■CALENDAR■
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
<<前月 2024年11月 次月>>
■NEW ENTRIES■
■CATEGORIES■
■ARCHIVES■
■OTHER■
左のCATEGORIES欄の該当部分をクリックすると、カテゴリー毎に、広津もと子の見解を見ることができます。また、ARCHIVESの見たい月をクリックすると、その月のカレンダーが一番上に出てきますので、その日付をクリックすると、見たい日の記録が出てきます。ただし、投稿のなかった日付は、クリックすることができないようになっています。

2017.2.18 辺野古新基地建設とオスプレイについて (2017年2月19、23、26日に追加あり)
    
    オスプレイ      みさご(鷹の一種)        ワシ           ツバメ

     
  2016.12.16産経新聞      フグ          トビウオ     マンタ(エイ)
 墜落したオスプレイの処理

(図の説明:「オスプレイ」は鷹の一種である「みさご」の名前をとったものだが、墜落の報告が多く、顔・形が鷹よりもフグに似ており、素人目に見ても威嚇効果はあるが流体中での抵抗が大きくて飛びにくそうだ。私は、生物に学ぶのなら、鳥はツバメ、魚はトビウオがスピードが出そうで、機体全体で浮力(揚力)を作りたければマンタではないかと考える)

(1)日米両首脳の合意について
1)日米安全保障条約第5条の尖閣諸島に適用
 安倍首相が、2月10日、*1-1のように、ワシントンのホワイトハウスでトランプ米大統領と初の首脳会談を行い、日米安全保障条約第5条が沖縄県の尖閣諸島に適用されることを確認したのは、日本が望むように進んでよかった。

2)米軍普天間飛行場の辺野古移設
 両首脳が、「米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設が、唯一の解決策」としたのも、日本政府が望む方向に話を進めたようだが、実際には唯一ではなく、他にもっと安価で賢いやり方があるため、「唯一」という根拠は「ガラス細工のような」という感傷的な言葉以外では一度も説明されたことがない。そのため、観光資源にもなる美しい自然を破壊しつつ、そのために多額の税金を無駄遣いしていることについては、沖縄県民以外の国民も納得できない人が多い。

 全国紙の毎日新聞も、*1-2のように、「辺野古移設で沖縄の美しい海がまた埋め立てられていく」「海上工事に政府が着手し、移設反対派に怒りと焦燥感が交錯している」としており、私も同感だ。そして、キャンプ・シュワブゲート前に集結して抗議の声をあげた移設反対派や翁長知事・稲嶺名護市長に感謝するとともに、*1-3のように、沖縄の民意が日本政府の意志で置き去りにされそうなことで、日本の民主主義や三権分立に絶望感を感じる。

3)経済分野
 自由で公正な貿易ルールに基づき日米間や地域の経済関係を強化するそうだが、アジア太平洋地域など一定の地域だけでまとまるのは、本当は公正ではないだろう。また、日米貿易摩擦と言えば必ず自動車を取り上げているが、現在、日本の自動車市場の関税率は0%で完全に開放している上、*4-1のように、トヨタの工場はインディアナ州に立地しており、その問題はかなり前に解決している。

 その上、次世代自動車は、*4-2のように、電気自動車(EV)では「テスラ」の方が進んでおり、自動運転車でも、*4-3のように、「テスラ」の方が進んだため、いつまでも自動車は日本の方が強いと考えるのは、アメリカ政府も日本政府もおかしい。しかし、トランプ大統領は、*4-4のように、環境長官に温暖化懐疑派を据え、「パリ協定」の離脱にも言及しており、アメリカ大統領の政策によって、せっかくアメリカで発展した次世代自動車の普及が遅れる可能性もある。つまり、トランプ大統領の産業政策は、20~30年遅れているのだ。

 なお、トランプ大統領は、日本の金融政策を「円安誘導」としており、確かに日本は金融緩和したため円の価値が下がって円安になってはいるが、私は、この程度が円の実力だと考える。また、円など通貨の為替レートは、「貿易収支+金融収支」が黒字なら上がり、赤字なら下がるものであるため、日本も無理せずに復興用の建築資材や外国人労働力を輸入すれば、もっと円安になった筈である。

(2)「辺野古が唯一」ではない理由
 日米防衛相は、*3-1、*3-2のように、「米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設は『“唯一”の解決策』との認識で一致した」とのことだが、“唯一”である理由を説明されたことは一度もない。そして、既に空港のある人口の少ない離島の使用などの他の代替案と比較検討された結果ではないため、これは、米国の要請ではなく、日本の要請だと、私は考える。

 また、*3-2に書かれているように、在日米軍駐留経費の日本側負担は、2015年度で約1,910億円、負担率86.4%、韓国は負担率4割、ドイツは負担率3割程度で、日本は米軍駐留や防衛に関して、現在では、経済も含めて米国に譲歩ばかりを強いられるほどの負い目は負っていない。

 なお、沖縄県の翁長知事は2014年11月の知事選で辺野古移設反対を公約に掲げて圧勝し、その後、沖縄県内では2014年1月の名護市長選、2014年12月の衆院選全選挙区、2016年7月の参院選のいずれも新基地建設を拒否する候補が当選し、2016年1月の宜野湾市長選は現職が勝利したものの選挙戦で辺野古移設の賛否を明言しておらず、2016年6月の県議選では翁長県政与党が圧勝しているため、沖縄県民の民意は明らかだ。そのため、翁長沖縄県知事があらゆる権限を使って建設を阻止するのは正しい。

 そのため、日本政府は「基地で潤わせている沖縄」というような僭越な先入観は捨て、観光も含む沖縄県の産業政策を真面目に検討すべきだ。そして、これによって、辺野古埋め立ての膨大な予算や基地の補償金を節約できる上、既にスタートしている沖縄のエンジンに火をつけることができる。

(3)オスプレイについて
 政府は、*2-1のように、数回にわたる選挙結果や世論調査で示された辺野古新基地建設反対の圧倒的多数の民意を踏みにじり、大規模な海域を埋め立てる海上工事に着手したそうだが、その地域は、世界でも貴重な自然が息づく海域で、日本国民や沖縄県民の財産だ。そのため、「宝の自然を破壊すること」「沖縄県民の基地負担が増えること」「国民の無駄な歳出が増えること」などの理由で、私も辺野古新基地建設に反対だ。

 また、オスプレイとは、タカ科の鳥「ミサゴ」の英語名だそうだが、欠陥機と言われるオスプレイは、垂直離着陸が可能な飛行機であるという点で画期的ではあるものの、確かに流体の中での抵抗が大きく、飛びにくそうな機体なのである。そのため、空中を飛ぶ鳥に学ぶのならタカよりツバメの方がスピードが出て飛びやすそうであるし、同じ流体である水中を泳ぐ魚に学ぶのならフグに似た体形のオスプレイよりも、スピード重視ではトビウオ、浮力重視ではマンタ(エイ)を参考にした方が機能的にできると思われる。

 その上、オスプレイは、神業のような空中給油をしているのだから事故が起こるのは当然で、空中で給油しなくてもよいように水素燃料を使うなど、安全で長距離飛行が可能な次世代燃料に変更すべきだ。なお、運んでいる荷物の中に放射性物質や毒物が含まれる可能性があるなど、とんでもない話だ。

 さらに、*2-2のように、目的は不明だが、米軍は200フィート(約60メートル)での飛行もあり得るとしており、オスプレイの飛行訓練ルートは東北から九州まで六つあるため、沖縄だけの問題ではない。

*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12793443.html (朝日新聞 2017年2月12日) 尖閣に安保、共同声明 経済対話、枠組み新設 日米首脳、同盟強化を確認
 安倍晋三首相は10日午後(日本時間11日未明)、ワシントンのホワイトハウスでトランプ米大統領と初の首脳会談を行った。両首脳は日米同盟の強化で一致し、米国の日本防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条が沖縄県の尖閣諸島に適用されることを確認した。また、麻生太郎副総理兼財務相とペンス副大統領による日米経済対話の枠組み新設で合意した。日米両政府は、首脳会談の成果をまとめた共同声明を文書で発表した。会談は約40分間行われ、終了後に両首脳が共同で記者会見。その後、経済分野を中心に約1時間のワーキングランチが開かれた。会見で、首相は「日米同盟の絆は揺るぎないものであり、私とトランプ大統領の手でさらなる強化を進めていくという強い決意を共有した」と強調。トランプ氏は「同盟関係にさらなる投資を行い、私たちの防衛力をさらに高めていくことが大切だ」などと語った。トランプ氏は大統領選の期間中、在日米軍の撤退や、駐留経費の負担増を日本政府に求めることを示唆していたが、会見では「私たちの軍を受け入れてくれている日本国民に感謝したい」と表明。日本側の説明によると、首脳会談でも取り上げなかったという。両首脳は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設計画について、「普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策」と位置づけた。北朝鮮には核・ミサイル開発の放棄を求め、東シナ海や南シナ海で海洋進出を強める中国を念頭に、地域の緊張を高める行動は抑制すべきだとの認識で一致した。また、経済分野では、自由で公正な貿易のルールに基づき、日米二国間の枠組みも排除せず、アジア太平洋地域の経済関係を強化していくことを確認した。新設する経済対話では、(1)財政・金融政策(2)インフラやエネルギーなどの協力プロジェクト(3)二国間の貿易枠組みの3分野を包括的に議論することにした。一方、米国へのインフラ投資や雇用創出などを盛り込んだ日本政府の経済協力案「日米成長雇用イニシアチブ」は首脳会談では示さず、日米間で今後、検討していくことにした。トランプ氏が問題視していた日本の自動車貿易や為替政策も取り上げられなかった。トランプ氏が難民や中東・アフリカ7カ国からの入国を一時禁止した問題についても、会談では議題にならなかったという。終了後の会見で、この問題を問われた首相は「難民政策、移民政策はその国の内政問題であり、コメントは差し控えたい」と述べた。(ワシントン=高橋福子)
■日米両首脳の合意事項(骨子)
▼日米同盟はアジア太平洋地域における平和、繁栄及び自由の礎
▼日米安全保障条約第5条は尖閣諸島に適用
▼米軍普天間飛行場の辺野古移設は唯一の解決策
▼自由で公正な貿易のルールに基づき、日米間や地域の経済関係を強化
▼麻生太郎副総理とペンス副大統領による日米経済対話の新設
▼安倍晋三首相はトランプ大統領の年内訪日を招請、ペンス氏の早期の東京訪問を歓迎し、トランプ氏は招待を受け入れ

*1-2:http://mainichi.jp/articles/20170206/k00/00e/040/212000c (毎日新聞 2017年2月6日) 辺野古移設 沖縄の美しい海、また埋め立てられていく
●海上工事に政府が着手 移設反対派に怒りと焦燥感が交錯
 沖縄の美しい海を埋め立てて巨大な米軍基地を造るための工事がまた一歩、前へと進んだ。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設に向け、政府が6日、初めて海上工事に着手。辺野古の米軍キャンプ・シュワブのゲート前では、移設反対派が作業に向かう車両を阻止し、排除する機動隊と衝突した。埋め立てへのカウントダウンが始まり、反対派には怒りと焦燥感が交錯した。まだ真っ暗な午前6時前、前夜の雨もあり肌寒いキャンプ・シュワブゲート前に続々と移設反対派が集結。「これ以上工事を進めないためには、作業員を中に入れないという抵抗をせざるを得ない」。約150人が「辺野古新基地NO」「辺野古埋立阻止」などと書かれたプラカードを掲げるなどして抗議の声をあげた。同県南風原町の稲福次義さん(63)は「市民の意思をきょう示さなければ、政府の意向を沖縄が黙認したことになる。民意を無視しようとも、県民の意思は揺るがない」と語気を強めた。  午前8時15分、作業員が乗った乗用車が到着。作業現場に向かうためキャンプ内へ進入しようとしたが、反対派は入り口前に座り込んだ。すると沖縄県警の機動隊が隊列を組んで阻みながら、隣接する出口の方から工事車両を通した。反対派からは「きちんと手順を踏め」と怒号が飛んだ。その後も続々と大型トラックやクレーン付き車両などが到着。「帰れ、帰れ」。反対派はゲート前で腕を組んで壁を作り声を張り上げた。一進一退のせめぎ合いの末、午前10時半ごろ、足止めとなっていた車両がキャンプの方へ。機動隊は約80人を次々に排除。腕をつかまれた高齢の男性は「県警は県民とアメリカとどっちが大事なんだ」と叫んだ。ゲート前には、辺野古への移設阻止を訴えるため翁長雄志(おなが・たけし)知事と訪米し帰国したばかりの稲嶺進・名護市長も駆けつけた。「アメリカでも、沖縄の置かれている状況はよく聞いてもらえたと思っている。全く無視し続けるのは日本政府だ。訪米中に防衛大臣が『辺野古が唯一の解決策』との見解を示すなど、恥も外聞もない」と怒りをあらわにしていた。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017020702000134.html (東京新聞社説 2017年2月7日) 辺野古海上工事 民意は置き去りなのか
 日本は法治国家だが民主主義国家でもある。安全保障は国の専管事項でも、選挙に表れた沖縄県民の民意を置き去りにしては、日米安全保障条約で課せられた基地提供の義務は円滑には果たせまい。政府がきのう、沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の「移設」に向けて、名護市辺野古の海上で代替施設の本体工事に着手した。海水の汚濁拡散を防ぐ防止膜の設置を経て、五月にも埋め立て区域の護岸造成を始める、という。沖縄県や名護市など、地元自治体が強く反対する中での工事の着手である。到底、容認できない。政府が海上での工事に着手したのは、沖縄県と国とが争っていた裁判で昨年十二月、県側の敗訴が最高裁で確定したためでもある。菅義偉官房長官は会見で「わが国は法治国家だ。最高裁判決や和解の趣旨に従い、国と県が協力して誠実に対応し、埋め立て工事を進める」と工事を正当化した。確定判決に従うのは当然だが、日本は民主主義国家でもある。安倍内閣は自由、民主主義、人権、法の支配という基本的価値を重んじると言いながら、翁長雄志県知事や稲嶺進名護市長に託された「県内移設」反対の民意をなぜないがしろにできるのか。訓練に伴う騒音や事故、米兵らによる事件など、米軍基地の存在に伴う地元住民の負担は重い。昨年、米軍北部訓練場が部分返還されたが、それでも沖縄県内には在日米軍専用施設の七割が集中する。日米安保体制を支えるため沖縄県民がより多くの基地負担を強いられる実態は変わらない。北部訓練場返還はヘリパッドの新設が条件だった。普天間返還も代替施設建設が条件だ。県内で基地を「たらい回し」しても県民の負担は抜本的には軽減されない。国外・県外移設こそ負担を抜本的に軽減する解決策ではないのか。安倍内閣はマティス米国防長官と、辺野古移設が唯一の解決策と確認したが、硬直的な発想は問題解決を遠のかせる。政府は工事強行ではなく、いま一度、沖縄県民を代表する翁長氏と話し合いのテーブルに着いたらどうか。稲嶺氏は、海上での工事着手を「異常事態だ。日本政府はわれわれを国民として見ているのか」と批判した。怒りの矛先は、法治国家と言いながら、憲法に定められた基本的人権を沖縄県民には認めようとしない政府に向けられている。本土に住む私たちも、そのことを自覚しなければならない。

<オスプレイ>
*2-1:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-440112.html (琉球新報社説 2017年2月7日) 辺野古海上工事強行 海域破壊取り返せない 県は提訴し対抗策尽くせ
 政府は大規模な海域埋め立てに向けた辺野古新基地の海上工事に着手した。幾たびの選挙結果や世論調査で示された建設反対の圧倒的な民意を踏みにじる暴挙に強い怒りを禁じえない。着手を前に県は詳細な説明を求めていたが、政府は一方的に打ち切った。地方自治を無視する政府の横暴に強く抗議する。新基地は危険なオスプレイの配備など在沖基地をさらに強化し、県民の財産であり、世界にとっても貴重な自然が息づく海域を決定的に破壊する。改めて政府に工事の即時中止を要求し、県には工事阻止の手段を尽くすよう求めたい。
●オスプレイ欠陥明らかに
 辺野古新基地建設は「県民の基地負担増」「大規模な自然破壊」の大きな二つの理由で到底、容認できない。辺野古新基地はヘリ基地と船舶の港湾機能を併せ持つ施設である。オスプレイほか最新鋭のF35戦闘機の配備、運用で沖縄の基地負担は確実に増す。その欠陥機オスプレイの配備計画を政府は長く隠蔽(いんぺい)し、県民を欺き続けてきた。オスプレイは昨年末墜落し、県民の不安は的中した。空中給油訓練中の事故が、機体構造と訓練態様の欠陥を浮き彫りにした。琉球新報が報道した米軍資料は「空中給油のホースや装備がオスプレイにぶつかることがあり得る」と機体構造の欠陥を認め、「プロペラにぶつかれば大惨事を起こしかねない」と墜落事故を予想していた。その通りの墜落事故が今回、起きた。「ホースがプロペラにぶつかる」構造欠陥が根本的に改善されない限り、またも「大惨事」が起きるのは必然だ。オスプレイの安全運用を否定する極めて重大な新事実の報道にも米軍、政府は口をつぐんでいる。そして海上工事を強行した。県民の命を犠牲に米軍基地建設を優先しているのである。埋め立てられる海域は、本島周辺に残された最後の優良な自然海域の一つだ。日本自然保護協会が大浦湾で行った調査で、海底のサンゴ被度は40%を超し、「健全な状態」と評価された。228個もの大型ブロック投入はサンゴを傷つけ、固有の自然体系に影響を及ぼそう。国際自然保護連合は何度もジュゴン保護を勧告したが、政府は無視した。浮具設置でジュゴンは姿を消した。埋め立てにより大浦湾の自然は壊滅的なダメージを避けられない。海域の豊かな自然は、大切な観光資源でもある。貴重生物の命と県民の観光資源が、今まさに奪われようとしているのである。
●国際連帯の情報戦略を
 来日した米国防長官は首相、防衛相と会談し、辺野古新基地推進を確認した。県民や県の異議申し立てを一顧だにしない姿勢だ。日米同盟が政府の権力を駆使して沖縄の民意を圧殺しようとしているのである。しかし県民は屈しない。日米の犠牲に甘んずることを県民は決して許容しない。日米両政府の強固な圧力に屈せず、県は法的、行政的なあらゆる対抗措置を講じてもらいたい。政府は矢継ぎ早に既成事実を積み上げ、ブロック投下後に汚濁防止膜を設置し、護岸設置の埋め立て工事に進む計画とされる。3月末に期限が切れる岩礁破砕許可の更新手続きをも一方的に「不要」と主張し、回避する方針だ。海域埋め立てで失われる自然は回復できない。県は一刻の猶予も置かず、前知事による埋め立て承認の撤回や、不当な岩礁破砕に対する提訴に踏み切るべきだ。日米両政府の抑圧を受けながらも県民は孤立してはいない。国内外に建設反対の世論を広げ、両政府に突き付けねばならない。政府の「地元住民は承認している」「オスプレイは安全」などの情報操作に対抗する必要がある。軍事、法律、行政の専門家や環境保護団体を巻き込み、国際連帯を強める情報戦略が重要になる

*2-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-444661.html (琉球新報社説 2017年2月15日) オスプレイ危険高度 直ちに飛行停止せよ 「欠陥と低空」二重の不安
 米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイに関する日本政府の二重基準が明らかになった。オスプレイは米軍普天間飛行場代替施設の辺野古新基地への配備が既定路線でありながら、日本政府の意向で公文書から配備に関する表記が削除された経緯がある。日本政府が国民世論の反発を避けるための方策であり、当初からその配備には疑問符が付いた。今回明らかになった事実も深刻だ。日本政府は安全策として最低安全高度を500フィート(約150メートル)以上と県民に説明したが、米軍の運用上は200フィート(約60メートル)での飛行もあり得るとの内容だ。
●米軍の運用優先
 航空法施行規則によると、最低安全高度とはエンジンが停止した際に地上や水上の人、物に危険を及ぼすことなく着陸できる高度のことだ。人家密集地域で最も高い障害物から300メートル、水上などでは150メートルなどと定めている。2013年には操縦士が共同通信の取材に「低空飛行訓練は200フィートまで下げて飛ぶ」と答えている。オスプレイの飛行訓練ルートは東北から九州まで六つある。県外各地では実際に低空飛行訓練がこれまで実施されてきた。沖縄だけ低空飛行がないと言われても信じ難い。危険は沖縄だけにとどまらないのだ。オスプレイの配備に当たって、日米両政府の合意に「安全性を確保するため、その高度(500フィート)を下回る飛行をせざるを得ない場合もある」とのただし書きがあった。例外を設けることで国民の安全より、米軍の運用を優先したと言われても仕方がない。オスプレイの低空飛行が危険なのは、機体の構造に不備があり、緊急時に対応が困難だからだ。専門家によると、エンジン停止時に気流をプロペラに受けて回転させ、軟着陸する自動回転(オートローテーション)機能がオスプレイには欠けている。防衛省は自動回転機能を有するとしているが、それでも従来のヘリに比べて機体が重く、プロペラが小さいことから1分間に機体が落下する降下率は約5千フィート(1525メートル)とされる。既存のヘリの降下率は1分間に1600フィート(約487メートル)であり、オスプレイの落下速度は3倍にもなる。一方、オスプレイがヘリモードから固定翼モードに転換するには約12秒かかる。固定翼で滑空するにしろ、自動回転機能を使うにしても60メートルでは危険回避の手順を踏む前に機体は地面に激突する。
●拭えぬ疑念
 問題なのは日本政府がこれまで二重基準を容認してきたことだ。配備の事実隠し、最低安全高度の設定など国民への説明を避け、密室で米国と合意を重ねてきた。欠陥機との指摘があるオスプレイを配備する必然性が見当たらない。その上に危険な低空飛行を容認するならば、いつ頭上に落ちてくるか不安でならない。国民・県民を安心させるには運用改善といった小手先の対処では不十分だ。オスプレイの即時飛行停止しか解決策はない。ハワイでは15年に、低高度で空中制止したオスプレイが自らのエンジンで巻き上げた砂やちりによってエンジンが停止し、墜落した。米軍の報告書によれば、10~12米会計年度にアフガニスタンで起きたオスプレイの事故は約90時間に1件で、全航空機の約3746時間に1件と比べ突出している。そもそもオスプレイは軍用機として適当なのか。名護での墜落につながった空中給油をはじめ、荒れ地での離着陸などといった特殊な作戦行動に向かない構造的な欠陥があるとの疑念が拭えない。日本政府が米軍の顔色をうかがい、国民に二枚舌を使うような状況では、対策を取ることなど考えられない。沖縄をはじめ、全国各地の住民が危険な低空飛行、さらにはオスプレイ配備に反対の声を上げるしか道はない。

<“唯一”の根拠>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201702/CK2017020502000124.html (東京新聞 2017年2月5日) 【政治】「辺野古が唯一」日米防衛相一致 翁長氏、反対へ決意新た
 訪米中の沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事は三日、マティス米国防長官と安倍晋三首相ら日本側が米軍普天間(ふてんま)飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)の移設に伴う名護市辺野古(へのこ)への新基地建設を「唯一の解決策」と確認したことについて「私の決意はかえって強くなっている」と反対の思いを新たにした。今後もあらゆる権限を使って建設阻止を目指し、沖縄の民意を世界に発信し続ける方針だ。知事として三度目となる首都ワシントン訪問は、トランプ米大統領の就任直後で、米国のアジア太平洋政策が固まっていない時期を選んだ。米下院議員十二人との面会や講演を通し、国土面積の0・6%にすぎない沖縄県に、在日米軍専用施設の七割が集中する過重負担の軽減や、新基地計画の見直しを訴えた。その最中に、日米両政府が沖縄の民意を顧みず、辺野古新基地の建設推進で一致したことに、翁長氏は「沖縄県民に対して大変失礼なやり方」と反発。「県民の感情的な高まりが米軍全体への抗議に変わり、基地の安定運用に影響しかねない。日米安保体制に大きな禍根を残す」と指摘した。安倍政権は六日に海上での本体工事に着手する方針で、翁長氏はあらゆる権限を使って建設を阻止すると主張。沖縄県が工事主体の防衛省沖縄防衛局に対し三月末で期限切れを迎える県の「岩礁破砕許可」の更新が必要であると通知するなど、本体工事の続行に抵抗する構えを見せる。翁長氏は「沖縄県民の圧倒的多数が反対していることを、トランプ政権の関係者に粘り強く訴えていきたい」と今後も働き掛けを続ける考えだ。

*3-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-439193.html (琉球新報社説 2017年2月5日) 日米「辺野古唯一」 民意踏みにじる愚論だ
 稲田朋美防衛相とマティス米国防長官が初めて会談した。マティス氏は前日に安倍晋三首相とも会談した。これらの会談では日米同盟の一層の強化に取り組む方針を確認した。さらに米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設について「唯一の解決策」との認識で一致したという。県民世論調査では7~8割が辺野古移設反対を示している。「唯一の解決策」との認識には断じて同意できない。訪米中の翁長雄志知事は「辺野古に固執すると日米安保体制に大きな禍根を残す」と批判した。当然だ。翁長氏は2014年11月の知事選で、辺野古移設反対を公約に掲げて圧勝して当選した。県内では14年1月の名護市長選、12月の衆院選全選挙区、16年7月の参院選のいずれも新基地建設を拒否する候補が当選した。16年1月の宜野湾市長選は現職が勝利したが、選挙戦で辺野古移設の賛否を明言していない。6月の県議選では翁長県政与党が圧勝した。これらの選挙結果を見ても、沖縄の大多数の民意は「新基地建設拒否」であることは明らかだ。それにもかかわらず、日米両政府は辺野古移設で強硬姿勢を取り続けている。沖縄の自己決定権を踏みにじる行為が民主主義社会でまかり通っていいはずがない。トランプ大統領が選挙中に増額要求を示唆した在日米軍の駐留経費負担に関しては、一連の会談で議題にならなかったようだ。15年度の日本側負担は約1910億円で、負担率は86・4%だ。これに対して韓国は4割、ドイツは3割程度だ。マティス氏も会見で「日本は負担の共有モデル」と評価しており、負担増など応じられるはずがない。増額要求がなかったからと喜ぶわけにはいかない。なぜならば、日本は16年度から5年間の経費を削減するよう米側に要求していたからだ。今後は減額要求すら困難な情勢になってしまった。すでにトランプ流の「取引」に引き込まれているではないか。外務省によるとマティス氏は普天間移設について、こう述べたという。「プランは二つしかない。一つは辺野古。二つ目も辺野古だ」。民意無視の愚論だ。沖縄からマティス氏に、言葉を投げ返したい。「プランは二つしかない。一つは県外。二つ目は国外だ」

<次世代の自動車>
*4-1:http://mainichi.jp/articles/20170212/ddm/008/010/109000c (毎日新聞 2017年2月12日) 日米首脳会談 懸念薄れ、市場好感 経済対話、楽観と警戒
 日米首脳会談で、トランプ氏が円安や自動車輸出への批判を控えたことについて、市場関係者の間に「期待した以上の内容」と好感する声が広がった。最近の市場の重しになっていた日米摩擦への懸念が薄れたことで、週明け以降の株価にも好影響を与えるとの見方が出ている。「正直驚いた。日本側の思い描いた形ではないか」(ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミスト)。「日本の外交チームが相当周到に準備した印象」(大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミスト)--。首脳会談について「前向きのサプライズ」との声が相次いだ。市場では、トランプ氏が首脳会談で対日貿易赤字を問題視し、是正策を要求するとの見方が強かった。日銀の金融政策を「円安誘導」とけん制することへの懸念もあり、7日の外国為替市場で一時、2カ月ぶりの円高・ドル安水準をつけた。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は「市場は身構えていたが、杞憂(きゆう)に終わった。最大の懸念が薄れたことで、日経平均株価は1月の高値の1万9600円台を超えてくる」と株価上昇に弾みが付くと予測する。今後の展開で市場関係者が注視するのが、ペンス副大統領と麻生太郎副総理による経済対話の行方だ。ペンス氏がトヨタの工場が立地するインディアナ州知事を務めた穏健派だけに、熊谷氏は「日本ペースで交渉できる可能性がある」と期待する。一方で、矢嶋氏は「トランプ政権の副大統領なので、雇用創出や貿易収支改善が進まなければ(批判の)発言を始める。楽観はできない」と警戒が必要との立場だ。通貨安批判への懸念も依然強い。大規模減税やインフラ投資を掲げるトランプ氏の政策は、海外からの資金流入を招く一方、日本は大規模金融緩和で長期金利を低く抑えており、円安・ドル高が進みやすい。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「米国の経済環境を考えるとドル高は続く。いずれ日銀の金融政策が円安誘導をしているとの批判が再燃するリスクはある」と指摘している。

*4-2:http://qbiz.jp/article/103491/1/ (西日本新聞 2017年2月11日) テスラ充電施設 九州で初の設置  福岡・須恵町
 米国の電気自動車(EV)メーカー「テスラ」の日本法人が10日、福岡県須恵町に、テスラ車専用の急速充電施設を開設した=写真。同様の施設は国内14カ所目で、九州では初めて。本州から九州にテスラ車でドライブする人などの利用を想定している。30分の充電で270キロ走行できるという。施設は、九州自動車道のインターチェンジ近くのホームセンター駐車場にあり、充電器6台を置く。24時間利用できる。また、ヒルトン福岡シーホーク(福岡市)の駐車場にも普通充電器4台を設置した。テスラの日本法人は「今後も専用充電施設のネットワークを拡大したい」としている。

*4-3:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO98310220R10C16A3000000/?n_cid=NMAIL002 (日経新聞 2016/4/11) 「渋滞苦」から解放 自動運転、簡易版でまずお試し
 「やっちゃえNISSAN」。歌手の矢沢永吉がハンドルから手を離してニヤリと笑う日産自動車のテレビCMが示すように、「自動運転車」の実用化が近づいている。2020年に市販化が期待されるのは、国内で「レベル3」と定義される自動運転車だ。加減速や制御のすべてをクルマが行い、緊急時のブレーキ操作だけをドライバーが担うものだ。自動運転車では、ドライバーの認知、判断、操作をサポートする要素技術が重要なカギを握るのだが、実は人間の目(認知)や手足(操作)を代替する技術の大半は、かなり熟成されている。「特に操作については、すでにクルマ側は人間の100倍の能力を発揮することが可能」(日産自動車ADAS&AD開発部の飯島徹也部長)というほどだ。例えば、ここ数年で普及した「自動ブレーキ」は、高精細のカメラやミリ波レーダー、超音波センサーを駆使して前方衝突を防ぐ。他にも、走行車線からクルマが出ないようにハンドルを自動制御する「レーンキープ技術」や、後方カメラ、センサーを使って駐車スペースを把握し、ハンドル操作をせずに済む「自動駐車システム」など、AI(人工知能)による複雑な判断を必要としない限られたシーンでは、すでに自動運転の要素技術が生きている。
■簡易版でテスラ先行
 これらを組み合わせて、簡易な自動運転機能を市販車でいち早く搭載したのが、テスラモーターズジャパンだ。同社の電気自動車「モデルS」は、ソフトウエアを2016年1月にアップデート。前方のミリ波レーダーや単眼カメラ、車体の周囲360度を感知する12個の超音波センサーを使って、「オートパイロット」「オートレーンチェンジ」「オートパーク」の3つが機能する。このうちオートパイロットは、前方車両の追従や自動ブレーキに加えて、ハンドルを制御して同じ車線を維持する機能だ。速度標識をカメラで認識しながら、規制速度のプラス10km/hを上限として加減速を行い、信号で完全停止した後も前方のクルマの発進を検知して自動で走り出す。この間、ドライバーはハンドルに手を添えておくだけだ。実際に試乗すると、最初はブレーキペダルをすぐ踏めるよう身構えていたが、モデルSは悠然とカーブを曲がり、前のクルマに対して適度な車間距離を保ちつつ実に滑らかに走る。発進、停止を繰り返す渋滞時のストレスもなくなり、簡易版ながら満足度は高い。
■普及車まで拡大の兆し
 ただ、安全確認までは自動化されていない。例えば、試乗時に前のクルマが赤信号に変わるタイミングで交差点に進入したのだが、モデルSは追従をやめず、一瞬ヒヤリとさせられた。また、白線がかすれている道路でオートパイロットは機能しないため、実際は高速道路が主な利用シーンになる。一方、オートレーンチェンジは、オートパイロット利用時にウインカーを出すと、クルマが自動でハンドルを動かして隣の車線に移動する機能。ウインカー操作からほとんど迷いなく車線変更できるが、モデルSの超音波センサーで検知できるのは約5mの範囲。後方からクルマが迫っていないか、人間がミラーで十分確認する必要はある。こうした簡易な自動運転機能は2016年、高級車から普及車まで一気に広がりそうだ。アウディ ジャパンが2月に発売した新型「アウディA4」は、アクセル、ブレーキに加えてハンドル操作もクルマが行う「トラフィックジャムアシスト」を標準装備。日産も混雑した高速道路の単一車線で自動運転を行う技術「パイロットドライブ1.0」の搭載車を2016年中に発売するとしており、フルモデルチェンジを控える人気のミニバン「セレナ」が対象車として有力視されている。
■限定地域なら“無人タクシー”も
 各社が簡易的な自動運転車を導入する一方で、その先に進むには、まだ課題が多い。日産は2018年に高速道路での車線変更を自動的に行う技術、さらに2020年までに一般道の交差点を通過できる技術を導入する計画だが、「一般道に出ると、自動運転のハードルは格段に上がる」(飯島氏)と話す。というのも、一般道は“道しるべ”となる白線が消えかかっている場合があり、交差点内はそもそも白線すらない。そのため、画像を含む高精度の地図などと照らし合わせて走行ルートを判断する必要がある。また、信号のない交差点で歩行者やバイクなどのイレギュラーな動きを見定めたり、混雑した車線に半ば強引に合流する判断をクルマに任せるには、まだ荷が重い。緊急時以外でも人間の介入が必要なケースが残り、米グーグルが目指すような、ボタン一つでクルマのAIがどこへでも運んでくれる「完全自動運転車(レベル4)」の実用化はかなり先の話だ。ただ、走行エリアやルートを限定した形なら、ドライバーを必要としない完全自動運転車にも光明が見えてくる。国内で目指すのはクルマ開発ベンチャーのZMPと、DeNAがタッグを組んで設立したロボットタクシーだ。同社は2016年2月末から神奈川県藤沢市で実証実験を開始。今回は走行ルートが3kmほどの単純な一本道で、緊急時の安全確保のため乗員が同乗する。今後は走行ルートに右左折を組み込んだり、無人営業を想定した車内サービスを試したりと、実験を繰り返す計画だ。そして2020年までに、あらかじめ設定したルート上の複数のポイントで乗り降りできる“無人タクシー”の営業を、千葉市の幕張周辺や東京・台場エリアで始める構え。「こうした限定エリアを複数つくったうえで、いずれは整備が行き届いた幹線道路や高速道路を使って各エリア間を無人タクシーで結ぶことを目指している」(ロボットタクシーの中島宏社長)と話す。他にも、乗務員の人件費がかからない無人タクシーは、人手不足や不採算で廃止された地方の路線バスなどに代わる移動手段として期待を集めており、自治体の後押しを受けて普及するかもしれない。

*4-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017021801001024.html (東京新聞 2017年2月18日) 米環境長官に温暖化懐疑派 上院承認、大統領令で規制緩和も
 米上院は17日、トランプ大統領が環境保護局(EPA)長官に指名した地球温暖化懐疑派のスコット・プルイット氏(48)の人事を承認した。民主党の大半が反対したが、多数派の共和党が支持し、賛成52で反対46だった。プルイット氏は同日、宣誓の上、就任した。産業重視のトランプ氏は、新たな温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」離脱に言及するなど環境保護に消極的な姿勢を示しており、プルイット氏就任に合わせ、環境規制を大幅に緩和する大統領令を準備しているもようだ。オバマ前政権が推進した地球温暖化対策が一気に後退する懸念が強まっている。


PS(2017年2月19日追加):与野党を問わず、またメディアも含めて、女性の大臣・国会議員・リーダーが言うと、正しいことを言っていても「わかっていない」「資質がない」など「女性は知識も実社会での経験もない」という女性蔑視の先入観を利用した批判をされることが多い。しかし、*5の稲田防衛相(弁護士)の場合は、「日報は私が出させた」「憲法九条上の問題になる言葉を使うべきでないから、戦闘ではなく武力衝突という言葉を使った」としており、政府が前防衛相時代に派遣した南スーダンでの自衛隊活動について、憲法や安全保障法制を熟知した上で、言葉の定義を使って正当化したものだ。
 そのため、この問題の本質は、稲田防衛相の資質ではなく、①南スーダンで戦闘(もしくは武力衝突)が起こったこと ②反政府勢力が国に準じる組織と評価できる支配系統、支配領域を有していなければ戦闘ではなく憲法九条違反にならないと解釈していいのか(レジスタンス活動もあるだろう) ③戦闘であれ武力衝突であれ、それが起こる場所に日本の自衛隊を派遣してどちらかの側につくのは日本国憲法違反ではないのか ということである。しかし、行ってしまった軍隊が「戦闘が起こったから」と言って引きあげるのは、他国にとっては予想外であり、難しいのではないかと思う。
 
 
                                   2017.2.9中日新聞(*5)より

*5:http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2017020902000076.html 中日新聞 2017年2月9日) 防衛相「戦闘」を言い換え 9条抵触避け「衝突」
 稲田朋美防衛相は八日の衆院予算委員会で、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に参加している陸上自衛隊部隊の日報に現地での「戦闘」が明記されていた問題を巡り、「法的な意味における戦闘行為ではない。国会答弁する場合、憲法九条上の問題になる言葉を使うべきではないから、一般的な意味で武力衝突という言葉を使っている」と述べた。海外での武力行使を禁じた憲法九条にPKO参加部隊が違反しないよう定めた参加五原則に触れないよう、「戦闘」を「武力衝突」に置き換えたとも取られかねない発言だ。民進党の小山展弘氏が、日報にある戦闘と武力衝突の違いについて質問。稲田氏は「国際的な武力紛争の一環として、人を殺傷する行為が行われていたら、憲法九条上の問題になる。憲法九条に関わるのかという意味において、戦闘行為ではない」と主張。「日報に書かれているのは一般的な戦闘の意味だ」と強調した。稲田氏は、反政府勢力が「国に準じる組織と評価できる支配系統、支配領域を有していなかった」としてPKO参加五原則は維持されていたとの従来の政府見解を繰り返した。防衛省は当初廃棄したと説明していた日報の一部を七日に開示。陸自が活動する首都・ジュバ市内で昨年七月に大統領派と反政府勢力の「戦闘が生起した」と明記していた。
◆歯止め形骸化懸念
 <解説> 憲法九条は「国際紛争を解決する手段」としての武力行使を禁じている。政府は、武力行使の意味を「国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」だと解釈している。自衛隊がこうした戦闘行為に巻き込まれる恐れがある場合は、PKOから部隊を撤退させなければならない。PKO参加五原則が「紛争当事者間の停戦合意」や「自衛隊の中立的立場の厳守」などを条件としているのも、自衛隊の活動が九条の解釈に基づく戦闘行為に該当するのを避けるためだ。
 しかし、防衛省が一部黒塗りで開示した陸上自衛隊の南スーダンPKOの日報は、陸自が活動する首都ジュバで「戦闘が生起した」と明記。戦車や迫撃砲を使った激しい戦闘が発生したことも報告した。稲田朋美防衛相は、日報に書かれた「戦闘」について、現地の反政府勢力が安定した支配地域を持たないことを理由に「国際的な武力紛争の一環として行われたものではない」と説明。戦闘でなく「武力衝突」という言葉を使う理由を「憲法九条上の問題」になるのを避けるためと説明した。こうした説明が許されれば、自衛隊が戦闘に巻き込まれるのを防ぐための九条の歯止めが、言葉の置き換えによって形骸化しかねない。南スーダン情勢を巡っては、国連事務総長特別顧問が七日に「大虐殺が起きる恐れが常に存在する」と指摘し、国内で戦闘が継続していると批判した。政府も南スーダンの厳しい現状を直視し、自衛隊の活動継続の是非を判断すべきだ。


PS(2017年2月23日追加):*6-1のように、夜間・早朝の米軍機飛行差し止めや騒音被害に損害賠償を求める訴訟で那覇地裁沖縄支部は騒音被害の損害賠償だけを認めた。そして、辺野古新基地についても、自然破壊や危険性などの理由で多くの市民が反対しているのに、*6-2のように、米軍運用のための刑事特別法を目的外に使用して刑罰を示すことによって報道の抑制をしようとしており、抵抗する市民が逮捕された。さらに、*6-3のように、基地建設に反対する市民団体が工事車両を止めようと座り込みを決めると、捜査機関が拡大解釈して裁量で組織的威力業務妨害が目的の組織的犯罪集団と判断して仲間への連絡を準備行為と認定して逮捕することもできるようにする法律を、「共謀罪→テロ等準備罪(名称変更)」として制定しようとしているのである。しかし、日本のTVは、ぼやけたような報道番組や金正男氏殺人事件ばかりを長時間報道しており、このような日本の民主主義の岐路になる法律の審議については隠しているかのように報道しない。
 そのため、このように日本人全体に日本国憲法の民主主義や人権尊重の精神が根付いていない中で、*6-4のように、自民党が2017年運動方針案として「改憲原案の発議に向けて具体的な歩みを進める」としているのは、憲法を変更すること自体が自己目的化している上、変更の内容に戦前回帰志向があるため改悪になる危険性が大きく、手をつけない方がよほどよいというのが私の結論である。

*6-1:http://ryukyushimpo.jp/news/entry-449470.html (琉球新報 2017年2月23日) 差し止め認めず、損害賠償のみ命じる 第3次嘉手納爆音訴訟判決
 米軍嘉手納飛行場の周辺住民2万2048人が国を相手に、夜間・早朝の米軍機飛行差し止めや騒音被害に損害賠償を求めた第3次嘉手納爆音訴訟の判決が23日午前、那覇地裁沖縄支部(藤倉徹也裁判長)で言い渡された。藤倉裁判長は差し止めの訴えを退け、過去分の損害賠償の支払いのみを命じた。

*6-2:http://mainichi.jp/articles/20170220/org/00m/070/003000c (毎日新聞 2017年2月20日) <在日米軍再編>辺野古工事、立ち入り禁止文書 「報道への脅し」批判の声
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設のための名護市辺野古(へのこ)沿岸部埋め立てに向けた作業を前に、防衛省沖縄防衛局は先月、沖縄県政記者クラブ加盟各社に海上の臨時立ち入り制限区域に許可なく入らないよう求める文書を出した。日米地位協定の実施に伴う刑事特別法の条文を示し、入った場合は刑罰に処されると警告する内容で、地元の記者らから「報道への脅しだ」と反発の声が出ている。  文書は「正当な理由なく立ち入った場合には、刑事特別法2条の規定に基づき、1年以下の懲役または2000円以下の罰金もしくは科料に処される」と明記。さらに「先般、報道関係者と思われる方が乗船した船舶が、臨時制限区域に許可なく立ち入り、当局の警備業務受注者の警告にも従わない事案が発生した」と記している。防衛局の児玉達哉報道室長は毎日新聞の取材に「威嚇するつもりはなく、あくまで立ち入りへの警告だ」と説明した。「先般」の出来事の内容を尋ねたが「警備上の観点から具体的な内容は差し控える」と答えなかった。制限区域は防衛省が2014年に辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沖約562ヘクタールに拡大して設定し、常時立ち入りを禁止している。地元紙の琉球新報は1月20日朝刊の社説で「刑特法適用をちらつかせた取材妨害であり、報道各社に対する許し難い脅しだ」「危惧することは報道の監視が広大な海域に行き届かなくなることだ」と批判した。防衛省は今月、海上工事を本格化させた。制限区域外から工事現場は数百メートル離れ、ブロックの投下で海底のサンゴにどのような影響が出ているかをチェックできないという。元沖縄弁護士会会長の加藤裕弁護士は「制限区域の設定自体が法の乱用だ。刑事特別法は米軍の運用のためのもので、日本政府の公共工事に適用するのは法の目的外使用にあたる。さらに、工事に実質的な支障がないのに刑罰を示すのは、報道を事前に抑制しようとするものだ」と厳しく指摘した。

*6-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017022202000131.html (東京新聞 2017年2月22日) 「共謀罪」拡大解釈の懸念 準備行為、条文に「その他」
 「共謀罪」と趣旨が同じ「テロ等準備罪」を創設する組織犯罪処罰法改正案を巡り、政府は、犯罪の合意に加えて処罰に必要な要素として検討している「準備行為」について、条文で「資金または物品の手配、関係場所の下見その他」と規定する方針を固めた。「その他」の文言が盛り込まれることで拡大解釈が際限なく広がり、準備行為が歯止めとならないことが懸念される。共謀罪法案は、犯罪に合意しただけで罰するのは内心の処罰につながるといった批判を受け、過去三度も廃案になってきた。安倍晋三首相や金田勝年法相らは今回、新たな共謀罪法案について「準備行為があって初めて処罰の対象とする」と過去の法案よりも適用範囲を限定する方針を説明。一方でハイジャックテロや化学薬品テロでは、現行法の準備罪や予備罪よりも前段階での処罰が可能になるとして、テロ対策での必要性を強調してきた。新たに明らかになった条文では「犯罪を行うことを計画をした者のいずれか」によって「計画に基づき資金または物品の手配、関係場所の下見その他」の準備行為が行われた場合、処罰対象となる。ただ、準備行為はそれ自体が犯罪である必要がない。例えば、基地建設に反対する市民団体が工事車両を止めようと座り込みを決めた場合、捜査機関が裁量で組織的威力業務妨害が目的の組織的犯罪集団だと判断し、仲間への連絡が準備行為と認定される可能性がある。また、政府への抗議活動をしている労組が「社長の譲歩が得られるまで徹夜も辞さない」と決めれば、組織的強要を目的とする組織的犯罪集団と認定され、誰か一人が弁当の買い出しに行けば、それが準備行為とされる可能性がある。米国の共謀罪に詳しい小早川義則・名城大名誉教授(刑事訴訟法)は「米国では、顕示行為(準備行為)は非常に曖昧で、ほんのわずかな行為や状況証拠からの推認で共謀が立証される」と説明。「日本の法体系と全くの異質のものを取り入れる必要性があるのか」と疑問を呈した。また、「その他」は無制限に解釈が広がる恐れがある。新屋(しんや)達之・福岡大教授(刑事法)は「何でも当てはめることができ、限定にはならない。結局、犯罪計画と関係ある準備行為かどうかは、捜査側の判断になる」と述べた。

*6-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/408022 (佐賀新聞 2017年2月22日) 「改憲発議へ歩み進める」 自民、審査会の論議促進、2017年運動方針案
 自民党は21日、2017年運動方針案を発表した。安倍晋三首相の憲法改正への強い意欲を踏まえ「改憲原案の発議に向けて具体的な歩みを進める」と明記。衆参両院の憲法審査会での論議を促進するとした上で「改憲に向けた道筋を国民に鮮明に示す」と強調した。小池百合子東京都知事との対立で苦戦が予想される7月の都議選での勝利を目指すとし、次期衆院選にも「常在戦場」で臨むとアピールした。党関係者によると、改憲原案の「発議」との文言は首相の指示で急きょ盛り込まれた。同党は運動方針案を3月5日の党大会で採択する予定。与党が衆参両院で改憲発議に必要な3分の2の議席を確保している状況を受け、国会での改憲論議を進めたい考えだ。運動方針案のタイトルは「日本の未来を切り拓く」。山口泰明・党運動方針案起草委員長は記者会見で「今年は憲法施行から70年であり、新時代を切り開く決意を示した」と説明した。改憲を巡り、民進党など野党の協力を念頭に「憲法審査会で幅広い合意形成を図る」と表明。世論喚起のため「改憲賛同者の拡大運動を推進する」と言及した。地方選挙に関し「県連など地方組織を積極的に支援する」と宣言。都議選については「全国的に注目されている」と位置付けた。次期衆院選を巡り、当選1、2回の約120人の選挙基盤強化が重要だと指摘した。外交面では、世界で保護主義や内向き傾向が強まっているとして、トランプ米政権発足などに触れ「不透明感と変化の兆しが漂う一年となる」と予測。首相による「地球儀俯瞰外交」を支える姿勢を明確にした。


PS(2017年2月26日追加):*7のように、政府の政策や権力に反対する人を弾圧する目的で逮捕して長期に勾留するのは、人権侵害であるとともに民主主義にも反し、日本ならどの時代の話か、現在ならどこの国の話かと思われる。

*7:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-450615.html
(琉球新報社説 2017年2月25日) 山城議長保釈棄却 「政治弾圧」批判に背く
 最高裁は長期勾留が続く山城博治沖縄平和運動センター議長の保釈申し立てを退けた。不当な人権侵害を容認する決定であり「人権の砦(とりで)」としての司法の役割を自ら放棄したのに等しい。山城議長はがんの病状悪化が危惧されながら家族の面会も禁止されている。拘置所で「家族に会いたい」と訴える言葉に胸が痛む。当初の逮捕容疑はヘリパッド建設現場で有刺鉄線を切断した器物損壊の微罪であり、逮捕の必要性すら疑わしい。その後、防衛省職員にけがを負わせた傷害容疑、威力業務妨害容疑が加わり、勾留は4カ月を超す長期に及んでいる。いずれも防衛省職員や警察官が目撃しており、客観的な証拠は十分なはずだ。那覇地裁は「証拠隠滅の恐れ」を保釈を認めない理由としているが、説得力はない。山城議長の長期勾留がヘリパッドや辺野古新基地建設反対の運動に与えるダメージは大きい。国内の刑法研究者が「正当な理由のない拘禁」「勾留は表現行為への萎縮効果を持つ」と釈放を求める異例の声明を出し、「政治弾圧」の批判が高まっている。国際人権団体アムネスティー・インターナショナルも釈放を求め、批判は国際社会に広がっている。保釈を認めない最高裁の決定は国際世論に背くものだ。最高裁が長期勾留を容認したことで、基地に反対する市民活動への不当な捜査、逮捕・勾留、政治弾圧が強まることを危惧する。元東京高裁裁判長の木谷明弁護士は「裁判官は、検察官の主張に乗せられてしまいがちだ」と実情を明かし、山城議長の長期勾留を「厳しすぎる。精神的な支援を遮断して自白を迫る『人質司法』の手法」と批判する。最高裁によると2015年の勾留請求却下率はわずか3・36%にとどまる。勾留申請に対する裁判官の審査が形骸化し、検察の求めるままに拘留を認める検察主導が実態ではないか。この間、平和運動センター、ヘリ基地反対協議会など活動拠点が家宅捜索され、パソコンやUSBメモリーが押収された。基地反対運動の事務所に捜索が及ぶのは異例で、関係者や活動の情報を得る狙いがなかったか疑わしい。関係者はなお早期保釈に尽力してほしい。同時に「共謀罪」を先取りするような警察、検察の捜査活動にも注意を払う必要がある。

| 辺野古・普天間基地問題::2015.4~ | 05:39 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.7.25 辺野古移設問題も、“安定”と称する日本政府の思考停止がネックなのである (2016年7月26日、27日《写真》、28日に追加あり)

      埋立予定地        立入禁止区域              市民の反対運動

   
首相と知事           工事                 ジュゴン     ジュゴンのえさ場の海藻
 の意見                           2010.6.18朝日新聞  2015.10.20朝日新聞

(1)日本政府が沖縄県を提訴したことについて
 *1-1、*1-2、*1-4のように、福岡高裁那覇支部は和解勧告で、政府と県が「円満解決」を目指すことを求めたが、菅官房長官は新たな訴訟を7月22日に起こす方針を翁長雄志知事に伝えた。政府によるこの提訴は、福岡高裁那覇支部などの要請に明らかに反し、和解条項をも踏みにじるものだ。

 最初の辺野古埋め立てと辺野古新基地建設の承認は、仲井真前沖縄県知事が何かに脅迫されたかのように、2013年12月27日、突然、県民の意志に反し県外移設の公約を翻して承認印を押した不自然なものだった。そのため、次の知事選で沖縄県民は辺野古埋め立てと辺野古新基地建設に反対の翁長知事を選び、先日の参院選でも島尻沖縄・北方担当相が大差で敗れて、現在、衆参両院を通じて沖縄選挙区で当選した自民党議員は一人もいなくなったのである。つまり、沖縄県民は辺野古移設反対の民意を民主主義で表現したのであり、翁長知事の承認取り消しに違法性はないだろう。

 そして、翁長知事が辺野古埋め立てと辺野古新基地建設の承認を取り消し、沖縄が選挙のたびに民主主義のルールに従って民意を示し、司法でも和解勧告が出て「オールジャパンで最善の解決策を合意して、米国に協力を求めるべきだ」と記載されているにもかかわらず、菅官房長官はじめ日本政府が、「辺野古が唯一の選択肢だ」という思考停止した発言を繰り返していることこそ不自然である。

 この様子は、*1-3で翁長沖縄知事が「国の強硬な態度は異常だ」と述べているとおりで、*1-4のように、あまりにも不合理な強引さがある。そして、これら一連の沖縄に対する仕打ちは異常であるため、沖縄県民に対する差別としか思えず、沖縄県民は政府と喧嘩はしたくないが、寄り添われたくもないのではなかろうか。

(2)ヘリ離着陸帯の移設着工について
 *2のように、日本政府が沖縄県を相手取り、地方自治法に基づく違法確認訴訟を福岡高裁那覇支部に起こしたのと同時に、防衛省沖縄防衛局は7月22日午前、米軍北部訓練場(沖縄県東村、国頭村)の一部返還の条件となっているヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)の移設工事に着手したそうだ。そもそも基地の多い沖縄で、一部返還の条件としてヘリパッドを県内移設するという条件も、本当は他に代替案があると考える。

(3)代替案
 *3-1で翁長知事が鹿児島県西之表市馬毛島(種子島の西約12キロにある無人島)を視察したように、馬毛島は一人の男性によって所有され、「米軍基地として十二分にやっていける」そうだ。そのため、私は自然を壊して米軍普天間飛行場を作り、5年以内に運用停止するよりも、直接、馬毛島に移転する方が合理的だと考える。このように、政府が「唯一の解決策」とする名護市辺野古以外にも移設候補地は国内にある。

 それでも、政府が「辺野古が唯一」と繰り返すのなら、その根拠を明確に説明する必要があるが、それは「地理的優位性」ではなく、本土の反発を回避する目的だそうだ。西之表市は翁長知事の突然の訪問に不快感を示しているとのことだが、無人島なら基地の危険に遭遇したり立ち退きで損害が発生したりしない。その上、原発よりは無人島に作った基地の方が安全であるため、鹿児島県にとっては、*3-2のように、川内原発を停止し廃炉にした後、基地からの交付金収入、そこに住む人のからの税収、食料調達などは有り難いのではないだろうか。

(4)沖縄の価値

     
                 八重山諸島の位置と風景(陸上・海・海中)

 *4のように、菅官房長官は2016年5月11日の記者会見で、大阪市の米映画テーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の運営会社が沖縄県に計画していた新パーク建設を最終的に撤回したことを明らかにし、「見送りは極めて残念だ」と語られたそうだが、沖縄の自然は本物の美しさで日本の宝石であるため、ユニバーサル・スタジオが作るようなイミテーションはいらない。沖縄は、本島だけでなく離島もよいし、海は表面だけでなく海中や海底がすごい。そして、それを見るには、グラスボート、シュノーケリング、スキューバダイビングなどの方法がある。

 その上、近年は、地質学的価値や人類拡散の歴史的価値も高くなっており、史跡としても重要だ。

      
                          与那国島の海底遺跡
       (http://www.okinawainfo.net/iseki.htm「沖縄の海底遺跡について」参照)

<政府の沖縄県提訴>
*1-1:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-320915.html
(琉球新報社説 2016年7月22日) 政府が県提訴へ 和解条項の曲解許されない
 話し合いで解決する考えなど、はなからなかったのだろう。安倍政権は選挙を念頭に、県民の気持ちに「寄り添う」姿勢を装っていたにすぎない。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡る訴訟の和解に基づく協議会で、菅義偉官房長官は新たな訴訟を22日に起こす方針を翁長雄志知事に伝えた。福岡高裁那覇支部は和解勧告で、政府と県が「円満解決」を目指すことを求めた。国地方係争処理委員会も、双方が「真摯(しんし)に協議」することで解決することを促した。政府による提訴は福岡高裁那覇支部などの要請に明らかに反する。和解条項をも踏みにじるものであり、断じて容認できない。新たな訴訟は、埋め立て承認の取り消し撤回を求めた国土交通相の是正指示に、翁長知事が従わないのは違法だとの確認を求める内容である。政府は、訴訟と協議は「車の両輪」とし、提訴した上で協議することは可能との見解を示している。それが「和解協議のもともとの精神」(定塚誠法務省訟務局長)とも強弁している。「もともとの精神」とは、福岡高裁那覇支部が和解勧告で提示した「原告と被告は違法確認訴訟判決まで円満解決に向けた協議を行う」との和解案を指すのだろう。だがその後、政府と県が合意した和解条項には政府による「違法確認訴訟」は含まれていない。政府の和解破りは明らかである。和解条項に明記された訴訟は、是正指示の取り消し訴訟のやり直しだけである。再訴訟についても、あくまで「折り合いがつかなければ」との条件が付されている。そもそも訴訟と協議を同時並行で行うことが、円満解決につながるはずがない。和解が成立した3月は6月の県議選、7月の参院選を控えた時期である。安倍政権が選挙を強く意識して和解に応じたことは容易に想像がつく。それまでの強権姿勢を隠し、話し合うことで県に歩み寄ったとアピールすることが狙いだったと断じざるを得ない。沖縄全戦没者追悼式参列のため、6月に来県した安倍晋三首相は「和解条項に従って誠実に対応していく」と述べていた。安倍首相が言葉に責任を持つならば、新たな提訴はやめるべきだ。和解条項の曲解は許されない。

*1-2:http://mainichi.jp/articles/20160722/ddm/005/070/024000c
(毎日新聞社説  2016年7月22日) 国の辺野古提訴 和解の精神に反する
 米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古移設をめぐる国と県の対立は、再び法廷に持ち込まれることになった。国は県を相手取って地方自治法にもとづく違法確認訴訟をきょう福岡高裁那覇支部に起こす。国と県が互いを訴えた3件の裁判について、和解が成立してわずか4カ月余り。問題解決に向けた話し合いは深まらず、司法に判断をゆだねることになったのは残念だ。和解条項には、国と県の双方が裁判を取り下げ、国が埋め立て工事を中止するとともに、今後の手続きが次のように定められていた。知事に埋め立て承認取り消しの撤回を求めた国の是正指示について、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」が適否を判断する。そして、係争委が是正指示を認めて県がそれに不服な場合や、係争委が是正指示を認めず国がそれに従わない場合は、県が国を提訴する−−。しかし、係争委は先月、是正指示の適否を判断しないという予想外の結論を出した。それを受けて、県は提訴を見送る方針を表明した。困ったのは国だ。国は和解条項に沿って県に再び提訴してもらい、早期に裁判を決着させ、工事を再開したいと考えていた。係争委の判断回避と県の提訴見送りは、誤算だった。そこで国は、係争委が是正指示を否定していない以上、是正指示はまだ有効だと主張し、埋め立て承認取り消し処分を撤回しない県に対し、不作為の違法確認訴訟を起こすというのが、今回の経緯だ。しかし、裁判所の和解勧告の考え方をもう一度、思い起こしてみるべきだ。勧告文には「本来あるべき姿としては、沖縄を含めオールジャパンで最善の解決策を合意して、米国に協力を求めるべきだ」とある。係争委の小早川光郎委員長も「肯定、否定のいずれの判断をしても、国と地方のあるべき関係を構築することに資するとは考えられない」と語っていた。国が辺野古移設を強引に進めてもうまくはいかないだろう。仮に国が違法確認訴訟で勝ったとしても問題解決にはなるまい。和解勧告でも指摘されていたように、設計変更のたびに変更承認が必要になり、延々と法廷闘争が続くことも考えられる。結局、国と県が問題解決を目指して真摯(しんし)に話し合うしかない。沖縄では、先の参院選で島尻安伊子沖縄・北方担当相が大差で敗れ、衆参両院を通じて選挙区で当選した自民党議員が一人もいない事態になった。辺野古移設反対の民意は明白だ。米軍による事件・事故も相次ぎ、反発はさらに高まっている。政府はこれ以上、民意に背を向けるべきではない。

*1-3:http://mainichi.jp/articles/20160722/k00/00e/010/242000c
(毎日新聞 2016年7月22日) 沖縄知事、「国の強硬な態度は異常だ」辺野古提訴
 沖縄県の翁長雄志知事は22日、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に関し、政府が県を相手取り違法確認訴訟を起こしたことについて、「真摯な協議を求めてきたため、(提訴は)非常に残念だ。国の強硬な態度は異常だ」と強く批判した。そのうえで、第1回口頭弁論に「出廷して自ら意見を述べたい」と述べた。東京都内で記者団に語った。また、政府が米軍北部訓練場(同県東村、国頭村)の約半分の返還に伴うヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)の移設工事を再開したことについて、「県民に大きな衝撃と不安を与えるものであり、大変残念だ。国は住民に対して説明すべきだ」と述べた。

*1-4:http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201607/0009311251.shtml
(神戸新聞 2016/7/23) 国が沖縄県提訴/あまりに強引ではないか
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、政府が沖縄県を相手取り新たな訴訟を起こした。政府と県が福岡高裁那覇支部の和解を受け入れて4カ月余りで、対立は再び法廷へと持ち込まれた。和解を促した裁判所の勧告には、「この問題をどちらが良い悪いという形にしてはいけない。沖縄を含めオールジャパンで最善の解決策を合意し、米国に協力を求めるべきだ」とある。しかし、この考え方に沿って協議が深まることはなかった。政府は提訴が和解条項に基づいたものだと強調している。だがこの間、問題の解決に向けてどこまで真摯な話し合いが重ねられてきたのか、はなはだ疑問だ。特に政府は当初から提訴ありきの姿勢が目立った。今後、法廷闘争で亀裂が深まるような事態は避けねばならない。今回の提訴は、埋め立て承認の取り消し処分を撤回しない県に対し、国土交通相の是正指示に従わないのは違法との確認を求めるものだ。是正指示では、県が第三者機関の「国地方係争処理委員会」に審査を申し出た。委員会は判断を示さず、改めて話し合いによる解決を促した。県はこれに従って協議を優先したが、政府は司法判断による早期決着を図る道を選んだ。同じ日、政府は沖縄県北部の東村高江で米軍のヘリコプター離着陸帯の建設工事に着手した。この問題では、前日に沖縄県議会が建設中止を求める意見書を可決している。さらに政府は、辺野古移設の和解受け入れで中断していた陸上部分の工事を再開する意向を県側に示した。一方で概算要求に向けて沖縄振興予算の減額をほのめかす。沖縄では6月の県議選で辺野古移設反対派が6割以上を占め、参院選では現職閣僚が落選、与党の沖縄県の選挙区選出議員がゼロになった。その民意に配慮するどころか、気持ちを逆なでするような政府の姿勢である。あまりに強引ではないか。安倍晋三首相は沖縄県民に寄り添う姿勢を打ち出し、6月の沖縄全戦没者追悼式の際は「和解条項に従って誠実に対応していく」と述べた。だが県民が一連の対応を「誠実」と受け止めることはできないだろう。「延々と法廷闘争が続けば国が勝ち続ける保証はない」。和解勧告の指摘を踏まえ、いま一度、話し合いで解決策を探るべきだ。

<ヘリ離着陸帯の移設着工>
*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160722&ng=DGKKASFS22H0K_S6A720C1EAF000 (日経新聞 2016.7.22) 辺野古、政府が再び県提訴 北部訓練場、ヘリ離着陸帯の移設着工
 政府は22日午前、沖縄県の米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り、翁長雄志知事が埋め立て承認取り消しの是正指示に従わないのは違法だとして、県を相手取り、地方自治法に基づく違法確認訴訟を福岡高裁那覇支部に起こした。3月に和解した政府と県は再び法廷闘争に入る。第1回口頭弁論は8月5日に那覇支部で開かれ、高裁判決は今秋にも出る見通し。いずれかが上告した場合、最高裁の判断は来春に出るとみられる。政府と県による代執行訴訟の和解条項は、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」の審査を踏まえ、県に不服がある場合、改めて国を提訴し、司法判断を仰ぐ段取りだった。承認取り消しをめぐる違法性の適否について同委は判断を回避し、双方に問題解決に向けた協議を促した。翁長氏ら県側は、政府との話し合い解決を重視する立場から提訴を見送ったため、政府は辺野古移設に向けた作業を加速する狙いから、再び訴訟に踏み切った。一方、防衛省沖縄防衛局は22日午前、米軍北部訓練場(沖縄県東村、国頭村)の一部返還の条件となっているヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)の移設工事に着手した。

<代替案>
*3-1:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-319544.html
(琉球新報社説 2016年7月20日) 知事の馬毛島視察 普天間問題考える契機に
 翁長雄志知事が鹿児島県西之表市の馬毛島を視察した。島のほぼ全域を所有する男性は、翁長知事に「米軍基地としては十二分にやっていける」と説明したという。馬毛島は、おおさか維新の会が米軍普天間飛行場の5年以内の運用停止に向けた訓練の移転先として提案している。だが知事の視察目的は、馬毛島に訓練を移転したいとか、普天間飛行場自体を移設してほしいということではない。政府が「唯一の解決策」とする名護市辺野古以外にも、移設候補地は国内にあるとの問題提起である。辺野古が「唯一」ではないことを政府に突き付け、撤回させる手段の一つとみるべきだ。それでも、安倍政権は沖縄の「地理的優位性」などを挙げて「辺野古が唯一」と繰り返すだろう。だが「地理的優位性」は専門家が否定している。本土の反発を回避したいことが真の理由だ。普天間飛行場返還合意時の官房長官だった梶山静六氏は「必ず本土の反対勢力が組織的に住民投票運動を起こす」と本土側の反発を恐れ、辺野古が普天間飛行場の移設先になったと理由を書簡に記していた。馬毛島は種子島の西約12キロにある無人島である。東京・硫黄島で暫定的に実施している米軍空母艦載機の陸上空母離着陸訓練の移転候補地に挙がっている。だが観光への影響や事故の懸念から反対の声が出ている。そのような中での翁長知事の視察に対し、辺野古移設への反対運動などに共感してきた地元の市民団体関係者らは「大変遺憾」とする声明を発表した。西之表市も、沖縄県から事前の説明などがなかったことに不快感を示している。丁寧に説明し、理解を得ることを県には求めたい。戦後71年が経過しても、沖縄には在日米軍専用施設の74・46%が集中し、圧倒的反対にもかかわらず辺野古新基地まで押し付けられようとしている。沖縄県民は命の危険にさらされ続けていることも、国民全体で共有してほしい。翁長知事の視察への反発によって、米軍基地は国内のどこでも歓迎されない迷惑施設であることが改めてはっきりした。普天間飛行場の危険性除去は移設でいいのか、移設を条件としない閉鎖・撤去がいいのか。知事視察を国民が普天間問題を深く考える契機としたい。

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160725&ng=DGKKZO05206880V20C16A7NN1000 (日経新聞 2016.7.25) 川内原発停止要請 来月にも 鹿児島新知事「県民の不安解消」
 鹿児島県知事に28日に就任する三反園訓氏(58)は24日、九州電力に川内原子力発電所(同県薩摩川内市)の一時停止を8月中にも要請する考えを明らかにした。熊本地震を受けた県民の不安に応えるため、関連施設や活断層などの再点検・再検証を求める。川内1号機は10月6日ごろに定期検査に入る予定だが、これを待たず要請する。日本経済新聞の取材に応じた。川内原発の停止と点検は三反園氏の知事選での公約。三反園氏は「県民が不安に思っていたら解消するのがトップの役目だ」と強調。一時停止の要請は「原発周辺を視察し、県庁職員の説明も聞くなどして、8月下旬か9月上旬を目指したい」と語った。知事に原発を止める法的権限はない。ただ九電との安全協定で鹿児島県は安全確保のために原発に立ち入り調査し、必要と認められれば適切な措置を求められる。九電は「実際に要請を受けておらずコメントする立場にない」としている。三反園氏は原発の避難計画見直しも公約に盛り込んだ。三反園氏は「周辺住民の安心・安全のために一番いい方法を取りたい」と言明。原発問題に関する検討委員会を設け、専門家らに検証してもらう意向を示した。

<沖縄の自然の価値>
*4:http://qbiz.jp/article/86537/1/%E8%BE%BA%E9%87%8E%E5%8F%A4/
(西日本新聞 2016年5月12日) USJが沖縄進出を撤回 菅氏「極めて残念だ」
 菅義偉官房長官は11日の記者会見で、大阪市の米映画テーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の運営会社が沖縄県に計画していた新パーク建設を最終的に撤回したことを明らかにした。政府が新たな振興策として沖縄進出を後押ししてきており「見送りは極めて残念だ」と語った。政府はUSJ進出をてこに米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に理解を求める考えだった。菅氏は「移設と振興は別だ」と述べ、今後も「沖縄の振興にできることは全てやる」と強調した。菅氏によると、USJ運営会社のジャン・ルイ・ボニエ最高経営責任者(CEO)が官邸幹部を訪問して計画撤回を伝えた。ボニエ氏は大阪のUSJに投資を集中させるため沖縄進出を見送ると説明した。ボニエ氏は運営会社を昨年買収した米メディア大手コムキャストから送り込まれた。買収される前の運営会社のCEOは計画に積極的だったが、新たに親会社となったコムキャストが採算性の観点から今回の計画に慎重な姿勢を示していた。政府は2016年度予算に沖縄振興策の一環として、USJ誘致に向けた1億2千万円を盛り込んだ。菅氏は「そういうことになったので、USJに使うことはない」と説明した。


PS(2016年7月28日追加):*6のように、沖縄のやんばる地域は、山、川、海がおりなす貴重な自然があり、森林にもヤンバルクイナ、ノグチゲラなど多くの固有種を含む森林性の鳥類が生息しているそうだ。そのため、現在のこの地域は、自然保護の対象ではあっても自然破壊の対象ではない。


   ノグチゲラ     ヤンバルクイナ    リュウキュウ    リュウキュウ   エリグロアジサシ
                           アカショウビン     ヨシゴイ
       http://www.ufugi-yambaru.com/yanbaru/yanbaru_tyourui.html 
         (やんばる野生生物保護センター) やんばるの生き物たち 参照

*6:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-324054.html
(琉球新報社説 2016年7月27日) ノグチゲラ営巣 米軍優先で森を壊すな
 国の天然記念物ノグチゲラは非常に特異な鳥だ。沖縄本島北部やんばるの森にしかいない。世界で最も分布域の狭いキツツキの一種だ。キツツキの仲間は、名の通り丈夫なくちばしで木をつつき、樹皮下に潜む虫を食べる。だが、ノグチゲラは木だけでなく、地上に降りて土をつつき、セミの幼虫やクモなどを掘り出す。約200種のキツツキの中で、土中から餌を得るのが報告されているのはノグチゲラだけだという。さらに毎年同じ雄雌でつがいをつくる「一夫一婦制」で、雌は木をつついて餌を採る一方、雄は地中の虫を掘り出す。餌を食べ分けることで狭いやんばるの森で争わずに生き延び、種を維持したとみられる。いわば、やんばるの森の象徴だ。米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)新設計画で、候補地のG、H両地区周辺でノグチゲラの巣穴が少なくとも計29カ所確認されていた。ヘリパッド建設に伴い、那覇防衛施設局(当時)が2007年にまとめた環境影響評価(アセスメント)図書に記されていた。同じ調査で、既存のヘリパッドがあったN4地区は巣穴は1カ所だけだった。ヘリパッドの造られていないG、H地区は自然豊かな森の証左になるだろう。しかし北部訓練場の部分返還に伴うヘリパッド6カ所の移設先を決めた時、日米両政府は自然保護を優先しなかった。優先されたのは、米軍が強く要望したG地区に近い宇嘉川を使った水域訓練と兵士の救助支援訓練ができる場所だった。米海兵隊が「戦略展望2025」で記すように多様な訓練のできる「土地を最大限に活用する訓練場を開発」するための選定だった。ノグチゲラは国際自然保護連合や環境省が指定する絶滅危惧種で、保護は急務だ。地元の東村は生息域への無断立ち入りを禁止するノグチゲラ保護条例を制定した。種の保存が必要とされているからこそ、ヘリパッドを建設する沖縄防衛局は3~6月の営巣期間は音の出る工事を休止するとしてきたはずだ。県鳥でもあるノグチゲラを残すには、貴重なやんばるの森を維持することである。軍事機能強化を優先して、森を切り開き、オスプレイの音や排気熱で環境を破壊することではないはずだ。


<有明海の価値>
PS(2016年7月26日追加):左図のように、有明海産の海苔は日本全体の40%以上を占めており、特に佐賀県は、*5のように、「有明海1番」などブランド化して稼いでいる。また、他にも有明海の漁獲高は大きいため、自衛隊と言えども、どの空港でも使ってもよいわけではなく、他の産業に影響のない場所を利用してもらいたい。

  
                      海苔の養殖

*5:http://digital.asahi.com/articles/ASJ7T4D11J7TTTHB017.html?iref=comtop_list_pol_n05 (朝日新聞 2016年7月25日) オスプレイ「ノリに影響」 佐賀の漁協、防衛局に反発
 佐賀空港(佐賀市)への自衛隊オスプレイ配備計画をめぐり、九州防衛局は25日、地元の佐賀県有明海漁協に対し、駐屯地の施設配置案や配備に伴う環境対策などを説明した。漁協側からは反対意見が続出した。有明海漁協には、配備に伴い整備される駐機場など計画地の地権者が多く所属。ノリ漁への影響などを心配する声も根強く、漁協の対応が配備受け入れのカギを握るとされる。この日、九州防衛局幹部が佐賀市の漁協を訪れ、県の担当者らも同席した。漁協側からは、諫早湾干拓事業など過去の公共事業を念頭に「国の言うことは信用できない」「万が一のことがあれば、風評被害で(県産の)ノリが売れなくなる」といった反対意見が噴出。説明会後、漁協の徳永重昭組合長は「(オスプレイに)来て欲しくないのが漁協の本音だ」と話した。一方、防衛局の市川道夫企画部長は「引き続き丁寧に説明をしていきたい」と語った。

| 辺野古・普天間基地問題::2015.4~ | 04:55 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.1.26 辺野古工事強行と宜野湾市長選挙で示された宜野湾市民の民意 ← ご都合主義の曲解は許されない (2016年1月27、29、31日、2月5日に追加あり)
    
   *1-1より                 <辺野古の工事計画と工事>

     
     <東シナ海周辺で増強を予定されている自衛隊>           石垣島  

(1)宜野湾市長選での佐喜真氏の再選について
 宜野湾市長選での佐喜真氏の再選について、沖縄タイムスは、*1-1のように、宜野湾市長選挙における出口調査により、「宜野湾市の民意は、普天間飛行場の速やかな撤去であって、辺野古を造成して新基地を作って移設することではない」と分析している。

 また、*1-2のように、宜野湾市長選挙を前に琉球新報社が2016年1月に実施した世論調査では、「県外移設」「国外移設」「無条件の閉鎖撤去」が計74.4%に達し、国が進める「辺野古移設」を支持する意見は、12.9%しかないそうだ。この結果からも、宜野湾市長選での佐喜真氏の再選により、辺野古への移設が賛同を得たという曲解は許されない。
 
 沖縄では、*1-3のように、一昨年の名護市長選以来、知事選、衆院選と普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対を訴えた候補が勝ってきたが、今回、自民党・公明党の応援で当選した佐喜真市長は、宜野湾市長選挙で「普天間の一日も早い閉鎖・撤去」は主張したが、辺野古移設への賛否は明言しておらず、移設問題を争点化させない戦略をとっていたため、危険な普天間飛行場の閉鎖と撤去のみが宜野湾市民の民意と受け止めるべきである。

 しかし、*1-4のように、日経新聞は社説で、「宜野湾市長選で与党が推した現職が勝利したため、安倍政権は同基地の県内移設に向けた作業を加速する方針だ」とし、「普天間移設は2013年に沖縄県の当時の知事が工事に必要な埋め立てを承認した」ということも振りかざしているが、知事が承認できることは知事が撤回できるため、これを争点とした直後の知事選で選ばれた翁長知事の承認取り消しは有効だと考えるのが筋である。そのため、このように歪曲したご都合主義の国の主張を最高裁が認めるようなら、日本国憲法で定められた司法の独立性を信じる人はいなくなる。

(2)政府のこれまでの対応
 沖縄県が県を挙げて反対している中で、*2-1のように、防衛省は2015年10月29日に、埋め立てに向けた本体工事に着手し、周辺海域では移設に抗議する人たちのカヌーや警戒に当たる海上保安庁の船などが確認され、シュワブのゲート前でも抗議する多くの県民と警察官がもみ合いになった。

 そして、*2-2のように、遅ればせながら一部全国紙も、「埋め立て強行は許されぬ」「民意に耳を傾けよ」と報道している。私も、米国が、在沖海兵隊のグアム移転や、ハワイ、豪州などへの巡回配備で対応を進めており、日本は人権を大切にする民主主義国家である以上、「辺野古移設が唯一の解決策」などという変な固定観念は排除して、日米地位協定と同時に解決できる「第三の道」を考えるべきである。

 なお、*2-3のように、辺野古の埋め立ては生態系保護上も欠点が多いため、名護市辺野古の新基地建設など公有水面の埋め立てに使う県外からの土砂や石材の搬入を規制する条例が沖縄県によって制定され、2015年11月1日から施行されている。辺野古の新基地建設で、防衛局は県内外からダンプカー約250万台分に当たる約1644万立方メートルの土砂(岩ズリ)を買い取り、辺野古沿岸部を埋め立てる計画だったそうだが、生態系を含む環境に対して無頓着にも程がある。

(3)米国について
 翁長雄志知事が名護市辺野古の新基地建設に伴う沿岸部の埋め立て承認を取り消したことを受けて、*3-2のように、沖縄タイムスと琉球放送(RBC)が、2015年10月16~18日の3日間、電話による緊急世論調査を合同で実施したところ、知事の取り消し判断を「支持する」と答えた人が79.3%に上り、県民の幅広い層が理解を示しているという結果が出たそうだ。

 そのような中、*3-1のように、菅官房長官は2015年10月29日、沖縄に駐留する米海兵隊の一部の移転先とする米領グアムを訪問し、グアム選出の米下院議員と会談して埋め立ての本体工事に着手したことを伝え、普天間移設を推進する安倍政権の姿勢を米側にアピールしたそうだが、国内で大きく意見が分かれ、地元では大多数が反対していることについて、先に米国と約束して、「米国と約束したから」という理由をつけて国内で強制することは許されない。

(4)代替案
 *4のように、宮古島に陸上自衛隊のミサイル基地候補地があるそうだ。そのほか、尖閣諸島の警備を目的として、上の図のように、奄美大島、石垣島、与那国島等にも自衛隊のミサイル基地や沿岸監視部隊ができるそうで、辺野古に新基地を造った上、これらの離島にも自衛隊を置くのは、悪乗りのやりすぎだ。辺野古の代替案は、人口が少なく、既に滑走路があってあまり工事がいらず、環境に悪影響を与えない離島を一つ探すべきで、環境という沖縄の財産を壊す予算の無駄遣いは許されない。なお、その人口の少ない離島住民のうち望む人には、近くの島や沖縄本島への移住を保障すればよいと考える。

 また、尖閣諸島周辺に接近する中国軍にどう対処するかについて、安倍政権は安保法制で(ただし、この安保法制や自民党憲法改正草案を作ったのは安倍首相ではないため、首相が別の人であれば異なる政策になっていたとは思わない)、武装漁民による離島占拠など武力攻撃には至らないが警察力では対応できない「グレーゾーン事態」に対応する法整備は見送ったが、それなら何の為の米軍基地や自衛隊基地なのかわからない。このように、その場限りのちぐはぐな対応で国益を損ねるのは、太平洋戦争勃発時からあまり変わっていないようなのだ。

*1-1:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=151185&f=ap
(沖縄タイムス 2016年1月25日) 出口調査で浮き彫りになった宜野湾市の民意
■辺野古移設「反対」57% 「賛成」34%
 24日に投開票された宜野湾市長選で沖縄タイムス社と朝日新聞社、琉球朝日放送(QAB)が実施した同日の出口調査で「投票する人を選ぶとき、何を一番重視したか」を聞いたところ、「普天間飛行場の移設問題」が48%で最多となった。米軍普天間飛行場の返還をめぐる問題が最大の関心事だったことが裏付けられた。次いで「候補者の経歴や実績」「経済や福祉政策」がそれぞれ19%となった。普天間問題を重視した人のうち、佐喜真淳氏に投票したのは30%、志村恵一郎氏は70%だった。候補者の経歴・実績と答えた人では佐喜真氏90%、志村氏10%。経済・福祉政策は佐喜真氏71%、志村氏29%となった。普天間飛行場の名護市辺野古への移設については、「賛成」と答えたのが34%、「反対」と答えたのが57%、「無回答」は10%だった。辺野古移設に賛成と答えた人のうち、佐喜真氏に投票したのは93%、志村氏は7%。辺野古移設に反対とした人は、佐喜真氏に24%、志村氏に76%。佐喜真氏は、辺野古移設に反対する人の一部の支持も得た。支持政党は自民党が29%で最も多く、民主党9%、社民党6%、共産党3%、公明党3%の順となった。無党派層と答えたのは41%だった。調査では1263人から回答を得た。
■投票率68.72% 4.82ポイント増
 宜野湾市長選の最終投票率は68・72%(同市選管発表)となり、前回選挙の63・90%を4・82ポイント上回った。米軍普天間飛行場の移設問題をめぐり、安倍政権が推す佐喜真淳氏と、翁長雄志知事をはじめとする「オール沖縄」勢力が支援する志村恵一郎氏が一騎打ちで激しい選挙戦を繰り広げ、関心が高まった。投票当日の有権者数は前回より2600人多い、7万2526人(男性3万4721人、女性3万7805人)。投票者総数は5153人多い、4万9839人だった。期日前投票は前回の2・2倍の1万4256人と過去最多となった。期日前投票が当日有権者数に占める割合は10・3ポイント上昇し19・7%だった。投票者総数に占める割合は14ポイント上昇の28・6%となった。

*1-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-209783.html
(琉球新報社説 2016年1月25日) 佐喜真氏再選 新基地容認ではない 国に「5年以内」閉鎖責任
 宜野湾市長選で佐喜真淳氏が再選を果たした。佐喜真氏の1期4年の実績を市民が評価し、今後の市政運営に期待した結果である。ただし佐喜真氏再選で沖縄の民意が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設容認に変わったわけではない。佐喜真氏は選挙戦で辺野古移設の賛否を明言せず、市民が容認したことにはならないからだ。重視すべきは、佐喜真氏が公約した普天間飛行場の5年以内運用停止を、市民が国に突き付けたことだ。佐喜真氏を支援した安倍政権には5年以内の期限である2019年2月までに運用停止を実現する責任がある。
●曲解は許されない
 安倍晋三首相は市長選を前に「安全保障に関わることは国全体で決めることだ。一地域の選挙で決定するものではない」と述べた。民意をないがしろにする許されない発言だが、翁長県政与党が支援した志村恵一郎氏が落選したことを捉えて、辺野古移設が支持されたとする可能性がある。曲解は許されない。厳に慎むべきだ。宜野湾市長選を前に琉球新報社などが昨年12月末に実施した世論調査で「県外移設」「国外移設」「無条件の閉鎖撤去」は計71・1%に上った。1月調査でもその割合は計74・4%に達した。国が推し進める「辺野古移設」支持は12月調査11・1%、1月調査12・9%でしかない。この結果からしても市民が普天間飛行場の閉鎖と引き換えに、辺野古新基地建設を望んでないことは明らかだ。佐喜真氏は「普天間飛行場の固定化は許さない」と訴えて当選した。選挙結果が示すことは、普天間飛行場によって市民が危険にさらされている状況を、1996年の返還合意後20年も放置する国に対する市民の強い怒りである。佐喜真氏には5年以内運用停止を実現する責任がある。だが、たなざらしにされる可能性は否定できない。中谷元・防衛相は昨年、5年以内運用停止の定義を「飛行機が飛ばないこと」と明言した。菅義偉官房長官が(1)空中給油機能(2)緊急時着陸機能(3)オスプレイの運用機能-の3要件停止だとの見解を示すと、防衛相は「幻想を与えるようなことは言うべきでない」と前言を撤回した。市民が求める運用停止は、飛行機などが飛ばないことである。佐喜真氏も「一日も早い閉鎖、返還を求める」と訴えた。安倍政権が支援したのは佐喜真氏の政策と合致したからだろう。ならば、その実現に全力を尽くすのが筋である。裏切りは許されない。
●分断策克服を
 沖縄は、基地をめぐる対立をうんざりするほど抱え込まされてきた。なぜ沖縄ばかりが市民を分断されねばならないのか。市民の一体感が損なわれれば政策効果が上がらないことは、ロバート・パットナムのソーシャルキャピタル(社会関係資本)をめぐる研究で実証済みだ。沖縄の社会を分断してきた国の罪は大きい。もう分断はたくさんだ。佐喜真氏にはその克服も求めたい。市民の一体感回復へ包容力を持って進んでもらいたい。今、子どもの貧困が可視化されつつある。宜野湾市も例外ではない。子ども全ての生活、学びを保障するのは喫緊の課題だ。親の経済格差を次世代に引き継いではならない。佐喜真氏は有効な手だてを講じてほしい。今選挙では両候補に共通する政策も目立った。学校給食費の無料化、子どもの医療費無料化などがそれだ。子どもをめぐる環境を意識しての政策だろう。これらの実現はいわば最大公約数だ。佐喜真氏は公約を早期に実現してもらいたい。「公約は破るもの」という昨今のあしき常識を、佐喜真氏には打ち破り、政治は信頼できるものだと実感できる結果を示してほしい。18歳選挙権が実現する年の最初の主要選挙の結果として、望まれるのはそのことだ。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12177493.html
(朝日新聞社説 2016年1月26日) 宜野湾市長選 「辺野古」容認と言えぬ
 沖縄では一昨年の名護市長選以来、知事選、衆院選と普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対を訴えた候補が勝ってきた。今回も、移設をめざす政権と、反対する翁長知事の対立構図が持ち込まれたものの、連勝の流れは止まった。翁長知事は、選挙で示された民意を最大の盾として辺野古移設阻止を訴えてきた。それだけに、知事にとって大きな痛手となることは間違いない。とはいえ、「これで辺野古移設が容認された」と政権側がとらえるとしたら、早計である。当選した佐喜真淳市長は「普天間の一日も早い閉鎖・撤去」を主張しつつ、辺野古移設への賛否は明言せず、移設問題を争点化させない戦略をとった。朝日新聞社の出口調査では辺野古移設に賛成の有権者が34%だったのに対し、反対は57%いた。本紙の取材でも、佐喜真氏に投票した人にも「県外に移してほしい」「市民としては普天間固定化阻止、県民としては辺野古移設反対」などの声があった。佐喜真氏を推した公明党県本部幹部も「あくまで辺野古移設には反対」と言う。宜野湾市民の基地負担は重い。市の面積の4分の1を占める普天間飛行場は、市中心部にある。12年前には滑走路そばの沖縄国際大に米軍ヘリが墜落。オスプレイが24機配備され、騒音被害は絶えない。市の「基地被害110番」へ寄せられる苦情は昨年10月、月間で過去最多の100件を数えた。だからこそ普天間の閉鎖・撤去は市民共通の悲願なのだ。辺野古移設に触れず、「一日も早い閉鎖・撤去」を訴えた佐喜真氏への市民の期待を、そのまま辺野古移設支持と受け取ることはできまい。むしろ、身近で危険な普天間飛行場の閉鎖と撤去を願う、市民の意思と受け止めるべきではないか。日米両政府が返還に合意してから今年で20年。本来は生活に密着した諸課題が問われるべき市長選で、米軍基地の県内移設の是非までが問われる沖縄県民の重荷を、一日も早く取り除く責任は日米両政府にある。そのためには、政権はまず「辺野古移設か、普天間固定化か」と県民に二者択一を迫るやり方を改める必要がある。そのうえで、県外移設など早期の普天間閉鎖・撤去の方法がないか、米政府と改めて協議を始めるべきだ。

*1-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160126&ng=DGKKZO96537570W6A120C1EA1000 (日経新聞社説 2016.1.26) 国と沖縄は対話を閉ざすな
 米軍普天間基地がある沖縄県宜野湾市の市長選で与党が推した現職が勝利した。安倍政権は同基地の県内移設に向けた作業を加速する方針だ。もっとも、沖縄県は反対姿勢を崩しておらず、移設実現のハードルはなお高い。国と県は対話の扉を閉ざすことなく、問題解決に努めてもらいたい。普天間移設は2013年に沖縄県の当時の知事が工事に必要な埋め立てを承認した。14年の知事選で当選した翁長雄志氏は昨年、承認の取り消しを発表したが、国は「行政には継続性がある」として工事を続行している。日米両政府が普天間返還で合意して今年ですでに20年になる。県内に代替施設を設けることへの沖縄県民の抵抗感は理解できるが、合意を白紙に戻せば返還はさらに遠のきかねない。市街地にある普天間の危険性を一刻も早く除去するには、県内移設が現状における最も現実的な打開策である。埋め立て承認の可否は国と県の間で訴訟になっており、司法の裁きに委ねるしかない。最高裁で国の主張が認められれば、翁長知事は判決に従うべきである。ただ、先の大戦において沖縄県民が被った惨禍や現在に至る過重な米軍基地負担を考慮すると、法理論を唱えるだけでは県民世論を和らげることはできない。代替施設が完成したとしても、周辺住民の協力がなければ円満な運用は望めない。国は県との溝を埋めるため、何ができるかを改めてよく考えるべきだ。沖縄本島南部にある米軍基地の返還の促進は最重要課題である。民主主義は有権者の意向を選挙を通じて行政に反映させるのが基本ルールだが、選挙には衆参両院選もあれば、知事選や市長選もある。政策課題も1つではない。移設反対派が知事選や衆院選の沖縄の4小選挙区での勝利を根拠に「県内移設は否定された」と主張し、賛成派が今回の市長選で「流れが変わった」と反論する。そんな不毛な言い合いをしても双方の感情的な対立を深めるだけだ。

<政府のこれまでの対応>
*2-1:http://mainichi.jp/shimen/news/20151029dde001010074000c.html (毎日新聞 2015年10月29日) 在日米軍再編:辺野古埋め立て着工 沖縄と対立、政府強行 知事「強権極まれり」
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古沿岸部への県内移設計画で、防衛省は29日朝、埋め立てに向けた本体工事に着手した。辺野古の海に隣接する米軍キャンプ・シュワブ内の陸上部分での仮設資材置き場の整備を始めた。今後準備が整い次第、海への土砂投入など埋め立てを開始する見通し。移設に反対する翁長雄志(おながたけし)知事をはじめとする沖縄の反対を振り切って政府が本体工事を強行。日米両政府が1996年に普天間返還で合意してから19年、移設計画は重大な局面を迎えた。沖縄防衛局によると、29日午前8時ごろ、護岸工事に必要な仮設資材置き場の整備作業などを開始。中断していた残り5地点の海底地盤のボーリング調査に向けた準備作業も再開させた。周辺海域では移設に抗議する人たちのカヌーや警戒に当たる海上保安庁の船などが確認された。シュワブのゲート前でも抗議する多くの県民らと警察官がもみ合いとなった。翁長知事は登庁時に記者団の取材に応じ、「強権極まれりという感じで大変残念だ。国に余裕がなく、浮足立っている感じがする。これからしっかりと対峙(たいじ)していきたい」と述べた。移設計画を巡っては翁長知事が13日に埋め立て承認を取り消したのに対し、防衛局は14日に行政不服審査法に基づく審査請求と取り消し処分の執行停止を石井啓一国土交通相に申し立てた。石井国交相は28日に取り消し処分の執行停止の決定を通知。防衛局は28日に県環境影響評価条例に基づいて埋め立て本体工事着手届け出書を県に提出した。防衛局はボーリング調査が終わった計19地点から埋め立て本体工事を進める方針。残り5地点の調査は来春までに完了させる。届け出書によると、工事は2020年10月31日に完了し、約160ヘクタールを埋め立てる。一方で県は13年12月に前知事が埋め立てを承認した際、本体工事着手前の事前協議を留意事項としていたことから、承認取り消しで中断した協議の再開を28日に防衛局に通知。だが、防衛局は同じ28日に「協議は終了した」との文書を県に提出し、再開に応じない姿勢を示した。承認取り消しが執行停止とされたことに対抗し、県は近く、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を申し出る。また、翁長知事による埋め立て承認取り消しに対し、政府は代執行の手続きに入ることも閣議で了解。政府が出した承認取り消し処分を撤回するよう勧告する文書が29日に県に届いた。翁長知事は「恒久的な基地を何が何でも沖縄に押しつけるという政府の最後通牒(つうちょう)だ」と批判するなど是正勧告には応じない姿勢を示しており、その場合には政府は知事に代わって承認する代執行を求めて高裁に提訴する方針。
◇政府理解求める
 世耕弘成官房副長官は29日の記者会見で、本体工事着手について、「事故の危険感や騒音などの被害をなくし、基地の整理縮小を目に見える形でしっかりと進めていきたい」と述べ、理解を求めた。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12041917.html
(朝日新聞社説 2015年10月30日) 辺野古、本体工事着手 埋め立て強行は許されぬ
 米軍普天間飛行場の移設先、名護市辺野古で政府は、埋め立ての本体工事に着手した。新基地建設に「NO」という多くの沖縄県民の声に耳を傾けようとせず、一連の手続きを強行する安倍政権の姿勢に、深刻な疑問を感じざるを得ない。沖縄県民の人権と民意がないがしろにされている。同時に、沖縄という一地域に過度の負担を押しつける、この国のあり方が問われている。
■沖縄の「NO」の理由
 政府に改めて求める。工事を速やかに中止し、県と話し合いの場をもつべきだ。いま一度、沖縄県民の心情に寄り添ってみたい。太平洋戦争末期、沖縄は県民の4人に1人が犠牲になる痛ましい地上戦を経験した。本土防衛の「捨て石」とされたのだ。その沖縄は戦後、平和主義や基本的人権を保障した日本国憲法から隔絶された。米軍統治のもと、「銃剣とブルドーザー」で土地を奪われ、強権的な支配のなかで米軍基地が広がる。念願の本土復帰から43年。今なお、国土の0・6%の沖縄に全国の73・8%もの米軍専用施設を抱えている。戦後70年たつのに、これほど他国軍の基地が集中する地域が世界のどこにあろうか。度重なる事故や犯罪、騒音などの基地被害に脅かされ続けてもいる。それが沖縄の現実である。それでも、翁長雄志知事は日米同盟の重要性を否定していない。抑止力で重要な米空軍嘉手納基地の返還も求めていない。こうした歴史をたどってきた沖縄に、さらに「新たな基地建設」を押し付けようとする。そんな政府の姿勢に「NO」の声を上げているのだ。辺野古に最新鋭の基地が造られれば、撤去は難しい。恒久的な基地になりかねない。
■民意に耳を傾けよ
 それに「NO」を告げる沖縄の民意は、昨年の名護市長選、県知事選、総選挙の四つの小選挙区で反対派が相次いで勝利したことで明らかである。政府にとって沖縄の民意は、耳を傾ける対象ではないのか。着工に向けた一連の手続きにも、強い疑問を禁じ得ない。翁長知事による埋め立て承認の取り消しに対し、沖縄防衛局は行政不服審査制度を使い、同じ政府内の国土交通相が取り消し処分の執行停止を認めた。この制度はそもそも、行政機関から不利益処分を受けた「私人」の救済が趣旨である。防衛局は「私人」なのか。政府と県の対立を、政府内の国土交通相が裁くのが妥当なのか。公正性に大きな疑問符がつく。政府は同時に、地方自治法に基づく代執行手続きにも着手し、知事の権限を奪おうとしている。その対決姿勢からは、県と接点を探ろうという意思が感じられない。埋め立て承認の留意事項として本体着工前に行うことになっている事前協議についても、政府は「協議は終わった」と繰り返し、「終わっていない」という県の主張を聞こうとしない。さらに政府は名護市の久志、辺野古、豊原の「久辺3区」に対し、県や市の頭越しに振興費を直接支出するという。辺野古移設に反対する県や市は無視すればいい、そういうことなのか。自らの意向に沿う地域だけが、安倍政権にとっての「日本」なのか。この夏に行われた1カ月の政府と県の集中協議も、結局は、県の主張を聞き置くだけに終わった。その後、政府が強硬姿勢に一変したことを見れば、やはり安保関連法を通すための時間稼ぎにすぎなかったと言わざるを得ない。
■日本が問われている
 「普天間飛行場の危険性を除去する」。政府はいつもそう繰り返す。しかし、かつて米国で在沖米海兵隊などの整理・縮小案が浮上した際、慎重姿勢を示したのは日本政府だった。96年の普天間返還の日米合意から19年。本来の目的は、沖縄の負担軽減のためだった。そのために、まず政府がなすべきは、安倍首相が仲井真弘多(ひろかず)・前知事に約束した「5年以内の運用停止」の実現に向けて全力を傾けることではないか。米国は、在沖海兵隊のグアム移転や、ハワイ、豪州などへの巡回配備で対応を進めている。その現状を見れば、「辺野古移設が唯一の解決策」という固定観念をまずリセットし、地域全体の戦略を再考するなかで、代替施設の必要性も含めて「第三の道」を模索すべきだ。ひとつの県の民意が無視され続けている。民主主義国として、この現実を見過ごすことはできない。日本は人権を重んじる国なのか。地域の将来に、自分たちの意思を反映させられる国なのか――。私たちの日本が、普遍的な価値観を大事にする国であるのかどうか。そこが問われている。

*2-3:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=139619
(沖縄タイムス 2015年11月1日) 辺野古新基地に生態系保護で壁 埋め立て土砂規制条例が施行
 名護市辺野古の新基地建設など、公有水面の埋め立てに使う県外からの土砂や石材の搬入を規制する県条例が1日、施行された。特定外来生物の混入を確認できれば、翁長雄志知事が搬入中止を勧告できる。政府は来年秋にも辺野古沿岸部に土砂を投入する計画だが、条例施行で進ちょくに遅れの出る可能性もある。「あらゆる手段で新基地阻止」を掲げる翁長知事を側面支援する狙いで県議会与党が提案し、7月に成立した。新基地建設に歯止めをかける知事権限の一つとして期待する声がある。条例は「アルゼンチンアリ」などの特定外来生物が県外産の埋め立て資材に紛れて県内に侵入するのを防ぎ、沖縄固有の生態系を守るのが目的。辺野古新基地建設、沖縄総合事務局による那覇空港第2滑走路増設が直近の対象になる。1日から、埋め立て事業者は県外から土砂などを搬入する90日前までに、採取地ごとに特定外来生物の有無や防除策を県に届け出なければならない。県は外来生物混入の恐れがあれば現地で立ち入り調査、必要に応じて搬入中止の勧告もできる。従わない事業者名は公表されるが、勧告に強制力はない。新基地建設で、防衛局は県内外からダンプカー約250万台分に当たる約1644万立方メートルの土砂(岩ズリ)を買い取り、辺野古沿岸部を埋め立てる計画だ。この大半を県外から搬入する予定で、沖縄の生態系を破壊しかねない特定外来生物などが紛れ込む懸念が指摘されていた。防衛局の埋め立て申請書では、外来生物の混入を防ぐ具体的な対策が示されていなかった。

<米国について>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12042048.html
(朝日新聞 2015年10月30日) 辺野古着工、米を重視 約束履行の姿勢、グアムで菅長官強調
 日本政府は米政府と1996年に普天間飛行場返還に合意して以来、初めて移設先とする辺野古で埋め立ての本体工事に着手した。安倍晋三首相は2012年暮れに政権に復帰して以来、民主党政権時代に冷え込んだ対米関係の改善を重視。翌年2月の日米首脳会談で、オバマ大統領とは普天間移設を早期に進めることで一致した。今回、辺野古で埋め立ての本体工事に踏み込んだのは、米国に対して約束の履行を訴える狙いがうかがえる。菅義偉官房長官は29日、沖縄に駐留する米海兵隊の一部の移転先とする米領グアムを訪問した。工事着手について、菅氏は「前の仲井真(弘多〈ひろかず〉)知事から埋め立て承認をいただいた。行政判断はもう下っているわけだから、その継続という形で進めている」と記者団に強調した。この日は、グアム選出の米下院議員と会談して埋め立ての本体工事に着手したことを伝えるなど、普天間移設を推進する安倍政権の姿勢を米側にアピールした。一方、翁長氏は批判を強める。29日午後、県庁で記者会見を開き、「法律的に最終的な判断が示されないまま工事が強行された。激しい憤りを禁じ得ない」と非難した。また埋め立て承認取り消しの効力を国土交通相に止められたことを不服とし、国地方係争処理委員会への審査申し出を表明。地方自治体による申し出は全国3例目となる。翁長氏は「基地建設に反対する多くの県民を代弁する知事として、あらゆる手法を駆使する」と訴えた。

*3-2:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=137794 (沖縄タイムス 2015年10月20日) 辺野古承認取り消し、支持79% タイムス・RBC世論調査
 沖縄タイムスと琉球放送(RBC)は、翁長雄志知事が名護市辺野古の新基地建設に伴う沿岸部の埋め立て承認を取り消したことを受け、16~18日の3日間、電話による緊急世論調査を合同で実施した。知事の取り消し判断を「支持する」と答えた人が79・3%に上り、県民の幅広い層が理解を示している結果が出た。知事の取り消しを「支持しない」と答えた人は16・1%。「どちらでもない」は4・5%だった。国が取り消しを無効化する対抗措置を経て移設作業を再開しようとしていることには、72・3%が「妥当ではない」と答え、国の方針に県民の反発が強い現状も浮き彫りになった。知事は昨年12月に就任以降、約10カ月が経過している。知事のこれまでの県政運営を「支持する」と答えた人は78・6%で、取り消しを支持する層とほぼ同様の割合だった。「支持しない」とした人は15・5%。国の作業再開方針を「妥当だと思う」とした人は20・8%。「どちらでもない」は6・9%だった。一方、裁判で沖縄側の主張が認められることへの期待は「期待できる」が50・1%にとどまり、「期待できない」が33・9%となった。「どちらでもない」は16・0%。調査は16~18日の3日間、県内全域の世帯を対象に、無作為に抽出した番号に電話をかけて、考えを聞いた。有効回答数は793人。有効回答率は9・9%。回答した人の地域別比率は北部11%、中部34%、南部・先島が55%。

<代替案>
*4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11842452.html (朝日新聞 2015年7月5日) (現場から考える 安全保障法制)宮古島の牧場「ここに基地が」 自衛隊増強の方針
 東京から南西に約2千キロ、沖縄本島からも約300キロ離れた宮古島(沖縄県宮古島市)。北部の海岸近くにある「大福牧場」の牛舎では、名産の黒毛牛が数十頭、草をはんでいた。この牧場周辺の大草原が陸上自衛隊のミサイル基地の候補地だ。防衛省の担当者は「海沿いの高台にあって、ミサイルを置くのに最適地だ」と話す。防衛省は、2018年度末までに宮古島に約800人の陸自ミサイル部隊などを配備する方針だ。宮古島などに配備する部隊は、警備部隊に加え、地対空ミサイル部隊、地対艦ミサイル部隊など本格的な戦闘部隊だ。沖縄の離島に、高い攻撃力を持った自衛隊の部隊が戦後初めて配備されることになる。「部隊が入ってきて訓練でも始めたら、この静かな土地はどうなってしまうのか」。牧場の従業員は不安を隠さなかった。一方、過疎化対策などで部隊配備を歓迎する声も少なくない。安倍政権は宮古島など南西諸島の自衛隊強化を加速する。那覇基地には昨年、「空飛ぶレーダー」といわれる早期警戒機の部隊を三沢から移した。F15の戦闘機部隊も新たに福岡から約20機を移し、約40機態勢に増強する。離島占拠に備え、離島奪還のための「水陸機動団」を新設する。オスプレイや水陸両用車など装備の強化も急ぐ。安倍政権が意識するのは、海洋進出を加速する中国の脅威だ。
■中、船の派遣常態化 米、主体的防衛期待
 中国は2013年11月、自国の防空目的で設ける空域「防空識別圏」を尖閣諸島を含む形で設定した。中国軍は日本列島から台湾、フィリピンなどを結ぶラインを「第1列島線」と呼び、その内側を中国の艦船が自由に往来できる「内海化」する戦略を立てる。習近平(シーチンピン)指導部は、尖閣諸島では公船派遣を常態化させ、南シナ海では埋め立てを進めることで、この戦略を着々と実行に移している。この中国の戦略は、米国の「リバランス(アジア回帰)」政策とぶつかる。米国は、南シナ海では中国の海洋活動を牽制(けんせい)するために沿岸国を支援している。これに対し、東シナ海では、尖閣を含めた日本の離島防衛は、日本が独自に担えるよう能力を向上させようとの狙いが透ける。今年4月に改定された日米防衛協力の指針(ガイドライン)でも、離島防衛は自衛隊が「主体的に実施する」とされ、米軍の関与は「自衛隊を支援し補完する」とした。水陸両用車両を売り、自衛隊の「水陸両用戦」の能力を高めようと支援している。日米中のにらみ合いが続く中で、各国にとって「悪夢」は、自衛隊と中国軍の偶発的な衝突だ。日中は衝突を避けるための仕組み「海空連絡メカニズム」の早期運用開始で合意している。戦闘機や艦艇が直接無線交信するために周波数を決めたり、自衛隊と中国軍の幹部どうしを結ぶホットラインを設けたりするものだ。しかし、尖閣問題の対立先鋭化を避けるため、日中両国の領海、領空は対象にしない方針だ。日本は尖閣諸島に領土問題は存在しないという立場で、「中国に尖閣諸島の周辺で連絡メカニズムを使われ、領有権を主張されると困る」(防衛省幹部)。ただ、そうした地域ほど衝突の可能性は大きく、十分な連絡体制になるか疑問視されている。
■離島防衛「ちぐはぐ」 野党が対案「一番心配なのに」
 尖閣諸島周辺に接近する中国軍にどう対処するか。安倍政権は安保法制で、武装漁民による離島占拠など、日本に対する武力攻撃には至らないが警察力では対応できない「グレーゾーン事態(準有事)」に対応する法整備を見送った。公明党が自衛隊の権限拡大に慎重だったのに加えて、警察や海上保安庁が権限縮小をいやがったようだ。この結果、グレーゾーン事態では、電話閣議を導入して自衛隊出動の判断を迅速化するなど、運用の改善で済ますことにした。「切れ目のない法整備というのに、一番の切れ目に手当てをしない。対応がちぐはぐだ」。自民党の防衛相経験者は疑問を呈する。一方、維新の党は今月2日、安保関連法案の対案を決定した。この中で、グレーゾーン事態で自衛隊が海上保安庁に協力する「領域警備法案」をまとめた。民主党も同法案を共同提出する方向だ。同法案は、警察や海上保安庁と自衛隊の関係を強化し、グレーゾーン事態の際に自衛隊が出動する手続きを簡略化するものだ。尖閣諸島周辺を念頭に、国会承認で「領域警備区域」を指定。平時から自衛隊が海上保安庁の警備に協力する。グレーゾーン事態では、閣議決定なしに自衛隊が「海上警備行動」や「治安出動」をできるようにする。ただ、それがかえって軍事衝突を誘発しないか、という議論もある。維新の党の柿沢未途幹事長は3日の衆院特別委員会で「国民が一番心配しているのは尖閣諸島をはじめ離島防衛だ。法整備を政府はなぜ置き去りにするのか」と指摘。中谷元・防衛相は「平時から自衛隊が海上保安庁と警察権を行使することは、日本側が事態をミリタリー(軍事)対ミリタリーにエスカレートさせたとの口実を相手に与える恐れがある」と答弁した。


PS(2016.1.27追加):*5-1のように、現在、日本の外務省は尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らかだとして根拠を示している。また、太平洋戦争後27年目の1972年日中国交正常化時点で合意された周首相(中国)と田中首相(日本)との間で交わされた尖閣問題棚上げ(一時的に問題を未解決のままにしておくこと)合意は、*5-2のように、「日中国交正常化という大同のために尖閣諸島の領有権問題という小異を次世代に繰り延べる」というものだ。そのため、それから40年以上過ぎた現在でも棚上げを主張するのは日本側の不作為に過ぎず、周首相や田中首相が現在のリーダーであれば、別の対応をすると考える。

*5-1:http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/qa_1010.html#q5 
尖閣諸島に関する日本外務省の見解
Q1:尖閣諸島についての日本政府の基本的な立場はどのようなものですか。
A1:尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らかであり,現に我が国はこれを有効に支配しています。したがって,尖閣諸島をめぐって解決しなければならない領有権の問題はそもそも存在しません。
Q2:尖閣諸島に対する日本政府の領有権の根拠は何ですか。
A2:第二次世界大戦後,日本の領土を法的に確定した1951年のサンフランシスコ平和条約において,尖閣諸島は,同条約第2条に基づいて日本が放棄した領土には含まれず,同条約第3条に基づいて,南西諸島の一部としてアメリカ合衆国の施政下に置かれました。1972年発効の沖縄返還協定によって日本に施政権が返還された地域にも含まれています。尖閣諸島は,歴史的にも一貫して日本の領土である南西諸島の一部を構成しています。即ち,尖閣諸島は,1885年から日本政府が沖縄県当局を通ずる等の方法により再三にわたり現地調査を行い,単に尖閣諸島が無人島であるだけでなく,清国の支配が及んでいる痕跡がないことを慎重に確認した上で,1895年1月14日に現地に標杭を建設する旨の閣議決定を行って,正式に日本の領土に編入しました。この行為は,国際法上,正当に領有権を取得するためのやり方に合致しています(先占の法理)。尖閣諸島は,1895年4月締結の下関条約第2条に基づき,日本が清国から割譲を受けた台湾及び澎湖諸島には含まれません。
【参考:サンフランシスコ平和条約第2条】
(b)日本国は,台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利,権原及び請求権を放棄する。 (以下略)

*5-2:http://vergil.hateblo.jp/entry/20130623/1371997158
[文書名] 田中総理・周恩来総理会談記録
[場所] 北京
[年月日] 1972年9月25日〜28日
第一回首脳会談(9月25日)
周総理: 田中総理の言うとおり、国交正常化は一気呵成にやりたい。国交正常化の基礎の上に、日中両国は世々代々、友好・平和関係をもつべきである。日中国交回復は両国民の利益であるばかりか、アジアの緊張緩和、世界平和に寄与するものである。また、日中関係改善は排他的なものであってはならない。田中・大平両首脳は、中国側の提示した「三原則」を十分理解できると言った。これは友好的な態度である。今回の日中首脳会談の後、共同声明で国交正常化を行い、条約の形をとらぬという方式に賛成する。平和友好条約は国交樹立の後に締結したい。これには、平和五原則に基づく長期の平和友好関係、相互不可侵、相互の信義を尊重する項目を入れたい。日中友好は排他的でないようにやりたい。日中は大同を求め小異を克服すべきであり、共通点をコミュニケにもりたい。
第二回首脳会談(9月26日)
田中総理: 大筋において周総理の話はよく理解できる。日本側においては、国交正常化にあたり、現実問題として処理しなければならぬ問題が沢山ある。しかし、訪中の第一目的は国交正常化を実現し、新しい友好のスタートを切ることである。従って、これにすべての重点をおいて考えるべきだと思う。自民党のなかにも、国民のなかにも、現在ある問題を具体的に解決することを、国交正常化の条件とする向きもあるが、私も大平外相も、すべてに優先して国交正常化をはかるべきであると国民に説いている。具体的問題については小異を捨てて、大同につくという周総理の考えに同調する。

第三回首脳会談(9月27日)
田中総理: 尖閣諸島についてどう思うか?私のところに、いろいろ言ってくる人がいる。
周総理: 尖閣諸島問題については、今回は話したくない。今、これを話すのはよくない。石油が出るから、これが問題になった。石油が出なければ、台湾も米国も問題にしない。国交正常化後、何カ月で大使(館)を交換するか?
大平大臣: できるだけ早く必要な措置を講じていくが、共同声明のなかに、何カ月以内にとは書けない。もし1日でもたがえたらよくないことだからだ。総理と私とが中国を訪問した以上、2人を信用してもらって、できるだけ早く大使の交換をやるということで御了承願いたい。

 会談全体の流れを見れば、日中国交正常化にあたって、尖閣問題を棚上げとすることで両国首脳の合意があったことは明白だ。


<憲法改正について>
PS(2016年1月29日追加):*6のように、「憲法“改正”は立党以来の自民党の党是であり、夏の参院選で争点にする」とのことだが、「自主憲法を作る」というだけでは憲法を改正する理由にはならない。何故なら、日本国憲法は、当時の日本人が自主的に変えたものではないからこそ、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義などの三大原則や法の下の平等、男女平等、言論の自由など、明治憲法から見れば革命的な国民の権利が定められたものだからである。そのため、自民党は憲法改正を包括的に一括して公約するのではなく、自民党の憲法改正草案を逐条で、①改正したいと考える条項 ②その理由 ③改正したら変化する法的効果 などについて説明すべきであり、野党やメディアも、議員の信頼を落とすようなチクリばかりでなく、正面から自民党の憲法改正草案を逐条で取り上げて質問すべきだ。日本国民は、既にそのレベルに達しており、まともな報道をすれば判断できるのだから・・。

*6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201601/CK2016012802000133.html (東京新聞 2016年1月28日) 「改憲、参院選の公約に」 首相、代表質問で明言
 安倍晋三首相は二十七日、衆参両院の本会議で行われた各党代表質問で、夏の参院選で争点にする考えを示している改憲について「自民党は党是として、立党以来ずっと憲法改正を掲げており、今後とも公約に掲げ、しっかりと訴える」と表明した。改憲について、おおさか維新の会の馬場伸幸幹事長は「地方自治体が国の意思決定に関与できる仕組みを創設する」として、統治機構改革のために改憲する必要があると訴えた。首相は「御党が具体的な改正項目を検討していることに敬意を表する」と理解を示したが、安倍政権が目指す具体的な改憲項目については「国会や国民的な議論と理解の深まりの中で定まる」とし明確にしなかった。首相は、環太平洋連携協定(TPP)について「署名後、速やかに協定の承認案と関連法案を国会に提出し、承認を求める」と説明した。交渉参加十二カ国による署名式は二月四日にニュージーランドで行われる。米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設については「普天間の全面返還を日米で合意してから二十年たった。もはや先送りは許されない」と指摘。沖縄県との法廷闘争に関しては「やむを得ない措置だ。対話の窓を閉ざすことは決してない」との考えを示した。二十八日は参院本会議で代表質問が行われる。

<金を使って害になることばかりする理由は何か>
PS(2016年1月31日追加): *7-1、*7-2のように、ホタテ養殖などで知られた宮城県石巻市雄勝町では、130億円かけて、高さ9.7メートル、延長3.5キロの防潮堤を築く計画が進んでいるそうだが、高台の集団移転地が完成し、町の従来の中心部に住むのは約80世帯くらいで、住民は「景観を破壊する」と防潮堤の建設には反対しているそうだ。宮城県は道路や再建された水産加工場など保全すべき施設があると主張しているそうだが、その場所は津波の際には水につかることを前提として建設すべきで、それよりも海と陸が切り離され森から海への栄養塩のルートが断たれてホタテの養殖に悪影響を与えたり、景観の悪化で観光客も呼べなくなったりする方が、生活権を侵害される重要な問題だ。
 そのため、環境を壊すので地元住民も望まないような防潮堤を造ることは、所得税の2.1%分を復興特別所得税として支払って東北を応援している国民も望むところではなく、環境への親和性が高くて無駄なコストをかけない対応をしてもらいたいのである。なお、この間、国費を使って毎週のように東北に通った国会議員は、何を聞いてきたのかと思われるが、行って話を聞いたというアピールをするだけでは意味がない。私自身は、住居、幹線道路、重要施設は高台に移転し、下は放牧地、田畑、公園などを、津波の際には浸水することを前提として、緑の防潮堤とともに配置するのがよいと考える。
 それにもかかわらず、金を使ってこのように害になることばかりしている理由は、政策担当者が、自然、生態系、生物、物理に疎く、何が何でもコンクリート造りの人工物がBestだと考えているからだろう。

      
 *7-1より      問題になっている巨大防潮堤       震災瓦礫を基礎にした緑の防潮堤
                      (どちらがよいふるさとになるかは、書くまでもない)
 
*7-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12186991.html?_requesturl=articles%2FDA3S12186991.html&rm=149 (朝日新聞 2016年1月31日) (東日本大震災5年 現場から考える:上)巨大防潮堤、何守る 宮城・雄勝
■高台移転、住民戻らず
 いったい何を守るためなのか。硯(すずり)の生産やホタテ養殖で知られた宮城県石巻市雄勝(おがつ)町。津波で壊滅した町中心部にいま、130億円をかけ高さ9・7メートル、延長3・5キロの防潮堤を築く計画が進む。津波をかぶったまちの跡は、災害危険区域に指定され、もう人は住まない。高台の集団移転地が完成し、町外で仮住まいを続ける人が戻っても、中心部に住むのは震災前の620世帯から約80世帯にまで減る。更地にぽつんと立つ仮設商店街の一室で昨年12月25日、防潮堤計画をめぐり、宮城県と「持続可能な雄勝をつくる住民の会」の話し合いが持たれた。「景観を破壊する」と建設に反対する住民。道路や再建された水産加工場など、保全すべき施設があると主張する県。平行線が続いた。「海と陸が切り離された雄勝では、観光客も呼べない。10年以内に町は衰退する」。硯職人の3代目、高橋頼雄さん(48)は語気を強める。自宅を流されながら、この5年近く、町のホタテ祭りなどを引っ張ってきた。「何とかこの地で皆でやっていけないかと、考えてきたんです」。県の担当者は「まちづくりの様々な会合で説明し、住民合意はなされたと判断した」という。だが決議などをとったわけではない。住民の会事務局の徳水博志さん(62)は「いま一度、地域住民を集めて採決すべきだ」と反論した。地元の市役所も、壁のような防潮堤を望んだわけではなかった。石巻市雄勝総合支所は震災の年、住民団体の議論もふまえ、海沿いを走る県道や国道を20メートルの高さまで移し、道沿いに山をきりひらいて住宅地をつくる復興案をまとめた。それなら防潮堤は、もとの4メートル程度に復旧すればいい。ところが県は、数十年から百数十年に一度の津波に対応する「L(レベル)1」の高さにこだわった。「道路移転は必要ない。費用もかかる」との考えが示され、9・7メートルの計画が動きだしたという。「防潮堤の上げ下げを議論していても、まちづくりは進まない。のまざるを得なかった」と三浦裕総合支所長は振り返る。県は2018年春の防潮堤完成を目標に、年度内の着工をめざす。工事が始まれば、硯職人の高橋さんは雄勝を離れるつもりだ。
     *
 東日本大震災からまもなく5年。人口が激減する三つのまちから「復興」を考える。

*7-2:http://onion21.cocolog-nifty.com/onion21_kyodo_news_blog/2014/06/post-1460.html(河北新報2014年6月13日)東日本大震災 巨大防潮堤/合意なき「壁」で何を守るのか
 沿岸被災地で完成間もない防潮堤に登ってみた。そこでは高さ10メートルを超える「壁」が海と陸をきっぱりと隔てていた。被災3県で整備予定の防潮堤は総延長386キロに及ぶ。既に46キロ分が完成し、各地で工事が本格化している。宮古市田老地区では、巨大防潮堤への過信が被害を大きくしたとの指摘もあった。それでも岩手県は、現況から4.7メートルをかさ上げする。気仙沼市本吉町の小泉海岸に造る防潮堤は14.7メートル。ここから海に流れ込む津谷川の河口堤を含めた完成予想図は、土木工学の専門家が今から難工事を予見するほどのスケールだ。既存の防潮堤は各県横並びでおおむね1メートルのかさ上げが決まった。「既存高プラス1メートル」までなら災害復旧事業の枠内として全額国に負担してもらえるためだ。国の基準を出発点に各県は、防潮堤の整備方針を決定。その後、背後地を土盛りしてインフラを敷設。最後に住民に諮ってまちづくり計画を固める。行政による復興は概略この順序で進められてきた。だが、復興に寄せる被災住民の思いは、行政の手法と逆のプロセスをたどるのが普通だろう。住民はまず「こんなまちで暮らしたい」という理想から対話を始める。次に願いを形にして街並みや施設の配置を考える。そして最後に防潮堤は必要か、必要だとしたら許容できる高さはどれくらいかを決める。防潮堤の建設を復興の入り口とする行政と出口に置く住民では、議論がかみ合うはずもなかった。単なる復旧事業である以上、住民合意も必要としない。結果、復興の加速化を重視する行政の対応は相当、荒っぽいものとなった。岩手県の説明会では職員が膨大な資料を駆け足で説明し、住民は熟慮する時間を与えられないまま、その場で拍手を求められたという。宮城県の村井嘉浩知事は「私の責任で決断する」との言説を曲げようとしない。仮に、それが住民の命を守る手だてだとの信念で復興事業を推し進めたとしよう。しかし、住民の理解と納得を軽視する形で造った防潮堤によって土地の魅力が減じてしまえば、やがて人々はその土地から去っていく。そうなったとき、巨大防潮堤は一体何を守ろうというのか。防潮堤整備の復旧事業扱いには、自然環境を保全する観点からも問題点が指摘されている。原状回復のレベルを逸脱する工事にもかかわらず、環境影響調査の対象外となるためだ。波打ち際をコンクリート壁で固めることによる生態系や、そこからの恩恵で成り立つ漁業への影響が真剣に検討されてきた形跡は、残念ながらない。過去、幾度となく津波被害に遭ってきた三陸の住民は、しなやかに、あるいはある種の諦観をもって海と向き合い、生きてきた。足元の防潮堤は、そんな精神性までも押しつぶそうとしているように見える。


PS(2016年2月5日追加): 辺野古新基地建設に伴う埋め立て承認取り消しをめぐる代執行訴訟で、福岡高裁那覇支部は、*8のように2つの和解案を示したそうだ。これまでの経緯を見れば、沖縄県地元紙の論調の方が正しいと考える。そのため、国は、ここで環境と財政の両方を考慮した案に変更すべきだ。

*8:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-215658.html
(琉球新報社説 2016年2月4日) 辺野古和解勧告 問題の本質を見極めよ
 辺野古新基地建設に伴う埋め立て承認取り消しをめぐる代執行訴訟で、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)が示した和解案2案が判明した。このうち「根本的な解決案」は、県が承認取り消しを撤回する代わりに、国は新基地の「30年使用期限」か「軍民共用」を米側と交渉するという内容だ。これのどこが「根本的」か、理解に苦しむ。沖縄への米軍基地の圧倒的な偏在の上に、なおも新基地を押し付けることに県民は反発している。本土の民意は大事にするのに、沖縄の民意は簡単に踏みにじることの差別性も問うているのである。和解案の通りなら結局、民意を無視して新基地が押し付けられることになる。基地の偏在は微動だにしない。貴重な環境も破壊される。民主主義と地方自治の否定、構造的差別という根源的な問題は放置されるのだ。論外である。使用期限も全くの空念仏だ。1999年当時の移設案の「15年使用期限」に対して政府は「尊重」を閣議決定したが、米側にまともに要求すらせず、2006年には沖縄の頭越しに一方的に廃止した。信用できるはずがない。しかも和解案は米側と「交渉する」だけである。米側が拒めばそれで終わりだ。30年後の返還を裁判所が保証できるわけがなく、いったんできてしまった新基地は半永久的に続くのである。県側は受け入れに否定的だが、当然だろう。半面、「暫定的」な案の方は興味深い。国が代執行訴訟を取り下げて工事を停止し、県と協議する。折り合わなければ、強制力の弱い違法確認訴訟で争うという内容だ。法定受託事務の処理をめぐって国と県が折り合わない場合、取り得る手段はいくつかある。このうち代執行は最も重く、強制的な処分だ。地方自治法は「是正勧告」や「指示」などを経てもなお「是正が困難」な場合に、初めて代執行が可能と規定しているのだ。 一挙に代執行訴訟を提起したことについて、国は緊急性を理由にしているが、選挙期間中は作業を中断するのだから説得力は乏しい。裁判長もそう判断しているのだろう。いずれにせよ裁判所は問題の本質を見極めてもらいたい。この国が法の前に誰もが平等な「法治国家」なのか、それとも政府の恣意(しい)的な法解釈を許し、民意も地方自治も踏みにじっていい国なのか。問われているのはそのことである。

| 辺野古・普天間基地問題::2015.4~ | 03:19 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.10.13 普天間基地の閉鎖と辺野古の基地建設問題について (2015年10月14日、15日、28日、11月1日、27日に追加あり)
    
 2015.10.13                辺野古の位置と地形            2015.5.31 
 沖縄タイムス                                          朝日新聞
 
(1)沖縄県の辺野古埋め立て承認取り消し
 普天間基地の辺野古移設については、*2-1のように、2013年12月に仲井真前知事が政府による辺野古沿岸部埋め立て申請を承認し、2014年11月の沖縄県知事選では、辺野古移設反対を公約に掲げた翁長氏が仲井真氏を破って、新知事に当選した。

 しかし、*1-1のように、仲井真前知事は、翁長新知事(前那覇市長)が知事に就任する直前に工法変更の承認まで行っていたため、翁長新知事が、*2-3のように、承認過程を検証する第三者委員会にかけた上で、「承認の手続きに瑕疵がある」として承認を取り消した。私は、2013年12月の仲井真前知事の誰かに脅されたかのような突然の翻意や2014年12月の知事交代直前の工法一部変更承認には疑問が多いため、仲井真知事の判断や承認手続きには、本質的な瑕疵が潜んでいそうだと考える。

 そして、*1-2のように、①普天間基地の移設先が名護市辺野古である必要性は乏しい ②米軍基地が沖縄県に集中し、基地負担が固定化する ③周辺の自然環境に悪影響がある 等の理由を挙げて、翁長知事が埋め立て承認を取り消したのに対し、菅官房長官や中谷防衛大臣は、「承認に法的瑕疵はない」「辺野古が唯一の選択肢だ」「粛々と進める」等の思考停止したような観念的で短い返事を繰り返すのみである。そして、国交相に行政不服審査法に基づく不服審査と取り消し措置の効力の一時停止を申し立てる考えを示したそうだが、何が大切かについての考察がなく、誰かから言われたフレーズを繰り返し、権力を振りかざすだけでは、官房長官や防衛大臣として不足である。

(2)これまでの経緯
 そのような中、*2-2のように、沖縄タイムスは、2015年4月6日付の「翁長・菅会談」における翁長知事の冒頭発言が、民意を過不足なく代弁し、ウチナンチュの心の琴線に触れる内容だったため、年配の読者が感動し興奮したと伝えている。確かに、有権者を馬鹿にし、大した根拠もないのに自分たちの判断が唯一無二だとする一部ヤマトンチュの態度は、同じヤマトンチュから見ても見苦しい。

 そして、沖縄県の第三者委員会は、*2-3のように、①沖縄防衛局は普天間の危険性除去・早期移設を挙げたが、他の場所ではなく辺野古だけが適切だとする理由を説明しておらず、論理の飛躍がある ②普天間の早期閉鎖手法が辺野古移設であるべき根拠はない ③辺野古移設の不利益は、沖縄に米軍基地の固定化を招き、格差や過重負担を固定化することである ④こうした状態は法の下の平等を定めた憲法14条の精神に反する ⑤埋め立て地域の一部は県の「琉球諸島沿岸海岸保全基本計画」で開発行為に規制が掛かっているが、防衛局は必要な規制解除の手続きを取らなかったため承認に瑕疵があった などを指摘しており、もっともである。さらに、上の右端の図のように、日本各地の土砂を沖縄に運び込むなど、生態系を壊す可能性のあるとんでもない話だ。

 しかし、*2-4のように、沖縄県の辺野古協議書取り下げ要求を、菅官房長官は拒否した。また、*2-5のように、2015年8月11日から辺野古移設工事を全面的に中断し、9月9日まで約1カ月の集中協議を行ったが、これは結論ありきの形式で、*2-6のように、9月13日には工事が再開された。これは、沖縄の民主主義で示された民意を踏みにじる行為にほかならない。

 そのため、*2-7のように、2015年9月21日に、翁長知事がスイスで開かれた国連人権理事会で「沖縄の人々の人権はないがしろにされている」という演説をしなければならなくなった。私は2012年2月からこのブログで普天間基地問題に関しても注視して記述していたため知っているのだが、確かに最初、ヤマトンチュのメディアは、沖縄問題は他人ごとで放っておけばよいという態度だった。そのために、ヤマトンチュの政治家や国民の認識が遅れたので、私は、沖縄の基地問題は、安全保障の問題であるのみならず、民族差別や人権問題も含んでいると考える。

(3)島尻参議院議員(自民党、沖縄選出)の沖縄担当相就任について
 *3-1のように、朝日新聞が、2015年4月18日、19日に、全国世論調査と沖縄県民意識調査を電話で行ったところ、米軍普天間飛行場の辺野古移設については、全国で「評価しない(55%)」が「評価する(25%)」を上回り、沖縄では「評価しない(73%)」が「評価する(18%)」を圧倒したそうだ。また、翁長知事の「辺野古に基地をつくることに反対し、移設のための作業を停止するよう指示した」という対応に、全国では「評価する(54%)」が「評価しない(28%)」を上回り、沖縄では「評価する(70%)」が「評価しない(19%)」を引き離したとのことである。

 さらに、*3-2のように、辺野古の埋め立て工事を阻止しようとする抗議市民と警官がもみ合いになる事態も起こっており、沖縄防衛局は移設に向けた準備作業を進め、市民らは関係車両がゲートに入るのを阻止しようと集まって、必死の抵抗をしているわけだ。

 これに対し、*3-3、*3-4のように、自民党沖縄県連会長に就任した島尻参院議員は、2015年4月4日、自民党の県連大会挨拶で、「名護市辺野古の新基地建設をめぐる市民の反対運動は責任のない市民運動で、私たちは政治として対峙する」「反対運動の声の大きさに恐れおののかず、毅然と冷静に物事を進めないといけない」と発言したそうだ。これは、国会議員が国民によって選ばれ、国民に委託されて政治を行っていることを考えていない発言で、島尻氏が「その発言は市民運動を否定するものではない。運動と私たちの立場である政治は違うという意味だ。現実を見据えて物事を進めるのが政治の使命だ」と説明しているのは、その説明自体がおかしい。

 このような島尻参議院議員が、*3-5のように、2015年10月7日に沖縄担当相として入閣した。安倍首相の女性枠だろうが、米軍普天間飛行場の返還問題では、2010年7月に「県外移設」を訴えて沖縄選挙区で再選を果たした参議院議員だ。その後、*3-3、*3-4のような発言をしていたため、どうするのか見ものである。

<沖縄県の辺野古埋め立て承認取り消し>
*1-1:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=136905 (沖縄タイムス 2015年10月13日) 【号外】辺野古埋め立て根拠失う 翁長知事が承認取り消し 
 翁長雄志知事は13日午前、県庁で記者会見し名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消したと発表した。前県政の承認の手続きに「瑕疵(かし)がある」と判断した。翁長知事は「承認は取り消すべき瑕疵があると判断した。今後も辺野古に新基地は造らせないという公約実現に向け、全力で取り組む」と述べ、新基地建設を阻止すると強調した。承認取り消しで、沖縄防衛局は埋め立ての根拠を失い、辺野古沖での作業ができなくなる。県は、承認の過程を検証した第三者委員会の「瑕疵あり」の結論を踏まえ、埋め立て承認申請では普天間飛行場の代替施設を県内に建設する根拠が乏しく、環境保全策が不十分な点などを指摘。埋め立ての必要性を認めることができないと判断した。取り消しを受けて、防衛局は公有水面埋立法を所管する国土交通相に対し、県の取り消しの効力を止める執行停止と、無効化を求める審査請求をする見通し。翁長知事は知事就任前から「あらゆる手段で新基地建設を阻止する」と公約に掲げてきた。ことし7月に第三者委員会が承認に「瑕疵がある」と翁長知事に報告後、8月10日から1カ月かけた政府との集中協議が決裂。処分される防衛局側の意見を聞く「意見聴取」と「聴聞」の手続きを終えて、取り消しが決まった。防衛局は県に出した陳述書で「承認手続きに瑕疵はなく、取り消しは違法」と主張している。

*1-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK13H0P_T11C15A0I00000/
(日経新聞 2015/10/13) 沖縄知事、辺野古埋め立て承認取り消し発表 菅氏「瑕疵ない」
 沖縄県の翁長雄志知事は13日午前、県庁で記者会見し、米軍普天間基地(同県宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認に関し、正式に取り消したと発表した。防衛省沖縄防衛局は移設工事を進める法的権限を失う。中谷元・防衛相は工事を続けるため、直ちに承認取り消しの執行停止と無効を求める申し立てをする方針を示した。県によると、13日付で沖縄防衛局に文書を送付し、埋め立て承認を取り消したことを通知した。理由について(1)普天間基地の移設先が名護市辺野古である必要性が乏しい(2)沖縄に集中する米軍基地負担が固定化する(3)周辺の自然環境への影響――などをあげた。翁長氏は記者会見で、仲井真弘多前知事が埋め立てを承認したことについて「到底容認できない」と主張。政府と県による1カ月間の集中協議で「沖縄の考え方や思いが理解いただけなかった」と政府を批判した。政府が対抗措置をとれば「法律的にも政治的にもしっかり沖縄の主張をしていく」と強調した。菅義偉官房長官は13日の閣議後の記者会見で「承認に法的瑕疵(かし)はない」と強調。埋め立て工事を進める考えを示した。「公有水面埋立法を所管する国土交通相に、審査請求および執行停止の申し立てすることを含め、対応を検討する」と述べた。中谷氏も記者会見で、国土交通相に行政不服審査法に基づく不服審査と、取り消し措置の効力の一時停止を速やかに申し立てる考えを示した。取り消しの効力が一時的になくなれば、移設工事を再開できる。政府は今秋以降に本体工事に着手する方針だ。ただ、工事を再開すれば今度は県が工事を阻止するための対抗措置を取る方針で、最終的に法的闘争に発展する可能性が高い。普天間基地の移設問題を巡っては、2013年12月に仲井真前知事が政府による辺野古沿岸部の埋め立て申請を承認した。14年11月の知事選で翁長氏が辺野古移設反対を公約に掲げて仲井真氏を破った後、15年1月に承認過程を検証する第三者委員会を置いた。第三者委が手続きに関し「法的な瑕疵がある」との報告書をまとめたのを受け、翁長氏は9月に承認を取り消す方針を表明していた。

<これまでの経緯>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASGD55RDCGD5TPOB002.html
(朝日新聞 2014年12月5日) 沖縄・仲井真知事、辺野古の工法変更を承認 退任直前に
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画を巡り、仲井真弘多知事は5日、工法の一部を変更したいとする沖縄防衛局からの申請を承認した。移設阻止を掲げる翁長雄志(たけし)・前那覇市長の知事就任を10日に控え、任期切れ目前の仲井真氏が昨年末の辺野古の埋め立て承認に続き、国に「お墨付き」を与えたことに、県内では反発の声が上がった。沖縄防衛局は9月、仮設道路の設置や護岸の追加など4項目の変更を県に申請。うち2項目について県は5日までに審査を終え、仲井真氏が承認した。仲井真氏は「標準的な処理期間を大幅超過しており、判断すべき時期と考えた」とするコメントを発表。しかし、移設反対派の市民団体は同日、県土木建築部長を訪ね、「(承認の公印の)押し逃げだ」と批判した。新たに知事に就く翁長氏は変更申請について、「私に判断をお任せ願いたい」と述べていた。移設工事を巡る国の変更申請は今後も繰り返し出される見通しで、知事就任後の翁長氏の対応が焦点となる。

*2-2:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=110598
(沖縄タイムス社説 2015年4月7日) [知事不退転の決意]支援の大きなうねりを
 感動のあまり心が打ち震えることをウチナーグチで「ふとぅふとぅー」と表現する。6日付本紙に掲載された「翁長・菅会談」の翁長雄志知事の冒頭発言を読んで、年配の読者は「ふとぅふとぅーしてきた」と興奮気味に伝えてきた。このような感想が出てくるのは、翁長知事の発言が名護市長選、知事選、衆院選で示された民意を過不足なく代弁しているだけでなく、ウチナーンチュの心の琴線に触れる内容だったからだ。テレビで連日のように流れる菅義偉官房長官の「粛々と」という発言に対しては、復帰前、「自治は神話である」と言い放ったキャラウェー高等弁務官の金門クラブ演説(1963年)を持ち出し、「問答無用の姿勢が感じられる」と厳しく批判した。名護市長選で移設反対候補が再選されても「全く影響ない」と無視し、県知事選が近づくと「(移設問題は)争点にならない。過去の問題」だと言い放ち、知事選の結果についても、移設反対の民意が示されたことを否定し、都合のいいように解釈する。有権者を小ばかにしたような菅氏の態度が、公開の場で厳しい批判にさらされたのである。安倍政権の強権的な手法は、沖縄戦で戦場となり米軍支配の下で自治・人権を脅かされ続けた沖縄では、通用しない。それを浮き彫りにしたのが翁長・菅会談だった。「辺野古の新基地は絶対に建設できないと確信を持っている」という知事の不退転の言明は今後、大きな意味を持ってくるはずだ。
    ■    ■
 翁長氏だけではない。大田昌秀、稲嶺恵一、仲井真弘多の3知事も在任中、辺野古移設は不可能という趣旨の見解を明らかにしてきた。「どの県の知事も安保は大事と言いながら、自分の所に基地が来ては困ると言い、自分が困ることを沖縄に押しつけ平然としている」と会見で語ったのは大田氏。稲嶺氏はラムズフェルド米国防長官と県庁で会った際、基地に対する県民感情をマグマにたとえ、「一度、穴が開くと大きく噴出する」と指摘した。仲井真氏だって2013年11月の会見では「固定化という言葉が出てくること自体、一種の堕落だ」と指摘しているのである。菅氏は、1999年、稲嶺知事と故岸本建男名護市長の受け入れ表明を受け、閣議決定がなされたことを強調するが、稲嶺県政が打ち出した構想を県の相談もなく廃棄し、閣議決定を一方的にほごにしたのは国である。稲嶺県政は現行案(V字案)には合意していない。
    ■    ■
 これら一連の経過の全体を菅氏は知っているのか。本紙が3日から5日まで実施したオートコール方式による緊急世論調査(サンプル数610)によると、約76%が新基地建設に反対し、翁長知事の姿勢を支持すると答えた人は83%に達した。民意を無視して建設を強行しようとすれば、むき出しの国家暴力が表面化し、辺野古移設の正当性は失われる。日米関係そのものが大きな痛手を受けるのだ。

*2-3:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-246497-storytopic-3.html
(琉球新報 2015年7月30日) 第三者委報告書、県が公開 辺野古の根拠示されず 
 沖縄県は29日、名護市辺野古の新基地建設計画に伴い前知事が行った埋め立て承認に「瑕疵があった」と翁長雄志知事に答申した第三者委員会の報告書と議事録を公開した。報告は米海兵隊が新基地に配備予定の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて、環境影響評価(アセスメント)手続きの最終段階に当たる評価書で初めて配備を記載したことに触れ「極めて重要な配備の情報は方法書および準備書段階で記載されるべき」だったと指摘した。辺野古に移設予定の普天間飛行場では、夜間飛行やオスプレイの飛行形態に関する日米合意違反が常態化し、県の審査担当者もこの状況を認識していたと聞き取りを基に断定した。埋め立ての必要性について沖縄防衛局が「普天間の危険性除去、早期移設」を挙げたことに対し、「他の場所ではなく、なぜ辺野古が適切なのか、何ら説明していない」とし、「論理の飛躍(審査の欠落)」があったと指摘した。報告書は埋め立ての利益と不利益を比較考量すべきだとした上で、利益について、普天間飛行場の早期閉鎖を挙げた。ただその手法が辺野古移設であることは「合理性が不明で、根拠も十分とは言えない」とした。一方、不利益について、沖縄の過重な基地負担に触れ、辺野古移設は「米軍基地の固定化を招く契機となり、格差や過重負担を固定化する」と指摘した。こうした状態は法の下の平等を定めた憲法14条の精神にも反するとも指摘した。報告書はジュゴンやウミガメなどの保護策、県外からの埋め立て土砂搬入に伴う外来種侵入防止策など各分野の環境対策も網羅した。埋め立て申請内容は、県自身が知事意見や環境生活部長意見で示した環境対策の問題点に「対応できていない」と結論付けた。埋め立て地域の一部は県の「琉球諸島沿岸海岸保全基本計画」で開発行為に規制が掛かっているが、防衛局は必要な規制解除の手続きを取らなかったとして、承認に瑕疵があったと指摘した。

*2-4:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=126367
(沖縄タイムス 2015年7月30日) 沖縄県、辺野古協議書取り下げ要求 菅氏は拒否
 米軍普天間飛行場返還に伴う名護市辺野古の新基地建設で、沖縄県は29日、埋め立て本体工事に向けた実施設計と環境保全対策に関する協議書を受理した上で、沖縄防衛局に対し、取り下げと再提出を求める文書を出した。翁長雄志知事は同日午前、那覇空港で記者団の質問に答え、「事前協議はボーリング調査終了後、全体の詳細設計に基づき、実施すべきだ」と述べ、全体の設計がまとまっていない段階での協議開始に否定的な考えを示した。菅義偉官房長官は同日の記者会見で、「政府として取り下げる考えはなく、県側と丁寧に協議していきたい」との考えを示した。県土木建築部の伊禮年男土木整備統括監らが嘉手納町の防衛局を訪れ、協議書を取り下げ、実施設計の終了後に再提出するよう要求する文書を提出。8月10日までの回答と、取り下げない場合にはその理由や一部の協議から始める理由などを質問している。伊禮統括監によると、防衛局調達部の福島邦彦次長が文書を受け取り、「内容を精査して答えたい」と語ったという。防衛局は24日に協議書を提出。「協議は始まった」との認識を示し、8月14日までに協議書に関する質問を出すよう、県に求めた。翁長知事は質問への回答について「取り下げるか、しないかという(防衛局の)判断を待って、こちらも判断したい」と話した。県は一方的に質問期限を設けた理由も防衛局に問い合わせている。防衛局は辺野古沿岸の海上ボーリング調査24地点のうち、深場の5地点で調査を終了していないが、調査を終えた地点の護岸などの実施設計と環境保全対策の協議書を、一部先行する形で提出していた。協議書の取り下げを求める県の文書では「工事中の環境保全対策は一部だけではなく、護岸全体の環境影響評価を連続的に検討すべきだ」と指摘している。菅官房長官は会見で、「工事は段階的に実施されるものであり、段階的に協議するのは問題ないと思っている」と話した。協議で県側の合意が得られない場合でも着工可能との認識を示した。

*2-5:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015081001001228.html
(東京新聞 2015年8月10日)辺野古移設工事を全面的に中断 政府と県11日から集中協議
 政府と沖縄県は10日、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、9月9日まで1カ月の集中協議期間に入った。辺野古沿岸部の埋め立て関連工事は全面的に中断。政府は辺野古移設を推進する姿勢を崩していないが、県は移設計画の撤回を求める構えで、協議で一致点を見いだせるかどうかは不透明だ。菅義偉官房長官は11日に沖縄入りし、県庁で翁長雄志知事や安慶田光男副知事らと集中協議の初会合を開く。沖縄防衛局は期間入りに先立ち、9日までに海底ボーリング調査に使う台船など工事資機材の撤去を終え、資材を運ぶ車両の運行も停止した。

*2-6:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-248816-storytopic-11.html
(琉球新報社説 2015年9月13日) 辺野古工事再開 民主主義踏みにじる愚行
 政府は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向け、県との集中協議のため1カ月中断していた新基地建設へ向けた関連工事を再開した。県が新基地建設の中止を求め続ける中、政府は工事再開を強行した。極めて遺憾だ。安倍政権は沖縄の民意を一貫して無視し、民主主義を踏みにじる愚行をいつまで重ねるのか。怒りを禁じ得ない。沖縄防衛局は「政府と県の集中協議期間が終了し、県の調査も終了したため、再開した」と説明しているが、工事を加速し、新基地建設の既成事実化を図るのが狙いだろう。来週にも埋め立て工事の前段となる海底ボーリング調査を再開する予定だ。新基地建設をめぐる県と安倍政権の集中協議は、完全な平行線をたどり、安倍晋三首相が出席した5回目で決裂した。政府側は、前知事による埋め立て承認に固執するばかりで、その後の名護市長選、同市議選、県知事選、衆院選で新基地建設拒否の候補者が圧勝し、沖縄の民意が何度も示されたことについて言及はなかった。本来なら政府は県と真摯(しんし)に向き合い、民意を直視すべきだったはずだ。協議は最初から結論ありきで、翁長雄志知事に理解を得る努力をした形跡を残すアリバイづくりだったと言われても仕方あるまい。翁長知事は、前知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認の取り消しを14日にも表明、必要な手続きに着手する方針だ。弁護士や環境学者ら有識者の第三者委員会は既に、手続きに「瑕疵(かし)あり」との報告書を提出している。政府の強硬姿勢に対抗するため、翁長知事はそれに基づき、埋め立て承認の取り消しを速やかに行えばよい。妥協や取引することなく、普天間飛行場の即時無条件全面返還を政府に要求すべきだ。政府は「辺野古が唯一の選択肢」とかたくなな姿勢を取り続けている。だが新基地建設の反対運動は県内ばかりでなく、国内、海外でも草の根レベルで盛り上がっている。12日午後に行われた国会包囲行動には2万2千人(主催者発表)が参加し「辺野古新基地ノー」の声を上げた。世界の識者109人も新基地阻止に賛同している。翁長知事は21、22の両日に国連人権理事会で演説する。そこで沖縄の民主主義的正当性を強く訴え、民意を無視する日本政府の理不尽さを内外に示してほしい。

*2-7:http://www.huffingtonpost.jp/2015/09/21/takeshi-onaga-okinawa-un-human-rights-council_n_8173918.html (The Huffington Post 2015年9月22日) 翁長雄志知事が国連で演説「沖縄の人々は、人権をないがしろにされている」(日本語訳全文)
 沖縄県の翁長雄志知事(64)は9月21日、スイスで開かれている国連人権理事会で約2分にわたって英語で演説し、アメリカ軍普天間基地の移設計画について、沖縄に米軍基地が集中する実態を紹介し「沖縄の人々は、自己決定権や人権をないがしろにされている」などと訴えた。翁長知事の国連演説は、国連人権理事会の場で発言機会を持つNGO「市民外交センター」が、持ち時間を提供して実現。国連での演説の意義について、同NGOの上村英明代表は琉球新報に、「沖縄の基地問題は安全保障、平和の問題ではなく、人権問題だということを国際社会にアピールする機会となる」と説明した。以下に、翁長知事による国連での演説の、日本語訳全文を掲載する。
−−−−
 ありがとうございます、議長。私は、日本の沖縄県の知事、翁長雄志です。私は世界中の皆さんに、辺野古への関心を持っていただきたいと思います。そこでは、沖縄の人々の自己決定権が、ないがしろにされています。第2次大戦のあと、アメリカ軍は私たちの土地を力によって接収し、そして、沖縄にアメリカ軍基地を作りました。私たちが自ら望んで、土地を提供したことは一切ありません。沖縄は、日本の国土の0.6%の面積しかありません。しかしながら、在日アメリカ軍専用施設の73.8%が、沖縄に存在しています。70年間で、アメリカ軍基地に関連する多くの事件・事故、環境問題が沖縄では起こってきました。私たちは自己決定権や人権を、ないがしろにされています。自国民の自由、平等、人権、民主主義すら守れない国が、どうして世界の国々とそれらの価値観を、共有することなどできるでしょうか。今、日本政府は、美しい海を埋め立てて、辺野古に新しい基地を建設しようと強行しています。彼らは、昨年沖縄で行われた選挙で示された民意を、無視しているのです。私は、あらゆる手段、合法的な手段を使って、新しい基地の建設を止める覚悟です。今日はこのようなスピーチの機会が頂けたことを感謝します。ありがとうございました。
−−--
 なお、この日の国連人権理事会では、翁長知事の演説のあと、日本政府が答弁する機会もあった。日本政府側は翁長知事に反論。「日本政府は、沖縄の基地負担軽減に最大限取り組んでいる。普天間基地の辺野古への移設は、アメリカ軍の抑止力の維持と、危険性の除去を実現する、唯一の解決策だ。日本政府は、おととし、仲井真前知事から埋め立ての承認を得て、関係法令に基づき移設を進めている。沖縄県には、引き続き説明をしながら理解を得ていきたい」と述べた。

<島尻氏の沖縄担当相就任>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11715605.html (朝日新聞 2015年4月21日) 辺野古めぐる政権対応、評価せず55%・評価25% 朝日新聞社世論調査
 朝日新聞社は18、19の両日、全国定例世論調査(電話)と、沖縄県民意識調査(同)を同時に実施した。沖縄県宜野湾市にある米軍普天間飛行場の同県名護市辺野古への移設問題に対する安倍政権の対応については、全国で「評価しない」が55%と、「評価する」25%を上回った。沖縄でも「評価しない」73%が「評価する」18%を圧倒した。辺野古移設問題については、全国調査と沖縄県の調査でいくつか同じ質問をして、全国と沖縄県内との調査結果を比較した。沖縄県の翁長雄志知事は辺野古に基地をつくることに反対し、移設のための作業を停止するよう指示した。全国ではこの対応を「評価する」が54%で、「評価しない」28%を上回り、沖縄では「評価する」70%が「評価しない」19%を引き離した。辺野古移設の賛否では、全国では「賛成」は30%で、「反対」は41%。「その他・答えない」は29%だった。沖縄では「反対」が63%と、「賛成」22%の3倍近かった。普天間飛行場の移設問題をどのように解決するのが最も望ましいか3択で聞くと、全国、沖縄ともに「国外に移設する」が最も多く、全国では45%、沖縄では59%を占めた。「沖縄県内に移設する」は全国で27%、沖縄で15%。「本土に移設する」が全国で15%、沖縄で20%だった。移設問題をめぐり、安倍晋三首相と翁長知事が17日に初めて会談したことに関しては、全国、沖縄ともに7割が「評価する」と答えた。安倍内閣の全国の支持率は44%(前回3月全国調査46%)、不支持率は35%(同33%)だった。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/231807
(佐賀新聞 2015年9月21日) 辺野古で抗議市民と警官もみ合い、怒声飛び一時騒然
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設予定地である名護市辺野古近くの米軍キャンプ・シュワブ前で21日午前、移設に抗議する市民ら数十人が道路に横たわったり、工事用車両が出入りするゲート前で隊列を組んだりし、これを強制排除しようとした警察官約100人ともみ合いになった。怒声が飛び交うなど周辺は一時騒然とした。沖縄防衛局は移設に向けた準備作業を進めており、市民らは関係車両がゲートに入るのを阻止しようと集まっていた。名護市の高校生(18)は「警察官のやり方は強引」と批判。国連で演説予定の翁長雄志知事に「沖縄の現状を世界に伝えてほしい」と期待した。

*3-3:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=110372&f=ap
(沖縄タイムス 2015年4月5日) 「責任のない市民運動」辺野古行動に島尻議員
 自民党沖縄県連の会長に就任した島尻安伊子参院議員は4日、那覇市内の自治会館で開かれた県連大会のあいさつで、名護市辺野古の新基地建設をめぐる市民の反対運動について「責任のない市民運動だと思っている。私たちは政治として対峙(たいじ)する」と発言した。さらに、米軍普天間飛行場の危険性除去のため辺野古移設を容認する立場から「反対運動の声の大きさに恐れおののかず、毅然(きぜん)と冷静に物事を進めないといけない。今日より明日がよくなるよう、真剣に議論し実行する」とも述べた。島尻氏は大会後、沖縄タイムスの取材に対し「発言は市民運動を否定するものではない。そういった(反対する)方々の声にも耳を傾けたいが、運動と私たちの立場である政治は違うという意味だ。現実を見据えて物事を進めるのが政治の使命だ」と説明した。

*3-4:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-241545-storytopic-11.html
(琉球新報社説 2015年4月8日) 島尻氏発言 移設反対の民意と向き合え
 市民の側ではなく、権力側に立つ人なのだと再認識させられる。自民党県連の新会長に選出された島尻安伊子参院議員のことだ。県連大会での就任のあいさつで、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する市民運動に関し「反対運動は責任のない市民運動だと思っている。私たちは政治としてここに対峙(たいじ)していく」と言い放った。にわかに信じられない発言だ。移設に反対するのが無責任だというが、そもそも自身が2010年の参院選で、普天間飛行場の県外移設を公約して再選されたことを忘れたわけではあるまい。島尻氏は県外移設公約を翻し、13年4月に辺野古移設容認を表明した。全ての県関係自民党国会議員が辺野古容認に転じ、その後に仲井真弘多前知事が辺野古埋め立てを承認するよりも、半年以上早い公約の撤回だった。新基地を後世に残したくないと反対運動をする市民に対し、公約を破棄した政治家が「無責任」と批判するのは、筋違いも甚だしい。島尻氏は「移設に反対すれば普天間が固定化する」といった政権幹部同様の論理を振りかざしている。辺野古移設反対と普天間の危険性除去は二者択一のテーマではなく、また移設問題の解決策をめぐっては米国でも多様な意見があることは何度も指摘した通りだ。仮に島尻氏の立場に立ったとして、昨年の知事選や名護市長選、衆院選などで示された通り、移設反対が世論であることは紛れもない事実だ。政治家であるなら、その民意に耳を傾け、利害を調整するのが最低限の責務ではないのか。発言について島尻氏は「言論の自由はあり、反対運動を否定するものではない」と釈明した。だが過去の言動を見ると、今回も本音ではないのかと思わざるを得ない。島尻氏は昨年2月の国会質問で辺野古の市民運動に対し「危険な行為に先んじて対策を打つことが必要だ」と述べ、反対運動を弾圧するかのような「対策」を求めた。13年11月には辺野古移設について「待望の子どもが生まれた時にはみんなでお祝い」と述べ、物議を醸した。「台所から政治を変える」を掲げて国政進出した島尻氏だが、為政者に忠実であることが政治家だとはき違えてはいないか。民意を無視する政権と歩調を合わせて市民と「対峙」する態度を改め、移設反対の世論と向き合うべきだ。

*3-5:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=136107
(沖縄タイムス 2015年10月7日) 島尻安伊子氏、沖縄担当相で入閣へ きょう内閣改造
 安倍晋三首相は7日に行う内閣改造で、県選出で自民党県連会長の島尻安伊子参院議員(50)を沖縄担当相に据えることを固めた。県選出・出身国会議員の入閣は1991年に沖縄開発庁長官に就任した伊江朝雄氏、93年に同長官に就任した上原康助氏、2012年に郵政民営化担当相に就いた下地幹郎氏以来、4人目となる。女性では初めて。島尻氏は那覇市議などを経て、07年4月の参院補選で初当選し、現在2期目。第2次安倍内閣発足時に内閣兼復興政務官を務めた。自民党沖縄振興調査会事務局長として、米軍キャンプ瑞慶覧・西普天間住宅地区の返還や改正跡地法の成立などに尽力。4月から同党県連会長を務める。米軍普天間飛行場の返還問題では、10年7月の自らの選挙で「県外移設」を訴えて再選を果たしたが、政務官就任後の13年4月に「辺野古容認」を表明し、公約を破棄。ことし4月の県連会長就任時のあいさつでは、名護市辺野古の新基地建設に反対する市民運動を「責任のない市民運動」と発言し、物議を醸した。


PS(2015年10月14日追加): *4-1、*4-3のように、菅官房長官は、沖縄県の埋立承認取り消しについて「①承認に法的な瑕疵はない」「②承認取り消しは沖縄や政府が重ねてきた普天間飛行場の危険性除去の努力を無にするものだ「③(ジュネーブでの知事演説には)強い違和感を受ける。国際社会では理解されない」などとし、国交相に不服審査請求を行うそうだ。しかし、②は既に事件から20年も経過して何ら進展していない普天間の危険除去を辺野古の埋め立てと交換条件にしている点が不誠実で、③は鈍感かつ融通が効かない。が、*4-2のように、名護市長はじめ沖縄県民には知事を評価し支持する声が強く、*4-3のように、社説で「沖縄の苦悩を理解し、人権や自己決定権に十分配慮する姿勢で、まず計画を白紙に戻せ」とする大手メディアも出てきたため、日本国民全体の認識も進むだろう。

*4-1:http://mainichi.jp/select/news/20151013k0000e010074000c.html?fm=mnm
(毎日新聞 2015年10月13日) 辺野古承認取り消し:菅官房長官「法的瑕疵ない」
 菅義偉官房長官は13日午前の記者会見で、沖縄県が埋め立て承認を取り消したことについて「(前知事時代の)承認に法的な瑕疵はない。従来の判断に基づいて進めていくのは自然なことだ」と述べた。政府は14日以降に行政不服審査法に基づき国土交通相に不服審査請求を行う。県内移設を進める方針に変わりはないが、県との対話は継続する姿勢だ。菅氏は「承認取り消しは沖縄や政府が重ねてきた普天間飛行場の危険性除去の努力を無にするものだ。危険性をどうするか、現職の知事として極めて大事なことだ」と翁長雄志知事を批判した。

*4-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015101301001367.html
(東京新聞 2015年10月13日) 辺野古抱える名護市長、知事評価 「全面的に支持」
 沖縄県名護市の稲嶺進市長は13日、翁長雄志県知事による同市辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消しについて「県民が期待していた日がとうとうきた。全面的に知事の行動を支持していく」と述べ、評価した。市役所で記者団の取材に応じた。稲嶺市長は、県との連携を今後も密にすると強調。政府に対しては「取り消し手続きは大きな効力を持つ。法治国家というなら従うべきだ」とけん制した。さらに「本体工事に着手するのは地方自治を無視し、違法。そんなことが許される国ではないはずだ」とくぎを刺した。

*4-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12013757.html
(朝日新聞社説 2015年10月14日) 辺野古移設 沖縄の苦悩に向き合え
 これに対し、政府は直ちに行政不服審査請求などを行う方針だ。政府と県が行政手続き上、司法上の対抗策を打ち合うなかで、民意に反した基地建設が進む。そんな異常事態は、何としても避けなければならない。政府は埋め立ての法的根拠を失った以上、計画は白紙に戻し改めて県と話し合うべきだ。前知事による承認から1年10カ月。翁長知事は取り消しに向けて周到に準備を重ねてきた。「承認手続きに瑕疵(かし)がある」との結論は、第三者委員会が半年かけて導き出した。第三者委は移設の必要性について「実質的な根拠が乏しい」と指摘。「米軍の沖縄配備の優位性」などの政府の主張にも具体的な説明がないとした。翁長知事は政府との集中協議でもこれらの点を問いただしたが、政府は「辺野古移設が唯一の解決策」と繰り返すばかり。説得力ある説明はなかった。翁長知事は先月、ジュネーブでの国連人権理事会の演説で、「沖縄の人々は自己決定権や人権がないがしろにされている」と訴えた。基地問題を人権問題ととらえての主張である。戦後、米軍に土地を強制接収され、次々と米軍基地が造られた歴史。戦後70年、米軍による犯罪や事故に巻き込まれる危険、航空機の騒音などの「基地被害」と隣り合わせの生活を余儀なくされてきた歴史。そして、いまなお全国の米軍専用施設面積の73・8%が、国土の0・6%にすぎない沖縄県に集中している現実。これはまさに、沖縄に対する「差別」ではないのか。日米安保条約を支持する政府も国民も、そうした沖縄の現実に無関心でいることによって、結果として「差別」に加担してこなかったか――。翁長知事による埋め立て承認取り消しは、政府に、国民に、そこを問いかけるメッセージだと受けとめるべきだ。残念なのは、ジュネーブでの知事の演説に対し、菅官房長官が「強い違和感を受ける。国際社会では理解されない」と冷淡な対応に終始したことだ。行政手続きや司法判断の結果がどうあれ、政府と沖縄の亀裂がこれ以上深まれば米軍基地の安定運用も危うくなるだろう。政府に求められるのは、沖縄の苦悩を理解し、人権や自己決定権に十分配慮する姿勢だ。まず計画を白紙に戻すことが、そのための第一歩になる。


PS(2015年9月15日追加):*5-1、*5-2のように、翁長沖縄県知事の辺野古埋め立て承認取り消しについて、政府(工事主体の防衛局)は行政不服審査法に基づき、審査請求と取り消し処分の効力停止を石井国土交通相に申し立てるそうだ。そして、同じ政府内であるため、国交相は政府寄りの判断をしそうだと懸念する人が多い。確かにそうかもしれないが、国交相は公明党である上、観光庁は国交省に所属しており、*5-3、*5-4で日弁連が会長声明や意見書で完璧に記載しているとおり、沖縄の自然や文化は価値が高く、日本の観光にとって有望な資産だ。そのため、国交相が沖縄側に立った適切な判断をしてくれればよいと願っている。

*5-1:http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201510148682.html (愛媛新聞 2015年10月14日) 辺野古承認取り消し 泥沼の闘争に政府は終止符打て
 ついに国と沖縄県の全面対決に至ってしまった。沖縄県の翁長雄志知事は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。対して政府側は、工事主体の防衛局が行政不服審査法に基づき、審査請求と取り消し処分の効力停止を石井啓一国土交通相に申し立てると表明した。国交相が効力停止を認めれば防衛局は審査請求の審査期間中も移設作業を続け、本体工事に着手することができる、と政府は読む。そうなれば、県側は効力停止の取り消しや差し止めを求めて提訴する方針だ。泥沼の法廷闘争は避けねばならない。ここまで対立を先鋭化させたのは、基地問題に関して「辺野古移設が唯一の解決策」との一点張りで、民意を一顧だにしない政府の強権的な態度にほかならない。抗議する市民への警察官や海上保安官らによる取り締まりが厳しさを増す現在、さらに力ずくで本体工事に突入すれば、流血の事態さえ現実のものとなりかねない。暴挙は断じて許されない。政府には、事態を重く受け止め工事を中止するよう強く求める。県民の声を聞き、苦難の歴史と向き合い、基地負担軽減策を練り直して米国との協議のやり直しへかじを切るべきだ。普天間返還の合意を主導したジョセフ・ナイ元国防次官補は辺野古移設について「沖縄の人々の支持が得られないなら、米政府はおそらく再検討しなければならないだろう」と沖縄の地元紙に述べている。住民の反発下では米国側も基地の安定的持続が見通せないに違いない。ナイ氏は以前、沖縄が中国の弾道ミサイルの射程内にあることを踏まえ、沖縄への基地集中を変えるべきだとも指摘している。実際、米国はリスク軽減のためハワイやグアムなどへの兵力分散を加速させている。沖縄での最大の兵力である海兵隊については、機動力や抑止力、訓練の環境などの観点から沖縄での存在意義や戦略的価値を疑問視する声が米国内や日本の専門家らから上がっている。これらの状況を鑑みれば、辺野古移設が基地問題の唯一の解決策であると主張する根拠は揺らぐ。国民の強い懸念と反発を米国に伝え、別の解決策を探ることこそ政府が取るべき道だ。米国への協力をアピールするために、政府が主導して辺野古への新基地建設を強行することは決して認められない。国民より米国との約束を優先する姿勢は安全保障関連法の強行成立と共通しており、深く憂慮する。翁長知事は先月、国連人権理事会で「自国民の自由、平等、人権、民主主義を守れない国がどうして世界の国々と価値観を共有できるか」と訴えた。県民の怒りはもっともだ。本土からの賛同や支援も拡大している。民意を力で抑え続ければ国際的信頼を失うことを政府は肝に銘じ、計画見直しと対立解消へ力を尽くさなければならない。

*5-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-153618.html (琉球新報社説 2015年10月14日) 承認取り消し 民意実現の出発点に 政府は新基地断念すべきだ
 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古沿岸部への新基地建設をめぐり、翁長雄志知事が前知事の埋め立て承認を取り消した。沖縄の将来を見据え、新基地建設阻止への決意を示す意義ある一歩として高く評価したい。裁判などで問題解決までには長い道のりが予想される。だが、新基地建設反対の民意は圧倒的であり、土地を同意なく奪って建設した普天間飛行場の形成過程からしても、理は知事にある。阻止運動を県外、国外に広げ、新基地建設断念と普天間飛行場の閉鎖を勝ち取る新たな出発点に、承認取り消しを位置付けたい。
●犯罪的な行為
 知事は埋め立て承認取り消し後の会見で、普天間飛行場は戦後、県民が収容所に入れられている間に、強制接収されて建設されたことをあらためて強調した。その上で「辺野古に移すということは、土地を奪っておきながら代わりのものも沖縄に差し出せという理不尽な話」と批判した。普天間飛行場が国際法に反して建設されたことは明らかである。知事の批判は当然だ。ところが、菅義偉官房長官は知事の承認取り消しを「沖縄や政府が重ねてきた普天間飛行場の危険性除去の努力を無にするものだ」と批判した。「政治の堕落」を指摘されたことから何ら学んでいないと言わざるを得ない。車の窃盗犯が持ち主である被害者に「古くなった車を返すから新車をよこせ」と開き直るような姿勢は改めるべきである。政府はそんな犯罪的な行為を国民の面前で恥ずかしげもなく行っているのである。これで法治国家と言えるだろうか。官房長官が知事を批判するなど、筋違いも甚だしい。官房長官が言うように、政府はこれまで普天間飛行場の危険性の除去に努力してきただろうか。新基地は完成までに10年かかるとされる。危険性を除去し、固定化させないための辺野古移設としながら、10年間は固定化し、危険性もその間放置されるのである。政府が真剣に危険性除去を考えるならば、直ちに普天間飛行場を閉鎖すべきだ。そうしないのは県民軽視以外の何物でもない。普天間飛行場の危険性除去や固定化回避を持ち出せば、新基地建設に対する県民の理解が得やすいといった程度の認識しかないのではないか。前知事の埋め立て承認の条件ともいえる普天間飛行場の5年以内の運用停止の約束も、ほごにしている。政府の言う「努力」はこの程度のものでしかない。
●普遍的な問題
 本来ならば、知事の承認取り消しを政府は重く受け止め、新基地建設の作業を直ちに停止すべきである。しかしそのような常識が通用する政府ではないようだ。中谷元・防衛相は「知事による埋め立て承認の取り消しは違法」と述べ、国交相に知事の承認取り消しの効力取り消しを求める不服審査請求と執行停止申し立てを速やかに行うとしている。同じ政府機関が裁決して公正を保つことはできない。政府側に有利になる可能性は極めて高い。これが官房長官の言う「わが国は法治国家」の実態である。新基地建設は沖縄だけの問題ではない。普遍的な問題を包含している。新基地建設に反対する圧倒的な民意を、政府は踏みにじろうとしている。日本の民主主義が問われているのである。日米同盟を重視し、民意は一顧だにしない政府を認めていいのかが突き付けられているのである。優れて国民的問題だ。知事は「これから節目節目でいろんなことが起きると思う」と述べている。新基地建設問題の本質をしっかり見極めてほしいということだ。そのことを深く自覚し、声を上げ続けることが今を生きる私たちの将来世代に対する責任である。

*5-3:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2015/151013.html (日本弁護士連合会会長 村越 進 2015年10月13日) 普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立ての承認の取消しに関する会長声明
 本日、沖縄県知事は、前知事が2013年12月27日に行った普天間飛行場代替施設建設事業(以下「本事業」という。)に係る公有水面埋立ての承認(以下「本件承認」という。)を、公有水面埋立法第4条第1項の承認要件を充足していない瑕疵があるとともに、取消しの公益的必要性が高いことを理由として、取り消した。本事業で埋立ての対象となっていた辺野古崎・大浦湾は、環境省レッドリスト絶滅危惧ⅠA類かつ天然記念物であるジュゴンや絶滅危惧種を含む多数の貴重な水生生物や渡り鳥の生息地として、豊かな自然環境・生態系を保持してきた。当連合会は、2000年7月14日、「ジュゴン保護に関する要望書」を発表し、国などに対し、ジュゴンの絶滅の危機を回避するに足る有効適切な保護措置を早急に策定、実施するよう求めた。また、当連合会は、2013年11月21日に、「普天間飛行場代替施設建設事業に基づく公有水面埋立てに関する意見書」を発表し、国に対し「普天間飛行場代替施設建設事業」に係る公有水面埋立ての承認申請の撤回を、沖縄県知事に対し同申請に対して承認すべきでないことをそれぞれ求めるなどした。その理由は、この海域は沖縄県により策定された「自然環境の保全に関する指針」において自然環境を厳正に保全すべき場所に当たり、この海域を埋め立てることは国土利用上適正合理的とはいえず(公有水面埋立法第4条第1項第1号)、環境影響評価書で示された環境保全措置等では自然環境の保全を図ることは不可能であるなど(同第2号)、同法に定める要件を欠いているというものである。そして、沖縄県知事が2015年1月26日に設けた「普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認手続に関する第三者委員会」(以下「第三者委員会」という。)においても、本件承認について、公有水面埋立法第4条第1項第1号及び同条第2号の要件などを欠き、法律的な瑕疵があるとの報告が出されるに至った(2015年7月16日付け検証結果報告書)。以上のとおり、本件承認には、法律的な瑕疵が存在し、瑕疵の程度も重大であることから、瑕疵のない法的状態を回復する必要性が高く、他方、本件承認から本件承認の取消しまでの期間が2年足らずであり、国がいまだ本体工事に着手していない状況であることからすれば、本日の沖縄県知事による本件承認の取消しは、法的に許容されるものである。当連合会は、国に対し、沖縄県知事の承認取消しという判断を尊重するよう求める。

*5-4:http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2013/opinion_131121.pdf (日本弁護士連合会意見書 2013年11月21日) 普天間飛行場代替施設建設事業に基づく公有水面埋立てに関する意見書
<意見の趣旨>
1 国は,沖縄県知事に対する「普天間飛行場代替施設建設事業」に基づく公有水面埋立ての承認申請を直ちに撤回すべきである。
2 国が上記承認申請を撤回しない場合,沖縄県知事は,本事業について公有水面埋立法に基づく承認をすべきではない。
3 国と沖縄県とは,協議の上,辺野古崎付近の海域及び大浦湾につき,自然公園法に基づく国立公園に指定する等の保全措置を講じ,ラムサール条約上の湿地登録手続を行うべきである。
<意見の理由>
第1 本意見書提出の経緯
1 事業計画の概要
 沖縄県名護市東部に位置する辺野古崎周辺及び大浦湾の一部の海域の埋立計画は,国(沖縄防衛局)が,沖縄県宜野湾市に存する普天間飛行場の代替施設を建設する目的で進めている公有水面埋立法に基づく海水面の埋立計画である。1997年には90ヘクタールの埋立てが,2000年には184ヘクタールの埋立てが計画されるなど,これまでに2度の計画変更がなされ,現在は米軍キャンプ・シュワブ基地沿岸部205ヘクタールを埋め立てるという計画となっている(添付図面参照)。現在の計画について,国は,①2007年8月に環境影響評価の方法書の公告・縦覧,②2009年4月に同準備書の公告・縦覧,③2011年12月に環境影響評価書の提出という環境影響評価法に基づく手続を行った。沖縄県知事は,2012年3月に知事意見を述べた(後述のとおり,このままでは「生活環境及び自然環境の保全を図ることは不可能と考える」というもの)。これを受けて,国は2012年12月に補正後の環境影響評価書を提出し,2013年3月,上記環境影響評価書を添付の上,公有水面埋立承認申請を行った。現在までに,環境影響評価書の告示・縦覧の手続は既に完了している。今後は,沖縄県知事により地元市町村である名護市からの意見聴取が行われ,年内あるいは年明けにも沖縄県知事によって公有水面埋立ての承認の可否の判断が下される見込みである。
2 当連合会の湿地保全に対するこれまでの取組
 当連合会は,1977年に大阪で開催された第20回人権擁護大会において,「海岸地帯保全法」の制定,「瀬戸内海環境保全法」の制定,両保全法の内容に沿うように公有水面埋立法を全面的に見直すこと等の提言を行った。この提言は,1978年の瀬戸内海環境保全特別措置法の改正につながった。また,2002年に福島県郡山市で開催された第45回人権擁護大会においては,湿地保全・再生法の制定や,重要湿地の開発計画中止の提言を行った。さらに,2012年に佐賀県佐賀市で開催された第55回人権擁護大会においては,①沿岸域環境を保全するために,現状の海岸線を保全し,原則的に開発・改変をしないこと,②生物多様性の保全・持続可能な漁業資源の利用などの基本原則を踏まえ,沿岸域を再生するための妨げとなる,開発を推進する方向となっている法制度を見直すなど,再生に向けたより実効的な法制度の整備を行うことなどを求める提言を行った。他方,沖縄県の希少な自然環境の保全についても,当連合会は,沖縄県の干潟の保全について,2001年6月に泡瀬干潟の現地調査を行って以降,調査や研究を積み重ねて,必要に応じて意見を述べてきた。例えば,泡瀬干潟に関しては,2002年3月15日に,「泡瀬干潟埋立事業に関する意見書」を公表して中城湾港(泡瀬地区)公有水面埋立事業の中止と泡瀬干潟のラムサール条約登録を求め,さらに同趣旨の意見書と会長談話をそれぞれ2回ずつ公表しているところである。また,ジュゴンの保護については,種の保全のため即時に実効性のある保護措置を求めて2000年7月14日に水産庁等に要望書を提出し,その中で辺野古崎周辺に基地移設計画を策定する場合はジュゴンの生息に関する影響を回避するために策定作業の初期の段階での環境影響評価手続の実施を求めている。
3 当連合会は,上述のとおり1977年以来,沿岸域の保護に取り組み,2012年には現状の海岸線を保全し原則的に開発・改変をしないこと,つまり新たな埋立てを禁止すべきことを提言している。とりわけ,辺野古崎周辺海域・大浦湾についてはジュゴンの餌場であることを含む貴重な生態系が残された自然環境であることから,意見の趣旨のとおり,①国に対し埋立ての承認申請の撤回を,②国の撤回がない場合には沖縄県知事に対し埋立てを承認しないこと
第2 辺野古崎・大浦湾の重要性
1 地理的特徴
 辺野古崎・大浦湾は,沖縄県のうち沖縄本島名護市東海岸にあり,太平洋に面する地区に位置する。同地域は,サンゴ礁が広がる辺野古崎周辺と外洋的環境から内湾的環境の特徴を持つ大浦湾が一体となって存在するという極めてまれな地理的特徴を有する。そして,辺野古崎周辺のサンゴ礁には,準絶滅危惧種に指定されているリュウキュウスガモ,ベニアマモなど7種の海草の藻場が安定的に広がっている。辺野古崎に隣接する大浦湾は,全体的に水深が深くなっているが,湾奥は,海底が砂れきから泥へと移り変わり,水深が深くなるスロープラインに沿ってユビエダハマサンゴの大群集が分布する。2007年9月には,大浦湾の東部に高さ12m,幅30m,長さ50mの広範囲にわたる絶滅危惧種のアオサンゴ群落(チリビシの青サンゴ群集)が発見された。湾奥の大浦川や汀間川の河口付近には,オヒルギやメヒルギといった大規模なマングローブ林や干潟が広がっている。さらに,辺野古崎と大浦湾の接点である大浦湾西部の深部には,琉球列島では特異な砂泥地が広がっている。
2 生態系の特徴
 辺野古崎・大浦湾は,環境省レッドリスト絶滅危惧IA類(CR)に指定されているジュゴンの生息域のほぼ中心に位置し,海草のみを餌とするジュゴンの生息には欠かせない餌場となっている。同地域のサンゴ礁には,沖縄に生息するカクレクマノミなど6種のクマノミ全てが観察されるなど魚類が豊富に生息し,絶滅危惧Ⅱ類(VU)のエリグロアジサシなど渡り鳥の生息地ともなっている。公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)が2009年に行った調査では,大浦湾においてわずか1週間の調査で36種の新種及び国内初記録の25種の十脚甲殻類(エビ・カニ類)などの生息が確認されるなど,生物学的にも貴重な地域である。河口部のマングローブ・干潟には,トカゲハゼなどの魚類のほか,ミナミコメツキガニといった甲殻類,シマカノコ,マングローブアマガイなどの底生生物などレッドリスト掲載の生物が多数生息している。さらに,大浦湾西深部の砂泥地は,詳細な生息地が知られていなかったオキナワハナムシロや新種の甲殻類など特異的な生物群と希少種が分布するなど,サンゴ礁の発達する琉球列島の中にあって極めて特異な生物相を有する。
3 辺野古崎・大浦湾が重要な自然環境として評価されてきたこと
 豊かな自然環境を有する辺野古崎・大浦湾は,沖縄県の「自然環境の保全に関する指針(1998年)によ」り,沿岸地域の大部分が,評価ランクⅠとして,自然環境の厳格な保護を図る地域とされてきた。また,同地域は,レッドリスト掲載種を多数育むなど生物多様性の見地から保全上の配慮をすべき地域として2001年に環境省により「日本の重要湿地500」に選定されている(№449及び№453)。さらに,海洋生物多様性保全戦略(環境省;2011年)の「海域の特性を踏まえた対策の推進」の記述においては,「藻場,干潟,サンゴ礁などの浅海域の湿地は,規模にかかわらず貝類や甲殻類の幼生,仔稚魚などが移動分散する際に重要な役割を果たしている場合があり,科学的知見を踏まえ,このような湿地間の相互のつながりの仕組みや関係性を認識し,残された藻場,干潟やサンゴ礁の保全,相互のつながりを補強する生物の住み場所の再生・修復・創造を図っていくことが必要である」とされ,その重要性が強調されている。生物多様性国家戦略2012-2020においては,ジュゴンについて,「引き続き,生息環境・生態等の調査や漁業者との共生に向けた取組を進めるとともに,種の保存法の国内希少野生動植物種の指定も視野に入れ,情報の収集等に努めます」とされ,その保全が急務となっている。ジュゴンの保護は国際的な関心事となっており,国際自然保護連合(IUCN)においては,2000年,2004年に次いで2008年のバルセロナ総会でも「2010年国連国際生物多様性年におけるジュゴン保護の推進」が決議されている。
4 ラムサール条約登録湿地の要件を満たすこと
 ラムサール条約(「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」)は,干潟をはじめとする湿地保全の重要性が国際的に認識されたことから,1971年に採択され,以後,湿地の保全は国際的な課題となっている。日本は1980年にラムサール条約を批准し,現在の日本における同条約登録湿地の数は,46か所となっている。ラムサール条約は,その名が示すとおり,かつては水鳥の保護を中心とした条約であったが,現在では広く湿地の保護を目的とするものとなっている。登録湿地の基準については,現在は9の基準が示されており,そのいずれかに該当すれば登録湿地の要件を充たすものと評価される。我が国においては,「国際的に重要な湿地であること(国際的な基準のうちいずれかに該当すること)」,「国の法律(自然公園法,鳥獣保護法など)により,将来にわたって,自然環境の保全が図られること」,「地元住民などから登録への賛意が得られること」が登録基準とされており,「国際的に重要な湿地であること」の要件については,環境省が2001年12月に選定した「日本の重要湿地500」から登録湿地がほぼ選定されるという方法が採られている。辺野古崎・大浦湾については,上記のとおり重要湿地500選に含まれている。また,ラムサール条約登録湿地の国際的な基準に照らしても,環境省レッドリストにおいて絶滅危惧種IA類(CR)のジュゴンの生息地となっていること(基準1 ,アマモ類の大き) な群落による藻場が形成されていること(基準8),大浦湾についても,「日本の重要湿地500」への選定理由とされている,危急種である底生生物が多く生息することやマングローブ林の前後に存する水溜まりに止水性昆虫の種の多様性が高いこと(基準2,基準3)から,優に「国際的に重要な湿地」の要件は充たしていることとなる。なお,埋立予定地である大浦湾に注ぎ込む大浦川及び河口域は2010年9月30日時点で環境省によりラムサール条約湿地潜在候補地として選定されている。このように,辺野古崎周辺の海域は,ラムサール条約締結のための基準を優に充たしているものであり,国際的に重要な湿地であることは明らかである。
第3 辺野古崎周辺海域・大浦湾埋立ての問題点
1 はじめに
 都道府県知事は,公有水面埋立法4条に限定列挙する一定の要件に適合する場合を除いて「埋立ノ免許ヲナスコトヲ得ズ」(同法4条1項柱書)とされる。なお,本件のように国が埋立免許の申請をする場合の都道府県知事の「承認」(同法42条)についても,同法4条は準用される。そして,本件埋立てについては,公有水面埋立法上の埋立承認の要件は次のとおり全く満たされていない。
2 国土利用の要件について
(1) 公用水面埋立法4条1項1号の趣旨
 公有水面埋立法上,埋立ての免許には「国土利用上適正且合理的ナルコト」という要件に適合することが必要である(同法4条1項1号)。この要件は,埋立ての可否の判断基準の基本である。
ちなみに,旧建設省河川局が監修した1995年発行の「公有水面埋立実務ハンドブック」においても,同条項については「よくいわれるのは,日本三景等の古来からの景勝地における埋立,環境保全上重要な地域等における埋立,良好な住宅地の前面の工業用地造成目的の埋立等である。こうした一般な基準からしても認め難いものは,本号により,免許拒否される。」(同ハンドブック41頁)としている。
(2) 本件における検討
 埋立予定地である辺野古崎周辺・大浦湾は,既に述べたとおり,生物多様性に富んだ環境的価値が高く評価されている。すなわち,開発行為等に対する配慮を促すために2001年に環境省によって選定された「日本の重要湿地500」の2つのエリアに関係している。また,開発事業による生態系への影響や貴重な野生生物の減少を憂慮して環境を保全するために1998年に沖縄県により策定された「自然環境の保全に関する指針」でも,藻場,干潟,サンゴ層が発達するなど健全で多様な生態系が維持されている沿岸域で,厳正な保護を図る必要のある区域(評価ランクⅠ)とされている。さらに,国際的な観点からみても,上述のとおりラムサール条約登録湿地のクライテリアを優に充足しており,周辺の大浦川及び河口域は環境省により2010年にラムサール条約の潜在的候補地にまで選定されている。特筆すべきは,埋立予定地は,環境省レッドリストにおいても絶滅危惧種ⅠA類(CR)に指定されているジュゴンの餌場の藻場としてかけがえのない海域であることである。
したがって,埋立予定地は,国土の利用に関する様々な位置付けからも自然環境を厳正に保全すべき場所にあたり,この海域を埋め立てることは,そもそも「国土利用上適正合理的」とはいえない。
3 環境配慮要件について
(1) 公用水面埋立法4条1項2号の趣旨
 次に,公有水面埋立法上,埋立ての免許には「其ノ埋立ガ環境保全・・・ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト」が要求される(同法4条1項2号)。これは,水面を変じて陸地となすという埋立行為は,環境に与える影響が多大で不可逆的であることから1973年改正により同法に特に付加されたものである。「十分配慮」とは,問題の状況及び影響を把握した上で,これに対する措置が適正に講じられていることであり,その程度において十分と認められることをいう。しかしながら,本埋立ては環境に十分配慮されたものとは到底いえない。
(2) ジュゴンについて
 まず,国の調査でもわずか3頭しか確認されていない絶滅危惧種(かつ,文化財保護法上の天然記念物)であるジュゴンに対する影響評価を大きく誤っている。埋立承認申請書添付の環境影響評価書では海草藻場でのジュゴンの食跡は「辺野古地区では確認されませんでした。」(同評価書要約書「6.16ジュゴンに係る環境影響評価の結果の概要(1)」)と記載されているが,申請書提出直後の2013年4月から6月にかけての調査で,埋立てにより消失する辺野古地区(大浦湾西部)において,合計12本の食跡が発見されており,このことは国も確認していた(2013年9月22日共同通信)。この新たな調査結果を踏まえなかったため,環境影響評価書はジュゴンの生息域に関して「施設等の存在に伴う海面消失によりジュゴンの生息域が減少することはほとんどないと考えられます。」(同評価書要約書「6.16ジュゴンに係る影響評価の結果の概要(2)」)と全く誤った予測をしており,訂正もされていない。なお,日本のNGOも関与して2003年に米国カリフォルニアの連邦地方裁判所に提起された訴訟(ジュゴンvsラムズフェルドケース)において,2008年1月24日の判決は,米国国防総省が本件海域の埋立てにあたり沖縄に生息するジュゴンへの影響等を評価・検討していないことは米国の国家史跡保存法(NHPA)に違反している状態にあると判示し,国防総省にジュゴンの保護手続の在り方を示すように指示をしている。今回,国(沖縄防衛局)が提出する環境影響評価書は,上記判決において指示されたアメリカ国家環境影響評価法(NEPA)で求められる評価・検討ともいえないことは明らかである。
(3) サンゴ・海藻草類について
 埋立区域内のサンゴに対する環境影響については,施設の存在により大浦湾側のサンゴの生息域が一部消失することを認め,その消失面積(被度5%以上)は6.9ヘクタールと予測しながら,確立された技術とはいえないサンゴ類の移植をもって環境保全措置としている点は極めて不十分である。また,埋立区域内の海藻草類に対する環境影響について,施設の存在により辺野古前面海域及び大浦湾の西側海域における海草藻場の一部(約78ヘクタール)が消失すると予測しながらも,具体的な環境保全措置についての言及はない(同評価書要約書「6.15海藻草類に係る環境影響評価の結果の概要(2)」)。
(4) まとめ
 そもそも,沖縄県知事は,2012年3月27日に,環境影響評価書に対して,「当該事業は,環境の保全上重大な問題があると考える。また,当該評価書で示された環境保全措置等では,事業実施区域周辺域の生活環境及び自然環境の保全を図ることは不可能と考える」と,およそ環境配慮がなされていないとの意見を述べていた。今回の埋立承認申請に当たり添付された環境影響評価書は若干の補正はされているものの,上記の点も含めその補正は全く不十分であり,当連合会としても,沖縄県知事意見と同様,「埋立予定地の自然環境の保全を図ることは不可能」と評価する以外ない。
4 以上のとおり,本件事業は,公有水面埋立法の埋立「承認」の要件も満たしていない。
第4 結論
 以上の検討結果に鑑み,本埋立ては公有水面埋立法により「承認」される要件が欠けているため,当連合会は,国に対し,本公有水面埋立ての承認申請を直ちに撤回することを求める。また,国が承認申請を撤回しない場合は,処分庁である沖縄県知事は,公有水面埋立法上の適正な解釈に従って本埋立ての承認申請を承認しないことを求める。むしろ,国と沖縄県は,協議の上,本沿岸域一体について自然公園法の国立公園に指定するなど,法律により自然環境を保護する手続を進め,次回に開催される締約国会議においてラムサール条約登録湿地に指定をされるように,積極的に保全手続をとるべきことを提言するものである。
                                                            以上

PS(2015年10月29日追加):知事に代わって取り消しを撤回する「代執行」の手続きをする強硬姿勢とは、環境についての意識の低さと沖縄県民の意志をないがしろにする態度が出ている。そして、気にしているのが来年夏の参院選のみで、どんな方法をとっても既成事実化してしまえば反対運動が沈静化するというのは、いくらなんでも考えが甘すぎるだろう。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/244128
(佐賀新聞 2015年10月28日) 辺野古、29日に本体着工、政府、移設に強硬姿勢
 政府は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の本体工事に29日朝、着手する。翁長雄志知事による埋め立て承認取り消しの効力を石井啓一国土交通相が停止したのに続き、知事に代わって取り消しを撤回する「代執行」へ手続きを始めるなど強硬姿勢を鮮明にした。沖縄県側は、取り消しの撤回を求める政府の是正措置に応じない方針を固め、反発を強めた。政府は、市街地に囲まれた普天間飛行場の早期閉鎖を目指している。本体工事を急ぐのは、移設を既成事実化して反対運動の沈静化を図り、来年夏の参院選への影響を最小限に抑える思惑もあるとみられる。


PS(2015年11月1日追加):私は、*7-1、*7-2の意見に賛成だ。そして、国が名護市の久辺3区に直接振興費を出すことを約束し、3区長が公民館や道路建設で納得したことについては、地方自治や主権在民(民主主義)を無視しているとともに、これからの久辺3区の可能性の大きさと公民館・道路・防災備蓄倉庫の整備等は基地と引き換えにしなくてもまちづくりの一環として整備すべきものであることを考えると、久辺3区にとっても割に合わない取引であり、ここで沖縄が分断されるべきではないと思う。
 また、*7-3のように、防衛省は、宮古島・与那国島・石垣島に陸上自衛隊の警備部隊を配備し、離島防衛を専門とする部隊や地対空ミサイル等を配備して、尖閣諸島を含む東シナ海の守りを固めるそうだが、尖閣諸島の守りを固めるのに「3つの島の自衛隊基地+辺野古米軍基地」の新設はやりすぎであり、予算の使い過ぎでもあるため、既に飛行場のあるどれか一つの島にすべく、配備する部隊の合目的性と費用対効果を検証して必要最小限にすべきだと考える。

<国のやり方>
*7-1:http://www.y-mainichi.co.jp/news/28642/ (八重山毎日新聞社説 2015年10月31日) 許せぬ民意無視の暴挙、辺野古新基地、国が本体工事強行
■国と県の対立極限に
 辺野古新基地建設の埋め立て本体工事が強行され、国と県の対立が極限に達している。27日、石井国交相は翁長知事の埋め立て承認取り消しについて「書面を審査した結果承認取り消しの効力を停止する」と発表。さらに菅官房長官は「普天間飛行場の危険性の除去が困難となり、外交、防衛に重大な損害が生じ著しく公益を害するとの結論に至った」として、国は県に代わり代執行の手続きを開始すると述べた。安倍総理は閣議で翁長沖縄県知事による承認取り消しを「違法」だとの立場から政府内のみならず司法の判断を仰ぐ必要があると代執行について語った。国は翁長県知事への承認取り消しの是正を勧告、従わない場合は高等裁判所へ提訴となる。翁長知事は取り消しの執行停止を決めたことに強い憤りを表明し「国が地方自治法に基づく代執行の手続きを行うとの発表があった。国も司法判断を問うのであれば、第三者機関である裁判所の判決が出るまで辺野古基地建設作業は開始すべきでない」と述べた。
■今後流血の事態も
 県は国地方係争委員会に不服審査を申し出る予定だ。防衛局は翁長知事の意向や民意を全く無視し、29日から本格的な工事を開始した。早くも現場では混乱が続いている。今後、流血騒ぎが起きてもおかしくない緊迫した状況だ。国交相による県知事の承認取り消しを無効にした「行政不服審査法」は本来、公権力(国)に対し個人が不服審査を訴える制度であるはずだ。今回、沖縄防衛局も一般私人としての立場で処分を受ける場合国は申し立ての資格を有するとの判断を初めて示した。防衛局は国の機関である。国の機関が提訴し国の機関が判断すること自体、公平さに欠けることは言うまでもない。国の勝手な解釈だ。県の提出した資料を国はどれだけ精査したか疑問が残る。防衛局、政府側に立たなければこのような「即判断」などできるはずはない。審査を国は公表すべきだ。国のなりふり構わぬ「ムチとアメ」政策も問題だ。国が名護市の久辺3区に名護市を通さず直接、振興費を出すことは地方自治への露骨な介入である。さらに、辺野古の海周辺の環境影響を監視する国の「環境監視委員会」のメンバー3人が監視委員会の運営や移設関連事業を請け負った業者から寄付を受けていたことが判明した。委員会は仲井真前知事が辺野古承認を決定した際、承認条件の一つとして政府に設置させたものだ。委員は発言や判断に影響はないと述べ、菅官房長官は「法的にも運営上にも問題はない」との認識を示した。しかし、委員や監視委員会に疑惑と不信の目が向けられるのは当然だ。28日、沖縄防衛局は世論に押され、移設と運営を同一関連業者が受注していたのを見直し、業者を新たに選定し契約すると発表。問題ありと認めたのだ。
■沖縄は重大な岐路に
 市内では28日、「翁長知事の埋め立て承認取り消しを支援し辺野古新基地を許さない」八重山郡民総決起大会が開かれ、「自らが選んだ誇りある翁長知事を最後まで支え、辺野古には絶対に新基地を造らせない」と決議した。国は県民の分断、懐柔攻勢を強めるだろう。沖縄は重大な岐路に立たされている。5月の県民大会で翁長知事が「ウチナーンチュ、ウセーテーナイビランドー」(沖縄の人をなめてはいけませんよ)の発言をいま一度かみしめ、揺るぎない視座を再確認したい。

*7-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-164124.html
(琉球新報社説 2015年11月1日) 久辺3区の振興費 新基地計画と絡めるな
 新基地建設に向けた政府の姿勢は常軌を逸している。その強引な手法は地方自治をも破壊しかねないものであり、極めて問題だ。政府は米軍普天間飛行場の代替となる名護市辺野古の新基地建設をめぐり、同市の辺野古、豊原、久志の「久辺3区」が進める地域振興の事業費を直接交付する方針を3区の区長らに伝えた。建設予定地に隣接する3区は、名護市に計55ある行政区の一部だ。国が自治体を通さず、財政支援するのは異例であり、地方自治への介入にほかならない。札束で地域の分断を図るような手法に憤りを覚える。政府としては、新基地建設に反対している名護市の頭越しに3区を支援することで稲嶺進市長らをけん制するとともに、国民に普天間の移設事業が進展しているとアピールする狙いがあろう。防衛省は本年度予算から3区にそれぞれ1千万円ずつ支出する方向で調整している。基地所在市町村に支給する「特定防衛施設周辺整備調整交付金(9条交付金)」などをモデルに、交付対象を行政区に拡大する方向だが、その法的な根拠ははっきりしない。9条交付金に基づく事業は自治体を介して行うのが通例だ。交付対象の拡大には財政規律上、疑問が大きい。国会での審議もないまま、政府内の手続きだけで制度が見直されていいはずがなかろう。交付金の原資は国民の税金だ。そもそも国の施策に反対した自治体を無視して、地域住民への交付金を恣意(しい)的に動かせるような仕組みは地方自治の精神を否定するものだ。復帰前、米統治下で住民の懐柔策に利用された高等弁務官資金と何ら変わらない。これで「法治国家」(菅義偉官房長官)と言われても、噴飯ものだ。久辺3区から振興事業として要望が挙がったのは、防災備蓄倉庫の整備や放送設備の修繕、芝刈り機の購入などだった。いずれも通常の地域振興事業として支援すべきものではないのか。仮に3区だけ、移設の諾否でその実施が左右されるとしたら差別以外の何物でもない。政府は翁長雄志知事による埋め立て承認取り消しの効力を停止させ、新基地の本体工事に着手するなど強権色を鮮明にしている。振興策を盾にさらに地域を揺さぶるようなまねは許されない。基地と振興はリンクしないと繰り返してきたことの責任を負うべきだ。

<沖縄の他の新基地>
*7-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150411&ng=DGKKASFS10H6V_Q5A410C1PP8000 (日経新聞 2015.4.11) 
宮古島に陸自部隊 防衛省、18年度末までに 550人、ミサイル配備
 防衛省は南西諸島の守りを固めるため、沖縄県の宮古島に陸上自衛隊の警備部隊を配備する方針だ。離島防衛などを専門とする550人規模の部隊のほか、航空機を撃ち落とす地対空ミサイル(SAM)を配備する。沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海への進出を拡大している中国をにらむ。左藤章副大臣を夏までに宮古島へ派遣し、下地敏彦宮古島市長らに配備計画を説明する。8月末に締め切る2016年度予算案の概算要求に用地取得費などを盛りこみ、18年度末までに配備することをめざす。新設するのは離島への上陸を阻んだり、大規模な災害に対処したりする警備部隊。航空機や艦船による武力侵攻に備え、SAMのほか、地対地ミサイル(SSM)などの配備も計画する。警備部隊は約350人、ミサイル部隊は約200人をそれぞれ想定している。現在、沖縄本島以南には陸上部隊がなく「力の空白」(陸自幹部)が生じている。中国の艦船や航空機が東シナ海で活動を活発にしていることを踏まえ、14~18年度の中期防衛力整備計画では南西地域の防衛強化を打ち出した。防衛省は15年度末までに日本最西端の沖縄県・与那国島に尖閣周辺の艦船や航空機の動きを監視する部隊を新設する。鹿児島県の奄美大島には18年度末までに警備部隊をつくる計画だ。宮古島に関しては昨年6月に当時の武田良太副大臣が下地市長と会い警備部隊配備先として「有力な候補地」と伝えていた。防衛省は沖縄県の石垣島も、警備部隊の配備先として検討している。


PS(2015年11月27日追加):米軍は、離島の自衛隊基地を利用すればよく、*8のように、第一級の食品生産を行っている海近くの民間空港を利用する必要はないだろう。防衛省が佐賀空港の米海兵隊利用の要請を取り下げたのに、あらためて確認するのは、まるで誘致しているかのようだが、このような産業間の矛盾や国費の無駄遣いはやめるべきである。また、玄海原発の再稼働については、伊方原発や国の対応を確認しなくても、佐賀は、汚染されていない高品質の食品を生産し、再生可能エネルギーほかクリーンな産業で勝負する決意をし、それと矛盾のない方針を出せば、他もついて来ると考える。

*8:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/253915
(佐賀新聞 2015年11月27日) 山口知事、米軍空港利用「確認する」、11月定例県議会開会
 11月定例佐賀県議会は26日開会し、86億6300万円の一般会計補正予算案や知事ら特別職の期末手当(ボーナス)を引き上げる給与条例改正案など27議案を提出した。山口祥義知事は提案理由説明で、防衛省が佐賀空港の米海兵隊利用の要請を取り下げたことに対し、「あらためて確認する必要があり、説明内容を精査すると(防衛省に)申し上げた」と述べた。その上で「国防の重要性は十分認識しているつもりだが、今回の要請は本県の将来を左右する大きな課題で、慎重には慎重を重ねて対応していく」と強調した。環太平洋連携協定(TPP)については「農相や政府の担当政務官に万全の対策を講じるよう要請した。県内の関係団体の意見を聞きながら、適宜必要な対応をしていく」とした。玄海原発の再稼働では、3、4号機の規制基準の適合性審査が進んだ段階で、「伊方など先行事例の関係者の対応状況や国の考えを確認した上で、県としての考え方を整理する」と説明した。1号機の廃炉に関し安全協定で廃止措置を事前了解の対象に含める改定をしたことに触れ、「安全第一の姿勢で対応する」と語った。補正予算案は、知的障害のある児童生徒の教室不足解消を図るため、県立大和特別支援学校の校舎整備の基本設計に761万円などを計上した。議会改革検討委員会も開かれ、政務活動費の在り方について意見を交わした。再び各会派で持ち帰り、検討を続ける。会期は12月18日までの23日間で、一般質問は2~4日の3日間、常任委員会は9、10日の2日間。14日はさが創生対策、16日は佐賀空港問題等特別委員会を開く。

| 辺野古・普天間基地問題::2015.4~ | 04:24 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.3.15 辺野古新基地の建設は、税金の無駄遣いである上、環境を破壊し、不合理である (2015.3.24、4.18に追加あり)
    
                  沖縄の米軍基地と辺野古

(1)沖縄の民意
 *1に書かれているように、2014年11月16日の知事選で、142万人の沖縄県民に選出された翁長氏が、「県民の期待に添うべく、誇りある豊かさを求め、ソフトパワーで沖縄の未来を拓いていくように、全力で県政運営に取り組んでいく」と就任の挨拶をしておられる。

 その内容は、①成長著しいアジアと連動した「アジア経済戦略構想」を策定して、国際物流拠点、情報通信産業、観光リゾート産業の振興などの産業の拡充・強化をする ②健康・医療分野、環境・エネルギー分野で、沖縄の地域特性を生かした産業の集積を図る ③亜熱帯気候を生かした農林水産業の沖縄ブランド確立や6次産業化を強化する ④沖縄の優位性を生かした広範な経済発展施策展開する ⑤こどもや高齢者の笑顔が輝き、女性や障がいのある方などの力が正しく生かされる活気に満ちた幸せ感あふれる社会を創る ⑥こども環境日本一の実現を目指し、女性が輝く社会づくりや女性リーダーの育成などに取り組む ⑦若者が希望を持てる社会を目指す ⑧少子高齢化社会を見据えた健康・医療・福祉政策を実行する ⑨少人数学級の導入の推進など教育施策について力を尽くす ⑩離島・過疎地域は、県民全体で支える仕組みを構築する ⑪基地の整理縮小を加速化して豊かな生活に導く土地活用を図り、近隣諸外国との平和交流を促進する平和創造施策を展開 ⑫米軍基地が沖縄経済発展の最大の阻害要因 ⑬過重な基地負担の軽減、日米地位協定の抜本的な見直しを求め、普天間飛行場の辺野古移設問題は、この知事選の結果を受けて公約の実現に取り組む などである。

 どれも大切なことだが、特に⑪~⑬は現在の沖縄で問題になっており、*3-3のように、地元である名護市の市長選・市議選はじめ、沖縄県知事選でも辺野古新基地の反対派が勝利し、衆院選でも反対の候補が全勝している。そのため、翁長沖縄県知事の主張は、確固とした沖縄全体の民意である。

(2)沖縄の民意に対する日本政府の対応
 しかし、菅官房長官は翁長沖縄県知事が繰り返し面会を求めても門前払いした上、*2-1のように、沖縄防衛局が辺野古沿岸部で海底のボーリング調査を再開し、カヌーで抗議行動して海上保安官に拘束された29歳の男性は、*2-2のように肋骨を骨折した。

 私は、日本政府は翁長知事と早急に面会して話を聞くべきだと考える。何故なら、翁長知事が辺野古の代替案として出した硫黄島は、既に滑走路があって埋め立てる必要がなく、安全保障上の地理的位置も申し分ないからで、翁長知事と話し合えば、国費を無駄遣いしてサンゴ礁を傷つけ、ジュゴンのえさ場を埋め立てて、環境という貴重な資源を破壊することのないBestな場所が浮かび上がってくるからだ。

(3)税金の無駄遣いをして自然を破壊するのは、野蛮な行為である
 私は、スキューバダイビングで、外国のサンゴ礁はじめ沖縄の慶良間や伊豆に行き、日本の海岸にある岸壁・護岸・波消しブロックは、さして必要もない場所に設置され景観を悪くしているだけのものが多いと思っていたが、ジャック・マイヨール(http://www.sponichi.co.jp/seibu/column/envi/KFullNormal20080430166.html 参照)も、「イルカと海へ還る日」という本で、全く同じことを書いていた。

 つまり、日本人は、美しい自然の水辺に必要以上のコンクリート構造物を作り、波消しブロックまで投入して、目を覆いたくなるような醜い景観を作っている上、水中生物の繁殖を妨害しているのだ。私は、いらないコンクリート構造物や波消しブロックが、えもいわれぬ美しさの沖縄、慶良間諸島でさえ見られてがっかりしたことがあり、この波消しブロックは日本全国の沿岸に大量に置いてあるため、干潮時でも水面に出ない形に並べ換えて、漁礁として使うのがよいと考えている。

 このような中、*3-1、*3-2、*3-4のようなサンゴ礁へのブロック投入と埋め立てがあるのだが、私は、税金を無駄遣いし、自然を破壊し、住環境や観光振興に悪影響を与える“景気対策”目的の公共工事は、もうやめるべきだと考える。しかし、「丁寧に理解を得ながら進めたい」とした安倍首相を非難しても実は無意味なのは、鳩山首相が「最低でも県外」と言ってもそうならなかったのと同様、誰が首相になっても同じだからだ。その理由は、首相が進めているのではなく、官が進めて大メディアが協力しているからで、これが日本の民主主義の未成熟、大メディアの形だけの権力批判の構図なのである。

 そのため、私も翁長知事には知事権限を行使してもらいたいと考えている。また、*3-3のように、普天間飛行場の代替基地を沖縄県内に置かずに単に取り払っても在日米軍専用基地の沖縄への集中度は73.8%から73.4%になるにすぎないのに、このように明確に示された沖縄の民意を踏みにじる政府の態度であれば、その政府判断に変更がない限り、沖縄の「島ぐるみ会議」が国連人権理事会に参加して、日本政府による沖縄県民への人権侵害を報告するのがよいと思う。

(4)沖縄はLost Islandの一部だったという説もあり、調査すべき面白いポイントである
   
                    与那国島付近の海底遺跡

 *4のように、与那国島付近に大規模な海底遺跡が発見され、「歴史を覆すかも?」と言われており、そこは、魏志倭人伝に書かれている邪馬台国の位置の記述と完全に一致すると言われている。そのため、調査・研究すべき面白いポイントで、世界遺産になる可能性すらある場所だ。

*1:http://ryukyushimpo.jp/news/storytopic-122.html
(琉球新報 2014年12月12日) 沖縄県知事選挙 翁長知事の就任あいさつ全文
 12日の県議会本会議での翁長雄志知事の就任あいさつの全文は次の通り。
 ハイサイ、グスーヨー、チューウガナビラ。
 平成26年第6回沖縄県議会の開会に当たり、提案しております議案のご説明に先立ち、県政運営に関する私の所信の一端と基本的な考え方を申し述べ、議員各位、ならびに県民の皆さまのご理解とご協力をたまわりたいと存じます。私は、去る11月16日の県知事選挙において、有権者多数の支持を得て当選いたしましたが、本議会に臨み、142万県民の知事として、その責任の重さにあらためて身の引き締まる思いであります。県民の皆さまのご期待に添うべく、全力で県政運営に取り組んでまいりますので、よろしくお願い申し上げます。さて、これまで、私たちは、自ら持ってきたわけではない「基地」を挟んで「経済」か「平和」かと厳しい選択を迫られてきました。しかし、社会情勢の変化とともに、これらは両立し得るものとなってまいりました。私たちは、「経済と生活」「平和と尊厳」を県民一人ひとりが手にすることができるようになりました。このことをしっかり自覚した上で、「誇りある豊かさ」を求める沖縄県民の意思を明確に示さなければなりません。こうした考えの下、私は、議員各位、ならびに県民の皆さまと心を一つにし、県政運営に力を尽くしてまいる所存であります。県政運営に当たりましては、沖縄が持つ地域力、文化力、伝統力、人間力、自然力、離島力、共生力、経済力など、国内外の多くの人々を魅了する大いなる可能性を秘めたソフトパワーで沖縄の未来を拓(ひら)いていくことが重要であると認識しております。私は、こうした県民の誇りの上に沖縄経済や社会が成り立つ「誇りある豊かさ」を手にしていくことが今後の沖縄が目指すべき姿だと考えます。このような認識の下、県民の英知を結集してつくられた沖縄21世紀ビジョンで示された将来像の実現を目指して、うやふぁーふじ(先祖)から受け継いだソフトパワーを生かし、3つの視点から、沖縄を拓き、うまんちゅの笑顔が輝く沖縄を創りあげてまいります。一つ目は、沖縄の「経済」を拓く―経済発展プラン―の視点であります。経済振興につきましては、成長著しいアジアのダイナミズムと連動した「アジア経済戦略構想」を策定し、国際物流拠点の形成をはじめ、情報通信関連産業、観光リゾート産業の振興などのリーディング産業の拡充、強化を進め、沖縄の経済をさらに発展させてまいります。空手・古武道、組踊などの文化資源を守り育てながら観光資源化を図ってまいります。健康・医療分野、環境・エネルギー分野では、沖縄の地域特性を生かした産業の集積を図ってまいります。農林水産業につきましては、亜熱帯気候を生かした沖縄ブランドの確立や6次産業化などを図ってまいります。中小企業など地場産業の活性化を着実に進めつつ、沖縄の優位性を生かした新たなビジネスの動きについてもしっかりと捉えながら、広範な経済発展施策を展開してまいります。二つ目は、沖縄の「幸せ」を拓く―生活充実プラン―の視点であります。人と人とを結ぶ絆は、協働のまちづくりの礎となります。私は、こどもや高齢者の笑顔が輝き、女性や障がいのある方などの力が正しく生かされる活気に満ちた幸せ感あふれる社会を創り上げてまいります。それぞれの地域の宝を大切にしながら、そこに関わるすべての人々が尊重される生活充実施策を展開してまいります。こどもの貧困対策や待機児童の解消などに取り組み、こども環境・日本一の実現を目指すとともに、女性が輝く社会づくりや女性リーダーの育成などに取り組んでまいります。また、若者が希望を持てる社会を目指し、格差社会などの課題の解決に取り組んでまいります。少子高齢化社会を見据えた、健康・医療・福祉政策を実行するとともに、きめ細かな教育指導ができる少人数学級の導入の推進など教育施策についても力を尽くしてまいります。離島・過疎地域につきましては、県民全体でこれらの地域を支える仕組みを構築しながら、定住人口の増加につながる生活環境の整備や産業振興など各種施策を展開してまいります。三つ目は、沖縄の「平和」を拓く―平和創造プラン―の視点であります。今、過重な基地負担に立ち向かうことができるのは、先人たちが土地を守るための熾烈(しれつ)な「島ぐるみ闘争」でウチナーンチュの誇りを貫いたからであります。私は、基地の整理縮小を加速化し、豊かな生活に導く土地活用を図るとともに、近隣諸外国との平和交流を促進する平和創造施策を展開してまいります。私は、日米安全保障体制の必要性は理解しております。しかしながら、戦後約70年を経た現在もなお、国土面積の約0・6%である本県に約74%の米軍専用施設が存在する状況は、異常としか言いようがありません。そして、その米軍基地が沖縄経済発展の最大の阻害要因であることは明確であります。日本の安全保障が大事であるならば、日本国民全体で考えるべきであります。このような基本認識のもと、私は、日米両政府に対し、過重な基地負担の軽減、日米地位協定の抜本的な見直しを求めるとともに、騒音問題や米軍人軍属による犯罪など米軍基地から派生する諸問題の解決に取り組んでまいります。普天間飛行場の辺野古移設問題につきましては、この度の県知事選挙の結果を受けて、公約の実現に向けて全力で取り組んでまいります。国においては、現行の移設計画をこのまま進めることなく、わが国が世界に冠たる民主主義国家であるという姿勢を示していただきたいと思います。この問題につきましては、埋め立て承認の過程に法律的な瑕疵(かし)がないか専門家の意見も踏まえ検証いたします。法的瑕疵があった場合は承認の「取り消し」を検討してまいります。私は、建白書の精神に基づき、県民が心を一つにし、共に力を合わせて、国内外に向けた働きかけを行っていくことが、基地負担軽減の実現につながるものと考えております。この問題の解決のため、県民の皆さまと力を合わせて全力で取り組んでまいります。以上の基本的考え方に基づき、私は、県政運営に関し、多くの公約を掲げました。未来を担う子や孫のために、「誇りある豊かさ」をいかに創りあげ、引き継いでいくか。県民すべてが生き生きと活躍できる協働のまちづくりの理念を大事にし、職員と一丸となって、その一つ一つの実現に邁進(まいしん)する覚悟であります。最後となりましたが、以上申し述べましたことに対し、議員各位、ならびに県民の皆さまには、ご理解とご協力を賜りますよう、重ねて衷心よりお願い申し上げ、私の知事就任あいさつとさせていただきます。 イッペーニフェーデービル。
平成26年12月12日 沖縄県知事 翁長雄志

*2-1:http://www.asahi.com/articles/ASH1H3FZSH1HTPOB002.html
(朝日新聞 2015年1月15日) 辺野古ボーリング調査再開へ 反対派と機動隊もみ合い
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設計画で、沖縄防衛局は近く、中断していた辺野古沿岸部での海底ボーリング調査を再開する。14日夜から15日未明にかけ、調査のための重機を移設予定地に搬入。座り込みを続ける反対派と県警の機動隊がもみ合いになった。ボーリング調査が再開されれば、昨年11月の知事選で移設反対を訴える翁長雄志氏が当選して以降、初の作業となる。15日正午ごろには、移設予定地のある米軍キャンプ・シュワブの沿岸に仮設の浮桟橋を設置する作業を始めた。14日夜はシュワブ内への重機の搬入をめぐり、24時間態勢で座り込む市民と機動隊が激しくもみ合った。座り込みをとりまとめる沖縄平和運動センターの山城博治議長は「どれだけ強制的に排除されても粘り強く阻止していく」と語った。15日からは、移設反対の有識者や議員でつくる団体が、那覇市や沖縄市から辺野古に向けてバスを連日運行し、県内各地から市民を運ぶ。防衛局は昨年8月、埋め立てのために地質を調べるボーリング調査を始めた。当初は11月末までの予定だったが、9月中旬以降、台風などのため中断。11月の知事選直後に再開準備を始めたが、天候悪化で延期し、その後も12月の衆院選への影響を考慮するなどして作業は行われなかった。防衛局は調査期間を今年3月末までに延長している。(泗水康信)

*2-2:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-237483-storytopic-1.html
(琉球新報 2015年1月18日) 防衛局が辺野古沖に浮具再設置 海保が16日拘束の男性骨折
 米軍普天間飛行場の移設に伴い新基地建設の準備が進む名護市辺野古沿岸部では17日、沖縄防衛局の作業船が臨時制限区域を示す浮具(フロート)を海上に設置する作業が確認された。海上では新基地建設に反対する市民らがカヌーや船で抗議行動を展開。延べ28人が海上保安官に拘束された。浮具の設置が確認されるのは、昨年10月に台風の影響で撤去されて以来。今後は仮設桟橋の設置や海底ボーリング調査の準備が進められるとみられる。浮具は辺野古崎から長島の間にかけて設置され、辺野古側から大浦湾側への行き来がしづらくなっている。船首に小型の滑車を装備した作業船は、アンカーとみられるブロックを水中でつり下げながら移動した。設置された浮具付近で潜水作業などをしていた。作業終了後に、ブロックがなくなっていたことから、海中に沈めたとみられる。16日にカヌーで抗議行動し、海上保安官に拘束された29歳男性が肋骨(ろっこつ)を骨折していたことが分かった。ヘリ基地反対協議会の安次富浩共同代表は「弁護士と相談して告訴する方向で進める。やったのが誰か特定できていないが、泣き寝入りはしない」と話した。

*3-1:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-239982-storytopic-11.html
(琉球新報社説 2015年3月8日) ブロック再投入 知事権限で作業止めよ
 米軍普天間飛行場の移設に伴う新基地建設で、沖縄防衛局は新たに大型コンクリートブロック2個を海底に沈めた。岩礁破砕許可区域外に投入したブロックがサンゴ礁を傷つけている問題で、翁長雄志知事がブロック設置作業の停止などを指示したのに、それを一顧だにすることなく再び沈めた。県民を代表する知事を侮辱し、誠実さのかけらもない行為と言わざるを得ない。県は、辺野古埋め立て承認に関する第三者委員会が検証を終えるまで作業を中断するよう求めたが、国はそれも無視した。埋め立て工事計画の実施設計に関する県との事前協議でも、国は工事中止に応じない姿勢だ。米国のための新基地建設には民意を踏みにじり、環境破壊もいとわない国との間で話し合う余地はもうない。翁長知事は即刻、岩礁破砕許可を取り消し、作業を止めるべきだ。10~45トンもあろうコンクリートブロックを沈めれば、サンゴ礁をはじめ環境に大きな影響を与えることは容易に想像できる。新たにブロックを沈めた場所は、岩礁破砕許可区域の境界付近だ。国は「区域内」と主張するが、線が引かれているわけではない。いずれにしてもサンゴ礁破壊を懸念する県側が区域外で作業停止を指示し、区域内でも調査する意向を示す中で乱暴なやり方だ。「丁寧に理解を得ながら進める」。安倍首相は事あるごとに繰り返してきたが、これが丁寧な物事の進め方なのか。新たなブロックの設置は近く再開予定のボーリング調査に伴うもので、調査の際に展開する浮具(フロート)などを固定するためのものとみられる。ボーリング調査は水深の深い12カ所がまだ残っており、国はさらにブロックを沈める可能性がある。「丁寧に理解を得ながら」と言うならば、国は県の要請を受け入れ、作業を中断するのが筋だ。いったん前知事から岩礁破砕許可を得たからといって強引に作業を進めても、決して新基地建設を許さないという民意は揺るがない。国は県の要請を無視し、作業強行の姿勢を鮮明にしている。これ以上のブロック投入やボーリング調査の再開を許してはならない。翁長知事には速やかに知事権限を行使してもらいたい。決断の時だ。

*3-2:http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201503143940.html
(愛媛新聞社説 2015年3月14日)辺野古海底調査再開 民主国家否定する暴挙止めよ  
 これが民主主義を掲げる国のすることなのか。政府は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立てに向けた海底ボーリング調査を再開した。沖縄県の再開見合わせ要請や県民の強い反発に一切耳を傾けることなく、説明や対話の機会を持とうともしないままである。「粛々と工事を進める。法に基づいており、全く問題ない」(菅義偉官房長官)。権力を持つ政府が地元の民意を抑え込み、新基地建設へと突き進んでいる。これは民意の黙殺であり県民への抑圧にほかならない。民主国家を政府自ら否定する暴挙を、決して認めることはできない。直ちに中止を求めたい。県全体の民意が辺野古移設に反対していることは明らかだ。昨年、名護市長選と知事選に加え、衆院選も4小選挙区全てで反対派が勝利した。にもかかわらず、政府は日米合意を盾に、無視を決め込む。安倍晋三首相は衆院予算委員会で「基地問題のような大事な政策は、その時々の政局、選挙に利用してはならない」とけん制。就任後7度上京した翁長雄志知事に一度も会おうとしない。首相や関係閣僚が沖縄の米軍基地負担問題を地元首長と協議する「普天間飛行場負担軽減推進会議」も昨年10月から開いていない。その状況で辺野古の埋め立て工事に「夏ごろにも着手したい」(中谷元・防衛相)と一方的に言及している。「移設が進めば反発は収まっていく」と政府関係者が言うように、既成事実をつくって反対運動を抑えようとの思惑は明らかだ。到底見過ごすことはできない。地元の反発は当然だ。政府は海上保安庁や内閣府の出先機関である国道事務所を使って市民の監視や抗議の封じ込めに躍起だが、自らの強硬姿勢が県民の心を踏みにじり、緊迫の度合いを深めている現状を省みてもらいたい。沖縄は戦争で多大な犠牲を出した。戦後も在日米軍専用施設の大半が沖縄にあり、今なお米国追従の影を背負わされている。戦後70年。米国の視点でなく、沖縄の痛みから国の針路を見つめ直す時機が来ている。地元の声から逃げず丁寧に対話することで、基地縮小の道を探らねばならない。軍縮と平和を沖縄から米国へ、世界へと発信したい。沖縄の人々は、自分たちの暮らしだけでなく、自然破壊を食い止め、海の生物を守るためにも声を上げている。ボーリング調査再開のため海中に投入した大型のコンクリート製ブロックが、県の岩礁破砕許可区域外でサンゴ礁を傷つけているのも確認されている。辺野古で起きている重い現実を、いま、日本の問題として国民全体で見つめたい。

*3-3:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-240321-storytopic-11.html
(琉球新報社説 2015年3月14日) 国連人権理事会 政府の非人道性を訴えよ
 今の政府の沖縄に対する態度がどれほど非人道的か、いまさら申すまでもない。人権に敏感な国際社会の目に照らせば、非難を浴びることは火を見るより明らかだ。その意味でまことに意義深い。沖縄の政財界や労働・市民団体の有志、有識者でつくる「島ぐるみ会議」が9月にジュネーブで開かれる国連人権理事会に参加し、政府による辺野古新基地建設強行が県民への人権侵害に当たると報告する。政府の仕打ちの不当性、非民主主義的専制ぶりを訴えてほしい。それにしても安倍政権の言行不一致ぶりにはあきれ返る。安倍晋三首相は就任直後、「(基地負担に関する)地元の声に耳を傾ける」と語り、ことしの施政方針演説でも「沖縄の理解を得る努力を続け」ると述べたが、翁長雄志知事が繰り返し面会を求めても門前払いだ。「耳を傾ける」発言は仲井真弘多前知事の時だった。言うことを聞く人の声は尊重するが、そうでない人は無視するということなのであろう。首相は国会で「沖縄の基地負担軽減に取り組む」とも述べたが、片腹痛い。実際に行っていることは、軍港機能を新たに加える辺野古新基地建設の強行である。考えてもみてほしい。普天間飛行場は、代替基地を県内に置かず、そのまま取り払ったとしても、在日米軍専用基地の沖縄への集中度は73・8%から73・4%になるにすぎない。そんなささやかな望みでさえ沖縄には持つ資格がないと言わんばかりの強行なのである。地元名護市の市長選も市議選も知事選も新基地反対派が勝利し、衆院選では反対の候補が全勝した。これ以上ないほど明確に示された民意を踏みにじる今の政府の態度が、人権侵害でなくて何であろう。「日本領土内で住民の意思に反した不当な支配がなされていることに国連加盟国が注意を喚起することを要望する」。現状を指すかと見まがうが、実は翁長知事の父がかつての立法院で読み上げた決議文だ。今の日本政府の専制ぶりはかつての米軍占領統治にも等しいと分かる。国連人種差別撤廃委員会は5年前、日本政府にこう勧告した。「沖縄への米軍基地の不均衡な集中は現代的人種差別だ。沖縄が被っている根強い差別に懸念を表明する」。5年前よりはるかに深刻化し、あからさまになった人権侵害を見て、今度は絶句するだろう。

*3-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11649029.html?_requesturl=articles%2FDA3S11649029.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11649029 (朝日新聞社説 2015年3月14日)辺野古移設 作業を止めて対話せよ
 米軍普天間飛行場の移設に向け、政府が海底を掘って地質を調べるボーリング作業を再開した。昨年夏に中断していたもので、この作業を経て今夏にも埋め立て工事に突き進む構えだ。移設に反対している翁長雄志知事の就任後、初の大きな動きであり、知事は「県民に説明がない中で物事を進めるのは許せない」と反発した。一方の政府では、菅官房長官が「法制に基づいて手続きを行っている。粛々と工事を進めるのは当然じゃないか」と強硬姿勢を崩さない。中谷防衛相はきのう、「こちらから(知事に)会う考えはない」と発言し、異様な対立状態に陥っている。確かに、仲井真弘多・前知事は埋め立てを承認した。だが、その判断に納得できない県民が選挙で知事を交代させ、移設反対の意思を明示したのだ。翁長知事を無視し続ける政府の姿勢は頑迷というほかない。政府と沖縄県の対立をこじらせることは、国と地方の関係や、安全保障を考える上でも、決して望ましいことではない。米軍の対応もおかしい。海底の環境が損なわれた疑いがあるため、県が立ち入り禁止区域での調査許可を求めたが、米軍は「運用上の理由」で拒んだ。この海域では、海上保安庁など政府の船舶は往来している。なのになぜ、県の調査船だけが支障となるのか。県が米軍に不信感を抱くのも無理はない。県が調査することになったのは、沖縄防衛局が岩礁破砕の許可区域外に巨大なブロックをいくつも沈め、サンゴなどを壊した可能性があるからだ。この海域は埋め立て予定地の周辺部で、工事完了後もサンゴ礁などはそのまま残る。県が水産資源の保護策や環境保全策をとるのは当然だろう。ましてやこの海域は、沖縄の海岸の中でわずかに残った貴重なサンゴ礁の海。ジュゴンが回遊し、近年、新種の甲殻類なども相次いで見つかっている。翁長知事は、前知事の承認を検証する県の第三者委員会の審査が終わるまで、作業を停止するよう政府に求めている。ここは政府が提案を受け入れて作業を中止し、県との対話による関係修復に乗り出すべきだ。政府も米軍も、長年、重い基地負担に苦しむ沖縄県民の心をこれ以上傷つけてはならない。民意を重く受け止められない政府の存在は、国民全体にとっても不幸だ。

*4:http://matome.naver.jp/odai/2133751340913855001
(歴史を覆すかも?与那国島付近の謎遺跡 2012年05月20日) 
●与那国島の海底遺跡
 与那国、数年前からちょっと有名になっています。なぜかといえば、すぐそばの海底に人間が手を加えて作ったとおぼしき遺跡が発見されたからです。 その規模はかなり大きく、直角の石組や通路どが点在するもので、遺跡ポイントとしてダイバーにも有名になっています。
●海底遺跡の発見
 与那国の海は透明度の高さでは世界的にも有名で、変化にとんだ海底地形や回遊魚の群れるさまなどは水中撮影やウオッチングに適しているため、新嵩喜八郎氏はダイバーたちのためのダイビングポイントのマップ作りを思い立ちました。そして、新川鼻沖の海中に潜ったとき、海底で運命的な岩盤との出会いが待っていたといいます。200メートルを越す岩磐のラインが規則正しく東西方向に延びているのを見て驚愕した新嵩喜八郎氏は、これが人工的な構造物であることを直感し、「遺跡ポイント」と名づけました。
●遺跡の詳細
 「遺跡」は、海底にそびえたつ巨大なビルのよう。階段状になった巨大な壁が高さおよそ25m、幅東西約250m、南北150mにもわたる、巨大な物体。現在も調査活動が続いていて、この範囲がさらに大きくなるかもしれません。規模としては、なんとあの古代エジプトのピラミッドに匹敵する大きさだとか。
●本当に遺跡なのか?
 「水中に作った墓」「神殿」「船着場」「グスク」…人工物であると仮定しただけでも諸説様々あり、「与那国島の海底遺跡こそムー大陸だ」という人もいます。かつて陸上にあった証拠として、「陸上にしかできない鍾乳洞が遺跡ポイントの近くにあること」をあげる人も。
●アトランティスの一部?
海底にある高度な岩盤加工を考察する場合、プラトンの「クリティアス」と「ティマイオス」を参照しないわけにはまいりません。古代ギリシャの哲学者プラトン(BC427~BC347年)の著作集の中の「クリティアス」と「ティマイオス」に書かれているアトランティス記事は、今から1万二千年ほど前に海底に沈んだという古代都市についての、ほとんど唯一ともいえる情報です。その中で、プラトンは、「ティマイオス」で、この、消滅したアトランティスの情報源は、古代のエジプトのサイスのネイト女神の神殿の神官であると明言しています。与那国島海底遺跡の構造と石切り技術には、ピラミッド文明を連想する巨大さと高度さがあるのですから、これを検証する場合、この「プラトンのアトランティス記事」を見逃しては通れません。
●遺跡説は賛否両論
 海底遺跡と聞けば、誰でもロマンを感じることでしょう。しかし、遺跡だ!遺跡ではない!と議論をよんでいます。遺跡派は、自然にできたものとは考えられないから人工的な遺跡だ。反遺跡派は石器などの遺物が見つかっていないから人工的な遺跡ではない、と反論します。しかし、最近、古代文字らしきものが見つかったり、石器が引き上げられているのです。(以下略)


PS(2015.3.24):*5-1、*5-2のように、沖縄県知事は辺野古作業の停止を指示し、不自然だった埋め立て承認手続きの経緯を検証するため、第三者委員会を設置して、場合によっては承認を撤回すると発表した。しかし、中谷防衛相は、その日のうちに米海兵隊トップのダンフォード司令官に「一日も早く(辺野古沿岸部に)移設できるよう努力したい」と改めて約束し、菅官房長官は「この期に及んでこのような文書が提出されること自体、甚だ遺憾だ」「法律に沿って粛々と工事を進める」と述べた。しかし、*5-2、*5-3のように、承認の経緯はきわめて不自然だった上、日本の民法では「契約は守るべきもの」とされ、契約違反があれば契約解除してもよいのが法治国家日本の法律なのである。なお、米国は、日本が硫黄島など離島で既に滑走路のある、今から埋め立てる場所よりもよい場所を提示すれば無理は言わないため、どうしても辺野古を埋め立てると言うのは日本政府の変な頑迷さによるところが大きい。

   
      *5-1より         ずっと続いていた沖縄県を挙げての反対運動

*5-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150324&ng=DGKKASDE23H0E_T20C15A3EA2000 (日経新聞2015.3.24)沖縄知事、辺野古作業の停止指示 政府は移設を継続
 沖縄県宜野湾市の米軍普天間基地を名護市辺野古沿岸部に移す作業をめぐる政府と県の対立が23日、一段と深まった。翁長雄志知事は海底ボーリング(掘削)調査を含む移設作業の停止を沖縄防衛局に指示。応じない場合、許可を取り消す意向を示した。政府は移設作業を「粛々と進める」(菅義偉官房長官)との立場を崩していない。対立は泥沼化しつつある。掘削調査など移設作業の停止指示は、沖縄県の漁業調整規則に基づく。県は30日までの「7日以内」に作業停止を文書で報告することを求めている。理由は沖縄県が2月に初めて実施した辺野古沖の海中調査。沖縄防衛局が設置したコンクリート製ブロックによって工事区域の外でサンゴ礁が傷ついた蓋然性が高く、改めて広い範囲で調査する必要があるという。翁長氏は記者会見で、作業停止の指示に従わない場合、沖縄県が仲井真弘多前知事時代の2014年8月に出した岩礁破砕許可を取り消すと強調したうえで「腹は決めている」と語った。同年11月の知事選以来「あらゆる手法を尽くして辺野古に基地をつくらせない」と繰り返してきた。強硬姿勢の背景には政府対応への不満がある。日米両政府が立ち入りを制限した工事区域の内側の調査を政府と米軍それぞれに求めたが、断られた。12日には沖縄防衛局が中断していた掘削調査が再開された。「不合理極まりない」(翁長氏)と反発を強めた。一方、政府は辺野古移設の作業を進める立場を堅持している。菅長官は23日の記者会見で「この期に及んでこのような文書が提出されること自体、甚だ遺憾だ」と批判した。掘削調査を経て夏にも埋め立て工事をスタートさせる政府方針は揺らいでいない。沖縄県は許可を取り消せば政府側が一連の作業を進めることができなくなるとみている。しかし、政府は移設を遅らせるための時間稼ぎととらえ、「手続き面に瑕疵(かし)がない以上、効力はない」(防衛省幹部)と続ける見通しだ。政府と沖縄県の対立は法廷闘争に発展するおそれもある。県が取り消し処分に踏み切った場合、政府は無効を求めて提訴する構えをみせている。1995年には米軍用地の強制使用に必要な代理署名を拒否した当時の大田昌秀知事を国が提訴し、96年に最高裁で県側敗訴が確定した。日米関係に影響を及ぼすとの見方も出ている。中谷元・防衛相は23日、米海兵隊トップのダンフォード司令官と防衛省内で会談し、「一日も早く(辺野古沿岸部に)移設できるよう努力したい」と改めて約束した。日米両政府は4月下旬に外務・防衛担当の閣僚協議(2プラス2)、同28日にはワシントンで首脳会談の開催をそれぞれ予定している。今回は日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を18年ぶりに見直す節目でもある。防衛省幹部は「米国の信頼を失うわけにはいかない」と懸念している。

*5-2:http://www.shinmai.co.jp/news/20150324/KT150323ETI090003000.php
(信濃毎日新聞 2015年3月24日) 辺野古移設 政府はごり押しやめよ
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐる沖縄県民と政府との対立が、ますます抜き差しならない状況になってきた。翁長雄志知事が記者会見し、政府が進めている海底ボーリング調査を含め「海底面の現状を変更する行為を全て停止する」ことを沖縄防衛局に指示したことを明らかにした。政府が指示に従う可能性は低い。対立の原因は県民の反対を押し切って移設を強行しようとしている政府にある。政府は、沖縄の民意を力ずくでねじ伏せるやり方をやめて、対話による問題の打開に転換すべきだ。政府は先日、辺野古のボーリング調査を再開した。知事選などへの影響を考え、昨年夏から中断していた調査である。調査は海上や沿岸部で住民の抗議行動に取り囲まれ、もみ合いが続いている。反対派女性の一人を海上保安官が馬乗りになって制圧するなど、乱暴な警備が住民の怒りを駆り立ててもいる。「法律に沿って粛々と工事を進める」。菅義偉官房長官は繰り返す。仲井真弘多前知事による許可を根拠に調査を続ける構えだ。前知事が埋め立てを承認した後の知事選で、移設反対を掲げた翁長氏が前知事を大差で破り、当選している。12月の総選挙では県内四つの小選挙区全てで自民党の公認候補が敗北した。県民は辺野古移設に対し明快に「ノー」の意思表示をしている。前知事の承認を根拠に、政府が作業を続けるのは許されない。翁長知事が調査をやめさせようとするのは当然だ。知事はきのうの会見で、埋め立て承認手続きの経緯を検証し、場合によっては撤回する考えも示した。検証のための第三者委員会は既に議論をスタートしている。早ければ4月にも報告がまとまる見通しだ。知事が姿勢を軟化させる見通しはない。翁長知事の就任後、政府は沖縄県に対する圧力を露骨に強めている。知事が何度も上京し安倍晋三首相との面会を求めても応じようとしない。2015年度予算案では沖縄振興予算を減額した。自民党も知事を党の会合に呼ばないままだ。仲井真前知事のときとは打って変わった対応である。冷遇すればそのうち音を上げる、と高をくくっているとすればとんでもない考え違いだ。住民意思を無視しての移設は沖縄では、本土による差別と受け止められている。対話の姿勢を欠いては、打開の道は遠くなるばかりだ。

*5-3:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=108428
(沖縄タイムス社説 2015年3月24日) [辺野古 作業停止指示]筋を通した重い判断だ
 名護市辺野古の新基地建設に反対する翁長雄志知事が、自らの権限を行使し、新たな対抗措置に踏み切った。ボーリング調査を含むすべての海上作業を1週間以内に停止するよう沖縄防衛局に指示したのである。国が指示に従う可能性は極めて低い。従わなければ来週にも岩礁破砕の許可を取り消す考えだ。海底の岩石採掘と土砂採取などを内容とする岩礁破砕の許可が取り消されれば、埋め立て工事の着工に影響を与えるのは確実である。翁長知事にとっては就任以来、最も重い政治決断といえる。なぜ、何を根拠に、知事は作業の停止を求めたのか。一連の経過を冷静に吟味すれば、筋の通った毅然とした判断であることが理解できる。県は昨年8月、仲井真弘多前知事の時に、県漁業調整規則に基づき埋め立てに必要な岩礁破砕を許可した。しかし今年2月、海底ボーリング調査を再開するため海中にコンクリート製の大型ブロックを投入した際、許可区域外にコンクリートブロックを設置し、サンゴを傷つけていたことが県の潜水調査で分かった。翁長知事は「漁業調整規則違反の懸念が払拭(ふっしょく)できない」と主張、調査が終了するまでのすべての作業の中止を指示したのである。併せて県は、臨時制限区域への立ち入り調査を認めるようあらためて沖縄防衛局に申請した。公務遂行のための調査であるにもかかわらず、米軍は、県の立ち入り調査を認めていないからだ。
    ■    ■
 臨時制限区域内では、民間の工事船や海上保安庁の警備船が多数出入りし、沖縄防衛局も独自の潜水調査を実施している。なのに、県の調査だけを認めないというのは、嫌がらせと言うしかない。菅義偉官房長官は「国としては十分な調整を行った上で許可をいただき工事をしている。全く問題ない」と法的正当性を強調する。だが、岩礁破砕の許可には条件がついており、条件に反する行為が確認されれば、許可を取り消すのは当然である。それよりも何よりも最大の問題は、前知事の埋め立て承認を唯一の根拠に、県との一切の対話を拒否し、選挙で示された民意を完全に無視し、抗議行動を強権的に封じ込め、一方的に作業を続けていることだ。埋め立て承認が得られたからといって、公権力を振り回して問答無用の姿勢で新基地建設を進めることが認められたわけではないのである。
    ■    ■
 国の環境監視等委員会(第三者機関)に配布した資料の改ざん、議事録公開の遅れが問題になっている。同委員会の副委員長は、国の環境影響評価(アセスメント)に不満を抱き、辞任を表明した。埋め立て承認の適法性に疑問符が付いているだけでなく、国の環境影響評価の信頼性も、疑われ続けているのである。「1強多弱」の国会の中で、安倍政権におごりや慢心が生じていないか。新基地建設は、今や完全に「負のスパイラル」に陥っている。異常な事態だ。


PS(2015.4.18追加):*6-2のように、沖縄県が県を挙げて新基地反対の地元民意を国内外に発信するための基金を設立したりしている中、*6-1のように、安倍首相は単に翁長沖縄県知事との会談しただけで、「①少しでも基地負担軽減を進めたい」「②辺野古が唯一の解決策」と言われているが、②の理由はないため言えるわけがなく、①は念仏にすぎない。そのため、②の理由を列挙した上で、それが本当に理由になるのか、よりよい代替案はないのかについて検討すべきである。なお、朝鮮有事なら長崎県の佐世保基地や対馬駐屯地を使う方が便利だが、朝鮮有事に玄海原発は危なすぎるのだ。

*6-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150418&ng=DGKKASFS17H3J_X10C15A4MM8000 (日経新聞 2015.4.18) 
首相「唯一の解決策」 辺野古移設巡り初会談 沖縄知事「中止を」
 安倍晋三首相は17日、首相官邸で沖縄県の翁長雄志知事と会談した。両氏の会談は、昨年12月に翁長氏が移設阻止を掲げて就任して以来初めて。首相は米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古沿岸への移設について「唯一の解決策だ」と強調した。翁長氏は「唯一の解決策との固定観念に縛られずに作業を中止してほしい」と反対する考えを伝えた。首相は「戦後70年、沖縄には大きな基地負担をかけている。少しでも負担軽減を進めたい」と語った。米軍嘉手納基地以南の施設・区域返還など政府の取り組みにも触れた。「普天間の一日も早い危険性の除去は我々も沖縄も思いは同じだ」と移設への理解を求めた。翁長氏は昨年の名護市長選や知事選など移設反対派が勝った一連の選挙結果を踏まえ「辺野古反対という圧倒的な民意が示された」と力説した。普天間基地については「土地を奪っておきながら老朽化したとか世界一危険だからとか(辺野古移設が)嫌なら代替案を出せというこんな理不尽なことはない」と訴えた。首相には26日からの訪米を前に、普天間移設に向けて沖縄との協調を探る姿勢を示したい意向がある。翁長氏は日米首脳会談に臨む首相に「オバマ米大統領に、沖縄は辺野古移設に反対だと伝えてほしい」と求めた。会談は約35分間で、菅義偉官房長官と沖縄県の安慶田光男副知事が同席した。

*6-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015040802000136.html
(東京新聞 2015年4月8日) 辺野古基地反対で基金 米政府に「民意」直接訴え
 米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設に伴う名護市辺野古(へのこ)への新基地建設をめぐり、地元経済人や有識者らが九日、新基地反対の地元民意を国内外に発信するための基金を設立する。日本政府が強行する新基地建設について、米政府や米議会にロビー活動で反対を訴え、国内でもこの問題への理解を深めてもらい、日本政府を動かすことが狙いだ。新たな基金「辺野古基金」は、昨年の沖縄県知事選で当選した翁長雄志(おながたけし)氏を支援した地元の経済人や地方議員、市民団体らが設立。重い基地負担に苦しむ沖縄の現状を訴える有識者らの活動を財政面から支え、世界一危険とされる普天間飛行場の早期閉鎖と、辺野古への新基地建設中止を目指す。共同代表には、建設会社やスーパーなどを運営する「金秀グループ」の呉屋守将(ごやもりまさ)会長、ホテル「かりゆしグループ」の平良朝敬(たいらちょうけい)最高経営責任者(CEO)ら地元経済界の重鎮が就任。本土の有識者などにも賛同者や寄付を募る。主な活動は、米政府と議会対策。米政府関係者や上下両院の議員へのロビー活動を後押しする。シンポジウム開催も検討し、米国の有識者の理解を広める。沖縄では昨年の名護市長選、知事選、衆院選の四小選挙区全てで新基地反対派が勝利。この結果を示し、「民主主義」の価値観を重視する米国で直接、建設に反対する地元の意思を伝える。県も四月、米ワシントン事務所を新設。在沖縄米国総領事館で特別補佐官を務めた経歴がある平安山(へんざん)英雄氏(66)を駐在員に起用。基金との官民一体で米国への働きかけを強める方針だ。基金は国内では、新聞への意見広告掲載やパンフレット作成などで建設反対を訴える。全国の地方議会にも、政府に対応を改めることを求める決議などで意思を示すよう働き掛ける。九日に那覇市内で設立会見を開き、翁長氏も出席する予定。設立に携わる沖縄県議は「沖縄の民意を無視し続ける政府の姿勢は許せない。国内外から政府に計画の断念を迫る」と話す。

| 辺野古・普天間基地問題::2012.2~2015.3 | 04:48 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.11.17 米軍普天間飛行場の辺野古移設問題については、沖縄県民が知事選で答えを出した
   

(1)沖縄知事選に対する沖縄地元紙の反応
 私が、2013年2月3日を中心として、このブログの「普天間基地問題」というカテゴリーにずっと書いてきたように、2013年1月28日、沖縄県の全市町村が普天間県外移設・オスプレイ配備撤回を求めて東京で大集会を開き、全市町村長の署名が入った「全沖縄の訴え」として米軍基地の負担軽減を求める「建白書」を手渡したにもかかわらず、2013年12月25日、日本政府は、仲井真知事に圧力をかけて辺野古埋め立てを表明させた。しかし、これは、どう見ても不合理で無理筋の話だ。

 そのため、今回の沖縄県知事選では、沖縄タイムス等の地元紙は、*1-1のように、「未来を切り開く選挙」と位置づけ、米軍普天間飛行場の辺野古移設問題を最大の争点としてリーダーを選ぶことで、選挙により民意を示す一票を投じるよう呼びかけた。そして、政治体制の保守対革新という旧来型の対立ではなく、辺野古への基地建設に保守同士が分裂して賛否を問う選挙になったわけである。
     
 その結果、*1-2のように、沖縄県知事選挙結果は、翁長氏が360,820票をとり、仲井真氏に約10万票の大差をつけて当選して、新たな基地は造らせないという民意が示された。また、同時に行われた那覇市長選挙では、城間幹子氏が101,052票で当選している。これは、沖縄県民が「沖縄のことは沖縄が決める」という自己決定権を行使し、辺野古移設拒否を政府に突き付けたことを意味しているため、政府は、率直に沖縄県民の強い民意を認めて、普天間基地の辺野古移設を中止すべきである。

 私は、すでに辺野古埋め立てに関する反対理由や代替案をこのブログに書き尽くしているため長くは書かないが、日本政府は沖縄県民に対する公平・公正な対応を行い、基地を、国の原発交付金をまだ手放せない鹿児島県の適地に移転して原発は早々に廃炉にすべきだ。鹿児島県にとっては、原発よりも基地の方がまだ安全で、基地による食料の調達も期待できる。

(2)沖縄知事選に対する全国紙の反応
 選挙前には沖縄知事選について殆ど報道しなかった全国紙も、朝日新聞は2014年11月17日の社説で、*2-1のように、「(沖縄県知事選の)最大の争点は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設の是非」「辺野古への移設計画は白紙に戻すしかない」としており、これは正しい。

 また、この対立は、旧来型政治体制の「保革対立」を超えた選択で、沖縄の未来をどう描くかという選択だった。その中で、仲井真氏は「一日も早い普天間飛行場の危険除去には、辺野古移設が現実的な方策」としたが、18年も放っておかれたことを少し早く解決するために、大きな妥協をするのは合理的でない上、「辺野古移設か普天間の固定化か」という二者択一というのは、選択肢が意図的で少なすぎる。

 しかし、2014年11月17日の日経新聞社説では、*2-2のように、「いまこそ政府と沖縄は話し合い、新知事と話し合いの糸口をつかんで予定通り普天間移設を進めるべき」「名護市での基地建設に必要な埋め立て工事は仲井真氏が承認済みであり、新知事に覆す権限はない」「日米同盟に影響する」などと言いたてて、普天間埋め立てを進めるべく世論を喚起している。これにより、どの新聞が、誰の意見を代弁しているかは、私が書くまでもないだろう。

(3)他の選択肢について
 *2-1にも書かれているように、日米両政府が「辺野古が唯一の選択肢」といくら強調しても、米国の専門家はじめ誰が考えても、より安価で優れた代替案が存在する。それでも「辺野古移設か、普天間の固定化か」と沖縄を脅しながら二者択一を迫り、新知事となる翁長氏に沖縄への一括交付金の削減で対抗するという声すらあるのでは、今度は沖縄(琉球)が独立のための国民投票をするかもしれない。

<地元紙の社説>
*1-1:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=90738
(沖縄タイムス社説 2014年11月16日) [知事選きょう投開票]未来を切り開く選挙だ
 戦後70年近く、沖縄の人々は幾度となく政治に翻弄され、歴史の岐路に立たされてきた。 例えば1956年の島ぐるみ闘争。軍事政策を優先し住民生活を無視した米民政府に、民衆が立ち上がった。68年に実施された主席公選は、自治権拡大闘争の末、勝ち取ったものだ。米軍支配に抗(あらが)う闘いは、72年の日本復帰へとつながっていく。復帰後12回目となる県知事選の投開票日を迎えた。主席公選以降、保守対革新で争われてきた構図が崩れた、かつてない選挙である。主席公選の高揚感を思い出したという年配の人がいた。基地か経済かで激しくぶつかった98年知事選以来の熱気という人も。どのような結果になっても、沖縄が進む方向と政治の枠組みに重大な影響を与えることは間違いない。立候補しているのは、元郵政民営化担当相の下地幹郎氏、前民主党県連代表の喜納昌吉氏、前那覇市長の翁長雄志氏、現職の仲井真弘多氏。いうまでもなく最大の争点は、米軍普天間飛行場の辺野古移設問題である。長く動かない問題を前に「選挙で変わるはずがない」と背を向けている人もいるかもしれない。でもそれは違う。県外移設、軍民共用、暫定ヘリポート、県内移設…、歴代知事の対応を細かく検証していくと、時々の政策や具体的アプローチが日米の取り組みに影響し、状況に変化をもたらしてきたことが分かる。誰をリーダーにするかで辺野古問題は変わるのだ。
      ■    ■
 前回の知事選と様子が変わったのは「基地問題」を重視する県民が増えたことである。「経済」から「基地」へと関心が逆転している。県民の心の奥底で起きている変化の正体が何なのか、選挙結果が明らかにしてくれるだろう。争点であり、関心が高い辺野古移設について候補者の主張をおさらいしたい。下地氏は県民投票を実施して結果に従うとする。喜納氏は埋め立て承認を取り消して撤回すると訴える。翁長氏は新基地は造らせないとし反対を主張している。仲井真氏は普天間の危険性除去が重要だとし容認の姿勢だ。現職が勝てば辺野古の埋め立てを承認した行為が民意によって認められたことになり、埋め立て工事にお墨付きを与える。それ以外の候補者が当選すれば状況は変わる。主張の違いは明らかであり、選挙で民意を示したい。
    ■    ■
 投票率が低下傾向にあることが懸念される。前回知事選は60%で、とりわけ若い世代の低さが目立った。今回の選挙では無党派層の増加が顕著だ。公明、民主党の自主投票が投票率にどう作用するのかも気になるところである。知事選を前に、菅義偉官房長官が辺野古移設は「過去の問題」と発言したことを思い起こしたい。新しい基地は10年後、50年後の沖縄の未来に影響する。将来世代をも拘束する計画なのだ。過去を振り返り、現在を直視し、未来を切り開く一票を投じよう。

*1-2:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-234623-storytopic-11.html
(琉球新報社説 2014年11月17日) 新知事に翁長氏 辺野古移設阻止を 尊厳回復に歴史的意義
 <県知事選挙開票速報>             <那覇市長選挙開票速報>
 当 翁長 雄志 360,820票               当 城間 幹子 101,052票
    仲井真弘多 261,076票                与世田兼稔 57,768票
    下地 幹郎 69,447票
    喜納 昌吉 7,821票
 新たな基地は造らせないとの民意は揺るがない。県知事選で、そのことがあらためて証明された。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対を掲げた前那覇市長の翁長雄志氏(64)が、政府と共に移設を進める現職の仲井真弘多氏(75)らを破り初当選した。約10万票の大差は、県民が「沖縄のことは沖縄が決める」との自己決定権を行使し、辺野古移設拒否を政府に突き付けたことを意味する。翁長氏には、政府の強硬姿勢を突き崩して移設問題など基地問題に終止符を打つことに全力で取り組むことを期待したい。
●民意尊重は当然
 在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄に新たな米軍基地の強権的な押し付けを認めることは、県民自ら尊厳を否定するに等しい。今知事選は1968年の主席公選を勝ち取った住民運動同様に、沖縄の尊厳と誇りを回復できるかも問われた。仲井真知事の辺野古移設工事埋め立て承認で、沖縄の尊厳と誇りを傷つけられたと感じた県民は少なくない。保守分裂選挙となったことがそれを物語っている。失われかけた尊厳を県民自らの意志で取り戻した選択は歴史的にも大きな意義を持つ。一方、政府は選挙結果にかかわらず、辺野古移設を進めると明言しているが、民主主義国家として許されない。埋め立て承認で地元の了解が得られたと受け止めているようだが、それも間違いだ。仲井真知事は前回知事選で県外移設を訴えて当選した。県民は辺野古移設推進にその後転じた仲井真知事を支持したわけではない。つまり地元の大半は了解などしていないのである。政府は辺野古移設の是非を最大の争点とした知事選で示された民意を真摯(しんし)に受け止め、辺野古移設を断念すべきだ。それこそが安倍政権の言う「沖縄に寄り添う」ことを具現化することになる。米政府も民主主義に立脚すれば、民意の重みを無視できないはずだ。ことし1月の名護市長選では移設阻止を掲げた稲嶺進市長が再選された。にもかかわらず、政府は移設工事を強行着手した。新基地建設工事を既成事実化し、県民に無力感を植え付けることを狙ったことは明らかである。だが、県民がなえることはなかった。新基地建設反対の意志をさらに強固なものにするきっかけにもなった。多くの県民が基地の県内たらい回し拒否に票を投じたことが何よりの証しだ。
●県民支援が必要
 東村高江では住民の反対を無視し、新たな米軍ヘリパッドの建設計画が進められている。翁長氏はオスプレイ配備に反対する立場からヘリパッド建設に反対している。建設断念に追い込んでほしい。県内全41市町村長が署名した「建白書」の求めるオスプレイ配備撤回の実現にも知事として力を注いでもらいたい。基地問題の解決はこれからが正念場である。辺野古移設など米軍基地の過重負担を強いる政府の厚い壁を突き破るためには、県民世論の後押しが欠かせない。「建白書」の精神に立ち返り、さらに幅広いオール沖縄で基地問題解決を訴え、翁長氏を支援する態勢の再構築も求められる。基地問題以外にも解決しなければならない課題は多い。翁長氏はアジア経済戦略構想の策定による自立経済の発展や正規雇用の拡大、4年後までの認可保育所の待機児童ゼロ、子ども医療費の無償化などさまざまな施策を通して県民生活を豊かにすることを打ち出している。那覇市長を14年務めた翁長氏の行政手腕、さらには那覇市議と県議で培った政治力、行動力を生かし、公約を実現するよう期待したい。県民は平和と豊かさの実感を望んでいる。県民の負託に応え、沖縄の将来も見据え、リーダーシップを発揮してほしい。

<全国紙の社説>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11459557.html
(朝日新聞社説 2014年11月17日)沖縄県知事選 辺野古移設は白紙に戻せ
 沖縄県知事選で、新顔の翁長雄志(おながたけし)氏(64)が現職の仲井真弘多氏(75)らを大差で破り当選した。「これ以上の基地負担には耐えられない」という県民の声が翁長氏を押し上げた。最大の争点は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設の是非だった。1月の名護市長選、9月の同市議選に続き、知事選も移設反対派が制したことで、地元の民意は定まったと言える。「沖縄に寄り添う」と繰り返してきた安倍政権である。辺野古への移設計画は白紙に戻すしかない。
■「保革」超えた動き
 政権側は辺野古移設を「過去の問題」として、知事選での争点化を避けようとした。だが、翁長氏は「あらゆる手法を駆使して辺野古に新基地をつくらせない」と主張。仲井真氏は「一日も早い普天間飛行場の危険除去には、辺野古移設が具体的で現実的な方策」と応じた。民意は翁長氏についた。県民にとって、今回の知事選には特別な意味があった。普天間飛行場の海兵隊は、山梨県や岐阜県の基地から、米軍政下の沖縄に移ってきた。米軍は「銃剣とブルドーザー」と呼ばれる強権的手段で住民の土地を奪い、基地を建設した。そして、国土の0・6%の沖縄に、全国の米軍専用施設の74%が集中する不公平。「基地は県民が認めてできたわけではない。今回、辺野古移設を受け入れれば、初めて自ら基地建設を認めることになる。それでいいのか」。県内にはそんな問題意識が渦巻く。それは「本土」への抜きがたい不信であるとともに、「自己決定権」の問題でもある。自分たちが暮らす土地や海、空をどう使うのか、決める権利は本来、我々にこそある、と。前那覇市長で保守系の翁長氏は「イデオロギーでなく沖縄のアイデンティティーを大切に」と訴え、保守の一部と革新との大同団結を実現した。とかく「保革」という対立構図でとらえられがちだった沖縄の政治に起きた新しい動きだ。
■公約違反に「ノー」
 96年に日米両政府が普天間返還に合意し、移設先として辺野古が浮上して18年。この間ずっと沖縄では、辺野古移設が政治対立の焦点となってきた。転機は2009年、「最低でも県外」と訴えた民主党の鳩山政権の登場だった。迷走の末、辺野古移設に逆戻りしたものの、「県外移設」に傾いた県民感情は収まらない。辺野古容認派の仲井真氏も、前回10年の知事選では「県外」を求め、再選された。以来、自民、公明を含めた沖縄の主要政党が辺野古移設反対で一致。「オール沖縄」と呼ばれる状況が生まれた。ところが、自民が政権に復帰すると、激しい巻き返しが始まる。党本部の圧力で、党国会議員団、党県連が、辺野古容認に再転換。仲井真氏も昨年末、埋め立てを承認した。今回有権者が突きつけたのは、本土の政権に屈して公約を覆した地元政治家に対する「ノー」だったとも言える。政府がこの夏、ものものしい警備のなか、辺野古のボーリング調査を強行したことも、県民の怒りを増幅させた。政府が打ち出す基地負担軽減策も、県民には「選挙対策か」と空々しく映っただろう。
■唯一の選択肢か
 なぜ、日本政府は沖縄に基地負担を強い続けるのか。最近は、中国の海洋進出や尖閣諸島の問題があるからだと言われる。だがそれは、米海兵隊の恒久的な基地を沖縄につくる理由になるのだろうか。尖閣周辺の対応は海上保安庁が基本だ。万が一の場合でも、少なくとも海兵隊が沖縄の基地に張り付いている必要はない。日米両政府は「辺野古が唯一の選択肢」と強調するが、米国の専門家の間では代替策も模索されている。フィリピンや豪州に海兵隊を巡回配備し、ハワイやグアム、日本本土も含め地域全体で抑止力を保つ考え方だ。米ハーバード大のジョセフ・ナイ教授は「中国の弾道ミサイルの発達で沖縄の米軍基地は脆弱になった」と指摘する。沖縄だけに基地を集める発想はかえって危ういという意見だ。「辺野古移設か、普天間の固定化か」。第三の道となる代替策を無視して二者択一を迫る政府の手法は、適切ではない。しかし、政権内に辺野古移設を見直す気配はない。新知事となる翁長氏に、沖縄への一括交付金の削減で対抗するという声すら聞こえてくる。明白になった沖縄の民意をないがしろにすれば、本土との亀裂はさらに深まる。地元の理解を失って、安定した安全保障政策が成り立つはずもない。知事選を経て、普天間問題は新たな段階に入った。二者択一の思考停止から抜け出す好機だろう。政府は米国との協議を急ぎ、代替策を探るべきだ。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141117&ng=DGKKZO79790180X11C14A1PE8000 (日経新聞社説 2014.11.17) いまこそ政府と沖縄は話し合うときだ
 沖縄県の米軍普天間基地の県内移設を容認した仲井真弘多知事が知事選で敗れた。移設作業が円滑に進まなくなるおそれがある。新知事との話し合いの糸口を探りつつ、日米同盟への影響をいかに小さくするか。安倍晋三首相はこの難題に取り組まねばならない。今回の知事選では、沖縄が返還された1972年から続いてきた基地容認の保守と基地反対の革新がぶつかる構図が初めて崩れた。初当選した翁長雄志前那覇市長は自民党の沖縄県連幹事長も務めた保守派である。しかし、自民党が推した仲井真氏とたもとを分かち、県内移設反対を掲げて共産党や社民党とも共闘して勝利した。背景にあるのは県民意識の変化だ。地元紙の世論調査などによると、県内移設への反対は自民党支持層でも半数を超えており、それが保守分裂を招いた。中国の海洋進出で沖縄の地政学的な重要度は高まっている。政府は沖縄などの離島防衛に力を入れると同時に、日米同盟を強化すべく防衛協力の指針(ガイドライン)の改定にも取り組んでいる。ところが沖縄ではそうした緊張の高まりが先の大戦での悲惨な経験の記憶を呼び起こし、平和運動が盛り上がるという本土とは逆の現象が起きている。ただ、反基地に賛同する県民のすべてが日米安保体制を否定しているのではない。米軍機の騒音や米兵による事件・事故など身近な不満がなかなか解消されないことで「沖縄は軽んじられている」と感情的に反発している面がある。ボタンの掛け違いを直すには、安倍政権がこれらの課題に真正面から向き合っているかを目に見える形で示さねばならない。翁長氏も国際情勢を冷静に判断し、政府との話し合いのテーブルに着いてもらいたい。名護市での基地建設に必要な埋め立て工事は仲井真氏が承認済みであり、新知事に覆す権限はない。沖縄県は長年、日米地位協定の改定を求めてきたが、米政府は消極姿勢を貫いてきた。改定は日本政府と沖縄県が足並みをそろえてこそ実現できる。その結果、県民の日常生活に変化があらわれれば県民感情も徐々に軟化しよう。普天間は市街地に囲まれた基地である。ひとたび事故が起きれば甚大な被害が生じる。政府と沖縄県がいがみ合っている場合ではない。その原点を確認するところから話し合いを始めるべきだ。

| 辺野古・普天間基地問題::2012.2~2015.3 | 12:43 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.2.12 普天間基地の辺野古移設について
   

(1)名護市長選の結果
 *1-1、*1-2、*1-3に書き尽くされているとおり、沖縄県名護市の市長選で、政府の辺野古案が厳しく拒絶され、名護市民の意思が明確になった。そのため、日本政府は、この事実を重く受け止め、米軍普天間飛行場の同市辺野古への移設を強行してはならないと、私は考える。

(2)沖縄の米軍基地は、本当に日本の防衛目的に資するか否か、まず明確にすべきだ
 *2に書かれているとおり、沖縄復帰前の1960年代初め、沖縄を統治していた米軍は、生物兵器の研究開発のため、「いもち病菌」を散布し、実験データを収集していたことが、米国の情報公開制度で明らかになったそうである。

 また、猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤が沖縄に保管されていたことを示す公文書の存在も明らかになり、沖縄は、化学兵器を大量に貯蔵し、生物兵器の研究開発の実験場でもある軍事植民地であり、米軍は日米地位協定に基づき返還時の原状回復義務を免除されているため、原状回復義務がなく、有害物質等の保管・管理・処理に関する届け出義務もないそうだ。

 さらに、沖縄の米軍は、他国に駐留しており、主権者である国民の監視も受けないため、軍隊が「モラル・ハザード(倫理の欠如)」を起こしていたとのことであり、土壌汚染に関する総合環境調査と地位協定の見直しを、早急に進めるべきである。

(3)日本政府は、何故、ここまで民意を無視するのか?
 しかし、*3-1に書かれているとおり、19日の名護市長選で辺野古移設阻止を掲げた稲嶺進氏の再選から僅か2日後に、沖縄防衛局が、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向けた代替施設設計などの受注業者を募る入札を公告し、民意を全く無視する決定をした。これでは、日本は、アメリカと価値観を同じくする民主国家とは言えない。

 また、*3-2に書かれているとおり、米識者も、日米両政府は「仲井真知事による埋め立て承認は、日米関係の突破口になる」と歓迎しているが、知事の承認により普天間論争が解決され、日米の安全保障協力の強化が促進できるとの期待は「希望的観測にすぎない」と断言したそうだが、そのとおりである。

(4)これでは「沖縄差別」だ
 そのため、*4のように、沖縄の地方紙が、ケネディ大使に、上空からではなく、自らの目、耳、足で確かめて名護市長と会談して欲しいと英語と日本語で掲載している。これは、名護市長選の結果を考慮することなく、「沖縄差別」を続け、辺野古の埋め立て工事に向けた手続きを進めている日本政府への不信任であることを、日本政府は素直に受け止めるべきだ。

*1-1:http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/516247.html
(北海道新聞社説 2014年1月20日) 名護市長選 辺野古案を厳しく拒絶
 市民は国からの圧力をきっぱりとはね返した。沖縄県の米軍普天間飛行場を県内名護市辺野古へ移設する是非が最大の争点となった名護市長選で、反対派の稲嶺進市長が勝利した。過重な基地負担の押しつけを拒否する民意が稲嶺氏を押し上げた。仲井真弘多沖縄県知事は国による辺野古埋め立て工事を承認したが、地元の不支持が明確になった。日米両政府は結果を重く受け止めなければならない。計画を白紙撤回し、県外、国外への移設を真剣に模索すべきだ。選挙戦で稲嶺氏は「辺野古の海にも陸にも基地をつくらせない」と反対姿勢を貫いた。住民にさらなる基地負担を強いる上、環境への影響も心配される現行計画を受け入れられないという主張は理解できる。初当選を目指した推進派の末松文信氏は安倍晋三政権とのパイプを強調した。しかし、振興策と引き換えに基地を受け入れるかのような姿勢に支持が集まらなかった。「国や県の姿勢には納得いかない」。それが名護市民の思いだろう。安倍政権は、見通しが不明確な基地返還の前倒しなどを約束して仲井真知事に埋め立て承認を迫った。沖縄選出の自民党国会議員には県外移設の公約を撤回させた。あまりに強引な進め方だった。知事の埋め立て承認も、県外移設の公約に違反すると言われても仕方ないものだった。県議会は、強制力はないものの、知事辞任を求める決議を可決した。全市町村議会がすでに辺野古移設反対を決議している。県内移設反対が沖縄県民の大多数の意思だ。名護市民の選択はそれを代弁していると言える。稲嶺氏の勝利によって、辺野古への移設工事はなかなか進まなくなることも予想される。工事に必要な道路や港湾などの使用には市長の許可が必要なものがあるためだ。気になるのは政権幹部が名護市長選の結果にかかわらず、辺野古移設を進める構えを見せていることだ。知事の埋め立て承認が根拠だ。だが名護市長選の結果は単なる首長の決定ではなく、有権者の厳粛な意思表明だ。無視すれば民主主義の否定につながる。国はこれまでも基地負担を沖縄に一方的に押しつけてきた。辺野古移設が実現しなければ、普天間基地が固定化するかのような恫喝も続けてきた。こうした手法は地元の反感を増幅させるだけだ。工事の強行は到底認められない。このまま作業を進めても混乱は必至だ。日米間で協議して県外、国外への移設を目指す方が現実的であるという事実を直視すべきだ。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014012002000150.html (東京新聞社説  2014年1月20日) 名護市長選 「辺野古」強行許されぬ
 沖縄県の名護市長選で、市民の意思が明確になった。政府はこの事実を重く受け止め、米軍普天間飛行場の同市辺野古への移設を強行してはならない。それでも日本政府は、米海兵隊普天間飛行場(宜野湾市)の辺野古沿岸部への「県内」移設を強行しようというのだろうか。辺野古移設の是非が問われた名護市長選である。反対する現職、稲嶺進氏(68)が、賛成する自民党推薦の新人、末松文信氏(65)を破り、再選された。安倍内閣が強力に推進し、仲井真弘多沖縄県知事が追認した辺野古移設に反対する、名護市民の明確な意思表示である。
◆民主国家と言えるか
 菅義偉官房長官は、市長選の結果は辺野古移設には「全く影響はない。国民の生命、財産を守る観点からも予定通り進めさせてほしい」と述べた。稲嶺氏勝利を見越して予防線を張ったのだろう。果たしてそうだろうか。外交、安全保障は国の役割だ。日米安全保障条約上、基地提供の義務を負うのは日本政府である。しかし、米軍基地は地元の住民に大きな負担を強いる。騒音や事故、米兵らの犯罪、そして戦争への加担という精神的重圧だ。基地の安定的提供には周辺住民の理解が欠かせない。反対意見が多数を占めるにもかかわらず、押し付けるのは民主主義国家と言えず、どこかの専制国家と同じだ。ましてや、沖縄には在日米軍基地の約74%が集中している。危険な普天間飛行場の返還は急務だが、名護市民がこれ以上の基地負担を拒み、稲嶺氏も市長権限で移設阻止の構えを見せる以上、「国外・県外」移設に切り替えた方が、返還への早道ではないか。米軍基地負担の県内たらい回しにすぎない辺野古移設を、もはや強行してはならない。
◆知事判断への不信任
 昨年十二月二十七日、仲井真知事は、辺野古沿岸部に代替施設を建設するために政府が許可申請した海面の埋め立てを承認した。市長選で稲嶺氏の当選が決まった後では許可しにくくなるため、駆け込みで手続きを進めたのだろう。仲井真氏は再選された二〇一〇年の県知事選で普天間飛行場の県外移設を公約し、その後も県民の反対が強い県内移設は「事実上不可能」と繰り返し強調していた。県外移設を求める考えに変わりないと、仲井真氏は強弁しているが、県内移設のための埋め立てを承認することはやはり、公約違反ではないのか。公約と違う政策を進めるのなら、辞職して県民に信を問い直すのが筋だ。今回の市長選は知事の埋め立て承認後、初めての関係自治体の首長選でもある。辺野古移設に反対する候補が勝利した選挙結果は知事の判断に対する不信任だと、重く受け止めなければならない。公約違反は知事だけではない。一二年の衆院選で、自民党本部は普天間問題を公約に明記せず、沖縄の同党公認候補はそれぞれ県外移設を訴えた。一三年参院選では党本部は県内移設を掲げたが、党沖縄県連は県外移設を「地域公約」として訴えた経緯がある。国政選挙で自民党を支持した沖縄の有権者にとって県外移設こそ自民党との契約だ。にもかかわらず、党沖縄県連は県内移設容認に転換し、仲井真知事の埋め立て許可を後押しした。このまま県内移設を推進する立場に立つのなら、公約違反との批判は免れまい。沖縄選出の自民党国会議員は全員、潔く辞職し、四月の統一補欠選挙で有権者の信を問い直すべきである。仲井真知事や自民党沖縄県連に公約違反を迫ったのは、安倍晋三首相率いる内閣であり党本部だ。年間三千億円台の沖縄振興予算という「アメ」と、危険な普天間飛行場の固定化という「ムチ」をちらつかせて辺野古移設を迫る手法は、名護市民に拒絶された。無視し得ない民意の高まりだ。琉球新報など地元メディアの県民世論調査で、知事の埋め立て承認を支持する回答は34・2%で、不支持は61・4%。しかし、共同通信の全国世論調査では、承認を評価する回答は56・4%、評価しないは30・7%と、全く逆だ。
◆人ごとで済まされぬ
 この世論調査からうかがえるのは、米軍基地負担は沖縄県民が受け入れて当然という、本土の側にある、どこか人ごとの空気だ。日米安保体制が日本と周辺地域の平和と安全に不可欠と言うのなら、その基地負担は沖縄に押し付けず、国民が可能な限り等しく負うべきである。本土の側にその覚悟がないのなら、日米安保体制の重要性を口にする資格などない。本土による沖縄への基地押し付けや差別的政策は、もはや許されない。名護市長選の結果は、われわれにそう語りかけてくる。

*1-3:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=60995
(沖縄タイムス社説 2014年1月20日) [稲嶺氏が再選]敗れたのは国と知事だ
 米軍普天間飛行場の辺野古への移設に対し名護市民は「ノー」の民意を、圧倒的多数意思として示した。国の露骨な圧力をはね返して勝ち取った歴史的な大勝である。同時に仲井真弘多知事が、辺野古埋め立てを承認したことに対し、市民が明確に拒否したことも意味する。名護市長選で辺野古移設に反対する現職の稲嶺進氏(68)が、移設を積極推進する新人の末松文信氏(65)を破り、再選を果たした。普天間の辺野古移設の是非が文字通り最大の争点となった市長選は今回が初めてだ。過去4度の市長選では、移設容認派が推す候補は選挙への影響を考慮して、問題を争点化しなかった。移設問題を明確に市民に問うたのは、1997年の市民投票以来である。市民投票では、条件付きを合わせた反対票が52・8%と過半を占めた。住民投票的な性格を帯びた今回の選挙で市民は再び移設反対の意思を明確にしたのだ。日米両政府は辺野古移設計画を撤回し、見直しに着手すべきだ。今回の市長選で末松氏は、基地受け入れによる再編交付金を財源にした地域振興策を前面に掲げた。これに対し、稲嶺氏は、再編交付金に頼らない4年間の実績を強調し、「再編交付金は一時的なもの。基地のリスクは100年以上も続く」と反論した。「すべては子どもたちの未来のために」をスローガンに、基地に頼らない街づくりを訴えた。本紙などの世論調査では、最も重視する政策を「普天間移設問題」と答えた市民が56%に達し「地域振興策」の23%を大きく上回っていた。市民の選択は、沖縄だけに負担を押し付け、その矛盾を振興策で覆い隠す「補償型」の基地行政がもはや通用しないことを証明した。名護市民がそのことを国内外に発信したことは、沖縄の基地問題の歴史的な転換点となろう。日米政府が進めてきた普天間の県内移設策が、大きな変更を迫られることは間違いない。
 市長選は、国による辺野古埋め立て申請を承認した仲井真知事の政治姿勢に対する信任投票の側面もあった。埋め立て承認に至る経過はいまだに不透明なままである。知事は、当事者である名護市民への説明もなく、選挙応援では、振興策のみに言及した。それにしても、安倍政権・自民党の策を弄するやり方は目に余った。仲井真知事から年内の埋め立て承認を得るため、県関係国会議員、県連に圧力をかけ県外移設の公約を転換させた。知事の翻意を促すため沖縄振興予算を大盤振る舞いし、実効性の担保が乏しい基地負担軽減策を「口約束」した。
 名護市に対する「アメとムチ」もあからさまだった。市の喜瀬、許田、幸喜の3区にまたがるキャンプ・ハンセンの一部の返還で、国は幸喜の分を先に返すことを決めた。返還予定地は利用価値が低く、幸喜区には軍用地料が入らなくなる。辺野古移設への協力姿勢を示さなかった同区へのいやがらせとしか受け取れない。選挙期間中も、菅義偉官房長官が、選挙結果に左右されることなく辺野古移設を「粛々と進めていきたい」と発言。自民党の石破茂幹事長は「基地の場所は政府が決めるものだ」と述べた。その石破氏は、選挙終盤の16日に名護入りし、同市の地域振興に500億円規模の基金を立ち上げる意向を表明した。基金は新たな財源措置ではなく、既存予算内の調整を念頭にしたものとみられるが、あからさまな選挙への介入であり、地方自治の精神にもとるものだ。県外移設を求める「オール沖縄」の枠組みは崩れたが、その精神は息づいている。自民県連OBが稲嶺氏を支援し、那覇市議会が知事の埋め立て申請に抗議する意見書を可決したことは、象徴的だ。今回は公明党が自主投票となったことも稲嶺氏の当選を後押しした。再選を果たした稲嶺氏は、公約に掲げた政策実現に向けて選挙のしこりを解消し、市民一体となった態勢づくりに取り組まなければならない。

*2:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=60541
(沖縄タイムス社説  2014年1月13日) [生物兵器実験]底知れぬ軍事優先の闇
 稲に大きな被害をもたらす「いもち病菌」を大量に散布し、人為的に「いもち病」を発生させる-復帰前の1960年代初め、沖縄を統治していた米軍が、生物兵器の研究開発のため、「いもち病菌」を散布し、実験データを収集していたことが米軍の報告書で明らかになった。60年代初め、米軍はマクナマラ国防長官の指示で、「プロジェクト112」という名の化学兵器開発計画を進めていた。この計画に基づいて63年、1万3000トンの毒ガスがホワイトビーチに陸揚げされ、知花弾薬庫のレッドハットエリアと呼ばれる区域に貯蔵された。米軍が排他的な統治権を持っていた軍政下の沖縄に大量の核兵器が貯蔵されていたことは「公知の事実」に属するが、その上、沖縄は、アジア最大の化学兵器備蓄基地でもあった。今回、明らかになった生物兵器開発のための屋外実験も、「プロジェクト112」の一環だと思われる。報告書は米国の情報公開制度を利用し、共同通信が入手した。それによると、1961年から62年に、少なくとも12回の実験を実施。「ナゴ」(名護)、「シュリ」(首里)、「イシカワ」(石川)などの具体的な地名も記載されている。あらためて痛感するのは、核・化学兵器を大量に貯蔵し、生物兵器の研究開発の実験場でもあった沖縄の、軍事植民地としての異常さである。県内各地で相次いでいる返還軍用地の土壌汚染問題は、米軍政下の異常な現実が決して過ぎ去った過去の話ではないことを示している。
  ■    ■
 沖縄市の市営サッカー場の地中からダイオキシン類が付着した大量のドラム缶が見つかったのは昨年のことだ。それ以前にも、恩納通信所の跡地から水銀、PCB、鉛、ヒ素などの有害物質が検出され、北谷町・桑江中学校近くの基地返還跡地から「タール状物質」の入ったドラム缶が215本も発見された。嘉手納弾薬庫地区の返還跡地からはカドミウムが検出され、キャンプ桑江北側の返還跡地からもヒ素、鉛、六価クロムなどの有害物質が見つかった。猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤が沖縄に保管されていたことを示す公文書の存在も明らかになっている。米軍は沖縄に枯れ葉剤が保管されていたことを公式には認めていない。だが、退役米兵や県民からも枯れ葉剤に関する証言が寄せられており、米軍の説明は説得力を欠いている。
  ■    ■
 米軍は日米地位協定に基づいて返還の際の原状回復義務を免除されている。それがネックになっているのは明らかである。原状回復の義務がなく、有害物質等の保管・管理・処理に関する届け出義務もなく、他国に駐留しているため主権者である国民の監視も受けない軍隊は確実に「モラル・ハザード」(倫理の欠如)を起こす。土壌汚染に絡む信頼のおける総合環境調査と地位協定の見直しによる新たな仕組みづくりを早急に進めるべきだ。

*3-1:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-218188-storytopic-11.html
(琉球新報社説 2014年1月22日) 辺野古入札公告 民主国家の自殺行為だ
 世界中を捜しても民意をこれほど露骨に踏みにじる「民主主義国家」は存在しないのではないか。沖縄防衛局が21日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向けた代替施設設計などの受注業者を募る入札を公告した。19日の名護市長選で辺野古移設阻止を掲げた稲嶺進氏の再選から、わずか2日後だ。政府に求められるのは移設作業の加速ではなく、選挙結果を尊重し、県内移設を撤回することだ。稲嶺市長は「選挙で示された名護市民の民意を無視して手続きを進めるのは民主主義社会としてあり得ない。あまりにひどい」と政府を批判した。まさに正論だ。しかし、小野寺五典防衛相は「埋め立て承認を得られているので、関係法令にしたがって進めていく」と述べた。民主的な選挙結果を歯牙にもかけない態度は権力の暴走以外の何物でもない。ただ、移設作業には名護市長の許可や協議が必要な手続きもある。作業ヤード設置のための漁港使用、キャンプ・シュワブ内への水道敷設、資材搬入のための道路使用、飛行場施設への燃料タンク設置、建設で影響を受けた場合の河川の水路切り替えなどだ。稲嶺市長は「建設阻止へ権限を行使する」と述べており、市長権限の手続きについては、国から申請されても許可しない方針を示している。それでも国が強引に作業を進めるというのなら、民主国家としての自殺行為だ。名護市は、過去に基地建設に関する国の調査申請を不許可にしたことがある。こうしたことから、石破茂自民党幹事長は「市長の権限はきちんと法に従った形であるべきだ」と述べ、市長方針をけん制する。自治体の判断への介入を予告するような圧力は言語道断だ。今回の入札公告について、地元では条件付きで移設を容認する住民からも疑問の声が挙がる。辺野古有志会代替施設安全協議会の許田正武代表理事は「移設を百パーセント、ノーと言っている稲嶺進市長への当てつけだ」と批判する。政府は入札公告を取り消すべきだ。直ちに米政府に対し、辺野古移設の断念と普天間固定化の回避策について協議を申し入れるのが筋だ。沖縄は植民地扱いを拒否する。政府は沖縄の非暴力の異議申し立てを力で屈服させるつもりなら民主主義を語る資格を失うと自覚すべきだ。

*3-2:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=60503
(沖縄タイムス 2014年1月12日) 「辺野古移設 緊張続く」米識者が警鐘
 米大手シンクタンク「ランド研究所」の研究員ステイシー・ペティージョン氏はこのほど、米外交専門誌ナショナル・インタレストに寄稿し、仲井真弘多知事の名護市辺野古の埋め立て申請の承認を歓迎する日米両政府の甘さを指摘し、「米軍普天間飛行場の移設問題は今後も日米同盟の緊張の要因であり続ける」と警鐘を鳴らした。同氏は、普天間移設をめぐるこれまでの経緯に触れたうえで、日米両政府は「仲井真知事による埋め立て承認は、(停滞してきた)日米関係の突破口になると歓迎している」と指摘。知事の承認により普天間論争が解決され、日米の安全保障協力の強化が促進できるとの期待は「希望的観測にすぎない」と断言。返還合意から17年以上が経過しているとし、「埋め立て許可は、普天間移設手続きの始まりにすぎない」と評した。また、「すべての県民が移設反対ではなく、基地建設が経済的利益をもたらすと信じ、計画を支持する層もある」とし、こうした移設計画における支持派と反対派の対立が「普天間闘争が今後も日米同盟の緊張の要因であり続けるだろう」と分析。名護市長選挙で現職の稲嶺進氏が勝利すれば、「辺野古再考への圧力増加に燃料を注ぐことになる」との見方を示した。同氏は今後の見通しについて「米国防総省は(普天間より)論争の少ない岩国基地の建設に10年以上を要した」と指摘した上で、「普天間を閉鎖し、海兵隊の機能を辺野古に再配置するには、すべてがスムーズに進行した場合でも少なくとも10~15年かかる」と分析。その上で、普天間移設の進行が「ふたたび行き詰まった場合、ワシントンと東京は計画を振り出しに戻し、他の選択肢を検討する必要が生じるかもしれない」と警鐘を鳴らした。

*4:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=62412
(沖縄タイムス 2014年2月11日) EDITORIAL [Dear Madame Ambassador Kennedy] Please Meet with Mayor Inamine
Welcome to Okinawa, Madame Ambassador Caroline Kennedy. It is your first visit to Okinawa as the US Ambassador to Japan. Many Okinawans are paying close attention to your visit and the statements you will make.
They are listening closely because they want you to see the real situation here, the real Okinawa that cannot be described in State Department staff briefings or reports from Japanese government officials.
They want you to see USMC Futenma Air Station, located in the heart of the densely populated city of Ginowan. They want you to experience- not from the sky, but with your own feet, your own eyes, your own ears - the ocean at Henoko, in the city of Nago, the proposed location of Futenma’s replacement and designated by our prefectural environmental survey as a Rank 1 site : Urgent Need for Environmental Protection.
In November, 1963, on the day your father, US President John F. Kennedy was assassinated in Dallas, Texas, this island was also enveloped in that sadness.
The red light district of Koza dimmed its neon lights as restaurants and bars closed of their own volition. The following day, at schools and workplaces, many residents grieved in silence the loss of the President.
After being appointed as ambassador to Japan, surely you have learned much about the concerns surrounding the US ? Japan relationship. As you know, the issue of USMC Futenma Air Station has been a huge strain on that relationship in the 18 years since your government and ours pledged to return it to the Okinawan people in 1996.
Why hasn’t the issue been resolved? Please visit Henoko. Talk to the people in the tent village on the seashore who have for years been sitting in protesting the proposed relocation. You will hear the raw voice of Okinawa, far different from the explanations of our governments’ foreign ministers and defense secretaries. You will quickly come to the heart of the problem.
The mayoral election was a clear expression of the will of Nago city. Residents reelected incumbent Susumu Inamine, who said that the relocation of Futenma to Henoko was in direct contradiction with the regional needs of Nago and its residents. In a prefecture wide opinion survey conducted by the Okinawa Times and another news organization at the end of last year, close to 70% of Okinawans expressed opposition to the proposed Henoko relocation. The majority in Okinawa are still opposed to any relocation of Futenma within the prefecture.
During your visit here, you should meet with Mayor Inamine and listen to the reasons why.
You have expressed “deep concern” about the “inhumaneness” of dolphin hunting on Twitter, saying that “the US government opposes dry hunt fisheries”.
The ocean around Henoko is the habitat of the Dugong, an ocean mammal like the dolphin. The Dugong is a Japanese natural monument and the Ministry of Environment has designated it as an endangered species at high risk of extinction.
If the ocean around Henoko is buried, the Dugong will lose their home and their extinction cannot be avoided. To forever lose the Dugong from the planet for the sake of the construction of a military base would be a great detriment to the human race.
The Japanese government has ignored the result of the Nago mayoral election and continued to move forward on the process of burying the ocean at Henoko. To allow the construction of this base to continue in direct opposition to the will of local residents is completely unacceptable in a democratic society.
To attempt to build a new military airbase in Okinawa after the tragedy of the Battle of Okinawa, the 27 long and difficult years of American occupation that followed it, and the disproportionate burden of military bases shouldered by Okinawa since, is nothing but blatant discrimination against the Okinawan people. Please relay these feelings to President Obama.

(沖縄タイムス社説 2014年2月11日) [拝啓 ケネディ大使]現地訪ね市長と会談を
 キャロライン・ケネディさん、ようこそ沖縄へ。駐日米大使として、きょう初めて来県されるんですね。沖縄の多くの人があなたの発言に注目しています。
 大使館スタッフのブリーフィングや日本政府関係者の情報からはとらえきれない、この島のありのままの姿を見て考えてもらいたいからです。
 宜野湾市の市街地の真ん中にある米軍普天間飛行場。移設先に予定されている名護市辺野古の海は、県の環境保全指針で「自然環境の厳正な保護を図る区域」であるランク1に評価されています。
 上空からではなく、自らの足で、目で、耳で確かめてください。
 1963年11月、あなたの父ジョン・F・ケネディ大統領がテキサス州ダラスで悲劇に見舞われた日、この島も悲しみに包まれました。
 コザの繁華街はネオンを消し、飲食店は営業を自粛しました。哀悼の日には、学校や職場などで多くの住民が黙とうし、哀悼の意を表しました。
 駐日米大使としての赴任に当たって日米間のさまざまな懸案について学んだことと思います。普天間問題は、ご存じのように96年の返還合意から18年にわたって、迷走を続けています。
 なぜでしょうか。辺野古を訪れ、移設反対を訴えテント村で座り込みを続けている人たちとじかに話してみることです。日米の外務・防衛官僚の説明とは違った沖縄の生の声が聞けるはずです。それによって、この問題の深層に触れることができるでしょう。
   ■    ■
 先の名護市長選で、名護市の民意は示されました。普天間の辺野古移設は地域利益に反するという稲嶺進市長の主張に多くの市民が賛同したのです。
 沖縄タイムス社などが昨年末に実施した県民世論調査では、7割近くが辺野古移設に反対でした。沖縄の多数意思は今も、普天間の県内移設に反対しています。
 今回の来県で、名護市を訪れ、稲嶺市長と会い、その考えに耳を傾けるべきです。
 あなたは短文投稿サイトのツイッターで「米国政府はイルカの追い込み漁に反対します」と表明しました。
 辺野古の周辺海域は、イルカと同じ海洋哺乳類ジュゴンの生息域です。ジュゴンは国の天然記念物で環境省は「絶滅の危険性が極めて高い種」に指定しています。
 沿岸域が埋め立てられれば、影響は避けられません。基地建設によってジュゴンを失うことは人類にとって大きな損失です。
   ■    ■
 日本政府は、名護市長選の結果を考慮することなく、辺野古の埋め立て工事に向けた手続きを進めています。民主主義を大切にする社会で、地元合意なしに一方的に軍事基地を建設することは許されません。
 沖縄戦と27年間の米軍統治、その後も過重な基地負担を背負わされている沖縄に、新たな米軍飛行場を建設するのは「沖縄差別」というしかありません。多くの県民の思いをぜひオバマ大統領に伝えてほしいのです。

| 辺野古・普天間基地問題::2012.2~2015.3 | 11:28 AM | comments (x) | trackback (x) |
2014.1.12 普天間基地の辺野古移設問題について (2014.1.18追加あり)
   
             首里城                            沖縄の都市部

(1)仲井真知事の辺野古埋め立て承認から沖縄県議会の辞任要求決議まで
 沖縄県知事一人に大きな圧力がかかったことに同情するとはいえ、仲井真知事が辺野古埋め立て承認の表明をしたのは、沖縄県民の民意を無視した公約違反だと、私も思う。そのため、*1-1、*1-2、*1-3、*1-4のような展開で、沖縄県議会が知事の辞任要求決議を可決するという顛末になったのは自然であり、仲井真知事は辞任するのがBestだろう。

 この議論の間、沖縄の新聞では*2のような論戦を展開していたにもかかわらず、ヤマトの全TVは、膨大な時間を使って、警察のポンミスで(冤罪かも知れない)容疑者が逃げ出し、警察が4000人体制で47時間もそれを追いかけていたという報道を行っていた一方、沖縄基地や辺野古埋め立ての本質については全く報道しなかった。これは、視聴者から沖縄問題を隠すためではないかと思われるくらいで、ヤマトんちゅを“馬鹿”にするのがヤマトのTVの役割のようだ。

(2)尖閣諸島の防備と在沖アメリカ海兵隊は、本当に関係があるのか??
 このブログに何度も書いているとおり、尖閣諸島が中国に領空・領海で侵犯されているのは問題だが、今でも米軍は沖縄に駐留しているのだから、沖縄に米軍が駐留すると領土保全のための抑止力になると言うのは疑わしくなった。

 そのため、*3のように調べたところ、米海兵隊は、朝鮮戦争、ベトナム戦争、グレナダ侵攻、湾岸戦争、イラク戦争など、米国が行う大規模軍事行動で常に最前線に投入されて全世界に展開されるもので、有事の際には世界中どこにでも展開できる能力を保有しているものだということがわかったが、これを、「日本の領土保全のための抑止力を目的とする」と言えるかどうかは、ヤマト及び沖縄双方のメディアの議論を聞きたい。

(3)そこで提案
 仮に、沖縄の米海兵隊が日本の領土保全のための抑止力になっているとしても、沖縄の負担は大きすぎるため、米軍普天間飛行場の移設先は名護市辺野古ではなく九州がいいのではないかと、私は思う。

 また、*4のように、世界の識者と文化人により沖縄の海兵隊基地建設への非難声明が出ており、その中には、オリバー・ストーン映画監督や歴史学、人類学の教授なども含まれているので、彼らに、琉球の歴史と文化、第二次世界大戦での立場、そして美しい島やサンゴ礁の海を含む歴史をこめた沖縄の映画を作ってもらったらどうだろうか?ヤマトでは、科学・思想などのどの分野でも、国内ではなかなか認められないことも、逆輸入するとすんなり受け入れられることが多いからだ。

   
                      沖縄の田園地帯
*1-1:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=59661
(沖縄タイムス 2013年12月27日) 仲井真知事、辺野古埋め立て承認表明
 仲井真弘多知事は27日午前、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた国の公有水面埋め立て申請を承認し、午後3時すぎから那覇市内の知事公舎で記者会見し、正式表明した。仲井真知事は「(国の環境保全策は)現段階で考えられる保全措置が取られており、基準に適合していると判断し承認することにした」と説明した。午前9時すぎ、審査担当の県土木建築部が申請を承認する書類に公印を押した。土建部は同9時41分に沖縄防衛局あての書類を発送し、同10時50分に到着し防衛局が受領した。知事は自らの公約である「県外移設」の主張は堅持すると説明。市街地にある普天間飛行場の危険性を早急に除去し、固定化を回避しなければならないと考え最終決断した。ただ、県民世論の強い反発を招くのは必至。来年1月の名護市長選で辺野古反対を明言する現職が再選されれば、「直近の民意」を理由に反対運動が高まるとみられ、移設実現には曲折も予想される。

*1-2:http://mainichi.jp/select/news/20131228k0000m010102000c.html
(毎日新聞 2013年12月27日) 辺野古埋め立て:知事の承認に「変節だ」反対渦巻く
◇「沖縄の心を忘れてしまった」
 米軍普天間飛行場=沖縄県宜野湾(ぎのわん)市=の移設に向けた名護市辺野古(へのこ)沿岸部の埋め立てについて、27日にゴーサインを出した仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事。「公約を変えたつもりはないし、変えていないので説明する理由はない」。記者会見でこれまでの「県外移設」公約との矛盾を突かれ、語気を強めて反論した。「銃剣とブルドーザー」で米軍に土地を奪われ、強制的に基地を造られた歴史を持つ沖縄。それだけに公約を事実上転換し、新基地建設を承認した知事に対し県民の反発は高まるばかりだ。県は27日午後になって急きょ会見場所を、移設反対派の市民が詰めかけた県庁から知事公舎に変更。仲井真氏は安倍晋三首相との会談を終えて25日夜に沖縄に戻ってから一度も県庁に登庁せず、知事公舎にこもったまま会見に臨んだ。午後3時13分。28社約80人の記者らが待つ会見場に、仲井真氏は足を引きずるように歩いて現れた。黄色い長袖のかりゆしウエア姿。胸ポケットから取り出した眼鏡をかけ、用意したペーパーを淡々と読み上げ「基準に適合していると判断し、承認いたしました」と述べると、フラッシュが一斉にたかれた。質疑応答に移ると、徐々に感情があらわになった。「県外ということも辺野古が困難という考えも変わっていない」との発言と、埋め立てを認めた判断の整合性を問われ「私への批判ですか? ちゃんと質問してください。どこが不整合だと言うのですか」と手を振り上げ声を荒らげた。「主」のいない県庁では、抗議する市民ら約1000人が1階ロビーで座り込みを続けた。テレビで会見の模様が流れると「ウソをつくな」と反発の声が。同県北谷(ちゃたん)町のアルバイト、宮里歩さん(34)は「知事は『いい正月を迎えられる』と言っていたが、とんでもない。ウチナーンチュ(沖縄の人)の心を忘れてしまったのだろう」と強く批判した。仲井真氏は旧通商産業省出身で沖縄電力会長などを歴任。2006年の知事就任時には条件付きで県内移設を容認していた。だが、09年に「最低でも県外」を掲げた民主党政権誕生を機に公約転換へ動き出す。10年の「県外移設を求める県民大会」にも参加し「沖縄の過剰な基地負担には差別の印象すら持つ」と踏み込んだ。そして2期目を目指す同年の知事選で「県外移設」にスタンスを変えた。

*1-3:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-217320-storytopic-11.html (琉球新報社説 2013年12月31日) 知事承認と世論 「もう、だまされない」 底堅い辺野古ノーの民意
 「もう、だまされない」。沖縄の未来に禍根を残す県知事の背信と政府の対応の欺瞞(ぎまん)性を、県民は冷静かつ毅然(きぜん)と受け止めている。仲井真弘多知事が、米軍普天間飛行場の移設先の名護市辺野古埋め立て申請を承認したことを受けた緊急県民世論調査で、「支持しない」が61・4%に上り、「支持する」は34・2%だった。普天間問題の解決手法を問うと、県外・国外移設、無条件閉鎖・撤去が計73・5%を占め、辺野古移設は15・9%にすぎなかった。県内への新たな基地建設を拒む民意は岩盤のように底堅い。7割を超える住民が反対する辺野古移設の強行は不可能だ。
●安倍政権の狙い不発
 知事再選時に「県外移設」を掲げていた仲井真知事の承認判断を公約違反とみなす回答は72・4%に上った。知事の支持率は過去最低の38・7%に下がり、不支持率は53・9%で、5割を超えた。最大懸案である普天間問題で、沖縄県政の舵(かじ)取り役が有権者との契約である公約をいともたやすく放棄したことに、大多数の県民が失望し、憤っている。辺野古埋め立てにお墨付きを与えつつ、「県外移設」の公約を維持しているという詭弁は破綻し、知事の主張が通用しないことが明白となった。基地問題で沖縄の県益に沿った主張をする知事は保革を超えて高い支持率を獲得する傾向にあるが、今回の支持率急落は、歴史の歯車を逆に回して期待を裏切ったことへの拒絶反応だ。知事は、県民世論の厳しさを自覚すべきだ。残り任期が1年を切った仲井真知事は「公約違反」を否定し続ける限り、さらに求心力を失い、「死に体」に近づくだろう。注目されるのは、自民党県連と所属国会議員、仲井真知事に圧力をかけ、県外移設の公約を撤回させた政府・自民党の対応に関し、「納得できない」が7割を超え、安倍政権への不支持率が54・8%を記録したことだ。国会議員に離党勧告をちらつかせて屈服させた政府・自民党の対応は、「21世紀の琉球処分」とも称される。沖縄の「自己決定権」を踏みにじり、屈従を強いた安倍政権の強権性は見透かされ、県民に諦めを植え付けようとした狙いは完全に外れた。安倍首相が知事との会談で示した基地負担軽減策については、評価しないが約7割に上った。仲井真知事は「普天間飛行場の5年以内の運用停止」などについて「最大限努力する」という首相の発言を確約とみなすが、県民はその実現性を既に見限っている。
●効力失う「アメとムチ」
 1999年、稲嶺恵一知事が移設先に辺野古を選定し、岸本建男名護市長が受け入れた際に繰り出した15年使用期限の条件は日米政府内で一顧だにされなかった。基地負担軽減の核心的な要求がはぐらかされ、消えていった経緯を知る県民は、あらためて政府への不信感を呼び起こされた。安倍首相が、2021年度までの3千億円台の沖縄振興予算を約束し、「空手形」との批判を浴びながら示した基地負担軽減策は、沖縄に対する新たなアメの性格をまとっている。その一方で、安倍政権は辺野古移設を強いるムチを猛然としならせ、仲井真知事はそれに陥落した。だが、主権者である県民は、基地受け入れの代償として沖縄振興予算を手当てする「補償型安保維持施策」、アメとムチの沖縄懐柔策の効力が失われていることを深く認識している。一方、共同通信の全国世論調査では、対照的に知事の埋め立て承認への評価が56%、辺野古推進への支持が49%に上った。沖縄に基地を押し付けて、平然と安全保障の恩恵を受ける国民が多数を占める現実がある。この「人ごとの論理」が息づいていても、地元沖縄の県内移設ノーと政権批判の強固な民意は、辺野古埋め立てを強いる安倍政権に立ちはだかる大きな障壁となるだろう。

*1-4:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-217720-storytopic-11.html (琉球新報社説 2014年1月11日) 知事辞任要求決議 もはや信を失っている 民意に背いた責任は重い
 こじつけとはぐらかし、開き直りが、これほど飛び交った議会答弁がかつてあっただろうか。県議会臨時会で米軍普天間飛行場の辺野古移設のための知事の埋め立て承認をめぐる質疑がなされたが、知事や県幹部の答弁は詭弁と言い逃れに終始していた。支離滅裂と偽装の羅列と言い換えてもいい。今の県庁には「話者の誠実性」が徹底的に欠けている。県議会が仲井真弘多知事の辞任要求決議を可決した。賛成多数とはいえ、選挙で選ばれた県民代表の構成体が辞職を求めた意味は重い。知事は辞任すべきだ。自分の決定の正しさに自信があるなら、堂々と県民に信を問うべきだ。
●開き直り
 知事は2期目の出馬の際の公約に「県外移設を求める」と掲げた。当時の記者会見では「(県内移設受け入れの可能性は)まずなくなった」とも述べている。辺野古移設にほかならない「日米共同声明」の「見直し」も明言した。県外と言えば県内反対であるのは論理的必然だ。だが今臨時会で知事は「辺野古が駄目だと言ったことは一度もない」と繰り返した。この開き直りは「だまされた有権者が悪い」と言うに等しい。知事は公有水面埋立法に照らして「基準に適合しており、不承認とする合理的理由はない」と説明したが、牽強付会(けんきょうふかい)だ。同法4条は「環境保全への十分な配慮」を必要条件としている。昨年11月末、環境影響評価に対する知事意見は「環境保全措置について懸念が払拭(ふっしょく)できない」と注文を付けたが、その後、環境保全措置は追加されていない。それなのになぜ突然、「適合」になったのか。當銘健一郎土建部長は「(今後)保全措置をやれば適合するだろう」と知事に報告したという。こんな珍妙な理屈があるか。法は、措置が十分かどうか吟味するよう求めているのだ。まだ提示されてもいない措置を勝手に推測し、それを根拠に許可するなら、今後いくらでも許可しなければならなくなる。當銘氏は、国が申請する埋め立てに対し、県は拒否できないかのような説明もしたが、そんな判例はないはずだ。他の副知事や部長の答弁も、過去の答弁との矛盾に満ちていた。県の公務員は知事への奉仕者でなく、県民への奉仕者であるべきであろう。知事は昨年末の埋め立て承認会見であえて振興予算に言及し、称賛した。この臨時会でも冒頭、予算に触れて「沖縄が飛躍的に発展する」と述べた。これで振興と基地の「リンク論はない」と強弁しても、納得する国民はいるまい。
●意味のすり替え
 今回の質疑には意味もあった。普天間の「5年内運用停止」に伴う「県外移設」は、新基地が完成すれば「機能はかなり(沖縄に)戻ってくる」と、知事が認めたのだ。「県外」が万が一現実化しても、あくまで一時的にすぎないことがはっきりした。「県外」の意味はいつの間にか「暫定」とすり替えられていたのだ。「県外移設の公約を変えていない」という知事の弁明について、今回の辞任要求決議は「不誠実の極み」と指摘する。琉球新報社などによる世論調査でも、承認を公約違反と見る意見は72%に上った。指摘の正しさを裏付ける。決議はまた「かつてこれほどまで政府に付き従い、民意に背を向けた知事はいない」と批判した。「県民の中に対立を持ち込むもの」だったのも間違いない。知事の承認表明が「沖縄の人はカネで転ぶ」「沖縄の抵抗はカネ目当て」との印象を全国に発信してしまったのは確かだ。その意味でも政治的責任は重い。県内移設は、知事や当該市長が容認していた時代でさえ失敗した。その歴史から教訓をくみ取るべきだ。まして今回は、決議が示す通り、知事はもはや信を失っている。不毛の17年を繰り返したくないなら、日米両政府は辺野古移設を断念すべきだ。

*2:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-217340-storytopic-11.html
(琉球新報社説 2014年1月1日) 年の初めに 平和と環境を次代へ 人間の安全こそ最優先に
 新年を迎えた。年の瀬に「知事、辺野古埋め立て承認」の衝撃的な決断に直面し、心を痛めて正月を迎えた県民も多かろう。だが、県民世論調査で米軍普天間飛行場の閉鎖・撤去、県外・国外移設を望む民意が強いことも明確になった。わたしたちは「命どぅ宝」の心、豊かな自然など先達が残した有形無形の遺産に支えられ「生かされている」との謙虚さを大切にしたい。来年の戦後70年も見据え、あらためて持続可能な平和と環境、経済を次世代に引き継ぐ覚悟、責任をかみしめよう。
●不平等の構造化
 普天間飛行場返還問題をめぐる自民党県連と国会議員、仲井真弘多知事の「県外移設」公約の事実上の撤回で混乱が続くだろう。だが県民は悲観も楽観もすることはない。「危険なオスプレイを飛ばすな」「民意は辺野古移設ノー」との主張には民主的手続きを踏んだ正当性がある。「沖縄に民主主義を適用せよ」との訴えも正論だ。沖縄とこの国の未来のために、三つの「原点」を見詰め直したい。
 一つは、1972年の日本復帰だ。米軍統治下で人権を蹂躙されてきた沖縄住民は「平和憲法」に救いを求めた。しかし、今なお過密な米軍基地が事件・事故、爆音、米兵犯罪の温床になっている。法の下の不平等が構造化している。もはや我慢の限界だ。米識者から駐留の軍事的合理性に疑義が出ている在沖米海兵隊の全面撤退を真剣に検討し、不平等と日米関係そのものを劇的に改善するときだ。
 二つ目は、昨年始動した「沖縄21世紀ビジョン基本計画」だ。知事は年末に首相が示した基地負担軽減策を評価し「沖縄の基地問題は日本全体の安全保障に寄与している」と述べた。首相を激励し、自らを政権の「応援団」とも言い放った。普天間飛行場の5年以内運用停止が口約束であり、オスプレイの配備中止要請に全く言及がないなど、核心部分で実質「ゼロ回答」だったにもかかわらずだ。21世紀ビジョンの基軸的な考えは、「潤いと活力をもたらす沖縄らしい優しい社会の構築」「日本と世界の架け橋となる強くしなやかな自立的経済の構築」の二つだ。会談での知事の「安保に寄与」発言には、沖縄の文化力や経済力、市民交流などソフトパワーで日本と世界の懸け橋になるとの発想がすっぽり抜け落ちている。沖縄の夢が詰め込まれた21世紀ビジョンを後退させてはならない。
 三つ目は、戦後日本の原点だ。「戦争放棄」をうたった日本国憲法の下で平和国家、民主国家として歩み、戦後一度も戦争をしなかったことは世界に誇れることだ。
●ソフトパワー
 ところが、安倍政権は「積極的平和主義」を掲げ、集団的自衛権の行使容認や武器輸出三原則緩和、自衛隊増強など、軍事拡大路線をひた走っている。軍事力を過信せず、非軍事的な国力を駆使し、戦略的互恵関係の構築により安全を実現するのが、平和国家のあるべき姿だ。国民は戦争をする軍事国家への回帰など望んでいない。「人間の安全保障」の提唱者の一人で、ノーベル経済学賞受賞者のアマルティア・セン氏は「テロや大量虐殺と戦うことは大切だが、私たちは人間の安全を脅かすものが、暴力だけでなく、さまざまなかたちで現れることにも気づかなければならない」と指摘する。これは、人々や社会の安全を脅かす貧困、抑圧、差別などの社会的不正義を「構造的暴力」と定義し、その解消を「積極的平和」と位置づける平和学の概念とも通底する。首相は軍事偏重の「積極的平和主義」ではなく「積極的平和」こそ追求し、沖縄で普天間撤去などを通じ構造的暴力を解消すべきだ。わたしたちは、琉球王国時代の万国津梁の精神に倣い多国間の懸け橋となりたい。沖縄は東アジアの緊張を沈静化し、「軍事の要石」から「平和の要石」へ転換する構想を描くべきだろう。沖縄の尊厳と安全を守るために、ソフトパワーに磨きをかけていこう。

*3:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E6%B5%B7%E5%85%B5%E9%9A%8A アメリカ海兵隊(要点)
 第二次世界大戦以後、第二次世界大戦後は朝鮮戦争において韓国救援の先遣部隊として派遣され、釜山に追い詰められた国連軍の中の米軍の中核として困難な時期を支え、マッカーサー元帥の立案した仁川上陸作戦(クロマイト作戦)に中核戦力として用いられ、上陸後のソウル奪還にも一番乗りの一翼を担った。また、中華人民共和国の参戦によって総崩れとなった国連軍の殿(しんがり。最後尾防衛)を務めたのも海兵隊であった。その後もゲリラの掃討戦に従事し、アメリカ軍やイギリス軍(イギリス連邦軍)、大韓民国軍やベルギー軍などから構成された国連軍が行った攻勢には常に主力として用いられ、海兵隊は朝鮮戦争の休戦を38度線の防御陣地で迎えることになる。
 その後も、ベトナム戦争、グレナダ侵攻、湾岸戦争、イラク戦争など、米国の行った大規模軍事行動には常に最前線に投入され、米海兵部隊は規模の大小はあるものの全世界に展開されており、有事の際には世界中どこにでも展開できる能力を保有している。創設以来、志願制による補充を原則としてきたが、第二次世界大戦中及びベトナム戦争中には徴兵による補充を行っている。

*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140112&ng=DGKDZO65212580R10C14A1NN9000 (日経新聞 2014.1.12) 負担軽減巡り思惑交錯
 首相が仲井真知事と約束した沖縄の負担軽減策の行方もなお不透明だ。沖縄県が要望する柱の一つは、普天間基地の5年以内の運用停止だ。計画では調査から米軍への提供まで約9年かかり、単純計算で4年前倒しする必要がある。菅義偉官房長官は「速やかに着手し、事業期間を短縮する」と語るが、日米関係者には「計画段階でかなり絞り込んだ日程。前倒しは難しい」との声も根強い。政府内には「実質的に運用停止の状態に近づければ理解が得られる」との見方もある。県は垂直離着陸輸送機オスプレイ24機の約半数を県外配備するよう求めるが、コストがかかり米側が難色を示すのは必至だ。政府は県外の訓練拡充などによる県内飛行の半減を強調している。「5年以内」を求める仲井真知事も、実現には「移設先は県外しかない」と語る。県外移設の公約をおろさず埋め立てを承認した整合性をとる説明といえるが、政府とのズレは明らかだ。もう一つの柱は、日米両政府が合意した新協定の協議だ。自治体が汚染調査などで基地内に立ち入る手続きや、環境保全の施設を整備する際の財政負担のあり方などを定める。在日米軍基地の管理などを定めた日米地位協定の補足協定との位置付けだ。米政府はこれまで地位協定の改定に一度も応じず、運用改善で済ませてきた。新協定の協議入りは、普天間を拠点とする在沖縄海兵隊の一部をグアムに移転させる米計画に弾みがつくと期待するからだ。ただ米政府は費用負担に厳しい米議会をにらみ、日本側の財政負担を多く求める可能性がある。自治体の基地内の立ち入り手続きも簡単にのめる話ではない。

    
                         沖縄の海と海岸
*5:http://ryukyushimpo.jp/uploads/img52ccad8c5288e.pdf
(プレスリリース 2014年1月) 世界の識者と文化人による、沖縄の海兵隊基地建設にむけての合意への非難声明
 私たちは沖縄県内の新基地建設に反対し、平和と尊厳、人権と環境保護のためにたたかう沖縄の人々を支持します。私たち署名者一同は、2013年末に安倍晋三首相と仲井真弘多沖縄県知事の間でかわされた、人間と環境を犠牲にして沖縄の軍事植民地状態を深化し拡大させるための取り決めに反対します。安倍首相は経済振興をエサに、軍港をともなう大型の海兵隊航空基地を作るために沖縄北東部の辺野古沿岸を埋め立てる承認を仲井真知事から引き出しました。辺野古に基地を作る計画は1960年代からありました。それが1996年に掘り起こされ、前年に起こった少女暴行事件もあり当時沖縄で最高潮に達していた反米軍基地感情を鎮めるために、日米政府は、宜野湾市の真ん中にある普天間基地を閉鎖して、辺野古の新基地にその機能を移転させようと計画しました。辺野古は稀に見る生物多様性を抱え、絶滅の危機にある海洋哺乳動物、ジュゴンが棲息する地域です。仲井真知事の埋め立て承認は沖縄県民の民意を反映したものではありません。知事は2010年の知事選直前に、それまでの新基地容認姿勢を変更し、「普天間基地移設は県外に求める」と言って、新基地反対で一貫していた候補を破って当選しました。近年の世論調査では県民の辺野古新基地への反対は7割から9割に上っていました。今回の仲井真知事埋め立て承認直後の世論調査では、沖縄県民の72.4%が知事の決定を「公約違反」と言っています。埋め立て承認は沖縄県民に対する裏切りだったのです。
 在日米軍専用基地面積の73.8%は日本国全体の面積の0.6%しかない沖縄県に置かれ、沖縄本島の18.3%は米軍に占拠されています。普天間基地はそもそも1945年の沖縄戦のさ中、米軍が本土決戦に備え、住民の土地を奪って作りました。終戦後返還されるべきであったのに、戦後70年近く経っても米軍は保持したままです。したがって、返還に条件がつくことは本来的に許されないことなのです。今回の合意は長年の沖縄の人々の苦しみを恒久化させることにもつながります。沖縄は、日本による17世紀初の侵略に始まり、19世紀末の日本国への強制併合を経て、1944年には、米軍の襲撃を控え、天皇制を守るための時間稼ぎの要塞とされました。沖縄戦では10万人以上、住民の4分の1にあたる人々が殺されました。戦後、米軍政下において基地はさらに増えました。沖縄は1972年に日本に「返還」されたものの、基地がなくなるとの沖縄住民の希望は打ち砕かれました。そして今日も、沖縄県民は基地の存在によってひき起こされる犯罪、事件、デシベル数の高い航空機の騒音や、環境汚染による被害を受け続けています。戦後ずっと、沖縄の人々は米国独立宣言が糾弾する「権力の濫用や強奪」に苦しめられ続けています。その例として同宣言が指摘する「われわれの議会による同意なしの常備軍の駐留」もあてはまります。
 沖縄の人々は、米国の20世紀における公民権運動に見られたように、軍事植民地状態を終わらせるために非暴力のたたかいを続けてきました。生活を脅かす実弾砲撃訓練に対し演習場に突入して阻止したり、米軍基地のまわりに人間の鎖を作って抵抗を表現したりしました。大規模なデモが時折持たれ、約10万人-人口の10分の1にもあたる人々が参加してきています。80代の人たちが辺野古基地建設を阻止するために立ち上がり、座り込みは何年も続いています。県議会は辺野古基地反対の決議を通し、2013年1月には全41市町村首長が、オスプレイ配備撤回と県内移設基地の建設を断念するよう政府に求める建白書に署名しました。私たちは、沖縄の人々による平和と尊厳、人権と環境保護のための非暴力のたたかいを支持します。辺野古の海兵隊基地建設は中止すべきであり、普天間は沖縄の人々に直ちに返すべきです。
ノーマン・バーンボームジョージタウン大学名誉教授
ハーバート・ビクスニューヨーク州立大ビンガムトン校歴史学・社会学名誉教授
ライナー・ブラウン国際平和ビューロー(IPB)共同代表、国際反核兵器法律家協会(IALANA)事務局長
ノーム・チョムスキーマサチューセッツ工科大学言語学名誉教授
ジョン・W・ダワーマサチューセッツ工科大学歴史学名誉教授
アレクシス・ダデンコネチカット大学歴史学教授
ダニエル・エルズバーグ核時代平和財団(Nuclear Age Peace Foundation)上級研究員、
元国防総省・国務省職員
ジョン・フェファー政策研究所(IPS)「フォーリン・ポリシー・イン・フォーカス」(fpif.org) 共同代表
ブルース・ギャグノン「宇宙への兵器と核エネルギーの配備に反対する地球ネット
コーディネーター
ジョセフ・ガーソン「アメリカン・フレンズ・サービス委員会」平和と経済の安全保障プログラム部長、政治学・国際安全保障学博士
リチャード・フォークプリンストン大学国際法名誉教授
ノーマ・フィールドシカゴ大学東アジア言語文明学部名誉教授
ケイト・ハドソン核軍縮キャンペーン事務局長
キャサリン・ルッツブラウン大学人類学・国際問題学教授
ナオミ・クライン著述家、ジャーナリスト
ジョイ・コガワ作家、『オバサン』(和訳『失われた祖国』)著者
ピーター・カズニックアメリカン大学歴史学教授
マイレッド・マグワイアノーベル平和賞受賞者
ケビン・マーティン「ピース・アクション」事務局長
ガバン・マコーマックオーストラリア国立大学名誉教授
キョー・マクレア作家、児童文学者
スティーブ・ラブソンブラウン大学名誉教授・米陸軍退役軍人(沖縄・辺野古にて1967-68年駐留)
マーク・セルダンコーネル大学東アジアプログラム上級研究員
オリバー・ストーン映画監督
デイビッド・バインアメリカン大学人類学部准教授
ロイス・ウィルソン世界教会協議会前総会議長
ローレンス・ウィットナーニューヨーク州立大学アルバニー校歴史学名誉教授
アン・ライト元米陸軍大佐、元米国外交官
(苗字のアルファベット順、2014年1月7日現在)


PS(2014.1.18追加):新たに、学者の「辺野古反対声明」が発表された。御用学者ではない学者の意見も聞く必要があるため、これは歓迎だ。
*6:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=60857
(沖縄タイムス 2014年1月18日) 「辺野古反対」東大名誉教授ら声明
 米軍普天間飛行場の辺野古移設について、県外で活躍する経済、国文学、歴史、法学など各分野の識者が17日、都内で記者会見し、「名護市辺野古に新たな基地を建設することに反対する」と声明を発表した。政府に対して、県内の米海兵隊基地の撤去に向けた具体的措置について米国と交渉するよう求め、今後は声明の賛同者を募るとともに講演やシンポジウムを開く方針だ。発起人の和田春樹東京大学名誉教授ら18人は、7日に辺野古移設反対の声明を出した米映画監督オリバー・ストーン氏や言語哲学者ノーム・チョムスキー氏ら欧米の著名人とともに「沖縄県民側に立つ」と訴え、すべての日本人に対し「自ら引き受けられない基地を沖縄に押し付け、新たな基地建設まで強行するのは無責任の極みではないか。沖縄差別の政策をいつまで続けるのか」と問い掛け、沖縄への基地建設を「許さない」と表明した。前田哲男氏(軍事評論家)は、自民党の石破茂幹事長が辺野古への新基地建設に向けて「500億円の名護振興基金の創設を示すなど“アメとムチ”を使っている」と批判し、「沖縄の現状に無関心であってはならない」と訴えた。また、古関彰一氏(独協大教授)は「沖縄への基地の押し付けは民主主義に反する」。西谷修氏(東京外国語大教授)は「世界の人が沖縄の現状を知るべきだ」と述べた。

| 辺野古・普天間基地問題::2012.2~2015.3 | 10:46 AM | comments (x) | trackback (x) |
2013.12.25 政府は、何のために、辺野古の埋め立てに固執しているのか?(2013年12月26日、28日に追加あり)
   
                      辺野古とその周囲の海
(1)「アメとムチ」が時代錯誤というのは、本当である
 *1に書かれているように、「日本政府は14年度の沖縄振興予算を3460億円とする方針だが、仲井真知事が辺野古の埋め立てを承認しないなら、2014年度予算で沖縄の交付金を取り消す」というのは、全く沖縄を馬鹿にした発言である。何故なら、他県も交付金や必要な補助金はもらっているからだ。

 また、「沖縄は基地補助金や基地関係収入に依存している」というのも誤りである。沖縄は、観光地としては、既に世界でも有数のダイバーのメッカであり、海底資源も豊富なので、まともな産業振興を行えば、国から同情予算をもらうどころか、堂々たる日本のエンジンになれるだろう。

(2)アメの古さと選挙の構図
 *2-1に書かれているように、「安倍首相が仲井真知事と会談し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向けて、公有水面の埋め立てを承認するよう要請する」とのことである。また、*2-2に書かれているように、「第5次沖縄振興計画(2012~21年度)の実施期間の沖縄振興予算を、毎年3000億円台にする」とのことだが、これも金額ありきで内容のない予算であり、国民の血税を、そのような無駄遣いに使ってもらいたくないと思う。

 そして、この予算を使って沖縄各地で土木工事を行い、埋め立てたり、コンクリートで固めたり、テトラポットを積み上げたりすれば、金の無駄遣いであるだけでなく、えもいわれぬ美しい自然という沖縄の観光資源を大きく劣化させて回復不能にする。また、この金で潤った土木建築会社が自民党を支持して選挙で自民党が勝利するという構図は、国民の意識の進歩を無視した、あまりにも古いシナリオだ。沖縄の土木建築会社も、無駄な仕事をする暇があったら、東北復興の手伝いに行くべきだろう。

(3)仲井真知事の苦しさはわかるため、全国紙も沖縄に協力して欲しい
 *3に書かれているように、仲井真知事は検査入院してしまったが、一人で首相や日本政府を相手に闘わなければならないのだから、そうなる気持ちもわかる。何故なら、徹底して闘えば、株主として東電の合理化を主張した東京都の猪瀬前知事のように、たいしたこともない埃を見つけ出して叩かれ、辞職に追い込まれたり、どうしても何もなければ殺されたりするからである。誰だって、「ぬちどぅ宝」だ。

 そのため、全国紙も、*5で信濃毎日新聞が行っているようにバックアップして欲しい。私自身は、このブログの左のカテゴリー「普天間基地問題」に何度も記載しているように、よく検討すれば、辺野古埋め立てより賢い方法がいくらでもあると考えている。

(4)後世に誇れる歴史的英断とは、どういう判断か
 まさに*4に書かれているとおり、仲井真知事は、選挙公約、県の基地・環境政策との整合性、法律要件、戦後68年間もの基地過重負担などを考慮して、歴史の批判に耐え得る「不承認」の英断を下して「県外移設」を主張すべきであり、それが歴史的英断になるだろう。その後のまともな沖縄県振興や、他の場所での基地負担は、その気になればどうにでもなるからである。

   
                        慶良間諸島と海
*1:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-217041-storytopic-11.html
(琉球新報社説 2013年12月23日) 米研究員“指南” 「アメとムチ」は時代錯誤
 あからさまな脅迫であり、時代錯誤も甚だしい発言である。米軍普天間飛行場辺野古移設に関し、米国の保守系シンクタンクの上席研究員が、仲井真弘多知事が埋め立てを承認しないのなら、日本政府は「2014年度予算で沖縄の交付金を取り消すべきだ。そうすれば沖縄は経済的苦境に陥るだろう」と論評した。米政府の政策決定に影響力のあるシンクタンク研究員の発言だ。研究員は自らの“指南”が日本政府の沖縄対策に反映されているとの認識も示しており、日米政府一体で沖縄懐柔を図る構図が浮かぶ。政府は14年度の沖縄振興関係予算について、概算要求より52億円増の3460億円とする方針だ。埋め立て承認を促す狙いは明らかだが、不承認なら予算を見直すというのなら、重大な問題だ。政府が予算で配慮を強調する那覇空港第2滑走路増設や科学技術大学院大学の整備拡充などは、何も沖縄県民のためだけの事業ではない。国の施策として当然取り組むべき事業であり、その予算の充実を沖縄県民がことさらありがたがる筋合いのものではない。再三指摘しているが、沖縄が基地負担の一方で国の補助金に過度に依存しているかのような認識も誤りだ。人口1人当たりの依存財源額は、沖縄は全国18位の31・5万円で、財政力が近い類似9県の平均41・2万円と比べて低い。
 基地関係収入が県民所得に占める割合も、1972年の日本復帰時の15・5%から2009年は5・2%にまで下がっている。基地に依存するより返還させた方が経済効果が高いことは、北谷町のハンビータウンなどを見ても明らかだ。振興策をちらつかせば、沖縄は、最後は言うことを聞く。そのような差別と偏見と誤解に基づく「アメとムチ」の懐柔策はもう沖縄には通用しない。植民地政策まがいの恫喝(どうかつ)は許されない。振興策を強調するのは、沖縄の強固な異議申し立てを前にした日米両政府の焦りの表れとも言えよう。ただ一方で、振興策や基地負担軽減を条件に辺野古埋め立てを承認するかのような印象を仲井真知事が与えているのも否定はできない。相手を付け込ませる思わせぶりな対応はもう取るべきではない。仲井真知事、そして県民は毅然(きぜん)とした態度で圧力をはねのけ、沖縄の未来に責任を持つべきだ。

*2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013122401002568.html
(東京新聞 2013年12月24日) 首相、沖縄知事に埋め立て要請へ 25日普天間移設で会談
 安倍晋三首相は25日午後、沖縄県の仲井真弘多知事と会談し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向け、公有水面の埋め立てを承認するよう要請する。沖縄振興予算の拡充や米軍基地負担の軽減策を説明し、理解を求める考えだ。仲井真氏はこれを受け、埋め立ての可否を週内にも判断する。1996年に日米両政府が返還合意した普天間飛行場の移設問題は重大な局面を迎える。仲井真氏は24日、首相が沖縄振興予算を、毎年度3千億円台確保する方針を表明したことを受け「心から感謝申し上げる」と歓迎するコメントを発表した。

*2-2:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2401H_U3A221C1EB2000/
(日経新聞 2013/12/24) 首相、沖縄振興「21年度まで年3000億円台」 知事と25日会談
 安倍晋三首相は24日の閣議で、第5次沖縄振興計画(2012~21年度)の実施期間の沖縄振興予算を、毎年3000億円台にすると表明した。沖縄県宜野湾市の米軍普天間基地の同県名護市辺野古移設に理解を得るため、手厚い支援で沖縄に配慮する姿勢を示したものだ。25日午後、仲井真弘多知事と会談する。首相は「沖縄振興の取り組みを強化するため毎年3000億円台を確保する」と述べた。菅義偉官房長官は閣議後の記者会見で、首相と仲井真知事の会談が25日午後になると発表。沖縄振興や基地負担の軽減を念頭に「政府としての責任でできる限りのことをすべてやりたい」と強調した。政府の立場を改めて伝え、辺野古沿岸部の埋め立てについて年内の承認を引き出したい考えだ。沖縄振興費を巡っては、政府は13年度当初予算で3001億円、14年度予算案で3460億円を計上し、2年連続で3000億円を上回った。

*3:http://digital.asahi.com/articles/DA2S10896007.html?iref=comkiji_redirect
(朝日新聞 2013年12月24日) 沖縄知事、週内にも判断 辺野古問題、負担軽減見極め
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設に伴う名護市辺野古の埋め立て申請への対応について、仲井真弘多知事は23日、県幹部と詰めの協議を行った。県が求めた負担軽減策に対する安倍政権の回答を見極めたうえで、承認するかどうか週内にも判断する構えで、移設問題は山場を迎えている。
 仲井真氏が検査入院している東京都内の病院に、県幹部を集めた協議は約2時間に及んだ。出席者によると、協議では、当銘健一郎・土木建築部長が公有水面埋立法にもとづく審査結果を報告。そのうえで、承認、不承認それぞれの場合に起こりうる問題点を整理した。当銘氏は、同法が判断基準とする6項目のうち「環境保全などに十分配慮されているか」については、「ジュゴンや特定外来生物の問題などがあり、難しい」と説明。法に適合するかどうかの結論を示さなかった。
 23日の県幹部との協議で、仲井真氏は17日の沖縄政策協議会で政権に申し入れた「普天間の5年以内の運用停止」「牧港補給地区(浦添市)の7年以内の全面返還」への対応を特に気にしていたという。いずれも負担軽減のために「日米地位協定の改定」「オスプレイ12機程度の県外配備」とともに求めた内容だ。県側の要望に対し、安倍政権は「やれることはすべてやる」(菅義偉官房長官)ことで、仲井真氏の承認を得たい考えだ。来年度予算案の沖縄振興予算では、概算要求を上回る金額を計上する方針。負担軽減にも前向きに取り組む姿勢をアピールする。
 普天間の早期運用停止などについても、岸田文雄外相が22日のNHK番組で「あらゆる可能性を検討しなければならない」と発言。小野寺五典防衛相も21日のBS朝日の番組で、日米地位協定の改定をめぐり「米国側と交渉することは大切だ」と述べるなど、そろって負担軽減への「意欲」を強調した。ただ、これらの課題の解決には米国の同意が不可欠だが、米側は否定的で実現の見通しは立っていない。

*4:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-217083-storytopic-11.html
(琉球新報社説 2013年12月24日) 埋め立て知事判断 後世に誇れる歴史的英断を
 仲井真弘多知事は、選挙公約、県の基地・環境政策との整合性、法律要件に適合するか否か、戦後68年間も米軍基地の過重負担に耐えてきた県民の苦しみなどを最大限考慮し、歴史の批判に耐え得る「不承認」の英断を下してほしい。政府が知事に求めた普天間飛行場の名護市辺野古移設計画に伴う埋め立て申請への判断のことだ。
 県が先に政府に行った沖縄振興と基地負担軽減に関する要請のうち、特に「普天間飛行場の5年以内の運用停止、早期返還」「日米地位協定の条項の追加等、改定」「オスプレイの12機程度を県外の拠点に配備」の3点は、従来の県の政策や県民意思と相いれず、要請の民主的正統性に疑義がある。知事は2期目の選挙公約で普天間飛行場について「県外移設」を約束した。「県外移設」を今回の要請書に明記しなかった理由、真意は何か、公約を変更するのか、県民に対し説明を尽くしていない。県と県内市町村はかねて、国にオスプレイ配備撤回と地位協定の抜本改定を求めてきた。もし知事の独断で常駐配備容認、協定の部分改定に主張を変更するなら市町村長や議会、県民への背信となる。今年1月にオスプレイ配備に反対する県民大会実行委員会、県議会、県下41市町村の首長、議会の連名で首相に提出した建白書も、オスプレイ全機の配備撤回、普天間基地の閉鎖・撤去と県内移設断念を求めた。これが最大公約数の県民意思だ。「県民の強い思い」をねじ曲げて、政府に誤ったメッセージを送ってはならない。
 在沖海兵隊の国外分散推進に伴う辺野古移設合意の事実上の破綻、森本敏前防衛相も認めた県内移設の軍事合理性の欠如、辺野古アセスのずさんさなどの観点からも「不承認」こそ合理的だ。防衛省は辺野古の軍港機能拡充を県民に隠し、米国防総省に対してはジュゴン関連の膨大な環境調査情報を削除したアセス資料を送付していた。県民を欺き、政権上層部、国会への説明を怠った疑いが拭えない。知事は防衛省の強権的かつ詐欺的手法に加担せず、後世に誇れる決断を下してほしい。国の申請が公有水面埋め立て法の要件を満たしているか厳格に判断すべきだ。曖昧な点があれば、来年1月の名護市長選への直接的影響を避ける観点から、選挙終了まで知事判断を留保するのも選択肢だ。

*5:http://www.shinmai.co.jp/news/20131223/KT131221ETI090005000.php
(信濃毎日新聞 2013年12月23日) 沖縄県知事 県外移設の公約は重い
 沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題がヤマ場を迎えた。仲井真弘多知事が同県名護市辺野古への移設に向けた政府の埋め立て申請を認めるかどうか、近く判断するとの見方が強まっている。
 知事は3年前の選挙で県外移設を公約に掲げた。今月上旬の県議会本会議の場でも「県民との約束であり、全力で実現に取り組む」と、立場を変える考えがないことを示している。沖縄県民の多くが県外移設を求めている。申請を認めれば民意をないがしろにする行為と受け取られかねない。日米両政府と沖縄県民の亀裂も深まるだろう。知事の決断に目を凝らしたい。安倍晋三政権の沖縄への姿勢はごり押しにしか見えない。
 自民党沖縄県連は昨年の衆院選や今年の参院選でも「県外移設」の方針を曲げなかった。米軍による犯罪や騒音に長年悩まされ、基地負担の軽減を求めてきた県民の声を尊重すれば当然である。来年1月には名護市長選が控えている。安倍政権は移設反対の現職が勝てば日米合意が頓挫するとの焦りも加わり、早期決着に向けた説得工作を加速させた。11月には県連幹部を上京させて「党本部の方針に従うべきだ」と要請。沖縄選出の国会議員にも辺野古容認を迫った。結局、県外移設にこだわれば普天間が固定化する、基地負担の軽減にならない―などの理屈で公約はほごにされた。
 一方、政府は沖縄振興策の拡充や在沖縄米軍の訓練移転をちらつかせてきた。アメとムチで移設を実現する構えだ。沖縄に対する包囲網が狭まっていく中、安倍首相と仲井真知事が先日都内で話し合った。知事は首相に▽普天間飛行場の5年以内の運用停止▽米軍基地の管理・運用を定めた日米地位協定の改定―などを求めた。知事はその後、政府の埋め立て申請の判断について「年内に間に合うかもしれない」と語っている。
 米側と交渉する必要もあり、政府にとっては高いハードルだが、見方によっては「条件闘争」をしているようにも受け取れる。なぜ普天間の閉鎖ではなく、移設なのか。新たな基地の建設は日米両政府が目指す負担軽減と逆行することなのに、双方とも必要だと強調するばかりで説得力のある説明をしてこなかった。理解を得られないのは当然だ。新しい基地が本当に要るのか、検証し直す作業こそ急ぐべきだ。


PS(2013.12.26追加):「『沖縄優遇』は印象操作にすぎず、戦後通算で見ると沖縄への1人当たり財政援助額は全国平均の6割で、むしろ『冷遇』だった。復帰後の沖縄への高率補助は戦中戦後の『償い』の意味があったが、今や露骨に基地押し付けの材料だ」等の分析を、きょう見つけたが、こういう分析は地元紙しか行わないと思うので、*6として追加しておく。

*6:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-217117-storytopic-11.html (琉球新報社説  2013年12月25日) 14年度予算 「厚遇」は印象操作だ 基地強要の正当化やめよ
 2014年度沖縄関係予算が前年度比15・3%増の3460億円で決まった。増額となったのはともかく、政府が「厚遇」を強調する点に強い違和感を抱く。政府は躍起になって「沖縄に対し他の都道府県ではあり得ないほど特別に国費をつぎこんでいる」というイメージを振りまいている。だがそれは事実と異なる。むしろ他府県にはあり得ない水増しやごまかしがまかり通っている。政府はこれで基地強要を正当化したつもりだろうが、不当な印象操作は直ちにやめてもらいたい。
●数ある「かさ上げ」
 「水増し」「ごまかし」の最たるものは那覇空港の整備予算だ。那覇空港は1990年代の段階で既に、2010年代半ばでの「ボトルネック」が懸念されていた。つまり、空港利用の需要が高まり、滑走路1本ではさばききれないという見立てだ。滑走路増設の必要性は全国でも福岡空港に次ぐ二番手の位置付けだった。福岡は既に整備され、那覇に着手するのは自然な流れのはずだ。那覇は国管理の空港だから整備は政府の空港整備勘定(旧空港整備特別会計)で計上すべきだ。だが政府はこれを沖縄関係予算に組み込んだ。県の注文で辛うじて一括交付金と別枠になったとはいえ、沖縄以外なら国の予算となるところ、さも沖縄のため特別に計上したかのように装うのは不当な「演出」だ。他の沖縄関係事業にしわ寄せも生じたはずである。
 沖縄関係予算を「かさ上げ」しているのは沖縄科学技術大学院大学も同様だ。2001年に構想が浮上した際は、この経費捻出のため通常の沖縄関係予算が削られるのを警戒する声があった。政府はその点をうやむやにし、一時は文部科学省予算で一部賄うと説明したが、雲散霧消した。今や完全に沖縄関係予算だ。本来、入るべきでないこれらを除くと、14年度の沖縄関係予算は2930億円だ。99年度は3282億円だから15年で1割減った。国全体ではこの間、逆に1割以上増えている。財政学が専門の池宮城秀正・明治大教授によると、沖縄の2011年度1人当たり依存財源(国からの財政移転)額は32万円で全国18位。類似9県平均41万円の8割弱だ。「沖縄優遇」は印象操作にすぎない。戦後通算で見ると沖縄への1人当たり財政援助額は全国平均の6割にすぎず、むしろ「冷遇」だった。復帰後の沖縄への高率補助は戦中戦後の「償い」の意味があったが、今や露骨に基地押し付けの材料だ。どこまで沖縄の尊厳を踏みにじれば気が済むのだろうか。
●程遠い自由裁量
 確かに沖縄振興一括交付金制度は沖縄予算だけにある制度である。だがこれはカネ目当てというより予算の効率化、財政の地方分権論として出た構想だ。地方の実需にあった予算編成とするため、省庁ごとのひも付き補助金でなく、地方の自由裁量で支出できるようにするのが本来の狙いだ。しかし、制約が多く、自由裁量とは程遠いのが現状だ。沖縄の振興には人材育成が欠かせないのに、例えば教員の加配には使えない。人件費支出を伴うのは予算の単年度主義に反するからという理由のようだが、制約は本来の趣旨に反する。例えば無償の奨学金の大幅創設、留学の大幅増に向けた大胆な支援策などを可能とすべきだ。県は15年度以降、裁量権を広げるべく国を説得してほしい。
 全国予算を見ても解せない点は多々ある。歳出削減に向けた切り込みどころか、各省庁の要求をほぼ受け入れた。増税は財政再建が目的のはずが、従来型の公共事業増加に振り向けられた感がある。税制改正の方向も疑問だ。低所得者に負担増を強いる一方、大企業への優遇策が目立つ。「強きを助け、弱きをくじく」構図だ。防衛費も増えた。「強権国家」づくりに税金を使うのが安倍政権らしい。予算編成の「哲学」が正しかったのか、疑問は尽きない。


PS(2013.12.28追加):2013年12月27日に、仲井真弘多知事が名護市辺野古沿岸部の埋め立て申請を承認したことについて、*7の地元紙の記事を紹介しておく。なお、私も、ここで基地問題を争点として議論を尽くし、知事選を行うのが、沖縄が覚悟を持って自らの針路を決めるスタートになると思う。
   
                 2013年12月27日、28日
沖縄タイムス      東京新聞           佐賀新聞        佐賀新聞 

*7:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=59679
(沖縄タイムス社説 2013年12月28日) [知事埋め立て承認] 辞職し県民に信を問え
 政治家の命綱である「選挙公約」をかなぐり捨てた姿というほかない。だが、本人はそうは思っていない。埋め立ては承認したが、「県外移設」の公約は変えていない、という。県外移設を実現するために、政府から何の担保も取っていないのに、である。こんな説明で県民の理解が得られるとほんとに思っているのだろうか。政治家の公約は有権者との契約である。知事はもはや、県民の負託を受けた政治家としての資格を自ら放棄したと言わざるを得ない。米軍普天間飛行場の移設に向けて国が県に提出していた名護市辺野古沿岸部の埋め立て申請を、仲井真弘多知事は27日承認した。辺野古移設を認めたということだ。知事選で県外移設の公約に1票を託した有権者への裏切り行為である。知事は記者会見で、辺野古移設を承認したことと、県外移設の公約との矛盾を問われると、県外移設の公約を変えていない、と声を荒らげ、説明を拒否した。17日に首相官邸で開かれた沖縄政策協議会以来、知事に決定的に欠けているのは県民への説明責任だ。それは27日の記者会見でも果たすことがなかった。記者とのやりとりはわずか30分余り。県の方から一方的に打ち切った。
 知事は、県外移設の公約と、辺野古移設は併存するという。その理屈が分からない。辺野古移設は時間がかかるため、5年以内に県外移設するのが「普天間の5年以内の運用停止」の意味のようだ。だが、過去の経緯を見ても分かるように、本土で具体的な地名が出るたびに地元から反対運動が起きてみんな頓挫しているのが現状だ。知事が根拠としているのが、安倍晋三首相との会談で、首相が危険性除去は最大の課題であるとの「認識を共有している」との表明である。沖縄の基地問題で、これまでなされた閣議決定、総理大臣談話でさえほごにされているのにである。首相の表明が「口約束」にすぎないことは、知事本人が一番知っているはずだ。
 事務レベルで最後まで可否判断を保留していた環境保全については「現時点で取り得ると考えられる措置等が講じられている」として基準に適合していると判断した。本当にそうだろうか。ジュゴンやウミガメの保護、投入土砂に混入する恐れのある特定外来生物は不確定要素が大きい。県は、留意事項として国に専門家や有識者で構成される環境監視等委員会(仮称)を設置することを求めているが、実効性があるか不透明だ。承認ありき、としか見えない。本社が実施した直近の2種類の世論調査では「承認するべきでない」が64~72%に上り、「承認するべきだ」はいずれも約22%にとどまっている。知事と有権者の信頼関係は破綻したといっていい。知事の言葉が信を失っては業務を遂行するのは不可能だ。
 仲井真知事は、1995年の米兵による暴行事件を受け、大田昌秀県政が米軍用地強制使用問題で代理署名の拒否をめぐり政府と対峙していたころの副知事を務めた。当時を知る関係者によると、「なんで県が中央と事を構えるのか」と言い、副知事として応諾の文案をつくる役回りを演じたという。2006年には当時の政府案を拒んでいた稲嶺恵一知事に「政府と事を構えるのはいかがなものか」といさめた。仲井真知事は旧通産省の官僚出身で、官僚体質がしみ込んでいる。その最も悪い部分が表れたのがこの日の記者会見だった。知事は記者会見を県庁で開くことができなかった。警備上の理由から、知事公舎に移した。警察に知事公舎を守られながら開かざるを得なかった記者会見が、知事の埋め立て承認の正当性に疑問符が付くことを象徴している。知事は会見で名護市民に対し何の言及もしなかった。17年間も地域を分断された市民の苦悩に思いをいたしているようには見えなかった。
 多くの県民は「平和的生存権」「環境権」「人格権」「公平・公正な基地負担」をかけて辺野古移設問題に向き合ってきた。その主張の正当性は高まるばかりだ。

| 辺野古・普天間基地問題::2012.2~2015.3 | 01:49 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013年6月9日 米軍普天間飛行場の沖縄県外移設はできること
      
            佐賀県の花(左から、マリーゴールド、花菖蒲、紫陽花)

 *1のように、世界一危険な普天間基地問題を解決するのに、自民党本部が辺野古を埋め立てる以外に方法を思いつかないとすれば、あまりにも頭が休みすぎているだろう。何故なら、このブログの2013年2月3日等に記載しているように、九州本土にも、九州の離島にも、すでに空港があり、人口の少ない適地は多いからである。

 佐賀空港でどうかと言う佐賀県人もいるが、これは少し北にありすぎるのではないかと、私は、個人的に思っていた。そのような中、*2のような佐賀新聞労組主催の対話集会が開かれたことは重要である。解としては、普天間基地の代替地は、鹿児島県、宮崎県あたりにあるのではないだろうか。

*1:http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/471480.html
(北海道新聞 2013年6月5日) 自民党の公約 地方と逆では不信招く 
 7月4日に予定される参院選公示まで1カ月を切った中、自民党の公約づくりが難航している。沖縄県連は「地域版公約」に米軍普天間飛行場の県外移設を盛り込むという。名護市辺野古への県内移設を掲げる安倍晋三政権と正反対の主張である。中央と地方で公約を都合良く使い分けるのでは、有権者を惑わせ政治不信を招くだけだ。政権与党として無責任と言わざるを得ない。選挙公約は国民に対する大事な約束である。地方の意見を取り入れてしっかり練り上げ、明確な主張で信を問うてもらいたい。
 党の選挙公約を補完し、地域の実情に合った政策を掲げるのであれば地域版公約の意味もあろう。だが全く逆の公約を掲げるのは禁じ手だ。沖縄では党派を問わず県外移設を求める声が大半だ。在日米軍施設の74%が沖縄に集中し、普天間基地は「世界一危険」と言われている。地元負担軽減の必要性を考えれば、沖縄県連の主張は理解できる。ところが自民党本部は辺野古移設の方針を変えようとしない。県連は県外移設を掲げて独自の戦いをする構えだ。これでは政党の体をなしていない。方針の一本化が不可欠だ。自民党は沖縄県連の要望を取り入れて県外移設に踏み出すのが筋だろう。県連も独自路線に進む前に、党の公約に主張を反映するよう努力すべきだ。有権者受けを狙ったパフォーマンスであってはならない。沖縄だけではない。福島県連は地域版公約に県内の原発10基すべての廃炉を盛り込む方針だ。安全が確認された原発の再稼働を目指す考えの党本部と足並みがそろっていない。
 昨年の衆院選で自民党は環太平洋連携協定(TPP)をめぐり「聖域なき関税撤廃を前提とする限り交渉参加に反対」と慎重姿勢を訴えた。ところが政権についたとたん、あっさりと交渉参加にかじを切った。自民党道連はさらに踏み込んで「暮らしを脅かすTPPを断固阻止する」と明言していた。農業団体などから「裏切りだ」との不満が噴出したのは当然である。この現状に対し、どう責任を取るのか。地方組織が党本部と違う公約を掲げ、選挙の後になってほごにするのでは民主主義は成り立たない。自民党は野党当時、民主党政権の「マニフェスト違反」を厳しく批判した。政権についたいま、有権者は自民党に厳しい目を光らせていることを忘れてはならない。きのうの自民党全国幹事長会議では各地から参院選に向けた要望が相次いだ。中央の方針を地方に押しつけるのではなく、地方の声を積み上げて公約をまとめる姿勢が大事だ。

*2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2479396.article.html
(佐賀新聞 2013年6月9日) 「沖縄の本質伝えてない」 地元記者ら指摘
 沖縄の今とメディアの在り方について地元紙記者らと考える市民対話集会(佐賀新聞労組主催)が8日、佐賀市で開かれた。沖縄の記者は「本土側のメディアは沖縄の姿を伝えていない。『沖縄問題』の本質は、沖縄だけでは解決できない『日本の問題』だ」と指摘した。基地問題を取材しているフリーライターの屋良朝博さんは、在沖縄米兵の6割を占める海兵隊が年間9カ月外国に遠征していること、佐賀と比較しても平壌や台北との距離に大差はないことを挙げ、「政府が基地を置く理由にする抑止力や地理的優位性には根拠がないのに、本土のメディアは分析をせず、論じようともしない」と批判した。
 日本維新の会の橋下徹共同代表の慰安婦をめぐる発言について、沖縄タイムスの謝花直美記者は「日本軍が沖縄に駐屯してきて130カ所の慰安所が作られた。沖縄の女性がどう虐げられてきたか。そこを理解していれば、米軍は風俗を使えばいいなどと口が裂けても言えないはず。これは沖縄を周辺視している日本の問題でもある」と訴えた。
 琉球新報の与那嶺路代記者は、ワシントン特派員として普天間飛行場の県外移設を掲げた鳩山政権に対する米側の動きを取材。「日本で報じられたように、米国は怒っていなかった。怒っていたのは日米合意に関わった一部の人間だけ。本土メディアのニュースソースは大使館などの官僚で、本当の取材をしていなかった」と明かし、「地元紙として沖縄の問題をどこよりも深く掘り下げていこうと思った」と力を込めた。
 佐賀新聞は、地方紙同士で視座を共有しようと、今年の元日と憲法記念日に沖縄の地元紙2紙の基地問題をめぐる記事を転載。この日は市民や記者ら約40人が議論した。

| 辺野古・普天間基地問題::2012.2~2015.3 | 07:52 PM | comments (x) | trackback (x) |

PAGE TOP ↑