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2015.4.9 大手電力会社の立場に立ち、温室効果ガスの削減を口実として、それより公害の多い原発維持の論理を展開するのは、もうやめるべきである。 (2015年4月10、11、12、24日に追加あり)
        
世界のCO2排出量  国別総排出量    日本の         日本の   
            一人当たり排出量  部門別排出量   部門別排出量推移

   
     *1-3より       *1-1より    *2-1より    再生エネ&水素社会  

(1)2030年に2013年比で温室効果ガス(CO2)20%削減は目標が小さすぎる
 世界のCO2排出量は上の段の一番左の図で、国別総排出量と国別一人当たり排出量は二番目の図である。アメリカは総排出量・一人当たり排出量ともに大きく、中国・インドは一人当たり排出量は小さいが人口が多いため総排出量が大きい。日本・ドイツは、先進国の中では総排出量が比較的小さい。

 しかし、日本の部門別排出量を見ると、①エネルギー転換部門39% ②産業部門26% ③運輸部門17% が大きい。そのため、2030年(今から15年後)までであれば、運輸部門をすべて自然エネルギー由来の水素燃料と電気自動車に変え、③からはCO2を排出しないようにすれば、まず17%のCO2削減が可能だ。また、①のうちの発電もLNG以外は全て自然エネルギーに変えれば、原発を再稼働しなくても10%くらい(39%X電力への使用割合X40%)は排出されなくなる。さらに、産業部門も半分を水素に変更すれば13%(26%X50%)の抑制ができるため、全部で約40%のCO2削減ができる筈だ。

 こう書くと、「責任政党は、そのような実行不可能なことは言わない」などと言う人がいるが、電気自動車や燃料電池車は、このために1995年頃から開発し始めて既に実用化済であり、自然エネルギーや水素燃料による発電システムも使用開始の目途がついているのだ。そのため、目標を立ててやるかやらないかが現在の政治責任であり、これを2段目の「再生エネ&水素社会」のイメージのように実行すれば、日本のエネルギー自給率は100%以上となって、海外に燃料費を支払わなくてもすむわけである。

 そのため、*1-3で、2009年9月に鳩山首相が「あらゆる政策を総動員して25%削減する」と言ったのが、目標として最も妥当だったと、私は、当時から思っていた。

(2)原発再稼働は不要である
 *1-1の「経済産業省と環境省が案を詰め、再生可能エネルギーのてこ入れや原子力発電所の再稼働を前提に、2030年までの温暖化ガス排出量を2013年比で20%前後削減する目標を打ち出す実現可能な目標として国際社会に示す」というのは、現状維持を前提としているため、全く話にならない。

 なお、原発再稼働論者は、*1-2のように、必ず「原発が稼働しなければ国民負担が大きい」という嘘を言うが、原発のコストは、何度も記載してきたとおり、原発立地自治体への交付金、防災費用、廃炉費用、最終処分費用、事故処理費用のすべてを含み、運転費用だけではないことを忘れてはならない。

(3)自民党の原子力政策とエネルギーミックスの非妥当性
 *2-1のように、自民党の原子力政策・需給問題等調査会が2030年の望ましい電源構成として、「原子力、石炭火力、水力などの“ベースロード電源”の比率を東日本大震災前の水準である約6割に引き上げるよう提言した」とのことだが、これは、何も考えずに経産省主導で従来のやり方を踏襲した姿だ。また、「安定的に発電できるのは、原子力、石炭火力、水力しかない」としているのも、フクシマ原発事故に正面から向き合って反省していない姿勢である。

 また、*2-2では、環境省が「2030年の再生エネ比率は、24~35%になると推定」し、宮沢経産相が「技術的な制約やコストの課題など実現可能性について十分考慮されていない」としているが、実際には、再生エネよりも原発の方が、技術、コスト、環境汚染などへの課題は解決していない。

 そのような中、*2-3のように、佐賀新聞社が佐賀県議選候補者に、玄海原発再稼働の地元同意範囲についてアンケート調査したところ、立地自治体だけでは「不十分」とした候補者が4割で、自民現職は明確な範囲を答えなかったそうだ。しかし、今後の原発の存廃と玄海原発の再稼働では、自民現職が「安全性確保を前提に、重要なベースロード電源と位置づけ、原子力規制委が新規制基準に適合すると認め、住民理解が得られた原発は再稼働を進める」という自民党及び政府の方針を踏まえた考えを示し、全体では6割が「廃止すべきでない」、7割が「再稼働を容認する」という情けない結果だったそうだ。

 一方、*2-4のように、憲法で原発建設を禁じるオーストリアが、英政府の原発補助金支出を欧州連合(EU)が認めた決定に対し、「市場競争を歪める」として5月にもEU司法裁判所に無効確認の訴訟を起こすそうだ。私も、「原発はコストが安く、安定電源だ」などとして再稼働しようとするのであれば、補助金は廃止して公正な市場競争を行うべきだと考える。

*1-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF08H1C_Y5A400C1MM8000/?dg=1
(日経新聞 2015/4/9) 温暖化ガス、20%削減 30年目標に政府調整、13年比で
 政府は2030年までの温暖化ガス排出量を、13年比で20%前後削減する新たな目標を打ち出す方向で調整に入った。6月上旬にドイツで開く主要7カ国(G7)の首脳会議(サミット)で表明する見通し。温暖化対策を巡る国際交渉での欧米の動向を踏まえ、再生可能エネルギーのてこ入れや原子力発電所の再稼働を前提に実現可能な目標として国際社会に示す。経済産業省と環境省が案を詰めている。外務省や首相官邸と調整し、今月下旬にも電源構成(ベストミックス)と温暖化ガスの削減目標に関する有識者会議にかけた上で、正式に政府案としてまとめる。温暖化の国際交渉では、各国が年末にパリで第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)を開く。そこでは、先進国に排出削減を義務付けた京都議定書に代わり、すべての国が参加する新たな枠組みで合意をめざす。国連は各国に20年以降の削減目標の提出を求めており、米国や欧州連合(EU)は今年3月に提出した。削減目標のベースとなる30年時点の望ましい電源構成について、経産省は二酸化炭素(CO2)を排出しない太陽光や風力などの再生可能エネルギーの割合を現状の10%程度から30年に23~25%前後に拡大。原子力の比率も停止中の原発の再稼働を前提に2割を確保する方向で調整している。CO2を大量に出す石炭、液化天然ガス(LNG)、石油の火力発電は5割半ばと、現状の約9割から大幅に減る見通しで、それだけで温暖化ガスの削減は13年比で10%台半ばとなる。これに省エネ対策の効果などを上乗せし、20%前後の削減をめざす。各国が提示している削減目標に、遜色ない水準にしたいと政府は考えている。当初は削減目標の基準年を米国と同じ05年で検討していた。東京電力福島第1原子力発電所事故に伴い、全国の原発が停止して温暖化ガスの排出が増えている13年を基準にすることで、20%前後の温暖化ガス削減が実現する面もある。米国の目標は05年比26~28%削減、EUは1990年比40%削減。政府関係者によると、これらを13年比に直すと米国は約2割減、EUは3割弱の減少となり、日本が示す20%前後の目標に近づく。温暖化問題は、過去に大量のCO2を排出してきた先進国の責任が重いとされ、新たな枠組みで合意するには日本も欧米並みの負担が必要とされる。日本は97年に京都議定書で、08~12年に90年比でCO2排出量を6%減らす目標を国際社会に示した。その後、09年に民主党の鳩山由紀夫首相(当時)が国連の気候変動サミットで20年までの目標として、90年比で25%削減すると表明。東京電力福島第1原発事故による原発停止を受け、13年に石原伸晃環境相(同)が05年比3.8%削減とする目標に実質的に引き下げた。関係各省は13年を軸に各国の目標を比較・検証する方向だが、14年とする案もある。ただ基準年は米国は05年、EUは90年と異なっており、大震災後の日本の環境変化について、国際社会の理解が得られるかが焦点だ。安倍晋三首相は第1次内閣の07年に「50年までに世界の排出量を半減する」との長期目標を示して国際的な議論を主導した。経済成長と国際交渉への貢献、地球環境への配慮という観点から削減目標でさらなる上積みが可能か、関係各省で詰める。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150319&ng=DGKKZO84541300Y5A310C1KE8000 (日経新聞 2015.3.19) 2030年の電源構成(下)過大な省エネは国民負担、原発比率20%以上に、成長維持へ電力価格抑制 野村浩二 慶応義塾大学准教授(1971年生まれ。慶大博士。専門は応用計量経済学、経済統計)
<ポイント>
○省エネと電力価格の上昇はコインの両面
○過大な省エネは電力需要の過小推計導く
○電力価格高騰は生産縮小、経済停滞を招く
 米国に比べて2倍以上の電力価格負担を強いられている日本の消費者が、さらに価格上昇を受け入れる余地はあるのだろうか。福島原発事故を受け、稼働を止めた原発を補うため化石燃料依存度は88%に達し、電力価格は現在までに35%上昇している。経済産業省は長期エネルギー需給見通し小委員会を設置し、2030年における電源構成について検討している。需給見通しには電力価格上昇の抑制は当然に織り込まれると思われるかもしれない。しかし、過去の政府試算では電力価格上昇はきわめて大きいものだった。12年、民主党政権下のエネルギー・環境会議では、国民に提示されたすべての選択肢で、30年における電力価格は60%から2倍以上の上昇となっていた。なぜこれほどの上昇となるのか。一般には再生可能エネルギーの増加の影響とみられがちだが、実際には省エネ拡大の影響の方が大きい。省エネ(省電力)と電力価格上昇はコインの両面である。省エネは、その多くが省エネ技術を体化した資本財の導入によって実現される。そして資本の更新時期を迎えたとき、追加的に大きな費用負担のないままに、新しい省エネ技術は緩やかに経済体系に組み込まれていく。市場経済において、省エネを加速するためには、企業や家計において合理的な投資機会となるよう、その背景に電力価格の上昇が必要となる。言い換えれば、将来の電力価格水準をターゲットとすれば、それに対応して実現可能な省エネ量の水準はおのずと定まる。政府は電力消費者の負担とせずに、補助金や直接規制により省エネを推進してきた。しかし、そうした安易な政策手段による隠れた費用も結局は国民の負担となる。省エネへの負担を余儀なくされた企業では、生産コストはトータルで上昇し、国際競争力を喪失していく。家計では教育や健康への投資が阻害される。一般的に資本財価格は相対的に低下する傾向にあり、将来の電力価格が安定的でも、市場経済においても省エネ技術は時間をかけて導入されていく性質のものである。政策によって得られるのは、少しばかりの「前倒し」効果にすぎない。非合理的な選択は、最終的にだれの負担になろうとも、一国経済の成長力をそぐことになる。政府はこの20年以上、コスト負担を顧みることなく、省エネ努力を数量的に積み上げることに腐心してきた。省エネの過大推計は、電力需要の過小推計を導く。そして二酸化炭素(CO2)排出量を小さく、電力構成における再エネ比率を大きく見せる。ゆえに理想的な政策目標に近づけるには、禁断の果実となる。図は日米両国における需要見通しについて、1990年代後半からの予測値と実績値の推移を示している。日本では少しの需要減少を契機に、その減少トレンドを引き継ぐように省エネが過大に推計されている。前政権の見通しを上回らないよう、過去の過大推計は将来の更なる過大推計の布石ともなる。そうした推計値は、リーマン・ショックや震災で生産が大打撃を受けた実績と皮肉にも近似した。その近似を根拠として、30年に向けて年率1.7%という高い経済成長率の想定のもとでも、省エネ努力の積算はきわめて大きなものとなっている。しかし震災後の生産縮小によらない電力需要の減少は、その多くが省エネの「前倒し」によるものであり、30年時点で残る省エネ効果はわずかであると考えられる。対照的に米国での見通しは合理的である。参照ケースは将来の予測値としての機能を果たしている。09年には大きく縮小しその後も停滞しているが、将来の需要は再び過去の成長率へと戻る見通しである。最良技術導入ケースでも増加が見込まれている。求められる需要見通しは、企業が中長期の事業計画を構築しやすいよう現実性の高いシナリオであり、経済合理性を度外視した積算ではノイズでしかない。電力需要の過小推計のもとに電力供給が計画され、もし将来に想定を上回る需要が現実化したとき、コインの表面(数量側)から見れば電気使用制限か停電、あるいは老朽火力の発電増加などでCO2排出量が膨らんで海外から排出枠を購入するという負担を余儀なくされる。コインの裏面(価格側)から見れば、需要を大幅に減少させるため、筆者の試算では電力価格の倍増が必要となる。その結果、日米の需給見通しに基づけば、日本の電力および炭素排出の価格は30年にはともに米国の5倍もの水準になってしまう。とても経済成長と両立するシナリオではない。電力価格の倍増への懸念は絵空事ではない。エネルギー政策で先行している欧州諸国では、21世紀に入り軒並み倍増した。イタリアは欧州連合(EU)の電力自由化指令が国内法化された99年を転機として急速な電力価格上昇に見舞われ、13年には3倍、消費者物価指数で除した実質価格でも2.3倍へと高騰した。産業ごとの成長率と生産コストに占める電力依存度はほぼ無相関だったが、高騰後は強い負の相関が見られる。窯業土石、ゴム製品、パルプ紙製造業など、一国平均よりも年率で3~4%ほど成長率が低い。電力価格倍増は、輸入財への代替や海外への生産移転などを通じて、国内の産業構造を大きく変えてしまう力をもっている。その結果、80%近く石炭火力に依存する中国や、過剰な再エネ負担なしに安定した電力価格を保つ米国へのシフトをもたらした。21世紀に入ってイタリアの経済成長率はほぼゼロで、先進諸国で最低となった。電力価格高騰による生産縮小は、一定の仮定に基づく積算でみれば年率0.15%ほどの成長率の低下要因と解される。これを日本経済の将来見通しに適用すれば、30年の断面では国内総生産(GDP)の約2.2%の下落となり、それまでに失う所得の総額は100兆円近い。日本が同じ轍(てつ)を踏んではならない。再エネは系統対策コストを含まずとも、経済性のある事業は限られ、ほとんどは政策支援なしに成り立たない。再エネの固定価格買い取り制度(FIT)による賦課金総額は15年度に1兆円を超えると言われるほど膨大となった。一部が期待した経済効果も無残なものである。導入前には30%程であった太陽電池の輸入シェアは、一気に80%近くまで上昇した。年率20%ほどで下落していた太陽電池の輸入価格は、導入後の13年初めには(外貨建てでも)プラスに転じ、過度な価格競争に陥っていた中国企業が大きく一息ついただけである。FITは買い取り価格を固定してしまうことで企業の競争を阻害し、価格低下を阻む引力にすらなる。価格上昇を抑制するためFITからの出口戦略の構築を急ぎ、再エネの目標値は20%ほどまでとして中長期的に整備していくことが現実的であろう。電源構成の見通し策定は、エネルギー政策における停滞を前進させる指針の役割も担う。エネルギー安全保障と低炭素、そして経済成長と両立する電力需要に対応できるベースロード電源として、原発の役割は依然として大きい。安全性と効率性の向上のため、原発のリプレースも将来の選択肢である。原子力は20%以上を目標とすべきである。残りは石炭と天然ガスの間の民間企業による選択である。原子力と再エネの適切なシェアの維持は、自由化による価格上昇リスクの抑制のためにも有益であろう。

*1-3:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E9%85%B8%E5%8C%96%E7%82%AD%E7%B4%A025%25%E5%89%8A%E6%B8%9B (Wikipedia)
●歴史
・2009年 民主党が衆議院選挙においてマニフェストに排出権取引・環境税の導入などによる25%削減を明記
・2009年9月7日 民主党の鳩山由紀夫代表が東京都内のシンポジウムにおいて「あらゆる政策を総動員して実現を目指していく」と発言、世界に注目される
・2009年9月22日 鳩山由紀夫首相がニューヨークの国連本部で開かれた国連気候変動サミットにおいて演説内で温室効果ガス25%削減を発言。日本メディアは注目するも、欧州メディアにはまったく注目されず。オバマ大統領の演説ではCO2削減についてブラジルや中国に言及するも日本には言及せず。
・2009年9月30日 鳩山由紀夫首相が関係閣僚へ温室効果ガスによる影響の試算のやり直しを指示
・2009年10月19日 国内総生産(GDP)が05年から20年に約21%成長することを前提とした場合、日本の2020年の温室効果ガス排出量を国内対策だけで1990年比25%減らし、光熱費の上昇を見込んでも、世帯当たりの可処分所得は経済成長などに伴い05年に比べて76万円増えるとの試算が、前政権(麻生政権)による削減中期目標の検討過程でまとめられていたことが中日新聞社によって報道された。
・2012年1月 温室効果ガス25%削減の撤回を表明
・2012年12月28日、再び政権与党となった自由民主党の茂木敏充経済産業大臣は、民主党政権が掲げた「2020年の温室効果ガス排出量を1990年比25%削減する」とした国際公約について、見直す方針とした[10]。2013年1月25日には安倍晋三首相が、温室効果ガス25%削減目標について、ゼロベースでの見直しを指示した。
・2013年10月 安倍首相と閣僚との協議で、2005年(Co2=129300万トン)比で日本のCo2の排出量をマイナス6%-7%を目標という考えを示した。
●対象となりうる業界
  製紙業界・出版業界
  石油業界・鉄鋼業界
  自動車業界
  発電業界

<エネルギーミックス>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150408&ng=DGKKZO85414030Y5A400C1EA1000 (日経新聞 2015.4.8) 
自民、原発比率 明示せず 安定電源引き上げを提言 党内に異論も
 自民党原子力政策・需給問題等調査会の額賀福志郎会長は7日、首相官邸で安倍晋三首相に2030年の望ましい電源構成案を提言した。安定的に発電できる原子力、石炭火力、水力などの「ベースロード電源」の比率を東日本大震災前の水準である約6割に引き上げるよう求めた。原発の稼働停止で電気料金は上がっており、家計や企業の負担軽減をめざすが、党内には異論もある。首相は「安全第一を基本原則に、安定供給が大切だ。国民生活や中小企業が成り立っていく上で電力料金の抑制は必要だ」と強調した。提言はベースロード電源に関して「欧米の多くの国で、漸減傾向にあるが現状6割以上となっている比率について、国際的に遜色のない水準を確保すること」とした。
■「6割」確保の表現消える 当初はベースロード電源の比率を「6割程度」確保すると明記する考えだった。比率の明示はないが、原発が2割程度、石炭が3割程度になるのが念頭にあるため、党内の一部から異論が出て、最終的に玉虫色の表現になった。11年の震災の後に原発が止まり、液化天然ガス(LNG)や石油といった燃料の調達コストが高い発電が増えた。震災前より家庭向けの電気料金は19%、企業向けは28%上がった。原発の立地自治体では、関連産業への波及も含めて再稼働を求める声がある。原発の再稼働が容易ではないなか、石炭の比率が増すことへの懸念も一部に広がった。「温暖化ガスの排出が増えれば国際舞台で恥をかくのは首相だ」と閣僚経験者の一人は語る。欧米各国は将来的にベースロード電源の比率を下げるとの指摘もあり、国際的な潮流に逆行するとの声も上がった。太陽光や風力など再生可能エネルギーの比率を上げるべきだとの意見もあるが、再生エネについては固定価格買い取り制度による家計や企業の電気料金の値上がりも懸念される。政府は再生エネの比率を原発よりも高くする方針で、今は全体の10%程度の割合が25%程度まで増えれば、電気代への上乗せ額は15年度の年5688円では済まなくなる見通しだ。
■排出削減目標の前提に 30年の電源構成は、今年末の第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)に向け、政府が温暖化ガスの排出削減目標を決める前提にもなる。首相は6月のドイツでの主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)で日本の目標を説明する考えだ。菅義偉官房長官は7日の記者会見で「党の提言もふまえ、できるだけ速やかにエネルギーミックス(電源構成)をまとめたい」と語った。政府内ではすでに原子力を2割以上とし、ベースロード電源で全体の6割程度を確保する方向で議論が進んでいる。

*2-2:http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/business/communications/mainichi-20150408k0000m020116000c.html (毎日新聞 2015年4月7日) <再生エネ比率>宮沢経産相、環境省試算を批判
 宮沢洋一経済産業相は7日の記者会見で、2030年の総発電量に占める電源ごとの割合(電源構成)をめぐり、再生可能エネルギー比率を最大35%まで拡大できるとする環境省の試算を「技術的な制約やコストの課題など実現可能性について十分考慮されていない」と批判した。環境省が三菱総合研究所に委託した試算は、30年の再生エネ比率が24~35%になると推定した。35%の場合、電力大手10社がそれぞれの地域で独自に行っている電力の過不足調整を、東日本と西日本の2地域(沖縄を除く)に統合し、地方で余った再生エネ電力を都市部に流すことや、蓄電池を最大限導入することを前提にしている。一方、経産省は再生エネ比率を20%台半ばとする方向だ。当初は3割程度まで拡大できるか検討したが、電力会社間の送電線の増強に数兆円規模のコストがかかり、過不足調整の地域を二つにするなどの対策は実現性が低いと判断した。宮沢氏は会見で、環境省の試算を「電源構成を決める議論で用いることはなかなかできない」と一蹴した。環境省は地球温暖化対策を推進するため、09年度から毎年、再生エネの導入可能量を試算している。今回の試算も「電源構成の策定を目的にしたものではない」と説明。望月義夫環境相は同日の記者会見で「環境省として技術やコストは試算できていない」と認めつつ、「CO2削減を考え、(経産省と)折り合いをつけなくてはいけない。最大限(比率を)増やす方向で頑張りたい」と述べた。

*2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/175082
(佐賀新聞 2015年4月9日) 県議選候補者アンケート(下) 玄海原発再稼働の地元同意範囲
■立地自治体だけ「不十分」4割 ■自民現職、明確な範囲答えず
 玄海原発(東松浦郡玄海町)再稼働を判断する際の「地元同意の範囲」について、佐賀県議選立候補者48人へのアンケートで、隣接や30キロ圏内の自治体への配慮を求める意見を含め、約4割が立地自治体(玄海町と県)だけでは不十分と回答した。統一見解で回答した自民現職27人(無所属1人を含む)は、明確な範囲は答えず、国の動向を注視する考えを示した。地元同意の範囲をめぐっては、7月の再稼働を目指す川内原発の場合、鹿児島県と立地する薩摩川内市だけで「同意」とされた。ただ、全国の原発では、30キロ圏内の自治体などから同意の範囲に含めるよう求める声も上がっている。アンケートでは、無所属や共産、社民現職ら8人が「不十分」と回答した。さらに「どちらともいえない」と答えた12人のほとんどが、「立地自治体だけの問題ではない」(自民新人)「30キロ圏内の意見も聞くべき」(公明)「説明や配慮が必要」(民主)「幅広い理解を得る必要がある」(無所属)など、何らかの対応が必要としている。原発に関する県独自の専門家組織は、8人が「必要」と答えた。「どちらともいえない」の7人の中には、「同じ判断基準の組織は不要だが、地域性に着眼した議論ができるならあっていい」「周辺県と連携した専門チーム」(自民新人)などの意見もあった。30キロ圏内の自治体が策定している避難計画の実効性に関しても、「計画通りにいくとは思えない」「現実的ではない部分がある」などの指摘が多く、改善を求める意見が多かった。今後の原発の存廃と玄海原発の再稼働では、自民現職が「安全性確保を前提に、重要なベースロード電源と位置づけ、原子力規制委が新規制基準に適合すると認め、住民理解が得られた原発は再稼働を進める」と政府方針を踏まえて考えを示した。全体では6割が「廃止すべきでない」とし、7割が再稼働を「容認」するだった。

*2-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015040401001563.html
(東京新聞 2015年4月4日) 英原発補助金めぐり提訴へ オーストリア、EU相手に
 【ウィーン共同】英政府の原発補助金支出を欧州連合(EU)が認めた決定に対し、憲法で原発建設を禁じるオーストリアが「市場競争をゆがめる」と反発、5月にもEU司法裁判所に無効確認の訴訟を起こす。英政府は「内政干渉」(キャメロン首相)と主張、対抗措置を警告したとも報じられ、両国の外交戦に発展しそうな気配だ。「われわれは誰の脅しにも屈しない。持続可能でも、再生可能でもない原発への補助金には明確に反対する」。オーストリア首相府の担当者は共同通信の取材にこう強調した。


PS(2015.4.10追加):*3のように、NHKは、「東電の福島第一廃炉責任者が、廃炉作業の見通しに関する悲観的な見通しを驚くほど率直に語った」とワールドニュースで海外には報道したが、国内ではそれを報道していない。そのため、NHKは海外向けには「報道した」というアリバイを作り、国民はその深刻でアホらしい内容を知らないのだ。これは、馬鹿者の悪知恵としか言いようがない。
       
        上              上           一方で2015.4.6日経新聞より
        上              上      2030年のエネルギーミックスで原発20%以上 
http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/english/news/features/201503312108.html より

*3:http://financegreenwatch.org/jp/?p=50971 (Finance GreenWatch 2015年4月8日) 東電・廃炉責任者が悲観的な見通しを語るも、NHKは国内では報道せず
NHKが、東電・福島第一廃炉推進カンパニー社長・増田尚宏氏に、廃炉作業の見通しについて
インタビューしています。
「東電・廃炉推進トップが語る」 (NHKワールドニュース 2015/3/31)
http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/english/news/features/201503312108.html
以下、増田氏の回答を引用します。
—–(引用ここから)——
(Masuda)
We have no idea about the debris. We don’t know its shape or strength.
We have to remove it remotely from 30 meters above, but we don’t have that kind of technology yet, it simply doesn’t exist.
溶融燃料についてはわからない。形状や強度は不明。30メータ上方から遠隔操作で取り除く必要があるが、そういった種類の技術は持っておらず、存在しない。
(Masuda)
We still don’t know whether it’s possible to fill the reactor containers with water.
We’ve found some cracks and holes in the three damaged container vessels,
but we don’t know if we found them all.
If it turns out there are other holes, we might have to look for some other way to remove the debris.
格納容器を水棺にするのが可能かどうかまだわからない。壊れた格納容器3基にヒビ割れや穴をいくつか見つけたが、それで全部かどうかわからない。ほかにもあれば、がれきを取り除く他の方法を見つけなければならない。
(NHK)
The government wants that work to begin in 2020.
I asked Masuda how confident he is that he hit the target. His answer was surprisingly candid.
政府は廃炉作業を2020年に始める意向だ。増田氏にそれについてどれだけ確信があるか尋ねた。彼の回答は驚くほど率直だった。
(Masuda)
It’s a very big challenge. Honestly speaking, I cannot say it’s possible.
But also I do not wish to say it’s impossible.
それは非常に大きなチャレンジだ。正直に言って、私はそれが可能だと言えない。でも不可能だとも言いたくない。
(NHK)
I also asked Masuda what he needs most for the operation to succeed.
増田氏に、成功させるためには何が一番必要かと聞いた。
(Masuda)
That’s hard to say. but probably experience.
How much radiation exposure can people tolerate?
What kind of information do the residents in the area need?There is no textbook to teach us what to do.
I have to make decisions every step of the way.
And I must be honest with you I cannot promise that I will always make the right decision.
言うのは難しいが、おそらく経験だろう。どのくらいの被ばく線量なら許容されるのか?周辺住民ににはどんな情報が必要なのか?どうすればよいか教えてくれる教科書はない。私は、ステップごとに決定を下さなければならない。正直に申し上げて、私が正しい決定をするということは約束できない。
—–(引用ここまで)——
増田氏は、極めて悲観的な見通しを語っています。NHKはこのインタビューを海外に報道したのに、国内では全く報道していません。国内の視聴者の受信料で番組を制作しているのに、都合の悪い情報は国内には一切報道しない。NHKは、東電の広報かと言いたい。極めて悪質な、ふざけた会社です。受信契約を解約する人が激増しているのは当たり前でしょう。


PS(2015.4.11追加):*4のとおり、電源別発電コストは、技術進歩や普及の程度で異なるため、名古屋大大学院教授、高村ゆかり氏の「原発など特定の電源を基幹電源と位置付ける考え方自体がなくなる」「ドイツでは安い再生エネが増えて電力の価格が下がっている」というのはそのとおりだと思う。また、環境省の試案根拠だけでなく、意図的な仮定と都合のよい不明事項が多すぎていかがわしい自民党、経産省、政府の試算根拠も明確に示すべきだ。

   
   2015.4.5NHKより     2015.4.8東京新聞より   2015.4.8    電気軽トラック 
                  原発がミサイル攻撃された場合  朝日新聞より   (実用化済)
*4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2015041102000126.html
(佐賀新聞 2015年4月11日) 「原発比率2割」異論続々 有識者「事故なかったような議論だ」
 経済産業省は十日、二〇三〇年に目指す再生可能エネルギーや原発など、電源種類別の発電比率を検討する有識者会合を開いた。自民党と経産省が原発で二割程度を賄うことを念頭に水面下で比率案を調整していることに対し、出席者からは「福島(の原発)の事故がなかったかのような議論だ」などの異論が相次いだ。自民党の額賀福志郎元財務相は経産省と足並みをそろえて原発、石炭火力、水力、地熱の「ベースロード(基幹)電源」を、現在の四割から震災前の六割程度に戻す提言を七日に安倍晋三首相に渡した。これは原発で二割程度を積み増すことが念頭にある。太陽光など再生可能エネルギーは、20%台半ばに抑える方向だ。十日の会合では、この提言に対し、東京理科大の橘川武郎(きっかわたけお)教授が、あらためて「将来に向けて大きく考え方を変え、再生エネを30%まで高めて原発は15%に抑えるべきだ」と主張した。また名古屋大大学院の高村ゆかり教授は、欧米では再生エネの増加とともに基幹電源の比率が減少している傾向を解説。「原発など特定の電源を基幹電源と位置付ける考え方自体がなくなりつつある」と話し、基幹電源の名の下に原発を重視する自民党と経産省をけん制した。その上で「ドイツでは安い再生エネが増えて電力の価格が下がっている」とも指摘した。環境省は三〇年に再生エネの比率を最大35%まで高められると試算したが、自民党と経産省は実現性に否定的だ。これについて全国消費者団体連絡会の河野康子事務局長は環境省の出席者に「(試算の)根拠を示してほしい」と要望。経産省に対して電源種類別の発電比率を検討する際の検討材料から環境省の試算を安易に外さないよう、くぎを刺した。次回の会合で経産省は基幹電源についての考え方を整理し、環境省は試算の詳しい根拠を示す。


PS(2015年4月12日追加):*5のとおり、原子力、石炭、水力、地熱をベースロード電源とし、それを隠れ蓑にして原発比率を高めようという意図がありありだ。しかし、「発電コストが安い」という理由で原子力をベースロード電源に入れるのなら、今後、原発に税金で補助金を出したり、フクイチ以後の事故に国の責任で補償したりすることは無用であり、他の電源と同様、すべて原発企業の責任で行うべきである。また、「どの電源による電力を使うか」については、このブログの2011年6月21日に記載したとおり、ユーザーが正しく選択できるよう、電源毎に別会社にして正確に原価計算・利益計算を行うべきである。

*5:http://mainichi.jp/opinion/news/20150412k0000m070110000c.html
(毎日新聞社説 2015年4月12日) 電源構成 原発回帰が透けている
 あの原発過酷事故をなかったことにしたいのだろうか。経済産業省が2030年の日本の電源構成について、「ベースロード電源6割」を打ち出した。自民党の調査会も同様の提言をまとめている。政府によればベースロードは発電コストが安く安定して発電できる電源で、原子力、石炭、水力、地熱を指す。経産省は現時点で原発比率を明示していないが、水力・地熱が簡単には拡大できず、石炭は温暖化対策の観点から抑制が必要であることを考えると、引き算で「原発20%以上」となる可能性が高い。この数字が原発回帰を示していることは明らかだ。事故後に決まった「原則40年廃炉ルール」を守れば、国内の全原発を再稼働させたとしても30年の原発比率は15%程度。20%以上とするには、多くの老朽原発の稼働期間を60年まで延長するか、原発の建て替え・新増設が必要になる。統一地方選への影響を考慮し、ベースロードを隠れみのに原発比率を決めようとしているのだとしたら、姑息(こそく)な話だ。そもそも、「ベースロード6割」に特段の意味があるわけではない。欧米では今後、その割合が低下していくとの予測や、ベースロード電源という考え方自体が時代遅れとの指摘もある。欧米では、まず再生可能エネルギーを優先的に活用する流れができてきている。ひとたび事故が起きれば何年も動かせない原発を、「安定供給できる電源」と言えるのかという疑問もある。経産省は再生エネの比率についても20%台半ば(水力を含む)を検討しているというが、これも政府方針の「最大限の導入」からはほど遠い。太陽光や風力の拡大には送電網の増強などに高コストがかかるためというが、まずは、既存の送電網を再生エネのために有効活用できるよう制度を改善することが先決だ。将来に向けては、事実上破綻している核燃料サイクルや、温暖化対策に逆行する石炭火力への投資分を送電網の拡充にふり向けられる仕組みも考えるべきだ。負担が増えても再生エネを選びたい国民はいるはずで、それを可能にするためにも透明性のある議論が不可欠だ。環境省は30年の再生エネの割合を最大35%まで拡大できるとの委託研究の試算を公表している。この試算をめぐっては技術的制約やコストなどの検討が十分かについて見方がわかれているが、経産省は門前払いするのではなく、公の場で議論してほしい。原発にしても再生エネにしても、正面からの議論を避けているとすれば、政府が決める電源構成に国民の理解は得られない。


PS(2015年4月24日追加):このように、「発電時に二酸化炭素を出さない」という理由をつけて、温室効果ガス削減の名目で、原発の割合を2030年代に20~22%(東日本大震災前と大差なし)とするのは、「公害を出さず、国民の生命・財産を守る」という最も重要な意欲に欠けており、頭が休んでいる。

  
        *6より             経産省上       2015.4.23NHK  
                (LNGをベースロード電源に入れないのもおかしい)

*6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11721337.html
(朝日新聞 2015年4月24日) 温室ガス削減「25%程度」 政府原案提示へ 2030年目標
 政府は23日、2030年の温室効果ガスの削減目標について、現状から25%程度の削減を目指して調整に入った。安倍晋三首相の指示も踏まえて、近く数値を定める。前提となる電源構成(エネルギーミックス)の割合は、原発を「20~22%」、太陽光など再生可能エネルギーを「22~24%」とする方針だ。
■電源構成、原発20~22%
 関係閣僚がこの日、首相官邸に入って協議した。首相の指示を経た後の週明けにも、環境省と経済産業省の専門家会合に政府原案として提示し、6月のG7サミット(主要7カ国首脳会議)までに決める。環境省と経産省で調整している目標案によると、前提となる30年の電源構成は、発電時に二酸化炭素を出さない原発と再生エネの合計で発電量の44%、排出量が少ない天然ガス火力が27%、石炭火力が26%、石油火力が3%。これらにより、エネルギー起源の二酸化炭素排出量は13年比で計算すると20%程度の削減になる見込みだ。ここから25%程度の削減を目指して、森林による二酸化炭素の吸収や代替フロン対策などを積み上げることなどで調整する。これまで、経済への影響を心配して当初10%台の削減としていた経産省と、国際社会で責任を果たすには30%近い削減が必要だとする環境省で主張に開きがあった。20%台半ばであれば、実現可能で意欲的な数字になると判断した模様だ。削減の基準となる年については従来の05年とする案と、原発停止後に排出量が増えた13年とする案があるが、削減率の差は0・6ポイント程度で、国際交渉への影響を見定めながら最終判断する。国際社会は、京都議定書にかわる、すべての国が参加する新しい枠組みを作るため、今年末にパリで開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)での合意を目指している。新しい枠組みでは、各国が温室効果ガス削減などの自主目標案を事務局に登録することになっている。すでに提出している主な国・地域のほとんどは30~50%の範囲にあり、この中では日本の目標は見劣りしかねない。

| 環境::2012.12~2015.4 | 03:55 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.1.6 原発には不向きな日本の位置と原発の廃炉について - 川内原発、玄海原発の事例を中心として (2015.1.8追加あり)
    
  地震発生箇所  日本近海の海図  マリアナ海溝付近    *2-1より

(1)地球上の日本の位置
 上の地図のとおり、プレートが押し込まれて無理な力がかかった時に地震が起こるため、プレートが潜り込む近くで地震が多発している。そして、隣の海図を見れば、プレートが押し込まれて盛り上がった場所が日本列島と島々になっており、このような場所に原発を作ったのがそもそも無謀だったのだろう。もう少し海の深さを正確に測定し、海底の地形が正確にわかる地図があれば、それを時系列で分析することによって、地球の動きを知ることもできると考える。

 また、*2-1に書かれているように、2014年8月3日午後0時半前、鹿児島県屋久島町の口永良部島の真ん中にある新岳が34年ぶりに噴火して火砕サージが通り、今でも噴火警戒レベル3だそうである。気象庁が24時間監視する全国47火山のうち、警戒レベル3なのは、他に2014年9月27日の噴火で戦後最悪の被害が出た御嶽山と、年に千回以上噴火する桜島(鹿児島県)だけだそうだが、新岳噴火後、島を視察した国会議員はゼロとのことだ。

(2)原発立地自治体の原発依存脱却の必要性とその萌芽は既にあること
 *1のように、九電玄海原発(佐賀県玄海町)で原子炉1号機が廃炉になると、原発の地元では関連交付金や税収の減少、原発労働者の縮小に伴う消費の減少で、少なくとも年間約13億円の経済損失が見込まれると、玄海町と唐津上場商工会が試算したそうだが、これまで電源立地地域対策交付金などで、薬草の研究、鯛やフグの養殖、西九州自動車道に通じる道路建設などを行い、ぼーっとしていたわけではないため、ここでその真価を発揮すべきである。

 そのため、水素燃料や自然エネルギー関係の工場、新聞社の印刷所などを誘致し、全力を挙げて普通の産業で成り立つようにすべきだ。今は、変化の時であるだけにチャンスも多いので、地元の旅館や飲食店は原発需要に頼らず、これまで育んだ技術や資産を活かして、6次産業化に向けての食品加工やサービスに参入していくのがよいと思う。

 また、原発の廃炉による減収を穴埋めするためには、「廃炉交付金」の創設を国に求めるよりも、日韓トンネルを実現してもらって、外国人労働者を受け入れ、産業振興した方が将来に繋がると考える。

(3)川内原発の再稼働はあり得ない
 このような場所に日本列島があり、口永良部島、桜島、西ノ島、御嶽山が次々と噴火しているのに、*2-2のように、「川内原発の万全の再稼働へ国は覚悟示せ」などというのはあり得ない話だ。火山や地震についての考察が不足し、避難する場所も避難方法もない状況で、原子力規制委員会の安全審査に合格したのなら、その基準と審査に問題があるにすぎず、無責任にも程があるのである。

 そのため、これ以上、「原発再稼働ゼロでは電気料金が上昇し、国民生活や経済に悪影響が及ぶ」などという、結果ありきの短期的で自己中心的な暴論は止めてもらいたいのだ。

(4)日本近海の地形と高レベル放射性廃棄物の最終処分場について
 *3のように、北西太平洋のマリアナ諸島の東、北緯11度21分、東経142度12分に位置する世界で最も深い海溝がマリアナ海溝で、水面下10,911mの地球上で最も深い海底の凹地であり、北東端は伊豆・小笠原海溝だそうである。海底の地形が正確にわかれば、高レベル放射性廃棄物は、これ以上出さないことを条件に、壊れない石と鉛の箱に入れて、スポットで深くなっており水の流れがない海底の凹地に、正確に沈める方法もあるかもしれない。

<玄海原発について>
*1:http://qbiz.jp/article/53005/1/
(西日本新聞 2015年1月5日) 玄海廃炉で年13億円損失 町、地元商工会が試算
 今年10月に稼働40年を迎える九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)で原子炉1号機が廃炉となった場合、地元では関連交付金や税収の減少、原発労働者の縮小に伴う消費減少で、少なくとも年間約13億円の経済損失が見込まれることが分かった。九電が1号機の廃炉方針を固める中、玄海町と唐津上場商工会が試算した。玄海町の本年度歳入(当初額)は100億8千万円で玄海原発1〜4号機に絡む原発関連交付金と九電から徴収する固定資産税が総額の66・8%を占める。潤沢な「原発マネー」で大型事業にも投資してきた。町財政企画課によると、廃炉で影響を受けるのは前々年度の発電実績で金額が決まる「電源立地地域対策交付金」。2015年度に廃炉が決定した場合、翌年度から交付対象外となるため、15年度の約17億3600万円が16年度は約13億1300万円(前年度比約4億2300万円減)に落ち込む。さらに、発電量が消費量の1・5倍を超える都道府県に国が支出し、市町村に配分される「県電源立地地域対策補助金」や核燃料に課税して県が交付する「核燃料税交付金」、原発の「固定資産税」も減額する可能性があるという。一方、地元の旅館や飲食店も影響を受ける。13カ月に1度、原発1基当たり約千人の臨時作業員が訪れる定期検査が減るためだ。唐津上場商工会は、宿泊費と食費で年間約4億7千万円、地元雇用の作業員給与約4億850万円の損失が生じると試算した。古賀和裕会長(59)は「酒代やクリーニング代、交通費も含めれば損失はさらに膨らむ」と危機感を訴える。実際には、廃炉が決定しても原子炉解体作業に伴う労働需要が発生するが「廃炉特需」は一時的で、長期的には大きなマイナスになるという。21年には2号機も稼働40年を迎える。町は減収を穴埋めするため「廃炉交付金」の創設を国に求め、玄海原発に保管された使用済み核燃料にも町独自で課税する制度を検討。岸本英雄町長は「1号機に加え、2号機も廃炉になれば町の財政は立ち行かない。国の支援が必要だ」と話している。
●依存から脱却を
 清水修二福島大学特任教授(地方財政論)の話 原発を増やしてきた国には廃炉に伴う地域の影響を軽減する責任がある。原発の立地自治体は廃炉に備え、原発依存の構造から脱却する戦略が求められる。今のうちに原発関連交付金の使途を見直すなど、自立を模索するべきだ。

<川内原発について>
*2-1:http://qbiz.jp/article/51432/1/ (西日本新聞 2014年12月9日) 見捨てられた火山島 検証「口永良部噴火」 観測機は全滅、国会議員視察もゼロ
 黄土色の山肌に転がる無数の岩と、山頂から絶えず上がる噴煙が、約3キロ離れた本村港からくっきり見える。「緑の火山島」と防波堤の案内板がうたう鹿児島県屋久島町の口永良部島(くちのえらぶじま)。一面に木々が生い茂っていたという新岳を今、想像するのは難しい。「海岸線までずーっと木が枯れとるでしょうが。火砕サージ(火山ガスや灰がまじった火砕流の一種)が通った跡よ。元に戻るのに数十年かかる」。島でただ一人の町職員、川東久志さん(54)がつぶやいた。8月3日午後0時半前、島の真ん中にある新岳が34年ぶりに噴火した。現在も噴火警戒レベル3(入山規制)。火口から半径2キロは立ち入り禁止のまま。気象庁が24時間監視する全国47火山のうち、警戒レベル3が出されているのは他に、9月27日の噴火で戦後最悪の被害が出た御嶽山(おんたけさん)=長野、岐阜県=と、年に千回以上噴火する桜島(鹿児島県)だけだ。屋久島から北西に約12キロ。136人(11月末現在)しかいない島で、火山は最大の観光資源だった。「一歩違えば、ここは御嶽山より先に全国に注目されたかもしれなかったんですよ」。民宿を営む貴船森さん(42)はこう話す。規制が一切ない警戒レベル1(平常)から突然、噴石を伴う噴火があったのは日曜日。土曜日の正午前に噴いた御嶽山とほぼ同じ状況だ。死者57人行方不明者6人の御嶽山に対し、口永良部島は負傷者ゼロ。その背景には、台風の接近で島へのフェリーが欠航し、新岳に登る予定だった観光客が来なかったという偶然があった。
   ◆    ◆
 「本当なら、あの時間は山頂で昼ご飯を食べていたはずです」。鹿児島県屋久島町口永良部島(くちのえらぶじま)。噴火当日、東京の高校生12人と新岳に登る予定だった民宿経営の貴船森さんは、フェリーが来なかったことで九死に一生を得た。8月3日午後0時24分。新岳火口から約2・2キロの集落にある民宿の庭にいた。バリバリバリバリ−。山を見ると空に上がった煙が斜面を駆け下りてきた。「あっ火砕流!」。宿には地域活性化を研究中の大学生グループが滞在中だった。「おまえらすぐ出てこい」。軽ワゴン車に家族や学生10人がぎゅうぎゅう詰めで坂を下った。バックミラーに灰色の煙が迫る。途中、走って逃げる数人を見かけたが、車に乗せる余裕はなかった。煙は坂をまっすぐ下っていった。「煙に巻かれた人は亡くなったと思っていましたよ」。島には警察官も消防士も医師もいない。住民を守るのは貴船さんも所属する消防団だけだ。火口から約1・5キロ地点では、噴火予測に使う地震観測機の設置工事中だった。死亡したと思っていた作業員から電話が鳴った。「助けてくれ」。山に向かうと、灰まみれの5人がいた。前後の区別もつかず目だけが真っ赤。視界がなくなり、横一列で手をつなぎ一歩ずつ逃げてきたという。「おれ、生きていますよね」。作業員はうつろな表情で何度も繰り返した。工事現場の数百メートル先には、数十センチ大の噴石がいくつも転がっていた。
   ◆    ◆
 11月15日。島には福岡管区気象台の職員2人の姿があった。火山ガスの放出量などを計測するため、チャーターした漁船で山の風下側を何度も往復する。「こうして地道にやるしかないんです」と職員は話した。気象台が火口付近に設置していた観測機は、噴火でほぼ全滅。安全上の理由から代替機を設置できず、観測は月に1度の麓からの調査に頼る。気象台も噴火の前兆現象を把握するのは困難と認める。噴火から4カ月がたつ今も、島は非常事態にある。コンクリート製造工場が立ち入り禁止区域に入り、島の経済を担う公共工事も観光客も止まったまま。小中学校では教員の車を校舎脇に止め、すぐに子どもを避難させられる態勢を取る。11月14日に実施した噴火後初の避難訓練では、避難場所を従来より新岳から遠くに変更した。「火山観測の態勢を見直す」「災害に強いまちづくり」。衆院選の各政党の公約には力強い言葉が並ぶ。安倍晋三首相は公示前、長野県北部地震の被災地を訪れた。だが、新岳噴火後、島を視察した国会議員はゼロ。有権者が100人ほどの島には選挙中に候補者が来る予定もない。「見捨てられとるんよ」と港のそばに住む松本章さん(70)。火山噴火予知連絡会は11月末、火山の観測強化を求める提言を出した。国も対策に乗り出したが、動きはあくまで御嶽山(おんたけさん)の災害を受けたものだ。「犠牲者が出んと国は動かん。口永良部で噴いたことを政治家は知っとるんやろうか」。島民の視線は冷めている。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141108&ng=DGKKZO79450040Y4A101C1EA1000 (日経新聞社説 2014.11.8) 川内原発の万全の再稼働へ国は覚悟示せ
 九州電力川内原子力発電所1、2号機の再稼働に地元鹿児島県の伊藤祐一郎知事が同意した。原発のある薩摩川内市も同意している。同原発は9月に原子力規制委員会の安全審査に合格しており、これで再稼働の要件を満たす。原発の稼働ゼロが長引き、電気料金が上昇して国民生活や経済に悪影響が及んでいる。川内原発は新たな規制基準を満たして再稼働する最初の原発になり、稼働ゼロが解消される意義は大きい。一方で、安全確保に万全を期すため、国や電力会社にはやるべきことがまだ多い。再稼働に同意した地元自治体も、住民の安全を守る責務を負うことになる。まず規制委は工事計画の審査など残った手続きをぬかりなく進めてほしい。九電もより入念に機器の点検などにあたるのは当然だ。事故を想定し、住民を安全に避難させる体制づくりでは自治体の責任が大きい。川内の周辺9市町は防災計画をつくり、国も専門家を派遣するなど支援を強めてきた。だが高齢者らが安全に避難できるかなど、なお懸念が残る。避難計画が机上の案にならないよう、自治体が防災訓練を積み、住民の不安を拭うことが大事だ。国も事故時の指揮系統がきちんと機能するか、点検すべきだ。地元だけでなく国民全体に向けても、再稼働がなぜ必要か、政府が丁寧に説明してほしい。宮沢洋一経済産業相は川内原発の地元を訪ね、理解を求めた。だが安倍晋三首相は「安全が確認された原発を再稼働させる」と訴えつつ、それ以上踏み込んでいない。政権内には「首相が安全を保証すると政治判断になり、適当でない」との意見があるという。確かに、原発の安全性は規制委が専門的な見地から判断すべき問題だ。一方で、再稼働には国民の不安も根強い。ここは首相が前に出て、事故の再発を防ぎ、万が一起きても最小限に食い止める決意を示すべきではないか。川内のほかにも電力会社10社が18原発の安全審査を申請し、うち数基の審査は終盤に入っている。だが政府が4月に決めたエネルギー基本計画では、将来の発電量に占める原発の比率や需給見通しなどがあいまいなままだ。規制委はほかの原発の安全審査を迅速に進めてほしい。同時に政府としても、中長期的に原発にどの程度依存するのか、位置づけをもっと明確に示すときだ。

<日本近海の地形と高レベル放射性廃棄物の最終処分場>
*3:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%8A%E6%B5%B7%E6%BA%9D (フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』) マリアナ海溝
 マリアナ海溝の位置マリアナ海溝(マリアナかいこう、Mariana Trench)は、北西太平洋のマリアナ諸島の東、北緯11度21分、東経142度12分に位置する、世界で最も深い海溝である。太平洋プレートはこのマリアナ海溝においてフィリピン海プレートの下にもぐりこんでいる。北東端は伊豆・小笠原海溝、南西端はヤップ海溝に連なる。マリアナ海溝の最深部はチャレンジャー海淵(チャレンジャーかいえん、Challenger Deep)と呼ばれている。その深さについてはいくつかの計測結果があるが、最新の計測では水面下10,911mとされ、地球上で最も深い海底凹地(海淵)である。これは海面を基準にエベレストをひっくり返しても山頂が底につかないほどの深さで、地球の中心からは6,366.4km地点にある。(以下略)


PS(2015.1.8追加):福井県には原発が林立しており危険だが、それは、日本海側は太平洋側と違って新幹線などの基礎的インフラ整備が遅れ、他産業が発展しにくかったことにも原因がある。しかし、製造業がアジアを相手として輸出する時代になると、日本海側の方が輸送コストが安くて有利になるため、原発を廃炉にして新幹線などへの投資を進め、他産業で成り立つようにするのがよいと考える。

*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150108&ng=DGKKZO81699380Y5A100C1EE8000 (日経新聞 2015.1.8) 北陸新幹線の福井延伸、20年にも
 政府・与党は建設を進めている北陸新幹線で、福井駅の早期開業に向けた検討に入った。すでに同県内にある敦賀駅の開業時期を現行計画から3年早め、2022年度とする方針を決めている。新幹線の開業効果をいち早く浸透させるため、与党側は途中駅である福井の開業をさらに2年前倒しするよう求めている。ただ早期開業には新たな財源が必要で、実現には曲折がありそうだ。14日にまとめる政府・与党の合意文書に福井駅の早期開業を検討する方針を盛り込む。与党のプロジェクトチームで議論を進め、今年夏までに結論を得る予定だ。福井駅の周辺部は北陸新幹線の延伸に先駆けて、09年に整備を終えている。与党側は既存駅を有効活用するためにも同駅の開業を急ぎ、新幹線の開業効果を高めるべきだと主張。20年まで、さらに2年早めるよう求めている。ただ福井を一時的に終着駅とするには駅近くに車両基地を建設する必要がある。


PS(2015.1.8追加):*5では、「過酷事故時の住民避難計画は、昨年12月5日時点で策定を終えたのが64%であり、4割弱の49市町村がなお未策定」としているが、策定済とされているものも、机上の空論だったり、いつ元の場所に戻れるかは見当もつかなかったりする。そのため、そうまでして原発に固執する理由がないのだ。

*5:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS05H1O_V00C15A1PP8000/?dg=1
(日経新聞 2015/1/6) 原発事故の避難計画、周辺自治体の4割弱が未策定
 政府は原発事故の発生に備えて周辺自治体がつくる住民避難計画について、昨年12月5日時点の策定状況をまとめた。計画づくりが必要な全国の原発から半径30キロ以内にある135市町村のうち、策定を終えたのは64%の86市町村で、4割弱の49市町村がなお未策定のままだった。昨年8月の前回調査と比べると、北陸電力の志賀原発(石川県)の周辺にある富山県氷見市と、東京電力の柏崎刈羽原発(新潟県)が立地する同県刈羽村が10月下旬に計画づくりを終え、策定済みが2市村増えた。政府は避難計画づくりが必要な自治体を13地域に分類して策定状況を集計している。九州電力の川内原発(鹿児島県)や、関西電力の高浜原発(福井県)周辺など8地域ではすべての市町村が計画の策定を終えた。東北電力の女川原発(宮城県)、中部電力の浜岡原発(静岡県)、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)周辺では策定を終えた市町村がいまだにゼロのままだった。柏崎刈羽でも、対象9市町村のうち策定済みなのは同原発が立地する柏崎市と刈羽村のみで、遅れが目立っている。


PS(2015.1.8追加):上のような状況であるにもかかわらず、九電社長は、ずいぶん一方的だと思う。それを地元住民の誰が喜ぶのだろうか?また、2号機は、廃炉の方向に進めるのだろうか?

*6:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFB08H3Y_Y5A100C1EAF000/
(日経新聞 2015/1/8) 九電社長「玄海3、4号機の15年中再稼働目指す」、町長に伝達
 九州電力の瓜生道明社長は8日、佐賀県玄海町の岸本英雄町長と会い、玄海原子力発電所3、4号機(佐賀県玄海町)の今年中の再稼働を目指す方針を伝えた。原子力規制委員会による玄海3、4号機の安全審査は終盤に入っている。岸本町長は瓜生社長に対して、改めて玄海3、4号機の早期の再稼働を求めた。瓜生社長は今年10月に運転開始から40年を迎える玄海1号機に関して、廃炉を検討していることを岸本町長に伝えたこともわかった。

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2014.11.19 赤サンゴの中国密漁船に対する日本の対応とサンゴ養殖の可能性について
     
              小笠原諸島における中国船のサンゴ密漁
(1)サンゴ密漁船に対する日本政府及び日本人の態度
 *1-1のように、小笠原諸島周辺海域に中国のサンゴ密漁船が押し寄せたが、日本は、「一時200隻を超えた漁船の一部に撤退の動きがあり、12日には117隻まで減って、再び増加した」等と言って、領海内や排他的経済水域(EEZ)内では断固として違法操業をさせないという意志が見えなかった。

 そして、これを「大人の対応」と呼ぶ人もいるが、それは何もできない自分を慰めている言葉にすぎない。政府要人が、慰安婦問題を蒸し返して否定したり、靖国神社参拝をしたりして、多くの外国に「日本は・・」と思われるよりも、日本の排他的経済水域(EEZ)内や領海内では断固として環境破壊や密漁を取り締まるという態度を貫いた方が国際法に照らして諸外国にも認められるにもかかわらず、過去のことでもめて現在から未来に係る大切なことを黙認せざるを得ない状況になっていたわけである。

 一方、*1-2のように、中国政府は漁船に帰港を指示しているそうで、そのための外交努力はあったのかもしれないが、すでにサンゴを獲りつくした後であるため、この海域の中国漁船が最盛期に比べて半減し、次第に姿を消していくのは必然である。漁船の拠点とされる福建・浙江両省で当局による取り締まりが強化されたとしても、サンゴは台湾に水揚げして代金をもらった後であるため関係なく、ボロ船はサンゴを売った後に沈めても売っても元が取れるのではないだろうか。そのため、中国漁船が半減したのを喜んでいるのは、あまりにもお人好しすぎる。

(2)サンゴ密漁船に対する中国政府の対応
 一方、*2-1、*2-2のように、小笠原諸島の周辺海域などで希少な「宝石サンゴ」を中国漁船が密漁している問題について、浙江省象山県の漁業管理当局の幹部が、2014年11月11日に、同県の漁港からサンゴ漁船数十隻が日本の海域に出ていることを認め、「戻れば厳しく処分し、再発防止のため漁船を破壊する」と明言したそうだ。

 しかし、①サンゴを採取した密漁船がそのまま漁港に戻るわけがない ②そのため浙江省象山県での漁業管理当局の摘発は困難である ③漁船からサンゴ採取の網が見つかれば、漁船を押収して破壊する措置を取るとしても、漁船や漁具も捨てることができる ④漁民がサンゴを所有していれば刑事処分を行うとしても、台湾で水揚げすれば浙江省象山県に戻る時には所有していない などのため、この事件は、日本の排他的経済水域(EEZ)や領海内で起こっている以上、これこそ日本の海上保安庁が現行犯逮捕しなければならない重要な問題だと考える。

(3)サンゴ礁と環境
    
                  小笠原諸島の自然と海
 海上保安庁は、漁船の行動や漁具から違法操業であることを証明できるにもかかわらず、船が足りないことを理由に、密漁船の船長や乗組員を積極的に逮捕しようとはせず、国会も罰金を引き上げる検討しかしなかった。これは、国際会議の最中で、中国政府ともめてはならない時期だったとしても、異常だ。

 また、沖縄県辺野古で自然を破壊してジュゴンの住む海を埋め立てるために世論を誘導しているメディアであれば仕方のないことではあるが、密漁のみを問題として、(世界遺産である)小笠原諸島の生物や自然保護に言及するメディアが殆どなかったことにも、メディアの見識の低さを感じた。

(4)サンゴも養殖して輸出しては?
      
            赤サンゴ製品(中国で好まれそうな色)
 しかし、私もピンクの数珠を持っていたので見たところ、サンゴ製品だった。他にも、写真のようにネックレス、ペンダント、指輪、ブローチ、帯留めなど、赤から白までのさまざまな明度のサンゴ製品があり、美しい。そのため、養殖して輸出する価値がありそうだ。例えば、有明海では、有害生物として邪魔者扱いしていたクラゲを捕獲し、細かく切って干しクラゲにして中国に輸出したところ、思わぬ収入源となっている。

 そのため、真珠貝に赤サンゴの遺伝子を組み込んで赤い真珠を作ったり、サンゴそのものを赤色光から白色光までのさまざまな色の光の下で養殖して目的の色のサンゴを作り、装飾品用として輸出すればよいと考える。既に、ユーグレナ(ミドリムシ)の大量生産に成功しているため、養殖サンゴの餌は安価に手に入るだろう。

     
               サンゴ製品(日本で好まれそうな色)
<日本の対応>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141114&ng=DGKKASDG14H18_U4A111C1CC0000 (日経新聞 2014.11.14) サンゴ密漁船145隻に 小笠原海域で再び増加
 小笠原諸島周辺などの海域に中国のサンゴ密漁船とみられる外国漁船が多数押し寄せている問題で、太田昭宏国土交通相は14日の閣議後の記者会見で、同海域で13日に145隻の漁船が確認されたことを明らかにした。一時200隻を超えた漁船の一部に撤退の動きがあり、12日には117隻まで減っていたが、再び増加した。海上保安庁によると、小笠原諸島の父島や母島の周辺で134隻、伊豆諸島南部の鳥島周辺などで11隻が確認された。いずれも排他的経済水域(EEZ)内だった。

*1-2:http://mainichi.jp/select/news/20141114k0000m040169000c.html
(毎日新聞 2014年11月14日) サンゴ密漁:漁船、週内に撤退か 中国政府が帰港指示
 東京都の小笠原諸島近海などで中国漁船によるサンゴ密漁が横行し、地元漁業に深刻な影響を与えている問題で、中国政府が漁船に帰港を指示していると日本側に通告してきたことが13日、政府関係者への取材でわかった。この海域の中国漁船は最盛期に比べて半減しており、中国側の指示がすでに実行に移されたとみられる。指示が徹底されれば、今週中にも小笠原周辺から中国漁船が姿を消す可能性がある。政府関係者によると、中国政府から、今週末にかけて漁船を福建省や浙江省にある母港に帰港させ、地元の公安当局が捜査を開始すると外交ルートを通じて連絡があったという。当局は多数の漁船を所有するオーナーらに帰港を指示したとされ、これを受け入れた漁船が中国本土に向けて移動を開始した可能性が高い。この問題を巡っては8日、中国・北京での日中外相会談で岸田文雄外相が対策の強化を求め、王毅外相が「必要な措置を取っている」と応じていた。10日の首脳会談でも安倍晋三首相が習近平国家主席に「前向きな対応」を要請。漁船の拠点とされる福建・浙江両省では当局による取り締まりが強化されている。中国が領有権を主張する沖縄・尖閣諸島周辺では、中国政府が関与しているとみられる公船や漁船の領海侵入が常態化しているが、今回のような通告をしてきたことはない。これに対し、今回の外交ルートを通じた通告は自国の船の違法操業を認めた形となっており、ある関係者は「小笠原近海でのサンゴ密漁に中国政府が関与していない証拠と捉えることもできる」と分析している。海上保安庁による上空からの調査では、小笠原10+件諸島周辺などでは先月30日に過去最多の212隻の中国船が確認され、活動海域も伊豆諸島南方まで拡大したが、その後は減少に転じた。日中外相会談後の10日には、141隻と大幅に減少し、約半数が中国本土に向かって西に航行しているのが確認された。12日は117隻で先月末に比べ半減した。

<中国の対応>
*2-1:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141112-00050018-yom-int
(Yahooニュース《読売新聞》 2014年11月12日) 「戻れば漁船を破壊」サンゴ密漁に中国当局
 小笠原諸島の周辺海域などで希少な「宝石サンゴ」を中国漁船が密漁している問題で、浙江省象山県の漁業管理当局の幹部は11日、読売新聞の取材に応じ、同県の漁港からサンゴ漁船数十隻が日本の海域に出ていることを認め、「戻れば厳しく処分し、再発防止のため漁船を破壊する」と明言した。ただ、サンゴを採取した密漁船は漁港に戻ることは少ないとみられ、幹部は「摘発が極めて難しいのも事実だ」と語った。実際にどこまで厳しく取り締まれるかは不透明だ。同当局によると、地元漁民の証言から、日本の海域へサンゴ漁に向かった漁船がいることを確認した。今後、戻った漁船からサンゴ採取の網が見つかれば、漁船を押収して破壊する措置を取る。漁民がサンゴを所有していれば、刑事処分を行う方針だ。今月7日、浙江省政府が緊急会議を開き、サンゴ密漁船を厳しく取り締まることを確認している。

*2-2:http://mainichi.jp/select/news/20141115k0000e040219000c.html
(毎日新聞 2014年11月15日) サンゴ密漁:中国が帰港漁船取り締まりへ 監視衛星で追跡
 東京都の小笠原、伊豆両諸島周辺で横行する中国漁船のサンゴ密漁問題で、中国公安当局は近く、帰港した密漁船を対象に大規模な取り締まりに乗り出す。中国側は日中外相会談(8日)などで「必要な措置を取る」と明言しており、成果をアピールする狙いがあるとみられる。ただ、帰港前に洋上で密売業者との取引を済ませてしまえば、証拠に乏しいとして摘発が困難になる可能性があり、実効性は不透明だ。日本政府関係者によると、中国当局はサンゴ密漁船の拠点の一つとされる浙江省象山で、小笠原近海から帰港するサンゴ漁船を集中的に摘発する。中国当局は監視衛星などを使い、中国本土に戻る船団の動きを正確に把握している。外交ルートを通じて日本側が提供した密漁船の特徴なども参考にするとみられる。中国政府は既に漁船オーナーに密漁船を帰還させるよう指示しており、今週末以降、数十隻がそれぞれの母港に戻ると予想されている。一方で、密漁船の多くは船名などを偽装し、宝飾品になる「アカサンゴ」は洋上で密売業者に売りさばかれてしまうケースが多いとされる。このため、密漁の痕跡を残して帰港する漁船は少ない可能性があり、多数の立件は難しいとの見方もある。サンゴ漁船には、海底を根こそぎさらう専用の網が装備されている。浙江省と並ぶ拠点とされる福建省の海洋漁業庁は今月11日、漁船の装備などに関する大規模検査を実施すると告知。さらに12日に地元メディアが伝えた情報によると、同省福安市の検察当局は沖縄・尖閣諸島周辺などでアカサンゴを密漁したとして4人を起訴したという。ただ、中国政府の働きかけにもかかわらず、小笠原周辺には今も100隻を超すサンゴ漁船が残る。海上保安庁によると、先月30日、過去最多の計212隻が確認され、今月12日に117隻まで減ったが、翌13日に再び145隻まで増加。一時海域を離れた漁船が密漁を再開した可能性もあり、海保の巡視船などが24時間態勢で取り締まりを続けている。13日には漁業法違反(立ち入り検査忌避)容疑で中国人船長(33)を逮捕し、今年10月以降に周辺で逮捕された中国人船長は計6人になった。

| 環境::2012.12~2015.4 | 12:10 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.9.20 日本政府に不足しているのは、「自然や生態系の維持は、生態系の一部である人間のためでもある」という発想だ
    
   鯨のおば      鯨の刺身    鯨の竜田揚げ   鯨のステーキ

(1)生物資源管理としての捕鯨の制限について ← 鯨の数は、元にもどったのか
 *1-1、*1-2のように、国際捕鯨委員会(IWC)は、科学委員会に続き、総会でも、日本が南極海で行っている調査捕鯨の再開を先延ばしすることを決議し、日本が調査捕鯨する際に出している計画を科学委員会だけでなく総会にも提出するよう要求したが、日本はそれに従わず、捕鯨再開の方針を変えないとのことである。これに対し、日本が国際ルールを無視していると批判されるのは当然だ。

 しかし、日本政府関係者は、*1-2のように、「日本は、今回の決議で、少なくとも次回2016年の総会まで南極海での調査捕鯨ができなくなったため、今後は、反捕鯨国に対して、国会議員や大使ら政府関係者が個別に働きかけ続けて、日本の方針への理解を求めていく」としている。

 私は、(動物愛護からではなく)人間の捕獲によって鯨の数が減り、日本近海だけでは十分な数の鯨が獲れなくなったため南極海まで行って捕鯨しているのだから、この日本政府の方針には反対だ。日本人の食文化としての鯨の捕獲なら、調査捕鯨ではなく商業捕鯨そのものであり、日本の近海で鯨を捕獲できるだけの鯨資源があった時代に成り立っていた食文化であるため、そういう状況になってから捕鯨を再開するのが筋である。

(2)「鯨を食べるのは日本の食文化」という主張は、どこまで通るのか
 *1-3に書かれているように、日本が世界中の非難を受けながらも捕鯨再開にこだわる理由は、①科学的根拠に基づく資源管理はしている ②鯨食は日本の食文化である ③捕鯨が日本の主張や愛国主義の象徴になっている などだそうだ。しかし、①については、江戸時代に日本近海で鯨を捕獲していた頃ほど鯨資源が回復したわけではないので成立しないし、②についても、今では子どもの頃に鯨を食べていた50歳以上の人にしか通用しないため、成立していない。さらに、③については、このようなことで横車を押していると、尖閣諸島についても、日本の方に正当性がないかのように他国に思われるため、その方が重大な問題である。

 また、*1-3で、「日本人は英語が不得意だから世界の世論を理解できていない」とされているのは、「日本人は、英語が不得意な人が多く、日本語の情報しか入手しないため、日本は特別な国で日本が中心だという発想をしがちだ」というのが正しいだろう。

 なお、ここで捕鯨にこだわる「日本」とは、一部の日本人と、その一部の日本人を代表する政治家や官僚、その太鼓持ちになっている日本のマスコミである。

(3)“調査捕鯨”は、商業捕鯨の抜け穴にすぎない
 *1-3には、「生物資源に関しては、持続可能な利用と保全の両立を基本的目標にするという持続利用原則が広く受け入れられており、我々は無規制で乱獲につながるような捕鯨の再開、絶滅が危惧されるような鯨種の捕獲を求めているわけではない」「捕鯨に反対する人の中には、すべての鯨類が絶滅に瀕しており,捕鯨国がそれを捕り尽くそうとしていると単純に誤解している人も多い」「捕鯨国が持続的に資源の豊富な鯨類を利用することを認めて欲しい」等が、書かれている。

 しかし、“調査捕鯨”とは、そもそも調査のための捕鯨であって商業捕鯨ではないため、食文化や生物資源の持続可能な利用・保全とは関係がない筈である。それにもかかわらず、*2-2のように、「調査」という名目の抜け穴を使って商業捕鯨を行い、1年間で何百頭ものクジラを捕殺するというのは、国が率先してとるべき行動ではない。また、DNA鑑定や遠隔監視ができる時代に、科学者が大量の鯨を捕殺して行わなければならないような科学的調査はない。

 また、*2-3に書かれているように、販売されている鯨肉のDNA鑑定をしたところ、1966年以来保護されているザトウクジラなども交じっており、生物資源の持続可能な利用・保全をしているとも言えないそうだ。そして、このような嘘や言葉のトリック、抜け穴を許さないのは、「感情的な反捕鯨派」にとどまらず、人類共通の倫理観である。

(4)日本人は、今、どうして鯨を食べる必要があるのか
 鯨食派の人は「鯨は美味しい」と言うが、鯨は南氷洋から運ばれて来るので、刺身も冷凍物であり、野生動物として泳ぎまわっていたのだから、筋肉質で固い。そして、鯨と牛の大和煮の缶詰を食べ比べてみればわかるように、牛の方が格段に美味しいのである。

 50~60年前は、牛や豚が少なく、高くて滅多に食べられなかったため、その代用品として鯨を食べていたにすぎない。上の写真の鯨の脂肪をさらした「おば」は安い食べ物の代表だったし、学校給食に出ていた鯨の竜田揚げは、独特の匂いがして固く、はっきり言ってまずかった。また、私は、鯨のステーキを食べたことはないが、野生動物である以上、国産牛のような味と柔らかさは期待できないだろう。

 従って、牛、豚、鶏、その他の動物性蛋白がふんだんに手に入る日本で、江戸時代ほど鯨が増えたわけでもないのに、家畜として日本近海で飼っているならともかく、わざわざ国際ルールを犯してまで南氷洋に鯨を取りに行って、鯨を食べなければならない理由はないと考える。

< 南極海の捕鯨継続派の意見>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140919&ng=DGKDZO77260320Z10C14A9EE8000 (日経新聞 2014.9.19) 
調査捕鯨、先延ばし決議 IWC総会 日本は「再開」変えず
 スロベニアで開いている国際捕鯨委員会(IWC)の総会は18日、ニュージーランドが提案した調査捕鯨の計画への評価や手続きを厳しくする決議を過半数の支持で採択して閉幕した。決議は日本の南極海での調査捕鯨の再開を事実上、先延ばしするように求めた。日本は調査捕鯨を再開する方針を変えていないが「総会決議違反」との批判は避けられなくなる。水産庁によると、決議に賛成したのは35カ国。米国やオーストラリア、チリ、メキシコなどが含まれるとみられる。反対は日本など20カ国にとどまり、棄権が5カ国あった。決議は日本が調査捕鯨をする際に出している計画をこれまでのIWC科学委員会だけではなく、総会にも提出するように要求している。これに従うと毎年開く科学委員会と違って総会は2年に1度しか開かないため、調査捕鯨の再開は最短で2年後の2016年となる公算が大きい。決議には法的拘束力はない。このため日本政府は予定通り、2015年度から南極海での調査捕鯨を規模を縮小したうえで再開する方針だ。ただ反捕鯨を掲げる欧米諸国が「日本は国際ルールを無視している」などとして反発を一層強めるのは必至とみられる。

*1-2:http://www.yomiuri.co.jp/world/20140918-OYT1T50172.html
(読売新聞 2014年9月18日) IWC調査捕鯨先延ばし決議…日本従わない方針
 国際捕鯨委員会(IWC※)総会は最終日の18日、日本の南極海での調査捕鯨開始を遅らせることを狙ったニュージーランドの決議案を賛成多数で採択し、閉幕した。決議に拘束力はないため日本は従わず、来年12月頃に調査捕鯨船団を出港させる方針を改めて表明したが、今回の総会で反捕鯨国との亀裂がさらに深まる結果になった。決議案は16日に提案された。日本政府関係者によると、豪州や米国、南米諸国、日本などが修正協議を行っていたが、特に南米の姿勢が強硬で交渉は決裂した。現在の手続きでは、日本は来年5月のIWC科学委員会で新しい調査計画の審査を受ければ、来冬から南極海の調査捕鯨を始められる。これに対し、決議では同委員会の審査に加え、隔年で開催される総会でも計画内容を議論し、総会が何らかの勧告を出すまで調査をしないよう求めている。決議に基づけば、日本は次回の16年の総会で新しい調査計画が議論されるまで、南極海での調査捕鯨ができない。さらに過半数の反捕鯨国が調査捕鯨に猛反対する総会では、日本に厳しい勧告が行われることになる。ただ、決議には拘束力がなく、日本は16年総会での議論を待たずに、来冬に南極海の調査捕鯨を実施する。一方、沿岸域でミンククジラ17頭を捕獲する商業捕鯨を求める日本の提案も審議され、4分の3の賛成が得られずに否決された。今後、日本は16年総会までの2年間に反捕鯨国に対し、国会議員や大使ら政府関係者が個別に働きかけを続け、日本の方針への理解を求めていく。しかし、反捕鯨国との対立が緩和されない限り、16年総会ではさらなる反発が出ることも予想される。日本は、国際社会の逆風を受け続けてまで調査捕鯨を継続するのか、決断を迫られる可能性もある。

*1-3:http://www.e-kujira.or.jp/whaletheory/morishita/1/
(水産庁森下丈二参事官 2007年12月20日) どうして日本はここまで捕鯨問題にこだわるのか?
 このコーナーへの投稿の第一弾として,「日本はどうして世界中の非難を受けながらも捕鯨再開にこだわるのか」という疑問についての考えを私なりにまとめてみたい。この疑問は様々な機会に呈されてきたが,その答えも様々である。捕鯨を支持する立場からは,科学的根拠に基づく資源管理を支持するから,日本の文化だからといったものが主張され,捕鯨に反対する立場からは,捕鯨関係者の政治力が強いから,一部官僚の独走,捕鯨が愛国主義の象徴となっているといった意見が聞かれる。日本人は英語が不得意だから世界の世論を理解できていない,もっと一般の日本人を啓蒙すべきだという記事もオーストラリアの新聞に掲載されたことがある。ここで,捕鯨にこだわる「日本」が,日本人一般なのか,一部の日本人なのか,日本のマスコミなのか,日本政府なのかによって,その答えは千差万別であろうが,本文は,あくまで私自身の立場から見た考え方である。
 まず明確にしなければならないことは,我々は無規制で乱獲につながるような捕鯨の再開や,絶滅が危惧されるような鯨種の捕獲を求めているわけではないということである。資源が豊富な鯨種を,持続的に(すなわち銀行の預金の利子だけを使い,元金を減らさないような方法で),国際規制の下で利用したいと求めているのである。これに対して,全ての捕鯨は破壊的であり規制などできないという捕鯨性悪説の主張があるが,そうした主張については次の機会に詳しく議論したい。我々が捕鯨問題に「こだわる」理由をあえてまとめれば,次のような観点がある。
(1)捕鯨問題は持続的利用の原則の象徴
 生物資源に関しては,持続可能な利用と保全の両立を基本的目標とするという持続利用原則が広く受け入れられている。これは,1992年のリオ会議(地球環境サミット)で確立し,『環境と開発に関するリオ宣言』や『アジェンダ21』に具体化された原則である。言い換えれば,漁業資源を含むすべての生物資源について,資源状態の悪いものについては保全措置をとり,資源が豊富なものについては持続的に利用して良いということが,世界的な常識となっている。他方,いわゆるカリスマ的生物(クジラやゾウなどのアピール性の強い生物)については,資源が豊富に存在しても,イコン(偶像,象徴)として手付かずで保護すべきとの考え方がある。捕鯨に反対する人の中には,すべての鯨類が絶滅に瀕しており,捕鯨国がそれを捕り尽くそうとしていると単純に誤解している人も多いが(仮にそうであれば捕鯨は非難されるべきである),そうではなく,クジラは特別な動物なので,いかなる場合でも保護すべきとの主張があるということである。現に強硬な反捕鯨国である豪州などは,IWCの場において,いかなる状況下であっても(資源が豊富でも,持続的管理が可能でも,充実した監視取締措置を導入しても)捕鯨に反対であるとの立場を公言している。この考え方には,誰が,どのような基準で「特別な動物」を決めるのか,「主要国」が特別な動物を決めれば,それを他の国に強制することが出来るのか,「特別な動物」が次々に増えていくことに対する歯止めはあるのかといった重大な問題が含まれる。インドが,ウシは特別な動物だから牛肉を食べるべきではないと国連などで主張し,これを経済制裁などで他の国に強制すれば,その異常さは誰の目にも明らかである。他方,クジラについてはまさにこれが行われているが,「世界の世論」として受け取られる。クジラは野生動物だから保護すべきとの主張もあるが,漁業対象の多くの魚は野生動物であり,世界人口のかなりの割合が陸上野生動物を捕獲し利用している。ちなみに,くだんの豪州は野生動物であるカンガルーを年間に数百万頭(数百頭ではない)捕獲し,食肉やペット(ドッグ)フードとして販売している。持続的な捕鯨を支持するということは,持続的利用の原則を支持するということであり,その持続的利用原則に恣意的な例外を作らないということであり,一部の「主要国」のわがまま(これには環境帝国主義という名前が付けられている)を認めないということであり,国際的な交渉においてはカリスマ性といった感情論ではなく科学と国際法を尊重するということなのである。捕鯨支持にこだわるのは当然ではないだろうか。
(2)理不尽な反捕鯨の主張
 反捕鯨の主張を理不尽な押し付けと捉える人は多い。日本を含む持続的利用支持派は,反捕鯨国が自国の水域内や,自国国民に対してクジラを完全に保護することを否定しているわけではなく,ホエールウォッチングも認めている。ただ,捕鯨国が持続的に資源の豊富な鯨類を利用することを認めて欲しいと求めている。他方,反捕鯨勢力は,捕鯨国の主張は受け入れず,自分たちの主張を全ての国が受け入れることを強く一方的に求めている。そこには相互の考え方を尊重し,妥協を受け入れるとの観点はきわめて希薄である。本年(2007年)のアンカレッジでの第59回IWC年次会合で,日本は捕獲頭数を空欄にして日本の沿岸小型捕鯨地域に対する捕獲枠を要請する提案を行った。これは,捕獲頭数について交渉をする用意があるとの意思表示であり,たとえば,論理的には誰が見ても資源に悪影響を与えない捕獲頭数(極端にいえば1頭などという象徴的な捕獲も議論としてはありえる)を提示し,捕鯨問題の本質を浮き彫りにしたいという意図もあった。反捕鯨国はこの提案を明確に拒否した。主な理由は,日本の沿岸小型捕鯨には商業性があり,同じアンカレッジ会合で認められた米国やロシアの先住民生存捕鯨とは異なるというのである。IWCが開催されたまさにそのホテルでは,アラスカ先住民が捕獲したホッキョククジラのヒゲや骨などの工芸品が一点数十万円という値段で販売されていたが,反捕鯨国によれば,このような工芸品の販売は商業性があるとはみなさず,一方では,日本の沿岸小型捕鯨地域で鯨肉が地域住民や市場に販売されれば商業性があって認められないというわけである。商業性をこれほど罪悪視すること自体も問題であるが,そもそも反捕鯨国のいうような「商業性」の定義(工芸品はいいが肉はだめ)はいかなる常識でも正当化し得ない。ここに,「日本には何があっても捕鯨はさせない」という基本方針があると疑うのは過剰反応であろうか?このような反捕鯨国の主張を理不尽と感じながら,「世界の世論」として受け入れるべきであろうか?日本の海外での評判という国益のために,捕鯨はあきらめるべきであろうか?捕鯨問題に関する街頭インタビューなどで,「反捕鯨国はウシを食べておきながらクジラを食べるなというのはけしからん」という意見を良く聞く。これに対しては,ウシは家畜でクジラは野生動物だから比較できないといった反論があるだろうが,一般市民が感じ,見抜いている捕鯨問題の理不尽さを端的に表した意見ではないだろうか。
(3)持続的利用を支持する国やNGOからの支持
 日本は捕鯨問題について国際的に孤立しており,IWCで日本を支持するのは援助で買われた開発途上国だけだという批判がある(これについても別の機会に詳細に書くこととしたい)。しかし,持続的捕鯨は広い方面から支持されている。まず国としては,西アフリカ,アジア太平洋,カリブ中米などの開発途上国約30カ国に加えて,ロシア,中国,韓国,ノルウェー,アイスランドなどがIWCにおいて管理された捕鯨の実施を支持している。特に,開発途上国は自国の漁業資源などの自然資源への依存を背景に,持続的利用の原則堅持を強く主張している。中国,韓国は捕鯨に従事していないが,やはり持続的利用の原則支持の立場から基本的に持続的捕鯨を支持している。また,NGOとしては,現在は活動を休止しているが,捕鯨の伝統のある世界の先住民の団体である世界捕鯨者連盟(WCW)があり,カナダの先住民,ニュージーランドのマオリ族などもメンバーとして参加している。また,生物資源の持続的利用を支持し,ゾウの問題などについて活動している国際NGOであるIWMC(国際野生生物管理連盟)は,1982年から1990年までワシントン条約事務局長を務めたユージン・ラポワント氏が率いるワシントン条約に関する専門家集団である。豪州に本拠を置くSMS(生物種管理専門家集団)も,元ワシントン条約動物委員会議長ハンク・ジェンキンス氏がリーダーを務めるワニや爬虫類管理などの専門家グループであり,ヨーロッパで持続的利用を支持するNGOのEBCD(欧州保全開発組織)は欧州議会やIUCNと強いつながりを有する。これら持続的捕鯨を支持するグループは,捕鯨問題を生物資源の持続的利用という大きな流れの中の問題として捉えており,捕鯨を持続的利用原則の立場から支持し,捕鯨問題における後退は,持続的利用原則の後退そのものと捉えているという点である。彼らの主要関心事項がゾウやワニやタイマイであることがこれを明確に示している。捕鯨問題が彼らの関心事項と深いつながりがあるとの認識が無い限りは,捕鯨を支持する理由は無い。彼らの中では,これらの問題を Wise-use という考え方と Non-use という考え方の対立と位置付けている。Wise-use とは保全を図りつつ資源を持続的に利用するということであり,Non-use とは動物愛護運動に代表されるような自然には一切手をつけるべきではないという考え方である。
 さらなる特徴は,自然資源の利用に生活を依存している先住民や開発途上国がクジラの利用を支持しているということである。彼らには,自然資源の利用が科学的な裏づけも無く制限や否定されることへの強い反発と危機感があり,捕鯨問題にその象徴を見ている。それを裏付けるように,IWCでの彼らの発言には食料安全保障や資源利用に関する国家主権などの話題が頻繁に登場する。反捕鯨運動は,独立国が主権に基づいて資源の持続的利用を実現し,開発につなげるという姿勢・考え方に対する攻撃と捉えられており,とりわけ開発途上国にとっては重大問題である。捕鯨問題は原理原則の問題であるといわれる。一部の関係者の利害を越えた,裾野の極めて大きな問題であるからこそ短期的な損得ではなく,より広い視野から資源管理のあり方の原則に沿った対応に,我々はこだわるのである。

<鯨保護派の意見>
*2-1:http://news.goo.ne.jp/article/jiji/business/jiji-140916X102.html (Gooニュース 2014年9月16日) 捕鯨継続への理解焦点=日本、沿岸捕獲枠を提案―IWC総会開幕
 国際捕鯨委員会(IWC)の総会が15日(日本時間同)、スロベニアのポルトロジュで4日間の日程で始まった。国際司法裁判所(ICJ)による南極海調査捕鯨の中止命令を踏まえ、日本は新たな計画を策定し、調査捕鯨を継続する方針を表明する。日本の主張がどの程度の理解を得られるかが焦点だ。総会開催は2年ぶり。IWCによると、初日は加盟88カ国のうち63カ国が参加した。参加国の過半数は反捕鯨国とされ、日本に対する反発が一段と強まる事態も予想される。初日の15日の討議で日本は、網走(北海道)や鮎川(宮城県)などで行われている沿岸小型捕鯨をめぐり、ミンククジラ17頭の捕獲枠の設定を提案。沿岸小型捕鯨に関する提案は過去何度も否決されてきたが、日本は今回、IWC科学委員会が昨年行った試算に基づき、商業捕鯨の例外として捕獲枠を新たに求めた。これに対し反捕鯨国からは、「(商業捕鯨を一時停止している)モラトリアムの抜け道だ」(ニュージーランド)といった厳しい意見が相次ぎ、16日以降も審議を続けることになった。

*2-2:http://www.ifaw.org/japan/our-work/whales/
(IFAW) 「調査」捕鯨の真実
 捕鯨の全面禁止にもかかわらず、国際捕鯨委員会(IWC)のモラトリアムは「科学許可による捕鯨」として知られる大きな抜け穴を含んでいます。この許可によって捕鯨船は調査の名目でクジラを捕獲することが許可されています。この抜け穴は1946年以来、国際捕鯨取締条約に含まれ、1986年に捕鯨モラトリアムが成立した後も残っています。しかし、これには科学的な要素は何もありません。
 •科学許可による捕鯨では鯨肉を利用する必要があり、鯨肉を販売するなり、あげるなりして、利用しな
  くてはいけません。つまり、科学許可は鯨肉の販売許可と大差ないのです。
 •科学許可による捕鯨は申請した国によって認可されます。つまり、日本は外部の精査や説明の必要も
  なく、自国の調査捕鯨を自国で認可しているのです。
 •調査捕鯨を行う国だけが鯨肉市場の開拓に熱心であることは偶然ではありません。日本の調査捕鯨
  プログラムによって、2009年だけで何百頭ものクジラが捕殺されました。
 •大量虐殺の原則に基づいて行われる科学的調査など、他の種では考えられません。
●調査捕鯨の代替案
 DNA鑑定や遠隔監視の時代に、科学者が調査目的でクジラを捕殺する必要はありません。クジラが脱皮する皮、脂肪、糞便からサンプルを採取することも可能です。科学者はクジラが噴気孔から息を吐き出す時にサンプルを採取して、病原体を検出することもできます。IFAWの調査船「ソング・オブ・ザ・ホエール」号の科学者は、クジラに危害を加えずに研究する技術と手法を開発しました。

*2-3:http://www.ifaw.org/japan/our-work/whales/
(IFAW) DNA鑑定が提示する違法捕鯨の証拠
 1995年以降、IFAWの定期的な調査は、日本と韓国による絶滅危惧種のクジラの違法捕鯨及び鯨肉販売の有力な証拠を明らかにしてきました。販売されたクジラ肉のサンプルのDNA鑑定によって、各サンプルの種と地理的起源が特定できます。サンプルには以下の鯨肉が含まれていることがわかりました:
 •ザトウクジラ:1966年以来保護されています。今日市場で見つかったザトウクジラの肉がこれほど
  古いはずはありません。
 •ナガスクジラの肉:1991年までアイスランドから輸入されていましたが、その後輸入は数年間停止
  されました。そしてごく最近、取引再開を目指して少量のナガスクジラの肉が再びアイスランドから
  日本に輸出されました。しかし、近年アイスランドで捕殺されたナガスクジラの肉の大半は買い手
  が付きません。ナガスクジラの肉は一部、日本と韓国で備蓄されていますが、現在の市場の供給
  量は需要をはるかに上回っています。
 •ニタリクジラとシャチの肉:ニタリクジラは1987年から2000年まで、シャチは1997年以降ずっと保護
  の対象になっています。
 •イワシクジラ:1979年以来、南半球では捕獲されていません。
●抜け穴のための抜け穴作り…
 IFAWの捕鯨調査が1995年に公表された後、日本はクジラが「偶然」日本の漁師の網にかかった際の「偶然捕獲されたクジラ」の販売を合法化しようとしました。この抜け穴を認めたIWCは、保護されたクジラの販売を原則的に認可したのも同じです。

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2014.9.17 ユーグレナの可能性と佐賀市の契約 - 循環型社会に向けて理念を通す
      
「ユーグレナは世界を救う」マーク     2014.2.9佐賀新聞より

(1)ミドリムシは食料問題に多様な解を与えるが、環境問題はどうか?
 昨日、会計人東大会で、ユーグレナ社長の出雲氏をお招きして話を聞いた。出雲氏は、*2に書かれているように、大学時代にバングラデシュに行き、おなかをすかせている子どもはいなかったが栄養が偏っているのを見て、ミドリムシで世界の食料問題を解決しようと、東大で文学部から農学部に転部して研究し、ベンチャー企業を興した人である。

 そして、*1に書かれているように、2005年12月に世界で初めて沖縄県石垣島でミドリムシ(学名:ユーグレナ)の屋外大量培養に成功し、2008年に最初の取引相手である伊藤忠商事の出資が決まるまでの3年間は取引を断られ続けて苦労したものの、伊藤忠商事の出資をきっかけに、石油会社、航空会社、ゼネコンなどが次々と手を挙げてくれて事業が軌道に乗り、2012年12月には、ユーグレナ社を東証マザーズに上場したとのことである。

 ミドリムシは、昆布やワカメの仲間の藻の一種で、動くことも光合成することもできる動物と植物の両方の性質を備える生物で、植物と動物の両方の栄養素を持つため、人間に必要なビタミン、ミネラル、アミノ酸、不飽和脂肪酸など59種類もの栄養素を作り出すことができる上、油脂分を作り出すこともできるため、食料問題に多様な解を与えるとともに、ジェット燃料の開発にも期待されているのだ。

 しかし、私自身は、ジェット燃料ならミドリムシより水素の方が、さらに環境適合性がよいため、燃料系は水素か電気にして、ミドリムシには、コストダウンが求められる家畜や養殖魚の餌を含む食料への貢献を期待したい。

(2)佐賀市の挑戦はあっぱれだ
 *2のように、ユーグレナ社と佐賀市は、ジェット燃料などの大量生産、低価格化を目指す共同研究を行うことになり、佐賀市の秀島市長が、石垣島(沖縄県)に次ぐ第二の拠点となる共同研究契約を締結したそうである。そして、今回の研究では、下水処理水や清掃センターで回収する二酸化炭素(CO2)を佐賀市が提供し、従来「じゃまもの」だった下水処理水やCO2を原料に使って燃料開発などに繋げるのはあっぱれで、この研究が成功すれば、他の自治体でも応用できるだろう。

 今後は、工場開設などの生産拠点化が可能かどうか検討し、新たな食品などへの応用を探るそうだが、この機会に玄海、有明海の養殖魚や家畜の餌の研究もし、餌をコストダウンさせることに成功して欲しい。私がそういう質問をしたところ、出雲社長は、養殖魚や家畜の餌に関しても積極的だったため、関係者は話をしに行ってもらいたい。

(3)神鋼環境ソリューションがユーグレナの本格培養を開始
 そのような中、*3のように、神鋼環境ソリューションが、閉鎖型の 1m3培養槽を設置し、従属栄養培養方式によるユーグレナの培養を本格的に開始して、ユーグレナ由来のバイオマスなどのサンプルをキログラム単位で提供する体制が整って、バイオ燃料、食品/化粧品、下水処理に加え、化成品などの商品化検討を開始するそうだ。今後は、培養する方法や種類について、(人間の食べ物でなければ遺伝子組み換えもできるため)目的に応じて更なる改良を進めることができるだろう。

*1:http://mainichi.jp/feature/news/20130118org00m020003000c.html
(毎日新聞 2013年1月22日) 社長インタビュー:出雲充 ユーグレナ社長
<いずも・みつる  広島県呉市出身。2002年東京大学農学部卒業、東京三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。05年8月、大学時代の後輩ら2人とともにユーグレナ10+件を設立し、社長就任。同年12月、ミドリムシの屋外大量培養に成功した。33歳。>
◇ミドリムシで食料・環境課題を解決する
 ユーグレナは2005年12月、世界で初めて沖縄県石垣島でミドリムシの屋外大量培養に成功したバイオベンチャー。13年9月期決算の見通しは、売上高が22億9000万円(前期比44.5%増)、営業利益が3億5200万円(同14.4%増)。社員は38人。12年12月20日、東証マザーズに上場した。
─ ミドリムシ(学名ユーグレナ)について教えてください。
出雲 その名前からイモムシのような虫の仲間と誤解されやすいのですが、ワカメや昆布と同じ藻類です。ただ、ワカメや昆布とは違い、水中で植物のように光合成をする一方、細胞を変形させて動くという、植物と動物の両方の性質を持つ珍しい生物です。ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸など59種類もの豊富な栄養素を含み、二酸化炭素を吸収して成長するという特性から、昔から食料問題や環境問題解決に活用しようと各国で研究されてきました。日本でも1980年代から00年まで、国家プロジェクトとして研究されていましたが、大量培養には至らず頓挫した経緯があります。
─ 大量培養はなぜ難しい?
出雲 培養している間に、他の微生物が侵入してきてミドリムシを食い尽くしてしまうからです。ヨーグルトや日本酒のように、発酵や培養は目的とする菌以外の増殖をいかに防ぐかが重要なのですが、ミドリムシは栄養価があらゆる微生物の中でトップクラスに多いので、その分、他の微生物に最も狙われやすい。そのため、屋外での大量培養は、従来はできなかったのです。
─ 成功した秘訣は何ですか。
出雲 まず、研究者の先生方に過去になぜ大量培養に失敗したのかを教えていただきました。すると、どの先生方も同じ方法で失敗していたことがわかりました。簡単に言えば、失敗していたのは「蚊帳方式」、つまり外敵が中に進入しないようブロックする方法。これに対して私たちは発想を転換し、「蚊取り線香方式」を考えました。培養液に独自の工夫を加え、微生物の進入を阻止する方法です。この培養液の工夫に偶然にたどり着き、大量培養の成功に至りました。
─ それから事業化までが大変だったとか。
出雲 創業前にライブドア社長(当時)の堀江貴文さんと知り合い、お金もオフィスもなかったので創業時には出資を受け、オフィスも間借りしていました。ところが06年1月にライブドアに強制捜査が入り、それをきっかけにそれまで協力してくれていた企業が一斉に当社から手を引いてしまったのです。それ以降、ミドリムシをあらゆる企業に売り込みましたが、協力してくれる最初の1社を見つけるまでに約3年かかりました。08年に伊藤忠商事の出資が決まったことをきっかけに、石油会社、航空会社、ゼネコンなどが次々と手を挙げてくれ、ようやく事業が軌道に乗りました。日本企業は、ベンチャーに出資する最初の1社になるのを躊躇します。しかし、いざチームを組むと、ものすごく協力的です。これまで門前払いをしていた企業も声をかけてくる。とにかく極端ですね。
◇ジェット燃料も開発
─ 現在は、どのような事業を手がけているのですか。
出雲 収益のほとんどがサプリメントなど機能性食品や化粧品などのヘルスケア事業で、自社製品の販売のほかOEM(相手先ブランドによる受託生産)や原料供給もしています。これに加え、様々な企業と共同でジェット機の燃料開発、家畜の飼料開発、水質浄化技術開発の研究も進めています。
─ ジェット燃料の開発が有望視されています。
出雲 バイオ燃料の中で、ミドリムシから取れる油はジェット燃料に性質が適していて、地球環境問題の解決にミドリムシは大きな可能性を持っています。そこで、JX日鉱日石エネルギーなどと共同で、ミドリムシからジェット燃料を作り出すための研究開発をしています。日本航空と全日本空輸の2社が使用する燃料は年9000億トンとされますが、その1割を将来的にミドリムシ由来で賄う計画を立て、18年度に事業化の実現を目指しています。 ただ、現在ある石垣島の培養設備のみでは規模が小さく、ジェット燃料に活用するにはコストが高すぎます。実用化が頂上だとすれば、現在は3合目ぐらい。実際に飛行機を飛ばすことができて6合目、採算性を示すことができて7合目、頂上は900億トンを毎年安定的に生産できる体制が確立した時と考えています。
 そのためにまず、巨大な培養設備が必要です。将来的には光合成に適した赤道直下や国内の耕作放棄地などの活用も含めて、現在の100倍の容量の設備を作ることを目指しています。上場で得た資金で、その場所を確保する予定です。
─ 上場時の初値は、公開価格の1700円に対し、2.3倍をつけました。
出雲 ミドリムシに注力している会社は他になく、その点で注目されている面があると思います。一方で期待に応えられないと、その評価はすぐ剥落するでしょう。いったん期待が逆回転したら2度目のチャンスはないと思うので、技術で株主の期待に応えていきたいです。

*2:http://www1.saga-s.co.jp/news/saga.0.2622486.article.html
(佐賀新聞 2014年2月9日) ミドリムシからジェット燃料 佐賀市と研究
 世界で初めてミドリムシの屋外大量培養に成功し、その体内から燃料を抽出する技術を持つバイオベンチャー企業「ユーグレナ」(本社・東京都)と佐賀市が、ジェット燃料などの大量生産、低価格化を目指す共同研究に乗り出すことになった。石垣島(沖縄県)に次ぐ第二の拠点を探す同社に、全国の自治体から共同研究の依頼が舞い込む中、佐賀市を研究パートナーとして選んだ。8日、同社の出雲充社長が秀島敏行市長と共同研究契約を締結した。自治体との共同研究契約は初めて。ユーグレナは2005年8月に設立。高タンパクのミドリムシを培養し、ミドリムシクッキーやサプリメントなど機能性食品の企画・販売などで成長している。抽出物質のバイオジェット燃料への応用も手掛け、20年の事業化を目指している。今回の研究では、下水浄化センターから排出される有機物を多く含む処理水や、清掃センターから回収する二酸化炭素(CO2)を佐賀市が提供。同社は従来「ごみ」となってきた処理水やCO2を原料に使い、市場コストに見合う燃料開発などにつなげるステップとする考え。今春にも研究に着手し、佐賀市に研究室を設けることも視野に、工場開設など生産拠点化が可能か検討する。ミドリムシは約100種類と多く、ジェット燃料のほか、新たな食品などへの応用も探る。研究者の人数や詳細な日程については「競合が多い分野なので控えたい」とした。出雲社長は「明治維新の原動力となった佐賀で循環型社会構築に向けたスタートを切ることができ、縁を感じている。しっかり取り組みたい」と話した。
■佐賀市と共同研究「ユーグレナ」社長が講演
 8日、佐賀市と共同研究契約を締結したバイオベンチャー「ユーグレナ」。出雲充社長(34)が同日、佐賀市内で講演し、ミドリムシの研究を始めるきっかけから今後の展望までを熱っぽく語った。講演要旨を紹介する。
   ◇   ◇   ◇
 大学時代、世界の最貧国バングラデシュに行った。土産に栄養補助食品を持って行ったが、おなかをすかせている子どもはいなかった。子どもたちはカレーを食べていた。しかし、カレーに具はない。動物性タンパク質の不足から、おなかがポコッと出ている子どもも多かった。腹ぺこ状態ではなく、炭水化物以外の栄養素が不足する「栄養失調」で困っている人が世界に10億人もいる-。現状の一端を垣間見た。「世界の栄養失調を解消したい」という思いが原点。しかし、世界にはそれだけの人が食べる卵や野菜を作る土地、農地がない。帰国して栄養価が高い食べ物について調べた。そこで出合ったのがミドリムシだった。その語感から、よくイモムシのようなものを想像されることが多いが、体長0・1ミリの微生物ミドリムシは植物の仲間で、ワカメやコンブなど海藻の親戚に当たる。植物だけではなく動物の栄養素も持ち合わせ、人間に必要な栄養素59種類を作り出すことができる。ただ、害虫からも狙われるミドリムシを育てる環境整備は非常に困難で、最初は大学の研究室に1カ月泊まり込んで育てても、できるのはスプーン1さじ程度だった。安く大量に育てる技術を世界で初めて発明したのは2005年。沖縄県の石垣島で大量に育てている。2006年からは食品展開を始めた。食品だけではない。ミドリムシからバイオ燃料、特にジェット燃料を生み出す研究も続けている。化石燃料の使用による二酸化炭素の排出が気候変動を引き起こし、昨年も大型台風が国内外を襲った。こうした状況は人類にとって、大きなリスクだ。農地を使わず、ジェット燃料を作り出すことができれば、地球に優しい新しい飛行機が作れる。私たちは今日から佐賀で、燃料や食料の面で日本や世界を救う研究に取り組む。前例がないことをやろうとしている人をぜひ応援してほしい。そして東京オリンピックの20年、ミドリムシからできた燃料を積んだ飛行機で、佐賀空港から東京に向かいましょう。

*3:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140910-00000131-mycomj-sci
(YAHOO 2014年9月10日) 神鋼ソリューション、ユーグレナの本格培養を開始
 神鋼環境ソリューションは9月8日、技術研究所内に閉鎖型の 1m3培養槽を設置し、従属栄養培養方式によるユーグレナの培養を本格的に開始致したと発表した。これにより、ユーグレナ由来のバイオマスなどのサンプルをキログラム単位で提供する体制が整ったため、バイオ燃料、食品/化粧品、下水処理に加え、化成品等の商品化検討を開始する。ユーグレナの培養方法は一般的に光合成培養と従属栄養培養がありますが、閉鎖型の培養槽における従属栄養培養は、光合成培養と比較すると、単位面積当たりのバイオマス獲得量が数百倍程度となると共に、気候等外部環境(日光、気温等)に影響されない安定した培養を継続することが可能です。このたび、筑波大学と共同で見出したユーグレナの新規株の培養をフラスコ規模から段階的にスケールアップし、培養槽(1m3)においても、バイオ燃料として有望と考えられてきたユーグレナ・グラシリスZ株と比較してバイオマス生産性が2倍以上であることを改めて確認できたという。ユーグレナから得られるパラミロンが嫌気状態にて、バイオ燃料のもとになりうるワックスエステルを生成することも確認されており、バイオマス乾燥重量当たり 70~80%のパラミロンを蓄積する培地成分や培養条件も確立しているとのこと。バイオマスの成分分析結果では、ビタミン・ミネラル・必須アミノ酸・必須脂肪酸の含有が確認されており、アミノ酸スコアは100となっている。なお、これらの培養成績は、日本農芸化学会2014年度大会にて発表された。同社は今後、培養方法について更なる改良を進めると共に1m3培養槽の培養実績を積み重ねていくとしている。また、培養槽の大型化に必要な最適設計条件を把握し、2015年度には10m3培養槽での大量培養を計画しており、この10m3培養槽が完成すれば、パラミロンの製造設備としては、世界最大レベルになる見込みだという。

| 環境::2012.12~2015.4 | 03:11 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.5.29 燃料電池車と東京都の対応について - もう、補助金の時期ではないでしょう
      
 *1より    iMiev(三菱) トヨタ燃料電池車 ホンダ燃料電池車 ヤマトEV車

(1)電気自動車(燃料電池車を含む)の普及について
 *1に、「①トヨタが燃料電池車を年内にも市販する」「②一般向け販売のハードルは500~1000万円になる」「③政府は『水素ステーション』を15年に100カ所設ける目標だが、まだ3分の1しかメドが立っていない」「④消費者が購入価格に見合ったメリットを得られないと普及が進まない」「⑤燃料電池車の普及を目指す自民党の研究会は6月中に、購入費用や燃料費の補助を政府に求める」「⑥水素の補給費用も当面は無料にする」と書かれている。
 
 しかし、電気自動車の構想ができてから既に20年、三菱自動車が2009年に最初の燃料電池車「i-MiEV」を発表してから5年が経過しているのだから、まだ①②③④のようなことを言っているのは、やる気がなかったというほかない。これに対しては、⑤⑥のように、民間企業の製品に対して税金由来の補助金をつけるよりも、排気ガスに応じて環境税をかけた方がよいと思う。

 また、*2のように、東京都も、2020年の東京五輪を念頭に燃料電池車の普及を急いで環境と調和した未来都市の姿を世界に印象づけたいということだが、それなら、2020年1月1日から、東京都内では電気自動車(燃料電池車を含む)以外は通行禁止にするのがよいだろう。何故なら、東京都を走れない車は日本国内での価値が低くなるため、日本全体で電気自動車の普及が推進され販売価格が安くなるからだ。そうなれば、充電施設や水素ステーションなどのインフラも自然とできる。もちろん、京都、大阪、名護屋、札幌、福岡などの大都市が、次第にこの規制を導入していけば、日本の環境はクリーンになるとともに、CO2削減効果も大きい。

(2)水素発電について
 せっかく燃料を国内で自給できる水素に変換するのに、それを外国から輸入しようというのは、経済の全体を見ておらず視野が狭いと思うが、*3のように、川崎重工業が2017年をメドに、水素を燃料とする火力発電設備を、世界に先駆けて量産するそうである。それならば、国内では、各家庭やビルで安全に自家発電するために水素を使い、その水素は、日本に豊富な地熱や汐潮発電で作るのがよいと考える。

*1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2802Y_Y4A520C1EA2000/
(日経新聞 2014/5/29) トヨタ、燃料電池車を年内にも市販 官民の連携拡大
 燃料電池車は水素と酸素を化学反応させて生み出した電気でモーターを動かして走る。いま国内では数十~100台が試験用に走るのみ。政府は15年からの市販開始を成長戦略の一つに掲げ、普及策検討を進めてきた。ひとつが燃料タンクの容量拡大。経産省は高圧ガス保安法の省令を改め、1回で車に補給できる水素の圧力上限を約700気圧から875気圧まで高める。これにより車両の走行距離は2割長くなる。トヨタ車の場合、平均的な乗用車を上回る600キロメートルの航続が可能になる。東京・大阪間を水素補給なしで走り続けられる計算だ。海外では高圧の補給が認められており、日本だけが規制のハードルが高かった。輸出のハードルも下げる。国連は日本や欧州連合(EU)などが燃料電池車の輸出入を簡素化するための交渉を進めている。政府は1国の安全審査を通った車両部品を他国の審査なしで輸出できる協定を16年に国内法に反映させる考え。日本の工場でつくった燃料電池車の輸出がしやすくなる。トヨタは規制緩和を追い風に燃料電池車の量産に向けた開発を急ぐ。これまで「15年中」と公表していた市販開始の時期を14年度中に前倒しする方向。ホンダも15年中に一般向け販売を始める。ほかに15年中の市販を予定するのは韓国の現代自動車のみで、日本メーカーが市場開拓でライバルを一歩リードする。一般向け販売のハードルは500万~1000万円とされる車両の価格だ。政府は燃料を補給できる「水素ステーション」を15年に100カ所設ける目標だが、まだ3分の1しかメドが立たない。「消費者が購入価格に見合ったメリットを得られないと普及が進まない」(経産省幹部)。燃料電池車の普及を目指す自民党の研究会は6月中に、購入費用や燃料費の補助を政府に求める提言をまとめる。購入費用の自己負担を「200万円台まで」とし、水素の補給費用も当面は無料にする。政府は提言を受け、15年度予算に補助金をどれだけ盛り込むかの検討に入る。

*2:http://www.nikkei.com/article/DGXNZO71329340W4A510C1L83000/
(日経新聞 2014/5/16) 燃料電池車普及急ぐ 東京都、減税や補助金検討
 東京都は環境への負担が少ない燃料電池車の普及へ減税や補助金制度の創設を検討する。16日に初開催した「水素社会の実現に向けた東京戦略会議」の終了後、舛添要一知事が明らかにした。非常時に避難所や家庭向けの電源供給に活用することも視野に、防災対策の強化も兼ねて都営バスへの導入も想定する。都の水素戦略会議は、一橋大学の橘川武郎教授を座長に自動車メーカーやエネルギー関連企業の担当者らで構成する。1台1千万円程度とされる燃料電池車のコストや規制など様々な課題の解消策を議論。2020年五輪開催時の利用法や、その10年後の30年を見据えた中期的な活用拡大策をまとめ、15年2月に最終報告を出す。16日の初会合で、舛添知事は20年五輪を念頭に燃料電池車の普及を急ぐ考えを表明、「環境と調和した未来都市の姿を世界に印象づけたい」と訴えた。出席者からは、最も需要の見込める都心部で地価の高さから水素ステーションの計画がない問題点などが指摘された。都はガソリンスタンドより広い敷地を必要とする規制などについて国に緩和を働きかける方針だ。

*3:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD120G1_V10C14A2MM8000/
(日経新聞 2014/2/16) 水素発電設備、川重が世界初の量産 17年メド
 川崎重工業は2017年をメドに、水素を燃料とする火力発電設備を、世界に先駆けて量産する。水素は燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しないほか、長期的に発電コストが天然ガス火力並みに下がる見通し。川重は自家発電設備として日本や、温暖化ガスの削減を急ぐ欧州などで売り込む。三菱重工業や米ゼネラル・エレクトリック(GE)なども開発を急いでいる。水素発電は20年以降に普及しそうだ。川重は火力発電の中核設備であるガスタービンの大手。水素燃料だけで発電するタービンを世界で初めて実用化する。標準家庭で2000世帯分を賄える出力7000キロワット級など中小型機を明石工場(兵庫県明石市)で量産する計画。価格は従来のガスタービンより1~2割高い水準に設定する考えだ。水素はガスと比べて熱量が大きいため燃やすとタービン内の燃焼温度が非常に高くなり故障の原因となる。川重は専用の冷却装置を取り付け、タービン内部の設計も改良し耐久性を高めた。水素発電は燃料のコストの高さと安定調達が課題だった。トヨタ自動車など世界大手は今後、水素を燃料とする量販タイプの燃料電池車を相次ぎ投入、20年以降に先進国で普及する見通しだ。水素が大量生産されることで、燃料価格が現在の3分の1程度に下がり、水素発電のコストも石炭やガスを使う火力発電に対抗できる可能性がある。水素発電設備の世界市場は30年に2兆円規模になるとの予測もある。

| 環境::2012.12~2015.4 | 05:21 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.4.27 再生可能エネルギー利用の自動車・住宅・農林漁業で、原発の必要性はなくなる (2014.4.28、29に追加あり)
   
    *1より                 スマートハウス               *4より
(1)自動車の進歩
 *1のように、住友化学は電気自動車(EV)に使うリチウムイオン2次電池の高温に強い絶縁材の生産能力を現在の2.3倍にし、米テスラ・モーターズのEVが搭載するパナソニック製の電池向けに供給するそうだ。これにより、テスラ・モーターズのEVは、1回の充電で500キロメートル走れるようになり、環境負荷や燃費も考慮すれば、軽くガソリン車を越えるEVとなった。

(2)住宅の進歩
 *2のように、積水ハウスは、2003年から販売している断熱性に優れた同社の省エネ住宅をリフォームし、太陽光発電システムや都市ガスによる燃料電池を設置して、省エネ型の空調設備などへ切り替える提案をしており、これにより光熱費(電気・ガス料金)を実質的に0にできるそうだ。

 このようなエネルギー自給型住宅は、経済性、環境負荷、災害時の危機管理に優れているため、特定の住宅だけでなく、多くの住宅に応用できるように、それぞれの機器のデザインやラインナップが増えれば、日本だけでなく、世界で爆発的に売れると思う。特に、電力インフラが頼りない地域では、これしかない必需品になるだろう。

(3)自家発電住宅、農漁業の協力が脱原発を可能にする
 自家発電による電力自給型の住宅が普及すれば、住宅は、電力の需要者ではなく供給者となる。また、*3のように、JAは、「環境が破壊されて一番困るのは農業者」として、第26回全国大会で「将来的な脱原発と再生可能エネルギーの利活用」を決議し、広い面積での太陽光発電や小水力発電・バイオマス発電、発電残さの肥料への活用などを進めているため、原子力発電からの脱却はすぐにでも可能だ。

(4)原発立地自治体は、他の産業へシフトを - 佐賀県玄海町の事例から
 脱原発が行われれば、原発立地地域も原発収入への依存から脱却しなければならないため、それぞれの地域の特性を生かした産業を育てなければならない。

 例えば、すでに九州大学と薬草の研究を進めている玄海町は、苺とタバコの産地でもあるため、*4のような付加価値の高い農産物を作る方法がある。実に有効な物質を含んで人間の歯肉炎を軽減する苺やワクチンの成分を作るタバコ、アルツハイマーの予防に役立つダイズなどを生産することもできるし、その他の製品を作ることも可能だろう。

 ともかく、脱原発のためには、多くの人が原発立地地域の産業振興に協力することが必要である。

*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140425&ng=DGKDASDZ240E1_U4A420C1TJ2000
(日経新聞 2014.4.25) 住友化学、EV電池部材を倍増 50億円投資、米テスラ向けに
 住友化学は電気自動車(EV)に使うリチウムイオン2次電池の部材を増産する。大江工場(愛媛県新居浜市)で50億円を投じて2015年春までに、高温に強い絶縁材の生産能力を現在の2.3倍に当たる1億1000万平方メートルへ増やす。一般的なEV10万台以上で使う量に当たる。米テスラ・モーターズのEVが搭載するパナソニック製の電池向けに供給する。高耐熱の絶縁材を採用すれば電池の容量が大きくなり、EVの走行距離を伸ばせる。住友化学はテスラの生産拡大を部材面で支える。他のEVメーカーへの供給も視野に入れている。増産するのはリチウムイオン2次電池の主要部の絶縁材であるセパレーター。樹脂フィルムにアラミド樹脂などを塗って耐熱性を高めた。住友化学はセパレーター市場で世界5位前後の大手メーカー。耐熱性を高めた高機能製品に特化し、この分野では旭化成や東レ、米セルガードなど競合他社に先行している。テスラのEVは一般的なEVの約3倍に当たる最大85キロワット時の高容量電池を積み、1回の充電で500キロメートル走れる。

*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140426&ng=DGKDASDZ250BO_V20C14A4TJ1000 (日経新聞 2014.4.26) 積水ハウス、電気・ガスを実質無料に リフォーム提案
 住宅最大手の積水ハウスは一般家庭の住宅向けに、電気やガスの料金を抑えられるリフォームサービスを始めた。同社が建築した6万戸以上の省エネ住宅が対象で、新たに太陽電池システムなどを設置する。初期費用は約420万円。売電収入を見込めるため、15年程度で回収できるという。積水ハウスがリフォームを提案するのは、2003年から販売している断熱性に優れた同社の省エネ住宅。リフォームでは太陽光発電システムのほか、都市ガスを使って電気や湯をつくる燃料電池を設置する。省エネ型の空調設備などへの切り替えも提案する。同社の試算によれば4人家族で生活した場合、電気・ガス料金は年間約26万円。発電出力が4.6キロワットの太陽電池と700~750ワットの燃料電池を取り付け、効率の高い燃料電池の利用などで消費電力を抑えられる。約28万円の売電収入も見込め、電気・ガスが実質的に無料になるという。

*3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27093
(日本農業新聞 2014年4月14日) JAの取り組み報告 脱原発フォーラム
 原子力発電からの脱却を目指す市民団体や研究者らは13日、脱原発フォーラムを東京都千代田区で開いた。JA全中の村上光雄副会長、JA福島中央会の川上雅則参事が参加し、JAグループの再生可能エネルギーの利活用などを発表した。市民ら820人ほどが参集した。原発と経済、食や生活への影響、JA、生協、漁協の取り組みなどの報告があった。研究者や弁護士らで組織する原子力市民委員会が作成した政策提言集「市民がつくる脱原子力政策大綱」も紹介した。全中の村上副会長は福島県の被災農地の状況などを話し、「なぜ素晴らしいふるさとで農業ができないのか。環境が破壊されて一番困るのは農業者」と強調。第26回JA全国大会で、将来的な脱原発と再生可能エネルギーの利活用を決議したことを説明した。村上副会長は再生可能エネルギーの事例として、中国地方の小水力発電を紹介した。電力は概ね1000キロワット以下で、大きなダムを作らずに川から水路を引き農業用水などを利用して発電していることなどを解説した。福島中央会の川上参事は農業の復興に向けた取り組みを説明した。「地域営農ビジョンを進めていくことが福島の復興再生に重要になる」と述べた。地域で再生可能エネルギー事業に取り組み、脱原発に向けた循環型社会をつくる方策を示した。売電収入による収益の安定化や、バイオマス発電の熱を施設園芸に使用して周年栽培する構想を説明。被災農業者らの雇用にもつなげる考えだ。これまで取り組みのあった耕畜連携をもとに、畜産酪農家から牛の糞尿や飼料作物を再生可能エネルギー施設に提供してもらうことや、発電残さを肥料に活用することなども説明した。川上参事は「地域営農ビジョンの単位ごとに、地域資源がどれだけあるか見極めて運営することが大切」と話した。

*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140427&ng=DGKDZO70432930V20C14A4MZ9000 (日経新聞 2014.4.27) 薬の成分、植物内で生産
 遺伝子組み換え技術を使って様々な医薬品を植物の中で作る「植物創薬」の時代が幕を開けた。この創薬技術は生産コストを大幅に減らせることに加え、新型の感染症の流行時に素早くワクチンを供給できるなどの利点もある。動物用の治療薬がこのほど商品化され、人間向けでも開発が進んでいる。札幌ドームの近くにある産業技術総合研究所北海道センター(札幌市)。その敷地に、完全に密閉された環境で遺伝子組み換え作物を栽培する工場がある。防じん服に着替えて工場内に入り、窓越しに栽培室をのぞくと、鮮やかな緑色の苗が目に飛び込んできた。これはイチゴで、農薬メーカーのホクサン(北海道北広島市)が栽培している。夏には赤く実る予定だが、食用ではない。「インターフェロンという物質が実の中で大量に作られる」と、ホクサンの田林紀子動物薬課長は説明する。イチゴの実は収穫されると、別の部屋ですりつぶされて凍結乾燥される。その後、医薬品製造に求められるGMPと呼ぶ国際的な基準を満たす工場で最終製品となる。同社は3月、イヌの歯肉炎を軽減する薬として発売した。遺伝子組み換え植物を原料とする医薬品は世界初という。工場は遺伝子の拡散を防ぐため、周囲よりも気圧を低くして空気が外に流れないようにしている。排気はフィルターでろ過し、排水も滅菌処理する。遺伝子組み換え作物を栽培する場合、カルタヘナ法にもとづいて厳重管理しなければならない。この工場は同法(第2種産業利用)に適合した国内初の施設として2007年に国の認定を受けた。遺伝子組み換え技術を使って医薬品を作る場合、今は大腸菌や動物の細胞を使うのが一般的だ。大量に培養し、医薬品となるたんぱく質などを抽出・精製する。ただ、細胞や細菌の培養や有効成分の抽出、精製に手間がかかって費用がかさむ。食べられる植物なら、すりつぶすだけで有効成分も一緒に取り出せる。建設に数億円かかるが、季節や天候などに左右されず、一年中栽培できる。「医薬品のような高付加価値製品を作ると、生産コストの削減につながる」と、産総研の松村健・植物分子工学研究グループ長は強調する。産総研の工場の隣には、別の植物工場がある。北海道科学技術総合振興センターが12年に設立したグリーンケミカル研究所だ。出光興産や北興化学工業など5社が入居し、医薬品などを作る遺伝子組み換え作物の開発に取り組んでいる。5つある栽培室の1つで、ダイズが青々と生い茂っている。室内はセ氏23度前後に保たれており、1年に3~4回収穫できる。「アルツハイマー病に効果が見込める物質が含まれている」。北興化学の寺川輝彦研究部長はダイズの実を見せながら説明する。アルツハイマー病の予防に役立つワクチンとなる成分で、実1グラムにつき3ミリグラム含まれるという。弘前大学の研究チームがアルツハイマー病を発症するように遺伝子を操作したマウスに、このワクチン成分を与えたところ、発症を遅らせる効果があるとわかった。原因物質とされるβアミロイドと呼ぶたんぱく質が脳に蓄積する量も減っていた。動物実験をさらに進め、数年後に人間で臨床試験(治験)を始めたい考えだ。ダイズを粉末にしてカプセルに詰め、飲んでもらうことを想定している。植物創薬を目指す動きは世界で活発になっている。遺伝子組み換え作物を栽培する完全密閉型の植物工場は、ドイツのフラウンホーファー研究機構や米バイオベンチャーのケンタッキー・バイオプロセシング(ケンタッキー州)など、少なくとも世界に8カ所ある。田辺三菱製薬は13年に子会社化したカナダのベンチャー企業で、インフルエンザワクチンの成分を作る遺伝子組み換えタバコを生産する。今のように鶏卵を使うと6カ月かかるワクチン製造を1カ月に短縮できるという。5年後の実用化を目指している。遺伝子を組み換えた微生物を使って製造する医薬品が増えつつある。今後はコストや生産調整のしやすさから、遺伝子組み換え植物を使う医薬品製造が広がるとみられる。


PS(2014.4.28追加):漁業における太陽光発電の設置事例を追加する。このほか、養殖施設に風リング風車を設置した例もある。

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2661728.article.html
(佐賀新聞 2014年4月12日) オリックスと契約 ノリ施設に太陽光発電
 佐賀県有明海漁協(草場淳吉組合長)は、太陽光発電装置の設置場所として屋根を約20年間貸し出す契約をオリックス(東京)と交わした。貸出料は年間約200万円。同社は、ノリ加工・集荷施設30カ所の屋根に太陽光パネル約1万1千枚を設置して売電する。草場組合長とオリックス国内営業統括本部地域営業担当の井尻康之執行役が佐賀市の同漁協本所で調印した。井尻執行役は「高い建物がなく、全国有数の日射量を誇る好立地」と選定理由を説明。草場組合長は「再生可能エネルギーの推進に一役買えれば」とあいさつした。年間総発電量は約286万6300キロワット時、一般家庭800世帯分を見込む。パネルは、川口スチール工業(鳥栖市)が独自工法で設置する。5月に着工し、9月までに全施設での稼働を目指す。オリックスは金融サービス事業が主な業務で、2012年度から太陽光発電事業に取り組んでいる。


PS(2014.4.29追加):*6のように、コンビニやスーパーに電気自動車の急速充電器があると便利で、高速道路のサービスエリアにもこのタイプの店舗があれば、電池切れの心配なく快適に高速道路を走れる。また、イートインコーナーは、20分程度で飲食を済ませなければならないため、そこで買ったものを座って食べられるスペースにすればよいのではないだろうか。

*6:http://digital.asahi.com/articles/photo/AS20140428003756.html
(朝日デジタル 2014年4月29日) ファミマ500店に電気自動車充電器 1回617円
 ファミリーマートは28日、電気自動車(EV)用の急速充電器を年内に全国500店で設置すると発表した。約20分の充電中に買い物をしてもらったり、「イートインコーナー」で飲食してもらったりするねらい。大手コンビニエンスストアが本格的に充電器を置くのは初めてという。充電器は幹線道路沿いの店などの駐車場に置く。1台あたり300万~500万円の費用がかかるが、政府や自動車メーカーの補助を使うため、ファミマの負担はほぼゼロという。EVのほかにプラグインハイブリッド車も使えて、客は1回617円(税込み)で充電できる。充電サービスを提供するジャパンチャージネットワーク社の有料会員になれば、1回308円(同)で済む。業界団体によると、急速充電器は国内では自動車販売店や公共施設などに約2千カ所ある。24時間使えるコンビニに設置されれば、さらに普及が進む。

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2014.4.18 原発と周辺自治体の権利 (2014.4.19追加あり)
   
                2014.4.12西日本新聞より 

(1)「原発回帰」を望んでいるのは誰?
 *1-1に書かれているとおり、閣議決定されたエネルギー基本計画では、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、原発稼働ゼロの方針を転換して、原発を「昼夜を問わず低い発電コストで動かせるベースロード電源」としたが、実際には、原発は、「昼夜を問わず動かせる」というよりは、「一旦、動かし始めたら夜になっても止められない」電源であり、安全対策のための投資を含めれば、経済的な優位性を持ち得ない電源という方が正しい。

 しかし、電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)をはじめとする旧電力会社、経済産業省の配下にある産業界及び原発推進派の学者が、このエネルギー基本計画を歓迎している。

 一方、*1-2のように、世論調査では国民の半数以上が脱原発を求めており、高レベル放射性廃棄物の最終処分場が決まっていないだけでなく、福島第一原発事故の汚染水への対応を見ても、技術もモラルもなく、その場しのぎの対応や説明が多く、安全性への懸念は全く払拭されていない。従って、エネルギー基本計画は、国民に背を向けていると言わざるを得ない。

(2)原発の立地には、最低30キロ圏内の同意は必要である
 *2-1のように、北海道函館市が2014年4月3日、青森県大間町で建設中の大間原発建設差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こした。函館市は津軽海峡を挟んで大間原発の対岸で、市の一部は原発事故に備えた避難の準備などが必要な30キロ圏の防災対策の重点区域に入るため、危険だけを押しつけられて、発言権がない理不尽さを訴えたいそうだ。

 しかし、*2-2のように、「組織である自治体(函館市)は、放射能汚染の被害を受ける利害当事者として認められるか否かが大きな争点になる」などと、馬鹿なことが議論されるそうである。会社は組織だが、利害当事者として原告になれるので、自治体は組織だから原告適格が焦点になるなどというのは、おかしい。これに関する判例で、住環境破壊を防ぐ目的の自治体訴訟は公益のためと見なされ、自治体限定の利益ではないとして、原告適格を認めていないというのも変だが、環境破壊されれば、住民が住めなくなるだけでなく、農林漁業を始めとする産業も破壊され、自治体の税収が減るとともに、その存続すら危ぶまれるため、狭い解釈をしたとしても自治体に原告適格はあるだろう。

 北海道函館市の提訴について、*2-3のように、市内のほぼ全域が原発30キロ圏に入るため、九州電力に事前了解権を安全協定に盛り込むよう求めている伊万里市の塚部市長は、「広域に被害をもたらす原発事故への対策が万全でないのに新設が進むことに対する抗議で共感できる」と語ったそうだ。

 中国電力島根原発(松江市)から西へ最短9キロの島根県出雲市でも、市民の7割に当たる約12万人が30キロ圏内で暮らしており、出雲市は周辺の同県雲南市などと連携して、事前了解を含む協定を締結するよう中国電力に要求しているそうだが、原発で事故があれば出雲市が警戒区域や立入禁止区域になる可能性もあり、日本は、そうまでして原発を動かす必要があるのかと思う。

 また、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)の周辺30キロ圏の人口は90万人超で、全国最多であり、東海村は、周辺10市町と歩調を合わせ、事前了解権を周辺自治体に広げるよう日本原子力発電に要求しているそうだ。

 さらに、*2-4によれば、放射性物質が広範囲に拡散した未曽有の事故を教訓に、京都府や京都市は福井県内で原発事故を想定した避難計画などを策定したが、京都府が関西電力に求めた原発立地自治体並みの安全協定締結は協議開始から2年半たっても進展がないそうである。京都も原発事故で警戒区域や立入禁止区域になれば、日本史や観光の面からも被害甚大であり、そうまでして原発で発電する必要があるのかと思う。

(3)事故時には30キロ圏外でも被害を受ける
 *3-1のように、茨城県取手市は、フクイチの事故で、放射性物質の汚染状況重点調査地域に指定されたが、3年後の2014年3月6日に、やっと住宅の除染作業が始まったそうである。フクイチから200km以上離れた埼玉県ふじみ野市にある私の自宅でも、地面は毎時0.23~0.3マイクロシーベルトあり、風が吹く度に放射性物質も舞い上がるので、事故時に30キロ圏内の住民を一時的に避難させさえすればよいというのは、楽観的すぎる。

 そのため、*3-2のように、年間被ばく線量20㍉シーベルト以下の避難指示解除準備区域で、除染後も政府が年間限度に掲げる1㍉シーベルトを上回る田村市都路地区の避難指示が4月1日に解除されたのは、除染が、住宅や道路など生活圏の周辺と森林の一部に限られていることを考えれば、安全とは言えない。その上、解除後の慰謝料は、避難住民には、現在、精神的損害への慰謝料(1人月額10万円)が支払われているが、避難指示解除後は、1年以内に戻った住民には慰謝料を1人90万円追加し、避難を続ける人への慰謝料は1年で打ち切るというのでは、「住民の健康より地域振興」という方針が明確に打ち出されており、不安が増加する。

(4)創作された原発の経済的優位性
 *4-1に書かれているように、エネルギー基本計画は、原発再稼働に結びつけるため、フクイチの後、全国の原子力発電所が停止し、火力発電のために必要になった原油やガスなど化石燃料の輸入が増加したことが、貿易収支を悪化させたと強調した。

 これに対し、大和総研はリーマン・ショック後の急激な円高をきっかけに進み、モノづくり拠点が海外に移ったため輸出が減る産業空洞化が主因だと指摘しており、斎藤勉エコノミストは「原発が再稼働しても、大幅な貿易赤字は解消しない」としたそうである。しかし、本当は、産業空洞化は、リーマン・ショック後ではなく、社会主義国、共産主義国が市場経済に参入した1990年以降に既に始まっていた。

 そして、世界のグローバル企業は、グローバリズムとローカリズムを組み合わせて経営し、それぞれの企業は、利益を最大にする方法を地球規模で考えながら(グローバリズム)、それぞれの地域に決定権を与えて地域に合った財やサービスを提供するようにしている(ローカリズム)。例えば、大市場であるインドで売る車は、その市場の中で生産し、開発にも現地の人を参加させて、その地域で求められるものを作って売るということだ。この時、日本の工場は、要(かなめ)の部品を輸出し、割安でできたものを輸入するという形になる。

 このように高コスト構造になっているわが国では、京都大学経済学部の植田和弘教授が述べているように、新エネルギー産業の振興で新しい経済モデルを作ったり、今まで世界になかった高付加価値のものを作ったり、今まで輸出していなかったものを輸出したりする必要がある。ただし、今まで輸出していなかったものを輸出すると言っても、わが国が武器や原発を輸出すべきではないので、もっと知恵を絞ってもらいたい。

(5)公害における国と企業の責任
 *4-2のように、原発被害者を支援する弁護団などでつくる実行委が主催して、「第2回 原発と人権 全国研究・交流集会 in 福島」で、集団訴訟や賠償、脱原発などの5分科会が開催されたそうだ。

 また、水俣病訴訟に1次提訴から携わっている馬奈木昭雄弁護士(福岡県弁護士会)は、国を相手取った集団訴訟の先例として、水俣病訴訟の経験から、「国と加害企業がすることは、原因の隠蔽と責任逃れだ」と厳しく批判したそうだが、フクシマの事例では、汚染された海水から採集される海産物が水俣の事例と似ており、詳しくは書かないが、私も同感である。

(6)九州の夏の電力予測
 *4-3のように、九州電力は、今夏、原発なしで供給予備率3・0%を確保できる見通しで、それには、周波数が異なる東京電力を含む他電力からの融通と、太陽光発電の急速な普及による需給の安定が貢献しているそうだ。

 また、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の導入で急増する太陽光発電が、この夏は存在感を増し、九電は、九州で稼働する太陽光の設備容量を1年前の2倍の327万キロワットと想定しており、夏の真昼には原発1基分に相当する94万キロワットの発電を見込むが、太陽光発電は真昼に出力がピークになることもあって猛暑の電力安定供給に欠かせない電源となるそうだ。

 しかし、九電は、いつまでも蓄電池を装備せず、同じ問題を繰り返し述べるだけで解決していないので、太陽光発電に対する積極性はないようだ。

*1-1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1100H_R10C14A4MM0000/ (日経新聞 2014/4/11) 「原発ゼロ」転換決定 エネ基本計画、重要電源と明記 、将来の比率は示さず
 政府は11日、国のエネルギー政策の指針となるエネルギー基本計画を閣議決定した。原子力を「重要なベースロード電源」と位置づけて再評価したのが最大の特徴だ。民主党政権が2012年に打ち出した原発稼働ゼロの方針を転換したが、電源全体に占める比率は示さなかった。太陽光など再生可能エネルギーを最大限、推進する姿勢を強調した。エネルギー基本計画を改定するのは10年以来となり、東日本大震災後は初めて。民主党政権は12年9月に「30年代の原発稼働ゼロ」を盛り込んだエネルギー・環境戦略をつくったが、閣議決定はできなかった。政権交代後、自公連立政権はエネルギー基本計画を改定する議論を進めていた。政府は新計画で、原発を昼夜を問わず低い発電コストで動かせるベースロード電源と位置づけた。石炭と共に重要な電源とし、原子力規制委員会の安全審査に合格した原発の「再稼働を進める」とも明記した。政府が地元自治体などに再稼働への理解を求める姿勢も示し、短期的には原発を動かす方針を明示した。電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)は11日、「方針は大変意義がある」と歓迎するコメントを発表した。中長期的な原発の位置づけは曖昧さを残した。原発依存度は「可能な限り低減させる」としつつ、原発を将来どれほど動かすかの目安となる将来の電源比率は示さなかった。原発の新増設をどうするかも明記しなかった。茂木敏充経済産業相は11日の記者会見で「(比率は)できるだけ早く設定する。新増設は次のステップの議論で、現段階において具体的に想定していない」と語った。使用済みの核燃料の再利用を目指す政策は推進する。ただ、高速増殖炉「もんじゅ」はトラブルが続く状況を踏まえて、放射性廃棄物を減らすための研究拠点と役割を修正した。

*1-2: http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-223459-storytopic-11.html
(琉球新報 2014年4月13日) エネルギー計画 被災地と国民への背信行為
 福島第1原発事故の惨状や教訓を忘れ去ってしまったのか。原発再稼働になし崩し的に突き進む安倍政権の姿勢は到底容認できない。政府は原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、再稼働を進める方針を明記したエネルギー基本計画を閣議決定した。事故後、初の基本計画であり、民主党政権が掲げた「原発ゼロ」方針との決別宣言となる。安倍政権はフクシマの現実から目を背けてはならない。汚染水漏れなど事故の収束には程遠く、長引く避難生活など復興も遅々として進んでいない。世論調査でも国民の半数以上が脱原発を求めている状況に変わりはない。原発回帰は見切り発車以外の何物でもなく、被災地と国民への背信行為だと認識すべきだ。安倍政権が再稼働に前のめりになるのは、電力会社をはじめ産業界の強い要望があるからだが、経済を最優先し、「安全神話」を妄信していた時代に時計を巻き戻す愚行というほかない。基本計画への疑問は多い。原発回帰を鮮明にする一方、「核のごみ」問題への対処は今回も明確に示されなかった。原発は高レベル放射性廃棄物の最終処分場が決まらない状況から、「トイレなきマンション」と揶揄(やゆ)されるが、“不都合な真実”には依然目をつぶったままだ。国民を欺こうとする記述も目立つ。原発依存度を可能な限り低減させるとしたが、具体的な比率は示さなかった。むしろ「確保していく規模を見極める」と、新増設に含みを持たせたのが実態だ。トラブルが頻発し、公明党が廃止を求めていた高速増殖炉原型炉もんじゅの項目もそうだ。高レベル放射性廃棄物の量を減らす「減容化」などの国際的な研究拠点化を前面に出したが、増殖炉の活用方針をカムフラージュし、延命を企図したものにすぎない。原発推進路線を維持したい経済産業省の思惑もにじむ。そもそも計画案自体が、原発推進派の学者や大企業幹部らの意見が色濃く反映されている。もはや、原発の利権に群がる「原子力ムラ」の復活と言っても過言ではない。モラルはないのか。安全対策への膨大な投資を迫られる原発は、もはや経済的な優位性を持ち得ない。最大の問題は安全性への懸念が何ら払拭(ふっしょく)されていないことだ。民意に背を向けた基本計画は画餅でしかない。

*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11066597.html (朝日新聞 2014年4月4日) 大間原発、函館市が提訴 自治体で初、建設中止求める 30キロ圏「発言権ない」
 北海道函館市は3日、青森県大間町で建設中の大間原発について、事業者のJパワー(電源開発)と国を相手取り、建設差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こした。原発差し止め訴訟で自治体が原告になるのは初めて。訴状を提出した工藤寿樹市長は「危険だけを押しつけられて、(建設の同意手続きの対象外のため)発言権がない理不尽さを訴えたい」と語った。函館市は津軽海峡を挟んで大間原発の対岸にあり、市域の一部は原発事故に備えた避難の準備などが必要な30キロ圏の防災対策の重点区域(UPZ)に入る。東京電力福島第一原発事故では深刻な被害が30キロ圏に及んだ。函館市は「大間原発で過酷事故が起きれば、27万人超の市民の迅速な避難は不可能。市が壊滅状態になる事態も予想される」と訴え、「市民の生活を守り、生活支援の役割を担う自治体を維持する権利がある」と主張する。その上で、立地市町村とその都道府県にある建設の同意手続きが、周辺自治体にはないことを問題視。同意手続きの対象に30キロ圏の自治体を含めるべきで、国が2008年4月に出した大間原発の原子炉設置許可は、福島原発事故前の基準で不備があり、許可も無効と指摘する。今回の提訴は、函館市議会が今年3月に全会一致で認めた。弁護団の河合弘之弁護士は「市長が議会の承認を得て起こした裁判で、その重さは裁判官にも伝わるだろう」と語った。大間原発の建設は提訴後も続く見通しだ。Jパワーは「裁判を通じて計画の意義や安全対策の考えを主張していく。函館市に丁寧に情報提供や説明をしながら計画を推進していきたい」とのコメントを出した。大間町の金沢満春町長は「他の自治体が決めたことにコメントはできない。町は今まで通り『推進』ということで地域一丸になって頑張る」とコメントした。
◆キーワード
<大間原発> 津軽海峡に面する青森県・下北半島の北端で建設が進む。使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜた燃料(MOX燃料)を100%使う世界初の「フルMOX原発」として2008年5月に着工。建設工事は東日本大震災で中断したが、12年10月に再開した。工事の進捗(しんちょく)率は37・6%。完成すれば出力は約138万キロワット。

*2-2:http://mainichi.jp/select/news/20140404k0000m040140000c.html
(毎日新聞 2014年4月3日) 大間原発:提訴 自治体・函館市の原告適格が焦点に
 北海道函館市が3日に起こした大間原発をめぐる裁判は、原発建設差し止め訴訟で自治体が原告となった初めてのケースだ。人ではなく、組織である自治体が、放射能汚染の被害を受ける利害当事者として認められるかが大きな争点になる。函館市は、自治体には市民の生活と安全を守る活動を行う権利「地方自治権」が憲法94条で保障されていると指摘。原発事故が起きれば自治体の存続が危うくなるため、利害当事者としての権利があると主張している。行政事件訴訟法は、自治体が訴訟を起こす資格「原告適格」について、「損害を受けるおそれのある者」または「法律上の利益を有する者」と規定。判例では、住環境破壊を防ぐ目的の自治体訴訟は公益のためと見なされ、自治体限定の利益ではないとして、原告適格を認めていない。行政事件訴訟に詳しい大阪大の大久保規子教授(行政法学)は「公益保護のための自治体提訴は海外で広く認められており、日本は特殊」とし、「原発事故で市有地の所有権が侵害されるなど、守るべき法律上の権利や利益を有している」と話し、原告適格はあるとの見方を示している。広域汚染をめぐる問題で自治体を訴訟当事者と認めるか否か。福島第1原発事故後の日本の司法の在り方が問われる。

*2-3:http://qbiz.jp/article/35034/1/
(西日本新聞 2014年4月4日)  事前了解要求、全国で 伊万里市長「提訴に共感」
 原発に事故があると被害を受けるのに、立地自治体並みに電力会社にもの申せないのはおかしい−。安倍政権が原発の再稼働へ前のめりとなる中、全国の原発30キロ圏の周辺自治体で立地自治体並みの権限を盛り込んだ安全協定締結を求め、電力会社と粘り強く交渉を続けるところが出ている。「広域に被害をもたらす原発事故への対策が万全でないのに新設が進むことに対する抗議で共感できる」。九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)から最短12キロで30キロ圏内にほぼ全域が含まれる同県伊万里市の塚部芳和市長は北海道函館市の提訴についてそう語る。原発施設の大きな変更時に「拒否権」ともなる事前了解権を安全協定に盛り込むよう求めている伊万里市。そのため玄海、川内両原発から30キロ圏の九州の自治体で唯一、協定締結に至っていない。九電とは月2回、定期的に協議を続けているが、内容は「平行線」という。市は「事前了解権を得れば、市民が納得するまで九電に説明を求められる。安全対策の拡充要請も可能になる」と主張する。原発事故に備え、市は2014年度から防災行政無線の整備に着手したが、総事業費約8億円の負担が重く、6年間で整備する方針。さらに避難道路の拡幅や改修に総額36億円を見込むが、厳しい財政事情で事業はなかなかはかどらない。中国電力島根原発(松江市)から西へ最短9キロの島根県出雲市では、市民の7割に当たる約12万人が30キロ圏で暮らす。出雲市は周辺の同県雲南市などと連携し、事前了解を含む協定を締結するよう中国電に要求している。出雲市は「そもそも、国が周辺自治体の意向を反映する制度を早急に設けるべきだ。その暫定措置として、立地並みの安全協定を中国電に求めている」と説明する。同原発から東に約17キロの鳥取県は、中国電と11年に安全協定を結んだものの、内容が不十分として事前了解を含んだ中身に改定するよう交渉中。中国電から「立地自治体と同様の対応を行う」との文言まで交渉で引き出したが、明確に事前了解権が盛り込まれるまで訴え続ける構えだ。日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)。周辺30キロ圏の人口は90万人超で、全国最多。東海村は、周辺10市町と歩調を合わせ、事前了解権を周辺自治体に広げるよう同社に要求している。

*2-4:http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20140310000152 (京都新聞 2014年3月10日) 原発安全協定協議、進展せず 京都府・市なお課題山積印刷用画面を開く
 福島第1原発事故を引き起こした東日本大震災から11日で3年を迎える。放射性物質が広範囲に拡散した未曽有の事故を教訓に、京都府や京都市は福井県内での原発事故を想定した避難計画などを策定した。しかし、府が関西電力に求める原発立地自治体並みの安全協定締結は協議開始から2年半たっても進展がないなど解決すべき課題が山積している。
■避難所計画も未整備
 福井県の若狭湾に林立する原発で、半径30キロ圏に府域が入るのは高浜原発(同県高浜町)と大飯原発(同県おおい町)。最も近い高浜原発の場合、府内では府北中部から京都市にかけて約12万8千人が暮らす。避難が必要な事態になれば、住民は府県境や市町境を越えて移動に迫られるため、府や関西広域連合は避難元と避難先の自治体の組み合わせを調整し、公表している。緊急時にスムーズな避難を実現するには、避難所ごとの受け入れ人数など詳細な計画が必要になるが、まだ決まっていない。特に舞鶴市から6万5千人もの避難者を受け入れる京都市は、市街地だけに自家用車で避難してくる人が多ければ駐車場はとうてい用意できず、避難所まで送り届ける手だてが課題となっている。福井県など立地自治体は、安全協定によって原発再稼働について関電と事前協議が行えるなど強い権限を持つ。府は半径5キロ圏に舞鶴市が入る高浜原発で同県に準じた権限を求め、11年9月に関電と協議入りし、12年3月末までの合意を目指したが、協議は前進していない。高浜原発から30キロ圏の人口では、福井県の5万4千人より府の方が2倍以上多く、府は「府の置かれている状況から安全協定は必要だ。協議は難航しているが、府民の安全安心の点から中途半端な内容では結ぶわけにはいかない」と強調する。今夏にも両原発が再稼働するとの見通しもある。府は早期締結も目指しているが、打開策は見つかっていない。

*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/20140307/CK2014030702000154.html (東京新聞 2014年3月7日) 放射性物質の汚染重点調査地域 取手で除染作業始まる
 東京電力福島第一原発事故で、放射性物質の汚染状況重点調査地域に指定された取手市で六日、住宅の除染作業が始まった。除染が必要な住宅は約五千五百軒程度と見込まれ、市は今年七月をめどに市内全域の除染を終える予定だ。この日、除染作業が行われたのは、倉持行雄さん(79)宅(中内)。市の事前調査で、敷地の南西隅一カ所で、地上一メートルの空間放射線量が除染対象となる基準値を上回った。除染作業は約一平方メートルの表土を三十センチ掘削し、上層十センチを下層二十センチの下に入れる「天地返し」方式で実施。その結果、地上一メートルの空間放射線量は、作業前の毎時〇・二三マイクロシーベルトから〇・一八マイクロシーベルトに下がった。「市が測定するまで、放射線量が高いとは知らなかった」と、厳しい表情で作業を見守っていた倉持さん。市職員から放射線量の低下を知らされると「これで一安心です」と笑顔を見せた。二月二十日現在、対象住宅約三万五千軒のうち約一万七千六百軒の空間放射線量を測定、約千三百軒が除染対象となった。市は測定を終えた住宅が一定数に達した段階で、順次、除染作業を進める。

*3-2:http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=318125&nwIW=1&nwVt=knd
(高知新聞 2014年4月3日) 【避難指示初解除】住民不安は消えていない
 東京電力福島第1原発事故のため、原発20㌔圏内に政府が出している避難指示のうち、田村市都路(みやこじ)地区の指示が1日解除された。原発から北西方向に広がっている放射線量が高い地域と20㌔圏内で避難指示解除は初めてだ。国の除染作業が昨年6月に終わり、「放射線量が下がった」として解除に踏み切った。だが、この解除を手放しで喜べる状況では決してない。除染は、住宅や道路など生活圏の周辺と森林の一部に限られている。都路地区は年間被ばく線量が20㍉シーベルト以下の避難指示解除準備区域だったが、除染後も政府が年間限度に掲げる1㍉シーベルトを上回る地域が多い。こうした中、古里に不安を持つ住民がいて当然だ。地区には約110世帯350人ほどが暮らしていた。子どもを持つ世帯の中には健康を心配し、帰還に踏み切れない家族が多い。授業を再開する小中学校に戻るのは児童生徒の約4割だという。2月に開かれた政府の説明会でも多くの住民が解除は「時期尚早」と反対した。健康への不安を抱え、古里に戻りたくても戻れない住民が多くいることを、政府は重く受け止めるべきだ。おかしいのは、解除後の慰謝料などの問題だ。避難住民には現在、精神的損害への慰謝料(1人月額10万円)が支払われている。解除後1年以内に戻った住民には、1人90万円追加するという。避難を続ける人への慰謝料は、1年で打ち切られる。政府は「帰還は強制ではない」と説明する。むろん強制は許されない。だが帰還か避難継続かで揺れる住民に、こうした対応はどう映るだろう。古里からの避難を強いられた同じ住民の慰謝料に差が生じてしまう。森林など完全な除染が見通せない状況で、住民に決断を迫るような政府の姿勢は適切だろうか。慰謝料を指示解除後1年で打ち切れば、確かに東電の賠償額は減る。一方で帰還後も放射線への不安の中で暮らす住民の精神的損害に終わりはない。打ち切りが住民の納得を得ているとは決して言えない。政府は別の地域でも指示解除へ向けた住民協議を始める予定だが、肝心な除染は着実に進んでいるだろうか。追加除染を含め、安心して住民が帰還できる古里再生が第一だ。

*4-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014041202000109.html (東京新聞 2014年4月12日) 原発停止が主因じゃない 貿易赤字
 エネルギー基本計画は、東京電力福島第一原発の事故後、全国の原子力発電所が停止し、火力発電のために必要になった原油やガスなど「化石燃料の輸入が増加」したことが、貿易収支を悪化させたと強調した。原発の停止により、輸出でお金を稼ぐ日本の経済成長モデルが崩れてしまった、という理屈だ。だが、民間シンクタンクは貿易収支の悪化の原因が原発停止ではなく、企業が海外生産を増やした産業構造の変化の影響だと分析する。政府の説明からは、原発停止の影響を強調し再稼働に結びつけたい思惑がにじむ。日本の貿易収支は二〇一一年に輸入額が輸出額を上回り三十一年ぶりに赤字に転落し、一三年の赤字幅は過去最大の一一・五兆円となった。赤字の理由について、エネルギー基本計画は化石燃料の輸入増加以外の大きな理由を記載していない。原発停止による電気料金の値上がりの影響も強調し、企業の負担増が業績悪化につながり、「海外への生産移転などの悪影響が生じ始めている」と書いた。だが、大和総研はリーマン・ショック後の急激な円高をきっかけに進んだ産業空洞化が主因だと指摘する。材料費や人件費などの費用を少なくしようと国内のモノづくり拠点が海外に移ったため輸出が減る一方、海外からさまざまな製品の輸入が増え、試算では原発が稼働していても収支を七兆円も押し下げている。一二年から一三年にかけた円安の進行は、輸入額の増加という影響を大きくし、貿易収支は三兆円悪化。燃料の輸入増加で四兆円の影響も加わるが、斎藤勉エコノミストは「原発が再稼働しても、大幅な貿易赤字は解消しない」という。京都大学経済学部の植田和弘(うえたかずひろ)教授は「新エネルギー産業の振興など、新しい経済モデルを模索するべき時期に来ている」と分析。「エネルギー戦略も新しいモデルに合わせて練るべきで、貿易赤字だから原発を再稼働しようというのは本末転倒だ」と再稼働ありきの政府の姿勢を批判した。

*4-2:http://www.minyu-net.com/news/news/0407/news2.html
(2014年4月7日 福島民友ニュース) 集団訴訟、賠償に理解 「原発と人権」全国研究集会
 第2回原発と人権全国研究・交流集会in福島は最終日の6日、福島市の福島大で集団訴訟や賠償問題、脱原発など5分科会を開いた。原発被害者を支援する弁護団などでつくる実行委の主催。分科会のうち、福島地裁に2千人規模の集団訴訟を起こしている「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟原告団は「被害者訴訟原告団・みんなで交流―私たちが求めるもの、私たちが目指すもの」をテーマに開催。国を相手取った集団訴訟の先例として、水俣病訴訟に1次提訴から携わる馬奈木(まなぎ)昭雄弁護士(福岡県弁護士会)は水俣病訴訟の経験から「国と加害企業がすることは、原因の隠蔽(いんぺい)と責任逃れだ」と厳しく批判。また「国は原発事故の原因を隠すことで、東電1社を守りたいのではなく、利権構造や、さらには『原発ムラ』の構造を守っている」と指摘した。分科会には全国で原発事故の集団訴訟を起こしている原告団や弁護団が参加し、それぞれの訴訟の現状や取り組みを紹介した。

*4-3:http://qbiz.jp/article/35978/1/
(西日本新聞 2014年4月18日) 九電、夏の余力3・0% 最低限確保も他社頼み 
 九州電力が今夏、電力の安定供給に最低限必要な供給予備率3・0%を確保できる見通しを示した。原発再稼働が見込めない中、東京電力を含む他電力からの融通頼みの構図は強まるが、太陽光発電の急速な普及も需給の安定を下支えする。需給切迫時には追加融通や市場調達の道も残されており、予期せぬ深刻な発電所トラブルや気温上昇がなければ、原発ゼロでこの夏を乗り切れそうだ。九電の今夏の需給見通しによると、最大需要は昨夏並みの猛暑想定で1671万キロワット。景気回復が需要を17万キロワット押し上げるなどとして、全体では昨夏実績を37万キロワット上回ると試算。節電効果は昨夏実績の約9割の161万キロワットを織り込んだ。供給力の頼みの綱は、周波数が異なる東電からの融通だ。電源開発(Jパワー)の松浦火力発電所2号機(長崎県松浦市)の事故で西日本の供給力低下が見込まれるため、九電と関西電力は東電から計58万キロワットを受け取る。東電からの融通がなければ、九電の予備率は1・3%に落ち、関電とともに電力不足が現実味を帯びるところだった。今後、懸念されるのはフル稼働を見込む火力発電所のトラブル。九電は夏を前に設備の点検・補修を集中的に進めるが、「酷使続きでトラブルのリスクが高まっている」(九電)。仮に出力70万キロワットの大型火力が停止してピーク時を迎えれば、揚水発電への影響と合わせ供給力が140万キロワット不足する計算になる。他電力のトラブルで融通を確保できなくなる恐れもある。九電は緊急時には、東電を含む他電力からの融通積み増しや卸電力取引市場からの調達で供給力をカバーする構えで、契約に基づいて大口企業の電力使用を抑えてもらう手段もある。今夏の需給状況が「昨夏以上に厳しい」(山崎尚電力輸送本部長)のは確かで、利用者の節電努力がまず必要となる。
◆太陽光倍増、供給上積み
 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の導入で急増する太陽光発電がこの夏は存在感を増しそうだ。九州電力は、九州で稼働する太陽光の設備容量は1年前の2倍の327万キロワットと想定。夏の真昼には原発1基分に相当する94万キロワットの発電を見込む。発電量が安定せず、発電コストが高い弱点はあるものの、猛暑の電力安定供給に欠かせない電源となる。太陽光発電は真昼に出力がピークになる。九電は、過去の実績や節電の影響を踏まえ、昨年まで午後2時台としてきたピーク需要の予想を今年は同4時台に変更する。太陽光発電の出力は夕方に向けて徐々に落ちるが、それでも33万キロワットを供給力に織り込んだ。また、昼間に太陽光発電が貢献する分、ピーク時の供給力として欠かせない揚水発電を温存できる効果もある。需要がピークを迎える時間帯の揚水発電の供給力は、太陽光発電のおかげで昨年より55万キロワット多い221万キロワットに上積みできるという。この夏のピーク時の、太陽光発電の貢献は合わせて88万キロワットで、供給力の約5%を占める。「天気任せで頼りにならない」とされてきた太陽光発電への見方が変わりそうだ。


PS(2014.4.19追加):九電は、玄海原発及び川内原発の安全対策費を1千億円追加して3千数百億円にするそうだが、これは、電気料金として電力の消費者に課せられる。そのため、原発事業部を別にして原発の経費をきっちりと区別し、正しい原発の発電コストを把握すべきだ。

*5:http://qbiz.jp/article/36107/1/
(西日本新聞 2014年4月19日) 玄海、川内原発の安全対策1000億円増 九電が見通し
 九州電力の瓜生道明社長は18日、都内であった電気事業連合会の会見で、川内(鹿児島県薩摩川内市)、玄海(佐賀県玄海町)両原発の安全対策費について、従来よりも1千億円増え、3千数百億円になるとの見通しを明らかにした。九電は、原子力規制委員会による審査に基づき、川内原発1、2号機と玄海原発3、4号機で火災の延焼を防ぐ仕切りの設置や火災検知器の追加など安全対策を拡充。最大規模の津波高さ(基準津波)を引き上げた川内原発1、2号機では、海水ポンプを守る防護壁や防護堤の設置も進めており費用が拡大している。現在、原子力規制委は川内原発1、2号機の審査を優先的に進め、再稼働が現実味を帯びる。審査終了後の手続きは不透明だが、瓜生社長は「エネルギー基本計画をベースに、国も原発の必要性を説明した方が、地元も理解してもらえるのではないか」と話した。一方、玄海原発1、2号機の廃炉についての質問には「運転期間延長の申請は来年7月がリミット。秋口くらいまでにはどうするのか、検討していきたい」と述べた。

| 環境::2012.12~2015.4 | 03:52 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.4.14 地球温暖化と電気自動車、再生可能エネルギー (2014.4.15最終更新)
 
   EV-BMW      EV-Nissan       EV-iMiev    電気軽トラック

(1)温暖化ガスは、2050年に40~70%削減が必要でも、このための原発再稼動は不要である
 *1のように、IPCCが、4月13日に報告書を公表し、「2050年には2010年比で40~70%の温暖化ガスの排出削減をする必要があり、そのためには、エネルギー効率の改善に加え、再生可能や原子力といった低炭素エネルギーを3~4倍にする必要がある」としたそうだ。

 上の図のように、世界の全自動車を水素燃料電池車や電気自動車に換え、ビルや個人住宅が太陽光発電や水素燃料電池による自家発電を行うようになれば、40~70%の温暖化ガスの排出削減はできるだろうし、やる必要がある。しかし、温暖化ガス排出削減のために原子力が必要というのは意図的であり、原発による公害を軽視しているので問題である。

 そして、”景気”は、高齢者や弱者から巻き上げたり、単なる金融緩和で貨幣価値を下げたりするのではなく、このような本質的な問題を解決して人々の福利を増すための投資や消費を促すことによって、回復させるべきものだ。

(2)エネルギー基本計画で、原発は「重要なベースロード電源」としたのは誤りである
 *2のように、政府(経済産業省が中心)は、2014年4月11日に、原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、再稼働を進める方針を明記したエネルギー基本計画を閣議決定したが、原発に関する懸案事項は何も解決しておらず、事故で被害を受けるリスクは小さくないし、もちろん0ではない。

 そして、再生可能エネルギーは、2013年から3年程度、導入を最大限加速するとのことだが、原発推進に比べて推進の度合いが低く、電源比率の目標も低い。つまり、これは、「フクシマ以前に戻ろう」 という倫理感も知性も感じられないメッセージなのである。

(3)要(かなめ)となる電気自動車の普及の遅さは、何故起こるのか
 *3のように、日本市場で、日産自動車、米テスラ・モーターズ、独BMW(全員、外国人社長)等が新車を投入して市場開拓に名乗りをあげるそうだが、電気自動車や燃料電池車の普及には、自動車の排ガス規制の強化と化石燃料にかかる環境税が功を奏する。

 しかし、三菱自動車工業が1994 年に開発を始め、2006年10月にi-MiEVを発表してから、既に7年が経過しているので、水素ステーションの整備にまだ時間がかかるというのは、わが国は、電気自動車の普及に本気ではないということだ。

 EV化によって車の姿が変わるのは必然であり、新しい機能も搭載しやすく、燃費も安いにもかかわらず、古い技術にしがみついて新しい技術を発展させることができないわが国のシステムは、太陽光発電の時と同じく重要な問題だが、これは、わが国のリーダーに多い、法学部、経済学部卒の知識と学部教育の問題ではないかと思う。

*1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK13019_T10C14A4000000/?dg=1
(日経新聞 2014/4/13)温暖化ガス、2050年に40~70%削減必要 IPCC 、現状のままなら気温3.7~4.8度上昇 
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は13日、温暖化ガスの排出削減に関する報告書を公表した。国際社会が温暖化防止に向けて一段の削減努力をしなければ、地球の気温は2100年には産業革命前から3.7~4.8度上昇するとの見解を示した。各国は産業革命前からの気温上昇を2度以内に抑える目標で合意している。報告書は各国に排出削減に向けた具体策を早急に取るように求めた。 7日から始まったIPCC総会には、各国政府の政策担当者や科学者らが参加。最終的な文言の調整を進め、12日に報告書がまとまった。13日にベルリンで記者会見したIPCCのパチャウリ議長は「この報告書を読めば、国際社会が一段の取り組みをしなければならないのは明らかだ」と訴えた。報告書は気温上昇を2度以内に抑えるには、大気中の温暖化ガスの濃度を450PPM(PPMは100万分の1)に抑える必要があると説明。現在の水準は430PPMで毎年1~2PPM増えており、具体的な対策を取らなければ、数十年で達してしまう。450PPM以内にとどめるには、50年には10年比で40~70%の温暖化ガスの排出削減をする必要があると主張。エネルギー効率の改善に加え、再生可能や原子力といった低炭素エネルギーを3~4倍にする必要があると分析した。2100年には温暖化ガスの排出はゼロか、温暖化ガスの回収によってマイナスになると指摘した。IPCCは昨年9月に第1作業部会が気候変動の科学的評価に関する報告書を、3月末には第2作業部会が温暖化による被害の軽減策についての報告書をまとめた。今回はその第3弾で、7年ぶりの改訂。国際社会は15年末に、20年以降の温暖化対策の次期枠組みの合意を目指しており、この報告書が交渉に影響を与えることが予想される。

*2:http://qbiz.jp/article/35553/1/
(西日本新聞 2014年4月11日) エネ基本計画を閣議決定
 政府は11日、原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、再稼働を進める方針を明記したエネルギー基本計画を閣議決定した。原発を成長戦略の一角に据える安倍政権の方針を反映し、民主党政権の掲げた「原発ゼロ」方針と決別した。再生可能エネルギーの取り組みを強化するため関係閣僚会議を設置。「核のごみ」への対処は今回も明確に示されなかった。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後初めての基本計画となる。国民の間には脱原発を求める声が多いが安倍政権は原発を将来にわたり活用し続ける姿勢を鮮明にした。今後、再稼働に向けた準備や原発輸出の動きが活発化しそうだ。再生エネルギーは2013年から3年程度、導入を最大限加速し、その後も積極的に推進する。電源比率として、過去の政府目標の「20年に13.5%、30年に約2割」を脚注に記載。これをさらに上回る水準を目指す。

*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140413&ng=DGKDZO69811910T10C14A4PE8000 (日経新聞社説 2014.4.13) 電気自動車の革新に注目を
 一時はハイブリッド車などに押されて、エコカーとしての存在感が低下した電気自動車(EV)への関心が再び高まっている。国内市場では日産自動車などの日本勢だけでなく、米テスラ・モーターズや独BMWも新車を投入し、市場開拓に名乗りをあげた。世界的にも、独フォルクスワーゲンなどが技術開発に余念がない。EVが注目される背景の一つは、各国の厳しい燃費規制だ。欧州連合(EU)は2020年に自動車の二酸化炭素の排出規制を強化し、未達の自動車会社には巨額の課徴金を科す。米国でも排ガスゼロの車の販売台数枠を設定する動きがカリフォルニアを起点に州レベルで広がろうとしている。こうした規制を満たすには、通常のエンジンの改良では追いつかず、EVやプラグイン型と呼ばれる充電できるタイプの新型ハイブリッド車の品ぞろえが欠かせない、という意見が多い。排出するのが水だけで「究極のエコカー」とされる燃料電池車の普及には水素ステーションなどのインフラ整備が必要で、時間がかかりそうだという事情もある。EVの登場で技術革新の加速も期待される。BMWはEVの欠点である走行距離の短さを補うために、鉄に代わって炭素繊維を採用し、車体を軽量化した。エンジン不要のEVは部品点数が少なく、車の設計の自由度が高まる。EVによって車の基本的な姿が大きく変わる可能性もあり、ハイブリッドなどで先行した日本勢も油断できない。課題も多い。EVは走行距離を優先して電池を大量に搭載すれば価格が高くなり、電池を減らすと走行距離が短くなる。そんな二律背反を克服するには、動力源のリチウムイオン電池の低コスト化と容量拡大が不可欠だ。高速道路のサービスエリアなどドライブに出かけた先で手軽に使える充電インフラの整備も必要だ。これは新技術を普及させるための先行投資でもある。自動車会社の支援協力に期待したい。


PS(2014.4.15追加):電気自動車や太陽光発電は、日本が最初に開発して市場投入したため、リチウムイオン電池も日本が一番だったが、国内では、*4のように、「太陽光や風力発電は天候などで出力が不安定」として原発回帰に走り、電気自動車も本気で普及しなかった。そのため、リチウムイオン蓄電池も、サムスン電子やLG電子など、周りに遅れてから買収などであわてて対応しているが、これが、わが国のいつものパターンであり、経済停滞の理由なのである。

*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140415&ng=DGKDZO69859840U4A410C1FFB000 (日経新聞 2014.4.15) 
米加州に蓄電池特需 再生エネ向け設置義務 韓国勢が先行
 米カリフォルニア州の大手電力会社による蓄電設備の大量発注に対して、米国の蓄電池ベンチャーやサムスン電子、LG電子が営業攻勢をかけている。同州が再生エネルギーの利用拡大を目指し、電力会社に対して蓄電設備の大規模調達を義務付けたためだ。「空前の特需」だが日本勢の大半は後れをとっている。カリフォルニア州は昨年10月、PG&E、SDG&E、南カリフォルニア・エジソン(SCE)という同州上位3つの電力会社に対し2020年までに合計130万キロワット相当の蓄電設備の調達を義務付けた。太陽光や風力発電は天候などで出力が不安定になる。リチウムイオン蓄電池などでためることで、安定的な主力電源として使えるようになる。電力会社が調達を一部延期できる特例規定はあるが認可条件は厳しい。調達量について「微調整はあっても実施は揺るがない」(PG&Eのブライアン・ヒットソン規制参考人会会長)という。これを受け3社は2月末に調達計画を提出。今年夏ごろからメーカーへの発注が始まり順次、調達の規模が拡大していく。米ではマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が出資するアクイオン・エナジーなど蓄電池ベンチャーが多数台頭。サムスン電子、LG電子など韓国勢も受注に向け昨年から動き、前哨戦の電力会社の実証実験では優位に交渉している。PG&Eはサムスンなどの電池を試しているもようだ。日系メーカーの担当者が電力会社の窓口担当者に会おうとしても他社との商談で忙しいと断られる状況がある。ようやく関西電力での採用実績がある住友電工や東芝が営業担当を置いて取り組みを始めた。日本勢の遅れは否めないが、巻き返しの動きも出始めた。NECは特需を見込み、米電力会社と取引実績のある米A123システムズの大容量蓄電システム事業の買収を決めた。環境保護への意識が世界でも突出して高いカリフォルニア州は再生可能エネルギーを全体の3分の1を占める主力電源にする方針。SCEは事故を起こした原発の廃炉を昨年に決め、電力を州外などから調達している。

| 環境::2012.12~2015.4 | 11:51 AM | comments (x) | trackback (x) |
2013.12.17 科学的根拠のない「基準」は、意味がない
  
    *1より              鹿児島県川内原発周辺の人々

(1)原爆症の新認定基準は、科学的に正しいことが証明されているのか
 *1に記載されているように、厚生労働省は、内部被曝を考慮しないまま、原子爆弾被爆者医療分科会を開いて原爆症の新認定基準を決定した。*1によれば、「現行制度は、がんなど七つの疾病について爆心地から三・五キロ以内で直接被爆した人や、原爆投下後百時間以内に二キロ以内に入った人を認定してきたが、新基準では、心筋梗塞と甲状腺機能低下症、慢性肝炎・肝硬変については二・〇キロまで、白内障については一・五キロまでとし、一律に三・五キロと表現するのはやめ、現行の実質的な認定範囲を少し拡大して明確に線引きした」そうだ。厚生労働省には、医師の資格を持つ官僚もおり、「基準」を決める際には、当然、外部の論文やデータ、専門家の意見を参考にし、それを評価した筈である。

 しかし、この「基準」の決め方は、「○○キロ以内」「百時間以内」というように、一見して、単にきりの良い数字で区切っただけで、科学的・実証的であるとはとうてい思えない。今決めたところから見ても、意図的で、ご都合主義であるように見える。

 従って、厚生労働省が、もし、この「基準」が妥当だと主張するのなら、その根拠となった調査やデータを開示すべきだ。それを見て、これまでの「基準」及び「新基準」の妥当性について、現代の医学者、科学者が評価すれば、「基準」そのものの妥当性が検証できる。国民の生命・健康・人生に関わり、国民に守らせる「基準」は、その評価に耐えるだけの合理性があって初めて意味があるため、検証すべきである。

(2)厚生労働省は、公害の被害者をどう扱ってきたか
 *2のイタイイタイ病のケースでは、国の基準で公害病患者と認められないカドミウムによる腎臓障害の人に、三井金属が1人60万円の一時金を支払うことで問題解決とするそうだ。①人の一生の苦しみや人生の転換の対価がたった60万円であること ②45年も経過し、多くの被害者が死亡して対象者が減った後に問題決着すること に、私は疑問を感じる。そして、それが、国や厚生労働省の考える一人の人間の一生の価値だから、問題なのである。

 また、*3のように、水俣病の認定基準も科学的でも実証的でもなく、認定患者を少なくするための認定基準が目立った。

 そして、これは、フクシマのケースでも同じであるから、被害者になる人は、それにも気をつけなければならず、病気になった上に、大変なのである。

*1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013121702000117.html
(東京新聞 2013年12月17日) 内部被ばく考慮ないまま 原爆症 新認定基準を決定
 厚生労働省の原子爆弾被爆者医療分科会が十六日開かれ、がんや心筋梗塞など被爆者の病気を原爆症として認定する新基準が決まった。がん以外の疾病を認定する範囲はわずかに広がるが、内部被ばくについてはこれまで通りほとんど考慮しない。日本原水爆被害者団体協議会(被団協)のメンバーらは会見で「非常に残念。死ぬまで裁判を続けなければならない」と肩を落とし、「抜本的な改善が実現するまで、戦い続ける」と訴えた。
 現行制度は、がんなど七つの疾病について爆心地から三・五キロ以内で直接被爆した人や、原爆投下後百時間以内に二キロ以内に入った人などを積極的に認定する。だが現実は、がん以外は原爆放射線の影響を厳しく問う「放射線起因性」を条件として強調し、ほとんどを却下。今年六月までの約三年間で心筋梗塞は16%、慢性肝炎・肝硬変は6%しか認めていない。
 新基準では、心筋梗塞と甲状腺機能低下症、慢性肝炎・肝硬変については二・〇キロまで、白内障については一・五キロまでとした。一律に三・五キロと表現するのはやめ、現行の実質的な認定範囲を少し拡大して明確に線引きした。国は、放射線起因性を、主に直接被爆した時の線量でとらえ、その後、環境中に残った放射性物質による内部被ばくの影響はほとんどないという考え方で認定作業をしてきた。しかし、原爆投下後に広島、長崎市へ入った人にも被ばくの急性症状が出ており、却下された被爆者が各地で起こした集団訴訟では原爆症として認める判決が出ている。被爆者側は国に、放射線起因性を問う考え方をやめ、三・五キロ以内は七疾病とも原則として認定するよう求めてきた。集団訴訟の元原告団長で、新しく百八人が起こした「ノーモア・ヒバクシャ訴訟」でも原告団長になった山本英典さん(80)は「新基準で救われる人は少なく、被爆者を切り捨てるための新しい基準になりかねない。とても収まらない。死ぬまで裁判するしかない」と話した。
 国が内部被ばくをほとんど認めようとしないことについて、田中熙巳事務局長は「福島第一原発事故の被害者や、外国の基準へ影響するのを恐れているのでは」と話した。新基準は次の認定会議から適用される。

*2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013121701001247.html
(東京新聞 2013年12月17日) イタイイタイ病、全面解決へ 三井金属が一時金と謝罪 
 富山県・神通川流域で発生した四大公害病の一つ「イタイイタイ病」で、被害者らでつくる「神通川流域カドミウム被害団体連絡協議会」(被団協)と原因企業の三井金属(東京)は17日、全面解決に合意する文書への調印式を開く。イタイイタイ病の前段階の症状で、国の基準では公害病患者と認められないカドミウムによる腎臓障害を抱えている人に、三井金属が1人60万円の一時金を支払う。これとは別に被団協に解決金を支払い、謝罪。双方が問題決着と位置付ける。国が初めて公害病と認定してから45年を経てようやく合意に至る。

*3:http://digital.asahi.com/articles/TKY201312120113.html?iref=comkiji_redirect
(朝日新聞 2013年12月12日) 水俣病、認定基準の「統一を」 熊本県知事が国に求める
 熊本県の蒲島郁夫知事は12日、環境省を訪れて谷津龍太郎事務次官と面会し、水俣病の認定基準に関し、国の公害健康被害補償不服審査会が示した認定のあり方と考え方を統一するよう求めた。蒲島知事は、同省の現在の基準に従って県が水俣病と認めなかった男性について、国の不服審査会が10月、認定すべきだとして県の処分を取り消す逆転裁決を出したことに触れ、「国として二つの違った判断をされた。認定基準に従って県として責任ある認定業務を続けることは大変難しくなった。認定業務を返上する覚悟で国の考え方を確認したい」と述べた。蒲島知事によると、谷津事務次官は「真摯(しんし)に取り組むべきことと思う」と答えたが、新たな考え方を示す時期には言及しなかったという。現在の水俣病の認定基準は、申請者に複数の症状があることを事実上の条件としている。しかし最高裁は今年4月、手足の感覚障害だけでも総合的に検討して認定できるとする判決を出した。判決を受け、国と県が認定基準の運用を協議している中で不服審査会の逆転裁決が出た。


| 環境::2012.12~2015.4 | 11:38 AM | comments (x) | trackback (x) |

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