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2013,12,29, Sunday
(1)企業の消費税は、主に労務費(従業員の給料)にかかるのだということ ある会社で支払う消費税を計算するにあたっては、商品の仕入れ、機械等の事業用資産の購入・賃借、事務用品の購入、運送・水光熱料金など、外部から購入した財・サービスについては、二重課税にならないよう仕入税額控除が行われるため、その会社での消費税はかからない。それでは、何に消費税がかかるのかと言えば、その会社でつけた付加価値にかかるのであり、それは主に人件費と利益だ。 例えば、弁当屋である京樽の平成18年12月期の財務諸表(http://www.kyotaru.co.jp/company/lib_pdf/474405.pdf#search='%E4%BA%AC%E6%A8%BD+%E5%80%8B%E5%88%A5%E8%B2%A1%E5%8B%99%E8%AB%B8%E8%A1%A8')を例にとれば、売上高は3,238万円、売上原価は1,175万円であるが、このうち、消費税の課税対象となるのは、外部から購入したものを除く労務費と利益が殆どであることが、損益計算書と製造原価報告書からわかる。それなら、消費税増税が行われたら、企業はどうやって利益を確保するかと言えば、労務費を削るのが最も大きな効果を挙げるだろう。その方法は、機械化や従業員の非正規化などにほかならない。 一方で、「消費税はすべて消費者に転嫁する」といきまいている人が多いが、年金生活者や非正規雇用者が多いわが国で、実質収入が増えるどころか減る場合に、消費税を転嫁されれば、買う数量が減るしかないというのは、生活者が考えればすぐわかることである。そもそも景気というような気分で変化する程度の需要は、大切にしなければならない堅調な需要ではない。 それでは、何故、政治家・評論家・御用学者・メディアが、こぞって消費税増税の必要性を説いているのかと言えば、このうち消費税法の仕組みや規定、国庫に入った後の税金の流れを理解して発言している人は殆どおらず、消費税増税をしたい財務省の理屈を、何かの利害関係があって、自分の見解として語っているにすぎない。つまり、全体が虚構なのである。 (2)軽減税率は、不公正・不公平を生む どうしても買わなければならない食品などの生活必需品への支出割合は、所得が低い人ほど高いため、これらに軽減税率を適用しなければ、低所得者ほど税負担が重くなるというパラドックスが存在するため、消費税には、軽減税率適用の話がつきものである。 しかし、軽減税率は適用範囲の設定がすこぶる難しく、不公正・不公平を生みやすい。例えば、食料品のうち材料には軽減税率を適用するが、加工品には適用しないとすると、一人暮らしで惣菜を買って節約している老人は、軽減税率を適用されないことになる。現在は、材料を買って自宅で調理する方が、廃棄物が多く出て不経済になる世帯も多いので、何が贅沢かを一概に線引きすることはできないのだ。 従って、消費税率はなるべく低くすべきであり、この際、消費税は、全額を地方税にして、税率もその地域で自由に決められるようにするのが、地方分権をバックアップする資金として優れていると、私は思っている。それでも、インボイス方式にすれば、事務手続きに大きな問題は生じない。 (3)消費税増税は社会保障目的というのは本当だったか *1、*2に書かれているように、消費税増税が社会保障目的という論理はすでに崩れた。また、逆に、社会保障費は消費税から支払わなければならないという根拠もない。さらに、年金受給者は、年金保険料を支払って受給資格を取得したのだから、受給する時になって、社会保障費が多すぎるなどとつべこべ言われるのは詐欺に等しい。もし年金資産が足りないとすれば、それは100%、国の年金資産管理や人口動態の読み、経済運営に問題があったのであり、その責任を受給者が負担するというのは理屈に合わない。また、そのいい加減な管理状況は、今でもさほど改善されていないのだ。 (4)社会保障と財政再建の代替案は、もう何度も示している 社会保障と財政再建の代替案は、このブログの「年金・社会保障」「経済」「消費税増税問題」というカテゴリーで何度も書いているので、改めて書くことはしない。また、*2に「社会保障費についても給付削減に踏み込むなど一段の改革をしなければ実現できない」と記載されており、こういう発言は多いが、そもそも社会保障費は一人当たりで増えたか否かを比較すべきであり、高齢者が増えれば年金給付や医療介護給付が増えるのは当然であるため、国は、それも想定してこれまでやってこなければならなかったのである。そして、それは、決して難しいことではなく、運営者として当たり前のことなのだ。 *1:http://qbiz.jp/article/28963/1/ (西日本新聞 2013年12月13日) 増税、暮らし直撃 与党が税制大綱を決定 自民、公明両党は12日、2014年度税制改正大綱を決めた。来年4月の消費税増税が控える中、軽自動車税の増税や給与所得控除の縮小など家計関連の増税が目立つ一方、交際費の非課税制度の拡充など企業の優遇措置は強化された。消費税の軽減税率制度は「税率10%時に導入する」としたが、対象品目や税率など重要部分の結論は来年に先送りした。14年度の消費税率8%への引き上げによる負担増は5兆1千億円程度と見込まれている。今回の改正で14年度は国と地方を合わせて7400億円程度の減税になるとされ、差し引きすれば4兆円超の増税になる。政府は増税時の経済対策のため13年度補正予算案を12日に閣議決定したが、企業優遇が中心で家計支援は手薄だ。賃上げで家計が改善しなければ、増税後の消費落ち込みでデフレ脱却が遠のく恐れがある。 最大の焦点となった軽減税率制度は、必要な財源を確保しつつ、国民の理解を得た上で導入するとした。14年末までに結論を得る方針も示したが、導入に積極的な公明と、税収減などを懸念して慎重な自民の意見対立は解消されていない。両党の議論は12日未明まで続き、大綱は双方に配慮した文言に落ち着いた。導入時期の表現は、15年10月予定の消費税率10%への引き上げ時と、引き上げ後のどちらとも解釈可能で、国民には分かりにくい内容となった。麻生太郎財務相は12日の会見で「考えないといけないことがいっぱいある」と述べ、導入には時間がかかるとの認識を示した。 大綱ではサラリーマンの給与所得控除を縮小し、16年から年収1200万円超、17年以降は年収1千万円超の人を対象にする。購入時に納める自動車取得税を軽減する一方、毎年支払う軽自動車税は増税。企業支援では交際費の一部を非課税にする制度の対象に大企業も加えた。復興特別法人税は1年前倒しで13年度末に廃止し、賃上げや投資を促す減税も実施する。 ◆経済活性は不透明、消費冷え込む恐れも 自民、公明両党が12日決定した2014年度税制改正大綱は、消費税10%引き上げ時点での軽減税率導入を事実上先送り、軽自動車税の増税など家計に厳しい項目が並ぶ一方、企業向けには設備投資減税など手厚い支援策が盛り込まれた。企業優遇で経済活性化を目指す「アベノミクス」色が濃いが、狙い通り景気を浮揚できるかは不透明だ。最大の焦点だった軽減税率の導入は、自公協議で対象品目の線引きや納税事務負担といった議論の入り口でつまずき、事実上の先送り。自公の綱引きに終始し、増税で生活が苦しくなる低所得層への有効な支援策は何か、という根本的な議論は深まらなかった。 軽自動車税は、15年度以降に購入する新車から1・5倍の1万800円への増税が決定。「軽ユーザーは収入の少ない女性や高齢者が中心」「地方の生活の足」という自公両党や軽メーカーの反発が強く、既保有者への増税は見送った。一方で「軽に市場が偏り、健全な形で自動車産業が育たない」(自民党税制調査会幹部)との業界への配慮から、利用者に負担増を求めることになった。 高所得のサラリーマンの給与所得控除も段階的に縮小され、年収1千万円超の人は17年から所得税・住民税が増税になる。対象は172万人、増税規模は1100億円に及ぶ。家計向けの増税策は、来年4月の消費税増税より後にずれるものの、将来の負担増を見越して節約志向が強まれば、景気回復をけん引する個人消費が冷え込むリスクもある。 一方、企業向けには接待などに使う交際費の一部非課税措置を大企業にも拡大。設備投資減税など手厚い支援策をそろえた。今回の大綱による減税規模は、14年度で国・地方合わせて総額7400億円とされるが、ほとんどは企業向け減税によるものだ。 国の借金は1千兆円に達し、家計向けに減税策を大盤振る舞いしている余裕はない。安倍晋三政権は、企業活動の活発化で給与増や雇用拡大、設備投資の増加といった経済の好循環を目指す。企業優遇は首相の政策を税制面から支援する狙いだが、企業向け減税分が家計に回る保証はない。景気が腰折れすれば、15年10月に予定する消費税率10%への引き上げができず、財政健全化も遠のく。 ◆低所得者支援固めず 消費税の軽減税率をめぐる自民、公明両党の攻防は玉虫色で決着した。2014年度の与党税制改正大綱に「税率10%時に導入する」と記したが「10%時」がいつを指すかは不明確。導入を望む公明党は「引き上げと同時」と読み、先送りしたい自民党は言葉を濁す。導入時期がぼやけ、10%増税への判断を自由に決めたい安倍晋三首相にとっては好都合な形になった。12日、国会内の会議室。大綱をまとめた両党の税制調査会幹部が記者会見に臨んだ。同日未明まで軽減税率の書きぶりをめぐって激しくやりあった。「10%時」の解釈について自民党の野田毅会長が「何年何月にと言及するのは難しい」と明言を避けると、公明党の斉藤鉄夫会長は語気強く「10%引き上げ時を含むのは当然だ」と口を挟んだ。結論は1年後の税制論議に持ち越された。軽減税率は公明党にとって、消費税増税に慎重な支持母体、創価学会への説得材料だった。特定秘密保護法への厳しい世論も公明を駆り立てた。「なぜ止めなかったのかって、電話がじゃんじゃんかかってくる。これで軽減税率を実現できなかったら…」。党幹部の危機感は強かった。山口那津男代表は税制大綱に「(軽減税率の)詳細な内容を検討する」と明記された点も成果と強調した。 一方、自民党は一貫して軽減税率に消極的だった。「イクラはいいけど、キャビアはどうするの」。麻生太郎財務相は対象食品の線引きの難しさを指摘。財務省と連合軍を組み、軽減税率の導入に「必要な財源を確保しつつ」と条件を付けた。1%で約4900億円の税収減と試算し「2%の軽減税率なら約1兆円の財源を見つけないといけない」と難しさを強調。なお抵抗できる余地を残した。首相にとっては、導入時期の曖昧さは好都合だった。具体的に決められると、10%への引き上げが既定路線化し、自らのフリーハンドを縛られかねない。自民党の強気には首相の存在もちらついた。 *税制改正大綱 経済や社会の変化に合わせた税制見直しや今後の検討課題を示した文書。通常、各省庁が毎年8月末、財務省に翌年度の税制改正項目を要望。与党が業界団体などの意見も踏まえながら、政府予算案の作成に合わせ、12月に大綱を取りまとめる。政府もこの内容に沿って大綱を閣議決定し、税制改正に必要な法案を国会に提出する。 *2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013122502000153.html 【東京新聞社説 2013年12月25日】 政府予算案 国民の痛みに応えたか 政府の来年度予算案は古色蒼然(こしょくそうぜん)とした自民党色に勇ましい安倍カラーも加わり過去最大に膨張した。財政危機を叫んで決めた消費税増税が国民に痛みを強いるのに、この財政規律の緩みは何なのか。十七年ぶりの消費税率引き上げと景気回復に伴う法人税などの増収で、全体の税収は前年度より七兆円多い五十兆円を見込む。いよいよ消費税増税がのしかかってくる国民の思いを酌めば、本来の消費税増税の趣旨である社会保障の維持・充実に努めるのはもちろんのこと、増え続ける国の借金を減らし財政健全化につなげるのは当然のことである。 ところがどうだろう。本年度補正予算で二兆円規模の公共事業費を決めたばかりなのに、さらに六兆円も積み増す。診療報酬は自民党のスポンサーである日本医師会に配慮して土壇場で増額改定を決める。農業も減反を見直しながら転作などの補助金を増額する。業界団体や既得権益層と結び付いた、これら主要項目は軒並み増額し、旧来のバラマキや利益誘導が顕著である。 安倍晋三首相の指示で防衛予算も二年連続で増やし、装備増強などに余念がない。普天間飛行場の移設問題を抱える沖縄に対して、要求を上回る振興予算を付けるなど辺野古移転決着もにらむような安倍カラーが随所に表れている。 せっかく税収が上がっても、歳出に対する切り込みが不足しては財政状況は改善しない。政府は、政策経費を税収でどの程度まかなえるかを示す基礎的財政収支の赤字削減幅が、目標の四兆円を一兆円以上も上回ったと胸を張る。 しかし、二〇一五年度までに一〇年度と比べた赤字幅を半減するという国際公約の達成や、二〇年度に黒字化するハードルは依然として高い。聖域をなくし、初めて三十兆円に達した社会保障費についても高所得者の給付削減に踏み込むなど一段の改革をしなければ実現できないのは明らかである。 グローバル化や高齢化により財政赤字に苦しむ先進国の多くは、予算制度改革に乗り出している。法的拘束力のある中期計画づくりや、中央銀行のように独立した機関による検証などだ。 ひとり日本だけが旧態依然のままである。補正予算や決算に対するチェックも甘く、著しく透明性を欠いている。経済協力開発機構(OECD)から勧告されたことである。どうしていつまでも財政再建の道筋が見えないのか。それは政治の意思の問題である。 PS(2013.12.30追加):*4の平成19年に追加された就学援助制度は、私の発案に依るもので、子どもの学費や給食費にも苦労する家庭が少なくなかったため、①親の貧乏の子どもへの影響を緩和すること ②質の良い次世代の労働力を育てること を目的とした。*3に書かれている「市町村ごとに準要保護の認定基準が異なり、夫婦と小学生、幼児の4人家族の場合、福岡市は年収約450万円以下で認定されるが、佐賀市では約270万円以下と差がある」というのは、地域によって生活費に差があるということもあるが、市町村の財政状態の問題もある。しかし、私は、この制度は、けちけち認定基準を厳しくせず、多くの子どもが無料で給食を食べられるようにした方がよいと思っている。地域の農水産物をうまく使えば、原材料費はさほど高くならずに、栄養豊富で美味しい給食を提供して食育を行うことができるし、子どもの教育が充実している場所に親は住みたがるので、結果として、その市町村の生産年齢人口が増え、住民税収入が増える効果も期待できる。なお、「食育は器から」ということで、有田を有する佐賀県の給食食器は、既にアルマイトから磁器に切り替えられている。 *3:http://qbiz.jp/article/29839/1/ (西日本新聞 2013年12月30日) 九州の就学援助最多 20万人 小中生5人に1人 12年度、景気低迷を反映 経済的に困窮した家庭の小中学生に、給食などの費用を補助する就学援助制度の対象者は2012年度、九州7県で19万8141人に上り、過去最多だったことが西日本新聞のまとめで分かった。全児童生徒に占める割合(就学援助率)も過去最高の18・5%で、およそ5人に1人に当たる。地方の景気低迷による貧困家庭の増加が、背景にはあるとみられる。就学援助費は学校教育法に基づき、市町村が支給する。生活保護を受ける「要保護世帯」と、生活保護世帯に近い状態と市町村が認定した「準要保護世帯」が対象になる。各県教委を通じて集計したところ、要保護が1万8435人、準要保護が17万9706人。各県の就学援助率は、福岡22・9%▽鹿児島20・5%▽長崎17・1%▽大分15・4%▽宮崎14・5%▽熊本14・0%▽佐賀11・4%−の順。いずれの県も前年度比0・3〜0・7ポイント増加した。文部科学省によると、全国の対象者は調査開始の1995年度から年々増加しており、2011年度は156万7831人(就学援助率15・6%)。今年に入り「景気が持ち直している影響から本年度の対象者は12年度より減りそうだ」(福岡市学事課)との見方もあり、一部では“下げ止まり”の兆しも見える。一方、各県の就学援助率にばらつきがあるのは、市町村ごとに準要保護の認定基準が異なるため。例えば、夫婦と小学生、幼児の4人家族の場合、福岡市は年収約450万円以下で認定されるが、佐賀市では約270万円以下と差がある。援助制度についての周知の仕方も、保護者にプリントを配布して申請を促す自治体がある一方、「財政的理由から広報紙やホームページにも載せていない」という自治体もある。教育関係者からは「住む地域によって子どもに不平等が生じるのはおかしい」と、認定基準の統一や周知の徹底を求める声が出ている。 ■就学援助制度 学校教育法19条に基づき、経済的に困窮している小中学生の保護者に市町村が費用を支給する。小学生の場合は、学用品代(年1万5千円ほど)のほか、給食費や修学旅行費、社会科見学費の実費(限度額あり)など。「三位一体改革」で2005年度から準要保護世帯の就学援助費への国庫補助が廃止され、財政難から認定基準を厳格化する自治体が出ている。 *4:http://www.houko.com/00/01/S22/026.HTM 第19条 経済的理由によつて、就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない。《平成19年追加》
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2013,12,26, Thursday
↑ 2013.11.17佐賀新聞より http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/dblog/speedi1/blog/38508/ SPEEDIデータ:強風で有明海まで1時間で汚染が到達 (1)発送電分離と市場競争の必要性 *1-1で、九電前社長の真部氏が「発送電分離に疑問」としながら、電力市場で競争が低調なことについて、「制度上の問題というより、新規参入事業者が大規模電源を持てないからではないか」としているのは、(経営者が経営学・経済学を知らないのでなければ)意図的に事実を歪めていると思う。何故なら、大規模発電設備など持たなくても、自然エネルギー等によって分散発電を行い、その電力を販売する場合や、*4のような新電力を使いたい人に送電するためには、送電会社が発電会社とは独立の意思決定ができる別会社であることが必要だからである。これまで新電力の普及を邪魔してきたのは、送電設備を所有する従来の電力会社にほかならない。 真部氏は、「発送電分離などが必ずしも電気料金の抑制や災害時の大規模停電回避につながらない」ともしているが、発送電分離により市場競争が起こることで、発電方法の工夫や技術革新が進み、電気料金は抑制される。また、災害時の大規模停電に備えるには、自家発電や狭い地域単位での発電設備所有しか危機管理の方法はないだろうし、ここで発電された電力も販売できるのである。 「改革の本当の狙いは、電力やガス、石油業界の融合を進め、外国に負けないエネルギー産業を育成することではないか」とも語られたそうだが、顧客本位の国内競争で鍛えられていない産業は、*1-2のように、原発か火力かという選択肢しか思いつかず、国際競争にも弱い。また、現在の地域独占と総括原価方式によるシステムでは、*5のようなことも普通に起こる。 原発について、「燃料コストが安い電源だが、事故時に巨額の損害賠償を求められたり、外国の事故でも停止を迫られたりするリスクがある。使用済核燃料の問題もあり、『国策民営』の矛盾を真っ先に考えるべきだ」とも主張されたそうだが、すべてを考慮した原発のコストが膨大であることは、すでに多くの国民が知っている。従って、国営だろうと民営だろうと、原発はもう終わりにすべきなのである。 なお、*1-3に記載されているように、「東京・六本木の原子力規制委員会からほど近いビルの一室に、7月以来、九電の社員90人が常駐し、原子力規制庁からのヒアリングや審査会用の資料作成に当たっている」という電力会社の体質は問題だ。普通の会社なら、社員が90人もいれば、数億円の売り上げを稼ぐが、電力会社では、他部署から送られた激励の寄せ書きや千羽鶴をもらって、「大変だ、大変だ」と言いながら、原子力規制委員会への対応だけをしているわけである。普段から、生産性が低く、人材や費用を無駄遣いしているのがよくわかるが、それで「九州の電力供給を支えている」などと言って欲しくない。何故なら、他社がやれば、もっと生産性高く発電し、料金を安くすることができるからである。 (2)立地自治体は、もう原発依存を断つべき *2で「原発が停止すると、地元を潤す定期検査に伴う作業員の宿泊や飲食、輸送需要が消えるという経済損失が危惧される」とされているが、これらは、結局は、私たちが電気料金として支払っているものだ。一方、これまで作業員の宿泊だけで経営が成り立っていた地元玄海町の旅館業者は、原発停止後、町内にある運動施設を活用し、サッカー大会や合宿の誘致に取り組んで宿泊客が右肩上がりになり、旅館組合長は「福島の事故で、原発が絶対的な存在でないことが分かった。経営を自立する手だてを築かなければ」と述べている。近くに原発がない方が都合のよい産業が多いため、立地自治体も、もう次のステージに進むべきだが、そのためには周囲の協力も必要なのである。 (3)原発事故時に被害を受ける周辺自治体について *3のように、玄海原発のケースでは、佐賀県伊万里市区長会連合会が2013年12月24日、九電に、原発立地自治体並みの「事前了解」を盛り込んだ原子力安全協定を伊万里市と早期に結ぶよう求める要望書を提出したが、受取った武雄営業所長は、立地自治体並みは難しいとの認識を示したそうだ。事故が起これば立地自治体と同じ被害を受けることが明らかな周辺自治体に、必要な情報を知らせるのは当然だし、それもできないのであれば、やはり一刻も早く原発を終えるべきである。 *1-1:http://qbiz.jp/article/29361/1/ (西日本新聞 2013年12月20日) 九電前社長、発送電分離に疑問 講演で「改革に事業者の声を」 九州電力前社長で九州通信ネットワーク(福岡市)の会長を務める真部利応氏が19日、福岡市・天神であった交流会「天神サロン」で講演し、政府が電力システム改革で進める予定の「発送電分離」について「意図がよく分からない」と疑問を呈し「(改革に)民間事業者の率直な声を反映してほしい」と訴えた。改革では、2015年をめどに全国規模で電力需給を調整する「広域系統運用機関」を設立する改正電気事業法が11月に成立。付則には小売りの全面自由化、大手電力会社の発電と送配電部門を別会社にする「発送電分離」を実現する工程が盛り込まれた。真部氏は、電力市場で競争が低調なことについて「制度上の問題というより、新規参入事業者が大規模電源を持てないからではないか。安い電源の確保には大規模開発しかないが、数千億円の設備費用がかかる」と指摘。発送電分離などが必ずしも電気料金の抑制や災害時の大規模停電回避につながらないとして「改革の本当の狙いは、電力やガス、石油業界の融合を進め、外国に負けないエネルギー産業を育成することではないか」と語った。原発については「燃料コストが安い電源だが、事故時に巨額の損害賠償を求められたり、外国の事故でも停止を迫られたりするリスクがある。使用済み核燃料の問題もあり、『国策民営』の矛盾を真っ先に考えるべきだ」と主張した。 *1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2601482.article.html (佐賀新聞 2013年12月26日) 1日も早く再稼働を 瓜生九電社長が会見 九州電力の全原発が停止して丸2年となった25日、瓜生道明社長は記者会見で「1日も早い再稼働が不可欠」と述べ、玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)、川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の早期再稼働を目指す考えをあらためて強調した。瓜生社長は1年を振り返り、原発停止に伴う電力需給のひっ迫と電気料金値上げについて「お客さまに大変な不便と迷惑をかけた」と陳謝。火力燃料費の増加で収支が急速に悪化しているとし、原発の早期再稼働に理解を求めた。一方、本年度は資金調達のめどが立ち、経営面で「まだ辛抱できる余地はある」とも述べた。原子力規制委員会の安全審査については、年内におおむね申請書類を提出できたとし、「想定の範囲でしっかりした対応ができた」と評価した。伊万里市の塚部芳和市長が「(安全協定は)政治的駆け引きの道具」などと発言した問題については「住民の安全・安心を守るために立地自治体並みの安全協定をという気持ちが根底にはあると思う」と話し、安全協定に関する協議に影響はないとの認識を示した。 *1-3:http://qbiz.jp/article/29631/1/ (西日本新聞 2013年12月26日) 「安定経営」今は昔 九電、社員に疲労感 「原発ゼロ」2年 主要電源だった原発がすべて停止し2年を迎えた九州電力。火力燃料費の増大に伴う急速な経営悪化で経営合理化を迫られ、「九州随一の安定企業」だった東日本大震災前とは様変わりした。原発再稼働に向けて九電は、原子力規制委員会による安全審査への対応に全力を挙げるが、賃金カットを余儀なくされた社員には疲弊感も漂う。東京・六本木の原子力規制委員会からほど近いビルの一室。7月以来、九電の社員90人が常駐し、原子力規制庁からのヒアリングや審査会合用の資料作成に当たっている。部屋の壁に掛けられているのは、九州の他部署から送られた激励の寄せ書きや千羽鶴。社員は都内でホテル暮らし。相応の経費がかかるが「審査に迅速かつタイムリーに対応する必要がある」と九電。一日も早い再稼働のためにはできることは何でもする構えだ。九電にとって正念場を迎えつつある審査会合。11月8日には原子力規制委員会から、原発で想定している地震評価が「不十分」と指摘され、審査期間が大幅に長期化しかねない状況になった。九電は12月18日に、想定する最大の揺れをこれまでより引き上げると説明。規制委から大きな異論はなく、九電幹部からは「本年度内の審査終了も見えてきた」と安堵(あんど)の声も漏れる。その一方で「最後まで何があるか分からない」とくぎを刺す声もある。規制委の現地調査で高い評価を得た川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)と玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)。関係者の間では、審査の進み具合は九電がトップとの見方があるものの、審査終了し、再稼働するまでは緊張の日々が続く。 ■ ■ 「忘年会で居酒屋を予約するときも、『九電』の名は出さない」。九電の40代の男性社員は自嘲気味に話した。福島第1原発事故以来、原発や電力会社への世間の視線は厳しい。九電は原発再稼働をめぐる「やらせメール問題」からの信頼回復も道半ば。春の電気料金値上げでは利用者に負担増を強いただけに「『九電社員が外で酒飲んで遊んでいる』と評判が立ったりしたらまずい」とこの社員はこぼす。九電は4月から、社員の基本給を5〜10%カット。賞与支給は夏冬とも見送り、創業以来初めて年間ゼロにした。妻と小学生の娘2人とマイホームで暮らすこの社員は住宅ローン返済のために、退職金の一部を前借りして家計をやりくりしている。「会社の赤字を考えるとやむを得ない」と分かっているものの「今後もこれが続くと思うときつい」のも本音だ。九州の電力供給を支える−。現場の社員には今も電力マンとしての心意気が残るものの、原発停止で電力の安定供給は他電力からの融通などに頼らざるを得ない現実が横たわる。「若い社員が希望を持てない会社になった」と嘆くのは別の中堅社員。「九電が原発事故を起こしたわけではないのに、なぜここまで肩身が狭い思いをしなければならないのか」。そんな不満も社員の間にはくすぶっている。瓜生道明社長は25日の記者会見で「厳しい環境の中でも社員の『頑張っていこう』という気持ちはなえていないのではないか。処遇の改善は、原発の再稼働をにらみながら考えていきたい」。九電の経営も、社員の生活も、原発に頼らざるを得ないのが九電の実情だ。 *2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2600048.article.html (佐賀新聞 2013年12月24日) 玄海原発停止2年 地域への余波目立たず 玄海原子力発電所(東松浦郡玄海町)の原発全4基が停止し、25日で丸2年となる。地元を潤していた定期検査に伴う作業員の宿泊や飲食、輸送需要が消えることによる経済損失が危惧されたが、目立った倒産などは出ていない。ただ、再稼働に向けた安全対策の工事が地元経済を“下支え”していることもあり、今の状況を「一時的な平穏」と見る向きは多い。玄海原発から十数キロにある唐津市中心部のホテル。福島第1原発事故後、当時の菅直人首相が「脱原発」を打ち出したことで、一時は「蓄えがあるうちに閉館」を検討したほどだが、昨秋ごろから原発関係者の宿泊が戻り始めたという。「定検で客が入るのは1年の半分ほど。今年は定検時ほど多くはなかったけど、年間を通じて客足が絶えなかった」と経営者。客室の空調設備も新しくした。銀行の融資査定はすんなり通ったという。原発による地元への経済効果は13カ月に一度、炉を停止して行う定期検査によってもたらされる。唐津上場商工会が昨春示した「年間34億円の経済損失」の根拠も、1日2千人前後の作業員の宿泊や食費などの需要が消えることを想定したものだ。ただ、安全対策工事が入り、「100ではなくても、最悪ではない」と同商工会はみる。唐松地区の宿泊施設は震災直後の2011年4月に106カ所だったのが、直近の今年12月は99カ所。飲食店は471店から450店に減った。駅前の唐津シティホテルという大型施設の閉鎖はあったが、景気低迷に伴う減少傾向を考慮すれば、大きな落ち込みとまでは言えない。経済指標の一つ、企業からの税収である法人市民税で唐津経済をみると、震災が起きた10年度が6億9400万円に対し、直近の12年度は7億円と微増。企業調査会社の担当者は「倒産の数も少ない。建設業を中心に活気を取り戻しており、原発停止の影響は見えにくい」と話す。ただ、地元は楽観視する声は少なく、唐津上場商工会の古賀和裕会長(58)は「安全対策工事は一時的なもので、もうすぐ終わる。原発が再稼働しても、九電もこれだけ経営が厳しいので“地元対策”のようなお金の使い方はしないだろう」と、以前ほど原発マネーが地域を潤すことはないとみる。これまで作業員の宿泊だけで経営が成り立っていた地元玄海町の旅館業者たちは、原発停止後、町内にある運動施設を活用し、サッカー大会や合宿の誘致に取り組む。宿泊客は昨年10月からの半年間で575人、4月以降は11月末までの8カ月間で1556人と右肩上がり。同町旅館組合の小豆朋行組合長は「福島の事故で、原発が絶対的な存在でないことが分かった。今回のことを教訓に、経営を自立する手だてを築かなければ」と話す。原発停止から2年の歳月は、地元の意識を変えつつある。 *3:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/saga/article/60009 (西日本新聞 2013年12月25日) 安全協定で九電に要望 「立地自治体並みに」 伊万里市区長会 佐賀県伊万里市区長会連合会は24日、九州電力に対し、原発立地自治体並みの「事前了解」を盛り込んだ原子力安全協定を伊万里市と早期に結ぶよう求める要望書を提出した。安並勇会長らが武雄営業所で富永弘文所長に手渡した。要望書は「緊急防護措置区域(UPZ)に指定され、市民は驚きと不安を募らせている」とし「安全・安心確保の観点から、立地自治体並みの安全協定を求める市の判断、行動を全面的に支持し早期締結を強く要望する」との内容。富永所長は「本店に伝えたい」と述べる一方「(事前了解を含む県との)安全協定があり、伊万里市とはこれを補完する形がいいのではないか」と述べ、立地自治体並みは難しいとの認識を示した。 *4:http://qbiz.jp/article/28003/1/ (西日本新聞 2013年11月27日) 新電力で9000万円削減 北九州市教委が競争入札 北九州市教育委員会は26日、市内の小中学校と特別支援学校計193校の来年度の電力供給について一般競争入札を実施し、新電力(特定規模電気事業者)の丸紅(東京)が落札したと発表した。これまでは学校ごとに九州電力と随意契約していたが、新規事業者が参加しやすい新制度に変更。今回の落札で約9千万円の電気料金が削減できる見込みだという。新電力は電力の小売りが自由化されて登場し、工場の余剰電力などを安く売ることが可能だ。今回の入札は個別契約の煩雑さを避けるため193校を3グループに分けて実施。いずれも九電と新電力の計5社が参加し、すべて丸紅が落札した。落札額は計約3億9千万円。九電の見積額は約4億8千万円だったという。同市によると、九電が4月から実施している企業・団体向けの値上げ(平均11・94%)で、市所有の施設の電気料金は年間約5億円の負担増になるという。市は体育館や野球場など学校以外の市所有施設についてもグループ化しての一般競争入札を検討する。 *5:http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=313119&nwIW=1&nwVt=knd 【東電談合 2013年12月23日】 発送電分離は不可欠だ いったい何度、国民や利用者を裏切るのか。もはやあきれるしかない。東京電力発注の送電線工事をめぐる談合問題で、東電の社員が受注業者に助言したり、事前に契約の意向を伝えたりするなど談合を容認、助長していた実態が公正取引委員会の調べで分かった。受注業者間の話し合いなどを主導していたのも関連2社だった。外形的にはグループぐるみの構図である。談合によって不当につり上げられた工事代金は結果的に電気料金に転嫁された可能性がある。早期の全容解明と再発防止の徹底を求める。東電は本来、必要のないしわ寄せを幾重にも国民、利用者に及ぼしている自覚があるのだろうか。原発事故の被害に加え、昨年9月には家庭向けで平均8・46%の電気料金値上げを実施。賠償や除染費用の原資として国が貸し付ける巨額の「無利子」融資も返済が滞れば、さらなる国民の負担になりかねない。こうした流れからも東電が経営合理化に努めなければならないのは当然なのだが、社員が不法行為に手を貸していた。東電は昨年1月、発注方法を随意契約から値引き率や見積価格で業者に競わせる手法に変更したものの、ポーズにすぎなかったわけだ。複数の担当社員がメールで「きれいに数字が並んだら談合がばればれ」といった助言のほか、「A社に取らせたい。うまく調整する」と「天の声」を下したケースも判明した。受注業者、特に関連2社には多数の東電OBが再就職しており、うち7人が直接担当者として談合に参加していたという。公取委が業者側に立ち入り検査に入ったことし3月までの1年余りに、違反が認定された工事の発注総額は約150億円に上る。価格の高止まりは明らかで、立ち入り後は4割も安くなった工事があった。こうした実態をみれば、電力システムのインフラにあたる送配電部門と収益事業である発電部門とを切り離す「発送電分離」の必要性を疑う余地は全くない。3段階で進められる電力改革で、発送電分離は18~20年をめどに実施する方向性は決まったとはいえ、成立した改正電気事業法では付則に盛り込まれたにすぎない。改革が骨抜きにされないよう、利用者である国民がしっかりとチェックしていく必要がある。
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2013,12,25, Wednesday
辺野古とその周囲の海 (1)「アメとムチ」が時代錯誤というのは、本当である *1に書かれているように、「日本政府は14年度の沖縄振興予算を3460億円とする方針だが、仲井真知事が辺野古の埋め立てを承認しないなら、2014年度予算で沖縄の交付金を取り消す」というのは、全く沖縄を馬鹿にした発言である。何故なら、他県も交付金や必要な補助金はもらっているからだ。 また、「沖縄は基地補助金や基地関係収入に依存している」というのも誤りである。沖縄は、観光地としては、既に世界でも有数のダイバーのメッカであり、海底資源も豊富なので、まともな産業振興を行えば、国から同情予算をもらうどころか、堂々たる日本のエンジンになれるだろう。 (2)アメの古さと選挙の構図 *2-1に書かれているように、「安倍首相が仲井真知事と会談し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向けて、公有水面の埋め立てを承認するよう要請する」とのことである。また、*2-2に書かれているように、「第5次沖縄振興計画(2012~21年度)の実施期間の沖縄振興予算を、毎年3000億円台にする」とのことだが、これも金額ありきで内容のない予算であり、国民の血税を、そのような無駄遣いに使ってもらいたくないと思う。 そして、この予算を使って沖縄各地で土木工事を行い、埋め立てたり、コンクリートで固めたり、テトラポットを積み上げたりすれば、金の無駄遣いであるだけでなく、えもいわれぬ美しい自然という沖縄の観光資源を大きく劣化させて回復不能にする。また、この金で潤った土木建築会社が自民党を支持して選挙で自民党が勝利するという構図は、国民の意識の進歩を無視した、あまりにも古いシナリオだ。沖縄の土木建築会社も、無駄な仕事をする暇があったら、東北復興の手伝いに行くべきだろう。 (3)仲井真知事の苦しさはわかるため、全国紙も沖縄に協力して欲しい *3に書かれているように、仲井真知事は検査入院してしまったが、一人で首相や日本政府を相手に闘わなければならないのだから、そうなる気持ちもわかる。何故なら、徹底して闘えば、株主として東電の合理化を主張した東京都の猪瀬前知事のように、たいしたこともない埃を見つけ出して叩かれ、辞職に追い込まれたり、どうしても何もなければ殺されたりするからである。誰だって、「ぬちどぅ宝」だ。 そのため、全国紙も、*5で信濃毎日新聞が行っているようにバックアップして欲しい。私自身は、このブログの左のカテゴリー「普天間基地問題」に何度も記載しているように、よく検討すれば、辺野古埋め立てより賢い方法がいくらでもあると考えている。 (4)後世に誇れる歴史的英断とは、どういう判断か まさに*4に書かれているとおり、仲井真知事は、選挙公約、県の基地・環境政策との整合性、法律要件、戦後68年間もの基地過重負担などを考慮して、歴史の批判に耐え得る「不承認」の英断を下して「県外移設」を主張すべきであり、それが歴史的英断になるだろう。その後のまともな沖縄県振興や、他の場所での基地負担は、その気になればどうにでもなるからである。 慶良間諸島と海 *1:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-217041-storytopic-11.html (琉球新報社説 2013年12月23日) 米研究員“指南” 「アメとムチ」は時代錯誤 あからさまな脅迫であり、時代錯誤も甚だしい発言である。米軍普天間飛行場辺野古移設に関し、米国の保守系シンクタンクの上席研究員が、仲井真弘多知事が埋め立てを承認しないのなら、日本政府は「2014年度予算で沖縄の交付金を取り消すべきだ。そうすれば沖縄は経済的苦境に陥るだろう」と論評した。米政府の政策決定に影響力のあるシンクタンク研究員の発言だ。研究員は自らの“指南”が日本政府の沖縄対策に反映されているとの認識も示しており、日米政府一体で沖縄懐柔を図る構図が浮かぶ。政府は14年度の沖縄振興関係予算について、概算要求より52億円増の3460億円とする方針だ。埋め立て承認を促す狙いは明らかだが、不承認なら予算を見直すというのなら、重大な問題だ。政府が予算で配慮を強調する那覇空港第2滑走路増設や科学技術大学院大学の整備拡充などは、何も沖縄県民のためだけの事業ではない。国の施策として当然取り組むべき事業であり、その予算の充実を沖縄県民がことさらありがたがる筋合いのものではない。再三指摘しているが、沖縄が基地負担の一方で国の補助金に過度に依存しているかのような認識も誤りだ。人口1人当たりの依存財源額は、沖縄は全国18位の31・5万円で、財政力が近い類似9県の平均41・2万円と比べて低い。 基地関係収入が県民所得に占める割合も、1972年の日本復帰時の15・5%から2009年は5・2%にまで下がっている。基地に依存するより返還させた方が経済効果が高いことは、北谷町のハンビータウンなどを見ても明らかだ。振興策をちらつかせば、沖縄は、最後は言うことを聞く。そのような差別と偏見と誤解に基づく「アメとムチ」の懐柔策はもう沖縄には通用しない。植民地政策まがいの恫喝(どうかつ)は許されない。振興策を強調するのは、沖縄の強固な異議申し立てを前にした日米両政府の焦りの表れとも言えよう。ただ一方で、振興策や基地負担軽減を条件に辺野古埋め立てを承認するかのような印象を仲井真知事が与えているのも否定はできない。相手を付け込ませる思わせぶりな対応はもう取るべきではない。仲井真知事、そして県民は毅然(きぜん)とした態度で圧力をはねのけ、沖縄の未来に責任を持つべきだ。 *2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013122401002568.html (東京新聞 2013年12月24日) 首相、沖縄知事に埋め立て要請へ 25日普天間移設で会談 安倍晋三首相は25日午後、沖縄県の仲井真弘多知事と会談し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向け、公有水面の埋め立てを承認するよう要請する。沖縄振興予算の拡充や米軍基地負担の軽減策を説明し、理解を求める考えだ。仲井真氏はこれを受け、埋め立ての可否を週内にも判断する。1996年に日米両政府が返還合意した普天間飛行場の移設問題は重大な局面を迎える。仲井真氏は24日、首相が沖縄振興予算を、毎年度3千億円台確保する方針を表明したことを受け「心から感謝申し上げる」と歓迎するコメントを発表した。 *2-2:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2401H_U3A221C1EB2000/ (日経新聞 2013/12/24) 首相、沖縄振興「21年度まで年3000億円台」 知事と25日会談 安倍晋三首相は24日の閣議で、第5次沖縄振興計画(2012~21年度)の実施期間の沖縄振興予算を、毎年3000億円台にすると表明した。沖縄県宜野湾市の米軍普天間基地の同県名護市辺野古移設に理解を得るため、手厚い支援で沖縄に配慮する姿勢を示したものだ。25日午後、仲井真弘多知事と会談する。首相は「沖縄振興の取り組みを強化するため毎年3000億円台を確保する」と述べた。菅義偉官房長官は閣議後の記者会見で、首相と仲井真知事の会談が25日午後になると発表。沖縄振興や基地負担の軽減を念頭に「政府としての責任でできる限りのことをすべてやりたい」と強調した。政府の立場を改めて伝え、辺野古沿岸部の埋め立てについて年内の承認を引き出したい考えだ。沖縄振興費を巡っては、政府は13年度当初予算で3001億円、14年度予算案で3460億円を計上し、2年連続で3000億円を上回った。 *3:http://digital.asahi.com/articles/DA2S10896007.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2013年12月24日) 沖縄知事、週内にも判断 辺野古問題、負担軽減見極め 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設に伴う名護市辺野古の埋め立て申請への対応について、仲井真弘多知事は23日、県幹部と詰めの協議を行った。県が求めた負担軽減策に対する安倍政権の回答を見極めたうえで、承認するかどうか週内にも判断する構えで、移設問題は山場を迎えている。 仲井真氏が検査入院している東京都内の病院に、県幹部を集めた協議は約2時間に及んだ。出席者によると、協議では、当銘健一郎・土木建築部長が公有水面埋立法にもとづく審査結果を報告。そのうえで、承認、不承認それぞれの場合に起こりうる問題点を整理した。当銘氏は、同法が判断基準とする6項目のうち「環境保全などに十分配慮されているか」については、「ジュゴンや特定外来生物の問題などがあり、難しい」と説明。法に適合するかどうかの結論を示さなかった。 23日の県幹部との協議で、仲井真氏は17日の沖縄政策協議会で政権に申し入れた「普天間の5年以内の運用停止」「牧港補給地区(浦添市)の7年以内の全面返還」への対応を特に気にしていたという。いずれも負担軽減のために「日米地位協定の改定」「オスプレイ12機程度の県外配備」とともに求めた内容だ。県側の要望に対し、安倍政権は「やれることはすべてやる」(菅義偉官房長官)ことで、仲井真氏の承認を得たい考えだ。来年度予算案の沖縄振興予算では、概算要求を上回る金額を計上する方針。負担軽減にも前向きに取り組む姿勢をアピールする。 普天間の早期運用停止などについても、岸田文雄外相が22日のNHK番組で「あらゆる可能性を検討しなければならない」と発言。小野寺五典防衛相も21日のBS朝日の番組で、日米地位協定の改定をめぐり「米国側と交渉することは大切だ」と述べるなど、そろって負担軽減への「意欲」を強調した。ただ、これらの課題の解決には米国の同意が不可欠だが、米側は否定的で実現の見通しは立っていない。 *4:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-217083-storytopic-11.html (琉球新報社説 2013年12月24日) 埋め立て知事判断 後世に誇れる歴史的英断を 仲井真弘多知事は、選挙公約、県の基地・環境政策との整合性、法律要件に適合するか否か、戦後68年間も米軍基地の過重負担に耐えてきた県民の苦しみなどを最大限考慮し、歴史の批判に耐え得る「不承認」の英断を下してほしい。政府が知事に求めた普天間飛行場の名護市辺野古移設計画に伴う埋め立て申請への判断のことだ。 県が先に政府に行った沖縄振興と基地負担軽減に関する要請のうち、特に「普天間飛行場の5年以内の運用停止、早期返還」「日米地位協定の条項の追加等、改定」「オスプレイの12機程度を県外の拠点に配備」の3点は、従来の県の政策や県民意思と相いれず、要請の民主的正統性に疑義がある。知事は2期目の選挙公約で普天間飛行場について「県外移設」を約束した。「県外移設」を今回の要請書に明記しなかった理由、真意は何か、公約を変更するのか、県民に対し説明を尽くしていない。県と県内市町村はかねて、国にオスプレイ配備撤回と地位協定の抜本改定を求めてきた。もし知事の独断で常駐配備容認、協定の部分改定に主張を変更するなら市町村長や議会、県民への背信となる。今年1月にオスプレイ配備に反対する県民大会実行委員会、県議会、県下41市町村の首長、議会の連名で首相に提出した建白書も、オスプレイ全機の配備撤回、普天間基地の閉鎖・撤去と県内移設断念を求めた。これが最大公約数の県民意思だ。「県民の強い思い」をねじ曲げて、政府に誤ったメッセージを送ってはならない。 在沖海兵隊の国外分散推進に伴う辺野古移設合意の事実上の破綻、森本敏前防衛相も認めた県内移設の軍事合理性の欠如、辺野古アセスのずさんさなどの観点からも「不承認」こそ合理的だ。防衛省は辺野古の軍港機能拡充を県民に隠し、米国防総省に対してはジュゴン関連の膨大な環境調査情報を削除したアセス資料を送付していた。県民を欺き、政権上層部、国会への説明を怠った疑いが拭えない。知事は防衛省の強権的かつ詐欺的手法に加担せず、後世に誇れる決断を下してほしい。国の申請が公有水面埋め立て法の要件を満たしているか厳格に判断すべきだ。曖昧な点があれば、来年1月の名護市長選への直接的影響を避ける観点から、選挙終了まで知事判断を留保するのも選択肢だ。 *5:http://www.shinmai.co.jp/news/20131223/KT131221ETI090005000.php (信濃毎日新聞 2013年12月23日) 沖縄県知事 県外移設の公約は重い 沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題がヤマ場を迎えた。仲井真弘多知事が同県名護市辺野古への移設に向けた政府の埋め立て申請を認めるかどうか、近く判断するとの見方が強まっている。 知事は3年前の選挙で県外移設を公約に掲げた。今月上旬の県議会本会議の場でも「県民との約束であり、全力で実現に取り組む」と、立場を変える考えがないことを示している。沖縄県民の多くが県外移設を求めている。申請を認めれば民意をないがしろにする行為と受け取られかねない。日米両政府と沖縄県民の亀裂も深まるだろう。知事の決断に目を凝らしたい。安倍晋三政権の沖縄への姿勢はごり押しにしか見えない。 自民党沖縄県連は昨年の衆院選や今年の参院選でも「県外移設」の方針を曲げなかった。米軍による犯罪や騒音に長年悩まされ、基地負担の軽減を求めてきた県民の声を尊重すれば当然である。来年1月には名護市長選が控えている。安倍政権は移設反対の現職が勝てば日米合意が頓挫するとの焦りも加わり、早期決着に向けた説得工作を加速させた。11月には県連幹部を上京させて「党本部の方針に従うべきだ」と要請。沖縄選出の国会議員にも辺野古容認を迫った。結局、県外移設にこだわれば普天間が固定化する、基地負担の軽減にならない―などの理屈で公約はほごにされた。 一方、政府は沖縄振興策の拡充や在沖縄米軍の訓練移転をちらつかせてきた。アメとムチで移設を実現する構えだ。沖縄に対する包囲網が狭まっていく中、安倍首相と仲井真知事が先日都内で話し合った。知事は首相に▽普天間飛行場の5年以内の運用停止▽米軍基地の管理・運用を定めた日米地位協定の改定―などを求めた。知事はその後、政府の埋め立て申請の判断について「年内に間に合うかもしれない」と語っている。 米側と交渉する必要もあり、政府にとっては高いハードルだが、見方によっては「条件闘争」をしているようにも受け取れる。なぜ普天間の閉鎖ではなく、移設なのか。新たな基地の建設は日米両政府が目指す負担軽減と逆行することなのに、双方とも必要だと強調するばかりで説得力のある説明をしてこなかった。理解を得られないのは当然だ。新しい基地が本当に要るのか、検証し直す作業こそ急ぐべきだ。 PS(2013.12.26追加):「『沖縄優遇』は印象操作にすぎず、戦後通算で見ると沖縄への1人当たり財政援助額は全国平均の6割で、むしろ『冷遇』だった。復帰後の沖縄への高率補助は戦中戦後の『償い』の意味があったが、今や露骨に基地押し付けの材料だ」等の分析を、きょう見つけたが、こういう分析は地元紙しか行わないと思うので、*6として追加しておく。 *6:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-217117-storytopic-11.html (琉球新報社説 2013年12月25日) 14年度予算 「厚遇」は印象操作だ 基地強要の正当化やめよ 2014年度沖縄関係予算が前年度比15・3%増の3460億円で決まった。増額となったのはともかく、政府が「厚遇」を強調する点に強い違和感を抱く。政府は躍起になって「沖縄に対し他の都道府県ではあり得ないほど特別に国費をつぎこんでいる」というイメージを振りまいている。だがそれは事実と異なる。むしろ他府県にはあり得ない水増しやごまかしがまかり通っている。政府はこれで基地強要を正当化したつもりだろうが、不当な印象操作は直ちにやめてもらいたい。 ●数ある「かさ上げ」 「水増し」「ごまかし」の最たるものは那覇空港の整備予算だ。那覇空港は1990年代の段階で既に、2010年代半ばでの「ボトルネック」が懸念されていた。つまり、空港利用の需要が高まり、滑走路1本ではさばききれないという見立てだ。滑走路増設の必要性は全国でも福岡空港に次ぐ二番手の位置付けだった。福岡は既に整備され、那覇に着手するのは自然な流れのはずだ。那覇は国管理の空港だから整備は政府の空港整備勘定(旧空港整備特別会計)で計上すべきだ。だが政府はこれを沖縄関係予算に組み込んだ。県の注文で辛うじて一括交付金と別枠になったとはいえ、沖縄以外なら国の予算となるところ、さも沖縄のため特別に計上したかのように装うのは不当な「演出」だ。他の沖縄関係事業にしわ寄せも生じたはずである。 沖縄関係予算を「かさ上げ」しているのは沖縄科学技術大学院大学も同様だ。2001年に構想が浮上した際は、この経費捻出のため通常の沖縄関係予算が削られるのを警戒する声があった。政府はその点をうやむやにし、一時は文部科学省予算で一部賄うと説明したが、雲散霧消した。今や完全に沖縄関係予算だ。本来、入るべきでないこれらを除くと、14年度の沖縄関係予算は2930億円だ。99年度は3282億円だから15年で1割減った。国全体ではこの間、逆に1割以上増えている。財政学が専門の池宮城秀正・明治大教授によると、沖縄の2011年度1人当たり依存財源(国からの財政移転)額は32万円で全国18位。類似9県平均41万円の8割弱だ。「沖縄優遇」は印象操作にすぎない。戦後通算で見ると沖縄への1人当たり財政援助額は全国平均の6割にすぎず、むしろ「冷遇」だった。復帰後の沖縄への高率補助は戦中戦後の「償い」の意味があったが、今や露骨に基地押し付けの材料だ。どこまで沖縄の尊厳を踏みにじれば気が済むのだろうか。 ●程遠い自由裁量 確かに沖縄振興一括交付金制度は沖縄予算だけにある制度である。だがこれはカネ目当てというより予算の効率化、財政の地方分権論として出た構想だ。地方の実需にあった予算編成とするため、省庁ごとのひも付き補助金でなく、地方の自由裁量で支出できるようにするのが本来の狙いだ。しかし、制約が多く、自由裁量とは程遠いのが現状だ。沖縄の振興には人材育成が欠かせないのに、例えば教員の加配には使えない。人件費支出を伴うのは予算の単年度主義に反するからという理由のようだが、制約は本来の趣旨に反する。例えば無償の奨学金の大幅創設、留学の大幅増に向けた大胆な支援策などを可能とすべきだ。県は15年度以降、裁量権を広げるべく国を説得してほしい。 全国予算を見ても解せない点は多々ある。歳出削減に向けた切り込みどころか、各省庁の要求をほぼ受け入れた。増税は財政再建が目的のはずが、従来型の公共事業増加に振り向けられた感がある。税制改正の方向も疑問だ。低所得者に負担増を強いる一方、大企業への優遇策が目立つ。「強きを助け、弱きをくじく」構図だ。防衛費も増えた。「強権国家」づくりに税金を使うのが安倍政権らしい。予算編成の「哲学」が正しかったのか、疑問は尽きない。 PS(2013.12.28追加):2013年12月27日に、仲井真弘多知事が名護市辺野古沿岸部の埋め立て申請を承認したことについて、*7の地元紙の記事を紹介しておく。なお、私も、ここで基地問題を争点として議論を尽くし、知事選を行うのが、沖縄が覚悟を持って自らの針路を決めるスタートになると思う。 2013年12月27日、28日 沖縄タイムス 東京新聞 佐賀新聞 佐賀新聞 *7:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=59679 (沖縄タイムス社説 2013年12月28日) [知事埋め立て承認] 辞職し県民に信を問え 政治家の命綱である「選挙公約」をかなぐり捨てた姿というほかない。だが、本人はそうは思っていない。埋め立ては承認したが、「県外移設」の公約は変えていない、という。県外移設を実現するために、政府から何の担保も取っていないのに、である。こんな説明で県民の理解が得られるとほんとに思っているのだろうか。政治家の公約は有権者との契約である。知事はもはや、県民の負託を受けた政治家としての資格を自ら放棄したと言わざるを得ない。米軍普天間飛行場の移設に向けて国が県に提出していた名護市辺野古沿岸部の埋め立て申請を、仲井真弘多知事は27日承認した。辺野古移設を認めたということだ。知事選で県外移設の公約に1票を託した有権者への裏切り行為である。知事は記者会見で、辺野古移設を承認したことと、県外移設の公約との矛盾を問われると、県外移設の公約を変えていない、と声を荒らげ、説明を拒否した。17日に首相官邸で開かれた沖縄政策協議会以来、知事に決定的に欠けているのは県民への説明責任だ。それは27日の記者会見でも果たすことがなかった。記者とのやりとりはわずか30分余り。県の方から一方的に打ち切った。 知事は、県外移設の公約と、辺野古移設は併存するという。その理屈が分からない。辺野古移設は時間がかかるため、5年以内に県外移設するのが「普天間の5年以内の運用停止」の意味のようだ。だが、過去の経緯を見ても分かるように、本土で具体的な地名が出るたびに地元から反対運動が起きてみんな頓挫しているのが現状だ。知事が根拠としているのが、安倍晋三首相との会談で、首相が危険性除去は最大の課題であるとの「認識を共有している」との表明である。沖縄の基地問題で、これまでなされた閣議決定、総理大臣談話でさえほごにされているのにである。首相の表明が「口約束」にすぎないことは、知事本人が一番知っているはずだ。 事務レベルで最後まで可否判断を保留していた環境保全については「現時点で取り得ると考えられる措置等が講じられている」として基準に適合していると判断した。本当にそうだろうか。ジュゴンやウミガメの保護、投入土砂に混入する恐れのある特定外来生物は不確定要素が大きい。県は、留意事項として国に専門家や有識者で構成される環境監視等委員会(仮称)を設置することを求めているが、実効性があるか不透明だ。承認ありき、としか見えない。本社が実施した直近の2種類の世論調査では「承認するべきでない」が64~72%に上り、「承認するべきだ」はいずれも約22%にとどまっている。知事と有権者の信頼関係は破綻したといっていい。知事の言葉が信を失っては業務を遂行するのは不可能だ。 仲井真知事は、1995年の米兵による暴行事件を受け、大田昌秀県政が米軍用地強制使用問題で代理署名の拒否をめぐり政府と対峙していたころの副知事を務めた。当時を知る関係者によると、「なんで県が中央と事を構えるのか」と言い、副知事として応諾の文案をつくる役回りを演じたという。2006年には当時の政府案を拒んでいた稲嶺恵一知事に「政府と事を構えるのはいかがなものか」といさめた。仲井真知事は旧通産省の官僚出身で、官僚体質がしみ込んでいる。その最も悪い部分が表れたのがこの日の記者会見だった。知事は記者会見を県庁で開くことができなかった。警備上の理由から、知事公舎に移した。警察に知事公舎を守られながら開かざるを得なかった記者会見が、知事の埋め立て承認の正当性に疑問符が付くことを象徴している。知事は会見で名護市民に対し何の言及もしなかった。17年間も地域を分断された市民の苦悩に思いをいたしているようには見えなかった。 多くの県民は「平和的生存権」「環境権」「人格権」「公平・公正な基地負担」をかけて辺野古移設問題に向き合ってきた。その主張の正当性は高まるばかりだ。
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2013,12,23, Monday
(1)ふるさと納税制度の意味
「ふるさと納税制度」は、私が提唱して作られた制度だ。その意図は、「ふるさとで教育を受け、老親はふるさとで医療・介護などのケアを受けているが、生産年齢人口の人は、都会や工業地域で働き、そこで住民税を支払っているため、地方財政の支出と収入に存在する矛盾を修正するためのものである。 そのため、ふるさと納税制度を使って寄付する地域は、自分が教育を受けた地域や老親が住んでいる地域というのが普通だが、ふるさとを複数持つ人や特別の思い入れを持つ地域のある人もおり、それらのどこへでも寄付することができる制度になったのはよいことだと思っている。 しかし、ふるさと納税制度の意図からすれば、控除は、国税とは関係なく住民税で行うべきであり、ふるさと納税した金額は、全額、居住している地域の住民税から差し引けるのが合理的だと思うが、これは、一人負けになる東京都の反対で実現しなかった。 (2)制度の不十分さと自治体の努力 *2、*3のように、「ふるさと納税」すれば、所得税、個人住民税の確定申告をすることによって、一定限度の寄付金控除が受けられるものの、100%は控除できない。*2で説明されているような「限度額計算」は、税法でよく使われるものだが、合理的な根拠があるわけではなく、納税者を不利にし、やたら計算を複雑化しているため、「ふるさと納税」は、もっと簡単な手続きと限度計算(例えば、住民税所得比例部分の70%以上は居住する自治体に納税するなど)で、全額を控除できるようにすべきだ。 しかし、現在は、納税者に煩雑さと不利益があるため、*1のように、「ふるさと納税」による寄付を受けたい自治体は、納税者の不利益部分の補填の為に、特産品などを贈るようになったわけである。自治体が特産品などの特典を与えたり、賛同を呼ぶ寄付金の使い道を提示したりして「ふるさと納税」による寄付金を集めるのは、全く悪いことではない。そして、ふるさとの再生やまちづくり、福祉の充実など、寄付する人に魅力のある使い道を提示したり、ふるさとの産品を送ったり、寄付の集め方を工夫したりした結果、寄付金の額に差が生まれるのは当然である。 *1:http://qbiz.jp/article/29089/1/ (西日本新聞 2013年12月16日) ふるさと納税格差拡大 導入5年−福岡市急増、長崎県苦戦 出身地や応援したい自治体に寄付をする「ふるさと納税」の導入から5年が過ぎた。寄付の使い道への賛同や、返礼に贈る特産品などの特典の効果で、爆発的に寄付額が増えるケースもあり、福岡県と福岡、北九州両市では本年度、既に過去の年間最高額を更新した。一方で自治体間の特典競争は過熱しており、寄付額に格差が生まれる傾向もうかがえる。 福岡市は4〜10月の寄付額が前年度(171万円)の40倍以上の7560万円となった。わずか7カ月で過去最高だった2010年度(710万円)の10倍を超えた要因として、寄付金の使い道に、市立こども病院の患者家族向け宿泊施設の建設支援を加えたことが挙げられる。市によると、宿泊施設建設を支援する寄付を受け付け始めた5月以降、賛同者が続出。5千万円の大口も含め、寄付全体の97・4%が施設建設向けに寄せられた。「こんなに集まるとは想定していなかった。使途に『目玉』があると寄付が増えるようだ」。市の担当者は目を丸くする。返礼の特典充実が、寄付を呼び込むことにつながった例も目立つ。福岡県は1万円以上寄付した人に県産イチゴ「あまおう」などを贈り始めた12年度、寄付額が過去最高を記録。さらに本年度は、10月時点で12年度の倍近い379万円に達している。担当者は「東京の県人会などで寄付を呼び掛け、特典の効果が浸透してきた」と言う。11年度から寄付目的に応じて水産加工品などを贈っていた佐賀県は、本年度に入ってテレビの全国放送で紹介された影響もあり、寄付件数が過去最多の545件になった。寄付額も過去最高となる勢いという。総務省が4〜6月に行った調査では、特産品などを贈っている自治体は932団体で全体の52%。少数派となった特典のない自治体の寄付集めは苦戦気味だ。 家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」の被害を受けた宮崎県は10年度、全国から寄付の申し出が殺到し、1億5千万円以上を集めたが、本年度はまだ270万円。10月までの寄付が135万円にとどまる長崎県は、特産品の提供を検討している。ただ、特典のない自治体の中にも「特産品を目当てに寄付をする人もいる。特典の豪華さで自治体競争をエスカレートさせても意味がない」(熊本市)と特典贈呈に否定的な声もある。国も競争過熱にブレーキをかけ始めた。総務省は「特典の提供が行き過ぎると、ふるさとへの貢献などを目的にした制度の趣旨から外れる」と警告。9月に「良識ある対応」を促す文書を全国の自治体に送付している。 ◇九州各県 返礼多様、使途も独自色 九州では、ふるさと納税の返礼として農水産物などを贈る自治体が目立つ。豪華なのは佐賀県玄海町。本年度から1口10万円以上の寄付者に、1年を通して毎月、黒毛和牛やメロンなどを贈る「プレミアムコース」を設けた。4月から10月末までの寄付額は、既に2012年度の10倍を超す4362万円に達した。特産品ではなく、工夫を凝らした返礼をしている自治体も。鹿児島県は約60の文化・観光施設で入館料割引などを受けられる「かごしま応援者証」を贈呈する。佐賀県は寄付者が選べる返礼の一つに、県に関する豆知識を記した「トリビア入りトイレットペーパー」を用意した。寄付の使い道でも独自色を競う。熊本県は11月、県のキャラクター「くまモン」の応援のための寄付を新設。全国のくまモンファンの賛同を期待する。西アフリカの伝統打楽器「ジャンベ」の普及促進を掲げたのは鹿児島県三島村。世界的奏者との交流を機に、ジャンベを核とした村づくりを進めており「ジャンベのリズムに乗せて島の情報を発信したい」としている。 ■ふるさと納税 個人が任意の自治体に2千円を超えて寄付すれば、住民税と所得税から一定の控除を受けられる制度。大都市と地方の税収格差を是正する狙いがあり、地方税法の改正で2008年に導入された。寄付する「ふるさと」は出身地に限らず自由に指定できる。年間70億円前後で推移してきたが、12年度は東日本大震災の被災地への義援金目的で急増し、649億円に達した。 *2:http://www.furusato-nouzei.jp/guide/simulator.html ふるさと納税の仕組み 寄付金の控除として所得税、個人住民税は確定申告をすることによって、それぞれ所得控除及び税額控除が一定の限度の中で受けられます。こちらから、自治体に寄付した場合の税控除額を試算できますので、ご参照ください。また、目安となる「ふるさと納税による税金の軽減額早見表」をダウンロードいただけます。 1 寄付金の控除対象金額所得税では、自治体以外への控除対象寄付と合わせて、所得金額の40%相当額、住民税では自治体、所在地の都道府県共同募金会及び所在地の日本赤十字社支部への寄付金の合計額で所得金額の30%相当額がそれぞれ控除対象の限度となります。 2 所得税から控除寄付金控除額(寄付した金額-2,000円)は扶養控除、社会保険料控除及び生命保険料控除等と同様に総所得金額から控除されます。 3 住民税から控除寄付金控除額(寄付した金額-5,000円)は算出した住民額から次の(1)、(2)の合計額が控除されます。 (1)= 寄付金控除額の10% (2)= 寄付金控除額×(90%-所得税の税率)・・・この金額は住民税の10%が限度 *3:http://www.furusato-nouzei.jp/guide/pdf/hayami.pdf ふるさと納税による税金の軽減額早見表(目安額) 1.この表は、総所得金額毎に寄付金額別の住民税と所得税の目安軽減額(概算額)を表したものです。 2.扶養の状況は、夫婦と子供2人で試算しています。 3.百円未満の端数は、切り捨てて表しています。 総所得額 寄付額50,000円の場合 寄付額100,000円の場合 500万円の場合 控除合計(割合) 38,200円(76.4%) 48,200円(48.2%) 700万円の場合 控除合計(割合) 45,600円(91.2%) 75,500円(75.5%) 1000万円の場合 控除合計(割合) 45,600円(91.2%) 95,600円(95.6%)
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2013,12,19, Thursday
白村江 邪馬台国の場所 (1)「白村江の闘い」の敗戦とその後の話 玄海原発の近くは、*1のように、日本最古で最大の国家機密である「白村江の闘い」のために、中大兄皇子が百済に2万7千人の援軍を船出させた場所である。ここは、壱岐、対馬を経由すれば、古代の帆船で、朝鮮半島に最も安全かつ最短距離で航海できた場所だからであろう。福岡県・佐賀県には、それを示す神社や逸話が多い。 (2)日本の古代史では、真実が扱われていない しかし、この事実は、日本の高校歴史教科書では殆ど触れられておらず、韓国の高校歴史教科書(日本語訳有)では、詳しく書かれている。従って、日本人は知らないが、韓国人には常識だ。これは、特定秘密(機密)によって、1300年以上も、日本史の真実が曲げられている最大の事例だろう。 なお、*1に書かれているように、「白村江の闘い」の後、百済は滅亡し、新羅が朝鮮半島を統一して、倭国(日本)に亡命した百済人は、いろいろな闘いを経た後、日本の中枢に入った。しかし、その様子も日本史では正確に扱われていないため、日本の奈良時代より前の正確な史実については、日本人は知らないと言っても過言ではない。 (3)そこを明らかにすると、古代東アジアでの倭(日本)の位置づけがわかる *2に書かれているように、現在の博多駅と同じ場所に、1300年前も「駅」があったそうだ。また、玄海原発の近く(唐津市、玄海町、松浦郡)は、日本の弥生時代を記した魏志倭人伝によれば、末盧國(まつらこく:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%AB%E3%82%89%E5%9B%BD)であり、糸島は伊都国(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E9%83%BD%E5%9B%BD)であって、長くは書かないが、邪馬台国(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%82%AA%E9%A6%AC%E5%8F%B0%E5%9B%BD)は大宰府の近くである。そのため、玄海原発の立地周辺地域は、歴史の真実が明らかになれば、日本史の中でも重要な地域であり、原発などなくても、観光地として整備して成り立たせることができると考える。 *1:http://www.asuka-tobira.com/hakusonkou/hakusonkou.htm 白村江の戦い(要点) 倭国の援軍 ●663年 ①3月,中大兄皇子は百済に2万7千人の兵を3軍編成で送った。将軍は上毛野君稚子(かみつけののきみわかこ)、巨勢神前臣訳語(こせのかんざきのおみおさ)、阿倍引田臣比羅夫(あべのひけたのおみひらふ)。援軍は博多湾から壱岐・対馬を越え,朝鮮半島へ向かった。いつも海が穏やかで天気がよいとは限らない。時には荒れ,また,海の流れに逆らって進まねばならない。 ②8月28日:白村江(錦江-クムガン河口)で,唐軍と百済・倭国連合軍が激突。倭国軍は唐の水軍によってはさみうちにされ,軍船400隻は燃え上がり,大敗してしまう。(歴史上最初で最大の敗戦となった)。百済王(豊璋)は逃亡してしまう。 ③9月7日:百済が陥落し永遠に滅亡 ●668年 唐・新羅連合軍は高句麗も滅ぼした。その後,唐と新羅が対立。 ●672年 壬申の乱:日本古代最大の内乱戦争で、天智天皇の太子・大友皇子に対し、皇弟・大海人皇子(後の天武天皇)が地方豪族を味方に付けて反旗をひるがえしたとされているもので、大海人皇子が勝利した。 ●676年 新羅によって、朝鮮半島統一 <百済人は倭国(日本)へ> 唐との戦いで敗れ,祖国をなくした百済人たちは倭国に亡命した。滋賀県蒲生郡は百済人たちが多く住み着いたところ。石塔寺の三重塔は,百済の都,扶余(ふよ)にあった定林寺の五重塔の様式と同じといわれる。滅亡した百済の王族たちは奈良地方に逃れたが,その後の動乱から逃れるため再び九州地方を目指して船出した。一行は瀬戸内海で時化(しけ)にあい,九州東海岸の日向市金ヶ浜と高鍋町蚊口浦に漂着した。そして,山間部に入り,父の禎嘉王(ていかおう)は宮崎県東臼杵郡美郷町に王子の福智王(ふくちおう)は宮崎県児湯郡木城町に移り住んだと言われている。(旧南郷村の「百済王伝説」より)。神門神社(宮崎県東臼杵郡美郷町)は718年(養老2年)創建されたと伝えられ、祭神として百済の禎嘉王が祀られている。この神社で行われる行事として「師走祭り」がある。禎嘉王とその王子が1年に1度再会する様子を再現したものという。禎嘉王の墓とされる南北10m,東西10mの円墳がある。 ●694年 飛鳥浄御原から藤原京(着工時期:676年)に遷都 ●710年 藤原京から平城京に遷都 *2:http://qbiz.jp/article/28503/1 (西日本新聞 2013年12月8日) 博多駅移転50年、1300年前も「ここ」にあった 石井幸孝氏(NPO法人 福岡城市民の会 理事長) 12月1日、福岡市・祇園にあった博多駅が現在のところに引っ越して50年がたった。一昨年の2011年、九州新幹線鹿児島ルートが完成して、鹿児島から青森までの新幹線列島大動脈が完成し、また新しい駅ビルもできた。博多駅は九州内各都市はもちろん、全国と鉄道で直結している。至近の博多港からは韓国・釜山に高速船ビートルが出るし、地下鉄で5分の福岡空港からは国内主要都市やアジア、世界とつながっている。 ■ ■ ■ 日本最初の法制国家誕生ともいえる大化の改新(646年)後、大和朝廷による律令国家では、最重要事項として全国に幹線道路網をつくった。奈良・京都を中心にして6方面に延びる「山陽道」、「東海道」、「東山道」などのほか、九州は「大宰府」を中心にした道路網「西海道」、合わせて「五畿七道」と呼ばれた。全国6300キロ(今の高速道路と同じくらいのキロ数)、道幅12メートルの直線道路という驚くべきスケールだった。都と、「遠の朝廷」(とうのみかど)と呼ばれた大宰府を結ぶ「山陽道」(九州内は大宰府道と呼ぶ)は、唯一の「大路」という最重要幹線だった。全国に当時の30里(約16キロ)毎に400ほどの「駅家」(うまや)を置き、ここに飼い慣らされた馬を、「大路」の場合には20頭ずつ置いて、公務出張の場合にはこれを乗り継いで移動した。大宰府から都まで6日くらいで飛ばした。馬は人間が歩く速さの5倍くらいで走るので、まさに高速道路だ。 ■ ■ ■ 奈良時代(710年〜)の初めには全国網がほぼ完成して平安時代にかけて使用され、万葉集などの古文書にも出てくる。平安時代半ばの法令ともいえる「延喜式」には、駅名などが詳細に載っている。驚くなかれ、現在の博多駅と同じところに1300年前の「駅」があったことになる。「美野駅」と記され「よしのえき」と呼ばれたらしい。近くに今も美野島という地名が残っている。もっと厳密に言うと、この「美野駅」はいまの博多駅ビルと交通センターの接するあたりに十字路があって、その隣接地に駅家の施設があったらしい。「五畿七道」のことを今の学者は「古代官道」と呼び、最近では歴史地理学と考古学でその実態がわかってきている。大宰府から水城東門経由「美野駅」に至り、博多港に至る直線道路と、水城西門経由鴻臚館に至る直線ルートがあった。外交・軍事・貿易の最重要地域なので、二本つまり二重系になっている。今の筑紫通りと高宮通りである。山王公園の南西の道からは、古代官道の遺跡が発掘調査されている。この2ルートと直交する道は、都から来た「山陽道」が柚須、二股瀬から美野駅経由住吉神社門前を通り、西門ルートと直交して早良平野の直線道を進み、糸島から唐津、壱岐・対馬に至り韓国(当時新羅)と対する。美野駅は都とつながり、さらに大宰府経由九州内各国(肥前、肥後、薩摩など)とはもとより、博多港からは海路中国(当時は隋・唐)、さらに遠くシルクロードにつながっていた。美野駅の役割は今の博多駅とまったく同じだ。たいへん重要な「駅」だったので、馬の管理や飼育の大規模な役所があったに違いない。今も近くに「馬番所」という字名も残っている。
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2013,12,17, Tuesday
*1より 鹿児島県川内原発周辺の人々 (1)原爆症の新認定基準は、科学的に正しいことが証明されているのか *1に記載されているように、厚生労働省は、内部被曝を考慮しないまま、原子爆弾被爆者医療分科会を開いて原爆症の新認定基準を決定した。*1によれば、「現行制度は、がんなど七つの疾病について爆心地から三・五キロ以内で直接被爆した人や、原爆投下後百時間以内に二キロ以内に入った人を認定してきたが、新基準では、心筋梗塞と甲状腺機能低下症、慢性肝炎・肝硬変については二・〇キロまで、白内障については一・五キロまでとし、一律に三・五キロと表現するのはやめ、現行の実質的な認定範囲を少し拡大して明確に線引きした」そうだ。厚生労働省には、医師の資格を持つ官僚もおり、「基準」を決める際には、当然、外部の論文やデータ、専門家の意見を参考にし、それを評価した筈である。 しかし、この「基準」の決め方は、「○○キロ以内」「百時間以内」というように、一見して、単にきりの良い数字で区切っただけで、科学的・実証的であるとはとうてい思えない。今決めたところから見ても、意図的で、ご都合主義であるように見える。 従って、厚生労働省が、もし、この「基準」が妥当だと主張するのなら、その根拠となった調査やデータを開示すべきだ。それを見て、これまでの「基準」及び「新基準」の妥当性について、現代の医学者、科学者が評価すれば、「基準」そのものの妥当性が検証できる。国民の生命・健康・人生に関わり、国民に守らせる「基準」は、その評価に耐えるだけの合理性があって初めて意味があるため、検証すべきである。 (2)厚生労働省は、公害の被害者をどう扱ってきたか *2のイタイイタイ病のケースでは、国の基準で公害病患者と認められないカドミウムによる腎臓障害の人に、三井金属が1人60万円の一時金を支払うことで問題解決とするそうだ。①人の一生の苦しみや人生の転換の対価がたった60万円であること ②45年も経過し、多くの被害者が死亡して対象者が減った後に問題決着すること に、私は疑問を感じる。そして、それが、国や厚生労働省の考える一人の人間の一生の価値だから、問題なのである。 また、*3のように、水俣病の認定基準も科学的でも実証的でもなく、認定患者を少なくするための認定基準が目立った。 そして、これは、フクシマのケースでも同じであるから、被害者になる人は、それにも気をつけなければならず、病気になった上に、大変なのである。 *1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013121702000117.html (東京新聞 2013年12月17日) 内部被ばく考慮ないまま 原爆症 新認定基準を決定 厚生労働省の原子爆弾被爆者医療分科会が十六日開かれ、がんや心筋梗塞など被爆者の病気を原爆症として認定する新基準が決まった。がん以外の疾病を認定する範囲はわずかに広がるが、内部被ばくについてはこれまで通りほとんど考慮しない。日本原水爆被害者団体協議会(被団協)のメンバーらは会見で「非常に残念。死ぬまで裁判を続けなければならない」と肩を落とし、「抜本的な改善が実現するまで、戦い続ける」と訴えた。 現行制度は、がんなど七つの疾病について爆心地から三・五キロ以内で直接被爆した人や、原爆投下後百時間以内に二キロ以内に入った人などを積極的に認定する。だが現実は、がん以外は原爆放射線の影響を厳しく問う「放射線起因性」を条件として強調し、ほとんどを却下。今年六月までの約三年間で心筋梗塞は16%、慢性肝炎・肝硬変は6%しか認めていない。 新基準では、心筋梗塞と甲状腺機能低下症、慢性肝炎・肝硬変については二・〇キロまで、白内障については一・五キロまでとした。一律に三・五キロと表現するのはやめ、現行の実質的な認定範囲を少し拡大して明確に線引きした。国は、放射線起因性を、主に直接被爆した時の線量でとらえ、その後、環境中に残った放射性物質による内部被ばくの影響はほとんどないという考え方で認定作業をしてきた。しかし、原爆投下後に広島、長崎市へ入った人にも被ばくの急性症状が出ており、却下された被爆者が各地で起こした集団訴訟では原爆症として認める判決が出ている。被爆者側は国に、放射線起因性を問う考え方をやめ、三・五キロ以内は七疾病とも原則として認定するよう求めてきた。集団訴訟の元原告団長で、新しく百八人が起こした「ノーモア・ヒバクシャ訴訟」でも原告団長になった山本英典さん(80)は「新基準で救われる人は少なく、被爆者を切り捨てるための新しい基準になりかねない。とても収まらない。死ぬまで裁判するしかない」と話した。 国が内部被ばくをほとんど認めようとしないことについて、田中熙巳事務局長は「福島第一原発事故の被害者や、外国の基準へ影響するのを恐れているのでは」と話した。新基準は次の認定会議から適用される。 *2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013121701001247.html (東京新聞 2013年12月17日) イタイイタイ病、全面解決へ 三井金属が一時金と謝罪 富山県・神通川流域で発生した四大公害病の一つ「イタイイタイ病」で、被害者らでつくる「神通川流域カドミウム被害団体連絡協議会」(被団協)と原因企業の三井金属(東京)は17日、全面解決に合意する文書への調印式を開く。イタイイタイ病の前段階の症状で、国の基準では公害病患者と認められないカドミウムによる腎臓障害を抱えている人に、三井金属が1人60万円の一時金を支払う。これとは別に被団協に解決金を支払い、謝罪。双方が問題決着と位置付ける。国が初めて公害病と認定してから45年を経てようやく合意に至る。 *3:http://digital.asahi.com/articles/TKY201312120113.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2013年12月12日) 水俣病、認定基準の「統一を」 熊本県知事が国に求める 熊本県の蒲島郁夫知事は12日、環境省を訪れて谷津龍太郎事務次官と面会し、水俣病の認定基準に関し、国の公害健康被害補償不服審査会が示した認定のあり方と考え方を統一するよう求めた。蒲島知事は、同省の現在の基準に従って県が水俣病と認めなかった男性について、国の不服審査会が10月、認定すべきだとして県の処分を取り消す逆転裁決を出したことに触れ、「国として二つの違った判断をされた。認定基準に従って県として責任ある認定業務を続けることは大変難しくなった。認定業務を返上する覚悟で国の考え方を確認したい」と述べた。蒲島知事によると、谷津事務次官は「真摯(しんし)に取り組むべきことと思う」と答えたが、新たな考え方を示す時期には言及しなかったという。現在の水俣病の認定基準は、申請者に複数の症状があることを事実上の条件としている。しかし最高裁は今年4月、手足の感覚障害だけでも総合的に検討して認定できるとする判決を出した。判決を受け、国と県が認定基準の運用を協議している中で不服審査会の逆転裁決が出た。
| 環境::2012.12~2015.4 | 11:38 AM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,12,14, Saturday
(まさか、この記述を「非科学的」「風評被害」「扇動」などと、言わないでしょうね)
2013.12.7東京新聞 日本全国で起こった市民の脱原発への意志表示 (1)原発事故を直視せず、将来に対する展望もない経産省の既定路線による危機 *1によれば、2011年3月のフクイチ原発事故直後、経済産業省が「原子力の再生」「原発輸出の再構築」をめざす内部文書をつくり、「機密」扱いにしたそうである。その冒頭の「趣意」には、「原子力なきエネルギー安定供給は成り立たない」と書かれ、その上で「原子力再生を果たし、インフラ輸出基盤を再構築」と記して原発の維持と輸出促進を確認しているそうだが、これは、*3の、まさに現在行われようとしていることだ。 (2)世銀と国連は、「原発は援助しない」と表明して、原発を過去のエネルギーとした しかし、*2のように、2030年までに世界中の全ての人が電力の供給を受けられるようにする取り組みに関して、世銀のジム・ヨン・キム総裁と国連の潘基文(パン・キムン)事務総長は、11月27日、「最貧国に電力網を整備するため数十億ドル規模の資金援助が必要だが、集まった資金は原子力発電には投資せず、電力網の整備やエネルギー効率の倍増、再生可能エネルギー比率の倍増などの新エネルギー開発に使用する」という考えを表明したそうだ。 私は、これが科学的・経済的でまっとうなエネルギー政策だと考えるが、現在、国連の事務総長が韓国出身の潘基文氏であるのは重要なことであり、*4に書かれている韓国や中国の原発停止にも尽力してもらいたいと思う。 (3)日本政府は、事実に対する追求がなく、ご都合主義である *5に書かれているように、内閣府が2012年3月、ロシアなどへ職員を派遣し、1986年に起こった旧ソ連チェルノブイリ原発事故の被災者支援を定めた「チェルノブイリ法」の意義を否定する報告書をまとめたそうだ。その報告書は、チェルノブイリ法が年間被ばく線量1ミリシーベルトと5ミリシーベルトを基準に移住の権利や義務を定めたことについて「(区域設定が)過度に厳しく、日本で採用するのは不適当」などの証言を並べ、「子ども・被災者生活支援法」の意義を否定し、両事故を比較して、福島での健康影響対策は適切だったと強調しているのだそうだ。 しかし、「http://ishtarist.blogspot.jp/2013/10/google.html」に記載されているように、内部被曝による健康被害は癌や白血病だけでなく、倦怠感・心不全・膀胱炎・免疫低下など、全身の多様な慢性疾患であり、その影響は、事故後1年以内に現われるというより、次第に増えてくるものであるため、内閣府が2012年3月に結論を出すのは早すぎるとともに、健康被害を過小評価して原発事故の被害を矮小化すれば、その結果は、無防備となって、さらに多くの被害者を出すのである。 また、①関東各地の地表線量の分布 ②放射性物質の飛散状況 ③爆発時の映像 ④事故後の原発の衛星写真が公開されていないこと などから、3号機の爆発は、本当は*6で言われているメルトダウンではなく、核爆発であり(http://www.youtube.com/watch?v=OiZmLqWnjgc 、http://www.youtube.com/watch?v=Gh1E1-u4CkU 参照)、大量の放射性物質はすでに外に放出されてしまっているのだろう。そのため、東京電力が「大量の放射性物質が放出された経路や原因などは依然解明されていない」などと言っているのであり、それは、本当は、上空からの写真、原発内部の写真、飛散した物質、その線量分布などを見れば、すぐにわかるはずなのだ。 (4)慣れっこになってはいけない、ものすごい事実 *7のように、福島第1原発の海側敷地にある観測用井戸の水から、ストロンチウム90などのベータ線を出す放射性物質が、過去最高値となる1リットル当たり180万ベクレル検出され、上昇し続けている。原発事故から2年9カ月の間、汚染水が流され続けており、その総量は想像もつかないが、これから何十年もこの状態が続けば、あの地域の海は、広い範囲で使い物にならなくなる。 そして、当然のことだが、国民が命や健康と引き換えに、業界を守るために、汚染された食品を食べさせられ続けるようなことがあってはならない。何故なら、そういうことがあれば、その後、本人が不幸であるのみならず、国民の医療費が増える結果にもなるからだ(http://saigaijyouhou.com/blog-entry-433.html ドイツの国営テレビ・ZDFの動画参照)。 また、*8の現場作業員の話からもわかるように、放射性物質に対する取り扱いの杜撰さ、技術のなさは、そんなことも知らずに原発をやっていたのかと驚くほどであり、それでも「日本の原発技術は世界一だ」「放射能は安全だ」と言って、「原子力再生」に突き進む人が多いのには呆れるほかない。 *1:http://digital.asahi.com/articles/TKY201312010227.html?iref=comkiji_redirect&ref=com_top6_2nd (朝日新聞 2013年12月2日) 福島事故直後に「原子力再生」 経産省が機密文書 2011年3月に東京電力が福島第一原発事故を起こした直後、経済産業省が「原子力の再生」や「原発輸出の再構築」をめざす内部文書をつくっていたことがわかった。事故の混乱が続いている最中にもかかわらず、原発推進政策の維持を図ろうとしていた。朝日新聞は、3月下旬の日付で情報管理が必要な「機密」扱いの「原子力エネルギー再復興へ向けて」と題する文書を入手した。関係者によると、原発にくわしい幹部がつくり、エネルギー政策にかかわる幹部級に配られた。事故後の方針を確認したり政策を立案したりするたたき台の一つになったという。冒頭の「趣意」には「原子力なきエネルギー安定供給は成り立たない」「原子力存続に向けた政府の再決意を表明する」と書かれている。そのうえで「原子力再生を果たし、インフラ輸出基盤を再構築」と記し、原発の維持と輸出促進を確認した。「経産省の再生そのもの」とも強調し、最重要政策に位置づけている。輸出では「今回の悲劇に潜む情報を分析し、世界に共有する」としている。原発輸出を進める安倍政権は「事故の経験と教訓を世界と共有する」と唱えており、その原型と言える。さらに、(1)(事故の)応急措置(2)緊急時宣言(3)原子力規制委員会の形成(4)東電解体と新電力事業体制の確立、という項目があり、とるべき具体策が並ぶ。このうち規制委は12年9月、民主党政権でつくられた。文書では新基準で審査したうえで「合格原発の稼働」としており、民主党政権や「原発活用」を掲げる安倍政権の再稼働方針とも重なっている。当時、経産省資源エネルギー庁にいた官僚は「原発に知見のある幹部が文書をつくった。政策に通じた幹部の考えが実現するのは自然の流れだ」と説明する。特定秘密保護法案では原発にかかわる文書なども秘匿されかねない。国民がこれらの政策立案過程を検証できなくなる恐れもある。 ■「原子力エネルギー再復興へ向けて」の主な内容(◎は実現かほぼ実現、○は一部実現や検討されているもの) 【趣意】 ・原子力なきエネルギー安定供給は成り立ち得ない。原子力存続に向けた政府の再決意を表明(◎) ・原子力再生を果たし、インフラ輸出基盤を再構築(○) ・今回の悲劇に潜む情報を分析し、世界に共有する覚悟を持つ(○) 【(事故の)応急措置】 ・福島第一原発1~4号機の冷却、5、6号機の復帰 【緊急時宣言】 ・安全基準を作成し、合格原発の稼働許可(○) ・原子力復興基金を創設し、不合格原発の復興に活用 【日本版NRC(原子力規制委員会)の設立】 ・原子力安全委員会、原子力安全・保安院、有識者から構成(○) ・事故経緯の徹底した分析。NRCによる追加安全基準の作成(◎) 【東京電力解体と新電力事業体制の確立】 ・原子力事業を東日本、西日本2社に再編 ・送電会社の国営化。配電事業は当面は現体制維持、または再編も ・東電の賠償を国が肩代わりするのをてこに改革を電力業界に迫る(○) *2:http://www.afpbb.com/articles/-/3004099?ctm_campaign=topstory (AFP BBニュース 2013年11月28日 発信地:ニューヨーク国連本部/米国) 「原発は援助しない」、世銀と国連が表明 世界銀行(World Bank)と国連(UN)は27日、最貧国に電力網を整備するため数十億ドル規模の資金援助が必要だと訴えるとともに、いずれの国においても原子力発電への投資は行わない考えを表明した。世銀のジム・ヨン・キム(Jim Yong Kim)総裁と国連の潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長は、2030年までに世界中の全ての人が電力の供給を受けられるようにする取り組みについて記者団に説明した。その中でキム総裁は「われわれは原発は行わない」と明言した。キム総裁によると、世銀は来年6月までに42か国の発電計画をまとめる予定。電力網の整備やエネルギー効率の倍増、再生可能エネルギー比率の倍増などを掲げ、目標達成には年間およそ6000~8000億ドル(約61兆~82兆円)が必要になるとしている。しかしキム総裁は、集まった資金は新エネルギー開発にのみ使用すると報道陣に明言。「原子力をめぐる国家間協力は、非常に政治的な問題だ。世銀グループは、原発への支援には関与しない。原発は今後もあらゆる国で議論が続く、たいへん難しい問題だと考えている」と述べた。 *3:http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20131211_3.html [京都新聞社説 2013年12月11日]エネルギー計画 「脱原発」明記が出発点 少しずつでも原子力発電所を減らし、将来的には原発に頼らない社会にしたい。そんな多くの国民の願いに目を背ける内容だと言わざるを得ない。経済産業省が、エネルギー政策の中期的な指針となる基本計画の素案を総合エネルギー調査会の分科会に提示した。年内に分科会案をまとめ、来年1月に閣議決定する。基本計画は、ほぼ3年ごとに見直している。民主党政権は2010年6月につくった今の計画で、30年までに全電源に占める原発の比率を約5割にするとし、翌年3月の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後には「30年代に原発稼働ゼロ」を掲げた。計画の見直しは、自民党への政権交代後、今年3月から始めた。素案は、原発を「エネルギー需給構造の安定性を支える重要なベース電源である」と明記し、前民主党政権の「原発ゼロ」目標をあっさり否定した。同時に、「原子力規制委員会によって安全性が確認された原発は再稼働を進める」との方針を記した。さらに、前政権が決めた「新増設は行わない」という原則を削除し、古くなった原発の建て替え(リプレース)や新設、増設に事実上、道を開く内容になった。政権交代に伴い、分科会委員を大幅に入れ替え、原発活用を進めたい現政権の意向に沿う結論は予想されたが、方針大転換にしては説明があまりにも不足している。 最近の世論調査でも、国民の半数以上は原発再稼働に反対し、7割近くが「脱原発」を支持している。民意を無視してごり押しするやり方は、特定秘密保護法を強行採決した巨大与党の姿と重なる。最も指摘したいのは、目標を明示しないで進める原発、エネルギー政策の危うさだ。今回の素案でも将来の原発と自然エネルギーなどの電源構成比率の数値目標化は見送った。国内の原発は、運転30年超が20基近くに達し、老朽化が進む。原発の運転は40年に制限され、このままだと49年にはゼロになる。原発から出る使用済み核燃料など放射性廃棄物の処分場探しも、短期間に実現できる可能性は低い。安倍晋三首相は、東京五輪開催が決まった直後の記者会見では「原子力比率を引き下げる」と胸を張ったはずだ。こうした目標すら持たないエネルギー計画では国際社会の信頼は得られない。目標があってこそ節電や省エネ、新しいエネルギー開発の知恵や行動が生まれる。年明けの国会では政府方針について突っ込んだ議論を深め、計画の見直しを求めたい。 *4:http://www.47news.jp/CN/201312/CN2013121101001482.html (47ニュース 2013/12/11) 韓国、原発増設路線を維持 35年に44基稼働目標 【ソウル共同】韓国政府は10日、電力供給に原子力発電が占める割合を、現在の26・5%から2035年には29%にまで高め、従来の原発増設路線を維持することを柱とした国家エネルギー基本計画案を国会に提出した。韓国メディアが11日報じた。韓国では現在、原子炉23基が商業運転中で、他に建設中や建設計画が決まったものが11基ある。韓国メディアは政府方針を基に試算した電力需要量から、新たに最大で10基を増設し、35年には44基を稼働させる必要があると伝えている。 *5:http://mainichi.jp/select/news/20131201mog00m010002000c.html (毎日新聞 2013年12月1日) 復興を問う:内閣府チェルノブイリ視察 支援法理念、報告書で否定 東京電力福島第1原発事故への対応の参考にするとして内閣府が2012年3月、ロシアなどへ職員を派遣し、旧ソ連チェルノブイリ原発事故(1986年)の被災者支援を定めた「チェルノブイリ法」の意義を否定する報告書をまとめていたことが分かった。同法の理念を受け継いだ「子ども・被災者生活支援法」の法案作成時期と重なるが、非公表のまま関係の近い原発推進派の団体などに配られていた。 支援法は、線量が一定以上の地域を対象に幅広い支援をうたって12年6月に成立したが、今年10月に支援地域を福島県内の一部に限定した基本方針が決まっており、成立を主導した国会議員らからは「国は早い時期から隠れて骨抜きを図っていたのではないか」と不信の声が上がる。 報告書はA4判30ページで、内閣府原子力被災者生活支援チームが作成。毎日新聞の情報公開請求で開示された。調査団は同チームの菅原郁郎事務局長補佐(兼・経済産業省経済産業政策局長)を団長に、復興庁職員を含む約10人。ウクライナ、ベラルーシ(2月28日〜3月6日)とロシア(3月4〜7日)を2班で視察し、各政府関係者や研究者から聞き取りした。 報告書は、チェルノブイリ法が年間被ばく線量1ミリシーベルトと5ミリシーベルトを基準に移住の権利や義務を定めたことについて「(区域設定が)過度に厳しい」として「補償や支援策が既得権になり、自治体や住民の反対のため区域の解除や見直しができない」「膨大なコストに対し、見合う効果はない」「日本で採用するのは不適当」などの証言を並べ、同法の意義を否定。両事故の比較で、福島での健康影響対策は適切だったと強調もしている。 支援法の成立を主導した谷岡郁子元参院議員(当時民主)は「視察自体聞いていない」。川田龍平参院議員(みんな)は「できるだけ被害を矮小化したい意図が当時からあったことが分かる。支援法つぶしが目的だろう」と話した。 *6:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131213/k10013805342000.html (NHK 2013年12月13日) 「3号機事故「早期に冷却機能低下」 おととしの福島第一原子力発電所の事故で、東京電力はメルトダウンした3号機では、重要な冷却装置の機能が早い段階で低下したうえに、その後の消防車による注水も配管の抜け道から漏れた可能性が高く、十分な冷却が行われなかったとする検証結果をまとめました。これらの冷却の問題はメルトダウンにつながったとみられ、東京電力は検証結果を公表することにしています。福島第一原発の事故について、東京電力は去年6月、みずから行った検証の結果を公表しましたが、メルトダウンや放射性物質の放出に至る具体的な経緯については、未解明の問題が多く残され、検証を続けています。 このうち3号機では、事故の2日後、おととし3月13日の午前10時40分ごろからメルトダウンが始まったとされていますが、それまでの原子炉の冷却がどのように行われていたのか、焦点になっています。東京電力で分析したところ、その日の早朝の原子炉の水位計のデータでは燃料が露出するほど水位が大幅に下がっていて、重要視していた外部電源がなくても動く緊急用の冷却装置の機能がそれよりも前の段階で低下していたとみられることが分かりました。さらに午前9時すぎに始めた消防車による注水では、水が配管の途中にある抜け道から別の装置に漏れ出していたとみています。 こうした冷却が十分にできなかったことはメルトダウンにつながったとみられ、東京電力は13日、この検証結果を公表するとともに、大量の放射性物質が放出された経路や原因など、依然解明されていない問題の検証を続けることにしています。 *7:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013121301002568.html (東京新聞 2013年12月13日) 海側井戸で180万ベクレル 福島第1原発、上昇続く 東京電力は13日、福島第1原発の海側敷地にある観測用井戸の水から、ストロンチウム90などのベータ線を出す放射性物質が、過去最高値となる1リットル当たり180万ベクレル検出されたと発表した。水は12日に採取した。5日採取の水から140万ベクレル、9日採取では150万ベクレルを検出しており、上昇傾向が続いている。井戸は2号機の東側で、2011年の事故直後に極めて高濃度の汚染水が漏れたトレンチ(電源ケーブルなどが通る地下道)の近くにある。 *8:http://news.nifty.com/cs/domestic/societydetail/agp-20131213-18314/1.htm (@niftyニュース 2013年12月13日) 現場作業員が独占激白!福島原発4号機 「燃料棒取り出し」の凄絶実態!(3) 現場は常軌を逸した惨状が続いている。ちなみに八木澤氏はこんな話を聞いたという。「福島原発が水素爆発した際、何号機のものかは定かではないが、燃料棒の一部が敷地の中に落ちていた。しかし非常に線量の高いものでしょ。では、どうしたかというと、遠隔操作のブルドーザーで運び、瓦礫と一緒に原発のそばを流れる川の河川敷に埋めてしまったというんですね」。そもそも仮に4号機の全ての燃料棒取り出しに成功したとしても、1~3号機の燃料棒が残っていることは周知のとおりだ。社会部記者が言う。「1号機の使用済み燃料プール内にある燃料棒70体が東日本大震災前から損傷していたことがこのほどわかりました。1号機プール内に保管されている使用済み燃料は292体で、その約4分の1に相当する。損傷した燃料棒を取り出す技術は確立しておらず、2017年にも始まる1号機の燃料棒取り出し計画や廃炉作業は困難を極めます。事故前から損傷していた燃料棒は1号機プールの他にも2号機プールに3体、3号機に4体、4号機に3体の計80体あった。しかし、震災後は、1~3号機は線量が高すぎ誰も近づけず、もはやこれらがどうなったかも、はっきりしたことは言えないのです」。 1~3号機の原子炉格納容器の内部では、炉心溶融で溶け落ちた核燃料と金属類のくずが熱を発しており、現在、真水による冷却が続いている。溶け落ちた核燃料の実態を高放射線量の中で把握し、取り出すまでの長期にわたる技術が確立されておらず、その工程も手探りの状態。「現場ではこのまま水を流し続けるしかないのではないかという諦めに似た空気がある」。廃炉まで40年──いや、廃炉できるのかどうかもわからない現状。一刻も早い詳細な情報開示による事態の広範な共通認識が形成されなければ、現場作業員ならずとも感覚が麻痺しそうになる。
| 原発::2013.11~2014.5 | 01:00 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,12,12, Thursday
*1で日弁連会長が声明を出しているとおり、2013年12月6日に参議院を通過した特定秘密保護法は、民主主義の根幹である「知る権利」を侵害する。また、重罰化や適性評価におけるプライバシーの侵害、*5に書かれている有効なチェック機関の不存在など、成立後も様々な問題をかかえている。そのため、*3の多くの団体や研究者、映画界などから廃案を求める意見が出されているとともに、*4のように、長野県では県内の19市長のうち12市長が「運用に不安」としているのである。 さらに、外国では、*2のように、世界の作家500人が、国連に、国家による監視の制限を要求し、「民主主義の基礎となる柱は、人格を不可侵のものとする個人の尊厳である。すべての人は、見張られず、妨害されない権利がある。しかし、大衆監視を目的とした国家と企業による技術開発の乱用により、この基本的人権が全く無視されている」と述べているのは、そのとおりだと思う。 また、*2の「監視下に置かれた個人は自由ではなく、監視下に置かれた社会は民主主義ではない。民主的権利の有効性を保つには、実世界と同様に仮想空間でもそれが認められなければならない」というのもそのとおりであるため、これが、現在の世界の常識であることを再確認して実現すべきだと考える。 *1:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2013/131206_3.html (2013年12月6日 日本弁護士連合会会長 山岸 憲司) 特定秘密保護法の採決強行に抗議する会長声明 本日、参議院本会議において特定秘密保護法案の採決が強行され、特定秘密保護法が成立した。同法は、国民の知る権利を侵害し、国民主権を形骸化するものである。衆議院における4党修正案によっても、官僚が恣意的に特定秘密を指定する危険性を除去する実効的な方策は規定されておらず、その危険性は何ら変わっていない。そのため、同法案に対しては、報道、研究、映画界等様々な分野から廃案を求める意見が出されてきたところである。 ところが、国会で審議が開始されてからも、衆議院においては、政府側からの答弁に不一致や変遷が起きるなどして審議が混乱し、みんなの党及び日本維新の会からの修正案を取り入れた4党修正案についてもわずか数時間の審議で採決がなされてしまった。参議院では、衆議院で検討が不足していた論点について、十分な検討がなされるべきであったが、参考人や公述人の多くが反対意見や問題点を指摘する意見を述べたにもかかわらず、これらの意見についても十分に検討がなされないまま、短時間の審議で採決が強行された。これは、およそ重要法案の審議とはいえず、国会の存在意義を自ら否定するに等しい。 よって、同法案の採決を強行したことは、内容面・手続面いずれにおいても国民主権・民主主義の理念を踏みにじるものであり、到底容認されるものではない。この点について強く抗議する。当連合会では、民主主義社会の根幹である国民の知る権利や報道の自由の侵害、重罰化、適性評価によるプライバシー侵害のおそれをはじめとした様々な問題点が残されている同法について、引き続きこれらの問題点の克服のための活動を行っていく所存である。あわせて、国民主権確立のために不可欠な情報公開制度・公文書管理制度の改正、特定秘密保護法の有無にかかわりなく整備されるべき秘密指定の適正化のための制度策定に向け全力を尽くし続けることを誓うものである。 *2:http://www.afpbb.com/articles/-/3004911 (AFPBBニュース 2013年12月12日) 国家による監視の制限、世界の作家500人が国連に要求 500人を超える世界の著名作家が10日、国家による大衆監視は基本的自由を侵害する行為だとして、国際法の制定を求める署名を国連(UN)に提出した。南アフリカのJ・M・クッツェー(J.M. Coetzee)氏やドイツの ギュンター・グラス(Gunter Grass)氏などノーベル文学賞受賞者も名を連ねている。米政府による監視活動については今年6月、米国家安全保障局(National Security Agency、NSA)に勤務していたエドワード・スノーデン(Edward Snowden)容疑者によって暴露された。「大衆監視に反対する作家たち(Writers Against Mass Surveillance)」と銘打った署名は、国家による広範囲なインターネット通信傍受を民主主義の侵害と位置づけ、そうした監視を制限する「デジタル著作権」を定める国際法の新設を求めている。世界80か国以上、562人の作家が署名し、英ガーディアン(Guardian)紙など各国の新聞約30紙に掲載された。 作家たちは署名と共に声明を発表し、大衆監視がすべての市民を容疑者と疑って扱うものだと批判した。「大衆監視の規模は、この数か月で誰もが知るものとなった。マウスを数回クリックするだけで、国家は個人の携帯端末や電子メール、ソーシャルネットワーク、インターネット検索などにアクセスできる。インターネット企業との連携の下、個人の政治的な傾向や活動を追跡することができ、個人のデータを収集・保管している」。「民主主義の基礎となる柱は、人格を不可侵のものとする個人の尊厳である。すべての人には、見張られず、妨害されない権利がある。しかし大衆監視を目的とした国家と企業による技術開発の乱用により、この基本的人権がまったく無効とされている」。「監視下に置かれた個人はもはや自由ではなく、監視下に置かれた社会は民主主義ではない。民主的権利の有効性を保つには、実世界と同様に仮想空間でもそれが認められなければならない」。 作家たちはまた、自分のデータがどのように収集され、保管されるかを自分で決め、そのデータがどのように使用されているのかを知り、不正な利用があれば削除を要求できる権利を求めた。「すべての国家と企業に、これらの権利を尊重するよう要求する。国連には、デジタル時代における市民的権利の保護が最重要課題であるとの認識、そしてデジタル著作権に関する国際法の制定を求める。また各国政府にはその協定に調印し、従うよう求める」。 ■署名した主な作家 ノーベル文学賞受賞者ではクッツェー氏とグラス氏に加え、オーストリアのエルフリーデ・イェリネク(Elfriede Jelinek)氏、スウェーデンの詩人トーマス・トランストロンメル(Tomas Transtroemer)氏、トルコのオルハン・パムク(Orhan Pamuk)氏の計5人が署名している。 ブッカー賞受賞者ではマーガレット・アトウッド(Margaret Atwood)氏、ジュリアン・バーンズ(Julian Barnes)氏、トーマス・キニーリー(Thomas Keneally)氏、カズオ・イシグロ(Kazuo Ishiguro)氏、イアン・マキューアン(Ian McEwan)氏、マイケル・オンダーチェ(Michael Ondaatje)氏、アルンダティ・ロイ(Arundhati Roy)氏らが署名した。 さらにコルム・トイビン(Colm Toibin)氏やマーティン・エイミス(Martin Amis)氏、ライオネル・シュライバー(Lionel Shriver)氏、ルイ・ド・ベルニエール(Louis de Bernieres)氏、アービン・ウェルシュ(Irvine Welsh)氏などの著名作家も名を連ねた。 *3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/list/CK2013120802100004.html (東京新聞 2013年12月8日) 【特定秘密保護法案】法廃止へ揺るがず 監視国家 広がる「反対」 国民の「知る権利」を侵す恐れのある特定秘密保護法は六日深夜の参院本会議で、与党の賛成多数で可決、成立した。野党は慎重審議を求めたが、与党が採決を強行した。だが「秘密保護法案反対」を訴えていた人たちの声は、消えることはない。「法律廃止」へと変わるだけだ。国民の権利を守ろうという全国の幅広い層による活動は続く。法成立に強く反対してきた「特定秘密保護法案に反対する学者の会」は七日、名称を「特定秘密保護法に反対する学者の会」に変え、活動継続を宣言。学者の中には、法律は違憲立法だとして法廷闘争に持ち込む準備を始める動きもある。 女性関係の三十六団体でつくる「国際婦人年連絡会」は、法成立を受けて近く集会を開催する。戦争体験を持つ女性が多く所属しており、秘密保護法が脅かしかねない平和の尊さを広く訴えることの重要性を確認する。連絡会の世話人で、女性の地位向上に尽くした政治家の故市川房枝氏の秘書を務めた山口みつ子さんは、秘密保護法が成立したのは「昨年末の衆院選と今年の参院選の低投票率の弊害だ」と分析。「有権者が政治への関心を高めないと、権力的な政治がさらにまかり通る」と訴える。 アイヌの有志でつくる「アイヌウタリの会」は、法律廃止への賛同を広く募っていくことを決めた。 弁護士有志による「自由法曹団」も法律の廃止を求めた。自民党の石破茂幹事長がデモとテロを同一視した問題を挙げ「政府に反対する声がテロとして排斥され、密告・監視が横行する。こんな国と社会は許されない」と訴えた。 日本ジャーナリスト会議も、衆参両院での採決強行を「憲政史上、前例のない最悪の暴挙」と非難。安倍政権を「国民の目と耳と口をふさぎ、民主主義を否定する」と批判し、衆院を解散して国民に信を問うべきだと主張した。 *4:http://www.shinmai.co.jp/news/20131212/KT131211ATI090012000.php (信濃毎日新聞 2013年12月12日) 特定秘密保護法、県内19市長見解 12市長が「運用に不安」 特定秘密保護法について、県内19市長のうち12人が運用面で不安を感じていることが11日、信濃毎日新聞の取材で分かった。13日の同法の公布から1年以内に予定される施行までに必要な対応(五つの選択肢から二つ以内で選択)については「特定秘密のチェック体制など適正な運用に向けた環境整備」「国民への丁寧な説明」を挙げた市長がそれぞれ14人に上り、国会審議や国民への説明が不足していると感じている市長が多いことがうかがえる。同法の運用面で不安を「感じる」とした12人からは「特定秘密の範囲が不明確で、秘密指定の妥当性を監視する仕組みづくりも明確でない」(今井竜五・岡谷市長)や、「説明が足りず、急ぎすぎている」(池田茂・中野市長)といった意見があった。 一方、不安を「感じない」とした加藤久雄・長野市長は「首相が丁寧に説明していくとしており、適正な運用に向けた検討も行われている」とした。5人は「何とも言えない、分からない」と回答を留保した。このほか、牧野光朗・飯田市長は選択肢からは回答を選ばずに「どんな運用がなされるのか、しっかり注視していく必要がある」とだけ答えた。 今後必要な対応について、ほかの選択肢では4人が法律の「修正」を選択。牛越徹・大町市長は「(特定秘密の妥当性などについて)どのような方法でチェックするのか法律に明記すべきだ」と述べた。小口利幸・塩尻市長は「修正」または「廃止」を求めた。「その他」を選んだのは2人で、「課題と考えられることの国会での十分な論議を」(三木正夫・須坂市長)といった意見があった。 *5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/list/CK2013121002000262.html (東京新聞 2013年12月10日) 【特定秘密保護法】 秘密保護法 識者ら訴え 独立の監視機関必要 数々の不安や懸念が解消されないまま、特定秘密保護法が成立した。政府は制度の細部を詰め、一年以内に施行する予定。識者は、恣意的な運用や国民の「知る権利」の侵害を防ぐため、独立性のある第三者機関のチェックが「最低限の条件」だと強調する。問題点を追及する報道や、国民が関心を持ち続けることが重要との声も上がった。 政府は法成立の直前、秘密のチェック機関として(1)指定や解除、適性評価の基準を定める「情報保全諮問会議」(2)警察庁長官や外務、防衛両省の事務次官らで組織する「保全監視委員会」(3)公文書廃棄の可否を判断する「独立公文書管理監」(4)外務、防衛両省の職員ら二十人規模で内閣府に置く「情報保全監察室」-の設置を打ち出した。さらに成立後、石破茂自民党幹事長が秘密の内容を監視する常設の委員会を衆参両院に置く考えを示した。しかし、田島泰彦上智大教授(メディア法)は「行政機関のほぼ一存で、非常に広範な情報を秘密に指定できる根本に手を付けず、チェックするのには限界がある。法施行させないことが一番だ」と指摘する。その上で「施行するならば最低限、行政の外部に監視機関を設け、独立した立場で秘密にアクセスする必要がある。この要件を満たさなければチェックの役割は果たせない」と言い切る。公文書管理に詳しい都留文科大講師の瀬畑源さん(日本現代史)も「保全監視委員会は政府内部で秘密を統制するにすぎない。各省庁で、その人たちの部下に当たる官僚がメンバーの情報保全監察室が、独立した公正な立場でチェックできるわけがない」と批判する。監視のシステムを少しでも良くするにはどうすればいいのか。瀬畑さんは「人事院のように監察室に内閣からの独立性を担保し、秘密を解除する権限も持ってチェックさせる。さらに諮問会議が監察室の活動を監視する。少なくともこの仕組みは必要」と根本的な見直しを求めた。 田島教授は、法の内容を十分知る必要性を訴える。「情報源に厳罰を科す法律が施行され、情報が出なくなれば、知る権利は実現できない。メディアはより明確に、より深く問題点を提示して、法を施行させない取り組みを続けてほしい」。精神科医の香山リカさんは「市民感情としては『特定秘密』という言葉に警戒心を抱いているのが現状だろう。関心を持ち続けることが大事」と語った。多くの映画監督や作家、学者などが反対の声を上げたことには「この件は政治的スタンスを問わず、幅広い層が『問題だ』と思っている。もっともっとアピールすべきだ」と話している。
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2013,12,11, Wednesday
(1)特定秘密保護法の成立とその危険性 *2に記載されているとおり、機密の漏洩に厳罰を科す特定秘密保護法の成立を受け、政府は特定秘密の内容をチェックする機関の設置を表明したが、それは、本来は、政府・行政から独立した第三者が監視する仕組みを設けることだった。 しかし、実際には、内閣官房への「保全監視委員会」の設置と、内閣府への「情報保全監察室」「独立公文書管理監」の設置であり、行政内部の身内にポストを増やしただけに終わっているため、国会にも「安全保障に支障を及ぼす」と言えば、資料を出さなくてすむ。そして、漏洩事件の裁判でも、裁判官に特定秘密を見せなくてよくなるため、行政に権力が集中して、三権分立が形骸化する。 そのため、*4のように、成立前にも反対意見や反対運動が多かったし、成立後の現在でも、*3のように、秘密保護法の撤廃を求めて緊急集会やデモが行われ、また、*5のように、多くの刑法学者が反対しているのである。 (2)特定秘密保護法における罰則の異常性 特定秘密保護法は、その罰則においても異常性がある。例えば、第23条において、「①特定秘密の取扱いの業務に従事する者がその業務により知得した特定秘密を漏らしたときは、10年以下の懲役に処し、又は情状により10年以下の懲役及び1,000万円以下の罰金に処する。特定秘密の取扱いの業務に従事しなくなった後においても、同様とする。」と規定されている。しかし、「1,000万円以下の罰金」というのは、他の法律では見たことがない高額であり、まず、他の罪とのバランスがおかしい。 また、「②当該提供の目的である業務により当該特定秘密を知得した者がこれを漏らしたときは、5年以下の懲役に処し、又は情状により5年以下の懲役及び500万円以下の罰金に処する。」等とも規定されているが、①では、特定秘密の取扱い業務に従事する者がその業務により知得した特定秘密を漏らしたときは、取扱いの業務に従事しなくなった後でさえ1,000万円の罰金が課されるのに対し、②では、当該提供の目的である業務により当該特定秘密を知得した者がこれを漏らしたときは、量刑・罰金とも①の半分になるというのがおかしい。何故なら、①と②は、同様に職務担当者の秘密漏洩だからである。 さらに、第25条等で、上記の犯罪に関し、共謀・教唆・煽動した者も、5年以下の懲役に処すると規定されているが、「共謀」「教唆」「煽動」の定義が明確でないため、どんな行為でもそれに当たると判断される可能性がある。このように、特定秘密保護法は、行政の都合によって、行政に都合の悪い人を、意図的に重罪に陥れて排除することができる法律なのである。 (3)今度は、共謀罪創設 ?! (2)でも記載したように、特定秘密保護法は、「共謀」「教唆」「煽動」した者を5年以下の懲役に処するとしているが、「共謀」「教唆」「煽動」の定義は明確でない。これに加え、*1のように、実行行為がなくても謀議に加われば処罰対象となる「共謀罪」の創設を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を来年の通常国会に提出する方向で検討に入ったそうだが、謀議に加わったことはどうやって証明するのだろうか? 盗聴などが盛んに行われるのかもしれないが、盗聴では、その会議の中でのその人の役割(推進していたのか、止めていたのか、黙って別のことを考えていたのか、寝ていたのか)はわからない。また、密告や自白は、動かぬ証拠がないため、意図的なものになりやすい。とにかく、共謀罪が適用されれば、盗聴や密告を含む国家の監視が正当化され、国民の言論の自由が阻害されることは明らかである。 *1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2594906.article.html (佐賀新聞 2013年12月11日) 政府、共謀罪創設を検討 / 組織犯罪処罰法改正で 政府は10日、殺人など重要犯罪で実行行為がなくても謀議に加われば処罰対象となる「共謀罪」創設を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を来年の通常国会に提出する方向で検討に入った。政府関係者が明らかにした。共謀罪が広く適用されれば、国による監視が強化される恐れがある。機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法に続く国権強化の動きといえる。秘密法成立で言論・情報統制が強まる不安が広がっているだけに、論議を呼ぶのは確実だ。政府は、2020年の東京五輪開催に向けてテロ対策の必要性が高まったと判断している。 *1-2:http://www.shinmai.co.jp/news/20131212/KT131211ETI090007000.php (信濃毎日新聞 2013年12月12日) 共謀罪 内心の自由を侵さないか 人を殺傷するテロ行為を未然に防ぐこと自体に異論はない。ただ、テロに限らず話し合っただけで処罰の対象にするのは行き過ぎだ。権力の意図的な運用を可能にし、憲法が保障する内心の自由を侵す恐れがあるからだ。組織犯罪処罰法に「共謀罪」を新設する動きが表面化した。菅義偉官房長官はきのう午前の会見で「まだ決めていない」としたが、政府関係者は同法改正案を来年の通常国会に提出する方向で検討に入ったことを明らかにしている。この法律は、組織的に実行された犯罪の刑を重くすることなどを定め、2000年に施行された。テロ行為だけでなく、市民団体のデモや「人間の鎖」などに適用される可能性がある威力業務妨害なども対象だ。国連は同年、国際組織犯罪防止条約を採択し、参加国に共謀罪の創設を求めた。条約に署名した日本政府は03年以降、同法改正案を3回、国会に提出。日弁連や野党などが強く反対し、いずれも廃案になった。 特定秘密保護法案にも共謀罪が盛られた。実際に秘密をつかんでいなくても、何とか得ようと話し合っただけで処罰される場合がある。しかし、この問題は国会でほとんど議論されないまま法案は強行採決され、成立した。これを機に、政府は20年東京五輪のテロ対策を理由にして組織犯罪処罰法にも共謀罪を広げる考えのようだ。 意思を通じ合ったというだけで処罰する手法は戦前、戦中に反政府的な考えを持つ人の弾圧に使われた。治安維持法の「協議罪」を多用して、何も実行していない人たちを次々に取り締まった。共謀罪にはこうした危険性が付きまとう。日本の刑事法は、犯罪の実行行為があって初めて罰することを原則とする。例外として未遂や予備(準備)といった罪があるが、共謀はさらに実行から遠い段階だ。しかも物的証拠がないので自白偏重になりやすい。現行の組織犯罪処罰法にも未遂や予備の罪はある。共謀罪を検討するなら、これらの罪では対応できない合理的根拠を示すべきだ。 気を付けなければいけないのは、共謀罪を盛った特定秘密保護法も改正自衛隊法も、自首による刑の免除や減軽の規定をセットにしていることだ。捜査側が、罪に問わないことを理由に密告の奨励や協力者工作をしやすくなる。共謀罪には監視社会をつくりだす危険性もある。 *2:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-216465-storytopic-11.html (琉球新報社説 2013年12月10日) 秘密監視機関 国の暴走の歯止めにならぬ 機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法の成立を受け、政府は特定秘密の内容をチェックする機関の設置を表明している。しかし政府が秘密指定の妥当性を監視する仕組みとして、複数の機関やポストの新設を次々と打ち出したのは、5日の採決直前だった。国民の知る権利や表現の自由を侵害する法律を通す作業は、あまりにずさんで稚拙だった。法案審議で争点となったのは政府による秘密指定を「政府の外」から監視する仕組みを設けることだったはずだ。行政による恣意的な秘密指定を防ぐ必要性から、野党の一部が独立した公正な立場の監察機関の設置を求めていたのもこのためだ。しかし政府が表明したのは内閣官房への「保全監視委員会」、内閣府への「情報保全監察室」と「独立公文書管理監」の設置だ。全て行政内部、身内だ。 保全監視委員会は警察庁長官や外務、防衛両省の事務次官らで構成され、情報保全監察室は外務、防衛両省の職員ら20人規模の組織だ。秘密指定の適否を検証するものだ。独立公文書管理監は審議官級を充て、公文書の廃棄の可否を判断する。官僚組織による秘密指定を身内の官僚が精査するのだから、茶番劇というほかない。こんな組織やポストがいくら設置されても「官僚による官僚のための情報隠し」(民主党の海江田万里代表)に歯止めがかからないのは明白だ。政府は3組織とは別に、報道や専門家ら有識者による「情報保全諮問会議」も設置する方針を示すが、この組織は具体的な特定秘密はチェックできない。これではお飾り、絵に描いた餅だ。国会も蚊帳の外に置かれる。国会の秘密会から求めがあれば、行政機関の長は特定秘密の提出が義務づけられている。しかし「安全保障に支障を及ぼす」と一言いえば、出さなくていい。漏えい事件の裁判でも裁判官に特定秘密を見せなくてもいい。政府の暴走を止める手段はない。あまりにも危険な法律だ。 国連のピレイ人権高等弁務官は同法について「日本の憲法や国際人権法が定める情報へのアクセス権や表現の自由に対する適切な保護規定を設けずに、法整備を急ぐべきではない」と述べ、政府と立法府に対し、国内外の懸念に耳を傾けるよう促した。安倍政権はボタンの掛け違いを認め、この法律をいったん廃止し、立法の是非を国民に問い直すべきだ。 *3:http://www.nnn.co.jp/news/131210/20131210001.html (日本海新聞 2013年12月10日) 秘密保護法の撤廃求め 米子で緊急集会とデモ行進 特定秘密保護法が6日国会で成立したのに抗議し、鳥取県米子市内で9日、同法の撤廃を求める緊急集会とデモ行進があった。参加者がJR米子駅前の目抜き通りを歩きながら、強行採決に踏み切った安倍政権への批判と同法の撤廃を訴えた。市民団体「平和・民主・住みよい米子をつくる会」が他団体や市民に呼び掛けて実施。約60人が集まった。参加者は米子市文化ホール前広場で気勢を上げた後、米子商工会議所前までの約1キロをデモ行進。「秘密保護法撤廃」と書かれたプラカードを掲げながら、「秘密保護法は憲法違反」「安倍内閣は総辞職せよ」などとシュプレヒコールを繰り返した。同会代表世話人の1人、大谷輝子さん(77)は「署名運動をした際も賛同してくれる市民が多かった。あの戦争の暗黒時代を再現させることがあってはならない」と話した。 *4:http://digital.asahi.com/articles/TKY201312030244.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2013年12月3日) (新ポリティカにっぽん)秘密保護法案、いまこそ再考を 世の中もこの法案の危うさにじっとしていられないということだろうか、街に「反対」の声が響く。国会会期末は6日、圧倒的多数の与党と「すりより野党」によって成立してしまうのかどうか、特定秘密保護法案の参院審議が大詰めである。 ■「平和」掲げる公明党が、なぜ? それにしても、いったい公明党は何を考えているのだろうか。「平和」の党であることを誇りにしていたのに、「戦争」がちらつく法案にかくも血道をあげるなんて。11月26日、この法案が自民、公明の与党とみんなの党の賛成で衆院を強行通過したその夜、明治大学で行われたジャーナリストのリレートークに参加した私は公明党への疑問を呈した。それが伝わったのか元参院議員の平野貞夫氏から電話がきた。「1985年、中曽根内閣のときのスパイ防止法案に一番強く反対して廃案に追い込んだのは公明党でしたよ。こんどの秘密保護法案は、そのスパイ防止法よりも戦前の治安維持法よりもタチが悪い」。平野氏は衆院事務局に長く勤め、かつては公明党の相談にも乗り、参院議員になってからは小沢一郎氏の知恵袋として有名である。ムムム、希代の悪法、治安維持法よりタチが悪いって? 公明党の母体である創価学会は戦前、治安維持法によって弾圧された歴史がある。初代会長牧口常三郎と2代会長の戸田城聖は、国家神道の「神札」受け取りを拒否して、「国体」すなわち天皇制国家を否定する不穏分子として投獄され、1944年11月18日、牧口は獄死した。今年のその日、牧口を偲(しの)ぶ70回忌法要が行われ、池田大作名誉会長はメッセージで、牧口の死をもたらしたのは「権力の魔性」と述べている。池田氏は著書「人間革命」第1巻で治安維持法についてこう書いている。「共産党弾圧のためのこの立法は、無数の故なき罪人をつくった」「次第に、ただ軍部政府を守るための弾圧法と化していった」「信教の自由が(大日本帝国)憲法に保障されていたにもかかわらず、この悪法のために、会長牧口常三郎は獄中で死ななければならなかった」「権力者の自分勝手な考えによって裁かれるべきではない」。 これらの記述からうかがわれるのは、悪法は自己増殖するということである。治安維持法は、初めは「国体の変革」と「私有財産否認」をめざすもの、つまり共産党をターゲットにして、作家小林多喜二を築地署で惨殺したりした。しかし、次第に対象を拡大して漸進思想の教授らを大学から次々と追放し、さらには当時、有力だった大本教を「天皇に代わってみろくの世をめざす」邪宗として殿堂をダイナマイトで破壊し、蔵書8万4千冊を焼却するなどの宗教弾圧に発展、ついに創価学会にも累が及んだ。池田氏は「すべての立法の意図を、われわれは改めて吟味する必要がある」と書く。特定秘密保護法案しかり。いったい公明党の議員諸兄は、「人間革命」をちゃんと読んでいるのだろうか。 ■法案通せば、「議会政治の葬式」に ところで平野さん、特定秘密保護法案が治安維持法よりタチが悪いというのは、具体的にはどういうこと? 「罪の内容が明確でない。『安全保障』というあいまいな概念のもと、何が『特定秘密』か、結局は官僚が選び出す。経済、エネルギー、食糧も安全保障だといって、いくらでも対象が広がっていくよ」。治安維持法は「国体」を持ち出せばみんなひれ伏した、こんどは、そこのけそこのけ「安保」が通るということですかね。「国体」よりはるかに広い範囲で罰せられることになりそうだなあ。「いまや、情報は米や水や空気と同じなんです。しかも、ほとんどの情報は公権力がかかわる。『知る権利』というのは、単に報道の自由ということと違って、国民の生活の権利なんだ。マスコミの認識も、まだ浅い」。 国会議員もわかっているのかな? 「何が特定秘密かわからないのだから、国会議員の国政調査権も萎縮させますよ。これは政治家に対する官僚の逆襲だな。官僚の無駄遣いや天下りが批判されているから、官僚が情報を独占管理すれば、逆に政治をコントロールできるという腹でしょう」。平野氏は高知県の出身。自由民権のふるさとといわれるこの地では、明治の昔、「高知新聞」が発禁になって「新聞の葬式」を催した故事がある。会葬者はなんと5千人を超えた。平野氏は危惧する。「特定秘密保護法案を通せば、それは議会政治の葬式になる」。安倍総理大臣、中国が防空識別圏などと持ち出してくるから、何かと心配なのはわからないでもない。しかし、コトは民主主義の根幹にかかわる。秘密のヨロイを着た息苦しい国家はよくない。将来、悪用する権力者が現れないとも限らない。ここは踏みとどまって再考しないか。 *5:http://digital.asahi.com/articles/SEB201312110002.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2013年12月11日) 刑法学者23人、秘密法廃止求める抗議声明 13日に公布される特定秘密保護法について、刑法学研究者23人が11日、速やかな廃止を求める抗議声明を発表した。声明は(1)何が特定秘密かが極めてあいまいで罪刑法定主義の原則に反し、違憲と言わざるを得ない(2)特定秘密の内容が明らかにされないまま公判が開かれれば、憲法82条の裁判公開原則に反する、などと刑事法の観点から問題点を指摘している。声明の呼びかけ人の代表は村井敏邦・一橋大名誉教授ら2人で、九州大、北海道大、大阪大などの教授や弁護士らが名前を連ねている。
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2013,12,10, Tuesday
(1)また歴史を逆走して、原発回帰を許してはならない
*1より *3より *1に記載されているように、経産省は、2013年12月6日に新エネルギー基本計画の素案を示し、「原子力は重要なベース電源」と明記して原発回帰を鮮明にしたそうだ。しかし、その根拠は、すでに明確に否定された「ほかの電源と比べてコストが安い」という虚偽である。 例を挙げれば、まず*2の中間貯蔵施設の建設と運用には多大なコストがかかるが、その予算は示されておらず、環境省が「設置可」とした根拠も薄弱すぎ、汚染垂れ流しの施設になる可能性が高いため、ここは、検証と結果の開示が必要だ。 また、福島第一原発事故(シビアアクシデント)の損害賠償、除染、住民の健康管理、医療などの費用の合計は天文学的数字になりそうだが、総額が示されていない。そして、原発のシビアアクシデントは、広い範囲の国土を奪い住民に被害を及ぼすため、発生確率が低ければよいというものではなく、発生確率は0でなければならないものなのである。 なお、*3に記載されているように、玄海原発のシビアアクシデント時については、避難訓練段階で27万人が逃げられるか、船やヘリ輸送に限界があるということだ。そして、避難した後に、元の場所に帰還して、元の生活に戻ったり、元の仕事に復帰したりすることができないのは、福島のシビアアクシデントで既に証明されている。つまり難民になるわけだが、放射能汚染地域になるのだから当然だ。 このような中、*4のように、政府は、原発重大事故に備えて被曝医療の拠点病院を作る方針を出した。拠点病院で被曝医療を行えば、シビアアクシデントによる癌や心臓病が元どおり治癒できると思っているのなら甘すぎる。その状況は、既に東北大学に蓄積されている筈だ(まさか、特定秘密ではないでしょうね)。また、科学的に正確な疫学調査も行うべきである。そして、これらの医療費、調査費や新しく被曝医療の拠点病院を作って運営するコストも原発のコストであるため、その予算や実績を開示して原発のコストに含めるべきなのである。 (2)経産省は原発再稼働に前のめりで、電力会社は電力改革に後ろ向きである このような中、*5のように、九州電力の社長が「国民の利益になるか、電力を安定供給できるかという視点でしっかり検討してほしい」と述べ、慎重な議論を求めたそうだ。九州電力は、*6のように、玄海原発で重大事故が発生した際に指揮所となる「代替緊急時対策所」を建設して公開し、放射線防護設備を完備したとしているが、この費用も電気代に上乗せされる上、これがあれば、原発のシビアアクシデント被害が防げるわけでもない。 そして、それをバックアップするかのように、*7では、「冬の節電スタート 九電、電力供給ぎりぎり」という従来通りの脅し文句が掲載されているが、九州では、冷房のため夏の方が電力需要が大きく、その夏は既にクリアしており、冬に備えては多くの家庭がガス・ストーブや石油ストーブを準備して電力離れしたのだ。また、再生可能エネルギー・自然エネルギー・エネファームなどの導入も進んでいるため、*7の内容は、古いタイプの脅しにすぎない。 (3)原発の地元では、再稼働に抵抗している *3より *8より *8のように、佐賀新聞社の佐賀県民世論調査では、玄海原発の再稼働について、反対が49・3%を占め、賛成の36・5%を上回った。また、今後の原発比率は、「将来的にゼロ」「即座にゼロ」の脱原発派が55・7%と半数を超え、維持派の39・3%を大きく上回った。 これは、フクシマのシビアアクシデントやそれに対する政府の対応を見ての結果であり、地域別にみると、玄海原発が立地して多額の交付金をもらっている玄海町のみが再稼働に賛成100%、今後の原発比率維持派が80%だが、伊万里市をはじめ、シビアアクシデントで大きな被害を受ける周辺地域では、すでに原発再稼働反対が多数なのだ。つまり、賛成は金で買ったものにすぎない。 年代別にみると、20代だけ再稼働賛成(51・2%)が反対(41・9%)を上回り、今後の原発比率についても維持派(60・5%)が脱原発派(34・9%)を大きく上回るが、これは、原発の安全神話に基づく間違った教育をした結果であり、これこそ深刻な問題なのである。 そして、*9のように、「原発の安全神話は虚偽であり、玄海原発の操業は、憲法が保障する人格権や生存権を侵害する」として、玄海原発停止を求めて新たに386人が提訴し、原告数が7137人となっている状況なのだから、政府は、時代の流れを感じとり、エネルギー基本計画を再考すべきである。 *1:http://qbiz.jp/article/28634/1/ (西日本新聞 2013年12月7日) 原発回帰、具体性なき「国が前面」 エネ基本計画素案 経済産業省が6日示した新たなエネルギー基本計画の素案は、原子力を「重要なベース電源」と明記して原発回帰を鮮明にした。東京電力福島第1原発の事故を踏まえ、民主党政権時代に多くの国民が「原発ゼロ」を望んだ民意は置き去りにされた。小泉純一郎元首相が問題提起した高レベル放射性廃棄物の最終処分場探しも、「国が前面に出る」としたものの、具体的な解決の道筋は示されていない。「エネルギー出力が圧倒的に大きい。数年は国内の保有燃料で供給できる」−。基本計画の素案は原子力の位置付けについて、天然ガスや石油などほかの電源に比べて有利な点を2回にわたって強調した。東京電力福島第1事故前の過去3回の計画と同様に、利点が目立つ書きぶりだ。だが、その説得力は乏しい。例えば、発電コスト。素案を議論した経済産業省の分科会では、民主党政権が2年前に行った1キロワット時8・9円との試算を基に、ほかの電源に比べて安く「運転コストが低い」とした。しかし、試算には廃炉の処理費用や福島事故の損害などが最低限しか入っておらず、それらを入れると1キロワット時17・4円との試算もある。それでも分科会ではコストの見直しはせず、推進派の委員が「原子力は安価な電源」と繰り返した。6日の分科会では、脱原発派の委員がたまらず「(放射性)廃棄物の問題や、ひとたび事故が起きれば悲惨な状況になると書いてほしい」と注文を付けたほどだ。 素案には自民党が昨年末の衆院選で掲げた「原発依存度を可能な限り低減する」が盛り込まれたが、「必要な規模を十分見極めて確保する」ともあり、矛盾する。原発推進派の委員の「新増設、建て替えの明記を」という意見と、慎重派の「原発をどう減らすか具体的な議論するべきだ」との声を踏まえた妥協の産物といえる。だが、「規模の確保」を理由に新増設や建て替えの可能性を残したのは間違いない。10年以上進んでない高レベル放射性廃棄物の最終処分場探しに関して、素案は「国が科学的により適性が高い地域を示す」と強調した。従来の自治体の立候補を待つ方式からの転換を印象付けている。だが、実際は2007年に国の自治体に申し入れる形で候補地を絞る仕組みが導入されており、新味はない。議論をまとめた三村明夫分科会長(新日鉄住金相談役)は会合後、「総合的に分科会の議論と民主党時代の議論もフェアに取り上げた内容だ」と自信をみせたが、国民の理解を得るのは難しそうだ。 ◇市民怒り 立地自治体歓迎 民主党政権が掲げた「原発ゼロ」目標を否定し、原発の活用方針を盛り込んだ国のエネルギー基本計画素案が公表された6日、九州の立地自治体から賛否の声が上がった。九州電力玄海原発がある佐賀県玄海町の岸本英雄町長は「国が活用方針を明確にすれば再稼働にもつながり、ありがたい。原発はこれからも町の基幹産業」と歓迎。同川内原発が立地する鹿児島県原子力安全対策課も「今すぐ原発に代わる安定電源がないのが現実ではないか」と理解を示した。玄海町を所管する唐津上場商工会の古賀和裕会長は「原発停止の影響の大きさを知った。活用方針が出たとしても、飲食、宿泊業などで原発依存度を減らす努力をしたい」と話した。原発政策が震災前に逆戻りしないか、地元の懸念は根強い。玄海原発から約3キロで暮らす新雅子さん(80)は「原発に危険を感じ続けている。国は経済優先で、住民の暮らしや安全を考えているのか」と憤る。川内原発増設に反対してきた下馬場学さん(58)=鹿児島県薩摩川内市=は「脱原発を望む住民は増えている。福島の事故を経ても脱原発に転換できない政治に怒りを覚える」と語気を強めた。 ◇合理性全くない 吉岡斉・九州大副学長(科学史)の話 東京電力福島第1原発事故で、原発の破局的事故は無視できないと分かり、原発の経済性やその他の特性の評価も厳しくなった。新たなエネルギー基本計画の議論では、事故リスクを踏まえた原発の総合評価を見直すべきなのにやらなかった。「原子力ムラ」の人たちが語る原発の利点だけを挙げて、重要な電源と位置づけており、合理性は全くない。 ■エネルギー基本計画 エネルギー政策基本法に基づき、3年ごとに政府が策定するエネルギー政策の中長期指針。2010年に策定された現行計画は、30年までに発電電力量に占める原発比率を50%以上にすると明記している。東京電力・福島第1原発の事故を受け、民主党政権は昨年9月に「革新的エネルギー・環境戦略」をまとめ、30年代に原発ゼロを打ち出した。戦略を反映した計画改定に向け、経済産業省の分科会を33回開いたが、取りまとめ前に政権交代した。安倍政権は民主党の政策を「ゼロベースで見直す」と表明。分科会委員から脱原発派を減らし、今年3月から議論を再開した。 *2:http://www.minpo.jp/news/detail/2013120812618 (福島民報 2013/12/8) 中間貯蔵施設、双葉の候補地も「設置可」 環境省 年内3町に受け入れ要請 東京電力福島第一原発事故に伴う除染で出た土壌などを搬入する中間貯蔵施設の整備で、環境省は7日、双葉町の建設候補地で実施したボーリング調査から「設置可能」と判断した。有識者でつくる検討会に設置案を示し、了承された。既に調査を終えている大熊、楢葉両町を含め、候補地がある3町全てで、設置可能とする調査結果が出そろった。環境省は年内に3町と県に対し、受け入れを要請する。除染の推進に必要な中間貯蔵施設の整備は新たな段階に入る。設置案は東京都で開かれた中間貯蔵施設の安全対策検討会、環境保全対策検討会の合同会合で示され、了承された。会合で井上信治環境副大臣は「大きな一歩になった」と評価した。井上副大臣は記者団の取材に対し、「政府として責任ある案をまとめることができた。年内には要請する。ぜひ受け入れてもらいたい」と述べた。要請に合わせ、貯蔵施設の具体的な設置場所を公表し、説明する考えを明らかにした。 環境省の調査結果によると、双葉町の建設候補地の地盤は「大年寺層」と呼ばれる固い泥岩層が分布。一部の砂岩層を除いて安定しており、建設に問題ないと判断した。地表から深さ3~5メートルで地下水を確認したが、くみ上げることで施設への影響はないとしている。土砂などを搬入する貯蔵施設は、大熊、楢葉両町の設置案と同様に、廃棄物の放射性セシウム濃度に応じて3種類設ける。1キロ当たり8000ベクレル以下は「1型」、8000ベクレル超~10万ベクレル以下は「2型」に搬入する。10万ベクレル超は専用の貯蔵施設に運ぶ。貯蔵施設の周囲には、廃棄物の体積を減らすための焼却施設や廃棄物の受け入れ・分別施設、研究施設などを整備する。3町ともに設置可能となったことで、今後、地元の受け入れが焦点となる。環境省は平成27年1月までの廃棄物搬入開始を目標にしている。ただ、3町は「調査と建設は別問題」と建設に慎重な姿勢を見せており、調整に時間がかかる可能性もある。 中間貯蔵後の搬入先となる県外の最終処分場は具体化しておらず、数千人に上る地権者の同意取得が難航することも予想される。井上副大臣は「住民に(土地の買い上げなどについて)説明する機会を設けたい」と話した。双葉町の伊沢史朗町長は、調査受け入れに際し、町と町議会への中間報告と調査結果報告を条件としていたことを挙げ、「報告がないので調査が終了したとは考えていない。この段階での判断は難しい」と述べた。検討会が設置案を了承したことについては「専門家の判断は真摯に受け止める」と語った。 *3:http://qbiz.jp/article/28256/1/ (西日本新聞 2013年12月1日) 3県原発避難訓練 27万人逃げられるのか 船、ヘリ輸送に限界 佐賀、長崎、福岡の3県合同の原子力防災訓練では、住民が県境を越えて避難する訓練が初めて行われた。九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の30キロ圏内には約27万人が暮らす。これだけの住民が本当に避難できるのか。参加者からは疑問の声も上がった。玄界灘に浮かぶ壱岐島(長崎県壱岐市)。午前8時、玄海原発30キロ圏に入る島南部の郷ノ浦港で、市民9人が海上自衛隊のミサイル艇に乗り込んだ。その一人、自営業の足達親次さん(51)は普段から「原発の近さ」を感じている。島と原発を隔てるものは海以外にない。島南部の住民は30キロ圏外の北部に避難するのが県の計画だが、「風向き次第で島全体が放射能に汚染される。島を出るしかない」と覚悟する。博多港との間でフェリーが運航するが、約2万9千人の市民を島外に逃がすには何往復も必要。訓練では、逃げ遅れた人たちを救うという想定で海自ミサイル艇が出動したが、足達さんの表情はさえない。「海が荒れれば船は来ない。どこに逃げたらいいのか」。空路での避難訓練では、壱岐市民9人が壱岐空港で航空自衛隊ヘリに乗り、福岡空港へ。避難誘導した市職員の飯田雅浩さん(40)は「落ち着いて行動できたが、事故が起きれば『われ先に』と乗り込む人も出てくるかも」。万単位が想定される避難者に対し、ヘリの定員はわずか55人だ。玄海原発から北約8キロの離島・松島(佐賀県唐津市)。住民は24世帯61人で、原発周辺の七つの離島で最も少ない。事故が発生すれば漁船が頼みの綱となりそうだ。訓練では7人が松島港で漁船3隻に乗り込み、福岡県糸島市の岐志港に向かった。訓練を終えた漁業、宗勇さん(51)は疲れた表情で漏らした。「知らない海を港まで安全に航海するのは難しい。そもそも船を係留する場所が確保できるのか」。宗さんは海に潜ってアワビなどを採る。その間、3〜4時間は携帯電話もつながらない。「事故の連絡があってもどうしようもないよね」。原発20キロ圏内の唐津市浜玉町からは、住民23人が大型バスで福岡市西区の高校に避難した。小学校教員の早瀬和人さん(51)は「避難ルートを佐賀県に限定せず、福岡県に広げたのはいいことだ」と評価しながらも、「交通渋滞の恐れがあるし、風向きなどの情報が行政から随時伝えられるのか。不安は尽きない」と話した。 ◆広域連携、課題山積み 九電玄海原発(佐賀県玄海町)周辺の佐賀、長崎、福岡3県は、広域避難の連携では一致しているものの、具体的な受け入れ先などは決まっていない。福岡都市圏には多くの避難者の流入が予想されるが、30キロ圏内からの避難を優先している福岡県の地域防災計画と、50キロ圏内からの避難も視野に入れる福岡市の計画が連動していないなど課題は山積している。3県は5月に開いた協議会で、福岡県が長崎県壱岐市や佐賀県唐津市方面から避難者を受け入れることを確認した。ただ、博多港と航路で直結している壱岐の人口だけで約2万9千人に達し、「全員の具体的な避難先を確保するのは簡単なことではない」(福岡県防災企画課)という。そもそも福岡県の計画では、福岡市を中心とした福岡都市圏(8市8町)は、原発から30キロ圏にかかる福岡県糸島市の一部、約1万5千人の受け入れを優先する。一方、福島第1原発事故のように30キロ圏外の多くの住民も避難を求められる可能性は高く、福岡都市圏に3県の避難者が集中する恐れもある。さらに複雑なのは、福岡県の地域防災計画は国の「原子力災害対策指針」に基づき原発から30キロ圏を避難対象としているのに対し、福岡市は独自に原発から50キロ圏の市民(約56万人)の避難も考えていることだ。福岡市の計画は、福島第1原発事故での高濃度放射性物質の飛散状況を勘案したもので、50キロ圏外の市内の小中学校を避難先とする計画を本年度中にまとめる予定。より原発に近い糸島市の30キロ圏外で暮らす約8万5千人の避難先は未定なのに、遠方の福岡市民には避難先が用意されるという矛盾が生じる。福岡市の計画のように、事故時には県の計画で避難者の受け入れ先とされている地域も避難が必要となることも考えられるが、福岡県は「国の指針が見直されない限り対象を広げられない」(防災企画課)としている。 *4:http://digital.asahi.com/articles/TKY201311040506.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2013年11月5日) 被曝医療に拠点病院 政府方針、原発重大事故に備え 派遣チーム新設も 東京電力福島第一原発事故を教訓に、政府は原子力災害時の医療体制を抜本的に見直す。原発周辺の広範囲で住民が低線量の被曝をしても即応できるよう、日常的に救急医療を行う病院を「原子力災害拠点病院」(仮称)に指定して、住民らの除染や治療を担う。大量被曝した重症患者を診る病院も全国のブロックごとに作る。原子力災害時に現地に入る派遣チームも新設する。原子力規制庁は近く検討会を立ち上げ、細部を詰める。原子力規制委員会の了承を得て、来年夏までに国の防災基本計画に盛り込むことをめざす。新設する「原子力災害拠点病院」は、救急医療に慣れた災害拠点病院などから選ぶ。その基準は規制庁が定め、各自治体が原発30キロ圏内と隣接区域に分散して指定する。拠点病院には、定期的に実践的な研修・訓練をしてもらう。また、大量被曝した重症患者への専門的な除染や診療をする病院を東北、北陸などブロックごとに指定する。候補には弘前大(青森)や福島県立医大、福井大、大阪大、長崎大などが挙がっている。従来は放射線医学総合研究所(千葉)と広島大の2カ所だけだった。さらに、原子力災害時の応援態勢も強化する。全国に約1150あり、自然災害発生地に行く災害派遣医療チーム(DMAT)の中から、被曝医療に詳しい医師、看護師らを育て、「原子力災害時派遣医療チーム(NMAT)」(仮称)を新設する。全国で100チーム以上指定し、避難指示区域でも活動できるようにする計画だ。現行の被曝医療体制は、1999年に数人の作業員が大量被曝したJCOの臨界事故をきっかけにできた。住民の被曝は少数との前提で、除染や治療は「被ばく医療機関」に指定された地元の病院が担うことになっていた。ただ、指定の統一基準がなく、各自治体は、救急対応力ではなく、原発からの距離などを重視して選んでいた。広範囲の住民が被曝した福島第一原発事故では、指定病院が十分に対応できなかった。福島県内では6病院が「被ばく医療機関」だったが、4病院は地元の一般病院で、災害拠点病院は2カ所、救命救急センターがあるのは1カ所だけだった。全体的に準備不足で、しかも4カ所は原発に近すぎて避難や屋内退避の対象となった。 ■原子力災害時の医療体制の見直しのポイント 《1.緊急時対応能力の強化》 原発30キロ圏内・周辺にあり、日常的に救急医療を担う病院から、全国統一基準で「原子力災害拠点病院」(仮称)を指定。低線量被曝患者の除染や診療をする 《2.重症患者対応能力の強化》 全国のブロックごとに、大量被曝した重症患者の除染や診療をする病院を指定 《3.応援態勢の強化》 事故発生時に応援に駆けつける「原子力災害時派遣医療チーム(NMAT)」(仮称)を新設 *5:http://qbiz.jp/article/28066/1/ (西日本新聞 2013年11月28日) 「電力改革慎重に」 九電社長 国民目線を強調 九州電力の瓜生道明社長は27日の記者会見で、政府が目指す電力システム改革について「国民の利益になるか、電力を安定供給できるかという視点でしっかり検討してほしい」と述べ、慎重な議論を求めた。電力システム改革をめぐっては、2015年をめどに全国の電力需給を調整する「広域系統運用機関」を設立する改正電気事業法が13日に成立。付則には小売りの全面自由化、大手電力会社の発電と送配電部門を別会社にする「発送電分離」の工程も明記された。瓜生社長は改革の方向性に理解を示しつつも「料金が高止まりしたりして国民が困るということも考えられないことはない。しっかりとした仕組みやルールが必要だ」と強調。九電としては経営環境の変化に備え、社内横断チームで将来の対応策などを検討していると説明した。会見で瓜生社長は、通信機能の付いた次世代電力計(スマートメーター)の全世帯への導入時期を、従来計画の2025年度から2年程度前倒しする方針も表明した。 *6:http://qbiz.jp/article/27914/1/ (佐賀新聞 2013年11月26日) 玄海原発の代替指揮所を公開、九電 放射線防護設備など完備 九州電力は25日、玄海原発(佐賀県玄海町)で重大事故が発生した際に指揮所となる「代替緊急時対策所」を報道関係者に公開した。放射線防護設備や九電本店とつながるテレビ会議システムを備え、2015年度に予定する免震重要棟完成まで、代替施設としての役割を果たす。事務所棟の地下にも対策所はあったが、津波が起きれば機能しなくなる恐れがあり、海抜21メートルの高台に6月下旬に着工、10月中旬に運用体制が整った。鉄筋コンクリート平屋の約180平方メートルで、窓はなく、壁の厚さは約60センチ。放射線対策としてヨウ素を除去するフィルター付き換気空調設備や、非常用発電機2台がある。収容人数は約100人で、最長1週間作業できる食料を備蓄した。隣接地には、原子力規制委員会の助言に基づき、放射性物質を遮る機能を持つ屋外待機スペースを建設中。担当者は「規制委から注文があれば、さらに改良したい」と話した。 *7:http://qbiz.jp/article/28270/1/ (西日本新聞 2013年12月2日) 冬の節電スタート 九電、電力供給ぎりぎり 沖縄電力を除く全国9電力管内で2日、冬の節電期間が始まる。東日本大震災後、夏と冬の節電要請は恒例となっているが、稼働原発ゼロで需要期を迎えるのはこの冬が初めて。節電期間も来年3月末までの平日(年末年始を除く)と夏より長い。九州電力は、安定供給ぎりぎりの供給力を確保し、トラブルなどに備え「無理のない範囲での節電」を呼び掛ける。冬の寒さが2011年度並みの厳寒だった場合、九電管内の最大電力使用量に対する供給余力を示す「予備率」は3・1%。安定供給に最低限必要とされる3・0%は上回ったものの、頼みの綱の原発は再稼働が見通せず、予期せぬ気温低下やトラブルで需給が逼迫(ひっぱく)しかねない状況だ。一番の心配は火力の停止。12年2月には新大分発電所(大分市、計229万5千キロワット)が寒波で発電できなくなり、広域停電寸前の危機に陥った。記録的猛暑だった今夏も8月に松浦1号(長崎県松浦市、70万キロワット)が蒸気漏れで17日間停止。需給が一気に緊迫した。冬本番に向けて九電は9月から火力発電設備の集中的な点検・補修に入り、今月中旬までに終える予定。廃止予定だった老朽火力の苅田(かりた)新2号(福岡県苅田町、出力37万5千キロワット)もフル稼働させる計画だが、11月19日にボイラー設備の不具合で運転停止に追い込まれた。応急工事で復旧したものの「設備の性質上、トラブルをゼロにするのは難しい」(九電)という。「供給力計画はぎりぎり」と九電はアピールするが、供給力の上積みができないわけではない。中部、北陸、関西、中国、四国、九州の6電力管内全体で見た予備率は厳寒想定でも5・0%。九電と関電を除く4社の予備率は6・0〜8・5%と比較的余裕がある。九電は中部などから約70万キロワットの融通を受ける計画で、緊急時に融通量を拡大してもらうことは可能だ。 企業などが電力を売り買いする日本卸電力取引所を使う手もある。翌日に使う電力を30分単位で取引する市場などがあり、九電はこの夏も最大108万キロワットを調達して乗り切った。冬の電力使用量は気温に大きく左右される。気象庁によると、西日本のこの冬の気温は平年より低い見込み。寒さで電力需要が増えれば、融通電力の積み増しが難しくなり、電力の市場価格も高くなる。赤字経営の九電にとって厳しい冬になる。 *8:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2582221.article.html (佐賀新聞 2013年11月17日) 玄海再稼働「反対」5割 県民世論調査 原子力規制委員会が新規制基準に基づき安全審査を進めている九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県東松浦郡玄海町)。佐賀新聞社の県民世論調査では、玄海原発の再稼働について、反対が49・3%を占め、賛成の36・5%を上回った。今後の原発比率については「将来的にゼロ」「即座にゼロ」の脱原発派が55・7%と半数を超え、維持派の39・3%を大きく上回った。汚染水漏れなどで福島第1原発事故がいまだに収束の道筋を描けない中、原発に対する県民の不信感が浮き彫りになった。 昨年と比較すると、再稼働に反対は5・1ポイント、賛成は6・2ポイントそれぞれ増え、差はわずかに縮まった。一方、今後の原発比率については脱原発派が8・4ポイントアップしたのに対し、維持派は5・9ポイントのダウン。拮抗していた昨年に比べ、10ポイント以上開いた。「分からない」という回答は減り、原発問題への理解の高まりもうかがわせた。 地域別にみると、玄海原発が立地する玄海町では再稼働に賛成が100%、今後の原発比率も維持派が80%を占め、長引く原発停止が地域経済に与える影響の大きさを示す結果になった。市域の大半が30キロ圏内に含まれ、立地自治体並みの権限を求めて県内で唯一、九電と安全協定を結んでいない伊万里市は、再稼働に賛成が31・6%、反対は52・6%だった。 年代別にみると、全体的に再稼働反対、脱原発の傾向が強まる中、20代だけが再稼働賛成(51・2%)が反対(41・9%)を上回り、今後の原発比率についても維持派(60・5%)が脱原発派(34・9%)を大きく上回った。若い世代ほど、原発を必要と捉えている傾向が読み取れた。 *9:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2584048.article.html (佐賀新聞 2013年11月22日) 「玄海原発停止」 新たに386人が提訴 佐賀など全国の反原発の住民が、国と九州電力に玄海原発(東松浦郡玄海町)全4基の操業停止を求めている訴訟で、新たに福島県を含む21都道県の380人と韓国人6人が21日、佐賀地裁に提訴した。提訴は第8次で、原告数は7137人となった。今回新たに原告に加わったジャーナリストの斎藤貴男さん(55)らが12月20日に意見陳述する。原告弁護団は「来年早期に1万人に到達し、その力で脱原発を実現する」と話す。訴状では2011年3月の福島第1原発事故で原子炉4基が制御不能となり「安全神話は虚偽」と主張。玄海原発の操業は、憲法が保障する人格権や生存権を侵害するなどとしている。
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