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2017.3.19 教育基本法と教育勅語の根本的な違いは、主権の所在と教育の目的である - 教育勅語と森友学園の建設地問題から(2017年3月20、21、23、24、28、31日、4月4、15日追加)

    教育勅語本文         教育勅語の読み方      上郵便振替用紙

(図の説明:左の2つは、教育勅語だ。一番右は、森友学園の籠池理事長が安倍昭恵夫人からの寄付だと主張している100万円だが、森友学園から森友学園への振込になっており、白い訂正の下には安倍晋三と記載してあるものの、文字が乱雑で感謝の心のこもった100万円の振込ではなさそうに見える)

   
森友学園校舎 横浜市立小学校校舎 松本開智学校校舎 ロンドン小学校校舎 米国高校校舎

(図の説明:森友学園の校舎は確かにあまり趣味がよくないが、横浜市立光が丘小学校も校庭が狭く、アスファルトで舗装してあり(転んだら痛そうで、思い切り運動ができないだろう)、日本の標準形の校舎だが個性や魅力がなく、子ども中心に考えられていない。そのため、日本最初の小学校である松本市の開智学校の方が気合が入って凛としており、ロンドンの小学校やアメリカの高校もよい。義務教育学校は、子どもが長期間通ってセンスを養う場所であるため、大学の建築学科の学生の卒業論文として義務教育学校の設計を提出させ、建て換えにあたってその中からよいものを採用したらどうかと考える)

(1)森友学園問題の本当のポイントは何か
1)国有財産の安値売却は、財務省の国民への背信行為であること
 *1-1のように、財務省が生活ゴミや廃材などが大量に埋まっていたという理由で、8億円値引きした安値で国有地を「森友学園」に払い下げたことについて、その土地が国有化される前に住んでいた住民は、財務省の主張を疑問視しており、森友学園による学校建設に憤っているそうだ。何故なら、その土地は、そこに災害時の一時避難地としての役割も担う公園を建設することを豊中市議会が平成11年(1999年)決議した土地だからだそうだ。

 そのため、政治家を陥れるために、メディアがステレオタイプに政治とカネを結びつけて、いっせいに国民感情を煽る報道をするだけでは、政治家への信用を落とし続け、国民の政治参加への意識を下げるだけで、民主主義に貢献してはいない。従って、問題の本質を見極めて真実を報道すべきだ。

 そこで、豊中市が土地の半分に対して支払った金額は14億2,300万円であり、豊中市が買えなかった残りの半分の評価額は9億5,600万円とされており、財務省は、その土地の地下にある埋設物の除去費用を差し引いて1億3,400万円で森友学園に売却した上、埋設物の除去及び土壌汚染対策費として、1億3,200万円を森友学園に支払ったため、森友学園は200万円でその土地を買えたわけである。この段階では、森友学園の籠池理事長はよい買い物をしただけで、非難される理由にはならず、財務省が国有財産を異常に安い値段で売却したという国民への背信行為だけが問題だったのである。

 地下の埋設物については、旧住民の乗光さんが「あの土地にゴミなんか埋まってないですよ。1960年代、私があの土地に家を建てた際、それまで水田や畑でしたから3メートルほど地面を掘ってコンクリートをしくなどの基礎工事をしっかり行いましたが、その時もゴミなんか出ませんでした。私たちが立ち退きする際、それまであった住宅は全て解体し、産廃業者が運んで行きました。立ち退き後、土地はフェンスに囲まれ、関係者以外立ち入りできなくなっていました。私たちは毎日のように、土地の状況を見続けてきましたが、(処理費8億円に相当する)トラック4,000台分のゴミが運び込まれたり、そのために大きな穴を掘り返したりというようなことが行われている様子は今まで見たことがありません」と証言している。

2)教育施設や福祉施設の立地適地は?
 学校を建てるのに、一部で報道されているような沼地でゴミが捨てられていたような場所や水田・中洲だった場所は、子どもの安全や希望・地域の中心的避難場所という意味で適していないと私は考える。入学式の頃には桜のトンネルができる坂道を登って丘の上の学校に行き、学校の鐘が周囲にも聞こえるような学校が、学校を地域の中心に据えて子どもたちを大切にしているように、私には思われる。

3)安倍首相、昭恵夫人と森友学園の関係は、ブラックではないこと
 森友学園の籠池理事長は、*1-2のように、3月16日に行われた参院予算委員会の現地調査で、「安倍首相から昭恵夫人を通じて100万円の寄付を受けた」と証言し、上の写真の郵便振込用紙が出てきたそうで、その日付は昭恵夫人が森友学園の依頼で講演を行い、名誉校長に就任した日のすぐ後とのことである。しかし、森友学園が寄付して安倍首相と関係を持ちたい理由はあっても、安倍首相がわざわざリスクを冒して森友学園に寄付する理由はなく、仮に安倍首相が政治資金から寄付したとすれば、それは監査済の政治資金収支報告書に掲載されている筈だが、今のところ、そういう指摘はない。

 また、*1-3のように、「2015年9月頃、籠池氏が安倍首相から昭恵夫人を通して100万円をもらった」として、上の写真の郵便振替用紙を証拠として示しているが、この郵便振替用紙は森友学園が森友学園に振り込んだことを示すもので、安倍首相が寄付した証拠にはならない。そのため、森友学園の監査人に、この振込用紙の金の出所は森友学園自身の他の口座でないのかを聞きたいものである。

 そして、百歩譲って、昭恵夫人(森永創業者の孫で安倍首相より金持ち)が個人で100万円を森友学園に寄付していたとしても、家族だからといって昭恵夫人が完全に首相のコントロール下にあるわけではなく、講演を頼まれ名誉校長(名誉市長と同様、何の権限もない)にも就任させてもらったから寄付したとも考えられる上、寄付すること自体は罪ではない。さらに、有名人に講演を依頼するというのは、既に親しいからではなく、親しくなるためにするケースが多く、昭恵夫人は罠にはまったように見えるのだ。

 そのため、私は、安倍首相が「私や妻が(国有地売却や学校認可に)関係していたことになれば首相も国会議員も辞める」「複数の中でお目にかかったかもしれないが、少人数ではなく、個人的な関係は全くない」と言われたのは本心だろうと思う。なお、森友学園の籠池理事長は、とかく有名政治家との関係を誇示したがるが、パーティーで握手したり、会話したりするのは、政治家にとっては普通のことであり、そうしたからといって出会った多くの人の中の一人を、特別の特徴がない限り覚えているわけではない。

(2)森友学園の教育内容は現代日本にふさわしくないことが、問題の本質だ
1)日本国憲法に基づく教育の目的と理念
 日本国憲法に基づく教育の目的と理念は、*2-1のように教育基本法に記載されており、教育の目的は、「本人の人格完成を目指して、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた国民を育てること」である。そのために、①幅広い知識と教養、真理を求める態度を養う ②豊かな情操と道徳心を培う ③健やかな身体を養う ④個人の能力を伸ばして創造性を培う ⑤自主・自律の精神を養う ⑥勤労を重んずる態度を養う ⑦正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んじ、公共の精神に基づいて主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養う ⑦生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養う ⑧伝統・文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う 等としている。

 その中で、1)学校教育は公の性質を有する 2)学校では教育の目標が達成されるように教育を受ける者の心身の発達に応じて体系的な教育を組織的に行う 3)私立学校は、公の性質及び学校教育において果たす重要な役割に鑑み、国及び地方公共団体が自主性を尊重しつつ助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない とされており、政治教育については、4)良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない 5)法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならないとしている。

 このうち、上の1)3)が、大阪府や国が学校の設置に協力した論拠になるが、森友学園は2)5)に反しており、学校法人としての認可を与えたのが適切か否かが問われる。

 さらに、森友学園の園児が暗唱している敎育勅語は、*2-2のように、「①朕(ちん)惟(おも)フ(う)ニ 我(わ)カ(が)皇祖(こうそ)皇宗(こうそう) 國(くに)ヲ肇(はじ)ムルコト宏遠(こうえん)ニ 德(とく)ヲ樹(た)ツルコト深厚(しんこう)ナリ」「我(わ)カ(が)臣民(しんみん) 克(よ)ク忠(ちゅう)ニ 」と、天皇主権を前提に国民を天皇の臣下と位置づけ、天皇に忠を尽くすよう教えているため、日本国憲法に反する。

 また、「②克(よ)ク孝(こう)ニ」というのは、自分を犠牲にして親や家に尽くすことを要求し、親が決めた相手と結婚させられる悲劇が多かったため、日本国憲法は、第25条で「婚姻は両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関して、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない」としたのである。

 その上、敎育勅語の「一旦(いったん)緩急(かんきゅう)アレハ(ば) 義勇(ぎゆう)公(こう)ニ奉(ほう)シ(じ) 以(もっ)テ天壤(てんじょう)無窮(むきゅう)ノ皇運(こううん)ヲ扶翼(ふよく)スヘ(べ)シ」というのは、*2-4のように、第二次世界大戦中、老若男女を問わず、国民に異論を言わせず戦争に駆り立て、死ぬことを強要する根拠となったものだ。

 そのため、日本国憲法は、第9条で戦争の放棄を定め、第11条ですべての国民に基本的人権を認め、第12条で国民の不断の努力によつてこれを維持しなければならない としているのである。

2)稲田朋美防衛大臣の資質問題について
 安倍首相は、右寄りの稲田防衛大臣を引き立てて育てているが、左よりの元内閣府特命担当大臣(消費者・食品安全、少子化、男女共同参画)の森雅子氏も同様に引き立てており、この2人の選択根拠は、①女性の抜擢 ②どちらも旧森派 ③どちらも選挙区で勝利 など、稲田氏が右よりだからではない。

 その稲田防衛大臣は、*2-3のように、「教育勅語の精神を取り戻すべきだと今も思う」「文科省の方に『教育勅語のどこがいけないのか』と聞きました」「教育勅語の精神である日本が道義国家を目指すべきであること、そして親孝行だとか友達を大切にするとか、そういう核の部分は今も大切なものとして維持している」等と述べている。しかし、私自身は、教育勅語の推進は、第二次世界大戦の敗因を真摯に受け止めておらず、国民主権をないがしろにしている点で、大きな憲法違反だと考えている。

 そのため、日本国憲法は第19条で「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」としているものの、憲法違反の考えを推進する政治家や行政官に関しては、全政治家の品位を低く印象付ける政治とカネ問題や嘘をついた等の人格問題や道義的責任などという法律に定めのない曖昧な責任問題にすり変えるのではなく、憲法違反の思想信条や国造りの方針について単刀直入に追求すべきだと考える。

*1-1:https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20170313-00068645/ (YAHOO 2017/3/13) 【森友学園】裏切られた元地権者たち―8億円埋設物も「そんなものはない」、志葉玲 | フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
 政府がただ同然の安値で、学校法人「森友学園」に、国有地を払い下げた問題で、その土地が国有化される前に住んでいた住民達の代表が、筆者のインタビューに応じた。元々の地権者たち157名は、皆、森友学園による学校建設に憤っており、また生活ゴミや廃材などの大量の埋設物がその土地に埋まっていたという政府の主張に対しても疑問視しているという。
○裏切られた元地権者達
 今回、インタビューに応じたのは、乗光恭生さん。森友学園が「安倍晋三記念小学校」こと、「瑞穂の国記念小学院」を建設している大阪府豊中市野田町で町内会長をしている。今回問題になっている土地には、かつて157人の住民がいたと乗光さんは言う。航空機の騒音対策や阪神淡路大震災を受けての避難場所確保という目的から、1970年代から1990年代にかけ、国は豊中市の協力のもとで土地の国有化を進めてきた。だが、乗光さんは当初の目的と違うかたちで土地が使われていることに、「裏切られた」と憤っているという。「今、森友学園が小学校を建設している土地は、本来、そこに災害時の一時避難地としての役割も担う公園を建設するということを豊中市議会が平成11年(1999年)決議した土地です。野田町も阪神淡路大震災で大きな被害を受けましたから、私たち住民は地域のため、被災者支援のためにと、区画整理に応じ、あの土地から立ち退き、多額のお金を投じて新たに住居を立てたのです。私自身、元の家の解体と今の家の建築に3000万円ものお金を使いました。全ては、地域のため、公園をつくるためにしたことです」(乗光さん) 。野田市による公園建設の計画書。公園の右側になるはずの土地を森友学園が取得ところが、豊中市はその後、いつまでたっても公園の建設を始めない。森友学園による国有地取得の経緯について、最初にその問題を告発した木村真・豊中市議会議員はこう語る。「乗光さん達が住んでらっしゃった土地の確保やその後の公園建設という使い道については、国と豊中市で合意していたはずでした。ところが、国は急に態度を変え、公園をつくりたいなら、土地を相応の値で買え、と強硬に迫ったのです。豊中市は財政的事情から、本来、公園するはずだった土地の半分しか買えませんでした。買えなかったもう半分の土地というのが、森友学園が国土交通省大阪航空局と財務省近畿財務局から取得し、『瑞穂の国記念小学院』を建設している土地なのです」。既に報道されているように、豊中市が本来取得するはずの土地の半分に支払った金額は、14億2300万円。他方、豊中市が買えなかった、もう半分の土地は評価額が「9億5600万円」とされ、さらに土地の地下にある埋設物の除去費用を差し引いて、1億3400万円で森友学園に売却された。その上、国側は埋設物除去や土壌汚染対策として、1億3200万円の有益費を森友学園を支払った。つまり、本来は地域の人々のための公園になるはずだった土地を、国は豊中市に対しては値下げしない一方、森友学園には実質200万円で売却してしまったのである。乗光さんは、やるせない思いを吐露する。「あそこが公園になって、(住居の移転のため)お金を出した価値が戻るのであって、そうならないのなら、私たちにとっては損失ばかりです。しかも、あんな酷い学校を建てるなんて…」「もう、私も年ですから、そう長くは生きられないでしょう。妻にも去年、先立たれました。あの土地が公園になって地域に残せてこそ、私も安心して逝けます」(乗光さん)。
○埋設物は本当にあったのか?
 森友学園による国有地取得の際の8億1900万円の控除と、1億3200万円の有益費の根拠とされている地下埋設物についても疑問が残る。乗光さんは「あの土地にゴミなんか埋まってないですよ」と語る。「1960年代、私があの土地に家を建てた際、それまでは水田や畑でしたから、3メートルほど地面を掘ってコンクリートをしくなど基礎工事をしっかり行いましたが、その時もゴミなんか出てきませんでした。私たちが立ち退きする際、それまであった住宅は全て解体し、産廃業者が運んでいきました。立ち退き後も、土地はフェンスに囲まれ、関係者以外立ち入りできないようになっていました。私達の新たな住居も、あの土地のすぐそばで、私たちは毎日のように、土地の状況を見続けてきました。しかし、(処理費8億円に相当する)トラック4000台のゴミが運び込まれたり、そのために大きな穴を掘り返したりというようなことが行われている様子を、私たちは今まで見たことがありません」(乗光さん) 。もし、乗光さんの言うように、トラック4000台分という膨大な埋設物が実際に埋まっていないとしたら、最初から森友学園に激安で土地を提供するため、埋設物についての調査結果をねつ造したのではないか―そんな疑念が出てくる。そして、仮にそうだとしたら、なぜ官僚たちがそこまでしたのか、誰からの圧力があったのか、ということも明らかにしないといけないだろう。
○疑惑の解明はこれからだ
 「瑞穂の国記念小学院」については、森友学園側は認可申請を取り下げ、籠池泰典理事長も辞任する意向を表明した。だが、あくまで森友学園側は、土地を所有し続け、「瑞穂の国記念小学院」の認可もあきらめていないという。国側が買い戻すにしても、国有地が不正に払い下げられた疑惑を解明するべきだ。そして、その土地の国有化の経緯を考えれば、乗光さんら元地権者の意見を尊重すべきだろう。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASK3J6GKDK3JUTFK01N.html
(朝日新聞 2017年3月16日) 籠池理事長を23日に証人喚問 自民・民進が合意
 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題をめぐり、学園の籠池(かごいけ)泰典理事長は16日の参院予算委員会の現地調査で「安倍晋三首相から昭恵夫人を通じて100万円の寄付を受けた」と証言した。首相側は即座に寄付を否定。自民、民進両党は、籠池氏の証人喚問を23日に衆参各院で行うことで合意した。籠池氏の新証言で、籠池氏との個人的な関係を否定してきた首相の答弁の信用性が問われかねない事態になり、これまで参考人招致を拒んできた自民側が、うそをついた場合に偽証罪に問える証人喚問が必要と判断し、民進側に提案した。籠池氏は大阪府豊中市の小学校建設現場を視察した参院予算委の与野党メンバーに対し、2015年9月に学園の幼稚園に講演に来た昭恵氏から「どうぞこれをお使い下さい。安倍晋三からです」と言われ、建設寄付金として100万円を手渡されたと証言。「名前は書いていないが、日付が入ったものはある」とも述べた。これに対し、菅義偉官房長官は記者会見で、「首相に確認をしたところ、『自分では寄付はしていない。昭恵夫人、事務所等、第三者を通じても寄付していない』ということだった」と述べた。昭恵氏が個人として寄付したかどうかは確認しているという。首相も記者団に「官房長官から話があった通り」と語った。証言を受け、自民、公明両党の国会対策委員長は国会内で会談。「首相に対する侮辱だ」(自民の竹下亘国対委員長)として証人喚問に応じる考えで一致。竹下氏は民進の山井和則国対委員長と電話会談し、衆参それぞれの予算委員会で23日に証人喚問を行うことで合意した。17日に正式決定する。国有地売却の不透明な経緯や政治家の関与が国会で議論となるなか、首相は「私や妻が(国有地売却や学校認可に)関係していたことになれば首相も国会議員も辞める」(2月17日の衆院予算委)と断言。籠池氏については「複数の中でお目にかかったかもしれないが、少人数ではない。個人的な関係は全くない」(同28日の参院予算委)と答弁していた。
     ◇
〈証人喚問〉 国会の国政調査権を定めた憲法62条に基づく制度。うそをついた場合は、議院証言法に基づき国会から告発され、偽証罪(3カ月以上10年以下の懲役)に問われる。正当な理由なく、出頭や証言を拒否しても禁錮刑や罰金を科せられる。近年では、2012年4月にAIJ投資顧問による年金資産詐取事件の浅川和彦社長、07年10月に防衛汚職事件の守屋武昌・元防衛事務次官、05年12月に耐震偽装事件の元建築士らが喚問された。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/ASK3J520TK3JUTFK00P.html
(朝日新聞 2017年3月16日) 籠池氏、調査に「首相から100万円」 官房長官は否定
 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地払い下げ問題をめぐる参院予算委員会の16日の現地調査で、籠池(かごいけ)泰典理事長への聞き取り調査を終えた舟山康江氏(民進)が記者団に「(籠池氏が)安倍(晋三)首相から、(昭恵)夫人を通して100万円をもらった、と語った。時期は2015年9月ごろ」と説明した。一方、菅義偉官房長官は同日午後の記者会見で、首相に確認したところ、「自分では寄付していない。昭恵夫人、事務所等、第三者を通じても寄付していない」との説明があったことを明らかにした。昭恵氏が個人として寄付したかどうかについても、念のために確認していることも説明した。現地調査では、山本一太委員長ら11人が学園が開校をめざしていた大阪府豊中市の小学校建設現場も視察した。敷地内では、籠池氏の案内を受けた。学園や籠池氏について、首相はこれまで、国会で「私や妻が(国有地売却や学校認可に)関係していたことになれば首相も国会議員も辞める」(2月17日の衆院予算委)、「複数の中でお目にかかったかもしれないが、少人数ではない。個人的な関係は全くない」(同28日の参院予算委)と答弁している。

*2-1:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO120.html
教育基本法 (平成十八年十二月二十二日法律第百二十号)
第一章 教育の目的及び理念
(教育の目的)
第一条  教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
(教育の目標)
第二条  教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一  幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二  個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三  正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四  生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五  伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
(生涯学習の理念)
第三条  国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。
(教育の機会均等)
第四条  すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
2  国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
3  国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。
第二章 教育の実施に関する基本
(義務教育)
第五条  国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
2  義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
3  国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。
4  国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。
(学校教育)
第六条  法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
2  前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。
(大学)
第七条  大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
2  大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。
(私立学校)
第八条  私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。
(教員)
第九条  法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
2  前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。
(家庭教育)
第十条  父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。
2  国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。
(幼児期の教育)
第十一条  幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。
(社会教育)
第十二条  個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。
2  国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。
(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)
第十三条  学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。
(政治教育)
第十四条  良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。
2  法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
(宗教教育)
第十五条  宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。
2  国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
第三章 教育行政
(教育行政)
第十六条  教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。
2  国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。
3  地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。
4  国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。
(教育振興基本計画)
第十七条  政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。
2  地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。
第四章 法令の制定
第十八条  この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない。
   附 則 抄
(施行期日)
1  この法律は、公布の日から施行する。

*2-2:http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/kyoiku_chokugo.htm
敎育ニ關スル勅語(全文)
 朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世々厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ敎育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重ジ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ獨リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン
斯ノ道ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ
明治二十三年十月三十日
御名御璽

教育勅語の読み
朕(ちん)惟(おも)フ(う)ニ 我(わ)カ(が)皇祖(こうそ)皇宗(こうそう) 國(くに)ヲ肇(はじ)ムルコト宏遠(こうえん)ニ 德(とく)ヲ樹(た)ツルコト深厚(しんこう)ナリ
我(わ)カ(が)臣民(しんみん) 克(よ)ク忠(ちゅう)ニ 克(よ)ク孝(こう)ニ 億兆(おくちょう)心(こころ)ヲ一(いつ)ニシテ 世(よ)世(よ)厥(そ)ノ美(び)ヲ濟(な)セルハ 此(こ)レ我(わ)カ(が)國體(こくたい)ノ精華(せいか)ニシテ 教育(きょういく)ノ淵源(えんげん)亦(また)實(じつ)ニ此(ここ)ニ存(そん)ス
爾(なんじ)臣民(しんみん) 父母(ふぼ)ニ孝(こう)ニ 兄弟(けいてい)ニ友(ゆう)ニ 夫婦(ふうふ)相(あい)和(わ)シ 朋友(ほうゆう)相(あい)信(しん)シ(じ) 恭儉(きょうけん)己(おの)レヲ持(じ)シ 博愛(はくあい)衆(しゅう)ニ及(およ)ホ(ぼ)シ 學(がく)ヲ修(おさ)メ 業(ぎょう)ヲ習(なら)ヒ(い) 以(もっ)テ智能(ちのう)ヲ啓發(けいはつ)シ 德噐(とくき)ヲ成就(じょうじゅ)シ 進(すすん)テ(で)公益(こうえき)ヲ廣(ひろ)メ 世務(せいむ)ヲ開(ひら)キ 常(つね)ニ國憲(こくけん)ヲ重(おもん)シ(じ) 國法(こくほう)ニ遵(したが)ヒ(い) 一旦(いったん)緩急(かんきゅう)アレハ(ば) 義勇(ぎゆう)公(こう)ニ奉(ほう)シ(じ) 以(もっ)テ天壤(てんじょう)無窮(むきゅう)ノ皇運(こううん)ヲ扶翼(ふよく)スヘ(べ)シ 是(かく)ノ如(ごと)キハ 獨(ひと)リ朕(ちん)カ(が)忠良(ちゅうりょう)ノ臣民(しんみん)タルノミナラス(ず) 又(また)以(もっ)テ爾(なんじ)祖先(そせん)ノ遺風(いふう)ヲ顯彰(けんしょう)スルニ足(た)ラン
斯(こ)ノ道(みち)ハ 實(じつ)ニ我(わ)カ(が)皇祖(こうそ)皇宗(こうそう)ノ遺訓(いくん)ニシテ 子孫(しそん)臣民(しんみん)ノ倶(とも)ニ遵守(じゅんしゅ)スヘ(べ)キ所(ところ) 之(これ)ヲ古今(ここん)ニ通(つう)シ(じ)テ謬(あやま)ラス(ず) 之(これ)ヲ中外(ちゅうがい)ニ施(ほどこ)シテ悖(もと)ラス(ず) 朕(ちん)爾(なんじ)臣民(しんみん)ト倶(とも)ニ 拳拳(けんけん)服膺(ふくよう)シテ 咸(みな)其(その)德(とく)ヲ一(いつ)ニセンコトヲ庶(こい)幾(ねが)フ(う)
明治二十三年十月三十日
御名(ぎょめい) 御璽(ぎょじ)

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/ASK385H5KK38UTFK00M.html (朝日新聞 2017年3月8日) 稲田氏「教育勅語の精神、取り戻すべきだと今も思う」
 稲田朋美防衛相は8日の参院予算委員会で、天皇を頂点とする秩序をめざし、戦前の教育の基本理念を示した教育勅語について、「日本が道義国家を目指すというその精神は今も取り戻すべきだと考えている」と述べた。社民党の福島瑞穂氏に答えた。学校法人「森友学園」が運営する幼稚園で教育勅語を素読させていることに文部科学省が「適当ではない」とコメントしたことについて、稲田氏は2006年10月の月刊誌で「文科省の方に『教育勅語のどこがいけないのか』と聞きました」と擁護していた。福島氏は「今もこの考えを変えていないのか」と問うた。稲田氏は「教育勅語の精神である日本が道義国家を目指すべきであること、そして親孝行だとか友達を大切にするとか、そういう核の部分は今も大切なものとして維持をしているところだ」と述べた。福島氏が、教育勅語が終戦後の1948年に衆参両院が排除・失効の確認を決議していることを指摘すると、「教育勅語自体が全く誤っているというのは私は違うと思う」と反論。三重県の私立高校を例に挙げて、「今も教育勅語の碑を校庭に置き、父母の日に教育勅語を全部写させている学校もある」と述べた。福島氏から「教育勅語が戦前、国民の道徳の規範になって問題を起こしたという意識はあるか」と問われると、「そういうような一面的な考え方はしていない」と答えた。稲田氏は2月23日の衆院予算委員会でも民進党の辻元清美氏から教育勅語に対する考え方を問われ、「教育勅語の中の親孝行とかは良い面だ。文科省が言う、(教育勅語を)丸覚えさせることに問題があるということはどうなのかと思う。どういう教育をするかは教育機関の自由だ」と答えていた。

*2-4:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-461489.html (琉球新報社説 2017年3月16日) 全学徒隊の碑 「強制動員」の歴史忘れまい
 糸満市摩文仁の平和祈念公園内に「全学徒隊の碑」が建立された。今から72年前、県内21の中等学校、師範学校などの生徒(学徒)が沖縄戦に動員され犠牲になった事実を伝える。沖縄に配備された日本軍の任務は、沖縄を守り抜くことではなく、米軍を一日でも長く引きつけて「出血消耗」させ、日本本土への攻撃を遅らせることだった。そのために少年少女たちは半ば強制的に動員され、約半数が命を落とした。学徒隊として「ひめゆり」や一中、二中、師範の鉄血勤皇隊が知られるが、その他の学徒隊はあまり知られていない。全学徒隊の碑の建立を機に、改めて沖縄戦の実相を明らかにし後世に伝える重要性を確認したい。動員された学徒のうち、男子は14歳から19歳で、上級生は「鉄血勤皇隊」に、下級生は「通信隊」に編成された。女子は15歳から19歳で、主に負傷兵の看護活動に当たった。正確な数字は不明だが、ひめゆり平和祈念資料館によると、男女1900人以上が動員され981人が死亡した。男子学徒の動員は「志願」という形を取っているが、結果的に強制だった。米軍押収史料によると、軍が県と覚書を交わして、14歳以上の生徒の名簿をあらかじめ軍に提出させていた。その名簿に基づいて3月末、有無を言わせず学徒たちを召集し、2等兵として従軍させた。女子生徒の動員に対し、県は抵抗したが軍に押し切られた。軍の強制とはいえ、県が軍に協力した事実を忘れてはならない。爆薬を背負って米軍戦車めがけて自爆することを命令された学徒もいる。刀や手りゅう弾だけで敵に向かっていく斬り込みも命じられた。命を武器として扱う特攻である。学徒の犠牲は日本軍が首里の司令部を放棄して南部撤退後に多くなる。米軍が迫って来た6月上旬~下旬、学徒隊ごとに解散命令が出た。周りを米軍に囲まれ、砲弾が降り注ぐ中、逃げ惑い、悲惨な最期を遂げた。沖縄戦は終わったが、今でも世界の紛争地には多くの少年たちが徴兵・徴用されている。今回建立された碑は、沖縄戦の実相を伝えると同時に、子どもの生命を脅かし夢と希望を奪う行為を許してはならない-というメッセージを発信する場となってほしい。


PS(2017年3月20日追加):*3によると、昭恵夫人は「寄付した記憶は全くない」と話しておられるそうだが、「記憶がない」という言葉は、「①寄付したが言わない」「②寄付したかも知れないが忘れた」「③寄付していない」のどの場合にも使うことができ、これまで①の場合に使う人が多かったため、かえって疑いが濃くなる。そのため、寄付したことを明確に否定するか、寄付したのならその理由を明確に説明するのがよいだろう。いずれにしても、夫人であって首相本人ではない。

*3:http://mainichi.jp/articles/20170317/k00/00e/040/219000c (毎日新聞 2017年3月17日) 昭恵夫人が100万円の寄付否定
 菅義偉官房長官は17日午前の記者会見で、大阪市の学校法人「森友学園」の籠池(かごいけ)泰典理事長が発言した「安倍晋三首相から昭恵夫人を通じて100万円の寄付を受けた」との事実を否定した。「安倍事務所を通じて夫人に確認したところ、領収書等の記録もなく、夫人個人としても寄付は行っていないということだった」と述べた。衆院予算委員会は17日昼、籠池氏の証人喚問を23日に行うことを全会一致で議決した。参院予算委も同じく23日の喚問を議決した。政府関係者によると、昭恵さんは「寄付した記憶は全くない」と話している。籠池氏が寄付を受けたと主張した2015年9月の昭恵さんの講演に同行した政府職員も「寄付をするような場面はなかった」と証言しているという。菅氏は証人喚問について「国会でお決めになることだ。政府は説明を丁寧に行っていくことに尽きる」と述べた。証人喚問は12年4月、AIJ投資顧問の年金消失問題で同社社長(当時)に行って以来。自民、公明両党は17日午前、幹事長らが国会内で会談し、証人喚問を行う方針を確認した。自民党の二階俊博幹事長は記者会見で、16日の参院予算委の視察で籠池氏が首相の寄付に言及したことについて「物事をはっきりしてもらいたい。首相とああいう人(籠池氏)を一緒にしないでもらいたい」と語った。証人喚問は出頭を拒否したり虚偽答弁をしたりすれば、議院証言法に基づき罪に問われる。与党は籠池氏の真意をただす必要があると判断。野党も応じた。民進党の蓮舫代表は党会合で「首相が侮辱されたから国会に招くのではない。国有地が首相の知人に不当に払い下げられたのではないか。この視点を間違えてはいけない」と語った。森友学園の民事訴訟に出廷していたことを認めた稲田朋美防衛相は「しっかり事実関係、真実を話してほしい」と発言。籠池氏が言及した首相の寄付に関して「全く承知していない」と語った。


PS(2017年3月23日追加):話は変わるが、*4のように、学童保育を高齢者の介護施設に併設すると、子どもは高齢者から勉強や遊び方、昔話、高齢者のやさしさなどを教えてもらうことができ、高齢者は子どもの元気を分けてもらうことができるので、お互いによいと思われる。

*4:https://www.agrinews.co.jp/p40429.html (日本農業新聞 2017年3月22日) 福祉施設に併設 子育て 地域ぐるみ 熊本・JAくま 直営学童保育
 熊本県のJAくまが、中山間地域のあさぎり町で学童保育(学童)の運営に乗り出している。既存の施設が人手不足や採算性の悪さで維持が難しくなったため、JAが手を挙げた。学童をJAの高齢者介護施設に併設し、両施設で人員を融通することで安定的な経営を実現した。保護者や地元行政から喜ばれており、専門家は「地域に根差す取り組み。JA直営は全国的にも珍しい」と指摘する。


PS(2017年3月24日追加):昨日の参院及び衆院予算員会で籠池氏の証人喚問を聞き、①西田議員(自民党、税理士)の質問で、籠池氏が8億円程度の資金不足だったこと ②竹谷議員(公明党、公認会計士)の質問で、籠池氏が真実のみを回答しているわけではないこと がよくわかった。さらに、現在、焦点となっている「昭恵夫人が100万円の寄付をしたか」については、国会議員は悪意で何を言われるかわからないので、必ず秘書等と一緒に人(メディアも含む)と会うようにしており、昭恵夫人の場合も人払いをしたというのは嘘だと思われる。
 また、*5の籠池氏が国有地の借地権延長に関して谷氏に手紙を出した回答のFaxは、昭恵夫人は電話がかかってきた時に出ておらず、夫人担当の政府職員が調べて0回答したもので瑕疵はないように見える。国会議員(夫人も)はこういうことを陳情する支持者に明確に断るとカドがたつため、こういう曖昧な断り方をすることがあり、これは断っている態度だ。しかし、その後、ゴミが埋まっていたとして8億円値引きして国有地が売却され、学校建設のために足りなかった費用の埋め合わせができており、籠池氏は「職員の働き掛けで物事が動いた」と証言している。もし、首相や昭恵夫人が何も言わないのに勝手に“忖度(そんたく)”したのなら、国民の財産を自分の出世ために安売りしたのであるため財務省担当者に責任があり、もし首相の指示があって物事が動いたのなら首相の責任になる。

 
 2017.3.23   2017.3.6  2017.2.21goo  2017.3.23goo  2017.3.24
 毎日新聞    朝日新聞                     朝日新聞  

(図の説明:籠池氏は「ゴミの除去は建物の下のみやった」と述べているが、本当にゴミがあったのなら運動場の方が子どもへの影響が大きいため重大だ。また、国の査定額と大阪府私学審議会への報告の差額は8億円程度であり、8億円の土地値引きがあると資金繰りに整合性が出る)

*5:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017032301001653.html (東京新聞《共同》 2017年3月23日) 森友、昭恵夫人の担当職員関与 財務省に照会、菅氏は影響否定
 菅義偉官房長官は23日の記者会見で、大阪市の学校法人「森友学園」の国有地払い下げ問題に絡み、学園理事長の退任意向を表明している籠池泰典氏の問い合わせに対し、安倍昭恵首相夫人を担当する政府職員が回答した2015年のファクスを公表した。ファクスは国有地に関し財務省に問い合わせ、結果を昭恵夫人に報告したと明記した。籠池氏は同日の衆院予算委員会の証人喚問で職員の働き掛けで「物事が動いた」と証言した。菅氏は昭恵夫人の関与や照会の影響を否定した。森友学園が小学校建設を計画した国有地を評価額よりも8億円安く取得した問題を巡り、昭恵夫人側の関与が明らかになった格好だ。


PS(2017.3.28追加):監査経験のある公認会計士の目で見ると、財務省は定期借地権の延長や借地料の値下げは(影響が長期に及び、関係者が多数になるため?)できず、売買に切り替えてゴミ撤去費用の名目で8億円値引きし、周辺の地価と比べて9割安の条件で土地を売却したというシナリオが矛盾が最も少ない。しかし、その際には、①新年度予算のうち他の兆円単位、1000億円単位の無駄遣いと比較して大きいか否か ②学校用地として8億円値引きして払い下げるのは不適切か ③経産省や財務省への政治家の指示があったか否か などが問題となる。
 私は、①については、8億円でも無駄遣いはやめて欲しいが、財務省や国会議員は、他の兆円単位や1000億円単位の無駄遣いを野放しにして、国民の生命線である福祉を削ったり、消費税を上げなければ財源がないなどとは決して言って欲しくない。また、②については、教育基本法第八条に、「私立学校も助成その他の適当な方法で私立学校教育の振興に努める」と規定されているため、よい学校への土地の低廉譲渡は違法ではないが、森友学園の場合は教育勅語をバイブルとし、籠池理事長が証人喚問で「皇国日本に役立つ国民を育てる」と連呼するなど、民主主義や主権在民を無視した教育を行う人であるため、そもそも認可したり優遇したりすべき学校ではなかったのだと考える。そして、③については、政治家の指示があったか否かは不明だが、このような学校に関わってその教育方針を褒めちぎっていたことについては、やはり昭恵夫人や安倍首相の感性に疑問を感じざるを得ない。
 そのため、この土地は、豊中市か大阪府か国が建物とともに買い、建物は他の学校にするとか、避難所にするなど、他の有意義な使い方をするのがよいと思われる。

*6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12863223.html
(朝日新聞社説 2017年3月28日)森友と財務省 納税者を甘く見るな
 森友学園(大阪市)を巡る様々な問題について国会で激しい論戦が続くなか、国の新年度予算が成立した。与党からは「次のステージに向かう時だ」との声があがり、幕引きを急ごうとする動きが見られる。とんでもない。学園の籠池(かごいけ)泰典氏の証人喚問を経ても疑惑は晴れない。安倍首相夫人の昭恵氏や昭恵氏付の政府職員の行動が、学園への異例づくしの国有地売却などに影響したのか、事実関係の徹底解明が不可欠だ。見過ごせないのは、取引の経緯を詳しく説明しようとしない財務省の姿勢である。国有地の売却ではその金額を原則公表してきたのに、森友側との取引では伏せた。財務省近畿財務局によるこの異例の対応が一連の疑惑の発端になった。遊休国有地の取引は売買が主流なのに、定期借地契約を認めた。その後売買に切り替えたが、ゴミ撤去費用を巡る不明朗な見積もりを経て、周辺の地価と比べて9割安という破格の条件になった。財務省は「適正に処理した」と繰り返す。交渉記録は廃棄したから残っていない。法令違反はない。関係者への聞き取り調査はしていない――。最近になって一部の調査結果を公表したが、自分たちが正しいから信じろと言わんばかりだ。国会では当時の理財局長と近畿財務局長の参考人招致が実現したが、「報告がなかった」「政治的配慮はしていない」との発言にとどまった。財務省の仕事は、国有財産の管理と不要な資産の処分にとどまらない。税制を考え、それに基づいて税金を徴収し、予算案として配分を練るという政府の仕事の中核を担っている。そうした役割は納税者・国民の理解と納得に支えられている。財務省を含む政府の説明が明らかに足りないと考える人が多数を占める現状に、危機感はないのだろうか。ただちに関係者から話を聞き、誰がどう動いたかを再現して、国会で説明するべきだ。自ら調べる意思がないのなら、第三者に任せるしかない。土地の売却契約の成立から1年もたたずに記録を廃棄したとしているのも適切でない。内規に基づく措置だというが、内規自体が情報公開を充実させる基本に反していることを自覚し、猛省しなければならない。かたくなな財務省は何を心配しているのだろう。自らの組織の防衛か、森友問題で浮上した政治家への配慮なのか。納税者の目は厳しい。甘く見れば必ずしっぺ返しがある。


PS(2017年3月28日追加):「安倍首相の妻昭恵氏が公人か私人か」については、私は公人として報酬をもらっていない以上、私人だと考える。これに対し、①首相の外遊への同行など首相の公務遂行を補助する活動を行っている ②夫人付き職員が首相関連の公的活動を支援するために配置されている 等の理由で公人だという主張があるが、①については、首相夫人は選挙で選ばれた議員ではなく、首相の外交にプラスαの付加価値をつけるため無償で行っている内助の功にすぎないため、公人と考えるべきではないだろう。また、②については、配置されている夫人付き職員は報酬をもらってプロの仕事をしているので公人だが、夫人は無償で内助の功をしているにすぎないため、公人ではないだろう。そして、仮に配偶者が公人であるとすれば、配偶者にも報酬を支払うべきであり、その職務に耐えうる配偶者を持っている人でなければ首相になることはできないため、変なことになる。つまり、何でも政治家に不都合なように拡大解釈してケチをつけると常識外れになり、むしろ支持率が下がるのだ。

*7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201703/CK2017032802000108.html (東京新聞 2017年3月28日) 【政治】「昭恵氏は私人」に野党が異議 首相夫人付き職員が「職務外」の照会報告
 学校法人「森友学園」に国有地が格安で払い下げられた問題で、安倍晋三首相の妻昭恵氏が、公人か私人かが問われている。首相は昭恵氏を「私人」と主張し証人喚問を拒否している。だが、学園に関連して、首相夫人付き職員が本来の職務を超えて対応している実態をみると、昭恵氏が「私人」との主張には疑問符が付く。 政府によると、夫人は公務員ではないが、首相外遊への同行など「首相の公務遂行を補助する活動」を行う。夫人付き職員は、首相に関連した公的活動を支援するため配置されている。第一次安倍政権で昭恵氏に初めて配置され、その後一人だったが、第二次安倍政権で常勤、非常勤で計五人に増員された。学園の籠池(かごいけ)泰典氏の依頼で、夫人付き職員が財務省に問い合わせてファクスで回答したことについて、菅義偉官房長官は二十七日の参院予算委員会で、夫人とは関係ない職務外の行為であり、「職員個人の行為」だと強調した。さらに、土生(はぶ)栄二内閣審議官は「職務ではなく『国民の方』の問い合わせに対する公務員としての『丁寧な対応』」と説明した。しかし、職員は昭恵氏に照会や回答について報告。そのことを籠池氏にも伝えている。民進党の白真勲氏は同委員会で「詭弁(きべん)だ」と反発した。職員は、昭恵氏が学園系列の幼稚園で講演し、小学校の名誉校長になった際に「連絡・調整が必要になる場合に備えて」同行した時に籠池氏と面識を持ったとみられる。職員が昭恵氏に報告したのは、籠池氏との関係を知っていたからだ。首相夫人付き職員は学園での講演のように、昭恵氏の私的な行為にも同行している。「夫人は公務員ではないから公人ではない」との説明には野党から批判が出ている。


PS(2017年3月31日、4月4日追加):*8-1に、「政府は、憲法や教育基本法等に反しない形で教育勅語を教材として用いることは否定されないと閣議決定した」と書かれているが、*2-2の最後には、「教育勅語に書かれていることは、天皇のためだけでなく、祖先の遺した文化であり、この道徳は皇祖・皇宗の遺訓であって子孫・臣民が倶に遵守すべきだから、古今に通じて護らなければならない」と記載されている。そのため、それなら、このどこを憲法や教育基本法等に反しない形で教材として利用できるのかを明示すべきだ。私自身は、教育勅語は日本史や文化人類学の教科書で教えることができるにすぎず、民主主義の下で日進月歩しており、古今で決して同じではない人類の生活様式やそれに基づく考え方とは相いれない。さらに、日本史や世界史は、「古事記や日本書紀等の文書に残されていないから、そういう事実はなかった」とするような非科学的な史実ではなく、地理学・遺伝学・考古学・行動学・社会学・比較文化等のあらゆる手法を駆使して、人類の誕生・気候変動・地殻変動・人類の地球上での拡散・それに伴って起こった戦争や文化の拡散などを、体系的かつ矛盾なく明らかにすべき時に来ており、現在の科学は既にその手法を持っている。そして、そうすることによって歴史は暗記科目ではなく筋の通った科学にすることができ、その中で、実験することが不可能な人間の行動や社会現象は過去の歴史を見れば過去にも似たようなことが起こっていて参考になることがあるわけだ。
 なお、*8-2の4月4日の記事に書かれているように、松野文科相は、「(教育勅語の)どの部分が憲法に反する、反しないに関して文科省は判断しない」として判断基準を明示しなかったそうだが、それなら文科省は教科書検定も行うことができない筈だ。しかし、本当は、(首相の問題と言うより)自民党の党是であり自民党のDNAと言われる自民党憲法改正草案(①天皇元首制 ②日本国民→日本国への変更 ③基本的人権の制限 等)や特定秘密保護法、共謀罪、安保法制と、この教育勅語復活論は考え方が同根で、下位の法律からのなし崩し的憲法改悪であるため、関連付けて考えるのがポイントである。

   
   教育勅語の排除・失効   稲田大臣の答弁  2017.3.31、2017.4.4朝日新聞

*8-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK3045LBK30ULFA00Q.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2017年3月31日) 教育勅語、教材で用いること否定せず 政府が答弁書
 政府は31日、戦前・戦中の教育勅語を学校教育で使うことについて、「勅語を我が国の教育の唯一の根本とするような指導を行うことは不適切である」としたうえで、「憲法や教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」との答弁書を閣議決定した。民進党の初鹿明博衆院議員の質問主意書に答えた。勅語については、太平洋戦争後の1948年、衆参両院が排除・失効の確認を決議している。また、稲田朋美防衛相が国会答弁で「親孝行や友達を大切にするとか、そういう(勅語の)核の部分は今も大切なもの」と述べたことの是非について、答弁書は「政治家個人としての見解」とし、政府としての見解を示さなかった。

*8-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12875229.html
(朝日新聞 2017年4月4日) 教育勅語、説明避ける内閣 教材で使用認める閣議決定
 戦前・戦中に道徳や教育の基本方針とされた「教育勅語(ちょくご)」を教材で使うことを認めた政府答弁書の閣議決定について、安倍内閣が詳しい説明を避けている。学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題を追及されるなか、教育勅語が注目されるきっかけをつくった稲田朋美防衛相も口を閉ざした。
■判断基準、文科相明示せず
 3日の衆院決算行政監視委員会。共産党の宮本徹氏は、「教育勅語の中で憲法に反しない部分は1カ所でもあるのか」と政府の見解を問うた。先月31日に安倍内閣が閣議決定した政府答弁書は、過去に国会が排除・失効の確認を決議した教育勅語を「憲法や教育基本法等に反しないような形」で教材として使うことを認めたからだ。使用を認めるのであれば、政府として具体的な判断基準を示す必要があるが、松野博一文部科学相は「(教育勅語の)どの部分が憲法に反する、反しないに関しての判断を文部科学省でするものではない」と解釈を避けた。そのうえで「教え方がポイントだ。我が国の歴史について理解を深める観点から教材として用いることは問題がない」と説明した。菅義偉官房長官も3日の記者会見で、教育勅語の本質や戦争中に教育勅語が果たした役割を問われたが、「法制上の効力は喪失している」と繰り返し、教材として教育現場で使うことは問題ないとの立場を強調。「教育勅語を我が国の教育の唯一の根本となるような指導を行うことは不適切だ」とする一方で、親孝行や夫婦仲良くといった徳目は評価する見方を示した。政権を支持する保守層には、教育勅語を評価する声が少なくない。記者たちから「教育勅語の内容を評価すると、戦前の否定をあいまいにすることになるのではないか」と問われると、「あいまいにしていないじゃないですか。法制上の効力は完全に消滅している」と、声を荒らげた。
■森友巡る防衛相答弁端緒
 論争のきっかけは、森友学園への国有地売却問題を追及された稲田氏の答弁だった。
 稲田氏は、教育勅語を幼稚園児に素読させている学園の教育方針を2006年の雑誌の対談で評価していた。2月23日の衆院予算委員会や3月8日の参院予算委でこの考え方を問われ、「教育勅語に流れているところの核の部分は取り戻すべきだ」などと発言した。稲田氏の一連の発言を受けて質問主意書を出し、今回の政府答弁書を引き出した民進党の初鹿明博氏は、「教育勅語の核は(天皇中心の)神話的国体観であり、それに閣僚が賛意を示すことは国際社会に疑念を与えてしまう」と話す。文科省によると、教育勅語の学校現場での使われ方に言及した答弁書は今回が初めて。作成に関わった同省生涯学習政策局政策課は「意図的に踏み込んで言ったわけではない。明治時代に出されたことを教えることまで禁止できないことを表現するためにあの書き方になった」と説明する。これに対して、共産の小池晃書記局長は3日の会見で、「ひとたび事が起これば天皇のため命を捧げるという教育勅語の根本は戦後、憲法や当時の教育基本法に反するから排除された。いいところがあるから使おうと閣議決定するところに、安倍政権の危険な姿勢が表れている」と批判した。共産の宮本氏はこの日の衆院決算行政監視委で、海上自衛隊OBらがつくる「水交会」の行事に海自幹部が出席するなか、森友学園の幼稚園児たちが教育勅語を唱和していたとも指摘。「おかしいと思う幹部はいなかったのか」とただした。稲田氏は「部外の団体主催の行事の内容について、防衛省としてお答えする立場にはない」と述べ、具体的な回答を避けた。


PS(2017年4月4日追加):教育勅語は、「天皇の臣民である日本国民が、心を一つにして忠孝に励むのが教育の目的である」としている。そのため、それを校是としている学校を認可するのは、いくら私学に入ってきてもらいたいといってもいかがなものかと考える。何故なら、それぞれの段階の教育は、その人にとっては一生に一度しか受けられないやり直し不可能なものであるため、単なる煩雑な手続ならともかく、教育の内容や質については、規制緩和すればよいというものではないからだ。
 なお、私は、先日、夫の学会(癌やバイオテクノロジーが中心で、これに関しては後で詳述する)に同伴してスペインに行き、マドリッドのプラド美術館とバルセロナのピカソ美術館・ミロ美術館に寄ってきたが、幼稚園から高校までの生徒が先生に引率されてひっきりなしに来ており、絵の前で説明を受けたり、ディスカッションしたり、あらかじめ配布された用紙に答えを書いたりしていたのに感心した。私は、このように広い裾野の生徒にセンスのよい創造力を身につけさせるため本物を見せる教育こそ、単純労働はロボットに置き替えられる時代の人間にとって必要不可欠だと考える。何故なら、そういう基礎があって初めて、部屋・レストランのコーディネートや服・カバン・靴・家電のデザインで、思わぬ色や形を組み合わせながら、センスのよさが光っているのだからである。

    
     教育勅語     籠池氏経営、塚本幼稚園の教育  松井大阪府知事の話 
 
*9:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12875189.html
(朝日新聞社説 2017年4月4日) 森友学園問題 大阪府も解明に全力を
 学校法人・森友学園の問題では、小学校の設置認可をめぐる様々な疑問も未解明のままだ。学園側の申請に対し、大阪府私学審議会には多くの異論があったのに、なぜ「認可適当」と答申したのか。学校用地に関する財務省と府の言い分も大きく食い違う。政府をチェックする国会はもちろん、認可に責任をもつ府も徹底調査すべきだ。学園が府に認可を申請したのは14年10月。同年12月の府私学審では、「永続的に小学校を運営できるか疑問」「思想教育のような部分がある」などの指摘が噴出した。だが翌年1月に臨時に開かれた審議会は、「進捗(しんちょく)状況を報告させる」という条件つきで、認可適当とした。府私学審の梶田叡一会長は先月の府議会で「学園が用地を取得する前に、認可の審議に入ったのは極めて異例だった」としたうえで、府が認可の見通しを出せば、国(近畿財務局)の審議会で森友側に国有地が渡る「確約があった」と語った。疑義に目をつむって、府と財務局が認可の流れを作ったように受け取れる。公平な審査がなされたのか、大いに疑問だ。松井一郎知事も会見で、「国から『認可の見込みと発表してくれ』と言われた」と、国側の要請があったことを認めた。しかし財務省は否定する。両者で責任を押しつけあっていては、らちが明かない。双方が公の場で詳細を語るしかない。府議会では、この問題のための百条委員会の設置案が否決された。自民の提案に、大阪維新の会と公明が反対した。維新の会代表の松井知事は賛意を示していたのに、理解に苦しむ。反対理由は「まず参考人招致をするのが筋」だった。ならば速やかに財務省や大阪航空局の担当者を招き、府議会として事実関係をただすべきだ。理事長を退いた籠池(かごいけ)泰典氏は国会の証人喚問で、協力を求めた複数の議員名をあげた。中には自民や維新の元府議もいる。真相にどこまで迫れるか、府議会の本気度が問われる。知事は、安倍昭恵氏が小学校の名誉校長だったことに触れ、「役所組織みんなでおもんぱかったのだろう」と語った。公正であるべき行政手続きを逸脱しなかったか、検証する必要がある。昭恵氏が名誉校長に就任したのは15年9月。14年12月にも、学園が運営する幼稚園で講演している。まさに府が認可を審査していた時期だ。府は補助金不正受給の疑いで幼稚園を調査したが、それ以外にも明らかにすべき点は多い。幕引きモードは許されない。


PS(2017.4.15追加):*8-1のように、教育勅語の教材化を否定しないことを閣議決定した上、*10のように、ヒトラーの「わが闘争」の教材使用を可能とする政府答弁書を出すなど、この頃、内閣はどうかしている。なお、歴史としてなら、これまでも日本史や世界史で教えており、わざわざ閣議決定をしたり、政府報告書を出したりする必要はない。

*10:http://www.jiji.com/jc/article?k=2017041401032&g=pol (時事ドットコム 2017.4.14) 「わが闘争」の教材使用可能=政府答弁書
 政府は14日の持ち回り閣議で、ナチス・ドイツの独裁者ヒトラーの自伝的著書「わが闘争」の教材使用について、「教育基本法等の趣旨に従っていること等の留意事項を踏まえた有益適切なものである限り、校長や学校設置者の責任と判断で使用できる」とする答弁書を決定した。民進党の宮崎岳志氏の質問主意書に答えた。答弁書では、「同書の一部を引用した教材を使用して、執筆当時の歴史的な背景を考察させる授業が行われている例がある」と紹介。その上で、「仮に人種に基づく差別を助長させる形で使用するならば、同法等の趣旨に合致せず、不適切であることは明らかだ」と指摘し、そうした指導があった場合は「所轄庁や設置者において厳正に対処すべきものだ」としている。

| 教育・研究開発::2016.12~ | 11:23 AM | comments (x) | trackback (x) |
2017.3.10 東芝・三菱重工・日立の原発による損失と原発の手終い方 - まず日本が再稼働せずに直ちに脱原発し、廃炉・使用済核燃料の処理に取り掛かるべきである (2017年3月11、12、14、15、16、17、20日、4月6、8、12日に追加あり)
  
 事故前後の   2号機の   除染された表土     従来の放射性廃棄物 
福島第一原発  ロボット調査   の野積み            の保存法
      2017.2.10東京新聞  毎日新聞

(図の説明:2号機のロボット調査で毎時650シーベルトの放射線量が観測されたが、2号機は被害が小さかった原発であり、3号機は爆発して放射性物質が噴出しており、その結果、関東まで含む広い範囲が放射性物質で汚染されているのである)


 2015.5.22   軍艦島            池島         池島の坑道
 朝日新聞
(図の説明:高レベル放射性廃棄物の最終処分場は、一番左の図のように地下300メートル以下とされているが、軍艦島や池島の深い坑道なら、水の下で人が近づくこともなく、既に地下がある。そのため、防御をしっかりすれば比較的安価に高レベル放射性廃棄物の最終処分場を作れるのではないだろうか)

(1)東芝・三菱重工・日立の原発による損失について
1)東芝の原発による損失
 東芝は、*1-1、*1-2のように、2017年2月14日に、2016年4~12月期連結決算で、ウェスチングハウス(以下、“WH”と記載)などの原子力事業に7,125億円の損失を計上すると発表したが、これで2015年3月期に計上した2,476億円の損失と合わせて1兆円弱の原子力事業に関わる損失を計上することとなった。しかし、WHが米国の原発4基の完成をあきらめて撤退すると、さらにWHの電力会社への違約金が生じる契約で、その親会社保証が2016年3月末で約7,935億円あるそうだ。

 しかし、「世界でエネルギー事情が変化しても、米国での原発建設を2020年末までに終えなければ、WHが工事費の増加とは別に違約金を負担し、それを親会社の東芝が保証する」という契約は、あまりにも東芝に不利にできており、このような契約を結ぶのは、営業や経営の実力のなさである。そして、このように災害に似たリスクを負う場合は保険をかけるのが通常であるため、保険もかけていなかったとすればお粗末すぎる。

 さらに、2017年3月9日の報道によれば、*1-3のように、建設工事の遅れで今後発生する損失を抑えるため、東芝が米原発子会社WHに米連邦破産法11条の適用を申請する方向で調整に入るそうだが、米国政府がWHの事業に83億ドル(約9,500億円)の債務保証をしていたとしても、契約通り処理して米原発子会社WHを破綻させるのが、誰もが納得できる問題の少ない解決策である。この際、米国民の負担や米政府の反応を気にして、日本政府が日本国民の税金を投入する理由は全くなく、徹底した契約社会で法治国家の米国は、日本政府が言い出さない限り、そのような解決策は期待しないだろう。

2)東芝の半導体事業について
 東芝は、*1-3、*1-4のように、1982年という日本では最も早い時期に超LSI研究所を設置し、クリーンルームに230億円の設備投資をした、半導体では先進的な会社であり、半導体は東芝の中核事業になっていた。にもかかわらず、東芝は、その半導体事業を分社化して設立する新会社の全株式売却も視野に入札手続きを進め、その売却額を1兆5千億〜2兆5千億円と想定しているそうだ。

 しかし、経営者と原発事業部長の判断ミスによる原発損失を半導体事業部など他の事業部の売却等で賄うと、それまでこれらの事業部で小さな製品を作りながら着実に頑張ってきた従業員はたまったものではない。従って、(私が提案してできた)持株会社方式を使って事業部毎に子会社とし、それぞれの事業部を独立採算制にしておけばよかったのだ。また、現在の日本には、(これも私が提案して)連結納税制度もできているため、事業部毎に100%子会社にすれば支払税金は増えず、事業部毎に直面している異なる市場環境で適切な意志決定を迅速に行うことができ、さらに現場から経営者までの階層が短くなるため、情報伝達が容易になった筈なのだ。

 東芝は、2017年1月27日の取締役会で、*1-4のように、半導体メモリー事業を分社化し、それをWHの巨額損失を補填するために売却することを決定した。そのような中で、東芝の半導体メモリー事業が、*1-5のような投資ファンドの餌食にならないためには、売却する相手はシナジー効果の出る他の製造業でもよいが、半導体事業部の有志が出資して銀行借り入れを行い、「東芝メモリー(仮称)」のような独立した会社を作るマネージド・バイ・アウトという方法もある。こうすると、東芝が解体された後で、優良部門だけが集まって東芝を再構築する機会もできる。

3)三菱重工、日立について
 原発で損をしそうなのは東芝だけではなく、*1-6のように、三菱重工業も、66億ドルという巨額の損害賠償請求訴訟を起こされているそうだ。

 また、*1-7のように、日立の子会社は、英国中部に2020年代前半の稼働を目指し、総事業費2兆円超の原発2基を建設するが、受注競争のためにJBICや政投銀が日立の子会社に融資や株式の買い取り支援を行うそうなのだ。ここでも、原発という過去のエネルギーに対して、日本政府が日本国民の金を「兆円」単位で投入しており、その結果が国民負担になるのは目に見えている。

(2)使用済核燃料の最終処分について
 事故を起こしていない原発にも、*2-1のように、使用済核燃料の最終処分という問題がある。九州電力は玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働後を見据えて、使用済核燃料の乾式貯蔵施設を建設する敷地内候補地の選定作業に着手し、①まず3号機の貯蔵プールの容量を増強し ②次の段階として原発敷地内での乾式貯蔵施設の新設 を挙げている。

 また、原子力規制委員会は、*2-2のように、水や電気を要しない空冷の保管容器の導入を促すために、原発の使用済核燃料の保管に関する基準を緩和する方針を決めたそうだ。

 しかし、フクイチ事故を見ればわかるように、多量の使用済核燃料を貯蔵していること自体も危険で、乾式貯蔵のように空気の通りがよい場所で保管すれば、空気が汚染される危険性が高いので、使用済核燃料の貯蔵に関しても、少くも30km圏内の近隣住民の同意を要件とすべきだ。

 私自身は、*2-3のように、過去のエネルギーである原発廃棄物の最終処分場の建設やその運営に「3.7兆円+α」を支払うよりは、すでに石炭採掘後の広い地下空間があり、海面下の地下深くで人が近づかず、安全に保管できる長崎県の池島か軍艦島の深い坑道に空冷の保管容器を保存するように整備するのが、過去のエネルギーという点では一致しており、安価で、新しい観光スポットにもなるため、よいと考える。もちろん、島民のうち原発廃棄物の最終処分場建設に伴って移住したい人には、その費用を負担すればよいだろう。

(3)玄海原発再稼働について
 九州電力玄海原発3、4号機の再稼働に関して、佐賀県は、*3-1のように、2月21日に初めての県民説明会を唐津市民会館で開き、唐津市や玄海町だけでなく佐賀県内各地から192人が参加し、会場からは原発の必要性や安全対策を疑問視するなど、再稼働への反対や懸念を示す意見が相次いだそうだ。住民は真剣に考えた上で反対しているのであるため、説明会を単なるプロセスとして形式的に説明会さえ終われば再稼働してもよいなどと考えるべきではない。

 また、*3-2のように、半径30キロ圏外では初めて武雄市文化会館で開かれた説明会には、周辺市町の首長・職員・住民ら117人が参加し、会場から「再生可能エネルギーや蓄電池などの開発に国策を転換して」などの意見が上がったそうだ。再稼働に慎重姿勢の谷口嬉野市長は、エネ庁の法的に地元の同意は必要ないとの明言について、「事故があればわれわれも避難する立場であり、同意を取ってほしい」としており、尤もだ。

 さらに、*3-3のように、原発再稼働に関する佐賀市の住民説明会には234人が参加して不満が噴出したそうだ。原発は、平時でも海水を利用して熱を逃がしているため、「海温め装置」と言われており、漁業環境を変化させて漁獲減に繋がっている。

 原発再稼働に関する佐賀県内4カ所目の県民説明会は、*3-4のように、2月28日に伊万里市民会館で開催され、周辺市町の住民らを含めて388人が参加し、安全性などへの疑問点を質問し、会場からは「福島原発事故の収束や原因究明も終わらない状態で、なぜ再稼働を急ぐのか」「避難訓練が必要なほどのリスクの中で進める理由が分からない」との批判や「再稼働ありきで検討が進んでいる」との不信感も漏れ、使用済核燃料保管の問題や、テロなどでの航空機墜落事故の際の安全対策への疑問が出たそうで、全く尤もである。

 *3-5のように、佐賀県では5会場での県民説明会を終え、国と九電が再稼働の必要性や安全対策に関する紋切り型の説明をしたが、参加者から容認する意見はなく、安全性への不安や必要性への疑問が相次ぎ、九大大学院の吉岡教授(科学史)は、県民の参加状況に関して、「周知不足だけではなく、県の姿勢に期待が持てず『形だけのスケジュールを消化している』と多くの住民が判断したのではないか」と見ているそうだ。

 玄海原発の再稼働に反対する佐賀県内の複数の団体は、*3-6のように、3月9日に説明会を要望し、全市町での県民説明会の開催や再稼働に反対・慎重の意見を持つ専門家の説明会などを佐賀県に求めたそうで、これは必要なことだ。

 また、九電玄海原発3、4号機の再稼働に同意した岸本玄海町長に対しては、*3-7のように、脱原発を訴える市民団体のメンバーが、町役場で抗議して同意撤回を求めている。

(4)リーダーたちの見解
 大震災から6年経過したが、*4-1のように、①原発被災地では今も8万人が避難生活を強いられ ②地域社会の再生は見えず ③除染が終わったと連絡が来ても線量は十分に下がっておらず ④避難指示解除とともに東電が家賃の支払いを停止する のは問題だとして抗議している状況だ。

 原子炉は炉心溶融を起こしたとされているが、それは事実とは思えず、3号機は爆発して核燃料を噴出したというのが正しいだろう。その証拠は、爆発時の映像、ぐにゃりと曲がった鉄骨だけの建物の残骸、「まだわからない」とされている惨状である。そして、東電がロボットを投入した2号機は、1、3号機よりは被害が小さかったが、650シーベルトの放射線量を記録しており、溶け落ちた核燃料を取り出す道筋は見当もつかないのだそうで、その対応の無責任さには呆れるほかない。

 原発の賠償・除染・廃炉等の費用について、経産省は昨年末、総額21.5兆円にのぼるとの見通しを示し、これは従来想定の2倍で、巨額の負担が電気料金や税金として国民にのしかかるが、21.5兆円という金額は年間消費税の8.6%分だ。従って、原発のコストは非常に高く、早々に再稼働なしの脱原発を進めるべきなのである。

 このような中、*4-2のように、日本カトリック司教団は、 2016年11月11日、「地球という共通の家に暮らすすべての人」に向け、「原子力発電の撤廃を―福島原子力発電所事故から5年半後の日本カトリック教会からの提言」と題するメッセージを発表して原発撤廃を呼び掛け、世界のカトリック教会に協力と連帯を要請したそうだ。これは、世界が共通の認識を持つための重要な一歩になる。

 これに先立って、日本仏教の多くの宗派も、*4-3のように、2012年6月26日の段階で原発への反対表明をしており、今後は世界の仏教圏へのアクセスが望まれる。

 政治では、*4-4のように、民進党が3月7日、「原発ゼロ基本法案」の国会提出を明記した政策方針を了承したそうだ。私は、再稼働なしの原発ゼロ実現に向けて、自然再生可能エネルギーの利用を促進し、これまでの原発立地自治体には、他の産業で成り立つ方法を提供するのがよいと考えている。

<東芝・三菱重工・日立について>
*1-1:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170215/biz/00m/010/032000c (毎日新聞 2017年2月17日)「撤退なら違約金8000億円」米原発やめられない東芝
●債務超過に転落(3)
 東芝は2月14日、2016年4~12月期連結決算で、ウェスチングハウスなど原子力事業に関して7125億円の損失を計上すると発表した。15年3月期にもウェスチングハウスで2476億円の損失を計上しており、原子力事業は2年間で9601億円もの損失を出したことになる。ほぼ1兆円という莫大(ばくだい)な損失。2011年の福島第1原発事故以降、原発をめぐる社会環境が一変したことに、東芝の経営陣は目をつぶってきた。そのツケが一気に噴出したのだ。急激な環境変化にもっと早く対応していれば、ここまで大きな損失にはならなかったのではないか。14日の記者会見で、東芝の綱川智社長は、原子力事業について(1)米国4基、中国4基の建設中の原発はあらゆるコストを削減して完成させる(2)原発新設は原子炉供給などに特化し、今後、土木建築工事は受注しない(3)原子力事業の売上高の8割は既存原発の燃料・サービスであり、安定したビジネスとして継続する(4)再稼働、メンテナンス、廃炉事業は継続するーーと説明した。
●新たな損失の可能性は?
1兆円近い損失を出した8基の原発新設で、今後、新たな損失が出ることは本当にないのか。二度あることは三度あるのではないか。もっと抜本的に原発事業を見直さないと、また別の損失が出てくるのではないか。記者の質問はそこに集中した。記者の一人と、綱川社長の会見に同席した畠澤守・常務原子力事業部長との間で次の質疑があった。  記者「海外の原発建設で、今後、東芝のコスト負担は最悪どのくらい出てくると見込んでいるのか」。原子力事業部長「今回発表の損失に見込んだ将来コストの見積もりは、かなり保守的に積み上げた数字だ。将来のコストなので、リスクがないと言えばうそになる。ただ、そのリスクの最小化に努めていく」。記者「現状でまだ見えていないリスクはあり得るのか」。原子力事業部長「我々はこれから(原発の建設に関する)効率改善に取り組むが、それが期待通りにいかないリスクはある。ただ、今の最悪の状態が続く前提で損失額を計上した。改善しないという可能性はゼロではないが、少ないと思っている」
●電力会社への支払い保証
これだけひどい目にあった建設中の原発から、東芝が全面撤退することはできないのか。その手がかりになる事情が、14日に公表された東芝の資料の一番最後にあった。「ウェスチングハウスに対する親会社保証」と書かれた1枚の資料だ。そこには「16年3月期 有価証券報告書の記載額(偶発債務及び保証類似行為)」として「16年3月末 7934億9900万円 ※米国AP1000の客先に対する支払い保証が90%弱」と書かれていた。さらに、「米国AP1000プロジェクトにおいてウェスチングハウスの客先への支払い義務(プロジェクトを完工できなかった場合の損害賠償請求を含む)を履行できなかった場合、東芝はウェスチングハウスの親会社として、客先にこれを支払うことが要求されている」との注記があった。AP1000は、ウェスチングハウスが建設中の原発に導入する予定の新型原子炉だ。客先とは、原発建設をウェスチングハウスに発注した電力会社のことだ。もしいま、ウェスチングハウスが米国の原発4基の完成をあきらめて撤退すると、電力会社に「7934億円」の違約金を支払う義務があるということだ。そして、東芝は親会社としてそれを保証しているのだ。この保証は現時点も続いている。すでに損失1兆円が発生した事業。ここで退けば、さらなる地獄が待っているという状況の一端が、この1枚のペーパーに記されていた。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12832302.html (朝日新聞 2017年3月9日) 東芝、新たな損失恐れ 20年末に税制優遇期限 米原発建設
 東芝が、米国で手がける原発4基の建設工事を2020年末までに終えられなければ、工事費用の増加とは別に、新たな損失が最大数千億円規模で生じる可能性があることが分かった。発注元の電力会社が米政府の税制優遇を受けられなくなり、東芝側に補償を求める公算が大きいためだ。工期を期限ぎりぎりの20年12月まで延長した原発もあり、さらに遅れれば再び大きな損失が出かねない。05年に定められた米政府の税制優遇では、20年末までに運転を開始した新設の原発は、発電量1キロワット時当たり1・8セントを税金から差し引く「税額控除」を8年間受けられる。海外電力調査会などによると、この4基の税額控除は1基当たり最大11億ドル(約1250億円)になる見込み。4基とも間に合わなければ、電力会社は5千億円規模の税制優遇を失う計算で、東芝側が求められる補償も数千億円規模になる可能性がある。東芝の米原発子会社ウェスチングハウス(WH)は先月、原発4基について3度目となる工期延長を電力会社2社に要請。最も遅いサマー3号機は20年12月の完成を見込み、1カ月の遅れも許されない状況だ。WHは4基を08年に受注。13年に工事を始めたが、4年経ったいまも約3割しか終わっていない。世界の原発事情に詳しい環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は「過去の経緯からみて、さらに工期が遅れる可能性は高い。その際、電力会社が東芝側に補償を求めるのは自然な流れ」と話す。補償を求められる可能性について、東芝は「コメントできない。現在の目標で工事を終わらせるよう努力する」(広報担当)としている。税制優遇を巡っては昨年、地元下院議員が20年末の期限を撤廃する法案を議会に提出したが、廃案になった。今年も同趣旨の法案を提出する動きがあるが、成立するかは不透明な状況だ。

*1-3:http://qbiz.jp/article/105252/1/ (西日本新聞 2017年3月9日) 東芝、WHに米破産法申請で調整 銀行団へ数千億融資要請を検討
 経営再建中の東芝が、米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)に米連邦破産法11条の適用を申請する方向で調整に入ったことが9日、分かった。日本の民事再生法に相当する制度を活用し、建設工事の遅れで今後発生する損失を抑える狙いだ。近く最終判断する。WHの事業には米国政府が83億ドル(約9500億円)の債務保証をしている。破産法が適用された場合、米国民の負担が発生して外交問題に発展する恐れがあり、米政府の理解を得られるか流動的な側面もある。東芝もWHの事業に債務保証をしており、破産法適用が認められたとしても、今後も原発の建設費用などで応分の負担を迫られる。このため東芝は、取引銀行団に数千億円規模の追加融資を要請する検討に入った。この2年で東芝がWH関連で計上する損失額は1兆円規模に上る。WHが米国で進める原発建設は工事の遅れが常態化している。来年度以降も巨額の損失が発生すれば、東芝の経営が立ち行かなくなる危険があり、経営陣は破産法の活用に傾いたもようだ。社内には「(適用申請には)数カ月かからない」(幹部)との声もある。東芝は、半導体事業を分社して設立する新会社について、全株式売却も視野に入札手続きを進める。売却額は1兆5千億〜2兆5千億円を想定しているが、売却完了は2017年度後半となる見通し。それまでに原発建設の費用が膨らみ、手元資金が不足する恐れがあるため、銀行借り入れで乗り切りたい考えだ。支援を受けるため、半導体の新会社の株式を一時的に融資の担保とする案が浮上している。建設中の米原発は、当初16年から順次稼働する計画だったが、延期を繰り返している。東芝は現段階でも人件費などで計61億ドル(約7千億円)のコスト増になると試算しており、完成が遅れると費用はさらに拡大する。

*1-4:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170203/biz/00m/010/002000c (毎日新聞 2017年2月6日) 「8500億円半導体事業切り売り」は東芝解体の第一歩
●東芝解体の危機(6)
 東芝は1月27日に開いた取締役会で、半導体メモリー事業の分社化を決めた。分社化後、株式の2割弱を入札で売却し、得た資金で米原子力事業の巨額損失を補てんする。すでに10社程度の売却候補の名前があがったり消えたりしている。半導体メモリーは、東芝の中核事業だ。その2割弱の株式を外部に売ることは、どんな意味を持つのか。 2016年1月26日付の毎日新聞東京朝刊より  東芝の発表によると、分社化の対象は、東芝の社内カンパニーであるストレージ&デバイスソリューション社のメモリー事業。「NAND型フラッシュメモリー」の開発、製造、販売部門だ。東芝の主力製品であり、稼ぎ頭である。製造拠点は三重県の四日市工場だ。分社化する部門の2015年度の売上高は8456億円、営業損益は1100億円の黒字。売上高に対する営業利益の比率は13%で、かなり高い利益率をあげている。東芝は15年度、不正会計が発覚し、連結売上高5兆6000億円に対し、営業損益は7191億円の大赤字だった。半導体メモリーだけがまとまった稼ぎをあげていた。
●NANDの世界シェアは2位
 「NAND」は「ナンド」と読む。小型の記憶媒体のことだ。スマホや携帯音楽プレーヤーの記憶装置に多用され、デジカメのメモリーカードや、パソコンに接続するUSBメモリーにも使われている。「NAND」という名前は、コンピューターの演算の種類である「Not」と「AND」を組み合わせたものだ。フラッシュメモリーの「フラッシュ」は、書き込んだ内容を一瞬で消せることから付けられた。NAND型フラッシュメモリーは東芝が1980年代に開発した。携帯音楽プレーヤーやスマホが広がるにつれ、需要が急速に伸びてきた。ただし、世界シェアのトップは、韓国サムスン電子。東芝は2位、3位は四日市工場で東芝と共同で投資を行っているウエスタン・デジタルだ。もともと東芝の半導体は、「DRAM(ディーラム)」と呼ばれるコンピューターに使われる製品が主流だった。80年代に生産量が世界一になったこともある。当時は東芝、日立製作所、NECがシェア上位を競っていた。ところがその後、サムスン電子など韓国勢が大がかりな投資で製品を量産して価格攻勢をかけ、東芝は競争に負けて00年代はじめに撤退する。代わって力を入れたNAND型フラッシュメモリーが、スマホなどの普及で東芝の屋台骨に育った。
●後ろ向きの分社化
 半導体部門の分社化は、経営の意思決定のスピードアップや、設備投資に振り向ける巨額資金を外部から調達するという前向きの狙いでこれまでも検討されてきた。ただし、外部資本を入れると、その分、配当という形で利益の一部を外部に流出させることになり、決断までに至らなかった。今回は、原子力事業の巨額損失の穴埋めのために、分社化することになった。打って出る前向きの分社化ではない。1月27日の東芝の記者会見でも、記者から次のような質問が相次いだ。「稼ぎ頭であるNANDを切り離し、それで得る資金を成長分野に振り向けるシナリオもあったが、それができなくなった。追い込まれる前にやっておくべきだったのでは」「主力事業を切り売りする形になって、本当に東芝の再生は果たせるのか」 東芝の綱川智社長=2017年1月27日、根岸基弘撮影  これに対して綱川智社長は「分社化がNAND事業を強化する一助になればと考えている。再建に向かって頑張りたい」と通り一遍の回答だった。半導体事業を担当する成毛康雄副社長は「東芝全体の危機と受け止めて、乗り切ることに注力したい」と短く回答するのみだった。半導体は分社化して2割弱の外部資本を導入した後、どういう道を歩むのだろうか。これは、どんな外部資本が株式を保有するかにかかっている。次回はそのあたりを詳しく解説する。

*1-5:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170206/biz/00m/010/006000c (毎日新聞 2017年2月7日) 東芝半導体新会社に群がるファンドの百鬼夜行
●東芝解体の危機(7)
 半導体メモリー事業の分社化を決めた東芝は、さっそく、入札で株式の2割弱を売却する手続きに入った。すでに、10社前後の売却候補の名前が挙がったり消えたりしている。投資ファンド、銀行系ファンド、事業会社だ。このなかで、有力なのは投資ファンドだ。入札するかどうかは判明していないが、事前に名前が挙がったのは米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)、米ベインキャピタル、米シルバーレイク・パートナーズ、英ペルミラといった名前だ。いずれも世界的に名前の知られたファンドで、日本でも実績のある大どころが並ぶ。投資ファンドに詳しいある関係者は、「まだほかのファンドが出てくる可能性がある。半導体メモリー事業に興味があるファンドは多いはず」と見る。投資ファンドの目的ははっきりしている。数年後に新会社を上場させ、株式の価値が上がったところで売却して利益を出すことだ。手を挙げるファンドがたくさん出て、競争が激しくなれば、東芝は思った以上に株式を高く売れるかもしれない。ただし、高値になればなるほど、数年後、投資ファンドが株式を手放す「出口」にたどり着いたときのハードルは高くなる。
●「出口」で大もめした投資ファンド
 「出口」で大もめしたのは、西武鉄道に出資した投資ファンド、サーベラスが記憶に新しい。西武鉄道(その後西武ホールディングス)は2004年に有価証券報告書の虚偽記載が発覚し上場廃止となった。東芝と同じくらいの窮地だった。そこにサーベラスが約1000億円を出資し、約32%の筆頭株主となった。10年後、再建を果たした西武は再上場した。その過程で、思ったほど売却益が出ないと考えたサーベラスは、路線廃止や球団売却を要求したり、株式の公開買い付け(TOB)で経営陣に揺さぶりをかけたり大騒ぎした。アベノミクスで全体の株価が底上げされ、そこそこの売却益が出ることになったため、静かになったが……。サーベラスは10年も出資をしてきた。言ってみれば「寝かせていた」ため、それなりの見返りを求めた。東芝が分社化する半導体メモリー事業について、投資ファンドは2~3年後の上場を想定し、少なくとも2~3割の売却益を目指すだろう。原子力事業の大損失がなく、戦略的に分社化・上場ができたなら、東芝が手にできたはずの利益だ。
●銀行系ファンドも有力候補
 銀行系ファンドも売却先の候補に挙がっている。その筆頭格が日本政策投資銀行(政投銀)が出資する投資ファンドだ。政投銀系の投資ファンドはベンチャー企業などに投資実績があり、企業再生に向けた出資も行っている。ただし、東芝のような大企業の再建支援に、政府系金融機関が乗り出せば、批判の声が上がる可能性がある。「投資ファンドや民間銀行系ファンドに任せればいい、なぜ政府系が手を出すのか」という批判である。政投銀は15年前、経営難に陥った大手スーパー、ダイエーの再建支援で、民間銀行とともに再建ファンドを作って出資し、このファンドがダイエーの筆頭株主になったことがある。このときも「国策救済」と批判された。結局、再建はうまくいかず、ダイエーは産業再生機構の支援を受け、最終的にイオンの傘下に入った。いま、ダイエーは店舗名からもほとんど姿を消している。仮に政投銀系ファンドが半導体新会社に出資することになったとしても、ダイエーの二の舞いにならないとは限らない。このほか、三井住友銀行やみずほ銀行、三菱東京UFJ銀行などメガバンク系のファンドも候補になる。政投銀やメガバンクのファンドは、東芝の半導体新会社の2割弱の株式をすべて手に入れることは想定していないだろう。金額が大きすぎるからだ。他の出資者と組むことが考えられる。東芝側は、外国系の投資ファンドが売却先の主体になった場合でも、政投銀や銀行系ファンドに一部出資してほしいと考えているはずだ。信用力と、話のわかる相手だからである。入札にはキヤノンなど、事業会社の名も挙がっていた。だが、キヤノンは「大変難しい」と事実上、参加しない方針を明らかにしている。次回は、そのあたりの事情を解説する。

*1-6:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170123/biz/00m/010/001000c (毎日新聞 2017年1月24日) 東芝だけじゃない 三菱重に賠償請求66億ドルの衝撃
●米国での原発新設(3)
 米国内では2013年以降、原子力発電所の廃炉が相次いでいる。「シェールガス革命」で電力価格が下がり、福島第1原発事故の影響で安全規制が強化され、原発のコストが上昇したことを受けた動きだ。米国内の原発新設計画も大きな影響を受けた。東芝の子会社、米ウェスチングハウスは、08年に受注したボーグル原発2基、VCサマー原発2基以外に、フロリダ州レビィ原発1、2号機を09年に受注していた。ところが、レビィ原発は当初の予定通りに米原子力規制委員会の建設運転認可がとれず、契約が解除された。東芝本体も、09年にテキサス州サウス・テキサス・プロジェクト原発3、4号機の建設を受注していた。東芝としては初の海外での原発受注だった。だが、このプロジェクトに共同出資を計画していた東京電力が、福島原発事故で断念した。さらに、プロジェクトの主体だった米電力大手も、福島原発事故直後に投資を打ち切ると発表した。2基は16年2月に建設・運転認可を受けたが、東芝は「テキサス州では電力価格が低迷していることから、電力市況を見極めながらパートナー企業を募集し、適切な時期に建設開始を判断する」と発表し、事業は凍結された。
●3割しか工事が進んでいないボーグル、VCサマー原発
 ウェスチングハウスと東芝の両社で米国内で受注した8基は、当初の予定では16年に4基、17年に3基が完成するはずだった。ところが建設が開始されたのはボーグル原発、VCサマー原発の計4基にとどまった。その4基の工期も予定より大幅に遅れている。原発回帰の流れにのって、米国内で原発を次々新設するという東芝・ウェスチングハウスの狙いは、大きく外れてしまったのだ。建設中のボーグル原発、VCサマー原発は今のところ、19年と20年に2基ずつ運転を開始することになっている。東芝が数千億円損失の可能性を公表したのはこの4基の建設についてだ。建設工事は全体の3割しか進んでいないことも明らかになった。ウェスチングハウスも、親会社の東芝も、巨額の損失で債務超過の恐れが出ている。そうした企業に、3割しか建設が進んでいない原発を完成させることができるのか、という疑問が湧いてくる。
●三菱重工に対して起こされた巨額の損害賠償請求
 米国内での原発事業で大変な目にあっているのは東芝・ウェスチングハウス連合ばかりではない。巨額の損害賠償請求訴訟を起こされている日本企業がある。三菱重工業だ。カリフォルニア州のサンオノフレ原発2、3号機のうち、3号機で12年、加圧水型原子炉の重要設備である蒸気発生器の配管が破損し、放射性物質が漏れた。定期点検中の2号機でも多数の配管の摩耗が見つかった。蒸気発生器は三菱重工製で、交換されて2年以内のものだった。米原子力規制委員会は三菱重工のコンピュータ分析のミスが、設計上の不具合につながったと結論づけた。地元住民が再稼働に反対し、米原子力規制委の調査も長期化するなかで、電力会社は13年に廃炉に追い込まれた。電力会社は三菱重工に対し、廃炉費用を含め、75億7000万ドル(今の為替レートで約8600億円)という巨額の損害賠償を求めた。三菱重工は契約上、支払いは最大1億3700万ドル(約155億円)だと主張。請求額はその後66億6700万ドル(約7570億円)に減額されたが、争いはパリの国際商業会議所の国際仲裁裁判所で係争中だ。東芝が抱えた数千億円の損失といい、三菱重工が抱える巨額の損害賠償請求といい、原発事業のリスクがいかに大きいかを物語っている。

*1-7:http://digital.asahi.com/articles/ASJDH3WLZJDHULFA00N.html (朝日新聞 2016年12月15日) 日立受注の英原発に資金支援 政府系金融機関
 政府系金融機関の国際協力銀行(JBIC)や日本政策投資銀行は、日立製作所が英国で進めている原子力発電事業に資金支援する方針を固めた。設計から運営までを担う日立の子会社に、融資などを行う。原発の輸出ビジネスに官民で取り組む姿勢を明確にする。
●日立が日本原電と協定 英国での原発建設へ協力要請
 日立の子会社は英中部に原発2基を建設する。2020年代前半の稼働を目指し、総事業費は2兆円超とされる。JBICや政投銀は、同社への融資や株式の買い取りを検討する。来年中に支援の大枠を固める。英国では中国の原子炉の導入が予定されている原発計画もある。安全面などから逆風が吹く原発ビジネスに官民で取り組む姿勢を示し、受注競争を有利に進めるねらいがある。来日したハモンド英財務相は15日、麻生太郎財務相と会談。原発事業への資金支援についても話し合ったもようだ。ハモンド氏は会談前、朝日新聞などのインタビューに応じ、日本の支援について、「前向きに考えてくれていることをうれしく思っている」と述べた。年内には、世耕弘成経済産業相とクラーク英ビジネス・エネルギー・産業戦略相も会談し、原発分野での協力を話し合う見通しだ。

<核燃料の最終処分>
*2-1:http://qbiz.jp/article/101074/1/ (西日本新聞 2017年1月3日) 玄海原発敷地内に乾式貯蔵施設 九電、候補地選びに着手 
 九州電力が玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働後を見据え、使用済み核燃料の乾式貯蔵施設を建設する敷地内候補地の選定作業に着手したことが分かった。玄海原発が再稼働すれば、同原発の使用済み核燃料貯蔵プールを全て使っても、4〜5年程度で満杯になる見通し。このため、まず3号機の貯蔵プールの容量を増強。次の段階として、乾式施設も新設する方針。
●再稼働後を見据え容量拡大
 玄海原発では、使用済み核燃料を原発内の貯蔵プールで保管しており、既に容量の約6割が埋まった状態。九電は2010年2月、3号機の貯蔵プール容量を燃料集合体1050体から2084体に約2倍に増やすリラッキング工事の計画を国に申請していた。しかし、11年3月の東京電力福島第1原発事故で、電源喪失のため貯蔵プールが冷却できなくなるトラブルが発生。事故後に発足した原子力規制委員会の田中俊一委員長は、同様の問題が起きなかった乾式施設の新設を電力各社に強く要求している。九電は規制委の求めに応えて、乾式施設の新設も具体化させる。ただ、関係者によると九電は、乾式施設よりも貯蔵プール増強の方が完成が早いと判断。再稼働後にプールが満杯になる事態を避けるため、3号機のプール増強を優先する。着工から完成まで4年程度と見積もっていた従来の増強計画の設計を、福島第1原発事故後の新規制基準に適合するよう変更した上で、再稼働後なるべく早い時期に国へ工事の認可を申請する方針。乾式施設建設のための調査も始動。再稼働に向けた安全対策で手狭になった敷地内に施設を置くための、具体的な建設レイアウトの検討に入った。貯蔵容器をコンクリート製にするか金属にするかなど技術面に関する検討も進めている。使用済み核燃料を巡っては、青森県六ケ所村の再処理工場稼働の見通しが立っておらず、九電は原発敷地外への持ち出しができない状態。16年8月には、玄海原発の対岸にある佐賀県唐津市鎮西町串地区の住民が、中間貯蔵施設誘致の要望書を市に提出するなど、使用済み核燃料の取り扱いが再稼働に伴う大きな焦点となっている。
◆使用済み核燃料の貯蔵方法 プールに貯蔵する「湿式」と、キャスクという密閉容器に入れる「乾式」がある。使用済み核燃料が出す熱をプールの水の循環で冷やす湿式には、電源や水が必要なため、電源が失われると冷却できなくなる危険性がある。乾式は使用済み核燃料をキャスクに入れて建屋に保存し、空気の自然換気で冷却する。海外では安全性が高く保守・点検が簡単な乾式が普及。日本でも福島第1原発事故後に原子力規制委員会が導入を促している。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12765433.html (朝日新聞 2017年1月26日) 原発の使用済み燃料、空冷保管を促進 規制委、基準緩和へ
 原発の使用済み燃料の保管について、原子力規制委員会は25日、水や電気を必要としない空冷の保管容器の導入を促すために基準を緩和する方針を決めた。プールでなく、地表に置いた容器で燃料を保管する方法で、乾式貯蔵と呼ばれる。使用済み燃料は通常、燃料プールで保管し、ポンプで水を循環させて冷やしているが、地震などで停電すると冷却機能が失われかねない。東京電力福島第一原発の事故では、4号機プールで1千体以上が冷やせなくなり、燃料がむき出しになることが懸念された。乾式貯蔵はプールで十分に冷やされた燃料を専用の容器に入れて密封し、空気の通りがよい場所で保管するもの。規制委が導入を促す容器は燃料の輸送用で、高さ9メートルからの落下試験や高温の炎に耐える試験にも通っている。この保管法は欧米で導入が進んでいる。これまで国内では耐震性の高い建屋が必要だったり、地震の揺れの想定が必要だったりして、導入のハードルが高かった。そのため、日本原子力発電東海第二原発(茨城県)など一部でしか導入されていない。規制委の田中俊一委員長は乾式貯蔵について、「プールで保管するより安全度がはるかに高い」と話した。電気事業連合会によると、全国の17原発にある使用済み燃料は計約1万5千トン。プールなどの保管施設は7割が埋まっている。乾式貯蔵で保管できるようになれば、プールに余裕が出るため電力会社も導入に前向きだ。ただ、原発が立地する自治体には、燃料の新たな保管場所ができることで、敷地での保管が長期化しかねないとの懸念も強い。

*2-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201703/CK2017030602000168.html (東京新聞 2017年3月6日) <原発からの請求書>(5) 最終処分場建設、運営に3.7兆円 増額の可能性も
Q 原発から出る核のごみを受け入れる最終処分場にはいくらかかりますか。
A 経済産業省の試算では建設・運営費で計三兆七千億円かかります。東京五輪向け新国立競技場(総工費約千五百億円)が二十四個できる金額です。
Q なぜそんなにかかるのですか。
A 燃料は再利用しますが、廃液など「高レベル放射性廃棄物」が出るからです。人が近づくとすぐ死亡するほど危険なので、ガラスに混ぜて固め、三百メートル以上の地下に埋めます。日本は地震が多いので耐震性を高め、完全な地下水対策も必要。その状態で最長十万年管理し、やっと放射線が減少するのです。その分、費用はかさみます。東京電力・福島第一原発事故の溶解燃料も受け入れる可能性があり、その場合もっと高くなるでしょう。
Q お金はだれが払うのですか。
A わたしたち電気を利用する国民が払っています。大手電力が出資する専門組織が建設・運営するのですが、費用は電気料金に上乗せされ、積み立てられています。東電の上乗せ額は一キロワット時あたり〇・〇四二五円で、約三百六十キロワット時使用した家庭(図のケース)では月十五円。家庭が電力会社を選べるようになった昨春以降は主に大手電力の利用者が負担しています。二〇一六年三月末時点の積立金は約一兆円にとどまっており、本紙試算では最低四十六年上乗せを続けないと必要額に達しません。
Q 原発を持たない新電力と契約すれば負担をしなくてよいのですか。
A いいえ、一部は負担を迫られます。経産省は〇五年に最終処分対象の核のごみの種類を増やし、見積総額も約八千億円上積みしました。燃料のリサイクルに必要な費用も膨らんでいたので、まとめて計二兆七千億円分を十五年かけて電線使用料である「託送料」に上乗せして集めると決めたのです。検針票の裏に小さく記されている「使用済燃料再処理等既発電費相当額」という長い名前の項目です。一キロワット時につき〇・一一二円の負担で、図の家庭は約四十円の負担。従来負担と合わせ月五十五円。東電管内の平均家庭(月間使用量二百六十キロワット時)は毎年計千六百七十五円ずつ積み立てに協力している計算です。
Q 処分場はいつできるのですか。
A 政府は長年候補地を探してきましたが、人々の抵抗感は強く、みつかりません。経産省は断層の状況などから有望地域を示す地図を昨年末までに示す予定でしたが、先送りにしています。ごみの受け入れ先がないにもかかわらず、政府と電力会社は原発再稼働を急いでおり「無責任」との批判があります。日本学術会議も「いまの科学で十万年の安全確保は証明できない」としており、建設計画は難航が必至。資金面でも作業が進めば、三兆七千億円の見積もりを大きく超え、国民は電気代からの積み立て増額などを迫られる可能性があります。原発政策と電気代についての疑問、意見をお寄せください。ツイッター上からハッシュタグ #原発からの請求書 をつけて投稿してください。メールは keizai@tokyo-np.co.jp  ファクスは03(3595)6914

<玄海原発再稼働>
*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/407816 (佐賀新聞 2017年2月22日) 玄海再稼働 唐津市で県民説明会始まる、住民から不安、疑問 国と九電は対策強調
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関し、佐賀県は21日、初めての県民説明会を唐津市民会館で開いた。エネルギー政策、適合性審査の概要、原子力防災の取り組み、原発の安全対策の4分野について、国と九電の担当者が説明し、再稼働への理解を求めた。会場からは原発の必要性や安全対策を疑問視するなど再稼働に反対や懸念を示す意見が相次ぎ、終了時間を1時間近く延ばして対応した。唐津市や玄海町だけでなく、県内各地から192人が参加した。原子力規制庁、資源エネルギー庁、内閣府、九電の担当者が各分野の概要や取り組みを挙げ、福島第1原発事故を教訓に「審査に通ることがゴールではない」「原子力に対する不安の声に真剣に向き合う」などと述べた。会場からは「熊本地震のように複数の地震に対する審査をしたのか」「福島の事故は終わっていない」など、震災を踏まえて再稼働に反対する質問が噴出し、国や九電の担当者は説明に追われた。質問時間が1人1分間と短いことへの不満や、再度の説明会開催を求める声も上がった。主催した佐賀県の山口祥義知事は「再稼働する、しないにかかわらず玄海原発はそこにある。時間が足りないというのはよく分かるが、われわれもプロセスを大切にしたい」と語った。県は県内首長にも案内を出し、参加を呼び掛けた。唐津市の峰達郎市長は「文言が専門的すぎる。一方的な説明の仕方が印象的で、住民は分からないのではないか」と感想を話した。玄海町の岸本英雄町長は「町議会特別委員会で説明を受けた内容と同じで、わざわざ出る必要はない」として欠席した。県は、この日の県民説明会をインターネットで中継したほか、動画も見られるようにする。今後は22日に武雄市、27日に佐賀市、28日に伊万里市、3月3日に鳥栖市で開催する。玄海原発3、4号機の再稼働に関しては1月18日、規制委の適合性審査に合格した。これを受け国は県と玄海町に理解を求め、山口知事は県民から広く意見を聞く姿勢を示している。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/408220 (佐賀新聞 2017年2月23日) 武雄で玄海再稼働に関する県民説明会、水蒸気爆発想定審査せず
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関する県民説明会が22日、半径30キロ圏外では初めてとなる武雄市文化会館で開かれ、周辺市町の首長や職員、住民ら117人が参加した。国と九電が、エネルギー政策や安全対策などを説明した上で再稼働に理解を求め、住民からの質疑に答えた。会場からは「再生可能エネルギーや蓄電池などの開発に国策を転換して」などの意見が上がった。資源エネルギー庁は再稼働の必要性について「現状では電力の安定供給、経済性、温暖化対策でリスクがあり、今すぐ原発を代替できるものではない」などと説明した。適合性審査を担当した原子力規制庁には、重大事故が発生した場合に水蒸気爆発が起こるかどうかに質問が集中した。規制庁は「海外の知見も踏まえて水蒸気爆発が起きないことを確認している」と繰り返し、万が一、爆発が起こる想定に関しては「審査していない」と答えた。参加した武雄市朝日町の朝重節男さん(82)は、国の説明を聞いて「安全対策が十分かどうかは判断できないが丁寧だった」と話した。会場は前日の唐津会場に続いて空席が目立ち、市内の会社員の女性(31)は「若い人がいない。周知が足りないのか関心がないのか…」と首をかしげた。再稼働に慎重姿勢の谷口太一郎嬉野市長は、エネ庁が法的に地元の同意が必要ないことを明言したことに対し「はっきり言われて驚いた。事故があればわれわれも避難する立場であり、同意を取ってほしい」と顔をしかめた。説明会は今後、27日に佐賀市、28日に伊万里市、3月3日に鳥栖市で開催する。

*3-3:http://qbiz.jp/article/104555/1/ (西日本新聞 2017年2月28日) 原発再稼働、佐賀市でも不満噴出 住民説明会
 佐賀県は27日夜、佐賀市日の出1丁目の市文化会館で、九州電力玄海原発3、4号機(玄海町)の再稼働に関する3回目の住民説明会を開き、234人が参加した。前回までと同様、参加者からは事故への不安を訴える声が相次いだ。原子力規制庁の荒木真一原子力規制企画課長は、玄海原発が福島第1原発事故を踏まえた新規制基準に適合し、格納容器の破損を防ぐ冷却手段の強化や、海水を利用して熱を逃がす対策を確認したことを説明し、理解を求めた。参加者からの質問は1、2回目の説明会と同じく1人1分以内に限られ、不満が噴出。出席者が「福島の事故が収まっていない中で、世界一といえる基準が作れるのか」と訴えたのに対し、規制庁の担当者は「分かってきている基本的な部分を参考に新基準を作った。必要なものがあれば追加する」と回答した。「海外のように(炉心溶融時に溶けた核燃料を閉じ込める)コアキャッチャーは設置しないのか」との質問には「同様の機能を持たせている」と答えた。

*3-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/410217 (佐賀新聞 2017年3月1日) 玄海原発再稼働、伊万里説明会 市長「反対変わらぬ」、「なぜ急ぐ」住民も批判
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関する県内4カ所目の県民説明会(佐賀県主催)が28日、伊万里市民会館であった。周辺市町の住民らを含め388人が参加、安全性などへの疑問点を質問した。地元の塚部芳和市長は「参加者の不安や疑問に国や九電は答えていない。再稼働に反対の立場は変わらない」と述べた。原子力規制庁と資源エネルギー庁、内閣府、九電の担当者が防災の取り組みや国のエネルギー政策などを説明した。会場からは福島原発事故の収束や原因究明が終わらない状態で「なぜ再稼働を急ぐのか」「避難訓練が必要なほどのリスクの中で進める理由が分からない」と批判の声や、「再稼働ありきで検討が進んでいる」と不信感も漏れた。このほか、使用済み核燃料の保管の問題や、テロなどでの航空機落下事故の際の安全対策への疑問が出た。伊万里市のほぼ全域は原発から半径30キロ圏内にあり、緊急時防護措置準備区域(UPZ)にあたる。塚部市長は、国が再稼働の必要性についてエネルギーの安定供給に終始したことに触れ、「原発の安全安心とエネルギー問題は同列で論じられない。不安への回答になっていない」と指摘した。その上で会場から再稼働への疑念を示す意見ばかりが出されたことを挙げ「県がどのような判断を下すか、注目したい」と話した。
■4カ所目、最多388人参加 市長「市民の関心、不安表れ」
 首長が再稼働反対を主張する伊万里市の会場で開かれた4回目の県民説明会。これまでの最多となる388人(県発表)の参加に、塚部芳和市長は「市民の原発に対する関心の高さと不安への思いの表れだ」と強調した。唐津市と武雄市の参加者が少なかったため、伊万里市には市民から「市が周知すべきだ」と意見が寄せられた。市は24日、各公民館長に対して区長に住民への周知を促すよう呼び掛ける文書を発送。その効果もあったのか、会場には行政関係者や区長以外に一般住民の姿も目立ち、住民ならではの「命の訴え」が相次いだ。70代女性は「既成事実のための説明会という印象」と切り捨てた上で、「みんな本当に反対しているのだと分かった。市長はあくまで反対を貫き通してほしい」と求めた。一方、70代男性は「反原発団体の関係者の殺気だった質問と怒号が目立ち、あんな雰囲気の中でごく普通の市民は質問できない」と違和感を訴え、「公民館で開かれるなら、もう一度聞きたい」と期待を寄せた。説明会を巡って伊万里市と市議会は2月17日、県に市内全地区の公民館(13カ所)での開催を申し入れ、「まず伊万里での県民説明会の様子を見て、改めて協議したい」と県の回答を得ていた。終了後、塚部市長は「県がどう判断するかだが、聞き入れられなければ市議会と相談する」と地区別での実施を求めていく姿勢を示した。

*3-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/411493 (佐賀新聞 2017年3月6日) 原発県民説明会 容認意見なく、空席目立つ
■専門家「県の説明必要」
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関し、佐賀県は5会場での県民説明会を終えた。国と九電が再稼働の必要性や安全対策を説明し、参加者から容認する意見はなく、安全性への不安や必要性への疑問が相次いだ。説明内容の分かりづらさや質問時間の短さを指摘、追加開催の要望も上がった。1000人以上収容できる各会場は空席が目立ち、有識者は事故被害の甚大さを踏まえ、県民意向調査の実施を訴えている。各会場の受け付けでは開始時間が過ぎても参加者用の資料がうずたかく積まれたまま。「多くの県民に説明を聞いてほしいが、難しい」と県幹部はこぼした。説明会は、国が説明責任を果たすことを条件に県が主催した。2月21日~3月3日に半径30キロ圏の唐津、伊万里両市と佐賀、武雄、鳥栖市で開いた。参加者数は伊万里の388人が最多で、佐賀234人、唐津192人、武雄と鳥栖は各117人の計1048人。夜の開催で、子育て世代や若者は少なかった。説明会の運営では説明内容や質疑時間を巡り課題が指摘された。説明者の答えがかみ合わず、紋切り型の説明が繰り返され、怒号が飛び交う会場もあった。質疑時間は、原子力規制庁が適合性審査の概要説明後に20分、資源エネルギー庁がエネルギー政策、内閣府が避難計画、九電が原発の安全対策を説明した後に2回目を30分設け、「規制」と「推進」で分けた。県は「多くの意見を聞く」として質問を原則1人1問で1分間に限定。質問中に「30秒前」「まとめてください」と書いたボードをステージ上で掲げた。会場からは「重大な問題なのに短すぎる」「もう一度説明会を開いて」と批判が出た。ただ、多くは1分を超えたものの、司会者が遮ることはほとんどなく、各会場とも終了予定時間を1時間近くオーバーした。県民説明会について九州大大学院の吉岡斉教授(科学史)は「再稼働を判断する立場にある佐賀県の説明が必要だった」と指摘する。県民の参加状況に関しては、周知不足だけではなく「県の姿勢に期待が持てず『形だけのスケジュールを消化している』と多くの住民が判断したのではないか」と読み解く。住民避難に特化した説明会の必要性も挙げた上で「何より県が、県民の生命・健康を守る立場から徹底的に安全性を評価し、県民世論を幅広く収集することが大切。これまでのように政府や業界に従う姿勢は改めるべき」と述べ、住民意向調査を行うよう求めた。唐津と佐賀の説明会に出席した山口祥義知事は「福島の事故を経験して不安の声が多かった」と感想を述べた。県はメールや書面で意見を受け付け、18日には20市町の首長の考えを聞く。開会中の県議会は、再稼働容認の自民議員が多数を占める。「県議会の意見は極めて大切」と強調する山口知事。追加の説明会を開くのかどうか、幅広い声をどうそしゃくし、いつ判断を下すのか。過程を重視する知事の説明責任も重要さを増している。

*3-6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/412564 (佐賀新聞 2017年3月10日) 玄海原発 反原発団体も説明会を要望、県に24項目の要請書
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関し、反対する県内の複数の団体が9日、全市町での県民説明会の開催や再稼働に反対・慎重な意見を持つ専門家の説明会などを佐賀県に求めた。山口祥義知事が判断材料にする会合が3月中旬に集中し、慎重な対応を求めた形だ。再稼働に反対する県内9団体で構成する脱原発佐賀ネットワークは、県内5カ所で開かれた県民説明会では不十分として、子育て世代や離島住民も参加できるよう、昼間や休日に説明会を追加開催することや、公開討論会の実施など24項目の要請書を提出した。県外住民の参加を認めることや、健康への影響、避難計画を検証する委員会の設置などを盛り込んでいる。県内各界の代表が委員を務める広く意見を聴く委員会の委員を出している県労連(北野修議長)は、再稼働に疑問を持つ専門家による説明会を求める要望書を提出した。2月の第2回会合では、再稼働を推進する国と九電の説明を聞いており「幅広い見地からの検討が必要」と指摘し、中立性を保つため県に選任を求めた。また共産党県委員会は、岸本英雄玄海町長が玄海3、4号機の再稼働に同意したことに対し抗議声明を発表した。広く意見を聴く委員会は13日、県議会原子力安全対策等特別委員会は15、16の両日、山口知事が県内首長の意見を聞く会合「GM21ミーティング」は18日に、それぞれ開かれる。

*3-7:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/412275 (佐賀新聞 2017年3月9日) 玄海原発、町長の再稼働同意撤回を 市民団体が抗議
 東松浦郡玄海町の岸本英雄町長が町内に立地する九州電力玄海原発3、4号機の再稼働に同意してから一夜明けた8日、脱原発を訴える市民団体のメンバーらが町役場で抗議活動し、同意の撤回を求めた。玄海原発対策住民会議(会長・藤浦晧玄海町議)をはじめ、佐賀市や武雄市などから集まった20人余りが、役場前でマイクを手に「再稼働は町長や議会だけで判断できるものではない」「玄海町で福島原発の二の舞いが起きてはいけない」などと声を張り上げた。その後、庁舎内に移動し、同意表明の撤回を求める要求書を、体調不良という岸本町長に代わって対応した町の担当者に手渡した。提出に先立ち、庁舎内の混乱を避けようと代表者だけの入庁を求める町職員に対し、「みんなが町民、県民の代表だ」とメンバーが詰め寄る一幕もあった。

<リーダーの見解>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12832205.html (朝日新聞社説 2017年3月9日) 大震災から6年 「原発は安い」では済まぬ
 東日本大震災からまもなく6年。復興はまだ道半ばだが、とりわけ原発被災地の福島県では今も8万人が避難生活を強いられ、地域社会の再生は見えない。原発事故の被害とその処理費用も膨らみ続けている。にもかかわらず、政権は原発を「重要な基幹電源」として、今後も積極的に使う構えだ。事故の惨禍を目の当たりにしてもなお、原発に頼り続けることに理はあるのだろうか。政府や電力業界が言うように、本当に「原発は安い」のか。
■膨らみ続ける費用
 東京都内のホール。福島第一原発の事故で全町避難を強いられた福島県浪江町が2月に開いた住民との懇談会で、避難者たちが次々に悲痛な声を上げた。「除染が終わったと連絡が来たが、線量は十分に下がっていない。これでは家に帰れない」。「私たちは原発事故で町を追い出された。帰れない人には東電が家賃を払い続けるべきだ」。浪江町の中心部は今月末に避難指示が解除され、住民は戻れるようになる。ただ、楢葉町など指示がすでに解除された地区では帰還率が1割ほどのところが多く、先行きは厳しい。炉心溶融を起こした原子炉の内部は、惨状がようやく見え始めたところだ。高熱で曲がった鉄格子、こびりついた黒い塊……。東京電力は2号機に調査ロボットを投入したが、人間なら数分足らずで致死量に達する強い放射線や堆積(たいせき)物に途中で阻まれた。溶け落ちた核燃料を取り出す道筋は見当もつかない。賠償や除染、廃炉などの費用について経済産業省は昨年末、総額21・5兆円にのぼるとの見通しを示した。従来想定の2倍で、巨額の負担が電気料金や税金として国民にのしかかる。そもそも、壊された生活や地域社会など金銭では表せない被害もある。痛手は計り知れない。
■保護ありきの政府
 政府は東電をつぶさないため、支援策のてこ入れに乗り出した。東電や原発を持つ電力大手各社が負担してきた賠償費を、今後40年間にわたって、電力自由化で参入した「新電力」にも一部負担させる方針だ。これは、自由化でめざす消費者の利益より、原発の保護を優先するやり方にほかならない。原発を持たない新電力にも原発固有のコストを押しつけ、大手の負担を軽くするからだ。なりふり構わぬ姿勢から浮かび上がるのは、原発はもはや強力な政策支援がないと成り立たないという実態である。それでも、経産省は「福島事故の費用を織り込んでも、原発のコスト面の優位性は変わらない」と言う。引き合いに出すのは15年に示した試算だ。原発を新設する場合の発電コストについて、火力や自然エネルギーなど他の電源より低いとする。30年度時点で必要な電気の2割ほどを原発でまかなう政策の根拠としている。だが、これにはさまざまな疑問が出ている。原発に批判的な専門家は「試算は、原発を大きなトラブルなく長く運転できることが前提。過去の稼働状況や費用の実績をもとに計算すれば、発電コストは高くなる。建設費用も震災後は世界的に上昇している」と指摘する。経産省の試算には、費用の見積もりが仮置きにすぎない項目も目につく。たとえば核燃料サイクルは技術が確立されておらず、具体的な進め方も未定の部分が多い。長年の懸案である高レベル放射性廃棄物の最終処分地選びは遅々として進まない。これらは既存の原発にもかかわる問題だ。歴代の政権は、原発推進の旗を振りつつ、「負の課題」については先送りやその場しのぎを繰り返してきた。そんなやり方は、もはや限界だ。
■脱原発への具体策を
 今年は国のエネルギー基本計画を見直す時期に当たる。この機をとらえ、原発をはじめ各電源の経済性やリスク、利点を精査し、新計画に反映させるべきだ。原発推進派だけでなく、批判的な専門家も招き、多角的に検討することが欠かせない。海外に目を向ければ、ドイツや台湾が脱原発を決めた。他の先進国でも原発を前倒しで閉鎖したり、原発への依存度を下げる目標を掲げたりする動きが出ている。安全性を重視する社会では、事故や廃棄物への対策が解決できていない原発は、手に余るものになりつつある。そのきっかけとなったのが、福島の事故だった。安全規制の強化とコストの上昇は最近の東芝の経営危機にもつながった。安倍政権がなすべきなのは、原発を取り巻く現実や再稼働に慎重な民意に向き合い、原発への依存度を着実に下げていく具体策を真剣に練ることである。閉鎖的な「原子力ムラ」の論理が幅を利かせ、安全神話がはびこった結果、福島で何が起きたか。この6年間をいま一度思い起こし、エネルギー政策を合理的で持続可能なものに作り替えなければならない。

*4-2:http://www.kirishin.com/2016/11/20161126.html (キリスト新聞 2016年11月26日) 司教団が原発撤廃を呼び掛け 世界のカトリック教会に協力と連帯要請
 日本カトリック司教団は11月11日、「地球という共通の家に暮らすすべての人」に向けて、「原子力発電の撤廃を――福島原子力発電所事故から5年半後の日本カトリック教会からの提言」と題するメッセージを発表した。同司教団は東日本大震災後の2011年11月、「いますぐ原発の廃止を」と訴えるメッセージを発表。その後、韓国のカトリック司教団とも原発について学びを重ねてきた。今回のメッセージでは、被災者が現在も経済的・社会的・精神的な苦境に立たされており、東京電力福島第一原子力発電所事故の収束の見通しも立っていないことを指摘。放射性廃棄物の根本的な処理方法が確立されていないにもかかわらず、日本政府は48基の原子炉を順次再稼働し始め、新原子力発電所建設計画の再開、原発輸出に向けた動きを加速していると述べた。そして、「一国の司教団が、世界に向けてメッセージを発するのはきわめて異例のことかもしれません」とした上で、「しかし、福島原発事故から5年半が経過し、日本がこのような事態に陥ってしまった中で日本司教団は、原子力発電の危険を世界のすべての人に知らせ、その撤廃を呼びかけるほかはないと考えるに至った」と、メッセージを発表した理由を説明した。メッセージは、「なぜ日本司教団は呼びかけるのか」「5年半をへて分かったことと学んだこと」「原子力発電を推進する国家の姿勢」「キリスト教信仰の視点から」「国際的な連帯の呼びかけ」の5項目から成り立っている。「国際的な連帯の呼びかけ」では、原子力発電の撤廃は、国際的な連帯がなければ実現困難だとし、世界中のカトリック教会に協力と連帯を要請。特に各国の司教団に対して、原子力発電の危険性を理解し、その是非について福音的立場から議論するよう求めた。最後に、「原子力発電の是非を将来世代をも含めたすべての人間の尊厳を守るという一点から判断しなければならない」と主張。また、核エネルギーを利用している国々が選択すべき道は、原子力発電の撤廃を決定し、再生可能エネルギーの利用拡大を推進していくことだと強調。「今一度立ち止まり、人類社会の目指すべき発展とは何か、真の豊かさとは何かを問い直さなければなりません」とし、それは「新たな豊かさに向けての前進」だと訴えた。

*4-3:http://www.higan.net/news/2012/06/post-28.html (彼岸ネット 2012年6月26日) 日本仏教各宗派は原発についてどう考えている? 
 毎週金曜日夜、首相官邸前や大阪の関西電力本店前などで行われている、大飯原発再稼動決定に対する抗議デモはどんどん規模が大きくなっていますね。6月22日には、官邸前に4万5000人、大阪の関電本店前には1500人が集まったと言われています。日本の仏教界では、6月12日に東本願寺(真宗大谷派)が「大飯原子力発電所再稼動に関する声明」を発表。こちらもTwitterやFacebook上で話題になりました。ところで、日本仏教界の各宗派は、原発についてどんな意見を持っておられるのでしょうか。各宗派のウェブサイトに記載されている声明や談話を、震災後から時系列に沿ってまとめてみました。
●東本願寺「原子力に依存する現代生活」を問い直す姿勢を表明(2011年7月7日、安原晃宗務総長)
http://higashihonganji.or.jp/info/news/detail.php?id=337
 宗会(最高議決機関)において、安原晃宗務総長が「原子力に依存する現代生活」の問題は「人間の方向」の問題であると述べ、「放射能飛散と被ばくのいたましい現実から『原発』の誤謬性を思い知らされることであり、したがって極力、ていねいな議論が必要な最重要課題であります」。
●全日本仏教会 会長談話「原子力発電所事故から思うこと」(2011年8月25日、河野太通会長)
http://www.jbf.ne.jp/2011/08/post_206.html
 原発の利便性ゆえに便利な生活を享受してきた反面、事故による放射能汚染、廃棄物の処理について見通しがつかないという現状があることに言及したうえで、「私ども仏教徒は、仏陀の教えに連なるひとりとして、今を生きるひとりの人間として、また大切な地球の中に生きる者として利便性と経済的効果のみを追求せず、自らの足、実地を踏む良き道を選び、歩んでまいりたいと思います」。
●臨済宗妙心寺派「宣言(原子力発電に依存しない社会の実現)」(2011年9月29日、臨済宗妙心寺派宗議会)
http://www.myoshinji.or.jp/about/post_9.html
 平和利用とは言え、原子力発電が人類に制御できない危険なものであることが明らかになった今は「一刻も早く原発依存から脱却し、これに代わる安全なエネルギーへの転換に向け社会に働きかけなければいけない」としたうえで、「私たち仏教徒は、利便性や経済性のみを追求せず、仏教で説く「知足(足るを知る)」を実践し、持続可能な共生社会を作るために努力することをここに決意し、宣言します」。
●曹洞宗「原子力発電に対する曹洞宗の見解について」(2011年11月11日)
http://jiin.sotozen-net.or.jp/wp-content/uploads/2011/11/20111101aboutapg.pdf
 「現状において即時に全ての原子力発電を停止し、再生可能エネルギーに転換することは不可能」であり、火力や水力もCO2増加や環境への負荷がかかること、電力不足で経済が混乱するなどの問題があると指摘。原発を速やかに停止して再生可能エネルギーへと移行することが望ましいとしながらも「現時点で原子力発電の是非について述べることは非常に難しいのではないでしょうか」。
●全日本仏教会「原子力発電によらない生き方を求めて」(2011年12月1日、河野太通会長)
http://www.jbf.ne.jp/2011/12/post_214.html
 快適さや便利さを追い求める影で、原子力発電所立地の人々が事故による「いのち」の不安に脅かされ、処理不可能な放射性廃棄物を生みだして未来に問題を残しているという現実があることに言及。「「いのち」を脅かす原子力発電への依存を減らし、原子力発電に依らない持続可能なエネルギーによる社会の実現を目指します。誰かの犠牲の上に成り立つ豊かさを願うのではなく、個人の幸福が人類の福祉と調和する道を選ばなければなりません」。
●西本願寺 本願寺新報「まことの安穏を目指して」(2012年1月1日号、梯實圓先生)※6/26追記
 本願寺出版社が発行する『本願寺新報』2012年1月1日号表紙に、梯實圓先生の文章を掲載。震災以降、本願寺派の公式発行物で原発に触れた最初の記事だとされています。仏教の説く「三毒の煩悩」になぞらえて、自分と自分の属する集団の利潤を最優先することを戒められています。以下、一部を引用。「単純な自然災害でも、天災と人災が複雑に組み合っていますが、とりわけ今度のような原子力発電所の事故は、想定を超えた天災のせいだけではなく、経済的効果に惑わされて、想定を甘く設定した人災であったといわねばなりますまい。さらにいえば原子力発電そのものが、経済発展を最高の価値と見なす思想が生み出した危険な産物です。その意味でこの事故は経済的利潤の追求を、すべてに優先させている思潮への激しい警鐘と受け取るべきでしょう」
●東本願寺「原子力発電所の再稼働に対する真宗大谷派の見解」(2012年4月24日、真宗大谷派解放運動推進本部長 林治)
http://higashihonganji.or.jp/info/news/detail.php?id=391
 2011年末に、政府に対して「原子力発電に依存しない社会の実現を目指す」要望書を提出。「生きとし生けるもののいのちを脅かすことなく、さらに未来を生きる子どもたちのためにも、一刻も早く原子力発電に依存しない社会の実現」を求め、「すべての原発の運転停止と廃炉を通して、原子力に依存しない、共に生きあえる社会」へと歩みたいと表明。「私たちは、すべてのいのちを摂めとって捨てない仏の本願を仰いで生きんとする念仏者として、仏智によって照らし出される無明の闇と、事故の厳しい現実から目をそらしてはならないと思っています」。
●法華宗(本門流)「第66次定期宗会において声明文を発表」(2012年6月11日)※6/27追記
http://www.hokkeshu.or.jp/
 「一、東京電力福島第一原発事故の一日も早い収束を祈り、原子力発電にたよらない、持続可能な自然エネルギーによる社会の実現に向け、努力してまいります」。
●東本願寺宗派声明「大飯原子力発電所再稼動に関する声明」を発表(2012年6月12日、宗務総長 安原晃)
http://higashihonganji.or.jp/info/news/detail.php?id=402
 「福島第一原子力発電所の事故で多数の苦しんでおられる方がある中で、一旦停止した原子力発電所を再稼動する理由に、人のいのちよりも優先すべきことがあったのでしょうか」と問いかけ、野田内閣総理大臣による大飯原子力発電所再稼動表明に強い遺憾の意を表明。すべての原発が「決して再稼働することないよう念願するものであります」。

*4-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017030701001351.html (東京新聞 2017年3月7日) 民進、「原発ゼロ法案」を了承 蓮舫代表、党大会で表明へ
 民進党は7日、エネルギー環境調査会(玄葉光一郎調査会長)を国会内で開き「原発ゼロ基本法案」の国会提出を明記した政策方針を了承した。原発ゼロ実現に向け、再生可能エネルギーの利用促進などを盛り込んだ。蓮舫代表が12日の党大会で表明する原発エネルギー政策に反映させる。政策方針は「民進党のエネルギー政策(当面の論点メモ)」。「2030年代原発ゼロ」目標の「30年」への繰り上げ明示を見送った一方、「原発依存からの脱却が前倒しで実現可能となるよう、来る総選挙に向け検討を進める」とした。省エネ目標を上積みするほか風力や水力などの再生可能エネルギーの導入を加速する。


PS(2017年3月11日追加):*5-1のように、国は年間積算の空間線量が20ミリシーベルト以下の地域では避難解除を進めているが、この線量は原発の中と同じである上、加算しなければならない内部被曝を考慮していないため、帰還した一般市民は原発労働者より大きな放射線量を365日、24時間浴び続けることになる。にもかかわらず、「20ミリシーベルトは最大で普通はそれ以下だ」という言い訳も聞くが、基準はそういうもので、原発労働者も同じである。また、避難し続けるか帰還するかについては、放射能汚染の正確な情報を公開した上で意思決定させるべきであるのに、正確に計ることもせず、「放射能による健康被害はないから、心配するのは風評被害だ」と決めつけるなど、想定が甘く非科学的すぎる。その上、避難し続ける人を「必要以上に不安に思っている人」などと吹聴しており、これが避難生活をやりにくくして、周囲から驚くような内容の差別やいじめの言葉を引き出すことになっている。そのため、*5-2のように、科学的に説明した上で、希望する避難者へは支援を継続することが必要だ。
 なお、*5-3のように、フクイチの原子炉建屋を覆っていたカバーは、解体され、現在は取り外されたままである。そのため、放射性物質の付着した粉じんが舞い上がるのを防ぐために飛散防止剤を吹き付けたとしても、その効き目がそれほど長くて強いとは思われず、フクイチは現在、遮るものもなく解放されているわけである。その上、*5-4の約350億円の国費を投入した凍土遮水壁は、かなり前に凍結を開始したものの未だに目的を果たしておらず、これから夏や台風の季節になればさらに凍りにくくなって、フクイチは汚染水を垂れ流し続けることになる。
 さらに、*5-5、*5-6のように、フクイチ2号機に、堆積物除去ロボットを投入して調査したところ、空間放射線量が毎時650シーベルトと推定され格納容器内の高線量でカメラは2時間で故障したというお粗末な結果で、「ロボットが圧力容器下まで行けなかったためデブリの状況が確認できなかった」などと説明されたが、人工衛星・ドローン・ミュー電子・放射線に感光するフィルムなど他の方法も使用可能であるため、これは稚拙な言い訳に過ぎない。

 
   スイス気象台の      日本のフクイチ以前と以後の   2015.4.14現在の上    
 2017.3.11放射能拡散予測    放射性セシウム基準    日本産食品の輸入制限上    
    (http://blog.goo.ne.jp/1shig/e/578f13d84d4da457255da1d206ae0d55参照)

(図の説明:一番左の図のように、フクイチからの放射能は現在も拡散し続けており、累積では天文学的数字だ。また、フクイチ事故前の食品に含まれていた放射性物質は大変微量だったが、現在の基準である100ベクレル以下というのは決して小さくなく、食べ続けても安全という証明はない。また、日本産食品の輸入にあたっては、条件をつけたり産地制限したりしている国が多い)

<フクイチ事故とその後>
*5-1:http://fukushima20110311.blog.fc2.com/blog-entry-94.html (福島 フクシマ FUKUSHIMA、津波被害と原発震災に立ち向かう人々とともに) 「20ミリ基準で解除」は原発の中と同じだよ ――帰還目指す住民も汚染の実態に警鐘
 国は、「年間積算の空間線量が20ミリシーベルト以下」を基準に、避難区域の解除を進めている。4月1日、田村市都路(みやこじ)地区が、20キロ圏内の旧警戒区域では最初の解除となった。南相馬市は2年後の解除を決めている。しかし、このような避難解除の進め方に、疑問を抱いている住民は少なくない。その一人である木幡寛治さん(仮名)にお話を聞いた。木幡さんは、30数年来、福島第一原発を中心に原発作業員として働いてきた。しかし、原発事故によって木幡さんの自宅も避難区域とされ、現在は、仮設住宅で暮らしながら、除染作業などに従事している。木幡さんは、原発内の作業に長年携わってきた知識と経験から、「日常生活で20ミリシーベルトというのは到底了解できるものではない。まさに原発の中の放射線管理区域で暮らすということなんだから」と厳しく見ている。とくに、木幡さんは、空間線量以上に汚染の実態と内部被ばくのリスクについて警鐘を鳴らす。だから、空間線量だけを見せて、汚染の実態について知らせないという国のやり方に対して、「国による犯罪」だと批判する。その一方で、木幡さん自身は、自宅へ「戻る」ことを選択し、「戻る」人びとと共に地域再生に取り組むことを模索している。しかし、「その前に『戻らない』人たちの選択を守っていく必要が絶対にある」と訴える。また、「戻る」にあたっても、汚染の実態を正確に調査し開示して、住民が主体となって、内部被ばくを防護する対策を徹底する必要があるという考え方だ。そして、国が、事故を何ひとつ反省せず、原発の再稼働と増設に突き進むことに対して、「国がそういう態度なら、国民の側から転換をつくり出していく必要がある」という思いを持っている。
●外部放射線以上に汚染が問題
○4月1日に田村市都路地区の避難指示が解除になり、小高や浪江もそういう方向で進んでいます。
木幡:いつまでたっても復興事業ができないとか、このままだとコミュニティーが崩壊してしまうとか、国に限らず、市町村も、遮二無二解除しようとしているよね。で、放射線に対する防御よりも、復興を優先して行くような雰囲気がどんどん強まっているし、そういう圧力が高まっているね。これ以上、除染しても無理だと思うし、そういうところに戻って住むか住まないかは個人の判断によるしかないんだけど、もし、年間20ミリシーベルト近く被ばくをする可能性があるようなところで生活するというなら、それはまさに原発作業員と同じなんだから。だから、そうするんだったら、そういう管理をきちっとやれよという話なんだよね。
○木幡さんは30年以上、主に福島第一原発で作業員をやって来られましたね。その経験や知識からすると、20ミリシーベルト基準での解除には問題があると。
木幡:そうね、相当に問題があるんじゃないかな。原発で働いてきたから、職業被ばくとして、年間20ミリシーベルト〔※〕ということについては、まあ了解しているよ。でも、日常生活で20ミリシーベルトというのは到底了解できるものではない。〔※法定の限度は「実効線量で5年間に100ミリシーベルトを超えず、かつ、1年間に50ミリシーベルトを超えない」。それに準じて、東京電力や協力企業では、概ね年間20ミリシーベルトを管理基準にしてきた〕。放射線管理区域というのが法律で定められている。その基準は、外部放射線で言えば、3カ月で1.3ミリシーベルトを超えるところ。そういうところでは、被ばく管理や汚染管理をきちんとしなさいよと決められている。例えば、放射線管理区域の中で作業をするときには、APD(警報付ポケット線量計)とか、ガラスバッチ(個人積算線量計)をつけて外部被ばくの線量を管理している。それから、作業を終えて管理区域から出るときは、汚染を服や体にくっつけたまま持ち出してしまわないように、スクリーニングチェック(表面汚染検査で汚染者を選別する)を受けなければならないんだ。表面の汚染密度で基準を作っている。そこで引っかかると、落ちるまで洗わされるとか、服なんか取り上げられるとか、そういう風にやっていたんだよ。それから、3カ月に1回はホールボディーカウンターの検査、それに6カ月に1回の電離健康診断が義務づけられているんだ。で、そういう検査でもし基準以上の数値が出たりしたら、放射線管理区域の中での作業ができなくなるんだよ。20ミリシーベルトというのはそういう世界なんだから、そういう管理がなされないといけないという話なんだよね。
○外部放射線にだけに目が行ってしまいますが、放射線管理区域では、外部放射線に対する管理とともに、汚染濃度で内部被ばくに対する管理が行われていたのですね。
木幡:その通り。原発労働の経験からすると、外部被ばくだけを見ていたらだめだと思うんだ。土壌や空気中のダストの汚染濃度を見ないと。震災前の原発では、外部被ばくに対する管理では、年間20ミリシーベルトを超えないように管理しているし、実際にはそれよりさらに低く抑えるようにしていた。しかし、それ以上に、内部被ばくに対する管理が厳しかったと思うよ。外部被ばくの防護管理だけであれば、線量測定と時間管理だけで十分なんだけど、汚染管理やスクリーニングとかホールボディーカウンターというのは、内部被ばくに対する防護としてやっていたわけだからね。だから、法律で決められている放射線管理区域の条件も、三つの基準があるんだよ。ひとつは、外部放射線で、実効線量が3カ月で1.3ミリシーベルト。もうひとつは、空気中の放射性物質の濃度。三つ目が、体や物の表面の放射性物質の密度。二つ目の空気中のダストの場合は、基準が核種によって違っていて、たとえばセシウム137だったら、1立方センチ当たり3×10-3ベクレルが空気中の濃度限度で、その1/10が管理基準といった具合。で、これがマスクオーダーだった思うんだよね。それ以上のダストが予想される場合は全面マスクをしないといけない。大事なのは、三つの指標があって、決して外部放射線だけではなかったということなんだ。
○そうすると、国の20ミリシーベルト基準の問題点は、単に、外部被ばくの数値として高いかどうかではなく、内部被ばくのリスクを軽視している点にあると。
木幡:そういうことだね。原子力規制委員会が昨年11月に「帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方(線量水準に応じた防護措置の具体化のために)」という見解を出しているけど、それを見ても、最初から最後まで線量に対する防護措置だけを扱っているんだよ。でも、20ミリシーベルト以下であれ一定の空間線量があるということは、そこにそれだけの放射性物質が存在して汚染しているということでしょ。で、外部被ばくは、空間線量率で予測できるけど、内部被ばくは主に汚染濃度に影響されるわけだからね。そういう汚染がある所で生活するということは、それを取り込むリスクがあるわけだ。それが一番危険なのに、そのことをほとんど無視しているという点だよね。
●シーベルトで管理する狙い
○そうすると、国は、汚染を密度・濃度でとらえるということを、意図的にネグレクトしているということでしょうか?
木幡:私としては、そう思わざるをえないね。実際、管理基準を変えているんだよね。あまり知られていないけど。まず、震災前の管理がどうだったかということを、少し前に作ったものだけど、表にしてみたんだ。(「放射線管理区域内の区分と管理例」 )もちろんこういう規定があるという意味ではなく、自分の経験と記憶の範囲でしかないけど。3・11以前から原発に関わってきた人は、こういうものだと思って、そういう基準でやってきたわけ。ところが、原発がドーンとなって、汚染が噴出したら、基準もガーンと変わってしまうというね。それも一時的な緊急措置ならまだしも、汚染にかんする基準は元に戻っていないわけだから。放射線管理区域から出るときの表面汚染の基準、スクリーニングの基準だね、それは、もともとアルファ線核種以外では1平方センチ当たり4ベクレル以下、カウントで約1300cpmだった。ところが、3・11以降、緊急時ということで40ベクレル、1万3千カウントにして、さらにすぐに10万カウントに引き上げた。で、その年の9月に40ベクレルには戻したけど、それがいまも続いている。3・11以前の基準の10倍。これは意図的でしょう。要するに、もう4ベクレルで管理しようとしても、そこら中が汚染だらけで、対応できないということでしょう。そういう意味で、汚染密度とか濃度ということにはできるだけ触れないで、外部放射線のシーベルトでくくっていると、これは管理しやすい。住民もシーベルトしか測んないから、本当の汚染が高いのか低いのかは分かんない状態なんだよ。もちろん、中心にいてコントロールしている人は分かっているでしょう。放射線管理区域の基準がどうだったかとか、汚染と内部被ばくの問題とか。でも、そういうことには触れないで、20ミリシーベルトという線量で切って解除ということにしている。これは、国による犯罪に近い行為なんだよ。
○なるほどそういう手口だったのですね。
木幡:ただね、国の方には、こういう言い訳があるんじゃないかと思うんだ。つまり、外部被ばくにしても、汚染を内部に取り込んだときの被ばくにしても、結局、シーベルトで統一しているんだからいっしょだと。外部被ばくで1ミリシーベルトを浴びようと、内部被ばくで1ミリシーベルト浴びようと影響は同じだというわけ。ICRP(国際放射線防護委員会)などの考え方なんだけど、外部被ばくでも、内部被ばくや局所的な被ばくでも、体の単位体積での平均的な影響で計算してしまう。でも、これは、私は違うと思うよ。例えば、細い針で皮膚を突いたときと、太い筒で突いたときとでは、痛さ、ダメージは違うでしょ、同じ力で押しても。だから、ECRR(欧州放射線リスク委員会)2010勧告では、内部被ばくは、外部被ばくに対して100倍から1000倍ぐらいリスクが高いと指摘しているよね。だから、原子力規制委員会の見解は、内部被ばくのリスクを非常に軽視したものだと思うよ。
●不安とリスコミ
○ところで、復興加速化方針では、被ばくと健康リスクに関して、住民の不安を取り除くためのリスクコミュニケーションということを言っています。
木幡:そこのところが、一番、頭に来ているんだ。たしかに健康への影響は、すぐに出てくる場合もあるかも知れないけども、すぐには出て来ない方が多い。少なくとも、健康への影響は、「わからないことが多い」というのが正しい知見でしょう。だけど、国の加速化方針は、放射線の健康影響は実際にはないと決めてかかっているよね。で、住民の抱いている「不安」には科学的な根拠はないと。それでも「不安」だというから、そういう人にはリスクコミュニケーションで「不安」を取り除いてあげましょうと。外部被ばくの数字だけを見せておいて、「大丈夫ですよ」「戻れますよ」というやり方はほんとにおかしいよ。これだけの放射能汚染があるよということを情報としてきちんと開示するべきでしょう。それからだよ、戻るかどうかは。もちろんそれをちゃんと理解した上で戻るという選択はあると思うけど。だけど、そのためには、ちゃんとした環境データをつくらないと。放射能は測ればわかるんだから。誰でも計測器があれば測れるんだから。
○国は、今後は個人の線量を把握すると言っていますが。
木幡:個人線量計つけるかどうかじゃないよ。帰還する住民に個人線量計を持たせるとか、それが被ばく対策で帰還促進策だと言っているけど。ガラスバッチを各家庭に配って、3カ月単位で送り返すと。ガラスバッチで積算線量を測るには便利だけど、その最少単位が0.1ミリシーベルトなんだ。だから0.1ミリシーベルト以下は被ばくゼロになってしまうんだ。そんなんじゃなくて、身体汚染とか内部への取り込みとか、汚染拡大なんかを防止することに力を注ぐべきだよ。
●除染の目標は「除染前よりは下げる」
○ところで、木幡さんは除染作業員としてモデル除染からかかわっていますね。また、被災者としてご自宅が除染の対象になっているわけですが。
木幡:うーん、除染ね。除染は必要は必要だよね。住宅の除染はどうしても必要だよね。ただ、やってもダメなところはダメだし、こんなやり方ではやらない方がいいんじゃないかというのもあるよね。屋根はもうやんなくてもいいと思うんだよ。最初の頃は、たしかに、一階より二階の方が線量が高いといったことがあって、やっぱり屋根から来ているということだったけど、今は、もう雨で汚染が流れてしまっているからね。あと苔が生えているような屋根とかは、苔を取ればいい。錆びたトタン屋根とか、そういうのはもう張り替えるしかない。雨樋もあるよね。雨樋なんか取り換えればいい。だけど、今の除染マニュアルでは、取り換えないね。壊れているものがあってもそれをそのままの状態におくんだ。非常に硬直している。それから壁でも、拭き取りによって効果がある材質のものだったら、拭き取りをやればいいだろう。それから洗浄でもいいと思うんだよ。
○洗浄は水の回収の問題があるのでは?
木幡:私も、最初の頃は、洗浄したら、水を回収はどうするんだかと言っていたんだけど、下がコンクリートだったら側溝に堰を作って回収する。それから、土のところでは、流れた水は土に染み込むけど、後で表土を5センチはぎ取る作業をやるから、結局、回収できるんだ。放射性物質は表土にとどまっていているからね。
○そうすると除染の現場で感じている問題は?
木幡:一番の問題は、拭き取りのできない材質のものだな。最悪なのはブロック塀。ワイヤーブラッシでブラッシングしているんだよね。これが最悪。たしかにブロックは多孔質で、放射性物質が付着していてなかなか取れない。だから、ワイヤーブラッシでやったら、ああキレイになったというのはあるかも知れないけど、で、それはどこに行ったのって?飛び散っちゃうんだから。
○それは作業している人にとって非常に危険ですね。
木幡:そう、それを一番心配しているんだよ。
それから、線量が高い場所での除草作業でもそうなんだ。ベーラーと言って、コンバインみたいな機械を運転しながら草を刈っていくわけ。そうすると粉塵がすごい。思わずもう風上に逃げたよ。タイベックを着て、マスクをして、あとタオルを覆ったりしてやってるんだけど。しかも除染作業員は、原発作業員よりも、検査の回数とか少ないんだ。ホールボディーカウンターだって、最初に除染作業に入る前と辞めた後に1回ずつ受けるだけ。例えば、除染作業員を2年やっていたら、その間は受けられない。除染電離則(除染業務における放射線障害を防止する法律)というのはそういうひどい法律なんだよ。
○ところで除染の作業には、数値的な目標や基準はないのですか?
木幡:厳密な意味での基準はないね。
 最初のモデル除染(2011年11月から12年3月)のときは、一応、きつい基準でやってたよ。ゼネコンがそれぞれ独自に目標を掲げて、空間線量率で毎時0.23マイクロシーベルトとか、表面汚染密度で1平方センチ当たり1000カウントとか。でも、環境省がこの間、言ってきたのは、「長期的な目標として追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下」、「2011年8月末と比べて物理的減衰等を含めて約50パーセント減少」〔『除染関係Q&A』環境省〕という目標だよね。でも、「長期的な」と言っている通り、1ミリシーベルトはあくまでも先の先ということでしょう。それから50%減少というけど、「物理的減衰等を含め」というところがミソ。セシウム134の半減期が2年だから、その効果で線量も下がってきているわけ。それから雨や風で流されていったりして下がることもあるし。だから、この3年についていえば、除染をしなくても線量はかなり下がっているんだよね。でもこれから先は、半減期が30年のセシウム137が支配的になるから、なかなか下がらないだろうね。ともかく、こういうことだから、環境省の目標は目標じゃないよ。
○そうすると現場ではどうしているのですか?
木幡:まずは、やってみないとわからないということだな。
 とくに、田畑や家の周囲の山林はとにかくやっているだけという感じ。実際、どうしようもないよね。
○除染して、住宅とその周囲は0.23マイクロシーベルト以下になったけど、住宅から10メートルも山の方に行ったらもう1マイクロシーベルトを超えているというような話がありますが。
木幡:山林や田畑はもうそれ以上、下げることはできないでしょう。スポット的に除染して下げることは可能かも知れないけど、全体では無理だと思う。
○宅地については?
木幡:宅地については、空間線量で見て、除染前よりも線量が高いときに再除染をしているな。除染でかえって汚染を拡散させて、除染後の線量を上げてしまうことだってあるんだよ。とにかく現場では、「除染前よりは下げる」ということでやるしかないんだな。「数字が下がっていることを見せる」というためにやっているという感じだな。何マイクロ以下といった数値目標はないね。結局、先ほどスクリーニングレベルでも言ったけど、1万3千カウントから下げてないんだから。作業者のスクリーニングで、1万カウントの汚染が出たらエライことで、よっぽど特殊なことをやらないとそういうのは出ないんだから。つまり、1万3千カウント、40ベクレルというスクリーニングレベルを基にしたら、そもそも除染なんてする必要もないということになるよね。除染も形だけでいいとなる理由もここにあると思うんだよ。
○ところで、この間、環境省と福島、郡山、相馬、伊達の各市長が会合をもって(4月14日)、除染をめぐる勉強会を初めて、「追加被ばく量年間1ミリシーベルト」という除染の一応の目標を見直し、緩めようという方向で動いていますが。
木幡:結局、除染がうまく行かなくて、それが復興の妨げになっているからって、目標そのものを変えてしまおうというやり方だよね。外部放射線で、追加被ばくが1ミリシーベルトという点については、意見に一定の幅があるところだと思うけど、狙いが、「戻れ、戻れ」というところにあるのが問題だよね。それから、いま話してきたことだけど、外部放射線だけとらえて、いいとか悪いとかという議論に引き込んで、結局、汚染と内部被ばくのリスクという問題から目を逸らさせていることが一番の問題だわな。
●インフラ工事で汚染拡大
○ところで、除染とは違いますが、インフラ復旧工事が、汚染拡散を防止する措置もなく進められています。巨大ダンプがひっきりなしに走ってますね。
木幡:これもね、根本には国が1平方センチ当たり40ベクレルからスクリーニングレベルを下げない以上はどうしようもないんだ。いま帰還困難区域の中を走って来たって、スクリーニングも受けないでそのまま出て来ちゃんだから。一応、受けてくださいとはいっているんだけど、個人の判断になっちゃう。だから、浪江のところのスクリーニング会場の人も暇そうにしているでしょ。国のやり方として、あれは無責任極まりないよ。警戒区域にしているときは、必ずやっていたんだよ。状況は変わってないんだから、本当はそういう管理をしないといけない。汚染が出たらどうするのか、公共の除染場もつくらないといけない。ただ、1平方センチあたり40ベクレルの汚染なんて、基準が緩すぎてほとんど出ることはない。だから形だけになっちゃう。そういう緩い基準で住民が慣れてしまうのを待っているようなもんだよね。だから汚染は拡散しっぱなしだ。
○そういう状態をどう見ていますか?
木幡:チェルノブイリの場合、食品の汚染が大きな問題になっているよね。汚染していると分かっているけど、貧しいから野生のキノコを食うしかないとか、野イチゴを食べるとか。そういうことで相当長いこと内部被ばくが続いている。日本では、現在のところでは、いろいろな取り組みもあって、一応、食品に関しては、そういう状況にはないだろうと思うけど。しかし、空気中のダストはわかんないよ。逆にチェルノブイリよりもひどいかもしれない。「除染だ、インフラだ」っていじって、余計に粉塵が舞い上がっちゃっている。そういう感じがするぐらい杜撰だよね。これが後々どういう影響がでるかが心配だよ。
●「戻らない」選択と「戻る」選択
○お話を伺っていると、空間線量だけを見て、戻るかどうかの議論や判断が行われていることに問題があると。つまり、汚染の実態ということを見ると、厳然と健康被害のリスクがあるというご指摘ですね。
木幡:そういうことだな。外部放射線だけでは、いいとも悪いともいえないところだと思うんだよ。ただ、そこで生活するという選択をする場合、やはり内部被ばくが問題になるわけでしょ。 そのリスクはあるんだから。だから、「戻りたい」という人たちの話の前に、そんな線量ではとても「戻れない」という人、とくに若い人、子育て世代、こういう人たちの選択があると思う。そういう選択の人たちを守っていく必要が絶対にあると思う。そういう人たちに対して、「じゃあ、帰んなくていいよ。その代り補償は打ち切るからね」なんていうやり方は絶対にしたらいけないよ。で、早く帰還する人には賠償を上乗せするなんて言ってるけど、そんなことをするんじゃなくて、むしろ賠償は、帰って来れない人がこれから生計を立てていくために使うべきでしょう。その上で、私自身は、戻ろうと思っているんだけどね。
○では翻って、「戻る」という住民にとっては、何が必要だと考えていますか?
木幡:木村真三さんの本(『「放射能汚染地図」の今』)を読むと、志田名(しだみょう:いわき市北部のホットスポット 本サイトの記事参照)の除染の話が出てくる。住民が出してくる意見にはかなり鋭いものがあって、そういう意見を取り入れながら進めたということがよくわかる。住民はその土地のことを良く知っているわけだからね。こういうやり方がやっぱり正しいんだと思うよ。もっとも、小高や浪江では、なかなかこうはいかないだろうね。志田名は小さい集落だからまとまれたかも知れないけど、やっぱり広いと簡単じゃない。それから、志田名の場合、そこに生活していたからできたんだと思う。小高や浪江は、避難しちゃってバラバラになっている。だから、いろいろ呼びかけても、それっきりになっちゃって、なかなか立ち上がって来ないわけね。だから、私としては、とりあえず、いま国でやっている除染は除染として一通り終わらせる。その後、帰還する人たちで、空間線量ももちろんだけど、土壌、空気中ダスト、水、食品、植物、動物などの環境モニタリングを詳細にやる必要があるでしょう。で、それに踏まえて、生活の中で、どうやったら内部被ばくを低減できるかという取り組みを具体的に詰めて行うことが必要だと思う。あるいはまた電離検診も義務付ける必要があるよね。それから、住民が調べた結果、まだ除染が必要だと判断すれば再除染を要請するとか。そういったことを町づくりというか町の再建の一環として、はじめていくということかなと考えている。それを住民の手でやっていくことが大切なんじゃないかと思う。
○住民が主体になる必要があると。
木幡:そう、だから、国には、避難解除をするならするんでいいけど、解除して終わりじゃなくて、それからやることがいろいろいっぱいあるだろって言っているんだよ。でも、今の政府のやり方は、除染のやり方でも解除の決め方でもそうだけど、住民の様子を見ながら、結局、自分たちの方に責任が来ないようにという動きをしているよね。自分たちが責任をとって率先してやろうとはまずしない。住民への説明会なんかでも、環境省の本体の人間なんて見たことがない。どっかのコンサルタント会社に雇われた地元の人間が出てくる感じ。
●いま変わらなくて、いつ変わる
○木幡さんは、2011年3月11日にまさに福島第一原発にいたわけですが、今日のお話しから、やはり3・11を経て、考え方に大きな転換があったといっていいでしょうか。その点を最後に聞かせて下さい。
木幡:そう、建屋の中にはいなかったけど、構内にね。30年以上、福島原発をメインにやってきたから。3・11以降もしばらく収束作業に入っていたし。長く原発に関わってきただけに、全電源停止で水素爆発を起こすのを見て、痛切に反省をさせられた。自分自身、いかに、現代の科学技術文明にどっぷりと浸りきっていたんだって。津波の凄まじさとか、原発メルトダウンとか、科学技術文明に頼りすぎてきたことへの、自然の側からのしっぺ返しのような気がしたんだ。だから、これまでの日本人のライフスタイルの総点検とか、日本の進路の総点検ということを、一人ひとりが考えなければならないと思うんだ。そういう意味で、日本人のあり方とか、日本の社会のあり方そのものが重なって問題になっていると思うんだよね。そんなことを、高木仁三郎を読んだりして考えたね。
○ところが、政府の方では、原発の再稼働と増設を打ち出した『エネルギー基本計画』を閣議決定しました(4月11日)。また、修正過程では原発事故への「深い反省」が一旦削除されました。
木幡:もう、怒り心頭だよね。国は、これまでの考え方を何も変えていない。何も反省していない。そして事故や被害はもう忘却の彼方にだよね。まあ、この流れはこの間、ずっと見えていたことだから今さら驚かないけど。結局、国がそういう態度なら、国民の側から転換をつくり出していかないとね。どうしたら転換していけるか、そこが問われていると思うよ。そういう問題意識を持っている人がいま結構多くなっていると思うよ。新聞の投稿なんかでも、「明治維新でも変わらなかった。終戦でも変わらなかった。いま変わらなくていつ変わるんだ」って。本当にそういうことだと思うんだ。
<管理区域の設定基準>
 以下の基準を超えるおそれのある場所について管理区域に設定すると電離則などの法律〔※〕で定められている。〔※放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行規則、人事院規則一〇一五、電離放射線障害防止規則、経産省告示第百八十七号など〕
①外部放射線に係る線量については、実効線量が3月あたり1.3mSv
②空気中の放射性物質の濃度については、3月についての平均濃度が空気中濃度限度の10分の1
③放射性物質によって汚染される物の表面の放射性物質の密度については、表面汚染密度(α線を放出するもの:4Bq/cm2、α線を放出しないもの:40Bq/cm2)の10分の1
④外部放射線による外部被ばくと空気中の放射性物質の吸入による内部被ばくが複合するおそれのある場合は、線量と放射能濃度のそれぞれの基準値に対する比の和が1

*5-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-458940.html (琉球新報社説 2017年3月11日) 東日本大震災6年 避難者支援さらに拡充を
 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から6年となった。被災地以外で震災報道が少なくなったと懸念する声を聞く。社会が関心を失う中で、被災者に対する偏見が広がっていることを憂慮する。福島第1原発事故で福島県から横浜市に自主避難した男子生徒へのいじめ問題が一つの例だ。復興に向けて生活再建が進む一方、古里に戻りたくても戻れず苦悩している人々がいることを忘れてはならない。私たちに何ができるかを考え、共に歩みたい。東日本大震災で故郷を離れ、プレハブ仮設住宅や賃貸住宅、親族宅などに身を寄せる避難者は全国で12万3千人に上る。阪神大震災では約5年で仮設住宅がなくなったのに対し、岩手、宮城、福島の被災3県では1月末現在で1万8千戸に入居者がいて、仮設生活の解消も見通せない。沖縄県内への避難者数は598人(1月現在)。県別では福島県が419人と最も多く、宮城県92人、岩手県3人。ピーク時の約半数に減った。県が2016年11~12月に県内避難者を対象に実施したアンケート結果によると、88%が今後の生活について「避難を継続」「県内に定住する」と答え、沖縄で県内の生活を望む避難者が大多数であることが明らかになった。中には経済的な理由で戻れない人もいる。福島原発事故で避難区域外から避難した自主避難者に対する住宅無償提供がことし3月で打ち切られる。支援打ち切りは避難者の生活を直撃する。県内への避難者は子どものいる世帯の割合が高く、二重生活の長期化で経済的不安を抱える世帯も多い。県は新たな補助制度を設けているが、さらに支援を拡充してほしい。避難者は国の原発政策が招いた事故の被害者である。当然ながら国は、被災者の生活安定に責任を持つべきだ。一方、横浜市に自主避難した男子生徒へのいじめ問題が発覚した昨年11月以降、全国各地で同様のケースが存在することが明らかになった。横浜市の男子生徒は名前に「菌」を付けて呼ばれていた。教育現場で被災地や避難者の現状を伝え、放射線について科学的な知識を教える必要がある。同時に社会が関心を持たなければ、偏見はなくならない。大人の責任でもある。

*5-3:http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/atcl/cntcolumn/15/00012/00009/?n_cid=nbpncr_twbn (日経BP社 2017年2月20日) 原発事故から4年後の難関、カバー解体、1号機原子炉建屋カバー工事編(第5回)
 時の流れは早い。福島第一原発1号機原子炉建屋の最上階(オペレーティングフロア)に残ったがれきの撤去に手を付けるため、4年間にわたって建屋を覆っていたカバーの解体が始まった。清水建設はカバーの建設に引き続き、工事を担う(以下、敬称略。肩書きや組織名は、特記以外は2016年2月時点)。清水建設生産技術本部の印藤正裕本部長(2011年12月時点)らが知恵を絞って計画した建屋カバーが完成してから、約4年後の15年7月28日。東京電力福島第一原子力発電所では、役割を終えたカバーの解体が始まった。放射性物質が付着した粉じんが作業時に舞い上がるのを防ぐため、建屋カバーの内側に眠るがれきに飛散防止剤を「これでもか」と吹き付けてから、最初のステップである屋根パネルの撤去を始める。建設時と同様に、風が弱まる早朝を狙う。750t吊りクローラークレーンを操って「自動玉掛け装置」を吊り込み、全長40mもの大きさの屋根パネルを取り外す算段だ。クレーンは、カバーの組み立てに使用した機体と同じもの。操作を担当するオペレーターの技能とマシンが一体となり、一つ目のパネルが無事に外れた。「その瞬間、現場には感動が広がった」。解体工事を指揮する清水建設JVの砂山智所長は、その時の現場の様子をこのように振り返る。カバー解体の第一段階である屋根パネル6枚の取り外しはその後も順調に進み、同年10月5日に終了した。

*5-4:http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2016/03/post_13557.html (福島民報 2017年2月22日) 東日本大震災 「福島第一原発事故」アーカイブ2016/3/31分、31日「凍土遮水壁」運用開始 第一原発汚染水対策規制委が認可
 東京電力は31日、福島第一原発の建屋への汚染水流入を抑制する「凍土遮水壁」の運用を開始する。原子力規制委員会が30日の会合で、建屋海側(東側)などの先行凍結を認可した。東電は工程を3つに分けており、規制委が認めたのは工程の第1段階。建屋の周囲約1・5キロを取り囲む凍土壁全体のうち、海側全面(690メートル)と山側(860メートル)の大部分が対象。効果は1~2カ月程度で表れるとみている。東電は山側の残りの部分(7カ所、計45メートル)についても今後、実施計画を申請する。凍土壁全体の凍結が完了するまでには8カ月かかる見込み。31日は昼ごろ、凍結を始める。規制委の田中俊一委員長(福島市出身)は会合で「建屋への流入水を減らすのが本質的な解決ではない。最終的には建屋の水を枯らす必要があり、今後の道筋に向けデータを取ってほしい」と注文した。凍土壁は1~4号機を取り囲むように埋めた配管に冷却材を循環させて地盤を凍らせ、建屋に入り込む地下水を遮って汚染水の増加を抑える。しかし、建屋周囲の地下水位が下がり過ぎると、建屋内の汚染水の水位と逆転し、汚染水が地中に漏れ出す恐れがある。地下水位が下がり過ぎた場合、凍結中止や建屋周辺の井戸への注水で対応する。凍土壁の建設には約350億円の国費が投入され、平成26年6月に着工し、先月設備工事が終わった。
■最後のステップ 経産副大臣
 高木陽介経済産業副大臣は、いわき市で開かれた政府、東電による廃炉・汚染水対策現地調整会議後、「地下水バイパス、サブドレン計画実施、海側遮水壁とさまざまな汚染水対策を行ってきた。(凍土遮水壁は)最後の大きなステップ」と述べた。東電の増田尚宏福島第一廃炉推進カンパニー最高責任者は「決して運用を間違うことがないよう取り組む」と語った。

*5-5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201702/CK2017021002000259.html (東京新聞 2017年2月10日) 福島2号機、格納容器内の高線量確実 カメラ2時間で故障
 東京電力が九日、福島第一原発2号機の原子炉格納容器内に堆積物除去ロボットを投入して実施した調査で、空間放射線量が毎時六五〇シーベルトと推定された。一月下旬の前回調査の推計五三〇シーベルトを上回る過去最高値。政府内では前回調査を疑問視する意見が少なくなかった。画像の解析によるもので、線量計で測定しておらず、大きな誤差がある可能性があるためだ。また圧力容器の真下付近の線量が最も高くなるとみられるが、二〇シーベルトとされた。信頼性が揺らいでいるとして、数値の公表に慎重な意見もあった。しかし、今回の調査でも高い線量が推計されたことで、誤差を考慮しても格納容器内が数百シーベルトという高線量であることはほぼ確実となった。堆積物の除去作業は九日午前に始まり、約二時間後、ロボットに搭載したカメラの映像が暗くなる不具合が発生して中断した。東電は「カメラは一〇〇〇シーベルトに耐えられるが二時間で壊れた。五〇〇~六〇〇シーベルトはおおむね正しいと思う」としている。

*5-6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/condition/list/CK2017021802000147.html (東京新聞 2017年2月18日) 【福島第一原発の現状】自走ロボ調査は失敗
 東京電力は福島第一原発2号機の原子炉格納容器内に、サソリ型の自走ロボットを投入したが、圧力容器下の足場にたどり着けなかった。途中、レール上の堆積物で動けなくなった。回収も断念して内部に放置。調査は失敗に終わった。一月下旬からの予備調査では、溶融した核燃料(デブリ)の熱で溶けたとみられる穴が圧力容器下の鉄製の足場で見つかった。格納容器内で最大毎時六五〇シーベルト(推定)を計測。ロボットが圧力容器下まで行ければ、デブリの状況をもっと詳しく確認できる可能性があった。デブリを取り出すためには、まだまだ情報が不足している。今回のロボット調査が失敗したことで、東電は新たなロボット開発など調査方法の練り直しを迫られる。


PS(2017年3月12日追加):*6のように、九電が玄海町と唐津市鎮西町・肥前町・呼子町を全戸訪問して“丁寧な”コミュニケーションをしたそうだが、いつもの紋切り型の説明にすぎないと思われる。何故なら、「丁寧な」とは、言葉が丁重でお辞儀が深いことを意味するだけで、内容が変わるわけではないからだ。また、「肯定的意見が約7割」というのは、わざわざ訪ねてきた九電職員の前で否定的な意見は言いにくく、もし否定的な意見を言えば、「停電してもいいのか」「ここの家の電気を止めたい」などと脅迫されるからであり、この全戸訪問は再稼働の説明と原発再稼働を推進する与党議員の選挙運動を兼ねたものにすぎないだろう。しかし、鎮西町や肥前町には「近所の娘さんが白血病になった」という話や、呼子には「海藻が少くなった」などの実体験があるのだ。

*6:http://qbiz.jp/article/105387/1/ (西日本新聞 2017年3月12日) 九電が全戸訪問、58%で面会 再稼働へ玄海町や唐津市
 九州電力は10日、佐賀県玄海町の玄海原発再稼働を巡り、同町と一部が原発5キロ圏に入る同県唐津市の鎮西町、肥前町、呼子町の全戸を2月に訪問し、約58%に当たる4347戸で住民に面会して安全対策を説明したと発表した。全戸訪問は玄海町では2013年以来約3年半ぶり。唐津市では初めて。玄海町は1569戸のうち約63%の991戸で面会、唐津市では5905戸のうち約57%の3356戸で面会できたという。住民からは約2300件の意見が寄せられ、再稼働、原発の必要性、安全性に関する意見が約1300件。肯定的意見が約7割、慎重な意見と反対意見が約2割、賛否が判別しにくい意見が約1割だったという。避難に関しては約300件あり、約6割が不安を訴える内容だった。九電は「今後は面会できていない世帯を数カ月で訪問し、丁寧なコミュニケーション活動を続けたい」としている。


PS(2017年3月14日追加):西日本新聞が*7の記事を掲載しているが、佐賀県の第三者委で意見表明した26人のうち女性は6人で23%、男性は20人で77%であり、女性は1/3に満たない。そして、原発再稼働について、女性は反対4人・容認2人、男性は賛成9人・容認5人・反対6人と、食品の安全性や環境汚染に敏感な女性の方が反対が多いのである。
 その食品の生産者である農業者は、4人のうち伊万里農協の岩永組合長が明確に再稼働反対を表明し、唐津農協の堤組合長は反対しているものの最大の心配事は原発事故ではなく風評被害で、佐賀県農協の金原組合長は再稼働に賛成しており、食品製造者として情けない。これなら、原発のないオーストラリア産牛肉の方が、安い上に脂肪が少なく、人工の放射性物質を含まないため、安全でよいと思う。また、漁業者のうち男性である佐賀県有明海漁協の徳永組合長は再稼働容認で、女性である佐賀県漁協女性部の西村連合会長は言いにくそうに再稼働に反対している。また、佐賀県森林組合連合会の福島会長は纏めるのが難しかったとしながら容認しているが、農林漁業は太陽光・風力・バイオマスなどの自然再生可能エネルギーによる発電機器を設置できる場所が多く、自らが発電者になり得るので、流されることなく、自然再生可能エネルギーで発電するための補助を求めた方が有益だと考える。
 なお、佐賀県中小企業団体中央会の内田会長の「安全性が確保されたら再稼働もやむを得ない」「原発以外に石油、天然ガスのほか、風力・太陽光といった再生エネルギーが考えられるが、生産コストが割高で、中小企業の経営の圧迫に繋がる」等というのは、メディアで宣伝されている自然再生可能エネルギー高コスト論そのままだが、すべての専門家が「原発に100%の安全はない」としている上、私がこのブログの「原発」「資源・エネルギー」「環境」の項目で証拠をつけて述べてきたとおり、世界の自然再生可能エネルギーのコストは原発より安くなっている。

*7:http://qbiz.jp/article/105484/1/ (西日本新聞 2017年3月14日) 賛否両論さまざま 玄海原発再稼働 第三者委
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働について有識者らの意見を聞く県の「第三者委員会」(会長・副島良彦副知事)第3回会合では13日、委員から賛否さまざまな意見が出た。県は委員会としての結論は求めず、山口祥義知事が再稼働に同意するかどうかの判断に役立てるとしているが、委員会を今回で終了させることに異論も相次いだ。県は委員会の中に原子力や地震分野の学識者7人による専門部会を設けており、今月中にも最終会合を開いて報告書をまとめる予定。13日の会合の主な意見は次の通り。
①堤武彦・唐津農協組合長 国が示す新しい対策は、それぞれの分野で格段に安全対策が強化され評価している。ただ、最大の心配事である風評被害についての新たな対策強化は聞いていない。このような中では再稼働に賛成とは言い難い。
②岩永康則・伊万里市農協組合長 原則は「第二の福島をつくらない」ということ。東北、近畿、九州でも原発事故が起きたら「日本の農産物は食べられない」と世界で議論される。原発をゼロにして国民が負担を強いられるとしても、納得はできると思う。
③家永美子・JA県女性組織協議会長 佐賀は農業県で、一度事故が起きると1次産業は壊滅的被害を受ける。再稼働についての説明は、資源エネルギー庁だけでなく環境省や国土交通省、農林水産省からもあるべきだった。農業団体としてはもう少し考えてもらいたい。
④徳永重昭・県有明海漁協組合長 ノリ養殖は冷凍網や加工などあらゆる面で電力が必要。原発事故が起きてから化石燃料に頼りすぎ、温暖化が加速する傾向がある。将来的には原発廃止の方向に進むべきだと思うが、再生エネルギーで電力に余裕が出るまでは頼らざるをえない。
⑤西村陽子・県漁協女性部連合会長 福島原発事故の現地視察で見た光景が今も鮮明に浮かぶ。佐賀県の主幹産業はノリ。熊本でも地震があった。佐賀でないとは言えない。再稼働した場合、地震がないか心配だ。専門部会委員との話し合いの場も設けてほしい。
⑥福島光洋・県森林組合連合会長 組合で統一した意見をまとめるのは難しかった。将来は、原発や化石燃料よりも再生エネルギーにシフトしてほしい。原発は安全の上に安全を重ねて、再稼働するよう努力してもらいたい。
⑦内田健・県中小企業団体中央会長 安全性が確保されたら再稼働もやむを得ないと考えている。原発以外に石油、天然ガスのほか、風力・太陽光といった再生エネルギーが考えられるが、生産コストが割高で、中小企業の経営の圧迫につながる。
⑧青柳直・連合佐賀会長 現場を抱える九電労組があり、賛成も反対もある。企業の生産活動には安定したエネルギー供給が欠かせない。単価が上がれば企業に影響を与える。新規制基準をクリアし、地元同意が得られたら再稼働やむなしと判断している。
⑨松永宣子・県老人福祉施設協議会長 会員の中に賛否はあるが、容認が多い。原発5キロ圏内の施設長から話を聞くと、玄海原発は安全性も配慮され、テロなどがない限り事故は起きない、と言っているので信じたいが、入所者の安全を考えて避難計画を立てている。
⑩岩本諭・佐賀消費者フォーラム理事長 県は、原発から30キロ圏という距離にこだわらず、安全確保のために努力する姿勢を示してほしい。化石燃料を使うから電気料金を値上げしたのなら、再稼働したら料金を下げる必要がある。県は九電と向き合う際に把握しておいてほしい。
⑪柳瀬映二・県平和運動センター事務局長 いち早く原発をやめ、子どもが安心でき、豊かな自然を残し続けることを考えなければいけない。再稼働と避難計画は車の両輪だが、避難計画の説明は不十分なままだ。電気は足りている。県は再稼働しない判断をしてほしい。
⑫飯盛康登・県商工会連合会長 新規制基準に適合していると判断したのであれば、玄海原発の再稼働をお願いしたい。小規模事業者は経営が圧迫され、大変であると分かっていただきたい。エネルギー政策は、国が中長期的な政策を示してほしい。
⑬池田秀夫・県医師会長 災害発生時の医療体制を最優先に考えてほしい。住民への安定ヨウ素剤事前配布はもちろん、被災時の情報の正確かつ迅速な開示、入院・在宅患者の搬送、避難患者の受け入れなどの態勢づくりが再稼働の前提条件だ。
⑭寺尾隆治・県歯科医師会長 自分たちは専門家ではないが、専門部会のメンバーが十分に審議したと思う。安全面について最善の注意を払って頂けるならば、原発再稼働に反対するものではない。
⑮佛坂浩・県薬剤師会長 事故時の健康被害防止や避難時の医療充実のため安定ヨウ素剤の事前配布と講習、適切な服用方法の周知徹底をしてほしい。安全確保が担保されれば再稼働に反対しない。ただし、原発依存度を低減させ代替エネルギー施策を講じてほしい。
⑯三根哲子・県看護協会長 看護職は原発事故の時、被ばく者に最初に対応する職業の一つで、必然的に被ばく者になる。国は環境問題改善(温暖化防止対策)のためであっても、原発再稼働を国民に強いてはいけない。県は県民の命と安全な暮らしを守るため再稼働を認めない判断が必要。
⑰北野修・県労働組合総連合議長 原発は100%安全と言えない。使用済み核燃料は安全保管できず、核燃料サイクルも破綻している。住民説明会でも反対意見しかなかったことを踏まえ、山口知事には原発再稼働反対を表明してもらいたい。
⑱藤岡康彦・県介護老人保健施設協会長 原発をコントロールできない現状では再稼働は反対。それでも玄海原発を再稼働するのであれば避難計画を早急に見直し実効性のあるものにしてほしい。これまでの計画は机上の考えで、介護現場の現状を理解していない。
⑲松尾義幸・県障害者社会参加推進協議会長 再稼働について、もう(手続きが)進んでおり、いろいろ申し上げることはない。30キロ圏内の避難計画について再度の配慮をお願いしたい。
⑳山田浩史・県連合青年団事務局長 分かりやすい言葉で県の方向性を示してほしい。国の意向は無視しても構わない。県は委員会を(今後も)やるべきだ。(再稼働を)決めるのは誰か分からないが、決めた人が責任を持つべきだ。
【欠席した9人のうち、次の6人は書面で意見陳述した。3人は後日提出する】
①金原寿秀・県農協組合長 代替エネルギーが確保できないうちに原発を止めれば電気代も上がり産業や生活に大きな影響が出る。廃炉には多額の費用が掛かり、それを捻出するためにも、今ある原発は高い安全性が確認できれば動かしていくべきだ。
②井田出海・県商工会議所連合会長 福島原発事故の反省を踏まえ、厳格な規制基準が設けられ、行政も電力会社も緊張感を持っているので、事故時も適切な対応がなされると思う。日本の経済力を維持し、生活水準を落とさないために原発は必要だ。
③枝吉真喜子・佐賀商工会議所女性会長 住民説明会の参加者が少なかったのは県の姿勢に期待が持てず、形だけのスケジュールを消化していると住民が思っているからではないか。山口知事は再稼働容認方針だが、少なくとも30キロ圏内の住民に丁寧な説明をする責任がある。
④村岡安広・佐賀経済同友会代表幹事 県内産業界のほとんどの人が、早期の再稼働をお願いしたいということであると理解している。私も同じように思っている。
⑤三苫紀美子・県地域婦人連絡協議会長 安全が保証されない限り再稼働には賛成できない。
⑥工藤和彦・原子力安全専門部会長 原発についての個人的な見解としては「100%の安全はない」との意識を常に持って、安全性向上へ不断に取り組んでいくことが必要だと考える。


PS(2017年3月14日追加):*8の関西弁の万博資料は、関西人はこの程度だとして関西人を侮辱しており、「万博はゴチャゴチャを解決する場」というのも論理が通らず、これを書いた人の頭がゴチャゴチャなのだと思われる。また、「主なゴチャゴチャは精神疾患だ」というのは、病気はゴチャゴチャな状態だと言うのと同じで、これを書いた人は、知識も見識もなく差別意識のみがあり、レベルが低いことがわかる。経産省がこれでは、エネルギーに関する簡単な問題も必要以上に複雑にして、解決困難になるわけだ。

*8:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201703/CK2017031402000247.html (東京新聞 2017年3月14日) 「ゴチャゴチャ解決の場 例えば精神疾患」 万博資料、経産相「不適切」
 世耕弘成(せこうひろしげ)経済産業相は十四日の閣議後会見で、経済産業省が二〇二五年国際博覧会(万博)を大阪に誘致するため十三日に公表した報告書案の関西弁版が「不適切だった」と陳謝し撤回した。関西弁版では万博を「人類共通のゴチャゴチャを解決する方法を提言する場」と表現し、「例えばやな、精神疾患」などと記載していた。世耕氏は「関西弁版(の作成)はまったく報告を受けていなかったし、不適切な表現が入っていた」と話した。担当者は、関西人にも親しみを持ってもらいたかったと作成の理由を話しているというが、世耕氏は「関西人の私が見ても、親しみは持てなかった」と語った。資料は十三日に大阪市内で開かれた有識者会合で配られ、経産省のホームページにも掲載された。正式な報告書案は「いのち輝く未来社会のデザイン」として、二五年五月三日から十一月三日に大阪湾沿岸部の人工島「夢洲(ゆめしま)」で開催する内容。万博を「人類共通の課題の解決に向けたアイデアを発信し、異なる知と知が融合することで新たなアイデアが生まれる場」としている。経産省は報告書案に加え、「試作品」として関西弁版も添付した。万博は「ゴチャゴチャを解決する場」で、「主なゴチャゴチャの例」として正式な報告書案になかった「例えばやな、精神疾患」などを追加。冒頭に「こんな言い方せーへんとか、細かいこと言わんといてな。とにかく大目にみてくれると助かるわ」と書いていた。


PS(2017年3月15日追加):*9のように、1kg当たり5,000~8,000ベクレル以下の膨大な量の除染土を、日本全国の公共工事で再利用するのが既定路線のようだが、数世帯が放射線量の高い地域にある家に帰る意欲を持つために放射性廃棄物を日本全国にばら撒くのではなく、それらの人々に補償して移住を進めるのが筋だ。何故なら、フクイチ事故以前は、100ベクレル以上の放射性廃棄物は、再利用などせずにドラム缶で厳重に保管してきたのであり、放射性廃棄物は閉じ込めるのが原則であって、ばら撒くのは論外だからだ。
 フクイチ事故後は大量の放射性廃棄物が出たが、それを日本全国にばら撒けば厳重に管理できるわけがないため、一か所に集めて厳重に管理する必要がある(★)。その一か所は、5,000~8,000ベクレル以上の土壌になっている帰還困難区域の埋め立てや防潮堤建設、海岸防災林や高速道路工事であり、それでも分量が多いのでコンクリートでしっかりした枠を作って、環境と遮断すべきだ。そうすれば、そのような場所でも、自然再生可能エネルギーによる発電地帯や自然公園にはできる。
 なお、日本では、既に放射性廃棄物を焼却してセメントの材料などにしているが、これでは新しいマンションや新築の家を安心して購入することはできない。

★大量の放射性廃棄物を日本全国にばら撒けば、①全国で心疾患や癌が増えて平均寿命が短くなり、年金財政にはプラスである ②全国で増える心疾患や癌の増加原因をフクイチ事故と特定できなくなり、「日本人の食習慣が変わったから」「人口が高齢化したから」など他の理由をつけることが可能になる 等の効果があるため、放射性廃棄物のばら撒きは、これらが目的の悪魔の政策ではないか?

*9:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/413609 (佐賀新聞 2017年3月14日) 除染土、再利用実証試験へ 福島原発事故で環境省、住民理解、ハードル高く
 東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の除染で生じた土を全国の公共工事で再利用するため、環境省は4月にも除染土で盛り土を作って放射線量を測る実証試験を同県南相馬市で本格的に始める。安全性を確認した上で再利用につなげたい考えだが、再利用先の周辺住民の理解が得られるかどうかは見通せない。環境省は昨年6月、管理責任が明確で、長期間掘り返されることがない道路などの公共工事に限定し、放射性セシウム濃度が基準以下となった除染土を再利用する方針を決定。工事中の作業員や周辺住民の被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下となるよう、1キログラム当たり5千~8千ベクレル以下に設定した。さらに土やコンクリートで覆い工事終了後の住民の被ばく線量を年間0・01ミリシーベルト以下に抑える。昨年7月に避難指示が解除された同市小高区の「東部仮置き場」。柵で囲まれた広大な敷地に除染土が詰まった黒い袋が大量に積み重なっていた。その一角にある盛り土の予定地付近には重機が並び、「再生資材化プラント」では放射性物質の飛散を防ぐテントの建設作業が進んでいる。実証試験は、仮置き場に保管された平均値で1キログラム当たり2千ベクレル程度と推計される除染土約千立方メートルを使う。分別して品質調整した除染土を遮蔽(しゃへい)のため別の土で覆って盛り土を作る。放射線量や浸出水の放射性物質濃度を測り、風雨の影響がどの程度あるか調べる。「目の前の仮置き場にいつまでも黒い袋があるから、家に帰る意欲がそがれる。袋が減るなら再利用も仕方ない」。避難先から東部仮置き場近くの自宅に戻っていた男性(68)は悩ましげだ。福島県内の除染廃棄物の量は、最大で東京ドーム18杯分に当たる2200万立方メートルに上ると推計される。中間貯蔵施設(同県双葉町、大熊町)で保管後、県外で最終処分する予定だが、全てを処理するのは難しいため、再利用で量を減らすのが環境省の狙いだ。南相馬市の担当者は「大量の土を中間貯蔵施設へ輸送するだけでは、仮置き場の解消に長い年月がかかる」と説明。市は仮置き場の早期解消のため、比較的濃度の低い除染土について、市内の海岸防災林や高速道路の工事での再利用の可能性を探っている。ただ、再利用先の住民が放射性物質への不安から、受け入れに反発することも予想される。男性も「除染土が流出したり、飛散したりしないかが心配だ。責任を持って管理してもらわないといけない」と懸念する。福島県外では、住民理解のハードルがさらに上がるのは必至。これまでの環境省の有識者検討会では、専門家から「県外での再利用は簡単ではない」「技術開発を進めても、実際の再利用先がなければ意味がない」との意見も上がった。環境省は実証試験前に仮置き場周辺の住民への説明会を開いており、現場の見学会も開く予定。担当者は「実証試験で安全に管理する方法を検証し、住民に理解してもらえるようにしたい」と話している。


PS(2017年3月16日追加):*10-1のように、原発事故の際には玄海町と同じリスクに晒され、避難に協力もしなければならない周辺自治体に原発再稼働に関する同意権がなく、“原発の地元”は玄海町と佐賀県だけというのはフクイチ事故の教訓を考慮していないため、周辺自治体から不満が出るのは当然だ。なお、参加者の「100%安全と言わないのに、なぜ再稼働をするのか。もっと環境に優しいエネルギーがあるはずだ」「事故が起きたときの生活の補償はどうなっているのか」などの質問はもっともだ。そして、この付近には潮流発電や風力発電の適地が多く、*10-2のように、鷹島には海岸の入江を締め切った海中ダムがあり、低層の貯留水を海へ放流しているので、その放流口に発電機をとりつければ、給水だけでなく発電もできそうだ。

   
 玄海原発30km圏内     玄海原発        鷹島での説明会    鷹島の海中ダム     
               2017.3.16西日本新聞

*10-1:http://qbiz.jp/article/105657/1/ (西日本新聞 2017年3月16日) 玄海原発「再稼働ならデモも」 長崎・鷹島、「同意」対象外に不満 県外説明会
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働を巡り、長崎県は15日夜、原発から最短8・3キロの離島、同県松浦市鷹島町で国と九電による住民説明会を開いた。同原発から30キロ圏内の自治体のうち、佐賀県以外で説明会が開かれたのは初めて。安全性への不安を訴える声が相次いだほか、事実上、立地自治体の玄海町と佐賀県に限られる「地元同意」について不満の声が出た。説明会には島民を中心に約80人が参加。国や九電の担当者は審査概要や安全対策などを説明した。質問に立った男性は「立地する町と県の同意があれば再稼働するという話だ。再稼働を前提にした説明会ではないか。玄海町に近い私たちの声は届かないのか」と怒りを込めた。新松浦漁協の志水正司組合長(69)は「再稼働には漁業者の9割が反対している。漁民の声を無視して再稼働するのなら海上デモも辞さない」と声を荒らげた。説明会は予定の2時間を超えた。終了後、友広郁洋市長は記者団に「周辺自治体には説明のみではなく、再稼働の了解を得る制度をつくるよう、国に要請していきたい」と語った。長崎県内では21日まで、30キロ圏内の佐世保市や平戸市、壱岐市でも説明会が開かれる。玄海原発をめぐっては、玄海町の岸本英雄町長が7日に「同意」を表明。焦点は佐賀県の山口祥義知事の判断となっている。
●避難路への不安消えず 陸路は佐賀に向かう橋のみ
 佐賀県玄海町の九州電力玄海原発の再稼働に向け、長崎県松浦市鷹島町で15日に開かれた住民説明会。再稼働の是非を判断する「地元同意」がないことへの批判のほかに、原発事故が起きた場合の避難ルートのぜい弱さを指摘する意見も出た。難解な専門用語が飛び交う説明会に参加者からは戸惑う声もあった。会場となった鷹島スポーツ・文化交流センターには市民約80人が集まった。鷹島は、原発から最も近い場所で約8キロしか離れていない。島全体が30キロ圏内に入り、原発事故時の避難は島外への脱出が必要となる。だが、陸路の避難は原発のある佐賀県側に、いったん入る形の「鷹島肥前大橋」を通過するルートしかない。質疑に立った参加者からは「(避難ルートが1本だけでは)橋が渋滞してしまう。どのような対応をするのか」との意見が出た。国の担当者は「佐賀、長崎両県と話し合っていく」と述べるにとどめた。その後、「風向きによっては鷹島に放射性物質が飛んでくることもあり得る。そうなった場合に、島民が避難できると考えているのか」と国などに訴える参加者もいた。立地自治体の玄海町と佐賀県のみの「地元同意」についても、松浦市にも同意権を与えるように求める声が上がった。だが、九電側からは容認する答弁はなかった。参加者の1人は「100%安全と言わないのに、なぜ再稼働をするのか。もっと環境に優しいエネルギーがあるはずだ」と疑問を呈していた。また、女性の参加者は「事故が起きたときの生活の補償はどうなっているのか」など、事故後の生活を懸念する声もあった。主催する県では、16日以降も県北4会場で説明会を開く。ただ、その後に再度、説明会を開く予定はないという。

*10-2:http://www.wec.or.jp/library/100selection/content/takashimadam.html 鷹島海中ダム、長崎県鷹島町
鷹島は、九州の西北端・玄界灘に面した南北13kmの島です。本地区は、本土に比べて降雨が少なく、河川もわずかで、農民は、安土・桃山時代から「六本幟」と呼ぶ雨乞いを行うなど、常に水不足と闘う生活を強いられてきました。その様な状況を打開すべくダムの建設が、昭和60年に計画され平成6年に完成しました。鷹島海中ダムの特徴は、ダムの建設地に陸で適地がなかったことから海岸の入江を締め切り、ダム湖内の海水塩分を沈殿させ、流入水をためて内水面を海面より高くして高低差と比重差を利用し、堤体下部に設けた除塩暗渠から、塩分の沈殿作用が進んだ低層の貯留水を海へ放流して淡水化を図るという方式で、日本初の海中ダムです。有効貯水量46万トンの水は、島内ほぼ全域の農地に給水されています。また、堤体背面に「六本幟」等が描かれ、島の玄関口・日比港を出入りするフェリーからその個性のある景観を見ることができます。ダム湖周辺は、展望所をはじめ周辺は遊歩道や公園も整備され、春先には芝桜が咲き、公園内のダム湖へ注ぐ「せせらぎ水路」はメダカやアメンボなどの生息地になっています。初夏はホタルが群舞する幻想的な姿を見せるなど、地域住民の憩いの場となっています。鷹島海中ダム湖では毎年1回、住民参加によりダム湖周辺の清掃作業を行い、ダム本来の機能を保つとともに、景観等を保持しています。


PS(2017年3月17日追加):*11のように、福島県など地元自治体が強く要請してきた4基全ての廃炉は、事故から6年経っても「まだ道筋が見えない」などと呆れたことを言わずに速やかに行うべきであり、この判断は、6年経たずとも事故直後に出た筈だ。にもかかわらず、このように重要性の順番が異なり、徹底した原因究明やそれに基づく意思決定がなされない態度が、日本の電力会社の原発運転能力のなさと経産省の政策の不誠実を示唆している。なお、フクイチの廃炉は、核燃料(デブリ)を迅速に取りだすことができないのなら、チェルノブイリのように直ちに石棺にするのが、放射性物質をむやみに散乱させず、最も安価で最短時間の解決をして被害を最小にする方法で、事故直後からわかっていた筈だ。

   
            2017.3.17毎日新聞             牛白血病の増加 周産期死亡率の推移

*11:http://mainichi.jp/articles/20170317/k00/00m/020/140000c (毎日新聞 2017年3月17日) 県民は「全基」を要請 
 東京電力ホールディングス(HD)は福島第2原発(福島県)の1号機について廃炉とする方針を固めたが、福島県など地元自治体が強く要請してきた4基全ての廃炉の道筋はいまだ見えない。一方、東電は福島第1原発事故の処理費用捻出のために柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働は進める方針だが、地元の反対は根強い。「県民の強い思いは県内原発の全基廃炉だ」。福島県の内堀雅雄知事は今年1月、東電の広瀬直己社長との会談で、福島第2原発の廃炉を迫った。一方、広瀬社長はこれまで「福島の思いは理解しているつもりだが、会社としては大変大きな判断になる」と明確な方針を示してこなかった。東電は福島第1原発の廃炉や賠償などの対応に追われており、これらの処理費用を捻出するための経営再建も喫緊の課題だ。福島第2の廃炉に手をつければ、さらに人手や費用が必要になる。東電内には「福島第1原発の対応が最優先で、第2原発の廃炉は待ってほしい」(幹部)との思いが強かった。だが、いつまでも地元の要請を無視し続けるわけにはいかず、福島第1原発の処理費用の工面も一定のめどがついたことから、まずは1号機に限った形で第2原発の廃炉を打ち出すことにした。政府内には「柏崎刈羽原発の再稼働に理解を得るためにも、福島第2の方針を明確にする必要がある」(政府関係者)との思惑もある。残る3基についても東電は廃炉の方向で検討を進めるが、費用面などで課題は残り、廃炉を決めても長い期間がかかることも予想される。また、1基で年間500億円の収益改善効果が見込まれる柏崎刈羽原発の再稼働についても新潟県知事は慎重な姿勢を示しており、東電の原発事業はなお課題が山積する状態だ。


PS(2017年3月20日追加):*12に、「東芝は、①原発が停止し、国内で火力発電用の燃料が必要とされたため、原油と連動しない米国産LNGを2019年から20年間にわたり年220万トン購入し、日本の電力事業者などに発電用として供給することにした ②東芝の思惑に反して原油とLNGの価格が下落し、米国産は割高となって競争力が低下したため、今後20年間で最大計1兆円近くの損失が生じかねない」と書かれている。しかし、エネルギー改革の時代に、20年間の長期でLNG調達契約をするなど、東芝のエネルギー部門は先見の明がなく、その杜撰な経営が他部門の足を引っ張っていることがわかる。

*12:http://qbiz.jp/article/105869/1/ (西日本新聞 2017年3月18日) 東芝、LNG事業で損失1兆円も 割高で販売先なく
 経営再建中の東芝は、米原発のほか液化天然ガス(LNG)事業でも巨額損失の不安を抱える。国際相場を見誤り、米企業から割高なLNGを長期にわたって調達する事態となったためだ。販売先を見つけられない場合、今後20年間で最大計1兆円近くの損失が生じかねない。全体の約半分の量について複数の顧客と基本合意書を締結したとしているが、条件面の調整は終わっておらず実際の販売契約には至っていない。既に2020年3月期決算で100億円規模の損失を見込んでいるようだ。東芝は13年に米フリーポート社(テキサス州)と、米国産天然ガスから加工したLNGを調達する契約を結んだ。東京電力福島第1原発事故で原発が停止し、国内で火力発電用の燃料が必要とされたためだ。当時は原油価格の高騰に連れてLNGも値上がりしていたため、原油と連動しない米国産LNGを19年から20年間にわたって年220万トン購入し、日本の電力事業者などに発電用として供給することにした。ところが東芝の思惑に反して原油とLNGの価格は下落し、米国産は割高となって競争力が低下した。東京電力ホールディングス子会社と中部電力が共同出資するJERA(ジェラ)から販売やマーケティング活動で支援を受けているが、顧客探しは難航している。19年9月に供給を始めるためには、18年中に販売先を決めて準備をする必要がある。LNGの売れ行きにかかわらず、フリーポート社に対し液化にかかる費用は支払わなければならないため、想定より安く売りさばいたり、LNG化を見送ったりすれば損失処理が必要となる。


PS(2017年4月6日追加):*13-1に書かれているように、震災復興の司令塔である今村復興相が記者会見で、「①(自主避難者は)本人の自己責任」「②裁判でも何でもやればよい」としたことのうち、①は、*13-2のように、放射線量が年間20mSV以下なら避難指示を解除するという日本基準が、チェルノブイリ法の強制移住地域5mSV以上と比較してあまりに高いことがそもそもの原因だ。また、②は、*13-3のように、各地で提訴された東電・国に賠償を求める原発被災者訴訟で、2017年3月には前橋地裁が国に賠償を命じたが、裁判をするには時間と労力がかかり、最高裁まで行くと結果が国寄りになるため、苦労が絶えないわけである。さらに、今村復興相は、TV番組で「③ふるさとを捨てるのは簡単だが、戻って頑張っていく気持ちをもって欲しい」などとも述べておられるが、これは、自民党憲法改正草案のように「日本国」を主に考えているか、日本国憲法のように「日本国民」を主に考えているかの違いだ。つまり、日本もチェルノブイリ法と同程度の権利を原発被災者に与えるべきなのである。
 なお、この放射線被害は、(日本政府は認めたくないようだが)風評被害のような実態がないのに評判だけで起こる被害ではなく、また不安や心の傷といった精神的な問題でもなく、心疾患や癌などの命に関わる病気になるという健康被害をもたらすものである。そのため、チェルノブイリ原発事故で強制移住地域となった年間5mSV以上の地域は避難・帰還のどちらを選んでも補償されるべきだ。それには、原発被災者の土地・家屋を買い取って移住させる方法もあり、移住を選択可能にして補償すべきなのである。そのようにしても、旧ふるさととの繋がりは、県人会や「南相馬出身者の集い(もしくは情報交換会)」などを、知事や市長・町長などを招いて頻繁に開くことによって可能だ。

   

(チェルノブイリ法は、年間被曝量1mSV超の可能性のある地域を汚染地域と定義している)
     《http://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-13030 参照》
 
*13-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12878633.html (朝日新聞社説 2017年4月6日) 今村復興相 避難への無理解に驚く
 震災復興の司令塔なのに、原発事故の避難者たちが置かれた複雑な状況を分かっていないのではないか。今村雅弘復興相が記者会見で、「本人の責任でしょう」「裁判でも何でもやればいい」と話した。福島第一原発の事故後、避難指示の対象区域以外から逃げた自主避難者をめぐる発言である。国の支援のあり方を記者から重ねて問われるうちに今村氏は激高し、会見を打ち切った。後で感情的な態度は謝罪したものの、発言については「客観的に言ったつもりだ」と釈明し、撤回しなかった。避難指示を受けた人と自主避難者との違いを指摘したかったようだが、内容には聞き流せない問題がある。自主避難者の多くは、避難指示に関して国が定めた放射線量の基準に不安が拭えず、悩んだ末に地元を離れる決断をした。全国で2万数千人にのぼり、家族がばらばらになった人は多く、生活に困窮する人もいる。東京電力からの損害賠償や行政による住宅提供も、避難指示を受けた人に比べると手薄だ。自身で決めたこととはいえ、自主避難者も事故の被害者だ。それを自己責任で片付けるのは、国策として原発を推進してきた政府の責任への認識に欠けると言わざるをえない。裁判をすればいいという発言に至っては、開き直りにしか聞こえない。東電や国に賠償などを求めて提訴した原発被災者は各地で1万人を超える。3月には前橋地裁が国に賠償を命じたが、裁判には手間ひまがかかる。その負担を避難者に背負えと言うのだろうか。今村氏はこれまでも、被災者との意識のずれを指摘されることがあった。今年1月、福島市での会合では、最近の避難解除でようやく本格化しつつある福島の復興について「マラソンにたとえると30キロ地点」と発言。3月にはテレビ番組で「ふるさとを捨てるというのは簡単だが、戻って頑張っていく気持ちをもってほしい」と述べた。避難者で地元に戻る人はまだ少数派で、生活基盤や放射能への不安などから当面戻らないという人は少なくない。ふるさとから離れていても、つながりは保ちたいという声も根強い。今村氏の発言は、さまざまな事情を抱える避難者の心を傷つけ、切り捨てと受け取られても仕方ない。帰還の促進策ばかりでなく、被災者の多様な声に耳を傾け、必要な手立てをとるという国の役割を自覚すべきだ。

*13-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/tohokujisin/fukushima_report/list/CK2015070702000163.html (東京新聞 2015年7月7日) 【ふくしま便り】20ミリシーベルト基準を許さない 避難指定解除 南相馬住民の決意
 東京電力福島第一原発の事故で放射線量が局所的に高いホットスポットとなった特定避難勧奨地点の指定を解除したのは違法として、福島県南相馬市の住民約五百三十人が、国に解除の取り消しと一人十万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴したのは、今年四月十七日のことだった。原告団の一人で「南相馬・避難勧奨地域の会」事務局長の小沢洋一さん(59)は、訴訟を「二〇ミリシーベルト基準撤回訴訟」とも呼ぶ。「人の命が何より大切とはっきりさせる訴訟だ」とも。小沢さんと現地を歩いた。特定避難勧奨地点に指定された百五十二世帯は南相馬市の西側半分、阿武隈山地に連なる農村部に点在している。福島第一原発から二十五キロ前後。線量の高さを考えれば、避難指示が出ても不思議はなかった。行政区分を基にした単純な線引きで区域外とされたにすぎない。だが、あまりにも線量が高いことがわかり、国は追加措置をとる。地域の中で、年間積算線量が二〇ミリシーベルトを超えるとみられる地点で、小さな子供や妊産婦などがいる世帯を選んで避難を促す対応をとった。「露骨な分断工作だった」と小沢さんは話す。「同じ小学校に通う子供で指定を受けた家の子とそうでない家の子がいる。指定を受ければ、慰謝料が払われた上、医療費、税金、電気代、ガス代、NHKの受信料までただになる。指定外の家の子も避難はしたが、経済的にも大変。誰だって理不尽だと思うでしょう」。福島県には伊達市や川内村の一部にも特定避難勧奨地点があったが、二〇一二年十二月に解除された。そして南相馬市についても、政府は昨年十二月に解除した。除染により線量が年間二〇ミリシーベルトを下回ったのが解除の理由であると説明された。
●畑の端で、毎時17.7マイクロシーベルトと高い値が計測された
 「分断」を乗り越えて住民は反対で団結した。地域の行政区長のひとりで原告団長でもある菅野(かんの)秀一さん(74)は「年間二〇ミリシーベルトを基準にするのもおかしいと思うが、地域の線量が、二〇ミリシーベルトを下回っているとは到底思えない。それでも特定避難勧奨地点がなくなれば、ただの地域になる。何ごともなかったかのように東電は賠償を打ち切るでしょう」と話す。たしかに地域の線量は驚くほど高い。小沢さんと一緒に実際に線量計をもって計測して歩いたところ、田畑の際などで空間線量が毎時一〇マイクロシーベルトを超えるような場所が随所にあった。政府は年間二〇ミリシーベルトの積算線量に達する目安を毎時三・八マイクロシーベルトとしているが、楽に超えてしまう。南相馬・避難勧奨地域の会の末永伊津夫会長は「東京五輪に間に合わせたいのか、政府は避難区域の解除に躍起になっている。その基準とされるのが年間二〇ミリシーベルトですが、無理があるのは明らかです。もしもこれが既成事実となったら、将来、世界のどこで原発事故が起きても二〇ミリシーベルトまでは大丈夫となる。こんなむちゃを黙認するわけにはいかないのですよ」と話す。前出の菅野さんは、こうも話した。「解除しても現実に帰ってきた子持ち世帯はない。病院もスーパーも閉鎖。長寿会も少年野球もPTAも崩壊。地域社会がなくなった場所へ帰って来られるわけがない。年寄りばかりになって将来なんかない。先日、近所のおばあさんが池に身を投げた。皆で引き上げたけど助からなかった。ここで、どれほど悲惨なことがおきているか、政府は知っているのか。私らは伝えなくちゃならない」。農民一揆、という言葉が頭に浮かんだ。 

*13-3:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-463362.html (琉球新報社説 2017年3月19日) 原発避難者訴訟 国と東電の責任は明白だ
 国と東京電力の責任を認めた判決は極めて妥当な判断だ。福島第1原発事故で福島県から群馬県などに避難した住民ら137人が国と東電に計約15億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、前橋地裁は「東電は巨大津波を予見しており、事故を防げた」と判断し、東電と安全規制を怠った国の賠償責任を認めた。原告のうち62人に計3855万円の支払いを命じている。判決は東電が2002年ごろには第1原発が津波に襲われる可能性を知り得たと認定した。予見可能だった時期がいつなのかは訴訟の最大争点だった。原告側は「02年~08年の間」と主張し、東電と国は「巨大津波は想定外だった」と真っ向から対立していた。政府の地震調査研究推進本部が02年に「福島県沖を含む太平洋側の日本海溝沿いでマグニチュード(M)8級の津波地震が30年以内に20%程度の確率で発生する」との長期評価を公表していた。しかし東電も経済産業省の旧原子力安全・保安院も過去400年間に福島県沖で大地震が起きていなかったため、長期評価を考慮せず、津波対策を先送りにしてきた。東電は08年、長期評価に基づく試算をしていた。高さ10メートルの第1原発の敷地を大きく超える津波が襲来し、敷地南側では東日本大震災と同規模の最大15・7メートルが押し寄せるとの結果だ。すでに大津波を予見していたのだ。それなのに東電は試算結果を公表せず、何の対策も取らなかった。旧保安院に結果を報告したのは3年後の11年3月7日だ。その4日後に震災が発生し、大津波が押し寄せた。無為無策というほかない。原発事故はタービン建屋に給気口から津波が入り、非常用配電盤の浸水により核燃料の冷却機能が失われたために起きた。長期評価や試算結果を踏まえて、給気口のかさ上げ、配電盤や発電機を高台に設置するなどの対策が取られていれば事故は起きなかった。判決はこうした対応を安全より経済的合理性を優先させたと指摘し「特に非難に値する事実がある」と批判した。事故によって福島県から県内外に避難している人は現在でも約7万7千人に上る。判決で国と東電の責任が明白になった。原発再稼働に突き進む国と電力会社は判決を真摯に受け止め、脱原発へと政策転換を図るべきだ。二度と同じ過ちを繰り返してはいけない。


PS(2017年4月8日追加):*14の「①ウェスチングハウスを巡る調査で、経営陣が2016年3月期にも巨額損失の可能性を認識していたのではないかとみて、監査法人が詳しく調べるよう求めていた」「②東芝は事前に損失を認識していた証拠はない」というのは、②は現時点で証拠がないからといって事実がなかったとは言えないため、①は監査法人としては当然だろう。しかし、現在行っている決算は第三四半期のものであるため、決算書にその旨を付記するなり、限定意見を出すなりして決算発表し、一年決算の第四四半期有価証券報告書までにすべてをクリアにしたらどうかと考える。なお、私はスペインで報道を見ていたのだが、2017年3月29日のウェスチングハウスの破産申請日は英国のEU離脱通告日と重なったため、欧州での報道は英国のEU離脱が中心で東芝の取り上げられ方は小さく、公表日の選び方は正解だったと思われる。また、スペインの工業製品のメーカーを見たところ、ホテルの空調は東芝、フロントの担当者が使っていたスマホはソニー、テレビはサムソン、エレベーターはOTISで、タクシーは50%くらいがプリウスだった。さらに、スペインではタクシーの運転手の50%くらいは女性で、帰りのバルセロナからロンドンまでのブリティシュ・エアウェイの機長も女性だったことを付け加えておきたい。

*14:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12882131.html (朝日新聞 2017年4月8日) 東芝決算、なお調整難航 監査法人と溝 11日期限
 東芝の昨年4~12月期決算の発表期限が11日に迫るなか、同社とその監査法人との溝が埋まっていない。監査法人側は、経営破綻(はたん)した米原発子会社ウェスチングハウス(WH)を巡る調査で、WH経営陣が2016年3月期の間にも巨額損失の可能性を認識していたのではないかとみて、詳しく調べるよう求めていた。監査法人による決算の承認はまだ得られていない。問題となっているのは、WHの経営幹部が損失を小さく見せるよう部下に「不適切な圧力」をかけた内部統制の不備だ。監査法人側は、調査の対象期間を15年秋よりも前にさかのぼる必要があると指摘。当時からWH経営陣が損失の可能性を認識していたのかどうかが焦点となっている。東芝はこれまでの調査から、「事前に損失を認識していた証拠はない」(幹部)として、調査そのものを終えた。しかし、監査法人側は、疑いを完全には晴らしていない様子だという。損失を事前に認識していた場合、東芝は16年3月期の決算を修正する必要が生じる。17年3月期末だけでなく、16年3月期末も債務超過となる可能性もある。東京証券取引所では、2期連続の債務超過で上場廃止となる規定がある。しかし、このケースではすぐに適用されるわけではない。18年3月期末までに債務超過が解消されれば、免れる。東芝はこれまで決算発表を2度延期。経営不安をいっそう高める異例の3度目は避けたい考えで、ぎりぎりの調整を続けている。


PS(2017年4月12日追加): *15-1に、東芝の決算について、監査法人は「ウェスチングハウス(WH)の経営幹部が『不適切な圧力』を部下にかけた」ということで「意見不表明」とした。しかし、*15-2のように、「意見不表明」とは、監査証拠の入手が困難で財務諸表に対する意見表明ができないというものであり、内部統制報告書に関する監査報告書の意見不表明は、上場廃止基準に抵触しない。そして、東芝で問題となっているのは、「WHの経営幹部が損失を小さく見せかけるよう部下に『不適切な圧力』をかけた」という内部統制の問題で、東芝は、2017年3月29日にWHの破産申請をしており、WHの破産後は内部統制は問題でなくなり、残余財産のみが問題となる。そして、東芝自体の債務超過や「継続企業」の問題は、他の子会社をいくらで売却できるかにかかっているだろう。

*15-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12887149.html(朝日新聞 2017年4月12日) 東芝、信頼欠く決算発表 監査法人「意見不表明」
 東芝は、2度にわたって延期していた2016年4~12月期決算を、国が認めた期限の11日に発表した。ただ、通常の決算につくはずの監査法人の「適正意見」は得られず、代わりに「意見不表明」という信頼性を欠いた異例のものとなった。経営破綻(はたん)した米原発子会社ウェスチングハウス(WH)をめぐる調査で監査法人との溝が埋まらなかった。東芝を担当するPwCあらた監査法人は、原発事業の損失を小さくみせようとして、WHの経営幹部が「不適切な圧力」を部下にかけたことを問題視。損失を経営陣が早くから認識していた可能性も調べていた。だが、詳しい調査の必要性を訴えるPwCに対して、東芝の綱川智社長は11日夕方の記者会見で「これ以上調査を続けても意味がない」と突き放した。PwCは報告書のなかで「調査結果を評価できておらず、財務諸表に修正が必要か否か判断できなかった」とした。「意見不表明」は十分な監査の証拠が手に入らない場合に監査法人が出す見解で、大手上場企業ではきわめて異例だ。綱川社長は「適正意見のめどが立たないことから、これ以上、ステークホルダー(利害関係者)に迷惑をかけられない」と話した。ただ、東芝の信用はさらに傷ついた。過去の不正会計問題で、東京証券取引所は東芝株を「特設注意市場銘柄」に指定し、上場を維持するかどうかを検討中。この件でも審査に入る。多くの課題も待ち受けている。異例の発表で、支援する金融機関の態度には変化が出かねない。体力のない地方銀行で融資を引きあげる動きがすでに出ている。まずは17年3月期の通期決算の発表を、予定する5月にできるかが当面の焦点になりそうだ。東芝の3月末時点の自己資本は6200億円のマイナスとなり、債務超過に陥る。18年3月期末も債務超過となれば上場廃止になる。その解消には、半導体子会社「東芝メモリ」を高値で売ることが不可欠だ。東芝が発表した16年4~12月期決算は、米国の原子力事業関連で7166億円の損失を計上し、純損益は5325億円の赤字(前年同期は4794億円の赤字)。企業としての存続に疑義が生じたことを示す「継続企業の前提に関する注記」を初めて記載した。
■決算に対する監査意見の種類
(1)適正意見
 企業会計の基準に従って、決算が正しいと監査法人が判断した場合
(2)限定付き適正意見
 一部に不適切な事項はあるが、決算全体には、それほど重要性がないと判断した場合
(3)意見不表明
 重要な監査手続きができず、決算が正しいかどうか判断できないとみなされた場合
(4)不適正意見
 不適切な事項が見つかり、決算全体に重大な影響を与えると判断した場合
〈通常は(1)。(3)(4)は東京証券取引所の上場廃止の基準に抵触し、廃止のおそれが出てくる。今回は(3)

*15-2:http://www.hp.jicpa.or.jp/ippan/cpainfo/ke_word/2007/09/post_40.html (日本公認会計士協会) 意見不表明
 監査報告書において監査意見を表明しないこと。監査報告書を提出しないということではなく、監査意見を表明しない旨を記載した報告書を提出する。監査人が「意見不表明」の報告書を提出するのは、財務諸表に対する意見表明ができないほど、会計記録が不十分であったり、監査証拠が入手困難である場合に限られている。この監査報告がなされると、「不適正意見」と同様に「その決算書は信用できない」ということになり、上場会社は上場廃止基準に抵触することになる。「内部統制監査報告書」においては、重要な監査手続きが実施できなかったことにより、内部統制報告書に対する意見表明のための合理的な基礎を得ることが出来なかったときは、意見不表明となる。内部統制報告書の監査報告書の意見不表明は、上場廃止基準には抵触しない。

| 原発::2015.11~ | 02:21 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.3.7 ふるさと納税とその返礼品・使途について (2017.3.9に追加あり)
    
  2015年の     2017.2.20佐賀新聞   戦後の出生率・出生数の推移 2010年都道府県別
ふるさと納税額  ふるさと納税の返礼品と使途                      合計特殊出生率

(図の説明:2015年のふるさと納税における勝者は、新鮮で美味しい農水産物を返礼品にした地域が殆どで、返礼品に対する批判も出ている。しかし、返礼品による産業振興効果も大きく、使途も真面目で、税収が多ければ本来は税収でやるべきことも散見される。保育所や子育て支援制度の整備については、出生率で成果が表れるが、出生率は戦後ずっと低下し続け、2005年の1.26を最低に、その後は政策効果もあって少し上がっている。県別出生率は、いつも東京が最低だ)

(1)ふるさと納税は、所得再分配を妨げる制度ではないこと
 *1-1のような「ふるさと納税は、返礼品より使途で競え」という論調が、最近、しばしば見られる。その根拠として「①返礼品ばかりが注目される」「②2千円の負担で欲しい商品やサービスが手に入るため、見返りがないか乏しい民間団体への寄付が不利になる」「③高所得者ほど限度額が膨らみ、多くの返礼品を得られるため、所得再分配を妨げる」「④本来の目的からはずれ、寄付のあり方や税制を歪める」などとして具体的な上限規制を求めているが、それでは国民の主体性を奪う護送船団方式になる。

 実際には、ふるさと納税は、*1-2のように「使い道でチョイス」することもでき、その中身には「自然保護、NPO・各種団体の支援、農林漁業・水産業・商工業、医療・福祉」などの多くの使途が示されており、寄付時に選択することになっているため、①は事実ではない。また、使途を指定できることは納税者にとっては画期的なことであり、自分が住んでいる町に使途を指定してふるさと納税を行うこともできる。

 また、*1-5のように、ふるさと納税の大手仲介サイトが、寄付額に比べて高額すぎる品や地域振興に繋がりにくい商品は掲載せず、寄付額の半分以上を自治体の手元に残すよう要請するそうで、これらは、本来はそれぞれの自治体が考えるべきことだが、変な返礼品競争は改善されることとなった。

 さらに、②は、ふるさと納税で民間NPOなどへの支援が行われることもある上、ふるさと納税しない人は民間団体に寄付するというわけでもないので根拠にならず、(私が最初に提案してできた)ふるさと納税制度に対する誹謗中傷になっている。その上、③④については、ふるさと納税は、人口が集中している都市に集まる税収を、それらの人材を育てた地域に再配分する手段であるため、「所得分布=税収分布」という状況に対して、まさに税収の再分配を行う機能を果たしているのであり、税の仕組みを知らない人が高額所得者を目の敵にしさえすればよいと考えるのは稚拙な批判である。

(2)「東京の産物に勝ち目がない」というのは、単なる努力不足であること
 東京は、*1-3のように、今でも保育園や学童保育の待機児童が多く、それは、戦後に社会進出した女性が出産適齢期にさしかかった50~60年前からずっと言い続けてきたが、20世紀の殆どの期間で「少数の変わった人たち(★)」として無視され続けてきたのである。そのため、東京は、日本全国から元気で優秀な若者を集めながら出生率が日本一低く、これは現内閣の責任というよりは、「子育てや介護は女性にしわ寄せさえすればよい」と考えてきたこれまでの日本の価値感に問題があったのである。
 (★しかし、そもそも先進的なことをする人は最初は少数であり、一世代か二世代後に一般的になる
   ため、先進的な少数の人をピックアップできなければ先見の明ある政策はできない)

 また、東京などの大都市では、メディアが論点を正確に報道せず、サラリーマンが多くて自ら政治に働きかけることが少ないため、首長や議員を選ぶ際に地方よりも意識が低い場合が多く、主権者である有権者が政治や行政を適切にチェックしなかったのも問題なのだ。そして、少数の人がそれらの問題を指摘しても、大多数の有権者の行動に結びつかなかったもので、問題の未解決は政治のせいだけではない。

 そのような状況であるため、東京こそ使途を指定してふるさと納税を募ればよく、東京は特産品も首都であるゆえの有利性が働いている上、小笠原諸島・八丈島などの離島や山間部もあるため、*1-4のように、「東京の産物は勝ち目がない」などとしているのは、実は本気で工夫していないだけである。
 
 なお、行政も加わって地域の産物を発掘し世に出すことは、ふるさと納税のもう一つの有意義な役割となった。そのため、競争は重要で、工夫している地域を納税者が選んで納税(寄付)できるのは、ふるさと納税の長所だ。従って、メディアは、どんな使途や返礼品があるかを正確に報道することの方が重要で、規制で競争を制限して護送船団方式にすれば、これまでと同じ失敗を繰り返すことになる。

(3)ふるさと納税の活用
1)教育・子育てへの活用
 一方、*2-1のように、ふるさと納税で2016年4月以降に集めた金は、「教育」「子育て支援」に充てられる例が多く、納税(寄付)した人に返礼品を贈ることで、地元特産品の販売が増えるなどの産業振興に効果があったとする回答も多数を占めたことが、共同通信の自治体アンケートで分かった。

 ここでも返礼品競争の過熱として問題視されているが、何割を返礼品に充てるかを総務省が規制するよりも、それぞれの自治体が最適な割合を自主的に選択する方が、自治体毎に異なる政策の重点が現れてよいと私は考える。それを監督するのは、総務省ではなく、主権者たる有権者であるべきだ。

 「ふるさと納税の勝ち組」は、*2-2のように、ふるさと納税額を見越して前年度に比べ予算を19.7%増の47億9,800万円にしたそうだ。ただ、工夫を重ねての勝ちと言っても、東京都や国のずさんな契約による誤差の範囲内であることを忘れてはならない。

2)エネルギー供給での活用
 群馬県中之条町は、*2-3のように、ふるさと納税した人への返礼品リストに太陽光発電による家庭用電力を加え、町は、太陽光のほか水力やバイオマス発電にも力を入れており、「再生可能エネルギーによる町づくりにご支援を」とし、温泉旅館で使える感謝券も人気で、今年既に約7億4千万円の申し込みがあったそうだが、そこには時流に合った工夫が感じられる。

 それならば、*2-4の大分県の地熱バイナリー発電所の電力も、ふるさと納税した人への返礼品リストに加えれば、環境意識の高い納税者から支持を得られると考える。

3)福祉への活用
 佐賀市大和町川上校区のNPO法人は、*3-1のように、高齢者の交通事故や運転免許返納後の代替手段が課題となる中で、ガソリン代のみの負担で高齢者が利用できる会員制送迎サービスに取り組み、佐賀県の「ふるさと納税NPO支援枠」に登録して2016年度は640万円の寄付があったそうだが、地道で感心な取り組みだ。しかし、自動車は、近い将来、高齢者・外国人・持病を持つ人などが運転しても安全なものにすべきだ。また、運転の担い手は、適正な報酬を支払えば、プロの運転手だった人を雇用することも可能だろう。

 (1995年頃に私が提案して)最初に介護制度を作った日本で、政府が高齢者の介護保険料負担を引き上げ、介護サービスを削減し続けている中、中国は、*3-2のように、介護サービスの産業としての発展を推進するそうで、私は、こちらの方が先見の明があると考える。

 つまり、中国では、民政部(省)・国家発展改革委員会・公安部(省)・財政部(省)・国土資源部(省)、全国高齢者事業委員会弁公室など13部門が共同で、「介護サービス産業の放管服改革の加速的推進に関する通達」を発表し、行政のスリム化と権限委譲、監督管理能力の強化、サービス水準の向上を通じて、介護サービス産業の発展に関わる社会的パワーを喚起し、起業や業界参入への制度的コストを引き下げ、公平で規範化された発展環境を創出する方針を明らかにしたそうなのだ。

 その通達では、居住地コミュニティの総合的サービス情報プラットフォームの構築を加速し、食事、衛生、外出、入浴、医療などでの訪問介助サービスを提供することを打ち出し、小規模の高齢者施設を設立して自宅近くで介護サービスを受けたい高齢者のニーズに対応することを奨励するそうで、自立してきた一人暮らしの高齢者が自立できなくなる時期を迎える中、これらは日本でも本当に必要なサービスであり、ふるさと納税の使途としても人気を集めると考えられる。

<負け組の泣きごと>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12816236.html (朝日新聞社説 2017年2月27日) ふるさと納税 返礼品より使途で競え
 返礼品ばかりが注目されるようでは、本来の目的からはずれ、寄付のあり方や税制をゆがめるばかりだ。自治体がもっと使い道を競うように改めていくべきではないか。自治体に寄付すると、国への所得税や住まいがある自治体への住民税が軽くなる「ふるさと納税」の勢いが止まらない。寄付総額は2015年度に前年度から4倍の1600億円余に増えた後、16年度はさらに倍増の3千億円程度になりそうだ。安倍政権が地方創生の目玉として制度を拡充したこともあるが、最大の要因は自治体が寄付者に贈る返礼品である。高級牛肉をはじめとする特産品や、立地する工場で作られる家電や情報機器、さらには地元の店や施設で使える商品券まで、ネット上の関連サイトはさながら通販の様相だ。ふるさと納税では、所得に応じて決まる限度額までの寄付なら、寄付額から2千円を引いた金額が手元に戻る。つまり、2千円の負担で欲しい商品やサービスが手に入る。見返りがないか乏しい民間団体への寄付が不利になる。高所得者ほど限度額も膨らみ、多くの返礼品を得られるため、所得再分配を妨げる。そんな批判が強いのに改善が進まないのは、自治体に一定のメリットがあるからだろう。地元の産業が潤って雇用が守られ、知名度も上がる。寄付金を返礼品につぎ込んでもおつりが来る――。過疎化と財政難に苦しむ地域から漏れる本音は、わからなくはない。しかし、NPOや公益法人など民間団体への寄付や、急速に広がるネットを使った資金集めの「クラウドファンディング」を見ても、具体的な事業の目的や内容を示した上でお金を募るのが原則だ。地元の農林漁業や商工業を支えたいのなら、まずは行政としての取り組みを示すのが筋ではないか。ここ数年、過度な返礼の自粛を求めてきた総務省はこの春、改善策をまとめる。あまりに高額な商品や換金しやすい金券類の見直しや、寄付額に対する返礼品額の比率の制限を求めることが考えられるが、具体的な線引きをどうするか。ここは寄付の原則を思い起こすことだ。まずは使い道を示す。いくら集まり、どう使ったかの報告も怠らない。昨年の総務省の調査では、寄付額と活用状況をともに公開する自治体は全体の半数にとどまる。政策や事業への共感でお金が集まる、そんなふるさと納税を目指すべきだ。

*1-2:https://www.furusato-tax.jp/use_category.html ふるさとチョイス
「使い道でチョイス」を抜粋
・自然保護等 ・高齢者 ・子供、青少年 ・伝統を守るなど ・NPO、各種団体支援 ・文化、教育、生涯学習 ・公共設備など ・祭事など ・農林漁業、水産業、商工業 ・医療・福祉 ・観光 ・スポーツ ・音楽 ・環境、景観 ・おまかせ ・国際交流 ・その他 ・震災復興

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017022702000136.html (東京新聞社説 2017年2月27日) 保育園落ちた いつになれば解消する
 四月の保育所入所をめぐり、今年も「保育園落ちた」の悲痛な声が相次ぐ。首相は新年度末までの「待機児童ゼロ」の目標達成は困難との見方を示した。対症療法でなく抜本的に政策転換すべきだ。積年の待機児童問題はいつになったら解消するのか。子どもが四月から認可保育所に入所できるのか、二月は自治体から可否通知が届く。「妊娠中から保活に走り回ったが入所できなかった」「入所先が見つからず退職」「会社の託児所に一歳児を預かってもらうことになったが、子連れで満員電車に揺られることになる」。国会内で開かれた集会では、認可保育所に入れなかった母親たちの怒りの声があふれた。「保育園落ちた」と窮状を訴える匿名ブログが話題を集めて一年たつが、問題はさらに深刻化している。厚生労働省によると、待機児童数は二〇一六年四月で約二万三千人で前年より増えた。背景には非正規雇用の増加で世帯収入が減り、幼い子を持つ母親の就業率が高まったことなどがある。国や自治体は保育施設を新設するなどして定員を増やすものの、入所希望者がそれを上回る勢いで増えるために追いつかない。国はどう責任を持つのか。一三年に発表した「待機児童解消加速化プラン」は、五年間に保育の受け皿を五十万人分整備し、待機児童をゼロにする計画だった。だが目標達成について安倍晋三首相は「厳しい」と国会で答弁。この間の対策には応急策が目立った。保育士配置や施設面で基準を緩和し、狭いスペースに子どもを詰め込もうとする。二歳児までの小規模保育所を増やしたが、それも三歳になれば行き場を失い、また保活を迫られる。企業主導型保育所も保育士の配置基準が緩く、親たちの心配は尽きない。もっと政策の優先度を上げて予算を投じ、国の基準を満たした保育所を増やす。保育士の給与引き上げも一部でなく全体の処遇改善につながる政策が必要だ。国はいまだに正確な待機児童数を把握していない。自治体によっては認可保育所に入れずに育休を延長したり、認可外施設などに入った場合は待機児童に数えていない。こうした「隠れ待機児童」を含めて九万人規模とも。都会の問題だとみられてきた待機児童は地方にも広がっている。子どもの数は減っても保育の需要はこの先も増える。今こそこうした社会構造の変化に向き合った抜本的な政策転換を図るべきだ。

*1-4:http://mainichi.jp/articles/20170218/dde/001/010/058000c (毎日新聞 2017年2月18日) ふるさと納税 .魅惑の返礼品、過熱 23区、208億円減収 17年度予想 「東京産物、勝ち目ない」
 高級肉などの「返礼品競争」が問題となっている「ふるさと納税」の影響で、東京23区が2017年度、少なくとも208億円の税収減を見込んでいることが各区への取材で分かった。16年度の129億円から1・6倍になる見通し。地方の自治体が特産品を用意して寄付を呼び込み合う中、目を引く産物に乏しい23区は、止まらない税流出に頭を抱えている。税収減の見込みは、多い区で▽世田谷区30億円=16年度比1・8倍▽港区23億4100万円=同1・5倍▽渋谷区14億6000万円=同2倍--など。ほぼ全ての区が、16年度より多くなると予測している。ふるさと納税は、出身地など応援したい自治体に寄付すると、居住地の税が軽減される仕組み。都市部と地方の税収格差を埋める目的で08年度に導入された。手続きの簡略化や軽減の上限額の引き上げによって15年中に利用者が急増、16年度の23区への影響は前年度の5・4倍に跳ね上がった。高市早苗総務相は「競争過熱や、制度の趣旨に沿わない返礼品は問題」として、対策に乗り出す考えを示している。各区は減収拡大に危機感を募らせる。世田谷区の保坂展人区長は2日の記者会見で「学校一つ分の減収だ」と述べ、不快感をあらわにした。30億円の税収減は学校1校の改修費に相当するという。一番人気の伊賀牛。中でもすき焼き用が最も多く選ばれた  杉並区の田中良区長は、仲介サイトで人気上位の返礼品を高級肉が占めていることに「税制度が『肉食欲』にじゅうりんされている。古里を応援しようという思いで税金の一部を納めるはずなのに、モラルハザードだ」と恨み節を述べた。地元で返礼品を探す区担当者は「地方と比べられたら勝ち目がない」とため息を漏らす。中野区は昨年10月から、交流のある青森県や北海道の特産品を返礼品にして寄付を募っている。これまでに約4500万円の寄付を受けたが、来年度の減収見込みは7億円を超え、遠く及ばない。しかも、寄付の半分は返礼品や送料などの経費で消えてしまうという。杉並区も17年度から、仲介サイトを利用して寄付を募る方針だ。ただ、直接的な返礼品は用意せず、被災地支援や福祉の充実に活用する方法を検討している。

*1-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/410350 (佐賀新聞 2017年3月1日) 高額返礼品は掲載せず ふるさと納税で大手仲介サイト、基準見直しへ
 ふるさと納税の寄付金集めを巡る自治体間の競争過熱を受けて、インターネットで寄付を仲介する大手ポータルサイト「ふるさとチョイス」の運営会社トラストバンク(東京)が、4月から返礼品の掲載基準を見直すことが28日、分かった。寄付額に比べ高額な品や、地域振興につながりにくい大企業の商品などを掲載しない方針だ。総務省は商品券などお金に換えやすい返礼品を問題視し、春に是正策をまとめる。他のポータル運営会社にも影響する可能性がある。トラストバンクは自治体に対し、返礼品の高額化などで「制度の存続が危うくなるかもしれない」と説明。新基準として、寄付額の半分以上を自治体の手元に残すよう要請し、中小企業を支援するため、資本金5億円以上の企業の商品は掲載しない考えを示した。さらに自転車やゴルフクラブ、貴金属もやめる方向だ。各自治体とは2月から協議しており、合意に至らなければ「契約を解除し、仲介をやめることもあり得る」としている。昨年7月には転売しやすい家電製品の掲載を中止した。一方、ソフトバンクグループの「さとふる」(東京)は「制度の趣旨に沿う返礼品であるか確認して掲載している」と説明。品目などで一律に線引きはしておらず、地元にある工場で製造した大手メーカーのビールや家電製品なども掲載することがある。「わが街ふるさと納税」を運営するサイネックス(大阪市)は、家電や商品券を贈らないよう求めた総務省の方針を説明するが、最終的には自治体側の判断を尊重するとしている。
■ふるさと納税の返礼品競争 ふるさと納税の返礼品競争 ふるさと納税で多くの寄付を集めるため、多くの自治体が返礼品の豪華さを競っている。返礼品の購入費が膨らむ分、自治体が独自の事業に使えるお金が減少、返礼品目当ての寄付は、地域を応援する制度の趣旨にそぐわないとの声もある。総務省は昨年4月、お金に換えやすい商品券や家電を贈らないよう自治体に要請したが、競争の過熱に歯止めがかからないため、新たな是正策を検討している。

<ふるさと納税のエネルギーへの活用>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/407274 (佐賀新聞 2017年2月20日) ふるさと納税の収入 教育、子育てに活用、返礼品、産業振興に効果
 ふるさと納税で2016年4月以降に集めたお金は、小学校の教員配置といった「教育」や、保育料免除などの「子育て支援」に充てる例が多いことが19日、共同通信の自治体アンケートで分かった。寄付した人に返礼品を贈ることで、特産品の販売が増えるなど産業振興に効果があるとする回答も多数を占めた。ただ、多くの寄付金を集めるための返礼品競争が過熱しており、自治体側には一定のルールを望む声が強い。お金に換えやすい商品券などを返礼品にするケースもあり、高市早苗総務相は是正策の検討を急ぐ考えだ。全国の自治体に寄付金の主な使い道を一つ聞いたところ、トップの「教育」が12%(202自治体)、次いで「子育て支援」11%(192)だった。茨城県美浦村は、きめ細かい指導のため小学校に非常勤講師を多く配置。長崎県雲仙市は第2子以降の保育料免除に活用する。「地域・産業振興」「まちづくり・市民活動」はいずれも6%(それぞれ105と102)。北海道池田町は寒冷地用ブドウの研究開発、宮崎県三股町は市民マラソン開催に充てる。このほか北海道栗山町の救急医療態勢の確保といった「健康・医療・福祉」が5%(90)、京都府宇治市のスタンプラリー開催など「観光・交流」は4%(66)だった。多くの自治体は、ふるさと納税をする人がお金の使い道を選べるようにしている。従来の税収、地方交付税や補助金だけではできない新たな施策や事業も実現できるため、地域の取り組みをより身近に感じてもらおうとする狙いがある。一方、返礼品による産業振興は、54%の自治体が「効果があった」と答えた。具体的には「衰退しかけていた伝統の八幡靴が復活の兆し」(滋賀県近江八幡市)などの例があり、地元生産者の販路拡大や新商品開発につながっているという。寄付総額に占める返礼品代は15年度の37%から16年度は43%へ膨らむ見通し。その分、独自政策に充てる額は減る。ただ返礼品自体が地元の活性化に役立つ面もあるため、これが競争過熱の一因となっているようだ。調査は16年11月~17年1月に全国1788自治体(都道府県、市町村、東京23区)を対象に実施し、96・2%の1720自治体が回答した。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/411091
(佐賀新聞 2017年3月4日) 江北町、48億円弱に ふるさと納税見越し19%増
 杵島郡江北町は3日、2017年度の一般会計当初予算案を発表した。昨年9月からオンライン決済を導入し返礼品も充実させて好調なふるさと納税の伸びを見越し、骨格予算だった前年度に比べ19・7%増の47億9800万円となった。7日開会予定の定例町議会に提案する。ふるさと納税推進事業費は3億6573万円。ポータルサイト委託料のほか、受け付けが集中する11~1月に臨時職員を雇う。町社会福祉協議会に開設する小規模保育所の運営委託事業は2000万6千円、小学校の教材用のデスクトップパソコンをタブレット端末に更新するリース料に331万3千円など。歳入は町税が9億4288万円(前年度比5・9%増)、町債は1億7750万円(9・8%減)。前年度1万3千円としていた寄付金は5億1014万円と大幅増を見込む。自主財源比率も41・2%(12・5ポイント増)と伸び、町債依存度は3・7%(9ポイント減)。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/ASK2M3VD1K2MUHNB001.html (朝日新聞 2017年2月20日) ふるさと納税、返礼に太陽光家庭用電力 群馬・中之条町
 群馬県中之条町は3月から、ふるさと納税(寄付)をした人への返礼品リストに家庭用電力を加える。町内にある大規模太陽光発電施設(メガソーラー)で発電し、送配電事業者を介して届ける。昨年4月の電力小売り全面自由化で可能になった。同町は県北西部の山間地にあり、四万(しま)、沢渡(さわたり)などの温泉地で知られる。寄付の返礼に贈っている感謝券が温泉旅館などで使えることから人気で、今年度は約8600件、約7億4千万円(1月末現在)の申し込みがあった。今春から、一口15万円以上の寄付をした人は家庭で使う電力を選択できるようになる。町内には町営と民間の計3カ所のメガソーラーがあり、年間発電量は計約650万キロワット時。町主導で設立した電力小売会社「中之条パワー」が全量を買い取り、市場調達分と合わせて町内の公共施設や一部家庭に供給している。返礼用は余剰分から振り向ける。関東など東京電力管内の家庭が対象で、当面は50戸限定で始める。希望者は、中之条パワーと電気の購入契約を結ぶ必要がある。一口15万円の寄付で、平均的な家庭の約半年分に当たる約2500キロワット時が届けられる。返礼用は使用量管理などを外部委託する分、「東電並み」の通常向け料金より割高になる。基本料金は本人持ちで、受け付けは3月1日から。町は、太陽光のほか水力やバイオマス発電にも力を入れており、「再生可能エネルギーによる町づくりにご支援を」。問い合わせは町企画政策課(0279・75・8802)へ。

*2-4:http://qbiz.jp/article/104722/1/
(西日本新聞 2017年3月2日) 余った熱水を使った全国初の地熱発電所が運転開始
 大分県九重町に出光興産が建設した地熱バイナリー発電所「滝上バイナリー発電所」(出力5050キロワット)が1日、商業運転を始めた。低温の熱水で発電するバイナリー方式として日本最大級。グループ会社や九州電力に売電する。発電所は、子会社の出光大分地熱が運営する滝上事業所の敷地内に建設。同事業所は、九電滝上発電所に地熱発電用の高温の蒸気を供給している。同発電所で使わずに地下に戻していた130度の熱水を利用するため、出光が新たに発電所を建設した。既設の地熱発電所に併設し、未利用の熱水を使う地熱バイナリー発電所の稼働は国内で初めてという。出光大分地熱の竹中照雄社長は記者会見で「エネルギーを効率的に利用でき、地熱発電の拡大にもつながる」と語った。

<ふるさと納税の福祉への活用>
*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/409473 (佐賀新聞 2017年2月27日) 住民発の高齢者送迎、軌道に 免許返納代替で、大和町川上のNPO
 高齢者による交通事故や運転免許返納後の代替手段が課題となる中、佐賀市大和町川上校区のNPO法人「かわかみ・絆の会」(松崎逸夫理事長)がガソリン代の負担で高齢者が利用できる会員制送迎サービスに取り組み、2015年10月の開始から1年5カ月で利用者が5倍超に増えている。懸案だった資金繰りはふるさと納税を利用するアイデアで解決の糸口を見いだし、地域住民による「生活の足」確保策は軌道に乗り始めた。利用できるのは65歳以上の川上校区住民。入会費2000円と年会費1000円で会員になる。1キロ当たり15円のガソリンチケットを購入し、移動した距離に応じてチケットを支払う。利用できるのは月・水・金・土曜の午前8時半から午後4時まで。利用者が前日までに予約する。病院や買い物など目的地は問わない。
▽利用5倍超 
 サービスに取り組む絆の会は、地区内の民生委員全13人と地元自治会長で運営する。松崎理事長(74)は民生委員で、高齢でマイカーを手放すことと、移動手段を失うことの板挟みに悩むお年寄りと接してきた経験から会を設立した。佐賀市によると、川上校区の住民は5735人(1月末現在)で、65歳以上の高齢者が3割を占める。地区内では10年ほど前にコミュニティバスが試験運行されたが、事前アンケートに反して利用が少なく廃止になった経緯がある。「生活の足」の確保は地区の高齢者にとって切実な問題となっていた。当初15人だった利用者は現在、78~93歳の83人に増えた。体制も普通乗用車1台から、譲り受けた軽乗用車を加えた2台体制に強化した。月140~150件の利用がある。運営には、保険や自動車整備など年間150万円ほどかかる。賛助会員を含めた会費や自治会からの助成を運営費に充てていたが、行政の補助金は受けていない。ただ、賛助会費は設立時ほど集まらなくなり、運営を安定させるため、県のふるさと納税NPO支援枠に登録した。2016年度は640万円の寄付があった。返礼品の経費を差し引きし、「なんとか本年度分の運営費を賄えた」(松崎理事長)。
▽課題は担い手 
 病院や買い物などで月に2、3回利用するという中島ケサエさん(84)は、10年ほど前に車の運転をやめた。「バス停までも行けないので、とても助かっている。パーマをかけるために美容室にも行けるんですよ」と語り、運転しない生活を以前ほど不自由と感じなくなった。NPOを運営するメンバーも64~74歳。松崎理事長は「この地区は公共交通の空白区。必要なサービスを続けるため、ふるさと納税してもらえるのはありがたい」と善意に感謝しながら、「運営側も高齢というのが現実で、自分たちもいずれサービスを利用する側に回ります」と憂える。資金繰りの次は担い手をどうするか。新たな課題も感じている。

*3-2:http://qbiz.jp/article/104854/1/
(西日本新聞 2017年3月3日) 中国は「放管服改革」加速、介護サービス産業発展を推進
 2016年10月8日、中国の伝統的祝休日「重陽節」を翌日に控えて、山東省青島市の介護サービスセンターで、駐屯軍の兵士が高齢者と一緒に餃子を作ったり、京劇を鑑賞したりした。民政部(省)、国家発展改革委員会、公安部(省)、財政部(省)、国土資源部(省)、全国高齢者事業委員会弁公室など13部門がこのほど共同で、「介護サービス産業の放管服改革の加速的推進に関する通達」を発表し、行政のスリム化と権限委譲、監督管理能力の強化、サービス水準の向上を通じて、介護サービス産業の発展に関わる社会的パワーの積極性をさらにかき立て、起業や業界参入にあたっての制度的コストを引き下げ、公平で規範化された発展環境を創出するとの方針を明らかにした。中国はすでに高齢化社会に足を踏み入れており、介護サービスへの需要は非常に大きい。2015年には60歳以上の人が2億2千万人に達し、総人口の16.1%を占めた。介護サービスの質は2億人を超える高齢者に関わる問題であり、特に4千万人を超える障害をもった高齢者の老後の幸福に直結する。だが日々増大する介護サービスのニーズとは裏腹に、中国の介護サービスは供給量も質も大幅に不足している。都市部と農村部で公共施設に大きな開きがあり、高齢者向け商品の製造・供給の遅れという問題も幅広く存在する。介護サービス産業は億単位の人々の福祉に関わる民生事業であり、また巨大な発展の潜在力を秘めた成長産業でもある。国務院が昨年末に下達した「介護サービス市場を全面開放して介護サービスの質を高めることに関する若干の意見」では、介護では居住地のコミュニティのサービスに力を入れ、農村に力を入れ、障害をもった高齢者に力を入れることや、ケア型サービス資源をさらに拡充し、小規模の、チェーン化された、専門的なサービス機関の育成発展に力を入れることが提起された。今ある介護サービスの弱点を見据えて、「意見」は、居住地のコミュニティの介護サービスについては、コミュニティレベルの総合的サービス情報プラットフォームの構築を加速し、食事、衛生、外出、入浴、医療などでの訪問介助サービスを提供することを打ち出す。また小規模のコミュニティレベルの高齢者施設を設立して、自宅近くで介護サービスを受けたいという高齢者のニーズに対応することを奨励する。


PS(2017.3.9追加):自然再生可能エネルギーを使って電力や水素燃料を作れば、*4-1のEVや*4-2の燃料電池列車や*4-3のゼロ・エミッション住宅など、自然再生可能エネルギーだけで生活するするツールが既に人々に与えられている。また、自然は請求書をよこさないため、安価に環境を汚さない生活をすることができ、地域で作った付加価値の多くを燃料費として海外に支払わなくて済む街づくりとビジネスモデルができる。そのため、国や地方自治体は、新築住宅にパッシブハウスであることを義務付けたり、環境規制を強めたり、補助したりして応援するのがよいと考える。
 それにもかかわらず、*5-1のように、九州電力はゴールデンウィークに太陽光発電の稼働を止める出力抑制する可能性があるそうで、その理由を、*5-2のように「①太陽光発電は日中しか動かないため設備利用率が低く、天候で出力が大きく変わる」「②大量に普及すると、日中の大きな出力変動で需給バランスが一気に崩れ、最悪の場合は広域大停電が起こるリスクがある」などと説明している。
 しかし、①②は蓄電池で対応することができ、電力をあまり使わない夜も大量に発電し続ける原発よりは太陽光発電の方がずっと需要と供給が近く、*5-2の「③太陽光発電は初期投資費用が高い」というのも、原発の初期投資や事後処理費用に比べればかわいすぎるくらいの金額である。
 そのため、九州で既に出力682万キロワット(大型原発約7基分)の太陽光発電による電力が接続され原発再稼働の理由がなくなった現在、九電などが太陽光発電の出力抑制を指示する本当の理由は、i)原発を再稼働させたいこと ii)再生可能エネルギー電力の供給に原発・火力などの発電設備を持っている大手電力会社の送電線を利用していること iii)再生可能エネルギー電力をその大手電力会社に買い取らせていること などの政治的なものである。
 従って、地方自治体が「ふるさと納税の資金を使って上下水道の近くに電線を埋設し、自然再生可能エネルギーによる電力を返礼品にする」という案も、環境意識の高い住民に人気が出ると考える。

   
                  2017.3.9西日本新聞(*5-1、*5-2)より

(図の説明:一番左のグラフのように、九州の太陽光発電は既に出力682万キロワット(大型原発約7基分)が接続されている。このような時代に、電力が余った時には、一番右の図のように、バイオマス・太陽光・風力発電を原発より先に止め、原発を「ベースロード電源《長期固定電源》」とするのは時代錯誤だ)

<自然再生可能エネルギー、エコカー、ゼロ・エミッション住宅>
*4-1:http://qbiz.jp/article/103491/1/ (西日本新聞 2017年2月11日) テスラ充電施設 九州で初の設置  福岡・須恵町
 米国の電気自動車(EV)メーカー「テスラ」の日本法人が10日、福岡県須恵町に、テスラ車専用の急速充電施設を開設した。同様の施設は国内14カ所目で、九州では初めて。本州から九州にテスラ車でドライブする人などの利用を想定している。30分の充電で270キロ走行できるという。施設は、九州自動車道のインターチェンジ近くのホームセンター駐車場にあり、充電器6台を置く。24時間利用できる。また、ヒルトン福岡シーホーク(福岡市)の駐車場にも普通充電器4台を設置した。テスラの日本法人は「今後も専用充電施設のネットワークを拡大したい」としている。

*4-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201610/CK2016100902000115.html (東京新聞 2016年10月9日) 【経済】エコな未来へ夢乗せて 世界初の燃料電池列車
 トヨタ自動車が先駆けて市販した燃料電池車の「列車版」が来年末、世界で初めてドイツで営業運行を始める。屋根に積んだタンクに入る水素と、空気中の酸素を反応させて発生させた電気で走り、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを出さないエコ列車だ。電気を供給する架線がないローカル区間を走ってきたディーゼル車の代役として期待されており、ドイツ政府も開発と普及を後押ししている。
■来年末から運行
 六十カ国から約三千の鉄道関連会社が出展し、ベルリンで九月に開かれた国際鉄道技術見本市。来場者の話題をさらったのは、フランスの重電大手、アルストムの燃料電池列車「コラディア・アイリント」だった。開幕初日にはドイツのドブリント運輸相も駆けつけ、「ローカル線に架線を設置するのは不経済。燃料電池列車なら排ガスゼロでエネルギー効率が高く、コストパフォーマンスもいい」と絶賛した。燃料電池列車は水素満タン時の連続走行距離が六百~八百キロで、最高速度は時速百四十キロ。乗客定員は最大三百人だ。アルストムのプロダクトマネジャー、シュランク氏(53)は「ディーゼル車に比べ、遜色ない性能」と胸を張った。新列車はまずドイツ北部のニーダーザクセン州内で二台が導入され、二〇年までに十四台が配備される。車両は同州内にある工場で製造。ドイツ政府は開発費の一部の八百万ユーロ(九億円)を支援した。
■水素燃料に発電
 ドイツでは、線路の総延長距離約三万八千キロのうち46%が未電化。燃料電池列車の潜在的な需要は大きいとみられている。オーストリアから見本市に見学に来た鉄道電気設備会社員のツィマーさん(34)は「古い線路に電線を設置するのは技術的に困難で、コストも高い。その点、新列車は見事なアイデアだ」と語った。日本の鉄道車両製造会社の技術者の男性(27)も「車体に設置する水素の配管は自動車より長く、設計が難しい。安全性を確保しながら、二年で開発したのはすごいこと」と評価した。燃料電池車は水素を燃料とし発電時にCO2を排出しないが、普及には水素を供給する水素ステーションの建設が不可欠という課題がある。これに対し燃料電池列車は、列車の車両基地内で水素を貯蔵。車両に注入する設備や水素を配送するシステムは列車とセットで販売するため、燃料供給面の不安はないという。ただ、水素をつくる過程では温室効果ガスが排出され、「環境に負担がかかっている」との指摘もある。これについてアルストムのシュランク氏は「塩素を製造する際の水素を活用しており、列車を走らせるために新たな環境への負荷は発生していない」と説明。将来は、風力発電で得た電気を利用してつくる水素を燃料にすることも検討し「環境負荷ゼロ」に近づける考えも示した。

*4-3:http://www.newsdigest.de/newsde/regions/reporter/hannover/5560-966.html (2015 November 2013 田口理穂) 欧州最大のゼロ・エミッション住宅地
 「パッシブハウス(Passive House)」という言葉をご存知ですか。これは、太陽光発電などを利用し、屋内の暖房や電気の使用量を極力抑えるよう造られた建物のことです。パッシブハウスの基準では、例えば160㎡の一軒家の暖房エネルギーは1年で1㎡当たり15キロワット時以下と定められています。ハノーファーはハイデルベルク、フランクフルトと並んで国内でもパッシブハウスを積極的に取り入れている町として知られ、昨年は国際パッシブハウス会議も開かれました。2006年頃からパッシブハウスの需要が増え、現在では新築住宅の3割はパッシブハウスだそうです。現在、市内南西部のヴェットベルゲン(Wettbergen)地区で、欧州最大のゼロ・エミッション(環境に負荷を掛けるCO2などの排出量をゼロにすること)住宅地「ゼロ・エー・パーク(Zero:E Park)」の建設が進められています。ここに建てられる住宅はパッシブハウスのみ。26万㎡の敷地に計330世帯の住宅が建てられる予定で、土地購入後2年以内に建設、3年以内に入居しなければなりません。すでに第1区画の59軒が完成し、入居が始まっています。先日公募があった第3区画は販売開始後、数時間で完売したそうです。昨年12月、この住宅地に国内初のパッシブハウス・スーパーマーケット「レーヴェ(REWE)」がオープンしました。見た目は普通のスーパーですが、屋内では主にLED電球を使用しているほか、冷蔵庫には3重ガラスを使用。外気がマイナス7度になるまで暖房は不要というエコな造りで、既存のスーパーよりもCO2の排出量を3割抑えられているのだとか。パッシブハウスには、環境に配慮した様々な工夫が施されています。例えば、太陽光を最大限に取り入れるため、全住宅の南側に大きな窓を設置。熱を逃がさないよう壁や天井には断熱材を用いて、窓はあまり開かず、熱交換ができる空気調整器で換気するようになっています。また、家の南側に掛かる影が最小限になるよう、隣の建物との間に十分な距離が取られています。雨水は下水道に流れるのではなく、ため池に集められます。建物と道との距離が近いところでは、道との間にスペースを設けて壁づたいに伸びるつる性の植物を植えるなど、緑化が義務付けられています。さらに、ソーラーパネルや太陽光温水器を屋根に載せている住宅も見られます。近年、エネルギー費用の高騰が著しく、暖房費を大幅に節約できるパッシブハウスの人気は右肩上がり。省エネを実践するパッシブハウスは、エネルギー政策の転換にも大きく寄与しています。

<九電の太陽光出力抑制指示>
*5-1:http://qbiz.jp/article/105151/1/# (西日本新聞 2017年3月9日) 九電が太陽光の「出力抑制」を指示へ GWにも、離島外では全国初
 九州電力が今春、太陽光発電の稼働を止める「出力抑制」を九州本土で指示する可能性があることが分かった。太陽光発電の急増を受け、天候が比較的良く電気の使用量が少ない春と秋に、需給バランスが崩れて広域的停電が起きないようにするのが狙い。ゴールデンウイーク(GW)中の出力抑制を想定し、対象となる発電事業者に対する事前説明の手続きをほぼ終了。出力抑制の順番を定めた国の「優先給電ルール」を運用する準備を整えた。経済産業省資源エネルギー庁などによると、固定価格買い取り制度(FIT)が始まった2012年7月以降、九電は15年5月に初めて、系統が孤立している鹿児島県の離島、種子島で出力抑制を実施した。本土で出力抑制されれば全国で初めてという。FITは11年3月の東京電力福島第1原発事故後、脱原発を打ち出した当時の民主党政権時代に始まった。建設が簡単で買い取り価格が高額な太陽光は、参入業者が予想以上に増加。日照量が多い九電管内では、太陽光接続容量817万キロワットに対し、接続は682万キロワットに達する。この容量は、各発電所に年間30日間の出力抑制を指示できる前提で設定している。西日本新聞の取材に対し、九電電力輸送本部の深川文博副部長は「早ければ年内に九州本土で出力制御しなければならない。特に今年のGWの可能性が高まっている」と述べた。GWは企業が休業することに加え、晴天なら太陽光の出力が増すため、供給が需要を大幅に上回りやすい。火力発電などの出力の調整だけでは需給バランスが保てなくなるため、太陽光の出力抑制を求めるという。出力抑制の対象は、事業者が運営する約3100発電所で、出力が小さい一般家庭は対象外。出力抑制の頻度などを公平にするため、交代制で各発電所に指示する。今年のGW期間中は、各発電所で最大2回の出力抑制を想定している。優先給電ルールに基づいた出力抑制を円滑に進めるため、九電は昨年7月に全国で初めて細かな運用指針を公表した。前日午後5時までに対象事業者に電話やメールなどで連絡。当日に日中の稼働を止めてもらうよう求める。ルールや運用方針への理解と協力を得るため、九電は昨年7月末までに、約2千事業者にダイレクトメールを送信。希望のあった約900事業者を個別に訪問した。3月中に残り30事業者を訪問する。深川副部長は「今まで再生エネルギーを積極的に受け入れてきたが、需要と供給のバランス調整には限界がある」と理解を求めている。

*5-2:http://qbiz.jp/article/105152/1/ (西日本新聞 2017年3月9日) 電力新時代、出力抑制の背景は太陽光の爆発的な普及
 九州電力が今春、九州本土での太陽光発電の出力抑制に向けて準備を進める背景には、2011年3月の東京電力福島第1原発事故後に太陽光が爆発的に普及したことがある。今後も太陽光は増えると見られ、出力抑制が常態化することになりそうだ。電力会社に対し、国が決めた価格で再生可能エネルギーの買い取りを義務づける固定価格買い取り制度は、12年7月に始まった。初期投資費用が高い太陽光も、一般の事業者や家庭に拡大。日照時間が長い九州は、出力682万キロワット分が接続された。単純計算で大型原発約7基分に相当する。ただ太陽光の弱点は、日中しか動かないため設備利用率が低く、天候で出力が大きく変わることにある。大量に普及すると、日中の大きな出力の変動で需給バランスが一気に崩れ、最悪の場合は広域大停電が起こるリスクがある。もともと買い取り制度は、各発電所で30日間の出力抑制を前提としていた。その後、15年1月以降に接続を申し込んだ事業者には、無制限の出力抑制を指示できるようになった。太陽光は、投資目的に増えた側面も大きい。九電が昨年8月以降、出力抑制を説明するために個別に事業者を訪問した際、「制度を知らない」「仲介業者から聞いていない」と戸惑いの声が一部で上がった。九電の接続は、容量の817万キロワットに対し、残り135万キロワットと迫り、現在も月6万〜7万キロワットのペースで増える。接続容量に達したら「年間の90日間はどこかの太陽光発電所が止まっている状態になる」(九電)。承諾済み分を合わせると、いずれ1100万キロワットまでは接続される見込みで、出力抑制の日数は増加し続ける。国と電力会社には、出力抑制による混乱が起きないように、丁寧な説明が求められる。
■優先給電ルール 電力供給が需要を上回る場合、稼働中の発電所を出力抑制する順番や条件を定めた指針。天候で発電出力が左右される太陽光発電をより多く受け入れるため、電力広域的運営推進機関が昨年4月に現在の内容とした。大手電力会社は火力の出力抑制から着手し、余剰電力を使って水力発電用のダムに水をくみ上げる揚水発電の運転、バイオマスの調整などでも供給の余剰が続く場合、太陽光や風力の出力を落とす対応を求められる。

| まちづくりと地域振興::2015.5~ | 10:48 AM | comments (x) | trackback (x) |

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