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2017.10.1 伝統産業のイノベーションとそれを支える人材 (2017年10月4、6、8日追加)

      2014.6.9日経新聞             2015.10.6日経新聞

(図の説明:左の2つは、インクジェットで染められた布とその機械、右の二つは、3Dプリンターで作られた有田焼で、伝統工芸も最新技術の導入で進化できることがわかる)

 

(図の説明:写真は博多人形だが、これにロボット技術を加えて、しゃべったり、音楽を奏でたり、一定の動作ができたりするようにすると面白いし、写真を使って亡くなった人とそっくりのしゃべる人形を作ったりすることも可能だろう。上の博多人形は、ロボットでなくても今にも動き出しそうにしているため、リンカーン大統領、マハトマ・ガンジー、サッチャー首相、メルケル首相等のロボットを作って、象徴的な演説や仕草を真似させ、アメリカ・インド・英国・ドイツなどに寄贈すれば、博多人形ロボットを世界で有名にすることができると考える )

(1)伝統産業には、どういうイノベーションが行えるのか
1)織物と染色-秩父銘仙の事例
 銘仙は、*1-1のように、ガシャンガシャンとにぎやかに機織機の音が響く中でほぐし織りにするため両面を使えるそうで、美しくて便利なため世界でヒットさせることもできそうだ。

 しかし、作り方は「父が数時間でできる仕事が、1週間かけてもできない(=生産性が低いため、価格が高くなる)」ということを現代でも繰り返す必要はなく、名人が作った製品と同じものやそれよりも安定したものをコンピューター制御で作れば、飛躍的に生産性を上げながら静かに美しい絹織物を作ることができるだろう。例えば、*2-2の、キヤノンが宮崎工場を自動化して競争力を強化し、製造業の日本回帰事例となっているように、である。
 
 また、染色も、*1-2のようなインクジェットによる染色もできるので、少量多品種生産が容易になった。さらに、現代では、繭を育てる背景の色を変えたり、DNA操作をしたりすれば、繭自体に初めから色や蛍光を持たせることができるため、退色しない美しい絹織物を作ることもできそうだ。

2)陶磁器-有田焼の事例
 有田焼の産地、有田では、現代にマッチした製品を作るため、伝統の中に最新技術を取り入れようとしているが、*1-3のように、佐賀県窯業技術センターが、3Dプリンターで造形した立体モデルを焼成して陶磁器の成形品を得る技術を開発した。

 3Dプリンターでは、インクジェットノズルから吐出したバインダーで粉末材料を固める手法を採用し、有田焼と同じ天草陶石の粉末を使って成形品を造形したが、最初は成形品を取り出す際に崩れてしまい、流動性の確保とバインダーの固着性の向上などを実現して強度を高めていったそうだが、私は、その粉末に冷えると固まり焼くとなくなる接着剤を混ぜておけばよかったのではないかと考える。

 有田焼の場合も、3Dプリンターやインクジェットを使えば、名人はがっかりするかも知れないが、すでに著作権のなくなった過去の名品を高すぎない価格で再現したり、新しい作品を作ったり、書や絵画を有田焼にして残したりすることも可能になり、応用は多岐にわたるだろう。

3)林業の振興-新建材CLTの事例
 直交集成板(CLT)を使えば、*1-4のように、6、7階建ての木造中層ビルも容易に建てられるそうだが、現在は、鉄筋コンクリートよりも総工費が高くなるため使われず、その克服には需要拡大でCLT製造価格が下がる好循環を作るしかないそうだ。そして、欧州に遅れること20年で、日本でもようやく普及段階に入ったものの、普及速度が緩慢なのだそうである。

 日本では、良い方向への変化でも変えるのに20年以上かかり、他国よりもかなり遅れてから追いかけるため、変えようとした人には負担がかかり、最初にその事業にチャレンジしたパイオニア企業は倒産することが多い。これは、我が国で新規事業の利益率が低く、その結果、新規事業の開業意欲が低い一因だろう。そしてすぐ、政府の補助金頼みになるのだが、森林の育成には都道府県の森林環境税を投入しているため、林業は既に「役所が補助している産業」なのである。

(2)労働力としてのロボット
 中国の人民網が、*2-1のように、「超高齢社会の日本を支える『第4の労働力』」として、「日本人の中には、高齢者、女性、外国人という3つの労働力で問題を解決できると考える人もいるが、実際には第4の労働力としてロボットがある」と伝えているのは面白い。

 日本でも、パナソニックが「離床アシストロボット」「自立支援型起立歩行アシストロボット」を開発し、トヨタは歩行不自由な障害者の歩行や起き上がるのが難しい障害者のベッドの上り下り・トイレへの移動を支援するパートナーロボットを作成し、ホンダは利用者の動作に合わせてモーターで歩行を支援する歩行アシストロボットを作っており、今ではロボットが普及向上期に入ったのだそうだ。

 ちょうどEVへの転換で仕事がなくなるとされている自動車部品メーカーは、これまでに培った精密な技術を活かして、航空機やロボット部品などの新技術に転換すればよいだろう。

(3)エネルギーと自動車のイノベーション
1)エネルギーのイノベーション


2017.10.5佐賀新聞   スカイマークの  都道府県別      主要産業の
            民事再生法申請   倒産状況      倒産件数推移 

(図の説明:太陽光発電事業者の倒産は買取制限によって増加し、航空参入したスカイマークも民事再生法を申請した。右の2つは、2015年の都道府県別倒産状況と産業別倒産件数である)

 私が1995年頃に太陽光発電を提案して20年以上が経過し、ドイツは、*3-1のように、フクイチ以後、科学的・論理的に脱原発を行って自然エネルギーを進め、トランプ米大統領のパリ協定離脱表明を受けて離脱に反対する米国の州と連携して引き続き米国を取り込み、温暖化対策で国際協力を進めているのに対し、日本は太陽光発電による電力を制限しつつ原発を再稼働した。そして、これは、新興企業が既得権のある大企業と政府にひねりつぶされた一例となった。

 また、*3-2のように、2017年9月24日投開票のドイツ総選挙では、緑の党の結党以来の主張だった「脱原発」は国の方針として定着し、「ドイツのための選択肢(AfD)」以外はすべての政党が「脱原発」を前提として再生可能エネルギーの拡大を掲げ、緑の党は「2030年までに全電力の需要を再生可能エネルギーで賄う」という公約を打ち出したのだそうだ。私は、「2030年までに全電力の需要を再生可能エネルギーで賄う」という公約も、市場の選択によって前倒しで達成され、それが緑の党の存在意義だと考える。

2)自動車(輸送手段)のイノベーション

 

(図の説明:左は京都市内を走っている中国製のEVバス、真ん中は太陽光発電と組み合わせたEV乗用車、右はロボット掃除機で、どれも日進月歩だ)

 電気自動車も、私が1995年頃に提案して始まったのだが、日本では、何かとEVの邪魔をする世論が多く、ハイブリッド車しか普及しなかった。しかし、*3-3のように、中国ではガソリン車が禁止され、BYDのトップは「中国市場からガソリン車が消える時期は、2030年になる」という見通しを示したそうだ。私は、あらゆる点でEVの方が優れているため、市場の選択によって、変化はそれより早いと考える。

 そのため、トップを走っていた日本は、*3-4のように、仏英両国の2040年までの「脱エンジン」の方針を見て、「ここで競争に負けてはならない」などと言わなければならない羽目に陥っているのだが、「車の動きはもっとゆっくりだろう」と兎さんではなく亀さんの方が寝ている状態であるため、とても競争に勝てそうにはない。つまり、このような油断と誤った方針決定が、技術を遅らせ敗退させるのである。

 なお、*3-5のように、スマホはワイヤレス給電のものがあるため、自動車も駐車場に駐車してスイッチを入れれば充電され、レストランから出てきた時や買い物が終わってスーパーから出てきた時には充電が終わっているということになればなおさら便利だ。そのため、市民は、そういう設備のあるレストランやスーパーを選ぶことになりそうである。

<伝統産業のイノベーション>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/CMTW1709211100003.html (朝日新聞 2017年9月21日) (13)秩父銘仙(秩父市)
◇ハイカラ復活 新たな挑戦
 華やかなデザインと色彩で大正、昭和の女性を魅了した着物「秩父銘仙(めいせん)」=◎。夏目漱石の小説にも登場し、竹久夢二も大正浪漫漂う銘仙姿の女性をたびたび描いた。セメントや材木と並ぶ秩父の近代産業を代表した銘仙の復活へ、若い後継者たちがいま、新たな挑戦を続けている。
◇ほぐし織り 現代に生かす
 秩父市黒谷(くろや)にある織元「逸見(へんみ)織物」。工場を訪ねると、ガシャンガシャンとリズミカルに機(はた)を織る自動織機(しょっき)の音がにぎやかに響いていた。逸見織物は1927(昭和2)年、初代が皆野町の織元から独立して創業した。秩父銘仙協同組合によれば、昭和初期、秩父には約500軒の織元が年に約240万反(1反は約12メートル)を織り、約7割の住民が、養蚕を含む織物関連の仕事に従事していたという。「そこらじゅう機織(はたおり)の音が響いていた」と2代目逸見敏(さとし)さん(84)。銘仙は、絹の経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を交互に組み合わせた平織物の総称。大正、昭和に大流行した模様銘仙は「ほぐし織り」という高度な技法で作られる。1908(明治41)年に地元の坂本宗太郎が「ほぐし捺染(なっせん)」の技法で特許を取得。仮織りの糸をほぐしながら本織りするのでほぐし織りという。新技法は画期的で、型紙で捺染するため大胆でハイカラな柄を織れるようになった。ほぐし織りの工程はちょっと複雑だ。まず真っ白な経糸を並べ、本数と長さを整え(整経(せいけい))、整経した糸を仮織り機でざっと織る(仮織)。仮織りした経糸に、模様を彫った型紙を載せ、染料を塗る(捺染)と、経糸に柄が入る。「つなぎ」をかけ、本織りした糸を「蒸し」て色止め。最後に「整理」と「検査」を経て、反物に仕上がる。織物はかつて一貫生産されていたが、工場経営に変わると分業体制が進んだ。しかし今、各工程の職人の高齢化などで分業を維持できるか難しい状況もある。銘仙は戦後、復興や朝鮮戦争の好景気で日常着として人気を集め、物不足の時代に飛ぶように売れた。ガチャンと機が動くと万単位の金が入る「ガチャ万」と称された「糸へん景気」だったが、昭和30年代に洋装が中心になり、和服も銘仙も廃れた。秩父の織元も現在、数軒に減ってしまった。銘仙を織り続ける逸見織物は貴重なその一つだ。作家宇野千代さんの依頼で、ほぐし織りの桜模様の着物を製作。30年前に長女の恭子さん(49)が3代目を継ぎ、夏銘仙の復活など様々な試みを続けている。ほぐし織りの良さを伝えたいとの思いは秩父市中宮地町の「新啓(あらけい)織物」も同じだ。新井啓一さん(83)が1970年に創業。織り手の妻ヤスさん(85)とともに国認定の伝統工芸師だ。新啓織物では12年前、長男の教央(のりお)さん(49)が2代目を継いだ。インドなど世界や日本各地の織物を見て、ほぐし織りの魅力を再発見。デザイナーとして15年勤めた繊維商社を辞め、元同僚の妻園恵さん(51)ら一家で里帰りした。「両親が織る物は魅力的だと思う半面、携わっていない自分への疑問もあった」。しかし家業を継ぐことに啓一さんからは「苦労するから」と反対された。現実はその通りで、父が数時間でできる仕事が、1週間かけてもできない。「でも、昨日できなかったことが今日は少しだけできる。それが励みになった」。まもなく園恵さんも加わり立ち上げたのが、ほぐし織りのブランド「機音(ハタオト)」。新感覚の色柄の銘仙のほか、園恵さんのセンスで淡い色合いの反物を織りだしている。工場に捺染の仕事場も併設し、自社一貫生産も目指す。反物だけでなくストールやバッグ、綿や麻に素材を変えたほぐし織りも制作。銘仙を現代に生かすため、新たな魅力を探る。長瀞町の清流沿いに看板を掲げる「秩父織塾工房横山」も秩父銘仙の一貫生産を試みる。1920(大正9)年創業の工房には、2代目横山敬司さん(83)が関東一円の工場などから収集した織機類がぎっしり。まるで織機の博物館だ。戦後は夜具(やぐ)地や大手寝具メーカーの発注で大手百貨店に置く座布団カバーのほか、サンローランやエマニュエル・ウンガロなどライセンス物を手がけたが、「原点に返ろう」と草木染に力を入れながら銘仙復活を目指している。「日本は絹文化と生きてきた。絹と絹織物の文化の証しを残すのは自分の使命」と敬司さん。今は3代目の大樹(たいじゅ)さん(56)が敬司さんから一貫生産を目指して学ぶ日々だ。「銘仙の全工程を自分でできるようになりたい。それができる機械がそろっているから」。秩父銘仙は2013年、国の伝統的工芸品に指定された。100年以上の歴史があり、主要部分が手作業という条件を満たし、県内では春日部の箪笥(たんす)などに続く指定で、織物では初だ。逸見織物3代目の恭子さんは今、新企画「STYLE*MEISEN(スタイル銘仙)」に取り組む。秩父や栃木県足利市の職人、服飾デザイナーらと組み、銘仙を洋服に発展させようという試み。香港など海外でも展開し販路を広げる。「現代のファッションとして銘仙を復活させる、ジャパン・メイドの誕生です」
◎秩父銘仙
 絹の経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を交互に組み合わせた平織物「銘仙」は、秩父・足利・桐生・伊勢崎・八王子が五大産地。秩父銘仙の起源は織物の女神が創案した布「千千布(ちちふ)」に由来し、秩父の地名の語源の一つとされる。経糸を仮織りし、型紙を使って模様を先染めして本織りをする。経糸と緯糸の色の重なりが角度によって変化して見える玉虫効果が特徴。染めた糸に織るため表と裏が同じ柄になり、色あせたら裏返して仕立て直しができる。
《ちちぶ銘仙館》 秩父織物や銘仙の資料を収集・展示し、伝統技術の継承を目的に2002年にオープン。本館や工場棟は昭和初期の面影が漂う旧県秩父工業試験場の建物で、国の登録有形文化財。生糸をたぐる作業から織り上げるまで全工程を見学できる。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ0408U_U4A600C1000000/ (日経新聞 2014/6/9) ものづくり進化論:インクジェット、広がる用途 衣類や食品、医療にも
 液体をノズルから飛ばすインクジェット技術。これまでは紙に文字などを印刷する場合に使われることが多かったが、アパレルや食品の製造現場を変えようとしている。ノズルを搭載する先端部品(ヘッド)やインクの改良により、衣服に使う生地に直接柄や模様を描いたり、食品にカラーのイラストや写真を描いたりすることができるようになってきたからだ。医療分野での応用も進み始めた。
■製造工程、2カ月から3日に
 繊維製品を染色する捺染(なっせん)加工を営む工場が集積するイタリア北部のコモ地区。工場の中では、大型のインクジェットプリンターが24時間稼働し、高級シャツやネクタイを量産している。コモ地区では工場の2割程度が、染料と溶剤をまぜた糊(のり)や原版を使う伝統的な捺染から、インクジェットプリンターによる量産に移行しているとされる。長野県諏訪市に本社を置くセイコーエプソンがインクジェット技術をコモのメーカーに提供、同社が印刷機を製造した。従来の捺染方式と違い、版を製造したり、洗浄したりする必要がなく、直接模様などを描くことができるため、1.5~2カ月かかっていた製造工程を、3日~2週間程度まで短縮できる。ぎりぎりまでデザインをいじれるため、「工場の方にデザイナーが(インクジェット方式の導入を)要求することが多い」(インダストリアルソリューションズ事業部の有賀義晴課長)という。エプソンの装置が捺染に使えるのは、同社のインクジェット技術が多様なインクに対応できるからだ。インクジェットには加熱で作った気泡で液体を吐出する「サーマル方式」と、電圧をかけると変形するピエゾ素子にスポイトのような働きをさせて液体を吐出する「ピエゾ方式」があり、エプソンは後者を採用している。印刷画質での違いはないとされるが、ピエゾ方式は液体に熱を加えないためインクの自由度が高いのが特徴だ。そのため、技術供与した製品やエプソンが2013年に自社製造・販売を始めた捺染プリンター「シュアプレスFP―30160」は、絹や羊毛に向く酸性インクや、麻や綿に向く反応インクなど粘度が異なる様々な液体を飛ばすことができる。07年には半導体の微細加工技術を取り込んで開発した新型ヘッドを発表。インクを出すノズルの設置密度が従来機種の2倍で、小型になったうえ印刷の速度や精度も上がっている。同ヘッドを搭載したシュアプレスFP―30160は従来機種に比べて製品自体の体積が半分程度、大きさも3分の1程度だ。
■食べられる印刷
 エプソン以外にも長野県の中信地域にはインクジェット装置を独自で開発するメーカーが多い。特殊プリンターを製造・販売するマスターマインド(塩尻市、小沢啓祐社長)は食品に絵や写真を印刷できる「フードプリンター」を扱う食品業界で有名なメーカーだ。創業者である小沢千寿夫氏が地元の農家に「りんごに印刷できる?」と話を持ちかけられたのが開発のきっかけだ。そこで特殊な液で下塗りをして印刷をしたリンゴを持っていったところ「これ食べられないの?」と聞かれたので、「食べられる印刷」ができる装置の開発に乗り出したという。食品に色をつける「色粉」を液体に混ぜるだけだと、プリンターのヘッドに詰まりやすい。同社はインクメーカーと協力し、食物油の量や種類を工夫し、詰まりにくいインクを開発した。食品に模様を付けるには、焼きゴテを使って食品の表面を焦がしたり、可食インクを判子を押すように食品に載せる手法などを使うのが一般的。だが、専用の焼きゴテを作るのに3万~4万円かかったり、圧力で食品が割れてしまったりするのが難点だった。デジタルデータをもとに印刷するインクジェット方式なら、少量多品種にも対応できるほか、食品を変形させる心配もない。核となるプリントヘッドの部分は、大手のプリンターメーカーの製品を使っているが、食品をヘッドの下で搬送するベルトコンベヤーの制御技術は独自のものだ。同社は6月10日に始まる国際食品工業展「FOOMA JAPAN2014」でフードプリンターの新製品を発表する予定だ。食品を搬送するベルトコンベヤーの幅を2倍の60センチメートルにすることで、製造速度を2倍近くに高めた。大手菓子メーカーの工場にも営業をかける。ご当地ゆるキャラの流行でキャラクターをデザインしたお菓子の需要は増している。また「2020年には東京五輪の開催もある。需要は間違いなく伸びる」(営業部の芦田賀浩課長)という。研究所向けのインクジェット装置を開発・販売するマイクロジェット(塩尻市、山口修一社長)はこのほど、液体の吐出の仕方を自動調節できる新製品を開発した。装置に新材料を入れると電圧のかけ方や電流波形を変えて何度か試行的に吐出し、カメラで飛散の仕方などを捉える。装置にはいくつかの材料の飛散に関する基本データを盛り込んだソフトウエアがあらかじめ組み込まれており、このソフトが基本データを参照しながら、カメラが捉えた画像を吟味して吐出の最適条件を自動的に決める仕組みだ。
■研究開発向けでも脚光
 インクジェット装置は、一定量の液体を精密に出すことができるので、ナノ金属インクによる電子回路の作製やDNAやたんぱく質によるバイオチップの製作など、高価な液体を使う研究開発分野でも使われ始めている。吐出条件を自動調整できれば、材料のロスを抑制できる。同社は5月にはドイツの企業と連携し、液体の流路となるパイプを交換できるヘッドも発売した。薬剤を変えるなど実験内容を変えても、パイプを交換しながら使用を続けることができるため、部品全体を交換するのに比べて費用は3分の1以下で済むという。ものづくりのデジタル化は今後ますます進む。注目が集まる3Dプリンターが速度や精度の面でまだ「量産」に使える水準にないのに対し、インクジェット装置の一部はアナログなものづくりに比べて速度も精度も遜色がないレベルに来ている。製造業や研究所への普及が加速しそうだ。

*1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO91640500R10C15A9000000/ (日経新聞 2015/10/6) 3Dプリンターで有田焼 伝統工芸、デジタルで革新
 佐賀県窯業技術センターは、3Dプリンターで造形した立体モデルを焼成して陶磁器の成形品を得る技術「C3DPO(Ceramic 3D-Direct Print-Out)」を開発した(図1)。石膏型に液状の泥である「泥漿(でいしょう)」を流し込んで硬化させるという従来の成形方法に比べて、大幅な工程短縮や低コスト化、複雑なデザインの実現などが期待できる。
■有田焼と同じ材料
 3Dプリンターとしては、インクジェットノズルから吐出したバインダーで粉末材料を固める手法を採用する市販の装置を導入。この装置で、有田焼と同じ天草陶石の粉末を使って成形品を造形した。開発を始めた当初は、成形品をうまく固めることに苦労したという。粉末材料が3Dプリンター用の純正品とは異なるため、成形品を未硬化の粉末から取り出す際に崩れてしまうのだ。粉末粒径を均一化するなど試行錯誤しながら、流動性の確保とバインダーの固着性の向上などを実現して強度を高めていった。その結果、3Dプリンターで成形品を得られるようになったが、それで有田焼の製品が完成するわけではない。成形品を素焼きし、下絵付けと施釉(せゆう:釉薬を施すこと)をした上で本焼成。さらに上絵付、上絵焼成という工程を経て初めて製品となるからだ。最終的に求められるのは、製品としての品質である。実際、3Dプリンターによる成形品を素焼きしたところ、当初は崩れてしまうことが多かったという(図2)。そのため、従来の石膏型による成形品を焼成する場合とは異なる条件を見出す必要があった。具体的な温度は明らかにしていないが、温度や焼成時間などを試行錯誤することで、陶磁器として完成させることに成功した(図3)。このように、陶磁器の成形品を3Dプリンターで造るためには、3Dプリンターに関する造形条件の工夫だけでは済まない。特に、成形品は製品になる前の中間品である。陶磁器の製造プロセスを構成する他の工程においても、従来とは異なった手法を見出し、それと組み合わせることが求められた。
■シート積層法で原型を造形
 実は、佐賀県窯業技術センターにおける3Dプリンターの活用はこれが初めてではない。まず取り組んだのが、石膏型を造るための基となる原型を3Dプリンターで造ることである。紙をカッターで切断し、積層していく方式の3Dプリンターを10年以上前に導入し、実際の製品に適用した(図4)。ただし、造形後に不要部分(原型ではない部分)を削除したり、角度によっては表面を滑らかにしたりする手作業が必要だったことなどがネックになった。さらに、造形後に時間がたつと変形してしまうこともあったため、原型での活用は続かなかったという。その後、しばらく3Dプリンターの適用は考えず、3Dデータを使って石膏型を切削加工することに取り組んだ(図5)。しかし、型を使う以上は抜き勾配という形状の制約はどうしても発生する。原型や石膏型ではなく、成形品を直接3Dプリンターで造れれば、その制約はなくなる。3Dプリンターの機能や性能が向上したことも踏まえ、再度チャレンジしたことで実現したのがC3DPO技術である。
■熟練技能者の減少対策にも
 有田焼は2016年に創業400年を迎える。近年の売り上げ減少や熟練技能者の減少といった課題にさらされる中、3Dプリンターの活用はこれらを解決する手段の1つになるかもしれない。例えば、3Dプリンターによって直接、成形品を得られることは、複雑な形状だけでなく、ごく少量や単品の生産も容易にする。型のコストを大量生産で吸収する必要はないからだ。一般消費者によるオーダーメード・システムなど、新しいビジネスモデルや市場を開拓できる可能性が広がる。現状では「完全に磁器化していないため、強度が不足している」(佐賀県窯業技術センター陶磁器部デザイン担当係長の副島潔氏)ことが課題だという。今後、さらに造形条件や焼成条件などのノウハウを蓄積して、3Dプリンターを活用した陶磁器の製造技術を確立していく考えだ。

*1-4:https://www.agrinews.co.jp/p41984.html (日本農業新聞 2017年9月23日) 新建材CLT普及 林業振興へ加速化急げ
 政府が国産材活用で期待する直交集成板(CLT)だが、普及はまだほとんど進んでいない。コスト高が障害になっている。CLTを使えば6、7階建ての木造中層ビルを容易に建てられるものの、鉄筋コンクリートより総工費が1割ほど高い。その克服には、需要拡大でCLT製造価格が下がる好循環を早くつくるしかない。林業振興に向け、政府は思い切った普及加速支援を急ぐべきだ。CLTは、ひき板を交互に積層接着したパネルで強度がある。壁や床にすれば、柱なしで中層の木造施設を建てられる。鉄筋コンクリートに代わって大量のCLTを使うようになれば、国産材の需要が大きく増えて林業振興に直結する。政府が目指す「林業の成長産業化」の切り札になり得る。CLTの日本農林規格(JAS)が制定され、国内初建築となった2013年が「CLT元年」とされる。昨春に国土交通省が建築基準を整えたことで、CLTは新建材として一般的に使えるようになった。欧州に遅れること20年。日本でもようやく本格的な普及時代に入った。しかし、その普及は緩慢だ。今年3月末までに国の支援を受けて建てられてCLT施設は、全国で51棟にすぎない。ほぼ半数の22府県は皆無だ。国内のCLT8工場の経営は厳しい。稼働率は昨年度がわずか1割で、今年度も3割がやっとの見込みだ。稼働率を高める需要拡大がないと、工場の存続自体が危ぶまれ、製造価格も下がらない。政府は、CLT生産体制を7年後の24年度までに年間50万立方メートルとする目標を掲げている。国内工場における昨年度の製造能力の10倍、製造実績の100倍に匹敵する。この量産体制を実現すれば、CLT製造価格を半減でき、建築工費を鉄筋コンクリート並みにできる算段だ。この目標を必達してこそCLTは独り立ちでき、木造ビル新時代に入る。欧州連合(EU)では来年、CLT生産量が日本の目標の2倍になると推計され、上昇飛行が続く。CLTのオフィスビルやマンション、ホテルなどが次々と建つ。木造は地球環境に優しく、社会的貢献の高いメッセージ性がある。日本は短期間で欧州に追い付かなければいけない。だが、わが国ではCLTは離陸後も低空飛行だ。会社や自治体、個人などの建築発注者が、鉄筋コンクリートに比べたコスト高にひるみ、二の足を踏んでいる。国交省や林野庁などにCLT建築のコスト高を埋める補助金があるが、財源が限定的で普及に弾みがつかない。今はCLT建築の発注増が何より肝要だ。量産によってCLT製造価格が下がれば、それがまた注文を呼ぶ。その経済的循環の早急構築が欠かせない。政府は今年1月に普及の新たなロードマップを示したが、悠長ではいけない。補助金増額をはじめ施策の集中的投入による普及の加速化が求められている。

<労働力としてのロボット>
*2-1:http://qbiz.jp/article/117436/1/ (西日本新聞 2017年8月28日) 中国・人民網おすすめ記事:超高齢社会の日本を支える「第4の労働力」とは
 よく知られているように、日本は深刻な高齢化社会の国だ。人口高齢化にともなう深刻な労働力不足にどう対処したらよいだろうか。日本人の中には、高齢者、女性、外国人という3つの労働力で問題を解決できると考える人もいる。そして実際にはこれ以外に第4の労働力といえるものがある。それはロボットであり、決して冗談を言っているわけではない。「光明日報」が伝えた。日本はこれまでずっと高齢者の生活を支えるロボットの開発を積極的に進め、この分野では世界のトップレベルにある。パナソニック、トヨタ、ホンダといった大企業が相次いで主業務と無関係にみえる介護ロボットの開発に乗り出している。報道によると、パナソニックは車いすと介護ベッドが誘導した新発想の「離床アシストロボット」を開発した。ベッドの高さ、背上げの角度、アームレストの高さを調節でき、ベッドから車いすを分離することが可能だ。車いすは眠ることはもちろん、自動的に血圧や体温をはかる機能も搭載されている。パナソニックが開発した自立支援型起立歩行アシストロボットは高齢者の小さな動きを検知し、この情報に基づいて高齢者の状態を予測し、ベッドからトイレへの移動、ベッドからイスへの移動を支援する。内蔵のモーターが足りない力だけをアシストして、高齢者の自立的動作を支援するため、筋肉の衰えを防ぐことができる。医療者や介護者の負担を軽減し、被介助者にとっても福音といえる。トヨタが打ち出した4種類のパートナーロボットは、下肢麻痺で歩行が不自由な障害者の歩行を支援したり、起き上がるのが難しい障害者のベッドの上り下りやトイレへの移動を支援したりする。そのうちの1つでロボット脚を備えた「ウェルウォークWW‐1000」シリーズは、ロボット脚を膝下部分に装着し、ベルトで太もも、膝、足首、脚にしっかりと固定して、膝の曲げ・伸ばし運動を補助するものだ。ホンダが開発した歩行アシストは、バッテリーを内蔵した腰フレームを腰に巻き、下に伸びた大腿フレームを膝に固定する。利用者の動作に合わせ、モーターで歩行を支援する。利用者の脚の動きを検知して、約1キログラムの力で前後の移動を支える。特定の病気の患者の歩行を支援するだけでなく、高齢者の日常的な動作も支援することができる。日本には脳血管障害の後遺症やパーキンソン病により歩行が不自由な患者が40万人以上いる。こうしたロボットの登場は歩きたいと強く願ってきた人々にとってうれしいニュースだ。
●ロボットの応用は普及段階へ
 介護ロボットは日本のロボット研究の1分野に過ぎない。日本のロボット発展は短い揺籃期を経て、急速に実用期へ突入し、今では普及向上期に入った。日本はロボット産業に極めて大きな期待を寄せており、ロボットを日常生活、公共サービス、工業生産の中で人により近づいたツールにすることを目指している。日本政府は中小企業に対して積極的な経済的補助政策を打ち出し、小規模企業に出資してロボット応用の専門的な知識や技術を身につける指導などを行い、応用ロボットの一層の発展と普及を奨励し、ロボット産業に取り組む企業の積極性を高めている。日本政府の予測では、2020年には日本のロボット産業の規模は2兆6700億円を超え、12年の4倍以上になるという。日本政府が15年に発表した「ロボット新戦略」では「アクションプラン−五カ年計画」が制定され、製造業、サービス業、農林水産業、医療・介護産業、インフラ建設、防災などの主要応用分野をめぐって、ロボットの技術開発、標準化、実証実験、人材育成、ロボット規制改革の実行など具体的な行動が打ち出された。日本は各分野のロボット化推進を通じて、作業の効率と質を大幅に向上させ、製造業やサービス産業などの国際競争力を強化するとともに、「少子高齢化」がもたらす一連の問題の解決をサポートしたい考えだ。注目されているのが、日本のロボット研究の第一人者で「日本の現代型ロボットの父」などと呼ばれる石黒浩氏が、人間そっくりのアンドロイドの研究を続けていることだ。石黒氏によれば、「ロボットは人間を模倣しなければならない」という。なぜなら人の理想的な対話型インターフェースは人であり、人間の脳は人を認識することができ、人間にとって最良の対話方式は人と人との対話にほかならないからだ。そこで人間そっくりのアンドロイドを研究し、人と機械がいかに対話するかを研究している。人間との密な対話が必要な多くの分野では、アンドロイドなら暮らしのニーズにかなり応えられる。特に高齢者や子どもに医療行為や介護を行う場合は、アンドロイドなら利用者の世界に入っていけるという。石黒氏が指導する研究計画では、さまざまなタイプのアンドロイドと高齢者、子どもとの対話が行われている。石黒氏はかつて、「自分のチームが発見したのは、高齢者でも子どもでも、アンドロイドに反感を抱く被験者はいなかったということだ。アンドロイドは認知症や自閉症の患者の介護で、大きな役割を果たすことができると確信する」とも述べている。

*2-2:http://qbiz.jp/article/118392/1/ (西日本新聞 2017年9月9日) 拠点国内回帰進む キヤノン宮崎に新工場 カメラ生産九州に集約 自動化で競争力強化
 キヤノン(東京)が、宮崎県高鍋町にデジタルカメラ製造などを担う新工場を開設するのは、生産拠点の国内回帰の一環だ。同社の国内でのカメラ工場設立は、2008年の長崎キヤノン(長崎県波佐見町)以来。九州に生産拠点を集中し、カメラ組み立ての自動化などを進めた最新鋭の工場を新設することで、競争力を強化する。「カメラはできるだけ日本に残そうと、生産技術を磨いていた。為替が1ドル=100円以上(の円安)であれば採算に合う」。8日に宮崎県庁であった記者会見でキヤノンの御手洗冨士夫会長はこう強調した。同社は現在、カメラ工場を国内に4カ所、海外に3カ所展開。国内は全て九州で、大分県に2カ所、長崎県に1カ所、宮崎県に1カ所ある。キヤノンは国内生産を維持するなどの狙いから、生産の自動化によるコスト削減を進めてきた。16年には、大分キヤノン安岐事業所(大分県国東市)に、自動化に向けた生産技術の研究開発拠点となる「テクノ棟」を設立。九州をカメラ生産の本拠地と位置付けている。今後は、宮崎キヤノンが運営する新工場と、大分キヤノンや長崎キヤノンとの連携を進め、市場動向に伴う需要の変化にも、柔軟に対応できる生産態勢を構築するという。御手洗会長は「今は64〜65%が国内生産。高鍋ができれば70%になると思う」との見通しを示した。一方、新工場の進出先である宮崎県高鍋町の黒木敏之町長は「キヤノンが高鍋町に工場を建てることで、雇用やにぎわいが生まれ、知名度が上がり、町民みんなで歓迎している」と語った。宮崎キヤノン従業員の雇用が維持されることについて、同県の河野俊嗣知事は「全体の雇用が守られるということでありがたい」と話した。 
   ◇   ◇
●製造業回帰広がる
 日本の製造業は2012年ごろから国内回帰の動きが出始め、15年ごろから本格化した。パイオニアは日本市場向けのカーナビ製造の一部をタイから青森県十和田市の工場に移管し、ダイキン工業は中国企業に委託していた家庭用エアコン生産の一部を滋賀県草津市の工場に切り替えた。JVCケンウッドも高級ホームオーディオの生産をマレーシアから山形県鶴岡市の工場に移している。経済産業省の調査によると16年には海外生産を行っている製造業の11・8%が国内に生産を戻した。移管元は中国・香港が66%を占め、人件費の高騰が後押ししているという。

<エネルギーと自動車のイノベーション>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201707/CK2017070602000136.html (東京新聞 2017年7月6日) ドイツ環境相の寄稿全文 「脱原発通じて独は多くを学んだ」
 ドイツのヘンドリクス環境・建設・原子力安全相(65)が本紙に寄稿し、トランプ米大統領が地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」から離脱表明したことを受け、離脱に反対する米国の州による「米国気候同盟」と連携して引き続き米国を取り込み、温暖化対策での国際協力を進めていく考えを表明した。パリ協定履行に向け、トランプ政権との対立も辞さない決意を示した形だ。
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 一年あまり前に福島第一原発と周辺地域を訪れ、原子力の利用はいかに甚大なリスクを伴うのかを目の当たりにしました。二〇一一年三月十一日、海底地震が引き起こした津波は日本沿岸を襲い、広い地域が荒野と化し、二万人近い住民の方々が亡くなったり、行方不明になったりしました。その後の数日間に福島第一で起きた原発事故は大惨事となり、当時のドイツで、政治における考え方を根本的に改める契機となりました。ドイツ政府は、国内の原発の運転期間延長を決定したばかりでしたが、政策転換に踏み切り、原発八基の運転を停止し、残り九基も段階的に稼働停止することを決めました。これにより遅くとも二二年末にはドイツの全ての原発が停止することになります。この決定でドイツでは再生可能エネルギーが大幅に拡大しただけでなく、国内の政治論争が納得いく形で収束し、エネルギー政策、気候変動政策の将来のあり方が示されました。ドイツのエネルギーシフトは、同様の計画を進める他国にとってモデルケースとなるだけではなく、むしろドイツ自身が他の部門や業種で構造改革を行う際に役立つ多くのことを学んでいます。ドイツは五〇年までに温室効果ガスニュートラル(排出量と吸収量を相殺)を広範囲で実現しなければなりません。そのために必要な変革を社会とともに形づくり、新たなチャンスが生まれ、皆が社会的、経済的、そして環境的に持続可能な行動をとるようになることを目指しています。この枠組みを定めるのが、一六年末に、パリ協定履行のため長期戦略として策定された「地球温暖化対策計画2050」です。この計画は、経験から学ぶ過程を打ち立て、定めた道筋が削減目標達成のために適切かどうかを定期的に検証することを盛り込んでいます。また、計画は欧州連合(EU)の気候変動政策にも合致しています。ドイツの三〇年温室効果ガス排出削減目標の「一九九〇年比で少なくとも55%削減」も、EUの二〇三〇年目標のドイツ分担分に相当します。エネルギー需要を再生可能エネルギー源で全て賄うまでは、エネルギー部門で脱炭素化を推進するため、特にエネルギー効率を大幅に高める必要があります。これに関してドイツはこれまで日本から学び、今でも活発な交流を続けています。資源効率性の向上もまた、日本とドイツが協力して国際的に取り組んでいるテーマの一つです。日本との協力関係が、二国間でも、また先進七カ国(G7)、二十カ国・地域(G20)といった多国間の枠組みでも築けていることは非常にうれしいことです。昨年の「脱炭素社会に向けた低炭素技術普及を推進するための二国間協力に関する日独共同声明」は、長期的課題や温暖化対策のさらなる局面において、両国が共に進むべき道を示しています。米国政府がパリ協定からの離脱を決定したにもかかわらず、もしくは離脱決定があったからこそ、新たな協力関係が生まれています。ジェリー・ブラウン米カリフォルニア州知事とはつい最近、共同声明に署名を交わしました。知事は、パリ協定を順守するための州の組織「米国気候同盟」で主導的な役割を担っています。パリ協定は現米国大統領の在任期間を物ともせず存続し続けていくと、確信しています。ドイツは、特にフランスをはじめEU内で、そして日本、中国、インドとも協力し、地球温暖化対策をさらに推進したいと考えています。G7ボローニャ環境相会合の共同声明は、協力関係を国際的にどう展開していくのかを示しています。ドイツが議長国を担うG20でも必ずや野心的な成果が得られることでしょう。今年九月にドイツでは連邦議会選挙が行われます。どの政党が政権を担うことになっても、ドイツの温暖化対策の取り組みは変わることなく、場合によってはより野心的目標を掲げ継続されるのは間違いありません。ドイツの経済産業界も確固たる意志でこの政策を受け入れています。日本とドイツは将来も必ず、両国の温暖化対策技術をさらに進展させていくでしょう。(バルバラ・ヘンドリクス=ドイツ環境・建設・原子力安全相)

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/ASK950P7XK94UHBI03T.html (朝日新聞 2017年9月10日) 脱原発「当たり前」、緑の党の支持下落 ドイツ
 24日投開票のドイツ総選挙で、緑の党が「2030年までに全電力の需要を再生可能エネルギーで賄う」との公約を打ち出している。結党以来の主張だった「脱原発」が国の方針として定着。緑の党は支持率が下落傾向にあり、さらに野心的な公約を掲げて党勢回復を狙っている。ドイツでは再生可能エネルギーの発電割合が約3割だが、石炭火力も4割、天然ガスも1割を占める。公約では現在100以上ある石炭火力発電の設備のうち、効率の悪い20設備を即座に停止し、30年までに全て廃止する目標だ。再生可能エネルギーシフトには経済界から、「供給が不安定で、急速な拡大は経済活動に影響する」(ドイツ産業連盟のデニス・レントシュミット博士)との懸念があるが、緑の党のベルベル・ヒューン連邦議会議員は「蓄電池の開発や電力需要のコントロールで、安定化させることは可能だ」と強気だ。ドイツ政府は東京電力福島第一原発の事故をきっかけに、22年までの全原発停止を決めたが、今回の選挙では、議席獲得が予想される政党のうち、新興右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」を除くすべての政党が「脱原発」を前提として、再生可能エネルギーの拡大を掲げている。世論調査では、他政党も環境や気候保護をテーマにしているので「緑の党はもはや重要ではない」との意見に57%が「ほぼ同意する」と回答。新たな目標の設定は、存在意義をかけた闘いと言えそうだ。

*3-3:https://www.nikkei.com/article/DGXLZO21456050S7A920C1FFE000/ (日経新聞 2017/9/23) ガソリン車禁止でBYDトップ「中国の車、30年に電動化」、自社電池を外部供給
 中国最大手の電気自動車(EV)メーカーである比亜迪(BYD)のトップの王伝福・董事長(51)は日本経済新聞などのインタビューに応じ、中国市場からガソリン車が消える時期が2030年になるという見通しを示した。中国政府は9月上旬、将来ガソリン車を禁止する意向を表明し、時期は検討中としていた。政策立案にも関わる王氏の発言から今後、急拡大が予想される中国EV市場の内情を読み解く。王氏は21日のインタビューで、中国のガソリン車の廃止時期について「車種別に工程表を決めることになるだろう」と語った。具体的には「20年に公共バスが全面的にEVに代わり、25年にトラックなど特殊車両、30年には全ての車が電動化するだろう」と述べた。その上で、中国のガソリンは現在62%を輸入に依存していると指摘し、「国家の安全上、中国はどの国よりも早く(ガソリン車禁止の)期限を公表し、EVの拡大を急ぐ必要がある」と語った。英国とフランスは40年までにガソリン車などの販売を禁じる方針を示しており、王氏の見解通りなら、中国はそれより早く大きな転機を迎える。王氏は、中国EV最大手として「これまでも先頭に立ち、政府に(EVなどの)政策を提案し、政策を推し進めてきた」と強調。王氏の意向は今後のEV関連の新政策にも、強い影響を与えていくとみられる。実際、王氏は「我々の強みは中国の政策に精通していることだ」と語る。エコカー推進役として政府の信頼も絶大だ。すでに手厚い補助金の後押しを受け、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)の「新エネルギー車」(新エネ車=NEV)の販売は昨年、前年比7割増の9万6千台へと急激に膨らんだ。中国政府は今後、中国新車市場が25年に16年比で25%増の約3500万台に達すると予測する。そのうち20%以上を新エネ車とし、700万台の販売を目指す計画だ。普及のカギを握るのは政府が18~19年に導入を予定する「NEV規制」だ。中国でガソリン車を販売するメーカーに対し、販売量に応じて一定量の新エネ車販売を義務付けるものだ。これまで中国政府は、多額の補助金をほぼ自国メーカーのみに使い、市場を独占させてきた。一方、支援のない外資は中国で新エネ車の体制整備が遅れた。そのため厳しいNEV規制をクリアするには、市場をリードする中国のEVメーカーからクレジットと呼ばれる権利を購入しなければならないケースもある。NEV規制の建前は、あくまで環境規制の強化だ。だが実際は中国企業をクレジットでもうけさせ支援するものとも指摘され、外資から反発の声が上がるのが裏事情だ。BYDはNEVの導入後の3年間だけで、クレジット販売で少なくとも140億元(約2400億円)の利益を手にするという試算もある。そんな同社の株価は連日上昇し、香港証券取引所では21日終値は71.65香港ドルと、今月に入り53%も上昇する過熱ぶりだ。当の王氏も「NEV導入は政府の補助金支援に代わる新しい我々への(支援)政策と理解している。利益がどれだけかは不明だが、トップメーカーとして恩恵は受けるだろう」と語った。中国政府はNEVの導入で新エネ車市場の拡大と中国メーカーの後押しを一挙にもくろむ。16年の50万台から25年には700万台へ急拡大を見込んでいるが、課題は無いのか。これに対し、王氏は「電池生産には巨額投資が必要で、最大の今の課題は電池の供給能力だ。このままでは20年以降、市場全体で電池が足りなくなる」と指摘した。対応策として「すでに現在、複数社と合弁生産や自社で生産する電池の外部供給、協力体制について交渉中で、大きなプロジェクトになる」と明かした。さらに独ダイムラーとのEVでの提携関係も一段と強化し、「新モデルの投資を今後行う」とも述べた。政府はNEV規制導入の詳細を近く公表する。外資各社はその動向を固唾をのんで見守らざるをえない状況だ。

*3-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170910&ng=DGKKZO20957690Z00C17A9EA1000 (日経新聞社説 2017.9.10) 電気自動車時代の足音が近づいてきた
 電気自動車(EV)シフトの動きが世界的に高まっている。日産自動車はEV「リーフ」の初のフルモデルチェンジを実施し、西川広人社長は「日産のコアになる車」と表明した。米国ではテスラが50万台という破格の予約を集めた「モデル3」の納車を始めた。メーカーだけでなく各国政府もEVの普及に熱心だ。仏英両国は2040年までにガソリン車などの販売を禁止する「脱エンジン」の方針を打ち出した。中国やインド政府、あるいは米国でもカリフォルニアをはじめとする有力州がEVの普及を後押ししている。以前のEVブームは尻すぼみに終わったが、今回は本物だろう。日本としてもここで競争に負けて、基幹産業の自動車を失うわけにはいかない。EV化の波を「脅威」ではなく、電池の部材や車の新素材、関連する電子部品など幅広い産業を浮揚させる「好機」ととらえ、変化を先取りしたい。ただ、いたずらに慌てる必要はない。携帯端末の世界では、スマートフォンがいわゆる「ガラケー」に取って代わるのに10年もかからなかったが、車の動きはもっとゆっくりだろう。米金融大手のゴールドマン・サックスは2040年時点でも世界の新車販売におけるEVの比率は32%にとどまり、エンジン車の45%を下回ると予測する。電池の性能向上や量産体制の確立、さらにリチウムやコバルトなど電池に使用される金属資源の増産にはかなりの時間が必要になる。使用済み電池のリサイクル技術の確立も未解決の課題だ。とはいえ変化の波は確実に押し寄せる。過去100年続いた「エンジンだけが車の動力源」だった時代が終わる衝撃は予想以上に大きいかもしれない。独自動車工業会などは「エンジンがなくなれば、ドイツ国内で60万人以上の雇用が影響を受ける」と試算した。日本でも「脱エンジン」の加速で、一部の自動車部品メーカーなどが痛みを被る恐れはある。こうした負の側面の一方で、EV化は電子部品や軽量な炭素繊維などの需要を広げるだろう。EVは自動運転技術との相性がよく、機械が人の運転手をサポートすることで、交通事故が大幅に減る可能性もある。そして何より排ガスがゼロになるので、新興国を中心に大気汚染に苦しむ地域には朗報だ。EV時代の足音を、冷静に前向きに受け止めたい。

*3-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170910&ng=DGKKZO20925630Y7A900C1MY1000 (日経新聞 2017.9.10) スマホ・車 どこでも充電、置くだけ 走るだけ 感電なし
 電線を使わずに電気を送るワイヤレス(無線)給電が身近になりつつある。電動自転車などに電気を供給する国内初の実験が始まったほか、人気スマートフォン(スマホ)の最新型にも搭載されるとみられている。宇宙空間でつくった電気を地上へ送る研究もある。いつでもどこでも電気が充電できる「電線のない社会」が実現するかもしれない。京都府南部に位置する精華町役場。今年3月、新しい電動自転車が登場した。見た目は普通の自転車だが、前カゴに板状の受電装置があり、専用の送電装置の前に駐輪すると無線を受けて充電できる。無線は電子レンジにも使うマイクロ波を使う。充電は安全面を考慮し職員がいない夜間だけ。1回の充電で約25キロ走れる。同町は研究所が点在する関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)があり、業務に自転車は欠かせない。森田吉弥健康推進課長は「重いバッテリーを取り外す手間が省けて便利だ」と話す。同町では5月、役場の5階にある企画調整課内の壁に貼り付けた温度計へ無線給電する実験も始めた。配線が難しい壁近くの温度が簡単に分かり、空調を管理しやすい。得られたデータは高齢者施設で入居者の体調などを把握するセンサーの開発に役立てる。これらの装置は京都大学と三菱重工業、パナソニックが共同開発した。いずれも政府の国家戦略特区で電波法の規制緩和を受けた国内初の実証実験だ。篠原真毅京大教授は「無線給電の普及に向けた大きな一歩になる」と強調する。電気自動車(EV)も無線給電の用途として期待されている。三菱電機は2つのコイルの間で磁界の変化を介して電気を伝える「電磁誘導方式」で、高効率の無線給電装置を開発した。「自宅に設置した太陽光発電との間で、電気を簡単に融通できる」(同社)。英国の高速道路では、走行しながら充電できる専用レーンの計画も進む。EVと無線給電の組み合わせにより、燃料補充の心配がない、新しい自動車社会が誕生しそうだ。実用化が先行するのは携帯電話だ。電磁誘導方式を採用する。普及を後押しするため、中国語で「気」の意味を表す「Qi(チー)」という規格が2010年に始動した。世界の携帯機器や自動車のメーカーなど約240社が、同規格を運営するWPCという団体に参加している。欧米を中心に、互換性のある製品が200点近く市場に出ている。今年2月には、米アップルがWPCに加盟した。9月12日に発表するスマホ「iPhone(アイフォーン)」の新型に同規格による機能が搭載されるとみられている。篠原教授は「無線給電の知名度が一気に上がる」と期待する。Qiの送電能力は現在15ワットまで。60ワット、120ワットと能力を上げていく計画だ。能力が高まれば携帯電話から照明やテレビ、パソコン、掃除機まで用途が広がる。家庭から電源コードがなくなるかもしれない。同規格の日本代表を務めるロームの鈴木紀行通信スマートデバイス課長は「新サービスが生まれたり、生活が便利になったりする」と話す。コンセントが要らず、水にぬれても感電の心配がないため、喫茶店のテーブルに置くだけで充電したり、屋外の自動販売機などから電気をもらったりもできる。充電機能を売りにした机や照明機器、カバンなども登場しそうだ。こうした商品が身の回りにあふれれば、「充電」という意識すらなくなるかもしれない。地球規模の研究も進んでいる。京大の石川容平特任教授は宇宙空間で太陽光により発電し、地上に送る「宇宙太陽光発電」技術の実現を目指している。静止軌道に浮かべた太陽光パネルで電気をつくって、海中に設けた装置にマイクロ波で送り、いったん蓄えた後に、陸上へ送電する構想だ。石川特任教授は「世界全体を網羅して安定的に電力を供給する全く新しい送電網が実現できる」と力を込める。大きな期待が集まる無線給電にも課題はある。一つは安全性だ。電磁波の人体影響に詳しい京大の宮越順二特任教授は「長期の評価はまだ十分ではない」と指摘。篠原教授と協力し今年度からマイクロ波による影響研究を始める。もう一つは電波を扱う規格だ。携帯電話使用時に発生する電磁波との干渉が指摘されている。普及には電波法を見直す必要があるが、日本は欧米に比べて出遅れており、国内メーカーは危機感を抱く。無線技術の進歩で生まれた携帯電話はこの数十年で、ビジネスや生活スタイルを大きく変えた。「第2の無線技術」といえる無線給電が普及すれば、新たな経済社会が生み出されるだろう。

<医療のイノベーション>
PS(2017年10月4日追加):医療もイノベーションを繰り返してきた伝統産業と言えるが、私は衆議院議員時代(2005~2009年)に再生医療を進め、日本は世界でリーダーになれるかに見えたが、*4-4のSTAP細胞はじめ、日本ではiPS細胞以外の研究は嘘か邪道であるかのような批判をして排除するようになったため、またまた先端研究が世界に遅れ始めている。
 例えば、*4-1のような体性幹細胞を利用した臨床研究は、皮膚などの体細胞に遺伝子を導入することがないためiPS細胞よりも問題が少なく、外国では進んでいるのだが、日本では手術や抗癌剤治療や放射線治療などで既に造血機能が低下したり免疫機能が損傷したりしている患者にしか適用されないので、効果が低い。
 また、臍帯血にも生命力あふれる元気な幹細胞が含まれているが、*4-3のように、臍帯血を違法に患者に移植していたとして医師ら6人が再生医療安全性確保法違反の疑いで逮捕され捜査されるのだそうだ。しかし、“違法”とはいっても、法律が医学研究より先を行くわけではないため、これでは日本で先進医療やその研究を行うのは医師にとっては危なすぎることになり、頭脳流出の原因になるだろう。また、治療による深刻な副作用であれば、現在の癌の標準治療の方がむしろすさまじいため、これらに関する検証は、抗癌剤を作っている薬剤会社の側に立ちがちな厚労省だけでなく、本当に公正に比較できる学者組織が行うべきである。
 さらに、*4-2のように、厚労省は癌の免疫療法に有効性を認めず実態調査をするそうだが、最も安全で賢い治療方法は、もともと体が持っている免疫機能を利用したり、それを強化したりして治すことであるため、「患者自身のリンパ球を使うものや癌ワクチンなどは科学的な効果が確立されていない」などとして研究や治療を禁止するのではなく、研究者に必要なバックアップを行って安定した結果を出せる治療法を確立すべきである。そして、文系出身の役人も、こういう知識を持って、知識に基づき正しい判断ができる教育をしておくことが必要だ。

*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13104676.html (朝日新聞 2017年8月27日) (科学の扉)体性幹細胞、変える治療 再生医療の研究、iPS・ESに先行
 自分の体の中に存在し、骨や神経など特定の組織を再生する能力を持つ体性幹細胞(組織幹細胞)を利用した臨床研究が、iPS細胞やES細胞に先行している。従来の治療をどのように変えていくのだろうか。幹細胞は、体を構成する様々な細胞に変化する分化能と、自分と同じ細胞に分裂できる自己複製能を併せ持つ。中でも、受精卵の中にある細胞を取り出して作るES細胞や、皮膚など体の細胞に遺伝子を導入して作るiPS細胞は、体の中のどんな細胞でも作り出せ、多能性幹細胞と呼ばれる。一方、幹細胞のうち、体の中に元々存在し、決まった組織や臓器の中で働くのが体性幹細胞だ。傷ついて古くなった細胞を入れ替えたり、病気やけがで失われた細胞を新しく補ったりする役割を担う。体性幹細胞には、赤血球や白血球などの血液をつくる造血幹細胞、神経系をつくる神経幹細胞、骨や軟骨、脂肪などへの分化能がある間葉系幹細胞などがある。幹細胞の機能を使った再生医療では、安全性の評価などに課題があるiPS細胞やES細胞に比べ、体性幹細胞の研究が実用化に近づいている。札幌医大の研究グループは2014年、脊髄(せきずい)を損傷した患者に、自分の骨髄液から分離した間葉系幹細胞を静脈内に投与して神経を再生させる臨床試験(治験)を開始。神経や血管系に分化する能力を持つ間葉系幹細胞は骨髄細胞の中に0・1%程度含まれる。これを1万倍に増やし細胞製剤にして点滴すると、患者の体内で傷ついた神経に細胞が集まり、その働きを取り戻すことが期待されている。国は16年に「高い有効性を示唆する結果が出ている」として、承認審査の期間を短縮する「先駆け審査指定制度」の対象に指定し、治験も終了。同大は、骨髄の間葉系幹細胞を脳梗塞(こうそく)患者に静脈投与し、後遺症の軽減を目指す治験も進めている。
■「親知らず」活用
 ただ、患者自身の幹細胞を使う方法は、摘出する際に体へ負担がかかり、培養に時間やコストがかかる問題もある。そこで、他人の良質な幹細胞を大量に培養し、必要な患者の治療に使う方法も研究されている。東海大の佐藤正人教授(整形外科学)は、ひざの軟骨がすり減る変形性膝(しつ)関節症の8人を対象に、患者自身のひざから取りだした軟骨細胞を培養したシートを患部に貼り付け、軟骨を再生させる効果が全員にあったことを確認した。細胞シートが特殊なたんぱく質などを出して、ひざの骨にある骨髄由来の間葉系幹細胞を活性化し、軟骨が再生すると考えられるという。今年2月からは、先天的に指が6本ある多指症の赤ちゃんから、手術で切除した指の軟骨の提供を受け、細胞シートに培養して患者に移植する臨床研究を始めた。佐藤さんは「軟骨は他人の細胞でも拒絶反応が起こりにくい。乳児の細胞は増殖能力が高く、修復を促す成分も多い」と話す。抜歯後に捨てられていた「親知らず」が歯周病の治療に役立つ可能性も見えてきた。東京女子医大の岩田隆紀准教授(歯周病学)は歯の根と周囲の骨(歯槽骨)の間にある歯根膜に着目した。歯根膜は間葉系幹細胞が豊富に存在し、骨の再生を促す役割があるが、歯周病の患者では部分的に失われている。そこで、抜歯した親知らずから歯根膜を採取して培養した細胞シートを歯の根元に移植し、骨の欠損部に一緒にいれた骨補填(ほてん)材(リン酸カルシウム)が骨に置き換わって周囲の骨を再生させる方法を考えた。重い歯周病10人を対象に患者自身の親知らずを使った臨床研究では、骨が平均で約3ミリ回復した。すでに、20代前半の健康な人の親知らずから細胞シートを作り、患者に移植する研究の準備を進めている。岩田さんは「1本の歯から約1万人分のシートができる。大量生産することでコストの大幅な削減が見込める」と言う。
■商品化、ごく一部
 再生医療の「治療薬」はごく一部で商品化されているが、研究の多くは安全性や有効性の確認を進めている段階だ。ロート製薬と新潟大の寺井崇二教授(消化器内科学)は7月、他人の脂肪組織に含まれる幹細胞を培養し、肝硬変の患者に点滴する治験を開始すると発表した。肝硬変は、肝臓の組織が炎症を繰り返して硬くなる「線維化」を起こす。マウスの実験で、脂肪由来の幹細胞を投与すると線維化が改善したため、治験をすることになった。寺井さんは「脂肪の採取は体への負担が比較的軽く、美容整形などで余っているものが入手しやすい」と話し、20年度の承認を目標としている。沖縄県は今月、再生医療の産業化を進める目的で、「脂肪幹細胞ストック事業」を琉球大などに委託することを決めた。琉球大医学部や再生医療ベンチャーのセルソース(東京都)の加工施設で、医療機関から提供された脂肪組織から幹細胞を抽出し、長期的にストックする技術を構築することを目指す。琉球大の清水雄介特命教授は「脂肪幹細胞の性質は個人ごとに大きな差があり、治療に適したものを選ぶ方法も確立していない。まず多くの細胞をストックして、個人ごとの異なる性質を解析することが不可欠だ」と課題を挙げる。
<治療法確立の分野も> 体性幹細胞による再生医療としてすでに治療法が確立しているのが、白血病などの治療における造血幹細胞移植だ。抗がん剤や放射線治療によって骨髄の造血機能が損傷した患者に、正常な造血幹細胞を移植して回復させる。骨髄液を採取して患者に移植する骨髄移植は1970年代に開発された。造血幹細胞はほかにも、特別な薬を投与すると全身の血液に流れ出す末梢(まっしょう)血幹細胞や、赤ちゃんと母親を結ぶ臍帯(さいたい=へその緒)と胎盤の中に含まれる臍帯血にも含まれており、それぞれ移植に使われている。

*4-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13164507.html (朝日新聞 2017年10月4日) がん「免疫療法」、調査へ 厚労省、拠点病院など434カ所 効果、不確かなケースも
 厚生労働省はがんの「免疫療法」について、有効性が認められておらず、治療費を患者が全額負担する治療があるとして、初の実態調査をすることを決めた。対象は、地域のがん医療の中心となるがん診療連携拠点病院など434カ所。加藤勝信厚労相は3日の閣議後会見で「どういう形で実施しているのか、速やかに調査したい」と話した。免疫療法は、体内の異物を攻撃して排除する免疫のしくみを利用して、がんを治すことを目指すもの。オプジーボなどの新しいタイプの薬・免疫チェックポイント阻害剤は、一部の進行がんで保険適用されている。一方、患者自身のリンパ球を使うものやがんワクチンなどは科学的な効果が確立されていない。研究目的の臨床試験でなければ、治療費は全額患者負担となる。こうした自由診療は民間クリニックだけでなく、国が指定するがん診療連携拠点病院でも実施し、多額の費用を患者が払うケースもあるという。国立がん研究センターの若尾文彦・がん対策情報センター長は「効果が確認されていないことなどの説明を十分せずに患者側の期待をあおり、多額のお金を使わせるのは問題だ」と指摘する。厚労省は、どれだけの拠点病院が免疫療法を実施しているかや安全管理体制などについて調査する。

*4-3:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/461079 (佐賀新聞 2017年9月6日) 無届け臍帯血移植、患者保護へ規制を見直せ
 他人の臍帯血(さいたいけつ)を違法に患者に移植していたとして、医師ら6人が再生医療安全性確保法違反の疑いで逮捕された。リスクが高い医療行為であるにもかかわらず、厚生労働省が認めた委員会で審査を受け、同省に届け出るという定められた手続きを踏まなかったというのが直接の容疑。安全性に問題がある移植が行われていた疑いも指摘されている。捜査で実態を明らかにするとともに、安全性や有効性に問題がある類似の医療行為から患者を守るため、再生医療に関する現行の規制や患者への情報提供の問題点を洗い出し、早急に対策を進めるべきだ。臍帯血は、赤ちゃんのへその緒や胎盤から採取される血液で、さまざまな血液細胞に成長できる幹細胞を多く含む。臍帯血移植は白血病などの治療法として確立しているが、容疑者らは、別のがんの治療や美容目的など、効果未確認の移植を行っていたとされる。再生医療安全性確保法は2014年施行。自由診療で幹細胞の移植を受けた患者が死亡した問題などをきっかけに検討が進み、今回が初の刑事摘発だ。同法がなければ、医師と患者の合意の下で行われる自由診療に当局のメスが入ることは、深刻な健康被害が明らかになるなどしない限り考えにくかった。法は一定の役割を果たしたと言える。一方で、現行の規制に深刻な不備があることもはっきりした。移植に使われた臍帯血は、09年に経営破綻した民間の臍帯血バンクから流出したものだとされる。国内には、白血病患者らの治療に使うため、産婦から任意で提供を受けた臍帯血を保存する公的バンクが複数ある。これらは法に基づく許可制で、臍帯血の品質確保のための基準もあるが、他人への移植を前提とせずに有償で臍帯血を預かる民間バンクは規制の対象外。破綻時の対応も業者任せで、保管方法に問題があれば、健康被害に結びつく可能性がある。日本で人工多能性幹細胞(iPS細胞)が開発されたこともあり、再生医療の研究は国が積極的に推進し日々のニュースにも登場する。それだけに患者の期待も膨らむが、多くの再生医療はまだ研究段階にあり、長期の効果やマイナス面ははっきりしていない。そうした現状での大きな問題は、再生医療と称し患者に提案される個別の自由診療の安全性や有効性について、患者自身が判断できる材料が非常に乏しいことだ。再生医療安全性確保法は「認定再生医療等委員会」と呼ばれる委員会が治療計画を事前に審査することで一定の安全性などを担保する仕組みだが、委員会の審査の質にはばらつきがあることや、治療後のフォローが十分なのかといった疑問も指摘されている。改善が急務だ。患者が自由診療の具体的な中身を他の医療機関と比較することも難しい。厚労省は、再生医療に携わる医療機関の情報提供を、患者に役立つ形に見直す必要がある。日本再生医療学会は、一般の人から再生医療の相談を受け付ける窓口を開設する方針を決めた。これも実施を急いでほしい。患者が相談したり、疑問を寄せたりしやすい仕組みを常設することは、患者を助けるだけでなく、問題ある医療機関の情報を、学会や当局が把握するにも有益だ。

*4-4:http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48272 (「週刊現代」2016年3月26日・4月2日合併号)小保方さんの恩師もついに口を開いた!米高級誌が報じたSTAP騒動の「真実」
 小保方さんは間違っていたのか、それとも正しかったのか—アメリカの権威誌に掲載された記事には日本で報道されていない新たな証言が書かれていた。世界中が彼女に注目し始めている。
●すさまじい駆け引き
 「私は、STAP細胞は正しい、確かに存在すると100%信じたまま墓場にいくつもりだ」。こう語るのは、小保方晴子さん(32歳)の恩師、アメリカ・ハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授だ。バカンティ氏は、小保方さんが発表し、後に撤回された「STAP細胞論文」の共著者でもある。小保方さんが、自らの言葉で綴った手記『あの日』が、海の向こうでも話題になっている。アメリカで有数の権威を持つ週刊誌『NEW YORKER』(ニューヨーカー)の電子版に、一連のSTAP騒動を検証する記事が掲載されたのだ。筆者は、アメリカ人のデイナ・グッドイヤー女史(39歳)。'07年まで『ニューヨーカー』の編集者として勤務し、その後、ノンフィクション作家として独立した人物である。冒頭のバカンティ氏の言葉は、グッドイヤー女史のインタビューによって騒動以降、初めて明らかになったものだ。在米の出版社社員が現地の様子について語る。「バカンティ教授が取材を受けたのも『ニューヨーカー』だからこそです。それくらいこの雑誌で記事が組まれることはステータスでもあるんです。この記事を掲載するに当たって編集部は約半年にもわたり、準備をしたそうです。かなり気合が入った記事であることは間違いない。小保方さんが手記を出したことで、世界が再び彼女に注目しています」。『ニューヨーカー』はアメリカ雑誌界の最高峰に君臨。読者層は知的好奇心が高く、「高級で権威がある雑誌」と認識されている。紙の雑誌の発行部数は100万部以上。電子版も好調で、こちらも100万人以上の会員数を誇る。一本一本の記事が丁寧に書かれている総合誌で、非常に読み応えがあるのが特徴だ。小保方さんに関する記事のタイトルは「THE STRESS TEST」。幹細胞研究の世界はまさに陰謀、欺し合いが錯綜している。そこに細胞に対して行う「ストレス・テスト」を引っかけ、ストレスに弱い者は、科学界で生き残れないことをこの記事は示している。グッドイヤー女史は日本中を巻き込んだ「STAP」騒動をどう分析しているのか。まず小保方さんの登場について記事ではこう書かれている。「この仕事(STAP)の背後にいた『革命児』が小保方晴子であった。彼女は男性中心の日本の科学界に女性として一石を投じた。彼女は他の女性に比べて、男たちとの駆け引きの中で生きることに長けていた。そして独創的な考えの持ち主であると賞賛されていた」(『ニューヨーカー』より・以下カッコ内は同)。その小保方さんを引き上げた人物こそ、バカンティ教授だった。「小保方がバカンティ教授の研究室にやってきた時、バカンティはすぐに『彼女にはopen‐minded(心の広さ、進取の気性に富む)と、明敏さがある』ことに気づいた。ただしバカンティは当面、細胞にストレスを与えると幹細胞を作り出す可能性があるという仮説を伏せておいた。彼がもっとも避けたかったのは、留学生が自国に戻って、他の誰かの研究室で彼女のアイディアを展開することにあった。バカンティは私にこう言った。『私の主な懸念は、我々はハルコを信用できるのかだ』と」
●「彼女には才能がある」
 だが、バカンティ氏の懸念は杞憂に終わる。小保方さんは彼の研究室で信頼を高めていった。「小保方の下でリサーチ・アシスタントとして働いたジェイソン・ロスはこう言った。『彼女がいかに才能があるかは、誰もが分かった。ハルコのような才能のある人はそう多くはいない』。それに対して小保方はこう返した。『日本では女性研究者は二流です。たとえ年下の大学生でも、男性が必要としたら、女性は顕微鏡を使うのを諦めないといけません』」。やがてバカンティ教授の元での短期留学を終えた小保方さんは、日本に帰国し、'11年に理化学研究所(CDB)の研究員に。そこで「STAP騒動」のキーパーソンである若山照彦教授のチームに所属する。そして本格的にSTAP細胞の研究に取り組んでいく。「生物学者の山中伸弥がノーベル賞を受賞したとき、CDBの研究者たちの野心は奮い立った。CDBのチームは、自分たちの発見が山中の発見と張り合う、いや山中の研究をobsolete(時代遅れ、廃れた)にしてしまうとまで考えた」。その一方で、当時の小保方さんについては、「小保方はCDBでの昇進は早かったが、うまく適応できてなかった。アメリカ的になっていたので、元同僚たちによると小保方は、日本の研究所の厳格なヒエラルキーにイライラしているように見えた」。と記している。'12年、STAP細胞発見への意欲を見せる小保方さんのもとにもう一人の協力者が現れる。それが騒動中に自殺した笹井芳樹・元CDB副センター長だった。笹井氏のもとで、小保方さんは論文を再構築する。そして'14年、ついに世界的権威を持つ科学雑誌『ネイチャー』にSTAP論文が掲載される。日本のメディアは割烹着姿で顕微鏡をのぞき込む小保方さんを「リケジョの星」、「ノーベル賞級の発見」と煽り持ち上げた。だが、風向きが急速に変わり始める—。「ブランドン・ステルという名の神経科学者が'12年に創設した『PubPeer』というオンライン・フォーラムがあり、そこでは誰もが科学論文を分析して議論することができる。STAP論文は彼らにとってまさに、好奇心をそそる材料であった。2週間も経たないうちに、匿名のユーザーが論文に掲載された画像の2つがほとんど同一のものであることに気づいた」。STAP論文の発表は世界に衝撃を与えると同時に、世界中の研究者からの検証にさらされることにもなった。これこそが「ストレス・テスト」なのだ。このテストにバカンティ氏と小保方さんは耐え抜くことができなかった。「ハーバード大学の科学者でボストン小児病院の幹細胞移植のディレクターであるジョージ・ダレイは私にこう言った。『当時、世界中の私の同僚たちは、お互いにメールをしあって、おーい、何が起きているんだ。うまくできたか? 誰も成功してないのか、と言い合っていた』」
●今も信じている
 グッドイヤー女史によると、ダレイは「STAPは幻想である」ことを立証するための論文を『ネイチャー』に発表する準備を始めたという。さらにダレイは2回にわたって、バカンティ氏に間違いを諭そうとしたが、無駄に終わったという。「ダレイは私に『バカンティは自分が正しいと思い込んでいる』と言った。そして、昨年の9月、『ネイチャー』はダレイのSTAPに関する論文を掲載した。そこには小保方の主張を正当化すべく7つの研究室が再現をしようとしたが、すべて失敗したと書かれていた。この論文の共著者であるルドルフ・イェーニッシュは、遠慮することなく私にこう言った。『小保方が若山にいろいろ混ざった細胞を渡したことは明らかだ。若山は彼女のことを信じてそれを注入した。そして美しいキメラができた』」。バカンティ氏は一度、小保方さんに「データの捏造はしてないのか」と尋ねたが、小保方さんの答えは、「それならこんなに時間をかけて実験はしない」だったという。さらに記事の中には、バカンティ氏は論文撤回後もSTAP細胞作製に向け、いまも研究を続けていると書かれている。断っておくが、『ニューヨーカー』に掲載されたこの記事は、誰が正しいと断定はしていない。あくまでそれぞれの当事者に取材し、主張を丁寧に拾ったものである。騒動以降、口を閉ざしたままだったバカンティ氏が、今も小保方さんを信じ続けていることは、この記事を読めば十分に伝わってくる。筆者のグッドイヤー女史は今回、記事を書くにあたって小保方さんとメールでコンタクトを取ったことを明かしている。「小保方は『私はスケープゴートにされた』と書いてきた。『日本のメディアはすべて、若山先生が犠牲者で、私がまったくのろくでなしと断定した』とも」。小保方さんは今、どんな思いで、何を考え、日々を過ごしているのだろうか。


<エネルギーから考えた街づくりのイノベーション>
PS(2017/10/6追加):*5-1に「①経産省は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度で、太陽光発電のさらなる価格引き下げを行い、最終的には10円前後を目指して、今後は競争を通じて民間で自律的に市場を拡大していくよう促す」「②小規模な発電にも入札対象を広げることを検討する」「③太陽光発電の導入費用は、日本が1キロワットあたり約30万円と欧州の2倍であるため、事業者には安価で質の高い設備などの一層の技術革新が求められる」と書かれている。この①②③については、最初に太陽光発電を導入した事業者には普及を促す目的で高い買取価格を20年間保障し、普及後は次第に市場に委ねる方法が正しい。にもかかわらず、最初に太陽光発電を発明した日本では、普及が遅れて技術が進まず、欧米の5~10円/kwhに及ばない状況となっているのは、油断と妨害の結果である。なお、電力のコストは「賦課金」ではないため、記者は原価計算を踏まえて正確に議論すべきだ。
 また、*5-2には、「①柏崎刈羽原発6、7号機に原子力規制委員会が安全審査に事実上の『合格』を出し、再稼働にようやく動き出した」「②日本では再生エネでベースロード電源を担うのは難しい」「③原発1基再稼働させれば同規模の火力発電に比べてコストは年350億~630億円、二酸化炭素(CO2)排出では260万~490万トンを減らせる。」「④政府は原子力の総発電量に占める割合を2030年度に20~22%とはじく」などが書かれている。しかし、原発に絶対安全はなく、事故を起こせばCO2どころではない公害を引き起こし、使用済核燃料の最終処理まで考慮すれば発電コストは最も高いため、①②③④こそ、環境後進国日本の思考停止による見解だ。そして、再生可能エネルギーの制約として書かれている内容は、使用済核燃料の処理よりもずっと簡単に解決でき、外国では既に実践されているものである。そのため、分散発電を前提とした良質で安価な機器が増え、それを使った街づくりが進めば、100%再生可能エネルギーによる電力社会は、石炭から石油に転換したよりも早いスピードで来るだろう。

*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21969410W7A001C1MM0000/?n_cid=NMAIL004 (日経新聞 2017/10/6) 太陽光買い取り価格、さらに下げ 18年度20円弱に
 経済産業省は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)で、太陽光発電のさらなる価格引き下げに乗り出す。2018年度にも産業用の買い取り価格を現在の1キロワット時21円から同20円弱とする見通しで、最終的には10円前後を目指す。再エネの導入拡大に向け国が手厚く支援してきたが、今後は競争を通じ、民間で自律的に市場を拡大していくよう促す。FITは再エネでつくった電気を大手電力が一定期間、同じ価格で買い取るよう国が定めた制度。参入事業者が収益性を見通しやすくする目的で、12年度に導入した。経産省はこのほどFITに関する有識者会議「調達価格等算定委員会」で18年度以降の見直しに向けて議論を始めた。年度内に結論を出す。12年度に制度を導入した際の産業用の買い取り価格は1キロワット時あたり40円だったが、産業用は17年度は21円となっている。また、同省は17年度からは2千キロワット以上の大規模な太陽光発電に対し、欧州などで普及する入札制を導入し、さらなる価格下げを促している。今秋に予定する初の入札の結果を踏まえた上で、現在21円の入札上限価格についても今後、引き下げるほか、より小規模な発電にも入札対象を広げることを検討する。太陽光の普及が進み、入札制が多い独仏、米国などは1キロワット時あたりの太陽光発電による電力価格は5~10円が相場で、日本の半分から4分の1と低い。経産省が太陽光発電の導入費用を調べたところ、日本は1キロワットあたり約30万円と欧州の2倍に上る。事業者には安価で質の高い設備の導入など、一層の技術革新が求められる。より発電効率の高い太陽光パネルやパワーコンディショナー(電力変換器)を使ったり、効率的な保守管理サービスを利用したりする必要がある。再エネ導入を加速させるためFITで手厚く支援してきて、太陽光の普及は進んだ。しかし事業者側のコスト競争力はまだ低い。経産省幹部は「日本でも大幅なコスト削減を進め、競争力のある電源にしていく」とし、買い取り価格の引き下げや入札制度の導入で、太陽光関連事業者の「自立」を促す。同省は太陽光に限らず、風力、水力、バイオマスなど他の電源でも価格の引き下げを進める方針だ。FITの背後で高まる消費者負担に配慮する面もある。標準家庭が月々の電気代で負担する再エネ促進のための「賦課金」は、17年度で686円と、12年度の57円から跳ね上がった。30年度には1千円を超える見通しで、対応を迫られている。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171006&ng=DGKKZO21827100T01C17A0EA1000 (日経新聞 2017.10.6) 環境後進国ニッポン(下)思考停止 もう許されない
温暖化対策と安定的な電力供給を両立する原子力発電は過度な依存を望めない。一定量の電力を低コストで安定供給できるベースロード電源の議論は堂々巡りが続く。
●再稼働弾み期待
 東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)。原子力規制委員会が安全審査に事実上の「合格」を出し、再稼働にようやく動き出した。事故を起こした福島第1原発と同じ「沸騰水型」で初の合格内定。経済産業省は同型原発の再稼働に弾みがつくと期待する一方で、「東電を適切に指導したい」と気を引き締める。同意が必要な地元の反応はなお厳しい。1年前の選挙に勝って新潟県知事に就いた米山隆一氏。福島原発事故の県独自の検証が済むまで認めない立場に固執し、3年ほどかけるという。東電は理解を得る活動を急ぐ。政府が報道各社の世論調査を分析したところ、福島事故直後から今まで「再稼働賛成1に対し反対2」の構図のままだ。経産省は原発再稼働をベースロード電源と位置づける。1基再稼働させれば同規模の火力発電に比べ、コストは年350億~630億円、二酸化炭素(CO2)排出では日本全体の0.2~0.4%にあたる260万~490万トンを減らせる。政府は原子力の総発電量に占める割合を2030年度に20~22%とはじくが、16年度は2%。経産省によると、目標達成には全国にある42基のうち30基程度の再稼働が要る。12基が安全審査を待つが、達成はなかなか厳しい。老朽化による廃炉かリプレース(建て替え)かの判断を迫られる原発も出てくる。同省幹部は「30年以降、原発の新増設がなければ20~22%は維持できない」と語る。想定する水準を確保できなければどうするのか。今の総発電量に占める再生エネの割合は15%(大規模水力含む)。30年度は原子力より高い22~24%になるとみる。ただ天候や日照時間に左右される太陽光や風力は電力が安定しない。国境をまたいで送電網がつながる欧州では、再生エネの普及するドイツと、原発大国のフランス間で電力の融通が成り立つ。現時点の日本では再生エネでベースロード電源を担うのは難しい。地球環境産業技術研究機構(RITE)の秋元圭吾主席研究員は「再生エネの普及と技術の革新を進めながら、火力と原子力を使うのが現実的」と話す。再生エネの不安定さを液化天然ガス(LNG)火力で調整して、発電量を安定させられる。
●地熱は10年停滞
 ベースロード電源の可能性を秘めた再生エネもある。火山国、日本で資源豊富な地熱発電だ。世界3位の約2300万キロワットの資源量があるとの試算があり、日本の電力の総設備容量の約1割にあたる。だがここ10年間は50万キロワット超で大きく変わらず、ニュージーランドやアイスランド、トルコ、ケニアに抜かれた。停滞の理由は内向きの事情だ。適地の8割が国立・国定公園内にあり、景観との兼ね合いで慎重論との一進一退になりがち。温泉地に重なり関連業者の懸念もある。環境を論じるには温暖化と密接に関わるエネルギー政策が欠かせない。衆院選でも争点となり、希望の党代表の小池百合子東京都知事は30年までの原発ゼロを主張。それなら代替エネルギーを示すべきだ。東日本大震災で原発を軸とする構成が壊れて6年半。思考停止を乗り越え、エネルギーの将来像を議論する時だ。

<農林漁業のイノベーション>
PS(2017年10月8日):*6-1に、「①地方銀行による農林業への融資残高が2017年3月末時点で約5400億円に上り、資金需要は拡大傾向」「②各行は農家への助言強化や農家が生産から流通までを手掛ける『6次産業化』を後押しするサービスを拡充し、需要の取り込みに躍起」「③強い農業には生産技術に加え、生産計画や財務管理といった企業経営で求められるノウハウが必要だ」と書かれている。農林漁業のイノベーションにも資金が必要であるため、①のように銀行が融資先として認識し始めたことはよいことで、②③に述べられている農林漁業の経営管理は非常に重要だが、無理に融資して貸しはがしすることにならないよう、銀行も情報収集力や人材を活かして農林漁業の得意先と一緒に育って欲しい。
 このような中、*6-2のように、「森林環境税(仮称)」を財源に市町村が管理の行き届いていない森林を整備し、担い手への集積・集約化を進める仕組みの構築を目指すとのことだが、CO2を吸収するのは森林に限らず、環境を汚している主体からはそれに見合った金額を徴収したいので、私は「環境税」という名前にした方がよいと考える。なお、木材の価格低迷で森林の所有者が森林を管理する意欲を無くしている点については、*6-3の大川のように、日本各地に家具の街があるため、これも伝統産業のイノベーションを行い、現代の住生活にあったおしゃれな家具を安価に作れるようにした方がよいだろう。何故なら、消費者は、自分の家に合わない家具やないものは欲しくても買えないのであり、この要求を満たせば輸出も可能だからである。


 2017.10.7西日本新聞

(図の説明:地方銀行の農林漁業への貸付残高、農林漁業金融公庫/日本政策金融公庫の農林水産事業への貸付が増え続けている。また、合板用材の国産割合も増加中だ)

*6-1:http://qbiz.jp/article/120196/1/ (西日本新聞 2017年10月7日) 地銀の農業融資5千億円超 大規模化、企業参入背景
 地方銀行による農林業への融資残高が2017年3月末時点で約5400億円に上ったことが7日、分かった。農業の担い手減少が続く一方、農家の大規模化や異業種からの企業参入を背景に資金需要は拡大傾向にあり、融資残高も年々増加している。各行は農家への助言強化や、農家が生産から流通までを手掛ける「6次産業化」を後押しするなどサービス拡充の動きを活発化させ、需要の取り込みに躍起だ。第二地方銀行協会などの集計では、第二地銀を含む地銀の13年3月末以降の農林業の融資残高は年100億円超のペースで増え、16年3月末時点で5千億円を突破した。長野県地盤の八十二銀行の17年3月末の農業融資残高は215億円で、前期から41億円伸ばした。農家との接点を増やそうと6次産業化や経営に関する講座などを開催。強い農業には生産技術に加え、生産計画や財務管理といった企業経営で求められるようなノウハウが必要だと訴えてきた。農業の専任担当者は「高い経営感覚を持った農家が増えれば、資金供給先も増える」と期待。企業から農業参入の相談があれば、経営計画の策定や、その後の販路開拓を後押しする。地域の基幹産業である農業に自ら参入して知見を蓄積しているのは鹿児島銀行(鹿児島市)。運転資金がかかる畜産向け融資も堅調で、17年3月末の残高は528億円と全国の地銀でトップだ。昨年9月に農業法人「春一番」を共同出資で設立し、銀行から出向した4人がタマネギとオクラを生産。「農業経営の理解が深まり、どうすれば稼げるかを考える意識が高まった」(鹿児島銀の担当者)といい、営業力強化へ増員を予定する。6次産業化を推進する西日本シティ銀行(福岡市)は農業融資の残高を17年3月期までの5年間で約16倍に拡大。宮崎銀行や常陽銀行(水戸市)、宮城県地盤の七十七銀行、北陸銀行(富山市)といった有力地銀も残高の伸びが目立った。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p42095.html (日本農業新聞 2017年10月6日) 森林管理 委託を促進 所有者の責務 法で規定も 規制会議
 政府の規制改革推進会議は5日、農林ワーキング・グループ(WG、座長=飯田泰之明治大学准教授)の会合を開き、林業改革について議論した。「森林環境税(仮称)」を財源に、市町村が管理の行き届いていない森林を整備し、担い手への集積・集約化を進める仕組みの構築を目指す。管理が困難な所有者に市町村への委託を促すため、適正に管理する責務をいかに法的に課すかが焦点となる。年内に結論を取りまとめる方針。同会議では9月の初回会合で、今期の重要課題のひとつに林業の成長産業化を掲げ、年内に結論を出すとしている。具体的には、意欲ある林業経営者に、森林の管理を集積・集約化する仕組みの構築を目指し、こうした仕組みを補完する市町村の役割などを詰める。所有者が管理できない森林について、市町村が受託し、作業道の整備や間伐などをした上で、担い手となる経営体に再委託する仕組みを検討する。一方、こうした市町村の取り組み財源として、与党は2017年度の税制改正大綱で、18年度の税制改正で森林環境税を創設する方針を示している。焦点となるのは、森林所有者にいかに市町村への委託を促すかだ。農水省によると所有者の約8割は経営意欲が低く、さらにそのうちの7割は主伐の意向がない。こうした中で、自ら管理する意向がない所有者に、市町村への委託を促すため、所有者に対して森林を適正に管理する責務を法律で課すことを検討する。来年の通常国会での森林法改正か、新法の制定も視野に入れる。この日の同WGの会合では、総務省が森林環境税の検討状況を報告。財源の使途について、間伐や作業道の整備の他、森林の所有者を特定する調査にも充てるとした一方、地方公共団体からは、森林の状況に応じて柔軟な使い方ができる仕組みを求める声が上がっていると説明した。

*6-3:http://qbiz.jp/article/120204/1/ (西日本新聞 2017年10月8日) 1万点の家具 展示販売 大川木工まつり始まる
 家具のまちの秋恒例イベント「大川木工まつり」が7日、大川市酒見の大川産業会館と大川中央公園をメイン会場に始まった。市内外の家具メーカー約200社が最新の約1万点の商品を展示販売しているほか、木工体験などさまざまなイベントがある。9日まで。会館横の市文化センターでは、東京を拠点に国内外で活躍する男女2人組のアートユニット「ミレイヒロキ」さんが、市内の倉庫に眠っていたタンスやベッドなどに色鮮やかな花を描いて再生させた作品を展示。木工体験では、南米生まれの箱形楽器「カホン」を作るコーナーもあり、親子連れでにぎわっている。8日は午前10時55分から木工まつりパレードがあり、市出身の歌手大川栄策さんや俳優の陣内孝則さん、騎手の的場文男さんが市民約500人とともに練り歩く。酢の醸造蔵や製材所などを巡る工場見学バスツアー「職人めぐり」(無料)も実施する。大川商工会議所=0944(86)2171。

| 経済・雇用::2016.8~ | 04:39 PM | comments (x) | trackback (x) |

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