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2017.4.10 さまざまな分野のイノベーションとそれを可能にする教育・研究 (2017年4月12、13、14、15、16、17、19、21、23日追加)

      太陽電池        ミニ肝臓       新有田焼    宅急便   
                             2017.4.8   2017.4.5 
                             佐賀新聞    東京新聞

(図の説明:太陽電池は今一つデザインが悪かったが、外壁ユニットに組み込む型や薄膜型太陽電池も現れ、次第に建材の一部として使えるようになってきた。また、バイオテクノロジーではミニ肝臓ができ、再生医療が一歩進んだ。さらに、磁器は、素材を改良することによって複雑なデザインを表現しやすくなった。また、ヤマト運輸は、起業時は輸送におけるイノベーションの先駆者だったが、大企業となって従業員に「寄らば大樹の陰」という意識が出てきた時には、その企業は下り坂になりがちなため、気をつけるべきである)

(1)エネルギー
1)原発について 
 原発は、*1-1のように、東芝がウェスチングハウスの経営破綻を受け、インド・中国・英国の原発事業からも撤退を急いでいる。私は、他国の原発事業者が、フクイチ事故を受けて原発から撤退しようとしていた時に、その原発事業を高値で買収した日本企業は間が抜けており、撤退しようとしていた原発事業者は幸いだっただろうと推測する。

 それでも産経新聞は、2017年3月29日時点で、インドでの原発建設が白紙撤回となることを懸念していたり、「東芝が6割を出資している英子会社ニュージェネレーション株を売却したりすれば日英関係がぎくしゃくする可能性がある」などとしており、理科音痴が技術に鈍感で、とかく過去に戻したがる傾向があるのには呆れるほかない。

 このような中、*1-2のように、もんじゅは1兆円も投じながら殆ど稼働せずに破綻し、政府は昨年12月に廃炉を決めた。そのため、使用済核燃料を再利用するプルサーマル発電で出る使用済MOX燃料を処分する必要が出てきており、現在は原発の使用済核燃料プールに山ほど保管されているが、それは非常に危険であると同時に経済性もない。それでも佐賀県議会は、4月13日に「原発再稼働容認決議」を行うそうで、それは原発交付金が目的だが、これで事故が起これば、それこそ自己責任になるだろう。

2)電力・ガスの自由化
 *1-3のように、4月1日に家庭向けの都市ガス販売が自由化され、電力・ガスの自由化が完了する。これにより、地域の電力やガスの独占状態が和らいで競争が生じれば、これまでのように国民負担させて、エネルギー価格が産業や生活の足を引っ張ることはなくなるだろう。しかし、まだ制度はそこまで行ってはいない。
 
 私は、九電が進めているオール電化と再生可能エネルギーによる発電が定着すれば、海外にエネルギー関連の支払いをする必要がなくなるため、国民はずっと豊かになると考えている。

 また、「太陽光発電は・・・」と念仏のように同じことを言う人がいるが、*1-4のように、シャープは従来機に比べて容量が35%増の6・5キロワット時でありながらサイズをほぼ半分に抑えた蓄電池システムの新製品を発表し、「ゼロエネルギー住宅」への普及を期待しているそうだ。このほか、家庭用スマートメーターも投入するとのことだが、「ゼロエネルギー住宅」や「スマートメーター」は海外でも人気が出るだろう。特に、赤道に近い地域、日照時間の長い地域、戦争で破壊されて街の再生を要する地域でのゼロエネルギー住宅の普及や、高齢化した国でのスマートメーターを利用した見守りサービスは需要が高いと思われる。

(2)バイオテクノロジーと医療のイノベーション
 私が、1990年代の初め、夫に同伴してハンガリーのブダペストで開かれたヨーロッパ脊椎・脊髄病学会に出た時に注目された発表は、マウスの脊髄を一度切って再生させ、そのマウスが歩けるようになったというもので、この研究発表が終わった時には、そこにいた人の全員が立ち上がって(その研究者とマウスに)拍手した。何故なら、「脊髄や神経は再生しない」というのが医学の常識だったからである。

 あれから約25年、今ではヒトでそれができるかと言うと、*2-1のように、2017年2月10日、慶応大学の岡野教授らのグループが他人のiPS細胞を使って脊髄損傷を治療する臨床研究の計画を大学内の倫理委員会に申請した段階だ。しかし、他国では、本人の脂肪幹細胞を使って脊髄細胞を作って治したと言う人もいるし、ES細胞を使ったと言う人もあり、私は、いずれも可能性が大だと考えている。

 このほか、*2-2のように、ドナーを必要とする肝臓移植ではなく、iPS細胞からミニ肝臓を大量製造して肝不全のマウスに移植し、顕著な治療効果を発揮しているため、ヒトに応用できる日も近いだろう。

 また、*2-2、*2-3に書かれているように、複雑であるため造るのが難しいとされている膵臓や腎臓の製造も研究中だそうで、これが実用化されると、糖尿病で苦しみ続けたり、膨大な時間と費用を費やして人工透析を続けたりする必要がなくなるため、患者の福利が増すと同時に、医療費も節減される。

 このほか、*2-4のように、人間の臓器を動物の体内で作る方法も研究されているが、私は3Dプリンターができた現在では、動物の体を借りなくても、元に近い形のヒト臓器を作ることも可能だと考える。そのため、武器の開発よりも、このようなバイオテクノロジー製品の開発に予算をつけた方が、プリウスや自動運転車のように、世界でヒットして日本が株を上げることは間違いないだろう。

(3)中小企業とイノベーション
 それでは、伝統産業は古いままで、中小企業はイノベーションができないのかと言えば、決してそうではない。例えば、*3-1のように、有田焼では、佐賀県窯業技術センターが2014年度から3年がかりで開発して焼成時に縮まない陶土を開発し、薄さ、細さ、軽さを追求するデザイナー製品や収縮率の高い大型品が作れるようになる。これは、佐賀県を挙げて努力した結果だが、欲を言えば、強さや軽さも増してもらいたい。

 そして、*3-2のように、有田・伊万里の窯元・商社16社と気鋭のデザイナー16組が共同で手掛けた伝統と革新を融合させた有田焼は、世界28の国・地域で発行されているデザイン誌「エル・デコ」主催の「インターナショナル・デザインアワード」テーブルウェア部門で、世界的なデザイン賞を獲得したそうだ。新ブランドは2016年10月に販売を始め、現在は国内40社、海外は欧州を中心に10カ国で取引をしているそうで、これも県を挙げての推進の成果である。これは、他の伝統産業や中小企業にも応用できるだろう。

(4)運輸のイノベーション
1)JR北海道とJR九州の経営比較
 北海道旅客鉄道(株)《通称:JR北海道》は、1987年(昭和62年)4月1日に国鉄から鉄道事業を引き継いだ旅客鉄道会社の一つで、鉄道とバス事業を承継し、旅客鉄道株式会社と日本貨物鉄道株式会社に関する法律(JR会社法)による特殊会社で、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構を介して日本国政府がすべての株式を所有している。

 そして、*4-1のように、30年でJR各社の明暗がはっきりし、JR北海道は、地域輸送を含めた基幹的交通機関として鉄道をどの程度必要としているかの役割を再検証し、鉄道をただ残しているだけでは無意味であるため、赤字路線は切るしかないとしているが、こういう解決策しか思い浮かばないのが国営の悪い点なのだ。

 一方、首都圏から同じくらいの遠距離にあるJR九州は、1987年の旧国鉄の分割・民営化によって発足してから29年で、東証1部に新規上場を果たした。もちろん、全体としては黒字だ。

 この結果の違いの原因は、JR北海道が列車やバスを走らせることしか考えていないのに対して、JR九州は、鉄道やそれぞれの街の一等地を所有している強みを活かして周辺不動産の開発を行い、不動産など非鉄道事業の売上高が全体の5割超を占めることである。そして、九州の食や観光を発信する観光列車も走らせており、JR九州の青柳社長が語る成長戦略は「中核である鉄道事業とそこから相乗効果を生み出す事業を両輪として、さらなる成長を目指していくこと」だが、これは北海道でも同じだろう。

 つまり、速やかに需要を把握し、さらに需要を発掘していくことが、国ではなく民が経営することの利点なのである。このよい例は、*4-5のように、ヤマト運輸ができてから、私たちは鉄道のチッキ(送る人は駅まで持って行き、受け取る人は駅まで取りに行かなければならなかった)を使わずに宅配便を使うようになり、さらに新しいサービスが増えて、その便利さからヤマトの宅配便は最高18・7億個となり、送る荷物が増えた(運輸部門のパイが大きくなった)ことである。これには、ITの普及や高齢化社会でインターネット通信販売のニーズが増えたことも影響している。

 そのため、JR貨物も、不便さを顧客に強いるのではなく、宅配便に劣らぬ便利さを持つようにすれば、安価に大量輸送できるため、客が増えると考えられる。

2)ドライバー不足に対するヤマト運輸の解決策は正しいか?
 ヤマト運輸が、*4-3、*4-4のように、宅配便の扱い量を抑えることを検討するそうで、これが、ドライバー不足とネット通販の拡大でドライバーの長時間労働に繋がっていることの解決策とのことである。

 しかし、この解決策は、利益獲得機会を労働力不足というネックで放棄しており、駅やロッカーで預かるのもサービスの低下に繋がる。その一方で、通販で買うものの中には軽いものも多いため、女性配達員を増やしたり、OBの高齢者を再雇用したりすればよい思われる。

 また、時間指定は現在ほど細かくしなくてもよいが、「配達して欲しいニーズの高い時間帯」があり、職場なら9時~17時、自宅なら18時以降か休日が多い筈だ。そのため、配達して欲しいニーズの高い時間帯に絞って荷物を受け付ければ無駄足が減り、生産性が上がると考える。

 なお、お茶・水・ジュースなどのように、重たくて買って帰るのが大変なため、アマゾン・アスクル・楽天などで購入して配達してもらうものもある。これを運ぶのは男性の方がよいかも知れないが、一人でいる家に行っても安全が確実な人なら、外国人でもかまわないだろう。

(5)イノベーション可能な教育・研究
 このようなイノベーションを起こすには、何も知らない人が想像で行うのではなく、知識を持った人が、国内だけでなく世界で起こる刺激に正しく反応して、正解を導くことができる創造力が必要なのである。

 そのため、*5-1のように、小学校から英語を学び、世界の情報を自在に手に入れることができるようになることは重要だ。また、最近では、世界の学会の会報や新聞・雑誌は世界共通語である英語で開示されているため、それを読めれば高校生でも大学生でも、簡単に最先端の情報を手に入れることができる。この点で、日本人は、インド・シンガポール・フィリピンなどの人よりも不利になっている。
 
 また、私の経験では、日本では日本語での教育が徹底しているため、専門用語の英語は別に覚えなければならない。そのため、最初に学ぶ時に日本語と英語の両方を教えるようにするとか、課目によっては英語で授業するようにした方が、苦労少なく世界で通用する人になれるのではないかと考える。

 さらに、*5-2のように、九州産業大学が、九州の伝統工芸品の販売戦略などを調査研究する「伝統みらい研究センター」を4月1日に設立したそうだが、価値ある伝統工芸を現在でも使い勝手の良い製品にするために、これは、自前での研究開発が難しい中小企業が多い業種でとりわけ重要なことである。

(エネルギー)
*1-1:http://www.sankei.com/economy/news/170329/ecn1703290053-n1.html
(産経新聞 2017.3.29) インドや英国の撤退も急ぐ 原発輸出に打撃
 東芝は巨額損失を出し続けてきた米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)の経営破綻を受け、米国のほかインドや中国、英国で手掛ける原発事業からの撤退作業を急ぐ。保有するWHと英原発子会社の株式を早期に売却できるかが今後の焦点だ。インドでは、WHが計6基の原発を建設することで昨年6月に米国とインドの両政府が合意した。今年6月までに契約する方針だが、白紙撤回となる懸念がある。昨年11月にインドと原子力協定を結び、原発輸出をもくろんでいた日本政府も打撃を受けそうだ。東芝は、6割を出資する英子会社ニュージェネレーションを通じて英北西部ムーアサイドに原発3基を建設する計画だったが、WH問題を踏まえて方針を転換し、英子会社株も売却する考えだ。ただ、東芝が手を引けば日英関係がぎくしゃくする恐れもある。中国ではWHが三門原発(浙江省)と海陽原発(山東省)で原子炉を2基ずつ製造している。最も早い稼働予定は三門の1号機だが、当初計画から約3年遅れている。東芝はWH株売却により距離を置く考えだ。

*1-2:http://qbiz.jp/article/107011/1/ (西日本新聞 2017年4月6日) もんじゅ「破綻」後議論なく プルサーマル、課題山積 玄海再稼働13日「決議」へ
 佐賀県議会が13日にも「容認」を決議し、再稼働に向けた最終局面に入る九州電力玄海原発3、4号機。このうち3号機は、使用済み核燃料を再利用する国内初のプルサーマル発電だ。同発電と高速増殖原型炉は国が掲げる核燃料サイクルの2本柱。高速増殖原型炉もんじゅの廃炉が決まり、プルサーマル発電を巡る環境も激変している。3号機の再稼働に向けた議論に核燃料サイクルの「破綻」を受けた視点は抜け落ちている。もんじゅは原発の使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムと、ウランの混合酸化物(MOX)燃料を使い、発電しながら消費した以上の燃料を生み出す「夢の原子炉」。約1兆円を投じながら、トラブル続きでほとんど稼働しないまま政府は昨年12月に廃炉を決めた。一方、プルサーマル発電はMOX燃料を使うところまでは同じだが、使用済みMOX燃料は処分する必要がある。もともと高速増殖炉実用化までの「つなぎ」の位置付けだった。核兵器にも転用できるプルトニウムを日本は48トン保有し、国際社会から厳しい目が注がれる。もんじゅの廃炉で、プルトニウムを消費できるのは事実上プルサーマル発電のみとなった。プルサーマル発電は核燃料サイクルの「つなぎ」から主役に躍り出たと言える。
   §    §
 プルサーマル発電には固有の課題も多い。使用済みMOX燃料は、普通の使用済み核燃料に比べ発熱量が大きいが、国は処分方法をいまだに示していない。当面、原発の使用済み燃料プールに保管するしかない。経済性も疑問視され、資源エネルギー庁の試算によると、1キロワット時当たりのコストは普通の原発に比べ1・5倍。燃料となるプルトニウムは半減期が長い上、毒性が強く体内に取り込まれると発がんの危険性も高いため不安視する声も多い。導入への同意を検討する際には県も安全性を問題視し、2005年に公開討論会を実施。その後、九電による「やらせ問題」が発覚した経緯がある。再稼働への意見を聞く県の第三者委員会の柳瀬映二委員(62)は「プルサーマルは危険性が大きい。公開討論会でやらせがあっただけに不安視する県民の声をしっかり受け止めるべきだが、委員会で議論は深まらなかった」と話す。徳光清孝県議は「使用済みMOX燃料は地元で保管し続けないといけない。県は先行きの議論に絡み、国と協議するべきだ」と求めた。ほぼ全域が玄海原発から30キロ圏内にある同県伊万里市の塚部芳和市長(67)は「プルサーマルの議論はあいまいになったままだ。国策といえど、県に降りかかっている問題であり、あらためて是非を検証するべきだ」と提言した。
*プルサーマル発電 一般の原発で使った使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを分離し、ウランと混ぜたMOX燃料を使う。2009年に玄海原発3号機で国内初の営業運転が始まった。福島第1原発事故前、電気事業連合会は15年度までに全国16〜18基で導入する計画だったが、現在稼働しているのは四国電力伊方原発3号機のみ。

*1-3:http://qbiz.jp/article/106532/1/ (西日本新聞 2017年3月30日) 西部ガスVS九電 対決激化 4月1日 ガス販売自由化スタート
 4月1日に家庭向けの都市ガス販売が自由化される。福岡、北九州の両都市圏に新規参入する九州電力が、ガスと電気のお得なセット割を打ち出すと、西部ガスも対抗値下げに踏み切るなど、早くも対決が過熱している。両社の料金とサービスを比較し、専門家に選択のポイントを聞いた。両社はお互いの現行料金からの割引率を公表しているが、それぞれの新料金プランは比較していない。西日本新聞は4人家族の新料金プランを比べるため、ガスと電気のセット料金の試算を両社に求めた。条件は電気使用量は月420キロワット時(契約容量40アンペア)、ガスは月41立方メートルと設定した。現在のガス料金は、西部ガスの一般契約が月1万301円。電気は、九州電力の従量電灯Bが月1万1280円で、光熱費は月額合計2万1581円となる。新料金メニューでは、西部ガスのガスと電気のセット割を契約した場合、ガス9757円、電気1万1082円で、計2万839円となる。一方、九電のセット割は、ガス9401円、電気1万1140円で、計2万541円。九電が1・43%、298円安い計算になった。年間では、3576円の差となる。ただセット割以外にも、西部ガスにはファンヒーターや床暖房など各家庭で使うガス機器によってお得になるプランが複数ある。九電は、電気代が大幅に安くなるオール電化を顧客に優先的に勧めている。また両社は、暮らし関連の支援サービスを有料で提供している。西部ガスの場合はセット割などの新料金メニューに契約すると、ガス機器が故障した場合の出張料と工賃が無料になる。水漏れやガラス割れ、鍵のトラブルの応急措置も2年間無料。いずれも本来は月324円なので、合わせて月648円お得になる。西部ガスは通常、すべての契約世帯を平均した月23立方メートルで試算。月41立方メートルが4人家族のモデルとは言えないと説明している。
●使用量把握し、自分に合う契約を
 料金プランを選ぶポイントについて、家庭の光熱費や省エネに詳しい消費生活アドバイザー・環境カウンセラーの林真実さんに聞いた。
     ◇   ◇
 電気とガスのセット割が始まる。西部ガスもかなり安くしてきたが、料金面では九電に分があるように見える。ただ、両社が出している料金比較は、あくまで平均的なモデルケースだ。実際は、その人その人で使い方が違う。自分自身の使い方を振り返り、それに合わせて、どちらがお得かを考えてほしい。まず過去の使用量を見てほしい。消費者の中には金額しか見ておらず、使用量を知らない人が多い。時間帯や季節での使用量の違い、機器のエネルギー消費量などを調べてほしい。効率が良く、無駄がないか。見える化することだ。例えば照明をLEDに変えるなど、料金プランより前に安くする方法がある。その上で料金比較サイトでシミュレーションするのがいい。企業独自のサイトもある。さらに、付加サービスもポイントになる。西部ガスの「住まいのトラブルかけつけサービス」2年間無料は、九電にはない。会社の社会的貢献や環境配慮など、社会的な姿勢も重要だ。経営方針、電源構成、ボランティアなど、消費者が勉強してほしい。好き嫌いもあるだろう。消費者が、ガスを購入する企業を選べるようになったのは画期的だ。今までは殿様商売的なところもあったが、消費者を向いてきたのはメリットといえる。ただ、セット割などが出てくる分、非常に複雑になり、自己責任の要素も生まれている。しょっちゅう契約を見直し、変えてもいい。

*1-4:http://qbiz.jp/article/107092/1/ (西日本新聞 2017年4月6日) シャープ蓄電池の販売2倍へ 住宅用新製品でシェア拡大狙う
 シャープは6日、2017年度の住宅用蓄電池の販売台数を1万台に伸ばし、16年度から倍増させることを目指すと明らかにした。エネルギー消費量が実質的にゼロになる省エネ住宅「ゼロエネルギー住宅」の普及が追い風になると期待し、新製品を投入してシェア拡大を狙う。シャープは同日、従来機に比べ容量が35%増の6・5キロワット時でありながらサイズをほぼ半分に抑えた蓄電池システムの新製品を発表。場所を取らずクローゼットなどにも設置できるのが売りだ。変換効率を高めた太陽光パネルや家庭のエネルギー管理システム(HEMS)の新製品も投入する。製品を組み合わせて販売して稼ぐ戦略で、担当者は「ゼロエネルギー住宅に対する国などの補助金も一つの起爆剤になる」と話す。ただ、再生可能エネルギーの買い取り価格下落の影響で太陽光パネルの需要は低調だ。割高で原材料を調達したことも響き、シャープの太陽光事業は赤字が続いている。パナソニックや京セラなどとの競争も激しく、計画通り売り上げが拡大するか不透明な面もある。

<医療のイノベーションとバイオテクノロジー>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK2B4STGK2BULBJ008.html (朝日新聞 2017年2月10日) iPSで脊髄損傷治療、臨床研究を申請 慶応大
 慶応大学の岡野栄之(ひでゆき)教授らのグループは10日、他人のiPS細胞を使って脊髄(せきずい)損傷を治療する臨床研究の計画を大学内の倫理委員会に申請した。2018年前半の手術を目指す。計画では、京都大学iPS細胞研究所の「iPS細胞ストック」から供給される細胞を、神経細胞になる「神経前駆細胞」に変化させ、脊髄の損傷部分に注入する。交通事故などで脊髄損傷を起こしてから2~4週間の患者が対象で、18歳以上の7人に移植し、安全性やまひした手足などを動かす機能の回復具合を調べる。iPS細胞ストックでは、拒絶反応が起きにくい特殊な免疫の型を持つ提供者の血液からiPS細胞をつくり、備蓄している。今後、学内の倫理委員会と他の委員会での技術的な審査を経て、厚生労働省で計画が了承されれば、来年前半にも移植を実施したいという。まずは損傷から時間があまり経っていない患者を対象にするが、将来的には慢性期の患者にも広げたい考えだ。グループは、脊髄損傷を起こした小型のサルのマーモセットにヒトiPS細胞からつくった細胞を移植し、歩けるまでに回復させることに成功している。脊髄損傷は、国内に現在約20万人の患者がおり、毎年新たに5千人がなっているとみられる。リハビリ以外に確立された治療法はなく、岡野教授は「たくさんの患者が待っている。良い細胞を使って、治療につなげられるよう研究をすすめたい」と話す。

*2-2:http://toyokeizai.net/articles/-/59601 (東洋経済 2015年2月3日)移植医療に朗報!「臓器製造システム」の実力、"ミニ肝臓"で肝不全患者を治療へ
 「谷口君、肝臓を作れませんか?」。1989年12月、研修医1年目だった横浜市立大学の谷口英樹教授は、恩師で筑波大学の教授だった故・岩崎洋治氏からこう尋ねられた。岩崎氏は1984年に日本初の脳死患者からの膵・腎同時移植を行い、殺人罪で告訴されるなど波乱の中で移植医療を開拓した臓器移植の第一人者。谷口教授は岩崎氏を間近で見ながら、自ら外科医として肝臓移植などを執刀してきた。「ドナー臓器の不足を抜本的に解決しなくては移植医療の未来はない」――冒頭の問いかけに込められた岩崎氏の強い危機意識を、谷口教授も共有していた。
●iPS細胞からミニ肝臓を大量製造
 その日から25年余り経った今、肝臓をはじめとする臓器の作成は実現可能な夢になりつつある。横浜市立大学の先端医科学研究センター内では、世界唯一の「ヒト臓器製造システム」の構築が進む。全自動ではなく、人の作業をロボットが支援する「トヨタ方式」を採用してiPS細胞(人工多能性幹細胞)から直径5ミリメートルほどの“ミニ肝臓”を大量に作り、将来的に肝不全の治療に役立てる予定だ。谷口教授の研究グループは臓器作りで世界をリードしてきた。2013年にはiPS細胞からの血管構造を持つ人の肝臓の作成に成功。世界初の小さな立体臓器が科学界に与えた衝撃は計り知れない。それまで、世界の研究者はiPS細胞から「肝細胞」を作ることに固執していた。細胞の分化の分子生物学的なメカニズムを基に、iPS細胞にいろいろなタンパク質を段階的に振りかけて肝細胞を作る。それを患者に注射して病気を治そうという考え方だ。だがこの方法には、最終的に作られた細胞の品質がとても低く、大量生産が難しいという難点があった。治療法としても、臓器の機能を失った患者に対し、臓器移植よりも良い結果が得られるのかは不明だった。「外科医としての経験から、細胞を注射することで本当に患者を治せるのか疑問を抱いていた。一方、臓器移植は起死回生の手段であり、瀕死の患者が翌日には回復する高い治療効果を目の当たりにしてきた」(谷口教授)。そこで谷口教授らは発想を転換。「肝細胞」ではなく「肝臓」を作り出すことを目標に据え、胎児内で肝臓が作られるときに起こる細胞同士の相互作用の再現を試みた。iPS細胞から肝細胞になる手前の前駆細胞を作り、そこへ血管のもととなる内皮細胞、接着剤の役割を担う間葉系細胞の2種類の細胞を混ぜて培養。すると、すべての細胞が48~72時間でボール状に集まってきた。これが網目状の血管構造を持つミニ肝臓だ。ミニ肝臓をマウスに移植すると、血液が流れ込み、マウス体内に人に特有なタンパク質が分泌され、人の肝臓でしか代謝されない薬物の代謝産物が産生。ミニ肝臓が人の肝臓の機能を持っていることが示された。また、肝不全のマウスに移植すると、30日後の生存率が何もしなかったマウスの約3割に比べて約9割に向上。ミニ肝臓はマウスにおいて顕著な治療効果を発揮した。
●膵臓や腎臓の製造も研究中
 人での臨床研究は、子どもの肝臓病を対象として2019年をメドに開始する。ミニ肝臓が大量に必要になるため、クラレと量産技術を共同開発中。ほかの企業とも連携して「ヒト臓器製造システム」の整備を進め、臨床研究の準備を行っている。ミニ肝臓の次のフロンティアの一つは、肝臓以外のミニ臓器への展開だ。現実的なターゲットとして、血糖値を下げるホルモン、インスリンを分泌する膵臓や、腎臓の研究が進められている。もう一つは、ミニでない丸ごとの臓器を作ること。線維化して細胞が生着するスペースのない肝硬変のような病気や、全体の構造があって初めて機能を持つ心臓、子宮、肺等の病気などは、ミニ臓器では治療できず、丸ごとの臓器の移植が必要となることが多い。この分野は米国のハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などに莫大な研究資金が投下されており、世界的にも注目が集まる。急ピッチで進む臓器研究だが、再生医療の中で、今まさに人への応用が進んでいるのは細胞が主役の方法だ。昨秋には理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーらによって目の難病である加齢黄斑変性の患者にiPS細胞から作った網膜の細胞の世界初の移植手術が行われた。今後もパーキンソン病や心不全の患者にiPS細胞から分化させた細胞を移植する臨床研究が計画されている。立体臓器が活躍するのはそのさらに先の段階だ。谷口教授は「複雑な臓器形成は再生医療の中では最も困難なテーマの一つ。だが、重い臓器不全の患者には臓器移植以外に既存の治療法がなく、非常に強い医療ニーズがある」と強調する。肝臓移植の場合、ドナー臓器の待機中に死亡する患者は世界で年間2万5000人超。「究極の医療」として、臓器作りにかかる期待は大きい。

*2-3:http://mainichi.jp/articles/20170126/ddm/041/040/155000c (毎日新聞 2017年1月26日) 臓器移植 世界初 ラットで膵臓作り、糖尿病マウスに 異種で作製、治療成功 東大医科研チーム
 マウスのiPS細胞(人工多能性幹細胞)などから膵臓(すいぞう)をラットの体内で作り、その組織を糖尿病のマウスに移植して治療に成功したと、東京大医科学研究所の中内啓光教授らの研究チームが25日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。異なる種の動物の体内で作った臓器を移植し、病気の治療効果を確認したのは世界初という。ラットはマウスより大きく、種が異なる。ブタなどの体内でヒトの臓器を作って移植する再生医療の実現につながる成果で、山口智之・東大医科研特任准教授(幹細胞生物学)は「今後は、よりヒトに近いサルの細胞で臓器を作る研究に進みたい」と話した。チームは、遺伝子操作で膵臓ができないようにしたラットの受精卵に、マウスのiPS細胞やES細胞(胚性幹細胞)を注入し、ラットの子宮に戻した。誕生したラットの膵臓はマウスのもので、一般的なマウスの膵臓の10倍ほどの大きさに育った。育った膵臓から、血糖値を下げるインスリンなどを分泌する膵島(すいとう)を取り出し、糖尿病を発症させたマウスに移植したところ、20日後には血糖値が正常になり、1年後でもその状態が維持された。がん化などの異常は確認されていないという。  ラットの体内で育った膵島を調べたところ、血管にラットとマウスの細胞が混じっていた。しかし、マウスに膵島を移植して約1年後に移植部位を調べると、ラット由来の細胞はなくなっていた。

*2-4:http://digital.asahi.com/articles/ASK2K74SFK2KULBJ01Q.html (朝日新聞 2017年2月23日) 人間の臓器、動物から作る 米で研究先行、日本は禁止
 iPS細胞やES細胞を使い、動物の体内でヒトの臓器を作る研究が進んでいる。1月には米国のグループがヒトの細胞が混じったブタの胎児の作製に成功した。日本では現在、このような研究が指針で禁じられており、改定に向けた議論が続いている。
■ブタ受精卵にiPS細胞
 米ソーク研究所(カリフォルニア州)のチームは1月、ヒトのiPS細胞をブタの受精卵に入れ、ヒトの細胞が混じったキメラ状態の胎児を作製したと発表した。米科学誌セルに掲載された論文によると、ブタの受精卵を、分裂が進んだ「胚盤胞(はいばんほう)」の状態まで成長させ、iPS細胞を注入。子宮に戻した1466個のうち、186個が胎児に成長した。妊娠3~4週間後に調べると、67個の筋肉などで、ヒトの細胞が混じっているのが確認できた。心臓や肝臓、膵臓(すいぞう)、腎臓などの複雑な臓器は、iPS細胞などから直接作ることが難しい。そのため動物の体内を利用して作る研究が世界中で進む。発生の仕組みがよく知られたブタは、ヒトと臓器の大きさが近く、最有力候補だ。東京大とスタンフォード大で、ブタなどでの膵臓作製の研究に取り組む中内啓光教授(幹細胞生物学)らは1月、ラットの体内で、マウスの膵臓を作り、糖尿病マウスに移植して治療することに成功したと発表した。遺伝子改変で膵臓を作れなくしたラットの胚盤胞に、マウスのES細胞を注入し、子宮に戻すとマウスの膵臓を持ったラットが生まれた。ただ、ラットとマウスが同じネズミ科で、受精から誕生までの妊娠期間がほぼ同じなのに対して、ブタの妊娠期間はヒトの半分以下。種としても離れており、キメラを作るのは簡単ではないとみられる。実際、ソーク研究所の作ったブタ胎児で確認されたヒトの細胞はブタの細胞10万個当たり1個程度だったという。中内さんは「成長すれば排除されてしまう可能性もある。改めてブタとヒトのキメラを作る難しさを示した」と指摘する。キメラになる要因の一つは受精卵の分裂速度にある。分裂の速度が違うと、片方だけの個体になったり、排除されたりしてしまう。動物の生殖に詳しい明治大の長嶋比呂志教授(発生工学)は「ブタの発生と整合性を持たせるため、注入するヒトの細胞の分化段階をいかに調整するかが今後の研究のポイントになるだろう」と話す。
■倫理的な懸念
 日本では、クローン技術規制法に基づく文部科学省の指針で、ヒトのiPS細胞やES細胞を入れた動物の受精卵を子宮に戻し、子どもを作ることは禁じられている。ヒトのような意識や人格を持った動物が生まれかねないといった倫理的な懸念があったためだ。そのためソーク研究所が実施したような実験は今のところできないが、規制が厳しいという声もあり、文科省の委員会で改定に向けた検討が進んでいる。昨年1月にまとまった科学的な検討結果では、臓器を作製できる可能性がある点では、iPS細胞などから直接作る他の手法より「優位」とし、子宮に戻すことによる研究の意義が示された。今年1月に了承された倫理的観点のまとめでは、臨床用ヒト臓器を作製する段階までの研究は「社会的妥当性が認められる可能性が高い」とされた。今後、作製が認められる臓器や、使う動物などについて議論する予定だが、「丁寧な説明で国民に許容されるか、総合的な検討が必要」としている。
     ◇
〈キメラ〉 遺伝子の異なる細胞を一つの体にあわせもつ生物。ギリシャ神話に登場するライオンの頭、ヤギの胴、ヘビの尾を持った怪獣に由来する。遺伝子が混じりあってできる雑種とは異なる。例えばオスのロバとメスのウマの交配から生まれるラバは、両方の遺伝子が混じりあった雑種で、キメラではない。

<中小企業とイノベーション>
*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/417521 (佐賀新聞 2017年3月29日) 焼いても縮まぬ陶土 県窯業技術センター開発、薄さ、複雑さ一層追求へ
 佐賀県窯業技術センター(西松浦郡有田町)は28日、焼成時に縮まない陶土を開発したと発表した。複数の鉱物を配合し、変形の原因になる10%程度の収縮を抑えた。薄さや細さを追求するデザイナー製品、収縮率が高い大型品が作れるようになる。担当者は「世界最高の精度を持つ陶磁器材料」と説明し、軽量食器やフィルターなどの新製品開発にもつながりそうだ。県の有田焼創業400年事業の一環で、2014年度から3年がかりで開発した。陶土に配合された複数の鉱物が高温で結晶化し、隙間が埋まらないような働きをして縮まなくなるという。これまで焼成時に割れていた複雑な形状でも製作が可能になるという。0・03ミリ以下の微細な穴が空き、従来の陶磁器より3割軽くなるため、軽量食器にも使える。吸水性にも優れ、アロマ用品やコーヒーフィルター、吸音材にも活用できるとしている。従来の磁器と同じ温度で焼くことができ、既存の設備を使用できる。配合した鉱物も廉価で、陶土の生産コストは変わらないという。県は製法と材料の特許を3月に出願しており、県内窯元など約500社だけが使えるようにする。窯業技術センター陶磁器部の蒲地伸明研究員は「焼成時の変形予測の労力を軽減し、デザイナーが求める創造的な形状に対応できるようにもなる。メーカーにとって恩恵は大きいと思う」と話した。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/420198
(佐賀新聞 2017年4月8日) 有田焼、新ブランドに最高賞 世界的デザイン賞
■伝統と革新「融合」
 有田焼の窯元・商社や国内外のデザイナーが共同開発した新ブランド「2016/」が、世界的なデザイン賞のテーブルウェア部門でグランプリを獲得した。高いデザイン性に加え、伝統工芸と革新的な創作者との「融合」で、産業振興の新たな可能性を示したことが高く評価された。
 世界28の国や地域で発行されているデザイン誌「エル・デコ」が主催する「インターナショナル・デザインアワード」で受賞した。新ブランドは昨年の有田焼創業400年に合わせ、有田や伊万里の窯元・商社16社と気鋭のデザイナー16組が共同で手掛けた。オランダやドイツのデザイナーが佐賀を訪れ、形状や色合いを窯元と調整しながら2年がかりで完成させた。日本時間の7日、イタリアの国際見本市「ミラノ・サローネ」に合わせて授賞式があり、商品を取り扱う2016株式会社(有田町)の百田憲由社長らが出席した。山口祥義知事は「デザインの力が地域を変えると信じてこのプロジェクトに取り組んだ。『2016/』『ARITA(アリタ)』が世界中の人に愛され続けることを祈っている」とコメントを寄せた。同社によると、新ブランドは昨年10月に販売を始め、現在は国内40社、海外は欧州を中心に10カ国で取引をしているという。今年は中国や米国にも販路を拡大する計画で、「受賞を追い風にブランドの確立を加速させたい」と話す。西松浦郡有田町の百田陶園の陶磁器ブランド「1616/arita japan」も2013年、テーブルウェア部門でグランプリを受賞した。

<運輸のイノベーション>
*4-1:http://toyokeizai.net/articles/-/160649 (東洋経済 2017年3月2日) 北海道「本当に残すべき鉄道」はどこなのか、JR30年「公共交通のあり方」再検討も必要だ
 1987年4月1日に国鉄がJRに変わってから間もなく30年になる。国鉄改革は概ね成功したというべきであろうが、ここにきてJR北海道の経営は風雲急を告げている。この連載の記事一覧はこちら 2016年に留萌本線の留萌-増毛間廃止が発表されたところまでは驚かなかったが、同年11月にJR北海道が「単独では維持することが困難な線区」を発表したときには、ついにこの日が来たか、という印象であった。
●30年でJR各社の格差がはっきり
 JR北海道が発表した「単独維持困難な路線」(JR北海道発表の資料をもとに一部簡略化して作成)JR北海道の発表によれば、「単独では維持することが困難な線区」は13線区・1237.2キロメートル、「単独で維持が可能な線区」は11線区1150.7キロメートル(札幌までの北海道新幹線予定区間も含む)とされている。JR北海道は「単独で維持困難」とされた区間全てを廃止すると現段階で明言してはいないが、今後、路線の存廃の議論は不可避である。30年が経過し、JR各社が独自色を打ち出しているのはよいことだが、経営状態の大きな格差は看過できるものではない。JR北海道が抱える経営難にどう対応すべきなのか、国鉄からJRへと分割民営化されたときの法律も見ながら考えてみることにしよう。JRの前身である国鉄は、1964年以降慢性的な赤字に悩まされるようになり、対応策として1980年に日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(以下「国鉄再建法」)が成立する。
○その第1条「目的」では以下のように規定されていた。
この法律は、我が国の交通体系における基幹的交通機関である日本国有鉄道の経営の現状にかんがみ、その経営の再建を促進するため執るべき特別措置を定めるものとする。
○そして第2条では、「経営再建の目標」として、
日本国有鉄道の経営の再建の目標は、この法律に定めるその経営の再建を促進するための措置により、昭和60年度までにその経営の健全性を確保するための基盤を確立し、引き続き、速やかにその事業の収支の均衡の回復を図ることに置くものとする。
○第3条では、そのために「国鉄と国が取るべき責務」として、
日本国有鉄道は、その経営の再建が国民生活及び国民経済にとつて緊急の課題であることを深く認識し、その組織の全力を挙げて速やかにその経営の再建の目標を達成しなければならない。国は、日本国有鉄道に我が国の交通体系における基幹的交通機関としての機能を維持させるため、地域における効率的な輸送の確保に配慮しつつ、日本国有鉄道の経営の再建を促進するための措置を講ずるものとする。
と、それぞれ定められた。
●組織の維持が前提だった再建計画
 国鉄には「我が国の交通体系における基幹的交通機関」としての重要な立場があり、国鉄が破綻した場合の影響は計り知れない。そのためにも膨大な赤字を抱える国鉄の経営再建は急務とされ、国鉄のみならず国にも国鉄再建への責務が確認された。国鉄は組織を挙げて経営再建目標を達成することを求められ、国は「基幹的交通機関」である国鉄の機能を維持させ、地域における効率的な輸送の確保を配慮して経営再建促進の措置を講ずることが責務とされた。国鉄は、国鉄再建法で廃止対象とされた特定地方交通線以外の路線を維持して引き続き国の基幹的交通機関としての役割を担うべきとされ、国もそれを支援せよ、とされたのである。この段階では、未だ国鉄は組織の維持を前提に再建計画が進められることになっていた。ところが経営改善計画は進まず、国鉄のままでは十分な経営改善は図れないと判断されることになり、1986年に分割民営化につながる日本国有鉄道改革法(以下「国鉄改革法」)が成立する。そのことが第1条として以下のとおり書かれている。この法律は、日本国有鉄道による鉄道事業その他の事業の経営が破綻し、現行の公共企業体による全国一元的経営体制の下においてはその事業の適切かつ健全な運営を確保することが困難となっている事態に対処して、これらの事業に関し、輸送需要の動向に的確に対応し得る新たな経営体制を実現し、その下において我が国の基幹的輸送機関として果たすべき機能を効率的に発揮させることが、国民生活及び国民経済の安定及び向上を図る上で緊要な課題であることにかんがみ、これに即応した効率的な経営体制を確立するための日本国有鉄道の経営形態の抜本的な改革(以下「日本国有鉄道の改革」という。)に関する基本的な事項について定めるものとする。国鉄のような全国組織かつ非効率な経営主体に任せていても事業の健全な運営が困難であるので、輸送需要の動向に的確に対応する経営主体の下に国鉄が保有していた鉄道路線を移管させる、と、方針の大転換が図られたのである。
●累積債務30兆円超えからの出発
 そして、国鉄から鉄道事業を継承するJRについては、国鉄改革法第6条及び第7条において、
国は日本国有鉄道が経営している旅客鉄道事業について、主要都市を連絡する中距離の幹線輸送並びに大都市圏及び地方主要都市圏における輸送その他の地域輸送の分野において果たすべき役割にかんがみ、その役割を担うにふさわしい適正な経営規模のもとにおいて旅客輸送需要の動向に的確に対応した効率的な輸送が提供されるようその事業の経営を分割するとともに、その事業が明確な経営責任の下において自主的に運営されるようその経営組織を株式会社とするものとする。とされ、旅客事業は6つの会社に分割することとされた(第7条はJR貨物)。あわせて同日、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(「JR会社法」)が成立し、1987年4月1日のJR発足につながっていく。このとき、JR北海道など経営基盤の脆弱性が懸念される会社には、運用益で経営を支えるための経営安定基金が用意された(JR北海道は6822億円)。なお、JR発足当時、国鉄の累積債務は30兆円を大きく超えるに至っていた。JRが発足したとき日本はバブル経済を享受していた。発足1年後の1988年3月には青函トンネル開業、寝台特急「北斗星」の運転開始などがあり、JRの滑り出しは上々であった。しかし、それから30年が経過し、いまやJR北海道は経営難に直面している。もし、JR北海道のいう「単独で維持することが困難な路線」が、もはや国鉄改革法にいう地域輸送も含めた「国の基幹的交通機関」としての地位を失っていて、かつ回復させる必要もない、といえる路線なのであれば、国鉄改革法の趣旨からすればその路線を維持することに合理性はなく、廃止も一つの選択肢であろう。一方で、その路線が「国の基幹的交通機関」としての地位を未だ失っていないというのならば、その路線を維持することができないJR北海道は、むしろ「国の基幹的交通機関」を維持する組織として国鉄改革法から期待されたその経営能力を喪失しつつあるともいえる。
●JR北海道の「役割」再検証を
 そうだとすると、国鉄改革法が定めていた「主要都市を連絡する中距離の幹線輸送、大都市圏の輸送、地方主要都市圏における輸送、そのほかの地域輸送」という視点からJR北海道の全路線が果たすべき役割を今一度検証し、「その役割を担うにふさわしい経営規模」のもとで、「明確な経営責任の下において自主的に旅客輸送の動向に的確に対応する効率的な輸送を提供」できているかどうか、再検討をするべきであろう。そして、少子高齢化社会の進展に加え、厳しい気候や、人口が広く薄く点在しているという地理的条件など北海道特有の事情からJR北海道の経営が厳しくなるのは仕方がない、というのならば、現状のJR北海道の組織や経営規模がもはや適正ではないということである。全くの私見であるが、JR北海道として維持すべき路線は、民間企業が責任をもって運営できる範囲、すなわち収支がほぼ均衡する輸送密度8,000人以上の札幌圏(札幌を中心にして小樽、旭川、室蘭程度まで)のみに縮小することも考えるべきである。2015年度のデータをもとにすると、札幌圏に限れば、営業係数(100円の売上に必要な経費を示す指数)は管理費を勘案して111、管理費を勘案しなければ96と黒字になる。営業損益は管理費を勘案すると50億円の損失になるが、管理費を勘案しなければ190億円の利益を計上できる。運用益が年に350億円に達する経営安定基金は、50億円の赤字を埋められる程度に一部を残してJR北海道単独での札幌圏の鉄道事業の支援に使うか、上下分離方式を採用したうえで施設保有者に必要な範囲で譲渡する、という方法もあろう。そして、輸送密度8,000人を下回る路線は、鉄道として残すべきか再検討するべきである。巨額の赤字が見込まれ、かつ限定的な域内輸送の役割しか果たせておらず、冬季の状況を考えても代替交通手段で足りるという路線は廃止することになる。その一方、貨物列車や都市間高速列車のために不可欠という理由や、特別な価値があり、公共財としての側面が強く公的資金を投入しても維持するべきとされる路線は、必要な限度で別途の公共企業体などの運営で維持することになる。その場合、経営安定基金はJR北海道から分離される、輸送密度8,000人未満で収支困難な路線のために分割するということも考えられる。
●鉄道を「ただ残しても」意味はない
 もちろん、鉄道をどう維持していくかはJR北海道だけの問題ではない。近年、「交通政策基本法」や「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」が成立し、公共交通機関の活性化推進が地域や国民生活に必要不可欠であることが認識されるようになってはいる。しかし、交通機関の多様化などで残念ながら社会には昔のような「交通機関は鉄道一択」という風潮はない。鉄道をただ残しているだけでは無意味である。この国全体として地域輸送を含めた基幹的交通機関としての鉄道をどの程度必要としているのか、この国の鉄道全体、あるいはその地域ごとの鉄道について、鉄道を使って地域や国全体の利益をどのように維持増進しようとするのか、といったことを、国鉄分割民営化から30年が過ぎる今、公共交通機関のあり方の中から再検討するべきではないだろうか。

*4-2:http://shikiho.jp/tk/news/articles/0/142173 (会社四季報 2016年10月26日) JR九州・青柳社長が記者会見で語った将来への「意気込み」、民営化から29年
 九州旅客鉄道(JR九州・9142)が25日、東証1部に新規上場を果たした。1987年の旧国鉄の分割・民営化によって発足してから29年。もともと強い営業基盤を持ち経営が安定していた東日本や西日本、東海の「本州3社」が民営化から10年以内に上場したのに対し、九州は長い時間を要した。しかし、上場初日には公開価格(2600円)を19%上回る3100円の初値を付け、直後の記者会見で青柳俊彦社長は「上場はゴールではなく、新たなステージへの出発点」との認識を示した。初値について感想を聞かれた青柳氏は「(初めは買い気配で推移し)写真撮影の最中に初値が付いたため、その瞬間は見ていなかったが、その後も非常に活発な売買が行われてよかった。初値はわれわれに対する期待の反映と受け止めている」などと語った。今後の成長戦略については「中核である鉄道事業とそこから相乗効果を生み出す事業とを両輪として、さらなる成長を目指していきたい」という考えを表明。不動産など非鉄道事業の売上高が全体の5割超を占める同社だが、具体的には地盤の九州で新幹線の乗車率向上やインバウンド(訪日外国人客)需要の取り込みを進め、ローカル線でも鉄道ネットワークを維持したうえでマンションや商業施設などを建設することで沿線人口の増加に努めると強調した。九州以外の地域への展開に関しては「ホテルやマンションは今後も東京や大阪など、九州以外でも展開していきたい」と指摘。アジアを中心とした海外事業については「これまで色々と勉強してきている。5年前に中国・上海にレストランを開店し、現在は5店を運営している。今後はそれ以外の都市への展開も考えている」などと述べた。また、同社が始めた豪華寝台列車「ななつ星in九州」が好評で、来年にはJR東日本やJR西日本も参入する計画を打ち出していることについて、「ななつ星も3年目を迎え、来年の予約も順調に入っているようだ。来春に西日本と東日本も参入することによって、日本の旅の楽しさが3倍になることを期待している」などと語り、競争激化に対する警戒よりも、むしろ市場の活性化による相乗効果への期待をにじませた。また、上場までに約30年かかったことについて聞かれた青柳氏は「本当に長い道のりだった。30年前にJR各社が発足した際に、九州が上場することをイメージできた人がどれだけいたか。当初からはっきりした道標があったわけではないが、厳しい事業環境の中で上場できたというのは、これまでの一つひとつの努力が決して無駄ではなかったということだ」とした。また、「当社の上場が北海道や四国、貨物という(まだ上場していない)JR3社の参考になり、励みにもなるのではないか」とも語った。

*4-3:http://www.huffingtonpost.jp/2017/02/22/yamato_n_14950390.html (Huffpost Japan 2017年2月23日) クロネコヤマトの宅配量、抑制検討へ ネット通販拡大でドライバー不足に
 ヤマト運輸が、宅配便の扱い量を抑えることを検討する見通しとなった。宅配量の急増にドライバーの確保が追いつかなくなっており、同社の労働組合が2月上旬、春闘で会社側に要求した。ヤマト運輸によると、ネット通販の拡大などにより、宅配便の量は毎年増加傾向にある。2016年度の配達量は、15年度と比べて8%増え、過去最高の18億7000万個を見込んでいる。同社には約6万人のドライバーが所属しているが、配達量の増加にドライバーの確保が追いつかず、長時間労働に繋がっているという。このため労組は、宅配便の引き受けを抑え、取り扱い個数をこれ以上増やさないようを会社側に要求。終業から次の仕事まで最低10時間空ける「勤務インターバル」の導入なども求めた。ヤマト運輸労働組合は、NHKの取材に対し「今年度は特に荷物の量が増え、現場のしわ寄せが大きくなっている。1年間でサービス内容の見直しなどを進め、きちんと宅配便事業を続けられる体制を整えるべきだと申し入れている」と話した。ヤマト運輸は23日、ハフィントンポストの取材に対し、「ネット通販などにより、配達量が想定以上に増え、ドライバーの確保が追いついていない。集荷量の抑制を含め、労働者の働き方を見直しを検討する」と答えた。長時間労働の是正は、業界全体の課題となっている。ヤマト運輸では2月1日、働き方改革室を新設し、ドライバーの労働環境の改善を図っている。

*4-4:http://www.sankei.com/economy/news/170228/ecn1702280043-n1.html
(産経ニュース 2017.2.28) ヤマト運輸が昼の配達取りやめ検討 来年度にも実施
 ヤマト運輸が宅配サービスを抜本的に見直し、正午から午後2時の時間帯指定の配達を取りやめる方向で検討に入ったことが28日、分かった。現在午後9時までの夜の配達時間を早めに切り上げることも検討する。インターネット通販の普及で宅配個数が急増し、ドライバーを中心に人手不足で長時間労働が慢性化しているため。今後、労使協議で詰め、早ければ来年度の実施を目指す。ヤマト運輸の労働組合は平成29年春闘の労使交渉で、宅配便の荷受量の抑制や、終業から次の始業までに一定の休息を入れる「勤務インターバル」の制度導入などを求めていることに対応する。

*4-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/419708 (佐賀新聞 2017年4月6日) ヤマト宅配便、最高18・7億個、16年度、通販普及で拡大
 宅配便最大手のヤマト運輸は6日、2016年度に取り扱った荷物が過去最高の約18億7千万個だったと発表した。インターネット通信販売の普及で宅配便の利用が急拡大し、これまで最高だった15年度の約17億3千万個と比べ7・9%増えた。荷物をさばく人手の不足が深刻化し、17年度は運賃値上げとサービスの縮小で荷物量や長時間労働を抑制する。ヤマトの宅配便は06年度の約11億7千万個と比べると、この10年間で約59%膨らんだ。特に、ネット通販最大手アマゾンジャパンの荷物を取り扱い始めた13年度には16億個を突破。配達の現場では急速に人手不足が進んだとされている。

<イノベーションを可能にする教育・研究>
*5-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/418011 (佐賀新聞 2017年3月31日) 【教育ニュース】小学英語の教科化を告示 小中の新指導要領
 松野博一文部科学相は三十一日付で、各教科での「主体的、対話的で深い学び」に向けた授業改善の推進や、小学五、六年での英語教科化を柱とした小中学校の新しい学習指導要領を告示した。パブリックコメント(意見公募)を受け、小学校で「聖徳太子(厩戸王(うまやどのおう))」、中学校で「厩戸王(聖徳太子)」としていた表記を、小中とも現行指導要領と同じ「聖徳太子」に戻すなど、歴史用語中心に改定案を修正した。文科省は改定案を公表した二月十四日から今月十五日まで意見公募を実施。一万一千二百十件の意見が寄せられた。社会で教える聖徳太子を巡っては「歴史教育の連続性から、用語を変えるべきではない」といった意見を踏まえた。ただ、中学校では史実を深く学ぶことを重視し、古事記や日本書紀で「厩戸皇子(うまやどのおうじ)」などと表記され、後に「聖徳太子」と称されるようになったことに触れるよう新たに示した。改定案で消えた江戸時代の「鎖国」が小中ともに復活。中学校の「モンゴルの襲来(元寇(げんこう))」も「元寇(モンゴル帝国の襲来)」という現行に近い表記になった。東京電力福島第一原発事故でのいじめや風評被害に絡み、「放射線に関する正しい知識を体系的に指導すべきだ」という意見があり、小中の総則に「災害等を乗り越えて次代の社会を形成する」ための資質・能力を育むとの文言を追加した。中学校の保健体育では武道の内容の取り扱いで、競技人口や国体種目であることなどを考慮し、銃を模した用具を使い互いに突き合う「銃剣道」も例に加えた。小学校では英語より国語に力を入れるべきだとの意見もあったが、双方の充実を盛り込んでいるとして修正しなかった。

*5-2:http://qbiz.jp/article/105394/1/ (西日本新聞 2017年3月12日) 九州の伝統工芸、九産大が支援 研究センター設立へ、販売戦略練る
 九州産業大(福岡市)は11日、九州の伝統工芸品の販売戦略などを調査研究する「伝統みらい研究センター」を4月1日に設立すると発表した。博多織(福岡)や唐津焼(佐賀)、山鹿灯籠(熊本)など国指定伝統的工芸品21品目が対象。記者会見した山本盤男学長は「伝統技術を後世に伝え、持続可能な産業として再生する手法を確立して地域を支援したい」と話した。同大は2004年、有田焼(佐賀)の柿右衛門窯の作品データベース化などに取り組む柿右衛門様式陶芸研究センターを設立。さらに生産額や従業員数が減少している伝統工芸の支援にも手を広げ、センターは博多人形や久留米絣(がすり)(いずれも福岡)などの新商品開発にも関わってきた。新センターはこうした取り組みを拡充し、柿右衛門の研究部門と伝統工芸産業の発展に向けた研究の計2部門で構成。デザインや経営が専門の同大教授らが、まず今後3年間で福岡、佐賀両県の伝統的工芸品9品目の素材、技術などを調査。その後、販売戦略なども練り地域を支援する。新センターの所長に就く釜堀文孝教授は「衰退しつつある伝統工芸を核とした地域産業に貢献するシンクタンクを目指す」と意欲を語った。


PS(2017/4/12追加):*6-1のように、鉄道は、蓄電池や燃料電池による電動化と自動運転によるイノベーションが考えられ、こうすると、JR北海道を含む鉄道の採算がよくなって赤字路線が減る。また、駅舎や高架に太陽光発電を取り付ければ、広い面積で発電してエネルギーを自給することもできる。さらに、鉄道の敷地は連続した送電線を置くのに都合がよいため、例えば北海道の農山漁村で風力発電した電力を都市部に送電して送電料を得ることも可能だ。そのため、いわゆる赤字路線も利用して、現在のニーズに合うシナジー効果の高い事業を子会社で行えば、連結決算で黒字にすることも可能だろう。
 そのような中、東芝や日立などのインフラや鉄道関連製品を作っている会社は、ルールがなければ事業の新陳代謝ができないと言うのではなく、時勢に合った産業に速やかに移行できることが、経営者の能力である。何故なら、イノベーションや新製品は、過去数期間に黒字だったか赤字だったかというような単純なルールで今後の可能性が決まるものではなく、業種によっても状況が異なるため、業務の選択と拡大のやり方を誤らないことが、その企業のリーダーである経営者の役割だからだ。
 なお、*6-2に、農水省が減らない農作業中の農機での事故の原因分析を行うと書かれており、調査・分析をやるのはよいが遅すぎたくらいで、農作業中の事故は、無残で回復不能なものも多く、生産性と安全性を両立した農機具の設計が求められる。なお、実現すれば、これは世界で求められる実需であるため、輸出を伸ばすこともできるだろう。

   
    蓄電池電車     鉄道の敷地に引かれる送電線 太陽光発電付駅舎

*6-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ12H7D_S7A410C1000000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2017/4/12) 老舗重電ライバル 東芝とシーメンスを分けたもの
 東芝が監査の適正意見がない異例の決算を発表した11日、独シーメンスがボンバルディア(カナダ)と鉄道関連事業の統合を検討していることが明らかになった。経営再建中の東芝に対し、シーメンスは不断の事業再編を繰り返し株価も好調だ。両社は日独を代表する老舗重電メーカーで、発電機や医療機器などで競い合ってきた。どこで道が分かれたのか。
■シーメンスは最高値更新
 12日の東京株式市場で東芝の株価は乱高下している。上場廃止の可能性もあり値動きの荒い展開が続きそうだ。方やシーメンスの株価は11日に最高値を更新し、ボンバルディアとの鉄道統合の報道も材料視されている。時価総額は1088億ユーロ(約12兆6200億円)と、東芝(約9300億円)の13倍強に達し、日本の重電の顔である日立製作所の約2兆8000億円も大きく上回る。「電動化、自動化、デジタル化にトレンドにあわせ、当社の中核事業を変えていく」。昨年末、シーメンスのローランド・ブッシュ最高技術責任者(CTO)は自社イベントでこう述べた。同社は近年、産業用ソフトウエアの企業を相次いで買収し、ソフトとサービスの両分野を強化。米ゼネラル・エレクトリック(GE)と競うように「脱・機器売り依存」を鮮明にしている。シーメンスはソフト・サービス関連を買収で内部に取り込む一方、従来型の重電メーカーに象徴される巨額の投資が必要な「重い」事業は柔軟に他社との統合に切り替える。背景にあるのは、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」。自らがデータを集める「面」の広がりが重要で、機器売りの規模自体を追う重要性は下がりつつある。
■鉄道車両の首位浮上も
 最近は世界シェア大手の風力発電機事業をガメサ(スペイン)と統合したばかり。今回報じられたボンバルディアとの鉄道関連事業もこの一環とみられる。シーメンスの鉄道車両を含むモビリティー事業の売上高は78億ユーロ(約9050億円、2016年9月期)、ボンバルディアの鉄道車両事業は76億ドル(約8360億円、16年12月期)。合算すれば、中国国有大手の統合で生まれた中国中車を上回る世界最大の鉄道車両メーカーになる。ただシーメンスが買収・統合だけ続けては肥大化するだけだ。東芝との最大の違いは撤退の早さだろう。社内の「撤退ルール」を持ち、事業の入れ替えを繰り返す。黒字であっても期待収益を下回ったり、中核ではないと判断したりした事業は遠慮なく売却・上場する。特に13年に就任したジョー・ケーザー社長はその傾向が顕著だ。最高財務責任者(CFO)の経験が長く、各部門の収益構造やキャッシュフローには「現業部門よりも詳しい」(同社幹部)。水処理、病院向けIT(情報技術)、補聴器、家電、製鉄機械と相次ぎ売却や合弁化している。
■撤退基準の有無、原子力で明暗
 こうした文化が染みついたシーメンスと東芝の分かれ道は原子力部門の扱いだ。2011年3月の東京電力・福島第1原子力発電所の事故を受け、メルケル独政権はいったん取り下げた「脱原発」に再びかじを切った。軌を一にしてシーメンスは仏アレバとの原子力合弁の株式をアレバに売却。22年に国が原発ゼロになる前に、シーメンスは先に脱原発を果たし、ガス火力発電タービンと、風力発電を核とした再生可能エネルギーに絞り込んだ。もっともシーメンスは政治や世論の圧力で脱原発を決めたわけではない。欧州は再生エネの普及で世界を引っ張っり、「風力発電は火力発電並みの競争力を持つ」との社内の合意が形成された。さらにシェールガス革命で天然ガスを燃料にする火力発電のシェアも高まる。もともと社内では「他の電源と比べ原子力の事業性を疑問視する声があった」(エネルギー部門幹部)。福島の事故は原発の規制コストが上昇するとみて、撤退の背中を押す一因にはなったが、それまでの計算があったから決断も早かった。その後、シーメンスの保有株すべてを引き受けたアレバは業績不振にあえぎ、仏電力公社(EDF)の支援を求める状況だ。結果的にシーメンスはうまく“足抜け”した。一方、東芝は戦略部門と位置づけ買収した原子力子会社、米ウエスチングハウス(WH)の内部統制の不備があり、WHの買収による損失でさらに傷を負った。日本の電力業界では、かつて「原子力ルネサンス」の旗振り役だった経済産業省との密接な関係もあり、東芝側から容易に撤退を言い出せない背景も指摘される。
■医療機器はそろって売却・上場
 東芝は昨年、経営再建の一環で医療機器子会社の東芝メディカルシステムズを売却した。追い込まれて“虎の子”を手放さざるを得なかった。実はシーメンスも稼ぎ頭の医療機器子会社、シーメンス・ヘルシニアーズを年内にも上場させる計画だ。ケーザー社長は「分子診断、先端治療、サービスといった成長分野でより柔軟性を持ち強くなるため」と述べ、外部に切り出すことで医療機器の成長を狙う。平時から事業の撤退ルールをどう作るか。日本企業に広く問われる課題と言えそうだ。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p40594.html (日本農業新聞 2017年4月12日) 事故原因を本格調査 報告書提出促す 農機の状態情報不十分 農水省
 農水省は、農作業事故の原因分析のため、本格的な調査に乗り出した。事故が起きた状況や使用していた農機の状態などの情報収集がこれまで不十分で、都道府県や農機メーカーから報告書の提出を強く求める。事故が大きく減らない中、集まった情報を専門機関で分析し、事故防止により効果的な対策を検討する。同省によると、農作業事故で毎年350人近くが亡くなっており、依然高い水準にある。過半数が農機での作業中の事故で、対策強化が急務となっている。具体策の検討に生かすため、同省は2007年度から農機メーカーに対し、農作業事故が起きた地形や農機の種類、事故原因に関する情報提供を要請。10年度からは都道府県にも対象を広げた。だが、報告書は記述式で記入が煩雑なことが敬遠され、未提出の団体もあるなど情報が思うように集まっていなかった。同省は本格的な調査に乗り出し、報告書の提出を強く促す。この1月には都道府県に対し、事故発生時に速やかに提出するよう求める生産局長名の通知を出した。さらに、報告書を記入しやすいチェックシート形式に改善した。業界団体にも同様の要請を出した。集まった情報は、農研機構・革新工学センターに提供し、専門家の視点での事故分析や農機の安全対策の研究などに役立てる。啓発資料や指導指針の策定、農機の一層の安全設計、メーカーや輸入業者への対応の要請などの活用を想定する。成果情報は同省のホームページや、農機の関係団体でつくる「農作業安全確認運動推進会議」などで報告し、普及につなげる考えだ。同省は「事故がどういう状況で起きたか、まずはデータを多く集めたい。原因を把握し万全な対策をまとめる」(技術普及課)考えだ。


PS(2017.4.13追加): *7に、「欧米の半導体・部品メーカーが自動運転など自動車の次世代技術を持つ企業を相次いで傘下に収めている世界の流れを踏まえ、日本の部品メーカーも積極的に先進技術獲得目的のM&Aを行うべきだ」と書かれている。しかし、自らは先進技術を持たない企業が金にあかしてM&Aを行っても、高いものについただけで破綻しかけているのが東芝のWH買収だ。何故そうなるのかと言えば、本当に先進技術を持つ優良企業は、シャープのような余程の事情がない限り、M&Aで一方的にその先進技術を他国企業に譲ることはないからだ。そのため、先進技術を持つ企業を買収したり、業務提携したりしたければ、自らも相手が欲しがる秀でた技術や販売力を持っている必要があり、それは欧米追随型の技術開発ではできず、日本独自にも役立つ先進技術を開発していなければならないのである。なお、スペインのバルセロナ空港にあったサムスンTVで、見慣れた顔のゴーン氏が「Inovation is exites!(訳:イノベーションは、素晴らしい)」という自動運転の広告をされているのを見たが、EVを世界で最初に作ったのはゴーン氏率いる日産であり、自動運転も最初に手がけられたと記憶している。しかし、日産のEVはデザインが今一つスマートでなく、航続距離も短いため、まだ改善の余地が大きい。

*7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170413&ng=DGKKZO15247030T10C17A4EA1000 (日経新聞社説 2017.4.13) 自動車部品会社は内向き脱せ
 欧米の半導体・部品メーカーが自動運転など自動車の次世代技術を持つ企業を相次いで傘下に収めている。自動車産業が「100年に1度」といわれる転換期に入ったことが背景にある。技術開発で自前主義が強い日本の部品メーカーも、こうした世界の流れをふまえて積極的にM&A(合併・買収)に動くべきだ。半導体大手の米インテルは年内に、自動運転車の「目」となる画像認識システムで先行するイスラエルのモービルアイを153億ドル(約1兆6800億円)で買収する。米クアルコムも車載半導体で世界首位のオランダNXPセミコンダクターズを470億ドルで傘下に入れる。自動運転技術や、通信で情報を外部とやり取りする次世代車が普及すると、自動車に搭載するセンサーや半導体が飛躍的に増える。異業種の企業も自動車分野の事業を拡大する好機となる。歴史が長い自動車関連の企業もM&Aに積極的に動いている。老舗タイヤメーカーの独コンチネンタルは15年間で約100社を傘下に収め、センサーなどの有力企業に成長した。愛知県豊田市のトヨタ自動車本社近くに100人規模の拠点を構え、同社に自動ブレーキの主要部品を供給する。日本に目を向けると、部品メーカーの動きは乏しい。トヨタ系列の部品メーカーは再編を進めてきたが、効率化を目的としたグループ内の事業集約にほぼ終始している。ブレーキ事業の統合に10年超を費やすなど、スピード感にも課題がある。独立系自動車部品メーカーや、半導体・電子部品メーカーを見ても、技術の獲得を目的としたM&Aはわずかだ。自動車もIT(情報技術)分野と同様、付加価値の源泉が部品とサービスに移る「スマイルカーブ現象」が進むとみられている。日本企業も部品の重要性が高まることを認識し、内向きな姿勢を改めて外部から先進技術を積極的に取り込むべきだ。


PS(2017年4月14日追加):*8-1、*8-2のように、食材(特に、水もの・野菜・果物)や日用品を買った時に、その日の夕方までに自宅に配送してくれるサービスがあると、休日にまとめ買いしている健康な人でも重い荷物を持ち帰る心配なく買い物することができるため、買う物が増えるだろう。また、自宅療養している人には、これは必要不可欠なサービスで、中食だけでなく、栄養管理された美味しい弁当を宅配してくれれば、生活の質が上がる。

*8-1:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/421592 (佐賀新聞 2017年4月14日) 食材と日用品、戸配事業統合 JAさがと全農、全国に先駆けサービス
■利便向上へ注文一本化 中山間地などの生活支援
 JAさがと全農は、それぞれが独自に手掛ける食材の戸別配達事業と日用品宅配サービスを統合した「生活総合宅配事業」を全国に先駆けて始めた。併用する利用者が多いことから注文窓口を一本化して利便性を高め、品ぞろえの充実を図る。中山間地などの生活支援を強化する取り組みとして効果を検証した上で、全農を通じて2018年度から県外の地域農協での事業展開を目指す。JAさがの戸別配達事業は、簡単な調理でおかずができる状態に加工した肉・魚や野菜などを家庭に届けるサービス。全農は食用油や小麦粉、加工食品などの日用品を宅配業者を通じて配達しており、県内でそれぞれ約6千人、約1万6千人が利用している。配達サービスは、生協や食材宅配の専門業者に加え、コンビニエンスストアや地場スーパーの参入も相次いでいる。JAグループが扱う農産物を中心に生鮮食品の品質、価格で差別化を図ることで利用者の減少を食い止め、初年度は会員数1万7千人、取扱高15億円を目指す。今月初めに神埼市のJAさが本所食材センターであった出発式では、JAさがの北村正弘生活燃料部長が「近くに商店がなく、買い物に困っている人もいる。地域のインフラとして定着できるよう改善に努めたい」とあいさつ。関係者のテープカットの後に第1便が出発した。総合宅配事業の利用対象者は、会員登録をした組合員と准組合員。専用の注文用紙やインターネットなどで受け付けている。JA全農は「サービスの拡充で地域の暮らしを支えるモデルを佐賀でつくりたい」と話している。

*8-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170414&ng=DGKKASDZ13HZY_T10C17A4MM8000 (日経新聞 2017.4.14) セブン、宅配を外部委託、セイノーから配達員 加盟店の人材確保限界
 小売り大手が宅配網のてこ入れに乗り出す。セブン―イレブン・ジャパンはセイノーホールディングス(HD)と提携。セイノーHDがコンビニエンスストアに配達員を送り、宅配を代行する。ニトリホールディングスは家具を運ぶ提携運送会社向けにトラックを割安に貸し出す。流通業の代表企業が物流の末端まで支援しなければならないほど人手不足が深刻化している。資本力のある大手が先行して配達員の確保策を進めることで、人材獲得競争が一段と過熱する可能性がある。セブンは弁当を中心にコンビニで購入した商品を店員が自宅まで届ける宅配サービス「セブンミール」を全店の7割超の約1万5千店で展開する。店員は接客なども担うため、多くの店では十分な人手を割けなかった。セブンイレブンの各店舗は個人事業主の経営が多く、採用力にも限界があった。セイノーHDはセブンの宅配を代行する全額出資子会社を設立、5月から本格稼働する。まず約100人の配達員をそろえ、広島県など1都7県の約150店を担当する。将来は全国に広げる方針だ。セイノーHDは接客や運転技能に関する社内検定に合格した人のみを派遣する。商品は軽トラックで運ぶが、運転免許以外の資格は必要なく、担当も自宅に近いエリアに限られるため、比較的、配達員も集めやすいとみられる。主婦など女性を積極的に活用する。セブンはセイノーHDに宅配を委託することで配達の頻度を増やせる。5店舗で試行したところ、利用金額は10倍に増えた。関連コストは増える見込みだがメリットの方が大きいと判断した。セブンミールは500円以上の商品を購入した場合の送料は無料で、今後も料金は変更しない。セブンミールの売上高は2017年2月期で266億円。全売上高の1%にも満たないが、高齢者や女性向けに潜在需要は大きいと見込む。ニトリHDは20年までをメドに2トンと10トンのトラックを計1200台購入し、家具を運ぶ約100社の提携運送会社向けに割安に貸し出す。月々のリース料は通常に比べ少なくとも1割程度(数万円相当)抑えることができるとみられる。運送会社の負担を抑え、運転手の人件費確保などにつなげる。小売企業が配送網維持のために、車両のリースまで手がけるのは珍しい。労働人口の減少で人材は建設や小売りなど各業界をまたいで取り合いになっており、トラック運転手は確保しづらい。


PS(2017年4月15、17日追加):*9-1のように、熊本地震で壊れた南阿蘇鉄道の全線復旧費用を沿線自治体が負担しなければ出せないとのことだが、この地域は陸上に現れた大断層の交差点であることが地震で有名になったため、観光地としての価値は上がったと言える。そのため、私は、スイスのマッターホルンのように、居心地のよい観光鉄道を設置し、高すぎない料金で走らせて、世界から観光客を集めるのがよいと考える。ちなみに、マッターホルンの場合は、その基地となるツェルマット村では、1990年代から環境に配慮し、ガソリン車の乗り入れを禁止して村内の交通手段は電気自動車としており、静かな環境と澄んだ空気が保たれている。また、北海道も乗り心地のよい北海道周遊鉄道を走らせれば、夏だけでなく冬も素敵な鉄道旅ができ、北海道の墨絵のような雪景色やスキーは、暑い国に住む人たちにとって憧れになる可能性が高い。
 なお、熊本県の農業は秀でており、首都圏でも多くの農産品が販売されているが、*9-2のように、まだ復旧していない農地があるのなら全力を尽くして早期復旧すべきだ。しかし、私は、この機会に復旧のみを考えるのではなく、どこでも作りたがって余剰している米を減らして他の作物に転作し、付加価値や食料自給率を上げるのがよいと思う。その際に障害となるのが、国が米作偏重で渡している交付金なのだ。


  2017.4.15西日本新聞(*9)より     マッターホルンの鉄道とケーブルカー

(図の説明:南阿蘇鉄道は、眼下に大きな断層を見下ろしながら草地を走る世界でも珍しい鉄道であることを前面に出し、快適に地球の営みを見学する列車を走らせたらどうかと考える。そして、これにはスイスのマッターホルンの例が参考になるが、この鉄道は赤字だろうか?)

*9-1:http://qbiz.jp/article/107652/1/ (西日本新聞 2017年4月15日) 2016熊本地震、南阿蘇鉄道の全線復旧は数十億円 沿線自治体の負担焦点
 南阿蘇鉄道の復旧に向け事業者負担をゼロにするなど、政府が特別な支援策の創設に動きだした。ただ、この支援策では地元自治体が復旧費の50%を負担する必要がある。国土交通省の調査では、復旧費は総額70億〜80億円前後に達する可能性もあり、全線復旧には数十億円に上る自治体の負担軽減が焦点だ。事業者負担をゼロにして国の補助を50%に倍増する制度は、東日本大震災で被災した岩手県の三陸鉄道で活用例がある。復旧費約90億円のうち国が45億円、県と沿線8市町村が計45億円を負担した。ただ各自治体には震災復興特別交付税が支給され、事実上、国が全額負担した形だ。熊本地震の場合、復興特別交付税の制度はない。財政基盤の弱い沿線の南阿蘇村や高森町にとって「数億円の負担も厳しい」(関係者)状況で、特別な交付税の支給や、95%が交付税措置される「補助災害復旧事業債」の活用などを国に求める考えだ。新たな支援策は線路や駅などの鉄道施設を、自治体の所有に移すことが前提になる見通し。自治体と事業者の協議がまとまり次第、政府は支援策の検討を本格化する。南阿蘇鉄道は2016年7月に高森−中松で運行を再開したが、被害が深刻な中松−立野は復旧のめどが立っていない。

*9-2:https://www.agrinews.co.jp/p40613.html (日本農業新聞論説 2017年4月14日) 熊本地震から1年 営農の完全再建急ごう
 熊本地震から1年がたつ。農地や施設の復旧が進み、多くの農家が営農を再開している。しかし被害が深刻な地域では、いまだに農家の1割が営農を再開できていない状況だ。熊本県は2019年度までの完全復旧を目指す。道のりは険しいが、農家が安心して生活し、営農で震災前の所得水準を早く回復できるよう復旧を急ぎたい。国もその間の支援を継続すべきだ。熊本地震では4月14日、16日と2度、最大震度7を観測。震源地が地下10キロと浅く、益城町と西原村を中心に大きな被害をもたらした。13日現在、関連死も含めた死者は225人。熊本県内の仮設住宅に住む被災者は3月末でも4万4000人を超える。高齢者が圧倒的に多い。一刻も早く自宅に帰れるよう、行政は全力を挙げるべきだ。農水省によると、農林水産関連の被害総額は熊本県を中心に1793億円。うち農業関係は7割を占める。1年間で被災した農地や施設の復旧は一定に進んだ。しかし復旧が遅れ、営農再建のめどが立たない地域や農家が多いのも事実だ。農地や水路が絶たれたままで、稲作の再開どころか飲用水すら確保できないケースもある。生活インフラを含め、早期の完全復旧の実現には国の支援も不可欠だ。県やJAの頑張りは評価できる。営農再開を優先させ、水を確保できない水田では復旧に先駆けて大豆作に切り替えた。農家の営農意欲を失わせず、少しでも農業収入を確保してもらう効果は大きかった。こうした臨機応変の対応が重要だ。県は昨年末、19年度までに完全復旧を目指す「食料・農業・農村計画」を策定した。「稼げる農業の加速化」をテーマに掲げ、復旧作業と併せて担い手を育て、効率的に高い品質の農畜産物を生産できる産地づくりを目指す。担い手に8400ヘクタールの農地を集める他、新品種イチゴ「ゆうべに」を125ヘクタールまで広げ、情報通信技術(ICT)を活用した次世代型園芸施設を120ヘクタール設けるなどの構想を描く。復旧の遅れた地域も含め、全県的にビジョンを早く実現してもらいたい。11日に農水省を訪れた蒲島郁夫県知事は、山本有二農相に復旧と営農再開の状況を報告した。まだ1割の農家が営農を再開できていないと指摘、「創造的な復興」に必要な支援の継続を国に要請した。JA熊本中央会の小崎憲一会長も日本農業新聞のインタビューで、行政の震災事業は単年度事業が多いと指摘し「農家の意欲が続くよう、複数年の予算確保を訴えたい」と強調した。こうした声に国は誠意を持って応えるべきだ。JAグループの役割も大きい。熊本中央会は昨年末、県経済連、農林中金と共に、県と連携協定を結んだ。県の復興計画に沿って「創造的な復興」を果たすため、全力を挙げてほしい。全国のJAも引き続き支援をする必要がある。


PS(2017年4月16日追加):沖縄では海に点在する観光地を巡るため、*10のように、クルーズ船が便利だが、そのためには大型客船が入港できる岸壁を造ってハード・ソフトを整備するだけでなく、沖縄を一級のクルーズ船観光基地にする計画が必要だ。そこで、私は、カリブ海・地中海などのクルーズ先輩地域を視察したり調査したり、クルーズの先輩の意見を聞いたりして、しゃれた計画を立てた方がよいと考える。なお、沖縄の場合は海の中が美しいため、クルーズ船に海底が見える床が透明な部屋を準備すると長い船旅にも退屈しないだろう。

*10:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-478409.html (琉球新報社説 2017年4月14日) クルーズ船対応 受け入れ態勢の整備を急げ
 観光に関する調査研究機関・じゃらんリサーチセンターのまとめでは「地元の人のホスピタリティー(もてなしの心)を感じた」のは、沖縄県が2005年以来12年連続で1位を記録している。毎年2位に10ポイント以上の差をつけている。観光客を大事にする県民の意識の高さを示す証しといえる。だが観光地・沖縄としての受け入れ態勢は十分といえない。クルーズ船入港時の混乱を見れば不備は明らかだ。ソフト、ハードの整備に関係機関は今以上に注力してもらいたい。本紙記者の取材によると、那覇港新港ふ頭に大型客船が寄港した11日は約千人が下船したが、船客待合所で多くの人が1時間ほど足止めされた。最後の客がタクシーに乗るまで3時間を要した。新港ふ頭は本来貨物船が使用する岸壁である。15万トンを超える大型客船が入港できる岸壁がないため利用しているだけだ。しかし周囲は貨物運搬の車両が行き交い、観光客、荷役関係者双方の安全のためタクシーの乗り入れが制限されている。市内観光に行くにはタクシーに頼るしかないが、現状は受け入れ態勢の不備で観光客に不便を強いている。クルーズ船寄港は16年に387回で過去最多を記録し、17年度はさらに増えて502回を見込む。県の観光振興基本計画は21年度までの目標として観光客1200万人を掲げている。そのうち海路客は現在の25万人から8倍の200万人に設定している。クルーズ船客は船内で入国手続きを済ませる。下船できるのは8~10時間しかなく、限られた時間で沖縄観光を楽しむ。港を出るまでに1~3時間を消費していては、観光地としての魅力が損なわれるだけでなく、買い物や飲食店などに行く時間が減り、消費面でも機会損失が大きいといえる。大型客船に対応できる岸壁の整備は急務だ。国、県をはじめとする関係機関が早急に対策を打ち出すべきだ。一方でソフト面の整備も課題となる。11日の寄港で対応したボランティアはわずか11人しかいなかった。単純計算で1人のボランティアが90人を相手にしなければならない。那覇市観光協会は語学人材の育成を進めるが、絶対数が不足している。現状では観光地・沖縄の「もてなしの心」は看板倒れに終わりかねない。


PS(2017年4月16日追加):*11のように、「利幅が薄い」などとして家電部門を縮小する会社が多いため、家電の日本製品が少なくなったのは秋葉原の電気街に行けば一目瞭然だ。そして現在、信頼できる日本製家電はパナソニックくらいしかなくなっており、技術は生産している場所でしか受け継がれたり進歩したりしないということを、技術や実績に誇りを持つのではなく、訳もなく傲慢になった日本人は忘れたように見える。そのような中、イノベーションに熱心で先進的な技術を持つシャープが家電市場で存在感を上げようとしているのは歓迎だが、シャープには一つだけ注文がある。それは、「家電は単純な構造で(それは丈夫で生産コストを削減できる効果もあるだろう)、使い易くて手入れしやすい」というのも重要な価値で、私はシャープ製のプラズマ式エアコンを使って快適に過ごしていたが、エアコンクリーニングをする時に専門業者でも掃除ができず、壊れやすい部品もあって2度交換したため、パナソニック製に変えたという事実があることだ。これは、改善した方がよいと考える。

*11:http://digital.asahi.com/articles/ASK4H4Q37K4HPLFA001.html?iref=comtop_list_biz_n01 (朝日新聞 2017年4月15日) シャープ、家電で逆張り勝負 冷蔵庫・テレビ機種増へ
 シャープの戴正呉(たいせいご)社長は15日、国内で売るテレビや冷蔵庫といった家電製品の品ぞろえを、2017年度に大幅に増やす方針を明らかにした。利幅の薄い家電部門を縮小する他社があるなかで、あえて「逆張り」に出て、家電市場での存在感を上げようとしている。戴氏は堺市の本社で開いた退職者の会合にテレビ会議システムを使って参加し、方針を明らかにした。16年度と比べた品ぞろえを高画質の4Kテレビで45%、冷蔵庫で30%、掃除機で180%それぞれ増やし、20機種前後にするという。高機能品に加え、機能を絞って価格を抑えた製品も出す。法人向けは複合機で40%増、電子看板で20%増の35機種程度にする。戴氏はパナソニックやソニーとの比較で「シャープは幅広い家電を持つが、ラインアップが足りない。頑張りたい」などと語った。だが、費用がかさむ一方で、利益が増えない恐れもある。調査会社GfKジャパンの調べでは、16年の国内の家電小売市場は約7兆円で、前年より1・5%減った。シャープが比較的強いテレビなどの音響映像製品は同6%減と縮小。競合他社では品ぞろえを絞る動きもある。また、戴氏は3月末に終わった17年3月期の決算について「予想を達成できると思う」と話した。シャープは現段階で営業損益を474億円の黒字、利息の支払いなどを反映した経常損益を99億円の黒字と予想しており、ともに3年ぶりの黒字転換となる見込みだ。


PS(2017.4.17追加):*12-1のように、3Dプリンターの再生医療への活用が既に行われているのはよかったと思うし、これを可能にする3Dプリンターや作成プロセスが世界で最初に完成すれば日本の得意技として高い世界シェアを獲得できる。しかし、*12-2のように、「そのまま患者に移植できる臓器の再現はかなり先となりそうだ」などとして時間をかけていると、EV・太陽光発電・自動運転車のように、他国に先を越されて好機を逃し、最初に着手した日本には特許権料も世界シェアも手に入らなくなるので注意すべきだ。なお、現在の日本の経済学部出身者は、言っていることが外国で作られた理論の単純な丸暗記に基づいており、イノベーションを考慮できず、言うことがとろいため、経済学部は理系学部に変更した方がよいと思う。

*12-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170417&ng=DGKKZO15375170W7A410C1TJM000 (日経新聞 2017.4.17) 科学技術:3Dプリンター、再生医療に活用 まず移植用組織、東大が皮膚の構造/福岡大は横隔膜の機能
 立体的な部品などを作る3次元(3D)プリンターを使った再生医療の研究が進んでいる。たんぱく質の微粒子や細胞の塊を積み重ね、移植用の組織や臓器を作る。東京大学は治りにくい傷の治療向けに皮膚の立体構造を再現した。福岡大学などは呼吸に欠かせない横隔膜の機能を果たす小さな組織を作り、動物で治療効果を確かめた。臨床応用できれば究極の再生医療の実現に近づく。3Dプリンターは原料の粉末などを少しずつ積み上げて立体構造を作る。再生医療向けでは、専用装置で生きた細胞の小さな集まりやコラーゲンなどのたんぱく質を積み重ねる。材料選びや使うタイミング、積み方などの工夫も研究の重要なテーマとなっている。東大の高戸毅教授と峰松健夫特任准教授は3Dプリンターを活用し、床ずれや糖尿病などで発症する皮膚の治りにくい傷を治療する研究に取り組む。高齢化などで患者は増えており、長期入院を余儀なくされたり治療後に痛みが残ったりして患者の負担となっている。皮膚には表面の表皮と内部の真皮の間をつなぐ役割を持つ微細な凹凸が並んでいる。皮膚の真皮まで傷付くと再生せず、平らになってしまう。高戸教授らは3Dプリンターで「RCP」というたんぱく質の微粒子を積み上げて表面に凹凸のある層を作り、皮膚の構造をまねた。傷を付けたマウスの皮膚に移植すると、表皮の再生を促した。今後はたんぱく質の微粒子の隙間に、脂肪から取り出した幹細胞を入れて、効果を高める。幹細胞が出す物質は皮膚が硬くなるのを抑える働きがあり、皮膚の再生も促せると見込む。損傷した真皮を補うためのスポンジ構造の材料も使い、表皮と真皮の立体構造を模倣した再生医療を目指す。福岡大の柳佑典助教と九州大学の田口智章教授は3Dプリンターで細胞を積み上げる手法を用い、人の皮膚の細胞で1センチ角の組織片を作った。胸と腹を区切る横隔膜に穴を開けたラットに移植した。横隔膜に穴が開くと呼吸に支障が出る。組織片を移植した5匹は横隔膜の穴が塞がり、3カ月以上生き延びた。効果は合成繊維の膜を移植するより高かった。今後はウサギなどでも実験する。横隔膜が生まれつきない患者などの治療に役立てたい考えだ。信州大学の今村哲也助教と九大発ベンチャーのサイフューズ(東京・文京)は、人の骨髄の細胞で数ミリ角の組織片を作った。膀胱(ぼうこう)が傷つき尿がためられないラットに移植すると、健康なラットのように排尿できる状態まで回復した。組織片から出たたんぱく質などが膀胱の再生を促したとみている。膀胱は伸縮する筋肉でできた袋状の臓器で、がんの放射線治療や病気が原因で硬くなると頻尿になる。今後iPS細胞の活用も検討し、10年以内に人への移植を目指す。

*12-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170417&ng=DGKKZO15375210W7A410C1TJM000 (日経新聞 2017.4.17) 科学技術:臓器実現、蓄積地道に
 3次元(3D)プリンターは材料を積み重ね、複雑、微細な立体構造を作るのが得意だ。細胞やたんぱく質に応用できる機種の開発が、再生医療研究を後押ししている。皮膚の難病治療を目指す東京大学の峰松健夫特任准教授は「3Dプリンターができたからこそ研究に着手できた」と語る。再生医療の実用化では細胞をシート状に培養して移植する手法が先行する。動物を「工場」として活用するアイデアもある。ブタなどの受精卵に人のiPS細胞を注入し動物の体内で人の臓器を作る手法だ。ただ、いずれも発展途上で、1つに絞られたわけではない。臓器は血管や神経など様々な細胞が組み合わさり、立体的な構造を作っている。そのまま患者に移植できる臓器の再現はかなり先となりそうだ。小さな組織片の移植など一歩ずつ技術を積み重ねていくことが重要だ。


<観察技術の進歩と理論のイノベーション>
PS(2017年4月19日):肉食恐竜ティラノサウルスの手は、使うには小さすぎると思っていたが、これと似た大きさの手をしているのは飛べない鳥類(エミュー、ダチョウ、鶏など)で、これらの鳥類は顔も恐竜から進化したように見え、足の形は恐竜と同じだ。また、これらの鳥類は、子供の頃は羽がなく毛だけが生えており、「個体発生は系統発生を繰り返す」という原理から考えれば、(化石には残っていないが)ティラノサウルスにもこれら鳥類と同じような毛が生えていたと推測できる。この疑問を解決するには、エミューかダチョウか鶏の卵がかえる時に、卵の中の胎児の変化を観察するのがよいだろう。また、鳥類は、飛ぶ鳥が先に発生したのではなく、飛べない鳥が先に発生した後に進化して飛ぶ鳥が発生し、捕食者との関係で飛ぶ鳥の種の方が多く生き残ったのではないかと思われる。


  ティラノサウルス       エミュー          エミューの卵と雛
 2017.4.19佐賀新聞

   
          ダチョウ            鶏の雛    鶏の手羽

*13:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/422867 (佐賀新聞 2017年4月19日) 肉食恐竜ティラノの分類に新説、トリケラトプスと近縁か
 ティラノサウルスのような二足歩行する肉食恐竜は、首の長い巨大草食恐竜と同じグループに属するという従来の分類よりも、むしろ角を持ったトリケラトプスの仲間に近いとの新説を英ケンブリッジ大などのチームが19日までに英科学誌ネイチャーに発表した。現在の分類では、恐竜は鳥に似た骨盤を持つ「鳥盤類」とトカゲに似た骨盤を持つ「竜盤類」に大きく分けられる。ティラノの仲間である獣脚類は鳥の起源と考えられているものの、これまでディプロドクスなど首の長い巨大草食恐竜が属する竜盤類に分類されてきた。新説ではティラノはトリケラトプスやステゴサウルスなどの鳥盤類と近縁となる。


PS(2017年4月21日追加):リコーが、*14のように、自社設備を拡充して太陽光やバイオマス発電による電力供給を増やし、足りない分は電力会社からグリーン電力を購入して再生エネ100%を目指して、国際イニシアチブ「RE100」に参加するのは、好感の持てる可能な目標だ。私は、鉄道会社がこれを行えば、①運行コストが下がって赤字路線が減る ②環境に貢献する ③鉄道会社の送電技術が進歩し、赤字路線も送電網として機能させることができる など、多くのメリットがあると考える。

*14:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017042101001072.html
(東京新聞 2017年4月21日) 【社会】 リコー、再生エネ100%へ パリ協定の脱炭素実現で
 事務機器大手のリコーは21日、国内外の事務所や工場で使う電力を、2050年までに全て再生可能エネルギーで賄う目標を明らかにした。マイクロソフトなど世界の約90社が参加し、再生可能エネルギー100%を目指す国際イニシアチブ「RE100」に日本企業として初めて加わった。パリ協定が目指す“脱炭素社会”の実現に向け、企業レベルの取り組みを強化する狙い。リコーは自社設備を拡充して太陽光やバイオマス発電による電力供給を増やし、足りない分は電力会社からグリーン電力を購入する。最初のステップとして30年に電力消費の30%以上を再生可能エネルギーにすることを目指す。


PS(2017.4.23追加):*15のような「人工知能(AI)の登場でロボットの存在感が増したら、人間が失業する」という論調はよく聞かれるが、それは間違いだと考える。何故なら、単純作業が自動化されれば人間はより高度で面白い仕事をすることができるようになるだけで、自動化したから人がいらなくなるわけではないからだ。例えば、全自動洗濯機は、これによって洗濯をする人がいらなくなったわけではなく、機械の方が人よりうまくやれる仕事を機械がしている時間に、人はもっと生産性の高い仕事や人にしかできない仕事にシフトすることができたという効果をもたらした。また、機械はあらかじめ導入されたソフトの範囲でしか働けないため、そのソフトを作った人以上の仕事はできない。
 そのため、例えば、弁護士が判例を探すのをAIが手伝えば、判例探しを個人の弁護士の知識と経験のみに頼らなくても済むため、弁護全体の底上げができるだろう。しかし、その判例を、①どう事例に当てはめるか ②過去の判例では対応できない事例ではないのか などの判断は、人間である弁護士の価値観や能力に基づくため、AIでは代替できない。これは、医療において、診断にAIを利用する場合も同じだろう。
 なお、自動車が普及して人力車がなくなった時には、確かに人力車の車夫という仕事はなくなったが、新しい仕事も多くできたため車夫だった人は別の仕事に移っただろう。つまり、教育は、人にしかできない仕事をできる人を育て、時代の変化に応じて仕事を変わることもできる能力を与えておかなければならないのである。


  *15より  会話ロボ 日本橋三越受付ロボ ポーターロボ  EV工場のロボット

(図の説明:いろいろなロボットがあるが、触ると望む方向に進み、飛行機の搭乗券をかざすと荷物を載せて案内しながら出発Gateに行くポーターロボが空港にあると便利そうだ)

*15:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170423&ng=DGKKZO15581470R20C17A4MM8000 (日経新聞 2017.4.23) ロボットと競えますか?日本の仕事、5割代替 主要国トップ
 人工知能(AI)の登場でロボットの存在感が世界で増している。日本経済新聞と英フィナンシャル・タイムズ(FT)が実施した共同の調査研究では、人が携わる約2千種類の仕事(業務)のうち3割はロボットへの置き換えが可能なことが分かった。焦点を日本に絞ると主要国で最大となる5割強の業務を自動化できることも明らかになった。人とロボットが仕事を競い合う時代はすでに始まっている。日経とFTは、読者が自分の職業を選択・入力するとロボットに仕事を奪われる確率をはじき出す分析ツールを共同開発し、22日に日経電子版で公開した。米マッキンゼー・アンド・カンパニーが820種の職業に含まれる計2069業務の自動化動向をまとめた膨大なデータを日経・FTが再集計し、ツールの開発と共同調査に活用した。
■丸ごと自動化も
 調査の結果、全業務の34%に当たる710の業務がロボットに置き換え可能と分かった。一部の眼科技師や食品加工、石こうの塗装工などの職業では、すべての業務が丸ごとロボットに置き換わる可能性があることも判明した。ただ、明日は我が身と過度に心配する必要はない。大半の職業はロボットでは代替できない複雑な業務が残るため、完全自動化できる職業は全体の5%未満にとどまる。19世紀の産業革命に始まる製造業の歴史は、自動化への挑戦そのものだった。200年を経た今、AIの進化が新たな自動化の波を起こしつつある。マッキンゼーによるとエンジンを組み立てる工場労働者の場合、77ある業務の75%が自動化できる。部品の組み立てや製品の箱詰め作業などだ。米ゼネラル・モーターズ(GM)は世界各国に合計3万台のロボットを導入しており、うち8500台のロボットは稼働情報を共有して生産ラインに故障の前兆がないかAIが目を光らせている。自動化の流れは、難しいとされたホワイトカラーや事務系職場にも押し寄せる。米通信大手のAT&Tは顧客の注文の文書化やパスワードのリセット作業など500業務相当をソフトウエアロボットで自動化している。データ抽出や数値計算は人より高速にできるため「2017年末にはさらに3倍に増やす」(同社)計画だ。ホワイトカラーの象徴といえる金融機関でも自動化が進む。事務職では60ある業務のうちファイル作成など65%がロボットに代替できる。米ゴールドマン・サックスでは00年に600人いたトレーダーが株式売買の自動化システムに置き換わり現在は数人に減った。著名投資家のジム・ロジャーズ氏も「AIが進化すれば証券ブローカーなどの仕事は消える」と断言する。一方で意思決定や計画立案にかかわる仕事、想像力を働かせる仕事はロボットの苦手分野だ。最高経営責任者(CEO)など経営幹部には63の業務があるが、ロボット化が可能なのは業務進捗表の作成など22%にとどまる。俳優や音楽家など芸術関連の職業も65ある業務のうち自動化対象は17%にすぎない。
■人手不足の解
 今ある業務が自動化される割合を国別に比較すると、日本はロボットの導入余地が主要国の中で最も大きいことが明らかになった。マッキンゼーの試算では自動化が可能な業務の割合は日本が55%で、米国の46%、欧州の47%を上回る。農業や製造業など人手に頼る職業の比重が大きい中国(51%)やインド(52%)をも上回る結果となった。日本は金融・保険、官公庁の事務職や製造業で、他国よりもロボットに適した資料作成など単純業務の割合が高いという。米国などに比べ弁護士や官公庁事務職などで業務の自動化が遅れている面もある。米国の大手法律事務所では膨大な資料の山から証拠を見つけ出す作業にAIを使う動きが急速に広がっているが、日本はこれからだ。一部の職場ではすでに雇用が失われ始めるなどロボット化には負の側面が確かにある。それでも生産年齢人口が50年後に4割減る見通しの日本では、ロボットに任せられる業務は任せて生産性を高めることが国力の維持に欠かせない。

 この記事は日経とFTの共同プロジェクトの一環として掲載しました。

| 教育・研究開発::2016.12~ | 02:46 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.3.19 教育基本法と教育勅語の根本的な違いは、主権の所在と教育の目的である - 教育勅語と森友学園の建設地問題から(2017年3月20、21、23、24、28、31日、4月4、15日追加)

    教育勅語本文         教育勅語の読み方      上郵便振替用紙

(図の説明:左の2つは、教育勅語だ。一番右は、森友学園の籠池理事長が安倍昭恵夫人からの寄付だと主張している100万円だが、森友学園から森友学園への振込になっており、白い訂正の下には安倍晋三と記載してあるものの、文字が乱雑で感謝の心のこもった100万円の振込ではなさそうに見える)

   
森友学園校舎 横浜市立小学校校舎 松本開智学校校舎 ロンドン小学校校舎 米国高校校舎

(図の説明:森友学園の校舎は確かにあまり趣味がよくないが、横浜市立光が丘小学校も校庭が狭く、アスファルトで舗装してあり(転んだら痛そうで、思い切り運動ができないだろう)、日本の標準形の校舎だが個性や魅力がなく、子ども中心に考えられていない。そのため、日本最初の小学校である松本市の開智学校の方が気合が入って凛としており、ロンドンの小学校やアメリカの高校もよい。義務教育学校は、子どもが長期間通ってセンスを養う場所であるため、大学の建築学科の学生の卒業論文として義務教育学校の設計を提出させ、建て換えにあたってその中からよいものを採用したらどうかと考える)

(1)森友学園問題の本当のポイントは何か
1)国有財産の安値売却は、財務省の国民への背信行為であること
 *1-1のように、財務省が生活ゴミや廃材などが大量に埋まっていたという理由で、8億円値引きした安値で国有地を「森友学園」に払い下げたことについて、その土地が国有化される前に住んでいた住民は、財務省の主張を疑問視しており、森友学園による学校建設に憤っているそうだ。何故なら、その土地は、そこに災害時の一時避難地としての役割も担う公園を建設することを豊中市議会が平成11年(1999年)決議した土地だからだそうだ。

 そのため、政治家を陥れるために、メディアがステレオタイプに政治とカネを結びつけて、いっせいに国民感情を煽る報道をするだけでは、政治家への信用を落とし続け、国民の政治参加への意識を下げるだけで、民主主義に貢献してはいない。従って、問題の本質を見極めて真実を報道すべきだ。

 そこで、豊中市が土地の半分に対して支払った金額は14億2,300万円であり、豊中市が買えなかった残りの半分の評価額は9億5,600万円とされており、財務省は、その土地の地下にある埋設物の除去費用を差し引いて1億3,400万円で森友学園に売却した上、埋設物の除去及び土壌汚染対策費として、1億3,200万円を森友学園に支払ったため、森友学園は200万円でその土地を買えたわけである。この段階では、森友学園の籠池理事長はよい買い物をしただけで、非難される理由にはならず、財務省が国有財産を異常に安い値段で売却したという国民への背信行為だけが問題だったのである。

 地下の埋設物については、旧住民の乗光さんが「あの土地にゴミなんか埋まってないですよ。1960年代、私があの土地に家を建てた際、それまで水田や畑でしたから3メートルほど地面を掘ってコンクリートをしくなどの基礎工事をしっかり行いましたが、その時もゴミなんか出ませんでした。私たちが立ち退きする際、それまであった住宅は全て解体し、産廃業者が運んで行きました。立ち退き後、土地はフェンスに囲まれ、関係者以外立ち入りできなくなっていました。私たちは毎日のように、土地の状況を見続けてきましたが、(処理費8億円に相当する)トラック4,000台分のゴミが運び込まれたり、そのために大きな穴を掘り返したりというようなことが行われている様子は今まで見たことがありません」と証言している。

2)教育施設や福祉施設の立地適地は?
 学校を建てるのに、一部で報道されているような沼地でゴミが捨てられていたような場所や水田・中洲だった場所は、子どもの安全や希望・地域の中心的避難場所という意味で適していないと私は考える。入学式の頃には桜のトンネルができる坂道を登って丘の上の学校に行き、学校の鐘が周囲にも聞こえるような学校が、学校を地域の中心に据えて子どもたちを大切にしているように、私には思われる。

3)安倍首相、昭恵夫人と森友学園の関係は、ブラックではないこと
 森友学園の籠池理事長は、*1-2のように、3月16日に行われた参院予算委員会の現地調査で、「安倍首相から昭恵夫人を通じて100万円の寄付を受けた」と証言し、上の写真の郵便振込用紙が出てきたそうで、その日付は昭恵夫人が森友学園の依頼で講演を行い、名誉校長に就任した日のすぐ後とのことである。しかし、森友学園が寄付して安倍首相と関係を持ちたい理由はあっても、安倍首相がわざわざリスクを冒して森友学園に寄付する理由はなく、仮に安倍首相が政治資金から寄付したとすれば、それは監査済の政治資金収支報告書に掲載されている筈だが、今のところ、そういう指摘はない。

 また、*1-3のように、「2015年9月頃、籠池氏が安倍首相から昭恵夫人を通して100万円をもらった」として、上の写真の郵便振替用紙を証拠として示しているが、この郵便振替用紙は森友学園が森友学園に振り込んだことを示すもので、安倍首相が寄付した証拠にはならない。そのため、森友学園の監査人に、この振込用紙の金の出所は森友学園自身の他の口座でないのかを聞きたいものである。

 そして、百歩譲って、昭恵夫人(森永創業者の孫で安倍首相より金持ち)が個人で100万円を森友学園に寄付していたとしても、家族だからといって昭恵夫人が完全に首相のコントロール下にあるわけではなく、講演を頼まれ名誉校長(名誉市長と同様、何の権限もない)にも就任させてもらったから寄付したとも考えられる上、寄付すること自体は罪ではない。さらに、有名人に講演を依頼するというのは、既に親しいからではなく、親しくなるためにするケースが多く、昭恵夫人は罠にはまったように見えるのだ。

 そのため、私は、安倍首相が「私や妻が(国有地売却や学校認可に)関係していたことになれば首相も国会議員も辞める」「複数の中でお目にかかったかもしれないが、少人数ではなく、個人的な関係は全くない」と言われたのは本心だろうと思う。なお、森友学園の籠池理事長は、とかく有名政治家との関係を誇示したがるが、パーティーで握手したり、会話したりするのは、政治家にとっては普通のことであり、そうしたからといって出会った多くの人の中の一人を、特別の特徴がない限り覚えているわけではない。

(2)森友学園の教育内容は現代日本にふさわしくないことが、問題の本質だ
1)日本国憲法に基づく教育の目的と理念
 日本国憲法に基づく教育の目的と理念は、*2-1のように教育基本法に記載されており、教育の目的は、「本人の人格完成を目指して、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた国民を育てること」である。そのために、①幅広い知識と教養、真理を求める態度を養う ②豊かな情操と道徳心を培う ③健やかな身体を養う ④個人の能力を伸ばして創造性を培う ⑤自主・自律の精神を養う ⑥勤労を重んずる態度を養う ⑦正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んじ、公共の精神に基づいて主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養う ⑦生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養う ⑧伝統・文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う 等としている。

 その中で、1)学校教育は公の性質を有する 2)学校では教育の目標が達成されるように教育を受ける者の心身の発達に応じて体系的な教育を組織的に行う 3)私立学校は、公の性質及び学校教育において果たす重要な役割に鑑み、国及び地方公共団体が自主性を尊重しつつ助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない とされており、政治教育については、4)良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない 5)法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならないとしている。

 このうち、上の1)3)が、大阪府や国が学校の設置に協力した論拠になるが、森友学園は2)5)に反しており、学校法人としての認可を与えたのが適切か否かが問われる。

 さらに、森友学園の園児が暗唱している敎育勅語は、*2-2のように、「①朕(ちん)惟(おも)フ(う)ニ 我(わ)カ(が)皇祖(こうそ)皇宗(こうそう) 國(くに)ヲ肇(はじ)ムルコト宏遠(こうえん)ニ 德(とく)ヲ樹(た)ツルコト深厚(しんこう)ナリ」「我(わ)カ(が)臣民(しんみん) 克(よ)ク忠(ちゅう)ニ 」と、天皇主権を前提に国民を天皇の臣下と位置づけ、天皇に忠を尽くすよう教えているため、日本国憲法に反する。

 また、「②克(よ)ク孝(こう)ニ」というのは、自分を犠牲にして親や家に尽くすことを要求し、親が決めた相手と結婚させられる悲劇が多かったため、日本国憲法は、第25条で「婚姻は両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関して、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない」としたのである。

 その上、敎育勅語の「一旦(いったん)緩急(かんきゅう)アレハ(ば) 義勇(ぎゆう)公(こう)ニ奉(ほう)シ(じ) 以(もっ)テ天壤(てんじょう)無窮(むきゅう)ノ皇運(こううん)ヲ扶翼(ふよく)スヘ(べ)シ」というのは、*2-4のように、第二次世界大戦中、老若男女を問わず、国民に異論を言わせず戦争に駆り立て、死ぬことを強要する根拠となったものだ。

 そのため、日本国憲法は、第9条で戦争の放棄を定め、第11条ですべての国民に基本的人権を認め、第12条で国民の不断の努力によつてこれを維持しなければならない としているのである。

2)稲田朋美防衛大臣の資質問題について
 安倍首相は、右寄りの稲田防衛大臣を引き立てて育てているが、左よりの元内閣府特命担当大臣(消費者・食品安全、少子化、男女共同参画)の森雅子氏も同様に引き立てており、この2人の選択根拠は、①女性の抜擢 ②どちらも旧森派 ③どちらも選挙区で勝利 など、稲田氏が右よりだからではない。

 その稲田防衛大臣は、*2-3のように、「教育勅語の精神を取り戻すべきだと今も思う」「文科省の方に『教育勅語のどこがいけないのか』と聞きました」「教育勅語の精神である日本が道義国家を目指すべきであること、そして親孝行だとか友達を大切にするとか、そういう核の部分は今も大切なものとして維持している」等と述べている。しかし、私自身は、教育勅語の推進は、第二次世界大戦の敗因を真摯に受け止めておらず、国民主権をないがしろにしている点で、大きな憲法違反だと考えている。

 そのため、日本国憲法は第19条で「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」としているものの、憲法違反の考えを推進する政治家や行政官に関しては、全政治家の品位を低く印象付ける政治とカネ問題や嘘をついた等の人格問題や道義的責任などという法律に定めのない曖昧な責任問題にすり変えるのではなく、憲法違反の思想信条や国造りの方針について単刀直入に追求すべきだと考える。

*1-1:https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20170313-00068645/ (YAHOO 2017/3/13) 【森友学園】裏切られた元地権者たち―8億円埋設物も「そんなものはない」、志葉玲 | フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
 政府がただ同然の安値で、学校法人「森友学園」に、国有地を払い下げた問題で、その土地が国有化される前に住んでいた住民達の代表が、筆者のインタビューに応じた。元々の地権者たち157名は、皆、森友学園による学校建設に憤っており、また生活ゴミや廃材などの大量の埋設物がその土地に埋まっていたという政府の主張に対しても疑問視しているという。
○裏切られた元地権者達
 今回、インタビューに応じたのは、乗光恭生さん。森友学園が「安倍晋三記念小学校」こと、「瑞穂の国記念小学院」を建設している大阪府豊中市野田町で町内会長をしている。今回問題になっている土地には、かつて157人の住民がいたと乗光さんは言う。航空機の騒音対策や阪神淡路大震災を受けての避難場所確保という目的から、1970年代から1990年代にかけ、国は豊中市の協力のもとで土地の国有化を進めてきた。だが、乗光さんは当初の目的と違うかたちで土地が使われていることに、「裏切られた」と憤っているという。「今、森友学園が小学校を建設している土地は、本来、そこに災害時の一時避難地としての役割も担う公園を建設するということを豊中市議会が平成11年(1999年)決議した土地です。野田町も阪神淡路大震災で大きな被害を受けましたから、私たち住民は地域のため、被災者支援のためにと、区画整理に応じ、あの土地から立ち退き、多額のお金を投じて新たに住居を立てたのです。私自身、元の家の解体と今の家の建築に3000万円ものお金を使いました。全ては、地域のため、公園をつくるためにしたことです」(乗光さん) 。野田市による公園建設の計画書。公園の右側になるはずの土地を森友学園が取得ところが、豊中市はその後、いつまでたっても公園の建設を始めない。森友学園による国有地取得の経緯について、最初にその問題を告発した木村真・豊中市議会議員はこう語る。「乗光さん達が住んでらっしゃった土地の確保やその後の公園建設という使い道については、国と豊中市で合意していたはずでした。ところが、国は急に態度を変え、公園をつくりたいなら、土地を相応の値で買え、と強硬に迫ったのです。豊中市は財政的事情から、本来、公園するはずだった土地の半分しか買えませんでした。買えなかったもう半分の土地というのが、森友学園が国土交通省大阪航空局と財務省近畿財務局から取得し、『瑞穂の国記念小学院』を建設している土地なのです」。既に報道されているように、豊中市が本来取得するはずの土地の半分に支払った金額は、14億2300万円。他方、豊中市が買えなかった、もう半分の土地は評価額が「9億5600万円」とされ、さらに土地の地下にある埋設物の除去費用を差し引いて、1億3400万円で森友学園に売却された。その上、国側は埋設物除去や土壌汚染対策として、1億3200万円の有益費を森友学園を支払った。つまり、本来は地域の人々のための公園になるはずだった土地を、国は豊中市に対しては値下げしない一方、森友学園には実質200万円で売却してしまったのである。乗光さんは、やるせない思いを吐露する。「あそこが公園になって、(住居の移転のため)お金を出した価値が戻るのであって、そうならないのなら、私たちにとっては損失ばかりです。しかも、あんな酷い学校を建てるなんて…」「もう、私も年ですから、そう長くは生きられないでしょう。妻にも去年、先立たれました。あの土地が公園になって地域に残せてこそ、私も安心して逝けます」(乗光さん)。
○埋設物は本当にあったのか?
 森友学園による国有地取得の際の8億1900万円の控除と、1億3200万円の有益費の根拠とされている地下埋設物についても疑問が残る。乗光さんは「あの土地にゴミなんか埋まってないですよ」と語る。「1960年代、私があの土地に家を建てた際、それまでは水田や畑でしたから、3メートルほど地面を掘ってコンクリートをしくなど基礎工事をしっかり行いましたが、その時もゴミなんか出てきませんでした。私たちが立ち退きする際、それまであった住宅は全て解体し、産廃業者が運んでいきました。立ち退き後も、土地はフェンスに囲まれ、関係者以外立ち入りできないようになっていました。私達の新たな住居も、あの土地のすぐそばで、私たちは毎日のように、土地の状況を見続けてきました。しかし、(処理費8億円に相当する)トラック4000台のゴミが運び込まれたり、そのために大きな穴を掘り返したりというようなことが行われている様子を、私たちは今まで見たことがありません」(乗光さん) 。もし、乗光さんの言うように、トラック4000台分という膨大な埋設物が実際に埋まっていないとしたら、最初から森友学園に激安で土地を提供するため、埋設物についての調査結果をねつ造したのではないか―そんな疑念が出てくる。そして、仮にそうだとしたら、なぜ官僚たちがそこまでしたのか、誰からの圧力があったのか、ということも明らかにしないといけないだろう。
○疑惑の解明はこれからだ
 「瑞穂の国記念小学院」については、森友学園側は認可申請を取り下げ、籠池泰典理事長も辞任する意向を表明した。だが、あくまで森友学園側は、土地を所有し続け、「瑞穂の国記念小学院」の認可もあきらめていないという。国側が買い戻すにしても、国有地が不正に払い下げられた疑惑を解明するべきだ。そして、その土地の国有化の経緯を考えれば、乗光さんら元地権者の意見を尊重すべきだろう。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASK3J6GKDK3JUTFK01N.html
(朝日新聞 2017年3月16日) 籠池理事長を23日に証人喚問 自民・民進が合意
 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題をめぐり、学園の籠池(かごいけ)泰典理事長は16日の参院予算委員会の現地調査で「安倍晋三首相から昭恵夫人を通じて100万円の寄付を受けた」と証言した。首相側は即座に寄付を否定。自民、民進両党は、籠池氏の証人喚問を23日に衆参各院で行うことで合意した。籠池氏の新証言で、籠池氏との個人的な関係を否定してきた首相の答弁の信用性が問われかねない事態になり、これまで参考人招致を拒んできた自民側が、うそをついた場合に偽証罪に問える証人喚問が必要と判断し、民進側に提案した。籠池氏は大阪府豊中市の小学校建設現場を視察した参院予算委の与野党メンバーに対し、2015年9月に学園の幼稚園に講演に来た昭恵氏から「どうぞこれをお使い下さい。安倍晋三からです」と言われ、建設寄付金として100万円を手渡されたと証言。「名前は書いていないが、日付が入ったものはある」とも述べた。これに対し、菅義偉官房長官は記者会見で、「首相に確認をしたところ、『自分では寄付はしていない。昭恵夫人、事務所等、第三者を通じても寄付していない』ということだった」と述べた。昭恵氏が個人として寄付したかどうかは確認しているという。首相も記者団に「官房長官から話があった通り」と語った。証言を受け、自民、公明両党の国会対策委員長は国会内で会談。「首相に対する侮辱だ」(自民の竹下亘国対委員長)として証人喚問に応じる考えで一致。竹下氏は民進の山井和則国対委員長と電話会談し、衆参それぞれの予算委員会で23日に証人喚問を行うことで合意した。17日に正式決定する。国有地売却の不透明な経緯や政治家の関与が国会で議論となるなか、首相は「私や妻が(国有地売却や学校認可に)関係していたことになれば首相も国会議員も辞める」(2月17日の衆院予算委)と断言。籠池氏については「複数の中でお目にかかったかもしれないが、少人数ではない。個人的な関係は全くない」(同28日の参院予算委)と答弁していた。
     ◇
〈証人喚問〉 国会の国政調査権を定めた憲法62条に基づく制度。うそをついた場合は、議院証言法に基づき国会から告発され、偽証罪(3カ月以上10年以下の懲役)に問われる。正当な理由なく、出頭や証言を拒否しても禁錮刑や罰金を科せられる。近年では、2012年4月にAIJ投資顧問による年金資産詐取事件の浅川和彦社長、07年10月に防衛汚職事件の守屋武昌・元防衛事務次官、05年12月に耐震偽装事件の元建築士らが喚問された。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/ASK3J520TK3JUTFK00P.html
(朝日新聞 2017年3月16日) 籠池氏、調査に「首相から100万円」 官房長官は否定
 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地払い下げ問題をめぐる参院予算委員会の16日の現地調査で、籠池(かごいけ)泰典理事長への聞き取り調査を終えた舟山康江氏(民進)が記者団に「(籠池氏が)安倍(晋三)首相から、(昭恵)夫人を通して100万円をもらった、と語った。時期は2015年9月ごろ」と説明した。一方、菅義偉官房長官は同日午後の記者会見で、首相に確認したところ、「自分では寄付していない。昭恵夫人、事務所等、第三者を通じても寄付していない」との説明があったことを明らかにした。昭恵氏が個人として寄付したかどうかについても、念のために確認していることも説明した。現地調査では、山本一太委員長ら11人が学園が開校をめざしていた大阪府豊中市の小学校建設現場も視察した。敷地内では、籠池氏の案内を受けた。学園や籠池氏について、首相はこれまで、国会で「私や妻が(国有地売却や学校認可に)関係していたことになれば首相も国会議員も辞める」(2月17日の衆院予算委)、「複数の中でお目にかかったかもしれないが、少人数ではない。個人的な関係は全くない」(同28日の参院予算委)と答弁している。

*2-1:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO120.html
教育基本法 (平成十八年十二月二十二日法律第百二十号)
第一章 教育の目的及び理念
(教育の目的)
第一条  教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
(教育の目標)
第二条  教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一  幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二  個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三  正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四  生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五  伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
(生涯学習の理念)
第三条  国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。
(教育の機会均等)
第四条  すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
2  国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
3  国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。
第二章 教育の実施に関する基本
(義務教育)
第五条  国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
2  義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
3  国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。
4  国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。
(学校教育)
第六条  法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
2  前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。
(大学)
第七条  大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
2  大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。
(私立学校)
第八条  私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。
(教員)
第九条  法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
2  前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。
(家庭教育)
第十条  父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。
2  国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。
(幼児期の教育)
第十一条  幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。
(社会教育)
第十二条  個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。
2  国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。
(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)
第十三条  学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。
(政治教育)
第十四条  良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。
2  法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
(宗教教育)
第十五条  宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。
2  国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
第三章 教育行政
(教育行政)
第十六条  教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。
2  国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。
3  地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。
4  国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。
(教育振興基本計画)
第十七条  政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。
2  地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。
第四章 法令の制定
第十八条  この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない。
   附 則 抄
(施行期日)
1  この法律は、公布の日から施行する。

*2-2:http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/kyoiku_chokugo.htm
敎育ニ關スル勅語(全文)
 朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世々厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ敎育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重ジ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ獨リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン
斯ノ道ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ
明治二十三年十月三十日
御名御璽

教育勅語の読み
朕(ちん)惟(おも)フ(う)ニ 我(わ)カ(が)皇祖(こうそ)皇宗(こうそう) 國(くに)ヲ肇(はじ)ムルコト宏遠(こうえん)ニ 德(とく)ヲ樹(た)ツルコト深厚(しんこう)ナリ
我(わ)カ(が)臣民(しんみん) 克(よ)ク忠(ちゅう)ニ 克(よ)ク孝(こう)ニ 億兆(おくちょう)心(こころ)ヲ一(いつ)ニシテ 世(よ)世(よ)厥(そ)ノ美(び)ヲ濟(な)セルハ 此(こ)レ我(わ)カ(が)國體(こくたい)ノ精華(せいか)ニシテ 教育(きょういく)ノ淵源(えんげん)亦(また)實(じつ)ニ此(ここ)ニ存(そん)ス
爾(なんじ)臣民(しんみん) 父母(ふぼ)ニ孝(こう)ニ 兄弟(けいてい)ニ友(ゆう)ニ 夫婦(ふうふ)相(あい)和(わ)シ 朋友(ほうゆう)相(あい)信(しん)シ(じ) 恭儉(きょうけん)己(おの)レヲ持(じ)シ 博愛(はくあい)衆(しゅう)ニ及(およ)ホ(ぼ)シ 學(がく)ヲ修(おさ)メ 業(ぎょう)ヲ習(なら)ヒ(い) 以(もっ)テ智能(ちのう)ヲ啓發(けいはつ)シ 德噐(とくき)ヲ成就(じょうじゅ)シ 進(すすん)テ(で)公益(こうえき)ヲ廣(ひろ)メ 世務(せいむ)ヲ開(ひら)キ 常(つね)ニ國憲(こくけん)ヲ重(おもん)シ(じ) 國法(こくほう)ニ遵(したが)ヒ(い) 一旦(いったん)緩急(かんきゅう)アレハ(ば) 義勇(ぎゆう)公(こう)ニ奉(ほう)シ(じ) 以(もっ)テ天壤(てんじょう)無窮(むきゅう)ノ皇運(こううん)ヲ扶翼(ふよく)スヘ(べ)シ 是(かく)ノ如(ごと)キハ 獨(ひと)リ朕(ちん)カ(が)忠良(ちゅうりょう)ノ臣民(しんみん)タルノミナラス(ず) 又(また)以(もっ)テ爾(なんじ)祖先(そせん)ノ遺風(いふう)ヲ顯彰(けんしょう)スルニ足(た)ラン
斯(こ)ノ道(みち)ハ 實(じつ)ニ我(わ)カ(が)皇祖(こうそ)皇宗(こうそう)ノ遺訓(いくん)ニシテ 子孫(しそん)臣民(しんみん)ノ倶(とも)ニ遵守(じゅんしゅ)スヘ(べ)キ所(ところ) 之(これ)ヲ古今(ここん)ニ通(つう)シ(じ)テ謬(あやま)ラス(ず) 之(これ)ヲ中外(ちゅうがい)ニ施(ほどこ)シテ悖(もと)ラス(ず) 朕(ちん)爾(なんじ)臣民(しんみん)ト倶(とも)ニ 拳拳(けんけん)服膺(ふくよう)シテ 咸(みな)其(その)德(とく)ヲ一(いつ)ニセンコトヲ庶(こい)幾(ねが)フ(う)
明治二十三年十月三十日
御名(ぎょめい) 御璽(ぎょじ)

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/ASK385H5KK38UTFK00M.html (朝日新聞 2017年3月8日) 稲田氏「教育勅語の精神、取り戻すべきだと今も思う」
 稲田朋美防衛相は8日の参院予算委員会で、天皇を頂点とする秩序をめざし、戦前の教育の基本理念を示した教育勅語について、「日本が道義国家を目指すというその精神は今も取り戻すべきだと考えている」と述べた。社民党の福島瑞穂氏に答えた。学校法人「森友学園」が運営する幼稚園で教育勅語を素読させていることに文部科学省が「適当ではない」とコメントしたことについて、稲田氏は2006年10月の月刊誌で「文科省の方に『教育勅語のどこがいけないのか』と聞きました」と擁護していた。福島氏は「今もこの考えを変えていないのか」と問うた。稲田氏は「教育勅語の精神である日本が道義国家を目指すべきであること、そして親孝行だとか友達を大切にするとか、そういう核の部分は今も大切なものとして維持をしているところだ」と述べた。福島氏が、教育勅語が終戦後の1948年に衆参両院が排除・失効の確認を決議していることを指摘すると、「教育勅語自体が全く誤っているというのは私は違うと思う」と反論。三重県の私立高校を例に挙げて、「今も教育勅語の碑を校庭に置き、父母の日に教育勅語を全部写させている学校もある」と述べた。福島氏から「教育勅語が戦前、国民の道徳の規範になって問題を起こしたという意識はあるか」と問われると、「そういうような一面的な考え方はしていない」と答えた。稲田氏は2月23日の衆院予算委員会でも民進党の辻元清美氏から教育勅語に対する考え方を問われ、「教育勅語の中の親孝行とかは良い面だ。文科省が言う、(教育勅語を)丸覚えさせることに問題があるということはどうなのかと思う。どういう教育をするかは教育機関の自由だ」と答えていた。

*2-4:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-461489.html (琉球新報社説 2017年3月16日) 全学徒隊の碑 「強制動員」の歴史忘れまい
 糸満市摩文仁の平和祈念公園内に「全学徒隊の碑」が建立された。今から72年前、県内21の中等学校、師範学校などの生徒(学徒)が沖縄戦に動員され犠牲になった事実を伝える。沖縄に配備された日本軍の任務は、沖縄を守り抜くことではなく、米軍を一日でも長く引きつけて「出血消耗」させ、日本本土への攻撃を遅らせることだった。そのために少年少女たちは半ば強制的に動員され、約半数が命を落とした。学徒隊として「ひめゆり」や一中、二中、師範の鉄血勤皇隊が知られるが、その他の学徒隊はあまり知られていない。全学徒隊の碑の建立を機に、改めて沖縄戦の実相を明らかにし後世に伝える重要性を確認したい。動員された学徒のうち、男子は14歳から19歳で、上級生は「鉄血勤皇隊」に、下級生は「通信隊」に編成された。女子は15歳から19歳で、主に負傷兵の看護活動に当たった。正確な数字は不明だが、ひめゆり平和祈念資料館によると、男女1900人以上が動員され981人が死亡した。男子学徒の動員は「志願」という形を取っているが、結果的に強制だった。米軍押収史料によると、軍が県と覚書を交わして、14歳以上の生徒の名簿をあらかじめ軍に提出させていた。その名簿に基づいて3月末、有無を言わせず学徒たちを召集し、2等兵として従軍させた。女子生徒の動員に対し、県は抵抗したが軍に押し切られた。軍の強制とはいえ、県が軍に協力した事実を忘れてはならない。爆薬を背負って米軍戦車めがけて自爆することを命令された学徒もいる。刀や手りゅう弾だけで敵に向かっていく斬り込みも命じられた。命を武器として扱う特攻である。学徒の犠牲は日本軍が首里の司令部を放棄して南部撤退後に多くなる。米軍が迫って来た6月上旬~下旬、学徒隊ごとに解散命令が出た。周りを米軍に囲まれ、砲弾が降り注ぐ中、逃げ惑い、悲惨な最期を遂げた。沖縄戦は終わったが、今でも世界の紛争地には多くの少年たちが徴兵・徴用されている。今回建立された碑は、沖縄戦の実相を伝えると同時に、子どもの生命を脅かし夢と希望を奪う行為を許してはならない-というメッセージを発信する場となってほしい。


PS(2017年3月20日追加):*3によると、昭恵夫人は「寄付した記憶は全くない」と話しておられるそうだが、「記憶がない」という言葉は、「①寄付したが言わない」「②寄付したかも知れないが忘れた」「③寄付していない」のどの場合にも使うことができ、これまで①の場合に使う人が多かったため、かえって疑いが濃くなる。そのため、寄付したことを明確に否定するか、寄付したのならその理由を明確に説明するのがよいだろう。いずれにしても、夫人であって首相本人ではない。

*3:http://mainichi.jp/articles/20170317/k00/00e/040/219000c (毎日新聞 2017年3月17日) 昭恵夫人が100万円の寄付否定
 菅義偉官房長官は17日午前の記者会見で、大阪市の学校法人「森友学園」の籠池(かごいけ)泰典理事長が発言した「安倍晋三首相から昭恵夫人を通じて100万円の寄付を受けた」との事実を否定した。「安倍事務所を通じて夫人に確認したところ、領収書等の記録もなく、夫人個人としても寄付は行っていないということだった」と述べた。衆院予算委員会は17日昼、籠池氏の証人喚問を23日に行うことを全会一致で議決した。参院予算委も同じく23日の喚問を議決した。政府関係者によると、昭恵さんは「寄付した記憶は全くない」と話している。籠池氏が寄付を受けたと主張した2015年9月の昭恵さんの講演に同行した政府職員も「寄付をするような場面はなかった」と証言しているという。菅氏は証人喚問について「国会でお決めになることだ。政府は説明を丁寧に行っていくことに尽きる」と述べた。証人喚問は12年4月、AIJ投資顧問の年金消失問題で同社社長(当時)に行って以来。自民、公明両党は17日午前、幹事長らが国会内で会談し、証人喚問を行う方針を確認した。自民党の二階俊博幹事長は記者会見で、16日の参院予算委の視察で籠池氏が首相の寄付に言及したことについて「物事をはっきりしてもらいたい。首相とああいう人(籠池氏)を一緒にしないでもらいたい」と語った。証人喚問は出頭を拒否したり虚偽答弁をしたりすれば、議院証言法に基づき罪に問われる。与党は籠池氏の真意をただす必要があると判断。野党も応じた。民進党の蓮舫代表は党会合で「首相が侮辱されたから国会に招くのではない。国有地が首相の知人に不当に払い下げられたのではないか。この視点を間違えてはいけない」と語った。森友学園の民事訴訟に出廷していたことを認めた稲田朋美防衛相は「しっかり事実関係、真実を話してほしい」と発言。籠池氏が言及した首相の寄付に関して「全く承知していない」と語った。


PS(2017年3月23日追加):話は変わるが、*4のように、学童保育を高齢者の介護施設に併設すると、子どもは高齢者から勉強や遊び方、昔話、高齢者のやさしさなどを教えてもらうことができ、高齢者は子どもの元気を分けてもらうことができるので、お互いによいと思われる。

*4:https://www.agrinews.co.jp/p40429.html (日本農業新聞 2017年3月22日) 福祉施設に併設 子育て 地域ぐるみ 熊本・JAくま 直営学童保育
 熊本県のJAくまが、中山間地域のあさぎり町で学童保育(学童)の運営に乗り出している。既存の施設が人手不足や採算性の悪さで維持が難しくなったため、JAが手を挙げた。学童をJAの高齢者介護施設に併設し、両施設で人員を融通することで安定的な経営を実現した。保護者や地元行政から喜ばれており、専門家は「地域に根差す取り組み。JA直営は全国的にも珍しい」と指摘する。


PS(2017年3月24日追加):昨日の参院及び衆院予算員会で籠池氏の証人喚問を聞き、①西田議員(自民党、税理士)の質問で、籠池氏が8億円程度の資金不足だったこと ②竹谷議員(公明党、公認会計士)の質問で、籠池氏が真実のみを回答しているわけではないこと がよくわかった。さらに、現在、焦点となっている「昭恵夫人が100万円の寄付をしたか」については、国会議員は悪意で何を言われるかわからないので、必ず秘書等と一緒に人(メディアも含む)と会うようにしており、昭恵夫人の場合も人払いをしたというのは嘘だと思われる。
 また、*5の籠池氏が国有地の借地権延長に関して谷氏に手紙を出した回答のFaxは、昭恵夫人は電話がかかってきた時に出ておらず、夫人担当の政府職員が調べて0回答したもので瑕疵はないように見える。国会議員(夫人も)はこういうことを陳情する支持者に明確に断るとカドがたつため、こういう曖昧な断り方をすることがあり、これは断っている態度だ。しかし、その後、ゴミが埋まっていたとして8億円値引きして国有地が売却され、学校建設のために足りなかった費用の埋め合わせができており、籠池氏は「職員の働き掛けで物事が動いた」と証言している。もし、首相や昭恵夫人が何も言わないのに勝手に“忖度(そんたく)”したのなら、国民の財産を自分の出世ために安売りしたのであるため財務省担当者に責任があり、もし首相の指示があって物事が動いたのなら首相の責任になる。

 
 2017.3.23   2017.3.6  2017.2.21goo  2017.3.23goo  2017.3.24
 毎日新聞    朝日新聞                     朝日新聞  

(図の説明:籠池氏は「ゴミの除去は建物の下のみやった」と述べているが、本当にゴミがあったのなら運動場の方が子どもへの影響が大きいため重大だ。また、国の査定額と大阪府私学審議会への報告の差額は8億円程度であり、8億円の土地値引きがあると資金繰りに整合性が出る)

*5:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017032301001653.html (東京新聞《共同》 2017年3月23日) 森友、昭恵夫人の担当職員関与 財務省に照会、菅氏は影響否定
 菅義偉官房長官は23日の記者会見で、大阪市の学校法人「森友学園」の国有地払い下げ問題に絡み、学園理事長の退任意向を表明している籠池泰典氏の問い合わせに対し、安倍昭恵首相夫人を担当する政府職員が回答した2015年のファクスを公表した。ファクスは国有地に関し財務省に問い合わせ、結果を昭恵夫人に報告したと明記した。籠池氏は同日の衆院予算委員会の証人喚問で職員の働き掛けで「物事が動いた」と証言した。菅氏は昭恵夫人の関与や照会の影響を否定した。森友学園が小学校建設を計画した国有地を評価額よりも8億円安く取得した問題を巡り、昭恵夫人側の関与が明らかになった格好だ。


PS(2017.3.28追加):監査経験のある公認会計士の目で見ると、財務省は定期借地権の延長や借地料の値下げは(影響が長期に及び、関係者が多数になるため?)できず、売買に切り替えてゴミ撤去費用の名目で8億円値引きし、周辺の地価と比べて9割安の条件で土地を売却したというシナリオが矛盾が最も少ない。しかし、その際には、①新年度予算のうち他の兆円単位、1000億円単位の無駄遣いと比較して大きいか否か ②学校用地として8億円値引きして払い下げるのは不適切か ③経産省や財務省への政治家の指示があったか否か などが問題となる。
 私は、①については、8億円でも無駄遣いはやめて欲しいが、財務省や国会議員は、他の兆円単位や1000億円単位の無駄遣いを野放しにして、国民の生命線である福祉を削ったり、消費税を上げなければ財源がないなどとは決して言って欲しくない。また、②については、教育基本法第八条に、「私立学校も助成その他の適当な方法で私立学校教育の振興に努める」と規定されているため、よい学校への土地の低廉譲渡は違法ではないが、森友学園の場合は教育勅語をバイブルとし、籠池理事長が証人喚問で「皇国日本に役立つ国民を育てる」と連呼するなど、民主主義や主権在民を無視した教育を行う人であるため、そもそも認可したり優遇したりすべき学校ではなかったのだと考える。そして、③については、政治家の指示があったか否かは不明だが、このような学校に関わってその教育方針を褒めちぎっていたことについては、やはり昭恵夫人や安倍首相の感性に疑問を感じざるを得ない。
 そのため、この土地は、豊中市か大阪府か国が建物とともに買い、建物は他の学校にするとか、避難所にするなど、他の有意義な使い方をするのがよいと思われる。

*6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12863223.html
(朝日新聞社説 2017年3月28日)森友と財務省 納税者を甘く見るな
 森友学園(大阪市)を巡る様々な問題について国会で激しい論戦が続くなか、国の新年度予算が成立した。与党からは「次のステージに向かう時だ」との声があがり、幕引きを急ごうとする動きが見られる。とんでもない。学園の籠池(かごいけ)泰典氏の証人喚問を経ても疑惑は晴れない。安倍首相夫人の昭恵氏や昭恵氏付の政府職員の行動が、学園への異例づくしの国有地売却などに影響したのか、事実関係の徹底解明が不可欠だ。見過ごせないのは、取引の経緯を詳しく説明しようとしない財務省の姿勢である。国有地の売却ではその金額を原則公表してきたのに、森友側との取引では伏せた。財務省近畿財務局によるこの異例の対応が一連の疑惑の発端になった。遊休国有地の取引は売買が主流なのに、定期借地契約を認めた。その後売買に切り替えたが、ゴミ撤去費用を巡る不明朗な見積もりを経て、周辺の地価と比べて9割安という破格の条件になった。財務省は「適正に処理した」と繰り返す。交渉記録は廃棄したから残っていない。法令違反はない。関係者への聞き取り調査はしていない――。最近になって一部の調査結果を公表したが、自分たちが正しいから信じろと言わんばかりだ。国会では当時の理財局長と近畿財務局長の参考人招致が実現したが、「報告がなかった」「政治的配慮はしていない」との発言にとどまった。財務省の仕事は、国有財産の管理と不要な資産の処分にとどまらない。税制を考え、それに基づいて税金を徴収し、予算案として配分を練るという政府の仕事の中核を担っている。そうした役割は納税者・国民の理解と納得に支えられている。財務省を含む政府の説明が明らかに足りないと考える人が多数を占める現状に、危機感はないのだろうか。ただちに関係者から話を聞き、誰がどう動いたかを再現して、国会で説明するべきだ。自ら調べる意思がないのなら、第三者に任せるしかない。土地の売却契約の成立から1年もたたずに記録を廃棄したとしているのも適切でない。内規に基づく措置だというが、内規自体が情報公開を充実させる基本に反していることを自覚し、猛省しなければならない。かたくなな財務省は何を心配しているのだろう。自らの組織の防衛か、森友問題で浮上した政治家への配慮なのか。納税者の目は厳しい。甘く見れば必ずしっぺ返しがある。


PS(2017年3月28日追加):「安倍首相の妻昭恵氏が公人か私人か」については、私は公人として報酬をもらっていない以上、私人だと考える。これに対し、①首相の外遊への同行など首相の公務遂行を補助する活動を行っている ②夫人付き職員が首相関連の公的活動を支援するために配置されている 等の理由で公人だという主張があるが、①については、首相夫人は選挙で選ばれた議員ではなく、首相の外交にプラスαの付加価値をつけるため無償で行っている内助の功にすぎないため、公人と考えるべきではないだろう。また、②については、配置されている夫人付き職員は報酬をもらってプロの仕事をしているので公人だが、夫人は無償で内助の功をしているにすぎないため、公人ではないだろう。そして、仮に配偶者が公人であるとすれば、配偶者にも報酬を支払うべきであり、その職務に耐えうる配偶者を持っている人でなければ首相になることはできないため、変なことになる。つまり、何でも政治家に不都合なように拡大解釈してケチをつけると常識外れになり、むしろ支持率が下がるのだ。

*7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201703/CK2017032802000108.html (東京新聞 2017年3月28日) 【政治】「昭恵氏は私人」に野党が異議 首相夫人付き職員が「職務外」の照会報告
 学校法人「森友学園」に国有地が格安で払い下げられた問題で、安倍晋三首相の妻昭恵氏が、公人か私人かが問われている。首相は昭恵氏を「私人」と主張し証人喚問を拒否している。だが、学園に関連して、首相夫人付き職員が本来の職務を超えて対応している実態をみると、昭恵氏が「私人」との主張には疑問符が付く。 政府によると、夫人は公務員ではないが、首相外遊への同行など「首相の公務遂行を補助する活動」を行う。夫人付き職員は、首相に関連した公的活動を支援するため配置されている。第一次安倍政権で昭恵氏に初めて配置され、その後一人だったが、第二次安倍政権で常勤、非常勤で計五人に増員された。学園の籠池(かごいけ)泰典氏の依頼で、夫人付き職員が財務省に問い合わせてファクスで回答したことについて、菅義偉官房長官は二十七日の参院予算委員会で、夫人とは関係ない職務外の行為であり、「職員個人の行為」だと強調した。さらに、土生(はぶ)栄二内閣審議官は「職務ではなく『国民の方』の問い合わせに対する公務員としての『丁寧な対応』」と説明した。しかし、職員は昭恵氏に照会や回答について報告。そのことを籠池氏にも伝えている。民進党の白真勲氏は同委員会で「詭弁(きべん)だ」と反発した。職員は、昭恵氏が学園系列の幼稚園で講演し、小学校の名誉校長になった際に「連絡・調整が必要になる場合に備えて」同行した時に籠池氏と面識を持ったとみられる。職員が昭恵氏に報告したのは、籠池氏との関係を知っていたからだ。首相夫人付き職員は学園での講演のように、昭恵氏の私的な行為にも同行している。「夫人は公務員ではないから公人ではない」との説明には野党から批判が出ている。


PS(2017年3月31日、4月4日追加):*8-1に、「政府は、憲法や教育基本法等に反しない形で教育勅語を教材として用いることは否定されないと閣議決定した」と書かれているが、*2-2の最後には、「教育勅語に書かれていることは、天皇のためだけでなく、祖先の遺した文化であり、この道徳は皇祖・皇宗の遺訓であって子孫・臣民が倶に遵守すべきだから、古今に通じて護らなければならない」と記載されている。そのため、それなら、このどこを憲法や教育基本法等に反しない形で教材として利用できるのかを明示すべきだ。私自身は、教育勅語は日本史や文化人類学の教科書で教えることができるにすぎず、民主主義の下で日進月歩しており、古今で決して同じではない人類の生活様式やそれに基づく考え方とは相いれない。さらに、日本史や世界史は、「古事記や日本書紀等の文書に残されていないから、そういう事実はなかった」とするような非科学的な史実ではなく、地理学・遺伝学・考古学・行動学・社会学・比較文化等のあらゆる手法を駆使して、人類の誕生・気候変動・地殻変動・人類の地球上での拡散・それに伴って起こった戦争や文化の拡散などを、体系的かつ矛盾なく明らかにすべき時に来ており、現在の科学は既にその手法を持っている。そして、そうすることによって歴史は暗記科目ではなく筋の通った科学にすることができ、その中で、実験することが不可能な人間の行動や社会現象は過去の歴史を見れば過去にも似たようなことが起こっていて参考になることがあるわけだ。
 なお、*8-2の4月4日の記事に書かれているように、松野文科相は、「(教育勅語の)どの部分が憲法に反する、反しないに関して文科省は判断しない」として判断基準を明示しなかったそうだが、それなら文科省は教科書検定も行うことができない筈だ。しかし、本当は、(首相の問題と言うより)自民党の党是であり自民党のDNAと言われる自民党憲法改正草案(①天皇元首制 ②日本国民→日本国への変更 ③基本的人権の制限 等)や特定秘密保護法、共謀罪、安保法制と、この教育勅語復活論は考え方が同根で、下位の法律からのなし崩し的憲法改悪であるため、関連付けて考えるのがポイントである。

   
   教育勅語の排除・失効   稲田大臣の答弁  2017.3.31、2017.4.4朝日新聞

*8-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK3045LBK30ULFA00Q.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2017年3月31日) 教育勅語、教材で用いること否定せず 政府が答弁書
 政府は31日、戦前・戦中の教育勅語を学校教育で使うことについて、「勅語を我が国の教育の唯一の根本とするような指導を行うことは不適切である」としたうえで、「憲法や教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」との答弁書を閣議決定した。民進党の初鹿明博衆院議員の質問主意書に答えた。勅語については、太平洋戦争後の1948年、衆参両院が排除・失効の確認を決議している。また、稲田朋美防衛相が国会答弁で「親孝行や友達を大切にするとか、そういう(勅語の)核の部分は今も大切なもの」と述べたことの是非について、答弁書は「政治家個人としての見解」とし、政府としての見解を示さなかった。

*8-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12875229.html
(朝日新聞 2017年4月4日) 教育勅語、説明避ける内閣 教材で使用認める閣議決定
 戦前・戦中に道徳や教育の基本方針とされた「教育勅語(ちょくご)」を教材で使うことを認めた政府答弁書の閣議決定について、安倍内閣が詳しい説明を避けている。学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題を追及されるなか、教育勅語が注目されるきっかけをつくった稲田朋美防衛相も口を閉ざした。
■判断基準、文科相明示せず
 3日の衆院決算行政監視委員会。共産党の宮本徹氏は、「教育勅語の中で憲法に反しない部分は1カ所でもあるのか」と政府の見解を問うた。先月31日に安倍内閣が閣議決定した政府答弁書は、過去に国会が排除・失効の確認を決議した教育勅語を「憲法や教育基本法等に反しないような形」で教材として使うことを認めたからだ。使用を認めるのであれば、政府として具体的な判断基準を示す必要があるが、松野博一文部科学相は「(教育勅語の)どの部分が憲法に反する、反しないに関しての判断を文部科学省でするものではない」と解釈を避けた。そのうえで「教え方がポイントだ。我が国の歴史について理解を深める観点から教材として用いることは問題がない」と説明した。菅義偉官房長官も3日の記者会見で、教育勅語の本質や戦争中に教育勅語が果たした役割を問われたが、「法制上の効力は喪失している」と繰り返し、教材として教育現場で使うことは問題ないとの立場を強調。「教育勅語を我が国の教育の唯一の根本となるような指導を行うことは不適切だ」とする一方で、親孝行や夫婦仲良くといった徳目は評価する見方を示した。政権を支持する保守層には、教育勅語を評価する声が少なくない。記者たちから「教育勅語の内容を評価すると、戦前の否定をあいまいにすることになるのではないか」と問われると、「あいまいにしていないじゃないですか。法制上の効力は完全に消滅している」と、声を荒らげた。
■森友巡る防衛相答弁端緒
 論争のきっかけは、森友学園への国有地売却問題を追及された稲田氏の答弁だった。
 稲田氏は、教育勅語を幼稚園児に素読させている学園の教育方針を2006年の雑誌の対談で評価していた。2月23日の衆院予算委員会や3月8日の参院予算委でこの考え方を問われ、「教育勅語に流れているところの核の部分は取り戻すべきだ」などと発言した。稲田氏の一連の発言を受けて質問主意書を出し、今回の政府答弁書を引き出した民進党の初鹿明博氏は、「教育勅語の核は(天皇中心の)神話的国体観であり、それに閣僚が賛意を示すことは国際社会に疑念を与えてしまう」と話す。文科省によると、教育勅語の学校現場での使われ方に言及した答弁書は今回が初めて。作成に関わった同省生涯学習政策局政策課は「意図的に踏み込んで言ったわけではない。明治時代に出されたことを教えることまで禁止できないことを表現するためにあの書き方になった」と説明する。これに対して、共産の小池晃書記局長は3日の会見で、「ひとたび事が起これば天皇のため命を捧げるという教育勅語の根本は戦後、憲法や当時の教育基本法に反するから排除された。いいところがあるから使おうと閣議決定するところに、安倍政権の危険な姿勢が表れている」と批判した。共産の宮本氏はこの日の衆院決算行政監視委で、海上自衛隊OBらがつくる「水交会」の行事に海自幹部が出席するなか、森友学園の幼稚園児たちが教育勅語を唱和していたとも指摘。「おかしいと思う幹部はいなかったのか」とただした。稲田氏は「部外の団体主催の行事の内容について、防衛省としてお答えする立場にはない」と述べ、具体的な回答を避けた。


PS(2017年4月4日追加):教育勅語は、「天皇の臣民である日本国民が、心を一つにして忠孝に励むのが教育の目的である」としている。そのため、それを校是としている学校を認可するのは、いくら私学に入ってきてもらいたいといってもいかがなものかと考える。何故なら、それぞれの段階の教育は、その人にとっては一生に一度しか受けられないやり直し不可能なものであるため、単なる煩雑な手続ならともかく、教育の内容や質については、規制緩和すればよいというものではないからだ。
 なお、私は、先日、夫の学会(癌やバイオテクノロジーが中心で、これに関しては後で詳述する)に同伴してスペインに行き、マドリッドのプラド美術館とバルセロナのピカソ美術館・ミロ美術館に寄ってきたが、幼稚園から高校までの生徒が先生に引率されてひっきりなしに来ており、絵の前で説明を受けたり、ディスカッションしたり、あらかじめ配布された用紙に答えを書いたりしていたのに感心した。私は、このように広い裾野の生徒にセンスのよい創造力を身につけさせるため本物を見せる教育こそ、単純労働はロボットに置き替えられる時代の人間にとって必要不可欠だと考える。何故なら、そういう基礎があって初めて、部屋・レストランのコーディネートや服・カバン・靴・家電のデザインで、思わぬ色や形を組み合わせながら、センスのよさが光っているのだからである。

    
     教育勅語     籠池氏経営、塚本幼稚園の教育  松井大阪府知事の話 
 
*9:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12875189.html
(朝日新聞社説 2017年4月4日) 森友学園問題 大阪府も解明に全力を
 学校法人・森友学園の問題では、小学校の設置認可をめぐる様々な疑問も未解明のままだ。学園側の申請に対し、大阪府私学審議会には多くの異論があったのに、なぜ「認可適当」と答申したのか。学校用地に関する財務省と府の言い分も大きく食い違う。政府をチェックする国会はもちろん、認可に責任をもつ府も徹底調査すべきだ。学園が府に認可を申請したのは14年10月。同年12月の府私学審では、「永続的に小学校を運営できるか疑問」「思想教育のような部分がある」などの指摘が噴出した。だが翌年1月に臨時に開かれた審議会は、「進捗(しんちょく)状況を報告させる」という条件つきで、認可適当とした。府私学審の梶田叡一会長は先月の府議会で「学園が用地を取得する前に、認可の審議に入ったのは極めて異例だった」としたうえで、府が認可の見通しを出せば、国(近畿財務局)の審議会で森友側に国有地が渡る「確約があった」と語った。疑義に目をつむって、府と財務局が認可の流れを作ったように受け取れる。公平な審査がなされたのか、大いに疑問だ。松井一郎知事も会見で、「国から『認可の見込みと発表してくれ』と言われた」と、国側の要請があったことを認めた。しかし財務省は否定する。両者で責任を押しつけあっていては、らちが明かない。双方が公の場で詳細を語るしかない。府議会では、この問題のための百条委員会の設置案が否決された。自民の提案に、大阪維新の会と公明が反対した。維新の会代表の松井知事は賛意を示していたのに、理解に苦しむ。反対理由は「まず参考人招致をするのが筋」だった。ならば速やかに財務省や大阪航空局の担当者を招き、府議会として事実関係をただすべきだ。理事長を退いた籠池(かごいけ)泰典氏は国会の証人喚問で、協力を求めた複数の議員名をあげた。中には自民や維新の元府議もいる。真相にどこまで迫れるか、府議会の本気度が問われる。知事は、安倍昭恵氏が小学校の名誉校長だったことに触れ、「役所組織みんなでおもんぱかったのだろう」と語った。公正であるべき行政手続きを逸脱しなかったか、検証する必要がある。昭恵氏が名誉校長に就任したのは15年9月。14年12月にも、学園が運営する幼稚園で講演している。まさに府が認可を審査していた時期だ。府は補助金不正受給の疑いで幼稚園を調査したが、それ以外にも明らかにすべき点は多い。幕引きモードは許されない。


PS(2017.4.15追加):*8-1のように、教育勅語の教材化を否定しないことを閣議決定した上、*10のように、ヒトラーの「わが闘争」の教材使用を可能とする政府答弁書を出すなど、この頃、内閣はどうかしている。なお、歴史としてなら、これまでも日本史や世界史で教えており、わざわざ閣議決定をしたり、政府報告書を出したりする必要はない。

*10:http://www.jiji.com/jc/article?k=2017041401032&g=pol (時事ドットコム 2017.4.14) 「わが闘争」の教材使用可能=政府答弁書
 政府は14日の持ち回り閣議で、ナチス・ドイツの独裁者ヒトラーの自伝的著書「わが闘争」の教材使用について、「教育基本法等の趣旨に従っていること等の留意事項を踏まえた有益適切なものである限り、校長や学校設置者の責任と判断で使用できる」とする答弁書を決定した。民進党の宮崎岳志氏の質問主意書に答えた。答弁書では、「同書の一部を引用した教材を使用して、執筆当時の歴史的な背景を考察させる授業が行われている例がある」と紹介。その上で、「仮に人種に基づく差別を助長させる形で使用するならば、同法等の趣旨に合致せず、不適切であることは明らかだ」と指摘し、そうした指導があった場合は「所轄庁や設置者において厳正に対処すべきものだ」としている。

| 教育・研究開発::2016.12~ | 11:23 AM | comments (x) | trackback (x) |
2016.12.9 教育・科学とカジノについて (2016年12月10、13、26日、2017年1月1、2、9日に追加あり)

   カジノの課題     2011年中核都市の   全国学力テスト順位   平均点の国際比較
2016.12.7西日本新聞  生活保護受給率                   2016.12.6佐賀新聞

(図の説明:カジノとは日本語で賭博のことで、犯罪を起こさせるきっかけになったり、普通の人を破綻させたりするもので、破綻してしまった人は生活保護で救助するしかない。大阪市の生活保護受給率は高止まりしているが、人を仕事で成功させるか、生活保護受給者に追いやるかは、小さいころからの教育の積み重ねによるため、カジノを含む統合型施設に家族で遊びに行き、親がカジノをしているところを子どもに見せるのは、教育上よくない。そのため、カジノを含む統合型施設を建設して一時的に雇用を増やすよりも、子どもの学力を上げ、正道から外れないように教育して、真の産業を発展させることが、本人のためにも日本のためにも重要だ)

(1)カジノ法案とそれを進めようとしている人の品位
 カジノを含む統合型リゾート(Integrated Resort、略称IR)の整備を政府に促す「カジノ解禁法案」が、*1-1のように、自民党・日本維新の会などの賛成多数で衆院本会議で可決されたが、これは、カジノ、宿泊施設、国際会議場からなるIRの整備を推進するための基本法案で、法律の施行後1年以内をめどに必要な法制上の措置を講じることを政府に義務づけるのだそうだ。

 しかし、カジノを含む統合型リゾートに子どもを連れて行くのはお薦めではなく、子連れの客は減ると思われるため、*2-2のように、長崎県がハウステンボスを候補地と想定して客が増えると考えているのは、教育的配慮にも品位にも欠ける。また、カジノを含む統合型リゾートにすれば、学会や国際会議など見識の高い会議の需要はなくなるため、施設全体のレベルが下がると考えた方がよい。

 さらに、カジノ解禁には、①刑法の賭博罪に抵触 ②治安の悪化 ③ギャンブル依存症の増加(パチンコ・競馬などの依存症患者は既に約536万人) ④反社会的勢力のマネーロンダリング(資金洗浄)への懸念 などの問題点があるとされているが、ギャンブルは負ければさらにまり込むものであるため、ギャンブル依存症はギャンブルがある限り対策をとったからといってなくならない。

 にもかかわらず、*2-2のように、観光振興や雇用の拡大に期待する自治体があるが、ギャンブルはゼロサムゲーム(分捕り合戦)であって新しい価値を生み出すものではないため、全体のGDPを押し上げる効果はない。それどころか、賭け事に熱中して働かなくなったり、生活保護受給者や犯罪者が増えたり、その対策に税金からの支出が増えたりする。また、アジアでのカジノ市場の過当競争などを理由に、専門家から地域活性化効果を疑問視する声も出ているそうだ。

 維新の会代表の松井大阪府知事は、「IRは雇用拡大のためにも必要」としているそうだが、大阪府は、まともな雇用を増やすべきなのである。さらに、イベントにすぎない国際博覧会(万博)の誘致を目指しているそうだが、そのようなことに大金を使っては長期的な地域振興にマイナスで、観光客を増やしたいなら、カジノではなく大阪の豊富な歴史・文化・自然・人材を生かす本物を作った方がよいと私も考える。そして、現在も、大阪府の生活保護受給率は突出して高いが、まじめにモノを考えているのだろうか?

(2)教育と経済
 経済政策をどういう方針にするかを決めるのは教育だ。何故なら、人は自分が知っている範囲でしかモノを考えられず、生きる姿勢や判断の尺度も教育によって培われるからである。

 そのような中、*2-1のように、英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの「世界大学ランキング」で、日本の東京大学は昨年の43位から39位に順位を上げたもののアジアでも4位であり、昨年に続きアジア首位を逃したそうで、日本の競争力低下に繋がる懸念があるとしている。そうなった理由はいろいろあるが、*2-2の私大補助も含め、日本は、制度として教育を軽視し、教育・研究人材の育成やその環境整備を疎かにしてきたことが最も大きいだろう。

 しかし、最近の生徒はゆとり教育を脱し、OECDの学習到達度調査結果では、*2-3のように、日本の高校1年生は科学的応用力が2位、数学的応用力が5位、読解力は8位だったそうではある。

 佐賀県の場合は、*2-4-1のように、学力テスト平均正答率がほぼ全国を下回り、佐賀県教育委員会が「家庭学習の時間確保を」とコメントしている。数学で大きな開きがあるのは、先生の方が数学を好きで数学の実力があるかどうかに大きく関わっていると、私は考える。何故なら、数学が好きで数学が得意な先生しか、生徒に数学の面白さや数学的思考法を教えることができないからである。

 ただ、そのように資源が少ない中でも、佐賀県は、*2-4-2のように、県内の小学4年生から中学2年生までを対象にした学力テストを行い、各学年の学力状況を確認している点で頑張っている。ただ、結果を「おおむね達成」「十分達成」の2段階くらいでしか評価・公表しないと、学習に競争(どこにでもある)を取り入れていないため、学習意欲や学習のための動機付けが弱いと思われる。

 なお、佐賀県多久市は、*2-5及び下図のように、小中の区分をなくして9年制の義務教育学校にするそうだ。「義務教育学校」として9年間の一貫教育を行うことにより、私は、中1ギャップの解消よりも、小さな子が手持無沙汰で遊んでいる時間を、有意義な授業に無駄なく使えるのがよいと考える。

   
  多久市の一貫校再編         現在の小中一貫校の風景        フランスの制服  
(図の説明:多久市は、学校教育法第1条の変更に基づいて、平成29年4月1日から小中一貫校を義務教育学校に移行し、9年間を見据えた一貫教育で学力向上に取り組むそうだ《https://www.city.taku.lg.jp/main/8903.html 参照》。その名前に使われている「東原庠舎」は、多久家の四代当主となった多久茂文公が、教育が何よりも大切だと考え、元禄 12年(1699年)に学舎を完成させ、身分を問わず学問を志す者すべてを受け入れた所だ。これからは、学問だけでなくデザインのセンスを磨くことも大切なので、よいデザインで学校に誇りを持てるような制服の方が良く、私は、一番右の写真の一番左の男の子の制服が好きだが、皆で相談して決めるのがよいだろう)

 ノーベル医学生理学賞を授賞する大隅東京工業大栄誉教授は、*2-6のように、「①若い人は興味を持てる分野で、最初に持った素朴な疑問を追究してほしい」「②自分が重要だと思うことにチャレンジすることが大事で、若い人が基本的な疑問に挑戦できる環境整備が必要だ」「③科学が有益な結果を生むのは大事なこと。でもそれだけでなく、社会全体が科学を一つの文化として楽しむことが大切だと思う」と話されたそうだが、私も同感だ。

 しかし、人がギャンブルではなく有意義な研究に興味を持つためには、上に書いたような幼いころからの積み重ねが大切だ。また、素朴な疑問は子どもの頃から持つものであるため、子どもに質問された時には、その機を逃さず科学的・論理的に答えられる親や先生の存在が必要だ。さらに、日頃から情報のシャワーを浴びせているメディアの態度は決定的である。そして、これらのすべてが、③の社会全体が科学を一つの文化として楽しむ状況を作らなければならないのだ。

(3)ところで、素朴な疑問だが・・
1)鳥インフルエンザへの対応は科学的か
 どのメディアも同じ論調だったが、*3-1のように、「①鳥インフルエンザで、辛い作業だったが一丸となって24時間態勢で54万羽の鶏を殺処分して鳥インフルエンザを封じ込めた」「②鶏舎の近くでカラスやスズメを見かけることがあったが、あれが発生源だったかもしれない」「③周辺には渡り鳥が飛来する池もあり、農家の心配は大きい。これ以上の拡大がないよう封じ込めに全力を挙げる」「④まん延防止や地域住民の不安解消に努めたい」「⑤県は発生農場の周辺などに6カ所の消毒ポイントを設置、車両の消毒を実施した」と書かれている。
 
 ①②③④から、i)カラス、スズメ、渡り鳥などの野鳥が感染源らしく、数羽の鶏が死んだ ii)鳥インフルエンザの拡大がないよう24時間態勢で54万羽の鶏を殺処分した iii)発生農場の周辺などに6カ所の消毒ポイントを設置した ということがわかるが、カラス、スズメ、渡り鳥などの野鳥が多いことは前からわかっているため、あらかじめ鶏と野鳥が接触しない鶏舎を設置しておくことは必要条件だ。しかし、正確な原因もわからず、ヒトに感染するウイルスに感染しているとも言えない鶏を54万羽も殺すのは、科学的というよりヒステリックで命を粗末にしている。それにひきかえ、消毒ポイントで逆性石けんで靴底を“消毒”したり、土間や飼育舎周囲の消毒に消石灰を散布したりしているのは、ウイルスに効果があるとは思えない。

 つまり、鳥インフルエンザへの対応は科学的ではなく、本当に鳥インフルエンザを封じ込めるのが目的だったのではないように見える。

2)踏切事故の原因がいつまでも解決されないのは何故か
 *3-2のように、佐賀県内で踏切事故が相次ぎ、車が踏切内で立ち往生して列車と衝突し、ドライバーの死亡事故も発生したそうだ。私もJR唐津線の山本駅付近の急カーブで、1時間に1本しかこない列車が突然現れて、ぞっとしたことがある。急なカーブ近くに踏切を作っていつまでもそのままにしておくよりもスマートな解決法はいくらでもあるので、長期間、それができないのはおかしいと考える。

<カジノ>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJD62R7XJD6UTFK001.html (朝日新聞 2016年12月6日) カジノ法案、衆院通過 与党内の対応割れる異例の展開に
 カジノを含む統合型リゾート(Integrated Resort、略称IR)の整備を政府に促す議員立法「カジノ解禁法案」が6日午後の衆院本会議で、自民党や日本維新の会などの賛成多数で可決され、衆院を通過した。慎重論が根強い公明党は自主投票とし、与党内の対応が割れる異例の展開になった。民進、社民、自由の野党3党は「このような拙速な審議、採決は認められない」(6日、民進の山井和則国会対策委員長)との立場から採決に抗議して退席。共産党は反対した。自民は14日の今国会の会期末までに法案を成立させる考えで、参院に送付後、7日に参院本会議で審議入りさせる方針だ。法案は2015年、超党派の「国際観光産業振興議員連盟(IR議連)」所属の自民党、旧維新の党、旧次世代の党の議員8人が提出した。カジノや宿泊施設、国際会議場からなるIRの整備を推進するための基本法案で、法律の施行後1年以内をめどに必要な法制上の措置を講じることを政府に義務づける。同様の法案は13年にも提出されたが、衆院解散で廃案になった。現在の法案もこれまでは事実上、「たなざらし」の状態だった。カジノ解禁には刑法の賭博罪の特例を設ける必要があるうえ、ギャンブル依存症の増加や反社会的勢力のマネーロンダリング(資金洗浄)への懸念が根強かったためだ。しかし、今国会では会期延長が決まるとみるや、自民と維新が審議入りに向けた動きを加速させた。自民は今月2日の衆院内閣委員会で審議時間が6時間に満たないなか、採決を強行。2年前に与野党で合意していた関係閣僚の出席や地方公聴会の開催、参考人質疑を行わなかった。

*2-2:http://qbiz.jp/article/99578/1/
(西日本新聞 2016年12月7日) カジノ設置 危険な賭け? 法案が参院審議入り(Q&A付)
●依存症、治安 残る懸念、地域活性化に疑問符も
 カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)を巡っては、ギャンブル依存症や治安悪化といった負の側面への懸念が払拭(ふっしょく)されていない。観光振興や雇用拡大に期待する自治体がある一方で、アジアでのカジノ市場の過当競争などを理由に、専門家から地域活性化効果を疑問視する声も出ている。ギャンブル依存症は「病的賭博」の別名通り、賭け事に没頭し自分をコントロールできなくなる精神疾患だ。新たなギャンブル施設ができて患者が増えれば、多くの家族や友人、職場の同僚らが経済的に巻き込まれる恐れがある。パチンコや競馬などの依存症患者は国内約536万人(厚生労働省推計)と深刻な状況で、医師や支援団体が知識の啓発や予防、早期治療などの必要性を訴えている。対策強化を求める付帯決議は可決されたものの、その中身について国会でこれまで具体的な議論はされていない。治安悪化の懸念も付きまとう。警察庁の坂口正芳長官は5日の講演でIR整備推進法案成立後の対応について「地域の風俗環境の保持、少年の健全育成、暴力団等の排除などの対策を講じていく必要がある」と述べた。だが具体策は「施行後1年以内をめど」に策定される実施法に委ねられ、「何も決まっていないのでコメントしようがない」と警察庁幹部は困惑する。暴力団関係者など反社会的勢力の介入を防ぐのは重要課題の一つ。警察庁の担当者は「組員らのデータについて民間の事業者に渡すわけにいかない」としており、今後方策を探ることになる。マネーロンダリング(資金洗浄)に悪用される恐れもあり、別の幹部は「一定額以上になれば、記録の保存や本人確認を事業者に義務付けることが必要だろう」との見方を示す。
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 「IRは雇用拡大のためにも必要だ」。大阪府の松井一郎知事は意気込み、2025年の開催を目指す国際博覧会(万博)の候補地である人工島への誘致を目指す。横浜市は、整備に伴う経済効果を毎年4144億円、市税収入61億円と試算。4万1千人の雇用を見込む。長崎県は大型リゾート施設ハウステンボス(佐世保市)を候補地に想定している。一方、鳥畑与一静岡大教授(国際金融論)は、中国経済の成長鈍化を背景に中国人富裕層の消費が鈍り、シンガポールやマカオなどアジアのカジノ市場は既に過当競争になっていると指摘。「持続可能な地域振興策かは疑問で、採算の取れない巨大施設だけが残ることになりかねない」と警告する。渡辺達朗専修大教授(地域マーケティング論)は「隔絶されたIRの区域内はもうかるかもしれないが、周辺は逆に吸い取られて寂れる恐れがある。地域全体の経済効果は乏しいのではないか」と指摘。「外国人観光客を期待するなら、カジノではなく文化や自然など日本の魅力を生かした集客を図るべきだ」と強調する。
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【Q&A】IRって何?
自治体名乗り、国が認定
 カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備推進法案が、今国会で成立する公算が大きくなりました。
 Q IRとはどんな施設ですか。
 A カジノ、国際会議場、ホテルなどが一体となっている複合施設のことです。
 Q 法案はどんな内容なのですか。
 A IRの整備に向けた基本的な理念や方針、政府内の体制を定めた上で、整備の推進を政府に促す内容です。法の施行後1年以内をめどに政府が具体的な制度設計を盛り込んだ別の法律を作ることも求めています。その法律が成立すれば、カジノをつくることができるようになります。
 Q どこでもカジノをつくれるのですか。
 A IRを整備したいという自治体の申請を受け、国が特別に認定した区域だけにつくられます。横浜や大阪、長崎などが意欲を示しています。
 Q 賭博を禁じている刑法の規定を変える必要はありますか。
 A 刑法が賭博を禁じているのは、国民が労働意欲を損なったり、犯罪を誘発したりする恐れがあるからです。この基本理念を重視する観点から、法務省幹部は「賭博規定を変えることは想定していない」と話しています。競馬に「競馬法」、ボートレース(競艇)には「モーターボート競走法」、宝くじには「当せん金付証票法」など、刑法とは別の法律を作って賭博・富くじ禁止の例外を定めていることから、カジノについても新たな法律を作ることが想定されています。
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●カジノ法案が参院審議入り
 カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備推進法案は7日午前、参院本会議で趣旨説明と質疑を行い、参院で審議入りした。質問に立った自民党の上月良祐氏はIR整備に伴う外国人観光客の集客に関し「日本の成長戦略の重要な柱だ」と主張。民進党の小西洋之氏は「違法とされてきた賭博を解禁する法案だ」と反発した。衆院採決で自主投票にした公明党は質問しなかった。参院内閣委員会は本会議後、理事懇談会を開催。自民党は8日の質疑終了後の採決を提案したが、民進党などは拒否。難波奨二委員長(民進党)は「十分な審議時間を取るべきだ」と述べた。

<教育>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/358466
(佐賀新聞 2016年9月22日) 東大またアジア首位逃す、世界大学ランキング
 英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)は21日、今年の「世界大学ランキング」を発表、東京大は昨年の43位から39位に順位を上げたもののアジアでは4位となり、昨年に続きアジア首位を逃した。THEは日本の競争力低下に懸念を示している。上位980校中、日本の大学は69校が入り数ではアジアでトップだが、上位200位内に入ったのは東京大と91位の京都大(昨年88位)の2校。400位内には東北大、大阪大、東京工業大、名古屋大、九州大、豊田工業大も入り、昨年の6校から8校に増加した。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12566679.html (朝日新聞 2016年9月19日) 国の私大補助1割切る 昨年度44年ぶり、学校増など背景 私学事業団推計
 私立大学の運営費用に対する国からの補助金の割合が2015年度は9・9%になり、44年ぶりに10%割れしたことがわかった。国会では補助割合2分の1をめざすことが決議されているが、財政難に加え、私大の定員増などで学生1人あたりの補助額もピーク時の6割に減っている。その分、授業料が高くなり、家計の負担は増している。日本私立学校振興・共済事業団(東京)の推計によると、私大の人件費や教育研究費、光熱費など大学運営にかかる主要な「経常的経費」の総額は、15年度に3兆1773億円(速報値)だった。これに対し、877の私大(短大、高専も含む)に渡された補助金は総額約3153億円で補助割合は9・9%になった。10%を下回ったのは1971年度以来。同事業団によると、私大生1人あたりでは、国からの補助金は81年度が24万1千円とピークで、15年度は15万6千円だった。一方、81年度から14年度までをみると、私大の授業料の平均額は年額約38万円から約86万円になった。経済協力開発機構(OECD)の13年の調査では、日本の高等教育における私費負担の割合は65%で韓国の次に高く、加盟35カ国中データがある32カ国の平均30%を大きく上回る。76年には私立学校振興助成法が施行され、国会の付帯決議で補助金の割合を「できるだけ速やかに二分の一とするよう努める」とされた。だが、80年度の29・5%をピークに減り続けている。背景には国の教育予算の伸びが低いことに加え、短大も含めた私大の数が70年度の688校から15年度は932校に増加していることもある。さらに、一つひとつの大学をみても情報技術(IT)の導入でパソコンなど設備が高度化し、経費がかさむことも要因だとの指摘がある。私大の統合などを視野に入れた動きもある。文部科学省は4月、有識者会議を設けて私大経営のあり方について検討を始めた。会議では「個々の私学が合併に踏み切るには、国から必要性や制度的な保障を示すことが必要だ」など再編を念頭に置いた意見も出ており、来年3月までの取りまとめに向け、私大再編への具体的な動きが出る可能性もある。

*2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/383931
(佐賀新聞 2016年12月6日) 科学・数学、日本はトップ水準、高1学力、OECD調査
 経済協力開発機構(OECD)は6日、72カ国・地域の15歳約54万人が参加した2015年の「生徒の学習到達度調査」結果を発表した。日本の高校1年生は科学的応用力が2位、数学的応用力が5位で、前回12年調査からさらに順位を上げ、トップレベルを維持。逆に読解力は平均得点が20点近く下がり、順位も4位から8位に落ちた。算数・数学、理科を中心に学習内容を増やした現行学習指導要領は、今回参加した生徒が小学4年の時に一部先行実施、6年で完全実施された。文部科学省は、科学と数学の好成績を「指導要領に加え、実験や観察に力を注いだ授業の効果が大きい」と分析している。

*2-4-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/361247
(佐賀新聞 2016年9月30日) 学力テスト平均正答率、県内ほぼ全国下回る
◆県教委「家庭学習の時間確保を」
 佐賀県教育委員会は29日、文部科学省が小学6年と中学3年を対象に4月19日に実施した2016年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の県内公立校の結果を公表した。小6の算数Aが全国平均と同じだった以外は下回った。県教委は「授業改善は進んでいるが、家庭学習時間の確保に課題がある」としている。県内と全国の平均正答率を比較すると、小6では、知識を問う算数Aが77・6%で全国と同じだった。これ以外は全国平均を下回り、国語A72・6%(全国との差0・3ポイント)▽国語B56・9%(同0・9ポイント)▽算数B46・2%(同1・0ポイント)だった。中3は全ての項目で全国平均より低く、国語A74・7%(全国との差0・9ポイント)▽国語B64・7%(同1・8ポイント)▽数学A59・3%(同2・9ポイント)▽数学B41・0%(同3・1ポイント)となっている。数学で大きな開きがあることについて県教委は「数式の意味を理解し、根拠を示して説明する活用力に課題がある。複数の条件を読み解き書き表すことができていない」と分析している。学力が伸び悩む要因として県教委は、家庭学習時間を挙げる。平日の1日当たり「1時間以上勉強している」とする割合は、小6で60・7%と全国より1・8ポイント低く、中3は62・6%で5・3ポイントも下回っている。学習習慣の定着には保護者の意識も鍵を握るとして「日ごろの声かけや親子一緒に学ぶ姿勢も大切。PTAと連携して対応したい」と話している。全国学力テストは、県内の公立の小学校165校7474人、中学校93校7735人で実施した。県の総合計画では、19年度の学力テストで全国平均を全科目で上回ることを目指している。

*2-4-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/384101
(佐賀新聞 2016年12月7日) 県学力テスト始まる 3万7000人参加
 佐賀県内の小学4年生から中学2年生まで約3万7千人を対象にした「学習状況調査」(学力テスト)が6日、2日間の日程で始まった。小学生が国語、算数(数学)、理科、社会の4教科、中学生はこれに英語を加えた5教科で行い、各学年の学力状況を確認する。県教委独自の調査は4月と12月の年2回で、4月は文部科学省が行う小6と中3対象の全国学力テストに併せて実施している。この日、佐賀市の赤松小では、担任が解答に関する注意点を説明した後、児童が真剣な表情で問題に取り組んだ。結果は最低限到達すべき「おおむね達成」、十分習得された「十分達成」の2段階で評価する。昨年12月の調査では、全ての学年と教科で「おおむね達成」を上回ったが、「十分達成」をクリアしたのは中1、2の英語だけだった。県内5地区別の評価では、地域で学力差が見られた。県教育振興課は「知識の理解はある程度進んでおり、知識の活用力を高めることが課題。記述式の正答率が高まることを期待している」と話す。結果は、来年2月上旬に公表する。

*2-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/358529
(佐賀新聞 2016年9月22日) 多久市、9年制義務教育学校へ、小中の区分なくす
 多久市は来年度から、小中学校の義務教育課程の区分をなくし9年間を「義務教育学校」とすることを決めた。改正条例案が21日、市議会で可決された。県内の義務教育学校は本年度からスタートした杵島郡大町町の「ひじり学園」に次いで2例目となる。市教育委員会によると条例の「小学校及び中学校」の文言を「義務教育学校」とし9年間の統一校に改正した。義務教育学校では小学6年間を「前期課程」、中学3年間を「後期課程」と定め、小学校の卒業証書は「前期課程修了証書」として発行する。制度導入で小学校の卒業式が実質的になくなり、6年生の授業が年度末まで余裕をもって組めるという。小中両方の教員免許を取得している教師を弾力的に配置し、中学校に進む段階の心理的、学力的な不安要素となる「中1ギャップ」の解消が進むと、市教委は期待している。多久市は2013年度から小中一貫校となり、児童・生徒数は9月1日現在で中央校が846人、東部小342人、西渓小292人。

*2-6:http://qbiz.jp/article/99634/1/
(西日本新聞 2016年12月8日) 大隅さん授賞式控え記者会見 「素朴な疑問追究を」
 ノーベル医学生理学賞の授賞式出席のためスウェーデンを訪れている大隅良典・東京工業大栄誉教授(71)は7日、ストックホルムのカロリンスカ研究所で公式記者会見に臨み、「若い人は興味を持てる分野で、最初に持った素朴な疑問を追究してほしい」とメッセージを送った。一連の行事に臨む心境を「こういうことに慣れておらず緊張しているが、楽しみたい」とも語った。記者会見後、大隅さんは「細胞内のリサイクルシステム」と題して学生や一般の人を前に記念講演する。大隅さんは授賞理由となった細胞のオートファジー(自食作用)の研究について「役に立つとは思わなかった。でもそういうことが後で有益だと分かるのは科学の歴史ではよくあること」と解説。「自分が重要だと思うことにチャレンジすることが大事で、若い人が基本的な疑問に挑戦できる環境整備が必要だ」と訴えた。「科学が有益な結果を生むのは大事なこと。でもそれだけでなく、社会全体が科学を一つの文化として楽しむことが大切だと思う」とも話した。

<科学の応用>
*3-1:https://www.agrinews.co.jp/p39583.html (日本農業新聞 2016年12月2日) 鳥インフル殺処分 一丸で作業 「つらい」でも「早急に」 封じ込め24時間態勢 新潟県上越市
 高病原性鳥インフルエンザ疑似患畜の発生が11月30日夜に確定した新潟県上越市で1日、23万羽の殺処分が始まった。29日の関川村に続く大規模養鶏場での発生となり、計54万羽と1県の殺処分羽数としては過去最大。地元JAえちご上越は職員延べ80人を投入、24時間態勢で防疫作業を支援する。行政と一丸となって「これ以上、感染を拡大させない」と封じ込めに全力を挙げる。
●職員延べ80人投入 JAえちご上越
 1日早朝。殺処分のための資材や作業員を受け入れる拠点となった市内の体育館には、作業に当たる行政や関係機関の職員、自衛隊員が続々と集まってきた。館内には、京都や福島など1府6県から提供された防護服や足カバーなどが入った災害対応キットの箱が山積み。集まった作業員はそれらを身に着け、厳しい表情で処理手順などを確認した。発生農場の従業員もおり、飼育担当の男性従業員は「家畜保健衛生所からも、レベルの高い防疫体制と評価されていただけに発生は残念。今は早く終息してほしい」と悔しさをにじませた。別の男性従業員は「鶏舎の近くでカラスやスズメを見かけることがあったが、あれが発生源だったのかもしれない」と話した。上越家畜保健衛生所によると県内での同時多発的な発生で、当初は資材不足が懸念されたが「現時点では順調に届いている」と言う。ただ、「作業を進めていくうちに足りないものが出てくるので気は抜けない」と同家保の平山栄一防疫課長。「周辺には渡り鳥が飛来する池もあり、農家の心配は大きい。これ以上の拡大がないよう封じ込めに全力を挙げる」と力を込めた。JAも24時間3交代で続ける防疫作業に職員を投入、「まん延防止や地域住民の不安解消に努めたい」(総務部)と強調した。鶏の殺処分に当たった市役所の男性職員(56)は「最初は暴れるので『かんべんな』と思いながら作業した。いち早い終息のため、途中から無心で作業をした」と、つらい心情を明かした。県は発生農場の周辺などに6カ所の消毒ポイントを設置、車両の消毒を実施した。消毒ポイントを訪れた糸魚川市の60代の養鶏農家は「出荷で近くを通るため立ち寄った。決してひとごとではない」と漏らした。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/371373
(佐賀新聞 2016年10月29日) 佐賀県内、車立ち往生で踏切事故続発、10月に3件も
■非常ボタン設置は4割
 佐賀県内で今月、踏切事故が相次いでいる。いずれも車が踏切内で立ち往生して列車と衝突しており、ドライバーの死亡事故も発生した。踏切は生活道路の一部だが、場所によって幅が狭かったり非常ボタンが設置されていなかったりするなど危険もはらんでおり、細心の注意が必要だ。小城市三日月町樋口のJR唐津線の踏切では18日夜、乗用車が脱輪して普通列車と衝突した。現場は、踏切を中心にして道路がややS字カーブになっている。小城署によると、乗用車の60代男性は「踏切の左側に寄りすぎていたためハンドルを右に切ったら、逆に右前輪のタイヤが脱輪した」と話しているという。住宅街にある杵島郡白石町東郷のJR長崎線踏切では17日夜、乗用車が対向車と離合する際、左側の脱輪防止の縁石に乗り上げて動けなくなった。踏切の通行幅はぎりぎり離合できる程度の4メートル。乗用車を運転していた20代男性は車を降りて非常ボタンを探したが、設置されておらず、遮断機や警報機が作動してそのまま普通列車が来た。踏切で異常が発生した場合、通行量が多い市街地や線路が複線の区間では、列車の運転士に知らせる非常ボタンが設置されている。国土交通省は「列車の速度や交通量を踏まえ、必要に応じて非常ボタンなどを整備していくことが鉄道事業者の責務」としている。ただ、県内は単線区間や小さな踏切が多く、JR九州によると、県内の踏切約330カ所のうち、非常ボタンの設置率は4割程度にとどまる。くだんの事故現場の踏切にもなかった。松浦鉄道も県内の踏切50カ所で同様の措置を取るのは2割余りとなっている。県警によると、県内の踏切事故は年間数件にとどまるが、今年は10月に3件連続した。小城市牛津町上砥川のJR長崎線踏切では1日正午ごろ、軽トラックが踏切内で止まり、普通列車と衝突して運転していた男性(84)が死亡した。原因はよく分かっていない。JR九州は、非常ボタンがない場合、車に備えられた発煙筒での合図を促している。「ボタンがない場合は、踏切に記している連絡先に通報を」と話す。踏切でのトラブルは、列車の乗客への影響を含めて重大事故につながる恐れがある。県警交通企画課は、ドライバーに対しては一時停止や、横断先にスペースができるまで踏切の手間で待つなどルールの順守を求めている。


PS(2016年12月10日追加):*4は前進かもしれないが、ずっと後ろからの半歩前進だと思う。例えば、生物学的には、一卵性双生児でない限り異なる遺伝情報を持っているため体質や性格は異なる上、一卵性双生児でも兄や姉として育った子と弟や妹として育った子は育つ環境が違うため性格が異なるという実証実験がある。研究分野では、他の人と同じ普通のことをしていれば新しいことを発見できず抜きんでることもできないため、ノーベル賞など思いもよらない。ビジネスの分野でも、どこにでもある普通の財やサービスを提供していれば、付加価値が低くて喜ばれないため儲からない。つまり、どの世界にいても普通でよいことはなく、普通以上だったりとりわけ優れていたりしなければ成功しない。そのため、そもそも「普通がいい(その“普通”の定義も自分勝手)」という教育は間違っており、他のメディアでもよく言われる「普通でない=LGBT」とか「個性=障害者」などというのは、日本に悪影響しかもたらさない。

*4:http://digital.asahi.com/articles/ASJD14608JD1OIPE00R.html?iref=comtop_8_05 (朝日新聞 2016年12月10日) 「ふつう」は違っていい 人権ポスター、ネットで話題に
 人権週間(4日~10日)にあわせ、愛知県が作った人権啓発のポスターが話題となっている。インターネット上では「すごく良い」「押しつけがましくなく、わかりやすい」と好評だ。ポスターに込めた関係者たちの思いは?「わたしの『ふつう』と、あなたの『ふつう』はちがう。それを、わたしたちの『ふつう』にしよう。」。こんなキャッチコピーで締められたポスターは全部で7種。障害者、高齢者、外国人などの人権について、蒲郡市出身の漫画家、大橋裕之さんの優しいタッチの漫画で描かれている。メインポスターの漫画は、こんな内容だ。丸刈り頭の少年を「ひとりだけ丸がり頭だ~!」「仲間外れだ~」とからかう級友に、別の子どもたちが指摘する。「でも、あなただってひとりだけ左利きよね」「きみはひとりだけメガネだよね」。最後は「ほんとだみんな違うじゃん!」と全員で笑う。人権週間を前に金山駅(名古屋市中区)に先行して貼りだしたところ、ポスターを見た人がツイッターに写真を投稿。内容に共感した人々の間に、11月下旬ごろからじわじわと広まった。担当する県人権推進室にはネットメディアからの取材依頼の他、県外から「素晴らしいポスターをありがとう」と電話がかかってきたという。ポスターは毎年、民間からコンペ方式で募集している。今年は「意識の高い人」だけでなく、人権問題にあまり関心のない人にも届くような企画を意識して集めた。初めて性的少数者(LGBT)も取り上げた。ネット上では、ポスターをシェアした人が「身近にありそうな話」「自分も無意識に普通を押し付ける時がある」「人権は自分に関係ないって言えない」といったコメントを寄せている。同室の今飯田将成主事(27)は「人権を自分のこととして考えてもらえている。狙い通りになってよかった」と話す。
■「伝えたいこと」表現
 今回のポスターを手掛けたのは広告会社「中日アド企画」(名古屋市中区)。同社クリエイティブ部の加藤了平さん(40)と、入社3年目の岩田真実さん(28)が担当した。加藤さんは7度目の挑戦で、初めてコンペを勝ち抜いた。これまでは大手の広告会社の作品が選ばれることが多かったという。「うれしかったが、それだけに責任も重かった」と話す。キャッチコピーは、コンペ初参加の岩田さんが担当。文字が多すぎるかもと考えたが、「これこそ伝えたいこと」と、そのまま載せた。ストーリーは2人で考えた。足をけがして松葉杖生活を送った友人や、LGBTの当事者から話を参考にした。「人権問題の被害者、加害者の視点に着目しすぎない話にした」と岩田さん。「普段の生活で何となく選び、考えること。そこに固定観念や偏見があるかも、と気づいてもらいたかった」と言う。デザインは東海のアートや音楽などの話題を発信するウェブマガジン「LIVERARY(ライブラリー)」の編集者、武部敬俊さん(33)に依頼。武部さんが親交のあった大橋さんに漫画を頼んだ。行政のポスターとしては斬新な内容とデザイン。「(漫画だと)ふざけていると思われるかも」と危ぶんだが、コンペでは6社の企画から選ばれた。審査員を務めた県人権推進室の伊藤弘憲室長(55)は「ストーリーのある漫画を使っていたのはこの企画だけ。柔らかい作風が、一般の人に人権を考えてもらうのにぴったりだった」と評価。「見た人の心にここまで届くとは」と想定外の反響に喜んでいた。


PS(2016年12月13日追加):*5の「フリースクールや自宅学習を前提に、保護者が『個別学習計画』を作り教育委員会の認定を受ければ義務教育を修了したと認める仕組み」は、不登校を正当化して教育水準を下げるため賛成できない。何故なら、保護者が創った個別学習計画が一般の教育課程よりも優れている可能性は非常に低く、自宅で学習し続けることは学校に行くよりも困難であるため、結局は子どもの教育を受ける権利を奪うからである。さらに、「つらいときは学校を休んでもよい(→つらいときは仕事も休む人になる)」という教育は、理由もなくつらいから休むのであれば甘やかしすぎだ。また、不登校の小中学生が12万6千人もいるとのことだが、いじめや教育上の問題があるのなら、子どもや親に不登校の理由を聞いて原因をなくすことが必要なのであり、不登校を認めることが解決策になるわけではない。もちろん、学校以外の学びは自由だが、それは公教育の中の位置づけでは限定されたものにすべきだ。なお、*5には、シュタイナー教育などのことも書かれているが、これらは限られた重度障害児を対象にしたもので、障害児と言えども人生におけるさまざまな機会を制限されないためには教育が不可欠であるため、同情的に美化した言葉を使って障害児が普通教育を受ける権利を差別的に奪ってはならない。 

*5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12702539.html (朝日新聞社説 2016年12月13日) 教育機会法 不登校対策で終わるな
 フリースクールをはじめ、学校の枠にしばられない多様な学びを正式な制度として親や子が選びとる道は、結局認められなかった。残念な結果である。議員立法による「教育機会確保法」が成立した。安倍首相が2年前にフリースクールを訪問し、超党派の議員連盟が法律づくりの準備を始めて機運が盛り上がったはずだった。だが、議論の過程で中身は大きく変わってしまった。当初検討されたのは、フリースクールや自宅での学習を前提に、保護者が「個別学習計画」をつくり、教育委員会の認定を受ければ、義務教育を修了したと認める仕組みだった。ところが「不登校を助長する」などと自民党内から異論が出て、骨抜きになった。かわりに法律に盛りこまれたのは、学校復帰を指導する自治体の「教育支援センター」や特別編成のカリキュラムの「不登校特例校」の整備など、現に行われている施策ばかりだ。単なる不登校対策法といっていい。いまの制度や対策に限界があるからこそ、新規の立法をめざしたのではなかったか。それでも状況を変える芽が、まったくないわけではない。法律は、学校以外の場で行う「多様で適切な学習活動」の重要性を認め、つらいときは学校を休んでもよいと「休養の必要性」を明記した。子の発達や参加の権利を保障する「子どもの権利条約」の趣旨にのっとることも、冒頭で宣言した。文科省はこの法律にもとづき「基本指針」をつくる。どんな内容にするのか。民間団体の意見もていねいに聞きとり、公立だけでなく民間の施設やそこに通う子、自宅で過ごしている子もしっかり支える姿勢を打ち出すべきだ。不登校の小中学生は12万6千人もいる。だがいまの法体系では、子どもが教育を受ける権利は学校で保障するしかない。法と現実との隔たりを放置し続けるのは、もはや許されない。今回の法律制定で終わらせるのではなく、学校以外の学びをどこまで認め、それを公教育の中にどう位置づけるか、引き続き議論を深めねばならない。外国では、芸術の要素を採り入れたシュタイナー教育や、生徒らがルールをつくり、何を学ぶかを自主的に決めるサドベリー教育などが認知されている。そうした場から生まれる多様な価値観は、柔軟でたくましい社会を生む効果をあわせもつ。法律には施行3年後の見直し規定もある。この成立を新たな検討の出発点としたい。


PS(2016年12月26日追加):子どもを、都会のコンクリート・ジャングル(飛行機から見ると、癌細胞のように、無秩序に浸潤しているように見える)の中で、仮想ゲームに浸らせて育てると、自然や生物に関する暗黙知や美意識が育まれず、驚くような価値観の大人ができる。そのため、*7-1のように、中山間地や離島に子育て期の世代が流入するのはよいことだが、子育て期の世代がより抵抗なく中山間地や離島に流入できるようにするためには、その地域における教育内容の充実が不可欠だ。また、*7-2の奥尻高校のように、都内からも生徒を募集して壮大な自然の中で育成するのはよい考えだが、行政も協力して下宿や寮を確保するのであれば、外国からの留学生も募集すればよいと思われる。

*7-1:https://www.agrinews.co.jp/p39759.html
(日本農業新聞 2016年12月26日) 中山間に人口流入 4割以上で30代女性増 子育て世代が“田園回帰” 島根県調べ. 島根県中山間地域研究センターの調査で、2011~16年の5年間に、県内中山間地域225地区のうち4割を超える98地区で30代の女性の人数が増えていることが明らかになった。人口が流入している地区の多くが山間部や離島で、子育て世帯を中心に田園回帰が定着している実態が浮き彫りになった。中山間地域の小学校区や公民館単位の225地区で、11年と16年の住民基本台帳を元に人口動態と将来の人口推計を調べた。4歳以下の子どもが増えている地区は全体の3割以上の69地区、小学生が増えている地区は全体の2割以上の49地区だった。いずれも役場など中心地から離れた「従来は人口減少が深刻とされてきた田舎の田舎」(同センター)で増えている傾向にあった。30代女性が増えている地区は98地区、維持している地区は17地区で、減っている地区(110地区)より多かった。30代男性は、全体の3分の1以上の80地区で増加。維持している地区は27だった。同センターの藤山浩研究統括監は、島根県ではリーマン・ショックが起きた08年以降、若者世帯を中心に地方を志向する田園回帰が広がり、11年の東日本大震災を契機に加速したと分析。その後の状況について「子育て中の女性が地方に向く意思がうかがえる」と説明する。地区の平均は人口1308人、高齢化率は38%だった。同センターによると、全国的にも移住対策に力を入れている自治体や地区は同様の田園回帰の傾向が見られる。藤山統括監は「予測をすると人口安定まで至っていない地区が多いものの、まだまだ伸びしろがある。田園回帰が力強く続いていることが明らかになった」と分析する。ただ、人口予測をすると今後10年間で大半の地区で10%以上の人口減少となり、今後30年間で過半の地区で人口が半減する。しかし、同センターは「平均すれば、人口の1%分の定住が増加すると人口が安定する」と試算する。

*7-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201609/CK2016092502000107.html (東京新聞 2016年9月25日) 北海道・奥尻高 初の試み 都内からも生徒募集
北海道奥尻町(奥尻島)の町立奥尻高校が来年度、全国から生徒を募集することを決め、来月二日に都内で説明会を開く。同町は一九九三年七月の北海道南西沖地震で津波の被害に遭い、死者・行方不明者百九十八人を出した。復興は果たしたものの、過疎化の流れは止まらないまま。学校関係者は「若者が増えれば島全体が活気づく。島の未来をかけている」と訴えている。募集するのは、来年四月の新入生の定員四十人のうち半分の二十人。従来は、町内と道南西部の檜山地方の生徒しか受験できなかったが、通学区域規則を改定。全国どこからでも受験できるようにした。地震で壊滅的打撃を受けた町は、移転や盛り土、緊急避難用の高台を整備するなどし、少しずつ、時間をかけて再建してきた。ただ、人口は減り続け、地震前の九三年六月に四千七百十一人だったのが二千八百十人にまで減少。今年一月の六十五歳以上の高齢化率も36・1%と、道全体の28・9%を大きく上回っている。同校でも各学年四十人の定員を割る状況が続き、現在在籍するのは一年生九人、二年生十七人、三年生十四人の計四十人。さらに、町内の中学生は各学年二十人前後しかいない上、半数程度が町外の高校に進学するため、定員が埋まる可能性はほぼなくなっている。こうした状況を打破しようと考えたのが、全国の中学生に受験を呼び掛けること。町が補助金を出して民宿を整備し、二十人分の下宿先を確保。授業内容も工夫し、以前から夏に行っているスキューバダイビングに加え、本年度からは町職員や漁業者、農業者らを講師に招いて一緒に課題の解決策を考えるプログラムを取り入れた。九十分すべて英語で話す「イングリッシュサロン」や、慶応大生がインターネットで受験のアドバイスや学習指導をする時間も設けている。同校の井上壮紀(まさき)教頭は「外から生徒が来てくれれば、小さい頃から同じ人間関係の中で生活してきた島の子どもにも刺激になる。ぜひ説明会に参加してほしい」と話した。
    ◇
説明会は、来月二日午前十時から港区のTKP品川カンファレンスセンターで。問い合わせは同校=電01397(2)2523=へ。


PS(2017年1月1日追加):私は海が澄んでいて美しいので離島が好きで、何とかしようと思って2005~2009年の衆議院議員をしていた間に唐津市の七つの離島に何度も行ったが、離島は、山・田畑・漁場が近接しており、景色も抜群なので、子どもに自然や動植物を体験させるのに大変よいと思う。そのため、地方でも特にコンクリートの街中にいる子どもたちは、一年間くらい離島で授業を行えばよく、そのための学校のリニューアルやインフラ整備があってよいと考える。

*8:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/391655 (佐賀新聞 2017年1月1日) 子どもの絆で活気呼べ 「島留学」始めます。 唐津・馬渡、加唐島
◆住民ぐるみ受け入れ
 玄界灘に浮かぶ唐津市鎮西町の馬渡島(153世帯)と加唐島(65世帯)は、新年度から小中学生を対象に「島留学」を始める。少子高齢化が顕著に進む離島で「子どもの声を絶やしたくない」との島民たちの切なる願いが事業を後押し。豊かな自然体験や少人数教育、島民とのふれあいを通じて、島の子と一緒に成長する子どもたちを募集している。県内では過疎化による児童数減を食い止めようと、佐賀市富士町の北山東部小が学校の生き残り策として1994年から留学生を受け入れている「山村留学」の例がある。今回はこの離島版と言える取り組みで、島ぐるみでの受け入れ体制をつくる。七つの離島では神集島が小中学校が廃校になり、小学校分校の向島と松島が休校の現状にある。島民や市職員でつくる「からつ七つの島活性化協議会」が3年前から先進地を視察するなどして準備を進め、12月26日に二つの島で実行委員会を立ち上げた。馬渡島は現在小学生15人、中学生14人、加唐島は小中学生3人ずつが在校している。留学期間は原則4月から1年間で、留学は島内の里親宅から通う「里親留学」、家族と一緒に島に住み込む「家族留学」、島に祖父母が住む家庭の「孫留学」の3タイプがある。里親留学は里親への委託料月額6万円を実行委と実親で半額ずつ負担する。家族留学は転入家族に、孫留学では祖父母世帯に、月額3万円の助成金を実行委が出す。原資は公的な補助金を見込んでいる。1月28日に現地で説明会を開く。唐津市の離島地域コーディネーターの小峰朋子さん(47)は「親の思いよりも、『島に行ってみたい』という思いのある子どもに来てほしい」と話している。現在、里親も募集している。問い合わせは唐津市地域づくり課内の同協議会、電話0955(72)9220。


PS(2017年1月2日追加):今から20年以上前にビッグ4で仕事をしていた時、私は、昼に顧客から質問を受けて英語で国際税務に関するアドバイス・レターを書き、帰宅前に社内Eメールでインド事務所に送っておくと、時差を利用して日本時間の夜の間に英文チェックと清書が終わり、翌朝には最終版が完成して顧客に届けられるというような仕事もしていた。そのため、企業側から見ても、現在の日本なら、文書の作成等は環境の良い地方に送り、低コストで迅速に行うシステムを作る方が効率的になるだろう。

*9:http://qbiz.jp/article/100432/1/ (西日本新聞 2017年1月2日) ネット活用 島で都会と同じ仕事 遺跡内施設にテレワークセンター 長崎・壱岐市 定住やU・Iターン 20人目指す
 長崎県壱岐市は、原の辻遺跡内の市関連施設(635平方メートル)を改修し、年度内に「テレワークセンター」を開設する。情報通信技術(ICT)を活用し、離島にいながら都会と同じように仕事をする拠点として整備し、定住や転職によるU・Iターンを促す。総務省の「ふるさとテレワーク推進事業」に採択された。市や富士ゼロックス(東京)、早稲田大のほか、仕事を発注する企業と請け負う個人をインターネット上で仲介するランサーズ(同)など産官学一体で事業を進める。テレワークは、ネットを使って場所や時間にとらわれず仕事をする働き方。子育て中の主婦や島へのUターン組などを対象に、都市部の企業からホームページ作成や情報サイトの記事執筆、翻訳などの仕事を受注し、収入を得る−という仕組みの確立を目指す。開設するセンターには、仕事を請け負う島民ら個人が作業できるスペースを設け、3年間で20人分の受注を目標とする。企業向けのオフィスも設け、富士ゼロックスは研究業務などの一部をセンターでも行う予定。来年度はセンター内にU・Iターン組や島民らが交流できる場所も設置し、一般開放する計画。市は「都市部から壱岐への仕事の流れをつくり、地域活性化につなげたい」としている。


PS(2012年1月9日追加):何歳以上を高齢者(支えられる側)と定義するかは社会の合意に基づくが、日本社会を支えるための労働生産性向上には、*10-1のように、教育水準を上げ、労働者がより付加価値の高い仕事をできるようにする教育が必要で、それにマイナスのことをしているゆとりはない。そのような中、*10-2のように、利点として地域経済や地方財政への寄与を挙げ、統合型リゾート整備推進法(カジノ法)を通し、ギャンブル依存症対策にさらに無駄な予算を使って、ギャンブル依存症対策さえすればよいかのような説明をするのは、思考が浅すぎる。

*10-1:http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20111226/225625/?rt=nocnt (日経ビジネス 2012年1月6日) 世界で最も教育を軽視している国、日本。特に高等教育への投資はOECD加盟国の半分
 人口の減少と高齢化の進展、自動車・電機といった前時代型の産業を中心とする産業構造、土建業に偏った公共事業頼みの経済政策――これらが示すように、成熟フェーズを迎えた日本の経済は現在低迷を続けている。そして、これからの展望も描けていない。人口が減り、高齢者が増えるということは、働ける人が減少する一方で、社会が扶養・支援しなければならない人の数が増加することを意味する。従って、これからの日本は二重の意味で経済の生産性を高めていくことが不可欠になる。内閣官房が発表した「社会保障に係る費用の将来推計について」は、今後10年間で高齢者の割合が30%を突破し、医療・介護にかかる社会的コストは現在の47%アップとなると予測している。また、労働者人口は10年で約740万人(9.1%)減る。労働者1人当りが負担する医療・介護費用の増分だけでも26.6万円になり、現在より約6割もアップすることになる。
●資本集約型産業に必要な資本が足りない
 となると、国民経済の生産性を大幅に高めることが必要になる。その方法論は2つある。1つは資本集約型の産業を強化すること、もう1つは知識集約型の産業を拡大することである。ただし、資本集約型産業の強化は、今の日本にとっては2つの点で問題がある。第1の問題は、資本集約型産業を次々に立ち上げ、発展させていくのに必要な財政的余裕があまりないことである。1400兆円とも言われる個人金融資産や、200兆円にも上る企業の内部留保資金があると思われるかもしれない。だが、そのほとんどは既に国債の購入という形で国家財政の赤字補填に使われてしまっている。資本集約型産業を新規に立ち上げるためには、国債を売って換金しなければならない。もしそのような大量の国債売却が起きると日本国債は暴落する。場合によっては国民経済が破綻してしまうリスクがあるのだ。
●資本に仕事をさせる産業は人の雇用を生まない
 資本集約型の産業に注力することの第2の問題は、雇用の創出につながらない点である。資本集約型の産業は“資本に仕事をさせる”タイプの産業である。そこで働く労働者1人当りの労働生産性は極めて高いものの、その反面、そうした産業が生む雇用は小さい。例えば、電力事業は資本集約型産業の典型である。労働生産性は2562万円と平均の3.4倍で、産業セクター別で見て第1位である。日本のGDPの2.3%を生み出している。だが、そこでの雇用者数は42.5万人と総雇用者の0.7%にすぎない。足下の円高の影響もあって、大量の雇用を生んできた自動車・電機産業が海外移転を推進している。年々、雇用問題が深刻化しつつある。今後の日本経済において、いかにして雇用を生むかが最重要課題となるのは確実である。こうした状況を考慮すると、資本集約型産業の強化だけで成熟日本を支えるのは無理がある。
●本命の知識集約型産業を支えるのは「教育」
 となると、成熟日本の社会を支えるために必要な経済の生産性を高めるための手段は、もう一方の「知識集約型産業」の強化を本命とするしかない。知識集約型産業は1人当り労働生産性が高いことに加えて“労働集約的”でもあるので、雇用の創出にもつながるからだ。では、どうすれば知識集約型産業を育成・強化し、日本経済の生産性を向上させていくことができるのか。答えは「教育」である。国民経済の生産性を上げるための手段としては、労働者1人ひとりがより高度で付加価値の高い仕事をできるようにするのが正道。そのためには国民の教育水準を高めることこそが王道である。

*10-2:http://mainichi.jp/articles/20170109/k00/00e/010/160000c
(毎日新聞 2017年1月9日) カジノ法、自民がパンフ作成も「何で…」と風当たり厳しく
1枚紙 年末年始に地元回った議員「説明に苦労した」
 自民党が「統合型リゾート(IR)整備推進法」(カジノ法)への理解を深めようと、有権者向けにパンフレットを作成し、所属国会議員や各都道府県連に配布した。ギャンブル依存症対策などを明記し、カジノへの不安を払拭(ふっしょく)する狙い。ただ、年末年始に地元を回った所属議員からは「説明に苦労した」との声も出ている。パンフレットは1枚紙で、IRの利点として地域経済や地方財政への寄与などを挙げた。そのうえで▽立地地域は全国数カ所に限られる▽厳格な入場規制で反社会勢力を排除する--などと説明した。秋の臨時国会で「審議時間が短い」と批判を浴びたことについては、超党派の議員連盟による議論を重ねて法案を国会提出した経緯を記し、理解を求めている。しかし、現場の風当たりは厳しい。若手衆院議員は地元回りの際に、支援者から「何でこんな法律を通したのか」と詰め寄られたという。地方議員らの協力を受けてパンフレットを配っているが、「ギャンブルに対するアレルギーが強く、聞く耳を持ってくれない」と嘆く。  官邸幹部も「民意が付いてきていない。政権に一定のリスクがある案件だ」と神経をとがらせている。政府はギャンブル依存症対策の「関係閣僚会議」を昨年末に新設するなど対策に躍起だが、有権者の理解を得るのは簡単ではなさそうだ。

| 教育・研究開発::2016.12~ | 06:43 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.10.2 良い人材がすべての基本だが、今、そのために足りないのは学力である。 (2016年10月4、6、7、11、18、30日に追加あり)
  
2016.2.10 2016.10.1goo   各国の削減目標      2016.9.30東京新聞(原発の現状)  
 朝日新聞                (日本は情けない)

   
2016.9.30  2016.9.30毎日新聞(公立学校の全国学力テストの結果)      上位県
 日経新聞

(1)無知と不見識による政策判断ミス
 *1-1のように、欧州連合(EU)は、2016年9月30日に「パリ協定」への締結を決め、インドも発効の条件を満たして締結する予定であるため、「パリ協定」は10月に発効する見込みだそうだ。日本は、(私の提案で)1997年に採択された京都議定書をまとめた国なのだが、その後、無知で不見識なバックラッシュによって環境政策は後戻りし、パリ協定もこの臨時国会でやっと審議する予定だ。つまり、形だけ決めても実行するまでに時間をかけることで形骸化させる政策によって、日本は存在感を示すどころか、日本とは関係なくパリ協定の発効が決まったのである。

 一方、*1-2のように、今世紀後半に温室効果ガス排出の「実質ゼロ」を目指すパリ協定を、米中は9月3日に締結し、「国際的信用にかかわる(ユンケル欧州委員長)」として欧州連合(EU)も、9月30日にEUと一部加盟国が先行締結する「例外的措置」を決めた。日本は、「締結は米中の動きを見てから」などと、いつものとおり他に遅れて初めてあわてて追随する姿勢であるため(これが官主主義の限界)、そのような国が意思決定に参加できずに蚊帳の外に置かれて存在感がなくなるのは当然のことなのである。

1)EVの例
 *2-1のように、欧州の自動車大手はディーゼル車から電気自動車(EV)へのシフトを強め、独フォルクスワーゲン(VW)は2016年9月29日に開幕したパリ国際自動車ショーで、1回の充電で最長600キロメートルを走れるコンセプト車を発表した。また、独ダイムラーはEV向け新ブランド「EQ」を立ち上げると表明し、第1弾として1回の充電で最長500キロメートルを走れるコンセプト車を公開した。

 しかし、トヨタをはじめ日本車はプラグインハイブリッド車(PHV)が中心で、電気だけで走れる距離は現行車の60キロメートルにすぎず、PHVはガソリン車でもあるため、EV車の長所を活かした設計ができない。また、日本では、電池の容量が小さいというEVに関する悪い宣伝が行き過ぎていたため電池の改良が進まず、次世代エコカーの本命を乗用車まで燃料電池車(FCV)とし、水素燃料の供給施設はコスト高で少なく、大いに出遅れている。そのため、科学的に正しい判断に基づいて迅速な行動をとる欧州勢が、先端技術の標準づくりをするのは当然のこととなる。

 EVへの転換も私の提案で始まったのでよく知っているのだが、EVへの転換の目的は新興国まで含めた排気ガスの抑制であり、それを燃費さえよければよいと考えて燃費規制(排ガス規制ではない)にした政治・行政や不正をしてまでディーゼルエンジンで乗り切ろうと考えた自動車会社は不見識だったのだ。

 なお、*2-2のように、北京モーターショーの会場もEVのオンパレードとなり、中国が日本企業を巻き込んで世界ナンバーワンのEV大国になる可能性が極めて高くなったそうだ。中国は、アメリカのZEV法(ゼロ・エミッション・ヴィークル規制法:排気ガス規制法)の中国版を作ったそうで、燃費規制ではなく排ガス規制があるべき規制であるため、これが世界に受け入れられるのは時間の問題だ。日本政府(経産省)や日本のメーカーは、自動車の排気ガスでいぶされて気分が悪くなっている人や排気ガスで汚れた道路をよく見るべきだったのである。

 また、三菱自動車は最初の燃料電池車を創ったにもかかわらず日の目を見ることなく、*2-3のように、燃費規制に合わせるため、ディーゼルエンジン車の燃費測定で不正を行っている。さらに、再測定でも不正があり、統計データのとり方すら知らない人が都合のよいデータを集めて結果を出しているのではないかと思われるほどだ。もしそうなら、統計学や数学などの基礎学力に問題がある。

2)エネルギーの例
 *3-1のように、他のエネルギー源と比較してコスト高で事故時の環境汚染が大きすぎる原発市場は世界でしぼむ。そのため、日立、東芝、三菱重工は核燃事業を統合することで調整している。
 
 にもかかわらず、*3-2のように、原発再稼働を進める経産省の意向を追い風に、国民負担を求めたい電力会社側の理屈で、内閣府の専門部会が議論を本格化させるとのことだ。そして、経団連でエネルギー対策を担当する加藤氏が、「原子力を積極的に推進してきたことに基づき、国の補償を求める」と述べたそうだが、原子力を推進していた時には、国民は「原発は安全でコストの安い夢の電源だ」と聞かされていたのだから、事実と異なる説明をして原子力を推進した者が正しい責任者である。

 なお、国は、東京電力福島第一原発の事故後に見直したエネルギー基本計画で、原子力を「重要なベースロード電源」と位置づけ、廃炉費用を電力自由化で新規参入した小売業者にも負担させる方針だ。しかし、これは、電力自由化を骨抜きにして原発より優れた電源が普及するのを邪魔し、新しい技術や新規企業の発展を阻害するやり方であって、経済学の基礎知識がなく、日本の再生可能エネルギーをEVと同じ運命にするものだ。

(2)教育における学力の軽視
 なぜ我が国で、(1)のような驚くべき判断が続くのかについては、書くと反感を感じる人がいるだろうが書かなければわからないので書くと、*4-3で代表されるように、全国学力テストをすることにさえ反対する人がいるくらい、学力を軽視しているからである(ただし、この程度の調査に数十億円かかるというのは、豊洲市場や東京オリンピックの経費と同様、高すぎる)。そのため、私は運動や芸術と同様、英・数・国・社・理くらいの「学力コンクール」はしばしばやるべきで、学校のみならず個人の上位者も氏名を発表して遣り甲斐を出すべきだと考える。何故なら、(1)で書いたことは、大学教養レベルの物理・数学・経済学の範囲内であり、これらがわかっていれば直ちに理解でき、わかっていなければ理解できないことだが、それを支えているのは小学校から高校までの学力だからだ。

 また、*4-1には、「①国語と算数・数学しかテストしていないこと」「②各地で学力の底上げが続いたという文科省の分析」「③国語では目的に応じて自分の考えを明確にしながら読んだり、根拠を示して書いたりする問題に課題があり、算数・数学でもグラフから情報を読み取って記述する問題などに間違いが目立った」と書かれている。

 しかし、①については、国語と算数・数学しかテストしないということは、国語と算数・数学しか重要科目として真剣に勉強していないということだろうが、それでは③のように自分の考えを明確にしながら読んだり、根拠を示して書いたりすることはバックグラウンドの知識がないためできないのが当たり前であり、グラフから情報を読み取って記述することもまた同じである。②は、その範囲では各地で頑張ったということなので、全国学力テストは無駄ではなかったということだ。

 なお、*4-2にも、やりとりや表現を理解する力や根拠を示して書く力などに引き続き課題が残ったと書かれているが、やりとりや表現を理解する力は国語だけの問題ではなく背景の知識が必要であり、根拠を示して書くことは(根拠にならないことを根拠のように書いているメディアも含めて)日本人の多くが不得意とすることだが、本来は普段から大人とのコミュニケーションの中で訓練されていくべきものである。

 そのような中、*4-4のように、沖縄県内の公立小学校は、国語A、算数Bの平均正答率が初めて全国平均を上回り、4教科全てで全国平均を超え、算数Aは、都道府県別で4位になったそうだ。公立中学校は、全教科の平均正答率で全国平均との差を縮め、国語Bは都道府県別で45位と、初めて最下位から抜け出すなどの改善傾向がうかがえたそうで、頑張ったことに敬意を表したい。

<政策における致命的な判断ミス>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12586084.html
(朝日新聞 2016年10月1日) パリ協定、来月発効 温暖化対策 EUが締結決定
 地球温暖化対策の新しい国際ルール「パリ協定」が11月に発効する。欧州連合(EU)が30日、環境相理事会で協定締結を決めた。3日に始まる欧州議会で承認する。インドも締結する予定で発効の条件を満たし、30日目に自動的に発効する。日本は開会中の臨時国会で審議する予定だが、日本を待たずに発効が決まった。協定は、すべての国が二酸化炭素(CO2)などの削減にとりくむことを定めた温暖化対策のルール。産業革命以降の気温上昇を2度未満に抑え、今世紀後半の温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にすることを目指す。55カ国以上が締結し、総排出量が全体の55%以上になることが発効の条件だった。国連によると、9月30日時点の締結国は米国や中国、ブラジル、北朝鮮など61カ国、排出量の割合は47・8%。EUは国内手続きを終えた加盟国とともに締結する。現時点では独仏など7カ国で排出量は4・6%、2日に締結する世界第4位の排出量国インドの4・1%を加えると排出量の条件を満たす。11月7日までに発効する可能性が高く、この日からモロッコで開かれる国連気候変動会議(COP22)で、パリ協定の第1回締約国会合が開かれ、実施ルールづくりなどを協議する。日本は温室効果ガス排出量が世界の約3・8%を占め、世界5位の排出国。5月にあったG7伊勢志摩サミットで議長国を務め、協定の年内発効を目指すことを首脳宣言に盛り込んだ。だが、締結の国内手続きが遅れており、存在感を示せていない。安倍晋三首相は29日、参院代表質問で協定締結について開会中の臨時国会で審議する方針を示したが、審議日程は決まっていない。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12585975.html
(朝日新聞 2016年10月1日) パリ協定、日本出遅れ 早期発効、審議追いつかず
 今世紀後半に温室効果ガス排出の「実質ゼロ」を目指すパリ協定が、11月に発効する。採択から1年足らずという国際条約としては異例の早さとなった。まだ締結できていない日本の存在感は薄れるばかりだ。1997年に採択された「京都議定書」は発効までに7年かかった。昨年12月に採択されたパリ協定は当初、各国の国内手続きと、実施ルール作りの時間を考えて、2018年ごろの発効が見込まれていた。しかし、世界の排出量の約38%を占める米中が9月3日に締結し、各国の動きが加速。欧州連合(EU)も、「国際的信用にかかわる」(ユンケル欧州委員長)として、30日にEUと一部の加盟国が先行締結する「例外的な措置」を決めた。国連のナバロ事務総長特別顧問は「各国が競っている。これだけ加盟国の多い協定では最速の発効だ」。パリ協定が、各国が自主目標に向けて対策を取る仕組みのため、先進国に削減目標を課して達成を義務づけた京都議定書よりも緩い枠組みだったことも、締結のハードルを下げた。「締結は米中の動きを見てから」と、承認案の審議を来年の通常国会で行う構えだった日本政府。想定外の早さに開会中の臨時国会に提出を前倒しするが、審議日程は決まっていない。早期発効で、11月7日に始まる国連気候変動会議(COP22)では、パリ協定の第1回締約国会合が開かれ、実施ルール作りを議論する。日本の締結が間に合わなければ、意思決定に参加できず、蚊帳の外に置かれる。

<EVの事例>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160930&ng=DGKKZO07807540Z20C16A9TI1000 (日経新聞 2016.9.30) VW、背水のEVシフト パリ自動車ショー開幕、排ガス不正/燃費規制強化 欧州、脱ディーゼルの波
 欧州自動車大手がディーゼル車から電気自動車(EV)へのシフトを強めている。先頭を行くのが排ガス不正問題で揺れた独フォルクスワーゲン(VW)だ。29日に開幕したパリ国際自動車ショーでは1回の充電で最長600キロメートルを走れるコンセプト車を発表。燃費規制強化も受け、背水の陣でEV開発を急ぐ。独ダイムラーなども同じ波に乗り、欧州発の新たなエコカー競争が始まる。「20世紀のベストセラーとなった『ビートル』や『ゴルフ』と同様、自動車産業に次の変革をもたらすモデルになる」。VWブランド乗用車部門トップのヘルベルト・ディース氏が会場で胸を張り、世界で初めて披露したのがコンセプトEV「I.D.」だ。開発中のEV専用プラットホーム(車台)「MEB」を採用し、2020年に生産を始める。電池など主要部品の配置を柔軟に組みかえられ、様々な派生モデルを造れる。部品共通化で量産効果を引き出し、「発売時にはゴルフ並みの価格に抑える」(ディース氏)。
●販売比率25%へ
 VWは25年までに30車種以上のEVを投入し、グループ年間販売台数に占めるEV比率を現状の1%から最大25%に引き上げる計画だ。かつてはクリーンディーゼルでエコカー競争を主導しようとしたが、1年前に発覚した排ガス試験の不正問題が歴史的な方針転換の引き金を引いた。だが欧州勢のEVシフトはVWにとどまらない。背景にあるのは燃費規制の強化だ。欧州連合(EU)は最も厳しく、21年に走行距離1キロメートルあたりの二酸化炭素(CO2)排出量を15年規制値より約3割減らす必要がある。三井物産戦略研究所の西野浩介産業調査第一室長は「ディーゼル車の進化だけで数値目標を達成するのは困難だ」と指摘する。
●新ブランド公開
 独ダイムラーはEV向け新ブランド「EQ」を立ち上げると表明。第1弾として1回の充電で最長500キロメートルを走れるコンセプト車を公開した。独オペルや仏ルノーも新型EVを披露した。欧州勢は部品生産や充電インフラの投資も急ぐ。ダイムラーは独化学大手と共同出資した電池企業を14年に完全子会社にし、今年3月には5億ユーロ(約570億円)で第2工場を建設することを決めた。ドイツではEV普及のために官民が折半出資で総額10億ユーロを拠出し、うち3億ユーロで17~20年に計1万5千カ所の充電スタンドを整備する。日本車大手は欧州でのEVシフトにやや距離を置く。トヨタ自動車が披露したのは今冬に日本で売り出すプラグインハイブリッド車(PHV)「プリウスPHV」。ガソリンを使わず電気だけで走れる距離は現行車の2倍強の60キロメートル。日常生活ではほぼEVとして利用できる点を訴えるが、純粋なEVとは異なる。そもそもトヨタ、ホンダは燃料電池車(FCV)を次世代エコカーの本命に据えている。「電動化」という点では一致するものの、水素をエネルギーとするためEVとは違うインフラが必要だ。欧州は現在、新車販売の約5割をディーゼル車が占めるが、次世代車はEV、PHV、FCVの三つどもえの競争となりそうだ。欧州勢は先端技術のデファクトスタンダード(事実上の標準)づくりにたけている。そのEVシフトのスピード感を甘く見ていると、日本車大手は思わぬ劣勢に立たされる可能性がある。

*2-2:http://autoc-one.jp/special/2695104/ (オートックワン 2016年5月3日)
電気自動車(EV)で日本の自動車メーカーが中国メーカーに負ける日が近い!?
●北京ショーが再びEVで大盛り上がり
 北京モーターショーの会場内は、EVのオンパレードになった。事態をよく呑み込めていない、口の悪い日本メディアは「どうせ、欧米や日本の技術のパクリでしょ」と嘲笑う。しかし、今回の中国でのEV盛況ぶりは、そんないい加減なものではない。それどころか、中国が日本企業を巻き込み世界ナンバーワンのEV大国にのし上がる可能性が極めて高くなってきた。「ちょっと、それって、言い過ぎじゃない?」と思われる方も多いかもしれない。だが、これが現実。筆者の個人的な観測ではなく、日系自動車メーカーの幹部や技術者たちの「本音」なのだ。中国でのEV事情を振り返ってみると、最初に盛り上がりを見せたのは2000年代後半だった。この頃は、中国は新興国のBRICs(ブラジル、ロシア、インド、チャイナ)の一角として、GDP(国民総生産)の伸び率が毎年二桁となる、急激な経済成長を続けていた。それに伴い、沿岸部の大都市圏を中心として、自動車の需要が急増。あと一歩で、アメリカを抜いて生産、販売それぞれで世界ナンバーワンの座につきそうな勢いだった。この時期、筆者は中国各地で日系や中国地場の自動車メーカーや部品メーカーを取材して回ったが、どこも「作っても作っても間に合わないほど売れる」と嬉しい悲鳴を上げ、工場の増設や新設が相次いでいた。
●中国が新EV政策でアメリカと手を組む?
 そうした国の成長を象徴するように、国際的なイベントが目白押しだった。2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博、そして同年に広州で開催されたアジア競技大会の3イベントで、中国政府は「新しい中国」のイメージアップを繰り広げた。その一環として、EVがあった。「十城千両」と呼ばれる施策によって、10の大都市でそれぞれ1000台以上のEVを数年間で普及させるとした。その後、対象の都市の数は25まで拡大した。北京オリンピックや上海万博では、電池交換式のEVバスが走り、広州にほど近い深センを本拠とするEVベンチャーのBYDが脚光を浴びた。しかし、「十城千両」は2013年頃、突如終わってしまった。その理由は、地方都市の官僚がEV普及の重要性をよく理解しておらず、EVに関する規制緩和や事務手続きで大幅な遅れが生じ、普及台数が伸び悩んだためと言われている。ところが、2014年秋になると、中国政府は何の前触れもなく、「新たなるEV政策」を発表。以前は、販売奨励金の対象が地方自治体や企業を中心としていたが、それを個人向けに拡大したのだ。さらに、「アメリカと手を組む」という大胆な行動に出た。これには、それまでEV技術で世界をリードしてきた日系自動車メーカーも強烈な衝撃を受けた。
●中国でついに始まる「NEV」ってなんだ?
 「アメリカと手を組んだ」とは、どういう意味か?それは、アメリカのZEV法の中国版を作ったということだ。ZEV法とは、ゼロ・エミッション・ヴィークル規制法。米カリフォルニア州の環境局による大気保全委員会(CARB)が規定する法律だ。カリフォルニア州は南部のロサンゼルス周辺の大気汚染が酷く、その改善策として、世界一厳しい排気ガス規制の一環として、1990年にZEV法を施行した。ここでは、EVやプラグインハイブリッド車、さらに燃料電池車などの電動車の普及台数を、同州内でガソリン車の販売台数の多い自動車メーカー毎に指定した。もし、この指定台数を達成できないと、各自動車メーカーのガソリン車の販売台数1台あたり、30万円程度と推測される巨額のペナルティが課せられる。こうした厳しいZEV法は、アメリカの他の州にも影響を与えている。自動車メーカーにとっては、アメリカは90年代~2000年代にかけて、世界ナンバーワンの自動車販売国。そのなかで、州別売上ランキングナンバーワンがカリフォルニア州だ。そのため、日系メーカーにとっても、EVや燃料電池車を開発する際、まずは「ZEV法ありき」で開発を進めてきたというのがEV開発の実態だ。そうした世界自動車産業の図式を、中国が参考にしたのだ。
●日本メーカーは当面は「プラグインハイブリッド」
 具体的にどうしたかというと、CARBに対する学術的なサポートをしている、カリフォリニア大学デービス校(UCD)に対して、中国の国立自動車研究所(CATARC)と一緒に中国版のZEV法を作って欲しいと、中国政府がアメリカ政府に持ち掛けたのだ。そうして生まれたのが、NEV法(ニュー・エネルギー・ヴィークル規制法)だ。そのNEV法が2016年に入って、具体的な内容が徐々に明らかになり、自動車メーカー各社は情報収集に躍起になっている。つまり、EVや燃料電池車などの電動車について、自動車メーカーが気にするのは、世界一の自動車製造・販売国の中国と、第二位のアメリカだ、ということ。この2国のみが、電動車の販売台数に対する厳しいペナルティを課すからだ。一方、日本の場合、こうした厳しい規定がない。あるのは、経済産業省が自動車産業界と連携してまとめた「次世代戦略2014」のなかで、ざっくりとした「達成目標」を提示しているだけだ。日本政府としては、自動車産業の自主性に任せるものであって、政府が強制的に指導するのは“いかがなものか”と「逃げ腰」である。そんな弱気の日本を尻目に、中国はアメリカとタッグを組んで、EVの本格普及に乗り出す構えだ。だが、日系メーカーの一部では「前回の十城千両で痛い目にあったから、少し様子を見たい」という声が聞かれる。 その結果として、日系メーカーは当面は「プラグインハイブリッド車止まり」の事業戦略しか公表していない。こんな弱腰で、本当に大丈夫なのか?気がつけば、EV産業界は中国とアメリカに牛耳られてしまうのではないのか?そんな強い危機感を、北京で感じた。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12586093.html (朝日新聞 2016年10月1日) 再発防止策を公表 三菱自燃費再測定不正
 三菱自動車は9月30日、燃費不正発覚後にデータを再測定した際にも不正があったと国から指摘された問題について、再発防止策を公表した。相次ぐ不祥事のたびに講じてきた再発防止策はうまくいかなかっただけに、資本業務提携を結んだ日産自動車の支援の下で、実効性を持たせられるかが問われる。三菱自の益子修会長兼社長が30日、国土交通省を訪れ、再発防止策を報告した。報告後、報道陣に「長い道のりだが、信頼を回復したい」と述べた。再測定をめぐる問題で8月末から販売を自粛していた8車種は10月1日から売り出す。三菱自は4月に軽自動車4車種の燃費不正が発覚した後、軽以外の9車種の燃費を再測定した。その際、法令の「グレーゾーン」を突く形で、有利な数値を選び出すプログラムを使って燃費を計算。その後、国交省の測定で、9車種のうち8車種で燃費がカタログより最大8・8%悪いことがわかり、国交省は「常軌を逸する事態」と批判した。三菱自は6月に23項目の再発防止策を公表したが、今回、8項目を追加した。不正の温床となった「開発本部」の見直しが柱で、開発本部の中間管理職を減らして風通しをよくし、燃費計算に使うプログラムの改訂に当たる専門委員会も新設することにした。三菱自は2000年、04年にリコール隠しが発覚。経営危機に陥り、三菱グループの資金支援で再建を図った。専門性の高い多くの技術者が退職し、組織が「たこつぼ化」した。燃費不正を受けて設けられた特別調査委員会は、こうした閉鎖性が「不正行為が法規に違反していることへの意識が極めて希薄」な企業文化を生んだと分析した。三菱自は10月、日産の出資を受けて傘下に入る。仏ルノーから送り込まれた日産のカルロス・ゴーン社長は、たこつぼ化した部門を横断するチームをつくって再建に成功した。経験を生かせるかが、再建のカギを握る。

<エネルギーの事例>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201609/CK2016093002000126.html (東京新聞 2016年9月30日) 世界でしぼむ原発市場 日立、東芝、三菱重が核燃事業統合へ
 日立製作所と東芝、三菱重工業の三社が原発の燃料製造事業を統合することで調整していることが二十九日、分かった。東京電力福島第一原発の事故の影響で国内の原発はほとんど稼働せず財務が悪化しており、来春を目指した統合で経費節減などを目指す。しかし、原発産業をめぐる経営環境は国内外で厳しさが増しており、狙い通りの効果を上げるのは難しい状況だ。統合を検討している三社は、日立、東芝、三菱重が直接出資する二社と、東芝傘下の米ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)などが出資する一社。安倍政権は原発の再稼働を急ぐが、国民負担を増やす議論が始まるなど矛盾や課題が山積している。安倍首相はインドやトルコなど海外に原発を売り込むが、原発産業は世界でも厳しさを増している。欧州ではドイツが脱原発の方針を決定。フランスは原発大手アレバが開発した原子炉に相次いでトラブルが発生し、二〇一五年度まで五年連続で純損益が赤字になり、政府が支援に乗り出している。英国は二酸化炭素(CO2)の排出を抑えるため原発の新設を決めたが、事業者の採算割れを防ぐため一キロワット時当たり一二・二一円(一ポンド=一三二円換算)の収入を保証する仕組みを導入。市場で取引される電力価格(一キロワット時当たり五・五円程度)の二倍を超え、足りない分は国民が負担する状態だ。米国では採掘困難な地層から石油や天然ガスが得られるようになったシェール革命で火力発電が安くなり、コストに劣る原発の廃炉が相次ぎ決まっている。新興国では原発の増加が見込まれている。だが、世界の原子力産業を調査する市民グループによると、中国では原発への投資額は再生可能エネルギーの二割弱。インドでも一二年以降、風力の発電量が原発を上回る傾向が続いている。加えて、原発には金銭以外のリスクもある。使い終わった核燃料など「核のごみ(高レベル放射性廃棄物)」は数万年におよぶ長期の管理が必要なため、民間企業は責任を負いきれず、各国とも処分に頭を悩ませている。名古屋大情報文化学部の高村ゆかり教授は「採算面や金銭に換算できないリスクがあるという側面を見ると、原発産業を民間ビジネスとして成り立たせるのは難しい」と話している。

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12587832.html
(朝日新聞 2016年10月2日) 原発事故、責任負うのは 事業者賠償に上限案
 原発事故の賠償責任を国民も負うべきか――。内閣府の専門部会が議論を本格化させる。背景には、原発再稼働を進める政権の意向を追い風に、国民にも負担を求めたい電力会社側の理屈がある。だが、事業者が「有限責任」になったら安全への意識が薄れ、対策が手薄になりかねないと指摘する専門家もいる。
■賛成派「国策、国も負担を」
 「原子力を積極的に推進してきたことに基づき、国の補償を求める」。5月の専門部会で、経団連でエネルギー対策を担当する加藤泰彦氏(三井造船会長)が述べた。オブザーバー参加の電気事業連合会も同調しつつ、自由化が進んで原発費用のすべてを電気料金でまかなえる総括原価方式がなくなったら、原発事故時の負担額を予測できない懸念を示した。これまで電力業界は「原発のコストは安い」と主張してきたが、賠償負担が重くなったらコストがどれだけ高くなるかの言及はなかった。国は、東京電力福島第一原発の事故後に見直したエネルギー基本計画で、原子力を「重要なベースロード電源」と位置づけた。いずれの意見も、これらを理由に国も事故の補償を担うべきだとの考えだ。部会では業界以外からも、テレビ番組のコメンテーターとしても知られる住田裕子弁護士が「(事業者への)絶大な許認可権限や監督権が国にはある。国の責任を一歩進めるべきだ」と主張。いまの原子力損害賠償法では国の援助があいまいで、具体化すべきだとの考えに立った。
■慎重派「安全おろそかに」
 ただ、事業者の有限責任化には慎重論も根強い。環境法や賠償制度に詳しい大塚直・早大教授は、無限責任の維持を強調した。国も負担する制度を採り入れると「安全に対する事業者の投資がおろそかになる可能性がある」というのが主張の柱だ。また、消費者団体役員の辰巳菊子氏は、原発事業について「利益はすべて事業者にいき、事故時だけ国に負担を求める話は納得しがたい」と指摘した。法曹界も有限責任に反対の立場だ。日本弁護士連合会は8月、賠償制度の見直しについて「そもそも(事故を起こすなどの)不法行為の法制度で賠償の責任が限定されることはない」とする意見書を公表した。事業者負担を限定すると、賠償制度が持つ「事故の再発を防ぐ機能」も失われるとしている。
■無限責任の原則、なし崩しの恐れ
 一方、福島の事故をみると、無限責任がなし崩しになる恐れがある。
 国は2013年度末、賠償や除染にかかる費用として、東電への貸し付けを5兆円から9兆円に増額した。しかし、その後も費用がかさみ、当面の廃炉費用を含めると計20兆円近くに膨らみそうだ。東電は7月、今後も増える廃炉費用を負担しきれないとして、国にさらなる支援を求めた。経済産業省も具体的に支援策の検討を始め、電力自由化で新規参入した小売業者にも負担を求める方針だ。全国の消費者の負担が重くなれば、福島事故が有限責任の先行例になり、賠償制度の見直しにも影響しかねない。
■原発事故の事業者責任の論点
<有限責任>
・事業者の安全意識が低下しないか
・過失度合いで負担額を決めると賠償手続きが煩雑化
・国の負担割合をあらかじめ決めるのは困難
・国民の理解が得られるか
<無限責任>
・現行の民間保険や政府補償では備えが過小
・事業者が巨額債務を抱える問題が残る
・国の援助のあり方

<教育―学力の軽視>
*4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160930&ng=DGKKASDG22H5H_Z20C16A9EA2000 (日経新聞 2016.9.30) 学力テスト、地域差縮小続く 下位県の成績向上 応用力に課題
 文部科学省は29日、全国の小学6年と中学3年を対象にした2016年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト、学テ)の結果を公表した。平均正答率で、下位自治体と全国平均や上位との差は初回だった07年度と比べて縮まっており、文科省は「各地で学力の底上げが続いた成果」と分析している。 今年4月、全国の国公私立の小中学校2万9千校に在籍する207万人が国語、算数・数学で受け、それぞれに知識を問うA問題と活用力を測るB問題が出題された。各回の全国平均を100として正答率が低い3県と比較したところ、07年度に3.7ポイントあった中学数学Bの差が今回は2.0ポイントに改善。上位と下位の差も縮まった。小学校の算数Bを除く小中7科目で07年度より数値が向上し、15年度と比べても5科目で改善した。平均正答率はこれまでと同様、B問題で低かった。国語では目的に応じて自分の考えを明確にしながら読んだり、根拠を示して書いたりする問題に課題があり、算数・数学でもグラフから情報を読み取って記述する問題などに間違いが目立った。都道府県別の平均正答率(公立)では、小学校の4科目のうち3科目で石川が最も高かった。中学では秋田と福井がそれぞれ2科目でトップとなり、上位の顔ぶれは例年と大きく変わらなかった。低迷が続いていた沖縄は、初めて小学校の全科目で全国平均を上回った。学テは教育委員会や学校現場が結果から子供の課題を把握し、指導改善につなげることを目的に07年度に始まり、今回で10年目。当初は全員参加方式で民主党政権下に抽出方式となり、自民党の政権復帰に伴い13年度から全員参加に戻った。全員参加は今回で4年連続だが、今年4月の熊本地震の影響で熊本県の全小中学校と宮崎、大分両県の一部は後日実施となり、結果は全国集計に反映されなかった。文科省は当初8月25日に今回の結果を公表する予定だったが、中学校分の採点などを受託した業者の集計にミスがあり公表が1カ月以上遅れた。

*4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160930&ng=DGKKZO07808290Z20C16A9M13300 (日経新聞 2016.9.30) 「深い学び」なお途上 小6・中3学力テスト結果
 2016年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト、学テ)は基礎知識の定着に一定の改善がみられたものの、やりとりや表現を理解する力や根拠を示して書く力などに引き続き課題が残った。次期学習指導要領で掲げられる「深い学び」の実践に向け、各教科の専門家からは指導のさらなる工夫を求める声が上がっている。

*4-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161002&ng=DGKKZO07902070S6A001C1PE8000 (日経新聞社説 2016.10.2) 学力テスト10年の総括を
 年中行事のように漫然と続けるのではなく、その功罪を総括して今後のあり方を考えるべきだ。導入から10年目を迎えた全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)のことである。調査は小学校6年生と中学校3年生を対象に、文部科学省が2007年度から始めた。国語、算数・数学は毎年実施。12年度からは理科が3年に1度行われ、19年度をめどに中3の英語も加わる。民主党政権下の一時期は抽出調査だったが、基本的には「毎年・全員参加」で調査は繰り返されてきた。学習成果の検証を通して授業改革や制度見直しに役立てるのが大きな目的だという。小6、中3の子どもの大半が取り組むテストを続けてきたことで詳細な学力データが積み重なり、学校での指導に生かす試みが広がってきたのは確かである。学力と家庭状況との関連もくっきり浮かび上がっている。そうした意義は理解できるが、だからといって数十億円もの費用をかけた悉皆(しっかい)調査が本当に毎年必要かどうか、当初からの疑問は拭えていない。「基礎的な知識は身についているが応用力には不十分」といった調査結果が示す課題は、毎年ほとんど同じだ。先日公表された今年度のテスト結果をみても、同様の傾向が浮かび上がっている。調査の本来の目的である全体的な学力傾向を把握するには抽出調査でこと足りよう。全数調査を実施するにしても数年に1度にする手もあるはずだ。実際に理科は3年に1度の実施である。「毎年・全員参加」の大きな弊害は、過去問題を勉強させるなど「学力コンクール」化が止まらないことである。このため文科省は今回から、都道府県別の平均正答率について表向きは小数点以下の数値を四捨五入して示した。弥縫(びほう)策を講じるよりも、この10年を検証して制度を見直すのが本筋だろう。このままでは走り出したら止まらない公共事業と同じではないか。

*4-4:http://ryukyushimpo.jp/news/entry-366771.html
(琉球新報 2016年9月30日) 小6 全教科平均超え 全国学力テスト 中3も差縮める
 全国学力テスト全国学力・学習状況調査文部科学省  文部科学省は29日、小学6年生と中学3年生を対象に4月19日に実施した2016年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表した。県内の公立小学校は、国語A、算数Bの平均正答率が初めて全国平均を上回り、4教科全てで全国平均を超えた。算数Aは、都道府県別で4位となった。県内公立中学校は、全教科の平均正答率で全国平均との差を縮め、国語Bは都道府県別で45位と、初めて最下位から抜け出すなど改善傾向がうかがえる。県内小学校の平均正答率は、国語Aが73・4%(全国平均72・9%)で、都道府県別では21位。国語Bは58・1%(同57・8%)で21位。算数Aは80・7%(同77・6%)で4位。算数Bは47・7%(同47・2%)で11位だった。前年度の平均正答率と比べると、国語Aで4・1ポイント、算数Aで3・0ポイント、算数Bで3・0ポイント上がった。国語Bは9・2ポイント下がった。県内中学校の平均正答率は、国語A71・3%(同75・6%)、国語B63・1%(同66・5%)、数学A54・3%(同62・2%)、数学B37・0%(同44・1%)。全国平均との差は国語Aでマイナス4・3ポイント(前年度マイナス5・8ポイント)、国語Bがマイナス3・4ポイント(同マイナス4・5ポイント)、数学Aでマイナス7・9ポイント(同マイナス8・6ポイント)、数学Bがマイナス7・1ポイント(同マイナス7・6ポイント)と、いずれも差を縮めた。都道府県別の平均正答率は国語Bが45位、残り3教科は最下位だった。前年度の平均正答率と比べると国語Aで1・3ポイント、国語Bで1・8ポイント、数学Bで3ポイント上昇した。数学Aは1・5ポイント減だった。今回の調査には、県内の公立小学校260校1万5109人、公立中学校147校1万4751人が参加した。熊本地震の影響により4月19日の実施を見送った熊本県の全小中学校と宮崎、大分両県の一部学校は結果集計を見送った。


<人材育成のための教育環境整備>
PS(2016年10月4日):東京都は、オリンピックや豊洲市場に相場以上の金をかけているが、*5-1のように、人材を育てる教育施設(保育・公教育・学童保育を含む)の整備は疎かで、未だに待機児童が多い上、現在の施設は子どもの居場所として質が悪すぎる。そのため、私は、0~2歳児を保育の対象とし、3歳児以上は義務教育として小学校で教育しながら育てるのが、今後の人材育成のためによいと考える。なお、保育の質は、佐賀県の*5-2の事例のように、居場所としての施設もケアの内容も工夫されている質の良い保育園ができている反面、東京都は、*5-3のようにその両方が欠けている。そして、オリンピックなどの一時的なイベントで相場以上の予算をかけて無駄遣いするよりも、教育施設を整備する方がよほど重要であり、将来への投資になるにもかかわらず、このような予算の使い方になる理由が最も重要な問題なのである。

 
       豊洲市場の建設費              オリンピック会場建設費の国際及び国内比較上
      2016.9.16朝日新聞                               2015.7.10Yahoo  

*5-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201607/CK2016072002000135.html (東京新聞 2016年7月20日) 都内の待機児童8466人 減少から再び増加
 東京都内で認可保育所に入れず、行政のほかの保育サービスでも預け先が見つからない待機児童は、今年四月一日時点で前年より六百五十二人増え、八千四百六十六人に上ることが分かった。現行基準で統計を取り始めた二〇〇二年以降、最多だった一四年(八千六百七十二人)に次ぐ多さ。都が十九日、各区市町村の集計を基に発表した。都によると、四月現在で認可保育所は前年より百五十八カ所増え、定員も一万三千六百三十五人増の二十三万三百三十四人だった。前年は減少した待機児童数が再び増加したことは、施設整備などの対策が、保育ニーズの伸びに追いついていないことを示している。都は主な要因として、人口増加や共働き家庭が増えていることを挙げる。認可保育所などの利用申込者数は二十六万三千五百十八人で、就学前児童人口に占める割合が41・3%と、初めて四割を超えた。認可以外も含めた保育サービスを利用する児童数は、前年より一万四千百九十二人増え、二十六万千七百五人で過去最多だった。年齢別の待機児童数は一歳児が四千四百四十七人と最も多く、ゼロ歳児が二千七十二人、二歳児が千四百八十五人と続く。区市町村別では、世田谷区の千百九十八人が最多。続いて江戸川区の三百九十七人、板橋区の三百七十六人。前年からの待機児童の増加数が大きかったのは、中央区の百四十四人、荒川区の百十六人、江東区の百十人の順だった。待機児童 保護者の仕事や病気で、認可保育施設に入れる条件を満たしているのに、定員超過などで入所できない乳幼児のこと。都市部に集中し、0~2歳児が多い。昨年4月時点で2万3000人を上回り、5年ぶりに増加した。保護者が育児休業中などの理由で、自治体が計上していない潜在的な待機児童はさらに約6万人いる。用地不足などで施設整備が追い付かず、保育士の確保も課題となっている。

*5-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/359511 (佐賀新聞 2016年9月25日) 待機児童問題改善へ 保育園起工式、定員75人
 人口増加が続き、保育所の入所待ちをする「待機児童」が県内で最も多い鳥栖市で23日、保育所の起工式があった。社会福祉法人健翔会(門司健理事長)が同市田代本町に建設する「あいりす保育園」で、定員は75人。鳥栖市内では来春までにあと2保育所の建設が予定されており、待機児童問題の改善を目指す。あいりす保育園は敷地面積3300平方メートルに、木のぬくもりが感じられる木造平屋建て園舎(建物面積740平方メートル)を建設し、園庭810平方メートルなどを整備する。園舎には未就園の子どもと保護者の交流の場となる子育て支援センターや学童保育を併設する。総事業費は2億3千万円。式には市や福祉、園の関係者らが出席した。門司理事長(83)は「100年先を見るとまず教育が大事になる。教育と保育の両方に力を入れ、たくましい子どもを育てたい」とあいさつした。同法人はすでにレインボー保育園(同市桜町)と虹の子保育園(同市古野町)を運営しており、今回が3園目になる。建設地に隣接して同法人のデイサービス施設やケアハウスがあり、利用者のお年寄りや地元と交流を図りながら運営する。同園では今後、保育士の確保を急ぐ。市によると、今春の待機児童は5人で、希望の保育所に入れないなどの理由による「隠れ待機児童」は約180人とみている。あいりす保育園の他に、来春までに鳥栖西中校区に定員71人と80人の保育所が建設され、市内の定員は226人増える予定。

*5-3:http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/243476.html
(NHK 2016年4月22日) 日本総研 主任研究員 池本 美香
 保育園に落ちたというブログが国会で取り上げられたことをきっかけに、待機児童問題がこれまでになく注目を集めています。待機児童数は7年連続で2万人を超えています。政府は2001年に「待機児童ゼロ」を打ち出し、この10年で保育所の定員は50万人も増えました。しかし、それ以上に、共働きや一人親など、保育所を必要とする子どもが増えています。政府は先月末、緊急的な待機児童解消策を打ち出しましたが、その内容は、国の基準より手厚い保育を行っている自治体に、基準を緩和して一人でも多く子どもを受け入れるよう要請する、といったもので、安全の確保や活動の豊かさといった「質」の低下が懸念されています。ただでさえ、短期間に保育所を増やしてきたため、現場では経験の浅い保育士が増えていて、保育士による虐待や保育所での死亡事故など、深刻な事例も報道されています。毎年10数人の子どもが保育施設で亡くなっており、この10年間に死亡した子どもはあわせて150人近くに上っています。特に国や自治体が認可も補助もしていない認可外保育施設において、死亡事故が多くなっています。私自身も5年前に息子が待機児童となり、認可外保育施設に預けるしかなく、その質が本当に心配でした。その後認可保育所に入ることができましたが、階段から落ちて頭を打ったり、アレルギーのある食材を食べてじんましんがでたりと、認可保育所なら安心というわけではありません。認可保育所でも、治療に要する期間が30日以上の重篤な事故が、昨年4月から12月の間に342件も報告されています。保育所に入れても、その質に不安があれば、親は安心して働けません。入れる保育所があっても、預ける気になれないと職場復帰をあきらめる人もいます。待機児童問題については、量の拡大だけでなく、保育の「質」の維持、向上に向けた検討が不可欠です。海外ではすでに、保育の質を確保するための取り組みが活発化しています。その背景には2つのきっかけがあります。一つは、国連で子どもの権利条約が採択されたこと、もう一つはノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のヘックマン教授が「保育への投資はリターンが大きい」という研究結果を出したことです。一つ目の子どもの権利条約は、安全・安心に加え、教育、遊びやレクリエーション、意見表明など、子どもに幅広い権利を認めるものです。海外ではこの条約に沿って政策が検討されているため、保育政策についても「働く親が子どもを預ける場所があるか」ではなく、まず「保育が子どもにとってふさわしいものとなっているか」が検討されます。すべての乳幼児に質の高い教育を保障するという観点から、保育所を学校と同列の教育機関と位置づけ、学校を担当する省庁が保育所を所管する国も増えています。親の仕事の有無にかかわらず、すべての子どもに保育所を利用する権利があり、親の所得にかかわらず利用できるように、幼児教育の無償化を進める国もあります。保育の質が重視されることとなったもう一つのきっかけは、幼児期の教育の質が、学校教育の効率性を左右するというヘックマン教授の研究です。質の高い幼児教育を受けた子どもは、その後の学力が高いことや、成人したあとの所得が高いことなどがわかりました。これは幼児教育を通じて意欲や自尊心、創造性などの非認知能力が高まるためだと考えられています。成人になってから事後的に補助するよりも、予防的に幼児期に投資する方が、財政への負担が少ないと考えられるようになっています。ヘックマン教授の研究を背景に、海外では保育の質向上のための財源の確保に国民の合意が得られ、幼児教育への公的投資が増えています。では、具体的に、海外ではどのようにして保育の質を確保しているのでしょうか。日本ではあまり検討されていない取り組みを3つご紹介します。第一に、保育士の処遇です。日本の保育士の平均賃金(認可保育所の保育士の約3分の1を占める公立保育所を除く)は、小学校教員の7割弱と少なく、月額で10万円以上も差があります。全産業平均と比べても、大きく下回っています。これに対して海外では、保育士も教育者としての専門性や、子どもの安全に対する責任といった高度な役割を果たしているとみなされ、幼児期と小学校で教員の賃金格差が小さくなっています。こうした高度な役割を果たせる保育士の育成に向けて、保育士に免許の更新を義務付けたり、保育士養成校の質をチェックする国もあります。第二に、園の運営についての評価です。日本では国が自治体に対して、年に一度は園を訪問して質をチェックするよう求めていますが、施設数が急増している自治体では数年に一度の訪問しか行われていません。外部の専門家による第三者評価も、義務付けではないため、2013年度に第三者評価を受けた保育所は5%にすぎません。これに対して海外では、国の評価機関が全国すべての施設を定期的に訪問して評価し、その結果をホームページで一元的に公表する取り組みがあります。たとえばイギリスでは、すべての園の評価レポートがホームページに掲載されていて、親にとって、保育所選びの際の貴重な情報源となっています。全国の園の評価結果が国に集約されるため、全国の保育の質の変化や地域別の状況も把握でき、政策の見直しにも役立ちます。好事例もホームページで紹介されるので、各園がそれを見て自らの運営の改善を図ることもできます。第三に、親の参画です。海外では、国の評価機関による訪問だけで質を確保することは難しいため、保育の質にもっとも関心が高い親に、日常的に保育の質をチェックしてもらうという考え方が見られます。親の役割として、気になることがあればすぐに園と相談すること、それでも気になることがあれば、自治体や評価機関に伝えることが期待されています。親の代表と職員の代表が定期的に集まる運営委員会を、すべての園に設置するよう求め、親の意見やアイディアを質の向上に活かそうとする国もあります。さらには、保育士不足や財源不足を補うために、親が交替で保育士の補助をしたり、大掃除や施設の修繕を親たちで行う例もあります。こうした親の参画は、親同士が親しくなるきっかけにもなっています。日本は保育の質を、保育士の努力だけで確保しようとする傾向も見られますが、海外の動向をふまえれば、保育の質を高めるためには、保育士の養成の在り方や賃金水準を見直すことが必要です。さらには、実質的に子どもにふさわしい保育が提供されているか、外部の専門家による評価をすべての園に義務付けることや、保育の質の向上に親の力を積極的に活かすことも期待されます。海外では、保育を子どもにとってふさわしいものとするために、実にきめ細かな配慮が見られます。保育士を採用する際に、過去の犯罪歴などをチェックすることが、多くの国で義務付けられています。園の活動に対して、子どもが意見を表明する権利を、法律に記載する国まであります。財源の制約から質の話を後回しにして、目先の待機児童解消に取り組むより、より長期的な視野を持って、子どもの権利や効果的な公的投資の視点から、すべての子どもに質の高い保育を保障する方向に、舵を切ることが求められます。また、その方がむしろ、財源確保に向けた合意を得やすいという面もあると思います。


PS(2016年10月6日追加):*6-1のような化学メーカーで出る水素の活用はよいが、*6-2の三菱重工MRJの5度目の納入延期は情けない。そして、ライバルはブラジルのエンブラエル社だそうだが、三菱重工がMRJを水素燃料で設計していればonly oneであり、他国の飛行機と同列の競争をせず引っ張りだこになった筈である。現在の飛行機は大量の排気ガスと大きな騒音を出すため、これを出さない燃料電池飛行機を作れば競争の土俵が変わったのだが、技術力だけでなく先見の明もないのだろう。

*6-1:http://qbiz.jp/article/95324/1/ (西日本新聞 2016年10月6日) 水素活用へ実証実験 山口・下関市、化学メーカーと連携
 山口県下関市は本年度から、同県周南市の化学メーカーや同市、県などと連携し、水素を使った燃料電池自動車などの実証実験「低炭素水素技術実証事業」に取り組む。年末までに下関水産会館跡地(下関市大和町)に簡易型水素供給設備(水素ステーション)の設置工事に着手し、2017〜19年度に実証実験を実施する予定。市環境政策課によると、周南市の化学メーカー「トクヤマ」「東ソー」などから発生する未利用分で高純度の水素を液化し、下関市内に輸送。水素ステーションに貯蔵し、市の燃料電池車や、下関漁港内のフォークリフト用に使用。純水素型燃料電池にも水素を供給し、漁港内の入浴施設や食堂にも活用する。環境省の委託事業で事業費は15億円で、このうち市の負担は約3億円。市環境政策課は「水素社会の到来を見据え、温室効果ガス削減とエネルギー問題を同時に解決できる水素技術の普及に向けて、取り組みを進めたい」としている。

*6-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161005-00000004-wordleaf-bus_all (Yahoo 2016年10月6日) 三菱重工のMRJが5度目の納入延期になる公算、プロジェクトは大丈夫?
 初の国産ジェット旅客機である三菱重工のMRJが5度目の納入延期になる公算が高まってきました。これ以上、納入が遅れると、収益面でかなり厳しい状況に追い込まれます。MRJのプロジェクトは大丈夫なのでしょうか。
●5度目の納入延期を検討
 三菱重工の航空機製造子会社である三菱航空機は、MRJについて5度目の納入延期を検討しています。当初は2013年の納入を目標としていましたが、初飛行の前に3回ほど開発スケジュールが延長され、初飛行に成功した2015年11月時点では2017年の納入を目指していました。しかし、開発スケジュールはさらに遅れ、その後は2018年半ばをメドに開発を進めてきました。2016年8月には、米国での試験飛行のため日本を飛び立った同機が空調システムの不具合などで2度日本に引き返すというトラブルが発生。3度目のトライでようやく米国への移送を完了しています。MRJは今後、機体の型式証明を取得するため、累計で2500時間に及ぶ飛行試験を実施する必要があります。この試験をクリアすれば、晴れて2018年半ばの納入にこぎ着けることができたはずなのですが、今度は別の問題が浮上してきました。量産に際して設計変更が必要なことが明らかとなり、開発スケジュールがさらに伸びる可能性が出てきたのです。
●ライバルはブラジル・エンブラエル社
 新しい航空機を開発するにあたってトラブルはつきものであり、何度も遅延すること自体に問題があるわけではありません。しかしビジネスにおける収益面を考えるとそうも言っていられません。MRJの開発費は当初1800億円程度を見込んでいましたが、金額は大幅に膨らみ、現在では4000億円に達しているともいわれています。MRJの現時点における目標販売数は1000機となっており、仮予約を含めても約400機の受注しか取れていません。1000機を販売することができても収益的には厳しいといわれていますから、受注がこれ以上伸びないという状況になった場合には、かなりの赤字を覚悟する必要も出てきます。スケジュールが遅れることの最大の問題は、ライバルであるブラジル・エンブラエル社の最新鋭機納入のタイミングが刻々と近づいていることです。同社はMRJの競合となる機体の納入を2020年に開始する予定ですが、MRJはエンブラエルより2年納入が早いことがセールスポイントでした。しかし、このアドバンテージがなくなってしまうと、MRJはエンブラエルと直接戦わなければなりません。エンブラエルは新規参入の三菱と異なり、豊富な納入実績がありますから、直接、競合するという状況になった場合には、三菱の苦戦が予想されます。三菱重工の経営陣は、当初から黒字化には10年かかるとの見通しを示しています。5度目の納入延期となった場合には、さらに長期戦を強いられることになります。


PS(2016/10/7追加):東京オリンピックと同様、*7の大阪万博にも呆れてモノが言えない。何故なら、日本(特に東京、大阪)は、施設が整っておらず外国での認知度も低い開発途上国ではないため、このようなイベントで無駄遣いをし、国民をないがしろにして国威発揚すべき段階ではなく、本物の豊かさを実現していく段階だからだ。また、東京オリンピックと大阪万博の組み合わせも50年前と同じことの繰り返しで呆れる。そのうち、江戸時代や明治維新をもう一度やろうということになるのではないか?

*7:http://www.nikkei.com/article/DGXLASHC21H7F_R20C16A9AC8000/
(日経新聞 2016/9/22) 大阪万博へ100ヘクタール確保 府・市、夢洲集約を正式決定
 大阪府が2025年の誘致を目指す国際博覧会(万博)の会場候補地について、府と大阪市は21日、人工島の夢洲(ゆめしま、大阪市此花区)に集約すると正式に決めた。埋め立て済み用地のほか、西側の廃棄物埋立処分場などを活用し会場に必要とされる100ヘクタールを確保。府・市が誘致するカジノを含むIR(統合型リゾート)用地も最大70ヘクタール生み出せるとした。現在は工事が進んでいない南側の約100ヘクタールについては、IRの進出動向をにらみ最大30ヘクタール程度埋め立て可能とした。目標とする3千万人の来場者を会場に輸送するため、大阪市営地下鉄中央線の延伸を開催に間に合わせる。シャトルバスなどの往来のため、夢洲に渡る橋も拡幅する。松井一郎府知事は方針決定後、記者団に「エンターテインメントを柱に大阪のにぎわいを実現できる」と強調。吉村洋文市長は「万博とIRで相乗効果が出せるようにしたい」と話した。


PS(2016年10月7日追加):道路際の住民や車に乗っている人は、もともと車両通行時の騒音や振動に悩まされてきたため、*8のように、せっかく静かに走れるようになったEV・HVに「車両接近通報装置」の設置を義務付ける規制は全く愚かで、日本でしか通用しないガラパゴス規制になるだろう。障害者・高齢者・一般人及び自転車が事故に巻き込まれないようにするためには、①道を広くして歩道・自転車道を設置する ②車に自動停止装置を付ける ③車の運転者が気をつける などが有効で、日本の街づくりにおける道路計画のなさは、国土交通省及び地方自治体の思考停止に依るところが大きい。

*8:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/364063
(佐賀新聞 2016年10月7日) HV接近音、装置義務付け、18年以降の新型車対象
 国土交通省は7日、道路運送車両法の保安基準を改正し、走行音が静かなハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の接近を歩行者に音で知らせる「車両接近通報装置」について、2018年3月以降の新型車への設置を義務付けた。視覚障害者やお年寄りが接近に気付かず、事故に巻き込まれるケースがあるためで、現在は認められている通報音の停止機能も禁止する。現在販売されている車種は、20年10月から適用する。中古車は対象外となる。通報装置は、市販されているHVやEVに標準装備されているが、メーカーごとに音量や音質が異なり、歩行者に分かりづらいといった問題もあった。


PS(2016年10月11日追加):いつものとおり廻りを見てバスに乗り遅れないようにあわてて行動するパターンで遅れ馳せだが、*9のように、「パリ協定」の批准案を閣議決定したのはよかった。今後は、これに沿って自然エネルギーによるCO2削減計画を作ることが必要で、乗り物は速やかに電動か燃料電池に変えれば、環境と資源の課題が同時に解決する。例えば、2020年の東京オリンピック開催時以降は、東京23区内などの都市部はEVか燃料電池車しか走らせないようにする思いきった施策を行えば、大きくCO2を削減でき、都市のヒートアイランド現象を緩和でき、次の技術に繋がって、景気もよくなる。

*9:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/364925
(佐賀新聞 2016年10月11日) パリ協定批准を閣議決定、国会審議で承認目指す
 政府は11日、地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」の批准案を閣議決定した。近く国会提出し、衆参両院の承認を得て、モロッコで国連の気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)が始まる11月7日までの批准を目指す。ただ環太平洋連携協定(TPP)を巡る与野党攻防のあおりを受けて審議が後回しになる懸念もある。パリ協定はすでに米国や中国、欧州連合(EU)諸国、カナダ、ブラジルなどが批准。批准55カ国以上、世界の温室効果ガス排出量に占める比率が55%以上という発効要件をクリアし、11月4日の発効が決まっている。


<太陽光発電の例>
PS(2016.10.18追加):太陽光発電の開発も、公認会計士の携帯品であるシャープの電卓をヒントに、私が経産省に提案して1995年頃に始まったもので、一直線に進んでいれば日本がトップになって多くの特許を得ていた筈だが、日本では太陽光発電に対するいちゃもんや妨害が多くて進展せず、シャープは鴻海に買収され、パナソニックも、*10-1のように国内不振を補うために米テスラと共同生産して海外に活路を見出すこととなった。これにより、日本発の技術も中国とアメリカで発展することになったが、こういうことの積み重ねが日本企業の利益率を低くし、イノベーションによる経済発展を邪魔しているのだ。
 こうなる理由は、政治・行政・経営・メディアに多い文系の人材が科学に弱すぎる上、私がこのようなことを書くと「女のくせに謙虚でなく生意気だから、あいつの言うことは絶対やらない」と考える人が少なからずいることで、このように科学的でも公正でもない判断基準で物事を決める人がリーダーになっていることが重大な問題なのである。そのため、文系学部も大学入試や大学教育において、数学・物理学・化学・生物学をはじめとする科学の科目を増やすことが、有能なリーダーを育成するにあたって必要不可欠だ。
 なお、*10-2のように、インドネシアでは、新エネ振興補助金は既存の電力会社ではなく政府が出しており、来年も継続する方針だそうで、インドネシアの方が着実に新エネルギーが伸びそうだ。

*10-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161018&ng=DGKKZO08478550X11C16A0TJC000 (日経新聞 2016.10.18) 太陽光パネル、海外に活路  パナソニック、米テスラと共同生産 販売網活用、国内不振補う
 パナソニックが太陽電池事業の立て直しを目指し、電気自動車(EV)メーカーの米テスラモーターズと協業することが17日分かった。2017年にも米国で太陽光パネルを共同生産する方針だ。テスラが買収予定の米住宅用太陽光パネル最大手、ソーラーシティの全米に広がる販売網を活用する。海外に活路を求め、販売減が続く国内を補う狙いだ。協業はテスラが同日発表した。テスラが買収を公表しているソーラーシティが建設中の工場(ニューヨーク州)で、パナソニックが開発した太陽光パネルを生産するほか、生産技術の指導などでも協力する見通し。投資額は数百億円に上るもようだが、パナソニックはその一部も負担するとみられる。17年の生産開始を目指す。パナソニックにとってテスラグループの販路を使って太陽光パネルを拡販できる利点がある。パナソニックは16年度の海外での販売量を前年度の約2倍の10万キロワットと全販売量の2割にまで引き上げる目標を掲げる。米国では太陽光パネルの販売代理店と相次いで提携している。背景には国内での不振がある。パナソニックが住宅向けでシェア首位に立つ国内市場は、太陽光発電の買い取り価格の下落で市況が悪化。同社の太陽電池を含むエネルギー事業の15年度の売上高は14年度比11%減の3671億円に落ち込んだ。1~8月の太陽電池事業の売上高も前年同期比4~5割減ったもようだ。販売減は生産にも影を落とす。16年2月から稼働を停止する二色の浜工場(大阪府貝塚市)は今秋の再開を予定していたが、来春にずれこみそうだ。海外市場の開拓が不可欠の中、太陽光発電事業に注力するテスラとの協業はパナソニックにとって設備投資の資金負担などが見込まれ、リスクを抱える面もあるが起爆剤となる可能性もある。両社はEVに使うリチウムイオン電池の工場も共同建設しており、11月にも量産を始める予定だ。テスラの新型車の受注が好調で、投資計画を前倒しにするなど、関係は深い。

*10-2:http://qbiz.jp/article/96151/1/
(西日本新聞 2016年10月18日) インドネシア 新エネ振興補助金、政府は来年も継続方針
 インドネシアのエネルギー・鉱物資源省は、新・再生可能エネルギー振興に向けた補助金の拠出を来年も継続する方針を固めた。補助金額は、約1兆1,000億ルピア(約88億2,600万円)。17日付インベストール・デイリーが伝えた。同省新・再生可能エネルギー局のリダ局長は、補助金には新・再生可能エネルギーの買い取り価格と国営電力PLNの電力生産コストとの差額分を補うことで、PLNによる買い取りを促進する重要な目的があると説明。国会は先に、企業に対する支援は補助金にふさわしくないとして却下する方針を示していた。国会第7委員会(エネルギー鉱物資源関連)との会合では、同補助金を通常の電力補助金と合算することにも同意し、合算しない場合でも同補助金の運用はPLNが行うことを確認した。同補助金の内訳は、小水力発電が5,200億ルピア(電力供給量30万2,420キロワット)、太陽光発電が2,050億ルピア(12万5,000キロワット)、バイオマス発電が3,020億ルピア(4万2,800キロワット)、バイオガス発電が383億ルピア(6,200キロワット)、ごみ焼却発電が77億ルピア(1,600キロワット)となっている。リダ局長は、今月25日付で電力価格と太陽光発電事業入札に関するエネ鉱相令『16年第19号』を公布する予定と表明。同相令の公布後に、全国で発電容量が合計25万キロワットとなる太陽光発電事業の入札を実施する計画とした。


PS(2016.10.30追加):*11に、都道府県立などの公立中高一貫校で学年を超えた前倒し学習などの学力対策が広がっており、約6割が中学で高校の学習内容を教え、進学率も一般の公立高より高いそうでよいことである。何故なら、私立の進学校は前からそうで、東大の場合、入学する時に東大教養レベルの知識を持っている人も少なくなく、授業料の高い私立でなければそれができないとすれば、経済的事情で進学の可能性が左右されたり、男女別学しかなかったり、中高一貫の私立校がない地方の生徒は不利になったりするからだ。しかし、そのように勉強すると「“ゆとり”ある楽しい学校生活ができない」と主張する人もいる。私は経験があるが、そのように勉強しても読書・習い事・遊び・スポーツなどをする時間は十分あり、暇の多い時期から必要な学識を身につけ始めることで、むしろゆとりを持って学ぶことができ、さらに大人になって使用する考え方や知識を短期間で詰め込むことなく、身につけることができる。そのため、下のように、近年は公立中高一貫校だけでなく、公立小中一貫校も増えており、歓迎だ。

 
    2013.10.25朝日新聞

*11:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12633538.html (朝日新聞 2016年10月30日) (教育考差点)公立一貫校、進む前倒し学習
 都道府県立など公立の中高一貫校で、学年を超えた前倒し学習などの学力対策が広がっている。朝日新聞が全国の一貫校にアンケートした結果、約6割が中学で高校の学習内容を教えていた。進学率も一般の公立高より高く、学校数はこの10年で2倍に増えている。公立中高一貫校は、(1)一つの学校で6年の一貫教育を行う中等教育学校(2)同じ自治体が設置した中高を接続し、中学から高校に入試なしで進める併設型(3)中高で生徒間の交流などをする連携型――に分類できる。アンケートは9~10月、一貫教育を進めやすい中等教育学校と併設型の計118校を対象に行い、105校(89・0%)が回答。このうち中学段階で高校の学習内容を教え始める学校は65校(61・9%)だった。前倒し学習は私立では進学校を中心に一般的に行われているが、公立の一貫校でも広がっている実態がわかる。中等教育学校と併設型は学校教育法施行規則に基づき、中高の学習内容の入れ替えが可能だ。中学3年時に高校の内容を教える例が多いが、鹿児島県立楠隼(なんしゅん)中学・高校は中1の11月から国数英で高校の内容に触れていた。1週間の平均的な授業時間数も一般の公立校より多い。高校でみると、一貫校は1コマ50分換算で33~35コマが72校(68・6%)で最多だったが、公立高全体では30~32コマが69・2%(昨年度の文部科学省調査)で最も多い。一貫校の今春の卒業生のうち、大学・短大に現役で合格して進学した割合は平均77・9%。公立高全体の平均50・1%(文科省調査)を大きく上回った。公立中高一貫校は旧文部省が1999年、ゆとりある6年間の学校生活の実現や進路の選択肢を増やすことなどを目的に、自治体が設置できる制度を開始。中等教育学校と併設型は2000年度には3校だったが06年度には59校、今年度は計118校になっている。10校を設置した東京都教育委員会の担当者は「経済的事情などから公立を選びたい人はおり、一貫校の門戸を広げる必要があると考えた。将来のリーダーを育成したい」と話す。

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2016.8.31 21世紀の医療へ (2016年9月2、6日に追加あり)

 ドクターヘリ(埼玉県)  ドクターヘリ(神奈川県)  ドクターヘリ(宮崎県)  ドクターヘリ(沖縄県)
   電線が危険
 
 ドクターヘリの    ドクターヘリの関東での広域連携      パイロット不足    熊本地震での      
出動状況(群馬県)                          2015.7.22公明新聞 高速道路通行止め   
                                           上         *1-3より 
                                (*パイロットは、自衛隊をリタイアした
                                  経験者に研修すればいいのでは?)
(1)ドクターヘリについて
 私が衆議院議員をしていた2005年~2009年の間に地元佐賀三区で有権者の意見を聞いて廻ったところ、特に離島の人に医療へのアクセスに関する心配が多かったことや、いざという時には誰でも短時間で先端医療にアクセスできるようにしたかったことから、前半の2006~2007年に、*1-1のドクターヘリによる救急医療体制を作った。

 しかし、*1-2のように、福岡、長崎両県のヘリを共同運航してきて、佐賀県独自のヘリが導入されたのが2014年1月というのは、佐賀県が他県に一方的に頼っており情けない。

 また、*1-2によれば、ドクターヘリが要請を受けたにもかかわらず出動できなかったケースが49件あり、その理由は、①要請の重複14件 ②時間外11件(運航時間:午前8時半~日没30分前まで) ③天候不良10件だったそうだ。

 このうち①はヘリ不足で仕方がないとはいうものの、*1-4で国立病院機構長崎医療センター救命救急センター長の髙山氏が提言されているとおり、北関東のように、まず他県と広域連携してこのようなことが少なくなるようにするのがよいと考える。

 ②③については、晴れの日の昼間以外は危険だから飛べないということで、それはヘリの操縦が人の視界のみに頼っているからだろうが、航空機だけでなく自動車でさえ自動運転できる時代に遅れている。また、フライトドクターやフライトナースはヘリに乗っている時間に比例して墜落に遭遇するリスクも高くなり、ドクターヘリに乗る重篤な患者はじめ乗る時間が長くなるドクターやナースにもヘリの振動や騒音は身体に悪いため、ヘリの性能を向上させるべきである。

 さらに、*1-3のように、ドクターヘリは災害時に「隠れた医療ニーズがあった」と、熊本地震の道路状況が悪くなった地域で災害医療派遣チーム(DMAT)の一員として活動し、患者の受け入れやその後の支援活動で指揮を執った久留米大病院高度救命救急センター教授の山下氏が証言しておられる。
 
 このように、ドクターヘリを使った医療システムは、比較的少ない拠点病院と少ない医師で広域をカバーできるため、ドクターヘリを使う広域医療ネットワークを構築すれば、最も安あがりで高品質の医療システムをつくることができるだろう。そして、それは、日本国内だけでなく、アジア・アフリカのように離島や山間部が多く医師の数が少ない地域で必須アイテムになると思われる。

(2)再生医療について
 
     2014.10.24日経新聞(癌治療)        毛髪の再生医療     皮膚の再生医療

 私は、1995年前後にJETROが開いた会合で、ヨーロッパのDNAに関する研究成果に触れる機会があり、遅れていた日本での再生医療の可能性について通産省(当時)に言って進めた経緯がある。そして、衆議院議員をしていた2005年~2009年の間に、日本は、文科省・厚労省・経産省が協力して再生医療の研究と産業化を進める体制になった。しかし、その後、日本では、iPS細胞以外は再生医療と認めないようなところがあったため、iPS細胞以外では外国に抜かれたように思う。

 つまり、新しい研究をしている時には何が成果を上げるかわからないため、既にノーベル賞をもらったか否かにかかわらず、あらゆる可能性を排除せずに筋の良いものは残してバックアップしていくべきで、国内で邪魔されながら世界で勝つことなどは到底できないということを、政治家も官僚もメディアも肝に銘じておくべきなのだ。

1)免疫療法
 小野薬品は、*2-1のように、免疫を使って癌細胞を攻撃する新たな治療薬「抗PD―1抗体」を実用化したが、仕組みがわかってから治療薬候補が完成し治験が始まったのは、米国で抗PD―1抗体の治験が始まった2006年からで、開発から実用化までに15年もかかっており、その間に亡くなった方は多い。また、メルク、ロシュなども、既に同じ仕組みの抗PD―1抗体の治験を拡大している。

 しかし、厚労省は、今でも公的医療保険が適用される標準治療は、外科療法(手術)・放射線療法・化学療法(抗癌剤)として免疫療法(http://camiku.kyushu-u.ac.jp/about/clinic/immune-cell-therapy 参照)は公的医療保険外というスタンスをとっている。この鈍さも、チャレンジして研究開発した先端企業にロイヤルティー収入を得にくくして、日本を研究開発に向かない国にしているのだ。

2)幹細胞を利用した再生医療
 再生医療に利用できる細胞には幹細胞もあり、加工していない本人の細胞であれば、自らの免疫で攻撃されることがなく癌化もしないという意味で、他人の細胞やiPS細胞を使うより優れている。

 そのような中、*2-2のように、「外傷性脳損傷」の患者に加工した他人の骨髄由来の幹細胞(細胞医薬品)を脳に直接注入して機能回復を試みる治験を東京大病院が近く始め、これは米国では先行して進められて脳梗塞患者の治験で運動機能や言語機能の向上が既に報告されており、回復が難しい脳損傷の新たな治療法になるそうだ。

 この幹細胞は、健康な他人の骨髄から採取した間葉系幹細胞を加工・培養したもので、移植した細胞は、約1カ月で脳内から消えるそうだ。米スタンフォード大などの研究チームが、この医薬品の安全性確認のために脳梗塞患18人に実施した治験結果を米医学誌に発表したが、それによると、ほぼ全員の運動機能が回復して目立った副作用はなかったとのことである(すごい!)。

 そのほか、外国では自分の脂肪由来の幹細胞で脊髄損傷を治したという報告もあったが、*2-3のように、日本では札幌医大が幹細胞で脊髄損傷を治療する国内初の治験をしており、これを適用すると自民党の谷垣元幹事長の頸髄損傷も治すことができそうだ。

 つまり、何にでも分化できる幹細胞はKeyであり、保険適用にして治せば患者の福利が増すのはもちろんのこと、介護がいらなくなり社会復帰できるため、社会全体では医療・介護のコストが節減できる。

3)毛髪・皮膚・心臓の再生医療
i)毛髪の再生
 命にかかわる病気ではないが、*2-4のように、京セラが理研と組み、患者から採取した健康な毛髪細胞を加工・増殖して患者に移植し、毛髪再生装置の試作機を開発するそうだ。事業化には細胞の精密加工技術や大量に培養する量産技術が必要で、これは日本のお家芸だ。毛髪の再生医療も公的保険が適用されない自由診療での実用化になるそうだが、この需要は多いと思われる。

ii)肌の若返り
 *2-5のように、自分自身の肌細胞を採取し、抽出して培養したものをシワやたるみなどが気になる部位に注射器で移植する「肌の再生医療」もあるそうで、実用化されれば需要は多いだろう。

iii)ハートシート
 実用化された再生医療製品では、テルモの心不全治療に使う「ハートシート」の標準治療価格が1400万円強と高かったところ、保険適用となって患者の自己負担は治療費の1~3割で済み、高額療養費制度の対象にもなるそうだ。そして、これも数を多く生産すればコストが下がることは間違いない。

4)iPS細胞を利用した再生医療
 iPS細胞は、*2-6のように、皮膚や血液の細胞から作れる万能細胞で無限に増え、体の様々な種類の細胞に変化できるが、移植した細胞が狙った細胞に変化し損なって腫瘍(=癌)になる危険がある。日本眼科学会総会は、「安全性に関するエンドポイント(評価項目)は達成した」としており、国もiPS細胞を全面的に支援しているが、心臓シートや角膜シートは自分自身の他の細胞からすでにできているため、リスクとコストをかけてiPS細胞から作成しなければならないかについて、私は疑問に思う。

(3)ワクチン
 *3のように、「第4のがん治療法」とされる癌ワクチンによる治療の実用化を目指す研究・診療拠点「久留米大癌ワクチンセンター」が開設から1年を迎え来院する患者も増加傾向で、中国等の海外からも患者が来ているそうだ。ワクチンは、それぞれの患者に適した四つのワクチンを選んで投与する「テーラーメード」や進行癌の患者に20種類のワクチンを混ぜて早期に打つ方法も進んでいるとのことである。

 私は、虫歯や歯周病も口内の雑菌に対する抵抗力を高めればよいため、ワクチンで予防できるのではないかと考える。

(4)予防の重要性
 *4-1のように、クボタやヤンマーが農業用のドローンに参入するという記事がある。私は、技術革新、省力化、コスト削減を同時に可能にするドローンに反対するつもりはないが、ドローンが墜落してプロペラが人に当たれば、身体がばっさりと切れてしまうことは間違いなく、それからでは再生医療を使っても回復できないケースが多くなる。そのため、通りがかった人や農業者の事故を防ぐように、ドローンはプロペラが人に当たらない徹底した安全設計にすべきだ。

 また、*4-2のように、自動車が公道で無人運転できたり、ドローンで設備点検したりするとのことだが、事故時の自動車の壊れ方も乗っている人を護れるものではない。さらに、ドローンでの設備点検時には労災が起こりそうである上、第三者も巻き込まれることがあるため、事故が起こって犠牲者が出てから「想定外でした」と言うのではなく、事前に安全第一の設計にすべきである。

<ドクターヘリ>
*1-1:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H19/H19HO103.html 救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法 (平成十九年六月二十七日法律第百三号、最終改正:平成二三年八月三〇日法律第一〇五号)
(目的)
第一条  この法律は、救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療が傷病者の救命、後遺症の軽減等に果たす役割の重要性にかんがみ、救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の全国的な確保を図るための特別の措置を講ずることにより、良質かつ適切な救急医療を効率的に提供する体制の確保に寄与し、もって国民の健康の保持及び安心して暮らすことのできる社会の実現に資することを目的とする。
(定義)
第二条  この法律において「救急医療用ヘリコプター」とは、次の各号のいずれにも該当するヘリコプターをいう。
一  救急医療に必要な機器を装備し、及び医薬品を搭載していること。
二  救急医療に係る高度の医療を提供している病院の施設として、その敷地内その他の当該病院の医師が直ちに搭乗することのできる場所に配備されていること。
(救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する施策の目標等)
第三条  救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する施策は、医師が救急医療用ヘリコプターに搭乗して速やかに傷病者の現在する場所に行き、当該救急医療用ヘリコプターに装備した機器又は搭載した医薬品を用いて当該傷病者に対し当該場所又は当該救急医療用ヘリコプターの機内において必要な治療を行いつつ、当該傷病者を速やかに医療機関その他の場所に搬送することのできる態勢を、地域の実情を踏まえつつ全国的に整備することを目標とするものとする。
2  前項の施策は、地域の実情に応じ次に掲げる事項に留意して行われるものとする。
一  傷病者の医療機関その他の場所への搬送に関し、必要に応じて消防機関、海上保安庁その他の関係機関との連携及び協力が適切に図られること。
二  へき地における救急医療の確保に寄与すること。
三  都道府県の区域を超えた連携及び協力の体制が整備されること。
(以下略)

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/242909
(佐賀新聞 2015年10月25日) 県ドクターヘリ出動322件 隣県依頼時から倍増、導入1年目
 佐賀県のドクターヘリは昨年1月の導入開始から1年間で322件出動した。導入前の福岡、長崎両県のヘリに出動依頼していたころに比べ、2倍近くに増えている。基地病院の佐賀大学医学部附属病院は「ヘリでなければ救えなかったケースもあり、県内の救急医療レベルが向上した」としている。佐賀県独自のドクターヘリは昨年1月17日に運航を開始した。佐賀大病院だけでなく、連携病院として県医療センター好生館からも週2日離着陸している。佐賀大病院救命救急センターによると、現場で対応したうち、ただちに医療介入しなければ危ない重篤患者は10%、生命に関わる可能性がある重症が37%、中等症43%、軽症10%だった。センターは「厳しく見積もっても、ヘリだからこそ助けられたケースが10%はあった」とみている。唐津市七山で発生したバイクの単独事故で運転していた男性は多発外傷で大量に出血していた。佐賀大病院から救急車では片道50分ほどかかり、ヘリでなければ助からなかったとみられるケース。ヘリは要請から5分程度で近くの休耕田に着陸し、救命措置を施しながら搬送した。男性は歩けるほどに回復したという。出動要請のあった消防別にみると、杵藤地区が最も多く116件、次いで佐賀地区が92件、唐津地区73件、伊万里有田地区37件、鳥栖地区20件となり、県西部への出動が多かった。出動の内訳は現場出動が236件(73・3%)、病院間の転院搬送が62件(19・3%)、出動後のキャンセルも24件(7・5%)あった。要請を受けたものの出動できなかったケースも49件あり、その主な理由は要請の重複が14件、時間外11件、天候不良10件などだった。通報から要請、出動までの時間は全国平均とほぼ変わらなかった。定期的にドクターヘリの症例検討会を開き、医師や看護師、消防、行政、運航事業者らと協議している。センター長の阪本雄一郎教授は「ヘリを通して医療機関や消防、行政による地域救急医療のチームワークが強固になった。今後は福岡、長崎と北部九州のより良い救急体制の構築を目指していきたい」と手応えを語る。
■佐賀県のドクターヘリの運航
 福岡、長崎両県のヘリを共同運航し、佐賀県内への出動件数に応じて費用負担してきたが、2014年1月に県独自のドクターヘリを導入した。年間経費は2億1000万円で半額は国の補助金。現在、県内は3県のヘリが飛ぶ珍しい地域となっている。臨時に離着陸するランデブーポイント(離着陸指定地)は公園や学校の運動場など162カ所あり、ケースによっては指定以外の広い場所に離着陸する。県内全域を15分以内でカバー。運航時間は午前8時半から日没30分前となっている。

*1-3:http://qbiz.jp/article/87753/1/
(西日本新聞 2016年6月6日) 「隠れた医療ニーズがあった」、災害派遣医師が証言
 熊本地震では被災地から地理的に近く、医師数や施設が充実する筑後地区から、医療支援が実施された。久留米大病院高度救命救急センター教授の山下典雄医師(55)は、同大病院の災害医療派遣チーム(DMAT)の一員として熊本県で活動し、患者受け入れやその後の支援活動でも指揮を執った。被災地の現状や災害時医療の課題を聞いた。
−被災地での活動は。
 「前震が起きた4月14日の翌15日未明、DMAT1次隊として久留米を出発した。益城町で活動し、避難所では打撲や擦り傷などけが人を搬送した。道路状況が悪く、移動に30分ほど余計にかかった。16日未明の本震以降は、DMATを2次隊まで組織し、現地で活動した。その後、急性期、救命期の医療支援から慢性期医療に移行し災害医療チーム(JMAT)を組み、今月6日まで9次隊にわたって派遣した」
−久留米大病院としての医療支援は。
 「大学病院では、被災地から広域搬送される患者受け入れのため、災害対策本部を立ち上げ、100人超の医師を招集して態勢を取った。被災地からは要請のあった透析患者や新生児ら三十数人を受け入れた。ドクターヘリも熊本県の指揮下に入り、広域搬送を支援した」
−被災地の現状をどう見ているか。
 「熊本市内の医療態勢は回復に向かい、今後は避難所や車中泊をしている人のエコノミークラス症候群予防、高齢者の口腔ケア、感染症予防のための生活指導が重要になっている。梅雨が近づくので、食中毒など衛生面でも注意する必要がある」「一方、阿蘇地域では電力や水道などライフラインの復旧が遅れ、医療機関も厳しい状況が続いている。南阿蘇村では唯一の救急指定病院が使用できなくなり、仮設の救護所で診療を受ける人も依然としていた。土砂崩れによる阿蘇大橋の崩落や、国道57号が通れなくなり、村内も分断され、交通状況も良くない。車が使えなくなり、移動手段がなくなった住民も少なくないと聞く。村内の巡回診療など今後も、医療支援が必要になると思う」「久留米大病院のチームは村内の介護施設を回った。道路が寸断された上、高齢などで移動が難しい入所者を抱えており、飲まず食わずの対応に追われた職員の疲弊も色濃かった。支援する側は、避難所などに集まってくる人たちに注意が行き、外側まで手が回っておらず、隠れた医療ニーズがあった」
−患者受け入れなど支援に当たって感じた課題は。
 「現場には混乱が起きた。被災地の病院から直接、患者受け入れ要請があり、熊本県に調整を依頼したが、なかなか連絡が来ない。しびれを切らした病院が、自ら患者を搬送してきた。こちらは受け入れ可能と伝えたが、勝手には動けずもどかしい思いをした」
−今後、筑後地区で大規模災害が起こる可能性もある。備えは。
 「災害医療は、日ごろの救急医療の延長線上にある。混乱を避けるには、地域医療機関同士の横のつながりと、行政、消防との連携が不可欠だ。NPO法人筑後地域救急医療研究会を中心に、救急に携わる人たちの間で顔の見える関係を築いてきた。救急指定病院ならベッドの空き具合や、医師の氏名から対応できる疾患まである程度、頭に浮かぶ。今回、被災地の患者受け入れで、聖マリア病院(久留米市)や他の医療機関と密に連絡が取り合えたのは成果だと思う」「筑後地区が被災地になった時、県外の医療機関やDMATにどう支援してもらい、受け入れるのかを想定した訓練は今後、より充実させていく必要がある。被災地ではコーディネーター役の地元の医師がリーダーシップを取り、続々と到着する支援組織を割り振っていた。人材育成も急務だ」「災害時には病床を空けるため状態の良い入院患者に同意を得て転院、退院、手術延期をお願いすることもある。理解を求めたい」

*1-4:http://www.qsr.mlit.go.jp/suishin/cgi/070516/08takayama.pdf#search='%E4%B9%9D%E5%B7%9E%E3%81%AE%E3%83%89%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%98%E3%83%AA+%E9%81%8B%E7%94%A8'
広域救急医療体制(救急ヘリコプターの共同利用)と高速交通網に関する提言
             独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 救命救急センター長 髙山 隼人
(1)広域救急医療体制への提言(救急ヘリコプターの共同利用)
1.はじめに
 慢性的な疾患に関しては、国民は希望する医療機関まで行くことによって受診することができるが、救急疾患や急病、外傷に関しては、近くの救急医療機関に搬送され治療を受けることになる。九州は、山間部や半島、離島など多く、三次救急医療機関まで60 分以上かかる地域が多く存在しており、医療に関しても地域格差を生じている。急性疾患の発症時間や外傷の発生時間より、60 分以内に適切な治療を受けることにより救命率を向上させることができることやドクターヘリにより交通事故による死亡を39%削減し重度後遺症を13%削減できることを踏まえ、広域救急医療体制を整備する。
2.提言
 九州圏内に住む国民の救命率を向上させることを目標として、救急ヘリコプター(ドクターヘリ)にて30 分以内に救急医よる治療を開始し適切な医療機関へ搬送して、60 分以内に適切な治療を受けることができるようすることを提言する。
3.方法
①救急用ヘリコプター(ドクターヘリ)を九州本土内に、県境を区別せず半径70km ごとに展開する。
根拠:ヘリコプターは、巡航速度200-240km/hr であり、覚知から要請・離陸の時間を考慮して飛行時間20 分以内であれば、受傷・発症から30 分以内に治療が開始できる。
②外海離島においては、小型固定翼や自衛隊救難ヘリコプターなども共同して運航する。
根拠:固定翼がヘリコプターより巡航速度が速く、離島からの遠距離搬送に適している。外界離島の場合は、離島医療機関で初期治療を行い高次搬送ができる体制を整えることにより対応する。
③基地病院形式もしくは、複数医療機関連携した基地形式にて医療を提供する。
④複数県が実施主体となり、共同運航する。
⑤着陸ポイントとして、道の駅など道路付属施設や公園・広場、居住地域に点在する小学校のグ
ランドなどを積極的に活用する。
⑥夜間の運航は、安全運航を確認するため、夜間照明のある場外離着陸場を旧町村ごとに設置して、受入病院近くの夜間照明付のヘリポートに搬送することで、搬送時間の短縮を図る。
4.現状の問題点
①ドクターヘリの県を越えた運用
 運用にあたり協定等の困難感があるが、救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法案(平成19 年6 月19 日)3)もふまえて、隣県での調整が可能になってきた。
②フライトドクターの確保困難
 基地病院で、フライトドクターを確保することが一番良いが、九州圏内の救命救急センターは、現在の救急医療活動を提供するのにぎりぎりの人数のところが大半である。しかし、救急医療やフライトドクターなどに興味を持つ若手医師も少しずつ増えてきているので、段階的に養成していくことが可能と思われる。代案として、複数の医療機関が連携してフライトドクターを提供して基地に待機して365 日出動態勢を整える方法もある。
5.その他
 新臨床研修制度により、医局からの派遣体制の崩壊が起こり、専門医から総合医の養成に方向転換がなされてきた。離島や中山間地域のみならず地方都市の医師不足が顕著になってきている。派遣体制整備は今後の国の施策に期待するが、離島・中山間・地方都市の医療体制のバックアップのため、重症患者の搬送などに救急ヘリコプターを活用することも支援となりうる。このため、昼夜を問わず搬送できるハード面の充実も必要である。
<参考文献>
1)Cowley RA, その他. J Trauma 1973; 13: 1029-1038
2)益子邦洋、その他.ドクターヘリによる交通事故死/重度後遺症の削減効果.平成17 年度厚生労働科学、研究費補助金「新たな救急医療施設のあり方と病院前救護体制の評価に関する研究 ドクターヘリの実態と評価に関する研究」
3)参議院議事情報http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/gian/16607166003.htm
(2)高速交通網に関する提言
1.はじめに
 九州内各県の主要な高度医療施設への救急車搬入の実態調査(日本救急医学会九州地方会2007 年プロジェクト「救急車搬送患者の搬送時間と転帰に関する検討」)より、急性心筋梗塞や急性大動脈解離、重症多発外傷などで、40 分以内での搬送時間と生存率や自宅退院率などの相関が認められている。長時間すなわち長距離搬送により、状態の悪化が予後を左右することがわかる。九州圏には3次医療機関まで、60分以上かかる地域が多数ある。
2.現状と問題点
・ 搬送時間の延長
・ 道路線形の不良
・ 交通量の増加
・ 救急医療機関の減少
・ 高速道路の未整備
3.課題
・ 消防署と救急医療機関の配置
・ 道路整備
・ 救急ヘリコプターが着陸できる道路整備
4.課題
・ 居住人口に合わせた救急車両の配置
・ 消防本部の統廃合により本部機能の一元化による人員を分署の再配置
・ 医療機関の統廃合(救急医療も担う地域の基幹病院とかかりつけ医の役割分担)
・ 国道整備:カーブなどの改善(ゆれや振動の低減)
・ 高速道路整備により3 次医療機関までの搬送時間の短縮
・ 電柱の地中化、中央分離帯の構造変更(救急車の走行できる車線とするなど)
5.まとめ
 物流対策のみではなく、救急医療への支援も考慮にいれ、高速道路や国道整備を検討する。道路
整備による搬送時間の短縮に伴う死亡率の改善は、社会的損失の軽減として経済効果は十分に大き
いと考える。

<再生医療>
*2-1:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO78790300T21C14A0X11000/
(日経新聞 2014/10/24) 15年間諦めなかった小野薬品 がん消滅、新免疫薬
 日本人の死因のトップであるがん治療には、外科的手術や放射線治療、最後の手段として化学療法があるが、今この構図が大きく変わる可能性が出てきた。免疫を使ってがん細胞を攻撃する新たな免疫治療薬「抗PD―1抗体」が実用化されたからだ。世界に先駆けて実用化したのが関西の中堅製薬、小野薬品工業だ。画期的な免疫薬とは――。
■「オプジーボは革命的なクスリ」と高評価
 「がん研究、治療を変える革命的なクスリだ」。慶応義塾大学先端医科学研究所所長の河上裕教授は9月から日本で発売が始まった小野薬の抗PD―1抗体「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)をそう評価する。ニボルマブは難治性がんの1つ悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬として小野薬と米ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)が共同開発した新薬だ。がんは体内の免疫に攻撃されないように免疫機能を抑制する特殊な能力を持つ。ニボルマブはこの抑制能力を解除する仕組みで、覚醒した免疫細胞によってがん細胞を攻撃させる。世界的な革命技術として、米科学誌サイエンスの2013年の「ブレークスルー・オブ・ザ・イヤー」のトップを飾った。今や米メルク、スイスのロシュなど世界の製薬大手がこぞってこの仕組みを使った免疫薬の開発を加速させている。悪性度が高いメラノーマは5年後の生存率は1割前後という極めて危険ながんだが、米国、日本での臨床試験(治験)では「増殖を抑えるだけでなく、がん細胞がほぼ消えてしまう患者も出た」(河上教授)。米国での他の抗がん剤と比較する治験では既存の抗がん剤を取りやめ、ニボルマブに切り替える勧告も出たほどだ。肺がんや胃がん、食道がんなど他のがん種に対する治験も進んでいる。世界の製薬大手が画期的な新薬開発に行き詰まるなか、なぜ小野薬が生み出せたのか。1つは関西の1人の研究者の存在がある。「PD―1」という分子を京都大学の本庶佑名誉教授らの研究チームが発見したのは1992年だ。小野薬もこの分子に目をつけ、共同研究を進めた。PD―1が免疫抑制に関わっている仕組みが分かったのは99年で、創薬の研究開発が本格的に始まるまでにおよそ7年。実際の治療薬候補が完成し治験が始まったのは2006年で、開発から実用化までにおよそ15年かかったことになる。当時は「免疫療法は効果が弱い」「切った(手術)方が早い」など免疫療法に対する医療業界の反応は冷ややかだった。医師や学会だけでなく、数々の抗がん剤を実用化した製薬大手も開発に消極的だった。そんな中で小野薬だけが“しぶとく”開発を続けてきた背景には「機能が分からなくても、珍しい機能を持つ分子を見つけ、何らかの治療薬につなげるという企業文化があった」(粟田浩開発本部長兼取締役)という。もともと小野薬は極めて研究開発志向の強い会社だ。売上高(14年3月期は1432億円)に対する研究開発比率は国内製薬メーカーでは断トツの30%台だ。しかもがん治療薬は初めて参入する分野で、「かならず成果を出す」という研究者の意欲も高かった。小野薬は血流改善薬「オパルモン」とアレルギー性疾患治療薬「オノン」の2つの主要薬で高収益を維持した。だが、特許切れや後発薬の攻勢で陰りが出てきたところでもあった。免疫療法に対する風向きが変わり始めたのは米国で抗PD―1抗体の治験が始まった06年からだ。一般的な抗がん剤はがんの増殖を抑える仕組みのため数年で耐性ができ、結局は延命効果しかない。しかし抗PD―1抗体で「がんを根治できる可能性も出てきた」。
■年間数百億円のロイヤルティー効果
 副作用が少ないうえ、がんの増殖を止める、小さくする、消滅させる――。そうした治験結果が出始めたことで、国内外の研究者、製薬企業の免疫療法に対する見方が大きく変わった。ただ、効果が出ていない人も一定の割合で存在する。その場合は「他の抗がん剤や免疫療法と組み合わせれば、効果が上がる可能性がある」(粟田本部長)という。足元の業績が低迷するなか、ニボルマブ効果で小野薬の市場評価は高まっている。昨年10月時点で6000円前後だった株価は今年に入って急騰。23日の終値は9340円とわずか1年足らずで3000円以上伸びた。アナリストも「今後数年でロイヤルティーだけで年数百億円は堅い」と分析する。小野薬の相良暁社長も「10年先を支える薬になるだろう」と自信をみせる。ただメルク、ロシュなどが同じ仕組みの抗PD―1抗体の治験を拡大しており、国際競争に巻き込まれる可能性も高い。一方で他の製薬大手から小野薬がM&Aの標的となる懸念もある。その意味で同社が置かれている環境は必ずしも楽観視できない。がんの新たな治療法の扉を開けた小野薬。日本発の免疫薬に世界の目が注がれている。

*2-2:http://mainichi.jp/articles/20160814/k00/00m/040/129000c
(毎日新聞 2016年8月14日) 治験へ 幹細胞注入、米で成果
 頭のけがなどで脳の神経細胞が死んだり傷ついたりし、体のまひや言語障害などが出た「外傷性脳損傷」の患者を対象に、加工した骨髄由来の幹細胞(細胞医薬品)を脳に直接注入して機能回復を試みる治験を東京大病院が近く始める。米国で先行して進められている脳梗塞(こうそく)患者での治験では運動機能や言語機能の向上が報告されており、回復が難しい脳損傷の新たな治療法になる可能性がある。この細胞医薬品は、健康な人の骨髄から採取した間葉系幹細胞を加工・培養したもので、再生医療ベンチャー「サンバイオ」(東京都中央区)が開発した。免疫反応を抑える働きもあり、他人の細胞を移植するにもかかわらず、免疫抑制剤を使う必要がない。移植した細胞は、約1カ月で脳内から消えるという。米スタンフォード大などの研究チームは6月、この医薬品の安全性確認のために脳梗塞患者18人に実施した治験結果を米医学誌に発表した。これによると、ほぼ全員の運動機能が回復し、目立った副作用はなかった。サンバイオによると、治験前は動かなかった腕が頭まで上げられるようになったり、車いすが必要だった患者が少し歩けるようになったりしたという。機能が回復する詳しいメカニズムは不明だが、東大病院での治験を担当する今井英明特任講師(脳外科)によると、傷ついた脳の神経細胞の修復を促す栄養分が移植した幹細胞から分泌されると考えられるという。東大病院の治験の対象は、脳に損傷を受けてから1〜5年が経過し、現在の医療では回復が見込まれない患者。移植する細胞の数を変えて四つのグループに分け、運動機能の回復状態を1年間、追跡調査する。

*2-3:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1000G_Q4A110C1000000/
(日経新聞 2014/1/10) 脊髄損傷、幹細胞で治療 札幌医大が国内初の治験
 札幌医科大は10日、脊髄損傷患者の骨髄から取り出した幹細胞を培養し、患者の静脈に投与して脊髄の神経細胞を再生させる治療法の効果や安全性を確かめる臨床試験(治験)を始めると発表した。10日から被験者の募集を始める。発症してから時間が経過していても治療効果が期待でき、患者自身の細胞を使うため拒絶反応の心配が少なく、安全性が高いとされる。神経となる「間葉系幹細胞」を使い、静脈に投与する薬剤として認可を目指す試験は、国内初という。チームを率いる山下敏彦教授は「脊髄損傷は事実上、有効な治療法がないが、この方法は多くの患者への効果が期待できる」と話している。チームによると、患者の腰の骨から骨髄液を採取し、間葉系幹細胞を分離。約2週間で約1万倍に培養し、約1億個の細胞が入った40ミリリットルの薬剤を静脈に点滴する。投与された細胞は脊髄の損傷部位に移動し、神経細胞に分化したり、タンパク質を分泌して傷ついた神経細胞を再生させたりする。神経が再生されると、手足が動かせるようになると見込まれるという。試験は損傷から14日以内で、脊髄のうち主に首の部分を損傷した20歳以上65歳未満の患者が対象。希望者は主治医を通じて大学に連絡する。2016年10月までに30人を目標に実施する。

*2-4:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO04775060S6A710C1TJC000/ (日経新聞 2016/7/13) 京セラ、理研と毛髪再生医療 20年実用化目指す
 京セラは理化学研究所などと組み、脱毛症を再生医療技術で治療する共同研究に乗り出す。患者から採取した健康な毛髪の細胞を加工、増殖した後に患者に移植する手法で、理研がすでに動物実験で実証している。京セラは電子部品で培った微細加工技術を生かして細胞の自動培養装置を開発し、2020年に細胞の受託製造事業への参入をめざす。脱毛症に悩む人は国内で男女あわせて1800万人以上いるという。将来の臓器再生につながるとされる毛髪再生での手法確立をめざす。12日、理研のほか、再生医療ノウハウを持つベンチャーのオーガンテクノロジーズ(東京・港)と組み、18年3月までに装置の試作機を開発すると発表した。20年までにヒトを対象とした臨床研究をする計画だ。理研は毛がないマウスに加工・増殖したヒトの細胞を移植し、発毛させる実験に世界で初めて成功している。皮膚内で毛髪を生む「毛包」と呼ぶ部分の2種類の幹細胞を分離し、加工して作った再生毛包を移植する手法をヒトに応用する。現在も後頭部など正常な毛包を脱毛部に移植する手術はある。だが頭皮の切除面積が大きくなる課題があった。理研の手法は毛髪細胞を100~1千倍に増やせるため切除部が小さくて済む。自らの細胞を使うので、人体への危険性は実用化済みの皮膚や軟骨の再生医療製品と同程度に抑えられるという。事業化には細胞の精密加工技術や大量に培養する量産技術が必要だ。京セラは精密部品の加工技術のほか、人工関節などの医療事業も手掛ける。業務用インクジェットプリンターでインクを精密に射出する技術も生かす。医療機関から患者の頭皮組織を預かり、約3週間かけて加工・培養したうえで医療機関に出荷する製造受託事業を20年をめどに始める計画だ。ただ今回の毛髪の再生医療は保険が適用されない自由診療での実用化をにらむ。実用化された再生医療製品でみると、テルモの心不全治療に使う「ハートシート」は標準治療の価格が1400万円強と高い。だが保険適用となったため患者の自己負担は治療費の1~3割で済み、高額療養費制度の対象にもなる。量産効果が効かない初期段階では、毛髪の再生医療の自己負担は高額になる可能性がある。

*2-5:http://wpb.shueisha.co.jp/2016/06/29/67245/ (週プレニュース 2016年6月29日) ヤケドの治療から始まった! 肌の再生医療の第一人者が手がける最新アンチエイジング
最近、老けてきた気がして。特にこのほうれい線、すごい深いよね…?」とため息をつくのは「週プレNEWS」の貝山弘一編集長。実年齢49歳とは思えぬ若いルックスに見えるが、本人は老化をひしひしと感じているらしい。そんな悩めるアラフィフのもとに気になるニュースが。なんと自分の細胞を培養して移植することで、肌が若返るという画期的なアンチエイジング治療法があるという。
従来の美容外科とは異なるアプローチで、安全かつ自然に若返りを可能とする手法とは? 最新医療レポート第1弾!
■薬も糸も使わない、若返りの最先端治療
老けたな~…と誰しも感じるのは、ふと鏡を見た自分の顔に白髪や顔のシワが増えたのを目の当たりにした時。気になり出すと、ますます老化が進みそう…。シワやたるみ、ほうれい線など男性は毎日のひげ剃りでも目について仕方ないハズだ。本格的にケアするにはヒアルロン酸やボトックス注射を打つか、金の糸を入れてリフトアップするなど美容外科手術に頼るしか解決方法はなかった。ところが、これまでとは全く異なるアプローチで若返りを実現させる革新的技術が開発されているという。それが「RDクリニック」で手がける「肌の再生医療」。そもそも米国FDA(日本の厚労省にあたる)が認可したれっきとした医療である。それを医学博士・北條元治(ほうじょう・もとはる)先生がわが国でいち早く始めた、最先端医療だ。北條先生「簡単にいうと『肌の再生医療』は臓器のパーツのコピーと同じです。皮膚が必要であれば、皮膚の細胞そのものをコピーする。コピーした元気な細胞を本人に移植すれば、その細胞が組織を修復するということです」
■自身の細胞で肌を若返らせる!
「肌の再生医療」は【自分自身の肌細胞を採取し、抽出して培養したものをシワやたるみなどが気になる部位へ注射器を使い移植】する治療方法。自分の細胞で肌の若返りを促すということだが、どういう仕組みなのか?表皮と真皮の2層構造になっている肌だが、シワやたるみは真皮にある肌細胞が減少することで起こる。「肌の再生医療」は自分の皮膚から肌細胞を抽出・培養して気になる部位に移植することで、減少した肌細胞を増やして肌のハリを取り戻す。

*2-6:http://digital.asahi.com/articles/ASJ5D24XMJ5DUBQU005.html
(朝日新聞 2016年5月12日) iPS細胞10年 進む再生医療・創薬研究、ハードルも
 皮膚や血液の細胞から作れる万能細胞、iPS細胞が開発されて今年で10年。無限に増え、体の様々な種類の細胞に変化できる性質を生かし、再生医療や創薬に向けた研究が急速に進んでいる。一方、複雑な組織ほど体外で作り出すことは難しく、越えなければならないハードルも見えてきた。
■心筋、網膜…再生医療への研究進む
 大阪府吹田市にある大阪大の実験室。直径約2センチの培養皿に入った、人のiPS細胞から作ったシート状の心筋細胞を見せてもらった。シートには心筋のほか、血管をつくる細胞などが含まれている。容器に収められた半透明のシートを顕微鏡で拡大すると、全体が連動してリズムを刻む様子がはっきり見える。まさに「拍動」だ。心臓に貼れば、一体となって動くと見込まれている。澤芳樹教授(心臓血管外科)らは、このシートを虚血性心筋症など、現在は心臓移植が必要になる心臓病の患者らに使う研究を進めている。「人に使うために安全性を確認する最終段階まで来ている」。京都大iPS細胞研究所(CiRA)の山中伸弥教授が作り出したiPS細胞は、ES細胞のように受精卵を使う必要がないため、倫理的な問題がなく、作りやすいことから、再生医療への利用が期待されてきた。先頭を行くのは理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーのグループだ。加齢黄斑変性という目の病気で臨床研究を始め、14年には患者のiPS細胞から作った網膜の色素上皮細胞のシートを患者の目に移植した。移植した細胞は約12万6400個。ねらった細胞に変化し損なったiPS細胞が体に入ると腫瘍(しゅよう)になる危険があるが、今のところ異常はないという。手術を担った栗本康夫・先端医療センター病院眼科統括部長は先月、日本眼科学会総会で「安全性に関するエンドポイント(評価項目)は達成した」と強調した。国も全面的に支援する。iPS細胞を含む再生医療関連の今年度予算は文部科学、厚生労働、経済産業の3省合わせて約148億円。文科省は昨年、iPS細胞研究のロードマップ(工程表)を改訂し、計19の細胞や器官で、実際に患者で研究を始める目標時期を掲げた。京大が進めるパーキンソン病患者への神経細胞の移植や血小板の輸血、阪大の角膜の移植は、早ければ今年度の開始とされている。
■費用が課題、自家移植は準備に1億円
 ただ、細胞の培養や品質のチェックに膨大なコストと時間がかかる。高橋さんの1例目では、細胞の準備から移植までに1年近く、約1億円を費やしたとされ、山中さんも「(患者自身の細胞を使う)自家移植は考えていた以上に大変だ」と口にする。腫瘍化などの危険性を懸念する研究者の声も依然として強い。このため、CiRAではあらかじめ品質を確認したiPS細胞を備蓄し、配るプロジェクトを開始。細胞は、多くの日本人に移植しても拒絶反応が起きにくいタイプの健康な人から提供してもらう。高橋さんらは2例目以降の移植にこの細胞を使う研究を準備している。高橋さんは「色素上皮なら一つの皿で何十人分も作れ、コストを減らせる。将来は普通の治療としていけるぐらいになる」と話す。一方、iPS細胞が国外で再生医療に広く使われるかは不透明だ。すでに欧米ではES細胞を使った研究が根付いており、加齢黄斑変性など、数十人の患者にES細胞から作った細胞による臨床応用も進んでいる。iPS細胞の研究に詳しい黒木登志夫・東京大名誉教授は「再生医療は競争が激しい。ES細胞が世界の標準になる可能性がある」と指摘する。
■創薬研究、技術確立に課題も
 再生医療への応用のほかに近年、注目を集めているのが創薬の研究だ。理研の六車恵子・専門職研究員らのグループはCiRAと共同で、ES細胞の研究で培ってきた大脳や小脳の組織を体外で作る技術を応用する。アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症、小脳変性症などの患者の細胞からiPS細胞を作り、脳神経に変える。培養皿でこの神経を調べると、患者ごとに薬に対する反応が違ったり、特定の細胞がストレスに弱かったりすることがわかった。「患者自身の脳組織を研究で使えるのは、iPS細胞ならではの手法」と六車さんは話す。CiRAの妻木範行教授らのグループは、遺伝子変異が原因の軟骨の難病で薬の候補を見つけた。患者のiPS細胞から作った軟骨は正常な組織に培養できなかったが、高脂血症治療薬のスタチンを加えると正常になった。こうした手法を使えば、薬の開発にかかる時間やコストを大幅に削れると期待される。ただ、複雑な組織になるほど体外での培養は難しく、細胞に酸素や栄養を供給し続けて成長させる仕組みも必要になる。さらに、現状では培養できた細胞や組織の多くが未熟な状態で、成熟させる方法も未確立だ。腎臓の組織づくりに取り組む熊本大の西中村隆一教授は「病気を調べるためには、まず正常な組織を作る必要がある。ただ、できたものがどこまで体内の状態を再現しているか確認が難しい」と指摘。マウスのiPS細胞を使い、毛包や皮脂腺など皮膚の器官をまとめて再生することに成功した理研の辻孝チームリーダーも「立体的な組織を作るには、培養技術の革新が必要だ。iPS細胞の潜在力をまだ引き出しきれていない」と話している。
《iPS細胞(人工多能性幹細胞)》 無限に増やせ、体の様々な細胞に変化できる能力を持った細胞。同様に万能性を持ち、受精卵を壊して作るES細胞(胚(はい)性幹細胞)と異なり、体の細胞から作ることができる。山中伸弥・京大教授が2006年、マウスの皮膚の細胞に四つの遺伝子を働かせて作製に成功した。特定の種類に変化し終えた細胞でも受精卵に近い状態に「リセット」できることを初めて示し、07年には人でも成功した。12年にノーベル医学生理学賞に選ばれた。

<ワクチン>
*3:http://qbiz.jp/article/43196/1/
(西日本新聞 2014年8月3日) 久留米大がんワクチンセンター、海外からも患者来院
 「第4のがん治療法」とされるがんワクチン治療の実用化を目指す研究・診療拠点「久留米大がんワクチンセンター」(福岡県久留米市国分町)が7月、開設から1年を迎えた。医師などスタッフは約60人と、開設当初の態勢から倍に増え、来院する患者も増加傾向という。「がんペプチドワクチンの医薬品承認に向けた申請時期のめどを付けたい」と話す伊東恭悟センター長に、活動の進展と2年目の目標を聞いた。
−診療態勢を一本化したセンターができて、患者の動きに変化はあったか。
 「患者は増えている。開設前は1日10〜20人だったが、今は平均30人前後来院する。55人だった日もあり、一時期は重症度の高い人だけに診療を制限しなければならないこともあった」「患者は全国各地だけでなく中国からも来ている。これまでは福岡市内のホテルに泊まる人が多かったが、最近は半数以上が久留米に泊まっているようだ」
−患者が増えた要因は。
 「若手の医師などスタッフが増えて受け入れ態勢が充実できた。センター開設後、メディアで多く取り上げられた影響も大きい」
−診療の成果は。
 「診療も研究も順調だ。それぞれの患者に適した四つのワクチンを選んで投与する「テーラーメード」型だけでなく、進行がんの患者に20種類のワクチンを混ぜて、早期に打つ方法も順調に進んでいる」「抗がん剤治療を受けている患者に対して、いったん抗がん剤をやめてワクチン投与だけにして、その後抗がん剤を再開した結果、長生きできたという症例については論文化した」
−センター開設時、前立腺がんと悪性脳腫瘍である膠芽腫(こうがしゅ)の治療に使うワクチンは3〜5年内の実用化を目指すと話していたが。
 「最後の検証段階にあるいくつかの試験も、一つずつ着実に進んでいる。特に抗がん剤が使えない高齢の前立腺患者向けのワクチンについては、医薬品として承認申請する時期のめどを2年目のうちにつけたい」
−強化したいことは。
 「ワクチンの効果を上げて、より長生きできるようになるため、副作用のない漢方薬を活用する臨床試験にも力を入れていきたい」「がんワクチンの発展と実用化をにらんで8月に初の研究会を開く。全国の医師たちと交流する場として今後も年1回、開きたい」

<予防>
*4-1:http://qbiz.jp/article/93139/1/
(西日本新聞 2016年8月29日) クボタが農業ドローン参入 農薬散布のコスト軽減
 クボタは29日、空中から農薬を散布する農業用ドローン事業に参入すると発表した。2017年中ごろに販売を開始する。手間やコストの軽減メリットを大規模農家に売り込み、20年度には売上高20億円規模の事業に育てる。大規模農家の農薬散布は、大型機器に乗って陸上から散布したり、産業用の無人ヘリコプターを使って空中から散布したりする方法がある。クボタはドローンを200万円程度で販売する方針で、無人ヘリコプターの1千万円規模に比べ割安で済む。記者会見した飯田聡専務執行役員は「超省力で農作業するニーズが高まっている」と指摘。ドローンメーカーのプロドローン(名古屋市)と農業機器メーカーの丸山製作所(東京)と共同開発する。将来的にはインターネットを使った管理システムと連動させるほか、農薬散布以外の用途にも対応させる。農業でのドローンの参入は増えており、ヤンマー(大阪市)もコニカミノルタなどと共同で、カメラを搭載したドローンで田んぼの状況を監視するシステムを開発中だ。

*4-2:http://qbiz.jp/article/91781/1/
(西日本新聞 2016年8月3日) 北九州市、戦略特区に4案 公道無人運転、ドローンで設備点検…
 地域限定で規制を緩和する国家戦略特区の指定を受けている北九州市は1日、新たな規制改革案として、公道での無人運転を可能にする案や、ドローン(小型無人機)を使って橋などの点検ができるようにする案など4案を内閣府に提案したと発表した。政府は今後、各特区などからの提案を取りまとめ、実現の可否を検討する。市によると、公道での自動車の無人運転は、運転者の操作を義務付けている道交法により現在、認められていない。一方、同市では自動運転の研究開発に向けた産学官の連携が進んでおり、公道を使った実験を可能にすることで、実用化へ弾みをつけたい考え。目視による確認が求められているトンネルなどの交通インフラの点検に関し、カメラやセンサーを搭載したドローンで代替する案も提出。国際的なスポーツ大会や会議で、人材確保が難しいタイ語やインドネシア語などの通訳を留学生が担えるよう、就労時間の緩和も求めた。また、海外のアマチュアスポーツ選手のチーム加入に際し設けられている大会実績の条件を緩める案も盛り込んだ。市は1月に戦略特区に指定。現在、50代以上の就労を支援するシニア・ハローワークの設置や介護ロボットの実証実験などが進められている。


PS(2016年9月2日追加):*5のように、救急医療の視点からオスプレイを利用する実験を速やかに行ったのは評価できるが、ヘリもオスプレイも、これまで救急医療用には使ってこなかったため、安全性、乗り心地、離着陸時の騒音・風圧など改善すべき点が多い。しかし、日本人は改善(海外でも「カイゼン」という日本語が通用する)は得意なので、本気でやればよいものが作れるだろう。

    
    かなり改良すれば使えそうなヘリ             現在のドクターヘリ
    (*5より)                      (滋賀県)        (奈良県)
*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/351493 (佐賀新聞 2016年9月2日) オスプレイ運用に思い交錯 医師評価、実効性疑問の声、佐世保市防災訓練
 佐世保市の防災訓練に米海兵隊オスプレイが参加した1日、訓練参加者や見学者からは、災害時の運用に期待する声と、訓練そのものの実効性を疑問視する声が交錯した。2機の米オスプレイは、訓練で想定した地震発生から15分後に佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地に姿を現した。プロペラで航空する「ヘリモード」で駐屯地に近づき、風圧で草や土ぼこりを巻き上げながらゆっくりと着陸した。医師らを乗せた機体は宇久島へ飛び、約45分でけが人役を乗せて再び駐屯地に姿を見せた。「スピードがあり、航続距離も長い。広域になればなるほど有力な搬送手段と言える」。医師として同乗した佐世保市総合医療センターの澄川耕二院長(69)は、救急医療の視点からオスプレイを評価する。患者を運ぶ簡易ベッドで5人ほど搬送できると見ており、「結構揺れるので、物資の輸送には適しているが、救助の場合はベッドの固定など工夫が必要」と感じた。米海軍佐世保基地のマシュー・オヴィアス司令官は「災害時に互いに連携することが大切で、今回の訓練で協力関係を示すことができた」と米軍参加の意義を強調した。駐屯地内で訓練を見学した市民団体リムピース佐世保の篠崎正人さん(69)は「災害時に偶然、佐世保近くに米オスプレイがいた設定など合理性に欠ける」と指摘する。「日米政府の協議を経て運用されるはずだが、どのような手続きで運用に至るのか想定が曖昧だ。市民には情報も不足している」と今回の訓練を批判した。


PS(2016年9月6日追加):腎臓病で透析しなければならない状態になると、生涯、その状態から抜け出せない人が多いが、透析は時間がかかって患者に不便である上、医療費もかかる。そのため、透析しなくてよい状態まで治せると、患者さんの福利が増す上に医療費負担が下がるのだが、現在、その方法は他者からの腎臓移植しかない。しかし、今後、3Dプリンターを使って自分の細胞で腎臓の補修部品を作ったり、「腎臓細胞シート」を貼って治すことができるようになったりすると、回復できる。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/352611
(佐賀新聞 2016年9月5日) 在宅医療の市民講座に300人 理解深めて
■多職種メンバー事例発表
 医師、ケアマネージャーら多職種のメンバー約300人でつくる「在宅ネット・さが」(満岡聰代表)の第9回市民公開講座が3日、佐賀市兵庫北のメートプラザであった。市民ら300人が事例発表や創作劇などを通し、在宅でのケアや医療について理解を深めた。南里泌尿器科医院(佐賀市)の南里正之副院長は現在、国内には32万人の透析患者がおり、高齢化が進んでいると指摘。治療の一つに自宅で行える腹膜透析を紹介した。介護が必要となった場合、血液透析では施設への受け入れが困難になる場合もあり、通院医療よりも在宅医療での腹膜透析が適していると説いた。また、矢ケ部医院(同)の矢ケ部伸也院長は「がん末期の自宅ケア」について40代男性の在宅医療を紹介。医師、看護師らのチームであたった医療や心理面のサポートなどを挙げ、佐賀でも在宅ケア・医療を支える施設が増えていると説明した。また、同ネットのメンバーによる「劇団くまくま」が創作劇を上演。在宅医療をテーマに佐賀弁で熱演、会場をわかせた。

| 教育・研究開発::2014.8~2016.11 | 09:13 AM | comments (x) | trackback (x) |
2015.10.3 教育の目的と、どこかおかしな文科省の教育観、文化 (2015年10月4日、6日、7日、9日、11日に追加あり)
     
  上  世界大学ランキング              高校生事件          中一男女事件
2015.10.1
西日本新聞
      
(1)保育園・幼稚園・小学校教育について
 唐津市は、*1-1のように、市町村合併後、幼稚園・保育園等の公立保育施設を統合・民営化し、認定こども園を開園するそうだ。民営化すると、保護者のニーズに素早く応えられたり、経営に長けていたりするが、経営のために保育士の待遇を悪くして幼児教育の質が落ちる場合もあるため、重要な時期に子どもに質の高い教育や保育を与えるためには、補助金でポイントを突いた配慮をする必要があろう。

 なお、三養基郡上峰町の上峰小では、*1-2のように、インターネットを使って1対1の英会話教育を始めたそうで、その先進性は大変よいと思うが、①どうせ時間と費用を使うなら、将来のためには、上の世界の上位校に進学してもひけをとらない標準英語を教えるべきである ②言葉は3歳くらいまでが最もよく身につくため、認定こども園時代から始めるのがよい(早くから外国語を教えても、母国語に悪影響を及ぼすことはない) などが、私のアドバイスだ。

(2)全国学力テストの取り扱いと文科省の学力軽視の不思議
 *2-1に、「全国学力テストにおける成績の扱いをめぐって混乱が続いている」と書かれているが、 国民の税金・時間・労力を使って全国学力テストを行う以上、学校毎の平均を公表して改善に繋げたり、生徒や保護者が学校を選択するための情報として活用させたりするのは重要なことである。

 そのため、文科省の「学校間の過度な競争が起きるから市町村別や学校別の成績は公表しない」という指導はおかしく、生徒の学力向上を軽視しすぎであり、「あえて一部の生徒を欠席させるような不正が行われる可能性がある」というのは、「だから非公表にする」ではなく「そういうルール違反や不正を禁止する」という形で解決すべきだ。

 しかし、佐賀県内市町の教育委員会は、*2-2のように、全国学力テストの結果について、武雄市、大町町、上峰町の3市町が学校別成績を公表し、学校に公表を指示する教委は8市町で、残る9市町は学校現場の判断に一任するそうだ。これは日本全国と比較するとよく取り組んでいる方だが、これでは、どこに住んでいても、また保護者の経済的状況が悪くても、公立校で十分に実態調査して改善された教育を受けられるという訳にはいかない。

 もちろん、私も、「個人の学力は個人戦であり、団体戦ではない」と考えているが、学校としての努力や基礎水準は、被験者の平均や標準偏差を連続的に比較していればわかるため、統計に表れた数値から言えることと言えないことを正確に分析するという条件で、公表して比較すべきだと考える。

 なお、武雄市は全国学力テストの学校別成績を公表しており、*2-3のように、市内の中学生が、こども会議で全中学校でいじめ追放に取り組むことを決めて6中学で「いじめ追放宣言」を作成するなど、自主性や積極性をもつまともな中学生が育っている。そして、よく言われる「“過度の学力競争(?)”は、性格を悪くする」などというのが虚偽であることを証明している。

(3)日本の大学教育について
 *3-1のように、各大学の教育環境、研究者間の評価、論文の引用数など5分野13項目の評価で決めた世界大学ランキングでは、上図のように、1位は米カリフォルニア工科大、英オックスフォード大、米スタンフォード大が続き、上位10校中9校を米英の大学が占めている。そして、日本の大学は、東大でもアジアで3位に留まるという結果になった。何故だろうか?

 私は、これには、数年しか在籍しない大学のみではなく、幼児教育・初等教育・中等教育での勉学の積み重ねによって作られた基礎学力による人材の裾野の広さや理数系を嫌う最近の日本の“変な文化”が影響していると考える。つまり、日本でしか通用しないおかしな発想で安易な方向への教育改革を続けて来た文科省の責任が大きいと思うのだ。

 そのような中、*3-2-1のように、佐賀大学は、芸術地域デザイン学部などの新学部を設置するとのことである。工学部を持つ大学が窯業を研究するからには、①より強い磁器 ②よりよい色を出せる釉薬 ③現代生活にあった機能 ④セラミック材料としての発展など、材料から用途までの再研究を期待する。

 また、「幼小連携教育」「小中連携教育」「IC教育」などを行うと、前倒しで効率的に学べることが増えるため、その中で効果的な教育を行うための教科書再編成もしなければならない。さらに、佐賀県は農林漁業が盛んな地域であるため、これを近代化するための機械の開発、品種改良、養殖技術、冷凍・保存技術など、*3-2-2に述べられている新しい理工学部や農学部に期待されるものは大きい。

 一方で、このようにして育てられた人材を雇用する企業集団である経団連は、*3-3のように、「文系と理系にまたがる『分野横断型の発想』で、様々な課題を解決できる人材が求められている」として、国立大学改革は国主導ではなく、学長のリーダーシップと大学の主体的な取り組みを最大限尊重するよう注文したそうで、その背景には、文科省の通知が「文系つぶし」と受けとられ、「経済界は文系はいらない、即戦力が欲しい」という報道もあったからだそうだ。しかし、即戦力か否かを問わず、論理性(主に数学・物理・近年は生物学によって養われる)や基礎知識のない人を選抜してマスプロ教育で次の知識を丸暗記させても、応用力が身につかず課題解決できる人材になれないため、私は、文系・理系を問わず、入試科目を増やし、特に文系は大学入学後の教育方法を見直すべきだと考えている。

(4)本当の人間性や希望を育まない教育は、何故、行われるのか?
 私は、*4-1の事件について、殺す人はもちろん悪いが、中学生の星野さんと平田さんの年齢なら、勉強・スポーツ・規則正しい生活など、やるべきことが多い筈なのに、午前1時10分~5時10分頃、京阪寝屋川市駅前の商店街を往来しており、自分の身を守ったり、将来に向かって夢や目標を持って努力したりする意識がなく、とても変だと思った。学校・家庭・地域は、彼らにどういう教育を与えていたのだろうか? 叱ってでも、よい生活習慣を身につけさせる教育はなかったのだろうか? また、*4-2のように、深夜に中学生の男女が街をうろついていても、帰宅を促す人がいたり、巡回の警官が注意したりしないというのも変である。

 また、これも驚いたのだが、*4-3では、高3の男子生徒が、前から自殺願望のあった高3の女子生徒(18歳)に頼まれて包丁で刺して殺害したそうだ。高3になっても、命の尊さをここまで勉強していないのだろうか? そして、その高3の女子生徒は「私は生きる価値のない人間だから死にたい」と日頃から言っていたそうだが、18歳で「生きる価値のない人間だ」と考えるとは、学校や家庭は、日頃から生徒に夢や希望やそれに基づく目標を持たせない誤った教育をしていたのではないのか? 表面的には優しそうに「気をつけて帰ってね」と声をかけても、生きる価値のない人間なら気をつけて帰る必要もなく、そう思わせるほど残酷なことはないのである。

<保育園・幼稚園・小学校教育>
*1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/229956
(佐賀新聞 2015年9月16日) 保育所民営化完了へ、唐津市・厳木3園統合
 唐津市は15日の市議会全員協議会で、厳木町や肥前町の公立保育施設を民営化する方針を示した。北波多と八幡町の保育所は指定管理者制度に移行し、市町村合併以降進めてきた公立保育所の統合・民営化はほぼ完了する。厳木町では中島保育園、岩屋保育園、厳木幼稚園の3園(園児数計104人)を統合し、2018年4月に認定こども園を開園する。運営する民間事業者は本年度中に公募で決める。新園は既存3施設の中間点にある厳木幼稚園敷地内に設置する計画で、土地は市が無償貸与し、建物は事業者の負担で建て替える。肥前町では、切木保育所(30人)と高串保育所(26人)の既存施設を活用し、それぞれ17年4月に民営化。建物は市の負担で改修し、無償貸与する。北波多の若竹保育所(16人)と八幡町の若葉保育所(8人)は地元との協議で指定管理者制度に移す。鎮西町の加唐島保育所(2人)は離島対策で公立のまま存続、市教委所管の唐津幼稚園(47人)は検討中。唐津市では10年に相知町、11年に肥前町の入野、納所、星賀で統合・民営化を進めてきた。市立の保育施設や幼稚園は少子化で、定員に占める園児数が38%にとどまっていることも背景にある。香月隆司保健福祉部長は「行政改革の一環ではあるが、民間の経営ノウハウを生かすことで、子育て支援がよりきめ細やかになると考えている」と話す。

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/227164
(佐賀新聞 2015年9月8日) 上峰小、ネットで英会話教育を開始、フィリピンの現地講師と
 三養基郡上峰町の上峰小で7日、インターネットを使う1対1の英会話教育が始まった。6年生100人がパソコン画面を通じてフィリピンの現地講師から英会話を楽しく学んだ。外国語活動の授業で15分間を会話に充てる。パソコン室で児童はヘッドセットマイクを付け、音声映像通信サービス「スカイプ」を利用し、フィリピン・マニラにいる講師と画面上でやりとりした。互いに誕生日や好きなスポーツなど自己紹介した。英語が好きという川崎晴加さん(12)は「先生はすごく優しくて分かりやすかった。1対1で話すのが楽くて、もっとおしゃべりしたい」と笑顔で語った。矢動丸壽之教育長は「子どもたちの笑顔が何より。上々の滑り出しと思う。マンツーマンで会話量を増やすことで、英語でのコミュニケーションに自信を付け、学習意欲の向上につながれば」と期待を寄せた。英会話教育は、「教科・英語」が2020年に始まるのを前に、語学習得に不可欠な会話量を確保し、国際的に活躍する人材育成につなげる狙い。オンライン英会話サービス事業を展開する「レアジョブ」(東京)に委託し、外国語活動の計20コマで実施する。地方創生関連の国の交付金を活用し事業費は195万円。委託期間は来年3月まで。

<全国学力テストの取扱いと学力の軽視>
*2-1:http://www.47news.jp/47topics/e/264590.php
(47ニュース、共同通信 2015年4月21日) 成績扱いめぐり混乱続き 全国学力テスト
 公表の在り方など、成績の扱いをめぐり、毎年のように混乱する全国学力テスト。今回も実施直前に、大阪府教育委員会が府立高入試への活用を決めるという、文部科学省にとって想定外の事態が発生し、同省は対応に苦慮している。1960年代に実施されていた学力テストは、学校間などの過度な競争が一因で中止になった。この教訓を踏まえ、文科省は2007年にテストを復活させた際、序列化を防ぐため、公表は都道府県別成績にとどめ、市町村別や学校別の成績は非公表とした。しかし、08年には大阪府の 橋下徹知事(当時)の要請で、府内の多くの市町が成績を明らかにした。その後も「学力向上には情報の開示が必要」「住民への説明責任を果たす」と、秋田県の 寺田典城知事(当時)や埼玉県教委、鳥取県教委、佐賀県武雄市教委などが市町村別、あるいは学校別の成績を相次いで公表してきた。結局、文科省は14年度調査から市町村教委が学校別成績を公表できるよう実施要領を改めたが、14年9月には静岡県の 川勝平太知事が、教委の同意を得ないまま市町別成績を明らかにした。文科省は実施要領にさらに手を加え、「結果の公表は教委の職務権限」とする、後手後手の対応を余儀なくされた。今回の実施に先立つ今月15日、大阪府教委は文科省を訪れ、成績の活用方針について説明した。「テスト本来の趣旨に反する恐れはない」と強調する府教委に、文科省は「あえて一部の生徒を欠席させるような不正が行われる可能性がある」と懸念を示している。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/222868
(佐賀新聞 2015年8月26日) 全国学テ学校別成績 武雄、大町、上峰が公表
 25日に発表された全国学力テストの結果について、佐賀県内の市町教育委員会で学校別の成績を公表するのは昨年度と同じ、武雄市、大町町、上峰町の3市町になる見通し。学校に公表を指示する教委は8市町で、今回から小城市とみやき町が加わった。残る9市町は学校現場の判断に一任している。みやき町教委は昨年度まで、学校別の成績公表を指示せず、学校からの問い合わせに対し、どの程度の表現が許されるか助言していたが、結果的に町内全校が公表していた。今回はあらかじめ、「詳細な数字を出さず、県平均と比べてどうかなど言葉で説明するよう指示している」。同様に、今回から学校に公表を指示している小城市教委も、昨年度は校長会の決定を受けて市内全校が公表した経緯があり、実態に即した対応を取った。教委として学校別成績を公表する武雄市など3市町は「地域と一緒に教育施策を進めているので、地域にもデータを公表している」と説明する。一方、教委として公表を指示しない9市町は「学力テストは『個人戦』であり、『団体戦』ではないという見解だ。自治体や学校といった集団で比較すべきではない」(吉野ケ里町)、「1学年数人の小規模校もあり、公表は個人の学力開示につながりかねない」(伊万里市)などの理由を挙げた。市町別の平均正答率の公表についても、教委で対応が分かれている。
■4月21日実施の2015年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の都道府県別結果や全問題と解答などの関連記事はウェブサイト「47NEWS」で公開しています。リンクはこちら。

*2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/227161
(佐賀新聞 2015年9月8日) 武雄市6中学「いじめ追放宣言」作成
 武雄市の中学生が市内6中学校で共有する「いじめ追放宣言」を作った。「心」「勇気」「絆」をキーワードに、思いやりや信頼でいじめに立ち向かう気持ちを表現した。6校の生徒会長が7日、小松政市長に宣言作成を報告した。市内の中学生は昨年夏のこども会議で、全中学校でいじめ追放に取り組むことを決め、1年間にわたって全校給食や集会での問題意識共有などの活動を続けてきた。
 宣言はその集大成で、今夏のこども会議での活動報告を経て、6校の生徒会長で内容を練った。各校が持ち寄った文案からキーワードを決め、思いやりの「心」、立ち向かう「勇気」、友情を深める「絆」の思いで言葉をつないだ。この日は武雄中3年で生徒会長の古川陸さん(15)が宣言を読み上げ、「宣言を実践し、いじめのない学校を築きます」と宣誓した。小松市長と浦郷究教育長が「学校の枠を超えて宣言を作ったこと、具体的な行動を起こしていることに感動した。つらい思いをする人がいなくなるよう、一緒に頑張っていこう」と呼び掛けた。宣言は各校に伝え、いじめをなくす活動を支えていく。
■いじめ追放宣言全文
一、「心」私たちは、相手の気持ちに寄り添い、思いやりのある行動をします。
一、「勇気」私たちは、正しい判断のもと見て見ぬふりをせず、いじめに立ち向かいます。
一、「絆」私たちは、お互いに認め合い友情を深め、信頼できる大切な仲間をつくります。

<大学>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11994476.html
(朝日新聞 2015年10月2日) 東大、アジア首位陥落 英誌、世界大学ランキング
 ランキングは各大学の教育環境、研究者間の評価、論文の引用数など5分野13項目の評価で決められた。ランキング1位は5年連続で米カリフォルニア工科大。英オックスフォード大、米スタンフォード大が続き、上位10校中9校を米英の大学が占めた。アジア2位は北京大(42位)、国内で東大に続いた京都大は昨年の59位から88位に沈み、アジア9位。日本から上位200校に入ったのは2校だけで、昨年入った東京工業大と大阪大、東北大は姿を消した。韓国トップのソウル大も昨年の50位から85位に後退した。同誌ランキング部門のフィル・ベイティ編集長は、「日本の苦戦と韓国の落胆が意味するところは、アジアの上位ランキングが流動的ということだ」と指摘した。(ロンドン=渡辺志帆)

*3-2-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/223990
(佐賀新聞 2015年8月29日) 佐賀大、新学部設置で会見
■芸術地域デザイン学部 「今後100年担う人材育成」
 佐賀大学は28日、来年4月に新設する芸術地域デザイン学部と教育学部、教職大学院の概要と入試要項を発表した。会見で佛淵孝夫学長は、県立専修学校の有田窯業大学校(4年制課程)を統合した芸術地域デザイン学部について、「(来年の)有田焼創業400年にぜひとも合わせたかった。今後の100年を担う人材を育てる」と意欲を語った。ドイツ、オランダなどの芸術系大学との連携構想も持ち上がっており、留学生の派遣・受け入れを検討している。新学部は文化教育学部を改組して「芸術地域デザイン学部」と「教育学部」に再編する。窯業大学校の過程を4年制化として、「有田セラミック分野」に組み込んだほか、大学院も経済研究科と合わせて「地域デザイン研究科」を設置した。教育学部も教員養成機能を強化し、「幼小連携教育」と「小中連携教育」の2コースを設け、地域の教育課題解決に特化した人材育成を目指す。教職大学院開設は長崎大と福岡教育大が先行しているが、甲斐今日子文化教育学部長は「準備段階から県教委と連携し、学校経営に優れた手腕を発揮した校長経験者や現役で大学院の教壇に立つ先生など、実務家教員をそろえたのが特色」と強調した。会見に先立ち、佛淵学長は県庁に山口祥義知事を訪ね、新学部設置を報告した。山口知事は「地方創生への取り組みや、佐賀の素材を磨き上げるという県が目指す方向性を象徴するもので期待するところが大きい」と述べた。

*3-2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/235826 (佐賀新聞 2015年10月3日) 学部改組、「教教分離」を促進 佐賀大学、宮崎学長が就任会見、地域貢献へ人材育成・研究
 佐賀大学の宮崎耕治新学長(66)は2日の就任会見で、国が進める大学改革に呼応した理系人材の育成強化に向け、理工学部や農学部の理系学部改組をはじめ、教員組織と教育組織を分離することで学部の枠を超えて柔軟な研究・教育プログラムを可能にする「教教分離」などに取り組む考えを示した。文部科学省は国立大学の機能強化と改革促進策として、重点的に取り組む教育や研究内容によって大学を3類型に分類する方針。宮崎学長はそれを念頭に「佐賀大学は地域のニーズに応えて地域貢献や課題解決に取り組む方向性で運営する」と強調。学部改組や教教分離はその具体策で「学生に佐賀で学んだことに誇りを持ち、大きく変容していく社会に対応できる人材を育成していく」と意気込みを示した。来年4月に新設する芸術地域デザイン学部については「総合大学としての強みを生かし、芸術家育成だけでなく、デザインのセンスを持つ、デジタルアートを手がけることができる企業人を育てて学生の就職率アップにもつなげたい」とした。大学運営全体の方針としても「芸術的感性豊かな、多様性に富む、グローバルな視点を持った知の拠点を目指す」と抱負を語った。宮崎学長は佐賀市生まれ。九州大学医学部卒業後、95年に旧佐賀医科大学教授に就任。2008~14年に同大学附属病院長。09年から先月末まで副学長も務めた。

*3-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11956921.html
(朝日新聞 2015年9月10日) 経団連、安易な文系見直し反対 国立大改革、文科省通知で声明
 経団連は声明のなかで「大学・大学院では、留学など様々な体験活動を通じ、文化や社会の多様性を理解することが重要」と指摘。その上で、文系と理系にまたがる「分野横断型の発想」で、様々な課題を解決できる人材が求められていると主張した。また、国立大学の改革は国主導ではなく「学長の強力なリーダーシップ」で進めるべきだとも指摘し、政府は大学の主体的な取り組みを「最大限尊重」するよう注文した。経団連が声明を出した背景には、文科省の通知が「文系つぶし」と受け止められ、それが「経団連の意向」との批判が広がっていることがある。就職活動中の学生らに誤解を与えかねないとの懸念があった。榊原定征会長は9日、記者団に「『経済界は文系はいらない、即戦力が欲しい』という報道もあったが、そうじゃない。即戦力(だけ)を期待しているのではないということを改めて発信したかった」と説明した。文科省は6月、教員養成系や人文社会系の学部と大学院について廃止や転換を検討するよう全国の国立大学に通知した。文系を「ねらい撃ち」にした理由について、文科省の担当者は専門分野が細かく分かれた人文社会系学部の「たこつぼ化」を挙げる。社会で必要な課題解決力とコミュニケーション力を身につける教育や、地域の就職先など学生の将来を見据えた教育が不十分だという。ただ、2千人以上の科学者でつくる日本学術会議が7月に「人文・社会科学の軽視は大学教育全体を底の浅いものにしかねない」との反対声明を出すなど、現場の反発も強まっていた。そもそも「廃止という言葉が強すぎた」(大学関係者)との指摘もある。文科省は、通知は大学に改善を促すのが目的だとしており、「積極的に対応してほしいとのメッセージだ」と火消しに追われる。下村博文文科相も7月下旬の記者会見で「人文社会科学を軽んじているのでなく、すぐに役立つ実学のみを重視しているのでもない」と理解を求めた。
◆キーワード
<組織見直し通知> 文部科学省が6月、全86校の国立大に通知を出し、学部や大学院といった組織を見直すよう求めた。特に「教員養成系」や「人文社会科学系」の学部・大学院について、「見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組む」とした。これが「文系軽視」と受け止められ、大学関係者らから反発された。国立大は6年ごとに「中期計画」を国に出す決まりで、通知は来年度から新計画となるのに合わせた措置だった。

<家庭・学校での指導>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11927413.html
(朝日新聞 2015年8月22日) 遺棄現場に容疑者の車 駐車場、遺体発見直前 大阪・中1殺害
 行動を共にしていた2人に何が起きたのか。容疑者との接点は――。大阪府寝屋川市の中学1年、星野凌斗(りょうと)さん(12)とみられる遺体が見つかってから一夜明けた22日。同級生の平田奈津美さん(13)への死体遺棄容疑で逮捕された山田浩二容疑者(45)が否認しているとされる中、地元では悲しみと憤り、やりきれない思いが広がった。平田さんの遺体が見つかった13日、防犯カメラは平田さんと星野さんとみられる男女2人と山田容疑者や同容疑者の軽ワゴン車を各所で、断続的に捉えていた。被害者2人の姿と容疑者の車は、早朝の寝屋川市の駅前商店街の極めて狭い範囲でほぼ同時刻に映っており、その後2人の消息が途絶えた。星野さんは12日午後9時ごろ、母親に「平田さんのところに行く」と言って外出。約30分後、星野さんと平田さんとみられる男女2人が自宅近くのコンビニエンスストアで目撃された。翌13日午前1時10分~5時10分ごろ、京阪寝屋川市駅前の商店街を行き来する様子が断続的に防犯カメラに映っていた。カメラが最後に2人を映した直後、山田容疑者のシルバーの軽ワゴン車が商店街付近を行き来する様子が捉えられていた。午前6時半ごろ、平田さんの携帯電話から友人に携帯電話の無料通信アプリ「LINE(ライン)」で「今から星野君と京都に行く」というメッセージが送られた。府警は容疑者が平田さんをいつ連れ去ったのか不明としつつ、この通信が平田さんによるものか、別人の「なりすまし」によるものか、慎重に捜査を進めている。午後0時40分ごろ、山田容疑者の車は寝屋川市駅から約20キロ南の大阪府柏原市内のコンビニエンスストアに姿を現した。店内で粘着テープ2本を購入する山田容疑者自身の姿も捉えられていた。寝屋川市駅の駅前駐輪場に駐輪していた星野さんの自転車は、メーターの料金などから午後3時ごろに止められたとみられている。これは星野さん自身が止めたのか。高槻市の駐車場で遺体で見つかった平田さんの死亡推定時刻は午後7時ごろ。約3時間半後の午後10時25分ごろ、高槻市に接する枚方市の国道170号沿いのガソリンスタンドに軽ワゴン車が入り、山田容疑者に似た男が給油していた。その約10分後、高槻市の駐車場に不審な車が入り、午後11時10分ごろに駐車場から出る車も防犯カメラは捉えていた。後に不審車の所有者は山田容疑者と特定された。午後11時25分ごろ、寝屋川市の山田容疑者の自宅マンションのエレベーターに、同容疑者が乗り込んでいる姿も映っていた。高槻市の駐車場で平田さんの遺体が見つかったのは、その約5分後だった。
■「容疑者、見たことない」 近所の人
 山田容疑者は、平田さんや星野さんの自宅がある地域から北へ3キロほど、2人の足取りが途絶えた京阪寝屋川市駅前からも2キロほどの所に住んでいた。京阪香里園駅に近い12階建てマンションの最上階。だが、住人らには、ほとんどその存在が知られていなかった。同じ12階に住む女性は「おばあさんが手押し車を押して出てきたところを見たことはあるが、若い男は見たことがない」と話す。マンションの1階の集合ポストには同居する両親と見られる名前が書かれており、その横に「山田浩二」と手書きされた小さなシールが貼られている。だが、管理人の女性は、70代より上の年齢の夫婦だけが住んでいると思っていたという。「40代の男なんて見たことがない」と驚いていた。近所の女性によると、容疑者宅には20~30年くらい前から高齢の夫婦が住んでいたという。だが、同じ12階に2年前から住む70代の男性は、容疑者と見られる男の姿を見たのは一度だけだという。7月下旬から8月上旬のある朝、12階の廊下で、容疑者宅に住む高齢の女性といっしょにいる中肉中背の40代くらいの男と顔を合わせた。女性に「息子さんですか」と尋ねると、「はい、そうです」と答えた。男に「おはようございます」とあいさつすると、愛想良く「おはようございます」と返ってきた。そのままエレベーターでいっしょに1階まで降りてマンションの玄関で別れたという。
■同級生「許せない」 平田さん葬儀
 寝屋川市内の斎場では、午前11時から平田さんの葬儀が営まれた。平田さん、星野さんと同じ市立中木田(なかきだ)中に通う生徒や保護者ら百数十人が1時間近く前から訪れ、約80人が座れる2階の会場はいっぱいになった。平田さんと星野さんの同級生の男子生徒(13)は参列する前、「こんなことになって本当に残念です。許せない」と硬い表情で語った。2人の同級生の女子生徒は「とてもいい友達。今は悲しみでいっぱいです」と声を振り絞り、中学2年生の女子生徒(13)は「ひどい。でも、容疑者が逮捕されて少し安心しました」と話していた。午前11時40分ごろ、棺(ひつぎ)が霊柩(れいきゅう)車に納められた。すすり泣く声やおえつが斎場前に響き、ハンカチで顔を覆う生徒らの姿が見られた。正午前の出棺では、参列者が手を合わせ、平田さんに最後の別れを告げた。葬儀後、平田さんの同級生の女子生徒は「悲しすぎて、今は何も話せません」と涙をこらえていた。平田さんと星野さんが通っていた中木田中学校。容疑者の逮捕から一夜明けた朝は門が閉じられ、ほとんど人影はなかった。事件以降、クラブ活動の多くも休止しており、生徒の姿はなく学校関係者が時折出入りするだけだった。
■柏原の遺棄現場、花手向ける人も
 星野さんとみられる遺体が見つかった大阪府柏原市青谷の竹やぶには、22日朝も青いシートが張られていた。複数の捜査員が頻繁に出入りを続け、警察犬とともに現場を回ったり、草刈り機を使って遺留品の有無を調べたりしていた。竹やぶから数十メートル離れたところには一般人の立ち入りを規制するロープが張られた。その外側には近隣住民や報道陣が集まり、捜査員の動きを見つめた。午前10時半ごろ、近くに住む男性(55)が花を手向けに訪れた。男性は「二度とこんな事件が起こらないようにと思い、花を捧げました」と話し、手を合わせた。午前11時前には、遺体が発見された竹やぶ内の畑を所有する女性(76)が警察官に伴われ、現場の確認をしていた。
■被害者と容疑者の足取り
【12日】
<午後6時ごろ>平田奈津美さんの在宅を家族が確認
<午後9時ごろ>星野凌斗さんが「平田さんのところに行く」と母親に言って外出
<午後9時半ごろ>2人とみられる男女が2人の自宅近くのコンビニエンスストア(大阪府寝屋川市)で目撃される
【13日】
<午前1時ごろ>平田さんの母親が帰宅。平田さんがいないことに気付く
<午前1時10分~5時10分ごろ>京阪寝屋川市駅前の商店街に設置された防犯カメラに2人とみられる男女の姿が映る
<午前5時すぎ>商店街付近の防犯カメラに山田浩二容疑者のワゴン車が行き来する様子が映る
<午前6時半ごろ>平田さんの携帯電話から友人にLINEで「今から星野君と京都に行く」というメッセージが送られる
<午後0時40分ごろ>山田容疑者が大阪府柏原市内のコンビニで粘着テープを購入
<午後3時ごろ>同駅前の駐輪場に星野さんの自転車が止められる
<午後7時ごろ>平田さんの死亡推定時刻(死因は窒息死)
<午後10時35分ごろ>大阪府高槻市内の駐車場にワゴン車が入る
<午後11時10分ごろ>ワゴン車が駐車場を出る
<午後11時25分ごろ>山田容疑者が自宅マンションに帰宅
<午後11時半ごろ>高槻市内の駐車場で平田さんの遺体が見つかる

*4-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11928841.html
(朝日新聞社説 2015年8月24日) 中1男女殺害 防ぐ手立てなかったか
 大阪府寝屋川市の中学1年の女子生徒(13)が殺された事件で、同市内の男(45)が死体遺棄容疑で逮捕された。一緒にいた男子生徒(12)も遺体で発見された。女子生徒は吹奏楽部でトロンボーンの練習に励んでいた。男子生徒は「人をたすける人になりたい」と小学校の卒業アルバムに書いていた。将来ある最愛の子を非道に奪われた家族の心痛は、察するに余りある。なぜ2人が狙われ、どんな手口で近づいたのか。同種の事件を繰り返さないためにも、警察は事件の解明に向け全力をあげてほしい。考えたいのは事件に巻きこまれる前に、被害に遭うのを防ぐ手立てはなかったかだ。防犯カメラには、事件前、2人が商店街を歩く姿が映っていた。深夜とはいえ、人通りも少しはあった。まだ幼さが残る男女だ。長時間、街をうろつく姿に、帰宅を促したり警察に連絡したりする大人がいなかったのか、悔やまれる。昔は面倒見のよい大人が地域にいた。人間関係が希薄になり、他人への干渉を避ける風潮が強まっていないだろうか。夏休みになると子どもは開放的になり、夜間の外出や、普段とは異なる行動パターンをとることも多くなる。学校の目も届きにくい。それだけ犯罪被害に遭う危険性が高まることを、大人がしっかり認識したい。身を守るすべを、子どもにも教えておくことが大切だ。昨年9月に小学校1年の女児が殺害された神戸市では、市教委が夏休み前、全小中学生に防犯チェックシートを配った。車の中から道を聞かれたら「車と距離を取る」「危険を感じたら車の進行方向と反対へ逃げる」など、具体事例ごとに家庭で話し合える内容だ。小学生向けの防犯対策はあっても、中学生になった途端、保護者も地域も油断しがちだ。警察庁によると、中学生の犯罪被害者数は昨年までの10年間、小学生を上回っている。最近は携帯電話を通じて犯罪に巻き込まれることも増えている。教育委員会や学校は、繰り返し注意を呼びかけてほしい。今回の捜査では、犯行時間の絞り込みや容疑車両の特定に、防犯カメラの映像が有力なツールとなった。一方、犯罪抑止の面では役割を果たせなかったともいえる。社会がどうカメラを使いこなすか、今後のカメラの設置のあり方を考える上でも、一つのきっかけになろう。

*4-3:http://digital.asahi.com/articles/ASH9Y6DVQH9YOIPE02W.html
(朝日新聞 2015年9月29日) 高3男子「頼まれた」 三重女子高生殺害容疑で逮捕
 三重県伊勢市の雑木林で、市内の高校に通う3年生の波田泉有(はだみう)さん(18)=同県松阪市=を包丁で刺して殺害したとして、県警は29日、同じ高校に通う3年生の男子生徒(18)=伊勢市=を殺人容疑で逮捕し、発表した。容疑を認め、「(被害者に殺害を)頼まれた。包丁は自宅から持ってきた」と説明しているといい、県警は証言や状況などから嘱託殺人の可能性もあるとみて当時の状況を調べている。県警によると、男子生徒は28日午後5時10分ごろ、伊勢市尾上町(おのえちょう)の「虎尾山(とらおやま)」の記念碑付近で、女子生徒の左胸を包丁のような刃物で刺して殺した疑いがある。午後9時45分ごろ、女子生徒の知人から119番通報があり、駆けつけた警察官が遺体を確認した。司法解剖の結果、死因は失血死だった。「(女子生徒に殺害を)頼まれた」。三重県警に殺人容疑で逮捕された高校3年の男子生徒(18)は、そう説明したという。自殺願望を口にしていたとされる高校3年の女子生徒と、男子生徒は28日も同じ同県伊勢市内の高校に通っていた。下校後の2人の足取りは分かっていない。女子生徒と同じ中学校の柔道部だったという少年は、高校に進んだ女子生徒が「自殺したい」と漏らしていると人づてに聞いた。別の少年によると、昨年、女子生徒は同級生の男子と川に飛び込もうとし、止められた。今年7月初めには同じ男子と行方が分からなくなり、5日後に見つかったこともあったという。
 28日午後3時半、体育祭の練習が終わり、高校を出る女子生徒に、教頭が「気をつけて帰ってね」と声をかけると、にこっと笑ってこたえたという。殺害時刻は午後5時すぎとされる。「どこにいるの」。夜になり、女子生徒や、逮捕された男子生徒との連絡がとれないことを不安に思った友人らが、LINEを使って呼びかけた。県警によると、男子生徒がLINEに応じて居場所を伝え、同市内の現場に向かった友人らが、女子生徒が刺されているのを見つけた。同じ高校の生徒は、男子生徒が「殺してって言われたから殺した」と友人らに話したと聞いたという。女子生徒は、同県松阪市の住宅街に並ぶアパートの一室に暮らしていた。近くの住民は「近所のつながりはほとんどない」。女子生徒の姉は、取材に「私からお話しすることはできません」と涙声で話した。


PS(2015年10月4日):*5に書かれているとおり、将来、多くの仕事が自動化されるというのは本当だ。また、その時でも雇用されるためには、人間はロボットにはできないことができる必要がある。そして、変化に対応できる問題解決能力は“想像力”ではなく、広い知識と経験に裏付けられ、将来の見通しを持った創造力に依る。しかし、私が言うと「広い知識と経験に裏付けられ将来の見通しを持った創造力」ではなく、「空想に基づく想像力」と過小評価したがる人が少なからずおり、これはまさにジェンダー(社会的に作られた性差)に起因する女性蔑視で、私に対しては、的外れで失礼だ
 なお、「“生きる力”が大事」と言う人も多いが、この言葉を何回唱えても何の解決にもならず(問題解決できず)、 「“生きる力”を構成する要素は何で、それはどうやって育まれるのか」を分析して、教育や職場のオン・ザ・ジョブ・トレーニングでそれを育む必要があるのである(これは理系の発想か・・)。

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/236085
(佐賀新聞 2015年10月4日) 子どもに問題解決力を 佐賀市で全国教育大会
 全国教育大会佐賀大会が3日、佐賀市文化会館で開かれ、今後の教育の在り方を探った。人工知能とロボット工学の研究で仕事が変わる将来を見据え、子どもをどう育てるかを議論。変化に対応する想像力、問題解決能力などを身に付ける重要性を確認した。シンポジウムで佐賀大文化教育学部の上野景三教授は「10~20年後に47%の仕事が自動化される」とした教育再生実行会議の将来予測を紹介。弁護士や冠婚葬祭業など人が関わることで希少価値を生む仕事はなくならないとし、社会の流動化に耐える「想像的思考力」を育むよう提言した。多久市の中川正博教育長は読書離れが進み、想像力が低下傾向にあると指摘し、読書の習慣化を求めた。佐賀市PTA協議会元副会長の江頭和恵さんは、子どもを地域行事に参加させた体験を基に、「出番や役割を与えて認めると、自信につながる」とした。コーディネーターの富吉賢太郎佐賀新聞社編集主幹は「教師も知識を教えるだけでは、機械に取って代わられる。生きる力こそ大事で、栄養豊かな時代の空気をつくるのは大人の責任」とまとめた。大会は日本教育会が開き40回目。県内では初めての開催で、全国の学校関係者約880人が参加した。


PS(2015年10月6日追加):確かに、そのことが好きで上手な人から習うと、面白かったり興味がわいたりするので、服飾専門学校生が小学校や学童保育でミシンを使った縫物を教えるというのは、よいアイデアだ。自分や家族が使うアップリケ付の手提げ袋を作ったりすると、さらに面白いだろう。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/236443
(佐賀新聞 2015年10月5日) 専門学校生が先生役 うつぼ木小5年生、ミシン上手に
 唐津市桜馬場の服飾専門学校「モードリゲル」の高等課程1年生5人が1日、同市厳木町のうつぼ木小を訪れ、本年度からミシンを習い始めたばかりの5年生児童15人の“先生役”を務めた。この日はクリスマスツリーをあしらった壁掛けづくりに挑戦した。児童たちは、緑と茶色のフェルトでかたどった「ツリー」と「植木鉢」をミシンで布に丁寧に縫いつけた後、色とりどりのデコレーションで飾りつけた。専門学校生は作業の様子を見守りながら、手本を見せたり、アドバイスした。小川珠雅君(10)は「角を縫う時にまち針で止めて外れないようにすることを教えてもらった。教え方が優しくて覚えやすかったし、上手にできて良かった」と話していた。専門学校生の小学校訪問は今回が初めてで、本年度中に6年生にもバッグや小物入れづくりを指導する予定。モードリゲルの前田洋子教諭は「子どもたちがものづくりに興味を持ってくれたら」と話していた。


PS(2015年10月7日追加):TPPによって大きな経済圏ができれば、大まかに言って、その経済圏の中では、これまで国内でやっていたのと同じ条件の競争を行わなければならない。そのため、その経済圏内での競争は激しくなり、これまでよりも比較優位の製品に特化した産業への産業の選別が行われることになるが、私は、国として、それではよくないと思っている。何故なら、環境、安全、食料自給率、産業構造、社会保障等の目的で、規制・税制・保険等によって国毎に行ってきた政策が禁止され、国が行うべき設計をTPP経済圏の市場に任せて放棄することになるからだ。さらに、日本の方が比較優位が高いとされる自動車も、20年以上前から現地生産が進んでいるため、さほど輸出増に繋がるとは考えられず、逆に環境規制の強化によって日本車の進歩を進めてきた規制は経済圏の規制に揃えられる。なお、伊万里焼・有田焼については、今まで関税が高いことが原因で輸出していなかったわけではないため、輸出拡大には、相手のニーズをとらえる製品を作って輸出するという意志を持って販売戦略を展開すればよいが(中国はじめTPP圏外でも売れそうだ)、農業については、比較優位がないため衰退する可能性があり、それで食料自給率や日本の基盤が保てるかどうかが重要な問題なのである。(*これを書くには、経済学、経営学、税制、環境、生物学、歴史などの知識と数学で培われた論理性を使っている)

*7:http://qbiz.jp/article/72264/1/
(西日本新聞 2015年10月7日) 九州の産業界「海外展開に有利」 TPP、中小の利点は不透明
 TPP大筋合意を受け、九州を含む産業界では、関税撤廃などを通じて海外展開の追い風になると歓迎ムードが広がった。影響は広範囲に及ぶが、政府が強調する「中小企業への利点」はまだ読みきれない。日本自動車工業会の池史彦会長(ホンダ会長)は「米国やカナダなど重要な市場との経済連携の枠組みが築かれる」と評価。九州でも、トヨタ自動車九州(福岡県宮若市)は海外向けが約9割で「トヨタ自動車本体を通じて米国などTPP参加国の大半に輸出している」としており、関税撤廃は好材料だ。海外向け生産台数が増えれば部品の需要も増えるため、トヨタ九州などと取引がある戸畑ターレット工作所(北九州市)は「どれだけ生産増になるかは読めないが、プラスには働くはず」と期待する。ただ完成車の関税撤廃は米国(2・5%)が25年後、カナダ(6・1%)が5年後などで、目先の効果は見込めない。即時撤廃となる部品の関税にしても「海外での現地生産が一般化しているので、輸出の増加にはつながりにくい」(部品メーカー)。どれだけ恩恵が広がるかは不透明だ。
   ■    ■
 日本、九州の強みを伸ばせる分野は他にもある。安倍晋三首相は6日の記者会見で、日本の伝統工芸品の輸出例として九州の陶芸品を挙げた。伊万里焼の窯元、畑萬陶苑(佐賀県伊万里市)の畑石真嗣社長は現在、フランスに輸出しており、TPP参加国との取引はないが「今後関税なしで取引できるようになれば販路拡大につながるかもしれない」と期待を示した。日本食や映像といったコンテンツ産業などの輸出強化を掲げる九州経済連合会の麻生泰会長は「今回の合意は輸出拡大の好機。九経連としても輸出拡大に向けた環境づくりを最重要課題として取り組む」とした。TPPには、海外進出の際にトラブルとなることが多い知的財産の保護や外資規制の緩和も盛り込まれた。北部九州でアジア進出支援を手掛ける弁護士は「東南アジアなどは不透明な法の運用がまだ多く、TPP発効後に少しでも改善すれば中小企業の進出リスクが減る」と期待する。輸入牛肉などの関税が引き下げられるため、外食関連業界も注目。西日本を中心に業務用食材を卸販売するトーホー(神戸市)は「外食向けに販売している牛肉や豚肉の価格が下がる可能性はある」と話した。一方、国への注文も相次いだ。福岡商工会議所の礒山誠二会頭は合意を歓迎した上で「国には、中小企業の国際競争力強化やTPPがもたらす地域経済への影響を克服するための対策を求める」と要望。福岡市を訪れていた日本商工会議所の三村明夫会頭も6日の記者会見で「政府はこれまで交渉の詳細を明かさなかったが、今後は詳細を中小企業に周知徹底させることが重要だ」と指摘した。


PS(2015年10月9日追加):民主主義の日本国憲法下では、議員は主権者である国民が自らの代表として選んだ人であるため、選ばれた政治家の行動結果については国民が責任を持たなければならない。しかし、実際には、官僚(もともと天皇の官吏)が必ずしも国民のためにはならない発想で作った政策を、国会議員が「与党の責任」として決めている形式的民主主義になっていることが多く、それでも国民は、補助金等でカムフラージュされれば判断に迷ってしまう。なお、形式的民主主義の下では、国民を「依らしむべし、知らしむべからず」の状態にしておけば監視機能を発揮できないため、スポーツや仕事に没頭して政治のことは考えない国民が最も都合がよいのである。
 そのため、主権者である国民は決してそうであってはならず、*8-1のように、主権者教育で自ら考える有権者を育てるのは大切なことだ。また、「政治的中立」については、身近なテーマ(例えば「保育」「医療・介護」「環境」「地域振興」など)について、事実関係やそれに関する与党と野党の見解を記載した資料を配った上で、考え方を教え、高校生自身がディスカッションしながら自分たちで考えるのがよいと思う。なお、選挙権が18歳以上に引き下げられるのであれば、多様な考え方の人がいるのを理解した上で、自分自身はどう判断するのかを自ら考える力も必要である。
 しかし、*8-2のように、男性政治家のみが、ばりばり活躍する政治家であるかのように表現するのは、高校生にジェンダー(社会的に作られた性差別)に基づいた女性蔑視を擦りこむことになり、国会議事堂の4つ目の台座には本当に実績ある女性首相を立てたい時代の教科書として70年古いと思う。

*8-1:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/237732
(佐賀新聞 2015年10月9日) 主権者教育、自ら考える有権者を
 選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられたことを受け、総務省と文部科学省は高校生の主権者教育に活用する副教材を作成した。18歳選挙権は来年夏の参院選で初めて適用される見通しで、現在の高校3年生全員と2年生の一部が有権者になる。学校現場に負担はかかるが、政治、社会への関心を高める契機にしたい。主権者教育の一環として新たに作られた副教材「私たちが拓く日本の未来」は、12月までに全ての高校生に配布される。約100ページで、解説編、実践編、参考編の3部構成。「公民」などの授業での活用が想定されている。総務、文科両省のホームページでも公開されているが、全体としてはよく編集されていると感じた。解説編では、政治に参加する意義や選挙、政治の仕組みなど基本的な事項が分かりやすく説明されており、大人が読んでも役立つ内容になっている。あらためて確認する意味でも一度、目を通してはどうだろうか。昨年12月の衆院選の投票率は全体で52・66%。年代別(抽出)にみると、最も高い60代が68・28%に対し、20代は32・58%で、2倍以上の差がある。これを人口推計に基づいて試算すると、60代の投票数は1240万票、20代は420万票と3倍近い開きになる。副教材ではこうしたデータも示し、若者の投票率が低くなると、若者の声が政治に届きにくくなり、その結果、若者に向けた政策が実現しにくくなったり、実現するのに時間を要したりする可能性があると指摘している。政治に緊張感をもたらすのは有権者の「一票」であり、新たな有権者の誕生が若い世代の投票率アップのきっかけになればいい。副教材は、実践編が全体の6割を占め、話し合いや討論の手法から模擬選挙、請願書作成、模擬議会などまで盛り込まれている。通常の授業や就職活動、大学受験などもあり、学校現場で全てを実践するのは難しいだろうが、有権者となる下地づくりに向けて前向きな取り組みを期待したい。県内では、北陵高校が生徒会長選挙の機会を活用して、実際の選挙規定に沿った模擬投票を実施。鳥栖青年会議所も模擬選挙の体験会を企画した。こうした試みが広がれば、選挙や政治がより身近に感じられるようになるだろう。一方で、教員向けの指導資料では政治的中立の確保に留意するよう強調され、「学校現場が萎縮するのではないか」という声も聞かれる。ただ、常識を持って対応すればよく、過剰に意識する必要はないのではないか。「政治的中立」という立場も含めて学習の材料にすればいい。学校での学習を基に、日常的に新聞やテレビなどで情報を得て、自ら考える有権者を育てていきたい。

*8-2:http://hi.fnshr.info/2015/10/04/hiraku-mirai/
高校生向けの有権者教育の副教材に載っている政治家は男性だけ
●概要
 文部科学省が作成・公開した『私たちが拓く日本の未来』という高校生向けの有権者教育の副教材に載せられている挿絵で、政治家はすべて男性として描かれている。
<中略>
●描かれたのは男性政治家のみ
 この『私たちが拓く日本の未来』には、挿絵がいくつか載せられている。挿絵が載せられているのは、読者が読みやすくするためだろう。挿絵の中で、政治家を描いたものが4つある。この4つの挿絵のすべてで政治家は男性として描かれている。「議員の活動」という節に書かれたイラスト。このイラストの主役になっている国会議員は男性である。右上部分に書かれている政党の会議や国会の委員会のイラストには女性議員らしい人も描かれているが、あまり目立たない。日本は国際的に見て女性議員が少ない。このことを問題視している人もいる。そういった中で、政治家の挿絵として男性しか載せなかったのは、非難される可能性がある。たかが挿絵であると言えばそうなのだが、有権者教育ということを考えると、1つぐらい女性政治家をメインにした挿絵があった方がよかったかもしれない。せっかくの副教材なので、こういったことで画竜点睛を欠いたことは残念である。


PS(2015年10月11日追加): *9では、40代以上の関心は「医療・福祉」が1位であることまで含めて、主権者は自分と家族に関係のある身近な課題解決(政策)に関心が高いことがわかる。そのため、私は、まず関心を持つ人が集まって多面的に検討し、それを全体で議論して進めれば、それによって本当に必要とされている財やサービスが提供されることになり、本物の経済成長や行財政改革にも繋がると考える。にもかかわらず、これまで、保育・教育・介護等の分野が疎かにされてきたのは、それを担当しているのが家庭にいる女性で、為政者や意思決定権者は家庭のニーズを知らない男性だったため、本当のニーズを把握できなかった(もしくは把握しようとしなかった)からだろう。

          
  2015.10.11佐賀新聞  2015.1.21日経新聞  2015.1.29西日本新聞
       *9より
*9:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/238406 (佐賀新聞 2015年10月11日) 力を入れてほしい分野 若い世代は「少子化」「教育」、2015県民世論調査
 県政で力を入れてほしい分野(二つまで回答)は、「医療・福祉」が36・0%と4年連続で最も多かった。「企業誘致・産業」(28・0%)、「少子化対策」(25・8%)、「景気・雇用」(25・5%)の順に続く。年代別では、40代以上の世代がいずれも「医療・福祉」が1位を占めた。20代は「少子化対策」(40・5%)、30代は「教育」(36・9%)がトップと、若い世代は身近な課題解決を求める傾向が見られた。職業別では、主婦や公務員、団体職員で「医療・福祉」の優先順位が高く、学生と公務員では「教育」を求める声が強い。「企業誘致」は会社員や商工業・自営、学生で多かった。地域別では、第一次産業が盛んな藤津郡で「農林漁業」が71・4%、神埼郡は「景気・雇用」が63・6%と突出している。鳥栖市は「景気・雇用」が比較的低い代わりに、「行財政改革」が高率だった。

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2015.7.24 教育、保育、福祉について (2015年7月25、26、28、30日、8月19日に追加あり)
   
                      2015.6.7佐賀新聞

(1)少子化は誰の責任か、また、自治体はどう対応すべきか
 *1-1のように、国は認可保育所を希望したのに入所できなくても、①東京都の認証保育所などの保育事業を利用 ②幼稚園の一時預かり等を利用 ③保護者が育休中の場合は待機に含めるかどうか自治体が判断 としており、①〜③を「隠れ待機児童」とみなして集計すると、「認可保育所に入れない待機児童数が多かった98市区町村で、集計されていない『隠れ待機児童』は、4月1日現在、少なくとも約1万3千人に上る」とされる。そして、質の良い保育所に入れるかどうかは「宝くじ」のようらしく、現在、都市部の自治体では待機児童の解消に力を入れているが、未だすべての子どもに満足な居場所を作ることができない状態で、認可外の保育施設を利用すると、一人当たり月に10万円もかかるそうだ。

 しかし、保育施設の充実を最初に訴えた女性は、既にひ孫を持つ年齢であり、最初に学童保育の充実を訴えた女性は、既に孫が中学校に入る年齢である。つまり、働く女性の声を無視して、女性の変化と家族のニーズに合った政策を進めてこなかった政治や行政の対応の遅さが、必要以上に少子化を進め、女性にとっても不幸な現象を招いた。そのため、少子化を「女性や家族の頑張り不足」のせいにするのは、とんでもない責任転嫁である。

 なお、地方では、*1-2のように、来年3月の国公立中学卒業見込み者が前年度より減り、全日制高校の募集定員を40人減らす自治体も現れた。もちろん、認可保育所の待ち行列はなく、保育環境も都会よりよい。そのため、地方では、教育の質を上げて充実させれば、企業誘致や移住が進むと思われる。

(2)教育の充実のうちの学力について
 *2-1に、「①教育関係者、保護者、有識者で構成される佐賀県学力向上対策検証・改善委員会が開かれた」「②委員から『情報収集力や表現力など求められる学力の質が変わってきた』等の意見が出た」「③テストでは、国語は条件に合わせて自分の考えをまとめて書く問題の正答率が低い」「④算数・数学も考え方や理由を説明する記述式の問題の正答率が伸びなかった」「⑤理科は観察、実験の技能や考察に関する問題に苦戦した」「⑥委員から『文章力を磨けばいいという問題ではなく、自分の考えを持っていないと対応できない』などの声が上がった」「⑦上野委員長は『全国学力テストで求められる学力と、教師がこれまで身に付けさせようとしてきた学力にズレがあるのではないか。情報収集力や表現力といった従来と質の違う学力を育む手だてが必要だ』と指摘した」などが記載されている。

 私は、①のように、まじめに教育を考えているだけでも佐賀県は立派だと思うが、②③④⑤⑥については、求められる知識や理論は増えることはあっても減ることはなく、パソコンやインターネットの普及では情報収集のツールが増えただけであり、表現力は表現すべき内容があって初めてものを言うため、小中高では、正しく自分の考えを育むための基礎的知識や論理力を学び、人としての内容を深めるべきだと考えている。そのため、⑦については、「今までどういう教育を進めていたのか?」と少し疑問に思った。

 しかし、パソコンやインターネットの普及で情報収集のツールが増えたというのは、実はすごいことなのだ。何故なら、小中高の生徒でも、国会中継を視聴でき、日本弁護士連合会の意見書を読むこともでき、国内外の政府の公開文書や外国人の論文も入手して読むことができ、どの地域にいても、最前線の情報を入手して考えることが可能になったからである。そのため、企業や大学を退職した人など、これまで最前線で活躍してきた人を小中高に顧問等として採用すれば、質が高くて面白い授業を行い、生徒に新しい見地を開かせる役に立つだろう。

 唐津市教育委員会は、*2-2のように、学力向上策として、教師による一斉指導から、子どもの意見交換の時間を増やし、自ら考える力を伸ばす「アクティブ・ラーニング」のモデル校を増やしているそうだ。これは、生徒に参加意識を醸成するのでよいと書かれているが、私は、教師が教えても、質問や反対意見を歓迎して受け付け、考えさせる指導をすれば、参加意識を高めることができるし、それが本当に必要なことだと考えている。

 一方、児童が授業の進行役を務めて意見交換を行うのは、児童には必要な知識がなく無駄が多いため、私は、特定の科目や特定の日にのみ、アクティブなディスカッションやアクティブなプレゼンテーションを指導するようにした方がよいと考える。唐松地区では、4月の全国学力テストで全学年・全教科が県平均を下回ったそうだが、このような授業方法では学力の低い生徒の参加意欲は高まるかもしれないが、リーダーとなる生徒は先生の代わりまでしなければならず無駄な時間が増えるため、学力の高い生徒の成績が下がって平均が下がると考えられるのだ。また、唐松地区は家庭学習する児童生徒が少ないという結果は、親も含めた意識と習慣が問題なのだろう。

(3)道徳について
 *3-1のように、文科省が教科書検定基準案を作り、「考える道徳」を重視して、「生命の尊厳」「正直・誠実」「公正」「礼儀」「家族愛」「伝統文化」「伝記」「愛国心」「言語活動」「体験学習」「スポーツ」などの幅広いキーワードで、これを進めるそうだ。しかし、これらは、これまでも国語、生物、総合学習、クラブ活動などで、折にふれてやってきたものではないのか?

 また、「一方的な価値観の押しつけではなく、子どもが自分で考える授業になるよう、教材の面から後押しする」と何度も書かれているが、成人ではない未発達の子どもが自分で考えられるようになるまでは、「生命の尊厳」「正直・誠実」「礼儀」「公正」「家族愛(いろいろな形があることも教えてよい)」「愛国心(批判したから愛国心がないわけではなく、愛国心だけでは足りないことも教えるべき)」等の価値観を一方的に押しつけることは教育の一部であり、それらをすべて自分で考えることのできる人はいない。にもかかわらず、それを曖昧にしてきたのが猟奇的犯罪・オレオレ詐欺・いじめ等、人権侵害の多い我が国の現在に至った理由の一つであり、子どものうちに叩き込んでおかなければならない価値感もあるのだ。

 しかし、*3-2のように、現在の「道徳の時間」では、「決まりを守る」などを紹介した副教材が使われてきたが、この副教材の使用に積極的でない教員もいたそうだ。確かに、決まりはどうにでも作れるので、時代遅れだったり不当だったりすることもあり、「決まりを守る」だけではなく、「その決まりは適切か」とか「では、どういう決まりにすればよいか」などを皆で議論して考え、答えを導くのもよい教育である。

<問題1(歴史・政治)>*3-3のように、ロシアの首相が北方領土を訪問する意向を示し、「島に軍事インフラを整備する」という考えを示した。北方領土は、北海道の人にとっては占領されたふるさとで目の前にある島だが、日本が周辺国すべてを見下して米国のみに頼ったツケが廻ってきたようだ。中学生以上の人は(小学生でも可)、どうすればよいかについて考えて下さい。
 
<問題2(道徳・経済)>*3-4のように、日本人の家計の金融資産は1700兆円を超え、安全資産の代表である現金と預金の比率が52%と過半だそうだ。家計の金融資産は個人が老後に備えて蓄えてきたものであるため、60歳以上に偏在しているのは当然で失うわけにいかないものであるにもかかわらず、日本経済を活性化させるという名目で元本が減るリスクのある金融資産を薦めるのは道徳的か? また、日本国憲法に照らして、人の老後の暮らしや人権、幸福を大切にしているだろうか? さらに、インフレ経済にして個人資金をリスク資産に引きつけ、市場の知識すらない人の資金が市場に流れる仕組みを整えることは適切か? 仮に適切な場合があるとすれば、それはどういう場合か?

 上の<問題1>と<問題2>は、生徒にとって簡単に答えが出るものではないが、道徳を含む多くの考慮すべき要素を含むため、多面的に調べてディスカッションし、考えを進めるトレーニングになるだろう。しかし、問題は、教える筈の大人が正解に近いものを作れるか否かである。

(4)ICTを使った教育の事例
 *4-1のように、佐賀県は、タブレット端末や電子黒板など佐賀県が推進しているICT(情報通信技術)教育について、ICT教育改善検討委で学校現場の意見を集約している点で進んでいる。タブレット端末や電子黒板は、先生が書いた黒板を写すという無駄な作業がなくなるのでよいと思うが、タブレット端末やパソコンでは紙上のように思考や論理構成をしにくい。そのため、タブレット端末や電子黒板は、それ自体が学習というよりは、参考書、ノート、鉛筆、黒板のような文房具にすぎないと考えるべきである。

 しかし、優秀な文房具であり、どんな地域に住んでいても、オリジナルの文書や専門家の意見に容易にアクセスして、ものを考えることができるツールだ。そのため、現場の先生には、使いこなし方を勉強していただき、授業に活かしてもらいたい。

 例えば、*4-2の佐賀西高の中国・東アジア史はよいが、「東アジアの国際体制は何が良かったのか」だけではなく、「何がなかったか」も学んで欲しい。さらに、世界史と日本史の年表を並べて学ぶことにより、日本史に書かれていなかった事実も浮かび上がってくるため、それは何かを徹底して追及すれば、歴史の流れを理解した上ですべてを同時に覚えられる。なお、私は、タブレット端末だからといってアニメーション化するのは感心せず、むしろ韓国国立中央博物館と正倉院の宝物の比較などをしてもらいたい。

 また、*4-3のように、致遠館高校では、「自分のお気に入りの物」をテーマに、生徒1人ひとりが英語でスピーチしたそうだが、私は、「英語のスピーチだから内容は簡単でよい(それでは内容が面白くない)」とは思わない。そうではなく、日本国憲法の英文オリジナルと日本語訳を読み比べて違いを指摘したり、生命科学やロボット工学や宇宙に関する英語論文を読んで解説したりなど、内容も充実した方が面白いし、将来の役にも立つ。何故なら、次世代の研究者や社会で活躍する人は、当然のコミュニケーションとして、そのような内容を英語と日本語の両方で話せることが要求されるからである。

<現在の状況>
*1-1:http://qbiz.jp/article/66602/1/
(西日本新聞 2015年7月12日) 「隠れ」待機児童1万3千人 集計方法あいまい
 認可保育所に入れない待機児童数が昨春多かった98市区町村で、「保護者が育児休業中」などを理由に集計されていない「隠れ待機児童」が4月1日現在、少なくとも約1万3千人に上ることが、共同通信の調査で分かった。自治体が待機児童として集計したのは約1万5千人(昨年4月から11%減)。国が自治体に示した基準では、認可保育所を希望したのに入所できなくても、(1)東京都の認証保育所など自治体単独の保育事業を利用(2)幼稚園の一時預かりなどを利用−の場合には、待機児童として集計しない。(3)保護者が育休中の場合は、待機児童に含めるかどうか自治体が判断できる。調査では(1)〜(3)を「隠れ待機児童」とみなした。女性の活躍に不可欠な待機児童の解消問題。国は4月から始まった保育の受け皿を拡充する「子ども・子育て支援新制度」を待機児童ゼロへの切り札にしたい考えだが、集計方法はあいまいで、自治体からは「机上の数字」と冷ややかな声も漏れる。子育てのニーズは多様で悩みは尽きない。
▽宝くじ
 「いつになったら預け先が決まるのか。不安が消えない」。通信設備会社に勤める女性(35)=東京都目黒区=は3月末までの育児休業を延長した。4月から娘(1)を区の認可保育所に入所させようとしたが、申し込みをした施設はいずれも空きがなかったからだ。認可保育所は競争が激しく、難しいと知っていた。さらに都が独自に設置する認証保育所7カ所にも申し込んだが、数十人待ちが当たり前。待機リストが100人以上のところもあり、宝くじに当たるようなものだ。「新しい制度が始まると聞いて期待したけれど何も変わっていない」。マンションを売却し、他の地域へ引っ越すことも考え始めた。目黒区ではこの女性のようなケースを待機児童にカウントしているが、自治体によって対応にはばらつきがある。東京都中野区の女性(31)も認可保育所を諦められずにいる1人だ。昨年4月に当時0歳だった娘を入所させたかったがかなわず、ビルの1階にある認証保育所へ。保育料は月6万3千円。昨年末に再び認可保育所に希望を出したが、だめだった。「広々とした園庭で遊ばせたい」。これからも申し込みを続ける。
▽居場所
 都市部の自治体などは待機児童の解消に力を入れている。共同通信の調査では、昨年4月時点で人数が多かった98市区町村のうち、約6割が今年4月時点で減少し、川崎、大津など4市はゼロになった。保育施設の整備などが理由とみられる。しかし保護者が育休中のケースを除いたりすることが多く、近畿地方のある自治体の担当者は「机上では、ゼロにするやり方はいくらでもある。実態に合っていない」と冷ややかに話した。保育の必要性と行政の関わりをめぐる意見はさまざまだ。埼玉県所沢市では6月、母親が出産し、育休を取った場合に、原則として上の子が保育所を利用できなくなるのは違法だとして、保護者らが市に差し止めを求める行政訴訟を起こした。市側は「育休中は家庭での保育が可能」と説明。保護者側は「子どもにとって保育所に通うのは生活の一部。元の保育所に戻れる保証がないのは不安だ」と訴える。保育問題に詳しいジャーナリストの猪熊弘子さんは「待機児童の定義や育休の扱いが自治体の方針で変わり、家族の人生を左右されるのはおかしい。本来はすべての子どもに居場所があるべきだ」と指摘している。
▽選択肢
 新制度は幼稚園と保育所の機能を合わせた「認定こども園」や、0〜2歳児を対象に少人数で子どもを預かる「地域型保育」の普及など、選択肢を広げるのが狙いだ。都内の女性(35)は7月から娘(1)を新設の認定こども園に通わせている。「これまでは仕事を続けるため、月10万円で認可外の保育施設を利用していた。幼児教育の要素もあり、どんな生活になるか楽しみ」とほっとした様子で話す。母親の立場で待機児童問題に取り組む杉並区の曽山恵理子さん(38)は「新制度で保育を利用できるようになった人もいるが、まだまだ厳しい状況は変わらない。多様な声を聞くべきだ」と注文を付けた。

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/211268
(佐賀新聞 2015年7月24日) 県立中高の来年度定員 武雄高40人減
 佐賀県教育委員会は23日、2016年度の県立中学、高校の生徒募集定員を発表した。全日制高校の募集定員の合計は、前年度より40人少ない6440人となる。武雄高校が定員280人を240人に減らす。県立中4校に変更はなく、各校120人を募集する。武雄以外に全日制の募集定員の変更はなく、学科・コースの改編もない。定時制6校の募集定員は前年度と同じ全体で280人。16年度から、普通科の通学区域を現在の4学区から2学区に変更する。これまでの東部、中部を合わせて「東部」学区とし、北部、西部を統合して「西部」学区とする。県教委によると、来年3月の国公立中学卒業見込み者は前年度より65人少ない8544人。旧学区ごとにみると、東部65人減、中部59人減、北部89人増、西部30人減だった。中でも、武雄・杵島地区は前年度も80人減だったことや武雄青陵中の来年3月の卒業者がこれまでより40人減ることを勘案し、武雄高校の定員を減らした。16年度も、募集定員の20%を上限に全日制全36校で特色選抜試験を実施する。県立高の試験日程は、特色選抜が2月9日、一般選抜は3月8、9日、合格発表は3月15日。県立中は1月16日に選抜検査、1月27日に合格を発表する。今回の選抜から、各校の特色を反映して出題してきた「学校独自検査」を廃止する。

<学力>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/210568
(佐賀新聞 2015年7月22日) 全国学力テスト「求められる質変化」 県学力向上委が分析
 教育関係者や保護者、有識者らでつくる佐賀県学力向上対策検証・改善委員会(委員長・上野景三佐賀大教授)が21日、県庁で開かれた。文部科学省が4月に実施した「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)の分析結果が報告された。委員からは「情報収集力や表現力など求められる学力の質が変わってきている」などの意見が出た。全国学力テストは、小学6年と中学3年を対象に国語と算数・数学に理科を加えた3教科で実施した。県教委は小5、中1、2にも独自のテストを実施し、結果をいち早く指導に生かすため、独自集計している。全国の結果公表は8月ごろで、まだ比較はできない。テストでは、国語は条件に合わせて自分の考えをまとめて書く問題の正答率が低く、算数・数学も考え方や理由を説明する記述式の問題の正答率が伸びなかった。理科は観察、実験の技能や考察に関する問題に苦戦した。委員からは「文章力を磨けばいいという問題ではなく、自分の考えを持っていないと対応できない」などの声が上がった。上野委員長は「全国学力テストで求められる学力と、教師がこれまで身に付けさせようとしてきた学力にズレがあるのではないか。情報収集力や表現力といった従来と質の違う学力を育む手だてが必要だ」と指摘した。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/column/ictedu/23901/200032 (佐賀新聞 2015年6月22日) 学力向上へ唐津市試み 「アクティブ・ラーニング」で活路、箞木小で成功、4地区にモデル校
■「授業に集中」大規模校でも効果
 唐津市教育委員会は学力向上策として、教師による一斉指導から、子どもの意見交換の時間を増やし、自ら考える力を伸ばす「アクティブ・ラーニング」のモデル校を増やしている。詰め込み型の知識偏重教育を改めようとする国の方針を“先取り”した試みだが、唐松地区の長期的な学力低迷を打開する狙いが背景にある。市教委は昨年度から学力向上モデル校事業を始めたが、きっかけは厳木町の箞木(うつぼぎ)小が2011年から始めた「司会式授業」。児童が授業の進行役、黒板筆記、タイムキーパーを務め、活発に意見交換する。全国学力テストでは、思考力や表現力を問う記述式問題で、全国平均を大幅に上回る結果を継続的に出している。
◆生徒に参加意識
 京都などでの取り組みを参考に始めた古川元視校長は「今の授業は先生が話しすぎると思う。自分たちで考え、答えを出す方が知識は定着するし、この繰り返しで、自分たちは何をすべきか考える子が育つ」と利点を話す。1年生の算数でも、答えだけでなく、そこに至るまでの考え方を記述させており、思考の過程を重視している。市教委が〓木流を最初に導入したのは、市内一の大規模校となる唐津一中。「司会式」ではないが、4人単位の席に配置し、意見交換やグループ別発表の機会を増やしたことで、生徒の授業参加意欲も高まった。保護者の一人も「居眠りや私語、授業を抜け出す子がほとんどいなくなった」と変化に驚いていた。濱隆朗校長は「やはり一番の生徒指導は『分かる授業』。勉強に自信が持てるようになることで、子どもたちも教室に居場所が見つかる」。教師は毎回の授業で、生徒の思考を手助けするワークシートを用意する負担が生じるものの、「子どもたちが授業に参加するので、心理的な負担は軽減できる」と濱校長。
◆自ら学ぶ力
 1年目の昨年度のモデル校は唐津一中を含め、3地区5小中学校だったが、2年目の本年度は4地区12小中学校に広げた。市教委は小中連携でアクティブ・ラーニングの流れをつくろうと試みている。文部科学省も次期学習指導要領(小学校2018年、中学校19年改定)でアクティブ・ラーニングを盛り込む方針。市教委の牟田口成喜学校教育課長は「私たちの試みは特別なものではなく、国が目指す教育の方向性に沿ったもの。一番規模が大きい一中でできたので、どこでも可能だ」と話す。一方、唐松地区は4月の全国学力テストで全学年、全教科で県平均を下回った。唐津市議会の6月議会では「塾など民間と連携する他の自治体の取り組みも参考にすべきでは」と議員から質問が出るなど学力向上策は急務となっている。県教委が同時期に行った学習状況調査では、平均点の高い三神や佐城と比べて、唐松地区は家庭学習をする児童生徒が少ないという結果が出るなど課題も見えている。「授業で『自ら学ぶ力』をつけることが、家庭学習の習慣につながる」と市教委。学校全体の意識改革をどれだけ進められるかが、授業改善の鍵を握っているようだ。
■アクティブ・ラーニング(AL)
 教師主導による講義型の授業とは異なり、最初に学習の目標が示され、与えられた課題を各自で考え、グループ別やクラス全体で意見を出し合うことで思考力を高める学習法。欧米の教育スタイルで、国内でも導入する大学が増えている。2018~19年度改定の次期学習指導要領に盛り込まれる。文科省はAL導入にあわせ、センター試験に代わり導入する「大学入学希望者学力評価テスト」には記述式問題を盛り込むことを検討している。

<道徳>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11877223.html
(朝日新聞 2015年7月24日) 「考える道徳」を重視 教科書検定基準案 文科省
 これまでの道徳は「教科外の活動」という位置づけで、国の検定を経た教科書はなく、副読本を読むことが中心だった。格上げで検定のルールが必要になり、3月に改訂された新学習指導要領に沿う形で文科省が検討していた。基準案では、教科書全体を通じて、子どもが表現力を高めるために話し合ったり書いたりする「言語活動」や、「体験学習」などを教員が採り入れやすくする工夫を求めた。一方的な価値観の押しつけでなく、子どもが自分で考える授業になるよう、教材の面から後押しする狙いがある。教科書に掲載する物語などの題材は、生命の尊厳や伝記、スポーツなど幅広いテーマを扱うことにした。「礼儀」「公正」「愛国心」など学習指導要領に決められた項目との対応を明示することも盛り込んだ。子どもの発達段階に即し特定の見方に偏らない配慮も求めた。検定基準は9月に正式に決定される。小学校向けの教科書は16年度、中学校向けは17年度に検定され、それぞれ18年度、19年度から使われる。
■<視点>多面的見方、どう配慮
 「読み物道徳」から「考え、議論する道徳」へ。文科省が教科化で打ち出した方向だ。道徳の授業が子どもの考えを縛り、特定の価値観を押しつけるものであってはならない。検定基準案でも、子どもたちが多面的に考えられるような配慮を教科書会社に求めた。それが現実の教科書でどこまで実現できるかは、なお未知数だ。「検定を通じて政権の意向が反映されるのではないか」との懸念もぬぐいきれない。改訂した道徳の指導要領は「正直、誠実」「家族愛」などのキーワードを設けた。基準案でも指導要領に沿い、「伝統と文化」や「先人の伝記」などを必ず盛り込むよう求めている。だが、物事や人物の評価は一つではない。この日も「1人の人間があるところでは英雄、あるところでは犯罪者とされ、簡単ではない」との声が出た。安倍政権は昨年、教科書検定のルールを変え、「愛国心」などを盛り込んだ教育基本法の目標に照らして重大な欠陥があると判断される場合は不合格になるとした。道徳でどう適用されるのか。注視していく必要がある。

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11877128.html
(朝日新聞 2015年7月24日) 話し合う道徳、出版社模索 独自教材の余地 課題解決型の学び
 「想定の範囲内で、驚きはない」。23日に了承された検定基準案について、道徳の副読本を発行する出版社の担当者は言う。現在の「道徳の時間」では、「命を大切に」「決まりを守る」など大切なことを物語や偉人の言葉を交えて紹介した文部科学省の副教材「私たちの道徳」が使われている。だが、この副教材の使用に必ずしも積極的でない教員もいるという。このため「私たちの道徳」を参考にしつつ、どんな教員も使いやすい教科書にする必要がある。道徳教育に詳しい上薗恒太郎・長崎総合科学大教授(教育学)も「採択されやすいよう、どんな先生も授業ができるわかりやすい物語が多くなるだろう。その分、経験や理論に裏打ちされた独自の教材も使える余地を残すことが必要だ」と指摘する。具体的には「いじめに対応する内容が学年ごとに盛り込まれ、課題解決型の学習が目玉になるだろう。自己肯定感を高めることを目標に構成し、子どもを支える教科書にするべきだ」との考えを示した。道徳教育が専門の別の研究者は「人間としてのあり方や生き方について、じっくりと考えることのできる工夫」を望ましい教科書の条件に挙げる。「あれっと思ったり疑問を持ったりと子どもの興味・関心を引きつけることが大事」。そうした「考える道徳」を重視するのは、やはり道徳の副読本を作ってきた別の会社だ。編集幹部は「一人ひとりが考え、教室での話し合いにつながる教科書にするため、四苦八苦している」と明かす。別の会社の担当者は「単なる読み物集では足りない。本音で自分を語り、自分とは違う考えを本気で受け止めることの大事さを実感できるものでなくてはならない」と気を引き締める。時間の制約は、各社共通の悩みだ。ある編集者は「教科書づくりは少なくとも1年半前から準備するが、今回は検定申請までに1年もない。急ピッチで作業を進めている」という。
■意識改革が必要
 貝塚茂樹・武蔵野大教授(日本教育史)の話 検定基準からは、子どもに多面的に考えさせる教科書をつくりなさいというメッセージを感じる。これまでのように登場人物の心情理解に偏った指導ではなく、子どもが話し合ったり考えを書いたりする授業ができる教材でなければならない。取り上げる読み物も死刑制度や脳死など、教員も迷うようなテーマ設定が必要だろう。教科書会社にも、これまでのスタイルを変える意識改革が求められている。

*3-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11877130.html
(朝日新聞 2015年7月24日) ロ首相、北方領土訪問意向 「島に軍事インフラ整備」
 実際に北方領土を訪問すれば、大統領時代の2010年、首相時代の12年に続いて3回目。日本政府は強く反発することとなり、安倍晋三首相が目指すプーチン氏の年内訪日も困難になりそうだ。タス通信によると、この日の閣議では、2016~2025年のクリル諸島(北方領土と千島列島のロシア側呼称)発展計画を基本的に承認。国家予算から700億ルーブル(約1540億円)を割り当てる方針だ。メドベージェフ氏は「あそこに行ったことがない者は行ってみるべきだ。いずれにしても、私は行くことを計画している。みなさんも招待する」と述べた。その上で「我々は軍事的なインフラ整備も進めている」と述べた。

*3-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150720&ng=DGKKZO89514130Q5A720C1PE8000 (日経新聞社説 2015.7.20) 1700兆円を経済の再生に生かそう
 日本人のお金に対する保守的な姿勢は相変わらずのようだ。日銀の資金循環統計によれば、2015年3月末の家計の金融資産は初めて1700兆円を超えたが、安全資産の代表である現金と預金の比率が52%と過半だった。家計の金融資産は個人が老後に備えて蓄えたものという面が大きい。慎重に使わなければならないのはもちろんだ。しかし、資金に多少なりとも余裕があるなら、元本が減るリスクがあるかわりに高い収益を見込める投資に回すことは、有力な選択肢のはずだ。
●市場の正しい知識を
 それはめぐりめぐって日本経済を活性化させる効果も持つ。個人が積極的に資産運用に取り組むための環境整備を急ぐべきだ。個人金融資産の6割強は60歳以上に偏在している。一般にこの世代は、教育費や住宅ローンの負担が軽くなる一方、退職金を受け取るため、金融資産の蓄積が進む。高額品を中心とする消費の主役として注目されるだけでなく、リスクマネーの出し手としての役割を期待する向きが多い。現在の60歳以上の人は投資の初心者が多い。まずは投資や資本市場に関して正しい知識を得るための学びの機会が必要だ。東京証券取引所は全国の主要都市に専門家を派遣し、投資のルールや市場の仕組みを教えるセミナーを、12年度から実施している。14年度は41回開催し5500人弱が参加した。投資経験の浅い個人にとって、こうした場でリスクとリターンの関係などを理解することは大切な経験だ。東証だけでなく、証券会社の自主規制団体である日本証券業協会なども含め、多くの市場関係者が個人投資家の裾野を広げる努力を続けてほしい。投資の学習と並んで重要なのは、個人の資金が市場に流れる仕組みを整えることだ。一定金額以内の個人の株式投資について、売却益や配当に税金を課さない少額投資非課税制度(NISA)を、有効に使いたい。金融庁によれば、同制度の導入から1年たった14年末の口座数は825万口座に達した。50歳以下で投資経験が乏しい人の開設が増える傾向にあるという。16年からは親や祖父母が子や孫の代理として投資する場合に非課税となる、ジュニアNISAが創設される。高齢世代から若い世代への金融資産の移転を促す狙いがある。金融機関が長期の視点で資産形成の助言などに力を入れることが普及のカギだろう。個人の資産運用の手段として古くからある金融商品には、投資信託がある。NISAの枠内で投信を持つ個人も増えた。既存の金融機関や運用会社に頼ることなく、自力で有望な企業や事業を見つけ、資金を投じたいと考える人もいるだろう。そうした需要に応えるうえで、インターネットの活用は有効な手段だ。企業がウェブ上で事業アイデアを公開し、個人から小口出資を募るクラウドファンディングが、5月に解禁された。
●個人資金を引きつけよ
 同制度を利用するのは知名度の低いベンチャー企業が多い。監督当局が不正に目を光らせるのは当然だが、ウェブを運営するクラウドファンディング事業者が出資を募る企業に対し詳しい経営情報の開示を促すといった、自主的な取り組みも欠かせない。モノの値段が下がり続けるデフレのもとでは、現金や元本保証の預金を多く持つことが財産の目減り防止につながった。日本経済がデフレからの脱却を果たし、再生の道筋がはっきりとしたものになれば、個人が自己責任に基づいて株式などに資金を投じる動きも強まるだろう。企業にとって個人投資家は、投機的なファンドなどと違って経営をじっくりと見てくれる資金の出し手となりうる。これまでにも増して、企業が個人を引きつけるための努力が必要となる。例えばオリックスは昨年から、1カ月に2~3回の頻度で個人向けの会社説明会を開いている。個人マネーを成長の原資とした企業が、雇用創出やイノベーションを通じて成長の富を社会や個人に還元していく。そんな経済活性化の道筋を、さらに太く、確かなものとしたい。

<ICTを使った教育>
*4-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/205623
(佐賀新聞 2015年7月8日) 佐賀県ICT教育改善検討委 学校現場の意見集約
 タブレット端末や電子黒板など佐賀県が推進しているICT(情報通信技術)教育について、県教委は7日、外部メンバーでつくる改善検討委員会の第3回会合を開いた。各委員がそれぞれの立場で意見を述べ、「知事も会の意見を参考にすると発言している。われわれは日和(ひよ)ることなく、思い通りに意見を出していきたい」と強調した。委員会は小中高の校長会や教職員組合の代表、PTA役員、学識者ら15人で構成する。山口知事は議会や会見で「現場の先生の意見を反映した形で検証してほしい」と発言していた。この日は、鳥栖工業高の籾井宏文教諭が「タブレット端末を配って終わり、ではなく、どう使えばいいのか、どういう成果を求めるのかを学校現場に示してほしい」と述べた。端末代の5万円の負担が家庭に重くのしかかっている現状や、基本ソフト(OS)としてウインドウズが適当かどうかといった機器の使い勝手についても疑問を呈した。事業責任者の福田孝義副教育長は「生徒負担をなくすために端末を学校の備品にすれば、自宅に持ち帰って学習効果を高めることができなくなる」と答えた。委員からは「持ち帰ることで得られる学習効果についての検証データを示すべきでは」「端末を購入できないのは教育の問題ではなく福祉の問題だ」などの意見が出た。検討委は過去2回、県教委からの事業説明や有識者の話を聞くことがメーンだった。次回は14日に開き、それまでの議論を山口知事に報告する。

*4-2:http://www.saga-s.co.jp/column/ictedu/23902/195013
(佐賀新聞 2015年6月8日) ICT最前線 学びをデザインするvol.001 佐賀西
■「学びの道具」に試行錯誤
 佐賀県内の公立高校でICT(情報通信技術)を活用した教育がスタートして1年がたった。教室では先生が電子黒板を使って授業を進め、生徒は机の上で開いたタブレット型パソコンに意見などを書き込む。自ら考え、学ぶかたちへと変容していく授業風景-。試行錯誤を重ねながら「学びの道具」としてのICTで、新しい教育をデザインしようと取り組む現場の最前線を月1回、報告する。第1回は、佐賀西高1年7組で世界史の授業を取材した。
■先生、時間効率の向上 生徒、多様な意見を共有
 授業は、中国・東アジア史。中国・漢時代から2千年間続いた体制を基本とした東アジアの国際体制は一体何が良かったのかを学び、考える授業だ。まずは平山智浩先生(47)が、電子黒板(70インチ、フルハイビジョン)に「中国の王朝交代を表した年表」を表示。電子黒板の画面を手で触ってスクロールすると、殷(いん)から後漢、後漢から唐、唐から清までの3つのスライドが示された。次に、授業で配ったプリントと同じ「唐と近隣諸国の地図」を表示。唐の部分に色を塗り、西アジアまで及んだ唐の領域を色分けした。さらに、明時代に南京からインドを経由しアフリカまで航海した「南海遠征航路地図」は、航路をアニメーションで表示。生徒は電子黒板を見ながら、プリントに要点を書き込んだ。授業の後半は、生徒個人の学習用のタブレット型パソコン(PC)を用いて意見を交換した。生徒は学習用PCを起動させ、教師と共有の「教材フォルダ」から当日の学習シートをローカルに保存し、自分の意見を記入した。その間、平山先生は教師用PCで各生徒のパソコンでの書き込み作業を確認できる「机間巡視機能」を使って学習シートをリアルタイムで確認。教室を動き回らなくても、生徒の意見を確認することや支援を必要としている生徒の把握ができるようになり、指導の効率向上と意見収集の時間短縮に効果が上がっているという。机間巡視機能には、生徒が書き込んだ学習シートを電子黒板に順次投影する機能もある。その際は無記名で表示でき、生徒は自分の意見を自由に書くことができるように配慮されてもいる。さらに、ほかのクラスで出された意見も電子黒板で紹介され、多様な考え方を共有できるようにも工夫が施されていた。生徒はこうした意見も参考に、自らの意見を加筆・訂正。中には、自分の意見と気づかなかった意見を区別するために、色を変えて書き込んでいる生徒もいた。最後に、生徒が事前にパワーポイントを使ってまとめていたレポートを電子黒板で紹介。アニメーションや矢印、吹き出しを使うなど随所に工夫がちりばめられ、生徒にとってもいい刺激になっているようだった。

*4-3:http://www.saga-s.co.jp/column/ictedu/23902/202685
(佐賀新聞 2015年6月30日) ICT最前線 学びをデザインするvol.002 致遠館
 「お気に入り」をテーマに、PCを使って携帯型音楽プレーヤーすごさを英語でスピーチする生徒。先生と他の生徒も説明に聞き入った=佐賀市の致遠館高学
■「お気に入り」英語とPCでプレゼン
 佐賀県内の公立高校で行われているICT(情報通信技術)を活用した授業。電子黒板や1人1台のタブレット型学習用パソコン(PC)を使い、新たな教育のかたちをデザインする取り組みを追うシリーズの第2回は、佐賀市の致遠館高校1年2組で英語の授業を取材した。
■3時限目「英語」
 「自分のお気に入りの物」をテーマに、生徒1人ひとりが英語でスピーチする。溝口健一郎先生(37)は終始、英語で授業を進める。
    ◇    ◇
 「Look at this(これを見てください)」。机を並び替えて5~6人の小グループをつくった教室の一角。生徒たちは1人ずつ順番に英語で「好きな物」をスピーチしていく。事前に準備した手書きのプリントの英語を読み上げながら、プレゼンテーションソフトの「パワーポイント」を使い、手元の学習用パソコン(PC)で資料や写真を見せながら発表した。あるグループの生徒が指し示した学習用PCの画面には、漫画本を全巻きれいに並べた写真が現れた。生徒は英語でスピーチを続けながら、画面をスライドする。すると、スピーチ内容に沿った写真などが次々に現れる。発表もいよいよクライマックスに差しかかり、主人公が大けがをした時の画像が現れた、と思ったら左右に小刻みに揺れ始めた。けがを負う“衝撃”をアニメーションで表現したのだ。見ていた生徒からは「おぉっ!」とどよめきが起こった。好きな物の題材は、以前使っていた愛用のランドセルだったり、家で飼っているペットだったりとさまざまだ。パワーポイントのスライドショーやアニメーションなどの機能を使いこなして分かりやすく伝えようとする生徒もいれば、逆に写真は少し見せるだけにとどめ、お気に入りのステッカーや文房具など実物を持ち出す生徒も。表現方法は生徒の自由に任されている。聞き手側の生徒は、プリントに発表者の発音や内容、アイコンタクトを取ったかなど5項目を評価して記入。最後に感想を書いて発表者に渡す。グループ全員が発表した後、クラス全員の前で発表する代表1人を選んだ。クラス全員の前で代表者が発表した後は、生徒同士が英語で質疑応答。質問は理解できても、英語での回答となると言葉に詰まる生徒もいたが、すかさず先生が駆け寄りアドバイス。何とか英語で回答して乗り切っていた。英語でスピーチする表現活動は初めての取り組みだった。プレゼンテーションの練習も兼ねた試みで、今後も学期に1~2回は実施する予定にしている。


PS(2015年7月25日追加):*5のように、細かく検討するのが地方議会のよいところだが、機器のトラブルに対応する支援員は学校ごとに一人置かなくても、市町で業者に委託しておけばよく、そのくらいの予算は出るだろう。「ICTの導入で具体的にどの程度学力が向上するのか」と言われると、やってみなくてはわからないが、これからは、農業、観光はじめ、あらゆる産業でICTを使いこなす必要があり、できない人は置いて行かれると考えた方が良い。

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/204040
(佐賀新聞 2015年7月3日) ICT教育で市町、「支援員、予算確保を」、県ICT利活用教育推進協
 佐賀県と各市町が連携してICT(情報通信技術)教育を進める県ICT利活用教育推進協議会が2日、県庁であった。市町の教育長や担当者が現状報告や意見交換を行い、複数の出席者が電子黒板などの機器トラブルに対応する支援員や予算の確保が難しい現状を訴えた。5月1日時点のまとめでは、1学級当たりの電子黒板整備率は、12市町で100%に達していない。ただ県教委によると、本年度中に全市町で達成するという。意見交換では「支援員の確保が厳しい」(鹿島市)、「支援員を1人確保しているが、突発事項があり1人では厳しい」(嬉野市)などの悩みが出た。基山町や上峰町からは予算確保が課題で「ICTの導入で具体的にどの程度学力が向上するのかを議員から問われる」との声も上がった。県が県立学校を対象に実施する支援体制と連動したサポートを求める声も出たが、県教委の福田孝義副教育長は「県立学校を抱え手いっぱい。まずは市町でできる範囲で行ってほしい。ただ、市町が困っていることに関しては一緒に解決策を探っていきたい」と話した。


PS(2015年7月25日追加):企業誘致したり、交流人口を増やしたりするためには交通の便も重要で、その流れの中で、長崎(日本が鎖国していた時代にオランダと貿易していた街)を終点とする九州新幹線西九州ルートのフル規格化の必要性は誰もが認めるところだ。私は、全線を高架化して一階部分を利用すれば、鉄道以外の収入も見込まれるため、建設によってむしろ利益を出すことも可能だと考える。

*6:http://qbiz.jp/article/67490/1/
(西日本新聞 2015年7月25日) 新幹線フル規格化、財政負担見直しを 武雄市が佐賀県に要望
 佐賀県の武雄市新幹線活用プロジェクト(会長・小松政市長)は24日、九州新幹線西九州ルートのフル規格化と沿線自治体の財政負担見直しを求める要望書を、県の副島良彦副知事に提出した。副島副知事は「地元の関心の高さをあらためて認識した」と述べるにとどめた。要望書は、現計画の在来線を使ったフリーゲージトレイン(軌間可変電車)では時短効果が小さく、試験運行もトラブルで昨年11月から休止していると指摘。フル規格化で全線を高架化し、安全性も確保するべきだと要望。国と自治体が折半する建設費も国の負担を増やすよう求めている。小松市長は「佐賀の発展にはフル規格化が不可欠。他の沿線自治体とも協力していきたい」と話している。


PS(2015.7.26追加):*7のように、人文社会系の見直しを求める文部科学省の通達があり、京都大学がこれに否定的であることは、これまでの京都大学の実績から見て納得できる。しかし、教育も、上のように文系出身の人が適している科目ばかりではなく、大学で一般教養さえ身に着ければ役に立つという時代でもない。そのため、大学が社会のニーズにあった知識や技術を習得する場所として機能することは重要であり、多くの生徒はそういう大学を選びたいのではないだろうか?

*7:http://www.kyoto-np.co.jp/education/article/20150726000015 (京都新聞 2015.7.26) 「人文系見直し」広がる波紋 文科省通達に国立大から異論印刷用画面を開く
 文学部の校舎が立ち並ぶ京都大吉田キャンパス。人文社会系の見直しを求める文部科学省の通達が波紋を広げている(京都市左京区) 国立大学に教員養成系や人文社会系の学部・大学院の組織見直しを求めた文部科学省の通達が、波紋を広げている。京都や滋賀では、京都大の山極寿一総長が人文社会系の廃止や縮小に否定的な考えを表明し、滋賀大の佐和隆光学長も国の方針に批判的な立場を取る。一方、地方の国立大学では既に、学部の再編や新設に乗り出す動きがある。
■学長ら批判
 「特に教員養成系や人文社会科学系の学部・大学院については、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めること」。6月8日、2016年度から始まる国立大学の第3期中期目標を作る際の留意点を伝える通達の中で、文科省は各大学にこう求めた。教員養成系を挙げたのは、18歳人口の減少に伴う教員需要の縮小を見越した対応といえる。一方、人文社会系が標的になった背景には経済界の意向が強く働いたとみられている。企業の競争力強化には、理系や実践的な知識を身に付けた人材が必要という考え方だ。通達には国立大学の学長から強い異論が出ている。京大の山極総長は6月17日の記者との懇談で「大学は今すぐ役立つ人材でなく、未来に役立つ人材を育てるのが使命。人文社会系は教養として重要だ」と力説。多様な知識を身に付けた学生を送り出すためにも、人文社会系は不可欠とする持論を展開した。滋賀大の佐和学長は「政府の産業競争力会議に入っている財界人や学者は、人文社会系の教育が産業振興に貢献していないと考えている」と指摘する。世界の大学ランキングで上位に入る英米の大学で人文社会系の教育研究が活発なことを挙げ、「欧州では人文社会系の学問は存在感がある。批判精神のある人間を育てるためだ。国が大学のランキングを上げたいなら、人文社会系にこそ力を入れるべきだ」と訴える。
■交付金への影響懸念
 文科省はこれまでも、国立大学に教育研究の特色や社会的役割を見直すよう求めてきた。その流れを受け、地方の大学では、教員養成系や人文社会系の定員を減らし、国際教育や文理融合などの新学部を開設する構想が相次いでいる。福井大は2016年度に「国際地域学部」の開設を予定。既存の教育地域科学部の1課程を廃止して、60人分の定員に回す。宮崎大も教育文化学部の定員をほぼ半分に減らし、定員90人の「地域資源創成学部」の設置を計画する。滋賀大も例外ではない。大規模データの解析にたけた学生を育成する文理融合系の「データサイエンス学部」の開設を17年度に目指している。100人の定員は経済、教育の両学部からそれぞれ90人と10人を削減して充てる。背景には国立大学の懐事情がある。収益の4割近くは国が支出する大学運営費交付金。しかも国は今後、機能強化や組織改革の取り組み次第で配分額に差をつける方針だ。佐和学長は「何もせずに交付金を削られるのは耐え難い。時代を先取りした新学部開設で前向きに対応する」と話す。一方、京大は今のところ、学部や大学院の再編は打ち出していない。教育担当の北野正雄理事は「人文社会系だけを取り出して議論するものではないというのが学内の意見だ。学内全体で教員を柔軟に動かせる仕組みを取り入れ、新たな教育や学問分野をつくる」と説明する。


PS(2015年7月28日追加):*8-1に、「生徒は中学1年からいじめを受けていたとみられ、2年生になってもいじめに関して担任に相談していた」「生徒と担任間の『生活記録ノート』に『なぐられたり、けられたり、首しめられたり』と書かれている」「最近の欄で『ボクがいつ消えるかはわかりません』」などの自殺をほのめかす記載があり、いじめを受けていた生徒は担任に相談していたにもかかわらず、担任は生徒同士のトラブルと捉えて対応しなかったということだ。これでは、①いじめを行っている生徒への教育にならない ②周囲で黙って見ていた生徒たちの教育にもならない ③いじめを受けている生徒の人権や生命を護ることができない のだが、このようにうやむやにして放置することはよく行われているのではないだろうか?これでは、子どもを安心して学校に預けられず、学校での道徳教育も不十分だ。
 そして、そのように頼りない教育をしていれば、保護者から苦情が出るのは当然であり、*8-2の「教諭の7割以上が、保護者からの苦情対応に負担を感じている」という結果は真摯ではない。自信を持てる教育をしていれば、保護者から苦情があっても教育方針を説明して納得させることができるだろうし、そもそもクレームは、保護者が求める先生とのコミュニケーションであり、問題解決や改善の源である。また、「研修リポートの作成が負担」とした7割以上の教諭は、生徒に予習・復習を薦めたり宿題を出したりする資格はないだろう。何故なら、研修リポートの作成は、教諭自身の勉強に関する結果報告だからである。さらに、「国や教育委員会の調査対応」が9割近くで最も負担感が高かったそうだが、調査もせずに政策を決めれば机上の空論になるため、教諭であれば、必要十分な調査を行って自分たちで改善案を出せるくらいでなければ、生徒に指導することはできない筈だ。
 なお、「教諭の1日平均在校時間を調べると、小学校は11時間35分、中学校で12時間6分」だそうだが、学校の存在目的は、大人の楽な雇用を増やすことではなく、生徒に質の良い教育を行うことであるため、上のようなことを忙しさのせいにして省略することは許されない。むしろ、他の人ができることで教員の時間をとらないよう事務職を配置したり、余分な教諭を配置して新人の先生にはまず採点・ICT・雑用をやってもらうなど、他の良い解決方法を考えるべきだ。

    
   *8-2より  いじめについて    小中一貫校について   

*8-1:http://mainichi.jp/select/news/20150707k0000e040199000c.html
(毎日新聞 2015年7月7日) 岩手・中2死亡:いじめ自殺か 担任への提出ノートに記述
 岩手10+件県矢巾町で5日、同町の中学2年の男子生徒(13)が電車にひかれ死亡する事故があり、生徒が担任に提出していたノートに他の生徒からのいじめや自殺をほのめかす記述をしていたことが7日、分かった。同町教育委員会は、いじめによる自殺があったとみて調査を始めた。県警紫波署などによると、生徒は5日午後7時半ごろ、同町のJR東北線矢幅駅の線路上で、盛岡発一ノ関行き上り普通電車(4両編成)にひかれ、間もなく死亡した。生徒は線路に飛び込んだといい、自殺とみられる。町教委によると、生徒は中学1年からいじめを受けていたとみられ、2年生になってもいじめに関して担任に相談していたという。生徒と担任間の「生活記録ノート」には「なぐられたり、けられたり、首しめられたり」と書かれ、最近の欄で「ボクがいつ消えるかはわかりません」「ただ市(死)ぬ場所はきまってるんですけどね」などと、自殺をほのめかす記載があった。生徒の死亡を受け、学校は7日に全生徒を対象にアンケートを実施。夜に保護者会を開く。

*8-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11884643.html (朝日新聞 2015年7月28日) 保護者の苦情対応や研修報告書、先生の7割「負担」 文科省、公立小中調査
 公立小中学校の教職員は、どのような仕事に負担を感じているのか。文部科学省が初めて調べ、27日に発表した。教諭の7割以上が「保護者からの苦情対応」や「研修リポートの作成」をあげた。いずれも授業や生徒指導とは別の仕事だった。国際調査で、日本の中学教員の勤務時間が参加国で最長だったことを受けて実施した。全国の公立小中451校の11職種、計9848人を対象に、昨年11月時点の状況を尋ねた。教諭の1日の平均在校時間を調べると、小学校は11時間35分、中学校で12時間6分。その上で、業務を71に分けて負担に思うかを尋ねた。教諭のおおむね7割以上が従事する業務のうち、「負担」「どちらかと言えば負担」の合計が高かったのは「保護者や地域からの要望、苦情対応」など。負担感だけで見ると「国や教育委員会の調査対応」が9割近くで最も高かった。一方、昨年の国際調査で週7・7時間と参加国平均の3倍を上回った部活指導の負担感は、中学教諭でも48・5%と5割を切った。「負担だがやりがいがある」という答えが多かったという。授業や子どもと接する仕事は比較的負担感が低い項目が目立った。


PS(2015年7月28日追加):定住人口を増やすには雇用を増やすのが第一だが、ほかにも教育・保育をはじめ福祉を充実して家族の定住を誘致する方法がある。後者は、関東圏では既に著しい結果の出ている方法で、保育の待ち行列をなくすと移住が進み、再び待ち行列ができる状態だ。

*9:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/212662
(佐賀新聞 2015年7月28日) 5年で5千人を新規雇用 佐賀県版「総合戦略」
 佐賀県は27日、県版の地方創生の総合戦略案をまとめた。若者の県外流出を抑えるため、向こう5年間で5000人の新規雇用を創出するなど4つの基本目標を掲げている。パブリックコメントで8月21日まで意見を募り、9月定例県議会前までに県まち・ひと・しごと創生本部で決定する。関連法や県内人口の将来展望「県人口ビジョン」に基づき、具体的な施策と数値目標を定めた。既に策定した県の新総合計画が知事の任期に当たる4年間を目標にしているのに対し、2019年までの5年間の目標を設定している。基本目標に「安定した雇用を創出する」「本県への新しいひとの流れをつくる」「若い世代に結婚・出産・子育ての希望をかなえる」「時代に合った地域をつくる」の4本柱を据えた。5000人の新規雇用は、企業誘致による正社員雇用や就農などで目指す。また県外からの移住を促進し、県内大学への進学率を高めるなどして、人口の社会減(転出超過)の減少幅を19年時点で年間1500人に抑える。交流人口の増加につなげるため、5年間で総数1500万人の宿泊観光客数を狙う。自発的な地域づくりに対して学識者らを派遣する取り組みは年々拡大し、60地域を目標にする。合計特殊出生率の目標は1・77と明記したが、さが創生推進課は「強制できるものではなく、子どもを産み育てたいと思う環境づくりを進める中で、結果として年少人口の減少を抑えることにつながれば」と説明している。


PS(2015年7月30日追加):ドクターヘリは、衆議院議員時代に私の提案で始まり、現在は佐賀県はじめ全国で運用されるようになった。今後は、救急でなくても離島や山間部ではヘリを使ってドクターが移動してもよいと思うが、ものすごく高価なヘリであるにもかかわらず、*10のように、心肺蘇生中の医師の腰にドアノブが引っかかってドアが開くようでは、医師も患者も安心して乗れない(心肺停止中の患者も驚いて飛び起きそうだ)。そのため、自動車並みにヘリの安全性を高めて騒音や振動をなくし、ヘリの価格を安くすれば、このシステムは世界(特に過疎地や道路事情の悪い国)でもヒットすると考える。

*10:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10102/213102
(佐賀新聞 2015年7月29日) ドクターヘリ飛行中ドア開く 佐大病院、部品落下か
 佐賀大学は28日、医学部附属病院が運航するドクターヘリ内部の部品が飛行中、ドアが開いた際に落下した恐れがあると発表した。乗員や搬送中の患者らにけがはなく、落下物による事故などの被害報告は入っていないという。落下したのはポリエステル製の日よけ部品で、縦38センチ、横51センチ、重さ55グラム。大学によると、27日午後0時37分ごろ、患者を搬送するため多久市から小城市にかけて上空約300メートルを飛行していたところ、心肺蘇生中の男性医師の腰にドアノブが引っかかり、ドアが開いた。運航後の点検で日よけの部品がなくなっていることが分かった。佐賀大学は「県民や関係機関にご迷惑と心配をおかけして深くおわび申し上げます」とコメントした。


PS(2015年8月19日追加):*11のように、積極的に新聞を使って「読む」「書く」「話す」などの能力を高めるのはよいと思うが、高学年では「分析する」能力も高めた方がよいと考える。例えば、「太平洋戦争中に、新聞はどう報道したか?」「安保締結時は・・」「高度成長期は・・」「バブルについては・・」「原発事故は・・」「沖縄基地問題は・・」等、既に事実と比較して答えのあるものから、まだ答えの出ていないものまで、各社の論調を比較して真実を探ることで、人によって書かれた歴史や言葉を鵜呑みにせず、事実に基づいて自分の考えをまとめる習慣を身につけることが重要である。また、文字を読むのがやっとという低学年向けには、新聞社が文字は平易で内容の充実した「子ども新聞」をネット上に展開すればよく、池上彰さんの解説のように、内容が充実していてわかりやすければ大人でも読むだろう。

*11:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/220175
(佐賀新聞 2015年8月19日) 学校教育に新聞活用 佐賀市でセミナー 教師ら実践例学ぶ
◆記事切り抜きレイアウト ゲーム感覚で片仮名探し
 新聞を使った学校教育の実践例を学ぶ「新聞活用セミナー」(佐賀新聞社、県教委主催)が18日、佐賀市のアバンセであった。朝の読書の時間に新聞を読んだり、気に入った記事をテーマに人前でスピーチするなど、子どもの「読む」「書く」「話す」能力を高める工夫を紹介した。山内中(武雄市)の江口成子教諭は、グループで話し合い、興味を持った記事を切り抜いて自分たちでレイアウトを考えたり、タイトルやコメントを付ける「新聞コラージュ」の実践を発表。「生徒が予想以上に主体的に取り組み、『またやりたい』という声が上がった」と報告した。南波多小(伊万里市)の野中佐栄子教諭は、低学年で片仮名を習った直後に、新聞記事の中からいくつ片仮名を見つけられるかをゲーム感覚で競うなど、新聞に親しむ手がかりになる取り組みを紹介。「子どもが興味を持つ記事はさまざまで教師自身の発見にもつながる」と話した。佐賀新聞社の井手研一販売局長は「新聞は次期学習指導要領の目玉となるアクティブラーニング(能動的学習)に最適」として、「有明抄」の書き写しノートや記者・デスクの出前講座などの活用を呼び掛けた。セミナーには教職員約80人が参加した。

| 教育・研究開発::2014.8~2016.11 | 04:08 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.7.3 教育改革が、ゆとり教育や義務縮小の方向ばかりであったことが、国民が考える基盤となる知識の習得を阻害してきたので、それを直すべきだということ (2015年7月4日、7日に追加あり)
   
2013.10.25朝日新聞                  自民党勉強会での発言と各界の反応              

注)詳しく書くと自慢話になるので書きませんが、私はこういうことを書く資格があって書いています。

(1)公立校教育の充実がニーズであること
1)小中一貫校による義務教育の充実
 *1-1のように、小中学校の9年間の義務教育を一貫して行う小中一貫校を制度化する改正学校教育法が可決成立し、小中一貫校は義務教育学校として地域の実情に応じて学年の区切りを「4・3・2」「5・4」など柔軟に変更できることになったそうだ。学年の区切りは国で統一した方がよいと思うが、小中一貫校は公立校の教育を充実することができるという意味でよいことだ。そして、その義務教育校は、前倒し授業などの弾力的なカリキュラムを可能としている。これらは、既に一部の自治体が小中一貫教育を実施しているため、制度化することにより、小中一貫教育の浸透を図る狙いがあるそうだ。

 しかし、私は、幼稚園まで連結して、イギリスのように入学年齢を5歳もしくは4歳とし、現在よりも2~3年長く無償の義務教育を行って学力や体力の充実を図り、生産性の高い高度な労働をこなすことができる人材を多く輩出するのが、本人にとっても国にとってもプラスだと考える。そのため、小学校から中学校に進学して新しい世界が開けるのを嫌がる生徒の中1ギャップの解消のような後ろ向きの理由ではなく、小中一貫校による義務教育の充実が重要なのだ。

 佐賀県では、*1-3のように、山口知事が教育委員と「県総合教育会議」を開き、「教育大綱」案を示して、「①心身ともにたくましく、郷土を愛し、郷土に誇りを持つ県民の育成」「②知事と県教委が連携・協力して教育・生涯学習・文化・スポーツ振興に関する施策を総合的に推進」を示されたそうだが、私は、②はよいとしても、①の「郷土を愛し、郷土に誇りを持つ県民の育成」は、まず愛せる郷土や誇りを持てる郷土を作ることが重要で、改善するための批判や欠点の指摘を、「郷土を愛していない」「郷土を誇りに思っていない」ひいては「愛国心がない」「反日」などの無意味なレッテル貼りに使うのは、知識や経験に基づいて積極的に議論する教育の不足であるとともに、日本国憲法に定められた「思想・信条の自由」「言論の自由(メディアだけの権利ではない)」に反すると考える。

 委員からは、「学力は全国学力テストの平均点が取り上げられるが、心の教育など多面的観点で子どもたちを見ていくべき」などの意見が出たそうだが、佐賀県の場合は学力が全国平均以下であり、考えるツールとなる知識の獲得が不十分なのが最も重要な問題であるため、まず学力を伸ばすことが不可欠である。何故なら、人間の心は心臓にあるのではなく、主に脳にあり、遺伝子によって組み込まれた本能と出生後に学び体験して得た知識や経験を組み合わせて総合的に考えることにより、個々の判断を積み重ねているものだからである。

 なお、現在、いろいろな分野で劣化が進んでいるのは、学びが疎かになり、考えるためのツールである基礎知識と、それを使って自ら考える姿勢が欠けてきたからにほかならない。

2)高校の教育内容とその充実
 *1-2のように、歴史が進むにつれ日本史や世界史の分量が増えるのは当然であり、その上、その真実性を科学的に証明する手段も増えてきたため、歴史の内容や質は次第に上がる。また、50年前の高校の生物学の遺伝に関する理論は、メンデルの法則や人間のABO式血液型の遺伝くらいだったが、現在では、生物も物理・化学の法則に従って反応を行い、巧みな仕組みでエネルギーを得て繁殖し、驚異的に進化し続けて、地球環境と影響し合っていることを、かなり理論的に説明できるようになった。

 ここで必要な生物学の勉強は、言葉や化学反応を丸暗記することではなく、生命や生態系の仕組みを理解し、物理・化学・遺伝・進化・環境(経済を含む)に関する科学的知識で、それをバックアップすることである。文系でも、それらの基礎知識のない人が法律を作ったり、記者として報道したり、企業を経営したり、政策を作成したりすると、物事の重みや重要性の順序がわかっていないため、浅薄で間違った結果を導くことになる。

 そのために必要なのは、生徒にこれを教えられる先生の実力と生徒がそれを理解できる時間だ。「とにかく短時間でセンター試験のレベルまで成績を上げる」というだけでは、丸暗記を薦めることになり、生物を含む科学の魅力やダイナミックさを教えることができず、後で役立つ知識にはならないからだ。

 そもそも、世の中の事象は、文系と理系とか学科毎に分かれて発生するものではなく、それらの知識を総合的に使って解決すべきものばかりだ。そのため、私は、4~5歳から始まる小中一貫校で前倒ししながらゆっくりと知識を理解させ、総合学習で体験もさせながら、高校終了時には、文系であれ理系であれ、現在の文理の大学教養課程で勉強することの初歩くらいまでは理解させておくのがよいと考える。

3)フリースクールについて
 このような中、*1-4のように、義務教育の場を、フリースクールや家庭学習などの学校以外に広げる制度の創設に向けた動きが出てきたが、これは、「多様な教育機会確保」の名の下に、親の判断で学校に行かない子どもを増やす。これでは必要な基礎知識を習得できていない人が増え、労働者としての質が下がって雇用も確保できないため、結局は本人が不幸だ。また、国も補助金や生活保護ばかり出しているわけにはいかない。

 そこで、外国と比較して不登校の子どもが本当に著しく多いのであれば、日本の学校教育の内容もしくは教え方に問題があるということであるため、真の原因究明を行い、それを速やかに改善すべきだ。

(2)文科省の人文社会系学部規模縮小通知と大学の反論
1)文科省の人文社会系学部規模縮小通知
 *2-1、*2-2、*2-3のように、文科省は、全国の国立大学法人に対し、18歳人口の減少などを理由に、①教員養成系や人文社会科学系の学部・大学院の廃止や転換に取り組むことなどを求める通知を出し ②各大学法人の強みや特色を明確に打ち出して組織改革に取り組む大学には予算を重点配分する枠組みを盛り込み ③司法試験合格率が低迷する法科大学院には廃止や他の大学院との連合など抜本的見直しを求め ④地域貢献、全国的な教育研究、世界的な卓越教育研究のいずれかを選んで機能強化を進める大学には、運営費交付金を重点配分するとしたそうだ。

 しかし、国立大学で教員養成系の廃止や転換を行い、これを私立大学に任せることは薦められない。何故なら、私立大学は入試科目が少なく、文理双方の深い知識を持って生徒に学問の魅力を教えられる教員を育てることができないからだ。

 また、人文社会科学系の学部・大学院も、大学によって社会への貢献度が異なるため、文科省の画一的な指導は当たらない。そもそも、社会への貢献度は、就職や卒業生の人生をフォローして調査することから始めるべきである。

2)これに対する大学の意見
 小林東大大学総合教育研究センター教授は、*2-2のように、「これまで大学は無駄が許容されてきた。今後は社会の需要に応えるのも大事だが、すぐ成果が出ない、就職率が悪いとの理由で切り捨ててよいか。大学は広い意味の教養を身につける場なのに、工学や経営学などの実学が増え、学問の幅が狭まる懸念もある。個々に状況が異なる大学が自主的に判断するべきだ」としている。

 しかし、成果が出なかったり、就職率が悪かったりするのは、就職先が必要としない人材を作っているせいかもしれず、「大学には無駄が許容されてきた」ということを前面に立てるのは甘えである。ただし、本当に許容されるべき無駄もあり、それは、先進的な研究だが実現できなかったものや社会の基礎知識となるようなものであるため、大学が自ら調査して自主的に変更すべきだ。

 なお、京都大の山極総長は、*3-1のように、「幅広い教養と専門知識を備えた人材を育てるためには人文社会系を失ってはならない。国旗掲揚・国歌斉唱なども含め、大学の自治と学問の自由を守ることを前提に考える」としている。

 さらに、*3-2のように、佐和滋賀大学長は、「『想定内』の通知がいよいよ来たと思うにすぎなかった」「理系の研究は技術革新や産業振興を通じて国益に寄与するが、文系の研究は役に立たない」「1.1兆円の運営費交付金の効率的配分からすれば、文系学部の学生定員・教員数を減らして浮くお金を理系の研究に回すべきだ」「欧州では人文社会系の学識が指導者にとって必須の素養と目されている」「滋賀大は未来志向と文理融合を改革の理念に掲げている」「ジョブズは、『人々の心を高鳴らせる製品を創るには、技術だけでは駄目で、必要なのは人文知と融合された技術だ』と述べている」としている。

 また、*3-3のように、里見国立大学協会長(東北大学長)は、教育学部や人文社会系学部の見直しを求めた文科省通知を批判し、同席した副会長も、「理工系単科大学でも、歴史や社会を知らない学生は困る」(大西隆・豊橋技術科学大学長)、「実学系学部の学生も人文社会学系を副専攻にできる仕組みにしている。多様性が重要」(高橋姿・新潟大学長)と訴えたそうだ。

 私は、基礎知識としてならば、理工系も歴史や社会は高校終了までに勉強しておくべきであるし、文化系も数学・統計学・生物学などは高校終了までに理解しておくことが必要であり、教員は、それを体系的でわかりやすく、かつ魅力的に教えられる人というのが条件になると考えている。

(3)基礎知識不足の事例
 *4-1のように、自民党国会議員が文化人や芸術家との意見交換を通じて「心を打つ『政策芸術』を立案し、実行する知恵と力を習得すること」が目的の勉強会を開いたとのことである。人の心を打ち、受け入れられる政策とは、①正確な現状調査によって作られ ②誰の人権も侵害せず ③現状を改善して国民の福利を増すものであって、芸術ではないため、勉強会にこういう命名をすること自体、教養や政策作成能力がないと考えられる。しかし、このように考える人は政治家だけではなく一般にも多く、これが、知識がなければ思考が浅薄になり、何もできない事例の一つだ。

 しかし、首相側近の加藤勝信官房副長官(東大法学部卒、大蔵省出身)や萩生田光一党総裁特別補佐(明大卒、市議出身)も会合に出席しており、講師として招いたのは放送作家の百田尚樹氏(同志社大法学部卒)で、全員が文系だが、本来は高校終了までに理解しておくべき日本史・世界史の知識に欠けていたと思われる。

 なお、出席者が、会合での数々の暴言をたしなめなかったのは、多かれ少なかれ同じ意見を持っている人が多かったからで、ここで私のように異論を唱えると、「空気が読めない(異論を封じる態度)」「左翼(言論を封じるための意味のないレッテル貼り)」など、週刊文春の名誉棄損事件としてこのブログに記載しているように、メディアから民主主義における議論の重要性を理解しない変な批判をされる可能性が高いため、これも教育の問題である。ちなみに、自民党内は、内部での議論や発言は自由だ。

 「マスコミをこらしめるには広告料収入がなくなることが一番。文化人は経団連に働きかけて」と言ったのは大西衆院議員(国学院大卒、東京都議出身)であり、「沖縄の世論はゆがみ、左翼勢力に完全に乗っ取られている」と言ったのは長尾衆院議員(立命館大卒、明治生命出身)だそうだ。また、井上衆院議員(独協大法学部卒、福岡青年会議所理事長出身)は「沖縄のいびつなマスコミ、後押しする左翼勢力、バックにある中国共産党の工作員の存在」「沖縄メディアは基地反対運動の反社会的行為を報じていない」などとし、この中には法学部出身者が多く、全員が文系であるにもかかわらず、日本国憲法の主権在民、言論・表現の自由、民主主義を理解も実践もしておらず、日本史・世界史の知識も疑われる発言であるのは、文系教育(もしくは法学部教育)の欠陥ではないだろうか。

 そのほかには、*4-2のように、東電福島第1原発海側のトレンチ(地下道)に滞留する汚染水を遮断するために「氷の壁」を作ることが可能だと考えた問題もある。まして、氷やドライアイスを投入すれば凍るかも知れないと原子力規制委員会に属する理系の技術者までが考え、熱交換の基礎知識もなかったというのには驚く。都会で育って公園の噴水くらいしか見たことのない人が、地下水の流量を想像すらできずに、権力さえあれば自然現象も変えられると考えたのか、何故、このような馬鹿な方法をとったのかという原因を明らかにして、そのために使った税金も正確に計算すべきだ。

 つまり、問題解決には、自然に関する暗黙知や総合的な知識が必要であり、そのためには、地方の生徒がもっと勉強して、地方の公立高校から東大に入れる人が増える必要があるのだが、佐賀県は、全県あわせても、東京の女子学院一校分も東大に合格できていないのだから(http://www.inter-edu.com/univ/2015/schools/59/jisseki/ 参照)、これ以上のんびりしてよい状況ではないだろう。

<小中高について>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150617&ng=DGKKASDG17H0O_X10C15A6CR0000 (日経新聞 2015.6.17) 
小中の区切り柔軟に、改正法成立、義務教育の一貫校制度化
 小学校と中学校の9年間の義務教育を一貫して行う小中一貫校を制度化する改正学校教育法が17日、参院本会議で可決、成立した。小中学校と同じく、同法第1条で学校に位置付け、名称は「義務教育学校」とする。2016年4月から施行する。義務教育学校は地域の実情に応じ、学年の区切りを「4・3・2」「5.4」など、柔軟に変更できる。学習指導要領で定めた学年の範囲を超えて、前倒しで授業をするには特例申請が必要だが、文部科学省は省令を改正して、義務教育学校については申請を不要にし、弾力的なカリキュラムを可能とする方針。校長は1人で、教員は原則として小中両方の免許が必要。校舎は離れていても、一体でも設置できる。従来の「6.3」制は、中学校に進学した際にいじめや不登校が増える「中1ギャップ」や、子供の発達の早期化で、現状の学年の区切りでは対応できていない点などが課題に挙げられていた。これらの課題解決や、学力の向上などのために、一部の自治体が既に小中一貫教育を実施しており、制度化で一貫教育の浸透を図る狙いがある。小中一貫校の制度化は、政府の教育再生実行会議が提言し、昨年12月に中教審が答申していた。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150622&ng=DGKKZO88343990R20C15A6CK8000 (日経新聞 2015.6.22) 重み増す理科基礎科目 早まる受験対策、高1から
 3学期制の高等学校では5月中旬頃に1学期の中間テストを行う。1年生にとっては、高校で初めてのテストということもあり、不安を抱えつつ準備をすることになる。窓口に、「すみません、学校の勉強のことなんですけど質問していいですか?」とやって来る1年生も少なくない。中でも、今年よく目にしたのが理科の質問をする生徒だった。1年では、生物基礎・化学基礎を履修する高校が多いのだが、「基礎」とついていても、決して易しいわけではない。特に生物基礎は、中学での学習との差が激しく、生徒たちはかなり難しく感じるようである。生物の担当講師は、「例えば、中学校では、『呼吸』は酸素を吸って有機物を燃やし、エネルギーを取り出して二酸化炭素を出すと習うけれど、生物基礎ではアデノシン三リン酸(ATP)やクエン酸回路といったことまで学ぶ。単に言葉として習っていたものが化学反応としてとらえなくてはならなくなり、きっと頭の中は混乱しちゃうでしょうね」という。2015年度の大学入試センター試験からは、文系志望であっても基本的に理科の基礎科目を2科目受験しなくてはいけなくなったので、理科の基礎科目は入試に直結する科目でもある。学校で学んだときに、センターレベルまでもっていければ理想なので、ここできちんと理解しておきたいと生徒たちが思うのも当然である。もちろん、理系志望者にとっては、その先にある専門科目を盤石なものにするために大切な科目でもある。私の塾では、今まで高1の講座は英語・数学・国語のみで、理科と社会の講座は高2から始めていた。しかし現状を考えると、高1の段階で、理科の基礎科目をある程度固めてしまいたいというニーズが確かにある。そこで、今年の夏休みから理科の基礎科目の講習を開くことにした。文系・理系を問わず、この講座が2年後の入試に向けて有益なものとなってくれるとよいのだが。

*1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/193905
(佐賀新聞 2015年6月4日) 知事、県総合会議に提示 「教育大綱」案を了承
 佐賀県の山口祥義知事は3日、教育委員との協議の場「県総合教育会議」を開き、教育行政の基本方針となる「教育大綱」案を示した。6月議会で議決される新総合計画の教育関連部分を抜き取って構成した。古谷宏教育長や教育委員5人と意見交換し、おおむね了承された。山口知事が7月下旬にも策定する。大綱は4月施行の改正地方教育行政法で首長に策定が義務付けられた。会議の冒頭、山口知事は「改正法の精神に基づき、政治的中立性を守りながら話し合いを進めたい」と述べた。大綱案は「教育」「子育て」「生涯学習」「文化・スポーツ」の4分野、15の基本施策で構成している。策定趣旨に「心身ともにたくましく、郷土を愛し、郷土に誇りを持った県民の育成」を掲げ、「知事と県教委が連携、協力して教育、生涯学習、文化・スポーツの振興に関する施策を総合的に推進していく」と明記した。期間は2018年度までの4年間とし、社会情勢の変化に合わせて適宜、見直していく。委員からは「佐賀らしさを感じながら進める教育について記載されており、評価できる」「学力は全国学力テストの平均点が取り上げられるが、心の教育など多面的観点で子どもたちを見ていくべき」などの意見が出た。山口知事は、競技性を重視した学校部活動の在り方に疑問を呈し、「教育現場には『こういうもんだ』という考えが多いが、それが本当に正しいのか、結論が出なくても教委で議論すれば、いろんな影響を与えられると思う」と語った。

*1-4:http://qbiz.jp/article/64071/1/
(西日本新聞 2015年6月9日) 義務教育を多様化 フリースクール認定法案提出へ
 義務教育の場を、フリースクールや家庭学習など学校以外にも広げる制度の創設に向けた動きが出てきた。超党派の議員連盟が、法案を今国会に提出する方針を決めた。実現すれば、日本の教育制度の大転換となる。不登校の子どもたちにとって「多様な学びの機会が認められる」と歓迎する声が上がる。一方で、教育の質をどう保証するのかなど課題も多い。不登校の小中学生は1997年度に10万人を超えてから増加傾向が続いており、2013年度は約12万人に上る。受け皿になっているフリースクールは全国に推計で400カ所余り。計約2千人が学んでいるとされ、全体の7割程度は不登校の子どもたちが占めているとみられる。子どもたちは居住区域の公立小中学校に籍を置きながら、活動内容を随時、学校側に報告。実際に登校していなくても、校長の裁量によって卒業が認められている。超党派の議連が今国会に提出予定の「多様な教育機会確保法案」(仮称)は、対象を不登校の子どもに限定。法案の概要によると、保護者が学校などの助言を受けて「個別学習計画」を作成し市町村の教育委員会に申請。計画が認定され、計画を修了したと認められれば、フリースクールや家庭内での学習でも、義務教育とみなされるようになる。法案に期待を寄せる関係者は多い。NPO法人「フリースクール全国ネットワーク」の江川和弥代表理事は「学校に行かないことで家族に責められたり、学校の先生との間であつれきが生じたりすることは少なくなるのではないか。小中学校以外での学習が公に認められることで、フリースクールにも通っていない不登校の子どもたちが表に出るきっかけにもなる」と強調する。公立小中学校の授業料が無料なのに対し、フリースクールは安いところで2万〜3万円、高いところでは7万〜8万円の月謝がかかる。法案には「国や自治体は必要な財政上の支援に努める」と記す予定で、経済的に通うことが困難な家庭にとっても助かる。義務教育制度に一石を投じる法案だが、課題を指摘する声も多い。フリースクールといっても現行では千差万別。数十年の歴史を持ち、100人を超える子どもたちが学ぶところもあれば、個人が数人規模で開いているところもある。質や教育の内容にばらつきがあり、埼玉大の高橋哲(さとし)准教授(教育行政学)は「学校にもフリースクールにも籍を置く『二重学籍』が解消されるのは画期的」としつつも、「教員免許の所持を教える条件にしたり、1人当たりの教えられる子どもの数を定めるなど、一定の学習環境を整備する必要はある」と話す。共栄大の藤田英典教授(教育社会学)は「少子化が進む中で、塾産業は学校教育への参入を狙っている。もともと学習指導要領の枠をはずれているフリースクールに、不登校の支援とは別の意味で塾産業が入り込んでくる恐れがあり、非常に危険」と懸念する。議連は今国会での法案成立を目指し、早ければ17年度から制度をスタートさせたい考えだ。高橋准教授は「不登校を生み出している現在の学校の状況をまず改善するべきだ」とする。「画一的な学習指導要領に拘束されるのではなく、多様な教育が認められるようにしないといけない。一人一人に目が届くよう、1クラス当たりの子どもの数を減らしたり、教師を増やすといった、根本的な施策が必要だろう」
●「社会性獲得に配慮を」福岡県内の関係者
 福岡県内のフリースクール関係者からも期待と懸念の声が聞かれた。NPO法人「青少年教育支援センター」(福岡県久留米市)の古賀勝彦理事長(67)は「学びの場として公的に認められ、フリースクールに通う子どもと保護者の安心につながる」と評価。その上で「教科学習のほか農業体験など自由活動のような教育環境も整えているか、義務教育と認める基準を明確にする必要がある」と注文する。卒業生約200人を送り出したNPO法人「フリースクール玄海」(福岡市東区)の嶋田聡代表(62)は「不登校生は、学校でテストを受けないことで内申の評価が下がり進学で不利になる場合がある。今後、フリースクールでの成績が評価の対象になれば進路の選択肢が増えることになる」と期待。一方で「フリースクールを学校に通えるようになるためのステップとして捉える考えもある。学校や本人が『通学しなくても良い』と受け止めてしまうと社会性を身に付ける機会を失いかねない」と懸念した。 

<文科省の人文社会系学部規模縮小通知>
*2-1:http://www.sankei.com/life/news/150528/lif1505280016-n1.html
(産経新聞 2015.5.28) 国立大学の人文系学部・大学院、規模縮小へ転換 文科省が素案提示
 文部科学省は27日、全国の国立大学に対して人文社会科学や教員養成の学部・大学院の規模縮小や統廃合などを要請する通知素案を示した。理系強化に重点を置いた政府の成長戦略に沿った学部・大学院の再編を促し、国立大の機能強化を図るのが狙いで、6月上旬に文科相名で大学側へ通知する。素案は、同日開かれた国立大の評価手法などを審議する有識者会議で提示された。国立大は6年ごとに中期目標を文科省に提出しなければならず、各大学は通知を参考に6月末に中期目標を文科省へ提出する。通知素案では、少子化による18歳人口の減少などを背景として、教員養成や人文社会科学などの学部・大学院について「組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むように努めることとする」と明記された。政府の試算では、平成3年に207万人だった18歳人口が42年に101万人まで半減する。文科省は少子化に伴う定員縮小の影響を指摘したほか、文系の学部・大学院の人材育成方針が明確でないなどの理由もあげた。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11798186.html
(朝日新聞 2015年6月9日) 「国立大、文系見直しを」 ニーズ踏まえ廃止・転換促す 文科省通知
 国立大は2004年度以降、6年ごとに「中期目標」を文科省に提出する義務がある。6月末が16年度からの目標案の提出期限で、認可を受けるには目標が通知に沿っている必要がある。通知は「特に教員養成系や人文社会科学系学部・大学院は、組織の廃止や社会的要請の高い分野に転換する」ことを求めた。例えば、人文社会系の卒業生の多くがサラリーマンになるという実績を踏まえ、大学は地元で必要とされている職種を把握。需要にあった人材を育てる学部に転換するなどといった想定だ。文科省によると、自然科学系は国益に直接つながる技術革新や産業振興に寄与しているが、人文社会系は成果が見えにくいという。国立大への国の補助金は計1・1兆円以上。財政事情が悪化する中、大学には「見返り」の大きい分野に力を入れさせるという考えだ。文科省担当者は「文系を減らして理系を増やすという意味ではない」。別の文系学部への転換も可能だからだ。成果が出にくい分野も、将来の成果を示せれば評価をするという。
■学問の幅、狭まる懸念
 小林雅之・東大大学総合教育研究センター教授(教育社会学)の話 これまで大学は無駄が許容されてきた側面がある。今後は社会の需要に応えるのも大事だ。ただ、すぐ成果が出ない、就職率が悪いとの理由で切り捨ててよいか。大学は広い意味の教養を身につける場なのに、工学や経営学など実学が増え、学問の幅が狭まる懸念もある。個々に状況が異なる大学が自主的に判断するべきだ。

*2-3:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG08HCT_Y5A600C1CR8000/
(日経新聞 2015/6/8) 教員養成系など学部廃止を要請 文科相、国立大に
 下村博文文部科学相は8日、全国の国立大学法人に対し、第3期中期目標・中期計画(2016~21年度)の策定にあたって教員養成系や人文社会科学系の学部・大学院の廃止や転換に取り組むことなどを求める通知を出した。通知では、各法人の強みや特色を明確に打ち出すよう求め、組織改革に積極的に取り組む大学には予算を重点配分する枠組みも盛り込んだ。教員養成系と人文社会科学系については、18歳人口の減少などを理由に、組織の廃止、社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう要請。司法試験合格率が低迷する法科大学院についても、廃止や他の大学院との連合など「抜本的な見直し」を求めた。(1)地域貢献(2)世界・全国的な教育研究(3)世界的な卓越教育研究――のいずれかの枠組みを選んで機能強化を進める大学には、運営費交付金を重点配分するとした。国立大学法人は6年ごとに中期目標・中期計画を掲げており、16年春からが3期目。各法人は通知を踏まえて目標・計画を策定し、15年度中に文科相が認可する。

<大学の反論>
*3-1:http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20150617000174 (京都新聞 2015年6月17日) 人文社会系学部「京大には重要」 山極総長、文科省通達に反論
 文部科学省が国立大学に人文社会系の学部や大学院の組織見直しを通達したことについて、京都大の山極寿一総長は17日、「京大にとって人文社会系は重要だ」と述べ、廃止や規模縮小には否定的な考えを示した。通達は2016年度から始まる国立大学の中期目標の策定に関する内容で8日に送られた。教員養成系や人文社会系の学部・大学院について、18歳人口の減少や人材需要などを踏まえ、「組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めること」としている。山極総長は「幅広い教養と専門知識を備えた人材を育てるためには人文社会系を失ってはならない。(下村博文文科相が要請した)国旗掲揚と国歌斉唱なども含め、大学の自治と学問の自由を守ることを前提に考える」と説明した。

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150622&ng=DGKKZO88343910R20C15A6CK8000 (日経新聞 2015.6.22) 国立大 文科省通知の波紋(上)人文知、民主主義支える、佐和隆光・滋賀大学長
 国立大学に教員養成系や人文社会系の学部・大学院の廃止や改組を求めた文部科学省の通知が波紋を広げている。大学関係者の受け止めを2回にわたって掲載する。初回は通知に異論を唱える一方、改革を進める佐和隆光・滋賀大学長。去る6月8日、全国86の国立大学法人に対し、文部科学省は「教員養成系学部や人文社会系学部・大学院を、組織の廃止や社会的要請の高い分野に転換する」ことを求めるべく通知した。
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 昨今の文部科学行政は産業競争力会議の意向がほぼ完璧に反映されており、こうした通知が出たからといって驚くに値しない。教育学部と経済学部から成る一地方大学の学長を務める私にとっては、「想定内」の公式通知がいよいよ来たかと思うにすぎなかった。理系の研究は技術革新や産業振興を通じて国益に寄与するが、文系の研究は役に立たない。1.1兆円の運営費交付金(国税が原資)の効率的配分という観点からすれば、文系学部の学生定員・教員数を減らして浮くお金を理系の研究に回すべきである――。議長の安倍晋三首相ほか閣僚8人、企業経営者7人、大学教授2人(工学と経済学)から成る産業競争力会議が、このように考えるのは、ある意味、至極もっともなこととうなずける。そういえば、全く同じようなことを半世紀余り前に聞いたことがある。1960年3月、岸信介内閣の松田竹千代文部相(当時)が「国立大学の法文系学部は全廃して理工系を中心とし、法文系の教育は私立大学に任せるべきだ」と言ってのけた。60年安保闘争に参加した大学生の多くが国立大法文系学部生だったことと、理工系振興への経済界からの熱い要望が、大臣発言の背後にあったのだ。同年12月、池田勇人内閣は「所得倍増計画」を公表し、「今後10年間で国民所得を倍増するために、理工系学部に重点的に資金配分する」との施策を打ち出した。ソニーの創業者井深大氏は「これからは国会議員の大半を理工系学部出身者が占めるようになるだろう」と語り、理工系全盛期の到来を予言した。残念ながら、井深氏の予言は当たらなかった。今もって国会議員の大半は文系出身、理系出身者が中央官庁の事務次官に就任する例は極めて少ない。皮肉なことに井深氏の予言が的中したのは、旧ソ連や中国においてのことだった。旧ソ連共産党書記長(ゴルバチョフを除く)、そして中国国家主席は、代々工学部出身者である。なぜ井深氏の予言は日本で的中しなかったのだろうか。答えは簡単で、日本は民主主義国家だからである。自由主義・民主主義の本家本元、欧米先進諸国においては、文系学科の存在感は極めて大きい。とりわけ欧州では人文社会系の学識が指導者にとって必須の素養と目されている。日本の経営者が見れば「役立たず」の典型である歴史学科出身の官僚・政治家が少なくない。昨今、文科省が唱える「思考力・判断力・表現力」を養うには人文社会系の学識が不可欠なのだ。民主主義国家では、企業であれ官庁であれ、旺盛な批判精神を有する人材を求める。人文社会系の学識なくして批判精神なしなのだ。ゆえに全体主義国家は必ずや人文社会知を排斥するし、人文社会知を軽視する国家はおのずから全体主義国家に成り果てる。
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 安倍政権が目指す「日本の10大学を世界のトップ100以内に」を達成するには、人文社会系の研究振興が欠かせない。ランキング上位にいる英米の大学は、人文社会系の分野で高得点を稼いでいる。人文社会系に特化するロンドン経済政治学院の順位は34位。23位の東京大学には及ばずとも59位の京都大学をはるかにしのぐ。世界大学ランキング3位のオックスフォード大学では、学士課程学生の過半が人文系を専攻している。英国の司法、行政、政治、経済の分野で指導者になるには、人文社会知が必須であることを示して余りある。同時に、人文社会系分野での研究者の層の厚さゆえに、同大は世界3位にランクされるのだ。ランキング1位のカリフォルニア工科大、6位のマサチューセッツ工科大には、人文社会系学科が盛りだくさんあり、研究水準は超一流であることをも付記しておこう。このたびの文科省通知は想定内だったと先に書いたが、人文社会系の2学部から成る滋賀大学が何もせずに手をこまねいていたのでは、既存の資源(学生定員と人件費)を削り取られることは必至と見てよい。滋賀大学という一地方大学の学長としての私は、文科省通知にある「社会的要請の高い分野」とは何なのかにつき思いを巡らせ、たどり着いたのが「ビッグデータ時代の人材養成」を目指すデータサイエンス学部の創設(2017年度予定)だった。滋賀大は未来志向と文理融合を改革の理念に掲げている。ビッグデータの大半は広義の社会データであり、人文社会系の学識とデータ解析能力を「融合」した人材養成が産業振興のために不可欠なことを、産業競争力会議員の諸兄姉によろしくご理解いただきたい。こうした取り組みは、滋賀大学だけではない。文科省通知を先取りする格好で、多くの地方大学が人文社会系の学識を生かした資源の再配分、すなわち新学部の創設を競っているのである。スティーブ・ジョブズの名言で本稿をしめくくろう。11年3月、iPad2の発表会でジョブズは、こう語って多くの聴衆を魅了した。「人々の心を高鳴らせる製品を創るには、技術だけでは駄目なんだ。必要なのは人文知と融合された技術なのだよ」

*3-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150622&ng=DGKKZO88344020R20C15A6CK8000 (日経新聞 2015.6.22) 「社会に役立つ」性急すぎる要求
 「大学は社会に役に立つ人材を送り出す必要があるが、最近は近視眼的で性急な要求も多い。もっと温かい目で見てほしい」。15日、里見進・国立大学協会長(東北大学長)は記者会見で、教育学部や人文社会系学部の見直しを求めた文科省通知を批判した。同席した副会長も「理工系単科大学でも、歴史や社会を知らない学生は困る」(大西隆・豊橋技術科学大学長)、「実学系学部の学生も人文社会学系を副専攻にできる仕組みにしている。多様性が重要」(高橋姿・新潟大学長)などと訴えた。一方で、文科省の“威光”をバックに、遅れがちの改革を進める動きも出ている。

<基礎知識不足の事例>
*4-1:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/203186
(佐賀新聞 2015年7月1日) 自民「報道圧力」問題
◆言論の府預かる資質ない
 安倍晋三首相に近い自民党若手国会議員の勉強会で、報道機関へ圧力をかけて言論封殺を探ろうとする発言が相次いだ。安全保障関連法案への理解が広がらない焦りやいらだちが、報道機関への八つ当たりという形で噴出した。言論の府を預かる国会議員として不見識極まりない発言で、稚拙というほかない。勉強会は、文化人や芸術家との意見交換を通じて「心を打つ『政策芸術』を立案し、実行する知恵と力を習得すること」が目的らしい。9月の総裁選で再選を目指す首相の「応援団」的な位置づけで、首相側近の加藤勝信官房副長官や萩生田光一党総裁特別補佐も初回会合には出席していた。非公式の勉強会とはいえ、あまりにお粗末な運営だった。講師として招いた作家の百田尚樹氏は、これまでもさまざまな舌禍を起こしてきた人物だ。政権が心血を注ぐ安保法制の国会審議に影響を及ぼす発言が出るかもしれないと想像力を働かせることはできなかったのか。各議員は報道機関が取材に来ているのを認識していたなら、非公開の場であっても発言が外に出ると自覚すべきだった。与党国会議員の勉強会が「居酒屋での愚痴」レベルの発言に終始したのは笑い話にもならず、その議員に一票を投じた有権者の方が恥ずかしくなる。何よりも会合での数々の暴言をたしなめる言動がなかったことにあきれる。「マスコミをこらしめるには広告料収入がなくなることが一番。文化人は経団連に働きかけて」と言論統制容認をうかがわせる発言をした当人はもちろん、同席議員も国会議員の資質はない。日本国憲法を一から勉強し直し、言論・表現の自由と民主主義の基本認識を深めることを求めたい。さらに「沖縄の特殊なメディア構造をつくってしまったのは戦後保守の堕落。左翼勢力に完全に乗っ取られている」との発言は、見当違いも甚だしい。29日付の本紙に掲載された沖縄タイムス、琉球新報の寄稿を読んでほしい。「県民に判断能力がないと見下すに等しい暴論だ。そんなおごりがあったなら、沖縄の新聞はとっくに県民に葬り去られていた」(琉球新報)との反論は、県民の民意に寄り添う報道姿勢を貫いてきた自負にほかならない。加えて百田氏の発言は、沖縄県民への侮辱以外の何ものでもない。「米軍普天間飛行場は田んぼの中にあった。まわりに行けば商売になると人が住みだした」は全くの事実誤認である。2地元紙が訂正などを求める抗議声明を出したほか、沖縄選出の国会議員や宜野湾市議会も発言の撤回と謝罪を求める声明や決議を出した。百田氏は真摯(しんし)に対応すべきだろう。近年、自民党による「報道への圧力」と取られかねない動きが目につく。昨年11月の衆院解散前にテレビ局に公正報道を求める文書を出したほか、今年4月には番組出演者が「政権の圧力」に言及したテレビ朝日と、やらせ疑惑が浮上したNHKの幹部を呼び、事情を聴取した。圧倒的な勢力を背景に「1強」のおごりが組織内に充満していないか。党はもちろん、政府も内部を顧みて姿勢を正すべきだ。

*4-2:http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140814/dst14081408090001-n2.htm
(産経ニュース 2014.8.14) 福島第1、凍らない「氷の壁」断念か 別工法も 19日に規制委が検討
 東京電力福島第1原発海側のトレンチ(地下道)に滞留する汚染水を遮断するための「氷の壁」が3カ月以上たっても凍らない問題で、7月末から投入している氷やドライアイスに効果が見られないことから、政府が「氷の壁」の断念を検討し、別の工法を探り始めたことが13日、分かった。政府関係者によると、19日に原子力規制委員会による検討会が開かれ、凍結方法の継続の可否について決めるという。氷の壁は、2号機タービン建屋から海側のトレンチへ流れ込む汚染水をせき止めるため、接合部にセメント袋を並べ、凍結管を通し周囲の水を凍らせる工法。4月末から凍結管に冷媒を流し始めたものの、水温が高くて凍らず、7月30日から氷の投入を始めた。しかし氷を1日15トン投入しても効果がなく、今月7日からは最大27トンに増やしたが、凍結が見られなかった。12日までに投じた氷は計約250トンに上る。ドライアイスも7日に1トン投じたものの、小さい配管に詰まってしまい投入を見合わせ、12日に再開した。氷の壁が凍結しないことは、規制委の検討会でも有識者から指摘されており、「コンクリートを流し込んでトレンチを充(じゅう)填(てん)すべきだ」との意見があった。政府関係者によると、19日に予定されている検討会では、氷投入の効果を評価した上で、効果がないと判断されれば代替工法の作業に着手するという。規制委は、トレンチにたまっている汚染水が海洋に流れ出す恐れがあることから「最大のリスク」と位置付けており、早期解決を目指している。特に凍結管の中に冷媒を通して水分を凍らせる技術は、1~4号機周囲の土中の水分を凍らせる「凍土遮水壁」と同じで、氷の壁が凍土壁にも影響しないか懸念を示している。氷やドライアイスの投入について、東電の白井功原子力・立地本部長代理は「十分な検討が不足していたという批判はその通り。失敗を次の糧にしていく。当初予定していたことができないことはあり得る」と話している。


PS(2015年7月4日追加):*5-1で、沖縄県の市民が、「県民を愚弄する精神が底流にある」と怒っているのは、“自民党若手議員”の発言の根底に、「自分たちの考えが正しく、沖縄県の市民の意見が歪んでおり、歪んでいる理由は沖縄二誌にある」という上から目線の考え方があり、失礼だからだ。そのため、*5-2で、菅官房長官の沖縄知事への「ご迷惑を掛けて申し訳ない」という謝り方は、誰にどういう“迷惑”をかけたのか不明であり、謝るべきポイントが違っていると考える。翁長沖縄県知事は大変だと思うが、へこたれずに頑張ってほしい。 女性

*5-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/204669
(佐賀新聞 2015年7月4日) 報道圧力に450人抗議、沖縄、首相に謝罪要求
 自民党若手議員の勉強会で報道機関に圧力をかけるような発言が出た問題を受け、沖縄県の市民団体などが4日、抗議の集会を那覇市で開いた。約450人(主催者発表)が参加。「報道・言論の自由を脅かし、民主主義の根幹をも揺るがす。県民を愚弄する精神が底流にある」と非難し、自民党の安倍晋三総裁(首相)にあらためて謝罪を求める決議文を採択した。「言論・表現・報道の自由を守る沖縄県民集会」と銘打ち、市民団体のほか翁長雄志知事を支持する県議が呼び掛けた。

*5-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/204685
(佐賀新聞 2015年7月4日) 菅官房長官が沖縄知事に陳謝、自民勉強会発言で、対話は継続
 菅義偉官房長官は4日夜、沖縄県の翁長雄志知事と東京都内のホテルで会談した。菅氏は6月25日の自民党若手議員の勉強会での沖縄をめぐる発言について「ご迷惑を掛けて申し訳ない」と陳謝した。両氏は今後の対話継続で一致した。翁長氏が会談後、明らかにした。会談は、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐる国と県の対立激化を回避する狙いから行われた。この日は、移設問題は話題にならなかった。次回以降で取り上げるとみられる。翁長氏は菅氏の陳謝について「よかった」と語った。「これから何回かにわたる話し合いのベースにする。次回以降は厳しくなる」とも述べた。


PS(2015年7月7日追加):*6は、すべての市町で質が高くて十分な学童保育ができるというのが条件であるため、場所によっては国や県のアドバイスと補助が重要だろう。私は、学童保育の担い手は、定年退職した教員や未採用の若い資格のある人に報酬を払って中心になってもらい、預かった子どもに予習・復習をさせるとともに、地域のプロにも協力してもらって、植林や畑での作物栽培、鳥の巣箱の作成と設置(木材を使った工作と生態系の理解目的)、魚とり、遠足、料理、地場産業(焼物・織物・染色等々)の作品作成、サッカーなど、家庭ではできない教育に役立つ遊びを体験させるのがよいと考える。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/205281
(佐賀新聞 2015年7月7日) 佐賀県、学童保育センター廃止 利用急増「過渡期」不安も
■「子育てし大県」どうなる 「市町主体で運営できる」
 佐賀県は、放課後児童クラブ(学童保育)の質を向上させる目的で6年前から実施してきた「学童保育支援センター事業」を廃止した。県は「市町がノウハウを蓄積し、主体的に運営できるようになったため」と説明する。ただ、「子育てし大県“さが”プロジェクト」を掲げる中での廃止に、市町の担当者や指導員からは「利用する子どもが急増している学童保育の運営は過渡期」と残念がる声が上がり、今後への不安も漏れている。学童保育支援センターは学童保育の充実を目的に2009年度、県内4カ所でスタートした。子どもに直接関わる指導員や保護者、市町からの相談は、最も多い年で1700件を超えた。指導員を対象にした研修会は年間約50回開き、県内全域の学童保育の現状をまとめたガイドブック発行も手掛けた。県は当初、国の基金を活用し3年間を予定していたが、12年度は「質向上」に焦点を当て、センターを1カ所に集約し、県単独予算でさらに3年間継続した。県こども未来課は、この6年間で市町は条例を作って国の基準に沿った運営ができるようになったとしている。さらに開設時間が12市町で30分~1時間半、最長午後7時まで延長され、4年生以上の受け入れを7市町が拡大している。これらを基に「市町は主体的に運営できる」と判断した。一方で、こども未来課によると、本年度当初、指導員を対象にした国の補助事業「現任研修」を実施する予算を組んだ市町は県内でゼロ。県は「困りを抱えている子どもたちへの対応」などをテーマに、指導員も参加できる全7回の研修会を開催しているが、50回を数えた前年度までと比べると、激減している。センターの廃止を受け、県北部で15年以上の経験がある指導員は行政による委託運営もあり、市町職員でも現状把握が進まない現状を挙げ「まだまだ主体的にできる状況となっていない」とセンター事業廃止を不安視する。また「センターの職員は他の市町を巡り、状況を把握していた。いろんなアイデアをもらい、行政とのパイプ役にもなってくれ改善につながってきたのに」と声を落とす。県内で学童保育を担当する市町職員の一人は「事業が昨年度で終わるのであれば、県は昨年度中にノウハウをセンターから引き継ぐ丁寧な仕掛けが必要だったのでは。それがなく、尻切れとんぼになった感じ」と疑問を口にする。減少する指導員研修についても「身近な地域で開いてくれていたからこそ、時間をやりくりして参加できた。指導員の担い手は主婦層が多く、遠くまでは難しい。これからは、どうでしょうか…」。質向上の足踏みを心配している。

| 教育・研究開発::2014.8~2016.11 | 02:04 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.2.22 小中一貫校に幼稚園も接続した方が、教育効果が上がること(2015.2.23追加あり)
   
 *1より      玄海町の農業体験      玄海町、修学旅行生の養殖見学        

(1)公立玄海小中一貫校の素敵な校舎
 *1のように、玄海町は2小学校、2中学校を統合して町立玄海小中学校「玄海みらい学園」を4月に開校する予定で、新校舎は鉄筋コンクリート4階建て、延べ床面積約1万5千平方メートルで、4階まで吹き抜けの天井がガラス張りになっているそうだ。教室は30人学級を想定した広さで、従来の黒板は置かず、電子黒板やホワイトボードを使用し、トイレは全個室洋式とのことである。

 このように小中学校を統合したり、耐震化するために新校舎を建設したりする際に、21世紀仕様の教育環境を整えるのがよいと、私も考える。また、新校舎の階段に、制服の見本が置いてあるが、小学生の時からかわいらしい制服を着せるのも悪くない。そして、玄海町は海・山・田畑が近く、子どもを自然の中で育てられるのが魅力だ。

 なお、私は、幼稚園も接続して、3歳、4歳もしくは5歳から、自然な形で教育を開始した方がよいと考えている。何故なら、言語は幼いほど吸収力が高いため、英語やフランス語を母国語とする教師が時間をかけて楽しく教えておけば、後で語学で苦労する必要がないからだ。また、教える内容も、これに合わせて前倒ししたり、内容を豊富にしたりし、飛び級も可能にした方がよいと考える。

 しかし、玄海町には原発があり、その交付金で立派な学校ができても、子を持つ家庭が玄海町に住むのはためらわれる。そのため、*4、*5-1、*5-2のように、政府が中枢機能分散を推進し、企業の地方移転を進めようとしており、地方創生総合戦略に対して交付金を準備している時であることを活用して、原発を速やかに廃炉にし、次の時代の稼ぎ方を設計すべきだ。

(2)公立小中一貫校の目的
 *2のように、9年間を通じたカリキュラムで教育する公立小中一貫校が急増し、政府の教育再生実行会議が6・3制を見直す学制改革の議論を次回以降に始めるそうだ。都道府県別では東京都が公立小中一貫校18校と最も多く、次いで宮崎県12校、広島県9校、佐賀県6校、京都府(京都市含む)6校と続き、佐賀県は進んでいる方だ。宮崎県は全国初の公立中高一貫校が1994年に誕生し(これを知って、私は佐賀県立唐津東高校を中高一貫校にするよう提言し、実現済)、小中一貫校も2006年に開校するなど早くから一貫教育に積極的に取り組んでいるが、私立は前からそうやって実績を出していたのだ。

 小中一貫教育を進める目的としては、「①教職員の指導力向上」「②学力向上」「③小中が核となり地域とともに学校づくりを進める」が大切だと考えるが、「④中1で不登校や問題行動が増える“中1ギャップ”を防ぐため」というのは、何かおかしい。もともと、子どもにとって変化やスリルは楽しい筈で(だから、子どもは冒険物語やジェットコースターに惹かれる)、小学校から中学校に行く程度の変化についていけない子どもが社会に出て場所や時代の変化についていけるのかも疑問であるため、学校・社会の“文化”や教育方針を見直すべきである。

(3)スーパー小中一貫校 (?)
 大阪市は、*3のように、「スーパー小中一貫校」を作り、通学区を限定せずに市全域から募集するそうだ。そして、①小1からの英語学習 ②児童・生徒1人1台のタブレットパソコン配布 ③小学校で教科担任制を一部導入などに取り組むそうだが、このうち②は、佐賀県では既に行われており、これに①と③を加えて教育するのが、小中一貫校のメリットを活かす方法であるため、どこでも普通にやるべきである。

*1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/159240
(佐賀新聞 2015年2月22日) 「玄海小中学校」校舎を披露 内覧会開催
■4階まで吹き抜け/天井ガラス張り
 玄海町の2小学校、2中学校を統合して4月に開校する町立玄海小中学校「玄海みらい学園」の内覧会が21日、有浦中敷地内に建設された新校舎であった。訪れた児童や生徒、保護者らが、小中一貫校としてスタートする新年度からの生活へ、イメージを膨らませていた。新校舎は鉄筋コンクリート4階建て、延べ床面積約1万5千平方メートル。4階まで吹き抜けで、天井はガラス張りになっており開放感が特徴。新1~9年生約530人が一堂に集まれるホールもある。教室は30人学級を想定した広さで、従来の黒板を置かず、電子黒板やホワイトボードを使用。トイレは全個室洋式。校舎を見て回った児童たちは「ベランダや屋上があるのがいい」「更衣室がきれいだった」「教室は少し狭く感じた」など、口々に感想を言い合っていた。工事は2013年6月に始まり、一部設備工事を残して今年1月末に完成。総事業費は約49億円で、新校舎、体育館、渡り廊下の建設費は39億9700万円。内覧会は22日も午前10時、正午、午後2時からの3回実施する。

*2:http://digital.asahi.com/articles/TKY201310230564.html?_requesturl=articles%2FTKY201310230564.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201310230564
(朝日新聞 2013年10月25日) 公立小中一貫校が急増100校 9割「学力向上狙い」
 小中学校の9年間を通じたカリキュラムで教育する公立の小中一貫校が急増し、今春までに全国で100校開校していることが朝日新聞の調査でわかった。政府の教育再生実行会議が6・3制を見直す学制改革の議論を次回以降に始めるが、ほぼ半数の48校の校長が学制改革を求めた。一貫校を「義務教育学校」として制度化することには、3分の1の29校が賛成した。小中一貫校は国により制度化されていないため、自治体ごとに定義や呼び方もさまざまだ。そこで京都産業大の西川信廣教授(教育制度学)の助言を受け、(1)小中の敷地が同じ(2)9年間を見通したカリキュラムを持つ――という最も一体化が進んだ学校を対象とし、校長に教育内容や成果、課題などを聞いた。その結果によると、2005年段階では4校だったが、08年に23校に。その後は毎年10校以上増え続け、11年で61校、12年で81校となり、今春現在で100校となった。都道府県単位だと、最も多いのは東京都で18校、宮崎県12校、広島県9校、佐賀県6校、京都府(京都市含む)6校と続く。宮崎県の場合、全国初の公立中高一貫校として県立五ケ瀬中・高校(現在は中等教育学校)が94年に誕生。小中一貫校も06年、日向市立平岩小中学校が開校するなど早くから一貫教育に積極的に取り組んできた。小中一貫教育を進める目的としては、「学力向上」が91校、中1で不登校や問題行動が増える「中1ギャップの解消など生徒指導上の成果を上げる」が90校、「小中が核となって地域とともにある学校づくりを進める」が66校、「教職員の指導力向上」が56校だった(複数回答)。9年間のカリキュラムの区切り方は「4―3―2」が最多で67校、「6―3」のままが28校だった。学制改革について質問したところ、「改めた方がよい」が16校、「どちらかといえば改めた方がよい」が32校、「どちらかといえば今のままでよい」26校、「今のままでよい」12校、「わからない」13校。「どちらかといえば」も含め「改めた方がよい」と回答した48校の校長に、どう改めるかを尋ねた。「中高一貫の中等教育学校のように、小中一貫の『義務教育学校』をつくる」が29校にのぼった。自民党の教育再生実行本部が5月に提言したのがこの形態だ。「全校一律で6―3の区切りを変える」は15校、「5歳から義務教育にする」「高校を義務教育にする」はともに3校だった。開校に至る経緯(複数回答可)では、「統廃合計画のなかで計画された」と回答したのが52校と半数以上。「公立学校の多様化を推進するため」が45校、「町づくりの核として」が21校、首長が公約で掲げたのが16校だった。一貫校の調査としては、文部科学省や、小中一貫教育に取り組む自治体でつくる「小中一貫教育全国連絡協議会」が10年に調べたものがあるが、校長に教育内容や成果まで尋ねた調査は「把握していない」と文科省は話す。
■半数、統廃合が影響
 小中一貫校が増える背景には、地方分権の流れがある。きっかけは広島県呉市が2000年から国の研究開発学校で、東京都品川区が04年から構造改革特区でそれぞれ小中一貫教育を試みたこと。市町村の教育改革として注目された。自治体が理由に挙げるのは(1)小、中学校で学習、生活指導が大きく違い、中1で不登校や問題行動が増える「中1ギャップ」が問題視されている(2)身長の伸びが早まり、発達の段差が小4、5年ごろに移っているとされることだ。小中9年間で教育内容を見直し、独自の教科の新設などで学力向上を目指す狙いもある。だが今回の調査では開校の経緯として統廃合計画を挙げる学校が地方に多く、52校と半数以上に上った。都市部では、子どもが私立中に進学し公立中の生徒が減るのを防ぐ狙いもある。西川教授は「一貫教育の目的についての回答に『学力向上』『生徒指導上の成果』が多く、それを生み出す『教職員の指導力向上』を挙げたのは56校にとどまっている。『中学生が小学生を思いやるようになった』といった子どもの変化に比べ、教職員の変化を成果として挙げる回答は少なかった。小中が表面的な交流にとどまり、教職員の力がつくところまでいっていない表れだと思う。何のために小中一貫教育を進めるのか、行政自身、見つめ直すことが必要だ」と話す。
     ◇
〈調査方法〉 まず全都道府県、政令指定都市の教育委員会に「小中学校が同一敷地にあり、9年間を見通したカリキュラムを持つ学校」の校名を挙げてもらった。東京都教育庁は「小中一貫校を把握していない」と回答したため、朝日新聞が都内の全市区町村を調べた。そのうえで自治体の挙げた学校の校長に、開校の経緯や成果、課題を問う質問票を郵送。全員から回答を得た。

*3:http://digital.asahi.com/articles/OSK201310210144.html
(朝日新聞 2013年10月22日) スーパー小中一貫校2校 入学・転入生募る 大阪市
 大阪市教委は市内在住の児童・生徒を対象に、施設一体型小中一貫校「やたなか小中一貫校」(東住吉区、昨年春開校)と「むくのき学園」(東淀川区、来年春開校)への来年春の入学・転校生を募集している。市立小中が通学区を限定せず市全域から募集するのは初めて。2校は市の教育改革を先駆けて実践する9年間の「スーパー小中一貫校」と位置づけられ、小1からの英語学習▽児童・生徒1人1台のタブレットパソコン配布▽小学校で教科担任制を一部導入、などに取り組む。対象は市内在住(2校の校区内なら応募の必要なし)で、来年度に小1~6年または中1~2年になる子ども。2校とも各学年40人程度で、応募多数なら抽選を行う。締め切りは10月31日で、学校選択制を実施する一部の区のみ締め切りを早めるケースもある。問い合わせは市教委学事課(06・6208・9114)。

*4:http://qbiz.jp/article/56137/1/
(西日本新聞 2015年2月18日) 企業の地方移転は進むのか? 政府、中枢機能分散を後押し
 地方の人口減少と東京一極集中に歯止めをかけるため、政府は企業の地方移転や分散に力を入れ始めた。経済拠点の多極化は過去にも試みられたが、はかばかしい成果を残していない。「地方創生の手段」と位置付ける今回の取り組みは、企業をその気にさせることができるか−。「2020年度までに、地方に30万人の若者の雇用を創出する」。政府は昨年12月に閣議決定した地方創生の総合戦略に大胆な目標を掲げた。企業の地方移転支援は、その一環。(1)東京から三大都市圏以外へ本社機能を移す企業(2)地方にある本社機能を拡充する企業−の税負担を軽くする特例措置を新たに設ける。政府が企業の地方移転を推進するのは初めてではない。1990年代の地方拠点都市、オフィスアルカディアなど数々の政策を打ち出したが、経済産業省幹部は「思わしい結果は出なかった」。逆に創業した地方で業績を伸ばし、本社を東京へ移す企業が多かった。
 だが、企業の考えは変わってきた。転機は東日本大震災だ。将来、東京の本社が被災するリスクを分散するため、複数の都市に経営拠点を置く動きが顕著になっている。インターネットの普及で、大都市でなくても可能な仕事も増えた。政府は「本社移転はハードルが高い」として、中枢機能の分散を後押しする。地方の誘致活動も熱を帯びる。福岡市と福岡経済同友会、福岡商工会議所は17日、東京都心でシンポジウムを開催。「ビジネス拠点・福岡」の優位性を企業関係者などにアピールした。政府で地方創生を担当するまち・ひと・しごと創生本部の若井英二事務局次長は「創業地や福岡、札幌のようなブロック拠点都市は可能性が大きい。通勤圏を考えると、自治体は広域で連携して誘致するのが有効ではないか」と語る。
   ◇   ◇
●機能分散、震災後に加速
 地方に拠点を移す企業は確かに増えている。
 「福岡で独立したビジネスが成り立つように、機能移転を進めたい」。マスミューチュアル生命保険(東京)の井本満社長は17日のシンポジウムで、福岡本社(福岡市)を4月に本格的に立ち上げる計画を披露した。従業員は約150人。災害時に保険金の支払いを滞らせないため、自然災害の可能性が小さい福岡市を第2の拠点に選んだ。生命保険業界では、ほかにアクサ生命保険が2014年11月に札幌本社を設立。大規模投資だったが「災害時にも業務を継続するために必要な投資」(広報)ととらえている。建設機械大手のコマツは11年、創業地である石川県小松市に総合研修施設を造り、人材育成などの機能分散を進める。13年度は国内外から約2万7千人が研修で小松市を訪れており、地域にもたらす経済効果も大きい。企業にとって地方移転は不安材料もあるが、踏み切ってみると、乗り越えられることも多いようだ。12年に東京から北海道恵庭市へ本社を移したエム・エス・ケー農業機械。杉野俊樹社長は「優秀な社員をつなぎ留められるか」心配だったが、首都圏に勤務していた約70人のほぼ全員が北海道に転居。現地でも「良い人材が確保できている」と自信をみせる。東洋ゴムは東京本社を大阪本社に統合、8月には本社を兵庫県伊丹市に移す。「取引先とのやりとりはネットを使えばよく、東京でないとできないことはない」という。経団連産業政策本部の森島聡主幹は、地方移転を税制で促進する政府の取り組みを歓迎するが、注文もある。「国の許認可権限を地方に移すことも必要だ。行政機能が東京に集まっている限り、必要な手続きは東京で行わざるを得ない」。地方移転をさらに拡大するには分権が必要と考える。企業を迎える自治体にも課題がある。石破茂地方創生担当相は「教育、医療、介護が単身赴任の大きな理由になっている」と指摘。家族が安心して新しい暮らしが営める環境整備を求めている。


PS(2015.2.23追加):*5-1、*5-2のように、地方創生担当相は、政府機関の地方移転を推進する方針で、「地方から誘致提案をして欲しい」とのことであるため、生活や教育などのメリットを示して、農漁業・エネルギー・文部科学など、シナジー効果のある施設の誘致に立候補するのがよいと考える。

*5-1:http://qbiz.jp/article/56407/1/
(西日本新聞 2015年2月22日) 政府機関の移転候補、近く公表 石破地方創生相インタビュー
 石破茂地方創生担当相は21日、福岡市で西日本新聞のインタビューに応じた。石破氏は東京一極集中を是正するため、政府機関の地方移転を推進する方針を示し、移転候補のリストを近く公表すると表明。「必ずしも東京になくていい機関がいっぱいある。東京にあるよりもうちに来た方が良い、と地方から提案してほしい」と語った。移転候補となるのは、府省庁の研究機関や研修所など。機関の名前、仕事の内容、職員数の一覧を2月中にも公表し、誘致する自治体を募る。2015年度に移転先を決め、16年度から具体化する。省庁本体は対象としない方向だ。石破氏は「移転したらこんないいことがある、地元はこんな支援をすると言ってもらいたい」と述べ、誘致する自治体に移転効果の説明を求める考えだ。政府は地方の人口減少対策を兼ねて、企業の本社機能移転を優遇税制で支援。民間と連動して、首都圏から地方へ雇用と人の流れをつくる。20年の東京五輪に向けて一極集中の加速が懸念されているが、石破氏は「そこは政策的に止めなければならない」と述べた。地方創生関連の交付金 政府は2014年度補正予算に自治体向けの交付金4200億円を盛り込んだ。「地域消費喚起・生活支援型」(2500億円)はプレミアム付き商品券の発行など経済対策色が濃い。「地方創生先行型」(1700億円)には、自治体がまとめる地方創生の総合戦略策定費が含まれる。政府は自治体の総合戦略を具体化する財源として、16年度に新たな交付金を創設する方針。

*5-2:http://qbiz.jp/article/56408/1/
(西日本新聞 2015年2月22日) 石破氏一問一答 総合戦略新交付金、自治体で差 
 石破茂地方創生担当相とのやりとりは次の通り。
−自治体は地方創生の総合戦略を2015年度に策定する。ポイントは何か。
 「三つある。一つ目はKPI(重要業績評価指標)。農業生産額、移住者数、出生率などの数値目標を設定することだ。二つ目は企画立案、実行、点検、改善のシステムを組み込むこと。三つ目は産官学、金(金融機関)労(労働界)言(言論界)のみんなが参画すること。市長が作ればいいという話ではない」
−総合戦略を実行する財源として新型交付金を16年度につくるそうだが、どのような交付金になるか。
 「自治体を一律に扱わず、総合戦略を見て、熱意があるところに厚く交付する。その審査は議員の口利きのような恣意(しい)性を排除し、透明性のある仕組みにする。独創性、将来の発展性、持続性などが審査基準になるだろう。金額の規模はまだ分からない」
−プレミアム付き商品券などに使える14年度補正予算の交付金は、ばらまきの印象がある。
 「効果をチェックする仕組みがあるから、ばらまきではない」
−人口減少対策は特に雇用が重要になるのでは。
 「地方で起きている人手不足をどう考えるか。保育や介護、公共交通、サービス産業の生産性を上げることが大事だ。雇用を安定させ、収入を上げるための工夫があってしかるべきだ。公共事業や企業誘致は絶対的な効き目がなくなった」「地方で生産性や収益を上げるには、コンパクトシティー化と企業の集積が必要だと思う。集落再編でなくなる集落はかわいそうだが、全ての集落に同じインフラを整備すると、いくらお金があっても足りない。切って捨てることはしないが粘り強く住民の合意を得なければならない」
−道州制にはどのような考えを持っているか。
 「全然否定しない。外交や安全保障、通貨政策は国が行い、地域のことは地域でやった方がいい。ただ、地方創生は都道府県の役割が大きい。市町村がばらばらなことを計画しても困るので、県にコーディネート(調整)してほしい」

| 教育・研究開発::2014.8~2016.11 | 05:05 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.12.17 ロボット、電気自動車・燃料電池車、蓄電池、エネルギーの技術進歩でイノベーションへ (2014.12.17、20、30に追加あり)
    
    *1-1より              トヨタとホンダの燃料電池車

(1)ロボットについて
 *1-1のように、電通がマツコ・デラックスさんをモデルに「マツコロイド」を開発し、今後、ロボットタレントとして活動させるそうだ。マツコさんの等身大であり、表情や癖、しぐさなどもそっくりで、マツコさんの声で話すとのことで、本人より人気が出るかもしれない。

 そして、私は、これを、観光地の案内に使ったら面白いのではないかと思う。例えば、大英博物館では、ロゼッタ石が書いてある内容やその解読の経緯を紹介したり、エジプトのツタンカーメン王やネフェルティティ王妃が、当時の衣装をつけた美男美女の姿でエジプトの歴史を客の母国語で解説すれば、面白く世界史を学ぶことができ、大英博物館の人気が上がるだろう。

 これは、日本なら、*1-2の法隆寺で釈迦三尊像や薬師如来像が、自分が表わしている内容を聞き手の母国語で説明したり、聖徳太子のロボットが同じく聞き手の母国語で歴史を語ったりすることであり、これらはロボットだからといって決しておもちゃではなく、本物の時代考証や法隆寺の由来に則し、客の質問も受けながら声優が演技して初めて魅力的になり、各国からの修学旅行生も増えるのである。

(2)観光について
 私は、ギリシャが財政危機というのは変だと前から思っていたが、*2-1のように、ギリシャはパルテノン神殿など由緒ある建造物や彫刻を数多く持っており、ヨーロッパ文化の先祖である。しかし、パルテノン神殿のように廃墟と化していれば一度行けば十分であるため、EUとギリシャは、まず現在残っているギリシャの建造物や彫刻を資産として活かすべく忠実に復元し、ヨーロッパの威信をかけて最新技術でロボットなどの解説員をおけばよいのではないだろうか。

 なお、*2-2は、400年間続いた磁器の街、有田(伊万里)の事例で、ここには、昔ながらの街並みがあるだけでなく、ロボットではなく生きた重要無形文化財などの人々が400年間磁器を作り続けている。そのため、ちょっと街を廻ると、現在の14代今泉今右衛門、15代酒井田柿右衛門、14代李参平(朝鮮出身の陶工で、有田焼《伊万里焼》の生みの親)などに会うことができる。また、宮内庁御用達の香蘭社、辻精磁、深川製磁なども近くに軒を並べているため、磁器を作るだけではなく、歴史的価値の高い観光地としてもグローバルに魅力を発信できる筈である。

 なお、古代ローマ帝国期の闘技場「コロッセオ」も廃墟と化しており、現在は一度行けば十分な場所になっているが、*2-3のように、「再び床を敷き、格闘技やコンサートの会場にしよう」という案があるそうで、私は、考古学に忠実に復元すれば、これも世界で人気の出る名案だと考えている。イタリアの多くの遺産が人目につかぬままに崩れ落ちているのなら、それこそもったいない話であり、EUとイタリアは、現在残っている建造物や彫刻を資産として活かすべく、威信をかけて考古学に忠実に復元し、各国語に対応できる最新ロボットの解説員や案内人を置けばよいだろう。

(3)燃料電池車と蓄電池の進歩
 *3のように、トヨタ自動車が2014年12月15日に燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を世界に先駆けて国内で発売した。走行時に水しか出さないため「究極のエコカー」だが、年間販売目標はたった400台だそうで、価格設定も723万6千円と高く、国の補助金を利用しても520万円であるため、とても普及車(300万円代の前半までだろう)にはなれそうもない。

 これは、せっかくよい技術が出てきても、価格設定を高くしすぎて普及を阻んだために、より安価な液晶テレビが出てきて普及前に消えてしまったプラズマテレビを思い出させる。もう燃料電池車は未来の技術ではなく現在の技術であるため、ミライがミイラにならないよう本格的な普及を心がけるべきだ。

 また、*4のように、固体の電解質を使った新世代の蓄電池が開発され、充電時間が従来の10分の1、電池の重さが半分以下になったそうだ。電気自動車の走行距離延長や自然エネルギー発電にも利用でき、電気自動車の走行距離がガソリン車に劣るということは、近々なくなるだろう。

<ロボット>
*1-1:http://qbiz.jp/article/51558/1/
(西日本新聞 2014年12月10日) 電通がロボタレント開発、第1弾はこの人
 電通は10日、タレントのマツコ・デラックスさんをモデルに開発したアンドロイドと呼ばれる精巧なロボット「マツコロイド」の写真を公開した。同社はロボットタレントとして活動させる考え。テレビ番組やCMへの出演時期は未定という。知能ロボット研究で知られる大阪大の石黒浩教授が監修した。マツコさんの等身大で、表情や癖、しぐさなどもそっくりの仕上がり。録音したマツコさんの声で話すなど、忠実に再現しているという。電通はテレビ番組やCMでタレントや歌手のアンドロイドの需要が拡大していくと予測しており、第2弾以降の開発も進める方針だ。

*1-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141208/k10013802581000.html
(NHK 2014年12月8日) 1年のほこり落とす「お身拭い」 法隆寺
 聖徳太子ゆかりの奈良の法隆寺で、新年を前に仏像に積もったこの1年のほこりを落とす「お身拭い」が行われました。奈良県斑鳩町の法隆寺の「お身拭い」は、仏像に清らかな姿で新年を迎えてもらおうと、毎年、この時期に行われています。国宝の金堂には午前10時にさむえ姿にマスクをつけたおよそ10人の僧侶たちが、一列になって入りました。僧侶たちは仏像の魂を抜くためのお経を唱えたあと、棒の先に細長い和紙の束をつけたはたきやはけを手に作業を始めました。そして、国宝に指定されている本尊の釈迦三尊像や薬師如来坐像などの肩や頭に積もったほこりを、丁寧に払い落としていきました。「お身拭い」は30分ほどで終わり、参拝に訪れた人たちは、お身拭いを終えてきれいになった仏像に静かに手を合わせていました。

<観光>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASGD82TMVGD8UHBI003.html
(朝日新聞 2014年12月9日)パルテノン神殿彫刻をロシアで公開 ギリシャ、英に怒る
 大英博物館が所蔵するギリシャ・パルテノン神殿の彫刻の一部がロシアに移送され、公開が始まった。19世紀に英国に移されてから、他国での公開は初めて。返還を求めているギリシャ政府は激怒している。6日からサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館で一般公開が始まったのは「川の神イリッソス像」。彫刻群は、オスマントルコ支配下のギリシャに駐在した英外交官が切り取って母国に持ち帰ったもので、外交官の名から「エルギン・マーブル」と呼ばれる。ロシアへの移送に、ギリシャのサマラス首相は「ギリシャ国民への挑発行為だ」と批判する声明を出した。ギリシャは彫刻群の返還を強く求めてきたが、大英博物館側が「壊れやすいので移送できない」と拒んできた。サマラス氏は「移送できないという英国側の言い分は、もはや存在しない」と主張した。サマラス氏は、かつて文化スポーツ相としてアクロポリス博物館の開設に尽力した。「ギリシャには重要な文化遺産を所蔵する能力がない」という批判を覆すためだった。同博物館には、彫刻群が返還された時のための空間が確保されている。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141217&ng=DGKKZO80998500X11C14A2EA1000
(日経新聞 2014.12.17) 有田焼作陶で最年少の人間国宝 十四代今泉今右衛門氏(51)
 陶芸の世界では最年少となる51歳で、先代の父に続き色絵磁器の重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を受けた。存命の人間国宝としても最若手だ。「若いからいいのではなく、長く仕事を続けてこそ出てくる美意識もある。次への可能性を期待してもらった」。謙虚な話しぶりに穏やかな人柄がにじむ。江戸期に佐賀鍋島藩窯で焼く「色鍋島」の御用赤絵師を代々務めた家の次男に生まれた。しかし、父の跡を継ぐつもりはなかったという。進学した美術大学では金工を学び、卒業後はインテリア会社に勤めた。「営業や販売促進では世間の理不尽さも味わったが、そこで取り扱う工芸品の美しさに触れた経験は今につながっている」。憧れていた京都の前衛陶芸家、鈴木治氏に師事し、焼き物の道へ。2年半の修業を経て、28歳で有田に戻った。「同世代の作家より遅れている」と焦りながらも作陶に真っすぐ向き合ってきた。色鍋島の伝統を核に、十三代が確立した技法を受け継ぎつつ、白抜きの下絵付け「墨はじき」や優雅な上絵付け「プラチナ彩」で新境地を開いた作風は現代の感覚を映す。2016年に有田焼が生まれて400年となる節目を控え「陶都」再興へ十四代への地元の期待は高まる。「日々の積み重ねを大切にしながら前向きに仕事をしたい」と静かに意欲を燃やしている。
[いまいずみ・いまえもん]
1962年生まれ、佐賀県出身。85年武蔵野美大卒、福岡市の「ニック」勤務などを経て、90年に父である十三代の下での作陶を開始。02年に十四代を襲名。14年10月重要無形文化財保持者に認定。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/ASGC43624GC4UHBI00H.html
(朝日新聞 2014年11月5日) コロッセオでコンサート? 再建案巡りイタリアで大論争
 古代ローマ帝国期の闘技場「コロッセオ」に再び床を敷き、格闘技やコンサートの会場にしよう――。イタリアの文化大臣が考古学者の提案に賛成し、賛否両論が巻き起こっている。約5万人を収容した巨大闘技場はローマの象徴だ。紀元1世紀に完成。地下には剣闘士と闘うライオンなど猛獣のおりがあった。現在は床がなく、訪問客は客席部分から地下の構造をながめることができる。フランチェスキーニ文化大臣は2日、「考古学者マナコルダ氏のコロッセオ再建策はとても気に入った。ほんの少しの勇気だ」とツイッターに記した。マナコルダ氏は7月、「床があるのが本来の姿だ。イタリアで一番の遺跡を過去のままにとどめず、現代に生き返らせられる」と提案した。文化遺産に一切手を加えず保存しようとすることを、「偏執的だ」とも批判した。文化省の遺産諮問委員会のボルペ座長も「格闘技やコンサートの会場にもできる」と賛意を示した。「観光客は地下を訪れ、2千年前に戻る体験ができる」という意見も出た。これに対し、歴史学者のモンタナリ氏は「コロッセオを遊園地にしようという低俗な発想だ」と強く批判。同氏の「コンクリートで客席を再建するのか? 我が国の多くの遺産が人目につかぬままに崩れ落ちている時に、コロッセオにばかり注目し、娯楽のために使うのが、本当に大臣のすべきことか」と指弾する投稿が地元紙に掲載された。研究者に賛同が広がっている。修復を担うローマ考古学遺産特別監督局は「床の再建が実現可能か、どんな技術的解決策が最善か、研究中だ」としている。伊北部ベローナに残る闘技場アレーナは、野外オペラの会場で知られている。

<燃料電池車>
*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141215&ng=DGKKASDZ13HF8_U4A211C1TJC000
(日経新聞 2014.12.15) ミライ、受注1000台へ トヨタ燃料電池車 年販売目標の倍 きょう発売
 トヨタ自動車が15日、水素と酸素で走る燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を世界に先駆けて国内で発売する。走行時に水しか出さない「究極のエコカー」への関心は高く、受注台数は年間販売目標(約400台)の2倍以上の1千台に達する勢いだ。ミライは4人乗りのセダンタイプで、価格は723万6千円(税込み)。国の補助金を活用すれば約520万円で購入できる。トヨタ系販売会社、東京トヨタ自動車は11日までに約50台を受注した。法人と個人が半々で、個人は「50~60代を中心に、すでにハイブリッド車(HV)を保有している人が多い」(同社)。商談中や見積もり希望も40件を超えるという。名古屋トヨペット熱田店(名古屋市)には、多い日で1日5件程度の問い合わせがあり、法人から数台を受注した。大阪トヨタ自動車にも企業経営者などから数十件の購入希望があるが、納期を案内できないため「正式な受注は待ってもらっている」状況だ。トヨタは12月に元町工場(愛知県豊田市)でミライの生産を開始。年間の生産予定台数は700台だが、販売店の受注台数は全国で1千台弱と大きく上回る。トヨタは来年末に増産を予定しているが、販売店側では「納期は数年かかると案内している」(名古屋トヨペット)。

<蓄電池>
*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141209&ng=DGKKZO80667620Z01C14A2TJM000 (日経新聞 2014.12.9) 蓄電池、新世代 固体の電解質、リチウムイオンより安全、東北大・トヨタ、充電時間10分の1
 現在主流のリチウムイオン電池より安全な「全固体電池」と呼ぶ次世代電池の研究成果が相次いでいる。東北大学とトヨタ自動車は、充電時間を従来の電池の10分の1に短縮した。東北大の別チームも、軽量な全固体電池を開発し、動作温度を下げた。韓国サムスン電子は全固体電池を長持ちさせる技術を開発しており、国内外で実用化に向けた開発競争が熱を帯びている。リチウムイオン電池の主要部材である電解液は発火しやすい有機溶媒を含んでいる。全固体電池は電解液の代わりに燃えにくい固体電解質の中をリチウムイオンが動き、安全性を高めている。理論的には電解液の電池より蓄電量が多く高出力とされるが、従来は電解液の電池以上の性能が出せず実用化が難しかった。東北大の一杉太郎准教授らは電解質と電極の境界面に注目した。真空装置を使い、電池の製法を工夫することで電解質と電極をきれいに密着させた。境界面がぴったり接することでリチウムイオンが電池内を移動しやすくなった。固体電解質と電極が隙間や不純物の影響でしっかり接していなかった課題を解決した。試作した電池を使った実験では、従来の電解液を使うと30分以上かかる充電時間を3分に短縮できた。電気自動車(EV)のバッテリーに使えば、短時間で充電できる。今後はトヨタや電池メーカーと共同でバッテリー開発に取り組む。同じく東北大の折茂慎一教授と宇根本篤講師らは、リチウムと水素の化合物を電解質に使い、電池の重さを従来の全固体電池の半分以下にした。研究の進んでいる硫化物や酸化物の電解質を使った電池は、電解液の電池より重かった。リチウムと水素の化合物を使うと高温の環境でしか動かない問題があるが、電解質の成分などを工夫し、従来のセ氏約120度から約90度に引き下げた。将来は室温での動作が目標だ。三菱ガス化学と協力し、5年後をめどにEVなどに搭載するバッテリー向けに実用化を目指す。サムスン電子は硫化物を使った全固体電池の耐久性を高めた。500回の充放電を繰り返した後も約8割の容量を維持でき、実用レベルに近づいた。これまで充放電を繰り返すと容量が急激に下がるのが課題だった。正極の構造を工夫するとともに、電気を通しやすい物質を正極内で均等に分散させた。京都市で先月開かれた電池討論会で発表した成果だ。現在主流のリチウムイオン電池は体積あたりの出力が高く電気も多くためられる。携帯端末やEVなどで使われている。ただ発熱により破損する可能性があり、安全性の懸念が指摘されている。


PS(2014.12.17追加):農業も作物を選ぶと、*5のように、太陽光パネルとソーラーシェアリングして発電しながら収量をより多くすることもできるため、各地域で適切な作物を研究することが望まれる。

*5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31277 
(日本農業新聞 2014/12/17) アシタバ増収を確認 露地と比べ16%増 営農型発電パネル下栽培 ソーラーシェアリング協会と東大が共同研究
 営農型発電を進めるソーラーシェアリング協会は、東京大学との共同研究で、太陽光パネルの下でアシタバを栽培すると、遮光で減収せず、むしろ大幅に増収することを確認した。営農型発電に取り組む農家などに対し、申請時に必要な資料を提供し、営農型発電とアシタバ栽培を推進する。既にアシタバの導入準備を始めた農業参入企業もある。太陽光発電をしながら農業をする営農型発電は、農地の一次転用を申請し許可を受ける必要がある。パネル下は遮光で収量が減るとされるが、申請には収量が周辺の8割以上確保できるという、いわゆる知見資料を添付しなければならない。同協会は茨城県土浦市の農家圃場(ほじょう)で試験をした。パネル下の384平方メートルと隣に露地の334平方メートルの試験区を設定し収量を比較した。6月18日に「源生林あしたば」を定植。8~10月の毎月下旬に地上部を全部収穫して収量を調査した。累計の10アール換算収量は、露地で栽培した場合が1447キロだったのに対し、太陽光発電パネルを設置した区は16%多い1682キロだった。市場単価が高い8月は40%も増収した。栽培試験を担当した東京大学大学院理学系研究科の和地義隆研究員は「アシタバは半日陰の方が生育が良い。営農型発電とアシタバの組み合わせはメリットが高い」と結論付けた。太陽光発電事業者のmisono電源(千葉市)は、この研究成果に着目。農業法人を設立し、アシタバと営農型発電で農業参入する。千葉県内に約1.5ヘクタールの農地を確保した。出力1~1.5メガワットの発電所を建設する。茨城県内でさらに候補地を検討中だ。別の農業法人も20ヘクタール規模のアシタバによる営農型発電を検討している。


PS(2014.12.20):「環境を汚しっぱなしにした人が得をする」という制度にしないためには、環境に負荷をかけるものに課税して外部不経済を内部化する方法がある。例えば、化石燃料に環境税を課して電気自動車や燃料電池車の使用を促進したり、*6のように、CO2を吸収する森林の維持管理費として環境税を課したりする方法である。そのうち森林環境税は、例えば長野県のように、広大な森林を有する人口の少ない県の人だけが森林の維持管理費を負担するよりも、森林は少なく人口が多くてCO2を多く発生している東京都の人たちも負担するのが合理的であるため、地方税ではなく国税にしようとするものだが、前から経済団体が反対しているのである。

*6:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31318 (日本農業新聞 2014/12/19) [ニュース三面鏡] 森林吸収源対策に経済界「反対」 環境より利益 声高
 自民党は2015年度税制改正大綱の30日の決定に向け、衆院選で止まっていた議論を再開した。地方の声を受け、同党農林部会などは、森林環境税の創設を含む森林吸収源対策の財源確保を重点事項とする。ところがこれに、日本経団連や経済同友会など113の経済団体が声明を出し、「反対する」とかみついた。政府は20年度に温室効果ガスを05年度比で3.8%削減することを目標に掲げ、そのうち2.8%以上を森林による吸収で達成する方針だ。しかし達成に必要な森林整備の安定財源がなく、地方自治体や林業団体などは(1)森林環境税の創設(2)地球温暖化対策として石油石炭税に上乗せ課税している分(地球温暖化対策税)を森林整備にも使えるようにすること――などを求め続けている。自民党も今年、財源確保のための新たな仕組みを検討するプロジェクトチームをつくって議論。11月には農林部会などの合同会議で、財源確保を15年度税制改正要望の重点事項に盛り込んだ。しかし経済団体の声明は、原子力発電所の停止による化石燃料輸入の増加や円安による原油高騰が経済の好循環の足かせになっている中、国民や企業にさらなる税負担を求めるべきではないと強調。地球温暖化対策税の使途拡大や森林環境税の創設に反対すると明言した。声明は、森林整備は社会全般に利益をもたらすため、費用を「特定の国民だけに負担させるべきではない」とも指摘する。だが自民党農林幹部は「都市住民も利益を得ているのに、地方の自治体や住民が負担して森林を整備しているのが実態。その言葉をそっくりお返ししたい」と反論。「農業や林業は補助金漬けだと批判しながら、自分たちは法人税も含めて税金を逃れようとする。浅ましい考えだ」。


PS(2014/12/29追加):*7のように、買い物に行き車を止めている間に充電できれば、便利である。駐車場に太陽光発電の屋根をつければ、無料で電気を供給することも可能であるため、コンビニやスーパーもやればよいのにと思っていたところだ。なお、農業では、軽トラック以外にも多くの燃油を使っており、これが値上がりして経営に打撃を与えているため、農機具等の動力も早く電気に変えた方がよい。

    
     農業用電気トラック(自家発電して電動器具を使えば、燃料費は0になる)

*7:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31451 (日本農業新聞 2014/12/29) 充電スタンド登場 オズメッセセルフSS 地元要望受け運用 JA愛媛たいき
 JA愛媛たいきは、オズメッセセルフSSスタンド(愛媛県大洲市)の敷地内に電気自動車専用の充電スタンドを設置し、運用を始めた。充電スタンドは直売所や道の駅などで設置が進んでいるが、JA―SSに設置するのは全国的にも珍しい。PRのため年内は無料で利用でき、その後は有料にする予定だ。充電スタンドは、次世代の自動車として有力視される電気自動車(EV)やプラグインハイブリット車(PHEV)の普及に伴い、組合員や地域のニーズに応えようと設置した。愛媛県が進める「次世代自動車充電インフラ整備ビジョン」に基づいて設置した。費用は約870万円で3分の2は国や県などの補助金と自動車メーカー4社の補助で賄った。急速充電では約30分で充電が終わるため、隣接するJA産直市「愛たい菜」などで買い物する間に充電ができる。利用時間は午前7時から午後10時まで。JA経済部の谷本哲也部長は「組合員だけでなく組合員の第2世代以降や若者など、幅広い客層に関心を持ってもらい、組合員や地域住民の利便性を図っていきたい」と話す。

| 教育・研究開発::2014.8~2016.11 | 12:52 PM | comments (x) | trackback (x) |

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