■CALENDAR■
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30       
<<前月 2014年11月 次月>>
■NEW ENTRIES■
■CATEGORIES■
■ARCHIVES■
■OTHER■
左のCATEGORIES欄の該当部分をクリックすると、カテゴリー毎に、広津もと子の見解を見ることができます。また、ARCHIVESの見たい月をクリックすると、その月のカレンダーが一番上に出てきますので、その日付をクリックすると、見たい日の記録が出てきます。ただし、投稿のなかった日付は、クリックすることができないようになっています。

2014.11.29 原発と火山の噴火について (2014.11.30に追加あり)
     
2014.11.28  2014.6.26   2014.5.1    2014.9.19   阿蘇中岳噴火 
  東京新聞    毎日新聞    西日本新聞    西日本新聞

(1)火山の噴火について
 *1-1に書かれているように、東大地震研究所長で日本火山学会長を務めた火山噴火予知連絡会長の藤井東大名誉教授が、「原発への火山影響予知には限界があり、原子力規制委員会の判断はおかしい」と述べている。具体的には、カルデラ噴火(巨大噴火)は、国内ではおよそ1万年に1度という発生頻度がわかるだけで、切迫度(今後どのくらい大丈夫か)は分からないそうだ。また、約7300年前に鬼界カルデラが噴火した際には、南九州の縄文文化が壊滅し、その後、復興に1000年くらいかかったそうだが、復興できるのは、原発がなく放射性物質がまき散らされなかった場合のみである。

 また、自治体の地域防災計画では、桜島の大正噴火を超える規模の噴火は想定されておらず、原子力規制委員会がまとめた「火山影響評価ガイド」は、「火山の噴火は予知できる」という前提で作られており、「カルデラ噴火が予想されたら核燃料を移動させる」ともしているが、これは火山学者の認識とは全く異なるそうである。

 そして、藤井氏は、「①確率が低いかどうか何も言えないため判定はできず、原発の立地は不可能」「②九電の主張は、たまたまギリシャの論文に載っていたもので、カルデラ噴火のすべてに当てはまるものではないまやかしの論理で不適切」「③噴火規模が大きくなると、前から予兆が分かるというのは幻想だ」としている。また、日本火山学会・原子力問題対応委員会(委員長:石原和弘京大名誉教授)も、規制委に火山影響評価ガイドラインの見直しなどを求める趣旨の提言をまとめたそうだ。

 日本火山学会の原子力問題対応委員会が規制委のガイドライン見直しを求めたことについて、規制委は、*1-2のように、「非常に荒っぽい話だ」と反対の姿勢を示し、「川内原発では、ここ30、40年ではカルデラ噴火はないと判断した」と訴え、「カルデラを含む巨大噴火への対応については『国がきちっと(火山学会の意見を)受け止めなければならない』」としているが、「国が受けとめる」ということの具体的な意味は不明だ。

 このように、新たな火山予知に関する安全神話が作られようとしていた時、小笠原諸島の西ノ島、長野県の御嶽山に続き、*1-3の阿蘇中岳の噴火があり、あらためて人々に火山活動が活発化していることを思い出させたのは、人間にはできない神技のようである。

   
                  小笠原諸島、西ノ島の噴火
(2)再稼働反対について
1)九州電力川内原発について
 *2-1のように、原子力規制委が新規制基準に適合しているとした九電川内原発1、2号機の原子炉設計変更許可について、再稼働に批判的な立場の約1400人が、行政不服審査法に基づき、許可の取り消しを求める異議申し立てをしたそうだ。

 しかし、*2-2、*2-3のように、九電は「川内原発が実際に動くまで気は抜けない」とし、さらに経営安定化のため、玄海原発3、4号機の再稼働を行うつもりだ。しかし、影響を受ける地元自治体は原発30キロ圏内の自治体だけでもないため、強引な再稼働を地元が許してはならない。

 また、*2-4のように、大津地裁に福井県の大飯原発3、4号機と高浜原発3、4号機の再稼働差し止めを求めた仮処分の申請は、2014年11月27日に、「①事故に対応する組織や地元自治体との連携・役割分担、住民の避難計画が何ら策定されていない」「②これらの作業が進まなければ再稼働はあり得ず、原子力規制委がいたずらに早急に、新規制基準に適合すると判断して再稼働を容認するとは考え難い」とし、緊急性がないと判断して仮処分の申請が却下された。これらは、川内原発や玄海原発でも同じ条件だが、それでも原発再稼働の前提となる原子炉設置変更許可は認められているため、安心することはできない。

 これについて、九電玄海原発の操業差し止め請求訴訟の原告団は、*2-5のように、2014年11月27日、「①再稼働差し止めの仮処分申し立てを却下した大津地裁の決定は原発の危険性を否定しているのではない」「②関西電力の高浜原発3、4号機と大飯原発3、4号機は、原発の再稼働が差し迫っていないのが却下の理由である」「③決定は簡単に原発の安全性が認められる状況にはないことを示している」として、電力会社に再稼働しないよう求める声明を出している。

(3)結論
 原発建設当初は、火山の噴火、地震、大津波について、それほど真剣には考慮されていなかったというのが正しいだろう。また、一度過酷事故を起こせば、原発から30km圏内の人が一時的に避難すれば、元に場所に戻って前の生活を取り戻すことができるという甘いものではないことが、今では誰の目にも明らかになっている。

 そのため、再生可能エネルギーや水素エネルギーの技術が進んできた現在こそ、脱原発してエネルギーの転換を図るのが、日本を本当の意味で豊かにする第一歩になる。

<原発と火山について>
*1-1:http://qbiz.jp/article/50235/1/
(西日本新聞 2014年11月20日) 「ミスター火山学」が批判を続ける理由
[藤井敏嗣:03年から火山噴火予知連絡会長。現在は東大名誉教授、NPO法人環境防災総合政策研究機構理事(環境・防災研究所長)、山梨県富士山科学研究所長。専門はマグマ学。1997〜2001年東大地震研究所長、06〜08年日本火山学会長を務めた。福岡県田川市出身。67歳]
 火山噴火予知連絡会会長の藤井敏嗣氏。東京大地震研究所長(現名誉教授)、日本火山学会長などを歴任した「ミスター火山学」。原発の火山影響について、予知には限界があり「原子力規制委員会の判断はおかしい」などと正面から批判を続けている。周辺が「あまりに率直に話しすぎる」という同氏に本紙がインタビュー(実施は11月3日)。発言の背景も交えながら、その詳細をまとめた。
◆カルデラ噴火、国全体で対処を
 「カルデラ噴火(巨大噴火)についてわれわれが分かっているのは、おおよそ1万年に1回という国内での発生頻度だけ。カルデラの半分規模の噴火なら、6000年に1回ぐらい起きている。今のわれわれの能力では、切迫度は言えない。『あと1000年は大丈夫』とかは分からない。その切迫度を読み取る手法を考えないといけない。それには国を挙げて研究体制を整えないと、とても間に合わない。これは原発問題が浮上する前から言ってきたこと」。藤井氏によると、カルデラ噴火の発生で、周辺地域は火砕流などで壊滅的な被害を受ける。最後のカルデラ噴火は縄文時代、約7300年前の「鬼界カルデラ」(鹿児島県南部)。関西で約30センチ、東京近辺で約10センチの火山灰が積もったとされる。想像を超える火山灰が降り積もる重みで、各地の送電線が切れて広域停電が起こり、電車も飛行機も動かない。農作物は全滅し、原発だけの問題ではない、と言うのだ。神戸大の巽好幸(たつみ・よしゆき)教授らが10月末発表した「巨大カルデラ噴火のメカニズムとリスク」の発表資料によると、鬼界カルデラの噴火で「少なくとも南九州の縄文文化は壊滅し、その回復に1000年近くかかったと言われる」という。「日本の株価も暴落し、経済もめちゃくちゃになる。火山学だけでなく、社会学などを含めて国を守るためにどうすればいいのか、研究を急がないといけないと提言した。カルデラ噴火が起きたら、国がつぶれるようなことになるからだ。だけど、まったく(世の中に)動きはなかった」。内閣府の「広域的な火山防災対策に係る検討会」が昨年5月に出した提言のことだ。藤井氏は座長。鹿児島・桜島の大正噴火(1914年)を超えるような大規模、あるいはカルデラなどの巨大噴火への備えを初めて促した。自治体の地域防災計画では、大正噴火を超えるような規模の噴火がそもそも想定されていない。提言のメッセージが世の中に理解されていないことに、藤井氏は不満を抱いていた。原子力規制委員会が、原発に対する基準「火山影響評価ガイド」をとりまとめたのはその直後、同年6月だった。「ガイドラインは予知できる、という前提で作られている。ガイドラインを見てがくぜんとした。われわれの認識とまるで違っていたから。火山の状況をモニタリング(監視)し、カルデラ噴火が予想されたら核燃料を移動させると言うけれど、今のわれわれの能力ではとても分からない。これから先40年(原発の運転期間)以内に何が起きるか予知ができないと、確率が低いかどうかというのは何も言えないわけだから。論理的に言えば、判定できないということなら立地は不可能となるはずだし、念のためにモニタリングしてカルデラ噴火の予兆があったら核燃料棒を片付けるというが、だいたい、何か異常があったとき、それがカルデラ噴火なのか、もっと小さい噴火なのか、ということは、今のわれわれの能力では分からないわけですよ」。カルデラ噴火はあまりに頻度が低く、これまで本格的な研究がなされていなかったが、ようやく噴火の前兆現象を捉える研究が本年度から始まった。西日本新聞も4月23日朝刊1面で、そのことを伝えている。火山学者にとっても、分からないことが多すぎるのだ。火山学の常識に反して見える規制委や九州電力の評価に、藤井氏は我慢がならない。
◆九電の主張「不適切」
 「たまたまギリシャの論文で、カルデラ噴火前の最終期にはマグマが大量に堆積するとあり、九電はそれに引きずられた。規制委も悪のりした。まやかしの論理だ」。九電は2012年に出された論文に基づき、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の運転期間中に、カルデラ噴火が起きる可能性が十分に低い、とした。それを規制委も認めた。紀元前17世紀、ギリシャのサントリーニ火山で発生したカルデラ噴火の噴出物を分析した結果、噴火直前の100年間、地中のマグマだまりへ毎年0・05〜0・1キロ立方メートルのマグマが供給され、地表の隆起が発生していたと推定されるとの内容だ。九電はそれを根拠に、現状で大きな変化が見られないことから、「カルデラ噴火直前の状態ではない」と主張。これに、藤井氏は異論を唱える。「論文は、サントリーニ火山についての研究であり、カルデラ一般に広げることはできない。マグマが供給されても地表の隆起が起こらない可能性もある。公表された論文に対し、反論が出るまで何十年もかかるケースもあり、12年論文に反論がないから正しい、というのは不適切だ。噴火規模が大きくなると、ずっと前から予兆が分かるというのは幻想。規制委の田中俊一委員長も国会でそのような答弁をしたけど、それは違う」。藤井氏の反論は、続く。九電は、南九州のカルデラの平均的な噴火発生頻度を約9万年に1度と整理。ところが、阿蘇カルデラだと2万年、3万年、11万年とバラバラという。さらに、仮にサントリーニ火山を参考事例にすれば、同火山は3500年前(紀元前17世紀)前の噴火のほか、1万8000年前にもカルデラ噴火を起こしており、1万5000年間隔で起きていることになるわけだが、九電は、そのことに関しては一切触れていない、とも批判。川内原発から40キロ、桜島を含む姶良カルデラの噴火から約3万年が経過しているからといって、あと6万年大丈夫というのはあまりに危ない、と指摘する。「カルデラ噴火の切迫度が分からないので、原発を止めろとは言えない。ただ、リスクが残っていて科学的に安全だと言えないことを認めた上で、どうしても電力が必要で動かしたいのなら、そう言うべきだ。科学的に安全だとすべきではない」。
◆火山監視体制はぜい弱
 日本火山学会・原子力問題対応委員会(委員長=京都大の石原和弘名誉教授)は11月2日、規制委に火山影響評価ガイドラインの見直しなどを求める趣旨の提言をまとめた。規制委と火山学会との意見対立が深まる中、田中委員長は記者会見で「とんでもないことが起こるかもしれないということを平気で言わないで、学会をあげて必死になって夜も寝ないで観測し、わが国のために国民のためにがんばってもらわないと困るんだよ」と声を荒らげた。ただ、委員長が言うように、学者が努力すれば済むような現状なのだろうか。「米国、イタリア、インドネシア、フィリピンなどでは国の一元的な監視組織がある。地震火山庁みたいな。地球科学、火山ガス、地殻変動、地質などいろんな分野の研究者がいる。そこで、24時間監視にあたる技術職員がいる。そういう機関がある。日本にだけない。気象庁のいわば素人集団が監視し、大学の研究者もバラバラ。火山をやるのにこういう観測装置が必要だというと、それぞれが買う。効率もよくない。言ってきたが、変わらない。気象庁のデータも、近年まであまりしっかりしたものがなかった」。巨大噴火の監視、研究体制の強化の必要性について、規制委と火山学会の問題意識は同じだ。両者の徹底的な議論を通じ、火山大国の日本が、よりよい方向に向かってほしいのだが。

*1-2:http://qbiz.jp/article/50250/1/
(西日本新聞 2014年11月20日) 規制委、火山学会に再度反論 「国が受け止めを」指摘も
 原子力規制委員会の田中俊一委員長は19日の会見で、日本火山学会の原子力問題対応委員会が規制委のガイドライン見直しを求めていることについて「非常に荒っぽい話だ」と、あらためて反対の姿勢を示した。火山学会は、規制委のガイドラインがカルデラ噴火の前兆が把握可能との前提でつくられていることに関して「現在の知見では予知は困難」と問題視。これに対し、田中委員長は「川内原発ではカルデラ噴火を検討した結果、ここ30、40年ではそういう状況には至らないと判断をした」と訴えた。一方、田中委員長は「火山学会の方も、単なる原子力だけではなく、国の存続に関わる問題であるということを、外に向かって言い始めていると思う」と指摘。カルデラを含む巨大噴火への対応については「国がきちっと(火山学会の意見を)受け止めなければならない」と話した。

*1-3:http://qbiz.jp/article/50655/1/
(西日本新聞 2014年11月27日) ルポ・噴煙やまぬ阿蘇中岳 降り続く灰、すべてが黒一色に
 火山活動が活発化している熊本県・阿蘇山の中岳は、26日も小規模な噴火を繰り返した。火山灰を含む噴煙が活動中の第1火口から噴き上げ、風に流れて、辺りの山々に降灰をもたらした。記者は、中岳と尾根続きの高岳周辺を歩き、その「黒い風景」を見た。午前9時すぎ、標高900メートルにある高岳登山口の仙酔峡(阿蘇市)は灰が降っていた。見上げると、中岳も高岳も霧の中にある。それも、黒い霧だ。山上からの眺めは「黒い雲海」になっているだろう。中岳火口から2〜3キロ離れた仙酔尾根に足を踏み入れる。尾根道は、倒れかかったススキで半ば隠れていた。葉に積もった火山灰が前夜の雨で重さを増し、しなってひれ伏している。足元の溶岩に積もった灰は、雨水で泥状になり、べっとりと靴を重くする。雲に入り、標高1200メートル(7合目)付近で雲海を抜けると、視界がぱっと開けた。右手に、中岳の噴煙が渦を巻くように立ち上っている。ヘルメットがパサパサ鳴る。服に無数の染みが付く。風下側の仙酔尾根を火山灰が襲っていた。口の中で、歯がすれ合うたびに、絶えずジャリジャリと音を出す。噴火の噴出物、恐らく火山灰が口に入るのだろう。これまで降り積もった灰の上に、今日も新しい灰が降る。正午近く、仙酔峡に下りた。3時間足らずの間に、登山口に置いていた車の窓は灰をかぶって真っ黒になっていた。活動はこれから本格化するのか、静まるのか−。
◆噴煙一時1000メートル 95年以来の規模
 福岡管区気象台は26日、熊本県・阿蘇山の中岳第1火口で小規模の噴火が継続していると発表した。同日午前9時には噴煙の高さが千メートルに達した。継続的に多量の噴煙が出ており、気象台によると、1995年以来の規模の噴火という。気象台によると、火口縁のカメラでは、高温の噴出物が炎のように見える火炎現象を断続的に観測したほか、火口縁内に飛散する噴石も見られたという。噴火による降灰は大分県豊後大野市(東約40キロ)、熊本県山都町(南約30キロ)などでも確認されたという。地殻変動も確認されており、気象台は「マグマだまりが膨らんでいる可能性がある」と指摘している。阿蘇山は8月の小規模噴火を受けて、噴火警戒レベルが1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げられた。阿蘇市は火口から半径約1キロの立ち入りを禁止している。気象台は現段階では警戒レベル3(入山規制)への引き上げは検討していないという。

<再稼働反対について>
*2-1:http://mainichi.jp/select/news/20141112k0000e040181000c.html
(毎日新聞 2014年11月12日) 川内原発:1400人が異議申し立て
 原子力規制委員会が新規制基準に適合していると判断した九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の原子炉の設計変更許可について、再稼働に批判的な立場の計約1400人が行政不服審査法に基づき許可の取り消しを求める異議申し立てをした。規制委が12日、発表した。川内原発の許可への異議申し立ては初めて。規制委は今後、内容の審理をする。

*2-2:http://qbiz.jp/article/49594/1/
(西日本新聞 2014年11月11日) 【川内再稼動】(3)九電 安定経営へ「玄海も」
 「実際に動くまで気は抜けない」−。川内原発の再稼働の地元同意手続きが完了した今も、九州電力社内では緊張感が渦巻く。再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査はまだ完全に終わっていない。その先には設備の使用前検査も残る。「手抜かりでもあれば、再稼働が後ずれしかねない」(九電関係者)。九電が昨春の電気料金値上げに際し想定した川内原発の再稼働時期は昨年7月。しかし、「世界最高水準」を掲げる規制委の審査は長期化。申請から約1年2カ月後の今年9月に新規制基準への適合が認められたものの、再稼働時期は想定より大幅に遅れている。九電には、2011年夏の苦い記憶も刻まれている。玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働に向け地元同意手続きを進めたのに当時の民主党政権が原発の安全検査を実施すると唐突に表明。自社の「やらせメール問題」発覚もあり、再稼働は一気に遠のいた。「何があるか分からない」。九電関係者は当時のことを思い起こしつつ、こう気を引き締める。原発全6基の停止で、かつて「九州ナンバーワンの安定企業」とうたわれた九電の経営は様変わりした。火力燃料費がかさみ、14年3月期まで3年連続の最終赤字。昨春は33年ぶりとなる電気料金の抜本値上げに踏み切ったが、原発が想定通りに動かず、燃料費がカバーできない状態が続く。債務超過が現実味を帯び始めた今夏は、日本政策投資銀行から1千億円を調達する資本増強策も余儀なくされた。料金値上げに伴う経費削減で、一般社員の基本給は昨年度から平均5%カット。退職金と企業年金の給付水準を将来的に3割程度減らす制度も来年度に導入する方針だ。社員からは「生活が心配」との声も上がる。料金の再値上げは政府の意向に反して景気の足を引っ張りかねないこともあり、踏み切れないまま今に至る。「経営安定化には原発の早期再稼働を目指すしかない」(幹部)というのが九電の現状だ。川内1、2号機の再稼働にめどが立ち、九電の最優先課題は規制委の審査が大詰めを迎えた玄海3、4号機に移る。この2基が動かないと収支が安定しないからだ。川内の前例が「ひな型」となるため、玄海の今後の審査手続きはペースアップが期待できる。しかし、審査の先に待ち構える地元同意手続きが、川内のように円滑に進むかは不透明だ。九電は、玄海でも立地自治体の佐賀県と玄海町に「地元」の範囲を限りたいのが本音だ。だが、玄海原発から最短12キロの佐賀県伊万里市が立地自治体並みの権限を求めており、原発30キロ圏の自治体で唯一、原子力安全協定を結べていない。塚部芳和同市長は「安全協定を締結しないままの再稼働には反対」と公言している。九電は古川康同県知事の調整力に期待を寄せるが、やらせメール問題の“後遺症”が懸念され、強引なやり方は批判を招きかねない。次なる再稼働をめぐっては波乱含みの展開も予想される。

*2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/130270
(佐賀新聞 2014年11月28日) 玄海原発、審査大詰め 残り52項目、年明け完了か
 九州電力は27日、原子力規制委員会による新規制基準の適合性審査で、玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の指摘事項19項目について回答し、規制委側から了承を得た。残りは52項目となり、審査は最終段階を迎えた。玄海原発をめぐっては、すでに地震・津波の審査は完了し、この日はプラント(設備)審査があった。これまでにさらに詳しいデータの提出や、災害時の対応手順などを提示するよう求められていた。審査を担当する規制委の更田豊志委員は「いくつかの項目が残されているものの、およそ数えられるほどになってきた」と最終段階に入ったという認識を示した。今後の見通しについて九電の中村明上席執行役員は、スタッフの体制を挙げて「川内原発に集中している。川内が済み次第、速やかに玄海の審査をしてもらうべく準備する。今後、どの程度の時間がかかるかははっきり言えない」と説明した。審査後、中村氏は「ほとんどの項目を川内原発の審査で答えているので、玄海特有のものを答えていくことになる」と述べ、年内の終了は困難との見通しを示した。

*2-4:http://mainichi.jp/select/news/20141128k0000m040143000c.html
(毎日新聞 2014年11月28日) 原発再稼働差し止め:却下決定「再稼働あり得ない」指摘も
 滋賀、大阪、京都3府県の住民計178人が関西電力に対し、福井県の大飯原発3、4号機と高浜原発3、4号機の再稼働差し止めを求めた仮処分申請で、27日に大津地裁が出した却下の決定は、事故対策などが進んでいない現状を指摘した上で仮処分の緊急性がないと判断した。住民側は、裁判所の認識と再稼働に向けた実際の動きの「ずれ」を批判する一方で、避難計画策定の遅れなどへの言及を一定程度評価した。住民側は「事故で琵琶湖が放射能汚染されれば健康被害は計り知れない」などと主張。関電は「安全性は十分確保されている」として却下を求めていた。決定は、4原発について「事故に対応する組織や地元自治体との連携・役割分担、住民の避難計画などが何ら策定されていない」と指摘。「これらの作業が進まなければ再稼働はあり得ず、原子力規制委がいたずらに早急に、新規制基準に適合すると判断して再稼働を容認するとは到底考えがたい」とした。27日午後に記者会見した住民側代表の辻義則さん(67)は、早急な再稼働を否定した決定理由について「両原発は近く再稼働の前提となる原子炉設置変更許可が認められると見込まれており、社会の一般的な認識に反する」と批判した。一方、決定が避難計画の策定作業などが進まなければ再稼働はあり得ないとしたことを「再稼働にまい進する政府・電力会社の姿勢に対する不信と批判」と評価。住民側代理人の井戸謙一弁護士(60)は「常識的に考えれば、こんな状態で再稼働は容認できないという裁判所のメッセージだ」と述べた。

*2-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/130271
(佐賀新聞 2014年11月28日) 玄海訴訟原告団、再稼働中止求める
■「危険性否定していない」
 関西電力の高浜原発3、4号機(福井県高浜町)と大飯原発3、4号機(同県おおい町)の再稼働差し止めの仮処分申し立てを却下した大津地裁の決定に対し、九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)の操業差し止め請求訴訟の原告団は27日、「決定は原発の危険性を否定していない」として、電力会社に再稼働しないよう求める声明を出した。声明では、原発の再稼働が差し迫っていないのが却下の理由になったことや、住民の避難計画も策定されていない実情を示し、「決定は簡単に原発の安全性が認められる状況にはないことを示している」と指摘した。原告団長の長谷川照・元佐賀大学長は「5月の運転差し止めを認めた福井地裁判決と大津地裁の決定は同じ考えに基づいている印象。再稼働させないための良い環境が整いつつある」と述べた。


PS(2014.11.30追加):自然エネルギーの買い取りを拒否した九州電力は、*3のように、総選挙の公示を控えて、「火力発電所のトラブルなどで需給が切迫する恐れ」を理由に冬の節電要請を始めた。これにより、半官半民の地域独占企業の技術進歩の遅れと顧客志向のなさが白日の下に晒されているわけだが、このようなことを繰り返してきたため、九州の消費者は既にガスストーブや石油ストーブを再購入して電力離れを進めた。

*3:http://qbiz.jp/article/50889/1/ (西日本新聞 2014年11月30日) 12月1日から冬の節電要請期間 九州電力管内 来年3月までの平日
 九州電力管内で12月1日、冬の節電要請期間が始まる。数値目標を設けない冬の要請は3年連続で、期間は来年3月末までの平日(年末年始を除く)。九電は原発全6基の停止下でも安定供給に必要な供給力を確保するが、不測の事態に備え「無理のない範囲での節電」を呼び掛ける。九電管内の今冬の需給見通しは、原発停止が続いたまま2011年度並みの厳寒を迎える前提だと来年1、2月の供給予備率は3・0%。他電力からの融通などで最低限必要とされる3%は確保したが、火力発電所のトラブルなどで需給が切迫する恐れがある。川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)が再稼働すれば、予備率は大幅に上昇するが、再稼働時期は来年2月以降になる公算が大きい。節電要請の対象時間帯は午前8時〜午後9時。冬の電力使用量は午前8〜11時と午後5〜8時の2回、ピークがあり、ここで空調温度の引き下げなどに取り組めば効果が大きい。 

| 原発::2014.10~2015.3 | 04:03 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.11.28 社会進出を果たした女性をステレオタイプに愚弄する記事は、名誉棄損かつ人権侵害であって、表現の自由、言論の自由のらち外である。そのため、単に見識が低いだけで公益性はない。 (2014.11.29に追加あり)
   
                     この事件の経緯
(1)産経新聞前支局長の朴大統領名誉毀損事件の概要
 *1-1、*1-2に書かれているように、2014年8月3日に産経新聞のウェブサイトに掲載された記事で、韓国の朴槿恵大統領の名誉を毀損したとして情報通信網法違反(名誉毀損)で在宅起訴された産経新聞の加藤前ソウル支局長(48)に対する公判がソウル中央地裁で開かれ、検察が起訴状の要旨を朗読したところ、加藤前ソウル支局長は「①大統領を誹謗する意図は全くない」「②韓国には深い愛情と関心を持っている」「③韓国国民の朴大統領への認識をありのままに日本の読者に伝えようとしたものだ」と述べたそうだ。

 しかし、産経新聞のウェブサイトの内容は、客船セウォル号が沈没した2014年4月16日に、「朴大統領の所在が7時間にわたって連絡がとれず、その間、元側近の男性と密会していた」という虚偽の噂を長期間掲載したもので、韓国紙・朝鮮日報のコラムを紹介した形をとりつつ、さらに証券街の関係筋の話として「朴大統領と男性の関係に関するものだ」と強調して記載したものである。

 しかし、メディアが、①増幅した虚偽内容を記載し、名誉棄損で訴えられた時には誰かの話として免罪の理由にする ②政治家の批判は、権力に抗する表現の自由、言論の自由の範囲内だとして逃げる のは、私も週刊文春に嘘記事を書かれて訴訟した時、同じ反論があったので経験済みであり、ステレオタイプの逃げ方だが、日本の裁判所も、「表現の自由、言論の自由は、人権侵害・名誉棄損・侮辱に優先しない」という判決を出している。また、これは、メディアの本物の表現の自由、言論の自由の使い方ではなく、こんなことしか書けないのを、日本のメディアは恥ずかしくないのだろうか。

(2)朴槿恵大統領が「重要な時に男性と私的な密会をしていた」という嘘記事は、公益にあたるか
 *2のように、韓国の検察が、「コラムの内容は客観的な事実と異なり、大統領を誹謗した」と主張したのに対し、産経新聞の加藤前ソウル支局長は、「誹謗する意図はなく、報道は公益性がある」と主張する構えで、「①誹謗中傷の意図があったか」と「②公益性が認められるか」が争点になる。

 このうち、①の「誹謗中傷の意図があったか」については、子どもではあるまいし、プロの記者と報道機関であれば、「誹謗中傷の意図はないのに誹謗中傷になってしまった」などという言い訳は無用であり、産経新聞という組織と記者なら、そのくらいの見識と判断力を持って行動するのが当然である。

 また、②の「『朴大統領の所在が7時間にわたって連絡がとれず、その間、元側近の男性と密会していたとの噂がある』という虚偽の記事を長期間にわたって産経新聞のウェブサイトに掲載し続けたことは公益に当たるか」という問題については、公益に当たる有用な情報だと考える人は日本人でも少ないし、そのような侮辱的行動は日韓双方にとって有害であり、独身女性と言えば「重要な時に男性と私的な密会していて仕事が疎かになった」などと報じるのは、女性蔑視を利用したセクハラを含む批判である。

(3)朴槿恵大統領の評判を落とす目的の誹謗中傷でなければ、何が目的だったのか
 この件に対し、産経新聞は「朴槿恵大統領の意思について、今後の公判で確認する必要がある」「朴槿恵大統領が加藤前支局長の処罰を望むのか」などが明らかにされていない “被害者”の意思不明の異例の名誉毀損裁判としているが、このような嘘記事を書かれて朴槿恵大統領が喜んでいるわけがなく、朴大統領は考慮して自分の発言を控えているにすぎないだろう。それを、朴大統領自身は産経新聞の加藤前ソウル支局長のコラムを喜んでいるなどと考えているとしたら、セクハラの定義すらわかっていない異様な報道機関であり、猛烈な反省が求められる。

 これに対し、大統領府の尹斗鉉(ユン・ドゥヒョン)広報首席秘書官が、2014年8月上旬、「民事、刑事上の責任を最後まで問う」と表明し、11月に国会で大統領府の金淇春(キム・ギチュン)秘書室長が「言論、出版の自由はとても重要だが、韓国憲法21条にある通り、虚偽によって他人の名誉を侵害する自由はない」と主張しているのはまことに尤もであり、日本でもそうである。

 そのため、*3-2のように、産経新聞は、「保守系団体のメンバーが、法廷で大声をあげて退廷させられた」「加藤前支局長の乗った車に生卵を投げつけた」として、怒っているのは保守系団体のメンバーだと決めつけて書いているが、短時間で「怒っているのは保守系団体のメンバーだけだ」と確認できたわけがない。そして、「大統領の名誉が優先か、言論・報道の自由が守られるべきか」という誤った争点に導こうとしているが、言論の自由や報道の自由は真実の情報であって初めて価値のあるものであるため、この争点の設定の仕方自体が合理化を図るための意図的なものである。

 従って、侮辱する記事を書いて反省のかけらもない産経新聞に対し、「加藤達也、韓国国民に謝れ」「加藤を拘束せよ」などと叫んで前支局長非難するプラカードを掲げたり、加藤前支局長の乗った車に卵を投げつけ、ボンネットに横たわり、「謝罪」を迫る紙を車体に貼り付けた気持ちはよく理解できる。しかし、このような人間に卵を投げつけてはもったいないので、牛か豚の糞でよい。

(4)これは日韓関係の問題ではなく、産経新聞の問題である
 *2のように、「この問題を巡り、日本政府は韓国政府に対し、『報道の自由や日韓関係の観点から、極めて遺憾で深く憂慮している』との立場を伝えた」そうだが、本来なら、ここで日本政府は関係がなく、これはあくまで産経新聞の問題である。

 しかし、あまりにも産経新聞に偏り、迅速な日本政府の発言を見ていると、都合の悪い朴大統領の発言力を低下させたり、排除したりする意図があって、そのために産経新聞を使ったかのように見えた。

 なお、*2には、国際的なジャーナリストの団体“国境なき記者団”も「報道機関が政治家の行動に疑いを持つのは普通のことだとして、韓国政府の対応を批判している」と書かれているが、民主主義の国でメディアが真実の報道をしなければ、その疑いが政治を正しい方向に導くことは決してないのを、ジャーナリストは肝に銘じるべきである。

*1-1:http://mainichi.jp/select/news/20141127k0000e030179000c.html
(毎日新聞 2014年11月27日) 韓国:産経前支局長が無罪主張 朴大統領名誉毀損の初公判
 【ソウル澤田克己、大貫智子】産経新聞のウェブサイトに掲載されたコラムで朴槿恵(パククネ)大統領の名誉を毀損したとして、情報通信網法違反(名誉毀損)で在宅起訴された同社の加藤達也前ソウル支局長(48)に対する公判準備手続きが27日、ソウル中央地裁で開かれた。検察が起訴状の要旨を朗読し、被告による起訴内容の認否も行われた事実上の初公判。加藤前支局長は「大統領をひぼうする意図は全くない」と述べ、起訴内容を否認し無罪を主張、全面的に争う姿勢を示した。法廷で加藤前支局長は用意した紙を読み上げ「韓国には深い愛情と関心を持っている」と強調。「韓国国民の朴大統領への認識をありのままに日本の読者に伝えようとしたものだ」と、ひぼうする目的だったとする検察側の主張を否定した。この日は日韓の記者ら約70人が傍聴し、座りきれず立ったままの人も多かった。開廷直後に男性が「大韓民国国民に謝罪しろ」と大声で叫び、連れ出される場面もあった。次回公判は12月15日の予定。コラムは、8月3日にウェブサイトに掲載された。客船セウォル号が沈没した4月16日、朴大統領の所在が7時間にわたって不明で、その間に男性と密会していたとのうわさがあるという韓国紙・朝鮮日報のコラムを紹介。さらに証券街の関係筋の話として、うわさを「朴大統領と男性の関係に関するものだ」と書いた。検察は起訴状で、コラムで名指しされた男性と朴大統領を被害者だと指摘。「被告は、被害者たちをひぼうする目的で、情報通信網を通じて公然と虚偽の事実を広めて被害者たちの名誉を毀損した」としている。加藤前支局長は10月1日付で東京本社勤務の辞令が出たが、韓国当局が8月から出国を禁じているため帰国できずにいる。弁護側は出国禁止措置の解除を要請しているが、公判中も出国禁止措置を継続することができる。このため今後も相当の期間、帰国できない可能性が高い。韓国の法曹関係者によると、名誉毀損事件の1審は通常、初公判から判決まで8カ月程度かかる。上告審まで争った場合、最終的に決着がつくまでに1年以上が見込まれる。さらに今回は「政治的な案件なので普通よりも長引く可能性がある」という。

*1-2:http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00281586.html
(FNN 2014.11.27) 産経新聞前ソウル支局長、事実上の初公判で罪状を否認
 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の名誉を傷つけたとして、在宅起訴された産経新聞の前ソウル支局長の事実上の初公判が、27日午前に行われ、前支局長は罪状を否認した。加藤達也前支局長(48)を乗せた車は、27日午前、裁判所をあとにしたが、市民団体が卵を投げつけるなどの混乱が生じた。しかし、裁判は粛々と進行し、加藤前支局長は、はっきりと「大統領個人を誹謗(ひぼう)する趣旨はない」と起訴事実を否認した。この裁判は、産経新聞の加藤達也前ソウル支局長が、セウォル号事故当日の朴槿恵大統領の対応について書いたコラムが、「元側近の男性と会っていたのではないか」との虚偽の事実で、朴槿恵大統領の名誉を傷つけたとして、情報通信網法の名誉毀損(きそん)の罪で、在宅起訴されたもの。午前10時から始まった裁判は、日本や韓国のマスコミが法廷を埋め尽くす熱気に包まれ、人定質問や証拠申請などの手続きが行われた。そして、開廷から1時間余りたって、意見陳述を求められた加藤前支局長は、「セウォル号事故当時の大統領をめぐる現象を、ありのままに伝えるもので、朴大統領個人を誹謗する趣旨はありません。法と証拠で、厳正に裁判が進行されることを望みます」などと述べた。裁判では、記事が大統領の名誉を傷つける目的で書かれたものか、記事の真実性などが主な争点となるが、前支局長側は、記事には公益性があり、また、男女関係を断定的に書いたわけではないなどと主張する方針。報道の自由をめぐり、批判が相次ぐ中、起訴を強行。日韓関係にも影を落としたこの裁判は、長期化が予想されるが、記事の公益性や趣旨をめぐり、双方の攻防が繰り広げられることになる。

*2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141127/t10013517671000.html
(NHK 2014年11月27日) 産経新聞前ソウル支局長 27日に初公判
 韓国のパク・クネ(朴槿恵)大統領の名誉を傷つけたとして在宅起訴された産経新聞の前ソウル支局長の初公判が27日、ソウルの裁判所で開かれ、前支局長は起訴された内容を否認し、争う姿勢を示す見通しです。産経新聞の加藤達也前ソウル支局長(48)はことし8月、産経新聞のウェブサイトに掲載されたコラムで、パク・クネ大統領が4月の旅客船沈没事故当日、7時間にわたって所在不明だったと伝えた韓国の新聞を引用するとともに、特定の男性とのうわさなどを紹介し、インターネットを使って名誉を毀損した罪に問われています。27日午前、ソウル中央地方裁判所で開かれる初公判で、前支局長は起訴された内容を否認し、裁判で争う姿勢を示す見通しです。裁判では「コラムの内容は客観的な事実と異なり、大統領をひぼうした」と主張する検察側に対し、前支局長は「ひぼうする意図はなく、報道は公益性がある」などと主張する構えで、ひぼう中傷の意図があったかや、公益性が認められるかが争点になるとみられます。この問題を巡り、日本政府は韓国政府に対して「報道の自由や日韓関係の観点から、極めて遺憾で深く憂慮している」との立場を伝えたほか、国際的なジャーナリストの団体「国境なき記者団」も「報道機関が政治家の行動に疑いを持つのは普通のことだ」として、韓国政府の対応を批判しています。

*3-1:http://news.livedoor.com/article/detail/9512463/ (産経新聞 2014年11月27日) 産経前支局長公判 “被害者”朴大統領の意思は…不明のまま異例の名誉毀損裁判
 【ソウル=藤本欣也】産経新聞の加藤達也前ソウル支局長の弁護側は27日、名誉を毀損されたと検察側が主張する朴槿恵(パク・クネ)大統領の意思について、今後の公判で確認する必要があるとの見解を提示した。加藤前支局長の処罰を望むのかなど、朴大統領自身の被害者としての考えが明らかにされていないためだ。朴大統領に対し、証人としての出廷や意見書の提出などを求める選択肢があるが、弁護側は検察側の対応も見極めながら法廷戦術を決定する。今回のケースが一般の名誉毀損と異なるのは、被害者とされる朴大統領が、問題となっている加藤前支局長のコラムについてどう考えているのか、また、加藤前支局長の処罰を望むのか否かなどに関して全く分からない点だ。起訴状にも一切触れられておらず、検察側は、被害者の意思が分からないまま名誉毀損での起訴に踏み切った形となっている。こうした異例の事態が起き得るのは、韓国では法律上、第三者が名誉毀損で告発できるためだ。日本を含め多くの国は、被害者本人の告訴がなければ名誉毀損で起訴できないという親告罪を適用している。今回のケースでは3つの市民団体が、加藤前支局長のコラムによって朴大統領の名誉が毀損されたとしてソウル中央地検に告発したのが契機となった。コラムに対する朴大統領側の見解としては、大統領府の尹斗鉉(ユン・ドゥヒョン)広報首席秘書官が8月上旬、「民事、刑事上の責任を最後まで問う」と表明。11月には国会で大統領府の金淇春(キム・ギチュン)秘書室長が「言論、出版の自由はとても重要であるが、韓国憲法21条にある通り、虚偽によって他人の名誉を侵害する自由はない」と主張している。弁護側はこれらに関し、「あくまでも大統領府という国家の一機関の見解にすぎない。被害者は大統領府ではなく朴大統領個人」との立場を取っている。今後の公判では、朴大統領の意思をどのように確認するのかが焦点の1つとなる。韓国の司法は、国内世論の動向に敏感で影響を受けやすい。弁護側は、検察側の対応のほか、世論の動向も考慮に入れながら判断することにしている。韓国の名誉毀損では、被害者が処罰を望まない意思を示した場合、裁判所は公訴を棄却し公判は終結することになる。

*3-2:http://www.sankei.com/world/news/141127/wor1411270032-n1.html
(産経新聞 2014.11.27) 一時騒然、退廷した前支局長の車に生卵投げつける 韓国保守系団体
 【ソウル=名村隆寛】大統領の名誉が優先か、言論・報道の自由が守られるべきか。産経新聞10+ 件の加藤達也前ソウル支局長が朴槿恵(パク・クネ)大統領の名誉を毀損(きそん)したとして、罪を問われた裁判の事実上の初公判が27日、開かれた。保守系団体のメンバーらは、法廷で大声をあげて退廷させられたほか、加藤前支局長の乗った車に生卵を投げつけるなど、裁判10+ 件所の内外は一時騒然とした。ソウル中央地裁には、日韓の報道関係者に加え、産経新聞を批判する保守系団体のメンバーら100人以上が集まった。外国人記者を法廷に立たせて、名誉毀損の罪に問うという異例の裁判。午前10時の開廷を前に加藤前支局長は入廷。約30席の傍聴席はすでに満席で、約40人が立ったまま傍聴した。韓国でも裁判所の敷地内の示威行為は禁止されている。しかし、保守系団体のメンバーらは傍聴席に入り、「加藤達也、韓国国民に謝れ」「加藤を拘束せよ」などと叫び、前支局長非難するプラカードを掲げるなどして、複数の男性が退廷を命じられた。加藤前支局長は裁判官や検察の発言にメモを取りながら聞き入り、公判の最後にはっきりした口調で意見陳述を行った。公判は1時間あまりで終了したが、団体メンバーらは裁判10+ 件所を出ようとする加藤前支局長の乗った車を取り囲み、複数の卵を投げつけ、ボンネットに横たわるなどして通行を妨害。「謝罪」を迫る紙を車体に貼り付けて気勢を上げた。


PS(2014.11.29追加):*4のように、韓国の原発付近で甲状腺がんを発症した223人が集団提訴したそうだ。日本ではこじつけのような解説が横行しているが、今後のためには、日本でも泣き寝入りしてうやむやにするのではなく、本当の因果関係を訴訟で明確にした方がよいと考える。

*4:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141128-00000031-xinhua-cn (YAHOOニュース 2014年11月28日) 韓国の原発付近住民、甲状腺がん患者223人が集団提訴―中国メディア
 27日付の韓国聯合ニュースによると、韓国各地の原子力発電所付近で生活する住民のうち、甲状腺がんを発症した223人が27日、韓国水力原子力発電会社を相手取り、慰謝料を求める訴えを提起した。環球網が伝えた。韓国では10月にも、釜山市機張郡の古里原発付近で生活する住民らが同社を相手に裁判を起こしている。釜山市の8つの市民団体が古里、月城、韓光、韓蔚原発から8~10キロ以内で3年以上生活している住民を集めて集団提訴した。裁判所は一審で、同社に1500万ウォンの支払いを言い渡したが、原告側は患者の配偶者に200万ウォン、子どもに対しても1人当たり100万ウォンの賠償も求め、上訴した。釜山市環境運動協会の崔秀英会長は「これほど多くの住民が集団提訴するとは思わなかった。原発付近の住民が受ける影響は想像以上だ」と話している。

| 民主主義・選挙・その他::2013.12~2014.11 | 12:39 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.11.22 消費税増税については、「増税続行か、取りやめか」を争点にすべきである。何故なら、消費税増税と社会保障をセットで論じたのは消費税増税を目的とする戦略であり、財政再建や社会保障改革は、消費税増税とは関係なく行えるものだからだ。 (2014.11.23、28に追加あり)
(1)「財政再建のためには消費税増税か福祉の切り捨てが必要」という仮説の立て方が間違っている
1)財政再建には消費税増税が必要というのは、嘘である
    
事故処理、汚染水処理、交付金、最終処分など原発の無駄遣い 土木工事の無駄遣い

 *2に、「安倍首相が、衆院解散と消費税率10%への引き上げを1年半延期することを表明し、2015年度税収は大きく落ち込むので、社会保障費など歳出面への影響が不可避になった」と記載されている。しかし、私が、このブログの2012年12月18日の「年金制度改革について」や2013年7月19日の「年金・医療・介護などの社会保証について」をはじめ、「消費税増税問題」や「年金・社会保障」のカテゴリーに何度も書いているように、年金や医療・介護・子育てなどの社会保障費は消費税からしか支出してはいけないわけではなく、国民を苦しめない代替案もあり、国民との契約である社会保障を護ることは可能であるため、そうすべきだと考える。

 また、政府は、国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2020年度までに黒字化すると言っているが、不況になったと言っては「カンフル剤」と称する投資の意味のない公共事業に支出していたのでは、経済効果が小さく、国民生活が侵害された上に、プライマリーバランスも黒字化しない。また、そのような中で、原因分析も行わずにバラマキを行っている消費刺激策は生産性の低いカネの使い方と言っても過言ではない。

2)国会議員が“身を切る改革”をすれば、消費税増税が合理化されるのか
     
   消費税増税の結果はどうなったか          人口10万人あたり国会議員数
 *3には、「①消費税増税と政治家自らが身を切る改革としていた衆議院議員の定数削減という3党合意、国民との約束はどうなるか」 「②解散や選挙で時間とお金をかけている時ではない。消費税は計画通りに引き上げるべきだ」という主張が掲載されている。

 上の①ついては、私は、消費税増税を永遠に凍結すべきだと考えている。そして、これによって財政再建が遠のくという意見については、「カネは、単位当たりの生産性を高くして、無駄なく使え(現在、そうなっていない)」というのが答えだ。

 また、「国会議員が“身を切る改革”をすれば消費税増税が合理化される」というのは甘い。何故なら、人口10万人あたりの国会議員数は、スウェーデン3.83人、デンマーク3.29人、イギリス2.28人、フランス1.49人、ドイツ0.81人、韓国0.62人、日本0.57人、アメリカ0.17人であり、民主主義先進国のヨーロッパや韓国と比較して日本の国会議員数が多すぎるということはなく、逆に国会議員数を減らしすぎると、小さな政党や人口の少ない地域の意見が反映されにくくなり、民主主義国家としての政治の力が落ちて、自らの政策を通したい官僚にとって都合がよくなるだけだからである。その上、国会議員数を100~200人減らしたからといって、民主主義の経費を50~100億円節約するだけであり、何兆円もの消費税増税を国民に課す根拠にはならないのだ。

 さらに②については、人々が豊かで幸福になることが重要なのであり、「消費税増税」や「経済成長率の上昇」「インフレ率の上昇」が重要なわけではないが、「どういう国を作れば国民が豊かで幸福になれるか」という問いに関する考察がなく、「消費税増税以外に方法はない」という消費税増税のための論理がまかり通り、実際には存在する他の解決法が検討すらされていないため、この議論が必要である。

(2)消費税増税と景気について
     
   この2年間に起こったこと            家計費における各支出割合
1)インフレ政策と消費税増税が国民に与えた結果について
 *1-1のように、内閣府が2014年11月17日に発表した7~9月期の実質国内総生産(GDP)は、前期比0.4%減、年率換算1.6%減で、消費増税後の個人消費停滞が長引き、2四半期連続でマイナス成長になったそうだが、これは、やってみなくても当たり前のことである。

 何故なら、現在、我が国のGDPの60%は個人消費で、それも高齢者の割合が高くなっているため、物価上昇、消費税増税、年金削減は、消費を抑制する政策だからである。また、*1-4に、「誤算を強めたのは、大幅な円安なのに伸びない輸出」と書かれているが、我が国は、既に安い人件費を武器に世界の工場となって輸出する国ではないため、内需を疎かにして外需に頼るのはそもそも時代錯誤なのである。そのため、国内需要の抑制で、国内需要を満たすべき製品やサービス生産のための投資も抑制されたのであり、これは単なる反動減ではない。それは、家計費の支出割合を見れば、住居費・家具費・被服費・娯楽費などの支出時期を選べる支出割合が全国平均で25%弱と低いことからも明らかである。

 つまり、我が国の最も大きな問題は、時代の変化を読み、その時代の実態にあった政策を作ることのできない人が政策を作成していることなのだ。そして、景気回復の処方箋も、このような生活費の構造や価格弾力性の実態を知らず、調べてもいない人(多くは男性の政治家・行政マン・エコノミスト)が描いたものであるため、予定通りになど進まないのが当たり前なのである。

 なお、*1-2には、「日本経済において消費税増税後の消費回復が想定より遅れ、多くの民間エコノミストが2%前後のプラス成長を予想していたので驚きだ」とも書かれているが、実際には政府の消費税増税という意志とそれに従って経済予測を描いて見せた民間エコノミストやメディアの質と志の低さの問題である。それでも、「政府は法人減税や規制改革で成長戦略を加速すべき」「企業も生産性の上昇にあわせて賃金や配当の形で家計への還元を着実にすすめるべき」などとさらに企業側の治療法を示している。民間エコノミストがどういう形で責任をとるのか知らないが、仮に医師であれば、病気の原因や治療法を誤って患者の病気を治せなかったら、重大な責任を問われるところだ。

 また、*1-3のような「デフレ脱却」「脱デフレ」という言葉はよく耳にするが、賃金や年金の上昇率を超えるインフレ(物価上昇)は、全国民からこっそり税金を取って生活を苦しくさせているものであり、その資産や所得が移転される先は、政府や企業などの借金超過主体である。そして、これを指摘するメディアも民間エコノミストもあまりいないのは、彼らがこの巨大な虚構を作り上げることに協力しているからだ。

 さらに、政府は、景気刺激を口実に、一時的な「カンフル剤」としての公共事業を拡大させ続けてきたが、公共事業は東日本大震災の復興需要で十分に増えているため、未来に向けた街づくりを一生懸命やれば公共事業への支出は十分あり、景気浮揚のための一時的な「カンフル剤」などは生産性の低い無駄遣いにすぎなかったのである。

2)企業の63%が景気回復の遅れから再増税に否定的
 そのため、*1-5に書かれているように、帝国データバンクが10月末に実施した調査では、業績が比較的好調な大企業が集まる首都圏でも、消費税再増税に否定的な意見が6割を超えたそうだ。

(3)財政再建には消費税増税と社会保障削減が必要という仮説は正しいか
  
    消費税増税と税収・財政再建の関係               *6より
 *4-1では「政府が来年10月の消費再増税を先送りして、財政再建が一段と不透明になったので、増税分を財源に見込んでいた社会保障費の圧縮や無駄な歳出の削減を大胆に進めなければ、政府債務の膨張というツケを次の世代に回すことになる」と書かれており、これは消費税増税論者の典型的な論法だが、実際には、上の右側のグラフのように、前回の消費税増税時にも税収が増えているわけでもなく、財政再建に貢献して国債残高が減ったわけでもない。

 しかし、この「社会保障を削減せよ」という意見は、*4-2のように、経済諮問会議でも出され、安部首相も歳出抑制を指示しているのだが、「無駄遣いは社会保障なのか」という問いに答えるためには、役に立つ支出と節約できる無駄な支出の定義を明確に分ける必要があり、そのためには、(1)で書いた「どういう国を作れば国民が豊かで幸福になれるか」という命題に関する考察が必要なのである。

 そして、*4-3のように、「社会保障給付が108兆5568億円で過去最高になり、それに公費が投入されているから減らせ」というのは乱暴であり、私の代替案は、すでにこのブログに記載している。そして、このように消費税と社会保障を結び付ける論議が横行しているため、*4-4のように、日本医師会の副会長が「予定通りの消費再増税が国民との約束だ」と増税を求める見解を出す事態になっているわけだが、もともと消費税と社会保障は必然的に結びついているものではないのである。
 
(4)世代間抗争に持ち込んだのは、国民を分断して真の責任者が追及されないようにするためだ
1)年金積立金はどのようにして目減りさせられてきたか
 *5-3に「約130兆円ある公的年金積立金の運用における国内株式と外国株式の割合を倍増させ、合計5割程度にまで引き上げて、リスクを負って高収益を目指す」と記載されているが、厚生年金と国民年金の積立金運用を任されている「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」のような公的機関がこれまでやってきたことは、国民が責任を追及しない年金積立金でやりたい放題をやり、年金積立金を目減りさせてきたということで、(理由を長くは書かないが)その体質が変わったわけはない。

 そのため、このような公的機関が安全を無視してリスクをとれば、高収益より大損をする取引を行う可能性の方が高いため、大切な年金積立金は、元本割れを起こさないように、本来、80%以上を債権で運用するのが世界常識なのである。

 しかし、*5-3には、「今回の運用見直しは、低利回りの国内債券中心の配分では、物価上昇が進むと必要な年金資産を確保できなくなる恐れがある」と書かれており、年金資産の流入後、株式相場が落ち着いた後で運用により大損をしたらどうするかは考察されていない。つまり、年金積立金の権利者である国民を無視した議論なのである。

2)世代間抗争に落とし込んで責任回避する行政のずるさ
 このように展望のないやり方で失われてきた年金積立金は大きいが、*5-2のように、「世代会計が重要」「給付削減は若年者と将来世代には有利に」「小さな社会保障と自助努力への誘導を」という具合に、年金積立金の不足を世代間抗争に落とし込み、積立金不足を作った責任者は責任を逃れて、「今後の年金財政を維持するためには、収入(保険料)の引き上げか、支出(給付)の引き下げかのどちらかを実施しなければならない」と結論づけている。しかし、この手法は、現在の高齢者に対してのみ用いられるものではないため、現在の若者も、明日は我が身としてしっかり考えておくべきだ。

(5)不幸の源は何か、また、日本の民主主義は本物か
 *5-1に、30年以上にわたって日本政治を研究してきたカレル・ヴァン・ウォルフレン氏(日本に長く滞在したオランダ人ジャーナリスト、アムステルダム大学名誉教授)が、「看板政策であるアベノミクスのメッキが剥がれても、安部政権の失政は覆い隠され、このままでは日本に国家的危機が訪れる」「安倍政権がアピールする『官邸主導』の正体は、大メディアと官僚が作り上げた『虚構』だ」と指摘しているが、現在はそうであると私も思う。

 また、安倍首相がやっているのは、「決断を下したふりをし、日本に真の民主主義があると見せかけることである」というのも、今回の衆議院解散を見ても明らかだろう。日本の有権者は、メディアと官僚という、この国の意思決定を牛耳る「現状維持中毒者」の存在に気が付かなければならないというのもそのとおりで、ウォルフレン氏は、日本の政治に対して第三者の目で直視する論評を行った多くの本を出されているため、ここから先の考察は、主権在民の国である日本の有権者に任せたい。

<消費税と景気を関連づけた記事>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141117&ng=DGKKASFS17H0M_X11C14A1MM0000 (日経新聞 2014.11.17) 2期連続マイナス成長 7~9月年率1.6%減、個人消費回復鈍く 在庫調整で押し下げ
 内閣府が17日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.4%減、年率換算で1.6%減だった。4月の消費増税後の個人消費の停滞が長引き、2四半期連続のマイナス成長になった。これを受け、安倍晋三首相は18日、2015年10月に予定する消費税率10%への再引き上げを延期し、国民に信を問うために衆院を解散することを表明する。2四半期連続で設備投資が減ったうえ、在庫の取り崩しが成長率を年率換算で2.6ポイント押し下げた。個人消費の反発力が鈍かったうえ、輸出も力強さを欠き、在庫や住宅投資などのマイナス分を補いきれなかった。民間エコノミストの予想の中央値は前期比年率2.0%増だったが、それを大幅に下回った。名目GDPは前期比0.8%減、年率換算で3.0%減と、4~6月期に比べてマイナス幅が拡大した。国民の実感に近い名目ベースでみると、経済の落ち込みは7~9月期の方が大きい。GDPの6割近くを占める個人消費は、実質で前期比0.4%増と2四半期ぶりにプラス。ただ5.0%減だった4~6月期と比べると、反発力は鈍い。品目別では衣服やガソリンが伸びた一方で、消費増税前の駆け込み需要の反動が長引き、自動車や家電が落ち込んだ。住宅投資は前期比6.7%減と2四半期連続のマイナスだった。設備投資は前期比0.2%減と2四半期連続のマイナスになった。今年春に米マイクロソフトの基本ソフト「ウィンドウズXP」のサポートが終わり、1~3月期にパソコンの駆け込み需要が大きく出た反動からの立ち直りが遅れた。在庫投資は、増税後の消費落ち込みで企業が4~6月期に在庫を抱えた分、7~9月期は生産調整で在庫を取り崩す動きが出て成長率を押し下げる結果を招いた。調整が進んだことで、来期以降に企業活動が再び活発になる可能性もある。輸出は前期比1.3%増だった。米国や欧州連合(EU)向けが低迷したが、アジア向けは持ち直した。輸入は0.8%増。輸出から輸入を引いた海外需要の成長率への寄与度はプラス0.1ポイントになった。収入の動きを示す雇用者報酬は名目ベースで前年同期比2.6%増と、1997年4~6月期以来の高い伸びになった。ただ消費増税と物価上昇で、実質では前年同期比0.6%減になった。実質的な手取りの低迷が個人消費の足取りを鈍くしている。物価動向を総合的に示すGDPデフレーターは前年同期比2.1%上昇した。駆け込み需要があった1~3月期とその反動があった4~6月期の実質GDPの平均は実額で約530.0兆円。これに対し、7~9月期は522.8兆円と、1.4%減(年率換算で5.3%減)になった。経済の立ち直りが鈍く、7~9月は1~6月に比べてもマイナス成長になっている格好だ。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141118&ng=DGKKZO79835960Y4A111C1EA1000 (日経新聞社説 2014.11.18) 増税後の消費回復が遅れる日本経済
 4月に消費税率を5%から8%に引き上げた後の日本経済は、回復が想定よりも遅れているといわざるを得ない。内閣府が発表した7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質ベースで前期比年率1.6%減った。4~6月期に続き2四半期連続のマイナス成長である。多くの民間エコノミストが2%前後のプラス成長を予想していたことからも、驚きだ。東京市場では株価が大幅に下落した。振るわなかったのは、個人消費だ。7~9月期は前期比で増加に転じたとはいえ、小幅の伸びにとどまった。自動車など高額の耐久財の購入が手控えられた。天候不順の影響でレジャーなどへの需要が落ち、サービス消費も足踏みした。設備投資や住宅投資も減った。公共投資や輸出は持ち直したものの、実質経済成長率をプラスにするほどの力はなかった。しかし、景気の先行きを過度に悲観する必要はないだろう。マイナス成長の最大の要因は、在庫投資の大幅な減少だ。在庫投資の分を差し引けば、プラス成長を保つかたちだ。在庫が増えれば成長率を押し上げる。逆に在庫が減れば成長率を押し下げる。企業は7~9月期に、4月の消費増税後に膨らんだ在庫を減らした。在庫調整の進展により先行きの生産は持ち直す兆しがある。賃金総額を示す名目雇用者報酬の伸び率はほぼ17年ぶりの高さとなった。高水準の企業収益を背景に、企業が雇用・賃金を増やす好循環の動きは続いている。民間エコノミストの間では10~12月期以降の実質成長率はプラスに転じるとの見方が多い。安倍晋三首相は7~9月期のGDP統計を踏まえて10%への消費再増税の延期を決める意向だ。再増税の是非は10~12月期以降の景気の足どりを確認してから最終判断する手もあったのではないか。2四半期連続で実質成長率がマイナスになるなかで、いま再増税を決めるのが難しいのはたしかだろう。大事なのは、デフレ脱却に向けた好循環の動きを途切れさせないことだ。政府は法人減税や規制改革で成長戦略を加速すべきだ。企業も生産性の上昇にあわせ、賃金や配当の形で家計への還元を着実にすすめてほしい。

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141119&ng=DGKKASFS18H4Y_Y4A111C1EA2000 (日経新聞 2014.11.19) 脱デフレ優先、財政ゆがみ、首相、消費増税先送り表明 「雇用・賃金が重要」
 安倍政権の経済政策、アベノミクスが試練を迎えている。安倍晋三首相は18日、景気失速を防ぎ、脱デフレを確実にするために消費再増税を先送りすると表明したが、財政再建が遅れる危うさもはらむ。経済成長と財政再建、社会保障の安定という三兎(さんと)をどこまで追えるのか。日銀の金融緩和に支えられる形でアベノミクスのまきなおしを探る展開だ。「雇用が拡大し賃金が上昇し消費が拡大していく。2015年10月に消費税率を上げると個人消費が再び押し下げられる。税率を上げても税収が増えなければ元も子もない」。政権発足から2年近く。第1の矢である日銀の異次元緩和は円安株高を呼び、第2の矢である公共事業拡大は地方経済を刺激した。しかし、一時的な「カンフル剤」では、今年4月の消費増税による消費の冷え込みを乗り越えられなかった。7~9月の実質国内総生産(GDP)は年換算で523兆円。アベノミクスが始まった13年1~3月の水準に逆戻りした。首相が描くのは、デフレから抜け出して経済のパイを広げ、税収を自然と増やして財政再建をなし遂げる姿だ。起点となる脱デフレは失敗できない。増税や物価上昇による賃金の目減りで消費者心理が曇るのを目の当たりにした首相は「予定通りの増税は脱デフレを危うくする」と指摘した。増税先送りで15年度は1.5兆円、16年度は4兆円のお金が消費者の財布に残る。経済対策とあわせ個人消費を下支えし景気再浮揚を急ぐ構えだが、財政支出による「第2の矢」の印象はぬぐえない。第3の矢である成長戦略は、柱の法人減税は15年度からの実施が決まった段階。円安でも輸出は伸びず、生産が増えないから国内設備投資の伸びは鈍い。増税先送りや経済対策で成長と財政再建を両立する軌道に乗せられるかは別問題だ。

*1-4:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS17H14_X11C14A1EAF000/?dg=1
(日経新聞 2014/11/17) 誤算のマイナス成長 弱い消費、V字回復逃す
 7~9月期に2四半期続けてマイナス成長に落ち込んだ日本経済には、国内外の需要に大きな誤算があった。家計は4月に消費税率が上がって所得が目減りしたことで節約に走り、消費の足取りが鈍化。企業は海外生産拠点から海外市場に製品やサービスを直接出す体制を整え、輸出が伸びなかった。在庫調整の進展が成長率を押し下げた影響も大きく「V字回復」を実現できなかった。「7~9月はプラス成長に戻るだろう」。大幅なマイナス成長になった4~6月の国内総生産(GDP)発表後に広がっていた楽観的な見方は覆された。先週までに7~9月のマイナス成長を予測した民間調査機関はゼロ。前期比1%弱の伸びとみられた個人消費は0.4%増にとどまり、プラス予想が多かった設備投資は2四半期続けて減るなど、内需は民間の予想ほど振るわなかった。個人消費の「誤算」を招いたのは、物価の上昇だ。消費増税、円安による輸入品の値上がり、天候不順による野菜の値上がり。7~9月の消費者物価は持ち家の家賃にあたる分を除いて前年比で4.0%上がり、これを引いた実質賃金は2.5%減った。15年ぶりの高い賃上げや夏のボーナス増も物価の上昇分に追いつかない。外食への支出も減り、節約の意識がにじみ出た。17年ぶりに消費税率が上がったことで内需の落ち込みはそれなりに予想できた。「誤算」の度合いをより強めたのは、大幅な円安なのに伸びない輸出だ。2015年3月期は輸出企業を中心に過去最高の経常利益を見込む勢いだが、7~9月の実質輸出は前期比1.3%増にとどまる。08年のリーマン・ショックと1ドル=80円を超える円高は、経営者に国内生産に頼る危うさを刻みつけた。足元で生産や調達の海外移転を急速に進めているのが日本の輸出額の2割を占める自動車産業だ。今年は好調な北米市場への供給をメキシコなどでの生産で賄う。電子部品・デバイスの輸出向け出荷が7~9月に前年比6.0%増えたことを考えると、円安でも自動車輸出が伸びないことは大きな誤算だ。内外需の誤算は、政府に経済政策の見直しを迫る。内閣府が7月にまとめた14年度の実質成長率見通し1.2%を達成するには10~12月と来年1~3月にそれぞれ前期比3.1%の成長が必要だが、達成は難しい。ただ7~9月期のGDPでは、企業が在庫の取り崩しを進めたことが前期比マイナスを招いた最大の要因だったことも事実だ。在庫調整が一巡すれば、需要に応じて生産が回復していく姿を描くことも可能だ。雇用者数は前年比1%程度の伸びが続き、働く人の報酬総額にあたる名目雇用者報酬は大きく伸びた。失業率は低く、求人倍率も高水準で安定している。所得を伸ばし、企業の投資を国内に呼び込む。政府は好循環の兆しが途切れる本当の「誤算」を招く前に、消費増税が浮き彫りにした内外需の誤算にしっかり向き合う必要がある。

*1-5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141119&ng=DGKKZO79873690Y4A111C1L83000 (日経新聞 2014.11.19) 企業の63%、再増税に否定的 1都3県
 帝国データバンクが10月末に実施した調査によると、首都圏1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)の企業の63.2%が予定通りの消費税率再引き上げに否定的だった。同社は「業績が比較的好調な大企業が集まる首都圏でも(否定的な意見が)6割を超え、景気回復のシナリオは当初予定通りに進んでいない」と分析している。調査では卸売業や製造業など3452社から回答を得た。消費税率10%への引き上げの是非を聞いたところ、「時期を延期して引き上げるべきだ」(30.9%)、「現状の8%を維持」(25.8%)、「引き下げるべきだ」(6.5%)の合計が6割を超えた。「2015年10月に引き上げるべきだ」との回答は27.7%にとどまった。全国調査(1万755社から回答)でも66.1%が再引き上げに否定的。否定の理由では、経済・物価動向や企業業績を挙げる声が目立った。

<財政再建と消費税増税を関連付けた記事>
*2:http://qbiz.jp/article/50196/1/
(西日本新聞 2014年11月19日) 増税延期はいばらの道 財政健全化困難に
 安倍晋三首相が18日、衆院解散と消費税率10%への引き上げを1年半延期することを表明したことで、2015年度税収は大きく落ち込み、社会保障費など歳出面への影響が不可避になった。首相が指示した経済対策もばらまき色が拭えず、政府の財政再建目標達成への道筋はさらに厳しさを増している。「消費税を10%に上げ、その増収分を社会保障に充てる計画でやってきた。大事な決断をしなければならないと思っている」。塩崎恭久厚生労働相は18日の記者会見で、15年度の社会保障予算について、事業の絞り込みなどが必要になるとの見通しを示した。消費税増税による増収分は、全額を社会保障の充実に充てることが決まっている。政府は5%から10%への2段階の増税による増収を年14兆円と見込み、15年度の社会保障充実の財源は約1兆8千億円になる計画だったが、再増税の延期で4500億円減る見込み。厚労省が15年4月からの実施を計画している子育て支援新制度や介護制度の充実などは、一部先送りや事業の縮小を迫られる。政府が掲げる国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を20年度までに黒字化する目標について、首相は「堅持する」と明言した。だが、目標は15年10月に消費税率が10%になるのが前提。今年7〜9月期の国内総生産(GDP)の実質成長率が2四半期連続でマイナスになるなど、景気の下振れ感が強まる中、目標達成はいっそう困難になったとの見方が強まっている。
   □    □
 安倍首相が指示した経済対策は、低所得者への商品券配布など低迷する消費刺激策が中心だ。景気の腰折れを防ぐ狙いだが、物価上昇で消費者の節約志向が強まる中、「一時的に消費を押し上げるだけで、力強い成長にはつながらない」(エコノミスト)と効果を疑問視する声もある。経済対策を盛り込んだ14年度補正予算案は3兆円規模に上る見込みだが、4月の消費税増税の際に実施した約5兆5千億円の経済対策は景気の下振れを防げなかった。学校施設耐震化や護岸補修といった公共事業の積み増しが人手不足や資材高騰を招き、民間投資を圧迫する弊害も出ている。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「経済対策はやめた瞬間に景気が悪くなる。やめることができなくなり、財政規律が働かなくなる懸念もある」と指摘した。

<消費税増税と“身を切る改革”を関連付けた記事>
*3:http://digital.asahi.com/articles/ASGCD61XWGCDUTFK00G.html
(朝日新聞 2014年11月13日) 増税・定数削減、3党合意の行方 国民との約束は
 安倍晋三首相が年内の衆院解散・総選挙の方針を固めたことで、2015年10月の消費税率10%への引き上げに加え、政治家自らが「身を切る改革」としていた衆院議員の定数削減も見送られることになりそうだ。前回の総選挙前、自民、公明、民主3党が難航の末に合意にこぎ着けた国民との約束は、いったいどうなるのか。
■増税、先送り繰り返す懸念
 「解散や選挙で時間とお金をかけている時ではない。(消費税は)計画通りに引き上げるべきだ」。「財界総理」として安倍首相と親密な関係を築いてきた経団連の榊原定征会長は12日、記者団に対し、衆院解散・総選挙の動きに疑問を呈した。不動産協会の木村恵司理事長(三菱地所会長)も12日の記者会見で「何のために選挙をするのか意味がわからない」と語り、「(再増税を)延期するなら粛々とやればいい。選挙より政策を」と注文した。来年10月の再増税を定めた消費増税法は、景気が想定以上に悪くなれば、増税を先送りしたり、やめたりできる「景気条項」が盛り込まれている。仮に景気が悪いという理由で再増税を先送りするなら、法律の改正案を国会に提出して審議するのが筋とも言える。必ずしも解散で「信を問う」理由にはならない。08年秋の「リーマン・ショック」。当時の麻生太郎首相(現財務相)は、国内外の需要が冷え込み、景気が急速に悪化していく状況を踏まえ、9月の就任当初から念頭にあった衆院解散を封印して、経済対策を最優先させた。消費増税は、歴代政権が先送りしてきた「不人気政策」の代表格だ。1997年に5%に上げてから17年間で、日本経済の「長期停滞」による税収の落ち込みと、度重なる大型の景気対策によって国の借金は膨らみ、財政は先進国で最悪の状況になった。麻生氏は2年前に増税法が成立した時の民主、自民、公明の「3党合意」について、12日の衆院財務金融委員会で「財政史で一番残るほどのものと評価している」と答弁した。3党合意時、増税を先送りするのは「リーマン・ショックや東日本大震災のような場合」(民主党政権の安住淳財務相)というのが、3党の共通認識だった。3党合意の2年前に比べれば株価はほぼ2倍になり、雇用情勢も改善した。17日発表の7~9月期の国内総生産(GDP)の実質成長率も民間予想の平均で年率2・47%のプラス成長が予想されている。この状況で再増税を先送りすることになれば、期限を区切った先送り案であっても、再び先送りされる可能性が残る。財務省幹部の一人は「永遠の先送りになりかねない」と危機感を募らせる。先送りすれば、再増税を前提にした社会保障改革や財政再建プランも練り直しを迫られる。国と地方の政策予算の赤字を、GDPに対する比率で15年度に10年度比で半減、20年度にゼロにするという世界各国に掲げてきた日本の財政再建目標も達成が難しくなる。12日の東京金融市場は増税先送りの観測に「二つの反応」を示した。株式市場では「当面の景気に追い風」との期待から日経平均株価の終値は1万7197円05銭と年初来高値を更新。一方、国債を売買する債券市場では「財政再建が遠のく」との見方から国債が売られ、長期金利は一時、前日終値より0・04%幅上がり、10月1日以来の高さとなる0・53%をつけた。
■定数削減「身を切る」約束は
 解散で実現が不透明になるもう一つは、消費増税という国民への痛みと同じように、政治家自身も身を切る、としていた衆院議員の「定数削減」だ。「身を切る改革としての定数削減という約束を放り投げる無責任な解散だ」。民主党の枝野幸男幹事長は12日、国会内で記者団にこう述べた。維新の党の江田憲司代表も11日の党会合で「約束をほごにした解散・総選挙は、大義がない」と訴えた。野党がここまで批判するのは、衆院議員の定数削減は、かつて安倍首相自らが約束したものだからだ。12年11月の党首討論。民主党政権の野田佳彦首相は衆院解散と引き換えに、消費増税とそれに伴う衆院の定数削減について「必ず次の国会で定数削減する。ともに責任を負うことを約束して欲しい」と、野党自民党の総裁だった安倍氏に迫った。その後、安倍氏もこれに合意したため、野田氏は約束通り衆院を解散して、自民党は政権を奪還した。しかし、政権交代後、身を切る改革の機運は一気にしぼんだ。与野党は約30回にわたって、定数削減など選挙制度改革を話し合ったが、各党の勢力の消長に直結するだけに政党間の協議が難航したのだ。小選挙区のほとんどに現職議員がいる自民党は、一票の格差を是正するための「0増5減」の調整でさえ手を焼く状態。多くの議員が議席を失う小選挙区の定数削減には消極的だった。その一方で、比例区の議席の割合が多い少数政党は、比例区部分の定数削減に反対。今年4月に消費税率が8%に上がった後も、妥協点は見つからなかった。このため、共産、社民両党をのぞく与野党は今年9月、伊吹文明議長のもとに設けた第三者機関「衆議院選挙制度に関する調査会」に調整を預けたが、定数削減の議論は後回しに。調査会の答申には拘束力もなく、実行される保証はない。ここで首相が解散に踏み切れば、任期中に約束した定数削減ができなかったばかりか、3党合意から時間がたち、新たに選出された議員の間で、定数削減への機運が一層薄れることも予想される。野党側は、定数削減ができなかった責任を首相や自民党に押しつける形で批判を強めている。自民党幹部の一人は「解散にあたって一番気になるのは、定数削減をしていないことだ」と警戒する。
     ◇
 〈景気条項〉 消費増税を決めた税制抜本改革法(12年8月成立)の付則で、増税に踏み切る条件や手続きを定めた条項。「経済状況の好転」を増税の条件とし、政府が増税前に「経済成長率や物価動向等を確認」することや、「経済状況を総合的に勘案し、停止を含め所要の措置を講じる」ことなどを定めている。「好転」といえる経済成長率の目安として、20年度までの10年間平均で「名目3%」「(物価変動を除く)実質2%」と示している。

<財政再建には社会保障削減が必要と説く記事>
*4-1: http://www.nikkei.com/article/DGXLZO79784830X11C14A1NN1000/
(日経新聞 2014/11/17) 増税先送り、財政目標達成危うく 歳出削減カギ
 政府が来年10月の消費再増税を先送りする方向で最終調整に入り、財政再建の道筋が一段と不透明になってきた。2015年度までに財政の赤字幅を半減する目標の達成が危うくなり、20年度の黒字化の実現もさらに難しくなりそうだ。増税分を財源に見込んでいた社会保障費の圧縮や無駄な歳出の削減を大胆に進めなければ、政府債務の膨張というツケを次の世代に回すことになる。「仮に(消費税率の)10%引き上げがない場合には目標達成は厳しくなるだろう」。麻生太郎財務相は14日朝、消費再増税を見送れば国際会議の場などで繰り返し表明してきた財政健全化目標の達成に黄信号がともるとの認識を示した。来年10月の再増税を前提にした政府の試算によると、15年度の基礎的財政収支の赤字は国内総生産(GDP)比で3.2%で、半減目標(3.3%)を何とか達成できる水準だ。ただ、目標を上回る幅はわずか0.1%分。金額にすると7千億円程度とされ、目標達成は綱渡りといえる。そこに、消費再増税の17年4月への先送りが加わるとどうなるか。15年度に税率の引き上げで増えると見込んでいた消費税収は1兆5千億円なので、単純にこの分だけ税収が減ると考えれば、目標達成は難しくなる。もっとも、黒田日銀による大胆な金融緩和の影響で円安が進み、企業の利益は金融危機前の過去最高益に迫っている。このため、消費税以外の税収は政府の従来見通しよりも1兆~2兆円規模で上振れているとの指摘がある。15年度も好調な企業業績が続くとすれば「再増税を見送っても赤字半減目標は達成できる」(経済官庁幹部)との強気の見方もある。確実に言えるのは、目標を達成できるとしてもぎりぎりの水準で、大規模な補正予算を組んだり、当初予算に大胆な景気刺激策を盛り込んだりする余地は小さいということだ。財務省幹部は「増税見送りが最大の景気対策なのだから、仮に見送るなら経済対策は最小限に抑えられる」と話す。試金石になるのが、14年度補正予算案と15年度当初予算案だ。14年度に組んだ補正予算でも、執行が来年度になる部分は来年度の収支に響いてくる。衆院の解散・総選挙になれば、各党が派手な景気対策を競う展開も予想される。政府はいまのところ14年度補正を3兆円規模に抑える方針だが、抑制姿勢を貫けるかが焦点になる。予算膨張の兆しもある。増税とセットのはずだった子育て支援などの社会保障の充実は、15年度からほぼ予定通り実施する方向だ。15年度の充実策に必要なお金は今年度より1兆3千億円多い1兆8千億円で、最終的には2兆8千億円に膨らむ。政権内では「再増税が実現するまでは赤字国債を発行すればよい」との声が飛び交っている。再増税を先送りした場合、17年4月に確実に税率を上げられるか。それまでにどこまで歳出を削り込めるのか。政府は15年度の赤字半減だけでなく、20年度の黒字化も約束している。公約実現に向けた重い課題を政府は背負うことになる。

*4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141002&ng=DGKDZO77836420S4A001C1EE8000 (日経新聞 2014.10.2) 社会保障改革「聖域なく」 、諮問会議、中長期の財政再建が焦点 首相、歳出抑制を指示
安倍晋三首相は1日の経済財政諮問会議で「社会保障支出も含めて聖域を設けず議論を進め、歳出抑制にしっかり取り組んでほしい」と表明した。年金改革のほか医療・介護など社会保障サービスの給付抑制に踏み込む姿勢を示した。来年10月に消費税を10%に引き上げても、国際公約の財政健全化目標の達成は難しいのが現実で、改革論議の成否が焦点になる。「経済再生と財政健全化の両立は来年度予算のみならず、中長期の視点から極めて重要な課題だ」。首相は会議で中長期の財政再建を指示した。伊藤元重東大教授ら民間議員も「経済と財政、社会保障の整合性を確保しつつ、今後10年程度の展望と道筋を示すべきだ」と、具体策づくりの必要性を訴えた。政府は2020年度までに、公共事業費などの政策経費を税収や国有資産の売却益などでまかなえるように、基礎的財政収支を黒字化する目標を掲げている。国債の利払いのための国債発行は認めるため、政府の債務残高は減らない。財政目標としてはハードルが低いといわれる。それでも、内閣府の試算では、来年10月に消費税率を10%に引き上げ、かつ、経済が年3%程度の高成長を続けても収支の黒字は難しいという。首相が「聖域なく」と言ったのは、医療・介護などの社会保障費の膨張に歯止めをかけるのが難しいからだ。直近の歳出は30兆円規模と公共事業の5倍、国の予算(14年度は95.9兆円)の3割強を占める。政府は消費税を5%から10%に引き上げる税と社会保障の一体改革をまとめた際にも、高齢者の窓口負担の引き上げ、高額療養費の高所得者の負担増など社会保障改革を盛り込んだプログラム法をつくった。病院の入院日数の短縮や、外来受診の抑制ができれば効果は大きいとされるが、抜本対策にはほど遠い。「ポスト一体改革に取り組む必要がある」。この日の諮問会議で民間議員は主張した。社会保障費の抑制に向け、大きな効果を期待できそうなのが、医療費の支出上限目標の設定だ。1人あたり国民医療費で都道府県間の差は約1.6倍あるともされる。都道府県ごとに数値目標を示してもらい、過度なサービス抑制につながるとみる。民間議員は来年度予算に反映させるという「結論」を迫った。高齢者の医療や介護にかかる費用を経済力に応じて負担してもらうようにする見直しも求めた。それでも財政再建が難航すれば、消費再々増税が必要になるとの声も今後、出てくることが予想される。

*4-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11450296.html?_requesturl=articles%2FDA3S11450296.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11450296 (朝日新聞 2014年11月12日) 社会保障給付、108兆5568億円 過去最高、介護は6.4%増 12年度
 2012年度に年金や医療、介護などに支払われた「社会保障給付費」は108兆5568億円だった。高齢化の影響で、介護を中心に前年度より1兆507億円(1・0%)増えた。統計を取り始めた1950年度以降、過去最高を更新し続けている。国立社会保障・人口問題研究所が11日に発表した。社会保障給付費は社会保険料や公費が財源で、国民1人当たりだと、前年度より1万100円(1・2%)増え85万1300円だった。部門別にみると、年金が前年度比1・7%増の53兆9861億円で最も多く、全体の49・7%を占めた。医療は同1・6%増の34兆6230億円だった。介護や生活保護、児童手当などの「福祉・その他」は、同2・1%減の19兆9476億円だった。東日本大震災の災害救助費などが減ったことが主な要因という。ただ、介護対策だけだと8兆3965億円で、前年度より6・4%増と高い伸びになった。介護報酬のプラス改定と受給者の増加が影響した。

*4-4:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL13H6Z_T11C14A1000000/
(日経新聞 2014/11/13) 日本医師会副会長、予定通りの消費再増税「国民との約束」
 日本医師会の今村聡副会長は13日、2015年10月に予定されている消費再増税について有識者の意見を聞く政府の点検会合で、「(15年)10月に消費税率をしっかり引き上げて社会保障財源に充てることは国民との約束だ」と述べ、予定通りの税率引き上げを求めた。会合終了後、首相官邸で記者団に語った。今村氏は「社会保障と経済は相互作用の関係にあり、経済成長がなければ税収が(増えず)保険料の増加につながらない。社会保障の発展が生産や雇用の誘発効果を通じて日本経済を支えている」と強調した。一方、筑波大の宍戸駿太郎名誉教授は「(消費税率の)引き上げは必要ない」と主張し、10%への税率引き上げ自体に反対の立場を示した。「本格的に成長加速のためのアベノミクスがスタートして成長が加速すれば、税収が増えて(税率を引き上げる)必要がなくなる」と指摘。そのうえで「問題は社会保障の収入がほしいから消費増税をすると言っていることだ。その収入よりもさらに高い自然増収が出ればそれで十分だ」との持論を述べた。

<世代間抗争に落とし込み、責任者が責任を逃れる記事を暴く>
*5-1:http://news.livedoor.com/article/detail/9477566/ (週刊ポスト2014年11月28日号  2014年11月17日) ウォルフレン氏 大メディアが危険なのは事実を創造するから
 看板政策であるアベノミクスのメッキは剥がれ、「主張する外交」は世界から全く相手にされない。それでも安倍政権の失政は覆い隠される。このままでは日本に国家的危機が訪れると指摘するのは、30年以上にわたって日本政治を研究してきたカレル・ヴァン・ウォルフレン氏(アムステルダム大学名誉教授)だ。同氏は安倍政権がアピールする「官邸主導」の正体は、メディアと官僚の作り上げた「虚構」だと喝破する。
      * * *
 日本人は「安倍首相の果たしている役割」は何だと考えているだろうか。「決断を下すこと」だとすれば、それは全くの間違いだ。安倍首相がやっているのは「決断を下したフリをすること」であり、「日本に真の民主主義があると見せかけること」である。日本の有権者は何よりもまず、この国の意思決定を牛耳る「現状維持中毒者」の存在に気が付かなければならない。それはメディアと官僚である。私は30年以上にわたって日本政治を研究してきたが、安倍政権の誕生から約2年が経ち、一時期の日本政治に芽生えかけた改革の機運は消え失せてしまったように見える。政治主導は建前となり、官僚組織が意思決定を独占し、「首相が決断しているかのような虚構」を大メディアが伝える。安倍政権の看板政策であるアベノミクスにしても、安倍首相ではなく一部の財務官僚が主導したものであり、株価など数字の上での見せかけの景気回復をメディアが煽っただけだ。日本の大メディアが国民にとって非常に危険なのは、彼らが「事実を創造する」からだ。官邸を取り巻いた反原発デモや消費増税などの政策に対する抗議活動が大メディアで報じられることはほとんどなかった。今年6月末には、集団的自衛権に関する憲法解釈を変えようとする安倍政権に抗議して、男性が新宿駅前で焼身自殺を図った。民主主義を重んじる国ならトップで報じられて当然のニュースだが、NHKは無視し、他の主要メディアもほとんど報じなかった。メディアは本来、権力を監視し、民主主義を守る役割を果たさなければならない。しかし、日本の大新聞やNHKがやっていることはむしろ逆だ。日本国民が国内外の現実を正しく理解する妨げとなっている。「社会秩序の維持」を優先しようとし、変革につながる刺激的な事象は黙殺する。あるいは自ら進んで変革の芽を摘もうとする。
【プロフィール】1941年、オランダ生まれ。ジャーナリスト、政治学者。NRCハンデルスブラット紙の東アジア特派員、日本外国特派員協会会長を歴任。『日本/権力構造の謎』『人間を幸福にしない日本というシステム』などのベストセラーで知られる。

*5-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140930&ng=DGKDZO77687490Z20C14A9KE8000 (日経新聞 2014.9.30) 給付削減こそ国民目線
吉田浩 東北大学教授 (1964年生まれ。一橋大大学院博士課程単位取得退学。専門は加齢経済)
<ポイント>
○世代会計は受益者側から真の負担を評価
○給付削減は若年者と将来世代には有利に
○「小さな社会保障」と自助努力への誘導を
 2014年の公的年金の財政検証は、出生率や様々な経済変数に中位の数値を用いた試算(ケースC)で、将来の所得代替率(現役世代の可処分所得に対する年金受給額の比率)が51.0%と当初計画の50%を上回った。04年の年金制度改革で示した基本的な枠組みは堅持されているというメッセージである。しかし、財政検証は主に年金を支給する国の立場から年金財政の持続可能性をみたものであり、受給する国民への情報としては不十分といえる。年金の「加入者」に重要なのは、自分が払い込んだ年金保険料に対し、どれだけの給付が受けられるかである。「自分が年金を受給する時点での他の世代の手取り収入」が基準となる所得代替率の情報は、2次的なものといえる。さらに今後は最高18.3%に達するまで保険料を徐々に引き上げる一方、高齢化に合わせて自動的に給付を抑えるマクロ経済スライドにより給付額は年々減っていく。受給者からみれば、より後に受給が始まる世代ほど、より高い保険料で、より低い受給額となることを意味する。国民の立場では「年金財政が維持できるか」よりも、個々の加入者にとって年金の保険数理が公平(フェア)か、生まれ年や受給開始年が異なる世代間で公平か、という情報こそが重要なのである。年金に限らず国の財政政策の本質を見抜くには、一時的な負担面・受給面だけを取り出すのではなく、生涯での負担と受給を個人の視点から把握する指標が欠かせない。この観点から、経済政策の影響を評価するために米財政学者、アラン・アゥアバック氏、ローレンス・コトリコフらが1990年代初めに提唱した指標が「世代会計」である。世代会計は、世代(生まれ年)別に各個人の税・社会保障負担と社会保障受給を生涯で集計し、通算して生涯での純税負担を計算したものである。政府の側の予算制約も守られるように設計されており、政府債務を膨らませつつ「ばらまき福祉」で見かけ上の受益を増やしても、将来の借金返済のための増税負担が必ず負担面にカウントされる仕組みとなっている。したがって、朝三暮四の政策の嘘も露見してしまうのである。日本の政府債務は既に1000兆円を超え、歴史的にも国際的にも飛びぬけた水準にある。超高齢社会を前に、社会保障、なかでも年金の改革なしには将来世代の負担は限界を超えた水準に膨らむと考えられる。国民の側に立った真の年金改革には、世代会計の視点が必須といえる。まず、現在提案されている支給開始年齢の引き上げについて考えてみよう。現行の65歳を68歳または70歳とすることによって、将来の支給開始時点での所得代替率が高まるといった試算や、年金財政に余裕が生まれることでマクロ経済スライドによる給付削減をより緩やかにできるという試算が得られたとしても、受給者側の生涯の実質的受給額は減少することになるため、世代会計の上では必ずしも改善とはならない。なぜなら、支給開始年齢を70歳に引き上げた場合、支給期間を65歳からの15年間とすると、5年間の支給停止は実質的に年金の3分の1を失うことに等しいからである。政府はその情報をセットで示さなければならない。また、年金加入者のパート職への拡大は、就業形態の選択によって年金制度の適用・不適用の差異をなくす意味での公平性は評価できる。しかし、世代会計では初期には政府の保険料収入の拡大につながるが、将来での、その加入者に対する年金給付までをも加味した試算が必要である。逆にパート加入者に対しても、初期の保険料負担が、将来のどの程度の年金受給によって、どのくらいカバーされるのかを示すことが、世代会計の観点からは重要な情報提示といえる。次に、今後の年金財政を維持するためには、収入(保険料)の引き上げか、支出(給付)の引き下げかのどちらかを実施しなければならない。この構造は、国全体の政府債務の削減についてもあてはまる議論である。そのどちらの方法をとっても、政府の年金会計の収支にとっては改善の試算が得られる。しかし、世代会計で評価すると、両者はまったく異なる影響を持つものとなる。まず保険料や税負担の増加によるパターンは、世代会計では現在の高齢者世代にとって有利な改革となる。なぜなら、高齢者は一般に所得税の負担などが少なく、主に若年世代の負担によって年金給付額が維持される改革となるからである。逆に年金給付額の削減のパターンは、世代会計の上では現在の若年者世代と将来世代にとって有利な改革となる。なぜなら、たとえ自らの将来の年金受給が引き下げられたとしても、その分は保険料や税の負担の増加が抑制されるというメリットで相殺されるほか、さらに現在の高齢者に対する支給の負担分も同時に軽減されるという効果があるからである。筆者が00年時点の世代会計の推計結果から04年の制度改革を評価したところ、保険料を一定水準で固定する改革の実施によって、現役世代(00年時点の0歳)と将来世代の純負担の差は7200万円弱となり、改革をしない場合より、400万円超拡大するという結果となった。これは現役世代の負担を軽くする一方、積立金を取り崩して足りない財源を捻出することで、最終的には将来世代の負担を拡大させるためである。次に、マクロ経済スライドによる給付抑制を実行した場合、現役世代と将来世代の純負担の差は6500万円弱となり、何もしない場合に比べて200万円強縮小した。これは給付抑制によって現役世代の純負担がやや拡大する半面、将来世代の純負担はむしろ縮小するためである。したがって世代会計の上からは、世代間不均衡が拡大せぬよう給付を引き下げ、小さな政府ならぬ「小さな社会保障」への道を軸に改革を進め、同時に、民間の金融資産運用による代替的な自助努力への誘導を選択すべきである。最後に、財政再計算における保険料負担と国庫負担について言及する。今回の財政検証は04年の年金改革の枠組みに基づき、基礎年金の2分の1が国庫負担によってまかなわれる前提で試算している。もし、将来の基礎年金の全額を(例えば消費税のさらなる増税によって)国庫負担でまかなう改革が提案された場合、保険料の引き上げも給付の引き下げもせず、年金を「安定的に」持続でき、どの世代にも改善をもたらす改革であると試算することは可能である。しかし、世代会計の上からは、国庫負担は必ず納税者の誰かの負担であるから、加入者の拠出負担としてカウントされることになる。04、09年と過去2回の財政検証の最終報告書では、生まれ年別の生涯負担と生涯受給の試算が示されていた。しかし、その試算には、国庫負担を通じた国民の負担分や保険料の雇用主負担分が加味されていない。このため見かけ上は、年金はどの世代においても受給が負担の2倍を上回る高い利回りが示されていた。しかし、筆者が世代会計の考えに基づき、そうした負担までを加味して試算したところ、実質的な利回りは0.9倍程度と推定された。このように、今後の年金改革の議論には、こうした隠れた負担も正確に加味して「いつ時点の誰のどのような負担によって、いつ時点の誰の受給がどのように変化するのか」を世代別に生涯の負担と受給で示す必要がある。そのことが、痛みにみえる改革が実は痛みではないこと、また逆に負担軽減にみえる改革が実は軽減になってはいないことを明らかにするのである。

*5-3:http://digital.asahi.com/articles/ASGB03CT5GB0UTFL001.html?_requesturl=articles%2FASGB03CT5GB0UTFL001.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASGB03CT5GB0UTFL001(朝日新聞2014年10月31日)年金の運用、株式比率を倍増へ リスク負い高収益目指す
 約130兆円の公的年金の積立金の運用基準見直しを検討する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」が、国内株式と外国株式の割合を倍増させ、合わせて全体の5割程度にまで引き上げることが分かった。安全重視から、リスクをとりながら高収益を目指す運用にかじを切る。31日午後にも発表する。従来の運用基準は、国内債券が60%を占め、国内株式と外国株式は12%ずつとなっている。ほかは外国債券が11%、現金などの短期資産が5%だ。新たな基準では、国内株式と外国株式をそれぞれ20%台半ばにまで増やし、国内債券を大幅に減らす。GPIFは厚生年金と国民年金の積立金運用を任されている。今回の運用見直しは、低利回りの国内債券中心の配分では、物価上昇が進むと必要な年金資産を確保できなくなる恐れがあるためだ。株価を重視する安倍政権の意向に沿った見直しでもある。昨年6月に決めた成長戦略に「公的資金運用のあり方」の検討が盛り込まれていた。国内株式の割合を1%幅買い増すだけで1兆円兆が株式市場に流れ込み、株価を押し上げる。運用基準には相場変動を想定した一定の許容幅があるので、6月末時点の国内株式の比率は約17%になっている。基準の変更はGPIFが2006年に設立されてから、昨年6月に続き2度目となる。


PS(2014.11.23追加):*6のように、高濃度汚染水がたまる福島第一原発の地下トンネル対策は、これまで凍結止水を試みたり、作業員が被曝と闘いながら24時間態勢で氷を投入したりしていたが、当然、凍結しなかった。そのため、内部に汚染水が残ったままセメントを流し込んで埋めることを決めたそうだが、この凍土壁には数百億円規模の税金が投入されたのである。そして、「この結果は想定外で、この数百億円規模の税金は必要な支出だった」と考えるレベルの人には、原発を語る資格はない。

*6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014112202000104.html (東京新聞 2014年11月22日) 【福島原発事故】セメントで閉鎖、月内開始 福島第一、来月下旬に状況確認
 東京電力は二十一日、高濃度汚染水がたまる福島第一原発の地下トンネルを、内部に汚染水が残った状態のまま特殊なセメントを流し込んで埋めることを決めた。月内に作業を始め、十二月下旬に原子力規制委員会の検討会で、きちんと閉鎖できたかどうかチェックする。うまくいけば、2号機のトンネルだけで五千トンある汚染水が海に流出するリスクが大幅に減る。新たな作業では、汚染水を抜き取りながら特殊なセメントを注入し層を重ねる。年内にトンネル本体を埋める作業を終え、年明けから来年三月にかけ、四カ所の立て坑部分も埋める。トンネル対策ではこれまで凍結止水を試み、作業員が被ばくと闘いながら二十四時間態勢で氷を投入。汚染水を冷やし、凍結管で建屋との接合部を凍らせ、汚染水を抜いた後に埋める計画だった。だが、凍結がうまくいかず、水中で薄く広がる特殊なセメントが開発されたこともあり、従来の工法を断念した。二十一日の検討会では、専門家から「トンネルの底には津波時の砂がたまっており、セメントが固まった後の水の通り道にならないか」などの懸念も出た。ただ、トンネルの水抜きが進まないと、税金を投入して進行中の凍土遮水壁が完成しない。規制委の更田豊志委員は「特殊なセメントが開発されたことで、凍結止水の役割は終わった。次のステップに進む」と締めくくった。


PS(2014.11.28追加):*7のように、「5歳児保育料の来年度一部無償化を導入すれば、年間240億円の財源が必要になる」として幼児教育の一部無償化を見送るそうだが、数百億円もかけて何の役にも立たない凍土壁を作ろうとしながら、教育や保育には240億円でも消費税を増税しなければできないとするのが、我が国のおかしな政策なのである。軽減税率が適用されれば消費税が非課税になることを想定して、新聞はどれも消費税増税の大合唱だが、これは日本のメディアと民主主義の問題だ。

*7:http://digital.asahi.com/articles/ASGCW5G3NGCWULFA02B.html?iref=comtop_6_01 (朝日新聞 2014年11月28日) 5歳児保育料、来年度の無償化見送りへ 財源確保厳しく
 政府が検討してきた年収360万円未満の世帯の5歳児の保育料をただにする「幼児教育の一部無償化」について、来年度からの導入は見送られる方向になった。自民党は前回の衆院選で幼児教育の無償化を公約に掲げており、文部科学省などは来年度からの導入を検討していたが、財源の確保が難しいと判断し、政府内で最終調整している。政府・与党は昨年、子育て支援のため、幼稚園児と保育園児の保育料を無料にすることについて5歳児から段階的な導入をめざすことで合意。文科省と厚生労働省は、まず年収360万円未満の世帯の5歳児を対象にする案をまとめた。5歳児の約2割となる約23万人が対象で、下村博文文科相は7月の記者会見で「絶対妥協できない最低限度(の案)」と述べていた。両省の案では、対象者が私立幼稚園に通う第1子の場合、平均で月額1万6千円程度の負担がゼロになるが、年間で240億円の財源が必要になるため、財務省が難色を示していた。来年度からの導入を見送る一方、保育料を補助する地方自治体への財政支援を拡充する方向で調整に入った。文科省内には、年収270万円未満の5歳の幼稚園児の保育料引き下げを求める声もある。安倍晋三首相は消費税率10%への引き上げを来年10月から1年半先送りした。増税を見込んだ厚労省の子育て支援策の一部に見直しの動きがあるなか、幼児教育の無償化を先行させるのは適当でないとの判断も政府内であったとみられる。自民党は2005年の衆院選以来、幼児教育の無償化を公約に掲げている。12月2日公示、14日投開票の衆院選の公約でも、導入時期は明示していないが、「財源を確保しつつ、幼児教育の無償化に取り組む」としている。すべての3~5歳児の保育料を無料にすると、年間で7千億円以上の財源を確保する必要がある。年収が多い世帯では保育料の自己負担も高くなるため、必要な財源も膨らむ。自治体への支援では、所得や子どもの数に応じて国と自治体が保育料を補助する「幼稚園就園奨励費補助」について、国の負担割合を増やし、国費を新たに40億円程度投入することを検討している。

| 消費税増税問題::2012.8~2014.11 | 11:45 AM | comments (x) | trackback (x) |
2014.11.26 原発の廃炉について (2014.11.26、27、30に追加あり)
     
     当初の原発発電原価   原発運転修了後の流れ  廃炉の人材育成 
                        日経新聞2014.11.26より  
(1)原発の耐用年数が、16年から40年を経て60年になったとは、あらためて驚きである
 私が衆議院議員だった2006年に、経産省と九州電力の重鎮が議員会館の事務所に来られて、「原発の耐用年数を40年から60年まで可能にしたい」と言われたので、「原発のような危険性のある機械の耐用年数を延ばすのはいけない」と反論した。その時、2人の重鎮は、「絶対に安全です!」と何度も言いきったが、今、調べると、*1のように、原発の税務上の法定耐用年数は最初は16年で、発電コストを安く見せるために40年に延長し、さらに60年に延長できるようにしたと書かれている。しかし、税法上の機械の耐用年数がそこまで実際と乖離しているケースはなく、仮にそこまで乖離していたとすれば、税務上、優遇されていたのである。

 原発の運転延長により、恣意的に原発の高コスト体質が隠され、フクシマ原発事故後の現在も、これに言及するメディアは少なく、新しい安全神話が創造されている。また、*1は、電気事業連合会 が2003年に記載したものとされており(本当?)、「新しい原発に更新すればよい」という受け取り方もできるが、現在は、既に水素や太陽光発電等を使った分散発電が可能になっているため、税務上の優遇や大きな補助金を交付してまで原発を更新する必要はないと考える。

(2)経産省の会計制度見直しで、国ぐるみの粉飾決算はよくない
 *2-1に書かれているように、「経産省は、2014年11月25日、運転開始から40年前後の老朽原発を廃炉にした場合、電力会社側の損失額が1基当たり約210億円になるとの試算をまとめ、電力会社の負担が過大にならないよう会計制度の見直しを進める」とのことだ。

 そして、*2-2、*3に書かれているように、経産省は、「①廃炉費用を安定確保するため、発送電分離後も新規参入組を含む電力小売会社が消費者や企業から徴収する仕組みにするよう廃炉の会計制度を見直す」「②電力会社から分かれた小売会社等が送配電会社に支払う送電線使用料に廃炉費用を上乗せして負担する」としているが、これでは、会計の基本を無視して、経産省ぐるみでおかしな会計処理を推奨していることになる。

 本来、廃炉費用は、原発の稼働開始と同時に廃炉引当金という負債性引当金として引き当てるべきで、廃炉引当金繰入額は原発由来の電力を販売する期の費用とすべきである。そして、廃炉時に廃炉引当金に不足が出れば、それは見積もり誤りであるため、ただちに特別損失の過年度修正損として処理すべきなのだ。それにもかかわらず、経産省は、原発の稼働可能期間を16年から40年、60年と引き延ばそうとし、その間に必要な負債性引当金を引き当てない会計処理を電力会社に許してきたのである。

 しかし、この引当金不足額(原発による過去の発電費用)を、将来の電力消費者に負担させるのは全く筋が通らない。また、原発を使っていない新規参入組の電力小売会社に負担させるのは、不合理である上、市場原理による選択を害する。

 ここで何が悪いのかと言えば、経産省はここまで会計の知識がなく、それでも会計制度をいじり、国を挙げて電力会社の有価証券報告書などによるディスクロージャーを歪めようとしているとともに、市場原理による電力需要者の電源選択を歪めようとしていることである。

(3)今頃、産学官で廃炉に携わる人材を育てる ?! ← 泥縄にも程がある
 *3に、「①東大・東電など協力して産学官で原発廃炉の人材を育てる」「②(そのために)東大、東工大、東北大は14年度に文科省から計2億円弱の補助を受ける」「③東電と情報を共有しながら、ロボットの遠隔操作や放射性廃棄物の管理、地下水処理の手法を教える」「④福島県では日本原子力研究開発機構が来夏以降、廃炉作業を担うロボットの開発を始める」「⑤政府が原発の輸出を後押しするなか、日本の原発産業全体の技術力の底上げ」などが記載されている。

 ここで驚くことは、原発が運転を開始する時には、廃炉の技術はできて見通しが立っていなければならないにもかかわらず、それから40年近く経った現在、①のように「産学官で原発廃炉の人材を育てる」などとアホなことを言っていることだ。これでは、廃炉引当金の引当額も見通せなかっただろうが、関係者が誰もそのことを問題にしなかったのは、さらに驚きだ。

 また、原子力発電を行って多大な収益を上げてきた電力会社は、廃炉計画くらい自分で作っていてもよさそうなものだが、②のように、廃炉のために、文科省が新たに東大、東工大、東北大に年2億円弱の補助金を出すとしており、これは焼け太りであるとともに、なけなしの社会保障を削りながら税金の無駄遣いが過ぎるのである。

 さらに、核燃料がどこにあるかは、放射線の強さを三次元で測定して映像化すればわかるため、③④のロボットは、NHK放送でロボットを使ってフクイチの核燃料のありかを探していたのを見て、ロボットを開発することが目的の行為のように思えた。ロボットのような精密機械は、強い放射線を浴び続ければ故障し、それも放射性廃棄物になるため、ロボット開発は原発とは結びつけずに行った方がよいと思う。

 なお、このように、原発をスタートする時点で、廃炉や最終処分場のことを誰も考えていない国が、世界でも厳しい安全基準を持っているとはとても考えられない。そのため、世界で唯一の被爆国であり、原発事故も経験した日本政府が、税金を使って原発輸出を後押しするのは誤った方向であると考えている。

*1:http://www.nuketext.org/yasui_cost.html
(電気事業連合会 2003年12月?日)原子力発電の発電コスト  
●原発などの発電コストを試算
 2003年12月16日、電気事業連合会は「モデル試算による各電源の発電コスト比較」を公表しました。1999年以来 4年ぶりの試算改訂です。運転年数40年・設備稼働率80%の場合、原子力5.3円/kWh(以下すべて単位同じ)、石炭5.7円、LNG 6.2円となりました。しかし従来の法定耐用年数等で試算すると、運転年数15〜 16年・設備稼働率80%として計算すると、原子力7.3円、 石炭7.2円、LNG 7.0円、となるそうです。さらに有価証券報告書を用いた既存発電所についての試算では原子力 8.3円、火力平均7.3円となるそうです。いろいろな数字が出てきて、いったいどれを信用していいのかわから なくなりますが、要するに、コストというのは試算の前提条件によってかなり変わってくるということなのです。試算結果としての数字は、ある程度の目安にはなると思いますが、どの数字も絶対的なものではありません。この後で詳しく見てみますが、電力会社にしても政府にしても、自分たちの方針(つまり原発の推進)がもっとも有利に見せられるような試算を利用しているということを理解しておかなければなりません。従って問題になるのは、その試算の前提となる条件にどのようなものなのが含まれているのかということです。前提としている条件には、意図的なもの、不合理な点など、多くの問題点が見られます。また、原発の問題には、前提条件に含まれていない隠されたコストが存在することも問題です。こうした問題について、次に見ていきます。
●耐用年数40年 新幹線と原発
 従来原発の"運転年数=耐用年数"は、減価償却の終わる「法定耐用年数」16年でした。しかし、ここ数年、電力会社や経済産業省などは、初期投資が大きく、燃料費の割合が化石燃料に比べて比較的に小さい原発の"耐用年数"を40年として、コスト計算をするようになりました。このことから言えることは、電力会社は原子力発電の経済性をアピールするために、耐用年数を引き上げ、原発を40年も使い続けることを想定しているようです。別の言い方をすれば、原発推進の結論が先にあって、コスト面でそれが都合よく説明できるように、耐用年数を40年に引き上げた、ともいえるでしょう。そうしないと、他の電源とコスト競争で打ち勝つことができません。そのことと実際原発が40年の使用に耐えられるかどうかは別問題。データの出し方からして、40年という数字を出してから、現場に指示をして、実際40年の使用に耐えられるか調べさせたような進め方をしていました。経済性を実証するために安全思想が無視されている、そう言ってもいいかもしれません。例えば、いまから40年前、東京オリンピックが開かれた年に開業したのが東海道新幹線です。今も当時と同じ型の0系と呼ばれる車両が山陽新幹線に走っているようですが、それも開業当初に製造されたものではありません。この形は1985年まで製造されたそうで、今残っているのもまだ20数年経っているに過ぎません。初期のものは老朽化し時代遅れになって、とっくに引退・解体されているはずです。ところが原発の場合は、まさに全く同じ原子炉がそのまま40年も使い続けられようとしています。新幹線は時速200kmを超えるスピードで激しい振動や摩擦にさらされていますが、原子炉はそれよりさらに危険な放射能と高温・高圧に、しかも運転期間中は四六時中さらされているわけです。40年前につくられた新幹線の車両をそのまま時速200kmで走らせ続けるとしたら、整備に当たる技術者は何というでしょう。新幹線と原発なんて直接比較することはばかげているかもしれませんが、4 0年という時間の重荷を理解する例になるとは思います。
●コスト試算のマジック
 このような発電所の耐用年数でコスト比較をする試算方式は、「耐用年数発電原価試算」といって、1986年から採用されています。ところが、その前までは「初年度発電原価試算」という方式が使われていました。両者の違いとその背景を整理してみると、原発をなんとか有利にみせようという意図がよく分かります。
□初年度発電原価試算:
発電所が完成した後1年間の実績を基に電源別のコストを比較しようというもので、建設費、燃料費、および人件費を含む維持管理費を実績値に基づいて作成します。但し、稼働率については比較のため統一し、水力は45%、火力・原子力は70%にしています。
□耐用年発電原価試算:
まず電源別に発電所の耐用年数を決めておき、期間中の燃料費や為替レートの変動を予測し、それをモデルプラントのコストに反映させて比較しようというものです。稼働率などの条件は「初年度..」と同じです。(前述の電気事業連合会の試算では"設備利用率≒稼働率 "80%の条件) 。この違いが何を意味しているか、その背景を見てみましょう。通産省(当時)が最初に試算を発表したのは1979年です。この年イラン革命とその後のイラン=イラク戦争を契機とする第2次オイルショックがはじまり、原油価格が急騰していました。そこで「初年度発電原価試算」方式により、実績をベースに試算して発表を始めたのです。原子力の経済的な優位性を印象づけるにはもってこいの内容でした。ところが、1986年、非OPEC諸国の原油増産により原油は供給過剰となり、原油価格は急落しました。逆オイルショックと呼ばれる状況で、化石燃料を用いた発電は、コスト的に優位になるはずでした。このとき通産省(当時)は発電コスト比較で突然「初年度・・・」方式をやめて、「耐用年数発電原価試算」方式に変更したのです。「発電所のように長期に渡る設備には、使用される燃料価格と為替レートの変動をコスト計算に含めるのがより公平」と通産省は言っていました。新しい試算方式の問題は、燃料価格の見通しとしてIEA(国際エネルギー機関:石油を中心としたエネルギー安全保障を追求している国際的組織)の試算を用いていて、原油価格など常に大幅な値上がりを前提にしています。一方で原子力の燃料はほとんど変化なしとされていますから、長い年月にわたって試算をすれば、化石燃料による発電の方が不利になってしまうのです。そして、前述したように原発の"耐用年数"を40年に引き延ばして、原発のコストをさらに安く見せかけようとしています。
●「試算」は「理想的なモデルプラン」
 「耐用年数発電原価試算」の方式のもう一つの問題は、個々の発電所のコストではなく「モデルプラント」における試算だということです。個々の発電所では、それぞれ立地・建設条件も違うし、燃料の輸送コストなどその他の条件も変わってくるので、電源別に単純に比較することは出来ません。電源種別毎に理想的な「モデルプラント」を想定し、そこに様々な数値を当てはめて試算したものが発表されている数値ですが、実際の個々の発電所のデータは公表していません。具体的な個々の発電所の原価試算はないのでしょうか。実は、各電力会社が原子力発電所を建設する際の手続きとして「電源開発調整審議会」での決定後、通産省(現経済産業省)に「原子炉設置許可申請」を行います。ここで、電力会社は建設しようとする原発の発電原価について試算し、結果を記載することになっています。これも実績ではありませんから、あくまでも予測にすぎません。参考までに、東京電力の原発について、つぎのような原価試算が提出されています。( *注:この年代の試算では耐用年は16年)。この表から見ると、原発の発電原価が一般に公表されている「モデルプラント」を用いた試算に比べてかなり割高であることは明らかです。電力会社自身は、そのことを一番よく知っているはずで、それでも「国策」として推進されている原子力開発に、異論を唱えることが出来ないでいるようです。
●隠蔽体質・・・・原発推進データの信用性
 「原子力発電は安全でしかも経済的」、政府・電力会社は、原発推進の理由としてことあるごとにそういってきました。なかでも原発の経済性は、これまで原子力推進の最も大きな根拠でした。しかし、その根拠を支える議論の透明性は確保されているのか、根本的な信用に疑問を抱かせるようなことがまた一つ明らかになりました。2004年3月参議院予算委員会において,社民党の福島党首の質問に対し,日下資源エネルギー庁長官(当時)は,「日本では(核燃料の)再処理*をしない場合のコストを試算したことはございません」と答弁しました。ところが、7月になって資源エネルギー庁の「ロッカー」から、したはずのない「試算」の資料が出てきたのです。隠されていた資料は,1994年2月4日の総合エネルギー調査会原子力部会核燃料サイクル及び国際問題作業グループにおける議論用参考資料として、事務局が作成した「核燃料サイクルの経済性試算について」というものです。これによると核燃料再処理のコストは再処理をしないで直接使用済み燃料を処分する費用の2〜4倍という結論でした。まるで子供だましのやり方で、この問題の責任の追及はなされないのでしょうか。この試算が隠されている間に、着々と将来計画をたててしまって、再処理を既定路線にしてしまってから肝心の試算を公表する。例えば、「長期エネルギー需給見通し(1998)」や、「エネルギー基本計画(2003)」、それらに基づくさまざまな計画や方針決定に関わる作業が行われてきました。この試算が公表されていたら、路線を巡る議論は別の方向に行っていた可能性もあるでしょう。原子力推進に都合の悪いデータはひた隠しにして、都合の良いデータだけを並べる。もんじゅの事故の時も、昨年の東電の事故隠しの時もそうでしたが、この隠蔽体質はどうしたものでしょう。結局自分たちの信用をおとしめ、原子力は不透明だと宣伝しているようなものです。そのほかの試算・データは存在しないのでしょうか? また、そうして明らかになったデータそのものが果たして信用できるものなのかという疑念も湧いてくるはずです。
●この発電コストに含まれていないそのほかの費用
 これまで見てきたとおり、経済産業省(旧通産省)・資源エネルギー庁のコスト試算そのものが、きわめて意図的に数字を操られていますが、実はそれ以外にも、原子力発電には隠されたコストがあります。大きく分けて次の4つの内容については、本来原子力発電を成立させるために必須の費用となっていますので、厳密な意味では原子力発電のコストに含まれるべきものです。
   ●電気を捨てる"発電所"・・・揚水式発電所
   ●電源三法交付金・・・地元への懐柔策
   ●バックエンド費用
   ●送電費用
それぞれの内容は、リンクが貼ってありますから、該当の項目のところをクリックしてみてください。

*2-1:http://www.47news.jp/CN/201411/CN2014112501001517.html
(47ニュース 2014/11/25) 原発廃炉の損失1基210億円 経産省、会計制度見直し
 経済産業省は25日、運転開始から40年前後の老朽原発7基を廃炉にした場合、電力会社側の損失額が1基当たり約210億円になるとの試算をまとめた。政府は老朽原発の廃炉判断を急ぐよう電力各社に求めており、電力会社の負担が過大にならないよう会計制度の見直しを進める。経産省で同日開かれた、会計制度見直しの有識者会議で示された。電力会社の廃炉決断を後押しするのが狙いで、年内に見直しの方向性を示す方針だ。福島原発事故後、原発運転期間が原則40年と定められた。電力会社は当初想定年数より前で、廃炉か、特別点検を受け運転延長を目指すかの決断を迫られるケースが出てくる。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141126&ng=DGKKASDF25H1E_V21C14A1PP8000
(日経新聞 2014.11.26) 廃炉費用を安定確保 発送電分離後も 消費者から徴収 経産省検討
 経済産業省は、電力会社が発電、送電、小売りの3事業に分かれた後も原発の廃炉費用を安定確保する検討を始めた。新規参入組を含む電力小売会社が消費者や企業から徴収する仕組みになる公算が大きい。25日の廃炉の会計制度を見直す経産省の有識者会議で議論した。経産省は導入した場合の試算を年内にも示す。現在は電力会社が家庭や企業の電気料金から廃炉を含む原発の運営経費を回収している。同方式は2018~20年に廃止されるため費用負担の仕組みづくりが課題だった。新たな案では、電力会社から分かれた小売会社などが、送配電会社に支払う送電線使用料に廃炉費用を上乗せして負担する。経産省はこの日、運転開始から40年前後の古い原発7基を廃炉したときの電力各社の損失額が1基あたり210億円程度になるとの試算も示した。

*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141126&ng=DGKKASDZ25HND_V21C14A1MM8000 (日経新聞 2014.11.26) 産学官、原発廃炉へ人材 東大・東電など協力 国が補助金 産業の技術基盤を維持
 産学官が共同で原子力発電所の廃炉に携わる人材を育てる。2015年から東京大学や東京工業大学が東京電力などと協力し、特殊な工程を伴う廃炉作業の専門知識を教える。文部科学省は補助金を出す。日本の原発は今後、再稼働か廃炉かの選別が始まる。高度な技術を備えた人材の確保は原発の輸出や安定稼働にも寄与するため、産業基盤の維持につながりそうだ。東大は来秋、原子力工学などを専攻する学生向けに廃炉専門の講座を設ける。東電福島第1原発の廃炉作業を想定し、東電と情報を共有しながらロボットの遠隔操作や放射性廃棄物の管理、地下水処理の手法を教える。九州大学や京都大学、福島工業高等専門学校と遠隔講義などで知識を共有する。東大の学生で年30人、総勢で同100人の受講を見込んでいる。東工大は15年4月に開講する。東電や三菱重工業、東芝などが参加する国際廃炉研究開発機構と協力して、放射線の測定など現場での実験を交える。東北大は15年1月に廃炉に関する情報を交換する研究会を設ける。東大と東工大、東北大は14年度に文科省から計2億円弱の補助を受ける。15年度以降も補助を利用する見込みだ。国内の48基の原発のうち、九州電力川内原発(鹿児島県)など再稼働に向けた動きがある一方、運転年数が40年前後たつ老朽原発は7基ある。40年を超えて運転するには原子力規制委員会の厳しい審査が必要で、関西電力の美浜原発1、2号機(福井県)など5基が廃炉を検討している。老朽原発を廃炉にすると電力会社の損失額は1基当たり210億円程度にのぼり、経済産業省は電気料金に上乗せできる会計制度の導入を検討中だ。福島県では日本原子力研究開発機構が来夏以降、廃炉作業を担うロボットの開発を始める。廃炉を進める様々な取り組みが動きだす一方、原発プラント大手ではベテランの技術者が今後10~15年間でほぼ退職するなど、技術の継承が課題に浮上している。このため産学官で廃炉作業の中核を支える人材を育てる枠組みをつくる。原発の廃炉作業は原子力工学や安全管理など総合的な知識や技術が不可欠で、再稼働でも貢献できる。政府が原発の輸出を後押しするなか、日本の原発産業全体の技術力の底上げにもつながる。日本には廃炉を終えた商用原発はまだない。海外には米国などで約10基あるほか、廃炉を検討・計画している原発が100基以上あるといわれる。今後は海外でも原発の廃炉に必要な技術者のニーズが高まると見込まれる。


PS(2014.11.26追加):*4のように、フクシマ原発事故では、現時点でも既に、国民が4兆5782億円(!!)を負担しているが、これは、*1に書かれている2003年時点の原発コストの試算には含まれていない。そして、今後も、「過酷事故は起きない」とは決して言えないのだ。

*4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014112602000115.html (東京新聞 2014年11月26日) 【福島原発事故】東電に738億円交付 機構、34回目
 東京電力は二十五日、福島第一原発事故の賠償資金として、原子力損害賠償・廃炉等支援機構から七百三十八億円の交付を受けたと発表した。資金の交付は三十四回目で、累計で四兆四千五百八十二億円となった。東電はこれとは別に政府から原子力損害賠償法に基づく千二百億円を受け取っており、合わせると四兆五千七百八十二億円になった。東電が二十一日時点で支払った賠償金は約四兆四千五百五十三億円だった。


PS(2014.11.27追加):経産省が、電力自由化後に、原発の廃炉費用を事業所や家庭への送配電を請け負う電力会社の利用料金に上乗せして消費者に転嫁する仕組みを導入しようとしている点については、現在及び未来の送配電に関する負担と過去の電力使用に関する負担は異なるため筋が通らない。そのため、このようなことをして電力市場を歪めるのは百害あって一利なしであり、私は、このブログの2011年6月21に、「電力会社の送配電部門は会社にして上場し、旧電力会社から独立させるべき」と記載している。
 もし、それができないのなら、もはや電力会社の送電線はあてにせず、自治体が上下水道と一緒に地下に送電線を埋設して送配電料金をとれば自治体の税外収入になるし、ガス会社がガス管と電線を併設して送配電料金をとる方法もあり、選択肢が多い方が適切な料金になるだろう。
 また、原発の運転期間はもともと16年から40年に延長されたものであるため、40年を経ずに廃炉する原発については、差の期間分の廃炉引当金不足額は国が負担してもよいと考えるが、そのためには合理的な見積もりによる廃炉引当金が原発稼働期間に引き当てられてきたことを前提にすべきだ。

*5:http://mainichi.jp/select/news/20141127k0000m020062000c.html
(毎日新聞 2014年11月26日) 原発廃炉:消費者に負担転嫁導入、検討入り 経産省
 経済産業省は26日、運転終了後の原子力発電所の廃炉費用について、2018〜20年に予定される電気料金の完全自由化後も大手電力会社が消費者に負担を転嫁できる仕組みを導入する方向で検討に入った。発電部門と送電部門を切り離す発送電分離が実施された後、事業所や家庭への送配電を請け負う電力会社の利用料金に上乗せする形で負担を求める案が浮上している。電力自由化後に予想される価格競争に影響されずに廃炉費用を安定して回収できるようにすることで、電力会社による早期の廃炉判断につなげたい意向だ。原発を保有する電力大手は、原発の廃炉費用を年度ごとに分割して計上し、電気料金に上乗せしている。13年7月の制度改正で原発の運転期間が原則40年に限定されたことで、より長期の運転を想定していた老朽原発の廃炉が前倒しされ、電力会社が運転計画期間に分割計上する予定の廃炉費用を前倒しで計上する必要が生じ、多額の損失が生じる可能性が出ている。経産省は、16年7月に運転期限を迎える原発7基を廃炉にした場合、1基当たりの損失は約210億円と試算している。原発の再稼働が遅れて財務が悪化している電力各社は多額の損失計上に慎重で、廃炉が円滑に進まない懸念があった。このため、経産省は、廃炉となった場合も、原発設備の多くを複数年度に分割して計上できるようにし、電力会社の財務が一気に悪化しないようにする方針だ。新たな仕組みの検討を急ぐのは、18〜20年をめどに電気料金の完全自由化が予定され、それに合わせて廃炉費用を電気料金に上乗せする現行の料金制度が廃止されるため。16年の電力小売り全面自由化後、大手電力会社の電気料金だけに廃炉費用が上乗せされた場合、新規参入の電力小売会社が料金設定で有利となる。そうなれば、大手からの顧客流出が進み、廃炉費用の回収に困難をきたしかねない。経産省はこうした懸念を解消することで、大手電力による予定通りの廃炉を後押しする。


PS(2014.11.30追加):*6の記事は、「①脱原発を志向して再生可能エネルギー専門の電力小売会社と契約する消費者にも原発廃炉費転嫁しながら、大手電力が発電コストの相対的に安い原発の再稼働を進めれば競争が成り立たない恐れがある」「②既存の新電力の中には、大手電力に原発で発電した電力の一部を割安な料金で卸販売させるべきだとの意見がある」などとしているが、①をはじめ全体として、原発の発電コストは安いという虚偽の情報を有権者に流しており、②は、脱原発を志向して再生可能エネルギー専門の電力小売会社と契約する消費者の意志と需要を無視するものである。つまり、この記事は、官業(経産省+旧電力会社)が結託した思想をメディアが宣伝しているものだ。

*6:http://qbiz.jp/article/50883/1/
(西日本新聞 2014年11月29日) 自由化後も原発廃炉費転嫁を検討 新規会社の契約者にも負担
 経済産業省は29日、大手電力会社が老朽化した原発の廃炉に取り組むのを支援するため電力小売り全面自由化後も、すべての電力小売り会社の電気料金に廃炉費用を転嫁する方向で検討に入った。費用を確実に確保できる仕組みを整備することで、老朽原発の廃炉を着実に進めたい考え。ただ新規参入の電力小売り会社の契約者にも大手電力の廃炉費用を負担させるのは、公平な市場競争を阻害するとの反対意見も多い。脱原発を志向して再生可能エネルギー専門の小売り会社と契約する消費者からは反発も予想され、激しい議論になりそうだ。大手電力はこれまで廃炉費用を電気料金の中で徴収してきた。2016年4月に電力小売りが全面自由化されると料金競争が激しくなり、廃炉費用を料金に織り込みづらくなると予想される。老朽原発は年々増えるため費用が確保できないと廃炉計画に遅れが出かねないと懸念されている。18〜20年には「発送電分離」で大手電力から送配電部門が切り離され別会社化される。すべての電力小売り会社が送配電会社に託送料を支払い契約者に電気を届けてもらう形になることから、託送料に廃炉費用を上乗せする案が検討されている。この場合、全電力利用者が大手電力の廃炉費用を負担することになる。一方、こうした支援を受けながら大手電力が発電コストの相対的に安い原発の再稼働を進めれば、競争が成り立たない恐れがある。既存の新電力の中には、大手電力に原発で発電した電力の一部を割安な料金で卸販売させるべきだとの意見があり、今後併せて議論が進むとみられる。

| 原発::2014.10~2015.3 | 11:47 AM | comments (x) | trackback (x) |
2014.11.23 安部政権への「ぬきうちテスト解散」で争点にすべき事項は、「解散の是非」ではなく「日本の進路」である。 (2014.11.24、25に追加あり)
      
フクシマによる汚染  パブリックコメントの内容    川内原発について 再稼働の流れ

 今回の衆議院解散について、安部首相は外国から日本に帰ってくるまで、「解散するつもりはない」と言っておられたが、帰ってきたら解散風が吹いていたので、それに従って解散したと言える。そのため、野党が「解散の是非」を論点にするのは間違っている。

 しかし、安部首相が「①決められる政治になった」「②これまで真っ暗な道を通っていたが、やっと明るさが出てきた」と頻繁に述べておられることについて、私は、①については、間違ったことを決められるよりは決められない方が余程よいと思うし、②については、これまで真っ暗だったかどうかは疑問があり、現在の薄日も名目であって実質ではないし、実質の明るさが出るためには準備期間が必要であることを考えれば、賛成できない。

 そのため、今回の解散を名付ければ、安部政権への「ぬきうちテスト解散」と言うことができ、安定多数をとって安心していた安部政権のこの2年間の実績が問われるべきである。ただし、この2年間に行われたことは、安部首相の意向によるものばかりではないため、アベノミクスとして一括するよりも、テーマ毎に是非を判断すべきだ。

 なお、有権者が、「政策が一致している政党に投票するか否か」については、「生意気に見えるから入れない」「お祭りに来たから入れる」「観劇会に連れて行ってもらったから入れる」などというようなこともあるため問題は残るものの、次の点は、争点にして判断して欲しいと考えている。

       
   特定秘密保護法        TPP       農協改革   アベノミクス

(1)原発再稼働の是非(このブログの「原発」「内部被曝・低線量被曝」のカテゴリーに詳しく記載)
 自民党政権になって、エネルギー基本計画で重要なベースロード電源とされた原発は、再稼働の準備がどんどん進められ、再生可能エネルギーは危機に瀕している。しかし、エネルギー基本計画を作成するにあたって、パブリックコメントとして国民から寄せられた意見では、原発維持・推進は1.1%しかなく、原発廃止が94.4%を占め、それはエネルギー基本計画作成前には公表されなかった。原発廃止意見の根拠は、①地震国で安全ではない ②使用済核燃料の処分場がない ③火山噴火予知ができない ④避難ができない などである。

(2)特定秘密保護法の是非(このブログの「特定秘密保護法関係」のカテゴリーに詳しく記載)
 特定秘密保護法が制定され、理由もわからないまま逮捕され厳罰に処せられる可能性が出てきたため、刑法研究者が、速やかな廃止を求める抗議声明を発表した。その声明は、①何が特定秘密かが極めてあいまいで罪刑法定主義の原則に反し違憲 ②特定秘密の内容が明らかにされないまま公判が開かれれば、憲法82条の裁判公開原則に反する、など刑事法の観点から問題点を指摘しており、一橋大名誉教授、九州大、北海道大、大阪大などの教授や弁護士らが名前を連ねている。それでも特定秘密保護法を施行するのか、また、それは何のためかなのかを問題にすべきである。

(3)TPP、農協改革の是非(このブログの「環太平洋連携協定」「農林漁業」のカテゴリーに詳しく記載)
 TPPは農業にダメージを与え国家主権を害するものだが、自民党は公約を曖昧にしてTPPや農協改革を進めてきた。これは、経済産業省の意向が強く働いているからだろうが、地域の産業として、農林漁業や食品産業は重要であるため、守らなければならない。また、農協改革も実態に合っていないため、ここで「No」の意志表示をすべきだ。

(4)消費税増税の是非(このブログの「消費税増税問題」のカテゴリーに詳しく記載)
 消費税増税の是非については、昨日も記載したとおり、ここで明確に「No」の意志表示をすべきだ。

(5)年金・社会保障削減の是非(このブログの「年金・社会保障」のカテゴリーに詳しく記載)
 社会保障は、街づくりや中食産業の工夫により、サービスを維持しながらある程度削減することが可能だが、年金、医療保険、介護保険を削減されれば生活できなくなる人が多い。これは、副総理の麻生財務大臣や世襲議員にはピンとこない人が多いため、国民が、ここで明確な「No」の意志表示をすべきだ。

(6)普天間基地問題の是非(このブログの「普天間基地問題」のカテゴリーに詳しく記載)
 このブログの2014年11月17日にも記載したとおり、在日米軍施設の74%が集中する沖縄に、辺野古沖を埋め立てて新たな米軍基地をつくることは、保守分裂までして行われた今回の沖縄県知事選挙で明確に反対の意志が示された。しかし、政府はその選挙結果にもかかわらず、辺野古移設を進めると明言しており、民主主義国家としていかがなものかと思われるため、国政選挙でも論点として、「No」の意志表示がなされなければならない。

(7)集団的自衛権行使の是非(このブログの「安全保障」のカテゴリーに詳しく記載)
 日本国憲法は最高法規であるため、日本がどこまで集団的自衛権を行使できるかは、憲法の範囲内に決まっているが、いろいろと迷案が出ているので、ここで明確にすべきである。

(8)国民主権と憲法改正の是非(このブログの「日本国憲法」「民主主義・選挙」のカテゴリーに記載)
 自民党は憲法改正の準備に入っているため、この議論も重要である。

*1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014112102000125.html
(東京新聞 2014年11月21日) 安倍政治を問う 衆院きょう解散
 安倍晋三首相は二十一日、衆院を解散する。二〇一二年十二月の第二次安倍政権発足後、約二年間にわたって進めてきた政策が審判を受ける。くらしへの影響が大きいアベノミクスと呼ばれる経済政策、憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使容認に踏み切った安全保障政策、再稼働を進める原発政策は、日本の針路を大きく左右する三つの岐路として、その是非が問われる。政府は二十一日午前の閣議で、各閣僚が解散の閣議書に署名。午後一時開会予定の衆院本会議で伊吹文明議長が解散詔書を朗読し、衆院は解散される。政府はこの後の臨時閣議で「十二月二日公示、十四日投開票」の選挙日程を正式決定する予定。衆院選は、自民、公明両党が大勝し、民主党から政権を奪還した一二年十二月以来二年ぶり。首相は二十日、都内で開かれた商工会全国大会で「私たちが進めている成長戦略が正しいのか、ほかに道があるのか、選挙戦を通じ明らかにしていく」と述べ、アベノミクスの継続の是非を問う考えを示した。与党は近く円安対策などを柱とした経済対策をまとめ、選挙戦で実現を訴える。一方、民主党の海江田万里代表は都内で記者団に「アベノミクスによる格差の拡大と固定化はあってはならない。(安全保障政策で)社会がきな臭い方向に行かないように押しとどめる」と安倍政権と対峙する考えを示した。衆院選公示が迫る中、野党は他党と競合する選挙区の調整や公認候補の選定作業を加速。一部では離党して民主党に合流する動きが表面化した。首相は十八日、消費税率の8%から10%への引き上げを一七年四月まで一年半延期すると明言。「国民生活に密接に関わる税制を変更する以上、速やかに信を問うべきだ」として二十一日に衆院を解散する。首相は与党で過半数(二百三十八議席)を下回れば退陣する考えを表明した。

*2:http://mainichi.jp/select/news/20141121k0000e010232000c.html
(毎日新聞 2014年11月21日) 衆院:解散、総選挙へ…アベノミクス問う 12月2日公示
 衆院は21日午後1時からの本会議で解散された。衆院選は「12月2日公示−14日投開票」の日程で行われる。衆院解散は2012年11月16日に民主党政権の野田佳彦首相(当時)が行って以来2年ぶり。安倍晋三首相は、今年4月の消費税率8%への引き上げ以降、経済が低迷していることを受け、来年10月予定の10%への引き上げを1年半先送りすることを決めた。衆院選では、政権の経済政策「アベノミクス」継続の是非のほか、集団的自衛権の行使容認などが大きな争点となる。首相は21日朝、首相官邸で記者団から「解散に臨む気持ちは」と問われたが、「おはよう」と右手を挙げるにとどめ、閣議前の写真撮影の際も硬い表情のままで無言だった。閣議では、全閣僚が閣議書に署名し、憲法7条に基づく解散詔書を決定。「大義なき解散」との批判を念頭に、菅義偉官房長官はその後の記者会見で、「首相はデフレ脱却と経済再生に強い意欲を持っている。解散後に首相が会見して説明する」と述べた。午後の衆院本会議で、伊吹文明議長が解散詔書を読み上げ、解散。民主党は「解散に大義がない」として、慣例となっている「万歳」をしなかった。維新も起立のみで万歳はしなかった。野党各党は今回の衆院解散・総選挙を「延命をはかる解散」と批判している。政府はその後の臨時閣議で、衆院選の日程を正式に決める。首相は就任後の昨年3月、毎日新聞の世論調査で内閣支持率70%を獲得。同7月の参院選で勝利して衆参両院の「ねじれ」を解消した。その後も安倍政権は、堅調な支持率と衆参で多数を占める自民党の「1強多弱」を背景に、安定した政権運営を進めてきた。経済政策では、(1)大胆な金融政策(2)機動的な財政政策(3)民間投資を喚起する成長戦略−−をアベノミクスの「三本の矢」として進め、株価は上昇した。一方、消費税率8%への引き上げを昨年10月に決定し今年4月に実施して以降は、経済が低迷。首相は景気回復の遅れを理由に、今月18日の記者会見で消費税率10%への引き上げを17年4月まで1年半先送りすると明言。そのうえで「国民生活に重い決断をする以上、速やかに国民に信を問う」と衆院解散の意向を表明した。エネルギー政策では、首相は「安全が確認された原発を再稼働する」と訴え、原子力規制委員会の審査を後押ししてきた。

*3:http://qbiz.jp/article/50442/1/
(西日本新聞 2014年11月22日) 衆院選の争点、世論を二分する4テーマ
 12月2日に公示される衆院選は、2年間の「安倍政治」を問う選挙になる。国民の間で意見が分かれ、日本の将来に大きく関わる(1)アベノミクス(2)安全保障(3)エネルギー(4)社会保障−の4テーマについて、第2次安倍内閣の実績やこれからの課題を検証し、選挙戦の争点を展望する。
■アベノミクス
<デフレ脱却には道/都市部に偏る恩恵>
 衆院選での最大の争点が、安倍内閣の経済政策「アベノミクス」だ。政府、与党が株価や賃金上昇などの成果を強調する一方、4月の消費税増税の影響が長引き、7〜9月期の国内総生産(GDP)が2四半期連続のマイナス成長となるなど、評価は分かれる。「企業がしっかりと収益を上げれば、雇用を増やし、賃金を上げることができる。その好循環を回していく、これがアベノミクスなんです」。安倍晋三首相は衆院解散した21日の会見で、雇用や賃金などの指標を挙げ、成果を自賛した。最大の課題だったデフレからの脱却に光が差してきたのは間違いない。9月の全国消費者物価指数は前年同月比3・0%上昇し、16カ月連続のプラス。消費税増税分を除くと1・0%の上昇で、日銀目標の2%には及ばないが、緩やかな上昇が続いている。雇用でも9月の有効求人倍率が1・09倍と、バブル後の最高(1・10倍)と肩を並べた。2012年12月の第2次安倍内閣発足時と比較すると、日経平均株価は約7千円上昇、円相場は1ドル=85円台から117円台まで円安が進んだ。10月の貿易統計で輸出は金額、数量とも2カ月連続で前年同月を上回り、財務省は「海外需要に加え、円安の影響も出ている」と分析する。
   §   §
 一方、アベノミクスの恩恵にあずかっているのは、大企業や都市部などに偏り、地方や家計に及んでいないという指摘は根強い。9月の消費支出は5・6%減で、消費税が引き上げられた4月以降、マイナスが続いている。物価上昇分を除いた実質賃金は9月も3・0%減と15カ月連続のマイナス。消費税増税を含めた物価上昇に賃金が追いつかず、消費が伸び悩むという図式だ。地域経済の力不足も顕著だ。10月の百貨店売上高は東京や大阪など大都市圏が前年同月比0・9%減だったのに対し、地方は4・8%減と落ち込みが激しかった。14年9月中間決算でも、好業績だったのは円安を追い風にした輸出関連の大企業が中心で、内需関連や地方の中小企業は輸入原材料や燃料費高騰に苦しむ。明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは「円安による物価上昇や、厚生年金保険料の引き上げなどで、家計の負担は拡大している。物価の推移を見る限り、日銀の追加緩和が効く見通しも立てがたい」と指摘した。
■安全保障
<武力行使、歯止め焦点>
 安倍晋三首相は7月、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更を閣議決定した。これまで、日本への武力攻撃があった場合のみ自衛隊が武力行使できると解釈してきたが、「国民の権利が根底から覆される明白な危険」がある場合、他国への武力攻撃であっても、自衛隊の武力行使を可能とした。だが、「明白な危険」の範囲については、与党内でも温度差がある。例えばペルシャ湾ホルムズ海峡のシーレーン(海上交通路)で行う機雷掃海について、首相は「可能」とする立場だが、公明党は慎重姿勢を崩していない。日米両政府は、自衛隊と米軍の協力や役割分担を定めた日米防衛協力指針(ガイドライン)の改定作業を年内に終える予定だったが、来春以降に先送りした。集団的自衛権を含む安全保障法制も、来年の通常国会後半で審議される。両者は密接に関係しており、自衛隊の武力行使に適切な「歯止め」をかけられるか否かが大きな焦点となる。国家機密の漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法は昨年12月、与党の強行採決で成立。選挙期間中の12月10日に施行される。指定する秘密の拡大解釈や恣意的な運用に対する懸念は強い。政府が設置する監視機関の権限も不十分で、実効性に疑問が残ったままだ。首相は18日のテレビ番組で「(秘密保護法によって)報道が抑圧されるような例があったら私は辞めます」と明言したが、廃止法案が成立しない限り同法は続く。たとえ首相が辞任しても事態は改善しない。
■エネルギー
<再稼働、さらに加速へ>
 安倍内閣は、今年4月に策定した新たなエネルギー基本計画で「重要なベースロード電源」と位置付けた原子力発電所の再稼働を推進する姿勢を鮮明にしている。21日の閣議後会見でも、宮沢洋一経済産業相が「安全性が原子力規制委員会で確認されたものについては再稼働を進めるという方針でやってきたし、(衆院選の)公約に明記しないといけない」と強調した。東京電力福島第1原発事故を教訓にして策定された新規制基準に基づき進んでいる規制委の審査は、1番手の九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)が地元同意を得て、年明けに再稼働する見込み。関西電力の高浜原発(福井県)や大飯原発(同)、九電玄海原発(佐賀県玄海町)も進んでおり、来年はさらに再稼働が加速しそうだ。一方、基本計画で「導入を最大限加速する」とした再生可能エネルギーの先行きには暗雲が漂う。九電など大手電力会社5社は9月、太陽光発電など再生エネの送電網への接続申し込みが許容量を超えたとして、契約手続きを中断。国が検証作業を進めているが、申し込みの全てが接続できるかどうかは不透明だ。福島第1原発の事故は今も収束せず、10万人以上が避難生活を強いられる中で進む原発回帰。火力発電中心となり、家庭向けの電気料金が震災前より約20%上昇しているのも事実だ。国民生活や企業活動を支えるエネルギーの将来像が問われる。
■社会保障
<過重労働、根強い懸念>
 雇用労働では安倍政権が進める規制緩和の是非、社会保障では制度維持に向けた負担増の在り方が問われる。臨時国会では、企業が派遣労働者を受け入れる期間の制限をなくす法案が廃案になった。政権は多様な働き方を支援すると主張したが、野党は不安定雇用が広がると批判した。政権は労働時間規制の適用を除外する「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入を目指しており、過重労働に歯止めがかからなくなるとの懸念が根強い。政権は、医療では75歳以上の一部に実施している保険料の特例軽減措置の廃止や、入院食費の増額を検討している。介護では、特別養護老人ホームの相部屋の利用料引き上げ、年金では少子高齢化に応じて年金水準を徐々に抑制する仕組みの強化などを議論している。

*4:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO80040280S4A121C1MM8000/
(日経新聞 2014/11/22) アベノミクス争点 衆院解散、12月14日総選挙
 衆院が21日の本会議で解散され、与野党は「12月2日公示―14日投開票」の衆院選に向けて事実上の選挙戦に突入した。安倍晋三首相(自民党総裁)は記者会見で、自らの経済政策アベノミクスの継続を問う考えを表明。雇用の増加や賃金水準の上昇などの成果を訴えた。野党側は経済格差が拡大したとして持続性と効果に疑問を呈し、対決姿勢を強めている。日本経済新聞社の調べによると、21日夜時点で立候補予定者は与野党で約1千人。1票の格差是正で小選挙区は5減り、今回の衆院選は小選挙区295、比例代表180を合わせた定数475議席を与野党が争う。首相は21日の記者会見で「アベノミクス解散だ。アベノミクスを前に進めるのか、それとも止めてしまうのか、それを問う選挙だ」と強調した。「100万人以上の雇用増」を成果に挙げた。「アベノミクスが始まって行き過ぎた円高が是正された」とも主張。円安による物価高については「経済対策でしっかり対応していく」と述べた。都市と地方の格差拡大に触れ「まだまだ厳しい地方経済に景気回復の暖かい風を送り届けてこそ、アベノミクスは完成する。この道しかない」と理解を求めた。2015年10月に予定していた消費税率10%への引き上げを17年4月に延期すると改めて説明。「今回のような景気判断による再延期は行わない」と断言した。「野党が皆同意しているから選挙の争点ではないといった声があるが、それは違う。いつから引き上げるべきなのか時期を明確にしていない」と批判した。再増税延期で社会保障を充実させる政策スケジュールの見直しが必要との認識を示す一方、待機児童解消を目指す子ども・子育て支援の新制度を来年4月から予定通り実施する考えを示した。民主党の海江田万里代表は記者団に「アベノミクスが持続的、安定的な経済成長につながるのか」と疑問を投げかけた。維新の党の江田憲司共同代表は「成長戦略の骨抜きが景気失速の最大の原因」と指摘した。次世代の党は金融政策に過度に依存しているとして軌道修正を求めている。
■アベノミクス、2年の評価は
 安倍晋三首相は衆院選でアベノミクスの是非を問うと力説した。2012年12月の政権発足後、金融緩和と財政支出、成長戦略の「3本の矢」でデフレからの脱却を目指してきたが、成果は道半ばだ。行き過ぎた円高の修正によって雇用や所得の改善につながったものの、個人の消費や企業の投資が増え続ける好循環には至っていない。第1の矢、日銀による大規模な金融緩和の効果は円高の修正だ。12年2月に一時1ドル=76円台となった円相場は14年11月に1ドル=118円台と、5割も円安になった。輸出企業の収益が高まり、大手製造業は今期も海外で稼いで最高益をうかがう勢いだ。企業収益の改善は株高にもつながった。第2の矢である財政支出も、政府債務が増したものの景気は押し上げた。2.2%だった13年度の実質成長率は0.7ポイント分が公共投資による押し上げ効果だ。雇用環境は人手不足とも指摘され、完全失業率も3%台まで下がった。今春の大企業の賃上げ率は、15年ぶりに2%台の伸び率となった。ただ4月の消費税率8%への引き上げ分を差し引くと、家計の購買力である「実質賃金」は減っている。輸出企業にはプラスに働く円安も、輸入企業や家計にとっては原材料や食料品の値上がりにつながる。第3の矢である成長戦略は、規制緩和などで企業活動を後押しするとしていた。医療や農業などの「岩盤規制」の突破も狙ったが、実現した政策はまだ少ない。企業側の要望が強い法人実効税率の引き下げも、詰めの議論は途上だ。日本経済の実力を示す潜在成長率は労働力人口の減少などで0%台半ばとされ、政権発足後も伸びていない。日本経済は4月の消費増税後、2四半期続けてマイナス成長になるなど立て直しは道半ばだ。消費再増税の先送りによって財政再建も遅れている。医療や介護、年金といった社会保障分野の歳出見直しは不可欠だ。

*5:http://qbiz.jp/article/50434/1/ (西日本新聞 2014年11月22日) 【景気変調〜アベノミクスの行方】(5)建設 人手不足の長期化深刻
 「実家に帰って農家になります」。今年9月、福岡市内の建築足場会社で、10〜20代の職人3人が相次いで辞表を出した。「給料はがんばって出していたが、今の若い人は建設業に魅力を感じてくれない。頭が痛い」と社長。過剰な業務による事故を防ぐには依頼の一部を断るしかない。外国人技能実習生の活用に向けた検討も始めた。今年9月の九州・沖縄8県の有効求人倍率は0・91。バブル期直後の1991年12月以来の高水準だ。特に建設業界は全国的な人手不足が続く。福岡労働局によると、福岡県の建設・採掘業の有効求人倍率は、比較可能な2012年4月以降、1・0倍を超えている。直近の14年9月は、働き口が求職者の2倍以上あることを示す2・12。他県もほぼ同じ傾向という。東日本大震災の復興工事や東京五輪に向けた工事が増え、東北や首都圏に職人が集まっていると言われるが、大本は、就労者の高齢化と若手の減少が同時に進む慢性的な問題だ。中高年が退職期に差し掛かり、今後、さらに深刻化するとみられている。
■大型工事に遅れ
 人手不足により人件費は上昇。円安による資材高とも相まって、各地で大型工事の遅れが散見される。来春の開業に向け、大分駅ビルの建設が進む大分市中心部。駅前の一等地にあった商業施設、大分パルコ(11年に閉店)の跡地は、今年7月から暫定的に駐車場になっている。15年度に完成予定だった大分中村病院(大分市)の新病院建設が、遅れる見通しになったためだ。同病院が、周辺道路の車線減との調整などと並んで原因に挙げるのが、当初の予算から2、3割高くなりそうな建設費。後藤昌一事務長は「早く建てたいが、理想の病院を建てるには慎重に進めた方が得策と判断した」と語る。
■高校生に見学会
 長崎県では8月、県庁舎の建て替え工事の入札で、参加業者が示した金額が県が算出した予定価格を上回り、落札業者が決まらなかった。「公共工事の単価は相場を反映するのが遅く、業者は民間工事を優先しているのでは」と業界関係者。26日にある2回目の開札を前に、県の担当者は「今度こそ決まってほしい」。人手不足解消に向け、竹中工務店九州支店(福岡市)は今年から、建設中のマンションで高校生や専門学校生向けの見学会を始めた。現場の作業を見せて興味を持ってもらう狙い。参加した41人のうち6人が来春から建設業界への就職を決めたという。牧旨之調達部長は「現状のままでは日本の建築技術は衰退する。後継者を増やすには、長い目で見た取り組みが必要」と力を込めた。景気変調の中で、人手不足など長期的な課題も抱える九州経済。アベノミクスの行方が問われている。


PS(2014.11.24追加):秘密保護法の施行には、*6のように、民主主義や三権分立を護る見地からの反対が多く、それだけ重要な問題なのである。
    
           特定秘密保護法の内容              *6より
*6:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014111801001716.html
(東京新聞 2014年11月18日) 秘密保護法施行やめて、市民訴え 国会前、日弁連集会も
 12月10日施行の特定秘密保護法に反対する市民団体が18日、東京・永田町の国会前で「国民の知る権利を奪う」と法廃止や施行延期を求めてシュプレヒコールを上げた。国会内では日弁連主催の集会も開かれ「恣意的な秘密指定がされる恐れがある上、国会の監視機能が制限され、三権分立がゆがめられる可能性もある」との指摘が出た。国会前では約130人の市民が「秘密保護法を施行するな!」と書いた横断幕やプラカードを掲げ「情報は市民のもの」「安倍政権の暴走を止めよう」と声を上げた。施行延期などを求める安倍晋三首相宛ての要請書を内閣府に提出した。


PS(2014.11.24追加):TPPに関しては、*7-1のように、農業など眼中にない日経新聞や経団連会長は「TPPの実現は日米関係のさらなる強化に資する」としており、農業を真面目に考えている日本農業新聞や専門家は、*7-2のように、「『日本農業は一人負けで、参加国の輸出増の70%を背負い込む』と米農務省がTPPの効果を試算している」と述べている。だからこそ、米国等はTPPに積極的なのであり、日本は農業を既に古くなっている形の貿易や能力なき外交の生贄にしてはならないのである。

       
  TPPの参加国  農業の今後の懸念とこれまでの交渉実績    ISD条項
*7-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141113&ng=DGKKASFS13H0A_T11C14A1EAF000 
(日経新聞 2014.11.13) 経団連会長、「TPP早期合意実現を」 日米財界人会議が開幕
 日米の経営者が経済問題などを話し合う日米財界人会議が13日、東京都内のホテルで開幕した。経団連の榊原定征会長は講演で、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉について「TPPの実現は日米関係のさらなる強化に資する」と強調した。年内の大筋合意は断念しているが「年明け以降、できる限り早く合意が実現されるよう日米の政治のリーダーシップに期待したい」と語った。会議には、菅義偉官房長官やケネディ駐日米大使が出席した。景気認識に関し榊原氏は、輸入コストの増加など下押し圧力に注意が必要だが「先行きを過度に悲観する必要はない」と指摘した。消費税10%への引き上げは、予定通り実行すべきだと重ねて強調した。

*7-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30768 
(日本農業新聞 2014/11/12) 日本農業 一人負け 参加国の輸出増 70%背負い込む 米農務省がTPP試算
 米農務省は、環太平洋連携協定(TPP)合意で2025年までに関税が完全撤廃になった場合、交渉参加12カ国の農産物貿易がどう変わるのかを予測した報告書をまとめた。合意によって米国農業は輸出額を最も増やす。一方、参加国全体の輸出増加額の70%は、その輸出先となる日本に押し付けられ、日本農業がほぼ一人負けになると見込んでいる。報告書は、米農務省経済分析局の専門家らがまとめた。各国が既に参加している自由貿易協定などを加味した「通常」と、関税や関税割当を完全撤廃した「TPP」シナリオを比べた。「TPP」シナリオで合意すると、参加国の農産物貿易は6%、計85億ドル(1ドルは約116円)増えると予測する。うち33%に相当する28億ドルを米国が獲得する。これに対し、日本の輸出増加分は、加工品を中心に8300万ドル。参加国全体の輸出増額分のわずか1.4%に過ぎない。一方、参加国の輸出増加額の70%に当たる58億ドル分は、輸入という形で日本が背負い込む。日本の輸入額が増える品目は、食肉が半分を占め、米を含めた穀物、その他の加工品、酪農製品などが続く。日本には貿易収支の面で「焼け石に水」にもならない。安倍政権が20年までに食品輸出額を1兆円に倍増する計画は、この試算からは完全に無視された形だ。報告書が示す日本農業への影響は、これまで日本政府などが試算したものに比べ、極めて小さい数字に抑えられている。例えば米について、日本政府が32%の生産額の減少を見込むのに対し、米農務省試算は3%減に過ぎない。砂糖の生産額は100%無くなるとの予測に対し、わずか2%の落ち込みと見込む。こうした“軽い”減産予測を基に報告書は「TPPで関税を撤廃しても日本農業生産額への影響は大きくない」などと指摘。TPP交渉で日本が関税撤廃に踏み切るよう背中を押した。日本政府の試算と大きく異なるのは、米農務省試算が関税以外の豚肉の差額関税制度や砂糖の価格調整制度などを織り込んでいないことが大きい。報告書の執筆に当たった米農務省関係者の一人は「国際市場で日本向けに輸出できる数量が十分に手当てできないこと、日本の消費者が国産志向を持っていることなどが米日の試算で影響が異なった原因だ」と説明する。
●生産への影響評価不十分 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏に聞く
 米農務省がまとめたTPPの試算に対する見方について、東京大学大学院の鈴木宣弘教授に聞いた。農務省は中間選挙での共和党の勝利を見込んで、このタイミングで試算を提示したと考えられる。共和党は徹底した自由貿易推進の立場をとっており、TPPでさらに徹底した農産物の関税撤廃を日本に迫るだろう。域内の農産物輸入増加分の7割を日本が負担する「一人負け」なのに、国内生産はほとんど減らないという試算は極めて恣意的である。この種の試算では安い輸入品が入ってきても国産品は「別物」で、国内生産はあまり影響を受けない。輸入と国産の代替性を現実的な水準に変更すれば、試算結果は大きく変化する。日本産米に匹敵するジャポニカ米の供給余力を現時点での生産量で評価しているのが問題だ。主産地のカリフォルニア州は水が不十分で余力が小さいとしても、アーカンソー州は水が豊富である。ビジネスチャンスが日本で生じれば、同州ではジャポニカ米に切り替えられる。ベトナムでもジャポニカ米はすでに60キロ当たり1200円程度で生産され、「コシヒカリ」を欧州に輸出している。日本の米農家の現地検証では、日本と同等の品質米も同4000円程度で生産可能だ。日本の商社などもTPPを見越した準備を始めている。中長期的な供給余力と低い生産コストを考慮すれば、農務省の試算結果とは全く異なり、日本の農業生産への影響はもっと大きくなる。


PS(2014.11.25追加):原発の安全性について、鹿児島県の伊藤知事は、*8-1のように、「もう命の問題なんか発生しない」と明言して川内原発の再稼働に同意したが、原発が事故を起こせば、癌、白血病、心臓病等の疾患が増えるのは当たり前だ。これについて、*8-2で、英国出身の放射線生物学者キース博士(73)が、11月24日、「国連科学委員会の報告書が掲載している被曝線量でも癌の過剰発生は予測され、国連科学委員会は、透明性、独立性を欠いて非科学的であるため解散すべきだ」としている。私は、キース博士の方が、勇気を持って、公正でまっすぐな意見を言っていると考える。

*8-1:http://mainichi.jp/select/news/20141108k0000m040112000c.html
(毎日新聞 2014年11月8日) 川内原発再稼働同意:「命の問題発生せず」鹿児島知事
 原発の立地県として初めて、鹿児島県の伊藤祐一郎知事と県議会が7日、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に同意した。原発事故への不安が根強い中、伊藤知事は国の新たな規制基準とそれに基づく九電の対策を高く評価し、「もう命の問題なんか発生しない」と明言。しかし、再稼働に反対する県民は「安全神話の復活だ」と猛反発している。両者の主張は相いれないまま、知事判断で再稼働の地元手続きは完了した。「やむを得ない」。伊藤知事は7日、県議会が再稼働陳情を採択した後に記者会見を開き、自らも同意したことについてこの言葉を連発した。伊藤知事はこれまで、再稼働の必要性を訴えつつ「脱原発に向かって模索する」とも主張してきた。今回、再稼働に同意したことに、伊藤知事は「国民生活のレベルを守り、わが国の産業活動を維持する上で(原発は)重要な要素だ」と理解を求め、「わが国の当面の判断として原発を活用する以外に道がない。安全性がある程度約束されるのであれば、それがベターだ」として「やむを得ない」の理由を説明した。一方、原発事故への不安については「福島であれだけの不幸な事故が起きた。安全神話が全部崩れたのは確かだ」との認識を示しながらも、原発事故後に設けられた国の新規制基準を高く評価。原子力規制委員会の指針や九電の評価を引用し、事故が起きても原発から5.5キロの放射線量は毎時5マイクロシーベルトだとした上で「避難の必要がない。普通に生活してもいい」と述べ、「もし福島みたいなことが起きても、もう命の問題なんか発生しない」と明言した。福島の事故は収束せず、避難計画の実効性や火山対策にも疑問の声が上がる中での再稼働同意に、納得のいかない住民は多い。この日、県庁には全国各地から再稼働反対を訴える400人以上が集まり、県議会の傍聴席を埋めた。午前10時の開会前から「再稼働にどんなメリットがあるのか」などのヤジが飛んだ。しかし、県議会(定数51、欠員2)は自民県議団が33人を占め、再稼働を進める政府・自民党本部の方針に従えば、再稼働陳情が採択されるのは必然だった。反対討論を行った柳誠子県議(県民連合)も「歴史に禍根を残す一日」と無念さをにじませた。

*8-2:http://digital.asahi.com/articles/ASGCR4HRLGCRUGTB002.html?_requesturl=articles2FASGCR4HRLGCRUGTB002.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASGCR4HRLGCRUGTB002 (朝日新聞 2014年11月25日)「国連科学委は非科学的」 元WHO欧州地域顧問
 旧ソ連・チェルノブイリ原発事故の健康影響調査などに携わってきた英国出身の放射線生物学者キース・ベーバーストック博士(73)が24日、東京都内で朝日新聞記者の取材に応じた。東京電力福島第一原発事故後のがんの増加に否定的な報告書を出した国連科学委員会(UNSCEAR)を「透明性、独立性を欠き非科学的」と批判し、「解散すべきだ」と訴えた。博士は取材に対し、科学委が今年4月に発表した福島第一原発事故の影響についての報告書で「被曝によるがんの増加は予測されない」などとしたことに、報告書が掲載している被曝線量でも「がんの過剰発生が予測される」と反論した。たとえば報告書は事故から約1年半後までに原発敷地内で働いた作業員で10ミリシーベルト以上被曝した人は1万人近くいるとしており、これだけで50人近くのがんが増えると主張した。科学委の中立性にも疑義を訴えた。理由として、原子力推進計画をもつ国が委員を指名し、科学委に資金提供している▽委員の原子力産業内での雇用履歴が公表されず、放射線リスク評価の際の利益相反がないことの宣誓書が添付されていない――などをあげ、「利権からの独立もなく、科学の名に値しない偏向した報告書だ」と述べた。博士はWHO勤務時代、原子力を推進している国際原子力機関(IAEA)から「常に介入圧力を感じていた」と語った。福島第一原発事故に関する報告書が公表まで3年以上もかかったことに疑問を呈し、内部情報をもとに「結論を巡る批判やIAEAなど他の国連機関の影響」の可能性を指摘した。博士はチェルノブイリ事故の被災地での甲状腺がんの増加をいち早く指摘。世界保健機関(WHO)欧州環境健康センターで放射線公衆衛生地域顧問などをつとめてきた。今回、原発事故に関する「市民科学者国際会議」を主催する市民団体の招きで来日した。


PS(2014.11.25追加):憲法改正論者の論拠は、*9のように、「現行憲法は占領下で制定されたので、日本国民が憲法を定めるべき」というのが多い。しかし、私は、日本の内部で改正すれば、小さな変革はできても、ここまで大きな民主化や男女平等への革命的変革はできなかったと考える。そのため、憲法を改正すれば、国民にとって(ここが重要!)良くなるのか悪くなるのかをしっかり議論すべきであり、私自身は、自民党の改正案よりも現行憲法の方が、ずっとヒューマニズムに富み見識が高いため、まず、この憲法を守るべきだと考えている。
      
 自民党改正手続案  自民党改正草案  一般へのアンケート(有権者も勉強が必要)

*9:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014111702000203.html
(東京新聞 2014年11月17日) 衆院憲法審が盛岡で公聴会 改正国民投票法議論
衆院憲法審査会は17日、盛岡市で大学教授や弁護士ら5人による地方公聴会を開いた。改正国民投票法の施行を受けたもので、憲法改正に対し賛否の意見が出た。衆院事務局によると、憲法審査会としての地方公聴会開催は初めて。宮城県議の相沢光哉氏は「現憲法は占領下で制定された。(衆参両院それぞれで総議員の3分の2以上の賛成が必要となる)改憲の発議要件は緩和されるべきだ」と主張。弁護士の小笠原基也氏は「改正国民投票法は採決までの経緯で十分な議論がなく、廃止すべきだ」、岩手県生活協同組合連合会会長理事の加藤善正氏は「改憲の必要性を感じるのは国民の少数だ」と述べた。日本大名誉教授の小林宏晨氏は「閣議決定による集団的自衛権の行使容認解釈は、国連憲章に近づいており、非常に良い方向だ」と指摘した。

| 民主主義・選挙・その他::2013.12~2014.11 | 03:23 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.11.19 赤サンゴの中国密漁船に対する日本の対応とサンゴ養殖の可能性について
     
              小笠原諸島における中国船のサンゴ密漁
(1)サンゴ密漁船に対する日本政府及び日本人の態度
 *1-1のように、小笠原諸島周辺海域に中国のサンゴ密漁船が押し寄せたが、日本は、「一時200隻を超えた漁船の一部に撤退の動きがあり、12日には117隻まで減って、再び増加した」等と言って、領海内や排他的経済水域(EEZ)内では断固として違法操業をさせないという意志が見えなかった。

 そして、これを「大人の対応」と呼ぶ人もいるが、それは何もできない自分を慰めている言葉にすぎない。政府要人が、慰安婦問題を蒸し返して否定したり、靖国神社参拝をしたりして、多くの外国に「日本は・・」と思われるよりも、日本の排他的経済水域(EEZ)内や領海内では断固として環境破壊や密漁を取り締まるという態度を貫いた方が国際法に照らして諸外国にも認められるにもかかわらず、過去のことでもめて現在から未来に係る大切なことを黙認せざるを得ない状況になっていたわけである。

 一方、*1-2のように、中国政府は漁船に帰港を指示しているそうで、そのための外交努力はあったのかもしれないが、すでにサンゴを獲りつくした後であるため、この海域の中国漁船が最盛期に比べて半減し、次第に姿を消していくのは必然である。漁船の拠点とされる福建・浙江両省で当局による取り締まりが強化されたとしても、サンゴは台湾に水揚げして代金をもらった後であるため関係なく、ボロ船はサンゴを売った後に沈めても売っても元が取れるのではないだろうか。そのため、中国漁船が半減したのを喜んでいるのは、あまりにもお人好しすぎる。

(2)サンゴ密漁船に対する中国政府の対応
 一方、*2-1、*2-2のように、小笠原諸島の周辺海域などで希少な「宝石サンゴ」を中国漁船が密漁している問題について、浙江省象山県の漁業管理当局の幹部が、2014年11月11日に、同県の漁港からサンゴ漁船数十隻が日本の海域に出ていることを認め、「戻れば厳しく処分し、再発防止のため漁船を破壊する」と明言したそうだ。

 しかし、①サンゴを採取した密漁船がそのまま漁港に戻るわけがない ②そのため浙江省象山県での漁業管理当局の摘発は困難である ③漁船からサンゴ採取の網が見つかれば、漁船を押収して破壊する措置を取るとしても、漁船や漁具も捨てることができる ④漁民がサンゴを所有していれば刑事処分を行うとしても、台湾で水揚げすれば浙江省象山県に戻る時には所有していない などのため、この事件は、日本の排他的経済水域(EEZ)や領海内で起こっている以上、これこそ日本の海上保安庁が現行犯逮捕しなければならない重要な問題だと考える。

(3)サンゴ礁と環境
    
                  小笠原諸島の自然と海
 海上保安庁は、漁船の行動や漁具から違法操業であることを証明できるにもかかわらず、船が足りないことを理由に、密漁船の船長や乗組員を積極的に逮捕しようとはせず、国会も罰金を引き上げる検討しかしなかった。これは、国際会議の最中で、中国政府ともめてはならない時期だったとしても、異常だ。

 また、沖縄県辺野古で自然を破壊してジュゴンの住む海を埋め立てるために世論を誘導しているメディアであれば仕方のないことではあるが、密漁のみを問題として、(世界遺産である)小笠原諸島の生物や自然保護に言及するメディアが殆どなかったことにも、メディアの見識の低さを感じた。

(4)サンゴも養殖して輸出しては?
      
            赤サンゴ製品(中国で好まれそうな色)
 しかし、私もピンクの数珠を持っていたので見たところ、サンゴ製品だった。他にも、写真のようにネックレス、ペンダント、指輪、ブローチ、帯留めなど、赤から白までのさまざまな明度のサンゴ製品があり、美しい。そのため、養殖して輸出する価値がありそうだ。例えば、有明海では、有害生物として邪魔者扱いしていたクラゲを捕獲し、細かく切って干しクラゲにして中国に輸出したところ、思わぬ収入源となっている。

 そのため、真珠貝に赤サンゴの遺伝子を組み込んで赤い真珠を作ったり、サンゴそのものを赤色光から白色光までのさまざまな色の光の下で養殖して目的の色のサンゴを作り、装飾品用として輸出すればよいと考える。既に、ユーグレナ(ミドリムシ)の大量生産に成功しているため、養殖サンゴの餌は安価に手に入るだろう。

     
               サンゴ製品(日本で好まれそうな色)
<日本の対応>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141114&ng=DGKKASDG14H18_U4A111C1CC0000 (日経新聞 2014.11.14) サンゴ密漁船145隻に 小笠原海域で再び増加
 小笠原諸島周辺などの海域に中国のサンゴ密漁船とみられる外国漁船が多数押し寄せている問題で、太田昭宏国土交通相は14日の閣議後の記者会見で、同海域で13日に145隻の漁船が確認されたことを明らかにした。一時200隻を超えた漁船の一部に撤退の動きがあり、12日には117隻まで減っていたが、再び増加した。海上保安庁によると、小笠原諸島の父島や母島の周辺で134隻、伊豆諸島南部の鳥島周辺などで11隻が確認された。いずれも排他的経済水域(EEZ)内だった。

*1-2:http://mainichi.jp/select/news/20141114k0000m040169000c.html
(毎日新聞 2014年11月14日) サンゴ密漁:漁船、週内に撤退か 中国政府が帰港指示
 東京都の小笠原諸島近海などで中国漁船によるサンゴ密漁が横行し、地元漁業に深刻な影響を与えている問題で、中国政府が漁船に帰港を指示していると日本側に通告してきたことが13日、政府関係者への取材でわかった。この海域の中国漁船は最盛期に比べて半減しており、中国側の指示がすでに実行に移されたとみられる。指示が徹底されれば、今週中にも小笠原周辺から中国漁船が姿を消す可能性がある。政府関係者によると、中国政府から、今週末にかけて漁船を福建省や浙江省にある母港に帰港させ、地元の公安当局が捜査を開始すると外交ルートを通じて連絡があったという。当局は多数の漁船を所有するオーナーらに帰港を指示したとされ、これを受け入れた漁船が中国本土に向けて移動を開始した可能性が高い。この問題を巡っては8日、中国・北京での日中外相会談で岸田文雄外相が対策の強化を求め、王毅外相が「必要な措置を取っている」と応じていた。10日の首脳会談でも安倍晋三首相が習近平国家主席に「前向きな対応」を要請。漁船の拠点とされる福建・浙江両省では当局による取り締まりが強化されている。中国が領有権を主張する沖縄・尖閣諸島周辺では、中国政府が関与しているとみられる公船や漁船の領海侵入が常態化しているが、今回のような通告をしてきたことはない。これに対し、今回の外交ルートを通じた通告は自国の船の違法操業を認めた形となっており、ある関係者は「小笠原近海でのサンゴ密漁に中国政府が関与していない証拠と捉えることもできる」と分析している。海上保安庁による上空からの調査では、小笠原10+件諸島周辺などでは先月30日に過去最多の212隻の中国船が確認され、活動海域も伊豆諸島南方まで拡大したが、その後は減少に転じた。日中外相会談後の10日には、141隻と大幅に減少し、約半数が中国本土に向かって西に航行しているのが確認された。12日は117隻で先月末に比べ半減した。

<中国の対応>
*2-1:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141112-00050018-yom-int
(Yahooニュース《読売新聞》 2014年11月12日) 「戻れば漁船を破壊」サンゴ密漁に中国当局
 小笠原諸島の周辺海域などで希少な「宝石サンゴ」を中国漁船が密漁している問題で、浙江省象山県の漁業管理当局の幹部は11日、読売新聞の取材に応じ、同県の漁港からサンゴ漁船数十隻が日本の海域に出ていることを認め、「戻れば厳しく処分し、再発防止のため漁船を破壊する」と明言した。ただ、サンゴを採取した密漁船は漁港に戻ることは少ないとみられ、幹部は「摘発が極めて難しいのも事実だ」と語った。実際にどこまで厳しく取り締まれるかは不透明だ。同当局によると、地元漁民の証言から、日本の海域へサンゴ漁に向かった漁船がいることを確認した。今後、戻った漁船からサンゴ採取の網が見つかれば、漁船を押収して破壊する措置を取る。漁民がサンゴを所有していれば、刑事処分を行う方針だ。今月7日、浙江省政府が緊急会議を開き、サンゴ密漁船を厳しく取り締まることを確認している。

*2-2:http://mainichi.jp/select/news/20141115k0000e040219000c.html
(毎日新聞 2014年11月15日) サンゴ密漁:中国が帰港漁船取り締まりへ 監視衛星で追跡
 東京都の小笠原、伊豆両諸島周辺で横行する中国漁船のサンゴ密漁問題で、中国公安当局は近く、帰港した密漁船を対象に大規模な取り締まりに乗り出す。中国側は日中外相会談(8日)などで「必要な措置を取る」と明言しており、成果をアピールする狙いがあるとみられる。ただ、帰港前に洋上で密売業者との取引を済ませてしまえば、証拠に乏しいとして摘発が困難になる可能性があり、実効性は不透明だ。日本政府関係者によると、中国当局はサンゴ密漁船の拠点の一つとされる浙江省象山で、小笠原近海から帰港するサンゴ漁船を集中的に摘発する。中国当局は監視衛星などを使い、中国本土に戻る船団の動きを正確に把握している。外交ルートを通じて日本側が提供した密漁船の特徴なども参考にするとみられる。中国政府は既に漁船オーナーに密漁船を帰還させるよう指示しており、今週末以降、数十隻がそれぞれの母港に戻ると予想されている。一方で、密漁船の多くは船名などを偽装し、宝飾品になる「アカサンゴ」は洋上で密売業者に売りさばかれてしまうケースが多いとされる。このため、密漁の痕跡を残して帰港する漁船は少ない可能性があり、多数の立件は難しいとの見方もある。サンゴ漁船には、海底を根こそぎさらう専用の網が装備されている。浙江省と並ぶ拠点とされる福建省の海洋漁業庁は今月11日、漁船の装備などに関する大規模検査を実施すると告知。さらに12日に地元メディアが伝えた情報によると、同省福安市の検察当局は沖縄・尖閣諸島周辺などでアカサンゴを密漁したとして4人を起訴したという。ただ、中国政府の働きかけにもかかわらず、小笠原周辺には今も100隻を超すサンゴ漁船が残る。海上保安庁によると、先月30日、過去最多の計212隻が確認され、今月12日に117隻まで減ったが、翌13日に再び145隻まで増加。一時海域を離れた漁船が密漁を再開した可能性もあり、海保の巡視船などが24時間態勢で取り締まりを続けている。13日には漁業法違反(立ち入り検査忌避)容疑で中国人船長(33)を逮捕し、今年10月以降に周辺で逮捕された中国人船長は計6人になった。

| 環境::2012.12~2015.4 | 12:10 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.11.17 米軍普天間飛行場の辺野古移設問題については、沖縄県民が知事選で答えを出した
   

(1)沖縄知事選に対する沖縄地元紙の反応
 私が、2013年2月3日を中心として、このブログの「普天間基地問題」というカテゴリーにずっと書いてきたように、2013年1月28日、沖縄県の全市町村が普天間県外移設・オスプレイ配備撤回を求めて東京で大集会を開き、全市町村長の署名が入った「全沖縄の訴え」として米軍基地の負担軽減を求める「建白書」を手渡したにもかかわらず、2013年12月25日、日本政府は、仲井真知事に圧力をかけて辺野古埋め立てを表明させた。しかし、これは、どう見ても不合理で無理筋の話だ。

 そのため、今回の沖縄県知事選では、沖縄タイムス等の地元紙は、*1-1のように、「未来を切り開く選挙」と位置づけ、米軍普天間飛行場の辺野古移設問題を最大の争点としてリーダーを選ぶことで、選挙により民意を示す一票を投じるよう呼びかけた。そして、政治体制の保守対革新という旧来型の対立ではなく、辺野古への基地建設に保守同士が分裂して賛否を問う選挙になったわけである。
     
 その結果、*1-2のように、沖縄県知事選挙結果は、翁長氏が360,820票をとり、仲井真氏に約10万票の大差をつけて当選して、新たな基地は造らせないという民意が示された。また、同時に行われた那覇市長選挙では、城間幹子氏が101,052票で当選している。これは、沖縄県民が「沖縄のことは沖縄が決める」という自己決定権を行使し、辺野古移設拒否を政府に突き付けたことを意味しているため、政府は、率直に沖縄県民の強い民意を認めて、普天間基地の辺野古移設を中止すべきである。

 私は、すでに辺野古埋め立てに関する反対理由や代替案をこのブログに書き尽くしているため長くは書かないが、日本政府は沖縄県民に対する公平・公正な対応を行い、基地を、国の原発交付金をまだ手放せない鹿児島県の適地に移転して原発は早々に廃炉にすべきだ。鹿児島県にとっては、原発よりも基地の方がまだ安全で、基地による食料の調達も期待できる。

(2)沖縄知事選に対する全国紙の反応
 選挙前には沖縄知事選について殆ど報道しなかった全国紙も、朝日新聞は2014年11月17日の社説で、*2-1のように、「(沖縄県知事選の)最大の争点は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設の是非」「辺野古への移設計画は白紙に戻すしかない」としており、これは正しい。

 また、この対立は、旧来型政治体制の「保革対立」を超えた選択で、沖縄の未来をどう描くかという選択だった。その中で、仲井真氏は「一日も早い普天間飛行場の危険除去には、辺野古移設が現実的な方策」としたが、18年も放っておかれたことを少し早く解決するために、大きな妥協をするのは合理的でない上、「辺野古移設か普天間の固定化か」という二者択一というのは、選択肢が意図的で少なすぎる。

 しかし、2014年11月17日の日経新聞社説では、*2-2のように、「いまこそ政府と沖縄は話し合い、新知事と話し合いの糸口をつかんで予定通り普天間移設を進めるべき」「名護市での基地建設に必要な埋め立て工事は仲井真氏が承認済みであり、新知事に覆す権限はない」「日米同盟に影響する」などと言いたてて、普天間埋め立てを進めるべく世論を喚起している。これにより、どの新聞が、誰の意見を代弁しているかは、私が書くまでもないだろう。

(3)他の選択肢について
 *2-1にも書かれているように、日米両政府が「辺野古が唯一の選択肢」といくら強調しても、米国の専門家はじめ誰が考えても、より安価で優れた代替案が存在する。それでも「辺野古移設か、普天間の固定化か」と沖縄を脅しながら二者択一を迫り、新知事となる翁長氏に沖縄への一括交付金の削減で対抗するという声すらあるのでは、今度は沖縄(琉球)が独立のための国民投票をするかもしれない。

<地元紙の社説>
*1-1:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=90738
(沖縄タイムス社説 2014年11月16日) [知事選きょう投開票]未来を切り開く選挙だ
 戦後70年近く、沖縄の人々は幾度となく政治に翻弄され、歴史の岐路に立たされてきた。 例えば1956年の島ぐるみ闘争。軍事政策を優先し住民生活を無視した米民政府に、民衆が立ち上がった。68年に実施された主席公選は、自治権拡大闘争の末、勝ち取ったものだ。米軍支配に抗(あらが)う闘いは、72年の日本復帰へとつながっていく。復帰後12回目となる県知事選の投開票日を迎えた。主席公選以降、保守対革新で争われてきた構図が崩れた、かつてない選挙である。主席公選の高揚感を思い出したという年配の人がいた。基地か経済かで激しくぶつかった98年知事選以来の熱気という人も。どのような結果になっても、沖縄が進む方向と政治の枠組みに重大な影響を与えることは間違いない。立候補しているのは、元郵政民営化担当相の下地幹郎氏、前民主党県連代表の喜納昌吉氏、前那覇市長の翁長雄志氏、現職の仲井真弘多氏。いうまでもなく最大の争点は、米軍普天間飛行場の辺野古移設問題である。長く動かない問題を前に「選挙で変わるはずがない」と背を向けている人もいるかもしれない。でもそれは違う。県外移設、軍民共用、暫定ヘリポート、県内移設…、歴代知事の対応を細かく検証していくと、時々の政策や具体的アプローチが日米の取り組みに影響し、状況に変化をもたらしてきたことが分かる。誰をリーダーにするかで辺野古問題は変わるのだ。
      ■    ■
 前回の知事選と様子が変わったのは「基地問題」を重視する県民が増えたことである。「経済」から「基地」へと関心が逆転している。県民の心の奥底で起きている変化の正体が何なのか、選挙結果が明らかにしてくれるだろう。争点であり、関心が高い辺野古移設について候補者の主張をおさらいしたい。下地氏は県民投票を実施して結果に従うとする。喜納氏は埋め立て承認を取り消して撤回すると訴える。翁長氏は新基地は造らせないとし反対を主張している。仲井真氏は普天間の危険性除去が重要だとし容認の姿勢だ。現職が勝てば辺野古の埋め立てを承認した行為が民意によって認められたことになり、埋め立て工事にお墨付きを与える。それ以外の候補者が当選すれば状況は変わる。主張の違いは明らかであり、選挙で民意を示したい。
    ■    ■
 投票率が低下傾向にあることが懸念される。前回知事選は60%で、とりわけ若い世代の低さが目立った。今回の選挙では無党派層の増加が顕著だ。公明、民主党の自主投票が投票率にどう作用するのかも気になるところである。知事選を前に、菅義偉官房長官が辺野古移設は「過去の問題」と発言したことを思い起こしたい。新しい基地は10年後、50年後の沖縄の未来に影響する。将来世代をも拘束する計画なのだ。過去を振り返り、現在を直視し、未来を切り開く一票を投じよう。

*1-2:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-234623-storytopic-11.html
(琉球新報社説 2014年11月17日) 新知事に翁長氏 辺野古移設阻止を 尊厳回復に歴史的意義
 <県知事選挙開票速報>             <那覇市長選挙開票速報>
 当 翁長 雄志 360,820票               当 城間 幹子 101,052票
    仲井真弘多 261,076票                与世田兼稔 57,768票
    下地 幹郎 69,447票
    喜納 昌吉 7,821票
 新たな基地は造らせないとの民意は揺るがない。県知事選で、そのことがあらためて証明された。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対を掲げた前那覇市長の翁長雄志氏(64)が、政府と共に移設を進める現職の仲井真弘多氏(75)らを破り初当選した。約10万票の大差は、県民が「沖縄のことは沖縄が決める」との自己決定権を行使し、辺野古移設拒否を政府に突き付けたことを意味する。翁長氏には、政府の強硬姿勢を突き崩して移設問題など基地問題に終止符を打つことに全力で取り組むことを期待したい。
●民意尊重は当然
 在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄に新たな米軍基地の強権的な押し付けを認めることは、県民自ら尊厳を否定するに等しい。今知事選は1968年の主席公選を勝ち取った住民運動同様に、沖縄の尊厳と誇りを回復できるかも問われた。仲井真知事の辺野古移設工事埋め立て承認で、沖縄の尊厳と誇りを傷つけられたと感じた県民は少なくない。保守分裂選挙となったことがそれを物語っている。失われかけた尊厳を県民自らの意志で取り戻した選択は歴史的にも大きな意義を持つ。一方、政府は選挙結果にかかわらず、辺野古移設を進めると明言しているが、民主主義国家として許されない。埋め立て承認で地元の了解が得られたと受け止めているようだが、それも間違いだ。仲井真知事は前回知事選で県外移設を訴えて当選した。県民は辺野古移設推進にその後転じた仲井真知事を支持したわけではない。つまり地元の大半は了解などしていないのである。政府は辺野古移設の是非を最大の争点とした知事選で示された民意を真摯(しんし)に受け止め、辺野古移設を断念すべきだ。それこそが安倍政権の言う「沖縄に寄り添う」ことを具現化することになる。米政府も民主主義に立脚すれば、民意の重みを無視できないはずだ。ことし1月の名護市長選では移設阻止を掲げた稲嶺進市長が再選された。にもかかわらず、政府は移設工事を強行着手した。新基地建設工事を既成事実化し、県民に無力感を植え付けることを狙ったことは明らかである。だが、県民がなえることはなかった。新基地建設反対の意志をさらに強固なものにするきっかけにもなった。多くの県民が基地の県内たらい回し拒否に票を投じたことが何よりの証しだ。
●県民支援が必要
 東村高江では住民の反対を無視し、新たな米軍ヘリパッドの建設計画が進められている。翁長氏はオスプレイ配備に反対する立場からヘリパッド建設に反対している。建設断念に追い込んでほしい。県内全41市町村長が署名した「建白書」の求めるオスプレイ配備撤回の実現にも知事として力を注いでもらいたい。基地問題の解決はこれからが正念場である。辺野古移設など米軍基地の過重負担を強いる政府の厚い壁を突き破るためには、県民世論の後押しが欠かせない。「建白書」の精神に立ち返り、さらに幅広いオール沖縄で基地問題解決を訴え、翁長氏を支援する態勢の再構築も求められる。基地問題以外にも解決しなければならない課題は多い。翁長氏はアジア経済戦略構想の策定による自立経済の発展や正規雇用の拡大、4年後までの認可保育所の待機児童ゼロ、子ども医療費の無償化などさまざまな施策を通して県民生活を豊かにすることを打ち出している。那覇市長を14年務めた翁長氏の行政手腕、さらには那覇市議と県議で培った政治力、行動力を生かし、公約を実現するよう期待したい。県民は平和と豊かさの実感を望んでいる。県民の負託に応え、沖縄の将来も見据え、リーダーシップを発揮してほしい。

<全国紙の社説>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11459557.html
(朝日新聞社説 2014年11月17日)沖縄県知事選 辺野古移設は白紙に戻せ
 沖縄県知事選で、新顔の翁長雄志(おながたけし)氏(64)が現職の仲井真弘多氏(75)らを大差で破り当選した。「これ以上の基地負担には耐えられない」という県民の声が翁長氏を押し上げた。最大の争点は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設の是非だった。1月の名護市長選、9月の同市議選に続き、知事選も移設反対派が制したことで、地元の民意は定まったと言える。「沖縄に寄り添う」と繰り返してきた安倍政権である。辺野古への移設計画は白紙に戻すしかない。
■「保革」超えた動き
 政権側は辺野古移設を「過去の問題」として、知事選での争点化を避けようとした。だが、翁長氏は「あらゆる手法を駆使して辺野古に新基地をつくらせない」と主張。仲井真氏は「一日も早い普天間飛行場の危険除去には、辺野古移設が具体的で現実的な方策」と応じた。民意は翁長氏についた。県民にとって、今回の知事選には特別な意味があった。普天間飛行場の海兵隊は、山梨県や岐阜県の基地から、米軍政下の沖縄に移ってきた。米軍は「銃剣とブルドーザー」と呼ばれる強権的手段で住民の土地を奪い、基地を建設した。そして、国土の0・6%の沖縄に、全国の米軍専用施設の74%が集中する不公平。「基地は県民が認めてできたわけではない。今回、辺野古移設を受け入れれば、初めて自ら基地建設を認めることになる。それでいいのか」。県内にはそんな問題意識が渦巻く。それは「本土」への抜きがたい不信であるとともに、「自己決定権」の問題でもある。自分たちが暮らす土地や海、空をどう使うのか、決める権利は本来、我々にこそある、と。前那覇市長で保守系の翁長氏は「イデオロギーでなく沖縄のアイデンティティーを大切に」と訴え、保守の一部と革新との大同団結を実現した。とかく「保革」という対立構図でとらえられがちだった沖縄の政治に起きた新しい動きだ。
■公約違反に「ノー」
 96年に日米両政府が普天間返還に合意し、移設先として辺野古が浮上して18年。この間ずっと沖縄では、辺野古移設が政治対立の焦点となってきた。転機は2009年、「最低でも県外」と訴えた民主党の鳩山政権の登場だった。迷走の末、辺野古移設に逆戻りしたものの、「県外移設」に傾いた県民感情は収まらない。辺野古容認派の仲井真氏も、前回10年の知事選では「県外」を求め、再選された。以来、自民、公明を含めた沖縄の主要政党が辺野古移設反対で一致。「オール沖縄」と呼ばれる状況が生まれた。ところが、自民が政権に復帰すると、激しい巻き返しが始まる。党本部の圧力で、党国会議員団、党県連が、辺野古容認に再転換。仲井真氏も昨年末、埋め立てを承認した。今回有権者が突きつけたのは、本土の政権に屈して公約を覆した地元政治家に対する「ノー」だったとも言える。政府がこの夏、ものものしい警備のなか、辺野古のボーリング調査を強行したことも、県民の怒りを増幅させた。政府が打ち出す基地負担軽減策も、県民には「選挙対策か」と空々しく映っただろう。
■唯一の選択肢か
 なぜ、日本政府は沖縄に基地負担を強い続けるのか。最近は、中国の海洋進出や尖閣諸島の問題があるからだと言われる。だがそれは、米海兵隊の恒久的な基地を沖縄につくる理由になるのだろうか。尖閣周辺の対応は海上保安庁が基本だ。万が一の場合でも、少なくとも海兵隊が沖縄の基地に張り付いている必要はない。日米両政府は「辺野古が唯一の選択肢」と強調するが、米国の専門家の間では代替策も模索されている。フィリピンや豪州に海兵隊を巡回配備し、ハワイやグアム、日本本土も含め地域全体で抑止力を保つ考え方だ。米ハーバード大のジョセフ・ナイ教授は「中国の弾道ミサイルの発達で沖縄の米軍基地は脆弱になった」と指摘する。沖縄だけに基地を集める発想はかえって危ういという意見だ。「辺野古移設か、普天間の固定化か」。第三の道となる代替策を無視して二者択一を迫る政府の手法は、適切ではない。しかし、政権内に辺野古移設を見直す気配はない。新知事となる翁長氏に、沖縄への一括交付金の削減で対抗するという声すら聞こえてくる。明白になった沖縄の民意をないがしろにすれば、本土との亀裂はさらに深まる。地元の理解を失って、安定した安全保障政策が成り立つはずもない。知事選を経て、普天間問題は新たな段階に入った。二者択一の思考停止から抜け出す好機だろう。政府は米国との協議を急ぎ、代替策を探るべきだ。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141117&ng=DGKKZO79790180X11C14A1PE8000 (日経新聞社説 2014.11.17) いまこそ政府と沖縄は話し合うときだ
 沖縄県の米軍普天間基地の県内移設を容認した仲井真弘多知事が知事選で敗れた。移設作業が円滑に進まなくなるおそれがある。新知事との話し合いの糸口を探りつつ、日米同盟への影響をいかに小さくするか。安倍晋三首相はこの難題に取り組まねばならない。今回の知事選では、沖縄が返還された1972年から続いてきた基地容認の保守と基地反対の革新がぶつかる構図が初めて崩れた。初当選した翁長雄志前那覇市長は自民党の沖縄県連幹事長も務めた保守派である。しかし、自民党が推した仲井真氏とたもとを分かち、県内移設反対を掲げて共産党や社民党とも共闘して勝利した。背景にあるのは県民意識の変化だ。地元紙の世論調査などによると、県内移設への反対は自民党支持層でも半数を超えており、それが保守分裂を招いた。中国の海洋進出で沖縄の地政学的な重要度は高まっている。政府は沖縄などの離島防衛に力を入れると同時に、日米同盟を強化すべく防衛協力の指針(ガイドライン)の改定にも取り組んでいる。ところが沖縄ではそうした緊張の高まりが先の大戦での悲惨な経験の記憶を呼び起こし、平和運動が盛り上がるという本土とは逆の現象が起きている。ただ、反基地に賛同する県民のすべてが日米安保体制を否定しているのではない。米軍機の騒音や米兵による事件・事故など身近な不満がなかなか解消されないことで「沖縄は軽んじられている」と感情的に反発している面がある。ボタンの掛け違いを直すには、安倍政権がこれらの課題に真正面から向き合っているかを目に見える形で示さねばならない。翁長氏も国際情勢を冷静に判断し、政府との話し合いのテーブルに着いてもらいたい。名護市での基地建設に必要な埋め立て工事は仲井真氏が承認済みであり、新知事に覆す権限はない。沖縄県は長年、日米地位協定の改定を求めてきたが、米政府は消極姿勢を貫いてきた。改定は日本政府と沖縄県が足並みをそろえてこそ実現できる。その結果、県民の日常生活に変化があらわれれば県民感情も徐々に軟化しよう。普天間は市街地に囲まれた基地である。ひとたび事故が起きれば甚大な被害が生じる。政府と沖縄県がいがみ合っている場合ではない。その原点を確認するところから話し合いを始めるべきだ。

| 辺野古・普天間基地問題::2012.2~2015.3 | 12:43 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.11.15 エコカーの普及は、何故、これだけ遅くなったのか? (2014.11.27に追加あり)
   
     EVバス        EVトラック      EV郵便車       EVフィット

(1)燃料電池車・電気自動車の普及と価格設定について
1)燃料電池車とその燃費について
 *1-1に書かれているように、東京都が水素エネルギーの利用拡大を目指して燃料電池車の普及を後押しするために支援に乗り出し、舛添知事は、「今後10年の都政の指針」で、それを「長期ビジョン」に反映するそうだ。そして、公用車や都バスで先行して16年度の実用化を目指し、燃料の供給拠点となる水素ステーションや家庭用燃料電池の普及目標も策定するとのことで、これは期待できる。そのため、他の大量に自動車を使う産業も燃料電池車や電気自動車に変更すれば、この変化は速く進むだろう。

 しかし、*1-2のように、産業ガス大手の岩谷産業が「燃料電池車のエネルギー源となる水素の販売価格を、ハイブリッド車と燃費がほぼ同等となるように設定する」と発表したのは、水素燃料の価格設定が変である。何故なら、*1-3のように、水を電気分解すれば水素を取り出すのが簡単なことは、50年前から小学校3年生の理科の教科書に載っている常識で、余っている太陽光発電など自然エネルギー由来の電力で水素を作れば、無公害で安価で国産のエネルギーを容易に作ることができるからである。

 また、*1-2の岩谷産業が、「燃費計算の前提として、トヨタ自動車が発売を予定する燃料電池車と同サイズのHVがガソリン1リットル当たり16キロ走るとみなし、2020年には水素価格をHVの燃料代と同等以下にする目標を掲げた」としているのも誤りだ。何故なら、①に書かれているトヨタのHVの燃費は、10月15日モードでは、アクアが40km/L、プリウスが28~38km/Lであり、ホンダのアコードも30km/Lだからである(http://e-nenpi.com/enenpi/?defact=carname_hybrid_best 参照)。そして、水素の価格はもっとずっと安くなければならないし、できる筈なのだ。

2)電気自動車の燃費について
 *2-1に書かれているように、ホンダが2012年の夏に米国カリフォルニア州とオレゴン州で一般発売した「フィットEV」は、米国EPA(環境保護局)が定める計測法に沿ったEV独自の燃費表示である「MPGe」と呼ばれるガソリン換算燃費が 50km/L でEV最高だそうだが、このくらいが妥当な燃費設定だ。

 また、*2-2に書かれているように、日産リーフの電気代は、一か月で「電力使用量114.1kWh(消費量153.5kWh・発電量39.3kWh)×12.41円/kWh=1415.9円」だったそうだが、もし、太陽光発電を行っている家庭や事業所が電気自動車を使えば、燃料費は0になる。

(2)日本企業の環境意識と価格設定について
 私がこのブログに何度も書いたように、電気自動車も燃料電池車も、日本が先鞭をつけ、基礎技術を持っていたにもかかわらず、日本のエコカーはハイブリッド車(HV)どまりでなかなか普及しなかった。しかし、HV車は、ガソリンエンジンやクランクシャフトを持っているため、車内の広さやデザインの制限がガソリン車と同じであり、部品点数を少なくすることもできない。そのため、価格やスタイルが変化に乏しい。

 一方、電気自動車や燃料電池車は、回転を電動モーターで作るため、ガソリンエンジンやクランクシャフトは必要なく、車内の広さや自動車のデザインを飛躍的に変えて電気自動車の良さを引き出すことができると同時に、部品点数が少なくなるため、価格も安くできる筈である。しかし、それにもかかわらず、日本企業は、環境意識が低く、エコカーの価格を高くして普及を阻んできた。それは、何故か。これが、次の日本企業の利益率が低い理由に繋がる解決すべき問題なのである。

(3)日本企業の利益率が低い理由は何か
 日本企業の利益率(稼ぐ力)が低い理由は、①時代のニーズをとらえて新しいものを世に出す行動が抑えられている(トップで走るリスクに見合うリターンが約束されず、むしろ横並びでないことが批判される) ②産業構造を変化させようとすると、周囲の多くがマイナスの力として働く ③環境意識が低い ④理科の基礎のない人が経営・経済・法律を学んでマネージメントする立場に多い などが挙げられる。

 そして、これらの日本企業の問題は、教育、環境等に関する社会の見識、雇用やマネジメントにおける考え方などの本質的な問題に起因しており、“景気”というようなその時点の気分の問題ではないため、それぞれの原因について本質的な解決をしなければならないのである。

<燃料電池車の普及と燃費>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141114&ng=DGKKASFB14H06_U4A111C1MM0000
(日経新聞 2014r。11.14) 燃料電池車、都内で10万台 東京都、25年までに官民で普及支援
 東京都は水素エネルギーの利用拡大を目指し、燃料電池車(FCV)の普及を後押しする大規模な支援に乗り出す。2025年までに都内のFCVを10万台、水素ステーションを80カ所とする目標を設定し、15年度に購入や設置費の助成制度を導入する。まず五輪施設が集まる臨海部を中心に普及を図り、クリーンなエネルギーを積極的に利用する環境先進都市を世界にアピールする。自動車、エネルギー業界などの大手約20社が参加する官民の「水素社会の実現に向けた戦略会議」で計画を固めた。18日の会合で中間報告として決定し、舛添要一知事が今後10年の都政の指針との位置づけで12月に公表する「長期ビジョン」に反映する。まず東京五輪が開かれる20年にFCVを6千台、水素ステーションは35カ所とする初期目標を設ける。トヨタ自動車は12月、世界初のFCVを発売する見通し。都は購入補助制度に加えて、初期の需要を創出するために公用車で率先して採用する。日野自動車が開発中の燃料電池バスも15年度に都バスで先行して実証実験に取り組み、16年度の実用化を目指す。燃料の供給拠点となる水素ステーションを初期目標とした35カ所に設置した場合、車が都内を平均的な速度で走ると単純計算で平均15分で水素ステーションに到着できるようになるという。25年には同10分で到着できる80カ所に拡大する。家庭用燃料電池の普及目標も策定した。20年に新築マンションなどを中心に15万台、将来は既存マンションも含めて100万台に拡大する。都は15年度予算案に水素エネの普及費用として補助金など100億円規模を計上する見通しだ。五輪開催都市として海外からも注目される東京都が普及の道筋をつける。

*1-2:http://qbiz.jp/article/49940/1/
(西日本新聞 2014年11月14日) 岩谷、水素の市販価格決定 ハイブリッド車並み燃費に
 産業ガス大手の岩谷産業は14日、燃料電池車のエネルギー源となる水素の販売価格を、ハイブリッド車(HV)と燃費がほぼ同等となるように、走行距離1キロ当たり約10円に設定すると発表した。車向け水素価格を決めたのは初めて。本年度に発売される燃料電池車の普及を後押しする。政府は6月に発表した工程表で、水素価格は「2020年にはHVの燃料代と同等以下を実現する」との目標を掲げており、岩谷はこれを5年早く達成する。水素ガス約5キログラムで車が満タンになると想定し、税抜き1キログラム1100円で販売する。上羽尚登副社長は大阪市内で記者会見し「だいぶ努力して安くした。コスト減は車が増えるかどうかが最も大きな要素だ」と強調。車の普及を促すため、今回の価格設定に踏み切ったという。産業用水素の市場シェア約55%を握る最大手という利点を生かし、岩谷は燃料電池車用の「水素ステーション」整備を加速している。15年度までに東京や大阪など大都市圏を中心に、全国20カ所に建設する方針だ。岩谷によると、燃費計算の前提として、トヨタ自動車が発売を予定する燃料電池車と同サイズのHVがガソリン1リットル当たり16キロ走るとみなした。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11454239.html (朝日新聞 2014年11月14日) 「究極のエコ」、太陽光で水から水素 非常時の発電に 東芝、来年度発売
 太陽光発電の電気で水を電気分解して水素を取り出す技術を、東芝が開発した。二酸化炭素(CO2)を出さない「究極のエコ技術」だ。発生した水素をタンクにためておき、非常時に発電したり温水を提供したりするシステムを、2015年度に売り出す。システムはコンテナ程度の大きさで、トラックや貨物列車に載せて被災地に運ぶこともできる。1台数億円ほどで、主に自治体向けに販売。一つのタンクの水素で、300人の避難者が1週間ほど最低限の生活ができるという。水素は現在、都市ガスやLPガスから取り出すのが一般的で、その際にCO2が出てしまう。田中久雄社長は「技術が進歩すれば、(昼間しか発電できない)大規模太陽光発電所の蓄電や、燃料電池車(FCV)向けの水素ステーションなどにも応用できる」と話す。

<電気自動車の燃費>
*2-1:http://response.jp/article/2012/06/07/175674.html
ホンダ フィットEV、換算燃費は 50km/リットル…EV最高
 ホンダが今夏、米国カリフォルニア州とオレゴン州で一般発売する同社初の市販EV、『フィットEV』。同車の換算燃費が公表された。フィットEVは、『フィット』ベースのEV。最大出力123ps、最大トルク26.1kgmを発生するモーターを搭載。1回の充電で、最大132kmを走行できる。二次電池は、蓄電容量20kWhのリチウムイオンバッテリー。充電は240Vチャージャーなら、約3時間で完了する。ホンダの米国法人、アメリカンホンダは6日、フィットEVの換算燃費を公表。これは、米国EPA(環境保護局)が定める計測法に沿ったEV独自の燃費表示、「MPGe」と呼ばれるもの。日産『リーフ』や三菱『i』(日本名:『i-MiEV』)も、このMPGeの数値を消費者に開示している。同社の発表によると、フィットEVの換算燃費は、複合モードで118MPGe(約50.17km/リットル)。ホンダによると、日産リーフの99MPGe(約42.1km/リットル)、フォード『フォーカス・エレクトリック』の105MPGe(約44.64km/リットル)、三菱i-MiEVの112MPGe(約47.62km/リットル)を上回る、EV最高数値だという。アメリカンホンダのスティーブ・センター副社長は、「航続距離と充電時間がEVにとって最重要。フィットEVはその点で完璧」と述べ、高い自信を示している。

*2-2:http://togetter.com/li/145868
日産リーフ[LEAF]|電気自動車ランニングコストシミュレーター
 電気自動車の月々と年間のランニングコストを、普段の走行距離、電費、電気料金から計算できます。日産リーフ10月の電気代は、「電力使用量114.1kWh(消費量153.5kWh・発電量39.3kWh)×12.41円/kWh=1415.9円」でした。走行距離1033.6kmで平均電費はEVドライブに絶好の気候で9.1km/kWh。


PS(2014.11.27追加):*3のように、中国がEV充電施設の建設を後押しする方向に動いた!「補助金は充電施設の建設・運営、管理のみに宛て、新エネ車の購入補助などへの充当は禁じた」というのは、インフラは整備するが、EV価格はEVの普及と各自動車メーカーの努力によるという意味で効果的だ。EVのデザインも優れているので、中国のEVが安価に供給されるようになれば、EVでも中国が勝つだろう。また、中国が電気自動車や燃料電池車に舵を切れば、人口が多いだけに効果が高く、太陽光発電や水素燃料による住宅の発電システムも加われば、冬の大気汚染で九州にPM2.5が飛んでくることもなくなる。アジアには人口の多い振興国が多いため、次はインドなどの対応が期待される。

   
                          中国のEV
*3:http://qbiz.jp/article/50686/1/
(西日本新聞 2014年11月27日) 中国 EV充電施設の建設後押し、モデル都市に補助金
 中国の財政省、科学技術省、工業情報省、国家発展改革委員会(発改委)の4省・委員会はこのほど、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)向け充電施設の建設奨励に向け、中央財政から補助金を給付すると発表した。期間は2013年から15年度まで。16年以降は、新エネルギー車の普及規模や、充電施設の建設コストを考慮した上で、補助制度の見直しを行う。給付対象は、4省・委員会が新エネ車普及モデルに指定する都市や都市群。普及活動にはっきりとした効果がみられ、かつ地元政府による補助制度がないことを条件として付加した。普及モデル都市以外でも、新エネ車の普及に効果がみられる都市や都市郡であれば、4省・委員会への申請が許可されれば、補助を受けられる。補助金は充電施設の建設・運営、管理のみに充て、新エネ車の購入補助などへの充当は禁じた。4省・委員会は毎年、モデル都市を対象に新エネ車の普及状況を調査し、結果が良ければ補助を増額、結果が悪ければ減額する。中国政府は新エネ車の普及目標を都市・都市群ごとに設定しており、北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタなど大気汚染対策の重点都市で、13年:2,500台以上、14年:5,000台以上、2015年:1万台以上。その他の都市で、13年:1,500台以上、14年:3,000台以上、15年:5,000台以上――と定めている。この目標を達成させるため、普及活動において不可欠となる充電インフラ環境の整備を加速させる。詳細は財政省のウェブサイト<http://jjs.mof.gov.cn/zhengwuxinxi/tongzhigonggao/201411/t20141125_1160262.html>から確認できる。


PS(2014.11.27追加):上に記載しているように、世界が脱石油して環境悪化防止に努め、燃料費を安くするイノベーションを起こそうとしているのに、*4のように、「原油価格下落で物価の伸び率が鈍り、低インフレを招いて景気を冷え込ませる」などと解説しているのは、「デフレがいけない=インフレがよい」という誤った知識を持っているせいである。実際には、原油価格高騰は、日本にコストプッシュ・インフレーション(悪いインフレ)を起こして実質経済を縮ませているものであるため、メディアは、経済学のわかっている人に経済記事を書かせるべきである。なお、産油国は、原油で潤沢な資金が得られている間に、国内にいろいろな産業を作るのがよい。

*4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11476839.html (朝日新聞 2014年11月27日) 原油、減産か維持か きょうOPEC総会、市場注視 価格下落、対応に温度差
 中東などの産油国12カ国でつくる石油輸出国機構(OPEC)は27日、ウィーンで総会を開く。原油価格の下落に歯止めをかけるため生産を減らすよう主張する国があるものの、加盟国の足並みはそろっていない。生産目標を据え置くのか、減産するのか。金融市場の注目が高まっている。OPEC総会を目前に控えた25日、有力産油国のサウジアラビアとベネズエラ、ロシア、メキシコの石油相らがウィーンで急きょ4者会談を開いた。OPECに加盟していないロシアとメキシコも加わった会談は、減産の可能性を探るのが狙いとみられた。だが、協調減産に向けた合意はできなかった。原油価格の下落傾向は止まらず、指標となる北海ブレント原油の先物価格は25日、1バレル=78ドル(約9200円)台に下がった。115ドル台をつけた6月に比べ、3割超の値下がりだ。値崩れを防ごうと、少なくない産油国から減産を求める声が上がるが、足並みはそろわない。各国で異なる財政事情があるからだ。アラビア半島の東端にある産油国オマーン。議会は23日、外国居住者からの送金に2%課税する新法を承認した。国防費など政府予算の削減も進める。いずれも、原油価格の下落による財政赤字の拡大を食い止めるためだ。国際通貨基金(IMF)の推計によると、オマーンが財政を黒字化するのに必要な「財政均衡原油価格」は1バレルあたり102ドル。原油の市場価格が回復しなければ、深刻な赤字に陥りかねない。苦しいのはイラン、イラクも一緒で、OPECに価格下支えを求める声が相次いでいる。一方、外貨準備が潤沢なサウジは、当面の赤字をかぶってでも市場でのシェアを確保したいため、大幅な減産には消極的だ。クウェートやアラブ首長国連邦(UAE)なども追随する。ロンドンの調査・コンサルティング会社「エナジー・アスペクツ」のアナリスト、ビレンドラ・チャウハン氏は「市場は減産が必要と見ているが、加盟国内でどこがどれだけ減らすのか決めるのは難しい」と指摘する。
■低インフレ懸念も
 OPECが減産で合意できなければ、原油価格がさらに値下がりするとの見方が市場には強い。今の生産目標の日量3千万バレルは維持する、と見るコメルツ銀行のアナリスト、カルステン・フリッチ氏は「原油価格は値下がりし、1バレル=75ドルを下回るだろう」と言う。市場には、1バレル=60ドル台まで下がるとの見方すらある。原油価格の下落は、日本など輸入に頼る国にとってはプラスの効果が期待される。ガソリン価格をはじめ、化学製品など原油を原料とする幅広い商品の価格を引き下げるからだ。一方で、原油価格の下落によって、物価の伸び率は鈍る。デフレ懸念が高まる欧州では、現在0%台の物価上昇率がさらに下がる可能性もある。そもそも今回の原油価格の値下がりは、欧州に加え、中国など新興国の景気減速による需要の伸び悩みと、米国などのシェールオイルの生産増で、供給過剰になるとの見方からだ。原油価格の下落が低インフレを招き、さらに景気を冷え込ませるという悪循環に陥るおそれもある。

| 資源・エネルギー::2014.10~2015.4 | 12:18 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.11.10 政府の「農業改革」は、農業を見たこともない人の発想のようで、農協解体による農協弱体化以外の目的が見えない → 農産物の付加価値を上げよう (2014/11/10、13に追加あり)
      
*1-1より     2014.7.3      2014.8.14  2014.7.15  *5より
                    西日本新聞より

(1)政府が求める「農協改革」は改革のための改革であり、農業への具体的なメリットが見えない
 *1-1に、「政府が中央会制度の抜本的な見直しをさらに進める踏み込んだ改革を求めるのは必至」と書かれているが、私も農協改革は自己改革でよいと考える。なお、「農協法でJA全中に認められている監査で、『農協監査士』などの資格を持つ中央会職員約500人が、地域農協の事業の妥当性や信用事業の法令順守態勢など多岐にわたって精査し、監査で得た情報を経営指導にも生かし、地域農協の経営安定に取り組んでいる」としても、それは、独立の第三者による監査ではなく内部監査である(その割には、人数が多すぎるが・・)。内部監査ももちろん重要なのだが、内部監査ではその組織のトップが指示する粉飾決算や組織ぐるみの不祥事は指摘できないというのが監査論のイロハだ。

 そのため、内部統制に依拠した外部監査も必要であり、*1-1の「企業監査は会計のチェックだけする」というのは、会計や監査を知らない人の失礼な暴言である。公認会計士などの外部監査を受けるとプラスになる点は、その組織が不正や不法行為を行っていないことを証明してもらうと同時に、あらゆる産業の監査をしている公認会計士を通じて他産業で行われている管理の知恵を得られることで、私が農業の弱点を見つけて改善策をすぐ提案できるのも、前に外部監査人として日本系・外資系の製造業、サービス業を多く廻った経験を持ち、他産業の事例を多く知っているからである。

 JA全中の幹部が「監査で経営状態を把握でき、東日本大震災でも破綻する農協はなかった。現行の監査がなければ地域の農業は守れない」と訴え、地域農協も理解を示しているのはよくわかる。何故なら、気候・風土の違いからくる地域による作物や経営方法の違いもあるが、集中しているからこそ安い単価で集まる知識や経験もあるからである。

 「農協改革を進める政府内に、全中の画一的な指導が、地域農協の自由な活動を阻害しているとの批判が根強く」「JA全中を一般社団法人化して監査などの権限を廃止する方向で検討が進む見通し」というのは、農協を弱めるための破壊の論理で、馬鹿の一つ覚えのように「法人化」を唱える人の意見は農業の競争力を弱めることこそあれ高めることはない。そのため、*1-2のように、中央会制度に関して 「改革ありき」の姿勢を疑問視する意見が出るのは当然である。 

(2)地方の豊かさを増すには、農林水産業及びその関連産業の付加価値向上が不可欠
 *2-1に書かれているように、農水省の有識者会議が「高齢化や人口減を解決するには、若者の地方移住促進に向けて農林水産業の6次産業化を進めて就業機会を確保すべきだ」とする方針を出したそうだが、そのとおりだ。何故なら、6次産業化によって農林水産業に新しい付加価値が加わり、就業機会が増えると同時に、地域を豊かにして活気づかせるからである。ちなみに、このスキームは、私が佐賀三区選出の衆議院議員をしていた時に考え、経産省が「6次産業化」という面白い名前をつけたものだ。

 そのため、*2-2のように、「ブランド化」や「6次産業化」を見つめた農業経営は、佐賀県ではかなり進んでおり、成功した農家には、学校農業クラブ全国大会で最高賞をとった中山君(農業高校3年)のようなりっぱな次世代も育っている。しかし、東北・北陸はじめその他の地域には、昔ながらの米作りのスキームに固執している場所も多く、これは農協組織の問題というよりも、国会議員はじめそれぞれの地域のリーダーが持っている地域活性化ビジョンの問題である。

 また、*2-3のように、長野県の工房「アトリエ・ド・フロマージュ」が、初の国産ナチュラルチーズコンテストで栄冠に輝き、来年6月のフランスでの国際コンクールに出るそうだ。ここでも上位優勝できれば、本場へのチーズの輸出で、農産物の輸出に貢献できそうである。

(3)農業・食品関連企業において期待される女性の活躍
 *3-1のように、地域経済の活性化に向けた男女共同参画会議(内閣府)専門調査会の報告で、働く人、管理職、起業家のいずれの項目でも、高知県の女性割合が最高だそうだ。それはよいことだが、高知県の担当者が「女性が働くことに寛容な(?)雰囲気がある」としているのは、働く女性が何かいけないことをしているかのようで、頑張って働いている女性に対して失礼である。一方、佐賀県は、起業家に占める女性の割合では高知県と並んで18.2%で最高だったそうだが、これは、食品・介護・家事支援サービスなどの家事延長系の会社が次々と立ち上がっているからだろう。

 また、*3-2のように、JAいわて花巻女性部が、17年前に購入した加工施設のアイスクリーム製造機を使ってアイスクリームを作ったところ、予想以上の出来となり、活性化に活用できるかもと期待しているそうだ。ブルーベリーやイチゴを入れた3種類のアイスクリームを作り、驚くほど良い出来で6次産業化につながるかもしれないとのことだが、農村で入手できる採れたての原材料を甘さ控えめのアイスクリームにすれば、美味しくて栄養価が高く、規格外の作物もうまく使うことができ、保存期間が長くなるため、作物全体の付加価値が高くなる。

 このほか、*3-3のように、佐賀県唐津市は、コスメ事業でフランスと協力連携協定を締結しており、フランスのコスメティックバレー協会のジャメ会長が、フランスのコスメ業界約30社をジャパン・コスメティックセンターの会員企業に紹介してビジネスマッチングを進めていくことを提案されたそうだ。アジア市場を睨んで日本で商品開発し、日本で原材料を調達して商品にするのはよいアイデアであり、(現在は原発で悪名高くなってしまっているが)玄海町も薬用植物の栽培を研究しているため、この機会を逃さず産学官連携して成功させるべきである。

 そのような中、*3-4のように、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG、福岡市)は、副支店長級以上の管理職に占める女性の割合を2023年3月までに現在の4倍の10%に引き上げる目標を設定したそうだ。2023年3月に10%というのは、1985年頃に私が監査で訪れた東京のケミカルバンク日本支店で50%くらいが女性管理職だったことから考えればかなり低いが、金融にも女性の視点が不可欠であるため、何も目標を設定しないよりはよいだろう。

(4)有害動物とされるシカやイノシシなどの野生動物は、本当は資源である
 *4-1のように、北海道から屋久島までシカが増え続けて、被害は農作物だけにとどまらず、下草も食い尽くされて土砂崩れの危険が高まる場所もあるということだが、シカやイノシシを駆除することしか思いつかず、せっかく捕獲した獲物を埋めることしかできないのでは、人間の方が情けない。

 先日、私の夫が、患者さんが獲ったというシカ肉をもらって来たので、すりおろしリンゴに1晩つけてから高圧釜でシチューにして食べたが、赤身でコラーゲンが多くヘルシーな肉だった。「肉は霜降りで柔らかくなければ価値がない」というのも、常識のウソにすぎないのではないだろうか。

 なお、シカ皮、イノシシ皮、やぎ皮は牛皮よりも柔らかいため、靴やバッグや手袋に加工すれば高級品となり、ファッショナブルでもある。そのため、フランス、イタリア、日本のブランドと組めば、付加価値の大きな商品が作れることは間違いない。

 しかし、*4-2のように、フクシマ原発事故では、山林にも放射性物質が降り注いで山林を汚染したため、そこで獲れる東北のジビエは使い物にならなくなった。そのため、放射性物質の影響が無視できるようになるまで、それらの地域は野生動物の楽園にするか、捕獲した後、しばらく放射性物質を含まない餌を与えて解毒するなどの方法が考えられる。

<農協改革について>
*1-1:http://qbiz.jp/article/49354/1/
(西日本新聞 2014年11月7日) 「農協改革」調整難航か 全中、監査機能の維持求める
 「新たな中央会として、これからも農協への役割を果たしていく」。全国農業協同組合中央会(JA全中)の万歳章会長は6日の会見で、グループを束ねるJA全中の存在意義をあらためて強調した。ただ、中央会制度の抜本的な見直しを進める政府が、さらに踏み込んだ改革を求めるのは必至。与党内には農協改革に反発する意見もあり、年末にかけて激しい議論が続きそうだ。自己改革案でJA全中が強く存続を求めたのは、地域農協に対する監査機能だ。会計のチェックだけをする企業の監査とは異なり、農協法でJA全中に認められている監査では、「農協監査士」などの資格を持つ中央会職員約500人が、地域農協の事業の妥当性や、信用事業の法令順守態勢などを多岐にわたり精査。監査で得た情報を経営指導にも生かし、地域農協の経営安定に取り組んでいる。農協の破綻や不祥事を防ぐため、国が監査強化を促してきた経緯がある。JA全中の幹部は「監査によって経営状態を把握でき、東日本大震災でも破綻する農協はなかった。現行の監査がなければ、地域の農業は守れない」と訴える。こうした考えには、地域農協にも理解を示す声も。大分大山町農協(大分県日田市)の矢羽田正豪組合長は「地域農協が独自性を生かして自立的な経営をしていくことは重要だが、現状では法律的な知識や経営面で中央会に頼る農協も少なくない」と明かす。
   ◇    ◇
 一方、農協改革を進める政府内には「全中の画一的な指導が、地域農協の自由な活動を阻害している」との批判が根強い。安倍晋三首相も国会などで「農協法に基づく現行の中央会制度は存続しない」と繰り返しており、JA全中を一般社団法人化して監査などの権限を廃止する方向で検討が進む見通しだ。混迷が予想される調整の行方に対し、現場からは「全中として政府の意向をにらみながらぎりぎりの改革案を出したと思うが、政府がどう判断するか…」(熊本県の農協幹部)と不安が漏れる。政府主導で進む農協改革について、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「安倍政権としては、アベノミクスの重要政策であるTPPに反対している全中の政治力を弱める狙いがあるのでは」と指摘。「組織を変えるだけでは本質的な農業改革にならない。政府には、減反の廃止や輸出の拡大など、農業の競争力を高める政策を進められるかどうかが問われている」と話している。

*1-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30651
(日本農業新聞 2014/11/6) 中央会制度 「改革ありき」疑問視 自民参院政審が勉強会
 自民党参院政策審議会は5日、農協改革について勉強会を開いた。議員からは、焦点のJA中央会制度をめぐり、改革ありきで議論が進んでいるのでは、と疑問視するような意見が相次いだ。一方、農水省は、6月の政府・与党の取りまとめに沿って、法改正に向けた作業をしていく原則論を説明するにとどまった。勉強会では農水省が、JAグループの現状や6月に閣議決定した「農林水産業・地域の活力創造プラン」に盛り込まれた農協改革の方針について説明。ただ来年の通常国会での関連法案の提出に向けた議論の方向性など、議員の最大の関心事には具体的な考え方を示さなかった。一方、議員からは「(中央会などの)組織をどうするかは(改革の)手段のはずが、目的化してしまっている」「中央会の権能のうち、どこに問題があると考えているのか」「(単位JAの自主性を尊重する仕組みに改革するのであれば)全中などの権限を変える必要はないのではないか」といった意見や、農水省への質問が出た。これに対し同省は、今回の改革の方向性について「いろいろなことを、組織でこうやろうと決めつけるのではなく、各単位農協が自由に頑張り、それを連合会や中央会がうまく支援する」形にすることが本筋だと説明した。また新たな中央会制度については「まだ定まっているわけではない」としながら、(1)自律的な新たな制度になる(2)単位JAは独り立ちしているということが前提――とする6月の取りまとめを踏まえ、「中央会が強制的な権限を持つことをどうするかが最大のポイントになる」と指摘した。同党参院政策審議会は定期的に勉強会を開いているが、今回は議員から「農協改革について議論するプロジェクトチーム(PT)を立ち上げてほしい」との声が出たことを受け、農協改革を議題とした。同党には有志議員でつくる「参院農業・農協研究会」もある。同党参院幹部によると、参院は1都道府県1選挙区で農村部を多く抱えるため、農協改革の議論にも関心が高いという。

<農業地帯における付加価値の向上>
*2-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30574
(日本農業新聞 2014/11/1) 6次化で就業確保 指針に向け論点整理 活力ある農山漁村検討会
 農山漁村活性化に向けた政策の「指針」を検討している農水省の有識者会議「活力ある農山漁村づくり検討会」(委員長=小田切徳美明治大学教授)は31日の会合で論点整理をした。高齢化や人口減が深刻化する中、若者らの地域移住・定住促進に向け、農林水産物の6次産業化を進めることで就業機会を確保すべきだとする方針を打ち出した。指針は「活力ある農山漁村づくりに向けたビジョン」で来年3月をめどにまとめる。今回の論点整理では、田舎暮らしを求める若者が増えている「田園回帰」の動きをさらに広める取り組みが必要と強調。「地域経済の活性化」「地域コミュニティー機能の維持・発揮」「都市と農山漁村のつながり強化」という三つの柱を掲げた。地域経済の活性化に向けては「担い手以外の農林漁業者や地域住民、都市からの移住者を対象とし、就業機会を確保する必要がある」と指摘。地元の農林水産物や生物由来資源(バイオマス)など多様な地域資源を活用し、6次産業化や観光、福祉などの分野との連携強化などが鍵を握るとしている。6次産業化による農山漁村の活性化をめぐっては、西川公也農相も意欲を見せている。食品メーカーなどの企業に対して税制面などで優遇措置を講じる農村地域工業導入促進法などを活用したい意向を示している。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/122384
(佐賀新聞 2014年11月6日) 学校農業クラブ全国大会 中山君(唐津南高3年)最高賞
■県内26年ぶり快挙
 先月22日に沖縄県で開かれた「日本学校農業クラブ全国大会」意見発表の食料・生産部門で、唐津南高3年の中山駿(すぐる)君(17)が最優秀賞に輝いた。県内では26年ぶり2回目。中山君は「練習の成果を出せてうれしい。これも指導してくださった先生のおかげ」と喜んでいる。中山君は8月に伊万里市であった九州大会で最優秀賞を受賞。9ブロックの代表が参加した全国大会には、副担任の松尾信寿教諭(49)と審査員との質疑の練習を行うなど準備して臨み、牧場経営や地域が抱える課題の解決方法を自分の意見として堂々と発表したことなどが評価された。指導した松尾教諭は「(練習で)九州大会より自信に満ちた顔つきになり、どこに出しても恥ずかしくない発表ができるように成長した」と教え子の快挙に満足げ。農業大学校への進学を目指す中山君は「今後は発表したことを実行に移し、品質の良い佐賀牛をたくさん生産したい」と語っている。
=発表文抜粋=
〈目指せ日本一!~中山牧場の挑戦~〉
 「駿、おまえもこれだけは見とかないかん」。中学生の頃、父に連れて行かれた先には思いもよらない光景が待っていました。そこには呻(うめ)き声とともに頭を打ち抜かれ、首を切られ吊される牛の姿がありました。初めて見る「と畜」の現場に衝撃で言葉を失いました。多くを語らない父が私に畜産という仕事への覚悟を伝えたかったのだと思います。私の家は繁殖牛130頭、肥育牛2000頭を飼育する畜産農家です。畜産という仕事とどう向き合っていくかを深く考えるようになると、以前にも増して家の手伝いをするようになりました。後継者になる気持ちは決意へと変わり、迷うことなく唐津南高校生産技術科へ進学しました。1年生の時、学校に「安勝」と「安平隆」、2頭の子牛がやってきました。今年、出荷の日を迎え、体重300キロにも満たなかった2頭は700キロまで成長し、食肉センターで別れる時はあふれ出る涙を止めることができませんでした。翌々日、枝肉となった2頭を目の当たりにした時、中学時代の「と畜」の情景が頭をよぎり、胸が締め付けられる思いでしたが、そんな気持ちも喜びへと変わる瞬間が訪れました。安勝は最高ランクA-5の評価を受け、南高の牛肉として販売されたのです。ありったけの愛情を注ぐことで、おいしい肉となり、牛と人、命と命のリレーが行われる、その橋渡しを自分がしているんだと思う瞬間でした。2年生の時、「佐賀県世界にはばたく未来のスペシャリスト派遣団」に参加し、オランダの農業を視察しました。オランダでは狭い国土を有効活用し、IT技術を駆使した大規模農業、スマートアグリを展開しています。酪農経営の牧場では牛の飼育から牛乳、アイスクリームの製造販売という一貫した6次産業的経営が行われていました。家での手伝いや高校での貴重な体験は、自分なりの経営ビジョンを描くのに十分なものになりました。大規模経営とはいえ、口蹄疫(こうていえき)の影響は今も残り、わが家の経営も決して楽ではありません。父は言います。「今を乗り切るには時代に合った経営が必要になってくる」と。私はブランド力と6次産業化を経営の柱とする三つの計画を立てました。その一つがIT技術の導入です。ストレスを与えず良質な牛に育てるには、個々の牛への気配り・目配り・心配りが欠かせません。牛舎内の環境が測定できるセンサーや監視カメラを導入し、牛を常時把握できるようにすることで、わずかな変化も見逃さないきめの細かな経営に結びつけていけると考えました。二つめは子牛の産地にこだわったブランド牛生産への取り組みです。牧場では祖父の代から沖縄産子牛の優良性に着目し、大半を石垣島のある八重山諸島から導入しています。今年の夏休み、沖縄の子牛買い付けに同行し、石垣島にあるわが家の牧場の繁殖用牛舎で仕事をしてきました。その時、島の自然豊かな環境で高品質ブランドの素がしっかりと育っていることを肌で感じました。三つめは地域活性化への貢献です。玄海町は農海産物が豊富なところで、町が海と山の幸を「ふるさと納税」の返礼品にしたところ、今や国内でも上位を争う自治体となりました。牧場の本生ハンバーグやローストビーフは旨味(うまみ)がギュッと詰まった中山牧場のブランドとして一番人気です。また、玄海町は数年前から修学旅行生を受け入れ、民泊・体験学習を行っており、牧場のレストハウスでもマイバーガーづくりなどを行っています。自治体と連携し、さまざまなプランを提案することで「自然が満喫できる玄海町」のさらなる発展に努めます。小さい頃から常々言われていることがあります。「人に感謝し、人とのつながりを大切にすること」。これは祖父から両親へ、そして自分へと言い伝えられてきました。多額の借金を背負い、どん底から始まった自分の知らない中山牧場の歴史があります。いろんな人の助けがあったからこそ、今の牧場があることを忘れてはなりません。高校卒業後は、県外農家での研修を行い、経営者としてのスキルを身につけたいと考えています。そして、両親や牧場スタッフとともに、全国でもトップクラスの佐賀牛生産農家として、より高いレベルでの挑戦を続けていきます。

*2-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30579 (日本農業新聞 2014/11/1) 長野の工房「アトリエ・ド・フロマージュ」に栄冠 初の国産ナチュラルチーズコンテスト
 特定非営利活動法人(NPO法人)のチーズプロフェッショナル協会は30日、東京都内で国産限定のチーズコンテスト「ジャパンチーズアワード14」を初めて開いた。酪農家ら61工房が121のチーズを出品。最高位のグランプリには、アトリエ・ド・フロマージュ(長野県東御市)のブルーチーズが輝いた。コンテストは、国産ナチュラルチーズの評価を高めて消費拡大するのが狙い。来年6月にフランスで開かれる国際コンクールの選考会を兼ねる。同協会が商談会「日本の銘チーズ百選」の一環で開いた。応募があったチーズを種類別に15グループに分け、審査員が味や見た目を採点。グループごとの金賞からグランプリ1点を選んだ。グランプリは青かびを使ったチーズで、原料の生乳は地元の酪農家から仕入れる。同工房の粂井裕也課長は「日本人が好む味わいに仕上げることができた。受賞を機に、地元の酪農家とのつながりを深めていきたい」と抱負を話した。商談会には300人以上のチーズ愛好家やバイヤーが参加。フランス産チーズを輸入する業者は「国産の品質は本場の欧州にひけをとらないほどだ。今後、取り扱ってみたい」と手応えを話した。

<農業と食品関連企業>
*3-1:http://qbiz.jp/article/41167/1/
(西日本新聞 2014年7月3日) 女性起業家率、佐賀と高知がトップ18.2%
 地域経済の活性化に向けた男女共同参画会議(内閣府)専門調査会の報告書で、働く人、管理職、起業家のいずれの項目でも、女性の割合は全都道府県の中で高知県が最高であることが明らかになった。県の担当者は「共働き世帯が多く、女性が働くことに寛容な雰囲気がある。中小企業が中心で、社員数が少ないため女性が管理職になりやすいのでは」と分析している。総務省の2012年調査を基に、内閣府が作成した都道府県別ランキングによると、公務員を含む課長相当職以上のうち、女性の割合は高知21.8%、青森20.3%、和歌山18.4%の順だった。最下位は滋賀の8.0%。働く人に占める女性の割合も高知が46.7%でトップ。2位は宮崎の46.4%だった。高知は起業家に占める女性の割合も、佐賀と並び18.2%で最高だった。今年2月時点で、将来女性の幹部登用促進に「積極的に取り組む」とした都道府県は33。「ある程度取り組む」が9だった。

*3-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30384
(日本農業新聞 2014/10/22) 古い調理機器生かせ 活動広げる糸口に JAいわて花巻女性部
 JAいわて花巻女性部花巻地域支部の各支部は、JA支店などで使用されなくなった調理機器を使って、JA店舗の利用拡大や女性部活動の活性化につなげている。JA本店農産加工施設の「アイスクリーム製造機」を使い、講習会を開いた同地域支部湯本支部の食母’S(クッカーズ)は、予想以上の出来上がりとなり、活性化に活用できると期待している。アイスクリーム製造機は、17年ほど前に購入した。時代とともに多様化する調理器具の普及で使用頻度が減り、近年は使い方を知る人も少ない状態だった。グループのリーダーらは「新たな活動につなげることはできないか」と試験を重ね、使い方を研究。果実を投入するタイミングなども吟味した。講習会には支部員ら14人が参加し、ブルーベリーやイチゴを入れた3種類のアイスクリームを作った。グループの吉田伯子代表は「驚くほどに良い出来だった。今後の活動に可能性が広がる」と話した。参加者は「自信を持って外に出せるほど、おいしく出来上がった。6次産業化にもつながるかも」などの積極的な声も出た。この他、同地域支部矢沢支部では、矢沢支店で30年以上前に使っていたパン焼き用オーブンに火入れを試みた。現在の機器とは使用法が異なるため、試作品を作りながら、不明だった温度や発酵時間の調節などを分析。もが使えるよう取り扱い使用書などを作った。講習会を開くなど活動の幅を広げる予定だ。

*3-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/123510
(佐賀新聞 2014年11月9日) 仏企業30社を紹介へ コスメバレー会長が初来訪
 フランスのコスメティックバレー協会のマーク・アントワーヌ・ジャメ会長が8日、コスメ事業で協力連携協定を締結している唐津市を訪れ、坂井俊之市長を表敬訪問した。ジャメ会長は日仏連携を軌道に乗せるため、フランスのコスメ業界の約30社をジャパン・コスメティックセンター(事務局・唐津市)の会員企業に紹介し、ビジネスマッチングを進めていくことを提案した。アジア市場をにらみ昨年4月に協定を締結して以来、具体的なビジネス提案は初めて。また、同協会が産学連携で進めている150の商品開発プロジェクトの中からも連携を模索したいとアイデアが出された。コスメ業界ではフランスは香水、日本は基礎化粧品を得意としており、ジャメ会長は「高い技術を持つ両国が協力すれば、得意分野をさらに伸ばせる。ともにいい商品を開発し、発展していきましょう」と述べた。コスメティックバレーはフランスのシャルトルに拠点を置く世界最大の化粧品産業集積地。3代目会長のジャメ氏が唐津を訪れるのは初めて。10日まで3日間滞在し、9日は玄海町の薬用植物栽培研究所、10日は県庁や佐賀大学を訪問する。

*3-4:http://qbiz.jp/article/49144/1/ (西日本新聞 2014年11月5日) FFG、管理職の10%を女性に 23年目標、積極活用で組織力強化
 ふくおかフィナンシャルグループ(FFG、福岡市)は、副支店長級以上の管理職に占める女性の割合を2023年3月までに現在の4倍の10%に引き上げる目標を設定したと発表した。女性行員を積極的に活用し、組織力を高める狙い。FFG傘下3行の女性管理職数は今年3月末で26人で、全体の2・5%。課長級以上の役職者を含めても7・7%にとどまるという。特に取引先との信頼関係が欠かせない法人融資部門が少なく、昨年10月に女性行員によるプロジェクトチームを立ち上げ、社内の意識や制度に改善点がないか検討してきたという。目標達成に向け、育児休業からスムーズに復職する制度なども検討するという。柴戸隆成社長は「お客さまの半分は女性なので、女性の視点を持つことは大事。中長期的には組織力も高まる」としている。

<シカやイノシシなどの野生動物について>
*4-1:http://news.goo.ne.jp/article/asahi/nation/incident/ASGBM520TGBMUUPI001.html (Gooニュース 2014年11月7日) シカ増殖、北海道から屋久島まで食害 土砂崩れの危険も
 シカが増え続けている。被害は北海道から屋久島まで広がり、農作物だけにとどまらない。下草が食い尽くされ土砂崩れの危険が高まる場所も。10年後に倍近くに増えるとの試算もある。捕獲を強化するため鳥獣保護法も改正され、官民一体で新たな試みも始まった。野生のシカを探して、富士山南斜面、静岡県裾野市の有料道路「南富士エバーグリーンライン」を車で走った。標高千メートル付近、シカが横切った。車を止めてカメラを構えたが間に合わない。走り出すとまた一頭、扉を開けた途端に逃げられた。昼は一頭も出てこなかったが、暗くなると次々現れる。数頭を逃し、今度は車を手前から徐行させる。近づいても、母子らしいシカは道路脇で草を食べ続けていた。静かに窓を開けて300ミリの望遠レンズで撮影できた。静岡県自然保護課によると、富士山地域の静岡県側には推定で1万頭前後が生息。木々は樹皮をはがされ、植林しても葉や枝先を食べられる。国有林では4年前、静岡森林管理署や県、富士宮市、猟友会などが協力して、シカの駆除を始めた。猟師ら十数人がかりで週末に通年行ったが、2010年度は288頭。簡単には減らせなかった。

*4-2:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201411/20141107_75024.html
(河北新報 2014年11月7日) 東北のジビエ危機 原発事故で提供困難に
 東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故を受け、野生鳥獣の食肉「ジビエ」を扱う料理を東北で提供できない状態が続いている。国の基準値を超える放射性物質が検出されたのが要因で、影響は岩手や山形、宮城各県など広範囲に及ぶ。マタギ文化の継承も危ぶまれる事態に、関係者の嘆きが深まっている。
<熊そば断念>
 「足を運んでもらっても断らなければならないのがつらい」。飯豊連峰に近い山形県小国町の小玉川地区。民宿と料理店を営む本間信義さん(64)は原発事故後、目玉だったツキノワグマ肉が提供できなくなった。県内全域で出荷が制限されたためだ。柔らかく煮込んだ赤身が入った「熊そば」などのメニューが人気だった。一時は東電への賠償請求も検討したが、手間の割に受け取れる金額が小さいことから諦めた。本間さんはマタギの9代目として、昔ながらの猟を仲間12人で守ってきた。肉の販売は収入源の一つだったこともあり、「この状態が続けば後継者がいなくなってしまう」と危機感を募らせる。
<シカ売れず>
 岩手県ではニホンジカの肉が基準値を超えた。五葉山に約1万頭が生息しており、原発事故までは大船渡市の第三セクター「三陸ふるさと振興」が「けせんしかカレー」を製造していた。五葉山から福島第1原発までの距離は約200キロ。ふるさと振興の志田健総務課長は「ヒット商品だったのに販売できなくなった。これだけ離れても実害を受けるとは…」と話す。フランス語で野生鳥獣肉を意味するジビエを使う料理が注目される背景には、野生鳥獣による深刻な農作物被害の増加がある。自治体などが近年、駆除促進と観光資源の発掘を狙い、食肉利用の拡大策を打ち出している。国が2012年度から年間30万頭分の補助金を用意し捕獲強化を促した結果、流通量が増加。メニュー開発も加速しブームに火が付いた。ただ出荷制限地域では食用販売できず、ほぼ全量が廃棄されているとみられる。
<イノシシも>
 宮城県丸森町でイノシシ肉を販売していた「いのしし館」は出荷制限が始まった11年8月、閉鎖に追い込まれた。農家らでつくる「丸森自然猪利用組合」が10年にオープンさせたばかりだった。町によると、10年度に252頭だった捕獲数は13年度に1236頭まで増えた。原発事故の影響が大きい福島県で繁殖が進み、域内に入り込む例が増えたらしい。組合の一條功代表(63)は「頭数は増え、施設の息の根も止められた。非常に理不尽だ」と嘆いた。


PS(2014/11/10追加):農林水産業は、①経営規模の拡大 ②6次産業化 ③再生可能エネルギーの利用など、これまであまりやってこなかったことを行うため初期投資が必要で、資金需要が大きい。その資金需要に的確に応えて農林水産業や地域の発展に繋げるには、農林水産業における資金需要の性格を知り、農林水産業を強い産業に育てたいという気持ちを持って、金融を行うことが大切である。

*5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30706
(日本農業新聞 2014/11/9) JAグループファンド 6次化 再エネ 法人経営 目的別出資で支援
JAグループは、ファンドを通じて農業と地域への支援を進めている。担い手である農業生産法人の経営安定や6次産業化の支援、再生可能エネルギーを活用した地域づくりという大きく三つの目的に沿って複数のファンドをそろえた。出資先が100件を超えたファンドもある。ファンドは農林中央金庫をはじめJAグループなどが拠出した資金で創設した。出資はJAグループなどが候補を運営会社に紹介し、運営会社が検討・審査した上で行う。法人などにとってファンドは借り入れと異なり、利息の支払いがない。出資を受けることで自己資本の比率が高まり、財務が安定。対外的な信用力も向上する。農業生産法人などを対象にしたファンドの数が多く、そのうち「アグリシードファンド」は資本過小ながら技術力のある法人に出資する。9月末までに119件に出資した。農林中金によると、イチゴの観光農園はファンドで1000万円の出資を受け、設備を改修。来園者が増え、経営が安定した。ファンドの活用で自己資本比率が低下せず、追加の借り入れが不要になったという。法人向けは他に、地域営農ビジョンの中核となる農業法人などを対象にした「担い手経営体応援ファンド」、大規模な法人向けには「アグリ社プロパーファンド」がある。東日本大震災からの復興を支援するファンドなども設けている。6次産業化を後押しするのが「JA・6次化ファンド」だ。農林漁業者とパートナー企業でつくる、6次産業化法に基づく認定事業者(6次産業化事業体)に出資する。これまでに、地元農産物を使った総菜の加工・販売、国産豚肉と鶏肉を使った料理を提供する外食産業を展開する会社などに出資した。「農山漁村再エネファンド」は、地域活性化の観点で取り組む再生可能エネルギー事業を支援する。10月に2件の出資が決まった。地域の営農と一体的に取り組む太陽光発電、地元林業者らによる木質バイオマス発電を行う会社を支援する。


PS(2014.11.13追加):日本商工会議所会頭の三村明夫新日鉄住金相談役が会長を務める諮問会議調査会が、「①女性や高齢者の就業率を5%引き上げれば」「②50年後も2%成長可能」で、「③結婚を希望する若者が皆結婚し、2人超の子どもを産み育てる環境を作れば、50年後の人口は1億人が維持できる」として、「④1億人維持を政府として目標に据えるべきだ」「⑤定期的に若返りが必要な企業は、高齢者雇用を増やすことで若者の働く場がなくなり、国全体の活力をそぐ」等と強調したそうだが、これらの諮問会議は、委員の頭が古すぎ、結果ありきの結論で、科学的・合理的な思考がないのが問題だ。 
 何故なら、このブログに何度も記載しているとおり、①は、50年後に女性や高齢者の就業率をわずか5%しか引き上げない予定で、さらに年金支給額を削減して需要を減らそうとしていること ②は、経済成長(正しくは、経済拡大)のみしか考えておらず、生活水準に関する考察がないこと ④は、合理的な説明なく1億人の人口が不可欠としており ③は、そのために2人超の子どもが必要だとしていること(この計算も間違い) ⑤は高齢化による需要構造の変化や高等教育での再教育を状況に合わせて考えていないこと などで、どれも正しくないからである。

*6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141113&ng=DGKKZO79623110T11C14A1EE8000 (日経新聞 2014.11.13) 女性・高齢者の就業率 5%引き上げを、諮問会議調査会の最終報告書案 50年後「2%成長可能」
 50年後の日本経済を議論する政府の「選択する未来」委員会の最終報告書案が12日、明らかになった。「女性や高齢者の就業率を5%引き上げる必要がある」としたうえで、生産性の上昇も実現すれば「50年後も1.5~2%超程度の経済成長を維持できる」と結論づけた。政府全体の施策を中期的視点でどう再構築するかが課題になる。同委は経済財政諮問会議の下に置かれた専門調査会で、日本商工会議所会頭の三村明夫新日鉄住金相談役が会長を務める。14日の会合で報告書を決定し、三村会長が記者会見で政策提言の狙いなどを説明する予定だ。現状のままでは人口は50年後に現在の3分の2の8700万人に落ち込む。報告書は「結婚を希望する若者が皆結婚し、2人超の子どもを産み育てる環境を作れば、50年後の人口は1億人が維持できる」とし、1億人維持を政府として目標に据えるべきだと強調した。労働参加を促しても、2031~60年平均で労働力不足は年0.3%成長を下押しする。1.5~2%の経済成長を実現するには、生産性が年1%台半ば~2%強、伸びる必要がある。報告書は「生産性の低いビジネスが淘汰されるよう起業促進や事業再編などを通じ、新陳代謝や若返りが活発化することが必要」と指摘した。特に20年代初頭までに改革を集中的に進め「生産性上昇率を世界トップレベルに引き上げる」ことを求めた。人口減への対応策は中長期的な視点から整理した。課題は実現に向けた具体策だ。報告書では女性の活躍を進めるため、現在1割程度の女性管理職を3割に高めるほか、事務職や販売職に偏った働く場を改善するよう求めた。育児休業の取得促進や長時間労働の是正を通じ、男女共に働きやすい職場作りを進める必要がある。報告書では税制や年金などを念頭に「女性の就労拡大を抑制する制度や慣行は積極的に見直す」とも強調した。ただ、主婦年金や配偶者控除の大胆な縮小は政治的な抵抗も強い。妻のパート収入に連動した公務員や企業従業員の配偶者手当も見直しが急務だ。高齢者の就労促進については「希望年齢まで働ける環境整備がまず重要だ」と提言した。現時点では高年齢者雇用安定法により、段階的に企業は65歳まで働く場を確保することが義務付けられている。さらに65歳を過ぎても働く意欲のある高齢者は多い。ただ、定期的に若返りが必要な企業にとって、年齢の高いシニアをどう活用するかは頭の痛い問題だ。高齢者雇用を増やすことで結果的に若者の働く場がなくなれば、国全体の活力をそぐリスクもある。

| 農林漁業::2014.8~2015.10 | 06:30 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.11.9 私に対する虚偽のブログ記載による侮辱は大きな実害があり、Googleに削除要請しても削除されなかったのだということ
(1)私がネットで侮辱され続けた事例
 私は身に覚えのない「選挙違反」「逮捕」「ky」「語録」などの名目で、5年以上に渡り、Google やYAHOO の検索機能で、*1-1や*1-2のようなサジェストを行われ続けている。そして、これは人格権の侵害であり、名誉棄損で侮辱以外の何物でもないため、まず、2012年12月26日に、週刊文春記事については根拠がない旨の東京高裁判決を得た。また、運動員の逮捕については、警察は何とか罪にして私と関連づけようとしていたが、そうはならなかった。従って、これは、私の選挙違反でも逮捕でもなく、逮捕された本人は「もう静かにしていたい」と言っているため、再審の請求もできないものである。

 そのためGoogle日本法人に、①ky・文春・語録は事実無根の記載であり、東京高裁で名誉棄損・侮辱が認められていること ②選挙違反や逮捕は私ではないこと を理由に、内容証明郵便でこのようなサジェスト表示の削除を要請したところ、1)検索機能で掲載されたものは機械的に抽出されたものであり、Googleが掲載したものではない 2)検索機能は米国で管理しているため、日本法人は関係ない 3)社内のプライバシーポリシーに照らして削除に該当する事案ではない などを理由に削除を断られた。そして、現在まで5年以上に渡り、人格権の侵害と名誉棄損を行われ続けているのである。

 また、YAHOOも、*1-1のように、選挙違反、語録などの事実でない名誉棄損のサジェストを行って、私の人格権を侵害し、名誉棄損を行い続けていることは同様だが、これは、Googleよりも少し穏やかだったため、現在のところ、まだ削除要請をしていない。

 そして、私が、このブログの「週刊文春の名誉棄損事件に勝訴」「Googleの検索機能などインターネットによる名誉棄損関係」「強引な運動員の逮捕」などのカテゴリーに記載しているように、ky、語録、選挙違反、逮捕のいずれも、「キャリアのある女性は性格が悪い」「女性は馬鹿で的外れ」というような古くて変な“常識”を、まるで事実ででもあるかのように作り上げている点で、社会進出を果たした女性に対する女性蔑視を利用した侮辱なのである。

 その結果、これらのサジェスト表示による私の損害は、何か悪いことでもしたかのように思われた実害といろいろな機会を奪われた機会費用を含めると、非常に大きなものがある。

(2)ネット投稿、サジェスト機能の削除要求に対する日本の裁判所の態度
 私と全く同様に、名誉棄損のネット投稿やサジェスト機能で損害を受けた人がおり、*2-1のように、犯罪行為に関与したとする中傷記事がネットに掲載され、フルネームで検索すると犯罪行為を連想させる単語が関連ワードとして表示され、それによって勤務先では退職に追い込まれ、その後の就職でもその中傷記事について言及されて内定を取り消された日本人男性が、その表示の差し止めを求めて提訴した事件で、Googleは「機械的に抽出された単語を並べただけで、プライバシーの侵害には当たらない」と主張したが、東京地裁は日本人男性の主張を認めた。

 それにもかかわらず、削除権限を持つ米Googleは、2014年3月28日の時点では、「日本の法律で規制されることではない」「社内のプライバシーポリシーに照らして削除に該当する事案ではない」として東京地裁の決定には従わないとしている。しかし、ネットなら何をしてもよいという発想は異常だ。

(3)2014年5月のEU司法裁判所の決定を受けて、米Googleがやっと削除
 EUでは、*3-1のように、2014年5月にEU司法裁判所が「忘れられる権利」を初めて認定し、ネット上の個人情報を削除すべきだとした。これを受け、米Googleは、欧州の利用者を対象に、検索結果に含まれる自分に関する情報の削除要請を受け付けるサービスを始めたそうだ。

 そして、*2-2のように、東京地裁は、日本人男性の仮処分申請について、2014.10.9になって初めて、「インターネットの検索サイト『Google』で自分の名前を調べて犯罪に関係したかのような記事リンクが現れたとき、米Googleは検索結果の一部を削除しなければならない」という命令を出した。

 これにより、東京地裁は、「検索結果自体が男性の人格権を侵害している」と認定して削除を命令したそうだが、もし欧州連合(EU)で同様の司法判断が出ていなければ、日本の裁判所が、米国のGoogle相手にこのような命令を出すか否かは危うかった。しかし、この東京地裁のGoogleへの検索結果削除命令で、検索結果に表示された記事のタイトルや要約も、人格権侵害の内容によって削除を命令できるという裁判所の考え方が確立されつつあるとの見方が専門家の間で強まったのはよいことである。

 これを受けて、Google日本法人は、*2-3のように、「裁判所の決定を尊重して仮処分命令に従う」とし、検索結果を削除する方針を明らかにした。男性側は「名前で検索すると、自分と関係のない犯罪行為を連想させる記事が多数表示される」として、検索結果237件の削除を求めて仮処分を申請していたが、東京地裁はこのうち122件が「男性の人格権を侵害している」と認め、Googleに削除を命じる決定を出したそうだ。しかし、裁判所の判断で人格権を侵害するものではないとされても、名誉棄損に関する裁判所の判断は一般社会から見るとかなり甘いため、一部を残したままでは効果が減殺されるだろう。

 このような中、*2-4のように、インターネットの掲示板で誹謗中傷されたとして投稿者の情報開示や投稿の削除をプロバイダー(接続業者)やサイト運営管理者に求めるなど、ネット関係の仮処分申し立てが激増しているのは、私の事例でも損害が大きいため、よくわかる。

 しかし、プロバイダーへの被害者からの要請で問題の投稿が削除されても、被害者に探しにくい場所で誹謗中傷の投稿が繰り返されれば、被害を防ぐことはできない。そのため、このような犯罪を防止し、損害賠償請求できるようにするためには、投稿者及び投稿目的の特定と有罪化が必要だ。

 なお、*3-3のように、YAHOOは「個人情報の保護と知る権利を踏まえ、実際にどういった事例が削除に値するか」などの意見を聞く有識者会議を設置して論じているそうだが、自分たちに都合よく範囲を狭めたIT会社内のルールやIT業界内のルールでは、このような人格権の侵害や名誉棄損事件をなくすことが不可能なことは、これまでの経験から明白である。そのため、IT上での言論の自由、表現の自由も、憲法の人権侵害などに優先しないことを、IT関係者にも認識させるべきだ。

(4)ネットでは犯罪が横行し、その監視に高額をとるという反社会的な販売法が横行している
 ネットや検索サイトであくどい誹謗中傷を行い、人格を傷つけて就職の機会を奪ったり、損害を与えたりするのは反社会的行為である。しかし、現在は、その犯罪的行為を行った人は野放しにされ、被害者が泣き寝入りせざるを得ない状況だ。

 そして、これを監視するためには、*4のように、被害者の方がネット監視料を月に数万円以上も支払わなければならず、不合理この上ない。また、パソコンの「ウイルス感染」も、実際には生物学上のウイルス感染ではなく、人間が作った悪意あるプログラムの侵入であるため、これを作ってばらまく行為は罰せられるのが当然であるにもかかわらず、いかにも自然にあるウイルスであるかのように、ユーザーにアンチウイルスソフトを買わせたり、ウィンドウズPXはサポートしないという販売方法を行ったりして、時間と資源の無駄遣いをさせているのである。もうIT業界も、このような反社会的行動はやめるべきだ。

<私がネットで侮辱され続けた事例>
*1-1:YAHOOの検索機能で「広津素子」を探すと・・
http://search.yahoo.co.jp/search;_ylt=A7dPR3T6OYFUPgIADkOJBtF7?p=%E5%BA%83%E6%B4%A5%E7%B4%A0%E5%AD%90&search.x=1&fr=top_ga1_sa&tid=top_ga1_sa&ei=UTF-8&aq=&oq=&afs=
  広津素子
  広津素子 選挙違反
  広津素子 語録
  広津素子 公認

*1-2:Googleの検索機能で「広津素子」を探すと・・
http://goodkeyword.net/search.php?formquery=%E5%BA%83%E6%B4%A5%E7%B4%A0%E5%AD%90
  広津素子 G B Y
  広津素子 語録 G B Y
  広津素子 選挙違反 G B Y
  広津素子 逮捕 G B Y
  広津素子 ツイッター G B Y
  広津素子 原発 G B Y
  広津素子 公認 G B Y
  広津素子 画像 G B Y
  広津素子 G B Y
  広津素子 語録 G B Y
  広津素子 選挙違反 G B Y
  広津素子 逮捕 G B Y
  広津素子 ツイッター G B Y
  広津素子 原発 G B Y
  広津素子 公認 G B Y
  広津素子 画像
*G B Yは、「God Bless You (幸運を祈る、神の祝福がありますように、感謝をこめてさようなら)」という意味らしい。ただし、Googleでは、現在は下のようになっているが、kyと文春も根拠がないため、既に東京高裁で勝訴済である。
  広津素子
  広津素子 ky
  広津素子 文春

<日本における事例>
*2-1:http://news.nicovideo.jp/watch/nw224079 (ニコニコニュース 2012年3月28日) Googleが「日本の法律には従わない」と宣言 注目の「サジェスト機能」裁判の行方は
 Googleの検索フォームに文字を入力すると、途中から文字の入力を補足したり関連ワードが表示される「サジェスト機能」。先日、この機能によって名誉を傷つけられたとして表示差し止めを求めていた日本人男性の申請が東京地裁で認められた。男性側によると、男性が犯罪行為に関与したとする中傷記事がネット上に掲載されるとともに、フルネームで検索すると犯罪行為を連想させる単語が関連ワードとして表示されるようになった。その関連ワードを含めて検索すると、中傷記事が掲載されたサイトが表示される。それによって当時の勤務先で特に思い当たる節もないのに退職に追い込まれ、その後の再就職でも中傷記事について言及されて内定を取り消される事態が相次いだという。男性は中傷記事を掲載したサイトに削除を求める訴訟も起こしており、請求が認められたケースもあった。だが、中傷記事が1万件以上も拡散していることから、個別訴訟が不可能になったためにGoogleに対応を求めるに至った。Google側は「機械的に抽出された単語を並べただけでは、プライバシーの侵害には当たらない」と主張し、法廷での争いとなった。今回の東京地裁の決定に基づき、男性はGoogleに関連ワードを22日までに削除するよう求めたが、削除権限を持つ米Googleは「日本の法律で規制されることではない」「社内のプライバシーポリシーに照らして削除に該当する事案ではない」として決定に従わないと回答した。このニュースに対して、ネット上では男性側に同情する反応が多い。近年は企業の採用担当者がネットで就職希望者の身辺調査をするケースもあることから、「もし自分が同じ立場になって就職できなくなったらと思うと心配」などといった意見が上がっていた。今回の男性のケースとは違うが、レイプ事件を起こした某有名大学の学生サークルのメンバーが、就職用にSEO対策会社に依頼して事件と関係のないページが検索上位にくるようにしたというウワサがあるほど、ネットの検索結果は無視できない状況になっている。また、ネットのデマ情報によって殺人犯の一味に仕立て上げられたお笑い芸人・スマイリーキクチの騒動を引き合いに出して「勝手に犯罪者扱いとか怖すぎだろ」といった声もあった。
一方で、問題があるのは中傷記事を掲載したサイトであり、Googleを責めるのは筋違いだという意見も目立つ。確かに、Googleは機械的に抽出した関連ワードを提供しているだけであり、直接的に男性の名誉を傷つけているわけではない。ネットに慣れ親しんでいる人ほど、今回の件でGoogle側に非があるようには思えないのではないだろうか。むしろ、外部からの要求によって意図的に関連ワードを操作してしまう方が、問題があるように思える。しかし、東京地裁は男性の訴えを全面的に認めている。この司法裁定に今一つピンとこないネット利用者が多いのは、ネットの実情と現行の法律が噛みあっていない証拠といえるだろう。現行法がネットに追いついていないことに加え、法律をつくる政治家や識者のネットへの理解が不足していることも、この状況をつくり出した要因である。だが、Google側の対応にも一抹の不安を感じる。Googleの検索エンジンはYahoo!にも採用されており、日本の検索サイトのシェアを事実上独占している。にもかかわらず、「日本の法律には縛られない」と堂々と宣言しているというのは、考えようによっては恐ろしい。Googleが日本の法律よりも社内規定を優先すると公言したという事実は、日本の法律の不備とGoogleの存在が大きくなりすぎたネットの歪みを象徴する出来事ではないだろうか。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141020&ng=DGKDZO78582660Y4A011C1TCJ000 (日経新聞 2014.10.20) グーグル検索結果の削除命令 記事タイトル・要約も対象 東京地裁、人格権に配慮
 インターネットの検索サイト「グーグル」で自分の名前を調べて犯罪に関係したかのような記事リンクが現れたとき、米グーグルは検索結果の一部を削除しなければならない――。日本人男性が求めた仮処分申請について東京地裁は9日、こんな命令を出した。欧州連合(EU)でも同様の司法判断が下されてから間もないだけに関心が高まっている。今回の事案は、自分の名前を検索すると反社会的集団に関わった過去を暴露する記事が多数表示された日本人男性が、記事のタイトルと要約の削除をグーグルに命じるよう申し立てた。記事の発信者に直接削除を求めることもできるが手続きに時間がかかるため、グーグルの検索結果にタイトルなどが表示されないようにして、記事そのものの削除に近い効果を得ようとした訳だ。東京地裁は一部の記事について「検索結果自体が男性の人格権を侵害している」と認定、削除を命令した。これまでも裁判所は場合によっては削除を命ずる姿勢を示していて、検索サイト運営会社に対してプライバシーや名誉を毀損する記事のタイトルなどを削除する義務を認めた例はある。ただ、グーグルなど検索サイト運営会社は、記事自体を提供しているわけではない。膨大な検索結果のタイトルと要約の事前チェックは現実的でないことや、グーグルが自主的に削除申請を受け付けていることなどもあり、削除命令までは至らないケースが多かった。今回、申立側が参考にしたのが、5月に欧州司法裁判所が下した判決だ。スペイン人男性が10年以上前の社会保険料未納に関する記事のタイトルなどを検索結果から削除するようグーグルに求めた訴訟で、男性の申し立てを認めた。ネット上での「忘れられる権利」の行使を認めた判決として話題になった。欧州司法裁の判決では、グーグルが個人情報の管理者に該当するかを検討、同社を「コンテンツのプロバイダー」と表現した。申立側はこうした考え方を参考に「検索結果も記事そのものと同様のコンテンツ」(代理人の神田知宏弁護士)と判断。コンテンツを管理するグーグルには違法なコンテンツを削除する義務、つまり検索結果を削除する義務があると訴えた。忘れられる権利は「人格権侵害行為への差し止め請求権がそれに当たる」(同)として、日本にも同様の権利があるとの考え方に立った。東京地裁が扱う損害回避のための仮処分事件の半数以上をネット関連事件が占める。今回、東京地裁がグーグルに検索結果の一部削除を命じたことが明らかになり、検索結果に表示された記事のタイトルや要約も、人格権侵害の内容によって削除を命令できるという裁判所の考え方が確立されつつあるとの見方が専門家の間で強まっている。欧州ではすでにグーグルに14万件を超える削除依頼が殺到している。急拡大するネット上での表現の自由と知る権利、人格権のバランスをどうとったらよいのか。個々の検索サイト運営会社の対応に任せるだけでなく、社会的なルールづくりも求められそうだ。

*2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141023&ng=DGKDASDG2202Y_S4A021C1CC1000 (日経新聞2014.10.23)グーグル 削除応じる 検索結果「裁判所の決定尊重」
 インターネット検索サイト「グーグル」に表示される不名誉な内容の投稿記事で日本人男性の人格権が侵害されているとして、東京地裁が検索結果の一部削除を命じた仮処分で、グーグル日本法人は22日、「裁判所の決定を尊重して仮処分命令に従う」として検索結果を削除する方針を明らかにした。男性側の神田知宏弁護士は22日までに、削除対象の大部分が既に表示されなくなっていることを確認した。グーグル側が削除に応じない場合に制裁金の支払いを求める「間接強制」を21日に地裁に申し立てたが、神田弁護士は「完全に削除されたことが確認できれば、間接強制の申し立ては取り下げることになる」としている。男性側は「名前で検索すると、自分と関係のない犯罪行為を連想させる記事が多数表示される」として、検索結果237件の削除を求めて仮処分を申請。東京地裁は今月9日、このうち122件が「男性の人格権を侵害している」と認め、グーグルに削除を命じる決定を出した。神田弁護士は「依頼者の男性も喜んでいた。今回のグーグルの判断を歓迎したい」と評価した。一方、仮処分で削除請求が却下された残り115件についても「どのような手続きで削除請求できるか検討したい」としている。

*2-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141027&ng=DGKKZO78916540X21C14A0CR8000 (日経新聞 2014.10.27) ネット投稿削除など請求 仮処分申し立て4年で20倍、東京地裁 昨年711件 SNSトラブル増映す
 インターネットの掲示板で誹謗中傷されたとして投稿者の情報開示や投稿の削除をプロバイダー(接続業者)やサイト運営管理者に求めるなど、ネット関係の仮処分申し立てが激増している。東京地裁が2013年に扱ったのは711件で、4年前の20倍以上になったことが地裁関係者への取材で分かった。関係者によると、東京地裁が09年に扱ったネット関係の仮処分は計33件で、仮処分申立総数の3%に満たなかった。しかし、10年に175件、11年に499件、12年は736件と増加。13年の711件は仮処分申立総数の40%近くを占めた。13年の711件の内訳は、名誉毀損やプライバシー侵害の状態を解消するための「投稿記事の削除」が247件、損害賠償請求訴訟を起こす前段階としての「発信者(投稿者)情報の開示」が290件、通信記録保存のための「発信者情報の消去禁止」が174件だった。仮処分申し立てが増えたのは、会員制交流サイト(SNS)などの普及でトラブルが増加したのと、対処する手続きが周知されたのが主な理由。02年施行のプロバイダー責任制限法では被害者は投稿者の情報開示や記事の削除をプロバイダーなどに直接請求できるが、司法手続きを取らざるを得ない実情があるとみられる。ネット事情に詳しい弁護士によると、プロバイダーへの要請で問題の投稿が削除されても、誹謗中傷の投稿は繰り返されることが多く、再発防止と損害賠償請求のため投稿者の特定を望む被害者が増えている。また、プロバイダーは記事の削除に応じても、投稿者の氏名やネット上の住所に当たるIPアドレスの開示は拒むことが多いという。

<EUの判断と行動>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140821&ng=DGKDASDZ13048_T10C14A8MM8000 (日経新聞2014.8.21)Google全ての情報を手中に それは正義か邪悪さか
 7月末、ベルギーのブリュッセル。米グーグルのスマートフォン(スマホ)向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」を巡り、欧州連合(EU)の独禁当局が年内にも正式な調査に乗り出すとの情報が駆け巡った。世界シェア8割の圧倒的な地位を利用して、グーグルが検索や地図など自社のサービスを優先していないか、他社を排除していないか――。欧州委員会が、端末メーカーなどに質問状を送ったのが発端だった。イノベーションの旗手として世界中から称賛されるグーグル。その一方で、あらゆる情報が一企業の手に集まることへの警戒感も強まっている。5月にはEU司法裁判所がネット上の個人情報を削除できる「忘れられる権利」を初めて認定。グーグルに対し、同社をプライバシー侵害で訴えていたスペインの男性の過去の報道内容へのリンクを検索結果から削除するよう命じた。グーグルは「『知る権利』とのバランスを欠く」(会長のエリック・シュミット、59)と反発したが決定は覆らず、5月末からEUの利用者を対象に削除要請の受け付けを始めた。欧州で厳しい目にさらされる一方、米国では昨年初めまで2年近く続いた米連邦取引委員会(FTC)による独禁法調査をほぼ無傷で乗り切った。「勝因」は1990年代に米司法省と全面戦争を繰り広げた米マイクロソフト(MS)に学んだことだったとされる。7月、米ワシントンで上下両院の議員らを招いた盛大なパーティーが開かれた。100人以上のスタッフを抱えるグーグルの新たなワシントン事務所のお披露目だった。同社の2013年のロビー活動費は1406万ドル(約14億円)とハイテク企業で最大。当局との対決姿勢をあらわにしたMSとは対照的に、グーグルはワシントンの流儀をいち早く身に付けた。ただ米国内ですら、したたかに立ち回るグーグルに対する警戒の声が上がる。米ジョージタウン大学教授のマーク・ローテンバーグ(54)は「ワシントンでの影響力が大きくなりすぎた結果、彼らの存在がネットの未来にどんな影響を及ぼすのか政策論議の機会が奪われている」と懸念する。5月14日に開かれた定時株主総会。会場からは4月に実施した無議決権株の発行を巡り、株主から批判の声があがった。グーグルは04年の上場時、共同創業者の2人と会長ら経営陣の一部に議決権が通常の10倍ある特殊株を交付し、強い支配力を与えた。今回発行した特殊株は議決権がゼロ。創業者らの影響力を維持しつつ、株式交換によるM&A(合併・買収)などをしやすくするためだが、「一般株主の声がますます届かなくなる」との不満がくすぶる。この10年、グーグルが生み出したサービスは消費者をとりこにし、投資家は成長物語に酔いしれた。ただその物語に疑念が芽生え人々の心が離れていけば、築き上げたものが崩れ去るのに時間がかからないことは歴史が証明している。「Don’t be evil(邪悪になるな)」。10年前に交わした株主との約束を貫けるか。世界の目が注がれている。

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140531&ng=DGKDASGM3100R_R30C14A5MM0000 (日経新聞 2014.5.31)
グーグル、欧州で個人情報削除に対応 「忘れられる権利」受け
 インターネット検索最大手の米グーグルは30日、欧州の利用者を対象に検索結果に含まれる自分に関する情報の削除要請を受け付けるサービスを始めた。欧州連合(EU)司法裁判所(ルクセンブルク)がプライバシー保護の観点から、ネット上の個人情報の削除を求める「忘れられる権利」を認める判決を出したことに対応する。欧州に限定した措置だが、日本でもネット上の個人の権利を巡って議論が高まる可能性もありそうだ。グーグルは専用サイトを開設し、削除要請の受け付けを始めた。希望者は削除してもらいたいサイトのリンクとその理由を明記し、氏名やメールアドレス、写真付きIDなどとともに申請する。グーグルは同社幹部や外部の専門家で構成する委員会を新設。申請内容について、削除するかどうかを1件ずつ慎重に判断する。削除されるのは欧州域内のグーグルサイトの検索結果に表示されるリンクのみで、リンク先の情報自体は残る。10年以上前に所有不動産が競売にかけられたことを報じた新聞記事へのリンクを巡り、スペインの男性が自分の名前の検索結果に今も表示されるのはプライバシーの侵害だとしてグーグルを提訴していた。EU司法裁判所は5月13日、この裁判で、個人の「忘れられる権利」を認定。新聞掲載時の目的と時間の経過などを考慮して、情報が「不適切、もはや重要でない、行き過ぎている」場合には削除を求められるとして、男性の情報へのリンクを削除するよう命じた。EUはプライバシー保護を重視し、情報保護に関する規則に個人の「忘れられる権利」を明記する方針。同判決はこれを先取りして権利を認めた格好だ。グーグルは「知る権利とのバランスを欠く」と反発していた。

*3-3:http://qbiz.jp/article/49391/1/
(西日本新聞 2014年11月7日) 検索めぐりヤフーが有識者会議 「忘れられる権利」で
 インターネット検索大手のヤフーは7日、ネット上に残る過去の個人情報を削除するよう求める「忘れられる権利」の意識の高まりを受け、検索のあり方を検討する有識者会議を設置すると明らかにした。会議の意見を聞き来年3月までに方向性を示す。新たなルール作りに発展すれば、国内のIT業界にも影響を与える可能性がある。会議には法学者や弁護士が参加する予定で、今月11日に初会合を開く。個人情報の保護と知る権利を踏まえ、実際にどういった事例が削除に値するかなどの意見を聞く。ヤフーは犯罪行為などを除き、これまで個人から削除の要請があっても、原則として応じていない。

<ネット犯罪への対応策>
*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140625&ng=DGKDZO73288440V20C14A6EAC000 (日経新聞 2014.6.25) ネット監視、月数万円から、情報拡散や「炎上」防ぐ
 ツイッターやフェイスブックを通じ、個人がインターネットで情報発信する機会が増えるのに伴いトラブルも目立ってきた。個人情報が公開されたり、個人に関するネガティブな情報が書き込まれたりするのが一例だ。ネット上の個人情報の流出や誹謗(ひぼう)中傷は企業だけの問題ではない。個人でできる対策を調べてみた。「自分のパソコンから写真が流出してネット上にさらされている」。ネット上の中傷やネガティブ情報の対策を手がける企業に、個人からこんな相談が持ち込まれた。自宅のパソコンがウイルスに感染、写真が勝手に公開され多くのサイトに転載されてしまったという。この会社は相談者に写真が掲載されたいくつかのサイトを特定して伝えた。ただ、すべてのサイトからの削除は難しかったため、新たに自身のサイトを立ち上げてもらい、そこで公開しても構わない情報を発信した。サイトの更新を頻繁にすることで、検索結果の上位に写真が掲載された問題のサイトが出にくくなるようにしたという。ネット上のネガティブな情報は主に個人がブログやSNSで発信。それが拡散し、グーグルなどの検索結果として表示されることもある。風評被害対策サービスは、ネット上の評判などを気にする企業が使い始めた。5年前に本格的にサービスを始めたシエンプレ(東京・中央)の桑江令氏は「最近は主婦や大学生、社会的地位のある個人からの相談も増えてきた」と話す。サービス提供会社は事実関係を確認したあと、どのサイトやSNSに掲載されているかを調べ、サービスの運営会社やサイト所有者に本人から連絡してもらう。グーグルの削除ポリシーには「具体的な危害がユーザーに及ぶ可能性があると判断すれば削除を行います」とある。ツイッターにも攻撃的なユーザーを報告するためのフォームがある。だが、各社とも原則的に「情報は発信者のもの」という立場。中傷やいやがらせは「事実かどうか判断できない」(ヤフー)ため対応が難しい。サイト所有者などが削除しない場合は「本人が情報を発信し、信頼できるものをネット上に提供するしかない」(ウェブ関連企業、ジールコミュニケーションズ=東京・港=の藪崎真哉代表取締役)。価格は相談から対策まで1回あたり5万円から。最近は「炎上」する前にチェックする動きも広がる。ネット上の投稿監視を手掛けるイー・ガーディアン営業部の竹口正修氏は「従業員がトラブルに巻き込まれるのを防ぎたい企業が多い」と話す。監視はあらかじめ決めたキーワードがツイッターなどで話題になったときにチェックするプランで月10万円から。目視で確認するキーワードの数などで料金が変わる。いったん炎上すると「個人情報が半永久的にネット上に残り個人にとってリスクが大きい」(イー・ガーディアンの竹口氏)。ネットの発言は、瞬時に世界中で表示されることを忘れずに便利なツールとつきあっていきたい。

| 民主主義・選挙・その他::Google・YAHOOの検索サジェッション機能など、インターネットによる名誉棄損と人権侵害 | 04:53 PM | comments (x) | trackback (x) |

PAGE TOP ↑