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2014,06,28, Saturday
(1)「少子化=先細り」というキャンペーンの中で、そのヤジは起こった
*1-1に、「①政府は多子世帯の育児支援や、地方を見据えた結婚、妊娠、出産支援に本腰を入れ、予算拡充を掲げた」「②50年後に1億人程度の人口を維持する」などと書かれており、現在、「少子化=国の先細り」というキャンペーンが激しい。そのような中で、*2-1に書かれているように、東京都議会で「早く結婚しろ」「産めないのか」というヤジが飛び出したのであり、このセクハラは、本当は都議のみの問題ではない。 しかし、②の根拠となっている「1億人の人口を維持しなければ経済が縮小し、国として成り立たない」というのは合理性がなく、世界の国の人口順位と経済規模は一致しない上、日本より人口が少なくても一人当たりの暮らしぶりが日本より豊かな国は多い。つまり、その時代に必要とされる財・サービスを賢く開発して提供すれば経済はよくなるのに、産めよ増やせよ論をやっているから、「早く結婚しろ」「産めないのか」などというヤジが飛び出すのである。つまり、これは、日本という国が、セクハラ政策を推し進めようとした結果なのだ。 そして、このようなセクハラ政策が進められる背景には、*1-2で61歳の主婦が述べているとおり、議会や“有識者”会議が超男性社会で、そこに入っている少数の女性は、議長をはじめ多数を占める男性の意見に反対する力がなく、①のように、「少子化対策=結婚、出産の奨励」となるという状況があるのだ。そして、これまでは、こういうヤジに毅然とした態度で臨むと、「そんな冗談に目くじらを立てて・・」などと、かえって批判された。 (2)この機会に変えるべきである *2-1には、「都内には出産や不妊に悩む女性が多い」と書かれているが、不妊にはいろいろな原因があり、生理的に無理であるため妊娠しない場合も多い。それでも無理やり人工授精までして妊娠したがる人が出る背景には、人生や結婚の幸福には子を産み育てることだけではない自己実現があるにもかかわらず、「産めないのか」というヤジに代表されるような社会の圧力があるからだ。 本当は個人が自己実現をやりやすく支援すべきで、それができれば個人にゆとりができて、自然と人口が増えるのは歴史上の真実である。また、「私たちの心の内に同じような意識が潜んでいないか考えたい」とも書かれているが、(1)の①②にひっかかりを感じない人は、そのような意識なのだから、この機会に変えるべきだ。 (3)セクハラ都議の隠蔽はやめよう *2-2のように、朝日新聞記者が取った録音と都議会が庁内放送で流した都議会中継の音を朝日新聞とテレビ朝日が分析したところ、「早く結婚した方がいい」「自分が産んでから」「がんばれよ」「やる気があればできる」とのヤジが続いたそうだが、都議会最大会派の自民党幹事長は、所属議員全員の聞き取りをし、鈴木都議のヤジ以外は「聞いていない」と説明していた。これは、これまでの“常識的”な幕引き方法だが、この機会に言った人を特定し、どういう考えでそう言ったのか、釈明させるべきである。 何故なら、東京都議会でさえそうなら、女性議員が極端に少ない地方議会では、「議員なんかやるより、早く結婚し家庭に入って子供を産むことこそ女の幸せであり、(裏から夫を支えるのではなく)表に出たがる女は性格が悪い」と言うレベルだと思われるからである。 (4)遅くとも2020年には、指導的地位に占める女性の割合を30%にすべきである *3のように、安倍政権が、女性の活用を成長戦略の柱の一つとして、女性登用の目標を定め、それを達成する計画をつくることを国、自治体、企業に義務付ける方針を固め、2020年に指導的地位に占める女性の割合を30%にする目標を掲げているのはよいし、それだけの能力のある女性は多くなった。 議員・公務員・一般企業の管理職に女性が増えれば、「少子化対策=産めよ増やせよ論」というようなめちゃくちゃな政策には疑問を持って意見し、意思決定もできる立場の人が増えるだろう。つまり、(長くは書かないが)いろいろな分野に女性の数が増えれば、解決することも多いのである。 <産めよ増やせよと言う少子化対策> *1-1:http://qbiz.jp/article/40606/1/ (西日本新聞 2014年6月26日) 地方、止まらぬ先細り 少子化対策は財源なく、人口動態調査 25日に発表された総務省の人口動態調査では、少子化傾向にブレーキがかかっていないことが明らかになった。政府は多子世帯の育児支援や、地方を見据えた結婚、妊娠、出産支援に本腰を入れ、予算拡充を掲げたが、財源確保のめどは立っていないのが実情だ。政府は24日に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」で、50年後に1億人程度の人口を維持する目標を掲げた。特に第3子以降の出産、育児、教育を重点的に支援する。ただ、若い世代を中心に「経済的な理由で結婚や出産をためらう人の支援を優先するべきだ」との声も上がる。有識者らでつくる「日本創成会議」の分科会は5月、地方で暮らす20〜39歳の女性が今後30年間で大幅に減るとの試算を発表した。政府は2013年度の補正予算で、結婚から育児まで幅広い事業に使える「地域少子化対策強化交付金」を創設。都道府県には4千万円、市区町村には800万円を上限に交付する仕組みで、6月現在、全47都道府県の自治体から申請があった。一方、少子化対策から切り離せないのが財源確保の問題だ。骨太方針では少子化対策への予算配分を「大胆に拡充」するとしたが、具体策は明らかになっていない。安蔵伸治明治大教授(人口学)は「夫婦共働きで安定した収入を得られるように、若者の正規雇用化などの環境整備が必要だ。今後は、高齢者から子どもへの予算配分の見直しも検討しなければならない」としている。 ◆三大都市圏の人口、過去最多 東京、名古屋、関西の三大都市圏に住む日本人の人口は、2014年1月時点の人口動態調査で6439万人となり、統計を取り始めた1975年以降で最多を記録した。全体に占める割合は50・93%。名古屋、関西の両圏は前年から減っており、東京圏の増加が総数を押し上げた。内訳は東京圏が過去最多の3506万人で、名古屋圏1117万人、関西圏1817万人。出生数が死者数を上回る「自然増」ではなく、転入者が転出者を上回る「社会増」が要因で、総務省は「雇用機会の多い東京圏への集中が進んでいる」と分析している。社会増を都道府県別でみると、東京が最多の6万9117人で、共に東京圏を構成する埼玉、神奈川、千葉でも増えた。名古屋圏では愛知、関西圏では大阪のみの増加にとどまり、圏域単位では微減。三大都市圏以外の地方圏で増えたのは宮城と福岡だけだった。転出者が転入者を上回る「社会減」は、北海道が最多の8428人で、静岡、青森、長崎などが続いた。福島は5144人だったが、東日本大震災後の12年3月末時点で前年から3万人以上減ったのに比べれば落ち着いており、総務省は「ほぼ震災前の水準に戻った」とみている。 *1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11207617.html?ref=reca (朝日新聞 2014年6月25日) (声:主婦 小河原初子 61) 男性社会の議会が生んだ傲慢さ 国会でも全国の地方議会でも、男性議員に比べて女性議員の数は少ないのが一般的だ。東京都議会でも女性都議の割合は約20%にすぎない。鈴木章浩都議のヤジ問題で、女性議員が少ないことによる弊害に合点がいった。多数を占める男性議員が、いかに傲慢になっているか分かったのだ。「早く結婚した方がいいんじゃないか」「産めないのか」などというヤジが、国内外でこれほど騒ぎになったことに驚いたのは男性議員たちだろう。これまで同じようなことがあっても表沙汰にならなかったのに今回は違ったため、戸惑っているようだ。鈴木都議は謝罪して反省の弁を述べ、会派からの離脱で決着をつけようとしているが、人の性根がそう簡単に変わるとは思えない。大きな問題は、都議会の品性のなさがあらわになったことだ。公の場では言ってはいけない男性の本音を言うがままにさせ、笑って同調した議員が複数いた。ヤジを受けた女性都議が発言者の特定と処分を申し入れた際、議長が不受理としたのにはがっかりした。議長は逃げずに、毅然とした態度で臨んでほしい。そうでなければ何も変わらないと思う。 <セクハラ都議への対応> *2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140624&ng=DGKDZO73210050U4A620C1EA1000 (日経新聞社説 2014.6.24) セクハラ都議会は猛省せよ こんな女性をさげすむ発言を許すわけにはいかない。都議会で少子化対策について質問した女性議員に向けられたヤジだ。23日になって自民党の鈴木章浩議員が名乗り出たが、卑劣なヤジを飛ばしたのは鈴木議員だけではない。「早く結婚しろ」「産めないのか」などというヤジは、18日の都議会で塩村文夏議員が妊娠や出産に対する都の支援策を質問しているさなかに飛び出した。ヤジにたじろぐ塩村議員に笑い声が広がるなど、ひどいありさまだった。今回のヤジは女性の社会での活躍に冷水を浴びせ、政府の成長戦略にも逆行する。政府は50年後にも1億人程度の人口を維持する目標を成長戦略に盛り込む方針だ。なかでも、合計特殊出生率が全国で最も低い東京都にとって、少子化対策は最大の課題になっている。塩村議員が質問したように晩婚化や晩産化に伴い、都内には出産や不妊に悩む女性が多くいる。結婚や子育てへの支援は女性だけでなく、男性にも必要だ。都議会自民党の対応もお粗末極まりない。吉原修幹事長は当初、「会派で不規則発言は慎むように話す」などと述べるだけだった。その後、各方面から批判が続出し、鈴木議員だと明らかにした。昨年6月の都議選で自民の候補者全員が当選し、都議会では自民主導の議会運営が続いている。今回の発言やその後の対応は、選挙で大勝した自民党のおごりから出た問題でもあるのだろう。鈴木議員は自民党の会派を離脱すると表明した。問題が発覚した直後に同議員は自ら発言したことを否定しており、議員辞職にすら値する言動ではないか。「産めないのか」などとヤジを飛ばした議員も自ら名乗り出るべきだ。海外でも報じられ、日本の国際的なイメージも損なっている。そもそも、私たちの心の内に同じような意識が潜んでいないか、考えたい。そうした偏見を許さず、出産や子育てと仕事が両立できる社会をつくりたい。 *2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11213784.html (朝日新聞 2014年6月28日) 複数都議がヤジ、録音精査し判明 東京都議会で晩婚化対策を質問した塩村文夏都議(35)が女性蔑視のヤジを浴びた問題で、複数の議員が立て続けにヤジを飛ばしていたことが分かった。都議会は発言者の特定を1人にとどめて幕引きを図ろうとしているが、事実解明は避けられなくなった。都議会の記者席で朝日新聞記者が取った録音と、都議会が庁内放送で流した都議会中継の音を朝日新聞とテレビ朝日が分析した。鈴木章浩都議(51)が「早く結婚した方がいいんじゃないか」とヤジを飛ばした直後、たたみかけるように男性の声で「自分が産んでから」「がんばれよ」とのヤジが続いた。塩村都議が女性の不妊に関して質問した際には「やる気があればできる」との暴言も聞かれた。音声分析に協力した日本音響研究所の鈴木創所長は「口調や声の調子からヤジを飛ばした人は複数いる。たくさんの人が同時に話している」と分析した。都議会最大会派の自民の吉原修幹事長は、所属議員全員の聞き取りをし、鈴木都議のヤジ以外は「聞いていない」と説明していた。 <女性管理職割合拡大の必要性> *3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11173576.html?ref=nmail_20140605mo&ref=pcviewpage (朝日新聞 2014年6月5日) 女性登用の目標義務化へ 国・自治体・企業に 成長戦略 安倍政権は、女性登用の目標を定め、それを達成するための計画をつくることを国、自治体、企業に義務付ける方針を固めた。女性の活用は成長戦略の柱の一つで、月内にまとめる成長戦略の改訂版に盛り込む。政府は2020年に指導的地位に占める女性の割合を30%にする目標を掲げている。少子高齢化で減る労働力人口を維持するためにも、官民で管理職や役員に積極的に女性を登用し、社会進出を促すために一定の強制力をもった仕組みづくりが必要と判断した。役所ごとの目標や計画は、全府省の次官級で構成する新設の「女性活躍・仕事と家庭の調和推進協議会」でつくる。5月末に新設した内閣人事局が中心となって働き方や人事も見直し、女性の採用や管理職への登用を中心に進めることを明記する。企業については、有価証券報告書に役員の女性比率を記載するよう義務づける。また、女性の就労の「壁」とされている所得税の配偶者控除や社会保障制度の見直しについては、政府の経済財政諮問会議の下に設ける新たな会議で「年末までに見直しの方向性について、一定の結論を得る」とした。企業や役所から給与の一部として支給される配偶者の扶養手当も「壁」の一つとされており、これも見直しの対象に含める。国家公務員の扶養手当も「人事院の協力を得ながら検討する」としている。 ■成長戦略に盛り込まれる主な女性の活躍支援策 ・国や自治体、民間事業者に対し、女性登用の「自主行動計画」をつくって情報開示するよう義務 づけることを検討 ・育児経験豊かな主婦らを「子育て支援員」(仮称)と認定する制度を創設 ・有価証券報告書への女性役員比率の記載を義務づけ ・内閣人事局が中核となり、国家公務員の女性採用、登用を拡大。全府省の次官級でつくる協議 会を設置 ・配偶者手当や税制などについて新たな議論の場を設置し、年末までに見直しの方向性を出す PS(2014.6.30追加):*4のように、佐賀県議会は女性議員1人(議員38人中)であり、女性議員が3人いるところは2市、2人いるところは6市、1人しかいないところは5市2町、1人もいないところが5町あり、そのうち自民党系は少ない。なお、首長は全員男性である。 女性議員が少ない理由は、「女になんができるか」「力のなかごたっとが議員になってもなんもならん」という言葉に代表されると思うが、私が国会議員として及びそれ以前からやってきたことを、「私がやった」と言っても「嘘だ、謙虚でない」などと言って実績を認められなかった上、左のカテゴリーの週刊文春名誉棄損記事、強引な理屈付けによる運動員の逮捕、Googleの検索機能をはじめとするインターネットの嘘による名誉棄損など、女性蔑視を利用した数々のネガティブ・キャンペーンが行われている。 つまり、「女性は何もできず、力がない」というのも、NHKのヒロインが女性の朝ドラ等における、とんまでくだらなくリーダーシップのかけらもない女性の描き方に代表されるように、メディアをはじめ社会全体が作り出した虚像なのである。 <佐賀県の議員> *4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/79142 (佐賀新聞 2014年6月30日) 抱きつきや交際迫られ… セクハラやじで県内女性議員 東京都議会で質問中の女性に「早く結婚した方がいいんじゃないか」などのやじが飛んだ問題を受け、佐賀新聞社が佐賀県内の女性議員にセクハラ被害について聞いたところ、過去に県外視察の夕食時に男性議員に抱きつかれたり、交際を迫られたケースがあることが分かった。選挙中に女性蔑視の発言を受けた議員もおり、議会内だけではなく、社会全体の問題として意識改革を求める声も上がった。「憤りを禁じ得なかった」。ある女性議員が打ち明けた。7、8年前、視察先で夕食が宴席になり、男性議員にカラオケに合わせて「踊ろう」と誘われ、抱きつかれた。さらにその場面を別の議員が写真に撮っていたという。女性議員は「場の雰囲気を壊したと周りの議員から言われるのを恐れ、怒らずあしらうのが精いっぱいだった」と抵抗できず、追い詰められた心境を語った。別の女性議員はかつて男性議員に「俺の女になれ」と交際を迫られ、拒絶すると嫌がらせを受けたという。「研修後の懇親会になると、複数の男性議員から女性蔑視の発言を聞くことが多い。セクハラと指摘したら、飛びかかってこられたこともある」と被害の深刻さを漏らす。今回の取材では議場内での直接的な被害はなかったが、過去にはセクハラ発言が問題になった事例もある。2002年3月、旧川副町議会で役場職員の育休に関する条例案をめぐり、男性議員が「(女性は)賞味期限の切れた人も該当するのか」と発言した。当時町議だった白倉和子佐賀市議は、女性の人権を軽視していると訂正を申し入れ、男性議員が「不適切な発言」として本会議で陳謝した。女性議員へのセクハラは、議会内だけでなく選挙運動など日々の活動のなかで被害を受けるケースがあった。武雄市の山口裕子議員は、選挙中に「女になんができるか」「力のなかごたっとが議員になってもなんもならん」といった女性蔑視発言を今でも言われるという。「議会に女性が入るのは難しい。難しくても頑張って女性が切り開いていくことで社会が変わっていくと信じている」と話す。三養基郡基山町の牧園綾子議員も、宴席で中高年の男性から肩や腰に手を回された経験がある。「私はやめてもらうように言ったり、うまく逃げることができたが、他の女性議員のなかには不愉快でも我慢している人がいるかもしれない」と、泣き寝入りすることを危惧する。議会内だけにとどまらない問題に対し、鳥栖市の飛松妙子議員は「社会全体の認識が変わらなければ同じようなことが続くのではないか」と指摘する。 ◇ ◇ 佐賀県内の女性の議員数は現在26人で、全議員397人に占める割合は6・5%。全国平均(2013年12月31日現在)の都道府県議会議員8・8%、市区町村議会議員11・8%より下回っている。 PS(2014.7.2追加):*5のように、西日本新聞が、九州の地方議会における女性議員の割合を調べたところ、30%は女性議員数が0など、女性議員の割合が全国より低いことが明らかになった。しかし、議会で決めるべき政策には女性の方が得意なものも多いため、私も「2020年までに30%は女性にする」という方針を議員にも当てはめるのがよいと考える。「2020年に30%」の適切な人材はいる筈だ。 <九州の議員> *5:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/98262 (西日本新聞 2014年6月30日) 九州の地方議会30%女性ゼロ 合併 定数減響く 九州の地方議会のうち、女性議員がゼロの議会は全体の30%。特に町村議会では45%に達する。郡部ほど「政治は男の世界」との風潮がいまだ根強いことや、「平成の大合併」が女性の議会進出を難しくしていることがうかがえる。地方議員に占める女性の割合が6%と全国最低だった長崎県。周辺6町を2010年までに順次吸収合併した佐世保市では、旧市町時代には計8人いた女性議員が、1人だけになった。唯一の早稲田矩子市議(71)によると、旧町の代表を確実に送り出すため、元町長ら知名度のある男性に候補者を一本化したり、旧町では数百票だった当選ラインが新市では2千票以上に上がって旧町議の女性が届かなかったりしたという。総務省によると、平成の大合併で全国の市町村が45%減ったのに対し、九州は長崎の71%を筆頭に、大分69%、佐賀59%など福岡、宮崎を除く5県で半分以下に。一方、13年末の女性地方議員数を10年前と比べると、佐賀県では52人が24人に、大分県は42人が29人に、長崎県は52人が28人に激減するなど、合併が進んだ県ほど、女性議員の減少が目立つ傾向が見られた。日本は国会議員(衆議院)の女性の割合も約8%と、先進国最低レベル。国連女子差別撤廃委員会は日本政府に対し、政治への女性参画を拡大する措置を講じるよう繰り返し要請している。女性に一定の議席を割り当て、半強制的に比率を高める「クオータ制」導入を検討する超党派国会議員らの勉強会が3月に開かれたが、慎重論も根強く大きなうねりとなっていない。 PS(2014.7.5):国会でもこのようなセクハラが横行しており、注意すると「冗談を解しない奴だ」とか「人の気持ちのわからない奴だ」などと逆ギレする輩も多いので、この際、徹底して究明し撲滅すべきだ。しかし、そういう人は、役所や企業にも多いのではないだろうか。 <国会議員> *6:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10202/80726 (佐賀新聞 2014年7月4日) 国会セクハラやじも自民 4月の衆院総務委員会で日本維新の会の上西小百合衆院議員(31)=比例近畿=がセクハラやじを受けた問題で、自民党の大西英男衆院議員(67)=東京16区=が4日、発言を認め、上西氏に「申し訳なかった」と電話で謝罪した。大西氏は同日夕、自身のホームページ(HP)に「親しみから不用意な発言をし、上西議員に迷惑をかけたことを反省している」との談話を掲載、記者会見は開かなかった。自民所属だった東京都議=会派離脱=に続き、国会でも自民議員のセクハラやじが発覚、国内外の批判が再び高まるのは必至だ。
| 男女平等::2013.12~2014.6 | 07:47 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2014,06,21, Saturday
世界の出生率 日本の県別出生率 (1)「産めよ増やせよ」論が出てくる理由 *1のように、新しい成長戦略に女性の活用が入ったのはよかったのだが、女性が働きやすい社会を作るため保育所や学童保育の受入拡充に取り組もうとして少子化を理由としたら、*3-1のように「16道府県が出生率・数で目標値を設定し、独自の少子化対策を作った」とか、*3-2のように「佐賀県が『企業子宝率』を調査し、従業員が育てる子どもの割合が高い事業所を『モデル企業』に認定する」など、「産めよ増やせよ」論が多くなり、最初に意図したのとは全く異なる政策になった。 このような雰囲気の中で出たのが、*4-1の東京都議会で晩婚化・晩産化対策について質問した女性都議に対し、「お前が早く結婚すればいいじゃないか」「産めないのか」という男性都議からのヤジである。少し前に、柳沢厚労大臣が「女性は産む機械」と述べて批判を浴びたが、このような価値観が横行ししている限り、労働市場で女性が気持よく働き、男性と同様に管理職に昇進していくことはできない。そのため、これは、なくすべき女性差別の価値観であり、*4-3に書かれているとおり、うやむやにせず徹底して再発防止を行うべきである。 なお、*4-2の西日本新聞の女性記者の記事には、「働く母親を増やしたいなら、乳幼児の急病やけがにも対応できる保育所を増やして、保育料も無料にすればいい。新聞社でも働くママが増えた。急に発熱した子どもを預ける先に苦労する先輩。保育所に入れず、母親に毎日赤ちゃんを預けて出勤する先輩。定期的に遠方の両親に泊まり込みの手伝いに来てもらう先輩。何とか家族や職場の協力を得て、必死に働いても、多額の保育料が家計を圧迫する」という事実が書かれており、そのとおりだ。 しかし、「国や自治体は『それでも働け』というのなら、女性や家族、職場の努力に報いる何らかのメリットを提示すべきだ」としているのは、少し前までは「それがいやなら、さっさとやめろ」という態度だったので、国や自治体が「何とかするから、頑張って働け」と言う態度になったのは、相当の進歩なのである。 (2)リプロダクティブ・ヘルス・ライツは世界女性会議で採択された人権である *5-1に書かれているように、すべてのカップルや個人は、子どもを持つか持たないか、また子どもの数、出産間隔、出産時期を自由に決定できる権利を有し、これは、1995年に北京で開催された世界女性会議で、リプロダクティブ・ヘルス・ライツとして採択された。 現在、*5-2のように、世界の国・地域別の合計特殊出生率(2005-2010年)を見ると、ニジェール 7.15人を1位として、46位のコモロ 4.00人までが、4人以上である。ここは、アフリカ、イスラム圏など、乳児死亡率が高く、女性の識字率や社会における地位が低く、女性には、安全で満ち足りた性生活を営み、子どもを持つか持たないか、何人持つかを決める選択権が与えられていない地域だ。日本で言えば、戦前・戦中の状況である。 また、47位のサモア3.99人から100位のバングラデシュ 2.36人までの間も、女性の学歴や識字率が低く、子どもを持つか持たないか、また何人持つかを自分で決められる選択肢が与えられていない地域が多い。日本で言えば、戦後すぐくらいの状況だ。 それ以降は、123位に先進国であるアメリカ合衆国 2.09人が現われるが、アメリカの出生率が高いのは移民の出生率が高いからだと言われている。そして、129位 ニュージーランド2.02人 、137位ノルウェー1.89人、138位フランス 1.89人、140位スウェーデン1.87人、144位イギリス1.84人、145位デンマーク 1.84人、146位オーストラリア1.83人と2人前後の先進国が出てくる。日本も、戦後しばらく、家族計画における産児制限で、子どもは2人を標準としていた。 さらに下がって、179位イタリア1.38人、180位ロシア1.37人、184位ドイツ 1.32人がくる。そして、196カ国中の190位に日本1.27人、193位に韓国1.22人がある。つまり、女性の教育レベルが上がり、女性がいろいろな選択肢を持つようになったにもかかわらず、育児サポートが乏しく、選択肢を持つ女性に昔ながらの家事・育児を押し付ければ、婚姻率が下がったり、DINKSが増えたりして、少子化するということなのである。 (3)2020年までに女性管理職の比率を2倍にと言う世界企業アクセンチュアと女性課長30%で日本は滅ぶとする日本の経営者向け雑誌記事の違いがすべてを物語っている *2-1のように、多様性が大切だとして、世界企業のアクセンチュアは、2020年までに日本における女性管理職の比率を2倍にするとともに、女性従業員の比率を35%程度にまで上昇させるそうだ。日本は国際的にみて管理職従事者に占める女性の比率が低く、同社では、ジェンダー(性別)で区別する発想を排し、多様性を受容した組織作りを標榜する考え方をとるが、それでも日本は世界の他地域と比較して最下位だそうだ。そして、これは、ビッグ4で働いていた私の経験と一致している。 一方、*2-2のPRESIDENTでは、安倍首相が「2020年までに、指導的地位にいる人の3割を、女性にする」と発言したが、ある住宅設備メーカーでは「①女性管理職30%を達成しようにも、女性社員が全体で2割もいない」とか、金融業で「②昇進審査では『女性枠』というものが存在しており、逆差別ではないか」「③現在、女性管理職の約7割に子どもがいない」「④子どもを産み育てる環境が不備なまま、性急に登用を促進すれば、少子化にますます拍車がかかる」等々、できない理由を列挙している。 しかし、①については、そもそも住宅設備メーカーに女性社員が全体で2割もいないのがおかしく、これまで男性本位で男性に下駄を履かせた採用をしてきたことがわかるため、その突破口として「2020年までに指導的地位にいる人の3割を女性にする」という目標は有用だと考える。 また、②についても、金融業で女性管理職が少ないのは、雇用で女性差別をしてきたからで、「2020年までに指導的地位にいる人の3割を女性にする」という目標は、その突破口になるため、これまでのやり方すべてを見直し、2020年までに指導的地位にいる人の3割を女性にすることを目標にすれば、多様性を維持して本当のニーズを把握し、本物の成長率や利益率を上げるためのKeyになると思われる。 さらに、③については、だからこそ速やかに保育所や学童保育を整備すべきなのであり、④については、(2)に書いた理由で歴史を逆に回そうとする本末転倒の主張だ。 <成長戦略に入った女性労働力の活用> *1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140611&ng=DGKDZO72561700R10C14A6EA2000 (日経新聞 2014.6.11)女性や技術、生かす成長戦略 首相「日本経済を一変」 政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)は10日、新しい成長戦略の骨子案を発表した。重点を置いたのは、日本がまだ生かし切れていない潜在力の活用だ。重要な働き手として期待する女性が仕事しやすくなる環境を整えるほか、日本が強みを持つ技術開発をさらに促す仕組みをつくることなどを柱に据えた。政府は月末のとりまとめに向け最終調整に入る。女性が働きやすい仕組みづくりでは、育児の負担を軽くするため、放課後に学校などに児童を預けられる学童保育の受け入れ枠の拡充に取り組む。現在の受け入れ枠は全国で約90万人だが、2019年度末までに30万人分を増やす計画だ。女性が働く意欲をそぐと批判がある配偶者控除など、税・社会保障制度の見直しの検討も進める。首相は同会議のしめくくりで「日本経済が一変するとのメッセージを強力に打ち出していくためにも、骨太な政策に絞り込んでまとめていただきたい」と指示した。法人税の実効税率の引き下げなどを念頭に「残された論点は難しいものばかりが残っているが、大胆に決断し、実行に移していきたい」とも力説した。 <労働市場における女性差別> *2-1:http://japan.zdnet.com/cio/analysis/35045076/ (ZDNet Japan 大川淳 2014年3月11日) 多様性が大事--アクセンチュア、2020年までに女性管理職の比率を2倍に アクセンチュアは3月10日、“ジェンダー・ダイバーシティ”への取り組みを発表、2020年までに女性管理職の比率を現在の2倍にするとともに、将来は女性従業員の比率を35%程度にまで上昇させる。日本は国際的にみて管理的職業従事者に占める女性の比率が低く、同社では、この問題を日本社会全体の課題ととらえ、社内で積極的に女性が活躍する場を広げるとともに、対外的にもさまざまな提言や活動をしていく方針だ。ジェンダー・ダイバーシティは、ジェンダー(性別)で区別するという発想を排し、多様性を受容した組織作りを標榜する考え方であり、企業などでの女性従業員の数を増やし、管理職や役員にも女性を登用することなどを求めている。アクセンチュアの場合、女性従業員は約1000人であり、この10年ほどで2.5倍になったという。同社によれば、2007年の時点で既婚の女性従業員は約2割、子どもがいる女性従業員は10%未満、時短勤務利用者は6人、女性マネジングディレクター(部長相当職)は2人だったが、2014年には既婚の女性従業員は約4割、子どもがいる女性従業員は20%以上、時短勤務利用者は80人以上、女性のマネジングディレクターは10人以上になっている。同社は世界規模で事業展開しているが、日本オフィスの女性比率は年々増加しているとはいえ、他の地域と比較すると最下位という。1位は中国、2位は東南アジア諸国連合(ASEAN)、3位はカナダで、いずれも40%以上だ。ワースト3は、13位のドイツ、オーストリア、スイス、14位の韓国、20%で15位の日本となっており、全世界での平均は36%だった。管理的職業従事者に占める女性比率(出典:データブック国際労働比較2012)は、フィリピンが52.7%、米国が43%、フランスが38.7%、オーストラリアが36.7%、英国が35.7%などである一方、日本は11.9%、韓国は9.4%だ。アクセンチュアは2006年に「Japan Women's Initiatives」を立ち上げ、女性が働きやすい環境の構築に取り組んできた。代表取締役社長の程近智氏は「女性が活躍できる場を広げ深めるため、さまざま支援策を講じており、女性向けプロフェッショナル研修、子育てと仕事の両立を支援する制度などを設けている。この7年間ほどでかなり進化していると考えている。実際、女性従業員の数が増えているが、世界的にみれば当社でも日本は(女性進出の水準が)最下位という状況であり、早くワースト3から脱したい」と話す。同社は、ジェンダー・ダイバーシティ推進のため、日本を含む世界32カ国のビジネスパーソン4100人に2013年11月に独自に調査した(男女の比率は50%ずつで、日本人の回答者は100人)。その結果、日本は世界で最もダイバーシティについての意識が低いことが浮き彫りになった。「自分のキャリアを構築する上で最も重要なものは何か」との問いへの回答では、グローバルと日本とも「特定の職域で専門性や知識を深めること」(グローバル67%、日本52%)だったが、これに次ぐのは、グローバルでは「組織内でのネットワーキング」であったのに対し、日本では「政治的な調整・擦り合わせ」の41%だった(グローバルでは19%)。「2020年までに女性取締役メンバーの比率は増えると思うか減ると思うか」との問いに「増える」との回答は日本では35%で、米国の65%、ドイツの64%、中国の62%などに比べ極めて低い。「2020年までに女性のCEO(最高経営責任者)は増えると思うか減ると思うか」との質問に「増える」と回答したのは日本では29%。米国では66%、ドイツは64%、中国は62%だった。全従業員に占める女性の比率をみると日本は42.2%であり、フランスの47.5%、米国の47.2%、英国の46.5%、ドイツの46.1%、シンガポールの43.6%などと比較して、それほど大きな差があるわけではない。この状況について同社執行役員 インクルージョン&ダイバーシティ統括 兼 金融サービス本部マネジングディレクターの堀江章子氏は「女性の活用を積極化しようとの掛け声があっても、日本では単に人数だけ増えれば良しとするような風潮があるのでは。女性だけが従事するような仕事を作るのではなく、男性と同じ仕事を女性も担うようにしなければならない」と述べ、女性と仕事に対する旧弊の意識を変えるべきではないかと主張する。今回、女性の社会進出について日本は後進国であるとの実態を物語る数値を明らかにしたアクセンチュア自体、同社の世界各国の拠点と比べ女性従業員の比率は最下位であり、国内状況の一つの縮図ということになったわけだ。この問題で日本全体が諸外国の水準に近づくのには、相当の時間がかかりそうだ。 *2-2:http://president.jp/articles/-/12707 (PRESIDENT Online 2014年6月3日) ●2020年、女性課長30%達成で日本は滅ぶのか 女性社員を役員や管理職に登用する動きが企業に広がっている。三井住友銀行やみずほ銀行で初の女性執行役員が誕生したほか、野村信託銀行では初の女性社長、大和証券グループ本社でも生え抜きの女性取締役が誕生した。役員だけではない。イオングループは現在10%の女性管理職比率を2016年までに30%、2020年までに50%にする計画を発表。NKSJホールディングスもグループで3.4%の比率を2015年度末に10%、2020年度末に30%にする目標を掲げている。こうした女性登用ラッシュの背景にあるのは昨年4月、安倍首相が経済界に対して行った以下の要請だ。<「2020年30%」の政府目標の達成に向けて、全上場企業において積極的に役員・管理職に女性を登用する。まずは役員に1人は女性を登用する>つまり、2020年までに課長職以上の女性比率を30%にしなさいというものだ。そしてこの数値目標は昨年6月に閣議決定した成長戦略にも盛り込まれ、いわば国家目標になった。その趣旨は少子高齢化による労働力人口が減少する中で潜在的資源である女性の力を、経済成長を支える原動力にしようというものだ。それはそれで結構なことであるが、果たして30%達成は可能なのか。2013年の民間企業の課長相当職以上の女性比率は7.5%にすぎない。20年までの7年間に2.5倍以上に引き上げなければならない。客観的に見ても無理筋な数値としか思えない。それでも安倍首相はやる気なのだろう。今年1月の世界経済フォーラム会議(ダボス会議)でも「2020年までに、指導的地位にいる人の3割を、女性にします」と発言。世界に大見得を切った。そして昨年から今年にかけて全省庁を挙げて目標達成に向けた政策の実施や企業への働きかけを強化している。 ●今春入社の女性が6年後、"全員"課長になれる会社 それを受けて経団連や各企業はこぞって女性比率の計画数値を公表し、登用に力を入れている。だが、無理矢理、数合わせのために目標を達成しても必ず弊害が発生する。すでに企業の現場では問題も発生している。ある住宅設備メーカーの人事課長は「経営トップは女性管理職を増やせと言っているが、30%を達成しようにも女性社員が全体で2割もいない。課長手前の係長も5%しかおらず、全員を課長に上げても足りない。すでに女性の課長候補者のほとんどは昇進させたために、課長手前の女性社員の空洞化も発生している」と語る。また、職場では不穏な空気も流れていると語るのは金融業の人事課長だ。「昇進審査では『女性枠』というものが存在している。本来は課長にふさわしい経験と能力があるかを審査するが、女性に関しては『女性の割には優秀だよね』といった視点で昇進させる。本来なら選ばれないのに、下駄を履かせて昇進させていることが職場にも伝わり、逆差別ではないかという声もある」。これでは女性もいい迷惑である。本来、課長になるべき女性が昇進しても、同僚や部下から色眼鏡で見られることになり、仕事もやりにくいだろう。もともと女性社員が少ない建設業はもっと深刻だ。人事課長は「トップの意向で史上最年少の女性課長を誕生させたが、2段跳びの昇格だった。といっても部下を率いる課長ではなく、部下なしの専門職課長だ。正直言ってマネジメント能力はないが、部下なし課長に上げている女性は多い」と語る。このまま行けば今年入社した女性を2020年には課長にしなければ間に合わないという嘆く人事担当者もいる。経営トップの意向で数値目標が目的化した昇進が続くと上司と部下の信頼関係が崩れ、当然、業務に支障を来し、生産性が低下することになりかねない。現在、多くの企業は「名プレイヤーイコール名監督ならず」の考えのもとで、管理職にふさわしいリーダーシップや部下の育成など経験と能力を持つ「マネジメントのプロ」の育成に注力している最中だ。そんな矢先にたいした基準も設けず、促成で女性管理職を無理矢理増やすようなことをやっていると、企業の発展どころか成長を阻害することになってしまう。 ●女性管理職“促成”で周囲のやる気↓少子化↑ もう一つ、女性は男性に比べて課長以上に昇進したい人が少ないという事実も忘れてはならない。一般従業員に課長以上の昇進希望があるかを聞いたところ、男性は59.8%があると答えたが、女性は10.9%にすぎない(独立行政法人労働政策研究・研修機構調査)。その理由で最も多かったのは「仕事と家庭の両立が困難になる」というものだ。これに関して大手事務機器メーカーの女性人事課長は「女性社員は男性と同じようにバリバリ仕事をしたいという上昇志向の女性もいるが、給与があがらなくてもいいからほどほどの仕事をしたい人、管理職になりたいが出産・育児の両立は無理と諦めている3タイプがいる。管理職と育児の両立が無理と考えている女性に前を向いてもらうには、長時間労働慣行や男性社員の理解がないと進まない」と指摘する。女性の登用の前に企業が取り組むべき課題は、出産・子育てを機に辞めさせない環境整備と子育てによるキャリアのブランクをフォローすることだ。たとえば在宅勤務などの制度面の改善や多様な働き方ができる働く場のインフラの整備。そして最後に何より大事なことは、女性はもちろん男性の意識を含めたカルチャーを変えていくことが必要だ。こうした仕組みを地道に改善していくことなく、性急に女性登用を進めてしまうと、単に企業の生産性の低下だけではすまない事態になる可能性もある。現在、女性管理職の約7割に子どもがいないという事実をご存知だろうか。その理由は未婚であるとか、結婚しても子どもを産み育てにくいといった様々な事情もあるだろう。仕事か子どもかの選択を迫られて子どもを諦めた人も多いのではないか。子どもを産み育てる環境が不備なまま、性急に登用を促進すれば、少子化にますます拍車がかかることになりかねない。もちろん、安倍首相は仕事と子育ての両立支援の拡充も要請しているが、2つが同時に功を奏するかどうかはわからない。それにしても企業や経営者が一斉に女性登用に血道を上げている姿を見ると、お上の意向に逆らえない体質や業界横並びの行動が依然として続いていることに驚かざるを得ない。仮に2020年に女性の管理職比率30%を達成したとしても、経済成長どころか、促成登用のひずみや少子化の影響で取り返しのつかない事態になっていなければいいのだが。日本銀行の異次元緩和によるインフレ政策の帰結と同様に“女性管理職インフレ”政策もアベノミクスの帰趨に大きく影響することは間違いない。 <出生数目標から「産めよ増やせよ論」へ> *3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/67037 (佐賀新聞 2014年5月24日) 16道府県が出生率・数で目標値、16道府県が出生率・数で目標値、独自の少子化対策 47都道府県のうち宮城、兵庫など約3分の1の16道府県が独自の少子化対策として、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)や出生数の数値目標を設定していることが24日、共同通信の調べで分かった。いずれも期限を決め、少子化への危機感や取り組み効果を理由に挙げた。政府は「個人への押し付け」との世論の反発を懸念し、出生に関する数値目標の設定を見送っており、都道府県との温度差が浮かび上がった。目標達成のため婚活支援や若者向けセミナーなどの事業も行われている。このほか福島、新潟、富山は数値の上昇を目指すとしているが、具体的な値は示していない。三重は「何かしらの目標が必要」として夏にも県民を交え、数値目標の是非を検討する。16道府県のうち、出生率のみの目標を示しているのは山形(2016年度までに1・70)、静岡(17年度に2・0)、佐賀(17年に1・71)など12道県。このうち大分は「14年度中に全国5位以内」を掲げる。年間の出生数のみを目標にしたのは京都(14年から5年で2千人増加)など3府県。秋田は「17年に1・45、年間6100人」と出生率と出生数の両方だ。16道府県は、目標を設定した当時に判明していた実績を基準に、それを維持するか、あるいは上回る数値としている。設定の理由は「危機感から」(兵庫)、「取り組むなら今。数字には効果がある」(佐賀)、「緊張感を持てる」(宮崎)、「知事の選挙公約だった」(山形)など。一方、設定していない都府県は「結婚・出産は一人一人の価値観や人生観。社会が強制するものではない」(東京)、「施策の内容こそ深く議論すべきだ。『産めよ増やせよ』というメッセージにもつながりかねない」(和歌山)などの見解だった。調査は5月中旬、都道府県の少子化対策の担当課に電話で実施した。 *3-2:http://qbiz.jp/article/40135/1/ (佐賀新聞 2014年6月19日) 佐賀県が「企業子宝率」調査へ 従業員が育てる子どもの平均数 佐賀県は本年度、従業員やその配偶者が、在職中に恵まれる子宝の数を示す「企業子宝率」の調査に乗り出す。子どもの割合が高い事業所を「モデル企業」に認定し、子育て支援の取り組みを紹介する。子育て環境の改善を促すのが目的で、識者からは「民間の支援充実を後押しする」と評価する声や「出産への圧力になる」と危ぶむ意見など、賛否両論が上がっている。こども未来課によると、企業子宝率は、男女を問わず、従業員が在職中に育てる子どもの平均数。1人の女性が生涯に産む子どもの平均数「合計特殊出生率」とほぼ同じ計算方法を使い、事業所ごとに割り出す。従業員の年齢と子どもの人数、年齢を尋ね、5歳刻みの年齢構成を基に将来の子ども数も見込む。内閣府男女共同参画会議の前専門委員の渥美由喜氏が考案し、福井県が渥美氏と2011年度に調査を始めた際に「企業子宝率」と打ち出した。その後、静岡県も採用、三重県や鳥取県も導入予定という。佐賀県は本年度の一般会計予算案に関連経費648万円を盛り込み、開会中の6月県議会に提案。県の子育て施策などに関わった経験がある事業所を中心に、従業員10人以上の約1200事業所に9月にもアンケート用紙を郵送し、任意で回答を求める。子宝率が高かった企業には子育て支援の取り組みをさらに調査し、県の広報誌で紹介する。ただ、支援制度が充実している事業所に子どもが多いとは限らず、出産を望まない家庭や、望んでも子どもを授からない家庭もある。和田光平・中央大教授(人口学)は「企業の社会的責任を問う指標ではあるが、人権の観点で『出産の押し付けになる』という批判は免れない。支援制度の充実度を数値化した方がいいのでは」と指摘。増田雅暢・岡山県立大教授(社会保障論)は「企業の子育て支援へのインセンティブ(動機づけ)になる」と一定の評価をしつつも「子育て環境は、両親の協力があるかや保育所が整備されているかなど幅広く測る必要があり、企業の取り組みだけで評価するのは一面的だ」と疑問視する。県の事業は少子化対策「418(しあわせいっぱい)プロジェクト」の一環。17年の出生見込み数が418人増えれば、県内の合計特殊出生率(12年は1・61)が0・1上がるという。 <東京都議会での「産めないのか」発言> *4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11199494.html (朝日新聞 2014年6月20日) 都議会に批判1000件超 女性議員へ「産めないのか」発言 東京都議会で晩婚化や晩産化の対策について質問した塩村文夏(あやか)都議(35)が、「自分が早く結婚すればいい」と男性都議からヤジを飛ばされた。ウェブ上で「セクハラだ」と議論が高まり、都議会には1千件を超す批判が殺到した。最大会派の自民は、発言者を特定せず幕引きを図ろうとしている。 ■ヤジの議場、知事も笑み 「議会の品位をおとしめるヤジは無いよう注意して欲しい」。各会派の全女性都議25人は19日、吉野利明議長に申し入れた。塩村氏が所属するみんなの党は19日、発言者の処分を求める申入書を議長あてに出す方針を決定。発言者が不明のままの場合、録画映像の音声から声紋分析する準備も進めている。問題のヤジがあったのは18日の都議会。晩産化について質問した塩村氏に「お前が早く結婚すればいいじゃないか」「産めないのか」とヤジが相次いだ。議場に笑い声が広がるなか、働く女性の支援を掲げる舛添要一知事も笑みを浮かべ、塩村氏は議席に戻ってハンカチで涙をぬぐった。塩村氏は自身のツイッターに「心ない野次の連続」と投稿。翌19日までに約2万回のリツイート(転載)が広がり、「企業なら懲戒処分だ」「都議会は、女性の社会進出と言っているが、結局は建前だけ」などの声が相次いだ。19日、塩村氏は「同調するように面白おかしく取る方たちがいた。不妊で悩む人の顔も浮かんだ」と声を落とした。みんなの党は、ヤジが「自民の席から聞こえた」と抗議。自民の吉原修幹事長は「自民の議員が述べた確証はない。会派で不規則発言は慎むように話す」と述べるにとどまり、発言者を特定しない意向を明らかにした。ツイッターで「うやむやにするつもりか」と批判した都教育委員で作家の乙武洋匡さんは「今回のヤジはおもてなしと正反対。本当にこの街で五輪を開催できるのか」と述べた。 ■女性蔑視発言で国政選挙落選も 都議会での議員の発言については、会議規則で「騒ぎその他議事の妨害となる言動をしてはならない」と定めているが、セクハラ発言については「罰則はない」(議会事務局)という。一方、傍聴人がヤジを飛ばすことは規則で禁じられ、違反すれば議長の命令で議場外に連れ出される。政治家の女性蔑視発言では、2003年に太田誠一衆院議員が早大サークルの強姦(ごうかん)事件で「集団レイプする人は元気があるからいい」と発言し、07年には柳沢伯夫厚生労働相が「女性は産む機械」と述べて批判を浴びた。いずれも次の国政選挙で落選した。 ■18日の一般質問の経緯 塩村氏は18日の一般質問で、割り当てられた時間の半分を出産や不妊に悩む女性の問題にあてた。「不妊治療を受ける女性のサポートを都は手厚くすべきだ」。そう訴えると、左前方の自民都議らが座る一角から、「お前が早く結婚すればいいじゃないか」「産めないのか」などとヤジが相次いだ。塩村氏が声を詰まらせながら質問を続けると、「おい、動揺しちゃったじゃねえか」と別のヤジも飛んだ。 *4-2:http://qbiz.jp/article/40199/1/ (西日本新聞 2014年6月20日) 産めよ増やせよ預けよ働けよ納税せよ ついでに「年金はあてにするな」というところか。注文の多い国だなあ、とつくづく思う。政府が配偶者控除の廃止・縮小を議論している。働く女性を増やして労働力を確保し、経済活性化につなげようという狙いだが、一緒に法人税減税なども推し進めているものだから、違和感がぬぐえない。経済成長は確かに重要だろうが、その恩恵が国民に等しく降り注ぐのは、一体いつになるのか。そもそも恩恵自体あるのか。分かりやすい成果や規制緩和を求めて急ぎすぎているのではないか。そもそも働く母親を増やしたいなら、乳幼児の急病やけがにも対応できる保育所を増やして、保育料も無料にすればいい。新聞社でも働くママが増えた。急に発熱した子どもを預ける先に苦労する先輩。保育所に入れず、母親に毎日赤ちゃんを預けて出勤する先輩。定期的に遠方の両親に泊まり込みの手伝いに来てもらう先輩。何とか家族や職場の協力を得て、必死に働いても、多額の保育料が家計を圧迫する。お金がすべてを解決するわけではないが、国や自治体は「それでも働け」というのならば、女性や家族、職場の努力に報いる何らかのメリットを提示すべきだ。18日の東京都議会で、女性議員が妊娠、出産や妊娠、不妊治療への支援について一般質問をしていた際に、男性議員から「早く結婚しろ」「子供もいないのに」などのヤジが飛んだとしてニュースになった。少子化問題をちゃかすだけの議員がいて、子どもを抱えて働く女性がいる。未婚で子どももいない私が言うとまたヤジが飛ぶのかもしれないが、それでもまだ、女性にもっと努力しろって言うんですかね? *4-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11201315.html (朝日新聞社説 2014年6月21日) 都議会の暴言 うやむやは許されぬ 議場が公の場であることをわきまえず、汚いヤジを飛ばして恥じることがない。名乗り出る潔さすら、持ち合わせない。そんな人が首都の議会にいるとは情けない。東京都議会の本会議。塩村文夏(あやか)議員が、東京は全国でとびぬけて晩婚晩産だと指摘し、妊娠・出産・育児に悩む女性への支援の充実を訴えていた。そこへ、男の声で「早く結婚した方がいいんじゃないか」などとヤジが飛んだ。塩村氏が絶句すると、議場に冷笑が広がった。暴言の出どころと疑われた会派の幹部は「臆測で言われても困る」と、発言者を特定せずに幕を引こうとしている。発言そのものも、事後の対応も、二重三重に罪深い。まず、少子化は、子どもを産み育てることを難しくしている社会構造の問題だ。それを、ヤジの主は「あなたが産めば解決する」と個人の問題にすりかえた。世の女性ひとりひとりに「あなたが産まないのが悪い」とメッセージを送ったに等しい。晩婚や晩産は男女双方の問題であるのは当然だが、そういう認識もまるで感じられない。この無理解こそ、既婚の女性に仕事か子どもかの二者択一を迫り、未婚の女性に結婚をためらわせる元凶ではないか。このまま発言者を特定もせずにうやむやにすれば、議会として暴言を許容したことになる。不心得な議員が一部にいたという話にとどまらなくなる。議員たちは選挙を通じて住民らに選ばれた代表である。その姿勢は、世の中の空気を映していると受け取られる。妊娠や出産の悩みを語ったり支援を求めたりすると、こんな仕打ちにあうのか――。職場や家庭で悩みを抱えている女性たちを、そんなふうに萎縮させる。そして、社会の難題の解決をますます遅れさせる。それがなにより罪深い。猪瀬直樹前知事のカネの疑惑の際は、あれほど厳しく「都民をなめるな」「自らえりをただせ」と迫った都議会である。自浄作用を働かせることを強く求めたい。塩村氏のツイッターへの投稿は、1日のうちに約2万回もリツイート(転載)され、全国に怒りが燃え広がった。ふつうの生活者の怒りが目に見える時代になった。あっという間に議員たちを取り囲んだ。救いはそこにある。これを教訓に、公に発言する責任の重さを全国の一人でも多くの議員にかみしめてもらいたい。 <出生率と文化度> *5-1:http://fathering.jp/repro/about_repro.html <要点のみ> リプロダクティブ・ヘルスは、安全で満ち足りた性生活を営み、子どもを持つか持たないか、いつ持つか、何人持つかを決める自由を持つことである。また、リプロダクティブ・ライツとは、すべてのカップルや個人が、自分たちの子どもの数、出産間隔、出産時期を自由に決定でき、そのための情報と手段を得ることができる人権であり、1995年、北京で開催された第4回世界女性会議で採択文章に明記された。 *5-2:http://ja.wikipedia.org/wiki/ (国及び地域別合計特殊出生率順位 2005-2010年) 順位 国及び地域 特殊出生率 世界の平均 2.56 1 ニジェール 7.15 、2 アフガニスタン 6.63 、3 東ティモール 6.53 、4 ソマリア 6.40 、5 ウガンダ 6.38 、6 チャド 6.20 、7 コンゴ民主共和国 6.07 、8 ブルキナファソ 5.94 、9 ザンビア 5.87 、10 アンゴラ 5.79 、11 ギニアビサウ 5.73 、12 マラウイ 5.59 、13 タンザニア 5.58 、14 マリ 5.49 、15 ベナン 5.48 、16 ギニア 5.45 、17 ルワンダ 5.43 、18 エチオピア 5.38 、19 赤道ギニア 5.36 、20 ナイジェリア 5.32 、21 イエメン 5.30 、22 シエラレオネ 5.22 、23 リベリア 5.14 、24 モザンビーク 5.11 、25 ガンビア 5.10 、26 パレスチナ 5.09 、27 セネガル 5.04 、28 ケニア 4.96 、29 中央アフリカ 4.85 、30 マダガスカル 4.78 、31 エリトリア 4.68 、32 カメルーン 4.67 、33 ブルンジ 4.66 、34 コートジボワール 4.65 、35 モーリタニア 4.52 、36 コンゴ共和国 4.41 、37 ガーナ 4.31 、38 トーゴ 4.30 、39 スーダン 4.23 、40 グアテマラ 4.15 、41 イラク 4.11 、42 パプアニューギニア 4.10 、43 トンガ 4.05 、44 パキスタン 4.00 、45 バヌアツ 4.00 、46 コモロ 4.00 、 47 サモア 3.99 、48 ジブチ 3.95 、49 ソロモン諸島 3.92 、50 サントメ・プリンシペ 3.85 、51 ミクロネシア連邦 3.62 、52 スワジランド 3.57 、53 ハイチ 3.55 、54 ラオス 3.54 、55 ボリビア 3.50 、56 ジンバブエ 3.47 、57 タジキスタン 3.45 、58 ナミビア 3.40 、59 レソト 3.37 、60 ガボン 3.35 、61 ホンジュラス 3.31 、62 シリア 3.29 、63 フランス領ギアナ 3.27 、64 サウジアラビア 3.17 、65 マヨット(フランス) 3.15 、66 ヨルダン 3.13 、67 フィリピン 3.11 、68 オマーン 3.09 、69 パラグアイ 3.08 、70 カンボジア 2.96 、71 ネパール 2.94 、72 ベリーズ 2.94 、73 ボツワナ 2.90 、74 エジプト 2.89 、75 イスラエル 2.81 、76 カーボベルデ 2.76 、77 インド 2.76 、78 ニカラグア 2.76 、79 フィジー 2.75 、80 リビア 2.72 、81 西サハラ 2.70 、82 ブータン 2.68 、83 ドミニカ共和国 2.67 、84 ペルー 2.60 、85 マレーシア 2.58 、86 エクアドル 2.58 、87 キルギス 2.56 、88 パナマ 2.56 、89 南アフリカ共和国 2.55 、90 ベネズエラ 2.55 、91 グアム 2.54 、92 トルクメニスタン 2.50 、93 コロンビア 2.45 、94 レユニオン(フランス) 2.44 、95 カタール 2.43 、96 スリナム 2.42 、97 ジャマイカ 2.40 、98 アルジェリア 2.38 、99 モロッコ 2.38 、100 バングラデシュ 2.36 、 101 エルサルバドル 2.35 、102 ガイアナ 2.33 、103 スリランカ 2.33 、104 ミャンマー 2.32 、105 カザフスタン 2.31 、106 グレナダ 2.30 、107 バーレーン 2.29 、108 ウズベキスタン 2.29 、109 アルゼンチン 2.25 、110 メキシコ 2.21 、111 フランス領ポリネシア 2.21 、112 インドネシア 2.19 、113 クウェート 2.18 、114 アゼルバイジャン 2.16 、115 アメリカ領ヴァージン諸島 2.15 、116 セントビンセント・グレナディーン 2.13 117 トルコ 2.13 、118 ウルグアイ 2.12 、119 グアドループ(フランス) 2.11 、120 ブルネイ 2.11 、121 アイスランド 2.10 、122 ニューカレドニア(フランス) 2.10 、123 アメリカ合衆国 2.09 、124 ベトナム 2.08 、125 モルディブ 2.06 、126 セントルシア 2.05 、127 バハマ 2.02 、128、 モンゴル 2.02 、129 ニュージーランド 2.02 、130 アンティル 1.98 、131 コスタリカ 1.96 、132 アイルランド 1.96 、133 アラブ首長国連邦 1.95 134 チリ 1.94 、135 マルティニーク(フランス) 1.91 、136 ブラジル 1.90 、137 ノルウェー 1.89 、138 フランス 1.89 、139 アルバニア 1.87 、140 スウェーデン 1.87 、141 北朝鮮 1.86 、142 レバノン 1.86 、143 チュニジア 1.86 、144 イギリス 1.84 、145 デンマーク 1.84 、146 オーストラリア 1.83 、147 イラン 1.83 、148 プエルトリコ(アメリカ) 1.83 、149 フィンランド 1.83 、150 タイ 1.81 、151 モーリシャス 1.78 、152 ベルギー 1.77 、153 中華人民共和国 1.77 、154 アルバ(オランダ) 1.74 155 オランダ 1.74 、156 アルメニア 1.74 、157 ルクセンブルク 1.66 、158 エストニア 1.64 、159 モンテネグロ 1.64 、160 トリニダード・トバゴ 1.64 、161 セルビア 1.62 、162 グルジア 1.58 、163 カナダ 1.57 、164 バルバドス 1.53 、165 キプロス 1.52 、166 モルドバ 1.50 、167 キューバ 1.50 、168 スイス 1.45 、169 マケドニア 1.44 、170 スペイン 1.43 、171 クロアチア 1.42 、172 チャンネル諸島[3](英王室領) 1.42 、173 チェコ 1.41 、174 ブルガリア 1.40 、175 ラトビア 1.40 、176 オーストリア 1.38 、177 ポルトガル 1.38 、178 ギリシャ 1.38 、179 イタリア 1.38 、180 ロシア 1.37 、181 スロベニア 1.36 、182 ハンガリー 1.35 、183 リトアニア 1.34 、184 ドイツ 1.32 、185 ルーマニア 1.32 、186 ウクライナ 1.31 、187 ベラルーシ 1.28 、188 スロバキア 1.28 、189 シンガポール 1.27 、190 日本 1.27 、191 ポーランド 1.27 、192 マルタ 1.26 、193 大韓民国 1.22 、194 ボスニア・ヘルツェゴビナ 1.21 、195 香港(中華人民共和国) 1.02 、196 マカオ(中華人民共和国) 0.95 PS(2014年6月24日追加):東京都議会のセクハラやじのうち、「早く結婚した方がいい」と言った鈴木都議は、「結婚できない人への配慮が足りなかった」と謝罪しているが、結婚するか否か、また、いつするかは個人の自由であるため謝罪の仕方が不十分だ。つまり、大きなお世話なのである。独身の国会議員は防衛大臣、環境大臣などを歴任された小池百合子さんはじめ、自民党の女性国会議員にも多い。 また、「まずは自分が産めよ」「子どもを産めないのか」「子どももいないのに」というやじには、誰も名乗り出ていないが、該当するのは、安倍首相夫妻はじめ、自民党政調会長の高市早苗さんなど多数おり、総務会長の野田聖子さんも少しひっかかる。つまり、「子どもがいない」「子どもを産めない」から半人前などということはないのに、頬かむりしていればそれで通ると考えているところが始末が悪いのである。 *6:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10202/77098 (佐賀新聞 2014年6月24日) 都議のやじ声紋分析、音源精査へ、別の発言者、特定難航も 東京都議会のセクハラやじ問題で、被害に遭った塩村文夏都議(35)が所属するみんなの党の会派は24日までに、鈴木章浩都議(51)以外のやじ発言者を声紋分析で特定するため、業者と相談しながら音源を精査する意向を固めた。ただ、発言に不明瞭なところもあり、分析には難航も予想されるという。同会派の両角穣幹事長は「自ら名乗り出てほしいと思う。それが難しいなら各会派がしっかり調査してほしい」と話している。同会派によると、議会局から提供を受けた一般質問の映像・音声データには、鈴木都議の「早く結婚した方がいい」という声は明瞭に残っていたが、ほかの「産めないのか」などのやじは、一部だけ聞こえたり、ほかの音でかき消されたりしていた。塩村都議が20日に議長宛てに提出を試み、不受理になった処分要求書では、鈴木都議が発言した結婚に関するやじのほか「まずは自分が産めよ」「子どもを産めないのか」「子どももいないのに」といった言葉もあったという。
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2014,06,05, Thursday
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2014.6.5 2014.4.17 *2-4より *3より 西日本新聞 日経新聞 (1)指導的地位にある女性の割合が低い理由 *1のとおり、安倍政権は、「女性の力が不可欠として、女性の活躍を進めるために、『2020年に指導的地位にある女性の割合を30%程度にまで増やす』とした政府目標を実現させるよう、企業・国・地方自治体に対して、女性の幹部登用についての目標設定や自主行動計画の策定、情報開示を義務づけ、来年の通常国会に関連法案提出を目指す」とのことで、よいことである。 しかし、その対策として、「働く女性が子どもを安心して預けられる環境の整備」「保育士確保プラン」「子育て支援員制度」「放課後児童クラブ(学童保育)」「家事・育児支援サービスの利用者負担軽減」しか検討しないのは、指導的地位にある女性の割合が低い理由を、「女性は、家事や子育てのため仕事を途中で辞めるからだ」とのみ考えている点で不十分である。 実際には、*2-1、*2-2のように、生物学の常識を覆す発見をした小保方氏に対しては、メディアを中心に、本質ではないことでしつこくあら探しをしてケチをつけ、*2-4のように、再現実験を行おうとしている段階で、理研が進めるSTAP細胞の検証実験に参加させるとして(?)、小保方氏にSTAP細胞の主要な論文を撤回することを同意させた。そして、これにより、小保方氏の実績はなかったことになった。 また、*2-3は、ハーバードで研究してきた小保方氏に対し、理研が英語の面接を行わなかったことを例外として問題視しているが、英語力で科学者としての能力が決まるのではなく、英語の論文を読み書きでき、英語でプレゼンテーションでき、英語で外国人研究者とコミュニケーションして共同研究できればよいため、ハーバードで研究していた小保方氏に対して、この批判は当たらない。それが嘘だと思うなら、日本の全研究者にTOEFLの試験をしてみればわかる。つまり、小保方氏が若い女性科学者だからこういうことを言ったのであり、小保方氏が40歳前後の男性研究者なら同じことは言わなかっただろう。 なお、理研の再現実験が順調に進まず、外部識者からなる改革委員会の岸委員長が、「科学者として再現実験させることが責任を果たすことになる」と語ったそうだが、明治時代に繭から絹糸を紡いで外貨を稼いだのが少女たちだったことを考えれば、偉そうなことを言っている上司の男性の方が、このような実験がうまいとは限らない。 (2)「生めよ増やせよ」論が、しつこい *3のように、「①日本の子どもが減り続けているので、社会全体で人口減への危機感を共有し、少子化対策を急がなければならない」「②出生数と死亡数の差である自然増減はマイナス24万人と、3年連続で20万人を超えた」とする論調が、大げさに、かつ、しつこく繰り広げられている。しかし、このブログの2014.5.5を始めとして「年金・社会保障」や「人口動態・少子高齢化・雇用」のカテゴリーに、私が何度も書いているように、①については、子どもを持ちたい人が持てるようにするための処方箋は既にできており、それは「生めよ増やせよ」論の展開ではない。また、②は、人口ピラミッドから見て当然のことであって、今頃、脅しをかけて大げさに騒いでいるのがおかしいのである。 そして、「子どもを持つ持たないは個人の選択であり、望んでも授からない夫婦もいるので、女性が圧力と感じることがないよう丁寧に対応してほしい」と申し訳程度に記載してあるが、(1)と(2)を合わせれば、「女はどうせ大した能力はないから、子どもを産むのが一番の仕事であり、望んでも授からない夫婦は気の毒なのである」ということになり、失礼千万だ。 私は、子どもか仕事かの二者択一をさせられたため、自己実現のために仕事を選んで子どもを作らなかったが、私の夫は、そういう私の能力を評価して尊敬し護ってくれ、それは、(子どもや家族ではなく)私自身に対する愛であるため、私の結婚生活は大変幸せだったことを記載しておく。それが本当の夫婦愛であり、幸せではないのか。 *1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10202/70465 (日経新聞 2014年6月3日) 成長戦略で女性登用の目標義務化、企業と国、自治体に 政府が今月まとめる新たな成長戦略に盛り込む女性の活躍推進策の全容が3日、分かった。企業と国、地方自治体に対し、女性の幹部登用についての目標設定や自主行動計画の策定、情報開示を義務づけ、来年の通常国会に関連法案提出を目指すことなどが柱。企業の取り組みを進めるため、優遇策も検討し、2014年度中に結論を出すとした。安倍政権は減少しつつある労働力人口の確保には女性の力が不可欠としており、女性の活躍を進めている。法整備によって「20年に指導的地位にある女性の割合を30%程度にまで増やす」とした政府目標を実現させる狙いがある。推進策では、国家公務員の女性採用や幹部登用を拡大。5月末に発足した内閣人事局のほか、全府省の次官級で構成する「女性活躍・仕事と家庭の調和推進協議会」を新設し、府省ごとの女性登用の目標や進み具合を公表する。女性の社会保障制度や配偶者控除などの税制の見直しについては、政府の経済財政諮問会議の下に新たな議論の場を設け「年末までに一定の結論を得る」とした。働く女性が子どもを安心して預けられる環境の整備にも取り組む。保育所の待機児童の一因となっている保育士不足を解消するため、数値目標と期限を示した工程表を「保育士確保プラン」として策定。子育て経験がある主婦らを対象にした「子育て支援員」(仮称)の資格を創設する。共働き家庭などの小学生を放課後に校内や児童館で預かる「放課後児童クラブ」(学童保育)の定員を19年度までに30万人分増やす。このほか、家事・育児支援サービスを安価で安心して使えるように、利用者負担の軽減などを検討する。 *2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASG584SMVG58PLBJ007.html?ref=reca (朝日新聞 2014年5月8日) 小保方氏側「結論ありきで残念」 再調査せぬ方針に 理化学研究所がSTAP細胞の論文に研究不正があるとした調査結果に対する不服申し立てを退けたことを受け、理研の小保方晴子ユニットリーダーの代理人の三木秀夫弁護士は8日午後、大阪市内で、「結論ありきだ。腹立たしく残念に思っている」と報道陣に話した。その上で、英科学誌ネイチャーに掲載されたSTAP細胞の論文を撤回する意思はないことを改めて表明した。三木弁護士は、理研が不服申し立てを退けた報告について「何の連絡もないのに、診断書が出ていないとか一方的に書かれている」と反論した。小保方氏は理研の決定を聞いて「何を言っても通らない、絶望感にとらわれている様子」だという。 *2-2:http://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20140605&c (日経新聞 2014.6.5) マウスの間違い、説得力なくした 上昌広・東京大学特任教授(医療ガバナンス)の話 細胞の遺伝子などを解析した結果、マウスの種類が違っていたのは非常に大きな影響力がある。小保方氏側は単純なミスというかもしれないが、辻つまが合わず説得力はなくなった。ただ理研は撤回を理由に再調査しないというが、調査しなければ様々な不正が「なかったこと」になる。再発防止のためにも徹底的に調査をすべきだ。 *2-3:http://digital.asahi.com/articles/ASG6504LXG64ULBJ024.html (朝日新聞 2014年6月5日) 理研、小保方氏に英語面接せず 特例的に採用か 理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)が2012年12月に実施した小保方晴子ユニットリーダーの採用面接で、英語のヒアリングを実施せず、2通必要な推薦状が1通もない状態だったことがわかった。CDBがまとめた報告書案で明らかになった。CDB側が当時、STAP研究を重視し、実績のない小保方氏を特例的に採用した状況をうかがわせている。CDBはSTAP細胞の研究不正を受け、小保方氏の採用過程を含む組織上の問題を点検していた。 *2-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140605&ng=DGKDASGG04027_U4A600C1EA2000 (日経新聞 2014.6.5) 疑惑の果て、白紙 「世紀の発見」STAP論文撤回、小保方氏、再現実験には参加も 理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーは、STAP細胞の主要な論文を撤回することに同意した。理研が4日、小保方氏から同意するとの書面を受け取ったことを明らかにし、小保方氏の代理人も事実関係を認めた。撤回に反対していた主要著者のチャールズ・バカンティ米ハーバード大学教授も同意しており、英科学誌ネイチャーが論文を取り下げれば研究は白紙に戻る。科学技術立国に向けて研究不正を防ぐ仕組みづくりが課題となりそうだ。代理人の三木秀夫弁護士は、理研が進めているSTAP細胞を再現する「検証実験に参加するためには(撤回に)応じざるを得なかった」と説明した。小保方氏は本意ではないとして「仕方がなかったんです。悲しいです」と話したという。一方、理研広報室は4日、「再現実験参加を条件に撤回に同意させたことはない」と話した。小保方氏は論文撤回に同意する書面を3日、共著者の一人である理研の丹羽仁史プロジェクトリーダーに提出した。撤回に同意したのは「アーティクル」と呼ぶ主要な論文で、STAP細胞の作製法や万能性に関する内容。小保方氏ら8人が著者に名を連ねる。アーティクルの撤回には原則、共著者全員の同意が必要。ネイチャーのニュースサイトは4日、バカンティ教授が5月30日に論文撤回を求める書簡をネイチャーに送っていたと明らかにした。これを受け小保方氏も同意に転じた可能性があるという。ネイチャーの広報担当者は「我々は独自に調査しており(論文を撤回するか)結論に近づいている」とコメントした。小保方氏はSTAP細胞の存在を主張し、撤回を強く否定していた。今回の同意の背景には、論文の不正で新たな疑惑が相次いでいるうえ、STAP細胞の存在を確かめる再現実験が難航していることがある。理研関係者は「ここまで出てくるとSTAP細胞の存在は疑わざるを得ない」と語る。理研は3日、論文に掲載した遺伝子データの調査結果を公表。論文でSTAP細胞の遺伝子としていたデータを調べたところ、ほかの万能細胞である胚性幹細胞(ES細胞)が混入した疑いが強まった。理研が不正と認定した画像の切り貼りなどの行為に加え、新たな疑惑が浮上した格好。科学的証拠から疑問が投げられ、もし裏付けられれば研究自体の存在が完全に消える深刻な内容だ。次々と明らかになる論文の不正疑惑に、小保方氏はかたくなに拒否していた撤回をせざるを得ない状況に追い込まれたといえる。再現実験は思うように進んでいない。「『もう限界』と泣きが入るぐらいだ」(理研関係者)という。ただ理研は予定通り来春まで続ける考え。外部からは小保方氏を再現実験に参加させるべきだとの意見がある。理研の外部識者からなる改革委員会の岸輝雄委員長は「科学者として再現実験させることが責任を果たすことになる」と語る。 *3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140605&ng=DGKDZO72292050V00C14A6EA1000 (日経新聞社説 2014.6.5) 人口減への危機感共有し少子化対策急げ 日本の子どもが減り続けている。2013年の出生数は前年より約7千人少ない103万人弱にとどまり、過去最少を更新した。1人の女性が生涯に産む子どもの数の推計である合計特殊出生率はわずかに上昇したが、1.43と依然、低水準だ。母親となる年代の女性の数が減っており、出生率がわずかに改善しても子どもの数は増えない。出生数と死亡数の差である自然増減はマイナス24万人と、3年連続で20万人を超えた。社会全体で人口減への危機感を共有し、少子化対策を急がなければならない。なにより大事なのは、結婚したい、子どもを持ちたいという若い世代の希望がかなうような環境を整えることだ。雇用が安定せず、結婚や出産に踏み切れない人は多い。就業支援や、非正規雇用の処遇改善などを通じ、将来への不安を和らげる必要がある。 経済的な負担が重くなりやすい多子世帯への支援もしっかり考える必要があるだろう。保育サービスの充実や、男性を含めた働き方の見直しも、引き続き進める必要がある。長時間労働が常態化した硬直的な働き方のままでは、女性は仕事か子育てかの二者択一を迫られる。国や自治体だけでなく、企業経営者などの努力が求められる。長年の少子化傾向を食い止めることは容易ではない。高齢者に偏りがちな社会保障の配分をどう工夫するか。財源の確保を含め、本格的に議論する時期が来ている。ここに来て、「50年後に1億人程度」という人口の目標値の議論が盛んになってきた。ただそれには、合計特殊出生率が2を超えて上昇することが前提になる。子どもを持つ持たないは個人の選択であり、望んでも授からない夫婦もいる。女性が圧力と感じることがないよう丁寧に対応してほしい。子育てを阻む壁を取り除き、若い世代の希望に寄り添う。その結果として子どもが増えていく道筋をつくりたい。このまま少子化が進むと、労働力不足や国内市場の縮小などで経済活動が勢いを失い、社会保障制度の土台も揺らぎかねない。少ない人口でも社会の活力を維持する方策を考えることはもちろん大事だが、それだけでは足りない。子どもたちは、未来だ。座して人口減を待つのか。危機感を共有し、一層の対策を打ち出すのか。時間は残されていない。
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2014,05,22, Thursday
*7より (1)世界農業者機構(WFO)における女性の地位向上宣言 *1のように、世界農業者機構は、総会で、「女性の地位向上が農業・農村の開発や成長に欠かせない」とする宣言を採択し、農業分野でも女性の地位向上が進み始めた。確かに、「女性農業者は世界の食料生産の半分以上、アフリカでは最大で80%を担っている」にしては、これまで、農業分野における女性の経営や技術能力の開発、男女平等は遅れていたと言わざるを得ない。 日本では、*5のように、「農家の高齢化に歯止めがかからないため、担い手の育成・確保が最重要課題だ」と言われつつ、女性は、農業の手伝いではあっても担い手に数えられてはいない。しかし、生活に密着した農業製品を作るに当たって、仲間づくり、地域貢献、政策提言、相互研鑽などを行う時、そのメンバーに女性が30%以上含まれていれば、議論の内容はさらに地に足のついた実利あるものになると考える。何故なら、栄養・食品・保育・介護などは女性が担当している場合が多いため、その知識や要請を踏まえた多方面からの議論ができるからである。 そのような中、*2のように、日本で最も女性差別がきついと思われる鹿児島県のJAで、女性の総代が前年度より120人増え、女性総代比率が6.5%となったのは喜ばしいことである。しかし、6.5%という割合は、2020年までに女性管理職を30%にするという国の目標には遠く及ばず、国会議員の女性比率よりも低いということを忘れてはならない。同様に、地方議員も、女性がいなかったり、全体の5%以下だったりする地域が多く、これが、政治における社会保障政策の遅れに繋がってきた。 (2)女性に能力ある人材がいないのではない 「仕事上、男女平等になっておらず、管理職に占める女性割合が少ない」と言うと、必ず「女性は能力とやる気のある人材が少ない」「家庭との両立ができずに辞める人が多い」と反論される。しかし、農業は最もわかりやすい例で、女性が退職するわけでも、家庭と両立しないわけでもないのに、担い手としての女性の認定やJAの女性総代比率は低いのであり、これは、古い型の“日本文化”が原因である。 具体的には、*3のように、女性グループが林業を盛り上げるために活動したり、女性が狩猟したりするケースもある。山からとれる製品にも、家、家具、食器、食品の材料など、生活に身近なものが多いことを考えれば、今まで女性がその分野に少なく、女性のセンスが活かされてこなかった方が不思議なくらいだ。ちなみに、東大農学部等、関連する教育機関は女子学生を差別していない。 また、*4のように、農村女性の起業数が2012年度に調査開始以来最多となり、グループ経営は平均60歳以上の経営体が7割に上って高齢化が進んでいるものの、39歳以下の若手女性の参入も目立つとのことである。起業活動の内容は、「食品加工」が全体の75%を占めるそうだが、産地でとれたての食材を加工すれば、美味しくて付加価値の高いものができることは言うまでもない。 *1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26806 (日本農業新聞 2014/3/30) 女性の地位向上宣言 会長にケンドール氏 WFO総会閉幕 【ブエノスアイレス(アルゼンチン)山田優編集委員】当地で開かれていた世界農業者機構(WFO)の第4回年次総会は28日、女性の地位向上が農業・農村の開発や成長に欠かせないとする宣言を採択し閉幕した。また、2代目の会長に英国農業者連盟元会長のピーター・ケンドール氏を、副会長にザンビア全国農業者同盟出身のエベリン・ヌレカ氏をそれぞれ選出した。2015年の総会はイタリア、16年はオーストラリアで開催することも決まった。80カ国から100人以上が参加して3日間、世界の農業者が抱える課題や解決策などを議論した。WFOは11年に発足。順調に加盟団体を増やし、財政基盤も安定したとの報告があった。ロバート・カールソン前会長は「国連など国際社会の場で農家の声を代表する団体としてWFOが着実に存在感を増してきた」と胸を張った。昨年の新潟総会に続き焦点になったのが、女性の能力開発の強化だ。総会では「女性農業者は世界の食料生産の半分以上、アフリカでは最大で80%を担っている」として、女性の経営、技術能力の開発、男女平等を実現するための政府による制度の確立などを支援する方針を決めた。また各国で日本を追いかけるような形で農業の高齢化が進んでいる。若い農業者の仲間づくりや育成など日本の取り組みにも注目が集まった。28日の「青年」の分科会でパネリストとして登壇したJA全青協の山下秀俊会長は、地域社会への貢献や政策提言、相互研さん、次世代の育成、アジアでの農業支援など取り組みを、事例を挙げて報告した。 ●会長就任会見 地球規模の課題 農業が対応貢献 WFOの年次総会で会長に選出されたピーター・ケンドール氏は28日、ブエノスアイレスで記者会見した。「これまで『農業が問題だ』と言われてきたが、『農業が未来を開く』と期待されるようになってきた」と指摘。食料需要の増加や気候変動など地球規模の課題への対応に農業が貢献できるとの見方を示した。また、「収益性を高めるため農家が力を合わせて販売力を強めていくべきだ」として、スーパーマーケットなどの巨大な購買力に対抗していく必要性を強調した。 *2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27609 (日本農業新聞 2014年5月10日) 女性総代が120人増 比率6.5%へ上昇 鹿児島 JA鹿児島県女性組織協議会が、女性の総代登用を県内JAに働き掛けた結果、2013年度末時点で457人と、前年度より120人増えた。女性総代比率は6.5%となり、同1.8ポイント高まった。3年間では209人(3ポイント)増えた。「女性総代比率10%以上」の目標は、県内15JAのうち6JAが達成。前年度より3JA増えた。JA女性部は、リーダー学習会で優良事例を学び、「JA役職員と語る会」などで女性枠について協議。JAは運営委員会などで女性総代の選出について協力を呼び掛けた。13年度の女性理事は、11JAで15人。JA鹿児島県中央会も女性理事を1人登用した。14年度は中央会の指導指針を踏まえ、改選JAで女性理事が増え、23人になる見込み。正組合員の女性比率は、県平均で20.4%。目標の25%達成は6JAと、徐々に増えてきている。県女性協の事務局は「3月に策定した県独自の女性組織活性化プランでも、女性のJA運営参画による女性パワーの発揮は大きな柱としている。JAと話し合いながら、目標達成JAを増やしていきたい」と話している。 *3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27526 (日本農業新聞 2014年5月5日) 若者に林業PR 女性グループ 東京で映画試写 林業を盛り上げようと活動する女性グループ林業女子会@東京は4日、東京都千代田区で、林業を題材にした映画「WOOD JOB(ウッジョブ)!~神去なあなあ日常」の試写イベントを開き、20、30代中心の若者約100人に林業の魅力をPRした。イベントは、映画が10日から全国公開されることに先立ち、林業や農山村部で働くことに関心を持ってもらおうと開いた。映画は、都会育ちの青年がひょんなことから林業に従事し、成長していく青春ドラマだ。試写後、林業女子会@東京のメンバー、真鍋弥生さん(25)が司会を務め、矢口史靖監督と、撮影に協力した三重県の林業家、三浦妃己郎さんらが、映画や林業について話し合った。矢口監督は「映画では、林業の面白さだけでなく、厳しくて危険なことや村で暮らす大変さも描いた。見てもらえれば、林業を自分の人生の選択肢に入れる若者も増えるだろう」と自信を見せた。三浦さんは「林業を振興しようといろいろ頑張ってきたが、この映画はそれを超える波になると思う。今年は林業にとってルネサンスになる」と語った。林業女子会@東京の廣田茜代表は「映画を通じて自然や林業、山間地の魅力を感じてほしい」と期待を寄せた。 *4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26812 (日本農業新聞 2014/3/31) 農村女性の個人起業 過去最多 12年度 ネットで多様化 若手の台頭も 農村で暮らす女性個人の起業数が2012年度は調査開始以来、最多となり、全体のほぼ半数を占めたことが農水省の調べで分かった。主流だったグループ経営が高齢化による休業などで減ったことや、直売所やインターネット環境の整備で販路が多様化したことが要因。39歳以下の若手女性の参入も目立ち、世代交代の兆しが見えてきた。全体の起業活動数は9719件と、2010年度の調査(9757件)に比べて減った。ただ、女性が個人で起業するケースは4808件と同335件増え、グループ経営は4911件と同373件減った。年齢層で見ると、個人経営では39歳以下の起業が13件増加。グループ経営は平均60歳以上の経営体が7割に上り、高齢化が進んでいることがうかがえた。起業活動の内容は、「食品加工」が全体の75%を占めた。一方、自ら「農業生産」に乗り出す例が19%増、農家民宿やレストランなど「都市との交流」は15%増、直売所やインターネットなどで農産物などを販売する「流通・販売」に取り組む例は9%増え、多角化が進んでいる。同省は「個人でも売りやすい環境が整い、柔軟な発想を生かした事業で多角化するなど起業活動は量から質へと変化している」(就農・女性課)とみる。ただ、全体の半分は売上高300万円未満。ビジネスとして軌道に乗せるには、事業を担う「人手の確保」や「販売ルート、集客の確保」などが課題だ。 *5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26790 (日本農業新聞 2014/3/29) [ニュースアイ] 担い手確保が争点 農政改革関連法案 国会審議入り 政府・与党と野党双方の農政改革関連法案が衆院で審議入りした。政府・与党は経営所得安定対策の対象者を見直し、担い手育成を加速させる方針。野党は戸別所得補償制度で全ての販売農家の営農を維持することで担い手育成につなげる考え。農家の高齢化に歯止めがかからない中、担い手の育成・確保が最重要課題であることは、与野党とも一致する。その実現に向けた考え方と具体的な方策をどうするかが、国会論戦のポイントになりそうだ。 ●政府・与党=対象絞り構造転換 「戸別所得補償制度は全ての販売農家を対象としていたから、担い手への農地集積が遅れた」。安倍晋三首相は、法案が審議入りした27日の衆院本会議でこう強調した。こうした認識に基づき、政府・与党は担い手経営安定法を改正し、経営所得安定対策の対象者を見直すことにした。法案には、畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)、米や麦、大豆などの収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)の対象を認定農業者と集落営農、認定新規就農者にすることを盛り込んだ。2015年産からの適用を目指す。対象者に要件を設けるのは農業構造を変えていくためだ。林芳正農相は「食料を安定供給するには効率的、安定的な農業経営が相当部分を占める構造にすることが重要」と考える。このため全販売農家を対象とせず自ら経営改善の計画を立て、実現しようとする認定農業者などを対象とし、担い手育成を加速させる。ただ、面積は問わないことにした。ナラシ対策の認定農業者4ヘクタール、集落営農20ヘクタールなどの要件は15年産から廃止する。面積規模要件は07年に導入した旧品目横断的経営安定対策で設けたが、“選別政策”との批判を受けたことへの反省だ。門戸を広げた理由には、当時より担い手不足が深刻になっているという農村の厳しい現実もありそうだ。 ●野党=全農家の意欲促す 担い手育成を重視する政府・与党に対し、戸別所得補償制度法案を提出した民主、生活、社民の野党3党は「静かな構造改革」を打ち出す。同制度があれば、農家が自らの規模を見直す動きが広がると考える。同制度は全販売農家が対象。民主党の大串博志氏は「規模や形態で差別しない」と政府・与党との違いを強調する。販売農家の営農を維持し、食料の安定供給や多面的機能の維持につなげる。政府・与党の「ばらまき」批判に、民主などの野党は「農業構造を変える働きも備えている」と反論する。米の定額払い(10アール1万5000円)などで全国一律の単価を設定すれば、2ヘクタール以上だと利潤が確保でき、規模が大きいほど利潤も増えることを論拠に挙げる。2ヘクタール以下の農家は規模拡大をしたり、高齢なら離農したりすることを想定。2ヘクタール以上なら、一層の規模拡大の動機づけになると見込む。結果、農業構造が変わっていくというのが民主などの野党の主張だ。 ●米の扱いも正反対に 主食用米への支援の在り方も政府・与党と野党の主張は正反対だ。政府・与党は「高関税の国境措置で守られている」ことから、米の直接支払交付金に理由はないと判断。10アール1万5000円の単価を半減し、18年産から廃止する。野党は「コスト割れしている作物」と位置付け、生産調整の参加を条件とした定額払いを掲げる。政府・与党の農政改革で、米の直接支払交付金を見直す意義として、自民党の齋藤健農林部会長は「外国産との競争にさらされていない米を麦、大豆と同等に論じることはできない」と訴える。主食用米向けの支援を縮小する半面、非主食用米の支援を手厚くした。飼料用米や米粉用米で「数量払い」を導入し、産地交付金による追加支援も用意した。主食用米からの転換を促し、水田フル活用と稲作農家の経営安定を目指す。一方、民主などの野党は戸別所得補償制度法案に定額払いの法制化を盛り込んだ。これまでと同様、生産調整への参加を条件とした。民主党の玉木雄一郎氏は「米もコスト割れが生じている。国境措置以外は不要とする政府・与党案とは、根本的な考え方が異なる」と指摘。戸別所得補償制度の本格実施後、過剰作付けが4万ヘクタールから2万ヘクタール台に減った実績などを踏まえて、支援の必要性を訴える構えだ。来週には農林水産委員会での法案審議を予定する。林農相は28日の会見で政府法案について「農政改革の重要部分を占める。制度が安定するよう現場では法制化の要望が強い」と強調。成立に向けて「丁寧に議論し、与野党の理解を得るよう努力したい」と述べた。 PS(2014.5.22追加):*6のように、安倍首相は女性の活躍に理解があり、このことにアクションが速いのはGoodだが、子どもか仕事か(もしくは結婚か仕事か)の二者択一を迫る社会は、男女共学の教育を受けた女性たちが社会に出て働き始めた1970年代に終わっておくべきであり、正しくは40年遅れだ。 *6:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/66167 (佐賀新聞 2014年5月22日) 首相、学童保育の定員拡充を表明、「30万人分受け皿つくる」 安倍晋三首相は22日、共働き家庭や、ひとり親家庭の小学生を放課後に校内、児童館などで預かる「放課後児童クラブ」(学童保育)に関し「5年間で30万人分の受け皿をつくっていきたい」と述べ、定員を拡充する方針を正式に表明した。横浜市内の関連施設を視察後、記者団に述べた。政府は2015年度から本格実施し、19年度末までの5年間で実現を目指す。6月にまとめる新たな成長戦略に盛り込む見通しだ。学童保育を充実させることで「女性の活躍」を推進するとともに、少子化対策につなげる狙いがある。首相は横浜市神奈川区の市立中丸小学校内で実施されている「放課後キッズクラブ」を見学。市や学校関係者から説明を受けた後、放課後に教室で読書や塗り絵をしていた小学生と交流し、紙飛行機作りも一緒に体験した。安倍政権は昨年、保育所の待機児童解消のため17年度までの5年間で40万人分の保育の受け皿を整備する計画をまとめた。今回、小学生を対象とした学童保育の定員拡充も打ち出し、小学校入学を機に親が仕事と育児を両立できなくなる「小1の壁」の解消を目指す。 PS(2014.5.23追加):*7のように、農業の担い手候補は、農家出身者だけではないため、今まで農学部出身者が農業と関係のない仕事に就かなければならなかったことが、もったいなかったのだ。そのため、農業法人で働いたり、実務研修を積んだ後で土地を借りて独立農業者になれたりする仕組みがあれば、それらの人材を活かせる。ただし、農家出身でない若者は、自然の中でできる遣り甲斐のある職業として農業を選んでいるのであって、古い型のムラ意識や束縛を好んでいるわけではないことを忘れてはならない。また、機械やアルバイトを使えれば、女性も施設園芸だけでなく何でもできる。 *7:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27848 (朝日新聞 2014年5月22日) 農の担い手 多様化 映画・漫画で注目度上昇 農大校入学者アンケート 農業の担い手育成を目指す農業大学校の入学者に変化が出てきている。今春、入学した学生の中で、実家が農家以外の出身者の割合が高まり、女性も増えてきていることが日本農業新聞のアンケートで分かった。増加の背景には、今春に映画化された農高生らの成長と青春を描いた漫画「銀の匙」などメディアの効果もうかがえる。 ●職業選択の一つに アンケートは、北海道から沖縄県まで1道2府39県の農業大学校計42校に対して行った(有効回答41校)。2014年度の入学者数のうち、農家と農家以外の出身者の割合を尋ねたところ、41校中21校が「農家以外の出身者の方が多い」(51%)と回答、過半を占めた。一方「農家出身者の方が多い」は17校(42%)にとどまった。特に、農家以外の出身者が多いとの回答が目立ったのは中部・関東地方。中部6県(信越含む)のうち新潟以外の5県が「農家以外の出身者の割合が高い」と回答。中でも岐阜、静岡、愛知の3県の農業大学校は「農業法人への就職が増えた」と回答。それが農家以外の出身者の入学増につながったとしている。「銀の匙」などのメディア効果に言及した学校も相次いだ。大消費地・東京を抱える関東では「酪農を題材とした漫画などの影響から酪農コースに興味を持つ受験生が増えている」(埼玉)、「映画や漫画でさらに農業の(良い)イメージが高まってくれるとよい」(神奈川)と期待する。他の県からも「映画を見て農業に興味を持ち、農業を志そうという農家以外の出身 者の学生が多い」(山形)、「映画や漫画を通じて学生が農業に興味を持ってくれるのは非常にありがたい」(福島)などの意見が相次いだ。女性の入学者も目立つ。入学者の男女比を尋ねたところ、全体の3割に当たる14校で「女性が例年より増えた」と回答。特に香川は入学者31人中15人が女性だった。「例年は2割程度だが今年度は特に高い」という。高知は女性の入学者が過去5年平均で17%だったが今年は24%に。栃木も「2年連続で女性の入学が増えた」という。静岡は前年の女性比率35%から43%に上昇。80人中34人を女性が占め、「施設園芸は女性でも参入しやすい。農業のイメージが刷新され、職業選択の一つとして捉えられるようになったのではないか」と増加の背景を分析する。ただ、農業大学校全体で見れば定員割れは続いており、「定員より入学者が多い」と回答したのは4校(9%)。34校が定員割れだった。 ●女性「生活密着産業」をイメージ 博報堂 荒川あゆみ氏に聞く 農業大学校に農家以外の出身者や女性の入学者が増えてきている背景に何があるのか。食と農業に詳しい 博報堂テーマビジネス開発局の荒川あゆみプラナーに聞いた。 ―農家以外の入学者が過半を占めました。 農水省の青年就農給付金など新規就農者への助成制度が充実したことが一役買っている。総務省による「地域おこし協力隊」でも、任期終了後も地域に定住し、就農する人が出てきた。 ―農業を扱った漫画の流行なども関係しているようですが。 農業の世界を描いた漫画が流行すれば当然、若者の関心は農業に向くだろう。入学者に農家以外の出身者が多いというのは、現場の厳しさを知っている農家の親より、農家でない親の方が就農に反対をしないからだと思う。メディアで農業を格好良く描いても、農家は現場との隔たりを感じるだろうが、農業以外の家庭は農業を職業選択の一つとして受け入れやすい。 ―女性の入学者も目立っています。 グリーン・ツーリズムの普及で農業体験をしたことがある女性が増えてきた。若者が農業に触れる機会が増えたことが入学増につながったといえる。また、直売所で特徴ある農産物を販売したり、インターネットで付加価値のある加工品販売などに取り組んだりする女性たちが増えてきた。就農を希望する女性たちが思い描くのは大型トラクターでの大規模農業というより、少量多品目の野菜栽培など「生活密着産業」としての農業ではないか。少量でも良い品であれば買ってくれる人がいて、生活が成り立つというイメージだ。 ―高齢化が進む中、農業に未来はありますか。 女性が丁寧に作った農産物に価値を見いだせる消費者と社会をつくるべきだ。そうなればメディアのつくった一過性のブームではなく持続可能な現象となる。直売所に足を運び、農家が丁寧に生産した農産物に対価を払うファンはとても多い。希望はある。
| 男女平等::2013.12~2014.6 | 11:33 AM | comments (x) | trackback (x) |
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2014,04,30, Wednesday
キャリア・ウーマン 銀行員 一級建築士 警察官 (1)本物の先駆者は誰か 1)男女雇用機会均等法に関する記述の間違い *1には、男女雇用機会均等法の説明として、「1986年の施行で、企業に対して募集や採用、昇進などで性別を理由に差別することを禁じた。妊娠や出産により女性を降格したり、不当な配置換えをしたりすることも禁じている。職場に残る男女間の格差をなくすため、政府に対しても、企業が女性の登用を増やすことを後押しするよう求めている」と書かれている。 しかし、この中には、事実を報道すべき新聞にあってはならない故意の間違いが2箇所ある。故意だと考える理由は、改正の経緯はちょっと調べればわかる筈で、この間違いにより男女平等を推し進めたのが実際には反対していた人たちであったかのような誤解を与えているからである。最近のメディアは、研究者のデータ改ざんがあったとして、世紀の発見をした研究論文のあら探しをして些細なことで研究者に謝罪させて喜んでいるが、最も大きな罪は内容で嘘を書き、国民をミスリードすることだ。そのため、朝日新聞は、データ改ざんよりも重要な意図的な内容の間違いについて、真摯に謝罪すべきである。 その間違いは、「http://wol.nikkeibp.co.jp/article/column/20091207/105154/」に書かれているように、1)1986年に施行された男女雇用機会均等法は、周囲の抵抗が強くて性別を理由に差別することを禁じることができず、努力義務になったこと 2)禁止規定になった改正男女雇用機会均等法は、1997年に成立して1999年4月1日から施行された ということだ。 そして、その最初の男女雇用機会均等法を作ったのは、東大が女性の入学を許した最初の頃に東大法学部に入学して卒業し、厚生労働省の婦人少年局長(後に文部科学大臣)をした赤松良子さんであり、男女雇用機会均等法をまとめるのには苦労したと聞いている。また、1997年の改正は、私が、当時の通商産業省・経済企画庁を通して行ったもので、この時は、「日本経済のためにも女性の登用は不可欠」という切り口で進めたため、赤松良子さんが、「最初に比べれば、とても信じられなかった」と言われたほど、すんなり通った。私は、公認会計士として多くの機会をもらって真剣勝負で働いていたが、同時に社会のジェンダーによるやりにくさも感じていたため、男女雇用機会均等法の改正を進めたのだ。 なお、*1には、「安倍政権も女性の登用を促している」と書かれているが、安倍首相に最初に各国の調査資料を添付して手紙を送り、女性の登用を促してもらっているのも私だ。 2)すでに存在する制度の中で頑張っただけの人を先駆者とは言わないだろう *1のように、「大手の銀行や証券会社で、この春、女性役員が相次いで生まれている」というのは結構なことだが、これを「均等法第1世代が先駆者」と言うのは言いすぎだろう。何故なら、まだ努力義務だったとはいえ、1986年に男女雇用機会均等法が施行され、「男女の機会均等があるべき姿だ」と法律で定められた中では、働く女性に対してあからさまな差別はなかったからである。もちろん、巧妙に行われる差別はそれ以後もずっとあるが、「先駆者」という言葉は、男女雇用機会均等法を作った赤松良子さんや、与謝野晶子、市川房江などのように、すこぶる先進的な発想で道なきところに道をつけ、後世のためになった人に使うべきである。 *1には、旧住友銀行の工藤禎子さんのことも記載されている。日本の銀行は1986年以降も女性の登用に消極的で女性管理職はおらず、ケミカルバンク(1986年頃、私はプライス・ウォーターハウスでここの監査を担当していた)の女性管理職が、取引先である日本の銀行に電話をすると、「上の人を出せ(女の子の相手はしないという意味)」と言われるので、「うちは、どこまで行っても女です」と返したことが語り草になっていたくらいである。つまり、せっかく女性を登用する会社があっても、取引相手の理解がないとやりにくいのであり、金融機関が今頃やっと最初の女性役員を出しているようでは、銀行の女性経営者に対する融資に偏見があることは推して知るべしだ。 (2)女性上司に対する部下のあるべき態度 *1に、「課長に昇進した年、男性中心の職場で部下への接し方に悩むこともあった」等々が書かれているが、私の場合は、悩むことなく男性上司と同じ行動をした。その時の男性部下の苦情には、「お母さんみたいにやさしくない」「威張っていて女らしくないから嫌い」というものがあった。 しかし、部下の方が、男性上司には望まない「やさしさ」や「細かい気配り」や「謙虚さ」を女性上司に求めるべきではない。何故なら、女性上司にはこれらを求め、男性上司には「厳しさ」や「決断力」や「リーダーシップ」を求めるのはジェンダーそのものであり、女性を上司としてやりにくくするからである。 (3)日本が1%台の理由 1)省庁、建設、警察では、2015年から本格的に取組み 1986年に最初の男女雇用機会均等法が施行されたにもかかわらず、*2のように、首相官邸は2015年度採用で、キャリア組と呼ばれる総合職の事務系の女性比率を30%以上とする目標を各省に指示したそうだ。30%は、採用者の割合であり、管理職の割合ではない。 また、*3のように、建設業に占める女性の割合は約3%で、国土交通省と日本建設業連合会など業界5団体が、人手不足が深刻な建設業で女性が就労しやすい環境を整備していくことで一致したそうだ。しかし、ビル・住宅の設計や街づくりは、女性の感性を生かせば、もっと環境によくて住みやすく、無駄のないものができたはずであり、一級建築士の女性も多いにもかかわらず、今までその能力が活かされなかったのは残念だ。 さらに、*4のように、警察庁では、安倍政権の掛け声で、今年度からキャリア官僚の採用は3割が女性となるが、管理職は昨年1月で女性が3%もいない。「被害者が女性のときは、同じ女性のほうが心情を理解しやすいこともあるし、相手も心を開いてくれるかもしれません」と書かれているが、容疑者が女性の場合も、現在の警察の事件に関するストーリーがステレオタイプで稚拙なのは、捜査官に女性が多ければ変わると思う。 (4)何故、日本の主な企業の役員に占める女性の割合は1%台なのか *1には、「日本の主な企業の役員のうち女性が占める割合は1%台にとどまる。女性総合職の採用がまだ少ないからだ」としか記載されていないが、正確には、1986年(今から30年くらい前)に、男女雇用機会均等法が施行されたにもかかわらず、官庁を始めとする日本企業が、女性を採用、教育、配置、昇進で差別して、戦力としないための工夫をしてきたからである。そのため、採用が少なかっただけでなく、その女性を採用した後も、女性が働き続けて管理職となるのに適した環境を与えなかったが、決して候補者が少なかったわけではないのだ。そして、これが、女子差別撤廃条約締結以来、まともな努力をした諸外国との差となっているわけである。 (4)では、差別したがるのは誰だったのか *5で、東京大学教授 大湾秀雄氏が、女性の活躍に向けた大きな障害で、女性の管理職が少ないことに繋がる理由として、単なる長時間労働ではなく、「遅い昇進」と「ラットレース均衡」を挙げているのは、本当に管理職候補者である女性を知って言っていると思う。 私のケースでは、東大卒の夫や東大関係者、公認会計士関係で私を知っている人などは、女性である私の実力を評価して協力してくれたが、何としても自分の方が優位に立ちたいが自分の方が劣っていると考えている人が、差別という卑怯な手を使ってそれをやり遂げようとしたという経験がある。 *1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11108361.html?ref=nmail (朝日新聞 2014年4月28日) 女性役員、先駆者たちは 金融大手、均等法「第1世代」を登用 大手の銀行や証券会社でこの春、女性役員が相次いで生まれている。男女雇用機会均等法の「第1 世代」が実績をつみ、社員を束ねる力が認められてきたからだ。安倍政権も女性の登用を促しているが、海外と比べると、企業で活躍する管理職の女性はまだ少ない。 ■適応力に評価/専門分野切り開く 厳しいノルマを課され、転職する人が多かった証券界で、真保(しんぽ)智絵さん(48)は最大手の野村証券で25年働き、この4月からグループ子会社の野村信託銀行の社長に就いた。国内の銀行では初めての女性トップだ。真保さんは1989年、雇用機会均等法の施行4年目に入社した。日々の仕事を補助する「一般職」ではなく、将来の幹部候補とされる「総合職」での採用だった。証券市場はバブル最盛期の活況で、連日長時間の残業が当たり前だった。「結果を残さないといけないと、肩ひじ張って仕事をしていた」という。課長に昇進した01年、男性中心の職場で部下への接し方に悩むこともあった。だが、同僚との話し合いを重ねて仕事をこなすうちに「女だから、ということは考えなくなった」。05年には社長秘書に昇格し、グループ全体の経営を見渡す仕事にたずさわった。社内では「どの部門でも結果を残す適応力の高さは抜群」と評価される。部下への細やかな気配りもできるとして、432人を抱える野村信託銀のトップに抜擢(ばってき)された。この春、大手金融機関でトップや役員に登用された女性4人は、均等法ができた直後に入った「第1世代」だ。入社当時は、受け入れ側もまだ試行錯誤だった。旧住友銀行(現三井住友銀行)に女性総合職の1期生として入った工藤禎子(ていこ)さん(49)は、目標にできる女性行員の先輩がいなかったため、どうやって仕事を続けていけばいいか不安だった。そこで、だれにも負けない専門分野をつくろうと考えた。海外の大型事業などに貸す「プロジェクトファイナンス」(事業融資)を担当したとき、「専門性が高いこの分野が、自分の居場所だ」と道が開けた。今年4月、同期入行のトップで執行役員になったのも、銀行の成長を引っ張る注目事業として専門分野が認められ、「第一人者」としての力量を期待されたからだ。みずほ銀行の有馬充美さん(51)は、子育てをしながらM&A(企業の合併・買収)事業で専門性を磨き、生え抜きでは初の執行役員になった。経験を生かし、「女性が働きやすい職場になるようにしたい」。 ■日本、わずか1%台 だが、日本の主な企業の役員のうち女性が占める割合は1%台にとどまる。女性総合職の採用がまだ少ないからだ。長時間労働が当たり前になっているため、育児を担うことが多い出産後の女性が離職せざるをえなかったり、責任のある仕事をまかせてもらえなかったりすることも背景にある。野村信託銀の真保さんは、これまで職場では旧姓の鳥海(とりうみ)の名で通してきた。だが、社長になると会社登記の際には旧姓を使えなかったという。女性の昇進には、こうした制度上の問題もある。安倍政権は昨年6月、成長戦略の柱の一つに「女性の活躍」を据え、2020年までに管理職などに就く女性の割合を3割にする目標を掲げた。まずは上場企業すべてに女性役員を最低1人置くよう求めている。金融界で女性役員が相次いだのはこれも影響している。女性の職場環境に詳しい関西学院大学経営戦略研究科の大内章子准教授は「育児をしながら働く女性の仕事を適正に評価する体制づくりが急務だ」という。 ■ノルウェー、4割超える 割り当て制、義務化で成果 女性役員の比率が世界トップクラスのノルウェーは、出産後も仕事を続けられる仕組みが整っている。 オスロ郊外の広告会社のオフィス。夕方4時になると社員が一斉に帰路につく。市場分析部門長を務めるビョルグ・カリ・パウルセンさん(41)も同じ時間に毎日仕事を終え、小学校と保育園へ2人の男の子を迎えに行く。「男性も女性も管理職も午後4時に帰るのが普通」とパウルセンさんは言う。残業を極力なくすよう政府が促し、子育てと両立できるようになっている。ノルウェーでも、10年ほど前までは女性役員の比率が8%台にとどまっていた。そこで2004年、上場企業で取締役会に出る役員の4割以上を女性にする「クオータ(割り当て)制」を世界で初めて導入した。06年には法律で義務づけ、女性役員の比率は直近の国内調査では40%を超えている。ノルウェーのように具体的な女性役員の比率を企業に割り当てる制度は、フランスやオランダ、スペイン、イタリアなどにも広がっている。情報公開を通じ、女性の登用を促す国もある。豪州では12年から上場企業に、従業員や役員の女性の割合や男女別の賃金を報告するよう義務づけた。日本と同じく登用が遅れている韓国でも、実態を政府に報告させ、女性登用率が大幅に低い企業には改善を促す仕組みがある。日本でクオータ制の議論は本格化していない。女性管理職の比率や目標について企業に公表を義務づけるよう求める声は与党などから出ている。 ◆キーワード <男女雇用機会均等法> 1986年の施行で、企業に対して募集や採用、昇進などで性別を理由に差別することを禁じた。妊娠や出産により女性を降格したり、不当な配置換えをしたりすることも禁じている。職場に残る男女間の格差をなくすため、政府に対しても、企業が女性の登用を増やすことを後押しするよう求めている。 *2:http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKDZO70346220U4A420C1KE8000 (日経新聞 2014.4.25)公務員制度改革を読む 「女性の活躍」阻む官の事情 国会改革も不可欠 改革と並行して議論が本格化しているのが、安倍晋三首相が旗を振る「女性の活躍」をお膝元の官でどう推進するかだ。首相官邸は2015年度採用で、キャリア組と呼ばれる総合職の事務系の女性比率を30%以上とする目標を各省に指示した。「男社会」の印象が強い財務省もこの4月、22人中で女性を過去最多の5人入省させている。女性がキャリアと家庭・子育ての両立を目指せる職場環境の見直し論議も各省で始まっている。文部科学、国土交通、厚生労働各省に続き、他省でも保育所新設の検討が進む。入省年次で横並びにしがちな人事も出産・育児期を考慮に入れ、柔軟なキャリアパスを用意する役所も出てきた。未明でも明かりが消えない霞が関の「不夜城」。深夜、休日も問わない長時間労働が常態化してきたことも「女性の活躍」の壁の一つだ。厚労省出身の中野雅至神戸学院大教授は「予算編成、法令審査、国会待機が構造的な三悪」と指摘する。予算編成は秋から年末に実務が集中する。査定する財務省は、時間外や休日は各省からの説明聴取を控える原則を申し合わせ、改善に努める。だが官だけで変えられないのが国会議員の質問に答弁書を用意するための夜間待機だ。議員は前日夕までの審議を見てから質問を通告するのが実態で、各省の作業が深夜にずれ込む。佐々木毅東大名誉教授らは「質問通告は2開庁日以前とする原則の徹底」などの国会改革を提言。自民党は23日、通告期限を前々日の午後6時とする新ルールを決めた。 *3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140425&ng=DGKDASDF24017_U4A420C1EE8000 (日経新聞 2014.4.25) 女性の建設就労倍増へ 国交省と業界、夏メドに行動計画 国土交通省と日本建設業連合会など業界5団体が24日に会合を開き、人手不足が深刻な建設業で女性が就労しやすい環境を整備していくことで一致した。女性の技術者や技能労働者を5年以内に現状の2倍にあたる約18万人へ増やすのが目標で、夏ごろに行動計画を取りまとめる。太田昭宏国土交通相は会合で「女性の感性が生かせる造園だけでなく、土木など多くの業種で活躍してほしい」と述べた。計画には建設現場の女性用トイレの設置や、研修の充実などが盛り込まれる見通し。建設業に占める女性の割合は約3%で、製造業(約30%)など他産業に見劣りしている。 *4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11082966.html (朝日新聞 2014年4月13日) (政治断簡)「女には向かない職業」…ホント? 政治部次長・秋山訓子 岩手県警本部長の田中俊恵さんが26年前、大学4年生だったときのことだ。国家公務員を志し官庁訪問をしていたら、ある女性官僚からこう言われた。「女性は男性以上に頑張らなくては駄目ですね」。それを聞き、田中さんはあえて、それまで男性しか採っていなかった警察庁を訪問する。「そのほうが逆にやりやすいかなと思って」。警察庁の女性キャリア第1号となり、滋賀県警防犯少年課長、埼玉県警捜査第2課長を務めて事件捜査の指揮も執った。そして、今の立場になった。 * 安倍政権の掛け声で、今年度からキャリア官僚で採用の3割が女性となる。とはいえ幹部になった女性はまだ少なく、昨年1月で管理職のうち女性は3%もいない。警察庁、そして防衛省は女性管理職が少ない代表的な省庁だ。事件捜査や災害対応といったハードな現場を最前線で担っているせいか、女性を採用し始めた歴史も浅い。霞が関は別にして、そもそもそういう現場は、女性にはふさわしくないと思われているのだろうか。英国の推理小説家P・D・ジェイムズのロングセラーに「女には向かない職業」がある。探偵事務所に勤めるコーデリアという女性が主人公。あちこちで「探偵は女には向かない」と言われ、困難にぶつかりながらも事件に取り組む物語だ。捜査は女性に向いていないのか。田中さんは言う。「被害者が女性のときは、同じ女性のほうが心情を理解しやすいこともあるし、相手も心を開いてくれるかもしれません。でも最終的には男女という問題ではないと思います」。防衛省でも今年初めて生え抜きの女性キャリアの課長職が誕生した。広瀬律子さん。自衛隊の最前線で活動することはないが、自衛隊員の規律の維持や表彰などの仕事をする。「東日本大震災では自衛隊が注目されましたが、女性自衛官が現地に行くと、被災者の女性も安心して話してくれますし、きめ細かい支援が可能になります」と言う。 * 男性に向いていることも、女性に向いていることもあれば、男女関係ないことだってある。女性が無理して男性のように、それ以上に頑張らないといけないのも変だ。でも、私たちは気づかないうちに、自分たちで勝手に設けた前提条件で物事を考えていないだろうか。これは男性向きとか女性向きとか。男女の問題に限らないが、立ち止まって考えてみれば、前提が間違っていることも結構あるのではないか。一線の捜査も、官僚組織を統率することも。田中さんに、仕事を辞めたいと思ったことはありますか?と尋ねると、「一回もありません」と明快だ。いま、警察庁を志しながらも、性差を気にする女子学生に相談されると、躊躇(ちゅうちょ)なくこう答えるそうだ。「大丈夫。女性でもまったく問題ありません」。もちろん、小説のコーデリアも最後には見事、事件を解決する。 *5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140424&ng=DGKDZO70291530T20C14A4KE8000 (日経新聞 2014.4.24) 良い組織・良い人事(8) 女性の昇進を阻む制度 東京大学教授 大湾秀雄 安倍晋三政権は成長戦略の中で女性の活躍支援をうたい、指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%程度とする政府目標を掲げています。目標達成に向けた大きな障害は何でしょうか。日本の「遅い昇進」と、必要以上に長時間労働するという意味のラットレース(ネズミの競走)均衡は、女性の管理職が少ないことにもつながります。昇進してから出産・育児を経験できれば、高い給料で保育園やベビーシッターを確保できます。会社もせっかく投資した優秀な社員の離職を防ぐ努力をするため、出産からの職場復帰が比較的スムーズとなり、キャリアと家庭の二者択一を迫られることもないでしょう。しかし現状は「遅い昇進」制度の下、多くの女性が管理職に上がる前に出産・育児を経験します。管理職昇進のために要求される長時間労働をすることは難しく、女性は昇進競争からの離脱を余儀なくされます。ラットレース均衡が社会全体で生じると、女性が家庭内労働に専業し、夫は会社に尽くすという家庭内分業を個々の夫婦の判断としては合理的なものにします。総務省の社会生活基本調査によると、子供のいる共働き家庭で1日のうち、妻が家事・育児に費やす時間は5時間弱なのに対し、夫は40分弱にすぎません。こうした家庭内分業が社会的な規範になると、女性に家庭内労働の負担が重くのしかかるため、男性のように長時間労働することは不可能となり、ビジネスの世界で女性が排除されてしまいます。実際、企業の中のどういう部署で女性が管理職に昇進しているか見ていくと、他部署との調整が少ない専門職が多いようです。しかし、経営陣に参加するためには、幅広い職務経験が有利であることを過去の研究が示しています。専門職で課長まで昇進する女性を増やせても、役員にまで多くの女性が進めるようにするためには、現在の均衡を変える必要があるのかもしれません。 PS(2014.5.3追加):*6のように、黒人がサルに似ているとして侮辱をこめてバナナの皮を投げ込んだ観客を批判せず、それを拾って皮をむき一口ほおばってこともなげに競技を続けた選手を褒める日本のメディアがあるが、その思慮の浅さには眉をひそめざるを得ない。観客を相手にして、サッカー選手ができる抗議行動はそれ以外になかったのだろうが、日本女性の場合も、差別されたことを抗議すると、それを「大人気ない」と言う日本人がおり、本末転倒である。 「差別」は、された側が抗議しなければ決してなくならないものであるため、抗議することは重要なのだ。日本の男性が「差別される側の気持ち」を理解しないのは、国内では差別する側として心地よくやっているからだと思うので、ここでわかりやすい例を出して説明しよう。★あなたは、侮蔑をこめて「JAP」と呼ばれたら、「はいはい、そのとおりです。みんなそうです。」と皆で言ってへらへら笑い、そうするのがよいことだと思っているのか?★ 大人なら、自分がその立場になったらどう思うかを考えればすぐにわからなければならないし、わからず屋が多い場合は、自由と平等の敵を法律で定めなければならないだろう。 *6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11116824.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2014年5月3日) (天声人語)広がる「バナナの輪」 「バナナの輪」が世界に広がっている。先月末、サッカー・スペインリーグの試合で、観客がブラジル人選手に向けてバナナを投げ込んだ。サル扱いを意味する侮辱であり、人種差別である▼当の選手はこともなげに拾って皮をむき、一口ほおばって競技を続けた。そのクールな態度が称賛を呼んだ。ブラジルのスター、ネイマール選手はバナナを手にした自分の画像をネットに掲げ、「俺たちは皆サルだ」と書いて抗議の意思を示した▼元日本代表監督のジーコさんやインテル・ミラノの長友佑都選手も輪に加わった。誰に指図されたのでもないだろう。差別反対を訴えるうねりの、あっという間の広がり方は爽快ですらある。この世界にはまだ希望があると感じさせる▼最近の我が世相を顧みる。サッカー競技場に「日本人のみ」の横断幕が出現した。四国の遍路道でも外国人排斥の貼り紙が現れた。ヘイトスピーチの当事者は、憲法が保障する表現の自由を盾に正当性を主張する▼もとより差別は自由を奪う。例えばナチスの記憶を受け継ぐドイツは、自由の敵には自由を与えない。ヘイトスピーチは法で罰せられる。不寛容を許さない姿勢は「たたかう民主制」と呼ばれる▼ただ、そこには、誰が敵かを権力が恣意的に決める危険性も潜む。だから、日本国憲法は自由の敵を初めから排除はしていない。この場合、敵にまず立ち向かわなければならないのは社会であり、個々人ということになる。そう、あのバナナの輪のように。
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2014,04,15, Tuesday
(1)経団連が女性登用で自主計画を要請したのは、かなりの進歩だが・・ *1の西日本新聞で、「経団連は、2014年4月14日、企業で働く女性の活躍を促す提言をまとめた」「役員・管理職への女性の登用について会員企業に自主行動計画の策定を要請する」と書かれているのは、これまで雇用における女性差別を行い、男性社員に下駄をはかせて男性社員を指導的地位に登用してきた日本企業の取り組みとしては、かなりの進歩である。 しかし、*2のように、経団連が、女性差別をしてきた事実を隠し、女性の活躍が進まなかった理由は女性自身の自覚の問題として、「粘り強い啓発活動が必要」などと、差別されてきた女性側に責任を押し付けているのは、責任転嫁であり卑怯だ。この点で、「企業上層部の男性が認識を改めるべき」というのは正しいが、実は、顧客、銀行、株主、メディア、行政、司法などの国民の認識も同様に改めるべきで、「役割分担論(ジェンダー)」が女性の活躍を阻んでいるのは、会社内部の女性差別だけではないのである。 (2)経団連が変わった理由 *1に、「女性の活用は優秀な人材確保に加え、人口減少で働き手が少なくなる中で重要」と書かれているとおり、人口の半分である男性だけから下駄をはかせて指導者を選抜していれば、結局、優秀な人材も半分しか得られない。わが国の経済構造が、開発途上国型の輸出ではなく、内需依存になった今、内需に詳しい女性を退ければ企業が発展できない状況になったことも、変化すべき大きな要因だ。そのため、*2で、「女性の活躍が企業の価値を高める」「イノベーションを起こすには女性の活躍が必須」とされているわけである。 また、生産年齢人口が減少すれば、女性を働かせ続けても雇用は足りるが、「(女性の)役員や管理職への登用は進んでいない。欧米では管理職に占める女性の割合が30%以上なのに対し、日本は10%程度にとどまっている」というように、女性の自己実現を図り、幸福を増す事象は遅れている中で、企業利益増加の論理ばかりが強調されるのは、日本国憲法に定められた「両性の平等」「基本的人権の尊重」に反すると考える。ここで、「立憲主義だから、私企業は憲法を守らなくてもよいのだ」と言う人もいるが、そんなことはないだろう。 (3)女性管理職が少ないのは何故か *1では、「女性管理職の養成講座を開く」「女性の幹部候補を対象に、管理職としての心構えや、社外との人材交流を深める養成講座を経団連内で開講する」など、女性管理職が少ないのは、あたかも女性が管理職としての知識がないか、管理職としての心構えができていないかのような表現がなされている。 しかし、男女雇用機会均等法に規定されているとおり、採用、配置、昇進、退職で男女差別を行わなければ、当然、女性社員も男性社員と同じ能力がつくため、女性管理職の養成講座を開き、女性の幹部候補を対象に管理職としての心構えや社外との人材交流を深める養成講座を開講しなければならないというのは、まるで女性には特別なことをしなければ管理職になる能力がないようような印象を受け、失礼千万だ。そして、このような考え方をしたり、メディアがこのような表現をばら撒いたりすることが、日本社会のジェンダーをさらに増幅し、昇進における女性差別を合理化しているのである。 (4)本当に男女の評価基準は同じか? ← リケジョの扱いの事例から *1では、「(今ごろではあるが)理工系の女性社員『リケジョ』の採用なども進める」と書かれており、*2には、「女性にチャンスを与えるが評価は公平に行う」と書かれているため、私もそれでよいと思うが、実際に評価が公平に行われているかと言えば、*3の小保方博士のSTAP細胞論文発表の例でも明らかなように、女性の業績に対しては、実績の過小評価とあら捜しの報道が多く、これは、小保方博士が次のステップに移るのを妨げている。 例えば、*3の「理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーは14日、代理人の三木秀夫弁護士を通じて報道陣に配布した文書で、『STAP細胞は日々培養され、解析されていた』などと主張した」という記事も、「などと主張した」として、「科学的なデータや写真は示していないのだから、どうせ嘘だろう」と暗示する悪意に満ちたものだ。(その割には、メディアは真実を伝えていることの方が少ないが・・) しかし、iPS細胞発見時も、最初からすべてがわかっていたわけではなく、長期的視野を持って次の成果を待った。これに対し、小保方博士のSTAP細胞には、このような長期的期待が与えられず、「直ちにすべての事象を解決・証明できなければ科学的ではなく、真実でもない」として、(「女のくせに生意気な」と感じた)小保方博士よりも科学に疎い記者が、異常に厳しい”評価”を日本全国にばら撒いているのだ。 そもそも、小保方博士は、そのような悪意あるメディアに科学的なデータや写真を公表する義務はなく、*4のバカンティ教授の対応が科学者の標準である。そして、このような悪意の報道に晒され続ければ、研究を妨げられるので、小保方博士は、バカンティ教授が言うように、ボストンに戻った方が早く次のステップに移れるが、そうなると、日本は、またSTAP細胞に関するすべてのチャンスを失うことになる。 これを、一般会社に置き換えれば、*2の「私は社長を目指す」という女性がいれば、周囲が「生意気でかわいくない女だ」として不利に扱い、そのような女性が育つ環境ではないため、会社が人材を失うということだ。そのため、*2の「社会全体で取り組むべき課題」は、小中学校の段階からすべての人にジェンダー教育を行い、社会のすべての人が、このようなジェンダーで人を”評価”しないようにすることである。 また、「ロールモデル不足が課題」として、子どものいる女性を登用しなければならないとする動きもあるが、ロールモデルがなければ挑戦できないような人は、男性であれ女性であれ、どうせ大したことはできない。その上、女性の昇進に「子どもがいること(自分で子どもを育てたこと)」という条件をつければ、これは世界でも類を見ない男女で異なる女性差別的な評価基準になる。 (5)配偶者控除をなくせば、問題が解決するのか *1には、「2017年までの40万人の待機児童解消を前倒しで実施することも要望」と書かれ、*2には、「保育施設は重要な社会インフラ」「介護休職者の増大を前提に制度設計を」「男性にも育児をする権利がある」と書かれているように、現在、保育、介護の社会的制度が不十分なため、女性が仕事を辞めざるを得ないケースが多い。また、男女を問わず、正規社員はどこへでも転勤させる企業風土も、単身赴任や女性が仕事を辞めざるを得ないケースを増やしている。 これらをそのままにして、*5のように、配偶者控除のみを廃止もしくは縮小しても、問題は解決せず、単なる増税に終わるだろう。それではどうすべきかについては、長くなるので、日を改めて記載したい。 *1:http://qbiz.jp/article/35679/1/ (西日本新聞 2014年4月14日) 経団連、女性登用で自主計画要請 リケジョ活用も 経団連は14日、企業で働く女性の活躍を促す提言をまとめた。役員・管理職への女性の登用について会員企業に自主行動計画の策定を要請することが柱。女性管理職の養成講座を開くほか、理工系の女性社員「リケジョ」の採用なども進める。15日に森雅子・男女共同参画担当相に提出する。経団連「女性の活躍推進部会」部会長の中川順子野村ホールディングス執行役員は14日の記者発表で「提言をきっかけに、多くの企業が女性活用の計画を検討することを期待したい」と話した。提言によると、女性の活用は優秀な人材確保に加え、人口減少で働き手が少なくなる中で重要だが、役員や管理職への登用は進んでいない。欧米では管理職に占める女性の割合が30%以上なのに対し、日本は10%程度にとどまっている。このため、経団連として大企業中心の会員企業約1300社に、女性の役員・管理職の登用に向けた自主行動計画の策定を要請し、経団連のホームページで公開することにした。ただ、策定は強制ではなく、各社の自主判断とする。また、女性の幹部候補を対象に、管理職としての心構えや、社外との人材交流を深める養成講座を経団連内で開講する。理工系大出身の女性活用で大規模な採用イベントの開催なども実施したいとしている。さらに政府が掲げる2017年までの40万人の待機児童解消を前倒しで実施することも要望。女性が育児などに時間を充てられるよう、決められた時間内に業務が終えられる働き方に改め、長時間労働が評価される慣例も変えていくべきだとしている。 *2:https://www.keidanren.or.jp/journal/monthly/2013/11/ (月刊経団連 2013年11月号) 女性の活躍推進に向けて <要点> ●女性の活躍は企業、社会に何をもたらすか 女性の活躍が企業の価値を高める イノベーションを起こすには女性の活躍が必須 育児と仕事の両立を支援する「カンガルースタッフ」 女性中心の組織は風通しが良い 産業革命以来のワークスタイルを変える ●女性の活躍が進まなかった理由 育児は「協力」ではなく「参加」の時代 粘り強い啓発活動が必要 企業上層部の男性が認識を改めるべき 女性の活躍を阻む「役割分担論」 保育施設は重要な社会インフラ ●女性の活躍を推進するために企業にできることは何か ロールモデル、ネットワーク不足が課題 社長を目指す女性が活躍できる環境をつくりたい 女性管理職の比率を20%にすることが目標 女性にチャンスを与えるが、評価は公平に行う 上司は「期待している」と部下に伝えることが大切 ●社会全体で取り組むべき課題は何か 小中学校の段階からジェンダー教育を 介護休職者の増大を前提に制度設計を 男性にも育児をする権利がある *3:http://digital.asahi.com/articles/ASG4G3F54G4GPLBJ002.html (朝日新聞 2014年4月14日) 小保方氏が説明文書を配布 「STAP細胞を日々培養」 STAP細胞の論文問題で、理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーは14日、代理人の三木秀夫弁護士を通じて報道陣に配布した文書で、「STAP細胞は日々培養され、解析されていた」などと主張した。この文書はSTAP細胞ができたと改めて主張する内容になっている。ただ科学的なデータや写真などは示していない。文書では、小保方氏が会見で「STAP細胞は200回以上作製に成功した」と述べた点について、「実験を毎日のように、しかも一日に複数回行うこともあった」と主張。万能細胞の指標となるたんぱく質が出ているかどうかをみて「作製を確認した」と説明している。また、「2011年4月には、(ネイチャー)論文に書いた方法でSTAP細胞が出来ることを確認し、その後、6月から9月ごろにはいろいろな細胞に、様々なストレス条件(刺激)を用いてSTAP細胞を100回以上作った」などと主張。その後も、遺伝子解析やマウス実験などに必要なSTAP細胞を100回以上作製したとしている。会見で小保方氏以外の第三者がSTAP細胞作製に成功していると述べた点については、「私の判断だけで名前を公表できないが、成功した人の存在は理研も認識しているはず」と主張した。理研広報室は「再現実験で万能細胞の指標となるたんぱく質が出ていることを確認した人は1人いるが、万能性が証明できたわけではない」としている。作製の「コツ」については、「所属機関の知的財産であることと、特許等の事情があるため、個人から全てを公表できない」と改めて理解を求めた。「状況が許されるようになれば、言葉で伝えにくいコツが分かるよう映像などを近い将来公開するよう努力したい」としている。三木弁護士は文書を出した理由について「時間が限られた会見の内容にバッシングが出て、小保方氏が心を痛めている」と話した。 *4:http://digital.asahi.com/articles/ASG4H36LQG4HPLBJ003.html?iref=com_alist_6_01 (朝日新聞 2014年4月15日) バカンティ教授「小保方氏、ボストンに戻っておいで」 STAP細胞論文の主要著者である米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授が来日し、15日に京都市内で開かれている国際会議で講演したことがわかった。出席者によると、論文について「すでに画像の取り違えの訂正がなされており、結論には影響を与えない。STAP細胞は必ず存在する」と述べたという。バカンティ教授は理化学研究所の小保方(おぼかた)晴子ユニットリーダーの米留学時代の指導教官。論文への疑惑が指摘されて以降、直接の取材に応じておらず、国内で発言するのは初めて。この日は「世界気管支学会議・世界気管食道科学会議」に出席し、「再生医療と幹細胞」というテーマで講演した。会場は報道陣の入場が規制され、警備員が出入り口を固める異例の厳戒態勢が敷かれた。出席者の男性によると、バカンティ教授はスライドを使って講演。論文が不正と認定されたことについて、小保方氏の単純ミスだと主張。ホテルでパスワードキーを3回打ち間違えて入れなくなり、無理に頼んで入れてもらった、という例をあげ、同様のミスだと話したという。また、小保方氏に対し、「(大学のある)ボストンに戻っておいで」と呼びかけたという。同会議の組織委員会によると、1年以上前にSTAP細胞とは無関係のテーマで講演を依頼。ハーバード大は「STAP細胞に関するコメントは一切行わないこと」を講演の条件に出したという。バカンティ教授はSTAP細胞論文の撤回を拒んでおり、これまで、所属する病院を通じて「発見全体を否定するような決定的な証拠がない限り、撤回すべきだとは思わない」などとコメントしている。ハーバード大学の関連病院で麻酔科部長を務め、再生医療工学の研究者として知られている。 *5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140415&ng=DGKDASGC1400O_U4A410C1EA2000 (日経新聞 2014.4.15) 配偶者控除見直し着手 政府の税制調査会は14日、専業主婦世帯の所得税を軽減する配偶者控除の廃止・縮小の議論を始めた。5月中旬から議論を本格化する。現行制度では妻の収入が年103万円を超えると夫の所得税の控除額が減るため、女性の社会進出を阻むとされる。ただ、同控除を廃止すれば専業主婦世帯の税負担が増す。「伝統的な家族観から見直しには慎重な意見もある」(麻生太郎財務相)と政府・与党内に反発もある。所得税の課税対象を個人単位から世帯全体にする改革が必要との意見もある。 PS(2014.4.16追加):STAP細胞とiPS細胞を比較してSTAP細胞の優位性を強調したことを問題にして叩くなどということは、(わが国では少なくないが)真実の追究や科学の進歩を妨げる。私もSTAP細胞の方が遺伝子を操作していないだけ優位性があると考えており、STAP細胞の研究者がハーバード大学に行ってしまえば、電気自動車や太陽光発電と同様、10年後の結果が目に見えるようだ。つまり、先端は、一人か少数の人が始めるもので、組織や権威の方が正しく強いということはないのである。 *6:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2663710.article.html (佐賀新聞 2014年4月15日) STAP報道用資料は笹井氏作成 / 優位性強調、16日記者会見 STAP細胞の論文問題で、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)が1月28日に報道機関向けの事前説明会で配布したSTAP細胞と人工多能性幹細胞(iPS細胞)とを比較した資料は、論文共著者の笹井芳樹・副センター長が作成したことが15日、分かった。この資料はSTAP細胞の優位性を強調し、誤解を招くとして後に理研が撤回するなど問題になった。笹井氏は小保方晴子氏とともに論文の主要な執筆者で、事前説明会にも出席。16日午後に東京都内で記者会見を開き、論文をめぐる一連の問題を説明する。問題発覚後、笹井氏が公の場で説明するのは初めて。 PS(2014.4.17追加):「泣きながら」「言葉にならない」などということを標題にし、好感を持って書くメディアの感性にジェンダーがある。そして、国民の何割かは同じ感性を持っているだろうが、逆に言えば、これは「感情的である」「科学的に筋を通して冷静に説明できない」と評価されるもので、女性に対しては、この2つの矛盾する要求が突きつけられるのが上昇を阻む原因である。小保方氏は、プレイヤーが男性ばかりの日本で、研究者として生きるために、そこまで読んで行動していると思うが、そうしなければ生きられない環境を変えるべきなのである。 *7:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2664229.article.html (佐賀新聞 2014年4月16日) 小保方氏「言葉にならない」 / 笹井氏会見に、泣きながら 理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダー(30)は16日、STAP細胞論文共著者の笹井芳樹氏の記者会見について「尊敬する笹井先生が私の過ちのため、厳しい質問に答えている姿を見て、本当に申し訳ない気持ちでいっぱい。申し訳なさ過ぎて、言葉にならない」と泣きながら話した。笹井氏の会見後、代理人の三木秀夫弁護士が、入院中の小保方氏と電話した様子を報道陣に明かした。三木弁護士によると、小保方氏は笹井氏の発言内容に言及することはなかったが、気持ちが沈んでいるようだったという。笹井氏が「弁護団として論文の撤回は検討していない」と主張した。
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2014,03,26, Wednesday
「セクハラ系」と「やっかみ系」の記事満載の週刊新潮・週刊文春の電車の中吊り広告だが、この ような悪しき”文化”が無批判な人々の脳裏に刻み込まれていくのは、いろいろな点で問題だ。 (1)女性登用の実態 *1-1のように、日本の女性議員割合は、2014年1月1日現在では127位になり、2013年2月1日の122位からさらに順位を落として先進国の中で最低水準になったそうだ。 また、*1-2のように、内閣府が「コーポレートガバナンス報告書」をもとに女性登用の現状をまとめたところ、指導的地位にある女性の割合を2020年までに全体の30%にする目標を定めているにもかかわらず、取締役に1人以上の女性がいるのは、日本全体でわずか4.1%の企業だったそうだ。しかし、女性の昇進差別と妊娠・出産・育児のハンディは必ずしも関係がない。何故なら、独身・DINKS・両親の協力などで、男性と同じ働き方をしてきた女性にもジェンダーによる昇進差別が存在し、こちらの方が根深いからである。これは、*1-3で、保育所に待ち行列がなく、子育てへの両親の協力も得やすい九州でも、課長級以上の管理職に占める女性の割合は4・7%にすぎず、全国の企業を対象にした7・5%を下回り、九州では全国よりも女性の登用が進んでいない現状から明らかである。 なお、こういう場合、企業は必ず、「女性従業員は昇進意欲が低い」などの女性側の理由を挙げるが、それならば、昇進意欲が高い女性には男性と機会均等で平等な評価によって報いてきたのか、「生意気だ」「性格が悪い」「使いにくい」などとして退職に追い込むことがなかったのかについては、何でも女性のせいにしており、卑怯である。 そして、この現象は、*3-2の小保方晴子博士のSTAP細胞批判にも見られ、利害相反関係になった共同研究者の証言によって、STAP細胞の存在とは関係のない「別マウスの遺伝子検出」のようなことまで、荒探しして批判しているわけである。また、上の写真の週刊誌記事のセクハラ度は、放っておくべきではないレベルに達している。そして、このようなことは、欧米ではあまりなく、女性の軽やかな成功を認めたがらない日本独特の現象だ。 (2)女性の活躍の場について *1-3には、「女性活躍の場、どう拡大」と書かれているが、これは、男女雇用機会均等法に定められているとおり、男性か女性かで採用・配置・昇進・退職における差別を行わず、普通に仕事を与えて男性と同じ知識と経験を持つ女性を増やし、その女性たちをジェンダーで歪んでいない公正な目で評価すれば解決すると断言する。 そして、その知識と経験のある女性たちは、女性のニーズがわかっているため、自然と女性目線での商品開発やサービス向上を行い、女性の活躍の場をさらに増やしていく。 (3)女性の登用は可能か *2-1のように、安倍首相は、「すべての上場企業が女性の登用を進め、執行役員、取締役などの役員のうち1人は女性を登用すること」を経団連に要請してくれた。ここでもやはり、古いタイプの米倉会長は、「欧米と違ってパイが少ないということもあり、結婚すると育児に専念したいという方々も多い。これをどうやって労働市場に誘い込むかということが非常に大きな問題だ」と指摘したそうだが、結婚しても働きたい人を差別なく気持ちよく働かせれば、首相の要請は簡単に達成できると断言する。 これまで、経済界は、「雇用のパイが少ないから」として男性を優遇し、女性には機会を与えない状況を続けてきたが、まさにそれが時代のニーズにあったパイを増やすことができずに、大きな財政赤字を作って愚鈍な景気対策を続けても景気がよくならなかった理由である。そのため、能力に応じてFairに機会を与えるのが、すべてを解決する唯一の方法である。 (4)女性管理職に対するUnfairな要求 *2-2のような女性の管理職登用を奨める記事でさえ、「しなやか(注:セクハラ用語)に駆ける」「女性らしさ(注:ジェンダー用語)が強み」などと題して、佐川急便の南福岡店長である大西さんに、「男と女は違う(注:違いの内容によっては女性差別とジェンダー)。トップダウンの命令ではなく気配りと協調性で束ねたい(注:ジェンダーによる決め付け)」と言わせており、要約すれば、「女性は時間をかけて信頼を得ても、トップダウンのリーダーシップを発揮すべきではない」というメッセージを発している。 さらに、「男性は期限を決めて顧客を一気に攻略。女性はじっくり話を聞き顧客の利益も考える。時間はかかるが一旦信頼関係を築くと次々契約を取り、中長期的な成績は同じ」としているが、これは個人差であって男女差ではない。そのため、短時間で一気に攻略して成功できる女性と顧客の利益を考える男性の双方に対して失礼な内容になっている。また、「共感性や協調性の高さなどが女性の武器」などと書かれているが、男性にも共感性や協調性は重要だし、女性だからといって「共感性」と「協調性」しか武器が無いわけではない。にもかかわらず、こういう決め付け方をするのが、まさにジェンダーであり、ガラスの天井の原因なのである。 なお、「行動経済学では『女性はリスクを避けたがる』『男性は自信過剰で競争を好む』」というのも、聞いたことのない学説だ。実際には、家計に重い責任を持っている男性の方がリスクを避けたがり、マウンティング(行動学用語)で決まった上下関係による順位を重んじる傾向がある(集団における協調性)。 (5)女性差別は教育や評価にも存在するので、直すべきである *3-1で、「理工系学部では近年、女子の受験生が増加」と書かれているが、周囲が何と言おうと自分の信念を貫いた私たちを除き、女性は、ともすれば良妻賢母教育へと教育段階から進路で差別された。つまり、上昇志向の仕事に直結する法学部、経済学部、医学部、工学部などに進む女性は少なく、文学部、家政学部、芸術学部などに行く女性が多いため、企業に就職しても、昇進するために必要な知識に欠け、家庭を選択せざるを得なくなるケースが多いのだ。そのため、本人が働きたければ努力が実って昇進し、やりがいを持って気持ち良く働けるための教育と均等な機会を女性にも与えるべきである。 また、*3-2のように、せっかく勉強して人がやらない仕事をしても、本質とは関係のないことで荒探しをして足を引っ張ったり、上の写真のように男女関係に結びつけたりしていると、*3-3に記載されているように、米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授のような人でさえ、「日本女性と関係するとややこしいことになるから、今後は日本女性と共同研究するのは避けよう」と考えるようになり、日本女性の機会が奪われるので、気をつけてもらいたい。世界は、貴方の周りだけではなく、貴方の常識が世界標準でも、世界最先端でもないのだ。 *1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2642559.article.html (佐賀新聞 2014年3月5日) 女性議員の割合、日本127位 / 先進国で最低水準続く 【ジュネーブ共同】世界の国会議員らが参加する列国議会同盟(本部ジュネーブ)は4日、各国・地域の議会に占める女性の割合調査を公表し、日本は今年1月1日現在で127位だった。昨年2月1日現在の122位からさらに順位を落とし、先進国の中で最低水準が続いた。順位は日本のような二院制の国については下院(日本は衆議院)のデータに基づいている。日本の女性議員の割合は約8%と横ばいだった一方、世界の平均は約22%と過去最高になった。アフリカや中南米諸国などを中心に、女性議員が増加したことが要因。 *1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140207&ng=DGKDASFS0602H_W4A200C1EE8000 (日経新聞 2014.12.7) 女性登用の実態開示、上場企業の17% 内閣府調査 「取締役に女性」は4.1% 内閣府は6日、上場企業に提出が義務づけられている「コーポレートガバナンス報告書」をもとに女性登用の現状をまとめた。役員の男女別の構成のほか女性の活躍推進の目標などを開示した企業は17.6%にとどまった。取締役に1人以上の女性がいるとした企業は4.1%だった。安倍晋三政権は昨年4月、コーポレートガバナンス報告書に女性登用の実態を開示するよう求めた。それ以降に報告書を更新した2995社を調べると、女性が活躍している状況などを記した企業は526社だった。東京証券取引所の17業種のうち最も記載が多かったのは銀行の45.6%。少なかったのは建設・資材の11.3%だった。昨年6月の成長戦略はすべての上場企業に1人の女性役員を置く目標を掲げたが、女性の取締役がいると記した企業は124社にとどまった。成長戦略は官民の指導的地位にある女性の割合を2020年までに全体の30%にする目標を定めている。政府は働く女性のために結婚や妊娠・出産、育児などに応じた支援策を打ち出しているが、登用に十分結びついていないのが現状だ。 *1-3:http://qbiz.jp/article/34042/1/ (西日本新聞 2014年3月20日) 九州の主要企業、女性管理職4・7% 80社アンケート、男性の育休1% 西日本新聞が九州の主要企業に女性の登用についてアンケートしたところ、回答企業80社で課長級以上の管理職に占める女性の割合が4・7%だった。全国の100人以上の企業を対象にした2013年の厚生労働省調査(7・5%)を下回り、全国に比べ九州では女性の登用が進んでいない現状が浮き彫りになった。政府は20年までに指導的立場に占める女性の割合を30%以上にする目標を掲げており、各企業の取り組みが課題になっている。アンケートで女性管理職登用に向けた課題(複数回答)を尋ねたところ、56社が「昇進意欲の醸成」を挙げ、女性側の意識変革を求める声が最も多かった。ただ「女性社員の職域拡大」(40社)「時間外労働削減や有休取得率向上」(30社)などの意見も目立ち、女性の昇進に向けた職場環境整備の重要性を認識していることがうかがえた。政府が上場企業役員のうち1人は女性を登用するよう経済界に求めている点について、アンケートでは女性役員がいる企業が8社(10・0%)にとどまり、役員全体に占める女性の人数は0・9%だった。育児休業関連では、回答企業全体でみた過去3年間の育休取得率は女性が86・3%だったのに対し、男性は1・0%と、依然として男性の育児参加が進んでいない現状が分かった。男性社員が育休を取得した企業は18社(22・5%)だった。アンケートは女性の活躍に関する九州の地場企業の取り組みを探るため初めて実施。2月10日から25日まで、上場企業など209社に回答を依頼し、回答率は38・2%だった。 ◆女性活躍の場 どう拡大 「女性の活躍」が、九州の企業にとって大きなテーマになっている。これまで各企業では、女性が結婚・出産後も働き続け、管理職に昇進する道筋を付ける取り組みが必ずしも十分ではなかった。しかし少子高齢化や経済のグローバル化が進み、人材活用への意識も変わりつつある。 ■有能な人材確保 「女性社員チームが企画した、国産原料を使った新商品が売れている」(理研農産加工)。西日本新聞が実施した地場企業へのアンケートに、こうした声が寄せられた。女性目線での商品開発やサービス向上は、企業の成長に欠かせない。育児関連制度の運用や女性社員登用の状況は近年、女子学生の会社選びの重要なポイントにもなっている。「(社内で)フォーラムを開催し、女性が働く上での問題点について意見を出し合い、改善策を話し合ってきた」(マックスバリュ九州)など、女性が活躍できる環境づくりは、有能な人材の確保にもつながる。 ■成長戦略に明記 政府は成長戦略で、女性の管理職登用の推進など女性の活躍を明記し、経済成長の原動力と位置付けている。背景にあるのは、少子高齢化に伴う労働力人口の減少への危機感だ。15〜64歳の全国の労働力人口は、2013年で6577万人。内閣府は女性の労働参加などが進まなければ、30年に約900万人減ると推計する。男女とも大学・短大進学率は55・6%(2012年度)と差はなく、女性の就業率も海外の主要国とほぼ同水準。しかし、女性の労働力人口の割合は、出産や育児が重なる30代で一度減少する、いわゆる「M字カーブ」を描く。非婚化・晩婚化で減少幅は縮小しているが、非正規雇用が多いのも課題だ。せっかく採用した女性が活躍しないのは、企業にとって経営資源の“無駄遣い”でもある。「女性社員のキャリア継続のため、配偶者の海外転勤に伴う休職制度を導入予定」(TOTO)などの回答にみられるように、雇用を継続する環境を整えることは、企業間競争に備える狙いでもある。 ■取り組み開示も そうした中、女性の活躍に向けた企業の取り組みを開示するよう求める動きも出ている。内閣府は1月末、上場企業の女性の登用状況などをホームページ上で公開。上場企業の32・4%(2月14日現在)が情報を開示している。今回の西日本新聞によるアンケートも、女性の活躍が地域経済の活性化に寄与する、という視点で企画した。回答率は4割弱で「当社は女性が少ない」など回答を控えた企業も少なくなかったが、積極的な姿勢を示す企業も目に付いた。現場で働く女性社員のニーズを組み入れた地元の各企業の取り組みが、さらに他の企業に波及していくかが、女性活躍の鍵を握っている。 ◆優遇せず仕事任せて−福岡女子大・塩次教授 経済発展や人口減少を考えると労働力不足は目前にある。それには女性の活躍が欠かせない。企業が女性を活用すれば、組織としての活力を生み出す。グローバル化の中、企業内の多様性をどう管理するかが重要になる。サービス業の一部で女性の感性を必要とする業種もあるが、基本的には女性もプラスマイナスなく男性と同じ労働力だ。企業はもっと女性に仕事を任せ、管理職に登用してみるといい。手を抜かず責任感を持ってやるとすぐに分かる。その時、女性だから優遇するやり方は、男性も怒るし女性も重荷になる。ごく普通に登用すべきだ。それには、女性を特別視しない男性側の意識変革も迫られている。「ガラスの天井(女性の昇進を妨げる見えない障壁)」という問題もある。一方で、昇進を望まずに企業内で安住する女性もいる。女性には自らを駆り立て能力を磨き、仕事を任されたらチャレンジしてほしい。そのことで新しい自分を発見し、人生が豊かになる。そういう女性を企業は求めている。塩次喜代明・福岡女子大学教授 九州大学経済学部教授として九大ビジネススクール長などを歴任し、2012年から現職。企業の女性リーダーや候補者を対象に、日本経営協会九州本部が13年に始めた「NOMA女性ビジネス・スクール」で塾長を務めた。 *2-1:http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MLHJ0K6TTDTB01.html (Bloomberg.co.jp 2013/4/19 ) 安倍首相:上場企業は役員に1人は女性登用を-経団連などに要請 4月19日(ブルームバーグ):安倍晋三首相は19日昼、官邸で日本経団連の米倉弘昌会長ら経済3団体幹部と会い、すべての上場企業が女性の登用を進め、執行役員、取締役などの役員のうち1人は女性を登用するよう要請した。意見交換会には米倉氏のほか、経済同友会の長谷川閑史代表幹事、日本商工会議所の岡村正会頭らが出席した。首相は女性の登用について「指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%程度とする政府目標の達成に向けて全上場企業において積極的に役員、管理職に女性を登用してほしい。まずは役員に1人は女性を登用してほしい」と語った。首相はこのほか、大学新卒者の採用活動の後ろ倒しや子どもが3歳になるまでの間は男女とも育児休業や短期間勤務ができるような環境整備を求めた。会合に同席した西村康稔内閣府副大臣は、首相の要請は3団体に「前向きに受け止めてもらった」との認識を示した。また、米倉氏は女性の幹部登用について「欧米と違ってパイが少ないということもあり、結婚すると育児に専念したいという方々も多い。これをどうやって労働市場に誘い込むかということが非常に大きな問題だ」と指摘した。西村、米倉両氏はともに会合後、記者団に語った。 *2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140222&ng=DGKDASGG1401C_Z10C14A2MM8000 (日経新聞 2014.2.22) しなやかに駆ける(3)「らしさ」が強み 共感・協調経験糧に 「今日も無事故で気を付けて」とハイタッチ。佐川急便の南福岡店長、大西由希子(37)は毎朝駐車場で、集配に出る約50人のトラック運転手全員と交わす。「スキンシップは仲間意識を高める効果があると聞いたから」。昨年6月に就任して以来の恒例行事だ。運転手からすれば店長は声をかけるのもはばかられる、上下関係に厳しい男社会。軽トラック運転手からたたき上げの大西も、そこで16年働いてきた。「男と女は違う。トップダウンの命令ではなく、気配りと協調性で束ねたい」 ●営業所苦情減る 同社を傘下に持つSGホールディングス。ここ3年で女性を約3千5百人増やし社員の約25%にした。「対応がいい」「気遣いが細やか」と顧客の評判も上々。女性中心に切り替えた営業所では苦情が減った。「女性らしさが新風を吹き込んでいる」(人事部)。昨年11月に日本経済新聞社が20~50代の男女千人に聞いた調査では57%が「仕事上で男女差を感じる」と回答。女性が上回っているものとして、細やかな配慮やコミュニケーション能力、協調性などが挙がった。「どうして男性は取引額が小さい顧客を後回しにするの?」。2月上旬の平日夜、東京都内の会議室で金融機関や化学メーカーなど別々の会社の女性営業職7人が悩みを共有した。ネットワーク「営業部女子課」を主催する人材組織コンサルタントの太田彩子(38)は元リクルート営業職。当時から男女の営業手法の違いが気になった。 ●時間かけ信頼 男性は期限を決めて顧客を一気に攻略。女性はじっくり話を聞き顧客の利益も考える。時間はかかるが一旦信頼関係を築くと次々契約を取り、中長期的な成績は同じ。「共感性や協調性の高さなどが女性の武器。男性をまねなくても結果は出せる」と太田は話す。山科裕子(50)は今年1月、オリックスの女性初の執行役員に就いた。法令順守担当で、女性の資質が生きると感じる。率直な発言は山科のセールスポイント。課長時代、部下のパートの時給を巡り「これが相場」と渋る人事部相手に能力に見合った待遇を勝ち取った。「おかしいところを女性は黙っていられない」。もっとも利点ばかりでもない。行動経済学では「女性はリスクを避けたがる」「男性は自信過剰で競争を好む」といった性差があるとされる。大阪大教授の大竹文雄は「男性の自信過剰傾向が投資や挑戦を促し、革新的な商品やサービスを生み出してきた側面もある」と指摘する。そもそも「らしさ」の定義は難しい。個人差もあるし、性別で固定されるものでもない。紙おむつ「パンパース」を開きやすく改良したのは育児休業中に使いにくいと感じた男性社員。ミサワホームの家事や子育てしやすいという住宅も共働き男性社員の提案だ。「らしさ」と混同しがちな「経験の違い」が強みになることもある。これまで来た道と違ったとしても、押し付けられる「らしさ」ではなく素直に優れた面を生かす道が、さらなる高みにつながる。(敬称略) *3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140225&ng=DGKDASDG2402B_V20C14A2CC0000 (日経新聞 2014.2.25) 理系女子になりたい 受験生、憧れ胸に 国公立大2次試験始まる 国公立大2次試験の前期日程が25日、全国で始まった。理工系学部では近年、女子の受験生が増加。「就職に有利」という思惑に加え、第一線で活躍する女性研究者の姿も理系志望を後押ししているようだ。少子化が進むなか、大学や国も優秀な女子を理工系学部に呼び込もうと力を入れている。東京大理科2類を受験する東京都杉並区の高校3年の女子生徒(18)は薬学部志望。「自分がアレルギー体質でひどいとじんましんが出る。副作用のない薬や肌に優しい化粧品を開発して人の役に立ちたい」という夢がある。「理系は就職にも有利と聞く。卒業後は大手の製薬会社や化粧品会社を目指したい」。東大理科1類を目指す東京都港区の女性(19)は「学習塾で科学史を教えてくれた物理の講師へのあこがれ」が出発点。「材料工学や環境の分野を学び、将来は大学で研究者になりたい」と意気込んでいる。大手予備校の河合塾によると、理工農学部系の大学1年生の女性比率は1990年の9.3%から2013年の19.7%に倍増した。模試受験者の志望先は6年前と比べ、文系はほぼ横ばいだが、理系は2割増。特に医療分野や工学の「建築・土木」「機械・航空」などで女子の増加が目立つという。文部科学省人材政策推進室は「理系分野に進む女性の先輩が増えたことや、高校が理数系の教育に力を入れるようになってきたことが背景にあるのではないか」とみる。東北大は「少子化が進むなか、優秀な女子学生を積極的に呼び込みたい」(女性研究者育成支援推進室)と、06年から地域の進学校で女子大学院生による出前授業を続けている。「研究面でハンディがないことや企業が女性採用に積極的なことを丁寧に説明している」。東北大では自然科学系学部の女性比率が7年間で5ポイント上昇し、12年度は約22%を占めた。京都大工学部も10年度から夏のオープンキャンパスで女子高生限定イベント「テク女子」を開催。女子学生が学生生活や卒業後の進路を説明する企画が人気で「100人の定員は募集開始直後に埋まる」という。理系を志す女子が増えてきたとはいえ、文科省によると日本の女性研究者は14%にとどまり、先進国最低レベル。政府が第4期科学技術基本計画で掲げる「30%」の目標はまだ遠い。文科省人材政策推進室は「多様な発想や視点を取り入れて日本の科学技術を発展させるには女性の力が不可欠。研究活動とプライベートを両立できる研究環境の整備を急ぎたい」としている。 *3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11049166.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2014年3月26日) 別マウスの遺伝子検出 STAP細胞実験、新たな疑問浮上 STAP細胞論文をめぐる問題で、理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーが共同研究者に提供した細胞から、実験に使われていたはずのマウスとは異なる遺伝子が検出されたことがわかった。STAP細胞をつくる実験のデータに、新たな疑問が浮かんだことで、理研が詳しく調べる。理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)が25日、明らかにした。CDBによると、山梨大の若山照彦教授らが、遺伝子解析の結果をCDBの複数の研究者に報告した。英科学誌ネイチャーに論文が掲載された研究では、若山さんは、小保方さんが「STAP細胞」と説明した細胞の提供をうけ、特殊なマウスを作ることで万能細胞だと証明する作業を担った。若山さんらが解析したのは、小保方さんから提供され、その後も保存していた2種類の細胞。論文で書いたものとは別の実験で、小保方さんはいずれの株についても「129」と呼ばれる系統のマウス由来の細胞だとして若山さんに提供した。しかし遺伝子を調べたところ、「B6」というマウスと、B6と129の子どものマウスに由来する細胞とわかったという。ただ、これだけでSTAP細胞の存在が疑われるかどうかは判断できない。CDBの竹市雅俊センター長は同夜、「まだ予備的な解析の段階であるため、今後、詳細な検証を若山教授と協力しながら進めていきます」とのコメントを出した。 *3-3:http://digital.asahi.com/articles/ASG3P1S83G3PUHBI001.html?iref=comkiji_redirect&ref=reca (朝日新聞 2014年3月22日) STAP細胞、米教授強気の理由 発想に自負、異端視も 新しい万能細胞「STAP細胞」の論文は、主要著者のうち米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授だけが撤回に反対している。弟と15年前に研究に着手していて、「アイデアを生んだのは自分」との自負がある。STAP細胞について独自の作製方法を公表、強気な姿勢を崩していない。2月に論文データに疑惑が見つかって以降、バカンティ教授は公の場に姿を現さず、日本メディアの取材にも応じていない。ハーバード大学医学部の関連病院で麻酔科部長を務め、再生医療工学の第一人者としても知られる。人間の耳のような組織を背中にはやしたマウスを1997年に発表し、注目された。ハーバード大に留学した小保方晴子・理化学研究所ユニットリーダーを指導し、今回の論文では総合プロデューサーのような役割を果たした。弟のマーティン・バカンティ氏も米国の病院に勤務する病理医で、英科学誌ネイチャー発表の論文では著者の一人になっている。 ■15年前に「確信」 日本では、理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーらが1月末、神戸市内で記者会見を開いて発表した。これに対し、バカンティ教授は直後の朝日新聞の取材に「まずはっきりさせておきたいのは、STAP細胞のもともとの発想は自分と弟のマーティンから出たことだ」と語った。同教授が論文発表前に共著者らに送った手紙では、「私とマーティンが15年前、他に例のない変わった細胞を発見した。当時から万能性を持っているという確信はあった」と述べている。ハーバード大の地元で発刊される米紙ボストン・グローブによれば、事故やけがで下半身まひになる脊髄(せきずい)損傷の治療に使える新しい細胞を探していたという。この論文は2001年に発表。極端な低酸素状態でも生き延びる「胞子のような細胞」があり、「病気や事故で失った組織を再生させる潜在性を持っている」と報告した。当時所属していた大学に異端視されたことなどから、ハーバード大に移ったという。08年に渡米した小保方さんに今回の研究テーマを与えたのもバカンティ教授だ。 ■共著者らと距離 直接の取材には応じない一方で、病院を通し「データが誤りである証拠がない以上、撤回すべきだとは考えない」(3月14日)との声明を発表。強気の姿勢を見せつつ、日本の共著者らとは距離を置きつつある。今月5日に理研がSTAP細胞の詳しい作製方法を発表すると、バカンティ教授らは「細いガラス管に通すことが極めて重要」などとする独自の方法をウェブサイトで公表した。10日に主要著者の一人、山梨大の若山照彦教授が論文撤回を提案した際も、米紙ウォールストリート・ジャーナルに「重要な論文が同僚研究者の圧力で撤回されたとなればとても残念なこと」とコメントした。バカンティ教授のグループは、すでにサルの脊髄損傷でSTAP細胞の移植実験を進め、臨床試験も準備中と言われる。米国のある再生医療の研究者は「今回の論文を取り下げればこの15年間の研究の信頼を失いかねないという危機感があるのではないか」と語る。(ボストン〈米マサチューセッツ州〉=小宮山亮磨、ワシントン=行方史郎) ■「日本と温度差」 ハーバード大で7年間の研究歴がある内科医の大西睦子さんによると、STAP細胞の問題は、現地では新聞以外でとりあげられることは少なく、「日本とは温度差がある」という。ハーバード大医学部の広報担当者は、「すべての懸念について、徹底的に検討する」などとする声明を出している。ただ、具体的な検討項目は明らかにされていない。大西さんは、「大学が調査をしているとしても、発表までは時間がかかる。それまでに米国のメディアの報道は、さらに沈静化するのではないか」と推測する。肩身の狭さを感じている日本人研究者もいる。大西さんによると、ハーバード大への留学から帰国し、今後の共同研究を計画している研究者や、これから留学しようとしている学生から、「受け入れてもらえるかどうか不安だ」との相談を受けているという。 ◇ 〈STAP細胞〉 体のどんな組織にでも育てる「万能性」を持っているとされる細胞。マウスの体の細胞を、酸性の液体に浸すことで作れる。理化学研究所は、小保方晴子ユニットリーダーがバカンティ教授のもとに留学中に着想を得て作製法を見つけた、と1月末に発表した。ただ英科学誌ネイチャーに掲載した論文に画像の二重使用や他人の論文のコピーが見つかり、日本側の主要著者は撤回に同意している。
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2014,03,19, Wednesday
*1-2より STAP細胞の作り方 関連記事が多く、*6の論文にも目を通さなければならなかったので、遅くなりましたが・・。 (1)批判するにも褒めるにも、日本のメディアはジェンダーを含んでいる 朝日新聞社が、*1-2の写真で報じている「かっぽう着姿で作業する」というのは、研究とは関係のない事項で、男性の研究者に対して、このような褒め方はしない。そもそも、「かっぽう着」は、着物を着た人が台所で作業する場合に都合のよい台所のコスチュームであるため、かっぽう着姿で研究室にいるのは、警察官が消防団の法被を着て仕事をしているのと同じくらい場違いなのである。それにもかかわらず、親しみの持てる人であるというメッセージを込めて「かっぽう着姿で作業する」としたのは、「女性=かっぽう着姿で台所にいるのが普通で親しみやすい」というジェンダーを含んでおり、スーツ姿や白衣で颯爽と働いている女性に対して失礼である。 そして、「やめてやると思った」と報じたのは、本当に小保方さんがそう言ったのかどうかは不明だが、「この程度の人なら、かわりはいくらでもいるのに不遜だ」と読者に思わせ、小保方さんに悪いイメージを刷りつけた。また、「泣き明かした」としたのも、研究者にしてはプロ意識が足りないというイメージを刷りつけており、そのような言葉を、無理に本人から聞き出して脚色して記事を書いたとすれば、それは、記者の中にあるジェンダーのなせる業である。しかし、私の経験では、本人は全く言わなくても、記者のジェンダーに基づいて、低レベルのストーリーに仕立て上げられた記事は、大変多い。 一方で、*1-2の中で、理研の笹井副センター長が、「化学系の出身で、生物学の先入観がなく、データを信じて独自の考えをもっていた」と表しているのは、小保方さんに研究のアイデアやヒントを提供したチャールズ・バカンティ米ハーバード大教授は生物系・医学系の人であり、生物系の人にもいろいろなレベルの人がいるため、生物系の人に対して失礼な発言となっている。しかし、小保方さんの評価には、ジェンダーは含んでいない。 (2)STAP細胞の研究は捏造で、その存在は嘘か? *1-1の朝日新聞記事は、「理化学研究所などが、新しい『万能細胞』の作製に成功し、マウスのリンパ球を弱酸性の液体で刺激するだけで、どんな細胞にもなれる万能細胞に変化することを発見した」「生命科学の常識を覆す画期的な成果で、英科学誌ネイチャー電子版のトップ記事として掲載された」「受精卵にSTAP細胞を注入して子宮に戻すと、全身がSTAP細胞から育った胎児になった」「究極の再生医療への応用にまでつながる可能性がある」と報じており、私には、これは自然に思えた。 また、*6-1の論文には、「本研究で、分化した体細胞が潜在的には驚くべき可塑性を持っていることが明らかになった」と書かれているが、これについては、私は、東大理Ⅱの学生時代(今から41年前)に、ノーベル賞級と噂されていた動物学の先生に教わった。つまり、受精して卵割が始まると、胃の場所に行った細胞は胃になり、肺の場所に行った細胞は肺になるというように、細胞は、場所を与えられてから、その場所に応じた分化をするということだ。そして、胃に肺の細胞ができないように、また、通常は勝手な分化をしないように、遺伝情報で制御されているのである。 *6-1には、「なぜ体細胞は致死以下の刺激が加わると自らをリプログラミングできる潜在能力を持っているのか?」と書かれているが、考えてみれば、リンパ球が致死以下の刺激で細胞の初期化を起こすのは、当然かもしれない。何故なら、リンパ球は、傷を負った場所に集まって傷を治す役割を持つ細胞で、その役割を果たすためには、何にでも分化できなければならないため、そのように遺伝情報でセットされているのではないかと思う。 そして、「いつ初期化されて修復するための新しい分化を始めるか」については、リンパ球が、毛細血管に似た環境の細いガラス管を多数回通されたり、傷口ができて血液が空気に触れて酸化したような状態の弱酸性になった時で、傷口を修復しなければならず、傷口に集まった時のような刺激を与えられた時なのだろう。 「このリプログラミングのメカニズムは、正常の状態ではどのように抑制されているのか?」については、それぞれの場所にある細胞が勝手に変化して収拾がつかない状態にならないように制御するシステムが、遺伝情報に組み込まれているからである。なお、「強い環境のストレスを受けても、通常の組織では多能性細胞(または奇形腫)の出現が見られないのはなぜか?」という問いもあるが、ストレスのすべてが癌化や奇形腫に繋がるわけではないし、身体には防御システムも備わっているからだ。 (3)研究への批判は正しいか 英科学誌ネイチャーに掲載された小保方さんのSTAP細胞に関する論文は、*2-1のように、小保方さんの博士論文が参考文献リストをコピペしていたとか、*2-2のように、小保方さんの博士論文は、米国立衛生研究所サイト冒頭をコピペしていたなど、対象論文とは関係がなく、事情があって悪いことではないかもしれないことでも叩かれた。しかし、これらは、STAP細胞に関する論文の内容を否定できるようなものではなく、あらさがしの類であり、女性である小保方さんには、批判もまた、女性蔑視とジェンダーが含まれていたと思う。 なお、*2-3では、①STAP細胞からマウスの胎盤ができたことを示す2種類の胎盤の画像が似ており、同じ画像を使い回した ②論文の中の実験手法に、海外の別の研究者の論文と同じ記述があり、引用の記載がないので盗用だ ③1月末に公表されたネイチャー誌の論文と、3月5日に公開された作り方の手順書で、符合しない点がある ④ネイチャー誌の論文で、STAP細胞の「万能性」を示す根拠とされていた画像と、小保方さんの博士論文で使われていた別の現象の画像が酷似しており、博士論文の画像を使い回した 等が指摘されたが、このうち①④は研究者として真実を追求する姿勢が問われるが、②③はそういうことがあったからといって盗用とは限らないし、STAP細胞の存在を否定するものでもない。そもそも、主たる部分を盗用して書いたような論文であれば、独創的でないため、生物学の常識から外れているなどとは言われないものである。 そして、*2-3には、その後、共著者の若山照彦教授が、「確信が持てないと表明して、取り下げを呼びかけた」と書かれているが、若山教授自身が、確信も持てないまま論文の共著者になっていたことは問題であり、最も圧力に屈しやすそうな人でもあって、論文に名を連ねた以上は共同責任者だという自覚がないのも変だ。 さらに、*2-3などで、朝日新聞は、「理研、遅れる対応」などとして理研に調査と論文撤回を迫っているが、メディアの無責任な記事と違って、研究者が論文を撤回すれば成果が白紙になるだけではなく、関係した研究者は研究生命を断たれるのだということや、論文不正といっても京都府立医大が中心になった高血圧薬をめぐるデータ捏造の臨床研究論文と今回のSTAP細胞の論文とは、目的も次元も全く違っていることを理解していない。 そして、*2-4で理研が、論文の改ざんがあったと認定して、重大な過誤があると認めた部分は、*1-1で、 「受精卵にSTAP細胞を注入して子宮に戻すと、全身がSTAP細胞から育った胎児になった」とされたことを証明する部分だが、受精卵に遺伝子を注入すれば胎児になるのは普通であり、それは家畜ではすでに実用化されており、また、胎児にならなくても再生医療には十分に利用できるのである。 (4)STAP細胞の結論に影響はないと思う *3-1のように、青山学院大生物学教授の福岡伸一氏は、「STAP細胞の実在性に著者らがなお信念をもっているのであれば、論文を撤回するのではなく、訂正や続報で対応すべきで、撤回すれば、故意のデータ操作や捏造などの不正があったと世界はみなすだろう」と書かれているが、全くその通りだ。 さらに、メディアは、悪乗りして的外れな賞賛や批判をするため、研究者の基本姿勢や倫理観を育てる科学教育だけでなく、官僚や記者や評論家などの文科系の人にも科学の基礎知識を学ばせる中等教育での科学教育を重視すべきで、それは、基礎知識がなければ、説明しても理解できないし、重要性の判断をすることもできないからである。 このような状況であるため、*3-2のように、共著者のチャールズ・バカンティ米ハーバード大教授が、「論文に対して持ち上がっている疑問や懸念は、私たちの研究結果や結論には影響を与えないと確信している」とする声明を発表したのはもっともで、*3-3の共著者、丹羽仁史理研プロジェクトリーダーが、「STAP細胞ができたという根幹は揺るがない」と述べ、STAP細胞の作製は事実だと訴えたのも、もっともだと思う。 なお、*3-4で、STAP論文を巡って「検証を待つ」と繰り返しているノーベル化学賞受賞者の野依良治理事長はじめ理研幹部は畑違いの専門家であり、「極めてずさんで、あってはならないこと」と論文の不備を認めたといっても、STAP細胞が存在するかどうかを判断できるとは思えない。また、*3-5で、小保方さんたちが細胞の証明不十分とされて、STAP論文の撤回に同意したのは、このような日本国内の圧力に屈したものであり、米大学教授の反対はもっともなのである。そして、*3-6のように、理研は、STAP記者向けに、iPSと比較してSTAP細胞の方が作りやすいとした資料を、誤解を招いたとして撤回している。 (5)妨害の陰が見えた *3-5等では、新聞が、小保方さんらにSTAP論文の撤回を同意させ、幹細胞研究に詳しい九州大教授の赤司氏が「いったん撤回して、科学的に批判の出ない論文を出し直すのは正当だ。そうすれば、(今回の研究メンバーの研究生命はなくなるかもしれないが)STAP細胞は生き残ることができる。それには、経験の豊富な科学者が責任を持ち、実験に参加する態勢が欠かせない」とたたみかけているが、STAP論文の共著者であるチャールズ・バカンティ米ハーバード大教授は経験豊富な科学者である。 また、*4-1で、共著者で山梨大教授の若山氏が、「科学的真実を知りたい」などとして、2014年3月18日に、小保方さんから送られて保存していた細胞を第三者機関に送ったそうだが、今まで真実を知らなかったというのは呆れる上、何から作ったかわからないと言われている問題の細胞を使っても、新たな事実が見つかるわけがなく、他の人にその細胞を提供しただけに終わりそうだ。 そのような中、*4-2のiPS細胞から赤血球を生産したという記事が目を引いた。何故なら、iPS細胞より優れていそうなSTAP細胞を否定して得をするのは、iPS細胞で特許を得ようとしている人たちだからである。*4-3のiPS細胞を年内配布して患者治療を後押しするという記事も同様だ。 さらに、*4-3では、「iPS細胞の活用として、創薬分野での産学連携に期待している」とされているが、官がiPS細胞のみに加担して、他の再生医療研究を予算で抑えれば、最も優秀な再生医療を日本で開発する機会が奪われ、iPS細胞以外の再生医療研究者は海外で研究開発せざるを得なくなる。そして、既に、そういう人はいるのだ。従って、Fairに、多様性を保って伸ばすことにより、その中で一番良い物を選抜しなければ最も良い方法を得ることはできないため、iPS細胞のみに加担してはならず、一騎当千の優秀な研究者の海外流出は、日本にとって大きな損失であることを強調しておく。 (6)メディアの報道について *5に、朝日新聞が、「理研の調査委員会が不適切と認めたが、報道のあり方が問われている」という記事を書いている。確かに、社会面での小保方晴子ユニットリーダーの研究人生紹介はジェンダーを含み、その後は一転して、新聞の1面、2面を大きく割いて、くだらないことまで含むあらさがしの批判を行い、共著者や理研に論文撤回をせっついたというのが朝日新聞の態度だった。そのため、新聞記者の資質や編集姿勢の検証も必要である。 *1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASG1Y41F4G1YPLBJ004.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2014年1月29日) 新しい万能細胞作製に成功 iPS細胞より簡易 理研 理化学研究所などが、まったく新しい「万能細胞」の作製に成功した。マウスの体の細胞を、弱酸性の液体で刺激するだけで、どんな細胞にもなれる万能細胞に変化する。いったん役割が定まった体の細胞が、この程度の刺激で万能細胞に変わることはありえないとされていた。生命科学の常識を覆す画期的な成果だ。29日、英科学誌ネイチャー電子版のトップ記事として掲載された。 ●万能細胞 理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の小保方晴子(おぼかたはるこ)ユニットリーダー(30)らは、新たな万能細胞をSTAP(スタップ)細胞と名付けた。STAPとは「刺激惹起(じゃっき)性多能性獲得(Stimulus―Triggered Acquisition of Pluripotency)」の略称だ。iPS細胞(人工多能性幹細胞)よりも簡単に効率よく作ることができた。また、遺伝子を傷つけにくいため、がん化の恐れも少ないと考えられる。作り方は簡単だ。小保方さんらは、マウスの脾臓(ひぞう)から取り出した白血球の一種のリンパ球を紅茶程度の弱酸性液に25分間浸し、その後に培養。すると数日後には万能細胞に特有のたんぱく質を持った細胞ができた。この細胞をマウスの皮下に移植すると、神経や筋肉、腸の細胞になった。そのままでは胎児になれないよう操作した受精卵にSTAP細胞を注入して子宮に戻すと、全身がSTAP細胞から育った胎児になった。これらの結果からSTAP細胞は、どんな組織にでもなれる万能細胞であることが立証された。酸による刺激だけではなく、細い管に無理やり通したり、毒素を加えたりといった他の刺激でも、頻度は低いが同様の変化が起きることも分かった。細胞を取り巻くさまざまなストレス環境が、変化を引き起こすと見られる。さらに、脳や皮膚、筋肉など様々な組織から採った細胞でもSTAP細胞が作れることも確かめた。STAP細胞は、iPS細胞とES細胞からは作れない胎盤という組織にも育ち、万能性がより高く、受精卵により近いことを実験で示した。さまざまな病気の原因を解き明かす医学研究への活用をはじめ、切断した指が再び生えてくるような究極の再生医療への応用にまでつながる可能性がある。ただ、成功したのは生後1週間というごく若いマウスの細胞だけ。大人のマウスではうまくいっておらず、その理由はわかっていない。人間の細胞からもまだ作られていない。医療応用に向けて乗り越えるべきハードルは少なくない。万能細胞に詳しい中辻憲夫・京大教授は「基礎研究としては非常に驚きと興味がある。体細胞を初期化する方法はまだまだ奥が深く、新しい発見があり、発展中の研究分野なのだということを改めて感じる」と話す。 ■山中伸弥教授「重要な研究成果、誇りに思う」 京都大iPS細胞研究所長の山中伸弥教授は「重要な研究成果が、日本人研究者によって発信されたことを誇りに思う。今後、人間の細胞からも同様の手法で多能性幹細胞(万能細胞)が作られることを期待している」とのコメントを発表した。 ◇ 〈万能細胞〉 筋肉や内臓、脳など体を作る全ての種類の細胞に変化できる細胞。通常の細胞は筋肉なら筋肉、肝臓なら肝臓の細胞にしかなれない。1個の細胞から全身の細胞を作り出す受精卵のほか、少し成長した受精卵を壊して取り出したES細胞(胚(はい)性幹細胞)、山中伸弥・京都大教授が作り出したiPS細胞(人工多能性幹細胞)がある。万能細胞で様々な組織や臓器を作れるようになれば、今は治せない病気の治療ができると期待されている。 *1-2:http://apital.asahi.com/article/news/2014013000016.html (朝日新聞 2014年1月30日) 泣き明かした夜も STAP細胞作製、理研の小保方さん いつも研究のことを考えています――。世界を驚かす画期的な新型の万能細胞(STAP〈スタップ〉細胞)をつくったのは、博士号をとってわずか3年という、30歳の若き女性研究者だ。研究室をかっぽう着姿で立ち回る「行動派」は、負けず嫌いで、とことんやり抜くのが信条だ。「やめてやると思った日も、泣き明かした夜も数知れないですが、今日一日、明日一日だけ頑張ろうと思ってやっていたら、5年が過ぎていました」。28日、神戸市内の理化学研究所発生・再生科学総合研究センターでの記者会見。無数のフラッシュの中、小保方晴子(おぼかたはるこ)さんはこれまでの日々を振り返った。千葉県松戸市の出身。2002年、早稲田大学理工学部に、人物重視で選考するAO入試の1期生として入った。当時、面接で「再生医療の分野に化学からアプローチしたい」とアピール。ラクロスに熱中し、「日々、大学生の青春に忙しかった」というふつうの学生生活を送っていた。応用化学科の研究室で海の微生物を調べていたが、指導教官から「本当は何をやりたいか」を問われ、最初の夢を思い出し、大学院から、再生医療の分野に飛び込んだ。小保方さんを大学院時代に指導した大和雅之・東京女子医大教授は「負けず嫌いで、こだわりの強い性格」と話す。一から細胞培養の技術を学び、昼夜問わず、ひたすら実験に取り組んでいた。半年の予定で米ハーバード大に留学したが、指導したチャールズ・バカンティ教授に「優秀だからもう少しいてくれ」と言われ、期間が延長になったという。ここで、今回の成果につながるアイデアを得た。研究の成功に欠かせない特殊なマウスをつくるために、世界有数の技術をもつ若山照彦・理研チームリーダー(現・山梨大教授)に直談判。ホテルに泊まり込みながら半年以上かけて、成果を出した。今回の発見について、小保方さんは「あきらめようと思ったときに、助けてくれる先生たちに出会ったことが幸運だった」と話す。理研の笹井芳樹・副センター長は「化学系の出身で、生物学の先入観がなく、データを信じて独自の考えをもっていた。真実に近づく力と、やり抜く力を持っていた」と分析する。昨年、理研のユニットリーダーになった小保方さんは、自身の研究室の壁紙をピンク色、黄色とカラフルにし、米国のころから愛用しているソファを持ち込んでいる。あちこちに、「収集癖があるんです」というアニメ「ムーミン」のグッズやステッカーをはっている。実験時には白衣ではなく、祖母からもらったというかっぽう着を身につける。研究をしていないときには「ペットのカメの世話をしたり、買い物に行ったりと、普通ですよ」と話す。飼育場所は研究室。土日も含めた毎日の12時間以上を研究室で過ごす。「実験室だけでなく、おふろのときも、デートのときも四六時中、研究のことを考えています」 *2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASG3D32NBG3DULBJ002.html?iref=comkiji_redirect&iref=comtop_6_01 (朝日新聞 2014年3月12日) 小保方さんの博士論文、参考文献リストもコピペか 英科学誌ネイチャーに掲載された新しい万能細胞「STAP(スタップ)細胞」論文の筆頭著者、理化学研究所の小保方(おぼかた)晴子ユニットリーダーが早稲田大に提出した英文の博士論文で、参考文献リストが他の論文と酷似していることが12日わかった。リストは論文の根拠となる文献を示すもので、学位取り消しの検討が求められる状況となっている。博士論文は2011年2月付。動物の体中から万能性をもつ幹細胞を見つけ出すもので、STAP細胞の論文ではない。章別に参考文献リストがある。たとえば、第3章では本文に引用の印がないのに、文献リストには38件分の著者名、題名、雑誌名、ページが列挙されている。これは10年に台湾の病院の研究者らが医学誌で発表した論文の文献リスト53件のうち、1~38番とほぼ一致した。博士論文では一部文字化けしている文字があり、コピー・アンド・ペースト(切りはり、コピペ)の可能性がある。リストは著者名のABC順。元論文の38番はPで始まる姓のため、ありふれたSやTで始まる著者名が博士論文にはないという不自然さがあった。普通の論文では本文で文献を参照した箇所に(1)などの番号を添えるが、図を除いて5ページある第3章の本文にはこのような番号はつけられていない。このため、意味不明な参考文献リストになっている。この博士論文に関しては11日、米国立保健研究所(NIH)がネット上に掲載している文章との酷似が指摘されたばかり。酷似は108ページある博士論文の約20ページ分に及ぶとされたが、今回判明した参考文献リストを合わせると約35ページ分になる。小保方さんは理研に就職する前、論文審査を通り博士の学位を得た。審査には早稲田大教授2人、東京女子医科大教授1人のほか、STAP細胞論文の責任著者になっている米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授も加わっている。研究倫理に詳しい山崎茂明・愛知淑徳大教授は「これで論文審査を通ったこと自体が驚き。審査した教授や大学の責任は重い。学位取り消しを含めて検討すべきだ」と語る。早稲田大広報課は「確認中。学位取り消しに相当するかは調べきってから評価することになる」としている。 *2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2645323.article.html (佐賀新聞 2014年3月12日) 小保方氏の博士論文、米に同じ文 / 国立衛生研究所のサイト冒頭 万能細胞「STAP細胞」の論文を執筆した理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーが、博士号を得るため早稲田大に提出した英語の博士論文の冒頭部分が、米国立衛生研究所(NIH)のサイトの文章とほぼ同じだったことが11日、分かった。博士論文にはこれまでも不適切な画像の操作の指摘がインターネット上で広がり早大が調査している。博士論文は、骨髄から採取の細胞がさまざまな細胞に変化できることなどを示したもので2011年2月発行。約100ページの冒頭26ページは幹細胞研究の意義や背景を説明、うち20ページはNIHの「幹細胞の基礎」というサイトとほぼ同じだった。 *2-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11022434.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2014年3月11日) 画像酷似、新たに指摘 論文裏付け、疑念 STAP細胞 生物学の常識を覆すとして世界に衝撃を与えた万能細胞「STAP細胞」の論文が、撤回される可能性が出てきた。発表からわずか1カ月余り。論文の不適切さを問う声が相次ぎ、共著者まで「確信が持てない」と表明した。次々に明らかになる問題に、理化学研究所の対応は後手にまわっている。「きょうの昼ごろに、理研の(幹部)3人から、メールや電話で『論文を取り下げてはどうか』と著者全員に連絡があった。それに後押しをされて、取り下げを呼びかけることにした」。10日夜、甲府市の山梨大。報道陣に囲まれ、論文の共著者である若山照彦教授は話した。若山さんはマウスのクローンを作る第一人者。論文では、STAP細胞がどんな組織にでもなれる「万能性」を持つことを裏付ける決定的な証拠のための実験を担った。STAP細胞の特徴は、(1)万能性を持ち、(2)体のふつうの細胞から作られる、という2点だ。こうした研究内容そのものにかかわる疑問が、今月に入り相次いで浮上した。万能性への疑問は、論文不正などを取りあげるインターネットのブログで9日に指摘された。筋肉や腸の組織をとらえた計4枚の画像で、英科学誌ネイチャー発表の論文では、いずれもSTAP細胞から育ったと説明された。だが、これらは論文の主著者である理研の小保方晴子ユニットリーダーが2011年に書いた博士論文の写真とそっくりだった。博士論文ではSTAP細胞ではなく、骨髄の中に元々含まれている万能の細胞を育てたとしていた。若山さんは「この写真は細胞がいろいろなものに分化できることを示す写真で、研究の根幹が揺らいだ。私が実験をしたのが何だったのか、確信が持てなくなった」と話した。第二の特徴にも疑念が出ている。論文では、血液に含まれるリンパ球という細胞からSTAP細胞をつくったとされ、人為的につくったことを示す遺伝子の変化がSTAP細胞に見つかったと書かれていた。ところが、理研が今月5日に公表した詳しい作製手順には、STAP細胞を改変した細胞(STAP幹細胞)にはこの遺伝子の変化がなかったと書かれていた。若山さんはこれまで小保方さんを擁護していた。論文については他にも、画像の「使い回し」や、記述の一部が別の研究者が発表した論文とほぼ同一だったとの指摘もあったが、STAP細胞を作ったという成果自体には影響しないと見られてきた。若山さんは「研究成果を信じたい気持ちがあるので、一度論文を取り下げて、もう一度研究を行い、だれからも文句の出ない形で論文を出したい」と話した。 ■理研、遅れる対応 これまで相次ぎ指摘されてきた問題点について、理研は「調査中」を理由に詳しい説明を拒んできた。研究の中心となった小保方さんも、論文の掲載時以降、取材に応じていない。理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の広報担当者は10日夜、理研所属の著者について質問されても「いま対応を協議しているところです」と繰り返した。このうち小保方さんについては「様々な指摘を真摯(しんし)に受けとめている」と説明し、内部で対応を議論しているという。STAP細胞の姿は、発表後まもなくから揺らぎ続けた。まず指摘されたのはSTAP細胞を用いて育ったマウスの胎児と胎盤の画像だ。別々の被写体のはずの2枚で一部が酷似していた。理研、ネイチャー誌が相次ぎ調査開始を公表。理研は「成果そのものは揺るがない」と自信を示した。当初、「簡単にできる」と説明したことについても疑問が噴出。研究者から「再現できない」との声が相次ぎ、理研は製法の詳細を公表した。だが、内容が当初の発表と矛盾するとの指摘が出て、さらに対応を迫られた。理研を所管する文科省幹部は「理研の調査委の中に、STAP論文について、正しいと見ている研究者と、疑いの目を持った研究者がいるので結論が出ていない」と説明する。一方、日本分子生物学会は日本の科学研究の信頼性への影響を懸念し今月3日、迅速な調査結果の公表を求める声明を出している。 ■撤回なら成果は「白紙」に 論文の撤回は、そこに記載された科学研究の成果全体が「白紙」となることを意味する。現段階でSTAP細胞ができたこと自体まで否定されたわけではないが、論文を発表した理研とは別のチームによる実験で同じ結果が示され、その結果が研究者のあいだで信用されるまでは、STAP細胞が本物とも言えない状態になる。公表された論文の内容に問題が見つかった場合、意図的でない小さなミスであれば論文の訂正がなされる。しかし、データの改ざんや捏造(ねつぞう)、ほかの研究者の論文からの盗用といった不正行為があった場合は論文そのものを取り下げ、雑誌にも撤回の事実を明記するのが一般的なルールだ。論文不正に詳しい愛知淑徳大の山崎茂明教授は「誤った研究結果がそれ以上広まらないようにするのが撤回の目的」と話す。今回も、盗用を含む複数の不正の指摘がある。撤回は、論文を書いた著者が自ら申し出るのが原則だが、雑誌の側がすることもある。京都府立医大が中心になった高血圧薬をめぐる臨床研究の論文は、掲載した欧州心臓病学会誌が昨年撤回している。悪質な不正があったとして、著者が所属する大学から解雇されたケースもある。今回の論文が掲載されたネイチャーのほか、サイエンスやセルといった影響力の大きい科学雑誌での撤回は実は珍しくない。「一流雑誌に載る論文ほど競争の激しい分野の研究が多い。それだけ、問題も生じやすい」と山崎さんはいう。 ■指摘されている主な問題点 (1)STAP細胞からマウスの胎盤ができたことを示す2種類の胎盤の画像が似ているため、同じ画像を使い回して別の画像のように見せかけたのではないかと疑われている (2)論文の中の実験手法について書かれた部分に、海外の別の研究者の論文とほぼ同じ記述があった。論文には引用の記載がなく、盗用したのではないかと疑われている (3)1月末に公表されたネイチャー誌の論文と、3月5日に公開された作り方の手順書で、符合しない点がある (4)ネイチャー誌の論文で、STAP細胞の「万能性」を示す根拠とされていた画像と、小保方さんの博士論文で使われていた別の現象の画像が酷似していた。博士論文の画像を使い回した疑いがある ■STAP細胞、これまでの主な経緯 <1月29日> 英科学誌ネイチャーにSTAP細胞の論文が掲載される <2月13日> 「論文に不自然な画像がある」とインターネットなどで指摘され、理研が調査開始 <17日> ネイチャーも調査開始を公表 <18日> 早稲田大が小保方さんの博士論文について調査を始める 共同研究者の若山・山梨大教授が朝日新聞に「画像取り違えの単純ミス」と説明 <3月3日> 日本分子生物学会が理研に対し、迅速な調査結果の公表を求める声明を発表 <5日> 理研がSTAP細胞の詳しい作製手順を公表 *2-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11030070.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2014年3月15日) STAP細胞、証明できず 万能性の根拠、別画像 理研中間報告 新しい万能細胞「STAP(スタップ)細胞」の論文に対し、理化学研究所は14日、「重大な過誤がある」と認めた。研究の根幹となる万能性を示す画像が、3年前に書かれた別の論文の画像と同一だったとした。野依良治理事長は「論文の疑義についておわび申し上げたい」と謝罪。STAP細胞を作製したことの具体的な根拠を示せず、証明できないと説明した。これまで「成果は揺るがない」としていた理研の姿勢は大きく後退した。 ■「論文、極めてずさん」 理研の調査委員会によると、問題の画像は、英科学誌ネイチャーの論文で、STAP細胞がいろいろな細胞になれることを示した証拠として使われていた。ところが、著者の理研発生・再生科学総合研究センターの小保方(おぼかた)晴子ユニットリーダーが博士論文に載せた別の実験による画像と同じことが判明した。野依理事長は「極めてずさん。あってはならないことだ」、竹市雅俊センター長は「完全に不適切。論文としての体をなさない」と述べた。論文は撤回に向けた協議が進んでいる。調査委は著者の小保方さんらに聴取するなどして、六つの項目を調べ、中間報告をまとめた。うち4項目は、疑わしい部分が残るなどとして調査を継続する。残る2項目については「不適切な点はあったが、研究不正にはあたらない」と判断した。実験手法の記載の一部が、他の海外論文をコピーしていたとする疑いについて、小保方さんにはコピーした記憶がある様子だったが、どこから取ってきたかは「覚えていない」と話したという。遺伝子を分析する画像に切り張りした形跡があるとの指摘について、小保方さんは条件の異なる実験の画像を挿入したと認めた。調査委はこうした問題点については、不正かどうかを判断するために継続調査とした。最終報告を公表する時期は明言しなかった。これまでの調査で、実際に実験していないデータなどの捏造(ねつぞう)はないという。一方、マウスの胎盤の画像を使い回したとの指摘については、小保方さんが「不要になった画像を削除し忘れた」と説明。実験ノートなどから、不正ではなく「不適切」だとした。STAP細胞が実在するかについては、理研の川合真紀研究担当理事は「まだ初めの段階しか再現されていない」と話した。さらに、詳しい作製手順を提供する方針を明かした。小保方さんは現在、同センターがある神戸市にいるが、研究は停止している。自身の未熟さを反省しているという。小保方さんを含む共著者3人は「心よりおわび申し上げる。適切な時期に改めて説明する機会を設ける」とする連名のコメントを出した。 *3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11030073.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2014年3月15日) 科学巡る課題、浮き彫り STAP細胞論文 福岡伸一(青山学院大教授〈生物学〉) iPS細胞の成功以降、生命科学がテクノロジーに走りすぎ、「作りました」という研究がもてはやされる風潮がある。今回の問題もその延長線上に起きたのではないか。科学は本来、もっとじっくり「How(どのように)」を問うべきものだ。STAP細胞の実在性に著者らがなお信念をもっているのであれば、論文を撤回するのではなく、訂正や続報で対応すべきだ。撤回すれば、故意のデータ操作や捏造(ねつぞう)などの不正があったと世界はみなすだろう。不適切と不正の切り分け。つまりどこまでが過失で、どこからが作為なのか。こうした点が明確にならないと、科学界に広がった多大な混乱と浪費は回収できない。著者や理研はきちんと説明してほしい。 さらに言えば、問われるべきは個人の資質や共著者の責任だけではない。メディアも当初は無批判に称賛していたし、研究者の基本姿勢や倫理観を育てる科学教育のあり方は十分だったのかなど、論点は限りなくあるように思える。今回は論文発表直後から、世界中の研究者の集合知的なあら探しによって問題点があぶりだされた。最高権威だった科学誌の審査が機能せず、草の根的なレビューが機能したという点でも興味深い。 *3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2645856.article.html (佐賀新聞 2014年3月12日) STAP論文「結論に影響ない」 / 共著の米教授 【ワシントン共同】新たな万能細胞「STAP細胞」の論文に相次いで不自然な点が指摘された問題で、共著者のチャールズ・バカンティ米ハーバード大教授は12日、「論文に対して持ち上がっている疑問や懸念は、私たちの研究結果や結論には影響を与えないと確信している」とする声明を、所属する米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院を通じて発表した。撤回の可否については明言しなかった。 *3-3:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2645792.article.html (佐賀新聞 2014年3月12日) STAP細胞「根幹は揺るがず」 / 共著者の丹羽氏 新たな万能細胞「STAP細胞」を報告した論文の画像や表現に相次いで不自然な点が指摘された問題で、共著者の1人、丹羽仁史理研プロジェクトリーダーは12日までに共同通信などの取材に「STAP細胞ができたという根幹は揺るがない」と述べた。丹羽氏は一連の指摘について問題点を認めた上で、「(STAP細胞が)科学的に正しいかどうかは別の問題だ」と強調。STAP細胞の作製は、事実だと訴えた。外部の研究者がまだSTAP細胞の作製を再現できていない点には、「実験のそれぞれの段階で時間がかかる」と説明し、再現には数カ月かかるとの見通しを示した。 *3-4:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1404L_U4A310C1CC1000/?dg=1 (日経新聞 2014/3/14) 理研幹部「検証待つ」繰り返す STAP論文巡り 新たな万能細胞の発見として世界を驚かせた発表から44日、STAP(スタップ)細胞の論文は国内外から示された様々な疑義により、研究の根幹が揺らぐ事態に発展した。4時間に及んだ14日の理化学研究所の記者会見でも、細胞が本当に存在するのかどうかは釈然としないままだった。科学者を志す学生らは「早く真相をはっきりさせて」と求めた。 ●会見4時間、小保方氏動向に質問集中 ノーベル化学賞受賞者でもある野依良治理事長らは午後2時すぎから、東京都内で会見。海外メディアの姿も見られ、「世紀の発見」に浮上した疑惑への関心の高さをうかがわせた。「科学社会の信頼性を揺るがしかねない事態を引き起こした」。冒頭、野依理事長らは厳しい表情のまま深々と頭を下げた。不正の有無の調査は続けるとしたが、「極めてずさんで、あってはならないこと」と論文の不備を認め、苦渋の色をあらわにした。会見ではSTAP細胞が存在するかどうかの質問も相次ぎ、理研側は「第三者の検証を待つしかない」と繰り返すばかり。当初は「研究成果そのものは揺るがない」との立場だったが、川合真紀理事(研究担当)は「楽観的に見ていたきらいは否めない」と釈明した。川合理事によると、理研の研究者が論文を雑誌に投稿したり、学会で発表したりする際は所属長の許可がいるが、全ての論文に目を通すかは「ケース・バイ・ケースで、個々の研究者の良識がベース」。野依理事長は「氷山の一角かもしれないので、倫理教育をもう一度徹底してやりなおしたい」と強調した。一方、小保方晴子研究ユニットリーダーら論文の執筆者は姿を見せず、文書でコメントを出したのみ。上司で発生・再生科学総合研究センターの竹市雅俊センター長は、論文撤回を勧めた際の小保方氏の様子について「心身とも消耗した状態で、『はい』とうなずく感じだった」と話した。 *3-5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11028261.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2014年3月14日) 小保方さんら、撤回同意 STAP論文、細胞の証明不十分 米大学教授は反対 「STAP(スタップ)細胞」の論文に多数の疑問が指摘されている問題で、主要著者4人のうち理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の小保方(おぼかた)晴子ユニットリーダーを含む3人が、論文の撤回に同意していることがわかった。複数の理研幹部が朝日新聞の取材に認めた。「生物学の常識を覆す」として世界中を驚かせた研究成果は、白紙に戻る公算が大きくなった。著者側から論文を撤回するには、最低でも主要著者全員の同意が必要。小保方さんの留学時代の指導教官だった米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授は反対しており、現在、CDB幹部が同意するよう説得しているという。STAP細胞論文は2本で構成され、著者は計14人。うち10人がCDBの関係者で、全員、撤回に同意の意向だという。主要著者4人のうち同意しているのは、小保方さんと、CDBの笹井芳樹・副センター長、前CDBチームリーダーの若山照彦・山梨大教授。論文が掲載された英科学誌ネイチャーでは、撤回にはすべての著者の同意が原則だが、主要著者全員の同意で撤回を申し入れることもできる。こうした申し入れで撤回を認めるかどうかは、個別に判断するとしている。また、著者側が論文を撤回しなくても、ネイチャー編集部が自身の判断で撤回することもある。複数の理研幹部によると、撤回の理由は、STAP細胞の存在や万能性の証明が科学的に不十分になってきたと判断したためという。マウスの血液細胞からSTAP細胞ができたとする証拠への疑問や、万能性を示す写真が小保方さんの博士論文から流用された疑いなどが指摘されていた。論文を撤回すると、研究成果は白紙に戻る。ただし、CDBの研究者らは、STAP細胞の存在自体が否定されたわけではないとして、実験をやり直して疑問に十分答えられる論文にし、改めて投稿することをめざすという。撤回には、研究結果が否定されていなくても、証明が不十分だったり、画像が不適切だったりした場合もあるからだ。STAP細胞論文をめぐっては、CDBを管轄する理研本部が調査委員会をつくり、指摘されている問題点を調べている。14日には調査委員長らが会見を開き、中間報告をする。日米の幹細胞研究に詳しい赤司浩一九州大教授は「いったん撤回して、科学的に批判の出ない論文を出し直すのは正当だ。そうすれば、STAP細胞が生き残ることができる。それには、経験の豊富な科学者が責任を持ち、実験に参加する態勢が欠かせない」と話している。 *3-6:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/science/article/76556 (西日本新聞 2014年3月18日) 理研、STAP記者向け資料撤回 iPSと比較、誤解招いた 理化学研究所は18日、発生・再生科学総合研究センター(神戸市)で1月に開いた、STAP細胞の作製に関する会見で配布した記者向け資料の一部に「誤解を招く表現があった」として撤回すると発表した。撤回したのは、STAP細胞と人工多能性幹細胞(iPS細胞)を比較した補足資料。 理研は、資料でiPS細胞の作製にかかる時間を2~3週間とし、作製効率を0・1%とした点に問題があったとしている。iPS細胞を開発した山中伸弥・京都大教授は2月、資料にあるiPS細胞の作製時間と効率は、最初に論文を発表した2006年当時のものだと反論していた。 *4-1:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/science/article/76426 (西日本新聞 2014年3月18日) STAP細胞を第三者機関に送付 若山氏「真実知りたい」 理化学研究所などのチームによるSTAP細胞の論文疑惑で、共著者の若山照彦・山梨大教授は18日、保存している細胞を第三者機関に送り、分析を依頼したことを明らかにした。若山教授は「自分の判断で送付した。科学的真実を知りたい」としており、STAP細胞を増殖しやすいように変化させた「STAP幹細胞」を17日に送付したという。送った分析機関の名称は明らかにしていない。若山教授は、理研の小保方晴子研究ユニットリーダーからSTAP細胞を渡され、マウスに成長させたが、論文の画像の流用が明らかになり、どんな細胞だったのか確信が持てなくなったと説明していた。 *4-2:http://digital.asahi.com/articles/OSK201312050167.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2013年12月6日) iPS細胞から赤血球生産 東大・京大が開発 京都大と東京大のグループは、ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から大量の赤血球をつくる方法を開発した。輸血用血液の不足解消に役立つと期待される。米科学誌「ステムセルリポーツ」で6日発表する。京大iPS細胞研究所の江藤浩之教授らは、これまでホルモンなどを使ってiPS細胞から赤血球をつくっていた。だが、赤血球になる率が非常に低かった。今回、細胞の増殖に関係する遺伝子と細胞死を抑える遺伝子の2種類を使い、まず、赤血球になる前の前駆細胞をつくった。この細胞はiPS細胞と同じく無限に増やすことができる。入れた遺伝子の働きを止めると、赤血球前駆細胞はまず未熟な赤血球に変わり、核が抜けて赤血球になった。iPS細胞から直接つくるのに比べ、効率が20倍高まったという。がんウイルスの遺伝子を使う同様の方法があったが、今回は、人間が本来持っているのと同じ遺伝子を使ったのでより自然なでき方に近いという。 *4-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140318&ng=DGKDASGG1703C_X10C14A3EA2000 (日経新聞 2014.3.18) 山中教授、iPS細胞を年内配布 患者治療後押し STAP「結果再提出を」 京都大学の山中伸弥教授は17日、日本経済新聞のインタビューに応じ、治療を計画する研究機関へiPS細胞を年内に配布する方針を明らかにした。理化学研究所が発表した新型万能細胞「STAP細胞」の作製に疑義が生じている点については「患者に不安を与えてしまうことが心配」と述べ、「もう一度はっきりしたデータを出していただきたい」と求めた。iPS細胞を使った治療では患者自身の細胞から作るのは数千万円かかるといわれ、普及が難しい。他人に移植しても拒絶反応が起きにくい人の血液細胞からiPS細胞を作って備蓄し、配布する計画を進める。山中教授は「(安全性の)評価のために各機関に配布する」と患者への治療を後押しする考えを示した。配布先には理化学研究所や慶応義塾大学、大阪大学などを挙げた。理研は目の難病、慶応大は脊髄損傷、阪大は重度な心疾患をそれぞれ対象に治療を計画する。山中教授は「安全性が特に重要だ」と指摘。「大丈夫だと信じているが、何が起きるか分からない点もある。(配布を受けた大学などに)全面的に協力する」と述べた。STAP細胞については、いったん成長した細胞が受精卵に近い状態に戻る「初期化」の研究の根幹に関わる科学的に興味深い現象と指摘。ただ、不信感が募ったままの状態は「しっかりした再生医療の研究がなされているのか、患者が不安に感じている」と理研による最終報告での解明を待ちたいとした。再生医療の実用化を巡っては、「改正薬事法」と「再生医療安全性確保法」が2013年11月に成立。山中教授は「再生医療に関わる医薬品や医療機器の規定が明確になり、再生医療の普及に向け大きな前進だ」と評価した。半面「これまで厚生労働省の指針で扱われてきた人の幹細胞を用いる臨床研究が法律の規制対象になり、手続きが煩雑になる恐れもある」と指摘した。iPS細胞の活用では「創薬分野での産学連携に期待している」と表明。患者から採取した皮膚や血液からiPS細胞を経由して病気を再現し、これらに新薬の候補物資を与えて治療効果を調べられる。事前に副作用などが調べられれば個人の体質にあった新薬を開発できる。「将来の個別化医療につながる有望なテーマだ」と強調した。 *5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11030201.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2014年3月15日) 取材重ね、検証していきます STAP細胞論文 科学医療部長・桑山朗人 理化学研究所などの研究チームが、新たな万能細胞「STAP細胞」を作製したとする英科学誌ネイチャーの論文について、データの扱いに問題があったとして、理研の調査委員会が不適切と認めました。研究論文の信頼性を著しく損なう事態です。私たち報道機関も、報道のあり方が問われていると受け止めています。論文について、朝日新聞は1月30日付朝刊1面トップで報じ、2面で科学的な成果とその意味、社会面で研究の中心的存在である小保方晴子ユニットリーダーの研究人生なども紹介しました。理研の発表を踏まえ、私たちは複数の専門家に論文を読んでもらうなどして、内容の妥当性について取材を進めました。その結果、実験で得られた細胞がこれまでと違う新たな万能細胞の可能性が高いこと、万能性を示す記述も説得力があること、などの評価を得ました。英科学誌ネイチャーは専門家による厳しい審査で知られ、掲載率は1割以下です。そうした審査を経て特に注目すべき記事の一つとして扱われたことや、論文に名を連ねている研究者の過去の実績も踏まえ、この論文は信頼できると判断しました。しかし、報道後、論文を読んだ別の研究者からデータの使い回しや盗用を疑う指摘が相次ぎました。論文の共著者や、同じ研究分野の専門家などにその指摘について取材を重ねました。その一方で、再現実験を試みている大学の取材も進めていました。そんな中、理研も調査に乗り出し、重大な不備が見つかったわけです。私たちは、発表段階で論文の問題点を見抜けませんでした。限られた時間で論文中のずさんなデータの扱いまで把握するのは容易なことではありません。それでも今回の件を教訓として受け止めなければならないと考えています。論文が撤回されれば、STAP細胞の存在は「白紙」になります。ただ、理研はまだ、再現実験などでSTAP細胞の存在が確認できれば、改めて論文として世に問いたいとしています。STAP細胞が本当に存在するかを見極めるためにも、私たちは再現実験の行方をしっかりとフォローしていきます。また、今回の経緯と問題点の詳細、さらに科学論文のチェック体制など、引き続き取材を重ね、検証していきます。 *6:http://syodokukai.exblog.jp/20313842/ 分化した体細胞における外部刺激に惹起される多能性の獲得 (STAP) 【まとめ】 刺激惹起性多能性獲得(stimulus-triggered acquisition of pluripotency; STAP)という、核移植も転写因子の導入も不要な、独特の細胞リプログラミングについて報告する。哺乳動物の分化した体細胞に外界からの強い刺激を一時的に加えたところ、体細胞はリプログラミングを起こして多能性細胞を生じたため、得られた多能性細胞を「STAP細胞」と名付けた。本研究では、新生児マウスの脾臓からFACSでソートしたCD45陽性リンパ球を酸性溶液(低pH)に30分置いて、LIF含有培地で培養することによりSTAP細胞を作製した。STAP細胞は、もとの細胞サンプルに含まれていた未分化細胞が単に低pH耐性によって「選択」されたのではなく、まさに低pH刺激に惹起されて「分化状態の体細胞にリプログラミングが起きた」ことによって生成していた。STAP細胞は、多能性マーカー遺伝子の調節領域のDNAメチル化が大きく減少しており、エピジェネティック状態のリプログラミングがあることが確認された。STAP細胞を胚盤胞に注入したところ、この細胞はマウスキメラ胚の形成に高効率で寄与し、生殖細胞系列伝達によって次世代の仔マウスに移行した。さらに、STAP細胞から増殖可能な多能性細胞株「STAP幹細胞」を得ることができた。以上の結果から、分化した体細胞のエピジェネティックな運命決定は、強い外界環境刺激によって著明に転換しうることが初めて示された。 【論文内容】 体細胞(Somatic cells)の運命は、ちょうど下り坂を落ちていくように細胞分化が進む方向に決定されており、これはWaddingtonの「エピジェネティックランドスケープの方向付け」として知られている。この分化の方向を逆行させるには、核の物理的な操作を行うか(核移植)、複数の転写因子を導入する(iPS細胞の作製)ことが必要であると一般的には信じられている。本研究では、このような体細胞のリプログラミング(「初期化」)が、外部刺激によって起きるかどうかを検討した。植物では、この外部刺激による体細胞のリプログラミングが起きることが知られている。植物の分化した体細胞、例えば単一のニンジンの細胞は大きな環境の変化によってカルスと呼ばれる未分化な細胞(芽体細胞)へと変わることがあり、オーキシン(auxin)の存在下ではそこから茎や根といった植物全体が発生する。では、動物の分化した体細胞も特殊な環境下に置けば、多能性を獲得する潜在能力を持っているのだろうか? ●低いpH刺激によって体細胞の運命転換を起こすことができる ここでは、CD45(白血球共通抗原)が陽性の造血幹細胞を「運命決定された分化した体細胞(committed somatic cell)」として用いた。もし、この細胞がリプログラミングされれば、多能性のマーカーであるOct4を発現するはずである。そこで、Oct4が発現(Oct4の転写が活性化)するとそのプロモーター下でGFPが発現して緑色蛍光を発するトランスジェニックマウス(Oct4-gfpマウス)の体細胞である、CD45+細胞を用いて以下の実験を行った。 出生後1週齢のC57BL/6系統Oct4-gfp トランスジェニックマウスの脾臓を採取し、そのリンパ球分画をFACS(蛍光活性化セルソーター)にかけてCD45+細胞をソートした。これらの細胞をLIF (leukaemia inhibitory factor;多能性細胞の維持・増殖に必要な増殖因子)とB27(血清フリーサプリメント)を加えたDMEM/F12培地(LIF+B27培地と呼ぶ)に懸濁して数日培養し、GFPを検出することによってOct4の発現を調べた。 FACSでソートされて得られる細胞は、ソートの過程で一時的にさまざまな強い物理的・化学的刺激にさらされている。ここでは、それらの細胞外刺激の中で、特に低pHという化学的刺激に注目した。これは、組織を一時的な低pHという「致死的以下の(sublethal)」条件に置くとその分化状態が変化することが従来示されていたためである(例えば、サンショウウオの動物極キャップは、pH 6.0以下のクエン酸培地に置くことで自発的に神経に転換するなど)。 そこで、上記で得られたCD45+細胞を酸性の培地 (pH 5.4-5.8)に30分間(25分の培養と5分の遠心の間)置いた後、LIF+B27培地で7日間培養した。その結果、Oct4-GFPを発現する球状凝集塊が多数出現した(刺激なしではOct4-GFP発現細胞が出現しなかった)。新生児の脾細胞で30回実験した場合でも、全部の実験で同様に多数のGFP陽性細胞が出現した。このCD45+細胞由来Oct4-GFP発現細胞はフローサイトメトリーでも観察できた。 次にCD45+細胞を、CD90 (T細胞)、CD19 (B細胞)、CD34 (造血幹細胞)の陽性・陰性で分画し、同様に低pH溶液で刺激した。T細胞・B細胞の分画の細胞からも高効率(7日目の生存細胞の25-50%)でOct-GFP発現細胞が生成した。CD34+造血幹細胞からはOct4-GFP陽性細胞の生成率は低かった(<2%)。 低pH溶液後5日目にはOct4-GFP発現細胞は集合して凝集塊を形成した。このGFP陽性の凝集塊はきわめて動きやすかった(supplement video1に示されている)。Oct4-GFP発現細胞は細胞質が少なく細胞のサイズは小さく、核の詳細構造はもとのCD45+リンパ球に比べて明瞭だった。7日目のOct4-GFP発現細胞は、もとのCD45+細胞やES細胞といった一般的に小さいと考えられている細胞に比べても、サイズが小さかった。 ここで、FACSでソートしたCD45+細胞の中に非常に少ないCD45-の多能性細胞が不純物として混ざっていて、それが急速に増殖して最初の数日でOct4-GFP+細胞集団を形成した可能性も考えられる。しかし、Oct4-GFPの発現開始は細胞分裂を伴っておらず、酸性ストレス刺激の後にEdU取り込みは見られていない(すなわち酸性刺激後には大きな細胞分裂、細胞増殖は起きてない)ため、その可能性は否定的である。また、FACSで精製されたCD45+細胞およびCD90+CD45+ T細胞から生成したOct4-GFP陽性細胞でT-cell receptor 遺伝子のゲノム再構成が認められたため、Oct4-GFP陽性細胞は分化したT細胞から生じたことが示された。以上より、Oct4-GFP陽性細胞は低pH処理したCD45+細胞からリプログラミングによって新たに生成されたものであり、低pHストレスに耐性を示す細胞が単に選択されたわけではないことが分かる。 ●低pH刺激によって生成したOct4陽性細胞は多能性を示す 低pH刺激後7日目のOct4-GFP発現細胞では、多能性関連マーカー蛋白(Oct4、SSEA1、Nanog、E-cadherin) とマーカー遺伝子(Oct4、Nanog、Sox2、 Ecat1 (Khdc3)、Esg1 (Dppa5a)、Dax1 (Nrob1)、Rex1 (Zfp42))の発現が、ES細胞と同程度に認められた。この多能性関連マーカー遺伝子の発現は、刺激後3日目には中等度認められていた。3日目には早期造血マーカー遺伝子Flk1 (別名Kdr) およびTal1が発現していたが、これは7日目には発現していなかったため、 Oct4-GFP発現細胞は3日目にはまだ運命転換の動的な過程にあったと考えられる。低pH処理7日目のOct4-GFP発現細胞では、ES細胞と同様にOct4とNanogプロモーター領域の広範な脱メチル化が認められていた。これは低pH処理されたCD45+細胞で、多能性のための主要な遺伝子のエピジェネティックな状態がリプログラミングされていることを示すものである。 In vitro分化アッセイ(In vitro differentiation assay)によって、低pH刺激によって生じたOct4-GFP発現細胞は3胚葉(外胚葉、中胚葉、内胚葉)の誘導体と近位内胚葉様上皮を生じることが示された。Oct4-GFP発現細胞の凝集塊をマウスに移植したところ、この細胞は奇形腫(teratoma)を形成した(n=20)が、奇形癌(teratocarcinoma)にはならなかった(n=50)。 凝集塊の中にはOct4-GFPシグナルのレベルにさまざまなものがあることから、7日目の細胞を大部分のGFPシグナルが強い細胞と少数のGFPシグナルが弱い細胞にFACSでソートし、分けたそれぞれをマウスに注入した。その結果、GFPが強い細胞のみで奇形腫が形成された。定量的PCRで解析したところ、GFPが強い細胞は多能性マーカー遺伝子を発現しており、早期系統特異的マーカー遺伝子は発現していなかった。一方でGFPが弱い細胞では逆に早期系統特異的マーカー遺伝子(Flk1、Gata2、Gata4、Pax6、Sox17)は発現しているが、多能性マーカー(Nanog、Rex1)の発現は見られなかった。したがって、上記の3胚葉誘導体は多能性マーカー遺伝子を発現しているGFPシグナルが強い細胞から生成されていることが示唆された。 以上より、運命が決定した体細胞の分化の状態は、低pHなどの強い細胞外刺激を加えると多能性の状態へと転換しうることが示された。そこで、このことを「刺激惹起性多能性獲得(stimulus-triggered acquisition of pluripotency; STAP)」、この結果得られた細胞を「STAP細胞」と呼ぶことにした。 ●ES細胞と比較したSTAP細胞の特徴 STAP細胞は、マウスES細胞と違って、LIFを含む培地で自己複製する能力がなかった。また、単細胞に分離した後のコロニー形成能が低く、分離誘導性アポトーシスを抑制するROCK阻害剤(Y-27632)の存在下でもコロニーを形成しなかった。部分的分離後の高濃度培養を行っても、STAP細胞数は2回の継代後には細胞数が大きく減少し始めた。さらに、ES細胞マーカー蛋白であるEsrrβの発現は、STAP細胞では少なかった。 一般に、メス由来のES細胞は、メスCD45+細胞やEpiSC(エピブラスト幹細胞;ES細胞とは別の多能性幹細胞)とは異なって、X染色体不活化を示さず、それを示唆するH3K27me3密度が高いフォーカス(不活性化されたX染色体を示す)を持たない。ところが、Oct4-GFP強陽性のメスSTAP細胞では、40%程度にH3K27me3密度が高いフォーカスが認められた。さらに、STAP細胞はEpiSCと異なり、Klf4が陽性、上皮体とジャンクションマーカーであるclaudin 7とZO-1が陰性であった。 ●他の臓器由来のSTAP細胞 次に1週齢のOct4-gfpマウスの脳、皮膚、筋肉、脂肪、骨髄、肺、肝臓からの体細胞で同様の運命転換実験を行った。転換効率はさまざまであったが、確認した全部の組織で、低pH刺激後7日目にはOct4-GFP発現細胞が生成された。これらの中には、FACSでCD45でソートされない脂肪組織間質細胞や新生児心細胞も含まれていた。 ●STAP細胞によるキメラ形成とSTAP細胞の生殖細胞系列への伝達 次に、GFPを恒常的に発現するマウス(C57BL/6系統のcag-gfpトランスジェニックマウス)の新生児からCD45+細胞を採取し、そこから作製したSTAP細胞の胚盤胞注入実験(blastcyst injection assay)を行った。まず、STAP細胞の凝集塊を、マイクロナイフを用いて手作業で切って小さい断片とした。得られたSTAP細胞をマウス胚盤胞(着床前胚)に注入してマウスの仮親の子宮に戻したところ、得られたキメラ胚の形成にはGFPを発現するSTAP細胞が高度から中等度寄与していた。このキメラマウスはかなりの率で出生し、すべて正常に発生し、CD45+細胞由来のSTAP細胞は調べたすべての組織の発生に寄与していた。さらに、キメラマウスからSTAP細胞由来の仔マウスが生まれ、STAP細胞由来遺伝子の生殖細胞系列への伝達(germline transmission)が認められた。Germline transmissionは、ゲノムおよびエピゲノムの正常性とともに、多能性にとって厳格な基準の一つである。さらに、発生能の最も厳密な試験と考えられている四倍体胚補完実験(tetraploid complementation assay)を行ったところ、CD45+細胞由来STAP細胞は胎生10.5日(E 10.5)にはすべてのGFP発現胚を生成した。すなわち、STAP細胞は、in vivoにおいて生殖細胞を含む体のすべての細胞に分化する能力を持っており、それのみで全胚構造を構成するのに十分であることが明らかになった。 ●STAP細胞から得られた増殖可能な多能性細胞株 STAP細胞は上記の樹立条件下では限られた自己複製能しか持たないが、胚発生においてはSTAP細胞凝集塊の小断片が全胚へと成長しうることが明らかになった。そこで次に、STAP細胞はin vitroで増殖可能な全能性細胞系列を生成するかを検討した。STAP細胞は、通常のLIF+FBS培地または2i培地(マウスESおよびiPS細胞用の無血清培地)では継代培養できない。そこで、ES細胞のクローン増殖を促進する培地であるACTH+LIF含有培地をMEF feederまたはゼラチン上に置き、STAP細胞の凝集塊の一部を培養したところ、マウスES細胞と同様にコロニーに成長し、高レベルのOct4-GFPを発現した。 STAP細胞は、ACTH+LIF含有培地で7日間培養すると、単細胞として継代可能となり、2i培地で成長し、少なくとも培養120日間は指数関数的に増殖した。このとき染色体異常は認められなかった。そこで今後は、このSTAP細胞由来の増殖細胞を「STAP幹細胞 (STAP stem cells)」と呼ぶことにする。 STAP幹細胞は多能性細胞の蛋白およびRNAマーカーを発現しており、Oct4とNanog座位のDNAメチル化レベルが低下している。また、核の微細構造はES細胞と同様であった。STAP幹細胞を分化培養すると、in vitroで外胚葉、中胚葉、内胚葉のそれぞれの誘導体となり、拍動する心筋やin vivoで奇形腫を形成することもできた。STAP幹細胞を胚盤胞注入したところ、この細胞は高効率にキメラマウス形成に寄与し、germline transmissionも見られた。四倍体補完法においても、注入したSTAP幹細胞によって、成体まで成長し仔を産める能力を持つマウスを作製することができた。STAP幹細胞と元のSTAP細胞の違いは、(1)STAP細胞には発現してなかったES細胞マーカー蛋白EssrβがSTAP幹細胞では発現していること、(2)STAP細胞で見られたH3K27me3フォーカスがSTAP幹細胞には見られないことである。以上の結果よりSTAP細胞は、ES細胞と同様の性質を持つ増殖可能なSTAP幹細胞を生じる能力を持っていることが明らかになった。 【結論】 本研究によって、分化した体細胞が潜在的には驚くべき可塑性を持っていることが明らかになった。この体細胞が多能性細胞となる能力は、通常の環境では経験されないような強い刺激(ここでは低pH)に一時的にさらされた時に発揮されるものであった。 本研究で用いた低pH刺激は、酸性培地によってサンショウウオの動物極がin vitroで神経に転換されるというHoltfreterの実験(1947)で用いられている。Holtfreterは、強くしすぎると細胞を死滅させてしまうような刺激を少し弱めた刺激、すなわち致死以下の刺激を細胞に加えることによって、細胞の運命転換を抑制している何らかの内因性抑制機構が解除されると考えた。本研究は外部刺激による核のリプログラミングであるためHoltfrenerの研究とは方向性が異なるが、「致死以下の刺激による細胞の運命転換抑制機構の解除」という点で共通した側面を持つ現象なのかもしれない。 この多能性細胞へのリプログラミングが低pH刺激に特異的に起こるものなのか、それとも他のストレス(物理的な傷害、細胞膜の穿孔、浸透圧ショック、成長因子の除去、ヒートショック、高Ca2+への曝露など)でも起こるものなのかは不明である。少なくとも、細胞を細いガラス管の中に多数回通したり(細胞にせん断力を加える)やstreptolysin Oを用いて細胞膜に穿孔を作ったりする刺激で、CD45+細胞からのOct4-GFP発現細胞生成が起きることは確認されている(論文中には示されていないが)。このようなさまざまな致死以下のストレスはある共通の調節機構を活発化し、それが分化した体細胞で保持されているエピジェネティックな状態を解放し、多能性の状態へと細胞を「初期化」するのに働いている可能性はある。 では、なぜ体細胞は致死以下の刺激が加わると自らをリプログラミングできる潜在能力を持っているのか?このリプログラミングのメカニズムは、正常の状態ではどのように抑制されているのか?強い環境のストレスを受けても、通常の組織では多能性細胞(または奇形腫)の出現が見られないのはなぜか?未解決の問題は多いが、今回の発見は生物の多様な細胞状態の意味に新たな光を投げかけるものと言える。 <図:分化した細胞を「初期化」する2つの方法―iPS細胞とSTAP細胞> (a) 分化した細胞は、転写因子を導入し、多能性を促進する培地で培養することによって、多能性の状態にリプログラミングできることが知られている。この 方法により誘導多能性幹細胞(iPSC)が作製できる。iPS細胞は自己複製でき、胚のすべてのタイプの細胞に分化できることが分かっているが、胎盤形成には寄与していない。 (b)酸性(低pH)の短時間刺激によって刺激惹起性多能性獲得(STAP)が起きる。STAP細胞は増殖しないが、多能性促進培地で培養することによりSTAP幹細胞となり、これはiPS細胞と同様の特性を持つ。STAP細胞を、栄養芽細胞(trophoblast)を成長させる培地で培養すると、iPS細胞と違って胎盤形成に寄与できる。
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2014,03,01, Saturday
金:ソトニコワ 銀:キム・ヨナ 6位:浅田真央 (1)キム・ヨナと浅田真央の差を作ったもの 2010年のバンクーバーオリンピックでは、キム・ヨナが金メダルで浅田真央が銀メダルであり、その時点では互角だったと思うが、今回のソチ・オリンピックでは、キム・ヨナは銀メダルをとれたにもかかわらず、浅田真央はジャンプの失敗が多く、総合6位に終わってしまった。 この結果を生んだ背景には、採点の不公正を指摘する人もいるが、私には、確かにキム・ヨナのスケートには安定感があり、浅田真央のスケートにはジャンプを跳べたことを喜ばなければならない不安定さがあって、エンタテイナーとしての実力に差があったと思う。これは、病院の例を挙げれば、医師が手術してうまくいったことを喜ぶようでは、とてもその病院に命を託せないのと同じである。 しかし、浅田は資質があるため、その実力差が出た理由を考えたところ、*2のように、バンクーバー五輪以降、浅田は、2010~2011年の6~9月頃まで長久保裕氏をジャンプ専門のコーチにして6種類全てのジャンプの矯正に取り組み、9月から佐藤信夫コーチに師事してジャンプの矯正を続け、ジャンプを1から出直した。しかし、そのジャンプコーチは2人とも男性で、男性と女性は筋肉の付き方や強さが異なるため(これはジェンダーではなく生物学的セックスの違い)、銀メダルをとれた浅田のよさを伸ばせずに、無理な要求をして浅田のジャンプを壊したのではないかと思った。また、師事する人が次々と変わらざるを得なかったのも、技術にぶれができ、浅田にとっては時間の無駄が多かったと推測する。 (2)女性に「迷い」「涙」「情緒」を要求する日本文化も、エンタテイナー、プロフェッショナル、リーダー、勝負師の育成に逆行する 日本人には、「韓国のキム・ヨナは、金メダルをとっても銀メダルをとっても表情が変わらないから嫌い」と悪く言う人がいるが、安定した滑りができる振付をし、終わった時にぱっと笑顔を作れるキム・ヨナはエンタテイナーであり、プロフェッショナルであると、私は思う。一方、浅田は、ジャンプで失敗を繰り返し、フリー終了後には泣き顔になって、エンタテイナーとしても失格だった。つまり、意識の差がある。 しかし、日本のメディアは、*1のように、「もう迷わない」「なかなか寝付けなかった」というように、浅田の人格を競技が始まってからも競技に集中できない女性と表現した上、「フィニッシュで涙がたまった」とそれをよいことであるかのように書いた。しかし、何があっても、淡々としてできるだけ高い得点をとることを目指し、最後は観客に向かって笑顔を送れる人でなければ、エンタテイナーの資格はない。「親の死に目に会えないのは当然」として、いつも通りに演技を遂行する歌舞伎役者を見習うべきである。 そして、「迷い、泣く」というのは、メディアを代表として日本人が女性に対して期待するジェンダー(社会的・文化的な女性差別)だが、これは世界では通用せず、「迷い、泣け」という要求は、エンタテイナー、プロフェッショナル、勝負師、リーダーの女性に矛盾した要求を突き付け、その成長を妨げることになるため、早急に改めるべきである。 (3)女子フィギュア・スケート競技に求めたいこと *3の羽生選手は、男子金メダルにふさわしい力強い技術と演技で振付にも面白さがあり、「強いスケーターになりたい」というコメントも良かったが、男子フィギュアのコスチュームは今一つだった。 女子フィギュアの場合は、3回転半のジャンプと3回転のジャンプでは観客の見た目に差はなく、ジャンプに失敗すると見苦しい。そのため、女子フィギュアでは、難易度の高いジャンプを増やせば高得点になる配点にするよりも、バレエなどの基礎の上に柔軟で美しい舞をした方が高得点になる配点にした方が、女性の生物学的セックスの違いを活かした美しい振付になって楽しめるのにと、私は思う。 また、子ども時代における選手選抜や選手の育て方は、裾野を広くし、良いコーチにつきやすくした上、次世代のスケーターにもオリンピックの経験を積ませるため、団体戦には個人戦に出られなかった選手を出すのがよいのではなかろうか。なお、女子フィギュア選手を育てるには、地域の私立女子小中高一貫校が、女子体操だけでなく、女子フィギュアの拠点になるのがよいかも知れない。 *1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S10992635.html?iref=comkiji_redirect&ref=nmail (朝日新聞 2014年2月22日) (ソチ五輪)もう迷わない、跳びきった 浅田6位 フィギュア 第14日の20日にあったフィギュアスケート女子フリーで、浅田真央がトリプルアクセル(3回転半)を決めるなど、会心の演技を披露。前日のショートプログラムが16位だったため点数が出にくい傾向にある早い順番での滑走だったが、自己最高となる142・71点を出し総合6位になった。新種目のフリースタイルスキー女子ハーフパイプでは、小野塚彩那が銅メダルに輝いた。SPで16位に沈んだ夜、浅田真央は、なかなか寝付けなかった。「今まで何をやっていたんだろう」。考え続けた。寝不足のまま、朝を迎えた。午前中の練習の表情は、どこか気が抜けていた。ジャンプの着氷でふらつき、両足をついた。「五輪の怖さを感じてしまい、体が全然動かなくて……」。佐藤信夫コーチ(72)がSPとフリーの点数配分を説明し、「まだ3分の2が残っている。気合を入れなきゃだめだ」。強く叱ったが目は覚めなかった。選手村に戻る前、佐藤コーチは静かに昔話を始めた。1980年レークプラシッド五輪。指導していた選手がへんとうが腫れて寝込んだ後、ぎりぎりの状態でフリーを迎えた。「ぶっ倒れたら、周りに叱られても必ずリンクの中まで助けに行く。倒れるまでやれ」。そう送り出した結果、会心の演技で総合8位に入った――。浅田にも優しく伝えた。「何かあれば先生が助けに行くよ」。浅田は黙って聞きながら、思った。「私は何も(病気などが)ないのに、できないということは、絶対にない」。選手村に戻った浅田は、少し寝た。赤飯も食べた。励ましのメールもたくさん見た。24選手中、出番は12番目。最終組が「指定席」の浅田にとっては、経験のない早さでリンクに乗った。演技直前の6分間練習で、体の軽さを感じた。「いける」。最初のトリプルアクセル(3回転半)。迷いのなさが、そこに向かう滑りのスピードに表れた。跳ぶ。鋭い切れで回る。着氷。今大会の女子では浅田にしかできない大技を決めた。あとは、「一つ一つプログラムをクリアしていく」だけだった。フィニッシュで上を見た。その目に、涙がたまった。「たくさんの方に支えてもらった感謝を込めた。メダルという形で結果を残せなかったけれど、自分の中で最高の演技ができた」。 *2:http://jp.ask.com/wiki/%E6%B5%85%E7%94%B0%E7%9C%9F%E5%A4%AE?lang=ja&o=2802&ad=doubleDownan=apnap=ask.com (浅田真央) 2006年夏、コーチをラファエル・アルトゥニアンに変更し、米国カリフォルニア州レイクアローヘッドに拠点を移す。2006-2007シーズンが開幕すると、NHK杯で総合得点199.52点のISU歴代最高得点を叩き出して優勝。GPファイナルは、フリーのジャンプで2度転倒して2位に終わった。地元名古屋開催の全日本選手権では右手小指を骨折しながらも初優勝。東京開催の2007年世界選手権はSPで出遅れたが、フリーで当時のISU歴代最高得点を出して銀メダルを獲得した。2007年夏はロシアに渡り、タチアナ・タラソワのもとでバレエなどに取り組んで表現力や芸術性の強化をはかった。2007-2008シーズンのGPシリーズは2戦とも優勝し、3季連続出場のGPファイナルではSP6位から巻き返して2位となった。全日本選手権のSPで、同シーズンにミスが続いていた3回転フリップ-3回転ループを成功させる。フリーでは冒頭の3回転アクセルが1回転半になったが、2連覇を達成した。同年12月、慣れない海外生活での心労や、5月に中京大学のフィギュア専用リンクが完成し、国内で練習に専念できる環境が整ったことを理由に、練習拠点を米国から愛知に戻す。アルトゥニアンは定期的に来日することになっていたが、四大陸選手権の直前に電話で「責任を持てない」と伝えられたため、師弟関係を解消した。(中略) バンクーバーオリンピックでは、ショートで1度、フリーで2度の3回転アクセルに成功したものの、フリーではこれまでの試合同様プログラムに3回転ルッツと3回転サルコウを取り入れなかったことに加え、3回転フリップが回転不足となり、3回転トウループが1回転となってしまったため技術基礎点は全体の6位となったが、成功した要素のGOEと演技構成点では高評価を得て自己ベストを更新し、銀メダルを獲得した。オリンピックフィギュアスケートの女子シングルで日本人選手がメダルを獲得するのは2大会連続。オリンピック後、タチアナ・タラソワコーチを総コーチとして、日本人を軸とした新たなコーチを選任する旨の報道がなされる。世界選手権では、オリンピック金メダリストの金妍兒を破って2年ぶりに金メダルを獲得。世界選手権2度の優勝は日本人初。この年は男子でも日本の髙橋大輔が優勝し、ジュニアでも男女ともに日本人が優勝している。 ●バンクーバー五輪シーズン以降 2010-2011シーズンは6月から9月頃まで長久保裕をジャンプ専門のコーチにつけ6種類全てのジャンプの矯正に取り組む。9月から佐藤信夫コーチに師事し、ジャンプの矯正も続けた。GPシリーズNHK杯、エリック・ボンバール杯では新しく変えたジャンプに苦しみ、2大会とも表彰台に登れずGPファイナル進出を逃した。だが、1カ月後の全日本選手権では復調し、SP1位、フリー2位の総合2位となる。 四大陸選手権ではSPで冒頭の3回転アクセルが着氷に乱れたもののフリーでは成功させ、シーズンベストを大幅に更新し、安藤に次いで2位となった。2連覇のかかった、世界選手権は東日本大震災の影響により1か月先に延期、その間に被災地の惨状を目の当たりにし、「こんな時に大会に行ってもいいのだろうか?」と練習に身が入らなくなった。みかねた佐藤コーチから1週間の休養を与えられたが、重要な時期に食が細くなり、いつもより体重が4・5kg減少した。大会本番では佐藤コーチから3回転アクセル回避を提言されたが、浅田は自分の信念を貫き通した。結果はショート7位、フリー6位の総合6位に終わった。(中略)2011-2012シーズンはGPシリーズ初戦のNHK杯で2位、ロステレコム杯では日本選手最多となるGPシリーズ8度目の優勝を果たし、3季ぶりにGPファイナル進出を決めた。だが、カナダでのGPファイナル開幕直前、以前から体調不良だった母親の健康状態が悪化したとの日本からの連絡を受けて帰国、ファイナルを欠場した。その後母は肝硬変のため死去、48歳没。浅田はその死の際に間に合わなかった。母親の葬儀翌日の12月13日から練習を再開し短期間の調整で臨んだ全日本選手権では、2年ぶり5度目の優勝を果たした。2013年4月、ソチ冬季オリンピックのシーズンを限りに引退する意向を表明した。(以下略) *3:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG25032_V20C14A2000000/?dg=1 (日経新聞 2014年2月25日)フィギュア羽生「最高の結果に誇り」 選手団が帰国 ソチ冬季五輪に出場した日本選手団が25日帰国し、東京都内で記者会見を開いた。フィギュアスケート男子シングルで金メダルに輝いた羽生結弦選手(19)は「最高の結果を持って帰れて誇りに思う。五輪チャンピオンにふさわしい強い人になりたい。(3月の)世界選手権に向けて早く練習したい」とさらなる飛躍を誓った。会見には羽生選手らメダリスト5人が出席。長野五輪のメダル10個を上回るという目標には届かなかったが、日本選手団は8個のメダルを獲得。橋本聖子団長は「(東京五輪に向けて)大きな希望を見いだすことができた」と振り返った。
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2014,02,28, Friday
(1)NHK経営委員の長谷川三千子氏の発言について 埼玉大学名誉教授でNHK経営委員になった長谷川氏の*1-1の発言には呆れる人が多いが、このようなことを言う人が重要な地位にいるのが日本の現況である。これまでも長谷川氏が埼玉大学教授等の地位にいたのは、同じような考えの人が彼女を引っ張り上げたからだろう。 そして、*1-1で述べられた長谷川氏の計算は、明らかに科学的でない。何故なら、「西暦3000年に日本の人口がゼロになる」としているが、生物の繁殖行動は、そのような直線グラフではなく、なだらかな曲線を描くからだ。人(生物の一つ)は、人口密度が高く暮らしにくい時には、出生率の低下と死亡率の上昇が起こって人口を抑制し、人口密度が低く暮らしやすくなると、出生率の上昇と死亡率の低下が起こって人口減少が緩やかになり、次第に人口増加に転じる。つまり、生物は、個体が暮らしやすい場合に数が増えるのであり、家が狭く通勤距離が長くて周りから子育ての援助を得られない東京では、他地域より出生率が低くなっているのだ。 さらに、*1-2では、長谷川氏の主張として、①男女共同参画社会に批判的で「女性が家で子を産み育て男性が妻と子を養うのが合理的」と主張 ②女性に社会進出を促す男女雇用機会均等法の思想は個人の生き方への干渉であるため、政府に「誤りを反省して方向を転ずべき」と求めている などとされている。しかし、男女雇用機会均等法は、働く女性が職場で差別されないための法律であり、すべての女性が外で働くべきだと法律で強制しているわけではない。そして、「女性が家で子を産み育て男性が妻と子を養うのが合理的」と決めつけることこそ、個人の生き方への干渉である。さらに、こういう考え方の人が多く、保育所や学童保育の整備が遅れたために、働く女性は子育てしにくく、仕事と子育ての二者択一を迫られて出生率の低下が加速されたのだということを忘れてはならない。そのため、長谷川氏は、「個人の生き方への干渉」「男女雇用機会均等法」「男女共同参画社会」の意味を正しく理解していない。 なお、長谷川氏は「女は家で子を産み育て、男が妻子を養うもの」と断定しているが、人間の女性は乳牛や採卵鶏と異なり、子を作る以外にも多様な能力や価値を持つことを決して忘れて欲しくない。子を作るだけなら、上のイラストの中では、鮭が一番優秀なのである。 (2)女性の賃金・登用について *2-1のように、安倍首相は女性政策を成長戦略の柱の一つに位置づけ、「政府の成長戦略を、指導的地位にある女性の割合を2020年までに全体の30%にする」「全都道府県の公的機関や企業での女性の登用状況を点検し、課長級以上の指導的地位につく女性の割合を調べて女性登用をチェックする」とし、内閣府が、全上場企業の女性管理職の登用状況を来年1月から公表する予定で、経済団体を通じて役員のうち1人は女性を登用するよう要請したそうである。1980年代から男性と同じに働いてきた私たちから見れば遅すぎるが、日本としては、かなり進んだ。 しかし、*2-2のように、現状として九州7県の59市町村で短期任用が原則の臨時・非常勤職員を10年以上雇い続け、任用期限が来る度に契約を繰り返して同じ非正規職員を約30年雇い続けた自治体もあったそうだ。非正規労働者は、仕事内容が正規職員と殆ど同じでも雇用条件が悪くて女性が多いが、その結果、*2-3のように、男女間の賃金水準は男性を100とした時に女性は71・3になっている。 そのため、*2-4のように、女性は公的年金の支給額が少なく、年金不足分を補うには自分で年金不足分を貯蓄しておく必要があり、生涯独身のケースでは、「2600万円の自分年金」を目標にすべきだそうだ。2600万円の根拠は明確でないが、低賃金で働かされた女性が老後資金を溜めるのは困難で、*2-5のように、最多更新し続けている生活保護世帯の中には女性高齢者が多い。 (3)女性の教育と女子教育 *3-1のように、小1で既に男女に将来就きたい職業に違いがあるのは、親や社会の意識に由来すると考える。例えば、男子の親は「医師」が希望で、女子の親は「看護師」がトップというように、女の子には賃金が安く、熟練度の低い仕事を奨める教育を行っているからである。 なお、*3-2には、「女子のみの高校数は、20年前の1993年度から半減し324校で、男子のみの高校は20年前から6割減り、女子大も減って、近年は女性リーダー育成を目指す女子大が増えてきた」と書かれている。しかし、*3-3のように、埼玉県内最古の女子校である県立浦和第一女子高等学校は、公立であるにもかかわらず戦後も男女別学で、2007年まで附属幼稚園が存在し、校歌はメロディーが優しく女子高らしい雰囲気のもので、2007年まで良妻賢母を作る女子教育をしていたのである。 また、*3-4に、「しなやかに駆ける女子校の魔法 役割縛られず自由育む」と題して記事が書かれているが、「しなやか」とは、①柔軟で弾力に富んでいるさま。 ②動作・態度がなよやか、たおやかで優美なさま。(http://kotobank.jp/word/%E3%81%97%E3%81%AA%E3%82%84%E3%81%8B 参照)である。そして、「思い込みを吹っ切り、楽になって女性の強みを生かす」とこうなるのが女性だとしているが、これがまさにジェンダーなのである。職場が男女別になっているわけではあるまいし、男女共学校で、女子生徒も堂々とすればよいのである。それでも、生物としてのセックスは、遺伝子に組み込まれているため、個体が無理に意識しなくても自然と出てくる。 さらに、*3-4の「運針」して初めて集中力が養われるとは呆れた上に情けなく、男女共学の必要性を再確認した。数学でも物理でも、勉強はそれ自体に集中しなければできず、スポーツもそれ自体に集中しなければよい結果は出せないという基本的なことを学んでいないからである。 (4)メディアも女子差別撤廃条約の効力発生から30年遅れで、まだ足を引っ張っている *4では、九州大大学院で遺伝子解析の研究をしている井上麻美さんが、女子児童を対象に科学講座「ガールズサイエンスチャット」を開設し、「身近な暮らしと結び付けることで、理数系に苦手意識を持ちがちな女子にも興味を持ってほしい」と、初回は生理用ナプキンの構造を科学的に解説したそうだ。 しかし、「理数系に苦手意識を持ちがちな女子」という決め付けは、そもそも失礼である。また、「みんな、生理って聞いたことあるよね。すてきな女子になるために大事なことなの」と切り出したのは、「素敵な女性=生理」としておりセクハラだ。このような経験からは、女子児童が生命科学に興味を持つことは期待できず、「今後は男児にも門戸を広げ、野菜を使った密度測定の実験などを検討中」とのことだが、教える側のテーマ選択に既にジェンダーが存在しており、女子児童には魅力のないものになっている。 ただし、井上麻美さん自身がジェンダーを持っている人か否かは不明だ。何故なら、メディアの記者は文科系が多く、編集で内容の色あいが変更されるのは、私が衆議院議員時代、当然のことを言っても女性を一段低く見た歪みを持って報道したメディアが多かったことから明らかだからである。 ★女子差別撤廃条約★1979年に国連総会で採択され、1981年に発効。1985年7月25日に日本において効力発生(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%B3%E5%AD%90%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%82%E3%82%89%E3%82%86%E3%82%8B%E5%BD%A2%E6%85%8B%E3%81%AE%E5%B7%AE%E5%88%A5%E3%81%AE%E6%92%A4%E5%BB%83%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%9D%A1%E7%B4%84参照)。 *1-1:http://blogos.com/news/hasegawa_michiko/ (産経ニュース 2014.1.6 埼玉大学名誉教授 長谷川三千子) 年頭にあたり 「あたり前」を以て人口減を制す 新年早々おめでたくない話--どころか、たいへん怖い話をいたします。このままでゆくと日本は確実に消滅する、という話です。日本の人口は昨年の10月1日で1億2730万人となりました。すでに8年前から減少に転じて、今のところ毎年20万人ほど減り続けています。 ≪千年後の日本人口ゼロに≫ だからといって何が怖いのか、と首をかしげる人も多いでしょう。戦後急に増えすぎた人口がもとに戻るだけではないか。毎年20万人減れば百年後には1億そこそこの人口になってちょうどよいのではないか--そう考える方もあるでしょう。しかし、そういう単純計算にならないというところが人口減少問題の怖さなのです。今の日本の人口減少は飢餓や疫病の流行などでもたらされたものではありません。出生率の低下により、生まれてくる子供の数が減ることによって生じている現象です。子供の数が減れば、出産可能な若い女性の数も減ってゆく。ちょうどネズミ算の逆で、出生率の低下による減少は、ひとたび始まると急カーブを描いて進んでゆくのです。学者たちの計算によると、百年後の日本の人口は現在の3分の1の4000万人になるといいます。そして西暦2900年には千人となり、3000年にはゼロになるというのです。 *1-2:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E8%B0%B7%E5%B7%9D%E4%B8%89%E5%8D%83%E5%AD%90 長谷川 三千子(1946年3月24日~)、日本の政治評論家、哲学者。埼玉大学名誉教授。保守系政治団体日本会議代表委員。NHK経営委員。 <主張> 選択的夫婦別姓制度に反対している。 男女共同参画社会に批判的で「女性が家で子を産み育て男性が妻と子を養うのが合理的」と主張している。また、女性に社会進出を促す男女雇用機会均等法の思想は個人の生き方への干渉だと批判し、政府に対し「誤りを反省して方向を転ずべき」と求めている。絶対天皇制を肯定。野村秋介の朝日新聞東京本社襲撃について「彼の行為によって我が国の今上陛下は人間宣言が何と言おうが憲法に何と書かれていようが再び現御神となられた」と追悼文集に寄せた。これらの発言に対して2月10日の夕方までに約800件の意見が寄せられ、大半が批判的な内容だった。 *2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20131231&ng=DGKDASFS3002L_Q3A231C1PE8000 (日経新聞 2013.12.31)女性の活躍、全国で把握 政府、都道府県ごとの登用状況 支援体制を強化 政府は来年度から、全都道府県の公的機関や企業での女性の登用状況を点検する。内閣府が中心となり半年ごとに実施。全職員のうちの女性の割合や、課長級以上の指導的地位につく女性の割合を調べ、女性登用への取り組みが地方に浸透しているかをチェックする。安倍晋三首相は女性政策を成長戦略の柱の一つに位置づける。地方に取り組みを強化するよう促すとともに、調査結果を支援策の検討につなげる。「女性の活躍」を全国に広げたい考えだ。政府は広報や啓発活動も強化する。働く女性支援に取り組む企業を紹介する専用のホームページを整備。家庭と仕事の両立に対する経営者の理解を促すためのセミナーも開催する。政府の成長戦略は全国の官庁や民間を含めて指導的地位にある女性の割合を2020年までに全体の30%にする目標を掲げている。人事院が10月に初めてまとめた21府省庁の課長・室長以上のポストに占める女性の比率(11年度)は2.6%にとどまる。安倍内閣は旗振り役として、厚生労働次官に村木厚子氏を起用したほか、11月には初めての女性の首相秘書官として総務省出身の山田真貴子氏を抜てきした。内閣府は全上場企業の女性管理職の登用状況を来年1月から公表する予定。経済団体を通じて役員のうち1人は女性を登用するよう要請しており、企業が競争意識を持って取り組むよう促す。政府は働く女性のために結婚や妊娠・出産、育児などに応じた支援策を打ち出す。国家公務員を対象に配偶者の転勤に伴う休職制度を来年度から導入。夫の転勤を機に離職しがちな女性の就業継続につなげ、将来は民間企業にも働きかける。 *2-2:http://qbiz.jp/article/32618/1/ (西日本新聞 2014年2月22日) 非正規公務員の長期雇用常態化 九州59市町村、10年以上 九州7県の59市町村で、本来は半年や1年の短期任用が原則の臨時・非常勤職員を、10年以上雇い続けていることが西日本新聞の取材で分かった。任用期限が来るたびに契約を繰り返し、同じ非正規職員を約30年雇い続けた自治体もあった。非正規は長年働いても退職金が支払われず、急な雇い止めで生活の糧を奪われることもあり、トラブルは後を絶たない。総務省による全自治体の臨時・非常勤職員調査(2012年4月1日時点)で各自治体から同省へ提出された資料を、本紙が情報公開請求で入手し集計した。それによると、調査は各自治体の事務補助や保育士、給食調理員、看護師、消費生活相談員、清掃作業員が対象。九州で非正規を20年以上雇い続けているのは、熊本県菊陽町のほか熊本市、佐賀県唐津市、大分県国東市、熊本県南小国町、熊本県荒尾市など11市町。保育士を29年雇っている同県菊陽町が最も長かった。同じ人を雇い続ける理由として、自治体側は「新しく任用した人に業務を最初から教える余裕がない」(福岡県桂川町)と説明する。ただ、非正規の給与水準は正職員より大幅に低く、諸手当や休暇制度も整っていない。仕事内容が正職員とほぼ変わらなくても、退職金は支払われない。専門家や労働組合からは待遇改善を求める声が相次いでおり、雇い止めされた長期の非正規職員が自治体に退職金を求めて提訴し、裁判所が支払いを命じるケースも出ている。 *2-3:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140221-00000104-san-bus_all (産経新聞 2014年2月21日) 昨年の平均給与は4年ぶり前年割れ 厚労省調査 厚生労働省が20日発表した平成25年の全国賃金構造基本統計調査で、同年6月時点の一般労働者の平均給与(残業代など除く)は前年比0・7%減の29万5700円となり、21年以来4年ぶりに前年を下回った。男女とも前年を割り込んだのは、比較可能な昭和51年以降初めて。賃金が低い中小企業の雇用やパートタイム労働者が増え、賃金水準全体が押し下げられた。男女間の賃金水準は男性を100とした場合、女性は71・3となり、前年の70・9から0・4ポイント上昇し男女の格差は縮小した。女性の社会進出が進み、勤続年数が伸びたためとみられる。パートタイム労働者の1時間あたりの賃金は、男性が1095円、女性が1007円でともに過去最高だった。昨年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法で、60~64歳の再雇用が増えたのが要因。 *2-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140226&ng=DGKDZO67368830V20C14A2PPF000 (日経新聞 2014.2.26) 独身なら「自分年金」 、2600万円を目標に 女性が生涯独身でいることを決めたら、早めに老後資金の見通しを確認しよう。一般に女性は男性より長生きなうえ、公的年金の支給額が少ない。そのため年金の不足分を補う「自分年金」づくりを強く意識する必要がある。漠然とした不安を抱えるより、備えるべき額を把握してすぐに動き出した方が賢明だ。「私の年金、これだけしかないの?」。都内に住むシングルの会社員、山田涼子さん(41、仮名)は初めて日本年金機構の「ねんきんネット」で見込み額を調べてショックを受けた。このまま働き続けると65歳から受け取る年金は月14万円程度。マンション購入の相談で訪れたファイナンシャルプランナー(FP)に老後への備え不足を指摘され、慌てて家計の見直しと積み立てを始めた。山田さんの年金額は女性にしては少なくない。厚生労働省によると女性の厚生年金の平均月額は10万2千円。現役時代の給与と加入期間で決まるため、女性は男性より少ない傾向が顕著だ(グラフA)。女性が7割を占める非正規雇用では厚生年金の受給資格が得られないケースもある。その場合もらえるのは基礎年金だけになり、額はさらに少なくなる。ではシングル女性は自分年金をいくら用意すればいいのか。求める生活水準や死亡年齢、年金額、企業年金の有無などによって変わるが、FPの氏家祥美氏は60歳から平均寿命の87歳までに必要な資金として2000万円が目安になるという。 ●賃貸なら余分に 総務省の家計調査によると、60歳以上の女性単身世帯の平均消費支出は月15万円程度。年金がもらえない60~64歳分の約900万円は自分で用意する必要がある。加えて年金受給が始まっても65歳以上の単身無職世帯では月2万8000円程度不足するため、65~87歳に約740万円が必要で、これに入院などの予備費300万円を入れると2000万円程度になる。ただこれはあくまでも平均値を使った試算。例えば家計調査で住居費は月1万5千円程度と低く「賃貸住宅に住む場合は余分に準備しなければならない」。米運用大手アライアンス・バーンスタイン(AB)の後藤順一郎・未来総研ディレクターは「豊かな生活に必要な資金」として月額26万円を想定。この場合、自分で賄わなければならない老後の不足額は2611万円とシングル男性(674万円)の4倍近くに達する。「現役時代の賃金の低さと寿命の長さが大きな要因」(後藤氏)だ。後藤氏は「支出の合計額」から「収入の合計額」を引く方法で試算。65歳まで働き続け、65歳時点の平均余命(23.82歳)より余裕を見て30年間、つまり95歳まで生きる前提とした。65歳まで働いたことを考慮するため、収入は厚労省の賃金構造基本統計調査をもとに年金が月14万円、退職一時金1709万円と算出している(図B)。老後の生活費は見通しにくいが「現在の8掛け程度で考えるといい」(FPの山本節子氏)。親からの贈与や相続もありうる人は早めに話し合い、老後資金に織り込んでおいた方がいいだろう。ただ、こうして割り出した自分年金額も年金の支給開始年齢引き上げや平均余命の延びを考慮に入れると「さらに増える可能性がある」(後藤氏)ことは頭に入れておきたい。 ●早めに積み立て シングル女性の中には「節約志向は強いが、普通預金や定期預金にそのまま置いている人を見かける」と氏家氏は指摘する。扶養控除などがある子持ち世帯に比べ「独身者は税負担が相対的に重くなりやすい」(同)面も見逃せない。マイホームを購入しても単身用の50平方メートル未満であれば、住宅ローン控除は受けられない。後藤氏は「資産形成では確定拠出年金や少額投資非課税制度(NISA)といった税制メリットのある制度を活用するのが一案」と助言する。「2000万円ためるのは無理と思う人も多い」(氏家氏)が、諦めるのは早計だ。後藤氏が示した自分年金額2600万円程度を40歳から積み立て投資で備える場合、年2%の利回りで月6万7千円弱、年3%では5万8千円でたどり着く。積み立て開始は早いほどいい(表C)。投資にリスクは付きものだが「長生きする可能性、今後の物価上昇リスクを考えると、運用である程度リスクを取ることを考える必要はある」(後藤氏)。しかし実際に準備を始めている人は多くない。年金シニアプラン総合研究機構が40、50代の独身女性を中心に調査したところ「老後の生活費が不安」と答えた割合が9割近くだったが「老後の生活設計をまだ考えていない」との割合が未婚者全体の46%を占めた。氏家氏は「結婚するかどうかは未定で、老後を真剣に考えることも先送りしている人は多い」と指摘する。まず年金額や企業年金の見込み額、保険の満期金などをチェックすることから始めてはどうだろうか。 *2-5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014020502000237.html (東京新聞 2014年2月5日) 生活保護最多更新 昨年11月 人数・世帯とも増加 厚生労働省は五日、全国で生活保護を受けている人が昨年十一月時点で二百十六万四千八百五十七人(前月比五百十九人増)となり、過去最多を二カ月連続で更新したと発表した。受給世帯数も百五十九万五千五百九十六世帯(同八百六十七世帯増)で、過去最多だった。厚労省は「働ける世代は、就職などで保護を抜け出した人もいて減少しているが、高齢受給者の増加が上回り、全体の増加につながった」と分析している。世帯別では、六十五歳以上の高齢者世帯が七十二万六百十六世帯(同千二百十八世帯増)で、全体の45%を占める。働ける世代を含む「その他の世帯」は前月より六百十一世帯減って、二十八万八千十九世帯だった。生活保護をめぐっては、昨年十二月に不正受給対策を強化した改正生活保護法が成立。政府は、消費税増税などに対応するため、保護費のうち食費や光熱水費に充てる「生活扶助」の基準額を四月から約0・4%引き上げる。 *3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140222&ng=DGKDASGG1302M_Z10C14A2EE8000 (日経新聞 2014.2.22) 小1の夢 男女に違い 役割意識 TVで薄まる 子供たちの将来の夢は男女で違う。クラレが2013年入学の小学1年生に将来就きたい職業を聞いた調査によると、1位は男子が「スポーツ選手」、女子は「パン・ケーキ屋・お菓子屋」。それぞれ調査を始めた1999年以降15年連続してトップを占めている。子供に就かせたい職業を親に聞いたところ、男子の親は「公務員」が1位で、「スポーツ選手」「医師」と続くのに対し、女子の親は「看護師」が90年代以降トップを占める。公務員、薬剤師も人気だ。かつて放送中止となった「私作る人、僕食べる人」という即席ラーメンのテレビCMは、女性が料理を作り男性が食べる、と性別によって役割を固定しているという批判を受けた。最近は白物家電や衣料洗剤の広告に男性タレントが相次ぎ登場。NHKは50年以上続く親子向け番組「おかあさんといっしょ」に加え、13年から「おとうさんといっしょ」の放送を始めた。一方で男女差の科学的分析も関心が高い。00年発売の「話を聞かない男、地図が読めない女」(アラン・ピーズ、バーバラ・ピーズ著、藤井留美訳)は行動や思考の違いを探り、ベストセラーになった。 *3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140220&ng=DGKDASGG12001_S4A210C1EE8000 (日経新聞 2014.2.20) 女子高 20年で半減 大学ではリーダー育成 男女別の高校は、全体から見れば数が少ない上に減少傾向が続いている。文部科学省の「学校基本調査」によると2013年度の女子のみの高校数は、20年前の1993年度から半減し324校。男子のみの高校は20年前から6割減った。98年度に99校あった女子のみの大学も13年度には79校にまで減り、近年は女性リーダー育成を目指す女子大が増えてきている。文科省によると、日本の女子中等教育のはしりは1872年(明治5年)に東京で開校した官立の女学校。1882年(明治15年)に東京女子師範学校付属高等女学校となり、この頃から小学校の他は男女別学が原則となった。帝国大学も当初は男性のみで、女性初の学生は1913年に東北帝国大学に入学した3人の「リケジョ(理系の女子学生)」だ。今や女性の大学進学率は45%を超えるが、女子大学生が増え始めた60年代には結婚前の教養として大学に行く女性がはばをきかせていると「女子学生亡国論」が世を騒がせた。80年代の「女子大生ブーム」では経済的に恵まれ、おしゃれな女子大生のファッションなどが注目を集め1つの社会現象になった。 *3-3:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9F%BC%E7%8E%89%E7%9C%8C%E7%AB%8B%E6%B5%A6%E5%92%8C%E7%AC%AC%E4%B8%80%E5%A5%B3%E5%AD%90%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1#.E6.A0.A1.E6.AD.8C (フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』) 埼玉県立浦和第一女子高等学校 ●埼玉県立浦和第一高等女学校 ●公立学校 ●男女別学:男子校である埼玉県立浦和高等学校と同じように、県内最古の女子校 ●2007年 附属幼稚園廃止。 ●校歌:野上彰作詞、高田三郎作曲で、メロディーは優しく、女子高らしい雰囲気 *3-4: http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140220&ng=DGKDASGG1302N_U4A210C1MM8000 (日経新聞 2014.2.20) しなやかに駆ける(1)女子校の魔法 役割縛られず自由育む 思い込みを吹っ切り、楽になりませんか? しなやかに駆け出し、あなたの強みを生かしませんか。 ●本音の付き合い 冬の三陸沖で30キログラムを超す機材と酸素ボンベをかつぎ潜る水中写真家の尾崎たまき(43)。東日本大震災後、魚の群れが戻って来る姿を撮り続ける尾崎は、ふと「女子高に通ったのが幸いした」と思うことがある。地元の漁師に撮影地点を教えてもらったり、漁に同行させてもらったりするには信頼を築くのが大切だ。「海の男」と「女の園」。別世界のようで共通点がある。懐に飛び込み自分をさらけ出すのに、「九州女学院(現ルーテル学院)高校時代に『女』を売りにせず『人』として腹を割る本音の付き合いをしたことが生きる」という。東京大学大学院助教の坂井南美(33)は星ができる過程を研究する宇宙物理学者。中高6年間を過ごした女子校、桜蔭学園で医者や研究者を目指す多くの同級生に恵まれた。「女子は文系、男子は理系という発想とは無縁でいられ、自分の可能性を狭めずに済んだ」。文部科学省によると、大学の人文系学部は女子が6割を超える半面、理系は3割。ただ「女子高の中には理系進学者の方が多いところもある」(教育ジャーナリスト、おおたとしまさ)。「良妻賢母を育てる」と始まった女子校も多いが、力仕事やまとめ役もすべて女子でこなし、男子の反応も気にならない。一歩外は男性主導の社会で、世間知らずとの指摘もある中、知らぬ間に染みつく「男女の役割意識」と距離を置けたことが道を開く。見渡せば元国連難民高等弁務官の緒方貞子や前米国務長官のヒラリー・クリントン、レディー・ガガも女子校出身だ。米国では男女別学の方が能力が伸びると見直され、別学が増えている。翻って日本の大学、高校に占める女子校の割合は年々減少。少子化や働く女性の増加という現実に、女子校自身も変わろうと道を探る。「良妻賢母だけでは時代に対応できない。社会に必要とされる力を身につけないと」。内閣府男女共同参画局長も務めた坂東真理子(67)は2007年に昭和女子大学長となり、キャリア教育にカジを切った。今は「就職率が90%と女子大トップ」を売り物にする。 ●「運針」で集中力 昨春、グローバルビジネス学部を新設。全員を米ボストンキャンパスに留学させる。3月にボストンにたつ杉下明直美(19)は「働き続ける武器に、まず語学力をつける」と意気込む。東京・池袋の進学校、豊島岡女子学園。旧加賀藩士夫人が1892年に開いた女子裁縫専門学校が前身で、毎朝、静まりかえった教室で生徒が一斉に白い布に赤い糸を走らせる。戦後から続く朝5分間の「運針」は時代も変わり、集中力を養う鍛錬になった。受験前の精神統一に役立てる生徒もいるという。「お嬢様学校」とも呼ばれた女子校。世に言う「女性らしい」人材を育てているように見えて、実は世界に羽ばたく強さも育んでいる。女性(Woman)を勇気づける魔法は気付けば社会の様々なところに息づいている。 *4:http://qbiz.jp/article/32352/1/ (西日本新聞 2014年2月18日) 育て!“リケジョ”の卵 26歳九大院生、女子児童の科学講座開設 九州大大学院で遺伝子解析の研究をしている井上麻美さん(26)=福岡県久留米市北野町=が、地元の女子児童を対象にした科学講座「ガールズサイエンスチャット」を開設した。「身近な暮らしと結び付けることで、理数系に苦手意識を持ちがちな女子にも興味を持ってほしい」と、初回は、生理用ナプキンの構造を科学的に解説。「リケジョ」(理系女子)の卵を育てようと奮闘している。「みんな、生理って聞いたことあるよね。すてきな女子になるために大事なことなの」。今月1日、北野町の大城ますかげセンター。白衣をまとった井上さんが、3〜5年の女子児童7人に向かって切り出した。初回のテーマは「ナプキンのふしぎ」。児童らの年頃に抱きやすい、体の変化への不安を解消しようと選んだ。女性の体の仕組みを紹介した後、実験開始。各自がナプキンを切って細かくし、顕微鏡で観察した。初めは照れから消極的だった児童も「糸みたいなものがくっついてる」「こっちはつぶつぶが見える」と次第に真剣な表情に。つぶつぶの正体「高吸水性ポリマー」に水を加える実験では「水が一瞬で固まった」と驚きの声が上がった。井上さんは久留米高専を卒業し、現在、九州大大学院システム生命科学専攻に在籍する3年生。昨年から大学院の仲間とショッピングモールなどを回り、子ども向けの科学講座を開いている。自然豊かな北野町で生まれ育ち、虫や魚を取って遊ぶうちに理科好きになったという井上さん。今回の企画は地元への恩返しの思いを込めた。「科学を教えるだけでなく、何でも相談できる地域のお姉ちゃんになりたい」と話す。今後は男児にも門戸を広げ、野菜を使った密度測定の実験などを検討中。科学者を育む土壌を、こつこつ耕していくつもりだ。
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