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2014,03,30, Sunday
*1より 中央公園の桜 姫路城の桜 熊本城の桜 *1のように、桜の開花予想が発表され、浮き浮きする気分の季節を迎えたが、見る度に怒りを覚えるのが、満開の桜の風景を台無しにする色や形をした提灯が下げられることだ。 上の左から二番目の写真は、私の自宅近くの公園で満開になる桜並木に、ふじみ野市観光協会が赤、ピンク、青、緑、黄色の提灯を下げたところだが、その提灯のため桜の美しさが台無しになり、私は毎年がっかりしている。この提灯はダサすぎて風景にくぎを刺し、観光にプラスどころかマイナスだろう。「桜=花見の宴会」という発想しか浮かばないのは、いくら何でもセンスが悪すぎ、街づくりも推して知るべしだ。 そこで、姫路城の桜、熊本城の桜を検索してみたところ、城とのバランスがよく、熊本城は夜間にライトアップされて、見ごたえがあった。城が無くても、夜間にLED照明でライトアップしたり、他の花と組み合わせたりして、現代的でおしゃれな雰囲気を出してもらいたい。 *1:http://www.excite.co.jp/News/weather/20140326/Tenkijp_481.html (tenki.jp 2014年3月26日) 2014年 桜開花予想(第6回)中国地方~関東は開花ラッシュ 日本気象協会では第6回桜の開花予想を発表しました。四国からスタートした2014年の桜前線は本州へ渡り、24日は名古屋と静岡、25日は広島と東京都心、26日は和歌山で開花しました。27日は大阪や京都の開花予想日です。来週の中ごろにかけて、中国地方から関東地方は桜の開花ラッシュが続く見込みです。各地の開花日は概ね平年並みでしょう。 PS(2014年3月31日追加):*2のように、旅館のおかみ会が行動している地域があったり、自然や他の花との調和で、さらによくなっている桜の景色があったりもする。 *2より 水仙と桜の小道 川べりの桜 チューリップ畑と桜 *2:http://qbiz.jp/article/34662/1/ (西日本新聞 2014年3月30日) 人吉温泉「さくら会」元気に20年 青井阿蘇神社に植樹 熊本県人吉市の温泉旅館・ホテルのおかみでつくる「人吉温泉さくら会」(会長・富田千鶴子鍋屋本館おかみ)が発足20周年を迎え、市を代表する観光名所の国宝・青井阿蘇神社(同市上青井町)の境内一角に桜を植樹し、記念碑を設置した。トレードマークのピンクの法被をまとい、市内外でPR活動に奔走して20年。発足当時からほぼ変わらぬメンバーたちは、さらなる人吉の活性化へ意欲満々だ。さくら会は九州自動車道人吉−えびのインターチェンジ間開通前年の1994年10月に設立。イベント時の観光宣伝はもとより、温泉水を使った化粧水や球磨焼酎を注ぐ酒器など、ご当地商品の企画開発にも携わってきた。現在のメンバーは旅館など11施設のおかみら12人。植樹したのは高さ2メートルほどのしだれ桜2本で、法被と同じピンク色に色づくという。黒御影石を使った記念碑(縦45センチ、横70センチ)には各旅館名とおかみの名前を彫り込んだ。どちらも神社入り口にあり、参拝客にも目立つ場所だ。人吉温泉と球磨川下りがデザインされた法被は、会の活動と同様、この20年間色あせていないという。24日の記念碑除幕式で、富田会長は「観光活性化のお役に立てばとの思いで皆元気に突っ走ってきた20年だった。今後も人吉を存分にアピールしていきたい」と語った。
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2014,03,29, Saturday
再審が決定し、釈放後 死刑を確定させた証拠の不自然さ (1)最初の袴田事件判決について *1-1に書かれているとおり、冤罪により人の誇りある幸福な人生を奪った行為は、 国家の犯罪である。しかし、*1-3に書かれている先輩判事を説得できなかったとする静岡地裁で死刑判決を書いた1審元裁判官の熊本典道さん(76)は、上司の圧力に屈して冤罪判決を書いたことについては、当然非難されるべきであるものの、2審以降で判決が覆るのを期待していたのかもしれない。 何故なら、*1-2に書かれているように、袴田さんは、拷問のような取り調べの末に追い込まれて自白し、その内容は日替わりで変わり、公判では起訴内容を一貫して否認しており、一審判決は、捜査段階で作られた四十五通の自白調書の四十四通を信用性も任意性もないとして証拠から排斥した上で、残り一通の検察官作成の自白調書だけを証拠として採用し、色もサイズも整合性のないズボンを証拠として死刑を言い渡したからだ。これらは、DNA鑑定しなくても、直ちに不自然さを指摘できる証拠である。 しかし、その矛盾を、当時の弁護士は控訴審で強力に指摘しなかったのだから、警察・検察・裁判所だけでなく、仕事上の利害関係で警察と一体になっている弁護士もまた追及されるべきである。 (2)48年後の再審決定の意味 DNA鑑定しなくても、直ちに証拠の不自然さを追求できる状況にありながら、控訴審でも死刑判決が出た上、48年間も再審決定がなされず、48年後に再審が決定して釈放された意味を考えたところ、48年という期間は、高卒の18歳で警察署に就職した人も66歳となり、当時の関係者でこの事件の真相を知る人はすべて退職して、無事に年金を支給されている時点だった。 つまり、司法は、司法の信頼性を維持するために、無実の個人に冤罪を着せて死刑判決を下し、その関係者がすべて退職するまで、再審を認めず拘束し続けたということなのである。つまり、司法の信頼性維持とその関係者の保護が、一人の人間の人生を奪うことよりも重要だという価値観なのだ。 (3)冤罪で失われたものは大きい 冤罪事件の罪は、①真犯人を探し出して罪の償いをさせる機会を奪うこと ②冤罪になった人の希望に満ちた人生を奪うこと ③真犯人に罪の償いをさせたかった被害者が報われないこと である。今回も①②③のすべてが起こったが、これらの重大な罪に対し、司法自身は、どういう裁きと償いをするのかが重要な注目点だ。 (4)歩ける人を車椅子に乗せたり、健康な人を入院させたりするのは、適切ではない *2-1には、今後は体調を整えてから静岡県内の医療施設で療養すると書かれており、写真や映像にも、歩いて出てきた袴田さんが車椅子に乗っている姿が映し出されたが、歩ける人を車椅子に乗せることは不要であり、健康な人にも病人の意識を与えてマイナスであるため、病院はそのような指示はしない。そのため、何故、車椅子に乗せたのか不明だし、今後の再審の進展のためにその必要があったとすれば、それこそが重要な問題である。 また、袴田さんが長期間の身柄拘束で拘禁症状があるというのは正常な防御反応と思われるし、「袴田さんがやっと『ありがとう』と言った」などと強調しているメディアもあったが、「俺の一生を返せ」と言うのが当たり前の状況であるから、「ありがとう」という言葉は、努力して再審までこぎつけてくれた人のみに対して発せられて当然の言葉である。さらに、認知症は、頭脳に刺激のない場所(長期入院も含む)に拘束されていれば起こるのが当たり前で、刺激のある場所に出てくれば治る可能性が高く、糖尿病などの指摘をされている人は一般人にも多い。 なお、*2-1で、静岡地裁の村山浩昭裁判長が再審開始を認めた27日の決定で「捏造の疑いのある証拠によって有罪とされ、死刑の恐怖の下で拘束されてきた。これ以上拘束を続けることは正義に反する」としたのは、本来は当然なのだが、勇気ある行動だ。これに対し、*2-2のように、検察は、釈放を行わないよう申し立てを行っていたが、東京高裁が28日、検察の申し立てを退ける決定を出したのはもっともで、まずは、早急に過ちを正すべきである。 (3)死刑を廃止すればすむ問題ではない 司法のメンツを保つため、冤罪は人を選んで着せられるのだそうで、そういう冤罪が少なくないため、「死刑廃止」の意見もあるが、これは、死刑を廃止すればすむ問題ではない。例えば、①中卒で元プロボクサーの袴田さんのように、皆が先入観と偏見を持って犯人だと納得しそうな人 ②身よりがなく孤立していて親身に再審の請求をしてくれる人がいない人 ③被害者の配偶者 などが冤罪被害者になりやすいそうだ。確かに被害者の家族を逮捕してしまえば、被害を訴える人も親身に再審の請求をする人もいなくなるため、警察は一石二鳥だろうが、このように計算しつくされた悪を許すわけにはいかない。 そして、犯罪のストーリーを考える司法関係者はじめ裁判員やそのストーリーを受け入れる一般市民の先入観や偏見は、このブログの2014年3月26日に記載したように、メディアが、日々、国民の頭脳に刻印し続けて作り出しているものであるため、メディアの偏向報道は、あらゆる場所に問題の基礎を作っているのである。 *1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014032802000164.html (東京新聞 2014年3月28日) 袴田事件再審決定 冤罪は国家の犯罪 裁判所が自ら言及した通り、「耐え難いほど正義に反する状況」である。捏造された証拠で死刑判決が確定したのか。速やかに裁判をやり直すべきだ。事件発生から一年二カ月後に工場のみそタンクから見つかった血痕の付いた衣類五点は、確定判決が、袴田巌さんを犯人と認定する上で最も重視した証拠だった。その衣類について、今回の静岡地裁決定は「後日捏造された疑いがある」と述べた。検察庁も裁判所も証拠の捏造を見抜けないまま死刑を宣告していたのであろうか。 ◆「こちらが犯行着衣」 絶対にあってはならないことであるが、死刑を言い渡した当の裁判所が、その疑いが極めて高くなったと認めたのである。ただならぬ事態と言わざるを得ない。そもそも、起訴の段階で犯行着衣とされたのは、血痕と油の付着したパジャマだった。ところが、一審公判の中でパジャマに関する鑑定の信用性に疑いがもたれるや、問題の衣類五点がみそタンクの中から突然見つかり、検察官は「こちらが真の犯行着衣である」と主張を変更した。袴田さんは、公判では起訴内容を否認したが、捜査段階で四十五通の自白調書が作られていた。毎日十二時間以上に及んだという厳しい取り調べの末に追い込まれた自白で、その内容は、日替わりで変遷していた。一審判決は、そのうち四十四通を、信用性も任意性もないとして証拠から排斥したが、残り一通の検察官作成の自白調書だけを証拠として採用し、問題の衣類五点を犯行着衣と認定して死刑を言い渡した。判決はそのまま高裁、最高裁を経て一九八〇年に確定した。この間、どれほどの吟味がなされたのか。この確定判決をおかしいと考えていたのは、再審を請求した弁護側だけではなかった。 ◆新証拠の開示が鍵に 一審で死刑判決を書いた元裁判官の熊本典道さん(76)は二〇〇七年、「自白に疑問を抱き無罪を主張したが、裁判官三人の合議で死刑が決まった」と告白している。「評議の秘密」を破ることは裁判官の職業倫理に反する暴挙だと批判されたが、この一件で、袴田事件に対する市民の疑念も決定的に深まったのではないか。第二次再審請求審では、弁護団の開示請求を受けて、裁判所が検察側に幾度も証拠開示を勧告。静岡地検は、これまで法廷に提出していなかった五点の衣類の発見時のカラー写真、その衣類のズボンを販売した会社の役員の供述調書、取り調べの録音テープなど六百点の新証拠を開示した。その一部が再審の扉を開く鍵になった。これまでの再審請求事件では、捜査当局が集めた証拠の開示、非開示は検察の判断に委ねられたままで、言い換えれば、検察側は自分たちに都合のよい証拠しか出してこなかったともいえる。弁護側から見れば、隠されたことと同じだ。今回の請求審では、証拠開示の重要性があらためて証明されたといっていい。そもそもが、公権力が公費を使って集めた証拠である。真相解明には、検察側の手持ち証拠が全面開示されてしかるべきだろう。柔道二段で体格もよい被害者を襲う腕力があるのは、元プロボクサーの彼以外にない…。従業員だから給料支給日で現金があることを知っている…。袴田さんは、いわゆる見込み捜査で犯人に仕立てられた。一カ月余り尾行され、逮捕後は、時に水も与えられない取り調べで「自白」に追い込まれる。典型的な冤罪の構図である。無理な捜査は証拠捏造につながりやすい。冤罪であれば、警察、検察庁、裁判所、すべてが誤りを犯したことになる。真犯人を取り逃がした上、ぬれぎぬを着せられた人物の一生を破滅に追い込む。被害者側は真相を知り得ない。冤罪とは国家の犯罪である。市民の常識、良識を事実認定や量刑に反映させる裁判員裁判の時代にある。誤判につながるような制度の欠陥、弱点は皆無にする必要がある。 ◆検察は即時抗告やめよ 司法の判断が二転三転した名張毒ぶどう酒事件を含め、日弁連が再審請求を支援している重要事件だけでも袴田事件以外に八件。証拠開示を徹底するなら、有罪認定が揺らぐケースはほかにもあるのではないか。冤罪は、古い事件に限らない。今も起きうることは、やはり証拠捏造が明らかになった村木厚子さんの事件などが示している。袴田さんの拘置停止にまで踏み込んだ今決定は、地裁が無罪を確信したことを意味している。検察は即時抗告することなく、速やかに再審は開始されるべきである。 *1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11053300.html (朝日新聞 2014年3月28日) 袴田さん、48年ぶり釈放 「国家が無実の個人陥れた」 死刑停止、再審決定 1966年に静岡県の一家4人が殺害、放火された「袴田事件」で、静岡地裁(村山浩昭裁判長)は27日、死刑が確定した元プロボクサー袴田巌(いわお)さん(78)の再審開始を認める決定をし、袴田さんは同日夕、東京拘置所から釈放された。逮捕から48年ぶり。死刑囚が再審決定と同時に釈放されるのは初めて。検察側は身柄をとどめるよう地裁に求めたが、退けられた。決定は、物証が捏造(ねつぞう)された疑いに言及し、「捏造する必要と能力を有するのはおそらく捜査機関(警察)のほかにない」と指摘。「国家機関が無実の個人を陥れ、45年以上拘束し続けたことになり、刑事司法の理念からは到底耐え難い」と悔恨もにじませた。今回の第2次再審請求審では、犯行時に着ていたとされた「5点の衣類」についていた血痕のDNA型鑑定が実施された。まず11年12月に、被害者のものとされていた血痕が別人のものの可能性が強いことが弁護側の鑑定で判明。12年4月には、袴田さんの血痕とされた白半袖シャツの右肩の血と、袴田さんのDNA型が一致しないとする結果が、検察、弁護側双方の鑑定で明らかになった。検察側は「DNAが劣化していた可能性がある」と信用性を争ったが、地裁決定は弁護側鑑定の信用性を認め、「DNA型鑑定が裁判で提出されていれば、有罪判断に達していなかった」と指摘。5点の衣類は袴田さんのものでも犯行時の着衣でもない可能性が十分あると認定した。5点の衣類は事件の約1年2カ月後、現場近くのみそ工場タンク内からみそ漬けの状態で発見された。弁護側は血をつけた衣類をみそ漬けにする実験の結果、長期間漬かっていた衣類と色が違うと主張。地裁決定も、「事件から相当期間経過した後、みそ漬けにされた可能性がある」として、「後日、捏造されたと考えるのが最も合理的」と判断した。また、5点の衣類のうち、「B」と書かれた札がついたズボンにも言及。確定判決は「B」を肥満体用の表示と認定し、袴田さんが装着実験でズボンをはけなかったのに、元々肥満体用のズボンがみそに漬かっている間に縮んだとしていた。しかし弁護側は、検察側の新たな証拠開示で得られた供述調書の中身から「B」は色を表すと指摘。地裁決定も「ズボンは袴田さんのものでないとの疑いに整合する」と判断した。 ■再審開始決定の骨子 ◆確定判決で犯行時の袴田さんの着衣とされた「5点の衣類」は、弁護側が提出したDNA型鑑定に よれば、袴田さんのものでも、犯行時の着衣でもなく、後日、捏造(ねつぞう)された疑いがある。 ◆5点の衣類が(事件の約1年後にみそ工場のタンクから)発見された当時の色合いや血痕の赤み は、長期間、みそのなかに隠されていたにしては不自然だ。 ◆その他の証拠を総合しても袴田さんを犯人と認定できるものはない。 ◆再審を開始する以上、死刑の執行停止は当然。捜査機関によって捏造された疑いのある証拠で 有罪とされ、極めて長期間、死刑の恐怖の下で身柄を拘束されてきた。これ以上、拘置を続ける ことは耐え難いほど正義に反する。よって拘置の執行も停止する。 ■姉や支持者と車に 袴田巌さんは27日午後5時ごろ、東京拘置所(東京都葛飾区)から釈放された。同20分すぎ、姉のひで子さん(81)や支援者らと車に乗り込んだ。ひで子さんらは釈放前に20分ほど面会。立ち会った弁護士によると、巌さんは当初、「袴田事件は終わった」などと再審開始を信じない様子だったという。拘置所から外に出たことがないため、ぼろぼろの靴しかなく、靴は拘置所から借りた。巌さんとひで子さんはこの日、都内のホテルに宿泊。ビールとケーキを用意したが、疲れた様子で、すぐに寝てしまったという。 ◆キーワード <袴田事件> 1966年6月30日未明、静岡県清水市(現・静岡市清水区)のみそ製造会社専務(当時41)宅から出火。焼け跡から専務、妻(同39)、次女(同17)、長男(同14)の遺体が見つかった。全員、胸や背中に多数の刺し傷があった。県警は同年8月、従業員の袴田巌さん(同30)を強盗殺人などの疑いで逮捕。一審・静岡地裁は袴田さんは家を借りるための金が必要で動機があるなどとして死刑を宣告した。 <おことわり> これまで「袴田巌死刑囚」と表記してきましたが、刑の執行停止や釈放などを受け、今後は「袴田巌さん」と改めます。 *1-3:http://mainichi.jp/select/news/20140327k0000e040162000c.html (毎日新聞 2014年3月27日) 袴田事件:「やっていません」に涙出る…1審死刑の裁判官 静岡市(旧静岡県清水市)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして強盗殺人罪などで死刑が確定した元プロボクサー、袴田巌死刑囚(78)側の第2次再審請求。静岡地裁(村山浩昭裁判長)は27日、再審を開始し、死刑執行を停止する決定を出した。1審・静岡地裁で死刑の判決文を書いた元裁判官、熊本典道(のりみち)さん(76)は「公判で袴田さんが『やっていません』と言った姿が忘れられない。思い出すと涙が出る」と、今でも悔やみ続けている。真っすぐに裁判長を見据えて受け答えする袴田死刑囚の様子や、任意性に乏しい供述調書などを通じ、「有罪認定は難しい」と思っていた。だが、結審後に判決文を検討する中で、結果的に先輩判事に押し切られた、と振り返る。半年後、耐えられず退官し、弁護士に転じた。合議の秘密を破り、第1次再審請求中の2007年、「無罪の心証があった」と告白したが、請求棄却が確定した。先月末には古巣の静岡地裁を訪ね、再審開始を求める上申書を提出。「自分は他の裁判官を説得できなかった。償いをしたい」と訴えた。 *2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140328&ng=DGKDASDG2704V_X20C14A3CC1000 (日経新聞 2014.3.28) 袴田さん「ありがとう」 、再審決定、48年ぶり釈放 1966年に静岡県で一家4人を殺害したとして死刑が確定し、静岡地裁が再審開始を決定した元プロボクサー、袴田巌さん(78)が27日、東京拘置所から釈放された。66年8月の逮捕以降、約48年にわたり身柄を拘束されていた。弁護団によると、今後は体調を整えてから静岡県内の医療施設で療養する見通しだという。静岡地裁は27日午前、袴田さんの再審開始を認め、刑の執行とともに拘置も停止する異例の決定をした。検察側は身柄を拘束する法的根拠はないと判断し、釈放の手続きをとった。検察側は再審開始の決定については、東京高裁に即時抗告を申し立てる方向で検討している。釈放された袴田さんは27日午後5時20分すぎ、姉の秀子さん(81)らと共に車で東京拘置所(東京・葛飾)を出た。弁護団などによると、袴田さんは長期間の身柄拘束による拘禁症状に加え、現在は認知症も進んでいるとされる。拘置所の医師からは糖尿病などの指摘があったという。静岡地裁の村山浩昭裁判長は再審開始を認めた27日の決定で「捏造の疑いのある証拠によって有罪とされ、死刑の恐怖の下で拘束されてきた。これ以上拘束を続けることは正義に反する」としていた。 お断り:「袴田巌元被告」と表記していましたが、釈放に伴い「袴田巌さん」と改めます。 *2-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140328/k10013328441000.html (NHK 2014年3月28日) 高裁も袴田さんの釈放認める 昭和41年に静岡県で一家4人が殺害されたいわゆる「袴田事件」で再審=裁判のやり直しが認められた袴田巌さんの釈放を、東京高等裁判所も認める決定を出しました。検察が今後、最高裁判所に申し立てを行っても認められる可能性は低いとみられるため、釈放を認めた判断が確定する見通しです。袴田巌さんは昭和41年、今の静岡市清水区で、みそ製造会社の専務の一家4人が殺害された事件で強盗殺人などの罪で死刑が確定しましたが、静岡地方裁判所は27日、再審を認める決定を出しました。さらに裁判所は釈放を認める異例の決定を行い、袴田さんは、昭和41年に逮捕されて以来、およそ48年ぶりに拘置所から釈放されました。これに対して検察は、釈放を行わないよう申し立てを行っていましたが、東京高等裁判所は28日、退ける決定を出しました。今後、最高裁判所に申し立てを行っても認められる可能性は低いとみられるため、釈放を認めた東京高裁の判断が確定する見通しです。検察はこれとは別に、再審開始についても取り消しを求める即時抗告を行う方向で検討しています。
| 司法の問題点::2014.3~ | 12:58 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2014,03,26, Wednesday
「セクハラ系」と「やっかみ系」の記事満載の週刊新潮・週刊文春の電車の中吊り広告だが、この ような悪しき”文化”が無批判な人々の脳裏に刻み込まれていくのは、いろいろな点で問題だ。 (1)女性登用の実態 *1-1のように、日本の女性議員割合は、2014年1月1日現在では127位になり、2013年2月1日の122位からさらに順位を落として先進国の中で最低水準になったそうだ。 また、*1-2のように、内閣府が「コーポレートガバナンス報告書」をもとに女性登用の現状をまとめたところ、指導的地位にある女性の割合を2020年までに全体の30%にする目標を定めているにもかかわらず、取締役に1人以上の女性がいるのは、日本全体でわずか4.1%の企業だったそうだ。しかし、女性の昇進差別と妊娠・出産・育児のハンディは必ずしも関係がない。何故なら、独身・DINKS・両親の協力などで、男性と同じ働き方をしてきた女性にもジェンダーによる昇進差別が存在し、こちらの方が根深いからである。これは、*1-3で、保育所に待ち行列がなく、子育てへの両親の協力も得やすい九州でも、課長級以上の管理職に占める女性の割合は4・7%にすぎず、全国の企業を対象にした7・5%を下回り、九州では全国よりも女性の登用が進んでいない現状から明らかである。 なお、こういう場合、企業は必ず、「女性従業員は昇進意欲が低い」などの女性側の理由を挙げるが、それならば、昇進意欲が高い女性には男性と機会均等で平等な評価によって報いてきたのか、「生意気だ」「性格が悪い」「使いにくい」などとして退職に追い込むことがなかったのかについては、何でも女性のせいにしており、卑怯である。 そして、この現象は、*3-2の小保方晴子博士のSTAP細胞批判にも見られ、利害相反関係になった共同研究者の証言によって、STAP細胞の存在とは関係のない「別マウスの遺伝子検出」のようなことまで、荒探しして批判しているわけである。また、上の写真の週刊誌記事のセクハラ度は、放っておくべきではないレベルに達している。そして、このようなことは、欧米ではあまりなく、女性の軽やかな成功を認めたがらない日本独特の現象だ。 (2)女性の活躍の場について *1-3には、「女性活躍の場、どう拡大」と書かれているが、これは、男女雇用機会均等法に定められているとおり、男性か女性かで採用・配置・昇進・退職における差別を行わず、普通に仕事を与えて男性と同じ知識と経験を持つ女性を増やし、その女性たちをジェンダーで歪んでいない公正な目で評価すれば解決すると断言する。 そして、その知識と経験のある女性たちは、女性のニーズがわかっているため、自然と女性目線での商品開発やサービス向上を行い、女性の活躍の場をさらに増やしていく。 (3)女性の登用は可能か *2-1のように、安倍首相は、「すべての上場企業が女性の登用を進め、執行役員、取締役などの役員のうち1人は女性を登用すること」を経団連に要請してくれた。ここでもやはり、古いタイプの米倉会長は、「欧米と違ってパイが少ないということもあり、結婚すると育児に専念したいという方々も多い。これをどうやって労働市場に誘い込むかということが非常に大きな問題だ」と指摘したそうだが、結婚しても働きたい人を差別なく気持ちよく働かせれば、首相の要請は簡単に達成できると断言する。 これまで、経済界は、「雇用のパイが少ないから」として男性を優遇し、女性には機会を与えない状況を続けてきたが、まさにそれが時代のニーズにあったパイを増やすことができずに、大きな財政赤字を作って愚鈍な景気対策を続けても景気がよくならなかった理由である。そのため、能力に応じてFairに機会を与えるのが、すべてを解決する唯一の方法である。 (4)女性管理職に対するUnfairな要求 *2-2のような女性の管理職登用を奨める記事でさえ、「しなやか(注:セクハラ用語)に駆ける」「女性らしさ(注:ジェンダー用語)が強み」などと題して、佐川急便の南福岡店長である大西さんに、「男と女は違う(注:違いの内容によっては女性差別とジェンダー)。トップダウンの命令ではなく気配りと協調性で束ねたい(注:ジェンダーによる決め付け)」と言わせており、要約すれば、「女性は時間をかけて信頼を得ても、トップダウンのリーダーシップを発揮すべきではない」というメッセージを発している。 さらに、「男性は期限を決めて顧客を一気に攻略。女性はじっくり話を聞き顧客の利益も考える。時間はかかるが一旦信頼関係を築くと次々契約を取り、中長期的な成績は同じ」としているが、これは個人差であって男女差ではない。そのため、短時間で一気に攻略して成功できる女性と顧客の利益を考える男性の双方に対して失礼な内容になっている。また、「共感性や協調性の高さなどが女性の武器」などと書かれているが、男性にも共感性や協調性は重要だし、女性だからといって「共感性」と「協調性」しか武器が無いわけではない。にもかかわらず、こういう決め付け方をするのが、まさにジェンダーであり、ガラスの天井の原因なのである。 なお、「行動経済学では『女性はリスクを避けたがる』『男性は自信過剰で競争を好む』」というのも、聞いたことのない学説だ。実際には、家計に重い責任を持っている男性の方がリスクを避けたがり、マウンティング(行動学用語)で決まった上下関係による順位を重んじる傾向がある(集団における協調性)。 (5)女性差別は教育や評価にも存在するので、直すべきである *3-1で、「理工系学部では近年、女子の受験生が増加」と書かれているが、周囲が何と言おうと自分の信念を貫いた私たちを除き、女性は、ともすれば良妻賢母教育へと教育段階から進路で差別された。つまり、上昇志向の仕事に直結する法学部、経済学部、医学部、工学部などに進む女性は少なく、文学部、家政学部、芸術学部などに行く女性が多いため、企業に就職しても、昇進するために必要な知識に欠け、家庭を選択せざるを得なくなるケースが多いのだ。そのため、本人が働きたければ努力が実って昇進し、やりがいを持って気持ち良く働けるための教育と均等な機会を女性にも与えるべきである。 また、*3-2のように、せっかく勉強して人がやらない仕事をしても、本質とは関係のないことで荒探しをして足を引っ張ったり、上の写真のように男女関係に結びつけたりしていると、*3-3に記載されているように、米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授のような人でさえ、「日本女性と関係するとややこしいことになるから、今後は日本女性と共同研究するのは避けよう」と考えるようになり、日本女性の機会が奪われるので、気をつけてもらいたい。世界は、貴方の周りだけではなく、貴方の常識が世界標準でも、世界最先端でもないのだ。 *1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2642559.article.html (佐賀新聞 2014年3月5日) 女性議員の割合、日本127位 / 先進国で最低水準続く 【ジュネーブ共同】世界の国会議員らが参加する列国議会同盟(本部ジュネーブ)は4日、各国・地域の議会に占める女性の割合調査を公表し、日本は今年1月1日現在で127位だった。昨年2月1日現在の122位からさらに順位を落とし、先進国の中で最低水準が続いた。順位は日本のような二院制の国については下院(日本は衆議院)のデータに基づいている。日本の女性議員の割合は約8%と横ばいだった一方、世界の平均は約22%と過去最高になった。アフリカや中南米諸国などを中心に、女性議員が増加したことが要因。 *1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140207&ng=DGKDASFS0602H_W4A200C1EE8000 (日経新聞 2014.12.7) 女性登用の実態開示、上場企業の17% 内閣府調査 「取締役に女性」は4.1% 内閣府は6日、上場企業に提出が義務づけられている「コーポレートガバナンス報告書」をもとに女性登用の現状をまとめた。役員の男女別の構成のほか女性の活躍推進の目標などを開示した企業は17.6%にとどまった。取締役に1人以上の女性がいるとした企業は4.1%だった。安倍晋三政権は昨年4月、コーポレートガバナンス報告書に女性登用の実態を開示するよう求めた。それ以降に報告書を更新した2995社を調べると、女性が活躍している状況などを記した企業は526社だった。東京証券取引所の17業種のうち最も記載が多かったのは銀行の45.6%。少なかったのは建設・資材の11.3%だった。昨年6月の成長戦略はすべての上場企業に1人の女性役員を置く目標を掲げたが、女性の取締役がいると記した企業は124社にとどまった。成長戦略は官民の指導的地位にある女性の割合を2020年までに全体の30%にする目標を定めている。政府は働く女性のために結婚や妊娠・出産、育児などに応じた支援策を打ち出しているが、登用に十分結びついていないのが現状だ。 *1-3:http://qbiz.jp/article/34042/1/ (西日本新聞 2014年3月20日) 九州の主要企業、女性管理職4・7% 80社アンケート、男性の育休1% 西日本新聞が九州の主要企業に女性の登用についてアンケートしたところ、回答企業80社で課長級以上の管理職に占める女性の割合が4・7%だった。全国の100人以上の企業を対象にした2013年の厚生労働省調査(7・5%)を下回り、全国に比べ九州では女性の登用が進んでいない現状が浮き彫りになった。政府は20年までに指導的立場に占める女性の割合を30%以上にする目標を掲げており、各企業の取り組みが課題になっている。アンケートで女性管理職登用に向けた課題(複数回答)を尋ねたところ、56社が「昇進意欲の醸成」を挙げ、女性側の意識変革を求める声が最も多かった。ただ「女性社員の職域拡大」(40社)「時間外労働削減や有休取得率向上」(30社)などの意見も目立ち、女性の昇進に向けた職場環境整備の重要性を認識していることがうかがえた。政府が上場企業役員のうち1人は女性を登用するよう経済界に求めている点について、アンケートでは女性役員がいる企業が8社(10・0%)にとどまり、役員全体に占める女性の人数は0・9%だった。育児休業関連では、回答企業全体でみた過去3年間の育休取得率は女性が86・3%だったのに対し、男性は1・0%と、依然として男性の育児参加が進んでいない現状が分かった。男性社員が育休を取得した企業は18社(22・5%)だった。アンケートは女性の活躍に関する九州の地場企業の取り組みを探るため初めて実施。2月10日から25日まで、上場企業など209社に回答を依頼し、回答率は38・2%だった。 ◆女性活躍の場 どう拡大 「女性の活躍」が、九州の企業にとって大きなテーマになっている。これまで各企業では、女性が結婚・出産後も働き続け、管理職に昇進する道筋を付ける取り組みが必ずしも十分ではなかった。しかし少子高齢化や経済のグローバル化が進み、人材活用への意識も変わりつつある。 ■有能な人材確保 「女性社員チームが企画した、国産原料を使った新商品が売れている」(理研農産加工)。西日本新聞が実施した地場企業へのアンケートに、こうした声が寄せられた。女性目線での商品開発やサービス向上は、企業の成長に欠かせない。育児関連制度の運用や女性社員登用の状況は近年、女子学生の会社選びの重要なポイントにもなっている。「(社内で)フォーラムを開催し、女性が働く上での問題点について意見を出し合い、改善策を話し合ってきた」(マックスバリュ九州)など、女性が活躍できる環境づくりは、有能な人材の確保にもつながる。 ■成長戦略に明記 政府は成長戦略で、女性の管理職登用の推進など女性の活躍を明記し、経済成長の原動力と位置付けている。背景にあるのは、少子高齢化に伴う労働力人口の減少への危機感だ。15〜64歳の全国の労働力人口は、2013年で6577万人。内閣府は女性の労働参加などが進まなければ、30年に約900万人減ると推計する。男女とも大学・短大進学率は55・6%(2012年度)と差はなく、女性の就業率も海外の主要国とほぼ同水準。しかし、女性の労働力人口の割合は、出産や育児が重なる30代で一度減少する、いわゆる「M字カーブ」を描く。非婚化・晩婚化で減少幅は縮小しているが、非正規雇用が多いのも課題だ。せっかく採用した女性が活躍しないのは、企業にとって経営資源の“無駄遣い”でもある。「女性社員のキャリア継続のため、配偶者の海外転勤に伴う休職制度を導入予定」(TOTO)などの回答にみられるように、雇用を継続する環境を整えることは、企業間競争に備える狙いでもある。 ■取り組み開示も そうした中、女性の活躍に向けた企業の取り組みを開示するよう求める動きも出ている。内閣府は1月末、上場企業の女性の登用状況などをホームページ上で公開。上場企業の32・4%(2月14日現在)が情報を開示している。今回の西日本新聞によるアンケートも、女性の活躍が地域経済の活性化に寄与する、という視点で企画した。回答率は4割弱で「当社は女性が少ない」など回答を控えた企業も少なくなかったが、積極的な姿勢を示す企業も目に付いた。現場で働く女性社員のニーズを組み入れた地元の各企業の取り組みが、さらに他の企業に波及していくかが、女性活躍の鍵を握っている。 ◆優遇せず仕事任せて−福岡女子大・塩次教授 経済発展や人口減少を考えると労働力不足は目前にある。それには女性の活躍が欠かせない。企業が女性を活用すれば、組織としての活力を生み出す。グローバル化の中、企業内の多様性をどう管理するかが重要になる。サービス業の一部で女性の感性を必要とする業種もあるが、基本的には女性もプラスマイナスなく男性と同じ労働力だ。企業はもっと女性に仕事を任せ、管理職に登用してみるといい。手を抜かず責任感を持ってやるとすぐに分かる。その時、女性だから優遇するやり方は、男性も怒るし女性も重荷になる。ごく普通に登用すべきだ。それには、女性を特別視しない男性側の意識変革も迫られている。「ガラスの天井(女性の昇進を妨げる見えない障壁)」という問題もある。一方で、昇進を望まずに企業内で安住する女性もいる。女性には自らを駆り立て能力を磨き、仕事を任されたらチャレンジしてほしい。そのことで新しい自分を発見し、人生が豊かになる。そういう女性を企業は求めている。塩次喜代明・福岡女子大学教授 九州大学経済学部教授として九大ビジネススクール長などを歴任し、2012年から現職。企業の女性リーダーや候補者を対象に、日本経営協会九州本部が13年に始めた「NOMA女性ビジネス・スクール」で塾長を務めた。 *2-1:http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MLHJ0K6TTDTB01.html (Bloomberg.co.jp 2013/4/19 ) 安倍首相:上場企業は役員に1人は女性登用を-経団連などに要請 4月19日(ブルームバーグ):安倍晋三首相は19日昼、官邸で日本経団連の米倉弘昌会長ら経済3団体幹部と会い、すべての上場企業が女性の登用を進め、執行役員、取締役などの役員のうち1人は女性を登用するよう要請した。意見交換会には米倉氏のほか、経済同友会の長谷川閑史代表幹事、日本商工会議所の岡村正会頭らが出席した。首相は女性の登用について「指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%程度とする政府目標の達成に向けて全上場企業において積極的に役員、管理職に女性を登用してほしい。まずは役員に1人は女性を登用してほしい」と語った。首相はこのほか、大学新卒者の採用活動の後ろ倒しや子どもが3歳になるまでの間は男女とも育児休業や短期間勤務ができるような環境整備を求めた。会合に同席した西村康稔内閣府副大臣は、首相の要請は3団体に「前向きに受け止めてもらった」との認識を示した。また、米倉氏は女性の幹部登用について「欧米と違ってパイが少ないということもあり、結婚すると育児に専念したいという方々も多い。これをどうやって労働市場に誘い込むかということが非常に大きな問題だ」と指摘した。西村、米倉両氏はともに会合後、記者団に語った。 *2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140222&ng=DGKDASGG1401C_Z10C14A2MM8000 (日経新聞 2014.2.22) しなやかに駆ける(3)「らしさ」が強み 共感・協調経験糧に 「今日も無事故で気を付けて」とハイタッチ。佐川急便の南福岡店長、大西由希子(37)は毎朝駐車場で、集配に出る約50人のトラック運転手全員と交わす。「スキンシップは仲間意識を高める効果があると聞いたから」。昨年6月に就任して以来の恒例行事だ。運転手からすれば店長は声をかけるのもはばかられる、上下関係に厳しい男社会。軽トラック運転手からたたき上げの大西も、そこで16年働いてきた。「男と女は違う。トップダウンの命令ではなく、気配りと協調性で束ねたい」 ●営業所苦情減る 同社を傘下に持つSGホールディングス。ここ3年で女性を約3千5百人増やし社員の約25%にした。「対応がいい」「気遣いが細やか」と顧客の評判も上々。女性中心に切り替えた営業所では苦情が減った。「女性らしさが新風を吹き込んでいる」(人事部)。昨年11月に日本経済新聞社が20~50代の男女千人に聞いた調査では57%が「仕事上で男女差を感じる」と回答。女性が上回っているものとして、細やかな配慮やコミュニケーション能力、協調性などが挙がった。「どうして男性は取引額が小さい顧客を後回しにするの?」。2月上旬の平日夜、東京都内の会議室で金融機関や化学メーカーなど別々の会社の女性営業職7人が悩みを共有した。ネットワーク「営業部女子課」を主催する人材組織コンサルタントの太田彩子(38)は元リクルート営業職。当時から男女の営業手法の違いが気になった。 ●時間かけ信頼 男性は期限を決めて顧客を一気に攻略。女性はじっくり話を聞き顧客の利益も考える。時間はかかるが一旦信頼関係を築くと次々契約を取り、中長期的な成績は同じ。「共感性や協調性の高さなどが女性の武器。男性をまねなくても結果は出せる」と太田は話す。山科裕子(50)は今年1月、オリックスの女性初の執行役員に就いた。法令順守担当で、女性の資質が生きると感じる。率直な発言は山科のセールスポイント。課長時代、部下のパートの時給を巡り「これが相場」と渋る人事部相手に能力に見合った待遇を勝ち取った。「おかしいところを女性は黙っていられない」。もっとも利点ばかりでもない。行動経済学では「女性はリスクを避けたがる」「男性は自信過剰で競争を好む」といった性差があるとされる。大阪大教授の大竹文雄は「男性の自信過剰傾向が投資や挑戦を促し、革新的な商品やサービスを生み出してきた側面もある」と指摘する。そもそも「らしさ」の定義は難しい。個人差もあるし、性別で固定されるものでもない。紙おむつ「パンパース」を開きやすく改良したのは育児休業中に使いにくいと感じた男性社員。ミサワホームの家事や子育てしやすいという住宅も共働き男性社員の提案だ。「らしさ」と混同しがちな「経験の違い」が強みになることもある。これまで来た道と違ったとしても、押し付けられる「らしさ」ではなく素直に優れた面を生かす道が、さらなる高みにつながる。(敬称略) *3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140225&ng=DGKDASDG2402B_V20C14A2CC0000 (日経新聞 2014.2.25) 理系女子になりたい 受験生、憧れ胸に 国公立大2次試験始まる 国公立大2次試験の前期日程が25日、全国で始まった。理工系学部では近年、女子の受験生が増加。「就職に有利」という思惑に加え、第一線で活躍する女性研究者の姿も理系志望を後押ししているようだ。少子化が進むなか、大学や国も優秀な女子を理工系学部に呼び込もうと力を入れている。東京大理科2類を受験する東京都杉並区の高校3年の女子生徒(18)は薬学部志望。「自分がアレルギー体質でひどいとじんましんが出る。副作用のない薬や肌に優しい化粧品を開発して人の役に立ちたい」という夢がある。「理系は就職にも有利と聞く。卒業後は大手の製薬会社や化粧品会社を目指したい」。東大理科1類を目指す東京都港区の女性(19)は「学習塾で科学史を教えてくれた物理の講師へのあこがれ」が出発点。「材料工学や環境の分野を学び、将来は大学で研究者になりたい」と意気込んでいる。大手予備校の河合塾によると、理工農学部系の大学1年生の女性比率は1990年の9.3%から2013年の19.7%に倍増した。模試受験者の志望先は6年前と比べ、文系はほぼ横ばいだが、理系は2割増。特に医療分野や工学の「建築・土木」「機械・航空」などで女子の増加が目立つという。文部科学省人材政策推進室は「理系分野に進む女性の先輩が増えたことや、高校が理数系の教育に力を入れるようになってきたことが背景にあるのではないか」とみる。東北大は「少子化が進むなか、優秀な女子学生を積極的に呼び込みたい」(女性研究者育成支援推進室)と、06年から地域の進学校で女子大学院生による出前授業を続けている。「研究面でハンディがないことや企業が女性採用に積極的なことを丁寧に説明している」。東北大では自然科学系学部の女性比率が7年間で5ポイント上昇し、12年度は約22%を占めた。京都大工学部も10年度から夏のオープンキャンパスで女子高生限定イベント「テク女子」を開催。女子学生が学生生活や卒業後の進路を説明する企画が人気で「100人の定員は募集開始直後に埋まる」という。理系を志す女子が増えてきたとはいえ、文科省によると日本の女性研究者は14%にとどまり、先進国最低レベル。政府が第4期科学技術基本計画で掲げる「30%」の目標はまだ遠い。文科省人材政策推進室は「多様な発想や視点を取り入れて日本の科学技術を発展させるには女性の力が不可欠。研究活動とプライベートを両立できる研究環境の整備を急ぎたい」としている。 *3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11049166.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2014年3月26日) 別マウスの遺伝子検出 STAP細胞実験、新たな疑問浮上 STAP細胞論文をめぐる問題で、理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーが共同研究者に提供した細胞から、実験に使われていたはずのマウスとは異なる遺伝子が検出されたことがわかった。STAP細胞をつくる実験のデータに、新たな疑問が浮かんだことで、理研が詳しく調べる。理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)が25日、明らかにした。CDBによると、山梨大の若山照彦教授らが、遺伝子解析の結果をCDBの複数の研究者に報告した。英科学誌ネイチャーに論文が掲載された研究では、若山さんは、小保方さんが「STAP細胞」と説明した細胞の提供をうけ、特殊なマウスを作ることで万能細胞だと証明する作業を担った。若山さんらが解析したのは、小保方さんから提供され、その後も保存していた2種類の細胞。論文で書いたものとは別の実験で、小保方さんはいずれの株についても「129」と呼ばれる系統のマウス由来の細胞だとして若山さんに提供した。しかし遺伝子を調べたところ、「B6」というマウスと、B6と129の子どものマウスに由来する細胞とわかったという。ただ、これだけでSTAP細胞の存在が疑われるかどうかは判断できない。CDBの竹市雅俊センター長は同夜、「まだ予備的な解析の段階であるため、今後、詳細な検証を若山教授と協力しながら進めていきます」とのコメントを出した。 *3-3:http://digital.asahi.com/articles/ASG3P1S83G3PUHBI001.html?iref=comkiji_redirect&ref=reca (朝日新聞 2014年3月22日) STAP細胞、米教授強気の理由 発想に自負、異端視も 新しい万能細胞「STAP細胞」の論文は、主要著者のうち米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授だけが撤回に反対している。弟と15年前に研究に着手していて、「アイデアを生んだのは自分」との自負がある。STAP細胞について独自の作製方法を公表、強気な姿勢を崩していない。2月に論文データに疑惑が見つかって以降、バカンティ教授は公の場に姿を現さず、日本メディアの取材にも応じていない。ハーバード大学医学部の関連病院で麻酔科部長を務め、再生医療工学の第一人者としても知られる。人間の耳のような組織を背中にはやしたマウスを1997年に発表し、注目された。ハーバード大に留学した小保方晴子・理化学研究所ユニットリーダーを指導し、今回の論文では総合プロデューサーのような役割を果たした。弟のマーティン・バカンティ氏も米国の病院に勤務する病理医で、英科学誌ネイチャー発表の論文では著者の一人になっている。 ■15年前に「確信」 日本では、理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーらが1月末、神戸市内で記者会見を開いて発表した。これに対し、バカンティ教授は直後の朝日新聞の取材に「まずはっきりさせておきたいのは、STAP細胞のもともとの発想は自分と弟のマーティンから出たことだ」と語った。同教授が論文発表前に共著者らに送った手紙では、「私とマーティンが15年前、他に例のない変わった細胞を発見した。当時から万能性を持っているという確信はあった」と述べている。ハーバード大の地元で発刊される米紙ボストン・グローブによれば、事故やけがで下半身まひになる脊髄(せきずい)損傷の治療に使える新しい細胞を探していたという。この論文は2001年に発表。極端な低酸素状態でも生き延びる「胞子のような細胞」があり、「病気や事故で失った組織を再生させる潜在性を持っている」と報告した。当時所属していた大学に異端視されたことなどから、ハーバード大に移ったという。08年に渡米した小保方さんに今回の研究テーマを与えたのもバカンティ教授だ。 ■共著者らと距離 直接の取材には応じない一方で、病院を通し「データが誤りである証拠がない以上、撤回すべきだとは考えない」(3月14日)との声明を発表。強気の姿勢を見せつつ、日本の共著者らとは距離を置きつつある。今月5日に理研がSTAP細胞の詳しい作製方法を発表すると、バカンティ教授らは「細いガラス管に通すことが極めて重要」などとする独自の方法をウェブサイトで公表した。10日に主要著者の一人、山梨大の若山照彦教授が論文撤回を提案した際も、米紙ウォールストリート・ジャーナルに「重要な論文が同僚研究者の圧力で撤回されたとなればとても残念なこと」とコメントした。バカンティ教授のグループは、すでにサルの脊髄損傷でSTAP細胞の移植実験を進め、臨床試験も準備中と言われる。米国のある再生医療の研究者は「今回の論文を取り下げればこの15年間の研究の信頼を失いかねないという危機感があるのではないか」と語る。(ボストン〈米マサチューセッツ州〉=小宮山亮磨、ワシントン=行方史郎) ■「日本と温度差」 ハーバード大で7年間の研究歴がある内科医の大西睦子さんによると、STAP細胞の問題は、現地では新聞以外でとりあげられることは少なく、「日本とは温度差がある」という。ハーバード大医学部の広報担当者は、「すべての懸念について、徹底的に検討する」などとする声明を出している。ただ、具体的な検討項目は明らかにされていない。大西さんは、「大学が調査をしているとしても、発表までは時間がかかる。それまでに米国のメディアの報道は、さらに沈静化するのではないか」と推測する。肩身の狭さを感じている日本人研究者もいる。大西さんによると、ハーバード大への留学から帰国し、今後の共同研究を計画している研究者や、これから留学しようとしている学生から、「受け入れてもらえるかどうか不安だ」との相談を受けているという。 ◇ 〈STAP細胞〉 体のどんな組織にでも育てる「万能性」を持っているとされる細胞。マウスの体の細胞を、酸性の液体に浸すことで作れる。理化学研究所は、小保方晴子ユニットリーダーがバカンティ教授のもとに留学中に着想を得て作製法を見つけた、と1月末に発表した。ただ英科学誌ネイチャーに掲載した論文に画像の二重使用や他人の論文のコピーが見つかり、日本側の主要著者は撤回に同意している。
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2014,03,25, Tuesday
*2-3より 2014.3.24東京新聞 2014.3.17西日本新聞 (1)原発の安全性は100%保証されるのか *1-1のように、原子力規制委員会は2014年3月6日の審査会合で、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)と九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県)について、過酷事故対策や設備面で重大な問題はないとの認識で一致し、同4日には関電の大飯原発(福井県)と九電の川内原発(鹿児島県)も同様の認識で一致したそうだ。 しかし、規制委は、*1-2のように「私どもは絶対安全とかそういうことは申し上げていない」「お墨付きを与えるためにやっている意識はない」としており、規制委が基準適合を判断したからといって、原発事故のないことが100%保証されたわけではない。さらに、提出された審査資料の厚さが10センチあろうと20センチあろうと、その内容が真実であり、質が高いとは限らないので、そこまで見抜ける審査でなければ審査する意味はない。 そのような中、*1-3のように、西日本新聞は「原発審査、完璧ではないからこそ『公聴会』を」などとして再稼働に前のめりの論調が目立つ。しかし、一度原発事故が起きれば、周辺住民の健康や農林漁業など、生物に関する全てに大きな被害が及ぶため、まず、原発事故は100%起こさないというお墨付きがあった上で、それでも再稼働に反対か否かを決するために公聴会を開くべきなのである。「完璧でないからこそ『公聴会』を開き、そこで了承されれば、過疎地とその周辺住民、農林漁業や国土は犠牲にしてもよい」などという発想をするのは、フクシマ後も進歩していない証だ。 (2)フクシマから学ぶべきこと 1)住民の命と健康について *2-1のように、内閣府原子力被災者生活支援チームは、想定より高い数値が出たため、住民の帰還を妨げかねないとして、当初予定していた結果の公表を見送っていたことが、2014年3月24日に分かったそうだ。そろそろ、住民の命や健康より、地域振興のために住民の帰還を優先している政府の行動を見抜くべきだ。これで、住民の命や健康を守れるわけがないではないか。 2)農産物について *2-2のように、福島県内の農業用溜池576カ所の底の土から、1キロあたり8千ベクレルを超える高濃度の放射性セシウムが検出されていたことが今頃わかり、そのうち14カ所は10万ベクレルを超えるが、国は溜池を除染対象外としているそうだ。最も高濃度の37万ベクレルのセシウムが検出された明戸石池は、住宅街の中心部にあり、その農業用水は、ふもとの田畑で使われているので、いつ底の泥が舞い上がって流れ出すかわからない溜池の危険な農産物を「食べて協力」まですれば、住民は外部被曝だけでなく内部被曝にも晒される。 3)水産物について *2-3のように、事故後3年経ってもまだ試運転中の東電福島第1原発の汚染水処理設備「多核種除去設備(ALPS)」は、汚染水から放射性物質を取り除けないという本質的なトラブルでまた停止し、4月中の本格運転は厳しい状況になったそうだ。三陸の水産物を愛し利用していたすべての人が、この汚染水の被害者であるため、本当に汚染水から放射性物質を取り除く気があったのか否かまで含めて、その理由を明確にすべきだ。 なお、*2-4のように、福島原発の地下水バイパスを福島県漁連に容認させ、県漁連は「苦渋の決断」 をしているが、これは、いろいろな証拠により、最初から計画されていたことだったと思う。つまり、原発推進論者は、ここまで、人工の核種による環境破壊と人命に無頓着な人々の集まりなのである。 (3)もう原発は不要であり、再生可能エネルギーの時代だ そのため、*3-1のように、原発再稼働に反対する立地自治体の地方議員有志でつくる原発立地自治体住民連合が3月24日、原発の安全性などに関する7項目の公開質問状を政府に提出し、川内原発を引き合いに、九電が存在を否定する活断層や巨大噴火のリスクも指摘した。質問状は、リスクを列挙した上で「それでも原発事故は100パーセント起こらないと住民に保証できるのか」と明確な回答を求めたそうだが、阿蘇、桜島、普賢岳の噴火でさえ想定外になっていそうであるため、全くもっともである。 そして、*3-2のように、「自民党内に再生可能エネルギーの導入や普及を訴える『新エネルギー族議員』が形成されつつあり、情報収集や判断に優れた国会議員が入っているようだが、この族議員は歓迎である。 *1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2643186.article.html (佐賀新聞 2014年3月6日) 高浜、玄海原発も重大問題なし / 規制委の審査 原子力規制委員会は6日の審査会合で、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)と九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県)について、過酷事故対策や設備面で重大な問題はないとの認識で一致した。4日には関電の大飯原発(福井県)と九電の川内原発(鹿児島県)も同様の認識で一致している。この日の会合では四国電力伊方3号機(愛媛県)についても議論されたが、規制委事務局幹部は「質問しても(四電から)十分な回答がなく、消化不良だった」と述べ、検討が不十分との見解を示した。規制委は、審査の最終段階となる審査書案作成に進む原発を絞り込む方針。 *1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11009767.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞社説 2014年3月4日) 原発と政治 このまま「安全宣言」か 新たな「安全神話」が形づくられようとしていないか。安倍政権が示したエネルギー基本計画案に、原発再稼働の手順が示された。安全性は原子力規制委員会の専門的判断に委ねる。規制委が新規制基準に適合していると認めた原発は再稼働を進める。国は立地自治体などの理解と協力を得られるよう前面に立つ。要するに、規制委の基準に適合した原発は国が全力で支援して動かすというわけだ。安倍首相は参院予算委員会で「世界で最も厳しい基準で安全だと判断されたものは再稼働していきたい」と述べ、閣僚らからも規制委の判断を「安全宣言」とみなす発言が相次ぐ。だが規制委の田中俊一委員長は「私どもは絶対安全とかそういうことは申し上げていない」「お墨付きを与えるためにやっている意識はない」という。確認しておきたい。新しい規制基準は原発事故以前よりもずっと厳しいが、万全ではない。たとえば、放射能が原発敷地外に放散した場合には周辺住民の避難が必要だが、規制基準に避難計画は入っていない。具体的な計画づくりと実施は、自治体や国の仕事になっている。規制委が基準適合を判断したからといって、住民の安全が保証されるわけではない。人口密集地に近い東海第二(茨城県)、浜岡(静岡県)の両原発や、県庁所在地にある島根原発についても、電力事業者は再稼働をめざしている。防災計画の策定が義務づけられた30キロ圏内の人口は、東海第二が98万人、浜岡では86万人、島根で47万人にのぼる。格納容器が破損する事態となれば、25時間以内に30キロ圏内の避難が必要という試算もある。津波や地震を伴う複合災害となれば、道路の寸断や大渋滞も起きるだろう。そうした中で、これだけの人を被曝(ひばく)させずに避難させることができるのか。日常を砕かれる住民への賠償の仕組みが全く不備だったことも、福島での事故で明らかになった。日本最大だった東京電力ですら支払いは不安だらけだ。他の事業者ならなお困難なのに、新たな仕組みも詰めないまま見切り発車するのか。事故の教訓のひとつは、万一に備えることだ。規制委の適合判断でどこまでリスクが減らせるか。それだけでは足りないものは何なのか。そこを見極め、国民に正直に説明することが、政治の使命である。規制委の判断をもって、住民を守る安全論議に終止符を打つことではない。 *1-3:http://qbiz.jp/article/34234/1/ (西日本新聞 2014年3月24日) 原発審査、完璧ではないからこそ「公聴会」を 原発再稼働の前提として原子力規制委員会が進める審査は、九州電力の川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)を優先することが決まり、大詰めに入った。だが、ここにきて審査終盤に科学的な意見を地元で聴く「公聴会」(仮称)をめぐり、規制委と立地自治体が対立している。地元の要請と共催を条件としたい規制委と、あくまでも規制委の責任での開催を求める自治体。最悪なのは、押し付け合いの末、住民が原発の安全性を考える貴重な機会が失われることだ。「規制委の責任で(公聴会の)位置付けや対象、開催範囲を明確にして、主催すること」。原発がある道と県の知事と議会議長らが、今月に入って相次いで同様の要請書を規制委に提出した。26日に公聴会の開催要領を公表する規制委は、開催条件を変えるつもりはなさそうだ。このままでは、自治体から要請がなく、開催されない恐れがある。なぜ、こんなに及び腰なのか。「今度やらせが起きれば終わり…」。関係者はこう漏らす。旧原子力安全・保安院が、九電玄海原発(佐賀県玄海町)のシンポジウムなどで電力会社に動員を要請した「やらせ問題」。原発不信を高めた苦い経験として、国と自治体の記憶に刻まれている。規制委は同じ過ちを犯さないため、開催場所や手法などを自治体に決めてもらおうと考えた。これに対し、自治体側は「責任だけ押し付けるな」と反発している。迷わずに開催すべきだ。理由は大きく二つある。一つは、規制委の審査が完璧ではないからだ。過酷事故対策などが加わった新規制基準による審査は、初めての経験。従来2年以上かけていた審査を、昨年7月から急ピッチで進めている。審査に提出される資料が厚さ10センチ近いのも珍しくない。「われわれも完全とは言えない」(田中俊一委員長)というなら、外部の意見に真摯(しんし)に耳を傾け、精度を高める必要がある。もう一つは、鹿児島、佐賀両県に原発の安全性を評価する組織がないことだ。四国電力伊方原発がある愛媛県では独自の委員会が精力的に活動し、関西電力大飯原発などがある福井県は再稼働の是非まで自ら判断するという。類似の組織がない鹿児島、佐賀両県では、地元ならではの科学的な知見を吸い上げ、検討する場が乏しい。「3・11」からまだ3年。国民の原発への不安はまだ強い。丁寧な手順が求められる重要な場面で、国も、自治体も、逃げることだけは許されない。 *2-1:http://mainichi.jp/select/news/20140325k0000m040151000c.html (毎日新聞 2014年3月25日) 福島原発事故:被ばく線量を公表せず 想定外の高い数値で ◇内閣府のチーム、福島の3カ所 東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示の解除予定地域で昨年実施された個人線量計による被ばく線量調査について、内閣府原子力被災者生活支援チームが当初予定していた結果の公表を見送っていたことが24日、分かった。関係者によると、当初の想定より高い数値が出たため、住民の帰還を妨げかねないとの意見が強まったという。調査結果は、住民が通常屋外にいる時間を短く見積もることなどで線量を低く推計し直され、近く福島県の関係自治体に示す見込み。調査結果を隠したうえ、操作した疑いがあり、住民帰還を強引に促す手法が批判を集めそうだ。毎日新聞は支援チームが昨年11月に作成した公表用資料(現在も未公表)などを入手した。これらによると、新型の個人線量計による測定調査は、支援チームの要請を受けた日本原子力研究開発機構(原子力機構)と放射線医学総合研究所(放医研)が昨年9月、田村市都路(みやこじ)地区▽川内村▽飯舘村の3カ所(いずれも福島県内)で実施した。それぞれ数日間にわたって、学校や民家など建物の内外のほか、農地や山林などでアクリル板の箱に個人線量計を設置するなどして線量を測定。データは昨年10月半ば、支援チームに提出された。一般的に被ばく線量は航空機モニタリングで測定する空間線量からの推計値が使われており、支援チームはこれと比較するため、生活パターンを屋外8時間・屋内16時間とするなどの条件を合わせ、農業や林業など職業別に年間被ばく線量を推計した。関係者によると、支援チームは当初、福島県内の自治体が住民に配布した従来型の個人線量計の数値が、航空機モニタリングに比べて大幅に低かったことに着目。関係省庁の担当者のほか、有識者や福島の地元関係者らが参加する原子力規制委員会の「帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム」が昨年9〜11月に開いた会合で調査結果を公表し、被ばく線量の低さを強調する方針だった。しかし、特に大半が1ミリシーベルト台になると想定していた川内村の推計値が2.6〜6.6ミリシーベルトと高かったため、関係者間で「インパクトが大きい」「自治体への十分な説明が必要」などの意見が交わされ、検討チームでの公表を見送ったという。 *2-2:http://digital.asahi.com/articles/ASG2G014KG2FUGTB00Y.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2014年2月25日) 福島のため池に高濃度汚染土 10万ベクレル超14カ所 福島県内の農業用ため池576カ所の底の土から、1キロあたり8千ベクレルを超える高濃度の放射性セシウムが検出されていたことが県などの調査でわかった。うち14カ所は10万ベクレルを超えていた。国はため池を除染対象外としているが、農業用水を供給している池や住宅街にある池も多い。汚染土の農地流出や住民の健康被害を不安視する県は、国に汚染土の処理を求めている。8千ベクレルを超える汚染土などは、国の責任で処分する指定廃棄物に相当する。また、環境省は県内で発生する除染廃棄物のうち10万ベクレルを超えるのは2千分の1以下と推定している。県によると、県内の農業用のため池は3730カ所。県と農林水産省東北農政局は2012年2月~昨年12月、地域のバランスを考えて選んだ計1939カ所の底にある土壌を初めて調べた。その結果、東京電力福島第一原発事故で住民が避難した国の避難指示区域内では108カ所(調査対象の41・2%)、事故後も水田や畑にため池の水を供給している同区域外では福島市や伊達市などの中通り地方を中心に468カ所(同27・9%)から土1キロあたり8千ベクレル超のセシウムが検出された。10万ベクレルに達した池は区域内で9カ所、区域外で5カ所あり、最高は区域内にある双葉町の大南廹(おおみなみさく)ため池(39万ベクレル)だった。県農地管理課によると、事故直後に原発から飛散したセシウムがちりに付着して雨とともに降り注いだり、周囲の山林から土砂と一緒に流れ込んだりして、ため池に蓄積したとみられる。担当者は「すり鉢状で土砂がたまりやすいため池は、周囲の汚染土壌が集まり、特に高濃度になりやすい」と話す。また、同課によると、高濃度セシウムが見つかった池の中には、事故後も夏場に水位が下がり、底の土がむき出しになる所がある。渇水や大雨で濁った池で取水し、農地に汚染土が流れ込む恐れもある。住宅街の池も多く、土が露出すれば周辺住民の健康被害の心配もあるという。一方、環境省除染チームの担当者は「住民の健康に影響が出るほど周辺の空間放射線量は上がっていない」として、現時点では除染しない構えだ。農水省防災課も「除染は環境省の所管。農水省の事業として検討対象にしていない」と及び腰で、池の汚染状況を環境省に情報提供するにとどまる。除染費用は放射性物質汚染対処特措法に基づいて国が東電に請求できる。だが、農水省が土の除去をすれば除染とみなされず、国費負担になる可能性があるという。県農地管理課の試算によると、中間貯蔵施設への輸送も含む全てのため池の除染費用は約154億円。国が新年度予算案で計上した除染費用は約2600億円。菊地和明課長は「この1割弱で賄える。どこの予算でもいい。お金さえあれば作業は県でもやれる」と、一刻も早い予算化を求めている。汚染土の扱いが宙に浮いたまま、春には再び池の水で農作業が始まる。 ■「コメ作れるのか」 避難指示区域外で最も高濃度の37万ベクレルのセシウムが検出されたのは、第一原発の西約55キロにある本宮市高木の明戸石(みょうといし)池。1980年代から開発され、高台の20万平方メートルに392世帯の住宅や高校などが集まる住宅街の中心部にある。池の水はセシウムが検出下限値未満。農業用水として、ふもとの田畑で使われている。根本得夫さん(65)はこの水を約30アールの田に引き、稲作を続けている。事故後に収穫したコメは全袋検査で、すべて検出下限値未満だった。だが、不安は消えない。「祖父の代から利用している池が使えなくなれば、コメを作れなくなる」とため息をついた。明戸石池の近くに住む町内会長の石井清さん(71)は「池の水が干上がって、土が空気中に舞い上がったら、ここに住めなくなるかも。行政は何の対策もしないつもりか」と憤る。 ◇ 水環境に詳しい独立行政法人農研機構農村工学研究所の白谷栄作・研究調整役の話 年月がたてば堆積(たいせき)した土でため池の底が浅くなったり、少雨で水位が下がったりして、汚染土が露出する危険も高まる。生活圏にあるため池の高濃度汚染土は早く除去すべきだ。 *2-3:http://qbiz.jp/article/34196/1/ (西日本新聞 2014年3月23日) 汚染水「浄化完了」一層困難に 東電 試運転中の東京電力福島第1原発の汚染水処理設備「多核種除去設備(ALPS)」が、汚染水から放射性物質を取り除けないトラブルで停止、東電が目指す4月中の本格運転は厳しい状況になった。敷地内の地上タンクにたまり続ける汚染水の浄化を来年3月までに完了するとの目標達成も一層困難になってきた。ALPSはトリチウム以外の62種類の放射性物質を除去でき、汚染水対策の切り札とされる。18日に発覚したトラブルでは、3系統のうち1系統の出口で17日に採取した水からベータ線を出す放射性物質が1リットル当たり最高1400万ベクレル検出。本来なら、数億ベクレル程度の汚染水が数百ベクレル程度まで浄化されるはずだった。水の採取が週3回だけだったため異常の把握が遅れ、浄化できなかった約2500トンの汚染水が「J1」と呼ばれるタンク群に流れ込み、浄化済みの水と混じって汚染が拡大。タンク21基に計約1万5000トンが入っており、東電は汚染状況の確認に追われている。敷地内の汚染水を来年3月までに浄化するとの目標は、昨年9月に安倍晋三首相が第1原発を視察した際に、東電の広瀬直己社長が表明した。達成には汚染水を1日当たり1960トン処理しなければならない計算で、ハードルは極めて高い。試運転中のALPSは3系統がフルに運転すると1日で約750トンを処理できるとされ、東電は同規模の設備を増設する方針。さらに国の補助を受けて整備する「高性能ALPS」も導入し、今年10月以降、計3設備で処理量を増やす計画だ。尾野昌之原子力・立地本部長代理は「改善点を新しい設備に反映させる。今回の件が、ただちに計画に影響を与えるとは思わない」とする。だが今回のトラブルの原因究明や、設備の洗浄などにかかる時間は不明で、本格運転の見通しは立たない。3設備を合わせても処理量は1日約2000トンで、1960トンを維持するには綱渡りが続く。 *2-4:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2651923.article.html (佐賀新聞 2014年3月25日) 福島原発、地下水バイパスを容認 / 県漁連「苦渋の決断」 福島県漁業協同組合連合会(県漁連)は25日、いわき市内で組合長会議を開き、東京電力と国が福島第1原発の汚染水対策で計画している「地下水バイパス」を容認することを決めた。県漁連の野崎哲会長は記者団の取材に「福島第1原発の廃炉の一助になるため、責任をもって回答した。容認は漁業者にとって苦渋の決断だ」と述べた。野崎会長は、経済産業省と東電に対し、排出する地下水に含まれる放射性物質濃度の基準を厳守することや、風評被害対策など5項目の要望書を手渡した。地下水バイパスは、原子炉建屋に入る前の地下水をくみ上げ、海に放出する計画。 *3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014032502000162.html (東京新聞 2014年3月25日) 原発事故絶対ない 保証あるのか 立地議員連合 政府に質問状 原発再稼働に反対する立地自治体の地方議員有志でつくる原発立地自治体住民連合は二十四日、原発の安全性などに関する七項目の公開質問状を政府に提出した。今後、最も早く再稼働する可能性が高い九州電力川内(せんだい)原発を引き合いに、九電が存在を否定する活断層や巨大噴火のリスクも指摘した。質問状は、リスクを列挙した上で「それでも原発事故は百パーセント起こらないと住民に保証できるのか」と明確な回答を求めた。回答がない場合、国会議員を通じ、閣議決定した回答が義務付けられる質問主意書を政府に提出する。共同代表を務める福島県いわき市の佐藤和良市議は国会内で記者会見し「原子力規制委員会は福島の汚染水対策に全力を挙げないといけないのに、川内の再稼働に全力を挙げている」と批判。住民連合を支援する作家の広瀬隆氏は「地元住民は自分たちの生活や命が奪われる恐怖と隣り合わせだ。まずは川内の再稼働を阻止しないといけない」と訴えた。質問状は規制委の審査に対する第三者チェック機関の設置時期や全原発について耐えられる直下型地震のマグニチュードの回答も求めた。同連合の参加議員は十三道県の百四十七人。 *3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11047349.html?_requesturl=articles/DA3S11047349.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11047349 (朝日新聞 2014年3月25日) 「新エネ族議員」我も我も 自民、予算拡大にらみ 自民党内に、再生可能エネルギーの導入や普及を訴える「新エネルギー族議員」が形成されつつある。国の新たなエネルギー基本計画に、再生可能エネルギーの数値目標を盛り込むよう要求しており、予算獲得を狙ったアピール合戦の様相も呈している。「私は水素族の族長だ」「私はメタン(ガス)族だ」。原発再稼働派が幅をきかせる自民党だが、今月に入ってからの党資源・エネルギー戦略調査会などでは、新エネルギー別に自ら「族」を名乗る議員が続出している。木質バイオマス発電を推進する「バイオ族」、水素による燃料電池などの普及を目指す「水素族」、メタンハイドレート採掘の技術革新を訴える「メタン族」などが代表格で、「国策として推進を」と政府に迫っている。背景には「脱原発」への動きに加え、新エネルギーへの予算拡大が見込まれる中、発電施設の選挙区への誘致などをにらんで、今から影響力をはたらかせておこうという狙いもありそうだ。 PS(2014.3.26追加:朝日新聞掲載の核燃料税批判は不当である):*4に、「原発停止状態でも2014年度以降、少なくとも年間計109億円の税収が確保される」「税収の大半は値上げされた電気料金で賄われており、電気利用者に負担が押しつけられている」「新たな仕組みでは、原発が止まっていても一定額の税収を確保できるためだ」と批判的に書かれているが、これは的を得ない批判だ。 その理由は、原発停止状態でも、使用済でも、核燃料を保管している限り、立地自治体や周辺自治体には環境リスクがあり(フクシマ以降、明確になった事実)、このリスク料として地方自治体は核燃料税を徴収しているからだ。そのため、これを無料にすれば、原発由来の電力利用者は、甚大な公害のリスクを与えながら対価を支払わないフリーライダー(経済学用語)になる。 そのため、このブログの「原発」のカテゴリーに記載してきたように、電力会社は発電方法毎に子会社を作って収益と費用を明確に区分し、電力利用者が、どの発電方法由来の電力を使用するかを選択できるようにすべきであるし、電力自由化を行って、旧電力会社の地域独占を排することが必要不可欠なのだ。 なお、玄海町の場合は、原発からの交付金をもらっている間に、薬草栽培の研究、鯛の養殖、高速道路へのアクセス道路の整備など、脱原発後を見据えた投資もしてきたが、原発立地地域や周辺自治体が原発依存から本当に抜け出せるためには、通常の企業を誘致したり、産業を育てたりしなければならず、それには、まず原発のリスクを取り除く必要がある。 そのためには、早急に原発を廃炉にして、現在、保管してある使用済核燃料をどこかに運び出し、通常の産業を振興できる体制の整備を行う必要がある。しかし、*4のように、メディアが浅薄な知識で視野も狭いまま一方的な批判を繰り返せば、まともなことでも悪いことであるかのようなイメージをつけられるため、メディアの記者はもう少し深く勉強して、このような批判はやめるようにすべきだ。 *4:http://digital.asahi.com/articles/ASG373WMBG37UTIL00Q.html?iref=comkiji_redirect&iref=comtop_6_04 (朝日新聞 2014年3月26日) 原発止まっても核燃料税 8道県、109億円税収確保 稼働している原発の核燃料に課してきた核燃料税の仕組みを、原発が止まっていても電力会社などに課税できるように原発を抱える八つの道県が変えていたことがわかった。朝日新聞の調べでは、これにより原発停止状態でも2014年度以降、少なくとも年間計109億円の税収が確保されることになった。税収の大半は値上げされた電気料金で賄われており、電気利用者に負担が押しつけられている構図が浮かんだ。核燃料税は、自治体が地方税法で定められた住民税などのほかに、条例で課すことができる「法定外普通税」の一つ。原発の安全対策に使うとして福井県が1976年に始めた。東京電力福島第一原発の事故前は、古くなった核燃料の代わりに新しいものを挿入するたびに価格に応じて課税する仕組みで、原発が動いていることが前提だった。ところが、朝日新聞社が全国13の原発立地道県を調べたところ、8道県が事故後に、原子炉の規模を表す出力に応じて課税できる「出力割」を採り入れる条例を作っていた=表。新潟、静岡、島根の3県も導入を検討中だ。新たな仕組みでは、原発が止まっていても一定額の税収を確保できるためだ。現在、全国48基のうち稼働している原発はない。12年度実績では、13のうち8道県が税額ゼロだった。福井県は11年11月、最初に新制度を導入。それまでは原発停止中の税収はゼロだが、出力割によって常に年間60億円が入ることになった。同県税務課の担当者は「稼働の有無に税収が大きく左右され続けるのは好ましくない」と説明する。青森県は12年4月に出力割を導入し、今年4月から濃縮されるウラン製品などにかける税率を2・3倍にすることも決めた。4月以降、年間37億円増える。これを加えると、青森を含めた8道県は少なくとも146億円の税収を得ることになる。一方、福島県は「原発の稼働を前提とするはずの核燃料税は福島の状況にそぐわない」とし、12年12月に核燃料税をやめた。宮城県も13年6月の条例更新時に出力割の導入は見送った。核燃料税の増額分は、電気料金の値上げ幅に入れられていた。電力各社が13年、料金値上げ申請で経済産業省に提出した資料によると、北海道、関西、四国、九州の電力各社がそれぞれ、北海道、福井県、愛媛県、鹿児島県の核燃料税の増額分を、料金算定の基礎となる経費「原価」に上乗せしていた。核燃料税は道県の一般会計に入り、交付金として原発立地・周辺の市町村に一定割合が支払われることが多い。各道県は出力割導入や増額の理由について「福島事故により安全対策の必要性が増えたため」とするが、交付金の使途を見ると、物産館の建設費や商店街活性化策など安全対策からは遠い事業もある。核燃料税の税率を決める際、地方税法では納税する電力会社から意見を聴くよう定めているが、「電力料金を負担する住民の意見を聴く機会も必要だ」という意見が地方財政審議会では出ている。(大谷聡) ◇ 〈核燃料税〉 自治体が条例で独自に課税する法定外普通税の一つ。福島県を除く原発立地の全12道県が導入。このほかに、新潟県柏崎市と鹿児島県薩摩川内市が「使用済み核燃料税」を採り入れている。2012年度決算では、法定外税のうち原子力関係が7割を占める。総務相の同意を得る必要はあるが、税率は実質的に自治体のさじ加減次第と言われる。電力各社でつくる電気事業連合会によると、電力9社が支払った核燃料税は2010年度に計242億円、11年度に計59億円、12年度は67億円。 ◇ 〈清水修二・福島大教授(地方財政学)の話〉 福島事故により、電源三法交付金など原発を巡る仕組みは知られるようになってきた。だが、核燃料税を巡るからくりで、電気料金の使われ方に問題があることを市民はもっと認識すべきだ。福島事故後にもかかわらず、原発立地地域が原発への依存を続けていることの現れで、悪循環から抜け出さなければならない。
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2014,03,21, Friday
檜(ヒノキ)林 杉林 竹林 松林 (1)クールでスマートな木材の利用をするには? 木材は、戦後の植林事業の成果が出て、現在では、日本に豊富な資源となっているが、住宅や家具は国産の木材をあまり使わない構造になってしまっているため、*1のように、林野庁が後援し、佐賀新聞社と全国地方新聞社連合会が主催して、「木材の利用を考えるシンポジウム」を開かなければならないくらいの状況だ。 そして、利用されなければ、木材の販売価格は安くなるため、間伐などの手入れも進まず、公費で補助して間伐しても、労賃を節約して間伐した木材を搬出せずに放置するようなもったいないことをしている。しかし、林業を付加価値の高い産業にすれば、森林資源の多い地方が元気になるので、クールでスマートな木材の利用を進めたいわけだ。 (2)どうやって利用方法を開発すればよいか 1)大学で取り上げるのが有効 では、どうやってクールで、スマートで、高付加価値の木材の使用方法を開発するかについては、このような状況を理解した上で、大学が、基礎研究と人材育成を行うのがよいと思う。 *2のように、佐賀大学は、佐賀県立有田窯業大学校を統合し、「有田」「唐津」といったブランド力の高い焼き物産地として、次代を担う作家を養成し、創作をビジネスにつなげる経営感覚を持った人材を育てて窯業を支える拠点になることを目指し、「芸術学部」を2016年4月から新設するそうだ。焼き物の場合は、今後、化学・工学などの最新技術も採用していかなければならないため、総合大学が技術を担う拠点となり、学生に幅広い知識や技能を習得させて、大学卒・大学院卒の資格を与えるのがよいと思う。 それと同様に、木材の利用でも、建物、家具、漆器など、工学部の先端技術と芸術学部の芸術の両方の要素が必要であるため、大学で取り上げるのが有効だと思う。その結果として、イタリアはじめ外国製の家具や建物のように、世界の人を惹きつける製品を作るべきである。 2)産業での利用を進めると大量消費できるが・・ 木材も、一定の産出量が見込めれば、産業で積極的に利用できる。その目的で、林野庁は、持続可能な木材利用を進めるためには、どの地域で、どの品種の木材を、1年間にどのくらい伐採と植林すればよいかについて、概算でもよいから公表すべきだ。何故なら、その数字が出れば、後は、いろいろなアプローチができるからである。 *1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2649734.article.html (佐賀新聞 2014年3月20日) 地元産木材の利用考える 29日、シンポ 地元産木材の利用を考えるシンポジウム「木で、未来をつくろう!in佐賀県」(佐賀新聞社・全国地方新聞社連合会主催、林野庁など後援)が29日午後1時半から、佐賀市の佐賀新聞社で開かれる。地元産利用が豊かな森林資源づくり、地域活性化につながることを学ぶ。入場無料。林野庁地域木材情報分析官の西林寺隆さん、県優良住宅建設事業者協議会の野口博会長が講演。国の制度、地元産材利用の現状などを紹介する。パネル討論には佐賀新聞社の田中善郎論説委員長ら4人が加わり「佐賀県における地域材利用、現在と未来」をテーマに意見を交わす。国の木材利用ポイントを活用した事例も紹介する。 定員100人。はがきに郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号を明記し、〒840-8585 佐賀新聞社事業部「地域材利用に関するシンポジウム」係へ。25日必着。電話やファクス、メールでも受け付ける。電話0952(28)2151、ファクス0952(29)4709、メールmokuzai@saga-s.co.jp *2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2649610.article.html (佐賀新聞 2014年3月20日) 佐賀大「芸術学部」新設へ 有田窯大を統合 佐賀大は19日、「芸術学部」を2016年4月から新設する構想を発表した。県立有田窯業大学校(西松浦郡有田町)が同大に統合されるのに合わせ、「有田」「唐津」といったブランド力の高い焼き物産地として、次代を担う作家を養成するとともに、創作をビジネスにつなげる経営感覚を持った人材を育て、窯業を支える拠点づくりを目指す。構想では、芸術学部は定員110人を予定。現在の文化教育学部の美術・工芸課程を引き継ぎ、新たに創作活動の産業展開などを学ぶ芸術マネジメントのコースも開設する。統合される有田窯大を「有田キャンパス」として、学士号が取得できる定員20人程度の「有田セラミック専攻」を設ける。また、最先端のICT(情報通信技術)を活用したデジタルアート教育も充実させる。新学部創設に伴い、文化教育学部は「教育学部」に再編、教員免許取得を義務付けない課程(新課程)を廃止し教員養成機能に特化する。これまで定員90人だった学校教育課程を120人に増員。小中学校の教員養成だけでなく、発達障害支援や特別支援教育の専攻を設け、教職大学院の設置も計画している。文部科学省が昨年6月、国立大の教育学部にある新課程を廃止する方針を打ち出したのを受け、佐賀大は対応を検討。同11月に有田窯大を事実上統合することで県と合意したことから、芸術に特化した学部創設を念頭に同省と学部再編の協議を重ねてきた。14年度中に学部新設などを同省に申請、翌15年度の認可を目指す。廃止される新課程(定員150人)は14年度に行う入試を最後に募集を停止する。学部再編は法人化前の旧佐賀大で1996年に文化教育学部を設置して以来。芸術学部や教育学部の入試方法などは4月中に公表する。佛淵孝夫学長は「美術・工芸課程の歴史と実績や美術館という大学の強みを生かし、伝統工芸、観光などとも結び付けて今までにない芸術学部になる。県と一緒に世界の窯業の拠点化を目指したい」と話した。 ★解説★「地域密着」構想 色濃く 芸術学部の新設を柱とした佐賀大の学部再編構想。背景にあるのは国が進める国立大学改革の流れだ。少子化に伴う「大学全入時代」を迎え、特色や強みを生かした個性的な戦略づくりと機能強化を図らなければ生き残れない、大学側の強い危機感がにじむ。文科省は改革の一環として、学力向上や教員の専門性を高めるため、教育学部の教員養成課程の強化を打ち出す一方、少子化に伴う採用枠の減少を背景に設置された教員免許取得を義務付けない新課程の廃止を求めている。学生の定数減に直結する問題だけに、各大学が対応に苦慮する中で、佐賀大は有田窯大の統合を好材料に、何とか学部再編の道筋をつけた形だ。景気回復の兆しが見えつつあるとはいえ、厳しい価格競争にさらされ、構造不況にあえぐ窯業界を、大学という「知の拠点」からどう支援していくか。新学部の果たす役割に期待が集まる一方、教員養成に特化される教育学部も卒業生の県内での教員採用を増やす目標を打ち出すなど、構想は「地域密着」が色濃い。改革は今後、理工学部や農学部の再編も視野に入れる。県内唯一の国立大として、自ら掲げる「地域に必要とされる大学」の実現に向け、主体的な機能強化が求められている。
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2014,03,19, Wednesday
*1-2より STAP細胞の作り方 関連記事が多く、*6の論文にも目を通さなければならなかったので、遅くなりましたが・・。 (1)批判するにも褒めるにも、日本のメディアはジェンダーを含んでいる 朝日新聞社が、*1-2の写真で報じている「かっぽう着姿で作業する」というのは、研究とは関係のない事項で、男性の研究者に対して、このような褒め方はしない。そもそも、「かっぽう着」は、着物を着た人が台所で作業する場合に都合のよい台所のコスチュームであるため、かっぽう着姿で研究室にいるのは、警察官が消防団の法被を着て仕事をしているのと同じくらい場違いなのである。それにもかかわらず、親しみの持てる人であるというメッセージを込めて「かっぽう着姿で作業する」としたのは、「女性=かっぽう着姿で台所にいるのが普通で親しみやすい」というジェンダーを含んでおり、スーツ姿や白衣で颯爽と働いている女性に対して失礼である。 そして、「やめてやると思った」と報じたのは、本当に小保方さんがそう言ったのかどうかは不明だが、「この程度の人なら、かわりはいくらでもいるのに不遜だ」と読者に思わせ、小保方さんに悪いイメージを刷りつけた。また、「泣き明かした」としたのも、研究者にしてはプロ意識が足りないというイメージを刷りつけており、そのような言葉を、無理に本人から聞き出して脚色して記事を書いたとすれば、それは、記者の中にあるジェンダーのなせる業である。しかし、私の経験では、本人は全く言わなくても、記者のジェンダーに基づいて、低レベルのストーリーに仕立て上げられた記事は、大変多い。 一方で、*1-2の中で、理研の笹井副センター長が、「化学系の出身で、生物学の先入観がなく、データを信じて独自の考えをもっていた」と表しているのは、小保方さんに研究のアイデアやヒントを提供したチャールズ・バカンティ米ハーバード大教授は生物系・医学系の人であり、生物系の人にもいろいろなレベルの人がいるため、生物系の人に対して失礼な発言となっている。しかし、小保方さんの評価には、ジェンダーは含んでいない。 (2)STAP細胞の研究は捏造で、その存在は嘘か? *1-1の朝日新聞記事は、「理化学研究所などが、新しい『万能細胞』の作製に成功し、マウスのリンパ球を弱酸性の液体で刺激するだけで、どんな細胞にもなれる万能細胞に変化することを発見した」「生命科学の常識を覆す画期的な成果で、英科学誌ネイチャー電子版のトップ記事として掲載された」「受精卵にSTAP細胞を注入して子宮に戻すと、全身がSTAP細胞から育った胎児になった」「究極の再生医療への応用にまでつながる可能性がある」と報じており、私には、これは自然に思えた。 また、*6-1の論文には、「本研究で、分化した体細胞が潜在的には驚くべき可塑性を持っていることが明らかになった」と書かれているが、これについては、私は、東大理Ⅱの学生時代(今から41年前)に、ノーベル賞級と噂されていた動物学の先生に教わった。つまり、受精して卵割が始まると、胃の場所に行った細胞は胃になり、肺の場所に行った細胞は肺になるというように、細胞は、場所を与えられてから、その場所に応じた分化をするということだ。そして、胃に肺の細胞ができないように、また、通常は勝手な分化をしないように、遺伝情報で制御されているのである。 *6-1には、「なぜ体細胞は致死以下の刺激が加わると自らをリプログラミングできる潜在能力を持っているのか?」と書かれているが、考えてみれば、リンパ球が致死以下の刺激で細胞の初期化を起こすのは、当然かもしれない。何故なら、リンパ球は、傷を負った場所に集まって傷を治す役割を持つ細胞で、その役割を果たすためには、何にでも分化できなければならないため、そのように遺伝情報でセットされているのではないかと思う。 そして、「いつ初期化されて修復するための新しい分化を始めるか」については、リンパ球が、毛細血管に似た環境の細いガラス管を多数回通されたり、傷口ができて血液が空気に触れて酸化したような状態の弱酸性になった時で、傷口を修復しなければならず、傷口に集まった時のような刺激を与えられた時なのだろう。 「このリプログラミングのメカニズムは、正常の状態ではどのように抑制されているのか?」については、それぞれの場所にある細胞が勝手に変化して収拾がつかない状態にならないように制御するシステムが、遺伝情報に組み込まれているからである。なお、「強い環境のストレスを受けても、通常の組織では多能性細胞(または奇形腫)の出現が見られないのはなぜか?」という問いもあるが、ストレスのすべてが癌化や奇形腫に繋がるわけではないし、身体には防御システムも備わっているからだ。 (3)研究への批判は正しいか 英科学誌ネイチャーに掲載された小保方さんのSTAP細胞に関する論文は、*2-1のように、小保方さんの博士論文が参考文献リストをコピペしていたとか、*2-2のように、小保方さんの博士論文は、米国立衛生研究所サイト冒頭をコピペしていたなど、対象論文とは関係がなく、事情があって悪いことではないかもしれないことでも叩かれた。しかし、これらは、STAP細胞に関する論文の内容を否定できるようなものではなく、あらさがしの類であり、女性である小保方さんには、批判もまた、女性蔑視とジェンダーが含まれていたと思う。 なお、*2-3では、①STAP細胞からマウスの胎盤ができたことを示す2種類の胎盤の画像が似ており、同じ画像を使い回した ②論文の中の実験手法に、海外の別の研究者の論文と同じ記述があり、引用の記載がないので盗用だ ③1月末に公表されたネイチャー誌の論文と、3月5日に公開された作り方の手順書で、符合しない点がある ④ネイチャー誌の論文で、STAP細胞の「万能性」を示す根拠とされていた画像と、小保方さんの博士論文で使われていた別の現象の画像が酷似しており、博士論文の画像を使い回した 等が指摘されたが、このうち①④は研究者として真実を追求する姿勢が問われるが、②③はそういうことがあったからといって盗用とは限らないし、STAP細胞の存在を否定するものでもない。そもそも、主たる部分を盗用して書いたような論文であれば、独創的でないため、生物学の常識から外れているなどとは言われないものである。 そして、*2-3には、その後、共著者の若山照彦教授が、「確信が持てないと表明して、取り下げを呼びかけた」と書かれているが、若山教授自身が、確信も持てないまま論文の共著者になっていたことは問題であり、最も圧力に屈しやすそうな人でもあって、論文に名を連ねた以上は共同責任者だという自覚がないのも変だ。 さらに、*2-3などで、朝日新聞は、「理研、遅れる対応」などとして理研に調査と論文撤回を迫っているが、メディアの無責任な記事と違って、研究者が論文を撤回すれば成果が白紙になるだけではなく、関係した研究者は研究生命を断たれるのだということや、論文不正といっても京都府立医大が中心になった高血圧薬をめぐるデータ捏造の臨床研究論文と今回のSTAP細胞の論文とは、目的も次元も全く違っていることを理解していない。 そして、*2-4で理研が、論文の改ざんがあったと認定して、重大な過誤があると認めた部分は、*1-1で、 「受精卵にSTAP細胞を注入して子宮に戻すと、全身がSTAP細胞から育った胎児になった」とされたことを証明する部分だが、受精卵に遺伝子を注入すれば胎児になるのは普通であり、それは家畜ではすでに実用化されており、また、胎児にならなくても再生医療には十分に利用できるのである。 (4)STAP細胞の結論に影響はないと思う *3-1のように、青山学院大生物学教授の福岡伸一氏は、「STAP細胞の実在性に著者らがなお信念をもっているのであれば、論文を撤回するのではなく、訂正や続報で対応すべきで、撤回すれば、故意のデータ操作や捏造などの不正があったと世界はみなすだろう」と書かれているが、全くその通りだ。 さらに、メディアは、悪乗りして的外れな賞賛や批判をするため、研究者の基本姿勢や倫理観を育てる科学教育だけでなく、官僚や記者や評論家などの文科系の人にも科学の基礎知識を学ばせる中等教育での科学教育を重視すべきで、それは、基礎知識がなければ、説明しても理解できないし、重要性の判断をすることもできないからである。 このような状況であるため、*3-2のように、共著者のチャールズ・バカンティ米ハーバード大教授が、「論文に対して持ち上がっている疑問や懸念は、私たちの研究結果や結論には影響を与えないと確信している」とする声明を発表したのはもっともで、*3-3の共著者、丹羽仁史理研プロジェクトリーダーが、「STAP細胞ができたという根幹は揺るがない」と述べ、STAP細胞の作製は事実だと訴えたのも、もっともだと思う。 なお、*3-4で、STAP論文を巡って「検証を待つ」と繰り返しているノーベル化学賞受賞者の野依良治理事長はじめ理研幹部は畑違いの専門家であり、「極めてずさんで、あってはならないこと」と論文の不備を認めたといっても、STAP細胞が存在するかどうかを判断できるとは思えない。また、*3-5で、小保方さんたちが細胞の証明不十分とされて、STAP論文の撤回に同意したのは、このような日本国内の圧力に屈したものであり、米大学教授の反対はもっともなのである。そして、*3-6のように、理研は、STAP記者向けに、iPSと比較してSTAP細胞の方が作りやすいとした資料を、誤解を招いたとして撤回している。 (5)妨害の陰が見えた *3-5等では、新聞が、小保方さんらにSTAP論文の撤回を同意させ、幹細胞研究に詳しい九州大教授の赤司氏が「いったん撤回して、科学的に批判の出ない論文を出し直すのは正当だ。そうすれば、(今回の研究メンバーの研究生命はなくなるかもしれないが)STAP細胞は生き残ることができる。それには、経験の豊富な科学者が責任を持ち、実験に参加する態勢が欠かせない」とたたみかけているが、STAP論文の共著者であるチャールズ・バカンティ米ハーバード大教授は経験豊富な科学者である。 また、*4-1で、共著者で山梨大教授の若山氏が、「科学的真実を知りたい」などとして、2014年3月18日に、小保方さんから送られて保存していた細胞を第三者機関に送ったそうだが、今まで真実を知らなかったというのは呆れる上、何から作ったかわからないと言われている問題の細胞を使っても、新たな事実が見つかるわけがなく、他の人にその細胞を提供しただけに終わりそうだ。 そのような中、*4-2のiPS細胞から赤血球を生産したという記事が目を引いた。何故なら、iPS細胞より優れていそうなSTAP細胞を否定して得をするのは、iPS細胞で特許を得ようとしている人たちだからである。*4-3のiPS細胞を年内配布して患者治療を後押しするという記事も同様だ。 さらに、*4-3では、「iPS細胞の活用として、創薬分野での産学連携に期待している」とされているが、官がiPS細胞のみに加担して、他の再生医療研究を予算で抑えれば、最も優秀な再生医療を日本で開発する機会が奪われ、iPS細胞以外の再生医療研究者は海外で研究開発せざるを得なくなる。そして、既に、そういう人はいるのだ。従って、Fairに、多様性を保って伸ばすことにより、その中で一番良い物を選抜しなければ最も良い方法を得ることはできないため、iPS細胞のみに加担してはならず、一騎当千の優秀な研究者の海外流出は、日本にとって大きな損失であることを強調しておく。 (6)メディアの報道について *5に、朝日新聞が、「理研の調査委員会が不適切と認めたが、報道のあり方が問われている」という記事を書いている。確かに、社会面での小保方晴子ユニットリーダーの研究人生紹介はジェンダーを含み、その後は一転して、新聞の1面、2面を大きく割いて、くだらないことまで含むあらさがしの批判を行い、共著者や理研に論文撤回をせっついたというのが朝日新聞の態度だった。そのため、新聞記者の資質や編集姿勢の検証も必要である。 *1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASG1Y41F4G1YPLBJ004.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2014年1月29日) 新しい万能細胞作製に成功 iPS細胞より簡易 理研 理化学研究所などが、まったく新しい「万能細胞」の作製に成功した。マウスの体の細胞を、弱酸性の液体で刺激するだけで、どんな細胞にもなれる万能細胞に変化する。いったん役割が定まった体の細胞が、この程度の刺激で万能細胞に変わることはありえないとされていた。生命科学の常識を覆す画期的な成果だ。29日、英科学誌ネイチャー電子版のトップ記事として掲載された。 ●万能細胞 理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の小保方晴子(おぼかたはるこ)ユニットリーダー(30)らは、新たな万能細胞をSTAP(スタップ)細胞と名付けた。STAPとは「刺激惹起(じゃっき)性多能性獲得(Stimulus―Triggered Acquisition of Pluripotency)」の略称だ。iPS細胞(人工多能性幹細胞)よりも簡単に効率よく作ることができた。また、遺伝子を傷つけにくいため、がん化の恐れも少ないと考えられる。作り方は簡単だ。小保方さんらは、マウスの脾臓(ひぞう)から取り出した白血球の一種のリンパ球を紅茶程度の弱酸性液に25分間浸し、その後に培養。すると数日後には万能細胞に特有のたんぱく質を持った細胞ができた。この細胞をマウスの皮下に移植すると、神経や筋肉、腸の細胞になった。そのままでは胎児になれないよう操作した受精卵にSTAP細胞を注入して子宮に戻すと、全身がSTAP細胞から育った胎児になった。これらの結果からSTAP細胞は、どんな組織にでもなれる万能細胞であることが立証された。酸による刺激だけではなく、細い管に無理やり通したり、毒素を加えたりといった他の刺激でも、頻度は低いが同様の変化が起きることも分かった。細胞を取り巻くさまざまなストレス環境が、変化を引き起こすと見られる。さらに、脳や皮膚、筋肉など様々な組織から採った細胞でもSTAP細胞が作れることも確かめた。STAP細胞は、iPS細胞とES細胞からは作れない胎盤という組織にも育ち、万能性がより高く、受精卵により近いことを実験で示した。さまざまな病気の原因を解き明かす医学研究への活用をはじめ、切断した指が再び生えてくるような究極の再生医療への応用にまでつながる可能性がある。ただ、成功したのは生後1週間というごく若いマウスの細胞だけ。大人のマウスではうまくいっておらず、その理由はわかっていない。人間の細胞からもまだ作られていない。医療応用に向けて乗り越えるべきハードルは少なくない。万能細胞に詳しい中辻憲夫・京大教授は「基礎研究としては非常に驚きと興味がある。体細胞を初期化する方法はまだまだ奥が深く、新しい発見があり、発展中の研究分野なのだということを改めて感じる」と話す。 ■山中伸弥教授「重要な研究成果、誇りに思う」 京都大iPS細胞研究所長の山中伸弥教授は「重要な研究成果が、日本人研究者によって発信されたことを誇りに思う。今後、人間の細胞からも同様の手法で多能性幹細胞(万能細胞)が作られることを期待している」とのコメントを発表した。 ◇ 〈万能細胞〉 筋肉や内臓、脳など体を作る全ての種類の細胞に変化できる細胞。通常の細胞は筋肉なら筋肉、肝臓なら肝臓の細胞にしかなれない。1個の細胞から全身の細胞を作り出す受精卵のほか、少し成長した受精卵を壊して取り出したES細胞(胚(はい)性幹細胞)、山中伸弥・京都大教授が作り出したiPS細胞(人工多能性幹細胞)がある。万能細胞で様々な組織や臓器を作れるようになれば、今は治せない病気の治療ができると期待されている。 *1-2:http://apital.asahi.com/article/news/2014013000016.html (朝日新聞 2014年1月30日) 泣き明かした夜も STAP細胞作製、理研の小保方さん いつも研究のことを考えています――。世界を驚かす画期的な新型の万能細胞(STAP〈スタップ〉細胞)をつくったのは、博士号をとってわずか3年という、30歳の若き女性研究者だ。研究室をかっぽう着姿で立ち回る「行動派」は、負けず嫌いで、とことんやり抜くのが信条だ。「やめてやると思った日も、泣き明かした夜も数知れないですが、今日一日、明日一日だけ頑張ろうと思ってやっていたら、5年が過ぎていました」。28日、神戸市内の理化学研究所発生・再生科学総合研究センターでの記者会見。無数のフラッシュの中、小保方晴子(おぼかたはるこ)さんはこれまでの日々を振り返った。千葉県松戸市の出身。2002年、早稲田大学理工学部に、人物重視で選考するAO入試の1期生として入った。当時、面接で「再生医療の分野に化学からアプローチしたい」とアピール。ラクロスに熱中し、「日々、大学生の青春に忙しかった」というふつうの学生生活を送っていた。応用化学科の研究室で海の微生物を調べていたが、指導教官から「本当は何をやりたいか」を問われ、最初の夢を思い出し、大学院から、再生医療の分野に飛び込んだ。小保方さんを大学院時代に指導した大和雅之・東京女子医大教授は「負けず嫌いで、こだわりの強い性格」と話す。一から細胞培養の技術を学び、昼夜問わず、ひたすら実験に取り組んでいた。半年の予定で米ハーバード大に留学したが、指導したチャールズ・バカンティ教授に「優秀だからもう少しいてくれ」と言われ、期間が延長になったという。ここで、今回の成果につながるアイデアを得た。研究の成功に欠かせない特殊なマウスをつくるために、世界有数の技術をもつ若山照彦・理研チームリーダー(現・山梨大教授)に直談判。ホテルに泊まり込みながら半年以上かけて、成果を出した。今回の発見について、小保方さんは「あきらめようと思ったときに、助けてくれる先生たちに出会ったことが幸運だった」と話す。理研の笹井芳樹・副センター長は「化学系の出身で、生物学の先入観がなく、データを信じて独自の考えをもっていた。真実に近づく力と、やり抜く力を持っていた」と分析する。昨年、理研のユニットリーダーになった小保方さんは、自身の研究室の壁紙をピンク色、黄色とカラフルにし、米国のころから愛用しているソファを持ち込んでいる。あちこちに、「収集癖があるんです」というアニメ「ムーミン」のグッズやステッカーをはっている。実験時には白衣ではなく、祖母からもらったというかっぽう着を身につける。研究をしていないときには「ペットのカメの世話をしたり、買い物に行ったりと、普通ですよ」と話す。飼育場所は研究室。土日も含めた毎日の12時間以上を研究室で過ごす。「実験室だけでなく、おふろのときも、デートのときも四六時中、研究のことを考えています」 *2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASG3D32NBG3DULBJ002.html?iref=comkiji_redirect&iref=comtop_6_01 (朝日新聞 2014年3月12日) 小保方さんの博士論文、参考文献リストもコピペか 英科学誌ネイチャーに掲載された新しい万能細胞「STAP(スタップ)細胞」論文の筆頭著者、理化学研究所の小保方(おぼかた)晴子ユニットリーダーが早稲田大に提出した英文の博士論文で、参考文献リストが他の論文と酷似していることが12日わかった。リストは論文の根拠となる文献を示すもので、学位取り消しの検討が求められる状況となっている。博士論文は2011年2月付。動物の体中から万能性をもつ幹細胞を見つけ出すもので、STAP細胞の論文ではない。章別に参考文献リストがある。たとえば、第3章では本文に引用の印がないのに、文献リストには38件分の著者名、題名、雑誌名、ページが列挙されている。これは10年に台湾の病院の研究者らが医学誌で発表した論文の文献リスト53件のうち、1~38番とほぼ一致した。博士論文では一部文字化けしている文字があり、コピー・アンド・ペースト(切りはり、コピペ)の可能性がある。リストは著者名のABC順。元論文の38番はPで始まる姓のため、ありふれたSやTで始まる著者名が博士論文にはないという不自然さがあった。普通の論文では本文で文献を参照した箇所に(1)などの番号を添えるが、図を除いて5ページある第3章の本文にはこのような番号はつけられていない。このため、意味不明な参考文献リストになっている。この博士論文に関しては11日、米国立保健研究所(NIH)がネット上に掲載している文章との酷似が指摘されたばかり。酷似は108ページある博士論文の約20ページ分に及ぶとされたが、今回判明した参考文献リストを合わせると約35ページ分になる。小保方さんは理研に就職する前、論文審査を通り博士の学位を得た。審査には早稲田大教授2人、東京女子医科大教授1人のほか、STAP細胞論文の責任著者になっている米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授も加わっている。研究倫理に詳しい山崎茂明・愛知淑徳大教授は「これで論文審査を通ったこと自体が驚き。審査した教授や大学の責任は重い。学位取り消しを含めて検討すべきだ」と語る。早稲田大広報課は「確認中。学位取り消しに相当するかは調べきってから評価することになる」としている。 *2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2645323.article.html (佐賀新聞 2014年3月12日) 小保方氏の博士論文、米に同じ文 / 国立衛生研究所のサイト冒頭 万能細胞「STAP細胞」の論文を執筆した理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーが、博士号を得るため早稲田大に提出した英語の博士論文の冒頭部分が、米国立衛生研究所(NIH)のサイトの文章とほぼ同じだったことが11日、分かった。博士論文にはこれまでも不適切な画像の操作の指摘がインターネット上で広がり早大が調査している。博士論文は、骨髄から採取の細胞がさまざまな細胞に変化できることなどを示したもので2011年2月発行。約100ページの冒頭26ページは幹細胞研究の意義や背景を説明、うち20ページはNIHの「幹細胞の基礎」というサイトとほぼ同じだった。 *2-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11022434.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2014年3月11日) 画像酷似、新たに指摘 論文裏付け、疑念 STAP細胞 生物学の常識を覆すとして世界に衝撃を与えた万能細胞「STAP細胞」の論文が、撤回される可能性が出てきた。発表からわずか1カ月余り。論文の不適切さを問う声が相次ぎ、共著者まで「確信が持てない」と表明した。次々に明らかになる問題に、理化学研究所の対応は後手にまわっている。「きょうの昼ごろに、理研の(幹部)3人から、メールや電話で『論文を取り下げてはどうか』と著者全員に連絡があった。それに後押しをされて、取り下げを呼びかけることにした」。10日夜、甲府市の山梨大。報道陣に囲まれ、論文の共著者である若山照彦教授は話した。若山さんはマウスのクローンを作る第一人者。論文では、STAP細胞がどんな組織にでもなれる「万能性」を持つことを裏付ける決定的な証拠のための実験を担った。STAP細胞の特徴は、(1)万能性を持ち、(2)体のふつうの細胞から作られる、という2点だ。こうした研究内容そのものにかかわる疑問が、今月に入り相次いで浮上した。万能性への疑問は、論文不正などを取りあげるインターネットのブログで9日に指摘された。筋肉や腸の組織をとらえた計4枚の画像で、英科学誌ネイチャー発表の論文では、いずれもSTAP細胞から育ったと説明された。だが、これらは論文の主著者である理研の小保方晴子ユニットリーダーが2011年に書いた博士論文の写真とそっくりだった。博士論文ではSTAP細胞ではなく、骨髄の中に元々含まれている万能の細胞を育てたとしていた。若山さんは「この写真は細胞がいろいろなものに分化できることを示す写真で、研究の根幹が揺らいだ。私が実験をしたのが何だったのか、確信が持てなくなった」と話した。第二の特徴にも疑念が出ている。論文では、血液に含まれるリンパ球という細胞からSTAP細胞をつくったとされ、人為的につくったことを示す遺伝子の変化がSTAP細胞に見つかったと書かれていた。ところが、理研が今月5日に公表した詳しい作製手順には、STAP細胞を改変した細胞(STAP幹細胞)にはこの遺伝子の変化がなかったと書かれていた。若山さんはこれまで小保方さんを擁護していた。論文については他にも、画像の「使い回し」や、記述の一部が別の研究者が発表した論文とほぼ同一だったとの指摘もあったが、STAP細胞を作ったという成果自体には影響しないと見られてきた。若山さんは「研究成果を信じたい気持ちがあるので、一度論文を取り下げて、もう一度研究を行い、だれからも文句の出ない形で論文を出したい」と話した。 ■理研、遅れる対応 これまで相次ぎ指摘されてきた問題点について、理研は「調査中」を理由に詳しい説明を拒んできた。研究の中心となった小保方さんも、論文の掲載時以降、取材に応じていない。理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の広報担当者は10日夜、理研所属の著者について質問されても「いま対応を協議しているところです」と繰り返した。このうち小保方さんについては「様々な指摘を真摯(しんし)に受けとめている」と説明し、内部で対応を議論しているという。STAP細胞の姿は、発表後まもなくから揺らぎ続けた。まず指摘されたのはSTAP細胞を用いて育ったマウスの胎児と胎盤の画像だ。別々の被写体のはずの2枚で一部が酷似していた。理研、ネイチャー誌が相次ぎ調査開始を公表。理研は「成果そのものは揺るがない」と自信を示した。当初、「簡単にできる」と説明したことについても疑問が噴出。研究者から「再現できない」との声が相次ぎ、理研は製法の詳細を公表した。だが、内容が当初の発表と矛盾するとの指摘が出て、さらに対応を迫られた。理研を所管する文科省幹部は「理研の調査委の中に、STAP論文について、正しいと見ている研究者と、疑いの目を持った研究者がいるので結論が出ていない」と説明する。一方、日本分子生物学会は日本の科学研究の信頼性への影響を懸念し今月3日、迅速な調査結果の公表を求める声明を出している。 ■撤回なら成果は「白紙」に 論文の撤回は、そこに記載された科学研究の成果全体が「白紙」となることを意味する。現段階でSTAP細胞ができたこと自体まで否定されたわけではないが、論文を発表した理研とは別のチームによる実験で同じ結果が示され、その結果が研究者のあいだで信用されるまでは、STAP細胞が本物とも言えない状態になる。公表された論文の内容に問題が見つかった場合、意図的でない小さなミスであれば論文の訂正がなされる。しかし、データの改ざんや捏造(ねつぞう)、ほかの研究者の論文からの盗用といった不正行為があった場合は論文そのものを取り下げ、雑誌にも撤回の事実を明記するのが一般的なルールだ。論文不正に詳しい愛知淑徳大の山崎茂明教授は「誤った研究結果がそれ以上広まらないようにするのが撤回の目的」と話す。今回も、盗用を含む複数の不正の指摘がある。撤回は、論文を書いた著者が自ら申し出るのが原則だが、雑誌の側がすることもある。京都府立医大が中心になった高血圧薬をめぐる臨床研究の論文は、掲載した欧州心臓病学会誌が昨年撤回している。悪質な不正があったとして、著者が所属する大学から解雇されたケースもある。今回の論文が掲載されたネイチャーのほか、サイエンスやセルといった影響力の大きい科学雑誌での撤回は実は珍しくない。「一流雑誌に載る論文ほど競争の激しい分野の研究が多い。それだけ、問題も生じやすい」と山崎さんはいう。 ■指摘されている主な問題点 (1)STAP細胞からマウスの胎盤ができたことを示す2種類の胎盤の画像が似ているため、同じ画像を使い回して別の画像のように見せかけたのではないかと疑われている (2)論文の中の実験手法について書かれた部分に、海外の別の研究者の論文とほぼ同じ記述があった。論文には引用の記載がなく、盗用したのではないかと疑われている (3)1月末に公表されたネイチャー誌の論文と、3月5日に公開された作り方の手順書で、符合しない点がある (4)ネイチャー誌の論文で、STAP細胞の「万能性」を示す根拠とされていた画像と、小保方さんの博士論文で使われていた別の現象の画像が酷似していた。博士論文の画像を使い回した疑いがある ■STAP細胞、これまでの主な経緯 <1月29日> 英科学誌ネイチャーにSTAP細胞の論文が掲載される <2月13日> 「論文に不自然な画像がある」とインターネットなどで指摘され、理研が調査開始 <17日> ネイチャーも調査開始を公表 <18日> 早稲田大が小保方さんの博士論文について調査を始める 共同研究者の若山・山梨大教授が朝日新聞に「画像取り違えの単純ミス」と説明 <3月3日> 日本分子生物学会が理研に対し、迅速な調査結果の公表を求める声明を発表 <5日> 理研がSTAP細胞の詳しい作製手順を公表 *2-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11030070.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2014年3月15日) STAP細胞、証明できず 万能性の根拠、別画像 理研中間報告 新しい万能細胞「STAP(スタップ)細胞」の論文に対し、理化学研究所は14日、「重大な過誤がある」と認めた。研究の根幹となる万能性を示す画像が、3年前に書かれた別の論文の画像と同一だったとした。野依良治理事長は「論文の疑義についておわび申し上げたい」と謝罪。STAP細胞を作製したことの具体的な根拠を示せず、証明できないと説明した。これまで「成果は揺るがない」としていた理研の姿勢は大きく後退した。 ■「論文、極めてずさん」 理研の調査委員会によると、問題の画像は、英科学誌ネイチャーの論文で、STAP細胞がいろいろな細胞になれることを示した証拠として使われていた。ところが、著者の理研発生・再生科学総合研究センターの小保方(おぼかた)晴子ユニットリーダーが博士論文に載せた別の実験による画像と同じことが判明した。野依理事長は「極めてずさん。あってはならないことだ」、竹市雅俊センター長は「完全に不適切。論文としての体をなさない」と述べた。論文は撤回に向けた協議が進んでいる。調査委は著者の小保方さんらに聴取するなどして、六つの項目を調べ、中間報告をまとめた。うち4項目は、疑わしい部分が残るなどとして調査を継続する。残る2項目については「不適切な点はあったが、研究不正にはあたらない」と判断した。実験手法の記載の一部が、他の海外論文をコピーしていたとする疑いについて、小保方さんにはコピーした記憶がある様子だったが、どこから取ってきたかは「覚えていない」と話したという。遺伝子を分析する画像に切り張りした形跡があるとの指摘について、小保方さんは条件の異なる実験の画像を挿入したと認めた。調査委はこうした問題点については、不正かどうかを判断するために継続調査とした。最終報告を公表する時期は明言しなかった。これまでの調査で、実際に実験していないデータなどの捏造(ねつぞう)はないという。一方、マウスの胎盤の画像を使い回したとの指摘については、小保方さんが「不要になった画像を削除し忘れた」と説明。実験ノートなどから、不正ではなく「不適切」だとした。STAP細胞が実在するかについては、理研の川合真紀研究担当理事は「まだ初めの段階しか再現されていない」と話した。さらに、詳しい作製手順を提供する方針を明かした。小保方さんは現在、同センターがある神戸市にいるが、研究は停止している。自身の未熟さを反省しているという。小保方さんを含む共著者3人は「心よりおわび申し上げる。適切な時期に改めて説明する機会を設ける」とする連名のコメントを出した。 *3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11030073.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2014年3月15日) 科学巡る課題、浮き彫り STAP細胞論文 福岡伸一(青山学院大教授〈生物学〉) iPS細胞の成功以降、生命科学がテクノロジーに走りすぎ、「作りました」という研究がもてはやされる風潮がある。今回の問題もその延長線上に起きたのではないか。科学は本来、もっとじっくり「How(どのように)」を問うべきものだ。STAP細胞の実在性に著者らがなお信念をもっているのであれば、論文を撤回するのではなく、訂正や続報で対応すべきだ。撤回すれば、故意のデータ操作や捏造(ねつぞう)などの不正があったと世界はみなすだろう。不適切と不正の切り分け。つまりどこまでが過失で、どこからが作為なのか。こうした点が明確にならないと、科学界に広がった多大な混乱と浪費は回収できない。著者や理研はきちんと説明してほしい。 さらに言えば、問われるべきは個人の資質や共著者の責任だけではない。メディアも当初は無批判に称賛していたし、研究者の基本姿勢や倫理観を育てる科学教育のあり方は十分だったのかなど、論点は限りなくあるように思える。今回は論文発表直後から、世界中の研究者の集合知的なあら探しによって問題点があぶりだされた。最高権威だった科学誌の審査が機能せず、草の根的なレビューが機能したという点でも興味深い。 *3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2645856.article.html (佐賀新聞 2014年3月12日) STAP論文「結論に影響ない」 / 共著の米教授 【ワシントン共同】新たな万能細胞「STAP細胞」の論文に相次いで不自然な点が指摘された問題で、共著者のチャールズ・バカンティ米ハーバード大教授は12日、「論文に対して持ち上がっている疑問や懸念は、私たちの研究結果や結論には影響を与えないと確信している」とする声明を、所属する米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院を通じて発表した。撤回の可否については明言しなかった。 *3-3:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2645792.article.html (佐賀新聞 2014年3月12日) STAP細胞「根幹は揺るがず」 / 共著者の丹羽氏 新たな万能細胞「STAP細胞」を報告した論文の画像や表現に相次いで不自然な点が指摘された問題で、共著者の1人、丹羽仁史理研プロジェクトリーダーは12日までに共同通信などの取材に「STAP細胞ができたという根幹は揺るがない」と述べた。丹羽氏は一連の指摘について問題点を認めた上で、「(STAP細胞が)科学的に正しいかどうかは別の問題だ」と強調。STAP細胞の作製は、事実だと訴えた。外部の研究者がまだSTAP細胞の作製を再現できていない点には、「実験のそれぞれの段階で時間がかかる」と説明し、再現には数カ月かかるとの見通しを示した。 *3-4:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1404L_U4A310C1CC1000/?dg=1 (日経新聞 2014/3/14) 理研幹部「検証待つ」繰り返す STAP論文巡り 新たな万能細胞の発見として世界を驚かせた発表から44日、STAP(スタップ)細胞の論文は国内外から示された様々な疑義により、研究の根幹が揺らぐ事態に発展した。4時間に及んだ14日の理化学研究所の記者会見でも、細胞が本当に存在するのかどうかは釈然としないままだった。科学者を志す学生らは「早く真相をはっきりさせて」と求めた。 ●会見4時間、小保方氏動向に質問集中 ノーベル化学賞受賞者でもある野依良治理事長らは午後2時すぎから、東京都内で会見。海外メディアの姿も見られ、「世紀の発見」に浮上した疑惑への関心の高さをうかがわせた。「科学社会の信頼性を揺るがしかねない事態を引き起こした」。冒頭、野依理事長らは厳しい表情のまま深々と頭を下げた。不正の有無の調査は続けるとしたが、「極めてずさんで、あってはならないこと」と論文の不備を認め、苦渋の色をあらわにした。会見ではSTAP細胞が存在するかどうかの質問も相次ぎ、理研側は「第三者の検証を待つしかない」と繰り返すばかり。当初は「研究成果そのものは揺るがない」との立場だったが、川合真紀理事(研究担当)は「楽観的に見ていたきらいは否めない」と釈明した。川合理事によると、理研の研究者が論文を雑誌に投稿したり、学会で発表したりする際は所属長の許可がいるが、全ての論文に目を通すかは「ケース・バイ・ケースで、個々の研究者の良識がベース」。野依理事長は「氷山の一角かもしれないので、倫理教育をもう一度徹底してやりなおしたい」と強調した。一方、小保方晴子研究ユニットリーダーら論文の執筆者は姿を見せず、文書でコメントを出したのみ。上司で発生・再生科学総合研究センターの竹市雅俊センター長は、論文撤回を勧めた際の小保方氏の様子について「心身とも消耗した状態で、『はい』とうなずく感じだった」と話した。 *3-5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11028261.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2014年3月14日) 小保方さんら、撤回同意 STAP論文、細胞の証明不十分 米大学教授は反対 「STAP(スタップ)細胞」の論文に多数の疑問が指摘されている問題で、主要著者4人のうち理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の小保方(おぼかた)晴子ユニットリーダーを含む3人が、論文の撤回に同意していることがわかった。複数の理研幹部が朝日新聞の取材に認めた。「生物学の常識を覆す」として世界中を驚かせた研究成果は、白紙に戻る公算が大きくなった。著者側から論文を撤回するには、最低でも主要著者全員の同意が必要。小保方さんの留学時代の指導教官だった米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授は反対しており、現在、CDB幹部が同意するよう説得しているという。STAP細胞論文は2本で構成され、著者は計14人。うち10人がCDBの関係者で、全員、撤回に同意の意向だという。主要著者4人のうち同意しているのは、小保方さんと、CDBの笹井芳樹・副センター長、前CDBチームリーダーの若山照彦・山梨大教授。論文が掲載された英科学誌ネイチャーでは、撤回にはすべての著者の同意が原則だが、主要著者全員の同意で撤回を申し入れることもできる。こうした申し入れで撤回を認めるかどうかは、個別に判断するとしている。また、著者側が論文を撤回しなくても、ネイチャー編集部が自身の判断で撤回することもある。複数の理研幹部によると、撤回の理由は、STAP細胞の存在や万能性の証明が科学的に不十分になってきたと判断したためという。マウスの血液細胞からSTAP細胞ができたとする証拠への疑問や、万能性を示す写真が小保方さんの博士論文から流用された疑いなどが指摘されていた。論文を撤回すると、研究成果は白紙に戻る。ただし、CDBの研究者らは、STAP細胞の存在自体が否定されたわけではないとして、実験をやり直して疑問に十分答えられる論文にし、改めて投稿することをめざすという。撤回には、研究結果が否定されていなくても、証明が不十分だったり、画像が不適切だったりした場合もあるからだ。STAP細胞論文をめぐっては、CDBを管轄する理研本部が調査委員会をつくり、指摘されている問題点を調べている。14日には調査委員長らが会見を開き、中間報告をする。日米の幹細胞研究に詳しい赤司浩一九州大教授は「いったん撤回して、科学的に批判の出ない論文を出し直すのは正当だ。そうすれば、STAP細胞が生き残ることができる。それには、経験の豊富な科学者が責任を持ち、実験に参加する態勢が欠かせない」と話している。 *3-6:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/science/article/76556 (西日本新聞 2014年3月18日) 理研、STAP記者向け資料撤回 iPSと比較、誤解招いた 理化学研究所は18日、発生・再生科学総合研究センター(神戸市)で1月に開いた、STAP細胞の作製に関する会見で配布した記者向け資料の一部に「誤解を招く表現があった」として撤回すると発表した。撤回したのは、STAP細胞と人工多能性幹細胞(iPS細胞)を比較した補足資料。 理研は、資料でiPS細胞の作製にかかる時間を2~3週間とし、作製効率を0・1%とした点に問題があったとしている。iPS細胞を開発した山中伸弥・京都大教授は2月、資料にあるiPS細胞の作製時間と効率は、最初に論文を発表した2006年当時のものだと反論していた。 *4-1:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/science/article/76426 (西日本新聞 2014年3月18日) STAP細胞を第三者機関に送付 若山氏「真実知りたい」 理化学研究所などのチームによるSTAP細胞の論文疑惑で、共著者の若山照彦・山梨大教授は18日、保存している細胞を第三者機関に送り、分析を依頼したことを明らかにした。若山教授は「自分の判断で送付した。科学的真実を知りたい」としており、STAP細胞を増殖しやすいように変化させた「STAP幹細胞」を17日に送付したという。送った分析機関の名称は明らかにしていない。若山教授は、理研の小保方晴子研究ユニットリーダーからSTAP細胞を渡され、マウスに成長させたが、論文の画像の流用が明らかになり、どんな細胞だったのか確信が持てなくなったと説明していた。 *4-2:http://digital.asahi.com/articles/OSK201312050167.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2013年12月6日) iPS細胞から赤血球生産 東大・京大が開発 京都大と東京大のグループは、ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から大量の赤血球をつくる方法を開発した。輸血用血液の不足解消に役立つと期待される。米科学誌「ステムセルリポーツ」で6日発表する。京大iPS細胞研究所の江藤浩之教授らは、これまでホルモンなどを使ってiPS細胞から赤血球をつくっていた。だが、赤血球になる率が非常に低かった。今回、細胞の増殖に関係する遺伝子と細胞死を抑える遺伝子の2種類を使い、まず、赤血球になる前の前駆細胞をつくった。この細胞はiPS細胞と同じく無限に増やすことができる。入れた遺伝子の働きを止めると、赤血球前駆細胞はまず未熟な赤血球に変わり、核が抜けて赤血球になった。iPS細胞から直接つくるのに比べ、効率が20倍高まったという。がんウイルスの遺伝子を使う同様の方法があったが、今回は、人間が本来持っているのと同じ遺伝子を使ったのでより自然なでき方に近いという。 *4-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140318&ng=DGKDASGG1703C_X10C14A3EA2000 (日経新聞 2014.3.18) 山中教授、iPS細胞を年内配布 患者治療後押し STAP「結果再提出を」 京都大学の山中伸弥教授は17日、日本経済新聞のインタビューに応じ、治療を計画する研究機関へiPS細胞を年内に配布する方針を明らかにした。理化学研究所が発表した新型万能細胞「STAP細胞」の作製に疑義が生じている点については「患者に不安を与えてしまうことが心配」と述べ、「もう一度はっきりしたデータを出していただきたい」と求めた。iPS細胞を使った治療では患者自身の細胞から作るのは数千万円かかるといわれ、普及が難しい。他人に移植しても拒絶反応が起きにくい人の血液細胞からiPS細胞を作って備蓄し、配布する計画を進める。山中教授は「(安全性の)評価のために各機関に配布する」と患者への治療を後押しする考えを示した。配布先には理化学研究所や慶応義塾大学、大阪大学などを挙げた。理研は目の難病、慶応大は脊髄損傷、阪大は重度な心疾患をそれぞれ対象に治療を計画する。山中教授は「安全性が特に重要だ」と指摘。「大丈夫だと信じているが、何が起きるか分からない点もある。(配布を受けた大学などに)全面的に協力する」と述べた。STAP細胞については、いったん成長した細胞が受精卵に近い状態に戻る「初期化」の研究の根幹に関わる科学的に興味深い現象と指摘。ただ、不信感が募ったままの状態は「しっかりした再生医療の研究がなされているのか、患者が不安に感じている」と理研による最終報告での解明を待ちたいとした。再生医療の実用化を巡っては、「改正薬事法」と「再生医療安全性確保法」が2013年11月に成立。山中教授は「再生医療に関わる医薬品や医療機器の規定が明確になり、再生医療の普及に向け大きな前進だ」と評価した。半面「これまで厚生労働省の指針で扱われてきた人の幹細胞を用いる臨床研究が法律の規制対象になり、手続きが煩雑になる恐れもある」と指摘した。iPS細胞の活用では「創薬分野での産学連携に期待している」と表明。患者から採取した皮膚や血液からiPS細胞を経由して病気を再現し、これらに新薬の候補物資を与えて治療効果を調べられる。事前に副作用などが調べられれば個人の体質にあった新薬を開発できる。「将来の個別化医療につながる有望なテーマだ」と強調した。 *5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11030201.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2014年3月15日) 取材重ね、検証していきます STAP細胞論文 科学医療部長・桑山朗人 理化学研究所などの研究チームが、新たな万能細胞「STAP細胞」を作製したとする英科学誌ネイチャーの論文について、データの扱いに問題があったとして、理研の調査委員会が不適切と認めました。研究論文の信頼性を著しく損なう事態です。私たち報道機関も、報道のあり方が問われていると受け止めています。論文について、朝日新聞は1月30日付朝刊1面トップで報じ、2面で科学的な成果とその意味、社会面で研究の中心的存在である小保方晴子ユニットリーダーの研究人生なども紹介しました。理研の発表を踏まえ、私たちは複数の専門家に論文を読んでもらうなどして、内容の妥当性について取材を進めました。その結果、実験で得られた細胞がこれまでと違う新たな万能細胞の可能性が高いこと、万能性を示す記述も説得力があること、などの評価を得ました。英科学誌ネイチャーは専門家による厳しい審査で知られ、掲載率は1割以下です。そうした審査を経て特に注目すべき記事の一つとして扱われたことや、論文に名を連ねている研究者の過去の実績も踏まえ、この論文は信頼できると判断しました。しかし、報道後、論文を読んだ別の研究者からデータの使い回しや盗用を疑う指摘が相次ぎました。論文の共著者や、同じ研究分野の専門家などにその指摘について取材を重ねました。その一方で、再現実験を試みている大学の取材も進めていました。そんな中、理研も調査に乗り出し、重大な不備が見つかったわけです。私たちは、発表段階で論文の問題点を見抜けませんでした。限られた時間で論文中のずさんなデータの扱いまで把握するのは容易なことではありません。それでも今回の件を教訓として受け止めなければならないと考えています。論文が撤回されれば、STAP細胞の存在は「白紙」になります。ただ、理研はまだ、再現実験などでSTAP細胞の存在が確認できれば、改めて論文として世に問いたいとしています。STAP細胞が本当に存在するかを見極めるためにも、私たちは再現実験の行方をしっかりとフォローしていきます。また、今回の経緯と問題点の詳細、さらに科学論文のチェック体制など、引き続き取材を重ね、検証していきます。 *6:http://syodokukai.exblog.jp/20313842/ 分化した体細胞における外部刺激に惹起される多能性の獲得 (STAP) 【まとめ】 刺激惹起性多能性獲得(stimulus-triggered acquisition of pluripotency; STAP)という、核移植も転写因子の導入も不要な、独特の細胞リプログラミングについて報告する。哺乳動物の分化した体細胞に外界からの強い刺激を一時的に加えたところ、体細胞はリプログラミングを起こして多能性細胞を生じたため、得られた多能性細胞を「STAP細胞」と名付けた。本研究では、新生児マウスの脾臓からFACSでソートしたCD45陽性リンパ球を酸性溶液(低pH)に30分置いて、LIF含有培地で培養することによりSTAP細胞を作製した。STAP細胞は、もとの細胞サンプルに含まれていた未分化細胞が単に低pH耐性によって「選択」されたのではなく、まさに低pH刺激に惹起されて「分化状態の体細胞にリプログラミングが起きた」ことによって生成していた。STAP細胞は、多能性マーカー遺伝子の調節領域のDNAメチル化が大きく減少しており、エピジェネティック状態のリプログラミングがあることが確認された。STAP細胞を胚盤胞に注入したところ、この細胞はマウスキメラ胚の形成に高効率で寄与し、生殖細胞系列伝達によって次世代の仔マウスに移行した。さらに、STAP細胞から増殖可能な多能性細胞株「STAP幹細胞」を得ることができた。以上の結果から、分化した体細胞のエピジェネティックな運命決定は、強い外界環境刺激によって著明に転換しうることが初めて示された。 【論文内容】 体細胞(Somatic cells)の運命は、ちょうど下り坂を落ちていくように細胞分化が進む方向に決定されており、これはWaddingtonの「エピジェネティックランドスケープの方向付け」として知られている。この分化の方向を逆行させるには、核の物理的な操作を行うか(核移植)、複数の転写因子を導入する(iPS細胞の作製)ことが必要であると一般的には信じられている。本研究では、このような体細胞のリプログラミング(「初期化」)が、外部刺激によって起きるかどうかを検討した。植物では、この外部刺激による体細胞のリプログラミングが起きることが知られている。植物の分化した体細胞、例えば単一のニンジンの細胞は大きな環境の変化によってカルスと呼ばれる未分化な細胞(芽体細胞)へと変わることがあり、オーキシン(auxin)の存在下ではそこから茎や根といった植物全体が発生する。では、動物の分化した体細胞も特殊な環境下に置けば、多能性を獲得する潜在能力を持っているのだろうか? ●低いpH刺激によって体細胞の運命転換を起こすことができる ここでは、CD45(白血球共通抗原)が陽性の造血幹細胞を「運命決定された分化した体細胞(committed somatic cell)」として用いた。もし、この細胞がリプログラミングされれば、多能性のマーカーであるOct4を発現するはずである。そこで、Oct4が発現(Oct4の転写が活性化)するとそのプロモーター下でGFPが発現して緑色蛍光を発するトランスジェニックマウス(Oct4-gfpマウス)の体細胞である、CD45+細胞を用いて以下の実験を行った。 出生後1週齢のC57BL/6系統Oct4-gfp トランスジェニックマウスの脾臓を採取し、そのリンパ球分画をFACS(蛍光活性化セルソーター)にかけてCD45+細胞をソートした。これらの細胞をLIF (leukaemia inhibitory factor;多能性細胞の維持・増殖に必要な増殖因子)とB27(血清フリーサプリメント)を加えたDMEM/F12培地(LIF+B27培地と呼ぶ)に懸濁して数日培養し、GFPを検出することによってOct4の発現を調べた。 FACSでソートされて得られる細胞は、ソートの過程で一時的にさまざまな強い物理的・化学的刺激にさらされている。ここでは、それらの細胞外刺激の中で、特に低pHという化学的刺激に注目した。これは、組織を一時的な低pHという「致死的以下の(sublethal)」条件に置くとその分化状態が変化することが従来示されていたためである(例えば、サンショウウオの動物極キャップは、pH 6.0以下のクエン酸培地に置くことで自発的に神経に転換するなど)。 そこで、上記で得られたCD45+細胞を酸性の培地 (pH 5.4-5.8)に30分間(25分の培養と5分の遠心の間)置いた後、LIF+B27培地で7日間培養した。その結果、Oct4-GFPを発現する球状凝集塊が多数出現した(刺激なしではOct4-GFP発現細胞が出現しなかった)。新生児の脾細胞で30回実験した場合でも、全部の実験で同様に多数のGFP陽性細胞が出現した。このCD45+細胞由来Oct4-GFP発現細胞はフローサイトメトリーでも観察できた。 次にCD45+細胞を、CD90 (T細胞)、CD19 (B細胞)、CD34 (造血幹細胞)の陽性・陰性で分画し、同様に低pH溶液で刺激した。T細胞・B細胞の分画の細胞からも高効率(7日目の生存細胞の25-50%)でOct-GFP発現細胞が生成した。CD34+造血幹細胞からはOct4-GFP陽性細胞の生成率は低かった(<2%)。 低pH溶液後5日目にはOct4-GFP発現細胞は集合して凝集塊を形成した。このGFP陽性の凝集塊はきわめて動きやすかった(supplement video1に示されている)。Oct4-GFP発現細胞は細胞質が少なく細胞のサイズは小さく、核の詳細構造はもとのCD45+リンパ球に比べて明瞭だった。7日目のOct4-GFP発現細胞は、もとのCD45+細胞やES細胞といった一般的に小さいと考えられている細胞に比べても、サイズが小さかった。 ここで、FACSでソートしたCD45+細胞の中に非常に少ないCD45-の多能性細胞が不純物として混ざっていて、それが急速に増殖して最初の数日でOct4-GFP+細胞集団を形成した可能性も考えられる。しかし、Oct4-GFPの発現開始は細胞分裂を伴っておらず、酸性ストレス刺激の後にEdU取り込みは見られていない(すなわち酸性刺激後には大きな細胞分裂、細胞増殖は起きてない)ため、その可能性は否定的である。また、FACSで精製されたCD45+細胞およびCD90+CD45+ T細胞から生成したOct4-GFP陽性細胞でT-cell receptor 遺伝子のゲノム再構成が認められたため、Oct4-GFP陽性細胞は分化したT細胞から生じたことが示された。以上より、Oct4-GFP陽性細胞は低pH処理したCD45+細胞からリプログラミングによって新たに生成されたものであり、低pHストレスに耐性を示す細胞が単に選択されたわけではないことが分かる。 ●低pH刺激によって生成したOct4陽性細胞は多能性を示す 低pH刺激後7日目のOct4-GFP発現細胞では、多能性関連マーカー蛋白(Oct4、SSEA1、Nanog、E-cadherin) とマーカー遺伝子(Oct4、Nanog、Sox2、 Ecat1 (Khdc3)、Esg1 (Dppa5a)、Dax1 (Nrob1)、Rex1 (Zfp42))の発現が、ES細胞と同程度に認められた。この多能性関連マーカー遺伝子の発現は、刺激後3日目には中等度認められていた。3日目には早期造血マーカー遺伝子Flk1 (別名Kdr) およびTal1が発現していたが、これは7日目には発現していなかったため、 Oct4-GFP発現細胞は3日目にはまだ運命転換の動的な過程にあったと考えられる。低pH処理7日目のOct4-GFP発現細胞では、ES細胞と同様にOct4とNanogプロモーター領域の広範な脱メチル化が認められていた。これは低pH処理されたCD45+細胞で、多能性のための主要な遺伝子のエピジェネティックな状態がリプログラミングされていることを示すものである。 In vitro分化アッセイ(In vitro differentiation assay)によって、低pH刺激によって生じたOct4-GFP発現細胞は3胚葉(外胚葉、中胚葉、内胚葉)の誘導体と近位内胚葉様上皮を生じることが示された。Oct4-GFP発現細胞の凝集塊をマウスに移植したところ、この細胞は奇形腫(teratoma)を形成した(n=20)が、奇形癌(teratocarcinoma)にはならなかった(n=50)。 凝集塊の中にはOct4-GFPシグナルのレベルにさまざまなものがあることから、7日目の細胞を大部分のGFPシグナルが強い細胞と少数のGFPシグナルが弱い細胞にFACSでソートし、分けたそれぞれをマウスに注入した。その結果、GFPが強い細胞のみで奇形腫が形成された。定量的PCRで解析したところ、GFPが強い細胞は多能性マーカー遺伝子を発現しており、早期系統特異的マーカー遺伝子は発現していなかった。一方でGFPが弱い細胞では逆に早期系統特異的マーカー遺伝子(Flk1、Gata2、Gata4、Pax6、Sox17)は発現しているが、多能性マーカー(Nanog、Rex1)の発現は見られなかった。したがって、上記の3胚葉誘導体は多能性マーカー遺伝子を発現しているGFPシグナルが強い細胞から生成されていることが示唆された。 以上より、運命が決定した体細胞の分化の状態は、低pHなどの強い細胞外刺激を加えると多能性の状態へと転換しうることが示された。そこで、このことを「刺激惹起性多能性獲得(stimulus-triggered acquisition of pluripotency; STAP)」、この結果得られた細胞を「STAP細胞」と呼ぶことにした。 ●ES細胞と比較したSTAP細胞の特徴 STAP細胞は、マウスES細胞と違って、LIFを含む培地で自己複製する能力がなかった。また、単細胞に分離した後のコロニー形成能が低く、分離誘導性アポトーシスを抑制するROCK阻害剤(Y-27632)の存在下でもコロニーを形成しなかった。部分的分離後の高濃度培養を行っても、STAP細胞数は2回の継代後には細胞数が大きく減少し始めた。さらに、ES細胞マーカー蛋白であるEsrrβの発現は、STAP細胞では少なかった。 一般に、メス由来のES細胞は、メスCD45+細胞やEpiSC(エピブラスト幹細胞;ES細胞とは別の多能性幹細胞)とは異なって、X染色体不活化を示さず、それを示唆するH3K27me3密度が高いフォーカス(不活性化されたX染色体を示す)を持たない。ところが、Oct4-GFP強陽性のメスSTAP細胞では、40%程度にH3K27me3密度が高いフォーカスが認められた。さらに、STAP細胞はEpiSCと異なり、Klf4が陽性、上皮体とジャンクションマーカーであるclaudin 7とZO-1が陰性であった。 ●他の臓器由来のSTAP細胞 次に1週齢のOct4-gfpマウスの脳、皮膚、筋肉、脂肪、骨髄、肺、肝臓からの体細胞で同様の運命転換実験を行った。転換効率はさまざまであったが、確認した全部の組織で、低pH刺激後7日目にはOct4-GFP発現細胞が生成された。これらの中には、FACSでCD45でソートされない脂肪組織間質細胞や新生児心細胞も含まれていた。 ●STAP細胞によるキメラ形成とSTAP細胞の生殖細胞系列への伝達 次に、GFPを恒常的に発現するマウス(C57BL/6系統のcag-gfpトランスジェニックマウス)の新生児からCD45+細胞を採取し、そこから作製したSTAP細胞の胚盤胞注入実験(blastcyst injection assay)を行った。まず、STAP細胞の凝集塊を、マイクロナイフを用いて手作業で切って小さい断片とした。得られたSTAP細胞をマウス胚盤胞(着床前胚)に注入してマウスの仮親の子宮に戻したところ、得られたキメラ胚の形成にはGFPを発現するSTAP細胞が高度から中等度寄与していた。このキメラマウスはかなりの率で出生し、すべて正常に発生し、CD45+細胞由来のSTAP細胞は調べたすべての組織の発生に寄与していた。さらに、キメラマウスからSTAP細胞由来の仔マウスが生まれ、STAP細胞由来遺伝子の生殖細胞系列への伝達(germline transmission)が認められた。Germline transmissionは、ゲノムおよびエピゲノムの正常性とともに、多能性にとって厳格な基準の一つである。さらに、発生能の最も厳密な試験と考えられている四倍体胚補完実験(tetraploid complementation assay)を行ったところ、CD45+細胞由来STAP細胞は胎生10.5日(E 10.5)にはすべてのGFP発現胚を生成した。すなわち、STAP細胞は、in vivoにおいて生殖細胞を含む体のすべての細胞に分化する能力を持っており、それのみで全胚構造を構成するのに十分であることが明らかになった。 ●STAP細胞から得られた増殖可能な多能性細胞株 STAP細胞は上記の樹立条件下では限られた自己複製能しか持たないが、胚発生においてはSTAP細胞凝集塊の小断片が全胚へと成長しうることが明らかになった。そこで次に、STAP細胞はin vitroで増殖可能な全能性細胞系列を生成するかを検討した。STAP細胞は、通常のLIF+FBS培地または2i培地(マウスESおよびiPS細胞用の無血清培地)では継代培養できない。そこで、ES細胞のクローン増殖を促進する培地であるACTH+LIF含有培地をMEF feederまたはゼラチン上に置き、STAP細胞の凝集塊の一部を培養したところ、マウスES細胞と同様にコロニーに成長し、高レベルのOct4-GFPを発現した。 STAP細胞は、ACTH+LIF含有培地で7日間培養すると、単細胞として継代可能となり、2i培地で成長し、少なくとも培養120日間は指数関数的に増殖した。このとき染色体異常は認められなかった。そこで今後は、このSTAP細胞由来の増殖細胞を「STAP幹細胞 (STAP stem cells)」と呼ぶことにする。 STAP幹細胞は多能性細胞の蛋白およびRNAマーカーを発現しており、Oct4とNanog座位のDNAメチル化レベルが低下している。また、核の微細構造はES細胞と同様であった。STAP幹細胞を分化培養すると、in vitroで外胚葉、中胚葉、内胚葉のそれぞれの誘導体となり、拍動する心筋やin vivoで奇形腫を形成することもできた。STAP幹細胞を胚盤胞注入したところ、この細胞は高効率にキメラマウス形成に寄与し、germline transmissionも見られた。四倍体補完法においても、注入したSTAP幹細胞によって、成体まで成長し仔を産める能力を持つマウスを作製することができた。STAP幹細胞と元のSTAP細胞の違いは、(1)STAP細胞には発現してなかったES細胞マーカー蛋白EssrβがSTAP幹細胞では発現していること、(2)STAP細胞で見られたH3K27me3フォーカスがSTAP幹細胞には見られないことである。以上の結果よりSTAP細胞は、ES細胞と同様の性質を持つ増殖可能なSTAP幹細胞を生じる能力を持っていることが明らかになった。 【結論】 本研究によって、分化した体細胞が潜在的には驚くべき可塑性を持っていることが明らかになった。この体細胞が多能性細胞となる能力は、通常の環境では経験されないような強い刺激(ここでは低pH)に一時的にさらされた時に発揮されるものであった。 本研究で用いた低pH刺激は、酸性培地によってサンショウウオの動物極がin vitroで神経に転換されるというHoltfreterの実験(1947)で用いられている。Holtfreterは、強くしすぎると細胞を死滅させてしまうような刺激を少し弱めた刺激、すなわち致死以下の刺激を細胞に加えることによって、細胞の運命転換を抑制している何らかの内因性抑制機構が解除されると考えた。本研究は外部刺激による核のリプログラミングであるためHoltfrenerの研究とは方向性が異なるが、「致死以下の刺激による細胞の運命転換抑制機構の解除」という点で共通した側面を持つ現象なのかもしれない。 この多能性細胞へのリプログラミングが低pH刺激に特異的に起こるものなのか、それとも他のストレス(物理的な傷害、細胞膜の穿孔、浸透圧ショック、成長因子の除去、ヒートショック、高Ca2+への曝露など)でも起こるものなのかは不明である。少なくとも、細胞を細いガラス管の中に多数回通したり(細胞にせん断力を加える)やstreptolysin Oを用いて細胞膜に穿孔を作ったりする刺激で、CD45+細胞からのOct4-GFP発現細胞生成が起きることは確認されている(論文中には示されていないが)。このようなさまざまな致死以下のストレスはある共通の調節機構を活発化し、それが分化した体細胞で保持されているエピジェネティックな状態を解放し、多能性の状態へと細胞を「初期化」するのに働いている可能性はある。 では、なぜ体細胞は致死以下の刺激が加わると自らをリプログラミングできる潜在能力を持っているのか?このリプログラミングのメカニズムは、正常の状態ではどのように抑制されているのか?強い環境のストレスを受けても、通常の組織では多能性細胞(または奇形腫)の出現が見られないのはなぜか?未解決の問題は多いが、今回の発見は生物の多様な細胞状態の意味に新たな光を投げかけるものと言える。 <図:分化した細胞を「初期化」する2つの方法―iPS細胞とSTAP細胞> (a) 分化した細胞は、転写因子を導入し、多能性を促進する培地で培養することによって、多能性の状態にリプログラミングできることが知られている。この 方法により誘導多能性幹細胞(iPSC)が作製できる。iPS細胞は自己複製でき、胚のすべてのタイプの細胞に分化できることが分かっているが、胎盤形成には寄与していない。 (b)酸性(低pH)の短時間刺激によって刺激惹起性多能性獲得(STAP)が起きる。STAP細胞は増殖しないが、多能性促進培地で培養することによりSTAP幹細胞となり、これはiPS細胞と同様の特性を持つ。STAP細胞を、栄養芽細胞(trophoblast)を成長させる培地で培養すると、iPS細胞と違って胎盤形成に寄与できる。
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2014,03,18, Tuesday
*1-2より *1-1より 3月18日西日本新聞 3月18日日経新聞 (画像をクリックすると大きくなります) (1)営農発電は、一石四~五鳥ある *1-1、*1-2、*1-3のように、営農しながら発電し、営農に利用したり、電力の販売を行ったりする方法ができた。農業が本気でこれを行えば、輸入化石燃料の単価に振り回されることなく、安い燃料コストで農業生産を行うことができる。また、農地からかなりの副収入が得られるため、最初に国が施設設置費を補助したとしても、その後の所得補償として農業に支払われる補助金を削減することができ、国の財政支出を削減することができるため、国民にもメリットがある。 さらに、エネルギーとして電力を使うため、制御しやすく、安価に次世代の園芸に進化させることができるし、それは国産エネルギーであるため、外国への支払いが生じず、エネルギー自給率を上げる。 (2)地域で、作物・発電方法の最適ミックスを選ぶべき もちろん、次世代の園芸になったからといって、液肥で育てた形だけでミネラルや栄養価の乏しい作物を作ってもらいたくはないし、そのような作物が市場を席捲するようでは困る。しかし、これについては、もう理解されているだろうから、まずは農業者の良心に任せたい。 そのため、作物と発電方法の最適ミックスを研究し、地域によって選ぶことが必要だが、気候が異なるため、これを中央集権で考えることはできない。 (3)「原発、原発」と言ってまだ未練をもっている人は、「馬鹿」としか言いようがない そのような中、*2のように、「2050年までに温室効果ガス40~70%減必要だが、それには太陽光や風力などの再生可能エネルギーや原子力といった低炭素エネルギーの比率を、現在の17%から3~4倍に急拡大させる必要性があると強調された」そうで、「原発は成熟した低炭素技術だが、世界的なシェアは1993年から減少している」とも指摘しているなど、環境に悪影響を及ぼすのが、まるで温室効果ガスだけだとでも言いたげな無知ぶりには呆れるほかない。*3-2の福島の退会表明はもっともである。 また、*3-1では、規制委が「大量の放射性物質の放出につながる事故を100万年に1回以下に抑えるなど原発の安全目標を掲げている」と書かれているが、STAP細胞に求めたのと同じ精度で「100万年に1回以下」という証明をするのは、津波・地震の発生や放射線の生物に対する影響について、ここまで想定外が多く無知な関係者にできるわけがないため、私企業の損害保険の対象となる筈もなく、このようなレベルの研究機関を設置することは、予算の無駄遣い以外の何物でもない。 *1-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26486 (日本農業新聞 2014/3/13) [営農発電・最前線 7] CO2排出削減 オール電化で省エネ 愛知県田原市はJA愛知みなみなどと低炭素施設園芸づくり協議会を組織、2010年度から菊苗業者、イシグロ農芸のハウスで低炭素モデルの実証試験をした。断熱性を高めた2重被覆で省エネ化、ヒートポンプの導入でオール電化とし、太陽光発電で一部の電力を自給、二酸化炭素(CO2)排出量を90%近くも削減した。 ●菊でモデル事業 同市は日本有数の施設園芸地帯だ。農業生産額724億円の半分が花でその90%が菊。市農政課の横田浩一主任は「花作りを続けるには高い技術が必要と考え、モデル事業に取り組んだ」と説明する。672平方メートルの耐候性ハウスを建て太陽光発電や発光ダイオード(LED)照明など、最先端技術を投入した。太陽光発電は2系統ある。一つはハウスの天窓部分に出力7.8キロワットのパネルを設置。天窓の開閉やカーテンの巻き上げなどの電源として使い、余剰分を売電する。もう一つは敷地内に設置した2.2キロワットの屋外施設で、蓄電し夜間、LEDに使う。屋根はガラスに16センチ四方の発電素子を天窓面積の50%になるよう配置した注文品で遮光率が屋根全体の約5%になるよう設計した。イシグロ農芸の中島康善社長は「10%では品質に影響すると考え5%にした。柱など部材を白くしフィルムも光が散乱する加工をした」と品質重視を強調する。外壁フィルムは専用アルミ部材で2重窓のようにフィルムを2センチ弱の間隔で2層に張った。この一つの技術で重油の使用量を25%削減できた。重油ボイラーを使わずヒートポンプ5台、電照はLEDを100灯導入した。太陽光発電、高断熱化と散乱光利用、省エネ機器、加えて複合環境制御を導入した。天窓の発電量は1年間で9500キロワット時程度の実績だった。12年度に購入した電力は約54万円、一方で33万円の売電をした。太陽光発電で必要な電力の6割を賄えたと見る。CO2削減率は10年度が冬作1作で84%、11年度が夏冬2作で86%、12年度夏冬2作で88%だった。LEDは赤色、遠赤色、青色を試験、赤色は花芽抑制効果を確認。消灯後の増加葉数は白熱電球と遜色なかった。 ●消費者招き教室 40品種を栽培し見本園とする一方、消費者を招き親子花育教室を開き、低炭素園芸への理解を深めた。最終年度の今年も1日に開催、約50人がフラワーアレンジメントに挑戦した。中島社長は「電力を自給しないとCO2排出は抑えられない。太陽光発電も一つの手段だ」と訴える。既存ハウス(946平方メートル)も12年度にリフォームし複層化、天窓に太陽光パネルを設置、低炭素化に挑戦する。環境省の統計によれば、1965年の大気中のCO2濃度は320ppmだったが、昨年気象庁が観測している国内全地点の観測データは400ppmを超えた。温暖化ガスの濃度が高まっている。政府は原発事故を受け25%削減の国際公約を撤回したが、温暖化対策は待ったなし。CO2を排出しない太陽光発電には消費者の関心も高まる。 *1-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26458 (日本農業新聞 2014/3/12) [営農発電・最前線 6] 共同事業 企業と連携、薬草栽培 徳島市の農家4人が営農型発電施設の設置に合わせ、国府花園薬草倶楽部(くらぶ)有限責任事業組合を組織した。奈良先端科学技術大学院大学の教授らが組織するベンチャー企業、(株)植物ハイテック研究所と連携し、遮光率50~60%に設定したパネルの日陰を生かして、薬草の産地化を目指す。 ●耕作放棄避ける 農家は同市国府町花園の松内豊次さん(65)、以西秋美さん(64)、岩崎滋大さん(58)、簑手重夫さん(53)。町内の農地は農用地区域内農地だが、戦後水路を手作りして以来整備されていないため、水利が悪い。パイプライン化の計画が持ち上がったが、高齢化で農家の事業意欲が弱く2012年2月に 頓挫した。このままでは耕作放棄地になるという危機感が高まった。「今後の地域農業の活性化策をどうしようと話し合う中で太陽光発電のアイデアが出てきた」と花園土地改良区の役員だった松内さんが説明する。一方、岩崎さんは知人から薬草などの知識と、産地化するときの組織として、有限責任事業組合(LLP)設立を助言された。以西さんは橋梁の設計会社の会社員で、松内さんと簑手さんは電気設備業などをそれぞれ経営する。兼業で得た知識を生かして対策を検討し、LLPで薬草を栽培、産地化する構想を立てた。13年6月にLLPを平等に出資し設立した。LLPは05年の法律施行で創設された共同事業をするための組合組織だ。代表者を置かず組合の業務執行は総組合員の同意によって運営し、利益を全額平等に分配できる。こうした点を「評価した」と岩崎さん。 ●6次化も視野に 資材を安価に調達するため、共同購入をし、販売も共同でする。営農を継続するため、互いに営農できなくなったときは、組合が作業を受託し農地を守る。さらに薬草の加工など6次産業化も視野に入れる。営農型発電施設を置く農地は本人か父親の所有だ。節税対策でそれぞれが既に所有する会社か新たに設立した会社が空中を借り、農地は個人が耕作する形にした。薬草栽培は植物ハイテック研究所が支援、種苗も供給する。13年8月に協定書を結んだ。栽培する作物は山菜、ホースラディッシュ、ハーブも予定する。同社は産地化の熱意に共感して応援。需要のほとんどを輸入に頼る薬草もある中、この提携で、国内生産量を増やしたいと考えている。営農発電型施設は合計で3.85ヘクタールの農地に19カ所、出力3.58メガワット。1カ所はLLPの活動資金に充てる共同発電所とする。以西さんは「12年9月から農業委員会に相談し根気よく説明した」と振り返る。13年8月に申請し11月に許可された。一部は12月から売電している。現在工事中で、年内には全部の売電を始めたい考えだ。 *1-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26326 (日本農業新聞 2014/3/5) 木質バイオ推進を 「エネ基本計画」 自民が提言 政府は、中長期的なエネルギー政策の方向性を示す新たな「エネルギー基本計画案」を取りまとめた。これを受けた自民党の議論で、再生可能エネルギーも焦点の一つに浮上している。特に、木質バイオマス(生物由来資源)発電は、基本計画案では導入拡大の「期待」にとどまっており、明確な導入目標を明記するよう注文がついている。 ●明確な導入目標 要望 政府はエネルギー基本計画案について、与党内での調整を経て3月中の閣議決定を目指す。最大の焦点の原発は、季節や時間帯にかかわらず一定の電力を発電し続ける「ベースロード電源」と位置付けて重要視し、再稼働したい方針を鮮明にした。一方、再生可能エネルギーについて「2013年から3年程度、導入を最大限加速していき、その後も積極的に推進していく」とした。木質バイオマス発電も「安定的に発電を行うことが可能な電源となり得る、地域活性化にも資するエネルギー源」と評価した。ただ、導入に向けた方針では「拡大を図っていくことが期待される」と、あいまいな姿勢にとどまっている。「木質や廃棄物など材料や形態がさまざまであり、コストなどの課題を抱える」と、むしろ難しさを指摘している。これに対し自民党では「自給率の向上に貢献し、ベースロード電源になり得る木質バイオマスをしっかりと位置付けるべきだ」「木質バイオマスの導入目標を示してほしい」「再生可能エネルギーは本気度が足りない」などの不満や注文が続出。同党の木質バイオマス・竹資源活用議員連盟(宮路和明会長)でも、同計画の策定に当たって木質バイオマス発電の積極的推進と明確な目標を盛り込むことなどを提言している。今後、計画案について与党内で議論を進め3月中にまとめる考えだが、再生可能エネルギーの位置付けをめぐっても議論が続きそうだ。 *2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11034972.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2014年3月18日) 2050年までに温室ガス40~70%減必要 原発の位置づけ後退 IPCC報告書案 地球温暖化による環境の激変を避けるには、2050年までに世界の温室効果ガス排出量を10年に比べて40~70%減らさなければならないとする気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最終報告書案を朝日新聞が入手した。達成には、二酸化炭素(CO2)排出の少ないエネルギーの割合を大幅に増やす必要があるとしつつ、東京電力福島第一原発事故などを踏まえ、原発の位置づけは後退させた。内容がわかったのは、温室効果ガスの削減策について最新の研究成果をまとめる第3作業部会の報告書案。4月にドイツである会合で承認される。報告書案によると、世界の温室効果ガス排出量は人口増と経済成長を背景に00年以降加速。10年にCO2換算で495億トンとなった。大気中の濃度は過去80万年で最も高い約400ppmまで上昇している。環境激変を避けるためには、19世紀半ばの産業革命前と比べて気温上昇を2度以内に抑える必要があると国際交渉で合意されてきた。報告書案は2度を突破しないために、今世紀末の濃度を480ppm以下に抑える必要性を指摘。また530ppm以下でも2度以内に抑えられる可能性が50%以上の確率で残っているとした。達成するためには、50年の世界の排出量を10年比で40~70%削減しないといけないという。現状の国際交渉では排出量を減少に転じさせるめどすら立っていない。重要対策として位置づけたのが最大の排出源になっているエネルギー供給分野だ。当面は石炭火力発電所を天然ガス発電所に変えていきながら、太陽光や風力などの再生可能エネルギーや原子力といった低炭素エネルギーの比率を、現在の17%から3~4倍に急拡大させる必要性を強調した。交通、建物、産業分野での省エネ技術のいっそうの普及なども挙げた。ただ、原発については、「成熟した低炭素技術だが、世界的なシェアは1993年から減少している」と指摘。安全性や廃棄物処理など未解決の課題を挙げた。7年前の前回報告書では、原発を重点技術として将来のシェア拡大を見込んでいた。 ◆キーワード <IPCCと報告書> 地球温暖化に関して世界中で発表された研究成果をまとめる国連機関。1990年以来、繰り返し評価報告書を発表し、現在2007年以来の第5次に取り組んでいる。 *3-1:http://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/? (日経新聞 2014.3.18) 原発リスク、産学で研究 経産省、研究機関の設置提言へ 電力会社や原子力の学界は原子力発電所のリスクを研究する機関を今夏にも設置する検討に入る。東京電力福島第1原発事故を受け、地震や津波など想定外のリスクを過小評価しない体制を整える狙い。事故が起きる確率や客観的なデータを用いて、電力会社ごとの自主的な安全対策の強化を促す。経済産業省の有識者会議が14日、原発のリスクを研究する機関の創設を提言する。電力会社などは提言を受け、重電メーカーの技術者や大学の研究者を集める。海外で原子力の研究や規制に携わった人材の確保も検討する。原発の安全審査は国の原子力規制委員会が担う。ただ想定外の地震や津波の発生に備えて「業界は規制水準を上回る安全対策をとるべきだ」との声が上がっていた。規制委は「大量の放射性物質の放出につながる事故を100万年に1回以下に抑える」など原発の安全目標を掲げている。新たな研究機関では数値や確率をもとにした安全対策を練り、事業者に実施を求める。有識者委は、原発が損害保険の対象となる体制を整えることなども提言する見通し。 *3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2648312.article.html (佐賀新聞 2014年3月18日) 福島が原発立地議長会の退会表明 / 再稼働方針に相いれず 福島県議会の平出孝朗議長は18日、原発が立地、あるいは立地予定の14道県の議会議長でつくる「原子力発電関係道県議会議長協議会」(会長・飯塚秋男茨城県議会議長)から、本年度末に退会すると明らかにした。原発再稼働を前提とする協議会の方針と、原発廃炉を目指す福島県は相いれないというのが理由で、この日に開かれた福島県議会各会派の代表者が集まる会合で表明し、各会派から賛同を得た。会合で平出議長は、政府のエネルギー基本計画案が原発を重視していることなどから、「協議会で原発再稼働の動きが活発化していくことは明らか」と指摘した。
| 資源・エネルギー::2013.10~2014.10 | 11:56 AM | comments (x) | trackback (x) |
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2014,03,16, Sunday
今日は簡単な話ですが、佐村河内守(新垣隆)さんの音楽の評価について、私は、変だと思っています。その理由は、佐村河内守氏が、両耳の聴力を失った作曲家として音楽を売り込んだにもかかわらず、それが嘘だったという佐村河内氏個人の人格だけが批判されているからです。 しかし、音楽の良さに関する評価は、作曲家個人の人格や背景とは関係なく、作者不詳の曲でも人の心を打つものは良いし、良くないものは残りません。また、ベートーベンの曲も、作者が難聴から全聾になった人だから残っているわけではなく、優れた曲を作曲した人が難聴から全聾になった人であるため、作曲された背景から、重厚な音楽の意味が、さらによく理解されたにすぎません。 そのため、佐村河内守(新垣隆)さんの音楽の評価を、作者が難聴ではなかったということで変えた人には、どういう基準でよい音楽か否かを決めているのかを、私は聞きたいと思います。 よくない音楽でも、難聴のふりをして大量に売ったのなら、佐村河内守氏は、(もちろん嘘はよくありませんが)音楽の真の価値がわからず、情に訴えるストーリーに弱いという日本人にありがちな人の弱点を知って、それを販売に利用したのだということになります。そして、その音楽が、実際には価値のないものであったのなら、*1のNHKはじめ、その音楽を推薦した人やよい音楽だと思ってCDを購入した人の音楽に対する評価力も問われる筈です。 *1:https://www.nhk.or.jp/special/detail/2013/0331/ 『2013年3月31日(日) 午後9時00分~9時49分総合』 魂の旋律 ~音を失った作曲家~ NHKスペシャルでは、去年3月31日、「魂の旋律~音を失った作曲家~」と題し、両耳の聴力を失った作曲家として、佐村河内守氏を紹介いたしました。しかし放送当時、本人が作曲していないことや全聾ではなかったことに気づくことができませんでした。視聴者の皆様や、番組の取材で協力して頂いた方々などに、深くお詫び申し上げます。なぜこうした事態を防げなかったのか、調査の結果をご報告いたします。
| 教育・研究開発::2013.11~2014.7 | 08:08 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2014,03,13, Thursday
*1-2より 原発に関するアンケート *2-4より (1)3号機は核爆発だったという隠された原発事故の真実 *1-1に書かれているように、福島第一原発3号機は黒いキノコ雲が発生する大爆発をしたが、この爆発は、東電は「水素爆発」と言い続けているにもかかわらず、多くの専門家の分析から核爆発だったことが判明しており、その前提で考えれば、関東を含む広範囲の汚染や示される測定値が合理的に説明できる。 このことについて、肝心なところでは「へなちょこ」の日本メディアは報道していないため、多くの日本人は知らないが、関心を持ってインターネット等で情報を入手している人は、外国の報道機関等が報道しているので知っている。そのため、そのような人たちから、*1-2のような大規模な国会周辺デモが発生したり、*1-3のように、独仏国境で独仏やスイスなどから集まった人が脱原発を訴えて「人間の鎖」をつくったり、*1-4のように、福岡へ移転する企業が増えたりしているのだ。 (2)世論調査の世論は、軽はずみで衝動的・情緒的なものか? *2-1に、元九州電力社長の眞部利應氏が、「世論調査は匿名で行われ責任を伴わないため、単純に好きか嫌いか、賛成か反対かなどの情緒的な思いを反射的に回答するその場限りのものだが、選挙時には、多くの国民は冷静に判断し、限られた情報からでも結果的に妥当な結論を導き出してくる。そう考えると、一国の運命に関わる極めて重要な政策を世論調査の世論で決めてしまうような軽はずみなことは避けるべきで、世論調査の世論をあたかも国民の意思であるかのように、声高に振りかざすことも止めてもらいたい」と書かれている。また、「選挙の事例でみると、確かに組織票とか選挙戦術とか個人的資質とか選挙の結果を左右する特有の事情が挙げられるが、それとは別に、国民の意志の有り様を見誤っているということが原因として考えられないだろうか」とも書かれている。 しかし、選挙で原発の世論調査と異なる結果が出る理由は、国民が知れば選挙に大きな影響を与える(1)の真実がメディアで報道されないように、原発再稼働を目指す電力業界・経済産業省・与党が、権力や広告料でメディアを縛っているからである(縛られている方も、報道の理念を忘れ社会的責任を果たしていないため情けないが)。また、*2-2の「原発ホワイトアウト」に書かれているように、原発再稼働を目指す電力業界が、電力使用者から電力料金として集めた資金を合法的に選挙に投入し、電力使用者の名簿を提供して、選挙に大きな影響を与えていることもある。さらに、選挙では、原発問題1点に集中して選択しているわけではなく、与党の財政政策に期待した選択効果が大きい上、長く与党であった政党の方が候補者の質が高くなるという要因もある。 一方、選挙で選ばれた首長も、*2-3のように、東電福島第1原発が立地する福島県双葉町前町長の井戸川克隆氏は、「福島事故以前は、国も東電も絶対に事故は起きないと言っていた」と指摘した上で、「事故を繰り返さないためには、国や電力会社が示す原発の安全対策に、国民が安易に妥協してはならない」と訴えた。また、*2-4のように、佐賀新聞社が佐賀県知事の古川康氏と佐賀県内20市町の首長に玄海原発再稼働や今後の原子力政策の方向性などについて考えを聞いたところ、再稼働について「賛成」としたのは玄海町長だけで、これは過疎化と電源開発交付金などのメリットが原因だ。 さらに、*2-5のように、市全体が玄海原発の30キロ圏に入った伊万里市は、事故があれば全市民約5万7千人が市外に避難しなければならないが、防災体制の構築が遅れ、立地自治体並みの事前了解を盛り込んだ安全協定を結んで原発の意思決定に加わりたいにもかかわらず、九州電力との安全協定は九州の原発30キロ圏で唯一未締結となっており、安全審査が進む中でも事故前と変わらず再稼働のプロセスの「蚊帳の外」に置かれるのではないかとの不安が漂っているそうだ。 つまり、脱原発の世論が情緒的で無責任なのではなく、選挙が、権力に抑えられたり、他の政策や実行力を重視したりしているのであって、脱原発、電力改革は、軽はずみどころか、真に的を得た国民の意思なのである。なお、眞部利應氏は、「声高に振りかざすことを止めてもらいたい」とも言っておられるが、日本は、憲法で「言論の自由」が保障されている国であるため、真実に基づかない名誉棄損などの不法行為でなければ、何を言っても自由だ。 (3)原発は、エネルギーの安定に寄与する重要なベースロード電源とは言えない このような中、世論を無視して、中長期のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の政府案が2月25日に公表され、「原発はエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置づけられ、安全性が確認されたものは再稼働を進めると書かれてしまった。 そして、*3-1のように、原子力規制委は、地震動の想定を評価して川内原発を優先審査するとのことで、順調に進めば5月にも合格して、地元了解を得られれば夏ごろ再稼働する見込みだそうだが、これは、地元の人にはむしろ戸惑いを与えている。 また、*3-2のように、原発事故に関する3つの事故調の元委員長は、再稼働に積極的な政府の姿勢を批判しており、*3-3のように、アメリカ原子力規制委員会のトップとして東電福島第一原発事故対応に当たったグレゴリー・ヤツコ氏も、「原発事故を完全に防ぐことはできない」「運転再開は世論の支持を得られなければ正当化できない」と述べた。神が作ったものでない以上、完全に事故を防ぐことができないのは当然であり、原発事故後は一時避難ではすまされないため、これらの状況が明らかになった以上、国土保全の為に、原発は再稼働すべきではないのである。 *1-1:http://saigaijyouhou.com/blog-entry-620.html (真実を探すブログ 2013/7/31) 核爆発だった!福島第一原発3号機 【原発事故継続中】3号機から再び湯気!核爆発をした3号機は危機的な状態!福島原発の地下水観測孔では水位が上昇!1.8mから2.9mに! 福島第1原発3号機から再び湯気の発生が観測されました。東電によると湯気は継続して発生しているようで、格納容器内に封入している窒素ガスが漏れ出した可能性もあるようです。3号機といえば、100メートル以上の巨大なキノコ雲が発生するような大爆発をした建屋です。この爆発について東電は「水素爆発」と言い続けていますが、多くの専門家の分析から「核爆発」の類であったことが判明しています。つまり、東電の予想以上に3号機の格納容器はボロボロの状態になっており、窒素ガスを入れようが直ぐに漏れてしまう状態に3号機はなっているということなのです。ハッキリ言って、3号機の状態は絶望的に近いと私は思います。しかも、東電によると福島原発では新たな問題が発生しているようなのです。以下は東電が7月30日に発表した「福島第一原子力発電所地下水観測孔No.1-1~No.1-4の地下水位について」という資料です。この資料には東電が福島第1原発に設置した観測用井戸の水位が書かれているのですが、資料を見てみると7月9日の水位が1.8メートルだったのに、7月30日の水位が2.9メートルにまで上昇しているのが分かります。 ☆3号機建屋で湯気 第一原発放射線量変化なし URL http://www.minpo.jp/news/detail/201307309960 東京電力は29日、福島第一原発3号機の原子炉建屋5階部分で出ていた湯気のようなものが確認されたと発表した。23日以降、断続的に出続けているとみられ、詳しい原因を調べている。午前7時ごろと午後4時ごろに確認された。東電は原因について、5階床の隙間から入り込んだ雨水が原子炉格納容器のふたで温められたことや、水素爆発を防ぐために格納容器内に封入している窒素ガスが漏れ出し外気との温度差で湯気となった可能性があるとみている。周辺のモニタリングポストで計測される放射線量に目立った変化はないという。 ☆福島第一原子力発電所地下水観測孔No.1-1~No.1-4の地下水位について URL http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2013/images/handouts_130730_04-j.pdf 今年に入ってから相次いで汚染水漏れが判明したことから、東電は福島第1原発と海の間に「遮水壁」という壁を建設中です。福島第1原発と海の間を壁で覆うわけですから、今まで漏れていた汚染水は福島第1原発内部に溜まり続けます。そうなると、福島第1原発内部は汚染水が増加し、汚染水の水位が上昇するということなのです。これは私の推測ですが、遮水壁は5月頃から建設指示が出ているので、時期的に見ても一致しており、ある程度の壁が完成している可能性が高いと考えられます。また、7月に入ってから常に一定量で汚染水の水位が上昇していることも、工事と連動しているからと考えると辻褄が合います。 ☆福島第一原発の遮水壁、対策工事は難航 URL http://www.asahi.com/area/fukushima/articles/MTW1307230700006.html 現場の1、2号機タービン建屋の観測井戸付近。折からの雨の中、作業灯の強い光に、土中で固まる水ガラス薬剤を注入する機械8台が浮かび上がる。10人の作業員が全面マスク、ヘルメット、白い防護服の上に雨がっぱを着た完全装備で作業していた。 空間放射線量が毎時200マイクロシーベルトと高いため、2時間半ずつの2班交代で、午後7時から午前5時までの突貫工事を続けている。昼間しかできない他の作業との混雑や作業員の熱中症を避けるためだ。護岸に沿って薬剤を注入し、2列の遮水壁を造る応急対策。しかし今月8日から始まり、中旬には完成する予定だった1列目さえ、半分が完成したばかりだ。東電は、予想外の地盤の固さや熟練作業員の不足を、遅れの理由にあげる。「マンパワーの強化」を図り8月中旬の完成をめざす。だが同夜、現場を視察した赤羽一嘉・経済産業副大臣も「(東電の対応が)後手後手になっている」と認めた。 また護岸の地中に造る遮水壁の効果について、原発事故直後から建屋を囲む遮水壁を造ることを提案してきた京大原子炉実験所の小出裕章助教は「海側だけ造っても汚染水はやがて脇から流れ出す」と指摘する。 情報を整理するため、簡単に福島原発で発生した最近の出来事を並べてみましょう。 ①7月14日から7月15にかけて3号機スキマサージタンクの水位が1メートル以上も急低下。 ②東電が報道向けメールにて「ホウ酸水注入準備」と伝える。 ③7月19日に3号機で湯気が観測される。 ④3号機周囲でのがれき撤去作業が一時中止。 ⑤3号機の作業用トンネルから6億7000万ベクレル ⑥7月23日に東電が3号機の線量を公表。湯気が発生していた場所から毎時562mSv。 ⑦7月23日、東日本各地の放射線量が上昇する。 ⑧7月25日、福島第1原発6号機の冷却装置が一時停止。 ⑨7月25日に新潟や福島などで線量が上昇。 ⑩7月26日に3度目の湯気が観測される。 ⑪7月26日に東京を含め、東日本の各地で放射線量が更に上昇。今月の数値では最大値を 捉える。 ⑫7月27日のふくいちライブカメラが一時的にオレンジ色になり、光の塊や煙みたいな物が写る。 ⑬7月28日、再び東日本各地で線量が上がる。 ⑭7月29日、3号機からまた湯気が発生。 当ブログの過去記事を参考にして並べてみましたが、これは凄まじいですね。2011年の福島原発事故以降では過去最多ではないでしょうか?ここまで多くの異常が福島第1原発で連続発生するのは私も初めて見ます。ふくいちライブカメラで異常が見られたり、湯気の発生が観測されると東日本各地で放射線量が上昇する傾向が強いので、今後も東日本にお住まいの方は放射線量情報に要注意してください。マスコミや政府はあまり福島原発を重視していませんが、このように福島原発事故はまだ終わってはいませんので・・・。 ☆BBC「日本、福島原発から水が漏洩されている事が懸念される」 *1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014031002000143.html (東京新聞 2014年3月10日) 3万2000人「忘れるな」 国会周辺デモ 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から3年を前に、大規模な脱原発デモが9日、国会周辺であった。毎週金曜日に首相官邸前で脱原発を訴え続ける首都圏反原発連合など3団体が主催。約3万2000人(主催者発表)が「事故を忘れるな」との声を上げた。デモに先立ち開かれた日比谷野外音楽堂の集会では「福島県内の全原発の廃炉を求める会」の呼び掛け人、名木(なぎ)昭さんが「二〇一一年三月十一日から時計は止まったまま。故郷を追われた人が自宅に戻れる保証はない。家族がばらばらになっているのが現状だ」と報告。三年を迎えても約十四万人が地元に戻れないことに危機感を募らせた。脱原発運動に取り組む音楽家の坂本龍一さんはゲストとして参加し、東日本大震災の一カ月後に作ったという曲を披露。坂本さんは「福島、関東、東北の人たちが手を取り合って脱原発の運動をやらないと絶対に成功しない。一番困っていても声を上げられない人の声を届けていかなければいけない」とスピーチした。集会後、参加者はプラカードやのぼり旗を持ち、ドラムをたたき、首相官邸や国会に向けデモ行進した。 *1-3:ttp://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014031000032 (時事ドットコム 2014/3/10) 9000人が「人間の鎖」=東電事故から3年、脱原発願い-独仏国境 フランス東部エルスタンのゲルストハイム橋で、脱原発を願い「人間の鎖」をつくる人々=9日 【エルスタン(仏東部)時事】2011年3月の東京電力福島第1原発事故から3年を控えた9日、ドイツ・フランスの国境付近の九つの橋で、独仏やスイスなどから集まった約9000人が、脱原発を訴え「人間の鎖」をつくった。仏東部エルスタンのゲルストハイム橋には約500人が集結。「福島の悲劇を繰り返さない」と叫びながら、原発撤廃の願いを込めた風船を空に放った。参加者は拡声器を手に「事故の被害に苦しむ福島の人々の救済を諦めてはいけない」「今年の欧州議会選に向けて、脱原発の声を上げよう」と口々に主張。「目に見えず、音も聞こえない放射能の危険性を語り合おう」などと記した横断幕を掲げ、100メートル超にわたる橋を手をつないで埋め尽くした。 *1-4:http://qbiz.jp/article/33580/1/ (西日本新聞 2014年3月11日) 福岡へ企業移転今も 13年度50社進出、受け皿づくり進む 東日本大震災の発生から11日で3年になる。震災後は、首都圏の企業が地震や津波のリスクが低いとされる福岡県に拠点を移転、新設する動きが相次いだ。この傾向は続いており、福岡市では、移転企業の受け皿となるオフィスビルなどの開発も本格化している。「現場はてんやわんやになった」。コールセンター代行キューアンドエー(東京)広報の大野香穂里さんは振り返る。同社のコールセンターは2011年3月の震災当時、東京と仙台市のみで、仙台の機能が3日間停止した。リスク分散のため同年11月に福岡市にもコールセンターを設け、通信販売の業務を全国展開している。福岡市経済観光文化局企業誘致課によると、本社機能移転を含む企業の福岡進出は11年度が40社、12年度が35社、13年度は50社。平均で震災前の2倍を超す水準で、11年度の進出のうち14社は災害リスクの軽減が目的だった。同課は「首都直下型地震や南海トラフ巨大地震などが取り沙汰され、現在も福岡移転を検討する企業は多いようだ」と話す。ヤフー(同)は4月に北九州市に自社ポータルサイトの3番目のニュース編集拠点を設け、大阪に続くバックアップ拠点にする。スマートフォン向け無料通信アプリを提供するLINE(同)は16年春、福岡市に千人規模が働く新社屋を開設。入居する子会社はLINE本体の業務も担う。ただ、福岡市の場合、中心部には古いオフィスビルが多く、移転のネックになっているとの指摘もある。築40年超の建物が並ぶ天神の明治通り地区では、福岡地所(福岡市)が「防災機能を備え、東京の会社が九州地区の拠点にできる仕様」のオフィスビルを計画し17年にも着工する。移転を検討する企業の取り込みも視野に入れる。福岡経済同友会は12年6月、災害時に官庁や省庁などの首都機能を担う代替拠点を目指し、福岡県への誘致の意義などをまとめた提言書を作成。福岡市も誘致に乗り出した。候補地には九州大箱崎キャンパス跡地(福岡市東区)も浮上し、14年2月にシンポジウムを初開催し、官民で誘致活動を進めていくことを確認した。福同友や同市は「誘致が実現すれば、災害に強い都市としてのイメージが強まり、企業誘致などに弾みが付く」としている。 *2-1:http://qbiz.jp/article/33220/1/ (西日本新聞 2014年03月10日) 世論調査の世論 よく世論調査の結果が報道される。ある政策なり考えなりについて、新聞、テレビやいろいろな調査機関が、広く一般国民の意見を聴き、統計的に国民が思考する方向性を探ろうとする。調査の手法は確立されていて、調査結果の精度は相当に高いものと思われる。しかし、ここ2〜3年の傾向を各地の自治体の首長選挙の結果からみると、必ずしも世論調査の内容通りとはいえないものが多いように見受けられる。これはどういうことであろうか。もちろん選挙は、様々な要素がからんでくるので、一概にこれだと理由づけることはできないであろう。とはいえ、あれだけ多くの自治体の選挙で、世論調査と異なる結果がもたらされていることについて、どのように受けとめればよいのだろうか。何か共通する原因があるのではないかと私なりに考えてみた。選挙の事例でみると、確かに組織票とか選挙戦術とか個人的資質とか選挙の結果を左右する特有の事情が挙げられる。しかし、それとは別に、国民の意志の有り様を見誤っているということが原因として考えられないであろうか。つまり世論調査は、匿名で行われ、かつ責任を伴わないものであるから、単純に好きか嫌いか、賛成か反対かなど、どちらかといえば情緒的な思いを反射的に回答するその場限りのものである。何日か経てば、本人はどのように答えたかも気にしていないと思う。これに対して投票などは、現実にその行為の結果によって良い影響または悪い影響が、後日確実に表れるものである。世論調査の段階では、政策に関してなんらかの思いは持っていても、それは具体的な根拠に基づくしっかりしたものではない。しかしながら、責任を伴う政策の選択の段階になると、「待てよ」と、今一度、自らの選択が現実社会において及ぼす影響について、真剣に考え始めるのではないだろうか。政策の実現性、有効性、利害得失などについて程度の差はあってもそれぞれが考え、より良い国、社会の実現を願って行動するのが普通であろう。普段は、衝動的、情緒的に行動する人たちの声が大きく鳴り響くため、それが民意であると思ってしまいがちである。しかしながら民意の採決の段階では、多くの国民は、冷静に判断し、限られた情報からでも、結果的に妥当な結論を導き出してくる。そのように考えると、世論調査の結果はどのように受けとめるべきかという本質的な問題に行き着く。一国の運命に関わる極めて重要な政策を世論調査の世論で決めてしまうような軽はずみなことは、ぜひとも避けるべきであろう。そして、そのようなものをあたかも国民の意思であるかのように、声高に振りかざすことも止めてもらいたいものである。 *眞部利應氏(まなべ・としお) 1968年九州電力入社。経営企画室長や熊本支店長などを経て、2007年に末席取締役から社長に就任。川内原発増設などを推進したが、11年夏の「やらせメール問題」を受け、再発防止策策定後の12年3月に社長退任。13年6月から現職。香川県出身、68歳。 *2-2:http://mainichi.jp/sponichi/news/20140112spn00m200018000c.html (毎日新聞 2014年2月24日) 「原発ホワイトアウト」:霞が関は犯人捜しに躍起…現役官僚の「原発小説」映画化へ 原発再稼働を目指して暗躍する政官財の舞台裏を描いた、霞が関の現役キャリア官僚による告発小説「原発ホワイトアウト」の映画化の計画が進んでいる。出版元の講談社には複数の製作会社から打診があり、今月中にも製作会社やキャストが決定する見通し。映画界を代表する大物俳優の名前も挙がっている。著者の若杉冽さんは、本名や所属官庁など個人の特定につながる情報を一切明らかにしていない「覆面作家」。原発再稼働を目指す電力業界、業界を所管する経済産業省、与党の動きを生々しく描く。これまで9回増刷し18万部を販売した。若杉さんは「内幕を見ている自分が世の中に真実を伝えなくてはならないとの思いから書いた。多くの人が読んで、怒ってほしい」と話す。霞が関は「犯人捜し」に躍起だが、「第2弾、第3弾を考えている。これからも戦いを続ける」と宣言、手を緩めるつもりはない。 *2-3:http://qbiz.jp/article/33630/1/ (西日本新聞 2014年3月12日) 「原発の安全妥協するな」 前双葉町長、福岡市で講演 東日本大震災から3年の11日、福岡市では東北から被災者を招き、原発の課題や復興の現状を聞く催しがあった。東京電力福島第1原発が立地する福島県双葉町の前町長、井戸川克隆さん(67)=写真=は「放射能に占領された町」と題して同市・天神で講演。「福島事故以前は、国も東電も絶対に事故は起きないと言っていた」と指摘した上で、「事故を繰り返さないためには、国や電力会社が示す原発の安全対策に、国民が安易に妥協してはならない」と訴えた。全国のグリーンコープ生協などでつくる被災地支援団体「共生地域創造財団」(仙台市)が福岡市博多区で開いた報告会では、宮城県石巻市の水産加工会社社長、高橋英雄さん(63)が被災者の収入格差拡大や、子どもの問題行動が増えている現状を紹介。津波被害に遭った工場復旧のため財団から支援を受けた体験から「震災で人生を考え直し、必要な人に手を差し伸べる重要さを学んだ」と語り、ニートの雇用などで地域貢献を続ける考えを示した。 *2-4:http://www.saga-s.co.jp/news/genkai_pluthermal.0.2644206.article.html (佐賀新聞 2014年3月9日) 再稼働「条件付き賛成」15人 知事・首長 福島第1原発事故から3年を迎え、佐賀新聞社は古川康知事と県内20市町の首長に玄海原発(東松浦郡玄海町)の再稼働や今後の原子力政策の方向性などについて考えを聞いた。再稼働については「条件付き賛成」が15人で最も多く、九州電力が新規制基準の適合性審査を申請した昨年7月の前回調査より1人増えた。「反対」は前回より1人減の4人、「賛成」は玄海町長だけだった。再稼働する場合の地元同意の範囲については「立地自治体とUPZ圏内」が7人で、「県内全自治体」6人、「立地自治体」3人、「その他」5人だった。再稼働の判断や地元合意の範囲については、政府が責任を持って主体的に説明することが必要とする声が多く、玄海原発の適合性審査が進む中、今後は、政府がどういう再稼働プロセスを示すのかが焦点になりそうだ。再稼働について、前回は「反対」としていた樋渡啓祐武雄市長と田中源一江北町長が「条件付き賛成」に変わった。樋渡市長は「規制委員会の審査が具体的に進んでいる」、田中町長は「安全確保が担保できれば」と理由を挙げた。一方、前回は「条件付き賛成」だった松本茂幸神埼市長は「反対」と回答。使用済み燃料など「最終処分の方法や処分地の受け入れ先などの課題解決が先決」とした。ただ、「条件付き賛成」を含め、「規制委員会が適合性を判断しても国が安全性の確保を保障し、十分な説明を行う必要がある」(秀島敏行佐賀市長)など、国に責任を持った対応を求める声が目立った。「選択せず」とした古川康知事は「現在、適合性確認の審査が行われており、現時点で申し上げる段階ではない」とした。また、九電に立地自治体並みの安全協定締結を求めている塚部芳和伊万里市長は「条件付き賛成」を選んだが、「協定を締結していない現時点では反対せざるを得ない」との考えを示した。再稼働する場合の地元同意の範囲は「立地自治体(玄海町と佐賀県)とUPZ圏内(原発から30キロ内の唐津市と伊万里市)」と「県内全自治体」が拮抗した。避難計画などの策定義務があるUPZ圏内が適当との考えのほか、「避難受け入れを含め、県内全体の問題」(小森純一基山町長)との考えも多かった。「その他」の回答では「地元自治体の理解が必要ということであれば範囲の考え方を含めて国が一定の考え方を示すべき」(古川知事)、「個々に意見は異なると考えるが、最低限、PAZ(原発から5キロ以内)圏の唐津市は含まれるべき」(坂井俊之唐津市長)といった意見のほか、「県内全自治体に加え、長崎県の近隣自治体との協議が必要」(谷口太一郎嬉野市長)など隣県を含めた検討の必要性を指摘する声もあった。原発の今後については、前回と同じく「将来的に廃止」が16人で最多。「数を減らして維持」は2人で、「その他」が3人。「現状維持」から「その他」に変わった橋本康志鳥栖市長は「電源確保は安全、安定的な供給が大前提。将来についてはさまざまな可能性を探りつつ、ベストミックスを選択すべき」と回答。「将来的に廃止」から「その他」にした松本神埼市長は、最終処分の問題を挙げ「解決できないなら廃止すべき」とした。古川知事は「その他」と回答、「中長期的には原発の依存度は下げていくべきだが、代替エネルギーの現状を考えれば、ただちにゼロは現実的ではない。エネルギー戦略は国が責任を持って決めるべきで、しっかりと議論し、提示してほしい」とした。 *2-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2644991.article.html (佐賀新聞 2014年3月11日) 原発30キロ圏の伊万里市 進まぬ防災体制 福島第1原発事故の被害が半径30キロを超える広範囲に及んだことで、玄海原発(東松浦郡玄海町)から最短12キロの伊万里市も原発の“地元”になった。市域は30キロ圏にすっぽり入り、事故があれば全市民約5万7千人が市外に避難しなければならない。行政、市民レベルで防災体制の構築を進めているが、防災行政無線などハード整備は遅れ、九州電力との安全協定も九州の原発30キロ圏で唯一、未締結となっている。伊万里市は2012年4月に防災危機管理室を設け、原発事故対策を本格化させた。市防災計画に原子力災害対策を加え、独自の避難訓練実施などソフト面の対策を進めている。だが、ハード面は県からモニタリングポストと安定ヨウ素剤が配備されたほかは、ほとんど進んでいない。重要な情報伝達手段である防災行政無線整備に8億円、避難道路整備に36億円を見込むが、財源を確保できず計画は足踏み状態。新年度からは核燃料税の一部が県から配分されるが、再稼働がなければ交付額は年7500万円にとどまる。古賀恭二室長は「国は原発30キロ圏で防災対策を講じるように言うが、財源の手当はない。市単独ではハード整備は難しく、ソフト面を充実させても避難計画に不安は残る」と話す。 ◇ ◇ 一方、防災意識は市民にも広がってきた。区長や防災委員を中心に市内全行政区で防災マップを作り、町単位で独自に避難訓練を行うなど原発事故への備えを進めている。民間病院では、医療関係者が中心となって防災研修会を毎月開催。それでも、市内で原発に最も近い波多津町の田中茂樹区長会長は「防災行政無線がないから、山や畑にいる人には避難警報が届かない。道も狭くて間違いなく渋滞する。お年寄りも多く、事故があったら逃げ切れるだろうか」と不安を漏らす。政府は原発の安全審査を進め、再稼働に向けた動きは加速している。再稼働に関しては“地元”の理解を前提とする考えを示しているが、地元の範囲や理解を得る方法など、プロセスはいまだ明らかにされていない。福島原発事故後、市は「30キロ圏内は地元であり、市民の安全安心の担保として原子炉施設の変更などに関する事前了解を含んだ『立地自治体並みの安全協定』を結ぶべき」と九電に求めてきた。当初は唐津市や長崎県松浦市など同じ30キロ圏内の自治体と足並みをそろえて要望してきたが、ほかの自治体は「事前説明」を含む準立地自治体並みの安全協定を次々に締結。川内原発(鹿児島県)の周辺も準立地自治体並みで妥結し、九州の原発30キロ圏では伊万里市だけが未締結となっている。 ◇ ◇ 市は昨年8月から九電と単独交渉を重ねているが、九電はより原発に近い唐津市などの安全協定を前例に立地自治体並みを認めない姿勢を崩さない。塚部芳和市長は「立地自治体並みの安全協定がなければ再稼働は認められない」と後ろ向きな九電をけん制するが、現状では市長に再稼働をストップさせる法的な権限はない。塚部市長は3月初旬の会見で、協定締結のめどについて「交渉中であり、こちらから期限を区切ることはない」と明言を避けた。ある市議は「反対と言ってもなし崩しに再稼働に進んでしまう恐れもある。本音は地元の理解がカードになる再稼働前が交渉の勝負と思っているだろう」と推測する。立地自治体並みの事前了解を盛り込んだ安全協定を結び、原発の意思決定に加わりたい伊万里市。安全審査が進む中で、事故前と変わらず再稼働のプロセスの「蚊帳の外」に置かれるのではないか、焦りと不安も漂っている。 *3-1:http://qbiz.jp/article/33693/1/ (西日本新聞 2014年3月13日) 川内原発を優先審査へ 地震動の想定を評価、原子力規制委 原子力規制委員会が進めている九州電力川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の安全審査で、九電が示していた想定される最大規模地震の揺れ(基準地震動)が12日、ほぼ固まった。施設や機器の耐震性の目安となる基準地震動が決まれば審査中の10原発17基で初めてとなる。規制委は基準地震動と最大規模の津波の高さ(基準津波)が決まった原発の審査を優先する方針。13日の規制委定例会合で原発の設備関係や火山の影響評価などで大きな問題が指摘されなければ、川内原発の優先審査入りが決まる見通しだ。規制委の田中俊一委員長は2月、優先審査に入る原発について「合格の見通しが立ったととらえていい」との考えを示しており川内原発が再稼働の前提となる「合格1号」に最も近づく。九電は、地震と津波に関する前回審査(5日)で、基準地震動を585ガル(ガルは揺れの勢いを表す加速度の単位)から620ガルに修正すると報告。12日の審査では修正の根拠となるデータを示し、「一定の確認はできた」(原子力規制庁)などと評価された。優先審査対象の条件の一つだった基準津波は、2月の審査で申請時の約3・7メートルから約5・2メートルに変更。12日は地震の規模をさらに引き上げても津波の高さは同程度になると説明し、異論は出なかった。原発の安全審査では、川内原発のほか、九電の玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)と関西電力の大飯原発3、4号機(福井県)が先行しているとみられていた。このうち玄海原発は、九電が基準地震動を川内原発と同じ620ガルに修正したが、規制委からの検討項目への回答を出せなかった。大飯原発は、想定する地震の震源の深さが特定できていない。川内原発の優先審査入りが正式に決まれば、規制委と規制庁が火砕流や敷地内断層などの残る審査に人員を集中させ、審査内容をまとめた「審査書案」を早期に作成。順調に進めば5月にも合格し、順調に地元了解を得られれば夏ごろに再稼働する見込み。川内原発は1号機(89万キロワット)が2011年5月、2号機(同)が同年9月に停止したままとなっている。 *3-2:http://mainichi.jp/select/news/20140311k0000m040030000c.html (毎日新聞 2014年3月10日) 原発:再稼働積極的な政府の姿勢批判…3事故調の元委員長 東京電力福島第1原発の事故原因を調査した、政府、国会、民間の3事故調の元委員長らが10日、日本記者クラブで開かれた討論会に出席した。政府が原発再稼働に積極的なことについて、「事故から学んでいない」などの批判が相次いだ。参加したのは、いずれも各事故調の元委員長の畑村洋太郎(政府事故調)▽黒川清(国会事故調)▽北沢宏一(民間事故調)−−の3氏と、米原子力規制委員会(NRC)前委員長のグレゴリー・ヤツコ氏。「規制委が安全と認めたものは地元の理解のうえで(原発を)稼働する」という政府の姿勢について、畑村氏は「安全性が確認されたから再稼働というのは論理が違う」と指摘。「想定外」だった福島の事故の教訓を生かしていないとの認識を示した。黒川氏も「あれだけの事故が起きても日本の社会が変わる気配がない」と厳しく批判。北沢氏は「事故は(再び)起こるかもしれない。(再稼働の是非は)国民がしっかり議論しなければならない」と指摘した。ヤツコ氏は「いまだに汚染水問題など課題は多い。事故は終わっていない」と述べた。 *3-3:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140312/k10015905701000.html (NHK 2014年3月12日) 「原発事故 完全には防げず」 アメリカ原子力規制委員会のトップとして、東京電力福島第一原子力発電所の事故対応に当たったグレゴリー・ヤツコ氏が、事故から3年の11日、NHKのインタビューに応じ、「原発事故を完全に防ぐことはできない」としたうえで、「運転再開は世論の支持を得られなければ正当化できない」と述べました。3年前の福島第一原発の事故で、アメリカ国内の対応に当たったアメリカ原子力規制委員会の前委員長、グレゴリー・ヤツコ氏は11日、東京都内で開かれたシンポジウムに参加したあとNHKのインタビューに応じました。ヤツコ氏は福島第一原発の現状について、「汚染水などによって放射性物質の放出が続き、問題は消えていない」と指摘したうえで、「人々の健康や環境に配慮できる人を現場の作業のトップに据え、避難している人たちに丁寧に説明することが重要だ」と述べ、地元住民への説明の大切さを訴えました。また全国の原発の安全性について、「新たな安全対策で再び事故が起こる可能性は低くなっている」とした一方で、「それでも事故を完全に防ぐことはできないので、起きた際の影響をできるだけ抑える対策が必要だ」と述べ、事故に備えた体制作りが欠かせないという認識を示しました。そのうえでヤツコ氏は「原発の運転再開は世論の支持を得られなければ正当化できない」と述べ、運転再開は国民の判断によるべきだという見解を示しました。
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2014,03,12, Wednesday
里山と春の花 (1)未利用資源になっている女性はいませんか? *1の、空いている田んぼを使ってリーフレタス栽培を始めた女性は、27歳で初めて農業の世界に飛び込まれたそうだが、私は佐賀県で衆議院議員をしていた時、奥さんが中心となってハウスで花作りをしている農家に伺ったことがある。元気な奥さんで、ハウスには花が沢山咲いており、女性が中心となってやっている農業もあることを知った。そして、私は、女性が中心となって経営意思決定を行うと、農業も需要に密着した多様なものになるだろうと思った。 また、*2は、女性で慶應義塾大学環境情報学部の渡邊萌果さんが、3次元(3D)プリンターで米粉の食器を作られたという記事で、発想が若者らしく面白くて、いろいろなものに応用できそうだ。ちなみに、最初にパンに米粉を使うアイデアを出したのは、私と同期の衆議院議員で料理研究家の藤野真紀子さんで、食料自給率向上ためだったが、驚くほど美味しかった。 (2)増えすぎた野生鳥獣は未利用資源 *3-1に書かれているように、現在は野生鳥獣が増えて農業被害があるため、捕獲わなや監視・操作システムを開発して捕獲しようとしている状況である。その捕獲した野生鳥獣を無駄にせず、ジビエとして利用しようと最初に提案したのは私だが、現在、*3-2のように、ジビエや旬の野菜などを使った本格的な缶詰が作られ、ワインによく合うと好評になっているのは、喜ばしいことである。 また、最初に獣皮を使っておしゃれな小物作りをやってみせたのは女子大生だったが、現在では、*3-3のように、なめし業者や鳥獣対策を進める自治体などでつくる「MATAGIプロジェクト実行委員会」などが、里山を荒らす害獣の皮を製品化するまでの課題を共有し、地域の資源にしようと確認して、イノシシや鹿の革製品を通じた地域興しを目指し始めたのは嬉しい限りだ。 野生鳥獣の肉や皮革は、都会の人から見れば価値の高いものだが、農業の生産現場では単なる厄介者と扱われていた。そして、その価値を見出し、高い付加価値をつけたのも、女性だったのである。 *1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=24177 (日本農業新聞 2013/10/28) 新規就農 信じる自分の可能性 宇佐川美奈さん 福岡県久留米市 福岡県久留米市でリーフレタスを栽培する宇佐川美奈さん(29)は、小学校と保育園に通う3人の息子を抱え、27歳で農業の世界に飛び込んだ。一人での就農は予想を超える忙しさで、慣れない作業や栽培講習会への出席、農業と育児との両立に悩みつつ、畑に向かい続ける。3年目の今年、地域が期待する新規就農者に成長、規模拡大に挑んでいる。きっかけは、同市の花農家で義父の光雄さん(63)の冗談めいた一言だった。「田んぼも空いているし、レタスでも作ってみんね」。それがまじめで責任感のある美奈さんのハートに火を付けた。ちょうど流れ作業のパート仕事に飽きていただけに、迷わず農業の世界に飛び込んだ。2011年9月、光雄さんの畑38アールを借りて就農した。就農してみたものの、光雄さんは専業のガーベラ栽培に忙しく、夫の直さん(31)は当時、会社員。畑には農家出身でない美奈さん一人が立った。でもトラクターに乗れない、田んぼを「鋤(す)く、返す」の意味も分からない。頭の中がはてなだらけの中、JAのリーフレタス部会や営農指導員に先生役を依頼、一から農業を学んだ。仕事に追われる一方、戸惑ったのは3人の息子だ。当時、美奈さん一家は、畑から車で20分の筑後市に住んでいた。小学校や保育園が休みの土・日も家を空ける美奈さんに、子どもたちは寂しさをぶつけた。「お母さんが農業しなくてもいいじゃん。なんで農業なんて始めたの」。畑に連れてきても、すぐに飽きて帰りたがる。直さんも、育児と農業の手伝いで負担が増えた。畑で一人になると途方に暮れた。「農業すると決めたのは自分。今さら辞められない」と自分を奮い立たせた。だが、本当に就農して良かったのか、自信が持てなくなっていった。栽培は手探り、悩みは山積み――。収穫を喜ぶ余裕もなく初年度が終わった。転機は就農2年目にやってきた。13年1月、直さんが就農を決意し、一家で久留米市に引っ越した。畑は徒歩圏になり、子どもの姿を見ながら農業ができるようになった。2月には、義妹の法子さん(28)が戦力に加わった。共同でのレタス栽培が、美奈さんを規模拡大へと導いた。現在定植を進めている今年産は、当初の2倍以上の87アールになった。県の事業を活用してトラクターとロータリーなども購入し、大型特殊免許も取得した。美奈さんが一人で頑張る姿を見てきた周辺農家からは、農地が集まり始めた。「農業は正直言ってきつい。でも頑張っていれば、周りの人が自分のことのように助けてくれる。他の仕事にはない温かさがある」。目標は、リーフレタスで子どもを養えるくらいの収入を得ることだ。「どこまで頑張れるのか、できるところまでやってみたい。やっと農業が楽しくなってきた」。畑に向かう足取りが、今はちょっぴり軽い。 *2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26418 (日本農業新聞 2014/3/10) 米粉で食器 食べれば“もちもち” 3Dプリンター開発 慶應大の渡邊さん 米粉で食器ができる3次元(3D)プリンターを、慶應義塾大学環境情報学部の渡邊萌果さん(21)が開発した。使った後は食べることもできるため、紙皿・紙コップの代替品としての利用を見込む。米粉の新たな使い方として提案し、実用化を目指す。材料に米粉を用いた同機の開発は「初めてではないか」(渡邊さん)という。 ●紙製品の代替期待 3Dプリンターは金型がなくても、立体の物を短時間・低コストで作れる先端技術。通常、材料には樹脂などを用いるが、渡邊さんは同大の田中浩也准教授の助言を受けて材料を絞るノズルなどを米粉用に改良した。1月末に高さ50センチ、直径80センチの試作機を完成させた。これまでチョコレートや砂糖を造形物の材料に用いるものはあったが「主食の米を使うことで、もっと家庭に身近なものが開発できるはずだ」と考えた。材料は、米粉に片栗粉と水を加えて粘土状にしたもの。パソコンで設計図を描くと、後は機械が自動で立体に仕上げる。作れるサイズは縦、横、高さともに10センチほどで、文字や星の形に仕上げることもできる。電子レンジで温めて固めると完成する。皿やコップ、スプーンなどの他、誤飲しても害がない幼児用のおもちゃなどが作れる。使用後は鍋などで煮込むと餅状になり、違和感なく食べられるという。渡邊さんは「食べられる食器を作れるのは驚きで、話題が増え、食卓がきっと明るくなるはず」と家庭円満にもつながると期待する。目標は、商品化して一般家庭や加工業者へ販売すること。米粉に味や色を加え、用途を広げることも検討中だ。ただ、課題もある。プリンターの想定価格は10万円台と 家電としては高価で、設計には専用のパソコンソフトも必要となる。「地元産の米を使ったり、材料に農作物を混ぜたりするなど、特徴のある米粉の活用法を見つけたい」と渡邊さん。今夏までに消費者に実際に使ってもらい、具体的な使い方を考える計画だ。 *3-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=25927 (日本農業新聞 2014/2/12)[鳥獣害と闘う]インターネット利用 大型捕獲わな 三重県農研など開発 三重県農業研究所と国立鳥羽商船高等専門学校、それに同県伊勢市にある電子機器設計・開発メーカー「アイエスイー」は、大型捕獲わなのウェブ監視・操作システムを共同で開発。「まる三重ホカクン」の名でアイエスイーから販売を始めた。獣が来ると赤外線センサーで感知、パソコンや携帯端末にメールで知らせる。わなの様子はインターネットカメラで常時監視しており、ネットの映像を見て、トリガーを遠隔操作し、群れを一網打尽に捕獲できる。導入したところでは、一挙に鹿9頭を捕獲した例もある。 ●遠隔操作で一網打尽 カメラが常時監視 獣害対策は捕獲数が少ないことが課題になっている。囲いわなやドロップネットなど大型のわなは大量に獣を捕獲できるものの確実に複数の獣を捕獲するためにはわなの近くで夜間、常時監視する必要があり捕獲者の負担が大きかった。同システムはその手間を無くした。わなの近くにカメラと赤外線投光器を設置し無線LANカードと制御器が入った制御ボックスを設置する。どこでも設置できるようソーラーパネルとバッテリーを電源とした。遠隔地からインターネットを介して常時、携帯端末やパソコンでわなを監視できる。わな内に群れが全頭入るなどした適切なタイミングで捕らえる。熱を感知する赤外線センサーを設置し、獣が来たらメールで知らせる装置も加えた。捕獲者は携帯端末などの画面を開いてわなの入り口を閉めるシステムを操作して捕獲する。このため携帯端末を常時監視する必要もない。アイエスイーが施工費別で1基約80万円で2012年9月から販売。1月末までに26基が普及しているという。装置とは別に通信料が毎年約9万円かかる。同県南伊勢町は12年7月に実証試験のために導入した。発売後買い増しして、現在4基をドロップネットと大型箱わなで運用している。13年11月末までに鹿78頭、猿116頭、イノシシ10頭の合計204頭を捕獲した。町水産農林課の城勝司係長は「夜間見張る必要がなくなり楽になった」と評価する。大型の箱わなと一緒に13年10月に導入した滋賀県日野町の鎌掛地区有害鳥獣被害対策協議会長の岡幹雄さん(64)は「鹿を昨年は7頭、今年は9頭捕獲した日があった。今後はイノシシも捕獲できるようにわなを改良したい」と話す。副次的な効果も生まれた。同研究所の山端直人主幹研究員は「これまでは捕獲者任せになりがちだったが、公民館などで集落の住民がみんなで捕獲場面を見ることで獣害対策に関心を高め、意欲が継続する効果が生まれている。獣が高密度に生息している地域は1人の担当者が複数台を集中監視するなど計画的に捕獲する必要がある」と指摘する。問い合わせはアイエスイー、(電)0596(36)3805。 *3-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26283 (日本農業新聞 2014/3/3) ワインにぴったり ジビエ料理缶詰に 東京・渋谷の酒販店 (株)恵比寿ワインマート(東京都渋谷区)が販売する、野生鳥獣肉(ジビエ)や旬の野菜などを使った缶詰「森の自美恵(じびえ)」が、ワインにもよく合うと好評だ。缶詰のレシピは、日本ジビエ振興協議会の代表で長野県茅野市のフランス料理店主、藤木徳彦さんが監修した。鹿肉のソーセージや塩漬けバラ肉と、キャベツをコンソメで煮込んだ「シュークルート」(470グラム・1940円)は、フランス・アルザス地方の名物料理を缶詰で再現した。缶詰は8種類あり、ほとんどの食材は同県産で無農薬栽培の野菜を使う。購入者から「レストランで食べる料理みたい」という声も届く。今後は「長野県産だけでなく全国各地の食材とジビエを組み合わせた缶詰を作りたい」と同社で販売を担当する増永太郎さん(42)は意欲を見せる。 *3-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26103 (日本農業新聞 2014/2/22)[鳥獣害と闘う]「厄介者を地域資源」共有 都市と農村 連携を 獣皮シンポ なめし業者や鳥獣対策を進める自治体などでつくる「MATAGIプロジェクト実行委員会」などは21日、東京都墨田区でシンポジウム「里山再生~明日からできる獣皮活用」を開いた。狩猟者や地域のリーダー、自治体関係者ら200人が参加。里山を荒らす獣の皮革を製品化するまでの課題を共有し、地域の資源にしようと確認した。イノシシや鹿の革製品を通じて地域興しを目指す産地からは、広く普及させるために「商品を見てもらう機会を増やす」(岡山県)、「デザインを工夫してイメージ向上につなげる」(北海道)といった報告があった。参加者からは、都市と農村が連携して革製品を広げる重要性を指摘する声が相次いだ。日本エコツーリズムセンターの鹿熊勤理事は「地方の人は獣害が非常に深刻で切実な問題だが、都市住民は全く知らない。意識の差を埋めて事業を進めることが必要」と指摘。跡見学園女子大学の許伸江助教も「鳥獣被害で困っているという産地の物語を含めて販売することが大切だ」と強調した。
| 農林漁業::2014.2~7 | 10:10 AM | comments (x) | trackback (x) |
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