分自身の肌細胞を採取し、抽出して培養したものをシワやたるみなどが気になる部位に注射器で移植する「肌の再生医療」もあるそうで、実用化されれば需要は多いだろう。

iii)ハートシート
 実用化された再生医療製品では、テルモの心不全治療に使う「ハートシート」の標準治療価格が1400万円強と高かったところ、保険適用となって患者の自己負担は治療費の1~3割で済み、高額療養費制度の対象にもなるそうだ。そして、これも数を多く生産すればコストが下がることは間違いない。

4)iPS細胞を利用した再生医療
 iPS細胞は、*2-6のように、皮膚や血液の細胞から作れる万能細胞で無限に増え、体の様々な種類の細胞に変化できるが、移植した細胞が狙った細胞に変化し損なって腫瘍(=癌)になる危険がある。日本眼科学会総会は、「安全性に関するエンドポイント(評価項目)は達成した」としており、国もiPS細胞を全面的に支援しているが、心臓シートや角膜シートは自分自身の他の細胞からすでにできているため、リスクとコストをかけてiPS細胞から作成しなければならないかについて、私は疑問に思う。

(3)ワクチン
 *3のように、「第4のがん治療法」とされる癌ワクチンによる治療の実用化を目指す研究・診療拠点「久留米大癌ワクチンセンター」が開設から1年を迎え来院する患者も増加傾向で、中国等の海外からも患者が来ているそうだ。ワクチンは、それぞれの患者に適した四つのワクチンを選んで投与する「テーラーメード」や進行癌の患者に20種類のワクチンを混ぜて早期に打つ方法も進んでいるとのことである。

 私は、虫歯や歯周病も口内の雑菌に対する抵抗力を高めればよいため、ワクチンで予防できるのではないかと考える。

(4)予防の重要性
 *4-1のように、クボタやヤンマーが農業用のドローンに参入するという記事がある。私は、技術革新、省力化、コスト削減を同時に可能にするドローンに反対するつもりはないが、ドローンが墜落してプロペラが人に当たれば、身体がばっさりと切れてしまうことは間違いなく、それからでは再生医療を使っても回復できないケースが多くなる。そのため、通りがかった人や農業者の事故を防ぐように、ドローンはプロペラが人に当たらない徹底した安全設計にすべきだ。

 また、*4-2のように、自動車が公道で無人運転できたり、ドローンで設備点検したりするとのことだが、事故時の自動車の壊れ方も乗っている人を護れるものではない。さらに、ドローンでの設備点検時には労災が起こりそうである上、第三者も巻き込まれることがあるため、事故が起こって犠牲者が出てから「想定外でした」と言うのではなく、事前に安全第一の設計にすべきである。

<ドクターヘリ>
*1-1:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H19/H19HO103.html 救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法 (平成十九年六月二十七日法律第百三号、最終改正:平成二三年八月三〇日法律第一〇五号)
(目的)
第一条  この法律は、救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療が傷病者の救命、後遺症の軽減等に果たす役割の重要性にかんがみ、救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の全国的な確保を図るための特別の措置を講ずることにより、良質かつ適切な救急医療を効率的に提供する体制の確保に寄与し、もって国民の健康の保持及び安心して暮らすことのできる社会の実現に資することを目的とする。
(定義)
第二条  この法律において「救急医療用ヘリコプター」とは、次の各号のいずれにも該当するヘリコプターをいう。
一  救急医療に必要な機器を装備し、及び医薬品を搭載していること。
二  救急医療に係る高度の医療を提供している病院の施設として、その敷地内その他の当該病院の医師が直ちに搭乗することのできる場所に配備されていること。
(救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する施策の目標等)
第三条  救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する施策は、医師が救急医療用ヘリコプターに搭乗して速やかに傷病者の現在する場所に行き、当該救急医療用ヘリコプターに装備した機器又は搭載した医薬品を用いて当該傷病者に対し当該場所又は当該救急医療用ヘリコプターの機内において必要な治療を行いつつ、当該傷病者を速やかに医療機関その他の場所に搬送することのできる態勢を、地域の実情を踏まえつつ全国的に整備することを目標とするものとする。
2  前項の施策は、地域の実情に応じ次に掲げる事項に留意して行われるものとする。
一  傷病者の医療機関その他の場所への搬送に関し、必要に応じて消防機関、海上保安庁その他の関係機関との連携及び協力が適切に図られること。
二  へき地における救急医療の確保に寄与すること。
三  都道府県の区域を超えた連携及び協力の体制が整備されること。
(以下略)

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/242909
(佐賀新聞 2015年10月25日) 県ドクターヘリ出動322件 隣県依頼時から倍増、導入1年目
 佐賀県のドクターヘリは昨年1月の導入開始から1年間で322件出動した。導入前の福岡、長崎両県のヘリに出動依頼していたころに比べ、2倍近くに増えている。基地病院の佐賀大学医学部附属病院は「ヘリでなければ救えなかったケースもあり、県内の救急医療レベルが向上した」としている。佐賀県独自のドクターヘリは昨年1月17日に運航を開始した。佐賀大病院だけでなく、連携病院として県医療センター好生館からも週2日離着陸している。佐賀大病院救命救急センターによると、現場で対応したうち、ただちに医療介入しなければ危ない重篤患者は10%、生命に関わる可能性がある重症が37%、中等症43%、軽症10%だった。センターは「厳しく見積もっても、ヘリだからこそ助けられたケースが10%はあった」とみている。唐津市七山で発生したバイクの単独事故で運転していた男性は多発外傷で大量に出血していた。佐賀大病院から救急車では片道50分ほどかかり、ヘリでなければ助からなかったとみられるケース。ヘリは要請から5分程度で近くの休耕田に着陸し、救命措置を施しながら搬送した。男性は歩けるほどに回復したという。出動要請のあった消防別にみると、杵藤地区が最も多く116件、次いで佐賀地区が92件、唐津地区73件、伊万里有田地区37件、鳥栖地区20件となり、県西部への出動が多かった。出動の内訳は現場出動が236件(73・3%)、病院間の転院搬送が62件(19・3%)、出動後のキャンセルも24件(7・5%)あった。要請を受けたものの出動できなかったケースも49件あり、その主な理由は要請の重複が14件、時間外11件、天候不良10件などだった。通報から要請、出動までの時間は全国平均とほぼ変わらなかった。定期的にドクターヘリの症例検討会を開き、医師や看護師、消防、行政、運航事業者らと協議している。センター長の阪本雄一郎教授は「ヘリを通して医療機関や消防、行政による地域救急医療のチームワークが強固になった。今後は福岡、長崎と北部九州のより良い救急体制の構築を目指していきたい」と手応えを語る。
■佐賀県のドクターヘリの運航
 福岡、長崎両県のヘリを共同運航し、佐賀県内への出動件数に応じて費用負担してきたが、2014年1月に県独自のドクターヘリを導入した。年間経費は2億1000万円で半額は国の補助金。現在、県内は3県のヘリが飛ぶ珍しい地域となっている。臨時に離着陸するランデブーポイント(離着陸指定地)は公園や学校の運動場など162カ所あり、ケースによっては指定以外の広い場所に離着陸する。県内全域を15分以内でカバー。運航時間は午前8時半から日没30分前となっている。

*1-3:http://qbiz.jp/article/87753/1/
(西日本新聞 2016年6月6日) 「隠れた医療ニーズがあった」、災害派遣医師が証言
 熊本地震では被災地から地理的に近く、医師数や施設が充実する筑後地区から、医療支援が実施された。久留米大病院高度救命救急センター教授の山下典雄医師(55)は、同大病院の災害医療派遣チーム(DMAT)の一員として熊本県で活動し、患者受け入れやその後の支援活動でも指揮を執った。被災地の現状や災害時医療の課題を聞いた。
−被災地での活動は。
 「前震が起きた4月14日の翌15日未明、DMAT1次隊として久留米を出発した。益城町で活動し、避難所では打撲や擦り傷などけが人を搬送した。道路状況が悪く、移動に30分ほど余計にかかった。16日未明の本震以降は、DMATを2次隊まで組織し、現地で活動した。その後、急性期、救命期の医療支援から慢性期医療に移行し災害医療チーム(JMAT)を組み、今月6日まで9次隊にわたって派遣した」
−久留米大病院としての医療支援は。
 「大学病院では、被災地から広域搬送される患者受け入れのため、災害対策本部を立ち上げ、100人超の医師を招集して態勢を取った。被災地からは要請のあった透析患者や新生児ら三十数人を受け入れた。ドクターヘリも熊本県の指揮下に入り、広域搬送を支援した」
−被災地の現状をどう見ているか。
 「熊本市内の医療態勢は回復に向かい、今後は避難所や車中泊をしている人のエコノミークラス症候群予防、高齢者の口腔ケア、感染症予防のための生活指導が重要になっている。梅雨が近づくので、食中毒など衛生面でも注意する必要がある」「一方、阿蘇地域では電力や水道などライフラインの復旧が遅れ、医療機関も厳しい状況が続いている。南阿蘇村では唯一の救急指定病院が使用できなくなり、仮設の救護所で診療を受ける人も依然としていた。土砂崩れによる阿蘇大橋の崩落や、国道57号が通れなくなり、村内も分断され、交通状況も良くない。車が使えなくなり、移動手段がなくなった住民も少なくないと聞く。村内の巡回診療など今後も、医療支援が必要になると思う」「久留米大病院のチームは村内の介護施設を回った。道路が寸断された上、高齢などで移動が難しい入所者を抱えており、飲まず食わずの対応に追われた職員の疲弊も色濃かった。支援する側は、避難所などに集まってくる人たちに注意が行き、外側まで手が回っておらず、隠れた医療ニーズがあった」
−患者受け入れなど支援に当たって感じた課題は。
 「現場には混乱が起きた。被災地の病院から直接、患者受け入れ要請があり、熊本県に調整を依頼したが、なかなか連絡が来ない。しびれを切らした病院が、自ら患者を搬送してきた。こちらは受け入れ可能と伝えたが、勝手には動けずもどかしい思いをした」
−今後、筑後地区で大規模災害が起こる可能性もある。備えは。
 「災害医療は、日ごろの救急医療の延長線上にある。混乱を避けるには、地域医療機関同士の横のつながりと、行政、消防との連携が不可欠だ。NPO法人筑後地域救急医療研究会を中心に、救急に携わる人たちの間で顔の見える関係を築いてきた。救急指定病院ならベッドの空き具合や、医師の氏名から対応できる疾患まである程度、頭に浮かぶ。今回、被災地の患者受け入れで、聖マリア病院(久留米市)や他の医療機関と密に連絡が取り合えたのは成果だと思う」「筑後地区が被災地になった時、県外の医療機関やDMATにどう支援してもらい、受け入れるのかを想定した訓練は今後、より充実させていく必要がある。被災地ではコーディネーター役の地元の医師がリーダーシップを取り、続々と到着する支援組織を割り振っていた。人材育成も急務だ」「災害時には病床を空けるため状態の良い入院患者に同意を得て転院、退院、手術延期をお願いすることもある。理解を求めたい」

*1-4:http://www.qsr.mlit.go.jp/suishin/cgi/070516/08takayama.pdf#search='%E4%B9%9D%E5%B7%9E%E3%81%AE%E3%83%89%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%98%E3%83%AA+%E9%81%8B%E7%94%A8'
広域救急医療体制(救急ヘリコプターの共同利用)と高速交通網に関する提言
             独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 救命救急センター長 髙山 隼人
(1)広域救急医療体制への提言(救急ヘリコプターの共同利用)
1.はじめに
 慢性的な疾患に関しては、国民は希望する医療機関まで行くことによって受診することができるが、救急疾患や急病、外傷に関しては、近くの救急医療機関に搬送され治療を受けることになる。九州は、山間部や半島、離島など多く、三次救急医療機関まで60 分以上かかる地域が多く存在しており、医療に関しても地域格差を生じている。急性疾患の発症時間や外傷の発生時間より、60 分以内に適切な治療を受けることにより救命率を向上させることができることやドクターヘリにより交通事故による死亡を39%削減し重度後遺症を13%削減できることを踏まえ、広域救急医療体制を整備する。
2.提言
 九州圏内に住む国民の救命率を向上させることを目標として、救急ヘリコプター(ドクターヘリ)にて30 分以内に救急医よる治療を開始し適切な医療機関へ搬送して、60 分以内に適切な治療を受けることができるようすることを提言する。
3.方法
①救急用ヘリコプター(ドクターヘリ)を九州本土内に、県境を区別せず半径70km ごとに展開する。
根拠:ヘリコプターは、巡航速度200-240km/hr であり、覚知から要請・離陸の時間を考慮して飛行時間20 分以内であれば、受傷・発症から30 分以内に治療が開始できる。
②外海離島においては、小型固定翼や自衛隊救難ヘリコプターなども共同して運航する。
根拠:固定翼がヘリコプターより巡航速度が速く、離島からの遠距離搬送に適している。外界離島の場合は、離島医療機関で初期治療を行い高次搬送ができる体制を整えることにより対応する。
③基地病院形式もしくは、複数医療機関連携した基地形式にて医療を提供する。
④複数県が実施主体となり、共同運航する。
⑤着陸ポイントとして、道の駅など道路付属施設や公園・広場、居住地域に点在する小学校のグ
ランドなどを積極的に活用する。
⑥夜間の運航は、安全運航を確認するため、夜間照明のある場外離着陸場を旧町村ごとに設置して、受入病院近くの夜間照明付のヘリポートに搬送することで、搬送時間の短縮を図る。
4.現状の問題点
①ドクターヘリの県を越えた運用
 運用にあたり協定等の困難感があるが、救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法案(平成19 年6 月19 日)3)もふまえて、隣県での調整が可能になってきた。
②フライトドクターの確保困難
 基地病院で、フライトドクターを確保することが一番良いが、九州圏内の救命救急センターは、現在の救急医療活動を提供するのにぎりぎりの人数のところが大半である。しかし、救急医療やフライトドクターなどに興味を持つ若手医師も少しずつ増えてきているので、段階的に養成していくことが可能と思われる。代案として、複数の医療機関が連携してフライトドクターを提供して基地に待機して365 日出動態勢を整える方法もある。
5.その他
 新臨床研修制度により、医局からの派遣体制の崩壊が起こり、専門医から総合医の養成に方向転換がなされてきた。離島や中山間地域のみならず地方都市の医師不足が顕著になってきている。派遣体制整備は今後の国の施策に期待するが、離島・中山間・地方都市の医療体制のバックアップのため、重症患者の搬送などに救急ヘリコプターを活用することも支援となりうる。このため、昼夜を問わず搬送できるハード面の充実も必要である。
<参考文献>
1)Cowley RA, その他. J Trauma 1973; 13: 1029-1038
2)益子邦洋、その他.ドクターヘリによる交通事故死/重度後遺症の削減効果.平成17 年度厚生労働科学、研究費補助金「新たな救急医療施設のあり方と病院前救護体制の評価に関する研究 ドクターヘリの実態と評価に関する研究」
3)参議院議事情報http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/gian/16607166003.htm
(2)高速交通網に関する提言
1.はじめに
 九州内各県の主要な高度医療施設への救急車搬入の実態調査(日本救急医学会九州地方会2007 年プロジェクト「救急車搬送患者の搬送時間と転帰に関する検討」)より、急性心筋梗塞や急性大動脈解離、重症多発外傷などで、40 分以内での搬送時間と生存率や自宅退院率などの相関が認められている。長時間すなわち長距離搬送により、状態の悪化が予後を左右することがわかる。九州圏には3次医療機関まで、60分以上かかる地域が多数ある。
2.現状と問題点
・ 搬送時間の延長
・ 道路線形の不良
・ 交通量の増加
・ 救急医療機関の減少
・ 高速道路の未整備
3.課題
・ 消防署と救急医療機関の配置
・ 道路整備
・ 救急ヘリコプターが着陸できる道路整備
4.課題
・ 居住人口に合わせた救急車両の配置
・ 消防本部の統廃合により本部機能の一元化による人員を分署の再配置
・ 医療機関の統廃合(救急医療も担う地域の基幹病院とかかりつけ医の役割分担)
・ 国道整備:カーブなどの改善(ゆれや振動の低減)
・ 高速道路整備により3 次医療機関までの搬送時間の短縮
・ 電柱の地中化、中央分離帯の構造変更(救急車の走行できる車線とするなど)
5.まとめ
 物流対策のみではなく、救急医療への支援も考慮にいれ、高速道路や国道整備を検討する。道路
整備による搬送時間の短縮に伴う死亡率の改善は、社会的損失の軽減として経済効果は十分に大き
いと考える。

<再生医療>
*2-1:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO78790300T21C14A0X11000/
(日経新聞 2014/10/24) 15年間諦めなかった小野薬品 がん消滅、新免疫薬
 日本人の死因のトップであるがん治療には、外科的手術や放射線治療、最後の手段として化学療法があるが、今この構図が大きく変わる可能性が出てきた。免疫を使ってがん細胞を攻撃する新たな免疫治療薬「抗PD―1抗体」が実用化されたからだ。世界に先駆けて実用化したのが関西の中堅製薬、小野薬品工業だ。画期的な免疫薬とは――。
■「オプジーボは革命的なクスリ」と高評価
 「がん研究、治療を変える革命的なクスリだ」。慶応義塾大学先端医科学研究所所長の河上裕教授は9月から日本で発売が始まった小野薬の抗PD―1抗体「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)をそう評価する。ニボルマブは難治性がんの1つ悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬として小野薬と米ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)が共同開発した新薬だ。がんは体内の免疫に攻撃されないように免疫機能を抑制する特殊な能力を持つ。ニボルマブはこの抑制能力を解除する仕組みで、覚醒した免疫細胞によってがん細胞を攻撃させる。世界的な革命技術として、米科学誌サイエンスの2013年の「ブレークスルー・オブ・ザ・イヤー」のトップを飾った。今や米メルク、スイスのロシュなど世界の製薬大手がこぞってこの仕組みを使った免疫薬の開発を加速させている。悪性度が高いメラノーマは5年後の生存率は1割前後という極めて危険ながんだが、米国、日本での臨床試験(治験)では「増殖を抑えるだけでなく、がん細胞がほぼ消えてしまう患者も出た」(河上教授)。米国での他の抗がん剤と比較する治験では既存の抗がん剤を取りやめ、ニボルマブに切り替える勧告も出たほどだ。肺がんや胃がん、食道がんなど他のがん種に対する治験も進んでいる。世界の製薬大手が画期的な新薬開発に行き詰まるなか、なぜ小野薬が生み出せたのか。1つは関西の1人の研究者の存在がある。「PD―1」という分子を京都大学の本庶佑名誉教授らの研究チームが発見したのは1992年だ。小野薬もこの分子に目をつけ、共同研究を進めた。PD―1が免疫抑制に関わっている仕組みが分かったのは99年で、創薬の研究開発が本格的に始まるまでにおよそ7年。実際の治療薬候補が完成し治験が始まったのは2006年で、開発から実用化までにおよそ15年かかったことになる。当時は「免疫療法は効果が弱い」「切った(手術)方が早い」など免疫療法に対する医療業界の反応は冷ややかだった。医師や学会だけでなく、数々の抗がん剤を実用化した製薬大手も開発に消極的だった。そんな中で小野薬だけが“しぶとく”開発を続けてきた背景には「機能が分からなくても、珍しい機能を持つ分子を見つけ、何らかの治療薬につなげるという企業文化があった」(粟田浩開発本部長兼取締役)という。もともと小野薬は極めて研究開発志向の強い会社だ。売上高(14年3月期は1432億円)に対する研究開発比率は国内製薬メーカーでは断トツの30%台だ。しかもがん治療薬は初めて参入する分野で、「かならず成果を出す」という研究者の意欲も高かった。小野薬は血流改善薬「オパルモン」とアレルギー性疾患治療薬「オノン」の2つの主要薬で高収益を維持した。だが、特許切れや後発薬の攻勢で陰りが出てきたところでもあった。免疫療法に対する風向きが変わり始めたのは米国で抗PD―1抗体の治験が始まった06年からだ。一般的な抗がん剤はがんの増殖を抑える仕組みのため数年で耐性ができ、結局は延命効果しかない。しかし抗PD―1抗体で「がんを根治できる可能性も出てきた」。
■年間数百億円のロイヤルティー効果
 副作用が少ないうえ、がんの増殖を止める、小さくする、消滅させる――。そうした治験結果が出始めたことで、国内外の研究者、製薬企業の免疫療法に対する見方が大きく変わった。ただ、効果が出ていない人も一定の割合で存在する。その場合は「他の抗がん剤や免疫療法と組み合わせれば、効果が上がる可能性がある」(粟田本部長)という。足元の業績が低迷するなか、ニボルマブ効果で小野薬の市場評価は高まっている。昨年10月時点で6000円前後だった株価は今年に入って急騰。23日の終値は9340円とわずか1年足らずで3000円以上伸びた。アナリストも「今後数年でロイヤルティーだけで年数百億円は堅い」と分析する。小野薬の相良暁社長も「10年先を支える薬になるだろう」と自信をみせる。ただメルク、ロシュなどが同じ仕組みの抗PD―1抗体の治験を拡大しており、国際競争に巻き込まれる可能性も高い。一方で他の製薬大手から小野薬がM&Aの標的となる懸念もある。その意味で同社が置かれている環境は必ずしも楽観視できない。がんの新たな治療法の扉を開けた小野薬。日本発の免疫薬に世界の目が注がれている。

*2-2:http://mainichi.jp/articles/20160814/k00/00m/040/129000c
(毎日新聞 2016年8月14日) 治験へ 幹細胞注入、米で成果
 頭のけがなどで脳の神経細胞が死んだり傷ついたりし、体のまひや言語障害などが出た「外傷性脳損傷」の患者を対象に、加工した骨髄由来の幹細胞(細胞医薬品)を脳に直接注入して機能回復を試みる治験を東京大病院が近く始める。米国で先行して進められている脳梗塞(こうそく)患者での治験では運動機能や言語機能の向上が報告されており、回復が難しい脳損傷の新たな治療法になる可能性がある。この細胞医薬品は、健康な人の骨髄から採取した間葉系幹細胞を加工・培養したもので、再生医療ベンチャー「サンバイオ」(東京都中央区)が開発した。免疫反応を抑える働きもあり、他人の細胞を移植するにもかかわらず、免疫抑制剤を使う必要がない。移植した細胞は、約1カ月で脳内から消えるという。米スタンフォード大などの研究チームは6月、この医薬品の安全性確認のために脳梗塞患者18人に実施した治験結果を米医学誌に発表した。これによると、ほぼ全員の運動機能が回復し、目立った副作用はなかった。サンバイオによると、治験前は動かなかった腕が頭まで上げられるようになったり、車いすが必要だった患者が少し歩けるようになったりしたという。機能が回復する詳しいメカニズムは不明だが、東大病院での治験を担当する今井英明特任講師(脳外科)によると、傷ついた脳の神経細胞の修復を促す栄養分が移植した幹細胞から分泌されると考えられるという。東大病院の治験の対象は、脳に損傷を受けてから1〜5年が経過し、現在の医療では回復が見込まれない患者。移植する細胞の数を変えて四つのグループに分け、運動機能の回復状態を1年間、追跡調査する。

*2-3:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1000G_Q4A110C1000000/
(日経新聞 2014/1/10) 脊髄損傷、幹細胞で治療 札幌医大が国内初の治験
 札幌医科大は10日、脊髄損傷患者の骨髄から取り出した幹細胞を培養し、患者の静脈に投与して脊髄の神経細胞を再生させる治療法の効果や安全性を確かめる臨床試験(治験)を始めると発表した。10日から被験者の募集を始める。発症してから時間が経過していても治療効果が期待でき、患者自身の細胞を使うため拒絶反応の心配が少なく、安全性が高いとされる。神経となる「間葉系幹細胞」を使い、静脈に投与する薬剤として認可を目指す試験は、国内初という。チームを率いる山下敏彦教授は「脊髄損傷は事実上、有効な治療法がないが、この方法は多くの患者への効果が期待できる」と話している。チームによると、患者の腰の骨から骨髄液を採取し、間葉系幹細胞を分離。約2週間で約1万倍に培養し、約1億個の細胞が入った40ミリリットルの薬剤を静脈に点滴する。投与された細胞は脊髄の損傷部位に移動し、神経細胞に分化したり、タンパク質を分泌して傷ついた神経細胞を再生させたりする。神経が再生されると、手足が動かせるようになると見込まれるという。試験は損傷から14日以内で、脊髄のうち主に首の部分を損傷した20歳以上65歳未満の患者が対象。希望者は主治医を通じて大学に連絡する。2016年10月までに30人を目標に実施する。

*2-4:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO04775060S6A710C1TJC000/ (日経新聞 2016/7/13) 京セラ、理研と毛髪再生医療 20年実用化目指す
 京セラは理化学研究所などと組み、脱毛症を再生医療技術で治療する共同研究に乗り出す。患者から採取した健康な毛髪の細胞を加工、増殖した後に患者に移植する手法で、理研がすでに動物実験で実証している。京セラは電子部品で培った微細加工技術を生かして細胞の自動培養装置を開発し、2020年に細胞の受託製造事業への参入をめざす。脱毛症に悩む人は国内で男女あわせて1800万人以上いるという。将来の臓器再生につながるとされる毛髪再生での手法確立をめざす。12日、理研のほか、再生医療ノウハウを持つベンチャーのオーガンテクノロジーズ(東京・港)と組み、18年3月までに装置の試作機を開発すると発表した。20年までにヒトを対象とした臨床研究をする計画だ。理研は毛がないマウスに加工・増殖したヒトの細胞を移植し、発毛させる実験に世界で初めて成功している。皮膚内で毛髪を生む「毛包」と呼ぶ部分の2種類の幹細胞を分離し、加工して作った再生毛包を移植する手法をヒトに応用する。現在も後頭部など正常な毛包を脱毛部に移植する手術はある。だが頭皮の切除面積が大きくなる課題があった。理研の手法は毛髪細胞を100~1千倍に増やせるため切除部が小さくて済む。自らの細胞を使うので、人体への危険性は実用化済みの皮膚や軟骨の再生医療製品と同程度に抑えられるという。事業化には細胞の精密加工技術や大量に培養する量産技術が必要だ。京セラは精密部品の加工技術のほか、人工関節などの医療事業も手掛ける。業務用インクジェットプリンターでインクを精密に射出する技術も生かす。医療機関から患者の頭皮組織を預かり、約3週間かけて加工・培養したうえで医療機関に出荷する製造受託事業を20年をめどに始める計画だ。ただ今回の毛髪の再生医療は保険が適用されない自由診療での実用化をにらむ。実用化された再生医療製品でみると、テルモの心不全治療に使う「ハートシート」は標準治療の価格が1400万円強と高い。だが保険適用となったため患者の自己負担は治療費の1~3割で済み、高額療養費制度の対象にもなる。量産効果が効かない初期段階では、毛髪の再生医療の自己負担は高額になる可能性がある。

*2-5:http://wpb.shueisha.co.jp/2016/06/29/67245/ (週プレニュース 2016年6月29日) ヤケドの治療から始まった! 肌の再生医療の第一人者が手がける最新アンチエイジング
最近、老けてきた気がして。特にこのほうれい線、すごい深いよね…?」とため息をつくのは「週プレNEWS」の貝山弘一編集長。実年齢49歳とは思えぬ若いルックスに見えるが、本人は老化をひしひしと感じているらしい。そんな悩めるアラフィフのもとに気になるニュースが。なんと自分の細胞を培養して移植することで、肌が若返るという画期的なアンチエイジング治療法があるという。
従来の美容外科とは異なるアプローチで、安全かつ自然に若返りを可能とする手法とは? 最新医療レポート第1弾!
■薬も糸も使わない、若返りの最先端治療
老けたな~…と誰しも感じるのは、ふと鏡を見た自分の顔に白髪や顔のシワが増えたのを目の当たりにした時。気になり出すと、ますます老化が進みそう…。シワやたるみ、ほうれい線など男性は毎日のひげ剃りでも目について仕方ないハズだ。本格的にケアするにはヒアルロン酸やボトックス注射を打つか、金の糸を入れてリフトアップするなど美容外科手術に頼るしか解決方法はなかった。ところが、これまでとは全く異なるアプローチで若返りを実現させる革新的技術が開発されているという。それが「RDクリニック」で手がける「肌の再生医療」。そもそも米国FDA(日本の厚労省にあたる)が認可したれっきとした医療である。それを医学博士・北條元治(ほうじょう・もとはる)先生がわが国でいち早く始めた、最先端医療だ。北條先生「簡単にいうと『肌の再生医療』は臓器のパーツのコピーと同じです。皮膚が必要であれば、皮膚の細胞そのものをコピーする。コピーした元気な細胞を本人に移植すれば、その細胞が組織を修復するということです」
■自身の細胞で肌を若返らせる!
「肌の再生医療」は【自分自身の肌細胞を採取し、抽出して培養したものをシワやたるみなどが気になる部位へ注射器を使い移植】する治療方法。自分の細胞で肌の若返りを促すということだが、どういう仕組みなのか?表皮と真皮の2層構造になっている肌だが、シワやたるみは真皮にある肌細胞が減少することで起こる。「肌の再生医療」は自分の皮膚から肌細胞を抽出・培養して気になる部位に移植することで、減少した肌細胞を増やして肌のハリを取り戻す。

*2-6:http://digital.asahi.com/articles/ASJ5D24XMJ5DUBQU005.html
(朝日新聞 2016年5月12日) iPS細胞10年 進む再生医療・創薬研究、ハードルも
 皮膚や血液の細胞から作れる万能細胞、iPS細胞が開発されて今年で10年。無限に増え、体の様々な種類の細胞に変化できる性質を生かし、再生医療や創薬に向けた研究が急速に進んでいる。一方、複雑な組織ほど体外で作り出すことは難しく、越えなければならないハードルも見えてきた。
■心筋、網膜…再生医療への研究進む
 大阪府吹田市にある大阪大の実験室。直径約2センチの培養皿に入った、人のiPS細胞から作ったシート状の心筋細胞を見せてもらった。シートには心筋のほか、血管をつくる細胞などが含まれている。容器に収められた半透明のシートを顕微鏡で拡大すると、全体が連動してリズムを刻む様子がはっきり見える。まさに「拍動」だ。心臓に貼れば、一体となって動くと見込まれている。澤芳樹教授(心臓血管外科)らは、このシートを虚血性心筋症など、現在は心臓移植が必要になる心臓病の患者らに使う研究を進めている。「人に使うために安全性を確認する最終段階まで来ている」。京都大iPS細胞研究所(CiRA)の山中伸弥教授が作り出したiPS細胞は、ES細胞のように受精卵を使う必要がないため、倫理的な問題がなく、作りやすいことから、再生医療への利用が期待されてきた。先頭を行くのは理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーのグループだ。加齢黄斑変性という目の病気で臨床研究を始め、14年には患者のiPS細胞から作った網膜の色素上皮細胞のシートを患者の目に移植した。移植した細胞は約12万6400個。ねらった細胞に変化し損なったiPS細胞が体に入ると腫瘍(しゅよう)になる危険があるが、今のところ異常はないという。手術を担った栗本康夫・先端医療センター病院眼科統括部長は先月、日本眼科学会総会で「安全性に関するエンドポイント(評価項目)は達成した」と強調した。国も全面的に支援する。iPS細胞を含む再生医療関連の今年度予算は文部科学、厚生労働、経済産業の3省合わせて約148億円。文科省は昨年、iPS細胞研究のロードマップ(工程表)を改訂し、計19の細胞や器官で、実際に患者で研究を始める目標時期を掲げた。京大が進めるパーキンソン病患者への神経細胞の移植や血小板の輸血、阪大の角膜の移植は、早ければ今年度の開始とされている。
■費用が課題、自家移植は準備に1億円
 ただ、細胞の培養や品質のチェックに膨大なコストと時間がかかる。高橋さんの1例目では、細胞の準備から移植までに1年近く、約1億円を費やしたとされ、山中さんも「(患者自身の細胞を使う)自家移植は考えていた以上に大変だ」と口にする。腫瘍化などの危険性を懸念する研究者の声も依然として強い。このため、CiRAではあらかじめ品質を確認したiPS細胞を備蓄し、配るプロジェクトを開始。細胞は、多くの日本人に移植しても拒絶反応が起きにくいタイプの健康な人から提供してもらう。高橋さんらは2例目以降の移植にこの細胞を使う研究を準備している。高橋さんは「色素上皮なら一つの皿で何十人分も作れ、コストを減らせる。将来は普通の治療としていけるぐらいになる」と話す。一方、iPS細胞が国外で再生医療に広く使われるかは不透明だ。すでに欧米ではES細胞を使った研究が根付いており、加齢黄斑変性など、数十人の患者にES細胞から作った細胞による臨床応用も進んでいる。iPS細胞の研究に詳しい黒木登志夫・東京大名誉教授は「再生医療は競争が激しい。ES細胞が世界の標準になる可能性がある」と指摘する。
■創薬研究、技術確立に課題も
 再生医療への応用のほかに近年、注目を集めているのが創薬の研究だ。理研の六車恵子・専門職研究員らのグループはCiRAと共同で、ES細胞の研究で培ってきた大脳や小脳の組織を体外で作る技術を応用する。アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症、小脳変性症などの患者の細胞からiPS細胞を作り、脳神経に変える。培養皿でこの神経を調べると、患者ごとに薬に対する反応が違ったり、特定の細胞がストレスに弱かったりすることがわかった。「患者自身の脳組織を研究で使えるのは、iPS細胞ならではの手法」と六車さんは話す。CiRAの妻木範行教授らのグループは、遺伝子変異が原因の軟骨の難病で薬の候補を見つけた。患者のiPS細胞から作った軟骨は正常な組織に培養できなかったが、高脂血症治療薬のスタチンを加えると正常になった。こうした手法を使えば、薬の開発にかかる時間やコストを大幅に削れると期待される。ただ、複雑な組織になるほど体外での培養は難しく、細胞に酸素や栄養を供給し続けて成長させる仕組みも必要になる。さらに、現状では培養できた細胞や組織の多くが未熟な状態で、成熟させる方法も未確立だ。腎臓の組織づくりに取り組む熊本大の西中村隆一教授は「病気を調べるためには、まず正常な組織を作る必要がある。ただ、できたものがどこまで体内の状態を再現しているか確認が難しい」と指摘。マウスのiPS細胞を使い、毛包や皮脂腺など皮膚の器官をまとめて再生することに成功した理研の辻孝チームリーダーも「立体的な組織を作るには、培養技術の革新が必要だ。iPS細胞の潜在力をまだ引き出しきれていない」と話している。
《iPS細胞(人工多能性幹細胞)》 無限に増やせ、体の様々な細胞に変化できる能力を持った細胞。同様に万能性を持ち、受精卵を壊して作るES細胞(胚(はい)性幹細胞)と異なり、体の細胞から作ることができる。山中伸弥・京大教授が2006年、マウスの皮膚の細胞に四つの遺伝子を働かせて作製に成功した。特定の種類に変化し終えた細胞でも受精卵に近い状態に「リセット」できることを初めて示し、07年には人でも成功した。12年にノーベル医学生理学賞に選ばれた。

<ワクチン>
*3:http://qbiz.jp/article/43196/1/
(西日本新聞 2014年8月3日) 久留米大がんワクチンセンター、海外からも患者来院
 「第4のがん治療法」とされるがんワクチン治療の実用化を目指す研究・診療拠点「久留米大がんワクチンセンター」(福岡県久留米市国分町)が7月、開設から1年を迎えた。医師などスタッフは約60人と、開設当初の態勢から倍に増え、来院する患者も増加傾向という。「がんペプチドワクチンの医薬品承認に向けた申請時期のめどを付けたい」と話す伊東恭悟センター長に、活動の進展と2年目の目標を聞いた。
−診療態勢を一本化したセンターができて、患者の動きに変化はあったか。
 「患者は増えている。開設前は1日10〜20人だったが、今は平均30人前後来院する。55人だった日もあり、一時期は重症度の高い人だけに診療を制限しなければならないこともあった」「患者は全国各地だけでなく中国からも来ている。これまでは福岡市内のホテルに泊まる人が多かったが、最近は半数以上が久留米に泊まっているようだ」
−患者が増えた要因は。
 「若手の医師などスタッフが増えて受け入れ態勢が充実できた。センター開設後、メディアで多く取り上げられた影響も大きい」
−診療の成果は。
 「診療も研究も順調だ。それぞれの患者に適した四つのワクチンを選んで投与する「テーラーメード」型だけでなく、進行がんの患者に20種類のワクチンを混ぜて、早期に打つ方法も順調に進んでいる」「抗がん剤治療を受けている患者に対して、いったん抗がん剤をやめてワクチン投与だけにして、その後抗がん剤を再開した結果、長生きできたという症例については論文化した」
−センター開設時、前立腺がんと悪性脳腫瘍である膠芽腫(こうがしゅ)の治療に使うワクチンは3〜5年内の実用化を目指すと話していたが。
 「最後の検証段階にあるいくつかの試験も、一つずつ着実に進んでいる。特に抗がん剤が使えない高齢の前立腺患者向けのワクチンについては、医薬品として承認申請する時期のめどを2年目のうちにつけたい」
−強化したいことは。
 「ワクチンの効果を上げて、より長生きできるようになるため、副作用のない漢方薬を活用する臨床試験にも力を入れていきたい」「がんワクチンの発展と実用化をにらんで8月に初の研究会を開く。全国の医師たちと交流する場として今後も年1回、開きたい」

<予防>
*4-1:http://qbiz.jp/article/93139/1/
(西日本新聞 2016年8月29日) クボタが農業ドローン参入 農薬散布のコスト軽減
 クボタは29日、空中から農薬を散布する農業用ドローン事業に参入すると発表した。2017年中ごろに販売を開始する。手間やコストの軽減メリットを大規模農家に売り込み、20年度には売上高20億円規模の事業に育てる。大規模農家の農薬散布は、大型機器に乗って陸上から散布したり、産業用の無人ヘリコプターを使って空中から散布したりする方法がある。クボタはドローンを200万円程度で販売する方針で、無人ヘリコプターの1千万円規模に比べ割安で済む。記者会見した飯田聡専務執行役員は「超省力で農作業するニーズが高まっている」と指摘。ドローンメーカーのプロドローン(名古屋市)と農業機器メーカーの丸山製作所(東京)と共同開発する。将来的にはインターネットを使った管理システムと連動させるほか、農薬散布以外の用途にも対応させる。農業でのドローンの参入は増えており、ヤンマー(大阪市)もコニカミノルタなどと共同で、カメラを搭載したドローンで田んぼの状況を監視するシステムを開発中だ。

*4-2:http://qbiz.jp/article/91781/1/
(西日本新聞 2016年8月3日) 北九州市、戦略特区に4案 公道無人運転、ドローンで設備点検…
 地域限定で規制を緩和する国家戦略特区の指定を受けている北九州市は1日、新たな規制改革案として、公道での無人運転を可能にする案や、ドローン(小型無人機)を使って橋などの点検ができるようにする案など4案を内閣府に提案したと発表した。政府は今後、各特区などからの提案を取りまとめ、実現の可否を検討する。市によると、公道での自動車の無人運転は、運転者の操作を義務付けている道交法により現在、認められていない。一方、同市では自動運転の研究開発に向けた産学官の連携が進んでおり、公道を使った実験を可能にすることで、実用化へ弾みをつけたい考え。目視による確認が求められているトンネルなどの交通インフラの点検に関し、カメラやセンサーを搭載したドローンで代替する案も提出。国際的なスポーツ大会や会議で、人材確保が難しいタイ語やインドネシア語などの通訳を留学生が担えるよう、就労時間の緩和も求めた。また、海外のアマチュアスポーツ選手のチーム加入に際し設けられている大会実績の条件を緩める案も盛り込んだ。市は1月に戦略特区に指定。現在、50代以上の就労を支援するシニア・ハローワークの設置や介護ロボットの実証実験などが進められている。


PS(2016年9月2日追加):*5のように、救急医療の視点からオスプレイを利用する実験を速やかに行ったのは評価できるが、ヘリもオスプレイも、これまで救急医療用には使ってこなかったため、安全性、乗り心地、離着陸時の騒音・風圧など改善すべき点が多い。しかし、日本人は改善(海外でも「カイゼン」という日本語が通用する)は得意なので、本気でやればよいものが作れるだろう。

    
    かなり改良すれば使えそうなヘリ             現在のドクターヘリ
    (*5より)                      (滋賀県)        (奈良県)
*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/351493 (佐賀新聞 2016年9月2日) オスプレイ運用に思い交錯 医師評価、実効性疑問の声、佐世保市防災訓練
 佐世保市の防災訓練に米海兵隊オスプレイが参加した1日、訓練参加者や見学者からは、災害時の運用に期待する声と、訓練そのものの実効性を疑問視する声が交錯した。2機の米オスプレイは、訓練で想定した地震発生から15分後に佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地に姿を現した。プロペラで航空する「ヘリモード」で駐屯地に近づき、風圧で草や土ぼこりを巻き上げながらゆっくりと着陸した。医師らを乗せた機体は宇久島へ飛び、約45分でけが人役を乗せて再び駐屯地に姿を見せた。「スピードがあり、航続距離も長い。広域になればなるほど有力な搬送手段と言える」。医師として同乗した佐世保市総合医療センターの澄川耕二院長(69)は、救急医療の視点からオスプレイを評価する。患者を運ぶ簡易ベッドで5人ほど搬送できると見ており、「結構揺れるので、物資の輸送には適しているが、救助の場合はベッドの固定など工夫が必要」と感じた。米海軍佐世保基地のマシュー・オヴィアス司令官は「災害時に互いに連携することが大切で、今回の訓練で協力関係を示すことができた」と米軍参加の意義を強調した。駐屯地内で訓練を見学した市民団体リムピース佐世保の篠崎正人さん(69)は「災害時に偶然、佐世保近くに米オスプレイがいた設定など合理性に欠ける」と指摘する。「日米政府の協議を経て運用されるはずだが、どのような手続きで運用に至るのか想定が曖昧だ。市民には情報も不足している」と今回の訓練を批判した。


PS(2016年9月6日追加):腎臓病で透析しなければならない状態になると、生涯、その状態から抜け出せない人が多いが、透析は時間がかかって患者に不便である上、医療費もかかる。そのため、透析しなくてよい状態まで治せると、患者さんの福利が増す上に医療費負担が下がるのだが、現在、その方法は他者からの腎臓移植しかない。しかし、今後、3Dプリンターを使って自分の細胞で腎臓の補修部品を作ったり、「腎臓細胞シート」を貼って治すことができるようになったりすると、回復できる。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/352611
(佐賀新聞 2016年9月5日) 在宅医療の市民講座に300人 理解深めて
■多職種メンバー事例発表
 医師、ケアマネージャーら多職種のメンバー約300人でつくる「在宅ネット・さが」(満岡聰代表)の第9回市民公開講座が3日、佐賀市兵庫北のメートプラザであった。市民ら300人が事例発表や創作劇などを通し、在宅でのケアや医療について理解を深めた。南里泌尿器科医院(佐賀市)の南里正之副院長は現在、国内には32万人の透析患者がおり、高齢化が進んでいると指摘。治療の一つに自宅で行える腹膜透析を紹介した。介護が必要となった場合、血液透析では施設への受け入れが困難になる場合もあり、通院医療よりも在宅医療での腹膜透析が適していると説いた。また、矢ケ部医院(同)の矢ケ部伸也院長は「がん末期の自宅ケア」について40代男性の在宅医療を紹介。医師、看護師らのチームであたった医療や心理面のサポートなどを挙げ、佐賀でも在宅ケア・医療を支える施設が増えていると説明した。また、同ネットのメンバーによる「劇団くまくま」が創作劇を上演。在宅医療をテーマに佐賀弁で熱演、会場をわかせた。

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2015.10.3 教育の目的と、どこかおかしな文科省の教育観、文化 (2015年10月4日、6日、7日、9日、11日に追加あり)
     
  上  世界大学ランキング              高校生事件          中一男女事件
2015.10.1
西日本新聞
      
(1)保育園・幼稚園・小学校教育について
 唐津市は、*1-1のように、市町村合併後、幼稚園・保育園等の公立保育施設を統合・民営化し、認定こども園を開園するそうだ。民営化すると、保護者のニーズに素早く応えられたり、経営に長けていたりするが、経営のために保育士の待遇を悪くして幼児教育の質が落ちる場合もあるため、重要な時期に子どもに質の高い教育や保育を与えるためには、補助金でポイントを突いた配慮をする必要があろう。

 なお、三養基郡上峰町の上峰小では、*1-2のように、インターネットを使って1対1の英会話教育を始めたそうで、その先進性は大変よいと思うが、①どうせ時間と費用を使うなら、将来のためには、上の世界の上位校に進学してもひけをとらない標準英語を教えるべきである ②言葉は3歳くらいまでが最もよく身につくため、認定こども園時代から始めるのがよい(早くから外国語を教えても、母国語に悪影響を及ぼすことはない) などが、私のアドバイスだ。

(2)全国学力テストの取り扱いと文科省の学力軽視の不思議
 *2-1に、「全国学力テストにおける成績の扱いをめぐって混乱が続いている」と書かれているが、 国民の税金・時間・労力を使って全国学力テストを行う以上、学校毎の平均を公表して改善に繋げたり、生徒や保護者が学校を選択するための情報として活用させたりするのは重要なことである。

 そのため、文科省の「学校間の過度な競争が起きるから市町村別や学校別の成績は公表しない」という指導はおかしく、生徒の学力向上を軽視しすぎであり、「あえて一部の生徒を欠席させるような不正が行われる可能性がある」というのは、「だから非公表にする」ではなく「そういうルール違反や不正を禁止する」という形で解決すべきだ。

 しかし、佐賀県内市町の教育委員会は、*2-2のように、全国学力テストの結果について、武雄市、大町町、上峰町の3市町が学校別成績を公表し、学校に公表を指示する教委は8市町で、残る9市町は学校現場の判断に一任するそうだ。これは日本全国と比較するとよく取り組んでいる方だが、これでは、どこに住んでいても、また保護者の経済的状況が悪くても、公立校で十分に実態調査して改善された教育を受けられるという訳にはいかない。

 もちろん、私も、「個人の学力は個人戦であり、団体戦ではない」と考えているが、学校としての努力や基礎水準は、被験者の平均や標準偏差を連続的に比較していればわかるため、統計に表れた数値から言えることと言えないことを正確に分析するという条件で、公表して比較すべきだと考える。

 なお、武雄市は全国学力テストの学校別成績を公表しており、*2-3のように、市内の中学生が、こども会議で全中学校でいじめ追放に取り組むことを決めて6中学で「いじめ追放宣言」を作成するなど、自主性や積極性をもつまともな中学生が育っている。そして、よく言われる「“過度の学力競争(?)”は、性格を悪くする」などというのが虚偽であることを証明している。

(3)日本の大学教育について
 *3-1のように、各大学の教育環境、研究者間の評価、論文の引用数など5分野13項目の評価で決めた世界大学ランキングでは、上図のように、1位は米カリフォルニア工科大、英オックスフォード大、米スタンフォード大が続き、上位10校中9校を米英の大学が占めている。そして、日本の大学は、東大でもアジアで3位に留まるという結果になった。何故だろうか?

 私は、これには、数年しか在籍しない大学のみではなく、幼児教育・初等教育・中等教育での勉学の積み重ねによって作られた基礎学力による人材の裾野の広さや理数系を嫌う最近の日本の“変な文化”が影響していると考える。つまり、日本でしか通用しないおかしな発想で安易な方向への教育改革を続けて来た文科省の責任が大きいと思うのだ。

 そのような中、*3-2-1のように、佐賀大学は、芸術地域デザイン学部などの新学部を設置するとのことである。工学部を持つ大学が窯業を研究するからには、①より強い磁器 ②よりよい色を出せる釉薬 ③現代生活にあった機能 ④セラミック材料としての発展など、材料から用途までの再研究を期待する。

 また、「幼小連携教育」「小中連携教育」「IC教育」などを行うと、前倒しで効率的に学べることが増えるため、その中で効果的な教育を行うための教科書再編成もしなければならない。さらに、佐賀県は農林漁業が盛んな地域であるため、これを近代化するための機械の開発、品種改良、養殖技術、冷凍・保存技術など、*3-2-2に述べられている新しい理工学部や農学部に期待されるものは大きい。

 一方で、このようにして育てられた人材を雇用する企業集団である経団連は、*3-3のように、「文系と理系にまたがる『分野横断型の発想』で、様々な課題を解決できる人材が求められている」として、国立大学改革は国主導ではなく、学長のリーダーシップと大学の主体的な取り組みを最大限尊重するよう注文したそうで、その背景には、文科省の通知が「文系つぶし」と受けとられ、「経済界は文系はいらない、即戦力が欲しい」という報道もあったからだそうだ。しかし、即戦力か否かを問わず、論理性(主に数学・物理・近年は生物学によって養われる)や基礎知識のない人を選抜してマスプロ教育で次の知識を丸暗記させても、応用力が身につかず課題解決できる人材になれないため、私は、文系・理系を問わず、入試科目を増やし、特に文系は大学入学後の教育方法を見直すべきだと考えている。

(4)本当の人間性や希望を育まない教育は、何故、行われるのか?
 私は、*4-1の事件について、殺す人はもちろん悪いが、中学生の星野さんと平田さんの年齢なら、勉強・スポーツ・規則正しい生活など、やるべきことが多い筈なのに、午前1時10分~5時10分頃、京阪寝屋川市駅前の商店街を往来しており、自分の身を守ったり、将来に向かって夢や目標を持って努力したりする意識がなく、とても変だと思った。学校・家庭・地域は、彼らにどういう教育を与えていたのだろうか? 叱ってでも、よい生活習慣を身につけさせる教育はなかったのだろうか? また、*4-2のように、深夜に中学生の男女が街をうろついていても、帰宅を促す人がいたり、巡回の警官が注意したりしないというのも変である。

 また、これも驚いたのだが、*4-3では、高3の男子生徒が、前から自殺願望のあった高3の女子生徒(18歳)に頼まれて包丁で刺して殺害したそうだ。高3になっても、命の尊さをここまで勉強していないのだろうか? そして、その高3の女子生徒は「私は生きる価値のない人間だから死にたい」と日頃から言っていたそうだが、18歳で「生きる価値のない人間だ」と考えるとは、学校や家庭は、日頃から生徒に夢や希望やそれに基づく目標を持たせない誤った教育をしていたのではないのか? 表面的には優しそうに「気をつけて帰ってね」と声をかけても、生きる価値のない人間なら気をつけて帰る必要もなく、そう思わせるほど残酷なことはないのである。

<保育園・幼稚園・小学校教育>
*1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/229956
(佐賀新聞 2015年9月16日) 保育所民営化完了へ、唐津市・厳木3園統合
 唐津市は15日の市議会全員協議会で、厳木町や肥前町の公立保育施設を民営化する方針を示した。北波多と八幡町の保育所は指定管理者制度に移行し、市町村合併以降進めてきた公立保育所の統合・民営化はほぼ完了する。厳木町では中島保育園、岩屋保育園、厳木幼稚園の3園(園児数計104人)を統合し、2018年4月に認定こども園を開園する。運営する民間事業者は本年度中に公募で決める。新園は既存3施設の中間点にある厳木幼稚園敷地内に設置する計画で、土地は市が無償貸与し、建物は事業者の負担で建て替える。肥前町では、切木保育所(30人)と高串保育所(26人)の既存施設を活用し、それぞれ17年4月に民営化。建物は市の負担で改修し、無償貸与する。北波多の若竹保育所(16人)と八幡町の若葉保育所(8人)は地元との協議で指定管理者制度に移す。鎮西町の加唐島保育所(2人)は離島対策で公立のまま存続、市教委所管の唐津幼稚園(47人)は検討中。唐津市では10年に相知町、11年に肥前町の入野、納所、星賀で統合・民営化を進めてきた。市立の保育施設や幼稚園は少子化で、定員に占める園児数が38%にとどまっていることも背景にある。香月隆司保健福祉部長は「行政改革の一環ではあるが、民間の経営ノウハウを生かすことで、子育て支援がよりきめ細やかになると考えている」と話す。

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/227164
(佐賀新聞 2015年9月8日) 上峰小、ネットで英会話教育を開始、フィリピンの現地講師と
 三養基郡上峰町の上峰小で7日、インターネットを使う1対1の英会話教育が始まった。6年生100人がパソコン画面を通じてフィリピンの現地講師から英会話を楽しく学んだ。外国語活動の授業で15分間を会話に充てる。パソコン室で児童はヘッドセットマイクを付け、音声映像通信サービス「スカイプ」を利用し、フィリピン・マニラにいる講師と画面上でやりとりした。互いに誕生日や好きなスポーツなど自己紹介した。英語が好きという川崎晴加さん(12)は「先生はすごく優しくて分かりやすかった。1対1で話すのが楽くて、もっとおしゃべりしたい」と笑顔で語った。矢動丸壽之教育長は「子どもたちの笑顔が何より。上々の滑り出しと思う。マンツーマンで会話量を増やすことで、英語でのコミュニケーションに自信を付け、学習意欲の向上につながれば」と期待を寄せた。英会話教育は、「教科・英語」が2020年に始まるのを前に、語学習得に不可欠な会話量を確保し、国際的に活躍する人材育成につなげる狙い。オンライン英会話サービス事業を展開する「レアジョブ」(東京)に委託し、外国語活動の計20コマで実施する。地方創生関連の国の交付金を活用し事業費は195万円。委託期間は来年3月まで。

<全国学力テストの取扱いと学力の軽視>
*2-1:http://www.47news.jp/47topics/e/264590.php
(47ニュース、共同通信 2015年4月21日) 成績扱いめぐり混乱続き 全国学力テスト
 公表の在り方など、成績の扱いをめぐり、毎年のように混乱する全国学力テスト。今回も実施直前に、大阪府教育委員会が府立高入試への活用を決めるという、文部科学省にとって想定外の事態が発生し、同省は対応に苦慮している。1960年代に実施されていた学力テストは、学校間などの過度な競争が一因で中止になった。この教訓を踏まえ、文科省は2007年にテストを復活させた際、序列化を防ぐため、公表は都道府県別成績にとどめ、市町村別や学校別の成績は非公表とした。しかし、08年には大阪府の 橋下徹知事(当時)の要請で、府内の多くの市町が成績を明らかにした。その後も「学力向上には情報の開示が必要」「住民への説明責任を果たす」と、秋田県の 寺田典城知事(当時)や埼玉県教委、鳥取県教委、佐賀県武雄市教委などが市町村別、あるいは学校別の成績を相次いで公表してきた。結局、文科省は14年度調査から市町村教委が学校別成績を公表できるよう実施要領を改めたが、14年9月には静岡県の 川勝平太知事が、教委の同意を得ないまま市町別成績を明らかにした。文科省は実施要領にさらに手を加え、「結果の公表は教委の職務権限」とする、後手後手の対応を余儀なくされた。今回の実施に先立つ今月15日、大阪府教委は文科省を訪れ、成績の活用方針について説明した。「テスト本来の趣旨に反する恐れはない」と強調する府教委に、文科省は「あえて一部の生徒を欠席させるような不正が行われる可能性がある」と懸念を示している。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/222868
(佐賀新聞 2015年8月26日) 全国学テ学校別成績 武雄、大町、上峰が公表
 25日に発表された全国学力テストの結果について、佐賀県内の市町教育委員会で学校別の成績を公表するのは昨年度と同じ、武雄市、大町町、上峰町の3市町になる見通し。学校に公表を指示する教委は8市町で、今回から小城市とみやき町が加わった。残る9市町は学校現場の判断に一任している。みやき町教委は昨年度まで、学校別の成績公表を指示せず、学校からの問い合わせに対し、どの程度の表現が許されるか助言していたが、結果的に町内全校が公表していた。今回はあらかじめ、「詳細な数字を出さず、県平均と比べてどうかなど言葉で説明するよう指示している」。同様に、今回から学校に公表を指示している小城市教委も、昨年度は校長会の決定を受けて市内全校が公表した経緯があり、実態に即した対応を取った。教委として学校別成績を公表する武雄市など3市町は「地域と一緒に教育施策を進めているので、地域にもデータを公表している」と説明する。一方、教委として公表を指示しない9市町は「学力テストは『個人戦』であり、『団体戦』ではないという見解だ。自治体や学校といった集団で比較すべきではない」(吉野ケ里町)、「1学年数人の小規模校もあり、公表は個人の学力開示につながりかねない」(伊万里市)などの理由を挙げた。市町別の平均正答率の公表についても、教委で対応が分かれている。
■4月21日実施の2015年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の都道府県別結果や全問題と解答などの関連記事はウェブサイト「47NEWS」で公開しています。リンクはこちら。

*2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/227161
(佐賀新聞 2015年9月8日) 武雄市6中学「いじめ追放宣言」作成
 武雄市の中学生が市内6中学校で共有する「いじめ追放宣言」を作った。「心」「勇気」「絆」をキーワードに、思いやりや信頼でいじめに立ち向かう気持ちを表現した。6校の生徒会長が7日、小松政市長に宣言作成を報告した。市内の中学生は昨年夏のこども会議で、全中学校でいじめ追放に取り組むことを決め、1年間にわたって全校給食や集会での問題意識共有などの活動を続けてきた。
 宣言はその集大成で、今夏のこども会議での活動報告を経て、6校の生徒会長で内容を練った。各校が持ち寄った文案からキーワードを決め、思いやりの「心」、立ち向かう「勇気」、友情を深める「絆」の思いで言葉をつないだ。この日は武雄中3年で生徒会長の古川陸さん(15)が宣言を読み上げ、「宣言を実践し、いじめのない学校を築きます」と宣誓した。小松市長と浦郷究教育長が「学校の枠を超えて宣言を作ったこと、具体的な行動を起こしていることに感動した。つらい思いをする人がいなくなるよう、一緒に頑張っていこう」と呼び掛けた。宣言は各校に伝え、いじめをなくす活動を支えていく。
■いじめ追放宣言全文
一、「心」私たちは、相手の気持ちに寄り添い、思いやりのある行動をします。
一、「勇気」私たちは、正しい判断のもと見て見ぬふりをせず、いじめに立ち向かいます。
一、「絆」私たちは、お互いに認め合い友情を深め、信頼できる大切な仲間をつくります。

<大学>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11994476.html
(朝日新聞 2015年10月2日) 東大、アジア首位陥落 英誌、世界大学ランキング
 ランキングは各大学の教育環境、研究者間の評価、論文の引用数など5分野13項目の評価で決められた。ランキング1位は5年連続で米カリフォルニア工科大。英オックスフォード大、米スタンフォード大が続き、上位10校中9校を米英の大学が占めた。アジア2位は北京大(42位)、国内で東大に続いた京都大は昨年の59位から88位に沈み、アジア9位。日本から上位200校に入ったのは2校だけで、昨年入った東京工業大と大阪大、東北大は姿を消した。韓国トップのソウル大も昨年の50位から85位に後退した。同誌ランキング部門のフィル・ベイティ編集長は、「日本の苦戦と韓国の落胆が意味するところは、アジアの上位ランキングが流動的ということだ」と指摘した。(ロンドン=渡辺志帆)

*3-2-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/223990
(佐賀新聞 2015年8月29日) 佐賀大、新学部設置で会見
■芸術地域デザイン学部 「今後100年担う人材育成」
 佐賀大学は28日、来年4月に新設する芸術地域デザイン学部と教育学部、教職大学院の概要と入試要項を発表した。会見で佛淵孝夫学長は、県立専修学校の有田窯業大学校(4年制課程)を統合した芸術地域デザイン学部について、「(来年の)有田焼創業400年にぜひとも合わせたかった。今後の100年を担う人材を育てる」と意欲を語った。ドイツ、オランダなどの芸術系大学との連携構想も持ち上がっており、留学生の派遣・受け入れを検討している。新学部は文化教育学部を改組して「芸術地域デザイン学部」と「教育学部」に再編する。窯業大学校の過程を4年制化として、「有田セラミック分野」に組み込んだほか、大学院も経済研究科と合わせて「地域デザイン研究科」を設置した。教育学部も教員養成機能を強化し、「幼小連携教育」と「小中連携教育」の2コースを設け、地域の教育課題解決に特化した人材育成を目指す。教職大学院開設は長崎大と福岡教育大が先行しているが、甲斐今日子文化教育学部長は「準備段階から県教委と連携し、学校経営に優れた手腕を発揮した校長経験者や現役で大学院の教壇に立つ先生など、実務家教員をそろえたのが特色」と強調した。会見に先立ち、佛淵学長は県庁に山口祥義知事を訪ね、新学部設置を報告した。山口知事は「地方創生への取り組みや、佐賀の素材を磨き上げるという県が目指す方向性を象徴するもので期待するところが大きい」と述べた。

*3-2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/235826 (佐賀新聞 2015年10月3日) 学部改組、「教教分離」を促進 佐賀大学、宮崎学長が就任会見、地域貢献へ人材育成・研究
 佐賀大学の宮崎耕治新学長(66)は2日の就任会見で、国が進める大学改革に呼応した理系人材の育成強化に向け、理工学部や農学部の理系学部改組をはじめ、教員組織と教育組織を分離することで学部の枠を超えて柔軟な研究・教育プログラムを可能にする「教教分離」などに取り組む考えを示した。文部科学省は国立大学の機能強化と改革促進策として、重点的に取り組む教育や研究内容によって大学を3類型に分類する方針。宮崎学長はそれを念頭に「佐賀大学は地域のニーズに応えて地域貢献や課題解決に取り組む方向性で運営する」と強調。学部改組や教教分離はその具体策で「学生に佐賀で学んだことに誇りを持ち、大きく変容していく社会に対応できる人材を育成していく」と意気込みを示した。来年4月に新設する芸術地域デザイン学部については「総合大学としての強みを生かし、芸術家育成だけでなく、デザインのセンスを持つ、デジタルアートを手がけることができる企業人を育てて学生の就職率アップにもつなげたい」とした。大学運営全体の方針としても「芸術的感性豊かな、多様性に富む、グローバルな視点を持った知の拠点を目指す」と抱負を語った。宮崎学長は佐賀市生まれ。九州大学医学部卒業後、95年に旧佐賀医科大学教授に就任。2008~14年に同大学附属病院長。09年から先月末まで副学長も務めた。

*3-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11956921.html
(朝日新聞 2015年9月10日) 経団連、安易な文系見直し反対 国立大改革、文科省通知で声明
 経団連は声明のなかで「大学・大学院では、留学など様々な体験活動を通じ、文化や社会の多様性を理解することが重要」と指摘。その上で、文系と理系にまたがる「分野横断型の発想」で、様々な課題を解決できる人材が求められていると主張した。また、国立大学の改革は国主導ではなく「学長の強力なリーダーシップ」で進めるべきだとも指摘し、政府は大学の主体的な取り組みを「最大限尊重」するよう注文した。経団連が声明を出した背景には、文科省の通知が「文系つぶし」と受け止められ、それが「経団連の意向」との批判が広がっていることがある。就職活動中の学生らに誤解を与えかねないとの懸念があった。榊原定征会長は9日、記者団に「『経済界は文系はいらない、即戦力が欲しい』という報道もあったが、そうじゃない。即戦力(だけ)を期待しているのではないということを改めて発信したかった」と説明した。文科省は6月、教員養成系や人文社会系の学部と大学院について廃止や転換を検討するよう全国の国立大学に通知した。文系を「ねらい撃ち」にした理由について、文科省の担当者は専門分野が細かく分かれた人文社会系学部の「たこつぼ化」を挙げる。社会で必要な課題解決力とコミュニケーション力を身につける教育や、地域の就職先など学生の将来を見据えた教育が不十分だという。ただ、2千人以上の科学者でつくる日本学術会議が7月に「人文・社会科学の軽視は大学教育全体を底の浅いものにしかねない」との反対声明を出すなど、現場の反発も強まっていた。そもそも「廃止という言葉が強すぎた」(大学関係者)との指摘もある。文科省は、通知は大学に改善を促すのが目的だとしており、「積極的に対応してほしいとのメッセージだ」と火消しに追われる。下村博文文科相も7月下旬の記者会見で「人文社会科学を軽んじているのでなく、すぐに役立つ実学のみを重視しているのでもない」と理解を求めた。
◆キーワード
<組織見直し通知> 文部科学省が6月、全86校の国立大に通知を出し、学部や大学院といった組織を見直すよう求めた。特に「教員養成系」や「人文社会科学系」の学部・大学院について、「見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組む」とした。これが「文系軽視」と受け止められ、大学関係者らから反発された。国立大は6年ごとに「中期計画」を国に出す決まりで、通知は来年度から新計画となるのに合わせた措置だった。

<家庭・学校での指導>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11927413.html
(朝日新聞 2015年8月22日) 遺棄現場に容疑者の車 駐車場、遺体発見直前 大阪・中1殺害
 行動を共にしていた2人に何が起きたのか。容疑者との接点は――。大阪府寝屋川市の中学1年、星野凌斗(りょうと)さん(12)とみられる遺体が見つかってから一夜明けた22日。同級生の平田奈津美さん(13)への死体遺棄容疑で逮捕された山田浩二容疑者(45)が否認しているとされる中、地元では悲しみと憤り、やりきれない思いが広がった。平田さんの遺体が見つかった13日、防犯カメラは平田さんと星野さんとみられる男女2人と山田容疑者や同容疑者の軽ワゴン車を各所で、断続的に捉えていた。被害者2人の姿と容疑者の車は、早朝の寝屋川市の駅前商店街の極めて狭い範囲でほぼ同時刻に映っており、その後2人の消息が途絶えた。星野さんは12日午後9時ごろ、母親に「平田さんのところに行く」と言って外出。約30分後、星野さんと平田さんとみられる男女2人が自宅近くのコンビニエンスストアで目撃された。翌13日午前1時10分~5時10分ごろ、京阪寝屋川市駅前の商店街を行き来する様子が断続的に防犯カメラに映っていた。カメラが最後に2人を映した直後、山田容疑者のシルバーの軽ワゴン車が商店街付近を行き来する様子が捉えられていた。午前6時半ごろ、平田さんの携帯電話から友人に携帯電話の無料通信アプリ「LINE(ライン)」で「今から星野君と京都に行く」というメッセージが送られた。府警は容疑者が平田さんをいつ連れ去ったのか不明としつつ、この通信が平田さんによるものか、別人の「なりすまし」によるものか、慎重に捜査を進めている。午後0時40分ごろ、山田容疑者の車は寝屋川市駅から約20キロ南の大阪府柏原市内のコンビニエンスストアに姿を現した。店内で粘着テープ2本を購入する山田容疑者自身の姿も捉えられていた。寝屋川市駅の駅前駐輪場に駐輪していた星野さんの自転車は、メーターの料金などから午後3時ごろに止められたとみられている。これは星野さん自身が止めたのか。高槻市の駐車場で遺体で見つかった平田さんの死亡推定時刻は午後7時ごろ。約3時間半後の午後10時25分ごろ、高槻市に接する枚方市の国道170号沿いのガソリンスタンドに軽ワゴン車が入り、山田容疑者に似た男が給油していた。その約10分後、高槻市の駐車場に不審な車が入り、午後11時10分ごろに駐車場から出る車も防犯カメラは捉えていた。後に不審車の所有者は山田容疑者と特定された。午後11時25分ごろ、寝屋川市の山田容疑者の自宅マンションのエレベーターに、同容疑者が乗り込んでいる姿も映っていた。高槻市の駐車場で平田さんの遺体が見つかったのは、その約5分後だった。
■「容疑者、見たことない」 近所の人
 山田容疑者は、平田さんや星野さんの自宅がある地域から北へ3キロほど、2人の足取りが途絶えた京阪寝屋川市駅前からも2キロほどの所に住んでいた。京阪香里園駅に近い12階建てマンションの最上階。だが、住人らには、ほとんどその存在が知られていなかった。同じ12階に住む女性は「おばあさんが手押し車を押して出てきたところを見たことはあるが、若い男は見たことがない」と話す。マンションの1階の集合ポストには同居する両親と見られる名前が書かれており、その横に「山田浩二」と手書きされた小さなシールが貼られている。だが、管理人の女性は、70代より上の年齢の夫婦だけが住んでいると思っていたという。「40代の男なんて見たことがない」と驚いていた。近所の女性によると、容疑者宅には20~30年くらい前から高齢の夫婦が住んでいたという。だが、同じ12階に2年前から住む70代の男性は、容疑者と見られる男の姿を見たのは一度だけだという。7月下旬から8月上旬のある朝、12階の廊下で、容疑者宅に住む高齢の女性といっしょにいる中肉中背の40代くらいの男と顔を合わせた。女性に「息子さんですか」と尋ねると、「はい、そうです」と答えた。男に「おはようございます」とあいさつすると、愛想良く「おはようございます」と返ってきた。そのままエレベーターでいっしょに1階まで降りてマンションの玄関で別れたという。
■同級生「許せない」 平田さん葬儀
 寝屋川市内の斎場では、午前11時から平田さんの葬儀が営まれた。平田さん、星野さんと同じ市立中木田(なかきだ)中に通う生徒や保護者ら百数十人が1時間近く前から訪れ、約80人が座れる2階の会場はいっぱいになった。平田さんと星野さんの同級生の男子生徒(13)は参列する前、「こんなことになって本当に残念です。許せない」と硬い表情で語った。2人の同級生の女子生徒は「とてもいい友達。今は悲しみでいっぱいです」と声を振り絞り、中学2年生の女子生徒(13)は「ひどい。でも、容疑者が逮捕されて少し安心しました」と話していた。午前11時40分ごろ、棺(ひつぎ)が霊柩(れいきゅう)車に納められた。すすり泣く声やおえつが斎場前に響き、ハンカチで顔を覆う生徒らの姿が見られた。正午前の出棺では、参列者が手を合わせ、平田さんに最後の別れを告げた。葬儀後、平田さんの同級生の女子生徒は「悲しすぎて、今は何も話せません」と涙をこらえていた。平田さんと星野さんが通っていた中木田中学校。容疑者の逮捕から一夜明けた朝は門が閉じられ、ほとんど人影はなかった。事件以降、クラブ活動の多くも休止しており、生徒の姿はなく学校関係者が時折出入りするだけだった。
■柏原の遺棄現場、花手向ける人も
 星野さんとみられる遺体が見つかった大阪府柏原市青谷の竹やぶには、22日朝も青いシートが張られていた。複数の捜査員が頻繁に出入りを続け、警察犬とともに現場を回ったり、草刈り機を使って遺留品の有無を調べたりしていた。竹やぶから数十メートル離れたところには一般人の立ち入りを規制するロープが張られた。その外側には近隣住民や報道陣が集まり、捜査員の動きを見つめた。午前10時半ごろ、近くに住む男性(55)が花を手向けに訪れた。男性は「二度とこんな事件が起こらないようにと思い、花を捧げました」と話し、手を合わせた。午前11時前には、遺体が発見された竹やぶ内の畑を所有する女性(76)が警察官に伴われ、現場の確認をしていた。
■被害者と容疑者の足取り
【12日】
<午後6時ごろ>平田奈津美さんの在宅を家族が確認
<午後9時ごろ>星野凌斗さんが「平田さんのところに行く」と母親に言って外出
<午後9時半ごろ>2人とみられる男女が2人の自宅近くのコンビニエンスストア(大阪府寝屋川市)で目撃される
【13日】
<午前1時ごろ>平田さんの母親が帰宅。平田さんがいないことに気付く
<午前1時10分~5時10分ごろ>京阪寝屋川市駅前の商店街に設置された防犯カメラに2人とみられる男女の姿が映る
<午前5時すぎ>商店街付近の防犯カメラに山田浩二容疑者のワゴン車が行き来する様子が映る
<午前6時半ごろ>平田さんの携帯電話から友人にLINEで「今から星野君と京都に行く」というメッセージが送られる
<午後0時40分ごろ>山田容疑者が大阪府柏原市内のコンビニで粘着テープを購入
<午後3時ごろ>同駅前の駐輪場に星野さんの自転車が止められる
<午後7時ごろ>平田さんの死亡推定時刻(死因は窒息死)
<午後10時35分ごろ>大阪府高槻市内の駐車場にワゴン車が入る
<午後11時10分ごろ>ワゴン車が駐車場を出る
<午後11時25分ごろ>山田容疑者が自宅マンションに帰宅
<午後11時半ごろ>高槻市内の駐車場で平田さんの遺体が見つかる

*4-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11928841.html
(朝日新聞社説 2015年8月24日) 中1男女殺害 防ぐ手立てなかったか
 大阪府寝屋川市の中学1年の女子生徒(13)が殺された事件で、同市内の男(45)が死体遺棄容疑で逮捕された。一緒にいた男子生徒(12)も遺体で発見された。女子生徒は吹奏楽部でトロンボーンの練習に励んでいた。男子生徒は「人をたすける人になりたい」と小学校の卒業アルバムに書いていた。将来ある最愛の子を非道に奪われた家族の心痛は、察するに余りある。なぜ2人が狙われ、どんな手口で近づいたのか。同種の事件を繰り返さないためにも、警察は事件の解明に向け全力をあげてほしい。考えたいのは事件に巻きこまれる前に、被害に遭うのを防ぐ手立てはなかったかだ。防犯カメラには、事件前、2人が商店街を歩く姿が映っていた。深夜とはいえ、人通りも少しはあった。まだ幼さが残る男女だ。長時間、街をうろつく姿に、帰宅を促したり警察に連絡したりする大人がいなかったのか、悔やまれる。昔は面倒見のよい大人が地域にいた。人間関係が希薄になり、他人への干渉を避ける風潮が強まっていないだろうか。夏休みになると子どもは開放的になり、夜間の外出や、普段とは異なる行動パターンをとることも多くなる。学校の目も届きにくい。それだけ犯罪被害に遭う危険性が高まることを、大人がしっかり認識したい。身を守るすべを、子どもにも教えておくことが大切だ。昨年9月に小学校1年の女児が殺害された神戸市では、市教委が夏休み前、全小中学生に防犯チェックシートを配った。車の中から道を聞かれたら「車と距離を取る」「危険を感じたら車の進行方向と反対へ逃げる」など、具体事例ごとに家庭で話し合える内容だ。小学生向けの防犯対策はあっても、中学生になった途端、保護者も地域も油断しがちだ。警察庁によると、中学生の犯罪被害者数は昨年までの10年間、小学生を上回っている。最近は携帯電話を通じて犯罪に巻き込まれることも増えている。教育委員会や学校は、繰り返し注意を呼びかけてほしい。今回の捜査では、犯行時間の絞り込みや容疑車両の特定に、防犯カメラの映像が有力なツールとなった。一方、犯罪抑止の面では役割を果たせなかったともいえる。社会がどうカメラを使いこなすか、今後のカメラの設置のあり方を考える上でも、一つのきっかけになろう。

*4-3:http://digital.asahi.com/articles/ASH9Y6DVQH9YOIPE02W.html
(朝日新聞 2015年9月29日) 高3男子「頼まれた」 三重女子高生殺害容疑で逮捕
 三重県伊勢市の雑木林で、市内の高校に通う3年生の波田泉有(はだみう)さん(18)=同県松阪市=を包丁で刺して殺害したとして、県警は29日、同じ高校に通う3年生の男子生徒(18)=伊勢市=を殺人容疑で逮捕し、発表した。容疑を認め、「(被害者に殺害を)頼まれた。包丁は自宅から持ってきた」と説明しているといい、県警は証言や状況などから嘱託殺人の可能性もあるとみて当時の状況を調べている。県警によると、男子生徒は28日午後5時10分ごろ、伊勢市尾上町(おのえちょう)の「虎尾山(とらおやま)」の記念碑付近で、女子生徒の左胸を包丁のような刃物で刺して殺した疑いがある。午後9時45分ごろ、女子生徒の知人から119番通報があり、駆けつけた警察官が遺体を確認した。司法解剖の結果、死因は失血死だった。「(女子生徒に殺害を)頼まれた」。三重県警に殺人容疑で逮捕された高校3年の男子生徒(18)は、そう説明したという。自殺願望を口にしていたとされる高校3年の女子生徒と、男子生徒は28日も同じ同県伊勢市内の高校に通っていた。下校後の2人の足取りは分かっていない。女子生徒と同じ中学校の柔道部だったという少年は、高校に進んだ女子生徒が「自殺したい」と漏らしていると人づてに聞いた。別の少年によると、昨年、女子生徒は同級生の男子と川に飛び込もうとし、止められた。今年7月初めには同じ男子と行方が分からなくなり、5日後に見つかったこともあったという。
 28日午後3時半、体育祭の練習が終わり、高校を出る女子生徒に、教頭が「気をつけて帰ってね」と声をかけると、にこっと笑ってこたえたという。殺害時刻は午後5時すぎとされる。「どこにいるの」。夜になり、女子生徒や、逮捕された男子生徒との連絡がとれないことを不安に思った友人らが、LINEを使って呼びかけた。県警によると、男子生徒がLINEに応じて居場所を伝え、同市内の現場に向かった友人らが、女子生徒が刺されているのを見つけた。同じ高校の生徒は、男子生徒が「殺してって言われたから殺した」と友人らに話したと聞いたという。女子生徒は、同県松阪市の住宅街に並ぶアパートの一室に暮らしていた。近くの住民は「近所のつながりはほとんどない」。女子生徒の姉は、取材に「私からお話しすることはできません」と涙声で話した。


PS(2015年10月4日):*5に書かれているとおり、将来、多くの仕事が自動化されるというのは本当だ。また、その時でも雇用されるためには、人間はロボットにはできないことができる必要がある。そして、変化に対応できる問題解決能力は“想像力”ではなく、広い知識と経験に裏付けられ、将来の見通しを持った創造力に依る。しかし、私が言うと「広い知識と経験に裏付けられ将来の見通しを持った創造力」ではなく、「空想に基づく想像力」と過小評価したがる人が少なからずおり、これはまさにジェンダー(社会的に作られた性差)に起因する女性蔑視で、私に対しては、的外れで失礼だ
 なお、「“生きる力”が大事」と言う人も多いが、この言葉を何回唱えても何の解決にもならず(問題解決できず)、 「“生きる力”を構成する要素は何で、それはどうやって育まれるのか」を分析して、教育や職場のオン・ザ・ジョブ・トレーニングでそれを育む必要があるのである(これは理系の発想か・・)。

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/236085
(佐賀新聞 2015年10月4日) 子どもに問題解決力を 佐賀市で全国教育大会
 全国教育大会佐賀大会が3日、佐賀市文化会館で開かれ、今後の教育の在り方を探った。人工知能とロボット工学の研究で仕事が変わる将来を見据え、子どもをどう育てるかを議論。変化に対応する想像力、問題解決能力などを身に付ける重要性を確認した。シンポジウムで佐賀大文化教育学部の上野景三教授は「10~20年後に47%の仕事が自動化される」とした教育再生実行会議の将来予測を紹介。弁護士や冠婚葬祭業など人が関わることで希少価値を生む仕事はなくならないとし、社会の流動化に耐える「想像的思考力」を育むよう提言した。多久市の中川正博教育長は読書離れが進み、想像力が低下傾向にあると指摘し、読書の習慣化を求めた。佐賀市PTA協議会元副会長の江頭和恵さんは、子どもを地域行事に参加させた体験を基に、「出番や役割を与えて認めると、自信につながる」とした。コーディネーターの富吉賢太郎佐賀新聞社編集主幹は「教師も知識を教えるだけでは、機械に取って代わられる。生きる力こそ大事で、栄養豊かな時代の空気をつくるのは大人の責任」とまとめた。大会は日本教育会が開き40回目。県内では初めての開催で、全国の学校関係者約880人が参加した。


PS(2015年10月6日追加):確かに、そのことが好きで上手な人から習うと、面白かったり興味がわいたりするので、服飾専門学校生が小学校や学童保育でミシンを使った縫物を教えるというのは、よいアイデアだ。自分や家族が使うアップリケ付の手提げ袋を作ったりすると、さらに面白いだろう。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/236443
(佐賀新聞 2015年10月5日) 専門学校生が先生役 うつぼ木小5年生、ミシン上手に
 唐津市桜馬場の服飾専門学校「モードリゲル」の高等課程1年生5人が1日、同市厳木町のうつぼ木小を訪れ、本年度からミシンを習い始めたばかりの5年生児童15人の“先生役”を務めた。この日はクリスマスツリーをあしらった壁掛けづくりに挑戦した。児童たちは、緑と茶色のフェルトでかたどった「ツリー」と「植木鉢」をミシンで布に丁寧に縫いつけた後、色とりどりのデコレーションで飾りつけた。専門学校生は作業の様子を見守りながら、手本を見せたり、アドバイスした。小川珠雅君(10)は「角を縫う時にまち針で止めて外れないようにすることを教えてもらった。教え方が優しくて覚えやすかったし、上手にできて良かった」と話していた。専門学校生の小学校訪問は今回が初めてで、本年度中に6年生にもバッグや小物入れづくりを指導する予定。モードリゲルの前田洋子教諭は「子どもたちがものづくりに興味を持ってくれたら」と話していた。


PS(2015年10月7日追加):TPPによって大きな経済圏ができれば、大まかに言って、その経済圏の中では、これまで国内でやっていたのと同じ条件の競争を行わなければならない。そのため、その経済圏内での競争は激しくなり、これまでよりも比較優位の製品に特化した産業への産業の選別が行われることになるが、私は、国として、それではよくないと思っている。何故なら、環境、安全、食料自給率、産業構造、社会保障等の目的で、規制・税制・保険等によって国毎に行ってきた政策が禁止され、国が行うべき設計をTPP経済圏の市場に任せて放棄することになるからだ。さらに、日本の方が比較優位が高いとされる自動車も、20年以上前から現地生産が進んでいるため、さほど輸出増に繋がるとは考えられず、逆に環境規制の強化によって日本車の進歩を進めてきた規制は経済圏の規制に揃えられる。なお、伊万里焼・有田焼については、今まで関税が高いことが原因で輸出していなかったわけではないため、輸出拡大には、相手のニーズをとらえる製品を作って輸出するという意志を持って販売戦略を展開すればよいが(中国はじめTPP圏外でも売れそうだ)、農業については、比較優位がないため衰退する可能性があり、それで食料自給率や日本の基盤が保てるかどうかが重要な問題なのである。(*これを書くには、経済学、経営学、税制、環境、生物学、歴史などの知識と数学で培われた論理性を使っている)

*7:http://qbiz.jp/article/72264/1/
(西日本新聞 2015年10月7日) 九州の産業界「海外展開に有利」 TPP、中小の利点は不透明
 TPP大筋合意を受け、九州を含む産業界では、関税撤廃などを通じて海外展開の追い風になると歓迎ムードが広がった。影響は広範囲に及ぶが、政府が強調する「中小企業への利点」はまだ読みきれない。日本自動車工業会の池史彦会長(ホンダ会長)は「米国やカナダなど重要な市場との経済連携の枠組みが築かれる」と評価。九州でも、トヨタ自動車九州(福岡県宮若市)は海外向けが約9割で「トヨタ自動車本体を通じて米国などTPP参加国の大半に輸出している」としており、関税撤廃は好材料だ。海外向け生産台数が増えれば部品の需要も増えるため、トヨタ九州などと取引がある戸畑ターレット工作所(北九州市)は「どれだけ生産増になるかは読めないが、プラスには働くはず」と期待する。ただ完成車の関税撤廃は米国(2・5%)が25年後、カナダ(6・1%)が5年後などで、目先の効果は見込めない。即時撤廃となる部品の関税にしても「海外での現地生産が一般化しているので、輸出の増加にはつながりにくい」(部品メーカー)。どれだけ恩恵が広がるかは不透明だ。
   ■    ■
 日本、九州の強みを伸ばせる分野は他にもある。安倍晋三首相は6日の記者会見で、日本の伝統工芸品の輸出例として九州の陶芸品を挙げた。伊万里焼の窯元、畑萬陶苑(佐賀県伊万里市)の畑石真嗣社長は現在、フランスに輸出しており、TPP参加国との取引はないが「今後関税なしで取引できるようになれば販路拡大につながるかもしれない」と期待を示した。日本食や映像といったコンテンツ産業などの輸出強化を掲げる九州経済連合会の麻生泰会長は「今回の合意は輸出拡大の好機。九経連としても輸出拡大に向けた環境づくりを最重要課題として取り組む」とした。TPPには、海外進出の際にトラブルとなることが多い知的財産の保護や外資規制の緩和も盛り込まれた。北部九州でアジア進出支援を手掛ける弁護士は「東南アジアなどは不透明な法の運用がまだ多く、TPP発効後に少しでも改善すれば中小企業の進出リスクが減る」と期待する。輸入牛肉などの関税が引き下げられるため、外食関連業界も注目。西日本を中心に業務用食材を卸販売するトーホー(神戸市)は「外食向けに販売している牛肉や豚肉の価格が下がる可能性はある」と話した。一方、国への注文も相次いだ。福岡商工会議所の礒山誠二会頭は合意を歓迎した上で「国には、中小企業の国際競争力強化やTPPがもたらす地域経済への影響を克服するための対策を求める」と要望。福岡市を訪れていた日本商工会議所の三村明夫会頭も6日の記者会見で「政府はこれまで交渉の詳細を明かさなかったが、今後は詳細を中小企業に周知徹底させることが重要だ」と指摘した。


PS(2015年10月9日追加):民主主義の日本国憲法下では、議員は主権者である国民が自らの代表として選んだ人であるため、選ばれた政治家の行動結果については国民が責任を持たなければならない。しかし、実際には、官僚(もともと天皇の官吏)が必ずしも国民のためにはならない発想で作った政策を、国会議員が「与党の責任」として決めている形式的民主主義になっていることが多く、それでも国民は、補助金等でカムフラージュされれば判断に迷ってしまう。なお、形式的民主主義の下では、国民を「依らしむべし、知らしむべからず」の状態にしておけば監視機能を発揮できないため、スポーツや仕事に没頭して政治のことは考えない国民が最も都合がよいのである。
 そのため、主権者である国民は決してそうであってはならず、*8-1のように、主権者教育で自ら考える有権者を育てるのは大切なことだ。また、「政治的中立」については、身近なテーマ(例えば「保育」「医療・介護」「環境」「地域振興」など)について、事実関係やそれに関する与党と野党の見解を記載した資料を配った上で、考え方を教え、高校生自身がディスカッションしながら自分たちで考えるのがよいと思う。なお、選挙権が18歳以上に引き下げられるのであれば、多様な考え方の人がいるのを理解した上で、自分自身はどう判断するのかを自ら考える力も必要である。
 しかし、*8-2のように、男性政治家のみが、ばりばり活躍する政治家であるかのように表現するのは、高校生にジェンダー(社会的に作られた性差別)に基づいた女性蔑視を擦りこむことになり、国会議事堂の4つ目の台座には本当に実績ある女性首相を立てたい時代の教科書として70年古いと思う。

*8-1:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/237732
(佐賀新聞 2015年10月9日) 主権者教育、自ら考える有権者を
 選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられたことを受け、総務省と文部科学省は高校生の主権者教育に活用する副教材を作成した。18歳選挙権は来年夏の参院選で初めて適用される見通しで、現在の高校3年生全員と2年生の一部が有権者になる。学校現場に負担はかかるが、政治、社会への関心を高める契機にしたい。主権者教育の一環として新たに作られた副教材「私たちが拓く日本の未来」は、12月までに全ての高校生に配布される。約100ページで、解説編、実践編、参考編の3部構成。「公民」などの授業での活用が想定されている。総務、文科両省のホームページでも公開されているが、全体としてはよく編集されていると感じた。解説編では、政治に参加する意義や選挙、政治の仕組みなど基本的な事項が分かりやすく説明されており、大人が読んでも役立つ内容になっている。あらためて確認する意味でも一度、目を通してはどうだろうか。昨年12月の衆院選の投票率は全体で52・66%。年代別(抽出)にみると、最も高い60代が68・28%に対し、20代は32・58%で、2倍以上の差がある。これを人口推計に基づいて試算すると、60代の投票数は1240万票、20代は420万票と3倍近い開きになる。副教材ではこうしたデータも示し、若者の投票率が低くなると、若者の声が政治に届きにくくなり、その結果、若者に向けた政策が実現しにくくなったり、実現するのに時間を要したりする可能性があると指摘している。政治に緊張感をもたらすのは有権者の「一票」であり、新たな有権者の誕生が若い世代の投票率アップのきっかけになればいい。副教材は、実践編が全体の6割を占め、話し合いや討論の手法から模擬選挙、請願書作成、模擬議会などまで盛り込まれている。通常の授業や就職活動、大学受験などもあり、学校現場で全てを実践するのは難しいだろうが、有権者となる下地づくりに向けて前向きな取り組みを期待したい。県内では、北陵高校が生徒会長選挙の機会を活用して、実際の選挙規定に沿った模擬投票を実施。鳥栖青年会議所も模擬選挙の体験会を企画した。こうした試みが広がれば、選挙や政治がより身近に感じられるようになるだろう。一方で、教員向けの指導資料では政治的中立の確保に留意するよう強調され、「学校現場が萎縮するのではないか」という声も聞かれる。ただ、常識を持って対応すればよく、過剰に意識する必要はないのではないか。「政治的中立」という立場も含めて学習の材料にすればいい。学校での学習を基に、日常的に新聞やテレビなどで情報を得て、自ら考える有権者を育てていきたい。

*8-2:http://hi.fnshr.info/2015/10/04/hiraku-mirai/
高校生向けの有権者教育の副教材に載っている政治家は男性だけ
●概要
 文部科学省が作成・公開した『私たちが拓く日本の未来』という高校生向けの有権者教育の副教材に載せられている挿絵で、政治家はすべて男性として描かれている。
<中略>
●描かれたのは男性政治家のみ
 この『私たちが拓く日本の未来』には、挿絵がいくつか載せられている。挿絵が載せられているのは、読者が読みやすくするためだろう。挿絵の中で、政治家を描いたものが4つある。この4つの挿絵のすべてで政治家は男性として描かれている。「議員の活動」という節に書かれたイラスト。このイラストの主役になっている国会議員は男性である。右上部分に書かれている政党の会議や国会の委員会のイラストには女性議員らしい人も描かれているが、あまり目立たない。日本は国際的に見て女性議員が少ない。このことを問題視している人もいる。そういった中で、政治家の挿絵として男性しか載せなかったのは、非難される可能性がある。たかが挿絵であると言えばそうなのだが、有権者教育ということを考えると、1つぐらい女性政治家をメインにした挿絵があった方がよかったかもしれない。せっかくの副教材なので、こういったことで画竜点睛を欠いたことは残念である。


PS(2015年10月11日追加): *9では、40代以上の関心は「医療・福祉」が1位であることまで含めて、主権者は自分と家族に関係のある身近な課題解決(政策)に関心が高いことがわかる。そのため、私は、まず関心を持つ人が集まって多面的に検討し、それを全体で議論して進めれば、それによって本当に必要とされている財やサービスが提供されることになり、本物の経済成長や行財政改革にも繋がると考える。にもかかわらず、これまで、保育・教育・介護等の分野が疎かにされてきたのは、それを担当しているのが家庭にいる女性で、為政者や意思決定権者は家庭のニーズを知らない男性だったため、本当のニーズを把握できなかった(もしくは把握しようとしなかった)からだろう。

          
  2015.10.11佐賀新聞  2015.1.21日経新聞  2015.1.29西日本新聞
       *9より
*9:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/238406 (佐賀新聞 2015年10月11日) 力を入れてほしい分野 若い世代は「少子化」「教育」、2015県民世論調査
 県政で力を入れてほしい分野(二つまで回答)は、「医療・福祉」が36・0%と4年連続で最も多かった。「企業誘致・産業」(28・0%)、「少子化対策」(25・8%)、「景気・雇用」(25・5%)の順に続く。年代別では、40代以上の世代がいずれも「医療・福祉」が1位を占めた。20代は「少子化対策」(40・5%)、30代は「教育」(36・9%)がトップと、若い世代は身近な課題解決を求める傾向が見られた。職業別では、主婦や公務員、団体職員で「医療・福祉」の優先順位が高く、学生と公務員では「教育」を求める声が強い。「企業誘致」は会社員や商工業・自営、学生で多かった。地域別では、第一次産業が盛んな藤津郡で「農林漁業」が71・4%、神埼郡は「景気・雇用」が63・6%と突出している。鳥栖市は「景気・雇用」が比較的低い代わりに、「行財政改革」が高率だった。

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続き▽
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2015.7.24 教育、保育、福祉について (2015年7月25、26、28、30日、8月19日に追加あり)
   
                      2015.6.7佐賀新聞

(1)少子化は誰の責任か、また、自治体はどう対応すべきか
 *1-1のように、国は認可保育所を希望したのに入所できなくても、①東京都の認証保育所などの保育事業を利用 ②幼稚園の一時預かり等を利用 ③保護者が育休中の場合は待機に含めるかどうか自治体が判断 としており、①〜③を「隠れ待機児童」とみなして集計すると、「認可保育所に入れない待機児童数が多かった98市区町村で、集計されていない『隠れ待機児童』は、4月1日現在、少なくとも約1万3千人に上る」とされる。そして、質の良い保育所に入れるかどうかは「宝くじ」のようらしく、現在、都市部の自治体では待機児童の解消に力を入れているが、未だすべての子どもに満足な居場所を作ることができない状態で、認可外の保育施設を利用すると、一人当たり月に10万円もかかるそうだ。

 しかし、保育施設の充実を最初に訴えた女性は、既にひ孫を持つ年齢であり、最初に学童保育の充実を訴えた女性は、既に孫が中学校に入る年齢である。つまり、働く女性の声を無視して、女性の変化と家族のニーズに合った政策を進めてこなかった政治や行政の対応の遅さが、必要以上に少子化を進め、女性にとっても不幸な現象を招いた。そのため、少子化を「女性や家族の頑張り不足」のせいにするのは、とんでもない責任転嫁である。

 なお、地方では、*1-2のように、来年3月の国公立中学卒業見込み者が前年度より減り、全日制高校の募集定員を40人減らす自治体も現れた。もちろん、認可保育所の待ち行列はなく、保育環境も都会よりよい。そのため、地方では、教育の質を上げて充実させれば、企業誘致や移住が進むと思われる。

(2)教育の充実のうちの学力について
 *2-1に、「①教育関係者、保護者、有識者で構成される佐賀県学力向上対策検証・改善委員会が開かれた」「②委員から『情報収集力や表現力など求められる学力の質が変わってきた』等の意見が出た」「③テストでは、国語は条件に合わせて自分の考えをまとめて書く問題の正答率が低い」「④算数・数学も考え方や理由を説明する記述式の問題の正答率が伸びなかった」「⑤理科は観察、実験の技能や考察に関する問題に苦戦した」「⑥委員から『文章力を磨けばいいという問題ではなく、自分の考えを持っていないと対応できない』などの声が上がった」「⑦上野委員長は『全国学力テストで求められる学力と、教師がこれまで身に付けさせようとしてきた学力にズレがあるのではないか。情報収集力や表現力といった従来と質の違う学力を育む手だてが必要だ』と指摘した」などが記載されている。

 私は、①のように、まじめに教育を考えているだけでも佐賀県は立派だと思うが、②③④⑤⑥については、求められる知識や理論は増えることはあっても減ることはなく、パソコンやインターネットの普及では情報収集のツールが増えただけであり、表現力は表現すべき内容があって初めてものを言うため、小中高では、正しく自分の考えを育むための基礎的知識や論理力を学び、人としての内容を深めるべきだと考えている。そのため、⑦については、「今までどういう教育を進めていたのか?」と少し疑問に思った。

 しかし、パソコンやインターネットの普及で情報収集のツールが増えたというのは、実はすごいことなのだ。何故なら、小中高の生徒でも、国会中継を視聴でき、日本弁護士連合会の意見書を読むこともでき、国内外の政府の公開文書や外国人の論文も入手して読むことができ、どの地域にいても、最前線の情報を入手して考えることが可能になったからである。そのため、企業や大学を退職した人など、これまで最前線で活躍してきた人を小中高に顧問等として採用すれば、質が高くて面白い授業を行い、生徒に新しい見地を開かせる役に立つだろう。

 唐津市教育委員会は、*2-2のように、学力向上策として、教師による一斉指導から、子どもの意見交換の時間を増やし、自ら考える力を伸ばす「アクティブ・ラーニング」のモデル校を増やしているそうだ。これは、生徒に参加意識を醸成するのでよいと書かれているが、私は、教師が教えても、質問や反対意見を歓迎して受け付け、考えさせる指導をすれば、参加意識を高めることができるし、それが本当に必要なことだと考えている。

 一方、児童が授業の進行役を務めて意見交換を行うのは、児童には必要な知識がなく無駄が多いため、私は、特定の科目や特定の日にのみ、アクティブなディスカッションやアクティブなプレゼンテーションを指導するようにした方がよいと考える。唐松地区では、4月の全国学力テストで全学年・全教科が県平均を下回ったそうだが、このような授業方法では学力の低い生徒の参加意欲は高まるかもしれないが、リーダーとなる生徒は先生の代わりまでしなければならず無駄な時間が増えるため、学力の高い生徒の成績が下がって平均が下がると考えられるのだ。また、唐松地区は家庭学習する児童生徒が少ないという結果は、親も含めた意識と習慣が問題なのだろう。

(3)道徳について
 *3-1のように、文科省が教科書検定基準案を作り、「考える道徳」を重視して、「生命の尊厳」「正直・誠実」「公正」「礼儀」「家族愛」「伝統文化」「伝記」「愛国心」「言語活動」「体験学習」「スポーツ」などの幅広いキーワードで、これを進めるそうだ。しかし、これらは、これまでも国語、生物、総合学習、クラブ活動などで、折にふれてやってきたものではないのか?

 また、「一方的な価値観の押しつけではなく、子どもが自分で考える授業になるよう、教材の面から後押しする」と何度も書かれているが、成人ではない未発達の子どもが自分で考えられるようになるまでは、「生命の尊厳」「正直・誠実」「礼儀」「公正」「家族愛(いろいろな形があることも教えてよい)」「愛国心(批判したから愛国心がないわけではなく、愛国心だけでは足りないことも教えるべき)」等の価値観を一方的に押しつけることは教育の一部であり、それらをすべて自分で考えることのできる人はいない。にもかかわらず、それを曖昧にしてきたのが猟奇的犯罪・オレオレ詐欺・いじめ等、人権侵害の多い我が国の現在に至った理由の一つであり、子どものうちに叩き込んでおかなければならない価値感もあるのだ。

 しかし、*3-2のように、現在の「道徳の時間」では、「決まりを守る」などを紹介した副教材が使われてきたが、この副教材の使用に積極的でない教員もいたそうだ。確かに、決まりはどうにでも作れるので、時代遅れだったり不当だったりすることもあり、「決まりを守る」だけではなく、「その決まりは適切か」とか「では、どういう決まりにすればよいか」などを皆で議論して考え、答えを導くのもよい教育である。

<問題1(歴史・政治)>*3-3のように、ロシアの首相が北方領土を訪問する意向を示し、「島に軍事インフラを整備する」という考えを示した。北方領土は、北海道の人にとっては占領されたふるさとで目の前にある島だが、日本が周辺国すべてを見下して米国のみに頼ったツケが廻ってきたようだ。中学生以上の人は(小学生でも可)、どうすればよいかについて考えて下さい。
 
<問題2(道徳・経済)>*3-4のように、日本人の家計の金融資産は1700兆円を超え、安全資産の代表である現金と預金の比率が52%と過半だそうだ。家計の金融資産は個人が老後に備えて蓄えてきたものであるため、60歳以上に偏在しているのは当然で失うわけにいかないものであるにもかかわらず、日本経済を活性化させるという名目で元本が減るリスクのある金融資産を薦めるのは道徳的か? また、日本国憲法に照らして、人の老後の暮らしや人権、幸福を大切にしているだろうか? さらに、インフレ経済にして個人資金をリスク資産に引きつけ、市場の知識すらない人の資金が市場に流れる仕組みを整えることは適切か? 仮に適切な場合があるとすれば、それはどういう場合か?

 上の<問題1>と<問題2>は、生徒にとって簡単に答えが出るものではないが、道徳を含む多くの考慮すべき要素を含むため、多面的に調べてディスカッションし、考えを進めるトレーニングになるだろう。しかし、問題は、教える筈の大人が正解に近いものを作れるか否かである。

(4)ICTを使った教育の事例
 *4-1のように、佐賀県は、タブレット端末や電子黒板など佐賀県が推進しているICT(情報通信技術)教育について、ICT教育改善検討委で学校現場の意見を集約している点で進んでいる。タブレット端末や電子黒板は、先生が書いた黒板を写すという無駄な作業がなくなるのでよいと思うが、タブレット端末やパソコンでは紙上のように思考や論理構成をしにくい。そのため、タブレット端末や電子黒板は、それ自体が学習というよりは、参考書、ノート、鉛筆、黒板のような文房具にすぎないと考えるべきである。

 しかし、優秀な文房具であり、どんな地域に住んでいても、オリジナルの文書や専門家の意見に容易にアクセスして、ものを考えることができるツールだ。そのため、現場の先生には、使いこなし方を勉強していただき、授業に活かしてもらいたい。

 例えば、*4-2の佐賀西高の中国・東アジア史はよいが、「東アジアの国際体制は何が良かったのか」だけではなく、「何がなかったか」も学んで欲しい。さらに、世界史と日本史の年表を並べて学ぶことにより、日本史に書かれていなかった事実も浮かび上がってくるため、それは何かを徹底して追及すれば、歴史の流れを理解した上ですべてを同時に覚えられる。なお、私は、タブレット端末だからといってアニメーション化するのは感心せず、むしろ韓国国立中央博物館と正倉院の宝物の比較などをしてもらいたい。

 また、*4-3のように、致遠館高校では、「自分のお気に入りの物」をテーマに、生徒1人ひとりが英語でスピーチしたそうだが、私は、「英語のスピーチだから内容は簡単でよい(それでは内容が面白くない)」とは思わない。そうではなく、日本国憲法の英文オリジナルと日本語訳を読み比べて違いを指摘したり、生命科学やロボット工学や宇宙に関する英語論文を読んで解説したりなど、内容も充実した方が面白いし、将来の役にも立つ。何故なら、次世代の研究者や社会で活躍する人は、当然のコミュニケーションとして、そのような内容を英語と日本語の両方で話せることが要求されるからである。

<現在の状況>
*1-1:http://qbiz.jp/article/66602/1/
(西日本新聞 2015年7月12日) 「隠れ」待機児童1万3千人 集計方法あいまい
 認可保育所に入れない待機児童数が昨春多かった98市区町村で、「保護者が育児休業中」などを理由に集計されていない「隠れ待機児童」が4月1日現在、少なくとも約1万3千人に上ることが、共同通信の調査で分かった。自治体が待機児童として集計したのは約1万5千人(昨年4月から11%減)。国が自治体に示した基準では、認可保育所を希望したのに入所できなくても、(1)東京都の認証保育所など自治体単独の保育事業を利用(2)幼稚園の一時預かりなどを利用−の場合には、待機児童として集計しない。(3)保護者が育休中の場合は、待機児童に含めるかどうか自治体が判断できる。調査では(1)〜(3)を「隠れ待機児童」とみなした。女性の活躍に不可欠な待機児童の解消問題。国は4月から始まった保育の受け皿を拡充する「子ども・子育て支援新制度」を待機児童ゼロへの切り札にしたい考えだが、集計方法はあいまいで、自治体からは「机上の数字」と冷ややかな声も漏れる。子育てのニーズは多様で悩みは尽きない。
▽宝くじ
 「いつになったら預け先が決まるのか。不安が消えない」。通信設備会社に勤める女性(35)=東京都目黒区=は3月末までの育児休業を延長した。4月から娘(1)を区の認可保育所に入所させようとしたが、申し込みをした施設はいずれも空きがなかったからだ。認可保育所は競争が激しく、難しいと知っていた。さらに都が独自に設置する認証保育所7カ所にも申し込んだが、数十人待ちが当たり前。待機リストが100人以上のところもあり、宝くじに当たるようなものだ。「新しい制度が始まると聞いて期待したけれど何も変わっていない」。マンションを売却し、他の地域へ引っ越すことも考え始めた。目黒区ではこの女性のようなケースを待機児童にカウントしているが、自治体によって対応にはばらつきがある。東京都中野区の女性(31)も認可保育所を諦められずにいる1人だ。昨年4月に当時0歳だった娘を入所させたかったがかなわず、ビルの1階にある認証保育所へ。保育料は月6万3千円。昨年末に再び認可保育所に希望を出したが、だめだった。「広々とした園庭で遊ばせたい」。これからも申し込みを続ける。
▽居場所
 都市部の自治体などは待機児童の解消に力を入れている。共同通信の調査では、昨年4月時点で人数が多かった98市区町村のうち、約6割が今年4月時点で減少し、川崎、大津など4市はゼロになった。保育施設の整備などが理由とみられる。しかし保護者が育休中のケースを除いたりすることが多く、近畿地方のある自治体の担当者は「机上では、ゼロにするやり方はいくらでもある。実態に合っていない」と冷ややかに話した。保育の必要性と行政の関わりをめぐる意見はさまざまだ。埼玉県所沢市では6月、母親が出産し、育休を取った場合に、原則として上の子が保育所を利用できなくなるのは違法だとして、保護者らが市に差し止めを求める行政訴訟を起こした。市側は「育休中は家庭での保育が可能」と説明。保護者側は「子どもにとって保育所に通うのは生活の一部。元の保育所に戻れる保証がないのは不安だ」と訴える。保育問題に詳しいジャーナリストの猪熊弘子さんは「待機児童の定義や育休の扱いが自治体の方針で変わり、家族の人生を左右されるのはおかしい。本来はすべての子どもに居場所があるべきだ」と指摘している。
▽選択肢
 新制度は幼稚園と保育所の機能を合わせた「認定こども園」や、0〜2歳児を対象に少人数で子どもを預かる「地域型保育」の普及など、選択肢を広げるのが狙いだ。都内の女性(35)は7月から娘(1)を新設の認定こども園に通わせている。「これまでは仕事を続けるため、月10万円で認可外の保育施設を利用していた。幼児教育の要素もあり、どんな生活になるか楽しみ」とほっとした様子で話す。母親の立場で待機児童問題に取り組む杉並区の曽山恵理子さん(38)は「新制度で保育を利用できるようになった人もいるが、まだまだ厳しい状況は変わらない。多様な声を聞くべきだ」と注文を付けた。

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/211268
(佐賀新聞 2015年7月24日) 県立中高の来年度定員 武雄高40人減
 佐賀県教育委員会は23日、2016年度の県立中学、高校の生徒募集定員を発表した。全日制高校の募集定員の合計は、前年度より40人少ない6440人となる。武雄高校が定員280人を240人に減らす。県立中4校に変更はなく、各校120人を募集する。武雄以外に全日制の募集定員の変更はなく、学科・コースの改編もない。定時制6校の募集定員は前年度と同じ全体で280人。16年度から、普通科の通学区域を現在の4学区から2学区に変更する。これまでの東部、中部を合わせて「東部」学区とし、北部、西部を統合して「西部」学区とする。県教委によると、来年3月の国公立中学卒業見込み者は前年度より65人少ない8544人。旧学区ごとにみると、東部65人減、中部59人減、北部89人増、西部30人減だった。中でも、武雄・杵島地区は前年度も80人減だったことや武雄青陵中の来年3月の卒業者がこれまでより40人減ることを勘案し、武雄高校の定員を減らした。16年度も、募集定員の20%を上限に全日制全36校で特色選抜試験を実施する。県立高の試験日程は、特色選抜が2月9日、一般選抜は3月8、9日、合格発表は3月15日。県立中は1月16日に選抜検査、1月27日に合格を発表する。今回の選抜から、各校の特色を反映して出題してきた「学校独自検査」を廃止する。

<学力>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/210568
(佐賀新聞 2015年7月22日) 全国学力テスト「求められる質変化」 県学力向上委が分析
 教育関係者や保護者、有識者らでつくる佐賀県学力向上対策検証・改善委員会(委員長・上野景三佐賀大教授)が21日、県庁で開かれた。文部科学省が4月に実施した「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)の分析結果が報告された。委員からは「情報収集力や表現力など求められる学力の質が変わってきている」などの意見が出た。全国学力テストは、小学6年と中学3年を対象に国語と算数・数学に理科を加えた3教科で実施した。県教委は小5、中1、2にも独自のテストを実施し、結果をいち早く指導に生かすため、独自集計している。全国の結果公表は8月ごろで、まだ比較はできない。テストでは、国語は条件に合わせて自分の考えをまとめて書く問題の正答率が低く、算数・数学も考え方や理由を説明する記述式の問題の正答率が伸びなかった。理科は観察、実験の技能や考察に関する問題に苦戦した。委員からは「文章力を磨けばいいという問題ではなく、自分の考えを持っていないと対応できない」などの声が上がった。上野委員長は「全国学力テストで求められる学力と、教師がこれまで身に付けさせようとしてきた学力にズレがあるのではないか。情報収集力や表現力といった従来と質の違う学力を育む手だてが必要だ」と指摘した。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/column/ictedu/23901/200032 (佐賀新聞 2015年6月22日) 学力向上へ唐津市試み 「アクティブ・ラーニング」で活路、箞木小で成功、4地区にモデル校
■「授業に集中」大規模校でも効果
 唐津市教育委員会は学力向上策として、教師による一斉指導から、子どもの意見交換の時間を増やし、自ら考える力を伸ばす「アクティブ・ラーニング」のモデル校を増やしている。詰め込み型の知識偏重教育を改めようとする国の方針を“先取り”した試みだが、唐松地区の長期的な学力低迷を打開する狙いが背景にある。市教委は昨年度から学力向上モデル校事業を始めたが、きっかけは厳木町の箞木(うつぼぎ)小が2011年から始めた「司会式授業」。児童が授業の進行役、黒板筆記、タイムキーパーを務め、活発に意見交換する。全国学力テストでは、思考力や表現力を問う記述式問題で、全国平均を大幅に上回る結果を継続的に出している。
◆生徒に参加意識
 京都などでの取り組みを参考に始めた古川元視校長は「今の授業は先生が話しすぎると思う。自分たちで考え、答えを出す方が知識は定着するし、この繰り返しで、自分たちは何をすべきか考える子が育つ」と利点を話す。1年生の算数でも、答えだけでなく、そこに至るまでの考え方を記述させており、思考の過程を重視している。市教委が〓木流を最初に導入したのは、市内一の大規模校となる唐津一中。「司会式」ではないが、4人単位の席に配置し、意見交換やグループ別発表の機会を増やしたことで、生徒の授業参加意欲も高まった。保護者の一人も「居眠りや私語、授業を抜け出す子がほとんどいなくなった」と変化に驚いていた。濱隆朗校長は「やはり一番の生徒指導は『分かる授業』。勉強に自信が持てるようになることで、子どもたちも教室に居場所が見つかる」。教師は毎回の授業で、生徒の思考を手助けするワークシートを用意する負担が生じるものの、「子どもたちが授業に参加するので、心理的な負担は軽減できる」と濱校長。
◆自ら学ぶ力
 1年目の昨年度のモデル校は唐津一中を含め、3地区5小中学校だったが、2年目の本年度は4地区12小中学校に広げた。市教委は小中連携でアクティブ・ラーニングの流れをつくろうと試みている。文部科学省も次期学習指導要領(小学校2018年、中学校19年改定)でアクティブ・ラーニングを盛り込む方針。市教委の牟田口成喜学校教育課長は「私たちの試みは特別なものではなく、国が目指す教育の方向性に沿ったもの。一番規模が大きい一中でできたので、どこでも可能だ」と話す。一方、唐松地区は4月の全国学力テストで全学年、全教科で県平均を下回った。唐津市議会の6月議会では「塾など民間と連携する他の自治体の取り組みも参考にすべきでは」と議員から質問が出るなど学力向上策は急務となっている。県教委が同時期に行った学習状況調査では、平均点の高い三神や佐城と比べて、唐松地区は家庭学習をする児童生徒が少ないという結果が出るなど課題も見えている。「授業で『自ら学ぶ力』をつけることが、家庭学習の習慣につながる」と市教委。学校全体の意識改革をどれだけ進められるかが、授業改善の鍵を握っているようだ。
■アクティブ・ラーニング(AL)
 教師主導による講義型の授業とは異なり、最初に学習の目標が示され、与えられた課題を各自で考え、グループ別やクラス全体で意見を出し合うことで思考力を高める学習法。欧米の教育スタイルで、国内でも導入する大学が増えている。2018~19年度改定の次期学習指導要領に盛り込まれる。文科省はAL導入にあわせ、センター試験に代わり導入する「大学入学希望者学力評価テスト」には記述式問題を盛り込むことを検討している。

<道徳>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11877223.html
(朝日新聞 2015年7月24日) 「考える道徳」を重視 教科書検定基準案 文科省
 これまでの道徳は「教科外の活動」という位置づけで、国の検定を経た教科書はなく、副読本を読むことが中心だった。格上げで検定のルールが必要になり、3月に改訂された新学習指導要領に沿う形で文科省が検討していた。基準案では、教科書全体を通じて、子どもが表現力を高めるために話し合ったり書いたりする「言語活動」や、「体験学習」などを教員が採り入れやすくする工夫を求めた。一方的な価値観の押しつけでなく、子どもが自分で考える授業になるよう、教材の面から後押しする狙いがある。教科書に掲載する物語などの題材は、生命の尊厳や伝記、スポーツなど幅広いテーマを扱うことにした。「礼儀」「公正」「愛国心」など学習指導要領に決められた項目との対応を明示することも盛り込んだ。子どもの発達段階に即し特定の見方に偏らない配慮も求めた。検定基準は9月に正式に決定される。小学校向けの教科書は16年度、中学校向けは17年度に検定され、それぞれ18年度、19年度から使われる。
■<視点>多面的見方、どう配慮
 「読み物道徳」から「考え、議論する道徳」へ。文科省が教科化で打ち出した方向だ。道徳の授業が子どもの考えを縛り、特定の価値観を押しつけるものであってはならない。検定基準案でも、子どもたちが多面的に考えられるような配慮を教科書会社に求めた。それが現実の教科書でどこまで実現できるかは、なお未知数だ。「検定を通じて政権の意向が反映されるのではないか」との懸念もぬぐいきれない。改訂した道徳の指導要領は「正直、誠実」「家族愛」などのキーワードを設けた。基準案でも指導要領に沿い、「伝統と文化」や「先人の伝記」などを必ず盛り込むよう求めている。だが、物事や人物の評価は一つではない。この日も「1人の人間があるところでは英雄、あるところでは犯罪者とされ、簡単ではない」との声が出た。安倍政権は昨年、教科書検定のルールを変え、「愛国心」などを盛り込んだ教育基本法の目標に照らして重大な欠陥があると判断される場合は不合格になるとした。道徳でどう適用されるのか。注視していく必要がある。

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11877128.html
(朝日新聞 2015年7月24日) 話し合う道徳、出版社模索 独自教材の余地 課題解決型の学び
 「想定の範囲内で、驚きはない」。23日に了承された検定基準案について、道徳の副読本を発行する出版社の担当者は言う。現在の「道徳の時間」では、「命を大切に」「決まりを守る」など大切なことを物語や偉人の言葉を交えて紹介した文部科学省の副教材「私たちの道徳」が使われている。だが、この副教材の使用に必ずしも積極的でない教員もいるという。このため「私たちの道徳」を参考にしつつ、どんな教員も使いやすい教科書にする必要がある。道徳教育に詳しい上薗恒太郎・長崎総合科学大教授(教育学)も「採択されやすいよう、どんな先生も授業ができるわかりやすい物語が多くなるだろう。その分、経験や理論に裏打ちされた独自の教材も使える余地を残すことが必要だ」と指摘する。具体的には「いじめに対応する内容が学年ごとに盛り込まれ、課題解決型の学習が目玉になるだろう。自己肯定感を高めることを目標に構成し、子どもを支える教科書にするべきだ」との考えを示した。道徳教育が専門の別の研究者は「人間としてのあり方や生き方について、じっくりと考えることのできる工夫」を望ましい教科書の条件に挙げる。「あれっと思ったり疑問を持ったりと子どもの興味・関心を引きつけることが大事」。そうした「考える道徳」を重視するのは、やはり道徳の副読本を作ってきた別の会社だ。編集幹部は「一人ひとりが考え、教室での話し合いにつながる教科書にするため、四苦八苦している」と明かす。別の会社の担当者は「単なる読み物集では足りない。本音で自分を語り、自分とは違う考えを本気で受け止めることの大事さを実感できるものでなくてはならない」と気を引き締める。時間の制約は、各社共通の悩みだ。ある編集者は「教科書づくりは少なくとも1年半前から準備するが、今回は検定申請までに1年もない。急ピッチで作業を進めている」という。
■意識改革が必要
 貝塚茂樹・武蔵野大教授(日本教育史)の話 検定基準からは、子どもに多面的に考えさせる教科書をつくりなさいというメッセージを感じる。これまでのように登場人物の心情理解に偏った指導ではなく、子どもが話し合ったり考えを書いたりする授業ができる教材でなければならない。取り上げる読み物も死刑制度や脳死など、教員も迷うようなテーマ設定が必要だろう。教科書会社にも、これまでのスタイルを変える意識改革が求められている。

*3-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11877130.html
(朝日新聞 2015年7月24日) ロ首相、北方領土訪問意向 「島に軍事インフラ整備」
 実際に北方領土を訪問すれば、大統領時代の2010年、首相時代の12年に続いて3回目。日本政府は強く反発することとなり、安倍晋三首相が目指すプーチン氏の年内訪日も困難になりそうだ。タス通信によると、この日の閣議では、2016~2025年のクリル諸島(北方領土と千島列島のロシア側呼称)発展計画を基本的に承認。国家予算から700億ルーブル(約1540億円)を割り当てる方針だ。メドベージェフ氏は「あそこに行ったことがない者は行ってみるべきだ。いずれにしても、私は行くことを計画している。みなさんも招待する」と述べた。その上で「我々は軍事的なインフラ整備も進めている」と述べた。

*3-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150720&ng=DGKKZO89514130Q5A720C1PE8000 (日経新聞社説 2015.7.20) 1700兆円を経済の再生に生かそう
 日本人のお金に対する保守的な姿勢は相変わらずのようだ。日銀の資金循環統計によれば、2015年3月末の家計の金融資産は初めて1700兆円を超えたが、安全資産の代表である現金と預金の比率が52%と過半だった。家計の金融資産は個人が老後に備えて蓄えたものという面が大きい。慎重に使わなければならないのはもちろんだ。しかし、資金に多少なりとも余裕があるなら、元本が減るリスクがあるかわりに高い収益を見込める投資に回すことは、有力な選択肢のはずだ。
●市場の正しい知識を
 それはめぐりめぐって日本経済を活性化させる効果も持つ。個人が積極的に資産運用に取り組むための環境整備を急ぐべきだ。個人金融資産の6割強は60歳以上に偏在している。一般にこの世代は、教育費や住宅ローンの負担が軽くなる一方、退職金を受け取るため、金融資産の蓄積が進む。高額品を中心とする消費の主役として注目されるだけでなく、リスクマネーの出し手としての役割を期待する向きが多い。現在の60歳以上の人は投資の初心者が多い。まずは投資や資本市場に関して正しい知識を得るための学びの機会が必要だ。東京証券取引所は全国の主要都市に専門家を派遣し、投資のルールや市場の仕組みを教えるセミナーを、12年度から実施している。14年度は41回開催し5500人弱が参加した。投資経験の浅い個人にとって、こうした場でリスクとリターンの関係などを理解することは大切な経験だ。東証だけでなく、証券会社の自主規制団体である日本証券業協会なども含め、多くの市場関係者が個人投資家の裾野を広げる努力を続けてほしい。投資の学習と並んで重要なのは、個人の資金が市場に流れる仕組みを整えることだ。一定金額以内の個人の株式投資について、売却益や配当に税金を課さない少額投資非課税制度(NISA)を、有効に使いたい。金融庁によれば、同制度の導入から1年たった14年末の口座数は825万口座に達した。50歳以下で投資経験が乏しい人の開設が増える傾向にあるという。16年からは親や祖父母が子や孫の代理として投資する場合に非課税となる、ジュニアNISAが創設される。高齢世代から若い世代への金融資産の移転を促す狙いがある。金融機関が長期の視点で資産形成の助言などに力を入れることが普及のカギだろう。個人の資産運用の手段として古くからある金融商品には、投資信託がある。NISAの枠内で投信を持つ個人も増えた。既存の金融機関や運用会社に頼ることなく、自力で有望な企業や事業を見つけ、資金を投じたいと考える人もいるだろう。そうした需要に応えるうえで、インターネットの活用は有効な手段だ。企業がウェブ上で事業アイデアを公開し、個人から小口出資を募るクラウドファンディングが、5月に解禁された。
●個人資金を引きつけよ
 同制度を利用するのは知名度の低いベンチャー企業が多い。監督当局が不正に目を光らせるのは当然だが、ウェブを運営するクラウドファンディング事業者が出資を募る企業に対し詳しい経営情報の開示を促すといった、自主的な取り組みも欠かせない。モノの値段が下がり続けるデフレのもとでは、現金や元本保証の預金を多く持つことが財産の目減り防止につながった。日本経済がデフレからの脱却を果たし、再生の道筋がはっきりとしたものになれば、個人が自己責任に基づいて株式などに資金を投じる動きも強まるだろう。企業にとって個人投資家は、投機的なファンドなどと違って経営をじっくりと見てくれる資金の出し手となりうる。これまでにも増して、企業が個人を引きつけるための努力が必要となる。例えばオリックスは昨年から、1カ月に2~3回の頻度で個人向けの会社説明会を開いている。個人マネーを成長の原資とした企業が、雇用創出やイノベーションを通じて成長の富を社会や個人に還元していく。そんな経済活性化の道筋を、さらに太く、確かなものとしたい。

<ICTを使った教育>
*4-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/205623
(佐賀新聞 2015年7月8日) 佐賀県ICT教育改善検討委 学校現場の意見集約
 タブレット端末や電子黒板など佐賀県が推進しているICT(情報通信技術)教育について、県教委は7日、外部メンバーでつくる改善検討委員会の第3回会合を開いた。各委員がそれぞれの立場で意見を述べ、「知事も会の意見を参考にすると発言している。われわれは日和(ひよ)ることなく、思い通りに意見を出していきたい」と強調した。委員会は小中高の校長会や教職員組合の代表、PTA役員、学識者ら15人で構成する。山口知事は議会や会見で「現場の先生の意見を反映した形で検証してほしい」と発言していた。この日は、鳥栖工業高の籾井宏文教諭が「タブレット端末を配って終わり、ではなく、どう使えばいいのか、どういう成果を求めるのかを学校現場に示してほしい」と述べた。端末代の5万円の負担が家庭に重くのしかかっている現状や、基本ソフト(OS)としてウインドウズが適当かどうかといった機器の使い勝手についても疑問を呈した。事業責任者の福田孝義副教育長は「生徒負担をなくすために端末を学校の備品にすれば、自宅に持ち帰って学習効果を高めることができなくなる」と答えた。委員からは「持ち帰ることで得られる学習効果についての検証データを示すべきでは」「端末を購入できないのは教育の問題ではなく福祉の問題だ」などの意見が出た。検討委は過去2回、県教委からの事業説明や有識者の話を聞くことがメーンだった。次回は14日に開き、それまでの議論を山口知事に報告する。

*4-2:http://www.saga-s.co.jp/column/ictedu/23902/195013
(佐賀新聞 2015年6月8日) ICT最前線 学びをデザインするvol.001 佐賀西
■「学びの道具」に試行錯誤
 佐賀県内の公立高校でICT(情報通信技術)を活用した教育がスタートして1年がたった。教室では先生が電子黒板を使って授業を進め、生徒は机の上で開いたタブレット型パソコンに意見などを書き込む。自ら考え、学ぶかたちへと変容していく授業風景-。試行錯誤を重ねながら「学びの道具」としてのICTで、新しい教育をデザインしようと取り組む現場の最前線を月1回、報告する。第1回は、佐賀西高1年7組で世界史の授業を取材した。
■先生、時間効率の向上 生徒、多様な意見を共有
 授業は、中国・東アジア史。中国・漢時代から2千年間続いた体制を基本とした東アジアの国際体制は一体何が良かったのかを学び、考える授業だ。まずは平山智浩先生(47)が、電子黒板(70インチ、フルハイビジョン)に「中国の王朝交代を表した年表」を表示。電子黒板の画面を手で触ってスクロールすると、殷(いん)から後漢、後漢から唐、唐から清までの3つのスライドが示された。次に、授業で配ったプリントと同じ「唐と近隣諸国の地図」を表示。唐の部分に色を塗り、西アジアまで及んだ唐の領域を色分けした。さらに、明時代に南京からインドを経由しアフリカまで航海した「南海遠征航路地図」は、航路をアニメーションで表示。生徒は電子黒板を見ながら、プリントに要点を書き込んだ。授業の後半は、生徒個人の学習用のタブレット型パソコン(PC)を用いて意見を交換した。生徒は学習用PCを起動させ、教師と共有の「教材フォルダ」から当日の学習シートをローカルに保存し、自分の意見を記入した。その間、平山先生は教師用PCで各生徒のパソコンでの書き込み作業を確認できる「机間巡視機能」を使って学習シートをリアルタイムで確認。教室を動き回らなくても、生徒の意見を確認することや支援を必要としている生徒の把握ができるようになり、指導の効率向上と意見収集の時間短縮に効果が上がっているという。机間巡視機能には、生徒が書き込んだ学習シートを電子黒板に順次投影する機能もある。その際は無記名で表示でき、生徒は自分の意見を自由に書くことができるように配慮されてもいる。さらに、ほかのクラスで出された意見も電子黒板で紹介され、多様な考え方を共有できるようにも工夫が施されていた。生徒はこうした意見も参考に、自らの意見を加筆・訂正。中には、自分の意見と気づかなかった意見を区別するために、色を変えて書き込んでいる生徒もいた。最後に、生徒が事前にパワーポイントを使ってまとめていたレポートを電子黒板で紹介。アニメーションや矢印、吹き出しを使うなど随所に工夫がちりばめられ、生徒にとってもいい刺激になっているようだった。

*4-3:http://www.saga-s.co.jp/column/ictedu/23902/202685
(佐賀新聞 2015年6月30日) ICT最前線 学びをデザインするvol.002 致遠館
 「お気に入り」をテーマに、PCを使って携帯型音楽プレーヤーすごさを英語でスピーチする生徒。先生と他の生徒も説明に聞き入った=佐賀市の致遠館高学
■「お気に入り」英語とPCでプレゼン
 佐賀県内の公立高校で行われているICT(情報通信技術)を活用した授業。電子黒板や1人1台のタブレット型学習用パソコン(PC)を使い、新たな教育のかたちをデザインする取り組みを追うシリーズの第2回は、佐賀市の致遠館高校1年2組で英語の授業を取材した。
■3時限目「英語」
 「自分のお気に入りの物」をテーマに、生徒1人ひとりが英語でスピーチする。溝口健一郎先生(37)は終始、英語で授業を進める。
    ◇    ◇
 「Look at this(これを見てください)」。机を並び替えて5~6人の小グループをつくった教室の一角。生徒たちは1人ずつ順番に英語で「好きな物」をスピーチしていく。事前に準備した手書きのプリントの英語を読み上げながら、プレゼンテーションソフトの「パワーポイント」を使い、手元の学習用パソコン(PC)で資料や写真を見せながら発表した。あるグループの生徒が指し示した学習用PCの画面には、漫画本を全巻きれいに並べた写真が現れた。生徒は英語でスピーチを続けながら、画面をスライドする。すると、スピーチ内容に沿った写真などが次々に現れる。発表もいよいよクライマックスに差しかかり、主人公が大けがをした時の画像が現れた、と思ったら左右に小刻みに揺れ始めた。けがを負う“衝撃”をアニメーションで表現したのだ。見ていた生徒からは「おぉっ!」とどよめきが起こった。好きな物の題材は、以前使っていた愛用のランドセルだったり、家で飼っているペットだったりとさまざまだ。パワーポイントのスライドショーやアニメーションなどの機能を使いこなして分かりやすく伝えようとする生徒もいれば、逆に写真は少し見せるだけにとどめ、お気に入りのステッカーや文房具など実物を持ち出す生徒も。表現方法は生徒の自由に任されている。聞き手側の生徒は、プリントに発表者の発音や内容、アイコンタクトを取ったかなど5項目を評価して記入。最後に感想を書いて発表者に渡す。グループ全員が発表した後、クラス全員の前で発表する代表1人を選んだ。クラス全員の前で代表者が発表した後は、生徒同士が英語で質疑応答。質問は理解できても、英語での回答となると言葉に詰まる生徒もいたが、すかさず先生が駆け寄りアドバイス。何とか英語で回答して乗り切っていた。英語でスピーチする表現活動は初めての取り組みだった。プレゼンテーションの練習も兼ねた試みで、今後も学期に1~2回は実施する予定にしている。


PS(2015年7月25日追加):*5のように、細かく検討するのが地方議会のよいところだが、機器のトラブルに対応する支援員は学校ごとに一人置かなくても、市町で業者に委託しておけばよく、そのくらいの予算は出るだろう。「ICTの導入で具体的にどの程度学力が向上するのか」と言われると、やってみなくてはわからないが、これからは、農業、観光はじめ、あらゆる産業でICTを使いこなす必要があり、できない人は置いて行かれると考えた方が良い。

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/204040
(佐賀新聞 2015年7月3日) ICT教育で市町、「支援員、予算確保を」、県ICT利活用教育推進協
 佐賀県と各市町が連携してICT(情報通信技術)教育を進める県ICT利活用教育推進協議会が2日、県庁であった。市町の教育長や担当者が現状報告や意見交換を行い、複数の出席者が電子黒板などの機器トラブルに対応する支援員や予算の確保が難しい現状を訴えた。5月1日時点のまとめでは、1学級当たりの電子黒板整備率は、12市町で100%に達していない。ただ県教委によると、本年度中に全市町で達成するという。意見交換では「支援員の確保が厳しい」(鹿島市)、「支援員を1人確保しているが、突発事項があり1人では厳しい」(嬉野市)などの悩みが出た。基山町や上峰町からは予算確保が課題で「ICTの導入で具体的にどの程度学力が向上するのかを議員から問われる」との声も上がった。県が県立学校を対象に実施する支援体制と連動したサポートを求める声も出たが、県教委の福田孝義副教育長は「県立学校を抱え手いっぱい。まずは市町でできる範囲で行ってほしい。ただ、市町が困っていることに関しては一緒に解決策を探っていきたい」と話した。


PS(2015年7月25日追加):企業誘致したり、交流人口を増やしたりするためには交通の便も重要で、その流れの中で、長崎(日本が鎖国していた時代にオランダと貿易していた街)を終点とする九州新幹線西九州ルートのフル規格化の必要性は誰もが認めるところだ。私は、全線を高架化して一階部分を利用すれば、鉄道以外の収入も見込まれるため、建設によってむしろ利益を出すことも可能だと考える。

*6:http://qbiz.jp/article/67490/1/
(西日本新聞 2015年7月25日) 新幹線フル規格化、財政負担見直しを 武雄市が佐賀県に要望
 佐賀県の武雄市新幹線活用プロジェクト(会長・小松政市長)は24日、九州新幹線西九州ルートのフル規格化と沿線自治体の財政負担見直しを求める要望書を、県の副島良彦副知事に提出した。副島副知事は「地元の関心の高さをあらためて認識した」と述べるにとどめた。要望書は、現計画の在来線を使ったフリーゲージトレイン(軌間可変電車)では時短効果が小さく、試験運行もトラブルで昨年11月から休止していると指摘。フル規格化で全線を高架化し、安全性も確保するべきだと要望。国と自治体が折半する建設費も国の負担を増やすよう求めている。小松市長は「佐賀の発展にはフル規格化が不可欠。他の沿線自治体とも協力していきたい」と話している。


PS(2015.7.26追加):*7のように、人文社会系の見直しを求める文部科学省の通達があり、京都大学がこれに否定的であることは、これまでの京都大学の実績から見て納得できる。しかし、教育も、上のように文系出身の人が適している科目ばかりではなく、大学で一般教養さえ身に着ければ役に立つという時代でもない。そのため、大学が社会のニーズにあった知識や技術を習得する場所として機能することは重要であり、多くの生徒はそういう大学を選びたいのではないだろうか?

*7:http://www.kyoto-np.co.jp/education/article/20150726000015 (京都新聞 2015.7.26) 「人文系見直し」広がる波紋 文科省通達に国立大から異論印刷用画面を開く
 文学部の校舎が立ち並ぶ京都大吉田キャンパス。人文社会系の見直しを求める文部科学省の通達が波紋を広げている(京都市左京区) 国立大学に教員養成系や人文社会系の学部・大学院の組織見直しを求めた文部科学省の通達が、波紋を広げている。京都や滋賀では、京都大の山極寿一総長が人文社会系の廃止や縮小に否定的な考えを表明し、滋賀大の佐和隆光学長も国の方針に批判的な立場を取る。一方、地方の国立大学では既に、学部の再編や新設に乗り出す動きがある。
■学長ら批判
 「特に教員養成系や人文社会科学系の学部・大学院については、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めること」。6月8日、2016年度から始まる国立大学の第3期中期目標を作る際の留意点を伝える通達の中で、文科省は各大学にこう求めた。教員養成系を挙げたのは、18歳人口の減少に伴う教員需要の縮小を見越した対応といえる。一方、人文社会系が標的になった背景には経済界の意向が強く働いたとみられている。企業の競争力強化には、理系や実践的な知識を身に付けた人材が必要という考え方だ。通達には国立大学の学長から強い異論が出ている。京大の山極総長は6月17日の記者との懇談で「大学は今すぐ役立つ人材でなく、未来に役立つ人材を育てるのが使命。人文社会系は教養として重要だ」と力説。多様な知識を身に付けた学生を送り出すためにも、人文社会系は不可欠とする持論を展開した。滋賀大の佐和学長は「政府の産業競争力会議に入っている財界人や学者は、人文社会系の教育が産業振興に貢献していないと考えている」と指摘する。世界の大学ランキングで上位に入る英米の大学で人文社会系の教育研究が活発なことを挙げ、「欧州では人文社会系の学問は存在感がある。批判精神のある人間を育てるためだ。国が大学のランキングを上げたいなら、人文社会系にこそ力を入れるべきだ」と訴える。
■交付金への影響懸念
 文科省はこれまでも、国立大学に教育研究の特色や社会的役割を見直すよう求めてきた。その流れを受け、地方の大学では、教員養成系や人文社会系の定員を減らし、国際教育や文理融合などの新学部を開設する構想が相次いでいる。福井大は2016年度に「国際地域学部」の開設を予定。既存の教育地域科学部の1課程を廃止して、60人分の定員に回す。宮崎大も教育文化学部の定員をほぼ半分に減らし、定員90人の「地域資源創成学部」の設置を計画する。滋賀大も例外ではない。大規模データの解析にたけた学生を育成する文理融合系の「データサイエンス学部」の開設を17年度に目指している。100人の定員は経済、教育の両学部からそれぞれ90人と10人を削減して充てる。背景には国立大学の懐事情がある。収益の4割近くは国が支出する大学運営費交付金。しかも国は今後、機能強化や組織改革の取り組み次第で配分額に差をつける方針だ。佐和学長は「何もせずに交付金を削られるのは耐え難い。時代を先取りした新学部開設で前向きに対応する」と話す。一方、京大は今のところ、学部や大学院の再編は打ち出していない。教育担当の北野正雄理事は「人文社会系だけを取り出して議論するものではないというのが学内の意見だ。学内全体で教員を柔軟に動かせる仕組みを取り入れ、新たな教育や学問分野をつくる」と説明する。


PS(2015年7月28日追加):*8-1に、「生徒は中学1年からいじめを受けていたとみられ、2年生になってもいじめに関して担任に相談していた」「生徒と担任間の『生活記録ノート』に『なぐられたり、けられたり、首しめられたり』と書かれている」「最近の欄で『ボクがいつ消えるかはわかりません』」などの自殺をほのめかす記載があり、いじめを受けていた生徒は担任に相談していたにもかかわらず、担任は生徒同士のトラブルと捉えて対応しなかったということだ。これでは、①いじめを行っている生徒への教育にならない ②周囲で黙って見ていた生徒たちの教育にもならない ③いじめを受けている生徒の人権や生命を護ることができない のだが、このようにうやむやにして放置することはよく行われているのではないだろうか?これでは、子どもを安心して学校に預けられず、学校での道徳教育も不十分だ。
 そして、そのように頼りない教育をしていれば、保護者から苦情が出るのは当然であり、*8-2の「教諭の7割以上が、保護者からの苦情対応に負担を感じている」という結果は真摯ではない。自信を持てる教育をしていれば、保護者から苦情があっても教育方針を説明して納得させることができるだろうし、そもそもクレームは、保護者が求める先生とのコミュニケーションであり、問題解決や改善の源である。また、「研修リポートの作成が負担」とした7割以上の教諭は、生徒に予習・復習を薦めたり宿題を出したりする資格はないだろう。何故なら、研修リポートの作成は、教諭自身の勉強に関する結果報告だからである。さらに、「国や教育委員会の調査対応」が9割近くで最も負担感が高かったそうだが、調査もせずに政策を決めれば机上の空論になるため、教諭であれば、必要十分な調査を行って自分たちで改善案を出せるくらいでなければ、生徒に指導することはできない筈だ。
 なお、「教諭の1日平均在校時間を調べると、小学校は11時間35分、中学校で12時間6分」だそうだが、学校の存在目的は、大人の楽な雇用を増やすことではなく、生徒に質の良い教育を行うことであるため、上のようなことを忙しさのせいにして省略することは許されない。むしろ、他の人ができることで教員の時間をとらないよう事務職を配置したり、余分な教諭を配置して新人の先生にはまず採点・ICT・雑用をやってもらうなど、他の良い解決方法を考えるべきだ。

    
   *8-2より  いじめについて    小中一貫校について   

*8-1:http://mainichi.jp/select/news/20150707k0000e040199000c.html
(毎日新聞 2015年7月7日) 岩手・中2死亡:いじめ自殺か 担任への提出ノートに記述
 岩手10+件県矢巾町で5日、同町の中学2年の男子生徒(13)が電車にひかれ死亡する事故があり、生徒が担任に提出していたノートに他の生徒からのいじめや自殺をほのめかす記述をしていたことが7日、分かった。同町教育委員会は、いじめによる自殺があったとみて調査を始めた。県警紫波署などによると、生徒は5日午後7時半ごろ、同町のJR東北線矢幅駅の線路上で、盛岡発一ノ関行き上り普通電車(4両編成)にひかれ、間もなく死亡した。生徒は線路に飛び込んだといい、自殺とみられる。町教委によると、生徒は中学1年からいじめを受けていたとみられ、2年生になってもいじめに関して担任に相談していたという。生徒と担任間の「生活記録ノート」には「なぐられたり、けられたり、首しめられたり」と書かれ、最近の欄で「ボクがいつ消えるかはわかりません」「ただ市(死)ぬ場所はきまってるんですけどね」などと、自殺をほのめかす記載があった。生徒の死亡を受け、学校は7日に全生徒を対象にアンケートを実施。夜に保護者会を開く。

*8-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11884643.html (朝日新聞 2015年7月28日) 保護者の苦情対応や研修報告書、先生の7割「負担」 文科省、公立小中調査
 公立小中学校の教職員は、どのような仕事に負担を感じているのか。文部科学省が初めて調べ、27日に発表した。教諭の7割以上が「保護者からの苦情対応」や「研修リポートの作成」をあげた。いずれも授業や生徒指導とは別の仕事だった。国際調査で、日本の中学教員の勤務時間が参加国で最長だったことを受けて実施した。全国の公立小中451校の11職種、計9848人を対象に、昨年11月時点の状況を尋ねた。教諭の1日の平均在校時間を調べると、小学校は11時間35分、中学校で12時間6分。その上で、業務を71に分けて負担に思うかを尋ねた。教諭のおおむね7割以上が従事する業務のうち、「負担」「どちらかと言えば負担」の合計が高かったのは「保護者や地域からの要望、苦情対応」など。負担感だけで見ると「国や教育委員会の調査対応」が9割近くで最も高かった。一方、昨年の国際調査で週7・7時間と参加国平均の3倍を上回った部活指導の負担感は、中学教諭でも48・5%と5割を切った。「負担だがやりがいがある」という答えが多かったという。授業や子どもと接する仕事は比較的負担感が低い項目が目立った。


PS(2015年7月28日追加):定住人口を増やすには雇用を増やすのが第一だが、ほかにも教育・保育をはじめ福祉を充実して家族の定住を誘致する方法がある。後者は、関東圏では既に著しい結果の出ている方法で、保育の待ち行列をなくすと移住が進み、再び待ち行列ができる状態だ。

*9:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/212662
(佐賀新聞 2015年7月28日) 5年で5千人を新規雇用 佐賀県版「総合戦略」
 佐賀県は27日、県版の地方創生の総合戦略案をまとめた。若者の県外流出を抑えるため、向こう5年間で5000人の新規雇用を創出するなど4つの基本目標を掲げている。パブリックコメントで8月21日まで意見を募り、9月定例県議会前までに県まち・ひと・しごと創生本部で決定する。関連法や県内人口の将来展望「県人口ビジョン」に基づき、具体的な施策と数値目標を定めた。既に策定した県の新総合計画が知事の任期に当たる4年間を目標にしているのに対し、2019年までの5年間の目標を設定している。基本目標に「安定した雇用を創出する」「本県への新しいひとの流れをつくる」「若い世代に結婚・出産・子育ての希望をかなえる」「時代に合った地域をつくる」の4本柱を据えた。5000人の新規雇用は、企業誘致による正社員雇用や就農などで目指す。また県外からの移住を促進し、県内大学への進学率を高めるなどして、人口の社会減(転出超過)の減少幅を19年時点で年間1500人に抑える。交流人口の増加につなげるため、5年間で総数1500万人の宿泊観光客数を狙う。自発的な地域づくりに対して学識者らを派遣する取り組みは年々拡大し、60地域を目標にする。合計特殊出生率の目標は1・77と明記したが、さが創生推進課は「強制できるものではなく、子どもを産み育てたいと思う環境づくりを進める中で、結果として年少人口の減少を抑えることにつながれば」と説明している。


PS(2015年7月30日追加):ドクターヘリは、衆議院議員時代に私の提案で始まり、現在は佐賀県はじめ全国で運用されるようになった。今後は、救急でなくても離島や山間部ではヘリを使ってドクターが移動してもよいと思うが、ものすごく高価なヘリであるにもかかわらず、*10のように、心肺蘇生中の医師の腰にドアノブが引っかかってドアが開くようでは、医師も患者も安心して乗れない(心肺停止中の患者も驚いて飛び起きそうだ)。そのため、自動車並みにヘリの安全性を高めて騒音や振動をなくし、ヘリの価格を安くすれば、このシステムは世界(特に過疎地や道路事情の悪い国)でもヒットすると考える。

*10:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10102/213102
(佐賀新聞 2015年7月29日) ドクターヘリ飛行中ドア開く 佐大病院、部品落下か
 佐賀大学は28日、医学部附属病院が運航するドクターヘリ内部の部品が飛行中、ドアが開いた際に落下した恐れがあると発表した。乗員や搬送中の患者らにけがはなく、落下物による事故などの被害報告は入っていないという。落下したのはポリエステル製の日よけ部品で、縦38センチ、横51センチ、重さ55グラム。大学によると、27日午後0時37分ごろ、患者を搬送するため多久市から小城市にかけて上空約300メートルを飛行していたところ、心肺蘇生中の男性医師の腰にドアノブが引っかかり、ドアが開いた。運航後の点検で日よけの部品がなくなっていることが分かった。佐賀大学は「県民や関係機関にご迷惑と心配をおかけして深くおわび申し上げます」とコメントした。


PS(2015年8月19日追加):*11のように、積極的に新聞を使って「読む」「書く」「話す」などの能力を高めるのはよいと思うが、高学年では「分析する」能力も高めた方がよいと考える。例えば、「太平洋戦争中に、新聞はどう報道したか?」「安保締結時は・・」「高度成長期は・・」「バブルについては・・」「原発事故は・・」「沖縄基地問題は・・」等、既に事実と比較して答えのあるものから、まだ答えの出ていないものまで、各社の論調を比較して真実を探ることで、人によって書かれた歴史や言葉を鵜呑みにせず、事実に基づいて自分の考えをまとめる習慣を身につけることが重要である。また、文字を読むのがやっとという低学年向けには、新聞社が文字は平易で内容の充実した「子ども新聞」をネット上に展開すればよく、池上彰さんの解説のように、内容が充実していてわかりやすければ大人でも読むだろう。

*11:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/220175
(佐賀新聞 2015年8月19日) 学校教育に新聞活用 佐賀市でセミナー 教師ら実践例学ぶ
◆記事切り抜きレイアウト ゲーム感覚で片仮名探し
 新聞を使った学校教育の実践例を学ぶ「新聞活用セミナー」(佐賀新聞社、県教委主催)が18日、佐賀市のアバンセであった。朝の読書の時間に新聞を読んだり、気に入った記事をテーマに人前でスピーチするなど、子どもの「読む」「書く」「話す」能力を高める工夫を紹介した。山内中(武雄市)の江口成子教諭は、グループで話し合い、興味を持った記事を切り抜いて自分たちでレイアウトを考えたり、タイトルやコメントを付ける「新聞コラージュ」の実践を発表。「生徒が予想以上に主体的に取り組み、『またやりたい』という声が上がった」と報告した。南波多小(伊万里市)の野中佐栄子教諭は、低学年で片仮名を習った直後に、新聞記事の中からいくつ片仮名を見つけられるかをゲーム感覚で競うなど、新聞に親しむ手がかりになる取り組みを紹介。「子どもが興味を持つ記事はさまざまで教師自身の発見にもつながる」と話した。佐賀新聞社の井手研一販売局長は「新聞は次期学習指導要領の目玉となるアクティブラーニング(能動的学習)に最適」として、「有明抄」の書き写しノートや記者・デスクの出前講座などの活用を呼び掛けた。セミナーには教職員約80人が参加した。

| 教育・研究開発::2014.8~2016.11 | 04:08 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.7.3 教育改革が、ゆとり教育や義務縮小の方向ばかりであったことが、国民が考える基盤となる知識の習得を阻害してきたので、それを直すべきだということ (2015年7月4日、7日に追加あり)
   
2013.10.25朝日新聞                  自民党勉強会での発言と各界の反応              

注)詳しく書くと自慢話になるので書きませんが、私はこういうことを書く資格があって書いています。

(1)公立校教育の充実がニーズであること
1)小中一貫校による義務教育の充実
 *1-1のように、小中学校の9年間の義務教育を一貫して行う小中一貫校を制度化する改正学校教育法が可決成立し、小中一貫校は義務教育学校として地域の実情に応じて学年の区切りを「4・3・2」「5・4」など柔軟に変更できることになったそうだ。学年の区切りは国で統一した方がよいと思うが、小中一貫校は公立校の教育を充実することができるという意味でよいことだ。そして、その義務教育校は、前倒し授業などの弾力的なカリキュラムを可能としている。これらは、既に一部の自治体が小中一貫教育を実施しているため、制度化することにより、小中一貫教育の浸透を図る狙いがあるそうだ。

 しかし、私は、幼稚園まで連結して、イギリスのように入学年齢を5歳もしくは4歳とし、現在よりも2~3年長く無償の義務教育を行って学力や体力の充実を図り、生産性の高い高度な労働をこなすことができる人材を多く輩出するのが、本人にとっても国にとってもプラスだと考える。そのため、小学校から中学校に進学して新しい世界が開けるのを嫌がる生徒の中1ギャップの解消のような後ろ向きの理由ではなく、小中一貫校による義務教育の充実が重要なのだ。

 佐賀県では、*1-3のように、山口知事が教育委員と「県総合教育会議」を開き、「教育大綱」案を示して、「①心身ともにたくましく、郷土を愛し、郷土に誇りを持つ県民の育成」「②知事と県教委が連携・協力して教育・生涯学習・文化・スポーツ振興に関する施策を総合的に推進」を示されたそうだが、私は、②はよいとしても、①の「郷土を愛し、郷土に誇りを持つ県民の育成」は、まず愛せる郷土や誇りを持てる郷土を作ることが重要で、改善するための批判や欠点の指摘を、「郷土を愛していない」「郷土を誇りに思っていない」ひいては「愛国心がない」「反日」などの無意味なレッテル貼りに使うのは、知識や経験に基づいて積極的に議論する教育の不足であるとともに、日本国憲法に定められた「思想・信条の自由」「言論の自由(メディアだけの権利ではない)」に反すると考える。

 委員からは、「学力は全国学力テストの平均点が取り上げられるが、心の教育など多面的観点で子どもたちを見ていくべき」などの意見が出たそうだが、佐賀県の場合は学力が全国平均以下であり、考えるツールとなる知識の獲得が不十分なのが最も重要な問題であるため、まず学力を伸ばすことが不可欠である。何故なら、人間の心は心臓にあるのではなく、主に脳にあり、遺伝子によって組み込まれた本能と出生後に学び体験して得た知識や経験を組み合わせて総合的に考えることにより、個々の判断を積み重ねているものだからである。

 なお、現在、いろいろな分野で劣化が進んでいるのは、学びが疎かになり、考えるためのツールである基礎知識と、それを使って自ら考える姿勢が欠けてきたからにほかならない。

2)高校の教育内容とその充実
 *1-2のように、歴史が進むにつれ日本史や世界史の分量が増えるのは当然であり、その上、その真実性を科学的に証明する手段も増えてきたため、歴史の内容や質は次第に上がる。また、50年前の高校の生物学の遺伝に関する理論は、メンデルの法則や人間のABO式血液型の遺伝くらいだったが、現在では、生物も物理・化学の法則に従って反応を行い、巧みな仕組みでエネルギーを得て繁殖し、驚異的に進化し続けて、地球環境と影響し合っていることを、かなり理論的に説明できるようになった。

 ここで必要な生物学の勉強は、言葉や化学反応を丸暗記することではなく、生命や生態系の仕組みを理解し、物理・化学・遺伝・進化・環境(経済を含む)に関する科学的知識で、それをバックアップすることである。文系でも、それらの基礎知識のない人が法律を作ったり、記者として報道したり、企業を経営したり、政策を作成したりすると、物事の重みや重要性の順序がわかっていないため、浅薄で間違った結果を導くことになる。

 そのために必要なのは、生徒にこれを教えられる先生の実力と生徒がそれを理解できる時間だ。「とにかく短時間でセンター試験のレベルまで成績を上げる」というだけでは、丸暗記を薦めることになり、生物を含む科学の魅力やダイナミックさを教えることができず、後で役立つ知識にはならないからだ。

 そもそも、世の中の事象は、文系と理系とか学科毎に分かれて発生するものではなく、それらの知識を総合的に使って解決すべきものばかりだ。そのため、私は、4~5歳から始まる小中一貫校で前倒ししながらゆっくりと知識を理解させ、総合学習で体験もさせながら、高校終了時には、文系であれ理系であれ、現在の文理の大学教養課程で勉強することの初歩くらいまでは理解させておくのがよいと考える。

3)フリースクールについて
 このような中、*1-4のように、義務教育の場を、フリースクールや家庭学習などの学校以外に広げる制度の創設に向けた動きが出てきたが、これは、「多様な教育機会確保」の名の下に、親の判断で学校に行かない子どもを増やす。これでは必要な基礎知識を習得できていない人が増え、労働者としての質が下がって雇用も確保できないため、結局は本人が不幸だ。また、国も補助金や生活保護ばかり出しているわけにはいかない。

 そこで、外国と比較して不登校の子どもが本当に著しく多いのであれば、日本の学校教育の内容もしくは教え方に問題があるということであるため、真の原因究明を行い、それを速やかに改善すべきだ。

(2)文科省の人文社会系学部規模縮小通知と大学の反論
1)文科省の人文社会系学部規模縮小通知
 *2-1、*2-2、*2-3のように、文科省は、全国の国立大学法人に対し、18歳人口の減少などを理由に、①教員養成系や人文社会科学系の学部・大学院の廃止や転換に取り組むことなどを求める通知を出し ②各大学法人の強みや特色を明確に打ち出して組織改革に取り組む大学には予算を重点配分する枠組みを盛り込み ③司法試験合格率が低迷する法科大学院には廃止や他の大学院との連合など抜本的見直しを求め ④地域貢献、全国的な教育研究、世界的な卓越教育研究のいずれかを選んで機能強化を進める大学には、運営費交付金を重点配分するとしたそうだ。

 しかし、国立大学で教員養成系の廃止や転換を行い、これを私立大学に任せることは薦められない。何故なら、私立大学は入試科目が少なく、文理双方の深い知識を持って生徒に学問の魅力を教えられる教員を育てることができないからだ。

 また、人文社会科学系の学部・大学院も、大学によって社会への貢献度が異なるため、文科省の画一的な指導は当たらない。そもそも、社会への貢献度は、就職や卒業生の人生をフォローして調査することから始めるべきである。

2)これに対する大学の意見
 小林東大大学総合教育研究センター教授は、*2-2のように、「これまで大学は無駄が許容されてきた。今後は社会の需要に応えるのも大事だが、すぐ成果が出ない、就職率が悪いとの理由で切り捨ててよいか。大学は広い意味の教養を身につける場なのに、工学や経営学などの実学が増え、学問の幅が狭まる懸念もある。個々に状況が異なる大学が自主的に判断するべきだ」としている。

 しかし、成果が出なかったり、就職率が悪かったりするのは、就職先が必要としない人材を作っているせいかもしれず、「大学には無駄が許容されてきた」ということを前面に立てるのは甘えである。ただし、本当に許容されるべき無駄もあり、それは、先進的な研究だが実現できなかったものや社会の基礎知識となるようなものであるため、大学が自ら調査して自主的に変更すべきだ。

 なお、京都大の山極総長は、*3-1のように、「幅広い教養と専門知識を備えた人材を育てるためには人文社会系を失ってはならない。国旗掲揚・国歌斉唱なども含め、大学の自治と学問の自由を守ることを前提に考える」としている。

 さらに、*3-2のように、佐和滋賀大学長は、「『想定内』の通知がいよいよ来たと思うにすぎなかった」「理系の研究は技術革新や産業振興を通じて国益に寄与するが、文系の研究は役に立たない」「1.1兆円の運営費交付金の効率的配分からすれば、文系学部の学生定員・教員数を減らして浮くお金を理系の研究に回すべきだ」「欧州では人文社会系の学識が指導者にとって必須の素養と目されている」「滋賀大は未来志向と文理融合を改革の理念に掲げている」「ジョブズは、『人々の心を高鳴らせる製品を創るには、技術だけでは駄目で、必要なのは人文知と融合された技術だ』と述べている」としている。

 また、*3-3のように、里見国立大学協会長(東北大学長)は、教育学部や人文社会系学部の見直しを求めた文科省通知を批判し、同席した副会長も、「理工系単科大学でも、歴史や社会を知らない学生は困る」(大西隆・豊橋技術科学大学長)、「実学系学部の学生も人文社会学系を副専攻にできる仕組みにしている。多様性が重要」(高橋姿・新潟大学長)と訴えたそうだ。

 私は、基礎知識としてならば、理工系も歴史や社会は高校終了までに勉強しておくべきであるし、文化系も数学・統計学・生物学などは高校終了までに理解しておくことが必要であり、教員は、それを体系的でわかりやすく、かつ魅力的に教えられる人というのが条件になると考えている。

(3)基礎知識不足の事例
 *4-1のように、自民党国会議員が文化人や芸術家との意見交換を通じて「心を打つ『政策芸術』を立案し、実行する知恵と力を習得すること」が目的の勉強会を開いたとのことである。人の心を打ち、受け入れられる政策とは、①正確な現状調査によって作られ ②誰の人権も侵害せず ③現状を改善して国民の福利を増すものであって、芸術ではないため、勉強会にこういう命名をすること自体、教養や政策作成能力がないと考えられる。しかし、このように考える人は政治家だけではなく一般にも多く、これが、知識がなければ思考が浅薄になり、何もできない事例の一つだ。

 しかし、首相側近の加藤勝信官房副長官(東大法学部卒、大蔵省出身)や萩生田光一党総裁特別補佐(明大卒、市議出身)も会合に出席しており、講師として招いたのは放送作家の百田尚樹氏(同志社大法学部卒)で、全員が文系だが、本来は高校終了までに理解しておくべき日本史・世界史の知識に欠けていたと思われる。

 なお、出席者が、会合での数々の暴言をたしなめなかったのは、多かれ少なかれ同じ意見を持っている人が多かったからで、ここで私のように異論を唱えると、「空気が読めない(異論を封じる態度)」「左翼(言論を封じるための意味のないレッテル貼り)」など、週刊文春の名誉棄損事件としてこのブログに記載しているように、メディアから民主主義における議論の重要性を理解しない変な批判をされる可能性が高いため、これも教育の問題である。ちなみに、自民党内は、内部での議論や発言は自由だ。

 「マスコミをこらしめるには広告料収入がなくなることが一番。文化人は経団連に働きかけて」と言ったのは大西衆院議員(国学院大卒、東京都議出身)であり、「沖縄の世論はゆがみ、左翼勢力に完全に乗っ取られている」と言ったのは長尾衆院議員(立命館大卒、明治生命出身)だそうだ。また、井上衆院議員(独協大法学部卒、福岡青年会議所理事長出身)は「沖縄のいびつなマスコミ、後押しする左翼勢力、バックにある中国共産党の工作員の存在」「沖縄メディアは基地反対運動の反社会的行為を報じていない」などとし、この中には法学部出身者が多く、全員が文系であるにもかかわらず、日本国憲法の主権在民、言論・表現の自由、民主主義を理解も実践もしておらず、日本史・世界史の知識も疑われる発言であるのは、文系教育(もしくは法学部教育)の欠陥ではないだろうか。

 そのほかには、*4-2のように、東電福島第1原発海側のトレンチ(地下道)に滞留する汚染水を遮断するために「氷の壁」を作ることが可能だと考えた問題もある。まして、氷やドライアイスを投入すれば凍るかも知れないと原子力規制委員会に属する理系の技術者までが考え、熱交換の基礎知識もなかったというのには驚く。都会で育って公園の噴水くらいしか見たことのない人が、地下水の流量を想像すらできずに、権力さえあれば自然現象も変えられると考えたのか、何故、このような馬鹿な方法をとったのかという原因を明らかにして、そのために使った税金も正確に計算すべきだ。

 つまり、問題解決には、自然に関する暗黙知や総合的な知識が必要であり、そのためには、地方の生徒がもっと勉強して、地方の公立高校から東大に入れる人が増える必要があるのだが、佐賀県は、全県あわせても、東京の女子学院一校分も東大に合格できていないのだから(http://www.inter-edu.com/univ/2015/schools/59/jisseki/ 参照)、これ以上のんびりしてよい状況ではないだろう。

<小中高について>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150617&ng=DGKKASDG17H0O_X10C15A6CR0000 (日経新聞 2015.6.17) 
小中の区切り柔軟に、改正法成立、義務教育の一貫校制度化
 小学校と中学校の9年間の義務教育を一貫して行う小中一貫校を制度化する改正学校教育法が17日、参院本会議で可決、成立した。小中学校と同じく、同法第1条で学校に位置付け、名称は「義務教育学校」とする。2016年4月から施行する。義務教育学校は地域の実情に応じ、学年の区切りを「4・3・2」「5.4」など、柔軟に変更できる。学習指導要領で定めた学年の範囲を超えて、前倒しで授業をするには特例申請が必要だが、文部科学省は省令を改正して、義務教育学校については申請を不要にし、弾力的なカリキュラムを可能とする方針。校長は1人で、教員は原則として小中両方の免許が必要。校舎は離れていても、一体でも設置できる。従来の「6.3」制は、中学校に進学した際にいじめや不登校が増える「中1ギャップ」や、子供の発達の早期化で、現状の学年の区切りでは対応できていない点などが課題に挙げられていた。これらの課題解決や、学力の向上などのために、一部の自治体が既に小中一貫教育を実施しており、制度化で一貫教育の浸透を図る狙いがある。小中一貫校の制度化は、政府の教育再生実行会議が提言し、昨年12月に中教審が答申していた。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150622&ng=DGKKZO88343990R20C15A6CK8000 (日経新聞 2015.6.22) 重み増す理科基礎科目 早まる受験対策、高1から
 3学期制の高等学校では5月中旬頃に1学期の中間テストを行う。1年生にとっては、高校で初めてのテストということもあり、不安を抱えつつ準備をすることになる。窓口に、「すみません、学校の勉強のことなんですけど質問していいですか?」とやって来る1年生も少なくない。中でも、今年よく目にしたのが理科の質問をする生徒だった。1年では、生物基礎・化学基礎を履修する高校が多いのだが、「基礎」とついていても、決して易しいわけではない。特に生物基礎は、中学での学習との差が激しく、生徒たちはかなり難しく感じるようである。生物の担当講師は、「例えば、中学校では、『呼吸』は酸素を吸って有機物を燃やし、エネルギーを取り出して二酸化炭素を出すと習うけれど、生物基礎ではアデノシン三リン酸(ATP)やクエン酸回路といったことまで学ぶ。単に言葉として習っていたものが化学反応としてとらえなくてはならなくなり、きっと頭の中は混乱しちゃうでしょうね」という。2015年度の大学入試センター試験からは、文系志望であっても基本的に理科の基礎科目を2科目受験しなくてはいけなくなったので、理科の基礎科目は入試に直結する科目でもある。学校で学んだときに、センターレベルまでもっていければ理想なので、ここできちんと理解しておきたいと生徒たちが思うのも当然である。もちろん、理系志望者にとっては、その先にある専門科目を盤石なものにするために大切な科目でもある。私の塾では、今まで高1の講座は英語・数学・国語のみで、理科と社会の講座は高2から始めていた。しかし現状を考えると、高1の段階で、理科の基礎科目をある程度固めてしまいたいというニーズが確かにある。そこで、今年の夏休みから理科の基礎科目の講習を開くことにした。文系・理系を問わず、この講座が2年後の入試に向けて有益なものとなってくれるとよいのだが。

*1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/193905
(佐賀新聞 2015年6月4日) 知事、県総合会議に提示 「教育大綱」案を了承
 佐賀県の山口祥義知事は3日、教育委員との協議の場「県総合教育会議」を開き、教育行政の基本方針となる「教育大綱」案を示した。6月議会で議決される新総合計画の教育関連部分を抜き取って構成した。古谷宏教育長や教育委員5人と意見交換し、おおむね了承された。山口知事が7月下旬にも策定する。大綱は4月施行の改正地方教育行政法で首長に策定が義務付けられた。会議の冒頭、山口知事は「改正法の精神に基づき、政治的中立性を守りながら話し合いを進めたい」と述べた。大綱案は「教育」「子育て」「生涯学習」「文化・スポーツ」の4分野、15の基本施策で構成している。策定趣旨に「心身ともにたくましく、郷土を愛し、郷土に誇りを持った県民の育成」を掲げ、「知事と県教委が連携、協力して教育、生涯学習、文化・スポーツの振興に関する施策を総合的に推進していく」と明記した。期間は2018年度までの4年間とし、社会情勢の変化に合わせて適宜、見直していく。委員からは「佐賀らしさを感じながら進める教育について記載されており、評価できる」「学力は全国学力テストの平均点が取り上げられるが、心の教育など多面的観点で子どもたちを見ていくべき」などの意見が出た。山口知事は、競技性を重視した学校部活動の在り方に疑問を呈し、「教育現場には『こういうもんだ』という考えが多いが、それが本当に正しいのか、結論が出なくても教委で議論すれば、いろんな影響を与えられると思う」と語った。

*1-4:http://qbiz.jp/article/64071/1/
(西日本新聞 2015年6月9日) 義務教育を多様化 フリースクール認定法案提出へ
 義務教育の場を、フリースクールや家庭学習など学校以外にも広げる制度の創設に向けた動きが出てきた。超党派の議員連盟が、法案を今国会に提出する方針を決めた。実現すれば、日本の教育制度の大転換となる。不登校の子どもたちにとって「多様な学びの機会が認められる」と歓迎する声が上がる。一方で、教育の質をどう保証するのかなど課題も多い。不登校の小中学生は1997年度に10万人を超えてから増加傾向が続いており、2013年度は約12万人に上る。受け皿になっているフリースクールは全国に推計で400カ所余り。計約2千人が学んでいるとされ、全体の7割程度は不登校の子どもたちが占めているとみられる。子どもたちは居住区域の公立小中学校に籍を置きながら、活動内容を随時、学校側に報告。実際に登校していなくても、校長の裁量によって卒業が認められている。超党派の議連が今国会に提出予定の「多様な教育機会確保法案」(仮称)は、対象を不登校の子どもに限定。法案の概要によると、保護者が学校などの助言を受けて「個別学習計画」を作成し市町村の教育委員会に申請。計画が認定され、計画を修了したと認められれば、フリースクールや家庭内での学習でも、義務教育とみなされるようになる。法案に期待を寄せる関係者は多い。NPO法人「フリースクール全国ネットワーク」の江川和弥代表理事は「学校に行かないことで家族に責められたり、学校の先生との間であつれきが生じたりすることは少なくなるのではないか。小中学校以外での学習が公に認められることで、フリースクールにも通っていない不登校の子どもたちが表に出るきっかけにもなる」と強調する。公立小中学校の授業料が無料なのに対し、フリースクールは安いところで2万〜3万円、高いところでは7万〜8万円の月謝がかかる。法案には「国や自治体は必要な財政上の支援に努める」と記す予定で、経済的に通うことが困難な家庭にとっても助かる。義務教育制度に一石を投じる法案だが、課題を指摘する声も多い。フリースクールといっても現行では千差万別。数十年の歴史を持ち、100人を超える子どもたちが学ぶところもあれば、個人が数人規模で開いているところもある。質や教育の内容にばらつきがあり、埼玉大の高橋哲(さとし)准教授(教育行政学)は「学校にもフリースクールにも籍を置く『二重学籍』が解消されるのは画期的」としつつも、「教員免許の所持を教える条件にしたり、1人当たりの教えられる子どもの数を定めるなど、一定の学習環境を整備する必要はある」と話す。共栄大の藤田英典教授(教育社会学)は「少子化が進む中で、塾産業は学校教育への参入を狙っている。もともと学習指導要領の枠をはずれているフリースクールに、不登校の支援とは別の意味で塾産業が入り込んでくる恐れがあり、非常に危険」と懸念する。議連は今国会での法案成立を目指し、早ければ17年度から制度をスタートさせたい考えだ。高橋准教授は「不登校を生み出している現在の学校の状況をまず改善するべきだ」とする。「画一的な学習指導要領に拘束されるのではなく、多様な教育が認められるようにしないといけない。一人一人に目が届くよう、1クラス当たりの子どもの数を減らしたり、教師を増やすといった、根本的な施策が必要だろう」
●「社会性獲得に配慮を」福岡県内の関係者
 福岡県内のフリースクール関係者からも期待と懸念の声が聞かれた。NPO法人「青少年教育支援センター」(福岡県久留米市)の古賀勝彦理事長(67)は「学びの場として公的に認められ、フリースクールに通う子どもと保護者の安心につながる」と評価。その上で「教科学習のほか農業体験など自由活動のような教育環境も整えているか、義務教育と認める基準を明確にする必要がある」と注文する。卒業生約200人を送り出したNPO法人「フリースクール玄海」(福岡市東区)の嶋田聡代表(62)は「不登校生は、学校でテストを受けないことで内申の評価が下がり進学で不利になる場合がある。今後、フリースクールでの成績が評価の対象になれば進路の選択肢が増えることになる」と期待。一方で「フリースクールを学校に通えるようになるためのステップとして捉える考えもある。学校や本人が『通学しなくても良い』と受け止めてしまうと社会性を身に付ける機会を失いかねない」と懸念した。 

<文科省の人文社会系学部規模縮小通知>
*2-1:http://www.sankei.com/life/news/150528/lif1505280016-n1.html
(産経新聞 2015.5.28) 国立大学の人文系学部・大学院、規模縮小へ転換 文科省が素案提示
 文部科学省は27日、全国の国立大学に対して人文社会科学や教員養成の学部・大学院の規模縮小や統廃合などを要請する通知素案を示した。理系強化に重点を置いた政府の成長戦略に沿った学部・大学院の再編を促し、国立大の機能強化を図るのが狙いで、6月上旬に文科相名で大学側へ通知する。素案は、同日開かれた国立大の評価手法などを審議する有識者会議で提示された。国立大は6年ごとに中期目標を文科省に提出しなければならず、各大学は通知を参考に6月末に中期目標を文科省へ提出する。通知素案では、少子化による18歳人口の減少などを背景として、教員養成や人文社会科学などの学部・大学院について「組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むように努めることとする」と明記された。政府の試算では、平成3年に207万人だった18歳人口が42年に101万人まで半減する。文科省は少子化に伴う定員縮小の影響を指摘したほか、文系の学部・大学院の人材育成方針が明確でないなどの理由もあげた。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11798186.html
(朝日新聞 2015年6月9日) 「国立大、文系見直しを」 ニーズ踏まえ廃止・転換促す 文科省通知
 国立大は2004年度以降、6年ごとに「中期目標」を文科省に提出する義務がある。6月末が16年度からの目標案の提出期限で、認可を受けるには目標が通知に沿っている必要がある。通知は「特に教員養成系や人文社会科学系学部・大学院は、組織の廃止や社会的要請の高い分野に転換する」ことを求めた。例えば、人文社会系の卒業生の多くがサラリーマンになるという実績を踏まえ、大学は地元で必要とされている職種を把握。需要にあった人材を育てる学部に転換するなどといった想定だ。文科省によると、自然科学系は国益に直接つながる技術革新や産業振興に寄与しているが、人文社会系は成果が見えにくいという。国立大への国の補助金は計1・1兆円以上。財政事情が悪化する中、大学には「見返り」の大きい分野に力を入れさせるという考えだ。文科省担当者は「文系を減らして理系を増やすという意味ではない」。別の文系学部への転換も可能だからだ。成果が出にくい分野も、将来の成果を示せれば評価をするという。
■学問の幅、狭まる懸念
 小林雅之・東大大学総合教育研究センター教授(教育社会学)の話 これまで大学は無駄が許容されてきた側面がある。今後は社会の需要に応えるのも大事だ。ただ、すぐ成果が出ない、就職率が悪いとの理由で切り捨ててよいか。大学は広い意味の教養を身につける場なのに、工学や経営学など実学が増え、学問の幅が狭まる懸念もある。個々に状況が異なる大学が自主的に判断するべきだ。

*2-3:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG08HCT_Y5A600C1CR8000/
(日経新聞 2015/6/8) 教員養成系など学部廃止を要請 文科相、国立大に
 下村博文文部科学相は8日、全国の国立大学法人に対し、第3期中期目標・中期計画(2016~21年度)の策定にあたって教員養成系や人文社会科学系の学部・大学院の廃止や転換に取り組むことなどを求める通知を出した。通知では、各法人の強みや特色を明確に打ち出すよう求め、組織改革に積極的に取り組む大学には予算を重点配分する枠組みも盛り込んだ。教員養成系と人文社会科学系については、18歳人口の減少などを理由に、組織の廃止、社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう要請。司法試験合格率が低迷する法科大学院についても、廃止や他の大学院との連合など「抜本的な見直し」を求めた。(1)地域貢献(2)世界・全国的な教育研究(3)世界的な卓越教育研究――のいずれかの枠組みを選んで機能強化を進める大学には、運営費交付金を重点配分するとした。国立大学法人は6年ごとに中期目標・中期計画を掲げており、16年春からが3期目。各法人は通知を踏まえて目標・計画を策定し、15年度中に文科相が認可する。

<大学の反論>
*3-1:http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20150617000174 (京都新聞 2015年6月17日) 人文社会系学部「京大には重要」 山極総長、文科省通達に反論
 文部科学省が国立大学に人文社会系の学部や大学院の組織見直しを通達したことについて、京都大の山極寿一総長は17日、「京大にとって人文社会系は重要だ」と述べ、廃止や規模縮小には否定的な考えを示した。通達は2016年度から始まる国立大学の中期目標の策定に関する内容で8日に送られた。教員養成系や人文社会系の学部・大学院について、18歳人口の減少や人材需要などを踏まえ、「組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めること」としている。山極総長は「幅広い教養と専門知識を備えた人材を育てるためには人文社会系を失ってはならない。(下村博文文科相が要請した)国旗掲揚と国歌斉唱なども含め、大学の自治と学問の自由を守ることを前提に考える」と説明した。

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150622&ng=DGKKZO88343910R20C15A6CK8000 (日経新聞 2015.6.22) 国立大 文科省通知の波紋(上)人文知、民主主義支える、佐和隆光・滋賀大学長
 国立大学に教員養成系や人文社会系の学部・大学院の廃止や改組を求めた文部科学省の通知が波紋を広げている。大学関係者の受け止めを2回にわたって掲載する。初回は通知に異論を唱える一方、改革を進める佐和隆光・滋賀大学長。去る6月8日、全国86の国立大学法人に対し、文部科学省は「教員養成系学部や人文社会系学部・大学院を、組織の廃止や社会的要請の高い分野に転換する」ことを求めるべく通知した。
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 昨今の文部科学行政は産業競争力会議の意向がほぼ完璧に反映されており、こうした通知が出たからといって驚くに値しない。教育学部と経済学部から成る一地方大学の学長を務める私にとっては、「想定内」の公式通知がいよいよ来たかと思うにすぎなかった。理系の研究は技術革新や産業振興を通じて国益に寄与するが、文系の研究は役に立たない。1.1兆円の運営費交付金(国税が原資)の効率的配分という観点からすれば、文系学部の学生定員・教員数を減らして浮くお金を理系の研究に回すべきである――。議長の安倍晋三首相ほか閣僚8人、企業経営者7人、大学教授2人(工学と経済学)から成る産業競争力会議が、このように考えるのは、ある意味、至極もっともなこととうなずける。そういえば、全く同じようなことを半世紀余り前に聞いたことがある。1960年3月、岸信介内閣の松田竹千代文部相(当時)が「国立大学の法文系学部は全廃して理工系を中心とし、法文系の教育は私立大学に任せるべきだ」と言ってのけた。60年安保闘争に参加した大学生の多くが国立大法文系学部生だったことと、理工系振興への経済界からの熱い要望が、大臣発言の背後にあったのだ。同年12月、池田勇人内閣は「所得倍増計画」を公表し、「今後10年間で国民所得を倍増するために、理工系学部に重点的に資金配分する」との施策を打ち出した。ソニーの創業者井深大氏は「これからは国会議員の大半を理工系学部出身者が占めるようになるだろう」と語り、理工系全盛期の到来を予言した。残念ながら、井深氏の予言は当たらなかった。今もって国会議員の大半は文系出身、理系出身者が中央官庁の事務次官に就任する例は極めて少ない。皮肉なことに井深氏の予言が的中したのは、旧ソ連や中国においてのことだった。旧ソ連共産党書記長(ゴルバチョフを除く)、そして中国国家主席は、代々工学部出身者である。なぜ井深氏の予言は日本で的中しなかったのだろうか。答えは簡単で、日本は民主主義国家だからである。自由主義・民主主義の本家本元、欧米先進諸国においては、文系学科の存在感は極めて大きい。とりわけ欧州では人文社会系の学識が指導者にとって必須の素養と目されている。日本の経営者が見れば「役立たず」の典型である歴史学科出身の官僚・政治家が少なくない。昨今、文科省が唱える「思考力・判断力・表現力」を養うには人文社会系の学識が不可欠なのだ。民主主義国家では、企業であれ官庁であれ、旺盛な批判精神を有する人材を求める。人文社会系の学識なくして批判精神なしなのだ。ゆえに全体主義国家は必ずや人文社会知を排斥するし、人文社会知を軽視する国家はおのずから全体主義国家に成り果てる。
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 安倍政権が目指す「日本の10大学を世界のトップ100以内に」を達成するには、人文社会系の研究振興が欠かせない。ランキング上位にいる英米の大学は、人文社会系の分野で高得点を稼いでいる。人文社会系に特化するロンドン経済政治学院の順位は34位。23位の東京大学には及ばずとも59位の京都大学をはるかにしのぐ。世界大学ランキング3位のオックスフォード大学では、学士課程学生の過半が人文系を専攻している。英国の司法、行政、政治、経済の分野で指導者になるには、人文社会知が必須であることを示して余りある。同時に、人文社会系分野での研究者の層の厚さゆえに、同大は世界3位にランクされるのだ。ランキング1位のカリフォルニア工科大、6位のマサチューセッツ工科大には、人文社会系学科が盛りだくさんあり、研究水準は超一流であることをも付記しておこう。このたびの文科省通知は想定内だったと先に書いたが、人文社会系の2学部から成る滋賀大学が何もせずに手をこまねいていたのでは、既存の資源(学生定員と人件費)を削り取られることは必至と見てよい。滋賀大学という一地方大学の学長としての私は、文科省通知にある「社会的要請の高い分野」とは何なのかにつき思いを巡らせ、たどり着いたのが「ビッグデータ時代の人材養成」を目指すデータサイエンス学部の創設(2017年度予定)だった。滋賀大は未来志向と文理融合を改革の理念に掲げている。ビッグデータの大半は広義の社会データであり、人文社会系の学識とデータ解析能力を「融合」した人材養成が産業振興のために不可欠なことを、産業競争力会議員の諸兄姉によろしくご理解いただきたい。こうした取り組みは、滋賀大学だけではない。文科省通知を先取りする格好で、多くの地方大学が人文社会系の学識を生かした資源の再配分、すなわち新学部の創設を競っているのである。スティーブ・ジョブズの名言で本稿をしめくくろう。11年3月、iPad2の発表会でジョブズは、こう語って多くの聴衆を魅了した。「人々の心を高鳴らせる製品を創るには、技術だけでは駄目なんだ。必要なのは人文知と融合された技術なのだよ」

*3-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150622&ng=DGKKZO88344020R20C15A6CK8000 (日経新聞 2015.6.22) 「社会に役立つ」性急すぎる要求
 「大学は社会に役に立つ人材を送り出す必要があるが、最近は近視眼的で性急な要求も多い。もっと温かい目で見てほしい」。15日、里見進・国立大学協会長(東北大学長)は記者会見で、教育学部や人文社会系学部の見直しを求めた文科省通知を批判した。同席した副会長も「理工系単科大学でも、歴史や社会を知らない学生は困る」(大西隆・豊橋技術科学大学長)、「実学系学部の学生も人文社会学系を副専攻にできる仕組みにしている。多様性が重要」(高橋姿・新潟大学長)などと訴えた。一方で、文科省の“威光”をバックに、遅れがちの改革を進める動きも出ている。

<基礎知識不足の事例>
*4-1:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/203186
(佐賀新聞 2015年7月1日) 自民「報道圧力」問題
◆言論の府預かる資質ない
 安倍晋三首相に近い自民党若手国会議員の勉強会で、報道機関へ圧力をかけて言論封殺を探ろうとする発言が相次いだ。安全保障関連法案への理解が広がらない焦りやいらだちが、報道機関への八つ当たりという形で噴出した。言論の府を預かる国会議員として不見識極まりない発言で、稚拙というほかない。勉強会は、文化人や芸術家との意見交換を通じて「心を打つ『政策芸術』を立案し、実行する知恵と力を習得すること」が目的らしい。9月の総裁選で再選を目指す首相の「応援団」的な位置づけで、首相側近の加藤勝信官房副長官や萩生田光一党総裁特別補佐も初回会合には出席していた。非公式の勉強会とはいえ、あまりにお粗末な運営だった。講師として招いた作家の百田尚樹氏は、これまでもさまざまな舌禍を起こしてきた人物だ。政権が心血を注ぐ安保法制の国会審議に影響を及ぼす発言が出るかもしれないと想像力を働かせることはできなかったのか。各議員は報道機関が取材に来ているのを認識していたなら、非公開の場であっても発言が外に出ると自覚すべきだった。与党国会議員の勉強会が「居酒屋での愚痴」レベルの発言に終始したのは笑い話にもならず、その議員に一票を投じた有権者の方が恥ずかしくなる。何よりも会合での数々の暴言をたしなめる言動がなかったことにあきれる。「マスコミをこらしめるには広告料収入がなくなることが一番。文化人は経団連に働きかけて」と言論統制容認をうかがわせる発言をした当人はもちろん、同席議員も国会議員の資質はない。日本国憲法を一から勉強し直し、言論・表現の自由と民主主義の基本認識を深めることを求めたい。さらに「沖縄の特殊なメディア構造をつくってしまったのは戦後保守の堕落。左翼勢力に完全に乗っ取られている」との発言は、見当違いも甚だしい。29日付の本紙に掲載された沖縄タイムス、琉球新報の寄稿を読んでほしい。「県民に判断能力がないと見下すに等しい暴論だ。そんなおごりがあったなら、沖縄の新聞はとっくに県民に葬り去られていた」(琉球新報)との反論は、県民の民意に寄り添う報道姿勢を貫いてきた自負にほかならない。加えて百田氏の発言は、沖縄県民への侮辱以外の何ものでもない。「米軍普天間飛行場は田んぼの中にあった。まわりに行けば商売になると人が住みだした」は全くの事実誤認である。2地元紙が訂正などを求める抗議声明を出したほか、沖縄選出の国会議員や宜野湾市議会も発言の撤回と謝罪を求める声明や決議を出した。百田氏は真摯(しんし)に対応すべきだろう。近年、自民党による「報道への圧力」と取られかねない動きが目につく。昨年11月の衆院解散前にテレビ局に公正報道を求める文書を出したほか、今年4月には番組出演者が「政権の圧力」に言及したテレビ朝日と、やらせ疑惑が浮上したNHKの幹部を呼び、事情を聴取した。圧倒的な勢力を背景に「1強」のおごりが組織内に充満していないか。党はもちろん、政府も内部を顧みて姿勢を正すべきだ。

*4-2:http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140814/dst14081408090001-n2.htm
(産経ニュース 2014.8.14) 福島第1、凍らない「氷の壁」断念か 別工法も 19日に規制委が検討
 東京電力福島第1原発海側のトレンチ(地下道)に滞留する汚染水を遮断するための「氷の壁」が3カ月以上たっても凍らない問題で、7月末から投入している氷やドライアイスに効果が見られないことから、政府が「氷の壁」の断念を検討し、別の工法を探り始めたことが13日、分かった。政府関係者によると、19日に原子力規制委員会による検討会が開かれ、凍結方法の継続の可否について決めるという。氷の壁は、2号機タービン建屋から海側のトレンチへ流れ込む汚染水をせき止めるため、接合部にセメント袋を並べ、凍結管を通し周囲の水を凍らせる工法。4月末から凍結管に冷媒を流し始めたものの、水温が高くて凍らず、7月30日から氷の投入を始めた。しかし氷を1日15トン投入しても効果がなく、今月7日からは最大27トンに増やしたが、凍結が見られなかった。12日までに投じた氷は計約250トンに上る。ドライアイスも7日に1トン投じたものの、小さい配管に詰まってしまい投入を見合わせ、12日に再開した。氷の壁が凍結しないことは、規制委の検討会でも有識者から指摘されており、「コンクリートを流し込んでトレンチを充(じゅう)填(てん)すべきだ」との意見があった。政府関係者によると、19日に予定されている検討会では、氷投入の効果を評価した上で、効果がないと判断されれば代替工法の作業に着手するという。規制委は、トレンチにたまっている汚染水が海洋に流れ出す恐れがあることから「最大のリスク」と位置付けており、早期解決を目指している。特に凍結管の中に冷媒を通して水分を凍らせる技術は、1~4号機周囲の土中の水分を凍らせる「凍土遮水壁」と同じで、氷の壁が凍土壁にも影響しないか懸念を示している。氷やドライアイスの投入について、東電の白井功原子力・立地本部長代理は「十分な検討が不足していたという批判はその通り。失敗を次の糧にしていく。当初予定していたことができないことはあり得る」と話している。


PS(2015年7月4日追加):*5-1で、沖縄県の市民が、「県民を愚弄する精神が底流にある」と怒っているのは、“自民党若手議員”の発言の根底に、「自分たちの考えが正しく、沖縄県の市民の意見が歪んでおり、歪んでいる理由は沖縄二誌にある」という上から目線の考え方があり、失礼だからだ。そのため、*5-2で、菅官房長官の沖縄知事への「ご迷惑を掛けて申し訳ない」という謝り方は、誰にどういう“迷惑”をかけたのか不明であり、謝るべきポイントが違っていると考える。翁長沖縄県知事は大変だと思うが、へこたれずに頑張ってほしい。 女性

*5-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/204669
(佐賀新聞 2015年7月4日) 報道圧力に450人抗議、沖縄、首相に謝罪要求
 自民党若手議員の勉強会で報道機関に圧力をかけるような発言が出た問題を受け、沖縄県の市民団体などが4日、抗議の集会を那覇市で開いた。約450人(主催者発表)が参加。「報道・言論の自由を脅かし、民主主義の根幹をも揺るがす。県民を愚弄する精神が底流にある」と非難し、自民党の安倍晋三総裁(首相)にあらためて謝罪を求める決議文を採択した。「言論・表現・報道の自由を守る沖縄県民集会」と銘打ち、市民団体のほか翁長雄志知事を支持する県議が呼び掛けた。

*5-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/204685
(佐賀新聞 2015年7月4日) 菅官房長官が沖縄知事に陳謝、自民勉強会発言で、対話は継続
 菅義偉官房長官は4日夜、沖縄県の翁長雄志知事と東京都内のホテルで会談した。菅氏は6月25日の自民党若手議員の勉強会での沖縄をめぐる発言について「ご迷惑を掛けて申し訳ない」と陳謝した。両氏は今後の対話継続で一致した。翁長氏が会談後、明らかにした。会談は、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐる国と県の対立激化を回避する狙いから行われた。この日は、移設問題は話題にならなかった。次回以降で取り上げるとみられる。翁長氏は菅氏の陳謝について「よかった」と語った。「これから何回かにわたる話し合いのベースにする。次回以降は厳しくなる」とも述べた。


PS(2015年7月7日追加):*6は、すべての市町で質が高くて十分な学童保育ができるというのが条件であるため、場所によっては国や県のアドバイスと補助が重要だろう。私は、学童保育の担い手は、定年退職した教員や未採用の若い資格のある人に報酬を払って中心になってもらい、預かった子どもに予習・復習をさせるとともに、地域のプロにも協力してもらって、植林や畑での作物栽培、鳥の巣箱の作成と設置(木材を使った工作と生態系の理解目的)、魚とり、遠足、料理、地場産業(焼物・織物・染色等々)の作品作成、サッカーなど、家庭ではできない教育に役立つ遊びを体験させるのがよいと考える。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/205281
(佐賀新聞 2015年7月7日) 佐賀県、学童保育センター廃止 利用急増「過渡期」不安も
■「子育てし大県」どうなる 「市町主体で運営できる」
 佐賀県は、放課後児童クラブ(学童保育)の質を向上させる目的で6年前から実施してきた「学童保育支援センター事業」を廃止した。県は「市町がノウハウを蓄積し、主体的に運営できるようになったため」と説明する。ただ、「子育てし大県“さが”プロジェクト」を掲げる中での廃止に、市町の担当者や指導員からは「利用する子どもが急増している学童保育の運営は過渡期」と残念がる声が上がり、今後への不安も漏れている。学童保育支援センターは学童保育の充実を目的に2009年度、県内4カ所でスタートした。子どもに直接関わる指導員や保護者、市町からの相談は、最も多い年で1700件を超えた。指導員を対象にした研修会は年間約50回開き、県内全域の学童保育の現状をまとめたガイドブック発行も手掛けた。県は当初、国の基金を活用し3年間を予定していたが、12年度は「質向上」に焦点を当て、センターを1カ所に集約し、県単独予算でさらに3年間継続した。県こども未来課は、この6年間で市町は条例を作って国の基準に沿った運営ができるようになったとしている。さらに開設時間が12市町で30分~1時間半、最長午後7時まで延長され、4年生以上の受け入れを7市町が拡大している。これらを基に「市町は主体的に運営できる」と判断した。一方で、こども未来課によると、本年度当初、指導員を対象にした国の補助事業「現任研修」を実施する予算を組んだ市町は県内でゼロ。県は「困りを抱えている子どもたちへの対応」などをテーマに、指導員も参加できる全7回の研修会を開催しているが、50回を数えた前年度までと比べると、激減している。センターの廃止を受け、県北部で15年以上の経験がある指導員は行政による委託運営もあり、市町職員でも現状把握が進まない現状を挙げ「まだまだ主体的にできる状況となっていない」とセンター事業廃止を不安視する。また「センターの職員は他の市町を巡り、状況を把握していた。いろんなアイデアをもらい、行政とのパイプ役にもなってくれ改善につながってきたのに」と声を落とす。県内で学童保育を担当する市町職員の一人は「事業が昨年度で終わるのであれば、県は昨年度中にノウハウをセンターから引き継ぐ丁寧な仕掛けが必要だったのでは。それがなく、尻切れとんぼになった感じ」と疑問を口にする。減少する指導員研修についても「身近な地域で開いてくれていたからこそ、時間をやりくりして参加できた。指導員の担い手は主婦層が多く、遠くまでは難しい。これからは、どうでしょうか…」。質向上の足踏みを心配している。

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2015.2.22 小中一貫校に幼稚園も接続した方が、教育効果が上がること(2015.2.23追加あり)
   
 *1より      玄海町の農業体験      玄海町、修学旅行生の養殖見学        

(1)公立玄海小中一貫校の素敵な校舎
 *1のように、玄海町は2小学校、2中学校を統合して町立玄海小中学校「玄海みらい学園」を4月に開校する予定で、新校舎は鉄筋コンクリート4階建て、延べ床面積約1万5千平方メートルで、4階まで吹き抜けの天井がガラス張りになっているそうだ。教室は30人学級を想定した広さで、従来の黒板は置かず、電子黒板やホワイトボードを使用し、トイレは全個室洋式とのことである。

 このように小中学校を統合したり、耐震化するために新校舎を建設したりする際に、21世紀仕様の教育環境を整えるのがよいと、私も考える。また、新校舎の階段に、制服の見本が置いてあるが、小学生の時からかわいらしい制服を着せるのも悪くない。そして、玄海町は海・山・田畑が近く、子どもを自然の中で育てられるのが魅力だ。

 なお、私は、幼稚園も接続して、3歳、4歳もしくは5歳から、自然な形で教育を開始した方がよいと考えている。何故なら、言語は幼いほど吸収力が高いため、英語やフランス語を母国語とする教師が時間をかけて楽しく教えておけば、後で語学で苦労する必要がないからだ。また、教える内容も、これに合わせて前倒ししたり、内容を豊富にしたりし、飛び級も可能にした方がよいと考える。

 しかし、玄海町には原発があり、その交付金で立派な学校ができても、子を持つ家庭が玄海町に住むのはためらわれる。そのため、*4、*5-1、*5-2のように、政府が中枢機能分散を推進し、企業の地方移転を進めようとしており、地方創生総合戦略に対して交付金を準備している時であることを活用して、原発を速やかに廃炉にし、次の時代の稼ぎ方を設計すべきだ。

(2)公立小中一貫校の目的
 *2のように、9年間を通じたカリキュラムで教育する公立小中一貫校が急増し、政府の教育再生実行会議が6・3制を見直す学制改革の議論を次回以降に始めるそうだ。都道府県別では東京都が公立小中一貫校18校と最も多く、次いで宮崎県12校、広島県9校、佐賀県6校、京都府(京都市含む)6校と続き、佐賀県は進んでいる方だ。宮崎県は全国初の公立中高一貫校が1994年に誕生し(これを知って、私は佐賀県立唐津東高校を中高一貫校にするよう提言し、実現済)、小中一貫校も2006年に開校するなど早くから一貫教育に積極的に取り組んでいるが、私立は前からそうやって実績を出していたのだ。

 小中一貫教育を進める目的としては、「①教職員の指導力向上」「②学力向上」「③小中が核となり地域とともに学校づくりを進める」が大切だと考えるが、「④中1で不登校や問題行動が増える“中1ギャップ”を防ぐため」というのは、何かおかしい。もともと、子どもにとって変化やスリルは楽しい筈で(だから、子どもは冒険物語やジェットコースターに惹かれる)、小学校から中学校に行く程度の変化についていけない子どもが社会に出て場所や時代の変化についていけるのかも疑問であるため、学校・社会の“文化”や教育方針を見直すべきである。

(3)スーパー小中一貫校 (?)
 大阪市は、*3のように、「スーパー小中一貫校」を作り、通学区を限定せずに市全域から募集するそうだ。そして、①小1からの英語学習 ②児童・生徒1人1台のタブレットパソコン配布 ③小学校で教科担任制を一部導入などに取り組むそうだが、このうち②は、佐賀県では既に行われており、これに①と③を加えて教育するのが、小中一貫校のメリットを活かす方法であるため、どこでも普通にやるべきである。

*1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/159240
(佐賀新聞 2015年2月22日) 「玄海小中学校」校舎を披露 内覧会開催
■4階まで吹き抜け/天井ガラス張り
 玄海町の2小学校、2中学校を統合して4月に開校する町立玄海小中学校「玄海みらい学園」の内覧会が21日、有浦中敷地内に建設された新校舎であった。訪れた児童や生徒、保護者らが、小中一貫校としてスタートする新年度からの生活へ、イメージを膨らませていた。新校舎は鉄筋コンクリート4階建て、延べ床面積約1万5千平方メートル。4階まで吹き抜けで、天井はガラス張りになっており開放感が特徴。新1~9年生約530人が一堂に集まれるホールもある。教室は30人学級を想定した広さで、従来の黒板を置かず、電子黒板やホワイトボードを使用。トイレは全個室洋式。校舎を見て回った児童たちは「ベランダや屋上があるのがいい」「更衣室がきれいだった」「教室は少し狭く感じた」など、口々に感想を言い合っていた。工事は2013年6月に始まり、一部設備工事を残して今年1月末に完成。総事業費は約49億円で、新校舎、体育館、渡り廊下の建設費は39億9700万円。内覧会は22日も午前10時、正午、午後2時からの3回実施する。

*2:http://digital.asahi.com/articles/TKY201310230564.html?_requesturl=articles%2FTKY201310230564.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201310230564
(朝日新聞 2013年10月25日) 公立小中一貫校が急増100校 9割「学力向上狙い」
 小中学校の9年間を通じたカリキュラムで教育する公立の小中一貫校が急増し、今春までに全国で100校開校していることが朝日新聞の調査でわかった。政府の教育再生実行会議が6・3制を見直す学制改革の議論を次回以降に始めるが、ほぼ半数の48校の校長が学制改革を求めた。一貫校を「義務教育学校」として制度化することには、3分の1の29校が賛成した。小中一貫校は国により制度化されていないため、自治体ごとに定義や呼び方もさまざまだ。そこで京都産業大の西川信廣教授(教育制度学)の助言を受け、(1)小中の敷地が同じ(2)9年間を見通したカリキュラムを持つ――という最も一体化が進んだ学校を対象とし、校長に教育内容や成果、課題などを聞いた。その結果によると、2005年段階では4校だったが、08年に23校に。その後は毎年10校以上増え続け、11年で61校、12年で81校となり、今春現在で100校となった。都道府県単位だと、最も多いのは東京都で18校、宮崎県12校、広島県9校、佐賀県6校、京都府(京都市含む)6校と続く。宮崎県の場合、全国初の公立中高一貫校として県立五ケ瀬中・高校(現在は中等教育学校)が94年に誕生。小中一貫校も06年、日向市立平岩小中学校が開校するなど早くから一貫教育に積極的に取り組んできた。小中一貫教育を進める目的としては、「学力向上」が91校、中1で不登校や問題行動が増える「中1ギャップの解消など生徒指導上の成果を上げる」が90校、「小中が核となって地域とともにある学校づくりを進める」が66校、「教職員の指導力向上」が56校だった(複数回答)。9年間のカリキュラムの区切り方は「4―3―2」が最多で67校、「6―3」のままが28校だった。学制改革について質問したところ、「改めた方がよい」が16校、「どちらかといえば改めた方がよい」が32校、「どちらかといえば今のままでよい」26校、「今のままでよい」12校、「わからない」13校。「どちらかといえば」も含め「改めた方がよい」と回答した48校の校長に、どう改めるかを尋ねた。「中高一貫の中等教育学校のように、小中一貫の『義務教育学校』をつくる」が29校にのぼった。自民党の教育再生実行本部が5月に提言したのがこの形態だ。「全校一律で6―3の区切りを変える」は15校、「5歳から義務教育にする」「高校を義務教育にする」はともに3校だった。開校に至る経緯(複数回答可)では、「統廃合計画のなかで計画された」と回答したのが52校と半数以上。「公立学校の多様化を推進するため」が45校、「町づくりの核として」が21校、首長が公約で掲げたのが16校だった。一貫校の調査としては、文部科学省や、小中一貫教育に取り組む自治体でつくる「小中一貫教育全国連絡協議会」が10年に調べたものがあるが、校長に教育内容や成果まで尋ねた調査は「把握していない」と文科省は話す。
■半数、統廃合が影響
 小中一貫校が増える背景には、地方分権の流れがある。きっかけは広島県呉市が2000年から国の研究開発学校で、東京都品川区が04年から構造改革特区でそれぞれ小中一貫教育を試みたこと。市町村の教育改革として注目された。自治体が理由に挙げるのは(1)小、中学校で学習、生活指導が大きく違い、中1で不登校や問題行動が増える「中1ギャップ」が問題視されている(2)身長の伸びが早まり、発達の段差が小4、5年ごろに移っているとされることだ。小中9年間で教育内容を見直し、独自の教科の新設などで学力向上を目指す狙いもある。だが今回の調査では開校の経緯として統廃合計画を挙げる学校が地方に多く、52校と半数以上に上った。都市部では、子どもが私立中に進学し公立中の生徒が減るのを防ぐ狙いもある。西川教授は「一貫教育の目的についての回答に『学力向上』『生徒指導上の成果』が多く、それを生み出す『教職員の指導力向上』を挙げたのは56校にとどまっている。『中学生が小学生を思いやるようになった』といった子どもの変化に比べ、教職員の変化を成果として挙げる回答は少なかった。小中が表面的な交流にとどまり、教職員の力がつくところまでいっていない表れだと思う。何のために小中一貫教育を進めるのか、行政自身、見つめ直すことが必要だ」と話す。
     ◇
〈調査方法〉 まず全都道府県、政令指定都市の教育委員会に「小中学校が同一敷地にあり、9年間を見通したカリキュラムを持つ学校」の校名を挙げてもらった。東京都教育庁は「小中一貫校を把握していない」と回答したため、朝日新聞が都内の全市区町村を調べた。そのうえで自治体の挙げた学校の校長に、開校の経緯や成果、課題を問う質問票を郵送。全員から回答を得た。

*3:http://digital.asahi.com/articles/OSK201310210144.html
(朝日新聞 2013年10月22日) スーパー小中一貫校2校 入学・転入生募る 大阪市
 大阪市教委は市内在住の児童・生徒を対象に、施設一体型小中一貫校「やたなか小中一貫校」(東住吉区、昨年春開校)と「むくのき学園」(東淀川区、来年春開校)への来年春の入学・転校生を募集している。市立小中が通学区を限定せず市全域から募集するのは初めて。2校は市の教育改革を先駆けて実践する9年間の「スーパー小中一貫校」と位置づけられ、小1からの英語学習▽児童・生徒1人1台のタブレットパソコン配布▽小学校で教科担任制を一部導入、などに取り組む。対象は市内在住(2校の校区内なら応募の必要なし)で、来年度に小1~6年または中1~2年になる子ども。2校とも各学年40人程度で、応募多数なら抽選を行う。締め切りは10月31日で、学校選択制を実施する一部の区のみ締め切りを早めるケースもある。問い合わせは市教委学事課(06・6208・9114)。

*4:http://qbiz.jp/article/56137/1/
(西日本新聞 2015年2月18日) 企業の地方移転は進むのか? 政府、中枢機能分散を後押し
 地方の人口減少と東京一極集中に歯止めをかけるため、政府は企業の地方移転や分散に力を入れ始めた。経済拠点の多極化は過去にも試みられたが、はかばかしい成果を残していない。「地方創生の手段」と位置付ける今回の取り組みは、企業をその気にさせることができるか−。「2020年度までに、地方に30万人の若者の雇用を創出する」。政府は昨年12月に閣議決定した地方創生の総合戦略に大胆な目標を掲げた。企業の地方移転支援は、その一環。(1)東京から三大都市圏以外へ本社機能を移す企業(2)地方にある本社機能を拡充する企業−の税負担を軽くする特例措置を新たに設ける。政府が企業の地方移転を推進するのは初めてではない。1990年代の地方拠点都市、オフィスアルカディアなど数々の政策を打ち出したが、経済産業省幹部は「思わしい結果は出なかった」。逆に創業した地方で業績を伸ばし、本社を東京へ移す企業が多かった。
 だが、企業の考えは変わってきた。転機は東日本大震災だ。将来、東京の本社が被災するリスクを分散するため、複数の都市に経営拠点を置く動きが顕著になっている。インターネットの普及で、大都市でなくても可能な仕事も増えた。政府は「本社移転はハードルが高い」として、中枢機能の分散を後押しする。地方の誘致活動も熱を帯びる。福岡市と福岡経済同友会、福岡商工会議所は17日、東京都心でシンポジウムを開催。「ビジネス拠点・福岡」の優位性を企業関係者などにアピールした。政府で地方創生を担当するまち・ひと・しごと創生本部の若井英二事務局次長は「創業地や福岡、札幌のようなブロック拠点都市は可能性が大きい。通勤圏を考えると、自治体は広域で連携して誘致するのが有効ではないか」と語る。
   ◇   ◇
●機能分散、震災後に加速
 地方に拠点を移す企業は確かに増えている。
 「福岡で独立したビジネスが成り立つように、機能移転を進めたい」。マスミューチュアル生命保険(東京)の井本満社長は17日のシンポジウムで、福岡本社(福岡市)を4月に本格的に立ち上げる計画を披露した。従業員は約150人。災害時に保険金の支払いを滞らせないため、自然災害の可能性が小さい福岡市を第2の拠点に選んだ。生命保険業界では、ほかにアクサ生命保険が2014年11月に札幌本社を設立。大規模投資だったが「災害時にも業務を継続するために必要な投資」(広報)ととらえている。建設機械大手のコマツは11年、創業地である石川県小松市に総合研修施設を造り、人材育成などの機能分散を進める。13年度は国内外から約2万7千人が研修で小松市を訪れており、地域にもたらす経済効果も大きい。企業にとって地方移転は不安材料もあるが、踏み切ってみると、乗り越えられることも多いようだ。12年に東京から北海道恵庭市へ本社を移したエム・エス・ケー農業機械。杉野俊樹社長は「優秀な社員をつなぎ留められるか」心配だったが、首都圏に勤務していた約70人のほぼ全員が北海道に転居。現地でも「良い人材が確保できている」と自信をみせる。東洋ゴムは東京本社を大阪本社に統合、8月には本社を兵庫県伊丹市に移す。「取引先とのやりとりはネットを使えばよく、東京でないとできないことはない」という。経団連産業政策本部の森島聡主幹は、地方移転を税制で促進する政府の取り組みを歓迎するが、注文もある。「国の許認可権限を地方に移すことも必要だ。行政機能が東京に集まっている限り、必要な手続きは東京で行わざるを得ない」。地方移転をさらに拡大するには分権が必要と考える。企業を迎える自治体にも課題がある。石破茂地方創生担当相は「教育、医療、介護が単身赴任の大きな理由になっている」と指摘。家族が安心して新しい暮らしが営める環境整備を求めている。


PS(2015.2.23追加):*5-1、*5-2のように、地方創生担当相は、政府機関の地方移転を推進する方針で、「地方から誘致提案をして欲しい」とのことであるため、生活や教育などのメリットを示して、農漁業・エネルギー・文部科学など、シナジー効果のある施設の誘致に立候補するのがよいと考える。

*5-1:http://qbiz.jp/article/56407/1/
(西日本新聞 2015年2月22日) 政府機関の移転候補、近く公表 石破地方創生相インタビュー
 石破茂地方創生担当相は21日、福岡市で西日本新聞のインタビューに応じた。石破氏は東京一極集中を是正するため、政府機関の地方移転を推進する方針を示し、移転候補のリストを近く公表すると表明。「必ずしも東京になくていい機関がいっぱいある。東京にあるよりもうちに来た方が良い、と地方から提案してほしい」と語った。移転候補となるのは、府省庁の研究機関や研修所など。機関の名前、仕事の内容、職員数の一覧を2月中にも公表し、誘致する自治体を募る。2015年度に移転先を決め、16年度から具体化する。省庁本体は対象としない方向だ。石破氏は「移転したらこんないいことがある、地元はこんな支援をすると言ってもらいたい」と述べ、誘致する自治体に移転効果の説明を求める考えだ。政府は地方の人口減少対策を兼ねて、企業の本社機能移転を優遇税制で支援。民間と連動して、首都圏から地方へ雇用と人の流れをつくる。20年の東京五輪に向けて一極集中の加速が懸念されているが、石破氏は「そこは政策的に止めなければならない」と述べた。地方創生関連の交付金 政府は2014年度補正予算に自治体向けの交付金4200億円を盛り込んだ。「地域消費喚起・生活支援型」(2500億円)はプレミアム付き商品券の発行など経済対策色が濃い。「地方創生先行型」(1700億円)には、自治体がまとめる地方創生の総合戦略策定費が含まれる。政府は自治体の総合戦略を具体化する財源として、16年度に新たな交付金を創設する方針。

*5-2:http://qbiz.jp/article/56408/1/
(西日本新聞 2015年2月22日) 石破氏一問一答 総合戦略新交付金、自治体で差 
 石破茂地方創生担当相とのやりとりは次の通り。
−自治体は地方創生の総合戦略を2015年度に策定する。ポイントは何か。
 「三つある。一つ目はKPI(重要業績評価指標)。農業生産額、移住者数、出生率などの数値目標を設定することだ。二つ目は企画立案、実行、点検、改善のシステムを組み込むこと。三つ目は産官学、金(金融機関)労(労働界)言(言論界)のみんなが参画すること。市長が作ればいいという話ではない」
−総合戦略を実行する財源として新型交付金を16年度につくるそうだが、どのような交付金になるか。
 「自治体を一律に扱わず、総合戦略を見て、熱意があるところに厚く交付する。その審査は議員の口利きのような恣意(しい)性を排除し、透明性のある仕組みにする。独創性、将来の発展性、持続性などが審査基準になるだろう。金額の規模はまだ分からない」
−プレミアム付き商品券などに使える14年度補正予算の交付金は、ばらまきの印象がある。
 「効果をチェックする仕組みがあるから、ばらまきではない」
−人口減少対策は特に雇用が重要になるのでは。
 「地方で起きている人手不足をどう考えるか。保育や介護、公共交通、サービス産業の生産性を上げることが大事だ。雇用を安定させ、収入を上げるための工夫があってしかるべきだ。公共事業や企業誘致は絶対的な効き目がなくなった」「地方で生産性や収益を上げるには、コンパクトシティー化と企業の集積が必要だと思う。集落再編でなくなる集落はかわいそうだが、全ての集落に同じインフラを整備すると、いくらお金があっても足りない。切って捨てることはしないが粘り強く住民の合意を得なければならない」
−道州制にはどのような考えを持っているか。
 「全然否定しない。外交や安全保障、通貨政策は国が行い、地域のことは地域でやった方がいい。ただ、地方創生は都道府県の役割が大きい。市町村がばらばらなことを計画しても困るので、県にコーディネート(調整)してほしい」

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2014.12.17 ロボット、電気自動車・燃料電池車、蓄電池、エネルギーの技術進歩でイノベーションへ (2014.12.17、20、30に追加あり)
    
    *1-1より              トヨタとホンダの燃料電池車

(1)ロボットについて
 *1-1のように、電通がマツコ・デラックスさんをモデルに「マツコロイド」を開発し、今後、ロボットタレントとして活動させるそうだ。マツコさんの等身大であり、表情や癖、しぐさなどもそっくりで、マツコさんの声で話すとのことで、本人より人気が出るかもしれない。

 そして、私は、これを、観光地の案内に使ったら面白いのではないかと思う。例えば、大英博物館では、ロゼッタ石が書いてある内容やその解読の経緯を紹介したり、エジプトのツタンカーメン王やネフェルティティ王妃が、当時の衣装をつけた美男美女の姿でエジプトの歴史を客の母国語で解説すれば、面白く世界史を学ぶことができ、大英博物館の人気が上がるだろう。

 これは、日本なら、*1-2の法隆寺で釈迦三尊像や薬師如来像が、自分が表わしている内容を聞き手の母国語で説明したり、聖徳太子のロボットが同じく聞き手の母国語で歴史を語ったりすることであり、これらはロボットだからといって決しておもちゃではなく、本物の時代考証や法隆寺の由来に則し、客の質問も受けながら声優が演技して初めて魅力的になり、各国からの修学旅行生も増えるのである。

(2)観光について
 私は、ギリシャが財政危機というのは変だと前から思っていたが、*2-1のように、ギリシャはパルテノン神殿など由緒ある建造物や彫刻を数多く持っており、ヨーロッパ文化の先祖である。しかし、パルテノン神殿のように廃墟と化していれば一度行けば十分であるため、EUとギリシャは、まず現在残っているギリシャの建造物や彫刻を資産として活かすべく忠実に復元し、ヨーロッパの威信をかけて最新技術でロボットなどの解説員をおけばよいのではないだろうか。

 なお、*2-2は、400年間続いた磁器の街、有田(伊万里)の事例で、ここには、昔ながらの街並みがあるだけでなく、ロボットではなく生きた重要無形文化財などの人々が400年間磁器を作り続けている。そのため、ちょっと街を廻ると、現在の14代今泉今右衛門、15代酒井田柿右衛門、14代李参平(朝鮮出身の陶工で、有田焼《伊万里焼》の生みの親)などに会うことができる。また、宮内庁御用達の香蘭社、辻精磁、深川製磁なども近くに軒を並べているため、磁器を作るだけではなく、歴史的価値の高い観光地としてもグローバルに魅力を発信できる筈である。

 なお、古代ローマ帝国期の闘技場「コロッセオ」も廃墟と化しており、現在は一度行けば十分な場所になっているが、*2-3のように、「再び床を敷き、格闘技やコンサートの会場にしよう」という案があるそうで、私は、考古学に忠実に復元すれば、これも世界で人気の出る名案だと考えている。イタリアの多くの遺産が人目につかぬままに崩れ落ちているのなら、それこそもったいない話であり、EUとイタリアは、現在残っている建造物や彫刻を資産として活かすべく、威信をかけて考古学に忠実に復元し、各国語に対応できる最新ロボットの解説員や案内人を置けばよいだろう。

(3)燃料電池車と蓄電池の進歩
 *3のように、トヨタ自動車が2014年12月15日に燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を世界に先駆けて国内で発売した。走行時に水しか出さないため「究極のエコカー」だが、年間販売目標はたった400台だそうで、価格設定も723万6千円と高く、国の補助金を利用しても520万円であるため、とても普及車(300万円代の前半までだろう)にはなれそうもない。

 これは、せっかくよい技術が出てきても、価格設定を高くしすぎて普及を阻んだために、より安価な液晶テレビが出てきて普及前に消えてしまったプラズマテレビを思い出させる。もう燃料電池車は未来の技術ではなく現在の技術であるため、ミライがミイラにならないよう本格的な普及を心がけるべきだ。

 また、*4のように、固体の電解質を使った新世代の蓄電池が開発され、充電時間が従来の10分の1、電池の重さが半分以下になったそうだ。電気自動車の走行距離延長や自然エネルギー発電にも利用でき、電気自動車の走行距離がガソリン車に劣るということは、近々なくなるだろう。

<ロボット>
*1-1:http://qbiz.jp/article/51558/1/
(西日本新聞 2014年12月10日) 電通がロボタレント開発、第1弾はこの人
 電通は10日、タレントのマツコ・デラックスさんをモデルに開発したアンドロイドと呼ばれる精巧なロボット「マツコロイド」の写真を公開した。同社はロボットタレントとして活動させる考え。テレビ番組やCMへの出演時期は未定という。知能ロボット研究で知られる大阪大の石黒浩教授が監修した。マツコさんの等身大で、表情や癖、しぐさなどもそっくりの仕上がり。録音したマツコさんの声で話すなど、忠実に再現しているという。電通はテレビ番組やCMでタレントや歌手のアンドロイドの需要が拡大していくと予測しており、第2弾以降の開発も進める方針だ。

*1-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141208/k10013802581000.html
(NHK 2014年12月8日) 1年のほこり落とす「お身拭い」 法隆寺
 聖徳太子ゆかりの奈良の法隆寺で、新年を前に仏像に積もったこの1年のほこりを落とす「お身拭い」が行われました。奈良県斑鳩町の法隆寺の「お身拭い」は、仏像に清らかな姿で新年を迎えてもらおうと、毎年、この時期に行われています。国宝の金堂には午前10時にさむえ姿にマスクをつけたおよそ10人の僧侶たちが、一列になって入りました。僧侶たちは仏像の魂を抜くためのお経を唱えたあと、棒の先に細長い和紙の束をつけたはたきやはけを手に作業を始めました。そして、国宝に指定されている本尊の釈迦三尊像や薬師如来坐像などの肩や頭に積もったほこりを、丁寧に払い落としていきました。「お身拭い」は30分ほどで終わり、参拝に訪れた人たちは、お身拭いを終えてきれいになった仏像に静かに手を合わせていました。

<観光>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASGD82TMVGD8UHBI003.html
(朝日新聞 2014年12月9日)パルテノン神殿彫刻をロシアで公開 ギリシャ、英に怒る
 大英博物館が所蔵するギリシャ・パルテノン神殿の彫刻の一部がロシアに移送され、公開が始まった。19世紀に英国に移されてから、他国での公開は初めて。返還を求めているギリシャ政府は激怒している。6日からサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館で一般公開が始まったのは「川の神イリッソス像」。彫刻群は、オスマントルコ支配下のギリシャに駐在した英外交官が切り取って母国に持ち帰ったもので、外交官の名から「エルギン・マーブル」と呼ばれる。ロシアへの移送に、ギリシャのサマラス首相は「ギリシャ国民への挑発行為だ」と批判する声明を出した。ギリシャは彫刻群の返還を強く求めてきたが、大英博物館側が「壊れやすいので移送できない」と拒んできた。サマラス氏は「移送できないという英国側の言い分は、もはや存在しない」と主張した。サマラス氏は、かつて文化スポーツ相としてアクロポリス博物館の開設に尽力した。「ギリシャには重要な文化遺産を所蔵する能力がない」という批判を覆すためだった。同博物館には、彫刻群が返還された時のための空間が確保されている。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141217&ng=DGKKZO80998500X11C14A2EA1000
(日経新聞 2014.12.17) 有田焼作陶で最年少の人間国宝 十四代今泉今右衛門氏(51)
 陶芸の世界では最年少となる51歳で、先代の父に続き色絵磁器の重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を受けた。存命の人間国宝としても最若手だ。「若いからいいのではなく、長く仕事を続けてこそ出てくる美意識もある。次への可能性を期待してもらった」。謙虚な話しぶりに穏やかな人柄がにじむ。江戸期に佐賀鍋島藩窯で焼く「色鍋島」の御用赤絵師を代々務めた家の次男に生まれた。しかし、父の跡を継ぐつもりはなかったという。進学した美術大学では金工を学び、卒業後はインテリア会社に勤めた。「営業や販売促進では世間の理不尽さも味わったが、そこで取り扱う工芸品の美しさに触れた経験は今につながっている」。憧れていた京都の前衛陶芸家、鈴木治氏に師事し、焼き物の道へ。2年半の修業を経て、28歳で有田に戻った。「同世代の作家より遅れている」と焦りながらも作陶に真っすぐ向き合ってきた。色鍋島の伝統を核に、十三代が確立した技法を受け継ぎつつ、白抜きの下絵付け「墨はじき」や優雅な上絵付け「プラチナ彩」で新境地を開いた作風は現代の感覚を映す。2016年に有田焼が生まれて400年となる節目を控え「陶都」再興へ十四代への地元の期待は高まる。「日々の積み重ねを大切にしながら前向きに仕事をしたい」と静かに意欲を燃やしている。
[いまいずみ・いまえもん]
1962年生まれ、佐賀県出身。85年武蔵野美大卒、福岡市の「ニック」勤務などを経て、90年に父である十三代の下での作陶を開始。02年に十四代を襲名。14年10月重要無形文化財保持者に認定。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/ASGC43624GC4UHBI00H.html
(朝日新聞 2014年11月5日) コロッセオでコンサート? 再建案巡りイタリアで大論争
 古代ローマ帝国期の闘技場「コロッセオ」に再び床を敷き、格闘技やコンサートの会場にしよう――。イタリアの文化大臣が考古学者の提案に賛成し、賛否両論が巻き起こっている。約5万人を収容した巨大闘技場はローマの象徴だ。紀元1世紀に完成。地下には剣闘士と闘うライオンなど猛獣のおりがあった。現在は床がなく、訪問客は客席部分から地下の構造をながめることができる。フランチェスキーニ文化大臣は2日、「考古学者マナコルダ氏のコロッセオ再建策はとても気に入った。ほんの少しの勇気だ」とツイッターに記した。マナコルダ氏は7月、「床があるのが本来の姿だ。イタリアで一番の遺跡を過去のままにとどめず、現代に生き返らせられる」と提案した。文化遺産に一切手を加えず保存しようとすることを、「偏執的だ」とも批判した。文化省の遺産諮問委員会のボルペ座長も「格闘技やコンサートの会場にもできる」と賛意を示した。「観光客は地下を訪れ、2千年前に戻る体験ができる」という意見も出た。これに対し、歴史学者のモンタナリ氏は「コロッセオを遊園地にしようという低俗な発想だ」と強く批判。同氏の「コンクリートで客席を再建するのか? 我が国の多くの遺産が人目につかぬままに崩れ落ちている時に、コロッセオにばかり注目し、娯楽のために使うのが、本当に大臣のすべきことか」と指弾する投稿が地元紙に掲載された。研究者に賛同が広がっている。修復を担うローマ考古学遺産特別監督局は「床の再建が実現可能か、どんな技術的解決策が最善か、研究中だ」としている。伊北部ベローナに残る闘技場アレーナは、野外オペラの会場で知られている。

<燃料電池車>
*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141215&ng=DGKKASDZ13HF8_U4A211C1TJC000
(日経新聞 2014.12.15) ミライ、受注1000台へ トヨタ燃料電池車 年販売目標の倍 きょう発売
 トヨタ自動車が15日、水素と酸素で走る燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を世界に先駆けて国内で発売する。走行時に水しか出さない「究極のエコカー」への関心は高く、受注台数は年間販売目標(約400台)の2倍以上の1千台に達する勢いだ。ミライは4人乗りのセダンタイプで、価格は723万6千円(税込み)。国の補助金を活用すれば約520万円で購入できる。トヨタ系販売会社、東京トヨタ自動車は11日までに約50台を受注した。法人と個人が半々で、個人は「50~60代を中心に、すでにハイブリッド車(HV)を保有している人が多い」(同社)。商談中や見積もり希望も40件を超えるという。名古屋トヨペット熱田店(名古屋市)には、多い日で1日5件程度の問い合わせがあり、法人から数台を受注した。大阪トヨタ自動車にも企業経営者などから数十件の購入希望があるが、納期を案内できないため「正式な受注は待ってもらっている」状況だ。トヨタは12月に元町工場(愛知県豊田市)でミライの生産を開始。年間の生産予定台数は700台だが、販売店の受注台数は全国で1千台弱と大きく上回る。トヨタは来年末に増産を予定しているが、販売店側では「納期は数年かかると案内している」(名古屋トヨペット)。

<蓄電池>
*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141209&ng=DGKKZO80667620Z01C14A2TJM000 (日経新聞 2014.12.9) 蓄電池、新世代 固体の電解質、リチウムイオンより安全、東北大・トヨタ、充電時間10分の1
 現在主流のリチウムイオン電池より安全な「全固体電池」と呼ぶ次世代電池の研究成果が相次いでいる。東北大学とトヨタ自動車は、充電時間を従来の電池の10分の1に短縮した。東北大の別チームも、軽量な全固体電池を開発し、動作温度を下げた。韓国サムスン電子は全固体電池を長持ちさせる技術を開発しており、国内外で実用化に向けた開発競争が熱を帯びている。リチウムイオン電池の主要部材である電解液は発火しやすい有機溶媒を含んでいる。全固体電池は電解液の代わりに燃えにくい固体電解質の中をリチウムイオンが動き、安全性を高めている。理論的には電解液の電池より蓄電量が多く高出力とされるが、従来は電解液の電池以上の性能が出せず実用化が難しかった。東北大の一杉太郎准教授らは電解質と電極の境界面に注目した。真空装置を使い、電池の製法を工夫することで電解質と電極をきれいに密着させた。境界面がぴったり接することでリチウムイオンが電池内を移動しやすくなった。固体電解質と電極が隙間や不純物の影響でしっかり接していなかった課題を解決した。試作した電池を使った実験では、従来の電解液を使うと30分以上かかる充電時間を3分に短縮できた。電気自動車(EV)のバッテリーに使えば、短時間で充電できる。今後はトヨタや電池メーカーと共同でバッテリー開発に取り組む。同じく東北大の折茂慎一教授と宇根本篤講師らは、リチウムと水素の化合物を電解質に使い、電池の重さを従来の全固体電池の半分以下にした。研究の進んでいる硫化物や酸化物の電解質を使った電池は、電解液の電池より重かった。リチウムと水素の化合物を使うと高温の環境でしか動かない問題があるが、電解質の成分などを工夫し、従来のセ氏約120度から約90度に引き下げた。将来は室温での動作が目標だ。三菱ガス化学と協力し、5年後をめどにEVなどに搭載するバッテリー向けに実用化を目指す。サムスン電子は硫化物を使った全固体電池の耐久性を高めた。500回の充放電を繰り返した後も約8割の容量を維持でき、実用レベルに近づいた。これまで充放電を繰り返すと容量が急激に下がるのが課題だった。正極の構造を工夫するとともに、電気を通しやすい物質を正極内で均等に分散させた。京都市で先月開かれた電池討論会で発表した成果だ。現在主流のリチウムイオン電池は体積あたりの出力が高く電気も多くためられる。携帯端末やEVなどで使われている。ただ発熱により破損する可能性があり、安全性の懸念が指摘されている。


PS(2014.12.17追加):農業も作物を選ぶと、*5のように、太陽光パネルとソーラーシェアリングして発電しながら収量をより多くすることもできるため、各地域で適切な作物を研究することが望まれる。

*5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31277 
(日本農業新聞 2014/12/17) アシタバ増収を確認 露地と比べ16%増 営農型発電パネル下栽培 ソーラーシェアリング協会と東大が共同研究
 営農型発電を進めるソーラーシェアリング協会は、東京大学との共同研究で、太陽光パネルの下でアシタバを栽培すると、遮光で減収せず、むしろ大幅に増収することを確認した。営農型発電に取り組む農家などに対し、申請時に必要な資料を提供し、営農型発電とアシタバ栽培を推進する。既にアシタバの導入準備を始めた農業参入企業もある。太陽光発電をしながら農業をする営農型発電は、農地の一次転用を申請し許可を受ける必要がある。パネル下は遮光で収量が減るとされるが、申請には収量が周辺の8割以上確保できるという、いわゆる知見資料を添付しなければならない。同協会は茨城県土浦市の農家圃場(ほじょう)で試験をした。パネル下の384平方メートルと隣に露地の334平方メートルの試験区を設定し収量を比較した。6月18日に「源生林あしたば」を定植。8~10月の毎月下旬に地上部を全部収穫して収量を調査した。累計の10アール換算収量は、露地で栽培した場合が1447キロだったのに対し、太陽光発電パネルを設置した区は16%多い1682キロだった。市場単価が高い8月は40%も増収した。栽培試験を担当した東京大学大学院理学系研究科の和地義隆研究員は「アシタバは半日陰の方が生育が良い。営農型発電とアシタバの組み合わせはメリットが高い」と結論付けた。太陽光発電事業者のmisono電源(千葉市)は、この研究成果に着目。農業法人を設立し、アシタバと営農型発電で農業参入する。千葉県内に約1.5ヘクタールの農地を確保した。出力1~1.5メガワットの発電所を建設する。茨城県内でさらに候補地を検討中だ。別の農業法人も20ヘクタール規模のアシタバによる営農型発電を検討している。


PS(2014.12.20):「環境を汚しっぱなしにした人が得をする」という制度にしないためには、環境に負荷をかけるものに課税して外部不経済を内部化する方法がある。例えば、化石燃料に環境税を課して電気自動車や燃料電池車の使用を促進したり、*6のように、CO2を吸収する森林の維持管理費として環境税を課したりする方法である。そのうち森林環境税は、例えば長野県のように、広大な森林を有する人口の少ない県の人だけが森林の維持管理費を負担するよりも、森林は少なく人口が多くてCO2を多く発生している東京都の人たちも負担するのが合理的であるため、地方税ではなく国税にしようとするものだが、前から経済団体が反対しているのである。

*6:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31318 (日本農業新聞 2014/12/19) [ニュース三面鏡] 森林吸収源対策に経済界「反対」 環境より利益 声高
 自民党は2015年度税制改正大綱の30日の決定に向け、衆院選で止まっていた議論を再開した。地方の声を受け、同党農林部会などは、森林環境税の創設を含む森林吸収源対策の財源確保を重点事項とする。ところがこれに、日本経団連や経済同友会など113の経済団体が声明を出し、「反対する」とかみついた。政府は20年度に温室効果ガスを05年度比で3.8%削減することを目標に掲げ、そのうち2.8%以上を森林による吸収で達成する方針だ。しかし達成に必要な森林整備の安定財源がなく、地方自治体や林業団体などは(1)森林環境税の創設(2)地球温暖化対策として石油石炭税に上乗せ課税している分(地球温暖化対策税)を森林整備にも使えるようにすること――などを求め続けている。自民党も今年、財源確保のための新たな仕組みを検討するプロジェクトチームをつくって議論。11月には農林部会などの合同会議で、財源確保を15年度税制改正要望の重点事項に盛り込んだ。しかし経済団体の声明は、原子力発電所の停止による化石燃料輸入の増加や円安による原油高騰が経済の好循環の足かせになっている中、国民や企業にさらなる税負担を求めるべきではないと強調。地球温暖化対策税の使途拡大や森林環境税の創設に反対すると明言した。声明は、森林整備は社会全般に利益をもたらすため、費用を「特定の国民だけに負担させるべきではない」とも指摘する。だが自民党農林幹部は「都市住民も利益を得ているのに、地方の自治体や住民が負担して森林を整備しているのが実態。その言葉をそっくりお返ししたい」と反論。「農業や林業は補助金漬けだと批判しながら、自分たちは法人税も含めて税金を逃れようとする。浅ましい考えだ」。


PS(2014/12/29追加):*7のように、買い物に行き車を止めている間に充電できれば、便利である。駐車場に太陽光発電の屋根をつければ、無料で電気を供給することも可能であるため、コンビニやスーパーもやればよいのにと思っていたところだ。なお、農業では、軽トラック以外にも多くの燃油を使っており、これが値上がりして経営に打撃を与えているため、農機具等の動力も早く電気に変えた方がよい。

    
     農業用電気トラック(自家発電して電動器具を使えば、燃料費は0になる)

*7:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31451 (日本農業新聞 2014/12/29) 充電スタンド登場 オズメッセセルフSS 地元要望受け運用 JA愛媛たいき
 JA愛媛たいきは、オズメッセセルフSSスタンド(愛媛県大洲市)の敷地内に電気自動車専用の充電スタンドを設置し、運用を始めた。充電スタンドは直売所や道の駅などで設置が進んでいるが、JA―SSに設置するのは全国的にも珍しい。PRのため年内は無料で利用でき、その後は有料にする予定だ。充電スタンドは、次世代の自動車として有力視される電気自動車(EV)やプラグインハイブリット車(PHEV)の普及に伴い、組合員や地域のニーズに応えようと設置した。愛媛県が進める「次世代自動車充電インフラ整備ビジョン」に基づいて設置した。費用は約870万円で3分の2は国や県などの補助金と自動車メーカー4社の補助で賄った。急速充電では約30分で充電が終わるため、隣接するJA産直市「愛たい菜」などで買い物する間に充電ができる。利用時間は午前7時から午後10時まで。JA経済部の谷本哲也部長は「組合員だけでなく組合員の第2世代以降や若者など、幅広い客層に関心を持ってもらい、組合員や地域住民の利便性を図っていきたい」と話す。

| 教育・研究開発::2014.8~2016.11 | 12:52 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.10.14 青色LED開発者のノーベル物理学賞受賞と新時代に求められるテクノロジー (2014.10.15追加あり)
    
  *1より                 現在あるLED照明    

(1)新時代の光、青色LEDがノーベル物理学賞を受賞したこと
 *1のように、赤崎名城大学教授と天野名古屋大学教授、中村米カリフォルニア大学教授が開発に貢献した青色発光ダイオード(LED)が「光の新世界」を開き、省エネで長寿命の照明やディスプレーなどの新産業を生み出した貢献により、ノーベル物理学賞を受賞したのは、誠におめでたいことである。

 松下電器産業(現・パナソニック)にいた赤崎氏は周囲から反対されながらも、窒化ガリウムの可能性にこだわり、会社を辞めて名古屋大学の教授に就任し、名古屋大学にいた天野氏とともに、きれいな結晶を安定的に作ることに成功した。そして、中村氏が、窒化ガリウムによる青色LEDの量産に道を開き、量産技術が産業応用に繋がったとのことだが、ノーベル物理学賞受賞後の赤崎氏の「好きなことをやる」等々のコメントには共感できて印象に残った。

(2)新時代の明かりのデザインと普及
 *3のフクイチ事故後、政府は電力が不足することを理由に関東で計画停電を行い、東電は原発が稼働していないことを理由に電気料金を上げた。しかし、関東地方では、東電にこれ以上、電気料金を支払いたいと思う人は減り、フクイチ事故を機会にLED照明が普及した。

 埼玉県に自宅のある私もその一人で、投資額は大きかったが東電に電気料金を支払うよりはましだと思って、2011年後半に自宅の電球を可能な限りLEDに換え、クーラーと冷蔵庫を最新の節電型に買い替え、これによって、電気料金の値上げ分を吸収した。

 しかし、需要者の立場から言えば、まだLED照明は節電目的の電球・蛍光灯の代替品にすぎず、LEDだからこそできるデザインの照明にはなっていない。実際には、LEDだからこそできる素敵なデザインがあると思われるので、今後、新築時や照明器具の交換時に、新しいデザインのLED照明に換えられるようになるとよいだろう。

(3)太陽光と光ファイバーによる照明
  
                太陽光と光ファイバーによる照明器具
 LED照明は、従来の照明の1/8~1/10の電力しか消費しないため節電目的に資するが、それより節電できる方法に、太陽光を光ファイバーで室内まで導く方法がある。

 もちろん、太陽光は、太陽が出ている間しか利用できず、明るさも変化するため、LED照明と併用して必要な明るさを出す必要はあるが、太陽光を光ファイバーで室内まで導くメリットもある。

 それは、マンションなどの太陽光の入らない部屋に太陽光を導くことにより、①室内に干した洗濯物や布団などに太陽の殺菌作用をもたらすことができる ②室内の植物を効果的に育てられる などである。①は、働く女性が増えた現在、どの地域でもニーズが大きく、フクイチ後の関東では、洗濯物や布団を外に干すことはできないため、さらに重要である。

(4)太陽光電力バス
 *2のように、北九州市営バスが、運行している2台の電気バスに電力を供給する太陽光発電所を完成し、太陽光電力への切り替えを進めて、排気ガスを出さず環境に配慮したバス運行を目指すそうだ。太陽光発電と電気自動車はどちらも直流であるため、そのまま充電した方が交流への変換ロスが生じない。そのため、他地域のバスや交通機関もこれに倣えば、100%国産のクリーンで安価なエネルギーにより、交通機関を走らせることができる筈だ。

*1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGG07019_X01C14A0EA2000/?dg=1
(日経新聞 2014.10.9) 新時代の光、産業創出 青色LEDが生活変える
 電気を流すと青色に光る半導体が究極の照明になる――。ノーベル物理学賞の受賞が決まった赤崎勇名城大学教授と天野浩名古屋大学教授、中村修二米カリフォルニア大学教授が開発に貢献した青色発光ダイオード(LED)は従来の概念を覆す「光の新世界」を開き、省エネで長寿命の照明やディスプレーなどの新産業を生み出した。「輝くような青さだった。感動で手が震えた」。赤崎氏は初めて青色LEDが光った約25年前の実験光景をこう振り返る。当時、LEDには赤色と緑色があった。実用化は早かったが、そろえば白色光ができる光の3原色のうち、残る青色はできなかった。世界の研究者が開発競争を繰り広げていた。当時、研究者から青色の光を出す物質と注目されていたのが、窒化ガリウムと炭化ケイ素、セレン化亜鉛の3つだった。このうち、青色LEDを実現した窒化ガリウムは極めて硬いうえ、溶け始める温度がセ氏2500度以上と扱いが難しい。きれいな青色LEDを得るには半導体の結晶を高い品質で作る必要があり、当時は技術的には非常に難しく「20世紀中の開発は不可能」とさえいわれていた。「窒化ガリウムには未来はない」とされ、世界中の研究者が次々と手を引いていった。これに対し、当時、松下電器産業(現・パナソニック)にいた赤崎氏は周囲から反対されながらも、この窒化ガリウムの難しさこそが青色LEDを実現できる可能性があるとみて開発にこだわった。赤崎氏は会社を辞めて名古屋大学の教授に就任し、大学にいた天野氏とともにきれいな結晶を作ることに挑戦した。「窒化ガリウムによる青色LED」という研究を国際学会で発表したものの、反響は薄い。それでも研究室に泊まり込み、実験を重ねた。きれいな結晶作りには低温のアルミニウムを吹き付け、その上に窒化ガリウムを重ねる方法があることを思いついたが、最適な条件が見つからず、試行錯誤を続けた。ある日たまたま電気炉の調子が悪く、温度が上がらない状態で使ってみると偶然、品質のよい結晶ができた。最適な条件を突き詰め、1985年にきれいな結晶を安定的に作れるようになった。その4年後、マグネシウムを加え、世界で初めてLEDに欠かせない窒化ガリウムの結晶を完成させた。努力型の赤崎氏と実験の腕で優れた天野氏が「二人三脚」で開いた成果だった。一方、窒化ガリウムによる青色LEDの量産に道を開いたのが中村氏だ。高品質な結晶を作るのが難しい中、学会で見た他の結晶の装置をもとに考えた「ツーフロー方式」という技術に注目し、きれいな結晶が量産できるようになった。1991年に成果を発表した。反応しないガスを上からふき込み、横方向から流す原料ガスが基板に定着するように押さえつけ、欠陥の少ない結晶を作れるようになった。量産技術が確立した産業応用につながる道が広がった。

*2:http://qbiz.jp/article/47438/1/
(西日本新聞 2014年10月9日) 太陽光でバスに電力供給 若松に発電所完成
 北九州市営バスが若松区と戸畑区の間で運行している2台の電気バスに電力を供給する太陽光発電所(出力7500キロワット)が若松区響灘地区に完成し、8日、竣工式があった。電気バスはこれまで一般電力で走行していたが、今後は太陽光電力への切り替えを進め、二酸化炭素(CO2)を排出しない環境に配慮したバスの運行を目指す。発電所は、電気バスの車体などの開発に携わった東レエンジニアリング(東京)や、市の第三セクター「ひびき灘開発」などが出資する合同会社が設置。約9ヘクタールの施設内に約3万4千枚の太陽光パネルを設け、うち約200枚はパネルが常に太陽の方向に向くよう全自動で追尾するシステムを採用した。来年4月、発電所に大型蓄電池を導入し、バスの電力を全て太陽光で賄えるようにする予定。総工費は約26億円。東レエンジニアリングの河村良一社長は「災害に備えて蓄電するなど地域のインフラとしても発電所を役立てたい」と話した。

*3:http://mainichi.jp/shimen/news/20141008ddm005070016000c.html (毎日新聞 2014年10月8日) 記者の目:福島原発事故 吉田調書の教訓=西川拓(東京科学環境部)
◇「人災」対策、まだ不十分
 東京電力福島第1原発事故で、政府の調査・検証委員会(政府事故調)が聞き取った関係者の調書が公表された。中でも、福島第1原発の吉田昌郎(まさお)所長(当時)の「吉田調書」は、時の首相を「おっさん」呼ばわりする率直な物言いもあって、大事故の最前線の様子が生々しく伝わる。当初から取材している身として、当時の東電や政府の混乱の原因がストンと胸に落ちた一方で、原発運転員ら事故に対処する「人」の重要性を痛感した。事故後、非常用電源の確保など設備面での対策は強化されたが、それらを運用するソフト面は十分とは言い難い。原発の再稼働が現実味を帯びる中、次の「人災」を防ぐためにも、現状に満足せず常に改善を求めたい。東日本大震災が発生した2011年3月11日、私は北海道に出張中だった。翌朝東京に戻り、そのまま東電本店で事故の取材を始めたが、本店の人たちが機能していないことは最初から明白だった。
◇本店も現場も「想定外」にまひ
 例えば、1号機の水素爆発を巡る混乱だ。12日夕、本店1階に設けられた記者室で、誰かが「何か変だ」と言い出した。テレビで映し出された1号機の建屋上部は鉄骨だけになっていた。室内は騒然となったが、東電の広報担当者は「何が起きたか分かりません。現場に確認中」の一点張り。2時間以上たって、「通常と異なる過程で建屋上部が開放された」という奇妙な言葉で、爆発を認めた。菅直人首相(当時)らの調書を読むと、事情は首相官邸も同じだった。テレビで1号機の異変が流れているにもかかわらず、官邸にいた東電幹部は何も説明できなかった。本来なら東電から情報を得て、官邸に伝えるのが役割の経済産業省原子力安全・保安院(当時)も同様だった。不信感を募らせた菅氏ら政府首脳は再三、吉田氏に電話で状況説明を求めた。吉田氏は調書で「何で官邸なんだ。本店は何をしている」などと不満を述べている。吉田調書は、現場の混乱ぶりを率直に伝えている。発電機を積んだ車が到着しても、ケーブルが合わずに接続できなかった。原子炉の冷却のため消防車のポンプで注水しようとした際には燃料が切れた。1号機では、電源がなくても動く非常用冷却装置が止まっていることに、吉田氏は気づかなかった。所内でも情報は寸断され、吉田氏は「被害妄想になっている。結果として誰も助けに来なかったではないか」と恨み節を口にしている。東電にも政府にも、以前から過酷事故を想定したマニュアルはあった。だが、現実の事故がマニュアルの想定を超えると、とたんに機能不全に陥ることを福島事故は教えている。
◇重複事故対応や能力の担保欠け
 事故を教訓に、新規制基準では起こり得る地震や津波の想定は引き上げられ、それに基づく対策は進み、マニュアルは改定された。ただし、更に想定を上回る事故は起こり得る。その際頼りになる原発運転員や支援する政府機関の能力を担保する仕組みが、現状ではない。吉田氏は「大事なのは物があるかないかではなく、能力を持った人がどれだけいて、どれだけ動けるかだ」と述べている。シナリオを伏せた抜き打ち訓練を重ね、運転員の事故対処能力、政府機関や電力会社本店の支援や情報発信の能力を、原子力規制委員会が評価するような仕組みが必要ではないか。さらに、福島第1原発は6基が立地し、連鎖的に危機が拡大したことも事故対処を難しくした。吉田氏自身、「三つのプラント(炉心溶融した1〜3号機)を判断した人なんて今までいませんよ。思い出したくない」と振り返った。7基が立地する東電柏崎刈羽原発(新潟県)を筆頭に、国内の原発17カ所(もんじゅを含む)のうち、複数の原子炉がある原発は14カ所を占める。規制基準は、電力会社が再稼働を申請した原子炉について、同時に事故が起きた場合の対策の妥当性を審査しているが、未申請の原子炉にまで影響が及ぶことを考えていない。福島第1原発で停止していた4〜6号機にまで危機が及び、あらゆる判断が吉田氏の肩にのしかかったことをみれば、不十分ではないか。吉田氏は確かに超人的な働きをしたと思う。だが、判断ミスもしているし、事故以前の津波対策を巡っては「マグニチュード9(の大地震)が来ると言った人はいない。なんで考慮しなかったと言うのは無礼千万」などと開き直ってもいる。それでも、世界でも例のない大事故を経験した生身の人間が残した言葉は貴重だ。今後も原発を利用するのであれば、それぞれの立場から教訓をくみ取り、未対応の課題はないのか検証していくべきだ。


PS(2014.10.15追加):*4のように、オランダの施設園芸を学んでいるのはGoodだ。温度、湿度、水、二酸化炭素、光を総合的に調整するにあたっては、太陽光を光ファイバーで導くのが最も安価であり、他の光と組み合わせることによって季節のずれも作り出せる。

*4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10103/113702
(佐賀新聞 2014年10月11日) オランダの施設園芸学ぶ講演会(要旨)
■ハウスをデータ管理、ハイテク機器活用 
 世界トップクラスの収量を誇るオランダの施設園芸技術を学ぶ研修会(県野菜花き技術者協議会など主催)が佐賀市で開かれた。オランダの施設園芸コンサルタント会社と、日本の環境測定装置会社が共同で設立した「GreenQ Japan」(栃木県)の取締役麻生英文氏、上級コンサルタントのアルコ・ファン・デア・ハウト氏が講演。ハウス内の環境をデータ化し、総合的に調整する重要性を伝えた。講演要旨を紹介する。
■勘頼みの農業から脱却を
 施設栽培で大事なのは温度管理だけではなく、湿度や水、二酸化炭素を総合的に調整しなければならない。ハウス内の環境を装置でデータとして見えるようにして分析する必要がある。勘頼みの農業から脱却し、収量を上げるために投資する意識改革を望む。植物の水分が水蒸気となって空気中に出る現象を蒸散といい、この時に栄養分を吸収する。湿度が高すぎたり、低すぎたりすると、植物がストレスを感じて蒸散しなくなる。湿度を適正に保つのが重要だ。朝方に気をつけたいのは、カビの病気を引き起こすトマトの結露。気温が太陽光と暖房で急激に上がる一方、果実は冷えたままで、結露が起きる。温度差を少なくするため、ハウス内の気温は日の出前から少しずつ上げてほしい。1時間で2度以上は上げない方がいい。オランダでは日の出後に湿度を下げるため、天窓を開けている。湿度を調整する機械もある。循環扇は葉っぱの相対的な湿度は下げるが、ハウス内の絶対湿度は下げない。ヒートポンプによる除湿にも限界があるので、「透湿性カーテン」の利用を勧めたい。二酸化炭素の濃度については、外気より低くならないように気をつけてほしい。二酸化炭素の濃度は、日射量に比例させながら上げていくのが原則。日の出前に二酸化炭素を与えても、光がなく、光合成は起きていないので無意味だ。光を通しやすい被覆材、白く塗装した柱、白いマルチなども有効活用してほしい。地上、地下、植物の状態をデータで観察しながら、ハウス内環境を総合的に制御することを忘れないでほしい。
■日蘭の経験と技術合わせ
 オランダの種苗会社で12年間働き、日本やルーマニア、アゼルバイジャンでコンサルタントとして活動している。オランダの農業技術を伝えるコンサル会社「GreenQ Japan」を栃木県に設立し、今年8月から2年間、栽培指導に取り組む。コンサル会社は、栃木県の農業資材販売会社「誠和。」と共同設立した。日本の経験に、オランダの最新技術を組み合わせれば成功できると考えた。気象条件や栽培法が異なるため、オランダの生産戦略をそのままコピーするのは不可能。だからこそ日本の生産者を指導して、ノウハウを蓄積してもらう。オランダの園芸技術はハイテク機器を使うため、急に導入すると、日本の生産者は混乱してしまうかもしれない。扱いが難しいため、日本に設立した新会社で指導をして操作ミスを少なくしていきたい。日本にはない技術もある。例えば、ハウス内の暖房。地面の下と、作物の間に管を通して温める仕組みだ。安価な天然ガスを燃やし、熱と電気を一緒に発生させる「コージェネレーション」で行っている。土や養液だけでなく、人工光での栽培も特徴だ。ただ、二酸化炭素発生装置やロックウール、細霧システムなど、日本に導入可能な技術もたくさんある。焦らず、少しずつ習得してほしい。ハウス栽培の未来の形はどうなるだろうか。環境配慮型の暖房を使い、小型ナトリウムランプとLEDを併用したハイブリッドシステムが導入されるだろう。作物の状態を見ながら、除湿などを細かく行い、収量を上げていく。もちろん、周年栽培。コストを下げ、消費者ニーズをより反映した施設園芸ができるのではないだろうか。

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2014.10.5 地球温暖化と農業の可能性
    
        現在、日本で作られている                   *1-1シベリアの農業
    レモン       オリーブ       パパイア      バニラ 

(1)地球温暖化が寒冷地の農業に与える影響について
1)シベリアの農業について
 *1-1に書かれているように、北海道の農業専門家たちは、シベリアのブラゴベシチェンスクで、チギリンスキー農産業施設建設への投資について協議しており、農業分野における日本とロシア間の協力のメリットは、日本の食料需要増加と極東のインフラ整備に集約されそうだ。

 私は、オランダに行く途中、シベリアの上空を飛び、地球温暖化の影響で耕作可能地が増えていると感じた。極東は、①現在使用されていない広大な土地がある ②気候条件が良く、周辺地域の食料需要が高い ③地の利が良く、ヨーロッパやアジアへの輸送に便利 という好条件が揃っている。しかし、課題として労働力と最新の農業技術の不足があるため、ロシアは、かなり前から農業分野における積極的な協力を呼びかけ、中国と韓国は先行してロシアの呼びかけに応えているとのことだ。

 ロシアは、宗教色を出させずにイスラム教を信仰する民族を包含してきた国であるため、ヨーロッパで教育を受けても仕事がなく「イスラム国」に入りそうな若者や難民となって行き場を失った人などを、労働力としてここで雇用するのはいかがかと思う。そのための農業施設は、日本はじめここの農業に関心のある国が準備すればよい。

2)北海道の農業について
 *1-2は、地球温暖化に対して悲観的な書き方ではあるが、北海道は食料自給率が200%で、日本の食料生産基地であると書かれている。そのため、北海道が米や大豆の生産適地になることは、日本の食料自給率にとって大きな意味がある。そして、地球温暖化が進行している現在(2010年時点)、北海道の気温は平年より2.2℃高く、1946年の統計開始以来最も高い気温であり、2010年から2013年までの7 、8 月の気温は4 年連続で平年より0.8℃以上高くなっているとのことである。

 そして、21世紀以降は秋の平均気温が上昇し、近年は秋には霜害がないと言われ、水稲(米)や大豆は温暖化による増収が期待されている。また、近年の水稲の品種は品質が上がり、気温の上昇によって食味も全国トップクラス(ゆめぴりか、おぼろづき等)となっているわけである。

 一方、これまで北海道の涼しい気候に適合していた小麦やじゃがいもは、現行品種では温暖化による収量や品質の低下が懸念されるため、高温・多湿にも強い新しい品種や栽培技術の開発が必要であり、北海道への暖地からの新作物導入は、さつまいもの栽培事例があるそうだ。

(2)地球温暖化の日本南部農業への影響 ← トロピカルフルーツもできやすくなった
1)バニラの生産、九州・沖縄
 日本南部の農業は、*2-1に書かれているように、バニラを自給しようと九州・沖縄で挑戦が始まり、生産者らが連携して果実を生産し、バニラビーンズに加工、商品化しているそうだ。「国産で安心できる、輸入品と香りが違う、輸入品の代替ではない新たな日本の香りを創出したい」というのは、なるほどと思われアッパレだ。

2)ライチの生産、宮崎県
 *2-2のように、宮崎県がポストマンゴーとしてライチ(レイシ)の産地化を始めそうだ。宮崎県はマンゴーに続くブランド果樹を探して2005年から5年間海外を調査し、地球温暖化を逆手に取って熱帯果樹を選び、候補をライチとインドナツメに絞って、ジューシーさとみずみずしさが輸入物と全然違い高級菓子店のニーズの高いものを作り上げた。産地化し、県のブランドとして特産化するためには、JAで共選して厳選されたものを出荷することが不可欠であり、それによる付加価値は大きい。

3)パパイアの生産、茨城県
 *2-3のように、茨城県では樹高のそろったパパイア園が広がり、未熟果を生産して健康機能性野菜として新たな食文化を提案・普及することを目指しているそうだ。未熟果は、たんぱく質、脂肪、糖分を分解したり、免疫力を高めたりする酵素を含み、ビタミンやミネラルなどの栄養素も多いため、人間の健康維持に役立つ上、そもそも美味しそうであるため、是非、食文化として取り入れたい。

4)ドラゴンフルーツ・バナナの生産、岐阜県(温泉利用)
 *2-4のように、冬の早朝は氷点下15度にもなる岐阜県で、70度の源泉を利用してハウスを暖房し、ドラゴンフルーツやバナナなどの熱帯果樹を生産しているそうだ。まだ、商業的に大量生産するには至っていないようだが、地熱や温泉を利用すれば低コストで暖房できるため、この技術は、多くの地域の多様な作物に応用できると考える。

(3)将来のための理工系教育では、生物学・農学も重要
1)農業技術の進歩について
 *3-2のように、佐賀県野菜花き技術者協議会などが、世界トップクラスのオランダの施設園芸技術を学び始め、JAや県の技術指導者らがイチゴのハウス栽培の環境整備技術について研究して、佐賀県にも導入できるノウハウを身につけるそうだ。また、研修では、収量アップにつながる光合成を促す条件について理解を深め、ハウス内の日射量や二酸化炭素濃度、水分、湿度の調整などを学び、今後はイチゴのハウスで実施するそうで、よく頑張っている。

 佐賀県園芸課の担当者は「オランダの施設園芸は、日本とは環境が異なるが、トマトの反収は佐賀の6倍もあり、しっかり学べば収量を倍にすることも不可能ではないはず。佐賀版の技術を確立し、来年度は別の作物にも応用していければ」としている。

2)理工系には農学・生物学も入れるべき
 *3-1のように、産業界から技術者の人材不足を訴える声が高まっていることを受け、文部科学省が理工系人材の育成に本格的に乗り出すのは賛成だが、対象とする専攻は、石油精製のプラントを設計する化学工学の技術や高齢者の生活を支える機器を開発する福祉工学の知見が豊富な人材の育成を目指すとしている。

 しかし、このうち石油精製プラントの設計や原子力が将来においても最先端技術であると考えるのは、企画している人が知識がなく時代をリードできていない上、これから必ず需要が増加する農学、生物学が、ものづくりを支える基盤技術や成長産業に結びつく分野として想定されていないのは問題だ。

 また、現在、生物学は暗記科目ではなく物理・化学を基礎にした理論的な基礎学問であり、農学はその応用であるため、文科省は、世界最先端の学術研究を進める中で、生物学や生態学を重視すべきであると同時に、産業界で活躍する職業人の育成の中には、生物学・生態学・工学・経営学などを含んだ学際的な農学の研究を入れるべきである。

<地球温暖化の日本北部農業への影響>
*1-1:http://jp.rbth.com/articles/2012/07/31/38265.html
(ロシアNOW 2012年7月31日) ロシア極東に大規模な総合農産業施設が誕生
 北海道の農業専門家たちの代表団は、シベリアのブラゴベシチェンスクで、チギリンスキー農産業施設建設への投資について協議した。この施設は、アムール州の最近のプロジェクトのなかでは最大規模になる予定で、農産物の加工、保存、販売に使用される。ほぼ同時期、アムール州では、東京の農業大学や工業大学の学者たちと愛知県の農業ビジネスの代表者たちによって共同で、農工業施設に関する大規模プロジェクトのプレゼンテーションが行われた。また日本の他の県も、ロシア極東における共同農業プロジェクトの実現に関心を持っているという。
●投資して生産物は自国へ
 「デイリーニュース誌」編集長で、農業の専門家であるミシェンコ氏は、農業分野における露日間の協力の展望について、次のように語っている。「極東は日本、中国、韓国の投資家にとって魅力的でしょう。これらの国では、食料需要が常に増加しているため、豆やトウモロコシ、ジャガイモなどの輸入が増加傾向にあります。これらの国は、ロシアの農業に資金をつぎ込み、生産物を自国に送ることを考えていると思います。その際、ロシア側にとって重要なのは、極東のインフラ整備が不可欠であることを考慮することですね」。
●極東の農業の可能性
 ロシア極東の農業には、大きな可能性がある。①現在使用されていないか、有効利用されていない厖大な土地がある、②気候条件も良く、周辺地域の食料需要は常に高い、③地の利が良く、ロシア国内およびアジア太平洋地域へ輸送に便利。主な問題は、労働力と最新の農業技術の不足だ。ロシアはアジア太平洋地域のパートナー国に対して、かなり前から農業分野における積極的な協力を呼びかけている。中国と韓国はロシアの呼びかけに応え、極東では、両国の直接参加のもとですでに一連の農産業施設が活動している。それらの施設では、最新の生産性の高い技術が活用されているほか、ロシア人の雇用も保証している。
●先行する中、韓
 13億の人口を抱え、ロシア極東と境を接する中国は、早くも4年前には、アムール州などで計5千ヘクタールをレンタルするなど(レンタル料は1ヘクタール=10ドル=800円!)、主に極東、シベリアを中心にロシア全土で様々な規模の農場を経営している。さらに、昨年プーチン首相が訪中した際に、中国側は最大40億ドル(約3200億円)規模の投資ファンドを中露共同で創設することを提案、合意をみた。ロシア国営の開発対外経済銀行(VEB)のドミトリエフ会長は、「農業プロジェクト」を投資対象候補の一つに挙げている。韓国では、韓国造船最大手の現代重工業が昨年9月下旬、沿海地方ウラジオストクの150キロ北方に農業法人を設立したと発表した。広さは6700ヘクタールで、今年から豆、小麦などを年間7千トン生産する計画。同社はすでに2009年に、ウラジオストク近郊の農地1万ヘクタールを6億円で買収済みで、農地を5万ヘクタールまで拡大する予定。いかに国益とバランスさせるか。ロシア極東の自治体は、農業プロジェクトに日本が参加することを望んでいる。これは、最近数年間で中国側からの投資があまりにも増えたことに対する警戒心とも関連している。食料安全保障は、9月に極東のウラジオストクで開かれるアジア太平洋経済協力(APEC)サミットでも焦眉のテーマの一つとなる。サミットでは、世界の食料供給や流通に関する問題に関する討論も行われる。

*1-2:http://www.hkk.or.jp/kouhou/file/no604_shiten.pdf#search='
地球温暖化と北海道農業 (廣田知良:(独)農業・食品産業技術総合研究機構北海道農業研究センター生産環境領域上席研究員、農林水産省北海道農業試験場研究員、カナダ・サスカチュワン大学客員教授、(独)農業・食品産業技術総合研究機構北海道農業研究センター寒地温暖化研究チーム長を経て2011年から現職。北海道大学連携大学院客員准教授を兼任)
 北海道の食料自給率は200%であり、日本を代表する食料生産基地である。この北海道農業の特徴は、冬季積雪寒冷の限られた生育期間の下で、冷涼で梅雨がない夏季の気候を最大限に活用した大規模農業の栽培体系を確立したところにある。寒冷な気候が食料生産上の制限要因となる面は今でも完全には克服されておらず、しばしば低温による冷害を被ってきた。一方で2013年9 月に公表されたIPCC※1第5 次報告書で述べられているように、地球の気候は温暖化が確実に進行している状況にある。冷害の被害をしばしば受けた北海道では、温暖化すると農業にはプラスになるとの楽観的な声もある。しかし、北海道農業は2010年、高温が原因の農作物の深刻な不作を、明治の開拓以来、初めて経験した。したがって、北海道農業への単純な温暖化楽観論を必ずしも全面的には肯定できない。そこで、近年の北海道の気候変動の状況を踏まえて、温暖化が北海道農業に及ぼす影響と対応方向を解説する。
●北海道の近年の気候変動傾向
 まず、北海道農業に影響を与える気候がどのように変化しているか述べる。作物の生育に大きな影響を与える夏季( 6 - 8 月)気温は、1950~1970年代は年々変動が比較的小さく比較的冷涼な夏が多い状態であったが、1980年代以降から年々変動が大きく、冷夏年、暑夏年を多発する傾向になった。そして、2010年は平年より+2.2℃高く、1946年の統計開始以来の最も高い気温となった。この2010年以来、今年の2013年まで、7 、8 月の両月では気温は4 年連続で平年より0.8℃以上高く、1946年の統計開始以来、初めての両月の4年連続の高温となった。一方で、農業にとっては4 -5 月の春先の播は種しゅ時期の天候も重要であるが、夏の高温とは異なり、4 年連続で春先の播種時期の天候は低温や多雨で安定していない。つまり、夏の気温が高くても、春先の播種時期を早めて、北海道の短い作物の生育期間の延長を図ることができてない。特に4 月の気温が低い(高い)ときは、8 月の気温が高い(低い)傾向が1990年代の後半から現在まで続いている。北海道の気温の上昇傾向は、秋、冬に顕著である。21世紀以降、秋( 9 - 11月)の平均気温は顕著な上昇傾向で、近年は農業現場では秋に霜の害なしと言われだしている。かつて凍霜害による深刻な被害を受けていた北海道農業の歴史からすると、想像もできなかった変化である。冬は、道東地方で初冬における積雪深増加時期の前進により1990年以降に土壌凍結深の顕著な減少傾向を生じている。これらの秋・冬の顕著な気候変動は、小麦や牧草等の越冬作物の対凍性の獲得や冬の越冬環境に影響を与える。十勝地方では土壌凍結深の減少に伴い、野良イモ※2が大発生する被害が現れている。
●温暖化が北海道農業に与える影響
 水稲や大豆は、温暖化により増収が期待される。特に、水稲は、近年の品種は品質も著しく向上し、食味も「ゆめぴりか」や「おぼろづき」に代表されるように全国トップクラスとなり、気温の上昇により食味の向上がさらに期待できる。ただし、2010年のように夏季の気温が2 ℃以上に上昇した場合では、北海道品種の収量は必ずしも増収せず、不作ではないが、高温で初めて平年を下回る作況指数98となった。一方で、札幌市羊ヶ丘にある農研機構※3北海道農業研究センターでの栽培事例では、東北で広く栽培されている「ひとめぼれ」が北海道で初めて十分に実り、しかも北海道品種の「きらら397」よりも収量が高かった。大豆以外の畑作物は、夏季の日射量や降水量の変動にも大きく左右されるが、これまでの北海道の涼しい気候条件に適合していた小麦やじゃがいもでは、現行の品種では温暖化による悪影響(収量・品質低下)が懸念される。小麦については、夏季の6 、7 月に高温になると、実(種子)を充実させる登熟期間は短くなり、この結果、実が小さくなって収量を低下させる傾向にある。特に2010年と2011年ではこの傾向が顕著であり、2010年では小麦の収量は平年と比べて3 割以上減となった。北海道を代表する畑作物のじゃがいもは夏季気温が高いと生育期間が短縮して、収量も低下する傾向にある。さらに、気温以外の気象要因では、夏季に多雨傾向になると晴天日は少なくなり光合成に必要な日射量が減少する悪影響とともに、湿害による病害虫の被害を拡大させる。2010年は多雨による病害虫発生により畑作物は大きく被害を受けた。特に、砂糖の原料となるてんさいは、褐かっ班ぱん病※4など高温多湿による病害による被害と糖分含量の低下は、深刻な問題である。
●技術対応の方向性
 北海道の作物は、これまで寒い気候帯の短い栽培期間に適合するように技術開発を進めて問題を克服してきた。また、逆に冷涼な気候条件により病害虫の発生が少ないことが利点となり、農薬を減らした栽培による農産物のブランド化(クリーン農業)を高めた。しかし、近年の気候の変化は、農業技術開発の方向に対しても転換を迫っている。気象の年々の変動は大きく、冷害対応も必要であることを考えると、北海道ですでに栽培されている水稲や麦、イモ、豆等の主要畑作物や野菜は、道外での暖地向けの南方の品種を直ちに導入することは考えにくく、道内で近年の気象条件の下で選抜され、特に低温ばかりでなく高温や多湿に強い新しい品種や栽培技術の開発が望まれる。すでに水稲、じゃがいも、てんさい等では、高温や病害に強い品種が開発され始めており、今後も農業研究機関で様々な新品種開発が進むであろう。一方、北海道への暖地からの新作物の導入では、例えば、さつまいものように栽培事例が見られ始めた。当面は、春先の天候不安定へ対応して、初期生育を確保し、かつ秋の気温上昇による栽培可能期間の延長を活かせる技術対応が一案である。冬季の土壌凍結深減少に対して生じた野良イモ対策は、気象情報の活用による雪割り―土壌凍結深制御での野良イモ対策技術が開発され、すでに北海道の十勝農業は気候変動に対する適応策を独自の創意工夫をして作り上げている。このように、気候変動に対しては、気象情報を有効に活用する対策技術、さらには長期予測も含めた予測精度の向上とこれを踏まえた対策技術をセットとした技術開発の重要性も高まっている。
※1 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change) 気候変動に関する政府間パネル。国際的な専門家でつくる、地球温暖化についての科学的な研究の収集・整理のための政府間機構。
※2 野良イモ:収穫後、畑に残ったじゃがいもが越冬して翌年に雑草化する現象。
※3 農研機構:(独)農業・食品産業技術総合研究機構の略称。
※4 褐班病:農作物の主に葉に褐色の斑点のできる病害。

<地球温暖化の日本南部農業への影響 - 広がるトロピカルフルーツ>
*2-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30119
(日本農業新聞 2014/10/3) バニラ 独自の香りを創出へ 沖縄県糸満市
 アイスクリームの香りとしてなじみ深い香料のバニラを自給しようと、九州・沖縄で挑戦が始まった。生産者らが連携、果実を生産しバニラビーンズに加工、商品化している。沖縄県糸満市の洋ラン生産者、仲里園芸はハウスで垣根仕立てにし、栽培、果実生産を始めた。
●連携して加工・商品化
 バニラは中米・西インド諸島原産のラン科のつる性植物で、細長いさや状の果実がなる。生果に香りはない。乾燥と発酵を繰り返すキュアリング技術でバニラビーンズに仕上げ、香りが生まれる。広く熱帯地方で生産、世界全体で年1000万トン程度の生産量がある。食品業界では、多くは主成分バニリンの合成香料を使うが、天然バニラは日本に年間100トン超輸入されている。仲里園芸は福岡県久留米市のラン生産者、金子植物苑の呼び掛けで生産を始めた。日本にはバニラ果実の生産技術もキュアリング技術もないが、社長の金子茂さん(46)はラン展の企画に参画してバニラに関心を持ち、事業化を決意。農商工連携事業を活用し、産地化に取り組んでいる。日本の気候風土に適したキュアリング技術が必要で、「天然バニラ香料の製造方法」(特許)を開発した。現在、仲里園芸の他、福岡県で5、熊本県で1、合計7経営体が果実生産を目指している。仲里園芸以外はようやく初なりを迎えた段階だという。仲里園芸はバニラを観葉植物として出荷していたことから、果実生産に取り組むことになった。ランなどのハウスの一角に約60鉢、10アールのハウス1棟に200鉢入れた。13号鉢に、水はけを考えヤシの実チップと樹皮の培土で定植。株間は1.5メートル程度とし、高さ1.75メートルのアーチ状のパイプを支柱にして垣根に仕立てた。ぶら下がる気根を受け止めるため、畝にヤシの実チップを敷いた。葉の上から夏は2日に1回かん水する。果実生産には授粉が必要だ。バニラの花は、花弁が雌しべをふた状に覆い、自家受粉しない構造になっている。担当の仲里美裕紀さん(29)は「1花10秒以内でできる。ランを交配する農家には難しくない」という。開花は5月で期間が限られ、午前中しか開花しない。その他の手間は掛からないので、大規模栽培できそうだが、授粉労力が課題といえそうだ。収量について社長の仲里清さん(58)は「まだ評価できない。初結実は早ければ3年というが、4年かかった。沖縄では無加温で栽培できるのがいい」という。成園になっておらず、昨年の収穫量は700果程度。夏は暑さで生理落果した。果実は10月に収穫し金子植物苑に送る。金子植物苑は製品をアイスクリーム店、ホテル、パン店に、12月から輸入品の2、3倍の価格で販売する。「天然物は合成香料にはない深みがあり、後味が残る」と金子さん。今年の収穫量は数十キロの見込みだ。「国産で安心できる、輸入品と香りが違う、連携の取り組みに賛同する、などと評価してもらっている。輸入品の代替ではなく、新たな日本の香りを創出したい」と話している。

*2-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=29958 (日本農業新聞 2014/9/24) ライチ 隔年結果、裂果を克服 宮崎県新富町
 宮崎県がポストマンゴーとしてライチ(レイシ)の産地化を始めた。7月中旬、新富町の森泰男さん(72)の園地に、色鮮やかな果実がたわわに実っていた。咲き誇る真っ赤な花のようだった。小売店の店先でもこの赤い果皮が国産の証しだ。果肉はぷるんとしてジューシー、しかも大玉。いずれも輸入品にない特徴だ。マンゴーの栽培技術を活用し、安定的に結実させることに成功した。
●マンゴーの技術応用
 原産地の中国では150万トンも生産される。ミカンコミバエの防疫対策でアジアからは生鮮での輸入が禁じられ、凍結か蒸熱処理が必要だ。そのためほとんどの輸入品は取れたての赤色を保てず、茶褐色に変わっている。県はマンゴーに続くブランド果樹を探して2005年から5年間海外を調査した。地球温暖化を逆手に取って熱帯果樹を選び、候補をライチとインドナツメに絞った。10年4月、JA宮崎経済連を事務局にライチ・インドナツメ研究会を設立、技術確立を進めた。森さんが会長を務める。ライチの世界的な課題は年ごとの収量差が大きく収量が低いこと。新芽だけ伸びて花が咲かない、生理落果して実が留まらない、直径4センチ以上、1果40グラム以上を目指しており大玉品種ほど裂果するなどの問題がある。同研究会や県総合農業試験場が栽培法を研究。マンゴーの、樹勢を見ながら枝先を剪定(せんてい)し樹体管理する連年安定結実技術や樹勢制御技術を生かし克服した。裂果も葉面散布剤やハウス栽培による温度管理で克服しつつある。品種は当面、果皮が深い赤色で、糖度が15程度の「チャカパット」を主体に進める。大木になるので防根シートを土に埋め根域制限し、剪定でハウスに収まる樹高に抑えた。室温5度以下で花芽分化させ、その後は16~20度で管理する。県は、10アール当たりの燃油は6キロリットル程度とする。営農支援課の山口和典主幹は「おおむね課題を解決し、出荷できた。まだ木が小さいので収量は10アール当たり1トン程度だが、中国の大木と同じくらいの1.6トンは取りたい」と話す。15人の研究会員の内、ライチは11人が1ヘクタールで作る。今年同経済連は6月5日から8月上旬に1.5トン出荷。平均1キロ約4500円で販売した。「ジューシーでみずみずしさが輸入物と全然違う。高級菓子店のニーズも多かった」という。森さんは30アール作る。10年生の木もある。いち早く取り組み、技術開発をリードしてきた。収穫後の液肥散布で隔年結果を解消。裂果も降雨時にハウスの側面を開けると減少することを発見した。燃油使用量もマンゴーの半分という。木が太り収量が増えるまで6年かかるので複合経営を勧める。30グラム未満の果実はJA児湯の直売所で販売した。飛ぶような売れ行きで、ニーズに手応えを感じた。「ライチブームが来たように感じた。産地化しJAで共選し、県の特産にしたい」と意気込む。

*2-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=29882 
(日本農業新聞 2014/9/19) パパイア 育苗工夫し露地栽培 茨城県那珂市
 茨城県那珂市の混住化が進む農業地帯の一画に樹高のそろったパパイア園が広がる。栁沼正一さん(62)は未熟果を生産し、健康機能性野菜として新たな食文化を提案、普及を目指す。半年で収量を確保する育苗法と徹底した土づくりで露地栽培に成功した。政府開発援助コンサルタント会社に勤め、パパイアに出合った。海外では未熟果を食べ、果物で食べるのは台湾だけだった。農業資材会社を興し九州で活動、JAに有望品目を問われ、思い付くままパパイアを提案した。しかし、自分で栽培してみなければと農家に依頼、2006年ごろから試作し手応えをつかんだ。販路の開拓は人口が多い首都圏が有利と考え、同市に拠点を移した。10年に10アール試験栽培し、徐々に増やし今年は2ヘクタール作る。
●加工品で機能性PR
 寒さに弱く生育限界温度は13度とされる。日本では露地で暖候期は育つが、霜が降ると枯れて実は熟さない。しかし、経費が掛かるハウスではなく露地栽培を選んだ。秋に収穫する未熟果は、たんぱく質、脂肪、糖分を分解したり、免疫力を高めたりする酵素を含む。熟すと消える。ビタミンやミネラルなどの栄養素も多く、人間の健康維持に役立つと知ったからだ。苗は業者から種を購入し育てた。半年の栽培で収量を確保できる品種を選び独自の育苗方法を考案。特許を申請する予定だ。1樹当たり20キロ収穫でき「普通の苗では半分以下だと思う」と栁沼さんはみる。2月に堆肥(10アール6~10トン)、米ぬか(同600キロ)、油かす(同200キロ以上)、自らが販売する微生物資材(菌の恵)を投入する。植栽本数は10アール当たり100本。4月末に定植し苗帽子(キャップ)で1カ月強覆う。保温し水分を保ち風をよけ病害虫を防ぐ。苗は病害虫に弱いが、帽子のおかげで無農薬で栽培できた。草生栽培し草刈り後、米ぬかと同資材を散布する。7月末から花が咲き、9月中旬から600グラム~1キロの果実を収穫する。霜が降る11月末まで収穫できる。昨年は1.2ヘクタールで16トン収穫した。台風の影響を受けた。今年は20トンが目標だ。収穫物は農園に併設した直売所で加工品や総菜と販売する。大口取引先も開拓している。生果は再生産価格の1キロ1000円と決めている。健康に関心を持つ消費者などが買い求めに来る。1樹1万円でオーナー制も行う。苗を1本1600円で300人に販売。生産者が茨城、長崎、和歌山、広島、静岡にできた。栽培方法を統一し品質をそろえ「那珂パパイヤ」の商標で販売する。来年は生産組合をつくる。パパイアを食べる食文化を普及し販路を拡大するために、約30品目の加工品を開発。同市在住の料理研究家と連携、約50品の総菜(レシピ)も開発、PRに力を入れる。13年に那珂パパイヤ普及推進協議会を設立した。栁沼さんは「作付け希望農家は多く、販路が確保できれば50~100ヘクタールはすぐ栽培できる。パパイアの食生活を普及し、医療費が掛からない健康な地域社会をつくりたい」と訴える。

*2-4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30102 (日本農業新聞 2014/10/2) ドラゴンフルーツ・バナナ 温泉利用し経費節減 岐阜県高山市
 日本アルプスの麓、岐阜県高山市の奥飛騨温泉郷栃尾温泉は冬、早朝は氷点下15度にもなる。ここで二つの経営体が70度の源泉を利用し、熱交換方式による床暖房と、掛け流し方式の、それぞれ異なる方式でハウスを暖房し、熱帯果樹を生産している。栽培品目は違うが、暖房費を抑えることで有利な経営を展開、経営面積を増やしたいと意欲を燃やす。フルージック(FRUSIC)は2007年9月、1080平方メートルのハウスを建て、黄色種など30品種のドラゴンフルーツを栽培する。社長の渡辺祥二さん(44)は同県美濃加茂市で04年、農業に新規参入し、アセロラ、ドラゴンフルーツの苗を米国から輸入し栽培している。飛騨ブランドを生かし温泉を活用した産業を起こし、観光業と連携して地域に役立ちたいと考え、栃尾にも農場を構えた。寒冷地の方が果実品質が高まるとの考えもあった。ハウスに隣接する喫茶店で果実を観光客に販売する他、ジャムやジュースに加工している。ハウス暖房は、熱交換機によって温泉の熱で真水を30~35度に温め、ハウス内の通路(幅1.2メートル)のコンクリート床(深さ15センチ)の下に通した全長約6キロのパイプ(直径13ミリ)に流す。温泉成分がパイプの内側に付く恐れがあるため、熱交換方式を採用した。温泉を利用する単位は「口」で表し、1口は毎分15リットル。このハウスの場合、秋は2口、10月中旬から3月は4口使う。温泉の費用は年間約50万円だという。外気温が氷点下15度でも、室温は10度に保てる。設備投資に1500万円掛かった。渡辺さんは「費用が掛かったが、元は取れる。条件が整えばハウスを増やしたい」と話す。
●床暖房、掛け流しで
 奥飛騨ファーム社長の滋野亮太さん(31)は315平方メートルのハウス2棟の暖房に、掛け流し方式で温泉を利用する。石垣島にも農場を持ち、リレー栽培する。温泉旅館の後継者で植物が好きだった。旅館の浴場にバナナの鉢植えを置いたら結実。渡辺さんのフルージックの取り組みなどを刺激に、小ハウスで試験し、08年に本格的に就農した。糖度26のバナナ果実、寒さに強いバナナ品種の苗、実付きバナナの鉢植えなどをインターネットで販売する。ハウス暖房は直径17センチのパイプを半分に切り、とい状に して水口で約62度の温泉を、11~4月は24時間、それ以外の期間は夜間だけ流す。氷点下15度でも27度に保てる。ただし湿度は高く栽培できる作物は限られる。「植物の葉はべたべたになる。マンゴーや野菜は栽培できない」と滋野さん。
 ハウスではバナナの他にカカオ、観葉植物などを育てている。使う温泉は2口で、年間費用は28万8000円。「ボイラーで暖房するなら、やらなかった。温泉とインターネットがあったから農業ができた。栃尾温泉は硫黄分を含まず温度が高い。日射量も多いので取り組めた」と分析する。来年はハウスを1棟増やす計画だ。

<理工系教育充実における農業の無視>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141004&ng=DGKDASDG16H0O_T01C14A0CR8000
(日経新聞 2014.10.4) 理工系 即戦力を育成、50大学選び集中支援 文科省が50億円計画 自治体など独自策も
 文部科学省は理工系人材の育成に本格的に乗り出す。産業界から技術者の人材不足を訴える声が高まっていることを受け、2015年度予算で新たに50億円を要求。高い技術開発力を持ち企業の即戦力となる人材を育てる大学を集中的に支援する。理工系の教育・研究に力を入れる自治体や大学も目立ってきた。文科省によると、学部と修士課程の計6年間を通じて高い職業能力を持った人材を輩出する大学を50校選び、年間1億円の財政支援を7年続ける。各校は企業の技術者を教員として招くなどして、即戦力育成のためのカリキュラムを新たに策定。16年度から1校あたり数十人規模の学生を募集する。対象とする専攻は、ものづくりを支える基盤技術や、成長産業に結びつく分野を想定。例えば、石油精製のプラントを設計する化学工学の技術や、高齢者の生活を支える機器を開発する福祉工学の知見が豊富な人材の育成を目指す。より多様な学生を集めるため、高等専門学校からの編入や社会人の入学も促す。理系への進学を志望する高校生は近年増えているが、医・薬学に比べ、地道な基礎研究が中心の理工系の人気は低調だ。今春の理・工学部の入学者数(速報値)は計10万9539人で、10年前と比べ1割減った。こうした状況を受け、理工系の人材不足に悩む地方を中心に、自治体や大学が独自に人材育成を図る動きも出てきた。福井県は11年度から、全国の理工系大学院生を対象に、修了後に県内の製造企業で7年間勤務すれば返還が免除される奨学金を設けている。秋田大は7月、理工学部などが、出荷額が増えている秋田県内の医療・健康機器関連の企業と研究開発で連携することを発表。埼玉大は3月、大学院理工学研究科の修士課程の定員を、18年度までに段階的に計200人増やす計画を明らかにした。富山大も16年度に、100~200人規模の理工系の学部を新設する方向で検討している。文科省は「大学では世界最先端の学術研究を進める一方で、産業界で活躍する職業人の育成も急ぎたい」としている。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10103/111294
(佐賀新聞 2014年10月4日) オランダの施設園芸学ぶ 県の技術指導者が研修
ハウス内の環境制御技術について講演した麻生英文さん=佐賀市川副町の県農業試験研究センター
■イチゴ栽培にノウハウ導入
 佐賀県野菜花き技術者協議会などは3日、世界トップクラスのオランダの施設園芸技術を学ぶ研修を始めた。JAや県の技術指導者らがイチゴのハウス栽培の環境整備技術について研究し、佐賀にも導入できるノウハウを身につける。研修は4回開き、収量アップにつながる光合成を促す条件について理解を深める。ハウス内の日射量や二酸化炭素濃度、水分、湿度の調整などを学ぶ。県農業試験研究センター(佐賀市川副町)で開かれた初回の研修には約90人が参加。オランダ園芸技術のコンサルタント会社「GreenQ Japan」(栃木県)の麻生英文取締役ら3人が講演し、二酸化炭素や日射データを見ながら一定量を保つ重要性を強調した。研修は3月までで、今後はイチゴのハウスで実施。生育過程に合わせた細やかな対応など、実践的なノウハウを学ぶ。オランダの施設園芸は、北海油田から産出される安価な天然ガスを使える利点がある。県園芸課の担当者は「日本とは環境が異なるが、トマトの反収は佐賀の6倍。しっかり学べば、収量を倍にすることも不可能ではないはず。佐賀版の技術を確立し、来年度は別の作物にも応用していければ」と期待をかけている。

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2014.8.23 燃料電池の先端技術における佐賀県の可能性について (2014.8.24追加あり)
   
   *2より    2014.8.5日経新聞より   2014.8.5日経新聞より

(1)九大と福岡県が次世代型燃料電池と下水汚泥由来水素の開発へ
 *1-1のように、九州大学と福岡県は、セラミックスを使った次世代型燃料電池を共同で開発して実用化に取り組む方針で、これは、主要部品の電解質に薄いセラミックス(焼き物)を使う「固体酸化物形」と呼ばれ、発電効率が高いそうだ。

 また、水素は、太陽光や風力発電を使って製造したものを「水素ステーション」に貯蔵し、同時に、*1-2に書かれているように、福岡市、九州大、豊田通商等が、下水処理施設の汚泥から水素を取り出して燃料電池車の燃料として供給する実証実験を始めるそうだが、この技術開発は国土交通省の先端事業に採択されており、実用化できれば他の自治体でも活用できる。

(2)欧州の水素ビジネスも発進している
 *2のように、欧州企業は燃料電池車の普及をにらんで、燃料となる水素関連ビジネスに本腰を入れており、上の左図のような取り組み方をするそうだ。燃料電池車の開発も日本が最初で、1994年頃から始めているため、今頃、日米欧の主導権争いが激しさを増す構図というのは遅すぎて情けないが・・。

(3)次世代型セラミックス燃料電池と磁器の可能性
 *3-1のように、日本ガイシが、世界No.1のがいしメーカーとして、これまでに培ってきたファインセラミック技術を最大限に活かして、次世代型セラミックス燃料電池(SOFC)の開発に着手している。また、*3-2のように、京セラも家庭でのエコロジー活動に適したシステムとして家庭用燃料電池のファインセラミックスの開発に力を入れ始めているが、どちらも、もともとは磁器メーカーである。

(4)佐賀県は次世代型燃料電池で製造業を育成して雇用を造ることができるのでは?
 *4-1のように、九州、佐賀県の自動車産業の現状と今後の展開を考える講演会が27日午後1時半から、佐賀市の県工業技術センターで開かれるそうだが、確かに、次世代自動車の普及に伴う産業構造の変化を踏まえた地場企業の参入戦略は重要だ。

 私は、どんな形にでも成形でき、義歯にも使われている佐賀県有田町や伊万里市のファインセラミック技術を、日本ガイシや京セラと同様、次世代型セラミックス燃料電池に使えば大量に生産して利益を上げることができるため、佐賀県で製造業を育成して雇用をつくり、人口を維持するのに役立つと考える。

 もちろん、*4-2のように、「有田焼」の名称が中国で事前に商標登録され、本場の佐賀県有田町の窯元が「有田焼」という名前を中国で使えなくなったようなことにならないよう、「有田焼ファインセラミック(made in Japan)」というような明確に区別できる特許や商標を世界で登録しなければならないのは言うまでもない。

*1-1:http://qbiz.jp/article/44238/1/ (西日本新聞 2014年8月20日) 燃料電池に特区推進費を活用 九州大と福岡県、次世代型の実用化めざす
 九州大と福岡県は19日、同大伊都キャンパス(福岡市西区)で、国の総合特区推進調整費を活用し、次世代型の燃料電池の実用化に取り組む方針を明らかにした。同大とメーカーが発電などに使う燃料電池を共同で開発し、2017年の製品化を目指す。燃料電池は、酸素と水素の化学反応を利用して電気をつくり、水を排出する「究極のクリーンエネルギー」とされる。同大では、主要部品の電解質に薄い焼き物(セラミックス)を使う「固体酸化物形」と呼ばれるタイプの次世代型を研究。発電効率が高く、家庭用から火力発電の代替用まで幅広い用途が期待されている。同キャンパスには、13年1月に開所した「次世代燃料電池産学連携研究センター」があり、TOTO(北九州市)や西部ガス(福岡市)など16社が研究所を設置するなど燃料電池分野の研究拠点となっている。本年度、新たに国から17億5千万円の助成を受け、発電に対応する産業用(約250キロワット)や業務用(約5キロワット)の燃料電池を開発。耐久性や発電効率の向上に取り組む。太陽光や風力発電を使って製造した水素を同キャンパスの「水素ステーション」に貯蔵し、同大が購入する燃料電池車に供給する事業も行う。同大工学研究院の佐々木一成主幹教授は「九大が核となり最先端の研究をしたり、企業の製品開発を支援したりできるような態勢を整備したい。未来の社会を伊都キャンパスで実証して世界に発信したい」と話している。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?
(日経新聞 2014.8.20) 福岡市など実証実験 汚泥で水素製造 燃料電池車向け
 福岡市や九州大、豊田通商などは4日、下水処理施設の汚泥から水素を取り出し、燃料電池車(FCV)の燃料として供給する実証実験を始めると発表した。都市部で多く排出される汚泥を有効活用する技術として2年後をめどに実用化を狙う。市によると、汚泥から水素を取り出し、燃料としてFCVに供給するまでの一連の事業は世界で初めて。福岡市の下水処理施設で2015年度末まで実験。1日3700立方メートルの水素を製造し、燃料電池車約70台分を満タンにできるという。同事業は国土交通省の先端事業に採択された。実用化に成功すれば他の自治体での技術活用を見込む。

*2:http://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/? (日経新聞 2014.8.20) 欧州、水素ビジネス発進 燃料電池車普及にらむ ダイムラーなど、供給拠点整備へ パイプライン敷設も
 欧州企業が燃料電池車の普及をにらみ、燃料となる水素関連のビジネスに本腰を入れている。独ダイムラー、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルなどは2023年までに、「水素ステーション」をドイツに400カ所設けると発表した。欧州勢は水素の充填装置やパイプライン整備などでも先行しており、周辺ビジネスで主導権確保を狙う。次世代エコカーの本命とされる燃料電池車は水素と酸素を反応させてつくる電気を動力に使う。走行時に二酸化炭素(CO2)を排出しないのが特徴。水素の充填時間はガソリン車並みに数分で済み、フル充填で500キロメートル走行できるが、インフラの整備とコスト低減が課題になっている。ダイムラー、シェルは、産業ガスの仏エア・リキードと独リンデ、エネルギー大手の仏トタルとオーストリアOMVの4社と共同で約3億5千万ユーロ(約460億円)を投じ水素ステーションの整備に乗り出す。独国内の水素ステーションは現在15カ所。6社は23年時点で高速道路「アウトバーン」沿いで90キロメートルごとに1カ所、大都市には最低10カ所を設ける計画。参加各社はすでに水素関連ビジネスで実績を持つ。ダイムラーは燃料電池車200台を公道で走らせ研究開発を進めてきた。今年1月には日産自動車、米フォード・モーターと技術提携し、17年に数十万台規模で量産を始める予定だ。産業ガス世界首位のエア・リキードと同2位のリンデは、化学や半導体の工場などで使う水素の製造や配送のノウハウが豊富。燃料電池車の燃料に求められる純度の高い水素の低コスト生産を狙う。シェルなどは水素ステーションの実証実験をしており、ガソリンスタンド併設型の開発などで導入コスト削減を図る。中でもリンデは水素充填装置で約8割の世界シェアを握る。「近年はアジアからの受注が多く、出荷は前年比2~3割増」(同社)としており、日本のほか米国、韓国向けの受注が増える見通しだ。欧州ではノルウェーが、自国で生産する天然ガスを改質した水素を融通する長さ580キロメートルのパイプラインを整備済み。国営石油会社のスタトイルが燃料電池車向けの水素供給事業で他国に先駆ける。欧州は各地にガスパイプラインが張り巡らされており、他国でも新規に水素インフラの整備も進めやすい。日米欧の自動車大手は15年以降に燃料電池車を市販する計画で、20年代に本格普及する見通し。日本でも関連技術の開発が進んでおり千代田化工建設が大型の水素供給基地を15年度にも建設し、川崎重工業が水素輸送船を開発する。今後は日米欧の主導権争いが激しさを増し、普及に向けて水素や関連設備のコスト削減も進む見通し。

*3-1:http://www.ngk.co.jp/invest/energy.html
(日本ガイシ) 電力エネルギー分野の研究開発、次世代のエネルギー技術を創る
●NAS電池
 日本ガイシの原点であるエネルギー分野では、世界No.1のがいしメーカーとして、送電電圧100万Vの超大型がいしをはじめ、落雷の被害を防ぐ避雷装置、配電自動化システムなど、電力の安定供給のために、さまざまな製品やシステムを提供してきました。現在、これまでに培ってきたファインセラミック技術を最大限に活かし、イオン伝導セラミックス・導電セラミックス・構造セラミックスをキーマテリアル、成形・焼成・加工・評価技術をキーテクノロジーとして、エネルギー分野の新たな柱となる事業フィールドへの積極的な進出を図っています。すでに量産を開始した電力貯蔵用のNAS電池システムをはじめ、セラミックスを利用した燃料電池(SOFC)などの開発に着手しています。
●SOFCについて
 近年、クリーンで高効率な発電システムとして燃料電池が注目されています。燃料電池の中でも、セラミックス製の燃料電池(固体酸化物形燃料電池:SOFC)は最も発電効率が高いため、次世代の高効率発電システムとして期待され研究が盛んに行われています。日本ガイシでは、SOFC発電システムの基幹発電部品であるSOFCモジュールの開発に取り組んでいます。全てにセラミックスを採用した当社独自の設計により、高効率発電と高耐久性の両立を可能にします。SOFCは、酸化物イオンのみを透過するイオン伝導性セラミックス(固体電解質)を多孔質の導電性セラミックス電極(空気極と燃料極)で挟み込んだ構造になっています。固体電解質で仕切られた片側に空気を供給し、反対側に燃料ガス(例えば水素や一酸化炭素を含むガス)を供給すると、1)空気中の酸素が酸化物イオンになり、2)その酸化物イオンが固体電解質中を移動し、3)燃料中の水素や一酸化炭素と反応して水や二酸化炭素になりますが、その際に電子を放出するため起電力が生じ、発電することができます。

*3-2:http://www.kyocera.co.jp/fcworld/consent/clean_energy.html
(FINE CERAMICS WORLD) 家庭用燃料電池の心臓部で活躍するファインセラミックス
家庭用固体酸化物形燃料電池(SOFC)システム
 家庭用燃料電池とは、電気を作る発電ユニットと、発電時に発生する熱でお湯を作る給湯ユニットの2つで構成されています。エネルギー効率が高く、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出や、窒素酸化物(NOX)、硫黄酸化物(SOX)などの発生が極めて少ない、家庭でのエコロジー活動に適したシステムとして、今後の普及が期待されています。

*4-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10103/96056
(佐賀新聞 2014年8月21日) 自動車市場参入拡大可能性探る 27日、佐賀市で講演会
 九州、佐賀県の自動車産業の現状と今後の展開を考える講演会が27日午後1時半から、佐賀市の県工業技術センターで開かれる。地域の産業事情に詳しい研究者2人が電気自動車など「次世代自動車」の市場動向を交え、地場企業の参入拡大の可能性を探る。東京大教授の田中敏久氏、九州大准教授の目代武史氏が講演。田中氏はトヨタ自動車で部品の調達や販売業務に従事、北九州市参与(自動車産業担当)も務めた。次世代自動車の普及に伴う産業構造の変化を踏まえ、部品の電子化やユニット化による地場企業の参入戦略、大学や自治体との連携のあり方を解説する。目代氏は、自動車産業を対象とした技術経営や経営戦略を研究。九州や中国地方などの部品供給事情に詳しく、地場の中小企業に求められる取り組みについて話す。関連企業でつくる県自動車産業振興会(吉村正会長)が主催。定員50人で、会員以外は参加費2千円が必要。申し込み、問い合わせは県新産業・基礎科学課、電話0952(25)7129へ。

*4-2:http://qbiz.jp/article/43811/1/
(西日本新聞 2014年8月13日) 有田焼、中国でやっと商標登録
 日本を代表する伝統工芸の「有田焼」の名称が、中国で勝手に商標登録されていた問題で、佐賀県有田町の窯元らでつくる県陶磁器工業協同組合は12日、名称とロゴを中国であらためて商標登録したことを明らかにした。創業400年が2年後に迫る中での解決に、関係者は「世界へのPRと大市場・中国への進出の大きな追い風」と歓迎している。登録したのは「有田焼」の名称と、色絵磁器の人間国宝だった故十四代酒井田柿右衛門さんが書いた「有田焼」のロゴ、「有田焼」が使用できない間、中国での展示会で使用した「有田瓷器(じき)」のロゴの計3件。組合によると、2010年秋に上海で開催した日本佐賀産品展の際、中国人事業者が04年11月に「有田焼」を商標登録していたことが発覚。このため窯元などは「有田瓷器」での出展を余儀なくされた。中国の商標法では3年間使用されない商標は、登録者以外でも取り消しを申請できる。町は12年4月に取り消しを、同時に組合が3件の商標登録を申請していた。今後は、窯元などが組合に申請すれば中国国内で有田焼として販売できる。組合の百武龍太郎専務理事は「有田焼のブランドを守るため監視体制も強化する」と話した。


PS(2014.8.24追加):*5のように、生物学の進歩で、微生物にクモの遺伝子を組み込んで、世界で最も強いと言われるクモ糸蛋白質を微生物に大量生産させることにも成功しているが、このようなことは、もともとは常識ではなかった。しかし、技術進歩で、このたんぱく質が容易に手に入る価格にまでなれば、自動車部品や車体などの工業製品にも使用でき、軽くて強い国産資源となるのである。

*5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11307562.html
(朝日新聞 2014年8月20日) (ザ・テクノロジー)第3部・バイオ編:下 最強の糸、編み出す微生物
 山形県鶴岡市の田園地帯にガラス張りの美しい建物が立つ。なかの「実験室」への出入りは厳しく制限されている。室内にあるのは、筒状のガラス容器だ。「企業秘密のため写真でしかお見せできませんが、これがクモの糸になるんです」と担当者は言う。ガラス容器のなかでは、ドロドロの黄色の液体が発酵している。まるで小さなビール工場のようだ。31歳の代表執行役、関山和秀が率いる慶応大発のバイオベンチャー企業「スパイバー」が目指すのは、人工的にクモの糸を合成し、量産化することだ。創業のきっかけは10年前の飲み会だった。慶応大4年だった関山は研究室の仲間らと「最も強い昆虫は何か」という話になった。「強力な毒を持つスズメバチだ」「それを捕食するクモの方がすごい」。議論は「捕食に使われるクモの糸はすごいらしい」という方向に。それが3年後の2007年、起業につながった。
    *
 クモの糸は鋼鉄を超える強度とナイロンを上回る伸縮性を持ち、「世界で最もタフな繊維」と呼ばれる。車体や防弾チョッキ、人工血管など様々な分野に応用できそうで、次世代の素材の注目株だ。しかし、実用化には壁があった。クモは縄張り意識が強く共食いする。一度に多く飼育できず、糸の大量生産ができないのだ。「クモの糸」は、特殊なたんぱく質でできている。同社は、微生物を利用して、そのたんぱく質を再現できないか知恵を絞った。微生物は、細胞のなかの遺伝子がさまざまなたんぱく質をつくっている。スパイバーは微生物のなかに、別の遺伝子を組み込むことで、クモの糸と同じたんぱく質を、効率よく大量につくる基礎技術の開発にこぎつけた。スパイバーの強みは「自ら遺伝子を設計し、生産効率の高い遺伝子を作製できる点にある」と取締役の東憲児は語る。自前でさまざまな遺伝子を作って微生物に組み込む実験を繰り返し、大量生産が可能な組み合わせに行き着いた。昨年11月、トヨタ自動車系の部品製造会社「小島プレス工業」と共同で、試作研究施設を造った。来年から年間10トンの生産態勢に入る予定だ。スパイバーが取り組む手法は「合成生物学」と呼ばれる。米欧ではベンチャー企業から世界的大手までが入り乱れ、激しく争っている。

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