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2014.10.29 女性蔑視を含む社会通念(常識)を利用した女性に対する侮辱及び人格権の侵害  ← 佐川急便事件の事例から (2014.11.1追加あり)
       
ジェンダーギャップの世界順位        女性管理職の割合 

(1)日本の議員や企業幹部に女性比率が低い理由は何か
 *1-1、*1-2に書かれているように、世界経済フォーラムが各国の男女格差(ジェンダーギャップ)の少なさをランキングで示した2014年報告書によれば、日本は総合で世界142カ国のうちの104位だ。ランキングは「職場への進出」「教育」「健康度合い」「政治への参加」の4分野で男女格差の少なさを指数化して評価しており、日本は「政治への参加」が129位、「職場への進出」が102位と、女性の社会参加や意思決定できる立場への進出が世界で最低レベルだということを示している。

 その理由は、これまで「女性は政治には向かない」「真面目だが仕事や仕事上のリーダーには向かない」等の“社会通念(常識)”があり、企業だけではなく官僚組織や地方議会でも採用時点から女性が少なく、配置、研修、昇進のための評価基準で男女差があるからである。そのような中、2014年10月21日に、厚労省の現役女性係長が「女性であることを理由に昇進差別された」として国に謝罪と約670万円を求めて提訴しているのは注目に値するが、それは決して出産だけが理由ではなく、子どもを持たずに継続して働いている女性でも女性蔑視で歪んだ常識(一般の価値観)により昇進格差が存在し、その結果として世界で最下位に近い順位となっているのである。

(2)女性の能力を過小評価する“社会通念(常識)”とそれを反映しているメディア・司法
 私は、国会よりも地方議会でさらに女性議員が少ない理由を、身をもって体験して知っているので記載するが、それは①地方では、実際に女性がよい労働条件で働く機会が限られているため、女性の仕事上のキャリアが低いこと ②その結果、東京より地方の方が男女平等意識が行きわたっておらず、女性の地位が低いこと などである。そして、議員は全有権者の投票によって選ばれるため、どちらの考えの国民が多いかで男女の議員数がだいたい決まるのだ。

 その一例だが、私は、*2-1、*2-2に書かれているように、佐賀三区内の全有権者に佐川急便を使ってみんなの党の渡辺代表と開催する国政報告会に関するお知らせのチラシを2009年衆議院議員選挙の公示前に佐賀3区内の全世帯・全事業所に配達し、その契約については、事前に佐川急便と、①配達完了報告書を作りながら、内部統制のきいた配達を行う ②配達後に私に配達完了報告書を提出する という契約をしていたにもかかわらず、佐川急便は配達完了報告書を作ってすらおらず、杜撰な配達をしていたため、契約違反として支払いをしていなかったところ、佐川急便から提訴されたことがある。

 その佐川急便の代理人が訴状に書いてきた内容は、私が*4の陳述書に記載しているとおり、私との契約内容や事実とは全く異なる虚偽であり、裁判官に事実誤認させる目的と見られる嘘の証拠が添付されていた。そのため、会計及び監査のプロである私が、事務所にしっかり保存していたその契約に関する書面による証拠で佐川急便の証拠が虚偽であることを証明したにもかかわらず、司法もメディアも、監査のプロで公認会計士の私が、商法も民法も監査も内部統制も知らず、細かいことを言って支払いを拒絶したかのように考えたのである。

 裁判中、佐賀地裁唐津支部には、ずさんな配達をした佐川急便の男性担当者本人が“証人(?!)”として呼ばれ、訴状に記載されたとおりの虚偽の“証言”をした。そして、裁判記録では、その証言の曖昧な点(ここがKey)が削除されたり変更されたりしていた。つまり、裁判官は、個別の民事契約とその履行状況ではなく、自らの“(女性公認会計士の能力を甘く見た)社会通念”から導き出した結論に従って、裁判の証拠を改ざんしてまで佐川急便の男性担当者の言い分を通す判決を出したのである。なお、こちら側の弁護士も、女性公認会計士の監査及び会計能力を今一つ軽んじていた。

 そして、最初に佐川急便の提訴を報道した時のメディアの失礼さは、*2-1よりも*2-2の方が著しいが、佐賀3区内の全世帯・全事業所への配達を「不特定多数への配布」と選挙違反であるかのように記載し、佐川急便が下請けに丸投げして監督もせず不正確な配達になったため私が下請け料金のみ支払うと譲歩したのを、「1通10円の単価で84万8千円ならば支払う」と私が理屈の通らないことを言って値切ったような表現にしているのである。

 さらに、佐川急便が真面目に配達しなかったことに関して、*2-2は、猛犬がいたり、チラシ配布を禁じる張り紙がある住宅のみに配達しなかったかのように佐川急便を援護し、私は「配布量が目標に届かなかった」などとは言うわけがないし言ったこともないのに(全世帯・全事業所への配達が契約であるから、私には「配布量」「目標」などという発想はない)、不特定多数に配布することを前提としてそれが目標に届かなかったかのように書いているのである。つまり、自分が持っている女性や国会議員を見下した“社会通念(先入観)”を、記事として表現しているにすぎないのだ。

 また、*2-2には、「広津氏は05年衆院選で、郵政民営化に反対した佐賀3区の保利耕輔衆院議員に対する『刺客』として自民党公認で出馬し・・」と記載されているが、このフレーズはメディアで何度も繰り返され、失礼な上に、私は議員としての評判を落とされた。実際には、私は佐賀県唐津市の出身で、刺客であることを目的として立候補したことはないにもかかわらず、なのである。

 その上、*2-3の佐賀地裁唐津支部の判決後の「広津元衆院議員に『ビラ配布代』支払い命令」という佐賀新聞記事は、故意に配達完了報告書に関するKeyの部分を消してHPに掲載している。つまり、ここでも契約の重点を隠し、佐川急便の虚偽の主張が正当であったかのように書いて、私の公認会計士としての能力を過小評価させる記事にしたてており、これは女性プロフェッショナルへの侮辱であるとともに、人格権の侵害である。

(3)人格権を侵害する意図的な編集は不法行為であり、「表現の自由」の範囲内ではない
 *3に、テレビ朝日が、鹿児島県の川内原子力発電所の安全審査を巡る原子力規制委員会の記者会見での発言を不適切に編集したとして、番組のプロデューサーら7人を処分すると発表したと記載されている。しかし、このようなことは、私が国会議員時代、朝日系列だけではなく、日常茶飯事だった。

 そして、どういう方針で編集されたかと言えば、「女性国会議員=権力志向=悪」「地位の高い女性=性格が悪い」というように、意思決定する立場に行く女性を励ますものでは到底なく、何とか足を引っ張ろうとするものばかりであった。そのため、このような記事が続けば、当然、「社会通念(先入観、常識)」は女性蔑視に傾き、それは警察、司法関係者、一般人にも浸透し、その結果が、*1-1や*1-2のようなことになって表れたのである。

 従って、「女性の上昇志向=権力志向=悪」「地位の高い女性=性格が悪い」などと言われるような変なことがなくなるまで、クウォータ制が必要だと考える。

<議員・企業幹部で女性比率が低く、日本の男女平等度は世界最低レベル>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASGBX2RMVGBWULFA031.html?_requesturl=articles%2FASGBX2RMVGBWULFA031.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASGBX2RMVGBWULFA031 (朝日新聞 2014年10月28日) 
男女平等、日本104位 議員・企業幹部、低い女性比率
 世界経済フォーラム(WEF、本部・ジュネーブ)は28日、各国の男女格差(ジェンダーギャップ)の少なさを指数化し、ランキングで示した報告書の2014年版を発表した。世界142カ国のうち日本は104位。前年から一つ順位を上げたものの依然として低水準で、主要7カ国(G7)中最下位だった。WEFは、世界の政財界人が集まる「ダボス会議」を主催することで知られている。ランキングは「職場への進出」「教育」「健康度合い」「政治への参加」の4分野で男女格差の少なさを指数化し、その平均点で総合順位を決める。各分野ごとに、2~5の要素を調べる仕組みだ。日本は「政治への参加」が129位、「職場への進出」が102位だったことが足を引っ張った。政治参加の得点は100点満点でわずか5・8点だった。要素別にみると、「議会における女性比率」が137カ国中126位で、主要20カ国・地域(G20)で最低だ。WEFによると女性議員のデータは14年1月時点という。政治参加は、女性国会議員の割合▽女性閣僚の割合▽過去50年間の女性大統領や首相の数、の3点で評価されるが、日本は国会議員の女性比率で、衆院が8・1%、参院も16・1%にとどまる。国会議員を多く出す官僚組織や地方議会に女性が少なく、世襲議員もほとんど男性だからだ。女性議員の比率を高めるため、海外では候補者などの一定割合を女性に割り当てる「クオータ制」を多くの国が導入しているが、日本では、みんなの党などが採用しているだけだ。今回の順位には反映されていないが、安倍晋三首相は9月の内閣改造で歴代最多タイとなる女性5人を入閣させた。だが、直後に「政治とカネ」をめぐる問題で小渕優子経済産業相と松島みどり法相が辞任し、いきなりつまずいた。また、日本は「議員、政府高官、企業幹部の女性比率」で112位だった。報告書は「日本は、上場企業の取締役に占める女性の比率が(調査対象国のなかで)最低」と指摘した。「女性の活躍」を掲げる安倍政権だが、足元の厚生労働省では21日、現役の女性係長が「女性であることを理由に昇進差別された」として、国に謝罪と約670万円を求めて提訴した。女性が出産後も働き続け、管理職になることも難しい。妊娠や出産をきっかけに解雇や降格などになるマタニティー・ハラスメント(マタハラ)について、各地の労働局に寄せられた相談は13年度3371件と前年度より2割弱増えた。安倍政権は女性の採用や登用などに関する数値目標などを企業に義務づける法案を今国会に提出した。ただ、対象は大企業に限られ、どの項目に数値目標を設定するかは企業任せ。「どのくらいの企業が数値を公表するかわからない。実効性が薄いのでは」(皆川満寿美・東京大社会科学研究所特任研究員)と疑問の声もあがっている。
■閣僚半数の仏、躍進
 一方、昨年の45位から今年16位へと躍進したフランスは、2012年にオランド大統領が「男女同数内閣」を実現させ、政治参加の点数がはね上がった。その後の内閣改造でも「平等」はほぼ維持され、いまは男性17人、女性16人だ。そんなフランスも、もとは政治への女性の進出が遅れた国の一つだった。しかし、1999年の憲法改正で、「選挙で選ばれる公職に男女の平等を促す」との文言が追加され、2000年には「候補者男女同数法」(パリテ法)が成立。国政でも地方議会でも、候補者リストの男女比を半々にするよう各政党に義務づけた。 この春にはパリ市長の座に初めて女性のアンヌ・イダルゴ氏が就いた。事実上の一騎打ちだったライバルも女性だった。フランスの政治に詳しい東北大大学院法学研究科の糠塚康江教授(憲法)は「仏の躍進は一朝一夕に実現したものではない。政治家の決断で憲法を変え、法律をつくり、政界に女性を増やした。その後、経済界に管理職を増やそうとお願いした。日本は順番が逆だ」と指摘する。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141028&ng=DGKKASDF27H0B_X21C14A0EE8000 男女平等指数、日本は104位 142カ国中、中女性活躍進まず
世界各国の男女平等の度合いを指数化した世界経済フォーラム(WEF)の2014年版「ジェンダー・ギャップ指数」で、日本は調査対象142カ国のうち104位だった。前年より順位を1つ上げたが、経済協力開発機構(OECD)加盟国では韓国の次に低い。WEFは女性の地位を経済、教育、政治、健康の4分野で分析する。日本は女性の労働参加率や管理職が少なく経済で102位、政治も議員の少なさが響いて129位だった。教育では93位。識字率と中等教育が世界1位と評価される一方、大学以上への進学が105位にとどまっている。

<女性の能力を過小評価する“社会通念(常識)”とそれを反映した新聞記事>
*2-1:http://www1.saga-s.co.jp/news/saga.0.1728502.article.html
(佐賀新聞 2010年9月19日) 広津元衆院議員を運送会社提訴 ビラ配布代金めぐり
昨年8月、衆院選佐賀3区にみんなの党公認で出馬し、落選した元衆院議員広津素子氏が選挙運動用ビラの配布代金を支払っていないとして、配布を請け負った佐川急便(本社・京都市)が広津氏に対し、代金約300万円の支払いを求める訴えを佐賀地裁唐津支部に起こした。訴状によると、同社は昨年8月、広津氏側が用意した10万6千枚のビラを佐賀3区内の一般家庭や事務所に1通27円で配布する契約を結んだ。チラシ配布を禁止する張り紙がされたり、猛犬のいる住宅を避け、6日間で約9万8千通を配布した。 広津氏側は予定していた80%にしか配布していないとして代金全額の支払いを拒否。1通10円の単価で84万8千円ならば支払うとしたが、同社は受け入れず、「広津氏は全戸配布できる性質の契約ではないと理解していたはず」としている。広津氏は「『ビラが届いていない』『複数枚来た』など多くの苦情が寄せられた。全戸配布の約束不履行であり、全額支払いは応じられない」と話している。

*2-2:(朝日新聞 2010.9.19) チラシ配布料を求め提訴―昨夏の衆院選 広津氏に佐川急便
 昨夏の衆院選に佐賀三区から立候補して落選した元衆院議員、広津素子氏から委託されて9万8千枚のチラシを配ったにもかかわらず料金が支払われないのは不当だとして、佐川急便が広津氏を相手取り、料金約300万円の支払いを求めて佐賀地裁唐津支部に提訴していたことが分かった。訴状によると、同社は2009年8月、佐賀3区の4市長の家庭や事業所にマニフェストや国政報告会の案内など、10万6千枚を1枚27円で配る契約を広津氏と結んだ。ただ、猛犬がいたり、チラシ配布を禁じる張り紙がある住宅を避けたため、14日間で約9万8千枚を配布した。同社は選挙後、料金を請求したが、広津氏側は配布量が目標に届かなかったとして、支払いを拒否。同社は「広津氏はすべてを配布できないことは理解していたはず」と訴えている。広津氏は取材に「1カ所に複数枚配るなど、こちらの要求通りに仕事をしていない。徹底的に争う」と話している。広津氏は05年衆院選で、郵政民営化に反対した佐賀3区の保利耕輔衆院議員に対する「刺客」として自民党公認で出馬し、比例九州ブロックで復活当選。保利氏が復党したため09年衆院選では公認が得られず、みんなの党から立候補し、落選した。2010年5月に政治資金が足りないことを理由に同党の選挙区支部を解散している。

*2-3:http://b.hatena.ne.jp/entry/www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2298741.article.html (佐賀新聞 2012/09/29) 広津元衆院議員に「ビラ配布代」支払い命令
 2009年8月の衆院選で落選した広津素子元衆院議員が選挙運動用ビラの配布代金を支払っていないとして、運送業者の佐川急便が約280万円の支払いを求めた訴訟の判決で、佐賀地裁唐津支部は28日、全額を支払うよう命じた。 判決理由…続きを表示で松本明子裁判官は「佐川急便は契約に基づく配達の債務を完了しており、広津氏は代金を支払う義務がある」と認定。「『ビラが届いていない』などのクレームが広津氏側にあったとしても、投函(とうかん)できる世帯に配達しなかったとはいえない」と指摘した。 広津氏は「投函へのクレームが多く、配達完了報...(以下は、佐賀新聞社が意図的に消している)

<悪どさを表現するための意図的な編集は違法行為>
*3:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141028/k10015765911000.html
(NHK 2014年10月28日) テレ朝が川内原発報道で7人処分
 テレビ朝日は、ニュース番組の中で、鹿児島県の川内原子力発電所の安全審査を巡る原子力規制委員会の記者会見での発言を不適切に編集したとして、番組のプロデューサーら7人を処分すると発表しました。この問題は、先月10日の「報道ステーション」で川内原発が新しい規制基準に基づく原子力規制委員会の審査に合格したことを取り上げた際、田中俊一委員長の記者会見での発言を不適切に編集していたものです。具体的には、田中委員長の竜巻の影響評価に関する発言を火山に関する発言として放送したほか、委員長がほとんどの質問に答えていたにもかかわらず、答えを拒んだかのように編集していました。この問題を受けて、テレビ朝日は29日付けで番組のプロデューサーやニュースデスクら3人を減給3か月、上司のニュースセンター長ら4人をけん責処分にすることを発表しました。さらに、報道局長が役員報酬の1か月分の5%を自主返上することにしています。テレビ朝日の吉田慎一社長は「不適切な編集であり、あってはならないことだ。関係者の皆様にご迷惑をおかけした」としています。この問題では、番組のキャスターが2日後の放送の中で陳謝したほか、BPO=放送倫理・番組向上機構が審議に入っています。

<陳述書による佐川急便事件の説明>
*4:私が、佐川急便が出してきた証拠には日付の改ざんや虚偽が多いことを指摘し、本当の契約について記述した陳述書
      
  陳 述 書 (2)     陳 述 書 (3)


PS(2014.11.1追加):「毎日、読売、日経、産経、共同通信など他のメディアも同じように伝えていたから、ねつ造ではない」という*5の主張は朝日新聞の逆ギレである。何故なら、事実か否かを判断し、記事として公開したことに対する責任は、掲載した時点でそれぞれのメディアに発生しており、「他のメディアと同じ内容だった」というのは免責理由にならないからだ。(仮にこれが免責理由になるとすれば、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というのを、メディアが実践して見せることになる)
 さらに、事実誤認により被害を受けた人は、それを指摘するに当たって同罪のメディアをすべて公平に指摘する義務はなく、どれをやり玉に上げるかはその人の自由だ。つまり、まわりがどうであれ、虚偽や事実誤認を含む記事による名誉棄損、侮辱、営業妨害、政治活動の妨害等の責任は、記事として公表した段階でそのメディアに発生しており、被害者の指摘の仕方に苦情を言うのは逆ギレなのである。
 なお、周囲と違っても真実を追求して報道するのがメディアの誇りでなければならないし、政治家を批判さえすれば民主主義に役立つわけではなく真実を報道して初めて民主主義が成立する。そのため、*5の朝日新聞社説は、他のメディアに拘わらず、メディアの志と自らの記事に対する責任を放棄している。

*5:http://www.asahi.com/articles/DA3S11432661.html
(朝日新聞社説 2014年11月1日) 首相の発言 「捏造」は看過できない
 NHKやネットで中継されている国会で、首相が特定の新聞社の報道を取り上げ、「捏造(ねつぞう)」だと決めつける。いったいどこの国の話かと思わせる答弁が続いている。おとといの朝刊で朝日新聞は、安倍首相と自民党議員との昼食会の模様を報じた。その席で、民主党の枝野幹事長の政治資金収支報告書に収入の不記載が見つかったことが話題になった。政治とカネをめぐる野党の追及について、安倍氏がこれで「撃ち方やめ」になればと語ったという内容だ。その枝野幹事長が衆院予算委で事実関係をただすと、首相はこう答えた。「きょうの朝日新聞ですかね。これは捏造です」。驚くべき答弁である。なぜなら、毎日、読売、日経、産経の各紙や共同通信も「撃ち方やめ」を首相の発言として同じように伝えていたからだ。枝野氏も、朝日の報道に限って質問したわけではない。首相は「私が言ったかどうか問い合わせがないまま、言ってもいない発言が出ているので大変驚いた」と述べた。だが、各紙の報道は、昼食会に出席した首相の側近議員による記者団への説明に基づいている。この議員の事実誤認であるなら、そう指摘すればいいではないか。実際、この議員は後に「『撃ち方やめ』は自分の言葉だった」と説明を修正した。首相はまた、「朝日新聞は安倍政権を倒すことを社是としているとかつて主筆がしゃべったということだ」とも語った。それが朝日新聞だけを名指しした理由なのか。権力監視は民主主義国の新聞として当然の姿勢だ。それでも時の政権打倒を「社是」とするなどばかげているし、主筆がしゃべったというのも、それこそ事実誤認の伝聞だろう。朝日新聞は慰安婦問題や福島第一原発事故の吉田調書について一部の記事を取り消し、その経緯を検証している最中だ。だが、それと政権に対する報道姿勢とは別の話である。メディアを選別し、自身に批判的な新聞に粗雑なレッテルを貼る。好悪の感情むき出しの安倍氏の言動は、すべての国民を代表すべき政治指導者の発言とはとても思えない。予算委で安倍氏は、閣僚の不祥事を追及する野党議員に対し、「公共の電波を使ってイメージ操作をするのはおかしい」と反論した。では、問いたい。「イメージ操作」をしようとしているのはどちらなのか。

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2014.10.28 エネルギー革命と21世紀のスマートシティーについて (2014/10/29追加あり)
    
  *2-4より               マンションのサンルーム
(1)省エネ都市が世界展開の時代に
 東芝が、*1のように、米複合企業ユナイテッド・テクノロジーズとスマートシティー事業で提携し、複数のビルや街区の省エネ化などを世界規模で展開して、空調・照明等の機器販売、故障予知等の保守サービスを一体提供するそうだ。日本企業は、蓄電池、ビルエネルギー管理システムなどの新しいエネルギー技術に早くから手をつけたため、その特許を活かして外国の優良企業と提携することができる。

 そして、スマートシティーのようなエネルギーの効率化を核とした都市インフラができれば、建物の耐震化、容積率の緩和・緑地の増加を実現しながら、これまでの建物を21世紀仕様に建て替えるインセンティブが増し、スマートで人間を主体とした街づくりを迅速に進めることができるため、国内でも早く進めて欲しいものである。

(2)マンションの建て替えや団地の再生は、どうすべきか
 *2-1のように、大和ハウスは、老朽化したマンションの建て替え事業を始め、容積率の緩和により既存の住人以外にも売り出す戸数を確保して、建て替え費用の負担を軽くしつつ、新しい耐震基準に従った耐震化や環境に配慮したスマートマンション、商業施設などと一体化した開発などを行うそうである。なるべく、従来の住人には建て替え費用が0か、むしろ収入があるようにすれば、マンションの建て替えが進むだろう。

 また、*2-2のように、都市再生機構(UR)は、高齢化しても住民が住み慣れた街で安心して暮らせるように、運営する団地の入居者の高齢化に対応して、団地内で地域の医療や福祉を担う拠点づくりを進め、自治体やNPOなどと連携して、医療や介護サービスを一体的に提供できる体制を整えるそうだ。そして、それを、今年度内に始めて2020年度までに100カ所程度へ広げる方針だそうで、これと*2-1のような建て替えを組み合わせると、言うことなしの街ができるだろう。

 なお、*2-2によると、団地の一部をサービス付き高齢者向け住宅に改装した上で、訪問看護ステーションや介護事業所などを誘致し、各施設を結ぶ情報システムの構築で医療や介護を一体的に提供できる仕組みを整えて「地域包括ケアシステム」にするそうだが、これらの施設は同じ団地内にあればよく、高齢者のみを高齢者向け住宅に集めない方がよいと思う。そして、包括サービスが手近にある住宅に住んで便利な人は、実は高齢者だけではなく、子育て中の共働き家庭や独身者、障害者などと多く、料金を払えば病気の子や病気の大人も訪問介護が受けられる方が便利である。

(3)サービス付き高齢者住宅のニーズの普遍性
 *2-3のように、京王電鉄も沿線に高齢者向け集合住宅を整備し、周辺在住の高齢者の入居を想定して、入居者が住んでいた自宅には子育て世代や若者などの入居を促す仕組みを設け、高齢化の進展に対応した住環境を整えるとともに、若い世代も呼び込むことで沿線の活性化を進めるそうだ。

 その第1弾として、自立して生活できるか、介護度合いの軽い高齢者を対象にしたサービス付き高齢者向け住宅と、介護度合いの重い高齢者が入る介護付き有料老人ホームを1棟ずつ建設するそうだが、サービス付きの便利な住宅は、実は高齢者のみが好むわけではないため、混住にした方が元気で明るい街になってよいと思う。

 また、*2-4のように、東急不動産は東京都内で一般住宅を併設したサービス付高齢者向け住宅を建設し、その敷地内に、分譲マンション、保育所、学生向け住宅を併設して、入居者以外の高齢者が介護サービスを受けられる施設やカルチャールームも設けるそうだ。私は、学生向け住宅には留学生や家族持ちの学生も入居しやすくし、その近くに保育所や高齢者施設があれば、博士課程まで進学する人が多くなった21世紀の学生のよいケア方法になると考える。

 なお、これらのモデルは、大都市だけでなく、地方都市でも応用できるものだ。そして、私は、今後は、上の写真のように、ベランダだけでなくサンルームのあるマンションの方が便利だと考える。

*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141017&ng=DGKDASDZ1603Q_W4A011C1EA2000(日経新聞2014.10.17)東芝、省エネ都市世界展開 米社と提携 機器・保守一体で
 東芝は米複合企業、ユナイテッド・テクノロジーズ(UTC)と環境配慮型都市(スマートシティー)事業で提携する。空調や昇降機に強いUTCと、ビルの設備制御が得意な東芝のノウハウを組み合わせ、複数のビルや街区の省エネ化などを世界規模で展開する。空調や照明など機器販売だけでなく、故障予知など保守サービスも一体提供し、顧客を囲い込む。17日に発表する。東芝は照明や蓄電池、ビルエネルギー管理システム(BEMS)に強い。UTCは、空調機器大手のキヤリアや昇降機のオーチスをはじめ、航空機エンジンやヘリコプターなど世界大手の子会社を多く傘下に抱える。両社は独自の技術を持ち寄り、省エネタイプの空調や昇降機、照明などビルの設備機器の開発などを進める。このほか、設備の稼働データをセンサーと通信を使って収集・分析して故障予防につなげるサービスも展開する。両社の製品とBEMSを世界160カ国以上にあるUTCの販売網を通じ一体提供する。東芝はビルの設備販売やエネルギーの効率化を核とした都市インフラ事業の売上高を3年後に現在の1割増の1兆6千億円にする計画を掲げるが、提携を機に上積みを目指す。UTCの同事業の2013年度売上高は推定3兆1千億円。グループ全体の売り上げの約半分を占める主力事業だ。20年には世界で65兆円にもなるとされるスマートシティー市場を共同で開拓する。東芝は横浜市でスマートシティーの実証実験を進めている。複数のビルの電力を一体管理したり、ビル内の人の動きに合わせて空調や照明を最適に管理したりするなどして、消費電力を2~3割減らす技術を確立しつつある。東芝はキヤリアと空調機器事業で合弁会社、東芝キヤリア(川崎市)を設立しているが、キヤリアの親会社であるUTCと組むことで空調機器以外のビル設備の販売を増やすほか、機器販売より収益性の高い保守サービスを強化し、収益基盤を広げる。また東芝とキヤリアは空調機器の新工場を北米に建設したり技術者拠点を欧米で整備したりする方向で検討に入ることでも合意。東芝キヤリアの13年度の売上高は1600億円だった。10年以内に倍増させたい考えだ。

*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141017&ng=DGKDZO78499890X11C14A0TI0000 (日経新聞2014.10.17)
大和ハウス、マンション建て替え参入、仮住居仲介も一括で
 大和ハウス工業は老朽化したマンションの建て替え事業を始める。古くなったマンションに住む住人(管理組合)向けコンサルティングから工事、建て替え中の仮住まいの仲介などを総合的に提供。首都圏や関西を中心に案件を掘り起こす。人口減で新築住宅需要の伸びが期待できないなかで、5年後をメドに年100億円規模の事業に育てたい考えだ。大和ハウスは2011年にマンション建て替えの営業や設計の担当部署を東京と大阪に設けて市場調査を進めてきた。このほど神戸市で最初の案件を受注。今後は担当者を16人に倍増して、老朽対策を検討している管理組合への働き掛けを本格化する。旧耐震基準(1981年以前)で建てられ、耐震性が不足しているマンションの建て替えについては、年末から容積率規制が緩和される予定だ。この制度を使って既存住人の住居とは別に売り出す戸数を確保すれば、建設費負担が軽くなる。大和ハウスは同制度をきっかけに、建て替えに踏み切る管理組合が増えると見込んでいる。建物の施工についてはフジタや大和小田急建設、工事中に必要な居住者の仮住まいに関する仲介は日本住宅流通を活用し、グループ全体で事業に取り組む。環境に配慮した省エネルギー型マンションや商業施設と一体となった開発なども提案する。国土交通省によると、国内のマンションの総ストック数は約590万戸で、旧耐震基準でつくられた物件は106万戸ある。建て替え事業には野村不動産や長谷工コーポレーション、旭化成不動産レジデンス(東京・新宿)などが参入しているが、建て替えを終えたのは1万4千戸(2013年4月時点)にとどまっている。ただ、南海トラフ地震など大規模な地震が想定されるなかで、建て替え需要は今後高まるとみられる。国内では大都市圏を中心に、通勤に便利な新築物件候補地が減っていることもあり、大和ハウスは建て替え事業を5年後に100億円、10年後には250億円規模に拡大したい考えだ。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141023&ng=DGKDASDF22H1S_T21C14A0MM0000 (日経新聞 2014.10.23) 
UR、旧公団団地を医療拠点に、多摩など、まず23カ所で 地域高齢化に対応
 独立行政法人の都市再生機構(UR)は運営する団地の入居者の高齢化に対応し、団地内で地域の医療や福祉を担う拠点づくりを進める。自治体やNPOなどと連携し、医療や介護サービスを一体的に提供できる体制を整える。年度内に始め、2020年度までに100カ所程度へ広げる方針だ。急速な高齢化をにらみ、住民が住み慣れた街で安心して暮らせるようにする。まずは高島平(東京・板橋)や多摩ニュータウン(東京都多摩市)、千里ニュータウンの一角を占める新千里西町(大阪府豊中市)など、首都圏や近畿圏を中心に23の団地を選んだ。ほとんどが1千戸以上の比較的大きないわゆる「旧公団団地」で、急速な高齢化が見込まれる場所だ。URは市町村と共同で地域の医師会や社会福祉協議会、NPOなどと「地域医療福祉拠点団地連絡会議」を順次立ち上げる。医療や介護、生活支援サービスなど地域ごとに必要な施設の整備計画をまとめ、URが拠点を整備する。これまでURはバリアフリー化などで高齢者が住みやすい環境を整えてきた。今後は外部の専門機関と連携を強め、地域住民のあらゆるニーズに対応できるようにする。誘致にあたっては団地内の空いた施設を活用したり、高齢化で利用者が減ってきた駐車場などを新しい施設に建て替えたりする。事業者の賃料を減額するなどの優遇策の導入も検討している。先行的な取り組みとして千葉県柏市の「豊四季台団地」では、行政や東京大学高齢社会総合研究機構と高齢化に対応した街づくりを始めた。団地の一部をサービス付き高齢者向け住宅に改装したうえで、訪問看護ステーションや介護事業所などを誘致し、各施設を結ぶ情報システムの構築で医療や介護を一体的に提供できるしくみを整えた。URは柏市の事例を参考とし、全国で同じような施策を展開する。こうした取り組みは、政府が進める「地域包括ケアシステム」の流れにも沿う。政府は施設への入居を中心としたモデルから、住み慣れた地域で医療や介護、生活支援サービスを一体的に受けられる在宅ケアへの転換をめざしている。URの取り組みはその一環で、地域の利害関係者を巻き込んだ街づくりは全国的な先行事例になりそうだ。URは全国で約1700の団地を運営し、総戸数は約75万戸にのぼる。そのうち半数超は1960~70年代に入居が始まった。2010年に行った調査によると、世帯主の平均年齢は56.8歳。65歳以上の高齢者を抱える世帯は全体の約4割で、25年前後には75歳以上の後期高齢者が急増するとみられている。

*2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141028&ng=DGKKZO78950210X21C14A0L83000 (日経新聞 2014.10.28) 
京王電鉄、多摩市に高齢者住宅、便利な駅前「移住」促す 空き家、若者世代が入居
 京王電鉄は沿線に高齢者向け集合住宅を整備する。まず、東京都多摩市に2棟を建設する。主に周辺在住の高齢者の入居を想定しており、入居者が住んでいた自宅には子育て世代や若者などの入居を促す仕組みを設ける。高齢化の進展に対応した住環境を整えるとともに、若い世代も呼び込むことで、沿線の活性化を進める。第1弾として、自立して生活できるか、もしくは介護度合いの軽い高齢者を対象にしたサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)と、主に介護度合いの重い高齢者が入る介護付き有料老人ホームを1棟ずつ建設する。ともに京王線聖蹟桜ケ丘駅の近くで、2016年の開業を目指す。サ高住は同駅から徒歩2分の場所に建てる。事業費は13億円を見込む。延べ床面積は約4000平方メートルで、予定入居者数は約60人。活動能力が比較的ある高齢者が入るため、買い物などに便利な駅前の立地にする。老人ホームは同駅から徒歩9分の場所で、事業費は11億円となる見通し。介護度合いが重く、サ高住では対応しにくい高齢者の入居を想定する。延べ床面積は約3300平方メートルで、約80人が入居可能だ。2棟については今後、沿線で建設を進める高齢者向け住宅のモデルケースにする考えだ。入居費用などの詳細は今後詰める計画で、中間所得層だった高齢者が利用できるように設定する方針だ。京王電鉄は1960年代から、沿線で戸建て住宅地を開発してきた。聖蹟桜ケ丘駅の南側にも同社が手掛けた大規模住宅地があるが、駅から離れているうえ、途中に坂道がある。高齢化の進展に伴い、こうした場所から、駅に近い物件に移り住む高齢者が増えている。同社は高齢者向け集合住宅の整備により、高齢者のニーズを取り込む。同時に、同住宅への入居者から依頼があれば、空き家になった自宅については、京王グループの不動産会社が売却や改修・賃貸の業務を請け負う。これにより、若い世代の呼び込みにつなげる考えだ。

*2-4:http://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20141028&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO78950210X21C14A0L83000&ng=DGKKZO78950260X21C14A0L83000&ue=DL83000 (日経新聞2014.10.28)サービス付き高齢者住宅、都内に一般併設型 東急不動産
 東京都内で一般住宅を併設したサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が登場する。東急不動産は世田谷区内でサ高住の敷地内に分譲マンションや保育所を建設。高齢者施設を展開するコミュニティネット(東京・千代田)などは町田市で学生向け住宅を併設したサ高住を整備する。東急不動産は東急田園都市線桜新町駅から徒歩15分の敷地(約3万4000平方メートル)に、サ高住(全246戸)と一般向け分譲マンション(全252戸)を建設する。2015年に着工し、17年度中の完成を見込む。敷地内には保育所のほか、入居者以外の高齢者が介護サービスを受けられる施設、高齢者や入居者が交流できるカルチャールームも設ける。コミュニティネットなどは町田市で、学生向け賃貸住宅を併設したサ高住を新設する。京王相模原線多摩境駅から徒歩15分で、敷地面積は約7000平方メートル。サ高住60戸、一般住宅40戸を設ける。16年度に完成する計画だ。周辺の桜美林大学と協力し、学生と高齢者の交流を促す。今回の2事業は東京都の新たな補助制度を活用する第1弾。都は一般住宅と交流施設を設けることを条件に、設計費などを一部助成する。


PS(2014/10/29追加):東京都の福祉施設を利用する障害者及び施設職員が、長野県に“通勤”してリンゴやブドウを栽培しているそうだが、人は仕事をすることによって成長し、報酬によってその仕事が評価されるものであるため、障害者も補助金頼みのボランティアや遊びではなく、可能な限り製品を作って販売し、報酬を得るべきである。そのためには、このケースでは、東京から“通勤”するのではなく、長野県の福祉施設が主体になるのが合理的だろう。なお、東京近郊にも農地や花畑はある。

*3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30496 (日本農業新聞 2014/10/28) 通勤農業 東京の福祉施設→長野の園地 障害者 果樹栽培で活躍
 東京都の福祉施設を利用する障害者と施設職員が、長野県高山村と須坂市に“通勤”し、農家の協力を得てリンゴやブドウを栽培している。果樹栽培を引退する高齢農家から園地を借り、春から秋に月1回、10人前後が園地を訪れて作業する。収穫物を障害者施設の直売所で販売する他、園地周辺の農家の作業を手伝ったり、地元の住民と郷土食を作ったりなどして交流を深めている。長野県への“通勤農業”に取り組むのは、練馬区の障害者就労支援施設「つくりっこの家」の障害者や職員、支援団体のメンバーら。自費や募金を資金に月1回、園地に通っている。管理する園地はブドウ15アールとリンゴ15アール。支援するメンバーの高木哲真さん(65)の知人が同村にいた縁から、園地を借り受けた。
●農産物販売や郷土食作りも
 施設職員の藤村明子さん(26)は「近くの人が摘果を教えてくれたり、通りがかりのお年寄りが剪定(せんてい)を見てくれたり」と、農家の親切に感激する。お茶やお菓子の時間に招いてくれることもあるという。参加する障害者も「空気はいいし、夜は星の数が違う」と顔をほころばせる。収穫した果実は施設の直売所で販売する他、りんごジュースも人気だ。活動上の悩みは、遠隔地のため地域での就労に出る補助金が付かないこと。このため支援者から募金を募って交通費などに充て、ボランティアは自費で訪れている。これを知った村民が村と交渉し、昨年からは村の施設を宿泊と自炊に無料で借りられることになった。また、村と施設、区民の交流が昨年からスタートした。村民が区内の催しに駆け付けて農産物を売り、障害者や区民が村を訪れて郷土食を一緒に作るなど、交流が深まっている。高木さんは「障害者にとって、自然の中の仕事や農家との交流は大きなプラスになっている」と活動に手応えをつかんでいる。藤村さんも「地域の支援に応えるために、果樹作業の応援の機会などを増やしたい」と意欲を語る。

| まちづくりと地域振興::2014.4~2015.4 | 02:25 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.10.24 燃料電池車の価値は、環境に悪影響を与えず、低コストで、100%国産の水素を使うことであるため、水素燃料の生産過程でCO2はじめ排気ガスを発生させるのはセンスがなさすぎる → 教育論へ (2014.10.25追加あり)
   
          燃料電池車                    燃料電池飛行機

(1)燃料電池車の価値は、環境に悪影響を与えず、低コストで、100%国産の水素を使うことである
 *1-3のように、福岡では、排気ガスを出さない「究極のエコカー」であるFCVの普及を図る産学官連携組織が発足して燃料電池車の魅力を発信することになり、日本の燃料電池車がやっとスタートラインに立った。水素燃料は、100%国内で自給できるエネルギーで環境に排ガスなどの悪影響を与えないのが大きな価値であるため、燃料を作る段階からそれを徹底しなければ、当初の目的が達せられない。

 そのような中、*1-1のように、九大と福岡県が九大伊都キャンパスで、国の総合特区推進調整費を活用し、太陽光や風力発電を使う次世代燃料電池の実用化に取り組んで2017年の製品化を目指すということで、これは期待できる。
 
 水素エネルギーは、*1-2に書かれているとおり、家庭用燃料電池(エネファーム)や燃料電池自動車の普及、新たな用途拡大により、2030年に1兆円の国内市場が立ち上がり、2050年には8兆円まで拡大すると新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が発表し、「水素を電源構成の一翼を担う存在に押し上げる」と表明している。

(2)水素燃料の生産過程で、CO2はじめ排気ガスを発生させるのはセンスがない
 しかし、*2-1のように、日経新聞は、①FCVを走らせるのに十分な水素は調達できるのか ②生産過程で発生するCO2が課題 ③燃料費はガソリン車の2倍以上 という内容の記事を書き、環境に悪い排気ガスをCO2のみに限定した上で、如何にも水素燃料が環境に良いわけではなく、価格はガソリン車の2倍以上で、調達が難しいと報じている。
 
 そして、②の理由を、水素を作る過程で二酸化炭素(CO2)が発生し、「水を水素と酸素に分解するには大きな電力が必要で、包丁でスパッと切り離すようにはいきません」などと女性提案者を舐めた説明を掲載しているが、実際には、*2-2のように、電力会社が太陽光発電等の再生可能エネルギーの受け入れを中断するほど再エネ由来の電力は豊富で、化石燃料を分解して水素を作ることこそ、本来の目的を理解しない馬鹿な方法なのである。

 なお、素材メーカーの排出ガスから水素を取り出す方法は、廃棄物の有効活用であるためアッパレだが、これは、これまで処理して捨てなければならなかったものを利用するため、安価にできる筈である。

 従って、「燃料電池車の燃料費はガソリン車の2倍以上」などという状態は、やる気があればあり得ないのであり、応用力のある理科の勉強をしてこなかったため、このような発想しかできない人が日経新聞の記者をしているというような事態が、日本の初等・中等・高等教育の重要な問題なのである。

    
   農業現場で使われている電気トラックと燃料電池車(燃油高騰、恐るべからず) 

*1-1:http://qbiz.jp/article/44238/1/
(西日本新聞 2014年8月20日) 次世代燃料電池に特区推進費 九大と県、17年実用化へ
 九州大と福岡県は19日、同大伊都キャンパス(福岡市西区)で、国の総合特区推進調整費を活用し、次世代型の燃料電池の実用化に取り組む方針を明らかにした。同大とメーカーが発電などに使う燃料電池を共同で開発し、2017年の製品化を目指す。燃料電池は、酸素と水素の化学反応を利用して電気をつくり、水を排出する「究極のクリーンエネルギー」とされる。同大では、主要部品の電解質に薄い焼き物(セラミックス)を使う「固体酸化物形」と呼ばれるタイプの次世代型を研究。発電効率が高く、家庭用から火力発電の代替用まで幅広い用途が期待されている。同キャンパスには、13年1月に開所した「次世代燃料電池産学連携研究センター」があり、TOTO(北九州市)や西部ガス(福岡市)など16社が研究所を設置するなど燃料電池分野の研究拠点となっている。本年度、新たに国から17億5千万円の助成を受け、発電に対応する産業用(約250キロワット)や業務用(約5キロワット)の燃料電池を開発。耐久性や発電効率の向上に取り組む。太陽光や風力発電を使って製造した水素を同キャンパスの「水素ステーション」に貯蔵し、同大が購入する燃料電池車に供給する事業も行う。同大工学研究院の佐々木一成主幹教授は「九大が核となり最先端の研究をしたり、企業の製品開発を支援したりできるような態勢を整備したい。未来の社会を伊都キャンパスで実証して世界に発信したい」と話している。

*1-2:http://qbiz.jp/article/42959/1/
(西日本新聞 2014年7月30日) 水素エネ、50年に8兆円市場へ NEDOが初の白書
 経済産業省所管の独立行政法人、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は「水素エネルギー白書」を初めてまとめ、30日発表した。家庭用燃料電池(エネファーム)や燃料電池自動車の普及、新たな用途拡大により2030年に1兆円の国内市場が立ち上がり、50年に8兆円まで拡大すると予測している。水素は燃焼時に二酸化炭素(CO2)が発生せず、環境にやさしいエネルギーとされる。水素と酸素の化学反応で発電する燃料電池分野で、日本は世界一の特許出願件数を有しており、政府はエネルギー基本計画で水素の活用推進を掲げた。白書はNEDOとして「水素を電源構成の一翼を担う存在に押し上げる」と表明。産官学での取り組みに弾みがつきそうだ。白書は、エネルギー安全保障や環境対策、産業競争力の強化のため、水素は極めて重要な技術領域であると強調。エネファーム、燃料電池車に次ぐ第三の柱に水素発電を挙げた。エネファームについては、設置工事費を含めて150万円程度と販売初期の半分程度まで安くなったが、本格普及にはさらなるコスト低減が必要と指摘している。政府はエネルギー基本計画で、エネファームの導入目標を30年に530万台としたほか、燃料電池車の普及に向けた環境整備として首都圏、中京圏、関西圏、福岡都市圏で水素ステーションを15年に100カ所整備する計画を打ち出した。

*1-3:http://qbiz.jp/article/44224/1/
(西日本新聞 2014年8月20日) 「FCVクラブ」福岡に発足 燃料電池車の魅力発信
 二酸化炭素(CO2)を排出しない「究極のエコカー」と期待される燃料電池車(FCV)の普及促進を図る産学官連携組織「ふくおかFCVクラブ」(代表=麻生泰九州経済連合会会長、小川洋福岡県知事)の発足式が19日、福岡市・天神のエルガーラであり、行政や企業などの約400人が出席した。FCVは、2014年度内にトヨタ自動車が市販する予定。同クラブは、試乗会やセミナーを通じてFCVをPRするほか、燃料の水素を補給する水素ステーションの設置状況や、購入時の支援制度などについての情報を発信する。会員の自治体、企業、大学などには率先してFCVを導入するよう促す。発足式で、麻生会長は「政府はFCVの世界最速の普及を目指している。クラブ発足でその勢いを福岡から広げたい」と表明し、小川知事は「普及には大きな初期市場が重要。クラブとしてFCVの魅力発信に努めたい」と強調。タクシー大手の第一交通産業(北九州市)など3企業・大学が業務などでFCVを活用する「導入宣言」をした。この日は記念講演会を開いたほか、近くのパサージュ広場でトヨタの市販モデル車や水素ステーションの水素供給装置を展示した。

*2-1:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO75788890Y4A810C1000000/
(日経新聞 2014/8/19 ) 始動した燃料電池車 普及の鍵は「眠れる水素工場」
 トヨタ自動車が2014年度内に燃料電池車(FCV)を市販する。価格を700万円程度まで引き下げ、政府も一台あたり200万~300万円の補助金を出す構えだ。普及への期待が一気に高まるが、気になるのが燃料電池を動かす水素の供給体制だ。FCVを走らせるのに十分な水素は調達できるのか、ガソリンと比べた価格は。水素事情を探ってみた。
■生産過程で発生するCO2が課題
 FCVは水素を燃やし(酸化させ)て走るため、走った後に出てくるのは水だけ。「究極のエコカー」と呼ばれるゆえんだ。しかし話はそれほど単純ではない。水素を作る過程で二酸化炭素(CO2)が発生するのだ。そもそも水素はどうやって作るか。中学の理科で習ったように、水から酸素を取り除けば水素になる。つまり「水素は水から作ることができる」。間違いではないがFCVの燃料としての水素を考えると、この作り方は現時点では現実的ではない。工業用水素で国内最大のシェアを持つ岩谷産業の担当者は「水を水素と酸素に分解するには大きなエネルギー(電力)が必要で、包丁でスパッと切り離すようにはいきません」と説明する。もちろん原理的には、水から水素を作れる。しかし電解にかかる電力コストを加味すると、かなり割高になってしまう。このため現在、半導体の製造工程や金属の表面処理などで使う工業用水素はLPガスや石油、天然ガスといった化石燃料を分解して作る。しかし生産過程でCO2が発生し、化石燃料への依存度も低下しない欠点がある。さらに現在、国内の水素生産量は年間1億立方メートル。だがFCVの普及が本格化する25年の需要は24億立方メートルと予想されている。この需給ギャップを埋めながら、水素を生産するときのCO2排出量を減らさなければ、FCVは「究極のエコカー」にはなれない。
■素材メーカーが排出ガスから取り出し
 考えられる解決方法は大きく分けて2つある。一つは「都市鉱山」の活用だ。日本国内には「眠れる水素工場」がかなりの規模で存在する。高炉や化学プラントである。鉄鋼や化学品の製造過程で発生する排出ガスの中には大量の水素が含まれている。高炉大手や化学品メーカーはこれらの一部を燃料として再利用しているが、その大半は捨てられている。その量は現在、水素工場で作られている工業用水素の100倍近いとも言われる。素材メーカーが排出ガスから水素を取り出して外販を始めれば、日本全体でCO2の排出量を増やさずに水素の供給量を引き上げることが可能だ。本物の鉱山を使う手もある。オーストラリアなどにある低品質の褐炭から水素を取り出すのだ。火力発電所では使えない低品質の褐炭は現在、そのほとんどが使われずに放置されている。ここから水素を取り出し、液化して日本に運んでくるのだ。水素の生産過程でCO2が発生する問題は残るが、十分な量の水素を確保するという意味では最も現実的だろう。そして第3の方法が実現すれば、FCVはより「究極のエコカー」に近づく。洋上に水素工場を浮かべ、組み上げた海水を太陽光や風力で作った電気で分解するのだ。水と太陽光、風力を使っていくらでも水素を作ることができる。コストを考えると今の時点では現実的な解とは言えないが、ここまで来ると水素は「電気の缶詰」になる。H2OをH2に分解するときに充電し、H2を燃やしてH2Oに戻す時に放電する。このサイクルを繰り返せば、「Well to Wheel(井戸から車輪まで)」で完全な「CO2フリー」が実現する。水素先進国のアイスランドでは地熱や水力で生み出した電気で水素を作り、自動車や船舶を動かす国家プロジェクトが進められているのだから、洋上水素工場もおとぎ話ではない。
■燃料費はガソリン車の2倍以上
 最後に気になる価格を見てみよう。現在、工業用水素の相場は1立方メートル当たり約150円。最新のFCVは水素1立方メートルで10キロメートル走るから、ガソリン車並みに満タンで500キロメートル走るには50立方メートル、つまり7500円の燃料費がかかる。感覚的にはガソリン車とほぼ同等の燃費性能だが「税金や水素ステーションの設置コストなどを足し込むと、2倍以上にはなる」(岩谷産業)という。その水素ステーションは今年度でも全国で約40カ所足らず。大都市の一部でしか設置されない。3万カ所を超えるガソリンステーションに追い付くにはまだ時間がかかる。FCVを販売するディーラーが水素漏れ点検装置などの導入に1店あたり500万円以上を投じる必要があることも普及の妨げだ。しかし初代プリウスが登場したのは今から16年前。当時に比べれば今の方が「消費者のエコカーへの関心は格段に高い」(トヨタ)。水素インフラの整備にはかなりの時間とお金がかかるが、道筋が見えていないわけではない。あとは日本の産業界全体が本気で「水素社会」を作る気になるかどうかの問題である。

*2-2:http://qbiz.jp/article/48164/1/
(西日本新聞2014年10月21日) 九電、住宅用太陽光は契約再開 再生エネ保留、一部解除
 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に基づく新規契約を中断している九州電力は21日、出力10キロワット以上の住宅用太陽光などの買い取り手続きを再開すると発表した。出力50キロワット未満で、契約中断を発表した9月24日までの申し込み分が対象。契約中断発表後、九電への苦情が殺到したことなどから対象を再検討した結果、住宅用については電力の安定供給への影響が限定的と判断した。
■なぜ再生エネ契約中断? 今後は?
 九電によると、再開の対象となるのは九州全域の約1万1100件で、発電容量は計32万1千キロワット。出力50キロワット未満でも、事業者が接続条件の緩和を狙って、大規模設備の敷地を分割して申し込んでいるケースは対象外とする。住宅用太陽光について、九電はこれまで10キロワット未満に限って契約中断の対象外としていたが、10キロワット以上のパネルを住宅に設置する計画の家庭などから「住宅ローンの返済計画が狂う」「発電設備を既に購入してしまった」といった反発が続出。国から対応策の検討を求められたこともあり、買い取り範囲の拡大を決めた。九電は「太陽光発電の急増で、管内の電力供給が不安定化する恐れが生じている」として、9月25日から再生エネの新規契約を九州全域で中断していた。今回の手続き再開後も、申し込み済みのうち事業用を中心とする約5万5500件(発電容量約1150万キロワット)は引き続き保留対象とする。再生エネの契約中断の動きは全国の他の電力会社にも広がっており、経済産業省の有識者専門部会が年内をめどに、各社の受け入れ可能量を検証する方針だ。
*固定価格買い取り制度 再生可能エネルギーによる発電を増やすため2012年7月に導入された制度。大手電力会社に対し、再生エネ事業者が発電した電気を国が決めた価格で長期にわたり買い取るよう義務付けた。電力会社の買い取り費用は電気料金に上乗せされる。ただ、大手電力の間で買い取り手続きを中断する動きが広がったことから、経済産業省は制度を抜本的に見直す議論を始めた。


PS(2014.10.25追加):私が本文で、「経済新聞記者でさえ、応用力のある理科の勉強をしてこなかったため、このような発想しかできない」と書いたところ、翌日、*3の記事が掲載されたが、これは本当に重要な問題点は記載していない。それは、1)私立文系の大学入試には、数学、物理、化学、生物などの理数系科目がないため、高校以下で理数系科目をしっかり勉強しておらず、知識も論理的思考力も身についていないこと 2)大学でも文系は大教室で知識を伝える講義を中心とし、知識を覚えたか否かの試験を行うため、学生がその知識に疑問を投げかけ解答を得ておく習慣を身につけていないこと 3)これを導くことができるのは先生の資質であるため、先生の質の確保のため、初等教育から先生の報酬を惜しまず、待遇をよくするとともに、先生の社会的地位を上げなければならない ということである。

 これまで、教育改革と言えば、*3のように、「①知識偏重がいけないので、知識量を問う『従来型の学力』を測るテストから、知識を活用し課題を解決できる能力を見る入試へ」「②知識の活用力や思考力、主体性を評価する入試に転換」「③筆記試験の点数ではなく、志望理由書や面接、プレゼンテーション能力、集団討論、部活動の実績、資格試験の成績などを組みあわせる」など、知識や学力を軽視する方向への変更が行われ続け、これが日本の公教育による学力低下を招き、貧困の世代間連鎖を生んだ。

 しかし、①②は、小中高の段階では、よい先生に導かれて多方面の知識と論理的思考力をしっかり身につけることによって達成できるものだ。さらに、③は、TOEFLなどの信頼できる資格試験を除き不確かな判断基準となり、評価者以上のとびあがりの学生やその時代の“標準”では予想できない学生も評価できない。そのため、それぞれの大学が、客観的で公正な大学入試センター試験をミニマムとし、自らの教育理念に従って必要な追加試験を行って選別し、その教育理念にそって学生を磨くべきだと考える。

*3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11420347.html?_requesturl=articles%2FDA3S11420347.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11420347 (朝日新聞 2014年10月25日) 大学入試、知識の活用重視 集団討論・プレゼン・記述式… 中教審が改革答申案
 大学入試改革を議論している中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)は24日、入試選抜方法の改革を促す答申案をまとめた。年内にも答申される。知識量を問う「従来型の学力」を測るテストから、知識を活用し自ら課題を解決できる能力を見る入試に改める。個別試験では、早ければ今の高校2年生が対象となる、2016年度入学の入試から導入される。大学入試センター試験も選抜方法が変わる。答申案は、センター試験や個別試験の知識偏重で1点を争うテストから、知識の活用力や思考力、主体性を評価する入試に転換するべきだと指摘している。個別試験については、筆記試験の点数ではなく、志望理由書や面接、プレゼンテーション能力、集団討論、部活動の実績、資格試験の成績などを組みあわせて選抜するよう提言した。学力を測る場合は、選択式だけでなく、「記述式、論述式」にするとした。個別試験の改革は「強力に推進する」べきだとされ、各大学には、学生のどのような力をどのように評価するのかを明確にし、求める人物像を示した基本方針を必ず策定することを求めた。国には、改革の取り組みに応じて補助金を出すなどの必要性を指摘した。一方、センター試験は、「思考力・判断力・表現力」を評価する「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」に変える。このため、国語と理科など複数教科を合わせた問題や記述問題を導入。各大学には試験結果の活用を勧める。こちらは20年度から「複数回」の実施を検討している。高校生の就職活動などにも使える新テストは「高校基礎学力テスト(仮称)」とし、19年度から始める。高校2年、3年で複数回受験でき、結果は大学受験の資料としても使用できる。いずれも、具体的な内容は専門家らが検討を進めるが、英語については、TOEFLなどの民間試験の活用が求められた。
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 <大学入試改革> 政府の教育再生実行会議が昨年から議論し、「能力・意欲・適性を多面的、総合的に評価する大学入学者選抜制度」を同年10月に提言した。センター試験は、知識の暗記だけでは解けない「考える力」をみるものに転換することを提案。学力水準の判定とともに、面接や高校時代の活動歴も評価するよう大学に求めた。これを受け、中央教育審議会が改革案を議論していた。

| 資源・エネルギー::2014.10~2015.4 | 10:41 AM | comments (x) | trackback (x) |
2014.10.22 川内原発再稼働は合理的ではなく、原発のコストも安くないということ
     
 原発のコスト       廃炉費用の負担について

(1)川内原発は、再稼働ありきの形式的手続ではいけない
 *1-1のように、川内原発の安全審査に関する住民説明会が行われたが、新規制基準は自然災害やテロ対策、放射性物質拡散防止を求めているものの、それはまだ実践されていない。また、原子力規制庁担当者は、「100%安全とは言えない」と繰り返すが、原発の場合は、事故時の影響が膨大であるため、100%安全でなければ稼働は許されない。

 しかし、川内原発再稼働に関する住民説明会での質疑は、技術的な審査に関するものだけで、避難計画や地元同意の範囲など住民の関心が高い事項が受け付けられず、インターネット中継も禁止されたため、説明会の様子を視聴できたのは薩摩川内市の人口の1%に限られたそうだ。薩摩川内市の岩切市長は、「規制庁は細かく説明してくれた」と評価し、住民説明会の追加開催を否定したそうだが、日本全国の住民が、より丁寧な質疑を望んでいる。

 なお、*1-2のように、新規制基準への適合性審査に合格した九電川内原発について、鹿児島県と鹿児島県内の5市町で開いた住民説明会では、A4判両面印刷のアンケート用紙が配られたが、設問はわずか6つで、そのうち3つは性別など回答者の属性を尋ねる内容であり、原発に関わるのは説明会で理解できなかった項目を選ぶ1問だけだったそうだ。そして、再稼働への意見を聞く設問は全くなく、鹿児島県は「理解不足の項目を確認し、情報提供の方法を検討する(原子力安全対策課)」と説明しているが、内容の理解と再稼働の支持は同義ではないのに、鹿児島県の住民は馬鹿にされたものである。

 こうした行政の姿勢は「再稼働ありき」で住民を原発の議論から遠ざけ、立地自治体の薩摩川内市以外での原発30キロ圏(本当は、30キロ圏内だけが地元でもない)の4会場は参加希望者が定員の4~8割程度で、さつま町は定員の半数にも満たなかったそうだ。そして、その中には「いくら意見を言っても無駄」「公開討論会を開いてほしい」「住民投票をやるべきだ」などの意見がある。

 また、*1-3のように、薩摩川内市での住民説明会は、「良くなかった」という意見が約5割で、「良かった」の約3割を上回った。そして、*1-4のように、薩摩川内市議会の特別委員会には、再稼働に反対する市民ら約70人が傍聴に詰めかけ、約40人が傍聴席の抽選から漏れて市側と小競り合いになり、熊本県水俣市の会社員は、「再稼働は薩摩川内市だけの問題ではない。傍聴希望者を全て受け入れて審議すべきだ」と話したとのことである。 

(2)薩摩川内市議会、薩摩川内市長の動向について
 薩摩川内市は、*1-5のように、10月28日に臨時議会を開いて、再稼働をめぐる賛成と反対の陳情が採決され、賛成の陳情が採択される見通しで、これを受けて岩切市長も同日中に再稼働への同意を表明する見込みとのことだ。岩切市長は20日の記者会見で「再稼働は市民の元気を取り戻す一つの方法」と述べたそうだが、原発にそのような前向きな発言ができるのは、私には、不勉強で無責任としか思えないが、これが現在の鹿児島県の状況である。

(3)原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分について
 *2に書かれているように、原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分に関して、日本学術会議が「新たに生じる放射性廃棄物の対策が曖昧なまま、原発を再稼働するのは将来世代に対し無責任」と指摘しており、これには賛成だ。しかし、「原発に対する現在世代の責任を強調している」ことについては、責任は現在世代の全員にあるのではなく、強引に原発を進め再稼働に積極的な人たちにあることを明確にすべきだ。何故なら、電気を使った人にも責任があるという意見もあるが、電気は原発でしか作れないわけではなく、需要者には発電方法の選択権がない地域独占システムだったからである。

 また、日本学術会議は、「暫定保管を各電力会社の管内とし、保管する期間は一世代に相当する30年を一区切りとした」とのことだが、①拡散して保管することによるリスク増大 ②分散して保管することによる費用増大 ③保管にかかる総予算 ④諸外国の事例 を明らかにすべきである。そして、拡散した暫定的保管にカネをかけ、さらに最終処分場にカネをかけた場合、全体として原発のコストはいくらになるのかを考えるべきである。私は、そのカネと労働力を最大限節約して、本当に将来の地域振興に役立つインフラに投資した方が、根本的に地方の問題を解決する手段になると考えている。

(4)原発事故の賠償金について
 *3に書かれているとおり、フクシマ原発事故で、原発が事故を起こせば巨額の賠償金が必要になることが分かったのに、事故への備えが不足したまま、九電川内原発が再稼働に向かうことになっており、これを現在世代全員の責任にされてはたまったものではない。さらに、原発の輸出促進を狙った「原子力損害の補完的補償に関する条約」も国民負担になっており、とんでもない話だ。

 福島事故では、11兆円を超える損害が生じる見通しだが、現行の原賠法による事故の備えは1200億円の保険金だけで、福島事故の不足分は国が一時的に肩代わりした。しかし、本来は、私的企業である電力会社が責任を持つべきであり、損害賠償のためには保険掛金を拡充すべきなのである。

(5)廃炉について
 *4-1、*4-2に書かれているように、運転開始から39年の玄海原発1号機を廃炉にするか、存続して再稼働させるかを検討しているそうだが、原発のように絶対に事故を起こしてはならない固定資産の耐用年数を、延長申請すれば40年から60年まで延長できるとするのが、そもそも乱暴すぎる。そのため、検討するまでもなく廃炉にすべきだ。

(6)原発解体費が4割も不足しているとは・・
 *4-3に書かれているように、原発の解体費が4割不足しているそうだが、解体費用や廃炉費用は発電して電力を供給している期間に廃炉引当金(そもそも“積立金”という認識が誤り)を積み、毎年の引当金繰入額は、発電費用として電気料金で回収するのがあるべき会計処理である。そのため、現在、引当金が6割に満たないのであれば、これまで電力会社は解体費の見積もりを誤っていたことになる。

 もし、予定外の廃炉による巨額の損失があれば、それは特別損失として一括処理するのがあるべき会計処理だが、災害によるものは、臨時巨額の損失として繰り延べ、できるだけ早く償却する方法もある。しかし、それは、5年以内に償却するのが普通であり、10年という事例は他にはない。

 また、電力会社が負うべき解体費用を国民に転嫁するのは、(国策変更で予定外に早く廃炉する部分を除き)筋が通らない。そのため、解体費用を負担できないのなら、原発のコストは安くないのだから、早々に原発から撤退するのが普通の経営判断である。

(7)最終処分場について
 高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する費用も、発電して電力を供給している期間に高レベル放射性廃棄物処理引当金を積み、毎年の引当金繰入額は、発電費用として電力料金に入れるべきだったのであり、ここまで含めて安くなければ、「原発のコストは安い」と主張することはできない。

 そして、最終処分場建設費も、本来は電力会社が負うべき処理費用を国民に転嫁しようとしているもので、それは筋が通らない。もし、その費用も負担できないようなら、原発のコストは決して安くはないため、国民にこれ以上の迷惑をかけないよう、早々に原発から撤退すべきである。

          
 使用済核燃料保管量  除染と中間貯蔵       最終処分場

*1-1:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201410/20141020_13007.html (河北新報 2014.10.20) 質疑打ち切りに反発/(上)住民説明 内容限定不安消えず/再稼働の行方・九州川内原発ルポ
 川内原発の安全審査に関する住民説明会。会場では安全性への不安の声が相次いだ=9日、鹿児島県薩摩川内市 鹿児島県薩摩川内市にある九州電力川内原発が国の新規制基準適合性審査(安全審査)に合格し、国内第1号となる再稼働に向けた手続きが着々と進む。福島の事故で増幅された地域の不信と不安に、自治体はどう向き合おうとしているのか。住民説明会が開かれた現地を訪れ、東北での課題を探った。(原子力問題取材班)
<何のため>
 1時間の質疑を終えて残ったのは反発と不満だった。薩摩川内市で9日夜にあった住民説明会。「何のために開催したのか。もっと丁寧に市民の声を聞くべきだ」。終了後、原発から12キロの地域で自治会長を務める川畑清明さん(58)が吐き捨てるように言った。説明会は再稼働への同意、不同意の判断を迫られる県と市が共催した。地元住民への説明は法的に定められていないものの、理解促進を目的に独自に企画された。2013年7月施行の原発新規制基準は、自然災害やテロの対策、放射性物質の拡散防止を求めている。福島の事故を踏まえて基準が厳格化されたとはいえ、住民の不安解消は容易ではない。「絶対安全には到達できない。できるだけリスクを抑える審査をした」。原子力規制庁担当者の発言に、満席の会場がざわめく一幕もあった。質問に立った女性の一人は「福島の事故が収束しておらず、説明に説得力があると思っているのか」と詰め寄った。住民が原発再稼働と向き合う貴重な機会のはずが、質疑は途中で打ち切られた。内容は原則、審査結果に関するものに絞られた。避難計画や地元同意の範囲など、住民の関心が高い事項は受け付けられなかった。開催は原発30キロ圏を含む5市町で各1回限り。薩摩川内市の場合、出席できたのは約1000人。全人口の1%にとどまった。
<市長は評価>
 十分な対話が尽くされたとは言い難いものの、行政サイドは再稼働に向けた地元手続きを着々と進めている。川内原発をめぐる焦点は、既に首長や地方議会の判断に移ろうとしている。一夜明けた10日、記者会見した岩切秀雄市長は「規制庁は細かく説明してくれた」と評価。次は「市議会の意向を聞く」と語り、住民説明会の追加開催は否定した。現在、東北電力の女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)と東通原発1号機(青森県東通村)も安全審査を受けている。基準を満たしていると判断されれば、地域で原発の是非をめぐる議論が再燃するのは必至だ。先行する鹿児島の動向は参考事例となる。深刻な原発災害が今も続く中、どんな対応が東北で求められるのか。より丁寧な住民説明が欠かせないのは明らかだ。立地自治体となる宮城県の担当者は「(放射性物質の飛散など)福島の事故の影響が及んでいる。手続きを慎重に検討したい」と話している。川内原発]加圧水型軽水炉(PWR)の1号機が1984年、2号機が85年に営業運転を開始した。出力はともに89万キロワット。東日本大震災後、2011年9月までに2基とも運転を中止した。運営する九州電力は13年7月、原子力規制委に適合性審査を申請。ことし9月に全国で初めて適合が認められた。

*1-2:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201410/20141021_13011.html (河北新報 2014年10月21日) 是非問う機会設けず/(中)民意集約/「結論ありき」批判も/再稼働の行方・九州川内原発ルポ
<同意の思惑>
 国の新規制基準適合性審査(安全審査)に合格した九州電力川内原発。鹿児島県などが県内5市町で開いた住民説明会では、A4判両面印刷のアンケート用紙が配られた。設問はわずか六つで、うち三つは性別など回答者の属性を尋ねる内容。原発に直接関わるのは1問しかなかった。それも「(地震や津波対策など)説明会で理解できなかった項目」を選ぶだけ。再稼働への意見を聞く設問は全くない。集計結果がどう活用されるかも見通せない。県は「理解不足の項目を確認し、情報提供の方法を検討する」(原子力安全対策課)と説明するにとどまる。本来、審査結果に対する理解と再稼働支持は同義ではない。アンケート項目の乏しさには「審査内容への理解が進めば再稼働に同意できる」との県の思惑が透けている。
<低い出席率>
 こうした行政の姿勢は「再稼働ありき」と映り、住民を原発議論から遠ざける恐れがある。説明会の全5会場のうち、定員を超す応募があったのは立地自治体の薩摩川内市だけ。原発から半径30キロ圏の4会場は希望者が定員の4~8割程度。平日の夜間開催という事情を勘案しても、高い出席率とは言い難い。さつま町は定員の半数に満たなかった。町内で眼鏡店を経営する山内義人さん(63)はあえて出席を見送った一人だ。「再稼働の是非で激論を交わすべきだが、行政側は強引に手続きを進めてしまっている。意見をいくら言っても無駄だ」。山内さんは諦め顔を見せた。「公開討論会を開いてほしい」「住民投票をやるべきだ」。複数の会場でこうした意見も出たが、県側は否定的な姿勢を崩さなかった。説明会について、伊藤祐一郎鹿児島県知事は「一般的な形では理解が進んだ」と話す。住民の意見を集約する機会がないままに、再稼働をめぐる手続きは最終局面を迎えようとしている。
<有志尋ねる>
 経済性や安全性など、原発を評価する住民の尺度は一様ではない。同意、不同意の判断を迫られる自治体は、多様な価値観をくみ取る努力が欠かせない。東北では再稼働の判断に向けた取り組みが進む。東北電力女川原発の地元、宮城県女川町の町議有志が今、2500世帯を対象に女川原発再稼働の賛否を尋ねている。12月には県と町に結果を報告する。企画者の一人、高野博町議(71)は「原発は一般の行政課題と異なる。首長や議員だけで決められる問題ではない」と指摘する。

*1-3:http://qbiz.jp/article/48068/1/
(西日本新聞 2014年10月20日) 川内の住民説明会 「良くなかった」5割
 九州電力川内原発の再稼働をめぐる陳情審議があった20日の鹿児島県薩摩川内市議会特別委員会で、市が原発の安全性に関する住民説明会出席者へのアンケート結果を説明した。説明会の感想は、「あまり良くなかった」(34%)と「良くなかった」(14%)を合わせると約5割で、「まあまあ良かった」(23%)と「良かった」(8%)の合計の約3割を上回った。「普通」は22%だった。説明会はほかに原発30キロ圏4市町であり、20日夜の同県いちき串木野市で終了する。伊藤祐一郎知事はアンケート結果を同意判断の材料にするとしているが、立地自治体の薩摩川内市で否定的な傾向が出たことで、ほかの4市町の結果が注目される。薩摩川内市の説明会は9日、市民を対象に開かれ、736人がアンケートに回答した。理解できなかった項目を選択する設問(複数回答可)では、「原子炉施設の大規模な損壊への対応」が25%、「自然現象および人為事象の想定と対策」が19%だった。何も選択しなかった人が52%いたが、市は「(全般的に)理解できなかったから印も付けられなかったのではないか」と説明した。 

*1-4:http://qbiz.jp/article/48069/1/
(西日本新聞 2014年10月20日) 市議会特別委、傍聴求め紛糾
 川内原発再稼働をめぐる陳情の採決があった20日の鹿児島県薩摩川内市議会の特別委員会には、再稼働に反対する市民ら約70人が傍聴に詰めかけた。約40人が傍聴席の抽選から漏れて市側と小競り合いになり、混乱した。傍聴席は30しかなく、議会側は抽選に漏れた人には審議状況を音声中継する別室を準備した。市民は「重大な問題なのになぜ傍聴を制限するのか」と反発し、議会事務局の職員に詰め寄った。特別委が始まると、傍聴席から大声で抗議した男性1人が橋口博文委員長に退室を命じられた。午前11時ごろから再稼働をめぐる陳情審理が始まると、市民約30人が委員会室前の通路を占拠。委員会室に向けて「再稼働反対」と繰り返し、市議会事務局の職員とにらみ合いを続けた。退室を命じられた熊本県水俣市の会社員永野隆文さん(60)は「再稼働は薩摩川内市だけの問題ではない。傍聴希望者を全て受け入れて審議すべきだ」と話した。 

*1-5:http://qbiz.jp/article/48205/1/
(西日本新聞 2014年10月22日) 薩摩川内市が28日臨時議会 鹿児島
 九州電力川内原発がある鹿児島県薩摩川内市の岩切秀雄市長は21日、臨時議会を28日に招集すると告示した。再稼働をめぐる賛成と反対の陳情が採決され、賛成の陳情が採択される見通し。これを受け、岩切市長も同日中に再稼働への同意を表明する見込みだ。福島第1原発事故を教訓に原発の新規制基準が施行された昨年7月以降、原発立地自治体が再稼働にゴーサインを出すのは初めてとなる。この後、再稼働に向けた地元同意手続きの焦点は、県議会と伊藤祐一郎知事の判断に移る。薩摩川内市議会は、20日の特別委員会の再稼働賛成陳情採択を受け、21日に議会運営委員会を開いた。瀬尾和敬議長が「特別委の審査終了を受け、市議会として意思を示す必要がある」と臨時議会の招集請求を諮り、全会一致で認めた。市議(26人)の過半数は取材に対して、再稼働に同意する意向。岩切市長は20日の記者会見で「特別委の判断を高く評価する。再稼働は市民の元気を取り戻す一つの方法」と述べて再稼働に前向きな姿勢を示している。

<核のゴミ処理について>
*2:http://www.sanyonews.jp/article/83861/1/?rct=shasetsu
(山陽新聞 2014年10月18日) 核のごみ報告書 再稼働ありきへの警告だ
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分に関し、「学者の国会」と呼ばれる日本学術会議が二つの分科会の報告書を公表した。新たに生じる放射性廃棄物の対策が曖昧なまま、原発を再稼働するのは「将来世代に対し無責任」などと指摘している。原発の再稼働に向けた動きが本格化する中、核のごみの処分をめぐっては全く見通しが立っていない。国は、今回の報告書を科学界からの警告として重く受け止めるべきである。日本は、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルを国策として進めてきた。だが、中核となる高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)はトラブル続きで、運転再開のめどが立たないなど、核燃料サイクルは事実上、破綻している。一方で、核のごみの処分方法や最終処分地は決まらず、手詰まりの状況にある。このまま原発の再稼働を進めれば、核のごみは増え続けるばかりだろう。2010年に国の原子力委員会から審議依頼を受けた日本学術会議は12年9月、廃棄物を回収可能な場所で「暫定保管」し、その間に最終処分の進め方について国民の合意を得るべきだと国に提言していた。今回の報告書はその提言をより具体化した。注目されるのは、原発に対する「現在世代の責任」を強調していることだ。暫定保管を各電力会社の管内とし、保管する期間は、一世代に相当する30年を一区切りとした。その間に長期的な政策選択について判断することを求めている。暫定保管の期間について、12年の提言では「数十年から数百年程度」と幅が広かった。今回の報告書では、保管期間があまりに長いと、廃棄物を生みだした世代の関与や責任が曖昧になる恐れがある一方、期間が短すぎれば、科学的知見や技術開発が進展せず社会的合意もできない、と指摘した。保管期間を30年間と具体的に示すことで、現在世代が責任を果たすよう強く促したといえよう。暫定保管の施設については、電力各社がそれぞれの配電圏域内で建設することを社会的な議論の出発点とするよう求めている。その上で、原発の再稼働に伴って新たに発生する放射性廃棄物に関して、対策を曖昧にしたままの再稼働は「将来世代に対する無責任を意味し、容認できるものではない」と断じた。報告書は、廃棄物の暫定保管や、発生量に上限を定める総量管理について社会的な合意形成を図るためには、中立公正な組織を設ける必要性も強調している。日本学術会議は報告書を基に、年内にも新たな提言としてまとめる方針だ。政府は原発再稼働ありきでなく、核のごみ処分に関する国民的な議論の喚起に向け、取り組みを主導していくべきである。

<原発事故の賠償金について>
*3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014101902100005.html (東京新聞 2014年10月19日) 【福島原発事故】原発賠償金「備え」放置 臨時国会 抜本改正見送り方針
 政府が臨時国会で原子力損害賠償法の抜本改正を見送る方針を固めたことが分かった。東京電力福島第一原発事故で、原発が事故を起こせば巨額の賠償金が必要になることが分かったのに、政府は、資金的な備え不足や、国と電力会社が責任をどう分担するのかの議論を避けた。このままでは備えが不足したまま、九州電力川内(せんだい)原発が再稼働に向かうことになる。政府は十一月末まで開かれる臨時国会に、原賠法の一部改正案を提出する考えだが、原発の輸出促進を狙った「原子力損害の補完的補償に関する条約」(CSC)の承認に必要な文言修正など、部分改正にとどめる。文部科学省の担当者は本紙の取材に「(必要な備えのあり方など)基本的な問題については、CSCの後で議論することになる」と、抜本改正を先送りすることを認めた。福島事故では、十一兆円を超える損害が生じる見通し。しかし、現行の原賠法による事故の備えは一千二百億円の保険金だけ。福島事故では不足分を国が一時的に肩代わりし、制度の不備を取り繕ったものの、資金量は東電対応で手いっぱいだ。日本がCSCに加盟すると、米国などの加盟国が賠償金を支援する仕組みもある。ただし、文科省の試算では、もし日本で再び重大事故が起きた場合、日本が得られる支援金は七十億円ほど。備えるべき兆円単位の被害額に比べると、ほとんど対策にはならない。本来なら、電力会社と国はどこまで責任を分担するのかや、保険金額を拡充できないのか、などの検討が不可欠。しかし、政府は六月と八月に原賠制度の見直しを議論する副大臣会議を開いたものの、実質的に議論はしていない。

<廃炉について>
*4-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/115189
(佐賀新聞 2014年10月16日) 廃炉か存続か迫る期限 玄海原発1号機運転39年
 九州電力玄海原発1号機(東松浦郡玄海町)が15日、運転開始から39年を迎えた。原則40年の運転期限まであと1年と迫り、九電は廃炉とするのか、存続して再稼働させるのか、検討を進めている。存続するには来年7月までに運転延長を申請する必要があるが、福島第1原発事故後の新規制基準をクリアするには巨額の設備投資は避けられず、3年連続赤字の九電としては高いハードルとなる。立地する玄海町の岸本英雄町長は運転延長を望みつつ、投資額の多さに廃炉もやむを得ないとの認識を示す。九電の判断が注目される。玄海1号機は出力55万9千キロワットで、2011年3月の福島の原発事故後、同年12月に定期検査のため運転を止め、2年10カ月にわたり冷温停止状態が続いている。今月10日には今後10年間の保守管理方針を原子力規制委員会に申請した。規制委は昨年7月に定めた新規制基準で、運転期間を原則40年と制限し、例外として1回、最大20年間の延長を可能としている。運転を延長する場合、期限の1年~1年3カ月前までに申請する必要がある。ただ、玄海1号機など全国の7基は特例で申請手続きが16年7月まで猶予され、それまでに審査を終えるには来年7月までに申請しなければならない。九電の瓜生道明社長は当初、今秋の判断を示唆していたが、来年4~6月への先送りを言明している。運転延長には、新基準の厳しい審査に合格しなければならない。最大の課題とみられるのが、新基準に適合しない可燃性の電源ケーブルの取り扱いだ。現在、延焼防止剤を塗って対応しているが、不燃性・難燃性への交換を求められると、巨費と多大な時間を強いられる可能性がある。どれだけ延長を認められるかも見通せず、費用対効果をどう判断するかが焦点となりそうだ。「50年運転」が持論の岸本町長は町財政や経済をにらみ、九電の判断を注視する。「私が社長なら膨大な投資をしても費用対効果が見込めないので廃炉にする」と語る。その上で「電力の安定供給のためには、リプレース(置き換え)で廃炉と同時に新設すべきだが、原発を取り巻く状況では困難」と指摘する。廃炉する場合、立地町への交付金新設を国に求める。規制委が運転延長を最終判断する際は「原発構内に入り、コンクリートの状況など確認して立地自治体の責任者として意見を言いたい」と注文する。また再生可能エネルギーの買い取り契約申請殺到で想定を上回る供給過剰の状況が発生し、九電は新規の契約手続きを中断している。「原発の再稼働を見越し、今後どれだけの買い取りが可能かどうか見極める」と説明しており、原発が再稼働すれば、さらに供給過剰が拡大し、買い取り制限につながりかねない。買い取り中断も絡み、九電は悩ましい判断を迫られている。

*4-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11407627.html
(朝日新聞 2014年10月18日) 経産相「早く判断を」 40年超原発、延長か廃炉か
 小渕優子経済産業相は17日、電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)と会談し、運転開始から40年を超える原発について、運転延長するか廃炉にするかの判断を早期に示すよう指示した。経産省は電力業界からの回答を踏まえ、廃炉を決めても巨額の損失がでないよう会計ルールを見直すなど、支援策で一定の方向性を年内に打ち出す。政府は東日本大震災後、原発の運転は「原則40年」と定めた。例外として1回に限り、最長20年の延長が認められており、原子力規制委員会への延長申請が必要になる。対象となる原発は、関電の美浜1、2号機(福井県)、九州電力の玄海1号機(佐賀県)、中国電力の島根1号機など7基で、期限は来年7月に迫っている。国が老朽化した原発の廃炉を進める姿勢をはっきりと示すことで、原発再稼働を加速させる環境づくりをすすめたい考え。会談で小渕氏は「地元経済、事業者の財務への影響などの課題があり、政府としてもしっかり必要な対策を検討する」とも述べた。経産相からの指示について、八木氏は記者団に、「できるだけ早く回答したい」と話した。今後、延長申請が迫る7基を持つ関電、九電、中国電などに廃炉判断を促し、電事連として国にまとめて回答する考えだ。

*4-3:http://qbiz.jp/article/48036/1/ (西日本新聞 2014年10月20日) 原発解体費4割不足 廃炉後も電気料金で穴埋め 電力9社積立金調査
 原発を保有する電力9社に義務付けられている解体費用の積立金が、今年3月末時点で見積額(計2兆6千億円)の6割に満たないことが分かった。積立金は電気料金に含まれ、利用者から徴収。原発解体をめぐっては放射性廃棄物の処分法が決まっておらず、解体費用が見積額を上回る可能性もある。電力各社はこれから相次ぐ原発の解体を控え、電力自由化後も追加負担を国民から徴収できる仕組みづくりを国に要望。解体費用が上振れすれば、発電コストが安いとされる原発の優位性はさらに揺らぐ。原発解体費用の積み立て状況は、西日本新聞がこのほど、9社に実施したアンケートで判明。それによると、解体費用の積立金は見積額の約56%の1兆4800億円。これまでは、運転期間中に稼働実績に応じて積み立てる制度だったが、東京電力福島第1原発事故後、運転が長期停止しているため、積み立て計画に遅れが生じている。このため経済産業省資源エネルギー庁は昨秋、運転を終了し、廃炉を決めても電気料金から、その後10年かけて徴収できる会計制度に改めた。積立金が不足する実態に合わせるため、制度を変更する原発優遇策。九州電力は、現状で年間約50億円を料金に折り込むことが認められている。そうした配慮がなされたものの、電力各社はその後の国の審議会で「解体費用が上振れする可能性がある」と懸念を表明。原子炉や制御棒といった放射性物質の付着レベルが高い廃棄物などは地中で300年程度の管理が必要とされるのに、処分場も決まっていないためだ。解体費用の見積額を上回る追加負担が出た場合、国民から徴収できるよう国に求めた。さらに廃炉が決まれば、使用中の核燃料や、タービンなどの発電設備が資産価値を失い、現状では電力各社は、減価償却できていない分を特別損失として一括して会計処理しなくてはならない。原則40年の運転期限が迫る玄海原発(佐賀県玄海町)1号機など、老朽化した全国7基の廃炉判断が間近に迫る中、各社は、損失計上せず、料金として徴収して自社負担とならない仕組みを国に要望中だ。
●負担できぬなら撤退を
 立命館大の大島堅一教授(環境経済学)の話 
電力業界は「原発のコストは安い」と主張する一方で、本来業界が背負うべき解体費用の追加負担などを、国民に転嫁しようとするのはおかしな話だ。負担を負えないのなら、事業から撤退するというのが普通の経営判断だ。国は、原発を極端に特別扱いしていることを、国民にきちんと説明すべきではないか。

| 原発::2014.10~2015.3 | 02:53 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.10.21 女性活躍推進法案について
   
                          *2より
(1)指導的地位に占める女性の割合を、2020年までに30%に上げることができるか
 *1のように、2014/10/17の閣議で、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案(略称:女性活躍推進法案)が閣議決定された。この法案では、国や地方公共団体、企業に女性登用の数値目標や取り組み内容を盛り込んだ行動計画策定を義務づけ、(1)女性の採用、昇進機会の提供 (2)仕事と家庭の両立を図るための環境整備 (3)本人の意思の尊重 の基本原則を明記し、目標設定や情報公開の方法を示す指針を作り、それに基づいて、国や地方公共団体、各企業が女性登用の数値目標を含む行動計画を2016年4月から作ることになったのは進歩である。

 しかし、①従業員300人以下の企業は努力義務で ②数値目標は一律ではなく ③女性の採用比率や勤続年数、労働時間状況などを分析した上で、それぞれの組織が独自に定める ならば、組織にとっては何ら規制がないのと同じであり、これでは現在10%程度にとどまる指導的地位に占める女性の割合を、2020年までに30%に引き上げることはできないだろう。

 具体的には、①について、大卒女性は就職難の時に、1ランク希望を下げて従業員300人以下の中小企業に就職するケースが多いため、中小企業は女性の方が優秀な場合が多く、ここで女性差別をすれば本質的な解決にはならない。そのため、従業員数5~10人以下で全体の人数が少なく融通をきかせていられない小企業のみを例外にすればよいと考える。また、②③については、最低限の数値目標(それが30%である)を一律の義務規定として義務の達成度合いや義務違反を公表すれば、義務達成の方法はいろいろあるため、それぞれの企業が考えるだろうし、その方が名案が出ると考える。

(2)多くの女性が輝けるためには・・
 *2のように、安倍晋三首相の肝いりで、女性の活躍推進法案が決定され、臨時国会中の成立を目指すのはGoodだが、(1)にも記載したように、数値目標の設定が企業任せでミニマム(30%)の規制がなく、個別企業が取り組みの結果を公表する義務はなく、従業員が300人以下の中小企業は努力義務に留まっており、全企業の9割以上は中小企業で働く女性の6割以上が中小企業に勤めているため、この法案のままでは実効性が薄い。そのため、国会では、この点を修正して可決すべきだ。

 また、このブログに前にも書いたように、そもそも非正規労働者というのは、男女雇用機会均等法や労働基準法をすっぱぬくために作られた制度であるため、基本は全員正社員にすべきなのであり、「正社員になることが夢」などという国は日本以外にはない。また、「無理がきく労働者」に賃金や昇進でプレミアムがあってもよいだろうが、原則として同一労働同一賃金は当たり前である。さらに、派遣労働者にも女性が多く、労働者派遣法の緩和が行われれば、女性労働者は派遣労働者か非正規労働者として合法的に搾取され続けるため、これらは廃止か厳格化こそすれ緩和すべきではない。

*1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS17H02_X11C14A0MM0000/?n_cid=TPRN0003 (日経新聞 2014/10/17) 女性活躍推進法案を閣議決定 企業などに登用目標義務付け
 政府は17日の閣議で、女性の社会参加を後押しする「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」を決めた。国や地方公共団体、企業に女性登用の数値目標や取り組み内容を盛り込んだ行動計画の策定を義務づける。安倍晋三政権が掲げる女性活躍を官民で進めるため、今国会での成立をめざす。法案は(1)女性の採用、昇進の機会の提供(2)仕事と家庭の両立を図るための環境整備(3)本人の意思の尊重――の基本原則を明記した。政府は法案成立後に目標設定や情報公開の方法を示す指針をつくり、それに基づき国や地方公共団体、各企業が女性登用の数値目標などを含む行動計画を2016年4月からつくる。従業員300人以下の企業は努力義務とした。数値目標は一律でなく、女性の採用比率や勤続年数、労働時間状況などを分析したうえで、それぞれが独自に定める。女性の登用に特に力を注ぐ企業に対しては国の認定制度を適用し、表彰する。補助金や公共調達を増やして積極登用を促す。政府は現在10%程度にとどまる指導的地位に占める女性の割合を、20年までに30%へ引き上げる目標を掲げている。

*2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014101802000124.html
(東京新聞 2014年10月18日)女性活躍法案実効性は? 目標数値企業任せ 結果公表義務なし
 政府は十七日の閣議で、女性の活躍推進法案を決定し、衆院に提出した。「すべての女性が輝く社会づくり」を掲げる安倍晋三首相の肝いりで、臨時国会中の成立を目指す。大企業などに女性の登用を促す内容だが、実効性の面で課題が残るほか、非正規雇用など厳しい環境にある人への配慮も十分だとは言えない。法案では、三百人超の従業員を抱える企業に対して、女性の採用比率や幹部に占める割合、労働時間などに関する数値目標を盛り込んだ行動計画の策定と公表を義務付ける。厚生労働省が届け出を受け、優良だと認めた場合は公共事業の発注などで優遇する。十年間の時限立法で、二〇一六年度から実施する。行動計画の公表でだれもが企業の取り組みをチェックできるようになり、女性の登用促進が期待できる。しかし、女性の採用比率などに関して目標とする数値の設定は企業任せで、行動計画を届け出なくても罰則はない。取り組みの結果、目標をどの程度、達成できたのか公表する義務もない。さらに従業員が三百人以下の中小企業は、行動計画の策定そのものが努力義務にとどまっている。全企業の九割以上は中小企業が占めており、働く女性の六割以上は中小に勤めているため、法案の効果は限られている。非正規労働者に対しては正社員化を促したり、正社員と同じ労働に対して同じ賃金を払う待遇改善策も欠かせないが、法案からはそうした政府の姿勢はうかがえない。しかも、政府は臨時国会に企業の派遣労働者受け入れ期間の上限(三年)を廃止する労働者派遣法改正案も提出し、成立させようとしている。企業にとっては派遣労働者の使い勝手がよくなる半面、雇用が不安定で低賃金の非正規が増える可能性が指摘されている。女性の労働問題に詳しい日本労働弁護団常任幹事の圷(あくつ)由美子弁護士は「法案そのものは前向きにとらえているが、労働者派遣法の改正で、派遣で働く多くの女性が非正規にとどまりかねない」と指摘した。

| 男女平等::2014.7~2015.5 | 12:21 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.10.20 政治資金収支報告書に関する答弁も論評もおかしいが、それより原発のコスト計算の方が巨額で、もっと大切なのでは? (2014.10.21に追加あり)
        
 2014.10.19朝日新聞   2014.10.19東京新聞

(1)小渕経産相の資金収支問題について
 *1-1に書かれているように、小渕経産相は地区毎に会費を集め、大型バス26台を連ねて後援会の女性を観劇会に招待し、支援者は、これを年に1度の楽しみにしていたそうだ。会費は、全員から1万2千円ずつ小渕事務所が集めたと言われているが、*1-2のように、支出が収入を大幅に上回っており、小渕事務所から会費以上の利益供与があれば、その金額は公職選挙法が禁じる選挙区内の有権者への買収行為にあたる。また、議員本人も挨拶や話をしているので、その行事を知らなかった筈はなく、今更、調査することはあるまい。

 そして、この問題は、*1-3、*1-4に書かれているように、ただ謝って、看板閣僚の傷が浅いうちに大臣を辞任すればよいという話ではなく、真に買収行為があれば公職選挙法違反であり、収支報告書の虚偽記載があれば政治資金規正法違反であるため、その点を明確にすべきなのである。

 なお、平成19年12月に政治資金規正法が大きく改正され、平成21年1月1日から国会議員関係政治団体の支出の公開などに関して、会計帳簿の記載、収支報告書の作成は会計責任者に責務が課され、政治資金監査も義務付けられた(http://www.soumu.go.jp/main_content/000077911.pdf#search='%E5%9B%BD%E4%BC%9A%E8%AD%B0%E5%93%A1+%E5%8F%8E%E6%94%AF%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%E7%9B%A3%E6%9F%BB' 参照)。

 その制度改正には、私(平成17年~21年:自民党衆議院議員)も参加して監査制度を導入し、平成21年1月1日以降は公認会計士等の監査人(会計のプロ)が収支報告書を監査しているため、本来なら違法性のある行為や妥当でない会計処理は、事前にブロックできなければならない筈なのである。そのため、質問者は担当した監査人にも適法意見を出した理由を聞くべきであり、収支報告書に関する責任は、公務で忙しい議員ではなく会計責任者と監査人にある。

 何故なら、一般会社に例えれば、国会議員は営業・技術畑の社長で、会計責任者が経理部長に当たるため、社長は、会計については重要な事項に関しては報告を受けて承認し、知っていなければならないが、細かい事務処理にまでは関与しておらず、経理部長が普段から監査人と相談しながら適切な会計処理をしていなければならないからである。

(2)メディアの報道の仕方と日本の民主主義の危機について
 *2に、「秘書の一人が、ここでは観劇会の参加者一人ひとりが実費を払ったかどうかを確認している最中と話した」と書かれているが、数千万円にも上る収支差や支出の方針については、今、確認するようなことではなく、計画時もしくは収支報告書の提出前には小渕氏自身の承認を受けておくべきものである。しかし、メディアは、下仁田ネギをもらったためか(?)、この真実を語ることがなかった。

 そして、「経産相になった時には、初の女性総理に近づいたとうれしく思った」などと記載しているが、小渕氏が初の女性総理では、他の女性が全員それ以下のようで、たまったものではない。また、「お金にきれいな人というイメージだったので、すごく残念」という点も、国費で支給される政治資金は本物の政治活動だけで赤字になるため、数千万円にも上る支出超過をして後援会を観劇会などのバスツアーに招待できるのは、まさに業界と癒着があり、資金が潤沢だからにほかならず、どういう根拠で、そのようなイメージを持っているのか不明である。

 つまり、国民を不幸にする政策を打ち出しても、このようにして当選を重ねているのであり、メディアはこの本質を指摘することができずに、「より若い人が活躍できるように」「子どもを産みやすいように」「今回の問題で辞任するとしたら残念。早く第一線に戻ってきてほしい」等と話す姿が印象的だったなどと記載しているのだ。

 なお、「自分が自分が、という目立ちたがりが政治家には多いが、そういうところがみじんもなかった。社会のためにとの思いがとても強い人だ」などと述べた評論家もいるが、政治家は実力主義の社会であり、何をしたかで評価されるのが当たり前で、そのためには誰がやったかを正確に把握しなければ正しい投票行動は起こり得ないものである。つまり、やったことをアピールせずに、観劇会への招待で後援会を固めることこそ、本末転倒で民主主義を後退させるものなのだ。

(3)原発問題の方が、莫大な資金の流れだ
 私が、(1)(2)のように思っていたところ、*3の自民党衆議院議員 河野太郎氏のブログの「原発の本当のコストはいくら」という記載が目に入り、そのとおりだと思った。確かに、小渕経産大臣は、議員として政治資金にもおかしなことがあってはならないが、参議院本会議で「原発の発電コストはその他の主要電源のコストと比較しても遜色なく低廉な電源と考えている」と答弁している以上、何故そうなのかを質問されれば、正確に答えることができなければならない。

 ここで、官僚の作文をのみこんで答弁するだけでは、男女を問わず、大臣どころか国会議員としても価値がない。いくらTVや後援会の前で「頑張る」「努力する」と頭を下げても、知識と経験に基づいた思考力がなければ、それは実行しようがないのである。

*1-1:http://mainichi.jp/shimen/news/20141019ddm041010068000c.html 
(毎日新聞 2014年10月19日) 小渕経産相:辞任不可避 観劇会、支援者「年1度の楽しみ」 地区で会費集金/大型バス26台
 「観劇会は大勢の人が集まる華やかな場所。年に1度の楽しみにしている支援者も多かった」。今月8日、東京・明治座で開かれた小渕氏の観劇会に出席した群馬県渋川市の女性(72)はそう話す。小渕優子後援会の複数の女性によると、観劇会の準備は夏ごろ始まり、各地区の支持者らに案内チラシを配って希望者を募り、会費を集める。この女性が担当する地区には今年10人の希望者がおり、全員から1万2000円ずつ受け取って小渕事務所の人に渡したという。会費は毎回1万2000円だったといい、地元の秘書に渡したケースもあった。ある地区は今年、当日午前6時半に集合した。群馬県内各地から大型バスが26台用意されていたといい、車内ではお茶菓子とペットボトル入りのお茶が配られた。劇場に到着すると、1、2階はほぼ満席だったという。座席表では1、2階席で約1200席になるため、約1000人は劇場にいたとみられる。公平にするため席は事前にくじ引きで決め、地区ごとに着席した。観劇会は後援会の女性大会として開かれ、会場に着くと後援会幹部らのあいさつから始まる。小渕氏は今年、閣僚就任から間もなかったため欠席したが、子供を連れて登壇した年もあり、その時は「普段お世話になっております。朝早くからご苦労様です」などとあいさつしたという。参加者は劇場内で弁当の昼食をとり、今年は正午から休憩などを挟んで午後3時半まで天童よしみさんの劇と歌謡ショーがあった。その後は真っすぐ群馬へ戻り、午後6時ごろに解散となった。以前は9月に開催し、帰りに巣鴨や浅草に寄る1時間ほどの自由時間があり、買い物などを楽しんだこともあったという。女性は「必要な会費は全額きちんと支払っている。なぜ疑惑を持たれるような収支報告になっているのか見当もつかない」と困惑した表情を浮かべた。ほかの70代の女性部地区役員は「小渕さんはこれまで持ち上げられ過ぎていて、どこかに気の緩みがあったのではないか。この際きっぱりと閣僚を辞め、まだ若いのだから出直した方がいい」と厳しい口調で話した。
◇小渕氏、言葉少なく
 東京都渋谷区の小渕優子氏の自宅前には、早朝から記者やカメラマンが多数詰め、出張のため自宅を出るのを待ち構えた。改造内閣の「看板」として小渕氏を起用した安倍晋三首相の私邸が、約80メートル先にある。出張先は愛知県。三菱重工業の工場で開かれる小型ジェット旅客機の完成記念式典に出る予定だった。しかし「現地での混乱を避ける」(経済産業省)として急きょキャンセル。午後2時20分ごろ、警察官が三角コーンで規制する中、玄関にぴたりと横付けされたワンボックスカーにうつむいたまま無表情で乗り込み、霞が関の経産省へ向かった。玄関口で報道陣の取材に応じたが、その時間は約40秒。「(きょう首相と会う予定は)ありません」。硬い表情だった。「辞任の考えは?」。畳み掛ける質問に、「今やらなければならないことは、政治資金の問題についてしっかり調査すること」と返すのが精いっぱいだった。同省職員によると、小渕氏はその後約3時間半、大臣室にこもっていた。午後6時過ぎ、居残る大勢の報道陣に何度か軽く会釈するそぶりを見せたが、投げかけられた質問に一切応じず、車で立ち去った。式典を欠席したことについて、三菱グループのある幹部は渋い調子で言った。「経産相から直接プロジェクト支援の言葉をいただけるに越したことはないが、我々は民間企業として粛々と事業を進めていくだけだ」。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141019&ng=DGKDASFS18H0U_Y4A011C1MM8000(日経新聞2014.10.19)小渕経産相、週明け辞任へ、収支問題 調査報告後に
 小渕優子経済産業相は18日、関連政治団体の不透明な収支を巡る問題の調査結果を週明けに報告した後、安倍晋三首相に辞表を提出する意向を固めた。すでに首相周辺には辞意を伝えており、首相は小渕氏の辞表を受け入れる方針だ。第2次安倍内閣発足後、閣僚が辞任するのは初めてで、今後の政権運営に影響を与えるのは避けられない。問題になっているのは小渕氏が関係する政治団体「小渕優子後援会」と「自民党群馬県ふるさと振興支部」が開いた支援者向けの「観劇会」の費用だ。両団体の政治資金収支報告書によると、参加者から集めたとみられる収入と劇場側への支出に食い違いがあり、支出が収入を大幅に上回っている。2010年と11年の差額は合わせて約2600万円に上り、参加者が負担すべき差額分を政治団体が肩代わりしていた場合、公職選挙法が禁じる選挙区内の有権者への「寄付」行為にあたる。衆院選のあった12年も観劇会を開いたとみられるにもかかわらず、収支の記載がない。小渕氏は18日、経産省内で記者団に「今、私がやらなければならないことは自身の政治資金に関する問題をしっかり調査することだ」と述べた。一連の問題についての調査結果を週明けの20日にも報告する意向だが、小渕氏自身が「納得できる説明をするのは難しい」と首相周辺に伝えており、調査結果を報告した後、収支問題の責任を取って首相に辞表を提出する方向となった。首相周辺は18日夜、小渕氏の進退について「首相官邸が判断する問題ではなく、小渕氏自身が判断すべき問題だ」と述べ、小渕氏が辞表を提出すれば首相は受け入れるとの見通しを示した。そのうえで「第2次安倍政権になって初めての試練だ。早く決着した方がいい」とも語り、辞任により早期収拾を図るべきだとの認識を示した。首相は後任選びを急ぐ。女性登用を重視した9月の内閣改造で看板閣僚として起用した小渕氏が辞任に追い込まれる事態になったことから、後任は慎重に選ぶ考えだ。

*1-3:http://qbiz.jp/article/48028/1/
(西日本新聞 2014年10月19日) 小渕経産相、辞任不可避 政治資金問題 首相に進退一任
 政治団体の不正支出疑惑をめぐり、小渕優子経済産業相の閣僚辞任は18日、避けられない情勢となった。首相周辺によると、小渕氏は進退を安倍晋三首相に一任した。自民党関係者は「傷が浅いうちに辞めさせるのが官邸の判断だ」と語った。首相は同日午後、イタリアから帰国し、そのまま公邸に入って今後の対応を検討した。近く小渕氏と会い、辞任させる方向で最終決断する見通しだ。閣僚が辞任すれば、2012年12月の第2次安倍政権発足後、初めてとなる。9月の内閣改造から1カ月余りで主要閣僚が辞任に追い込まれれば、政権のダメージは大きい。首相の任命責任も問われそうだ。小渕氏は同日、愛知県で開かれる国産初の小型ジェット旅客機「MRJ」の機体完成記念式典に出席予定だったが、「混乱を回避するため」(経産省広報室)としてキャンセルした。午後、都内の自宅から経産省に登庁。記者団から辞任する考えかと問われ、「今、私とその政治資金に関わるさまざまな問題について調査をしっかりやっているということだ」と述べ、進退については言及しなかった。同日中に首相と会う予定も「ない」と答えた。一方、首相はイタリア・ミラノでのアジア欧州会議(ASEM)首脳会議の出席を終え、政府専用機で帰国。公邸から電話で菅義偉官房長官らと対応を協議したとみられる。同日夕、都内の自宅に戻る際、記者団から小渕氏の進退を問われたが、何も語らなかった。与党内では、辞任は不可避との見方が広がっている。だが、小渕氏が辞任すれば、野党側が「うちわ」問題で松島みどり法相への辞任圧力を強める懸念があることから、政府高官の一人は「そんなに早く決める話じゃない」と早期辞任には否定的見方を示した。小渕氏の不正支出疑惑をめぐり、野党は週明け20日の衆院地方創生に関する特別委員会で、さらに追及する構えだ。この場での小渕氏の説明を見て進退を判断すべきだとの声もある。

*1-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141019&ng=DGKDASFS18H0L_Y4A011C1PE8000 (日経新聞 2014.10.19) 
首相、早期収拾狙う、小渕経産相の辞表受理へ 看板閣僚の将来配慮
 イタリア訪問から帰国した安倍晋三首相は18日、小渕優子経済産業相の関連政治団体の不透明な収支問題の事態収拾に着手した。小渕氏は週明けの調査結果の報告後に辞任する方向で、首相は後任選びも急ぐ。早期辞任により政権運営への打撃を最小限に抑えるとともに、将来の首相候補の一人とも目される小渕氏をこれ以上、批判の矢面に立たせないようにする配慮も働いたとみられる。首相は午後3時すぎに羽田空港に到着し、そのまま首相公邸に入った。政府関係者から小渕氏の問題の経緯について報告を受けるとともに、政府・与党の幹部と電話で今後の対応などを話し合ったとみられる。首相は公邸に1時間ほど滞在した後、私邸に戻った。愛知県への出張をとりやめた小渕氏は午後、経産省にこもった。週明けに予定する関連政治団体や資金管理団体の不透明な収支に関する調査の報告の段取りなどを関係者らと打ち合わせたとみられる。小渕氏は夕方に無言で経産省を後にした。首相周辺は同日夜、まず小渕氏が調査結果を報告するのを待つとしたうえで「第1次安倍内閣では内閣支持率ばかりを気にして判断が遅れたが、今回は国政を遅滞させないことを基本方針にやる」と指摘。調査結果の報告後、速やかに辞任するとの見通しを示した。早期辞任による決着は政権運営への影響だけでなく、小渕氏への配慮もにじむ。女性として最年少で入閣した小渕氏は安倍内閣の看板閣僚であるだけでなく、将来の首相候補の一人と見る向きもある。政府関係者は「この問題で政治家としての小渕優子を殺してはいけない」と早期辞任が望ましい理由を説明する。しかし、小渕氏が辞任しても、新任閣僚をめぐって混乱した事態を直ちに収拾できるかどうかは予断を許さない。「野党はほかの閣僚の問題を追及してくるのではないか」。自民党幹部はこう身構える。第1次安倍政権は「政治とカネ」の問題が絡んだ閣僚の辞任が相次ぎ、支持率低下につながった。閣僚経験者は「小渕氏で前例を作ると、再び『辞任ドミノ』が始まる」と危機感をあらわにし、参院幹部は「副大臣や政務官にも波及する」と警戒する。やり玉に挙がりそうなのが選挙区で討議資料として「うちわ」を有権者に配った松島みどり法相だ。政府高官は「小渕さんと比べれば些末(さまつ)な問題だ」として小渕氏の問題とは分けて考えるとするが、今後も厳しい追及が予想されるだけに「小渕氏と一緒に辞めた方が政権へのダメージは少ない」(閣僚経験者)との見方もある。後任選びは慎重にならざるを得ない。自民党内では「国会会期中であり、後任は経験者か商工族がよい」(自民党幹部)との声が上がる。原子力発電所の再稼働など重要課題を抱えるため「重量級のベテランを起用すべきだ」(党三役経験者)との意見も出ている。

*2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11409709.html
(朝日新聞 2014年10月19日) 小渕氏地元、広がる動揺 「出直して」の声も
 後援会などをめぐる「政治とカネ」の問題で、小渕優子経済産業相の辞任論が噴出した。小渕氏の地元・群馬の支援者や、小渕氏の政策に期待した人々の間では18日、戸惑いや落胆が広がった。一方で、「辞任やむなし」の声も上がる。18日夕、群馬県高崎市の住宅街にある小渕氏の後援会事務所。秘書ら数人がいるだけで、訪れる人は少ない。秘書の一人は「ここでは観劇会の参加者一人ひとりが実費を払ったかどうか確認している最中。(進退の話は)まったく聞いていない」。内閣改造で9月3日に大臣に就任した後は、自民党県連の行事で1度、前橋市入りしたほかは群馬に戻っていないという。小渕氏は、後援会などが、支援者らの観劇会費用を一部負担したり、収支を政治資金収支報告書に記載しなかったりしたとの疑いをもたれている。重要閣僚への起用を「首相へのステップ」と喜んだ支援者には、動揺が広がる。後援会幹部の一人は「進退については聞いておらず、何とも言いようがない」と戸惑いを隠せない。ただ、別の後援会幹部は「大臣になれば周囲の目は厳しくなる。まだ若いので、反省するところは反省して、出直してほしい」。県議の一人も「収支報告書の記載が食い違う問題は言い訳できない。長引けば本人や政権の傷が広がるだけ。若いのだから早く辞めて出直した方がいい」と辞任は仕方ないとの考えだ。父の恵三元首相の時代から地区の後援会幹部を務める中之条町の女性(83)は、問題の観劇会にも参加してきたという。「経産相になった時には、初の女性総理に近づいたとうれしく思った。お金にきれいな人というイメージだったので、すごく残念。しっかり説明してほしい」。(吉浜織恵、井上怜)
 ■福島支援、あの約束は…
 少子化や原発問題など、政策面で小渕氏に期待した人たちの失望も大きい。経済評論家の勝間和代さん(45)は、小渕氏が少子化担当相を務めた2008年、政府の少子化対策プロジェクトのメンバーとして知り合った。「より若い人が活躍できるように」「子どもを産みやすいように」と、淡々と話す姿が印象的だったという。「自分が自分が、という目立ちたがりが政治家には多いが、そういうところがみじんもなかった。社会のためにとの思いがとても強い人だ」と話す。政策ののみ込みも早く、有能な政治家だと感じていた。「今回の問題で辞任するとしたら、残念。くじけず、早く第一線に戻ってきてほしい」。福島県川内村の遠藤雄幸村長は先月、経産相就任後に村を訪れた小渕氏に復興策の支援を求めた。原発事故後に村が誘致した工場を視察し、避難先から戻れない子が多い小学校で児童たちと触れ合った。「住民が安心して暮らせるよう支援したい」と約束した小渕氏。「政治家は『知らなかった』という釈明では済まされない。こんなにも早く辞任の話が持ち上がるなんて、がっかりだ」。(藤生明、岡本進)
 ■政治資金、絶えぬ疑惑
 「政治とカネ」をめぐり閣僚が責任を問われるケースは近年も相次いでいる。06年9月発足の第1次安倍内閣。当時の佐田玄一郎行政改革担当相は、関連の政治団体に事務所の実体がないのに、政治資金収支報告書に、事務所費など約7800万円を支出したと記載しているのが発覚。同年12月に辞任した。翌年1月には松岡利勝農林水産相の資金管理団体が、家賃のいらない議員会館に事務所を置いているのに、年間計数千万円の事務所費や光熱水費を計上していたことが発覚。松岡氏は自殺した。後を継いだ赤城徳彦農水相も、実家を政治団体の主な事務所と届けながら、多額の事務所費などを計上していた問題を追及され、辞任に追い込まれた。次の遠藤武彦農水相は自身が組合長を務める農業共済組合に補助金の不正受給疑惑が浮上。9月に辞任すると、まもなく安倍晋三首相も辞意を表明した。民主党政権下では菅直人内閣の11年に前原誠司外相が外国人から違法な献金を受けたとして辞任。野田佳彦内閣でも12年、田中慶秋法相に外国人が経営する企業からの献金が発覚し、辞任につながった。(大西史晃)

*3:http://www.taro.org/2014/10/post-1537.php
(衆議院議員 河野太郎 2014年10月17日) 原発の本当のコストはいくらか
 小渕経産大臣の政治資金に関して、国会でも質問が飛んでいる。もちろん政治資金の流れにおかしなことがあってはならない。しかし、経産大臣に国会で金の話を質問するならば、もっと突っ込みどころがあるはずだ。10月2日の参議院本会議で小渕大臣は、「原発の発電コストはその他の主要電源のコストと比較しても遜色なく低廉な電源と考えています」と答弁している。
 本当にそうなのか。
 10月8日の参議院予算委員会で、政府は「原発のコストについてはキロワットアワー当たり8.9円以上となっておりまして、その他の電源に比べて低廉なものと認識をしています」と答弁している。これは福島の事故の費用が5兆8000億円であるとして計算された数字だ。2011年のコスト等検証委員会の計算である。この計算の前提は、福島第一原発の1号機から4号機の4基を除く50基の原発がすべて再稼働され、その後、40年間稼働するというものだ。しかし、実際の福島の事故の費用はこれをはるかに超えている。
  立命館大学の大島堅一教授の試算では
  損害賠償額 4兆9088億円
  賠償対応費用   777億円
  除染費用  2兆4800億円
  中間貯蔵施設1兆0600億円
  事故収束費用2兆1675億円
  行政対応費用  3878億円
  合計   11兆0819億円
 原発の発電コストと経産省が称するものにこの費用を加えたものを、50基の原発が40年で発電する電力量で割ると、キロワットアワーあたりの原発の発電コストは9.4円になる。さらに、これを現実的な試算に置き換えてみる。現在、我が国にある50基の原発がすべて再稼働するものとするが、それぞれの原発は建設から40年経ったところで運転を停止するとして計算すると、11.4円になる(大島堅一教授の試算による)。もちろん福島第一原発の5、6号機は再稼働しないし、日本原電の原子炉も再稼働できないだろう。その他にも再稼働しないものは少なからずあるはずだ。だとすると、原発のコストはさらに高くなる。とてもじゃないが「原発の発電コストはその他の主要電源のコストと比較しても遜色なく低廉な電源と考えています」などとは言えない。小渕経産大臣に、国会で、金の質問をするならば、まず、こっちのほうから質問するべきではないか。
 ちなみに
  損害賠償額 4兆9088億円 電力消費者負担
  賠償対応費用   777億円 電力消費者負担
  除染費用  2兆4800億円 支援機構の株の売却益を想定*
  中間貯蔵施設1兆0600億円 国民負担
  事故収束費用2兆1675億円 電力消費者負担
  行政対応費用  3878億円 国民負担
 *国が1兆円で買った東電の株を3.5兆円で売却し、その利益2.5兆円を充当する。事故費用のうち、東京電力が自らの利益で負担したのは、災害特別損失の10-12年度の合計額1兆259億円と新総合特別事業計画で積み増した1兆円の合計2兆259億円と原子力損害賠償支援機構への特別負担金だけだという(大島堅一教授による)。ちなみに2013年度までの特別負担金は500億円。


PS(2014.10.21追加):*4のように、小渕氏が自分の事務所のことに関して第三者であるかのように、「これまで気付かなかった」「全体像がわからないので、一から調べてもらうしかない」と言うのなら、小渕氏は、これまで自らの政治活動を自分で意思決定して主体的にやってきたのではないことになる。それは、「監督責任が十分でなかった」のではなく、すべてお膳立てしてもらって活動していたにすぎず、政治家として何をやりたいかの主体性すらないことを意味するため、これが何かの「星」ならば、他の女性議員はすべてそれ以下のようで、誰も納得しないだろう。また、「ワインのことは知っているが、選挙区外の方に配っていると思っていた。調査をしたい」というのも第三者的すぎる。

 しかしながら、*5をはじめとして、この件によって「女性は・・」と言う論調が出るのは、男性に変な人がいてもすべての男性が変だとは言われないのと同様、論理的ではなく男性中心社会の女性蔑視だ。

*4:http://mainichi.jp/shimen/news/20141020dde041010068000c.html (毎日新聞 2014年10月20日) 安倍内閣:閣僚ダブル辞任(その1) 自民の星、痛い失点 小渕氏「甘かった」
 女性5人を「看板」閣僚に起用し、支持率を保ってきた第2次安倍改造内閣の一角が、大きく崩れた。「すべてが甘かった」。小渕優子経済産業相(40)は自身の政治資金疑惑を説明できず、50日足らずでつまずいた。地元で「うちわ」を配り公職選挙法違反の疑いで告発されていた松島みどり法相(58)も同じ日に辞任し、関係者に衝撃が広がった。小渕氏は午前9時40分すぎ、濃紺のスーツ姿で経産省10階の記者会見室に現れた。カメラのフラッシュを浴び、緊張した表情で時折髪に手をやりながら、指摘された疑惑について現段階での調査内容を説明した。地元の下仁田ネギやこんにゃく、ベビー用品、化粧品……。政治資金で買った数々の「物品」について、「会社や団体が経済活動の中で関係者に経費で社交儀礼をするのと同じ」と述べ、政治活動の経費として認められるものだと強調した。政治団体が開いた支援者向け観劇会については、「年間2000人が参加した」とし、集めた実費を管理する通帳や支援者からの申込用紙のコピーの束を一枚一枚、記者団に示した。「入場料は相当安くしていただいている」などと述べ、集金も確実に行われていたと強調した。しかし、肝心の収支の差額の生じた理由については説明できず、「実際の記載には私も大きな疑問がある」と疑惑を認めた。質疑では、この差額を巡る質問が多く出た。時折言いよどみ、宙をにらんで涙をこらえる場面もあった。開催料の負担については改めて自身の関与を否定したが、「なぜこれまで気付かなかったのか」との質問に一瞬顔をこわばらせ、「長年、子供のころからずっと一緒に過ごしてきた信頼するスタッフに管理してもらってきた」。ひと呼吸を置いて「監督責任が十分でなかったと思っている」と、うつむいた。記者の追及はやまない。自身が代表の資金管理団体も、観劇の開催費用を負担していた事実を突きつけられると「全体像がわからないので、(第三者に)一から調べてもらうしかない」とかわすのがせいいっぱい。自身が女性閣僚の目玉と期待されていた点を聞かれると、「私自身は目玉かどうか分からない」とうなだれた。東日本大震災からの福島県の復興については「議員の一人として次の世代のためにしっかりやりたい」とくやしげな表情を見せた。終了間際に、小渕氏は再度、深々と頭を下げた。「私は一から出直そうと思っている」と述べたが、最後には「もう一度、ゼロから信頼を取り戻すよう、出直します」と言い換え、目をうるませた。
◇ずさん経理に驚きの声
 経済産業相を辞任した小渕優子氏が関係する政治団体の政治資金収支報告書では、つじつまの合わない記載が次々見つかり、自身も記者会見で多額の不記載を認めた。「いまだにこんな会計処理をしているのか。信じられない」。政界からも驚きの声が漏れる。問題となった観劇会は小渕氏の支援者ら約2000人が地元・群馬県から大型バスに乗り、東京・明治座で有名歌手らの公演を見る。昼食時には弁当も配られるという。閣僚経験のあるベテラン議員の元秘書によると、小渕氏以外の国会議員も支援者との交流イベントを開いている。「後援会員に知り合いを誘ってきてもらう。支援者を増やす重要な機会」で「国会見学ツアー」などの名称で地元秘書がバスで引率。観劇会同様、日帰り食事付きが一般的だ。元秘書は「昔は議員側が持ち出すのが普通だったが、第1次安倍内閣(06〜07年)で閣僚が次々と辞めた後は改めたはず。各政党は秘書を集め、会計処理に関する勉強会も開いている。小渕氏側の処理は旧態依然としている。ずさん過ぎて信じられない」と語る。識者の見方も厳しい。日大法学部の岩井奉信教授(政治学)は「普通は帳尻を合わせるはずで、事務所の会計がずさんなのか脇が甘いのか」と首をひねる。「複数の団体に収支を分散させたため、各団体が『全体では合っている』と思っていたのかもしれず、ミスのような感じもする」と推測する。
◇「選挙区外と思っていた」−−ワイン贈呈問題
 記者会見では、小渕氏の地元事務所が選挙区内の男性に対し、小渕氏の顔写真などがラベルに印刷されたワインを贈った問題についても質問が出た。小渕氏は「ワインのことは知っているが、選挙区外の方に配っていると思っていた。調査をしたい」と述べた。また、自身の資金管理団体でベビー用品や下仁田ネギ、親族経営の服飾雑貨店などに支出を計上したことについては「政治活動のための贈答品。選挙区内でお配りしたことはないと承知している」と述べた。
◇オンブズマン、告発状を提出 公選法違反などで
 市民オンブズマン群馬(小川賢代表)は20日、小渕優子氏に対する公選法違反(利益供与)と政治資金規正法違反の両容疑の告発状を、東京地検に提出した。同オンブズマンは、小渕氏の地元後援会が支援者向け観劇会の費用の一部を肩代わりした疑いがあり、公選法が禁じる有権者への利益供与にあたると指摘。収入と支出を政治資金収支報告書に正しく記載しなかったとしている。

*5:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC2000E_Q4A021C1EA2000/
(日経新聞 2014/10/20) 女性閣僚が安倍政権の「地雷」 中国国営メディア論評
 【北京=大越匡洋】中国の国営新華社は20日、小渕優子経済産業相、松島みどり法相の辞任について「安倍晋三首相が9月の内閣改造で重視した女性閣僚が政権の『地雷』になっている。安倍政権に重大な打撃となる」と報じた。高市早苗総務相らほかの女性閣僚が靖国神社に参拝したことにも触れ「国内外の世論の疑問と非難を引き起こした」と批判した。欧米メディアも20日、女性2閣僚の辞任を相次いで速報した。英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は「女性の活用で経済を再生しようとしていた安倍政権に打撃となる」と分析。英国放送協会(BBC)も「小渕氏は将来の首相候補とされるが、疑惑が持ち上がった」指摘した。米紙ワシントン・ポストは日本が消費再増税の是非を判断する時期に差し掛かっていることを踏まえ「2人の辞任は難しい時期にある安倍政権に暗い影を落とした」と報じた。

| 民主主義・選挙・その他::2013.12~2014.11 | 09:40 AM | comments (x) | trackback (x) |
2014.10.18 21世紀の航空機・船舶の動力は、水素による燃料電池か電力でしょう (2014.10.19追加あり)
   
     *1より            *3より           船舶用電動モーター

(1)燃料電池航空機の飛行実験はアメリカで成功しているそうだが・・
 *1に書かれているように、IHIとIHIエアロスペースは、米ボーイング社と共同で、2012/10/4に燃料電池システムを搭載した航空機の飛行実験に成功しているそうだ。燃料電池はIHI製で、発電後は水のみを排出し、排出した水をまた水素と酸素に分解して燃料を再生するところは全くアッパレだ。しかし、それを、米ボーイング社と共同でしかできないところが残念だ。

(2)日本企業の視野は矮小で追随主義ではないのか?
 *2に書かれているように、ホンダが、2014/10/16に、小型航空機エンジン事業で世界シェア3割を目指す方針を明らかにしたのはよいことだが、燃料電池車を作っているメーカーであるのに、その視野には、燃費性能と耐久性しか入っておらず、空気を汚さないという環境意識が欠けているのが情けない。
 
 これを見ると、日本企業の経営者は、まだ、「エンジンは油の匂いがしなければならない」「油にまみれて働いているのが美徳である」という発想から抜け出せない古い世代なのではないかと思わざるを得ないが、これでは21世紀をリードして世界で勝ち残ることはできないだろう。

 私がそういうことを書く理由は、市販の自動車の動力に電気や水素を使用することを経産省に最初に提案したのは私で、それは1995年くらいのことだったが、いち早く電気自動車を作ったのは日産のゴーン社長(両親はレバノン人、生まれはブラジル、育ちはフランス)であり、トヨタはハイブリッド車止まりで、三菱自動車は燃料電池車を最初に作ったものの、未だにブレイクできずにいるからだ。

(3)三菱重工の旅客機開発について
 *3のように、三菱リージョナルジェット(MRJ)が、70~90席クラスの地域路線向け小型旅客機の開発を行い、2015年度中の就航を目指しているそうだ。三菱重工は、MRJの開発に航空宇宙部門から700人近い技術者を投入し、社運を懸けて開発しているとのことで、頑張って欲しい。

 しかし、三菱は燃料電池車を最初に実用化した企業グループであるため、水素燃料によるモーターを使うのは容易であるにもかかわらず、遅れて出発して燃費しか追求せず、ブラジル、カナダなどのライバルと同次元の競争をするのは単に不利でしかない。

 一方、得意技を生かして燃料電池による旅客機を作れば、航空機業界の巨人であるボーイングやエアバスにさえエンジンの供給をできるかも知れず、参入障壁はない。そのため、三菱航空機の二ツ寺機体設計部長が言われるとおり、経済性、環境性、快適性のすべてにおいて優れた次世代のジェット機を作ってもらいたい。現在の航空機は、エンジン音がうるさ過ぎて中で音楽を聞いていると大きな音にせざるを得ないため耳が痛くなり、上空を飛ばれるとやかましく、燃費が悪い上に空気を汚しているので、必ず売れ筋になると考える。

(4)船舶の燃料について
 東京湾を代表として、船舶の往来が激しい港の海水は濁って汚いが、それは、いろいろな形で燃料の重油を海に漏らしているせいだ。船舶も、経済性、環境性、快適性のすべてにおいて優れたものにすべきであり、そのツールは、電動、燃料電池、それらと自然エネルギーのハイブリッドなど、既にできている。

*1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD040HW_U2A001C1TJ1000/
(日経新聞 2012/10/4) 燃料電池搭載した航空機、飛行実験に成功 IHI
 IHIとIHIエアロスペースは4日、米ボーイングと共同で、燃料電池システムを搭載した航空機の飛行実験に成功したと発表した。小型機「737」に燃料電池を搭載し、米シアトル上空を約5時間飛行。燃料電池による電力供給や、航行時の航空機エンジンからの充電などを試験した。航空機内の補助電源として実機採用を目指す。燃料電池はIHI製で、エンジンとは別に電気を供給できるのが特徴。発電後には水のみを排出するため、環境に優しい。排出した水を水素と酸素に分解し、燃料電池として再生する仕組み。今後は燃料電池の小型化や出力増強などの改良を進め、新型機などへ導入を働きかけていく。機内の電源は現在、航空機エンジンによって駆動した発電機で賄われている。エンジン出力の低い地上移動中や降下中には電力が不足する一方、巡航中や上昇中は余裕が生まれやすい。これらの余裕分を燃料電池に蓄電しておくことができる。

*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141017&ng=DGKDASDZ16HD6_W4A011C1TJ2000 (日経新聞 2014.10.17) 
ホンダ、小型航空機エンジンのシェア3割目標 初の外販、米社と合意
 ホンダは16日、小型航空機エンジン事業で世界シェア3割を目指す方針を明らかにした。機体メーカーや中古機のエンジン交換を手がける企業などにエンジンを外販し、プラット&ホイットニー(P&W)など米エンジン大手に対抗して事業を拡大していく。米ゼネラル・エレクトリック(GE)と共同開発したジェットエンジンを小型ビジネスジェット機など向けに売り込む。最初の外販先として、中古機の改造などを手掛ける米シエラインダストリーズ(テキサス州)へ納入することで基本合意した。エンジン価格は機体1機当たり8000万円前後とみられる。競合品を10%上回る燃費性能や耐久性を前面に打ち出す。2020年には年300~400機分のエンジン需要があると予想し、P&Wなどのシェア切り崩しを狙う。ホンダはこのエンジンを自社開発のビジネスジェット機「ホンダジェット」に搭載し、15年初めにも米国で納入を始める。エンジン単体の販売も事業化し、新たな収益源に育てる。

*3:http://toyokeizai.net/articles/-/13951 (渡辺清治:東洋経済編集局記者2013年5月15日)三菱重の旅客機開発、狙うは世界シェア5割、次世代リージョナルジェット、誕生への大きな試練
 昨年、名古屋市で開催された航空展示会で客室が公開され、多くの報道陣と見学者が訪れた三菱リージョナルジェット、略してMRJ――。総合重機メーカー最大手、三菱重工業が計画する70~90席クラスの地域路線向け小型旅客機だ。2015年度中の就航を目指し、子会社の三菱航空機(本社・名古屋市港区大江町)を通じて開発作業を進めている。MRJの開発に三菱重工は航空宇宙部門から700人近い技術者を投入、総開発費は1800億円にも及ぶ。まさに同社の社運を懸けた一大プロジェクトと言っていい。オールジャパンによる初の国産旅客機、「YS-11」(初飛行は1962年)の生産が1972年に終了して以降、国産旅客機の誕生は途絶えている。同機の開発で中心的役割を果たした三菱重工は、その後も独自に定員10人未満の小型ビジネス機を開発したが、事業としては失敗。以後、国内航空機産業は海外完成機メーカーの下請けに甘んじ、新たな国産旅客機の開発は日本の航空機産業、そして三菱重工の悲願だった。長きにわたる空白期間を経て、三菱重工は2008年に旅客機の自主開発を決断。同年春に事業主体となる三菱航空機を設立し、MRJの本格的な開発をスタートさせた。そこから今年で6年目。この間、設計変更や開発の遅れから2度のスケジュール変更を余儀なくされたが、いよいよ今年秋から、実機による飛行試験のフェーズに入る。
●飛行試験用の機体製作急ぐ、初号機は夏までに完成
 飛行試験は膨大な検証データを集めるのが目的で、MRJは日本と米国で延べ2500時間に及ぶ飛行試験を計画している。必要なデータを効率よく集めるために、飛行試験用の実機を5機用意し、それを並行して飛ばすという。機体を製作するのは三菱重工本体の仕事だ。愛知県内の航空関連工場がその役割を担い、製造現場では飛行試験に向けた機体の準備に追われている。地上での強度試験にも2機使用するため、必要となる試験用の実機は合計7機。すでに初号機に関しては組み立て作業に取りかかっており、遅くとも夏までには機体が出来上がる予定だ。
●ライバルはブラジル、カナダ勢など4社
 MRJが参入する100席以下の小型リージョナル旅客機は現在、北米、欧州を中心に世界で約3400機が飛んでいる。そうした既存機の更新需要に加え、将来的にはアジアなど新興国でも地域路線の整備が予想されるため、「今後20年間で新たに5000機前後の需要が見込まれる」(三菱航空機の福原裕悟・営業部部長代理)。航空機業界の巨人であるボーイング、エアバスはいずれも100席以下の旅客機を手掛けておらず、このクラスはエンブラエル(ブラジル)とボンバルディア(カナダ)の2社が市場を二分。さらに軍用機で知られるロシアのスホーイ社が2011年に出荷を開始、中国企業も同サイズ機の開発を進めている。いちばん最後に名乗りを上げたのがMRJだ。多くの実績がある2社のみならず、ロシア、中国勢にも地盤を確立されてしまったら、参入のチャンスは永久になくなる――。三菱重工が2008年に開発本格着手へと踏み切った背景には、そうした強い危機感もあった。MRJは開発スタートが最後発になった分、米国プラット&ホイットニー社が開発した最新鋭の次世代型エンジンを採用。同エンジンは燃費性能と騒音などの環境性能に優れている。また、機体のデザインにおいても、最新の空力設計技術を取り込んだ。三菱航空機の二ツ寺直樹・機体設計部長は、「われわれが目指すのは、次世代のリージョナルジェット機。経済性、環境性、快適性。そのすべてにおいて優れたものになる」と話す。
●燃費性能を武器に大口受注、「シェア5割取る」
 中でも最大の“売り”は、他社機種より2割優れているという燃費性能だ。現在、リージョナル機の平均的な1日当たりの総運航距離は6000キロメートル前後で、その燃料コストは1機当たり年間6億円前後に上ると言われている。燃費性能が2割違えば、それだけで年間のコストが1億円以上浮く。燃料高に頭を抱えるエアライン(航空会社)にとって、これは非常に魅力的だ。高い性能を掲げるMRJに、海外のエアラインからも大きな注目が集まる。昨年12月には、米国のスカイウェスト社から、オプション(=優先予約権)を含め200機の大口受注を獲得。これでバックオーダーは確定分が170機、オプションも含めると300機を超えた。MRJの定価は1機4200万ドル(42億円弱)。定価で計算すると、金額にしてざっと7000億円の受注をすでに確保したことになる。三菱航空機の川井昭陽社長によれば、「リージョナル機で飛行試験前にこれだけのオーダー数が集まるのは画期的なこと」だという。しかも、大口契約を結んだスカイウェスト社は、毎日4000便を運航する米国最大の地域エアライン。その同社から選ばれたことで、業界内での注目度は一段と高まった。「米国に限らず、MRJに対するエアラインの関心は非常に強い。最低でもこれから出てくる需要の半分、シェア5割は取りたい」と川井社長は自信を見せる。
●最大の難関は型式証明の取得
 となると、期待は高まるばかりだが、MRJを世に送り出すには、まだまだ多くの課題が残されている。川井社長の言葉を借りれば、「開発作業は、初飛行まで行ってようやく5合目程度。そこからが本当のヤマ場」だ。飛行試験で膨大なデータを集めたら、今度はそれを解析して、設計にフィードバックする作業が待っている。今までの開発作業はあくまで、さまざまな仮定数値を前提としたシミュレーションの世界。実際に機体を作って飛ばせば、地上では想定しえなかった多くの問題に直面する可能性がある。問題点が出てくれば、当然、設計の見直しを強いられる。設計を見直せば、再び実機を使った検証作業も必要だ。こうした作業の末に、「次世代リージョナルジェット機」の名にふさわしい旅客機へと仕上げられるかどうか。MRJは高い性能をうたっているだけに、そのハードルもおのずと高い。そしてもうひとつの大きな課題が、安全性の証明だ。墜落すれば大惨事が避けられない旅客機は、航空法で厳しい安全基準が課せられている。実際に製品として出荷するには、開発メーカー自身が機体の安全性を確信するだけでなく、それを客観的に証明して、国から型式証明と呼ばれる設計承認を得る必要がある。「極論すれば、飛行機自体を作るよりも、その安全性を証明するほうが大変」と川井社長自身が語るように、型式証明の取得には膨大な労力と時間を要する。何しろ、型式証明は「飛行」や「強度」「設計・構造」「動力装置」など分野ごとに数十項目、全部でざっと400もの細かな基準項目が定められており、そのすべての基準を満たすことが義務づけられている。開発メーカー側は項目ごとに必要な解析・試験データを用意し、基準に適合することを自ら証明しなければならない。こうした証明作業は開発と並行して進められていくが、「1項目を証明するための提出資料が数百ページに及ぶのはザラ」(審査に当たる国土交通省の航空機技術審査センター)というから、何とも気の遠くなるような作業である。
●「何としてでも開発をやり遂げる」
 開発に伴う資金負担もこれから一挙に重くなる。人件費に加え、飛行・地上試験に必要な実機製作に伴う出費が本格的に始まるからだ。「開発費用は今2013年度からハネ上がり、14、15年度と高い水準が続く」(三菱航空機)。しかも、期間損益の黒字化は商業機の量産開始から数年後、投資を回収し終えるのははるか先のことだ。こうした一連の課題や多額の先行投資負担は、MRJを世に送り出すための“産みの苦しみ”とも言えるが、「われわれが全力で頑張れば乗り越えられる。何としてでもやり遂げる」と三菱重工の大宮英明会長は言い切る。その大宮氏から4月に三菱重工社長職を引き継いだ、宮永俊一新社長も思いは同じだ。「旅客機は参入障壁が非常に高い。しかし、その大きな壁を乗り越えれば、長期にわたって開発者メリットが享受できる。MRJは当社の長期的な発展に欠かせない」。三菱重工の未来をも背負ったリージョナルジェット旅客機・MRJ。その誕生に向けた挑戦が続く。


PS(2014.10.19追加):*4に書かれているように、2008年に開発がスタートしたのは、私が衆議院議員をしていた時(2005年~2009年)に、自民党の部会で「戦後60年が経過したので、付加価値の高い航空機を作り始めましょう」と言ったのがきっかけである。しかし、ゼロ戦を作っていたビルで開発しているのはやりすぎだろう。

*4:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ18H0Z_Y4A011C1000000/?dg=1 (日経新聞 2014/10/18) MRJを初公開 三菱重工会長「ものづくりの英知の結晶」
 国産小型旅客機「MRJ」を開発中の三菱航空機(名古屋市)は18日午後、MRJの機体を初公開した。機体がほぼ完成し、航空会社など関係者の前でお披露目される「ロールアウト」と呼ばれる式典を開いた。初飛行は来年4~6月を計画している。式典は三菱重工業・小牧南工場(愛知県豊山町)で開かれ、約500人の関係者が出席。午後2時過ぎ工場の幕が開き、白地に赤黒金の3色のラインが引かれたMRJの飛行試験用機体が登場した。式典で三菱重工の大宮英明会長は「事業を決心した当時は、会社の屋台骨を揺るがしかねないという覚悟だった」と振り返りながら、「(MRJは)高い技術力で品質を追求するものづくりの英知の結晶。世界に誇れるメード・イン・ジャパンだ」とあいさつした。2017年に初号機を受け取るANAホールディングスの伊東信一郎社長は「『さあいよいよだな』と気持ちの高ぶりを覚える。初号機受領がいまから待ち遠しい」と初飛行への期待感を示した。MRJは2008年に開発がスタート。3度の開発延期に見舞われながら今年6月に胴体と主翼、エンジンが結合された。これまで日米やミャンマーの航空会社6社から407機(オプションなど含む)を受注している。

| 資源・エネルギー::2014.10~2015.4 | 12:20 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.10.16 政府・経産省が、平気で不合理な判断をするのは何故か ← 再生可能エネルギーと原発から (2014.10.16、17、22、23に追加あり)
   
     *1-2より       2014.10.15河北新報より  *4-5より

(1)「天候で発電量が変わり停電する」という理由で、太陽光エネの受け入れを中断するとは・・
 *1-1に書かれているように、北海道、東北、四国、九州、沖縄の電力5社は、「太陽光発電は天候で発電量が変わり、急に増えすぎると送電が不安定になって停電を起こしかねない」として、太陽光発電の新たな受け入れを中断し、経産省が、再生可能エネルギーの普及を後押しする固定価格買い取り制度の新規申請を抑える方向で検討に入ったそうだ。

 しかし、太陽光発電の発電量が天候で変わることは最初からわかっており、その解決策もいろいろあるにもかかわらず、風力や地熱など太陽光以外の再生エネに関する電力会社ごとの優先枠を設ける検討をするとのことであるため、その前にまず、使わない原発の送電線を活用した方がよいと考える。

 また、*1-2に書かれている「制度に問題があった」というのは、最初はそこまで見通せなかったとしても、環境影響評価は原発にこそ最も重要であり、送配電網の不足は迅速かつ建設的に解決すべきなのである。そして、この際に、日本国内の交流電源の周波数は、明治時代から東日本50ヘルツ、西日本60ヘルツHzと異なり、広域で電力を送る場合には周波数変換ロスが生じるため、遠距離はすべて直流で送電し、直流でも使える仕組みにすると、変換ロスが生じず節電できる。なお、太陽光発電や蓄電池、EV、PC、LED照明などの家電は直流であるため、直流電流を使った方が変換ロスが生じない。

(2)原発訴訟について
 政府・自民党が原発に直進しているため、これを止めるには司法を使うしかない。そのため、*2-1のように、脱原発原告団が全国連絡会を発足させ、再稼働反対訴訟で連携することを、10月10日に佐賀地裁で開かれた玄海原発の操業停止請求訴訟の口頭弁論終了後、原告団の長谷川照団長(http://www.data-max.co.jp/2012/02/08/post_16433_ym_1.html 参照、京都大理学博士。専門は原子核理論。佐賀大理工学部教授、理工学部長等を経て、2003~2009年度、佐賀大学学長)が明らかにされたそうだ。連携するのは、それぞれの原告団が持っている知見を集める上で大いに役立つため、頑張って欲しい。

 また、連絡会の共同代表、蔦川佐賀大名誉教授は「脱原発が当たり前の社会になるよう交流を深めていきたい」とされ、大飯原発訴訟の中嶌原告団代表は意見陳述して、運転差し止めを認めた福井地裁判決について「福島の原発事故後に全国に広がった(脱原発の)世論の結晶」として「過疎地域に原発を押しつける差別構造についても玄海原発訴訟の司法判断で深めてほしい」と求められたのは心強い。

 なお、玄海原発訴訟には、いろいろな分野の専門家が入っており、*2-2のように、9月10日の11次提訴で原告が8500人超になるほどの共感を呼んでいる。政府・自民党は、原発や政治とは全く利害関係のない原発地元のいろいろな専門家を含むこれらの人々の意見を真摯に受け止めるべきである。

 そして、*2-3のように、鹿児島、宮崎、熊本県などの住民が九電川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働停止を国や九電に求める訴訟でも、新たに237人が追加提訴し、原告数が26都道府県の計2479人になったそうだ。鹿児島、宮崎、熊本は、農林漁業の盛んな地域であり、原発より農林漁業の方がよほど重要である。

(3)原発再稼働に対する一般国民の意見
 *3-1のように、原子力規制委員会は9月10日、九州電力川内原発1、2号機の審査書案についての意見公募(パブリックコメント)の概要を明らかにし、火山噴火の監視の難しさや耐震設計について批判的な意見が多かったにもかかわらず、規制委は表現の一部を修正しただけで、1万7819件に上った意見の大半は宙に浮いたそうだ。

 意見の提出者には、元燃焼炉設計技術者の中西さんのように、科学技術的な立場に立って意見を書いた人が多く、中西さんが「重大事故で核燃料が溶け落ち、原子炉圧力容器が壊れる時間の推計値に問題がある」などを具体的に指摘しても無視されるなど、審査書案の「案」が取れただけで、意見が検討されたとは思えず、規制委の委員からも意見公募の形骸化を危ぶむ声が上がったそうだ。

 原発では、このようなことが日常茶飯事として起こるため、*3-2のように、脱原発を訴え、九電川内原発の再稼働に反対する集会が、9月23日、東京都江東区の亀戸中央公園であり、主催者発表で約1万6千人が参加したそうだ。これらの人たちは、よく言われる「左翼運動のプロ」ではなく、一般市民が見るに見かねて立ち上がっているものである。

(4)川内原発再稼働ありきの住民説明会
 *4-1のように、九電川内原発の再稼働に向けた地元同意手続きの第1弾となる住民説明会では、原子力規制庁の職員が、国内原発で初めて新規制基準に「適合する」とした審査内容を説明し、住民の関心が高い事故時の避難計画の説明は「主催者の県側から要望がない」として行わないとのことである。また、説明するのは5会場とも設備に詳しい規制庁原子力規制部安全規制管理官だけで、避難計画専門の職員は同行しないそうだが、それでは安全と判断した根拠を説明することも、住民の質問に答えることもできないだろう。

 そして、*4-2のように、初めての住民説明会で、会場の川内文化ホールには住民が詰めかけ、ほぼ満員となり、原子力規制庁の市村安全規制管理官が「福島原発事故の教訓をとりいれて、規制を徹底的に見直した」と強調したのに対し、質疑応答で住民の男性が「原子力規制委員会の安全審査は科学的、技術的に厳正とはいえない」とただし、ある女性からは「説明会の参加者を締め出すかのように、抽選とするのはいかがなものか」と説明会の運営に対する疑問が出たそうだ。

 原発の地元川内については、原発の30キロ圏の日置市、いちき串木野市の両市議会が9月末、再稼働の同意が必要な「地元扱い」を求める意見書を可決し、出水市は鹿児島市など周辺6市町の首長による地元の範囲についての協議を呼び掛けるそうだが、伊藤知事は同意の必要がある自治体を「鹿児島県と薩摩川内市で十分」との主張を繰り返しているそうだ。

 さらに、*4-3のように、九電川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市で9日夜開かれた住民説明会は、会場が1000人を超す市民で埋まって怒りの声が渦巻き、会場では再稼働への賛否も問われず、今回の説明会が再稼働に関する地元判断にどう反映されるかも不透明で、説明会では再稼働の是非自体は議論されず、参加者向けに配布されたアンケートも、説明会に参加して「良かった」か「良くなかった」などを聞くだけの簡単な内容だったそうだ。

 なお、原発の安全性を不安視する住民の再三の質問に対しては、原子力規制庁職員が「どんなに努力をしても絶対に事故が起こりえないとは言えない」と答えると、会場からは「説得力がない」「リスクがあるのなら再稼働すべきではない」といった声が上がり、約1時間の質疑の間、質問に立った7人の大半が再稼働への懸念を表明したとのことで、当然である。

 *4-4のように、住民説明会をインターネット中継するよう、鹿児島県内の市民団体が6〜7日、鹿児島県に繰り返し要請した件については、鹿児島県は中継しない方針を崩さなかったそうだ。しかし、川内原発の再稼働は他地域の原発の再稼働にも影響を与えるため、日本全国の人が視聴できるよう、住民説明会をインターネット中継して開示するのは当然のことだ。ただし、ここでTVなどの公的メディアは、既に台風災害とスポーツの専用チャンネルと化しており、誰も期待しておらず、報道の自由、言論の自由を標榜するに値しない存在となっており、「報道の自殺」と呼ばれている。

 そして、*4-5のように、多くの住民の反対にもかかわらず、薩摩川内市は月内に再稼働に同意する見通しで、伊藤鹿児島県知事は薩摩川内市の議会と市長、県議会と自らの同意を再稼働の条件にしているそうだが、それで不十分なことは誰の目にも明らかである。

(5)どんな時代にも、知識は合理的な思考や判断の必要条件であって十分条件ではない
 このような中、*5のように、佐賀県教職員組合(佐教組)教育研究集会で、前大阪教育大学長の長尾氏が全国学力テストを取り上げ、「社会で求められる学力そのものの中身が大きく変わっているにもかかわらず、知識量を1点2点の差で評価するのは時代遅れ」と批判したとのことである。しかし、この発言は、学力テストの意味を「知識量を1点2点の差で評価するもの」として、故意に歪めて間違った結論を導いており、意図的である。従って、アホな大阪の真似をしてはいけない。

 (1)~(4)で明らかなように、基礎的な科学知識がなければ合理的・論理的にものを考えて判断することができず、基礎的な知識を身につけるために学力テストは欠かせない。つまり、主権在民の国日本で、本当の意味で主権者でありうるためには、一般住民もメディアの記者も基礎的な知識が必要で、そのためには、学力テストが欠かせないのである。

 また、長尾氏は、「学力は子どもの生きる力の一部でしかなく、産業界も主体性やコミュニケーションなど実践的な能力を求め、知識だけ詰め込んだらいいという時代が過ぎ去ったことを察知している」と解説したそうだが、これは「知識を得ること」を「知識だけを詰め込んだらいいと考えること」に矮小化して説明し、再度、間違った結論を導いており、論理的でない。

 何故なら、知識がなければ、それを土台にして科学的・論理的・合理的な考察をすることはできず、それらの裏付けのない主体性は暴走になりがちだからだ。また、私は、真実の知識と考察の裏付けなきコミュニケーションは、内容がなく、進歩をもたらすこともなく、そもそも面白くないと思っている。

*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11403720.html?_requesturl=articles%2FDA3S11403720.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11403720 (朝日新聞 2014年10月16日) 太陽光発電の新設抑制 買い取り価格見直し案 経産省方針
 太陽光など再生可能エネルギーの普及を後押しする固定価格買い取り制度(FIT)について、経済産業省は、家庭用を除く太陽光発電の新規申請を抑える方向で検討に入った。天候などで発電量が変わる太陽光が急に増えすぎると送電が不安定になり、停電などを起こしかねないためだ。年内に一定の方向性を示す。経産省は15日の新エネルギー小委員会で、見直しの選択肢を示した。有力なのは、太陽光の買い取り価格を切り下げたり、風力や地熱発電の送電網への接続を優先したりする案だ。太陽光の買い取り価格は普及にあわせ、毎年4月に引き下げられる。だが、いまの仕組みでは、事業計画を認定した時点の価格が適用されるため、それより数カ月以上先の電力会社との契約時や運転開始時の価格を適用することで、買い取り価格の引き下げにつなげることを検討する。また、風力や地熱など太陽光以外の再生エネについて、電力会社ごとに導入の優先枠を設けることも検討する。こうした見直しで、申請を抑えたい考えだ。FITは、発電費用に一定の利益を上乗せした価格で、電力会社が電気を買い取る仕組み。事業者の利益が安定し、再生エネの普及が進むとの想定だった。ところが、再生エネのなかでも発電開始までの手続きが短く、買い取り価格も高めの設定になった太陽光に人気が集中。北海道、東北、四国、九州、沖縄の電力5社は、供給が急に増えると停電などを起こす心配があるとして、新たな受け入れを中断していた。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014101690070143.html
(東京新聞 2014年10月16日) 「制度設計に失敗」 再生エネ買い取り破綻
 経済産業省と有識者委員会は十五日、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の抜本見直しを本格的に議論し始めた。経産省は同日、有識者による新エネルギー小委員会(経産相の諮問機関)に大規模太陽光発電所(メガソーラー)の認定を凍結するなどの素案を提示、再生エネの拡大策の柱となってきた買い取り制度は開始からわずか二年で破綻が明らかになった。制度設計など準備不足が露呈した格好で、委員たちからは「制度に問題があったことは認めなければならない」との指摘が相次いだ。経産省は再生エネ拡大策が太陽光に偏ったとして、風力や地熱による発電の環境影響評価(アセスメント)に必要な期間の短縮や、買い取り価格の見直しも検討課題として提示した。九州電力など大手電力五社が送配電網の不足を理由に発電業者からの買い取り手続きを中断している問題については、十六日から別の専門部会で受け入れ可能量の検証や受け入れ拡大策を検討する方針を説明した。見直し策は年内に方向性を出す。委員の松村敏弘東京大学教授は「(政府が)制度設計に失敗したのは(小委員会も含め)反省すべきだ」と指摘した。佐藤泉弁護士は「制度改善してもまた中断されるのでは、との疑念を発電業者から持たれ、信頼回復は容易ではない」として、「不安を抱える事業者に、早く今後の道筋を示す必要がある」と話した。制度見直しに向けては、経産省側が再生エネの導入と電気料金の上昇について試算し、どこまで負担を引き受けるか国民にアンケートする案を紹介。これに対し、委員の消費生活コンサルタント・辰巳菊子氏が「再生エネだけが高いと思われかねない」として、廃棄物処理なども入れれば実際は高コストとされる原発も含めたエネルギー全体の構成比率と電気料金を試算するよう求めた。固定価格買い取り制度は民主党政権時の二〇一二年に開始、再生エネ拡大のきっかけとなったが、政権交代した自民党が原発重視に転換。再生エネを受け入れるための送電網の強化策や自然条件で一時的に発電量が増え過ぎる場合の出力抑制策、買い取り価格の適正化など全体的な制度設計は停滞してきた。再生エネの発電事業者らは「原発依存に回帰するのでなく、再生エネの導入機運がしぼまないようにしてほしい」(東京都内の太陽光発電業者)と議論を注視している。
<再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度> 太陽光、風力、中小規模の水力、地熱、バイオマスの5種類の発電を、国が決めた価格で買い取る制度。買い取りにかかった費用は「賦課金」として電気料金に上乗せされ、家庭や企業などすべての電力利用者が負担する。4月からの買い取り価格は、企業などが設置する大規模な太陽光発電は1キロワット時当たり32円、風力は22円などとなっている。太陽光の方が高いことや参入への技術的ハードルが低いことから、太陽光に人気が集中、政府の認可件数の9割を占めている。

<原発訴訟>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/113714
(佐賀新聞 2014年10月11日) 再稼働反対訴訟で連携 脱原発原告団が全国連絡会
 九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)運転差し止め請求訴訟の2原告団など、全国で提訴されている原発裁判の原告団が、連絡会を発足させた。5月に大飯原発(福井県おおい町)の運転差し止め判決が出たものの、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)では再稼働に向けた準備が進んでおり、原告団同士のネットワークで脱原発運動を強化する。佐賀地裁で10日開かれた玄海原発の操業停止請求訴訟の第10回口頭弁論終了後、原告団(長谷川照団長)が明らかにした。連絡会には現在、全国の22原告団が参加、裁判関連の資料や原告数拡大の広報活動などについて情報交換する。11月に名古屋高裁金沢支部で始まる大飯原発訴訟の控訴審に合わせ、現地で集会を開くほか、川内原発でも再稼働阻止の活動で連携する方針。連絡会の共同代表になった蔦川正義佐賀大名誉教授は「脱原発が当たり前の社会になるよう交流を深めていきたい」と話した。口頭弁論では、大飯原発訴訟の中嶌哲演原告団代表が意見陳述。運転差し止めを認めた福井地裁判決について「福島の原発事故後に全国に広がった(脱原発の)世論の結晶」と強調し、「過疎地域に原発を押しつける差別構造についても玄海原発訴訟の司法判断で深めてほしい」と求めた。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/102973
(佐賀新聞 2014年9月10日) 玄海原発訴訟、11次提訴 原告8500人超に
 佐賀をはじめ国内外の反原発の市民が国と九州電力に玄海原発(東松浦郡玄海町)全4基の操業停止を求めている訴訟で、新たに447人が10日、佐賀地裁に追加提訴した。11回目の提訴で、原告は計8517人となった。弁護団は会見で「事故は3年半たっても収束しておらず、約13万人の避難者が故郷に戻れない。避難計画も不十分なままでの再稼働は絶対許されない」とした。

*2-3:http://qbiz.jp/article/45997/1/
(西日本新聞 2014年9月17日) 再稼働差し止め、237人が追加提訴 鹿児島地裁
 鹿児島、宮崎、熊本県などの住民が九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働停止を国や九電に求めた訴訟で、新たに19都道府県の237人が16日、鹿児島地裁に追加提訴した。提訴は6回目で、原告数は26都道府県の計2479人になった。川内原発50キロ圏内に4市町がある熊本県から114人が追加提訴し、鹿児島県は54人、宮崎県は12人だった。追加提訴の数が200人を超えるのは第3次提訴以来。森雅美弁護団長は「再稼働手続きが本格化する中、(市民が)関心を取り戻した。この訴えが世論に跳ね返り(再稼働阻止への)力になる」と期待した。11月11日に第7回口頭弁論がある。

<原発再稼働に対する国民の意見>
*3-1:http://qbiz.jp/article/45690/1/
(西日本新聞 2014年9月11日) 意見公募1万8000件が宙に
 原子力規制委員会は10日、九州電力川内原発1、2号機の審査書案についての意見公募(パブリックコメント)の概要を明らかにした。火山噴火の監視の難しさや耐震設計について批判的な意見が多かったが、規制委は表現の誤りなど一部を修正しただけ。1万7819件に上った意見の大半は宙に浮いた。意見提出者からは「何のための意見募集か」と不満も出た。「審査書案の『案』が取れただけで、われわれの意見が検討されたとは思えない」。元燃焼炉設計技術者の中西正之さん(70)=福岡県水巻町=は規制委の対応を批判する。中西さんは規制委が意見公募の条件とした「科学技術的」な立場に立ち、「重大事故で核燃料が溶け落ち、原子炉圧力容器が壊れる時間の推計値に問題がある」などと具体的に指摘した。それに対し規制委は10日に公表した文書で「(問題がないことを)確認している」と記しただけだった。原発問題への関心の高さを示すように、避難計画や新規制基準そのものを疑問視する意見も少なくなかった。田中俊一委員長は会見で「避難計画へのコメントは多かったが、分担が決まっている。私どもとしてできることをやっている」と、募集条件に合わない意見や提案を除外したことを明かした。規制委の委員からは意見公募の形骸化を危ぶむ声も上がった。大島賢三委員は「意見には(原発の)安全性を高めるための具体案や示唆、提案も含まれている。パブリックコメントが形式的なもので終わってはいけない」とし、寄せられた意見を生かす仕組みを提案。だが、田中委員長は「限界もあるが、できるだけ前向きに取り組む」と述べ、具体的な改善策は明言しなかった。 

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11366333.html?_requesturl=articles%2FDA3S11366333.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11366333 (朝日新聞 2014年9月24日) 脱原発1万6千人訴え 東京で集会
 脱原発を訴え、九州電力川内原発(鹿児島県)の再稼働に反対する集会が23日、東京都江東区の亀戸中央公園であった。主催者発表で約1万6千人が参加。作家の澤地久枝さんは「安倍晋三さんに『原発をやめる』と言わせたい。一緒に歩いて声をあげる以外に道はないが、生き生きと笑って闘おう」と訴えた。澤地さんや作家の大江健三郎さんらが呼びかけた「『さようなら原発』1千万署名 市民の会」が主催した。大江さんは「『3・11直後の強く明確な反原発の国民感情が弱まっているのでは』という悲観的な観測や不安がある」と指摘。そうした背景があって安倍政権が強硬に政策をすすめていると分析し、「私たちは断固として進まねばならない」と呼びかけた。

<川内原発再稼働ありきの住民説明会>
*4-1:http://qbiz.jp/article/47327/1/
(西日本新聞 2014年10月8日) 川内原発、9日から住民説明会 避難計画は説明せず
 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に向け、地元同意手続きの第1弾となる住民説明会が9〜15日、原発30キロ圏の避難対象地域の5市町で開かれる。原子力規制庁の職員が、国内原発で初めて新規制基準に「適合する」とした審査内容を説明する。住民の関心が高い事故時の避難計画の説明は「主催者の県側から要望がない」(同庁)として、しない方針。説明会は県と開催地の市町の主催で、原発の安全への住民理解を進める狙い。伊藤祐一郎知事は説明会開催を再稼働条件の一つに挙げており、参加者に理解度をアンケートし、再稼働同意判断の材料にする。日程は9日=薩摩川内市▽10日=日置市▽13日=いちき串木野市▽14日=阿久根市▽15日=さつま町。申し込みは既に締め切った。初回以外の4会場は応募期限を5日間延長したがいずれも定員割れ。参加総数は定員の65%の2981人で、30キロ圏の人口約21万5千人の1%にとどまる。規制庁によると、説明するのは5会場とも規制庁原子力規制部安全規制管理官(課長級)。川内原発の審査に携わった事務責任者で、設備に詳しいという。地震や津波に関する審査の担当職員も同行する。避難計画が専門の職員は同行しない。

*4-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASJC09H1S_Z01C14A0000000/
(日経新聞 2014/10/9) 川内原発、初の住民説明会始まる 安全性など議論
 九州電力の川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に向け、初めての住民説明会が9日午後7時、同市内で始まった。原子力規制庁の職員が安全審査の経緯などを説明したのに対し、住民からは「審査は科学的に厳正とはいえない」などといった声が上がった。説明会は15日までに県内計5カ所で予定され、県と同市は原発の安全性について住民の理解を得たうえで再稼働同意の手続きに入りたい考えだ。原子力規制委員会が9月10日、川内原発1、2号機に安全審査合格を出し、同原発は再稼働第1号となる見通し。説明会は津波・地震対策など、安全審査の内容を住民に伝えるのが目的だ。10月9日夜は会場の川内文化ホール(同市)に住民が詰めかけ、ほぼ満員になった。原子力規制庁の市村知也・安全規制管理官が冒頭、「福島原発事故の教訓をとりいれて、規制を徹底的に見直した」と強調した。質疑応答では住民の男性が「原子力規制委員会の安全審査は科学的、技術的に厳正とはいえない」とただした。ある女性は「説明会の参加者を締め出すかのように、抽選とするのはいかがなものか」などと、説明会の運営に対する不満の声も出た。再稼働への地元同意は原子力規制委員会の認可手続きと並び、再稼働の条件となっている。立地自治体である鹿児島県と薩摩川内市は同意手続きに入るには、国が関与する形で安全性などを住民に説明し理解を得ることを前提としていた。県内での住民説明会はこの後、日置、いちき串木野、阿久根の各市とさつま町の4カ所で開かれる。その結果を踏まえ、薩摩川内市議会と岩切秀雄市長、鹿児島県議会と伊藤祐一郎知事が再稼働への態度を表明する手続きに入る見通し。同市長、県知事とも従来から早期再稼働を求めており、最終的に同意する可能性が高い。川内原発の30キロ圏には薩摩川内を含めて9市町が立地している。このうち日置、いちき串木野の両市議会は9月末、再稼働の同意が必要な「地元扱い」を求める意見書を可決した。出水市も鹿児島市など周辺6市町の首長による地元の範囲についての協議を呼び掛ける。周辺自治体からは、原発事故が発生した場合に避難が必要になるにもかかかわらず、意思表示の蚊帳の外に置かれていることへの不満が出始めている。伊藤知事は同意の必要がある自治体を「県と薩摩川内市で十分」との主張を繰り返している。県と周辺自治体の溝は今のところ埋まっていない。九電は今月8日、原子力規制委員会に川内1号機の安全対策工事の詳細な設計内容を記した「工事計画」などの書類を提出したが、2号機分は提出できていない。加えて規制委による計画内容の審査や「使用前検査」にも2~3カ月かかるとみられる。地元同意に手間取れば再稼働はさらにずれ込む可能性がある。

*4-3:http://mainichi.jp/select/news/20141010k0000m040095000c.html
(毎日新聞 2014年10月9日) 川内原発:「説明根拠、理解できぬ」…市民から怒りの声
 1000人を超す市民で埋まった会場に怒りの声が渦巻いた。九州電力川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市で9日夜開かれた住民説明会。川内原発が国の新規制基準に適合した理由を説明する原子力規制庁の職員に対し、再稼働に反対する住民たちは「子供と孫に責任を持てるのか」と迫った。会場では再稼働への賛否も問われず、今回の説明会が再稼働に関する地元判断にどう反映されるのかも不透明なままだ。不測の事態に備え、主催する県や市職員のほか多数の警察官らが警戒する物々しい雰囲気の中で開かれた説明会。原発の安全性を不安視する住民の再三の質問に対し、原子力規制庁職員が「どんなに努力をしても絶対に事故が起こりえない、とは言えない」と答えると、会場からは「説得力がない」「リスクがあるのなら再稼働すべきではない」といった声が上がった。最後に質問した地元商工会関係者が「よく理解できた」と述べると、再稼働に期待する住民から大きな拍手も起きたが、約1時間の質疑の間、質問に立った7人の大半が再稼働への懸念を表明した。県と市が参加者を抽選で絞り、会場での録音を禁止したことにも不満の声が出た。原発から10キロ圏内に住む福山登さん(50)は終了後「説明不足で安全とは思えなかった」と憤慨。薩摩川内市の教員、瀬戸ちえみさん(49)は、専門家が過小評価だと指摘する地震への評価を聞きたくて参加したが、会場で示された根拠について「全く理解できなかった。リスクがあるなら押しつけるなといいたい」と語った。一方、同市峰山地区のコミュニティ協議会会長、徳田勝章さん(76)は日本のエネルギー事情や安全性、避難計画の有効性などを総合的に勘案して再稼働への賛否を「判断したい」と言う。この日の説明会は「判断するうえで重視するものの一つ」だったが、「もっと突っ込んだ説明や回答がほしかった」と残念そうに話した。鹿児島県の伊藤祐一郎知事は、薩摩川内市を皮切りに周辺5市町で開かれる説明会での住民の反応を、再稼働の判断材料の一つにする意向だ。ところが、説明会では再稼働の是非自体は議論されず、参加者向けに配布されたアンケートも、説明会に参加して「良かった」か「良くなかった」などを聞くだけの簡単な内容だった。

*4-4:http://qbiz.jp/article/47328/1/
(西日本新聞 2014年10月8日) 住民説明会ネット中継、鹿児島県は認めず 川内原発
 9日から川内原発30キロ圏5カ所で開かれる住民説明会をインターネットで中継するよう、鹿児島県内の市民団体の関係者らが6〜7日、県に繰り返し要請したが、県は中継しない方針を崩さなかった。市民側は離島住民や高齢者、体の不自由な人が説明を聞く機会を保障すべきだと主張。中継しないなら説明会参加者による中継を認めるよう要望した。これに対し、県原子力安全対策課の四反田昭二課長は知事の意向として「説明は会場で直接聞いてもらいたい」と述べ、参加者による中継も認めなかった。原子力規制庁が録画映像を後日、同庁ホームページ(HP)に掲載する方向で検討中で、四反田課長は「HPの映像を見てほしい」とした。要請に参加した開業医の青山浩一さん(53)=鹿児島市=は「1人でも多くの県民が説明を聞けるようにすべきなのに」と憤っていた。

*4-5:http://qbiz.jp/article/47819/1/
(西日本新聞 2014年10月16日) 薩摩川内市、原発再稼働同意へ 月内に議会と市長が意思表明
 原発の新規制基準の下、政府が国内で最初の再稼働を目指す九州電力川内原発(鹿児島県)の地元同意手続きで、原発が立地する同県薩摩川内市が月内に同意する見通しとなった。市議会の川内原発対策調査特別委員会(10人)が20日に開かれ、早期の再稼働を求める陳情が採択されることが確実になったため。この後、本会議が月内に招集される見通しだが、市議(議長を除き25人)の過半数は再稼働に賛成の意向。岩切秀雄市長は再稼働容認を掲げて当選しており、議会の判断を受け、間を置かずに同意を表明するとみられる。 伊藤祐一郎知事は薩摩川内市の議会と市長、県議会と自らの同意を再稼働の条件にしている。同市の動きを受け、県議会も11月上旬に臨時議会を招集し、同意するかどうか判断する方向で調整が進んでいる。再稼働をめぐっては国内に根強い反対があるが、地元では同意に向けたスケジュールが一気に動きだしそうだ。薩摩川内市議会特別委は15日、次回の日程を20日に決定し、再稼働をめぐる陳情(賛成1件、反対10件)が一括採決される運びになった。特別委の委員の過半数は西日本新聞の取材に対し「審査には十分な時間をかけた。早く採決すべきだ」などと述べ、再稼働に賛成する意向を示した。特別委の意思表示を受け、岩切市長は月内に臨時議会を開く方針だ。市議の過半数は取材に対し、再稼働への賛成を明言しており、臨時議会でも賛成多数で賛成陳情が採択される見通しだ。薩摩川内市では9日に住民説明会が終了。岩切市長は10日、説明の内容を評価し、臨時議会の招集を検討する意向を示していた。15日の取材に対しては「議会がどうまとめるかを待ちたい」と述べた。県議会の原子力安全対策等特別委員会には、川内原発をめぐる陳情36件が付託されており、27、28日に原子力規制庁や経済産業省の担当者を参考人招致し審査する。関係者によると、11月上旬にも臨時議会を招集し、数日で陳情に対する結論を出す見込みだ。

<どんな時代にも、知識は合理的な思考と判断の必要条件である>
*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/114863
(佐賀新聞 2014年10月15日) 知識量評価の学テ時代遅れ 佐教組教育研究集会
 佐賀県教職員組合(佐教組)の第64次教育研究集会が11日、佐賀市の開成小で開かれた。前大阪教育大学長の長尾彰夫氏が講演で全国学力テストを取り上げ、「社会で求められる学力そのものの中身が大きく変わっているにもかかわらず、知識量を1点2点の差で評価するのは時代遅れ」と批判した。長尾氏は「学力テストは点数化することで一見客観的で説得力を持つが、学力は子どもの生きる力の一部でしかない」と強調し、毎年数十億円の巨費を投じて行うことに疑問を呈した。企業が出身大学で採用を判断していた時代は、受験に必要な、自分をコントロールし、与えられた職務を忠実にこなす能力が求められていたと指摘した。「今では産業界も主体性やコミュニケーションなど実践的な能力を求め、知識だけ詰め込んだらいいという時代が過ぎ去ったことを察知している」と解説した。集会には約270人が参加、17の分科会で教科教育や教育現場のさまざまな課題を論議した。核廃絶を訴える高校生平和大使の活動報告もあった。


PS(2014.10.16追加):太陽光促進付加金が大きいかのように報道されているので、うちの東京電力への2011年~2014年の8月使用9月支払い電気料金の年次比較をしたところ、賦課金で大きいのは電力会社が高値買いしている火力発電用燃料の燃料費調整であり、太陽光促進付加金は非常に小さかった。つまり、火力を少なくして太陽光発電に変えた方がよいということだ。また、うちはオール電化ではない普通のマンションで30アンペアであるにもかかわらず、段階料金制度の3段料金としてとられた金額が非常に高いが、それは、家庭用電気料金が贅沢品として高く設定されており、この発想が時代について行っていないからだろう。

<8月使用、9月支払い分の東京電力電気料金比較>       再エネ発電賦課金
      使用料(kw)  請求金額合計(S)  燃料費調整(A)  太陽光促進付加金(B)  消費税(T)
2011.9   652        16,495         -65           19          749
2012.9   687        18,757         667.8          192         52
2013.9   700        22,152         1,386         280        1,006
2014.9   532        17,999        1,324.68        425        1,241

基本料金    1段料金       2段料金      3段料金     口座振替割引
1,092      2,144       4,115        8,494          -53
1,092      2,164.80     4,184.7      9,656.39        -53
1,092      2,266.80     4,534.2      11,640         -53
1,123.20    2,331.60     4,663.80     6,943.76        -54
*三段階料金制度:省エネルギー推進などの目的から、昭和49年6月に採用したもので、電気の使用量に応じて料金単価に格差を設けた制度のこと
 第1段階:ナショナル・ミニマム(国が保障すべき最低生活水準)の考え方を導入した比較的低い料金
 第2段階:標準的なご家庭の1か月のご使用量をふまえた平均的な料金
 第3段階:やや割高な料金


PS(2014.10.17追加):*6に、「各電力会社も火力発電の燃料負担が増加しており、2度目の値上げを検討している」と書かれているが、電力会社は燃料負担分を“燃料費調整”として既に顧客から回収しているので、この値上げ理由はおかしい。また、「経産省は、北電の泊原発が再稼働すれば料金値下げを実施することを認可の条件とする」としているが、上のような明細を作る以上は、原発にかかる費用も明細にして区分請求するのが筋である。このように、都合のよい嘘だらけの理由を並べたてるのが原子力ムラの真実だが、何のためにそこまでするのかが重要なのである。

*6:http://mainichi.jp/select/news/20141011k0000m020078000c.html
(毎日新聞 2014年10月10日) 北海道電力:値上げ幅 家庭向け平均15.33%に圧縮
 小渕優子経済産業相は10日の閣議後記者会見で、北海道電力が認可申請していた家庭向け平均17.03%の電気料金値上げについて、値上げ幅を同15.33%に引き下げることで消費者庁と合意したと発表した。火力発電の燃料費を削減し、値上げ幅を申請より1.7ポイント圧縮する。15日にも値上げを認可し、北海道電は11月1日に値上げを実施する。東京電力福島第1原発事故後、北海道電を含む7社が値上げを実施したが、2度目の料金値上げは初めて。北海道経済への影響が懸念される。また、各電力会社も火力発電の燃料負担が増加しており、2度目の値上げを検討している。東電などが再値上げを実施すれば、景気に悪影響を与えることは確実だ。北海道電は、電力需要のピークとなる冬季の負担増を抑えるため、来年3月までと4月以降の2段階で値上げを行う。家庭向けは来年3月末までは値上げ幅を12.43%に圧縮。平均22.61%を予定していた企業向け料金値上げ幅は20.32%に引き下げ、来年3月までは16.48%にとどめる。値上げ幅圧縮のため、人件費削減や資産売却など約60億円の効率化を行う。今回の値上げで、平均的な世帯の電気料金は現在の月7233円から、来年3月までは約8000円、来年4月以降は8185円となる。経産省は、北海道電の泊原発が再稼働した場合、順次料金値下げを実施することを認可の条件とする。北海道電は昨年9月に家庭向け平均7.73%の値上げを実施。しかし、当初、昨年末を見込んでいた泊原発再稼働の見通しがつかず、代替火力発電の燃料費が増加したため、燃料費の増加分のみを料金改定に反映する「電源構成変分認可制度」に基づき再値上げを申請していた。福島原発事故後の各電力会社の料金値上げで、値上げ幅が10%を超えるのは今回が初めてだ。


PS(2014.10.17追加):*7のように、排気ガスや二酸化炭素を排出して公害を出し、外国から燃料を輸入しながら、国産の自然エネルギーや水素よりも化石燃料を選択する判断は、エネルギー自給率と環境を全く考えておらず、馬鹿としか言いようがない。

*7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141017&ng=DGKDASDZ16HJL_W4A011C1EA2000 (日経新聞 2014.10.17) 石炭火力発電所 国内需要の3割賄う
▽…石炭を燃やして発生したエネルギーを使う発電方式。世界各地で産出され安く安定的に調達できることから、世界の発電量の4割程度は石炭火力でつくられている。原子力発電所と同様に24時間安定稼働する「ベース電源」として使われ、国内需要の3割が石炭で賄われている。東日本大震災前は25%程度だったが、原発の停止を受けて比重が高まった。
▽…かつては大気汚染物質などの大量排出が問題視されていたが、現在は硫黄酸化物(SOx)などの排出量は天然ガス火力並みに抑えられている。投入したエネルギーを電気に変える効率を示す発電効率も高まっている。現在国内で主流の超々臨界圧発電(USC)は45%程度と1世代前の超臨界圧より1~2割ほど向上している。
▽…一方、二酸化炭素(CO2)の排出量を抑制するのは難しい。課題克服に向けて石炭ガス化複合発電(IGCC)と呼ぶ最新技術が実用化段階に入っている。石炭を蒸し焼きにして発生させたガスを燃料にガスタービンを回し、廃熱でつくった蒸気でもタービンを回す。2回発電することで同量の石炭から多くの電気を得られる。蒸気タービンだけ回す方式より発電効率は2割ほど高まり、その分CO2の排出も減らせる。


PS(2014年10月22日追加):*8のように、*2-1で玄海原発原告団団長を勤める長谷川佐賀大学元学長と関連する佐賀大学病院で、10月25日、26日、11月1日に停電があるそうだが、九電が再生可能エネルギーの買取拒否をしながら、「原発が再稼働できないから電力が足りない」などと言えば誰もが呆れるだけである。病院はどんな災害時にも重要な拠点となるべき施設であるため、自家発電や新電力によるバックアップなどで、普段から絶対に電気設備がストップしないようにしておくべきものだ。

*8:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/117248
(佐賀新聞 2014年10月22日) 佐大病院25、26、来月1日に停電
 佐賀大学医学部附属病院(佐賀市鍋島)は25、26の両日、電気設備の定期点検整備のため停電する。特に、25日正午から午後4時と26日午前8時から午後0時半の時間帯は、救急患者の診察に支障が生じる恐れもあり、ほかの救急病院での受診を呼び掛けている。11月1日も東西病棟で停電作業を行う。エレベーターなどの電気設備がストップし、院内の混雑も予想されるため、いずれの停電日も見舞いをできるだけ控えるよう協力を求めている。


PS(2014.10.23追加):燃料費調整として燃料費増加分を顧客に請求しておきながら、*9の主張は成立しない。そのため、電力会社は、燃料毎に別会社(子会社)にして正確にコスト計算し、それぞれが高値買いしないようコスト削減に努めるのがよいと考える。高値買いせずコスト削減に努めるのは、トヨタをはじめ、通常の会社ならどこでもやっていることだ。

*9:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141023&ng=DGKDASDF23H01_T21C14A0MM0000 (日経新聞 2014.10.23) 
火力燃料費12兆円増 経産省試算、震災後の累計 原発停止など響く
 経済産業省は原子力発電所の停止に伴う火力発電用の燃料費について、2011年度から14年度の累計で12兆7000億円増えるとの試算をまとめた。原発の停止で、コストの高い液化天然ガス(LNG)や石油などを使う火力発電所の稼働が増えたためだ。14年度の追加燃料費は約3兆7000億円に上る見通しだ。すべての原発が止まったままと想定しているため、大飯原発3、4号機が一時稼働した13年度よりも1500億円増えるとした。燃料費は13年度まで3年間の累計で、すでに9兆円増えている。発電電力量に占める火力発電の比率は、東日本大震災前(10年度)の62%から13年度は原発の停止で88%と大幅に上昇した。増えた分の燃料費は電力会社の収益を圧迫している。経産省によると、震災後の3年間で電気料金は家庭向けで2割、企業向けで3割上昇した。

| 原発::2014.8~10 | 11:50 AM | comments (x) | trackback (x) |
2014.10.14 青色LED開発者のノーベル物理学賞受賞と新時代に求められるテクノロジー (2014.10.15追加あり)
    
  *1より                 現在あるLED照明    

(1)新時代の光、青色LEDがノーベル物理学賞を受賞したこと
 *1のように、赤崎名城大学教授と天野名古屋大学教授、中村米カリフォルニア大学教授が開発に貢献した青色発光ダイオード(LED)が「光の新世界」を開き、省エネで長寿命の照明やディスプレーなどの新産業を生み出した貢献により、ノーベル物理学賞を受賞したのは、誠におめでたいことである。

 松下電器産業(現・パナソニック)にいた赤崎氏は周囲から反対されながらも、窒化ガリウムの可能性にこだわり、会社を辞めて名古屋大学の教授に就任し、名古屋大学にいた天野氏とともに、きれいな結晶を安定的に作ることに成功した。そして、中村氏が、窒化ガリウムによる青色LEDの量産に道を開き、量産技術が産業応用に繋がったとのことだが、ノーベル物理学賞受賞後の赤崎氏の「好きなことをやる」等々のコメントには共感できて印象に残った。

(2)新時代の明かりのデザインと普及
 *3のフクイチ事故後、政府は電力が不足することを理由に関東で計画停電を行い、東電は原発が稼働していないことを理由に電気料金を上げた。しかし、関東地方では、東電にこれ以上、電気料金を支払いたいと思う人は減り、フクイチ事故を機会にLED照明が普及した。

 埼玉県に自宅のある私もその一人で、投資額は大きかったが東電に電気料金を支払うよりはましだと思って、2011年後半に自宅の電球を可能な限りLEDに換え、クーラーと冷蔵庫を最新の節電型に買い替え、これによって、電気料金の値上げ分を吸収した。

 しかし、需要者の立場から言えば、まだLED照明は節電目的の電球・蛍光灯の代替品にすぎず、LEDだからこそできるデザインの照明にはなっていない。実際には、LEDだからこそできる素敵なデザインがあると思われるので、今後、新築時や照明器具の交換時に、新しいデザインのLED照明に換えられるようになるとよいだろう。

(3)太陽光と光ファイバーによる照明
  
                太陽光と光ファイバーによる照明器具
 LED照明は、従来の照明の1/8~1/10の電力しか消費しないため節電目的に資するが、それより節電できる方法に、太陽光を光ファイバーで室内まで導く方法がある。

 もちろん、太陽光は、太陽が出ている間しか利用できず、明るさも変化するため、LED照明と併用して必要な明るさを出す必要はあるが、太陽光を光ファイバーで室内まで導くメリットもある。

 それは、マンションなどの太陽光の入らない部屋に太陽光を導くことにより、①室内に干した洗濯物や布団などに太陽の殺菌作用をもたらすことができる ②室内の植物を効果的に育てられる などである。①は、働く女性が増えた現在、どの地域でもニーズが大きく、フクイチ後の関東では、洗濯物や布団を外に干すことはできないため、さらに重要である。

(4)太陽光電力バス
 *2のように、北九州市営バスが、運行している2台の電気バスに電力を供給する太陽光発電所を完成し、太陽光電力への切り替えを進めて、排気ガスを出さず環境に配慮したバス運行を目指すそうだ。太陽光発電と電気自動車はどちらも直流であるため、そのまま充電した方が交流への変換ロスが生じない。そのため、他地域のバスや交通機関もこれに倣えば、100%国産のクリーンで安価なエネルギーにより、交通機関を走らせることができる筈だ。

*1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGG07019_X01C14A0EA2000/?dg=1
(日経新聞 2014.10.9) 新時代の光、産業創出 青色LEDが生活変える
 電気を流すと青色に光る半導体が究極の照明になる――。ノーベル物理学賞の受賞が決まった赤崎勇名城大学教授と天野浩名古屋大学教授、中村修二米カリフォルニア大学教授が開発に貢献した青色発光ダイオード(LED)は従来の概念を覆す「光の新世界」を開き、省エネで長寿命の照明やディスプレーなどの新産業を生み出した。「輝くような青さだった。感動で手が震えた」。赤崎氏は初めて青色LEDが光った約25年前の実験光景をこう振り返る。当時、LEDには赤色と緑色があった。実用化は早かったが、そろえば白色光ができる光の3原色のうち、残る青色はできなかった。世界の研究者が開発競争を繰り広げていた。当時、研究者から青色の光を出す物質と注目されていたのが、窒化ガリウムと炭化ケイ素、セレン化亜鉛の3つだった。このうち、青色LEDを実現した窒化ガリウムは極めて硬いうえ、溶け始める温度がセ氏2500度以上と扱いが難しい。きれいな青色LEDを得るには半導体の結晶を高い品質で作る必要があり、当時は技術的には非常に難しく「20世紀中の開発は不可能」とさえいわれていた。「窒化ガリウムには未来はない」とされ、世界中の研究者が次々と手を引いていった。これに対し、当時、松下電器産業(現・パナソニック)にいた赤崎氏は周囲から反対されながらも、この窒化ガリウムの難しさこそが青色LEDを実現できる可能性があるとみて開発にこだわった。赤崎氏は会社を辞めて名古屋大学の教授に就任し、大学にいた天野氏とともにきれいな結晶を作ることに挑戦した。「窒化ガリウムによる青色LED」という研究を国際学会で発表したものの、反響は薄い。それでも研究室に泊まり込み、実験を重ねた。きれいな結晶作りには低温のアルミニウムを吹き付け、その上に窒化ガリウムを重ねる方法があることを思いついたが、最適な条件が見つからず、試行錯誤を続けた。ある日たまたま電気炉の調子が悪く、温度が上がらない状態で使ってみると偶然、品質のよい結晶ができた。最適な条件を突き詰め、1985年にきれいな結晶を安定的に作れるようになった。その4年後、マグネシウムを加え、世界で初めてLEDに欠かせない窒化ガリウムの結晶を完成させた。努力型の赤崎氏と実験の腕で優れた天野氏が「二人三脚」で開いた成果だった。一方、窒化ガリウムによる青色LEDの量産に道を開いたのが中村氏だ。高品質な結晶を作るのが難しい中、学会で見た他の結晶の装置をもとに考えた「ツーフロー方式」という技術に注目し、きれいな結晶が量産できるようになった。1991年に成果を発表した。反応しないガスを上からふき込み、横方向から流す原料ガスが基板に定着するように押さえつけ、欠陥の少ない結晶を作れるようになった。量産技術が確立した産業応用につながる道が広がった。

*2:http://qbiz.jp/article/47438/1/
(西日本新聞 2014年10月9日) 太陽光でバスに電力供給 若松に発電所完成
 北九州市営バスが若松区と戸畑区の間で運行している2台の電気バスに電力を供給する太陽光発電所(出力7500キロワット)が若松区響灘地区に完成し、8日、竣工式があった。電気バスはこれまで一般電力で走行していたが、今後は太陽光電力への切り替えを進め、二酸化炭素(CO2)を排出しない環境に配慮したバスの運行を目指す。発電所は、電気バスの車体などの開発に携わった東レエンジニアリング(東京)や、市の第三セクター「ひびき灘開発」などが出資する合同会社が設置。約9ヘクタールの施設内に約3万4千枚の太陽光パネルを設け、うち約200枚はパネルが常に太陽の方向に向くよう全自動で追尾するシステムを採用した。来年4月、発電所に大型蓄電池を導入し、バスの電力を全て太陽光で賄えるようにする予定。総工費は約26億円。東レエンジニアリングの河村良一社長は「災害に備えて蓄電するなど地域のインフラとしても発電所を役立てたい」と話した。

*3:http://mainichi.jp/shimen/news/20141008ddm005070016000c.html (毎日新聞 2014年10月8日) 記者の目:福島原発事故 吉田調書の教訓=西川拓(東京科学環境部)
◇「人災」対策、まだ不十分
 東京電力福島第1原発事故で、政府の調査・検証委員会(政府事故調)が聞き取った関係者の調書が公表された。中でも、福島第1原発の吉田昌郎(まさお)所長(当時)の「吉田調書」は、時の首相を「おっさん」呼ばわりする率直な物言いもあって、大事故の最前線の様子が生々しく伝わる。当初から取材している身として、当時の東電や政府の混乱の原因がストンと胸に落ちた一方で、原発運転員ら事故に対処する「人」の重要性を痛感した。事故後、非常用電源の確保など設備面での対策は強化されたが、それらを運用するソフト面は十分とは言い難い。原発の再稼働が現実味を帯びる中、次の「人災」を防ぐためにも、現状に満足せず常に改善を求めたい。東日本大震災が発生した2011年3月11日、私は北海道に出張中だった。翌朝東京に戻り、そのまま東電本店で事故の取材を始めたが、本店の人たちが機能していないことは最初から明白だった。
◇本店も現場も「想定外」にまひ
 例えば、1号機の水素爆発を巡る混乱だ。12日夕、本店1階に設けられた記者室で、誰かが「何か変だ」と言い出した。テレビで映し出された1号機の建屋上部は鉄骨だけになっていた。室内は騒然となったが、東電の広報担当者は「何が起きたか分かりません。現場に確認中」の一点張り。2時間以上たって、「通常と異なる過程で建屋上部が開放された」という奇妙な言葉で、爆発を認めた。菅直人首相(当時)らの調書を読むと、事情は首相官邸も同じだった。テレビで1号機の異変が流れているにもかかわらず、官邸にいた東電幹部は何も説明できなかった。本来なら東電から情報を得て、官邸に伝えるのが役割の経済産業省原子力安全・保安院(当時)も同様だった。不信感を募らせた菅氏ら政府首脳は再三、吉田氏に電話で状況説明を求めた。吉田氏は調書で「何で官邸なんだ。本店は何をしている」などと不満を述べている。吉田調書は、現場の混乱ぶりを率直に伝えている。発電機を積んだ車が到着しても、ケーブルが合わずに接続できなかった。原子炉の冷却のため消防車のポンプで注水しようとした際には燃料が切れた。1号機では、電源がなくても動く非常用冷却装置が止まっていることに、吉田氏は気づかなかった。所内でも情報は寸断され、吉田氏は「被害妄想になっている。結果として誰も助けに来なかったではないか」と恨み節を口にしている。東電にも政府にも、以前から過酷事故を想定したマニュアルはあった。だが、現実の事故がマニュアルの想定を超えると、とたんに機能不全に陥ることを福島事故は教えている。
◇重複事故対応や能力の担保欠け
 事故を教訓に、新規制基準では起こり得る地震や津波の想定は引き上げられ、それに基づく対策は進み、マニュアルは改定された。ただし、更に想定を上回る事故は起こり得る。その際頼りになる原発運転員や支援する政府機関の能力を担保する仕組みが、現状ではない。吉田氏は「大事なのは物があるかないかではなく、能力を持った人がどれだけいて、どれだけ動けるかだ」と述べている。シナリオを伏せた抜き打ち訓練を重ね、運転員の事故対処能力、政府機関や電力会社本店の支援や情報発信の能力を、原子力規制委員会が評価するような仕組みが必要ではないか。さらに、福島第1原発は6基が立地し、連鎖的に危機が拡大したことも事故対処を難しくした。吉田氏自身、「三つのプラント(炉心溶融した1〜3号機)を判断した人なんて今までいませんよ。思い出したくない」と振り返った。7基が立地する東電柏崎刈羽原発(新潟県)を筆頭に、国内の原発17カ所(もんじゅを含む)のうち、複数の原子炉がある原発は14カ所を占める。規制基準は、電力会社が再稼働を申請した原子炉について、同時に事故が起きた場合の対策の妥当性を審査しているが、未申請の原子炉にまで影響が及ぶことを考えていない。福島第1原発で停止していた4〜6号機にまで危機が及び、あらゆる判断が吉田氏の肩にのしかかったことをみれば、不十分ではないか。吉田氏は確かに超人的な働きをしたと思う。だが、判断ミスもしているし、事故以前の津波対策を巡っては「マグニチュード9(の大地震)が来ると言った人はいない。なんで考慮しなかったと言うのは無礼千万」などと開き直ってもいる。それでも、世界でも例のない大事故を経験した生身の人間が残した言葉は貴重だ。今後も原発を利用するのであれば、それぞれの立場から教訓をくみ取り、未対応の課題はないのか検証していくべきだ。


PS(2014.10.15追加):*4のように、オランダの施設園芸を学んでいるのはGoodだ。温度、湿度、水、二酸化炭素、光を総合的に調整するにあたっては、太陽光を光ファイバーで導くのが最も安価であり、他の光と組み合わせることによって季節のずれも作り出せる。

*4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10103/113702
(佐賀新聞 2014年10月11日) オランダの施設園芸学ぶ講演会(要旨)
■ハウスをデータ管理、ハイテク機器活用 
 世界トップクラスの収量を誇るオランダの施設園芸技術を学ぶ研修会(県野菜花き技術者協議会など主催)が佐賀市で開かれた。オランダの施設園芸コンサルタント会社と、日本の環境測定装置会社が共同で設立した「GreenQ Japan」(栃木県)の取締役麻生英文氏、上級コンサルタントのアルコ・ファン・デア・ハウト氏が講演。ハウス内の環境をデータ化し、総合的に調整する重要性を伝えた。講演要旨を紹介する。
■勘頼みの農業から脱却を
 施設栽培で大事なのは温度管理だけではなく、湿度や水、二酸化炭素を総合的に調整しなければならない。ハウス内の環境を装置でデータとして見えるようにして分析する必要がある。勘頼みの農業から脱却し、収量を上げるために投資する意識改革を望む。植物の水分が水蒸気となって空気中に出る現象を蒸散といい、この時に栄養分を吸収する。湿度が高すぎたり、低すぎたりすると、植物がストレスを感じて蒸散しなくなる。湿度を適正に保つのが重要だ。朝方に気をつけたいのは、カビの病気を引き起こすトマトの結露。気温が太陽光と暖房で急激に上がる一方、果実は冷えたままで、結露が起きる。温度差を少なくするため、ハウス内の気温は日の出前から少しずつ上げてほしい。1時間で2度以上は上げない方がいい。オランダでは日の出後に湿度を下げるため、天窓を開けている。湿度を調整する機械もある。循環扇は葉っぱの相対的な湿度は下げるが、ハウス内の絶対湿度は下げない。ヒートポンプによる除湿にも限界があるので、「透湿性カーテン」の利用を勧めたい。二酸化炭素の濃度については、外気より低くならないように気をつけてほしい。二酸化炭素の濃度は、日射量に比例させながら上げていくのが原則。日の出前に二酸化炭素を与えても、光がなく、光合成は起きていないので無意味だ。光を通しやすい被覆材、白く塗装した柱、白いマルチなども有効活用してほしい。地上、地下、植物の状態をデータで観察しながら、ハウス内環境を総合的に制御することを忘れないでほしい。
■日蘭の経験と技術合わせ
 オランダの種苗会社で12年間働き、日本やルーマニア、アゼルバイジャンでコンサルタントとして活動している。オランダの農業技術を伝えるコンサル会社「GreenQ Japan」を栃木県に設立し、今年8月から2年間、栽培指導に取り組む。コンサル会社は、栃木県の農業資材販売会社「誠和。」と共同設立した。日本の経験に、オランダの最新技術を組み合わせれば成功できると考えた。気象条件や栽培法が異なるため、オランダの生産戦略をそのままコピーするのは不可能。だからこそ日本の生産者を指導して、ノウハウを蓄積してもらう。オランダの園芸技術はハイテク機器を使うため、急に導入すると、日本の生産者は混乱してしまうかもしれない。扱いが難しいため、日本に設立した新会社で指導をして操作ミスを少なくしていきたい。日本にはない技術もある。例えば、ハウス内の暖房。地面の下と、作物の間に管を通して温める仕組みだ。安価な天然ガスを燃やし、熱と電気を一緒に発生させる「コージェネレーション」で行っている。土や養液だけでなく、人工光での栽培も特徴だ。ただ、二酸化炭素発生装置やロックウール、細霧システムなど、日本に導入可能な技術もたくさんある。焦らず、少しずつ習得してほしい。ハウス栽培の未来の形はどうなるだろうか。環境配慮型の暖房を使い、小型ナトリウムランプとLEDを併用したハイブリッドシステムが導入されるだろう。作物の状態を見ながら、除湿などを細かく行い、収量を上げていく。もちろん、周年栽培。コストを下げ、消費者ニーズをより反映した施設園芸ができるのではないだろうか。

| 教育・研究開発::2014.8~2016.11 | 07:14 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.10.13 フクイチ事故後の地元住民ほか → エネルギーミックスへの指針 (2014.10.14、15に追加あり)
    
 *1-4より                     *4-2より

(1)フクイチ事故とSPEEDIの使用について
 *1-1に書かれているように、福島第1原発事故直後の福島県の行為をめぐり、法廷で責任を追及するそうで、その内容は、「福島県がヨウ素剤の服用を指示し、SPEEDI(スピーディー)の情報を公表していれば、子どもたちの被ばくを減らせたはずだが、そうしなかった」というものだ。福島県の重過失のため毎年検査を受けなければならなくなった被害者に対する慰謝料としては、1人10万円は安すぎる上、①慰謝料 ②治療費 ③病気になった場合の損害賠償 は別に考えるべきだろう。

 なお、SPEEDIの情報を公開しなかった理由は、「福島県の職員が国から送信されたデータの一部を誤って消してしまった」とされているが、原発の地元自治体の職員がこのような大切なデータの使い方を知らなかったのなら、それは重過失である。重要なことであるため、①本当に国から送信されたのか ②本当に県職員が誤って消したのか ③本当にデータの使い方を知らなかったとしたら、それは何故か について、きちんと調べるべきだ。

 福島県浪江町民の間には、SPEEDIの拡散予測が即座に公表されなかったことへの憤りが今もあり、町民の多くが放射能から逃れようと避難した津島地区はより線量が高くて現在も帰還困難区域に指定されている場所だった。そして、「現場の警察官は防護服を着て、福島県は放射能の危険性を認識していた。県の行動で住民は無用な被曝を強いられた」という証言もあり、これは、地元住民がないがしろにされた一事例である。

 また、福島第1原発敷地内の地下水をくみ上げ海洋に放出する「地下水バイパス」の実施を前に、東京電力は作業を公開し、国や県の関係者が立ち会ったが、県の職員は、一部作業の写真だけ撮ってすぐ帰り、これでは『監視している』というパフォーマンスにすぎない」との意見もある。このように、原発では危機管理意識が欠如し、住民をないがしろにする行為が普通に行われることが問題なのである。

 そのような中、*1-2のように、原子力規制委員会は、10月8日、「SPEEDI(スピーディ)」(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)を、住民避難などの判断に使わない運用方針を決め、その理由を「SPEEDIの使い方が曖昧で、避難計画を作る自治体から明確化を求められたため」「重大事故が起きた段階で5キロ圏内は即避難、30キロ圏は屋内退避したうえで、周辺のモニタリングポストによる放射線量の実測値をもとに避難などの判断をすることにした」としている。

 しかし、これは、「鉄砲を使えないから、武器は竹槍に変更した」というのと同じくらい後退であり、鉄砲を使えなければ、①訓練された使い手が間髪をいれずに使えるように改善する ②より使いやすくて正確な鉄砲を作る などが普通の発想だ。

(2)フクイチ事故後の現在の状況
 *1-3に書かれているように、台風の影響か、フクイチで異常事態が発生し、2号機付近の井戸で放射線の最高値を観測し、①トリチウム 15万ベクレル(過去最高値、一週間前の観測時に比較して10倍以上に急上昇) ②ストロンチウム(90) 120万ベクレル(過去最高値) という発表を東電が行ったそうだ。その理由は「不明」だそうだが、言えないことは不明で通すのが、東電の信用できない点である。

 なお、400億円かけて福島原発の回りに氷の壁を作ると言って始めた工事も当然凍らず、その後、ドライアイスをぶちこんで温度を下げようとしたが、当然凍らず、これが世界に冠たる技術を持つ鹿島建設がやることかと世界中で笑い者になっているそうだが、これでは安全な原発を建設して安全に使いこなせるわけがなく、汚染濃度が過去最高値を更新しているということは、福島原発の状況は悪化しつつあるということだろう。

 そして、*1-4のように、フクイチ事故から3年7カ月後、東京湾の放射能汚染について、独協医科大学の木村准教授(放射線衛生学)の協力で海底の土や水を調べたところ、上図のように、河口周辺でかなり高い汚染が広く残っていることが確認され、環境省に河口部の調査をしないのかをただすと「事故前から有害物質の測定をしてきた地点を踏襲している(←ここが馬鹿で、やる気がない)。今後、自治体からの要望があれば、必要に応じて測定点を増やす可能性はあるが、測定点をいくらでも増やすわけにいかない」という答えだったそうだ。

 この結果について、木村准教授は「事故で関東平野も汚染され、そこを流れる川の河口付近では、放射性物質がたまる場所があるだろうと予測していたが、予測が裏付けられた。河口付近は生態系が豊かで、放射性物質が生物に濃縮される恐れがあり、海底や水の汚染だけでなく、魚介類もしっかり監視していく必要がある」としている。

(3)中間貯蔵施設の買い取り地価
 *2-1、*2-2のように、フクイチの除染で出た汚染土を保管する中間貯蔵施設の建設について、政府は「住宅地は原発事故がない場合の評価額の5割、山林は同7割」とした標準価格を算出し、9月29日に地権者に説明したそうだ。その買い取り価格は国による原発事故の補償ルールに基づいているそうだが、評価額の5割や7割にするルールの妥当性は疑問だ。何故なら、東電に原発事故を起こされて土地や住宅地を放棄せざるを得なくなった人は、事故前の評価額に慰謝料を加えた金額を受け取るのが当然だからである。

 なお、政府は、国が福島県外で最終処分するまで土地の所有権を地権者に残したまま、国がその土地を最長30年間使用する「地上権」も示したそうだが、30年後に別の場所で最終処分するというのは、経済的でも現実的でもないため、はじめから適切な価格で土地を購入して最終処分し、中途半端なことをすべきではないと考える。

(4)どうも信用できない最終処分場
 *3-1のように、環境省によると、フクイチ事故で発生した指定廃棄物の最終処分場建設をめぐり、候補地の栗原、大和、加美の3市町での現地調査が、当初予定していた9月から10月にずれ込むが、作業手順を効率化することで調査期間を短縮でき、問題ないとのことである。しかし、その調査は、何を目的として、どういう調査を行い、それはどういう意味があるのか不明だ。

 また、*3-2のように、環境省が突然、一方的に、栃木県の「指定廃棄物最終処分場」建設候補地として、名水の里である矢板市塩田の国有林野を選定した件については、オール矢板で『一万人集会』や『国会周辺デモ行進』等の反対運動を展開し、政府や環境省に対して最終処分場断固拒否の市民の総意を示して、「大幅な選定プロセスの見直し」が発表通告されたが、まだ完全な白紙撤回ではないとのことである。

(5)九電の再生可能エネルギー受入中断と今後のエネルギー政策について
 *4-1に書かれているように、九電が再生可能エネルギーによる電力買取の新規受け入れを中断した。太陽光発電は、私が強く提唱していたこともあり、九州では太陽光発電を中心に自然エネルギーの事業計画が多く、原発に代わるエネルギーや地域再生の切り札となっている。しかし、九電が再エネの「全量固定価格買い取り制度」(FIT)を通じた買い取り契約中断を宣告し、これが、北海道、東北、四国の各電力会社にも連鎖して、受け入れが再開されても九電から新たな設備投資などの高いハードルが課されるのだそうだ。

 しかし、*4-2にも書かれているように、これはビジネスの信義則に反する。各社ともに、出力10キロワット未満の住宅用太陽光は当面対象外としているが、住宅用でも10キロワット(10アンペア)以下の家庭は少ないため、多くの住宅が除外されることになり、事実上の接続拒否である。電力会社はその理由を、「電力の供給安定化」とし、「太陽光は夜間に発電できず、昼間でも晴天から雨に変わると発電量が急減する」などと、同じ弁を繰り返しているが、電力が余れば、これから燃料電池で使う水素を作ったり、他地域へ送電したり、蓄電池を使ったりなど、やる気があればいかようにも解決できることである。

 なお、九電への2014年7月末までの申し込み全量が接続されると、九州の春・秋の昼間の電力需要約800万キロワットを上回り、契約申し込み前の設備認定分も合わせると夏のピーク需要約1600万キロワットも超えるそうで、100%国産の自然エネルギーに、それだけの実力があるということがわかったわけだ。しかし、そこで九州全土で接続拒否することにより、九電が再エネ導入にブレーキをかけ、原発再稼働に備えているのは困ったものである。

(6)「適切なバランス」とは、何を基準に考えるのか
 *4-3のように、小渕経産相が「再生エネの中でバランスをとることが大事だ」と述べ、地熱や風力の拡大の必要性を示唆したそうだが、単に「このくらいだろう」という目分量で「バランスがよい」などと言われては、真剣に取り組んでいる人たちはたまったものではない。そのため、「バランスをとる」なら、どういう理念に基づいて、どういう基準でバランスをとるのか、そして、それは各方面から考えて合理性があるのかを、明確に検証すべきである。
 
 なお、*4-3には、「政府は、見直しを進めている再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に関し、現在の太陽光発電への偏重を是正して、地熱や風力発電の導入を促進する方針を固めた」と書かれているが、買い取り価格の見直しは進めてよいものの、太陽光発電が普及しているのは、私が進めてきた九州だけであり、日照時間が長くても他地域ではさほど進んでいないため、太陽光発電を抑制すべきではない。

 また、地熱発電は安定した大量の電力が得られるためよい電源だが、風力発電は低周波が人間に与える影響を無視できないので、立地可能地域が限られる。つまり、①100%国産(貿易は高値買いの輸入ではなく輸出を考えるべき) ②放射線、排気ガス、低周波等による公害を出さない ③安価である などが、次のエネルギーの必要条件となり、そのために技術の開発・改良を行うべきなのである。

 *4-4に書かれているように、「原発はコストが安い。化石燃料で国富が流出している」という決まり文句がいまだに繰り返されているが、実際には、すべての原発が止まっていた今年の夏の電力需要のピーク時にも大規模停電はなく、これには、2011年の夏を乗り越えるために導入した省エネ型設備や省エネ機器が役に立っており、国民の意識はそこまで行っているのだ。

 また、経産省は、火力発電の燃料費が13年度に3.6兆円も増加する見込みとの試算を公表したが、この試算の基準になった原発の発電量には事故を起こした福島第一原発の発電量も含まれ、国内の発電に使う化石燃料の輸入数量は実際には4割しか増えておらず、化石燃料自体の価格上昇と円安が費用増大の大きな原因だそうだ。また、いまだに「原子力は安い」と言う人がいるが、原子力は電力会社にとっては安いかもしれないが、立地対策費や事故対策費などの膨大な社会的コストを、税金や電気料金に上乗せする形で国民に負担させており、それらをすべて含めたコストは決して安くないのである。

 なお、本当に原発が安いと言い切れるのなら、電力会社は、事故対策費から最終処分、廃炉まで含むすべての原発コストを自ら負担して原発を稼働すればよいだろうが、そんなことをしたら原発事業はなりたたず、このことは経産省も電力会社もよくわかっているため、電力完全自由化の下でも原発を維持できるように原子力で発電した電気の価格を保証することを検討しているのだ。しかし、原発は、稼働し始めてから既に40年も経過しており、まだ独り立ちできないようなら、撤退するのが筋である。

<フクイチ事故後のSPEEDIの使用について>
*1-1:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201410/20141004_61011.html
(河北新報 2014.10.6) 原発事故対応 批判続く/(1)危機管理/福島知事選「復興の論点」
 福島県廃炉安全監視協議会のメンバーによる現場視察。監視体制強化の一環として、県が原発事故後に設置した=7月17日、福島第1原発 東日本大震災と福島第1原発事故後、初めてとなる福島県知事選(26日投開票)の告示が9日に迫った。県の危機管理は機能したのか、除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設はどうあるべきか、暮らしと産業の復興をどう進めるのか。県が直面する課題を検証する。
<国と県を訴える>
 「あの日」から3年半。福島第1原発事故直後の大混乱の中で福島県が関与した二つの行為をめぐり、法廷で責任を追及する動きが表面化した。「県がヨウ素剤の服用を指示し、SPEEDI(スピーディー)の情報を公表していれば、子どもたちの被ばくを減らせたはずだ」。「子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト」郡山代表で歯科医師の武本泰さん(56)が、1人当たり10万円の損害賠償を求め8月末に起こした訴訟で、国だけでなく県も訴えた理由を語る。「安定ヨウ素剤」と、「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」の略称「SPEEDI」。前者は甲状腺がんを防ぐ効果、後者は放射性物質の広がりを予測する役割が期待される。ヨウ素剤は、国や県から服用の指示が出ず、実際に服用したのは町独自の判断で配布した三春町民ら一部に限られた。SPEEDIは、県職員が国から送信されたデータの一部を誤って消してしまった。武本さんが県の情報公開で開示した資料などによると、県は県立医大にヨウ素剤を配布し、被ばく医療に携わる医師や看護師が服用した。ところが、被ばく医療とは無関係の職員や学生、家族も服用し、「かん口令が敷かれていた」(医大関係者)ことが判明した。三春町は町独自の判断でヨウ素剤を配布した。県は当時、「国の指示がない」と服用中止を求め、回収を指示した。東北大は8月、「町の判断は正しかった」との調査結果を公表した。武本さんは「県内に原発を10基も抱えていながら、行政としての危機管理能力の低さにがくぜんとする」と話す。原告に加わった母親から「県の責任も大きい」との声が相次ぎ、県を被告に加えることになったという。
<無用な被ばく>
 浪江町民の間には、SPEEDIの拡散予測が即座に公表されなかったことへの憤りが今も根強い。町民の多くが放射能から逃れようと避難した町西部の津島地区は逆に線量が高く、帰還困難区域に指定されている。津島出身の馬場績(いさお)町議(70)は「現場の警察官は防護服を着ており、県は放射能の危険性を認識していたはずだ。県の危機意識の欠如で住民は無用な被ばくを強いられた」と訴える。4月16日、福島第1原発敷地内の地下水をくみ上げ海洋に放出する「地下水バイパス」実施を前に、東京電力は作業を公開し、国や県の関係者が立ち会った。「一部の作業の写真だけバシャバシャ撮って、県職員はすぐに帰った。これでは『監視している』というパフォーマンスにすぎない」。現場に居合わせた関係者の1人は、皮肉を込めて当時を振り返る。後手後手に回った県の危機管理対応が、繰り返される恐れはないか。廃炉作業の終了まで40年、県の有事対応は続く。
[安定ヨウ素剤] 放射能を持たないヨウ素(ヨウ化カリウムなど)を含む錠剤。服用して放射能のないヨウ素を取り込んでおくことで内部被ばくを防ぐ。効果が約24時間と短く、適切なタイミングでの服用が必要。
[スピーディー] 原発事故時、原子炉停止時間や放射性物質の放出量などの情報や気象、地形データを基に施設周辺の放射性物質の空気中濃度や被ばく線量を予測する。国や自治体が予測を参考に避難地域などを決める。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASGB851VCGB8ULBJ01N.html
(朝日新聞 2014年10月8日) SPEEDI、原発事故の避難判断に使わず 規制委方針
 原発などで重大事故が起きた際に放射性物質の広がりを予測する「SPEEDI(スピーディ)」(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)について、原子力規制委員会は8日、住民避難などの判断に使わない運用方針を決めた。すでに、放射線量の実測値をもとに判断する態勢に転換しているが、SPEEDIの使い方があいまいで、避難計画を作る自治体から明確化を求められたためだ。東京電力福島第一原発事故では、予測のもとになる原子炉などの情報が得られないなか、初期の住民避難に活用されず問題になった。規制委は昨年2月に原子力災害対策指針を改め、重大事故が起きた段階で5キロ圏内は即避難、30キロ圏は屋内退避したうえで、周辺のモニタリングポストによる放射線量の実測値をもとに避難などの判断をすることにした。事故前、避難の指標とすると位置づけられていたSPEEDIは、「参考情報」に格下げされた。だが、使い方は具体的に示されておらず、予測結果を避難の判断に使えると受け止める自治体もあった。この日に決めた運用方針で、避難の判断以外の使い方を示すことを明記。放射性物質の放出が収まった後、放射性ヨウ素などの被曝(ひばく)線量の事後評価などの例を示す。対策指針に基づくマニュアルは、重大事故発生時にSPEEDIで計算を始め、結果を公表するとしているが、混乱を招くおそれがあることから、計算自体しないよう修正する。さらに、委託先の職員が24時間常駐する態勢をなくし、緊急時に対応できる程度に縮小する。規制委は来年度予算の概算要求で、維持管理や調査の費用を今年度より7割以上減額し、約1・6億円としている。

*1-3:http://blog.livedoor.jp/nevada_report-investment/archives/4759622.html
(NEVADAブログ 2014年10月13日) 異常事態が発生(福島第一原発)
 しばらく報道がされていませんでした【福島第一原発】の状況ですが、時事通信は東電発表として以下のような報道を行っています。
【2号機付近の井戸で最高値を観測】
トリチウム 15万ベクレル(過去最高値)
ストロンチウム(90) 120万ベクレル(過去最高値)
 トリチウム濃度は一週間前の観測時に比較して10倍以上に急上昇しているとされています。現在、34ケ所の観測井戸があり、異常値になったのはこの内、2号機の東側にある3ケ所の井戸となっており、その理由は『不明』となっています。台風の影響とも言われていますが、それであれば他の井戸にも影響があるはずであり、東側で濃度が急上昇したということは東側の原発(2号機)の壁に先日震度3クラスの地震が連続した影響で亀裂や穴が空いたのかも知れません。今日本国民は福島原発問題は終わったと思っていますが、何ら終わっておらず、そのまま危機的な状況にあるということを認識していません。報道がされなくなったからです。
 400億円かけて福島原発の回りに氷の壁を作ると言って始めた工事も全く凍らず、ならばと何をしたかと言いますと、ドライアイスをぶちこんで温度を下げるという、これが世界に冠たる技術を持つ鹿島建設がやることかと世界中で笑い者になっています。結果はそれでも凍ることはなく(当たり前ですが)、そのままになっています。日本のスーバーゼネコンの技術は世界一の水準にあるというのが認識ですが、こんなことをしているようでは、日本の技術水準もかなり落ちているのかも知れません。ドバイのシンボルタワーを建設した企業を見せるコーナーがありますが、韓国企業となっており、日本の姿はありません。
福島原発の状況は汚染濃度が過去最高値を更新するということは、悪化しつつあるということになります。
 これをどれだけの国民が知り、危機的な状況を理解するでしょうか?本来は国会で議論すべきことになりますが、今や国会は野党が崩壊しており、うちわがどうこうというどうでもよいことを追求する体たらくであり、あてにはなりません。一人一人が意識を持ちどうすればよいかを考えるだけの時代になっていると言えます。

*1-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014101302100003.html (東京新聞 2014年10月13日) 福島事故放出セシウム 東京湾河口 残る汚染
 東京電力福島第一原発事故から三年七カ月が過ぎ、東京湾の放射能汚染はどうなっているのか。本紙は九月、独協医科大の木村真三准教授(放射線衛生学)の協力を得て、海底の土や水を調べた。沖合の汚染は低かったが、河口周辺ではかなり高い汚染が広く残っていることが確認された。木村准教授は、魚介類も含め継続的に監視する必要性を指摘している。調査は九月六、七の両日、東京湾に注ぐ主要河川の河口など九地点で、海底の土と海水の放射性セシウムの濃度を調べた。高い値が出た地点では後日、八地点で土を採取し直し、汚染はその地点だけなのかどうかを確かめた。その結果、沖合では海底土一キログラム当たり高くても数十ベクレルと汚染度は低かったが、花見川(千葉市)河口では、局地的ながら一一八九ベクレルと非常に高い濃度のセシウムが検出された。荒川(東京都)では一六七~三九八ベクレル、東京と神奈川県境の多摩川では八九~一三五ベクレルが検出された。海底付近の水はいずれも不検出だった。花見川は河口や周辺のくぼ地のみ高く、少し上流に入ったり、沖に出たりすると値がぐんと下がった。荒川と多摩川では、河口一帯にかなり広く汚染が残っている様子がうかがえた。魚介類には食品基準(一キログラム当たり一〇〇ベクレル未満)があるが、海底土の汚染に基準はない。だが、福島第一周辺でも、原子力規制委員会が公表している七十五点の調査地点のうち、一〇〇ベクレルを超えるような海底土の汚染は二十二点に限られている。河口周辺は川と海がぶつかり、上流から運ばれてきたセシウムが沈殿してたまりやすいと指摘されてきた。今回の調査で、原発から二百キロ以上離れた東京湾でも、河口周辺は要注意の汚染レベルにあることが判明した。国は東京湾でも十八地点を定期的に調べているが、木更津港などを除けば、いずれも調査地点は沖合に限定されている。担当する環境省に河口部の調査をしないのかただすと「事故前から有害物質の測定をしてきた地点を踏襲している。今後、自治体からの要望があれば、必要に応じて測定点を増やす可能性はあるが、測定点をいくらでも増やすわけにいかない」との答えだった。魚介類への影響が心配されるが、水産庁の本年度のデータでは、河口部で採れたシジミやアサリは一件で三ベクレルを検出したのみ。海水魚では花見川で捕れたウロハゼの八ベクレル弱が最高で、ほとんどは不検出だった。食品基準から考えると、心配ない状況と言えそうだ。調査結果について、木村准教授は「事故で関東平野も汚染され、そこを流れる川の河口付近では、放射性物質がたまる場所があるだろうと予測していた。予測が裏付けられた。河口付近は生態系が豊かで、放射性物質が生物に濃縮される恐れがあり、海底や水の汚染だけでなく、魚介類もしっかり監視していく必要がある」と話している。
 <海底の調査方法> ボートから専用の採土器を海底に下ろして土や海底付近の水を採取。着底後、ロープを引っ張ると表面数センチの堆積(たいせき)物が回収できる。東京湾奥の17地点で採取。土は乾燥させた後、独協医大のゲルマニウム半導体検出器で8時間かけて放射性セシウムの濃度を測定した。水はろ過した後、12時間測定した。

<中間貯蔵施設の買い取り地価>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140930&ng=DGKDZO77729670Q4A930C1CR8000 (日経新聞 2014.9.30) 福島・中間貯蔵施設用地買い取り、宅地「平時」の半額で、政府、初の地権者説明会
 東京電力福島第1原発事故後の除染で出た汚染土を保管する中間貯蔵施設の建設を巡り、政府は29日、福島県大熊、双葉両町の建設予定地の地権者を対象に、用地補償に関する初めての説明会をいわき市で開いた。土地の買い取りについて、政府は「住宅地は原発事故がない場合の評価額の5割、山林は同7割」とした標準価格を算出。施設建設への理解を求めた。29日の説明会には約150人の地権者が出席した。買い取り価格は国による原発事故の補償ルールに基づき、不動産鑑定士の知見に従って算出した。原発事故前の土地価格をもとに、事故のない平常時を仮定した現在の評価額を求め、避難によって土地が使えない期間や周辺の土地の価格変動などを考慮した。双葉、大熊両町の住宅地は14地域に分け、標準価格は1平方メートルあたり2800~9250円とした。両町の田畑は同1150~1200円、山林は同520円とした。政府は買い取りに加え、国が福島県外で汚染土などを最終処分するまで、土地の所有権を地権者に残したまま国がその土地を最長30年間使用する「地上権」も示した。地上権の価格は買い取りの場合の7割になるとした。国による補償とは別に、福島県は地権者の生活再建を支援するため150億円を大熊、双葉両町に交付することを表明している。国による土地の買い取り価格の目減り分を県が実質的に補う。東電による賠償も別途支払われている。国は地権者向けの説明会を10月12日まで県内外の9カ所で計12回開く予定。環境省は土地の登記簿情報などをもとに少なくとも2365人の地権者を特定。このうち住所が判明した1269人に開催通知を送った。説明会終了後、国は各地権者と個別交渉に入る。

*2-2:http://www.minyu-net.com/news/news/0930/news7.html
(2014年9月30日 福島民友ニュース) 農地最大1200円、山林520円 中間貯蔵・地権者説明会
 いわき市で29日開かれた中間貯蔵施設の地権者向け説明会で、政府が示した大熊、双葉両町の標準地ごとの土地価格によると、宅地以外の用途では、両町とも農地の価格は1平方メートル当たり1150~1200円、山林の価格は1平方メートル当たり520円と設定された。政府は土地の買い取り額について(1)建設候補地が東京電力福島第1原発事故で帰還困難区域に指定され、土地の利用が一定期間できない(2)将来的に避難指示が解除され、土地価格の回復が見込まれる―などの事情を踏まえ、不動産鑑定士による評価額を基に決めた。建設候補地を含めて原発事故で被害を受けた地域については、東電が土地や建物などの損害を賠償しているが、政府は施設の建設に伴う用地補償はこれらとは別で、東電による賠償に影響を与えないとしている。

<最終処分場について>
*3-1:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201410/20141001_11035.html
(河北新報 2014.10.1) 最終処分場 現地調査、今月着手も可 環境省
 福島第1原発事故で発生した指定廃棄物の最終処分場建設をめぐり、環境省は30日、候補地の栗原、大和、加美の3市町での現地調査について、当初予定していた9月着手が10月に1週間程度ずれ込んでも問題はないとの見解を示した。作業手順を効率化することで調査期間を短縮できるという。調査は地下水、地質など十数項目。掘削が必要で10日程度かかる項目もあるが、候補地間で効率的に機材を使うことなどで、3候補地全体の調査期間を1カ月半弱に短縮できると判断した。同省の担当者は10月以降の着手でも「11月中下旬の降雪前に終えられる」と説明する。現地調査に関しては井上信治前副大臣が「物理的に9月下旬がデッドラインになる」と発言。同省は9月中の着手に向けて準備を進めていた。3市町などへの事前告知について、同省担当者は「前副大臣が既に8月に詳細調査着手を3市町に伝えており、あらためて調査時期を知らせる必要はない」と話している。

*3-2:http://info.yaita-doumeikai.net/ (指定廃棄物最終処分場候補地の白紙撤回を求める矢板市民同盟会 2014.3.27) 指定廃棄物最終処分場候補地の白紙撤回を求める矢板市民同盟会主催、選定プロセスの見直しを受けての緊急市民集会
 昨年の9月3日、環境省により突然で一方的に栃木県における「指定廃棄物最終処分場」の建設候補地として、矢板市塩田字大石久保の国有林野が選定されました。早いものであれから半年が経過致しました。この間、市民の皆様の絶大なるご協力のもと、『一万人集会』や『国会周辺デモ行進』等の反対運動を展開し、政府及び環境省に対して、オール矢板で最終処分場『断固拒否』の市民の総意を示すことが出来たものと確信致しております。そして、先月の25日、井上環境副大臣が栃木県庁及び矢板市役所を訪問され、この度の問題に関して、「大幅な選定プロセスの見直し」を発表通告がされました。私ども矢板市民同盟会と致しましては、完全なる白紙撤回が実現していない以上、今後も反対運動を展開して参る所存でございます。この度の緊急市民集会は、市民の皆様方の英知を結集し、市と議会と強く連携し、完全なる白紙撤回を貫徹するために開催致します。多くの市民の皆様のご参集をお待ち致しております。

<九電の再生可能エネルギー受入中断と今後のエネルギー政策>
*4-1:http://mainichi.jp/select/news/20141007k0000m040123000c.html
(毎日新聞 2014年10月6日) 再生エネ:九電受け入れ中断 「詐欺と同じ」憤る住民 
 九州電力が再生可能エネルギーで作った電力の新規受け入れを中断した。日照時間が長く土地代も比較的安価な九州では、太陽光発電を中心に大規模な計画が目白押しで、原発に代わるエネルギーや地域再生の切り札として期待されてきた。だが、九電の突然の発表を受けて各事業者は計画の見直しを迫られ、影響は一般家庭にも及んでいる。「昔は芋や稲作が盛んでこの辺も田畑が広がっていたんですけど」。五島列島の北端にある長崎県佐世保市の宇久島。島在住の市議、大岩博文さん(61)が雑草が生い茂る土地の前で言った。近くには計画中の大規模太陽光発電所(メガソーラー)で使う太陽光パネルの見本が立っている。かつて1万2000人が暮らした島の人口は現在2377人。救世主として登場したのが世界最大規模のメガソーラー計画だった。今年6月、京セラや九電工など5社が合同で発表した計画は、島の面積の4分の1、東京ドーム134個分にあたる約630ヘクタールの土地に約172万枚の太陽光パネルを敷き詰め、一般家庭約13万8800世帯分の電力(出力43万キロワット)をまかなうという壮大なものだ。九州本土との間に約60キロの海底ケーブルを敷設して九州電力に売電する計画で、2015年度着工、18年度完成予定という。「太陽光パネルは高さ数メートルの支柱の上に設置するのでパネルの下で営農も可能」「保守管理で150人の雇用を生む」−−。夢のような話に島は沸き、8月までに地権者約1000人との間で土地の賃借契約が完了した。九電の発表3日後、島の旅館に大岩さんら住民約20人が集まった。「島の将来に絶対必要。やってもらわないと困る」。九電からの説明がない中、住民らは同席した地元の事業関係者に対し、口々に計画の続行を求めた。現段階で計画が白紙になったわけではない。だが、受け入れが再開されても九電側からは新たな設備投資などの高いハードルが課される見込みで、事業者の1社は「事業として定まっているものではない」と、見直しの可能性を示唆する。

*4-2:http://toyokeizai.net/articles/-/50377 (東洋経済 2014.10.13) 再エネに冷や水浴びせる電力会社の契約中断、太陽光発電の買い取りを止めた九州電力
 「電力会社にも、国にも、裏切られたような気持ちだ」。九州電力が10月1日に福岡県で開いた事業者向け説明会。そこでは詰めかけた数百人の再生可能エネルギー事業者から厳しい声が相次いだ。九電による電力買い取りを当て込んで太陽光パネルに投資した個人事業主は、「投資が無駄になったらどうしようかと毎日不安。慰謝料は考えてくれるのか」と訴えた。事の発端は9月24日、九電が再エネの「全量固定価格買い取り制度」(FIT)を通じた買い取り申請への回答を、翌日から数カ月間「保留する」と発表したことだ。突然の“契約中断”宣告は、30日には北海道、東北、四国の各電力会社にも連鎖した。各社ともに、出力10キロワット未満の住宅用太陽光は当面対象外としたが、10キロワット以上の住宅用も少なくない。九電の説明会では、「太陽光を含めローンを組んで家を着工したが、契約中断で工事を中断している」「マンション屋上に太陽光パネルを設置する計画が頓挫した。顧客にどう説明すればいいのか」といった苦情も聞かれた。
■「電力の供給不安定」を理由に拒否
 今までも各管内の一部エリアや沖縄では、「送電線の容量不足」を理由に、接続の拒否や高額な接続工事費の請求を行う、ローカルネックの問題はあった。だが今回は管内全域が対象。自治体からも「九州全土とは想定外。福岡県は再エネ導入量全国1位だが、ブレーキになりかねない」(福岡県総合政策課エネルギー政策室)と懸念が広がる。九電によれば、今年3月だけで、FITの買い取り単価引き下げ直前の駆け込みもあり、従来の1年分に匹敵する、約7万件の太陽光の接続契約申し込みが殺到。詳細を確認した結果、7月末までの申し込みの全量が接続された場合、総量は春・秋の昼間の電力需要約800万キロワットを上回る。契約申し込み前の設備認定分も合わせると、夏のピーク需要約1600万キロワットをも超えるという。電力を安定供給するには、需要と供給を常時一致させる必要がある。もし、太陽光を含む発電の供給が需要を大きく上回れば、周波数が上昇、場合によっては自動的に発電機が停止し、大規模停電が発生するおそれがあるというのが、電力会社の回答保留の理由だ。太陽光は夜間に発電できず、昼間でも晴天から雨に変わると発電量が急減する。安定供給には太陽光以外の電源が不可欠とも強調する。今後は再エネの受け入れ可能量を数カ月かけて見極める方針。結果的に受け入れ拒否となる事業者が多数出る可能性がある。FIT法では、電気の円滑な供給確保に支障の生ずるおそれがあれば、受け入れを拒める。事業者の損害を補償する義務もない。だが問題は電力会社が再エネの受け入れ可能量を増やすための対策だ。要は、昼間に太陽光の発電で需要をオーバーする分を、どこまで調整・転用できるかである。第一には揚水発電。昼間に太陽光の電気を使って、揚水運転を行い(水を上部のダムにくみ上げ)、夕方や夜間に水を落とし発電する。通常のやり方と昼夜の運転が逆だが、これを行うことで、夜間の火力発電もセーブできる。第二は地域間連系線を使った管外への送電である。現在の連系線の空き容量を活用し、電力会社間の送受電を増やすものだ。ほかにも、太陽光の出力抑制や、蓄電池の活用といった方法が考えられる。
■原発再稼働にらみ、再エネを減らす?
 そもそも今回の回答保留には疑問点も多い。一つには、接続申請が集中した3月から今回の発表まで、約半年もかかったことだ。電力側は、申し込み内容の詳細確認に時間がかかったというが、もっと早くできなかったのか。また九電の場合、7月末の再生エネの設備認定容量(政府認可)は1900万キロワットに及ぶが、導入容量(運転開始済み)は400万キロワット弱にすぎない。「この状態で唐突に回答を保留することは、通常のビジネス常識では考えられない」(大林ミカ・自然エネルギー財団事業局長)。気になるのが原子力発電との関係だ。事業者からも「川内(せんだい)原発が再稼働するから再エネの枠が減ったのでは」との質問が出た。これに対し九電は「再エネのみでは安定供給できない。ベースロード電源としての原発と、調整可能電源としての火力発電も入れた前提で、再エネの接続可能量を見極めたい」と説明。ただ川内原発1、2号機の計178万キロワット、玄海原発3、4号機の計236万キロワットの再稼働を前提にすれば、おのずと再エネの入る枠は狭まる。この点はまさに再エネに対する、国としての姿勢が問われる。欧州では再エネの優先給電が欧州連合(EU)指令で義務づけられ、再エネの出力を抑制する前に、火力や原子力を抑制しなければならない。結果としてベースロード電源が消滅に向かっているともいわれる。もちろん、電力系統の安定が大前提ではあるが、日本はまだFIT法によっても、再エネの優先義務が徹底されていない。電力会社にとっては「厄介な代物」との意識が根強く、受け入れ対策も後手後手の印象が強い。「系統接続に厳しさがあり、受け入れ容量拡大が必要なことは、FIT開始前からわかっていたはず。揚水発電の設備利用率は低く、連系線を通じた他地域への供給もあまり行われていない。本当に受け入れ枠はいっぱいなのか」と、高橋洋・富士通総研主任研究員は疑問を投げる。日本の全発電量に占める再エネの比率は、欧米に比べて低く、普及の本格化はこれから。FIT導入で、住宅用の太陽光発電の導入コストは急速に低下し、2016年には家庭向け電気料金より安くなる可能性も指摘される。低コストでエネルギー自給率を高めるためにも、電力会社が先進国の需給調整ノウハウを見習い、そして政府も再エネの推進姿勢をより明確にする必要があろう。

*4-3:http://qbiz.jp/article/47651/1/
(西日本新聞 2014年10月12日) 政府、地熱や風力の導入促進へ 再生エネ、太陽光偏重を是正
 政府は12日、見直しを進めている再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に関し、現在の太陽光発電への偏重を是正して、地熱や風力発電の導入を促進する方針を固めた。小渕優子経済産業相は同日、視察先の山梨県甲州市で記者団に、「再生エネの中でバランスをとることが大事だ」と述べ、地熱や風力の拡大の必要性を示唆した。再生エネは、買い取り価格が高い太陽光に事業者の参入が集中。九州電力や東北電力など電力5社が、送電網の能力の限界から、受け入れを中断する事態になっている。政府は、太陽光に比べて発電コストが安く国民負担の拡大抑制が期待される地熱、風力の比率を高めることを目指す。小渕経産相は「再生エネを最大限導入する方針は変わっていない。年内には一定の答えが出てくると思う」と強調した。15日の総合資源エネルギー調査会新エネルギー小委員会で議論を本格化させる。地熱は開発費用はかかるが、発電にかかる費用が安価なほか、天候に左右される太陽光などと異なり安定的に発電できるメリットがあるとされる。開発期間が地熱で約10年、風力でも約5年かかり事業参入が思うように進んでいないため、てこ入れを図る。6月末の認定設備の内訳は、太陽光が6896万キロワットと再生エネ全体の96%を占め、風力は121万キロワット、地熱はわずか1万キロワットにとどまる。政府は、地熱や風力発電所の環境影響評価(アセスメント)の審査短縮などで導入促進を図る考えだ。

*4-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11357434.html (朝日新聞 2014年9月19日)原発のコスト 国富流出の試算に疑問 大島堅一(立命館大学教授、環境経済学)
 すべての原発が止まった状態で初めて迎えた今年の夏。電力需要のピーク時期は、大規模停電などがないまま無事過ぎた。一方で、九州電力川内原発の再稼働に向けた手続きが着々と進められている。そんな今、改めて日本のエネルギー政策を考えてみたい。今夏、政府は、エネルギーを自由に使いたい産業界に配慮してか、数値目標のない節電要請でお茶を濁した。私は「大丈夫だろうか」とかなり心配だった。しかし、結果的に、電力不足は生じなかった。元々、発電施設が過剰だった上に、2011年夏の電力危機の際に、各工場や家庭で導入された省エネ型の施設や機器が今でも節電効果を生み続けているためだろう。しかし、さらなる省エネ機器の導入を企業や家庭に促すためにも、政府は数値目標付きの節電要請をすべきだったと思う。一部に、老朽化した火力発電設備を稼働させての綱渡り操業で、「いつ大停電が起きてもおかしくない状態だった」との指摘もあった。しかし、いくつかの原発依存度が低い電力会社は高効率の火力への更新を進めており、決してすべての電力会社が綱渡りだったわけではない。経済産業省は火力発電の燃料費が13年度に3・6兆円も増加する見込みという試算を公表した。原発を稼働させず火力に頼ることで、国富が海外に流出しているという印象を内外に広めた。だが、この試算はおかしな点がある。この「3・6兆円」の試算の詳しい根拠は公表されていないが、基準になった原発の発電量には事故を起こした福島第一原発も含まれている。また、国内の発電などに使う化石燃料の13年度の費用は、10年度に比べて2・3倍になっているが、輸入数量は4割しか増えていない。つまり、化石燃料自体の価格上昇と円安が費用増大の大きな原因だ。原発が停止していることによる直接的影響は費用増のうち3分の1程度である。裏を返せば、福島以外の全ての原発を稼働させていたとしても、2兆円以上、燃料費が増えていた計算になる。何もかも原発停止のせいにして、原発を再稼働すれば巨額の貿易赤字が解消されるかのように言うのはおかしい。いまだに、「原子力は安い電力だ」と言う人がいるのには驚かされる。確かに、電力会社にとっては安いかもしれないが、それは立地対策費や事故対策費など社会的コストを、税金や電気料金に上乗せする形で国民に転嫁しているからで、それらを含めたコストは決して安くない。政府の検討小委員会は11年、使用済み核燃料の処分や廃炉の費用を含めて「1キロワット時8・9円以上」という数字を出している。事故後の最新事情を考慮して私が試算し直してみると、1キロワット時9・4~11・6円になる。本当に原発が安いと言い切れるなら、電力会社は事故対策費を含むすべてのコストを自ら負担して原発を稼働すればよい。しかし、そんなことをしたら、原発事業は到底なりたたないだろう。このことは経産省も電力会社もよくわかっている。実際、8月に開かれた経産省の原子力小委員会で、電力完全自由化の下でも原発を維持できるように、原子力で発電した電気の価格を保証することを検討している。これこそ、究極の原発生き残り策で、国民には「原発の電気は安い」と言っておきながら、一方で、原子力の膨大なリスクとコストを国民に負担させようとするのものにほかならない。これはとんでもない二枚舌だ。本来、「原子力は経済性はなくリスクも大きい。事故を起こせば巨額のコストがさらに発生する。それでもかくかくしかじかの理由から、原発は稼働させる」と国民にきちんと説明してこそ、説明責任を果たすことになるというものだ。


PS(2014.10.14追加):*5のように、原発事故に備えて自治体の防災計画作成を支援するため、内閣府に専従職員50人を配置した新しい部署が発足したそうだが、これも個別企業のために税金を使っているものであり、許し難い。また、「原発事故に備えた自治体の避難計画作り」とのことだが、使用済核燃料の捨て場もないのに原発を再稼働して、再度大きな事故を起こされるのは御免である。原発よりも、長い時間をかけて切り開いた農地や海の方がよほど大切な財産だ。

*5:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141014/k10015380811000.html
(NHK 2014年10月14日) 原発事故時の防災計画作成支援で新部署
 原子力発電所の事故に備えた自治体の防災計画の作成を支援するため、内閣府に専従の職員50人を配置した新しい部署が発足しました。発足したのは、局長級をトップに、50人の専従職員からなる原子力防災の担当部署で、原発事故に備えた自治体の避難計画作りへの支援などを担います。望月原子力防災担当大臣は「避難計画への国民の関心の高さは改めて言うまでもない。福島の事故の教訓を忘れず、自治体と共に計画作りに取り組んで欲しい」と述べました。原発事故に備えた防災計画や避難計画を巡っては、これまで内閣府が自治体に助言をしたり、作成の手引きを示したりしてきましたが、専従の職員はおらず、原子力規制庁の職員およそ30人が兼務していたため支援体制が不十分だと指摘されていました。今回発足した部署では、規制庁の職員が出向したり、ほかの省庁の職員が常駐したりして、専従で業務に当たるということです。原子力防災の支援は、これまで原子力規制委員会の審査がもっとも早く進んだ鹿児島県の川内原発の周辺地域に重点が置かれてきましたが、今後は、そのほかの原発がある地域への支援が本格化することになり、それぞれの実情に合わせたきめ細かい支援を行って避難計画の実効性を高めていけるかが課題になります。


PS(2014.10.15追加):*6について、これまで40年以上に渡り原発に数兆円の税金を投入し、これからも天文学的金額の税金を投入せざるを得ないにもかかわらず、まだ始まって10年前後の再エネの買取価格はすべて電気料金に上乗せして税金での補助を行わない理由を、国民が納得できるように説明しなければ、政府及び経産省の信用はさらに下がって地に落ちるだろう。そもそも、会計上、明確に区別して集計できるようにすれば、後は電力の需要者が選択する。また、*7は全くそのとおりで、*8は、農業団体から陳情するのがよいだろう。

*6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141015&ng=DGKDASDF15H05_V11C14A0MM0000 (日経新聞 2014.10.15) 再生エネ、入札制を検討 買い取り価格柔軟に、経産省、国民負担を抑制
 経済産業省は再生可能エネルギーの買い取り価格を柔軟に見直せるようにする。発電コストの安い事業者を優遇する入札制度の導入、価格の改定時期を1年ごとから半年ごとに短くする案などを検討する。国民が負担する費用を抑えると同時に、太陽光発電に偏重した再生エネ制度を見直し、新規契約の中断に揺れる現状の打開策を探る。経産省は15日に開かれた総合資源エネルギー調査会新エネルギー小委員会で、「固定価格買い取り制度」の見直しに向けた論点を正式に示した。太陽光発電への新規参入や発電施設の新増設の凍結など当面の対策も盛り込んだ。小委員会の議論を踏まえ、年内に具体策をまとめる。再生エネの参入の9割以上は、電力会社が買い取る価格がほかの発電に比べ高く、事業者に有利な太陽光発電に集中している。そのコストは毎月の電気料金に上乗せされ、利用者に転嫁されている。経産省は国民負担の抑制策の一つに、スペイン、ドイツが採用している入札制度の導入をあげた。事業者間のコスト引き下げ競争を促す効果が期待できる。そのほか、価格を決める際に最もコストの低い事業者を基準にすること、価格改定の頻度を上げ、機動的な価格下げを可能にすることも検討課題とした。太陽光発電への参入集中に歯止めをかける対策としては、買い取り量が政府が目標とする一定の水準を超えた段階で、優遇価格から他の電源と同水準に切り下げる仕組みなどを検討する。太陽光に代わる電源として、地熱発電を重視、発電した電力を地域内外に送る際、地熱向けを一定程度確保する案などもあがっている。経産省は議論を踏まえ、年内に具体的な対応策を打ち出す。同制度を抜本的に見直すことになった場合、経産省は省令を改めたり、2015年以降の国会で再生可能エネルギー特措法の改正を検討することになる。再生エネをめぐっては推進論と見直し論が交錯しており、制度見直しは難航が予想される。経産省は小委員会の下に作業部会を設け、電力各社の受け入れ能力の検証も進める。初会合を16日に開き、現在の送電網による受け入れ能力の拡大を検討する。具体的には電力会社が発電事業者から電力を受け入れなくてもいい期間を現在の30日から長く設定し、電力会社が需給の調整をしやすくする案などを検討する。不安定な太陽光で発電する電気をためるための蓄電池や送電網を増強して受け入れ能力を拡大するのも検討する。固定価格買い取り制度は再生エネで発電した電力を一定の価格で最長20年にわたり電力会社に買い取りを義務付けている。12年の開始以降、買い取り価格が高く設置が容易な太陽光発電所に事業者が殺到し、国が認定した設備容量の9割超が太陽光に集中している。九州など電力5社は急増した再生エネが送電線の受け入れ能力を超えるとして、10月以降、受け入れを止めている。国が同制度の適用を受ける太陽光発電の認定を拡大したことで、国民負担の増大が懸念されている。再生エネを買い取る原資は電気料金に上乗せする形で年2700円(一般家庭)を徴収。認定済みの事業者が全発電所を稼働すれば家庭の負担が1万円を超すことが見込まれる。

*7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014101502000241.html
(東京新聞 2014年10月15日) 政府、長期展望欠く 電力会社、なお原発優先 再生エネ買い取り
 再生可能エネルギーの拡大に貢献してきた固定価格買い取り制度が、開始からわずか二年余りで大きな見直しを迫られることになった。これは再生エネを導入するために必要な長期展望を欠いた政府と、原発の再稼働を優先する電力会社の非協力的な姿勢が背景にある。政府は民主党政権時の二〇一二年に固定価格買い取り制度を始めて再生エネを増やす目標を掲げた。しかし、政権交代した自民党が原発重視にかじを切ったことで、再生エネの位置付けがあいまいになった。欧州各国では、再生エネの発電量が導入から十年で数十倍に跳ね上がっており、制度開始後に爆発的に増えるのが常識となっている。日本の場合、今後の見通しが二倍になっただけで抜本的な見直しを迫られたのは、どこにどの程度の再生エネ発電所を誘致するのか、それを吸い上げるためにどれだけ送電網を準備するのかといった長期展望を描かず、必要な対策も怠ったためだ。また、今回はまず九州電力が九月二十五日に受け入れ手続きを中断。同三十日には、東北電力など大手四社が、それぞれ状況が異なるにもかかわらず、電力需要に対しどれぐらいの買い取り申請が積み上がっているのかといった情報を開示しないまま、一斉に中断を表明した。再生エネを地域振興の柱としていた自治体や、発電を計画していた事業者、発電設備の販売会社など幅広い関係者は衝撃を受け、不信感を強めている。経産省は十六日から、別の専門家部会をつくって電力各社の主張が妥当なのか検証するほか、将来的に再生エネを拡大するための方策を検討する。東京都内で新規のメガソーラーを検討していた業者は「はしごを外すような政府の対応に腹が立つ。再生エネの導入機運がしぼまないよう、前向きに議論してほしい」と議論の行方を注目している。

*8:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30287 (日本農業新聞 2014/10/15) [波紋 再エネ契約中断 上] 小水力 米農家支援 足踏み 山形県酒田市、高知県香美市
 電力5社(北海道、東北、四国、九州、沖縄)が、小水力や太陽光など再生可能エネルギーの固定価格買取制度に基づく契約の受け付けを中断したのを受け、売電を計画していた農山村地域に波紋が広がっている。契約できない事態になれば、見込んでいた売電収益が得られないからだ。現場の実情を報告する。
●実現へ時間 計画後手に
 山形県酒田市の日向川土地改良区。農業用水を活用した出力118キロワットの小水力発電施設を整備しようと、2年前から準備してきた。今年度末にも東北電力と買取契約を完了する。そんな見通しが立った矢先、新規契約の一時中断を突きつけられた。「先行きがまったく見えなくなった。何もしなければただの水の流れ。それが“宝の流れ”になるはずだったのに……」。同改良区の富樫善弘理事長は、歯がゆさを募らせる。日向川から取水した農業用水を約5600ヘクタールに供給する土地改良区は、その水資源に着目。総工事費約4億円をかけ、発電施設を整備する計画を打ち出した。工事費の85%を国や県、市町村が負担し、残り15%を土地改良区が金融機関からの融資で捻出する。既に県が事業主体となり施設の詳細設計にも入った。売電収入は年間約2200万円を見込む。農家経営は米価下落、電気・燃料代高騰で厳しい。それだけに売電収入を土地改良区の施設の維持・管理に充て、農家負担を少しでも減らしたいと、長い時間を費やし計画を具体化してきたのだ。富樫理事長は「これから地域で小水力を導入しようと考える農業者が萎縮しかねない」と不安視する。東北電力が新規契約を一時中断したのは、出力50キロワット以上の発電設備だ。管内の再エネ発電設備の認定量(5月末時点)が1149万キロワットに達し、全てを受け入れると、「管内の電気の需要量を超え、電気の安定供給に支障をきたす恐れがある」(東北電力電力システム部)からだ。背景には太陽光発電設備の急増がある。実際に認定量の93%を太陽光が占める。約半年で簡単に建設できるとあって、契約の申し込みが殺到した。これに対し、小水力は水路に合った専用の発電機を設計・製作しなければならない。後手に回らざるを得ないのだ。小水力での発電が見込める量が全国8位の山形県は「太陽光の急増で出はなをくじかれた。小水力の場合、計画から最低でも2年はかかる」(農村整備課)と指摘する。農業用水路などを活用した小水力発電を2016年度までに計1400キロワット整備する目標を掲げ、100地点の発電候補地の選定と優先順位づけに取り組むだけに、危機感が強い。他の電力会社管内でも、小水力発電の計画に支障が出ている。中国四国農政局によると、四国で計画中の4カ所のうち愛媛県西条市、高知県香美市の2カ所が契約申請前にある。その一つ、香美市の山田堰井筋土地改良区は、16年の運用開始を目指し、出力90キロワットの発電施設の設計を発注しようとしていたところだった。売電収入は年間1200万~1300万円を見込み、水利施設の補修費や人件費の一部に充てたいと準備してきたという。植野寛事務局長は「小水力発電は、地域の水を守る公共の意味合いが強い。その点を十分に考慮し、計画通りに進むよう、対応してほしい」と訴える。

| 原発::2014.8~10 | 05:25 PM | comments (x) | trackback (x) |

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