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2015,08,30, Sunday
電力システム改革の流れ 東京電力の分社化 エコカー市場の拡大 2015.3.17 2015.8.23 西日本新聞 日経新聞 (1)電力自由化、発送電分離に対する電力会社の対応不足について 上の左の2つの図及び*1-1のように、2016年4月に電力小売りの全面自由化と電力会社の地域独占廃止が行われ、2020年には「発送電分離」が実施されるため、九電は、2015年度中に電力事業を「発電」「送配電」「小売り」に分ける組織改正に踏み切る方針を固め、送配電部門を切り離すそうだ。 しかし、「発電部門」は大きく変えないとしている点については、私は、発電部門も電源由来別に分けて独立採算とし、「社内カンパニー制」ではなく「分社化」して正確に電源由来別の原価を把握し、独立採算にしてディスクローズした方が、誰にとってもわかりやすく、連結納税制度を活用すれば税務上の損失もあまりないため、メリットが大きいと考えている。 何故なら、「社内カンパニー」は、一つの会社の中で事業部に分けているにすぎないため、①顧客が電源由来別に正確なコストを支払って電力を選択することができない ②火力発電、原子力発電、新エネルギー、スマートシティーの構築など、異なる性格の技術者を同一の就業規則や給与体系で処遇しなければならないため、不合理な人事管理になって必要な人材を繋ぎとめられない ③規模が大きくなるため、組織階層が多すぎて現場のニーズがトップに正確に伝わらず、有効な経営管理がやりにくい ④それらすべての分野に精通した社長を置くことは不可能である などの不都合があるからだ。 そのため、上中央の図のように、東電も2016年度に発電事業会社、送配電事業会社、小売事業会社を子会社化して持ち株会社の下につけるが、私は、発電事業会社をさらに細かく、「火力発電会社」「原子力発電会社」「自然エネルギー発電会社」などに分け、電源由来別に選択できるようにした方が、顧客獲得と資金調達の両方に有利だと考える。その理由は、これからは、顧客も株主も、環境やエネルギー自給率に資する電源を選択するようになるからだ。 なお、*1-2のように、九電が「『日本一のエネルギーサービス』を提供する企業グループになる」と言うのを西日本新聞は驚きを持って報道しているが、本来、日本企業に「日本一」は普通に存在し、分野によっては「世界一」も珍しくない。これまで、電力産業でそういうことがなかったのは、古い意識の役所(経産省)と甘え合って、規制で保護され先進的なことも止められていたからであり、自由化するとこういうことが可能になるのである。 (2)太陽光はじめ自然エネルギー由来の電力買い取りについて 九州で太陽光発電が普及し、九電は買い取り制限を始めたが、*2-1のように、電力小売り事業に参入する福岡県みやま市が主体となって設立した電力売買会社「みやまスマートエネルギー」が、2015年10月15日から市内の公共施設向けに売電を始め、2016年4月からは家庭向けにも電力供給するそうだ。そして、メガソーラーや家庭用太陽光発電機の電力を九電より高い価格で買って安く販売するそうなので、他の市町村も頑張ってもらいたい。 なお、*2-2で東京新聞が記載しているように、今夏は太陽光発電が原発十二基分に当たる計一千万キロワット超(川内原発の出力八十九万キロワットの約十二倍)の電力を生み出し、二年前の供給の1%から6%台に急伸したそうだ。太陽光発電が千百万キロワット弱(6・5%)の電力を生み出したのは、政府の事前予測五百万キロワットの2倍であり、これは、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度がスタートして、たった三年後の成果なのである。 (3)電気自動車、燃料電池車について 「太陽光発電は不安定な電力」と言われることが多いが、これは、*3-3のような研究開発で蓄電池が大容量かつ安価になったり、電力を水素燃料に変えて保存できるようになったりすれば解決することだ。しかし、*3-2のように、日本は電気自動車に取り組み始めて20年にもなり先行していた筈なのに、*3-1のように、エコカーはまだハイブリッド車が主流であり、本気で電気自動車や燃料電池車に変えようとしているようには見えない。日産自動車の電気自動車「リーフ」の走行可能距離がやっと300キロメートルになるそうだが、「電気で走ればいいんだろ」と言わんばかりのワンパターンのデザインであるため、魅力に乏しく、BMWやテスラのように本気で開発した電気自動車には見えないのである。 また、ホンダも2016年3月末までに発売する燃料電池車の走行可能距離を700キロメートル以上とトヨタのFCV「ミライ」(約650キロメートル)を上回る水準にするそうだが、水を電気分解すれば100%国内産の水素燃料を作ることが簡単である。しかし、水素燃料の進捗が遅く、外国から輸入する化石燃料から水素を作る案もあり、これは筋が悪すぎる。何故なら、そのような水素と酸素を化学反応させてエネルギーを作れば、我が国のエネルギー自給率は上がらない上、燃料電池車の普及後には空気が酸素不足になるからだ。そのため、水素は水から作るのを原則とし、同時にできる酸素も供給すべきである。 (4)原発は公害が深刻すぎるため、過去のエネルギーにすべき *4-1のように、全国知事会原子力発電対策特別委員会の西川委員長(福井県知事)が、原子力規制委員会の田中委員長と会談して、「現場を重視した実効性のある安全対策を進めてほしい」と要望し、避難に緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)などを活用する仕組みづくりを求めたそうだが、当然のことである。 また、*4-2のように、暮らしを一変させた東電福島第1原発過酷事故から4年5カ月で、九電は鹿児島県の川内原発1号機を再稼働させたが、このやり方はモデルケースにはできない。また、廃炉や最終処分場などについても、原発ゼロへの道筋があり、これ以上核廃棄物を出さない確約があって初めて相談に乗れるものだ。そして、このことは、川内原発再稼働に「反対」との回答が57%を占めている世論調査からも明らかである。 さらに、「原発はコストが安い」ともよく言われるが、これはまず、電源由来別に別会社にして正確にコストを集計してから、同じ次元で比較すべきなのである。その上で、*4-3のようなコストも加えれば、原発は金食い虫であり、維持してプラスになるものではないことが、いっそう明らかになる。 なお、*4-4のように、川内1号機は、2次冷却水に海水が混入して出力上昇を延期したそうだが、これと似たようなことが同じ型の米サンオノフレ原発の蒸気発生器で起こり、*4-5のように、NRC(米原子力規制委員会)が三菱重工の製造工場に抜き打ちで調査に入った後、サンオノフレ原発の廃炉が決定的となり、現在、三菱重工は9300億円の訴訟を起こされているそうである。 <電力自由化と発送電分離> *1-1:http://qbiz.jp/article/58025/1/ (西日本新聞 2015年3月17日) 九電、7月めどに配電部門を再編 「発送電分離」へ備え 九州電力は、2015年度中に電力事業を「発電」「送配電」「小売り」に分ける組織改正に踏み切る方針を固めた。7月をめどに、営業と配電業務を担う現在の「お客さま本部」から配電部門を切り離し、「電力輸送本部」と統合する方向で調整している。国の電力システム改革の一環として16年4月に導入される新たな制度をにらんだ対応。大手電力会社の送配電部門が切り離される「発送電分離」に備えた動きが本格化しそうだ。九電は労働組合に組織改正の意向を伝えた。今後、具体的な協議に入る。組織改正は、国が電力小売りが全面自由化される16年4月に導入する新たな制度によって、大手電力も発電事業が届け出制、送配電事業が許可制、小売り事業が登録制となるのに対応するのが目的。本店組織から着手し、段階的に出先の拠点の機能整理も進める。具体的には、電力輸送本部に配電部門を統合することで送配電を一元的に担える体制とし、お客さま本部は小売りの営業に特化させる方向。発電部門は、現在の「発電本部」から当面は大きく変えない。今回の組織改正に応じて、部署名を変更する可能性がある。政府は、発送電分離を20年4月に実施する電気事業法改正案を既に閣議決定している。九電は今回の組織改正をベースに、各部門を独立採算とする「社内カンパニー制」の導入や分社化の検討も進めるとみられる。各部門の独立性を高めながら、業務の効率化や全面自由化後の競争力強化にもつなげたい考えだ。国の電力システム改革をめぐっては、東京電力が他の電力大手に先んじる形で13年4月に社内カンパニー制を導入しており、16年度にも持ち株会社を設立して事業の分社化に踏み切る方針を示している。 ◇ ◇ ◆改革への対応「第一歩」 九州電力が2015年度に乗り出す組織改正は、電力システム改革に対応する社内体制構築の第一歩となる。20年4月に予定される発送電分離による送配電部門の分社化が避けられない中、九電は経営環境の激変をにらんだ体制整備を迫られている。電力システム改革の一環として、16年4月の電力小売り全面自由化と同時に導入されるのは「ライセンス制」と呼ばれる制度。大手電力会社の「一般電気事業者」という事業類型を廃止し、「発電事業者」「送配電事業者」「小売り事業者」に再分類し、従来の一貫体制を前提としない制度に移行する。国は、これを円滑な発送電分離につなげたい考えだ。発送電分離は、持ち株会社に発電、小売り、送配電の3社をぶら下げる方式のほか、発電と小売りの一体会社が送配電の子会社を傘下に置く形態も認められる方向。ただ、親会社には送配電会社の中立性を確保するための規制が課せられ、今年4月に設立される「電力広域的運営推進機関」の送配電会社への関与が強まることも想定される。九電を含む大手電力は今後、市場の全面自由化に伴う競争環境の変化に対応しながら、将来の組織体制の検討も進めることになる。原発の再稼働が進んで収支状況が好転したとしても、会社経営の在り方は大きく変容する見通しで、九電幹部も「会社が東日本大震災前の状況に戻ることはもうない」と断言する。 *1-2:http://qbiz.jp/article/69448/1/ (西日本新聞 2015年8月26日) ついに「日本一」を掲げた九電 その瞬間は耳に引っかからなかったのに、後から意味ありげに響くことがある。九州電力が今年4月に発表した「九州電力グループ中期経営方針」に明記された言葉がそうだ。「『日本一のエネルギーサービス』を提供する企業グループ」。競争が日常となっている一般のビジネスにあって、企業が「日本一」を目標に掲げることは、むしろ普通だ。でも、地域ごとに独占を認められ、完全かつ激しい自由競争にさらされてこなかった大手電力会社が「日本で1番」という目標を、ここまでど真ん中直球で掲げたことはなかったと思う。関西電力や中部電力は「NO.1」という言葉を使っているが、「どこの1番」かは明確じゃない。これまで何度か電力業界を取材してきたが、いつも「横並び」とか「序列」といったキーワードがつきまとっていた。いまも基本的な印象は変わらない。でも、九電の「日本一宣言」はその壁を破ろうとする意志を感じる。言うまでもなく、背景にあるのは、来春に迫った電力小売りの全面自由化だ。企業向けは自由化されていたが、「一般家庭が電気を買う企業を自由に選べる時代」に入る危機感は、これまでの比ではないだろう。だからこそ、なのか。九電関係者は言う。「日本一と言う文言は、若手・中堅から原案が上がってきたようだ。先が読めない中だからこそ、攻めの目標を掲げようということだろう」。別の幹部はこうも語った。「国や電事連(電気事業連合会)の中で、ある意味優等生として頑張ってきたが、もうルールが変わると言うのなら、九電として一丸となって生き残っていくしかない」。新規制基準下では全国初の原発再稼働。復水器の不具合。そして25日には台風の影響という、まさかの火力発電所連続停止。九電にとっては試練が続く。「日本一」は、厳しい自由化時代の壮大な目標か、悲壮な覚悟か−。いずれにしても、長年培ってきたと自負する九電ブランドの全てが問われることになる。その答えは、そう遠くない将来出る。 <太陽光発電> *2-1:http://qbiz.jp/article/69178/1/ (西日本新聞 2015年8月20日) みやま市が10月15日から売電 全面自由化される電力小売り事業に参入する福岡県みやま市が主体となって設立した電力売買会社「みやまスマートエネルギー」(同市)が、10月15日から市内の公共施設向けに売電を始めることが19日、分かった。2016年4月からの家庭向け電力供給をにらみ、売電事業を本格化させる。売電先は、市役所本庁を皮切りに、市内の学校や公民館など計38カ所を予定している。病院や工場など民間施設への供給も順次開始し、市外にも売電エリアを広げる方針。電気料金は、基本料金を安く設定することを検討している。新会社が、大規模太陽光発電所(メガソーラー)や家庭用太陽光発電機の電力を九州電力よりも高い価格で買い取り、安く販売する。売り上げは15年度に1億5千万円を目指す。家庭向けに売電を始める16年度は12億円を見込む。 *2-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015083090071134.html (東京新聞 2015年8月30日) 太陽光発電 今夏シェア6%台に ピーク時に原発12基分 今夏に電力需要がピークを迎えた時間帯にどう電力が確保されたか電力各社に取材したところ、太陽光発電が原発十二基分に当たる計一千万キロワット超の電力を生み出し、供給を支えていたことが分かった。二年前は供給力の1%にすぎなかった太陽光は、6%台に急伸。九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)が今月再稼働するまで約一年十一カ月にわたり国内の「原発ゼロ」が続いた間に、太陽光が欠かせない電源に成長したことが明確になった。本紙は、原発のない沖縄電力を除く全国の九電力会社に、今年七~八月の電力需要ピークの時間帯に、電源構成がどうなっていたのかデータ提供を求めた。四国電力は提供を拒否したが、八社が回答した。地域によってピークの日や時間帯は若干異なるが、八社が需要を見越して準備した供給力の合計は約一億六千六百万キロワット。首位は火力発電で、約一億二千六百万キロワット(75・4%)と圧倒的に多い。二位は、くみ上げておいた水を需要に応じて放水する揚水発電で約千八百万キロワット(10・9%)、三位は水力発電の約千二百万キロワット(6・9%)。太陽光発電は僅差で続き、千百万キロワット弱(6・5%)。川内原発の出力は一基八十九万キロワット。約十二倍の電力を生み出していたことになる。政府の事前予測は五百万キロワット前後だったが、大きく外れた。再生エネルギーの固定価格買い取り制度がスタートしてからの三年で、中心的な存在になった。需要が高まる日中、軌を一にするように発電するのが太陽光の特質で、割高な石油火力の稼働を最小限にできる効果もあった。地域別では、太陽光の発電量は東京電力管内が四百万キロワットと最も多かったが、発電割合では九州電力管内が9・5%と最も高かった。九州では今夏、ピークが通常とは異なり、日射量が減り始める午後四時だった。もしピークが一般的な昼前後であれば、発電量は二~三倍だった可能性が高い。九電は八月十一日に川内原発1号機を再稼働させたが、その前から電力の需給バランスは余裕のある状態が続いていた。中部電力などから電力融通を受けていたこともあるが、九州では太陽光の導入量が非常に多く、そのサポートで安定が保たれていたともいえる。 <固定価格買い取り制度> 太陽光や風力、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギーでつくられた電気を、国が設定した価格で一定期間、電力会社が全量買い取るよう定めた制度で、2012年7月にスタートした。買い取り費用は電気料金に上乗せされるが、太陽光パネルの価格低下などに伴い、買い取り価格は段階的に下げられている。導入量は、設置が容易な太陽光に集中しており、家畜のふんや木材チップなどを活用し、出力調整が容易なバイオマスがあまり伸びないなどの問題もある。 <電気自動車と燃料電池車> *3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150823&ng=DGKKASDZ07HN2_S5A820C1MM8000 (日経新聞 2015.8.23) エコカー 走行距離長く、日産、フル充電で300キロ トヨタ・ホンダも海外で攻勢 自動車メーカー各社が環境対応車を刷新し走行可能距離を伸ばす。日産自動車は年末にも電気自動車(EV)「リーフ」を改良し、フル充電での走行可能距離を3割増の300キロメートルとする。トヨタ自動車は12月、ガソリン1リットルあたり40キロメートル超と現行モデルより約2割長く走るハイブリッド車(HV)「プリウス」の新型車を発売する。クルマの電動化を軸にエコカーの使い勝手を高め、グローバル市場での普及を促す。日産はこのほどリーフで使うリチウムイオン電池にためられる電気の量を増やす技術を開発した。EVは一度の充電で走れる距離がガソリン車より短いことが課題だったが、300キロメートルまで伸びる。電池の大きさは変わらず現行の製造ラインを使える。原価の大幅増にはならない見通しで、販売価格を大きく変えることなく商品力を上げる。現行リーフを部分改良し年末にも発売する。日産では400キロメートルの実現を目指し研究開発を続けている。「電池の技術レベルが急激に上がっており、長期では通常のエンジン車と同水準の走行可能距離も不可能ではない」(幹部)という。トヨタはHVの旗艦車、プリウスを6年ぶりに全面改良する。従来のニッケル水素電池だけでなくリチウムイオン電池も採用し、小型化しながらも出力性能を高める。モーターやインバーター(変換装置)や制御システムなども刷新する。衝突安全性を高める部品の採用で車体重量は増える方向だが、エンジンの燃焼効率も高めるなどしてガソリン1リットルあたりの走行距離を現状の32.6キロメートルから伸ばす。ホンダも2016年3月末までに発売する燃料電池車(FCV)の走行可能距離を700キロメートル以上とトヨタのFCV「ミライ」(約650キロメートル)を上回る水準にする。HVやEVといったエコカーは日本が技術開発で先駆けたが、世界での販売はまだ限られている。トヨタのHVは日本では14年で10%強のシェアを持つが、全世界では2%弱にとどまる。10年に発売した日産のリーフも、6月末までの世界累計販売は18万台強。仏ルノーと合わせて16年度までに150万台というEVの販売計画を大幅に下回っているのが現状だ。ただ、欧米などで燃費規制が強化されるためエコカー市場は拡大する見通し。調査会社マークラインズは、14年に200万台だったHVの世界市場は25年に2000万台を突破すると予測する。ドイツ勢ではフォルクスワーゲン(VW)がより廉価なHVの開発を進めているほか、BMWが家庭で充電できるプラグインハイブリッド車の扱いを増やしている。米テスラモーターズがEVの車種を拡大するなど、エコカー市場の競争は激しくなる。日本勢はより燃費を改善したり、走行可能距離を伸ばしたりすることで優位性をアピールし、欧米や中国など海外で販売を加速させたい考えだ。 *3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150823&ng=DGKKZO90864450T20C15A8NN1000 (日経新聞 2015.8.23) クルマの電動化 日本が先行、追う欧州勢 ▽…自動車の駆動装置をエンジンから電気モーターに置き換えたり、モーターを併用したりすること。化石燃料の使用をゼロまたは大幅に減らすことができ、環境負荷を和らげる目的で開発された。車載電池から電気を取り出して走る電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)に加えて、水素と酸素を反応させて生み出した電気で走る燃料電池車(FCV)などがある。 ▽…トヨタ自動車のHV「プリウス」や日産自動車のEV「リーフ」などクルマの電動化では日本メーカーが先行してきた。ただ米カリフォルニア州の「ZEV規制」や欧州の「ユーロ6」など厳しい環境規制を見据え、クリーンディーゼル車やエンジンの小型化で規制に対応してきた欧州メーカーも電動化に本腰を入れはじめた。 ▽…クルマの電動化普及の壁となってきた充電インフラも整いつつある。国内の急速充電器の数は現在約5400基と2014年9月に比べ約3倍に増えた。独BMWと独フォルクスワーゲン(VW)も米国で100カ所に急速充電器を整備することを合意している。 *3-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150824&ng=DGKKZO90871610T20C15A8TJM000 (日経新聞 2015.8.24) 電極に硫黄使い、リチウムイオン電池容量を4~5倍に、産総研や関大、3~5年後に実用化へ 幅広く使われるリチウムイオン電池の電極に硫黄を採用することで電池の容量を4~5倍に増やす技術の開発が相次いでいる。硫黄は電解液に溶け出しやすいが、産業技術総合研究所は電極の金属と強く結合させることで克服した。関西大学は電極の構造を工夫し、問題を解決した。スマートフォン(スマホ)などの携帯機器を充電する頻度を大幅に減らせる見込み。電池メーカーなどと組み3~5年後の実用化を目指す。リチウムイオン電池はリチウムイオンが電解液を通じて正極と負極の間を行き来することで充放電を繰り返す。正極にレアメタル(希少金属)を含むコバルト酸リチウムなどを使っている。硫黄は電気を多く蓄える性質があり、電極材料に向く。希少資源でもない。硫黄を微粒子状に加工し、表面積を増やしたうえで正極に活用する研究などが進んでいる。ただ充放電を繰り返すと電解液に溶け、電池の性能を落とす課題があった。産総研の栄部比夏里上級主任研究員らは、正極に使う金属と硫黄の微粒子を強く結合させる技術を開発した。鉄やチタンなどの金属と硫黄を粉にし、セラミックスでできた小さな球と一緒にかき混ぜる。球がぶつかる際の衝撃で、金属原子と硫黄が強く結びつく。1つの金属原子に硫黄の微粒子が4~6個結合する。この材料を正極に使い電池を試作した。電池の容量は従来のリチウムイオン電池の3~5倍になった。電圧は半分になるが、回路構成などを工夫することで電圧を引き上げられるという。電池メーカーと協力して今年度中にも携帯電話に使う大きさの電池を試作し、実用性を確かめる。関西大の石川正司教授らの技術は、電極に使う炭素に開いた直径数ナノ(ナノは10億分の1)メートルの穴に硫黄の微粒子を染み込ませる。微粒子が固定しやすい大きさの穴を均一に作り込むとともに、硫黄を穴に効率よく充填する技術を開発した。電極の重さのほぼ3割が硫黄になり、電池の容量が従来の4倍になった。正極を作り電池で試した。数百回充放電を繰り返しても性能を保った。充電に要する時間は従来のリチウムイオン電池の20分の1に短縮できた。今後は炭素に染み込ませる硫黄の量を増やし、5年後の実用化を目指す。 <原発について> *4-1:http://qbiz.jp/article/69273/1/ (西日本新聞 2015年8月21日) 「現場重視の安全対策を」 全国知事会が規制委に要望 全国知事会原子力発電対策特別委員会の西川一誠委員長(福井県知事)は20日、原子力規制委員会の田中俊一委員長と会談し、「東京中心に物事が考えられがちだ。現場を重視した実効性のある安全対策を進めてほしい」と要望した。西川委員長は、東京電力福島第1原発事故の早期収拾や原子力防災体制の強化などを盛り込んだ提言書を提出。原子力災害対策指針に明確な規定がない原発から30キロ圏外の自治体でも事前対策が必要だと指摘し、避難ルートの検討に緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)などを活用する仕組みづくりも求めた。田中委員長は避難計画策定向けに「発電所ごとに気象条件や風向きを考慮してシミュレーションした基礎データを出せるようにしたい」と応じ、規制の判断基準について丁寧に説明する考えを示した。提言は宮沢洋一経済産業相にも提出した。 *4-2:http://mainichi.jp/shimen/news/20150812ddm005070045000c.html?fm=mnm (毎日新聞社説 2015年8月12日) 川内再稼働 原発依存社会に戻すな 人々の暮らしを一変させた東京電力福島第1原発の過酷事故から4年5カ月。九州電力が鹿児島県の川内原発1号機を再稼働させた。事故後に策定した新規制基準のもとでの初の稼働である。政府も電力会社もこれをモデルケースに既存の原発を順次再稼働していく心づもりだろう。しかし、あれだけの事故を経てなお原発と向き合う政府の本質的な姿勢は変わらず、事故の教訓を生かし切っていない。この再稼働を3・11前の安全神話に逆戻りする第一歩にしてはならない。 ◇ゼロへの道筋が先決だ 3・11の教訓は、「対策をとっても原発事故は起きうる」「原発事故が人、環境、社会に与える被害は質も範囲も他の事故と大きく異なる」ということだった。しかも、日本は世界有数の地震・火山国である。日本で原発を動かし続ける危険性はあまりに大きい。核のゴミの処分問題を考えても原発は持続可能なエネルギーとは言いがたい。だからこそ、できるだけ早く原発をやめようと私たちは主張してきた。一方で、原発即ゼロがもたらす経済的、社会的リスクを考えれば、一定の条件を満たした上で最小限の稼働を認めざるをえない場合もあるだろう。そんな考えも示してきた。しかし、この再稼働は条件を満たさず、認めることはできない。まず、原発を減らしていく過程での再稼働との位置付けが欠けている。政府が昨年閣議決定したエネルギー基本計画には、「原発依存度を可能な限り低減させる」との方針が盛り込まれた。これに従えば、確実に原発を減らしていくための工程表を描くことが政府の責務だ。ところが、7月に経済産業省が決定した2030年の電源構成は原発比率を20〜22%とした。これを実現するには40年廃炉の原則を超えた老朽原発の延命、建て替え・新増設が必要となる。ここに見え隠れするのは、なし崩しに原発依存社会に戻そうとする政権の意図だ。事故が起きた場合に住民への被害を最小限にとどめる、という必須条件も満たされていない。確かに新規制基準では以前は想定していなかった過酷事故も考慮し、求められる安全対策は厳しくなった。基準適合を審査する原子力規制委員会も独立性を高めハードルは高くなった。しかし、ハード面の対策強化は再稼働の必要条件であっても、十分条件ではない。福島の事故では指揮命令系統の混乱が事態を悪化させた。拡散する放射能の情報が住民に届かず、線量の高い場所へ逃げた人もいる。入院患者や介護施設の入所者の避難は大混乱し、避難途中や避難先で亡くなった人も多い。事故後、避難計画が必要な自治体は原発から30キロ圏に拡大され、川内原発の周辺でも計画自体は策定された。ところが、その計画の実効性を担保する住民の避難訓練が実施されていない。政府もそれを容認している。住民の安全確保に十分な備えがないまま再稼働を急ぐ姿勢は、「事故は起きない」と高をくくってきたかつての安全神話と根が同じではないか。住民の安全を守るためにもただちに避難訓練を行って問題点を抽出し、場合によっては原発再停止も考えるべきだ。 ◇国民の意思反映させよ 誰の責任で再稼働するのかが明確でない点も3・11前と変わらない。原発は民間ビジネスである以上、一義的には再稼働も安全確保も電力会社の責任だ。ただし、原発は政府の国策でもある。その政府は、「規制基準への適合」を再稼働の唯一のよりどころとし、一方の規制委は「基準への適合=安全」ではないとの認識を示している。これでは、福島の事故と同様、再び事故が起きた時に誰も責任を問われない不条理がまかり通ってしまう。さらに根本的な問題もある。原発・エネルギー政策を国民の納得のもとに進めようとする意思が政府にみられないことだ。各種の世論調査によれば、事故以降、ほぼ一貫して原発再稼働への反対が賛成を上回っている。毎日新聞が8、9日に実施した世論調査でも川内原発再稼働に「反対」との回答が57%を占めた。しかし、住民にこれほどの影響を与えた事故を経ても、国のエネルギー政策に国民の強い意思を反映させる手段は用意されていない。経産省の審議会を使って政策の方向性を決める手法は事故前のままだ。民主党政権時代には討論型世論調査など、曲がりなりにも国民の意思を反映させようとする努力はあった。現政権にはその姿勢すらない。原発を動かし続ける限り核のゴミがたまり続けるという問題も大きい。10万年後まで見越して最終処分する必要性があるのに、日本ではまったくめどが立っていない。たとえ事故が起きなくてもこの問題に解決の糸口がない以上、原発を長期的に維持するわけにはいかない。政府はまず原発ゼロに向けた具体的道筋を描くべきだ。避難計画や訓練を規制委が事前評価する体制作りも早急に進める必要がある。川内原発再稼働を原発回帰の踏み台にしてはならない。 *4-3:http://www.shinmai.co.jp/news/20150819/KT150818ETI090005000.php (信濃毎日新聞 2015年8月19日) 原発維持費 国民の理解得られない やはり金食い虫である。昨年度に1基も稼働しなかった原発の維持、管理のために、電力9社が計1兆4260億円を使っていたことが明らかになった。内訳は人件費や修繕費、使用済み核燃料の再処理費などだ。停止していても熱を出す核燃料を常に冷やすことが必要で、専門的な技術を持つ多数の人員による日常的な点検も不可欠なためだ。多くは電気料金に転嫁され、消費者が負担した。維持、管理費の合計は、中堅電力会社1社の年間売上高に相当する。あまりに巨額ではないか。大手電力会社は、停止中の原発の維持費は「再稼働に向け必要な経費」とする。ただ、維持されている原発には、原子炉建屋直下に活断層が走る疑いがあるため再稼働が困難とみられる北陸電力志賀原発(石川県志賀町)や、運転開始から40年近い原発も含まれる。安全なエネルギーを求める国民の意向は明確だ。危険性を排除できない原発や老朽原発の維持費を、いつまで国民が負担するのか。電力会社は廃炉を増やす検討を始めるべきだ。一方で巨額の維持費は、電力会社が再稼働を進める動機にもなっている。運転時に必要となるコストと停止中のコストが大きく変わらないためだ。九州電力の場合、昨年度にかかった原発維持費は1363億円。自社発電の46%を原発が占めていた2010年度は2157億円で、37%しか減っていない。原発停止で火力発電の経費が2倍以上に膨らみ、原発の維持費も負担となった。電気料金の値上げでもコストを回収できず、決算は4期連続で最終赤字だった。九電が川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働を急いだ理由はここにある。1、2号機が再稼働すれば今期は黒字に回復する見込みだという。原発は稼働させればさせるほど利益を生み出す一方、停止しても莫大(ばくだい)なコストがかかる。原発から抜け出しにくい構造といえる。ただ、来春の電力小売りの全面自由化後には、燃料費や人件費、維持費などを電気料金に組み込める「総括原価方式」が廃止される方向になっている。新規参入が相次ぎ、競争も激化するだろう。原発の追加安全対策や廃棄物の最終処理費なども増えることが想定される。原発は電力会社の重荷になる可能性がある。電力新時代に消費者に選んでもらえるよう、電力会社も将来を見据えた戦略を考えるべきだ。 *4-4:http://www.jiji.com/jc/zc?k=201508/2015082100245&g=soc (時事ドットコム 2015/8/21) 川内1号機、出力上昇を延期=2次冷却水に海水混入か-九電 九州電力は21日、再稼働した川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)について、2次冷却水に海水が混入した恐れがあるため、予定していた出力上昇を延期すると発表した。25日に予定している出力100%到達も遅れる見通し。九電によると、2次冷却水を循環させる復水ポンプの出口で、水質を監視する「電気伝導率」の数値が上昇した。電気伝導率は2次冷却水に海水などの塩分が混入した場合に上昇するといい、九電は発電タービンを回した後に2次冷却水を海水で冷やす「復水器」の中に海水が混入した可能性があるとみて調べている。川内1号機は11日、新規制基準に基づき全国の原発で初めて再稼働した。出力は16日に50%、19日に75%に到達し、21日に95%に上昇させる予定だった。 *4-5:http://diamond.jp/articles/-/77425 (ダイヤモンド 2015年8月29日) 9300億円の訴訟を起こされた三菱重工!! 日米原発報道での一番の違いとは? ―広瀬隆×堀潤対談<中篇> 『原子炉時限爆弾』で、福島第一原発事故を半年前に予言した、ノンフィクション作家の広瀬隆氏。壮大な史実とデータで暴かれる戦後70年の不都合な真実を描いた『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』が第4刷となった。本連載シリーズ記事も累計145万ページビューを突破し、大きな話題となっている。このたび、新著で「タイムリミットはあと1年しかない」とおそるべき予言をした著者が、「8bitNews」主宰者で元NHKアナウンサーの堀潤氏と初対談。放射能漏れ事故を起こし、9300億円の訴訟を起こされた三菱重工事件を米国現地で見た堀潤氏は、どう感じ、どんな行動に出たのか?アメリカと比較し、日本の原発報道はなにが問題なのか。川内原発再稼働で揺れる日本人の有益なモデルケースとなるかもしれない。 ●放射能漏れを起こした三菱重工製の蒸気発生器 (広瀬)2012年1月に運転中だった3号機で、交換したばかりの蒸気発生器の配管に異常な摩耗が起きて、放射性物質を含む水が漏れた。その後、定期点検中だった2号機でも同様の摩耗が見つかった。サンオノフレ原発の蒸気発生器は三菱重工製でした。川内原発の再稼働で、私が最もこわいと思っているプラントで、川内原発も同じ三菱重工製ですからね。川内原発は再稼働した途端に、復水器で細管が破損しましたが、蒸気発生器の細管破損は、もっとこわいことです。くわしく聞かせてください。 (堀)ぼくがカリフォルニアに行った2012年6月頃、夏場の電力需給を考えると再稼働が必要ということになりましたが、地元住民を中心に反対の声が上がりました。「津波対策も不十分、情報公開もされていない」と。 (広瀬)アメリカでは、西部が地震と津波地帯ですからね。 (堀)アメリカの底力を感じたのは、パブリック・ミーティングを見てからです。さまざまなステークホルダー(利害関係者)、市民、原発の労働者、電力会社、米原子力規制委員会(NRC)、地元自治体、有識者、メディアなどが集まって、「サンオノフレ原発をどうするか」という話し合いが、いろいろなところで開かれていました。しかもそれがインターネットですべて公開されています。日本にはパブリック・ミーティングのような話し合いの場はなく、一方的な官製の説明会でごまかすので、市民側は裁判にいかざるを得ない。ここが大きく違います。 (広瀬)昔からアメリカのパブリック・ミーティングは制限時間がないので、いつも感心して見ていました。 (堀)たしかにヒアリングが長いです。 (広瀬)アメリカ人のよさはそこにある。怒鳴り合いもするけど、とにかく時間制限なしで徹底的に言い合う。これはアメリカだけではなくドイツもそうです。 (堀)そう、それぞれが持っている情報を出し合いながら、合意点を探す作業を丁寧に行います。これが本当のディスカッションだと思います。成熟した民主主義社会は、丁寧な議論ができる市民社会であるべきだし、情報を持っている機関は、公開することに心血を注いでいただきたい。 (広瀬)日本にはパブリック・ミーティングのような話し合いの場がないし、事実は隠蔽されたままです。成熟した民主主義社会には程遠いのが現状です。 (堀)私が2012年にアメリカに留学していた当時、米カリフォルニア州の電力会社サザン・カリフォルニア・エジソン(SCE)が運営しているサンオノフレ原発が再稼働問題に揺れていました。ディスカッションは意見ベースではなく、事実ベースで進みます。電力会社やメーカーはもちろん、環境団体や市民も、自分の感情や意見を排除して、事実と事実を突き合わせて、落としどころを探っていました。 ●報道されなかった三菱重工への「抜き打ち調査」 (堀)2012年の事故発生後、エジソン社(電力会社SCE)と三菱重工は蒸気発生器の設計変更を発表しました。設計変更し、安全検査をクリアして、NRCが承認したら再稼働という流れでしたから、設計変更が完了した時点で、反対側の住民もいよいよ再稼働なのかと注視していました。そんなときNRC(米原子力規制委員会)が突然、神戸にある三菱重工の製造工場に抜き打ちで調査に入ったのです。その結果、定められた手順で安全検査を行っていないことを突き止めました。 (広瀬)日本でNRCの動きはまったく報道されていません。本当ですか? (堀)三菱重工は、「確かに手順を飛ばした部分はあるが、安全管理上はまったく問題はない」と主張しました。それでもNRCはこれを問題視して、三菱重工の担当者とのすべてのやりとりをネットで公開しました。これによってサンオノフレ原発の廃炉が決定的になりました。SCEの親会社であるエジソン・インターナショナルは三菱重工に対し、検査や補修費用としてそれまでに1億ドル(当時のレートで約97億円)以上を請求していましたが、さらに廃炉に伴う損害賠償(約9300億円)を三菱重工に求めました。 (広瀬)最終的に、廃炉という決断を誰が下したのですか? (堀)SCE(電力会社)です。修理して運転するより廃炉にしたほうが安いという判断でした。そういう判断を自分でできる電力会社はすごいと思います。 (広瀬)日本で報道されたのは事故が起きたことと、廃炉になったことだけです。でも、いちばん重要な部分は、NRCが三菱重工に査察に入ったことですね。そんな経緯があったなんて全然知らなかった。 (堀)これはビッグニュースですよね。しかし、日本では報道されていません。米国ではNRCが会見を開き、三菱重工とのやりとりをほとんどの局が報道していました。それなのに、日本では報道されない。でも今の私は、こうして事実を伝えられる自由な立場にいます。 ●世界中から不信感を持たれる日本の原子力業界 (堀)最近、日本の電力会社の取材をしています。電力会社のある幹部は「社内や資源エネルギー庁から、堀さんの取材を受けて大丈夫なのか、と言われましたが、情報公開するにはどうすればいいか迷っている部分もあるし、こうやって話をするところから始めたい」という人もいました。他の電力会社の幹部も「どうやったら市民社会と接続できるのかを考えたい」と言っていました。 (広瀬)それはいつ頃の話ですか? (堀)今年の7月終わりくらいです。その理由は、諸外国の原子力業界から声があがっている、日本の原子力業界への不信感です。日本の原子力業界は、事故後の対応や情報公開のやり方を世界中から批判されています。今年4月、第48回原産(日本原子力産業協会)年次大会が東京で開催されました。ブラジル、中国、フランス、インドなどの原子力部門の代表から「日本は情報公開ができていない」「あらゆるステークホルダー(利害関係者)を集めた場をつくるべき」という声があがりました。中国の代表からは「内陸部に原発をつくりたいけれど黄河を汚してしまったらとんでもないことになる。住民の声を受けて沿岸部にしかつくっていない。住民の声を聞くのが大事なんだ」と。OECD(経済協力開発機構)の原子力部門のトップからは「福島の事故は人的な側面が大きい。いくらテクノロジーを向上させても人間がエラーを起こしたらうまくいかない。そこで“心理学的側面から安全を担保する専門部署”を新たに立ち上げた」などの発表がありました。日本は事故から4年経っても業界の体質は大きく変わっていないのが現状です。 (広瀬)変わっていないどころか、原子力規制委員会は大事故が起こることを前提に川内原発を再稼動させたんですよ。地元民は「100%事故は起こらない」というから原発を誘致し運転を認めてきたのに、いまや「事故は起こる」といって動かしているのです。それが8月11日の川内原発再稼働という出来事です。だからトンデモナイことが始まったのです。 ●なぜ、『東京が壊滅する日』を緊急出版したのか――広瀬隆からのメッセージ このたび、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』を緊急出版した。現在、福島県内の子どもの甲状腺ガン発生率は平常時の70倍超。2011年3~6月の放射性セシウムの月間降下物総量は「新宿が盛岡の6倍」、甲状腺癌を起こす放射性ヨウ素の月間降下物総量は「新宿が盛岡の100倍超」(文部科学省2011年11月25日公表値)という驚くべき数値になっている。東京を含む東日本地域住民の内部被曝は極めて深刻だ。映画俳優ジョン・ウェインの死を招いたアメリカのネバダ核実験(1951~57年で計97回)や、チェルノブイリ事故でも「事故後5年」から癌患者が急増。フクシマ原発事故から4年余りが経過した今、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』で描いたおそるべき史実とデータに向き合っておかねばならない。1951~57年に計97回行われたアメリカのネバダ大気中核実験では、核実験場から220キロ離れたセント・ジョージで大規模な癌発生事件が続出した。220キロといえば、福島第一原発~東京駅、福島第一原発~釜石と同じ距離だ。核実験と原発事故は違うのでは?と思われがちだが、中身は同じ200種以上の放射性物質。福島第一原発の場合、3号機から猛毒物プルトニウムを含む放射性ガスが放出されている。これがセシウムよりはるかに危険度が高い。3.11で地上に降った放射能総量は、ネバダ核実験場で大気中に放出されたそれより「2割」多いからだ。不気味な火山活動&地震発生の今、「残された時間」が本当にない。子どもたちを見殺しにしたまま、大人たちはこの事態を静観していいはずがない。最大の汚染となった阿武隈川の河口は宮城県にあり、大量の汚染物が流れこんできた河川の終点の1つが、東京オリンピックで「トライアスロン」を予定する東京湾。世界人口の2割を占める中国も、東京を含む10都県の全食品を輸入停止し、数々の身体異常と白血病を含む癌の大量発生が日本人の体内で進んでいる今、オリンピックは本当に開けるのか?同時に、日本の原発から出るプルトニウムで核兵器がつくられている現実をイラン、イラク、トルコ、イスラエル、パキスタン、印中台韓、北朝鮮の最新事情にはじめて触れた。51の【系図・図表と写真のリスト】をはじめとする壮大な史実とデータをぜひご覧いただきたい。「世界中の地下人脈」「驚くべき史実と科学的データ」がおしみないタッチで迫ってくる戦後70年の不都合な真実!よろしければご一読いただけると幸いです。 *広瀬 隆*1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『資本主義崩壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数。 *堀潤*元NHKアナウンサー、1977年生まれ。 2001年NHK入局。「ニュースウォッチ9」リポーターとして、おもに事件・事故・災害現場を取材し独自取材で他局を圧倒。2010年、経済ニュース番組「Bizスポ」キャスター。2012年、米国ロサンゼルスのUCLAで客員研究員、日米の原発メルトダウン事故を追ったドキュメンタリー映画「変身 Metamorphosis」を制作。2013年、NHKを退局しNPO法人「8bitNews」代表に。現在、TOKYO MX「モーニングCROSS」キャスター、J-WAVE「JAM THE WORLD」ナビゲーター、毎日新聞、「anan」などで連載中。2014年4月より淑徳大学客員教授。 PS(2015.8.31追加):スズキは自らの小型車開発技術を武器に、VWが次世代の環境技術や高級車を持ち寄って収益を拡大させる狙いでVWと資本提携していたが、*5のように、お互いに満足いく結果が得られず、提携関係を解消したそうだ。しかし、日本の自動車メーカーが次世代の環境技術をドイツのメーカーに頼るというのは、日本の方が環境技術先進国だっただけに、先見の明がなかったと言わざるを得ない。一方で、スズキは軽自動車に強く、女性がよく使用しているため、日産とジョイントベンチャーを作って、自動運転機能付で素敵なデザインの電気軽自動車を、次々と世に出したらどうだろうか。女性は、操作が簡単で使いやすく、環境意識の高いおしゃれなデザインの便利な車が好きなのであって、匂いや排気ガスを出すガソリンエンジンに価値を見出しているのではないことを忘れてはならない。 *5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150831&ng=DGKKASDZ30H6A_Q5A830C1MM8000 (日経新聞 2015.8.31) スズキ、VWと提携解消、国際仲裁決着、全株買い戻し 5000億円規模 スズキは30日、独フォルクスワーゲン(VW)との資本提携を解消すると発表した。2009年の提携後、経営の独立性などを巡って対立し、英ロンドンの国際仲裁裁判所(総合・経済面きょうのことば)を通して4年弱にわたり争っていた。VWが保有する全てのスズキ株式、19.9%分を買い戻す。買い戻し金額は5千億円規模になる見通し。今後のスズキの新たな生き残り策は、世界自動車メーカー再編の引き金となりそうだ。29日、国際仲裁裁判所が両社に仲裁判断を通知した。主な内容は「包括提携の解除を認める」「VWに保有するスズキ株の売却を命じる」「VWが主張していたスズキの技術関連の契約違反について一部認め、損害賠償も含め引き続き審議する」の3つ。損害賠償が発生した場合の金額などが焦点となる。現在のスズキの時価総額で計算すると株式買い取り額は約4600億円となり、株価次第では増加する可能性がある。VWは約2200億円で取得していた。スズキは15年3月期末時点で約1兆1千億円に上る手元資金のほか、持ち合いで保有する1.5%分のVW株(時価で約1千億円)も売却し、自社株買いの原資とする見通しだ。30日、スズキの鈴木修会長は記者会見で「最大の目的を達成した。結果に満足している」と話した。VWはスズキ株売却により「利益と流動性の面でよい影響がある」との声明を出した。スズキは米ゼネラル・モーターズ(GM)との提携を通じて成長してきた。だが、GMの経営不振で提携解消となったことを機に、09年にVWと資本・業務提携を発表した。スズキが小型車開発技術、VWは次世代の環境技術や高級車を持ち寄ることで、収益を拡大させる狙いだった。当初、両社は「対等関係」を強調していた。VWの19.9%という出資比率は、持ち分法適用会社化を避けるといった意味合いがあった。しかし、VWは年次報告書で持ち分法適用会社と表記し、事実上の傘下企業と位置づけた。スズキはVWの環境技術の開示が十分でないとも主張していた。一方、VWはスズキがフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)からディーゼルエンジンを調達したことを提携合意違反だと表明。溝が生じていった。スズキは11年9月、提携解消を申し入れたが、提携の証しだった株の買い戻しにVWは応じなかった。このため同11月に国際仲裁裁判所に提訴していた。4年弱にわたる係争はスズキの海外戦略や次世代技術開発などに影響を及ぼしていた。世界販売では約280万台で10位にとどまり、持続的成長には新たな提携先を模索する可能性が高い。 PS(2015.9.1追加):IAEAが東電福島第一原発事故最終報告書を公表し、「日本では原発が安全という思い込みが浸透していたが、いかなる国も原子力安全について自己満足に浸る理由はない」としているのは、全くそのとおりだ。しかし、*6-2-1のように、福島県の検討委員会が、福島県の小児甲状腺癌の割合が通常より非常に高いにもかかわらず、「チェルノブイリ原発事故の過去の知見を踏まえると、現時点では原発事故の影響とは考えにくい」としているのは、チェルノブイリとフクシマにおける被曝状況や検査体制が全く同じではないため合理性がなく、「原発事故の影響とは考えにくい」と言うのなら、疫学の専門家も納得できるような科学的根拠を示すべきである。さらに、*6-2-2のように、甲状腺癌を「悪性ないし悪性の疑い」というマイルドな言葉を使って不明確化しているのも意図的だ。そのため、*6-3のように、静岡県の保険医協会が九電川内原発の再稼働に抗議して、エネルギー政策の転換を求める理事会声明を発表したのはもっともだ。 *6-1:http://www.asahi.com/articles/ASH9131SRH91ULBJ001.html (朝日新聞 2015年9月1日) 「原発は安全と思い込み」が要因 IAEAが事故報告書 2011年3月の東日本大震災で起きた東京電力福島第一原発の事故について、国際原子力機関(IAEA)は8月31日、最終報告書を公表した。事故の主な要因として「日本では原発が安全という思い込みが浸透していた」としたうえで、事故対応の設備や手順などの備えが不十分だったと指摘している。14日からはじまる総会に提出される。報告書は約200ページ。事故の原因や影響を評価し、教訓を共有するために作成された。42カ国の約180人が参加し、5冊の技術解説書(計約千ページ)もまとめた。IAEAのホームページで読むことができる。巻頭で天野之弥・IAEA事務局長は日本の原発は非常に安全だという前提で運転されていたことを踏まえ、「いかなる国も原子力安全について自己満足に浸る理由はない」と述べた。報告書では、原発の設計や緊急時対応で弱点があったことに加え、外部電源が長時間失われる事態や複数の原子炉が事故を起こす想定がされていなかったことなどを指摘している。 *6-2-1:http://www.asahi.com/articles/ASH805SMGH80UGTB00M.html (朝日新聞 2015年8月31日) 甲状腺がん新たに1人 福島の子ども、計104人に 福島県は31日、東京電力福島第一原発事故による健康影響を調べる甲状腺検査で、今年4月から6月末までに新たに1人が甲状腺がんと診断されたと発表した。検査対象となる事故当時18歳以下だった約38万5千人のうち甲状腺がんと確定したのは合計104人になった。2011年から昨年3月末までの1巡目の検査結果を基準に、2巡目以降の検査結果と比べ、がんが増えるかどうかをみる。これまで1巡目検査で98人、今年度末まで続く2巡目検査で計6人ががんと診断された。県検討委員会は「チェルノブイリ原発事故で甲状腺がんになった子どもの被曝(ひばく)線量や年齢といった過去の知見を踏まえると、現時点では福島で見つかった甲状腺がんは原発事故の影響とは考えにくい」としている。 *6-2-2:http://www.sting-wl.com/fukushima-children6.html (福島原発事故後の日本を生きる 2015年8月31日) 【最新】福島の甲状腺がん急増→子供達の身にいったい何が起きた? 2015年8月31日に公表された最新の福島県民調査報告書によると、福島県の小児甲状腺がん及び疑いの子供達は、3か月前…前回の126人から11人増えて合計137人になりました。福島県の発表は甲状腺がんを、悪性…悪性とはがんのことですが『悪性ないし悪性の疑い』という言葉を使い、あたかも甲状腺がんでない子ども達もこの中に含まれているように書くことで、焦点をぼかしチェルノブイリ原発事故との比較を困難にしています。しかし137人のうち手術を終えた105人の中で、良性結節だったのはたった1人にすぎず、101人が乳頭癌、3人低分化癌との診断です。つまり『悪性ないし悪性の疑い』のうち99%は、小児甲状腺癌でした。ですので疑いという言葉を過大評価して安心するのは危険です。 *6-3:http://mainichi.jp/area/shizuoka/news/20150828ddlk22040097000c.html (毎日新聞 2015年8月28日) 鹿児島・川内原発:再稼働 抗議の声明発表 静岡県保険医協会 静岡県内で開業している医師、歯科医師2320人で組織する県保険医協会(聞間元・理事長)は27日、九州電力川内原発(鹿児島県)の再稼働に抗議し、エネルギー政策の転換を求める理事会声明を発表した。声明では「九州電力管内でも電力需要は安定しており、電力不足を理由とした再稼働の根拠は崩れている」と指摘。御前崎市の中部電力浜岡原発についても「中部電幹部からは『手続きを進めやすくなる』との歓迎の声が上がっており、なし崩し的に再稼働が進むことを危惧する」と主張した。 PS(2015年9月3日追加):*7のように、労基署は、タイムカードによる出退勤記録を金科玉条の如く重視して労基法違反としているが、タイムカードによる拘束時間が仕事量と比例するのは、流れ作業で組み立てを行い、会社の拘束時間と成果が比例する製造業など一部の産業に限られるため、全業種でタイムカードのみを金科玉条の基準として運用するのは問題がある。例えば、営業は、普段からタイムカードでは集計されない多方面での付き合いで人脈を作っている人は成果が上がりやすく、タイムカード上、長く会社に拘束されていても成果は上がらない。また、組織再編などのコンサルティングも、長時間考えても答えを出せない人もいれば、少し調べれば適切な答えを出せる人もおり、これは記者も同じだろう。つまり、知識の集積、経験の積み重ね、人脈などはタイムカードでは測れず、タイムカード偏重は働き方の問題にも繋がるのである。また、直属の上司の時間管理や指導は、公正な業績評価のみならず、要領を得た働き方を教えるオン・ザ・ジョブ・トレーニングとしても重要だ。 *7:http://qbiz.jp/article/70138/1/ (西日本新聞 2015年9月3日) 福岡大同青果、残業不払い 労基署是正勧告、勤務時間短く算定 市場での卸売業で九州最大の福岡大同青果(福岡市博多区)が、残業代の一部を社員に支払っていなかったことが分かり、福岡中央労働基準監督署が労働基準法違反で是正勧告していたことが分かった。労基署は、タイムカードによる出退勤記録よりも意図的に残業時間を少なくしていたと認定。同社は事実関係を認めた上で「勤務体系を変え、既に改善した」と説明している。同社は、福岡市が開設する中央卸売市場の中核企業。かつては、競り時間に合わせて早朝出勤し、夕方前に退社する勤務体系が主流だった。ただ、ここ10年ほどで特定のスーパーと産地を同社が仲介する「相対取引」が増えるに従い、長時間の過重労働が慢性化。この過程で、残業代の不払いが増えてきたとみられる。労基署は、(1)多くの従業員でタイムカードより少なく勤務時間を算定していた(2)営業担当の部長らに労働時間を管理させていた−ことから、「意図的」と判断した。西日本新聞の取材に、社員の一人は「多いときは月150時間を超える残業があった。だが、上司が経費を抑えるため、残業時間の半分程度しか認められなかった」と証言した。月80時間を超える残業は過労死の恐れが強まるとされる。同社は取材に、一部で残業が100時間を超える過重労働や休日のサービス残業があったことも認めた。同社への是正勧告は昨年12月16日付。これを受け「違法と指摘された点は3月までに改善した」としている。ただ、同社の物流子会社も同様の是正勧告を受けたが、関係者は「改善が遅れている」と明かす。福岡市は今回の件について「青果物の取引と関係ない」として調査しない方針。大同青果に業務認可を出している農林水産省は「再び発生しないように注意を払いたい」としている。同社の売上高は約630億円で、社員数は約180人。来年2月、福岡市東区のアイランドシティ(人工島)で建設中の新市場に移転する予定。 PS(2015年9月4日追加): *8の小水力発電は、農業用水などの小さな流れでもかなりの電力を発電できるため、農業用ハウスの無料のエネルギー源として使うと、安いコストでハウス栽培ができそうだ。この際に、地中熱(一年中、摂氏16度前後)で空気を適温に近くしてからエアコンを使うと、さらに節電できるとのことである。 *8:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/225948 (佐賀新聞 2015年9月4日) 県、小水力発電普及へ助成 事業者を募集 佐賀県が小水力発電の普及を目指している。再生可能エネルギー分野の裾野を広げ、新たな産業につなげる狙いで、技術開発や実証事業に取り組む県内事業者を募集している。小水力発電は河川や水路の水をためることなく、そのまま利用する発電方式。昼夜や年間を通して安定した発電が可能で、太陽光に比べて設備利用率が高い点などが長所とされる。出力は大きくないものの、独立した電源として多目的に使え、売電収入も見込める。募集は県内の民間企業や団体、大学・研究機関などを対象にしている。小水力発電の開発や普及につながる新規事業に対して経費を助成する。補助率は総事業費の2分の1以内で、250万円を上限とする。事業期間は来年3月10日まで。県内16カ所の水力発電のうち、出力が1千キロワット以下の小水力発電は5カ所にとどまる。水利権に加え、落差と流量が見込める設置場所の確保がネックになっているが、新エネルギー課は「唐津や脊振、太良の山あいなどには適した環境がある」とみている。県内に小水力発電メーカーは2社あり、県は2018年度までに4社に増やす目標を新総合計画に掲げている。応募は9月25日まで受け付け、審査で1、2件を採択する。問い合わせは新エネルギー課、電話0952(25)7522。 PS(2015年9月11日追加):原発に余分なコストを払わずにすむ新電力の方が電気料金を安くすることができるため新電力に移行が進むのは自然だが、電力自由化後は、一般家庭もこういう選択ができるようになる。そのため、大手電力会社も電源別に別会社にして、それをアピールする子会社の名称にし、正確にコスト管理を行って電力の価格を決めなければ、顧客が離れるということだ。 *9:http://qbiz.jp/article/70589/1/ (西日本新聞 2015年9月10日) 自治体の大手電力離れ進む 新電力購入額が震災前の1.8倍に 全国の都道府県と政令市、中核市の計112自治体が2014年度、特定規模電気事業者(新電力)から電力を購入した総額は488億円に上り、東日本大震災前の10年度(269億円)と比べ1・8倍に増えたことが、全国市民オンブズマン連絡会議の調査で分かった。大手電力会社から購入する場合と比べた節減額について、連絡会議は17億6千万円と試算とした上で「震災後の電気代の値上げで、自治体の電力へのコスト意識が高まった」と分析している。調査によると新電力から購入した自治体数は68で、10年度と比べ17増加。国が自治体に電力の調達方法を随意契約から一般競争入札に替えるよう促していることも背景にあるとみられる。九州15自治体の購入額は64億円で、震災前の1・6倍に増えた。節減額は5億円。福岡県(14億8千万円)や宮崎県(8億7千万円)の購入額が大きく、両県とも新電力の購入割合が5割を超えた。一方で長崎、大分、宮崎の3市は、新電力からの購入はゼロ。全て九州電力から随意契約で調達していた。購入額に占める新電力の割合は、都道府県と中核市で約1割、政令市で約2割。今後も新電力が伸びる余地は大きい。福岡県は本年度、本庁舎の電力について、大手電力と新電力を組み合わせる「部分供給」という方式を九州7県で初めて導入した。九電1社から購入した場合より、3400万円を節減できたという。来春の電力小売りの全面自由化を前に、福岡県みやま市など、自治体が新電力事業に参入する動きも全国で広がっている。連絡会議事務局の内田隆さん(40)は「自治体の大手電力離れはさらに進むだろう。今後は安価な電力を求めるだけでなく、再生可能エネルギーの比率を高める視点も必要ではないか」と話した。 PS(2015年9月11日追加):スズキは軽自動車を作っているのに自動運転や電気自動車の技術が遅れているため、*10のような提携をすればよいと考える。何故なら、軽自動車を使っているのは女性(特に主婦)が多く、①子どもの送り迎え ②郊外のスーパーへの買い物 ③通勤 などが目的であるため、自動運転に切り替えられる車は便利だし、かつ、安全性への要求、コスト意識、環境意識が高いからだ。つまり、どの企業も、時代をリードできなければ、せめて時代の変化にはついていかなければならない。 *10:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150911&ng=DGKKASDZ10HPY_Q5A910C1TJC000 (日経新聞 2015.9.11) 自動運転車で日本車メーカーと提携交渉、グーグルの研究部門、生産委託など協力仰ぐ 米グーグルの研究開発部門「グーグルX」のトップを務めるアストロ・テラー氏は10日、日本経済新聞の取材に対し、開発中の自動運転車について「日本でも様々な企業と話し合いを続けている」と述べ、複数の日本企業と提携に向けた交渉に入っていることを明らかにした。さらに「自前の工場は持たない」と語り、事業化の段階では生産委託などの形で自動車メーカーの協力を仰ぐ方針を表明した。グーグルは運転手なしで安全に走る自動車を次世代の中核事業のひとつに位置づける。トヨタ自動車の「レクサス」など既存の車両を改造して、米カリフォルニア州のマウンテンビュー市などで公道を使った走行実験に取り組んでおり、関係者の間では「17~20年には実用化しそうだ」との期待が高まっている。テラー氏は自動運転車の最終目標を「事故による死亡者をゼロにし、渋滞の間に失う1年間で1兆ドル相当の経済価値を取り戻すこと」とし、この目標を共有できる提携相手を日本でも探しているとした。さらに「よく誤解されるが、我々がメーカーになって車の販売台数を増やすことが目標ではない」と述べ、既存の自動車メーカーとは競合関係にないことを強調。グーグルはセンサーやソフトウエアなどの開発に専念し、最終的な自動運転車の販売・普及の段階では自動車メーカーと組むとの方針を示し、一部の自動車メーカーが懸念する「グーグル脅威論」を否定した。グーグルは既に自動車部品大手の独ボッシュや韓国LG電子などと提携している。日本企業との関係については「我々はオープン。具体的な社名を明かすことはできないが、部品メーカーと完成車メーカーの双方と話し合いを続けている」と語った。グーグルXが中心となって開発を進め、プライバシー保護の観点から計画が滞っているとされる眼鏡型ウエアラブル端末「グーグルグラス」については「私の部門を『卒業』し他の部門に移った。得られた知見は多くの場面で生かされている」と述べた。 *アストロ・テラー氏:1992年米スタンフォード大卒。98年に米カーネギーメロン大学で人工知能(AI)の研究で博士号取得。投資管理会社などの最高経営責任者(CEO)を経て、2010年からグーグルXの統括責任者である「キャプテン・オブ・ムーンショット」(前代未聞な船の艦長)を務める。AIをテーマに近未来SFを執筆するなど、小説家としての顔も持つ。
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2015,08,14, Friday
2015.8.? 2015.8.11 2015.8.12 2015.8.12 東京新聞 佐賀新聞 佐賀新聞 朝日新聞 2015.8.1~7 2015.8.12 九州の 2015.8.12 最大電力使用率 朝日新聞 火山分布 産経新聞 (1)原発のコストは安くなく、川内を再稼働の雛型にしてはならないこと *1-1のように、九電が川内原発1号機を再稼働させて8月14日に発送電を開始し、「原発ゼロ」の状態が終わってエネルギー政策が原発に回帰し、佐賀新聞はこれを祝うように号外で報じた。しかし、「電力が足りない」という再稼働の根拠は、上の東京新聞や*1-4のように、代替電源や広域融通で既に解決されており、原発自体は課題が山積している。しかし、電力業界と経済界は「大きな一歩が踏み出された(経団連の榊原定征会長)」と歓迎しており、ここが原発再稼働のメリットを最も大きく受けるようだ。 しかし、「原発はコストが安い」と言われてきたことについては、*1-2のように、「核のごみ処分」の目途も立っておらず、「国が責任を持って立地自治体以外に最終処分場を造れ」と言う人もおり、強引に川内原発再稼働を進めた鹿児島県の伊藤知事も最終処分場の鹿児島県への建設には反対している。 そもそも電力会社は、核のごみ処分費用については見積もりを作って引当金を計上し、引当金繰入額と原子力由来の電力販売収益を毎期対応させてコスト比較を行うべきだったのだ。つまり、他の電源を使いたいと主張している再稼働反対派や受益者ではない将来世代に、今後発生する核のごみ処分費用を税の形で負担させるのは、受益者と負担者が一致しないため不公正なのである。 また、行き場のない大量の核のごみが原発内の貯蔵プールに溜まっているのは今でも危険であり、その原発を再稼働してメリットがあるのは九電と一部の企業にすぎない。そのため、私も、*1-3のように、川内原発を雛型にして、次々と原発を再稼働してはならないと考える。なお、原子力規制委員会の新規制基準は、火山の大規模噴火を想定しておらず、避難計画も不備であり、*4-3のように、長期避難は想定外であるため、欠陥品である。さらに、放射性物質が拡散して線量も十分に下がっていない場所に住民を帰還させるのは、非人道的としか言いようがない。 「原発がなければ安定的な電力が不足する(これこそ10年1日の如く言われる科学的でない観念論である)」として、政府(経産省)は2030年の電源構成目標で原発をベースロード電源として原発比率を20~22%と決めたが、*1-3のように、先進国ではベースロードという概念は消え、再エネを含めた多様な電源やサービスを公正な条件のもとで消費者が選ぶ時代になっている。それにもかかわらず、太陽光発電などの技術を最初に作った日本が、古い観念に縛られて割に合わない原発に回帰するのは愚かであり、さらに、電源構成を決めるというのは計画経済であって市場経済ではない。 (2)原発再稼働の受益者は誰か *2-1のように、九電は原発再稼働を業績回復の「切り札」として再稼働による収支改善に期待を寄せ、他の電力会社からねぎらいの連絡もあったそうで、再稼働の最大の受益者は電力会社である。しかし、「原発ゼロ」でも、値上げにより電力会社の黒字化は進んでいたし、電力会社の赤字解消が原発再稼働の目的であれば、原発がらみのコストはすべて電力会社が負担した上で他の電源と比較すべきだ。 さらに、*2-2のように、大口需要先として優遇を受けている経済界からも「大きな一歩」と再稼働に歓迎の声が上がったそうだが、立地地域の商工会トップは原発の増設は「非現実的」として、原発だけに頼らない地域経済を模索する必要性を強調しており、原発立地地域も次の時代の産業に進むべき時だ。 (3)原発事故の責任者は誰か *3-1のように、業界は無責任体質で、立地自治体がそこまで「振興のため必要だ」と言うのなら、東京でかつての脱原発のうねりが消えるのも尤もではあるが、*4-4のように、立地自治体や周辺地域の住民も脱原発派の方が多い上、関東も鹿児島県で原発が過酷事故を起こせば汚染が広がって九州の安全な農水産物を食べられなくなるため、本当は深い関係を持っている。 そのような中、電力会社と立地自治体の利益のために原発を再稼働させながら、*3-2の「政府は原子力の必要性とエネルギー政策の転換を改めて国民に説明し、原子力利用に伴う最終責任を国が引き受けることを明確にすべきだ」という主張には呆れるほかない。 そのため、2016年に自由化される電力市場では、電力需要者に好みの電源由来の電力を使う選択権を与えるべきである。そうすれば公正な市場競争と消費者の見識によって原発は消え、それを無理やり残そうとすれば国民の福利を最大にしないことが明らかになるからだ(経済学の基本)。 (4)過酷事故時の汚染範囲と汚染期間 *4-1のように、約2年間の「原発ゼロ」が終わり、「新基準は世界でも最も厳しいレベルだから、新基準に合格しさえすれば安全だ」という新たな安全神話ができた。そして、これまで規制委に審査を申請したのは、川内を含めて15原発の計25基あり、高浜原発は福井地裁が運転を認めない仮処分の決定を出したが、川内原発は鹿児島地裁が仮処分の決定を出さなかった。 しかし、川内原発の周辺では、高齢者の多い医療施設や福祉施設で住民の避難計画が十分に整っていない上、*4-2のように、放射性物質の放出量や気象条件、地形などのデータを基に放射性物質の拡散範囲や量を予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」は住民の避難に活用しないことが決められ、被曝前に避難することが不可能になった。さらに、*4-3のように、長期避難は、今も想定外になっている。 川内原発再稼働は、*4-4のように、鹿児島県の伊藤知事が主導権を握って強引に進めたが、蚊帳の外にされた自治体も安全だというわけではない上、周辺の大切な農林水産業もダメージを受ける可能性が高い。そのため、私は、鹿児島県知事をリコールして、正確に次のステップに進める知事に選び直すしかないと考える。 また、*4-5のように、過酷事故時は高線量の下で誰が突入するかも深刻な問題だ。過酷事故はテロ以外にも、*4-6の火山噴火やミサイル攻撃等でも起こり、作業員の被曝線量限度を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げたからといって人の手に負えるものではない。そのため、他のクリーンな発電方法も多い中、私は、発電のために国の存続や命を懸けなければならないとは思わない。 <原発再稼働の責任者について> *1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/218064 (佐賀新聞 2015年8月11日) 川内1号機が臨界、エネルギー政策、原発回帰 九州電力は11日、川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉を起動し再稼働させた。核分裂反応が安定的に持続する「臨界」に同日深夜に達し、14日に発電と送電を開始する。国内の全ての原発が停止した「原発ゼロ」状態は終わり、日本のエネルギー政策は原発に回帰。「核のごみ」問題など課題が山積し、世論の反対も根強い中、安倍政権は新規制基準に適合した原発の再稼働を進める方針だ。電力業界や経済界は「大きな一歩が踏み出された」(経団連の榊原定征会長)と歓迎。一方、国会前や川内原発前では市民団体が「福島の事故を忘れるな」などと訴える抗議集会を開いた。 *1-2:http://qbiz.jp/article/68867/1/ (西日本新聞 2015年8月14日) 【原発が動いた日〜川内1号機再稼動】(下)核のごみ ●限界迫る“行き場”探し 九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉が起動し、3時間後の同市役所。記者会見の席で、原発から出る「核のごみ」の処分にめどが立っていないことを問われた岩切秀雄市長(73)は予防線を張った。「(原発の)リスクは全国で公平に負うべきだ」。国が責任を持ち、立地自治体以外に最終処分場を造れとの意思表示だ。原発関係者は「処分場」と聞くと、フィンランドを思い浮かべる。世界で最も核のごみへの準備が進む同国では、経済的利益がある原発新設と引き換えに、地元が処分場を受け入れた。同県では、伊藤祐一郎知事(67)も地元建設には一貫して反対。九電玄海原発がある佐賀県玄海町の岸本英雄町長(62)も引き受ける考えがない。処分場の用地選定は、福島第1原発事故の前でさえ進まなかった難事業。原発への拒否反応が広まる中、予定地を探すことは可能なのか。 ◇ ◇ 京都教育大(京都市)で9日まであった日本エネルギー環境教育学会で、経済産業省名のペーパーが参加者に配られた。「処分地の選定調査にも着手できていない状況」を反省しつつ、最終処分問題を授業で扱ってくれる学校には、教材提供や講師派遣で支援するとの文面だ。処分事業は立地調査から埋め終えるまで100年以上かかり、推進には将来世代の理解が不可欠。一部小中学校で試験的に取り入れられるようになったのはここ1、2年にすぎず、政府が原発回帰へとかじを切った今、将来世代教育は待ったなしの課題だ。同大には核のごみの処分計画を紹介する、経産省認可法人の展示車が乗り入れていた。見学を終えた和歌山市の高校3年中井仁さん(17)が首をかしげる。「処分場がないのに、再稼働で核のごみが増えるのはどうなんでしょう。結局、僕ら世代の負担になる」 ◇ ◇ お盆に入った13日、再稼働当日に反対派であふれていた川内原発のゲート前は静まりかえっていた。 川内2号機も動けば、九電は本年度決算の黒字化が見える。原子力規制委員会で審査が進む玄海原発3、4号機も再稼働すれば、経営のV字回復は確実。ただ、使用済み核燃料を再処理してウランなどを再利用する核燃料サイクル政策は、再処理工場(青森県六ケ所村)稼働にめどがつかない。行き場のない核のごみは原発敷地内にたまり続け、川内で10年、玄海だと4年の運転で貯蔵プールは限界に達し、原発は動かせなくなる。川内1号機は14日、発送電を開始する予定。核のごみ問題の解決なしに10年後の安定運転は見込めない。 *1-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11911199.html (朝日新聞社説 2015年8月12日) 原発再稼働 川内をひな型にするな 福島第一原発事故を契機に改められた原子力規制委員会の新しい規制基準に合格した第1号でもある。政府は川内を皮切りに、規制委の審査をパスした原発はすべて動かす方針だ。しかし、今回の再稼働の決定過程には問題が多い。火山の大規模噴火について規制委の審査には疑問が投げかけられたままだ。避難計画も不備が指摘され、鹿児島県民の半数以上が再稼働に反対とする世論調査もある。誰の判断と責任で再稼働が決まったのか、あいまいだ。こうした疑問や問題、さらには民意を置き去りにした見切り発車の再稼働は認められない。川内の決め方をひな型として今後も再稼働を決めていくこと、なし崩しで原発依存に戻すことには反対である。 ■消えるベースロード 今回の再稼働に先立って、政府は2030年時点の電源構成目標を決定し、原発の比率を20~22%という水準においた。新たに原発をつくるか、相当数の老朽原発の寿命を延ばさないと達成できない数字だ。関西電力の八木誠社長(電気事業連合会会長)は先月末の会見で「(建設中の3基を含む)46基の原発を相当数稼働していく必要がある数字だと理解している」と語った。国と電力会社は原発回帰を既定路線にしようとしている。原発の位置づけは「ベースロード電源」だ。「発電コストが安く、出力が安定しているので昼夜を問わず運転を続ける電源」だという。しかし、先進国ではベースロードという概念自体が消えつつある。風力や太陽光などの再生可能エネルギーをできるだけ受け入れ、原発や火力発電は、再エネによる発電が少ないときの調整弁へと役割を変えている。こうした運用を可能にしているのが、電力改革だ。欧州では送電部門を発電部門から分離・独立させ、一元的に管理・運用している。天候に左右されがちな再エネも、精緻(せいち)な天気予報に基づいて広域的に融通させることで、需要に見合うようにしている。今後は、変動する電力需要にあわせて柔軟に供給をコントロールする技術が世界の電力ビジネスのカギになると見られている。日本も、遅まきながら電力改革に着手した。今国会で仕上げとなる法律も成立した。2020年までに3段階で改革を進める。再エネを含めた多様な電源やサービスが公正な条件のもとで競い合い、消費者が選んでいく。そんなエネルギー社会に変わることが期待されている。 ■割に合わない電源に 原発を支えてきた地域独占や、経費をそのまま消費者に転嫁する料金制度もなくなる。「安い」とされてきた原発だが近年、建設や運営にかかるコストは世界的に上昇の一途だ。世界有数の原発メーカーであるフランスのアレバは新設原発のコストが膨らんで経営が行き詰まり、政府が救済に入った。不正会計に揺れる東芝も、強化してきた原子力部門が経営の重荷になりつつある。国内の電力各社は追加の安全対策に2・4兆円を見込む。今後も新しい対策が出るたびに追加投資を迫られるだろう。廃棄物の処理や立地のための交付金制度、事故時の賠償金などを積み上げていくと、原発は「割に合わない」電源であり、新しい電力システムの中では成り立たない事業であることが見えてくる。何より、国民の過半数が「原発を使わなくてすむ社会」を望んでいる。 ■再エネ築く覚悟を 政府がいま取り組むべきは、再稼働を重ねて原発を主軸に戻していくことではない。一時的に原発に頼るとしても、老朽原発や安全面に疑問符がつく原発から優先的に廃炉にすると同時に、再エネを育てていくことである。自然環境から見て、九州は最適地の一つだ。この間、再エネの固定価格での買い取り制度が始まり、地域の特性を生かした「ご当地電力」が各地に誕生した。太陽光発電に偏っている問題や、買い取り価格を見直す課題はあるが、自給できて温暖化防止にも役立つ電源を伸ばそうという機運は、着実に育っている。当面は支援が必要だが、送電網への接続といったインフラが整って普及すれば、今より安くて持続的な電源となる可能性が高い。もちろん、再エネを主軸とした分散型エネルギー社会を築くには、時間もかかるし、曲折もあるだろう。国民の覚悟もいる。高い電気料金を受け入れなければならない時期があるかもしれない。それでも、福島での事故で、私たちは原発の怖さを知った。新しいエネルギー社会に向かう原点はそこにある。 *1-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/218184 (佐賀新聞 2015年8月12日) [解説]川内原発再稼働 電力代替進み必要揺らぐ 九州電力川内原発1号機が再稼働し、東京電力福島第1原発事故から4年5カ月で日本は原発活用路線に戻った。政府と電力業界は、電力の安定供給や燃料コストの観点から原発の再稼働が必要だと主張するが、その背景説明は説得力を失いつつある。東日本大震災後、東電管内で計画停電が実施されるなど電力供給体制のもろさが露呈し、国民の間に電力不足への不安が広がった。しかし原発が長期停止する間に火力発電や、太陽光を中心とした再生可能エネルギーによる代替が進んだことに加え省エネの定着もあり供給力は着実に回復。電力需要が急増する夏を震災後4回乗り越え、記録的な猛暑が続く今年も需給は逼迫(ひっぱく)していない。昨年夏ごろまで1バレル=100ドル程度と高値で推移していた原油価格も50ドルを下回る水準にまで下落し、電力各社の収支は大幅に改善した。多くの国民の反対を振り切り再稼働を急ぐ切迫した事情は見あたらない。政府が再稼働の可否判断の根拠とする新規制基準は、厳格化されたとはいえ最低限の安全確保策を求めているにすぎず、事故のリスクが消えたわけではない。 <原発再稼働の受益者について> *2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11911218.html (朝日新聞 2015年8月12日) 九電、赤字脱却図る 再値上げ見送りへ 川内再稼働 九州電力川内原発1号機が再稼働した。九電は再稼働を業績回復の「切り札」と期待する。これまでは、原発停止でコストが高い火力発電の割合が増え、4年連続の赤字。再稼働が順調に進んで黒字が視野に入れば、九電は電気料金の再値上げは見送る方向だ。九電幹部は11日夜、「これまで崖っぷちだったが、新たなスタートラインに立てた」と再稼働による収支改善に期待を寄せた。他の電力会社からはねぎらいの連絡があったという。2011年の東日本大震災まで、九電の発電量の4割は原発が占めた。比較的コストが安いとされる原発を推進したためだが、震災後状況は一変した。11年12月までに管内の全原発6基が停止。代わりに火力発電を多く稼働し、燃料費がふくらんだ。11~14年度の経常損失の累計は7千億円超。10年度に1・1兆円あった純資産は、14年度は半分以下の約4500億円に減った。13年春に電気料金の抜本値上げに踏み切ったが、川内、玄海の各原発の早期稼働を前提にしていた。しかし再稼働が遅れ、コスト増を値上げでカバーできずに赤字が続いた。九電は川内原発の再稼働が今夏から遅れれば、電気料金の再値上げが必要とみていた。しかし、川内1号機が再稼働し、2号機も10月中旬の再稼働が視野に入りつつある。九電によると、川内1、2号機が動けば、月に計150億円の収支改善効果があるという。再稼働が順調に進めば、今後の赤字縮小は確実視される。「再稼働したのに値上げ、というのは理解されない」(幹部)として、再値上げは見送られる公算が大きい。経営改善のための再稼働を強調する九電だが、「原発ゼロ」でも値上げやコスト削減で他電力は黒字化が進む。14年度決算では、10電力のうち九電と関西電力、北海道電力を除く7電力が経常黒字を確保した。九電も、今年の4~6月期決算は211億円の経常黒字だった。4~6月期としては5年ぶりの黒字だ。原油価格の下落で燃料コストが下がったことが大きい。 ■収益改善、他社も期待 再稼働を収支改善につなげたいという思いは他の電力も同じだ。震災後の赤字続きで失われた「体力」を取り戻す狙いがある。東京電力は、再稼働に向けた審査が進む柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)が両方動くと、利益が月に160億~280億円アップすると見込んでいる。再稼働すれば1年間で利益を数千億円上積みできる計算だ。足元では黒字を確保しているものの、福島第一原発事故の賠償や廃炉などに巨額の費用がかかる。国の支援を受けながら経営を続けている状況で、こうした事故対応の支払いを、原発再稼働によって埋め合わせたいという本音もある。九電と並んで原発への依存度が高かった関西電力。高浜原発3、4号機(福井県)と大飯原発3、4号機(同)が再稼働すると、月に計約300億円の収支改善効果があるという。電気事業連合会の八木誠会長(関電社長)は11日に出した談話で、川内原発の再稼働は「大きな節目の一つ」とし、他の原発も「一日も早い再稼働を目指す」との考えを示した。 *2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/218225 (佐賀新聞 2015年08月12日) 佐賀県内経済界「現実的選択」と歓迎 地元は脱原発依存模索 川内原発再稼働 原発停止に伴う電気料金の値上げに苦しむ佐賀県内の経済界からは「大きな一歩」と再稼働に歓迎の声が上がった。玄海3、4号機の再稼働にも期待を寄せる一方、立地地域の商工会トップは原発の増設は「非現実的」として、原発だけに頼らない地域経済を模索する必要性を強調した。「やっとこぎ着けることができた」。2年前から早期再稼働を県に要請してきた県商工会議所連合会の井田出海会長は安堵(あんど)の表情を浮かべた。反対世論は根強いが、「万が一にも備えた基準をクリアしたと考えている。感情論ではなく、現実的な選択が日本の経済を支える」と強調した。再稼働による電気料金の値下げ効果について、「大いに期待したいが、川内だけでは不十分」と玄海原発の早期再稼働に期待した。一方、玄海1号機は廃炉が決まり、九電も巨額の累積赤字を抱える。玄海町や隣接地域の事業者でつくる唐津上場商工会の古賀和裕会長は「原発が地元経済を支えてきた側面はある」と再稼働に理解を示しながらも、「今後は原発作業員や国の交付金が減り、九電も経費抑制に動く。停止前の状況には戻らない」と原発依存からの脱却を訴えた。 <原発事故の責任> *3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11911308.html (朝日新聞 2015年8月12日) 業界の無責任体質、指摘し続ける 福島原発事故で避難の原電元幹部 川内再稼働 11日に再稼働した九州電力川内原発の前には、全国から反対する市民が集まった。一方、電力大消費地の東京ではかつての脱原発のうねりは消えつつある。事故の記憶は、もう遠のいたのか。福島で避難を続けるかつての原発推進者は、なし崩しでの原発回帰に危機感を募らせる。「事故の想定も避難計画も不十分。こんな状態でよくも再稼働できるものだ」。日本原子力発電元理事の北村俊郎さん(70)は、ため息をついた。今回の再稼働は、東京電力が15・7メートルの津波を試算しながら福島第一原発の対策を怠った態度と重なる。「政権も根拠なく『世界一の規制基準』と説明している。安全神話にすがっている証拠だ」。国内で初めて原発を動かした原電で人事部長や社長室長を歴任。退職後は業界団体の日本原子力産業協会の参事を務めた。原子力業界の中枢に40年。その体質も問題点も知り尽くす。推進してきたその原発が起こした大事故で、家を追われた15万人の1人になった。15年前、福島県富岡町をついのすみかに選んだ。温暖で電源三法交付金で行政サービスが充実しているのが魅力だった。震災翌日に避難した。車に積み込んだのは位牌(いはい)と数枚の衣類。「どのくらい避難するの」と妻に問われ「せいぜい2、3日だよ」と答えた。県内の避難所を転々とし、現在は須賀川市の借り上げ住宅に暮らす。帰還困難区域にある自宅に戻れるのか。先月末、一時帰宅すると、雑草だらけの庭の所々に、イノシシが掘り返した穴が開いていた。富岡町にある福島第二原発は、県議会や地元市町村が廃炉を求めているが、東電は再稼働の可能性を否定しない。世論調査で反対が多数でも、政権は再稼働を推し進める。「安保法案の進め方と同じ。国民を甘く見ている」。一方、かつての推進者として、自責の念が消えることはない。事故前、住民説明会で重大事故の可能性を聞かれ、「1万年に1回」と答えていた。「もし明日起きたら」。そう返されると、「あくまで確率論。大丈夫」とごまかした。事故後、業界誌などに投稿を続けている。安全を危うくする下請け・孫請けの発注構造を「無責任体質が変わっていない」と指摘。「原発は経済的にも割に合わない」と切り込む。原産協会は震災翌年に辞めた。「批判を受け付けない業界の閉鎖性が、福島の事故につながった。内部にいた者として、問題を指摘し続ける。そうすることで私は責任を取るしかない」。事故からわずか4年余りで国民の関心が薄れていることに焦燥感を抱く。政権も復興や事故の収束より東京五輪に重点を移しているように映る。安倍首相は招致の演説で「状況は制御できている」と言い切り、福島を方便にした。「浜は祭りの/ようだけど/海のなかでは/何万の/鰮(いわし)のとむらい/するだろう」。金子みすゞの詩が、東京と福島の対比の風景として頭から離れない。 ■「命を軽視」「福島を忘れるな」 川内原発前で抗議 「九電は命を軽んじている」「福島を忘れるな」。川内原発の正門前には、11日、約200人が集まった。再稼働した午前10時半、抗議の声はひときわ大きくなった。周辺では200人以上の警察官や警備員が警戒。緊張感に包まれた。鹿児島県姶良(あいら)市の公務員女性(48)は高校生と中学生の娘と一緒に参加した。「放射能が漏れれば命が脅かされる。私たちの声が無視されるなんて不合理だ」。埼玉県富士見市の大学生梶原康生さん(20)は、原発事故があった福島、米軍基地問題で揺れる沖縄を訪ね歩き、住民の声を聞いてきた。初めて川内原発を訪れ、「基地問題も原発も根っこは同じ。国家権力の横暴を感じる」。海外メディアも注目した。台湾のテレビ局記者、胡慕情さん(32)は「欧米では再生可能エネルギーへの転換が進んでいるのに、日本はその逆を行こうとしている」と話した。 ■立地自治体「振興のため必要」 大都市デモはかつての熱気欠く 原発の足元からは、早くも歓迎ムードが漂う。川内原発の地元、鹿児島県薩摩川内市内で宿泊施設を経営する40代の男性は「見学客も全国から来る。期待します」。同市の岩切秀雄市長は「安全であれば原発は地域振興のために必要だと思う」と語った。全国各地の原発立地自治体でも、再稼働に弾みがつくとの期待の声が続いた。関西電力高浜原発がある福井県高浜町の野瀬豊町長は「原発の一つが現実に動いたことを評価したい」、Jパワー大間原発の建設が進む青森県大間町の金沢満春町長も「うれしく思います」とコメントした。一方、脱原発を目指す市民らは、電力消費地の関心が薄れていると危機感を抱く。国会の周辺では11日、反対デモがあったが、参加者は午前中に数十人、夜も数百人。沿道が埋め尽くされた3年前の熱気はない。3カ月ぶりに参加した東京都板橋区の主婦(62)は「最近は安保関連法案の反対運動が忙しく、原発まで手が回らない」。同足立区の星野芳久さん(65)は「のど元過ぎれば熱さ忘れる、という無責任さがあるのかも」と話す。2012年に都内で原発の是非を問う住民投票実施の署名集めをしたジャーナリストの今井一さん(61)は「巨額の交付金で原発を地方に押しつけ、大都市が電力を消費する構図が変わらない限り、国民の多くは問題を我がこととして考えられない」と指摘する。当時は約32万人の署名を集めたが、「今やったら5万人くらいでは」と今井さん。ただ、再稼働反対が多数である状況は以前から変わらない。「その意思を政策に映す回路さえ作れば、脱原発は実現できる」 *3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150812&ng=DGKKZO90440820S5A810C1MM8000 (日経新聞 2015.8.12) 国は責任とる覚悟示せ 福島第1原子力発電所の事故から川内原発の再稼働まで約4年半。何が変わったのか。原子力はかつてエネルギー安全保障や安価な電力供給、温暖化対策のどの面でも他の電源に比べ優位だと考えられていた。2010年のエネルギー基本計画が電力の半分以上を原子力で賄うとしたのはその表れだ。福島原発の事故で原子力は「特等席」から滑り落ちた。7月に政府が決めたエネルギー長期需給見通しは30年時点の原子力比率を20~22%と見込んだ。再生可能エネルギーや火力と並び、電源の一選択肢にとどまる。原発は安全規制の厳格化でいつ、幾つが稼働するのか見通せなくなった。関西電力などが古い原発5基の廃止を決めたが、新増設に関しては政府は「脱原発」を求める世論を前に、議論すら封じている。自由化される電力市場で、原発の初期投資の巨大さは大きな経営リスクとなる。原子力が切り札の時代は終わり、多様な電源の組み合わせで日本のエネルギー戦略を考える時代になった。大きな転換といえる。ただ原発への依存度の低下とは逆に、原発への政府の関与は高まる。重大事故時の賠償や使用済み核燃料の処分などは民間企業や市場だけに委ねられないことがはっきりしてきた。原子力は「国策民営」といわれてきたが、国策の度合いが強まる。核物質を扱う点で再生エネや火力と本質的な違いがあるからだ。そこに原子力特有のしがらみがあり、わかりにくさがある。国策強化を福島原発事故以前への回帰の兆しだとみる人も多いだろう。再稼働の節目にあたり、政府は原子力の必要性とエネルギー政策の転換を改めて国民に説明すると同時に、原子力利用に伴う最終責任を国が引き受けることを明確にすべきだろう。放射性廃棄物の処分など山積する課題解決への道筋を早期に示す必要もある。そこを欠いては再稼働しても原子力は長続きしない。 <過酷事故時の汚染範囲と汚染期間> *4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11911328.html (朝日新聞 2015年8月12日) リスク抱え原発回帰 川内再稼働、新基準で初 避難計画、実効性課題 九州電力川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)が11日午前、再稼働した。東日本大震災後にできた新規制基準を満たす初の再稼働となり、約2年間の「原発ゼロ」は終わった。安倍政権はこの審査手続きを「ひな型」に原発の再稼働を進める方針だ。避難計画の実効性などに課題を残したまま「原発回帰」が本格化する。 ■1号機、「臨界」に 東京電力福島第一原発事故を受け、政府は独立性がより高い原子力規制委員会を設け、地震や津波対策を強化した新規制基準を2013年7月に施行した。新基準は「安全神話」の反省から、事故は起きることを前提にしている。再稼働に向けた審査でも、規制委は一定規模の事故が起こりうると想定して新基準に適合すると判断した。「絶対の安全」はなく、事故のリスクをゼロにすることはできない。再稼働を進めるということは、事故が起こりうるリスクを抱えた社会に戻ることを意味する。川内1号機の再稼働は約4年ぶり。午前10時半に原子炉内で核分裂を抑えていた制御棒32本を引き抜く作業が始まり、原子炉が起動。午後11時に核分裂反応が連続的に起こる「臨界」状態となった。九電は14日から発送電を始め、9月上旬にも営業運転に移る。2号機は10月中旬に再稼働させる方針だ。瓜生(うりう)道明社長は「安全確保を最優先に今後の工程を進める」とコメントした。菅義偉官房長官は11日の記者会見で「原子力規制委員会によって、世界でも最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認められた場合は、原発の再稼働を進める」と、安倍政権の方針を改めて示した。これまで規制委に審査を申請したのは、川内を含めて15原発の計25基。関西電力の高浜原発3、4号機(福井県)と四国電力の伊方原発3号機(愛媛県)が主な審査を終えている。高浜原発は福井地裁が運転を認めない仮処分を出しているが、川内の審査や検査手続きは他の原発のモデルとなり、今後の再稼働手続きは加速する可能性がある。しかし周辺地域では、高齢者などが多い医療施設や福祉施設で住民の避難計画が十分に整っていない。防災対策などに対する原発周辺の住民の不安は解消されていない。 *4-2:http://mainichi.jp/select/news/20150812k0000e040221000c.html (毎日新聞 2015年8月12日) 緊急時放射能予測:政府「不確実」防災基本計画から外す 原発事故の際に放射性物質の放出量や気象条件、地形などのデータを基に放射性物質の拡散範囲や量を予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」(SPEEDI)について、政府は7月、国や自治体の災害対応の基礎となる防災基本計画で住民の避難に活用しないことを決めた。「予測が不確実なため」としているが、住民避難で予測を参考にするとしてきた自治体や住民は反発している。SPEEDIは原発事故時の避難に活用すると位置づけられていたが、東京電力福島第1原発事故では予測の公表が遅れ、住民に無用の被ばくを強いたとして国が批判された。原子力規制委員会は2012年に新たな原子力防災指針を策定。原発から5キロ圏は即避難とする一方、5〜30キロ圏は屋内退避を基本とし、空間放射線量の実測値が毎時500マイクロシーベルトに達したら避難すると定めた。この時点で指針はSPEEDIを「参考にする」とし、同時期、防災基本計画も予測結果を「公開する」とした。だが、今年4月に指針からSPEEDIの記述が消え、7月には防災基本計画からも除外された。原子力規制庁幹部は「放射性物質の流れた方向が予測と異なることもあり不確実だ。実測値の基準では被ばくを完全には防げないが、世界でもスタンダードな方法だ」と説明する。国の「SPEEDI外し」に、新潟県の泉田裕彦知事は7月の中央防災会議で「被ばくが前提の避難基準では住民の理解は得られない」と訴えた。また、11日に再稼働した九州電力川内(せんだい)原発の地元、鹿児島県薩摩川内市などで開かれてきた避難計画の説明会でも、自治体はSPEEDI活用の考えを伝えていた。市内で子供3人を育てる大中美子さん(48)は「被ばくありきの避難計画では引っ越さないと子供は守れない」と国の姿勢に憤る。 ◇SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム) 事故を起こした原発から送られてくる放射性物質の放出量や気象条件、地形などのデータを基に、放射性物質の拡散範囲や量、大気中の濃度などを予測するシステム。現在は原子力規制委員会が運用し、予測結果は原発の立地する周辺自治体などに送信される。1979年の米スリーマイル島原発事故をきっかけに120億円以上かけて開発され、東京電力福島第1原発事故当時は文部科学省所管の原子力安全技術センターが運用していた。 *4-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11914937.html (朝日新聞 2015年8月14日) (再稼働を問う 教訓どこへ:下)長期避難、今も想定外 福島の現実反映せず 7日昼過ぎ、客のいないプレハブ造りの仮設商店にはテレビの音だけが響く。福島県田村市の都路地区で、地元商店主らが経営する「ど~も古道店」。東京電力福島第一原発の事故後、避難先から自宅に戻った人たちのためにつくられ、食料品や雑貨を扱う。開業から1年半近くですでに経営が行き詰まっている。原発事故の復興は国の責任で行う、と進められた目玉施策の一つだった。 ■進まぬ住民帰還 都路地区は昨年4月、原発事故に伴う避難指示を国が初めて解除した。人口約2600人の地区に戻ってきたのは5~6割。今年1月、近くに大手コンビニエンスストアができ、売り上げは6割減った。ど~もの売り上げを支えた除染作業員らを奪われ、地元客の少なさに直面している。共同経営者で古道店長の吉田光一さん(56)は中学2年の長男らと車で約50分離れた仮設住宅に避難している。店が順調なら帰還するつもりだったが「当てが外れた」と気落ちする。昨年10月、一部を除き避難指示が解除された川内村も住民が戻らない。人口約2700人のうち、帰還したのは6割。野菜工場などを誘致したが、働き手が足りない。井出茂・村商工会長(60)は「国の復興策に役場は踊らされている」と言う。7月、都路地区と川内村に、追い打ちをかけるような出来事が起きた。環境省は、汚染稲わらの焼却施設を2地域の境界に造ると決めた。都路の行政区長連合会長の吉田修一さん(60)は「避難指示が解除されても、なぜ苦労し続けなければならないのか」と嘆く。「地域を築くには何十年もかかるが、失うのは一瞬だ」。田村市の冨塚宥けい(ゆうけい)市長は2011年、朝日新聞のアンケートで答えた。アンケートでは、原発周辺自治体の首長15人に地域を維持するために住民がふるさとに戻らなければならない期限を聞いた。10人が「1年以内」と回答した。事故から4年半近く。福島では今も11万人が避難を続ける。避難者数のピークは、事故のあった11年ではなく12年(16万4千人)。避難指示区域の外でも、放射線量が下がらずに不安を募らせた母親らが、新年度にあわせて子どもを連れ自主的に避難したからだ。九州電力川内原発の再稼働を翌日に控えた10日、日本学術会議による復興シンポジウムが福島市であった。事故で悲観し自殺した人など震災関連死の認定に携わってきた今野順夫(としお)・福島大元学長は講演で言った。「原因究明もなく福島をないがしろにしたままの再稼働は、被災者の心を逆なでするものだ」 ■計画「体裁だけ」 原発が重大事故を起こせば一時避難では済まない。福島の教訓だ。しかし、国と自治体は何万人もが何年間も避難先で生活する事態を、今なお想定していない。内閣府によると、全国の原発の30キロ圏にある135市町村のうち、避難計画を作り終えたのは65%の88市町村。100万人近い人口を抱える中部電力浜岡原発(静岡県)、日本原子力発電東海第二原発(茨城県)では、策定済みの市町村はゼロ。避難先を確保するめどが立たないからだ。南海トラフ巨大地震が想定される静岡県は、県外避難先を12都県に打診中だが、協議は難航している。打診された群馬県の担当者は「数万人がいつまでいるか分からないのに、避難先を決められない」という。静岡県が想定する避難期間は約1カ月。「更に延びるようなら国と協議する」(原子力安全対策課)。それ以上のことは未定だ。茨城県でも、避難対象の96万人のうち52万人が向かう県外の避難場所は、決まっていない。東海第二原発がある東海村の村上達也前村長は「真面目に検討すればするほど、避難計画など作れるはずがないとわかる。体裁を整えるだけの計画は不誠実だ」と語る。そもそも国の防災基本計画は、体育館などでの一時避難が長びいた場合の記載しかない。策定済みの市町村の避難計画も、多くは期間の記述はなく、あっても1~2週間がほとんどだ。11日に再稼働した川内原発がある鹿児島県は、国が30キロ圏の病院などに避難計画を求めているのは現実的でないとして、対象を10キロ圏に絞った。長期避難については「必要な情報や支援・サービスを提供する」などとしか定めていない。福島第一原発事故の避難行動を研究する関谷直也・東大特任准教授(災害情報学)は、各地の計画に危惧を抱く。「もう事故は起こらない。そう思っているのではないか」 *4-4:http://qbiz.jp/article/68806/1/ (西日本新聞 2015年8月13) 【原発が動いた日〜川内1号機再稼動】(中)線引き ●“地元”で差渦巻く不満 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)から南へ5キロ余り。周辺自治体として最も近い、同県いちき串木野市は11日の再稼働をどう受け止めたのか。市役所で取材に応じた田畑誠一市長(75)は「エネルギー政策は国策。国が再稼働の地元同意の範囲を決めるべきだ」と語気を強めた。政府が再稼働を認める条件「地元同意」は、電力会社と立地自治体が結ぶ安全協定に基づく。法的ルールではなく、“地元”の線引きがポイントとなる。川内原発の場合、伊藤祐一郎知事(67)が主導権を握った。総務省出身で「行政のプロ」を自認する手腕を発揮し、九電が同意を得るべき自治体を県と薩摩川内市に限定した。蚊帳の外となった、いちき串木野市は過酷事故が起きた場合に最優先で避難すべき「5キロ圏」からわずかに外れるが、風向き次第で放射能被害を受ける。昨年11月、知事が再稼働に同意する直前、田畑市長は鹿児島県を訪れた宮沢洋一経済産業相を空港まで追いかけ、国主導の同意形成を求めた。だが、国は「各地で決めること」と突っぱねている。 ◇ ◇ 原子力防災の枠組みから外れた自治体もある。川内原発から北へ38キロの熊本県水俣市。「ホームページをご活用ください」。昨年11月、原子力規制委員会からのつれない回答が、市担当者にメールで届いた。同市は30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)の外だが、事故時に南隣の鹿児島県出水市から6600人の避難者を受け入れる計画に組み込まれた。そこで昨年9月、物資確保への支援などに関する要望書を近隣自治体と共同で規制委に提出。届いた回答はA4サイズの紙1枚だけ。具体的な説明がまったく書かれていなかった。西田弘志市長(56)は憤る。「国は30キロ圏の外には関心がないようだ。大事故になれば、われわれも被害者となるのに…」 ◇ ◇ 目に見えない放射能への備えに、歴然と横たわる行政の線引き。関西電力高浜原発(福井県)の5キロ圏に入る京都府は3月、川内原発の再稼働に際し、立地自治体の意見だけが反映された理由を明確にするよう政府に要望した。「周辺の意見も聞いた上で政府が判断すべきだ」との不満の表れで、九電玄海原発から12キロの佐賀県伊万里市も立地自治体並みの安全協定の締結を求め続けている。法的ルールなき地元同意と、30キロ圏外に目を向けない原子力防災−。全国的には“地元”の定義拡大を求める声は強まっている。原発の再稼働にこぎつけながら、多くの関係者に不満と不安を残した鹿児島の「川内方式」は全国モデルになりそうにない。 *4-5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11913190.html (西日本新聞 2015年8月13日) (再稼働を問う 教訓どこへ:上)高線量下、突入誰が 過酷事故訓練、飛ぶ怒号 事故を起こした原発を止める高い放射線量下の作業をだれが担うのか。福島第一原発事故で日本が直面した難題が、再稼働によって、現実の問題として突きつけられている。「行きたくない。家族がいるんだ。電力の社員が先に行くべきだ」。今年1月、東京都三鷹市にある会議室で怒号が飛び交った。原発の安全対策のため電力会社などがつくった民間団体、原子力安全推進協会が今年から採り入れた過酷事故対策の訓練だ。原発でテロが起き、全電源を喪失。高い放射線量の現場にけが人が取り残されたという想定。救出を命じられた孫請けの若手社員が反発する。どう判断し、命令し、行動するか、参加者が自ら考える。全国の原発から集まった所長の補佐クラス20人ほどが、電力会社、下請け、孫請けの社員役になる。部屋は真っ暗。煙をたいて視界を悪くするなど事故時の混乱と緊張を再現した。一定時間を超えると線量計のアラームが鳴る。どう振る舞うかのシナリオはない。時間が迫る中、ある参加者は思わず「行ってくれ」と部下役に土下座した。 ■「福島の検証を」 福島の事故では、高い放射線量に阻まれて十分に作業できない場面が多かった。国は作業員の被曝(ひばく)線量限度を100ミリシーベルトから250ミリに特例で引き上げたが、事故の進展を食い止められなかった。反省を踏まえ、原子力規制委員会は今月5日、緊急時の被曝限度を250ミリとする法令改正を決めた。事前にルール化しておけば必要な作業が迅速にできる、との考えからだ。原発は、暴走すると手に負えなくなる核物質という脅威を内包した発電技術だ。福島第一の故吉田昌郎所長が「決死隊」と呼んだ高線量下への突入作業は、1986年4月のチェルノブイリ原発事故で現実のものになっていた。炉心の爆発や一帯での火災が起き、消火活動などで消防士ら28人が急性放射線障害などで死亡。軍が出動し、鎮火後も続いた放射性物質の大量放出を止めるのに10日かかった。極限状態の作業がなければ、世界の汚染はさらに広がっていた。日本はこの問題を深く議論してこなかった。「日本の原発では大事故は起きないから」が理由だった。福島の事故から4年余り。ようやく被曝限度引き上げという一つの答えを出した。だが、福島第一の作業員の一人は疑問を持つ。「事故のときは100ミリを超えてしまいそうだから近づけなかった。何もできなかった、ということ。250ミリで本当に事故を止められるのか。だれも福島の検証をしていない」 ■限度どう判断 7月23日の放射線審議会でも委員から質問が出た。「仮に250ミリでは事故が収束できそうもない場合はどういう判断になるのか。諦めて退避するのか」。規制委は、国際機関が勧告する「正当化原則」を使う考えだ。作業員の健康リスクと作業で得られるメリットを比べ、人命救助や広大な国土の汚染の阻止など必要性が明らかに上回るなら、被曝限度を超えてやってもらう、ということだ。田中俊一委員長は会見でこう話した。「事業者としての一つの責任とか、そういう問題になってくる」。原子力災害対策特別措置法は、事故の拡大防止は電力会社の責務と定める。だが、民間企業にどこまでやれるのか。福島の事故では自衛隊や警察、消防も現場に入り、米軍は専門部隊を日本の基地に派遣した。今も福島の検証を独自に続ける新潟県。泉田裕彦知事は昨年11月、高線量下での作業に関する国への要請の中で、外国の事例も参考に、自衛隊の任務に事故対応を追加するなど国が指揮する部隊の設置を求めた。一方、福島第一に放水した部隊を現地で指揮した元東京消防庁警防部長の佐藤康雄さんは「福島の現場に入ったのは特別だった。本来、事故収束は事業者の責任。電力業界が事故時に助け合う組織をつくるべきだ」。 ■「覚悟はあるか」 過酷事故対策の訓練に取り組む原子力安全推進協会は、原発の所長を集め、こんなテーマで討論した。「部下の命を左右する命令を出す覚悟はあるか」。協会の久郷(くごう)明秀理事は言う。「高線量下の作業はある意味、弾が飛んでくる戦争と一緒。自分の犠牲でみんなを守ろうという人も、そこまではできない人もいる。家族や上官のことを思う中で個人で決断せざるを得ない」。九州電力川内原発の再稼働で、日本は再び事故が起きうるリスクを抱えた。次に起きたとき、最後に事故を止めるのはだれか。答えはまだはっきりしない。 *4-6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11911275.html (朝日新聞 2015年8月12日) 安全の確保、どこまで 火山対策に専門家異論・複数の設備未完成 川内原発再稼働 新規制基準に適合するとして再稼働した九州電力川内原発(鹿児島県)。過酷事故や自然災害への対策は厳しくなったが、火山対策では専門家から異論が出た。設置が義務づけられたものの、猶予期間中でまだできていない設備もある。川内原発の160キロ圏には、活発な活動を繰り返す桜島や阿蘇など39の火山がある。地質調査から、過去に巨大噴火の火砕流が原発近くまで届いていたことも分かった。火砕流は、原発の設計で対応することができない災害にあたる。九電は、稼働期間中に巨大噴火が起こる可能性は十分低く、巨大噴火につながりそうな変化を観測すれば運転を止めて核燃料を運び出すとしている。しかし、火山学者からは「前兆が捉えられるとは限らない」と異論が相次いだ。核燃料の搬出先も未定だ。地震対策で九電は、揺れの想定を引き上げ、規制委も重要施設の直下に活断層がないと認めた。だが、福井地裁は関西電力高浜原発3、4号機の運転を認めない仮処分で、新基準の厳しさそのものを疑問視した。設置が猶予され、未完成のまま再稼働した設備は複数ある。その一つが「フィルター付きベント」だ。東京電力福島第一原発事故では、格納容器が圧力で壊れるのを防ぐため、内部の気体を放出するベントが実施された。フィルターを通すことで、排気に含まれる放射性物質を減らす。福島第一原発と同じ沸騰水型炉では再稼働に必須だが、川内原発などの加圧水型炉は、格納容器が大きいとして猶予されている。九電は来年度に設置する予定だ。事故対策の拠点となる緊急時対策所は当面、別施設で代替する。航空機テロなどへの対策として、電源やポンプを別に備えておく特定重大事故等対処施設も2018年まで猶予されている。 PS(2015/8/15追加): *5-1のように、経産省が原発地元の自治体に渡す交付金も、国民が税金で支払っている原発のコストだ。しかし、原発地元の自治体は、このような後ろ向きの交付金よりも、次のステップに進んで将来は交付金なしでもやっていける準備をするための脱原発促進交付金による支援と各省庁の知恵に依るサポートの方が有り難い。 また、*5-2のように、「原発ゼロ」でも電力の需給は安定していたため、原発を再稼働させる意味はなかった。電力各社が老朽化した火力発電所を使用して供給力を高めていたのなら、それを地熱発電や分散型の太陽光発電などに変更すればよく、その方が地球と日本の両方のためになるのだ。 *5-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS14H36_U5A810C1EE8000/ (日経新聞 2015/8/15) 原発再稼働、交付金手厚く 送電開始の川内が第1号 経済産業省は原発が再稼働した自治体への交付金を手厚くする。九州電力川内原発1号機(鹿児島県)が14日に発送電を開始した薩摩川内市などを第1号とし、稼働実績に基づく交付金に加え、再稼働に伴う新たな交付金を上乗せする。一方、原発停止が続く立地自治体は今より減らす方向で検討している。川内1号機は14日から家庭や企業に電気を送り始めた。九電は今月下旬にフル出力とし、9月上旬から本格的な営業運転を始める方針だ。九電は今夏、中国電力などから電気の融通を受けて供給余力を示す予備率を3.0%確保する計画だった。再稼働で5.1%に改善し、他社から融通を受ける必要も無くなる。川内1号機の再稼働に伴い、立地地域に配る交付金には差をつける。政府は「電源立地地域対策交付金」を稼働実績に応じて配っているが、東京電力福島第1原発事故以降は、原発の停止中も稼働率を一律81%とみなして支給していた。16年度以降は算定方法を見直し、再稼働した自治体は稼働実績に応じて配り、原発が稼働しない場合、稼働率の想定を70%前後に減らす方向で検討している。経産省は15年度予算で、原発を再稼働したときなどに立地自治体に配る15億円の交付金を新設した。再稼働後の支援を手厚くすることで地元自治体の理解を得やすくする狙いがある。川内原発がある薩摩川内市の地域対策交付金は15年度で14億6653万円。16年度は8月に再稼働した川内1号機の稼働実績を考慮して決めるが、新たな交付金を加えれば、当面は交付金の総額が増えることになる。一方、原発が稼働しない自治体は稼働率の想定が減る影響で、交付金が減ることになる。交付金への依存が強い自治体からは懸念の声が出ている。 *5-2:http://qbiz.jp/article/68916/1/ (西日本新聞 2015年8月15日) 【川内原発再稼働】「原発ゼロ」でも需給安定、再稼働の意味は 九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市、出力89万キロワット)で14日に発電と送電が始まったことで、西日本と中日本の電力需給状況は大きく改善に向かう。ただ「原発ゼロ」だったこれまでも全国的に需給は逼迫(ひっぱく)していない。供給余力がさらに増すことで、原発再稼働への疑問の声が高まりそうだ。九電や関西電力、中部電力など西日本と中日本の電力6社は、周波数が同じ60ヘルツ。今夏は九電と関電が、中部電や中国電力などから電力の融通を受けており、6社間でやりくりして電力の安定供給に努めている。西日本、中日本全体でみると、電力需給の余力を示す「予備率」の想定は、川内1号機が稼働する前で4・5%。安定供給に最低限必要とされる3%を上回っていたが、川内1号機がフル出力になれば、5・5%程度まで高まる。川内1号機の出力が高まるにつれて、九電への融通は不要になる。中部電や中国電などは、予備率が3%と低い関電への融通を手厚くすることができ、電力不足の危機は遠ざかる。そもそも「原発ゼロ」でも需給は安定していた。6社とも8月3〜7日にかけて今夏の最大電力需要を記録しているが、省エネへの取り組みや太陽光発電が普及したこともあり、最大供給力に対して10〜20%程度の余力がある状況だ。周波数が50ヘルツの東日本(東京、東北、北海道電力管内)でも、全体の予備率は9・7%。原発がなくても十分な余力を確保しているといえる。ただ電力各社は、老朽化した火力発電所の補修を先送りするなどして供給力を高めており「需給は予断を許さない状況で、安定供給へ原発の再稼働が必要なことに変わりはない」(中国電力)などと主張している。 PS(2015年8月16日追加): 桜島が全島避難になっても、川内原発に火砕流が達する可能性は小さいと思うが、桜島は、*6-1のように、怒りを溜めて爆発することで警告を発しているように見える。また、*6-2のように、原発再稼働への反対は全体で55%だが、女性の方が反対割合が高いのは、①自分も健康被害を男性より早く受けること ②食品の安全性を考えること ③子どもはじめ家族の健康を考えていること 等が理由だ。そのため、ここは、男性よりも反対割合の高い女性の意見を重視すべきだ。 2015.5.15東京新聞 2015.8.16西日本新聞 *6-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/219474 (佐賀新聞 2015年8月16日) 桜島の噴火切迫、厳戒続く、鹿児島市が対応協議 鹿児島市では16日、桜島の噴火警戒レベルが4(避難準備)に引き上げられたのを受け、厳戒態勢が続いた。市は午前、警戒本部会議を開き、火山活動や避難所の現状、今後の対応などを協議した。16日は午前8時までに有感地震が発生していないことや、「爆発的噴火が切迫している状況は変わらない」との京都大防災研究所の報告が伝えられた。市は島の有村町の全域、古里町と黒神町の一部の計51世帯77人に出した避難勧告を維持。山腹の噴火や大きな火砕流の恐れがある場合、全島避難に切り替える方針だ。避難対象の住民は島内に開設された避難所で不安な一夜を過ごした。 *6-2:http://qbiz.jp/article/68949/1/ (西日本新聞 2015年8月16日) 原発再稼働、反対は55% 世論調査 共同通信社の世論調査では、停止中の原発再稼働への反対が55.3%で、賛成の36.9%を上回った。反対は7月の前回調査に比べ1.4ポイントの微減。政府は、原子力規制委員会の新規制基準に基づく審査に合格した原発を再稼働させる方針だが、九州電力川内原発(鹿児島県)1号機の再稼働後も、依然として根強い慎重姿勢が浮き彫りになった。政党別では、自民党支持層の57.1%が賛成と答え、反対は35.4%だった。これに対し、民主党支持層では反対70.0%、賛成24.1%。与党の公明党支持層でも反対が54.8%で、賛成の41.4%を上回った。反対は維新の党支持層で59.2%、共産党支持層では91.2%に達した。男女別では、女性は反対が62.0%で、賛成は27.9%。男性は反対48.1%、賛成46.6%で意見が二分した。地域別に見ると、反対が最も多いのは四国の60.1%。賛成が反対より多かったのは近畿のみだった。川内原発がある九州は反対が52.2%で、賛成は39.9%だった。 PS(2015年8月17日追加):国民主権の民主主義社会では、国民の意志決定で政策が決まるため、メディアが正確な情報を流すことは必要不可欠であり、メディアの情報の流し方一つで政策も左右される。そのため、①国民がフクイチ事故後に散々被曝させられ ②政府が2030年時点の電源構成で原発をベースロード電源として原発比率20~22%と決め ③川内原発が再稼働した 後で真相を伝えても、(伝えないよりは良いが)遅すぎる。それではメディアの情報が信用できず、これが「メディアの自殺」と言われる理由だ。つまり、適時に真相を伝えることが、本来のメディアの使命であり社会的責任なのだ。 また、現行憲法下で大本営発表をそのまま書くのは意気地がなさすぎ、外国の報道や放射能測定値を参考にしたり、いろいろな所に取材に行って線量を測ったり話を聞いたりすれば真相はわかる筈で、それが記者の実力と勇気であって言論の自由や表現の自由で守られる価値のある報道だ。私は取材に行けなくても自分が不利になっても、2011年7月25日、27日くらいから、このブログに原発事故に関して真実だと思うことを記載している。 *7:http://qbiz.jp/article/68782/1/ (西日本新聞 2015年8月17日) 原発再稼働、今度こそ「真相」を 会見の合間を見計らって、記者たちは、航空機のチケットをパソコンで予約していた。2011年3月。東京で日銀を担当していた私は、東京電力福島第1原発事故の取材に加わった。霞ケ関の「原子力安全・保安院」(現在は原子力規制委員会)の会見は、昼夜を問わず、断続的に行われ、その度に、100人近い報道陣が集まった。記者たちの「予約」は、いわば保険のようなもの。東京から避難しなければならなくなったときに備え、「退路」を確保した。当時、ネット上では「福島原発はメルトダウン(炉心溶融)した」「放射性物質をまき散らしている」とさんざん書き込まれ、羽田空港は、自主避難の人たちであふれ返った。会見で質問は「メルトダウン」に集中した。保安院の審議官は「燃料棒の損傷の疑い」と繰り返すばかり。当時の枝野幸男官房長官も「メルトダウンはしていない」「直ちに健康への影響はない」と強調し、新聞やテレビはそのまま「発表」を垂れ流した。しかし、実際は、福島第1原発の1〜3号機すべてでメルトダウンが起きていた。最も早い1号機では地震から約5時間後、原子炉圧力容器が破損していたという。15年8月11日。東日本大震災からちょうど4年5カ月後、九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)が再稼働した。震災後に作った新しい規制基準を満たす、初の再稼働だ。「安全神話」の反省から、新基準は事故が起きることを前提にした。菅義偉官房長官は11日の会見で「原子力規制委員会によって、世界でも最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認められた場合は、原発の再稼働を進める」と、原発回帰を鮮明にした。だが、安全に「絶対」はない。規制委の田中俊一委員長は「絶対安全とは申し上げない」と断言。再稼働後、私たちは、事故が起きるかも知れない危険性と隣り合わせとなる。福島第1原発事故では、報道機関は、原発政策を進めてきた国の「発表」を伝えてきた。それでも記者たちが、航空機のチケットを予約していたのは、事故の真相をつかめず、不安に襲われたためだ。私もその1人だった。今も、じくじたる思いがある。「震災前」に戻った日本のエネルギー政策。国や電力会社の「発表」は本当なのか―。今度こそ、真相を伝えていきたい。 PS(2015年8月26日追加): *8-1のように、佐賀県、玄海町、九電間で40年前に結ばれた協定では、原発地元は立地自治体のみとなっているが、過酷事故時には、*8-2のように、近隣住民に被害があるのみならず農林水産業の生産物も汚染されて輸出に影響が出る(実際には、韓国だけでなく多くの国が輸入禁止や制限を行っており、ここで韓国だけをWTOに提訴するのはおかしい)。さらに後で書くように、本当は日本国民が食べている食品の安全性も疑問であり、今では「日本産」は安全ブランドではなくなったのである。つまり、原発事故の被害を受けるのは多くの国民であるため、エネルギーへの原発使用には、それだけをテーマとした全国民の国民投票が必要だ。 *8-1:http://www.saga-s.co.jp/column/genkai_pluthermal/20201/222871 (佐賀新聞 2015年8月26日) 唐津市長、現協定で「原発の地元権利」遂行と強調 唐津市の坂井俊之市長は25日の定例会見で、玄海原発(東松浦郡玄海町)の「地元」の定義について、「準立地自治体と言ってはいるが、われわれは地元という認識を持っている。九電と締結した安全協定で実質的な権利は得ており、その権利を遂行するだけ」と述べた。今後の再稼働や廃炉に対して現在の協定の枠組みで対応していくことをあらためて強調した。唐津市は福島第1原発事故後の2012年10月、九電と1対1で安全協定を結んでいる。坂井市長は「県と玄海町、九電の間で40年前に結ばれた協定に入ろうと努力したが、なかなか難しかった」と振り返った上で、九電と2年議論して作った協定に関し「事前了解という言葉はないが、九電から説明を受け、こちらから意見を述べるという実質的な権利は取っている」と語った。原発をめぐっては「立地」と「隣接地」の差は大きく、鹿児島県の川内原発再稼働の際は「地元同意」の対象は県と立地の薩摩川内市に限定された。市のほぼ全域が玄海原発の30キロ圏に入る伊万里市の塚部芳和市長は福島第1原発事故後、「立地自治体並みの安全協定」を主張し続けている。 *8-2:http://qbiz.jp/article/69276/1/ (西日本新聞 2015年8月21日) 政府、WTOに韓国提訴 原発事故で水産物輸入規制 政府は20日、韓国が東京電力福島第1原発事故を理由に、日本からの水産物輸入を規制しているのは不当な差別だとして、世界貿易機関(WTO)に提訴した。福島第1原発事故を受けた輸入規制で政府が他国を提訴するのは初めて。2国間の協議で解決できなかったため、紛争を処理する小委員会(パネル)の設置を要請した。9月までに開かれるWTOの紛争解決機関の定例会合でパネルの設置が認められる見通し。政府は提訴後も、韓国側に規制を撤廃するよう働き掛けを続ける方針。菅義偉官房長官は20日の記者会見で「WTOの結論を待つことなく、規制を早く撤廃すべきだ」と指摘した。韓国は2011年3月の原発事故を受けて、青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の8県のヤマメやスズキといった一部水産物の輸入を禁止した。13年9月には汚染水漏れを理由に、禁止対象を8県の全水産物に拡大するなど規制を強化した。日本政府はことし5月にWTO協定に基づき、2国間協議の開催を要請した。6月の協議では、日本が「科学的根拠がなく、WTO協定に違反している」として規制撤廃を求めたが、韓国政府が反論し、対立が続いていた。協議開催の要請から60日以内に決着しなければ、パネル設置を要請できる仕組みだ。 PS(2015年8月27日追加):写真のように、原発の温排水により瀬戸内海の海水温を上げて漁獲高を減少させ、本来は恵まれている海の価値を減じながら、政府・自治体が資源管理のみを強調しているのは適切でなく、もったいないことである。さらに、*9のように、原発で過酷事故が起きて陸路が使えない場合には、佐田岬半島の住民約5千人は対岸の大分県内18市町村に海路で避難する予定などとしているが、どのくらいの期間、陸海の汚染が続いて漁ができず、平常の生活に戻れないかの考察がない。 瀬戸内海の漁獲高推移 資源管理 漁 海中の様子 *9:http://qbiz.jp/article/69642/1/ (西日本新聞 2015年8月27日) 大分県に5千人避難も 伊方原発の事故時、国など対応策 原子力規制委員会が新規制基準に適合していると判断した四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の再稼働を控え、関係省庁と愛媛、山口、大分の3県でつくる伊方地域原子力防災協議会は26日、原発事故に備えた広域避難計画を含む緊急時対応をまとめた。原発から約30キロ圏内の住民約12万4千人の避難経路や受け入れ先、放射性物質の拡散状況を測定するモニタリング体制などを盛り込んだ。原子力災害対策指針に基づき、愛媛、山口両県の5市3町にまたがる約30キロ圏内を重点区域に指定。原発西側の佐田岬半島は5キロ圏内に準じた防護措置を取る「予防避難エリア」とした。原発で電源喪失など深刻な事態が発生した場合、5キロ圏内と佐田岬半島では要支援者を優先して車やバスで避難。5〜30キロ圏内の住民は屋内に退避する。複合災害で陸路が使えない場合、佐田岬半島の住民約5千人は対岸の大分県内18市町村に海路で避難する。ただ予防避難エリアに放射線防護施設が4カ所しかないなど課題も多い。内閣府は「訓練を通じて問題点を把握、対策を講じるのが重要」と継続した見直しを行う姿勢を示したが、再稼働前の訓練実施については明言しなかった。今後、原子力防災会議(議長・安倍晋三首相)を開き、了承を得る方針。 PS(2015年8月28日追加): *10-1で、「女子に三角関数教えて何になるのか」と伊藤鹿児島県知事が言ったのは教育における女性差別だし、「自分自身も使ったことがないから勉強不要」と言うのなら、そのような人だから論理的思考ができないのだろう。また、「サイン、コサイン、タンジェントを社会で使ったことがあるか女性に問うと、10分の9は使ったことがないと答えるから教えなくてよい」のであれば男性にも教えなくてよいことになる。つまり、女性にも数学者や理系の職業人は多いにもかかわらず、鹿児島県知事は、このように女性蔑視が甚だしく、こういう人が総務省出身で知事だから問題なのである。 ちなみに、国は、*10-2のように、まさにこの日に「女性活躍推進法」を成立させたので、鹿児島県も率先して女性登用の推進に向けた行動計画の策定と公表を行うべきだ。 *10-1:http://mainichi.jp/select/news/20150828k0000e040234000c.html?fm=mnm (毎日新聞 2015年8月28日) 鹿児島知事:「女子に三角関数教えて何になるのか」 鹿児島県の伊藤祐一郎知事は、県教育委員らが参加した会議で「高校教育で女子に(三角関数の)サイン、コサイン、タンジェントを教えて何になるのか」と発言したことが分かった。28日の定例記者会見で、発言について「自分自身も使ったことがないよねという意味。口が滑った」と述べ、訂正した。発言は、全国学力・学習状況調査の結果が25日に公表されたことを受け、27日の県総合教育会議で知事としての目標設定について問われた際にあった。伊藤知事は「サイン、コサイン、タンジェントを社会で使ったことがあるか女性に問うと、10分の9は使ったことがないと答える」とも述べた。 *10-2:http://mainichi.jp/select/news/20150828k0000e010182000c.html?fm=mnm (毎日新聞 2015年8月28日) 女性活躍推進法:成立 管理職の数値目標設定の公表など 女性管理職の割合に数値目標の設定などを義務付ける「女性活躍推進法」は28日午前、参院本会議で自民、民主、公明各党などの賛成多数で可決され、成立した。従業員301人以上の企業と、雇用主としての国や自治体は、女性登用の推進に向けた「行動計画」の策定と公表を求められる。数値目標の水準は各企業などに委ね、罰則規定もないが、計画策定と公表の義務付けによって女性登用を進める効果を狙っている。行動計画策定は2016年4月1日に、その他は公布と同時に施行する。集中的に対応するよう施行から10年間の時限立法とした。安倍政権は「女性活躍」を成長戦略の中核の一つに掲げ、「20年までに指導的地位に女性が占める割合を30%にする」との目標を掲げている。人口減少が進む中、女性に活躍してもらい、労働力不足による社会の活力低下を防ぐ狙いもある。行動計画は、(1)採用者に占める女性の割合(2)勤続年数の男女差(3)労働時間の男女差(4)管理職に占める女性の割合−−の各項目の現状把握と分析を必須とした。その上で、改善点や取り組み期間、数値目標などを盛り込むよう求めている。この他、企業側が選択する項目が省令で示される見通しで、育児と仕事の両立支援制度や利用状況、非正規雇用から正規雇用への転換制度の利用状況などが想定される。従業員300人以下の中小企業にも努力義務として課す。施行に合わせ、国は「女性活躍の推進に関する基本方針」を閣議決定する。各企業などの計画策定を支援するためのガイドラインも作る。また、行動計画の内容や達成度などに応じて優良な企業を認定し、国や自治体の公共事業や備品購入などで優遇できるようにもする。法案は昨年秋の臨時国会で提出されたが、衆院解散で廃案となり、今国会に再提出された。衆参両院で、賃金の男女格差の把握と是正、非正規労働者の待遇改善のためのガイドライン策定などを求める付帯決議を行った。14年の日本の女性管理職の割合は11.3%で、米国の43.7%、フランスの39.4%、ドイツの28.6%(いずれも12年)などの主要国の水準を大幅に下回っている。
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2015,08,08, Saturday
2015.7.30日経新聞 三越受付ロボット 電通受付ロボット 会話ロボット ハウステンボスフロントロボット (*ロボットなら、数カ国語対応も容易) 諸富家具の製品 2015.8.5西日本新聞 (*一番良いものを選んで掲載したとは限りません) 燃料電池船 (1)1000億円超の新型地方創生交付金で、本当のところ何が不便なのか? *1-1のように、政府が地方創生の柱として2016年度に創設する新型交付金を1000億円規模にする基本方針を決定し、地方からは「小粒」との不満の声があがっているそうだ。確かに、これまで地方は、インフラの整備が十分ではなく、産業にも伸びしろが多い。 そのため地方は、ここで是非、国の財政出動頼みではない、将来自立型の先駆的なグランドデザインを作って欲しいものである。 (2)佐賀市の挑戦 佐賀市は、*1-2のように、2060年の推計人口が、現在の約23万人から9万人少ない14万人に減少すると試算し、20万人を維持するために雇用、子育て、観光客誘致、まちづくりなどの戦略を示して、本年度から5年間は、雇用創出、定住促進、出産・子育て環境の充実、まちづくりの4分野の施策を重点的に行うそうだ。 また、*1-3のように、支所の再編で佐賀市の職員数を3年かけて半減する計画だそうだが、これは、*2-1-1、*2-1-2のように、キャノンが九州の全拠点工場で、カメラの生産を完全自動化し、三菱重工が広島県の航空機胴体生産工場で人工知能を活用した自動化生産ラインを新設し、三井造船が船の部材を切断する機械を導入し、キユーピーも工場の自動化を進め、ハウステンボスでは、*2-2-1のように、フロントやポーターにロボットを導入し、日本橋三越では、*2-2-2のように、受付嬢にロボットを採用し、電通は、*2-2-3のように受付に柏木由紀そっくりのロボットを採用していることから可能だろう。 しかし、この時代に必要となる人材は、それらの機械を作ったり、操作したり、生産技術を改善したりすることができる人材であり、ルーチンな仕事のみをこなす人材ではなくなるため、そのつもりで教育や企業誘致・産業振興の戦略を立てる必要がある。 (3)地場産業の進化 *3-1のように、佐賀市の諸富家具5社が、現地デザイナーとの開発も視野に、シンガポールに市場調査に行くそうで、その挑戦は大変面白いが、日本で制作する以上、デザインだけでなく、日本の木や竹を使用し、家具や玩具にロボット技術を組み込んで付加価値を上げ、シンガポールで開かれる世界最大規模の見本市に出展して話題をさらい、キャノン・三菱重工・三井造船のように生産ラインをなるべく自動化して生産性を上げなければ、世界市場で勝つのは難しい。そのため、あちこちから技術を集めて、そういう製品を開発するのがよいと考える。 また、*3-2のように、環境省が、長崎県五島市の椛島沖で水素を燃料とする国内初の燃料電池船の実証事業を始め、その水素は、同省が椛島沖で進める「浮体式洋上風力発電実証事業」の余剰電力を利用して製造するそうだ。自動車だけでなく船も燃料電池船になると、CO2のみならず有機物を海に捨てないため、東京湾のように通行量の多い港でもクリーンにすることができる。また、化石燃料を外国から購入しなくてよくなるため、大幅なコストダウンが可能だ。 なお、*3-3のように、伊万里市内の学校では強化磁器の食器を使っており、給食食器に焼きものを使う小中学校は、文部科学省の2006年調査で、佐賀県が67.4%、全国では32.6%だそうだが、食文化は、食品だけでなく食器の使い方も含むため、これは全国に広がることが望まれる。また、私は、それぞれの児童・生徒が書いた絵やデザインを染めつけた器を作って使うようにすれば、磁器が身近で面白いものになるとともに、才能を早く発見して磨くことも可能だと考える。 *1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150805&ng=DGKKASFS04H78_U5A800C1PP8000 (日経新聞 2015.8.5) 地方創生「目玉」は小粒、16年度、新型交付金1000億円超 「看板なのに」地方は不満 政府のまち・ひと・しごと創生本部(本部長・安倍晋三首相)は4日、地方創生の柱として2016年度に創設する新型交付金を1000億円規模にする基本方針を決定した。規模は14年度補正予算で先行計上した1700億円を下回る。財政事情の厳しさを理由にあげているが、地方からは「看板政策にしては小粒だ」と、担当の石破茂地方創生相らに不満の声があがっている。8月末の概算要求で、内閣府と関係省庁が新型交付金向けに1000億円超を計上する。地方創生は首相の経済政策「アベノミクス」の中の重要分野。新型交付金は「地方の先駆的な取り組みを後押しする」という名目だ。政府は今年1月にまとめた14年度補正予算で試行的に「先行型交付金」1700億円を計上。全国知事会は16年度予算では「14年度補正を大幅に上回る規模」を要請していた。概算要求を前に出てきたのは6割程度の規模。「大きければ大きいに越したことはないが、厳しい財政事情の中で予算を組んでいかないといけない」。石破氏は4日の記者会見でこう説明した。額を積み増せないのは、財源を既存の補助金や交付金の見直しで捻出するためだ。石破氏が所管する内閣府は地方向けの2つの交付金を衣替えして約580億円を確保する。残りの約500億円は他省庁の予算から切り出す。地方創生以外の分野で企業や独立行政法人向けの補助金などを減らして振り向ける。各省の既得権とみなされる予算を削る調整は難しく、閣僚の協力も得にくい。1000億円超を生み出すのが「ギリギリの水準だった」(内閣府幹部)という。全国の自治体は都道府県と市区町村を合わせて約1800。単純にいえば、1自治体あたり1億円にも満たない計算だ。全国知事会の山田啓二会長(京都府知事)は「国の全面支援を期待していた地方側としては非常に不満だ」と訴える。新型交付金を利用する事業は、半額が地方負担となる仕組みだ。石破氏は「(地方の負担も合わせた)事業費ベースでの2000億円は、14年度の補正規模を上回っている」と強調するが、地方側の関心事は国から拠出される金額だ。「(国が配分する)地方交付税で補う措置を確実に講じてほしい」(全国市長会の森民夫会長)。地方側からは早速、こうした声も上がり始めた。与党内では当初から「財政が苦しいのに財政出動頼みの地方創生は厳しい」(閣僚経験者)との声があった。一方で中途半端な施策ではアベノミクスの「看板倒れ」との批判を招きかねない。首相官邸や石破氏は年末まで財務省や各省、地方との難しい調整を迫られる。 *1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/216015 (佐賀新聞 2015年8月6日) 2060年の佐賀市人口、20万人維持へ素案提示、産学官会議で疑問の声も 佐賀市は5日、2060年の推計人口が現在の約23万人から9万人少ない約14万人に減少するとの試算を明らかにした。人口減対策の総合戦略素案も示し、60年に約20万人を維持する目標を掲げた。雇用、子育て、観光客誘致、まちづくりなど多様な施策で人口減に歯止めをかける。素案について協議した経済関係者らからは「予算規模に対して事業が多すぎるのでは」などの意見が上がった。市は、市の総合計画や国、県の人口推計、合計特殊出生率の見通しなどを基に推計した。人口は毎年減少し、35年には19万6千人と20万人を割り込み、55年には約15万人となる。60年の人口目標値は、合計特殊出生率で県の仮定値を用い、2040年以降は2・07を維持、転出抑制と転入促進は、県の目標を前倒しで実現する計算。これらの条件がそろえば、推計値より5万7千人多い19万7千人になると展望した。実現の足掛かりとなる総合戦略素案は本年度から5年間、雇用創出や定住促進、出産・子育て環境充実、まちづくり-の4分野を軸に施策を展開する。例えば、企業誘致による新規雇用者1250人、バイオマス関連企業3社誘致、観光客増などによる経済波及効果を330億円、外国人宿泊客数3万人、保育所の待機児童数ゼロを掲げている。市は、初年度の関連予算として2億2千万円を見込んでいる。人口展望と戦略素案は商工会議所、佐賀銀行、佐賀大、佐賀市など産学官の15人でつくる「まち・ひと・しごと」創世推進会議で提示された。委員からは「予算を考えると、絵に描いたもちになるのでは」「事業の選択と集中が必要」「20万人を目指す根拠を示してほしい」などの意見が出た。市は9月に総合戦略を策定する。 *1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/215635 (佐賀新聞 2015年8月5日) 佐賀市、支所再編で職員半減 3年かけ270人から128人に 来年度の支所再編に伴い、佐賀市は4日、7支所に配置する職員数を本年度の270人から半数以下となる128人に減らす方針を明らかにした。3年ほどかけて段階的に減らす。一部の支所業務を本庁に集約するため本庁職員は増員となるが、具体的な職員数は示していない。支所再編を調査する市議会特別委員会で説明した。7支所のうち、職員が最も多い大和は48人から25人に、最少の三瀬は26人から13人に減る。減員数が一番多い川副は47人が23人になる。初年度は支所窓口の混乱を想定し、各支所に1、2人を上乗せして配置する。業務の本庁集約に伴い、本庁職員数は増えるが、行政管理課は「最終的な人数は調整中」としている。支所再編は行財政改革の一環で、人件費削減による支出減が目的の一つ。1人減員による削減額は年700万円程度とみており、今回の再編で100人削減した場合、7億円の支出減になるとみている。ただ、地方交付税は将来的に14億円削減される見通しで、行政管理課は「行財政改革を緩めることはできない」と強調した。定員管理計画をまとめ、今後は採用調整で本庁職員も減らしていく。議員からは、「いきなり半数近く減って業務に問題はないのか」「減らしすぎではないか」など懸念の声が相次いだ。市側は「支所職員の業務実績を踏まえ、各支所と協議した。病欠や休暇、災害時にも対応できる」と主張し、譲らなかった。 <生産性の向上とICT> *2-1-1:http://qbiz.jp/article/68262/1/ (西日本新聞 2015年8月5日) キヤノン、カメラ生産完全自動化 18年めどに九州全4拠点 キヤノンは4日、2018年をめどに国内デジタルカメラ生産を完全自動化する方針を明らかにした。同社のカメラは全て、大分キヤノン(大分県国東市)など九州の子会社3社が生産している。新たな自動生産装置の研究開発拠点を16年内に大分キヤノン内に新設、熟練技術者の高度技能も機械化したい考え。人口減が進む中で国内生産を維持する狙いがあり、生産経費も最大2割程度削減できる見通しだ。完全自動化を目指すのは大分キヤノンの安岐事業所(同)と大分事業所(大分市)のほか、長崎キヤノン(長崎県波佐見町)と宮崎ダイシンキヤノン(宮崎県木城町)の4カ所。人手に頼る工程をロボットや人工知能を活用した装置に置き換え、主力機種では15人程度必要な工程が監視要員の2〜3人で済むようになると見込んでいる。新たな自動生産装置の研究開発拠点は「総合技術棟」(仮称)=3階建て、延べ床面積1万9700平方メートル=で、133億円を投じて安岐事業所に建設する計画。大分キヤノン内の配置転換などで約500人の人員を確保するとしている。各社の従業員数(14年末時点)は▽大分3130人▽長崎1170人▽宮崎840人。生産自動化による直接の人員削減は行わない。4日に大分県庁で記者会見した大分キヤノンの増子律夫社長は「狙いは人員削減ではなく、生産性の向上にある。人員削減はせず、今後も必要な時に必要な人材は採用していく方針だ」と強調した。 *2-1-2:http://qbiz.jp/article/68258/1/ (西日本新聞 2015年8月5日) キヤノン生産自動化 人手不足備え、競争力維持が理由 キヤノンが国内のデジタルカメラ生産の完全自動化に踏み切るのは、少子高齢化で労働人口の縮小が見込まれる中、国内生産を維持するのが狙いだ。生産拠点が集中する九州では地元雇用が先細りすることへの懸念はあるものの、国内製造業の生産自動化への動きが加速しつつある。主力製品であるデジカメの約6割を国内で生産しているキヤノン。国内製造業は将来的に人口減などで労働力確保が難しくなることも想定されるが、生産の完全自動化により、人手不足に備えることができる。スマートフォンの普及などで競争が厳しいデジカメ市場にあって、生産コストも今より1〜2割削減できる見込み。円安基調も追い風に、キヤノンは今後、国内生産比率を7割程度まで高める方針という。生産の自動化で競争力と人材確保を狙う動きは、さまざまな製造業で相次いでいる。三菱重工業は広島県の航空機胴体生産工場で、人工知能を活用した自動化生産ラインを新設、生産コストの削減を目指す。三井造船も5年間で約150億円を投じ、船の部材を切断する機械などを導入、生産効率を3割引き上げる計画を進めている。キユーピーも工場の自動化を徐々に進めているという。一方で、自動化による人手に頼らない生産の実現は、地方経済を支える雇用の受け皿を縮小することにつながりかねない。キヤノンは「自動化は『無人化』とは違う。機械を運転したり、生産技術を改善したりするための人員が必要になる」「従業員の終身雇用は守る」と説明する。ただ、生産子会社の人員規模が中長期的に縮小する可能性は否定できない。国内製造業の現場では既に人手不足感が顕在化しており、機械化が進んでも地域経済にとって大きな問題にはならないとの見方もある。ただ九州経済調査協会調査研究部の小柳真二研究員は「雇用の増減は、地域経済にとって影響が大きい。企業経営にとって良いことが、地域にとって良いこととは限らない」と指摘している。 *2-2-1:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO89644340T20C15A7000000/ ロボットだらけのホテル、ハウステンボスで近未来体験 ハウステンボスが2015年7月17日に開業した「変なホテル」。快適性と世界最高水準の生産性を両立させるため、様々な技術を駆使した革新的なホテルだ。特に面白いのは、人件費を通常の4分の1に抑えるため、フロントやポーターなどの業務にロボットを導入していること。とはいえ、“ロボットホテル”などこれまでなかっただけに、ピンとこないだろう。一体どのようなホテルなのか。開業前の7月15日に開かれた、完成お披露目記者会見に参加した記者が体験レポートを2回にわたってお届けする。「変なホテル」は、長崎県佐世保市にあるハウステンボスの敷地内に建設された、72部屋(第1期)を有する宿泊施設。人件費、建設費、光熱費の三つを抑制する工夫を凝らした「世界初のローコストホテル」(ハウステンボスの澤田秀雄社長)である。2階建てのその外観は、特段変わったところはない(写真1)。だが、中に入ると他のホテルにはない、様々な工夫を目にすることになる。ホテルに入って目を奪われるのが、左手にあるフロントだ。そこには3台のロボットが宿泊者を出迎える。カウンターをはさんで対話する相手は、女性型ロボットや恐竜型ロボットだ。「女性型はまだしも、なぜ恐竜のロボットがフロントに?」。外見がリアルな恐竜が帽子と蝶ネクタイをしてフロントに立っている様子に、ここが「変なホテル」であることに改めて気付かされる。まずはチェックイン。女性型ロボットの前に立つと、センサーでそのことを感知し、女性型ロボットが話し始める。「いらっしゃいませ。変なホテルにようこそ。チェックインをご希望のお客様は1のボタンを押してください」。お辞儀をしたり、口やまぶたを動かしたりしながら話す女性型ロボット。その動きは、思っていたよりもスムーズで、ほとんど違和感はなかった。 ■女性型ロボットとはボタンで会話 フロントのカウンターの上には、1~3と番号が振られたボタン付きの装置がある。ロボットの案内に従ってボタンを押す(写真3)。すると、ロボットは「宿泊者名簿に氏名などを記載してください」「右手にある端末でお客様の名前を入力してください」などと案内してくれる。 *2-2-2:http://ryutsuu.biz/it/h042002.html (流通ニュース 2015年4月20日) 日本橋三越/受付嬢ロボットを公開 日本橋三越本店と東芝は4月20日、21日、本館1階室町口に東芝のコミュニケーションロボット「地平アイコ」を受付嬢として登場させる。地平アイコは、人間らしい容姿や表情が特徴で、デジタルサイネージの横に立ち、身振りや手ぶりを加えながら、表情豊かに、館内のイベントなどをお客に説明する。中陽次三越日本橋本店長は「常に最新の新しい物事を紹介するのが百貨店であり、新しい最新の科学技術を紹介する取り組みだ。接客は百貨店の要であり、機械化することはできないが、デジタルサイネージを活用した接客は、今後、発展する可能性がある」と語る。東芝、研究開発統括部の徳田均マーケティング戦略室参事は、「現状では、双方向のコミュニケーションには対応できないが、技術的には双方向コミュニケーションも可能になりつつある。1日に何百回と同じ説明をする業務は人間では不可能だが、地平アイコならば笑顔を絶やすことなく、正確な説明ができる。イベントを中心に、さまざまな場面で、地平アイコを登場させたい」と語る。今回は、来店客数が多い店頭での設置のため、一方通行の情報伝達を採用したが、技術的にはカメラと連動させ、来店客毎に応じた接客もできる。現状では、プロトタイプ一体のみで、一体で数千万円の価格だが、量産化ができれば、一体あたり1000万円を切る価格で生産ができる見込みだ。今期中に4体の生産が決定しており、接客業務のほか、展示会の案内、イベントの告知など、活躍の場を拡大する予定だ。音声での対話は難しいものの、デジタルサイネージやタブレット端末と連動した形であれば、百貨店のフロア案内など、顧客の要望に応えるコミュニケーションは可能だという。人間では不可能な、何千、何万という情報量を駆使した店内案内なども想定できる。徳田氏は「単なるデジタルサイネージだけの情報提供では、お客の記憶に残りにくい課題があった。人は表情を含めてコミュニケーションするもので、何か情報を記憶する時に表情は重要な要素だ。表情が豊かな地平アイコが解説することで、より記憶に情報が残りやすい面があると思う」「多言語対応も技術的には可能であり、今後は観光案内など、さまざまなシーンで笑顔を絶やさない接客が提供できるかもしれない」と語った。 *2-2-3:http://www.rbbtoday.com/article/2015/07/28/133793.html (RBBTODAY 2015年7月28日) 誰もがぎょっとする!……電通受付にあのアイドル? 「ほんとに柏木由紀そっくり。気持ち悪いくらい目が合う」。広告代理店大手の電通。東京汐留の本社受付にやってきた人は、受付スタッフの異変に気付き、声をあげる。ゲイズロイド「ロボリン」の名前を持つこのロボットは、首を傾けながら、来訪者と目を合わせたりしている。ロボットは胸にセンサーが組み込まれており、対面者の目の位置を認識する。製作はメディアアーティストの藤堂高行氏。この展示は、電通のイベントスペースデザイン局が、自ら取り扱うテクノロジーを社内にアピールするために、不定期に開催している「電通人ほぼ未体験展」だ。その「エクスペリエンス・テクノロジー・エントランス」に藤堂氏が協力した。今回は3Dスキャニング技術などが社内スペースに展示されているが、「ロボリン」はせっかくなので受け付けに配置されたという。展示は31日まで。 <地場産業の進化> *3-1:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/215657 (佐賀新聞 2015年8月5日) 諸富家具5社、シンガポールへ市場調査 ■現地デザイナーと開発も視野 海外進出の足掛かりを探っている諸富家具メーカー5社が8月下旬、シンガポールを訪問する。現地の小売業者や商社と面談し、ニーズや住宅事情を調べる。来春には、同国で開かれる世界最大規模の見本市への出展も計画。国産家具は大量生産の海外製品に比べて価格が高く、輸出の実績は少ないが、現地デザイナーとの製品開発も視野に商機をうかがう。3月にシンガポールで開かれた見本市に出展したレグナテックなど、佐賀市諸富町の5社が現地を訪ねる。昨年、同国の商社を通じて一部商品を販売した平田椅子製作所も参加、本格的な展開を見据えて需要を探る。「ヒト、モノの中継拠点として発展し、関税もかからない。海外進出の足掛かりになる」。諸富家具振興協同組合理事長を務めるレグナテックの樺島雄大社長は、シンガポールに注目する理由を語る。人口減で国内市場が縮小する中、県や市の協力を受けて同国の商社やデザイナー、見本市の運営会社を佐賀に招き、販売戦略や商品開発の研修も重ねてきた。ただ、輸出のハードルは高い。業界団体の2013年統計によると、海外からの家具輸入額約3600億円に対し、輸出額は80億円。国内メーカーの海外進出は一部にとどまる。国産家具は海外製品よりも割高で、価格競争で大きく水を空けられている。輸送コストも、輸出の大きなネック。台湾への輸出準備も進める樺島社長は「インターネットで日本国内での販売価格を調べ、割高感を持つ人は多い」と海外展開の難しさを語る。今月上旬の研修会で、欧州など20カ国以上と取引しているシンガポールの商社は「日本のやり方が海外で通用するとは限らない」と指摘。大量生産で台頭してきた中国の生産技術も向上しており、従来の手法にとらわれず、現地のニーズに対応する柔軟性を持つよう注文した。メーカー5社は訪問後、来年3月の見本市に向け、現地デザイナーと連携した海外向けブランドの構築も目指す。解消すべき課題は多いが、樺島社長は「立ち止まっていては、販路は広がらない。挑戦する意欲を大切にしたい」と話す。 *3-2:http://qbiz.jp/article/68321/1/ (西日本新聞 2015年8月5日) 五島で国内初の燃料電池船、環境省が実証開始 環境省は5日、長崎県五島市の椛島(かばしま)沖で水素を燃料とする国内初の燃料電池船(10トン級)の実証事業を始めた。水素は、同省が椛島沖で進める「浮体式洋上風力発電実証事業」の余剰電力を利用して製造。二酸化炭素(CO2)の排出削減効果が期待される。船の開発は、戸田建設(東京)、長崎総合科学大、日本海事協会(同)の3者でつくるグループに委託した。船内のタンクに詰めた水素を、外気の酸素と反応させて発電し、モーターを動かして走らせる仕組み。全長12・5メートルで、最大速力は20ノット。450リットル(350気圧)の水素を補充すれば2時間運航できる。当面は、同風力発電機の維持管理用などとして使用し、本年度内は船の加速度などを調べる。戸田建設の開発担当者は「安心安全に運転できるよう完成度を高め、実用化につなげたい」と話した。 *3-3:http://www1.saga-s.co.jp/danran/feature.0.1492133.article.html ●焼きもの食器、地域の“ぬくもり”感じ 白磁に染付の藍、そして上絵は赤、黄、緑色だけを使い、松やツバキなどを描く伝統の「色鍋島」様式。碗や皿の裏底には窯元の銘も入る。伊万里市内の学校で使う焼きもの食器。「何でもおいしそうに見える」「熱くないから持ちやすい」。子どもたちは毎日、給食を楽しみにする。伊万里市は2006年9月、新しい学校給食センターの稼働に合わせて焼きもの食器を導入した。きっかけはその3年前。子ども議会で市執行部に対し、小学6年生がした問いかけだった。「伊万里は焼きものの里なのに、どうして給食食器はアルマイト製なんですか」。食器は伊万里陶磁器工業協同組合(10窯元)と連携、開発した強化磁器。飯碗、汁碗、大皿、中皿の4種類で、大皿は小中学生から募った絵柄をあしらう。現在、幼稚園と小中学校の計26カ所、毎日約6000人が伝統の器に親しむ。かつては全国的に主流だったアルマイト製食器。熱くて持てず、食器に顔を近づけて食べる「犬食い」の原因と言われてきた。焼きもの食器は糸底に手を添えて持ち、姿勢を正しくして食べられ、同給食センターは「手に持つ食べ方は文化の一つ。割れ物だから丁寧に扱う気持ちにもつながる」と話す。毎月第1、3水曜日には、野菜など地元の旬の恵みをふんだんに使った「ふるさと食材・伊万里の日」も行い、食器をはじめ「子どもたちに身近に感じてもらい、昔からある食の文化、産業を知ってほしい」。24時間、いつでも何でも手軽に食べられる時代。先人から受け継がれ、郷土の多くの人が手をかけた給食に囲まれる。鍋島藩窯があった大川内山の地元、大川内小学校の吉村清美校長は「肩ひじ張って伝統を学ぶとかではなく、それで食べるのが当たり前になった」という。アルマイト製に比べて重たく、当初は給食準備の持ち運びの手間や破損を心配したが「みんな大事に扱っている」。学校にある窯で陶芸教室を開いたり、もち米を育てて収穫し、もちをつく「田んぼの学校」、大豆を栽培して豆腐やみそ、きな粉を作るなど、「食」に関するさまざまな取り組みを地域と一緒に進める。「出来上がりだけでなく、その過程がどうなのか」。子どもたちは肌で感じ、感謝の心や「命をいただく」気持ちをはぐくむ。今、新型インフルエンザ対策で、給食の時間は、授業と同じように黒板に向かって机が並ぶ。班ごとに顔を向かい合わせて食べられないが、楽しいおしゃべり、教室いっぱいの笑顔はいつも通り。ぬくもりのある器を前に、「いただきます」「ごちそうさま」と元気のいい声も変わらない。 ●「ズームアップ」、県内導入率77.9%に 給食食器に焼きものを使う小中学校が増える中、佐賀県は全国に比べて抜きん出ている。文部科学省の2006年調査によると、導入率は佐賀県が67.4%、全国は32.6%。「焼きものの里」として全国の倍以上となっている。県内の08年は77.9%にアップ。焼きもの食器は他の材質食器に比べて費用がかかり、破損率も高いほか、調理場自体の改修も必要だが「県の産業を知り、マナーも身につく」(県体育保健課)と県は1999年度から購入経費の2分の1を補助している。プラスチック食器の有害化学物質問題などもあり、「安全・安心」が強く求められる学校給食。06年の全国の導入状況は、ポリプロピレン32.8%、陶磁器32.6%、ポリエチレンナフタレート16.8%、メラミン11.8%などとなっている。 PS(2015年8月9日追加): 男女平等と出生率低下の関係 *4のように、九州各県は強気の将来人口想定をしているが、私は、①食料・エネルギーの自給率が低いにもかかわらず適正人口も考えずに人口増加だけを目標にしている ②人口推移における将来の人口減少推定が誇張されすぎている ③出生率が下がった理由を正確に把握せず「産めよ増やせよ論」になっている 等の理由で、そもそも国の分析に違和感を感じている。 そして、下の2・3番目のグラフのように、文明が進歩し教育が普及して人間開発指数が高まるにつれ(=先進国になるにつれ)、どの国も合計特殊出生率が下がっているが、標準以上に下がっているのは韓国と日本で、どちらも儒教の影響で女性蔑視が強く、出産や子育ての責任を過重に女性に負わせている国だ。また、日本では、下の段の一番左のグラフのように、女性労働のM字カーブが激しく、出産後の女性は働く意思があっても非正規労働の職しかない場合が多い。さらに、下の段の左から2番目のグラフのように、男性の非正規労働者は有配偶率が低くなっており(=結婚しにくくなっており)、このように人生設計をして子どもの数を決めるのは、教育が普及して人間開発指数が高まった結果なのである。 なお、九州各県は保育の待ち行列がないため物理的にはM字カーブは解消しやすいものの、男女の性的役割分担意識が強いため女性に負わせる家事育児負担が重く、非正規社員の割合も他地域より高くなっているのがネックであり、そこを変えるべきなのである。 過去1000年間の 過去70年の 世界各国の人間開発指数 日本の出生率と 日本の人口 先進国の出生率 と合計特殊出生率 合計特殊出生率 女性の年齢別 年齢別・雇用形態別 *4より 2013.11.15朝日新聞 労働力率 の男性の有配偶率 世界の男女格差 *4:http://qbiz.jp/article/68538/1/ (2015年8月9日) 九州各県強気の人口想定 出生率大幅上昇 県外流出はゼロ 国機関の推計上回る 政府が掲げる地方創生に関連し、人口の将来推計を盛り込んだ人口ビジョン策定を求められた九州各県が“強気”の青写真を描いている。女性が生涯に産む子どもの数を推計した合計特殊出生率を現状より高く設定し、いずれも国の機関の推計人口を上回っているのが特徴だ。実現は並大抵ではなく、施策の実効性が問われる。昨年1・64だった出生率が2030年に2・0、40年には2・1まで上昇する−。熊本県がビジョン素案を公表した6日の会議。その根拠を県議に問われた県幹部は「希望と理想」と認めた上で「政策を総動員し、何とか達成したい」と強調した。既婚者が予定する子どもの数や未婚者の結婚希望などの各種データを基に算出したという。昨年の県人口は179万4千人。国立社会保障・人口問題研究所の推計に準拠すれば、60年に117万6千人となるが、県の素案では26万8千人多い144万4千人。実現に向け、結婚や子育ての支援や、企業の研究開発部門の誘致による雇用創出などを掲げる。昨年は3千人近かった県外への転出超過についても、20年以降はゼロと見込む。「希望と理想」に彩られた数字に、会議では「どの政策を最優先するか示してほしい」と注文が付いた。ビジョン(素案段階なども含む)をまとめたのは鹿児島を除く6県。福岡、佐賀、熊本、宮崎各県は60年、大分は2100年、長崎は2110年までの人口を推計した。佐賀を除く5県は政府の長期ビジョンより前倒しの出生率向上を想定しており、上昇幅も政府想定より最大0・28ポイント高く見込んでいる。「人口は75年ごろまでは減少するが、その後上昇に転じる」とした大分県の担当者は「高めの設定かもしれないが、突拍子もない数字とは思っていない」。磯田則彦福岡大教授(人口移動論)は「自治体は既に出産や子育て支援に取り組んでおり、出生率を劇的に上昇させるには相当な困難が伴う。東京五輪を控え東京圏への人材流出も予想される」と指摘。「期限を細かく切り、政策の検証と修正を繰り返す作業が不可欠だ」としている。 *地方人口ビジョン:政府は昨年12月、人口減対策の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」と人口の将来展望を示す長期ビジョンを決定。都道府県と市町村に対し、(1)2016年度から5カ年の地方版総合戦略(2)人口の見通しなどを盛り込んだ人口ビジョン−の策定を求めている。政府の長期ビジョンは、出生率が30年に1・8、40年に2・07程度に上昇すれば、60年に「人口1億人程度」を確保できるとしている。 PS(2015年8月11日追加): みやき町の挑戦 *5-1のように、佐賀県三養基郡みやき町は2017年度から10年間のまちづくり指針となる第2次総合計画を策定するために審議会を発足させ、国の地方創生に呼応した人口ビジョンや総合戦略を策定中だそうだ。久留米市、鳥栖市、佐賀市、大宰府市に近い立地と豊かな自然を活かして教育や福祉の行きとどいた街を作れば、住環境がよくなり、良好なベッドダウンとして空き家や空き地も資源にできる。そのため、*5-2でみやき町長が語っている「みやき町総合計画」は大変よいと思うが、住所に郡がつかない方が都会のベッドタウンとして選ばれやすく、地区の名前も工夫した方がよいかも知れない。 みやき町の位置と風景 古墳 *5-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/217705 (佐賀新聞 2015年8月10日) 町の将来像を論議 みやき町、第2次総合計画審議会を発足 三養基郡みやき町は10日、2017年度から10年間のまちづくりの指針となる第2次総合計画を策定するための審議会を発足させた。町民アンケートの結果なども踏まえ、町の将来像を論議する。委員は各種団体の代表や学識経験者ら20人。中原庁舎で開かれた初会合では、末安伸之町長が「合併当初で旧3町の平準化に重きを置いた第1次総合計画は、その目的を十分達しつつある。国の地方創生の流れの中で、新たな総合計画には町独自のアイデアが必要になる」と協力を呼び掛けた。会長に北茂安校区の行武薫区長会長を選出した。事務局は、国の地方創生に呼応した人口ビジョンや総合戦略を策定中で、新たな総合計画と整合性を保つ必要性などを説明した。委員からは「現実的な人口予測を反映させた計画にすべき」「空き家の増加を踏まえた定住対策を」といった意見が出た。年3、4回のペースで審議会を開いて答申をまとめ、17年3月までに末安町長に提出する。 *5-2:http://www.town.miyaki.lg.jp/_2003/_1210.html (平成27年4月1日 みやき町HP) みやき町長 末安 伸之 平成27年度 新年度のごあいさつ 陽春の候、皆様におかれましては、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。また、日頃より町政にお寄せいただいております温かいご支援とご協力に対しまして、厚くお礼申し上げます。 みやき町は、平成17年3月の合併から10周年の記念の年を迎えます。これまで、町民の皆様の融和を大切に、誰もがいきいきと生活し、安全で安心して暮らせるまちづくりに全力で取り組んでまいりました。特に、平成24年度より取り組んでおります「定住総合対策事業」として、官民連携によるPFI事業の「住宅支援」、児童館建設や出生祝金などの「子育て支援」、 学校ICT機器整備やアスリートによる「夢先生」の授業などの「教育支援」、そして、「安全安心まちづくり支援」では、防犯パトロール活動や防災行政無線の整備などを行いました。昨年、国において、人口急減・超高齢化という我が国が直面する大きな課題に対して、政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした、自立的で持続的な社会を創生することを目指した「まち・ひと・しごと創生本部」が発足いたしました。この創生本部は、国民が誇りを持ち、将来に夢や希望を持てる誰もが安心して暮らすことができる地域づくりを進めるため、魅力あふれる地方を創生し、地方への人の流れを作っていくこととしております。現在、みやき町において取り組んでおります「定住総合対策事業」は、国の創生本部が打ち出している基本理念に合致しており、これからは、この地方創生事業に基づき、官民連携による住宅環境整備や学校教育施設の整備・構築を目的とした「ユニバーサルタウン構想」や今年度の主要事項であります「健康のまちづくり」に取り組む中でも、治療としての医療だけではなく、予防医療領域の両面から対処療法・原因療法を相互発展・連携させていく「統合医療」の推進を行っていく必要があると思っております。自分たちの生活習慣に対する意識を見直し、一人ひとりが健康づくりに取り組み、健康を維持増進することができる環境整備を図るため、官民連携による「予防医療」及び「チーム医療」の推進を研究してまいりたいと思っているところでございます。「すべての人が快適に暮らせるまち」「心と体が元気なまち」が構築できるよう目指していく所存であります。本年も「住んでよかったみやき町」の実現に向け、これまでの取り組みを着実に進めるとともに、新たなプロジェクト計画の推進に努めていきたいと思っております。町民の皆様が、こよなくみやき町を愛し、次世代の子どもたちが健やかに成長できる「安全で安心なまちづくり」を目指して、決意を新たにしているところです。今後とも、なお一層のご理解とご協力をお願いしたしますとともに、皆様のご健勝とご多幸を祈念いたしましてご挨拶とさせていただきます。 PS(2015年9月29日追加):先日、夫の学会に同伴して、唐時代まで“長安”と呼ばれて中国の首都だった(兵馬俑で有名な)西安のゴールデン・フラワーホテル(シャングリラ系列、http://www.shangri-la.com/jp/xian/goldenflower/)に泊まったところ、下の写真のように、中に置いてある木製の家具が素敵で、街には高層マンションが次々と建設されていた。そのため、中国は日本製家具の大輸出地になり得ると考える。そこで、家具業界の人や関係者は視察に行き、需要のありそうな付加価値の高い家具を開発したり、地域で協力してブランドを作ったりして、世界に打って出ればよいだろう。 ゴールデン・フラワーホテルのHPより *6:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/234243 (佐賀新聞 2015年9月29日) 諸富誘客、異業種タッグ サイト設立、見学者回遊策も 佐賀市諸富町の家具メーカーと販売店、飲食店がタッグを組み、町全体で客を呼び込む取り組みを始める。業界の垣根を越え、地域の情報を発信するポータルサイトやイベントを立ち上げ、家具の購入を促すとともに、飲食店や観光地への回遊も目指す。町内の国道208号沿いにある家具メーカー5社とショールームを持つ販売店3社が中心となり、地方創生事業として取り組む。県の補助約500万円を活用する。諸富家具メーカーは、たんすなどの収納家具やテーブル、椅子など、それぞれの得意分野で独自ブランドを展開している。連携によって自社にない商品を互いに紹介し合い、顧客の要望に応える。町内に事業所を構える味の素とも連携する。同社は団体や個人向けに工場見学を実施しており、家具メーカーや販売店にも回遊してもらう仕組みをつくる。町内での滞在時間を増やすことで、地元の飲食店に立ち寄る客を増やす。ポータルサイトは10月下旬にも開設する予定で、外出先から閲覧できるように、スマートフォンの規格に合わせる。業種ごとの検索機能も設けて見やすくする。配布用の地図も作り、随時、協力店を増やして情報を更新していく。リーダーの平田尚士・平田椅子製作所社長(48)は「これまでは横のつながりが薄く、客が欲しい商品も『うちにはありません』と答え、みすみす客を逃していた」と振り返る。「競合を恐れず、補完し合う関係に」と町内の工場やショールームを見学して、顧客に説明できるように商品の知識を身に付ける。今後は収益を生み出すイベントを計画し、補助に頼らない運営を目指す。平田社長は「異業種の連携によって、今まで気づかなかった地域資源も掘り起こしたい」と意気込みを語る。
| まちづくりと地域振興::2015.5~ | 04:45 PM | comments (x) | trackback (x) |
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