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2013.10.14 賢い再生可能エネルギーの作り方と環境技術(2013.10.15最終更新)
      
2013.8.1農業新聞 ハウスのソーラー発電  2013.8.5日経新聞  風リング風車

(1)ゴミ焼却のCO2にも使い道があった
 *1は、佐賀市の清掃工場の排ガスから二酸化炭素(CO2)を取り出す実験装置が稼働したという記事で、エネルギーとは関係ないが、今まで捨てていた迷惑物質を利用するというアッパレな実験であるため紹介する。確かに、CO2は光合成に必要な物質であり、農業用ハウスで農作物の成長促進や糖度・収量のアップに期待できそうだし、藻類の培養に役立てることもできるだろう。塩化水素やダイオキシンなどの有害物質が混入しない純度の高いCO2を取り出すようにしてもらいたい。秀島市長の「今まで利用されることが少なかったCO2に価値を見いだし、新たな産業を創造することで雇用を創出し、地域振興を図りたい」という考え方にも賛成だ。

(2)ゴミ焼却熱による発電
 *2に書かれているように、ごみ焼却時に電気を作る「ごみ発電」も、効率よく電気を安定供給でき、1キロ・ワット時あたり17・85円の固定価格買い取り制度による売電収入が得られるようになったため、新エネルギーとして期待されている。同時に、ごみから出る灰、金属、ガラスなどを完全に溶融し、路盤材などに利用できるスラグとメタルに資源化するというのはアッパレだ。さらに、「ごみ焼却炉」近くの家には、温水を供給することも可能だろう。環境省も、ごみ焼却で出る熱を有効利用する施設を自治体などが建設する際、一定要件を満たすものを「高効率」施設として交付金を拠出するとのことである。ゴミの資源化を行う自治体は、副収入が出る筈だ。

(3)太陽光・風力などの自然エネルギーを馬鹿にすべきではない
 *3によれば、太陽光・風力発電を合わせた供給力244万kWは、原子力発電所で唯一稼働していた関西電力の大飯発電所3・4号機の合計出力236万kWを上回ったそうである。しかし、「固定価格買取制度により、太陽光を中心に全国各地で再生可能エネルギーによる発電設備が増え続け、2014年の夏も供給力が大幅に伸びることは確実だが、電力会社が発電事業者などから買い取る電力は通常よりもコストが高く、その差額は電気料金に上乗せされる」と記載されている。これに対して、私は、原子力には平時でも毎年5,000億円の国費を投入しているのに、太陽光・風力などの国産自然エネルギーの固定価格買取については、すべて電力需要者の負担として原子力と比較するのは、正確な比較にならず、不公正だと思う。

 また、*5に記載されているように、「政府は電力システム改革で2016年をめどに、家庭向けを含む電力小売りを自由化する方針」であるならば、その時までに、家庭や企業が本当に自由に電力を選べるように、発送電分離が不可欠である。そうでなければ、旧来の電力会社の経営に影響のない範囲までしか新電力の送電は認められないだろう。なお、「自前の発電設備を持つ企業の参入などで、新電力の供給力が増えれば、電力会社の地域独占が崩れる」と書かれているが、地域独占は独占と同じであるため、独占禁止法上及び公正取引法上、独占が崩れることこそ望ましいのである。

(4)農業での太陽光発電
 *4では、最新の農業資材を展示する「第3回国際農業資材EXPO(アグリテック)」が、2013年10月9日に幕張メッセで開幕し、太陽光発電や情報技術(IT)農業関連の資材などが注目を集めたそうだ。農業者が太陽光発電に協力すれば、持っている土地・家屋が広いだけに、太陽光発電の普及が加速されることが期待できる。

 しかし、私は、農業者は農業が主体であるべきなので、圃場に全く影響を与えない形での太陽光・風力発電を進めたいし、それができるような発電機を作るべきだと考える。例えば、①畜舎の屋根に設置して畜舎の空調を行った上、余剰電力を売る ②ハウスに透明な太陽光発電機を取り付けてハウスの温度管理をした上、余剰電力を売る ③圃場の日差しに影響を与えない太陽光発電機を作る などである。

 つまり、太陽光発電機も、そろそろ「発電しさえすればよい」というコンセプトから、「発電効率が高く、見栄え、その他の機能も備えている(損なわない)」というコンセプトに変わるべきなのだ。

*1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2558985.article.html
(佐賀新聞 2013年10月3日) 排ガスからCO2回収 佐賀市清掃工場
 佐賀市清掃工場(高木瀬町)に導入した排ガスから二酸化炭素(CO2)を取り出す実験装置が2日、稼働した。清掃工場から排出されるCO2を分離回収し、CO2は農作物の成長促進や藻類の培養に役立てる実証実験の第一歩。東芝や九州電力、焼却炉の運転管理を担当する荏原環境プラントなどとの共同研究で、ごみ焼却場では国内で初めてのCO2分離回収実験が本格スタートした。実験は東芝が担い、1日当たり10~20キログラムのCO2を回収する。2009年から福岡県大牟田市の火力発電所で稼働している実験プラントの技術を応用した。装置内では、CO2を吸収する特殊な液体と排ガスを混合。CO2だけを取り込んだ液体を加熱することで、純度99%以上のCO2を得られるという。約半年間をかけ、塩化水素やダイオキシンなどの物質が含まれていないCO2が回収できることを確認する。安全性や純度の確認と並行して、2014年度末にかけては回収コストの評価や利活用方法の調査研究を進める。糖度や収量アップに効果が期待される農業用ハウスでの活用や、バイオジェット燃料としての可能性も注目されている藻類の培養への活用を模索している。稼働式で、秀島敏行市長は「今まで利用されることが少なかった二酸化炭素に価値を見いだし、新たな産業を創造することで雇用を創出し、地域振興を図りたい」とあいさつ。東芝の油谷好浩常務は「地球温暖化などの問題が世界的規模で顕在化している。今回の取り組みなどを通し、持続可能な社会の推進に貢献していきたい」と述べた。

*2:http://www.yomiuri.co.jp/eco/feature/20121025-OYT8T00714.htm
(2012年10月29日 読売新聞) ごみ発電 効率性に熱視線
●有機物ガス活用 地域の安定電源へ
 ごみから電気を生み出す「ごみ発電」への期待が高まっている。東日本大震災以降、新たなエネルギー源として効率よく電気を安定供給できる長所に加え、固定価格買い取り制度による売電収入ももたらされるようになったからだ。
●「迷惑施設」で発電
 「本格的に稼働すれば約5億円の売電収入を見込めます」。今月試験運転を始めた堺市クリーンセンターの臨海工場(堺市堺区)で、神沢泰博・市環境施設課長の言葉には期待がこもる。公共事業に民間資金を生かすPFI方式による特別目的会社が市の委託を受けて運営する同センターは、最新のごみ発電施設だ。ごみから出る灰、金属、ガラスなどを完全に溶融し、路盤材などに利用できるスラグと、メタルに資源化するだけでなく、有機物から出るガスでもれなく発電する。迷惑施設のイメージが強いごみ処理施設から資源や電気が生み出されるのだ。発電効率は全国平均の約1・6倍。来年4月に本格稼働すれば、市の一般廃棄物の半分近い年間14万トンを処理でき、約2万世帯分に相当する電気を生み出す。市は、蒸気タービンとガスタービンを組み合わせて発電効率を22・5%に高めたスーパーごみ発電施設も1997年から稼働させており、こちらは年間約4億円の売電収入がある。だがガス代が年々高騰し、2011年度は売電収入約4億2000万円に対し、ガス代が約3億円かかるようになり、もうけは少ない。発電技術や金属材料の進歩でガスがなくても高効率で発電できるようになったのが臨海工場で、市は今年度、老朽化した既存のスーパーごみ発電施設も改造して、この方式へと変換する。
●優遇措置
 環境省は、ごみ焼却で出る熱を有効利用する施設を自治体などが建設する際、発電効率など一定要件を満たすものを「高効率」施設として交付金を拠出。東日本大震災後の電力不安などから、来年度は特別重点枠に位置づけ、159億円を予算要求している。同省によると、全国1221のごみ焼却施設のうち発電しているのは約4分の1にあたる306施設。全国的にごみ焼却施設の数は減ってきているが、発電設備を備える施設の割合は増えており、2010年度の総発電量は約72億キロ・ワット時。1世帯あたりの年間電気消費量を3600キロ・ワット時として計算すると約199万世帯分に匹敵し、地域の安定電源としての期待が高まっている。
●売電が後押し
 7月1日に始まった再生可能エネルギーの「固定価格買い取り制度」の対象になったことも今後の追い風となりそうだ。一般廃棄物などを燃やして発電した場合はバイオマス発電となり、その買い取り価格は1キロ・ワット時あたり17・85円。堺市の場合、制度導入後の売電収入は1・5倍程度に上がるという。廃棄物やリサイクル問題に詳しい田中勝・鳥取環境大サステイナビリティ研究所長(廃棄物工学)は「広域処理を目指し、複数の自治体で大規模で高効率のごみ処理発電施設を運営すれば、売電収入の増加も見込め、経済負担も少なくてすむ。地域の電力危機解消にもつながっていく」と話す。

*3:http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1310/09/news009.html
夏のピーク時に太陽光と風力で244万kW、原発2基分を供給
 電力会社9社が太陽光発電と風力発電によって供給する電力が増えている。2013年夏の電力需要がピークになった時間帯の実績を集計した結果、太陽光と風力の合計で244万kWに達した。原子力発電所の2基分に相当する規模で、再生可能エネルギーが原子力を代替する状況が進んできた。政府の電力需給検証小委員会が2013年夏の実績をまとめたもので、各地域で需要がピークに達した日時の太陽光発電と風力発電の供給力を9つの電力会社ごとに集計した。太陽光発電では東京電力の管内で最大需要日の8月9日に56万kWを供給したのが最高だった。次いで中部の51万kW(8月22日)、関西の44万kW(同)の順に多かった。いずれも委員会が事前に予測した数値を2倍前後も上回っており、予想以上の伸びになっている。九州だけは予測値を下回ったが、最大需要日の8月20日のピークが夕方の16時台にずれこんだことが要因だ。供給対象になった太陽光発電設備の最大出力を9つの電力会社で合計すると876万kWにのぼった。ピーク時の設備利用率(最大出力に対する実際の出力)を計算すると25%になり、太陽光発電の標準値である12%の約2倍を発揮した。一方の風力発電によるピーク時の供給力は9電力会社を合わせて24万kWになった。最大は九州の5.1万kWで、次いで四国の4.8万kW、東北の4.1万kWと続く。対象設備の最大出力は合計で260万kWになり、設備利用率は9%と低い。晴天時には風が弱いことが多く、夏のピーク需要には風力よりも太陽光の効果が大きいことがわかる。前年の2012年夏には太陽光が121万kW、風力が13万kWだったことから、2013年の夏は太陽光と風力ともに2倍近くに増加した。両方を合わせた供給力244万kWは、原子力発電所で唯一稼働していた関西電力の大飯発電所3・4号機の合計出力236万kWを上回っている。固定価格買取制度によって、太陽光を中心に全国各地で再生可能エネルギーによる発電設備が増え続けている。2014年の夏も供給力が大幅に伸びることは確実である。ただし電力会社が発電事業者などから買い取る電力は通常よりもコストが高く、その差額は電気料金に上乗せされる。2013年度は全国平均で電力1kWhあたり0.1円程度だが、再生可能エネルギーによる電力の供給量に合わせて今後は増加していく見通しだ。

*4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=23853
(日本農業新聞 2013/10/10) 農業資材EXPO開幕 「ソーラーほ場」紹介 
 最新の農業資材を展示する「第3回国際農業資材EXPO(アグリテック)」が9日、千葉市の幕張メッセで開幕した。リードエグジビションジャパンの主催。前回より出展が増えた太陽光発電や情報技術(IT)農業関連の資材などが注目を集めた。扇港電機(三重県四日市市)は、太陽光発電をしながら稲作ができる「ソーラーほ場」を紹介した。農地の一時転用許可を取った同県伊賀市の水田10アールで今年、「コシヒカリ」を栽培。96キロワットの容量のパネル400枚で発電しながら日照率63%を確保し、収量は地域平均の8割だった。架台下の高さが3メートル、1ユニット81平方メートルで機械作業による稲作が可能。支柱は20センチ角の鉄骨に亜鉛溶融メッキなどを施し、耐久性を高めた。同社は「稲作で太陽光発電ができるのはあまりない。売電収入は地域によるが、10~12年で回収できる」と説明する。容量48キロワットの場合、コストは基礎とパネルで10アール当たり2400万~2600万円。他にメンテナンスなどの費用がかかるという。アグリテックには350社、団体が出展。11日までの期間中、同時開催の展示会と合わせて3万人の来場を見込む。

*5:http://qbiz.jp/article/24962/1/
(西日本新聞 2013年10月9日) 新電力、存在感高まる 九電から離脱加速
 九州電力が4月に企業向け電気料金を値上げした影響で、電力を安く売る特定規模電気事業者(新電力)の存在感が九州でも高まっている。新電力の供給力には限りがあるため、本格的なシェア拡大には至っていないものの、将来の小売り完全自由化をにらんだ動きが加速しそうだ。「他施設との競合が厳しいので、固定経費を少しでも下げたい」とは、福岡県などで斎場や結婚式場を展開するラック(福岡市)の担当者。同社は5月から、一部施設の電力を東京ガスや大阪ガスが出資する新電力大手のエネット(東京)から買うように改めた。電気料金は九電より5%前後抑制できる見込みで、担当者は「効果を見極めた上で契約拡大を検討したい」と語る。厳しい経営環境にさらされる地場企業にとって、経費節減は経営の生命線。九州でも営業展開するエネットやイーレックス(東京)といった新電力は、他社工場の余剰電力を買い取ることなどで安さを実現しており、九電から乗り換える企業が相次ぐ。九電によると、今年3月末から9月1日にかけて自由化部門の顧客が415件減った。減少数は、昨年の同じ期間の20件減、2年前の189件減より大幅に増加。九電の料金値上げで離脱する動きが加速した格好で、新電力に流れた顧客は2400件を超えた。九電全体の自由化部門の顧客数約7万4千件と比べれば、離脱は3%強にすぎない。資源エネルギー庁によると、全国でも新電力が電力市場に占めるシェアは4%程度にとどまる。大規模な発電施設を持たない新電力は供給力に限界があるため「お客さまの声に十分に応え切れていない」(エネット経営企画部)のが実情だ。政府は電力システム改革で2016年をめどに、家庭向けを含む電力小売りを自由化する方針。自前の発電設備を持つ企業の参入などで、新電力の供給力が増えれば、電力会社の地域独占が崩れる可能性もある。守勢の九電は「使用電力量を低減できる省エネ器具の紹介や使用状況に応じた料金メニューの提案を通じて契約継続に取り組みたい」としている。

PS(2013.10.15追加):*6もGoodですが、水道のある自治体なら、どこでもできるでしょう。
*6:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131014/k10015255261000.html
(NHK 2013年10月14日)  東京都が小型水力発電の電力販売
 東京都は、水を送る圧力を利用した小型の水力発電の設備を新たに江戸川区に整備し、発電した電力を事業者に販売する取り組みを始めました。小型の発電設備が完成したのは、東京・江戸川区にある葛西給水所です。給水所は、水道水を各家庭に送る前に一時的にためている施設で、浄水場から圧力をかけて水道水が届けられています。今回完成した発電設備は、この水圧を利用して水車を回して発電します。発電できる電力量は、420世帯が1年間に使うおよそ140万キロワットで、新たに電力事業に参入した東京に本社がある事業者に販売を始めました。東京都は、再生可能エネルギーによって発電した電力を電気事業者が買い取る制度を使って、年間4600万円の売り上げを見込んでいて、都は整備にかかった費用を6年間で回収したいとしています。東京都の施設で発電した電力をすべて販売するのは今回が初めてです。東京都水道局は「今後も電力の販売を拡大して、社会全体の電力供給に貢献していきたい」と話しています。

| 資源・エネルギー::2013.4~2013.10 | 02:55 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.8.8 再生可能エネルギーに対する積極的な金融の段階になってよかった。
 *1のように、電力を消費する地域で発電も手がける電力の地産地消を推進するのはよいことだと思う。送電距離が短いため送電ロスが少なく、電気と熱を同時に供給でき、高い燃料費を外国に支払わずにすむため、その分の資金が、その地域で廻ることになる。また、地方自治体も、ゴミ焼却の熱を無駄にせずに稼いだり、*3のようにして、収入に電力収入を加えたりすることができる。

 また、ハウス栽培の農業も多いが、燃料費の高騰でやっていけないという要望が強い。そのため、*2のように、ハウスに太陽光発電をつけてエネルギーを作りながら、出荷したい時期に出荷できるような農業は待たれている。私は、ガラス製の方が耐久性に優れているため、ガラス製の太陽光発電素材も販売すればよいと思うが・・。

 *4、*5のように、再生可能エネルギーに融資がつくようになったのは、喜ぶべきことである。これから、次々とよいスキームが出てくることを期待したい。

*1:http://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/? (日経新聞 2013.8.5)
電力「地産地消」を推進 総務省 来年度から実証実験 安定供給・雇用拡大狙う
 総務省は、電力を消費する地域で発電も手がける「地産地消」を推進する。地域の企業や地方自治体による発送電や需給調整の事業モデルを構築するため、来年度から実証実験を実施する検討に入った。政府は電力大手による地域独占を見直す方針で、新規参入がしやすくなる。各地の官民が受け皿となり、電力の安定供給と雇用拡大などの経済効果の創出につなげる。総務省が今夏までにまとめる地域経済の活性化策の柱の一つになる。地元企業と自治体が共同で取り組む事業モデルを想定する。太陽光や地熱、ガス火力などで発電し、市役所や学校、事業所といった域内の施設に供給する。送電距離が短いため電気と熱を同時に供給でき、送電設備の維持費も減らせる。小型の発電設備を分散して配置することで、災害時などの一斉停電も防げる。既存の電力大手からの供給を含めた域内の需給調整が課題となる。総務省は来年度、全国で5つほどの自治体をモデル地区に選び実証実験を始める。

*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130805&ng=DGKDASFB03001_V00C13A8MM0000 
(日経新聞 2013.8.5) 農地で発電、作物も成長 かずさDNA研、太陽電池の基礎技術
 公益財団法人のかずさDNA研究所(千葉県木更津市)は農地の上に設置しても農作物の成長をほとんど妨げない太陽電池の基礎技術を開発した。日光のうち青や緑に相当する波長の短い光で発電し、農作物の成長に必要な波長の長い光は通す。3年以内にビニールハウスなどで使えるフィルム状の電池を開発し、農地での太陽光発電を促したい考えだ。開発した太陽電池は半透明で、ガラスの間に2種類の電極や電解液が挟まった構造。電極の表面に付着した色素分子が、青や緑に相当する400~600ナノ(ナノは10億分の1)メートルの波長の光を吸収して発電する。赤など波長が長く植物が成長するのに必要な光は通す。かずさDNA研は植物遺伝子の研究などで多くの実績がある。新しい電池に使う色素を植物から見つけた。一般的な太陽電池は発電効率を高めるため、すべての波長を発電に使おうとする。農地を太陽電池で覆うと、農作物に日光が届きにくくなり収量が落ちてしまう可能性がある。かずさDNA研は太陽電池が吸収する波長を絞り込み農作物の成長を妨げないようにした。
 ガラス製のままでは農地で使いづらいため、桐蔭横浜大学と組んでビニールハウスに取り付けやすいフィルム状の太陽電池を開発する。太陽電池を植物の上に設置し、成長に及ぼす影響を詳細に調べる計画だ。農業法人などは農作物の売り上げに売電収入が加われば経営が安定する。農林水産省の3月末の規制緩和で、農地で太陽光発電ができるようになった。このため農業を営みながら太陽光発電で売電収入を得る「ソーラーシェアリング」に取り組む農家が増えている。新技術を実用化できればソーラーシェアリングの普及に弾みがつきそうだ。

*3:http://qbiz.jp/article/21521/1/ (西日本新聞 2013年8月5日)
温泉発電で町おこし支援 別府など20カ所に30億円 経産省
 経済産業省が、地下の熱水のエネルギーで発電する「温泉発電」に用いた後のお湯の再利用事業を支援し、温泉地などの町おこしの後押しを検討していることが5日、分かった。ハウス栽培や水産物の養殖、足湯の整備などを行う全国約20カ所の事業に補助金を出す。総事業費は約30億円となる。温泉発電は地熱発電の一種だが、設備が小規模で旅館などが独自に運営できるのが特徴。発電と地域振興を組み合わせることで地元の理解を進め、地熱発電の拡大につなげるのが狙いだ。海外での発電後のお湯の再利用にはアイスランドの温泉施設、ニュージーランドのエビ養殖場などの例がある。今回の支援対象に検討されている事業は、イチゴ栽培のビニールハウス設置(北海道弟子屈町の温泉地)や、温水で豚肉を調理する食品工場整備(新潟県十日町市の松之山温泉)、足湯施設の整備(大分県別府市の別府温泉)など。東京電力の地熱発電所がある八丈島(東京都)では、発電所の温水を水産物の養殖に活用できるか可能性を調査している。北海道や秋田、富山や鹿児島などでは、地熱発電の理解を深める住民勉強会を支援する。設備が大規模になる地熱発電は原発停止後の再生可能エネルギーとして期待されている。ただ、必要な地熱が得られる地域は温泉地や自然公園内に集中している。

*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130805&ng=DGKDASGC0101C_R00C13A8NN7000 (日経新聞 2013.8.5) 北都銀、太陽光発電に融資
 北都銀行は発電事業の特別目的会社である風の王国・潟上(秋田県潟上市)と事業融資(プロジェクトファイナンス)契約を結んだ。対象は同社が潟上市で手掛ける太陽光発電事業で、融資額は数億円になる見通し。事業融資は、事業から生み出される利益を返済原資に充てる形態。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度によって、太陽光発電事業は利益が見込みやすいという。

*5:http://qbiz.jp/article/21555/1/ (西日本新聞 2013年8月6日)
設備投資、再生エネ頼み 九州3年ぶり増、鉄鋼など依然減少
 日本政策投資銀行九州支店は2013年度の九州への設備投資計画が3年ぶりに前年度を上回るとの調査結果を5日公表したが、大規模太陽光発電所(メガソーラー)など電力への投資が全体の1割を占めるなど、業種のばらつきが大きい。3年ぶりの「増加」も、08年秋のリーマン・ショック以降、各企業が投資を抑制していた反動の面もあり、同支店は「維持補修費が先行し、前向きな投資はまだ少ない」としている。九州では、鹿児島県や宮崎県を中心に、再生可能エネルギーへの投資が活発化。宮崎県国富町では、昭和シェル石油の太陽電池製造販売子会社、ソーラーフロンティア(東京)が新製品の生産ラインを導入するほか、鹿児島県薩摩川内市でも、中越パルプ工業(富山県)が木質バイオマス発電設備を約85億円かけて設置する。ただ再生可能エネルギー関連の投資は大きな雇用にはつながりにくく、地域経済への効果も限定的だ。製造業では、投資抑制が続く鉄鋼は27・0%減と4年連続のマイナス。穀物や油など原料高に悩む食品も6・3%減と、2年連続の減少だった。デジタルカメラ向けの精密機械も35・7%減と、業種によって明暗が分かれている。円安効果も読み切れない。基幹産業の自動車は、トヨタ自動車九州苅田工場(福岡県苅田町)のエンジン生産ライン増設や、ダイハツ工業(大阪府)の軽自動車用エンジン開発拠点の福岡県久留米市への移管で、43・5%増と好調だが、いずれも生産拠点集約に伴う投資。各社は海外生産を強化しており、1ドル=100円前後では、国内への積極投資には動きにくい。設備投資を判断するには、事業環境が見通せる状況が必要。鈴木恵一支店長は「再生エネルギーや自動車など九州に優位性のある産業を持続的に発展させるには、産学官の一段の取り組みが求められる」としている。

| 資源・エネルギー::2013.4~2013.10 | 08:38 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.8.7 新エネルギーの可能性、発送電分離、完全な連結納税制度の導入について
   
  燃料電池バス       燃料電池車        エネファーム      電気トラック

(1)新エネルギーの可能性
 *1、*2、*3のように、今まで使っていなかった新エネルギーを賢く活用すると、わが国は、低コストで環境を害さないエネルギーを自給できた上、輸出も可能だ。そのため、新エネルギーの可能性は大きいが、新エネルギーを発見して開発し、安い価格で供給するには、発電事業者の工夫とコスト削減努力が必要なので、公正な市場競争が存在することが必要不可欠である。
 そのため、政府は、①地域独占による電力供給システムを廃して電力需要者が事業者を自由に選択できるようにすること ②徹底した発送電分離を行うこと ③環境基準を厳しく定めて環境を害さないエネルギーに誘導すること が必要である。念のために書いておくが、人間が暮らす環境を害するものは、CO2だけではなく、放射性物質、NOx、SOx、騒音、振動、低周波等もである。
 これらのあらゆる点で優れているのが、*1の水素、*2の太陽光であり、石油から水素や電気へのエネルギーシフトを行えば、殆どの問題が解決する。そのため、一般国民に手の届く安い価格で、新エネルギーに対応した便利な機器を供給することが必要だ。

(2)完全な発送電分離が必要な理由
 これまでの電力会社が送電線を所有していれば、送電事業者の意志により、新規の発電事業者は、努力に見合った安い価格で需要者に電力を届けることができず、電力市場は送電線を所有している既存の電力会社の思いのままになり、公正な競争にならない。経産省の認可が必要であっても同様だ。そのため、①既存電力会社が発送電分離を行って送電会社が中立になるか ②新しい電力網を国、地方自治体、他企業が作るか ③それを併用するか が必要なのである。

(3)完全な連結納税制度導入の必要性
 電力会社が、送電網とそれに関わる人材をまとめて送電会社として会社分割したら納税額が増えるという不利益がなく、会社分割したことによって経営力を高めるというメリットを得られるためには、連結納税制度の徹底が必要である。注の連結納税制度は、私が公認会計士の時、先進諸外国の事例を見て提唱し導入されたもので、組織再編に有力なツールだ。しかし、現在でも、連結納税制度は法人税に認められているだけで、住民税や事業税には認められていないため、会社分割すると住民税・事業税の税負担が重くなる上、税効果会計の会計処理も複雑になる。そのため、連結納税制度は、本来の趣旨にかんがみて、住民税・事業税にも適用すべきである。

 なお、特定の事業者の原発事故処理、汚染水処理、廃炉等に税金を使うのは、順番が違うと思う。まず、当事者が送電会社などの売れるものは売り、捻出できる資金はすべて捻出した上で、どうしても足りなければ税金を使うという話になるべきである。

注:連結納税制度http://100.yahoo.co.jp/detail/%E9%80%A3%E7%B5%90%E7%B4%8D%E7%A8%8E%E5%88%B6%E5%BA%A6/
 親会社と子会社などの企業グループを一つの企業のように看做して法人税を課税する制度。早くから欧米で定着していたが、日本は2002年(平成14)4月から導入した。グループ内企業の黒字と赤字を相殺でき、一般的に課税所得を圧縮する効果がある。税制面でM&A、新規事業への進出、赤字事業の分社化など機動的な組織再編を促し、企業の国際競争力を高める効果がある。

*1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD2908V_Z20C13A7SHA000/?dg=1
(日経新聞 2013/8/6) 日本は水素大国 燃料電池車の潜在力(真相深層)
■住宅に給電実験
 3年前にできた福岡県北九州市のスマートコミュニティ実証実験場。最近始まったのは車から住宅に給電する実験だ。使っているのはホンダが開発した燃料電池車。車で起こした電気を地域のエネルギー管理システムと連携させ、家庭に給電しながら電力をよく使う時間帯の分散が可能かどうかを調べている。実験場に入居するのは230世帯と50の事業所。隣接する新日鉄住金の八幡製鉄所とパイプラインでつながっており、製鉄のプロセスで生じる水素を燃料電池による発電や燃料電池車に使う。生成過程では二酸化炭素が発生しているが、通常は捨てられてしまう水素を電気にして使えば地域全体としては余計な化石燃料を使わずに済む、とのコンセプトだ。発電、熱利用、貯蔵。水素の活用法は多数ある。例えば、使う時間帯を分散して余った電力で水素をつくり、保存すれば家庭用発電機や燃料電池車に回せる。太陽光など再生可能エネルギーで水素をつくれば、さらに二酸化炭素を出さない循環が生まれる。自治体などが主導するこうした実験場は国内に4カ所あり、石油会社や重電、自動車、鉄鋼メーカーが技術開発を競う。実は、日本は水素大国だ。製鉄などの副生成物として大量に発生するほか、ガソリンなどを精製する際、硫黄分を取り除くためにつくる大量の水素が今後は製油所の縮小で余剰になる。日本の生産能力は年間約360億立方メートル。これに対し、石化や産業ガス、ロケット燃料などで使われる総需要は約半分だ。余剰の能力を生かせないか。これを使えば例えば水素で動く燃料電池車が年間1500万台動かせる計算。日本は厳しい二酸化炭素の削減目標に挑み、東日本大震災の後は天然ガスの輸入増加で貿易収支の改善が課題になっている。

*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130806&ng=DGKDZO58137320V00C13A8TJ1000
(日経新聞 2013.8.6) 昭和シェル系 太陽電池、20円台前半に 発電コスト下げ
 昭和シェル石油の太陽電池子会社、ソーラーフロンティア(東京・港)の玉井裕人社長は、2015年以降に住宅向け太陽電池の発電コストを20円台前半まで引き下げる方針を明らかにした。出力1キロワットで1時間電気をつくるのにかかるコストで、現在は30円台とみられる。発電コストの低い太陽電池の商品化で住宅向け需要を開拓する。薄膜化合物系の太陽電池の1枚あたり出力を引き上げ、現在14%の発電効率を向上させる。「原材料の見直しや不良品率低減を徹底して製造費用も下げる」という。3~4年後に20円台前半で発電できるようにする。15年3月に国の太陽光発電買い取りの設備認定受け付けが締め切られる。15年以降は産業用の太陽電池の需要が減るとみられるが、「発電コストが安くなれば、住宅の屋根への搭載が進む」とみている。ソーラーフロンティアは、宮崎県に3つの太陽電池製造工場を持つ。年間供給量は約1ギガワットで国内3位、世界ではシェア10位。

*3:http://bizgate.nikkei.co.jp/smartcity/kanren/201308021433.html
(日本経済新聞 2013/8/1) 世界最大蓄電池、北海道電が導入
 経済産業省は31日、住友電気工業製の世界最大級の蓄電池を北海道電力の南早来変電所に導入すると正式に発表した。蓄電池の放充電により、天候による出力変動の激しい太陽光や風力などの供給量のブレを調整して、再生可能エネルギーの活用を進める。蓄電池の導入で北海道電の再生可能エネルギーの導入可能量は約1割増える見込み。住友電工横浜製作所(横浜市)の実証機を視察した茂木敏充経産相は、「世界最先端の技術は国内で再生可能エネルギーを安定的に拡大するために重要だ。日本のお家芸の技術を将来的には国際展開したい」と述べた。導入するのはリチウムイオン電池の倍の20年の寿命があるレドックスフロー電池。6万キロワット時(一般家庭6千世帯の1日分の消費電力に相当)の蓄電能力がある。電力会社が大容量蓄電池を本格導入するのは初めて。北海道では昨年7月から始まった再生エネの固定価格買い取り制度で、メガソーラー(大規模太陽光発電所)に参入する事業者が急増した。気象条件で発電量が大きく変動する太陽光発電は電圧や周波数の振れが大きく、安定供給に影響があるとして、北海道電では電力網への接続を制限している。

*4:http://digital.asahi.com/articles/TKY201308060684.html?ref=pcviewpage
(朝日新聞 2013年8月7日) 中部電、首都圏で売電 三菱商事から新電力買収 地域越え競争へ
 中部電力が今年10月から、東京電力管内で企業向けの電力販売に乗り出す。三菱商事から新電力会社「ダイヤモンドパワー」(東京都)を買収し、首都圏市場に参入する。地域ごとに電力市場を独占してきた大手電力が、他の地域に本格参入するのは初めて。大手電力どうしが競争する時代の幕開けになりそうだ。
▼国盗り合戦
 企業など大口向けの電力販売は2000年から自由化されている。三菱商事は同年に、新規参入の「新電力会社」としてダイヤモンドパワーを設立。三菱商事が株式の100%を持ち、首都圏の百貨店や工場に電気を売っている。販売量は数億キロワット時で、約90社ある新電力の上位10社に入る規模だ。中部電は10月1日付で三菱から持ち株の80%を買い取り、経営の主導権を握る。買収額は10億円程度とみられ、社長も中部電から新たに派遣する。三菱商事が売却するのは、当初の計画ほど販売が伸びなかったためだ。一方で、20%の株式を保有し続け、引き続き電力事業にかかわる。株式取得とともに、東電管内の静岡県富士市にある日本製紙の工場内に石炭火力発電所を新設する。三菱商事、日本製紙と約250億円かけて建設し、16年に運転を始める。発電能力は10万キロワット。発電した電力は、ダイヤ社が首都圏の販売用に買い取る。2000年に大口販売は自由化されたものの、大手優位が続く。大手電力が他社の区域に販売する例は、九州電力が中国電力管内のスーパーに売る1件しかない。自由化後も競争は十分に進んでいなかった。そんななかで、中部電がダイヤ社を買収して首都圏での電力販売に乗り出すのは、販売市場を広げる好機とみているためだ。首都圏を地盤とする東電は、福島第一原発事故などの影響で、今後も電気料金の高止まりが予想されている。中部電は販売電力に占める原発の比率が小さく、東電などと違って値上げしていない。首都圏で安い電力を供給できれば、市場を開拓できる余地が大きい。ダイヤ社の売電規模は、東電や中部電の企業向け販売と比べると1%に満たない。ただ、優良顧客を抱えており、首都圏市場に参入する第一歩としては、効果的だ。中部電は買収を足がかりに、首都圏での販売をさらに拡大させたい考えだ。中部電管内の周波数は60ヘルツで、東日本の50ヘルツと異なる。ただ、電力自由化が今後進めば、中部電が自社管内で発電した電力を変換して、首都圏で直接販売する道も広がる。東電と中部電の電気料金の差が開いていくと、中部電が首都圏での直販を検討する可能性もある。


PS(2013.8.7追加):このような中、*5のように、経済産業省が2014年度予算の概算要求に、原子炉建屋への地下水流入を防ぐため、土を凍らせて壁をつくる費用を盛り込むそうである。中学生程度の熱交換の知識があれば、莫大な量の水が流れている場所に凍土の壁を作っても、それを凍らせ続けることはできず、温度の下がった水が海に流れ込んで、環境に悪影響を与えることは明らかだ。このように、放射性物質は水に流し、国民の税金をどぶに捨てながら、環境を破壊するような意思決定をする者に意思決定させるのが間違いだが、それにしてもひどすぎる。

*5:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDF0600Z_W3A800C1MM8000/
 
(日経新聞 2013/8/7) 福島原発汚染水対策に国費 来年度概算要求で遮水壁
 政府は東京電力福島第1原子力発電所の汚染水対策に国費を投入する方針を固めた。経済産業省が2014年度予算の概算要求に、原子炉建屋への地下水流入を防ぐために土を凍らせて壁をつくる費用を盛り込む。福島第1原発の収束作業を東電任せにせず、国がこれまでより踏み込んだ対策を取る方針に転換する。7日に開く原子力災害対策本部会議で、安倍晋三首相が茂木敏充経産相に汚染水対策の強化を指示する見通し。これを受け、経産省が具体策を詰める。国は福島第1の廃炉の研究開発費を支援してきたが、汚染水対策に予算がつけば初めて。福島第1原発では放射性物質で汚れた水の海への流出を少しでも抑えるのが最大の課題だ。東電は地下にたまった汚染水の海洋流出を防ぐため、原発そばの護岸沿いに遮水壁をつくる工事を進めている。ただ原子力規制委員会は遮水壁を乗り越えて汚染水が海に漏れ出ている可能性を指摘。原発の地下を流れる地下水そのものを食い止める対策が必要になっていた。
 経産省は5月、原子炉建屋に流れ込む1日400トンの地下水を減らすため、1~4号機を囲うように土を凍らせて流入を阻む壁をつくるよう東電に指示した。凍土による壁は世界でも前例がなく技術的課題も多い。工事費は最大400億円規模になりそう。実質国有化中の東電には負担の余力が乏しく、費用の大半は国が負担する見通しだ。経産省は8月から遮水壁の設置場所などの調査を始め、年内に必要額が固まる見通し。8月末の概算要求では対策費の名目だけを要求し、必要額が固まって改めて予算要求する。エネルギー対策特別会計から補助金として支出する案があるが、詳細は経産省と財務省で詰める。遮水壁は15年9月末までの設置を見込むが前倒しも検討する。政府は汚染水問題では前面に出る格好だが、それにとどまらずに賠償や廃炉、除染などでも国と東電の役割分担を明確にしていく考え。
 廃炉は原則として事故を起こした東電が担う。廃炉費用を国が資金支援する枠組みもない。昨年9月に経産省から独立して発足した原子力規制委員会は当初、廃炉作業から距離を置き、官庁の監督体制も弱まった。汚染水問題は、「廃炉を東電任せ」にしてきたもろさが露呈した格好だ。東電は昨年11月に賠償、廃炉、除染の費用が10兆円規模になり「一企業のみの努力では到底対応しきれない」と国に追加支援を求めた。3月、4月にも責任と費用の分担を求める文書を国に提出。安倍首相は4月に「国が一歩前に出る」と約束したが、具体策は参院選後に先送りしていた。東電は10月に800億円弱の借り換え、12月に3000億円の新規融資を控えており、秋には昨年まとめた総合特別事業計画を改定する。東電再建を後押しし、廃炉作業を着実に進めるためにも、今後は国の関与のあり方が焦点となる。

| 資源・エネルギー::2013.4~2013.10 | 12:19 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.8.2 EVになれば街づくりも変えられるが、技術がトップランナーでも政治・行政の対応が後手後手だということ
     
      Leaf販売推移(赤)              Leaf                 iMieV 

 水素は、わが国でも豊富に作れるため、水素を燃料として使えば①エネルギー自給率が上がる ②貿易収支が大きく改善する ③燃焼後に水しか出さないため、公害が出ない などの利点がある。そのため、早く、自動車だけでなく、船舶や住宅用燃料にも水素を使う時代になって欲しいと思う。

 特に自動車については、いくら燃費が良くなってもガソリンを使う限り公害が出るため、早くEVか水素燃料電池車に変ってもらいたい。そのような中、EVでも燃料電池車でも、わが国は技術的にはトップランナーであり、日産のゴーン氏は先見の明があるのだが、*2のように、周囲の理解がないため先に進まずにいる。もちろん、車の価格・デザイン、一回の充電による走行距離、充電インフラの価格とその不足など、不便をかけながら値段が高いのも売れない理由であるため、早急に改善すべきだ。

 そして、車が全く排気ガスを出さなくなると、道路がビルの中を通ることも可能になり、街づくりが大きく変えられる。例えば、東京の例では、高速道路の設置場所を変更したり、新しく作ったり、通常の道路を碁盤の目のようにしたりすることがやりやすくなり、出来上がった街は、便利でクリーンな街にできる。それにもかかわらず、わが国が、いつ枯渇するかわからない原油に頼って大金を払い続けている理由は、政治・行政・経営の人材に、総合的な先見の明がないからのように思われる。

*1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0803K_Y3A400C1000000/?df=2
(日経新聞 2013/4/10) 燃料電池車が生むかもしれない「シェール級革命」
 シェール革命を日本に起こそう、と言うのではない。だが、同じようなモード転換を促す効果がある技術や産業の芽、あるいはそれを後押しする政策は、他にもたくさんあるはずだ。例えば、燃料電池車。10年前は1億円もした燃料電池車だが、2年後には500万円程度の市販車をトヨタなどが発売し、新市場が誕生する兆しがある。ハイブリッド車や電気自動車などとの違いは結構大きい。1回の燃料充填(水素)で走れる距離はガソリン車並みかそれ以上。空気中の酸素に、積んでいる水素を反応させて走るので、排ガスで大気を汚すこともない。シェール革命が加速しかねない温暖化などの問題をにらめば、日本が率先して燃料電池車革命を起こし、世界に広げていく価値は大きい。日本は水素を貯蔵する炭素繊維製のタンクや、電池に相当するスタックの技術で最先端を走っており、日本国内の関連産業に大型投資を促す効果も大きい。
■貿易収支改善などにも一役買う
 何より、日本の貿易収支改善やエネルギー自給にも一役買いそうだ。10年度の日本の原油輸入量は石油ショックがあった40年前の1973年度より減少しているものの、輸入額が13倍にもなっている。米国がシェール革命で沸いている間に、日本は製鉄の過程などで内製することも可能な水素の時代に移行。「石油をなるべく使わない国」の運営モデルを確立しておけば、日本の国や企業に対する世界の目もいずれ、異次元緩和以上に「買い」に動く可能性がある。米シェール革命級の大転換は不可能ではない。肝心なのは、産業や社会の秩序を変える覚悟。政府はビジョンづくりや規制緩和でお膳立てし、企業は世界で勝つための経営モデルとメリハリの利いた投資を進めていく、ということだろう。

*2:http://biz-journal.jp/2013/04/post_1954.html
(2013.4.21)日産、揺らぐゴーン神話 EV販売は計画の10分の1、経営層硬直化で人材流出も…
 1999年に日産最高執行責任者に就任したカルロス・ゴーン。1998年に2兆円あった有利子負債を4年間で全額返済。12%まで下落した国内シェアを20%にまで回復させた。「ゴーン神話」とも評されるこの経営手腕だが、日産最高経営者就任14年を経て、再びその経営手腕が試される季節を迎えている……。
●ゴーン氏に試練、肝入りの電気自動車伸び悩み、世界販売も減速 ー Bloomberg(3月21日)
 ゴーン氏肝入りで進められている電気自動車(EV)の販売台数が伸び悩んでいる。開発におよそ5000億円を投じたEV「リーフ」。しかし、昨年のアメリカでの販売台数は目標の半数以下の9600台にとどまった。日本をはじめ米、英、仏、ポルトガルなどで計50万台の生産体制を計画していたものの、市場投入後2年での累計販売台数はおよそ5万台。フランス、ポルトガルのバッテリー工場設置計画は中止された。ブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンス(BNEF)によれば、プラグインハイブリッド車を含むEVの販売台数は、自動車メーカーが見込んでいた需要の1/3である22万5000台。消費者にとってスタンドをはじめとする環境の整備、バッテリー技術などまだまだ不安要素が多く、手を出しにくいのが現状だ。みずほ銀行投資顧問の青木隆氏は、ゴーンについて「目標数字を達成するコミットメント経営は信頼感が厚かったが、その信頼感が低下している」とコメント。さらに投資家の目線から「ゴーン氏が確実に利益を達成するのであれば、EVは急ぐ課題ではない」と指摘している。

●日産、中国市場シェア目標の達成期限を1年先延ばし ー Reuters(3月28日)
 2016年度までに中国での市場シェア10%を目指していたゴーン。だが、昨年発生した反日デモなどの影響で「実質的に1年間を失った」ことを原因に、その成長戦略に1年間の遅れが生じていることを認めた。現在、中国市場における日産のシェアは6.5%〜6.7%。10%の数値目標を達成するまでには遠く及ばず、先送りせざるを得ない状況だ。一方、アメリカ市場での今年の販売台数は、昨年の1450万台を超え1500万台以上に達する見込み。現在のシェア8%を、中国同様2016年末までに10%に引き上げる目標だ。

●異例の覆り人事に社内は混乱 日産ゴーン長期政権の危うさ ー ダイヤモンド・オンライン(4月9日)
 EVが伸び悩み、中国市場が思うように伸びない……。そんな中、日産社内に思わぬゴタゴタが噴出している。日産の子会社カルソニックカンセイの社長から、日産執行役員に登用される予定だった呉文精氏。3月の段階ですでに日産から情報が公表されていたものの、急遽呉氏は日本電産へ転身。ゴーンら経営陣の「顔に泥を塗ってしまった」形となる。呉氏は旧日本興業銀行、ゼネラル・エレクトリック子会社社長などを経て、カルソニック社長に就任した人物。日産に対する忠誠心は薄い。さらに、日産ではエグゼクティブ・コミッティ(EC)メンバーが硬直化しており飛躍的な出世は難しいため、より高いポストを目指す呉氏にとっては日本電産の方が都合がいいようだ。執行役員クラスでは制裁人事が頻繁に行われているにもかかわらず、ゴーンをはじめとする上層部のECメンバーの入れ替わりは少ない。軽自動車の展開、EVの不振などの問題を「本来責任を取るべきはECメンバーら上層部ではないか」という声も上がっている。ゴーンにとっては安定した経営体制も、呉氏をはじめとする執行役員にとっては「硬直化」に映る。

●円安でも日本に生産戻らず=TPP影響小さい ー 時事ドットコム(3月28日)
 安倍政権発足後に進行した急激な円安で、対ドル相場は98円(4月15日)にまで下落した。今後もさらに下落するのではないかという予想も立てられているものの、ゴーンは、円安が進行しても「北米に移管した生産は戻ってくるとは思わない」とコメントする。日産では、アメリカ市場で販売台数の多い「ローグ」「ムラーノ」といったSUVの生産を14年にも九州工場からアメリカに移管することを決定しているが「為替の変動リスクを抑えるためには現地化が必要」と、この方針が覆ることはないようだ。また、同じくニューヨーク国際自動車ショーで「中立的な水準に達するために円は対ドルで100円を超える必要がある」と発言したゴーン。「円は不利な領域にあると考えている」とし、一層の円高の進行に期待している。

*3:http://qbiz.jp/article/21408/1/
(西日本新聞 2013年8月2日) 世界で一番燃費がいい船 次世代省エネ船第1号が船出、JMU有明
 造船大手のジャパンマリンユナイテッド(JMU、東京)が有明事業所(熊本県長洲町)で建造していた次世代省エネ船「Gシリーズ」の第1号船が完成し1日、引き渡し式があった。新開発の廃熱回収発電や最適運航探索システム、船形設計の工夫などを組み合わせ、燃費を20%改善した。世界的に環境規制が強化される中、技術力で先行するエコシップで中国、韓国勢に対抗する。第1号船は全長300メートル、幅50メートルのばら積み運搬船「ケープ グリーン」(20万9千重量トン)。船主は三菱商事(東京)で、鉄鉱石と石炭をオーストラリアから日本やフィリピンなどに運ぶ。採用した省エネ装置は多彩。エンジンの排ガスで回すハイブリッド過給器と、排ガスの廃熱を利用する蒸気タービンで発電し、運航中に船で使う電力を全て賄う。一般的なディーゼル発電を使わないため燃費が5%改善。風や波、海流などの予測データを基に最適な航路を選ぶ運航探索システムも採用。試験運転では燃費が最大10%改善されたという。船体は、船首の形を垂直にしたり、居住棟を形状を工夫したりして、水や風の抵抗を受けにくいように工夫。船体は水との摩擦が小さい塗料で仕上げた。商船事業本部の山田久行技監は「韓国、中国が持っていない技術がある。細かい技術を詰め込んだ結果、世界で最も燃費がいい船に仕上がった」と話した。JMUは、有明事業所を含むユニバーサル造船とIHIマリンユナイテッドが1月に経営統合してできた会社。省エネ船の需要が高まっており、1〜3月に受注した船の7割がGシリーズなどの省エネ船という。

| 資源・エネルギー::2013.4~2013.10 | 11:06 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.7.1 特色ある技術を持つ会社がその長所を伸ばすには、合併して大きくなればよいというものではない。
  
   LNG埋蔵海域      海洋資源採掘    地球深部探査船「ちきゅう」     

(1)合併すればよいのか?
 私は、「困ったら合併しさえすればよい」というのは、その会社の技術や経営を知らない官僚やメディア記者の発想だと思う。何故なら、それぞれ特色ある長所を持った造船会社であれば、別会社として経営した方が、経営意思決定が早くて正確であり、会社の長所を活かしやすいからである。わかりやすい例を挙げれば、仮に読者が減ったからといって、日経新聞と朝日新聞が合併したとしても、一時的には規模が大きくなるかもしれないが、その後には両経営陣とも経営方針を見失い、それぞれの長所を失って、さらに読者が減るのと同じである。

(2)海洋資源開発やプラントは、非造船事業なのか?
 今後、日本で需要が拡大する海洋資源開発やプラントは、海洋や造船技術の基礎の上に成り立つものであり、陸上でビルを建てるのとはわけが違うため、三井造船がそれに得意だというのは、重要な長所であり、造船事業か否かというジャンル分けはどうでもよい話である。

(3)そもそも合併話は成立するまで極秘の筈である。
 *1には、「川崎重工との合併話を前向きに考えていたのに、相手から断られた上、あの相手と結婚しても幸せになれないと世間に吹聴された」と書かれているが、吹聴しているのはメディアであり、そもそも合併話や買収話は、お互いの長所や財産・収益力を評価しあって成立するまで極秘に進められるのが常識であるため、報道がマッチポンプなのである。また、技術がよければ、その長所を活かして収益体質を改善することができるので、川崎重工業に限らず、どこの会社との提携話でも出てくるだろうし、海洋資源開発やプラントを得意とするのなら、建設会社とジョイントベンチャーを作るという選択肢もあるだろう。

(4)経営については、官僚や記者よりも、経営の専門家の方が詳しい。
 民間企業が、「人員や生産能力の削減は考えていない」というのであれば、それだけの付加価値をつけているということであるから問題ない。ここは、生産性の高低に関係なく国民の税金で養われている公務員とは異なる。また、企業の経営改善は、コスト削減だけではなく、売上を増やすための新たな市場開拓や技術投資もある。マーケティングについては、今から「液化天然ガス運搬船を作る」というのは、三井造船にしては古くてスケールが小さいので、経営陣に技術や市場の先を見通せる人物を配置し、必要な技術を持つ会社との連携を進めつつ、国も動かさなければならない。本来、資源戦略は、国が最初に、(いつまでも外国からの輸入頼みではない)しっかりとした方針を定めなければならないのだが、わが国には、トップランナーを叩き、横並びの既得権益団体を保護して国力の源をそぐ、変な体質があるのだ。

*1:http://www.nikkei.com/markets/kigyo/editors.aspx?g=DGXNMSGD2804L_28062013000000
(日経新聞 2013/7/1) 三井造船が造船会社でなくなる日公開日時
 三井造船が「造船会社」と言えなくなる日が来るかもしれない。川崎重工業との経営統合が白紙撤回されて半月。6月28日に打ち出した新しい中期経営計画は、造船事業にほとんど触れず、海洋資源開発やプラントなど非造船事業の強化策に終始した。「意欲的な目標に比べ具体策に乏しい」との指摘が市場から漏れるなか、三井グループの重工会社は単身で厳しい荒波を乗り越えられるのか。ふと舞い込んだお見合い話。前向きに考えていたのに、突然相手から「なかったことに」と言われたうえに「あの相手と結婚しても幸せになれない」と世間に吹聴された。川重の統合白紙宣告を三井造が「失礼な話」(同社幹部)と受け止めたのもうなずける。では独身で今後どう生きていくのか。改めて考え出した人生プランが、先週末に発表した中期計画だ。今回の計画の対象期間は13年7月から17年3月までの3年9カ月と中途半端。本来は14年4月から始めるはずだったが、今期予想の連結営業利益は140億円と前回の中期計画で立てた目標(250億円)を大きく下回る。「経営課題にスピード感を持って対応しなければいけない今が正念場」(田中孝雄社長)との認識に立ち、9カ月前倒しで始めることにした。
 川重との経営統合破談で改めて認識された造船業界の厳しい環境。韓国や中国の造船会社が増産投資を競った結果、世界全体の供給能力は需要の2倍に上るとされる。三井造の今期はリーマン・ショック後に受注した安い船の建造が増えるため、造船事業の営業損益はゼロに落ち込む。中期計画では造船事業をどう立て直すかが市場の関心事だったが、配布資料には造船について「外部環境・受注環境に応じたスリムな体制へのシフト」との一文があるだけ。「人員や生産能力の削減は考えていない」(田中社長)と具体的なコスト削減策への言及もなかった。燃費性能の高い省エネルギーの液化天然ガス(LNG)運搬船のイメージ図も掲載したが、受注を増やす具体策にも触れなかった。

| 資源・エネルギー::2013.4~2013.10 | 10:10 AM | comments (x) | trackback (x) |
2013.6.14 徹底した電力自由化と迅速な発送電分離が必要
      
            日経新聞より                  東京新聞より

 *1のように、電力の広域融通にメドが立ち、地域独占にくさびが打たれつつあるのは電力自由化への第一歩であり良いことだが、電力業界などの既得権益者がおとなしくしているわけがないため、決して油断はできない。また、この広域運用機関の役員の選任、解任を経産相が認可するのでは、電力の統制経済はなくならない。

 電力供給を経産省による統制経済ではなく、市場経済に任せなければならない理由は、消費者(電力の需要者)が最低の価格で、必要十分な電力を自由に購入できるようにするためである。市場経済だから安定性に欠けるということはなく、統制経済の方が供給に不足が出て価格も高くなるというのは、近代経済学の常識だ。例を挙げれば、*4のように、現在、電気料金の値上げが各地で相次いで農業経営を圧迫しているが、これは、現在の、経産省による電力の統制経済の下で起こっていることなのであり、電力が市場経済に任され、いろいろな会社が自由に発電できていれば、このようなことはなかった筈なのである。この意味で、産業振興すべき経産省は、産業に不可欠な電力価格を高止まりさせてきたことによって、産業振興において大きな過ちを犯してきたことになる。

 なお、地域間の周波数の違いは、この際解消し、すべて直流送電にすれば、太陽光発電、電車、電気自動車、パソコン、電池、LED電球などの使用時に電力変換の無駄が出ず、家電もモーターを直流方式に次第に変えていけば、日本全国、問題なく広域融通が可能となり、変換ロスが減って省エネとなる。直流ではどうしても都合の悪い家電の方に変換装置をつければよいのである。

 今や、*2、*3のように、ドイツ、イギリスでは、合理的な判断をして次のステップに進みつつある。日本が、いつまでも原発に未練を残し、次のステップに進まずにいれば、世界の潮流に遅れて、(いつものように)オンリーワンだった技術が後追い型技術になってしまうのが目に見えている。それによって起こる景気低迷にカンフル剤を打つために、また、ばら撒きをやられたのでは、国民はたまったものではない。

*1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS13035_T10C13A6EE8000/?dg=1
(日経新聞 2013/6/13) 電力の広域融通にメド 電事法改正案が衆院通過 地域独占にくさび
 電力システム改革のための電気事業法改正案が13日、衆院で自民、公明、民主各党などの賛成多数で可決した。2015年に全国で電力需給を調整する広域運用機関を設立するのが柱。参院に送付して今国会で成立する見通しだ。18~20年の完成を見込んで3段階で進める60年ぶり大改革の第一歩にようやくメドをつけたが、完全自由化に向けてなお課題は残る。
 電力システム改革は、地域ごとの大手電力による独占を崩して電気契約の選択肢を増やしたり料金を抑制したりするのが狙い。消費者が全国から自由に電力を買うためには、他地域からの送電体制を整える必要がある。改革の第1弾の柱は、15年に設置する電力の広域運用機関だ。同機関は周波数変換設備など、地域をまたぐ送電インフラの増強を担う。発電所の事故などで、ある地域の電力が不足した場合には全国からの融通を指示する権限も持たせる。平時から各電力会社の発電量を把握して、緊急時のたき増しや需要の抑制を指示する。中立性を保つために新規参入の電力会社も含めて幅広く資本、人材を受け入れる。詳細設計はこれからだが、役員の選任、解任は経産相が認可する方針だ。企業が自家発電を使いやすくする規定も新設する。自家発電した電気を自社の工場に送る場合、大手電力会社が送配電網を貸し出す義務を課して使用料金を規制する。現行制度では送電網の貸し出しは電力会社の判断に委ねられ、企業が電気をたくさん作っても消費できる保証がなかった。
 電気の利用者に対する罰則なしの節電勧告も創設する。いまは違反すると罰金を受けかねない「命令」しかなく、発動しにくい問題があった。法案の付則には3段階で進める改革の道筋を明記した。第2弾は16年の電力小売りの参入自由化で、家庭向けの電力供給の地域独占をなくす。最終段階は18~20年で、電力会社の送配電部門の中立性・独立性を高める発送電分離を実施する。政府は14年と15年の通常国会でそれぞれ第2弾、第3弾の関連法案の提出を目指している。
 電力業界は「資金調達に悪影響を及ぼす」として組織の改編を迫られる発送電分離に強く反対しており、残す2回の法案提出も一筋縄ではいかない。電力システム改革の発端は、東日本大震災後に東京電力が計画停電に踏み切ったことで大手電力に頼らない体制を求める機運が高まったことにある。今後、原子力発電所の再稼働が進み電力供給に余裕が出てくれば改革の機運がしぼみかねないと危惧する声もある。

*2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130523/k10014777331000.html
(NHK 2013年5月23日) 独議長「脱原発で経済成長や雇用創出」
 日本を訪れているドイツの連邦参議院のクレッチュマン議長は、NHKの取材に対し、ドイツが進めている脱原発の取り組みについて、原発の安全対策にかかる費用を節約できるだけでなく、再生可能エネルギーの普及によって経済成長や雇用の創出につながるとして、経済面での正当性を強調しました。日本の国会議員などとの政策協議のため来日している、ドイツの上院にあたる連邦参議院のクレッチュマン議長は、22日夜、都内でNHKのインタビューに応じました。
ドイツは、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、2022年までに国内すべての原発を閉鎖する取り組みを進めていますが、電気料金の値上げにつながっているなどとして、経済面での課題が指摘されています。これについて、クレッチュマン議長は「脱原発政策は、原発の安全対策にかかる費用をゼロにするだけでなく、再生可能エネルギーの普及によって経済成長や雇用の創出にもつながり、経済的にも正しい道だ」と述べ、脱原発政策の正当性を強調しました。
また、クレッチュマン議長は、今回、福島県の佐藤知事とも会談して、福島第一原発の廃炉作業について意見を交わしたことを明らかにしたうえで、「ドイツは、福島での事故の前から2基の原発を廃炉にするなどこの分野で実績を積み重ねてきており、それを生かすべきだ」と述べ、ドイツとして福島第一原発の廃炉作業に協力していきたいという考えを示しました。

*3:*2:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2463474.article.html
(佐賀新聞 2013年5月26日) 再生エネ発電量37%に拡大 / 2030年、英の調査機関試算
 風力や太陽光などの再生可能エネルギーの開発は予想を超えるペースで進んでおり、2030年には、大型水力発電を含めると最大で総発電量の37%を担う可能性があるとの試算を、英国の調査機関「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」(BNEF)が26日までにまとめた。30年まで新たに建設される発電設備の70%前後が再生可能エネルギーとなる見通しで、化石燃料による発電所は25%、原子力は5%程度にとどまるという。BNEFは「化石燃料価格が上昇する一方で、再生可能エネルギーのコストは低下し、エネルギー市場で中心的な役割を果たすだろう」と分析している。

*4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=21022
(日本農業新聞 2013/5/17) 電気代値上げ 農業経営を圧迫 節約は限界 農家悲鳴
 電気料金の値上げが各地で相次ぎ、農業経営を圧迫している。電力会社は、原子力発電所の稼働停止で、火力発電の燃料費がかさんでいることを理由に挙げる。円安などに伴う資材高に加え、電気料金の引き上げで農業のコスト上昇は避けられない見通し。農産物価格への転嫁も難しいのが実情だ。帝国データバンクが16日発表した調査では農林水産業者の8割が業績に「悪影響がある」と答えている。電気料金の値上げは昨年9月の東京電力を皮切りに、5月1日には関西電力と九州電力が踏み切った。東日本大震災から復興途上の東北地方でも東北電力が、需要が増える7月1日からの値上げを政府に申請。北海道、四国電力も同様だ。
●業績に「悪影響」 農林漁業の78%
 帝国データバンクの調査では、電気料金の値上がりで業績に「悪影響がある」と答えたのは農林水産業が78%で、全業種の中で最も高かった。農産物などの価格に値上げ分を「全く転嫁しない」との回答も農林水産業では49%。「値上がりは事業の存続にも影響する」という声も出ている。調査は4月17日から30日まで行い、1万244社(45%)が回答。全業種では60%が業績に「悪影響がある」と答えた。値上げ分を価格に「全く転嫁しない」は46%。「ほぼ全額転嫁する」は2.4%にとどまった。
●[ニュースサイト] 節約は限界 農家悲鳴 価格転嫁の環境整備を
 電気料金の値上げが、重油の高騰などに苦しむ農家の経営に追い打ちをかけている。海外や他産地との競合が強まる中で、値上げ分を農作物の価格に転嫁することが難しいのが実情だ。生産現場からは「節電も限界だ。コスト上昇は避けられない」という切実な声が上がっている。電気料金の値上げに踏み切った電力会社3社の中で、家庭用の上げ幅が平均9.75%と最も大きい関西電力。「なんぎやなぁ」。奈良県平群町で「ブロッサムピンク」など10品種を40アールで栽培し、平群温室バラ組合の組合長を務める谷田昌信さん(46)が嘆く。冷房や除湿など、夏場に向けてヒートポンプの利用が増えるのがバラ栽培。周年でバラを栽培する谷田さんが値上げ前と同量の電気を使い続けるとすれば、5月から1年間の電気料金は約280万円になり、前年より約40万円増える見込みだ。今冬は円安などの影響で重油価格が1リットル80円近くまで上昇。昨年に比べて3割高となり、既に経営を圧迫している。重油高騰を乗り切ろうと、谷田さんは組合の仲間4人と協力して鮮度の良い朝取りのバラを出荷して単価を高める努力をしてきた。だが、「電気代も上がれば経営はもっと苦しくなる。ハウスの増設もしたいが、こんな状況では取り組めない」と肩を落とす。収穫したバラの開花が進まないように予冷する際の電気代も悩みの種だ。組合はコンビニの売り場ほどの広さがある共同の冷蔵室を所有するが、年間でかかる電気代は100万~120万円。今年は2割近く上がる見通しで、組合員の負担が増えるのは確実だ。昨年値上げに踏み切った東京電力の管内では、既に農業現場に影響が出ている。田に水をくみ上げるポンプに使う農事用電力は家庭用より5カ月早く、昨年4月から値上げになった。需要期の夏場は、1時間当たり1キロワット9.36円から12.26円へ上がり、値上げ率は3割と、家庭用(平均8.5%)を大幅に上回った。千葉県野田市で1000ヘクタール余りの耕地をカバーする土地改良区では、2012年度の電気代が前年比で25%上昇し、年間1350万円になった。ポンプの稼働時間を見直し、価格が安い時間帯に使うなどの工夫で5%節電したものの、これ以上の削減は難しいという。県土地改良事業団体連合会は「電気代の負担が重く、今後は農家の賦課金を上げることも考えなくてはいけない」と漏らす。同連では昨年4月、森田健作知事に農事用電力の値上げに関する要望書を提出、農業現場の苦境を訴えた。値上げ“ラッシュ”に産地はどう対応すればいいのか。農林中金総合研究所の渡部喜智理事研究員は、エネルギー利用では「産地の努力で削減できる量に限界がある」と指摘。その上で「生産コストの上昇分を農作物の販売価格に転嫁できる環境づくりが必要。産地は、円安などの環境変化でコストが増えている実態を市場関係者や消費者に訴えていくべきだ」と提言する。政府に対しても「価格転嫁に理解が広がるよう、主導してほしい」と注文を付ける。

| 資源・エネルギー::2013.4~2013.10 | 07:54 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.6.13 過去のエネルギーである原発を、世界で止めるのが日本の使命である。
  
東京新聞2013.1.24    海洋汚染       朝日新聞2013.3.10

 私も、*4のように、原発は、1)潜在的な危険性が高く 2)放射性廃棄物の最終処理の道筋が確立しておらず 3)仮に確立できたとしても十万年以上の長い管理が必要とされる高コストのエネルギーであり 4)原発の負債を負うのは現在世代の人間にとどまらず将来世代の人間もである という理由で、速やかに脱原発すべきだと考える。

 そのため、*3のように、菅元首相が、2013年6月4日、最悪の場合は、東京都を含め5000万人が避難しなければならない事態となり、日本が国としての機能を長期間失う可能性すらあったと、米環境保護団体主催のパネル討論会で指摘したのは、遅すぎたくらいだと思っている。

 そのような事態を、大メディアで報道されずとも、東北・関東在住の国民は察していた。それだからこそ、*2のように、経済成長の大義名分の下でも、原発の利用に59%の人が反対しているのである。これを無視して、原発再稼働、原発輸出を進めるのは、あまりにも鈍感と言わざるを得ない。一旦、理解した時には、開発途上国の国民でも、原発の輸出を進めた日本に対し、感謝するどころか恨みを持つだろうから、相手国のためを思いやり、わが国との関係を親密にする見識の高い判断にはならないだろう。

 そのような中、*1は、全く妥当であり、福島第1原発には、1本で約300キロの核燃料が、1~3号機の原子炉に1496本、1~4号機の使用済み核燃料プールに3106本もあったのである。これだけでも、如何にわが国の原子力関係者がリスクに無頓着だったかがわかるが、その上、事故の後始末の方法すら準備されていなかったのであるから、これで、安心、安全な原発などできるわけがなく、一刻も早く、*4の脱原発基本法案を成立させて原発から撤退するのが、わが国の使命であると考える。

*1:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-207887-storytopic-11.html
(琉球新報社説 2013年6月12日) 後退する脱原発 「福島の教訓」が泣く 
 原子力発電から脱却する電力政策が後退し、大きくきしんでいる。そんな中、東京電力福島第1原発の廃炉に向けた改定工程表が公表された。東日本大震災による未曾有の事故で、原子炉に残された溶けた核燃料を取り出す開始時期を、従来計画の2021年末から最大で1年半前倒ししている。だが、廃炉完了の予定時期は「30~40年後」とした計画に変更はない。1、2号機では最速で2020年度前半に核燃料取り出しを始めるとしているが、3号機を含めて溶融燃料が原子炉格納容器周辺のどこにあり、どんな状態にあるのかさえ確定していない。その上、燃料を取り出すクレーンなどの機材の開発が大前提となるが、そのめども立っていない。そのような段階で、打ち出された工程表の実現可能性は未知数だ。各号機の現状を踏まえて作業日程を提示したというが、楽観的にすぎないか。
 未曾有の事故に見舞われた福島第1原発には、1本で約300キロに及ぶ核燃料が、おびただしい量残されている。1~3号機の原子炉に計1496本、1~4号機の使用済み核燃料プールに計3106本もある。原子炉内の燃料は固まりとなっている可能性が高い。原子炉内にとどまる約450トンの放射性物質の巨大な塊を削り取り、回収する作業には、遠隔で操作する高度な機材とその技術が必要となる。絵に描いた餅になりかねないのに、7月の参院選に向けて、安倍政権が原発事故の収束に向けた前進を印象付けようとする思惑はないだろうか。疑念が浮かぶ。
 安倍晋三首相は来日したフランスのオランド大統領と会談し、新興国への原発輸出の推進や、事実上の破綻状態にある核燃料サイクル政策での連携を盛り込んだ共同声明を出した。その直前の5月末には、インドのシン首相と、原発輸出を可能にする原子力協定の早期妥結で合意している。福島の原発事故の収束は見えず、除染や被災者の帰還時期も定まらないにもかかわらず、首相は国民の約7割が支持する脱原発に背を向け、原発温存政策に血まなこになっている。それは、拙速な廃炉工程表の前倒しと地続きだ。民意がないがしろにされ、唯一の被爆国として非核を誓ったはずの平和国家の名が泣いている。

*2:http://digital.asahi.com/articles/TKY201306090137.html
(朝日新聞 2013年06月10日) 経済成長に原発利用、「反対」59% 朝日新聞世論調査 
 朝日新聞社が8~9日に実施した全国定例世論調査(電話)によると、日本経済の成長のためだとして原発を積極的に利用する安倍政権の方針について、反対が59%に上り、賛成27%を大きく上回った。
●質問と回答(6月8、9日実施)
 停止している原発の運転再開の賛否も聞くと、やはり反対は58%で、賛成28%と大きく差がついた。安倍首相は5日、成長戦略の第3弾を発表。この中に「原子力発電の活用」や「安全と認められた原発の再稼働」を盛り込んだが、原発に対する有権者の抵抗感はなお根強いようだ。
また、「安倍首相の経済政策で、日本経済が成長することを期待できると思うか」と尋ねると、「期待できる」51%が「期待できない」33%を上回った。ただ、「安倍首相の経済政策が賃金や雇用が増えることに結びつくと思うか」と聞くと、「結びつく」が36%にとどまり、「そうは思わない」が45%。「安倍政権になってから景気が回復したという実感があるか」という質問では、「ない」78%が「ある」18%を大きく引き離した。安倍内閣の支持率は59%で、前回の5月定例調査の65%からやや下がった。不支持率は20%(前回18%)だった。
 いま投票するとしたらとして聞いた参院比例区投票先は、自民45%、民主7%、みんなの党6%、日本維新の会5%、公明5%、共産4%など。今夏の参院選で、「参議院全体で自民党と公明党の議席が過半数を占めた方がよいと思うか」と尋ねると、「占めた方がよい」51%、「占めない方がよい」34%。一方で、「自民党に対抗できるような大きな政党があった方がよいと思うか」と聞くと、「あった方がよい」が71%に上り、「そうは思わない」は21%にとどまった。
   ◇
〈調査方法〉 8、9の両日、コンピューターで無作為に作成した番号に調査員が電話をかける「朝日RDD」方式で、全国の有権者を対象に調査した(福島県の一部を除く)。世帯用と判明した番号は3444件、有効回答は1781人。回答率は52%。

*3:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2476012.article.html
(佐賀新聞 2013年6月5日) 菅元首相、米で脱原発を訴え / 「人類は核と共存できず」
 脱原発を掲げる米環境保護団体が4日、西部サンディエゴで開催したパネル討論会に、東京電力福島第1原発事故が発生した当時に首相だった菅直人氏が参加、「人類は核エネルギーと共存できないと考えるに至った」と述べ、世界が脱原発に向けてかじを切るべきだと訴えた。菅元首相の秘書によると、菅氏が海外で原発に反対するイベントに参加するのは2011年の首相退任後初めて。菅氏は事故の直後に、最悪の場合として東京都を含めて5000万人が避難しなければならない事態も想定したと指摘。「日本が国としての機能を長期間失う可能性すらあった」と振り返った。

*4:http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g18001039.htm
第一八〇回  衆第三九号  脱原発基本法案
 東日本大震災における原子力発電所の事故から学び取るべきものは何か。世界で唯一の原子爆弾の被爆国でありながら、虚構の安全神話の下で推進してきた我が国の電力政策の見直しが、その重要な課題であることは論をまたない。原子力発電は、潜在的な危険性の高さにおいても、放射性廃棄物の処理においても、信頼性及び安全性が確保されたエネルギーではない。一旦事故が起これば幾多の人々が故郷を追われ、働く場を失い、家族を引き裂かれるのみならず、周辺地域や国民経済に与える甚大な被害や人々の不安と恐怖を考えれば、むしろエネルギーとして、極めて脆(ぜい)弱なものであった。原子力発電所において重大な事故が発生した場合に被害を受けるのは、原子力発電の利益を享受している現在の世代の人間にとどまらない。将来の世代の人間も、その事故に起因する数々の危険にさらされる。また、事故が発生しなくても、いまだに放射性廃棄物の最終処理の道筋が確立しておらず、仮に確立できたとしても、十万年以上の長い管理が必要とされる。原子力発電所の事故がもたらす重大な影響を知った我々は、今こそ「脱原発」の意思決定をする責務がある。
 一方、今後の我が国は、低炭素社会を目指すとともに経済の活力を維持することが不可欠である。省エネルギーを一層推進すること、再生可能エネルギー電気を普及させること、発電方式等を高効率化すること、エネルギーの地産地消を促進すること等と併せ、原発立地地域の経済雇用対策も重要である。このような状況に鑑み、原子力発電を利用しなくなることに伴う各般の課題への適確な対応を図りつつ、原子力発電を利用せずに電気を安定的に供給する体制を早期に確立することは緊要な課題である。ここに、我々は、国家として「脱原発」を明確にし、その確実な実現を図るため、この法律を制定する。

以下は、「続き▽」をクリック

続き▽
| 資源・エネルギー::2013.4~2013.10 | 03:28 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.6.3 自民党の資源・エネルギー政策における「成長戦略に原発の活用」は、クリーンな再生可能エネルギーの開発と矛盾しているということ
     
       地熱発電          ハウスの太陽光発電         洋上風力発電
 私は、衆議院議員時代(2005~2009年)、原子力発電に関して容認の立場をとっていた。その理由は、現在と同様、①二酸化炭素を出さず ②安価で経済性があり ③安定した ④安全で ⑤クリーンなエネルギーであり ⑥他では代替できない と、強く説明されていたからである。しかしながら、このうちの④⑤については、当時から私は賛成しておらず、①②③⑥の長所と原発立地地域である地元への交付金のために容認していたものである。しかし、私は、その間、太陽光発電、地熱発電、天然ガスの採掘など、国産自然エネルギーの開発を進めながら我慢していたというのが正しい。一方、自民党や政府内では、経済産業省系の族議員を中心として、原発推進派が多かった。

 しかし、福島第一原発事故により、②③④⑤⑥の原発の長所と言われたものは、嘘であることが明らかになった。一方で、自然エネルギーの開発と利用技術は進みつつある。それが、地熱発電、太陽光発電、風力発電、蓄電池、スマートシティー、建物の自家発電化・省エネ化、次世代自動車(電気自動車・燃料電池自動車)の普及、水素燃料の供給場所整備、メタンハイドレートの採掘 などである。

 原発をなくすために、自然エネルギーの技術開発やメタンハイドレートの採掘を進めているのだから、自民党が「成長戦略」の中に、これらと並べて「原子力発電の活用」を入れるのは自己矛盾である。どうしても原子力発電所を動かしたいのだとすれば、後は、核燃料から核兵器への転用しか目的は残っておらず、これを許すかどうかは、何の議論もなく、なし崩し的に決めるべきことではない。

 もう一つ、「原発を動かさなければ、電力料金が高くなる」という脅しがある。しかし、そのために、「発送電分離」「電力への他産業からの参入の自由化」「電力会社の全国区化」などの電力システム改革の断行を行おうとしているのだから、これに反対しながら、「電力料金が高くなる」と連発する人や組織は、自己矛盾を含みながら既得権にしがみついているとしか言いようがない。

  
     電気自動車(ベンツ)         水素燃料電池車(三菱)         電気軽トラック

*1:http://digital.asahi.com/articles/TKY201305300592.html
(朝日新聞 2013.5.31)成長戦略に「原発の活用」 政権素案、再稼働の推進明記 
 安倍政権が6月にまとめる成長戦略の素案に「原発の活用」を盛り込み、原発再稼働に向けて「政府一丸となって最大限取り組む」と約束することがわかった。東京電力福島第一原発事故を受けて脱原発を求める声は根強いが、安倍政権の経済政策「アベノミクス」で目指す経済成長には原発が欠かせないという姿勢を鮮明にする。素案は、成長戦略をまとめる産業競争力会議で5日に示され、12日までに正式に決めたうえで、14日にも政府方針として閣議決定する。成長戦略に「原発の活用」が入れば、中長期にわたって原発に頼る経済・社会を続けることになる。
 朝日新聞は「成長戦略(素案)」を入手した。エネルギー政策では、成長を担う企業が活動しやすくするため、原発事故後の電力不足を解消したり、火力発電につかう燃料費がかさんで値上がりする電気料金を抑えたりする必要があると指摘している。そのために必要な政策として「電力システム改革の断行」「高効率の火力発電の導入」などとともに「原子力発電の活用」を盛り込んだ。具体的には、原子力規制委員会が安全と判断した原発は「判断を尊重し、再稼働を進める」としたうえで、地元の理解や協力を得るために「政府一丸となって取り組む」と明記し、原発再稼働を積極的に進める方針を打ち出す。安倍晋三首相は、民主党政権が打ち出した「2030年代に原発ゼロを目指す」という方針を「ゼロベースで見直す」と表明している。ただ、原発への依存は「できる限り低減させる」として、10年以内に中長期的なエネルギー政策をまとめることにしていた。しかし、電力業界や産業界から原発再稼働を求める声が強まったのを受け、原発の活用に前のめりになった。5月には早期の再稼働を求める自民党の議員連盟ができ、「電力の安定供給は成長戦略に欠かせない」などの声が上がった。首相も15日の参院予算委員会で「(再稼働を)できるだけ早く実現していきたい」と表明している。産業競争力会議でも産業界などから「原発を早く再稼働し、国策として一定比率を持つべきだ」(民間議員の榊原定征・東レ会長)との意見が相次いだ。竹中平蔵・慶応大教授ら一部議員から慎重論も出たが、政権は成長戦略に原発活用を組み込むことを選んだ。素案ではほかに、環太平洋経済連携協定(TPP)などの経済連携の推進やインフラ輸出の推進、農地の集約などによる農業の競争力強化なども盛り込んだ。
     ◇
■原発事故後のエネルギー政策の変化
【2011年】
 3月 東日本大震災・東京電力福島第一原発事故
【2012年】
 5月 国内の全原発が停止
 7月 関西電力大飯原発3、4号機が再稼働
     東京電力が実質国有化
 8月 政府の討論型世論調査で「2030年に原発ゼロ」支持が半数近くを占め、最多に
 9月 野田政権が「30年代に原発ゼロを目指す」とする革新的エネルギー・環境戦略をまとめる
 11月 自民党が選挙公約に「原発再稼働は原子力規制委員会の安全審査を前提に
     3年以内に判断」と明記
 12月 総選挙で自民党が大勝し、安倍政権発足
【2013年】
 1月 安倍首相が「『30年代に原発ゼロ』方針をゼロベースで見直す」と表明
 5月 安倍首相が原発再稼働について「できるだけ早く実現していきたい」と答弁
     ◇
■安倍政権の「成長戦略」素案に盛り込まれたエネルギー政策
【企業が稼ぎやすい立地の環境づくり】
 ・電力システム改革の断行
 ・原子力発電の活用
  「原子力規制委員会により安全と認められた場合には、その判断を尊重し原子
   力発電の再稼働を進める。その際、立地自治体等関係者の理解と協力を得る
   ため、政府一丸となって最大限取り組む」
 ・高効率火力発電の導入
 ・液化天然ガス(LNG)の調達コストの引き下げ
【クリーンで経済的なエネルギー需給】
 ・火力発電所の環境影響評価(アセスメント)期間の短縮
 ・浮体式洋上風力発電の推進
 ・海底資源「メタンハイドレート」の商業化
 ・蓄電池の技術開発と国際標準化
 ・街全体で電気を効率的に使う「スマートコミュニティー」の拡大
 ・新築建造物の省エネ基準の義務化
 ・次世代自動車の普及と研究開発の支援
 ・燃料電池自動車の導入に備え、水素供給の場所の整備

| 資源・エネルギー::2013.4~2013.10 | 07:45 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.4.29 科学オンチばかりでは、こういう馬鹿なことをするという事例
      
    水素燃料電池車      エネファーム            屋根用太陽光発電
 「原発がほとんど稼働していないため、政府は2020年の温暖化ガス排出量を1990年比で25%削減する目標の撤回を、5月に国連に通知する方針を固めた」という*1の記事内容は、原発もしくは化石燃料を燃やして発電することしか考えられない人の言うことで、私は驚いた。さらに驚いたことは、そこには、CO2による地球温暖化よりも、原発事故による大規模な放射性物質の放出の方が環境によいという判断があったことだ。この記事は、「だから、原発が必要だ」という、前からある言い訳のようでもある。

 自動車を電気自動車や水素の燃料電池車にすれば、CO2は全く排出されず、地熱発電や汐潮発電を使えば、その水素もCO2排出なしで作ることができる。また、住宅に太陽光発電をつけ、水素による発電装置も併設しておけば、家庭もCO2を排出しないだけでなく、電力供給源となり、わが国のエネルギー自給率が上がる上、国民が支払うエネルギー代金は下がり、災害時の危機管理にもよい。つまり、エネルギーを得る仕組みを変える覚悟があれば、2020年の温暖化ガス排出量を1990年比で25%~30%削減する目標を達成した上、2030年には50~80%削減することさえ可能なのである。そして、これにより、意味のある雇用も生まれる。要は、やる気があるかないかの問題であり、私が首相だったら、世界にそう宣言してばく進するところだ。

 従って、*2の「『3本の矢』の最後の1つである成長戦略」には、エネルギーに関する上記目標も掲げ、そのためのあらゆる努力をすべきだ。そうすることによって初めて、わが国の技術が外国より先んじて開発されたことの成果を得ることができる。わが国の技術が最初に開発されたものでも、わが国が、その成果を得ることができないのは、科学オンチの利害関係者ばかりで政策を決め、外国で実現されたのを見てあわてて追随するという行動パターンをとってきたからである。

*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130425&ng=DGKDASFS2403G_U3A420C1MM8000 (日経新聞 2013.4.25)
温暖化ガス「25%削減」撤回通知へ 政府、10月めど新目標
 政府は2020年の温暖化ガス排出量を1990年比で25%削減する目標の撤回を、5月に国連に通知する方針を固めた。原発がほとんど稼働していない現状を踏まえて10月をめどに達成可能な新たな目標を定め、11月にポーランドで開く第19回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP19)で表明する。温暖化対策に積極的な姿勢を示しながら、エネルギーの安定供給を図る。 25%の削減目標は09年9月に民主党の鳩山由紀夫首相(当時)が国連気候変動首脳会合(気候変動サミット)で表明した国際公約。10年1月に気候変動枠組み条約事務局に提出した。政府は5月をメドに同事務局に削減目標を「COP19までに見直し、新たな目標を提出する」という文書を出し、正式に撤回を通知する。同時に「削減目標を見直している間もこれまでと同等以上の地球温暖化対策を進める」方針も伝える。新しい削減目標では(1)13~20年の原発の稼働状況の見通し(2)20年以降の目標――なども検討対象だ。中央環境審議会(環境相の諮問機関)の地球環境部会で8月にも温暖化ガス排出量の試算を提示。10月中に地球温暖化対策推進本部(本部長・安倍晋三首相)で原案を了承し、意見公募を経て11月に閣議決定する。

*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130428&ng=DGKDASFS2701X_X20C13A4PE8000 (日経新聞 2013.4.28)
成長戦略、集約に課題 会議乱立で議論拡散も  6月決定へ具体策づくり急ぐ
 政府は大型連休明けから、経済政策の「3本の矢」の最後の1つである成長戦略の取りまとめを本格的に始める。安倍晋三首相は夏の参院選を意識し、女性の活用や農業活性化策などを掲げる構えで、6月中旬に閣議決定する段取りを描く。ただ首相官邸には各分野の対策を検討する会議が乱立し、議論は拡散気味。首相がどう手綱を引くかが成果を左右する。「民間議員の提言を受けた成長戦略の具体策を出してほしい」。古谷一之官房副長官補は26日午後、内閣府の5階に経済産業省や厚生労働省などの幹部を集め、具体策づくりを急ぐよう求めた。
◆「連休返上しかない」
 成長戦略は大胆な金融緩和、積極的な財政出動に続く柱。産業競争力会議は23日で主な論点の議論が一巡し、次回から取りまとめに入る。古谷氏の指示は菅義偉官房長官らの意向を受けたとみられる。別の閣僚も関係省庁に「今までの焼き直しのようなものを出しても国民は満足しない」と迫った。経済官庁幹部は「連休返上で働くしかない」と話す。成長戦略への評価は、参院選の行方も左右しかねないだけに、首相自身も国民の関心を引きつけるのに躍起だ。19日には記者会見で、成長分野と位置付ける医療や女性に関する政策を自ら説明。5月中旬にも首相が会見を開いて新たな分野の目玉策を打ち出す。日銀の黒田東彦総裁が予想を超える大胆な金融緩和で市場を驚かせたように、成長戦略でも世論の関心を呼ぶ施策を並べたい思惑が透ける。とはいえ政治家の掛け声とは裏腹に、政府内には「小出しにしていれば6月に新しいタマを出すのは難しい」(経済産業省幹部)との声が出ている。
◆方向性の違い表面化
 それぞれの会議の方向性の違いも表面化している。産業競争力会議では竹中平蔵慶大教授ら民間議員が提言した東京・大阪・愛知の三大都市圏を中心に規制緩和や税制優遇に取り組む「国家戦略特区」を推進する方針を打ち出した。一方、経済財政諮問会議の民間議員は都道府県ごとの「47特区」の検討を提言した。18日の諮問会議では、ベンチャーキャピタル会社を経営する原丈人氏の提案を受け、企業が成長の恩恵を広く社会に還元する「日本型資本主義」を議論する専門調査会の設置を決定。規制改革の推進などを主張する竹中氏らと意見を異にする。意見集約は難航しそうだ。甘利明経済財政・再生相は成長戦略の調整にあたる事務局長代理に経済産業省の局長を招き、事務局をテコ入れした。「みんなが納得できる戦略は無理」(内閣官房幹部)との見方が強い中、経済成長につなげる戦略を打ち出せるのか。首相の指導力が問われそうだ。

| 資源・エネルギー::2013.4~2013.10 | 12:02 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.4.2 原発を再稼働するための屁理屈をやめ、消費者が喜んで使える電力を供給すべきだ。
 
            過去100日間の震央分布                東日本のγ線空間線量率
                                        (ブルーは平常値で茶色は高い場所)
 この頃、*1、*2のように、原発維持や再稼働のための動きが激しいが、「原発は、安全で、コストが安く、クリーンだ」などとする屁理屈は、いい加減にやめるべきだ。国民は、それほど馬鹿ではない。

 なお、*3のように、電力会社から送配電部門を切り離す「発送電分離」を2018~2020年をめどに実施することを柱とした電力制度改革方針が閣議決定されたのは、よいニュースだった。

*1:http://www.shinmai.co.jp/news/20130330/KT130329ETI090002000.php
(信濃毎日新聞 2013年3月30日) エネ基本計画 福島を出発点に据えよ
 経産省の総合資源エネルギー調査会が、新たなエネルギー基本計画の策定に向けて議論を再開した。有識者による総合部会がその場である。安倍政権の意向を受け、原発維持を盛り込んだ新計画を年内にまとめる可能性が高い。論点が安定供給やコスト低減など経済性に傾き過ぎている。暮らしの安全、持続可能性、将来世代への責任、市民参加や地域分散などの観点がないがしろではないか。論議はあくまで福島の原発事故を出発点にすべきだ。計画は中長期的な指針で3年ごとに見直す。現行は2010年6月の策定。CO2排出削減を理由に原発推進を明記した。
 原発事故を受け、民主党政権が調査会の基本問題委員会で議論を進めた。だが、脱原発派と維持派の対立から意見が集約できないまま政権交代した。総合部会は基本問題委員会の委員のうち、脱原発派の多くが排除された。再稼働を目指す安倍政権の意向をくんだとみられる。
今月中旬の第1回会合で、部会長の三村明夫・新日鉄住金相談役が安定供給とコスト低減を強調。経産省が示した主な論点には、原発再稼働を見据え、使用済み核燃料を再処理する核燃料サイクル政策の在り方まで掲げた。化石燃料の輸入増と貿易収支の赤字を理由に、安易に原発依存に回帰すれば、エネルギー政策を過去に後戻りさせるだけだ。地域分散の再生可能エネルギー普及や省エネに欠かせない発送電分離は自民党総務会で了承されたものの、反対論は根強く、後退する恐れは消えていない。
 総合部会では、「3・11を踏まえリアルでポジティブな原発のたたみ方を考えるべきだ」「将来世代への責任を果たすのが課題」といった意見も出た。意見聴取会や討論型世論調査など市民参加のプロセスがエネルギー政策に初めて取り入れられた。民主党政権が掲げた「2030年代の原発ゼロ」目標は、曲がりなりにも民意の反映である。脱原発を打ち出し、具体的な道筋を示す。それが民意を受けた基本計画の進むべき道だろう。2022年末までの原発全廃を決断したドイツは、メルケル首相の諮問を受けた倫理委員会が脱原発を打ち出した。委員は哲学者、宗教家、社会学者ら広範な分野の知識人だ。原発は文明、社会の在り方や倫理にかかわる。その認識は福島を経験した日本こそ肝に銘じなければいけない。

*2:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-204660-storytopic-11.html
(琉球新報社説 2013年4月1日) 東電最終報告 再稼働の免罪符にするな
 東京電力は、福島第1原発事故について「天災と片付けてはならず、防ぐべき事故を防げなかった」と総括し、経営陣の意識改革などの対策を盛り込んだ原子力部門改革の最終報告書をまとめた。自戒や反省の文言こそ並ぶが、東電が経営再建の柱と位置付ける柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働を強く意識していることは疑いようがない。東電の広瀬直己社長は「過信やおごりを一掃し、安全の取り組みを根底から見直す」と強調したが、企業体質の変革につながるかは不透明と指摘せざるを得ない。報告書は原発事故について「炉心溶融し、広域に大量の放射性物質を放出させる深刻な事故を引き起こしたことを反省する」と、過酷事故の引き金となった全電源喪失を招いた責任を認めた。原発の再稼働差し止めを求める住民訴訟などで、東電は「想定外の津波が原因」と主張していただけに、従来よりは、踏み込んで自らの責任に言及したとは言える。
 しかし、事故原因については津波が来る前に地震により配管が破損した疑いも消えておらず、今回の報告をもって一件落着とはいくまい。低姿勢で殊勝な態度に見えるからと言って、閉鎖的で官僚的と指摘された企業体質が改善されたと見るのは早計だろう。実際、事故から2年が経過した3月18日に第1原発で発生した停電は、公表が3時間遅れ、全面復旧までに2日を要した。公表遅れは、原子炉への注水に異常がなく水温が制限値に達するまでに時間的余裕があったためとされる。報告書は、この点についても「立地地域の心情への感度が著しく鈍く考え方や判断の尺度が社会とずれていた」としたが、これは2年前の過酷事故を招いたおごり、過信と同根ではないか。これでは原発事故から何も学んでいないと批判されても言い訳できまい。経営再建に向け東電改革は不可欠だが、最終報告書が、原発再稼働に向けた免罪符にはならないと認識すべきだ。東電の企業体質が変わったと、社会に認められたいのならば、被害者と真摯(しんし)に向き合い、賠償や除染、廃炉など事故収束に向け、今まで以上に誠実に取り組む必要がある。それこそ旧態依然の「電力ムラ」「原子力ムラ」と決別する覚悟が求められる。巨大な事故リスクを伴う原発事業からの撤退も選択肢から排除すべきではない。

*3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2013040202000239.html
(東京新聞 2013年4月2日) 「発送電分離」18~20年に 閣議決定
 政府は二日、電力会社から送配電部門を切り離す「発送電分離」を二〇一八~二〇年をめどに実施することを柱とした電力制度改革方針を閣議決定した。電力システムの改革に必要な電気事業法を今年から三年連続で改正して段階的に進める。まず、今国会の法改正に各地域の電力会社の垣根を越えて電力を融通する「広域系統運用機関」を一五年に設立することを盛り込む。続く一四年の改正では現在は大手電力会社が地域独占している家庭向けの電力販売を一六年から自由化し、新規参入を認める。さらに改革の仕上げとなる一五年の改正では発送電分離の実施と料金規制完全撤廃を打ち出す。販売の自由化は、各電力会社が独自に料金やサービスを決め、消費者は購入先の電力会社を選べるようになることを目指す。茂木敏充経済産業相は二日の記者会見で「消費者にとって多様な料金メニューの選択肢の幅が増え、最終的に支払う料金の低下にもつながる」と述べた。
 ただ、競争を進めるには、誰もが公平に送電網を使える発送電分離が不可欠だが、既得権を失う電力会社や、その支援を受ける一部の自民党議員は慎重姿勢を崩さない。政府が党に提示した「一五年の国会に提出する」とした改革案も、一部議員の反発で「提出を目指す」と努力目標に後退させられている。改革の本丸である発送電分離に向けた改正法案提出は二年後になるため、その間に「骨抜き」が進む恐れもある。
<電力システム改革>
 電力市場の新規参入を促し、価格やサービスの競争で消費者の利益を拡大しようとする改革。企業向けに限定されている電力小売りの自由化の範囲を家庭向けに拡大する全面自由化と、大手電力の発電部門と送配電部門を別会社にする発送電分離が2本柱となる。いずれも欧米に先行事例があるが、安定供給ができなくなったり、自由化で料金が上がったりする恐れもあるなどの慎重論もあり、実現していなかった。

| 資源・エネルギー::2013.4~2013.10 | 06:08 PM | comments (x) | trackback (x) |

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