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2016.3.18 政府の経済政策は、60年1日の如くで正しくないこと ← では、どうすればよいのか? (2016.3.20、22、25、27、29、30、31、4.2に追加あり)
    
学童保育   県別学童保育      県別保育      待機児童の     国立・私立大学
 の推移    待機児童数       待機児童数    多い自治体      年間授業料

    
   人口の推移と        年金支給額       実質賃金の推移     家計収入と
    高齢化率           の推移                      消費支出の推移

(1)保育と学童保育について
 学童保育は、子どもが小学校に入ってから退職せざるをえない女性も多かったため、私や周囲の人の提案で1995年頃できて増えてきた制度だが、まだ待機児童が多く、質も十分ではない。それにもかかわらず、上のグラフで保育園の待機児童数より学童保育の待機児童数の方が少ないのは、学童保育の質が一定レベル以上に保証されておらず、そのため期待が薄く、申し込みが少ないからだろう。

 しかし、子どもができると、母親は退職して収入がなくなり、子育てが一段落しても元の仕事に復職できないリスクが高い上、子育て費用は確実に増えるため、保育料や幼稚園の入園料、大学の授業料などが高いのは打撃だ。そのため、私は、①無償の義務教育を3歳からにして、幼稚園と小学校を連結して幼児教育も行うようにし ②0~2歳の子どもを保育園に預けるようにしたらどうかと考える。何故なら、イ)①により、文科省管轄の教育を一貫して無償で行うことができ ロ)その場合の保育士の不足数がわかり ハ)居心地良く改修すれば、少子化で空いた小学校を使うことができ 二)教育の心配なく子どもを預けられるからである。なお、英国の義務教育は5歳からであるため、5歳からのアレンジも考えられる。

 また、大学授業料の推移を見ると、私立との格差是正として国立大学の授業料を上げた結果、2012年でも授業料が年間50万円を超えており驚くが、これでは普通の親が国立大学に入れられる子どもの数は、やはり1人が限度である。大学は義務教育ではないため無償にまでする必要はないと思うが、国立大学の授業料は1万円/月、12万円/年を限度として、知識と論理に基づいて良い判断ができる人材を増やすべきだ。また、良く教育された質のよい人材の恩恵を受ける財界の寄付や国の拠出で、返還義務のない奨学金を作ることも必要だろう。なお、格差是正を、「(全部を最善にはできないため)全部を最悪にしても差をなくしさえすればよい」と考えているのは、根本的に間違っている。


  自然な英語学習     料理体験        田植え体験       地曳網体験     木登り
  
本物の体験で    ダンス教室      陶磁器教室    植林体験       いちご狩り
発達を助ける            <学童保育だからこそできる活動をしよう>

(2)日本のGDPが上がらない理由は、60年1日の如き経済政策である
1)デフレ脱却(インフレ政策)のための金融緩和とマイナス金利の影響
 *1-1のように、内閣府が3月8日に発表した2015年10~12月期のGDPは、実質0.3%減で、このペースが1年間続くと年率換算では1.1%減だったそうだが、その最も大きな理由は需要の大きな割合を占める個人消費が振るわなかったことだと、私は考える。中国経済の減速はこれまでの経緯から既に織り込んでおかなければならず、原油安は日本にとってはプラスの方が大きいため、これらを理由とするのは変であり、分析して意見を書くような人は、それこそ大学でもっと経済学を勉強しておくべきだ。

2)個人消費が増えない理由
 それでは、何故、個人消費が振るわなかったかと言えば、①金融緩和によるデフレ脱却と呼ばれるインフレ誘導で個人資産、年金受取額、給与を目減りさせたこと ②*1-3のようなマイナス金利や低金利で預金利息を0に近くして個人所得を減らしたこと ③*1-2のように社会保障の負担を増やして給付を減らしたこと ④消費税増税を行ったこと などが理由であり、つまり個人の可処分所得が減ったことが理由なのである。

 ちなみに、私も、消費税増税後、スーパーで前と同じように買い物をしたところ、インフレと増税の相乗効果で支払い額が1.2倍になったため、ただちに買い物する回数を減らし、一回当たりの購入にも気をつけるようして、以前より購買額が減っている。しかし、年金削減やインフレによる預金の目減りなどを考慮すれば、これで適切なのである。

3)何がいけないのか
 戦後すぐの日本は、安い労働力と円安(1ドルは360円だった)を武器に、安価な製品を米国を中心とした外国に輸出することで稼いだ。しかし、現在の日本では、労働力は安くなく、円高であるため、1990年頃からは、新たに市場主義経済に参入してきたアジア諸国や旧共産主義諸国が、安価な労働力で作った製品を輸出する立場を担っている。そのため、日本で物価が下がるのは当たり前で、これは米国でも起こったことだ。

 この変化に対応できず、政府は加工貿易を堅持して工業製品を輸出するスキームを維持し続け、内需で本当に必要とされているサービスを疎かにした。介護、保育、家事サポートサービスは、その中でも本当に必要とされていたにもかかわらず、供給されなかった需要の典型である。

 さらに、景気回復のための役に立たない歳出も多かったため財政が圧迫されると、政府は、自らの責任は全く感じずに、年金原資を株式に投資したり、年金支給額を削減したりして、国民の権利を奪うことによってつじつまを合わせようとした。これにより、高齢化率(高齢者の割合)が25%を超えている日本では、さらに需要が減退し、必要な供給もできなくなったのである。

 なお、金融緩和で景気がよくなったと言われるが、東日本大震災後にはその復興需要があったため、きちんと復興すればニューディール政策と同じになり、金融緩和などしなくても景気はよくなったに違いない。そのため、東日本大震災後の金融緩和はいらぬことだったと、私は考える。

(3)待機児童について
 *2-1のように、東京都23区内で今年4月から認可保育所入所を希望する0~2歳児のうち、杉並区など六つの区では入所倍率が2倍を超え、保育所に子どもを入れられない親たちの不満が噴出しているそうだ。そして、待機児童の7割は東京などの都市部にいるとのことである。
 
 また、*2-2のように、保育や介護は、福祉ではなくサービスと発想を切り替え、同一のサービスを受けるのに、年収で対価が異なるなどというのはやめるべきだ。そして、少子化を問題にするのなら、保育料は1万円/月、12万円/年を上限とし、その中で年齢に応じて栄養バランスのとれた食事やおやつを出すようにすればよく、私は、保育や教育への公的助成は、親が何に使うかわからず、高所得者ほど恩恵の大きな所得税の扶養控除よりも、子ども自身のためになると考える。

(4)介護と介護人材難
 *3-1のように、厚労省は1月23日、介護現場で働く外国人を増やす対策案をまとめたそうだ。介護の人材が不足し、せっかく来てくれた外国人を追い返すようにしていたことから考えると、これは遅すぎたくらいである。

 しかし、それでも、*3-2のように、福岡県介護保険広域連合の65歳以上が支払う介護保険料が、4月の改定で7369円にまで引き上げられ、年金の減額と相まって高齢者の生活を脅かしているのは本末転倒だ。その上、介護サービスは削減されるのだそうで、介護サービスと医師の往診だけで自宅療養ができるという状態から、さらに遠くなった。

 そして、「高齢者人口が増えるから・・」「介護士不足で・・」など、10年1日のように同じことを言って、国民のためになる解決をしないのも、厚労省(官)のやり方である。

<GDP>
*1-1:http://qbiz.jp/article/82214/1/
(西日本新聞 2016年3月8日) GDP改定値年1・1%減 15年10〜12月期
 内閣府が8日発表した2015年10〜12月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)改定値は、物価変動を除く実質で前期比0・3%減、このペースが1年間続くと仮定した年率換算で1・1%減だった。最新の統計結果を反映し、2月に公表した速報値の年率1・4%減から上方修正した。個人消費や輸出が振るわず、2四半期ぶりのマイナス成長となった。中国経済の減速や原油安による市場混乱の影響で、世界経済の先行きへの懸念は根強い。日本経済の景気低迷が続いていることを再確認する結果となったことで、景気対策を求める声が国内外から高まる可能性がある。個人消費は速報値の0・8%減から0・9%減へとやや悪化した。公共投資も2・7%減から3・4%減にマイナス幅が拡大した。設備投資は1・5%増となり、速報値の1・4%増から上方修正した。景気実感に近いとされる名目GDPは前期比0・2%減、年率換算で0・9%減となり、速報値の年率1・2%減から上方修正した。

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/252984
(佐賀新聞 2015年11月24日) 社会保障費、伸び5千億円弱、16年度予算で財政審建議
 財政制度等審議会は24日、2016年度予算編成に関する建議(意見書)を麻生太郎財務相に提出した。財政健全化につなげるため、年金、医療など高齢化に伴う社会保障費の伸びを前年度比5千億円弱に抑えるよう要請。公共事業など他の歳出は人口減少を反映した「自然減」を前提にすべきだと強調した。これを受け、12月下旬の政府予算案決定に向けた作業が本格化する。建議は診療報酬を16年度改定で引き下げるよう提言しており、折衝の行方が大きな焦点になる。

*1-3:http://qbiz.jp/article/82832/1/
(西日本新聞 2016年3月16日) マイナス金利の拡大可能 日銀総裁、0・5%まで
 日銀の黒田東彦総裁は16日、民間銀行が日銀に預けている資金に手数料を課すマイナス金利政策に関して、マイナス0・5%程度まで金利を引き下げることが可能との見方を示した。衆院財務金融委員会で述べた。民主党の宮崎岳志議員が欧州の先行事例を挙げマイナス金利は0・5%ぐらいまで下げることが可能かと質問したのに対し、黒田総裁は「理論的な可能性としては、その通りだ」と応じた。日銀は現在0・1%のマイナス金利を設定している。追加金融緩和の手段に関しては、経済や金融情勢に応じて国債の買い入れ拡大やマイナス金利の引き下げなどを検討すると述べ、「必要に応じてちゅうちょなく行う用意がある」と話した。

<保育と待機児童>
*2-1:http://mainichi.jp/articles/20160313/ddm/001/100/183000c?fm=mnm
(毎日新聞 2016年3月13日) 都内保育所、6区の認可園、倍率2倍超 整備追いつかず
 東京都23区内で、今年4月からの認可保育所入所を希望する0〜2歳児のうち、杉並区など六つの区で入所倍率が2倍を超えることが毎日新聞の調べで分かった。「保育園落ちた」と訴えるブログを機に、保育所に子どもを入れられない親たちの不満が各地で噴出しているが、背景にある厳しい入所事情が浮き彫りになったかたちだ。ほとんどの区で前年よりも受け入れ枠を増やしているが、それを上回る勢いで入所希望者が増加しており、昨年よりも状況は厳しくなっている。23区を対象に、0〜2歳児の2015、16年度4月入所分(1次募集)の申込人数と受け入れ枠などを聞き取った。区によって集計の仕方にばらつきはあるものの、申込人数を受け入れ枠で割った入所倍率は、杉並区が2・2倍で最も高く、世田谷区2・1倍▽台東区2・0倍▽渋谷区2・0倍−−など計6区で2倍を超えた。回答がなかった中野、足立両区を除く21区全体では、約5万人の申し込みに対し受け入れ枠が約2万8000人と、平均でも1・8倍に上り、ほぼ2人に1人が申し込んでも入れない状況となっている。前年比では、2倍を超えた六つの区のうち、四つについては前年は2倍を切っていた。また前年と比較可能な18区のうち、3分の2にあたる12区で入所倍率が高くなっていた。18区だけでも受け入れ枠は約1800人増えたが、申込人数は約4000人増と2倍を上回る伸び。出産後も働き続ける女性が増えているため、対策が現状に追いついていないのが実情だ。保育問題に詳しいジャーナリストの猪熊弘子さんは「この数字や見聞きしていることからも、今年は昨年よりもさらに厳しい状況になりそうだ。保育所は増えたが申し込みも想定以上に増えた、というイタチごっこを20年も繰り返している。自治体任せではなく国が財源を確保し抜本的に変えていかないと、永遠に解決しない」と危機感を示す。保育所に入れない待機児童の対策を巡っては、政府は17年度末までに、50万人分の保育の受け皿を増やす計画だが、最近の騒動を受けて、今月中に新たな緊急対策を取りまとめる方針を固めている。
●待機児童の7割、東京など都市部
 希望しても、認可保育所など国や自治体が基準を定め、補助金を出している保育を利用できない児童は「待機児童」と呼ばれ、東京都など都市部に多い。厚生労働省の調査では、昨年4月時点で0〜5歳児の全待機児童2万3167人のうち、首都圏や近畿圏、政令市などの都市部が約7割を占める。特に東京都は全体の3割を超える7814人と突出している。待機児童を年齢別にみると、保護者が育児休業明けで職場復帰のため、新規に申し込むケースが多い0〜2歳児が全体の9割近くを占めている。待機児童になると、保育スペースが狭かったり、職員数が少なかったりして、認可保育所より質の劣る可能性のある無認可の保育施設やサービスを探さなくてはならない。無認可の施設は補助金がなく、利用料が高額となる場合もある。保育サービスが利用できず、近くに育児を手伝ってくれる祖父母などがいないケースが多い都市部では、親が仕事を辞めざるをえないことも多い。
■認可保育所
 児童福祉法に基づく児童福祉施設。定員20人以上で、子ども1人当たりの保育面積や職員数、給食設備など、国の設置基準を満たした保育施設を指す。公費で運営され、保護者が負担する保育料は、所得に応じて設定されている。15年度に始まった「子ども・子育て支援新制度」では、自治体が基準を定め、公費で運営される、少人数単位の0〜2歳児を預かる小規模保育や家庭的保育(保育ママ)なども新たに認可施設や認可事業に含まれるようになった。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160317&ng=DGKKZO98524530W6A310C1EN2000 (日経新聞 2016.3.17) 保育を福祉からサービスへ
 保育所不足を訴えたブログが政権を揺るがしている。保育所の拡充を政府が約束したのは1994年のエンゼルプランであり、20年以上も前である。なぜそれがいまだ実現できないのかといえば基本的な戦略に誤りがあるからだ。まず待機児童の解消という政策目標自体が間違っている。待機児童とは、認可保育所に入所を希望する子どもの数で、保育所が増えれば諦めていた人が登録する「逃げ水」に等しい。全国で2万~3万人程度の待機児童なら対症療法で済む。しかし、5歳以下の630万人を潜在的な保育需要と見なせば、制度の抜本的な改革が不可欠となる。保育所が需要に見合った数に増えないのは、公立や社会福祉法人主体の児童福祉の枠組みのままだからだ。限られた数の低所得家庭にコストを度外視した料金でサービスを提供する仕組みでは需要超過になるのは当然だ。一般の共働き世帯には、コストに見合ったサービスの対価を支払ってもらう必要がある。数百万人の潜在需要に応えるには企業が主体とならなければ成り立たない。明確な根拠もなしに企業を排除する自治体に対しては、競争政策の視点からの是正策も考えられる。保育所を政府が責任を持って提供する福祉と考えるから財源問題が深刻になる。しかし、これを潜在需要の大きな市場と考えれば、企業にとってはビジネスチャンスだ。子どもの数は減っても1人当たりの支出は増えている。企業が創意と工夫で多様な保育サービスを生み出し、消費者保護の観点から政府が監視するという分担であるべきだ。保育サービスの不足を解消するには乏しい一般財源依存ではなく、独自の財源確保も必要である。2006年の「日本経済研究」で紹介された「育児保険」は、40歳以上が被保険者となっている介護保険の仕組みを応用し、20~39歳層に育児保険の被保険者として保険料を求めるものだ。保育所の充実は安倍晋三政権の掲げる女性の活躍促進のための手段にとどまらない。それ自体が新たな生産活動と雇用を生み出す成長産業となる可能性を秘めている。子育てを社会で支えるという理念を実現するには、児童福祉法を改正し、保育を介護と同じサービスとして位置づける必要性がある。

<介護と介護人材難>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150124&ng=DGKKASFS23H44_T20C15A1PP8000 (日経新聞 2015.1.24) 小手先の対応 限界 介護の人材難、一段と
 厚生労働省が23日、介護現場で働く外国人を増やす対策案をまとめたのは、人材難が今後一段と深刻化するためだ。同省の推計では「団塊の世代」が75歳以上となる2025年度には介護職員は30万人も不足する見込み。人口減少も重なり、日本人だけで労働力を賄うのが難しいとの判断がある。ただ今回の対策案でも政府は「外国人を単純労働力としては受け入れない」という原則は崩していない。技能実習制度の拡大は「介護の技術移転を求めるニーズが途上国側にあるため」(厚労省)というのが建前。不足する労働者の受け入れでなく、あくまで途上国支援との立場だ。こうした対応には国内外で批判が出ている。建設や農業など先行して受け入れている技能実習生は賃金未払いや低賃金の長時間労働が絶えず、諸外国から「都合良く外国人を使っている」などと問題視されている。厚労省と法務省は対策として監督機関を新設する。340人体制で全国約2千の受け入れ団体や約3万の事業所を巡回監視できるようにする。ただ23日の厚労省の検討会では連合の代表から「制度改正を重ねても運用が改善されていない」との指摘が上がった。経済連携協定(EPA)を結んだフィリピンなどから受け入れる仕組みにも課題がある。今年1月までに受け入れた累計1538人のうち481人がすでに帰国した。日本語の専門用語が多い介護福祉士試験に期限内に合格できなかったり、難しさに嫌気がさして他国に渡ったりしたためだ。小手先の対応を続けると、日本は外国人から働く場として見放されかねない。外国人を労働力としてどう位置づけるのか。きちんとした判断が必要な時期に来ている。

*3-2:http://qbiz.jp/article/58480/1/ (西日本新聞 2015年3月22日) 
介護保険料が高騰 福岡・田川など7000円超え 制度開始時の2・5倍
 全国最多の33市町村でつくる福岡県介護保険広域連合の65歳以上が支払う介護保険料(基準月額)が、4月の改定に伴い、田川市郡など8市町村のグループで7369円に引き上げられることが分かった。高齢化が進み、介護サービスの利用が増え続けているためで、現行保険料(6589円)から780円増。介護保険制度が始まった2000年度の2・5倍で、7千円の大台に達する。65歳以上の介護保険料は、保険者の市町村や広域連合が必要なサービス量に応じて決め、3年に1度見直す。福岡県広域連合では05年度から、加盟市町村間の負担と給付をめぐる不公平感を解消するため、構成自治体を高齢者1人当たりの介護サービス給付費の高い方からA、B、Cの3グループに分け、それぞれ保険料を設定している。15年度からAに属するのは田川市、香春町、糸田町、川崎町、大任町、福智町、赤村、東峰村。Bの柳川市など17自治体は5545円(現行比673円増)、Cの志免町など8自治体は4800円(同411円増)で、同じ広域連合内でも最大2569円の開きが生じる。関係者によると、Aの自治体の多くが旧産炭地。炭鉱閉山が続いた1960年代以降、若者が流出し、独居高齢者や高齢夫婦世帯の割合が増す一方で、雇用の場の確保も念頭に特別養護老人ホームなどサービス単価の高い入所施設の開設も続いた。その結果として、給付費が膨らみ保険料アップにつながっているという。Aの15〜17年度の給付費見込み総額は約471億円とされ、12〜14年度の約458億円から2・8%増。高齢者1人当たりのサービス給付費(12、13年度)は、最も低い新宮町(Cグループ)の19万3千円に対し、最も高い赤村(Aグループ)は44万5千円だった。厚生労働省によると、Aの12〜14年度の保険料6589円は、6680円の新潟県関川村に次ぎ全国2番目。09〜11年度の6275円は全国最高額だった。グループ別保険料を4月以降、導入しているのは、福岡と沖縄の広域連合だけで、同省は「1保険者1保険料が原則だが、著しい格差がある場合は、解消に取り組むのを条件に経過的措置として認めている」としている。
▼九州の県庁所在地・政令市は佐賀市除きアップ
 九州の県庁所在地と政令市では、65歳以上が支払う介護保険料(基準月額)が、4月の改定に伴い、佐賀市を除く7市で現行より引き上げられることが西日本新聞の取材で分かった。見直される保険料は、長崎市が現行より591円増の6083円となる他、大分市5994円(542円増)、福岡市5771円(409円増)など。現行からの上げ幅は、鹿児島市が903円増の5766円(23日に決定見込み)で最も大きい。各市は負担増について「高齢化率が高く、介護給付費の伸びも大きい」(長崎市)、「65歳以上の人口比が上がり、基金などを取り崩しても上げざるを得ない」(福岡市)などと説明。佐賀市(佐賀中部広域連合)は、4月からの介護報酬引き下げや、給付費の伸びが予想を下回ったことに加え、基金を2017年度までの3年で9億5400万円取り崩すことで据え置く。宮崎市も基金からの充当で30円増の小幅アップに抑えた。各市とも「団塊の世代が75歳以上になる10年後を見据えると、3年後も下がる要因はない」としている。介護保険料 介護保険を運営するため40歳以上の人が支払う。65歳以上の保険料は保険者の市町村などが決め、所得に応じて軽減される。基準月額の全国平均は現行(12〜14年度)が4972円、介護保険制度の導入当初(00〜02年度)は2911円。40歳〜64歳の保険料は、加入する国民健康保険や健康保険組合などの算定基準に応じて、医療保険料と一括して徴収される。


PS(2016.3.20追加):*4のような記事が、“年金改革”と称して言われる論調の典型で、「①世代間の格差を広げないためには今のうちから我慢することが必要」「②マクロ経済スライドで年金支給額を下げないと子や孫の世代の支給額がさらに減り、厚労省は、デフレ下では発動できないという制約を残しつつ、物価が上がった年にまとめて下げる改革案をまとめた」としている。
 しかし、①は、イ)世代間格差を計算するにあたって、物価上昇を加味しない名目保険料支払額(負担)と名目受給額(給付)を比較している点で論理的でなく結論誘導的であること ロ)年金制度が不備だった時代の働き手は、祖父母や親を直接扶養して負担していた事実が見落とされていること ハ)下の図のように、日本における公的年金の所得代替率はOECD諸国の平均より、かなり低いこと 二)実際に生活できない高齢者が多いこと などから、これまでの年金積立金運用の杜撰さのつけを国民にまわすための屁理屈にすぎない。また、②も、物価上昇時なら下げてもよいとする“改革”案は、下の左のグラフのように、今でさえ公的年金の所得代替率が低い我が国で、目立たぬようにこれまでの年金制度運用の杜撰さのつけを国民に押し付けるもので、正当な理由はない。
 そのため、私は、65歳以上の人や女性の正規労働での労働参加率を上げ、稼働する生産年齢人口と年金の支え手を増やすことが、まず必要な解決策だと考える。さらに、民間企業と同様、退職給付会計を導入して年金資産をきちんと管理するのも当然のことだ。

     
   公的年金による      現在の       人口構造と           女性の       
 所得代替率国際比較   年金改革案    マクロ経済スライド       労働化率

*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160207&ng=DGKKZO97026990X00C16A2PE8000 (日経新聞社説 2016.2.7) 将来世代を考えた年金額の抑制が必要だ
 2016年度の厚生年金や国民年金の支給額が15年度と同じ額のまま据え置かれる。少子高齢化に合わせて支給額を少しずつ抑えていく仕組みが条件を満たせず、発動しないと決まったからだ。今の年金制度では、早めに支給水準を下げておかないと、将来世代の年金額が想定以上に減ることになってしまう。どのような状況の下でも、少しずつ着実に年金額を抑えていけるように早急に制度を見直すべきだ。年金支給水準を毎年小刻みに切り下げていく仕組みは04年度の年金制度改革で導入された。「マクロ経済スライド」と呼ばれる。ただこの仕組みは、高齢者の生活を考慮して、物価や賃金が下がるデフレ状況下では発動できないなど一定の制約が設けられた。その後、日本経済はデフレが続いた。その結果、マクロ経済スライドは発動できず、年金の支給水準は高止まりしたままとなった。脱デフレ傾向が強まった15年度に初めて発動することができたものの、16年度はまた発動できない状況に戻ってしまう。すでに年金を受け取っている人たちにとって、支給額が減らないのは喜ばしいことに違いない。しかし、その代わりに子どもや孫の世代の支給額がさらに減るとしたらどうだろう。世代間の格差を広げないためには、今のうちから少しずつ我慢することも必要ではないだろうか。厚生労働省の審議会は、この問題を解決するために、今ある制約を取り払って、毎年マクロ経済スライドが発動できるような形に制度を改めることを求めていた。これに対し同省は、政治的な配慮からデフレ下で発動できないという制約は残しつつ、発動できなかった分は物価などが上がった年にまとめて下げるという制度改革案をまとめている。しかし、この妥協的な改革案ですら、今夏の参院選を前に高齢者からの反発を恐れる与党には「受け入れ難い」との批判があるようだ。今国会で改革法案を成立させることができるかどうかは不透明な情勢にある。高齢化が急速に進む日本において、なんら手を加えずに年金制度を維持することはできない。給付抑制などの「痛み」を伴う改革を実施し、将来世代に引き継いでいくしかない。政府・与党にはそこをごまかさず、正々堂々と国民に訴えていく姿勢が求められる。


PS(2016年3月22日追加):北海道でも東北でもフル規格の新幹線が開通した現在、*5のように、九州新幹線西九州ルート(終点は長崎)に今さらフリーゲージトレイン(FGT)を投入するのは、FGTの開発費も含めて無駄である。関東在住の人には想像がつかない人も多いかもしれないが、長崎は日本が鎖国していた江戸時代から海外への窓として機能していたため、洗練された独特の文化があり、歴史的価値が高い。そのため、長崎をフル規格の新幹線で結ぶのは、馬鹿な埋め立て工事をするよりもずっと経済合理性が高く、投資価値があり、高架にすればさほど土地の買収費用もかからないと考える。

*5:http://qbiz.jp/article/83138/1/
(西日本新聞 2016年3月22日) 長崎新幹線、フル規格待望論も
 九州新幹線西九州(長崎)ルートの「リレー方式」での開業が確定的になる中、関係者は開業の「その後」に注目している。国土交通省案では、開業から3年後の2025年度にはフリーゲージトレイン(FGT)の量産車が投入される見通し。関西圏から長崎まで乗り換え不要で利便性向上、在来線と新幹線の両区間を走行する新型車両に鉄道ファンが殺到−。当初描いたそんな「夢」が実現する。ただ、これはFGTの開発や走行試験が「順調にいった場合」(国交省)との条件付き。不具合が生じれば投入はさらに遅れる恐れがある。「新技術の開発には、常に予想外の事態が付いて回る」。同省幹部はそう釈明するが、地元はそれでは収まらない。九州選出の国会議員の一人は「本当に完成するのか分からないのに、国の都合に振り回されてはかなわない」と言う。FGTに「見切り」を付ける動きも出てきた。長崎県議会の九州新幹線長崎ルート建設促進議員連盟は、リレー方式での開業の先に全線フル規格化への「計画変更」を見据える。長崎、諫早、大村の沿線3市を含む6市議会は議連と足並みをそろえ、経済界からも同様の声が出るが、財政負担の大きさから国は慎重だ。


PS(2016/3/22追加):*6-1のように、厚労省が理念なき細かな変更を行うことによって、介護事業に参入した事業者やその仕事の担い手は大きな打撃を受ける。また、子を都会に出して一人暮らしをしている老親や子が夫婦で農作業に従事している老親のうち、このサービスを利用している人は生きていけなくなるのに、政府は、*6-2の原発事故賠償を始めとして、あちこちで大きな無駄遣いをしながら何をやっているのか。なお、原発事故の賠償は、初めてだった福島の場合は仕方がないが、二度目以降は、リスク承知で、リスク料をもらって再稼働した地元のみの責任とすべきだ。

*6-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36697
(日本農業新聞 2016/3/22) 要介護1、2の生活援助が保険外に 厚労省が検討、年内に結論
 厚生労働省は介護保険制度で、介護の必要度が軽い「要介護1、2」向け訪問介護のうち、掃除や買い物などの生活援助サービスを保険から外し原則自己負担とする方向で検討に入った。2016年中に結論を出す方針だ。費用の負担感からサービスを利用できなくなる高齢者が増え、訪問介護中心のJA事業などにも影響が出そうだ。
●訪問事業手引けぬ JAも打撃
 「体が動かないから、身の回りのことが思うようにできない。ヘルパーさんが頼り」。新潟県上越市で一人で暮らす金子まちさん(99)は要介護2で、JAえちご上越の訪問介護を週7日利用する。高齢のため足腰が弱り、一度椅子に座ると立ち上がりづらい。自分だけで浴槽に出たり入ったりするのも困難だ。「子どもは近くにいないし、近所に何もかも頼るわけにはいかない」と言い、買い物や調理、掃除などホームヘルパーの日常的な支援を必要とする。金子さんが生活援助にかける費用は1カ月で約10万円。今は自己負担1割の約1万円で済み、安心して毎日利用できる。だが、全て自己負担となると家計を大きく圧迫し、今のような毎日の利用は難しくなる。同JAの訪問介護を受ける利用者約90人のうち、要介護1、2で生活援助を受ける人は3割弱を占める。保険対象から外れれば、利用者の負担が増すのはもちろん、JAも事業収益が減り経営が打撃を受ける。このため、保険から外れた人を対象にしたサービス提供にも乗り出す考えだ。「地域貢献を使命に持つ事業所だから、地域の受け皿として機能しなければならない」(高齢者福祉部)。広島県のJA三次は、訪問介護利用者が約170人。生活援助が5、6割を占め、ほとんどが要介護1、2だ。中山間地のため家から歩いて行ける店は少なく、買い物や調理などのサービスをホームヘルパーに頼る高齢者が多い。JAふれあい課ふれあい福祉センターの吉川順一郎センター長は「介護度の比較的軽いお年寄りの毎日を支えているのは生活援助。これが保険から外されると厳しい。事業収入としても切実な問題で、職員の給料が出るかどうか……。だが、地域に根差すJAとして訪問介護から手を引くわけにはいかない」と頭を悩ませる。介護の必要度が軽い人を多く抱える、熊本県のJA菊池も難局を予想する。訪問介護利用者は約40人、要介護認定平均は1.58だ。「制度見直しで、国は介護給付金をできるだけ抑えようとしている」(福祉課)と、事業継続に厳しさを抱く。
●受け皿なくなる
 JA全中高齢者対策課は「JA訪問介護事業は要介護1、2など軽度の利用者が多く、生活援助の占める割合が高い。保険から外れたら、収入減となる影響は大きい」と指摘。採算割れを見込んで事業自体の引き受け手がなくなり、「地域全体でみれば介護難民が出かねない」と危惧する。

*6-2:http://www.jiji.com/jc/zc?k=201603/2016031800629&g=soc
(時事通信 2016.3.20) 国に5800億円追加申請=原発事故の賠償支払い-東電
 東京電力は18日、福島第1原発事故の賠償金支払いなどのため、原子力損害賠償・廃炉等支援機構に対し、5831億2800万円の追加支援を申請した。認められれば、原発事故の賠償に絡んだ国からの資金援助額は、除染費用も含め合計7兆4695億8633万円に達する。追加支援の申請は昨年6月以来。内訳は、土地や建物の除染費用の支払い分が3101億円、出荷制限や風評被害などの賠償分が2730億円


PS(2016.3.25追加):*7に、日経新聞が「①農業を教育に生かせ」「②浦安市は農地がないため、中学校が人工的な環境で農作物を育てる植物工場を導入した」「③方法は違えど生き物としての農作物から学ぶ目的は同じ」「④機械音が響くが土の匂いはない」「⑤校内の植物工場ならつぶさに植物の生育を観察でき、最新の技術に触れて大きな刺激になる」などと記載している。
 そのうち、①はよいが、②のように農地(農地は人工物であって自然ではない)のないコンクリート造りの都会で育ち、ごく限られた科目の勉強しかしていない人が、地下水の分量も自然の仕組みもわからずにフクイチの汚染水のような呆れた処理をしているのだと思うため、そのような街は子どもにも関わらせて自然の川や海を利用した自然公園を作った方がよいと考える。また、並木の間に花壇を作ったりして、小学校区毎に、特徴ある美しい街づくりの競争をするのも面白いだろう。
 さらに、④の機械音が響くが土の匂いのない人工的な環境で農作物を育てる植物工場は、水槽に空気を出しながら金魚を飼っているようなもので、③の「農作物から学ぶ目的は同じ」とは到底いかない。その理由は、子どもは、収穫時の驚きや喜び、有機農業の土で育ったとれたての作物の味も一緒に覚える必要があるからで、⑤のように、植物の生育を観察する目的なら植木鉢に植えた方が自然に近い上、植物工場の限られた光と栄養素で育った形だけのレタスや、それを喜んで食べている人は憐れだ。

*7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160325&ng=DGKKZO98846190V20C16A3NZBP00 (日経新聞 2016.3.25) 農業を教育に生かせ、千葉・浦安、中学に植物工場
 農業を教育に生かす取り組みが、各地で工夫をこらしながら続いている。市内に農地のない千葉県浦安市の中学校は、人工的な環境で農作物を育てる「植物工場」を導入した。東京都調布市では大人と子供が一緒に田んぼで学ぶ活動が回を重ねる。方法は違えど、生き物としての農作物から学ぶ目的は同じ。良好な環境や食べ物を大切にする気持ちを培う助けになると期待されている。教室の半分ほどを占める巨大な装置の中で、青々としたレタスが葉を広げる。かすかに機械音が響くが土の匂いはない。千葉県浦安市の市立入船中学校は光や水、温度などを制御して農作物を育てる「植物工場」を設置した珍しい中学校だ。生徒の手で実験的な栽培を始めている。同校は昨年9月に可動式の「ワゴン型植物工場」6台を導入。今年1月には幅6メートル、高さ2.5メートル、奥行き2.1メートルの「小型植物工場」も設置した。ワゴン型では昨年10月からリーフレタスを栽培している。世話をするのは各クラスの環境係の生徒たち。養液の補給、苗の間引きなどを週に数回行う。種まきから収穫まで約35日間。とれたレタスは文化祭で配ったり調理実習で使ったりしている。4月からは理科の実験や食育の授業などでも工場の活用を目指す。二酸化炭素(CO2)の濃度や日照時間などを変えて育ち方を比べることで、植物に必要な環境条件などを考察できる。浦安市は全国の市町村で唯一、農地がない。入船中の生徒は農業体験をするのに茨城県の農地まで出向いている。工場を設置したわけを、緒方利昭校長は「校内の植物工場ならつぶさに植物の生育を観察でき、小さな変化に気づける。最新の技術に触れることも生徒にとって大きな刺激になるはずだ」と語る。市から理科教育の推進校に指定されていることも理由の一つという。環境係の一人として栽培に携わる佐々木悠帆さん(13)は「様子を見に来るたび、植物の大きさや色が変化していくのが分かる」と笑顔で話す。同校ではワゴン型植物工場を近隣の小中学校に貸し出すことも検討中。4月からは小型植物工場の試験稼働も始める予定だ。市の教育政策課は「より多くの生徒に、自分で育てたものを食べる経験をしてもらいたい」と意気込んでいる。


PS(2016年3月27日追加):*8の「①少子化対策を進める市の職員は市民の先頭に立って子供を産むべきだ」「②市職員には一定数の子供を育てた人を一部で採用すべきだ」「③職員は少子化対策に積極的なことが望ましく、子育て経験者が採用されれば、若い職員が産休を取得する際などに職場の理解が得やすくなる」というのは、女性職員のみを対象として言われたのだと思うが、もしそうなら、実質的に女性に対してのみ採用や配置にハードルを作って不利な扱いをしているため間接差別である。また、男性職員も含めて言ったのであれば、子どもを奥さんに育ててもらった男性は、自分で育てたわけではなく仕事と子育ての両立の苦労はわかっていないため、「子育てした」というグループから除くべきだ。つまり、直後に撤回したとしても、*8のようなことを考えるのは、その時代の状況に応じて多様な人生を選んだ人(特に女性)に対し、自己決定権を認めていない点で女子差別撤廃条約違反なのである。

*8:http://mainichi.jp/articles/20160327/k00/00e/040/160000c
(毎日新聞 2016年3月27日) 「市職員は子供を産むべき」直後に撤回
 大分市の帆秋(ほあき)誠悟市議(55)=2期=が、18日の市議会一般質問で「少子化対策を進める市の職員は市民の先頭に立って子供を産むべきだ」「市職員には一定数の子供を育てた人を一部で採用すべきだ」などと発言したことが分かった。質問の直後に永松弘基議長から「誤解を招く」と指摘されたため取り消しを申し入れ、25日に議事録から削除されたという。帆秋市議は毎日新聞の取材に「職員は少子化対策に積極的なことが望ましく、子育て経験者が採用されれば、若い職員が産休を取得する際などに職場の理解が得やすくなるという考えで質問した」と説明。一方で「『先頭に立って』の表現は職員の義務と解釈される可能性があるなど、適切でなかった」と話した。


PS(2016.3.29追加):*9に、「①土地デフレが終わり全国平均の地価が8年ぶりに上昇した」「②大都市から始まった地価上昇は着実に広がっている」「③地価の上昇により担保価値が上昇して、中小企業も設備投資資金を手当てしやすくなるため、経済にとって望ましい」「④銀行による不動産融資はバブル期を超えて過去最高になり、不動産業への資金集中が続けば新たなバブルを生む」と書かれている。
 このうち、①②のように、日本の都市部における地価上昇を祝福するのは全くおかしい。何故なら、日本の都市部の地価は収益還元法による価値を大きく上回っており(その場所でビジネスを行ってもなかなか採算が合わないということ)、さらなる地価上昇は、バブル期と同様、まさに④の理由で売買価格が上がったにすぎないからだ。このため、都会ではまともな保育園も作れず、狭いマンションの値段が驚くほど高く、その他のビジネスを行っても地代が高すぎて販売単価や人件費にしわ寄せされ、つけが一般市民の生活にまわされた上、この高コスト構造がバブル期に始まった日本の産業空洞化の原因であるため、何度も同じ失敗を繰り返して学習できていないのは誠に情けないのである。
 さらに、③については、不動産担保型の貸付には(長くは書かないが)ディメリットが多いため、前回のバブル終焉後、企業の返済能力や将来性を評価した貸付をするよう20年以上も前から奨励してきたにもかかわらず、まだできていないのなら不思議と言うほかない。

*9:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160323&ng=DGKKZO98744360S6A320C1EA1000 (日経新聞社説 2016.3.23) 土地デフレの終息はいいが
 リーマン・ショック以降続いた土地デフレが終わった。国土交通省が発表した公示地価(1月1日時点)で全国平均の地価が8年ぶりに上昇した。不動産市場への資金流入に加えて、訪日客の増加も地価を押し上げている。大都市から始まった地価上昇のすそ野は着実に広がっている。都道府県別にみると、商業地では新たに北海道や石川県、広島県などが上昇に転じた。住宅地でも新たに熊本県が上がった。商業地が特に堅調だ。東京の都心部を中心に主要都市でビルの空室率が低下している。社員の採用増や業容拡大に併せてオフィスを移転したり、拡大したりする企業が多い。需給が引き締まり、東京などでは賃料も上がっている。訪日客の増加で大阪の心斎橋や東京の銀座などではブランド店や免税店の出店が相次いでいる。ホテル用地の取得も広がっている。土地デフレが終わり、地価が上昇に転じたことは経済にとって望ましいだろう。担保価値が上がれば中小企業なども設備投資などの資金を手当てしやすくなる。地価が上がったといっても全国平均で0.1%の上昇にすぎない。実需の支えがなければ、持続的に地価が回復するのは難しい。規制緩和などでビジネス拠点としての都市の魅力を高め、内外の投資を呼び込む政策が要る。一方で気になる点もある。銀行による不動産融資は昨年、バブル期を超えて過去最高になった。運用難が背景にあるとはいえ、不動産業への資金集中が続けば、新たなバブルを生みかねない。大阪では上昇率が40%、名古屋でも30%をそれぞれ超えるような地点が出てきた。東京・銀座の一等地ではバブル期よりもすでに地価は高い。マンションの販売価格も全国でかなり上がっている。日銀のマイナス金利政策は住宅投資などを後押しするだろうが、バブルの芽を膨らます可能性もある。地価は上昇への期待感から振れやすいだけに、注意を要する局面に入ったといえるだろう。


PS(2016年3月30日追加):*10の「焼き物に関心がない人に向けた方策や基本理念」は、焼き物作りを小中学校の工作の授業に加えれば一般の関心が高くなると同時に、広い裾野から才能を見い出すことができると考える。私は唐津市出身なので中学校で唐津焼を創る授業があり、私が作ったものを見て母も関心を示していた。そのため、小学校、中学校で陶磁器創りを工作の授業に取り入れ、小学生の部・中学生の部に分けてコンクールを行って、優秀作品を展示すると面白いと思う。


2016.2.14佐賀新聞  鍋島      源衛門     中里太郎衛門   今泉今衛門  酒井田 
子どもの有田焼製作                                           柿右衛門

*10:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/294797
(佐賀新聞 2016年3月30日) 「九陶に語らいの場を」検討委最終会合、提言へ
 佐賀県立九州陶磁文化館(西松浦郡有田町)の機能や施設のあり方を探る検討委員会の最終会合が29日、佐賀市であった。来館者が展示を見た感想を話し合うスペースを設けた「議論できる博物館」などを求める意見が出た。7回の会合で深めた論議を基に近く提言をとりまとめる。県は地元窯業関係者らの意見を含めて今後の運営につなげる。焼き物に関心がない人に向けた方策や基本理念などで意見交換した。世界に開かれた陶磁文化の拠点として、住民を巻き込んだ情報発信などを提言した。ハード面では収蔵施設拡大の必要性を指摘するとともに、収蔵型展示の検討や、展示室を拡充するため館内スペースを見直すことなどの意見が挙がった。委員会は開館から34年が過ぎた九陶の将来を見据え、社会のニーズに対応した展示や今後の役割を考えようと2014年に設置。前九州国立博物館館長の三輪嘉六さんを座長に、九州陶磁文化館の鈴田由紀夫館長と博物館関係者、大学教授ら9人で議論を進めていた。


PS(2016.3.31追加):健康寿命・平均寿命などが伸びたので、定年を延長するのは当然だが、60歳以上の人からは、「働くのはよいが、年齢で差別して非正規にするのではなく、そのまま仕事を続けさせて欲しい」という要望があり、男子若年層には「それではいつまでも役職につけないではないか」という声がある。しかし、時代は速く変わっているので、高齢化かつ共働き時代のニーズに合わせるためには、特に若年層の発想を必要とする事業もあれば、熟年層や高齢者の知識・経験が重要な事業もあり、男子若年層のみの発想では時代のニーズにあったものは作れないと考える。
 
*11:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160331&ng=DGKKASFS30H3E_Q6A330C1MM8000 (日経新聞 2016.3.31)定年引き上げ助成金拡大、支給基準66歳以上に 厚労省
 厚生労働省は意欲のある高齢者が働きやすいように定年退職の年齢引き上げを企業に促す。定年を70歳以上に引き上げないと助成金を出さない制度を改め、4月から支給基準を「66歳以上」に広げて使いやすくする。65歳以上の社員を雇う企業が40~50代の中高年の転職を受け入れた場合、1人あたり40万円を出す助成金制度もつくる。定年を引き上げた企業は就業規則の変更など制度の導入にかかる経費として100万円をもらえる。定年を迎えた正社員が非正規社員として働ける継続雇用制度を導入した場合も助成する。助成金をもらえる企業の数は基準の緩和で大幅に増える見通しだ。2015年の厚労省調査によると、70歳以上まで働ける企業は全体の2割にとどまっている。希望者全員が65歳以上まで働ける企業は7割を超える。40~50代の転職を後押しする助成金は1人当たり40万円を受け入れ企業に出す。1社につき最大500人まで支給する。


PS(2016年4月2日):*12-1の消費税は、人件費をはじめとする付加価値に課税して消費者に転嫁する悪税であるため、凍結した上で次第に廃止すべきだ。そう書くと必ず財源問題や直間比率を言う人がいるが、財源は、*12-2のように、優秀で屈強な人材(強者)を大量に採用した商社が、外国から他国より高い値段で資源を買い付けて代金に比例して手数料を取り、それらを国内産業や国民に負担させるような最も安易で情けないビジネスを行うのではなく、日本産天然ガス・水素・農林水産物などを輸出するような本当に国のために役立つビジネスを行えば、弱者からむしり取るようなことはしなくてすむのである。また、日本が自然エネルギーを中心とする国産エネルギーにエネルギー変換を行なって、エネルギー自給率100%の国になれば、国富を外国に出すことなく国内でまわすことができるため、税収が増える。さらに、直間比率については、アメリカ合衆国には付加価値税はなく、必要と思った州が独自に課税しているのであって、税体系の必須要件ではないのだ。

*12-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/296030
(佐賀新聞 2016年4月2日) 消費税増税再延期は適切に判断、首相、分析踏まえ政治判断
 安倍首相は消費税率引き上げの再延期について、専門的見地の分析を踏まえ政治決断するとした上で「延期には法改正が必要だ。そうした制約条件の中で適時適切に判断する」と述べた。

*12-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160325&ng=DGKKASDZ24I4J_U6A320C1EA2000 (日経新聞201.3.25)次代の経営者に重い宿題 収益の安定化/革新力の向上
 資源ビジネスへの傾斜を深めた総合商社の経営が転機を迎えた。業界の双璧である三菱商事と三井物産がそろって最終赤字に転落するのは、やはり衝撃的だ。資源以外の事業の育成を急ぎ、お得意の「稼ぐ力」を取り戻す必要がある。過去四半世紀、停滞を続けた日本経済だが、個別の業界や企業に焦点を絞ると、飛躍的に成長した例も少なくない。その代表格がいわゆる総合商社だ。三菱商事を例にとると、1990年度から99年度まで10年間の純利益の合計は3700億円にすぎないが、最近は単年度で4千億円以上の純利益を当たり前のように計上してきた。桁違いの収益力の源泉は、以前のモノの売買を仲介するトレーディング(交易)会社の事業モデルから脱却し、天然ガスや原料炭など資源分野で直接投資に乗り出したことだ。1000億円単位の巨額の資本を投下して、地下に眠る資源の所有権を獲得。それを採掘して内外の電力会社や製鉄会社に供給することで、高収益を享受した。中国の需要爆発がもたらした商品市況の高騰が、プラスに働いたことも言うまでもない。逆にいえば、資源価格が下がれば、過去の投資案件の価値が毀損し、大型の損失が出るのも必然だ。大切なのは損切りを短期で終わらせ、なるべく引きずらないことだ。バブル崩壊後の地価下落局面で、一部の商社は「これで最後」と言いながら何度も特別損失を出し、市場の信頼を失った苦い経験がある。商社は過去にも何度か冬の時代を迎えながらも、時代に合わせて自己変革し、よみがえってきた。今必要なのは、非資源分野の充実と顧客といっしょになって価値を創出するイノベーション力の向上だ。ブルネイの液化天然ガス(LNG)プロジェクトのように、商社が海外の石油メジャーや需要家の電力会社とチームを組んで新境地を開いた案件も過去には多い。三井物産で昨年上席役員32人を抜いて、安永竜夫社長が誕生するなど、大手商社の経営陣はいま代替わり期を迎えている。資源価格の乱高下に振り回されない確固たる事業基盤を築けるかどうかが、問われている。

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 04:27 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.3.14 フクシマ、原発再稼働、復興など (2016年3月15、16、17、18、21、23日追加)

 汚染範囲  2016.3.12Huffintonpost  2016.3.12 放射性セシウム  放射性物質体内蓄積
                              農業新聞    食品基準

  原発事故による世界の日本食品輸入規制 (日本人なら、命をかけても食べて応援すべきか?)

(1)エネルギーの変換が必要なのである
 *1-1のように、「パリ協定」に基づいて政府がまとめた「2050年までにCO2を80%削減する」という目標はよいのだが、そのために原発をベースロード電源として2030年時点の原発比率を「20〜22%」とし、電源の柱の一つに位置付けたのは、思考停止の重大な問題だ。

 その点、*1-2のように、元米原子力規制委員長のグレゴリー・ヤツコ氏は、「大規模発電は今世紀限りで、新規制基準に適合していても事故は起きないという保証はできない」「原子力は非常に高価な技術で、来世紀には使われていないだろう」と明言しておられ、これが率直な論理的帰結である。

 また、*1-3のように、台湾では、5月に新政権を発足させる民進党の蔡英文次期総統が、2025年に原発の完全廃止の方針を掲げており、東京電力福島第1原発事故から5年に合わせて台北市などで3月12日に反原発デモが行われたそうだ。韓国も女性大統領であるため、勇気を出して原発の完全廃止方針を掲げてもらえると有り難いのだが・・。

(2)水素発電について
 原発にかわる二酸化炭素を出さずに発電できるエネルギーは自然エネルギーで、これを貯蔵するには、蓄電池のほか*2の水素も利用でき、必要な時に発電して電力を取り出す水素発電を政府が支援するそうだ。

 しかし、水素燃料による発電が燃料電池車で既に行われているのに、2020年までに民間実験炉を作るなどと言うのは、やる気のなさを感じる。さらに、政府が支援例として、液体水素輸送船や新型ガスタービン開発などを想定しているのも、水素は電力で作って国内で自給できるエネルギーであることを考慮しておらず、的外れだ。

(3)大津地裁の高浜原発運転差止仮処分決定
 *3-1のように、①大津地裁は高浜原発の運転を差し止める決定を出し ②関電は想定外の即時停止を迫られ「承服しがたい」としたが、その背景には、弁護団に第一人者の弁護士が入り、裁判官にも原発事故を直視する人が各地にいるようになったことがあるだろう。今後、野党は、国会で変な印象付けをするような質問をするのではなく、原発再稼働を推進する政府の甘さを論理的に追及して、エネルギー変換に繋げて欲しいと私は考える。

 また、*3-2のように、大津地裁が関電高浜原発3、4号機の運転差し止めを命じた判決は、動いている原発を司法が止めた初めての判決だが、「仮処分での主張や説明の程度では」との文言を何度も繰り返しているので、ともかく説明さえすれば判決が変わったのか心配になる。

 なお、裁判官の間に従来のように国の手続きの適否にとどまらず安全に関する審理を本格的に行うべきだという「改革論」が浮上していたそうだが、手続きの適否と安全性に関する真実とは無関係である上、従来“原子力の専門家”と呼ばれてきた人たちは原発再稼働と利害関係のある人が多く、煮詰まっているため信用できない。しかし、国民は、どうしても真実の根拠に基づく安全を必要とするため、福島原発事故の真の原因を究明した上で、他の原発にはその危険性がないのか否かを真摯に判断してもらいたいのだ。そのため、「多くの市民が求めているのは安全であり、規制基準ではなく安全基準だ」というのは、当たり前の話である。

(4)原発の本当のコスト
 まだ、「原発は安い電源だ」と主張する人がいるが、*4-1でロイターが掲載しているように、城南信用金庫の吉原理事長が、「①原発のコストの方が低いという人は、会計原則ぐらい勉強していただきたい」「②原発は、今あるウランを使うだけなら原価は低いが、それには廃炉費用、使用済核燃料の保管料・処理費用、工事費、人件費、地代を入れていない」「③事故が発生したら天文学的なコストがかかり、これに対して正確に引当金を積み立てると、とんでもない金額になる」「⑤これは不採算なのであり、国家ぐるみの壮大な粉飾決算だ」「⑥原発の将来に発生する未計上のコストをちゃんと計上して原発を再稼働させたら、もっと値上げをしなければならない」と述べておられ、私も全くそのとおりだと考える。

 また、自然エネルギーを使った発電による新電力が勃興してくれば、モノづくりのコストダウンに繋がるとともに、大量のエネルギー代金を海外に支払う必要がなくなり、その分、国民の暮らしが豊かになる。

 そのため、新エネルギーが新しい経済活力を生み出すとして、その開発に融資する金融機関があるのは理屈に合っており、環境に配慮した事業を行う組織には「グリーン・マーク」を作って付与したいところだ。なお、現在の消費者ニーズは脱原発が主流であり、消費者の教育レベルが高くなって洗練されればされるほど、消費者主権の方が外国追随型の官僚主導よりも新しいニーズに速やかに応えられる。

 そして、「⑦東京電力を生かすことが公共性ではない。安全でコストの安い電力サービスを継続的・安定的に保証することが公共性だ」というのも、全くそのとおりだ。

 なお、*4-2のように、英フィナンシャル・タイムズは、「福島原発事故の費用を東電は20%しか負担しておらず、日本の納税者の負担は約1000億ドル(約11兆4000億円)になる」と報告しているが、汚染水は未だに垂れ流しで原発事故は続いており、この11兆4000億円は全費用ではなく、賠償金は今後も増える見通しで、廃炉費用も結局は国民か電力使用者が支払うことになる。それでも、「原発のコストは安い」と言う人は、事実から目をそらせて特定の人に利益誘導しているのだ。

(5)原発事故公害と政府・メディアの対応
1)原発事故により発生する病気
 *5-1のように、"原子力ムラ"の言い分が通って原発の危険性に警鐘を鳴らす報道が少なくなっていのは本当だが、福島原発事故後、子どもの甲状腺癌の増加が膨大な人数になっているにもかかわらず、検討委員が科学的根拠もなく原発事故との因果関係を否定したことは驚きだった。そのため、これは、これ以上、損害賠償が増えるのを抑えるため、担当者に政府からお達しが出ているのだと推測する。

 第一に、星福島医師会副会長の「チェルノブイリとの比較の線量の話、あるいは被爆当時の年齢などから考えまして、これらの癌につきましては、放射線の影響とは考えにくいとの見解をこのまま維持する形に、今日の議論としては委員会としてはそうなったと理解しています」というのは、変なコメントだ。

 また、床次弘前大学被曝医療総合研究所教授はじめ検討委員会中間報告最終案では、「これまでに発見された甲状腺癌については、①被曝線量がチェルノブイリ事故と比べてはるかに少ない ②被曝から癌発見までの期間が1年から4年と短い ③事故当時5歳以下からの発見はない ④地域別の発見率に大きな差がない などから、⑤放射線の影響とは考えにくいと評価する」としているが、①は測定していない上、②は必ずチェルノブイリ原発事故と同じカーブを描く必然性はなく、③は、なぜそうなったのかの考察がない。また、④は、実際には線量に応じて地域差が出ているため、⑤の曖昧な言い方はごまかしにすぎない。

 なお、岡山大学大学院の環境疫学の専門家である津田教授を中心とした研究グループも、甲状腺癌の発生率は国内平均の20~50倍で、潜伏期間やチェルノブイリでのデータから今後も増加は避けられないと公表しており、政府や原子力ムラの学者は、甲状腺癌の増加を「過剰診断」や「スクリーニング効果」などと反論している。しかし、「過剰診断」や「スクリーニング効果」の結果か否かは、関西以西で一定数の同じ検査をして比較すれば直ちに結論が出るため、それをやらないのは真実の解明を拒んでいるということである。そして、国際環境疫学会(ISEE)は日本政府に対して「福島県民における甲状腺癌のリスク増加は、想定よりはるかに大きい」と懸念を表明し、リスクの推定をきちんとやるように警告する書簡を送ったそうである。

 なお、このような不誠実な態度に対抗するため、*5-2のように、「甲状腺癌家族の会」が結成されるそうだが、一般市民の原発事故に起因する病気は、*5-3のように、内部被曝・低線量被曝によるものが多く、甲状腺癌だけではない。

2)政府等の対応
 そのような中、*5-4、*5-5、*5-6のように、政府は2020年までの東日本大震災の復興基本方針を閣議決定し、①今後5年間を復興・創生期間と位置付け ②農業関連では農地の復旧を18年度までに完了させ ③農地の大区画化や利用集積を進めるとし ④放射性物質の被害で対応が遅れる地域の農地復旧や“風評被害”の払拭に重点的に取り組むそうだ。

 このうち、①は、国民全員が通常の所得税の2.1%を余計に復興特別所得税として支払っており、居住地の安定しない仮設住宅暮らしは再建の妨げになり、これまでの5年間で速やかに復興すべきだったのに対応が遅すぎるため、やり方の検証が必要である。

 また、②は、原発事故で汚染された地域の産物について、放射能が体内に蓄積することは無視して「放射線量が基準値以下なら安全性が確保される」としているが、その人為的に決めた基準値以下なら長期間摂取しても無害だという証拠はない。そのため、どの地域も農地に戻せばよいわけではなく、農林漁業をあきらめて原生林や野生動物の別天地に戻すなど他の利用法を考えるしかない場所もある筈だ。

 さらに、③は、せっかく農地整備をするならば、農地の大区画化や利用集積は必須であり、間違っても復旧すべきではない。そして、忘れてならないのは、④のように、政府が食品中の放射性物質による内部被曝を「風評被害」などとして真剣に考えないでいると、日本食品全体の安全性が、外国人のみならず日本国民からも信頼されなくなるということだ。

(6)電力会社の信頼性について
 *6-1のように、原発事故から5年を経過した2016年2月24日に、NHKは、「メルトダウンの判断は、事故後3日後には可能だった」とする報道をしている。どうしてそれを今報道するかについてはNHKにも責任があるが、福島第一原発事故で1~3号機の3基で原子炉の核燃料が溶け落ちるメルトダウンが起きたのだとしている点も、まだ不足だと考える。

 何故なら、メルトダウンしただけなら、関東を含む広い地域で放射線量が上がったことは説明できず、このブログの2011.7.27に「衆議院厚生労働委員会での『放射線の健康への影響』についての説明」で書いているとおり、2011年7月27日の衆議院厚生労働委員会参考人質疑で児玉龍彦東大教授が「3月15日に、最初に午前9時ごろ東海村で5μシーベルトという線量を経験して、それを文科省に直ちに通報しました。その後東京で0.5μシーベルトを超える線量が検出され、これは一過性に下がって、次は3月22日に東京で雨が降り、0.2μシーベルト等の線量が降下し、これが今日に至るまで高い線量の原因になっていると思っています」「広島原爆の29.6個分に相当するものが漏出しています。ウラン換算では20個分の物が漏出していると換算されます」と、科学的測定の結果を説明しておられ、児玉教授の説明だけが、*6-3の「透視調査の結果『福島第一原発の原子炉内に核燃料はない』」「4年たった今も溶け落ちた核燃料がどこにあるのか分かっていない」という事実と符合するからだ。

 なお、新潟県の泉田知事は、「事故後、5年もの間、このような重要な事実を公表せず、原発の安全対策の検証を続けている県の技術委員会に対しても真摯に対応して来なかったことは極めて遺憾。メルトダウンを隠蔽した背景などについて今後の調査で、真実を明らかにしてほしい」としている。

 また、*6-2のように、福島民報は、「東電は国や自治体に対して極めて深刻な事態の『炉心溶融』の前段階の『炉心損傷』との説明を続けていたため、福島県民への正確な情報発信ができず、東電の情報公開の在り方に対する県民の不信感は根強い」としており、原発事故にはこのような虚偽の説明が当然になってしまっている。

(7)東電トップの責任
 *7-1、*7-2のように、東電福島第一原発事故で、東電の勝俣恒久元会長ら旧経営陣三人が業務上過失致死傷罪で強制起訴され、公判では、巨大津波の襲来を予測できたか否かが、最大の争点となるそうだ。三被告は「津波の予測は不可能だった」と無罪を主張するが、*7-3のように、2008年には東電社内に15.7メートルの津波が来ると試算していた非公開の内部資料があり、東電の旧経営陣3人が大津波を予見できなかったというのは無理がある。津波の頻度や規模についても、地域の古文書や地層を調査すればわかるため、原発や非常用電源を無防備に「15.7メートル+余裕分」より下に建設したのは、重過失と言える。

 なお、*7-4のように、死者・行方不明者が多かった岩手県陸前高田市も、18mの津波が襲ったにもかかわらず、10mの盛り土をして住宅地にしようとしているが、一度は仕方がないとしても、既に教訓があるのに何度も国民に津波被害の補償をさせないようにして欲しい。そのため、10mの盛り土をして住宅地を作るのではなく、住宅地は高台に造って交換によって移転させ、道路や商業施設もそれに都合がよいように造るべきである。

 そして、使わなくなった旧住宅地は、放牧(津波が来たら高台に逃げるように、家畜をしつけておけばよい)や田園など、津波が来ても人命にかかわる被害にならないような使い方をすべきだ。

(8)驚くような考え方(3月23日追加)
 「①原発事故から5年経ち、福島の人が病気になるという予言を出して危険を煽った人は、福島の農家の復興への想いを踏みにじっている」「②福島県民への差別だ」「③反原発派は福島の復興の最大の障害だ」「④反原発の人は社会の利便性にタダ乗りしている」などと本気で言っている人がいるが、①は、警告したからこそ注意して病気になる人が減ったが、今後どのくらいの人が病気になるか未判明で、甲状腺癌と同じく隠される可能性も高い上、②は、“差別(特定の個人や集団に対して、正当な理由なく不利益を強制する行為)”の意味すらわかっておらず、③は、放射能で汚染されている場所に「戻れ戻れ」と言って復興すればよいという価値観こそ人の命を粗末にしており人道に反する。さらに、④は、まだ原発のコストが安く、原発がなければ社会の利便性が失われると主張していることに驚く。

 そのため、こういうことを自分の頭で判断できないのは、どういう教育を受けてきたのかと思われる。

*1-1:http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=352974&nwIW=1&nwVt=knd
(高知新聞 2016年3月8日) 【温暖化対策計画】長期的な視点に欠ける
 昨年12月に採択された地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に基づき、政府が国内計画をまとめた。2030年までに国内の温室効果ガス排出量を13年比で26%削減する国際公約の実現を図る。パリ協定は、産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑え、今世紀後半には世界の排出量を実質的にゼロとする長期目標を掲げる。政府は新計画に「50年までに80%削減」との長期目標を明記したものの、具体策は示していない。国際社会が目指す脱炭素社会をどう実現するか、長期的な視点に欠けた計画といわざるを得ないだろう。パリ協定は、全ての国が参加する歴史的な枠組みだ。だが、温暖化を食い止めるには、多くの課題を抱えているといってよい。合意を優先させたため、各国の目標達成は義務化されず、仮に全ての国が実現しても気温は2・7度上昇するとの試算もある。2度未満の目標達成には、さらなる対策強化が避けられないといえよう。先進国である日本は、経済発展の過程で温室ガスを排出してきた歴史的な責任を負っている。だが、日本の「13年比で26%削減」の目標は、京都議定書の基準年である1990年と比べると18%の削減にすぎず、世界の環境保護団体などから厳しい評価を受けた。目標を具体化した計画にも、消極さがうかがえる。約40%削減を目指す家庭部門やオフィスビルなどの業務部門は別として、産業界の削減は自主的な計画に委ねられる。特に、排出量全体の4割を占める電力部門には疑問を禁じ得ない。石炭火力の新設容認である。コスト面で優れてはいても、最新型でさえ温室ガスの排出量は天然ガス火力の2倍近くに上る。老朽施設との切り替えで短期的には削減できよう。ただし、温室ガス排出ゼロを目指す段階になって、新設された施設が脱炭素社会への足かせとなりはしないか。林経済産業相は80%削減の長期目標に対し、「新たなイノベーション(技術革新)」が必要とする。従来対策の延長では達成が難しいとしても、人ごとの印象は拭えない。原発が対策の柱の一つに位置付けられたことも疑問だ。政府は2030年の電源構成で「20~22%」を賄うとするが、思惑通りに再稼働が進むかは見通せない。事故から5年を経ても、6割以上の国民が「脱原発依存」を志向する。温暖化対策も、40年を超える老朽原発延命の免罪符にはならない。やはり地道に、再生可能エネルギーを温暖化対策の中心に育てる必要があろう。政府は30年に電源の「22~24%」としたが、環境省は最大35%まで拡大可能と試算していた。パリ協定は5年ごとに各国が目標を見直す仕組みである。温暖化対策は将来のエネルギー像とは不可分といえよう。温室ガス削減はむろん、安全で安心な姿を示すことで、先進国としての責任を果たしたい。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160311&ng=DGKKZO98208100Z00C16A3M12900 (日経新聞 2016.3.11) 〈3・11を胸に〉元米原子力規制委員長 グレゴリー・ヤツコさん 大規模発電、今世紀限り
 福島原発事故の最も重要な教訓は、事故は今でも起こりうるということだ。福島事故前は、原発の事故は決して起きないと信じられていた。市民や産業界、政府は、事故は起こりうることを認めなければならない。除染とは放射性物質に汚染されたものを取り除き、別の場所に移すことだ。どこをきれいにして、どこを汚すかということだ。汚染物質を住宅地から遠く離れた場所に移そうとしても日本のような人口密集国では適地が少ない。特効薬はない。水の汚染は今も続いている。事故は進行中だ。燃料を冷却した水を回収して保管する大量のタンクがつくられたが、最も重要な分析がされていない。水を何年ためておくのか。数十年か、数百年か。不測の事態で何が起きるか、長期的に分析しなければならない。米国は1979年、スリーマイル島原発事故を経験した。事故後、業界団体の米国原子力発電運転協会(INPO)ができ、緊急避難などの対応のために米連邦緊急事態管理局(FEMA)が創設された。原子炉の設計も大幅に変え、安全装置を追加し、中央制御室も再設計した。原子炉(の輸出)を通じ、変化は他国にも広がった。それでも福島で事故は起きた。技術評価をしていないので言及しづらいが、新規制基準に適合していても、もう事故は起きないと保証はできない。これは伝えるべき重要なメッセージだが、原発は安全になったという正反対のことが伝わっている。将来、原発が大規模に稼働しているとは思わない。原子力は非常に高価な技術で、来世紀には使われていないだろう。多くの電力を巨大発電所でつくり、離れた都市や工場などに送電するという仕組みは今世紀限りだ。小規模な天然ガス火力発電所や再生可能エネルギー、水力発電所などで地域の電力需要を満たすのが合理的だ。多くの国で原発依存度は現状維持か減少傾向にある。米国では現在約100基ある原発の多くが15年以内に運転許可の期限を迎え、経済的圧力で運転延長はあまり申請されないだろう。原発は今後15~20年でエネルギー源としての終わりが始まると思う。
*Gregory Jaczko 1999年米ウィスコンシン大院修了。米ジョージタウン大助教授などを経て、2005年に米原子力規制委員、09~12年委員長。ニューヨーク出身、45歳。

*1-3:http://mainichi.jp/articles/20160313/k00/00m/030/071000c?fm=mnm
(毎日新聞 2016年3月12日) 原発ゼロへデモ…福島から5年 次期総統も訴え
 東京電力福島第1原発事故から5年に合わせ台北市などで12日、反原発デモが行われた。福島原発事故を機に台湾の環境保護団体などが毎年3月に実施している。デモ隊は総統府前で集会後、デモ行進し、台湾電力の稼働中の原発の速やかな廃炉や建設が凍結された第4原発の廃止など、原発の全面廃止を訴えた。5月に新政権を発足させる民進党の蔡英文次期総統は2025年に原発の完全廃止の方針を掲げる。蔡氏は同日、フェイスブックで「再生可能エネルギーの発展を奨励し、一歩ずつ原発ゼロに向かって努力していこう。最も困難な問題は使用済み核燃料の処理。次の世代に対する我々の世代の最大の債務だ。党派を隔てず、共に直面する時にある」と呼びかけた。

<水素発電>
*2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/156832
(佐賀新聞 2015年2月15日) 政府、水素発電を支援へ、20年までに民間実験炉
●政府、水素発電を支援へ
 政府は、水素を燃料として環境に優しい発電が可能となる「水素発電所」の商用化に向け民間企業支援に乗り出す。15年度予算に関連事業費約20億5千万円を初めて計上し、水素製造や輸送技術開発などを後押しする。企業が20年までに実験炉をつくり、30年ごろに発電事業を始動させる目標を掲げるが、技術やコスト面で課題も残る。安倍首相は12日の施政方針演説で「水素社会」実現へ決意を表明した。燃料電池車に水素を補給する「水素ステーション」の整備に続き、水素発電所の商用化で水素の流通量拡大と価格低下を狙う。政府は支援例として液体水素輸送船や新型ガスタービン開発などを想定。

<高浜原発訴訟>
*3-1:http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20160309000186
(京都新聞 2016年3月9日) 原告「琵琶湖から脱原発」 高浜運転差し止め決定
 稼働中の原発を司法が初めて止める。福島第1原発事故から5年。大津地裁は9日、高浜原発の運転を差し止める決定を出した。規定路線のような原発再稼働にくぎを刺す決定を京滋の住民らは「画期的」「多くの人の不安を受け止めた当然の決定」と歓迎した。一方、関電は想定外の即時停止を迫られ「承服しがたい」と厳しい表情を見せた。「琵琶湖を守りたいという県民の期待に応える画期的な決定だ」。住民と弁護団が大津市打出浜の市勤労福祉センターで開いた報告会で弁護団長の井戸謙一さん(61)は大津地裁の決定をこう評価。「立地県外の住民が訴訟を起こし原発を止めることが、裁判所で明確に認められたのは重要」と話した。井戸さんは06年に志賀原発2号機(石川県)の運転差し止めを初めて言い渡した元裁判官。退官後は彦根市で弁護士を開業している。井戸さんは「われわれの主張が認められるのは当然のことだ。だが、再稼働が進められているこの時期に、裁判官には強いプレッシャーもあったはずだ。敬意を表したい」と話した。弁護団には井戸さん以外にも各地の弁護士32人が名を連ねる。映画「日本と原発」を制作した河合弘之さん(第二東京弁護士会)は「政治や電力業界などに配慮、遠慮した判決が続いてきたが、原発事故を直視する裁判官が各地にいることが分かってきた。脱原発の運動の成果だ。異議申し立て審に向け裁判官人事などで理不尽な介入がないよう注視したい」と指摘した。出席した支援者たちは「全国の裁判官の心を動かしたのでは」「日本から一刻も早く原発をなくさなければ」との声が相次いだ。住民代表の辻義則さん(69)=長浜市=は「原子力規制委員会にも決定文を読んでもらいたい。各政党も国会で原発再稼働を推進する政府を追及してほしい」と強調した。

*3-2:http://qbiz.jp/article/82366/1/ (西日本新聞 2016年3月10日) 「稼働中の停止」衝撃 政府、各地の訴訟へ影響懸念 高浜運転差し止め 
 大津地裁が、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の運転差し止めを命じた。2基は今年、順次再稼働したが、4号機は先月29日にトラブルで緊急停止したばかり。停止命令に、関電は「予想外だ」と衝撃を隠さず、政府からはほかの同種訴訟への波及を警戒する声も上がる。申立人の住民らが高く評価する決定からは、原発訴訟に対する司法の姿勢変化ものぞく。「動いている原発を司法が止める。本当に例がない。画期的だ」。決定後、大津市内で開かれた記者会見で、住民側の井戸謙一弁護団長は称賛の言葉を並べた。井戸氏は、今回の決定内容がこれまでの裁判に比べて原発事故の危険性に対する主張や説明を、より強く電力会社側に求めたと指摘した。決定の行間からうかがえるのは、関電が審理段階で住民側の訴えに真摯に対応しなかったのではないかという疑念だ。決定理由は関電側の主張を否定する根拠として「仮処分での主張や説明の程度では」との文言を何度も繰り返した。住民側弁護団によると、1年余り審理を続けてきたが、関電が明確な反論をしたのは今年1月末になってからだった。
   □    □
 東京電力福島第1原発事故を機に、裁判官の間には、従来のように国の手続きの適否にとどまらず、安全に関する審理を本格的に行うべきだとの「改革論」が浮上していた。最高裁が2012年1月に開いた特別研究会では、出席した裁判官から訴訟の在り方について問題提起が相次いだ。背景には、原発訴訟で「安全」のお墨付きを与え続け、結果的に未曽有の事故を防げなかったとの反省がある。研究会では「福島事故を踏まえ、従来の判断枠組みを再検討する必要がある」と述べた裁判官もおり、行政追随の判決を繰り返せば、司法の信頼が揺らぐとの危機感がにじむ。裁判所は「『事故のリスクは専門家でなければ分からない』として、原発訴訟で具体的な判断を避けがちだった」(元裁判官)とされ、原発の運転を認めなかった司法判断が確定した例はない。だが、ある法曹関係者は「政府や経済界が原発推進の中、裁判所は最後のとりで。司法の責任は重い」と語る。
   □    □
 電力業界を管轄する経済産業省では、決定の一報に職員から「まさかと思った」と驚きの声も聞かれたが、多くは「新規制基準が否定されたわけではない」(幹部)などと冷静に受け止め、林幹雄経産相も、再稼働を進める方針に変化がないことを強調した。だが別の幹部は「同様の訴えは各地で起こされている。影響を与えないわけがない」と、司法による“原発停止ドミノ”を懸念。関電の中堅社員も「審査に対する取り組みが全否定された。これで(原発が)止められてしまうのなら、打つ手がない」と頭を抱える。政府は30年の電源構成比率で原発を20〜22%に設定。福島事故前より低いものの、原発を基幹電源として使い続ける方針を数値上も明確にしたが、新基準下で再稼働にこぎ着けたのは九州電力川内1、2号機(鹿児島県)と高浜3、4号機の4基のみ。四国電力伊方3号機(愛媛県)が今夏以降に再稼働する見通しだが、その後は不透明だ。大手電力の関係者は「再稼働の勢いにブレーキがかかるのは避けられない」と厳しい見方を示す。記者団から審査への影響を問われた林経産相は「何とも分かりません」と短く答えた。
   ◇   ◇
■市民の不安代弁した判断 明治大准教授 勝田忠広氏
 今回のような司法判断が出るとは思っていなかったので、非常に驚いている。しかも人格権という要素に着目して仮処分決定が出されており、その意義は大きい。東京電力福島第1原発事故から5年になるが、今も多数の被災者が避難を続け、多くの問題が解決されていない。他の原発の避難計画も実効性が疑問視されている。再稼働の前提となる新たな規制基準をクリアし、安倍晋三首相が再稼働にOKを出したところで、多くの市民が今も不安を抱えているのだ。規制基準を踏まえた再稼働をめぐるこれまでの審査は、いってみれば、原子力規制委員会と電力業者だけの「内輪の議論」だった。しかし、多くの市民が求めているのは次元の違う安全であり、規制基準ではなく、あくまで「安全基準」が必要だと考えている。今回の大津地裁の仮処分決定は、そうした市民の不安の根っこを人格権という概念を用いて解き明かした。人格権を軸に下された判断は、5年前の事故直後に大多数の市民が抱いていた思いを代弁しており、そうした意味で評価されていい。今回の判断にはさらに、二つのポイントがある。まず、再稼働が既に決まった原発に対する司法判断であり、新規制基準をクリアしたとする原子力規制委員会の判断は「信用に足りない」として、厳しい異議申し立てをした点だ。非常用電源の整備をはじめ、5年前の原発事故を機に表面化した多くの不備をチェックした上で、再稼働のお墨付きを規制委員会が与えてきたわけだが、大津地裁はそうした実態にも不信を表明しており、規制委には厳しいメッセージだ。今回の判断は、使用済み燃料プールの問題にも触れた。規制基準を作るときも、スプレーなど冷却装置設置の必要性は議論したが、プールそのものが壊れてしまう危険性までは議論をきちんと尽くさなかった。その問題点を突いている。また福島の事故原因の究明も「道半ば」と指摘しており、これは再稼働を急ぐ電力関係者や行政当局への警鐘だろう。もう一つのポイントは、滋賀県の住民が申し立てており、より広範囲な周辺自治体の権利が認められたことだ。他の原発再稼働への波及効果も大きいだろう。北海道函館市が青森県にある大間原発の建設差し止めを求めているが、この訴訟にも影響を与えるのではないか。不安を抱きながらも、諦めかけていた周辺自治体の住民による訴訟が今後、新たに誘発される可能性もある。
   ◇   ◇
■原発の経済性神話崩壊 大島堅一立命館大教授(環境経済学)の話
 今回の仮処分決定で、原子力規制委員会の新規制基準をクリアし再稼働した原発でも、司法の判断によって停止され得るということが明確になった。司法判断次第で原発を運転できなくなるリスクが電力会社に与える影響は計り知れない。何千億円かけて安全対策をしようが原発は経済性が高いという神話が崩壊したと言える。多くの電力会社は同様の訴訟を抱えており、今後も増え続けるだろう。電力自由化を前に経済性の観点で言えば、電力会社は、もはや見通しの立たない原発から撤退していくしかない。
■司法への信頼損ねる 宮崎慶次大阪大名誉教授(原子力工学)の話
 外部電源と非常用電源の役割の違いなど多くの点に事実誤認があり、専門的立場から納得できない。原子力規制委員会の判断を無視し、原発事故後の関係者の努力も一切評価していない。原発にゼロリスクを求める内容だが、仮に夏場に電力供給が滞り工場などの稼働が止まれば社会的リスクも生じる。関西電力側の主張も分かりやすさの点で不十分だったのかもしれない。再稼働を認めた昨年末の福井地裁決定と正反対の内容だが裁判官により判断が二転三転するのは、司法への信頼を損ねるのではないか。
■公平で理詰めの判断 吉岡斉九州大教授(科学史)の話
 関西電力の主張にも一定の合理性を認め住民側の主張には不十分な点もあると指摘した上で、理詰めの判断をしている。双方を公平に比較し、裁判官が自分の頭で考えて是々非々の結論を出した。行政や電力会社は、東京電力福島第1原発事故前の基準を少し厳しくすればいいと考えているのだろうが、裁判官ははるかに厳しい基準で臨まなければならないとの前提に立った。福島の事故の歯止めになれなかったことを悔い、自立して責任ある裁判をやろうとの流れが司法界にあると感じさせる。

*3-3:http://qbiz.jp/article/82562/1/
(西日本新聞 2016年3月12日) 原発止めた司法例外か 大津地裁仮処分決定
 関西電力高浜原発3、4号機の運転差し止めを命じた大津地裁の仮処分決定を受け、稼働中の原発が初めて止まった。裁判の当事者は関電だが、エネルギー政策を担う政府も無関係ではないだろう。ところが、政府は今回の決定を「例外」と評し、真摯(しんし)に受け止めているようには感じられない。「またおかしな裁判官がいた」「イレギュラー(不規則)な決定だ」。政府関係者の受け止めは、予想通りだった。昨年4月、福井地裁が同じ高浜原発について、運転差し止め決定を出したときと同じだ。政府は、「世界最高水準」の新規制基準をクリアした原発は「安全」と言う。「裁判官は原発の素人」とも批判する。その姿勢は、福島第1原発事故を招いた「安全神話」が復活したようで、危ういと感じる。政府が、原発を安定的に発電できる「重要なベースロード電源」(エネルギー基本計画)と位置付けても、司法判断で稼働できないという「想定外」に目を向けていないことも気になる。基本計画の策定過程で、政府は民主党の「原発ゼロ」を無責任と断じ、「責任あるエネルギー政策」を掲げた。原発は安価で、出力が大きいことを重視した。新たな電源構成比率(エネルギーミックス)については、2030年時点の原発比率を「20〜22%」確保すると決めた。事故リスクは多少議論されたが、司法判断による停止という「リスク」は議論されなかった。司法により稼働が左右されるという原発特有の不安定さを、エネルギー供給の観点からどうとらえるのか。20〜22%という数字は現実的なのか。真剣に考えてはどうか。3・11から5年。世論調査では再稼働反対が賛成を上回り、半数を超える。原発に対する国民の不安はなお根強い。九州電力川内原発や玄海原発も含め、原発差し止め訴訟が相次ぎ、係争中は20件ある。原発事故を受け、裁判官から「政府や電力会社を信頼し過ぎた。司法にも責任がある」と悔悟の声を聞いた。決定を「例外」と切り捨てて、思考停止にみえる政府。責任ある姿勢と言えるだろうか。

<原発のコスト>
*4-1:http://jp.reuters.com/article/l3n0na1au-interview-yoshihara-idJPTYEA3H06620140418 (ロイター 2014年 4月 18日) インタビュー:原発は国家ぐるみの粉飾決算=吉原・城南信金理事長
 脱原発路線を強力に主張する異色の地域金融機関トップとして知られる城南信用金庫(本店・品川)の吉原毅理事長が、ロイターのインタビューに応じ、原発コストが安いというのは将来負担を無視した国家ぐるみの粉飾決算に近いとの見解を示した。また、新エネルギーの開発が新しい経済の活力を生み出すとの持論を展開した。東京・神奈川を地盤に信金業界2番手の総資産3兆6000億円を持つ同信金は、地銀中位行に匹敵する規模を誇る。そのトップとして、金融業とエネルギーの政策のかかわりあいに関し、どのような本音を持っているのか聞いた。
――金融機関のトップが、政治的発言をするのが極めてまれだ。
 「金融は、政治にかかわるべきではなないという意見がある。それは本来、権力にかかわることで金融が求めるべき理想がねじ曲げられ、利用されてしまう懸念が生じるために生まれた考えだ」「しかし、金融に限らず企業の目標は、より良い国や社会を構築することだ。すべての企業は、理想の実現のためにある。経営者は、金儲けだけ考えればいいというのはおかしいのではないか」
――国論を二分する1つの側に付くことで、顧客からの不評を買わないか。
 「消費者のニーズに応えることが企業、つまり消費者主権という考えは間違えていないか。例えば当社は、投機のためのゴルフ会員権購入のための融資はお断りする。そういう資金使途には貸せない。健全性とは何かを考え、顧客にも説明していく。それが金融マンの役割だ」。「福島第1原子力発電所の事故で分かったことは、将来の世代に責任を持てないエネルギーということだ。もはや原発は反社会的存在だ。原発を造る金を貸せと言われたら、お断りする」
――電力債は、金融機関の運用手段としても重要だ。
 「東電の株式と社債は、事故後に売却した。金融機関は公共的な存在だ。東電の株式や社債に投資をするわけにはいかない」
――経済界の中には、コストの安い原発を稼働しないと、日本経済が立ち行かないという意見が多い。
 「原発のコストの方が低いという人で、いやしくもビジネスマンや経済に携わる者ならば、会計の原則ぐらい勉強していただきたい。コスト計算には、直接原価と間接原価があり、そこで総合原価計算が行われる。原発は、今あるウランを使うだけならば直接原価は低い」。「では、その結果の間接原価はどうなのか。将来の廃炉費用や、使用済み核燃料の保管料や処理費用、工事費や人件費、地代がカウントされているのか。カウントされていない。われわれは今、時価会計で、将来に発生するキャッシュフローをすべて現在価値化し、負債計上している。原発にはそれが入っていない」「1回事故が発生したら、天文学的なコストがかかる。貸し倒れ引当金の積み立ての考え方を入れれば、とんでもない引き当てを積まなければならない。これは、不採算というのではないか。国家ぐるみの壮大な粉飾決算だ」
――原発の再稼働ができなければ、値上げしなければならない。顧客の中小企業にとっても、それは経営上の困難になるのではないか。
 「まず、原発の将来に発生する未計上のコストをちゃんと計上しなければならない。その上で、原発を再稼働させたら、もっと値上げをしなければならない」「新しい電力産業が勃興してくれば、新産業としてモノづくりの復活にもつながる。例えば、石炭ガス化コンバインド発電やソーラーパネル、さまざまサービスも増える。工事やモノづくりに携わるわれわれの顧客たちにも恩恵がある。原発の再稼働では、新産業は生まれない」
――経常赤字を懸念する指摘もある。
 「燃料の輸入によって、貿易収支が悪化し、経常収支が赤字に陥るのは日本経済にとってマイナスだという指摘は、本当に正しいのか。経常収支が赤字でも成長している国はたくさんある。日本は、黒字を溜め込み、結果的に円高になり、デフレから抜け出せなかった。輸出入のインバランスは、為替で調整される」
――大手銀行は、福島第1原発の事故後に、東電に対して巨額融資を行った。どのように評価する。
 「第2の住専問題だという気がする。当時も、政府が保証するからとみんなが貸して、最後は損失となった。1980年代のバブル時も金融機関は公共性という考えを放棄し、その後、大きなツケを払わさられることになった。金融機関は、引き返す勇気を持つ必要があると思う」
――大手行は公共性を考えて貸しているのではないか。
 「それは、公共性を勘違いしている。東京電力を生かすことが公共性ではない。安全でコストの安い電力サービスを継続的に安定的に保証することが公共性なのではないか。もっと見識を持たなければならない」

*4-2:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO98110430X00C16A3000000/
(英フィナンシャル・タイムズ、日経新聞 2016/3/7) [FT]福島原発事故の国民負担は約11兆円
 日本政府は福島原子力発電所事故の費用は東京電力が負担していると主張しているが、フィナンシャル・タイムズ紙(FT)の試算では、同事故による日本の納税者の負担は約1000億ドル(約11兆4000億円)になる。東日本大震災の津波で冷却用の電源を失い、東電の3機の原子炉で炉心溶融(メルトダウン)が起こってから5年がたとうとしているが、この額は日本国民が事故で発生した費用のほとんどを負担してきたことを示している。これは民間の一企業に原発事故の膨大な費用を負担させることの難しさを浮き彫りにしている。
■東電は全費用の20%を負担
 FTが用いたのは立命館大学の大島堅一教授の試算だ。同氏の試算ではこの事故でこれまでに掛かった費用は13兆3000億円だ。東電の株主が失った株式の価値を見ると、東電の株主が負担することになるのはこの内の20%だけだと分かる。大島教授は「(それ以外の)隠れたコストは主に国民が電気料金か税金の形で負担している」と話す。日本政府は原発事故の費用に関する数字を何一つ発表していない。だが、大島教授はこれまでで最も掛かった費用は企業や避難者に対する賠償金で6兆2000億円、次いで福島原発周辺の除染費用が3兆5000億円、そして、廃炉費用の2兆2000億円だ。賠償金と廃炉費用は東電が払っているが、同社は政府から支払い能力維持のための補助金をもらっている。理論的にはこれは東電やその他の原発事業者への賦課金として政府に戻ることになっているが、最終的にこれを負担するのは電力の使用者であることから、これは別の名目で国民から徴収する税金だといえる。また、4月1日から日本の電力市場で競争が自由化されるのに伴い、これまで通りの賦課金が維持できるかも疑問だ。東電の広瀬直己社長は最近のインタビューで、同社が福島第1原発の廃炉に充てる十分な収入を確保できると主張した。東電の負担状況を把握する一つの方法は株価を見ることだ。株価は過去の損失と市場が予想する今後のすべての負担を反映しているはずだ。東電の株式は原発事故前日の2011年3月10日以降2兆6000億円を失った。債権者は損失を被っていない。このため、東電は全費用の20%をやや下回るほどしか負担しておらず、残りの10兆7000億円は納税者が負担する計算になる。これは概算で、日本の全原子炉の停止による費用は加味されていないため、この全費用と国民の負担は低めに見積もられている。東電と財務省、経済産業省はこの試算についてのコメントを拒否した。政府関係者は東電が最終的には全費用を弁償することになると主張している。

<原発事故による公害と政府・メディアの対応>
*5-1:http://tocana.jp/2016/02/post_8983_entry.html (TOCANA 2016.2.2) 丸川珠代発言こそが日本のホンネか? 福島で甲状腺がんの子どもがさらに増加するも政府、県、メディアは黙殺
 2月下旬の再稼働が確定的となっていた福井県高浜原発4号機で、20日午後、放射性物質を含む一次冷却水が漏れ出していたことが発覚した。高浜原発では1月29日に3号機を再稼働させたばかりで、それから1カ月も経たない4号機の重大事故に衝撃が走っている。だが、当事者である関西電力、そして福井県原子力安全対策課は早々に「大きなトラブルではない」「周辺環境への影響はない」と事故を過小評価するのに必死だ。そして、なぜかこうした"原子力ムラ"の言い分がまかり通り、原発の危険性に警鐘を鳴らす報道はほとんど見られなくなっている。最近もある重大なニュースが無視されてしまった。それは、福島原発事故の後の子どもたちの甲状腺がんの増加だ。2月15日、福島の有識者会議「「県民健康調査」検討委員会」が会見で、事故後、甲状腺がんと診断された福島県の子どもたちは167人に上ると公表したのだ。福島原発事故後の2011年10月から始まった当時18歳以下だった子どもへの甲状腺がんの検査だが、現在は1巡目が終わり2巡目の検査が行われている。そこで新たに甲状腺がんまたはがんの疑いの子ども51人(男性21人、女性30人)が発見され、最初の検査と合計で167人という膨大な人数に膨れ上がっている。しかし驚くのはこの数字だけではない。会見で検討委員たちが次々と発した言葉だ。それらは全て、がん増加と事故のその因果関係を否定したものだった。例えば星北斗・福島医師会副会長はもってまわったような言い方で、福島県の甲状腺がんと事故の因果関係をこう否定した。「チェルノブイリとの比較の線量の話、あるいは被爆当時の年齢などから考えまして、これらのがんにつきましては、放射線の影響とは考えにくいとの見解をこのまま維持する形に、今日の議論としては委員会としてはそうなったと理解しています」。また被爆医療の専門家でもある同委員会の床次眞司・弘前大学被ばく医療総合研究所教授も「総じて言えば福島の事故における甲状腺被ばく線量はチェルノブイリ事故に比べて小さいことは言えるだろうと考えます」と同様の見解を表明している。"チェルノブイリより被爆線量が少ない"そんな根拠だけで、専門家たちが福島事故と甲状腺がん増加の関係を否定したのだ。さらに同委員会は事故から5年に当たる3月に「中間報告」を取りまとめる予定だが、その最終案にも"チェルノブイリとの比較"から甲状腺がんは放射線の影響とは考えにくいと断定している。「これまでに発見された甲状腺がんについては、被ばく線量がチェルノブイリ事故と比べてはるかに少ないこと、被ばくからがん発見までの期間が概ね1年から4年と短いこと、事故当時5歳以下からの発見はないこと、地域別の発見率に大きな差がないことから、放射線の影響とは考えにくいと評価する。但し、放射線の影響の可能性は小さいとはいえ現段階ではまだ完全には否定できず、影響評価のためには長期にわたる情報の集積が不可欠であるため、検査を受けることによる不利益についても丁寧に説明しながら、今後も甲状腺検査を継続していくべきである」。要するに何もわからないけど、でも事故とがん増加は関係ない。無責任にもそう断定するものなのだ。しかも最終案には「数十倍多い甲状腺がんが発見されている」と明記されているにも関わらず、だ。いや正確な発生率はそれ以上という指摘もある。昨年8月には岡山大学大学院の環境疫学の専門家である津田敏秀教授を中心とした研究グループが甲状腺がん発生率は国内平均の20~50倍であり、潜伏期間やチェルノブイリでのデータから今後も増加は避けられないと公表している。これに対し、政府や原発ムラ学者たちは、甲状腺がんの増加を「過剰診断」や「スクリーニング効果」などと反論したが、それでも説明はつかないほどの増加だという。さらに「検討委員会」に先立つ今年1月22日、国際環境疫学会(ISEE)は日本政府に対して「福島県民における甲状腺がんのリスク増加は、想定よりはるかに大きい」と懸念を表明し、リスクの推定をきちんとやるよう警告する書簡を送ったことも明らかになっている。福島県の子供たちに甲状腺がんが多発し、国際機関からさえも指摘を受けているにもかかわらず、政府や"お抱え"学者たちは、決してそれを認めない。今後さらに甲状腺がんが激増しようともその姿勢は変わることはないだろう。もちろん今回の高浜原発4号機事故にしても同様だ。記事直後から「漏洩した放射性物質の量は国の基準の200分の1以下で、作業員も被ばくしていない」などと嘯いているが、高浜4号機では福島原発事故後でも、同様の一次冷却水が漏れる事故が起きていたことも判明している。さらに運転期間が40年を過ぎた高浜1号、2号機においても2月16日に新基準適合検査が終了し、事実上「合格」が確定したが、その審査で大きな問題となっていた地震や津波などへの安全対策は「4号機の審査が終わっているから」としてほぼ無視されたままでの「合格」だった。こうした問題は高浜だけではない。福島原発事故後も福井県美浜原発2号機や北海道泊原発、茨城県東海原発、愛媛県伊方原発など冷却水漏れが続いているが、いずれのケースも今回同様「環境に影響がない」として政府や電力会社は"事故"として認める姿勢が極めて低い。こうした姿勢、本心が露骨に現れた典型例が環境相の丸川珠代議員の発言だ。2月7日、丸川議員は長野県の講演で、東京電力福島第1原発事故後に、国が除染に関する長期努力目標として「年間1ミリシーベルト」と定めていることに関し「何の科学的根拠もない」「反・放射能の人がワーワー騒いだ」と発言して大きな問題となった。さらに衆院予算委員会で発言を追及された丸川議員は一旦はそれを否定したが、後日、一転して謝罪をするドタバタぶりを露呈した。しかしこれは丸川議員個人の問題や見解ではないだろう。原発再稼働や海外輸出をがむしゃらに推し進める安倍政権の"ホンネ"が表れたにすぎない。そして、この姿勢はマスコミも同様だ。前述した甲状腺がんの問題は新聞でもテレビでも大きく取り上げられることはほとんどなかった。唯一『報道ステーション』(テレビ朝日系)だけが3月11日、大々的に特集を放映予定だというが、その「報ステ」も3月一杯で古舘伊知郎が降板し、体制が大きく変わる。東日本大震災から5年、原発報道のこれからを考えると、暗澹とするばかりだ。

*5-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJ395SDYJ39UGTB00S.html?iref=comtop_list_api_n03 (朝日新聞 2016年3月10日) 福島の小児甲状腺がん、家族会発足へ 医療改善など要望
 東京電力福島第一原発事故後に福島県が行っている健康影響調査で小児甲状腺がんと診断された患者の5家族7人が12日、「311・甲状腺がん家族の会」を結成する。突然のがん宣告で不安や孤立に苦しむ家族が交流して情報を共有し、予後の生活や医療の改善を行政に求めていくという。原発事故当時18歳以下の県民と事故後に生まれた乳幼児も加えた約38万人を対象に県が実施する甲状腺検査で、昨年末までに166人が甲状腺がんやがんの疑いとされた。患者の家族会ができるのは初めて。会を結成するのは、甲状腺の切除手術を受け、がんが確定した5人の子どもの親や親族。県が有識者で組織する検討委員会は、これまでに発見された甲状腺がんについて「放射線の影響は考えにくい」としている。しかし、家族の会の親たちは検討委の見解に不安などを感じており、情報共有を進めていくという。

*5-3:http://kaleido11.blog.fc2.com/blog-entry-3941.html
(カレイドスコープ  2015.11.24) 糖尿病の激増とストロンチウム90による内部被曝との関係
 糖尿病が飽食文明の先進国以外の発展途上国で激増。日本では、戦後、膵臓がんが12倍に。ストロンチウム90が壊変して生成されるイットリウム90が、膵臓がんや糖尿病などの内分泌系疾患に大きく作用すると著名な科学者が分析。実際に、そのとおりになっている。臓器不全は、これから増えてくる。それが内部被曝の第二ステージ。(この記事は、「パート1」と「パート2」の2回配信分を、かなり圧縮した形でその一部を公開しています)
●内部被曝の第二ステージ「ストロンチウム90による臓器不全」
・・・チェルノブイリ原発事故後、もちろん心筋梗塞による突然死が一気に増えたことは事実ですが、むしろ急激に増えたのは、「脳梗塞、脳溢血、クモ膜下出血」などの脳血管疾患による「死」です。ウクライナでは、子供の脳梗塞が顕著に増えたとの報告があります。さらに重要視しなければならないのは、やはりチェルノブイリ原発事故後、糖尿病が急激に増えたことです。北ウクライナとベラルーシのゴメリ地域では、1998年、過去最高の糖尿病発症率を記録したことです。1型糖尿病は、糖を筋肉などに取り込む際の媒介役となるインスリンが、膵臓のB細胞(ベータ細胞)がウィルスなどによって破壊されてしまうことによって膵臓からまったく分泌されないか、絶対量が足りなくなってしまうため、常に血液が高血糖の状態になってしまうという病気です。そのため、さまざまな合併症を発症しないように、基本的には生涯、インスリン注射によって外から足りない分を補わなくなはならないタイプです。ただし、1型の糖尿病患者は、糖尿病患者全体のわずか5%程度で、遺伝的素因が影響していると言われています。残りの糖尿病患者全体の95%は2型糖尿病で、いわゆる生活習慣病といわれる典型的な病気です。「高カロリーの食事を続けたり、不規則な生活を長い間、続けることによって、いずれは程度の差はあれ、誰でもがなってしまう病気」と、私たちは教えられてきたはずです。表面化しないのは、自覚症状がないため、本人が病院に行って検査をしないこともあるのですが、「病気」と診断するにはまだ距離があるためです。いわゆる、日本は「糖尿病予備軍」でイモ洗い状態だということです。日本人の膵臓がんは戦後12倍。核実験と膵臓の病気はシンクロしている。アーネスト・スターングラス(Ernest Joachim Sternglass)という著名なアメリカの物理学者が、今年の2月、91歳で亡くなりました。冷戦時代の核実験によって世界中に降り注がれた放射性降下物と、原発から出て来る放射性廃棄物による人体への健康被害について、広範な疫学調査を行い、議会の公聴会に証人としても呼ばれた学者です。そのスターングラス博士が、2006年の2月、初来日し、青森県の六ヶ所村の核再処理施設を視察した後、青森市で講演を行いました。そのときの記録が残されています。
http://fujiwaratoshikazu.com/2011disaster/
・・・以上からわかるように、スターングラス博士は、誰でも入手できる国の公式データから、冷戦時代の核実験によって大気中に放出された放射性物質の量が増えるにつれて、また、原発の稼働率がアップするにつれて、膵臓(すいぞう)がんや糖尿病の発症が劇的な増加をみせていることを指摘しました。つまり、大気圏から地上に降下した放射性物質の量と、原発から漏れ出る放射性物質や核廃棄物の量と、膵臓がんや糖尿病の増加がぴったりシンクロしていると主張しているのです。ここに、スターングラス博士が来日した時のインタビュー記事の翻訳があります。この中で、博士はこのように言っています。「・・・ついでに、もう一つ重大な話をしよう。ストロンチウム90からできるのが、イットリウム90だ。これは骨じゃなくて、膵臓(すいぞう)に集中する。膵臓というのは、糖尿をおさえるホルモンであるインスリンを分泌しているから、ここに異常が出ると糖尿病になる。世界中で、糖尿病が急増しているのは知ってるね。日本は、すでに人口の割合から言えば、アメリカの(糖尿病になっている人の)二倍もいる。そのアメリカだって、イギリスより発症率が高いのだ。日本では、戦後から現在にかけて、膵臓がんが12倍にもふくれあがっている。50年代の終わりにドイツの動物実験で発見されたのが、ストロンチウム90が電子を放出してイットリウム90になると、骨から肺、心臓、生殖器などに移動するのだが、膵臓に最も高い集中見られたということだ。膵臓からインスリンがうまく生産されないようになると、血糖値が上がって糖尿病になってしまうのだ。今までは放射能が糖尿病と繋がっているなんてまったく認知されていないのだ。これで分かっただろう、国際放射線防護委員会(ICRP)は、当初、放射能の影響として、特定のがんと奇形児くらいしか認めなかった。未熟児、乳児の死亡や、肺、心臓、膵臓、これらの部位への影響はすべて無視されてきたのだ。」
(※彼の本の邦訳版『人間と環境への低レベル放射能の脅威―福島原発放射能汚染を考えるために』が出ています。)
・・・ストロンチウム90は、ベータ崩壊後、イットリウム90になって、再びベータ崩壊を繰り返すので二度にわたって細胞を破壊するという「セカンド・イベント理論」があります。イットリウム90の半減期はわずか64時間ですから、その分、単位時間当たり放出されるエネルギーが大きいことになるので、破壊力がある、という理論です。このため一般にストロンチウム90の分析では、対象試料を溶液化した後、イオン交換分離や沈殿分離などの方法を用いてストロンチウムだけを分離し、更にストロンチウム90の子孫核種であるイットリウム90の生成を2週間程度待ってから放射線計測が行われています。ストロンチウム90のβ線を計測するとき、イットリウム90の生成を2週間程度待ってから測る、という意味は、ストロンチウム90はβ崩壊してイットリウム90になった後、再びイットリウム90がβ崩壊してβ線(高速電子)を出すからです。この二度にわたるβ崩壊はストロンチウム90が消えるまで同時に起こっています。つまり、イットリウム90の半減期は、とても短いものの、食べ物から取り込まれたストロンチウム90がβ崩壊するたびに、すかさず膵臓に取り込まれてしまう、というのです。ストロンチウム90は、主に骨に取り込まれてカルシウムに置き換えてしまいます。このため、ストロンチウム90の恐ろしさを想像する時、真っ先に白血病が頭に浮かんできます。しかし、スターングラス博士は、骨に取り込まれたストロンチウム90がβ崩壊を繰り返してイットリウム90になると、骨から肺、心臓、生殖器などに移動し、膵臓に最も高い集中が見られる、というのです。これが、膵臓がんや糖尿病の増加につながっている本当の原因であると博士は言っているのです。ストロンチウム90の物理学的半減期は約29年で、セシウム137とほぼ同じです。しかし、骨に取り込まれてしまった場合のストロンチウム90の生物学的半減期は50年です。なんとセシウム137の100日と比べると182倍も長いのです。50年かかっても、半分しか体外に出て行かないのです。しかも、その50年間の間、まったく放射能に汚染されていない肉、魚を食べ続けることのできる人はいないでしょうから、ストロンチウム90は微量ながらも骨に蓄積される一方です。それが、常にβ崩壊してイットリウム90になって、膵臓に集中するというわけです。このことによって、年中、膵臓のランゲルハンス島という場所にあるβ細胞をイットリウム90が攻撃していることになるのです。膵臓のβ細胞は、血糖値をコントロールするインスリンを分泌するので、この細胞が内部被曝によって破壊されてしまうと、糖尿病になり、最終的には、インスリンが分泌されなくなってしまうことも考えられます。そうなると、人工透析の生活が続くようになってしまいます。
●チェルノブイリ事故後、6年経ってからベラルーシでは糖尿病が劇的に増加した
 スターングラス博士の分析のように、1986年のチェルノブイリ原発事故の後、糖尿病は増えたのでしょうか。ここに、「チェルノブイリの大参事が住民と環境に与えた結果」という2009年の報告書があります。Amazonでは、『Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment, Volume 1181 (Annals of the New York Academy of Sciences」』というタイトルの報告書として入手可能です。日本語版では、『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』が、それに該当します。読書録に、 その報告書の中身が紹介されているように、ロシア科学アカデミー会員のヤブロフ(Alexey V.YABLOKOV)博士と、白ロシア放射線安全研究所の2名のネステレンコ博士(Vassily B. NESTERENKO、Alexey V. NESTERENKOの二人 おそらく夫婦か兄弟)の共著によるものです。幸いにも、pdfファイルが無料公開されているので、そこから放射線被曝と糖尿病との関係について記述されている箇所を抜粋してみます。下のファイルです。全部で327ページあるファイルです。(本:pdfファイルの78ページの小見出し「5.3.1. Review of Endocrine System Disease Data」(5.3.1節(内分泌系疾患データの総括)以降に、糖尿病の増加と放射線被曝との関係が報告されています。
・・・このファイルのデータから明らかなように、特に、ベラルーシ全域では、1型糖尿病の数が著しく増加し、高汚染地域で特に増加した、ということですから、スターングラス博士の分析結果を裏付けることが起こっているのです。深刻なのは、生活習慣病と言われる2型糖尿病ではなく、遺伝的要因が作用していると言われる1型糖尿病が増えているという事実です。
・・・これは、自然界に存在しない何らかの外的な作用が働いたと考える他はありません。それは放射能で間違いないはずです。
●突然死は、突然、起こらない
・・・「異常に喉が渇く」「トイレが近い」「寝ても寝ても体がだるい」「めまいが酷い」「最近、ずいぶん痩せた」「手足がしびれる」「足先がつる」・・・などの症状が出ていたはずなのですが、疲れているだけだから一晩、ぐっすり眠れば治るだろう、と自己診断してしまうのです。それを繰り返していると、健康に対する危機感がなくなって、しまいには重篤な症状を引き起こすことになります。膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンの量が少なくなったり、インスリンが分泌されるタイミングがずれたりすると、インスリンは分泌されていても、各組織でのインスリンの作用が低下(インスリン抵抗性)してしまいます。これが糖尿病(高血糖)の状態です。インスリンが十分、分泌されなければ、エネルギー源となる血中のブドウ糖(血糖)は筋肉にスムーズに取り込まれなくなるので、血中には、血糖があふれかえり、いわゆるドロドロ血の状態になっていきます。筋肉にエネルギーとして糖が取り込まれないのですから、体が「だるい」などの症状が出ます。また、消耗感が続き、外見的には筋肉が少なくなってどんどん痩せていきます。ドロドロの状態の血液を心臓は、なんとかとして心臓から遠い手足の末梢血管にまで行き渡らせようとするので、心臓自体に負担がかかってきます。ちょうど、水鉄砲に、水ではなく、ドロドロの砂糖水を入れて遠くに飛ばすようなものですから、ポンプを押すにも余計な力を必要とするし、やがては水鉄砲の筒(血管に相当)の内側に、砂糖の塊がこびりついて、とうとう詰まってしまいます。また、砂糖の塊が押し出されることによって、筒の内壁を傷つけてまいます。こうして血管は、どんどん傷つけられていくのです。これが、血栓や瘤になると、できた場所によって、「脳梗塞」や「心筋梗塞」、「動脈瘤破裂」などを引き起こして突然死を招くのです。根本的な原因は、血中の赤血球の変形能が失われることによって、血管が詰まってしまうことなのですが、さらに、その大元の原因は、膵臓のβ細胞から、十分なインスリンが出なくなってしまうことなのです。詰まってしまう血管が、足の抹消血管であったりすると、酷い場合は、足先にまったく血液が流れなくなってしまい、同時に神経も麻痺してしまいます。すると、足に怪我をしても、まったく気づかず、傷口から細菌が入っても何も感じなくなってしまいます。高血糖状態によって、すでに免疫が低下しているので、細菌が繁殖するだけでなく、血流が止まっているので、最終的には足が壊死(壊疽)して切断という悲惨なことになる可能性があります。
・・・基本的に、糖尿病自体で死に至ることはなく、血液の異常によって、各臓器に合併症が起こることによって死亡します。
 一般に、医師や薬剤師、管理栄養士は、「し・め・じ」という言葉で、糖尿病の合併症の進行段階を説明します。「し」とは、神経障害のことです。足のしびれがその典型です。「め」とは、目の合併症のことで、「し」の神経障害がさらに進んだ段階で、網膜症を発症します。網膜症は、数ある目の病気でも糖尿病特有の病気で、最悪の場合は失明します。網膜には、微細な血管と神経が網の目のように張り巡らされていますが、これが糖尿病によって、血管に瘤ができたり破れたりして眼底出血を起こします。「じ」とは、糖尿病のもっともひどい段階で、腎臓障害。人工透析を受け続けなければ命を保つことができなくなります。腎臓という臓器も、毛細血管の塊で、この細小血管の流れが悪くなると腎臓病を発症します。目の網膜症も、足の壊疽も、この細小血管が高血糖によってダメージを受けることから起こります。一方、一般に「動脈硬化」によって起こる大血管障害が、「狭心症」「脳卒中」や「心筋梗塞」です。大血管障害は、高血糖や脂質によって引き起こされますが、特に糖尿病の人は正常な人に比べて心筋梗塞になる危険が2倍から4倍になると言われています。連日、有名人の訃報が絶えることはありません。しかし、公表される病名と死因は、「心筋梗塞」「心不全」「多臓器不全」による突然死と急死。本当の病根は明らかにされることはないのです。それは、糖尿病などによる血液の異常です。
●アフリカや東南アジアの展途上国でさえ糖尿病が増えている
 医師たちは、糖尿病の急増を警告しています。しかし、原子力ムラの火消し機関の医療関係者は、糖尿病の専門知識の欠片も持ち合わせていないにも関わらず、「ストレスによって糖尿病を発症する」と今でものたまわっているのです。ストレスが主原因で糖尿病を発症することは「ありえません」。彼らから医師免許を取り上げるべきです。それどころか、今まで糖尿病は「贅沢病」と揶揄さえされてきましたが、それも間違いです。肥満のグルメ三昧、酒豪だけがなる病気でもありません。それが証拠に、アフリカや東南アジアの展途上国でさえ糖尿病が増えているのです。それどころか、現実には、20歳代の若者の糖尿病が増えてさえいるのです。糖尿病は「飽食の先進国で起こるものだ」というマスコミによって刷り込まれてきた“ジョーシキ”の裏側に何があるのか、しっかり考えないと、これからは自分の健康を守ることはできないでしょう。この図から分かる通り、世界中すべての地域で増加していますが、特にアフリカでは今後22年間に約2倍に激増する見込みといいます。糖尿病患者の数は、世界的に恐ろしいスピードで増え続けているのです。世界の糖尿病人口は4億人を突破しました。日本の糖尿病人口は世界第9位です。日本の糖尿病と糖尿病予備群の合計は2,050万人。なんと、国民の5人に1人が糖尿病、もしくは予備軍に該当するのです。したがって、「糖尿病=贅沢病」は、何かを隠す目的で、マスコミを操作するために使われてきたと考えることもできます。
・・・医療関係者は、放射線の内部被曝を考慮していません。
 もちろん、医師たちは、個人的には放射能の内部被曝を疑っています。
しかし、膵臓のβ細胞の破壊と、イットリウム90の関係一つとっても、大規模な疫学データが出て来ない以上、国の医療行政は変更されることはありません。では、私たちは、どうすればいいのか・・・。まずは、病院に行って血液検査と尿検査をやってもらうことです。両方をやってもらうと、約80項目のデータが出そろいます。その中で、「血糖値」、「HBA1c(ヘモグロビンA1c)」、「eGFR(推算糸球体濾過量)」、「CRE(クレアチニン)」などの重要な数値があるので、それを自分でネットで調べても、かなりのことが分かります。これからは、徹底的に早期発見に努めるべきです。そうすれば、不幸にも、体に多少のトラブルがあることが分かっても、重大な事態に至ることなく、あなたは今までどおり、活発に活動できるのです。これからは、食べ物を厳選し栄養バランスを自分で考えた上、摂取したカロリーを適正に消費できる運動を励行しながら、血液検査に最低でも年1回は行ってください。採血のキットは進歩していて、チクリとするのは最初だけで、後は痛みをまったく感じません。安心して病院に行きましょう。最悪、入院ということにでもなれば、病人食の3食に一度は、キノコ類を使った副菜を食べなければならなくなります。管理栄養士のほとんどは、国の基準を信じており、放射能の本当の恐ろしさをまだ理解していないのです。
(※以上は、パート1とパート2の要約です。全文は、この4倍程度あります)

*5-4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36587 (日本農業新聞 2016/3/12) [東日本大震災 5年] 復興基本方針を決定 農地復旧18年度までに 風評払拭も重点 政府
 政府は11日、2020年までの東日本大震災の復興基本方針を閣議決定した。今後5年間を「復興・創生期間」と位置付け、農業関連では、農地の復旧を18年度までに完了させ、農地の大区画化や利用集積を進めるとした。放射性物質の被害で対応が遅れる地域の農地復旧や風評被害の払拭(ふっしょく)も重点的に取り組む。農水省は、大規模化や高収益化などで一段高い農業に押し上げたい考えだが、現状では、経営の安定化や根強い風評被害などへの対応が依然課題として残っている。政府は基本方針で、これまでの集中復興期間で産業の再生が着実に進展したと評価。今後5年間の復興・創生期間では、今後生じる課題や多様なニーズにきめ細かく対応し、被災地の自立につなげるとした。農業分野では、被災農地約2万ヘクタールの74%(今年1月末時点)が復旧し、ハード面の整備は一定程度進んだ。基本方針では、18年度までに復旧を完了させ、農地の大区画化や利用集積を推進するとした。震災前の復旧にとどまらず、大規模化による省力化やコスト削減で成長化を目指す。一方、原子力発電所事故で被災した福島県の農地復旧の進捗(しんちょく)率は33%と宮城、岩手に比べて遅れている。基本方針では、事故被災地域の営農再開に向けて、①除染の進捗に合わせた農地・農業施設の復旧②除染後の農地の保全管理や作付け実証③大規模化や施設園芸の導入など新しい農業への転換――など一連の取り組みを行うとした。被害が深刻な鳥獣害対策を地域の実情に合わせて進めることも基本方針に盛り込んだ。森山裕農相は同日、農水省の地震災害対策本部と原子力災害対策本部の合同本部で「農林水産業、農山漁村が持つ大いなる可能性を示す取り組みを新たな形として作り上げる」と語った。原発事故は政府が目指す輸出拡大にも影響し、香港、台湾、中国などは日本産農林水産物の輸入を規制している。輸出額1兆円の目標達成に向けて規制撤廃が課題となっている。

*5-5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36585 (日本農業新聞 2016/3/11) [東日本大震災 5年] 被災地食品 安全性検査 関心薄く 「風評」は根強い 消費者庁がアンケート
 放射性物質検査など被災地の食品の安全・安心に関わる情報に、消費者の関心が薄らいでいることが、消費者庁が10日に公表したアンケートで分かった。放射線量が基準以下であれば安全性が確保されているなどの評価について、情報がなく判断できないとする層が3分の1を占め、過去最多となった。東京電力福島第1原子力発電所事故の被災地の食品を避ける「風評被害」は依然残っており、同庁は「被災地への理解が薄れてしまっているようだ」と指摘する。産地で食品中の放射性物質検査を行っていること自体知らない人も37%と過去最多だった。「風評被害」が根強く残っている実態も分かった。福島県産の購入をためらう人は前回より減ったものの、1割以上いた。消費者庁や農水省、厚生労働省などは2011年から、消費者に放射性物質の正確な情報の発信に取り組んでいる。同庁は16年度から、PTAや学校給食に携わる人向けの勉強会を新たに開く予定。「消費者が判断できる情報を、より丁寧に伝えていきたい」(消費者安全課)としている。調査は東北3県(岩手、宮城、福島)と、主要な消費地である8都府県(茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫)が対象。20~60代の男女5176人がインターネット上で回答した。

*5-6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12253623.html (朝日新聞原発取材センター長・福島総局長 2016年3月12日) 福島への先入観、捨ててほしい 
 放射線量は高いが、日中は誰でも入れる居住制限区域での風景だ。防護服が必要な帰還困難区域はバリケードで囲われ、住民も許可なく入れない。屋根瓦が路上に落ちたままの場所さえある。原発事故から5年たったが、原発近くでは復興はいまだ遠い。廃炉はさらに大変で、東京電力の担当者は「山登りの準備をしているだけで、まだ登り始めていない」と話す。しかし、同じ県内でも原発から離れれば、ほぼ普通の生活が送れている。風下のため空間放射線量が一時、数十倍になった福島市。除染と自然減衰の効果で5倍弱まで下がった。いわき市や会津若松市は震災前の1・5倍程度。世界を見渡せば自然放射線量がこうした地点より高い地域もある。福島市の仮設住宅に住む伊藤延由さん(72)は居住制限区域となった飯舘村に通っては、研究者の助言を受けつつ放射線量を測り続けている。自生するキノコや山菜は今でも突然、高い数値が出る。しかし、試験栽培している野菜は土壌が多少汚染されていても軒並み検出限界値以下。「市場に出ている野菜や米はさらに安心」と伊藤さんは話す。福島県の農林水産物は出荷前に検査を受けている。2年前、緊張しながら福島市に住み始めた私は、いまでは最も安全が確認されたものを食べていると思っている。もちろん、安心への感覚は人それぞれだ。伊藤さんも「個人の心の問題」と認める。ただ、安全への努力が伝わらないまま「福島=危険」という印象だけが固定化しているのでは、と私は危惧を覚える。

<電力会社の信頼性>
*6-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160224/k10010420291000.html
(NHK 2016年2月24日) メルトダウン判断 3日後には可能だった
 東京電力は、福島第一原子力発電所の事故発生から2か月たって、核燃料が溶け落ちる、メルトダウンが起きたことをようやく認め大きな批判を浴びましたが、当時の社内のマニュアルでは事故発生から3日後にはメルトダウンと判断できたことを明らかにし、事故時の広報の在り方が改めて問われそうです。福島第一原発の事故では1号機から3号機までの3基で原子炉の核燃料が溶け落ちるメルトダウン=炉心溶融が起きましたが、東京電力はメルトダウンとは明言せず、正式に認めたのは発生から2か月後の5月でした。これについて東京電力はこれまで、「メルトダウンを判断する根拠がなかった」と説明していましたが、事故を検証している新潟県の技術委員会の申し入れを受けて調査した結果、社内のマニュアルには炉心損傷割合が5%を超えていれば炉心溶融と判定すると明記されていたことが分かりました。実際、事故発生から3日後の3月14日の朝にはセンサーが回復した結果、1号機で燃料損傷の割合が55%、3号機では30%にそれぞれ達していたことが分かっていて、この時点でメルトダウンが起きたと判断できたことになります。東京電力は事故後にマニュアルを見直し、現在は核燃料の損傷が5%に達する前でもメルトダウンが起きたと判断すれば直ちに公表するとしていますが、事故から5年近くたって新たな問題点が明らかになったことで、当時の広報の在り方が改めて問われそうです。 .メルトダウン認めるまでの経緯今回の発表や政府の事故調査・検証委員会の報告書などによりますと、東京電力は福島第一原発の事故発生から3日後の3月14日に核燃料の損傷の割合が1号機で55%、3号機が30%に達していることを把握しました。さらに翌日の15日には損傷の割合について1号機で70%、2号機で30%、3号機で25%と公表しますが、原子炉の核燃料が溶けているのではないかという報道陣の質問に対して「炉心溶融」や「メルトダウン」とは明言せず、「炉心損傷」という表現を使います。一方、当時の原子力安全・保安院は、事故発生の翌日の12日の午後の記者会見で、「炉心溶融の可能性がある。炉心溶融がほぼ進んでいるのではないだろうか」と発言していました。ところが、その日の夜の会見では担当者が代わり、「炉心が破損しているということはかなり高い確率だと思いますが状況がどういうふうになっているかということは現状では正確にはわからない」と内容が大きく変わります。さらに翌月の4月には、当時の海江田経済産業大臣の指示でことばの定義付けを行ったうえで、1号機から3号機の原子炉の状態について「燃料ペレットの溶融」とふたたび表現を変えます。その後、事故から2か月たった5月になって、東京電力は解析の結果として1号機から3号機まででメルトダウンが起きていたことを正式に認めました。社員「炉心溶融 なるべく使わないようにしていた」メルトダウン=炉心溶融を巡っては、東京電力の社員が、政府の事故調査・検証委員会の聞き取りに対し、「炉心溶融」ということばを使うことに消極的だった当時の状況を証言しています。公開された証言の記録によりますと、事故当時、東京電力の本店で原子炉内の状態の解析を担当していた社員は、事故から1か月近くたった4月上旬の時点の認識として、「1号機については水位は燃料の半分ほどしか無かったため、上半分は完全に溶けているであろうと考えていた」と述べ、核燃料の一部が溶け落ちていたと見ていたことを明らかにしています。そのうえで、「この頃の当社としては、広報などの場面で炉心溶融ということばをなるべく使わないようにしていたと記憶している」「炉心溶融ということばは正確な定義があるわけではないので、誤解を与えるおそれがあるから使わないと言った考えを聞いた覚えがある」と証言しています。福島・楢葉町の住民「憤りを感じる」原発事故の避難指示が去年9月に解除され、住民の帰還が始まっている福島県楢葉町の住民が暮らすいわき市にある仮設住宅では、東京電力に対する憤りや不安の声が聞かれました。今も仮設住宅で避難生活を続けている83歳の男性は、「東京電力はきちんと謝罪をしたのか。憤りを感じます」と話していました。また、72歳の女性は「メルトダウンしたと、本当に分からなかったのか、それとも隠していたのか。今ごろ言われても気分がよくない」と話していました。仮設住宅の自治会長を務める箱崎豊さんは、「楢葉町民が、安全だというお墨付きのもとに帰ろうとしているときに今さらという感じで腹立たしく思う。残念極まりない。企業体質が改めて問われる事態だ」と話していました。福島・大熊町長「発表が遅れた真意は」メルトダウンを巡る東京電力の対応について、福島第一原発が立地し、現在も全町民が避難を続ける大熊町の渡辺利綱町長は、「なぜ発表が遅れたのか、率直に考えて疑問に思う。単純なミスとは考えられないし発表までにだいぶ時間がかかっているので、そのあたりの真意も知りたい。最初からメルトダウンと発表されていれば、町民などの反応も違ったと思う。信頼を築く上でも、正確な情報を迅速に伝えてもらうのが大事なので、引き続き対応を求めていきたい」と話していました。福島県知事「極めて遺憾」東京電力の、メルトダウンを巡る通報などの対応について、福島県の内堀知事は「3月14日の時点で『炉心溶融』という重要な事象が通報されなかったことは極めて遺憾だ。今後、迅速で正確な通報や連絡が徹底されるよう、改めて強く求めたい」というコメントを出しました。新潟県知事「隠蔽の背景など明らかに」新潟県の泉田裕彦知事は、「事故後、5年もの間、このような重要な事実を公表せず、原発の安全対策の検証を続けている県の技術委員会に対しても真摯(しんし)に対応して来なかったことは極めて遺憾。メルトダウンを隠蔽した背景などについて今後の調査で、真実を明らかにしてほしい」というコメントを発表しました。

*6-2:http://www.minpo.jp/news/detail/2016022529114
(福島民報 2016/2/25) 東電 炉心溶融基準気付かず 第一原発事故危機管理甘さ露呈
 東京電力は24日、福島第一原発事故発生時に核燃料が溶け落ちる炉心溶融(メルトダウン)の社内基準があったにもかかわらず、存在に気付かなかったと発表した。基準に従えば事故発生から3日後には炉心溶融状態と判定できた。当時は「判断基準がない」としており、極めて深刻な事態と公式に認めたのは約2カ月後だった。東電の危機管理体制や情報公開の不備があらためて浮き彫りとなった。基準は「原子力災害対策マニュアル」に盛り込まれていた。基準は「炉心損傷割合が5%を超えていれば炉心溶融と判定する」としていた。福島第一原発では平成23年3月14日に原子炉格納容器内の放射線量を測定する監視計器が回復し、3号機の炉心損傷の割合が約30%、1号機が約55%に達していることを確認したが当時、東電は国や自治体に対して極めて深刻な事態の「炉心溶融」の前段階の「炉心損傷」との説明を続けていた。基準は11年に茨城県東海村で起きたJCO臨界事故を受けて15年に作成された。東電柏崎刈羽原発の安全確保について協議する新潟県技術委員会が炉心溶融公表の遅れを指摘したことを受けて社内で調査し、今月になって基準の存在が判明したという。東電は24日に記者会見を開き、マニュアルの中に炉心溶融の基準があったことが分からなかったと説明。東電は会見で陳謝し、「基準を社内で共有できていなかった。今後、調査を行い、気付かなかった経緯を明らかにしたい」とした。
■求められる説明責任
 東京電力は基準を作成しておきながら、福島第一原発事故に生かさなかった。福島第一原発事故直後、経済産業省原子力安全・保安院は炉心溶融の見解を示していたが、東電は「炉心溶融の定義がない」として前段階の「炉心損傷」と説明し続けた。しかし、実際には判断基準が存在していた。震災から3日後の平成23年3月14日には基準を大きく超える割合で炉心が損傷しており、炉心溶融はその時点で判断できたはずだった。基準は事故前に防災訓練で使用しており、事故当時に存在を誰も指摘しなかったとは信じ難い。東電は公表遅れによる影響はなかったとするが、的確に使われていれば県民への正確な情報発信につながったはずだ。東電の情報公開の在り方に対する県民の不信感は根強い。今回の炉心溶融も極めて重大な事態で、原発を抱える電力事業者が今まで存在に「気付かなかった」というのは理解し難い。東電が明確に説明責任を果たさなければ過小評価のための隠蔽(いんぺい)と受け止められかねず、県民の新たな不信を招く。

*6-3:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150319/k10010021671000.html
(NHK福島 2014年3月19日) 透視調査で「原子炉に核燃料なし」 福島第一原発
 東京電力福島第一原子力発電所で行われている、レントゲン写真のように建屋を透視して溶け落ちた核燃料を捜す調査で、1号機では原子炉の中に核燃料が見当たらないことが分かりました。ほとんどの核燃料が原子炉の底を突き抜け、格納容器に溶け落ちている可能性が強まり、廃炉の厳しい現実を改めて示す形となっています。福島第一原発の事故では、3つの原子炉で核燃料が溶け落ちましたが、極めて高い放射線量に阻まれ、4年たった今も溶け落ちた核燃料がどこにあるのか分かっていません。このため、高エネルギー加速器研究機構などのグループは、先月から、さまざまな物質を通り抜ける性質がある「ミューオン」と呼ばれる素粒子を捉える特殊な装置で、レントゲン写真のように原子炉建屋を透視し、核燃料のありかを突き止めようという調査を進めてきました。その結果、1号機では、使用済み燃料プールにある核燃料は確認できましたが、原子炉の中には核燃料が見当たらないことが分かりました。1号機ではこれまで、コンピューターによるシミュレーションでも、ほとんどの核燃料が原子炉の底を突き抜け、その外側にある格納容器に溶け落ちている可能性が高いとみられてきました。今回の調査結果はこうした推定を裏付けていますが、原子炉から溶け落ちた核燃料が多いほど取り出しが難しくなるだけに、廃炉の厳しい現実を改めて示す形となっています。今回の調査を行った高エネルギー加速器研究機構の高崎史彦名誉教授は「原子炉の中で核燃料があるべきところに何も確認できなかったので、おそらく1号機は核燃料がすべて溶け落ちたのではないか。原子炉の底にも燃料の塊らしい形が見られないので、原子炉を突き抜けて格納容器の底に落ちてたまっているのではないか」と話しています。そのうえで、「今回の調査で、格納容器や原子炉、使用済み燃料プールなど、原子炉建屋の内部が外から透視できたことは大きな意味がある。今後、調査の範囲を広げて核燃料がある場所を特定できれば、福島第一原発の廃炉にさらに貢献できると考えている」と話しています。

<東電トップの責任>
*7-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201603/CK2016030102000129.html (東京新聞 2016年3月1日) 巨大津波予測が最大の争点 東電元トップら強制起訴
 東京電力福島第一原発事故で、検察官役の指定弁護士は二十九日、東電の勝俣恒久元会長(75)ら旧経営陣三人を業務上過失致死傷罪で在宅のまま強制起訴した。公判では、全交流電源喪失が起きるほどの巨大津波の襲来を予測できたかが、最大の争点となる。三被告は公判で「津波の予測は不可能だった」などと無罪を主張するとみられ、指定弁護士は難しい立証を迫られる。原発事故の刑事裁判が開かれるのは初めて。強制起訴は二〇〇九年五月の改正検察審査会法施行後、九件目。今回の指定弁護士は強制起訴事件で過去最多の五人で、ネパール人が再審無罪となった東電女性社員殺害事件の主任弁護人を務めた神山啓史(かみやまひろし)弁護士らが担当する。他に起訴されたのは、ともに原子力・立地本部長を務めた武藤栄元副社長(65)と、武黒(たけくろ)一郎元副社長(69)。起訴状では、福島第一原発の敷地の高さ(海抜一〇メートル)を超える津波が襲来し、浸水で重大な事故が起きる可能性を予測できたのに、原発の運転停止を含めた津波対策をすべき注意義務を怠り、東日本大震災に伴う津波で重大事故を引き起こし、四十四人を死なせ、十三人にけがを負わせたとされる。津波の予測をめぐり、指定弁護士の立証のポイントの一つになるのが、東日本大震災の三年前の〇八年三月、福島第一原発に高さ一五・七メートルの津波が押し寄せる、との試算結果の評価だ。国の地震調査研究推進本部(推本)が〇二年七月に出した長期地震予測に基づき、東電が算定した。推本は「福島第一原発の沖合を含む日本海溝沿いでマグニチュード(M)8クラスの津波地震が三十年以内に20%の確率で発生する」と予測していた。昨年七月の東京第五検察審査会の起訴議決によると、東電は当初、試算結果を原発の耐震性向上のための作業に取り入れる方針だったが、原子力担当の責任者だった武藤元副社長の提案で方針を転換。その後も、巨大津波を想定した防潮堤の整備などの津波対策は取らなかった。試算結果について、勝俣元会長は一二年五月の国会事故調の参考人聴取で「私自身まで上がってきた話ではなかった」と関与を否定。東電も株主代表訴訟で東京地裁に提出した書面などで、「津波は従前の研究で想定された波源(津波の発生源)とは比較にならないほどの広範囲で発生し、予測することができない状況にあった」と主張している。他の争点として、津波対策を取っていれば事故を防げたかや、原発事業者の経営トップとしてより高度な注意義務を負うかについても、双方の主張がぶつかると予想される。
◆心からおわび 東京電力広報室の話
 事故により、福島県民をはじめ、広く社会の皆さまにご迷惑とご心配をお掛けしていることを、あらためて心からおわび申し上げる。当社元役員が強制起訴されたとの報道は承知しているが、刑事訴訟に関することでありコメントは差し控える。損害賠償や除染に全力を尽くし、原発の安全性強化対策に、不退転の決意で取り組む。

*7-2:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201603/20160301_63021.html
(河北新報 2016.3.1) <東電元幹部強制起訴>明らかな人災 有罪を
 東京電力福島第1原発事故で、勝俣恒久元会長(75)ら東電の旧経営陣3人が業務上過失致死傷罪で強制起訴されたことに対し、福島県内では29日、「裁判を通して刑事責任を明らかにしてほしい」などと期待する声が上がった。「福島原発告訴団」のメンバーは福島県庁で記者会見。佐藤和良副団長(62)は「告訴・告発から3年8カ月。刑事責任を問える段階まできたことは感慨無量だ」とし「多くの関連死や自殺者を出している原発事故は明らかな人災だ。3人の有罪を勝ち取りたい」と力を込めた。事故から5年を迎える今なお、全域が避難を強いられている自治体は数多い。その一つ、飯舘村から逃れ、福島市の仮設住宅で暮らす無職遠藤由勝さん(71)は「賠償金をもらっても古里は元には戻らない。東電の罪は重く、誰かが責任を取らないといけない」と訴えた。南相馬市の桜井勝延市長は「南相馬市は1万7000人が市内外で避難を強いられている。誰も責任を取らないのは許されない。裁判を通して責任をはっきりさせてほしい」とコメント。浪江町の馬場有町長は「これまで原発事故の原因究明をしっかりやっていない。責任を明確化するために審理してもらいたい」と語った。
          ◇         ◇         ◇
 東京電力福島第1原発事故で、勝俣恒久元会長(75)ら旧東電経営陣3人が大津波対策を怠ったとして、検察官役の指定弁護士は29日、検察審査会の議決に基づき、業務上過失致死傷罪で東京地裁に在宅のまま強制起訴した。未曽有の事故をめぐり、証拠や争点の整理に相当な時間を要するとみられ、裁判の長期化は必至だ。原発事業者に課せられた注意義務の範囲をどう判断するかが焦点。3人は無罪を主張する見通しで、事故の真相解明がどこまで進むかに注目が集まる。

*7-3:http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2722473.html
(TBS 2016年3月10日) 2008年「15m超津波試算」 東電 非公開の内部資料入手
 11日で5年を迎える東京電力・福島第一原発の事故。JNNは、事故が起きる3年前に、東電社内で「15.7メートルの津波」が来ると試算していた非公開の内部資料を入手しました。東電の旧経営陣3人は先月、大津波が予見できたにもかかわらず、注意義務を怠り、原発事故を引き起こしたなどとして、業務上過失致死傷の罪で強制起訴されました。東電は、これまで大津波を「想定外だった」などと説明していますが、JNNは、事故が起きる3年前の2008年に、「高さ15.7メートル」の津波が来るという試算結果が記された東電の内部資料を入手しました。津波のシミュレーションも記されています。また、職員向けの資料には「津波対策は不可避」とも記されていました。
Q.津波の想定はされていたのに対策を取らなかったのでは?
 「これから裁判になりますので、意見を申し上げるのは控えたいと思います」(試算の報告を受けていた 東京電力 武藤栄元副社長 7日)。東電は、「社内で検討する目的で作成された一資料」としています。今夜のNEWS23スペシャルで、さらに詳しくお伝えします。

*7-4:http://www.geosociety.jp/hazard/content0065.html 日本地質学会 
石渡 明(東北大学東北アジア研究センター)
 東日本の太平洋沿岸部の各市町村における今年3月11日の大震災(主に津波)による死者・行方不明者の統計(表1)を見て気がついたこと述べ,今後の防災や土地利用計画の参考に供したい.資料は河北新報と朝日新聞の記事及び河北新報社の「東日本大震災全記録」(2011.8.5発行)に基づく.
1.死者・行方不明者が最も多かったのは宮城県石巻市(4043人)であり,岩手県陸前高田市(2122人)がこれに次ぐ.石巻市は津波の浸水面積が最大であり(73km2),陸前高田市では18mの高さの津波が市街を襲った.死者・行方不明者が1000人以上に達するのは岩手県大槌町から宮城県東松島市までの6つの市町村であり,500人以上は岩手県宮古市から福島県南相馬市までの14の市町村である.この他に福島県最南部のいわき市でも347人,千葉県旭市でも13人の死者・不明者が出た.複数の死者が出た青森県水沢市から千葉県旭市まで(表1の範囲)は直線距離で560kmあり,これはほぼ今回の地震の余震域の長さに対応する.
2.死者・行方不明者の人口比が最も高かったのは宮城県女川町,岩手県大槌町,陸前高田市で,各自治体の人口の8~9%(津波浸水域の人口の12~13%)が亡くなった.死者数が最多の石巻市の人口比は2.5%(浸水域人口の3.6%)であった.北は岩手県野田村から南は福島県大熊町までの25の市町村で人口比0.2%以上の死者・行方不明者が出た.
3.津波による被害が大きかった沿岸部の範囲内でも,岩手県普代村,岩泉町,宮城県松島町,利府町,塩釜市では特に人的被害が小さかった.普代村から岩泉町にかけては20mを超える高さの津波が襲来したが,普代村では高い防潮堤が津波を防ぎ,住民を守った.岩泉町は海岸に平野がほとんどなく,低地に住む人が少なかったことが被害を小さく抑えたと思われる.松島町・利府町・塩釜市は,入口が狭くて多くの島や半島に守られた湾の奥にあるという地形的な利点が幸いしたと思われる.
4.深刻な津波被害を受けた岩手県宮古市から宮城県東松島市までの範囲内では,岩手県大船渡市の人的被害が比較的小さかったことが目立つ.同市綾里(りょうり)の白浜では津波の高さが26.7mに達し,これは宮古市田老の37.9mに次ぐ高さであり,大船渡港にも10mを超える高さの津波が来ていて,これは山田町や釜石,気仙沼と同程度である.死者・行方不明者の数(448人)においても,その人口比(1.0%)においても,大船渡市の被害が周辺市町村に比べて顕著に少なかった理由については,(1)市街地や集落が他の市町村よりも標高の高いところにある,(2)防災教育が徹底していて多くの人が早く高所に避難した,(3)津波の破壊力(流速)が弱かった,などいくつかの可能性が考えられる.大船渡市は,1960年のチリ地震津波で最も人的被害が多かったため(死者53人,全国の死者・行方不明者142人の1/3以上),他の市町村より津波被害の記憶が鮮明で,住宅の高台移転や防災教育に熱心だった.市役所,学校,病院,警察なども高台にあり,低地は商業ビルや工場として利用されていた.郊外でも,大船渡市吉浜では集落を高台に移転し低地は水田にしたため,今回の津波でも人的被害が少なかった(行方不明1人のみ).また,チリ地震後に世界最大級の湾口防波堤が建設され,今回の津波で破壊されたものの,津波の勢いを弱め,市街への到達を遅らせて避難の時間を稼ぐ上で一定の効果があったと考えられる.つまり,津波対策を考えた土地利用,住宅の高台への移転,湾口防波堤の設置などが人命を救ったことがはっきりと数字に表れているわけで,大船渡市は他の三陸市町村の今後の防災・土地利用計画のモデルとなるだろう.
5.東北最大の沿岸都市である仙台は,海岸平野部で多数の死者・行方不明者を出し,津波浸水地域の面積(52km2)では石巻(73km2)に次ぐが,2番目の大都市である福島県いわき市(15km2)よりも人的被害の人口比がやや小さかった.津波の高さは仙台港で7m程度(ただし若林区荒浜では12m以上),いわき市江名港でも7m程度であった.仙台の市街地は内陸の台地や丘陵地に発達し,海岸平野は主に水田や商工業施設,公共施設などに使われている.台地や丘陵地にある都市は坂が多くて生活に不便であるが,津波や洪水に対する防災上は有利であり,この土地利用が仙台市全体の人的被害を軽減したと思われる.これには,伊達政宗が44歳の時に発生した1611年12月2日(旧暦10月28日)の慶長津波の経験が生きているのかもしれない.この時の仙台~岩沼の津波の高さは7m程度,伊達領内の死者は1783人とされる.政宗はその2年後の1613年に慶長遣欧使節を派遣しており,復興は早かったようだ.沿岸市町村では,津波被害軽減のために今後もこのような土地利用に努めるべきだと思う.しかし,浸水域人口比では仙台の方がいわき市の2倍以上の被害があり,これは避難が遅れたことや浸水域内またはその直近に避難場所が少なかったことが原因と思われる.海岸平野の犠牲者を少しでも減らすために, 十分な高さの丈夫な津波避難ビルや高架道路などの建設,避難路や警報機の整備,避難訓練の定期的な実施などが望まれる.そしてこれは,南海トラフ沿いや日本海側を含め,海岸線をもつ全ての市町村が緊急に行うべきことだと思う.
*粗稿を読んで貴重なコメントをいただいた(社)日本石材産業協会技術顧問(元地質調査所)の服部 仁氏,住鉱資源開発(株)の田代寿春氏(大船渡出身),(株)地圏総合コンサルタントの棚瀬充史氏に感謝する.末筆ながら,今回の地震・津波で亡くなられた方々のご冥福をお祈りし,被災された方々にお見舞い申し上げる。


PS(2016.3.15追加):*8のように、地方自治体が水道とセットで自然エネルギー由来の電力を販売するのは、持っている資源を有効活用できるので大変よい。給水用ダムや農業用ダムなど、これまで国の縦割行政のために発電に利用されてこなかったダムも、自治体が音頭をとれば電源として利用できるので、こういう前向きの政策に取りくんでいる自治体には、ふるさと納税で応援したい人も多いだろう。

   
  *8より   2015.12.20      ふるさと納税(納税する自治体を選べる制度)    
           東京新聞
*8:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160315&ng=DGKKASFB08HCU_V10C16A3MM0000 (日経新聞 2016.3.15) 自治体、家庭向けに新電力 地方でも競争促す、水道とセット割/「地産」太陽光活用
 自治体が一般家庭向けの電力販売に乗り出す動きが広がっている。4月の電力小売り全面自由化を見据え、自治体主導で新電力を設立。地元の太陽光発電などから電力を調達し、電力大手より割安の料金で供給する計画だ。首都圏や関西圏など大都市に比べ、地方は新電力参入の出足が鈍い。自治体が料金引き下げの競争環境を醸成し、住民サービスの向上につなげる。福岡県みやま市が筑邦銀行などと共同出資した新電力、みやまスマートエネルギー(同市)は4月から、九州の家庭向けに電力を販売する。料金は九州電力より平均2%程度安く設定。同市内では水道とセットにして割り引く全国でも珍しい試みも始め、月額50円を値引く。2年以上の契約者にはタブレット(多機能携帯端末)を貸与。日々の電力使用量を通知したり、節電に関するアドバイスを提供したりする。同社はすでに市内の太陽光発電設備などから調達した電力を公共施設や病院に供給している。今後は家庭にも売り込み、契約件数は3年後をメドに1万件を見込む。鳥取市が鳥取ガスと共同で設立した新電力、とっとり市民電力(同市)は2016年度中に家庭向け小売りを始める計画だ。電力は市営の太陽光発電所などから調達する。今後は「電気とガスのセット販売で料金を割り引くことも検討する」(市経済・雇用戦略課)。地域エネルギー管理システム(CEMS)などのノウハウを持つNTTファシリティーズと連携するのは浜松市。昨年10月に設立した浜松新電力(同市)は16年度にも家庭向けに電力を販売する。IT(情報技術)機器を活用し、節電に関する助言サービスも提供する方針だ。群馬県中之条町が設立した中之条パワー(同町)は年内にも家庭向け小売りを開始する。料金体系や契約目標、供給エリアなど詳細は今後詰める。同社は「売電による収益は町の再生可能エネルギーの普及や地域活性化策に充てたい」としている。経済産業省に登録した小売電気事業者は現在225事業者に上り、これらの事業者の本拠地は関東、関西、中部の三大都市圏が約8割を占める。新電力の参入が少ない地方では、沖縄電力が4月以降も料金プランを変更しないと公表するなど、料金引き下げ競争は総じて低調だ。自治体は新電力の設立を主導することで、競争環境づくりに一役買う考えだ。地元の太陽光や風力、バイオマス、ごみ焼却発電など再生可能エネルギーの活用を通じ、「エネルギーの地産地消」(みやまスマートエネルギー)によって地域経済を活性化する狙いもある。


PS(2016.3.16追加): *9のように、原子力規制委員会は「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の放射性物質拡散予測は信頼性がない」としているが、本当に信頼性がないか否かは、SPEEDIの予測と直径30kmの同心円のどちらが実際に近いかを福島原発事故の汚染状況で比較すれば一目瞭然だし、単なる同心円よりも地形、風向き、風速を考慮した方が正確になることは誰が考えても明らかだ。また、仮に国民が支払った税金から113億円もの開発費をかけて役に立たないものを作っていたと言うのなら、その責任も問われるべきである。

      
実際の放射能蓄積量   SPEEDI予測値    SPEEDI甲状腺     福島県と国の対応
                              内部被曝予測値
*9:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201603/CK2016031602000240.html (東京新聞 2016年3月16日) SPEEDI「信頼性ない」 規制委、避難で活用の弊害指摘
 原子力規制委員会は十六日、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)を用いた放射性物質の拡散予測について「信頼性はない」との見解で一致、原発事故時の住民避難に活用するのは弊害が多いと結論付ける文書をまとめた。政府は自治体側からの要望を受け、自治体の裁量でSPEEDIの活用を十一日に容認したが、政府自身は活用しない方針を変えていない。規制委がSPEEDIの信頼性にあらためて否定的な見解を示したことで、自治体は難しい判断を迫られそうだ。政府の活用容認は、原発再稼働に対する地元同意を円滑に進めたい思惑が背景にあるが、自治体任せの政府対応に批判が強まる可能性もある。規制委はこの日まとめた文書で、予測に必要な放射性物質の放出タイミングを事前に把握することは不可能と指摘。その上で、予測を住民避難に活用すれば「かえって避難を混乱させ、被ばくの危険性を増大させる」と強調した。田中俊一委員長は会合で「拡散予測が出れば人々は冷静さを失い、われ先にと行動を取りがちだ」と述べた。東京電力福島第一原発事故では、予測の前提となる放射性物質の放出状況などのデータが確保できず、SPEEDIを活用できなかった。そのため規制委は住民避難について、原子炉から放射性物質が放出された後に、地域で測定される放射線量の実測値で判断する仕組みに見直した。全国知事会は「放射性物質の拡散が始まった後の避難では遅い」としてSPEEDIの活用を政府に要望していた。


PS(2016.3.17追加): *10の「原発停止による電力会社のコストは大きい」というのは同意できるが、原発の社会的コストは事故時のコスト、避難訓練などのコスト、電源立地自治体へのリスク料の支払いなど他の電源とは比べものにならないくらい大きい。さらに、「社会として、どこまでリスクを下げればよいのか」などと間抜けなことを言っているが、原発事故が起きると他の事故と異なり広い国土を失い、被害者の数も桁違いに多いため、事故のリスクは0でなければならず、これは手続が不十分でリスク・コミュニケーションが足りないため、私がリスクについて理解していないから言っているわけではない(そもそも、そういう理解をすること自体、女性や国民の科学的思考力を馬鹿にしている)。そして、原発は、0ではない大規模な原発事故リスクに国民を晒し、稼働から40年経過しても廃炉の方法すらできておらず、使用済核燃料処分の目途も立たず、新エネルギー体系の構築を邪魔し、国民負担を膨らませている点から考えて、社会に大きな不利益を与えているため、即時脱原発が妥当であり、この5年間の対応からその結論は既に出ているのだ。

     
 原発事故による甲状腺癌の発生 福島原発事故避難者 廃炉予定の原発  日本の原発立地

*10:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160317&ng=DGKKZO98529860W6A310C1NNS000 (日経新聞 2016.3.17) リスク巡り国民的議論を 長崎大教授 鈴木達治郎氏
 大津地裁の決定が司法判断として適切かどうかはわからないが、稼働中の原発に停止を命じたことは画期的だと受け止めている。停止による電力会社や社会のコストは大きいが、事故が起きた時のコストとの差し引きを判断したと解釈できる。当然、賛否が分かれるだろう。本来、原発の規制基準を決める際の「どこまでリスクを下げれば安全なのか」という考え方自体、技術論や法律論だけでは決められない。利害関係者や市民も含めた議論が必要なはずだ。今回の判断についても意見が分かれるとすれば、社会として「どこまでリスクを下げればよいのか」に関する合意ができていないということではないか。「規制基準を満たしていれば事故は起きない」というのが、東京電力福島第1原発の事故以前の考え方だった。それが十分でなかったことが分かった以上、規制基準を超えてリスクを下げる努力が電力会社に求められる。リスクの受け入れはその利益の大きさとも比べて、社会が判断するものだ。その手続きが十分でないと、今のように政府や電力が再稼働を決定した後に「説明して納得してもらう」あるいは「説得する」ことになる。リスク・コミュニケーションは双方向であるべきで、一方的な説明や説得では信頼が得られない。国民、住民に対話を通じて丁寧に情報を公開し、必要であれば安全対策や規制基準も変えていく姿勢が求められる。原発に限らず司法が科学的課題に判断を示すことは、今後もますます増えるだろう。司法と科学の関係は非常に難しい。科学も不確実であり、司法の判断も主観がどうしても入る。裁判にかかわる科学者の在り方についても、もっと議論があっていい。原発の運転差し止めは国の政策に影響を及ぼしうるが、国民の信頼がなければ政策は円滑に進まない。司法判断も社会の意思決定システムの一部で排除はできない。「国民的議論」を省略したつけが回ってきているのではないか。一見、遠回りにみえるが、意思決定プロセスを再構築し、議論を尽くすことが求められている。
*すずき・たつじろう 米マサチューセッツ工科大、電力中央研究所、東大での勤務を経て14年から現職。政府の原子力委員会委員長代理も務めた。64歳。


PS(2016.3.18追加):*11のように、「太陽光発電など再生可能エネルギーの拡大に伴う家計の負担が大きい」と言うような人は、原価計算のしくみが全くわかっていないため、原価計算を勉強してから(もしくは知っている人に聞いてから)モノを言うようにしてもらいたい。そうすれば、私がこのブログに既に記載したように、再生エネによる発電の原価と請求書で家庭や企業に請求する電気代に上乗せした金額とはあまり関係なく、原発のコストの方が高いことがわかる筈だ。
 また、*12のように、バイオマス発電と称して木材を燃やす発電方法は、薪に逆戻りするようで感心しない。どうしても使えない廃材でも燃やせば不純物を出すため、唐津市佐志のように排気が唐津市を直撃するような場所に立地すれば、住宅や観光地としてのまちづくりを阻害する。さらに、燃やすのは最も付加価値の低い使い方であるため、別の使い道を探し、どうしても使えない廃材は伊万里のごみ焼却炉に持って行って発電しながら焼却すればよいだろう。そして、その“塩漬土地”も、もっとスマートな別の使い方があると私は考える。

*11:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160318&ng=DGKKASFS17H42_X10C16A3MM8000 (日経新聞 2016.3.18) 再生エネ家計負担10倍に 12年度比 16年度から月600円台後半
 太陽光発電など再生可能エネルギーの拡大に伴う家計の負担が一段と膨らむ。標準的な家庭の電気料金の負担は2016年度から月600円台後半になる見通しだ。再生エネの固定価格買い取り制度が始まった12年度の10倍程度に達する。足元の原油安で電気料金は低下傾向にあるが、再生エネの負担が打ち消す形となりそうだ。経済産業省が18日にも16年度の負担額を示す。買い取り制度は太陽光や風力発電の建設などにかかるコストを家庭や企業の電気代に上乗せして賄う。そのため再生エネの導入が増えるほど負担も膨らむ仕組みだ。16年度の標準家庭の負担額は700円近くになり、制度が始まった12年度(月66円)の10倍程度に膨らむ見通しだ。負担総額は2兆円弱となり、昨年策定した30年度の望ましい電源構成(ベストミックス)で想定する4兆円の半額に近い水準となる。負担増の要因は再生エネの導入の9割を占める太陽光設備だ。12年度の10キロワット以上の太陽光の買い取り価格は1キロワット時当たり40円と高額で、設置も手軽だったため企業の参入が集中した。経産省は16年度の10キロワット以上の太陽光の買い取り価格を24円とし、4年連続で引き下げる方針だ。経産省は国民負担の抑制に向け、今国会で再生エネ特別措置法改正案の成立を目指している。17年度以降により安いコストで電気をつくる事業者を優先する入札制度などを導入し、国民の負担を抑えたい考えだ。

*12:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/288301
(佐賀新聞 2016年3月12日) 唐津市・佐志の“塩漬け土地” バイオマス発電活用へ
■唐津市、関連企業誘致へ
 唐津市は30年以上“塩漬け”状態が続き、昨年秋に市土地開発公社から9億4400万円で購入していた佐志鴻巣の土地を処分するため、バイオマス発電の企業誘致を始める。再生可能エネルギーの中でも、バイオマスは廃材利用の観点から伸びており、市は「企業進出が見込め、再生可能エネ推進の条例を掲げる市の理念とも合致する」と話す。売却するのは、塩漬け状態の土地6万4千平方メートルに加え、企業が利用しやすいように、新たに佐志地主組合や個人から800万円で購入した隣接地1万1千平方メートルを含む計7万5千平方メートル。土地売却だけでは、市が負担した9億円の穴埋めは難しいため、企業の長期的な事業計画を重視し、公募型プロポーザル方式を採用した。「固定資産税や法人税収入、そして新規雇用による経済効果で、長期的にみれば市民の損失が出なかったという形にしたい」と市企画政策課。14日から4月15日まで募集する。佐志鴻巣の土地は当初の宅地分譲計画が住宅事情の変化などで当てが外れ、1980年から35年にわたり塩漬け状態が続いた。公社の購入費は全額、金融機関からの融資で、利息払いだけでも計7億8600万円が発生した。


PS(2016年3月21日追加):東日本大震災の津波被害だけなら、高台移転すれば近くに戻ることができただろうが、原発事故で放射性物質が降り注いでしまった所には、命が惜しければ戻るわけにはいかない。復興住宅の建設が遅れたため、*13のように、新しい人間関係の構築が困難になったことは事実だが、3LDKのマンションを「監獄と同じ」と感じるのは贅沢だろう。特に、高齢者が一人暮らしをする場合、離れ離れの住宅に住んで、雪かき、買い物、介護などの問題が出るよりも、まとまってマンションに住んでもらった方がケアしやすいし、交流したい人は娯楽室などで交流できるようにすればよいからだ。なお、東京で子育てする母親は、2LDK程度の狭いマンションに閉じ込められ、「一万円」というのは駐車場代にもならない金額だ。そのため、原発事故の影響で住めなくなった自宅は、東電か国に事故前の固定資産税評価額で買ってもらった上で、今後の人生設計をするのが合理的ではないかと思う。

*13:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201603/CK2016032102000121.html (東京新聞 2016年3月21日) 「ここは監獄と同じ」 ぬくもりない復興住宅
 高速道路のインターチェンジに近い、五階建ての復興住宅は、都会のマンションのような、無機質なにおいがした。表札を出している家はわずかだ。福島県大熊町から会津若松市の仮設住宅に避難していた門馬五子(もんまいつこ)さん(73)は一年ほど前、郡山市内のこの復興住宅に移った。長女宅に近く、東京の息子も来やすいだろうと選んだ。四階の3LDKに一人暮らし。年金から月一万円ほどの家賃を払う。百万円近くかけて家具をそろえ、孫が遊びに来た時のために大きなこたつも買った。だが、表情は晴れない。今年の正月明け、上の階の住人が亡くなった。救急車が下に来るまで、異変に気付かなかった。「ドアの向こうで誰が、どんな暮らしをしているのか。部屋に入ってしまうと、お互い分からない」と嘆く。安倍晋三首相が視察に来たとき、こう言った。「ここは監獄と同じよ」。顔見知りは民生委員の夫婦だけ。会津の仮設で親しかった人は、いったん同じ復興住宅に入ったが、子と同居すると言って引っ越してしまった。ペットは禁止で、事故前から一緒に暮らしていた愛猫は長女に預けた。三十分歩いて会いに行くが、「私の顔を忘れてしまった」と寂しそうに笑う。仮設での暮らしは、つらかった。薄い畳が体を冷やした。壁は石こうボード一枚で、隣の音が筒抜け。窓の結露にも悩まされた。台所は狭く、まな板を置く場所もなかった。大熊町にある築百年の自宅は、避難中に動物に荒らされている。「直すには一千万円じゃきかない。もう住めない」。月十万円の慰謝料は早晩打ち切られ、年金だけが頼りの暮らしになる。家を借りたり買ったりできる余裕はない。復興住宅に入るしかなかった。終(つい)の棲家(すみか)と思い、「私はここで死ぬんだ」と繰り返す。でも、知り合いが多く、濃い近所付き合いがあった大熊町での暮らしは、取り戻せない。避難生活は幕を閉じていない。

| 内部被曝・低線量被曝::2014.4~ | 04:22 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.3.8 地方への移住、子育て、仕事

  ヒラメの放流(*1-5)   サケの放流(*1-6) 県別大学進学率       日本ジカ


  小学生の田植え   小学生の玉ねぎ収穫    小学生の大根収穫      日本イノシシ

(1)子育てから見た地方移住の長所と短所
 *1-1、*1-2のように、九州7県の全233市町村のうち、4分の1に当たる60市町村が、移住相談窓口や東京相談員を置いて移住を推進しており、2010~14年度の5年間で、移住者は3900人を超えるそうだ。移住前の居住地は東京都が66人、福岡県が81人、大阪府が51人で、5年間の移住者数のトップは鹿児島県霧島市の336人、次いで長崎県松浦市と大分県豊後高田市がともに331人、鹿児島県出水市が248人だったとのことである。

 都会では、狭い保育園すら落とされる中で、地方では、*1-4のように、シベリア帰行中のマナヅルが羽を休める自然環境が周囲にあったり、*1-3のように、保育園が裸足で走りまわれる木造で、スギの色目の違いを生かしたグラデーションを壁に取り入れた、園庭の広い保育園に入れたりする。

 また、*1-5のように、唐津市の保育園児や小学生はヒラメの稚魚約500匹をふるさとの海に放流して泳いでいく姿を観察し、*1-6のように、富山県小矢部市の津沢小学校の児童は、小矢部川漁協が提供したサケの稚魚3万匹を放流して帰ってくるのを楽しみにし、これらは、生物、川、海、山、田畑、食、自然の法則などに関するよい教育になっている。

 さらに、*1-7のように、小学生が農業体験でタマネギを収穫して喜び、これらの体験は、都会でコンクリートの建物や人工の公園に囲まれていては決して得ることのできない多くの情報を、子どもたちに楽しみながら暗黙知として習得させる。そのため、(ここが重要なのだが)学校教育のレベルや親の仕事などの条件が整えば、地方は子育てに適している。

(2)地方にある仕事
 子育て環境がよくても、親の仕事がなければ地方移住を進めることはできない。そのため、現在では、*1-2のように、子育て世代などの地方移住志向の高まりを受け、首都圏から移住希望者を呼び込むための専門相談員を置く自治体が増えている。地方には、都会にいては考えつかない面白い仕事もあるため、市町村や企業も積極的に取り組めばよいと考える。

 元システムエンジニアの藤本さんは、海の美しさに魅かれて壱岐に移住するそうだが、システムエンジニアの経験は、漁業をやっても農業をやっても役に立つ。しかし、そもそもシステム設計などの仕事も、都会のビルの中よりも現場に近い閑静な場所の方が向くのではないだろうか。

(3)地方でできる新産業と雇用創出
 都会の製造業やサービス業で経験した経営効率化や生産性向上のノウハウは、農林漁業でも応用でき、それができる人材は地方には少ない。そのため、地方では、既存産業の維持や新産業の創出について、都会からの移住者に期待するところは大きい。

1)林業の例
 近年は日本の森林資源も増えてきたため、*2-1のように、九州の森林組合は、規模拡大でコストを削減し国際競争力を高めるために、木材輸出の広域連携を行い、木材産業が有望になりつつある。

 また、*2-2のように、鹿児島県薩摩川内市と中越パルプ工業(富山県)は、地域資源の竹の調達や製品開発の連携協定を結び、市が放置竹林を活用した新産業の育成を加速させ、中越パルプ工業が開発した竹製新素材の普及を後押して、竹を資源として活用し、高機能材料や製品を開発する計画だ。私は、スーパーの食品トレイや漁網なども、竹由来の製品を使った方がプラスチックを使うよりも環境親和性が高くて賢いものができると考える。

 さらに、*2-3のように、放置竹林を活用して、竹の堅い繊維質を生かした住宅用建材等に加工する事業も、熊本県内の建設業者の呼び掛けで始まり、これも新しい仕事となって雇用が創出されそうであるため、それに関する知識・経験のある人材は有用だろう。

 
    竹製タオル            竹製小物         竹製家具       竹製建具 

2)ジビエの例
 *3-1のように、害獣対策に一役買うジビエは野生獣の肉で、下のように蛋白質・鉄分が豊富で脂質・エネルギーが少ないため健康食品だ。また、ジビエは、もともと貴族が自分の領地で狩った獲物を食材にしたのがルーツで、伝統・格式とも申し分なく、ステータスシンボルともなっていた食材なのである。
   100グラムあたりの成分比較     シカ赤肉    乳牛モモ肉
    エネルギー(キロカロリー)       110        140
    タンパク質(グラム)           22.3       21.9
    脂質(グラム)               1.5        4.9
    鉄(ミリグラム)               3.1        2.7

 そのため、石川県も、*3-2のように、「いしかわジビエ」ブランドを確立して新幹線開業後の誘客につなげるため、猟師や料理関係者らとともに「いしかわジビエ利用促進研究会」を発足させ、メニューやレシピ作りを進めている。そのため、ジビエは、農林漁業とともに人材を必要としている分野だろう。

3)畜産の例
 日本の畜産物は脂肪が多く、霜降りになっているため、肉を食べると脂肪を多く食べさせられ、健康によくない。そのため、*4-1、*4-2の畜産クラスター事業は、大区画化した草地を整備して飼料を増産するだけではなく、放牧した脂肪の少ない家畜をコストダウンしながら生産することも重要だと考える。なお、中山間地であることをむしろ利用したスイスのような畜産もよいと思う。

4)6次産業化の例
 高齢化社会、共働き社会では、*5-1のように、女性農業者や管理栄養士でつくる地元野菜を使った日替わり弁当などは有り難いものである。農業・漁業の産地だからこそできる新鮮な食材を使って栄養を考慮した高付加価値の加工品を作る事業は、女性が働く場所もつくっている。

<地方移住>
*1-1:http://qbiz.jp/article/76319/1/
(西日本新聞 2015年12月6日) 九州への移住者3900人超 60市町村、5年で2.4倍
 人口減少が指摘される中、西日本新聞社は九州7県の全233市町村に対し、移住者政策に関するアンケートを実施した。4分の1に当たる60市町村が、相談窓口などを通して県外からの移住者を詳細に把握しており、2010〜14年度の5年間では約2・4倍に増え、計3900人を超えることが分かった。移住前の居住地は福岡、東京、大阪など大都市部が目立つ。市町村が移住促進に力を入れていることに加え、少子高齢時代の「生き方」として移住が有力な選択肢となっている実態がうかがえる。各市町村は定期的に転入者数を調査・公表しているが転勤者を含むため、九州で移住自体を目的に県外から越してくる人の規模はこれまで明らかではなかった。市町村の4分の3は把握しておらず、行政の窓口を経由せずに移り住む人も少なくなく、実際の数はさらに多いとみられる。アンケートは今秋、九州の全市町村に文書を送付、今月上旬までにすべて回答を得た。うち60市町村が、相談窓口のほか空き家バンクや奨励金など各種制度の利用者をカウントするなど、県外からの移住者を「把握している」とした。県別では福岡1、佐賀6、長崎11、熊本5、大分9、宮崎10、鹿児島18−市町村。移住者は10年度が計464人で、11年度は715人、12年度746人、13年度920人。14年度は1107人に上り、5年間の総計は3952人に達した。14年度、移住前の居住地で最も多かった都道府県を聞いたところ、東京都との回答が最多の11市町村(計66人)。福岡県が9市町村(計81人)、大阪府が8市(計51人)−と続く。5年間の移住者数のトップは鹿児島県霧島市の336人。市内の中山間地に住宅を新築・増改築した場合などに最高100万円を支給し、農業体験や住宅物件の見学を組み合わせたツアーなどで移住を促す。担当者は「05年の1市6町合併後、横ばいだった人口は減少局面に入った。移住者の受け入れは人口維持政策の大きな柱だ」と話す。次いで長崎県松浦市と大分県豊後高田市がともに331人、鹿児島県出水市が248人−だった。一方、全市町村の6割を超える150市町村が本年度、移住関連予算を計上した。98市町村が東京などで移住相談のセミナーやフェアを開催(予定を含む)。33市町村は短期間の「お試し滞在」などの移住体験ツアーを実施している。

*1-2:http://qbiz.jp/article/77332/1/
(西日本新聞 2015年12月21日) 移住相談員、東京に次々 長崎、熊本など九州5県は常駐
 子育て世代などの地方移住志向の高まりを受け、首都圏から移住希望者を呼び込むための専門相談員を置く自治体が増えている。東京・有楽町のNPO法人「ふるさと回帰支援センター」に相談員を置く自治体は、2014年度の5県から15年度には29県に増加。九州も長崎や熊本など5県が初めて配置し、残る福岡、佐賀両県も検討中だ。移住希望者の“争奪戦”に向け住宅事情の詳細な説明や地域の魅力発信に懸命で、人口減に直面する市町村の再生につなげたい考えだ。「知り合いがいない場所で不安だったけど、親身に相談に乗ってもらった。九州での暮らしが楽しみ」。来年1月、神奈川県から長崎県壱岐市への引っ越しを予定する元システムエンジニア、藤本彩子さん(30)は声を弾ませた。テレビ番組で見た海女の仕事に憧れ、海の近くへの移住を決意。千葉県や三重県も候補地に挙がったが、9月に初めて訪れた壱岐の海の美しさが決め手になった。藤本さんが頼りにしたのが長崎県の移住相談員、久永倫世さん(44)。都内在住の久永さんは幼少期、長崎県内で暮らしたことがあり、今年5月から県の非常勤職員としてセンター内で働く。藤本さんには住まいなど生活情報をはじめ、観光名所や豊かな自然環境も説明。海女として働けるよう漁業に関する各種制度を紹介し、市や地元漁協との橋渡し役を担った。センターは02年、地方移住の情報発信や支援を目的に発足。九州では本年度、長崎、熊本のほか大分、宮崎、鹿児島各県が相談員を常駐させるようになった。このうち宮崎県は就職相談員も置き、子育て支援や住宅補助の仕組みなど「なんでも聞ける窓口」を目指している。相談件数は4月の開設から11月末までに265件に上り、少なくとも4世帯7人が宮崎、小林市などに移り住んだという。センターには今後、九州の2県も含む10県以上が相談員配置などを検討中。宮崎県中山間・地域政策課は「人口減対策として他県も移住に力を入れており、競争は激しくなっている。市町村と連携し、県の魅力を発信していきたい」と意気込む。

*1-3:http://qbiz.jp/article/80554/1/
(西日本新聞 2016年2月12日) 森のおうち保育園と嘉穂小に大賞 福岡県木造・木質化建築賞
 「第2回福岡県木造・木質化建築賞」の受賞建築物が決まり、木造の部は「森のおうち保育園」(福岡市中央区)、木質化の部は「嘉麻市立嘉穂小学校」(嘉麻市)が、最高賞の大賞に選ばれた。同賞は昨年度、国産材利用の普及、拡大を図るため県が創設。今回は、昨年6月までの10年間に県内で竣工(増改築や修繕を含む)された建物が対象で、柱やはり、桁に木材を利用した「木造の部」に18件、建築物の天井や床、外壁に木材を利用した「木質化の部」に22件の応募があった。森のおうち保育園は、床や腰壁を木材にこだわった園児に優しい構造で、園内のクスノキを伐採せずに生かした設計も評価された。嘉穂小学校は、スギの色目の違いを生かしたグラデーションを壁に取り入れ、地元材を多く使用した点も評価された。5月に粕屋町で開かれる県植樹祭で表彰式が行われる。大賞以外の受賞建築物は以下の通り。
【優秀賞】木造の部=妙泉寺門徒会館・庫裏(福岡市城南区)▽木質化の部=八女市子育て支援総合施設(八女市)
【奨励賞】筑紫保育園分園(太宰府市)、風ひかり作業所(福岡市早良区)、海物山物(同市博多区)、耳納の家(久留米市)、日豊本線城野駅(北九州市小倉南区)

*1-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/277937
(佐賀新聞 2016年2月11日) 鎮西町 マナヅル100羽「羽休め」、シベリア北帰行の途中
 佐賀県唐津市鎮西町打上地区にマナヅルの群れが飛来した。鹿児島県の出水平野で冬を越し、シベリアへ「北帰行」中に羽休めしているとみられる。近くに住む農業の松本幹男さん(75)が8日朝、打上ダム近くの田んぼに100羽以上の大群がいるのを見つけた。9日午前にも約50羽が田んぼで餌をついばむ姿が見られ、午前10時半ごろ一斉に飛び立った。県内のマナヅルの飛来地は伊万里市の長浜干拓が有名だが、松本さんは「このあたりにも毎年数羽は来るが、今年のように数が多いのは初めて」と話している。

*1-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/194301
(佐賀新聞 2015年6月5日) 「さがっ子リレー放流」開始 ヒラメ稚魚500匹放流
 唐津市湊町の北浜海水浴場で2日、子どもたちに海の生き物を身近に感じてもらう「さがっ子リレー放流」が始まった。地元の小学生や保育園児がヒラメの稚魚約500匹を放流し、ふるさとの海に親しんだ。湊小3年児童17人と湊保育園児22人が、近くの小川島の育成施設で約8センチに育った稚魚を放流した。子どもたちは波打ち際で稚魚が入ったバケツをそっと傾け、「大きく育ってね」と呼び掛けた。稚魚は唐津湾内で育ち、1年後には約30センチに成長するという。参加した同小3年の江口凛さん(9)は「ヒラメの赤ちゃんがひらひらと泳いでいてかわいかった。元気に育ってほしい」と話していた。放流は県が主催し、7月までに唐津市や伊万里市の海岸など7カ所で行われる。

*1-6:http://www.chunichi.co.jp/article/toyama/20160209/CK2016020902000029.html (中日新聞 2016年2月9日) サケ稚魚放流 帰ってこいよ! 小矢部・津沢小児童
 小矢部市の小矢部川左岸にある津沢大堰公園で八日、サケの稚魚三万匹が放流された。地元の津沢小学校の五年生四十三人が「帰ってこいよ」と、大海へ向けて送り出した。稚魚は小矢部川漁協小矢部地区が提供。昨秋、遡上(そじょう)したサケから採卵し、流域の人工孵化(ふか)場でかえして、体長二~三センチに育てた。役山隆地区長が「小矢部川にもサケが上がってくるようになった。関心を持ってきれいに保つようにしてください」とあいさつ。組合員らから稚魚を入れたバケツを受け取った子どもたちは、川べりで順番に中身を空けていった。順調なら、サケは体長四〇~五〇センチに育ち、三、四年後に戻る。地区の放流は二〇〇八年に始まり、今年で九回目。

*1-7:http://www1.saga-s.co.jp/news/saga.0.1915897.article.html
(佐賀新聞 2011年5月25日) 小学生が農業体験 予想以上のタマネギ収穫ににんまり
 神埼市千代田町の千代田中部小(永渕由利校長)で24日、農業体験があった。5、6年生約80人が校内の畑で育てたタマネギを収穫し、「おっきくて重い」と歓声を上げた。収穫を指導したのは、三神地区の若手農業者でつくる4Hクラブ神埼地区のメンバー5人。「収穫したタマネギは上の葉と下の根を切って」と説明すると、子どもたちは早速畑に入り、収穫と運ぶ作業を繰り返した。メンバーたちは「持ってきたコンテナ20個じゃ足りない」と大玉ばかりの収穫に驚(おどろ)き、予想の300キロを大幅に上回る約730キロを収穫した。5年の森山由貴さん(10)は「収穫には結構力がいるけど、大きなタマネギでうれしかった」と話した。

<新資源の開発、林業>
*2-1:http://qbiz.jp/article/75957/1/
(西日本新聞 2015年12月1日) 木材輸出で広域連携 九州の森林組合など
 スギやヒノキなど国産木材の輸出で広域連携の動きが進んでいる。規模拡大でコストを削減し、国際競争力を高めるのが狙い。中国での木材需要増加や円安を追い風に、今後も県レベルの連携が活発化しそうだ。財務省によると、2014年の木材の輸出額は前年比45%増の178億円となり、2年連続で過去最高を記録した。政府は20年までに輸出額を250億円にまで伸ばす計画だ。鳥取港(鳥取市)ではことし10月、中国山東省に向け住宅用建材のスギの丸太約1万5千本を輸出した。鳥取港から木材を輸出するのは初めて。建築資材の卸売業者「エコ開発」(鳥取市)が、兵庫、鳥取、岡山の3県の業者などと手を組み、実現した。今後も定期的に船を出すという。荒川正臣相談役(77)は「日本産の木材は形が整っていて、中国でも人気が高い。地方の林業と鳥取港の活性化につなげたい」と話した。鹿児島と宮崎の両県では11年に、複数の森林組合などからなる「木材輸出戦略協議会」を結成し、スギの丸太を中国と韓国向けに輸出。14年度は11年度に比べて約7倍の約30万本を輸出するなど、成果を上げている。長崎県森林組合連合会(諫早市)は14年度、伊万里港(佐賀県伊万里市)から中国に約5万本のスギやヒノキの丸太を輸出しているが、本年度中に福岡、佐賀の両県の森林組合連合会と連携し、輸出拡大を図る。四国では徳島、高知両県の木材関係の組織などが協力し、甲浦港(高知県東洋町)からスギの丸太を輸出する計画がある。

*2-2:http://qbiz.jp/article/76601/1/
(西日本新聞 2015年12月10日) 放置の竹で新産業育成 薩摩川内市と中越パルプ協定
 鹿児島県薩摩川内市と中越パルプ工業(富山県)は9日、地域資源の竹の調達や製品開発に関する連携協定を結んだ。市が目指す放置竹林を活用した新産業育成を加速させ、同社が開発した竹製の新素材の普及も後押しする狙いだ。林野庁の統計によると、県内の竹林面積は全国トップの1万6千ヘクタール。特に同市など県北部に多いとされ、所有者の高齢化による放置竹林の拡大が問題となっている。市は7月、竹資源の活用を目的に市内外の企業など57団体による協議会を設立。竹製の高機能材料や製品開発を進めている。市内に製紙工場が立地する中越パルプは1998年から竹を使った製品研究に着手。県内農家など2千人から年2万トンの竹を集め、竹紙を製造している。竹の繊維を細かくした新素材も開発。鉄より軽く強度がありガラスの代用品や自動車ボディー素材への利用が期待されるが、製品化は進んでいない。中越パルプも協議会メンバーで、協定は協議会の参加企業に対する竹の供給や新素材などを使った製品開発のノウハウ提供を盛り込んだ。薩摩川内市の岩切秀雄市長は「困りものの竹資源のさまざまな展開が期待できる」と歓迎。中越パルプの加藤明美社長は「竹資源の活用が進めば、雇用拡大にもつながる」と話した。

*2-3:http://qbiz.jp/article/77884/1/ (西日本新聞 2016年1月3日) 放置の竹、余さず資源化 住宅用建材、燃料、消毒剤 熊本に工場建設へ
 放置竹林を活用し、竹の堅い繊維質を生かした住宅用建材などに加工する事業が、熊本県内の建設業者の呼び掛けで始まる。拠点となる敷地面積約4万平方メートルの工場を熊本県南関町に建設。建材に使われない部位も、バイオマス発電や消毒剤に活用する計画だ。伐採には、熊本県北部と福岡県南部の関係自治体が協力する。竹を余すことなく資源として使い切る試みは全国でも珍しく、竹林の拡大を抑えるモデルケースとして注目されそうだ。呼び掛けたのは、熊本県玉名市の建設業山田浩之さん(48)。山田さんは、熊本城周辺を手作りの竹灯籠で彩るイベント「みずあかり」(10月)に携わっており、イベントの賛同企業などから出資を募って運営会社を設立した。1月末にも工場の建設に着工する。林野庁によると、竹は繁殖力が強く放置された竹林の拡大が社会問題化。特に九州は竹林面積が広く、福岡、熊本両県はともに1万ヘクタールを超え、全国でもトップクラスになっている。山田さんはこれまでに、熊本県の玉名市や山鹿市、和水町、福岡県みやま市などと連携協定を締結し、伐採に向けた竹林の調査を進めてきた。今後、関係自治体と伐採用の作業道整備などで連携を深める考え。事業では、伐採した竹を幹と枝葉、表皮の三つに分類し、幹の部分をチップ化して住宅用建材に加工する。杉の樹皮を加えた「ナンカンボード」など、独自製品も開発した。建材の加工工場に隣接してバイオマス発電施設も建設。加工の際に生じるくずや枝葉を燃料として使用する。殺菌力のある表皮の部分は消毒剤などに活用する。また、竹の安定確保に向け、福岡、熊本両県の各所に1次加工施設を設置。地元の事業者などが伐採した竹を1本300〜400円程度で買い取る。南関町の工場は2016年末に完成予定。ナンカンボードなどの販売は17年に始める。山田さんは「森林を侵食する厄介者を資源化する『バンブーフロンティア(竹活用の新天地)』を九州に築きたい。将来的には、九州産の建材を台湾やインドネシアなど海外にも売り込んでいく」と話している。

<新資源の開発、ジビエ>
*3-1:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO79856470Y4A111C1000000/ (日経新聞 2014/11/21)珍味ではなくなった 野性味あふれるジビエの魅力、国産普及、害獣対策にも一役
 先日、駅ナカのハンバーガーショップ「ベッカーズ」に入ったところ、カウンターのメニューの「ベッカーズ別格」が目に飛び込んできた。「信州ジビエ鹿肉バーガー 690円」。通常のハンバーガーより300円も高い。迷わずにジビエバーガーを選んだ。
■クセ・生臭さなし 驚くほど淡い味
 「焼くのに10分ほどお時間をいただきます」。「別格」を名乗るだけあり、ファストフードには珍しい重厚感がある。あるいは頼む人が珍しく、作り置きでは廃棄のリスクが高すぎるのかもしれない。ハンバーガーが到着する。外観だけでは普通の牛肉ハンバーガーと大きな違いはない。パンと肉の合間から顔をのぞかせた大ぶりな信州あわび茸(たけ)がいかにも秋の風情を醸し出している。ガブリとかじりつく。ジビエ(野生動物)から連想されるクセの強さ、生臭さは感じられない。むしろ驚くほど淡い。玉ネギの甘みの方がよほど自己主張が強い。それでも味覚を研ぎ澄まし、何とか「鹿肉らしい滋味」を感じようと集中する。時たま、独特の野性味が口内をよぎる。少なくともそんな気がする。情報社会において、人はモノ自体を享受しているのではなく、情報を消費しているというのが定説だ。「モノではなくコト(ストーリー)を売る」といったマーケティング手法も情報による付加価値アップを説いたものだ。大切なのは「自分が食べているのは信州の鹿肉なんだ」という情報である。そこに通常のハンバーガーとの差額300円の価値がある。
■普及へ行政も後押し
 「ベッカーズ」と「ベックスコーヒーショップ」を展開するJR東日本フードサービス(東京・北)が長野県産鹿肉を使ったメニューを提供し始めたのは2011年。当初は3店舗だけだった取扱店舗が100店にまで拡大したのは、こうした価値観を共有する人が多いからに違いない。JRにジビエの活用を提案したのは長野県蓼科高原で「オーベルジュ エスポワール」を経営する藤木徳彦シェフだ。観光客が減る冬の集客対策として10年前から地元の鹿肉などを使った料理を出し始めた。やがて県から料理店向けにジビエの調理法を教えるセミナー依頼などが入るようになる。行政も曖昧だった衛生管理のガイドライン策定などで後押しし、「信州ジビエ」が広がった。現在はNPO法人「日本ジビエ振興協議会」(埼玉県三郷市)の代表も務め、ジビエ普及のために全国各地を行脚する。「ジビエ」とはフランス語で狩猟の対象となる野生の鳥獣類を意味し、牛や豚、鶏、羊など家畜類と区別される。貴族が自らの領地で狩った獲物を食材にしたのがルーツで伝統、格式ともに申し分ない。貴族にとっては豊かな土地と腕の良い料理人を持つ証しでもあり、ステータスシンボルとなっていたようだ。
■背景に天敵オオカミの絶滅や猟師の高齢化
 ところが最近、珍味とみなされがちだったジビエ料理が日本でも広がりつつある。最大の理由は野生動物が増えていることだ。温暖化で冬が過ごしやすくなったこと、天敵であるニホンオオカミの絶滅、猟師の高齢化などが原因といわれる。シカやイノシシを中心とした12年の捕獲頭数は約80万頭で10年前から2倍以上に増えた。「猟師さんが獣肉処理施設に売るシカの値段は15年前には1頭10万円ぐらいした。今は1万円しかしない」(藤木さん)。一方、鳥獣類による14年度の農作物の被害は全国で70万トンと10年前の1.8倍に増えた。従来、ジビエ食材は輸入に頼ることが多かったが、捕獲した国産ジビエを活用すれば「害獣」が「食材」に変わる。長野県、岡山県、和歌山県、鳥取県などは地域ぐるみでジビエ振興に取り組んでいる。運動量が多いジビエは高たんぱく低カロリー、鉄分も多い。美肌効果もあるとかで、女性誌が取り上げることもある。最近の赤身肉ブームも追い風だ。
●100グラムあたりの成分比較   シカ赤肉  乳牛モモ肉
    エネルギー(キロカロリー)     110      140
    タンパク質(グラム)         22.3     21.9
    脂質(グラム)             1.5      4.9
    鉄(ミリグラム)             3.1      2.7
■皿全体で動物の住環境を表現
 「料理人にとってもジビエは楽しい」と藤木さんは言う。「品質が一定の牛や豚に対し、ジビエはサイズも肉質も個体差が大きい。モノを見て、どう料理すれば一番良さが引き出せるかを考え、工夫する面白みがある。無駄なくすべてを使い切り、盛り付けなど皿全体でその動物が住んでいた環境を表現するのがジビエ料理の哲学。そういう部分も含めて楽しんでほしい」。濃厚な味わいの赤身が印象的なシカ肉、対照的に甘みのある脂身が魅力の猪肉は年間を通して提供している。狩猟が解禁される11~2月は最盛期だ。仕入れの状況次第では「ジビエの王様」とされるヤマシギ、コジュケイ、マガモ、スズメ、ハトなどもある。
■「カンガルーは鹿より筋肉質」
 ジビエ料理を楽しめる店は都心でも盛況だ。スパイスワークス(東京・港)が東京と大阪で4店を展開する「炉とマタギ」は「初心者のためのジビエ料理」がコンセプト。北海道十勝地方のトムラウシで捕獲して太らせた蝦夷鹿(えぞしか)のほか、猪などを盛り合わせた「マタギの三獣奏」や「蝦夷鹿モモ肉の串焼き」が定番だ。他店ではなかなか食べられないのはオーストラリア産カンガルー。鹿肉以上に筋肉質で、繊維が太い印象だ。「カンガルーはぴょんぴょん跳びはねてるからね。鹿よりも筋肉があるんでしょう」と大将の福本渡さん。かなりアバウトだが妙に説得力のある解説だ。市場が確立している牛や豚と違い、流通経路が定まっていないジビエは、猟師の仕留め方や直後の処理によって味が大きく左右される。漁獲手法や締め方により価値が変わる鮮魚と同じ理屈だ。「適切に処理されず、生臭くなったジビエを食べて悪い印象を持ってしまう人も残念ながら多い」と藤木さんは話す。水産の世界では天然魚を養殖魚よりも格上とする「天然信仰」が根強く残っている。それは味や身質の問題だけでなく、春夏秋冬で旬が変わる季節感や大海原を回遊するロマン、全国各地や遠洋まで及ぶ産地への旅情のようなものが混然一体となった価値だろう。ジビエにも似たような楽しさがある。

*3-2:http://www.yomiuri.co.jp/hokuriku/feature/CO006633/20150220-OYTAT50029.html (読売新聞 2015年2月20日) 県産ジビエブランドに
●斬新メニュー、誘客狙う
 北陸新幹線金沢開業を機に、石川県などは、県内の豊かな食文化をPRする一環として野生鳥獣の肉「ジビエ」の活用を進めている。19日には、県内で捕獲されたイノシシやシカの獣肉を使ったローストやお茶漬けなど斬新なメニューの試食会が金沢市のホテルで開かれた。関係者は「いしかわジビエ」ブランドを確立し、新幹線開業後の誘客につなげたい考えだ。県内では近年、イノシシによる被害が目立ち、水稲やジャガイモなどの食害のほか、田畑を転げ回る「ぬたうち」の被害もある。農作物被害金額は2007年の1191万円から14年は9145万円に急増。捕獲数も07年の655頭から13年の2684頭に増えた。県は昨年7月、有害鳥獣の駆除を進めながら「ジビエ料理」を普及させる狙いで、猟師や料理関係者らとともに「いしかわジビエ利用促進研究会」を発足させ、メニューやレシピ作りを進めてきた。県内では、ジビエ料理をブランド化して町おこしにつなげようとする動きもある。白山市商工会青年部は、イノシシの肉を「白山麓猪(いのしし)」と名付け、白山麓旧5村にあるホテルや旅館、レストラン計12施設で、イノシシを使った料理の提供を始めたほか、生肉、薫製など加工品の販売、牙や皮などを生かしたグッズの販売などを行っている。白山市の旧5村の観光協会で作る「白山ふもと会」は、イノシシやクマを食肉として加工する解体場を12年に建設。白山猪は、白山の清涼な水や木の実を食べて育つため、肉は柔らかく、甘みがあるという。同青年部部長の山本隆俊さんは「多くの人がイノシシを食べることが駆除につながり、農業被害の減少になれば」と期待する。加賀市の伝統のジビエ「坂網鴨(さかあみがも)」も注目される。国内有数のカモの飛来地で、ラムサール条約登録湿地でもある片野鴨池に飛来するカモをY字型の坂網で捕獲する伝統猟法は、江戸時代から続く。鉄砲と違って身が傷つかないため、同市出身の料理人・道場六三郎さんは「最高の食材」として激賞する。市は、地元や東京で食談会を開くなどし、「坂網鴨」のブランド化を進めている。

<畜産>
*4-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36534 (日本農業新聞 2016/3/7) TPPで“守り”重視 畜産、中山間に独自支援 16年度都道府県予算案
 47都道府県の2016年度予算案が出そろった。農林水産予算は、日本農業新聞の調べで、29都道府県が前年度より増額となった。環太平洋連携協定(TPP)合意を受け、大きな影響が懸念される畜産や中山間地域などへの独自支援が目立つ。“攻め”の対策が目立つ国に対し、“守り”を重視しているのも特徴だ。米の主産県では、18年に迫った生産調整の見直しを念頭に、園芸産地の育成支援に力を入れているところが多い。15年度補正にTPP対策を盛り込んだ県もある。農林水産予算が増えたのは、国のTPP対策の畜産クラスター事業や園芸パワーアップ事業を県予算で計上したことも大きな理由とみられる。TPPでは、肉用牛・酪農の繁殖基盤対策に取り組む県が目立つ。兵庫県は「但馬牛」2万頭増頭へ、大規模畜舎の整備などに1億5000万円を計上。滋賀県は「キャトルステーション整備支援事業」(7900万円)で増頭を支援する。畜産クラスターが担い手に軸足を置く一方、鳥取県は6500万円を確保し小規模家族経営に独自支援するなど、対象を柔軟にする動きもある。北海道は、放牧酪農の推進へ15年度補正で7600万円を確保した。効率化・規模拡大が難しい中山間地域への目配せもみられる。岩手県は5000万円を確保し、同地域の基盤整備を進める。山形県も農地保全や新規作物の導入に合計7200万円を計上した。果樹の改植支援で福岡県は、極早生ミカンの優良品種にも使えるよう独自事業を仕組む。柔軟に使える基金を造成した県もある。徳島県は「農林水産業未来創造基金」に5億円を計上し、16年度は3億円取り崩す。愛媛県は「農林水産業体質強化緊急対策基金」に25億円を積み、5億円を16年度使う。地域資源に着目した動きも強まっている。長野県は、県産品のブランドを高め外国産と置き換えていく。観光など地域経済の活性化につなげる考えだ。地方創生で農業の役割を重視し、6次産業化を支援する県も多い。一方で“攻め”の対策を打ち出す県もある。新潟県は、水田フル活用、農地中間管理機構(農地集積バンク)を通じた集積を加速し、出し手農家には野菜・果樹への転換を促す。3億円を計上した。愛知県は「あいち型植物工場」を県内50カ所に設置する計画で1億2000万円を確保。石川県は、製造業のノウハウを農業に取り入れ、成長産業化を目指す。6700万円を計上した。米政策でも主産県の独自事業が目立っている。秋田県は園芸品目の拡大へ団地のネットワークをつくる。6200万円を計上した。富山県は県内JAが水稲以外の戦略作物を定めるのを、970万円確保し支援する。岡山県は飼料用米の1割増収など低コスト化多収技術の開発を進める。

*4-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36015 (日本農業新聞 2016/1/19) 草地整備で飼料増産 大区画化など164億円 クラスター推進へ農水省
 農水省は飼料作物の収量を増やし、地域一体で畜産の収益拡大を目指す「畜産クラスター」を後押ししようと、草地の基盤整備へ重点支援に乗り出す。大区画化で作業効率を高め、適期収穫もしやすくすることで、単位収量を25%以上増やすのが目標。環太平洋連携協定(TPP)の発効後を見据え、自給飼料の安定生産体制を整えることで、畜産経営の体質強化を目指す。畜産物はTPPで関税の大幅削減が決まり、国際競争力の強化が重要課題となっている。同省は飼料生産基盤を強化し、足腰の強い畜産経営を実現しようと、2015年度補正予算案の農業農村整備(土地改良)事業に草地整備関連費として164億円を計上した。補正予算案にTPP対策の目玉として盛り込んだ畜産クラスター事業(畜産・酪農収益力強化整備等特別対策事業)と連携し、収益向上に向けた畜産クラスター計画を策定した地域が対象。生産コストの低減へ飼料の増産を目指す地域に、草地や畑の区画整理や暗きょ排水などを施す。柱の一つが、大型機械による作業に対応できる基盤整備だ。①草地と畑の一体的整備②草地の大区画化③排水不良の改善――などを支援し、生産性の大幅な向上につなげる。同省はコントラクター(農作業受託組織)や担い手を耕作者と想定する。これらの工事の補助率は原則、事業主体が国の場合は3分の2、それ以外は2分の1。同省は「圃場(ほじょう)が点在し生産効率が悪い地域がある。大区画化を進め、収量向上に結び付けたい」(飼料課)と説明する。この他、北海道向けの支援として、水はけが悪い泥炭地帯にある草地への排水施設の整備や、家畜ふん尿からスラリー(液状きゅう肥)を作る「肥培かんがい施設」の整備にも助成する。

<6次産業化>
*5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=35976 (日本農業新聞 2016/1/15) 宅配弁当で地域守る 年間通じ働く場も 栃木県下野市の女性グループ
 栃木県下野市の女性農業者や管理栄養士の女性11人でつくる企業組合「らんどまあむ」が作る、地元野菜を使った日替わり弁当が人気だ。健康に配慮し塩分は2.7グラム以下に抑え、高齢者宅に配達し、体調に変化はないか見守り活動も担っている。母ちゃんたちの試みは口コミで評判となり、当初は1日に数十食だった注文も、多い時で700食を超えるほど。食を通して自分たちが年間通して働ける場をつくり、地域の健康を支えている。「らんどまあむ」は地元農業をPRしようと、2011年に発足。中心となるのは、女性農業士の大越歌子さん(60)と大高京子さん(58)、管理栄養士の大沼スミエさん(60)。農閑期は女性が働ける場所がなく、市外にパートに出掛ける状況に危機感を抱いた大越さんと大沼さんが、道の駅しもつけのオープンを機に立ち上がった。日替わり弁当の14日のメニューは、「豚のしょうが焼きとゴボウサラダ」。ゴボウは地元農家から仕入れ、ご飯は大越さんが栽培した米を使った。価格は宅配料込みで1食520円。宅配と同時に「体調はどうですか」などと声を掛けて、健康状態を気遣っている。市から弁当代の補助が出るため週3回、毎回40人ほどの高齢者が利用している。最近では口コミで弁当の良さが広がり、保育園や子どもらが集まるイベントなどでの注文も増えているという。加工品も開発した。ニンジンとゴボウを鶏肉と特産のカンピョウで巻いた八幡巻きや、ゴボウをしょうゆなどで漬け込んだ「ごぼうのたまり」など20種類ほどを道の駅で販売する。大越さんは「食で地域の人々の健康を支えていきたい。今後は、若い女性の働く場所もつくっていきたい」と抱負を語る。


PS(2016年3月10日追加):上のほか、*6のグリーン水素ネットワークモデルは、自然エネルギーが豊富な地方の新しい収入源になりそうだし、下の写真や*7のようなロボット・農機の開発は、今後有望で海外展開も期待できそうな分野だ。

*6:http://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/hydrogen-network.html (福岡市HP 2015年6月12日更新)「地産地消型グリーン水素ネットワークモデル」構築に着手!~全国に先駆け、再エネ導入拡大に向けて「水素エネルギーによる電力貯蔵システム」のビジネスモデル構築を目指します~
 福岡県では、「福岡水素エネルギー戦略会議」(※2)を設立し、他の地域に先駆けて水素エネルギー社会実現に向け取り組んできました。 水素エネルギーは、電力を大規模かつ長期間にわたって貯蔵できるポテンシャルがあることから、出力変動が大きい再生可能エネルギーの導入拡大に資するものとして有望視されています。本県では、平成25年2月に有識者による「地域エネルギー政策研究会」(※3)を設置し、分散型電源や高効率発電の普及、エネルギーの効率的利用の促進などにおける地方の役割や取組みを幅広く研究してきました。今年3月に取りまとめられた報告書では、「水素エネルギー分野で世界を先導する福岡県において、産学官連携の下、水素エネルギーによる電力貯蔵システムの開発・普及を積極的に進めるべきである。」という提言がなされたところです。このような状況のもと、この度、福岡県では、経済産業省の支援を受けて、豊田通商株式会社、九電テクノシステムズ株式会社、九電みらいエナジー株式会社、西日本環境エネルギー株式会社、国立大学法人九州大学とともに、再生可能エネルギーの導入拡大に向け、水素エネルギーによる電力貯蔵システムのビジネスモデル構築に着手することとしました。今年度は事業計画を策定し、来年度以降、県内の工場等に水素製造装置や水素利用機器を設置し、電力のピークカットや変動する再生可能エネルギーの出力の平準化するための水素利活用モデルの構築を目指します。
※1:地産地消型再生可能エネルギー面的利用等促進事業費補助金(構想普及支援事業)
 経済産業省平成26年度補正予算事業(1事業当たり、定額3,000万円)。民間事業者や地方公共団体等が、地域の実情に根ざした地産地消型のエネルギーシステムの構築を進めるために実施する事業化可能性調査及び事業計画策定を支援し、地産地消型のエネルギーシステムの加速的な導入・普及につなげることにより、システム構築に関するノウハウの共有化及び他地域への展開を図ることを目的として、事業計画策定を支援するもの。
※2:福岡水素エネルギー戦略会議
 水素の製造、輸送・貯蔵から利用までの一貫した研究開発や社会実証、全国唯一の人材育成などに取り組む全国最大の産学官連携組織(2004年8月発足)。2015年6月1日現在、757企業・機関が会員として参加。会長は、新日鐵住金株式会社 柳川 欽也(やながわきんや)代表取締役副社長
※3:福岡県地域エネルギー政策研究会
 平成25年2月23日に設置。座長は、東京大学公共政策大学院日下 一正 客員教授。報告書では、福岡県において新たなエネルギー社会を先導して実現するため、   
  (1)エネルギーを無駄なく最大限効率的に利用する社会の実現
  (2)環境にも配慮したエネルギーが安価かつ安定的に供給される社会の実現   
  (3)水素を本格的に利活用する水素エネルギー社会の実現
  (4)新たなエネルギー関連産業の育成・集積による地域振興・雇用創出
を目指した課題が整理されるとともに、その課題を解決するための取組みに関し幅広い提言が行われている。

   
 芝刈りロボット(ホンダ)              農業用草刈り機(オ―レック)

*7:http://qbiz.jp/article/76368/1/ 
(西日本新聞 2016年3月10日) 【ロボットの波(上)】マンパワーの“聖域”にも
 ロボット化に「第3の波」が来ている。注目すべきは、マンパワーに頼ってきた「組み立て工程」だ。「関東より人件費が安い」(大手自動車メーカー)ため、九州には大手の組立工場が集まり、雇用の受け皿となってきた。だが、インターネットを駆使する欧米の動向や、将来の労働力不足懸念に背を押され、機械に置き換わりつつある。デジタルカメラ生産の「完全自動化」を掲げるキヤノン(東京)に続く動きが九州で広がる。
■生産の質を向上
 2人の作業員が、鉄製のギアとチェーンを金属ケースにはめ込んでいた。四輪駆動の草刈り機の組み立て工程の一部だ。ここは、オーレック(福岡県広川町)本社工場。国内有数の草刈り機メーカーの同社は2016年2月、車輪の駆動に必要な「チェーンケースカバー」の組み立てを自動化する。ロボット導入は25年ほど前から進めてきたが、溶接や塗装といった「前工程」と呼ばれる部品製造ばかり。作業が複雑で、製造する製品の切り替えなど、人の判断を伴う「後工程」と呼ばれる組み立てでは、「初めて」という。目的は「生産性の向上」。農家の高齢化が進む中、草刈り機の需要は高まり、生産が追いつかない。第2工場を本社敷地につくり、製造ラインを現在の二つから三つに増設。来年3月をメドに生産能力を1・5倍に引き上げ、「量」を拡大するとともに、ロボット導入で生産の「質」も向上させる。
■普及のモデルに
 計画では、人間の両腕のような「双腕ロボット」と、関節が六つある片腕の「六軸ロボット」を導入する。数千万円かかるが、作業のほとんどを自動化でき、工程管理上の作業員は現在の「2人」から、「0・5人」に省力化。生産能力は20%増えるという。ロボットの低価格化と性能向上で、これまで人手に頼ってきた組み立て工程も、自動化が可能になりつつあるという。約100種類の草刈り機を製造する同社。今回の自動化は、傾斜地向けの主力機種「スパイダーモアー」だけだが、同社はこれを普及の「モデル」として、他の機種や、別の組み立て工程にも導入していきたい考えだ。人口減で将来、労働力不足が懸念され、安定生産の地盤を固める必要もある。「もうここしかない」。同社幹部は人の姿が目立つ組み立て工程を見渡した。
■キヤノンに続く
 今年1月、政府は今後5年の成長戦略となる「ロボット新戦略」を策定した。産業面では、中小企業の「組み立て工程」や「食品加工」を「労働集約的製造業」と位置づけ、ロボット導入を進める構え。マンパワーに頼ることが多く、雇用の受け皿となる“聖域”と呼ばれる分野だ。背を押すのは、欧米の動向だ。ドイツが国家プロジェクトとして仕掛ける「インダストリー4・0」。「第4次産業革命」と呼ばれ、センサーやネットワークを駆使し、工場の完全自動化を進める。部品の在庫がなくなりかけると、センサーが感知し、ネットを通じて部品を発注。生産を絶やさない。トヨタ生産方式の「ジャスト・イン・タイム」(カンバン方式)のネット版と言える。米国も、こうしたモノをインターネットでつないだ「IoT」技術の導入で先行する。日本では、キヤノンが2018年をメドに、大分キヤノン(大分県国東市)など九州の子会社3社で生産するデジタルカメラの組み立てを完全自動化する。人工知能(AI)やIoTをフル活用し、成長力を押し上げる狙いだ。「波」は、中小企業にもじわりと広がる。今夏、経済産業省が中小企業を主な対象にロボット導入の助成事業を行ったところ、九州から6社が手を挙げた。オーレックもその1社だった。

| まちづくりと地域振興::2015.5~ | 03:35 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.3.6 男女雇用機会均等法ができたにもかかわらず、女性の登用が進まなかった本当の理由は何か? (2016年3月7、9、11、12日に追加あり)
   
2013.11.15朝日新聞   2015.11.19 地方議会議員     社会保障への対応   
                    朝日新聞   の女性割合

     
 多方面の男女格差  年齢別・男女別平均年収     非正規雇用者数とその増減

(1)女性総合職1期が8割も退社した理由
 *1のように、最初の男女雇用機会均等法が施行された1986年に入社した現在50代前半の女性総合職は、約30年経った2015年10月には約8割が退職していたそうだ。多くのメディアは、その理由を、①長時間労働などの慣習が変わらなかったから ②育児と仕事の両立支援が遅れたから などとしているが、最も大きな理由は、雇用における女性差別の禁止を「努力義務」に留め、男女雇用機会均等法をザル法化して、企業が女性の活躍を本当の意味では推進しなかったからである。しかし、1989年には「1.57ショック」があり、このままでは女性が仕事か子どもかを選ばされて少子化するという統計上のメッセージは出ていたが、これは無視された。

 この間、女性が結婚や出産を機会に退社せざるを得なかった背景には、まだ社会全体に残っていた家制度に基づく古い価値観(嫁は家の女と書く)があり、また、団塊の世代が働き盛りで男性だけでも雇用が満杯だったため、政府や日本企業は、本音では女性を雇用の調整弁として女性に寿退社を薦めていたことがある。これは、*3-1の「結婚したら仕事を辞める、それが私という女の生き方」として、結婚後は個性的なスター歌手から専業主婦になった山口百恵が英断として褒められ、松田聖子のように結婚しても引退しない歌手は徹底的に叩かれるという社会的風潮があったことからも明らかだ。

 また、最初の男女雇用機会均等法が創られた1986年には、*3-2のように、基礎年金制度ができて、厚生年金や共済年金に加入している者に扶養されている20~60歳の配偶者は、保険料の負担なしで基礎年金を受け取れるようになり、これは給与所得者の専業主婦に有利に働いた。

 そして、これらが、家族や社会から評価されて初めて働き続けられる日本女性の仕事の継続に不利に作用したことは言うまでもない。

(2)最初の男女雇用機会均等法について
 *2-1に、1982年に労働省婦人少年局長に就任して、最初の男女雇用機会均等法の成立に奔走された赤松良子さんの話が出ている。私は、1985年頃から赤松さんと東大の女子同窓会でお会いして何度か話をする機会があったが、労働省内にすら雇用の男女平等のための法律をつくることには根強い反対論があり、「女は家にいるのが幸せ」と考える人が多かったそうだ。そして、その後の行政改革で労働省と合併した厚生省は、労働省にもまして、その傾向が強かったと他の先輩から聞いている。

 そして、*2-2のように、最初の男女雇用機会均等法は徹底していなかったため、女性の中にも反対する人が多く、赤松さん自身も「満足する中身ではなく、後輩に改正を託す」と言っておられる。しかし、最初の男女雇用機会均等法の成立により、とにもかくにも、*6の国連女子差別撤廃条約への批准手続きを進めることはできた。

 しかし、この時点で、日本企業は総合職と補助職(現在は一般職と呼ばれている)の区分を作り、大半の女性を補助職、一部の女性だけを総合職として男性に近い昇進の機会を与えた(ただし、全く同じではなかったため、むしろ男性より負担が多かった)。つまり、日本企業は、総合職と補助職を分けるという方法で、最初の男女雇用機会均等法を骨抜きにしたのである。

(3)1997年改正の男女雇用機会均等法について
 (私が当時の通産省に提案して)1997年に、*4の男女雇用機会均等法改正が行われ、1999年4月1日から施行された。これにより、職場における募集・採用、配置・昇進、教育訓練、福利厚生、定年・退職・解雇における女性差別が全面的に禁止されたが、この改正時は不思議なほど抵抗がなかったと赤松さんが言っておられた。実は、その理由は、女性を社会で活躍させることを、女性の人権保護としてではなく、経済に好影響を与えるという論理で説明したからである。

 つまり、日本には、経済発展はしなければならないが、女性の尊厳や人権の保護、男女差別の撤廃などは疎かにしてもよいと考える風潮があり、これは民主主義については開発途上国もいいところなのである。そして、1999年4月1日からの改正男女雇用機会均等法施行後には、経産省や日本企業は、非正規社員・派遣社員という改正男女雇用機会均等法で守られない人の割合を増やすことによって、改正男女雇用機会均等法を骨抜きにした。

(4)日本で女性の登用が進まなかった理由
 上のグラフや*5で示されているように、世界経済フォーラム(WEF)の男女格差(ジェンダーギャップ)指数は、日本が世界145カ国中の101位でG7では最下位だったそうだ。その理由は、1979年に国連で採択され、1981年に発効した女子差別撤廃条約に批准して後、他の国はまともな対応をしてきたのに、日本は(1)~(3)のように、女子差別撤廃条約や男女雇用機会均等法を形骸化し、ザル法化することに専念してきたからである(日本には女子差別撤廃条約には拘束されないという主張もあるが、条約は国内法に優先するため、締結国は条約を守らなければならない)。

 そのうち、「政治への参加118位」「経済活動への参加と機会104位」は著しく低く、「教育91位」も社会の“常識”を反映するせいか意外に低く、「健康と生存34位」がまあまあといったところだ。特に、女性の政治家が少ないのは、少子化対策を産めよ増やせよ論にすり替え、社会福祉や安全な食品を疎かにして、無駄な土木や原発などの有害無益なものにうつつをぬかしている現在の政治の根本原因であるため、私も、女性議員が少なくとも3割に達するように当選させる仕組みを考えることは、日本の政治経済に真に有効だと考える。

<最初の男女雇用機会均等法の成果>
*1:http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=351228&nwIW=1&nwVt=knd (高知新聞 2016年2月1日) 【均等法1期生】なぜ8割も退職したか
 働く女性を取り巻く状況を浮き彫りにする数字だ。男女雇用機会均等法が施行された1986年に大手企業に入社した女性総合職のうち、昨年10月時点で約80%が退職していたことが共同通信の調査で分かった。この30年間に一定の前進があったとはいえ、女性が子育てなどを機に退職する「M字カーブ」の基本形は変わっていない。安倍政権は成長戦略に女性の活躍を掲げるが、過去の反省も踏まえ働き続けることができる環境を着実に整備することが欠かせない。募集、採用、昇進などでの性差別を禁じる均等法は、憲法がうたう男女平等を働く場でも保障する意味がある。それまでは男女別採用、女性だけの若年定年制、結婚退職制もあったから、女性の働き方を大きく変えることが期待された。その代表と言えるのが企業の幹部候補生である女性総合職だが、86年入社の均等法1期生は、約30年後には大半が職場を去っていた。法の想定とは大きく異なる。これには差別禁止を企業の「努力義務」にとどめた法の不備も絡んでいるが、問題なのは「義務」とした99年の法改正後も基本的な構造が変わらなかったことだ。調査では99年採用の女性総合職のうち74%が退職していた。この世代は現在は40歳前後で、これから介護などに直面すると、その割合はさらに上がる恐れがある。無論、均等法には効果もあった。女性の結婚退職はかなり減ったし、企業や役所では管理職への起用が徐々に増えている。それでも働く女性の課題は多い。それを象徴するのは、以前から指摘される「M字カーブ」であろう。総務省が2013年に実施した調査によると、女性の就業率は25~29歳が約75%と最も高いが、30~39歳は60%半ばまで低下、40歳以上で再び70%台に戻っている。かつてほどの深い谷ではないとはいえ、出産の前後に退職する人が多いことを物語っている。共働き家庭では家事、育児、介護が依然、妻に集中する傾向があり、仕事との両立は容易でないのが現実だ。均等法施行から3年後の89年には1人の女性が生涯に産む子どもの数が、当時としては記録的に減少した「1・57ショック」があった。これを受けた少子化対策では、子育て支援を中心とする新旧のエンゼルプランなどが策定されている。それでも共同通信の調査では、2007年採用の女性総合職の42%が既に退職している。大手企業がこんな状況なら、中小・零細企業ではどうなっているのだろう。安倍内閣は女性活躍推進法や第4次男女共同参画基本計画などを通じて、女性の活躍できる社会づくりを目指している。それには長時間労働など男性の働き方も見直す必要がある。これまでずっと事態の改善を阻んできた構造にもメスを入れることだ。

<最初の男女雇用機会均等法>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASHB655CBHB6ULFA014.html?iref=reca
(朝日新聞 2015年10月12日) 〈証言そのとき〉男女平等を求めて:4 政・財界に強い反対論
 1982年に労働省の婦人少年局長に就任しました。のちの「男女雇用機会均等法」の法制化に向け、一気に走り出そうと思いましたが、なかなかうまくいきませんでした。
――労働省内にすら、雇用の男女平等のための法律をつくることに根強い反対論があった。
 省内もほとんど男性ですから。女性が男女平等を叫ぶのはあんまりうれしくないわよね、誰だって。それでも良識ある人は「そうは言ってもご時世だから」ってあきらめたけど、あきらめきれない人もいたのね。「わざと過激な中身にした方がつぶしやすい」なんて悪知恵を出していた人もいたそうです。当時の大野明大臣も「女性は家にいるのが幸せ」という価値観の持ち主で、男女平等なんて大嫌いな人でした。だから省内でも「そんな法律、本当にできるの?」って白い目で見られていました。
■担当として根回し
――83年夏、赤松さんは担当局長として財界、政界への根回しに明け暮れた。
 当時の偉い男性たちの認識というのは「労働力が必要だから女性にも働いてはもらいたい。だけど結婚や出産をしたら、30歳くらいまでに辞めるべきだ」というものでした。女性が働き続けて責任あるポストに就いていくことは、家庭にも社会にも良くないというのが大勢でしたね。そこで条約と法律の関係をよく説明しました。法律ができないと、世界に約束した「女子差別撤廃条約」を批准できません。日本は先進国としての立場をまずくしますよ、と。国のメンツで説明すると、ほとんど理解してくれました。その代わり、必ず「あまり厳しい法律はごめんだ」と釘を刺されました。義務や罰則のないものでないと困ると。そのため無理に義務としないで「ソフトランディングで」と考えたわけです。これはのちに女性団体から非常に怒られるところなんですが、約束でしたから守ったんです。
――その年の秋、日経連が雇用の男女平等のための法律制定に反対する声明を出す動きがあるとのニュースが飛び込んだ。
 まだ法案の中身が決まっていない段階。こんな声明が出たら大変です。慌てて日経連の幹部のところへ説明に行きました。範囲や強さなど何も決まっていない時点で法制化に反対を表明すると、雇用の場での男女平等という原則そのものに反対だということになる。「日本の経営者はそんな考えの持ち主だと世界に知らせるようなことをしていいんですか」と言いました。大企業の社長さんたちですから、国際的な視野もあり、ちゃんと耳を傾けてくれました。すったもんだの末、反対声明は出ませんでした。
■新内閣誕生で一変
 潮目がかわったのは83年の年末です。衆院解散で第2次中曽根康弘内閣が誕生。新しく労働相に就任したのが坂本三十次氏で、彼は熱心に雇用の男女平等について勉強を始めてくれました。これで省内の雰囲気がガラリと変わった。中曽根首相にも面会がかないました。「資本家の走狗(そうく)になる覚悟で」と言われました。あなたは女性労働者の味方と思っているかもしれないが、妥協すれば財界に有利な法律になる、資本家の使い走りの犬だと言われても仕方ないんだよ、という意味でしょうね。すごい悪口よね。脅しのつもりだったのかしら? 私は励ましと思うことにしました。でも、「スゴイ言葉よね」と一緒に行った次官と話したものです。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/ASHBC5DLCHBCULFA001.html
(朝日新聞 2015年10月26日) 〈証言そのとき〉男女平等を求めて:6 「満点ではない」と本音
■元文部相 赤松良子さん
――1984年7月、衆院社会労働委員会で男女雇用機会均等法案の本格的な審議が始まった。
 注目法案ですから、激しい質問もありました。共産党・革新共同の田中美智子議員に「財界からの圧力に屈してこのような法律を作ったのなら、けつをまくったらどうですか。辞職願を出したらどうですか」と言われました。坂本三十次労働相が「赤松(婦人)局長はベストを尽くした」と答弁してくださいました。
■「太陽」の質問され
 その直後、今度は社会民主連合の江田五月議員が質問に立ちました。穏やかな口調で「この法案で法律としてもうできあがったと感じているか、それとももっとすばらしい法律をつくることが課題としてこれから残るとお感じか」と聞かれました。国会答弁には、できるかぎり誠実に答えるのが私のモットーでした。ただ、政府はベストの法案を国会に提出しているというのが建前ですから、たとえ法案に不十分な点があると本心で思っていても、決して言ってはいけないのです。けれど、本音を言ってしまいました。「百点満点だとは決して思っておりません。いろいろな制約の中で現実に見合ったものにしなくてはならない。あまりに現実と遊離したものではワークしないのではないかという考慮もありました」と答えました。イソップ童話「北風と太陽」のようなものですね。北風が吹きつけても旅人はコートを脱ぎませんでしたが、江田議員の質問は太陽のようで、ぽかぽか照らされて私はコートを脱いだのです。
――85年5月、均等法はいくつかの修正を経て衆院本会議で可決・成立した。
 ほっとしました。けれども、そもそも満足している中身ではないので、残念な気持ちもありました。
■後輩に改正を託す
 本会議場で成立を見届けてから、労働省に戻って乾杯しました。局長室のドアを開いて、30~40人くらいいたかしら。「これで役人としての最後の仕事だからお別れだけど、あなたたちは残って、あと何年かかっても必ず改正案を出し、より良いものにしてくださいよ」と後輩たちに言いました。「みにくいアヒルの子を白鳥にしてね」と。どこが不十分だか、作った私たちがよく知っていますからね。そしてその後、均等法は後輩たちの手で97年に改正され、差別を全面的に禁止することになりました。
――均等法成立後、国連の女子差別撤廃条約への批准の手続きも順調に進んだ。
 85年7月、世界女性会議がケニアのナイロビで開かれ、政府代表として出席しました。飛行機には、日本から参加するNGOの女性たちも乗り合わせていました。均等法に大反対していたグループもいて「あれは赤松局長よ、呉越同舟ね」という声が聞こえてきました。それを言った人とは、のちに女子差別撤廃条約の研究や普及のNGO活動を一緒にして、いまも仲良くしているんですけどね。まさに日本の条約批准が発効する日を、ナイロビの会議中に迎えました。私は会議でそれに触れ、まだ批准していない国にはぜひ早く批准して欲しいとスピーチをしました。その日は政府代表で来ていた女性官僚たちと街へ繰り出し、ドンペリを飲んで批准を祝いました。世界女性会議には各省の女性官僚が代表として出ました。

<専業主婦の薦めと専業主婦優遇>
*3-1:http://eyes-woman.com/life/2249/ (女性の人生, 恋愛・結婚 2014/9/25) 「結婚したら仕事を辞める、それが私という女の生き方です」大スターから主婦の道へ英断した、山口百恵
 今回は、売り上げたシングルは1630万枚、LP434万枚と絶頂期にありながら、俳優三浦友和さんと結婚し、引退した女性、山口百恵さんの、引退後30年たつ今でも、色あせない魅力を見つめます。
●ワタシのあの頃
◇オーディションで勝ち取ったデビュー。自身がどんどん自分の個性を引き出していった
 1972年に、オーディション番組『スター誕生!』で準優勝し、20社 から指名を受け芸能界入り。年齢が低くビジュアル面でも純朴な少女が大胆な大人の世界を歌うことで、「青い果実」「ひと夏の経験」などが次々と大ヒットに。この歌とビジュアルのギャップは所属事務所やレコード会社による周到なイメージ戦略の賜物でもありましたが、何より彼女自身が山口百恵というイメージを作り上げていったのでした。当時のスタッフは、こう振り返ります。“「テレビや映画での演技、読書や海外のアーティストの音楽などから色々なことを吸収し、レコードを1枚出すごとに上手くなっていきました。それは、テクニックだけが上手くなっていったということではなく、自然な形で百恵自身の存在感がどんどん大きくなっていき、僕らスタッフでも気圧(けお)される-気分的に圧倒される-ようなところが、他の歌手にはあまり感じなかったところだと思います」。与えられた役割をこなすだけではなく、彼女は、常に自分自身や自分の置かれた状況を、冷静に第三の目で見つめ続けていたように見えます。着るものの色や型によって、気持ちががらりと変わり、歩き方から言葉遣いまで違ってしまう自分に気が付き、仕事によって着る服を選んだり、髪型を変えたり。自身をプロデュースして「山口百恵」像を作り上げていったところも大きかったのではないでしょうか。また、勝手に作られたイメージと本当の自分の姿とのギャップに苦しみながら、心の奥底で静かに闘っている女性でもありました。どんな人でも、自分が勘違いされていると感じ、理不尽な思いをした経験があるはず。だからこそ、人々は彼女に魅かれていったのでしょう。
◇変わったきっかけ
21歳、絶頂期の中の完全引退。彼女は一人の女性としての幸せを選んだ。映画『伊豆の踊子』で共演した相手役の三浦友和さんとは、彼女の主演映画13作のうち12作も共演。二人はゴールデンコンビと呼ばれました。そして、1979年のリサイタルで、突如「私が好きな人は、三浦友和さんです」と発表。婚約発表での引退発表は、世間に衝撃を与えました。まだ21歳という若いトップスターの引退。世の中は女性進出が進み始めた時代でもあり、絶頂期にも関わらず突如として家庭に入ることに否定的な意見も多かったのです。
◇“「結婚したら仕事を辞めよう」
 あの時にはまだ、ふたりの間で“結婚”という言葉を、正式に取り交わしていなかった。ただ、このままいけば私は多分、この人と結婚するだろうとだけ、漠然とだが予感していた。やっぱり、仕事を辞めよう・・・ある日突然に私の心に浮かんだ結論。直感としか言いようがなかった。彼女はこの直観を信じて、自分のこれから先の人生を決定しました。「女優・歌手」の山口百恵としてではなく、一人の女性としての「山口百恵」を選んだのです。彼女は、世の中の、引退に否定的な意見に関しても、自分の意見をしっかり述べています。山口百恵という女性の魅力は、しっかりとした自分自身の考えをもち、世間に媚びなかったところにあるのかもしれません。彼女は、自叙伝「蒼い時」で、こう綴っています。“仕事でも家庭でも恋人でもいい。生きている中で、何が大切なのかをよく知っている女性こそが自立した女性なのだ。絶頂期の中での引退に「あなたのせいで、女性の地位は10年前に逆戻りした」、「たかが男のために、その身を滅ぼそうとしている」などと批判されながらも、彼女の思いはブレることがなかったのです。男性社会の中で声高に「私は自立する女よ」と肩ひじ張って生きなくとも、「家庭の中にも自立の道はある」と言いきることのできる潔さ。世間が「堕落や逃げ」だと決めつけている「スターから家庭への転落」というものに、新しい光を当てたのも彼女なのではないでしょうか。
◇ワタシの今、そしてこれから
 これからも大事に家を作っていきます。息子の三浦貴大は、一度も両親のけんかを見たことがないといいます。“私たちも機嫌の悪い時もある、そんな時は私たちにはひとつの決まりがある。・・・順番に天使になる、つまりトラブルが起きた後、どちらが間違っていようとも、いつも一方が引いて間違いを認めれば、お互い幸せでいられる。また、2012年の路上インタビューでも、山口さんはしっかり「今」を生きており、芸能界カムバックはまったくないことがうかがえます。“家のことしかしてませんから。・・・今まで通り、普通にやっていきます。ああしたい、こうしたいというのはなくて、何かあれば、主人に相談しながら、大事に家を作っていきたいと思っています。一見「地味」ともとられがちな「主婦」という仕事をしっかりこなし、夫や子どもたちを支えている山口百恵さん。それは、彼女の中にある「家庭」というものに対する考え方に、しっかりした基盤があるからにほかなりません。「家庭」を自分の世界をしっかり確立できる唯一の場所ととらえ、主婦ほどむずかしい仕事はないのではないかと考えているからこそ、そこに真剣に生きようと思う。過去の栄光とすっぱり決別した潔さがそこにあります。彼女には「凛とした美しさ」が漂い、言葉のはしばしに聡明さが漂います。それらが引退後30年を経た今でも我々の心をとらえて離さないのではないでしょうか。

*3-2:http://www.office-onoduka.com/nenkinblog/2007/07/3_2.html (厚生年金・国民年金情報通) 厚生年金と国民年金のニュース、年金法改正、用語説明、消えた年金問題など年金生活のための年金情報
◇国民年金の第3号被保険者とは?
 国民年金の第3号被保険者とは、ごく一般的に言うと、会社員の夫に扶養されている20歳以上60歳未満の妻のことです。正確には、厚生年金や共済年金に加入しているもの(国民年金の第2号被保険者)に扶養(年収130万円未満)されている、20歳以上60歳未満の配偶者です。第3号被保険者割合は、の99%が妻、1%が夫となっていますので、ここでは妻と断定して話を進めます。
◇第3号被保険者の問題点「不公平感」
 第3号被保険者問題の一番問題とされているのが保険料負担の不公平感です。第3号被保険者の保険料は誰が負担しているかと言えば、第2号被保険者全員で負担しているわけで、その中には母子家庭の母や、独身女性、共働き女性も含まれています。また、将来自分の年金を受け取るのに、自分で保険料を払わなければならない自営業妻の専業主婦、自営業共働きの女性、厚生年金に入れない母子家庭の母、学生から無職の人まで、第1号被保険者と比べても不公平感はぬぐえません。片方では保険料を払い、片方では保険料負担なしで同じ金額の年金を受け取る。所得が低い人や障害があって保険料が免除になっている人ならまだ保険料負担がないことに納得できますが、その免除の人たちは免除の種類に応じて受け取れる年金額は2分の1、3分の1など削られたものになってしまいます。それに対して第3号被保険者は、第1号被保険者、第2号被保険者と同じく、基礎年金はカットなしの全額給付です。専業主婦(第3号被保険者)のいる家庭というのは、育児・介護等やむをえないケースを除き、夫一人で家計を支えることができる比較的恵まれた世帯ということができますので・・・(最近ではそうでもないかもしれませんが。(中略)
◇第3号被保険者導入の歴史
 第3号被保険者は昭和61年(1986年)4月、基礎年金制度ができた時に誕生した制度です。それまで国民年金、厚生年金、共済年金はそれぞれ別々の管理運営がされており、国民年金については、夫が厚生年金加入者である専業主婦は任意加入でした。そのため、国民年金に任意加入しない妻もおよそ3割存在し、離婚した場合には将来無年金となる怖れがありました。そこで、将来自分自身の基礎年金を受け取れるように、厚生年金加入の夫を持つ専業主婦については保険料無拠出で年金に加入できる制度、第3号被保険者が誕生したのです。(以下略)

<1997年改正男女雇用機会均等法>
*4:http://wol.nikkeibp.co.jp/article/column/20091207/105154/
(日経ウーマン 2009年12月8日) 1997年改正男女雇用機会均等法成立
1986年に施行された男女雇用機会均等法の改正法がこの年の6月に成立し、(施行は1999年4月1日)、法律としての実効性が大きく前進しました。主な改正点は以下の点です。
 (1)女性に対する差別の努力義務規定が禁止規定に
 (2)ポジティブ・アクション、セクシュアルハラスメント関連の規定の創設
 (3)母性健康管理措置の義務規定化(施行は1998年4月1日)
 この改正法では、募集・採用、配置・昇進、教育訓練、福利厚生、定年・退職・解雇において、男女差をつけることが全面的に禁止されました。1986年に施行された均等法では、経済界からの強烈な反発もあり、募集・採用、配置・昇進については努力目標とするにとどまっていたものが、この改正で罰則を伴う禁止規定となったのです。これ以後、基本的に男性のみ、女性のみの求人募集は法律違反となりますが、特例として、その企業が過去に男性を優先的に採用していた実績があるために男女間の従業員数や雇用管理に差が生じている場合は女性を優先的に雇用する「ポジティブ・アクション」によりその差の解消することは違法ではないと規定されました。また、改正法により、職種をできるだけ性別的には中立に表現する形で募集を行うこと進められました。「保母」が「保育士」に、「看護婦」が「看護士」に変更されたのもこの年のことです。さらに、この年に行われた労働基準法の改正に伴い、女性に対する深夜労働・残業や休日労働の制限が撤廃されました。これによりそれまでは実際には残業をしても「本来深夜労働をするはずがない」ということで残業代が請求できなかった事務職の女性たちにきちんと残業代が支払われるようになったり、保護を口実とした女性の排除が難しくなったりというプラス面もあったのですが、他方で深夜や長時間の労働で子育てや介護と仕事の両立の困難に直面したり、激しい労働により健康を害する女性も数多く見られるようになりました。ところで、この改正法にもひとつ大きな問題点がありました。というのも、そもそも男女雇用機会均等法は「女性に対する差別をなくす」という目的で制定された法律なので、もし「男性であることを理由とする差別」があったとしてもこの法律では直接規制ができなかったのです。そのため、商社などの一般職、看護士、保育士などの職種で男性であることを理由に採用されなかった事例は救済できず、法律が男女両性に対する差別を禁止する内容となるためにはさらに2006年まで待たなくてはなりませんでした。

<各国の男女格差>
*5:http://digital.asahi.com/articles/ASHCL5JLWHCLULFA01N.html (朝日新聞 2015年11月19日) 日本の男女格差、少し改善して101位…G7では最下位
 ダボス会議で知られる世界経済フォーラム(WEF)は19日、各国の男女格差(ジェンダーギャップ)の少なさを指数化し、順位で示した最新の報告書を発表した。日本は、世界145カ国中101位だった。前年の104位からわずかに順位を上げたものの、主要7カ国(G7)の中で最下位だった。このランキングは「政治への参加」「職場への進出」「教育」「健康度合い」の4分野の計14の項目を使って、男女平等の度合いを指数化し、総合順位を決める。1位から4位までは、アイスランド、ノルウェー、フィンランド、スウェーデンと北欧諸国が独占。5位から10位はアイルランド、ルワンダ、フィリピン、スイス、スロベニア、ニュージーランドの順だった。日本の近隣国では、ロシアが75位、中国が91位、韓国が115位だった。G7ではドイツ、フランス、英国が10位台に並び、日本をのぞくと最下位のイタリアが41位だった。世界全体では、4分野のうち、「教育」「健康」では格差が縮小していて、男女の差はなくなりつつある。一方、「政治」「職場」の分野は、依然として大きな格差が残ったままだ。2006年の報告書と比べると、過去10年間で「職場」の男女格差は3%、4分野全体での格差も4%しか縮まっていない。WEFは、このままでは「格差が完全に解消するには118年かかる」としている。
■政治・職場、格差解消ほど遠く
 日本が三つとはいえ順位を上げたのは、女性閣僚が増え、「政治」の得点がアップしたからだ。報告書は15年1月時点のデータを使っており、前年の2人から4人に倍増した。衆院議員に占める女性の割合もわずかに上昇した。ただ、それでも「政治」の得点は10・3点で、格差解消にはほど遠い。世界では100以上の国が「候補者に占める一方の性の割合は6割を超えない」など何らかの「クオータ(割り当て)」のしくみを採用し、女性の政治家を増やしている。日本でも今年、超党派の国会議員が参加する「政治分野における女性の参画と活躍を推進する議員連盟」(中川正春会長)が発足。勉強会をかさね、衆院選の比例区で、各政党が男女を交互に当選させることができるようにする公職選挙法の改正案をまとめた。中川氏は「次期通常国会での提出を目指す」としており、各政党の動向が注目される。一方、「職場」分野は前年よりわずかに悪化した。女性の労働参加率は上がったが、男女の賃金格差が広がったためだ。WEFが行った意識調査で、日本の経営者は、同種の仕事についている男女の賃金格差が拡大していると考えている、という結果が出たことを反映している。働く女性は増えているが、待遇を低く抑えられた非正社員が多いことが背景にありそうだ。総務省の労働力調査(4~6月)によると、この2年で働く女性は65万人増えたが、そのうち48万人は契約社員や派遣、パートなどの非正社員だ。東京大の大沢真理教授は、「アベノミクスは女性の活躍をうたっているが、男女格差の解消には向かっていないことが報告書から分かる」と指摘する。

<女子差別撤廃条約>
*6:http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/ (外務省 平成28年2月18日) 女子差別撤廃条約 (女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約)
 女子差別撤廃条約は、男女の完全な平等の達成に貢献することを目的として、女子に対するあらゆる差別を撤廃することを基本理念としています。具体的には、「女子に対する差別」を定義し、締約国に対し、政治的及び公的活動、並びに経済的及び社会的活動における差別の撤廃のために適当な措置をとることを求めています。本条約は、1979年の第34回国連総会において採択され、1981年に発効しました。日本は1985年に締結しました。
ダイヤhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/3b_001.html
女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約 (全文、ただし前文の中に番号を追加)
この条約の締約国は、
 ①国際連合憲章が基本的人権、人間の尊厳及び価値並びに男女の権利の平等に関する信念を改めて確認していることに留意し、②世界人権宣言が、差別は容認することができないものであるとの原則を確認していること、並びにすべての人間は生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳及び権利について平等であること並びにすべての人は性による差別その他のいかなる差別もなしに同宣言に掲げるすべての権利及び自由を享有することができることを宣明していることに留意し、③人権に関する国際規約の締約国がすべての経済的、社会的、文化的、市民的及び政治的権利の享有について男女に平等の権利を確保する義務を負つていることに留意し、④国際連合及び専門機関の主催の下に各国が締結した男女の権利の平等を促進するための国際条約を考慮し、⑤更に、国際連合及び専門機関が採択した男女の権利の平等を促進するための決議、宣言及び勧告に留意し、⑥しかしながら、これらの種々の文書にもかかわらず女子に対する差別が依然として広範に存在していることを憂慮し、⑦女子に対する差別は、権利の平等の原則及び人間の尊厳の尊重の原則に反するものであり、女子が男子と平等の条件で自国の政治的、社会的、経済的及び文化的活動に参加する上で障害となるものであり、社会及び家族の繁栄の増進を阻害するものであり、また、女子の潜在能力を自国及び人類に役立てるために完全に開発することを一層困難にするものであることを想起し、⑧窮乏の状況においては、女子が食糧、健康、教育、雇用のための訓練及び機会並びに他の必要とするものを享受する機会が最も少ないことを憂慮し、⑨衡平及び正義に基づく新たな国際経済秩序の確立が男女の平等の促進に大きく貢献することを確信し、⑩アパルトヘイト、あらゆる形態の人種主義、人種差別、植民地主義、新植民地主義、侵略、外国による占領及び支配並びに内政干渉の根絶が男女の権利の完全な享有に不可欠であることを強調し、⑪国際の平和及び安全を強化し、国際緊張を緩和し、すべての国(社会体制及び経済体制のいかんを問わない。)の間で相互に協力し、全面的かつ完全な軍備縮小を達成し、特に厳重かつ効果的な国際管理の下での核軍備の縮小を達成し、諸国間の関係における正義、平等及び互恵の原則を確認し、外国の支配の下、植民地支配の下又は外国の占領の下にある人民の自決の権利及び人民の独立の権利を実現し並びに国の主権及び領土保全を尊重することが、社会の進歩及び発展を促進し、ひいては、男女の完全な平等の達成に貢献することを確認し、⑫国の完全な発展、世界の福祉及び理想とする平和は、あらゆる分野において女子が男子と平等の条件で最大限に参加することを必要としていることを確信し、⑬家族の福祉及び社会の発展に対する従来完全には認められていなかつた女子の大きな貢献、母性の社会的重要性並びに家庭及び子の養育における両親の役割に留意し、また、出産における女子の役割が差別の根拠となるべきではなく、子の養育には男女及び社会全体が共に責任を負うことが必要であることを認識し、⑭社会及び家庭における男子の伝統的役割を女子の役割とともに変更することが男女の完全な平等の達成に必要であることを認識し、⑮女子に対する差別の撤廃に関する宣言に掲げられている諸原則を実施すること及びこのために女子に対するあらゆる形態の差別を撤廃するための必要な措置をとることを決意して、次のとおり協定した。
第一部
第一条
 この条約の適用上、「女子に対する差別」とは、性に基づく区別、排除又は制限であつて、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野においても、女子(婚姻をしているかいないかを問わない。)が男女の平等を基礎として人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを害し又は無効にする効果又は目的を有するものをいう。
第二条
 締約国は、女子に対するあらゆる形態の差別を非難し、女子に対する差別を撤廃する政策をすべての適当な手段により、かつ、遅滞なく追求することに合意し、及びこのため次のことを約束する。   (a)  男女の平等の原則が自国の憲法その他の適当な法令に組み入れられていない場合にはこれを定め、かつ、男女の平等の原則の実際的な実現を法律その他の適当な手段により確保すること。
(b)女子に対するすべての差別を禁止する適当な立法その他の措置(適当な場合には制裁を含む。)をとること。
(c)女子の権利の法的な保護を男子との平等を基礎として確立し、かつ、権限のある自国の裁判所その他の公の機関を通じて差別となるいかなる行為からも女子を効果的に保護することを確保すること。
(d)女子に対する差別となるいかなる行為又は慣行も差し控え、かつ、公の当局及び機関がこの義務に従つて行動することを確保すること。
(e)個人、団体又は企業による女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとること。
(f)女子に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し又は廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとること。
(g)女子に対する差別となる自国のすべての刑罰規定を廃止すること。
第三条
 締約国は、あらゆる分野、特に、政治的、社会的、経済的及び文化的分野において、女子に対して男子との平等を基礎として人権及び基本的自由を行使し及び享有することを保障することを目的として、女子の完全な能力開発及び向上を確保するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとる。
第四条
1 締約国が男女の事実上の平等を促進することを目的とする暫定的な特別措置をとることは、この条約に定義する差別と解してはならない。ただし、その結果としていかなる意味においても不平等な又は別個の基準を維持し続けることとなつてはならず、これらの措置は、機会及び待遇の平等の目的が達成された時に廃止されなければならない。
2 締約国が母性を保護することを目的とする特別措置(この条約に規定する措置を含む。)をとることは、差別と解してはならない。
第五条
 締約国は、次の目的のためのすべての適当な措置をとる。  
(a)両性のいずれかの劣等性若しくは優越性の観念又は男女の定型化された役割に基づく偏見及び慣習その他あらゆる慣行の撤廃を実現するため、男女の社会的及び文化的な行動様式を修正すること。
(b)家庭についての教育に、社会的機能としての母性についての適正な理解並びに子の養育及び発育における男女の共同責任についての認識を含めることを確保すること。あらゆる場合において、子の利益は最初に考慮するものとする。
第六条
 締約国は、あらゆる形態の女子の売買及び女子の売春からの搾取を禁止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとる。


PS(2016年3月7日追加):*7のように、《保育園落ちた日本死ね!!!》と題した匿名のブログで「1億総活躍社会のかけ声にもかかわらず、保育園不足が解消していない」と安倍首相を攻撃するのは、味方を攻撃しており感心しない。その理由は、*8の女性活躍推進法は、(冗長な割に内容に乏しく出来はよくないが、私が手紙に書いた提案をきっかけとして)2015年8月に安倍首相が成立させてくれたものであり、1億総活躍は女性の活躍を含むもので、保育園不足は数十年前からあって安倍首相に責任があるわけではなく、女性差別をなくして解決しようとしている人に対して苦情を言っているからである。
 なお、*7については、①どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか ②安倍晋三首相は「匿名である以上、実際に本当であるかどうかを、私は確かめようがない」と答弁した ③事務職の正社員で4月に復職の予定だったが保育所に子どもを入れられなかった とのことだが、①③については、都会の保育園不足は前からわかっているため、育てる算段を立ててから子どもを産むべきである上、少なくとも妊娠中から保育園や学童保育に入れるような地域を選んで引っ越しておくくらいの努力はすべきで、そういう場所が見つからなければ夫婦の一方が子どもか仕事かの二者択一になるのだ。そして、そんなことはわかっているからこそ、私は子どもではなく仕事を選び、子どもの扶養控除もとらずに保育園や学童保育の整備をしてきたし、安倍首相も子どもはいないのに解決しようとしているのだ。つまり、これから子どもを育てるのなら、恨む相手を間違えないくらいの冷静さがなければ、子どもも八つ当たりされて大変なのである。
 また、②については、匿名で書いたような無責任で一方的な発言に対していちいち相手をする必要はないため、政策に反映してもらいたければ、主権者として、首相、国会議員、市長などに、きちんと名前を書いて事情と要望を説明する礼をつくした手紙を出すくらいの努力はすべきだ。

       

*7:http://digital.asahi.com/articles/ASJ3355J2J33UTIL01N.html (朝日新聞 2016年3月4日) 「保育園落ちた日本死ね!」 匿名ブロガーに記者接触
 《保育園落ちた日本死ね!!!》と題した匿名のブログが注目を集めている。1億総活躍社会のかけ声とは裏腹に、なかなか解消しない待機児童問題を指摘する内容で、国会でも取り上げられた。ネット上では同じ境遇の人たちから共感の声が相次いでいる。ブログが書かれたのは2月中旬。《何なんだよ日本。一億総活躍社会じゃねーのかよ。昨日見事に保育園落ちたわ。どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか》。怒りをぶつけるような書きぶりだ。2月29日の衆院予算委員会では、民主党の山尾志桜里議員が取り上げた。安倍晋三首相は「匿名である以上、実際に本当であるかどうかを、私は確かめようがない」と答弁。議員席からは「誰が(ブログを)書いたんだよ」「(質問者は)ちゃんと(書いた)本人を出せ」とやじが飛んだ。記者がメールでブログの主に連絡を取ると、東京都内に暮らす30代前半の女性と名乗った。夫と間もなく1歳になる男児と3人暮らし。事務職の正社員で、4月に復職の予定だったが、保育所に子どもを入れられなかったという。ツイッターでは《#保育園落ちたの私だ》というハッシュタグ(検索ワード)ができ、議論が盛り上がった。《同じ悩み抱えてる人がたくさんいるからブログが広まった》《仕事だけでなく、親や子どもが外とつながる機会を持つ意味でも子どもを預けられることは大事》。投稿は相次ぎ、2千回以上リツイート(転載)されたものもあった。投稿した一人、都内の40代女性は5年前に出産。子どもを保育所に預けられなかったため、半年間、育児休業を延長し、その間に認可外保育所を探して職場復帰したという。「ブログの表現は乱暴だけど、よくぞいってくれたという気分」。ネット上の議論の矛先は国会論戦の「中身のなさ」や「やじの多さ」にも向かう。1歳の男の子を育てる女性(36)は「ブログを読み、自分の首がもげるのではと思うくらいうなずいた。国会のやりとりを聞いていると、政府が本気で考えているとは思えない」と憤った。

<女性活躍推進法>
*8:http://www.gender.go.jp/policy/suishin_law/pdf/law_honbun.pdf
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律
目次
第一章総則(第一条―第四条)
第二章基本方針等(第五条・第六条)
第三章事業主行動計画等
第一節事業主行動計画策定指針(第七条)
第二節一般事業主行動計画(第八条―第十四条)
第三節特定事業主行動計画(第十五条)
第四節女性の職業選択に資する情報の公表(第十六条・第十七条)
第四章女性の職業生活における活躍を推進するための支援措置(第十八条―第二十五条)
第五章雑則(第二十六条―第二十八条)
第六章罰則(第二十九条―第三十四条)
附則
第一章総則
(目的)
第一条この法律は、近年、自らの意思によって職業生活を営み、又は営もうとする女性がその個性と能力を十分に発揮して職業生活において活躍すること(以下「女性の職業生活における活躍」という。)が一層重要となっていることに鑑み、男女共同参画社会基本法(平成十一年法律第七十八号)の基本理念にのっとり、女性の職業生活における活躍の推進について、その基本原則を定め、並びに国、地方公共団体及び事業主の責務を明らかにするとともに、基本方針及び事業主の行動計画の策定、女性の職業生活における活躍を推進するための支援措置等について定めることにより、女性の職業生活における活躍を迅速かつ重点的に推進し、もって男女の人権が尊重され、かつ、急速な少子高齢化の進展、国民の需要の多様化その他の社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現することを目的とする。
(基本原則)
第二条女性の職業生活における活躍の推進は、職業生活における活躍に係る男女間の格差の実情を踏まえ、自らの意思によって職業生活を営み、又は営もうとする女性に対する採用、教育訓練、昇進、職種及び雇用形態の変更その他の職業生活に関する機会の積極的な提供及びその活用を通じ、かつ、性別による固定的な役割分担等を反映した職場における慣行が女性の職業生活における活躍に対して及ぼす影響に配慮して、その個性と能力が十分に発揮できるようにすることを旨として、行われなければならない。
2 女性の職業生活における活躍の推進は、職業生活を営む女性が結婚、妊娠、出産、育児、介護その他の家庭生活に関する事由によりやむを得ず退職することが多いことその他の家庭生活に関する事由が職業生活に与える影響を踏まえ、家族を構成する男女が、男女の別を問わず、相互の協力と社会の支援の下に、育児、介護その他の家庭生活における活動について家族の一員としての役割を円滑に果たしつつ職業生活における活動を行うために必要な環境の整備等により、男女の職業生活と家庭生活との円滑かつ継続的な両立が可能となることを旨として、行われなければならない。
3 女性の職業生活における活躍の推進に当たっては、女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意思が尊重されるべきものであることに留意されなければならない。
(国及び地方公共団体の責務)
第三条国及び地方公共団体は、前条に定める女性の職業生活における活躍の推進についての基本原則(次条及び第五条第一項において「基本原則」という。)にのっとり、女性の職業生活における活躍の推進に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施しなければならない。
(事業主の責務)
第四条事業主は、基本原則にのっとり、その雇用し、又は雇用しようとする女性労働者に対する職業生活に関する機会の積極的な提供、雇用する労働者の職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備その他の女性の職業生活における活躍の推進に関する取組を自ら実施するよう努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する女性の職業生活における活躍の推進に関する施策に協力しなければならない。
第二章基本方針等
(基本方針)
第五条政府は、基本原則にのっとり、女性の職業生活における活躍の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実施するため、女性の職業生活における活躍の推進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一女性の職業生活における活躍の推進に関する基本的な方向
二事業主が実施すべき女性の職業生活における活躍の推進に関する取組に関する基本的な事項
三女性の職業生活における活躍の推進に関する施策に関する次に掲げる事項
イ女性の職業生活における活躍を推進するための支援措置に関する事項
ロ職業生活と家庭生活との両立を図るために必要な環境の整備に関する事項
ハその他女性の職業生活における活躍の推進に関する施策に関する重要事項
四前三号に掲げるもののほか、女性の職業生活における活躍を推進するために必要な事項
3 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。
5 前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。
(都道府県推進計画等)
第六条都道府県は、基本方針を勘案して、当該都道府県の区域内における女性の職業生活における活躍の推進に関する施策についての計画(以下この条において「都道府県推進計画」という。)を定めるよう努めるものとする。
2 市町村は、基本方針(都道府県推進計画が定められているときは、基本方針及び都道府県推進計画)を勘案して、当該市町村の区域内における女性の職業生活における活躍の推進に関する施策についての計画(次項において「市町村推進計画」という。)を定めるよう努めるものとする。
3 都道府県又は市町村は、都道府県推進計画又は市町村推進計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
第三章事業主行動計画等
第一節事業主行動計画策定指針
第七条内閣総理大臣、厚生労働大臣及び総務大臣は、事業主が女性の職業生活における活躍の推進に関する取組を総合的かつ効果的に実施することができるよう、基本方針に即して、次条第一項に規定する一般事業主行動計画及び第十五条第一項に規定する特定事業主行動計画(次項において「事業主行動計画」と総称する。)の策定に関する指針(以下「事業主行動計画策定指針」という。)を定めなければならない。
2 事業主行動計画策定指針においては、次に掲げる事項につき、事業主行動計画の指針となるべきものを定めるものとする。
一事業主行動計画の策定に関する基本的な事項
二女性の職業生活における活躍の推進に関する取組の内容に関する事項
三その他女性の職業生活における活躍の推進に関する取組に関する重要事項
3 内閣総理大臣、厚生労働大臣及び総務大臣は、事業主行動計画策定指針を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
第二節一般事業主行動計画
(一般事業主行動計画の策定等)
第八条国及び地方公共団体以外の事業主(以下「一般事業主」という。)であって、常時雇用する労働者の数が三百人を超えるものは、事業主行動計画策定指針に即して、一般事業主行動計画(一般事業主が実施する女性の職業生活における活躍の推進に関する取組に関する計画をいう。以下同じ。)を定め、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に届け出なければならない。これを変更したときも、同様とする。
2 一般事業主行動計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一計画期間
二女性の職業生活における活躍の推進に関する取組の実施により達成しようとする目標
三実施しようとする女性の職業生活における活躍の推進に関する取組の内容及びその実施時期
3 第一項に規定する一般事業主は、一般事業主行動計画を定め、又は変更しようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、採用した労働者に占める女性労働者の割合、男女の継続勤務年数の差異、労働時間の状況、管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合その他のその事業における女性の職業生活における活躍に関する状況を把握し、女性の職業生活における活躍を推進するために改善すべき事情について分析した上で、その結果を勘案して、これを定めなければならない。この場合において、前項第二号の目標については、採用する労働者に占める女性労働者の割合、男女の継続勤務年数の差異の縮小の割合、労働時間、管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合その他の数値を用いて定量的に定めなければならない。
4 第一項に規定する一般事業主は、一般事業主行動計画を定め、又は変更したときは、厚生労働省令で定めるところにより、これを労働者に周知させるための措置を講じなければならない。
5 第一項に規定する一般事業主は、一般事業主行動計画を定め、又は変更したときは、厚生労働省令で定めるところにより、これを公表しなければならない。
6 第一項に規定する一般事業主は、一般事業主行動計画に基づく取組を実施するとともに、一般事業主行動計画に定められた目標を達成するよう努めなければならない。
7 一般事業主であって、常時雇用する労働者の数が三百人以下のものは、事業主行動計画策定指針に即して、一般事業主行動計画を定め、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に届け出るよう努めなければならない。これを変更したときも、同様とする。
8 第三項の規定は前項に規定する一般事業主が一般事業主行動計画を定め、又は変更しようとする場合について、第四項から第六項までの規定は前項に規定する一般事業主が一般事業主行動計画を定め、又は変更した場合について、それぞれ準用する。
(基準に適合する一般事業主の認定)
第九条厚生労働大臣は、前条第一項又は第七項の規定による届出をした一般事業主からの申請に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業主について、女性の職業生活における活躍の推進に関する取組に関し、当該取組の実施の状況が優良なものであることその他の厚生労働省令で定める基準に適合するものである旨の認定を行うことができる。
(認定一般事業主の表示等)
第十条前条の認定を受けた一般事業主(次条及び第二十条第一項において「認定一般事業主」という。)は、商品、役務の提供の用に供する物、商品又は役務の広告又は取引に用いる書類若しくは通信その他の厚生労働省令で定めるもの(次項において「商品等」という。)に厚生労働大臣の定める表示を付することができる。
2 何人も、前項の規定による場合を除くほか、商品等に同項の表示又はこれと紛らわしい表示を付してはならない。
(認定の取消し)
第十一条厚生労働大臣は、認定一般事業主が次の各号のいずれかに該当するときは、第九条の認定を取り消すことができる。
一第九条に規定する基準に適合しなくなったと認めるとき。
二この法律又はこの法律に基づく命令に違反したとき。
三不正の手段により第九条の認定を受けたとき。
(委託募集の特例等)
第十二条承認中小事業主団体の構成員である中小事業主(一般事業主であって、常時雇用する労働者の数が三百人以下のものをいう。以下この項及び次項において同じ。)が、当該承認中小事業主団体をして女性の職業生活における活躍の推進に関する取組の実施に関し必要な労働者の募集を行わせようとする場合において、当該承認中小事業主団体が当該募集に従事しようとするときは、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第三十六条第一項及び第三項の規定は、当該構成員である中小事業主については、適用しない。
2 この条及び次条において「承認中小事業主団体」とは、事業協同組合、協同組合連合会その他の特別の法律により設立された組合若しくはその連合会であって厚生労働省令で定めるもの又は一般社団法人で中小事業主を直接又は間接の構成員とするもの(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)のうち、その構成員である中小事業主に対して女性の職業生活における活躍の推進に関する取組を実施するための人材確保に関する相談及び援助を行うものであって、その申請に基づいて、厚生労働大臣が、当該相談及び援助を適切に行うための厚生労働省令で定める基準に適合する旨の承認を行ったものをいう。
3 厚生労働大臣は、承認中小事業主団体が前項に規定する基準に適合しなくなったと認めるときは、同項の承認を取り消すことができる。
4 承認中小事業主団体は、第一項に規定する募集に従事しようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、募集時期、募集人員、募集地域その他の労働者の募集に関する事項で厚生労働省令で定めるものを厚生労働大臣に届け出なければならない。
5 職業安定法第三十七条第二項の規定は前項の規定による届出があった場合について、同法第五条の三第一項及び第三項、第五条の四、第三十九条、第四十一条第二項、第四十八条の三、第四十八条の四、第五十条第一項及び第二項並びに第五十一条の二の規定は前項の規定による届出をして労働者の募集に従事する者について、同法第四十条の規定は同項の規定による届出をして労働者の募集に従事する者に対する報酬の供与について、同法第五十条第三項及び第四項の規定はこの項において準用する同条第二項に規定する職権を行う場合について、それぞれ準用する。この場合において、同法第三十七条第二項中「労働者の募集を行おうとする者」とあるのは「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律第十二条第四項の規定による届出をして労働者の募集に従事しようとする者」と、同法第四十一条第二項中「当該労働者の募集の業務の廃止を命じ、又は期間」とあるのは「期間」と読み替えるものとする。
6 職業安定法第三十六条第二項及び第四十二条の二の規定の適用については、同法第三十六条第二項中「前項の」とあるのは「被用者以外の者をして労働者の募集に従事させようとする者がその被用者以外の者に与えようとする」と、同法第四十二条の二中「第三十九条に規定する募集受託者」とあるのは「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成二十七年法律第六十四号)第十二条第四項の規定による届出をして労働者の募集に従事する者」とする。
7 厚生労働大臣は、承認中小事業主団体に対し、第二項の相談及び援助の実施状況について報告を求めることができる。
第十三条公共職業安定所は、前条第四項の規定による届出をして労働者の募集に従事する承認中小事業主団体に対して、雇用情報及び職業に関する調査研究の成果を提供し、かつ、これらに基づき当該募集の内容又は方法について指導することにより、当該募集の効果的かつ適切な実施を図るものとする。
(一般事業主に対する国の援助)
第十四条国は、第八条第一項若しくは第七項の規定により一般事業主行動計画を策定しようとする一般事業主又はこれらの規定による届出をした一般事業主に対して、一般事業主行動計画の策定、労働者への周知若しくは公表又は一般事業主行動計画に基づく措置が円滑に実施されるように相談その他の援助の実施に努めるものとする。
第三節特定事業主行動計画
第十五条国及び地方公共団体の機関、それらの長又はそれらの職員で政令で定めるもの(以下「特定事業主」という。)は、政令で定めるところにより、事業主行動計画策定指針に即して、特定事業主行動計画(特定事業主が実施する女性の職業生活における活躍の推進に関する取組に関する計画をいう。以下この条において同じ。)を定めなければならない。
2 特定事業主行動計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一計画期間
二女性の職業生活における活躍の推進に関する取組の実施により達成しようとする目標
三実施しようとする女性の職業生活における活躍の推進に関する取組の内容及びその実施時期
3 特定事業主は、特定事業主行動計画を定め、又は変更しようとするときは、内閣府令で定めるところにより、採用した職員に占める女性職員の割合、男女の継続勤務年数の差異、勤務時間の状況、管理的地位にある職員に占める女性職員の割合その他のその事務及び事業における女性の職業生活における活躍に関する状況を把握し、女性の職業生活における活躍を推進するために改善すべき事情について分析した上で、その結果を勘案して、これを定めなければならない。この場合において、前項第二号の目標については、採用する職員に占める女性職員の割合、男女の継続勤務年数の差異の縮小の割合、勤務時間、管理的地位にある職員に占める女性職員の割合その他の数値を用いて定量的に定めなければならない。
4 特定事業主は、特定事業主行動計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを職員に周知させるための措置を講じなければならない。
5 特定事業主は、特定事業主行動計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
6 特定事業主は、毎年少なくとも一回、特定事業主行動計画に基づく取組の実施の状況を公表しなければならない。
7 特定事業主は、特定事業主行動計画に基づく取組を実施するとともに、特定事業主行動計画に定められた目標を達成するよう努めなければならない。
第四節女性の職業選択に資する情報の公表
(一般事業主による女性の職業選択に資する情報の公表)
第十六条第八条第一項に規定する一般事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、職業生活を営み、又は営もうとする女性の職業選択に資するよう、その事業における女性の職業生活における活躍に関する情報を定期的に公表しなければならない。
2 第八条第七項に規定する一般事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、職業生活を営み、又は営もうとする女性の職業選択に資するよう、その事業における女性の職業生活における活躍に関する情報を定期的に公表するよう努めなければならない。
(特定事業主による女性の職業選択に資する情報の公表)
第十七条特定事業主は、内閣府令で定めるところにより、職業生活を営み、又は営もうとする女性の職業選択に資するよう、その事務及び事業における女性の職業生活における活躍に関する情報を定期的に公表しなければならない。
第四章女性の職業生活における活躍を推進するための支援措置
(職業指導等の措置等)
第十八条国は、女性の職業生活における活躍を推進するため、職業指導、職業紹介、職業訓練、創業の支援その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
2 地方公共団体は、女性の職業生活における活躍を推進するため、前項の措置と相まって、職業生活を営み、又は営もうとする女性及びその家族その他の関係者からの相談に応じ、関係機関の紹介その他の情報の提供、助言その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
3 地方公共団体は、前項に規定する業務に係る事務の一部を、その事務を適切に実施することができるものとして内閣府令で定める基準に適合する者に委託することができる。
4 前項の規定による委託に係る事務に従事する者又は当該事務に従事していた者は、正当な理由なく、当該事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
(財政上の措置等)
第十九条国は、女性の職業生活における活躍の推進に関する地方公共団体の施策を支援するために必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとする。
(国等からの受注機会の増大)
第二十条国は、女性の職業生活における活躍の推進に資するため、国及び公庫等(沖縄振興開発金融公庫その他の特別の法律によって設立された法人であって政令で定めるものをいう。)の役務又は物件の調達に関し、予算の適正な使用に留意しつつ、認定一般事業主その他の女性の職業生活における活躍に関する状況又は女性の職業生活における活躍の推進に関する取組の実施の状況が優良な一般事業主(次項において「認定一般事業主等」という。)の受注の機会の増大その他の必要な施策を実施するものとする。
2 地方公共団体は、国の施策に準じて、認定一般事業主等の受注の機会の増大その他の必要な施策を実施するように努めるものとする。
(啓発活動)
第二十一条国及び地方公共団体は、女性の職業生活における活躍の推進について、国民の関心と理解を深め、かつ、その協力を得るとともに、必要な啓発活動を行うものとする。
(情報の収集、整理及び提供)
第二十二条国は、女性の職業生活における活躍の推進に関する取組に資するよう、国内外における女性の職業生活における活躍の状況及び当該取組に関する情報の収集、整理及び提供を行うものとする。
(協議会)
第二十三条当該地方公共団体の区域において女性の職業生活における活躍の推進に関する事務及び事業を行う国及び地方公共団体の機関(以下この条において「関係機関」という。)は、第十八条第一項の規定により国が講ずる措置及び同条第二項の規定により地方公共団体が講ずる措置に係る事例その他の女性の職業生活における活躍の推進に有用な情報を活用することにより、当該区域において女性の職業生活における活躍の推進に関する取組が効果的かつ円滑に実施されるようにするため、関係機関により構成される協議会(以下「協議会」という。)を組織することができる。
2 協議会を組織する関係機関は、当該地方公共団体の区域内において第十八条第三項の規定による事務の委託がされている場合には、当該委託を受けた者を協議会の構成員として加えるものとする。
3 協議会を組織する関係機関は、必要があると認めるときは、協議会に次に掲げる者を構成員として加えることができる。
一一般事業主の団体又はその連合団体
二学識経験者
三その他当該関係機関が必要と認める者
4 協議会は、関係機関及び前二項の構成員(以下この項において「関係機関等」という。)が相互の連絡を図ることにより、女性の職業生活における活躍の推進に有用な情報を共有し、関係機関等の連携の緊密化を図るとともに、地域の実情に応じた女性の職業生活における活躍の推進に関する取組について協議を行うものとする。
5 協議会が組織されたときは、当該地方公共団体は、内閣府令で定めるところにより、その旨を公表しなければならない。
(秘密保持義務)
第二十四条協議会の事務に従事する者又は協議会の事務に従事していた者は、正当な理由なく、協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
(協議会の定める事項)
第二十五条前二条に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、協議会が定める。
第五章雑則
(報告の徴収並びに助言、指導及び勧告)
第二十六条厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、第八条第一項に規定する一般事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。
(権限の委任)
第二十七条第八条から第十二条まで及び前条に規定する厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。
(政令への委任)
第二十八条この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。
第六章罰則
第二十九条第十二条第五項において準用する職業安定法第四十一条第二項の規定による業務の停止の命令に違反して、労働者の募集に従事した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
第三十条次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一第十八条第四項の規定に違反した者
二第二十四条の規定に違反した者
第三十一条次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一第十二条第四項の規定による届出をしないで、労働者の募集に従事した者
二第十二条第五項において準用する職業安定法第三十七条第二項の規定による指示に従わなかった者
三第十二条第五項において準用する職業安定法第三十九条又は第四十条の規定に違反した者
第三十二条次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一第十条第二項の規定に違反した者
二第十二条第五項において準用する職業安定法第五十条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
三第十二条第五項において準用する職業安定法第五十条第二項の規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の陳述をした者
第三十三条法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第二十九条、第三十一条又は前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
第三十四条第二十六条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。
附則
(施行期日)
第一条この法律は、公布の日から施行する。ただし、第三章(第七条を除く。)、第五章(第二十八条を
除く。)及び第六章(第三十条を除く。)の規定並びに附則第五条の規定は、平成二十八年四月一日から施行する。
(この法律の失効)
第二条この法律は、平成三十八年三月三十一日限り、その効力を失う。
2 第十八条第三項の規定による委託に係る事務に従事していた者の当該事務に関して知り得た秘密については、同条第四項の規定(同項に係る罰則を含む。)は、前項の規定にかかわらず、同項に規定する日後も、なおその効力を有する。
3 協議会の事務に従事していた者の当該事務に関して知り得た秘密については、第二十四条の規定(同条に係る罰則を含む。)は、第一項の規定にかかわらず、同項に規定する日後も、なおその効力を有する。
4 この法律の失効前にした行為に対する罰則の適用については、この法律は、第一項の規定にかかわらず、同項に規定する日後も、なおその効力を有する。
(政令への委任)
第三条前条第二項から第四項までに規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置は、政令で定める。
(検討)
第四条政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(社会保険労務士法の一部改正)
第五条社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
別表第一第二十号の二十五の次に次の一号を加える。
二十の二十六女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成二十七年法律第六十四号)
(内閣府設置法の一部改正)
第六条内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
附則第二条第二項の表に次のように加える。
平成三十八年三月三十一日女性の職業生活における活躍の推進に関する基本方針(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成二十七年法律第六十四号)第五
条第一項に規定するものをいう。)の策定及び推進に関すること。
理由
女性の職業生活における活躍を迅速かつ重点的に推進し、もって豊かで活力ある社会を実現するため、女性の職業生活における活躍の推進について、その基本原則を定め、並びに国、地方公共団体及び事業主の責務を明らかにするとともに、基本方針及び事業主の行動計画の策定、女性の職業生活における活躍を推進するための支援措置等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


PS(2016年3月9日追加):*9の高校への推薦にまつわる事件は、①万引きの非行歴があると誤った情報を書類に記載し ②万引きの事実がないのに修正されず ③教育委員会は会議資料が正式な書類でなかったため修正しないままにしていたなどと言い訳しており、人の一生を左右する推薦だけに見過ごすことができない。しかし、そもそも推薦制度は公平・公正になりにくい上、普通の人である先生がその時代の“常識”に沿って推薦するため、誰の目から見てもおかしいものだけがはじかれるわけではない。例えば私の場合、「女のくせに謙虚でない」「女だから男に道を譲れ」など、時代の“常識”を変える女子学生の将来性は予測できずに、その時代の“常識”で芽を摘まれそうになったこともあり(こういう時にガードしてくれたのは両親や夫)、男女平等に自己実現しようとしてきた私は、先入観と偏見を排除できない推薦ではなく、公平・公正な試験で東大や公認会計士試験の合非が決まったため助かったのである。

*9:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160308/k10010436001000.html
(NHK 2016年3月8日) 中3生徒自殺 誤った非行歴で進路指導の経緯は
 去年12月、広島県府中町で中学3年生の男子生徒が自殺した問題で、学校が誤った非行歴に基づいて進路指導を行っていた経緯などを、広島県教育委員会が自殺から3日後に文部科学省に報告していたことが分かりました。文部科学省への報告によりますと、去年12月8日の夕方、男子生徒が自宅で倒れているのを父親が見つけ、生徒は病院に運ばれましたが死亡しました。自宅には自殺をうかがわせる遺書が残されていたということです。その日は生徒と保護者との三者懇談が予定されていましたが、予定の時間になっても生徒は現れず連絡も取れなかったため、担任と両親だけで懇談を行いました。懇談の中で担任は両親に、男子生徒が1年生のときに万引きした事実があるため志望校に推薦できないと伝えたということです。しかし、その後の学校の調べで、この男子生徒が万引きした事実はないことが分かりました。推薦するかどうかの判定の際に使う、問題行動のあった生徒のリストに男子生徒の名前が誤って記録されていたということで、これが事実誤認の原因だとしています。県教育委員会は、こうした経緯などを生徒の自殺から3日後には文部科学省に報告していました。報告によりますと、男子生徒の欠席日数は1、2年生のときは数日で、3年生になってからは1日しか休んでいませんでした。また、学校では去年9月と11月にいじめを把握するためのアンケートを行っていましたが、この生徒の回答にいじめに関する記述はなく、周りの生徒からもこの生徒に関わる記述はなかったということです。文部科学省は「誤った非行歴に基づいた指導によって子ども1人を自殺に追い込んでしまったのであれば大変遺憾で、あってはならないことだ。なぜそのようなことが起きたのか、徹底的に調査してもらいたい」と話しています。資料修正されず誤った記載残る府中町教育委員会によりますと、「万引きの非行歴がある」という自殺した生徒についての誤った情報は、生徒が1年のときに教諭たちの生徒指導用の会議資料に記載されました。資料には複数の生徒の非行歴が記されていて、会議の中では、出席した教諭から自殺した生徒は「実際は万引きをしていない」という指摘があり、万引きの事実がないことを出席した教諭の間で確認し合ったということです。しかし、資料は修正されず、誤った記載は残ったままになりました。これについて教育委員会は、会議の資料が正式な書類ではなかったため、当時関わった教諭が修正しないままにしていたのではないかと説明しています。


PS(2016年3月11日追加):東大医学部は、免疫学・再生医療・公衆衛生学・解剖学・法医学・人類学等々の基礎研究に進む人も多く、患者と接する臨床医になる人ばかりではないため、何が資質になるかは容易に判断できない(国会議員には阿部知子さんがいる)。また、本当に優秀な人が多いので、他大学と同じにする必要はなく、*10の面接は足切り程度に留めるのがよいと考える。さらに、理3の人で(第二外国語ならともかく)日本語や英語のコミュニケーション能力に問題のある人は見ない。そして、私は理2なので理3の人と同じクラスだったが、理3の友人から1972~1975年頃(!)に聞いた言葉のうち、もっともであったため、私が2005年に国会議員になってからすぐに実行したことが下のようにある。
 1)整形外科に進んだ友人がその科を選んだ理由を、「将来は必ずロボットの時代が来るし、自分は
   ロボットに興味があるので、人間の機能を勉強したい」と語った → これにより、私は国会議員に
   なってすぐにロボット議連のメンバーとしてロボット研究を後押ししたが、こういう人が工学部に
   学士入学すればロボットの研究をやりやすいようにすべきであり、医師としての資質ややる気が
   ないなどとして排除しない方が、本人のためだけでなく国のためにもなると考える。
 2)「将来は少子高齢化時代になるので、産科・小児科ではなく高齢者に需要の多い整形外科に進む」
   と言って整形外科に行った人もいる → もっともであるため、この時から私は人口構成と需要構
   造の連動に留意するようにしている。
 3)北方領土のことを知らなかった九州出身の私に、北海道出身の理3の友人が、「北方領土は日本の
   領土だよ。知らないの!」と怒った → 私は、この時はじめて、北方領土は日本の領土だったが、
   ロシアに占有されたのだという歴史を知り、国会議員になってすぐに全島返還のために動いた。
   今はまた、展望があやしくなってきたが・・。

*10:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12251804.html
(朝日新聞 2016年3月11日) 東大理科3類、面接を再導入へ 「医師の資質見極め」
 東大によると、理科3類の入学者は主に医学部に進む。医学部では、実習で患者と接する機会を増やすなど、コミュニケーション能力が従来以上に求められている。面接は点数化せず、一定の資質・能力があるかを確認する方針だ。また、入学者には試験の点数は高くても医療や医学を目指す意欲に乏しい学生もいるという。7月をめどに実施方法を、17年には選抜要項をそれぞれ公表する。全国の国公私立大学医学部医学科の入試で、面接がないのは東大と九州大だけ。理科3類は1999年~07年の9年間、面接をしていたことがある。


PS(2016年3月12日追加):*11は、女子差別撤廃条約、男女共同参画社会基本法、女性活躍推進法などに反する発言で、これを中学校の校長が全校集会で言うと、それが学校の雰囲気となって価値感形成期の生徒に悪影響を与える。しかし、こういうことを言う人は、議員・民間議員・メディアにも多く、そういう政策をキャンペーンしているのが根本原因であるため、それらも同時に批判すべきだ。

*11:http://digital.asahi.com/articles/ASJ3C7RL6J3CPTIL03C.html?iref=comtop_pickup_02 (朝日新聞 2016年3月11日) 「女性は2人以上産むことが大切」中学校長、全校集会で
 大阪市立中学校の男性校長が2月29日にあった全校集会で「女性にとって最も大切なのは子どもを2人以上産むこと。仕事でキャリアを積む以上の価値がある。子育てした後に大学で学べばいい」などと発言していたことがわかった。市教育委員会関係者が取材に明らかにした。市教委は不適切発言として懲戒処分を検討している。関係者によると、市教委の聞き取りに校長は発言を認め「間違ったことは言っていない」という趣旨の説明をしたという。今月初め、市教委への匿名の電話で発覚した。校長は2015年3月に定年退職したが、再任用されていた。

| 男女平等::2015.5~ | 01:41 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.3.3 高齢者への冷遇と社会保障
     
 *1-1より   介護負担増   介護費用負担割合      介護認定数、給付費、保険料

 書かなければならないテーマは沢山あるが、今日は、認知症高齢者の列車事故と公的介護制度について記載する。なお、(私の提案でできた)公的介護制度は、日本で2000年4月に始まり、40歳以上の国民全員が加入して介護サービスを受けることができるもの(https://www.fp-kazuna.com/insu/social/61.html 参照)であるため、2000年から介護給付費が右肩上がりに増えるのは当然であり、いまだ成熟した制度ではない。

 また、介護制度ができる前の介護は親族の負担で行われていたため、現在の高齢者に介護保険料を支払わせると現在の高齢者にとっては親族への直接介護との二重負担になるとともに、40歳未満の世代が介護制度への加入を免除されるのは、この世代への過度な優遇となる。そして、40歳以上の従業員のみを公的介護制度に加入させることにより、40歳以上の従業員に対する企業の負担が増えたため、40歳定年制を唱え始めた企業さえある。

(1)認知症高齢者の列車死亡事故 ← 見落とされた重要な論点
 認知症高齢者が列車にはねられて死亡した事故について、*1-1のように、一審、二審は家族に監督責任があるという理由で遺族に損害賠償責任を認めたが、最高裁は、家族のかかわり方や介護の状況を総合考慮して「遺族に責任はない」という結論にした。その結論はよいが、最高裁も①本人との関係②同居の有無や日常的な接触③財産管理への関わり方などを総合的に考慮し、責任を問うのが相当といえる客観的状況が認められるかを基準とすべきだとしており、損害賠償責任を負う場合もあるようだ。

 この論理の進め方で驚くのは、家庭で介護している親族が列車にはねられると、ただでさえ親族の他界で悲しんでいる遺族に、監督責任不履行として当然の如く損害賠償請求がなされることである。しかし、今の時代、そのように危険な踏切を放置しておいたことは、鉄道会社に責任があるのではないか?高齢者であっても、人間を閉じ込めたり繋いだりすれば人権侵害であるため、どの時点で何をすれば監督責任を履行したことになるかの判断は困難で、そもそも人は家の中に閉じ込めるべきものではない。

 さらに、高齢者や障害者が社会で暮らしやすくするため、バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO091.html 参照)が2006年に制定されている。この法律の趣旨は、高齢者や障害者を社会で受け入れ、その生活をやりやすくするため、公共交通機関の旅客施設や建築物の構造を改善することだが、今は、駅にエレベーターをつけたり、車椅子で交通機関を利用できるようにすることくらいしか実行されていない。しかし、高齢化社会・共働き社会に向けて鉄道構築物を安全なものにすることは、この制度に含めるべきである。

 そのため、*1-2に書かれているように、今後増える認知症高齢者のためには、「地域包括ケアシステム」で見守るのも大切だが、その前に鉄道や車の多い道路は高架にして事故や自殺を予防し、一階は自転車や歩行者が安心して通れる安全な街を作る必要があると考える。そうすれば、このような事故の予防になると同時に、踏切で長時間待たされたり道路が渋滞したりして生産性が低下することも防げるため、一石二鳥だ。

(2)公的介護制度について
 *2-1のように、2015年4月に事業者に支払われる介護報酬が全体で2.27%引き下げられたことが主な要因で、57.6%の事業所が改定後に報酬が減少し、訪問介護と通所介護(デイサービス)の事業者の40%以上が赤字となり、その中でも小規模事業所ほど苦境だそうだ。しかし、このように毎年切り下げられるようでは、安心して介護事業に参入したり、介護施設に投資したりすることができず、*2-2のように、「介護離職ゼロ」を実現することなど到底できない。

 なお、介護分野は労働集約型産業であるため雇用吸収力が大きいが、待遇の厳しさから人材不足が続いている。私は、チームで介護を行えば、全員が流暢な日本語を話せなくても介護サービスはできるため、*2-3のように、人手不足の介護などの分野でせっかく日本に来てくれた外国人は、技術に応じて公平・公正に処遇し、日本から追い返すようなことはしないのがよいと考える。

<認知症高齢者の死亡事故とバリアフリー>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160302&ng=DGKKASDG01HBF_R00C16A3EA2000 (日経新聞 2016.3.2) 家族の責任、総合判断 認知症事故で最高裁判決、介護の実情に配慮 線引き不明確、不安も残す
 認知症の人による損害の賠償責任を家族がどこまで負うかについて、最高裁が1日、初判断を示した。家族のかかわり方や介護の状況を「総合考慮する」という内容で、今回の事例では「家族に責任なし」と判断した。在宅介護の実情に配慮した形だが、状況によっては責任を負う可能性もある。「同居の配偶者や成年後見人というだけで自動的に監督義務者に当たるとはいえない」。民法は責任能力の無い人が第三者に損害を与えた場合、「監督義務者」が賠償責任を負うとしている。裁判では、認知症の人の家族がこの監督義務者にあたるかどうかが争点だった。同居している配偶者を監督義務者とした二審判決は「介護の担い手がいなくなる」と批判された。最高裁判決は介護の実情を踏まえ、二審判決を明確に否定した。では、どのような場合に義務を負うことになるのか。最高裁は(1)本人との関係(2)同居の有無や日常的な接触(3)財産管理へのかかわり方――などを総合考慮し、「責任を問うのが相当といえる客観的状況が認められるか」を基準とすべきだとした。最高裁がこうした判断を示したのは初めてだ。介護分野の専門家は「現場の実態を踏まえている」と評価。介護問題に詳しい弁護士は「個人が被害者となることもあり、事案によっては賠償責任を問えるとする判断は被害救済の道を残す」と肯定的だ。もっとも認知症の家族にとっては、不安が残る内容といえる。義務を負うかどうかの線引きについて、判断材料となる項目を示したにすぎないからだ。項目を見る限り、同居の家族が健康だったり、財産管理を含め日常的に深く関わったりしていた場合、監督責任を問われる可能性も出てくる。ただ「監督義務者がその義務を怠らなかったときは賠償責任を負わない」とする民法の規定があり、ただちに賠償責任を負わされるわけではない。判決でも裁判官5人のうち2人が、長男を「監督義務者として扱うべき」としたうえで、「十分な対策を取っていた」と賠償を認めない意見を付けた。一方、問題行動を放置していた時などは賠償責任が生じる可能性もある。国は認知症の人を医療機関でなく地域で見守る政策を進めており、在宅介護の比重は増している。「症状の軽重や介護する家族の年代にかかわらず、24時間目を離さずにいることは不可能」。「認知症の人と家族の会富山県支部」(富山市)の勝田登志子事務局長は、義理の両親と自分の母親を介護した経験を踏まえてこう訴える。あるベテラン裁判官は「今後、法律の分野では家族の監督責任は制限される方向に働くだろう」と予想しつつも、「どのような場合に家族の責任が認められるかは、判例の積み重ねを待つ必要がある」とみる。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160302&ng=DGKKZO97916920S6A300C1EA1000 (日経新聞 2016.3.2) 認知症介護の実態を重くみた最高裁判決
 認知症の高齢者が徘徊(はいかい)中に列車にはねられ死亡した事故で、遺族に賠償責任があるかが争われた訴訟の判決が、最高裁であった。判決は「家族が高齢者を監督することが可能な状況になかった」として、賠償を命じた二審判決を破棄した。高齢者を介護する多くの家族にとって、納得しやすい結論だろう。ただ、家族に責任はないとされても、亡くなった高齢者は戻ってこない。こうした事故を防ぐため、認知症の人を支える仕組みをつくる必要がある。民法は、責任能力のない人が第三者に損害を与えた場合に、監督する義務のある人が賠償責任を負うと定めている。裁判では、妻と長男に監督義務があるかが焦点となった。最高裁はまず、配偶者であることで直ちに監督義務を負うわけではないと指摘した。監督義務があるかどうかは、その人自身の生活や心身の状況、同居の有無、介護の実態などを「総合的に考慮し判断すべきだ」とした。妻は事故当時85歳で、要介護1の認定を受けていた。また長男の妻は近所に住んで介護にあたっていたが、長男自身は同居しておらず、月3回訪ねる程度だった。これらを踏まえ、判決は、妻も長男も監督が可能ではなかったと結論づけた。高齢化が進み、老々介護や遠距離介護のケースも増えている。一律に責任を負わせず、個々の事情を丁寧に見る判断といえるだろう。ただどのような場合に責任が問われ、どのような場合は問われないかは必ずしも明確ではない。何より大事なのは、こうした悲劇を繰り返さないことだ。政府は認知症になっても住み慣れた地域で暮らせる社会を目指すという。鍵となるのが医療や介護などを一体的に提供する「地域包括ケアシステム」だ。国や自治体は整備を急がなければならない。高齢者が徘徊した際に、市民にメールで連絡し、保護につなげる地域もある。住民の力も欠かせない。認知症の予防や治療のための研究の推進、見守りに役立つ機器の開発、損害を広く薄く負担し合う保険のような仕組みづくりが課題になるだろう。認知症の高齢者の数は2025年には約700万人に達するとの推計もある。誰もが当事者になる可能性がある。一つ一つ、地道に対策を積み上げていくしかない。

<介護>
*2-1:http://qbiz.jp/article/81909/1/
(西日本新聞 2016年3月3日) 訪問・通所介護、4割超が赤字経営 小規模事業所ほど苦境
 訪問介護と通所介護(デイサービス)の事業者の40%以上が赤字となっていることが2日、日本政策金融公庫総合研究所の調査で分かった。2015年4月に事業者に支払われる介護報酬が全体で2・27%引き下げられたことが主な要因で、57・6%の事業所が改定後に報酬が減少した。調査は昨年10月、訪問介護か通所介護のサービスを提供する企業や社会福祉法人などを対象に実施し、2886事業者から回答があった。サービスごとの事業者の赤字割合は訪問介護が47・6%、通所介護が42・7%。特に通所介護では、事業所の規模が小さいほど経営が苦しい傾向が鮮明で、従業者が「4人以下」の赤字の割合が52・8%だったのに対し、「50人以上」だと32・8%にとどまった。改定の前と後で、報酬が「増えた」と回答した事業者は全体の8・8%。「変わらない」は33・6%、「減った」は57・6%だった。減少した事業者のうち、16・7%が「15%以上減少した」と回答した。日本政策金融公庫総合研究所は「大規模な事業所では、介護報酬の高いサービスを始めることなどで報酬減の影響を少なくできたが、規模の小さい事業所では対応が難しかったと考えられる」としている。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/262734
(佐賀新聞 2015年12月24日) 1億総活躍社会、目立つ政策のちぐはぐさ
 「1億総活躍社会」のスローガンの下、政府はこの国をいったいどこへ導こうとしているのか。政府の補正予算や来年度予算の編成が進むとともに、おぼろげながら全体像が見えてきた。1億総活躍という、戦前・戦中の全体主義を連想させるネーミングはともかく、世界にも例がない超高齢化社会に突入したわが国にとって、新たな社会構造に応じた経済の活性化策が最重要課題なのは確かだ。その具体的な政策が、アベノミクスの第2ステージと位置づけられた「新3本の矢」というわけだ。従来の3本の矢を束ねて、GDP(国内総生産)を2020年ごろまでに600兆円に拡大させるというのが、新たな第1の矢。第2の矢は子育て支援で、出生率を現在の1・42から「希望出生率1・8」まで押し上げる。さらに、社会保障を充実させる第3の矢で、家族の介護や看護を理由に離職・転職する人が年間10万人以上も生じている状況を解消して「介護離職ゼロ」を実現させるという。いずれも、理想的な未来の姿なのかもしれない。だが、果たして実現できるのだろうか。これまで、安倍政権は規制緩和により、雇用の流動性を高める政策を進めてきた。その結果、賃金が低く押さえられ、企業側に有利な雇用環境が生まれ、働く人の4割が非正規雇用という状況になった。ところが、今回の政策では賃上げで消費を刺激するという。最低賃金を年率3%程度をめどに引き上げ、全国加重平均で千円を目指す。これでは、雇用改善の責任を中小企業に押しつけるだけではないか。非正規雇用の問題は、第2の矢の出生率の問題にもつながる。若い世代では、不安定な雇用と低い所得水準を背景に、結婚に踏み切れない、あるいは子どもを生み育てる自信がないという現実が生じている。これまでの大企業重視で雇用流動性を優先してきた政策そのものを転換しなくては、若い世代の生活の安定は望むべくもない。第3の矢の「介護離職ゼロ」にしてもピントがずれていないか。今回の政策では、介護施設の整備のために国有地を活用したり、賃貸物件での運営を認める規制緩和策を打ち出している。だが、本当に解決すべきはハード面の整備ではなく、介護現場で働く人材の確保ではないか。介護分野は典型的な労働集約的産業にもかかわらず、待遇の厳しさから人材不足が続いているからだ。最も気掛かりなのは、低年金受給者へ一律3万円を支給するという政策だ。1130万人、その額は3600億円を超える。「消費の下支え」を名目にしているが、来年夏の参院選をにらんだバラマキと批判されても仕方あるまい。総じて目立つのは政策のちぐはくさだ。目指す先には、経済や社会保障分野で好循環を生み出し、50年後に人口1億人を維持するという最終的な目標がある。そうであれば、ここに挙げられた政策は、どれも小手先に過ぎず、実効性も疑わしい。旧「3本の矢」のように、十分に成果を検証しないまま、選挙が終われば次の矢を持ち出すような、目くらましでは困る。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12131786.html
(朝日新聞 2015年12月24日) (人口減にっぽん)外国人79万人が働く国
 コンビニや居酒屋、そして除染も。日本で働く外国人が増えている。その数、79万人。6年間で30万人増え、過去最高だ。日本の労働人口が減る中、今や貴重な働き手になっている。ただ、職場は日本人が避けがちな仕事が多い。その働く現場を追った。
■除染の町「人が足りぬ」
 日系ボリビア人の男性(41)はこの夏、福島県飯舘村で除染作業員として働いた。幹線道路沿いの草刈りが主な仕事だ。1日8時間で、1万6千円。お金を稼ごうと23歳で来日して18年。これまでもらったことのない額だった。妻の反対を押し切って申し込んだ。作業グループは10人。そのうち、自分を含む4人が外国人だった。「人が足りないからだ」。除染作業員を募るある派遣会社の役員は、そう話す。この会社も今年初めて、外国人を6人送り込んだ。事故やトラブルを恐れる派遣先から「外国人はやめてくれ」と言われていたが、今年は「解禁」された。大手ゼネコンも「東京五輪で人手不足が進むので、除染する外国人は増えるだろう」。だが働く環境は、ボリビア人男性が感じたほど好待遇ではない。この工事で環境省が業者に示している除染の賃金目安は、実は2万5千円だ。給料がきちんと支払われる保証もない。この男性は、8~9月の1カ月間分の給料28万9千円が振り込まれなかった。雇用主の派遣会社に問い合わせたが、「別の建設業者が支払う」と言ったきり。一緒に作業した3人の外国人と連絡を取ると、みな未払いだった。労働組合に駆け込み、ようやく11月、建設業者から「未払い分は払う」と連絡がきた。それでも、男性はこう話す。「また除染で働きたい。これまで車部品工場で働いたけど、あまり人間的な扱いを受けなかった。除染現場はそうではなかった」
■労働人口、30年後は2000万人減
 厚生労働省の統計(2014年)では、働く外国人は79万人。国家公務員(64万人)をしのぐ数だ。雇用主が未報告のケースもあり、「法務省の統計データもあわせて推計すると、厚労省調査の捕捉率は7割程度。すでに100万人働いているのはほぼ確実だ」(自由人権協会の旗手明理事)という。一方、日本の推計労働人口は、今後30年間で2千万人以上減る。外国人へますます頼ることになりそうだ。政府は、どういう外国人を増やすのか。「1億総活躍」を掲げる政府は、「移民受け入れより前にやるべきことがある」(安倍晋三首相)という立場だ。日本人だけで人口1億人を維持し、経済発展に役立つ外国人を中心に歓迎する、というスタンスだ。具体的には、学歴や収入が高い「高度人材」が長く日本で暮らせるようにしているほか、人手不足の「介護」で、来年度にも受け入れを広げる。外国人が「家事代行」のために入国することを新たに認め、日本の女性が家の外で働きやすくして、労働力の落ち込みを防ぐ。安価な単純労働を担う実態がある「技能実習生」は、滞在期間を3年から5年に延ばす。こうした方針が、政府の成長戦略に盛り込まれている。
■家事「両親に頼むより楽」
 外国人の家事代行は今月、神奈川県の計画が国家戦略特区として認められた。同県では来年3月をメドに家事代行で働くことを目的に入国できるようになる。賃金は日本人以上とすることや、働けるのは3年未満と政府指針で決まっている。すでに需要はあり、現在は「日本人と結婚した外国人」など就労に制限のない人が働いている。12月中旬の平日、午後5時。東京都渋谷区の戸田万理さん(42)宅に、フィリピン人のヴィナさん(42)がやって来た。ヴィナさんは夫が日本人で、日常レベルの会話はだいたい理解できる。持ってきたエプロンを身につけると、戸田さんが「スープを作ってもらえるかな」と材料を渡す。1時間ほどでカボチャのスープを仕上げた。その間、戸田さんは長女の理花ちゃん(1)をあやす。フルタイムで働くコンサルタント。共働き家庭で、来年1月には長男を出産する予定だ。「仕事と家事、育児のすべてがのしかかり、イライラすることが増えていた」。11月、家事代行の「タスカジ」に申し込んだ。1回3時間、交通費を除いて4500円。週2回、平日に来てもらう。戸田さんに甘える理花ちゃんに「ちょっと待って」と言う回数が減った。「自分の両親に頼むより気楽。もう離せません」。タスカジの働き手は登録式だ。外国人に限っているわけではないが、多くがヴィナさんのように「配偶者ビザ」を持つフィリピン人女性だ。午前9時~午後10時に3時間区切りで頼め、1時間あたり1500円から。利用者は3千人近くいる。「国家戦略特区」での解禁を見据え、人材確保も始まっている。人材大手パソナは来年4月をメドに、フィリピン人約30人に日本に来てもらう予定だ。マニラの人材会社と提携し、「実務経験1年以上」などの日本政府の条件に合う人材の募集を始めた。選考に通れば、日本語や日本食などの研修を年明けから現地で始める。料金は、週1回の利用で1カ月1万円ほどを想定。企業に、「社員の福利厚生」としての利用を売り込む考えだ。92年に外国人の家事代行を解禁した台湾では、労働時間の管理が課題になっている。家庭に住み込む形式がほとんどのためだ。今年秋、台湾家庭に住み込むフィリピン人女性(32)は「雇用主が外に出してくれない」と目に涙をためて訴えた。働き始めて6カ月。ようやく初めての休日を1日もらえたのだ。外国人の就労を担当する労動部労動力発展署の蔡孟良副署長は「雇用主が週7日働かせても、ちゃんと残業代を払い、労働者が合意していれば政府は何もできない」という。日本の国家戦略特区では、住み込み形式は認めていない。ただ台湾では「外国語交じりで世話をされると、子どもの文化やアイデンティティーに影響が出る」(蔡副署長)とも指摘されていて、最近では受け入れの条件を厳しくしている。
■「まずは家事の分担を」
 外国人労働問題に詳しい指宿昭一弁護士の話 外国人に家事を頼る前に、まずは男性も平等に分担できるようにすべきではないか。長時間労働を見直して、不足している保育所を増やすことが先決だろう。本当に外国人が必要なのか、国民的な議論も不足している。外国人に家事をさせる理由は、低賃金でしてもらえるからだ。家事は範囲が広く、仕事は育児や介護に広がる可能性がある。そうすると、保育士や介護福祉士などの賃金がますます低く抑えられることになる。

| 年金・社会保障::2013.8~2017.4 | 04:23 PM | comments (x) | trackback (x) |

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