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2023.2.2~ 2023年度予算審議のうち少子化対策について
・・工事中ですが・・

 「少子化が問題なのだから、少子化を止めるために何でもいいから対応すべきだ」という主張は、乱暴な「産めよ増やせよ論」であり、時代に逆行しているため、私は同調しない。

 しかし、「子を育てられないから、産めない」という状況は、日本国憲法第13条「すべて国民は個人として尊重される。生命・自由・幸福追求に対する国民の権利は、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政上で、最大の尊重を必要とする」や第25条「①すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する ②国は、すべての生活部面について、社会福祉・社会保障・公衆衛生の向上や増進に努めなければならない」を満たさず、先進国とはとても言えないため、改善すべきだ。

 そして、改善するためには、必要以上の少子化になっている本当の理由を突き止め、ピンポイントでそれを改善しなければならないのは当然のことである。

(1)少子化について

  
               いずれも内閣府HPより
(図の説明:左図は結婚数の推移で、団塊世代が結婚適齢期になった時に最高で、現在は最低である。中央は、出生数の推移で、団塊世代の出生時に最高となり、団塊世代の出産適齢期に次の山があって、その後は漸減している。合計特殊出生率は、2005年の1.26を最低として、現在は1.45である。これらの結果、右図のように、人口は2010年の1億2,806万人を最高に、2065年に8,808万人まで緩やかなカーブで減少するが、これは①太平洋戦争後の異常な状態が自然に修正される過程である ②8,000万人台の人口は1945~50年頃と同じで適正人口であろう ③従って寿命の延びに伴って生産年齢人口の定義を75歳以上に延長すればよい 状態である)

  
               いずれも内閣府HPより
(図の説明:左図のように、出生率が低いのは東京はじめ関東の都市部、大阪・京都・奈良など近畿の都市部と北海道・東北で、都市部については、人口密度が高くて居住面積が狭く、保育所等も足りない、ゆとりのない場所である。北海道・東北で出生率が低いのは、差別を嫌って若い女性が都市部に転出するからではないか?また、中央の図のように、女性の出産年齢が次第に上がっているが、これは高等教育や仕事におけるキャリア形成の時期と重なるため、仕方のないことで後戻りはできない。しかし、右図のように、所得が低い層の割合が増えて結婚・出産の障害になっているのは、バラマキよりも根本的解決が必要である)

1)少子化の状況
 内閣府の少子化をめぐる現状分析は、*1-1のように、①我が国の年間の出生数は第1次ベビーブーム期には約270万人、第2次ベビーブーム期には約210万人だったが、1975年に200万人を下回り、2022年は第1次ベビーブーム期の約28.6%にあたる77万3千人で、②合計特殊出生率は、第1次ベビーブーム期には4.3を超えていたが、1950年以降は急激に低下し、1975年に2.0を下回ってからは2005年の1.26まで下がり続け、一時回復して2015年は1.45になったが、2022年は1.27になるそうだ。

 このうち①については、太平洋戦争後、兵隊に行っていた男性が戻ってきて結婚・出産ラッシュが起こり、約270万人/年も生まれる第1次ベビーブームが起こった。②の合計特殊出生率4.3超というのは、戦前の発想で子ども数を決めていたからである。

 そして、医学の進歩や衛生状態の改善による乳児死亡率低下で、このままでは人口が増えすぎると考えた日本政府は、子2人を標準とする家族計画を奨励し、1975年に出生数が200万人を下回って合計特殊出生率も2.0以下になったのである。

 しかし、教育改革で女性にも平等な教育機会が与えられ、女性が働いてキャリアを積むことも可能になったにもかかわらず、日本政府は戦前と同じ発想で家事・育児・介護などを家庭責任として女性に押し付け、保育所や介護制度等の整備を怠ってきたため、自由を獲得した女性が結婚や出産の回避に動いたり、日本人男性以外を配偶者に選んで海外に生活基盤を築いたりした。

2)合計特殊出生率の趨勢
 そのような理由から、2015年の合計特殊出生率は1.45となり、比較的女性の教育レベルが高く、女性の仕事も多い東京都(1.24)で合計特殊出生率が最も低く、そうでない地域で高くなっている。また、都道府県別・年齢別出生率で下位の東京都は15~34歳の出生率が全国より低く、35~49歳で高くなっているが、これは高等教育を受け収入の多い働き甲斐のある仕事についた女性が多いからだと言えるだろう。

 ただし、東京都などの都市部は、*1-5のように、人口が集中しすぎた結果、住宅価格は高く、家族一人当たりの居住面積は狭く、郊外に住宅を取得したため通勤時間が長くなったりして、子育てできないその他の事情も増えた。 

3)晩婚化、晩産化
 女性の年齢別出生率は、1975年は25歳がピークで、1990年は28歳がピークで、2005年は30歳がピークとピークの年齢が高くなってきており、20歳代の出生率低下が少子化の一因と考えられるそうだ。

 しかし、このために20歳代の出生率をあげるのは不可能だ。何故なら、職場で安定した立場を確立してから結婚・出産しようと思えば、高等教育終了後の一定期間後にしか結婚・出産はできず、そのため平均初婚年齢は上がり、出生時の母親の平均年齢も上がり、30~40歳代の年齢別出生率がわずかに上昇して、完結出生児数が2人前後になっているのだからである。

4)未婚化
 50歳時の未婚割合は、1970(昭和45)年は男性1.7・女性3.3%だったのに対し、2015年には男性23.4%・女性14.1%となり、この流れが変わらなければ50歳時の未婚割合上昇は続くそうで、これは私の体感と一致している。

 そして、「いずれ結婚するつもり」と考える未婚者(18~34歳)の割合は男性85.7%・女性89.3%と男女とも高く、それでも独身でいる理由は、男女とも①適当な相手にめぐりあわない ②異性とうまくつきあえない ③自由さや気楽さを失いたくない が多く、男性は④まだ必要性を感じない ⑤結婚資金が足りない も多くなっているのだそうだ。

 しかし、いずれ結婚するつもりだが独身でいる理由が、①②というのは、男女別学の学校から男女の割合が著しく異なる職場に就職したためではないかと私には思われ、私自身は男性の方が多い男女共学校から男性の多い職場に就職したため、そのような経験は全くない。従って、何らかの形で異性の多い場所に身を置くのが解決策だと考える。

 なお、現在は独身や単身でも暮らしやすくなっているため、④は理解できる。また、それなら③の自由さや気楽さを失ってまで結婚するメリットを感じないという人もいるだろう。ただ、⑤の結婚資金が足りないというのは、下の5)のとおり、所得が低ければ有配偶率も低くなるため、解決しなければならない問題である。

5)所得と有配偶率
 2012(平成24)年の所得分布を1997(平成9)年と比べると、20代は250万円未満の雇用者割合が増加し、30代は400万円未満の雇用者の割合が増加して、若い世代の所得分布が低所得層にシフトしており、その理由は非正規雇用の割合が全年齢より高いからだそうだ。

 そして、男性の就労形態別の有配偶率は、正規雇用は25~29歳31.7%、30~34歳57.8%であるのに対し、非正規雇用は25~29歳13.0%、30~34歳23.3%と正規雇用の1/2以下、パート・アルバイトは25~29歳7.4%、30~34歳13.6%と正規雇用の1/4以下であり、就労形態の違いによって有配偶率が大きく異なり、男性の年収別有配偶率はどの年齢層でも年収が高い人ほど高いとのことである。

 しかし、これは当たり前のことで、仕事と収入が安定していなければ自分の生活だけで精一杯であり、結婚して子どもを育てようなどというステップには進めない。そのため、望まぬ非正規雇用が発生しないようにして安心して生活できるようにすることが、まず重要であろう。そして、これは、仕事やキャリアを大切にする女性も同じなのである。

(2)所得税等の少子化対策

   
         2021.12.16、2014.3.6、2023.2.1日経新聞

(図の説明:左図は、地域別の25~34歳男女の人口比で、地域によって男女比に違いがある。また、中央の図のように、ドイツ・アメリカは個人単位と2分2乗方式の選択制、フランスはN分N乗方式の世帯単位課税のみと、課税単位は国によって異なる。右図は、現在の日本の税率で個人課税とN分N乗方式適用の場合の所得税額の差を示す事例であり、N分N乗方式を適用した方が負担力主義に合致する)

   
     2020.7.12労務              2023.2.2日経新聞  

(図の説明:左図は、出産後の女性が専業主婦になるM字カーブは浅くなったが、出産後に正規社員に戻れず非正規社員として低賃金で働く女性が多いことを示すL字カーブの健在性を示すグラフだ。そして、非正規社員として低賃金で働く場合には、中央の図のように、収入が103万円を超えると所得税が発生し夫の扶養家族にもなれない103万円の壁と社会保険料が発生する130万円の壁が効くため、就業時間を調整する人が増える。右図は、不動産価格の高騰で首都圏・近畿圏の新築マンションの平均専有面積が狭くなっていることを示すグラフだ)

1)N分N乗方式について
 租税の原則は「公平」「中立」「簡素」であり、i)「公平」は、負担力に応じて負担すること ii)「中立」は、経済活動に関する選択を税制が歪めないようにすること iii)「簡素」は、納税者が理解しやすい簡単な仕組みにすること である。もっと詳しく知りたい方は、金子宏氏の名著、「租税法」を読むのがお奨めだ。

 で、日本の所得税は、現在、個人単位課税のみだが、①アメリカ・ドイツは、2分2乗方式の夫婦単位と個人単位との選択制 ②フランスは、N分N乗方式の世帯単位課税のみ ③イギリスは、1990年に世帯合算非分割課税から個人単位課税に移行 というように、所得税の課税単位は国によって異なる。

 私は、i)の負担力を考える時、日本もN分N乗方式(子がいなければ2分2乗方式になる)を選択できるようにした方がよいと思うが、夫婦であっても経済は個人単位というカップルもいるため、基本を個人単位課税としてN分N乗方式を選択可能にすればよいと考える。何故なら、①のように、アメリカ・ドイツは、2分2乗方式の夫婦単位と個人単位との選択制だが、2分2乗方式では子の数が加味されないため、本当の負担力主義にならないからだ。また、ii)の経済活動に関する中立性やiii)の納税者の理解という点から考えても、選択制なら誰もが納得できるだろう。

 しかし、税負担軽減によるメリットは、所得税を支払っている層にしか効かないため、児童手当はやはり必要である。この時、児童手当をもらう人はN分N乗方式の選択ができないことに決めれば、二重に得する層はなくなる上、扶養控除の廃止部分と児童手当不支給による財源でN分N乗方式採用による税収減はかなり賄えるのではないかと思う。

 このような中、*1-2は、「N分N乗方式」を世帯単位課税と説明しているが、②のように、フランスの場合はN分N乗方式の世帯単位課税のみしか認めていないものの、日本は、アメリカ・ドイツのように、個人単位課税を基本としつつ、「N分N乗方式」や児童手当支給を選択可能にすればよいため、個人単位課税を基本にすることもできるのだ。

 そして、N分N乗方式を選択した場合は、所得が大きいほど税率が高くなる累進課税の所得税の仕組みの中で支払税額が少なくなるため、こちらの方が本当の負担力主義となる。また、「N分N乗方式は所得の高い専業主婦世帯に有利」との批判もあるが、夫のみを見た場合に所得が高かったとしても、夫の転勤が多かったり、夫が専業主婦の妻のサポートを受けて初めてその所得を得ていたり、職や保育所がなくて妻が働けなかったりするのであれば、1人当たりの所得はN分N乗方式の方が正しいわけである。

 *1-3も、④「N分N乗方式」はいいことずくめではない ⑤N分N乗方式は世帯単位課税 ⑥高所得者ほど恩恵が大きくなりやすい ⑦扶養控除や適用税率などで個人単位課税でもN分N乗方式と同様の効果を持ち得る ⑧女性の社会進出を促す政府方針と逆行する ⑨社会保険料など他の制度との整合性をつけるのが難しい 等とできない理由を並べている。

 しかし、⑤は選択制にすることで完全に解決でき、⑥の“高所得者”は1人あたりの稼ぎが小さい場合にのみ、N分N乗方式で恩恵を受けられるのである。また、⑦については、年間合計収入が103万円以下の妻について夫が48万円の扶養控除を受けられるにすぎず、それでは生きていけないくらい小さな金額だ。さらに、⑧の女性の社会進出は、非正規の低賃金労働者ばかり増やすのではなく、高所得の女性を増やす本当の社会進出を進めれば逆行しないし、⑨の社会保険料は、その性格によって世帯単位(医療保険・介護保険など)か個人単位(年金・雇用保険など)に統一すればよいのである。

 最後に、所得税でN分N乗方式を選択可能であることは、結婚や出産を躊躇しているカップルに対し、最後の一押しとなるだろう。

2)「年収の壁」について
 岸田首相は、*1-4のように、女性の就労抑制に繋がっている「年収の壁(所得税が発生する103万円、一定条件下で社会保険料を支払い始める106万円、配偶者の扶養を外れて自ら健康保険料を払う130万円)」への対応策を検討されるとのことだが、“生産年齢人口”が減少して働き手不足となり、女性の社会進出を政府も後押ししていることを踏まえた内容にして欲しい。

3)住宅について
 若い世代では、*1-5のように、理想の数の子どもを持たない理由として「家が狭いから」と答える人が2割を超え、家の狭さや長い通勤時間が第2子の出生を抑制するという分析も出ており、住宅の価格高騰と狭さは子どもを産もうという動機を確かに抑制している。

 EUの中でも出生率が高水準のフランスは、所得などに応じた子育て世帯への住宅手当があり、日本は約849万戸の空き家があって一部地域では改修して子育て世帯向けに貸す動きもある。そのため、企業も都市への過度な集中を避け、自然に近くてゆとりの持てる環境のよい地域に、若い世代が勤務できる場所を設け、政府や地方自治体と一緒になって空地・空家等の活用を行われることが望ましい。


4)育休中のリスキリングについて
 岸田首相が、*1-6のように、「育休・産休期間にリスキリングによってスキルを身につけたり、学位を取ったりする方を支援できれば、逆にキャリアアップが可能になることも考えられるので、育休中のリスキリングを後押しする」と答弁されたことに批判が高まっているそうだ。

 批判の内容は、①育休は授乳・おむつ交換・寝かしつけなどがひっきりなしに続くので、出産・育児への理解に欠けている ②子育てと格闘している時にできるわけがない ③赤ちゃんを育てるのは普通の仕事よりずっと大変で、子育てをしてこなかった政治家が言いそうなことだ ④自分で子供の世話しながら学位取ってみろ ⑤多くの人にとって「学び直し」は現実的と言えない ⑥子育てを困難にしてきたのは明治以来の家父長制・男尊女卑の考え方だ などである。

 育休・産休期間にリスキリングについては、私がさつき会(東大女子同窓会)の後輩に助言したことであるため、事例を挙げて説明するが、私は子育て期間にリスキリングして出産後も第一線に居つづけた人を複数知っている。

 1人は、東大法学部卒で、結婚・出産後にハーバード大学への留学が決まり、幼子を連れて留学した人で、ハーバード大学は学内に保育所があり、ベビーシッターも簡単に雇えるため、日本にいるよりやり易かったそうである。もちろん、その人は体力も知力もあり、日本に帰ってからも閑職に追いやられることなく、東大法学部教授にまでなられた。

 もう1人は、女性公認会計士で同じ事務所の人と結婚した後で、旦那さんがロンドン勤務になり、旦那さんの方から「どうしたらよいか」と私に相談されたので、上の事例を挙げて「外国の方が子育てしやすいそうだから、ロンドンにいる間に出産して、同時にロンドン大学でMBAをとって来させたら」とアドバイスし、彼女はそうしたので、日本に帰ってからも閑職に追いやられることなく、PWCのパートナーになった。

 上は両方とも仕事への熱意と体力のある人材で、苦労しながらも欧米の大学に通いつつ子育てした点が同じだ。その点、①②③⑤は事実ではあるが、だからといって子育てだけに集中していると置いて行かれ、マミートラックに追いやられたり、非正規になるしかなかったりするのが、日本の現状なのである。

 そのため、この状況を変えるのが政治の役割であるし、④については、日本の大学も院生や学生が子育てしながら学位が取れるくらいのインフラがあってよいと思う。⑥の「子育てを困難にしてきたのは明治以来の家父長制・男尊女卑の考え方だ」というのも事実かもしれないが、最近の政治家にはそのジャンルに入らない人も少なからずいると思う。

(3)2023年度予算案について

   
    2020.12.16愛媛新聞   2021.12.25日経新聞 2022.12.23読売新聞

(図の説明:左図のように、日本の一般会計予算は2008年9月に起こったリーマンショック後の2009年度でも90兆円未満で、東日本大震災を経て自民党政権に戻った2014年度に95兆円を超え、その後も減少することなく、2020年度からコロナ禍で急激に上昇して2021年度に106兆円となった。そして、中央の図のように2022年度は107.6兆円、右図のように2023年度は114.4兆円とコロナ禍が一服しても上昇し続け、国債依存度は30%台と高止まりしているのだ)

  
      財務省          2022.12.17日経新聞  2022.12.24日経新聞
    
(図の説明:左図のように、一般会計歳出が税収より常に大きいため、国債残高はうなぎ上りに上がったが、歳出がGDPを上げる効果のあるものでないため、中央の図のように、税収は増えず、借金が増えるばかりだ。もちろん、税収だけを当てにするのではなく税外収入も得て欲しいが、効果的な歳出を行う基礎資料を作る公会計制度の導入は不可欠だ。そして、右図のように、新しいことをする度に増税しようとするが、本当は歳出の組み換えをすべきなのである)

1)日本の財政と予算の現状
 政府は、*2-1-1のように、2023年度一般会計当初予算案を過去最大の114兆3,812億円と決め、そのうち国債依存度が3割を超す。しかし、これは新型コロナ禍による有事に対応した前年までの予算より大きく、米独は国債依存度を2022年度には2割台前半に下げたが、日本だけが3割台で高止まりしているのだ。

 つまり、日本ではリーマンショック・東日本大震災・コロナ禍などの危機対応のための予算編成が、危機が去った後にも既得権として残り、全体として次第に歳出と国債残高が膨らんでいる状況なのである。そして、教育・EV・再エネ・量子・AI・バイオ医薬品・医療/介護(今後の成長産業)など次の成長に向けての投資的予算配分が乏しいため、経済は停滞したまま債務だけが増大する悪循環の出口が見えないのだ。

2)岸田首相の年頭記者会見から
 岸田首相は年頭記者会見で、*2-1-2のように、①2023年は日本経済の新しい好循環の基盤を起動する ②異次元の少子化対策に挑戦する ③国際社会の現実を前に常識への挑戦が求められている ④「新しい資本主義」がその処方箋 ⑤官民連携して賃上げと投資の2つの分配を強固に進める ⑥企業が収益を上げて労働者に分配し、消費や企業投資が伸びて経済成長が生まれる とされた。

 このうち①③について反対する人は少ないが、具体的にそのやり方で日本経済の好循環の基盤が本当に起動できるか、常識へのよい挑戦になっているのかが問題なのである。②の異次元の少子化対策については、児童手当の拡充に終われば大した効果があるとは思われず、私は上の(2)で述べた選択的N分N乗方式の採用・ゆとりある住宅の提供・保育所/児童クラブの充実・教育の質の向上と高校教育までの無償化なども迅速に進めた方がよいと思う。

 ④については、特に新しいことではなく、これまでもやってきたが肝心の改革が遅々として進まなかったので日本経済の停滞を招いているのである。また、⑥の企業が収益を上げて労働者に分配し、消費や企業投資が伸びて経済成長が生まれるのは本当だが、企業が収益を上げるためには安くて品質のよいものを供給してそれが売れなければならない。そのため、⑤のように、賃上げ・賃上げと言っても、それ以上の付加価値向上や生産性向上がなければコスト増になるため、さらに売れなくなって投資どころではなくなるわけである。

 なお、岸田首相は、⑦この30年、企業収益が伸びてもトリクルダウンは起きなかった ⑧インフレ率を超える賃上げの実現をお願いしたい ⑨リスキリングによる能力向上支援と日本型職務給の確立、成長分野への円滑な移動を三位一体で進める ⑩日本企業の競争力強化にも取り組む とも言われた。

 ⑦⑧は事実だが、付加価値の向上や生産性の向上で安定的に収益を獲得できる状況にならなければ、定期昇給はできない。そのため、コストプッシュインフレの中で、将来の見通しは暗くて不安定性が高い時に、政府のバラマキによって一時的に収益が増えたとしても、それを定期昇給による賃上げに繋げるわけにいかないのは、やってみなくてもわかることである。

 ⑨⑩については、付加価値や生産性を上げ競争力を強化するには、日本企業の設備投資や労働者の能力向上が必要だ。しかし、労働者が能力を向上させる動機づけは、向上させた能力が有効に使われ、昇進や賃金に反映されることなのである。そのための基盤として、職務給の確立・公正な評価・移動の容易化が必要なわけだが、一部に年功序列型賃金を残すのも特に日本型ではなく、欧米でも行われていることだ。
 
 岸田首相は、⑪権威主義的国家はサプライチェーンを外交目的達成のために使うようになった ⑫海外に生産を依存するリスクを無視できない ⑬世界では官民連携で技術力・競争力を磨き上げる競争が起きている ⑭国内で作れるものは日本で作って輸出する ⑮研究開発等を活性化して付加価値の高い製品・サービスを生み出す ⑯国が複数年の計画で予算を約束し、期待成長率を示して投資を誘引する官民連携が不可欠だ ⑰半導体などの戦略産業に官民連携で国内に投資する ⑱民間の挑戦を妨げる規制は断固改革する ⑲日本をスタートアップのハブとするため、世界のトップ大学の誘致と参画によるグローバルキャンパス構想を23年に具体化する ⑳子どもファーストの経済、社会をつくり上げて出生率を反転する必要がある 等も言われている。

 ⑪については、日本を含む民主主義国家も「制裁」と称して禁輸しているので、権威主義的国家だけがサプライチェーンを外交目的達成のために使っているわけではない。その中で、エネルギーや食糧はじめ実物経済よりも金融の方が強いと考えた点が誤りなのである。そのため、⑫⑭は事実だが、戦略産業としては、⑰の半導体だけではなく、エネルギー・食糧・その他の製品も重要であって、これはグリーンイノベーションを効果的に進めればかなり達成できる筈なのだ。

 また、⑬も事実だが、⑮は外国と比較しなくても当然のことである。そのためには、⑲の世界のトップ大学の誘致と参画は効果的だろうが、⑱は、EVや再エネを見ればわかるとおり、官は外国と比較しながら黒船が来たら何十年も遅れて方針を変えるような体質で、古い規制を堅持したり、民間の挑戦を妨げる規制を残したがったりするため、⑯の国が複数年の計画で予算を約束して投資を誘引するような官民連携は、あまり効果がなく、損失しか出さないと思う。

 なお、⑳の「子どもファースト」は、言えば言うほど「子のために犠牲になれ」と言われる女性は出産をためらうのであり、日本独特の発想でもある。

3)防衛・GX・子どもとする重点3分野について
 政府の2023年度予算案は、*2-2のように、岸田首相が重視する①防衛 ②GX ③子ども予算の大幅増額に踏み出したのだそうだ。

 しかし、私が聞いていても、規模ばかりが強調され、肝心の理念や理念に沿った使い道の方針、そのための歳出の組み換えについて、説明がなかったと思う。

 2027年度までに総額で43兆円支出するという①の防衛費は、米国の武器を買うなどの米国向け支出が多く、外交も含めた全体像がちぐはぐで、いくら防衛は秘密が多いと言っても、これでは民主主義にならない。

 また、民間投資の呼び水として今後10年で20兆円規模の支出をするという②のGXの推進はよいが、やることに相互矛盾が多く、GXを妨げる原発は温存したまま、化石燃料にも補助金を出しているため、これでは国富が流出するだけで国全体の生産性は上がらず、国民は次第に貧しくなるしかないだろう。

 さらに、③の子ども予算も倍増とされるが、規模より中身が大切であり、これまでにも書いてきたとおり、バラマキをしても質も量も改善しないのである。

・・以下、工事中・・

<少子化対策と所得税>
*1-1:https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2017/29webhonpen/html/b1_s1-1-1.html (内閣府HPより抜粋) 第1部 少子化対策の現状
第1章 少子化をめぐる現状(1)
1 出生数、出生率の推移
●合計特殊出生率は1.45
我が国の年間の出生数は、第1次ベビーブーム期には約270万人、第2次ベビーブーム期には約210万人であったが、1975(昭和50)年に200万人を割り込み、それ以降、毎年減少し続けた。1984(昭和59)年には150万人を割り込み、1991(平成3)年以降は増加と減少を繰り返しながら、緩やかな減少傾向となっている。2015(平成27)年の出生数は、100万5,677人であり、前年の100万3,539人より2,138人増加した。合計特殊出生率をみると、第1次ベビーブーム期には4.3を超えていたが、1950(昭和25)年以降急激に低下した。その後、第2次ベビーブーム期を含め、ほぼ2.1台で推移していたが、1975年に2.0を下回ってから再び低下傾向となった。1989(昭和64、平成元)年にはそれまで最低であった1966(昭和41)年(丙午:ひのえうま)の1.58を下回る1.57を記録し、さらに、2005(平成17)年には過去最低である1.26まで落ち込んだ。近年は微増傾向が続いており、2015年は、1.45と前年より0.03ポイント上回った。
●年齢別出生率の動向
 女性の年齢別出生率を見ると、そのピークの年齢と当該年齢の出生率は、1975(昭和50)年は25歳で0.22、1990(平成2)年は28歳で0.16、2005(平成17)年は30歳で0.10と推移し、ピークの年齢は高くなり、当該年齢の出生率は低下したものの、2015(平成27)年は30歳で0.11とピークの年齢の出生率はやや上昇している。合計特殊出生率の1970(昭和45)年以降の低下については、例えば25歳時点の出生率を比べてみると、1975年は0.22だったが、2005年は0.06に大幅に下がるなど、20歳代における出生率が低下したことが一因であると考えられる。また、近年の合計特殊出生率の微増傾向については、例えば35歳時点の出生率を比べてみると、2005年は0.06だったが、2015年は0.08となるなど、30~40歳代の年齢別出生率の上昇を反映したものと考えられる。
●都道府県別合計特殊出生率の動向
 2015(平成27)年の全国の合計特殊出生率は1.45であるが、47都道府県別の状況を見ると、これを上回るのは35県、下回るのは12都道府県であった。この中で合計特殊出生率が最も高いのは沖縄県(1.96)であり、次は島根県(1.78)となっている。最も低いのは、東京都(1.24)であり、次は北海道(1.31)となっている。都道府県別の年齢別出生率をみると、上位の沖縄県、島根県は、いずれも20~34歳の出生率が全国水準よりも顕著に高く、とりわけ、沖縄県では全ての年齢の出生率が全国水準よりも高くなっている。一方、下位の東京都、北海道はそれぞれ異なる動きをしている。東京都では15~34歳の出生率が全国水準より低いのに対し、35~49歳では高くなっている。北海道では20~24歳の出生率が全国水準より高いのに対し、その他の年齢では低くなっている。また、全国水準と同様に多くの都道府県では、30~34歳の出生率が最も高くなっているが、例えば、福島県のように25~29歳の出生率が最も高くなっているといった特徴や、愛媛県のように25~29歳と30~34歳の出生率がほぼ変わらないといった特徴も見られる。
●総人口と人口構造の推移
 我が国の総人口は、2016(平成28)年で1億2,693万人となっている。年少(0~14歳)人口、生産年齢(15~64歳)人口、高齢者(65歳以上)人口は、それぞれ1,578万人、7,656万人、3,459万人となっており、総人口に占める割合は、それぞれ12.4%、60.3%、27.3%となっている。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成29年推計)」は、我が国の将来の人口規模や年齢構成等の人口構造の推移を推計している。このうち、中位推計(出生中位・死亡中位)では、合計特殊出生率は、実績値が1.45であった2015(平成27)年から、2024(平成36)年の1.42、2035(平成47)年の1.43を経て、2065(平成77)年には1.44へ推移すると仮定している。最終年次の合計特殊出生率の仮定を前回推計(平成24年1月推計)と比較すると、近年の30~40歳代における出生率上昇等を受けて、前回の1.35(2060(平成72)年)から1.44(2065年)に上昇している。この中位推計の結果に基づけば、総人口は、2053(平成65)年には1億人を割って9,924万人となり、2065年には8,808万人になる。前回推計結果(長期参考推計)と比較すると、2065年時点で前回の8,135万人が今回では8,808万人へと672万人増加している2。人口が1億人を下回る年次は前回の2048(平成60)年が2053年と5年遅くなっており、人口減少の速度は緩和されたものとなっている。年齢3区分別の人口規模及び構成の推移をみると、年少人口は、2056(平成68)年には1,000万人を割り、2065年には898万人の規模になるものと推計され、総人口に占める割合は、2065年には10.2%となる。生産年齢人口は、2056年には5,000万人を割り、2065年には4,529万人となる。総人口に占める割合は、2065年には51.4%となる。高齢者人口は、2042(平成54)年に3,935万人でピークを迎え、その後減少し、2065年には3,381万人となる。総人口に占める割合は、2065年には38.4%となる。前回推計結果と比較すると、推計の前提となる合計特殊出生率が上昇した結果、2065年時点で、前回から生産年齢人口は約1割、年少人口は約2割増加したものとなっている。
第1章 少子化をめぐる現状(2)
2 婚姻・出産の状況
●婚姻件数、婚姻率の推移
 婚姻件数は、第1次ベビーブーム世代が25歳前後の年齢を迎えた1970(昭和45)年から1974(昭和49)年にかけて年間100万組を超え、婚姻率(人口千人当たりの婚姻件数)もおおむね10.0以上であった。その後は、婚姻件数、婚姻率ともに低下傾向となり、1978(昭和53)年以降2010(平成22)年までは、年間70万組台(1987(昭和62)年のみ60万組台)で増減を繰り返しながら推移してきたが、2011(平成23)年以降、年間60万組台で推移しており、2015(平成27)年は、63万5,156組(対前年比8,593組減)と、2014(平成26)年に続き過去最低となった。婚姻率も5.1と2014年に続き過去最低となり、1970年代前半と比べると半分の水準となっている。婚姻件数及び婚姻率の年次推移(CSV形式:2KB)のファイルダウンロードはこちらファイルを別ウィンドウで開きます
●未婚化の進行
 未婚率を年齢(5歳階級)別にみると、2015(平成27)年は、例えば、30~34歳では、男性はおよそ2人に1人(47.1%)、女性はおよそ3人に1人(34.6%)が未婚であり、35~39歳では、男性はおよそ3人に1人(35.0%)、女性はおよそ4人に1人(23.9%)が未婚となっている。長期的にみると上昇傾向が続いているが、男性の30~34歳、35~39歳、女性の30~34歳においては、前回調査(2010年国勢調査)からおおむね横ばいとなっている。さらに、50歳時の未婚割合1をみると、1970(昭和45)年は、男性1.7%、女性3.3%であった。その後、男性は一貫して上昇する一方、女性は1990(平成2)年まで横ばいであったが、以降上昇を続け、前回調査(2010年国勢調査)では男性20.1%、女性10.6%、2015年は男性23.4%、女性14.1%となっており、男性は2割、女性は1割を超えている。前回調査(2010年国勢調査)の結果に基づいて出された推計は、これまでの未婚化、晩婚化の流れが変わらなければ、今後も50歳時の未婚割合の上昇が続くことを予測している。
●晩婚化、晩産化の進行
 平均初婚年齢は、長期的にみると夫、妻ともに上昇を続け、晩婚化が進行している。2015(平成27)年で、夫が31.1歳、妻が29.4歳となっており、30年前(1985(昭和60)年)と比較すると、夫は2.9歳、妻は3.9歳上昇している。前年(2014(平成26)年)との比較では、男女とも横ばいとなっている。また、出生時の母親の平均年齢を出生順位別にみると、2015年においては、第1子が30.7歳、第2子が32.5歳、第3子が33.5歳と上昇傾向が続いており、30年前(1985年)と比較すると第1子では4.0歳、第2子では3.4歳、第3子では2.1歳それぞれ上昇している。年齢(5歳階級)別初婚率について、1990(平成2)年から10年ごと及び直近の2015(平成27)年の推移をみると、夫は25~29歳で1990年の68.01‰が2015年の48.25‰となるなど下降幅が大きく、35~39歳で1990年の8.25‰が2015年の13.61‰となるなど35歳以上で上昇しているが、その上昇幅は小さい。他方、妻は20~24歳で1990年の54.40‰が2015年の26.11‰となるなど下降幅が大きいが、30~34歳で1990年の12.73‰が2015年の28.83‰となるなど30歳以上で上昇しており、夫に比べてその上昇幅が大きい。
●完結出生児数は1.94
 夫婦の完結出生児数(結婚持続期間が15~19年の初婚どうしの夫婦の平均出生子供数)を見ると、1970年代から2002(平成14)年まで2.2人前後で安定的に推移していたが、2005(平成17)年から減少傾向となり、2015(平成27)年には1.94と、前回調査に続き、過去最低となった。
第1章 少子化をめぐる現状(3)
●結婚に対する意識
「いずれ結婚するつもり」と考える未婚者(18~34歳)の割合は、男性85.7%、女性89.3%であり、ここ30年間を見ても若干の低下はあるものの、男女ともに依然として高い水準を維持している。(第1-1-12図)
また、未婚者(25~34歳)に独身でいる理由を尋ねると、男女ともに「適当な相手にめぐりあわない」(男性:45.3%、女性:51.2%)が最も多く、次に多いのが、男性では「まだ必要性を感じない」(29.5%)や「結婚資金が足りない」(29.1%)であり、女性では「自由さや気楽さを失いたくない」(31.2%)や「まだ必要性を感じない」(23.9%)となっている。さらに、前回の第14回調査(2010(平成22)年)と比較すると、男性では「自由さや気楽さを失いたくない」(28.5%)や「異性とうまくつきあえない」(14.3%)が上昇しており、女性では「異性とうまくつきあえない」(15.8%)が上昇している。
●若い世代の所得の状況
2012(平成24)年の所得分布を1997(平成9)年と比べると、20代では、250万円未満の雇用者の割合が増加しており、30代では、400万円未満の雇用者の割合が増加しており、若い世代の所得分布は、低所得層にシフトしていることがわかる。
●就労形態などによる家族形成状況の違い
 若年者(15~34歳)の完全失業率は、近年、男女ともに低下しているものの、全年齢計よりも高い水準になっている。最も高かった時期と比較すると、15~24歳の男性では、2003(平成15)年の11.6%から5.7%へと低下しており、25~34歳の男性では2010(平成22)年の6.6%から4.4%へと低下している。15~24歳の女性では2002(平成14)年の8.7%から4.5%へと低下しており、25~34歳の女性では2002年の7.3%から4.1%へと低下している。また、非正規雇用割合についてみると、15~24歳の男性(47.3%)では前年より上昇しており、全年齢計(22.1%)よりも高い水準となっている。25~34歳の男性、15~24、25~34歳の女性では前年より減少しており、全年齢計よりも低い水準となっている。男性の就労形態別有配偶率をみると、「正社員」では25~29歳で31.7%、30~34歳で57.8%であり、「非典型雇用」では25~29歳で13.0%、30~34歳で23.3%であり、「正社員」の半分以下となっている。また、「非典型雇用のうちパート・アルバイト」では25~29歳で7.4%、30~34歳で13.6%であり、「正社員」の4分の1以下となっているなど、就労形態の違いにより配偶者のいる割合が大きく異なっていることがうかがえる。さらに、男性の年収別有配偶率をみると、いずれの年齢層でも一定水準までは年収が高い人ほど配偶者のいる割合が大きい。(以下略)

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGKDASFS0502H_V00C14A3EA2000/ (日経新聞 2014年3月6日) 世帯課税、総所得、家族数で割る
▽…個人ではなく家族を1つの単位として所得税などを課す仕組み。家族が多ければ多いほど納めなければいけない税金が少なくなるのが特徴で、少子化対策になるとされる。フランスが導入している制度が代表的で「N分N乗方式」とも呼ばれる。
▽…具体的には、まず世帯の総所得を家族の人数で割って、1人当たり所得を計算する。この金額に税率を掛け合わせて1人当たりの税額を算出。家族の数を再び掛け合わせて、世帯が払うべき税の総額を決める。所得税は所得が大きいほど税率が高くなる仕組みがあるため、家族が多ければ1人当たり所得が減り、払わなければならない税額も少なくなる。
▽…もっともN分N乗方式は、比較的所得の高い専業主婦世帯に有利になる面がある。一方で、所得税をあまり払っていない共働きの中低所得世帯への恩恵は限られる可能性が高い。このため、実際にどれだけ少子化対策としての効果があるのか、疑問視する向きもある。制度設計を進めるうえでは、女性の活躍を後押ししようとする安倍政権の政策との整合性も焦点になりそうだ。

*1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA018010R00C23A2000000/ (日経新聞 2023年2月2日) 所得税「N分N乗」とは 少子化対策で急浮上
日本の少子化対策として新たな税制を求める声が与野党で広がってきた。「N分N乗」と呼ばれ、子どもが多い世帯ほど所得税の負担が軽くなる仕組みだ。過去にも政府で議論されたこの制度は決していいことずくめではない。
●「個人」でなく「世帯」に課税
 N分N乗方式はフランスが戦争で減った人口を増やそうと1946年に始めたことで知られる。日本の所得税は個人単位で課税する一方、N分N乗方式は世帯単位でみる。共働きで子ども2人の4人家族(夫の所得600万円、妻が300万円)の場合、いまの所得税は夫婦あわせて150万円になる。それぞれの所得に累進税率を適用するのがルールで、夫は20%、妻は10%だ。現行の日本の累進税率でフランスのN分N乗方式を取り入れると、控除などを省略した計算で以下の図の後半部分のようになる。
●税金の計算で踏む3つのステップ
 特徴は税の計算で段階を3つ踏む点にある。1つ目は所得の合算だ。先の例だと世帯の所得900万円は見かけ上は変わらないものの、まず家族の人数「N」で割る。フランスは第2子までは0.5人とカウントしており「N=3」。課税所得300万円が出発点になる。続いて家族1人あたりの税額を出す。所得が少ないほど累進税率は低い。この段階での税率は夫も含めて10%になる。最後に家族の人数「N」を掛ける。ここでも「N=3」。世帯全体の所得税は現行制度より60万円少ない90万円になる。N分N乗を巡っては日本維新の会や国民民主党がかねて制度の検討を訴えてきた。自民党の茂木敏充幹事長は25日の衆院本会議で「画期的な税制」などと強調した。現時点での首相の反応は「様々な課題がある」。慎重な回答に終始するのは制度のメリットだけに着目する危うさを感じたからだろう。首相も構想段階からすでに課題を指摘する。その1つが片働き世帯に有利に働くという点だ。世帯所得が同じ900万円でも「夫900万円」と「夫600万円・妻300万円」を比べると、N分N乗に伴う税の軽減効果は前者が207万円、後者が60万円。3倍以上の開きが出る。高所得者ほど恩恵が大きくなりやすいことも課題にあげる。子2人の片働き世帯で所得が1000万円と500万円の世帯なら税の軽減効果で50万円ほどの差が生じる。
●「検討」より踏み込めた歴史なし
 N分N乗は政府内で過去に何度か議論した経緯もある。政府税制調査会は2005年、扶養控除や適用税率などで「個人単位課税でもN分N乗方式と同様の効果を持ち得る」とまとめた。第2次安倍政権下の14年には当時の甘利明経済財政・再生相が閣内から提起した。この時も女性の社会進出を促す政府方針と逆行するとの意見が相次いだ。「検討」より踏み込んだ対応は歴史上ない。慶大の土居丈朗教授は「社会保険料など他の制度との整合性をつけるのが難しい」と話す。「夫婦どうしで所得を完全に把握するのを嫌がる人も多いのではないか」とも指摘した。 日仏の違いも根底にはある。フランスの所得税はもともと世帯課税で夫婦共有財産制をとるなどN分N乗がなじみやすいとの解説もある。婚外子が多い事情もあり、自民党の萩生田光一政調会長は「日本で直ちに参考にならない部分もある」と語る。

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20230202&ng=DGKKZO68101700R00C23A2EP0000 (日経新聞 2023年2月2日) 「年収の壁」対策 就労促進を探る、106万、130万円で社会保険料発生 年金改革と調整必要
 岸田文雄首相は1日、一定の所得を超えると税や社会保険料が発生する「年収の壁」への対応策を検討すると明らかにした。働き手不足が続いており、就労を抑える要因として「106万円」や「130万円」の壁が指摘される問題に向き合う。政府は厚生年金に加入するパート労働者を広げるなど目先は本人の負担増となる改革にも取り組む。さまざまな制度との調整が必要になる。年収の壁とは、パートの主婦(主夫)ら配偶者の社会保険上の扶養に入りながら働く人が一定の年収を超えると手取り額に影響が出る問題や金額を指す。主な壁には所得税が発生する103万円、一定条件を満たすと厚生年金や健康保険に加入するための社会保険料が発生する106万円、配偶者の扶養を外れて自ら社会保険料を払う130万円の壁、配偶者特別控除が減り始める150万円がある。特に影響が大きいとされるのが手取りが急に減る「106万円」と「130万円」の壁だ。岸田首相は1日の衆院予算委員会で、女性の就労抑制につながっている現状を踏まえ「問題意識を共有し、制度を見直す。幅広く対応策を検討する」と述べた。「いわゆる『130万円の壁』の問題のみならず、正規・非正規の制度・待遇面の差の改善など幅広い取り組みを進めなければならない」とも語った。人手不足は日本経済の回復の壁になっている。人口減少や高齢化の加速が響いて2022年の就業者数は新型コロナウイルス禍前の19年の水準に戻らず、外食の出店やホテルの宿泊客受け入れの妨げになっている。時給引き上げを受け、働く時間をさらに抑える人が出る恐れもあり、政府は就労促進の妨げとなる制度の改革を探るようだ。制度を見直す場合は多岐にわたる制度との調整が欠かせない。一つは社会保険制度との兼ね合いだ。現在のルールでは(1)従業員数が101人以上(2)週労働時間が20時間以上(3)月収8.8万円(年収換算で106万円)以上――といった条件を満たす場合に厚生年金と健康保険に加入する。例えば従業員数101人以上の会社で働くパートの人は106万円が壁に、それよりも小規模の会社で働く場合には130万円が壁になっている。政府は厚生年金の加入対象を拡大している。22年10月にはこれまで短時間労働のパートやアルバイトが加入する企業規模の要件を501人以上から、101人以上の中小規模の会社まで拡大した。24年10月には51人以上まで引き下げる。22年末にまとめた有識者会議の報告書では企業規模要件を撤廃すべきと提起した。より多くの働く人の将来もらえる年金水準を引き上げるのが狙いだ。年収の壁問題に対応するため、仮に厚生年金に加入する収入を引き上げれば、個人の老後の生活と年金財政の安定をめざして進めてきた年金改革の方向に逆行しかねない。103万円と150万円では税制が絡む。所得が一定以下の配偶者を持つ人に所得控除を認める配偶者控除は1961年にできた。配偶者の給与収入が年103万円以下である場合に最高38万円の控除を認める。控除を受ける本人の給与収入が1195万円を超えると控除は受けられなくなる。パートなどで配偶者の収入が一定を超えると世帯全体で手取りが減る現象を解消するため、87年に配偶者特別控除という制度ができた。配偶者の給与収入が103万~201万円の場合に控除が受けられる。150万円を超えると控除額が段階的に減る。両制度を修正するには所得税法などを見直す必要がある。年収の壁を巡っては、103万円などの税金の壁を超えた時、手取りは伸びが緩やかになっても減ることはないといった点を理解してもらうことが必要だ。厚生年金への加入で目先の負担は増しても、保険料に応じて将来の年金が上乗せされるなどの保障がある。負担と将来にわたる収入について正確に理解してもらう努力が欠かせない。

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20230202&ng=DGKKZO68105530R00C23A2EA2000 (日経新聞 2023.2.2) 住宅高騰、増やせぬ子ども 狭まる面積も意欲そぐ要因に、若年層の所得向上が急務
 住宅の価格高騰と狭さが子どもを産もうという心理を冷やしている。若い世代では理想の数の子どもを持たない理由として「家が狭いから」と答える人が2割を超えた。家の狭さや長い通勤時間が第2子の出生を抑制するという分析も出た。岸田文雄首相の「次元の異なる」少子化対策を効果あるものにするためには空き家活用など住宅政策との連携が欠かせない。不動産経済研究所(東京・新宿)によると、2022年の首都圏の新築マンションの平均価格は6288万円と2年連続で過去最高を更新した。上昇率は前年比0.4%増と微増だが、専有面積の平均は同1%減の66.1平方メートルと10年前と比べて6%狭くなった。一般的には2LDKの広さだ。「間取りなども、子を複数もつ世帯を想定した物件が減っている」(都内の不動産仲介会社)
●「実質値上げ」
 住宅コンサルタント、さくら事務所(東京・渋谷)の長嶋修会長は「面積を狭くし、表面的な価格の上昇を緩やかに見せる『実質値上げ』が目立つ」と指摘する。東日本不動産流通機構によると、22年に成約した首都圏の中古マンションの平均面積は63.59平方メートル。近畿圏でも持ち家の価格高騰と住居が狭くなる傾向が目立つ。賃貸住宅も広さを確保するのは難しく、総務省の住宅・土地統計調査によると、延べ床面積は49平方メートル以下が約6割に上る。国が「豊かな生活」の目安として定める住居の面積は都市部の夫婦と3~5歳の子の3人家族で65平方メートルだ。2人以上の子を持ち、快適に過ごせる住まいの確保がすでに難しくなっている。国立社会保障・人口問題研究所の21年の出生動向基本調査では「理想の数の子どもを持たない理由」のうち「家が狭いから」が若い世代(妻が35歳未満)で21.4%に上昇。02~15年の調査では18~19%台だった。財務省の21年の研究では、第1子出生時点の住居が狭いほど、第2子出生数が抑制される。郊外に出れば住宅費は下がるが、同研究によると、都市部では配偶者の通勤時間が10分長くなると、第2子の出生数が4%抑制されるという。同省の内藤勇耶研究官は「若い子育て世帯など対象者を絞ったうえで、企業による賃貸住宅手当や持ち家手当の増額、都心部での社宅や公営住宅の整備が有効」と話す。共働きで東京都心に勤める40代の女性は、通勤時間を考慮して中央区の中古マンションを21年に購入した。55平方メートル・2LDKの間取りに夫と子どもの3人で暮らす。「2人目はないと決めている。もう1部屋増やすなら、2000万円は上乗せしないと買えない」
●空き家改修も
 問題の解決には少子化対策と住宅政策の連携を深めることが必要だ。欧州連合(EU)のなかでも出生率が高水準のフランスでは、所得などに応じた子育て世帯への住宅手当がある。日本国内には約849万戸の空き家があり、一部地域では改修して子育て世帯向けに貸す動きもある。岸田首相は1月31日の衆院予算委員会で「若者の賃金を上げ、住宅の充実をはかる取り組みは、結婚して子どもを持つ希望をかなえる上で大変重要な要素だ」と述べ、結婚を控えた若いカップルや子育て世帯への住宅支援を拡充する意向を示した。斉藤鉄夫国土交通相も30日、子育て世帯が公営住宅に優先的に入居できる仕組みを検討することを表明した。ただ、少子化の大きな要因として、経済的な理由で若い世代の子どもを持ちたいという意欲が減退していることがある。安心して結婚・出産できる環境を整えるには、賃上げなどにより若い世代の所得を向上させることが何よりも不可欠だ。日本では一定の収入がある共働き世帯でも、住宅は割高かつ手狭な状態から抜け出せていない。住宅の購入価格が世帯年収の何倍かを示す年収倍率をみると、日本は21年時点で6.83倍と先進国でも高い。調査した年は異なるが、例えば米国は5.07倍、英国5.16倍、フランス6.14倍だ。日本は1戸当たりの床面積でも最低だ。世界では住宅費と出生率の研究が進む。米連邦準備理事会(FRB)の経済学者らは14年の論文で「住宅が1万ドル上昇すると、持ち家がない家庭の出生率は2.4%下がる」と分析した。英国でも同様の研究がある。

*1-6:https://digital.asahi.com/articles/ASR1Y6D58R1YUTIL00T.html (朝日新聞 2023年1月29日) 育休中のリスキリング「後押し」、首相答弁に批判 識者「理解欠く」
 岸田文雄首相が掲げる「異次元の少子化対策」にからみ、育児休業中の人らのリスキリング(学び直し)を「後押しする」とした国会での首相答弁に批判が高まっている。育児の実態を理解しているのか疑問視する声が上がっている。「育休・産休の期間にリスキリングによって一定のスキルを身につけたり、学位を取ったりする方々を支援できれば、逆にキャリアアップが可能になることも考えられる」。27日の参院代表質問。自民党の大家敏志氏はこう述べ、育休中のリスキリング支援を行う企業に対する国の支援の検討を求めた。これに首相は「育児中など様々な状況にあっても、主体的に学び直しに取り組む方々をしっかりと後押ししていく」と答弁した。野党からは批判の声が上がった。29日には与野党幹事長級が出演したNHK討論番組で、共産党の小池晃氏が「子育てと格闘している時にできるわけがないのに言う。子どもを産み育てることを困難にしてきたのは明治以来の家父長制、男尊女卑の考え方が根強くやっぱり自民党にある。根本的な反省と改革を求めたい」と述べた。国民民主党の榛葉賀津也氏も「育休中にリスキリングしろとはがっかりした。自民党がやっとわかってくれたなと思ったら、総理がこれを言うんですから」と批判した。自民党の茂木敏充氏は「育休中に仕事をしろとは言っていない。みんなで良い方向に持っていくのが必要だ」と反論した。SNS上では多くの批判の声が上がった。ツイッターで、小説家の平野啓一郎さんは「何のための産休・育休なのか。自分で子供の世話しながら学位取ってみろ」と投稿。IT大手のサイボウズの青野慶久社長は「赤ちゃんを育てるのは、普通の仕事よりはるかに大変。子育てをしてこなかった政治家が言いそうなことですね」と投稿した。
●「労働者個人の責任にすりかえ」
「出産や育児への理解に欠けたやりとりだと言わざるをえない」。末冨芳・日大文理学部教授(教育行政学)はこう話す。育休は「休み」ではなく、赤ちゃんの授乳やおむつ交換、寝かしつけなどがひっきりなしに続く。多くの人にとって「学び直し」は現実的と言いづらい。末冨教授は「子育てによるキャリア停滞を防ぐのは本来は雇用主の責任。今回のやりとりは、労働者個人の責任にすりかえていると言える」と指摘する。「なぜ国会で質問されるまで、誰もチェックできなかったのか。自民党が児童手当に対する所得制限の撤廃方針を示したのは評価できるが、それを帳消しにしてしまった」と話した。

<2023年度予算案>
*2-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20221224&ng=DGKKZO67127410U2A221C2MM8000 (日経新聞 2022.12.24) 来年度予算案、最大の114兆円決定、国債依存なお3割超 コロナ有事、脱却できず
 政府は23日、一般会計総額が過去最大の114兆3812億円となる2023年度予算案を決めた。新型コロナウイルス禍で拡張した有事対応の予算から抜けきれず、膨らむ医療費などの歳出を国債でまかなう流れが続く。米欧で1~2割前後に下がった借金への依存度はなお3割を超す。超低金利を前提にしてきた財政運営は日銀の緩和修正で曲がり角に立つ。23年1月召集の通常国会に予算案を提出する。一般会計で当初から110兆円を超えるのは初。歳出は社会保障費が36兆8889億円。高齢化による自然増などで6154億円増えた。国債の返済に使う国債費は9111億円増の25兆2503億円。自治体に配る地方交付税は一般会計から5166億円増の16兆3992億円を計上した。切り込み不足で増大するこうした経費をまかなう歳入は綱渡りだ。税収は企業業績の回復で69兆4400億円と過去最大を見込む。それでも追いつかず、新たに国債を35兆6230億円発行して穴埋めする。うち29兆650億円は赤字国債だ。歳入総額に占める借金の割合は31.1%と高水準。00年代半ばまでは2割台だったのがリーマン危機後の09年度に4割近くに跳ね上がって以降、3~4割台で推移する。大規模緩和前の00年代半ば、日本の長期金利は1%を超えていた。10年代に入って長期金利0%台以下になるのに合わせるように政府は国債への依存度を高めた。各国で基準をそろえた公債依存度をみると日本も米国やドイツといった他の先進国もコロナ下の20~21年度は一様に4~5割前後に高まった。米独は22年度に2割台前半に下がった。日本だけが3割台で高止まりする。コロナ禍や物価高、ウクライナ情勢に柔軟に対応するための予備費は計5兆円を盛り込んだ。危機対応の予算編成がなお続いていることを示す。結局、次の成長への予算配分は乏しい。脱炭素の研究開発にはエネルギー特別会計で約5000億円を積んだ。量子や人工知能(AI)などの科学技術振興費は微増の1兆3942億円。これらを足し合わせても2兆円程度にとどまる。経済が停滞したまま債務だけが増大する悪循環の出口は見えてこない。

*2-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20230105&ng=DGKKZO67325590U3A100C2PD0000 (日経新聞 2023.1.5) 首相会見の要旨 異次元の少子化対策挑む/増税前解散、可能性の問題
 岸田文雄首相の年頭記者会見の要旨は次の通り。
【冒頭】
 2023年は第1に日本経済の新しい好循環の基盤を起動する。第2に異次元の少子化対策に挑戦する。世界は協力と対立、協調と分断が複雑に絡み合うグローバル化の第2段階に入った。国際社会の現実を前に常識への挑戦を求められている。新たな方向に踏み出さなければならない。「新しい資本主義」がその処方箋だ。官民連携のもとで賃上げと投資の2つの分配を強固に進める。持続可能で格差の少ない成長の基盤をつくり上げる。賃上げを何としても実現しなければならない。企業が収益を上げ、労働者に分配して消費や企業の投資が伸び、経済成長が生まれる。この30年間、企業収益が伸びても想定された(成長の恩恵が時間をかけて末端に広がる)トリクルダウンは起きなかった。この問題に終止符を打ち、賃金が毎年伸びる構造をつくる。23年春闘(春季労使交渉)で連合は5%程度の賃上げを求めている。ぜひインフレ率を超える賃上げの実現をお願いしたい。リスキリング(学び直し)による能力向上支援と日本型職務給の確立、成長分野への円滑な移動を三位一体で進める。6月までに労働移動円滑化のための指針をとりまとめる。日本企業の競争力強化にも取り組む。権威主義的国家はサプライチェーン(供給網)を外交上の目的を達成するために使うようになった。海外に生産を依存するリスクを無視できない。世界では官民連携で技術力や競争力を磨き上げる競争が起きている。国内でつくれるものは日本でつくり輸出する。研究開発などを活性化し、付加価値の高い製品・サービスを生み出す。国が複数年の計画で予算を約束し、期待成長率を示して投資を誘引する官民連携が不可欠だ。半導体など戦略産業に官民連携で国内に投資する。民間の挑戦を妨げる規制は断固改革する。日本をスタートアップのハブとするため、世界のトップ大学の誘致と参画によるグローバルキャンパス構想を23年に具体化する。縮小する日本に投資できないという声を払拭しなければならない。子どもファーストの経済、社会をつくり上げて出生率を反転する必要がある。4月に発足するこども家庭庁で子ども政策を体系的に取りまとめる。6月の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の策定までに将来的な子ども予算倍増に向けた大枠を提示する。まず児童手当を中心に経済的支援を強化する。次にすべての子育て家庭を対象としたサービスを拡充する。働き方改革の推進や制度の充実も進める。育児休業制度の強化を検討しなければならない。日本は7年ぶりに主要7カ国(G7)議長国を務め5月に広島でサミットを開く。G7の結束や世界の連帯を示さなければならない。グローバルサウス(南半球を中心とする途上国)との関係を強化し、食糧危機やエネルギー危機に効果的に対応していくことが必要だ。世界経済に下方リスクが存在するなか、G7として世界経済をけん引しなければならない。感染症対策などの課題でもリーダーシップの発揮が求められる。ロシアの言動で核兵器をめぐる懸念が高まるなか、被爆地・広島から「核兵器のない世界」の実現に向けたメッセージを発信していく。9日からフランス、イタリア、英国、カナダ、米国を訪問し胸襟を開いた議論をする予定だ。G7議長国としてリーダーシップを発揮したい。
バイデン米大統領との会談はG7議長としての腹合わせ以上の意味をもった大変重要な会談になる。日本は22年末に安全保障政策の基軸たる3文書を全面的に改定し、防衛力の抜本的強化の具体策を示した。日本の外交や安全保障の基軸である日米同盟の一層の強化を内外に示す。「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた踏み込んだ緊密な連携を改めて確認したい。新型コロナウイルス対応を巡り23年こそ平時の日本を取り戻していく。将来の感染症に対応するため、感染症危機管理統括庁の設置などに向けた法案を次期国会に提出する。8日から中国からの入国者の検査を抗原定量またはPCR検査に切り替える。直行便での入国者に陰性証明を求める。中国便の増便について必要な制限を続ける。4月には統一地方選がある。デジタル田園都市国家構想を進めて地方創生につなげていくため、与党としてしっかりした成果を出したい。
【質疑】
―テレビ番組で防衛費の財源となる増税の実施前に衆院選があるとの認識を示しました。年内に解散に踏み切る考えはありますか。
院の任期満了は25年10月で衆院選はいつでもありうる。防衛費の財源確保のための税制措置は24年以降、27年度に向けて適切な時期に複数年かけて段階的に実施することが決まっている。結果として増税前に衆院選があることも日程上、可能性の問題としてあり得ると発言した。衆院解散・総選挙は専権事項として時の首相が判断する。
―新型コロナの感染者数が増加傾向にあります。感染症対策や旅行支援、インバウンド増加に向けた政策の方針を教えてください。
 新型コロナ対策は社会経済活動との両立を図る取り組みを進めてきた。専門家などの意見も聞きながら最新のエビデンスに基づき議論を進めたい。全国旅行支援を10日から再開する。全国的な旅行需要の喚起を着実に進める。インバウンドの本格的な回復に向けて多額の予算を計上している。訪日外国人の旅行消費額5兆円超の速やかな達成を目指す。
―ロシアによるウクライナ侵攻は収束の糸口が見いだせません。主要7カ国首脳会議(G7サミット)をどのような会議にし国際社会をリードしていきますか。
 力による一方的な現状変更は世界のどこでも許してはならないという強力なメッセージを広島サミットで示すことが重要だ。日本は唯一の戦争被爆国としてロシアによる核による威嚇は断じて受け入れることはできない。核兵器のない世界に向け、G7として世界にメッセージを発したい。ロシアへの制裁とウクライナ支援を改めて確認するとともに中間に位置する多くの国々とも連携する。停戦に向け努力すべきだというメッセージを世界に広げていく手掛かりをつかみたい。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20221224&ng=DGKKZO67125520U2A221C2EA2000 (日経新聞 2022.12.24) 防衛・GX・子ども 重点3分野、規模ありき、来年度予算案、財源確保で詰め急務
 政府の2023年度予算案は岸田文雄首相が重視する防衛・GX(グリーントランスフォーメーション)・子ども予算の大幅増額に踏み出した。いずれも規模の議論が先行し、具体的な政策や歳出改革の議論は後回しになった。積み増した防衛費は使い道の優先度が曖昧なまま。成長戦略の中核となるはずのGXの取り組みも詳細は詰まっていない。防衛費は27年度までの総額で43兆円。GXは民間投資の呼び水として今後10年で20兆円規模。子ども予算は倍増。いずれも当面の歳出規模が先に固まった。肝心の中身や財源確保は後付けになっている。防衛力の強化は安全保障環境の変化への対応に向けて、必要性を見極めて予算を積み上げたとは言いにくい。財源確保の増税も法人・所得・たばこの3税を充てるところまでしか詰めなかった。施行時期は先送りした。GXは20兆円規模の移行債を財源に、脱炭素投資を加速するという。ただ国内で再生可能エネルギーなどの具体的な大型案件は乏しいのが実情。子ども予算は使途も財源も詳細な議論すら始まっていない。一般会計で扱う防衛や子どもの予算は財源が確保できなければ、他の政策経費を圧迫する。ただでさえ少ない成長戦略に充てられるお金がさらに減りかねない。23年度予算案の編成過程で改めて浮き彫りになったのは歳出改革の意識の薄さだ。社会保障以外の政策経費は実質1500億円ほど増えた。従来の約330億円と比べ4倍以上の伸びだ。防衛費は増税の前段として3兆円弱を歳出改革や決算剰余金などで本当にまかなえるのか見通せない。具体的な各事業の削減論が浮上すれば、関係業界や与党議員らが反発する可能性が高い。決算剰余金は税収の上振れや結果的に経費を使わなかった不用額などの積み上げで生じる。この10年の平均は約1.4兆円。財政法は剰余金の半額を国債償還に充てるよう義務づける。残り0.7兆円を防衛財源として当て込む。税収が下ぶれすれば皮算用に終わる。借金頼みの財政運営を避けるには、一般会計にとどまらず、監視の目が届きにくい補正予算や予備費を含めたムダの洗い出しも欠かせない。ガソリン価格を抑えるために石油元売りに配る補助金は21年度の補正予算で始めた。その後も上積みや延長を繰り返し、既に累計6兆円ほど積んだ。化石燃料への依存を助長し、脱炭素の妨げになったとの見方がある。支援を必要とする層も絞り込めておらず、バラマキとの批判も絶えない。巨額の補助が適切に使われているかも疑わしい。財務省は「販売価格に補助金の全額が反映されていない可能性がある」と問題視する。ガソリンスタンド事業者の利益になったケースがあるとみている。コロナ対策や物価高対応などで地方に配る「地方創生臨時交付金」は補正や予備費で累計17兆円超を積んだ。うち5兆円ほどはコロナ関連なら使途を問わない仕組みだ。ずさんな実態は既に明るみに出ている。会計検査院は21年度の決算検査報告で、警察署など公的機関の水道料の減免といった不適切な使い方が少なくとも7億円ほどあったと指摘した。一般会計だけで114兆円と過去最大に膨らんだ日本の予算。手助けを必要とする家計や企業をきちんと支えつつ、成長の芽を育てる中身になっているのか不断のチェックが重要になる。

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15544415.html (朝日新聞社説 2023年2月2日) 中期財政試算 疑わしい「黒字化実現」
 政府が中長期の財政試算をまとめた。財政健全化目標が達成可能だとするが、大型の補正予算を組まないのが前提とされ、実現性は疑わしい。コロナ禍で失われた財政規律を立て直し、肥大化した歳出を着実に見直すことが求められる。政府は、国と地方の基礎的財政収支を25年度に黒字にする目標を掲げている。昨年末に防衛費の大幅拡充を決めたため、従来試算より収支が悪化する懸念が高まっていたが、内閣府が先週公表した最新の試算は、半年前とほぼ同じ中身だった。23~25年度の実質経済成長率を平均1・8%と想定すると、基礎的収支は25年度も1・5兆円の赤字になる。だが、今まで同様の歳出効率化を続ければ、1・1兆円の黒字に転じ、目標が達成できるという。だが、額面通りには受けとれない。試算には多くの非現実的な仮定があり、実際には、目標の達成は極めて難しいと考えざるを得ないからだ。そもそも今年度の基礎的収支は、約49兆円もの記録的な赤字に陥る見通しだ。それがわずか3年で大幅に持ち直すと試算する最大の理由は、近年急膨張した補正予算を今後は編成しないと想定したことにある。岸田首相は、コロナや物価高騰の対策が補正予算の大部分を占めていると説明したうえで、今後「減額していく」と述べている。だが、補正予算に計上されているのは、それだけではない。半導体の生産支援や研究開発の強化、農林水産業の生産性向上など、各省庁の目玉政策も毎年盛り込まれてきた。つまり近年の補正予算は、当初予算の金額を小さく見せるために計上しきれなかった事業を実施する「抜け道」になっている。与野党の財政規律がまひするなか、抜本的に補正予算を縮小できるかは、疑わしい。試算は、防衛費増額にあたって政府の計画通りに安定財源が確保できることも前提にしている。だが、防衛費向けの増税には自民党内で反対論が根強く、歳出改革も具体的な中身が固まっていない。今後3年間で平均1・8%の経済成長との前提も実現は危うい。それに基づく税収見通しも過大な可能性がある。中期試算は、できるだけ客観的な見通しを示すことで、財政健全化に必要な歳出歳入両面の改革を政府に迫るためにある。今回の結果からは、緊急対応で増やした予算を平時に戻すことが必須なのは明らかだ。政府は、政策の優先順位を洗い直し、具体的な対策を詰めるべきだ。達成困難な現実から目を背けて対応を先送りするならば、試算の意味は無い。

| 経済・雇用::2021.4~ | 12:04 AM | comments (x) | trackback (x) |

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