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2019.8.30 高齢者差別や人権無視という病根がはびこる理由は何なのか? (2019年8月31日、9月1、2、3、5、7日に追加あり)
 
   日本の出生数推移      一人当たりGDP比較     2019年度政府予算
                               2018.12.21産経新聞

(図の説明:左図のように、日本の出生数・出生率は戦後の1947~1949年を最高として漸減しているが、中央の図のように、一人当たりGDPは著しく増加している。個人の豊かさは、一人当たりGDPの方がよく表すが、近年は世界の一人当たりGDPも上がり、世界と比較した場合の日本の一人当たりGDP倍率は下がっている。また、右の2つの図のように、政府支出は過去最高に達しているが、社会保障についてはその充実や高齢者の増加で仕方がない面があるものの、投資に当たらない景気対策と称する生産性の低い支出は国全体の生産性向上の足を引っ張っている)

(1)高齢ドライバーに対する運転免許返納の大合唱は正しくないこと
1)高齢者の免許証返納を奨める高齢者いじめ
 *1-1のように、高齢ドライバーの同一の事故が繰り返し報道され、家族に高齢の親に免許返納を提案させたり、強引に免許証を取り上げさせたりして、高齢者に免許返納させようという動きがある。

 報道を信じた家族は、「よかれ」と思って善意で老親に免許返納を奨めるわけだが、同世代の高齢ドライバーによる事故が報じられたからといって、運転の必要性や老化の程度は人によって異なるため、他の高齢ドライバーが起こした事故を個人に敷衍するのは妥当ではない。

 さらに、まだ運転できる人に無理に免許を返納させれば、仕事や買い物に支障をきたしたり、高齢者を引きこもりにしたりして、健康寿命を縮める。そのため、「運転の自信を失った」「必要でなくなった」と本当に自分で感じる人以外は、家族の勧めがあっても免許を返納する必要はないと、私は考える。

 このような中、*1-5のように、警察庁が、①高齢ドライバーに実技試験を課し ②技能に課題があれば安全機能を備えた車のみに限って運転を認める「限定免許」の対象とする 方針を出した。しかし、教習は、高齢者だけを対象とするのではなく、長くペーパードライバーだった人が再度運転を始める時や自動車の仕組みが大きく変わった時もやる必要があると、私は思う。

 なお、高齢ドライバーによる事故には、ハンドルやブレーキ操作ミスが多いそうだが、個人を犠牲にして免許を返納させるよりも、安全装置を導入する方が理にかなっている上、それによって新時代のニーズにあった自動車ができるのである。

2)生産年齢人口にあたる人が起こした事故
 しかし、*1-2のような生産年齢人口にあたる人の「あおり運転」もたびたび起こっており、これは、1)とは異なり、意図的であって許し難い。そのため、何故、すぐに対策を講じなかったのかが疑問だ。そして、一般の人が気を付けるべきことは、必ずドライブレコーダーを装備して運転時の証拠を残し、事故時に冤罪を押し付けられないようにすることとなる。

 また、*1-3のケースは、ワゴン車とバイクの追突死亡事故が発生し、ワゴン車の運転手はスマホの画面でミステリーやホラー系の漫画を読みながら運転を続け、夜間だったことからその様子がフロントガラスに反射して写り、それが本人の車のドライブレコーダーにはっきりと記録されていたのだそうで、このようにたるんだ人が運転しているのは恐ろしいことである。

3)根本的な解決
 自動車は既に贅沢品ではなく生活必需品となっており、とりわけ足の悪い人には便利な移動ツールだ。そのため、私が10年以上前から言っているように、*1-4のような手放し運転できる運転支援システムや安全装置の搭載は、EV・燃料電池車・ガソリン車などのエネルギー源や大型・中型・小型車といった車種を問わず、どの車種でも速やかに行うべきである。

(2)個人情報の無断使用と個人情報保護について
1)就職情報サイト「リクナビ」の「内定辞退率」予測データ販売
 日経新聞は、*2-1のように、①就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、学生の同意を得ずに「内定辞退率」の予測データを売っていたこと ②リクナビが就職活動の代表的な情報プラットフォームになっていること ③学生の信頼を裏切ったこと について、「個人情報を扱う自覚はあるか」と厳しく糾弾している。

 しかし、*2-2のように、日経新聞は経産省の「信頼ある自由なデータ流通政策」に協力してきた。上の③のように「信頼したから」と言ってそれに応える人ばかりではないし、②のように情報プラットフォームになって多数の情報を扱うからより正確な結果が出せるのであり、購入価値のあるデータを作るには多量のデータを分析することが必要だろう。そのため、「プラットフォーマー」だったことが問題なのではなく、個人情報を他の用途で勝手に使用してよいことにしたのが問題なのである。さらに、①の予測は、AIが統計的に推測できるような“普通”の行動をする人にしか当てはまらないことにも留意すべきだ。

 また、2013年にJR東日本が「Suica」の乗降データを匿名化して社外に販売し、個人情報保護に反すると批判が相次いだことについて、*2-3のように、匿名化されたビッグデータでもいくつかのデータを組み合わせれば、高確率で個人を特定できることが指摘されている。つまり、「匿名加工すれば個人情報の扱いではなくなり、本人の同意がなくても第三者に提供できる」という指針が間違っているのだ。

2)医療ビッグデータの活用!?
 日経新聞は2019年8月21日の社説で、*2-4のように、「①医療ビッグデータを使いこなせ」「②高齢化が進む中、効率的で質のよい医療の提供は重要な課題だが、それを支える検査や治療の記録などの膨大な医療ビッグデータの活用が進まない」「③デジタル技術が生かされておらず、宝の持ち腐れで、医療産業の国際競争力も低下しかねない」などと記載している。

 しかし、①は個人情報の悪用に繋がる可能性が高く、②③はデータ提供者の同意の上で治験を行ったり、医療保険会社が使用された薬と治療効果を比較したりすれば、ビッグデータでなくても検証できる。さらに、「新薬開発のためなら個人の権利を無視してもよい」と考える製薬会社があるとすれば、その会社の薬が患者の側に立って開発されたとは思えない。

 そのため、厚労省の有識者会議で「用途に公益性があると認められた場合」といってもそれがどういう場合かを吟味する必要があるくらいで、私は、EUのやり方の方が見識があると思う。日本もルールづくりに関与したいのなら、まず「人権」「個人情報」「個性」「差別」などの正しい意味を理解してからにすべきだ。

3)ゲノムデータの収集
 東芝は、*2-5のように、従業員のゲノムデータを収集して数万人規模のデータベースを構築するそうだ。断りにくいという社内のプレッシャーはあるものの、これは希望者を対象にしている点で許せる。しかし、個人の生活や遺伝的要因を会社に調べられるのは、(どうにでも使えるという)リスクがある。

 なお、東芝は、これによって多くのデータを分析し、特徴別に複数のパターンに分けることで、最適な予防法・治療法の開発に繋げることが可能になるとしているそうだ。

4)マイナンバーカードによる強引なデータ収集
 政府は、*2-6のように、個人番号が記載されたマイナンバーカードの普及率を高めるため、年度末までに国・地方の全ての公務員にマイナンバーカードを取得させるそうだ。

 国がそうまでするのは、国民一人一人に割り当てられた12桁のマイナンバーで年金・税金・社会保障などを照合し、国民を効率的に監視下に置くのが目的だ。そのため、マイナンバーカードの取得が進まないのであり、その国民の判断は、国が率先してビッグデータを活用して個人情報を使うことを奨めている人権無視の政策を進めていることから見ても正しい。

(3)論調に見る「個人の権利」「社会保障」の軽視
1)年金制度は効率的に運用されているか
 日経新聞はじめ多くのメディアは、*3-1のように、①日本の社会保障は「中福祉・低負担」で ②その差を財政赤字が埋めているため ③負担を中レベルに引き上げるべきだ とする。しかし、ここには年金保険料を支払ってきた割に年金をもらえているか、つまり、i)年金資産運用の適格性 ii)年金保険料集金の網羅性 iii)年金管理事務の効率性 iv)年金関係法令の妥当性 に関して検討がなく、足りなくなれば負担増・給付減して国民にしわ寄せすればよいという省庁の発想の受け売りがあるにすぎない。

 私から見ると、i) ii)とも不十分で、iv)の年金関係法令が“きめ細やか”と表現される無意味な複雑さも手伝って、iii)の効率性は著しく低い。また、*3-3のように、未納者が多い上に未納者データを紛失したりなど、年金保険料をきちんと集めて管理する風土があるのか否かが疑問という民間企業ではありえないようなことが続いているわけである。

2)支え手の拡大
 上記、1)のiv)の年金関係法令に関しては、*3-4のように、支え手を拡大するために、会社員らの入る厚生年金の適用を拡大し、高齢者やパートらの加入を増やす改革に乗り出すとのことだが、パートだから厚生年金の適用がなかったというのは、パート労働者(多くは女性)の生活を全く考えていない法体系だったということだ。

 そのため、*3-2の「支え手」を増やす改革を急ぐのは賛成であるものの、「支払われた年金保険料を誠意をもって大切に管理し、できるだけ多くの年金支払いをする」というコンセプトが共有されないまま、負担増・給付減をいくらやっても無駄遣いが増えるだけだと考える。

 「少子高齢化の進行で『支える側』の現役世代が減り、『支えられる側』の高齢者の割合が増えた」というフレーズも何度も聞いたが、それは人口構成を見れば1980年代からわかっていたことで、1985年に積立方式を賦課課税方式に変更してばら撒くのではなく、積立方式のまま年金支払いに十分なだけの積立金を備えておくべきだったのだ。

 また、「現役世代の手取り収入に対して厚生年金の給付水準『所得代替率』は50%以上あればよい」というのも理由が不明であり、政府の言う「モデル世帯」に国民の何%が当たるのか、さらに国民の一部に関する試算だけをやればよいのか についても疑問である。

 平均寿命や健康寿命が延びたので、私は、高齢者も*3-5のように68歳と言わず、75歳であっても「支える側」に入れることにやぶさかではないが、そのためには、就業における高齢者差別がなく、気持ちよく働ける仕事のあることが大前提になるわけだ。

<高齢者いじめ>
*1-1:https://www.sankei.com/west/news/190603/wst1906030013-n1.html (産経新聞 2019.6.3) 高齢者の免許返納、説得のポイントは
 相次ぐ高齢ドライバーによる事故で、免許証の自主返納を呼びかける動きが広まっている。高齢の親に返納を提案する家族も増えているが、応じないケースが少なくない現状も。半ば強引に免許証を取り上げるなどの強行な手段も考えられるが、家庭内でのトラブルにもつながりかねず、高齢者自身が納得した上で返納することが重要な課題になる。どうすれば説得を受け入れてもらえるのか。「免許を返納した方がいい」。大阪府内に住む80代男性は昨年、同居する50代の息子から免許の返納を持ちかけられた。同世代の高齢ドライバーによる事故が相次いで報じられていたが、それでも返納には抵抗があった。しかし息子も譲らず、妻や孫も加勢。説得は最終的に男性が返納に応じるまで続いたという。「説得に悩む家族の話はよく聞くが、頭ごなしに返納を求めるだけでは、かえってかたくなになってしまう」。高齢社会の問題に詳しいNPO法人「老いの工学研究所」の川口雅裕理事長(55)は指摘する。警察庁が平成27年に75歳以上のドライバーと免許返納者約1500人ずつを対象とした調査では、「家族らの勧め」を返納理由とした人が33%で最も多く、「運転への自信を失った」や「必要性を感じなくなった」を上回った。一方、運転を継続しているドライバーは67・3%が「返納しようと思ったことはない」と回答。「家族の勧めで返納について考えたことがある」は4・7%にとどまっている。高齢者の車の運転に対するスタンスはさまざまで、単なる移動手段としてではなく、運転そのものを楽しみに感じていたり、苦労して手にした免許や車そのものに特別な思い入れを抱いていたりするケースもある。川口さんは「まずは免許や車が親にとってどういう存在なのかを理解することが大切」と話す。車を使う頻度や目的によって、効果的な説得方法は変わってくる。例えば、免許返納者への公共交通機関やタクシーの割引などのサービスは、移動手段として車を利用してきた人には有効だ。一方で、運転自体を趣味にしている場合はメリットとは感じず、車に思い入れがある場合、その“喪失感”を埋めることにはならない。重要なのは、返納後の生活に対して「ポジティブな提案」をすること。車の維持費に充てていた資金で旅行に行くことや、日常生活での新たな趣味や地域活動への参加を提案することが挙げられる。川口さんは「親と同居している人もいれば、疎遠になっている人もいる。返納が必要だと感じたら、まずはコミュニケーションを取ることから始めてみてほしい」と話している。
■年間40万人超返納も後絶たぬ事故
 運転免許の自主返納制度は平成10年に始まった。スタート初年は年間2596人だったが、30年には42万1190人が返納。このうち、75歳以上が半数以上を占める。返納が進む一方、高齢者による事故は後を絶たない。警察庁の調査では、29年の免許保有者10万人当たりの死亡事故件数は85歳以上が年間14・6件。運転免許を取得したばかりの16~19歳の11・4件を大きく上回った。また、75歳以上と75歳未満で比較すると、75歳未満が3・7件なのに対し、75歳以上は7・7件と2倍以上になり、高齢になるほど事故が多くなることが明らかになった。高齢者の免許保有者も増えており、75歳以上の免許保有者は19年に283万人だったのが、30年には564万人に。このうち、80歳以上は98万人だったのが、227万人となっている。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM8N55NSM8NUJHB017.html (朝日新聞 2019年8月20日) 「車遅く頭にきた」容疑者供述 あおり運転自体も捜査へ
 茨城県守谷市の常磐自動車道であおり運転を受けた後、男性会社員(24)が殴られ負傷した事件で、傷害容疑で逮捕された会社役員宮崎文夫容疑者(43)=大阪市東住吉区=が「男性の車が遅く、進行を妨害されたと感じて頭にきた」と話していることが、捜査関係者への取材でわかった。男性のドライブレコーダーには、宮崎容疑者が数キロにわたってあおり運転をする様子が映っていたという。県警は20日、宮崎容疑者と、あおり運転の際に同乗し同容疑者をかくまったとして犯人蔵匿・隠避容疑で逮捕された喜本(きもと)奈津子容疑者(51)を送検した。捜査関係者によると、宮崎容疑者は「車をぶつけられたので殴った」と傷害容疑について認める一方、「危険な運転をしたつもりはない」と供述。しかし県警は、ドライブレコーダーの映像などから危険な運転があったのは明らかとみている。そのため、傷害容疑とともに、あおり運転そのものについても、道交法違反(車間距離保持義務違反など)や、あおり運転で被害者に恐怖心を与えたとして暴行容疑などを視野に調べる方針だ。一方、より刑罰の重い自動車運転死傷処罰法の危険運転致傷の適用について、捜査幹部は「現時点で法律の要件を満たす上で困難な部分がある」との見方を示している。同幹部は「今回はあおり運転後に、手で殴りけがをさせた事案で、危険な運転行為で直接的に衝突などの事故により負傷したものでない」と話す。自室で宮崎容疑者をかくまったとして逮捕された交際相手の喜本容疑者は、高速道路上で宮崎容疑者が殴る様子を携帯電話で撮影していたことを認めている。県警は、宮崎容疑者の暴行を止めなかったなどとして、傷害幇助(ほうじょ)容疑も視野に調べを進めている。

*1-3:https://news.yahoo.co.jp/byline/yanagiharamika/20190630-00132169/ (Yahoo 2019/6/30) スマホ漫画で追突死亡事故 真実を明らかにしたのはドラレコだった
■楽しかった夫婦ツーリングが、一瞬の追突事故で暗転
 まずは、この写真をご覧ください。高速道路の事故現場から引きあげられた250ccのオートバイが、レッカー車の荷台に横倒しの状態で積まれています。ハンドル周りは原形をとどめず、車体も大破しています。つい数時間前まで、このバイクには39歳の女性が乗っていました。夫婦で2台のバイクを連ね、ヘルメットに装着された無線機で楽しい会話を交わしながら、泊りがけのツーリング……。しかしその楽しい旅は、自宅まであと少しというところで断ち切られてしまったのです。2018年9月10日、午後9時11分、事故は関越自動車道下り線、大和PAから小出ICの間の見通しのよい片側2車線の直線道路で発生しました。夫の井口貴之さんは左車線を、妻の百合子さん(当時39)はその後ろを走っていました。制限時速80キロの区間でしたが、百合子さんは時速約70キロで走行していたところ、後ろから運送会社のワゴン車が時速100キロのスピードで追突。百合子さんは避ける間もなく、そのままワゴン車の前後輪に轢かれたのです。
■高速道路上に横たわる妻の変わり果てた姿
 無線での会話が、突然の百合子さんの悲鳴とともに途切れたことに異変を感じた貴之さんは、すぐに自分のバイクを路肩に止め、百合子さんの姿を確認しに後方へと戻りました。しかし、目に入ったのは無残な光景でした。百合子さんは40~50秒後に走行してきた後続車にも轢かれ、脳挫傷等の致命傷を負い、命を奪われたのです。現場はその後、7時間にわたって通行止めになったほどの大事故でした。事故の翌朝、ワゴン車の運転手は、「なぜこんなことになったんだ」と詰め寄った貴之さんにこう説明したそうです。「対向車に気を取られて、わき見してしまった」 。結局、運転手は逮捕されることはなく、事故処理されました。
■ドライブレコーダーに写っていた「スマホ漫画」の動かぬ証拠
 ところが、事故から1週間後、思わぬ展開を見せます。新潟県警は、ワゴン車を運転していた男性(当時50)を、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死)の疑いで逮捕したのです。夫の貴之さんは語ります。「逮捕後、警察からその理由を聞いて驚きました。わき見という当初の説明は全くの嘘で、加害者は、高速道路に入ってからもスマホの小さな画面で、ミステリーやホラー系の漫画を読みながら、十分に前を見ず運転を続けていたそうです。そして、前方の妻のオートバイに気づかずに追突したのです」 。実は、加害者がスマホで漫画を読み続けていたことは、本人の車のドライブレコーダーにはっきりと記録されていました。夜間だったことから、その様子はフロントガラスに反射して写っており、約4時間にわたってその映像が残されていたというのです。この映像をもとに警察が加害者から事情を聞いたところ、本人が「わき見」ではなく「ながらスマホ(漫画読み)」をしていたことを認めました。また、加害者の車には、運転手の目の動きを感知し、居眠りや脇見を3秒以上検知すると警報ブザーが鳴る装置も取り付けられていましたが、それすらも無視し、マンガを読みふけっていたといいます。時速100キロの車は、10秒間に約280メートル進みます。高速道路で10秒以上前方から視線をそらすことが、どれほど危険な行為なのか……。検察官は、「これは目隠しをして走っているのと同じだ」と述べたそうです。夫の貴之さんは、今回、私に直接連絡をくださった理由について、こう話してくださいました。「加害者の言い分だけで処理をされた交通事故のことを『Yahoo!ニュース』の柳原さんの記事で知り、妻の事故と全く同じだと思いました。もし、ドライブレコーダーに映像が写っていなければ、この事故は単純なわき見運転で処理されていた可能性が大だったでしょう。なぜこんなことで妻は殺され、私たちの人生が壊されなければならなかったのか……。私は、ながらスマホの危険性、そして加害者が嘘をつくことの悪質性を広く世間に知っていただきたいと思うのです」
■マンガを読みながらの運転は悪質な「危険運転」
 この事故は現在、新潟地裁長岡支部で刑事裁判が進行中です。夫の貴之さんは、事故後、心身に大きなダメージを受け、仕事復帰にも長い時間がかかったそうですが、被害者参加制度を利用してご自身も検察官と共に法廷に立ち、6月24日には被告に対して直接尋問を行いました。被告が運送業務に携わるプロドライバーであるにもかかわらず、スマホで漫画を読みながら高速走行をしていたこと、そして、事故直後にそのときの閲覧履歴を消去するなどして事実を隠し、「対向車線のほうをわき見していた」と嘘の供述をしていたことの悪質性に言及し、危険運転致死など重い罪を課してほしいと述べたそうです。「ながらスマホ」による事故のニュースをたびたび耳にする昨今ですが、実際に車を運転していると、信号待ちなどで明らかにスマホに夢中になっているようなドライバーをたびたび見かけます。ドライバーはこの行為の危険性を改めて認識すべきでしょう。ましてや、スマホの小さな画面でコマ割りされた漫画を読みながら、クルマを運転するなど論外です。次の裁判は、7月16日。被告人に対しての論告求刑が行われる予定です。

*1-4:https://news.livedoor.com/article/detail/16991243/ (読売新聞 2019年8月28日) 高速「手放し運転可能」、BMWが国内初実用化
 独BMWの日本法人は27日、渋滞した高速道路で手放し運転ができる運転支援システムの搭載を今月から始めたと発表した。同社によると、手放し運転ができる自動車の実用化は国内で初めてという。支援システムはドライバーの疲労軽減が目的で、安全確認は運転手が行う。ドライバーが前方を注視しているかどうかを車内カメラで監視し、よそ見や居眠りの状態が続いたと判断されると警告音などで注意を促す。時速60キロを超えた場合も、ハンドルに手を添える必要がある。報道陣向けの試乗会では、高速道路で前の車に追従して走行し、暗いトンネル内でも車線をはみ出すことはなく、加速や減速もスムーズにこなした。7月生産分以降の最新型「3シリーズ」や「8シリーズ」などに標準装備している。すでに購入した人も、販売店で制御ソフトの更新を有償で行えばシステムが使える。日産自動車も高速道で手放し運転が可能な新型「スカイライン」を9月に発売する。高精度な3次元の地図データなどを駆使して実用にこぎ着けた。

*1-5:https://r.nikkei.com/article/DGXMZO49134150Z20C19A8MM0000?s=1 (日経新聞 2019年8月29日) 高齢ドライバーに実技試験 警察庁、事故対策へ検討
 高齢ドライバーによる交通事故対策として、警察庁は運転技能を調べる実車試験を導入する検討を始めた。高齢者を対象にブレーキやアクセルの操作を試験し、技能に課題があれば、安全機能を備えた車のみに限って運転を認める「限定免許」の対象とする。高齢者による事故の原因は操作ミスが多く、事故のリスクを軽減する狙いがある。2020年度予算の概算要求に調査費2700万円を計上する。高齢者向けの限定免許は早ければ21年度に創設される見通しで、実車試験も同時期の導入を念頭に制度設計を進める。現在は75歳以上のドライバーを対象に免許更新時に認知機能検査を義務付け、検査を経て医師に認知症と診断されれば免許取り消しか停止になる。ただ認知機能に問題がなくても運転技能が衰えているケースがあり、専門家から実車試験の導入を求める声が上がっていた。実車試験の対象者は認知機能検査を受ける高齢ドライバーを想定。アクセルとブレーキの踏み間違いや、対向車線へのはみ出しといった危険な運転の兆候がないかどうかなどを調べる。20年度の調査ではこうした危険な運転について、車の安全機能でどの程度制御できるかを実証する。限定免許の創設は、相次ぐ事故を受けて政府が6月に決めた緊急対策に盛り込まれた。ドイツやスイス、オランダといった先行して限定免許を導入している国では、医師による診断や実車試験の結果などに基づき対象者を決めている。警察庁はこうした各国の事例を基に、新たに導入する限定免許の対象者を判断する基準として、実車試験の結果を活用する方針だ。具体的な試験の項目などについては、対象となる高齢者の負担が重くなりすぎないように配慮する。75歳以上の運転免許保有者は2018年末時点で563万人で、社会の高齢化とともに20年に600万人に増えると推計される。75歳以上による死亡事故は18年に460件発生し、全体に占める割合(14.8%)は過去最高だった。東京・池袋で4月に80代のドライバーの車が暴走し母子2人が死亡するなど、重大事故も後を絶たない。19年上半期(1~6月)に発生した高齢ドライバーによる事故を警察庁が分析したところ、34%はハンドルやブレーキの操作ミスが原因だった。自動車各社は操作ミスの影響を軽減する安全装置の導入を急いでおり、新車の17年の搭載率は加速抑制機能が65.2%、自動ブレーキが77.8%だった。後付けの装置の商品化も広がっている。実車試験の導入を巡っては警察庁が17年に設置した有識者会議の分科会でも議論されたが、「どのような運転が事故のリスクが高いと言えるかという判断基準が明確でない」などの課題が示され、結論は出なかった。

<個人情報の無断使用と個人の特定>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190829&ng=DGKKZO49110140Y9A820C1EA1000 (日経新聞社説 2019.8.29) 個人情報を扱う自覚はあるか
 個人データを扱う企業としての自覚を問われている。就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリア(東京・千代田)が学生の同意を得ずに「内定辞退率」の予測データを売っていた問題で、政府の個人情報保護委員会が是正を求める勧告を出した。人材サービスへの信頼が損なわれれば、人的資源を効率的に配分する柔軟な労働市場づくりにもマイナスだ。同社は影響の大きさを認識し、再発防止に向けた具体策を早急に示すべきだ。リクナビに登録した学生がどの企業の情報を閲覧したかを、同社は人工知能(AI)で分析。それをもとに内定を辞退する確率を推計するサービスを始め、計38社と契約した。これまでに約8千人分の個人データを本人の同意を得ないまま提供していた。個人情報保護法違反と判断されたのは当然だ。十分に説明しないまま分析に使ったデータも約7万5千人分にのぼり、個人情報保護委は改善を指導した。見過ごせないのはリクナビが就職活動の代表的な情報プラットフォームになっている点だ。学生の間では、これを使わずに就活を進めるのは難しいとの声が多い。他のサイトに比べた優位性を利用して個人データを集めていたのだとしたら、まさに学生の信頼を裏切る行為である。面接でAIが応募者と対話して適性を探るなど、採用選考や人事管理にIT(情報技術)を活用する動きが広がり始めている。業務効率化につながるが、個人データの扱いが公正なことが前提だ。リクルートキャリアには徹底した再発防止策を講じる責任がある。学生にとっては、自分のデータがどの企業に提供されていたのかなどが不明なままだ。同社は説明を尽くさなければならない。個人データの購入企業にも説明責任がある。合否判定に使っていた例は出てきていないが、データの購入目的について、学生の納得のゆく情報開示が求められる。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190820&ng=DGKKZO48719040Z10C19A8MM8000 (日経新聞 2019年8月20日) ワタシという商品(上) リクナビのつまずき 革新の波、使う知恵試す
 データエコノミーの落とし穴があらわになった。人工知能(AI)が個人の心理を読む時代が現実となり、日本では学生データの利用を巡る「リクナビ問題」が起きた。個人情報を扱う責任を負いながら、便利なデータ社会を実現できるか。課題に直面している。8月上旬、経済産業省にいら立ちが広がった。「最悪のタイミングだ」。職員の一人は唇をかんだ。政府が20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で「信頼ある自由なデータ流通」を提唱。リクナビ問題が発覚したのは、経産省がこの構想を後押しするデータ活用事例集の公表準備を進めているさなかだった。
●年80万人が利用
 就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリア(東京・千代田)は2018年以降、学生の十分な同意を得ずに内定辞退率の予測データを38社に販売するなどしていた。年80万人が使うなくてはならない就活の「プラットフォーマー」が震源地だったことで問題は深刻になった。トヨタ自動車やNTTグループ、三菱電機などデータを購入した企業も説明に追われる。日本企業はデータ利用で米国勢などに出遅れ、その経験不足は個人情報の保護意識も鈍らせた。環境や人権に配慮した経営で知られる英蘭ユニリーバは、2年前からAIを採用に使う。「欧州本社も加わり、情報の用途や対象を何重にも確認する」。日本法人でデータ保護を統括する北島敬之さんは話す。データエコノミーの進展は、新たな技術を次々と生んでいる。個人の信用や将来性まで点数化されるようになったが、問われるのは使い手である人の知恵だ。米カリフォルニア州は20年の新規制で、AIで趣味や思想を割り出す手法を制限する。欧州もAIの決定に異議を唱える権利を定めた。慶応大学の山本龍彦教授は「日本は企業倫理も法制度もAI時代に追いついていない」と指摘する。
●「スイカ」の教訓
 マッキンゼー・アンド・カンパニーの推定では、30年までにAIは世界で1400兆円の経済活動を生む。日本も立ちすくんでいては巨大な情報鉱脈にたどり着けない。教訓は13年の「スイカ・ショック」だ。JR東日本がIC乗車券「Suica」の乗降データ活用に動いた直後だった。匿名化して社外に販売したが、説明が足りず個人情報保護に反すると批判が相次いだ。多くの企業が個人データを使う新事業の立ち上げに慎重になった。「国が白黒の判断を下さず、グレーのままにしたのが問題だった」。国立情報学研究所の佐藤一郎教授は振り返る。ルールが曖昧なままでは前に進めない。リクナビも丁寧な説明が欠かせなかった。適切な手続きを踏めば、学生を特定しない企業単位の辞退数予測などの形で、人材難の各社が機動的な採用に使えた可能性がある。個人も意識を高める必要がある。「後輩には他のサイトと使い分けるよう伝える」。早稲田大学4年の女子学生は憤る一方、内定を得たのもリクナビのおかげと割り切り、最適解を探す。個人情報はデータの世紀の資源だ。使いこなせば、豊かさをもたらす。「ワタシという商品」を巡るトラブルは問題解決の好機だ。企業も政府も個人も、やるべきことは見えている。

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM8B2394M8BULBJ002.html?iref=pc_extlink (朝日新聞2019年8月11日)進む匿名データの第三者提供に警鐘 日本でも特定の恐れ 
 客の購入動向やニーズに応じた商品やサービスを薦めたり、企業の業務の効率化につながったり。ビッグデータは幅広い分野で利活用が広がっているが、前提となるデータの匿名性は保たれているのか――。今回の論文は警鐘を鳴らす。
●ビッグデータ、匿名化でも高確率で個人特定 海外で指摘
 欧米では、先月発表されたこの研究内容は関心を集めた。米紙ニューヨーク・タイムズは「あなたのデータは匿名化されている? だが科学者はあなたを特定できている」、英紙ガーディアンは「データは指紋 ネットの世界ではあなたはあなたが思っているほど匿名ではない」との見出しでそれぞれ報じた。匿名データからの個人の特定をめぐっては、過去に別の研究者が、公開情報に含まれる生年月日、性別、郵便番号から米州知事の病歴記録を特定した。また、有料動画配信サービス・ネットフリックスが提供した匿名化された閲覧履歴情報を使い、研究者が公開の映画レビューサイトの内容と照合して、個人を特定したケースなどもある。米国ではデータがオンライン公開されることが多く、属性にまつわるさまざまなデータが日本より入手しやすい事情はある。ただ、日本でも匿名化して、まとめられたビッグデータの提供が進みつつあり、対岸の火事とはいえない。個人情報保護法が改正され「匿名加工情報」の考えが導入された。2013年、JR東日本が外部に販売していたICカード「Suica(スイカ)」の乗降履歴から、個人が特定される恐れがあると批判を浴びたことがきっかけだった。匿名加工には基準があり、特定の個人の識別につながる氏名や生年月日、住所などの全部または一部を削除したり、住所を県や市までにあいまいにしたりといった要件を満たせば個人情報の扱いではなくなり、本人同意がなくても第三者に提供できる。ただ、匿名加工に関する政府の指針は、あらゆる手法によって特定できないということまでは求めず、現在の一般的な技術レベルで特定できなければよいとしている。また、匿名化の方法の細かいところは必ずしも明確ではないとされる。産業技術総合研究所の高木浩光主任研究員は、個人が識別されない適切な匿名加工の必要性を強調。そのうえで「論文が指摘している問題は匿名加工情報の制度設計でも議論された。一人しかいないようなデータがあれば、どうしてもリスクが高くなる」と話す。個人を特定するために、例えば交通系ICカードの乗降履歴と、別会社のポイントカードの購買履歴などを突き合わせる行為は「照合」と呼ばれ、個人情報保護法で禁じている。政府の「パーソナルデータに関する検討会」の技術担当会合で主査を務めた国立情報学研究所の佐藤一郎教授は、「購買履歴や治療履歴などは人によって大きく異なるので、(特定につながる)リスクがあると知っておいてほしい」と語る。ただ、データの削除や、あいまいにする加工を進めすぎると、ビッグデータ活用の芽を摘むことになる。国の個人情報保護委員会の担当者は「個人情報保護と利活用のバランスを取り、最新の技術動向も注視していきたい」と話す。

*2-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190821&ng=DGKKZO48773980Q9A820C1EA1000 (日経新聞社説 2019年8月21日) デジタル社会を創る 「医療ビッグデータ」を使いこなせ
 高齢化が進むなか効率的で質のよい医療の提供は重要な課題だ。しかし、それを支える検査や治療の記録など膨大な「医療ビッグデータ」の活用が進まず、デジタル技術が生かされていない。宝の持ち腐れでは、医療産業の国際競争力も低下しかねない。
●新薬開発に使いにくく
 医療ビッグデータは問診記録や検査結果、投薬情報など多岐にわたる。個人情報として慎重な取り扱いが必要だが、新薬開発や病気予防、健康管理に役立ち医療費抑制にもつながると期待される。国は2018年、個人を特定できないよう医療情報を匿名化して使う仕組みを定めた「次世代医療基盤法」を施行した。医療ビッグデータの利用推進が目的だ。だが製薬企業などにとって使い勝手が悪いという。匿名化したデータでは病気ごとの患者数や薬の処方実績などの統計は出せても、一人ひとりの薬の効き目や症状の推移を把握できないからだ。医療情報は従来、活用よりも保護を重視する考え方が強かった。発想を変えて、十分な情報漏洩対策は施しつつも、創薬などのニーズに即した活用をもっと重視した制度設計にすべきだろう。日本には世界有数の規模を誇る診療報酬明細書(レセプト)の情報を集めた「ナショナル・データベース」がある。ことし5月の法改正で介護データと照らし合わせて解析できるようになった。一歩前進だが、制約はなお大きい。厚生労働省の有識者会議で用途に公益性があると認められた場合にしか、企業は利用できない。自社製品の開発や販売に生かせなければデータの魅力は薄れる。大学や研究機関でも、認められた人が専用の部屋でネットに接続できない端末でのみ使える。クラウドを上手に活用し利便性を高めるなど改善の余地は大きい。電子カルテの情報を使いこなすのも大きな課題だ。記載の仕方が病院や担当科ごとに異なり、国の標準化計画は進展が遅い。医療現場は診療業務に追われシステム改修の余裕がないというが、それだけではない。縦割り組織やメーカーの顧客囲い込み、研究者によるデータ独占など、あしき慣習を絶つ必要がある。医薬品医療機器総合機構(PMDA)は18年から、全国23の病院の協力を得てレセプトと電子カルテの情報の統合データベースを運用し始めた。副作用の把握を目的としているが、用途や対象病院の拡大を検討してはどうか。利用価値は高いのに基盤整備が途上の分野もある。コンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)による診断画像のデータベース構築だ。画像をAIに学習させ、がんや脳疾患の診断を支援するサービスが大きく伸びると予想される。信頼できるデータが豊富なほど診断精度は上がる。ところが、多くの大学や病院がもつ画像は紙焼き写真のみで、もとになるがん組織の保存状態も悪い。関係学会による画像のデジタル化を国が継続的に支援すべきだ。
●国際ルール積極関与を
 今後は遺伝子データの収集も進む。19年から全国の拠点病院で、がん患者の遺伝子を解析して最適な治療薬を探す「がんゲノム(全遺伝情報)医療」が始まった。一定の条件を満たせば公的保険の対象となり、年間数万人分の解析が実施される見通しだ。国立がん研究センターは集約したデータを製薬企業などに最大限開放し、がんの新薬開発などに生かしてほしい。米国のように、データの提供サービスに民間の参入を認めるのも検討に値する。身近なところでは、スマートフォンや腕時計型センサーによる心拍数や血圧、体温、血糖値などの測定が広がり、データが集まりだしている。病気の発症や進行を遅らせ、健康寿命を延ばす研究などに生かせる。こうした遠隔の測定や投薬管理サービスでは米欧のIT企業や製薬企業が先行する。日本人のデータが知らぬ間に海外に流出する可能性もある。データ利用に関する同意項目などに、一人ひとりが注意する習慣をつけたい。個人情報に配慮しながら国境を越えて医療データをやりとりする、データシェアリングの方式を標準化する動きも米欧を中心に活発になってきた。日本も率先してルールづくりに加わるべきだ。

*2-5:https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/news/18/04940/ (日経BP 2019/5/15) 東芝が従業員のゲノムデータを収集へ、数万人規模のデータベース構築
 東芝は、「東芝Nextプラン」で新規成長事業の1つに位置付けた精密医療の取り組みの一環として、日本人に特徴的な遺伝子を効率的に解析する「ジャポニカアレイ」によるゲノムデータの収集開始を決定した。また、医療分野のスタートアップ投資に実績のあるBeyond Next Venturesと業務提携契約を締結した。東芝グループは、2018年11月8日に全社変革計画「東芝Nextプラン」を発表し、「超早期発見」「個別化治療」を特徴とした精密医療を中核とする医療事業への本格的な再参入を表明した。また、東芝のDNAであるベンチャースピリットを呼び覚まして新規事業を創出する新たな仕組みとして、100億円規模のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)機能を導入している。疾病は個人の生活パターンや遺伝的要因(体質)によって異なるため、より多くのデータを分析し、特徴別に複数のパターンに分けることで、最適な予防法・治療法の開発につなげることが可能となる。「ジャポニカアレイ」によるゲノムデータの収集開始はその第一歩で、国内グループ従業員の希望者を対象に、ゲノムデータや複数年の健康診断結果などを含む数万人規模のデータベースを構築する。これにより東芝は、「予防医療」の実現に向けた研究開発を、医療研究者をはじめとする医療・ライフサイエンスに携わる機関や企業と共同で推進する。また、精密医療事業の事業化や収益化には社外の力を積極的に活用することも重要となることから、Beyond Next Venturesとの連携を通じ、優良な医療系ベンチャー企業の探索や協業の検討を推進していく。このほか東芝は、精密医療事業を本格的に推進するため「一人ひとりのクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上を応援します」「積み重ねた技術力と、新たなパートナーシップでこれからの先進医療・ライフサイエンスを支えます」「次の世代も見据えた予防医療にデジタルの力を活かします」の3つを目標とする「精密医療ビジョン」を新たに作成した。東芝グループは、このビジョンのもとに予防から治療にわたる複数のテーマで要素技術などの技術開発に着手しており、研究から実用化に向けたさまざまなパートナーシップを組みながら事業の成長を目指す。

*2-6:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190821/KT190820ETI090002000.php (信濃毎日新聞 2019年8月21日) マイナンバー 強引なカード普及促進策
 個人番号が記載されたマイナンバーカードの普及率を高めるため政府は年度末までに国と地方の全ての公務員に取得させる考えだ。そうまでする必要があるのか。カードの普及が自己目的化しているかの強引なやり方には疑問が拭えない。国、地方それぞれの共済組合から職場を通じて交付申請書を配布し、手続きを促す。申請書には家族分を含め、あらかじめ名前などを印字する。霞が関の中央省庁で始めている身分証との一体化も出先機関や自治体に順次広げる。実質的な取得の義務化だ。マイナンバーは、国民一人一人に割り当てられた12桁の番号である。年金や税金などの個人情報を番号で照会し、事務を効率化するとして2016年1月に導入された。預金口座にも適用し、国民の所得や資産を正確につかむことで脱税などを防ぐことも狙う。希望者には、顔写真付きのICカードが交付される。番号のほか氏名、住所、生年月日が載り、身分証明書になる。政府は、22年度にほとんどの住民がカードを持つことを想定するものの、現状は程遠い。交付は今月8日時点で1755万枚、人口比で13・8%にとどまる。申請書を受け取った公務員は提出を拒みにくいだろう。公務員だからといって、本人の希望が前提であるカード取得を強いていいのか。まして扶養家族まで対象に含めるのは普及促進の度が過ぎる。内閣府の世論調査では、カードを「取得していないし、今後も取得する予定はない」との回答が半数を超えている。理由は「必要性が感じられない」が最多で「身分証になるものは他にある」「情報漏えいが心配」と続いた。利点が乏しい一方で不安が残る制度―。国民のそんな受け止めが見て取れる。公務員への働き掛けのほかにも政府は普及策をあれこれ打ち出している。消費税増税に伴う景気対策ではカードを活用した「自治体ポイント」を計画する。21年には過去の投薬履歴を見られる「お薬手帳」の機能も持たせる。カードの利点をアピールしようと活用範囲を拡大していけば、その分、情報漏れや不正利用の心配が膨らむ。脱税防止といった本来の目的がかすんでもいく。普及を図りたいなら、強引な促進策ではなく、制度への国民の理解を広げる努力が先決だ。何のための個人番号か、なぜカード取得を促すのか。出発点に立ち返って丁寧に説明するべきである。

<個人の権利や社会保障の軽視>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190820&ng=DGKKZO48739010Z10C19A8EN2000 (日経新聞 2019年8月20日) 社会保障を巡る認識ギャップ
 日本の社会保障は「中福祉・低負担」であり、その差を財政赤字が埋めている。これに対して専門家は負担を中レベルに引き上げるべきだと考えている。一方で、多くの国民は福祉水準の方を高レベルに引き上げてほしいと願っている。そして政治は票を意識して国民意識に寄り添おうとするから、認識ギャップは放置され、財政赤字だけが拡大していくことになる。この放置された巨大な認識ギャップこそが社会保障問題の解決を難しくしている最大の原因だ。このギャップを少しでも小さくしていくためには、まずは政治が短期的な人気取りではなく、長期的な国民福祉の安定を考えた議論を展開すべきだ。国民の側も次のような点で社会保障への理解(社会保障リテラシー)を高めていくことが必要だ。第1は、社会保障の給付と負担は一体だという認識を持つことだ。これは当然のようにみえて結構難しい。例えば消費税率を引き上げようとすると「それにより社会保障がどう改善されるのかを示すべきだ」という意見が出る。しかし、現在の低すぎる負担レベルを正そうと消費税率を引き上げるのだから、税率を上げても社会保障のレベルが高まるわけではない。第2は、適切な期待を持つことだ。例えば年金について「百歳までも安心して暮らしていける年金水準にすべきだ」というのは過度な期待である。年金制度があっても自ら老後に備えるのは当然だ。一方、若者たちの中には「自分たちが老人になる頃には年金はもらえない(文字通り受け取る年金がゼロ)」と悲観する向きも多いが、これはあまりにも期待レベルが低い。現行の年金制度は長生きリスクに備えて自己努力を補う有力な手段となっている。第3は、自分自身がどんな形で負担しているかを知ることだ。近年、消費税率の引き上げが遅々として進まなかったこともあって、社会保険料の引き上げが続いてきた。このため勤労者と企業が相対的に重い負担をすることになってしまっている。これは、勤労者が負担する社会保険料は給料から天引きされているため、本人も負担の高まりを認識していないからだ。政治の側と国民の側の双方が社会保障を巡る巨大な認識ギャップを埋める努力をしてほしいものだ。

*3-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/538855/ (西日本新聞社説 2019/8/29) 年金の将来 「支え手」増やす改革急げ
 5年ぶりの健康診断は厳しい結果だった。放置すれば命を縮めかねない。すぐに大手術をするわけにはいかないが、体力の増強などやるべきことに早急に取り組む必要がある-。厚生労働省が公表した公的年金の財政検証結果から読み取るべきは、こんな結論だろう。少子高齢化の進行で「支える側」の現役世代が減り、「支えられる側」の高齢者が受け取る年金給付水準の低下は避けられない。老後に対する国民の不安は募るばかりだ。厚生年金の加入対象者を拡大するなど、支え手を増やす制度改革で国民の不安解消に努めるべきだ。財政検証では、現役世代の手取り収入に対する厚生年金の給付水準「所得代替率」を試算した。政府にとっては、モデル世帯で所得代替率50%以上を維持という約束が、将来も守られるかが焦点の一つだった。経済成長の度合いによって6通りで試算し、高成長3ケースでは約30年後も約束は守られるとした。5年前の試算結果とほぼ同じで、根本匠厚労相は「経済成長と労働参加が進めば、一定の給付水準が確保されながら約100年間の負担と給付が均衡し、持続可能となる」と強調した。年金制度の「100年安心」をアピールする狙いだ。ただ、それでも現在の所得代替率61・7%からは大幅に低下する。しかも、この3ケースは経済成長と高齢者の就労が順調に進むという甘い条件設定での見積もりだ。それらが低迷するケースでは40%台に落ち込む。楽観を排して見通せば、年金制度も受給者の生活も「100年安心」とは言い難い。不安解消には、年金給付水準の低下抑制が欠かせない。厚生年金の加入対象者を中小企業のパートにまで広げたり、賃金要件を緩和したりすれば、給付水準は改善する。厚生年金の保険料は労使で折半するため企業側の反発が予想されるが、支え手の層を厚くするためにも腰を据えた議論が必要だ。現在は20歳から60歳まで40年間となっている基礎年金加入期間を45年に延ばす案や、厚生年金の加入上限年齢を75歳に引き上げる案などについても、給付水準の改善につながるという試算が出た。これらについても検討してほしい。「就職氷河期世代」の非正規労働者など、老後への備えが十分ではない人は少なくない。無年金や低年金への対策は待ったなしだ。政府は検証結果を踏まえて制度改革案をまとめ、関連法案を来年の通常国会に提出するという。与野党とも政治の責任として、より望ましい年金の将来像づくりに合意できるよう議論を尽くすべきだ。

*3-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/403840 (佐賀新聞 2019年7月22日) 年金機構が個人情報紛失、未納者データのDVD
 日本年金機構の東京広域事務センター(東京都江東区)が、国民年金の未納者の個人情報が入ったDVDを紛失したことが22日、機構への取材で分かった。未納者の氏名や住所、電話番号が含まれている可能性があるが、情報の流出や悪用は確認されていないという。機構によると、機構は国民年金の保険料未納者に支払いを訪問や電話で催促する業務を外部業者に委託。業者が状況を報告するための情報を記録したDVDを同センターに送付し、届いた後に行方不明になった。機構の担当者は「具体的な個人情報の内容や人数、行方不明になった時期は調査中」としている。

*3-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49083190X20C19A8SHA000/?n_cid=NMAIL006(日経新聞2019/8/27)年金、支え手拡大急ぐ パート加入増で給付水準上げへ
 厚生労働省が27日公表した公的年金の財政検証では、少子高齢化で先細りする公的年金の未来像が改めて示された。日本経済のマイナス成長が続き、労働参加も進まなければ2052年度には国民年金(基礎年金)の積立金が枯渇する。厚生労働省は一定の年金水準を確保できるよう、会社員らの入る厚生年金の適用を拡大し、高齢者やパートらの加入を増やす改革に乗り出す。

*3-5:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49054290X20C19A8SHA000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2019/8/27) 年金、現状水準には68歳就労 財政検証 制度改革が急務
 厚生労働省は27日、公的年金制度の財政検証結果を公表した。経済成長率が最も高いシナリオでも将来の給付水準(所得代替率)は今より16%下がり、成長率の横ばいが続くケースでは3割弱も低下する。60歳まで働いて65歳で年金を受給する今の高齢者と同水準の年金を現在20歳の人がもらうには68歳まで働く必要があるとの試算も示した。年金制度の改革が急務であることが改めて浮き彫りになった。

<インフラ整備は最初の都市計画が重要であること>
PS(2019年8月31日、9月3日追加):*4-1のように、熊本地震からの復興と将来の都市づくりのため、「中心市街地を『歩いて暮らせる上質な生活都市』に転換する新たな街づくりが必要」として、熊本市の大西市長・市の幹部・市の職員・市議など28名の視察団がフランスに派遣されることになり、これに対して、「①市長や議員が飛行機でビジネスクラスを利用する」「②生活再建できない熊本地震の被災者が残される中で、議員が物見遊山のように海外視察に行くことは納税者の理解を得られない」との批判があるそうだ。しかし、①については、一般企業の常識から考えると、市長・議員・市の幹部などが出張時にビジネスクラスを利用するのは当たり前であり、②についても、街づくりが進む前に都市計画をしておくことが重要だ。ただ、本当に都市計画のための見聞であることは大切で、そのためには議員は少人数づつに分かれてあちこちの街を視察し、必要な質問を行い、正確な報告書を提出して、その後の議論に資するのでなければならない。その時は、共産党の議員も分担して、中国・ロシア・東ヨーロッパなどの開発の進みつつあるモデルにしたい都市を視察して報告すると役に立つと思う。
 なお、*4-2のように、横浜市で第7回アフリカ開発会議(TICAD)が開かれ、「横浜宣言」に「自由で開かれたインド太平洋」「海洋安全保障」などが入れられたそうだが、それはアフリカの開発とはあまり関係ないだろう。また、尖閣諸島に関しては抗議が甘いのに、何に関しても中国の悪口を言ったり、投資額だけでなく中国独自の取り組みとの違いも際立たせたいなどと中国と競争するためにアフリカ開発援助をしているような発言をしているのは日本の意識が低いと言わざるを得ない。私は、*4-5のように、アフリカ開発銀行のアデシナ総裁が、中国の経済圏構想『一帯一路』について、「アフリカの経済成長に寄与する」「中国が『債務のワナ』の意図を持っているとは思わない」とされているとおり、現在のアフリカは、1950年代の日本と同様に、今から経済成長する地域で、そのためにインフラ整備を必要としており、人口増加しつつある平均年齢の低い国が多いため、借金は経済発展すれば返せると思う。
 そして、日本が援助するのなら、アフリカの貴重な自然を破壊せずに開発を進めるため、都市計画を先にたて、民間企業を中心として上下水道・再エネによる分散電源・EV・FCV・携帯電話・パソコン使用などを前提とする「質の高いインフラ投資」をすべきだ。
 さらに、*4-3のように、G7首脳会議で日米欧が素早く一致したとおり、2050年までにアフリカ大陸は人口が倍増して25億人になると予想されるため、治安の悪化を防ぐには雇用創出しなければならないが、日本はこの状態を1940~1950年代に経験済であり、これらを解決する方法は、女性も含めた教育・人材づくり・家族計画・経済成長であることがわかっている。そのため、中国と同様、一時的な格差拡大を恐れずに、できる所からやっていくことが必要だろう。
 2019年9月1日、日本農業新聞が、*4-6のように、「①人口が倍増するアフリカは、今後の有望成長地域で食料輸入国が多い」「②農業振興で成長を後押ししたい」「③アフリカの食料安全保障も大問題」と記載している。私は、エネルギーは全く排気ガスを出さない再エネ由来の電動にすべきだと思うので、わざわざ食料を作れる田畑でバイオ燃料を作ることには反対で、さらにスマート農業にしすぎると人口増のアフリカで雇用吸収力が低くなるのではないかとも思うが、①であるからこそ②③は非常に重要で、JAグループ等の農業関係団体は技術協力や人材育成が可能だと思う。また、アフリカで技術協力した日本人の方にも貴重な経験になるし、アフリカの家族農業をまとめた農業協同組合との連携や6次産業化もできるだろう。
 なお、JA全農が、*4-7のように、組合員の家庭や営農施設向けの電力の販売に乗り出すそうだが、各地域の電力会社から電力を調達するのでなく、ハウス・畜舎・田畑などで再エネ発電を行えば、完全なグリーン電力にでき、営農の大きなコストダウンや農家の副収入確保が可能になる。また、この方式は、アフリカなど電力インフラの遅れている地域でも活用できる。


アフリカのGDPと経済成長率 アフリカの人口ピラミッド 日本の人口ピラミッドの変化

(図の説明:左図のように、アフリカ諸国は変動はあるものの世界平均より経済成長率が高く、これから成長する国々である。中央の図のケニア・ナイジェリア・エチオピアの人口構成は、右図の日本の1940年代、南アフリカの人口構成は1955年くらいに当たり、先進国の援助でスピードが速まりつつ、インフラ・経済・医療・教育の充実は似たような道を辿ると思われる)

   
世界では最安値の太陽光発電      改良型風力発電機        地熱発電

*4-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM8V5392M8VTLVB00B.html?iref=comtop_8_05 (朝日新聞 2019年8月30日) 熊本市、海外視察に1850万円 市長はビジネスクラス
 熊本市が今秋、大西一史市長をはじめ、市幹部や市職員、市議ら28人からなる視察団をフランスに派遣することになった。6泊8日で、市負担の予算は計約1850万円。市は視察の理由を、熊本地震からの復興と将来の都市づくりには中心市街地を「歩いて暮らせる上質な生活都市」へと転換する新たなまちづくりが必要で、フランスが欧州の先進事例と説明している。今年6月、熊本市と交流都市の関係にあるエクサンプロバンス市から「日仏自治体交流会議」の準備会議への招待状が大西市長に届き、倉重徹議長にも議員との交流を求める招待状が届いた。これに合わせる形でフランスの3都市を巡る視察団の派遣を企画した。市都市政策課によると、一行は10月30日に熊本を出発。同日夕にストラスブール市に到着。31日に同市の市長を表敬後、公共交通を優先したまちづくりを視察。11月2日にオルレアン市を回り、3日に交流都市のエクサンプロバンス市に移動。翌4日に同市の市長を表敬し、5日まで市内を視察して6日に帰国する。大西市長は県産農産物品の売り込みのため視察の途中でイタリア・ミラノ市を訪問し、エクサンプロバンス市で合流する予定だ。市議会からは倉重議長のほか、自民の寺本義勝議員、小佐井賀瑞宜議員、光永邦保議員、公明の井本正広議員、市民連合の福永洋一議員が参加する予定。参加議員は各会派の代表として選ばれた。視察の準備は昨年から始め、市幹部と職員の費用は今年度当初予算で議決済み。市議会分については、9月定例会に770万円の補正予算案を提出する。経済界から参加する4人の旅費は自己負担という。市長や議員は飛行機でビジネスクラスを利用する予定。市議会事務局によると、交通費や滞在費を含む議員1人あたりの旅費約106万円は全額公費から支出する。議員は視察後の報告書提出の義務が無く、議会事務局が感想を聞き取って報告書を作成する。海外視察の事例については「近年は無く、少なくとも改選前の前期の4年間は無かった」としている。市議6人が同行する海外視察ついて、大西市長は27日の記者会見で「派遣する議員数については議会がお決めになること。熊本市の市電延伸にも色んなご意見があり、多様な方が実際に現地を見て違う角度から将来の熊本について検討する機会。視察の目的も明確でまちづくりの知見を深められる」と説明。倉重議長も取材に対し、「路面電車をいかしたまちづくりやコンパクトシティーを実現した先進国で、なるべくたくさんの議員に一緒に交通体系を体験してもらい、その意見を将来の熊本のまちづくりにいかす」と話す。一方、これまで市議会の海外視察に加わってこなかった共産の上野美恵子議員は「市民の代表として市長と議長の表敬訪問は理解できる。しかし、まだ生活を再建できない熊本地震の被災者が残されるなかで、議員が物見遊山や大名行列のようにゾロゾロと海外視察に行くことは納税者の理解を得られると思えない」と批判している。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190830&ng=DGKKZO49193050Q9A830C1MM0000 (日経新聞 2019年8月31日) TICAD横浜宣言、インド太平洋構想を明記、中国念頭に 民間重視を強調
 横浜市で開いた第7回アフリカ開発会議(TICAD)は30日午後、「横浜宣言」を採択して閉幕した。安倍晋三首相が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」構想にTICADの成果文書として初めて触れ、重要性について認識を共有した。今後のアフリカ開発では民間ビジネスを重視していく姿勢も前面に出した。インド太平洋構想はアジアとアフリカを結ぶインド洋や太平洋地域で、法の支配や航行の自由、経済連携を推し進めるものだ。首相が2016年8月にケニアで開いた前回TICADの基調演説で打ち出した。横浜宣言では同構想に「好意的に留意する」と言及した。中国が主導する広域経済圏構想「一帯一路」を意識し、アフリカ諸国が中国に傾斜しすぎないよう促すものだ。アフリカでのインフラ開発では中国の融資に頼り、巨額の債務を負った事例が指摘される。6月の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)でまとめた首脳宣言や「質の高いインフラ投資原則」を共通認識として歓迎することも盛り込んだ。相手国に返済が難しいほど過剰な債務を負わせないよう、透明性と持続可能性を重視する内容だ。優先事項の一つでも海洋安全保障を挙げ、中国の海洋進出を念頭に「国際法の諸原則に基づくルールを基礎とした海洋秩序の維持」を訴えた。経済連携では「アフリカ開発における民間部門の役割を認識」と盛り込んだ。民間ビジネスを活性化してアフリカ経済の自律性を高める狙いで、政府間が主導する中国の対アフリカ支援との違いを訴えた。首相は閉会式で「民間企業のアフリカにおけるさらなる活動を後押しするため支援を惜しまない」と強調した。アジアでの開発で日本が取り組んだ経験がアフリカでも役立つことを確認し、日本がアフリカ諸国での人材育成を支援する「ABEイニシアチブ3.0」を評価した。日本への留学やインターンを促進し、今後6年間で3000人の産業人材の育成を目指す仕組みだ。女性起業家への支援も歓迎する考えを明記した。アフリカ開発を巡っては中国も00年から中国アフリカ協力フォーラムを計7回開き、18年の会合では3年間で約600億ドルの拠出を表明した。首相も28日の基調演説で今後3年間で200億ドルを上回る民間投資の実現を後押しする考えを示した。ただ投資額だけで対抗するのではなく、中国独自の取り組みとの違いも際立たせたい考えだ。横浜宣言ではTICADの基本理念として日本とアフリカだけでなく国際機関や第三国にも開かれた枠組みだと強調した。同宣言では日本が目指す国連安全保障理事会の常任理事国の拡大を念頭に「安保理を含む国連諸組織を早急に改革する決意を再確認」することも明記した。次回の第8回TICADは22年にアフリカで開く。TICADは前回初めてアフリカで開いており、3年ごとに日本とアフリカで交互に開催する方向性を明確にした。日本が1993年に立ち上げたTICADでは参加する日本やアフリカ諸国で共通する問題意識を盛り込んだ宣言を出すのが通例だ。28日に開幕した今回はアフリカ54カ国のうち過去最高の42カ国の首脳級が参加した。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190831&ng=DGKKZO49225340Q9A830C1EA3000 (日経新聞 2019年8月31日) 人口増リスク、欧米が注視
 対立が目立った26日までのフランスでの主要7カ国(G7)首脳会議で日米欧が素早く一致した分野がある。西アフリカのサハラ砂漠南部「サヘル地域」での雇用創出などを通じた開発支援だ。マリやチャドなどサヘル地域5カ国は世界のアフリカへの成長期待をよそに治安が悪化し、統治が機能していない。背景には人口が増えるなかで貧困や若年層の失業が膨らみ、過激派勢力が不満を募らす若者を引き込む負の構図が浮かぶ。2050年までに人口が倍増して25億人になるアフリカ大陸。欧米は「最後の市場」としての潜在性よりも、リスクへの意識を強めているように見える。西アフリカのある高成長国の閣僚も「雇用創出できなければ、人口は文字通りに爆発し、世界の問題になる」と話す。特に地理的に近い欧州は大量の難民流入やテロのリスクに直面する。アフリカの安定成長を促して人口増に伴う雇用を確保し、インフラや衛生整備を進めなければ、食料不足や疫病の流行といった危機も招きかねない。今回のアフリカ開発会議(TICAD)で安倍晋三首相が平和構築への協力を打ち出し、教育や医療支援も強調したのは欧米の懸念に呼応した動きといえる。「スクランブル(先を競った奪い合い)」と形容される最後の市場を巡る各国の競争は思わぬ結果を生む可能性もある。改革を進め、外資を呼び込んで成長する国と、負のサイクルから抜け出せない国との格差が広がる兆しがある。人口予測通りにいけば、50年には世界の4人に1人はアフリカ人となる。世界銀行総裁候補だったナイジェリアのオコンジョイウェアラ元財務相は訴える。「アフリカを育むことは世界の未来に直結する」

*4-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190831&ng=DGKKZO49216720Q9A830C1EA3000 (日経新聞 2019年8月31日) アフリカ投資拡大へ「人づくり」前面 TICAD閉幕 、膨らむ債務 対処後押し 支援先行の中国を意識
 第7回アフリカ開発会議(TICAD)は30日、アフリカの経済成長の進展をめざす「横浜宣言」を採択して閉幕した。日本は会議を通じて民間主導の投資を訴え、政府としては投資拡大の環境を整える人材育成を前面に掲げた。中国の融資で過剰債務を抱える国などの実態を踏まえ、投資や支援で先行する中国に傾斜しすぎないよう促す狙いもある。安倍晋三首相は30日のTICAD閉幕後の記者会見で「日本とアフリカの懸け橋となる人材の育成に力を入れていく」と強調した。治安から公的債務、保健、産業まで投資拡大の前提となる能力向上をはかる。具体策のひとつが今後3年間でのべ30カ国に公的債務のリスク管理研修を実施することだ。ガーナやザンビアへの債務管理やマクロ経済政策を助言する専門家の派遣を決めた。ケニアの鉄道など中国の融資で重い債務を抱えた例が指摘される。財政が悪化すれば円借款などを用いたインフラ支援などが難しくなる。横浜宣言には6月の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)でまとめた首脳宣言や「質の高いインフラ投資原則」の歓迎を盛り込んだ。過剰な債務を負わせないよう透明性と持続可能性を重視する内容だ。首相は記者会見で「支援は対象国の債務負担が過剰にならないようにしなければならない」と述べた。宣言で「自由で開かれたインド太平洋構想」の評価に初めて触れたのは、中国の「一帯一路」構想を意識した。アフリカ側にも「投資や援助を受ける国を多様化したい」(ジブチのユスフ外相)との声がある。30日の「平和と安定」に関する会合では、河野太郎外相がアフリカ諸国の国連平和維持活動(PKO)の能力向上支援に触れた。ケニアなどのPKO訓練センターで日本の自衛官らによるPKO部隊の研修を充実させる。アフリカでは治安が悪化している地域が多く、地域格差拡大の要因にもなる。アフリカ市場が発展し民間投資が増えるためには情勢の安定が重要だ。

*4-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190831&ng=DGKKZO49221200Q9A830C1FF8000 (日経新聞 2019年8月31日) アフリカ開銀総裁「一帯一路は成長寄与」 債務のワナ否定
 アフリカ開発銀行(AfDB)のアデシナ総裁は30日、日本経済新聞のインタビューに対し、中国の経済圏構想「一帯一路」について「アフリカの経済成長に寄与する」と評価した。中国が過剰債務の代償としてインフラ権益を奪う「債務のワナ」について「中国がそうした意図を持っているとは思わない」と述べ、中国のインフラ投資を歓迎する姿勢を見せた。アデシナ氏はアフリカの持続的な経済成長にはインフラ整備が欠かせないと述べた。不足している資金を最大で1080億ドル(約11兆円)と予測し、海外から投資を呼び込むことが重要との考えを示した。「一帯一路」については「アフリカの発展に寄与する」と評価した。また、アフリカの一部の国で対外債務が増えていると指摘し、各国が「債務についての透明性を確保し、処理の道筋を示すことが非常に重要だ」と述べた。一方で「アフリカで債務危機に陥っている国はない」と述べ、現時点でのアフリカ諸国の債務水準は問題視しない考えを示した。足元のアフリカ経済については良好との認識を示した。「2019年の平均成長率は4.1%を確保できる」と述べた。今後のリスクに米中貿易戦争と英国の欧州連合(EU)離脱、インドとパキスタンの緊張の3つを挙げた。アデシナ氏は8月28~30日に横浜市で開いたTICADに出席するため来日した。

*4-6:https://www.agrinews.co.jp/p48606.html (日本農業新聞論説 2019年9月1日) 日・アフリカ会議 農業支援で関係強化を
 日本政府が主導する第7回アフリカ開発会議(TICAD7)は、民間企業の投資強化など「横浜宣言」を採択して閉幕した。人口が倍増するアフリカは、今後の有望な経済成長地域だ。一方で食料輸入国が多い。日本の先進技術を含め、農業振興で成長を後押ししたい。「後進地域がゆえの先進性」──潜在的な成長力を秘めるアフリカ大陸の可能性はこう表現できる。「横浜宣言」で、民間投資の大幅拡充やデジタル革命へ対応を明記した理由だ。農業面でも同じ。JAグループが6月開設した戦略拠点「イノベーションラボ」。ベンチャー企業と連携し、幅広い分野でITを活用した新規事業の創出を目指す。その一つ、日本植物燃料(神奈川)は、アフリカのモザンビークで新たな挑戦を進める。現地農家にバイオ燃料作物栽培を推進。それを契機に農家に電子マネーを広げ、少額融資などを行う。鍵は普及している携帯電話の活用だ。合田真代表は、情報通信技術(ICT)を駆使し、農林中金やJA全農など総合事業を行うJAグループと連携すれば、「さらに現地の農村を発展できる」と強調する。吉川貴盛農相はTICAD期間中、「農業」部門に参加し、アフリカの食料安全保障確立に関連し、専門家派遣の拡充や、先端技術を駆使したスマート農業の振興などを強調した。TICADでは、二つの視点が欠かせない。地球規模の食料安保と中国の存在感だ。アフリカ諸国はかつて農産物の輸出大国でもあった。だが度重なる紛争や気象災害で国土は荒廃した。豊富な鉱物資源は多国籍企業の収奪に遭う。土地収奪も重なり、アフリカ農業は衰退の一途をたどる。基礎的食料さえも不足し食料輸入大国に転落した。人口増と食料輸入の同時進行は、世界の食料安全保障上も大問題となりかねない。アフリカ大陸の経済成長の潜在力は大きい。今年5月には域内の関税撤廃などを目指す自由貿易協定も発効し、巨大な統一市場への期待も膨らむ。中国やインドに匹敵する13億人の人口で、2050年には25億人と倍増し世界の4分の1を占める見通しだ。巨大な胃袋をどうやって満たすのか。いま一つの視点は中国の動き。2000年からアフリカ協力フォーラムを7回開催。昨年は、3年間で600億ドルを拠出する巨額支援を表明した。米中貿易紛争の激化は、安全保障問題も絡む。こうした中で、今回のTICADでは中国に対抗し日本の存在感を強める戦略的な意味合いも一段と強めた。一方、食料自給率の向上は喫緊の課題だ。農業分野支援は、日本の高い技術力を生かせる。既に干ばつに強い多収性の「ネリカ米」振興は高い評価を受けている。JAグループなど農業団体はアジアの途上国を中心に人材育成に力を入れてきた。今後はアフリカを含め日本の“農協力”発揮の時でもある。

*4-7:https://www.agrinews.co.jp/p48629.html (日本農業新聞 2019年9月3日) 全農 電力販売を本格化 割安提供 家計、営農後押し
 JA全農は、JA組合員の家庭や営農施設向けの電力の販売に本格的に乗り出す。各地域の電力会社より安価に供給し、家計の負担や営農コストの削減を後押しする。地方では電力小売りへの参入業者が少ないが、「JAでんき」の愛称で北海道と沖縄県、一部の離島を除く全国で展開。2021年度までに累計35万戸の契約を目指す。子会社の全農エネルギーが各地域の電力会社などから電力を調達し、正・准組合員やJAグループ役職員の家庭、営農施設に届ける。電力会社の送電網を使うため、電力の安定性は従来と変わらない。JAを通じて申し込むが、地域のJAが同社や全農と代理事業契約を結ぶ必要がある。家庭用電力の料金は、各地域の電力会社より割安に設定する。自前の発電所などを持たないため料金を抑えられる。全農によると、標準的な4人家族の使用量で、電気料金は5%前後安くなる。使用量が多いほど割安な料金体系で、世帯人数が多い農家は、さらに電気料金の引き下げメリットが受けられるという。ハウスや畜舎などの営農施設向けには、使用実態の調査や料金の試算を個別に行った上で、値下げが見込める場合に切り替えを提案する。営農施設には、地域の電力会社も規模や使用量に応じて割安な料金を設定している場合があるためだ。16年の電力小売り全面自由化で、家庭や小規模事業者も電力会社を選べるようになった。だが、JAの組合員が多い地方では、大都市圏に比べ参入業者が少なく、切り替えが進んでいない。全農はその受け皿となり、組合員の電力コスト削減を目指す。16年に電力事業に参入後、電力の使用規模が大きい精米や食肉などの加工工場、物流センターといったJAグループの施設向けに先行して取り組み、全国的に供給できる態勢を整えてきた。全農は現在、電力事業に取り組んでもらうJAへの説明や提案を進めている。19年度は50JA程度でモデル的に供給を開始。20年度以降、対象となる全てのJAに広げたい考えだ。19年度からの3カ年計画では、契約件数の目標を21年度までの累計で35万戸と掲げた。全農は「安価な電力の供給で家計負担の抑制や営農コストの削減に貢献したい」(総合エネルギー部)とする。従来のLPガスや灯油と組み合わせたエネルギー利用の提案や、営農用エネルギーの総合診断なども展開していく方針だ。

<“普通”信奉(≒同質主義)は、病根の一つである>
PS(2019年9月2日追加):持って生まれたDNAと周囲の環境の違いのために発現する多様な個性を、*5のように、“普通”でないから脳機能障害による発達障害だとし、“グレーゾーン”まで含めて医療機関の受診を奨める報道は少なくないが、これは間違った知識を一般の人に与えるのでよくない。何故なら、医師が「経過をみましょう」と言っても、母親が「ママ友」の繋がりで発達障害と診断してくれるクリニックを捜して「むしろ安心した」と言うような状況になるからだ。人の性格や生育スピードにはばらつきがあるので、周囲の大人が「普通でない」と感じたからといって脳機能障害と考えるのは間違いであり、その子に対する人権侵害でもある。
 学校や社会に適応できない理由には、くだらないことで仲間外れにしたり、いじめたりする影響があるからで、発達障害というよりは“文化”の方を変えなければならない側面が大きい。そして、社会に出てまで支援を受ける人の割合が多いのは困るため、それぞれの個性を活かした教育や能力開発が必要だ。さらに、普通に働いている大人まで「見過ごされた人」として、その症状を「①空気が読めない」「②ミスを繰り返す」などとしているが、①は、空気を読んで周囲に合わせることしかできない深刻な無思考(他人依存)症候群であり、②は、慣れないことは誰にとっても難しいため仕事ができるためには熟練しなければならないということだ。



(図の説明:最近、左及び中央の図のように、程度の差こそあれ誰にでもある多様性の範囲に入るものまで発達障害として精神障害に入れ、右図のように、相談してケアされることを奨めているが、これはむしろ教育や躾の妨げとなって子どもの機会を奪う)



(図の説明:左図のように、人は成績・身体能力・所得・貯蓄高等と同様、性格にも多様性があり、普通と言うのは中央から2σ《95.4%が入る》か3σ《99.7%が入る》内の人だ。そして、3σより向こうの両端にも0.3%《1000人に3人》の人がおり、右端《0.15%、1000人に1.5人》には優秀な人がおり、左端《0.15%、1000人に1.5人》には駄目な人がいて、普通が最もよいわけではない。また、中央の図のように、ばらつきが左右対称に分布している場合は平均値・中央値・最頻値は一致するが、歪んだ分布をしている場合には平均値・中央値・最頻値は異なる。そして、日本は何でも精神障害ということにする結果、世界でも突出して精神病床の多い人権侵害国になっている。ただ、既製服や既成靴を買う場合は「普通」の範疇に入る人の方が品物が豊富でよいのだが、この「普通」も国によって大きく異なることは誰もが知っているとおりだ)

*5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14160488.html (朝日新聞 2019年9月2日) (記者解説)発達障害、寄り添うため 特性は多様、早めに専門機関へ 生活文化部・土井恵里奈
 ・脳の機能障害が原因とされ、手術や投薬では解決しない。障害特性は一人ひとり違う
 ・専門家や専門機関と早めにつながり、社会生活上の困難を小さくすることが大切
 ・障害を見過ごされた大人、診断されない「グレーゾーン」の人たちの支援も課題
■診察のため予約殺到
 東京都江戸川区の児童精神科クリニック「まめの木クリニック」には、発達障害かどうか診察を求める電話が後を絶たない。「健康診断や学校で(発達の凸凹を)指摘されて来る人、自分で調べて来る人が多い」。上林靖子院長はそう話す。初診予約は年内すでにいっぱい。2年待ちの時もあった。東京都内の女性の長男(中2)は発語が遅く、あちこちにふらふら行くなど落ち着きがなかった。1歳半の健診では「経過をみましょう」と言われ、病院を受診しても「発達障害の疑いはありますが……」とあいまいだった。「ママ友」のつながりで同クリニックを知った。約10カ月待ち、長男が2歳のころ受診。発達障害と診断された。女性はこう振り返る。「むしろ安心した。それまでは情報が得られなくて先が見えなかったから」。今も定期的に長男と通院し、医師や臨床心理士らに相談する。女性は「最初は長男がなぜこんな行動をするのか共感してあげられなかった。子どもへの接し方を学び、子どもが穏やかに生活できるようになった」と話す。発達障害の特性による育てにくさに直面し、周囲に言えなかったり理解されなかったりして悩んでいる人は多い。発達障害かどうかは、成育歴を聞き取る問診や知能検査などを経て医師らが診断する。厚生労働省によると、特性を適切に把握できる児童精神科医は少ない。発達障害の原因は脳の機能障害とされる。手術や投薬で治ることはなく、当事者は特性と生涯向き合う必要がある。だから、医師や臨床心理士といった専門家と早くからつながることが大切だ。上林院長は「発達障害の特性ゆえのやりにくさをうまく乗り越えていけるようにして、社会に送り出してあげることが大切」と指摘する。発達障害は一様ではない。読み書きや計算など特定の課題の学習につまずく「学習障害」(LD)、こだわりが強く、他人の気持ちを想像したり共感したりするのが苦手な「自閉スペクトラム症」(ASD)、衝動性が強かったり、忘れ物や遅刻などの不注意が多かったり落ち着きがなかったりする「注意欠陥・多動性障害」(ADHD)がある。複数の特性が重複していることもよくある。特性から光や音、接触に過敏だったり、暑さや寒さ、痛みに鈍感だったりする人もいる。
■高校でも支援の動き
 政府も後押ししている。2005年に発達障害者支援法が施行され、早期の発達支援が重要と条文にうたわれた。学校や社会に適応できずに不登校やうつ、引きこもりといった「二次障害」を防ぐためで、「障害の早期発見のため必要な措置を講じること」が国と地方公共団体の責務となった。だからこそ発達障害の疑いのある子どもがいれば、いち早く地元の市役所や町村役場を頼りたい。行政機関は求めに応じて医療機関を紹介してくれる。ただ地域格差があり、都道府県と政令指定市に設置されている「発達障害者支援センター」も支援の窓口だ。発達段階に応じた児童発達支援(未就学児対象)や放課後等デイサービス(小学生から原則高校生まで)も制度化されている。専門性を持った職員から社会的スキルなどを学ぶが、こうした情報も行政とつながることで得られやすくなる。幼稚園や保育所、小中学校には教員や支援員が増やされることがある。高校でも、通常学級に在籍しながら発達の程度に応じた特別な指導(通級指導)を受けることができる。一方、義務教育が終わると支援が行き届かない場面が増える。孤立しないよう、積極的に向き合う高校もある。和歌山県立和歌山東高校では、発達に課題がある生徒の保護者とは入学前の早い時期に面談している。読み書きを苦手にしている生徒に対しては、在籍する通常学級で黒板を書き写しやすくするため、重要なことを黄色の線で囲むなど工夫している。こうした配慮は他の生徒にも好評で、退学者が減るなど全体に好影響をもたらしている。石田晋司校長(58)は「社会に出ると多様な人と関わっていく。得手不得手を助けたり助けられたりすることを学ぶことは、どの子にとってもプラス。人を理解する力をつけることにつながる」と話す。
■「見過ごされた」大人
 困難を抱えていたのに、子どもの時に「見過ごされた」人たちがいる。大人の発達障害だ。昭和大付属烏山病院(東京都世田谷区)には大人の発達障害専門の外来があり、来院者が絶えない。臨床心理士らに付き添われ、怒りや不安の感情との向き合い方や時間を管理するスキルなどを学ぶ。仕事や生活での具体的な困り事を当事者同士が話し合うプログラムもある。「家に食材をため込む」「体調が悪い時は特に片付けが苦手」。当事者たちは日頃の悩みを互いに打ち明ける中で自己理解を深め、解決のアイデアを共有する。障害の傾向はあっても発達障害と診断されない、「グレーゾーン」に置かれる人たちもいる。困難や生きづらさはあるのに、支援の手が届きにくい。神奈川県の男性会社員(31)は子どもの時から忘れ物や遅刻、不注意が多かった。周囲から孤立し、22歳でうつに。発達障害を疑って受診したが、医師からは「ADHDの傾向はあるが断定できない」と言われた。就職活動時はリーマン・ショック。特性を職場に伝えるのはマイナスと考え、言えなかった。職場では複数の業務を同時にこなすのに苦労。転職を繰り返した。2年前、グレーゾーン当事者の支援団体「OMgray事務局」をつくった。定期的に東京に集まり、就労や生活の困り事の解決策などを情報交換する。男性は「社会に普通にいる存在として受け止めてほしい」と話す。女性の当事者会「Decojo」には、診断を受けた人もグレーゾーンの人も参加し、困り事をブログに書き込んでいる。代表の沢口千寛さん(27)は「当事者だけでなく、私たちの行動を理解できず振り回されている人や社会にも見てほしい。理解し合い、歩み寄れるようになれば」と話す。
■「普通」に見える、でも困っている 学校で職場で手をさしのべて
 23万人。発達障害の診断などを受けるために医療機関を受診した人の推計(17年度)だ。受診者といっても、学校に通ったり働いたり子育てしたりと「普通」に見える。でも壮絶に困っている。生きづらさを抱えたまま社会に紛れている。「空気が読めない」「ミスを繰り返す」。当事者の困りごとは切実だが、外からは見えにくい。「怠けている」「だらしない」と責められやすい。「グレーゾーン」だと、相談先も十分でない。病気のように重いほどつらいとは限らないことも、この障害の特徴だ。子どもは自分で苦しさを伝えづらく、いじめにつながりやすい。無理を重ね不登校になった子もいる。大人になると、周囲が助けてくれる場面は少なくなる。特性を抱えながらも、発達障害という言葉さえ知られていない時代に子どもだった人は今、30代、40代を過ぎている。就職氷河期のロストジェネレーション世代とも重なり、非正規雇用など不安定な生活を強いられている人は多い。ひきこもりに陥るなど社会からの孤立が心配だ。当事者の言葉は重い。「人生で普通の人の100倍怒られてきた」「パターンをたたき込んで普通になろうともがく。努力して努力して、でもなれなくて。自分はダメと思い、殻に閉じこもっていく」「社会に出たら迷惑をかける。出ないことが社会貢献」。当事者を縛る「普通」とは何だろう。常識? 標準? ものさしは一つ? いろんな国や言語があるように、一人ひとりの普通は違う。学校にも職場にも地域にも、「苦手ならちょっと代わりに」とさしのべる手がたくさんあるといい。発達障害の痛みを和らげるには、医療より社会にできることが大きい。特効薬がない障害の鎖をほどいてゆく力になるのは、医師や専門家だけじゃない。どこにでも普通にいる私たちだ。

<日本は、本当に法治国家か?>
PS(2019年9月3日追加): 総務省が、ふるさと納税の新制度から大阪府泉佐野市を除外した件を審査した「国地方係争処理委員会」が、*6-1・*6-2のように、除外決定の再検討を石田総務相に勧告することを決めて総務省は敗訴したが、これは新制度への参加が認められなかった静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町も同じであるため、提訴すれば速やかに結論が出るだろう。何故なら、日本国憲法に「第84条:あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」と定められており(租税法律主義)、新たに定められた法律が施行前に遡って効力を持つこと(遡及効)はないからだ。さらに、総務省の通知は、国税庁の通達と同様に一つの考え方であって法律ではないため、総務省が「メチャクチャだ」と感じたとしても通知の順守を強要すれば憲法違反になる。そのため、大阪府知事が、*6-3のように、「総務省のおごり」「国は真摯に受け止めて見直すべき」としているのは妥当であり、メディアや行政は、もっと法律を勉強しておく必要がある(笑)。
 なお、佐賀県は、(私の提案で)日本の中でも病院のネットワーク化が進んでいるので、*6-4の東多久町に建設する新病院は、①どのような先進医療を ②どういう新しい施設で市民に提供するか についてのコンセプトを決め、新病院の建設を使い道として県人会や同窓会などで「ふるさと納税」を集めればよいと思う。

   
 2019.9.3東京新聞 2019.8.27朝日新聞

(図の説明:左図には、泉佐野市の勝因は地方税法違反と書かれているが、そもそも租税法律主義を定めた憲法違反である。また、中央の図には、泉佐野市は肉・カニ・米の三種の神器がないと書かれているが、私は農産物でなくても地域を振興する何かであればよいと思う。確かに、右図のように、大阪府泉佐野市・静岡県小山町・和歌山県高野町・佐賀県みやき町は頑張ったわけだが、これは上記の法的根拠で除外される理由にはならないわけだ)

*6-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201909/CK2019090302000146.html (東京新聞 2019年9月3日) ふるさと納税 泉佐野市除外、違法か 係争委、再検討勧告へ
 ふるさと納税の新制度から、大阪府泉佐野市が除外された問題を審査した第三者機関「国地方係争処理委員会」は二日、除外決定の再検討を石田真敏総務相に勧告することを決めた。過去に不適切な寄付集めをしたとして除外した総務省の対応は、新制度を定めた改正地方税法に違反する恐れがあると指摘した。同省が事実上の「敗訴」となる極めて異例の判断を下した。総務省には、勧告の文書を受け取ってから三十日以内に、再検討の結果を泉佐野市へ通知するよう求める。同省は再検討を義務付けられるが、別の理由で改めて除外するのは可能。審査を申し出た市は「主張がおおむね理解された」とコメントした。同様に新制度への参加が認められなかった静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町の三町は勧告の対象外。委員長の富越和厚元東京高裁長官は記者会見で、泉佐野市による寄付集めを「制度の存続が危ぶまれる状況を招き、是正が求められるものだった」と述べ、問題があったとの認識を示した。ただ、それを除外の根拠にすることは認められないと指摘。理由として「改正地方税法に基づく新制度の目的は過去の行為を罰することではない」と説明した。六月開始の新制度は、改正法に基づく総務相の告示で「昨年十一月以降、制度の趣旨に反する方法で、著しく多額の寄付を集めていない」ことが参加基準の一つになった。市はインターネット通販「アマゾン」のギフト券などを贈り、昨年十一月~今年三月に三百三十二億円を獲得。総務省は基準を満たしていないとして五月に除外を決めた。

*6-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM9263JXM92ULFA03B.html?iref=pc_rellink (朝日新聞 2019年9月2日) 総務省、泉佐野市に完敗 「メチャクチャだったのに…」
 ふるさと納税制度からの除外をめぐる総務省と大阪府泉佐野市の対立で、同省の第三者機関・国地方係争処理委員会が2日、石田真敏総務相に除外の内容を見直すよう求めた。係争委は、法的拘束力のない通知への違反を除外理由にしたことを「法に違反する恐れがある」と認定しており、事実上、総務省の「完敗」となった。係争委の富越和厚委員長は委員会後の会見で、6月の地方税法の改正前の泉佐野市の行為は「世間にやり過ぎと見られるかもしれないが、強制力がない通知に従わなくても違法ではない」と説明した。係争委は今回、改正法の施行後に守るべきものとして総務省がつくった基準を、法改正前の行為にあてはめて除外を判断したとして、違法の疑いがあると認定。同省に直接、除外の判断の撤回までは求めなかったが、総務省が除外の根幹として掲げていた理由は「少なくとも本件で使うべきではない」と退けた。富越委員長は、総務省が泉佐野市を除外する判断を続ける場合は、新たな法的根拠を提示する必要があるとの見解を示した。係争委の勧告に、総務省内では戸惑いの声が上がった。同省幹部の一人は朝日新聞の取材に「泉佐野市の集め方はメチャクチャだったのに。係争委の厳しい判断は受け入れがたい」と話す。一方、政権幹部の一人は「今後訴訟になった時に対応できるよう整理するということ。根本的な問題ではないのでは」との見方を示した。

*6-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM933HCLM93PTIL005.html?iref=comtop_list_nat_n05 (朝日新聞 2019年9月3日) 大阪府知事「総務省のおごり」 ふるさと納税の勧告受け
 ふるさと納税制度から大阪府泉佐野市を除外した総務省の判断に対し、同省の第三者機関・国地方係争処理委員会が「法に違反する恐れがある」と見直しを求めたことについて、大阪府の吉村洋文知事は3日、記者団に「妥当な判断。国は真摯(しんし)に受け止めて見直すべきだ」と述べた。吉村知事は、国が元々通知として出し、6月施行の改正地方税法に盛り込んだ「返礼品は寄付額の3割以下の地場産品に限る」とのルールを、法改正前の泉佐野市の行為にあてはめて除外したと指摘。「法律を遡及(そきゅう)適用しないのは大原則。新しい制度から外すのは総務省のおごりだ」と批判した。
菅義偉官房長官は記者会見で「総務省において対応について検討が行われる。各自治体で使途や返礼品について知恵を絞り、健全な競争が行われ、地域の活性化につなげていくことが大事だ」と述べた。

*6-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/421806 (佐賀新聞 2019年9月3日) 新病院は東多久町に 建設地を選定多久、小城検討委
 多久市立病院(多久市多久町)と小城市民病院(小城市小城町)の統合計画で、多久、小城の両市は2日、新しい統合病院の建設予定地が多久市東多久町に選定されたと発表した。選定の理由は「両市民の利便性や経営の安定性に加え、医療機関が特定の地域に偏らないことなどを総合的に判断した」としている。今後は地権者との協議を進め、新病院の建設費に関する負担割合や診療科目などを両市で議論する。両市長や医師会、両病院の代表者らで構成する建設地の検討委員会が8月30日、佐賀市で3回目の会議を非公開で開き、候補地5カ所の中から適地を選んだ。両市の事務局によると、多久、小城市はそれぞれ、自らの市域への建設を会議で要望した。民間の病院が少ない多久市は「公立病院がなくなれば医療過疎地になる」とし、財政支援などで経営の安定に努力すると訴えた。建設予定地は東多久町別府の約2・6ヘクタールの範囲。現在は水田などが広がり、北東に佐賀LIXIL(リクシル)製作所の佐賀工場がある。両市長が2日、両市議会に選定の概要を説明した。今後は両市で新病院の準備室を立ち上げ、具体的な協議に入る。2020年に診療科目や病床数を定めた基本計画の策定を目指す。検討委の委員長を務める池田秀夫佐賀県医師会長は「両病院ともに老朽化が進んでおり、必要な医療を継続して両市民に提供するためにも、早期の病院建設を望む」とのコメントを出した。

PS(2019年9月5日追加):*7-1のように、「情報社会でデータを使ってなら人権侵害をしてもよい」という感覚は早急に正すべきだが、そういうことをする人の心の底には、他を貶めたり差別したりすることによって自分の優位を保とうとする誤った意識がある。そのため、私は、「表現の自由」「日本文化」の名の下にあらゆる角度から女性差別された嫌な経験から、「他人を差別した人が有利になることはない」ということを徹底しなければならないと考えている。
 そして、*7-1には、被差別部落の事例が掲載されているが、*7-2の外国人のケースも、「包丁購入=殺人犯」とするのは飛躍しすぎているため重傷を負った裕子さんが話せるようになってから犯人について聞くことが不可欠なのに、警察もまた孤立無援に近い外国人を差別を利用して犯人に仕立て上げることが多いわけだ。例えば、*7-3のゴビンダさんの冤罪事件は有名だが、その他にも人権侵害にあたる事件は多い。

*7-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/422734 (佐賀新聞 2019年9月5日) 情報社会と権利侵害、感覚が鈍っていないか
 個人情報やプライバシーをめぐってインターネットの負の側面を象徴するような出来事が続く。就職情報サイト「リクナビ」の運営会社は学生の閲覧履歴を基に内定辞退率を予測し、個人を特定する形で企業に販売していた。常磐自動車道でのあおり運転事件で無関係の女性が「同乗者」と名指しされ、実名と写真がさらされた。就職活動に関わる情報は学生の人生を左右しうる。それが本人も知らない間に採用側に提供される。事件のたび虚実ない交ぜの情報がネット上で飛び交い、平穏な日常を送っていたら突然、デマ情報で「犯罪者」扱いされる。企業しかり、個人しかり。個人データや情報、名誉権に対する意識の希薄さを浮き彫りにする。身近なところで気になっていることがある。今年3月、被差別部落(同和地区)の地名や戸数、人口などを掲載した『全国部落調査』の復刻版が、ネットのフリーマーケット「メルカリ」に佐賀県内から出品されていた件だ。『全国部落調査』は1936年、政府の外郭団体が融和事業を進めるため作成した報告書で、70年代、企業や調査会社が就職や結婚の際の身元調査のために購入し、社会問題となった『部落地名総鑑』の原本とされる。それが2016年、神奈川県の出版社が復刻版発行をネットで予告し、出版は差し止め処分が出たが、ネット上でダウンロードできた。出品物はデータを個人で印刷したとみられ、約200ページ、売価3500円で、行政関係者が気づいた時は既に3冊が売れていた。出自をめぐる差別は普段は見えないが、就職や結婚など人生の節目に出現する。そして人を排除し、引き裂く。購入者は一体何のために買ったのか。出品者はコトの重大性を認識しているのか。そんな資料が公然と出回っている現実は、長きにわたる部落差別撤廃の取り組みの内実を問う。同様に、差別をあおる行為は特定の国の人々やマイノリティーに対して顕著だ。国際社会での日本の経済力が低下し、格差が拡大する中、雇用や社会保障への不安と不満が募っていることが関係するのか。いら立ちが社会的弱者に向かい、それがネットという匿名性の空間に噴出している。インターネットの普及でさまざまな情報が瞬時に手に入るようになり、個人が自由に情報発信できる時代になった。ただ、利便性ゆえ、社会規範を逸脱した行為や権利侵害を誘発しやすい。一度ネット上で広がれば長期間残り、不特定多数の目に触れるという点で、影響は大きく、深刻だ。デマ情報問題では女性が投稿者の法的責任を追及する方針だが、情報の洪水の中で、こうした権利侵害行為への感覚が鈍っていないか。自戒したい。

*7-2:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190903-00000061-asahi-soci (朝日新聞 2019/9/3) 逮捕のベトナム人実習生、容疑を否認 包丁購入は認める
 茨城県八千代町の住宅で8月24日、大里功さん(76)が殺害され、妻の裕子さん(73)が刺されて重傷を負った事件で、裕子さんに対する殺人未遂容疑で逮捕されたベトナム国籍の農業実習生グエン・ディン・ハイ容疑者(21)が「現場に行っておらず、刺してもいない」と容疑を否認していることが3日、捜査関係者への取材でわかった。茨城県警は同日、ハイ容疑者を水戸地検に送検した。捜査関係者によると、ハイ容疑者は容疑を否認する一方で、事件前日の午後5時ごろ、近くのホームセンターで包丁を購入したことは認めている。購入したのは、現場に落ちていた凶器とみられる包丁と同じ型のものだったという。県警は、同店の防犯カメラの映像などからハイ容疑者を特定したという。県警によると、ハイ容疑者は農業実習生として昨年11月から1年間の期限で在留しており、大里さん宅から約2キロの宿舎に他の実習生らと住んでいた。大里さん宅近くの畑で野菜を栽培するなどしていたという。ただ大里さんは元会社員で、実習生の受け入れなどは確認されていないという。県警は、事前に凶器を準備した計画的犯行とみるとともに、室内が物色された形跡がないことなどから、夫婦との間に何らかのトラブルがあった可能性があるとみて調べている。

*7-3:http://www.jca.apc.org/~grillo/ (ウイズダムアイズ 2019.9.5) 外国人冤罪事件から日本が見える
 ウイズダムアイズは真実を見通す眼です。私たちが裁判官に期待したい眼です。
●ゴビンダさん冤罪事件
 1997年3月、東京都渋谷区で一人の日本人女性が殺される事件が発生しました。
間もなく、近くに住んでいたネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリさんが逮捕されました。一審無罪、それにも関わらず勾留が続き、新しい証拠調べもないままに2000年12月高裁での逆転有罪・・・と異様な経過をたどる事となりました。
●ロザールさん冤罪事件
 1997年11月、フィリピン人女性マナリリ・ビリヤヌエバ・ロザールさんは、恋人と同居していたアパートのベッドで恋人が刺されているのを発見しました。ロザールさんはすぐにY病院に駆け込み、助けを呼びました。救急隊員は、硬直の状況等を多少確認しただけで警察に通報しました。その直後、ロザールさんは松戸署に連行され、その後逮捕状もないまま拘束され、二度と釈放されませんでした。 
●トクナガさん冤罪事件
 2000年6月27日長野県警豊科署は、3歳の長女に暴行を加え死亡させたとして傷害致死の疑いで、同県穂高町穂高に住む日系ブラジル人の工員トクナガ・ロベルト・ヒデオ・デ・フレイタス容疑者(23)を逮捕しました。トクナガさんの逮捕容疑は同年6月25日ごろ、長女のマユミちゃんが自分になつかないことに腹を立て、全身を殴るけるなどの暴行を加え死に至らしめたというもの。
公判では一貫して「暴行したのは当時の妻」と無罪を主張。一審長野地裁では無罪判決を受けました。しかしその後も「無罪勾留」が続き、東京高裁は2002年6月8日、1審無罪判決を破棄し、懲役5年を言い渡した。弁護人は閉廷後、「控訴審は、当時を知る元妻らを証人として出廷させず、事件について真摯(しんし)な検討を加えたとは言い難い」としています。
●姫路冤罪事件(ジャスティスさん冤罪事件)
 兵庫県姫路市2001年6月19日、市内の花田郵便局に、目出し帽をかぶった2人組の強盗が入り、約2200万円が奪取されました。その犯人とされたのが、ナイジェリア人のジャスティスさん。この事件については担当の池田弁護士のサイトがくわしいです。
●ニック・ベイカーさん冤罪事件
 2002年にサッカーワールドカップを見に日本にやってきたイギリス人のベイカーさんが成田空港で麻薬の不法所持で逮捕された事件。ベイカーさんはプルーニエという男にだまされて鞄を持たされたと主張しましたが、日本の警察はこのプルーニエを調べもしないで出国させました。ところがその後、このプルーニエがベルギーで、他人をだまして麻薬を運ばせようとした容疑で逮捕されました。このことを証拠として申請した弁護側の要求を蹴って、東京地裁は2003年6月にベイカー氏に懲役14年の判決をくだしました。2005年10月、控訴審でも有罪となり、上告はせずに服役した。
●モラガさん無罪勾留事件
 チリ国籍のモラガさんは2001年8月、知人と共謀し東京都内と諏訪市で窃盗を働いた容疑で逮捕された。2003年5月29日、諏訪簡裁で無罪判決。検察控訴の後、8月29日、東京高裁の決定により再勾留されました。2004年年8月17日逆転有罪。最高裁第二小法廷(滝井繁男裁判長)は2004年12月14日付けで上告を棄却する決定をし、懲役二年が確定した。11月上旬に上告趣意書を提出し、わずか一カ月余りで最高裁は十分な審理をしたとは思えない。一審の無罪判決が軽んじられている決定である。

<高齢者差別による活動制限は人権侵害である>
PS(2019/9/7追加):すべてのメディアで長時間に渡って繰り返し繰り返し高齢ドライバーによる交通事故が報道された後、*8-1のように、九州の240自治体にアンケートで尋ねた結果、18自治体が「①免許更新を厳格化すべき」とし、「②65歳以上のサポカー購入に1人1台に3万円補助している」「③後付け装置の購入を支援している」とする自治体もあり、「④交付税措置を検討してほしい」とする自治体もあったそうだ。政府は「⑤75歳以上を対象にサポカーだけを運転できる限定免許を導入する方針」としているが、①は、“高齢者”だけを一律に厳格化すれば、老化に程度の差がある高齢者に対して差別になり、②も65歳以上の全員を運動機能の衰えた高齢者とすることには無理がある。そのため、私は高齢か否か、故意か過失かを問わず、自動車運転が事故に繋がらないように運転支援車の普及を義務化しつつ、既に所有されている自動車にも国の補助をつけて車検時に運転支援プログラムを導入するのがよいと考える。
 なお、*8-2のように、「車の運転をやめて移動手段を失った高齢者は、要介護状態になるリスクが2.2倍になる」という研究結果が日本疫学会誌に発表されたが、これは当たり前のことで、要介護状態になれば支える側から支えられる側になるのである。当たり前である理由は、筋力と同様に頭脳も使わなければ衰えるため、頭脳がつかさどる言語能力・思考力・健康維持力なども落ちるからで、事故のリスクだけが人体への悪影響ではないことを考慮すべきだ。

*8-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/539398/ (西日本新聞 2019/8/31) 高齢事故防止 広がる助成 九州5市町導入、26自治体検討
 高齢ドライバーによる交通事故が相次ぐ中、事故防止につながる「安全運転サポート車」(サポカー)や後付け安全装置への関心が高まっている。西日本新聞は九州7県の全自治体にアンケートを行い、5市町がサポカーや後付け装置購入に助成していることが分かった。26自治体は検討中とした。公共交通が乏しい地域を抱える自治体は、助成の必要性は感じているものの「財源がない」と国の財政支援を求めた。18自治体が「免許更新を厳格化するべきだ」と回答した。アンケートは九州の7県と市町村の計240自治体に送付、今月までに218自治体(回収率90・8%)が回答した。助成制度の有無や検討状況、国への要望などを聞いた。助成制度がある5市町のうち、福岡県苅田町は65歳以上がペダルの踏み間違い加速抑制装置などを備えたサポカー購入時、1人1台に限り3万円を補助する。同県うきは市、熊本県玉名市、大分県日出町は、後付け装置の購入を支援。玉名市は地元企業が開発した踏み間違い防止ペダルの取り付けに5万円まで出す。宮崎県新富町はサポカーと後付け装置の購入両方に3万~5万円を補助する。サポカーと後付け装置の両方の助成を検討するのは13自治体。ほかに13自治体が後付け装置の補助を検討している。制度のない自治体のうち、少なくとも50自治体が「交付税措置を検討してほしい」(熊本県八代市)などと回答した。政府は75歳以上を対象にサポカーだけ運転できる「限定免許」を導入する方針で、福岡県須恵町など8自治体が支持した。10自治体は高齢者を中心に免許更新の厳格化に言及した。同県柳川市は「急発進防止機能装置の義務化や更新時の技能指導が必要」、熊本県甲佐町は「実技試験の導入」を提案した。独自の取り組みをしている自治体もある。宮崎県都城市は4月から65歳以上を対象に自動車学校での実技訓練やサポカーの試乗を始めた。同県美郷町は10月、ドライバーが自ら運転する時間や場所の条件を申告する「補償運転」を始める。免許返納者らの「足」確保を手助けする自治体も多かった。長崎県西海市は4月から事前予約制の乗合ワゴンを運行。高齢者へタクシー券を配布する自治体も多い。

*8-2:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190905-00000137-kyodonews-soci (KYODO 2019/9/5) 高齢者運転中止、要介護リスク倍 外出減、健康に悪影響か
 車の運転をやめて自由に移動する手段を失った高齢者は、運転を続けている人と比べ、要介護状態になるリスクが2.2倍になるとの研究結果を、筑波大の市川政雄教授(社会医学)らのチームが5日までに日本疫学会誌に発表した。運転をやめたが公共交通機関や自転車を使って外出している人は、リスクが1.7倍だった。高齢者の事故が問題になり、免許返納を勧めるなど運転をやめるよう促す機運が高まっている。だが市川教授は「運転をやめると閉じこもりがちになり、健康に悪いのではないか。事故の危険だけを考えるのではなくバス路線を維持・充実させるなど活動的な生活を送る支援も必要だ」と話す。

| 年金・社会保障::2019.7~ | 11:03 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.6.13 高齢者の困窮と高齢者の就業を妨げる高齢者差別 (2019年6月14、15、17、19、20、21、22、23、24、25、26、28、29日に追加あり)
(1)高齢者の生活と年金

 
                               2019.6.3YAHOO
(図の説明:左図のように、65歳の夫と60歳の妻の“標準的”夫婦は、年金だけでは毎月5万5千円、30年で約2千万円が不足するので貯蓄や資産運用が必要だと金融庁が公表し、右図のような対策を推奨している。しかし、ここで前提とされている高齢者のイメージは、現在の50代、60代、70代の人から見ると、かなり昔のものであることに注意が必要だ)

 

(図の説明:左図のように、“平凡な”夫婦の場合、65歳から貯蓄を取り崩し始め、夫の死後は年金給付額が減るためか取り崩しのカーブが急になり、90歳程度で貯蓄が底をつくようだ。また、中央の図のように、高齢者が貯蓄を取り崩すに従って家計貯蓄率は低下し、さらに右図のように、60歳以上の人が購入する品の物価上昇率は他に比べて大きいそうである)

 「65歳の夫と60歳の妻の“標準的”夫婦の場合、年金収入だけでは毎月5万5千円、30年で約2千万円が不足し、貯蓄や資産運用が必要」と金融庁が公表した報告書について、参院決算委員会で、*1-1のように、野党が「年金『100年安心』は嘘だったのか」と追究したが、制度の持続が100年安心なのであり、国民生活が100年安心なのではないことは、年金制度の改定内容を見ればわかる筈である。

 実際、少ない年金だけでは暮らせず、高齢になっても働き続けたり、蓄えを取り崩したりしている人は多く、(少子高齢化のせいにしているが、本当は引当不足が原因)の年金水準のさらなる(調整と称する)引き下げが予定されている。そのため、誰もが納得する形で年金引当不足を解決するには、年金を賦課方式から発生主義による引当方式に戻し、引当不足分は国有資源から生じる収益で埋めていくしかないだろう(このブログのマニフェスト参照)。

 なお、金融庁の報告書は夫婦が揃っている間の収支しか述べていないが、実は妻が1人で残った家計の方がずっと苦しく、貯蓄が底をつくこともある(女性の皆さん、どうするか考えていますか?)。また、国民全体としては、貯蓄を取り崩す高齢者の割合が増えるにつれて家計の貯蓄率は下がり、それとともに投資が抑制される。

 その上、「高齢者は金づるだ」と言わんばかりに、高齢者が購入する製品の物価を高くしたり、高齢者のみに高額の介護保険料を課したりして、全世代に年金・医療・介護の将来不安を残したままでは、誰もが消費を抑えて将来に備える必要があるため、経済にも悪影響を及ぼす。

 また、「95歳まで生きるには夫婦で2千万円の蓄えが必要」と試算した*1-2の金融庁審議会報告書は、「物価の伸びより年金給付の伸びを抑える『マクロ経済スライド』を適用してさらに年金を減額していくため、(インフレ政策をとり続ければ)中長期的には年金給付額の実質的低下が見込まれる」と明記しており、地域によって物価水準は異なるものの、2千万円蓄えても不足する人が多いというのが正しいと思われる。

 一方、参院選前なので、寝た子を起こしてはならないと、*1-3のように、自民党は金融庁金融審議会報告書に抗議して撤回を要求し、公明党の山口代表も不快感を示している。

 最後に、*1-4の「将来への議論封じるな」とする記事もあり、確かに報告書が公的年金の先細りを指摘して自助努力を促し、高齢社会の資産形成に役立つ(?)とする投資のみに言及しているのは偏りがあるため、非正規労働者の増加・年金給付水準の低下・高齢者の貧困拡大などを前提に、参院選を控えた今だからこそ、最近の年金制度改定を復習して議論を深め、それぞれの候補者がどう考えて行動してきたのかを明確にして、有権者の判断に資すべきである。

(2)改訂しても高齢世代と40代以上のみに保険料を負担させる介護保険制度

  
                                 2019.6.15東京新聞
(図の説明:左図のように、介護保険料は増加の一途を辿っているが、地域や所得によってさらに高い。また、中央の図のように、所得によって利用料の負担率が異なるが、所得によって保険料も異なるため、これは二重負担になる。そして、右図のように、金融庁の報告書には、介護が加わるとさらに最大1千万円必要だと書かれているそうだ)

 2018年度の介護保険制度改訂で、①所得が高い人の利用料3割負担の導入 ②所得が高い人の高額介護サービス費の自己負担上限引き上げ ③要介護・要支援認定有効期限の延長 ④「介護療養病床」に代わり「介護医療院」を新設 ⑤福祉用具貸与価格の適正化 ⑥共生型サービスの開始 ⑦市町村に対する財政的なインセンティブの導入 が行われたそうだ(https://www.sagasix.jp/knowledge/hoken/kaigohoken-seido-kaisei/ 参照)。

 このうち①②は、「世代間・世代内の公平性を確保しつつ、制度の持続的な可能性を高める目的で、平成30年8月から所得が特に高い一部の利用者層(年金収入などが年間340万円以上の利用者)の負担割合が3割とした」とのことだが、世代間の公平性確保なら、介護保険制度で自らの介護負担が軽減された働くすべての人に介護保険料を課すことが必要だ。何故なら、介護保険制度が無かった時代は、介護保険料の支払いは不要だったが、そのかわり家族が全ての介護をしなければならず、この負担の方が重かったからである。さらに、現在は現役世代のうち40歳以上に介護保険料を課しているため、40歳定年制などが言われているからだ。

 また、世代内の公平性として利用料3割負担の導入や自己負担上限の引き上げが行われたことについては、年金収入等が年間340万円以上の利用者が“所得が特に高い一部の利用者層”に入るというのは大いに疑問である上、所得が上がれば高い保険料を徴収し、サービス提供時にも利用料を増やすというのは、同じ所得に対する二重負担(二重課税と同じ)である。

 ③~⑦は、変更の内容を検討しなければ何とも言えないので省くが、①②を見ただけでも厚労省及び関係議員のセンスのなさがわかる上、世代間・世代内の公平性には程遠いわけだ。

(3)生活の不安は全員に

  
                        2019.5.16東京新聞

(図の説明:左図のように、老後の生活に不安を感じているのは、全世代では81.3%に上るが、非正規雇用の多い40代の91.0%は特に高い。しかし、中央の図のように、就業機会も65歳までの就業継続は義務化されたが70歳までは努力義務にしかなっていないため、平均余命の伸びや年金給付の不足額を考慮すれば、70歳までの義務化は急務である。ただ、右図のように、日本・アメリカは就労希望理由の1位が「収入」であるのに対し、ドイツ・スウェーデンは「遣り甲斐」であり、これがあるべき姿であって羨ましい)

1)高齢者の就労について
 *2-1のように、政府は未来投資会議で、成長戦略として70歳まで働ける場を確保することを、企業の「努力義務」として規定することを盛り込んだそうだ。私も、人手不足の中、労働者が長く働けるようになれば、教育研修費を節約しながら生産性を上げることができると考える。

 しかし、年金制度を国民サイドからの100年安心プランにするためには、高年齢者雇用安定法を改正して70歳までの雇用は義務化すべきだ。その際、同一労働・同一賃金は、全世代及び男女から見て当然のことである。

 そのような中、*3-1、*3-2のように、高齢運転者による事故をTVの全局で毎日取り上げ、「高齢者は全員運転能力がなくなるため、免許返納すべきだ」という世論を作っているのは目に余る。それこそ、運転支援機能がある自動車に限定した運転免許制度を創設したり、全自動車に運転支援機能をつける技術開発を行ってその装備の装着に補助金を出すなど、世界で進む高齢化社会のニーズに対応する技術開発に重点を置いた方がよほど賢い。

 しかし、*2-2は、①日本の労働生産性は主要7カ国で最下位 ②産業の新陳代謝を促して付加価値の高い分野に人を動かす抜本策が必要 ③70歳までの就業機会確保は少子高齢化への処方箋の一つとして評価できるが、単なる雇用延長だけでは日本全体の生産性の足を引っ張りかねない ④そのため、裁量労働制の対象拡大や解雇規制の緩和などが必要だ としている。

 革新を嫌ってカンフル剤の投入ばかりやってきたため、①は当然だが、②の実現には能力の高い人を必要とする企業がヘッドハントして雇用できるシステムが必要なのであり、④の裁量労働制の対象を拡大することによって労働者から搾取したり、解雇規制の緩和で解雇された人を他の企業に転職させたりすればよいわけではない。また、③の70歳までの雇用延長だけでは生産性の足を引っ張りかねないというのは、年齢・性別・勤務年数にかかわらない能力給の比重を増して、公正な評価を行う必要がある。

2)高齢者は能力がないとアピールする高齢者差別
 このような中、*3-1のように、「福岡市で高齢者が逆走し、追突事故後に加速して600~700メートル、ブレーキ痕がなかった」というニュースがあったが、運転していたのは81歳男性で76歳の妻とともに亡くなったと書かれている。

 これは、事故を起こした人も気の毒な話なのだが、*3-2のように、池袋で起こった高齢者の事故とあいまって、「子どもが犠牲になるのは痛ましいから、高齢者は全員免許返納すべきだ(話が飛躍しすぎており、子どもの事故をなくすために全高齢者が引きこもるべきだという考え方は問題だ)」「海外には免許の定年制もある(運転支援車の技術を進歩させた方が役にたつ)」という愚かな結論になった。
 
 私は、このような事故を繰り返し報道して、*3-3のように、「高齢者に免許を返納させ、生活支援の体制整備をすればよい」と結論付けるのはよくないと考える。何故なら、事故を起こすのは高齢者だけではないし、仕事や外出に運転が必要な高齢者も多いからだ。また、「75歳以上の層は70~74歳に比べて、事故が2倍多く発生」と書かれているのも層分けの幅が同じでない上に、高齢者全員が事故を起こしているわけではない。

(4)科学技術の進歩を活かせ
 政府は、*4-1のように、75歳以上の高齢ドライバーを想定して新しい運転免許制度を創設し、安全運転支援システムを搭載した自動車に限定して運転を認めるそうだが、年金生活者が新車に買い替えるのは容易ではない。そのため、プログラムを更新したり、小さな器械を装着したりすれば安全運転支援システムを搭載できるようにし、それに補助金をつけることが望まれる。

 また、*4-2のように、九電が買い取り単価7円/kw時で、FIT期限終了後の家庭発電の太陽光を買い取るそうで、これなら原発や火力発電と十分に競争できる。FIT期限が終了した家庭は、①九電への売電継続 ②新電力会社への変更 ③蓄電池を活用した自家消費などを選択できるそうで、言うことはない。経産省は大手電力各社に料金プランを示すように求め、四電が7円/kw、関電が8円/kw、東北電が9円/kwと発表しているそうで、これとEVの運転支援車を併用すれば、21世紀の移動手段になるわけだ。

 さらに、蓄電池の材料になるので次の油田と言われている「レアアース」は、*4-3のように、南鳥島周辺や沖縄付近の海域に埋蔵されているそうだ。いつまでも原油に拘泥して産業化せず、これも中国・韓国・インド・ロシアなどに大きくリードされないように願いたい。

・・参考資料・・
<高齢者の生活と年金給付>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14050522.html (朝日新聞社説 2019年6月11日) 「年金」論戦 まずは政府が説明を 
 安倍首相と全閣僚が出席する参院決算委員会がきのう開かれた。衆参の予算委員会の開催を与党が拒むなか、広く国政の課題をめぐる質疑に首相が応じたのは2カ月ぶりだ。野党の質問が集中したのは、夫婦の老後の資産として2千万円が必要になるとの、金融庁が先に公表した報告書だ。65歳の夫と60歳の妻の場合、年金収入だけでは毎月5万5千円、30年で約2千万円が不足する――。そんな試算に基づき、貯蓄や資産運用の必要性を呼びかけた。「年金は『100年安心』はうそだったのか」「勤め上げて2千万円ないと生活が行き詰まる、そんな国なのか」。野党の追及に、首相や麻生財務相は「誤解や不安を広げる不適切な表現だった」との釈明に終始したが、「表現」の問題にすり替えるのは間違っている。年金だけでは暮らせず、高齢になっても働き続けたり、蓄えを取り崩したりしている人は少なくない。少子高齢化が進み、今後、年金水準の引き下げが予定されているのも厳然たる事実だろう。制度の持続性の確保と十分な給付の保障という相反する二つのバランスをどうとるのか。本来、その議論こそ与野党が深めるべきものだ。国民民主党の大塚耕平氏は「制度を維持・存続する意味での安心で、国民の老後の安心ではない」とただしたが、首相は「みなさんに安心してもらえる制度の設計になっている」と述べるだけだった。年金の給付水準の長期的な見通しを示す財政検証は、5年前の前回は6月初めに公表された。野党は今回、政府が参院選後に先送りするのではないかと警戒し、早期に明らかにするよう求めたが、首相は「政治的に出す、出さないということではなく、厚労省でしっかり作業が進められている」と言質を与えなかった。年金の将来不安を放置したままでは、個人消費を抑え、経済の行方にも悪影響を及ぼしかねない。財政検証を含め、年金をめぐる議論の土台となる正確な情報を提示するのは、まずは政府の役割である。日米の貿易交渉や日朝関係、防衛省が公表したデータに誤りがあった陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備など、国会で議論すべき課題は山積している。しかし、4時間弱のきのうの審議では、年金以外のテーマはほとんど取り上げられなかった。夏の参院選で、有権者の判断材料となるような審議こそが求められている。今国会の会期末まで2週間余り。政権与党は逃げの姿勢を改め、国民の前で堂々と論戦に応じるべきだ。

*1-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/CK2019061102000140.html (東京新聞 2019年6月11日) 「老後2000万円」報告書 野党追及 年金目減り記述削除
 安倍晋三首相は十日、参院決算委員会で、九十五歳まで生きるには夫婦で二千万円の蓄えが必要と試算した金融庁の審議会の報告書について「不正確であり、誤解を与えるものだった」と釈明した。野党は、当初案にあった年金給付水準の目減りなどに関する記述が報告書から削除されたことなども指摘。「国民を欺いている」(立憲民主党の蓮舫参院幹事長)と批判した。報告書は金融庁の金融審議会が今月三日に公表。平均的な無職の高齢夫婦世帯で月五万円の赤字が見込まれ、三十年間で二千万円が不足するとした。自公政権は二〇〇四年の年金制度改革で、制度が「百年安心」との看板を掲げてきた。だが老後には公的年金以外に多額の自己資金が必要なことが明確に示されたことで、不安が広がっている。蓮舫氏は決算委で「国民は『百年安心』がうそだったと憤っている」と批判。麻生太郎副総理兼金融担当相が報告書について「冒頭の一部、目を通した。全体を読んでいるわけではない」と明かした点も「問題だ」と指摘した。首相は、公的年金の積立金運用益が六年間で四十四兆円となったことを強調。本年度の年金給付が、物価の伸びよりも年金給付の伸びを抑える「マクロ経済スライド」を適用した上でも「0・1%の増額改定となった」と反論した。麻生氏は報告書に関して「二千万円の赤字であるかのように表現した点は、国民に誤解や不安を与える不適切な表現だった」と繰り返した。蓮舫氏は、先月二十二日に審議会がまとめた報告書案の段階では、年金給付水準について「中長期的に実質的な低下が見込まれている」と明記されていたことも追及した。今月三日の報告書で削除した理由について、金融庁の担当者は「より客観的な表現に改めたものを提出した」と説明した。蓮舫氏は、年金制度の健全性を五年に一度チェックする財政検証についても「早く出さないと国会で審議できない。まさか参院選後ということはないか」と確認を求めた。首相は「厚生労働省でしっかりと作業が進められている」と、公表時期を明言しなかった。

*1-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/385861 (佐賀新聞 2019年6月11日) 自民、金融庁に報告書の撤回要求、公明代表「猛省促す」
 自民党は11日、金融庁に対し、老後資金として2千万円が必要とした金融庁金融審議会の報告書への抗議を伝え、撤回を要求した。林幹雄幹事長代理が国会内で金融庁幹部に伝えた。公明党の山口那津男代表は記者会見で「いきなり誤解を招くものを出してきた。猛省を促したい」と不快感を示した。自民党の二階俊博幹事長も「2千万円の話が独り歩きして国民の不安を招き、大変憂慮している」と自民党本部で記者団に語った。報告書の撤回を要求した理由に関し「参院選を控えており、党として候補者に迷惑を掛けないよう注意していかねばならない」と説明した。

*1-4:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20190613_4.html (京都新聞 2019年6月13日) 「老後」報告書  将来への議論封じるな
 国民の「老後」に関する議論まで封印しようというのだろうか。95歳まで生きるのに夫婦で2千万円の蓄えが必要と試算した金融庁金融審議会の報告書の受け取りを、政府が拒否した。内容を巡って野党をはじめ各方面から強い批判が上がっていた。夏の参院選への影響を排除しようとしたことは明らかだ。確かに、報告書は公的年金の先細りを指摘して自助努力を促し、投資を勧めているとも読み取れる。違和感を感じさせる内容だ。麻生太郎財務相は「世間に不安や誤解を与えた。政府の政策スタンスとも異なる」と受け取り拒否の理由を述べた。だが、報告書はその麻生氏の諮問を受けてまとめられており、公的な性格を持つ。内容が妥当でないというなら、政府内や国会で議論を尽くすのが筋ではないか。報告書の門前払いは、審議会が提起した年金の将来に関する問題まで封じてしまいかねない。自ら諮問しておきながら、選挙で不利になりそうだと見るや一転して突き放し、はしごを外す-。麻生氏のこうした姿勢も、政治に対する不信を招きかねない。報告書はもともと、高齢社会の資産形成に関するものだが、公的年金制度の限界を政府が認めたと受け取れることや、元本割れリスクもある投資を促すなどの内容は衝撃的だった。批判が拡大したのは、非正規労働者の増加や高齢者の貧困拡大など、国民が抱く生活実感とつながる面があったからではないか。その意味では、年金の給付水準低下や長い老後への備え方など、報告書が示唆する課題を国民に示し、幅広く考えるきっかけにできる可能性があった。参院選を控えた今だからこそ、与野党を超えて議論を深めなければならないはずだ。報告書をなかったことにするのは、そうした機会の放棄に等しい。今年は5年に1度行われる年金の財政検証の年だが、政府は検証結果の公表時期をいまだ明らかにしていない。参院選での争点化を避けるため、選挙後に先送りするとの見方も出ている。そうだとすれば、年金制度の現状と先行きの見通しを覆い隠そうとするもので、極めて不誠実だ。批判を強めている野党も、政権の姿勢を責めているだけでは済むまい。年金制度の持続可能性や負担と給付のあり方に踏み込んだ具体策をぶつけ、実りのある議論につなげる気構えが欲しい。

<高齢者の就労について>
*2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14045073.html (朝日新聞 2019年6月6日) 70歳就労、企業に努力義務 成長戦略素案 人手不足、効率化狙う
 政府は5日の未来投資会議(議長=安倍晋三首相)で、今年の成長戦略の素案を示した。70歳まで働ける場を確保することを、企業の「努力義務」として規定することなどが盛り込まれている。人手不足が深刻化するなか、限られた労働の担い手がより長く働けるようにして、生産性を上げる狙いがある。今月下旬にも閣議決定する。盛り込まれた施策について、必要な法律の改正案は2020年の通常国会に提出する。安倍首相はこの日の会議で、「急激な変革の時代にあって、人や資金が柔軟に動けるよう、これまでの発想にとらわれない大胆な政策をスピーディーに実行していかなければならない」と述べた。「目玉」と位置づけるのは、高年齢者雇用安定法を改正して、70歳まで働きたい人が働けるようにすることだ。希望する人に働く場を提供するため、定年廃止や定年延長、他企業への再就職、起業支援など七つの選択肢を示す。どれを採り入れるかは各社の労使などで話し合う仕組みだ。いずれかの方法で70歳まで雇用することを当初は罰則のない「努力義務」として企業に課し、定着するかをみる。運転手不足が深刻な運送分野も重点的に盛り込まれた。一つは、マイカーによる有償での運送だ。「白タク」行為として原則禁止されており、現在は過疎地域などで限定的に「自家用有償旅客運送」として認められている。今回、この制度をさらに緩和。民間のタクシー会社が配車手続きなどで参入しやすくする。タクシーに見知らぬ人同士を乗せる「相乗り営業」については、今年度中にも通達を出して実現させる。そのほか、地方銀行と地方のバス会社が合併しやすくする特例法案を提出し、単独で生き残りが難しい地域での企業再編を促す。また、以前の成長戦略から継続する政策として、高齢運転者による事故防止策を明記。安全運転支援機能がある自動車に限定した高齢者の運転免許制度の創設に向けて、今年度内に方向性を定める。今後の課題として、戦略では「個人が組織に縛られ過ぎず、付加価値の高い仕事ができる社会を実現する必要がある」と提言。兼業・副業を広めるための議論を加速させるとした。一方、昨年の成長戦略で重点施策として掲げられた152項目のうち、4割が1年で達成すべき目標に満たなかった。ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次・チーフエコノミストは「本来、成長戦略は企業活動を活発にするための規制緩和を掲げるべきものだ」とした上で、「夏に選挙があるため、風当たりのきつくない政策を並べている。成長力アップにどの程度役立つのか疑問だ。目新しい政策を並べるより、過去に掲げた目標を点検し、不十分な分野を加速させるべきだ」と話した。
■成長戦略実行計画案に盛り込まれた主な施策
◆70歳までの就業機会確保を企業の「努力義務」として規定
◆マイカーの有償運送にタクシー事業者らが参画しやすくする規制緩和
◆タクシーに見知らぬ人同士が乗る「相乗り営業」の解禁
◆100万円を超える銀行業以外の送金
◆地方銀行、乗り合いバス事業者の経営統合や共同経営を容易に

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190606&ng=DGKKZO45748260W9A600C1MM8000 (日経新聞 2019年6月6日) 「新陳代謝」に遅れ 雇用改革踏み込めず
 人口減少が進む日本で人手不足を「成長の天井」にしないためには、効率よく働いて成果を高める「労働生産性の向上」の道を歩む必要がある。今回の計画では地銀の再編支援などを盛り込んだ。だが産業の新陳代謝を促し、付加価値が高い分野に人を動かす抜本策は踏み込み不足だ。日本生産性本部の国際比較によると、日本の労働生産性(就業1時間あたり付加価値)は2017年に47.5ドルだった。10年代以降、米国の3分の2程度の水準が続き、主要7カ国では最下位が定位置だ。原因の一つは成長分野への人材再配置の遅れにある。「日本再興戦略」と称した第2次安倍政権で初の成長戦略では、「開業率・廃業率10%台を目指す」と明記していた。それぞれ当時は4~5%程度。17年度の開業率は5.6%どまりで、廃業率は逆に3.5%まで下がった。目標未達の検証は十分でない。本来は企業の存続と雇用の問題は切り離し、生産性の低い企業には退出してもらうのが筋だ。企業の再編も既存の事業を救うためでなく、産業の入れ替えにつなげる必要がある。70歳までの就業機会の確保は少子高齢化への処方箋の一つとして評価できる。ただ単なる雇用延長だけでは日本全体の生産性の足を引っ張りかねない。裁量労働制の対象拡大や解雇規制の緩和など、ハードルが高い本丸の課題はなお積み残されている。

<高齢者は能力がないとアピールする高齢者差別>
*3-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/516005/ (西日本新聞 2019/6/5) 追突事故後に加速 600~700メートル ブレーキ痕なし 福岡市の高齢者逆走
 福岡市早良区百道2丁目の交差点付近で4日夜、6台が絡み9人が死傷した多重事故で、交差点に突っ込んだ乗用車は反対車線を約600~700メートル逆走して次々と車と衝突し、事故現場には目立ったブレーキ痕も残っていなかったことが5日、捜査関係者への取材で分かった。福岡県警は、乗用車が同じ車線を走行する前方の車に追突した最初の事故直後に逆走を開始し、加速を続けて猛スピードで交差点に突っ込んだとみて調べている。
●死亡は運転81歳男性と76歳妻
 福岡県警は乗用車を運転し、死亡した2人の身元について、同区原3丁目、小島吉正さん(81)と妻節子さん(76)と発表。自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)容疑で、5日午前から乗用車と関係車両の計6台の実況見分を始めた。車の破損状況などを調べ、事故の詳しい経緯や原因の解明を急ぐ。事故は4日午後7時5分ごろに発生。県警の調べや目撃者の話を総合すると、乗用車は県道を交差点に向けて北上中、同区藤崎2丁目の動物病院付近で前方を走る車に追突、直後に対向車線にはみ出して逆走した。その後、前から走ってきた車やタクシーに次々と衝突、交差点で右折しようとした車2台にもぶつかり、うち1台は歩道に乗り上げてひっくり返った。信号待ちをしていた歩行者の男性も巻き込んだ。県警によると、10~80代の関係車両の8人と通行人1人が病院に搬送された。小島さん夫婦はその後、死亡が確認された。残る7人は負傷したが、命に別条はないという。当日、孫の送迎で県道を交差点に向けて走行していた同区の70代男性は「動物病院近くでガシャーンと音がした後、『ププッ』とクラクションの音がして、猛スピードで(小島さんが運転していた)乗用車に右側から追い抜かれた。自分は中央線寄りの車線を走っていたので、乗用車は逆走で反対車線を真っすぐ走っていった。80キロ以上は出ていた気がする」と話した。県警によると、県道の制限速度は時速50キロ。乗用車は、追突事故をきっかけに何らかの理由で加速し、制限速度を大幅に上回るスピードを出していたとみている。

*3-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/516217/ (西日本新聞 2019/6/6) 高齢者免許返納ためらう地方 海外は場所制限、定年制も
 高齢者が運転する車による悲惨な事故が相次ぐ中、運転免許制度はどうあるべきか‐。東京・池袋で4月、87歳が運転する車が暴走し母子2人が死亡。福岡市早良区では81歳の車が逆走で交差点に突っ込んだ。都心部では免許返納者が増えているが、交通の便が悪い地方で車は「生活の足」で返納にためらう人も少なくない。海外には運転する場所などを制限する高齢者向け「限定免許」や定年制を採用する国もあり、高齢ドライバーの事故防止に各国が試行錯誤している。「(池袋と)同じような事故を起こすかもしれないと恐ろしくなった」。同区の平野澄雄さん(84)は5月23日、免許を返した。元タクシー運転手で無事故運転が自慢だったが、妻の不安などが背中を押した。福岡県警によると、池袋の事故後、免許返納者は増加傾向で、例年の倍の105件に上った日もあった。交通機関が充実した都心部でも事情は一様ではない。同市城南区の主婦(72)は「加害者になってしまったら…」と恐怖がよぎる一方で、夫(78)の病院への送迎や買い物に車は「手放せない」と悩む。地方では返納に「高いハードル」がある。高齢者の免許返納率が九州で最も低い熊本県の八代市泉町に住む森山和俊さん(78)は「車がないと何もできない」と訴える。買い物や病院、老人クラブの会合場所は約30キロ離れ、バスは1日4~6便のみ。「免許は自立の証し。衰えも感じないし、返納は考えてない」
   ◇    ◇ 
 警察庁によると、昨年の免許保有者10万人当たりの交通事故件数は494件。65~74歳はこれより少なく、75~79歳は533件▽80~84歳604件▽85歳以上645件と年齢とともに増加。一方、16~19歳1489件、20~24歳876件と若者の事故率の方が高い。ただ、山梨大の伊藤安海教授(交通科学)は「高齢者の運転能力は加齢に伴う目の衰えなどにより、若い人に比べて個人差が出やすい」と指摘する。「事故を予防するためにも『限定免許』を導入し、限定免許になった時点で返納後の生活設計もするべきだ」と話す。ドイツやスイスが導入している限定免許は、運転は昼間に限り、場所も制限する。速度制限を設ける国もある。日本も政府が2017年から導入を検討しているが、結論は出ていない。オーストラリアや米国では運転技能を見極める実技試験を取り入れている州もある。日本は70歳以上に講習を義務付け、75歳以上には認知機能検査も加わるが、実技試験はない。九州大の志堂寺和則教授(交通心理学)は「高齢者の中には運転能力を過信する人もいる。免許更新時に運転技能を確かめる仕組みが必要」と強調する。「年齢の上限が必要」‐。池袋の事故後、インターネット上には、定年制を支持する書き込みも目立った。中国は70歳までの定年制を採用する。福岡県警幹部は「年齢と運転能力は別。年齢で一律で区切って“返納しろ”は行き過ぎ」と慎重だ。

*3-3:https://www.agrinews.co.jp/p47834.html (日本農業新聞論説 2019年6月4日) 高齢運転事故防止 生活支援の体制整備を
 高齢ドライバーによる交通事故が後を絶たない。子どもらが犠牲になる痛ましい事故も相次いでいる。だが、免許の自主返納を勧めるだけでは、問題は解決しない。返納しても生活に困らない支援体制づくりや、先進技術を活用した運転支援など総合的な対策が急務だ。高齢者の運転については、農山村で暮らす農家らの関心が高く、日本農業新聞にもさまざまな声が寄せられている。免許を自主返納し、その後は電動自転車やタクシーなどの代替手段を使って支障なく暮らしている人もいる。しかし、交通事情や行政の支援、農業経営の規模など個人や地域で差があり、返納をちゅうちょする人もいる。70代後半の男性は「返納したいが、そうすると暮らしていけなくなる」と切実に訴える。返納の有無にかかわらず、対策が遅れているのが実態だ。政府は5月末、相次ぐ高齢者による事故を受けて、交通安全対策に関する関係閣僚会議を開いた。安倍晋三首相は、①高齢者の安全運転支援②免許を返納した場合の日常生活支援③子どもの移動経路の安全確保──を指示、早急な対策を求めた。60歳以上を対象にした内閣府による高齢者の経済・生活環境調査(2016年)では、買い物に行くときの手段で6割が「自分で自動車などを運転」と回答。公共交通機関や家族の運転する車、タクシーを利用するとの回答は計1割にも満たなかった。17年交通安全白書で、免許人口10万人当たりの死亡事故件数は、最多が75歳以上(8・9件)で、次いで16~24歳(7・2件)となった。75歳以上の層は、70~74歳に比べ2倍多く発生しており、高齢になるほど死亡事故につながりやすい。原因は視力や認知力、判断力の低下によるものとみられている。だが、免許を返納して交通手段が絶たれると、困るのが買い物と通院だ。近年は、こうした高齢者の生活や外出を支援しようと、国や行政の助成事業を活用して地域住民自身が高齢者の通院や買い物に付き添う支援をしたり、ショッピングセンターなど買い物ができる場所にミニデイサービスを設置したりする動きも出てきた。運営に携わる関係者は「地域住民に困り事を聞き取ったところ、草刈りとともに『買い物や病院に行く手段がない』が最も多かった。この悩みは全国共通。国や行政が本格的に支援体制をつくるべきだ」と指摘する。ブレーキとアクセルを踏み間違えた際のスピード抑制装置などが搭載された「先進安全自動車(ASV)」導入への補助も必要だ。高齢者を対象にした購入支援の検討は始まったばかりだが、早期に実現すべきだ。政府は早急に、高齢者の生活・外出支援体制を整備すべきだ。JAは行政と連携し、生活支援事業の推進に力を入れてほしい。年を重ねても安全に暮らし続けられる地域をつくることが求められている。

<科学技術の進歩を活かせ>
*4-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45930890R10C19A6000000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2019/6/11) 高齢者向け新免許創設 メーカーは安全機能の開発競う
 政府は75歳以上の高齢ドライバーを想定し、新しい運転免許制度を創設する方針です。安全運転の支援システムを搭載した自動車に限定して運転を認める枠組みで、新免許は新型車の買い替え需要を促しそうです。75歳以上の高齢ドライバーは2018年末時点で563万人で、18年の高齢者による死亡事故は全体の約15%を占めています。最近でも福岡市や東京・池袋で高齢ドライバーによる死亡事故が相次ぎ発生。高齢ドライバー対策を求める世論が高まったことから、政府も制度面の検討を急ぐ必要があると判断しました。企業も対策に動き始めています。08年に富士重工業(現SUBARU)が安全運転支援システム「アイサイト」を開発。10年に乗用車「レガシィ」に搭載しました。トヨタ自動車は15年から先進安全システム「トヨタセーフティセンス」を導入。「アルファード」や「ヴェルファイア」といった上級ミニバンなどに夜間の歩行者を検知する自動ブレーキを標準搭載しました。トヨタとデンソーはアクセルとブレーキの踏み間違いなどによる事故を防ぐ後付け装置を開発。19年内には「プリウス」や「ヴィッツ」など12車種に取り付けられるようにします。

*4-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/516218/ (西日本新聞 2019/6/6) 九電、買い取り単価7円 家庭発電の太陽光 FIT後方針
 九州電力が11月以降に家庭の太陽光発電で余った電力の10年間の買い取り期間が終了する契約者について、新たな買い取り単価を1キロワット時7円程度とする方針を固めたことが5日分かった。固定価格買い取り制度(FIT)が始まった2009年度に契約した家庭の単価は48円だった。九州で19年度中に期限を迎える契約は約10万件(出力約42万キロワット)に上る。九電が6日に発表する。九電と契約を結んでいる太陽光10キロワット未満の家庭などは2月現在で約37万件(同約170万キロワット)ある。期限が終了した家庭は、九電への売電継続や新電力会社への変更、蓄電池を活用した自家消費などを選択できる。FITは太陽光など再生可能エネルギーを普及させる目的で始まり、従来の単価は高く設定されていた。電力会社が再エネ電力を買い取る費用は「賦課金」として電気料金に上乗せされているため、消費者の負担軽減のために単価は段階的に下落し、九州は19年度で26円になっていた。電力会社はFITによって住宅用太陽光の余剰電力を10年間買い取ることを義務付けられているが、期限終了後は二酸化炭素(CO2)を排出しない電源としての価値などを勘案して電力各社が個別に単価を設定できる。経済産業省は大手電力各社に6月末までに料金プランを示すように求めている。既に四国電力が7円、関西電力が8円、東北電力が9円などと発表。一方、16年4月に電力小売り事業を始めた西部ガスは、FIT終了後の余剰電力を買い取るかどうかを検討している。他の新電力は九電の単価設定を踏まえ、九州地域での買い取り単価を公表する見通し。

*4-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39489620Y8A221C1TJM000/ (日経新聞 2019/1/4) 深海の「レアアース泥」本格開発へ、資源量把握急ぐ
 深海底にある鉱物資源の開発が本格化する。産業技術総合研究所や海洋研究開発機構などのチームが国の支援のもと、2月に南鳥島周辺の海域でレアアース(希土類)を高濃度で含む泥「レアアース泥」の含有量を調査する。沖縄周辺の海域にある「熱水鉱床」の開発でも研究は進む。産業化には正確な埋蔵量や品質の把握が欠かせない。「予定よりも早く調査が進んでいる」。内閣府の研究プログラム「SIP」の一環で海底資源の開発に挑む石井正一プログラムディレクターは笑顔を見せる。2018年秋に先行して実施した航海では、南鳥島周辺の水深5000メートルの海底の25カ所から試料を採った。18年度内に解析する。19年も海底の地質調査を進め、海洋機構や産業技術総合研究所などがレアアース泥の量を正確に推定する。22年度には南鳥島近海で試験採掘をする計画だ。南鳥島近海では14年ころから、東京大学や企業約30社などがつくる民間団体が調査や採掘技術の開発を進めてきた。東大の加藤泰浩教授らが13年に磁石に使うネオジムなどを高濃度で含むレアアース泥を発見し、国も開発の支援に動き出した。加藤教授は「市場価値の高いレアアースが多く含まれており、泥から鉱物を取り出す工程も簡単だ」と話す。専用の管で泥を海上へ引き揚げ、酸に浸すと泥の中の鉱物が溶けて取り出せる。石井プログラムディレクターは「資源量を正確に把握し、なるべく早く産業化したい」と話す。国はこれまで、より浅い海底にある熱水鉱床の開発に力を入れてきた。熱水鉱床は金属を含む熱水が噴き出してできたもので銅や亜鉛、金などを含む。水深1000メートル前後にあり、比較的調査しやすく研究が進んでいる。17年には沖縄周辺で採掘試験に成功した。まだ産業化には調査不足だ。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、産業化には1日あたり5000トンの採掘規模が必要だという。この規模で何十年も採掘を続けられる資源量があるかは不明だ。現状ではどちらの資源も採算は不明だ。熱水鉱床の場合、経産省の試算では設備投資に1183億円、運営に年232億円かかり、採掘期間を20年とすると834億円の赤字になる。レアアース泥の場合、加藤教授らの13年の試算では約750億円の設備投資を約16年で回収できる。ただどちらも様々な仮定を伴う。石井プログラムディレクターは「民間の参入を促すには、産業化した場合の全体像を示すことが必要」と話す。SIPでは詳細調査を進めて、企業の事業判断に必要な情報をそろえる考えだ。中国や韓国、インド、ロシアでも海底資源の埋蔵量の調査が進む。国連下部組織の国際海底機構は、20年をめどに環境影響などを考慮した海底資源開発のルールを作ろうとしている。「採掘が海底の環境に与える影響を調べる技術で日本は先んじている」(資源エネルギー庁)。このリードを生かしつつ産業につなげるには、企業を巻き込んだ調査結果に基づく議論が欠かせない。

<できないということを威張るな>
PS(2019年6月14、15日追加):*5-1には、「①老後の生活費が2千万円不足するとした金融庁の報告書をめぐって野党の追及が、年金制度を所管する厚生労働省にも向かっている」「②厚労省側は『年齢が上がると支出が減るので、厚労省は[5.5万円×12カ月×30年で2千万円不足]という単純な議論はしない』と主張」「③100年安心は制度の『安定』が原点で、現在の年金制度は、向こう100年持続可能性があるという意味」「④政府は2004年改革で、『マクロ経済スライド』を導入した」「⑤日本の公的年金は『仕送り方式』なので、高齢化に伴って現役世代の負担増か高齢者への給付減が起きる」「⑥年金に魔法の杖はなく、制度への批判は簡単だが大きな改革は難しい」などが書かれている。
 しかし、①は野党に頑張って追及して欲しいが、②の厚労省の答弁のうち「年齢が上がると支出が減る」というのは誤った仮定である。何故なら、高齢になる程に、医療・介護費、葬儀等の交際費がかかる上、家事も自分でこなすことが大変になって外注が増えるからだ。つまり、消費が減るのではなく、消費の内容が変わるのである。また、③は、年金制度が継続しても国民生活はより不安になるというふざけた話で、④については、マクロ経済スライドを導入したのは2016年の改訂であるため、虚偽だ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284.html 参照)。さらに、⑤⑥については、1985年以前は積立方式(自分用に積み立てる形式)だったが、1985年にサラリーマンの専業主婦を3号被保険者にすると同時に賦課課税方式(国が取り立てて他の人に仕送りする形式)に変更し、徴収が不完全な上に目的外使用も多くて積立金不足になったのだから、国が責任を持って発生主義による引当方式に変更し、引当金不足額は税外収入で補えというのが、私の趣旨である。 
 なお、これは「魔法の杖」ではなく「技術進歩」の力ででき、*5-2のように、日本以外の国は既に海底資源を採掘しており、日本近海の排他的経済水域にもメタンハイドレートの形で大量のLNGが存在する。そして、サハリン沖の石油ガス開発事業には、三井物産や三菱商事が参加しているのだ。
 このような中、安倍首相がイランを訪問している最中の昨日、*5-3のように、日本の海運会社が運航するタンカーが、ホルムズ海峡付近で攻撃を受けたとしてイランに疑いがかかった。しかし、国営イラン通信は「イランの捜索チームが、2隻から船員44人を救助してイラン南部の港に運んだ」と報じており、イランが日本のタンカーを攻撃する理由もメリットもないため、私もイランが犯人ではないと思った。しかし、この“攻撃”の後、「ホルムズ海峡は日本の生命線」という報道が多くなって安全保障法制を正当化しており、(エネルギーを外国産原油に頼りきって)未だにここを“生命線”と呼んでいること自体が兵糧攻めに弱すぎて防衛失格だと思われる。
 また、中東ホルムズ海峡近くでタンカーが沈まない程度の騒ぎがあって、“敵”が誰かもわからないのを“攻撃”と呼ぶのはおかしいと思ったが、*5-4に、「①自民党の防衛相経験者の1人が『やはり安保法は必要だった』としている」「②2015年に成立した安保法では、ホルムズ海峡が機雷封鎖され日本への原油供給が断たれて政府が『存立危機事態』に当たると判断すれば、集団的自衛権の行使が可能」と書かれている。これらから、参議院議員選挙前に安保法を正当化するため、日本が自作自演の騒ぎを起こしたのではないかと考える。しかし、ホルムズ海峡経由の原油が絶たれると存立危機事態に陥るような国は、実力から見ても戦争はできない。

 

(図の説明:左図の2019年度予算を見て、年金・医療費等の金額が大きいのでこれを減らしさえすればよいと考える人がいる。しかし、それでは1人当たりのサービスが低下する上、保険料を支払って給付を受けているのに、税金投入額が大きいのはおかしい。これについては、「仕送り方式だから」「少子高齢化で支え手が減ったから」という説明がよくなされるが、右図のように、ベビーブーム世代が高齢化すれば高齢者が増えるのは当然なので、その世代が働き手だった間に退職給付相当額を引き当てておかなければならなかったのだ。そして、この退職給付会計は、世界では1985年に導入され、日本では《私の提案で》1998年6月にできて2000年4月以降に始まる事業年度から適用された。現在は、民間大企業の殆どが退職給付会計を採用している)

*5-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14054990.html (朝日新聞 2019年6月14日) 「老後2000万円」厚労省弁明 元データを提示、報告書関与は否定
 老後の生活費が2千万円不足するとした金融庁の報告書をめぐり、野党の追及の矛先が、年金制度を所管する厚生労働省にも向かっている。2千万円と計算する際の元データは厚労省が提出していたからだ。年金批判の高まりを回避したい厚労省は、報告書は金融庁が独自に作ったものと距離を置くのに躍起で、制度の持続可能性を強調している。報告書を作った金融庁の審議会の議事録によると、厚労省の課長は4月の会合で、主に年金で暮らす高齢夫婦の家計について「実収入と実支出との差は月5・5万円程度」と資料を示して説明。資産形成の重要性にも言及していた。13日の参院厚労委員会では、この厚労省の説明が焦点となった。社民党の福島瑞穂氏は「公的年金だけでは暮らしていけない、あとは自己責任でやれということか」と批判。厚労省の局長は、課長はあくまでオブザーバーとしての参加であり、「5・5万円」は総務省の家計調査から引用したデータだったと強調した。さらに局長は、月5・5万円の赤字が30年続く想定とした報告書のとりまとめへの関与も否定。「協議を受けていない。向こう(金融庁)の責任で作成された」とした。根本匠厚労相も「課長は2千万円不足すると説明はしていない」。厚労委に先立つ野党の合同ヒアリングで、厚労省側は「年齢が上がると支出が減るので、厚労省は『5・5万円×12カ月×30年で2千万円不足』という単純な議論はしない」と主張した。2004年の年金制度改革のキーワード「100年安心」を巡る綱引きも激しさを増している。野党は、年金が老後の安定を保障しないことが報告書で明らかになったと攻め込むが、厚労省は「年金は老後生活の柱だが、年金だけで暮らせると言ったことはない」と反論。現在の年金制度は、向こう100年を見通した上で持続可能性のある仕組みと説明する。政府は04年改革で、現役世代の負担増に上限を設けつつ、現役世代の減少や平均余命の伸びに応じて年金額を自動的に引き下げる「マクロ経済スライド」を導入した。ただ、この仕組みでは少子高齢化に伴う年金水準の低下は避けられない。モデル世帯(40年間働いた会社員と専業主婦)が受け取る厚生年金が、現役世代の平均収入の何割かを示す「所得代替率」は14年時点で62・7%だったが、一定の経済成長を見込んでも43年度には50・6%に低下すると厚労省は試算している。民主党政権になる直前の09年時点でも、38年度に50・1%となる見通しが示されている。菅義偉官房長官は13日の記者会見で、報告書について「世間に著しい誤解や不安を与えた」と釈明。「公的年金が老後の生活設計の基本。(報告書は)政府のスタンスと異なる」として、正式な報告書としては受け取らない政府の立場を繰り返した。
■<視点>年金に魔法の杖ない
 金融庁の報告書問題を機に、「年金不安」の声が上がっている。制度への批判は簡単だが、大きな改革が難しいのも現実。旧民主党が挑んで挫折し、その後、政権も手放したことは記憶に新しい。高齢社会を迎え、年金の将来は有権者の関心事。それだけに、誤解を生む言葉も語られる。野党が攻勢でたびたび使う「100年安心」は代表格だろう。2003年の総選挙当時、坂口力・厚生労働相を出していた公明党が使い始めた。日本の公的年金は、現役世代が払う保険料を高齢者に渡す「仕送り方式」だ。高齢化に伴い、現役世代の負担増か高齢者への給付減が起きる。そこで、100年間を見通して収支を調整するしくみがマクロ経済スライド。現役の保険料に上限を設け、高齢者への給付をその範囲に抑える。100年安心は制度の「安定」が原点だった。有権者の耳には「十分な給付額」と届きやすい。年金への誤解を招くため、厚労省などは使うのを避けてきた。それだけに、安倍晋三首相が10日の参院決算委員会で「マクロ経済スライドで、100年安心という、そういう年金制度ができた」と答えたのは罪深い。給付の「安心」には、経済を成長させるとともに、より多くの人がより長く働いて保険料を払う社会をつくる努力が必要だ。制度改革に、魔法の杖はない。与野党が地に足をつけた年金論戦をすることこそ、報告書問題を機に有権者が最も望むことではないか。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190614&ng=DGKKZO46052490T10C19A6MM8000 (日経新聞 2019年6月14日) ロシア、LNG生産5倍に エネルギー相、最大7割アジア太平洋向け
 ロシアのアレクサンドル・ノワク・エネルギー相はモスクワで日本経済新聞と会見し、2035年までに液化天然ガス(LNG)の生産量を現在の約5倍に増やすと表明した。北極圏のLNG生産(総合2面きょうのことば)の拡大などで「世界市場のシェアを約20%に高める」方針だ。生産量の最大70%をアジア太平洋に輸出すると述べ、日本とエネルギー分野での協力関係を強化する。プーチン大統領は6月28~29日に大阪で開く20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席する。サミット期間中の日ロ首脳会談では、エネルギー分野を中心とした経済協力も議題になる見通しだ。ロシアのLNG生産能力は、三井物産や三菱商事が参画するサハリン沖の石油ガス開発事業サハリン2と、北極圏のヤマルLNGなどを合わせて約2800万トン。ノワク氏は「35年までに1億2000万~1億4000万トンに引き上げる計画だ」と明言した。18年時点で約6%にとどまる世界の市場シェアを約20%まで引き上げる。LNG市場での18年の国別シェアはカタールやオーストラリアが20%を超える。シェールオイルの増産が進む米国も存在感を高めている。ロシアはカタールなどに並ぶLNG輸出大国をめざす。ただロシアの大幅な増産は、世界的なLNGの供給過剰に拍車をかける可能性が高い。LNG増産に関し、ノワク氏は「ロシアの北極圏だけで74兆立方メートルの天然ガスがあり、多くの未確認の埋蔵量もある」と指摘した。ロシアのガス大手ノバテクが計画するアークティック2やサハリン2の増設など新規プロジェクトを念頭に「20%のシェア獲得へ必要な資源や競争力など潜在力はすべてある」と自信を示した。

*5-3:https://mainichi.jp/articles/20190614/ddm/003/030/023000c (毎日新聞 2019年6月14日) タンカー攻撃 日本の生命線で誰が ホルムズ海峡緊張増す
 日本の海運会社が運航するケミカルタンカーが、中東のホルムズ海峡付近を航行中に攻撃を受けた。安倍晋三首相がイランを訪問し、緊張緩和を呼びかけていた最中の事件。日本に衝撃を与えるとともに、米国とイランを軸にした中東地域の緊迫化がさらに進みそうだ。13日に起きたタンカー2隻への攻撃について、バーレーンに司令部を置く米海軍第5艦隊は「早朝に二つの遭難信号を受信し、救援に向かった」との声明を発表。一方、国営イラン通信は「イランの捜索チームが、2隻から船員44人を救助してイラン南部の港に運んだ」と報じており、対立する米・イラン双方が共に「救助にあたった」との主張を展開する。(以下略)

*5-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/CK2019061502000162.html (東京新聞 2019年6月15日) 自衛隊派遣論 緊迫進めば高まる恐れも
 岩屋毅防衛相は十四日、中東ホルムズ海峡近くでの日本のタンカー攻撃に関し、現時点での自衛隊派遣を否定した。日本人に被害がなく、攻撃した相手も不明だからだ。ただ、米・イラン関係や現地情勢がさらに緊迫すれば、自民党内から安全保障関連法による自衛隊派遣を求める声が上がる可能性もある。岩屋氏は閣議後の記者会見で「現時点で自衛隊へのニーズ(需要)は確認されておらず、部隊を派遣する考えはない」と述べた。日本が直接攻撃された際に反撃する個別的自衛権発動の要件は満たさないとの見解を示した。一方、自民党の防衛相経験者の一人は「やはり安保法は必要だった」と自衛隊派遣に意欲を隠さない。安保法の施行で「あらゆる事態」に応じて自衛隊を海外に派遣できるようになったことが念頭にある。例えば、米・イランが戦争状態になり、ホルムズ海峡が機雷封鎖された結果、日本への原油供給が断たれ、政府が「存立危機事態」に当たると判断すれば、集団的自衛権の行使が可能になる。二〇一五年に成立した安保法の審議の際には、安倍晋三首相が海上自衛隊によるホルムズ海峡での機雷除去を集団的自衛権行使の事例に挙げた。政府は、戦時の掃海活動は機雷をまいた国の防御力をそぐ「武力行使」とみなされる可能性があり、実施するには集団的自衛権行使を認めなければならないと主張。首相は審議の終盤、当時の国際情勢からは海峡封鎖は想定できないとして事例を撤回したが、今後の展開次第ではこうした派遣論が再浮上しかねない。名古屋学院大の飯島滋明教授(憲法学)は本紙の取材に「安保法が成立した今、機雷敷設が現実になれば、自衛隊が米軍の求めに応じて掃海艇を派遣せざるを得ないことはあり得る。米国に追従する姿が反米勢力の反発を買い、自衛官が危険にさらされる恐れがあるだろう」と懸念を示した。

<生活できるためには?>
PS(2019年6月17日追加):*6-1のように、問題になった金融審議会報告書は、将来の公的年金給付水準について、当初は「中長期的に実質的な低下が見込まれる」と記載したが、最終的には「調整されていくことが見込まれる」に修正したそうだ。本当は、「『マクロ経済スライド』を導入してインフレ政策をとることにより、給付水準を低下させる」と言うのが正しく、国民を犠牲にして年金制度を維持するという知恵も工夫もない愚策である。さらに、言葉を曖昧にすれば実態が変わるわけではないので、国民に実態を見えにくくしたにすぎない。
 そのような中、*6-2のように、就職氷河期に高校・大学を卒業した氷河期世代は、新卒時に正社員になれず、今も無職や派遣・アルバイトなどの非正規雇用割合が他の世代より高く、厚生年金に入れないため無年金・低年金予備軍となっているそうだ。そのため、*6-3のように、社会保障の支え手を拡大し、正社員としての勤務年数が短い氷河期世代や女性・高齢者・外国人が損をしない能力給中心の給与体系に変え、公正な評価をする仕組みに変える必要があるわけだ。また、「70歳までの就業機会確保」「勤労者皆保険制度」は、必要である。
 そうすると、これまで差別によって優遇されてきた男性労働者から不満が出るかも知れない。また、世代間の公平性がないと言う人もいるが、年金制度がなかった時代は、年金保険料は支払わなくてもよいが、親に直接仕送りしたり、親と同居して経済的・物理的援助をしたりしなければならなかった。一方、現在それを求める親は殆どおらず、年金保険料は支払わなければならないものの、より自由な職業選択ができ、活躍できそうな新産業も次々と芽生えている。
 例えば、*7-1のように、農業も現代化しつつあり、「マーケットイン」「スマート農業」「輸出」などを目標にして、成長産業になりつつある。また、戦後植林した木が伐採期を迎えて林業も有望な産業になっている。*7-2のように、「国有林を大規模に伐採・販売する権利を民間業者に与える改正国有林野管理経営法が、2019年6月5日の参院本会議で自民・公明・国民民主・日本維新の会などの賛成多数で可決・成立した」というのは、国民の資産を二束三文で民間に譲渡するもので大規模なドロボーの合法化だが、このような国民全員の財産を相当の料金をもらって民間企業に伐採させ、税外収入を得て政府のこれまでの年金政策の失敗をカバーすれば、林業や森林の維持管理も重要な産業になりつつあるだけに問題解決に近づく。
 さらに、*7-3のように、2030年までに世界の海底地形図を作って資源探査することが可能になり、日本近海での資源開発にも役立ちそうだ。ただ、日本で鉱業を行うには、日本には鉱業会計すらないため、国際会計基準(IFRS)の鉱業会計を早急に採用する必要がある。

  
 2019.6.16東京新聞  三菱UFJリサーチ&コンサルティング    総務省統計局

(図の説明:左図のように、金融庁金融審議会報告書は、「マクロ経済スライド」による公的年金水準の低下に関する表現を曖昧にし、中央の図のように、資産形成によって不足分を補うよう奨めているが、ここでモデルとされているような家計はむしろ少ない。なお、右図は、2012年時点の産業別営業利益率だが、現代のニーズに合ったことをすれば、新市場を作ったり、売上高や利益率を劇的に上げたりできることが介護市場を見れば明らかである)

*6-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/CK2019061602000142.html (東京新聞 2019年6月16日) <「消された」報告書を読む>(中)年金給付水準「調整」 実質は「低下」表現修正
 老後に公的年金以外で二千万円の蓄えが必要と試算した金融庁金融審議会の報告書は、将来の公的年金の給付水準について「今後調整されていくことが見込まれている」と記した。先月二十二日に示された当初の報告書案には、給付水準について「中長期的に実質的な低下が見込まれている」と「低下」の文字があったが、最終的に「調整」に修正した。「調整」とは、現役世代が支払う保険料の上限を定め、現役世代人口の減少や平均余命の伸びに応じ給付水準を徐々に引き下げる「マクロ経済スライド」という仕組みを指す。年金制度を維持するための仕組みだ。厚生労働省が二〇一四年に公表した年金の財政検証では、この「調整」の結果、年金給付水準は約三十年後の四三年度まで下がり続ける見通しを示した。財政検証によると、現役世代の平均手取り収入に対し、夫婦で受け取ることができる年金額の割合を示す「所得代替率」は、一四年度に62・7%だったが、その後は二〇年度が59・3%、四〇年度が51・8%、四三年度の50・6%まで低下することを示した。修正前の報告書案に記された「実質的な低下」という表現は、こうした試算に合致する内容だ。当初の報告書案には、この他にも年金の給付水準を巡り「今までと同等だと期待することは難しい」「今後は公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある」などの厳しい表現が並んでいた。みずほ証券の末広徹氏は、報告書の表現が当初案から変更されたことについて「国民が萎縮しないようバランスを考えて調整したと思うが、給付水準が実質的に低下するとの見通しは厚労省の財政検証の結果なので、ストレートに伝えるべきだった」と指摘する。また末広氏は、年金財政の負担と給付に関する正面からの議論を、政府が避けようとする傾向について「今回もうやむやにして先送りすれば、次に年金問題が注目された時は、この程度のショックでは済まないだろう」と懸念する。 

*6-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190616&ng=DGKKZO46163500V10C19A6EA1000 (日経新聞社説 2019年6月16日) 氷河期世代の支援にもっと知恵を絞れ
 就職氷河期という言葉がある。バブル経済の崩壊後、1993年からの10年あまりの間、日本企業が新卒採用を極端に絞った長期低迷期を指す。この期間に高校・大学を卒業した氷河期世代は30代半ば~40代後半になっている。無職や非正規雇用の割合がほかの世代より高いのが特徴だ。日本の中核的な層が不安定雇用に甘んじているのは、本人にも日本経済にもマイナスが大きい。産業界と政府・自治体が知恵を出し合い、効果的に支援する必要がある。氷河期世代は第2次ベビーブームの1970年代前半に生まれた団塊ジュニア世代を含む。明確な定義はなく、2300万人を超すという見方がある一方、政府は1700万人程度とみている。新卒時に正社員になれず、今なお派遣やアルバイトで生計を立てる人の割合が相対的に高い。無職者は40万~55万人、不本意なまま非正規社員を続けている人は50万~70万人と推計されている。社会保障についても不利益を強いられがちだ。国民年金の保険料を払う経済的余裕が乏しいのに減免手続きを怠り、未納を放置している人が多いとみられる。無年金・低年金者の予備軍だ。数十年後には生活保護に頼る人が続出することが想定される。経済面の制約から未婚者が多く、少子化の原因にもなっている。介護を家族に頼れない不安もある。本人の職への意識を高める必要があるのは言うまでもないが、非正規雇用の固定化などを本人の責任だけに帰すのは酷だろう。再チャレンジ支援に熱心な安倍晋三首相の意を受け、政府の経済財政諮問会議が氷河期支援を提起した。政権は今週まとめる骨太の方針に、3年間に30万人を正社員化する政策目標を盛り込む。重要なのは、根拠に基づく実効性が高い支援策だ。職業訓練・資格取得・学び直しのメニューを漫然と羅列したり、たんに人手不足が著しい業界に送り込もうとしたりしても、正社員として定着するのは難しいだろう。企業経営者も支援に責務を負っているが、正社員化の目標が独り歩きするようでは意味がない。一口に氷河期世代といっても置かれた状況はさまざまだ。例えばこの世代が得意とするデジタル技術の習熟度を高めてもらい、自宅で仕事を請け負う環境を充実するのも一案だ。企業側と本人双方の意欲と工夫が問われている。

*6-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20190616&bu=BFBD9496EABAB・・ (日経新聞 2019年6月16日) 支え手拡大へ雇用改革 社会保障維持へ骨太素案 、氷河期世代、正規30万人増へ 女性・高齢者、年功から能力給に
 政府が11日示した経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の素案では、社会保障の支え手拡大に軸足を置いた。働く高齢者や女性は増えており、雇用形態にかかわらず能力や意欲を評価する仕組みに変えていけるかが課題だ。今年の骨太で焦点を当てた就職氷河期世代が生まれたのは新卒採用に偏重した雇用慣行にある。年功序列と一括採用を前提にした日本型雇用の転換が急務だ。骨太の素案では「全世代型社会保障への改革」を柱に据えた。70歳まで就業機会を確保するよう企業に定年延長などの環境整備を求める。パート労働者すべてが厚生年金などに加入する「勤労者皆保険制度」の実現を掲げた。長く働き、税金や社会保険料を負担する人を増やす政策だ。厚生年金は年収106万円を超えると、保険料を払う必要がある。その負担を回避する目的で就労調整するパート労働者は多い。政府は年金保険料を負担するパートを増やすため、年収基準の引き下げを含めた公的年金の改正法案を2020年の通常国会に提出する。女性や高齢者を中心に社会保障の支え手である就業者は増えている。総務省によると、18年(平均)の就業者は6664万人となり、過去最高だ。過去5年間に増えた分の7割を占めたのが女性。一般に子育て期とされる30歳代前後の女性で就業率が下がる「M字カーブ」は緩やかになってきた。さらに年齢別では65歳以上の高齢者が35%増と高い伸びを示す。ただ、女性や高齢者は社会保障の支え手として1人あたりの稼ぐ力は十分とはいえない。女性や高齢者の雇用形態はパートなど非正規が多い。例えば、65歳以上になると非正規比率は75%を超す。パート労働者の平均賃金は月10万円弱。30万円台の正規社員と比べれば格差は大きい。日本企業の間では一定の年齢になると退職・再雇用の扱いとなり、賃金を一律で3割下げるといった措置がある。女性は育児休業で勤続年数が短くなると、男性に比べ賃金は低くなりやすい。年功型から能力に応じた制度へと変える必要がある。25年には団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者になる。その時点で75歳以上の人口は2180万人となり、15年比で3割以上も増える。一方、60歳代は約2割減る。社会保障の支え手として高齢者の働き手を増やし続けるのはいずれ限界が来る。働く高齢者の年金を減らさないよう、在職老齢年金の廃止を含めて働く意欲や質を高める政策も課題になる。「就職氷河期世代への対応は、わが国の将来に関わる重要な課題だ。計画を策定するだけでなく、実行こそが大事だ」。安倍晋三首相は11日の経済財政諮問会議でこう語り、関係閣僚に対応を指示した。素案では今後3年間を「集中支援期間」とし、30代半ばから40代半ばの氷河期世代の就職を支援する考えを示した。この世代の正規雇用で働く人を3年間で30万人増やすことをめざす。全国の支援拠点と連携し、就業に直結しやすい資格取得などを促す。氷河期世代が卒業したのは1993年から04年ごろ。バブル経済の崩壊やその後の金融危機の影響で、企業が新卒採用を大幅に絞った時期だ。他の世代に比べ、正規で働きたくても働けない不本意な非正規が多い。氷河期世代で非正規や働いていない人は90万人を超す。高齢化すると十分な年金を受け取れず、生活保護に頼る世帯が急増すると懸念されている。この世代を正規社員として働けるようにするには、新卒一括採用と終身雇用の見直しが欠かせない。景気後退期に就職活動する世代が希望通りの仕事に就けない問題は潜在的にある。新たな氷河期世代を生まないためにも中途採用の拡大を進めていく必要がある。

*7-1:https://www.agrinews.co.jp/p47681.html (日本農業新聞 2019年5月17日) 新時代の農業技術 消費者意識して導入を
 時代を先読みした技術を取り入れよう。キーワードは「マーケットイン」と「スマート農業」。消費者が求めているものを的確に把握し、それに応じた生産に取り組むとともに、新しい技術をどう生かしていくか。時代のニーズに応じた生産や技術の導入が求められている。マーケットインの生産とは、消費者ニーズを栽培に取り入れようとする取り組み。日本農業新聞営農面の「農業技術ネクストエイジ」では平成の時代に開発されたり、広く普及したりした技術や品種を連載した。その中で、かんきつのマルチ・点滴かん水同時施肥法(マルドリ栽培)や根域制限栽培を紹介した。水分を与える量を制御することで、糖度を高める技術だ。消費者が求める甘いかんきつが生産できるとして、産地に広く普及した。出荷作業も同様だ。果実を切ることなく、糖度を測ることができる光センサーを取り上げた。花きのバケット輸送システムは、生花を長く楽しみたいという声に応えた技術。バラなど鮮度保持が難しい品目でも、日持ちの向上につながった。安全・安心は当たり前になった。化学合成農薬を減らし、天敵などを取り入れた総合的病害虫・雑草管理(IPM)は、広く普及した。一方、長期的な影響を踏まえ「安心できない」という消費者心理が働いた遺伝子組み換え(GM)技術や体細胞クローン技術は、普及につながらなかった。今夏にも流通する可能性があるゲノム編集で作られた作物も、消費者が安心して購入するのか。産地は見極めが必要だ。少子高齢化に伴う人口減で日本の「胃袋」は年々小さくなっていく。貿易自由化で輸入農産物は増え、消費者に選ばれる産地をどうつくるかが、重要になっている。食味や鮮度、安全性、食べやすさ、便利さなど時代のニーズに的確に応えられる技術が求められる。農村の高齢化や担い手不足に対応するため、連載企画では水稲の直まき栽培や不耕起V溝直播(ちょくは)、高密度播種育苗が進んだことを取り上げた。少ない労働力でも、大きな面積を耕作することができる技術だ。果樹の樹体ジョイント仕立ては高密度に苗を定植し、隣の木に接ぎ木する手法。樹高が一定で直線状に作業ができ、効率が高まる。酪農は規模拡大に合わせたユニットミルカーやミルキングパーラー、搾乳ロボットを紹介した。労働力不足は今後、さらに深刻化する。それを補う人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)、ドローン(小型無人飛行機)などを駆使したスマート農業は課題解決の一つの手法ではあるが、農業のあらゆる課題を解決できるわけではない。ゴールは、作る側と食べる側がつながり日本農業を再生することだ。そのためにも、消費者を意識した技術の導入が不可欠である。

*7-2:https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190605/k00/00m/010/113000c (毎日新聞 2019年6月5日) 改正国有林法が成立 大規模伐採を民間開放
 全国の国有林を最長50年間、大規模に伐採・販売する権利を民間業者に与える改正国有林野管理経営法が、5日の参院本会議で、自民、公明両党や国民民主党、日本維新の会などの賛成多数で可決・成立した。立憲民主、共産両党などは反対した。安倍政権は国有林伐採を民間に大きく開放して林業の成長産業化を掲げるが、植え直し(再造林)の失敗による森林の荒廃や、中小業者が淘汰(とうた)される懸念を残したまま、改正法は来年4月に施行される。改正法は、政府が「樹木採取区」に指定した国有林で伐採業者を公募。業者に与える「樹木採取権」の期間は50年以内と明記し、対価として樹木料などを徴収する。再造林の実施は農相が業者に申し入れるが、業者への義務規定はない。改正法では明文化されず今後の運用に委ねられた部分が多い。政府は当面全国で10カ所程度、計数千ヘクタールの樹木採取区を想定。「伐採期間は10年が基本」(吉川貴盛農相)と強調し、再造林は伐採業者との契約にも盛り込んで担保すると繰り返した。ただ、林野庁は現行の小規模な伐採でも、再造林の成功率などを示す全国のデータを把握していない。5日の採決に先立つ反対討論で、共産党の紙智子氏は「数ヘクタールの再造林で苗木が育たない山があるのに、数百ヘクタールを伐採すれば荒廃しかねない」と強調した。また改正法は中小業者の育成を掲げ、政府は業者の選定で財務基盤や取引先の優劣のほか、雇用増加などの地域貢献も「総合的に評価」すると答弁している。だが具体的な基準は明示されず、立憲民主党の川田龍平氏は討論で「超長期のリスクを取るのは中小業者には不可能だ。特定企業のみに50年の権利を設定するのでは、という疑念がぬぐえない」と批判した。改正法に賛成した与野党からも慎重な運用を求める声が続出し、政府は来春までに運用のガイドラインを作ってパブリックコメント(国民の意見公募)を実施する方針だ。

*7-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM6753MSM67ULBJ00X.html?iref=comtop_list_sci_n01 (朝日新聞 2019年6月13日) 海底3億6千万平方キロを探れ 30年までに地図作成へ
 ロボット潜水艇で海底を測量し、地形図の正確さや範囲を競う国際探査レースで、海洋研究開発機構などの「チームKUROSHIO(クロシオ)」が準優勝し、日本人が参加する国際チームが優勝した。地球の7割を占める海の底は、月や火星より未知の領域が多い最後のフロンティア。海底にはどんな尾根や谷があり、どんな生き物がいるのか。レースで得られた知見をもとに、探査が本格化する。「世界の海の8割以上に詳しい地形図がない。新しい生き物や資源の探査には欠かせないのに」。レースを主催した米Xプライズ財団のジョーティカ・ヴァルマーニ事務局長は、1日にモナコであった表彰式で海底探査の意義を強調した。私たちが目にする世界地図の海底地形には、深い海溝や海底火山が描かれているが、ほとんどは解像度が1キロほどとデータが粗い。逆に、高温の熱水が噴き出す熱水鉱床などの周囲は、珍しい海洋生物や貴重な鉱物資源が集まるため詳しく調べられているものの、調査範囲が狭い。この間を埋める、詳しくて広い範囲の地形図が、開発や研究の現場から求められていた。しかし、船から人が潜水艇を操作する従来の探査では、1日に10平方キロほどを測量するのがせいぜいで、3億6千万平方キロに及ぶ広大な海を調べ尽くすのは無理がある。そこで、自動で調査できる水中ロボットの開発を後押しする国際探査レースが企画された。決勝は昨年11~12月、ギリシャ沖であった。出場したのは日米独などの5チーム。海洋機構や九州工業大、三井E&S造船、KDDI総合研究所などでつくるKUROSHIOは、全長5・6メートルの潜水艇と通信用の無人船を投入。悪天候で急きょ調査海域が変更になるなか、山手線の内側の面積の倍にあたる長さ34キロ、幅5キロの測量を成功させ、準優勝した。中谷武志共同代表は「海底を無人調査するなんて、レース前は20~30年先の技術と思っていた。造船や通信といった専門家たちが知恵を出し合って実現できた」と喜んだ。優勝は、日本財団が財政支援し、海上保安庁の職員も参加した国際チーム「ジェブコNFアルムナイ」だった。海底地形図づくりのプロを育てる米ニューハンプシャー大の研究コースの卒業生16人が日米ロなど10カ国以上から集まり、潜水艇の遠隔制御などそれぞれの得意分野を生かした。日本財団などは今後、ほかのチームにも参加を呼びかけて2030年までに世界の海底地形図をつくる構想だ。詳しい地形がわかれば、未知の生物がいそうな場所はないか、海底ケーブルをどう設置すればより安全か、新しい油田を探すのにどこが候補になりそうかなど開発や発見に役立つ。財団の海野光行常務理事は「私たちの支援はレースのためだけではなく、その先を見据えたもの。ここからが始まりだ」と話した。

<高齢化による新市場の出現>
PS(2019年6月19日追加):佐賀県吉野ケ里町が、*8-1のように、高齢者が地域で安心して暮らせるよう、セブン-イレブン2店と高齢者見守り協定を結んだそうだが、このように新しいニーズをとらえて対応すると、新市場ができたり、従来の営業のプロモーションになったりする。しかし、*8-2のように、「高齢者=認知症≒子ども」というような単純な発想で、看護師・介護師に親しすぎる言葉で話しかけられるのは、(人によっては)尊厳を無視されたようで嫌なのである。そのため、看護師・介護師は、相手の言葉遣いや態度から、相手の要望を見分ける必要がある。私の女学校卒の大叔母は、90代の時、「『ちーちーぱっぱ』のようなくだらない歌を歌わされるので、ショートステイには行きたくない」と言っていた。そのため、介護施設も、「高齢者≒子ども」という扱いは慎み、相手のニーズに合ったことをすべきだと思う。
 なお、人口動態において先進国の日本は、「高齢者が本来もらう筈だった年金や社会保障を削減する」という最も安易で工夫のない政策をとらなければ、このような新しく必要となる財やサービスを作りだして世界に普及する先進国になった筈だ。何故なら、世界もまた、*8-3のように、次第に高齢者の割合が増えていき、日本と似た道を辿るからである。

  
主要国の人口高齢化率長期推移        日本の人口ピラミッドの変化

*8-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/519143/ (西日本新聞 2019/6/17) セブン-イレブン2店が高齢者見守り 吉野ケ里町と協定
 吉野ケ里町は13日、地域の高齢者を見守り、異変に気づいた際には連絡をしてもらえるようコンビニチェーンのセブン‐イレブン・ジャパンと協定を結んだ。高齢者がいつまでも地域で安心して暮らせることを目的に、住民と接する機会の多い企業などと協力して高齢者の見守りを図る「吉野ケ里町ふれあいネットワーク」事業の一環。セブン‐イレブン側は以前から他の自治体で来店したり商品の配達サービスを利用したりする高齢者などへの声掛けに取り組んでおり、町に打診し協定が実現した。協定をもとに、町内の2店舗は商品の配達時などに高齢者の安否を確認し、認知症の可能性など異変を感じた場合は町の地域包括支援センターに知らせる。協定の締結式で伊東健吾町長は「(見守りを通じて)町づくりに貢献していただければうれしい」とあいさつした。

*8-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190619&ng=DGKKZO46283280Z10C19A6MM8000 (日経新聞 2019年6月19日) 春秋
 「はい、あーんして」「ごっくんしようねー」。病院でいたたまれなくなる光景のひとつは、医師や看護師が高齢者に、赤ちゃん言葉で接している場面である。つい先日も、認知症が進んでいるらしい女性に幼児語を連発するスタッフがいた。見ていて、とてもつらい。▼悪意はないのだろう。むしろみんな、熱心に仕事をしているはずである。かつて東北地方などでは恍惚(こうこつ)の境地に入った人を「二度童子(わらし)」と呼んだという。人間は年老いて、また子どもに還(かえ)りゆくものなのかもしれない。しかし……。長い人生をひた走り、辛酸をなめ、それぞれに足跡を残してきた人々の尊厳はどこにある。▼政府がきのう、認知症対策の新たな大綱を閣議決定した。患者が暮らしやすい社会をめざす「共生」と、発症や進行を遅らせる「予防」とを柱にするそうだ。数値目標は批判を浴びたため参考値にとどめたが、予防に役立ちそうな努力を求める雰囲気はなお拭えていない。当初案では「予防」が「共生」よりも上にあった。▼いかに「共生」を唱えても、まだまだ社会は戸惑い、誰もがたじろいでいる――。むしろ、そんな思いを募らせる大綱であり、あちこちで聞く赤ちゃん言葉なのである。認知症はまさに誰でもかかる。そして症状が進んでも、さまざまな感情は心を離れない。蛇足ながら、かつて身内に患者を持って知らされたことである。

*8-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190619&ng=DGKKZO46250640Y9A610C1FFJ000 (日経新聞 2019年6月19日) 変わる人口地図 国連報告から(1) 50年、6人に1人高齢者
 国連の最新の予測によると、世界人口のうち65歳以上の高齢者の割合は2050年に16%と、6人に1人を占めるようになる。現在は11人に1人(9%)だが「歴史的な低さの出生率と寿命の延びで、事実上すべての国が高齢化していく」という。日本が直面する高齢者の社会保障や労働力の確保といった問題が、多くの国に共通する課題になりそうだ。地域別にみると高齢化は欧州・北米で特に進み、50年には4人に1人に当たる26%が高齢者になる。次いで日本を含む東・東南アジアで、19年の11%から24%に上昇する。ペースは緩やかだが、アフリカや中南米にも高齢化は広がる。世界全体では、65歳以上の人の数は19年から50年までに2倍以上に膨らむ。18年に史上初めて、5歳未満の子どもの数を上回り、50年には15~24歳の若者の数をも追い越すと国連は予測する。平均寿命は世界平均で72.6年から77.1年に延びるという。一方で出生率は、現在の2.5から2.2に下がると予測した。途上国で乳幼児の死亡率が下がり、先進国では女性の社会進出が広がっているのが背景とみられる。1990年には3.2だったが、低下に歯止めが掛からない。
     ◇
 変わる人口地図は世界の経済や社会にどう影響するのか。国連が17日公表した人口推計を基に解説する。

<産業のイノベーションと人材不足>
PS(2019年6月20日追加):*9-1のように、政府がやっと温暖化対策戦略で水素を柱の一つに掲げてG20サミットで話題にするそうだが、日本で水素エネが実用段階に入っても普及しなかったのは、太陽光発電と同様に経産省の愚かなエネルギー政策が邪魔したからであり、外国で実用化されて初めて慌てるのが日本の情けないところだ。なお、再生可能エネルギー由来の電力で水を電気分解して水素を作るのは、環境先進国では、理想ではなく理念に基づく現実だ。
 また、*9-2のように、林業も人材不足で、人材確保には労働環境の改善等も重要だろうが、若くして退官させられる航空自衛隊や陸上自衛隊のOBが中心になるのが、体力・技術面で適任ではないかと考える。そして、国有林は現役自衛官が訓練を兼ねて、整備や作業を行いつつ、植生・野生動物の生存数・断層などを含めた正確な地図を作ったらどうだろうか?
 さらに、*9-3のように、JR九州が事業承継ファンドを設立して自社と関連性の高い地場企業に資本や人材を投入して支援するのは、銀行の出資で設立されるファンドとは異なる視点で有意義だ。このようにして人材を入れれば、従来の事業も次第に21世紀型にできる。


2019.6.11朝日新聞     国民年金の場合      あいちのICT林業活性化構想

(図の説明:左図のように、老後、どのような生活をするかによって老後必要な貯蓄額は大きく異なる。また、中央の図のように、国民年金世帯は、不足額が大きい。しかし、右図の林業のように、現在は人手不足で、スマート化によって生産性の高い産業にできそうな分野も多い)

*9-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190620&ng=DGKKZO46303940Z10C19A6TCS000 (日経新聞 2019年6月20日) 水素で温暖化を防げるか
 政府は温暖化対策の長期戦略で水素の活用を柱の一つに掲げた。20カ国・地域首脳会議(G20サミット)でも話題になる見通しだ。温暖化ガスを出さない理想のエネルギー源として期待は高いが、思うように実用化が進んでいない。普及へ向けての課題と解決への道筋を日欧の官民の代表に聞いた。
  ◇  ◇
■政策誘導で実用化を 環境相 原田義昭氏
 日本は二酸化炭素(CO2)排出量を2050年までに80%減らす長期目標を掲げている。パリ協定の目標と照らし合わせると不十分と言われており、実質ゼロにしたいが足元の対策は必ずしもそこへ向かっていない。「究極の環境型エネルギー」である水素エネルギーをどれだけ活用できるかが、決め手の一つになる。水素エネは理論研究を経て実用段階に入っているが、思うように普及しない。有力な応用分野である燃料電池車(FCV)は水素ステーションが増えず、頭打ちだ。自動車メーカーは燃料電池車よりハイブリッド車(HV)などを重視していた。そこで水素エネの利用に広がりをもたせるため、列車や船などの公共交通に使えないかと考えている。燃料電池列車を製造しているフランスの鉄道車両大手アルストムの幹部と話す機会があり、ドイツ北部の路線で試乗もした。いま大事なのは、水素エネを使う技術や製品の需要を創出することだ。いつまでに確実にどのくらい使う、というコミットメント(約束)があればメーカーも動く。それには政府の関与が必要だ。日本でも、たとえば国がJRと組んで燃料電池列車の開発にトライすれば刺激策になる。その後、民間主体のインフラ整備へと移行すればよい。フランスでは無人の水素ステーションも見た。安全管理面などの規制緩和やルールづくりの参考になる。省庁の垣根を越え、オールジャパンで水素エネの利用を推進するつもりだ。過去を振り返ると、日本は10年ほど前には太陽光技術で圧倒的に強かったのに、いまや惨憺(さんたん)たるものだ。技術は優れていても商売で中国などに負ける。人工知能(AI)やロボット技術も同様だ。水素技術で同じ轍(てつ)を踏むようなことがあってはならない。先日、九州大学の水素エネの研究室を訪れた。毎週のように中国から見学者が来るそうだ。中国の水素エネの研究開発や関連事業への投資は日本に比べ桁違いに大きく約2兆円だという。金額ではとてもかなわないが、選択と集中で強いところを伸ばし、民間による事業化を促す。水素は再生可能エネルギーを使い、水を電気分解してつくれれば理想的だ。化石燃料由来の電力を使う場合にはCO2の回収・貯蔵(CCS)技術などと組み合わせる工夫がいる。(CO2の排出が多い)石炭火力発電所の延命策になるという見方があるのも知っている。しかし、温暖化対策に逆行する新設の石炭火力は環境影響評価(アセスメント)の段階で基本的に認めないなど、厳しい姿勢で臨んでいる。安倍晋三首相が言うように、これまでの延長線上にない非連続なイノベーションも追求する。政策当事者として、こんなことができるとよいという具体的なものを示していきたい。水素社会への移行をめざす考えは、20カ国・地域(G20)エネルギー・環境相会合でも説明した。賛同を得られ、実現へ向けた機運が高まったと思う。

*9-2:https://www.agrinews.co.jp/p47966.html (日本農業新聞論説 2019年6月18日) 林業の人材不足 労働環境の改善を急げ
 わが国の森林は、人工林を中心に木材資源の本格的な利用期を迎えている。林家の高齢化や林業経営体の弱体化で伐採できず、宝の持ち腐れになる恐れが指摘されている。人材確保に向け、林業経営体の労働環境の改善を急ぐ必要がある。林野庁は3本の柱をてこに林業改革に取り組む考えだ。第一に、森林所有者に代わって民間企業等が主伐や間伐、造林ができる新しい「森林経営管理制度」の導入だ。これを“エンジン”に、本格的な山の手入れや伐採に乗り出す考えだ。林業経営に適さない森林は、所有者に代わって市町村が管理する。第二に、森林環境税の導入だ。1人当たり年1000円を個人住民税に上乗せして徴収し、年間600億円の財源を確保。森林の管理や、間伐、担い手確保、木材利用の促進などに充てる。そして、第三が人材育成・確保である。「伐(き)って、使って、植える」という循環利用を担うための人材を確保することである。2018年度の林業白書は人材の確保に焦点を置き、当面する大きな課題と位置付けた。その認識に異論は無い。事実、地域の森林整備の担い手で、植林、下刈り、間伐の受託面積の6割を占める森林組合の9割が人材不足だ。また、民間事業体も中小規模が多く、後継者の確保が課題であることを浮き彫りにした。安い外材に頼って国内林業を軽視してきた結果である。人材不足の解決の方向として白書は、機械化や情報通信技術(ICT)などの新たな技術の導入でコスト削減を進め、林業従事者の労働条件の改善に取り組む必要性を強調した。実際に成果を上げた事例も示した。労働条件の改善は、人材確保の有効な手段であり、方向性は一定に理解できる。しかし、全産業的な労働力不足の中で、人材を確保することは容易ではないはずだ。賃金や休日の確保などの労働環境の改善を国家的に支援するとともに、林業の魅力を若い人にPRする必要がある。林野庁は、その具体策を早急に示すべきだ。林野庁が取り組む改革で懸念されるのが、伐採だけが進んで“はげ山”になることだ。民有林に加え、国有林に関する法改正では長期の「樹木採取権」を企業に与えることになった。植林を怠らないよう適切に指導すべきだ。また、山村振興に取り組む小さな林業経営を排除するようなことがあってはならない。今後、森林管理で市町村の役割が高まるが、林業に詳しい職員はごく一部に限られる。市町村の林務担当職員を増やすなど市町村の体制充実も必要だ。森林をきちんと維持するための基本は、現地に住む林家の経営を安定させ、きめ細やかな森の管理が行えるように環境を整えることだろう。後継者が育つように新しい技術の指導や国産材の販売先の確保などでの支援が必要だ。急ぐべきである。

*9-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/519457/ (西日本新聞 2019/6/18) JR九州が事業承継ファンド設立へ 利益増、地域支援も
 JR九州が、後継者不足に悩む地場中小企業の受け皿となる事業承継ファンドを設立する方針を固めたことが分かった。鉄道関連や飲食など、自社の事業と関連性が高い地場企業に資本や人材を投入。利益拡大とともに地域経済の下支えにつなげる考え。事業承継ファンドは地方銀行などの出資で設立されるケースが多いが、鉄道会社が乗り出すのは全国的にも珍しい。鉄道部品関連や食品、流通分野などから投資対象となる地場企業を探し、1社当たり数千万円から数億円を投じて経営権を取得するなどする。各事業に精通した人材もJR九州側から派遣する。6月1日付で社内に担当人員を配置。本年度中にも資本提携や買収による経営参画を始めてノウハウを積み上げ、早ければ2021年度にもファンドを設立する。通常の合併・買収(M&A)と違い、ファンドは機動的な投資判断が可能になるなどの利点がある。運営には専門会社を入れることも検討する。中小企業の後継者不足は全国で深刻化。帝国データバンクの調査で「後継者がいない」と答えた九州の企業の割合は、18年は61・2%に達した。廃業する中小企業が増えれば、沿線人口の減少や地域衰退につながる。JR九州は本業の鉄道事業で実質赤字が続いており、自社の多角化の経験を活用することで、利益の底上げを図る狙いもある。

<保守系議員の女性蔑視と参院選の野党共闘>
PS(2019/6/21追加):*10-1、*10-2に、超党派の保守系議員でつくる日本会議国会議員懇談会は、「①男系男子による皇位継承を維持し、女性宮家創設に反対」「②126代にわたって例外なく維持されてきた男系による皇位継承の伝統に基づく男系男子孫による皇位継承が可能となる方策を要望」「③Yはずっと形が変わらず続いていき、Xとは違う」「④皇族の減少に伴い、女性皇族が結婚を機に皇族の身分を離れた後も活動を継続できるよう政府に申し入れる」としたそうだ。③の「Y染色体はXと異なり、形が変わらない」というデータはないので科学的根拠にはならない。ただ、次世代に誰の遺伝子が伝わるかを見ると、愛子さまが天皇となられる事例では、その次の世代には雅子さま由来のX遺伝子と美智子さま由来(天皇経由)のX遺伝子が伝わる確率が1/2ずつあり、どちらも上皇由来ではないが、男系男子のY染色体なら必ず天皇・上皇由来である。しかし、ヒトの染色体は23対あり、XY染色体はそのうちの1対にすぎない上、ミトコンドリアや細胞質からの遺伝は母方からのみだ。従って、①②も、「126代も続いた伝統だから男系男子」という気持ちは伝わるが、伝統も最新の科学や社会環境を考慮して変化しなければ、それ自体が続かなくなることを無視していると思う。さらに、④は、「(大した働きは期待しないが)人手不足だから、既婚女性は非正規かボランティアで働け」という、これまで日本女性に採ってきたのと同じ失礼な態度で、やはり女性蔑視である。
 そのような中、*10-3に「参院選野党共闘は、明確な選択肢打ち出せ」と書かれており、誰がやろうとよい政策を進めてもらえばよいため「安倍一強打破」は国民にとっての選択肢にはならないが、「市民連合」が示す①改憲反対 ②安保法制廃止 ③消費税凍結 などの政策は選択肢になる。年金に関しては、今の野党は「有権者の立場に立った社会保障の姿」を示しているとは言えず、発生主義に基づく引当方式への移行と移行期間における全世代の二重負担排除くらいは掲げるべきで、国民のストックである国有財産をうまく使えば、それは可能なのである。
 改憲については、安倍首相は、*10-4のように、「①憲法について、ただ立ち止まって議論をしない政党か」「②正々堂々と議論する政党か」を選ぶ選挙にしたいと言われたそうだ。しかし、これまでの議論で自民党の改憲案とその理由を理解した上で、「改憲を議論するのは、現在の日本国憲法の理念がもっと議員や国民に浸透してからにすべきであり、現在は時期尚早だ」という判断もあり、スタンスは①②だけではない。そして、安心して議論できるためには、強行採決して国民投票に懸けられないよう、参議院の改憲勢力は2/3未満にすべきだ。

*10-1:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190620-00000157-kyodonews-pol (Yahoo 2019/6/20) 男系男子の皇位継承維持 女性宮家創設に反対
 超党派の保守系議員でつくる「日本会議国会議員懇談会」は20日、国会内で総会を開き、男系男子による皇位継承を維持し、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」創設に反対する内容の基本方針を決めた。今後、具体的な方策や提言案をまとめ、政府や各党に要望する。基本方針は、安定的な皇位継承を確保するための解決策について「126代にわたり、古来例外なく維持されてきた男系による皇位継承の伝統に基づき、男系男子孫による皇位継承が可能となる方策」を要望した。皇族の減少に伴い、女性皇族が結婚を機に皇族の身分を離れた後も活動を継続できるよう政府に申し入れるとした。

*10-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2019061101051&g=pol (時事 2019年06月11日) 「Y染色体」に触れ男系継承評価=自民・古屋氏
 自民党の古屋圭司元国家公安委員長は11日、皇位が男系でのみ継承されてきた歴史について、男性に特有の「Y染色体」に触れ、「何百年、何千年前は遺伝子工学の知識はなかったと思うが、先人の素晴らしい知恵だったと思う」と評価した。人間の性を決める染色体にはXとYの2種類があり、古屋氏は「Yはずっと形が変わらない、続いていく。Xとは違う。男女差別という問題ではなく、あくまでも染色体の科学的根拠がベースだ」と語った。古屋氏は、超党派の保守系議員で構成する「日本会議国会議員懇談会」会長として、同懇談会の皇室制度に関する検討チームの会合であいさつした。

*10-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019062102000199.html (東京新聞 2019年6月21日) 参院選野党共闘 明確な選択肢打ち出せ
 予想される参院選投票日まで一カ月。野党は二〇一六年に続き、焦点となる三十二の改選一人区で候補を一本化し戦う態勢を整えた。一強多弱構造を崩す対立軸となり得るか、共闘の真価が問われる。立憲民主、国民民主、共産など五党派の候補者一本化協議は、四月の統一地方選後に急進展した。政府・与党内から衆参同日選の観測が漏れ出し、立民、国民を支援する連合からは「(安倍)一強政治を何としても打破しないといけない」(神津里季生会長)と、悲壮な声も飛び出した。野党票が分散すれば、一人区で与党候補に漁夫の利を与えるのは明らかだ。危機感が共有され、二十四区に公認を立てていた共産も相次ぎ候補取り下げに応じた。前回の野党共闘では地域事情に合わせた協議の積み重ねで候補を絞り込んだのに対し、今回は一月の野党党首会談で合意し中央レベルで協議を進めた影響も大きい。ただ、一本化は共闘の「スタートライン」にすぎず、選挙の公示が迫っても共通公約や相互支援の在り方は明確でない。政策は、民間の「市民連合」が五党派に九条改憲反対、安保法制廃止、十月の消費税増税見送りなど十三項目を要望し、各党派代表が署名した。しかし、扱いについては党派ごとに認識が異なり、共通の「旗」となっていない。にわかに広がった年金不信を踏まえ、有権者の立場に立った社会保障の将来像など選択肢を共同で示すことができれば、野党の存在感は一段と高まるのではないか。相互支援態勢では、五党派間で「最大限の協力で勝利を目指す」と合意したにすぎない。各党派の相互推薦は無所属候補にとどまる見込みだ。公認も含む全一本化候補に対し、実効性のある協力関係が築けるかが今後の課題となる。一人区の野党側の戦果は一六年参院選で十一勝二十一敗。共闘が整わなかった一三年が、当時の三十一選挙区中二勝二十九敗だったのと比べると善戦だった。さらに一七年衆院選の比例代表で見ると、立民、旧希望、共産、社民の合計票は約二千六百十万票で自民、公明両党の票を六十万票近く上回る。昨年以降、沖縄では野党系の「オール沖縄」候補の大勝が相次ぐ。参院選でも与党候補に十分対抗可能だろう。旧民進党分裂に伴う主導権争いや基本理念の違いが表面化しがちな野党共闘だが、残り一カ月。有権者の信頼を集める政権批判の受け皿づくりに努める局面だ。

*10-4:https://www.jiji.com/jc/article?k=2019062101353&g=pol (時事 2019年6月21日) 憲法改正、参院選争点に=安倍首相「議論する政党選ぶ選挙」
 安倍晋三首相は21日夜のインターネット番組で、憲法改正が夏の参院選の主要争点になるとの考えを強調した。「憲法について、ただただ立ち止まって議論をしない政党か、正々堂々と議論する政党か、それを選ぶ選挙だ。そのことを強く訴えていきたい」と表明した。首相は、衆参両院の憲法審査会の論議が進まない現状に関し「真剣にどういう国をつくっていくかを議論する大切な場で議論がなされていない」と述べ、野党の対応を批判。改憲について「最終的には国民が国民投票で決める。その国民の権利すら奪っている」と指摘した。

<社会保障の充実とその財源としてのエネルギー資源>
PS(2019年6月22、28、29日追加):*11-1のように、熊本市は環境省の委託を受けて熊本大等と運行実験を行い、実用性やCO2の排出削減効果を確認していたEVバス1台を2019年12月から熊本城の周遊バスに採用するそうだ。EVは、再生可能エネルギー由来の電力を使う限りCO2排出量が0であり、海外に支払っている燃料代を節約して国内で廻せるメリットもある。しかし、日本では、EVバスの新車が8千万円、中古でも4千万円もするそうで、必ず価格の高さが日本製普及のネックになるが、これは高コスト構造が原因だ。ちなみに、中国のEV最大手BYDは、*11-2のように、航続距離200km、充電時間3時間の新小型EVバスを日本市場に投入し、その価格は税抜き1950万円だそうだ。私は、日本の環境先進都市は、BYDの小型EVバスだけでなく主力の乗用車もタクシーとして導入すれば、日本メーカーの刺激になってよいと思う。
 日本政府は、*11-3のように、2019年度の経済財政運営と改革の基本方針を、①就職氷河期世代への支援 ②最低賃金上げ ③70歳までの就業確保策の検討 ④幼児・高等教育の無償化 ⑤終身雇用や年功序列など日本型雇用の見直しや兼業・副業解禁など企業改革を促す とする閣議決定をしたそうだ。私は、①はよいが、②は地域によって物価水準が異なるのに全国一律の最低賃金を採用したり、生産性と合わないほど最低賃金を引き上げたりすると、雇用が減少すると思う。また、③については、*11-4のように、努力義務ではザル法となり、高齢者をワーキングプアにするので不十分だ。さらに、④及び⑤のうちの年功序列見直しは重要だ。
 これに対し、日経新聞等のメディアは、⑥社会保障の持続性確保のための消費税率10%引き上げ後の国民の負担増・給付減に繋がる改革に踏み込まなかった ⑦国と地方の基礎的財政収支(PB)の黒字化目標を25年度まで先延ばしした などと旧来型の思考停止した批判を繰り返している。しかし、社会保障財源については、これまで述べてきたようなエネルギー改革、雇用改革、国の収支を管理しながら国有財産を有効に使う行財政改革等を行えば、消費税増税は不要なのである(このブログのマニフェスト参照)。
 また、*11-5のように、共産党が参院選の公約に、⑧マクロ経済スライドの廃止 ⑨低年金者への月額5000円の上乗せ給付 ⑩最低賃金は全国一律とし時給1500円をめざす ⑪消費税率10%引き上げの中止 ⑫安全保障法制の廃止 を盛り込んだそうだが、このうち⑧⑪⑫は賛成だが、⑨の月額5000円の上乗せ給付では殆ど役に立たず、⑩は行き過ぎだろう。なお、将来、納めた保険料に応じた額を所得比例部分として上乗せする年金制度(=発生主義による引当方式≒積立方式)にするのなら、月5万円の最低保障年金とマクロ経済スライド廃止の財源を高所得者の年金保険料の上限廃止に求めても文句はないが、これまで高所得者の年金保険料に上限があったり、徴収漏れのケースが多すぎたりしたのがおかしかったのである。さらに、歳出の見直しという視点から、金食い虫の原子力発電所の再稼働を中止して全ての原発で廃炉のプロセスに入るのは、将来の負債やリスクを少なくするために重要なことだ。
 なお、社民党が、*11-6のように、「⑪改憲反対」「⑫社会を底上げする経済政策」「⑬最低賃金全国一律時給1500円を目指す」「⑭消費税率10%への引き上げ中止」「⑮マクロ経済スライドによる基礎年金の給付抑制中止」「⑯保育士給与の月5万円引き上げ」「⑰財源確保策として大企業への法人課税強化や防衛費の見直し」などを参院選の公約にしたそうで、⑪⑫⑭⑮は賛成だが、⑬は物価水準が異なる地域で生産性以上の時給を課せば、事業(特に中小企業)が成り立たなくなるため賛成できない。また、⑯も、幼児教育・保育を無償化した上で、義務教育開始年齢を3歳にするなどの全体的な教育改革が必要なので、保育士さえ増やせばよいわけではないだろう。⑰の防衛費の見直しについては、単価が高いだけで役に立たないものも多そうなので重要だ。「大企業への法人課税強化」は役割を終えた租税特別措置法の見直しは有益であるものの、世界競争をしているので大企業だからゆとりがあるとも限らないため、具体的に言うべきだ。また、共産党がよく使う「富裕層への課税強化」は、“富裕層(年収380万円以上?!)”の定義を明確にしなければ、一億総中流階級意識の日本では殆どの有権者を敵に廻す。何故なら、現在は「蟹工船」「女工哀史」のような「資本家は金持ちで欲張りな搾取者」「労働者は貧しい被搾取者」という時代ではなく、出資している事業者の方が不利な点も多いからである。
 最後に、日本維新の会は参院選のマニフェストで、*11-7のように、⑱年金は「賦課方式」から「積立方式」に変更 ⑲年金支給開始年齢は段階的引き上げ ⑳税金と年金等の保険料を一括徴収する「歳入庁」を設置 ㉑消費税増税凍結 ㉒財源は「身を切る改革」をして国会議員報酬・定数は3割減、国家公務員人件費は2割減 としているようだ。私は、⑱には賛成で、必要な積立金額を長期の低利(orマイナス金利)国債で賄うのがよいと考える。⑲は、定年の廃止や定年年齢の引き上げと連動しなければ困るが、働いていた方が医療費や介護費も少なくてすむので一石二鳥だ。⑳は、税金と年金等の保険料を一括徴収しても年金や医療・介護費用の源資は、(ごっちゃにするのではなく)きちんと分けて保管・運用するのならよい。これにエネルギー改革・歳出改革と女性や外国人労働者の活躍を加えれば7~20兆円は簡単に出る筈で、消費税は消費に対するペナルティーとして働くため廃止も視野に入れるべきだ。なお、日本維新の会は、「身を切る改革」を看板として民主主義のコストである議員報酬や定数削減をよく言われるが、これによって節約される金額は桁が小さすぎ、議員報酬が減ったからといって年金を減らされるいわれはないし、報酬が低ければ優秀な人が集まらず、金持ちばかりが議員になって生活感のない政策を行うため、国民にとっては利益がないと考える。

    
現役・再雇用・年金時代の家計収支  2019.6.21東京新聞   2019.6.22東京新聞

(図の説明:左図のように、子育中の貯蓄は困難であるため、子育後に老後資金を準備をしなければならないが、再雇用での貯蓄は難しく、年金時代は貯蓄を取り崩す生活になる。従って、中央の図の「マクロ経済スライド」は本当に廃止すべきだ。また、右図の改正高齢者雇用安定法による高齢者雇用は非正規での再雇用を認めているため、再雇用後、著しく減収する人が多い)

*11-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/519998/ (西日本新聞 2019年6月20日) EVバスで熊本城周遊 市が導入、12月から運行
 熊本市の大西一史市長は19日、電気自動車(EV)のバス1台を、12月から市が運行する熊本城周遊バス「しろめぐりん」に導入する考えを明らかにした。EVバスは昨年2月から1年間、市や熊本大などが環境省の委託を受けて運行実験を行い、実用性や二酸化炭素(CO2)排出の削減効果を確認していた。県内で路線バスへのEV導入は初めて。市によると、導入するEVバスは乗客乗員27人乗り。1回の充電で約50キロ走行でき、熊本駅から熊本城周辺の1周約10キロを1日に4、5便運行する。CO2排出量はほぼゼロの見込みで、車体にはEVをアピールするラッピングを施す。災害時には、登載バッテリーから外部への電気の供給もできるという。運行実験に参加したイズミ車体製作所(大津町)が保有する中古バスをEVに改造する。バスはリース会社が保有し、市は5年間のリース契約を結ぶ。市は5月に国から事業計画の認可を受けており、改造費など市の負担は約4千万円を見込む。市によると、全国ではEVバスの新車導入例はあるが、中古バスを改造してEV化するのは珍しいという。市は「EVバスを新車で購入すると約8千万円かかるとされ、費用が抑えられる」としている。

*11-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42874120V20C19A3916M00/ (日経新聞 2019/3/25) BYD、日本で新EVバス 24年に1000台
 中国の電気自動車(EV)最大手である比亜迪(BYD)の日本法人、ビーワイディージャパン(横浜市)は25日、新たな小型EVバスを日本市場に投入すると発表した。国内の小型EVバスとして航続距離は最長となるという。同日から予約を受け付け、中国で製造し、2020年春から納車する予定。24年までに1000台の販売を目指す。新型車は全長7メートル、車幅2メートル、車高3メートル。地方の細道でも走れるように小回りの効く大きさにした。1回の充電は3時間で済み、航続距離は従来車より1.3倍の200キロとなった。一般的なEVバスの価格は1億円台とされ、高い価格が課題になっていた。新型車は税抜き1950万円と購入しやすい価格帯に設定した。BYDグループは、世界50カ国・地域で5万台のEVバスを納めている。日本では15年に京都市でEVバスを納車後、4つの自治体で計21台の大型・中型のEVバスを納品している。日本車メーカーでは20年の東京五輪で、トヨタ自動車が燃料電池車(FCV)のバスやEVなど3000台を走らせる計画で開発を進めている。また日野自動車が12年にEVバスを販売し、東京都羽村市が導入した。世界では二酸化炭素(CO2)や排出ガスの環境規制が厳しくなっており、自動車メーカーは環境対応が求められる。だが主要な日本車メーカーはEVバスの開発に消極的な姿勢のままだ。ビーワイディージャパンは緊急時に運転手が操作する「レベル3」の自動運転機能を後付けできる製品も、20年に販売するという。日本で導入済みのEVバスや今後販売の小型EVバスに搭載可能で、自動運転バスでも先陣を切りたい構えだ。25日に都内で記者会見した同社の花田晋作副社長は、主力の乗用車を日本市場に投入することに関し、「EVの市場規模が小さく、日本での展開はない」と強調。他の日本車メーカーとの提携も「求めがあれば、そのような出会いもある」とした。最後に「交通弱者の高齢者が増え、地方では路線バスの需要が増える。低価格でEVを普及し、電動化社会を進めたい」と話していた。

*11-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190622&ng=DGKKZO46415190R20C19A6EA1000 (日経新聞社説 2019年6月22日)厳しい改革を忘れた骨太の方針
 政府は21日、2019年度の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)を閣議決定した。7月の参院選を意識したのか、就職氷河期世代への支援や最低賃金上げなど有権者に聞こえのよい政策が並んだ。消費税率10%引き上げ後の社会保障・財政改革など国民の負担増につながる厳しい改革には踏み込まなかった。成長戦略を含む骨太の方針では、70歳までの就業確保策の検討、幼児・高等教育の無償化のほか、就職氷河期世代への支援策などを盛り込んだ。成長戦略の実行計画では、日本が第4次産業革命を世界で主導できるかどうかは「この1、2年が勝負」としたうえで、組織に閉じこめられている個人を解放し、自由に個性を発揮できる社会の実現を提唱。終身雇用や年功序列など日本型雇用の見直しや兼業・副業解禁など企業に改革を促した。民間の変革努力は必要だが、政府の改革の取り組みは十分だろうか。巨大IT(情報技術)企業との公正競争を促す組織・法制整備、業態別の縦割り金融規制を見直す法整備などを盛り込んだが、成長を促す改革は迫力不足だ。何よりも問題なのは「経済財政運営と改革」という主題がぼやけてきていることだ。安倍晋三政権は昨年、当初は20年度としていた国と地方の基礎的財政収支(PB)の黒字化目標を25年度まで先延ばしした。骨太の方針では10月に消費税率を10%に予定通り上げることは明記したが、黒字化目標への道筋は描いていない。さらに高齢化がピークに達し、医療・介護など社会保障費が増大する40年度までについては議論すら進んでいない。社会保障・財政健全化の取り組みは消費税率の10%への引き上げで完結するわけではない。長期の政権を担う安倍首相にはその後の改革の青写真もしっかりと描く責任がある。当面の課題は、団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる22年以降に増大する医療など社会保障費をどう抑制するかだ。この問題については「20年度の骨太の方針で、給付と負担のあり方を含め社会保障の総合的かつ重点的に取り組むべき政策をとりまとめる」と具体策には踏み込まなかった。社会保障の持続性確保には、歳出抑制や負担増などの議論は避けられない。政府は国民に事実を正直に説明し政策を訴えるべきだ。

*11-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201906/CK2019062202000157.html (東京新聞 2019年6月22日) <働き方改革の死角>高齢ワーキングプア誘発 定年後の再雇用「ザル法」
 政府の成長戦略で柱とされる高齢者の雇用機会確保。企業に「70歳までの雇用延長」を努力義務として課すが、現状でさえ不安にさらされる高齢者雇用の断面を見た。「Aさんは明日から契約社員になり、営業の仕事からは離れます」。神奈川県内にある投資コンサルタント会社に勤めるAさん(60)。定年日当日の今月中旬、会社は突然、社員を集めて発表した。「こんな強引なやり方が許されるのか」。Aさんはショックを受けた。外資系銀行での資金運用経験など金融知識を買われ、転職してきて以来十年間、営業最前線で成果を上げてきた。会社は「定年後も営業をやってもらう。給料も従前どおり」と言っていたが、定年が間近に迫った今月初め、態度をひょう変させた。定年後再雇用に際し、会社が労働条件通知書に記した給料は、定年前の六割減。仕事内容は「簡単な事務作業」。頭の中が真っ白になったAさん。以来、定年後の条件を巡って会社と押し問答を続けてきた。大学に入学したばかりの子どもがいる。給料も仕事内容も受け入れがたいが、「(辞めるのは)悔しい」と子どもに言われ、Aさんはとりあえず働き続けることにした。
    ◇  ◇ 
 高齢者雇用の根幹となる高年齢者雇用安定法(高年法)。「六十五歳までの安定した雇用を確保する」と謳(うた)い、企業に(1)定年の引き上げ(2)継続雇用(再雇用)(3)定年制廃止-のいずれかを義務付けている。だが、実際には厚生労働省調査では企業の八割が(2)の再雇用を選んでいる。「雇用契約をいったん切ると、待遇切り下げが可能になるから」。労働問題に詳しい安元隆治弁護士が言う。

*11-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190622&ng=DGKKZO46413490R20C19A6EA3000 (日経新聞 2019年6月22日) 年金給付の抑制廃止 共産が参院選公約
 共産党は21日、7月の参院選の公約を発表した。高齢者が受け取る年金を抑える「マクロ経済スライド」の廃止や、低年金者への月額5000円の上乗せ給付などを掲げた。最低賃金は全国一律とし時給1500円をめざす。消費税率10%引き上げの中止や安全保障法制の廃止を盛り込んだ。志位和夫委員長は記者会見で「年金問題が大きな争点になってきた」と指摘した。マクロ経済スライド廃止の財源は、高所得者の年金保険料の見直しなどで賄う。将来は全ての高齢者に年金を月5万円保障したうえで、納めた保険料に応じた額を上乗せする年金制度に変えるとした。最低賃金は「ただちに全国どこでも1000円に引き上げ、速やかに1500円をめざす」と記した。原子力発電所に関しては「再稼働を中止し、全ての原発で廃炉のプロセスに入る」と記した。

*11-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190628&ng=DGKKZO46645440X20C19A6PP8000 (日経新聞 2019年6月28日) 社民公約、最低賃金一律1500円
 社民党は27日、「社会を底上げする経済政策」を柱に据えた参院選公約を発表した。最低賃金を全国一律とし、時給1500円を目指すと明記した。消費税率10%への引き上げ中止や憲法改正反対を掲げた。「マクロ経済スライド」による基礎年金の給付抑制中止や、保育士給与の月5万円引き上げも訴えている。これらの財源確保策として大企業への法人課税強化や防衛費の見直しを挙げた。

*11-7:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019062601002289.html (東京新聞 2019年6月27日) 維新公約、年金は積み立て方式に 消費増税は凍結
 日本維新の会が夏の参院選で掲げるマニフェスト(政権公約)の全容が26日、判明した。現役世代が納めている保険料を今の年金受給者への支払いに充てる現行の「賦課方式」から、自分が積み立てた保険料を老後に取り崩して受け取る「積み立て方式」への移行を提起。国会議員や公務員の給与を削減して財源を捻出し、消費税増税を凍結する。27日に発表する。看板政策とする「身を切る改革」の必要性を改めて強調。国会議員の報酬と定数をそれぞれ3割カット、国家公務員の人件費を2割削減する。年金支給年齢の段階的な引き上げ、税金と年金などの保険料を一括徴収する「歳入庁」設置も提案した。

<「マクロ経済スライド」の廃止について>
PS(2019年6月23日追加):*12-1のように、「マクロ経済スライド」は国民にわかりにくくしながら年金を7兆円減らす仕組みで、これが完全に実施されると年金給付は7兆円削減される。それに消費税増税とインフレ政策が加わるので、今でも生活費が不足している高齢者はますます困窮する。少し前、私が、暗くなってスーパーから帰ろうとしたところ、高齢の男性が道に座り込んで荒い息をしておられたので具合でも悪いのかと思って声をかけたら、たった一つモノが入ったスーパーのカートを押して走ってきた万引きだとわかった。そのため、そっとそのまま帰ったが、高齢者からぶんだくることしか考えない政策を作った人たちの一食分にも満たない金額を支払えない高齢者が、今の日本には少なからずいることを忘れてはならない。
 なお、*12-2のように、「骨太の方針」が出て消費税率10%への引き上げを明記し、増税後の景気下支えのための臨時経済対策費の計上が示されたそうだが、何かと理由をつけては経済対策を行うため、消費税導入後、国の債務は増え続けている。私は、「幼児教育・保育の無償化」はよいと思うが、未だ教育の質の向上と連動していないのが残念だと思う。また、幼児教育・保育を無償化すれば、それが景気対策になる筈であり、「社会保障財源は消費税」と(世界で唯一)決めつけるのもやめるべきだ。

 
税収・歳出・国債残高 2018.12.18東京新聞 2018.12.21西日本新聞 2018.3.19東京新聞

(図の説明:1番左と左から2番目の図のように、1989年《平成元年》の消費税導入後、景気対策と称する歳出拡大が続いた結果、国の財政状態はむしろ悪化した。また、弥縫策のような歳出が多いため、右から2番目の図のように、実質GDP成長率は0付近で推移している。さらに、人口に占める割合の多い高齢者の収入を削減する政策になっているため、1番右の図のように、エンゲル係数《貧しさの指標》は上がりつつあり、本当に必要とされる消費財の需要も増えない)

*12-1:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-06-23/2019062301_01_1.html (赤旗 2019年6月23日)年金7兆円減 首相認める、マクロ経済スライド廃止が最大焦点に
 年金給付を自動的に削減する「マクロ経済スライド」が完全実施されると、年金給付は7兆円も削減される―。高齢者のくらしを貧困に突き落とすマクロ経済スライドの恐るべき実態が、安倍晋三首相自身の口から明らかにされました。安倍首相は22日に出演した民放テレビ番組「ウェークアップ!ぷらす」(日本テレビ系)で、日本共産党のマクロ経済スライド廃止の提案に言及し、「やめてしまってそれを保障するには7兆円の財源が必要です」と発言しました。この問題をめぐって安倍首相は、19日の国会の党首討論で日本共産党の志位和夫委員長がマクロ経済スライドの廃止を提案した際、「ばかげた案だ」などと批判し、唐突に7兆円という数字を持ち出していました。民放番組で安倍首相自ら、マクロ経済スライドが7兆円の年金給付削減という痛みを国民に押し付ける仕組みだと明らかにしたことで、マクロ経済スライドを続けて年金給付を7兆円削るのか、それとも廃止して「減らない年金」をつくるのかが、年金問題の最大焦点に浮上しました。党首討論後、志位氏の求めに厚生労働省が提出した資料によれば、7兆円はマクロ経済スライドによる基礎年金(国民年金)給付の減額幅を示したもので、2040年時点で本来約25兆円になるはずの給付額は18兆円に抑制されることになっていました。基礎年金給付の実に3分の1がマクロ経済スライドで奪われる計算で、現在でも6万5000円にすぎない基礎年金の満額はさらに約2万円も削り込まれることになります。基礎年金しか入っていない低年金者ほど打撃が大きい、最悪の「弱者いじめ」の仕組みであることが浮き彫りになりました。日本共産党は21日に発表した参院選公約で、マクロ経済スライドを廃止するための財源として、年収1000万円を超えると保険料負担率が低くなる高所得者優遇の保険料制度の見直し、200兆円もの巨額積立金の計画的取り崩し、最低賃金引き上げや非正規雇用の正社員化による保険料収入増加を掲げています。

*12-2:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/318070 (北海道新聞 2019/6/23) 骨太の方針 問題の先送りも同然だ
 政府はおととい、経済財政運営の基本指針である「骨太の方針」を閣議決定した。予定通り10月に消費税率を10%に引き上げることを明記し、増税後の景気を下支えするため本年度に続き来年度予算でも臨時の経済対策費を計上する方針を示した。米中貿易摩擦などにより景気悪化のリスクが高まれば、新たな経済対策を講じることも示唆した。就労促進で内需を支えようと、就職氷河期世代の正社員化や最低賃金の引き上げ、在職老齢年金制度の廃止検討も盛り込んだ。景気対策が色濃くにじむ内容だが、裏付けとなる財源をどう賄うのかはほとんど触れていない。社会保障改革についても具体策には踏み込まず、来年の骨太の方針で重点政策をまとめるという。これではあからさまな懸案の先送りではないか。参院選を意識して聞こえのいい政策ばかりを列挙したようにしか見えない。財政健全化では、国と地方を合わせた基礎的財政収支を2025年度に黒字化する目標を据え置いた。だが今回盛り込んだ景気対策などの新たな財源を確保できなければ目標達成が遠のきかねない。働いて一定の収入がある高齢者の年金を減らす在職老齢年金制度も、年金財政に影響させずに廃止するには1兆円の財源が必要だ。年金額が減ることを理由に就労意欲がそがれるのを防ぐことで、元気に働ける高齢者を増やし、社会保障の支え手に回ってもらうことは期待できよう。とはいえ、将来世代へつけ回すことは許されない。高所得の高齢者優遇にならない仕組みを含め、丁寧な制度設計が求められる。消費税増税対策も理解に苦しむ。対策費は本年度当初予算と同規模の2兆円程度となる公算が大きい。これは増税に伴う実質的な国民負担増に匹敵する額である。膨らむ社会保障費を皆で賄うことが本来の理念のはずだが、これでは何のための増税なのか。増税する一方で景気対策を打つ。アクセルとブレーキを同時に踏む、つじつまの合わない経済運営と言わざるを得ない。増税に耐えうる経済状況にないなら増税自体を見送るのが筋だ。安倍晋三政権の看板政策で、消費税の増税分を財源とする「幼児教育・保育の無償化」を10月に始めるために税率引き上げを見送ることもできないなら本末転倒だ。「骨太」と呼ぶにはもろさが目立つ。経済安定への道しるべとは到底言えまい。

<支え手・労働力不足の解決へ>
PS(2019年6月24、25、26日追加):*13-1のように、シリア・アフガニスタンなどの中東やミャンマーのロヒンギャが上位を占める難民は、2018年末に7080万人となり、その半数が子どもだそうだ。その解決策として、「①緊急の生活支援」「②難民を受け入れている周辺の貧しい国への支援」「③日本はUNHCRへの拠出額で5番目だが、2018年の難民認定申請者数1万493人に対して認められたのは42人」「④難民を出さない取り組みが必要」「⑤難民の自立を助け、安全な帰還を促す」「⑥シリア難民を最大150人留学生として受け入れている」「⑦難民の雇用を始めたファーストリテイリングは、2019年4月末で59人が地域限定社員等として働く」などが書かれている。
 このうち①②③は、決して自国民が豊かとは言えない日本が、難民を受け入れることはせず金で解決しようとしている点で、いつもながらの貧しい発想力である。④⑤は、難民発生国、難民受入国の課題であり、第三者である日本ができることは殆どない。そのような中、支え手が不足している日本で、⑥⑦のように難民を受け入れて教育したり、労働力として活躍させたりするのがよいと、私は考える。
 そのため、*13-2の「世界に開かれた国として多くの留学生を受け入れ、高度な技術や専門性を育成し、それによって日本の国際競争力を高め、留学生には母国との懸け橋として活躍してもらうことを目的として、留学生30万人を受け入れる」という計画はよい。現在は、農林漁業・製造業・サービス業の人手不足が顕著になっており、多様な人材を育てれば文明の相乗効果でより有用な財・サービスを作りだすことができると思う。そのため、東京福祉大のような最悪のケースを持ち出して今後の留学生拡大まで否定するのではなく、例えば、九州でも、今後必要となる分野なら大学のみならず高校や高専も留学生を増やしてよいだろう。*13-3のように、高等教育の費用も生活保護世帯の自宅生や児童養護施設の入所者など収入の少ない人は、特に給付型奨学金の増額や授業料の減免などがある時代になったのは大きい。
 なお、*13-4のように、日本の「女子学生の制服100年の歩み」は、1世紀前の1919年を境に制服が和装から洋装へと切り替わり、一般の人は当時の身の回りの“普通”にこだわったものの、私立女学校の校長だった山脇房子氏のデザインによる紺色のワンピースと白エリの制服を皮切りに洋装が広がり、昭和に入ってセーラー服が優勢になったそうだ。つまり、学生の制服は、一般の人に服装から新しいよい習慣を身につけさせる働きもしてきたわけである。そのため、女性にスカーフやヒジャブ・ニカブなどを強制する地域から来た外国人・難民の子女には、まずは学校と制服で女性を宗教による女性差別の制約から解放してあげたいと思う。

    

(図の説明:『ところざわのゆり園(西武グループ運営、https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/iitokoro/enjoy/kanko/flower/syogyo_20140508131620678.html 参照)』は、約3万平方メートルの自然林に50種・約45万株のユリが咲き誇って森林浴と散策が楽しめるそうだが、森林に花を植えてもよいわけだ。そのコンセプトは、目から鱗だった)

*13-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190624&ng=DGKKZO46463940S9A620C1PE8000 (日経新聞社説 2019年6月24日) 難民問題は最大の人道危機だ
 増え続ける難民にどう対処するか。日本を含む世界に突きつけられた課題である。20日の「世界難民の日」にあわせ国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が報告書を発表した。2018年末の難民は7080万人と過去最高を更新した。1年前に比べ230万人増加し、その半数が子どもだった。上位を占めたのは、シリアやアフガニスタンといった中東からのほかミャンマーのロヒンギャ難民など。第2次世界大戦以降で最大級の人道危機に直面していることを、国際社会は認識すべきだ。まずは、緊急に必要な生活支援を的確に、かつ効果的に行わなければならない。難民を周辺の貧しい国が受け入れているという現実があり、その負担を軽減する国際的な体制作りが不可欠だ。難民の自立を助け、安全な帰還を促すとともに、そもそも難民を出さないようにする多角的で中長期的な取り組みが重要になる。難民を生む原因である紛争や対立の根っこには貧困があるからだ。日本にとってもひとごとではない。UNHCRへの拠出額では5番目で、国際協力機構(JICA)を通した開発協力などを実施している。しかし、18年の難民認定申請者数1万493人に対し、認められたのはわずか42人だった。17年より22人増えたが、先進国のなかでは極端に少ない。これとは別枠で、シリア難民を最大150人留学生として受け入れるプログラムなどを実施している。しかし、十分とはいえない。もっと受け入れを増やすのか、海外での支援を重視するのか。議論が深まらないのは国民の関心が低いからだろう。その意味で、民間企業で動きが出ているのは評価したい。難民の雇用を始めたファーストリテイリングでは今年4月末現在、59人が地域限定社員などとして働く。支援物資を海外の難民キャンプに送る企業も増えている。こうした取り組みが、問題を身近に考えるきっかけになることを期待したい。

*13-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/521175/ (西日本新聞社説 2019/6/24) 留学生30万人 内実伴わぬ計画の検証を
 世界に開かれた国として多くの留学生を受け入れて高度な技術や専門性の育成を図る。それによって日本の国際競争力を高め、留学生には母国との懸け橋として活躍してもらう-。そんな理念をうたった国家戦略と現実の落差が浮き彫りになった。戦略とは、2020年までの実現を目指した政府の「留学生30万人計画」、現実とは、東京福祉大で大量の留学生が所在不明になった問題のことだ。計画策定の08年当時、全国で約12万人だった留学生は現在ほぼ30万人に達し、数字の上では目標が達成されている。ところが内実は伴っていない。文部科学省などによると、東京福祉大は定員の明確な規定がない「学部研究生」の枠を大幅に広げるなどして13年度以降、留学生を10倍以上に増やし、18年度は5千人余を受け入れていた。ただ、アパートやビルの一室を教室にするなど教育環境は貧弱だった。この3年間で研究生を中心に留学生1610人が所在不明になっていたという。「大学が真に留学を目的としない外国人を大量に受け入れることは想定外だった」と柴山昌彦文科相は言う。苦し紛れの釈明である。留学名目で大学や専門学校などに籍を置き、在留資格を得る。けれども実態は出稼ぎ目的の事例が多いと、かねて指摘されていた。日本側の人手不足も手伝い、外国人を積極雇用する企業も増えている。東京福祉大は結果として、そうした「需要」の受け皿になっていたのではないか。少子化が進む中、日本の大学は学生の確保に苦慮している。留学生の受け入れ拡大が「ビジネス色」を帯びた面も否めない。政府は東京福祉大に学部研究生の募集を当面見合わせるよう指導した。全大学に留学生の在籍管理の厳格化を求める仕組みを設ける方針も打ち出した。それも遅きに失した感がある。政府はこれまで留学生の数値目標にこだわり、問題を半ば黙認してきた印象が拭えないからだ。留学生の不法残留は近年増加の一途をたどり、今年1月の法務省調査では過去10年間で最多の4708人に上った。政府の計画が、大学のずさん経営や企業の低賃金雇用、外国人の人権侵害、さらには犯罪を助長しているとすれば本末転倒である。無論、大学の自治を尊重し、意欲ある留学生を支援することは重要だ。それを踏まえつつ、政府は「30万人計画」の検証を進めるべきだ。大学の活性化や日本の国際競争力の向上などにどれだけ寄与しているのか。そうした視点での検証作業は、今春スタートした外国人労働者受け入れ拡大策の適正、円滑な実施にも資するはずだ。

*13-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/o/521462/ (西日本新聞2019/6/25) 生活保護世帯は奨学金を増額
 政府は25日、低所得世帯を対象にした大学や短大、高専、専門学校の無償化制度を来春から導入するのを前に、給付型奨学金の額や授業料の減免額を正式に定める政令を閣議決定した。生活保護世帯の自宅生や児童養護施設の入所者は、給付型奨学金の支給額を通常より4100~8300円高い月2万5800円~4万2500円とする。文部科学省によると、夫婦と子ども2人(うち1人が大学生)の家庭の場合、支給額が満額となる世帯年収の目安は270万円未満。年収380万円未満の場合は、支給額が満額の3分の1~3分の2となる。

*13-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14069003.html?iref=comtop_tenjin_n (朝日新聞 2019年6月25日) (天声人語)制服100年の歩み
 女子学生の服装史をさかのぼると、ちょうど1世紀前、1919(大正8)年が大きな節目だった。その年を境に通学服の流れが和装から洋装へと切り替わったからだ。東京の弥生美術館で今月末まで開催中の「ニッポン制服百年史」展を見て学んだ▼内田静枝学芸員(50)によると、明治の初め、女子の通学服と言えば着物だった。官立学校は袴(はかま)を勧めたが、生徒には不評。政府が欧化を急いだ鹿鳴館の時代には一転、ドレスが推奨されるが、浸透しなかった▼1919年夏、画期的な制服を考案したのは私立の女学校長だった山脇房子氏だ。紺色のワンピースと白のエリ。斬新すぎて恥ずかしいとためらう生徒も少なくなかったが、校長自ら率先して着用した▼着物より安くて動きやすい。これを皮切りに洋装が広がる。昭和に入るとセーラー服が優勢に。戦時下には、もんぺ姿を強いられ、嘆く声が聞かれた。戦後の成長期にはセーラー服に加えてブレザーも人気を広げた▼80年代以降、制服のデザインを一新した高校で受験者が急増するなど、制服は学校の経営にも影響を及ぼした。「明治以来、いくら政府や学校、親たちが強制しても、着る本人たちに愛されないと女子の制服はすぐ廃れました」と内田さん▼「女子でもスラックス制服を選べます」――。性的少数者への配慮などから、近年は性別を超えて制服の選択を認める自治体も出てきた。新旧の展示品を見て回りながら、制服は時代の制約と変化の縮図のように感じた。

<ドアホな政策が産業の低迷を生み、国民負担を増やすのだということ>
PS(2019年6月26日追加):再生可能エネルギー由来の電力で豊富な水を電気分解すると、水素と酸素が発生する。つまり、再生可能エネルギーと水が豊富な日本は、水素燃料を自給した上、輸出までできる国であり、(副産物として自然にできるのでなければ)石炭・原油・天然ガスなどの化石燃料から作るよりもCO₂フリーで超安価なのだ。にもかかわらず、*14-1のように、経産省が「水素を軸としてこのような国際協調の輪を広げ」「将来にわたって日本のエネルギー調達を安定させる」などとしているのは、ドアホとしか言いようがない。しかし、このようなことが起こるのは、馬鹿な議員を何度も当選させたり、行政の言うことだから正しいと考えたりなど、主権者たる有権者の責任にほかならないのである。
 また、輸送手段も水素燃料を使えば水しか排出しないため、陸上交通やジェット機だけでなく、*14-2の海運も水素燃料か電力に変更すべきだ。記事には「変更に多額のコストがかかる」と書かれているが、現在は港を汚し公害(外部不経済)を垂れ流して国民に負担させているため、液化天然ガス(LNG)に代替する手間とコストを省き、エンジンだけをすぐに燃料電池に換えたり、船舶を燃料電池船に更新したりすれば、全体としてはより安価にすむだろう。

 
 FCV航空機(IHI製) FCVバス(東京) FCV電車(ドイツ)   FCVトラック


        EV航空機            EV船(石垣島)   EV軽トラック

*14-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190626&ng=DGKKZO46558320V20C19A6EE8000 (日経新聞 2019年6月26日) 水素エネ普及 資源国と連携、サウジで燃料電池車 豪と輸送実験 技術提供テコに協力主導
 政府は水素エネルギーの普及へ資源国との連携を強化する。サウジアラビアで日本の技術を提供して水素ステーションを設けたほか、オーストラリアでは石炭からつくる水素の輸送実験を手掛ける。化石燃料は温暖化対策に逆行すると批判されている。現状ではコストが高いものの環境負荷の小さい水素の開発を通じ、日本は次のエネルギーに注目する資源国との結びつきを強める。「水素など新しい分野での協力も進めたい」。17日、世耕弘成経済産業相と都内で会談したサウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相はこう呼びかけた。水を電気分解してつくる水素は燃やしても水が出るだけで、二酸化炭素(CO2)を排出しない。環境への負荷が小さく「究極のクリーンエネルギー」とされる。サウジアラビアは原油販売への依存を減らすため国内産業の多角化を進めており、原油から生産できる水素に期待をかける。そのサウジアラビアの国営石油会社、サウジアラムコは今月中旬から、水素を供給する「水素ステーション」の実証実験を始めた。トヨタ自動車の燃料電池車(FCV)を導入し、水素活用の方策を探る。技術面で日本が協力し、原油から水素を取り出す技術の実用化なども進める考えだ。水素は石炭などからもつくることができる。このため埋蔵する化石燃料を環境に配慮した形で活用したい資源国が注目しており、水素開発の技術を持つ日本との連携を強める動きが広がる。豪州は炭化が不十分で低品位な「褐炭」をガス化して水素をつくる。2020年度にも専用設備を備えた船で日本に運ぶ計画だ。30年ごろの商用化を視野に入れている。ブルネイでも未利用の天然ガスを水素に変え、日本に運ぶ計画がある。日本は川崎重工業や千代田化工建設など水素のプラント建設や輸送に強みを持つ企業が多い。FCVを含め、世界的に高い水準の技術をテコに協力国を増やす考えだ。水素は天然ガスなど他のエネルギーと単純比較して供給コストが数倍に上り、まだ普及していない。採算性の向上が課題だが、クリーンエネルギーとしての将来性には各国が期待を寄せる。経産省によると、中国は30年にFCVを100万台導入する目標を掲げる。経産省など日米欧の当局は6月中旬、水素分野での協力を盛り込んだ共同宣言を出した。長野県で開かれた20カ国・地域(G20)エネルギー・環境相会合に合わせて開催したのは、日本が開発を主導する姿勢を国際社会でアピールするためだ。世耕経産相らが議長役を務めたG20の同会合でも、共同声明に水素に関する文言を盛り込んだ。9月には日本が主導した関係閣僚会議の2回目の会合も控える。経産省は水素を軸としたクリーンエネルギーの国際協調の輪を広げることが、将来にわたって日本のエネルギー調達を安定させる戦略を支えるとみている。

*14-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190626&ng=DGKKZO46488060U9A620C1QM8000 (日経新聞 2019年6月26日) <海運環境規制 広がる波紋(上)>燃料転換、コスト重荷、硫黄分、大幅削減迫る
 海運業界に新たな環境規制が迫っている。国連の専門機関である国際海事機関(IMO)は、2020年から船舶燃料の硫黄分を大幅に減らすよう海運会社に求める。規制を満たすには多額のコストがかかる。海上運賃や燃料油など、商品市況への影響は広範に及ぶ。「ほかの環境規制に比べあまりに規模が大きい」。海運大手の担当者はこうぼやく。新たな規制は、あらゆる船舶の燃料油に含まれる硫黄分の上限を3.5%から0.5%と大幅に引き下げるよう義務付ける。国内外を問わず全ての海域で守らなくてはならない。目的は大気汚染の原因となる硫黄酸化物(SOx)の排出削減だ。海域や稼働年数などによって対象にならなかった船もあった従来の環境規制に比べ、適用範囲は広い。海運業界の対応方法は主に2つある。1つは燃料の切り替えだ。これまで使っていたC重油に代わり、硫黄分の少ない軽油と重油を混ぜた「適合油」を使う。硫黄を含まない液化天然ガス(LNG)の代替使用も選択肢になる。もう1つは船への脱硫装置(スクラバー)の設置だ。C重油を燃やした際の排ガスから硫黄分を除去する。どの方法にしてもコスト増は避けられない。スクラバーの設置に5億円前後が必要との見方もある。LNGは主要な港ごとに必要な補給体制の整備が進んでいない。現時点で最も現実的な対策は適合油だ。製造に使う軽油はアジア市場の指標となるシンガポール市場で1トン620ドル前後。船舶用C重油(420ドル前後)に比べ5割高い。「従来の船舶用重油に比べ、最低でも1トン5千~6千円(1割程度)高くなるだろう」(市場関係者)との声すら聞かれる。海運会社は大手を中心に、適合油の確保を進める。商船三井は燃料油の補給港で最大のシンガポール港で、19年内に切り替える予定の適合油を先行調達した。20年1~3月分も「6割確保した」(エネルギー輸送営業本部の中野道彦燃料部長)。一方で適合油には硫黄分以外の明確なスペックが確立していない。「複数の企業から調達した燃料がタンクで混ざると、エンジンに問題が起きないか」との不安を訴える海運会社もある。日本船主協会(東京・千代田)の武藤光一会長(商船三井前会長)は「(対応策の)選択の是非で経営内容に大きく差がつき、業界地図が塗り替わるかもしれない」と話す。海上運賃への影響は避けられそうにない。

| 年金・社会保障::2019.7~ | 01:50 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.3.31 消費税と教育や社会保障をひも付きにしている国は、日本以外にないこと (2019年4月1、2、3、4、5日に追加あり)
   
 2018.5.26日経新聞                   2019.1.6毎日新聞

(図の説明:左図のように、2019年10月から3歳以上の子がいる世帯と0~2歳の子がいる住民税非課税世帯の幼児教育・保育料が無償化されることになった。また、中央の図のように、高等教育への進学率も上がっているが、現在は公立も授業料が高すぎるという問題がある。そのため、世帯年収380万円未満の学生を対象に高等教育も無償化することになったのは一歩前進だが、それだけでは足りない。そのような中、右図のように、日本の財政は世界最悪であるとして消費税増税が声高に叫ばれているが、日本の財政は消費税が導入された後に悪化したのであり、消費税は解決策ではない。根本的には、複式簿記による公会計制度を国にも導入し、国民が予算の使い方を速やかにチェックして正確な対応策を出せるようにすべきだと考える)

(1)教育は投資である
1)幼児教育・保育の無償化について
 1953年にWatsonとCrickがDNAの二重らせん構造を発見し、生物学が科学としてかなり系統的に説明できるようになり、私が東大理科2類の教養過程でノーベル賞候補と言われた教授から習ったことまでが、現在の高校生物学にはさらりと包含されるようになった。それは、生命科学の原理が多くの人の常識となり、物事の考え方の基本として定着すると言う意味で良いことなのだが、高校生は消化するのに苦労するだろう。

 しかし、生物学だけではなく、(宇宙・地球・生物・人類の)歴史で新しく解明された事実も増え、国際化で英語や他の外国語の重要性も増し、音楽・ダンス・スポーツ等の授業も充実できるようになると、生徒がこれまでと同じ授業時間数でこれらを消化するのは本当に困難になる。そのため、無理なく面白く身につけられるために、私は小学校の入学年齢を3歳にして、語学はじめ前倒しできる科目はできるだけ前倒しして教えるのがよいと考える。

 そのような中、*1-1のように、消費税率が10%になる2019年10月から、「①増収分を財源に幼児教育・保育の無償化を実施する」「②高齢者向けに偏った社会保障を見直して子育て中の現役世代に財源を回し、全世代型社会保障に転換する」として、3~5歳児を持つ全世帯の幼児教育・保育の無償化が行われることになったが、それに対して、*1-2のように、「③無償化の恩恵が比較的所得の高い世帯に偏る」「④その前に誰でも希望の保育園に入れるようにして、待機児童を無くして欲しい」「⑤無償化はそれほど急ぐべき政策か」という反対がある。

 私は、①②については、景気対策という名目で山ほど無駄遣いしながら、福祉財源は消費税でなければならないと説明している点は誤りであるものの、「教育・保育の無償化」は小学校の入学年齢を3歳にする前段階としてGoodだと思う。しかし、厚労省が作った政策らしく、厚労省所管の範囲内(現役世代と高齢者福祉)でのゼロサムゲームにしている点で発想が小さく、理念を欠いている。なお、高齢者は既に物価高・低金利・消費税増税に加え、年金・医療・介護の負担増・給付減で生きていけるか否かというぎりぎりの生活を強いられている人が多いため、次世代のためなら高齢者を犠牲にしてもよいという理屈は成立しない。

 また、③については、必ず「所得の高い世帯に恩恵があってはいけない」かのような反対論が出るが、所得税・相続税で累進課税にし、社会保険料の掛金も所得に応じて差を付けることによって、所得の再配分は終わっているため、受けるサービスの値段まで所得で変えれば、その所得を境に可処分所得に逆転が生じる。さらに、市場主義経済では、交通費や食品の価格を買う人の所得に応じて変えてはいけないのと同様、保育料・授業料・医療費・介護費などのサービスの値段も、所得に応じて変えると経済を歪めるのである。

 なお、④⑤については、安倍首相が「無償化と待機児童解消は二者択一ではない。どちらも優先的に取り組む」とされており、私もそれがよいと思うし、首相がそう言っておられるのだからできるだろう。さらに、地方には保育所の待機児童はいない自治体もあり、保育所の待機児童は都市に人口を集中させ過ぎた結果として出ている面があるため、都市計画・産業の再配置・教育システム改革などを含めた複数の改革で待機児童問題を解決した方が効果的だ。そのため、日本の将来像を正確に描いて、それに向かって進んだ方が無駄のない変革ができると考える。

2)高等教育の無償化について
 *1-1は、2020年4月から「⑥世帯年収の目安が380万円未満の低所得世帯の学生を対象として大学等の高等教育も無償化する」「⑦高等教育無償化の柱は、授業料減免と給付型奨学金の拡充」「⑧生活費を補助する給付型奨学金も用意する」「⑨学業成績が悪い場合は支援を打ち切る」とされており、⑥以外は妥当だと思う。

 ⑥については、世帯年収が380万円以上であっても、複数の子を大学にやるには学費も生活費も高すぎる上、女子学生の場合は低所得でなくても親の反対に合って希望の大学に行けないケースがあるため、親の世帯年収は参考資料の一つに留めるべきだ。

 東大の場合は、女子生徒が保護者に反対されても東大受験を躊躇しなくてすむように、女子の同窓会である「さつき会」が、会員からの寄付を元手として受験前に奨学金対象者を選抜し、合格を条件として奨学金を支給している。しかし、個人会員からの寄付だけでは支給できる金額も支給対象人数も限られるので、国・地方自治体・企業などの取り組みが望まれるわけである。

3)教育が投資である理由
 *1-3に書かれているとおり、「子どもの貧困」は世代を超えた貧困の連鎖を生むとともに、未来の労働力の質を低下させるため、まず公立学校の授業料は安くするとともに、公立学校に通っても受験に不利にならないような教師陣や教育内容の充実が不可欠だ。

 また、学童保育等の「子どもの居場所設置」や「学習支援」も不可欠で、親から子への虐待を防ぐためにも、母親が働いていなくても保育園に預けられたり、親が病気や出産などで子の世話ができない場合には介護制度を利用したりできるよう、既存の制度を改善することが必要だ。そのほか、「労働環境の改善」などの社会全体での雇用の質を底上げすることも重要である。

 一方で、政府は、*1-4のように、AIを使いこなす人材を年間25万人育てる新目標を掲げ、文系・理系を問わず全大学生にAIの初級教育を受けさせることを大学に要請し、社会人向けの専門課程も大学に設置するそうだ。私は、ビッグデータ等として個人のデータを黙って収集するのは人権侵害だと思うが、AIやITなどによるイノベーションは不可欠であるため、幅広い人材が使いこなせるよう、98.8%の人が進学する高校までに基礎を教えておくのがよいと考える。

 このように、産業を維持・発展させるためには、教育を受けた良質の労働力が必要であるため、教育は福祉ではなく投資の性格も持っており、(単なる景気対策のための支出は削って)一般会計から堂々と支出すればよいだろう。

(2)消費税増税について
1)消費税増税の是非について
 「①消費税はヨーロッパで課されている税制」「②税のバランスが大切」「③消費税は安定財源」等と説明されることが多いが、①については、ヨーロッパで課されるのは、企業に対する付加価値税であり、必ず消費者に転嫁しなければならないとする消費税を課しているのは世界中で日本だけである。また、消費税は消費に対するペナルティーとして働く。そして、ヨーロッパで付加価値税を課している理由は、法人税や所得税の徴収率が悪いからだと言われており、付加価値税の徴収には完全なインボイス方式を採用して正確な計算を行っている。

 ②については、法人税や所得税の徴収率が日本と同様によい米国は、国としては付加価値税を課しておらず、州のみが課しているため、税率は州によって異なる。私は、個人に対して所得税を課した上、所得に応じて増える社会保険料を課し、さらに消費税を課すのは同じ所得に対する三重課税であり、これに加えて保育サービス等を提供する場合にも所得によって対価が異なれば四重課税になると考える(参考:企業の場合は二重課税も排除している)。

 さらに、③については、所得税は景気が良くなれば増え、景気が悪くなれば減るため、自動的に景気を調整するビルト・イン・スタビライザーの機能を持っているが、消費税はそうでないため財源が安定しているのであり、負担力主義で税を支払うという原則に照らせば、消費税財源の安定性は短所なのである。

 しかし、*2-1・*2-2のように、メディアは消費税増税がよいことであるかのように大々的に宣伝し、消費税増税に反対する市民や政治家を「ポピュリズム」「ポピュリスト」と呼んで馬鹿にしている。「何故、そういうことが言えるのか」については、そういうことを言う人が経済・税法・家計のことをあまりわかっておらず、アンプの役割を果たしている財務省の言うことを、スピーカーのように拡散しているだけだからである。従って、多くの市民の方が、彼らを馬鹿にしている人よりも、肌で感じる真実に気が付いているわけだ。

 実は、消費税増税は財務省の政策であり、財務省は自らの政策実現のために、メンツをかけてメディア対策も行っている。ただし、財務省は財務省の権限内で物事を解決しようとしがちで、全貌を見渡してよりよい方法を考えているわけではない。本当は、全貌を見渡して省庁横断でよりよい政策を考えるのが政治の役割なのだが、政治家にも経済・税法・家計の関連がよくわかっている人が少なく、財務省より弱いわけである。

 その財務省は、「消費税率の引き上げによる安定的な財源がどうしても必要だ」と主張しており、安倍首相もそう言っておられる。しかし、辺野古の新基地造成を止めて離島の空港を使ったり、莫大な原発補助金や農業補助金を止めて自然エネルギーとEVに変えたり、海底資源や国有林等の国有資源を有効に使うよう速やかにアレンジしたりすれば、消費税増税を行って「個人消費が減るから(物価が上がるため当然なのである)」などとして、一時的なポイント還元やプレミアム商品券配布のため消費税1%分の約2兆円を使う必要はない上、次の時代に向けてのイノベーションを進めることもできるのだ。

 つまり、「日本の国の借金はGDPの2倍超と先進国最悪の水準」というのは事実だが、「増税が延期されれば財政健全化の道は遠くなり、将来世代へのツケが重くなる」というのは、消費税増税のための理屈付けにすぎない。しかし、財務省は、既に税率引き上げの準備を完了しているため、この説明を押し通して変更することはないだろう。

2)軽減税率について
 私は、消費税そのものにも消費税増税にも反対だが、消費税増税を行うとすれば、逆進性を緩和するために軽減税率は必要だと考える。これに対して、*2-3-1・*2-3-2・*2-3-3のように、軽減税率対象の線引きのみがマニアックに議論されているが、これは小売店の工夫次第で解決できる。

 例えば、*2-4のように、課税後の価格を同じに設定し、持ち帰りの場合は包装代金を取る方法もあるし、店の外に休憩スペースを作って椅子や自動販売機を置いておき、そこで食べるのは持ち帰りと判定してもよいわけだ。しかし、共働き社会・高齢化社会で、外食を贅沢として増税対象とするのは、確かに現実に合っていない。

3)ポイント還元について
 2019年10月の消費税増税と同時に始めるキャッシュレス決済のポイント還元制度は、*2-5のように、消費者がICカード等で支払えば中小の小売店・飲食店なら5%、コンビニ等のチェーン店なら2%のポイントがもらえ、割引や割引分を銀行口座等に振り込む方法も認められて、その対象金額には上限がつき、還元方法・上限は決済事業者ごとに決まるという、複雑な上に公正性の感じられない恣意的なものだ(税法の基本は「公正」「中立」「簡素」)。

 また、増税後に消費の底上げさえすればよいというのは消費者を食い物にしており、中国や韓国でキャッシュレス化が進んでいるからといって日本の全店でキャッシュレス化を推進する必要もなく、スマホですべてができるようになればスマホを落としたら万事休すであり、リスクは分散するのが基本なのである。

4)消費税に関するその他の重要な論点
 消費税は、医療費を非課税にしており、非課税収入に対する仕入れにかかる消費税はどこにも転嫁できずに病院や診療所の負担となるため、今でも苦しい病院や診療所の中には、消費税増税後に赤字となって、耐え切れずに倒産する経営体も出ると言われている。

 そもそも、「医療費は非課税にせず、0税率にすればよいだろう」というのが、消費税導入当初からの税務専門家の意見であり、私もそう考える。

・・参考資料・・
<教育は投資である>
*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190329&ng=DGKKZO43038560Y9A320C1M10600 (日経新聞 2019年3月29日) 幼児教育・保育を無償化 300万人が対象に
 消費税率が10%になる10月から、増税の増収分を財源に幼児教育・保育の無償化が実施される。高齢者向けに偏った社会保障を見直し、子育て中の現役世代に回すもので、「全世代型社会保障」への転換を掲げる安倍政権の目玉施策となる。2020年4月からは低所得世帯の学生を対象として、大学などの高等教育も無償化される。幼児教育・保育の無償化は、3~5歳児は原則として全世帯が対象だ。幼稚園や認定こども園、地域型保育などが全額無料になり、0~2歳児は住民税が非課税の低所得世帯が対象になる。認可外の保育施設は0~2歳児が月4万2千円、3~5歳児は月3万7千円を上限に利用料が補助される。約300万人の子供が対象になる見通しで、費用は年間7764億円を見込み国と都道府県、市町村で分担する。ただ、無償化をきっかけとして利用希望者が大幅に増えれば、保育施設や保育士の不足に拍車がかかる懸念がある。20年4月から実施する高等教育の無償化は、授業料の減免と給付型奨学金の拡充の2つが柱になる。対象は世帯年収の目安が380万円未満の層で、年収によって支援金額が異なる。20年4月の新入生だけでなく在校生も利用できる。授業料減免の上限は国公立大が年間54万円、私立大が同70万円など。学生が学業に専念できるよう生活費も補助する給付型奨学金も用意する。金額は国公立の自宅生が年間35万円、私立大に自宅外から通う学生は同91万円など。低所得世帯の進学率が8割まで上がった場合の費用は年約7600億円で、最大70万人ほどが対象になる見通し。学業成績が悪い場合は支援を打ち切るほか、経営難の大学は対象から外す。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13947484.html (朝日新聞社説 2019年3月24日) 幼保無償化 政策の優先度見極めを
 10月から幼児教育・保育を無償化するための子ども・子育て支援法改正案が、衆院内閣委員会で審議中だ。子どものための予算を増やすことには、野党も反対していない。だが、2年前の衆院解散・総選挙で安倍首相が唐突に打ち出した無償化には、疑問や懸念が尽きない。政策の優先度をしっかり見極めるべきだ。多くの野党が批判するのは、無償化の恩恵が比較的所得の高い世帯に偏る点だ。例えば認可保育園の無償化に必要な4650億円のうち約半分は年収640万円以上の世帯に使われ、住民税非課税世帯に使われるのは1%程度だ。認可施設の保育料は所得に応じた負担になっているためだ。政府は、これまでの負担軽減分も合わせれば「高所得者優遇」ではないと反論する。しかし問われているのは、やるべき多くの政策の中で、無償化はそれほど急ぐべきものか、ということだ。子育てにかかる費用の軽減はありがたい。でもその前に、誰でも希望の保育園に入れるようにしてほしい。そんな声は、今年も各地に広がる。待機児童が多い自治体などを対象にした朝日新聞の調査でも、4月の入園に向け認可施設に申し込んだのに1次選考から漏れた人は4人に1人。前年からほとんど改善していない。首相は「無償化と待機児童解消は二者択一ではない。どちらも優先的に取り組む」として、保育の受け皿を今後32万人分増やすとアピールしている。だが、この計画は無償化の方針が出る前のものだ。潜在的な需要も見込んで、計画を作り直すべきだ。国の指導監督基準を満たさない認可外施設やベビーシッターの扱いも揺れている。希望しても認可保育園に入れない人への配慮から、国は5年間、無償化の対象にするとしていたが、「安全面が心配」との自治体側の反発を受け、条例で独自に対象外にできるようにした。あまりに泥縄の対応だ。消費増税を決めた12年の「税と社会保障の一体改革」では、保育士の処遇改善や職員の配置を手厚くするなどの「質の向上」を約束したが、それも置き去りのままだ。子どものための政策分野では、虐待防止のための児童相談所の体制強化や子どもの貧困対策など、予算の拡充が必要なものが多い。限りある予算をどう効果的に使うのか。無償化ありきでない、建設的な議論が必要だ。

*1-3:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-895577.html (琉球新報社説 2019年3月29日) 県民意識調査 子の貧困解消に全力を
 沖縄戦で焦土と化し、無から復興せざるを得なかった沖縄社会が抱え続ける課題を今、克服しなければならない。県民の強い決意にも思える。県が昨夏、実施した第10回県民意識調査で、県が取り組むべき施策として「子どもの貧困対策の推進」を挙げた人が42%に上り、最多となった。子育て世代の生活の厳しさと、育児環境の整備に県民が強い関心を寄せている表れだ。世代を超え連鎖した貧困を断ち切り、未来を担う子どもを育む必要がある。調査は県民の価値観やニーズを捉えて県政運営に生かそうと、3~5年ごとに実施される。今回、県が重点施策の選択肢に初めて「子どもの貧困対策の推進」を入れたところ、過去3回の調査で1位だった「米軍基地問題の解決促進」の26%を抑え、最も多かった。行政が特に力を入れるべきこととして「子どもの居場所の設置」37%、「学習支援」36%の二つが3割を超えた。貧困により孤独や学習不足に陥らないよう、子どもに寄り添う支援が求められている。次いで「ひとり親家庭への支援」29%、「労働環境の改善」28%と、経済的な支援策を求める意見が続いた。行政以外に期待する役割は「企業による雇用促進」が48%と5割に近く、「労働関係団体による労働条件改善に向けた取り組み」39%と、保護者の就労関連が上位となった。社会全体で雇用の質の底上げを図らねばならない。暮らし向きが「良くなった」が3年前の前回調査より3・5ポイント上がった23・2%で、好況の実感が見られるとはいうものの、自らの生活を「中の下」「下」とした人は34%に及び、全国の25%を上回っている。県民が望む施策の2番目に挙げられた「基地問題の解決促進」だが、全国の米軍専用施設の7割が沖縄に集中する状況に、66%が「差別的だ」と感じている。沖縄の負担軽減が進まない状況に「差別」を見る人は依然として多い。離島住民対象の調査では8割が島に誇りを感じ、7割超が「島に生まれて良かった」と答え、強い愛着がうかがえる。一方34%が、20年先に今より発展し、輝いているとは「思わない」と不安視する。施策要望の生活必需品の価格や島外へ出る際の交通費、ガソリン価格の安定への対応も求められる。県民の要望は次世代育成や生活の質の向上、基地問題の解決に向けられている。国、県、市町村は生活に根差した県民の不安に耳を傾け、子どもの貧困の解消、非正規雇用の多い雇用環境の改善、真の基地負担軽減に取り組んでほしい。意識調査では85%が「幸せ」と感じ、82%が沖縄に生まれて「良かった」と回答している。幸福感をより多くの人に広げるためにも、私たちにもゆいまーるの助け合いの心が求められる。

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190327&ng=DGKKZO42932250W9A320C1MM0000 (日経新聞 2019年3月27日) AI人材、年25万人育成、政府戦略、全大学生に初級教育
 政府が策定する「AI戦略」の全容が分かった。人工知能(AI)を使いこなす人材を年間25万人育てる新目標を掲げる。文系や理系を問わず全大学生がAIの初級教育を受けるよう大学に要請し、社会人向けの専門課程も大学に設置する。ビッグデータやロボットなど先端技術の急速な発達で、AI人材の不足が深刻化している。日本の競争力強化に向け、政府が旗振り役を担う。政府の統合イノベーション戦略推進会議(議長・菅義偉官房長官)で29日に公表する。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の普及やビッグデータの活用に伴い、AIを必要とする事業は、IT業界にとどまらず様々な分野に広がっている。高度な専門技術者に加え、今後は幅広い人材がAIの基礎知識を持っていなければ、競争力ある製品の開発や事業展開は難しい。一方、急速な実用化の速度に、大学や企業の人材育成は追いついていない。大学のAI教育の規模はまだ小さく、政府の調べでは修士課程を修了する人材は東大や京大、早大などの11大学で年間900人弱。全国でも2800人程度にとどまる。一般学生への対応はさらに遅れており、経済産業省によると、AIなどのIT知識を持つ人材は日本の産業界で2020年末には約30万人不足していると試算する。政府は今の教育制度では十分に対応ができないとみて体制づくりに乗り出す。様々な分野で活躍する人材が「ディープラーニング(深層学習)」の仕組みやAIを使ったデータ分析のやり方といった基礎知識を持てるようにし、日本の産業競争力の底上げを図る。目玉に据えるのが高等教育へのAI教育の導入だ。年間1学年あたり約60万人いる全大学生や高等専門学校(高専)生に初級水準のAI教育を課す。最低限のプログラミングの仕組みを知り、AIの倫理を理解することを求める。受講した学生には水準に応じた修了証を発行し、就職活動などに生かしやすくする。そのうち25万人は、さらに専門的な知識を持つAI人材として育成する。初級水準の習得に加え「ディープラーニング」を体系的に学び、機械学習のアルゴリズムの理解ができることを想定する。「AIと経済学」や「データサイエンスと心理学」など文系と理系の垣根を問わずAIを活用できるよう教育を進める。現状、4年制大学では各学年文系が42万人、理工系が12万人、保健系が6万人いる。このうち理工系と保健系を合わせた18万人に加え、文系の15%程度にあたる7万人がAI人材となる想定だ。社会人の学び直しもテコ入れする。22年までに大学に専門コースを設置し、政府が費用の一部を支援する。年間2000人を教育する目標だ。AIの活用に必要な「ディープラーニング」などの習得を目指す。教員については、まずはAI分野で修士課程や博士課程を終えた人材の協力を求めながら、将来の人員増に向けて育成する。処遇などの詳細は今回の政府の戦略を示した後に具体的に検討する。政府は大学側に一連の改革案を順次、カリキュラムに反映するよう求める。企業にはインターンシップなどを通じてAIの技能を持つ学生の受け入れ環境を整えるよう促す。企業側がAI技能を持った学生を高待遇で受け入れるようになれば、大学側も積極的に教育課程に反映していくことが見込まれる。

<消費税増税>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190329&ng=DGKKZO43038360Y9A320C1M10600 (日経新聞 2019年3月29日) 10月の消費増税まで半年 何が変わる? 消費急変回避へ全力 首相「三度目の正直」へ
 2019年10月に予定する消費税率10%への引き上げまで残り半年となった。安倍晋三首相はこれまで2度にわたり10%への増税を見送ったが、手厚い消費下支え策で「三度目の正直」を目指す。少子高齢化が急速に進み、財政再建は待ったなし。中国など海外経済に陰りが見える中で、国内経済への悪影響を抑えられるかが焦点だ。「消費税率の引き上げによる安定的な財源がどうしても必要だ」。1月末、衆参両院での施政方針演説で、首相はこう述べ、理解を求めた。首相は14年に消費税率を8%に引き上げた後は、同年11月と16年6月に増税延期を表明してきた。だが、政権中枢では「今回は予定通り実施する」との見方が支配的だ。背景には増税が「安倍カラー」を強く帯びてきたことがある。12年6月、当時与党の民主党と、野党だった自民党、公明党の3党合意では消費税の増税分を社会保障に限っていた。首相はこれを変更し、税収の使い道を教育などに拡大。幼児教育の無償化などは10月から始まる予定で、延期すれば自身への批判にもつながりかねない。増税対策も積み増した。14年の消費増税時は個人消費が急減し、その後も景気低迷が長引いた。この反省を踏まえ、住宅・車の購入支援策に加え、キャッシュレス決済した場合のポイント還元、低所得者層へのプレミアム商品券など約2兆円の対策をまとめた。増税対策費用などを計上した2019年度予算案が27日に国会で成立したことで、住宅・保育など民間の活動は動き出しつつある。財務省幹部は「増税への条件は整った。後戻りするコストの方が大きい」と話す。消費税率10%への引き上げによる増収は政府による最新の見積もりでは年約5.7兆円。首相は約1.7兆円を教育・子育てなどに回し、半分を借金の返済に回す考え。残るリスクは海外景気だ。米中貿易戦争などの影響で中国景気は減速感が強まる。内閣府が3月に公表した景気動向指数は3カ月連続で低下した。首相は「リーマン・ショック級の事態が起きない限り予定通り増税する」と繰り返す。政権内でも「金融機能の破綻や東日本大震災並みの災害がなければ引き上げる」との意見が強い。ただ7月に予定される参院選をにらみ、景気動向を慎重に見極める動きは続きそうだ。日本の国の借金は国内総生産(GDP)の2倍超と先進国で最悪の水準。国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化は、すでに25年度に先送りされている。増税が延期されれば、さらに財政健全化の道は遠くなり、将来世代へのツケが重くなる。

*2-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201901/CK2019010302000121.html (東京新聞 2019年1月3日) <こう動く2019日本>(2)消費税増税 3度目の延期 否定できず
 消費税は十月一日から、税率が10%に上がる。政府は経済危機や大災害が起こらない限り、予定通り増税すると説明するが、安倍晋三首相はかつて、増税による景気の冷え込みを懸念して、引き上げ時期を二度延期した。世界経済の悪化で日本の成長が大きく鈍るなら「二度あることは三度ある」というシナリオも否定はできない。今月召集の通常国会へ提出される二〇一九年度予算案には、消費税率引き上げによる増収を活用した幼児教育・保育無償化や社会保障の充実策などが盛り込まれた。さらに、キャッシュレス決済時のポイント還元や低所得者ら向けのプレミアム商品券発行など、景気の下支え対策としても二兆円超を計上。価格が高い車や住宅の購入を中心とした減税策も加えれば、一連の対策の規模は、増税による家計の実質的な負担増二兆二千億円を上回る。政府が増税に向けて手厚い支援を講じるのは、一四年四月に税率を5%から8%に上げた際のトラウマ(心的外傷)が残っているためだ。当時、大規模な経済対策を組んだものの、いったん冷え込んだ個人消費はなかなか回復しなかった。「財務省は景気が落ち込むのは一・四半期だけと言っていたが、実際には長引いた」(政府高官)と官邸の不興を買ったことも、税収増を相殺するほどの大盤振る舞いにつながった。消費税増税を織り込み、当初段階で初めて百兆円を超えた予算案と税制改正大綱が閣議決定されたことから、財務省では今のところ、「税率引き上げのプロセスが進んでいる」(岡本薫明次官)という見方が支配的だ。しかし、三たびの延期が完全にないとは言えない。昨年末にかけ日米の株価が急落。米中の貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱の行方など、日本経済に影響を及ぼす海外景気の不安材料が今年も多いからだ。 首相は景気重視を鮮明にしている上、「消費税率10%への引き上げを決めた一二年の民主、自民、公明の三党合意にかかわっておらず、(消費税への)こだわりが小さい」(財務省幹部)とされ、増税からの方針転換も抵抗なく決断できるとみられている。一方、三度目の正直で増税するとしても、景気の動向によっては追加の財政支出が浮上する可能性はある。夏の参院選を控え、首相が「バラマキ」の誘惑に打ち勝つことは容易でない。

*2-3-1:https://digital.asahi.com/articles/ASLDK51VQLDKULFA01C.html (朝日新聞 2018年12月21日) 飲料水やケータリングは何%? 難しい軽減税率を解説
 来年10月から消費税率がいまの8%から10%に上がり、同時に飲食料品などの税率を8%に据え置く軽減税率も導入される。増税の影響を和らげるため、来年度予算案には総額2兆280億円の臨時の対策が盛り込まれた。5年半ぶりとなる消費増税で、私たちの暮らしにはどのような影響があるだろうか。
●軽減税率のわかりにくい線引き
 消費増税にあわせて、初めて導入される軽減税率は、消費税率が10%に引き上げられた後も、酒類や外食を除く飲食料品と、週2回以上発行され、定期購読されている新聞の税率を8%に据え置く。生活に欠かせない飲食料品を中心に税率を抑えることで、低所得者の負担を軽くするねらいがある。お金持ちも低所得者も一律にかかる消費税は、低所得者ほど負担が重いとされているからだ。しかし、ひとくちに「飲食料品」と言っても、日々の買い物ではどちらの税率が適用されるのかがわかりにくいものもある。例えばみりん。アルコール分が1%以上の本みりんや料理酒は酒税法上の「酒類」に該当するため、軽減税率は適用されず、税率は10%となる。ところが、同じ棚に並んでいても、アルコール分が1%未満の「みりん風調味料」は軽減対象となり、税率は8%だ。このほか、飲料用のミネラルウォーターは軽減税率の対象だが、水道水は風呂や洗濯といった生活用水としても使われるため、飲食料品とみなされず、税率は10%になる。軽減税率の対象外となる外食の範囲も線引きが難しい。原則として、事業者がいすやテーブルなどの飲食設備のある場所で客に飲食させた場合は「外食」となり、税率は10%。例えば、コンビニエンスストアで弁当を買い、店内のイートインコーナーで食べる場合は、外食扱いだ。一方、買った弁当を客が持ち帰り、自宅で食べる場合は8%となる。レジで会計する際、従業員から店内で食べるのか、持ち帰って食べるのかを聞かれる場面が出てきそうだ。外食と同様、客が指定した場所で料理を温めたり、配膳したりする「ケータリング」も軽減税率の対象外だ。企業がパーティーなどでケータリングサービスを頼む場合は、税率は10%となる。ただ、同じケータリングでも、有料老人ホームで入居者に提供される食事や学校給食など、それ以外の方法で食事をとることが難しい場合には、8%が適用される。このほか、ピザやそばなどを出前で取った場合は単なる飲食料品の販売とみなされ、8%が適用される。こうした複数の税率に対応するため、事業者側はレジの改修などが必要になるが、対応は遅れている。導入後、店頭で混乱が生じる可能性がある。
●プレミアム商品券で低所得者へ支援
 軽減税率に加えて実施する低所得者対策が「プレミアム商品券」だ。市区町村が売り出す商品券を購入すると、購入額より25%高い商品と換えられる。購入額との差額の上乗せ分(プレミアム分)の費用を、国が負担する仕組みだ。低所得者への支援策のため、商品券を買えるのは、住民税の非課税世帯と0~2歳児がいる子育て世帯に限る。世帯内の人数(子育て世帯はこどもの人数)1人あたり2万円(2万5千円分)まで買える。1枚ごとの商品券の価格は自治体が決めるが、政府は400円(500円分)を想定している。この場合、最大50枚まで買える計算だ。使えるお店は原則、商品券を発行した地方自治体の中の小売店で、使用期限は増税後から2020年3月末までの半年間とする。政府は15年にも前回の消費増税の対策として同様の商品券を発行したが、消費の押し上げ効果は限定的だったとの指摘もある。
●税金の使い道は
 消費税率の10%への引き上げは2012年、旧民主党、自民党、公明党による3党合意で決まった。14年4月にいったん8%に引き上げた後、もともとは15年10月に10%にする予定だったが、2度にわたって延期に。来年10月の増税は5年6カ月ぶりとなる。2%分の増税で、消費税の税収は5・7兆円増える見込みだ。3党合意ではこの増収分の使い道を社会保障に限り、5分の4を既存の社会保障費の財源に充てて国の借金を減らすことに使い、残りを社会保障の充実に充てるとしていた。ところが、安倍晋三首相は昨年、この使い道を変更。一部を教育無償化などに使うことを決めた。この結果、借金減らしに充てられる額は増収分の半分の2・8兆円程度に。安倍首相が打ち出した教育無償化などには、1・7兆円程度が使われることになった。幼児教育の無償化は来年10月1日から実施予定で、幼稚園や認可保育所、認定こども園に通う3~5歳児の利用料が原則無料になる。0~2歳児は住民税の非課税世帯が無償化の対象になる。これにより、待機児童が増える可能性もあるため、同時に保育の受け皿づくりを加速。保育士の処遇改善も進める。20年4月からは大学や短期大学、専門学校などの高等教育について、住民税非課税世帯を対象に入学金・授業料を減免。生活費は返還の必要がない給付型奨学金で賄えるようにする。非課税世帯だけでなく、年収380万円未満の世帯も2段階に分けて支援する。増税分の使途変更前から決まっていた措置として、低所得の高齢者向けの支援も拡充する。住民税非課税世帯で、年金を含む所得が老齢基礎年金の満額以下の高齢者に対し、年金保険料の納付期間に応じて月最大5千円を支給。この措置によって、保険料の納付期間が短い人の方が優遇されることにならないよう、一定の所得以下の人にも補足的に給付金を支給する。所得が低い65歳以上の高齢者を対象に、部分的に実施されてきた介護保険料軽減策の拡充をさらに進める。1人あたりの平均で月約1千円が軽減される。また、人材不足となっているベテラン介護福祉士の賃金も大幅に引き上げる。政府はこうした施策により、増税による増収分の半分を「国民に還元する」とアピール。増税への反発を和らげるねらいもある。

*2-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190329&ng=DGKKZO43038410Y9A320C1M10600 (日経新聞 2019年3月29日) 軽減税率で対応急ぐ 飲食料品8% 外食10%
 消費増税では新たに軽減税率制度が導入される。日々の生活に欠かせない飲食料品(お酒や医薬品は除く)と定期購読の新聞に限り消費税率を今のまま8%に据え置く。低所得者の負担増に配慮するためだが、店頭では8%と10%の商品が混在することになる。小売店の担当者や消費者が判断に迷うケースが出てくる恐れもある。お酒や雑貨も売るスーパーやコンビニエンスストアなどの小売店の現場は、対策としてレジや受発注システムなどの改修に動き出している。軽減税率は企業間の取引にも適用されるため、商社の食糧部門なども取引先との契約書の見直しなどの対応に動いている。商品が8%か10%かを見極めて分類をする必要があるが、線引きに迷うものもある。例えばアルコール度数が1度以上の「みりん」はお酒なので10%だが、それより度数が低い「みりん風調味料」は8%になる。ドリンク剤なども医薬部外品なら10%だが、清涼飲料水であれば8%になる。軽減税率は「外食」は対象外で、レストランで食事をすれば10%のままだ。スーパーのイートインコーナーなどの場合は、同じ商品でも「持ち帰り」の場合は8%になるが、店内で食べれば10%と税率が変わる。自分が指定した場所でサービスを受けるケースも外食と同じ扱いになる。例えば肉の専門店のスタッフにパーティー会場まで肉を運んで焼いてもらった場合は10%だ。価格表示の仕方はばらつきが出そうだ。日本経済新聞社が大手23社を対象に2018年12月にまとめたアンケートでは、4割が持ち帰りも店内飲食も同一の税込み価格で表示すると回答した。一方、日本KFCホールディングスのように2通りの税込み価格表示を検討しているケースもある。

*2-3-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20190329&bu=BFBD9496EABAB5・・ (日経新聞 2019年3月29日) 軽減税率 適用対象か否か周知急ぐ
 消費税率を8%から10%に引き上げるのに合わせ、飲食料品や定期購読の新聞の税率を8%に据え置く軽減税率制度が導入される。円滑な導入には、小売店や流通に携わる事業者にしっかり準備してもらうことが重要だ。政府は税率を判断するための事例集を公表するなど周知活動を急ぐ。外食や酒、医薬品は「飲食料品」に当たらず税率は10%だ。飲食スペースを持つ小売店やテークアウトができる外食店では、同じ商品でも店内飲食かどうかで異なる税率になる。こうした店や、食品とそれ以外の商品を扱う小売店などでは、2つの税率を打ち分けられるレジの導入や価格表示の見直しが必要になる。顧客とのトラブルを避けるためには従業員向けマニュアルの作成といった対応も欠かせない。政府が10月にとりまとめた飲食料品を扱う事業者への調査によると、レジの改修など準備を始めているとの回答は37%だった。政府は特に、街の青果店といった専門の小売店の対応がカギとみる。軽減税率に対応したレジへ買い替える際の補助金の活用を促すなど、早めの準備を呼びかける。生活に密接に関わる分野なだけに、軽減税率と関係する経済活動は幅広い。一見すると食品には関係のない事業者も帳簿を付ける際などの対応が必要になる。23年10月には、事業者が商品ごとの消費税率を記録するインボイス(税額票)制度が導入される。現在は消費税の納付が免除されている売上高が1千万円以下の事業者も、大企業や中堅企業と取引するためには対応が求められる。軽減税率は生活必需品の税率を抑えて低所得者の負担を軽くする目的だが、高所得者の方が食品への支出額が大きく恩恵があるとの指摘がある。現場からは制度がわかりにくいとの声や、自分は対応が必要なのかどうか分からないといった声もいまだに強い。円滑な実施に向けては、的確な情報発信が急がれる。ペットフード(10%)、自動販売機のジュース(8%)、みりん(10%)――。事業者から相次ぐ疑問に答えるべく、国税庁は軽減税率の適用対象になるかを事例ごとに解説する「Q&A」の改定を重ねてきた。具体的な例を示して判断に役立ててもらう。軽減税率の導入には約1兆円の財源が必要だ。このうち4千億円分は低所得者の医療や介護の負担を軽くする「総合合算制度」の創設を見送った分を充てる。3千億円程度はたばこ増税と給与所得控除の縮小で確保し、残りの3千億円分は免税事業者への課税による増収と社会保障改革の余剰分を充てる方針だ。

*2-4:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20190329&bu=BFBD9496EABAB5E6B39・・ (日経新聞 2019年3月29日) 店内・持ち帰り「同価格」も 軽減税率対応 外食大手が検討
 2019年10月の消費増税と同時に導入される軽減税率をめぐり、外食大手の対応が割れる可能性が出てきた。日本経済新聞社が実施したアンケートで、同一商品でも税率が異なる店内飲食と持ち帰りの扱いを聞いたところ、回答企業の4割が同一価格で提供を検討していると答えた。外食チェーンによって対応が異なれば、消費者の混乱を招く恐れもありそうだ。軽減税率は消費税率が10%に引き上げられても、食料品などに限り税率を8%に据え置く制度。外食は軽減対象にはならないため、店内で飲食した場合は10%だが、同じ商品を持ち帰った場合は8%と税率が異なる。例えば本体価格が500円の食事は税込み価格は店内550円、持ち帰り540円となる。ただ、包装代などを加味して持ち帰りの本体価格を510円にすれば税込み価格は550円になり消費者が払う額は同じになる。アンケートは、持ち帰りが一定割合以上あるファストフードやカフェなど外食大手23社に実施し、20社から回答を得た。「店内飲食と持ち帰りで同一価格を導入するか」と聞いたところ、4割にあたる8社が「検討している」と答えた。「導入には消極的」と答えた企業も8社で、「導入しない」は1社だった。姿勢が分かれるものの、現時点では最終的な対応を決めかねているようだ。同一価格を検討する企業に複数回答で理由を聞くと、「消費者にわかりやすい価格体系にするため」(87.5%)が最多で、「店頭で会計作業が煩雑にならないようにするため」「告知や店員の説明を簡潔にするため」が62.5%で続いた。

*2-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13932271.html (朝日新聞社説 2019年3月14日) ポイント還元 見切り発車するのか
 懸念は解消されないどころか、ふくらむばかりだ。この状況のまま、政府は本当に実行に移すつもりなのか。10月の消費税増税にあわせて始めるキャッシュレス決済でのポイント還元策について、安倍首相は「事業者に混乱が生じないよう、また消費者が安心して購買できるよう、きめ細かな対応を行う」と述べてきた。ところが、制度の細部が明らかになるにつれ、不安は増す。この制度では、消費者がクレジットカードやICカードなどで支払うと、中小の小売店や飲食店では5%相当分、コンビニなどのチェーン店なら2%分のポイントがもらえる。買ったその場での割引や、割引分を銀行口座などに振り込む方法も認められる。不正利用を防ぐために、対象金額には上限がつく。還元方法や上限は、クレジットカード会社といった決済事業者ごとに決まる。消費者は「対象の店はどこか」「還元率は5%か2%か」「自分のカードは使えるか」「ポイントか即時割引か、振り込みか」「上限額はいくらか」を見極めねばならない。こんな複雑なしくみで、最大の目的のはずの増税後の消費の底上げに、つながるのか。制度づくりを担う経済産業省によると、店ごとのポイント還元に関する情報を載せたスマホ用の地図アプリをつくり、使える決済手段のロゴつきのポスターを店頭に貼る。「店の人に聞かなくてもわかる」というが、ある店主は、同時に始まる軽減税率の対応もあり、「困った客に質問されても、答えられない」と不安をみせる。中小企業者支援もポイント還元の目的の一つだが、これでは店主に負荷がかからないか。三つ目の目的であるキャッシュレス化の推進も、費用に見合う効果があるのか、疑問だ。2019年度予算の2798億円のうち、ポイントなどで消費者に還元されるのは1786億円。残りの1千億円強はコールセンターやポスターに使われるほか、加盟店の勧誘支援としてカード会社などにも渡る。これだけの税金を使って、中小の小売店での支払いに占めるキャッシュレスの割合は、約14%から17%程度に上がるという想定にすぎない。実施ありきで議論が進み、費用対効果の検討がおざなりではないか。財務省の査定責任も重い。参院の審議は、問題点を洗い出す最後の機会だ。予算審議の最中でも決済事業者の募集を始め、見切り発車しようとする政府に、再考を迫るべきだ。

<新元号と民主政治>
PS(2019年4月1、2日追加):*3-1・*3-2のように、2019年4月30日に天皇陛下が退位され、皇太子殿下が新天皇に即位される5月1日から施行される新元号は「令和」と発表された。出典は万葉集の梅花の歌「初春の令月にして気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を香らす」から引用したと説明されているが、その説明を聞く前、私は「令は命令、させること」「和は和やかなこと」を意味し、奈良時代の「大宝律令」の令と「和を持って尊しとなす」の和がイメージされて、「国民は命令に従い、和を持って尊しとなせ」という現在の国民主権国家からは程遠い元号のように思えた。そのため、そういう価値観を持っていないのに、現皇太子の時代として歴史に残るのは、現皇太子に気の毒だと思ったわけである。私自身は、次は「光」という字を用いて、「光和」「光久」「光輝」などの明るい元号がよいと思っていたが、こうなったら計算しやすいので西暦で通すことにする。
 なお、新元号「令和」の出典となった万葉集の一節は、*3-3のように、730(天平2)年に大宰府の大伴旅人の邸宅で催された「梅花の宴」で詠まれた32首の序文にある「令月」「風和」から取ったものだそうで、大宰府は博多港から20km程度の地域にあり、鳥栖や吉野ヶ里にも近く、古代史のKeyと言える場所だ。

*3-1:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019032901001500.html (東京新聞 2019年4月1日) 新元号は「令和」、5月1日施行 出典は「万葉集」、日本の古典初
 政府は1日、「平成」に代わる新元号を「令和(れいわ)」と決定した。今の天皇陛下が改元政令に署名され、同日中に公布。4月30日の天皇陛下退位に伴い、皇太子さまが新天皇に即位する5月1日午前0時に施行される。皇位継承前の新元号公表は憲政史上初。出典は「万葉集」で、中国古典でなく、国書(日本古典)から採用したのは確認できる限り、初めて。「大化」(645年)から数えて248番目の元号で、1979年制定の元号法に基づく改元は「平成」に続いて2例目となる。改元は明治以降、天皇逝去に伴う皇位継承時に行われてきた。今回は退位特例法に基づき、逝去によらない改元となる。

*3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43166560R00C19A4000000/?nf=1 (日経新聞 2019年4月1日) 新元号は「令和」 官房長官が公表
 政府は1日午前、平成に代わる新元号を「令和」と決定した。「れいわ」と読む。菅義偉官房長官が記者会見し、墨書を掲げて公表した。出典は「万葉集」と説明した。日本最初の元号「大化」から数えて248番目にあたる。新元号は天皇陛下の退位に伴い5月1日午前0時から施行する。安倍晋三首相は正午ごろから記者会見を開き、首相談話を読み上げて新元号に込めた意義などを説明する。元号に用いる漢字が日本の古典から採用されたのは確認される限り初めて。これまでは中国古典(漢籍)を出典としてきた。令和は万葉集巻五、梅花の歌三十二首の序文、「初春の令月にして気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭(らん)は珮(はい)後の香を香らす」から引用した。政府は今回、漢文学や東洋史学だけでなく、国文学や日本史学を専門とする学者にも考案を委嘱したことを明らかにしている。関係者によると、平成への改元時に委嘱した考案者にも国文学者が含まれていたが、日本古典を出典とする案は「平成」を含む3つの最終案に残らなかった。政府は4月1日午前9時半から首相官邸でノーベル生理学・医学賞受賞者の山中伸弥京大教授ら計9人の有識者による「元号に関する懇談会」を開き、原案について一人ひとりから意見を聞いた。その後、衆参両院の正副議長に意見を聴取。首相官邸で開いた全閣僚会議を経て閣議で新元号を定めた政令を決定した。天皇陛下が署名し、4月1日中に公布する。3月14日に複数の学者らに新元号の考案を正式に委嘱し、それぞれ2~5つの案の提出を求めた。官房長官の下で絞り込み、5つ以上の原案から新元号を選んだ。天皇陛下は4月30日に退位、翌5月1日に皇太子さまが新天皇に即位される。「退位礼正殿の儀」は4月30日午後5時からで、三権の長や地方自治体の代表ら338人が参列する。皇太子さまは5月1日午前10時半から歴代天皇に伝わる神器などを引き継ぐ「剣璽等承継の儀」に、午前11時10分から即位後初めて国民代表の前でお言葉を述べる「即位後朝見の儀」に臨まれる。天皇陛下は2016年8月、国民向けのビデオメッセージで象徴天皇としての務めに関する考え方についてお言葉を述べ、退位の意向を示唆された。政府は天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議を設置。17年6月、現天皇一代限りで退位を認める特例法が国会で成立した。

*3-3:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/culture/article/499075/ (西日本新聞 2019年4月2日) 典拠序文は大宰府ゆかり 新元号「令和」
 新元号「令和」の出典となった万葉集の一節は、730(天平2)年に大宰府の大伴旅人の邸宅で催された「梅花(ばいか)の宴(えん)」で詠まれた32首の序文。宴では、対馬や鹿児島など九州各地から集められた官僚たち計32人が、「梅」をテーマに1人1首歌を詠んだ。歌は万葉仮名で序文は漢文。作者は旅人や山上憶良などと推測されている。宴の開かれた前年、時の左大臣が自死に追い込まれる「長屋王の変」が発生。「政変が起きたため、九州の引き締めを図り各地の官僚を集めたのだろう」と福岡女学院大の東茂美教授(日中比較文学)は解説する。緊張した政策議論が行われ、その後に催されたのが梅花の宴だった。令和は、序文にある「令月」と「風和」から取られた。東教授は「『令』は『好(よ)い』という意味。平成は大災害で多くの命が奪われた。不幸な時代を超え『好い和』という穏やかな時代になってほしいという願いが込められているのではないか」と話す。

<外国人の受け入れについて>
PS(2019年4月1、4日追加):*4-1のように、「外国人受け入れ拡大の準備が整わないまま、新制度がスタートした」という批判が多いが、制度が導入されたからやるべきことが具体的にわかったという面もあるので、制度を導入したのはよいことだ。そして、外国人を受け入れたいが未経験の自治体は、先行する自治体から準備に必要な情報を聞き、議会で話し合って予算を作り、次第に受け入れていけばよいだろう。また、多言語対応は、すべての自治体で11言語すべての翻訳を正確にできなければならない理由はなく、来日する外国人の母国語に翻訳できればよい筈だ。大切なのは、母国で既に教育投資を受けた外国人が日本で労働を提供し、日本社会の支え手になってくれることであり、日本人よりハングリー精神があるかもしれないことである。
 また、*4-2のように、熊本県では、第2次ベビーブーム時に多く採用された教職員が退職期を迎え、教職員の約4割が今後10年で定年退職する予定だそうだが、経験豊富で授業力のあるベテラン教員が学校現場を去る前に、①定年年齢を引き上げて働き方改革を実行したり ②小学校の入学年齢を3歳に引き下げたり ③クラスに副担任を置いて教員を支援したり ④学童保育の学習支援員として働いてもらったり 等々を、正当な報酬を支払って行えばよいと思う。
 なお、外国人技能実習制度は、*4-3のように、外国人から搾取する手段となっていたケースが多かったため、3年間の実習を終えると無試験で1号の新資格を取得でき、資格を変更したい人は本人の意思で変更できることをアナウンスしておけば、劣悪な労働環境にある技能実習生は変更すると思われる。なお、外国人労働者に慣れておらず言語対応に不安がある自治体は、フィリピンやインドの人から始めると英語を話せるため対応しやすい。

*4-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13959827.html (朝日新聞 2019年4月1日) 外国人受け入れ拡大、準備整わぬまま 新制度スタート
 新たな在留資格「特定技能」を創設し、外国人労働者の受け入れを拡大する新制度が1日に始まる。政府は、技能実習生からの資格変更を含めて今後5年間で最大約34万5千人を見込む。労働政策の転換点だが、4月の制度導入ありきで進められたため、現場の準備が整わないなかでの「見切り発車」となる。政府は昨年12月、新制度の目玉として、行政サービスや生活情報の相談に原則11言語で対応する「多文化共生総合相談ワンストップセンター」を全国に約100カ所整備することを打ち出した。法務省が地方自治体に対し、多言語対応などに向けた整備費の交付金申請の受け付けを始めたのは2月中旬。補助対象は、47都道府県と20の政令指定市、さらに外国人住民が1万人以上、または5千人以上で全住民に占める割合が2%以上(東京23区は1万人以上で6%以上)の44自治体とした。だが地方議会に諮る時間が足りないなどの理由もあり、申請は37自治体にとどまった。法務省は4月1日の時点で何カ所にセンターが整備されるか明らかにしていない。来日する人から多額の保証金を徴収するような悪質な仲介業者の排除についても、政府は2018年度中に、送り出し国として想定されるベトナム、フィリピン、カンボジア、中国、インドネシア、ミャンマー、タイ、ネパール、モンゴルの9カ国と協力覚書の締結を目指していた。だが3月29日の時点で締結に至ったのはフィリピン、カンボジア、ミャンマー、ネパールの4カ国だけだ。
■窓口整備、足りぬ財源・人材 11言語「翻訳の正確さ心配」
 改正出入国管理法の施行に合わせて、朝日新聞は外国人が多く住む全国の74自治体を対象にアンケートを行った。共生に向けた対応策の目玉となるワンストップセンターについては、過半数が財源不足などを理由に開設予定がないと回答。受け入れ拡大に戸惑う現場の姿が浮き彫りになった。ワンストップセンターの補助対象となった自治体には、人口規模の小さい市町村は入らない。今回のアンケートは、外国人が多い地域の実態把握に努めるため、外国人住民が1万人以上か、全住民に占める外国人の割合が5%以上の74市区町村を対象とし、都道府県は除いた。3月中旬から下旬に調査し、70自治体から回答を得た。回答率は94・6%。今回のアンケートでは、「ワンストップセンターを開設する予定があるか」との問いに、55・7%(39自治体)が「いいえ」と回答した。理由の多くは財源不足だ。補助の対象でも「開設場所や人材の確保にめどが立たない」(東京都北区)との声が出た。大きな課題は、多言語対応だ。国はセンターで原則11言語に対応することを求めている。通訳が配置できなければタブレット端末などで対応する必要がある。岐阜県可児市は翻訳機を導入する予定だが「細かな行政用語をどこまで正確に翻訳できるのか心配。例えば日本の『住民票』という概念は外国と一致するのか」と気をもむ。

*4-2:https://kumanichi.com/column/syasetsu/922837/ (熊本日日新聞 2019年3月27日) 教員の大量退職 教育の質低下防ぐ対策を
 公立の小中学校や高校などに勤める県内の教職員の約4割が、今後10年で定年退職することが明らかになった。この事態に対応するため、県教委や熊本市教委は採用数を増やしているが、授業力のあるベテラン教員が学校現場を去る一方、現場経験の少ない若手の教員が増えることになる。両教委には教育の質の低下を招かない取り組みが求められている。大量退職の要因は、1970年代の第2次ベビーブーム時に多数採用された教職員が退職期を迎えるためだ。両教委によると、2018~27年度に定年を迎える教職員は5033人で、現在の教職員全体の37・7%に当たるという。一方、採用増に志願者の減少もあって、教員採用試験の志願倍率は、小中学校を中心に低下している。小学校の場合、両教委がそれぞれ採用試験をするようになった13年度と19年度を比べると、県教委分が5・1倍から2・3倍に、熊本市教委分が13・7倍から3・2倍に落ち込んだ。志願倍率の低下が、教育の質の低下につながるとは一概に言えないが、「高い倍率を勝ち抜き、合格した」という思いは、採用後のモチベーションになることは確かだ。また、以前と比べ臨時任用教員として数年間学校現場を経験した後、本採用されるケースも減ったため、「即戦力の若手が少なくなった」という声もある。両教委は20年度の採用試験から小学校教諭の実技試験を全廃、または一部の廃止を決めた。受験要件緩和で志願者を増やすのが狙いだが、「単に採用のハードルを低くするだけでは質の低下を招きかねない」とも指摘されている。志願者減の要因の一つとして、「教員は授業や部活動で多忙。保護者対応も重なりストレスが大きい」とのイメージが定着していることがあるのではないか。両教委はタイムカード導入などで、教職員の労働時間管理の徹底を試みているが、さらに抱え込み過ぎているとされる学校や教員の業務の明確化・適正化にも力を入れ、本来の教えるという業務に専念できるようにすることが必要だろう。既に教員の年齢構成はいびつになっている。熊本市教委のまとめでは、18年度に市内の小中学校で働く教員約3千人のうち、51~60歳が半数近くを占め、若手と中堅をつなぐ世代の31~40歳は15%ほどとなっている。経験の少ない若手が増える中、身近な手本となる世代が少ないのも問題だ。「技術の伝承」に悩む民間企業に通じる課題だろう。熊本市教委は退職後に再任用された教員が若手をマンツーマンで指導する事業を実施している。県教委も優れた指導力を持つ中堅教員をスーパーティーチャーとして選び、若手の指導力向上を支援している。こうした経験豊富なベテラン世代を活用して世代をつなぐ取り組みをさらに拡充し、若手も余裕を持って児童、生徒に対応できる環境づくりを進めてもらいたい。それが教育の質の維持、向上にもつながるはずだ。

*4-3:https://www.toonippo.co.jp/articles/-/174288 (Web東奥 2019年4月4日) 廃止含め抜本策の検討を/技能実習制度
 外国人就労を拡大する新制度で、新たな在留資格「特定技能1号」の取得を目指す外国人向けに受け入れ業種別の日本語・技能試験が国内外で始まる。今月中旬からフィリピンで介護、東京や大阪などで宿泊、外食と続く。これとは別に外国人技能実習制度で来日した実習生は3年間の実習を終えると、無試験で1号の資格を取得できる。政府は新制度により5年間で14業種に最大34万5千人の受け入れを見込む。試算では、2019年度は6割弱が実習生からの移行組。その後、試験の合格者は徐々に増えていくものの、5年たってもなお5割は移行組という。技能実習制度と新制度とは切っても切れない関係にある。その実習制度を巡り新制度スタート目前の先月末、賃金や残業代の不払い、長時間労働から実習中の事故死まで、過酷な労働実態が改めて浮き彫りになった。昨年の国会で野党から実習制度の問題点を追及され、山下貴司法相は17年に技能実習適正化法が施行され、それ以降は「適切な運用」が図られていると反論する一方、法務省に調査を指示していた。それ以前の実態調査がずさんだったことも明らかになり、法務省は10項目の改善策を示した。しかし、どれもやって当たり前のことばかりだ。技能実習は末期的な状況にあり、制度の廃止も含め、抜本策の検討に取り組まなくてはならない。法務省の調査では、実習先から失踪して17年1月~18年9月に不法残留などで摘発された5218人のうち759人が最低賃金以下の給料や食費名目などによる過大な控除、時間外労働の割増賃金不払い、違法な時間外労働などを強いられていた疑いがあった。このうち今回の調査以前に把握し対応していた事案は38人分にすぎなかった。例えば、縫製業の実習生は月給6万円で働かされて月60時間の残業をしても割増賃金をもらえず、建設機械施工の2人が実習計画にない家屋の解体などをさせられた。さらに12~17年に実習生171人が死亡、うち43人はこれまで把握できていなかった。実習中の事故死28人、病死59人、自殺17人など。病死の3人は違法な時間外労働をさせられ、自殺の1人は3カ月半で休みが4日だけだった疑いがある。だが不正行為はもっとあるとみた方がいいだろう。調査対象となった企業など実習先は4280に上るが、そのうち383は協力拒否や倒産などで調査できずじまい。賃金台帳やタイムカードの写しなど詳細な資料を集められたのは7割弱にとどまっている。17年11月、実習生に対する人権侵害に罰則を設け、受け入れ先への監督を強化する適正化法が施行された。しかし失踪者は年々増え続け、昨年は9052人に達した。調査結果を踏まえ、法務省は報酬支払いは支払額を確認できる口座振り込みなどで行うよう義務付けるのをはじめ、初動対応の強化や実習生の支援・保護の強化、厳正な審査・検査など改善策を提示した。ただ実効性がありそうなのは口座振り込みくらいだ。日本で働く外国人は昨年10月時点で146万人。それがこれまでにないペースで増えていく。政府は「共生社会の実現」に向け技能実習制度が障害とならないよう早急に手を打つべきだ。

<森林環境税と環境税>
PS(2019年4月2、3日追加):*5-1のように、2018年に森林の適切な維持管理を目的とする森林経営管理法(「①森林の持ち主は適時に木を植えて育て、伐採する経営管理の責務がある」「②適切に手入れされていない森林は、経営管理権を市町村に集める」等を規定)ができ、2019年4月1日から施行されている。そして、「③まとめて経営すれば利益が出ると見られる森林は意欲と能力のある林業経営者に伐採や造林を委託」「④採算がとれない森林は市町村が管理して複層林化」するとされ、④には、2024年度から住民税に上乗せして徴収する森林環境税を充てるとのことだ。私は、森林はCO₂吸収源であるだけでなく、水源や自然環境の源泉でもあるため、都市部の住民も森林整備の負担を担うのは当然だと思うが、②のように、所有者が手入れすらしない森林を市町村が無償で管理をするのはどうかと思われ、管理するにあたっては相応の受託料をとるべきだと考える。また、管理委託さえしたくないような所有者には、所有権を放棄もしくは売却してもらってから公的管理に入るのが公正だろう。さらに、③については、民民の取引であるため適切な受委託関係があると思うが、状況はどうなっているのだろうか。
 私は、*5-2のように、既に地方で導入されている森林環境税よりも、CO₂排出抑制効果を持ち、森林だけでなく農地・藻場・公園・緑地帯等のCO₂吸収源の保全すべてに役立てることが可能な炭素税の導入を行い、他の税収からの環境対策支出は減らせばよいと考える。
 なお、林業は、*5-3のように、長野県や信州大などがドローンやICTを活用した林業の効率化に取り組んで「スマート林業」を進めているほか、林野庁が航空レーザーなどによる計測で詳細な森林情報(立木、地形など)を把握してデジタル化し、一元管理(全都道府県で導入済)する取組を推進しているので、次第にスマート化して面白い産業になることが予想される(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/nourin/dai9/siryou4.pdf#search=%27%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%88%E6%9E%97%E6%A5%AD+%E8%A8%98%E4%BA%8B%27 参照)。ただし、林野庁の見解とは異なり、林業における生産とは、植林・育成(間伐や害虫駆除を含む)・伐採の一連の行為を含むものだ。


2018.2.1朝日新聞  
                    
(図の説明:左図のように、2024年から全国規模で森林環境税が課されることになっている。しかし、私は、森林環境税は既に地方自治体が課しているため、環境税を課してCO₂対策や他の環境関係支出に充てるのがよいと思う。また、左から2番目の図のように、都市の納税者は、現在は森林の効用を無料で享受しているが、森林の手入れにも費用がかかるため、環境税には理解を示すべきである。なお、右から2番目の図のように、日本は森林資源に恵まれており、森林は財産としての価値もあるため、森林資源を無駄にせず有効に使うように工夫すべきだ。そのような中、右図のように、林業の高齢化率は他産業より高く、若者の参入が望まれている)

*5-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13420454.html (朝日新聞社説 2018年3月26日) 森林経営管理 課題の検討を丁寧に
 政府が、森林の適切な維持を目指す法案を国会に提出した。スギやヒノキを植えたまま、手入れされていない森林が増えているためだ。ただ、法案が描く仕組みの実行には課題が多く、丁寧な議論と検討が必要だ。提出したのは森林経営管理法案。森林の持ち主には適時に木を植え、育てて伐採する経営管理の責務があると規定した。市町村にも大きな役割を求める。適切に手入れされていない森林は、経営管理の権利を市町村に集める。そのうち、まとめて経営すれば利益が出ると見られる森林は、意欲と能力がある林業経営者に伐採や造林を委託する。採算がとれない森林は市町村が管理し、広葉樹などを交えた「複層林」に誘導する。目的は二酸化炭素(CO2)の吸収促進や土砂災害の防止、水源の維持などとされる。林野庁は管理が不十分な人工林を約400万ヘクタールと推定。人工林全体の約4割、国土面積の1割強で、放置できないのは確かだ。新制度の方向性は支持できる。農業にも、土地を集めて貸し出す「農地バンク」の仕組みがある。だが、林業は植林から伐採までの期間が数十年に及び、それだけハードルは高い。まず、長期にわたり経営管理をきちんと担える林業経営者を十分に確保できるか、そうした業者を行政が選定できるかという問題がある。木材の需給や経済状況次第で、経営者の意欲がなえたり有能な人材が集まらなくなったりしかねない。市町村には、森林の実情を把握して計画をたて、適切な委託先を選ぶ能力も必要になる。きちんと対応できなければ、森林所有者の意欲や責任感をそぐだけに終わりかねない。所有者が不明の場合や、市町村に経営管理を委ねたがらないときは、一定の手続きで同意とみなす仕組みも設ける。適正に運用できるかも大きな課題だ。一時的に伐採が進んでも、森林管理の成否が最終的に確認できるのはかなり先になる。官民ともに責任の所在があいまいになるリスクがあり、継続的に点検することが不可欠だ。市町村による複層林化には、2024年度から住民税に上乗せして徴収する予定の森林環境税をあてる。森林の機能からみて、都市部の住民も負担するという考え方は理解できる。だが、個別施策の目的税を安易に設けると「予算ありき」の無駄遣いを助長しかねない。CO2吸収源への対策なら、排出抑制効果を持つ炭素税などの導入と一体の議論が望ましい。財源については再考を求めたい。

*5-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24437540Y7A201C1L31000/ (日経新聞 2017/12/9) 長野県、森林税5年継続を正式決定 説明責任重く
 長野県議会は8日の本会議で、森林づくり県民税(森林税)を2018年度~22年度も続ける条例案を可決した。今年度で2期目(計10年間)の課税期間が終わり、さらに5年間継続する。森林税を巡っては税収の余剰や里山整備の目標未達成などが問題視されていた。県は景観整備などに使途を広げると活用策を打ち出したが、従来以上に説明責任を問われる5年間になりそうだ。阿部守一知事は本会議後の記者会見で「新しい形で森林づくり県民税を有効に生かしていくことができるように、体制整備・準備をしていきたい」と述べた。森林税は、森林保全などを目的として通常の税金とは別に住民から徴収する超過課税の一種。長野県では08年に導入し、個人から年500円、法人からは資本金に応じて同1000~4万円を徴収する。17年度の税収見込みは6億6000万円。森林税を活用した里山整備事業の実施面積は17年度末までの10年間で当初目標の84%(3万2210ヘクタール)にとどまる見通しだ。所有者が不明確なことなどを理由に未整備のまま残された森林がある。余った税収を積み立てた基金は同年度末に4億9000万円となり、来年度の歳入となる法人税収分を含めれば6億円にのぼる見込みだ。1年分の森林税収に匹敵する額となる。間伐面積の目標未達成に加え、大北森林組合の補助金不正受給問題を受けて予算を抑制したことも要因だ。県は3期目の新たな使途として、街路樹などの景観整備、県産材を活用した道路標識の設置、河畔林整備などの事業を追加した。市町村に自由度の高い形で森林税収から年1億3000万円拠出していた森林づくり推進支援金は県地方税制研究会の指摘を受けて年9000万円まで縮小し、市町村に事業内容や成果の詳細な説明を求めていく。税制研究会などが重視したのは県の説明責任だ。推進支援金など使途が明確でないものがあったほか、大北森林組合が不正受給した補助金に森林税が含まれていたことも県民の不信を招いた。県はみんなで支える森林づくり県民会議などで事業の評価・検証をして毎年度初めに知事が公表することを新たに条例案に盛り込んだほか、透明性向上のための庁内組織を立ち上げるとしている。国が1人当たり年1000円の徴収で導入を検討している森林環境税との関係について県林務部は「県税とは目的が違うため明らかな重複はない。もし重複する部分があれば設計を見直す」と説明している。国は24年度から導入する方向で検討を進めているため3期目とは時期が重ならない公算が大きいが、「二重取り」にならないよう慎重な検討が必要となる。県は継続の根拠の一つとして、県民・企業へのアンケートで継続賛成が7割を上回ったことを挙げる。ただ、同時に行った森林税の使途の認知度を調べるアンケートでは7割が「使い道がよくわからない」と答えた。県民の理解を深め、納得を得られる説明をしていくことが一層求められそうだ。

*5-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31787370U8A610C1L31000/ (日経新聞 2018/6/14) 長野県や信州大など、スマート林業普及促進
 長野県はドローンや情報通信技術(ICT)を活用して林業の効率化を進める。同県や信州大学、林業事業者などが参加する協議会を始め、2018~20年度にレーザーやドローンを使った森林資源の把握や木材の需給状況がネット上で分かるシステムを開発する。県の林業に先進技術を導入する「スマート林業」で競争力を高める。協議会の名称は「スマート林業タスクフォースNAGANO」で、14日に南箕輪村の信州大で最初の会議を開いた。森林資源の把握では林業事業者にドローンを保有してもらい、信州大の技術を活用して木の本数や位置、高さを測定して伐採の計画・調査を省力化する。伐採した木材のデータはネット上で林業事業者や運送事業者、木材を求める事業者で共有する仕組みをつくる。リアルタイムで出荷情報を更新し、必要な材を適切に納入できるようにする。運送も効率化して費用を削減する。県の事業費は18年度が1583万円。19年2月まで効果を検証し、19年度以降の具体的な施策を決める。

<事業承継税制の大改正>
PS(2019年4月5日追加):働き方改革で従業員は働き易くなるが、その皺寄せは、中小企業の場合には経営者にかかるため、事業主は大変になるだろう。しかし、*6-2のように、需要の少ない時間帯や曜日はCloseしたり、週4日勤務(週休3日)の1日10時間労働にして従業員をローテーションしたりする方法もある。
 そのような中、高齢で事業承継の時期にある個人事業主が多くなっているが、後継者がおらず、良い技術を持っていたり、黒字であったりするにもかかわらず、廃業になるケースは多い。そのため、相続争いを防ぎ、個人企業が事業承継をやりやすくするために、*6-1及び下図のように、個人事業を後継者に譲るときのルールが見直されるのはよいことである。

  

(図の説明:左と中央の図のように、代替わりで事業の継続が困難にならないよう、2018年度から10年間の特例で事業承継時の相続税軽減要件が緩和され、2019年中に先代が早く事業資産を贈与すれば相続対象から外すことができる制度に改めるそうだ。しかし、右図の「働き方改革」は悪くはないが、役所や大企業をモデルにしているため、ぎりぎりで経営している不安定な中小企業を承継するよりサラリーマンになった方がよいと考える次世代は多いと思われる)

*6-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41271940U9A210C1EE8000/ (日経新聞 2019/2/15) 個人事業主、土地など承継しやすく 相続争い防ぐ
 政府は個人事業を後継者に譲るときのルールを見直す。先代が生きている間に事業を引き継いだ場合、後継者の譲り受けた土地や建物などの事業資産が、一定の条件の下で他の法定相続人の手に渡らないようにする。経営者の高齢化に伴う個人事業の廃業が増える中、相続争いを防ぐことで代替わりを進めやすくする。今国会に提出する承継円滑化法改正案に盛り込んだ。2019年中の新ルール実施を目指す。現行では生前に事業を譲り受けても、先代が亡くなった後、他の相続人に資産を「遺留分」として取得され、事業の権利が分散する余地が残る。本人の兄弟を除く遺族には原則、全体の2分の1の遺産を受け継ぐ権利があるからだ。後継者に土地や建物などの事業資産を集中して贈与しても、他の相続人が主張すれば、資産が複数の相続人に分散してしまう可能性がある。他の法定相続人の「遺留分」について、相続開始前の10年間に限定した基礎財産から算定する仕組みに改める。先代が早い段階で事業資産を贈与すれば、相続対象から外すことができる。他の相続人に渡す「遺留分」についても、相当額の金銭で支払えるように改める。土地や建物、設備を現物で返還しなくても済むようになる。19年度から始まる個人版事業承継税制では、先代が生きている間に事業を引き継ぐと、相続税や贈与税の納付が猶予される。政府は今回の新ルールが加わることで、さらに代替わりがしやすくなるとみる。中小企業には既に同様のルールが適用される。帝国データバンクによると、18年(1~12月)に「休廃業・解散」した企業(個人事業主を含む)は、全国で2万3026件(前年比5.6%減)ある。中小企業系の団体から生前贈与分の事業資産の権利を確保できるよう求める声があがっていた。

*6-2:https://mainichi.jp/articles/20190316/dde/001/040/043000c (毎日新聞 2019年3月16日) 働き方改革、宿泊業だって休みたい 人材確保へ週休3日 従業員「プライベート充実」
 年中無休のイメージが強い旅館やホテルで週休3日制導入など、働き方改革の動きが出ている。外国人観光客の増加や2020年東京五輪・パラリンピックに向け宿泊業界は活況だが、長時間労働が敬遠され、人手不足は深刻。労働環境の見直しで、優秀な人材確保につなげる狙いがある。「月、火、水は宿泊がお休みになります」。将棋、囲碁のタイトル戦の舞台にもなっている神奈川県秦野市の旅館「元湯 陣屋」は週3日、宿泊客を取らない。(以下略)

| 年金・社会保障::2019.7~ | 11:09 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.4.24 国の予算の使い方 (2017年4月25、26、27、28、30、5月4、20、27日追加)
 書くべきことは多いが、今日は、国の予算の使い方とそれを左右する基本的意思決定について記載する。なお、私は、前のパソコン(PC)にwindows XPを入れていて、そちらの方が使い勝手がよかったため最近まで使っていたが、XPではアクセスできないHPが増えたので、仕方なくwindows8.1が入っているPCを使うよう変更した。そうすると、ブログ写真の解説文字の位置が変わってしまう上、蓄積されたデータの移管にも苦労が多かった。そのため、ソフト会社は新ソフトを開発して「売らんかな」の販売戦略をとるのではなく、PCを事務作業や研究に使って価値あるデータをPCで蓄積している人の身になって考えて欲しいと思った次第である。

  
      フクイチの現状      諫早干拓地       玄海原発
        2016.6.30毎日新聞 ランドサット撮影  2017.4.13西日本新聞

(1)“国の責任”となる膨大な原発事故費用
1)フクイチの廃炉・賠償費用とその無駄遣い部分
 経産省は、2016年12月9日、*1-1のように、フクイチの廃炉・賠償などの費用総額が21兆5000億円にのぼるという見積もりを公表し、これまでの11兆円から倍増させた。

 その理由は、①廃炉費が2兆円から8兆円 ②賠償費が5兆4000億円から7兆9000億円 ③除染費が2兆5000億円から4兆円 ④中間貯蔵施設整備費が1兆1000億円から1兆6000億円に膨らんだ などだが、溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出し方法などの詳細が決まっていないため、経産省は合理的な見積もりが困難としてそれを含めていない。これなら、また2倍になるのも時間の問題のように見えるが、④は最初から最終処分をすれば節約できる金額で、核燃料の取り出し費用も石棺にすれば不要だった。また、廃炉に長期間かけ、原子炉建屋のカバーを外して環境を汚し続けているのは、殺人に近い。

 さらに、経産省は、賠償総額7兆9000億円のうち2400億円程度を新電力にも負担させるようにして、巨額の事故処理費用を賄う方針だ。しかし、これでは、原発事故には責任のない会社や個人が原発事故の費用負担をすることとなり、電力市場が不公正な市場となって電力自由化の効果もそがれるため、事故を起こした会社が蓄えた資産を売却して廃炉費用を賄うのが筋である。

 なお、*1-2のように、2013年9月3日、フクイチから高濃度の放射性物質を含む汚染水が漏れているため、政府は約470億円(凍土壁建設費:320億円、浄化装置開発費:150億円)の国費を投じ、政府主導・国の全額負担で、①原子炉建屋への地下水の流入を遮断する凍土壁を設置し ②汚染水浄化装置を増設し ③汚染水漏れが見つかった急造タンクは溶接のしっかりしたタンクに入れ替え ④建屋に流れ込む地下水をくみ上げ ⑤地下坑道(トレンチ)にたまっている高濃度汚染水を除去し ⑥汚染水の海への漏洩を抑えるための地盤改良をする とした。

 しかし、それから約3年6か月後の現在も、原子力規制委員会が国際原子力事象評価尺度(INES)でレベル3(重大な異常事象)に相当するとした汚染水問題は、課題のまま解決していない。これだけの国費を投入しても片付かない理由は、「総額470億円を投入。うち2013年度予算の予備費を210億円使い、対策を前倒し」というように使う金額を先に決め、汚染水問題の解決よりも景気対策が目的であるかのような予算の使い方をしているからだ。このように、事の重大性が全く理解できずに優先順位が滅茶苦茶な人は多いが、これなら石棺にすれば、汚染水問題は生じず、この470億円やタンクの設置費用は不要だったのである。

2)国は原発事故でどういう責任をとれるのか
 フクイチの場合は、これまで政府・電力会社が「原発は絶対に壊れず、安全でクリーンだ」と強く宣伝してきたため、政府や電力会社の宣伝を信じてきた住民に罪はない。そのため、原発事故の責任は、虚偽の宣伝をしてきた政府・電力会社にあり、住民は政府・電力会社に完全に復旧してもらい、復旧までに生じた損失についての損害賠償や慰謝料を受ける権利がある。ただし、実際には、除染しても完全には復旧できない地域が多く、そこに住んでいた人は損害賠償・慰謝料に加えて移転費用も請求できるわけである。
 
 しかし、*1-3のように、原発を再稼働して起こる今後の原発事故に対しては、「原発は絶対に壊れないので、安全でクリーンだ」と住民が信じれば、それは交付金目当てのご都合主義の信頼になるだろう。

 また、「万一事故が発生した場合、国は責任を持って対処する」と繰り返しているが、(1)1)の状況で、国が責任を持って対処しているとは言えず、故郷が汚染され復旧していないのに避難指示を解除されて困っている被害者も多い。さらに、原発事故は、復旧すること自体が困難で、その費用も高くつくというのが現実で、国民は、何度も原発事故処理費用のような後ろ向きの費用は負担したくないし、できないのである。

(2)玄海原発再稼働について
 佐賀県議会は、*2-1のように、過半数を占める自民党議員が「再稼働容認」、民進党は「条件付き再稼働容認」として、最稼働容認決議案を可決した。佐賀県知事は、「県民代表としての県議会決議を重く受け止め、再稼働に同意する見通し」で住民投票には否定的だが、佐賀新聞社が昨年秋に実施した県民世論調査では、反対が賛成を上回ったそうだ。私は、県議会議員選挙は原発再稼働のみを争点にして行うわけではないため、原発再稼働のみを争点とし、その賛成及び反対理由を明らかにして住民投票するのが、これからの方針を決め、それを遂行する覚悟を決める上で重要だと考える。

 なお、佐賀県内の3首長は原発再稼働に反対の意思を表明し、事故が起きれば県境は関係ないため、長崎県、福岡県からも反対・不安・懸念の表明が相次いでいる。

 このような中、*2-2、*2-3のように、2017年4月22日、世耕経産相が九電の瓜生道明社長の案内で玄海原発を視察し、午後に佐賀県庁で山口知事と会談し、山口知事は記者団に「大臣から国として責任を持つとの強い決意の言葉を頂いたので、(地元同意の判断は)できるだけ早くと思っている」と述べ、週明けにも地元同意を表明するそうだ。山口知事(東京大学法学部卒、総務省出身)は「手続きが大事」とよく言われるが、西日本新聞が書いているとおり、再稼働するための“儀式”は一歩ずつ進んでいるが、原発再稼働による住民リスクは親身に考えられていないように見える。

 そして、*2-4のように、山口知事は24日午後、「熟慮に熟慮を重ねた結果、原子力発電に頼らない社会を作るという強い思いを持ちつつ、現状においては(再稼働は)やむを得ないと判断した」として、九電玄海原発の再稼働に同意する考えを表明し、これで地元同意手続きが完了したそうだ。しかし、「手続きさえ踏めば、真実はどうでもよい」という発想が法学部卒の人に多く、「裁判で手続きさえ踏めば、無実の人を犯人に仕立て上げてもよい」という結果も招いているため、法学部教育は手続主義から真実追及主義に変更すべきである。

 なお、住民リスクの内容を重視する大学の元教員や医師らでつくる「福岡核問題研究会」の有志は、*2-5のように、「玄海原発が新規制基準に適合すると認めた原子力規制委員会の許可は不当だ」として、規制委員会に異議を申し立てる審査請求をすることを決めたそうだ。その理由は、①フクイチ後、フランスは総勢300人の緊急対応部隊を新設したが日本の新規制基準には対応する措置がなく、世界基準に程遠いこと ②規制委が重大事故時の住民避難などの対策の有効性を審査の対象にしていないこと などが、「法律が求める責務からの責任逃れであり違法」などとして、主に8項目を挙げているそうだ。また、*2-6のように、反原発団体も、「県民を犠牲にするな」と経産相に抗議している。

 さらに、2017年4月14日、*2-7のように「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」が発足し、会見で小泉元首相は「国民全体で原発を止めていこうという強いうねりが起きているのを実感している」とし、「いずれ国政選挙で脱原発が大きな争点になる時がくる」と力を込められたそうで、やはり感がよいと思う。会長その他の役員は「顧問:細川護熙元首相、会長:城南信用金庫吉原毅相談役、副会長:中川秀直元自民党幹事長、島田晴雄(前千葉商科大学長)、佐藤弥右衛門(全国ご当地エネルギー協会代表理事)、事務局長:河合弘之(脱原発弁護団全国連絡会共同代表)、事務局次長:木村結(東電株主代表訴訟事務局長)、幹事:鎌田慧(ジャーナリスト)、佐々木寛(新潟国際情報大教授)、香山リカ(立教大教授)、三上元(元静岡県湖西市長)、永戸祐三(ワーカーズコープ理事長)」だそうだ。

(3)諫早干拓について
 *3-1、*3-2のように、諫早湾(長崎県)を鋼板で閉め切ってから20年が経過し、国の干拓事業で国内最大級の干潟は農地になり、諫早湾を含む有明海は漁業不振が深刻化した。そのため、2002~2016年度に、海底に砂を入れて耕したり、干潟に潮の流れをよくする水路を築いたりする工事をして、498億円という多額の公費を投入したが海は再生しなかった。自然の流れを壊した上で、海底に砂を入れて耕したり、干潟に潮の流れをよくする水路を築いたりするのが無意味なことは、やってみなくても明らかである。

 そのほか、国と自治体を合わせると、352億円の公費が投じられ、下水道を整備したり、水質を浄化したりして、調整池の水質改善を続けているそうだ。下水道の整備は干拓しなくても必要だが、水質浄化までしても調整池は富栄養化し、毎夏のようにアオコが大量に発生して、海の再生も池の水質改善も十分な効果が上がっていないのは、水が外に流れ出ないからである。逆に、有明海の方は貧栄養化して、養殖海苔が色落ちしたり、漁業不振になったりしているわけだ。

 そのため、調整池のアオコの調査を続ける熊本保健科学大の高橋徹教授(海洋生態学)は「病気なら検査して、診断し、効果のある治療法を選ぶ。有明海の異変では検査にあたる開門調査をしていない。それ抜きでは効果的な対策も不可能なのに、あてどもなく血税が投じられている」と述べている。

 この干拓事業をめぐっては複数の訴訟があり、干拓が有明海の漁業不振の原因だと疑う漁業者らは開門を求めて国を提訴し、2010年には福岡高裁で開門を命じる判決が確定したが、その後、長崎地裁が干拓地営農者の主張を認めて、国に開門を差し止める仮処分決定を決定したため、国は確定判決を履行できなくなり、2014年6月から「罰金」として漁業者側に間接強制金を支払っている。

 諫早湾干拓工事は1952年に、約1万ヘクタールの湾全体を農地にする大干拓構想として浮上し、米余り時代になって規模を縮小したものだ。そして、畑地開発や高潮・洪水防止に目的を変え、1989年に着工して、1997年4月14日に、ギロチンを思わせる293枚の鋼板で湾の3分の1が閉め切られ、長さ7キロの堤防内側は干潟が陸地になり、672ヘクタールの農地に変わった。総事業費は、2530億円(3.7億円/ヘクタール)だ。

 造成された農地は長崎県の公社が国から51億円で買い取り、2008年から営農が始まって、個人・法人計40事業者が農地を借りて野菜などを作っている。1ヘクタールあたり約3.7億円かけて造成された農地だが、リース料は年20万円/ヘクタールで、総事業費をカバーし終わるまでには1850年かかる。そのため、1事業者の面積は平均16.7ヘクタールと大規模経営でよいが、国の事業としての費用対効果は低かったと言わざるを得ない。

 しかし、私は、公共事業は短期的に見れば費用対効果が悪くても、将来の地域振興を考えると必要なものもあり、「費用対効果が悪いから、その公共事業はやらない」と即座に言うべきではないと考えている。それでも、諫早湾の干拓工事は、戦後の米不足時代に湾全体を農地にする大干拓構想として浮上し、米余り時代になってから規模を縮小し、目的を畑作や高潮・洪水防止に変更して行っているもので、一度決めたら何があっても中止しない国の公共工事のあり方とそれによる膨大な無駄遣いが問題なのである。さらに、食料自給率向上のためには、畑作もよいが漁業も大切であるのに、農水省や国土交通省は、これまで水産業(海の環境保全が必要)は眼中にないかのような政策をとってきており、それが間違いだったのだ。

 政府の公共事業費は、景気対策のためと称して、1990年代に毎年のように当初予算で9兆円台を計上し、1998年度は当初と補正の合計が15兆円近くに達して、「大型公共事業=環境破壊、税の無駄遣い」と批判された。東日本大震災の復興事業においても、本当に必要な公共事業だけをなるべく安い価格で行うのではなく、国民の血税を使って高い価格で行う有害無益な公共事業も含まれているのが残念だ。

 これらの状況は、宮入長崎大名誉教授が言われるように、「農水省は諫早湾干拓事業の費用対効果を算出する際、失われる干潟の浄化能力や漁業被害を勘定に入れなかった。そのつけを今払っており、終わりの見えない国民の血税による後始末」になっており、調和した自然の大きな力を無視した公共事業は、国民に無限の負担を強いるのである。

 なお、*3-2に書かれている諫干開門差し止め請求訴訟判決骨子で、開門反対派は、 ①開門すれば農地に塩害など重大な被害が発生する恐れがある ②開門で漁場環境が改善する可能性は高くない ③開門調査で堤防閉め切りと漁獲量減少の関連性解明の見込みは不明 と主張し、判決も、開門で堤防内の調整池に海水が入り込み、農地に塩害や潮風害、農業用水の一部喪失が発生する恐れがあるため、生活などの基盤に直接関わり重大」と指摘している。

 しかし、①については、半島・島・有明海の他の干拓地では堤防が無くても農作物ができているので根拠がなく、②③は、本明川、田古里川、船津川、境川、深海川、二反田川、有明川、西郷川、神代川、土黒川などから流入していたミネラルが海へ拡散するのを堤防の閉め切りで不自然に止めてしまったことが原因であることは誰が見ても明らかである。そのため、それを確認するために開門調査をしようとしているわけなのだ。

 さらに、開門しても、諫早湾には多くの川が流れ込んでいるため、調整池は完全な塩水にはならないが、仮に塩水になったとしても、*3-3のように、「ウオータープラザ北九州」は海水と下水から飲用水レベルの真水を精製する技術も確立しており、諫早市は下水道を整備しているため、その下水道から農業用水を作ることは容易で、むしろ精製しすぎずに窒素やリンが少し残っている方が、肥料が節約できそうである。

(4)これだけ1000億円単位の無駄遣いが多いのに、福祉・教育だけは消費税を上げなければ財源がないとするのはおかしいこと
 そもそも、保険とは、「将来起こるかもしれないリスクに対して、予測される発生確率に見合った一定の保険料を加入者が負担して万一の事故に備える制度で、さまざまな事故や災害から生命・財産を守る為の合理的な防衛策」とされている(http://www.nihondaikyo.or.jp/insurance/08.aspx 参照)。

1)介護保険の負担増について
 2017年4月15日、*4-1のように、与党が、高所得者のサービス利用時の負担割合を2割から3割に引き上げ、大企業社員や公務員らの保険料負担を増やす内容の介護保険関連法案の採決を強行した。この間、TVは森友学園問題や殺人の容疑者(犯人と確定していない)が捕まったという話ばかりをいっせいに行い、介護保険関連法案に関する報道は極めて少なかった。
 
 しかし、痛みがあるか否か以前に、将来起こるかもしれないリスクに対して、そのリスクが発生する確率に見合って保険料を支払っているのに、保険給付が行われる段階になって給付額に所得制限を設けるのでは、保険とは言えない。その上、介護保険で言っている“現役並み所得”というのは、「単身世帯で年収383万円以上、夫婦世帯では年収520万円以上」と、夫婦で医療費や介護費を負担しなければならない高齢者夫婦にとって、高所得とは言えない金額だ。

 そして、これによって節約されるのは、健康な生産年齢人口の人のために、景気対策と称して政府が行った1000億円単位の無駄遣いのほんの数%なのだから、どこか大きく間違っている。

 つまり、厚労省管轄の保険設計は、保険料の支払い時と給付時の両方において所得で差をつけており、とても保険とは言いがたく、税だとすれば二重課税になっているのである。

2)“こども保険”構想?
 自民党の小泉進次郎衆議院議員を中心とする若手議員でつくる小委員会が、*4-2のように、2017年3月29日に、「少子化に歯止めをかけるため」として、「こども保険」構想を発表したそうだ。

 「こども保険」を子育て支援の財源にするという根拠は、子どもが必要な保育・教育などを受けられないリスクをなくすことだそうだが、子どもが必要な保育・教育を受けられなければ、その子は稼ぎ手になれず、国の発展にも寄与できないため、それは個人のリスクというよりも、政府の予算の使い方における優先順位の問題である。つまり、教育や保育は、本人のためであると同時に国の礎でもあるため、1000億円単位や1兆円単位の無駄遣いをしながら、「財源がない」などと言って疎かにすべきものではないのだ。

 私自身は、幼児教育は3歳から始め、それ以前を保育として、幼児教育以降は義務教育として無償化するのがよいと考える。そして、3歳未満(0、1、2歳)の保育は、夫婦で交互に育児休暇をとれば家庭で行うという選択肢もできるため、高くない保育費を徴収するのがよいだろう。また、義務教育は高校卒業の18歳までとし、中学・高校は一貫校として行く学校を選択でき、入試を受ける形式にするのがよいと考える。

 そのため、「子ども保険」は不要で、保育・教育の費用は、堂々と一般財源から出せばよい。

<膨大な原発事故費用>
*1-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS09H0H_Z01C16A2000000/ (日経新聞 2016/12/9) 福島廃炉・賠償費21.5兆円に倍増 経産省が公表
 経済産業省は9日午前、東京電力福島第1原子力発電所の廃炉や賠償などの費用総額が21兆5000億円にのぼるとの見積もりを公表した。廃炉費用が8兆円に上振れしたことなどにより、これまでの想定の11兆円から倍増した。賠償費用の一部を新たに新電力にも負担させるようにして、巨額の事故処理費用を賄う。経産省が9日示した見積もりでは、廃炉は従来の2兆円から8兆円に、賠償は5兆4000億円から7兆9000億円に、除染は2兆5000億円から4兆円に、中間貯蔵施設の整備費用は1兆1000億円から1兆6000億円にそれぞれ膨らむ。このうち廃炉費用は原子力損害賠償・廃炉等支援機構が国内外の有識者へのヒアリングに基づく試算として示した。ただ、溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出し方法など廃炉の詳細はまだ決まっておらず、経産省は合理的な見積もりは現段階で困難としている。東京電力ホールディングスは9日午前に開かれた「東京電力改革・1F問題委員会」で送配電や原子力事業で再編・統合を検討する方針を示した。両事業の再編で企業価値を高め、廃炉費用を捻出する。国は東電向けの無利子融資枠を今の9兆円から13兆5000億円に引き上げるほか、廃炉費用を積み立てて管理する基金をつくり、長期に及ぶ廃炉や賠償が円滑に進むようにする。賠償総額7兆9000億円のうち、新電力による負担は2400億円程度になる。新電力が40年かけて支払う場合、新電力を利用する標準家庭の電気代に月平均で18円が上乗せさせる計算となる。

*1-2:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDF03004_T00C13A9MM0000/ (日経新聞 2013/9/3)福島原発、汚染水対策に470億円 政府が基本方針、遮水壁、建設前倒し
 東京電力福島第1原子力発電所から高濃度の放射性物質を含む汚染水が漏れている問題で、政府は3日、約470億円の国費を投じ政府主導で解決する方針を固めた。国の全額負担で原子炉建屋への地下水の流入を遮断する凍土壁を設置するほか、汚染水を浄化する装置も増設する。東京電力主体の従来の対策よりも前倒しで事態を解決できるようにする。3日に開いた原子力災害対策本部で汚染水対策の基本方針を示した。安倍晋三首相は「世界中が注視している。政府一丸となって取り組みたい」と述べた。対策費は凍土壁の建設費で320億円、浄化装置の開発費で150億円と見積もった。対策費のうち約210億円は2013年度予算の予備費でまかない、年度内に対策に取りかかる。約2年の工期がかかる凍土壁の建設を前倒しする。対策費は概算で、凍土壁や浄化装置の開発が難航すれば上振れする可能性がある。凍土壁は建屋のまわりの土を冷却剤の循環により凍らせて地下水の浸透を防ぐ設備。原発内にたまった汚染水を浄化する多核種除去設備(ALPS)も、東電が設置する3系統に加え、国が高機能な浄化設備を増設する。汚染水漏れが見つかった急造タンクは溶接のしっかりしたタンクに入れ替える。汚染水対策に向けた体制も強化する。従来は経済産業省や原子力規制庁が汚染水問題に対処していたが、国土交通省や農林水産省も加えた関係閣僚会議を発足させる。地下水や土壌改良の専門家を集め、政府一丸で対策にあたる態勢を整える。東電や地元との連携を深めるため、国の現地事務所も新設。福島第1原発の周辺に常駐する担当官を増やし、情報収集や対策協議を密にする。基本方針には、▽建屋に流れ込む地下水くみ上げ▽地下坑道(トレンチ)にたまっている高濃度汚染水の除去▽汚染水の海への漏洩を抑えるための地盤改良――などを盛り込んだ。個々の対策の実施計画も明らかにし、早期解決に向けた姿勢を内外に示す。東電は7月下旬、福島第1原発から汚染水が海洋に流出している可能性を認め、流出量を1日300トンと推計した。対策は後手に回り、8月には汚染水をためるタンクからの漏洩が見つかるなど事態は悪化の一途をたどっていた。原子力規制委員会は汚染水問題が、国際原子力事象評価尺度(INES)でレベル3(重大な異常事象)に相当するとの評価を決定。国内外に懸念が広がっているため、政府は「対策を東電任せにせず、国が前面に立つ」(安倍首相)との姿勢を打ち出していた。
<政府の主な汚染水対策>
■体制・資金
・経済産業省や国土交通省などが関係閣僚会議を設置。東京電力や地元と連携する現地事務所を新設し、国の担当官が常駐
・総額470億円を投入。うち2013年度予算の予備費を210億円つかい、対策を前倒し
■対  策
・建屋を凍った土で覆う遮水壁の設置(320億円)
・汚染水から放射性物質を取り除く装置を新設(150億円)

*1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/424128 (佐賀新聞 2017年4月24日) 玄海再稼働へ、事故時対応約束 今村氏発言後引き、「国が責任」に疑念
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に同意するかどうか、佐賀県知事の最終判断が目前に迫った。万一事故が発生した場合、国は「責任を持って対処する」と繰り返すが、福島第1原発事故の自主避難者の帰還を巡って「本人の責任、判断だ」と発言して撤回した今村雅弘復興相の言動が後を引き、国への疑念はくすぶる。福島事故への対応は、原発事故に対する国の責任の取り方の先例になるだけに、厳しい視線が注がれている。
▽故郷が汚染 
 「今村さんって佐賀出身でしょ? ふるさとが放射能に汚染されてみないと、私たちの痛みは分からないんでしょうか」。福島市から佐賀市に自主避難している渡辺弘幸さん(55)は、ため息交じりにつぶやいた。事故直後、原発から約60キロ離れた福島市にも放射性物質が飛来した。国の避難指示は出なかったが、持病が心配で、母親を連れて避難することを決意した。だが、母親は「どうせこの先、長くないから」と残り、1人でふるさとを離れた。1年半前、事故で足を骨折して仕事を続けられなくなった。自主避難者に対する住宅の無償提供支援が3月で終了し、家賃が重くのしかかる。「自分の判断で避難したから、自己責任と言われればそうかもしれないが、原発を推進してきた国の責任はどうなる」
▽にじむ距離感 
 事故の翌年、2012年6月にできた「原発事故子ども・被災者支援法」は、被災者の生活支援を、原発を推進してきた国の責務として行うと定め、自主避難者も救済対象にしている。衆参両院の全会一致で可決され、今村氏も賛成した。避難者の支援活動に取り組み、法案作りに関わった福田健治弁護士は「今村氏は行政トップとして法を誠実に執行する立場なのに、支援法の規定を知らなかったんだろうか」と嘆く。
政府は「福島への帰還こそが早期復興につながる」として、避難指示の解除を段階的に進め、避難者への生活支援策を縮小していった。支援法も、具体的な施策を決める段階で対象者が限定され、支援の中身が形骸化していった。今村発言の半月前の3月17日、避難住民らが起こした集団訴訟で前橋地裁(群馬県)は、原発事故の国の過失責任を認める判決を出した。放射性物質への恐怖や不安にさらされずに暮らす「平穏生活権」が侵害されていると指摘した。国は引き続き争う姿勢で、避難者との距離感がにじむ。
▽切り捨て 
 福島原発事故による広域避難の実態を、鳥栖市などで調査してきた立教大学の関礼子教授(社会学)は懸念する。「社会の中で、事故の記憶とともに被災地への関心が薄れていっている。そうした中、政府が示す姿勢は、被害を受けた人たちを切り捨てようとしているようにも映る」。その上で、今村氏の発言は避難者だけに関わる問題ではないと強調する。「原発の再稼働を進めたい国が『責任を取る』と言った場合の、責任の取り方とはどういうものなのか、今の対応が先行事例になる。原発立地地域の人たちは自分の身に引き寄せて、見ておく必要がある」

<原発再稼働>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/421590 (佐賀新聞 2017年4月14日) 県議会の玄海再稼働容認、住民の安全最優先に判断を
 九州電力玄海3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関し、佐賀県議会が同意した。過半数を占める自民党の「再稼働容認」とする決議案が賛成多数で可決された。既に原発のある玄海町は同意している。決議を「極めて重く受け止める」とした知事は同意する見通しだが、不安や反対の声は根強い。判断を下す際の十分な説明が必要だ。臨時県議会では3本の決議案が提出された。自民などは、電力の安定供給といった観点から「再稼働の必要性が求められる」と提案し、避難計画の充実や地域振興などを国に求めた。民進などは、条件付きながら「再稼働せざるを得ない」、共産などは「拙速な判断と同意をしないよう強く求める」と主張した。しかし十分な議論が尽くされたのか、疑問も残る。知事は再稼働に同意するかどうかの判断の前提として、県議会の意思表示を求めていた。臨時県議会の12日の質疑でも、県民の代表としての議会の意見が大切であることを繰り返し表明。住民投票に否定的な答弁をしたのは、その裏返しともいえよう。地方自治を支えているのは首長と議員を住民が直接選挙で選ぶ「二元代表制」で、間接民主主義をとっている。原発再稼働というテーマが、多数決になじむのかという論議もあろう。再稼働に前向きだった自民党の案が通るのは予想された。しかし、県民にはいろいろな意見があり、佐賀新聞社が昨年秋に実施した県民世論調査では、反対が賛成を上回った。不安に感じる県民がいる以上、知事は十分に留意する必要がある。県主催の住民説明会、知事と県内20市町長との懇談会も開催した。伊万里市長ら3首長が再稼働に反対の意思を表明し、ここにきて長崎、福岡県から反対や不安、懸念の表明が相次いでいる。事故が起きれば、県境は関係ない。地元同意の範囲をめぐる議論が起きるのも、当然といえる。地元同意に法律上の明確な規定はない。このため臨時県議会の質疑では、議員から知事に対し、現在より広い範囲の同意を必要とするよう、法的な整備も含めて国に求める意見が出た。知事も「根本の議論が必要」と応じた。今後の判断に際し、隣県も含めた住民や首長の声を真摯(しんし)に酌(く)んでほしい。与野党を問わず、避難計画を実効性のあるものにすべきという主張は根強い。20市町長との懇談会でも、多くの首長が条件付きで再稼働に賛成する立場を表明した上で、福島原発事故の被害の長期化とともに、事故時の避難者の受け入れに不安を訴えた。「道路が混雑し、地震の場合は住民の避難も困難になる」「道路も整備しないとパニックになる」などと、懸念と対策を求める声が相次いだ。県議会の質疑では、避難計画は国が審査して同意を与える法整備が必要との提案があった。「それも一考に値する」として知事は、国にどういう提言ができるか検討すると答弁した。原発は国策である以上、国がしっかり対応すべき課題ではあるが、任せるだけではいけない。県レベルでも周知や渋滞などの対策が求められる。再稼働へ向けた手続きは進んだ。ひとたび原発が動けば、後戻りはできないとの覚悟がいる。知事は住民の安全を最優先に慎重に判断してほしい。

*2-2:http://qbiz.jp/article/108174/1/ (西日本新聞 2017年4月22日) 世耕経産相が玄海原発視察
 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働に向けて、世耕弘成経済産業相は22日、九電の瓜生道明社長の案内で同原発を視察し、原子力規制委員会が新規制基準適合を認めた安全対策を確認した。午後には佐賀県庁で山口祥義知事と会談する。山口知事は世耕氏との会談で再稼働や事故時などの「国の責任」を再確認し、週明けにも地元同意を表明する方針。一方、玄海原発30キロ圏の8市町のうち半数の同県伊万里、長崎県松浦、平戸、壱岐の4市長は反対を表明している。世耕氏は玄海原発で、東京電力福島第1原発事故後に配備した移動式大容量ポンプ車や格納容器が破損した場合に放射性物質の飛散を防ぐ放水砲などを見て回った。山口知事との会談後には鹿児島県薩摩川内市で九電川内原発も視察する。

*2-3:http://qbiz.jp/article/108179/1/ (西日本新聞 2017年4月23日) 玄海原発、24日にも再稼働同意 佐賀知事、経産相と会談
 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働に向けて、佐賀県の山口祥義知事は22日、世耕弘成経済産業相と県庁で会談した。山口知事は会談後、記者団に「大臣から国として責任を持つとの強い決意の言葉を頂いた。(地元同意の判断は)できるだけ早くと思っている」と述べ、週明けの24日にも同意を表明する考えを示した。山口知事は、同意を判断する際の最終手続きとして世耕氏との会談を国に要請していた。会談で世耕氏は「原子力政策に政府として責任を持つ」と述べ、再稼働への理解を求めた。山口知事は「言葉は重く受け止める」と評価した。知事は、住民説明会では反対の声が大半で、県内の市長3人も反対していると伝え、使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物の最終処分での取り組み加速▽原子力に依存しない経済社会の確立▽避難計画の充実、原子力災害対策の継続的見直し−など6項目を求めた。国が避難計画策定を義務付ける玄海原発30キロ圏の8市町のうち、同県伊万里、長崎県松浦、平戸、壱岐の4市長は反対している。事実上、県と玄海町に限られている地元同意の範囲拡大について、世耕氏は記者会見で「同意は法律上、再稼働の要件とはなっていない」と否定的見解を示した。会談に先立ち、世耕氏は玄海原発を訪れ、福島第1原発事故後に配備した移動式大容量ポンプ車などの安全対策を確認した。山口知事との会談後には、鹿児島県薩摩川内市で九電川内原発も視察した。
●再稼働へ“儀式”着々
 佐賀県玄海町の九州電力玄海原発再稼働に向け、同県の山口祥義知事が「地元同意」を判断する際の最終手続きとして国に求めた世耕弘成経済産業相との会談が22日、終わった。国が避難計画策定を義務付ける原発30キロ圏の4市長が反対し、県庁前で住民団体の約100人が「再稼働やめろ」「県民の話を聞け」と声を響かせる中、知事は24日にも再稼働同意を表明する見通しで、世耕氏との会談にはセレモニー色がにじんだ。会談で山口知事は「県民から寄せられた意見のほとんどは再稼働に反対」と訴え、福岡、長崎両県にも不安や反対の声が多いと強調したが、世耕氏が「政府として責任を持ってエネルギー政策、原子力政策を進める」と応じると「大臣の発言は重く受け止める」とあっさり評価。「今後も地元の意見に真摯(しんし)に向き合っていただきたい」と述べ、約25分間で会談は終了した。佐賀県では1月以降、県の住民説明会や第三者委員会、県内全ての首長との懇談、担当大臣との会談など、知事が同意を判断するための意見集約が進められてきた。しかし、玄海原発の再稼働は山口知事が初当選した2015年1月の知事選の公約。知事は今月13日の県議会の容認決議を重視する考えも示していた。会談後、山口知事は記者団に判断条件は出そろったかと問われ「そうですね。あとは今日、話を頂いたことを考えて説明したい。できるだけ早く」と述べた。世耕氏は「佐賀県の皆さんに再稼働を進める政府方針を説明する良い機会になった」と満足そうに話した。府方針を説明する良い機会になった」と満足そうに話した。

*2-4:http://www.nikkei.com/article/DGXLASJC24H32_U7A420C1000000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2017/4/24) 玄海原発再稼働に同意、佐賀知事「重い決断」
 佐賀県の山口祥義知事は24日午後、同県庁で記者会見を開き、九州電力玄海原子力発電所3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働に同意する考えを表明した。山口知事は「熟慮に熟慮を重ねた結果、原子力発電に頼らない社会をつくるという強い思いを持ちつつ、現状においては(再稼働は)やむを得ないと判断した」と述べた。知事の表明で、再稼働に向けた地元同意の手続きは完了。福島原発事故を受けて新規制基準が導入された以降では、鹿児島県(川内原発)、愛媛県(伊方原発)、福井県(高浜原発)に続き4例目となった。地元同意をめぐっては立地自治体の玄海町が3月初旬までに同意を表明し、佐賀県議会も13日に容認決議を行った。ただ、福島の事故の大きさゆえに、県民の不安の声は根強く、「非常に重い判断だった」と知事。「県民83万人全員が同じ方向を向くことはない。我が国のエネルギー事情を考えたとき、火力発電がフルパワーで稼働して環境問題もある中で、総合的に判断した」と最終判断の理由を説明した。山口知事は会見に先立ち、世耕弘成経済産業相に電話で再稼働同意を伝達。22日の会談で国側が示した原発政策の実行に加え、「自然エネルギーの普及促進を改めてお願いした」と述べた。今後の焦点は玄海原発3、4号機がいつ稼働するかに移る。原子力規制委員会が現場で設備を確認する使用前検査などが必要で、稼働は今秋メドになる見通しだ。

*2-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/422599 (佐賀新聞 2017年4月18日) 玄海原発、基準適合は不当 福岡の研究会が規制委に異議申し立てへ
 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県東松浦郡玄海町)が、新規制基準に適合すると認めた原子力規制委員会の許可は不当だとして、大学の元教員や医師らでつくる「福岡核問題研究会」の有志は、規制委員会に異議を申し立てる審査請求をすることを決めた。研究会の有志5人が、行政不服審査法に基づき、許可の取り消しや、執行停止(再稼働の停止)を求める。審査請求期限の18日までに手続きする。理由として、福島第1原発事故の後、フランスは総勢300人の緊急対応部隊を新設したが、日本の新規制基準には対応する措置がなく、「世界基準に程遠いこと」や、規制委がそもそも重大事故時の住民避難などの対策の有効性を審査の対象にしていないことが、「法律が求める責務からの責任逃れであり違法」などと主に8項目を挙げている。研究会メンバーが17日、佐賀県庁で会見を開き、豊島耕一佐賀大学名誉教授は「県議会は安全性が認められたとしているが、実際には程遠い状況」と批判した。

*2-6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/423954 (佐賀新聞 2017年4月23日) 反原発団体、経産相に抗議「県民犠牲にするな」
「県民を犠牲にするな」。玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働を巡り、山口祥義佐賀県知事と世耕弘成経済産業相が22日面会した県庁の前では、反原発の市民団体が抗議行動した。原発再稼働に前のめりの姿勢を示す国や手続きを着々と進める山口知事に対し、集まった約150人が怒りの声を上げた。午後2時18分、世耕経産相を乗せた車が急速度で正門から中に入り、参加者は「合意なき国策を押し付けるな」と声を張り上げた。県平和運動センターの原口郁哉議長は「知事は反対や疑問の声に答えずに再稼働へのステップを積み重ねている」と批判した。知事と面談して経産相が県庁を後にする午後3時10分まで約50分にわたり、「無責任な同意は許さない」などとシュプレヒコールした。参加した徳光清孝県議(社民)は「知事の同意後も再稼働まで時間がある。阻止するため粘り強く取り組む」、武藤明美県議(共産)も「福島の原発事故や自主避難者に対する復興相の失言で明らかなように、国も電力会社も原発に責任は取れない」と非難した。玄海原発の運転差し止め訴訟を続ける市民団体の石丸初美代表は「命や生活が脅かされ、核のごみも未来に押し付ける原発を続けられるわけがない。大臣は知事ではなく県民に説明するべき」と訴えた。経産相が視察した玄海原発の前でも抗議活動が行われた。

*2-7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201704/CK2017041502000133.html (東京新聞 2017年4月15日) 原発ゼロ・自然エネ連盟 発足 小泉元首相「国民運動に」
 各地で活動する脱原発や自然エネルギー推進団体の連携を目指す全国組織「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」が十四日発足し、東京都内で記者会見を開いた。顧問に就任した小泉純一郎元首相は「自民党と革新勢力双方の支持者を巻き込んだ国民運動にしていく」と訴えた。福島第一原発の事故後に全国で進められた脱原発の運動は、連携がなく広がりを欠いていたとの判断から設立を決めた。全国組織として事務所を置き、講演会や意見交換会の開催、政府への提言、優れた活動をした団体の表彰などを行う。会見で小泉氏は「国民全体で原発を止めていこうという強いうねりが起きているのを実感している」と強調。その上で「いずれは国政選挙においても脱原発が大きな争点になる時がくる」と力を込めた。会長には、経営者として脱原発を訴えてきた城南信用金庫の吉原毅相談役が就任。吉原氏は「原発が経済的にも採算が合わないのは明らかで、自然エネルギー化は世界の流れだ。日本全国の声を結集していく」とあいさつした。連盟には約百五十の団体が参加する予定。主な役員は次の通り。
 顧問=細川護熙(元首相)▽副会長=中川秀直(元自民党幹事長)島田晴雄(前千葉商科大学長)佐藤弥右衛門(全国ご当地エネルギー協会代表理事)▽事務局長=河合弘之(脱原発弁護団全国連絡会共同代表)▽事務局次長=木村結(東電株主代表訴訟事務局長)▽幹事=鎌田慧(ジャーナリスト)佐々木寛(新潟国際情報大教授)香山リカ(立教大教授)三上元(元静岡県湖西市長)永戸祐三(ワーカーズコープ理事長)

<諫早干拓>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12878773.html
(朝日新聞 2017年4月6日) 諫早、止まらぬ税金投入 国の干拓事業、湾閉め切り20年
 国の干拓事業で、諫早湾(長崎県)を鋼板で閉め切った「ギロチン」から14日で20年。国内最大級の干潟は農地になったが、湾を含む有明海は漁業不振が深刻化し、海の再生などに多額の公費投入が続く。巨費を投じた大型事業は、今も先が見えない。
■海再生498億円/判決守れず「罰金」
 2008年に完成した干拓事業。今も続く支出のうち、最も規模が大きいのが有明海再生事業だ。湾が閉め切られた3年後の00年、有明海特産のノリが大凶作に見舞われた。干拓事業との因果関係を調べるため、農林水産省の第三者委員会は、短・中・長期の開門調査を提言した。だが、農水省は中長期の開門をしない代わりに再生事業を始めた。02~16年度の事業費(予算ベース)は計498億円。海底に砂を入れて耕したり、干潟に潮の流れをよくする水路を築いたりしている。もう一つの大きな支出は堤防の内側の調整池の水質改善だ。淡水化され、干拓地の農業用水になるが、生活排水などが流れ込むと水質が悪化しやすい。そこで長崎県などが下水道整備や水質浄化を進めてきた。04~15年度に国と自治体合わせて352億円(決算ベース)の公費を投じた。それでも池では毎夏のようにアオコが大量に発生している。海の再生も池の水質改善も十分な効果が上がらないまま、毎年続いている。調整池のアオコの調査を続ける熊本保健科学大の高橋徹教授(海洋生態学)は「病気なら検査して、診断し、効果のある治療法を選ぶ。有明海の異変では検査にあたる開門調査をしていない。それ抜きでは効果的な対策も不可能なのに、あてどもなく血税が投じられている」と話す。公金投入は、こうした事業だけにとどまらない。干拓事業をめぐっては複数の訴訟が争われている。干拓が有明海の漁業不振の原因と疑う漁業者らは開門を求めて国を提訴。10年に開門を命じる福岡高裁判決が確定した。一方、長崎地裁は干拓地の営農者の主張を認め、国に開門を差し止める仮処分決定を出した。国は確定判決を履行できなくなり、14年6月から「罰金」として漁業者側に間接強制金を支払っている。現在は1日あたり90万円、3月10日時点で総額7億6500万円に上る。判決を履行するまで積み上がり、このままだと年内に10億円を超える。仮に開門すると、国は農業者側に罰金を支払う義務も負っていて、どちらに転んでも支払いは続く。漁業者らは強制金を海の再生のための基金に積み立てている。その一人、佐賀県太良町の平方宣清(のぶきよ)さん(64)は言う。「国の役人は自分の懐が痛まないから、こんな異常な状況を放置しておける。納税者としては納得できない」
■低い費用対効果
 諫早湾干拓は戦後間もない1952年、約1万ヘクタールの湾全体を農地にする大干拓構想として浮上した。その後、米が余る時代になり2度、規模を縮小。畑地開発や高潮・洪水防止に目的を変え、89年に着工した。97年4月14日、ギロチンを思わせる293枚の鋼板で湾の3分の1を閉め切った。長さ7キロの堤防の内側は干潟が陸地になり、672ヘクタールの農地に姿を変えた。総事業費は2530億円。造成された農地は長崎県の公社が国から51億円で買い取った。2008年から営農が始まり、個人・法人の計40事業者が農地を借りて野菜などを作る。1ヘクタールあたり約3億7648万円をかけて造成された農地。リース料は1ヘクタールあたり年20万円(標準額。当初は15万円)だ。1事業者の面積は平均16・7ヘクタールの大規模経営で、11年度の県の調査ではタマネギやニンジンなど主力5品目で計約2万3千トンの収穫があった。ただ、リース料の未納などでこれまでに9事業者が干拓地を去った。事業の費用対効果は農水省の試算で0・81。当初は1・03だったが難工事のため事業費が予定の倍近くに膨らみ、望ましいとされる1を割り込んで費用が事業効果を上回っている。
■大型事業、復活の動き 震災復興やアベノミクスで
 政府の公共事業費は、バブル崩壊後の90年代半ばから00年代初めがピークだった。自民党政権は景気対策のため毎年のように当初予算で9兆円台を計上。98年度には当初と補正の合計が15兆円近くに達した。一方で長良川河口堰(かこうぜき)(三重県)の反対運動が呼び水になり、大型公共事業が「環境破壊」「税の無駄遣い」と批判の的になる。01年には「構造改革」を掲げた小泉政権が発足し、公共事業費は削減に転じた。09年、「コンクリートから人へ」を掲げた民主党に政権交代すると、「事業仕分け」などにより削減が進んだ。だが、11年の東日本大震災後、野田政権は一転、復興費を含む公共事業費を増やした。高速道路や新幹線など、凍結していた大型事業の復活も認めた。安倍政権は「アベノミクス」の「第2の矢」で財政出動を掲げる。「国土強靱(きょうじん)化」をうたい、防潮堤や道路など災害に備えたインフラの整備が進む。当初予算は14年度から6兆円弱での微増が続く。関門など全国6海峡をトンネルや橋で結ぶプロジェクトなど凍結された事業の復活を、防災の名の下でめざす動きも活発だ。
■教訓学びとって
 宮入興一・長崎大名誉教授(財政学)の話 農水省は、諫早湾干拓事業の費用対効果を算出する際、失われる干潟の浄化能力や、漁業の被害を勘定に入れていなかった。そのつけを今払っているということだろう。国民の血税による終わりの見えない後始末だと言える。公共事業が無限の国民負担を強いることもあるという、最悪の事例だ。この教訓を、国も納税者も学びとらなければならない。

*3-2:http://mainichi.jp/articles/20170417/k00/00e/040/253000c (毎日新聞2017年4月17日) 諫早訴訟:開門差し止め命じる判決 長崎地裁
 国営諫早湾干拓事業(諫干、長崎県)の干拓地の営農者らが国に潮受け堤防の開門差し止めを求めた訴訟で、長崎地裁は17日、開門差し止めを命じる判決を言い渡した。松葉佐(まつばさ)隆之裁判長(武田瑞佳裁判長代読)は、もし開門すれば「農地に塩害などの重大な被害が発生する恐れがある」として、事前対策工事によって被害は防げるとする国の主張を退けた。諫干を巡る訴訟で、開門差し止めを命じる判決は初めて。2010年に国に5年間の開門調査を命じた福岡高裁判決が確定しているが、確定判決と逆の請求を認める判決は極めて異例。堤防閉め切りから今年で20年を経て“司法判断のねじれ”は一層深まった。国側補助参加人の漁業者側は控訴の意向を示したが、国が2週間以内に控訴しなければ判決が確定することから対応が注目される。判決は開門で堤防内の調整池に海水が入り込み「農地に塩害や潮風害、農業用水の一部喪失が発生する恐れがある。生活などの基盤に直接関わり重大」と指摘。これに比べ、国が主張する開門による漁場環境の改善効果は高くなく、開門調査で漁獲量減少との関連性を解明できる見込みは不明だと判断した。潮風害などを防ぐ事前対策工事も「実効性に疑問があるものがある」と結論づけた。判決を受け、山本有二農相は「判決内容を詳細に分析し関係省庁と連携しつつ適切に対応したい」とコメントした。訴訟は11年、福岡高裁確定判決への対抗措置として営農者らが起こした。長崎地裁は13年、営農者らが申し立てた開門差し止めの仮処分を認める決定を出し、国が不服を申し立てた異議審(15年)でも決定を支持した。開門差し止め訴訟を巡っては長崎地裁が16年1月に開門しない前提の和解を勧告したが今年3月に和解協議が決裂した。
●諫干開門差し止め請求訴訟判決骨子
・国に開門差し止めを命じる
・開門すれば農地に塩害など重大な被害が発生する恐れがある
・開門で漁場環境が改善する可能性は高くない
・開門調査で堤防閉め切りと漁獲量減少の関連性解明の見込みは不明
【ことば】国営諫早湾干拓事業
 大規模農地造成や低平地の水害対策を目的に1997年に湾内を全長7キロの潮受け堤防で閉め切った。2008年に完成し、総事業費約2530億円。約670ヘクタールの農地は、長崎県が全額出資する県農業振興公社が国から約51億円で購入し、営農者(個人・法人計40)に貸し付け、野菜や麦が栽培されている。農業産出額は年間計34億円。

*3-3:http://qbiz.jp/article/105683/1/ (西日本新聞 2017年3月16日) 南アで真水化事業へ 北九州市が日立と覚書
 北九州市は15日、南アフリカ東部のダーバン市で新たな水ビジネスを始める日立製作所(東京)と連携協力する覚書を結んだ。同社は、北九州市が民間企業に無償貸与している研究施設「ウオータープラザ北九州」(小倉北区西港町)で海水と下水から飲用水レベルの真水を精製する技術を確立しており、今後、ダーバン市で実証事業を手掛け、北九州市が現地スタッフを同研究施設に招き人材育成に当たる。記者会見した同社などによると、ダーバン市関係者が2013年に同研究施設を視察したことをきっかけに実証事業のオファーが来た。現地は少雨による慢性的な水不足に陥っているという。同社は飲用水の供給を依頼されており、現地施設を19年9月に完成させ、1日6250トン(2万〜3万人分)を精製。将来的に商用化して10万トン(40万〜50万人分)の供給につなげたい考えだ。11年に開業した同研究施設は、海外の89カ国を含め7700人が視察。今後、ダーバン市の海水や下水の水質に近づけた条件での実験も行っていく。北橋健治市長は「水資源が乏しい他国への普及も考えられ、官民の連携をさらに深めたい」と話した。

<財源は消費税とする福祉・教育、他の税収は何に使うのか>
*4-1:https://www.ehime-np.co.jp/article/news201704165417 (愛媛新聞社説 2017年4月16日) 介護法案強行採決 国民に視線を向けて議論尽くせ
 衆院厚生労働委員会で、与党が介護保険関連法改正案の採決を強行した。民進党議員が質疑で森友学園問題を取り上げたことに、与党が反発した結果だ。法案は、高所得者のサービス利用時の負担割合を2割から3割に引き上げ、大企業社員や公務員らの保険料負担を増やすなど、国民への影響は大きく、十分な審議が欠かせない。痛みを強いる内容でもあり、理解を得るには丁寧な説明が必要だ。にもかかわらず、その責務を放棄して、不都合なことにふたをするような身勝手な国会運営は到底容認できない。与党は「法案以外の質問をするのは、十分に質疑をしたという証拠だ」と正当化するが、実質合意していた採決予定日まで2日を残していた。議論を尽くしていないことは、与党側も認識していたはずだ。この後、衆院本会議が見送られるなど国会は混乱。貴重な審議時間も失われてしまった。「法案以外の質問」を理由に審議を打ち切り、採決することがまかり通れば、民進党議員が非難したように「言論封殺」と言わざるを得ない。ましてや、今回の強行採決の背景に、森友学園問題に関わる「安倍晋三首相擁護」があったことは想像に難くない。首相に都合が悪い質問は許さないとばかりの与党の姿勢は、「言論の府」として看過できない。首相には国民の疑問に対し、正面から向き合い答える義務がある。安倍内閣の支持率は高水準を維持し、自民党内で首相の座を脅かす有力な対抗馬は見当たらないのが現状だ。首相や政権はこの状況に甘んじ、説明責任をなおざりにしていると言われても仕方あるまい。周囲も首相の意思を忖度(そんたく)しすぎではないか。国会議員が視線を向けるべきは時の権力者ではなく、国民であるという基本をいま一度認識すべきだ。介護法案は18日に衆院通過の見通しで、審議の場を参院に移す。「良識の府」である参院は政争が目に余る衆院を反面教師に、「数の力」に頼むのではなく議論を重ねてほしい。自民党の政権復帰、第2次安倍内閣の発足から4年4カ月。政権や与党による国民軽視や、議論封じ込めの「暴走」は今回が初めてではない。今なお懸念が根強い特定秘密保護法、安全保障関連法などでも強行採決。沖縄県の米軍普天間飛行場移設では、反対する沖縄の民意をよそに、政府が名護市辺野古沖で基地建設を強行する。政権の傲慢(ごうまん)な姿勢に、危うさが募る。今国会では「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案、衆院小選挙区の新区割りに関する公選法改正案など、与野党の激しい対立が予想される法案が残っている。介護法案と同様の手法で採決をごり押しするようなことは断じて許されないと、政権や与党は肝に銘じなければならない。

*4-2:https://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2017_0405.html(NHK 2017.4.16) ビジネス特集:子育て世帯の負担軽減?“こども保険”構想
 増える待機児童、広がる教育格差。子どものいる家庭にとって心配事は増える一方です。自民党の小委員会は、子育て世帯を支援するため、今の公的年金の仕組みのように、働く人や企業などから保険料を徴収して子育て世帯の負担の軽減に充てる新たな仕組み、「こども保険」構想を発表しました。働き盛り世代に重くのしかかる子育ての出費。その軽減につながるのでしょうか?
●社会全体で支える「こども保険」
 自民党の小泉進次郎衆議院議員を中心とする若手議員でつくる小委員会は、3月29日、少子化に歯止めをかけるため、新しい社会保障制度として「こども保険」構想を発表しました。「年金、医療、介護には社会保険があるが、喫緊の課題である子育てに社会保険がない」として、子どもが必要な保育や教育などを受けられないリスクをなくそうと、社会全体で支えるとしています。具体的には「公的年金」や「介護保険」の仕組みのように、保険料を徴収して社会全体で子育て世代を支援する新たな保険制度をつくろうというものです。今の厚生年金や国民年金の保険料に上乗せする形で、働く人と企業などから幅広く徴収します。徴収した財源は、小学校入学前の子どもがいる世帯に対し、児童手当に上乗せしたり、待機児童の解消に向けて保育所の整備に充てたりするとしています。当面の案として、企業と働く人から賃金の0.1%ずつの保険料を集める案が考えられています。国民年金の加入者の場合、月160円を徴収します。小委員会によると、子どもが2人いる30代の世帯では、年収400万円の場合、月に240円の保険料の負担増となり、子どもが2人(高校生の場合は児童手当はない)いる50代の世帯では、年収800万円の場合、月に500円の保険料負担の増加になると試算しています。「こども保険」によって、およそ3400億円の財源が確保できることから、児童手当に上乗せする場合、子ども1人当たり月5000円を加算することなどが可能だとしています。
●幼児教育や保育の無償化も視野に
 小委員会は、医療や介護の改革が同時に進めば、企業と働く人から徴収する、「こども保険」の保険料率をそれぞれ0.5%まで引き上げ(国民年金の加入者は月830円に引き上げ)、財源の規模をおよそ1兆7000億円まで増やせるとしています。この場合、例えば小学校に入学する前の子どもがいる世帯には、子ども1人当たり2万5000円が支給できるようになるため、児童手当と合わせると、幼児教育や保育を実質的に無償化できるとしています。小委員会のメンバーは「医療・介護保険料は高齢化で今後も徐々に引き上げられることが予想されるが、改革を行うことで給付の伸びを抑えることはできる。まずは、なんとか0.1%の保険料でも導入したい」と話しています。小委員会では今の社会保障制度が高齢者偏重ではないかという問題意識もあり、「こども保険」の創設を「全世代型社会保険」の第一歩としたいという思いもあるといいます。厚生労働省によりますと、「待機児童」は去年10月の時点で、全国で4万7738人。2年連続で増えており、東京は1万2232人と4分の1を占めています。国は女性の就業率の向上なども念頭に十分な保育の受け皿を確保することを目指していますが、財源などの面で険しい道のりであることは言うまでもありません。今回の「こども保険」は、子育て支援の安定財源になり得るのではないかという期待も出ているのです。
●負担だけが増える世帯も
 しかし、小さな子どもがいない世帯にとっては、「こども保険」の保険料の負担だけが増えることになるため、実現に向けて慎重論が出ることは確実。小委員会でも、子どもがいない人たちの理解をどのように得るかが実現のカギになるとみていて、「子どもがいない人も、将来、社会保障の給付を受ける側になる。社会保障制度の持続性を担保するのは、若い世代がどれだけいるかだ。若い人を支援するということは、子どもがいる、いないに関係なく、社会全体の持続可能性につながる」と説明しています。また、政府内では「保険制度は、自分にふりかかるリスクに対し、個々が保険料を納めて制度として成りたっているので、子育て支援の財源は、保険制度にはなじまず、一般財源でやるべきではないか」という意見や、「保険料の徴収の対象が勤労者と事業者となっていて、『全世代型の社会保障』といいながら、高齢者からの徴収がないのは疑問だ」などという指摘も出ています。
●保険方式浮上の背景に財源問題
「こども保険」構想の背景には、「教育格差」の問題が指摘される中、与野党で「教育無償化」を進めようという議論が出ていることもあります。これまでに財源として消費税や国が使いみちを教育に限定した新たな国債「教育国債」を発行する案などが浮上しています。しかし、消費税を10%に引き上げた場合の使いみちはすでに決まっているほか、さらなる引き上げがいつになるかわからず、財源として当てにできるものではありません。「教育国債」の発行も「名を変えた赤字国債だ」という慎重論が根強く、実現に向けてハードルの高さが指摘されているのです。こうした中で出てきたのが、保険の仕組みというわけです。とはいえ「こども保険」は、まだ構想段階。使いみちなど、制度の詳細が決まったわけではなく、今後、自民党内に新たに特命委員会を設けて検討していくことになっています。「少子化対策」が言われて久しいですが、抜本的な対策は待ったなし。今後どういう議論が展開されていくのか注目していきたいと思います。


<予算から見た辺野古埋め立て>
PS(2017年4月25日追加):誰もが望む普天間基地の返還のためなら、既に滑走路のある離島は多く、そこに基地を移転すれば埋め立てなど不要で予算も少なくてすむ。にもかかわらず、*5-1、*5-2のように、辺野古でも大量の予算を使うことが目的であるかのように誰のメリットにもならない埋め立て工事が始まり、その結果は、諫早干拓事業と同様に、大量の血税を使って自然を壊し回復不能にして、沖縄の資産を破壊する結果になると思われる。

   
  辺野古の海   2016.12.28東京新聞 2017.4.25沖縄タイムス 2016.12.27朝日新聞

*5-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK4S7HDWK4STPOB009.html?iref=comtop_8_06 (朝日新聞 2017年4月25日) 辺野古埋め立て護岸工事始まる 政府、5年で完了めざす
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設計画で、政府は25日午前、名護市辺野古沿岸部を埋め立てる護岸工事を始め、海に砕石が沈められた。工事が進めば、原状回復は困難になる。日米両政府が普天間返還合意をしてから21年が経ち、大きな節目を迎えた。辺野古の大浦湾に面した米軍キャンプ・シュワブ北側の浜辺では、午前9時20分ごろ、砂浜に設置された大型クレーンが動き出し、網に入れられた数十個の砕石をつり上げて、波打ち際に沈めた。護岸造成の地盤として海底に敷く捨て石とみられ、計5袋が海に入れられた。その後、午前11時時点までに目立った動きはない。この日着工したのは、埋め立て予定地の最も北に位置する場所。沖縄防衛局は今後、予定地の外側を囲む護岸を造成し、海を囲み終えた場所から年度内にも土砂の投入を始め、5年間での埋め立て完了を目指す。政府は当初、今月中旬の護岸工事着工も想定していたが、安倍政権と翁長雄志(おながたけし)知事の両者が支援する候補の一騎打ちとなったうるま市長選(23日投開票)が終わってからの着手となった。一方、県には25日朝、沖縄防衛局から「きょう着工する」と連絡があり、情報収集に追われた。基地問題を担当する県の吉田勝広・政策調整監は現地で工事の様子を確認し、「まるで沖縄の声を聞かない強引なやり方だ」と憤った。翁長雄志知事は、埋め立て工事に必要な「岩礁破砕許可」の期限が3月末に切れていると主張しており、工事により海底の岩礁が破壊されているのが確認されれば、工事差し止め訴訟を検討している。埋め立て承認の撤回や、県民の民意を改めて示す「県民投票」の可能性も模索している。普天間移設計画は、1995年の米兵による少女暴行事件を機に浮上した。日米は96年、普天間の返還に合意。計画は曲折を経て、辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部を埋め立てて、滑走路2本をV字形に配置する現行案になった。県内で反対運動が続く中、13年12月、当時の仲井真弘多(ひろかず)知事が政府からの埋め立て申請を承認。しかし、「辺野古阻止」を掲げて当選した翁長知事が15年10月にこの承認を取り消し、政府が県を提訴。16年12月の最高裁で県の敗訴が確定し、政府は護岸工事着工に向けて準備工事を急いでいた。

*5-2:http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/80555 (沖縄タイムス 2017.4.25) 辺野古の工事再開、知事は「あらゆる手法で」阻止姿勢 違法確認訴訟・敗訴から1カ月 
名護市辺野古の新基地建設を巡る違法確認訴訟の最高裁判決で沖縄県が敗訴してから20日で1カ月となった。敗訴を受け、翁長雄志知事は自身の承認取り消し処分を取り消し、国は昨年12月27日にキャンプ・シュワブ沿岸部の埋め立てに向けた工事を再開した。県は工事開始前の事前協議を求めているが国は応じておらず、本体工事に向けフロートの設置作業を急いでいる。知事は取り消し処分を取り消す一方、新基地建設は「あらゆる手法で阻止する」との姿勢を崩していない。3月で期限を迎える岩礁破砕許可やサンゴを移植する際の特別採捕許可、埋め立て本体工事の設計変更申請の不許可など知事権限を行使する考えだ。現在、県は2013年の埋め立て承認時に付した留意事項に基づく事前協議や岩礁破砕許可の条件が守られているかを確認するため海中に設置するコンクリートブロックの大きさや個数などの報告を求めている。だが、19日までに防衛局から返事はなく、県は国の留意事項違反などを根拠に承認の撤回を検討しているほか、県民投票の実施も視野に入れている。また、31日からは訪米し米議会関係者や有識者らに直接、辺野古計画の見直しを求める。一方、防衛局は抗議する市民らが臨時制限区域に立ち入らないようロープを張る新たなフロートの設置を進めているほか、報道各社に取材船で臨時制限区域に入らないよう呼び掛ける文書を送付するなど、警備態勢を強化している。国は国内最大級の作業船を導入し、早ければ月内にもボーリング調査を開始する予定で、護岸建設などの本体工事着手に向けた態勢を早急に整える考えだ。


PS(2017年4月26日追加):*6-1のように、今村復興大臣が「社会資本の毀損も25兆円という数字があり、まだ東北のほうだったからよかったが、もっと首都圏に近かったりすると莫大な額になる」と述べたのは、首都圏だったら数千兆円の損害になったかもしれないので真実ではあるが、「東北のほうだったからよかった」という言葉は、被害者自身は1人であっても大変なので不要だった。その点、新復興大臣の吉野氏は、東日本大震災復興特別委員長及び環境副大臣等を務め、まさにフクイチの地元である衆院福島5区選出の衆議院議員であるため、より真剣に東北の復興に取り組まれると考える。なお、原発が人口密度の低い地域に建設されたのは、まさに今村氏が述べた理由によるのだが、原発事故が起これば10km圏、30km圏どころか250km圏まで汚染されることが明白になったのである。
 そのため、*6-2のように、再エネによる発電を地域主導・産直で進めると、「原発は避けて再エネの電気を使いたい」という需要を満たすことができる上、エネルギー代金が地域から外に流出せずにすむので、生協だけでなく、全農も発電・配電子会社を作って地域に電力を供給すれば、再エネ開発が進んでよいと考える。

*6-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170425/k10010961341000.html (NHK 2017年4月25日) 今村復興相の後任に吉野正芳氏を起用 安倍首相方針固める
 安倍総理大臣は今村復興大臣が東日本大震災に関連し、被災者を傷つける発言をした責任を取りたいとして辞任する意向を固めたことを受けて、後任に、衆議院の東日本大震災復興特別委員長で、環境副大臣などを務めた自民党の吉野正芳氏を起用する方針を固めました。今村復興大臣は25日、みずからが所属する自民党二階派のパーティーで講演し、東日本大震災に関連して「社会資本などの毀損も、いろんな勘定のしかたがあるが、25兆円という数字もある。これは、まだ、東北のほうだったからよかったが、もっと首都圏に近かったりすると、ばく大な額になる」と述べました。今村大臣はその後、発言を撤回し謝罪しましたが、このあと同じパーティーに出席した安倍総理大臣は「東北の方々を傷つける極めて不適切な発言で、総理大臣として、おわびをさせていただきたい」と述べ、陳謝しました。こうした中、今村大臣は被災者を傷つける発言をした責任を取りたいとして、復興大臣を辞任する意向を固め、26日午前、総理大臣官邸で安倍総理大臣に辞表を提出する見通しです。これを受けて安倍総理大臣は、内閣の重要課題と位置づける東日本大震災からの復興や、国会審議などへの影響を最小限に抑えるため、後任人事の調整に入り、今村大臣の後任に衆議院の東日本大震災復興特別委員長で、環境副大臣などを務めた自民党の吉野正芳氏を起用する方針を固めました。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p40701.html (日本農業新聞論説 2017年4月25日) 再エネ発電 地域主導で産直もっと
 農山村にある太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス(生物由来資源)の再生可能エネルギーによる発電を地域主導でもっと進めたい。これまでは大手企業の地方進出による大規模発電が目立ち、開発トラブルも絶えない。一方で、安全でクリーンな再エネ電気を望む国民は多い。地元での収入確保と消費者との結び付きの両方がかなう、産直型の再エネ発電に挑む価値は大いにあろう。一般家庭が電気の購入契約先を自由に選べる電力自由化が、4月で2年目に入った。大手電力10社の地域独占が崩れ、電気小売り事業に新規参入する企業「新電力」も増えた。だが、この1年で契約を大手電力から新電力に切り替えた家庭は全体のわずか5.4%。しかも、その切り替えは大都市圏に集中し、新電力が少ない地方は低調だ。東京電力福島第1原子力発電所事故以来、「原発は嫌だ」「再エネ電気を使いたい」という安全・安心志向の家庭は多い。それでも契約切り替えが少ないのは、再エネ電気を供給する新電力がごく一部に限られるからだろう。実際、農山村で発電された再エネ電気をいわば産直契約で主体的に扱う新電力は、ほとんど生協系でしか見当たらない。首都圏で先行しているのは、生活クラブとパルシステムの2生協。組合員に野菜や果実、米、肉・卵、牛乳など共に、再エネ電気の共同購入を勧めている。脱原発、地球温暖化防止に向けた実践的な消費者運動との位置付けだ。だが、両生協とも子会社の新電力は採算ベースには乗っていない。供給規模が小さく、薄利多売で利益を得る電力事業では苦戦が続く。農山村側に産直契約をしてくれるところが少なく、今後も組合員への供給量は段階的にしか増やせない。他方、大手企業による地方での再エネ発電は増えているが、売電先は地域の大手電力会社が大半だ。目的が売電利益だけなら、あえて産直型にはしない。結局、地元で再エネ電気を扱う新電力が育たず、消費者が使いたくても購入先がない地域がかなりある。発電では売電先の選定が重要だ。国の再エネ電気の固定価格買取制度を使えば、どこに売っても同額で差がない。ならば、こだわりの消費者とつながる新電力に売る産直型の方が、お互いの顔が見える関係を築ける。地方での購入可能地域の拡大にも役立つ。わが国の2015年度の再エネ発電は電力全体の14%にすぎないが、ここ数年で増加。政府は地球温暖化防止の国際約束として30年度には22~24%にまで高める。農山村での発電は地域主導が望ましい。そのための農山漁村再エネ法施行から3年になるが、実施への基本計画作成は昨年末で29市町村にとどまる。環境先進国ドイツのように、安全・クリーンの価値を認め合う産直連携を広げながら、再エネ発電を増やしたい。


PS(2017年4月27日追加):鹿児島県の川内原発も、過疎地にあるため原発適地とされたよい例だろうが、原発事故時には「風下になった地域では農地が汚染され、長期にわたって農作物が汚染される」「汚染水で付近の海が汚染されて水産業ができなくなる」「汚染範囲は原発の周囲に留まらない」「大地震・津波・大規模な火山噴火が発生する可能性もある」などは考慮されておらず、*7-1のような専門委員会のご都合主義の安全宣言も信頼に値しないことは証明済である。そのため、*7-2のように、少なくとも30キロ圏内の市町村の意見は聞くべきだ。
 さらに、私は、対馬市などの日本海側の関連地域が、韓国の裁判所に提訴することによって、韓国釜山地区にある古里原発等の危険性を問えば、韓国内でも原発の危険性に関する意識が上がるのではないかと考える。

*7-1:http://qbiz.jp/article/107269/1/ (西日本新聞 2017年4月27日) 川内2号機「問題なし」 鹿児島県専門委
 鹿児島県は26日、九州電力川内原発(同県薩摩川内市)の安全性などを議論する専門委員会の本年度第1回会合を開いた。九電が2号機で実施した特別点検と定期検査の結果、特に問題なかったと報告。委員から指摘が出ていた、ゆっくり繰り返す長い揺れ「長周期地震動」についても「影響は及ばない」と回答した。会合後、座長の宮町宏樹鹿児島大大学院教授は「1、2号機の装置は同じ。5月に予定する次回会合で1号機と同様に問題ないと了承する」との見通しを示した。専門委は次回に意見を取りまとめて三反園訓(みたぞの・さとし)知事に提出し、これを基に知事が2号機の稼働の是非を判断するとみられる。2号機は既に定期検査を終え、3月24日に営業運転に復帰している。

*7-2:http://qbiz.jp/article/108270/1/ (西日本新聞 2017年4月25日) 「再稼働、長崎の声黙殺か」 30キロ圏内、住民 憤りと落胆と 玄海原発 佐賀知事同意
 佐賀県の山口祥義知事が玄海原発(同県玄海町)再稼働への同意を表明した24日、原発30キロ圏内にある長崎県内の住民からは「長崎の声は黙殺か」などと憤りや落胆の声が上がった。原発から8キロに位置する松浦市鷹島町にある新松浦漁協の志水正信組合長(69)は「鷹島では住民説明会が1度あっただけ。漁業者として再稼働同意は残念で許し難い。反対の意思を伝える海上デモの準備を進める」と怒りの声。一方、同市議会の高橋勝幸議長は「佐賀県知事は国策を重く受け止めたのだろう。それぞれの立場がある」と述べるにとどめた。30キロ圏内に含まれる平戸市田平町の森文明さん(64)は「国の政策が上意下達され、地方はないがしろにされる政治状況はいかがなものか」と苦言。同市大久保町の障害者支援施設「平戸祐生園」の佐藤慎一郎園長は「国は再稼働を急がず、万一の場合の補償や支援も含め、30キロ圏内の住民に時間をかけて説明してほしい」。同市議会の辻賢治議長は「市民の安全、安心を考えれば、実効性のある避難計画の確立が国の関与で万全なものにならない限り、議会として反対の立場は変わらない」と話した。壱岐市郷ノ浦町の特別養護老人ホーム「光の苑」の武原光志施設長(66)は「入所者が60人いる。再稼働するのであれば避難先などの環境を整えてほしい」と曇った表情。同市で反対活動をしている「玄海原発再稼働に反対する市民の会」の中山忠治会長(69)は「同意の判断は残念。署名活動は4月で終わるが、脱原発を目指し、今後も反対運動を続ける」と強調した。県内では30キロ圏内の松浦、平戸、壱岐、佐世保の4市が連携し、避難計画などへの国・九電の関与を県を通して求めている。中村法道県知事は「佐賀県知事は総合的に判断されたと認識している。関係自治体と連携し、諸課題の解決に努めたい」とするコメントを発表。松浦市の友広郁洋市長は「大型連休明けにも県と4市で協議の場を設けることになった」と話した。
●壱岐市議会も再稼働反対
 壱岐市議会は24日の本会議で、九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働に反対する意見書案を全会一致で可決した。原発から30キロ圏内にある長崎県内の市議会では平戸、松浦両市が既に可決している。意見書では「県は住民説明会で再稼働への理解を求めているが、市民からは安全性や避難への不安をぬぐえないなどの声が相次いでる」「市は30キロ圏内地域の中では最も人口が多い離島で、事故が発生すれば壊滅的な打撃を受ける。離島からの避難は船舶が主で、全島民が避難するには5日半かかる」などと指摘。その上で「国の責任で、原発の安全性検証の手段や実効性ある避難計画などが確立されることがなければ、市民の安全を守ることができないと判断し、市民の理解が得られない限り、玄海原発再稼働に反対する」などとしている。


PS(2017年4月28、30日追加): 「教育無償化のために憲法改正が必要」とする意見があるが、日本国憲法で規定されているのは、*9-1の「第23条:学問の自由」「第26条:教育を受ける権利、義務教育の無償」であるため、3歳~18歳を義務教育と法律に定めれば、憲法を変更しなくても幼児教育から中等教育までの無償化を憲法で規定できる。これにより、16年(現在なら4年制大学まで卒業できる期間)かけて幼児教育から中等教育までを無償で行うため、親の経済力にかかわらず、子は必要な教育を受けることができるようになる。また、3歳くらいの早い時期から始めた方がよい科目も始められ、全体としては充実した内容を、しっかり教育することができる。そして、教育は、国にとっては投資であるため、一般財源からその費用を出すべきだ。
 なお、*9-2のように、教育改革よりも憲法の変更を目的として「高等教育も無償化すべき」と主張する人もいるが、高等教育を受ける必要があるか否かは職業によって異なり、初等・中等教育を充実していれば教養や見識のある市民を育てることができる。そのため、高等教育は、①公立大学の授業料を月額1万円程度まで下げる ②公立大学の入学金も10万円程度まで下げる ③高等教育で学んでもらいたい学生には、性別や国籍を問わず生活費も賄える奨学金を渡す ④安価で質の良い学生寮を整備する などの政策の方が、教育の機会均等や平等には憲法変更より有効だと考える。そして、奨学金は、国や地方自治体だけでなく、高等教育を受けた人材を活用する企業やその大学の卒業生などが作って給付対象者を選別してもよいだろう。

*9-1:http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM (日本国憲法 関連個所抜粋) 
第23条 学問の自由は、これを保障する。
第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける
     権利を有する。
   2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせ
     る義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

*9-2:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170318-00081574-playboyz-pol (Yahoo:週プレNEWS 2017/3/18) 「高等教育無償化」は警戒すべき! 安倍首相が目論む“憲法9条改正”への布石
 安倍首相が次期衆院選を2018年秋以降に先送りする検討を始めたという。その思惑はどこにあるのか?『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、これは安倍首相の“憲法9条改正へのシナリオ”だと警戒する。
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 次期衆院選について、「首相が任期満了ギリギリの2018年秋以降に先送りする検討を始めた」と、新聞各紙が伝えている。次期衆院選はこれまで、今年の秋と予測する声が大半だった。それをさらに1年も先送りにする。これが本当なら安倍首相の思惑はどこにあるのだろうか? その答えを知るカギのひとつが3月5日の自民党大会にあった。この冒頭のあいさつで、首相はこう力説したという。「憲法改正に向け、具体的な議論をリードする。それが自民党の歴史的使命だ」。昨年の党大会では、安倍首相は改憲についてひと言も触れていない。その時と比べると、大きな変化だ。現在、自民は衆参で改正発議に必要な3分の2の議席を持っている。おそらく、首相はその議席数をキープできる来年末までに、憲法改正をやり遂げてしまおうと腹を固めたのだ。ただし、首相が狙う9条改正は容易ではない。平和憲法は広く国民の間に根づいており、そのシンボルである9条の改正には極めて強い抵抗が予想される。そこで首相が新たに持ち出そうとしている改憲項目がある。「教育無償化」だ。憲法26条では、「義務教育は無償」と書かれているが、これを受けて実際に行なわれているのは小・中学校までの無償化である。本来は、今すぐにでも義務教育の範囲を拡大して高校の無償化を実施すればよい。しかし、その前に、憲法の条文を改正して、高校まで入ることを明文化しようというのだ。教育無償化を高等教育にまで拡大するため、憲法改正したいと提案されて、表立って反対できる人は少ないだろう。望めばだれでも国の負担で高等教育を受けられる制度が憲法で保障されることは、良いに決まっている。だが、注目すべきは憲法改正による教育無償化を最も熱心に主張しているのが、「日本維新の会」ということだ。安倍・自民が憲法改正の最初のメニューに教育無償化を打ち出すということは、維新の政策を受け入れたことを意味する。そこに首相の計算が透けて見える。まずは来年の秋までに26条の改憲を実現させることで、教育無償化の言いだしっぺの維新に花を持たせる。国民の憲法改正アレルギーが払拭されるとともに、当然、維新の評価・支持率も高まるだろう。その上で自民、維新で憲法改正の連合軍を作り、次期衆院選を戦う。次の選挙で自民は30前後議席を減らすとの選挙分析があるものの、そのマイナス分を維新が他の政党に競り勝って確保してくれれば、全体としては改正の発議に必要な衆参3分の2の勢力を維持できる。来年9月には首相は3期目の党総裁選に勝利して、21年9月までの長期政権運営に乗り出しているはずだ。衆院選で維新とともに3分の2を取れば、いよいよ、本丸の9条改憲への道筋がはっきり見えてくる。このシナリオに死角があるとすれば、小物感の強い松井一郎府知事の下で維新の党勢がじり貧になっていることだろう。しかし、来年秋までに橋下氏が政界復帰するという観測がここに来て急速に高まっている。維新関係者の希望的観測かもしれないが、橋下氏が登場すれば、維新フィーバー再来も夢ではない。教育費をタダにする――国民が歓迎しそうな改憲メニューを“9条改正”の布石にしようと目論む安倍・自民。警戒を怠ってはならない。
●古賀茂明(こが・しげあき)
 1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して2011年に退官。近著に『国家の暴走』(角川oneテーマ21)。インターネットサイト『Synapse』にて「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中


PS(2017.5.4追加): 100%の人が高等教育を受けるわけではないため、高等教育の無償化はむしろ不公平を招く。また、義務でない場合の無償化は対象者の意思決定に誤った影響を与えるため、サービスを利用する人に少しは負担させる形式の方がよく、これは、誰が対象であれ医療費の無料化も同じである。さらに、憲法をいじる必要のない教育無償化をだしにして、自民党憲法改正草案のような非民主国家に逆戻りさせる憲法改悪が行われるきっかけにされるのは大きな問題だ。首相は「2020年を新しい憲法が施行される年にして、日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだ」と言っておられるが、①どういう新しい国に生まれ変わるために ②現行憲法のどこが不備だから ③どのように変えたいのか を具体的に示すべきである。そうすれば、その夢の適切性や意図どおりになるか否かについて、次のディスカッションができるのだが、「憲法をよく読んだことはないが、(敗戦後に押し付けられた憲法だから)現行憲法を変更すること自体が夢」で、説明は国民を説得するための手段にすぎないというのは論外なのだ。

  
     2016.8.12東京新聞     昭和天皇の御名御璽      ポイント  

(図の説明:これまで「敗戦後に日本の国力を弱めるため米国によって押し付けられた」と説明されることが多かった日本国憲法9条は、実は幣原首相が提案したものだと米上院でマッカーサーが証言していた。その憲法には、①国民主権 ②平和主義と戦力不保持 ③基本的人権の尊重 が記載されており、昭和天皇が深く喜んで交付せしめるとしている)

*10:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170504&ng=DGKKZO16046710U7A500C1PE8000 (日経新聞 2017.5.4) 首相メッセージ要旨 高等教育無償化にも意欲
 安倍晋三首相(自民党総裁)のビデオメッセージの要旨は次の通り。憲法は国の未来、理想の姿を語るものだ。私たち国会議員はこの国の未来像について、憲法改正の発議案を国民に提示するための具体的な議論を始めなければならない時期にきている。例えば憲法9条。今日、災害救助を含め、命懸けで24時間365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く任務を果たしている自衛隊の姿に対し、国民の信頼は9割を超える。しかし、多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が今なお存在する。「自衛隊は違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれ」というのは、あまりにも無責任だ。私たちの世代のうちに、自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置づけ、「自衛隊が違憲かもしれない」などの議論が生まれる余地をなくすべきだ。もちろん、9条の平和主義の理念については未来に向けて、しっかりと堅持していかなければならない。「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という考え方は、国民的な議論に値するだろう。教育の問題。70年前、現行憲法の下で制度化された普通教育の無償化は、戦後の発展の大きな原動力となった。70年の時を経て、社会も経済も大きく変化した現在、子どもたちがそれぞれの夢を追いかけるためには、高等教育についても全ての国民に真に開かれたものとしなければならない。私はかねがね夏季オリンピック、パラリンピックが開催される2020年を未来を見据えながら日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだと申し上げてきた。20年を新しい憲法が施行される年にしたいと強く願っている。自民党総裁として憲法改正に向けた基本的な考え方を述べた。これを契機に国民的な議論が深まっていくことを切に願う。


PS(2017.5.20追加):政府は、子育てや教育にかかる負担を社会全体で分かち合うと称して、*11のように、教育無償化や待機児童対策の財源として年金等の保険料に上乗せして徴収する“こども保険”制度の検討に入るそうだが、教育財源の不足は教育に対する国家予算の優先順位が低すぎるのが問題なので、公的保険等で国民負担を増やして教育費用を賄おうという発想はセンスが悪すぎる。また、今後、子育て費用のかかるリスクがない人(既に自前で子育てを済んだ人やさまざまな理由で子どもを持っていない人)にまで保険料を支払わせるのは不公正である上、保険制度にも合わないため、もし“子ども保険”を作るとすれば、今後、子育てで費用がかかるリスクのある人で保険に入りたい人に限るべきだ。そのため、“子ども保険”を作るとすれば私的保険が適しており、その点は誰もがリスクを有する年金・医療・介護とは根本的に異なる。

*11:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170520&ng=DGKKZO16659010Q7A520C1MM8000 (日経新聞 2017.5.20) こども保険検討へ、教育向け新財源、税・拠出金と比較
 政府は、教育無償化や待機児童解消などをまかなう新たな財源として、年金などの保険料に上乗せして徴収する「こども保険」制度の検討に入る。税金や企業からの拠出金でまかなう案などと比較検討し、早ければ年内にも方向性を出す。少子高齢化が急速に進む中、子育てや教育にかかる負担を社会全体でどう分かち合うのか。財政論を超えて国民的な議論を呼びそうだ。政府は6月にまとめる経済財政運営の基本方針(骨太の方針)でアベノミクスの柱の一つとして教育や子育てといった人材投資の強化を盛り込む。財源として(1)税(2)拠出金(3)社会保険料――の3案を明示する。具体的な検討は今夏にも政府内に「人材投資会議」(仮称)を新設し、教育無償化の範囲などと併せて進める見通しだ。「こども保険」構想はもともとは自民党の小泉進次郎氏ら若手議員が小学校就学前の教育費の負担軽減策として打ち出したものだ。小泉氏らの提言によると、まずは社会保険料を勤労者、事業者とも0.1%ずつ上乗せして徴収。それによって得られる約3400億円で、児童手当を1人当たり月5000円増やすことができるとしている。さらに保険料の上乗せを0.5%まで増やせば、集まる財源は約1.7兆円。小学校入学前の子ども約600万人に児童手当を月2万5000円加算できるため、幼児教育・保育を実質的に無料にできる計算だ。最終的には上乗せ率を1.0%まで引き上げ、財源規模を3兆円規模に増やすことを想定する。「こども保険」の特徴は、現役世代で負担を共有し、将来世代へのツケの先送りを避けられることだ。並行して検討する税金でも消費税ならば国民全体から広く集められるが、すでに10%までの使い道は決まっている。社会保険は税金と異なり他の使途に使われることもなく、給付と負担の関係が明確で、国民の理解が得られやすいとの読みもある。政府が教育や子育て支援に必要な新しい財源の本格的な検討に入るのは、高齢化による社会保障の膨張が避けられない中で、新たな施策へ振り向ける財政的な余裕がなくなっていることがある。これまで日本の社会保障は高齢者優遇に偏っているとの声が強かった。自民党も選挙を意識して社会保障の削減には後ろ向きで、その分、子育てや教育への予算配分がおろそかにされてきた。「こども保険」の検討によって、社会保障の歳出抑制などの議論にも一石を投じる可能性がある。


PS(2017.5.27追加): *12のように、維新の党の提案を入れる形で自民党が進めようとしている高等教育無償化は、憲法9条変更のだしにすぎず、このような動機で憲法を変更すべきではない。また、日本国憲法は26条で義務教育の無償化をうたっているが、高等教育の無償化を禁じてはいないため、高等教育の無償化もやろうと思えばいつでもできる。そして、私は、国民全員を利する教育・社会保障を財源論とセットにして増税のだしに使うべきでもないと考えている。
 なお、どこまでが義務教育で、幼児教育・初等教育・中等教育・高等教育かは時代によって変わってよく、平成20年度で97%を超える生徒が進学している高校は、残る3%の進学できない生徒が人生で不利益を蒙らないためにも、義務教育にすべきだろう。
 そのため、私は、大学以降を高等教育とし、幼稚園から高校までを義務教育として無償化するのがよいと考える。また、大学の奨学金も、(子の方が未来に適合した考え方をする場合が多いのだが)親子で教育に関する考え方が一致するとは限らず、世帯収入が多いからといって100%の親が子の望む進学に金を出すとは限らないため、世帯収入とは関係なく学生全員を対象として渡すべきだと考える。そのよい例は、東大女子学生で、地方出身の女子生徒が東大に進学するのを周囲や社会に阻害されず、生活の心配なく受験できるように、東大女子同窓会が支払う女子学生への奨学金は合格前に内定し、東大が女子寮の便宜を図るようになっている。

*12:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0113953.html (北海道新聞 2017.5.27) 教育の無償化 改憲と切り離すべきだ
 安倍晋三首相が改憲の具体的項目として、9条への自衛隊明記とともに、高等教育までの無償化を挙げた。憲法は義務教育を無償と定めている。これを大学など高等教育まで拡大するよう、憲法に書き込むとの提案だ。貧富の差に関係なく、誰でも大学で学べる社会の実現に異論はない。だが、無償化は改憲しなくても可能だ。事実、民主党政権時代には高校が無償化されている。首相は誰もが賛同する教育無償化とセットにすることで、反対が根強い9条改正に踏み込もうとしているかのようにも映る。無償化が必要と考えるなら、改憲論議と切り離して、すぐにでも取り組むべきである。憲法は26条で義務教育の無償化をうたっている。その対象拡大を禁じているわけではない。だからこそ、民主党政権下で高校無償化法が成立し、公立高校の授業料は免除、私立高校にも就学支援金が支給され、事実上無償化が実現した。これを、選挙目当ての「ばらまき」と批判したのは野党だった自民党だ。事実、政権交代後は所得制限を設け、制度を後退させた。にもかかわらず、突然の「変節」である。教育無償化については、日本維新の会も憲法による規定を求めている。9条改正という目的達成に向け、維新の協力を得るために無償化を「だし」にするような手法であるなら、到底認めがたい。経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本の国内総生産に占める教育機関への公的支出割合は、比較可能な33カ国中32位だ。教育費の多くを家庭が負担している。こうした実態が少子化の一因にもなっている。教育の無償化は喫緊の課題なのだ。幼児教育から高等教育まで無償にすると、年間4兆円以上が必要とされる。財源を巡っては教育国債発行や、社会保険料引き上げによるこども保険創設などが出ているが、いずれも決め手に欠ける。さらに、世帯収入に関係なく全員を対象とするのか、無償化の範囲は幼児教育だけか、高等教育まで含むのか―など、実現に向けては難問が山積みだ。解決には、国会が党派の壁を取り払って、活発な議論を展開することが欠かせない。無償化を本当に実現したいのであれば、対立点の少なくない憲法を絡めて提唱したところで、逆効果ではないか。

| 年金・社会保障::2013.8~2019.6 | 10:46 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.7.28 医療・介護に関する政府・行政・メディアが作りあげた誤った論理を鵜呑みにしたのが、植松容疑者が障害者を刺殺した動機だろう (2016年7月30、31日、2016年9月16、23、25日に追加あり)
(1)精神障害者差別の根源は刑法39条であること
 厚労省は、*1-3のように、相模原市の障害者施設で起きた殺傷事件を受け、再発防止のために措置入院のあり方を見直す有識者会議を設置し、措置入院を解除した患者を継続的に支援(?)する体制を作るとのことだ。そして、その内容は、入院解除の判断や解除後の警察との連携などのフォローアップ体制に関する法改正やガイドラインづくりで、対応がいやに速やかである。

 しかし、忘れてならないのは、精神病院は精神障害者を治療する場所であって拘置所でも監獄でもないため、大量殺人(テロ?)に手を染めそうな人を精神障害者として精神科医が監視するのは無理があるということだ。アメリカでは、精神障害者のふりをして罪を免れて精神病院に行った人の話が、1975年に「カッコーの巣の上で」という映画になっており、深い映画であるため見ることをお勧めする。

 また、日本で悪質な殺人事件が起こるたびに、「犯人は精神障害者だった」とされる理由は、*1-4のように、刑法が39条で「心神喪失者の行為は、罰しない」「心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」と定めており、罰の軽減を図って犯罪時に「心神喪失だった」「心神耗弱だった」とワンパターンの弁護を行うからである。もちろん、人を殺す時の精神状態は正常ではないのかもしれないが、それをすべて責任能力がないため罰っせられないとする心神喪失や罪が軽減される心神耗弱に当たるとすれば、罰せられる人はいなくなる。

 そして、このような理由で精神障害者と認定された人を除けば、実際に精神障害者が殺人を犯す割合は、一般の人が殺人を犯す割合より低いと言われている。

 にもかかわらず、これらの対応の結果、*1-5のように、「刑法39条の精神疾患が有る人は、人を殺しても罪に問われないと言う法律、これって可笑しくない?」「つまり獣に罰を与えても無駄でしょ!? って理屈な訳?」「刑罰が人以下で人権だけ主張されてもねぇ・・・」というイメージが一般の人について、刑法39条とメディアの報道の仕方が、本当の精神障害者に対する言われなき差別を作っているのである。

 また、その答えが、「もう大丈夫です。心神喪失者等医療観察法が制定されましたから」「人の形をした人ならざる者に人権は不要です。その事を国も認めました」「これで事実上一生監視下に置かれる事と成ります」というのもふるっている。

(2)それでは、植松容疑者の障害者刺殺の動機は何か
 障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人を刺殺し、26人にけがをさせた事件で、*1-1のように、植松容疑者(26)の犯行は、「精神障害か」「違法薬物のせいか」とされている。

 しかし、植松容疑者は、2016年2月15日、衆議院議長公邸を訪ね、土下座で頼み込んだ上で大島理森議長にあてた今回の事件を示唆する内容の手紙を渡し、その手紙には「私は障害者総勢470名を抹殺することができる」と記していた。さらに、*1-2のように、「意思疎通ができない人たちをナイフで刺した」「障害者なんていなくなればいい」とも供述しており、殺人後の現在は、「遺族の方には、突然のお別れをさせるようになってしまって心から謝罪したい」と話しているが、被害者本人への謝罪は全くない。つまり、普段から障害者を自分と同じ人間と見ておらず、この世に存在してはならないもののように考えていた確信犯であることがわかる。

 「車イスに一生縛られている気の毒な利用者も多く存在する」「私の目標は重複障害者の方が家庭内での生活、及び社会的活動が極めて困難な場合、保護者の同意を得て安楽死できる世界です」「重度障害者の大量殺人は、日本国の指示があればいつでも実行できる」などとも述べているが、これらは、植松容疑者の信念であり、大麻による薬物中毒や精神異常が原因ではないように見える。

(3)では、植松容疑者の信念はどうして作られたのか
 行政・メディアは、*2-1のように、「社会保障を軸に『岩盤歳出』に切り込め」として、①インフレ政策をとり ②消費税率を引き上げ ③高齢者に対する社会保障を中心とする歳出の削減・抑制をすべきだと連日訴えている。

 そして、その理由を、高齢化で膨らむ一方の社会保障費を“効率化”するため、ゆとりのある高齢者の自己負担を増やし給付を真に困っている高齢者に重点化して、子ども・子育て支援は充実するとしているが、このような政策を進めた結果、実際には年金生活者は財産権を侵害されて生活に困窮している人が多く、介護殺人も起こった。

 そのため、*2-1の論調の人は、植松容疑者のように刃物で高齢者を手にかけることはなかったが、間接的に殺人や泥棒をしたことになり、「社会保障費を“効率化”することだけが重要だ」というメッセージを流し続けてきた人は、若者に誤りを擦りこみ続けたのである。

 なお、*2-1に、2018年度の診療報酬と介護報酬の同時改定を待たずに、政府は17年度予算から歳出抑制の具体策を打ち出していくべきだとも書かれている。しかし、政府が診療報酬や介護報酬をカットし続けたことは、これらのサービスに従事している人たちに過度の労働を強いるなど多くの問題を引き起こしているとともに、本物のニーズ(需要)を削ってGDPを下げているのだ。

 また、*2-2のように、経産省は企業と連携して会社員の健康情報のデータベース化に向けた取り組みを強化するそうだが、最近の過度のデータ収集ではプライバシーの侵害になりそうである。

 さらに、*2-3のように、厚労省は、2018年度の介護保険制度改正に向けた本格的論議を開始し、日常生活で部分的な介助が必要な「要介護1、2」の認定者に対する掃除や調理、買い物など生活援助サービスの給付を減らす予定とのことだが、要介護度の低い人が自宅療養できるためには支援が必要であるため、生活援助サービスのカットは介護が必要な人やそれを支える家族の負担を重くする。

 最後に、介護保険制度ができた当時、年3兆6千億円だった介護給付費は現在10兆円を超えて、今後10年間は団塊の世代の高齢化が進んで給付費はさらに増大するとのことだが、それは当たり前であり、あらかじめわかっていたことだ。そして、多くの人が介護保険料を支払っていない現在、働く人すべてが介護保険料を支払う介護保険制度にすれば、それは解決できる筈である。

<“無駄”削減が本当の動機ではないのか>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12483228.html
(朝日新聞 2016年7月28日) 手すりに複数職員縛る 議長宛て手紙通り 相模原19人刺殺
 相模原市緑区千木良(ちぎら)の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が死亡し、26人がけがをした事件で、殺人などの容疑で送検された植松聖(さとし)容疑者(26)が、5人前後の職員を結束バンドで縛りつけたうえで入所者を襲っていたことが神奈川県警への取材でわかった。2月に衆院議長に宛てた手紙に記された「作戦」通りの内容で、県警は計画的に事件を起こしたとみて調べている。
■自宅に違法薬物か
 県警は27日、園近くの植松容疑者宅を捜索。植物片とみられるものが付着した容器を押収した。危険ドラッグや大麻などの違法薬物の疑いがあるとみて調べる。捜索では、事件について記したメモもあった。県警や県関係者によると、東棟1階から侵入した植松容疑者は、寝ていた入所者らを次々に刺した後に西棟1階に移動。居合わせた職員2人の指や腕をプラスチック製の結束バンドで縛り、手すりにつないで動けない状態にした。縛られた職員の一人は「殺されると思い、怖かった」と話しているという。ほかにも3人前後が結束バンドで縛られた。植松容疑者はさらに西棟の2階へ移動。居室を回り、約50分間で計45人を襲ったとみられている。植松容疑者は2月、大島理森衆院議長に宛てた手紙の中で、障害者施設で多数を殺害する「作戦内容」として、「見守り職員は結束バンドで身動き、外部との連絡をとれなくします」「職員は傷つけず、速やかに作戦を実行します」などと記していた。また、司法解剖の結果、遺体の致命傷は首や腹、背中など上半身に集中していた。施設内では血のついた2本の包丁が押収され、凶器とみられる刃物はこれで計5本となった。植松容疑者は「突然のお別れをさせるようになってしまって遺族の方には心から謝罪したい」と話しているという。園を運営する社会福祉法人かながわ共同会は27日に記者会見し、米山勝彦理事長は「尊い生命が失われ、強い怒り、憤り、悲しみを禁じ得ません。19人の方々が亡くなり、負傷者が出たことを心よりおわび申し上げます」と述べた。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12481359.html (朝日新聞 2016年7月27日) 重度障害者、標的か 相模原19人刺殺、容疑者「意思疎通できぬ人刺した」
 相模原市緑区千木良(ちぎら)の障害者施設「津久井やまゆり園」で26日未明、刃物を持った男が入所者らを襲い、19人が死亡、26人がけがをした事件で、神奈川県警に殺人未遂などの容疑で逮捕された元職員の植松聖(さとし)容疑者(26)が、「意思の疎通ができない人たちをナイフで刺した」と供述していることが県警への取材でわかった。県警は植松容疑者が身勝手な動機から、重度の障害者を狙って事件を起こしたとみて調べる。県警は27日、容疑を殺人に切り替え、横浜地検に送検する。警察庁によると、平成元(1989)年以降、最も死者の数が多い殺人事件となった。消防や県などによると、亡くなったのはいずれも入所者で、41~67歳の男性9人と、19~70歳の女性10人。けが人のうち、重傷者が13人という。けが人には職員2人も含まれていた。植松容疑者の逮捕容疑は、26日午前2時ごろ、同園で入所者の女性(19)を刺して殺害しようとしたというもの。県警の調べに対して容疑を認め、「障害者なんていなくなればいい」とも話しているという。植松容疑者は東居住棟の1階東側の窓をハンマーで割って施設に侵入し、結束バンドを使って施設職員を拘束。所持していた包丁やナイフを使い、次々に入所者を刺したという。津久井署には午前3時ごろ1人で出頭。持参したかばんには、血が付いた刃物3本が入っていた。また、乗ってきた車の後部座席からは、少量の血液が付いた結束バンドも見つかった。同園は県が設置し、指定管理者である社会福祉法人かながわ共同会が運営。神奈川県北西部にあり、東京都や山梨県との境に近い。県などによると、知的障害者ら149人が長期で入所中。敷地は3万890平方メートル、建物は延べ床面積約1万1900平方メートル。2階建ての居住棟が東西に2棟あり、20人ずつが「ホーム」と呼ばれるエリアに分かれて暮らしていた。
■2月に施設退職
 捜査関係者によると、植松容疑者は今年2月15日、衆院議長公邸を訪ね、土下座で頼み込んだうえで大島理森議長にあてた手紙を渡していた。手紙は「私は障害者総勢470名を抹殺することができる」として、今回の事件を示唆するかのような内容だった。手紙は「標的」にやまゆり園を含む2施設を挙げ、「作戦」として、夜間に事件を起こすことや結束バンドで職員の動きを封じること、事件後は自首することなどを記していた。いずれも事件時の実際の行動と同様の内容だ。手紙では障害者について「車イスに一生縛られている気の毒な利用者も多く存在」するとし、「私の目標は(複数の障害がある)重複障害者の方が家庭内での生活、及び社会的活動が極めて困難な場合、保護者の同意を得て安楽死できる世界です」などと自分勝手な考えを示していた。神奈川県や相模原市によると、植松容疑者は2012年12月から同園に勤務していたが、今年2月18日、園の関係者に「重度障害者の大量殺人は、日本国の指示があれば、いつでも実行できる」などと話したため、話し合ったうえで19日に退職願を提出してもらった。市は精神保健福祉法に基づいて植松容疑者を措置入院させた。入院中には植松容疑者の尿と血液の検査から大麻使用が判明。その後、症状が改善されたとして、家族と同居することを条件に、3月2日に医師の判断で退院させていたという。退院を受け、県警のアドバイスで4月、同園の防犯カメラが16台増設されたという。
■「命の重さに思いを」障害者団体
 知的障害のある当事者と家族らでつくる「全国手をつなぐ育成会連合会」は26日夜、会のホームページで声明を公表した。「職員体制の薄い時間帯を突き、抵抗できない知的障害のある人を狙った計画的かつ凶悪残忍な犯行であり、到底許すことはできません」と激しい憤りを表明している。さらに「このような事件が二度と起きないよう、事件の背景を徹底的に究明することが必要」と指摘。被害者や遺族・家族、入所者に対する十分なケアを求め、「早期に対応することと中長期に対応することを分けて迅速に行いつつ、深く議論をして今後の教訓にしてください」と再発防止策の検討を要求した。その上で「今回の事件を機に、障害のある人一人ひとりの命の重さに思いを馳(は)せてほしい」と国民に訴えた。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12483220.html?ref=pcviewpage
(朝日新聞 2016年7月28日) 措置入院、あり方検討 厚労省、相模原19人刺殺受け
 相模原市の障害者施設で起きた殺傷事件を受けて、厚生労働省は、再発防止に向けて措置入院のあり方を見直す有識者会議を8月にも設置する調整に入った。措置入院を解除した患者に対し、継続的に支援する体制づくりが課題となる。措置入院は精神保健福祉法に基づき、自分や他人を傷つける恐れがある場合に都道府県知事らが患者本人の同意なしに入院させられる仕組み。植松聖容疑者は2月に緊急で措置入院し、3月に退院した。厚労省は措置入院解除後の植松容疑者の行動や解除の判断のあり方、警察との連携などの調査に着手。現状では「退院後のフォローアップ体制」がないことから、有識者会議で検討を進め、必要に応じて法改正やガイドラインづくりを行う考えだ。塩崎恭久厚労相は27日に事件現場を視察後、記者団に「措置入院後の十分なフォローアップができていなかったという指摘がある。こういった点もよく考えていかなければならない」と述べた。

*1-4:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M40/M40HO045.html 刑法 (抜粋)
(心神喪失及び心神耗弱)
第三十九条  心神喪失者の行為は、罰しない。
2  心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

*1-5:http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1354030598
刑法39条(精神疾患が有る人は、人を殺しても罪に問われないと言う法律)
Q:これって可笑しくない?
  補足つまり獣に罰を与えても無駄でしょ!?って理屈な訳?
  刑罰が人以下で人権だけ主張されてもねぇ・・・
A:もう大丈夫です。心神喪失者等医療観察法が制定されましたから。http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/sinsin/index.html
  人の形をした人ならざる者に人権は不要です。その事を国も認めました。これで事実上一生監視下に置かれる事と成ります。以前は不起訴処分となり、精神保健法により慣例として措置入院されていました。しかもたった1人の精神科医の判断で退院出来てしまうのです。一般の病院ですから、うつ病になって入院したら大量殺人の異常者が隣の部屋と言う事もあり得ます。医療観察法が有る今は、裁判の替わりに検察と弁護士と裁判官と精神科医による審査、検察と弁護士と裁判官と精神科医による審査で退院可。専用の精神科病院に強制入院ですから、大量殺人の異常者が隣の部屋と言う事もありません。

<高齢者の医療・介護について>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160727&ng=DGKKZO05306920X20C16A7EA1000 (日経新聞社説 2016.7.27) 社会保障を軸に「岩盤歳出」に切り込め
 日本の財政は先進国で最悪の状態にある。この立て直しには、具体的な計画が必要だ。安倍晋三政権はその点を忘れてはならない。安倍政権は消費税率を10%に引き上げる時期について、2017年4月から19年10月へと再び延期することを決めた。これを踏まえて内閣府は中長期の経済財政に関する試算をまとめた。名目経済成長率が3%以上で推移する経済再生ケースをみると、20年度時点で国と地方をあわせた基礎的財政収支は5.5兆円の赤字になる。名目成長率が1%台半ば程度の現実的なケースだと、9.2兆円の赤字になるという。いずれの場合も今年1月時点の試算よりも赤字幅は縮小する。消費増税を再延期するのに数字が改善するのは、17年度予算での歳出抑制を織り込んだからだ。前提の置き方しだいで試算値はかわるので、幅を持ってみる必要はある。それでも20年度に基礎的財政収支を黒字にするという目標を達成するハードルが高いことが改めて浮き彫りになった。名目成長率が高くなれば税収増が期待できる。0%台にとどまっている日本の潜在成長率を高めるための構造改革は、財政健全化の面からみても不可欠だ。同時に、政権は歳出の削減・抑制から逃げてはならない。消費増税を再延期するのであればなおのこと、長年手つかずの「岩盤歳出」に切り込んでほしい。大事なのは、高齢化で膨らむ一方の社会保障費を効率化する視点だ。医療や介護では、所得や資産にゆとりのある高齢者の自己負担を増やす方向は避けられない。給付は真に困っている人に重点化し、子ども・子育て支援は充実する。そんなメリハリのある改革が急務だ。18年度の診療報酬と介護報酬の同時改定を待たずに、政府は17年度予算から歳出抑制の具体策を打ち出していくべきだ。地方財政や公共事業費も聖域を設けず、厳しく見直してほしい。政府の経済財政諮問会議の民間議員は、補正予算などに頼らず民需主導で成長できれば、20年度時点の基礎的財政赤字を1兆円未満に縮小できるとの見方を示した。しかし、楽観的な経済想定を前提に中長期の財政健全化計画をたてるのは危うい。いつまでに、何をやり、どの程度、財政収支を改善するか。堅実で具体的な計画を固めなくてはならない。

*2-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF28H07_Y6A620C1PP8000/
(日経新聞 2016/6/26) 経産省、会社員の健康情報収集 医療費削減狙う
 経済産業省は企業と連携し、会社員の健康情報のデータベース化に向けた取り組みを強化する。7月から1140人の糖尿病に関する情報をデータベース化し、2017年以降は高脂血症や高血圧にも対象を広げる。取り組みにはトヨタ自動車や三菱地所、NTTデータ、テルモなど大手企業や医療機関が参加する。7月から各社の糖尿病軽症患者計760人、予備軍計380人全員から同意を取り、糖尿病のデータを集める。ウエアラブル端末で日々の体重や歩数を記録し、糖尿病の指標となる「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」も職場で計測する。運動不足や体重増加が目立つ社員を、自動的に抽出して産業医が指導。健康保険組合の負担や国の医療費の削減につなげる。データベースは情報を匿名化したうえで、研究者にも活用してもらえるようにする。17年以降は、高脂血症と高血圧の患者も対象に加え、生活習慣病全般のデータを集められるようにする。経産省は関連費用を来年度予算の概算要求に盛り込む方針だ。官公庁が集まる東京・霞が関でも同様の取り組みを進める。今夏以降に、経産省職員から糖尿病の軽症患者数十人を選び、ウエアラブル端末でデータを計測。その後は、厚生労働省など他省庁にも協力をあおいで対象を拡大する。

*2-3:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0068891.html
(北海道新聞 2016/7/25) 軽度者の介護 暮らしを守れる制度に
 要介護度の低い人は、今の暮らしを守り続けられるのだろうか。そう心配する声すら出ている。厚生労働省の社会保障審議会は、2018年度の介護保険制度改正に向けた本格的論議を開始した。3年に1度の見直しで、年内の取りまとめを目指している。焦点は、日常生活で部分的な介助が必要な「要介護1、2」の認定者に対するサービスの扱いだ。政府は社会保障費抑制を狙いに、掃除や調理、買い物など生活援助サービスの給付を減らし、車いすなど福祉用具の貸与も自己負担化する方向だ。そうなれば、介護が必要な人や支える家族の生活が大きく揺らぎかねない。介護に当たる家族の負担が重くなれば、政府が掲げる「介護離職ゼロ」にも逆行する。制度改正に当たっては、老後の安心を何よりも重視すべきだ。審議会にまず求めたいのは、過去の見直しについての検証だ。前回の見直しでは、要介護より軽度の「要支援」認定者を介護保険の対象から外し、ボランティアなども活用した市町村事業に移行することを決めた。現在はその移行途中だが、当初からサービスも担う受け皿が不足するとの見方があり、実際にまだ移行できていない市町村が少なくない。要支援者の状況を含めた分析が欠かせない。一方、今回の改正で心配なのは、「要介護1、2」認定者向けのサービスを縮小したり保険対象外にした場合の影響だ。負担の重さから利用をためらい、体調が維持できなくなれば、要介護度が重くなって結果的に介護給付費を押し上げかねない。それでは本末転倒だ。超高齢社会の急速な進展によって、介護保険制度の維持が厳しくなっているのは確かだろう。制度ができた当時、年3兆6千億円だった介護給付費は現在、10兆円を超えている。その上、今後10年間は団塊の世代の高齢化が進み、給付費はさらに増大する。できるだけ無駄をなくすことは必要だ。しかし、安心してサービスを使えないようでは制度の信頼性が薄れる。利用者の経済状況に応じた負担割合の細分化など、弱者にしわ寄せがこないような工夫も視野に入れるべきだろう。小手先の手直しでは対応できなくなりつつある現実も、直視しなければならない。制度の設計を根本的に見直す時期に来ているのではないか。


PS(2016.7.30追加):上のほか、2013年12月6日に成立し、2014年12月10日から施行されている特定秘密保護法も、*3の日本精神神経学会(専門家集団)の見解のとおり、精神障害者を見当違いに差別する法律である。そのため、偏見と差別に満ちた「らい予防法」の1996年廃止後、この特定秘密保護法が衆参両院を通って成立・施行されたことに呆れるが、何でも決める政治がよいわけではない。

*3:http://aichi-hkn.jp/system/140516-162235.html (日本精神神経学会2014年3月15日発表 《一部抜粋》) 特定秘密保護法における適性評価制度に反対する見解
(一)精神疾患、精神障害に対する偏見、差別を助長し、患者、精神障害者が安心して
   医療・福祉を受ける基本的人権を侵害する。
   内閣官房による逐条解説によれば、次のように記されている。「精神疾患により
   意識の混濁・喪失等が生じたり、薬物依存・アルコール依存症が症状に見られたり
   するという事実は、自己を律して行動する能力が十分でない状態に陥るかもしれ
   ないことを示唆していることから、こうした事実が見受けられる者には、本人に
   その意図がなくても特別秘密を漏らしてしまうおそれがあると評価しうると考えられ
   る。」ここでは、神経疾患であるてんかんや意識障害に関する事柄が精神疾患の
   問題として述べられるという全く見当違いな記述がなされている。このような杜撰な
   認識で法が成立し、かつ、それによって調査されるなどということは許されること
   ではない。なによりも、精神疾患患者が「自己を律して行動する能力が十分でなく」
   「特別秘密を漏らしてしまうおそれがある」とすること自体が、精神障害者に対する
   差別にほかならない。さらに、精神障害者に対する「何をするかわからない者」と
   いう偏見を利用し、不気味さを強調して秘密保護の必要をあおり立て、秘密保全に
   係わる国民統制のためのスケープゴートにすることは法治国家として許されるもの
   ではない。
(二)医療情報の提供義務は、医学・医療の根本原則(守秘義務)を破壊する。……(略)
(三)精神科医療全体が本法の監視対象になる危険性が高い。
   特定秘密の範囲が広範かつ秘密であるため、適性調査の対象が無制限に広がる
   おそれがある。しかも行政機関の長が行う適性評価は上記のように秘密保全部署
   がその情報の確認をすることとなり、精神疾患を有する者及びその疑いのある者
   及び精神科医療機関及び精神科医、精神科医療に係る職種にある者は医療の
   倫理に反する調査に直面することになる。


PS(2016年7月31日追加):*4の元職員が「津久井やまゆり園」に侵入して入所者を襲い、19人に死亡・26人に重軽傷を負わせた事件で、同園の経営者は誠実そうな人柄であったため問題にされていないが、このような状況で退職した元職員がいる場合には、鍵を変えたり、他の職員に注意を促したり、警察と連携したり、警備会社と厳重な契約をしたりして警備を厳しくするのが、入居者を護るための正当な注意だが、何故、それをやらなかったのだろうか。
 なお、医療系の教育を受けた人は、「救える命は救う」という教育を受けているため、「生きている命を殺す」というのは安楽死の議論があったとしても慎重なのだが、他学部出身の人が福祉や医療を語ると、この基礎教育ができていないため、“効率性”のみを重視して短絡的になりがちだ。そして、日本の高齢者施設や障がい者施設で入居者のケアをしている人は、急に需要が増えて医療・福祉系の教育を受けていない人が多いため、人材というこのサービス(産業)の要の部分が心もとないのである。

*4:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=180289
(沖縄タイムス社説 2016年7月27日) [障がい者施設殺傷]兆候は幾つも出ていた
 相模原市の知的障がい者施設「津久井やまゆり園」に元職員の男(26)が刃物を持って押し入り、入所者を次々襲った事件は、19人が死亡、26人が重軽傷を負った。殺人事件の犠牲者数としては戦後最悪とみられる。未明の就寝の時間帯を狙った卑劣な犯行である。警察に出頭し逮捕された男は容疑を認め、「意思疎通できない人たちをナイフで刺した。障がい者なんていなくなってしまえ」などと供述しているという。就寝中に突然、命を奪われた犠牲者の理不尽さを思うと、残忍な蛮行に憤りを抑えることができない。神奈川県警捜査本部は、容疑を殺人未遂から殺人に切り替え、取り調べる方針だ。動機は何なのか。男は2012年12月に非常勤職員として採用され、13年4月には常勤職員となった。今年2月に施設関係者に「障がい者を殺す」と話したため、警察が事情聴取した。警察にも「重度障がい者の大量殺人は、日本国の指示があればいつでも実行する」と供述したため、市が精神保健福祉法に基づき措置入院させた。男は退職した。病院の尿検査で男から大麻の陽性反応が出ていたが、市は症状がよくなったとして約2週間で退院させていた。男はこれに先立つ2月、同施設を「標的とする」と犯行を予告するような手紙を衆院議長公邸に持参していた。手紙は「職員の少ない夜勤に決行する」などと今回の事件を想起させる内容だ。退院後の男の病状を確認するなど、行政の対応は十分だったのだろうか。厳しく検証しなければならない。
■    ■
 「津久井やまゆり園」には6月末時点で、19~75歳の149人が長期入所していた。全員が介助が必要な重度の知的障がい者だ。施設の管理体制はどうだったのだろうか。事件当時は夜勤の職員8人と警備員1人の計9人態勢で当たっていた。施設には部屋12室を1ユニットとし、計8ユニットがあり、それぞれ職員が1人ずつ付き添っていた。男は1階の窓ガラスをハンマーで割り、そこから施設内に侵入したとみられる。入所者は侵入者に自力では抵抗できない。その上、未明の就寝中に、刃物を持った男に突然襲われたことも被害者が多数に上った要因である。障がい者らの入所施設は、厚生労働省によると、全国に約2600あり、約13万人が入所している。侵入者に対する防犯対策など国の規定はなく、現場に委ねられているのが現状だ。緊急通報体制の在り方や訓練など社会的弱者が入所する施設の危機管理体制を点検する必要がある。
■    ■
 自分勝手な思い込みを絶対化し、他者への寛容をなくする。今回の事件は障がい者を標的にした犯罪「ヘイトクライム」である。障がい者に対し強い差別と偏見を持ち、存在そのものを否定するような男のゆがんだ考えはどのようにして形成されたのだろうか。知的障がい者施設に勤務したことと関係があるのだろうか。捜査当局は全容解明を急いでほしい。


<日本で公的に堂々と行われている精神障害者差別>
PS(2016年9月16日追加):*5-1のように、「津久井やまゆり園」の重度障害者刺殺事件に関し、厚労省は、殺人容疑で逮捕された元職員の植松容疑者が措置入院させられていた病院や相模原市の対応を「不十分」とする検証結果を公表し、内容は「措置入院した植松容疑者は『大麻使用による精神および行動の障害』と診断されたが、病院側に薬物による精神障害の専門性が不足していた」とした。しかし、大麻などの薬物使用は犯罪であって精神病ではないため、精神病院に措置入院させること自体おかしく、また、大麻使用による精神障害で重度障害者だけを選んで刺し殺すという計画的な犯行をすることも考えにくいため、犯行前から準備していたかのように、厚労省が津久井やまゆり園事件を機会に精神病、措置入院、その後の“支援(?)”という路線を強化するのは、ますますおかしいのである。
 しかし、我が国では、近年、精神障害者に対する差別が次第にひどくなり、2013年12月には、*5-2のように特定秘密保護法が成立し、「精神疾患の既往歴のある人は秘密保持能力がないため特定秘密を扱う適性がない」ということになったが、実際には、精神疾患の既往歴と秘密保持能力に関する相関関係はなく、特定秘密保護法制定前にそれを調査した形跡もない。そのため、この法律は差別を助長して不当に就業機会を奪うことになっており、これで精神障害者に何を支援しようというのかも疑問に思われ、まず日本国憲法に定められているとおり、「基本的人権の侵害」等をなくすべきなのである。
 ちなみに、*5-3のように、欧州諸国における精神科入院全体に占める強制入院の割合は、Portugal(3.2%)、Denmark(4.6%)、Belgium(5.8%)、Ireland(10.9%)、Italy(12.1%)、France(12.5%)、Netherland(13.2%)、UK(13.5%)、German(17.7%)、Austria(18%)、Finland(21.6%)、Sweden(30%)であるのに対し、我が国は40%以上となっており、その理由は、①強制入院要件の厳格性の欠如 ②入院を回避する代替手段の欠如 などで繰り返し批判され、医療または家族から独立した代理人(ソーシャルワーカーや弁護士等)の関与が義務付けられているEU 諸国では、そうでない国に比べて強制入院の割合が有意に低くなっているそうだ。

*5-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJ9H22S3J9HUBQU001.html
(朝日新聞 2016年9月15日) 措置入院中の対応「不十分」/相模原事件で厚労省が検証
 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が死亡した事件で、厚生労働省は14日、殺人容疑で再逮捕された元職員の植松聖(さとし)容疑者(26)が措置入院していた病院や相模原市の対応を「不十分」とする検証結果を公表した。退院後に支援を続けなかったことを問題視し、現行制度の見直しが「必要不可欠」と指摘している。有識者9人による厚労省の検証・再発防止策検討チーム(座長=山本輝之成城大教授)がまとめた。検証結果を踏まえ、再発防止策の検討に入る。植松容疑者は職場の障害者施設で「障害者は安楽死させたほうがよい」などと発言し、2月19日に緊急で相模原市の北里大学東病院に措置入院。退院後の7月26日に事件が起きており、病院や相模原市の対応を検証していた。検証によると、措置入院をした植松容疑者は「大麻使用による精神および行動の障害」と診断されたが、病院側に薬物による精神障害の専門性が不足していることを指摘。大麻使用による精神障害のみで「『障害者を刺し殺さなければならない』という発言が生じることは考えにくい」として、入院中に生活歴の調査や心理検査を行っていれば診断や治療方針が異なった可能性にも触れて、病院側の対応に疑問を示した。一方、12日後に退院したことには「指定医としての標準的な判断だった」として問題なしとした。ただ、措置入院を判断した2人のうち1人は不正に指定医の資格を取った疑いがあり、資格を失った。これには「信頼を損ねたことは重大な問題」と明記した。措置入院を解除する際に病院が相模原市に提出した「症状消退届」には退院後の支援策が記入されず、市も詳細を確認せず解除を決めている。症状消退届への記入や退院後の継続的な支援は精神保健福祉法で義務づけられていないが、再発防止に向けて制度の見直しによる対応を求めた。検証結果について、北里大学東病院は「厚労省から直接、指摘や指導があったわけではないので詳細がわからず、病院としてコメントできない」。相模原市の熊坂誠・健康福祉局長は「指摘を重く受け止めている」と語った。
<措置入院>精神障害が原因で本人や他人を傷つける恐れがある場合、本人の同意がなくても精神科病院に入院させることができる仕組み。精神保健福祉法に基づいて指定医が診察し、この結果を踏まえて知事か政令指定市長が決める。近年は増加傾向にあり、2014年度は6861人で、10年前の1・36倍になった。一方、平均入院日数は10年間で半減している。

*5-2:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H25/H25HO108.html 特定秘密の保護に関する法律 (平成二十五年十二月十三日法律第百八号)
 第一章 総則(第一条・第二条)
 第二章 特定秘密の指定等(第三条―第五条)
 第三章 特定秘密の提供(第六条―第十条)
 第四章 特定秘密の取扱者の制限(第十一条)
 第五章 適性評価(第十二条―第十七条)
 第六章 雑則(第十八条―第二十二条)
 第七章 罰則(第二十三条―第二十七条)
 附則
   第一章 総則
(目的)
第一条  この法律は、国際情勢の複雑化に伴い我が国及び国民の安全の確保に係る情報の重要性が増大するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される中で、我が国の安全保障(国の存立に関わる外部からの侵略等に対して国家及び国民の安全を保障することをいう。以下同じ。)に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものについて、これを適確に保護する体制を確立した上で収集し、整理し、及び活用することが重要であることに鑑み、当該情報の保護に関し、特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定めることにより、その漏えいの防止を図り、もって我が国及び国民の安全の確保に資することを目的とする。
<中略>
   第四章 特定秘密の取扱者の制限
第十一条  特定秘密の取扱いの業務は、当該業務を行わせる行政機関の長若しくは当該業務を行わせる適合事業者に当該特定秘密を保有させ、若しくは提供する行政機関の長又は当該業務を行わせる警察本部長が直近に実施した次条第一項又は第十五条第一項の適性評価(第十三条第一項(第十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による通知があった日から五年を経過していないものに限る。)において特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められた者(次条第一項第三号又は第十五条第一項第三号に掲げる者として次条第三項又は第十五条第二項において読み替えて準用する次条第三項の規定による告知があった者を除く。)でなければ、行ってはならない。ただし、次に掲げる者については、次条第一項又は第十五条第一項の適性評価を受けることを要しない。
一  行政機関の長
二  国務大臣(前号に掲げる者を除く。)
三  内閣官房副長官
四  内閣総理大臣補佐官
五  副大臣
六  大臣政務官
七  前各号に掲げるもののほか、職務の特性その他の事情を勘案し、次条第一項又は第十五条第一項の適性評価を受けることなく特定秘密の取扱いの業務を行うことができるものとして政令で定める者
第五章 適性評価
(行政機関の長による適性評価の実施)
第十二条  行政機関の長は、政令で定めるところにより、次に掲げる者について、その者が特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないことについての評価(以下「適性評価」という。)を実施するものとする。
一  当該行政機関の職員(当該行政機関が警察庁である場合にあっては、警察本部長を含む。次号において同じ。)又は当該行政機関との第五条第四項若しくは第八条第一項の契約(次号において単に「契約」という。)に基づき特定秘密を保有し、若しくは特定秘密の提供を受ける適合事業者の従業者として特定秘密の取扱いの業務を新たに行うことが見込まれることとなった者(当該行政機関の長がその者について直近に実施して次条第一項の規定による通知をした日から五年を経過していない適性評価において、特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められた者であって、引き続き当該おそれがないと認められるものを除く。)
二  当該行政機関の職員又は当該行政機関との契約に基づき特定秘密を保有し、若しくは特定秘密の提供を受ける適合事業者の従業者として、特定秘密の取扱いの業務を現に行い、かつ、当該行政機関の長がその者について直近に実施した適性評価に係る次条第一項の規定による通知があった日から五年を経過した日以後特定秘密の取扱いの業務を引き続き行うことが見込まれる者
三  当該行政機関の長が直近に実施した適性評価において特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められた者であって、引き続き当該おそれがないと認めることについて疑いを生じさせる事情があるもの
2  適性評価は、適性評価の対象となる者(以下「評価対象者」という。)について、次に掲げる事項についての調査を行い、その結果に基づき実施するものとする。
一  特定有害活動(公になっていない情報のうちその漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるものを取得するための活動、核兵器、軍用の化学製剤若しくは細菌製剤若しくはこれらの散布のための装置若しくはこれらを運搬することができるロケット若しくは無人航空機又はこれらの開発、製造、使用若しくは貯蔵のために用いられるおそれが特に大きいと認められる物を輸出し、又は輸入するための活動その他の活動であって、外国の利益を図る目的で行われ、かつ、我が国及び国民の安全を著しく害し、又は害するおそれのあるものをいう。別表第三号において同じ。)及びテロリズム(政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう。同表第四号において同じ。)との関係に関する事項(評価対象者の家族(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下この号において同じ。)、父母、子及び兄弟姉妹並びにこれらの者以外の配偶者の父母及び子をいう。以下この号において同じ。)及び同居人(家族を除く。)の氏名、生年月日、国籍(過去に有していた国籍を含む。)及び住所を含む。)
二  犯罪及び懲戒の経歴に関する事項
三  情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項
四  薬物の濫用及び影響に関する事項
五  精神疾患に関する事項
六  飲酒についての節度に関する事項
七  信用状態その他の経済的な状況に関する事項
3  適性評価は、あらかじめ、政令で定めるところにより、次に掲げる事項を評価対象者に対し告知した上で、その同意を得て実施するものとする。
一  前項各号に掲げる事項について調査を行う旨
二  前項の調査を行うため必要な範囲内において、次項の規定により質問させ、若しくは資料の提出を求めさせ、又は照会して報告を求めることがある旨
三  評価対象者が第一項第三号に掲げる者であるときは、その旨
4  行政機関の長は、第二項の調査を行うため必要な範囲内において、当該行政機関の職員に評価対象者若しくは評価対象者の知人その他の関係者に質問させ、若しくは評価対象者に対し資料の提出を求めさせ、又は公務所若しくは公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
<以下略>

*5-3:http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/k_25/pdf/s1.pdf#search='%E4%BA%BA%E5%8F%A310%E4%B8%87%E5%AF%BE+%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E7%97%85%E6%82%A3%E8%80%85+%E5%9B%BD%E5%88%A5%E6%AF%94%E8%BC%83' (2015年8月31日) 障害者政策委員会 ヒアリング資料:欧州諸国との比較からみる我が国の精神科強制入院制度の課題 、(公財)東京都医学総合研究所 西田 淳志
I.医療保護入院、代弁者制度について
■ 欧州諸国における精神科入院全体に占める強制入院割合1
(低):Portugal(3.2%)、Denmark(4.6%)、Belgium(5.8%)
(中):Ireland(10.9%)、Italy(12.1%)、France(12.5%)、Netherland(13.2%)、UK(13.5%)、
(高):German(17.7%)、Austria(18%)、Finland(21.6%)、Sweden(30%)
*1『厚生労働科学研究 精神障害者への対応への国際比較に関する研究(主任研究者:中根允文)(2011)』
■ 我が国の現状(平成24 年時点)
強制入院(医療保護入院を含む)割合:40%以上
強制入院発生頻度(届出数):160 人以上(対人口10 万)
⇒ 自由権規約、および拷問等禁止条約に関する日本政府報告への総括所見:
強制入院要件の厳格性欠如、入院を回避する代替手段の欠如、強制入院の最終手段性、等々の問題について繰り返し批判されている
■ 強制入院割合と関連する制度要因2
強制入院手続きに医療から独立した代理人(アドボケイトカウンセラー、ソーシャルワーカー、弁護士等)の関与が義務付けられているEU 諸国では、そうでない国々に比べ強制入院の割合が有意に低い。
例)Portugal(3.2%)、Denmark(4.6%)、Belgium(5.8%)、Ireland(10.9%)、
Netherland(13.2%)、Austria(18%)
*2『精神障害者の強制入院ならびに非自発的医療:EU 加盟国の法制度と実践に関する最終報告書(2002)』
◇ 代弁者が実質的なアドボカシーを担える仕組みの要件◇
1. 強制入院手続きに関与が義務付けられている各国のアドボケイトカウンセラーやソーシャルワーカーは、医療から独立している(大前提)
2. 法律機関等に所属を置き、医療(または家族)からの独立性を担保したアドボケーター制度 (以下略)


PS(2016年9月23日追加):*6のように、刑事責任能力を判断するため「精神障害等の疑いがある容疑者や被告を数カ月にわたって病院などで拘束する『鑑定留置』が急増している」とのことだが、①精神障害が罪の原因となるのか ②過去に精神科への通院歴があったことを精神障害と言えるのか など、論理的におかしく、科学的調査を行うべきことが多い。にもかかわらず、精神病歴のある人は罪人予備軍であるかのような誤解を与えたり、弁護士が精神障害により免責を主張したりなど、刑法39条による精神障害者差別、冤罪、不当な免責などが進みつつあるのは問題だ。そして、鑑定医を増やす努力がされているとのことだが、鑑定経験や人生経験の浅い精神科医が、このような犯罪を犯す場合の精神の正常と異常の堺の判定を正確にできるのかも疑問に思う。
(*ちなみに、私は1975年頃、東大医学部保健学科の学生だった時、精神衛生の実習で、東京都の女性センターで、何度も売春して捕まってくる女性の心理カウンセラーの実習をしたことがあり、相手から「あんたみたいにめぐまれた人に話しても理解できるわけないでしょ」と言われ、本当に理解できなかったので参ったことがある。その人は戦争中に子供時代を過ごして学校に行けず、計算をしたり、文字を書いたりすることができないため、他の仕事を見つけにくい人だった。その時、私は、心理カウンセラーが相談にきた相手の心理を分析しても問題は解決せず、そうなった背景を変えるべきだと心から思った)

*6:http://digital.asahi.com/articles/ASJ9Q4QJ1J9QUTIL00G.html
(朝日新聞 2016年9月23日) 「鑑定留置」裁判員導入後に急増 医師不足、育成が急務
 刑事責任能力を判断するため、精神障害などの疑いがある容疑者や被告を数カ月にわたって病院などで拘束する「鑑定留置」が急増している。市民が裁判員として加わるようになり、判断しやすくする狙いが検察側にある。ただ、鑑定に携わる医師は不足しており、学会などが人材育成を急いでいる。
■責任能力、判断しやすく
 「精神鑑定のおかげで、責任能力について迷わず判断できた」。今年3月に東京地裁であった裁判員裁判。自宅マンション13階から長男(当時5)を投げ落としたとして、女(36)が殺人などの罪に問われた。裁判員を務めた男性は、被告人席の女の身ぶりや表情を注意深く見守った。女は精神科への通院歴があったことなどから、起訴前と起訴後に計2度の鑑定を受けていた。鑑定結果は鑑定医が法廷で説明。その結果をふまえ、弁護側は「障害の影響があり責任の非難は軽減される」と訴えていたが、検察側は「(被告の)障害は、過度に有利にくむべき事情ではない」と主張した。裁判員裁判では、難しい専門用語をわかりやすく言い換える配慮もされている。裁判員の男性は「身近に同じような障害のある人がいないので、自分の感覚だけで判断するのは難しかった。鑑定書類を読み、鑑定医の証言を法廷で聞いて、総合的に考えた」。判決は懲役11年。「障害の程度は軽度で犯行に影響したとは認められず、責任を軽減する事情として重視できない」との判断だった。最高裁によると、鑑定留置が認められた件数は2009年に裁判員制度が始まる前は年間250件前後だったが、その後は急増。14年は564件だった。起訴前に検察側が請求する鑑定と、起訴後に裁判所が職権で行う鑑定があるが、特に増えているのは起訴前の件数だ。今年7月に相模原市の障害者施設で起きた殺傷事件でも、起訴前に容疑者が鑑定留置された。ある検察幹部は「法廷で被告の様子がおかしいと感じると、裁判員は責任能力を疑う。検察が鑑定した上で起訴すれば、犯行当時に責任能力があったとわかってもらえる」。別の検察幹部は「取り調べの録音・録画が進み、弁護人は自白が任意にされたものかを争点にしにくくなり、責任能力を争うようになった。検察として先手を打つ意味合いもある」と打ち明ける。こうした検察側の狙いを、弁護側も注視する。日本弁護士連合会で責任能力をめぐる対策チームの委員を務める田岡直博弁護士はこう分析する。「検察側は起訴するケースを絞り込み、裁判員裁判での立証の負担を減らしているのだろう。鑑定で有利な結果を得て確実に有罪に結びつける一方で、危ない橋は渡らない」。田岡弁護士は「責任能力を争うスキルで、弁護側は検察側に立ち遅れている」と認める。弁護側が独自に依頼する「私的鑑定」を増やす必要性もあるとしつつ、「どんな鑑定結果についても裁判員を説得できるよう、研修などを通して態勢を強化したい」と話す。
■医師育成追いつかず
 急増する鑑定に、医師の育成が追いついていない。日本司法精神医学会理事の五十嵐禎人(よしと)・千葉大教授は「経験の浅い医師にも依頼が増えた。質が落ちている可能性は否定できない」と語る。五十嵐教授によると、鑑定医には特別な資格は要らないが、精神障害を診断したり、犯行に与えた影響を分析したりするスキルが必要だ。学会では14年、鑑定医の認定制度を始め、これまでに約30人が認定された。過去に担当した鑑定書5件の提出を求めるなど経験を重視している。大学院で養成する動きもある。東京医科歯科大の大学院は昨秋、国内で初めてという「犯罪精神医学専門チーム」を設けた。今春から若手の精神科医2人が週1回、ベテラン鑑定医の岡田幸之(たかゆき)教授のもとで犯罪精神医学を研究したり、実例を分析したりしている。岡田教授は「犯罪を扱う精神医学者は非常にマイナーな存在。国内での教育の場はほとんどなかった」と話す。「1人の患者と長時間向き合って判断する仕事のやりがいを知ってもらい、ごく限られた医師に依頼が偏る現状を変えたい」
     ◇
〈鑑定留置〉 精神状態などを調べるため、逮捕後の容疑者や起訴後の被告の身柄を数カ月にわたって病院などで拘束すること。刑事訴訟法に基づく手続きで、検察官が請求して裁判所が認める場合と、裁判所の職権による場合がある。鑑定では、成育歴や生活状況のほか、犯行の動機が了解できるかや計画性、違法性の認識などについて調べられ、その結果は捜査や裁判で刑事責任能力を判断する材料となる。勾留期間中に半日から1日で行われる「簡易鑑定」とは区別される。


PS(2016年9月25日追加):*7のように、全て同じ4階のフロアでトラブルが発生していたとして、神奈川県警は「点滴への異物混入は殺人事件」と一本化して捜査を進めているが、点滴袋が無施錠の状態で保管され誰でも手に取れる状態であったことは病院内の管理に甘さがあるものの、点滴液の中に薬剤を混合する目的で界面活性剤が含まれている可能性も合わせて考えるべきだ。何故なら、この病院では4階に多かったようだが、高齢者や重症者などの弱っている人が、長期間その薬を使い続けると中毒死することがあるかも知れず、その方が影響が大きいからだ。警察が、メーカーの製造物責任を考えず(その結果メーカーを保護し)、被害者を犯人に仕立て上げ、自白により証拠を造って結論に合わない証拠を無視した事件に東住吉冤罪事件(http://www.jca.apc.org/~hs_enzai/jikentoha.html)があり、警察(→メディア)の古くてステレオタイプな筋書きには要注意なのである。

*7:http://www.sponichi.co.jp/society/news/2016/09/25/kiji/K20160925013418490.html (スポニチ 2016年9月25日) 点滴異物混入で患者死亡病院トラブルまみれ…全て同じ4階フロア
 横浜市神奈川区の大口病院で入院患者の点滴に異物が混入され殺害された事件で、同院の4階でトラブルが相次いでいたことが24日、分かった。飲料への異物混入などが春から続発し、事件と同時期に入院患者3人が亡くなっていた。この日会見した高橋洋一院長は、殺害事件の犯人について「院内の人物の可能性も否定できない」と話した。最初の異変は今年4月。看護師用のエプロンが切り裂かれているのが見つかった。さらに6月20日には、患者1人のカルテ数枚が抜き取られていたことが発覚した。病院はスタッフへの聞き取りを実施。横浜市は7月上旬に情報提供のメールから、エプロン切り裂きの事実を把握した。8月には、女性看護師がペットボトル飲料を飲もうとして違和感を訴えた。ボトル上部から、注射針ほどの穴が見つかっており、飲料は「漂白剤のような」味がしたという。病院側によると、これらのトラブルは全て4階で発生している。市医療安全課によると、エプロン切り裂きを市に情報提供した同じ差出人からメールがあり、「飲んでしまい、唇がただれた」と記されていた。その後、病院関係者から所轄の神奈川署にトラブルの相談があったという。同院では今月20日に殺害された横浜市港北区の無職八巻信雄さん(88)の他にも、点滴を受けていた別の80代の男性患者2人が18日に死亡。点滴は受けていなかったが、90代の女性患者も八巻さんと同じ20日に亡くなった。4人が入院していたのも4階で、院内のトラブルも合わせて全て同じ階で起きたことになる。八巻さんの遺体や点滴袋からは、ヘアリンスや殺菌剤などに使う界面活性剤の成分が検出されていたことも、捜査関係者への取材から分かった。一般に市販されているものの可能性がある。点滴袋の中に微量の気泡があるのを担当の女性看護師が見つけ、異変を察知した。袋に目立った穴や破れはなかったという。点滴袋は、4階フロアのナースステーションに無施錠の状態で保管。誰でも手に取ることが可能な時間帯もあり、近くに界面剤成分を含む製品があったことも判明。神奈川署特別捜査本部は、何者かが不特定に患者を狙って在庫の点滴袋に界面剤を混入させた疑いもあるとみて鑑定を急ぐ。高橋洋一院長によると、同院は「(病気が進行した)終末医療の患者が多い」という。犯人について「院内の人物の可能性も否定できない」と話した。川崎老人ホーム連続殺人事件など、高齢者施設での虐待事件などが相次いでいることにも触れ「我々の考えられないような感情を持つ若い方もいるのかもしれない。今回がその流れで起きているならば残念」と漏らした。
▽界面活性剤 1つの分子の中に、水になじみやすい「親水性」と、水になじみにくい「親油性」の2つの部分を持つ。性質の異なる2つの物質の境界面(界面)に働きかけ、水と油のように混じり合わないものを混ぜ合わせる働きをする。せっけんや洗剤の主成分。誤って飲んだ場合、嘔吐(おうと)や吐血などの症状が考えられ、肝機能障害や、肺水腫による呼吸困難から死亡するケースもある。
▽川崎老人ホーム連続殺人事件 川崎市幸区のホームで14年11~12月、入居者3人が転落死。初動捜査で変死と処理されたが、16年2月に元職員の男を逮捕。15年、ホームでの窃盗で逮捕されていた
▽大口病院のトラブル
 ▼4月 4階で看護師のエプロンが切り裂かれる
 ▼6月20日 患者1人のカルテ数枚が抜き取られていたことが発覚。後日一部が、院内で見つかる
 ▼7月 市にエプロン切り裂きについて情報提供のメール
 ▼8月 病院スタッフの飲み物に異物が混入。市にメール。病院が神奈川県警に相談
 ▼9月2日 市が定期立ち入り検査でトラブル再発防止を指示
 ▼14日 八巻さんが入院
 ▼18日 4階に入院し、点滴を受けていた80代の男性患者2人が死亡。病死と診断
 ▼19日午後10時ごろ 30代の女性看護師が4階の部屋にいた八巻さんの点滴を交換
 ▼20日午前4時ごろ 八巻さんの心拍が低下しアラームが作動
 ▼同4時55分ごろ 八巻さんが死亡
 ▼同10時45分ごろ 病院が神奈川県警に「点滴に異物が混入された可能性がある」と通報
 ▼同日 4階に入院し、点滴を受けていない90代の女性が死亡。病死と診断
 ▼23日 県警が八巻さんの死亡を殺人と断定し、特別捜査本部を設置


PS(2016年9月26日):確かに現在は、*8のように、高齢によるものも含む障害者の人権や社会の受入におけるバリアフリーを正面から要求すべき時だ。

*8:http://qbiz.jp/article/94657/1/ (西日本新聞 2016年9月26日) 「障害者の権利」をテーマに全国大会 水俣病、ハンセン病から学ぶ
 障害者の共同作業所などでつくる全国団体「きょうされん」の全国大会が10月22、23両日、熊本市の県立劇場などで開かれる。熊本地震のため見送りも検討されたが「災害時こそ障害者の権利を守らなければいけない」と、開催を決めた。水俣病公式確認60年、らい予防法廃止20年の節目も踏まえ、胎児性水俣病患者やハンセン病元患者も登壇。実行委員会は25日、熊本市に集まり、日程や運営面の最終確認をした。大会は全国40支部の持ち回りで開かれ、九州では2010年の福岡市以来3回目。「障害者権利条約をこの国の文化に」をテーマに、水俣病やハンセン病を巡り、命と人権を軽視された歴史を通して差別や障壁のない社会の実現を目指す。22日は午後1時から、第2次世界大戦中のドイツで障害者が虐殺されていた事実を掘り起こしたきょうされんの藤井克徳専務理事が「憲法公布70年の今年、わたしたちが進むべき道とは」と題し基調報告。「熊本から伝えるプログラム」として、胎児性水俣病患者の金子雄二さん(61)や菊池恵楓園入所者自治会の志村康会長(83)たちの半生から、国策によって踏みにじられた人権を考え、今後の展望について理解を深めるシンポジウムもある。午後4時からは、県立劇場と熊本学園大の計16会場で分科会を実施。各事業所が支援活動などの取り組みを紹介するほか、障害者との交流会、水俣病患者やハンセン病元患者との対話を通して「平和」を考える討論会もある。23日も午前9時から各分科会を開く。副実行委員長を務める山下順子きょうされん熊本支部長は「4月の地震では全国から多くの温かい支援をいただいた。感謝を伝える大会にもしたい」と話している。実行委事務局=096(342)4951。

| 年金・社会保障::2013.8~2019.6 | 08:58 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.3.3 高齢者への冷遇と社会保障
     
 *1-1より   介護負担増   介護費用負担割合      介護認定数、給付費、保険料

 書かなければならないテーマは沢山あるが、今日は、認知症高齢者の列車事故と公的介護制度について記載する。なお、(私の提案でできた)公的介護制度は、日本で2000年4月に始まり、40歳以上の国民全員が加入して介護サービスを受けることができるもの(https://www.fp-kazuna.com/insu/social/61.html 参照)であるため、2000年から介護給付費が右肩上がりに増えるのは当然であり、いまだ成熟した制度ではない。

 また、介護制度ができる前の介護は親族の負担で行われていたため、現在の高齢者に介護保険料を支払わせると現在の高齢者にとっては親族への直接介護との二重負担になるとともに、40歳未満の世代が介護制度への加入を免除されるのは、この世代への過度な優遇となる。そして、40歳以上の従業員のみを公的介護制度に加入させることにより、40歳以上の従業員に対する企業の負担が増えたため、40歳定年制を唱え始めた企業さえある。

(1)認知症高齢者の列車死亡事故 ← 見落とされた重要な論点
 認知症高齢者が列車にはねられて死亡した事故について、*1-1のように、一審、二審は家族に監督責任があるという理由で遺族に損害賠償責任を認めたが、最高裁は、家族のかかわり方や介護の状況を総合考慮して「遺族に責任はない」という結論にした。その結論はよいが、最高裁も①本人との関係②同居の有無や日常的な接触③財産管理への関わり方などを総合的に考慮し、責任を問うのが相当といえる客観的状況が認められるかを基準とすべきだとしており、損害賠償責任を負う場合もあるようだ。

 この論理の進め方で驚くのは、家庭で介護している親族が列車にはねられると、ただでさえ親族の他界で悲しんでいる遺族に、監督責任不履行として当然の如く損害賠償請求がなされることである。しかし、今の時代、そのように危険な踏切を放置しておいたことは、鉄道会社に責任があるのではないか?高齢者であっても、人間を閉じ込めたり繋いだりすれば人権侵害であるため、どの時点で何をすれば監督責任を履行したことになるかの判断は困難で、そもそも人は家の中に閉じ込めるべきものではない。

 さらに、高齢者や障害者が社会で暮らしやすくするため、バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO091.html 参照)が2006年に制定されている。この法律の趣旨は、高齢者や障害者を社会で受け入れ、その生活をやりやすくするため、公共交通機関の旅客施設や建築物の構造を改善することだが、今は、駅にエレベーターをつけたり、車椅子で交通機関を利用できるようにすることくらいしか実行されていない。しかし、高齢化社会・共働き社会に向けて鉄道構築物を安全なものにすることは、この制度に含めるべきである。

 そのため、*1-2に書かれているように、今後増える認知症高齢者のためには、「地域包括ケアシステム」で見守るのも大切だが、その前に鉄道や車の多い道路は高架にして事故や自殺を予防し、一階は自転車や歩行者が安心して通れる安全な街を作る必要があると考える。そうすれば、このような事故の予防になると同時に、踏切で長時間待たされたり道路が渋滞したりして生産性が低下することも防げるため、一石二鳥だ。

(2)公的介護制度について
 *2-1のように、2015年4月に事業者に支払われる介護報酬が全体で2.27%引き下げられたことが主な要因で、57.6%の事業所が改定後に報酬が減少し、訪問介護と通所介護(デイサービス)の事業者の40%以上が赤字となり、その中でも小規模事業所ほど苦境だそうだ。しかし、このように毎年切り下げられるようでは、安心して介護事業に参入したり、介護施設に投資したりすることができず、*2-2のように、「介護離職ゼロ」を実現することなど到底できない。

 なお、介護分野は労働集約型産業であるため雇用吸収力が大きいが、待遇の厳しさから人材不足が続いている。私は、チームで介護を行えば、全員が流暢な日本語を話せなくても介護サービスはできるため、*2-3のように、人手不足の介護などの分野でせっかく日本に来てくれた外国人は、技術に応じて公平・公正に処遇し、日本から追い返すようなことはしないのがよいと考える。

<認知症高齢者の死亡事故とバリアフリー>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160302&ng=DGKKASDG01HBF_R00C16A3EA2000 (日経新聞 2016.3.2) 家族の責任、総合判断 認知症事故で最高裁判決、介護の実情に配慮 線引き不明確、不安も残す
 認知症の人による損害の賠償責任を家族がどこまで負うかについて、最高裁が1日、初判断を示した。家族のかかわり方や介護の状況を「総合考慮する」という内容で、今回の事例では「家族に責任なし」と判断した。在宅介護の実情に配慮した形だが、状況によっては責任を負う可能性もある。「同居の配偶者や成年後見人というだけで自動的に監督義務者に当たるとはいえない」。民法は責任能力の無い人が第三者に損害を与えた場合、「監督義務者」が賠償責任を負うとしている。裁判では、認知症の人の家族がこの監督義務者にあたるかどうかが争点だった。同居している配偶者を監督義務者とした二審判決は「介護の担い手がいなくなる」と批判された。最高裁判決は介護の実情を踏まえ、二審判決を明確に否定した。では、どのような場合に義務を負うことになるのか。最高裁は(1)本人との関係(2)同居の有無や日常的な接触(3)財産管理へのかかわり方――などを総合考慮し、「責任を問うのが相当といえる客観的状況が認められるか」を基準とすべきだとした。最高裁がこうした判断を示したのは初めてだ。介護分野の専門家は「現場の実態を踏まえている」と評価。介護問題に詳しい弁護士は「個人が被害者となることもあり、事案によっては賠償責任を問えるとする判断は被害救済の道を残す」と肯定的だ。もっとも認知症の家族にとっては、不安が残る内容といえる。義務を負うかどうかの線引きについて、判断材料となる項目を示したにすぎないからだ。項目を見る限り、同居の家族が健康だったり、財産管理を含め日常的に深く関わったりしていた場合、監督責任を問われる可能性も出てくる。ただ「監督義務者がその義務を怠らなかったときは賠償責任を負わない」とする民法の規定があり、ただちに賠償責任を負わされるわけではない。判決でも裁判官5人のうち2人が、長男を「監督義務者として扱うべき」としたうえで、「十分な対策を取っていた」と賠償を認めない意見を付けた。一方、問題行動を放置していた時などは賠償責任が生じる可能性もある。国は認知症の人を医療機関でなく地域で見守る政策を進めており、在宅介護の比重は増している。「症状の軽重や介護する家族の年代にかかわらず、24時間目を離さずにいることは不可能」。「認知症の人と家族の会富山県支部」(富山市)の勝田登志子事務局長は、義理の両親と自分の母親を介護した経験を踏まえてこう訴える。あるベテラン裁判官は「今後、法律の分野では家族の監督責任は制限される方向に働くだろう」と予想しつつも、「どのような場合に家族の責任が認められるかは、判例の積み重ねを待つ必要がある」とみる。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160302&ng=DGKKZO97916920S6A300C1EA1000 (日経新聞 2016.3.2) 認知症介護の実態を重くみた最高裁判決
 認知症の高齢者が徘徊(はいかい)中に列車にはねられ死亡した事故で、遺族に賠償責任があるかが争われた訴訟の判決が、最高裁であった。判決は「家族が高齢者を監督することが可能な状況になかった」として、賠償を命じた二審判決を破棄した。高齢者を介護する多くの家族にとって、納得しやすい結論だろう。ただ、家族に責任はないとされても、亡くなった高齢者は戻ってこない。こうした事故を防ぐため、認知症の人を支える仕組みをつくる必要がある。民法は、責任能力のない人が第三者に損害を与えた場合に、監督する義務のある人が賠償責任を負うと定めている。裁判では、妻と長男に監督義務があるかが焦点となった。最高裁はまず、配偶者であることで直ちに監督義務を負うわけではないと指摘した。監督義務があるかどうかは、その人自身の生活や心身の状況、同居の有無、介護の実態などを「総合的に考慮し判断すべきだ」とした。妻は事故当時85歳で、要介護1の認定を受けていた。また長男の妻は近所に住んで介護にあたっていたが、長男自身は同居しておらず、月3回訪ねる程度だった。これらを踏まえ、判決は、妻も長男も監督が可能ではなかったと結論づけた。高齢化が進み、老々介護や遠距離介護のケースも増えている。一律に責任を負わせず、個々の事情を丁寧に見る判断といえるだろう。ただどのような場合に責任が問われ、どのような場合は問われないかは必ずしも明確ではない。何より大事なのは、こうした悲劇を繰り返さないことだ。政府は認知症になっても住み慣れた地域で暮らせる社会を目指すという。鍵となるのが医療や介護などを一体的に提供する「地域包括ケアシステム」だ。国や自治体は整備を急がなければならない。高齢者が徘徊した際に、市民にメールで連絡し、保護につなげる地域もある。住民の力も欠かせない。認知症の予防や治療のための研究の推進、見守りに役立つ機器の開発、損害を広く薄く負担し合う保険のような仕組みづくりが課題になるだろう。認知症の高齢者の数は2025年には約700万人に達するとの推計もある。誰もが当事者になる可能性がある。一つ一つ、地道に対策を積み上げていくしかない。

<介護>
*2-1:http://qbiz.jp/article/81909/1/
(西日本新聞 2016年3月3日) 訪問・通所介護、4割超が赤字経営 小規模事業所ほど苦境
 訪問介護と通所介護(デイサービス)の事業者の40%以上が赤字となっていることが2日、日本政策金融公庫総合研究所の調査で分かった。2015年4月に事業者に支払われる介護報酬が全体で2・27%引き下げられたことが主な要因で、57・6%の事業所が改定後に報酬が減少した。調査は昨年10月、訪問介護か通所介護のサービスを提供する企業や社会福祉法人などを対象に実施し、2886事業者から回答があった。サービスごとの事業者の赤字割合は訪問介護が47・6%、通所介護が42・7%。特に通所介護では、事業所の規模が小さいほど経営が苦しい傾向が鮮明で、従業者が「4人以下」の赤字の割合が52・8%だったのに対し、「50人以上」だと32・8%にとどまった。改定の前と後で、報酬が「増えた」と回答した事業者は全体の8・8%。「変わらない」は33・6%、「減った」は57・6%だった。減少した事業者のうち、16・7%が「15%以上減少した」と回答した。日本政策金融公庫総合研究所は「大規模な事業所では、介護報酬の高いサービスを始めることなどで報酬減の影響を少なくできたが、規模の小さい事業所では対応が難しかったと考えられる」としている。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/262734
(佐賀新聞 2015年12月24日) 1億総活躍社会、目立つ政策のちぐはぐさ
 「1億総活躍社会」のスローガンの下、政府はこの国をいったいどこへ導こうとしているのか。政府の補正予算や来年度予算の編成が進むとともに、おぼろげながら全体像が見えてきた。1億総活躍という、戦前・戦中の全体主義を連想させるネーミングはともかく、世界にも例がない超高齢化社会に突入したわが国にとって、新たな社会構造に応じた経済の活性化策が最重要課題なのは確かだ。その具体的な政策が、アベノミクスの第2ステージと位置づけられた「新3本の矢」というわけだ。従来の3本の矢を束ねて、GDP(国内総生産)を2020年ごろまでに600兆円に拡大させるというのが、新たな第1の矢。第2の矢は子育て支援で、出生率を現在の1・42から「希望出生率1・8」まで押し上げる。さらに、社会保障を充実させる第3の矢で、家族の介護や看護を理由に離職・転職する人が年間10万人以上も生じている状況を解消して「介護離職ゼロ」を実現させるという。いずれも、理想的な未来の姿なのかもしれない。だが、果たして実現できるのだろうか。これまで、安倍政権は規制緩和により、雇用の流動性を高める政策を進めてきた。その結果、賃金が低く押さえられ、企業側に有利な雇用環境が生まれ、働く人の4割が非正規雇用という状況になった。ところが、今回の政策では賃上げで消費を刺激するという。最低賃金を年率3%程度をめどに引き上げ、全国加重平均で千円を目指す。これでは、雇用改善の責任を中小企業に押しつけるだけではないか。非正規雇用の問題は、第2の矢の出生率の問題にもつながる。若い世代では、不安定な雇用と低い所得水準を背景に、結婚に踏み切れない、あるいは子どもを生み育てる自信がないという現実が生じている。これまでの大企業重視で雇用流動性を優先してきた政策そのものを転換しなくては、若い世代の生活の安定は望むべくもない。第3の矢の「介護離職ゼロ」にしてもピントがずれていないか。今回の政策では、介護施設の整備のために国有地を活用したり、賃貸物件での運営を認める規制緩和策を打ち出している。だが、本当に解決すべきはハード面の整備ではなく、介護現場で働く人材の確保ではないか。介護分野は典型的な労働集約的産業にもかかわらず、待遇の厳しさから人材不足が続いているからだ。最も気掛かりなのは、低年金受給者へ一律3万円を支給するという政策だ。1130万人、その額は3600億円を超える。「消費の下支え」を名目にしているが、来年夏の参院選をにらんだバラマキと批判されても仕方あるまい。総じて目立つのは政策のちぐはくさだ。目指す先には、経済や社会保障分野で好循環を生み出し、50年後に人口1億人を維持するという最終的な目標がある。そうであれば、ここに挙げられた政策は、どれも小手先に過ぎず、実効性も疑わしい。旧「3本の矢」のように、十分に成果を検証しないまま、選挙が終われば次の矢を持ち出すような、目くらましでは困る。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12131786.html
(朝日新聞 2015年12月24日) (人口減にっぽん)外国人79万人が働く国
 コンビニや居酒屋、そして除染も。日本で働く外国人が増えている。その数、79万人。6年間で30万人増え、過去最高だ。日本の労働人口が減る中、今や貴重な働き手になっている。ただ、職場は日本人が避けがちな仕事が多い。その働く現場を追った。
■除染の町「人が足りぬ」
 日系ボリビア人の男性(41)はこの夏、福島県飯舘村で除染作業員として働いた。幹線道路沿いの草刈りが主な仕事だ。1日8時間で、1万6千円。お金を稼ごうと23歳で来日して18年。これまでもらったことのない額だった。妻の反対を押し切って申し込んだ。作業グループは10人。そのうち、自分を含む4人が外国人だった。「人が足りないからだ」。除染作業員を募るある派遣会社の役員は、そう話す。この会社も今年初めて、外国人を6人送り込んだ。事故やトラブルを恐れる派遣先から「外国人はやめてくれ」と言われていたが、今年は「解禁」された。大手ゼネコンも「東京五輪で人手不足が進むので、除染する外国人は増えるだろう」。だが働く環境は、ボリビア人男性が感じたほど好待遇ではない。この工事で環境省が業者に示している除染の賃金目安は、実は2万5千円だ。給料がきちんと支払われる保証もない。この男性は、8~9月の1カ月間分の給料28万9千円が振り込まれなかった。雇用主の派遣会社に問い合わせたが、「別の建設業者が支払う」と言ったきり。一緒に作業した3人の外国人と連絡を取ると、みな未払いだった。労働組合に駆け込み、ようやく11月、建設業者から「未払い分は払う」と連絡がきた。それでも、男性はこう話す。「また除染で働きたい。これまで車部品工場で働いたけど、あまり人間的な扱いを受けなかった。除染現場はそうではなかった」
■労働人口、30年後は2000万人減
 厚生労働省の統計(2014年)では、働く外国人は79万人。国家公務員(64万人)をしのぐ数だ。雇用主が未報告のケースもあり、「法務省の統計データもあわせて推計すると、厚労省調査の捕捉率は7割程度。すでに100万人働いているのはほぼ確実だ」(自由人権協会の旗手明理事)という。一方、日本の推計労働人口は、今後30年間で2千万人以上減る。外国人へますます頼ることになりそうだ。政府は、どういう外国人を増やすのか。「1億総活躍」を掲げる政府は、「移民受け入れより前にやるべきことがある」(安倍晋三首相)という立場だ。日本人だけで人口1億人を維持し、経済発展に役立つ外国人を中心に歓迎する、というスタンスだ。具体的には、学歴や収入が高い「高度人材」が長く日本で暮らせるようにしているほか、人手不足の「介護」で、来年度にも受け入れを広げる。外国人が「家事代行」のために入国することを新たに認め、日本の女性が家の外で働きやすくして、労働力の落ち込みを防ぐ。安価な単純労働を担う実態がある「技能実習生」は、滞在期間を3年から5年に延ばす。こうした方針が、政府の成長戦略に盛り込まれている。
■家事「両親に頼むより楽」
 外国人の家事代行は今月、神奈川県の計画が国家戦略特区として認められた。同県では来年3月をメドに家事代行で働くことを目的に入国できるようになる。賃金は日本人以上とすることや、働けるのは3年未満と政府指針で決まっている。すでに需要はあり、現在は「日本人と結婚した外国人」など就労に制限のない人が働いている。12月中旬の平日、午後5時。東京都渋谷区の戸田万理さん(42)宅に、フィリピン人のヴィナさん(42)がやって来た。ヴィナさんは夫が日本人で、日常レベルの会話はだいたい理解できる。持ってきたエプロンを身につけると、戸田さんが「スープを作ってもらえるかな」と材料を渡す。1時間ほどでカボチャのスープを仕上げた。その間、戸田さんは長女の理花ちゃん(1)をあやす。フルタイムで働くコンサルタント。共働き家庭で、来年1月には長男を出産する予定だ。「仕事と家事、育児のすべてがのしかかり、イライラすることが増えていた」。11月、家事代行の「タスカジ」に申し込んだ。1回3時間、交通費を除いて4500円。週2回、平日に来てもらう。戸田さんに甘える理花ちゃんに「ちょっと待って」と言う回数が減った。「自分の両親に頼むより気楽。もう離せません」。タスカジの働き手は登録式だ。外国人に限っているわけではないが、多くがヴィナさんのように「配偶者ビザ」を持つフィリピン人女性だ。午前9時~午後10時に3時間区切りで頼め、1時間あたり1500円から。利用者は3千人近くいる。「国家戦略特区」での解禁を見据え、人材確保も始まっている。人材大手パソナは来年4月をメドに、フィリピン人約30人に日本に来てもらう予定だ。マニラの人材会社と提携し、「実務経験1年以上」などの日本政府の条件に合う人材の募集を始めた。選考に通れば、日本語や日本食などの研修を年明けから現地で始める。料金は、週1回の利用で1カ月1万円ほどを想定。企業に、「社員の福利厚生」としての利用を売り込む考えだ。92年に外国人の家事代行を解禁した台湾では、労働時間の管理が課題になっている。家庭に住み込む形式がほとんどのためだ。今年秋、台湾家庭に住み込むフィリピン人女性(32)は「雇用主が外に出してくれない」と目に涙をためて訴えた。働き始めて6カ月。ようやく初めての休日を1日もらえたのだ。外国人の就労を担当する労動部労動力発展署の蔡孟良副署長は「雇用主が週7日働かせても、ちゃんと残業代を払い、労働者が合意していれば政府は何もできない」という。日本の国家戦略特区では、住み込み形式は認めていない。ただ台湾では「外国語交じりで世話をされると、子どもの文化やアイデンティティーに影響が出る」(蔡副署長)とも指摘されていて、最近では受け入れの条件を厳しくしている。
■「まずは家事の分担を」
 外国人労働問題に詳しい指宿昭一弁護士の話 外国人に家事を頼る前に、まずは男性も平等に分担できるようにすべきではないか。長時間労働を見直して、不足している保育所を増やすことが先決だろう。本当に外国人が必要なのか、国民的な議論も不足している。外国人に家事をさせる理由は、低賃金でしてもらえるからだ。家事は範囲が広く、仕事は育児や介護に広がる可能性がある。そうすると、保育士や介護福祉士などの賃金がますます低く抑えられることになる。

| 年金・社会保障::2013.8~2019.6 | 04:23 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.2.24 介護保険制度の変更について (2015.2.26追加あり)
   
  人口ピラミッドの推移    高齢者人口の推移  介護費の推移  医療費の世界比較

(1)介護保険制度の不公正と不公平
 *1に書かれているとおり、現在、介護費用は、利用者の自己負担以外は、40歳以上の国民が支払う介護保険料と国と地方自治体の税金で賄っている。また、介護保険料は、65歳以上の高齢者が払う「第1号保険料」と、40~64歳の現役の会社員らが健康保険を通じて払う「第2号保険料」からなり、第2号保険料には企業負担もある。

 そして、高齢者の第1号保険料は各市町村が決め3年毎に見直すため引き上げ幅が大きくなり、現役世代の第2号保険料は、企業の健康保険や市町村の国民健康保険が毎年度決める仕組みで単年度の給付費の増加見込みを反映させるため、引き上げ幅が小さくなるそうだ。ここでおかしいのは、誰もが直接・間接にサービスを受けている介護負担において、年齢によって国民を不平等に扱い、徴収が不公正になっていることである。

 また、「第2号保険料」は40~64歳の現役会社員らが支払うことになっているため、企業の社会保険料負担を減らす目的で、*7-1、*7-2のように「40歳定年」というような驚くべき提案が出てくる。*7-1、*7-2では、「40歳定年は、労働者が知識やスキルを磨き直すため」と主張されているが、それなら40歳定年よりも会社内で研修、配置、出向を工夫したり、労働者がスキルアップするために休職や自発的転職をしやすくしたりするのがまっとうな方法だ。

 全体として、医療費は世界的に見て高い方ではなく、介護は始まったばかりであるのに、このように不公正かつ不平等な制度をいつまでも改正せず、さらに高齢者に負担増・給付減を強い、企業が社会保険料を支払わない方法を導入しようと言うのは、政策を語る資格のない人のすることである。

(2)介護保険制度の利用が増えるのは当然で、これは本物の需要だ
 *2には、「①介護費は発足時の3倍になり、団塊の世代が75歳以上になる2025年度には、現在の2倍の21兆円に膨らむ」「②介護職員が不足する」「③膨張が続けば税金の投入額も40歳以上の国民が負担する保険料も年々増える」「④国民負担の増加を和らげるため4月の介護報酬改定では平均単価を2.27%引き下げる」「⑤高齢者は今後も増え続ける見通しだ」と書かれている。

 しかし、①については、介護保険制度は2000年度から始まったのであり、最初は利用できるサービスが少なく、質も高いとは言えず、利用者も介護を他人に任せるのを敬遠していた時から、次第に介護サービスが充実してきたのであり、核家族化と高齢者人口の増加とともに介護サービスの利用が増えるのは当然であり、これは第三の矢にあたる本物の重要なのである。そして、上の2番目のグラフのように、中国はじめ他の新興国でも、少し遅れて同じになるものだ。

 そして、②も考慮すれば、*6のように外国人介護士を使い捨てにすることなく労働力として重視し、③④から国民負担の増加を和らげる必要はあるが、それはいらない人に車椅子を与えて歩けなくしたり、一律に平均単価を引き下げたりするのではなく、可能な人には自立を促しながら、必要十分なサービスを適時に行いつつ、解決すべきなのである。

 なお、③④⑤から、介護保険制度は、40歳以上の国民のみが負担し、65歳以上の引き上げ幅は大きいというような不公正・不平等な制度ではなく、所得のある人全員が負担する応能負担にすべきだ。

(3)介護保険制度の4月以降の負担増・給付減について
 *3に、「①高齢者ら利用者の自己負担は、リハビリ目的の老人保健施設など施設・居住系サービスでは安く、訪問介護など在宅・通いのサービスは高くなる」「②要介護度が重い人や認知症の人向けのサービスは手厚くなる」「③現役世代の介護保険料がわずかに安くなる」と書かれており、現役世代の介護保険料を安くするとともに、在宅介護への変換を促していることがわかる。

 しかし、①により、リハビリ目的の老人保健施設が減ると、本当に必要な高齢者も施設でリハビリをすることができなくなる。また、40歳未満の人を介護保険料免除にしたまま現役世代の介護保険料を安くするために所得の少ない高齢者の負担増・給付減を行うというのは、驚くほど不公正である。さらに、年中、介護保険報酬を変にいじくることで、*4のように、介護事業者の経営計画が立たず、質の維持もできず、投資して始められた事業が成長するどころか無駄になるのだ。

 その上、40歳未満の人を介護保険料免除にすることにより、*7-1、*7-2のように、企業は屁理屈をつけて、介護保険料の事業主負担分を節約するために、「40歳定年制」を導入したがっている。つまり、介護保険料の負担者を40歳以上としていることが、労働者が40歳で区分される理由にもなっているため、介護保険料の負担者を医療保険と同様、働く人全員とすべきなのである。

(4)外国人介護職を活かす方法について
 *6に、「①厚生労働省は、介護職に外国人技能実習生を活用する方針を固めた」「②国内の施設で働きながら介護福祉士の資格取得を目指すが、日本語の壁の高さなどで合格率は2割に満たない」と書かれているが、介護現場の労働力として外国人労働者を受け入れるのであれば、名目的な技能実習生ではなく、正式な労働者として受け入れるべきである(そもそも厚労省労働局が、このような労働基準法の脱法行為を認めているのが疑問)。

 何故なら、1)実習生は即戦力にはならず、3年や5年の実習期間では、介護事業者にとっては教えるばかりで役に立つ期間が短い 2)技能実習の現場では、低賃金や時間外労働の強制など違反行為が後を絶たない 3)日本国内の施設で働きながら介護福祉士の資格取得を目指す外国人は、日本語の壁で介護福祉士の資格合格率が2割にも満たない 4)介護福祉士のニーズは必ず増加する からだ。

 しかし、1)2)4)は、外国人介護士を技能実習生としてではなく、労働者として受け入れれば解決する。また、3)の原因となっている「介護には利用者や家族の声を聞き取る高い日本語能力と技能、経験が要求される」というのは、まず、介護は家族の“愛”や日本語能力だけでできるものではなく、プロの知識と経験が必要だというところから出発すべきだ。そうすると、母国で看護師などの資格をとってきている外国人介護士に不足するのは、日本語能力と日本における技能・経験だけであり、これは、知識のない日本人よりも改善しやすく、どちらも、チームで介護を行えば解決できるものなのである。

(5)それでは、介護に誰を予定しているのか
 *5は、佐賀労働局雇用均等室が、「①女性の能力発揮や仕事と育児・介護との両立支援に積極的に取り組む企業を表彰する」「②仕事と育児・介護との両立支援の取り組みを実施しているファミリー・フレンドリー企業を表彰する」としている。

 ここで、仕事と育児・介護を両立すべき人の前提が女性のみであれば、60年、遅れている。また、仕事と育児・介護との両立支援の取り組みを実施しているファミリー・フレンドリー企業というものが、女性にのみ短時間労働、非正規雇用、派遣労働を強いるものであれば、それは、30年、遅れている。

 しかし、率直に言って、全体として介護サービスをカットし、女性に負担を負わせようとしている厚労省を見れば、こんな逆噴射を予定しているのではないかと思わざるを得ない。

<介護制度の度重なる改変>
*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150130&ng=DGKKASFS29H3X_Z20C15A1EA2000 (日経新聞 2015.1.30) 介護保険料 高齢者・現役世代とも伸び傾向
▽…介護保険サービスにかかる費用は、利用者本人の自己負担分を除き、半分を40歳以上の国民が支払う介護保険料、残り半分を国と地方自治体の税金で賄っている。介護保険料は65歳以上の高齢者が市町村を通じて払う「第1号保険料」と、40~64歳の現役の会社員らが健康保険を通じて払う「第2号保険料」からなる。第2号保険料には企業負担分も含む。
▽…高齢者の第1号保険料は、各市町村が決め、原則3年ごとに見直すことになっている。3年間の介護給付費の増加見込みを反映して保険料を一度に見直すため、引き上げ幅は大きくなる。直近では給付費が全国平均で年5%伸びており、3年間で15%増になる。
▽…一方、現役世代の第2号保険料は、企業の健康保険や市町村の国民健康保険が毎年度決める仕組みだ。単年度の給付費の増加見込みを反映させるため、引き上げ幅は小さくなる。制度改正や介護報酬の引き下げで抑制が大きいと、単年度では下がるケースも出てくる。給付費は高齢化で伸び続けるため、保険料が中長期で上がる傾向は第1号・2号とも同じだ。

*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150216&ng=DGKKZO83209230V10C15A2M10600 (日経新聞 2015.2.16) 制度発足15年 高齢者急増、厳しい財政
 介護保険制度は想定を超えて増える高齢者を背景に、制度発足から15年で早くも変革を迫られている。介護費は発足時の3倍になり、「団塊の世代」が75歳以上になる2025年度には、今の2倍の21兆円に膨らむ見通しだ。介護職員の不足の解消も道半ばだ。介護保険の財源は税金と40歳以上が納める保険料、サービス利用者の自己負担でまかなっている。膨張が続けば税金の投入額も40歳以上の国民が負担する保険料も年々増える。国民負担の増加を和らげるため4月の介護報酬改定では平均単価を2.27%引き下げる。厚生労働省の試算では、40~64歳の現役世代が15年度に納める保険料は1人あたり平均で月額5177円となり、前年度に比べて96円減る。市町村ごとに決まる65歳以上の平均保険料は月額4972円から5550円に上がるが、減額改定をしなければ5800円に上がるはずだった。ただ高齢者は今後も増え続ける見通し。保険料負担を抑える効果は一時的でしかない。給付そのものを抑える工夫が避けられない。厚労省は4月からは特別養護老人ホームの新規入所を要介護度3以上の重度者に限定する方針。入居待ちは52万人に上るが、施設増ですべて対応するのではなく、介護の必要度が低い軽度者は在宅でケアを受ける方向にするためだ。今回の改定で特養ホームの基本料が軒並み減額になるのは利益率が高く、経営に余裕があるとの判断からだが、介護を巡る「施設から在宅へ」という政府方針とも無関係ではない。こうした流れを成功させるには、高齢者や家族が安心できる在宅介護の体制づくりが不可欠だ。厚労省は12年度の報酬改定で24時間対応で看護や介護を受けられる巡回サービスを導入したが、肝心の事業者の参入は限られ、訪問看護事業所がない自治体も多い。年々増える認知症患者をケアする体制もまだ不十分だ。

*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150216&ng=DGKKZO83209170V10C15A2M10600(日経新聞2015.2.16)介護保険、重度者・認知症のケア手厚く 4月からこう変わる
 介護保険の負担が4月から変わる。介護サービスの公定価格である介護報酬が改定されるためだ。高齢者ら利用者の自己負担は、リハビリ目的の老人保健施設など施設・居住系サービスでは安くなり、訪問介護など在宅・通いのサービスが高くなる。要介護度が重い人や認知症の人向けのサービスは手厚くなる。現役世代が納める介護保険料はわずかだが安くなる。影響を詳しくまとめた。
●特別養護老人ホームなどで重度者の受け入れに力を入れる
 介護保険のサービスは介護を受ける場所や内容に応じて20種類以上に分かれ、事業者に支払われる報酬も細かく定めている。サービスを受ける高齢者らは報酬の1割を毎月負担する。残りは保険料や税金から事業者に払う。報酬は大きく分けて、基本料金にあたる「基本サービス費」と、事業者の人員体制が要件を満たした場合や付加的なサービスを受けた場合などに上乗せする「加算部分」の2つからなる。
■職員賃上げの原資反映
 今回の改定では、基本サービス費は大半のサービスで引き下げる。一方、加算部分を見ると、介護職員の給料を引き上げる原資にする「介護職員処遇改善加算」が、多くのサービスで増額になった。介護は人材難が深刻化しており、一般産業界に比べて見劣りする給与水準を引き上げることで職員確保につなげる狙いだ。賃上げ計画を策定し、賃金体系や職場環境などを整えた事業者は、職員の月給を1人につき1万2千円アップできる原資を報酬に加算できる。多くの事業者が取り組むとみられ、この分は利用者の負担増につながる。加算部分にはこのほかにも新設されたり、増額されたりした項目もある。サービスの利用者負担がどう変わるかは、サービスごとに基本サービス費と加算部分を合算して考える必要がある。例えば特別養護老人ホームをみると、最も重度の「要介護5」の人が個室を利用する場合((1)参照)、1カ月あたりの負担合計は3万720円となり、今より810円安くなる。職員を賃上げするための加算などが増える一方、本人が負担する基本料は1日につき947円から894円に減るためだ。
■特養相部屋は2段階改定
 同じ特養ホームでも相部屋の負担は4月と8月の2段階で変わる。4月に月2万9670円と630円安くなる((2))。ただ光熱費が月1500円の値上げになる上、8月からは低所得者を除く約6万人は室料が保険対象外になる。該当する人の8月以降の負担は今より1万2000円以上増える見込みだ。老人保健施設((5))や、医療が必要な人が入る介護療養病床を含め、施設・居住系サービスは利用料がおおむね安くなる。認知症の高齢者がケアを受けながら共同生活する認知症グループホーム((3))の1日あたりの負担額は要介護度3の人で1001円へと5円安くなる。民間の有料老人ホームなどに住む人が介護を受ける特定施設入居者生活介護((4))も、要介護度5の1日あたり負担額は6円安く863円。いずれも基本料が大きく下がる。一方、自宅で訪問介護を受けたり、施設に通ったりする在宅サービスは高くなるものが多い。デイサービス(通所介護)は要介護3の人が1日8時間のサービスを利用すると、1日あたりの負担は1001円。今より16円安くなる。ただ重度の人や認知症の人を受け入れた場合の加算を設けたので、該当する人の負担は1日に1110円と93円増える((7))。通いや泊まりを組み合わせて利用できる小規模多機能型居宅介護((8))は訪問サービスを拡充した事業者への報酬が加算される。こうした利用者の負担は月に559円増え、2万5503円になる。

*4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11610837.html
(朝日新聞 2015年2月20日) 介護報酬、減額っていいこと? 事業者・利用者への影響は
 介護保険サービスを提供した事業者に支払われる「介護報酬」が、4月から引き下げられる。収入が減る事業者には「介護崩壊」への強い不安が広がる一方、介護保険料やサービスの利用料が安くなるのも事実だ。介護の現場にどんな影響があるのか。
■事業者 経営に打撃、サービス休止も
 介護報酬引き下げは事業者には打撃で、サービス休止を決めたところもでてきた。富山県内でショートステイ(短期入所生活介護)を運営する事業者は、3月末で事業所を休止する予定だ。ここ数年、競合する事業者が増えて赤字が続き、減額改定が決め手になったという。ショートステイの基本報酬は約5~6%下がる。この事業所は職員10人弱の人件費を支払うめどもたたなくなった。利用者は1日7~8人。食道や肺の機能が落ちて食事介助に2時間近くかかるなど介護度が重い人も多く、休止後の受け入れ先を探し始めた。「消費税を8%に上げたのは社会保障の充実が目的だったはずなのに」。運営法人の幹部は声を落とす。認知症グループホームも基本報酬が約6%下がった。仙台市などで複数のグループホームを運営する「リブレ」は、職員の処遇改善のための加算をのぞくと、一つのホームで年間約300万円の減収を見込む。夜勤体制の加算は新設されたが、人手不足のなか、宿直できる人を確保する見込みはたたず、加算を取るのは簡単ではないという。介護度が重い人への対応に手厚くする方針にも懸念の声がある。訪問介護事業などを手がけるNPO法人「ACT昭島たすけあいワーカーズ大きなかぶ」(東京都)の事務局長・牧野奈緒美さんは「事業者が介護度の重い人ばかりを優先し、軽い人が見捨てられるのでは」と危惧する。訪問介護につく新たな特定事業所加算は、利用者のうち要介護3以上や認知症の症状が進んでいる人が6割以上いれば、報酬が上乗せされる。ただ、大きなかぶの場合、利用者の7割は要介護2以下の人だ。「軽度の人の介護度が重くならないように支える、という視点が欠けている」。改定の目玉の一つが、介護職員の給料アップのための処遇改善加算の拡充だ。1人月額1万2千円相当を上乗せできるようにすると国は説明する。認知症デイサービスやグループホームなど7事業を運営するNPO法人「暮らしネット・えん」(埼玉県)でも、4月からこの加算で職員の賃上げをはかる計画だ。ただ代表理事の小島美里さんは「加算はいわば『おまけ』。3年後の報酬改定で維持されるかもわからない。処遇改善のためのお金は基本報酬に入れるべきだ」と言う。
■利用者 負担は減少、質の維持に懸念
 利用者目線で考えると、また違う見方もでてくる。介護報酬が下がれば、65歳以上の高齢者や、40~64歳の人が負担している介護保険料は、いずれも抑制されるからだ。税や保険料から介護事業者に支払われる費用は、制度が始まった2000年度の3・6兆円から10兆円(14年度)に増加。65歳以上が払う保険料(全国平均の月額)でみると、2911円(00~02年度)から4972円(12~14年度)にまで上昇。10年後には、8200円程度まで上がると厚労省は予想する。65歳以上が支払う介護保険料は15年度から全国平均で5800円程度になると見込まれていた。それが介護報酬引き下げで230円程度値上げが抑えられ、5千円台半ばにとどまる見通しだ。また介護サービスの値段である介護報酬が下がれば、その原則1割を負担する利用料も連動して減る。ただし負担が減ればいいということでもない。介護をしてくれている事業者が経営に行き詰まったり、サービスが悪くなったりすれば、利用者やその家族にしわ寄せは向かう。いま介護が必要ない人でも、将来必要になったときに、利用できるサービスが減ってしまうかもしれない。結果として、家族の介護の負担が重くなり、高齢者の世話のために仕事を辞める「介護離職」などが増える恐れもある。
■国の狙いは? 介護度重い人の在宅支援強化
 厚生労働省は6日に2015年度~17年度の介護報酬の額を公表した。全体では2.27%の引き下げで、個別のサービスの値段も決まった。企業のもうけにあたる「収支差率」が高い特別養護老人ホームなどの施設に限らず、在宅サービスも含めて基本報酬は軒並み減額となった。一方、介護職員の給料増額にあてる加算は拡充。さらに認知症や介護度の重い人を支える「24時間定期巡回・随時対応型サービス」などの在宅サービスでは、様々な「加算」を手厚くし、加算を含めれば増収になるようにした。安倍晋三首相は18日の参院本会議で「質の高いサービスを提供する事業者には手厚い報酬が支払われることとしている」と述べた。

<介護は誰が?>
*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10103/159784
(佐賀新聞 2015年2月24日) 「均等・両立推進」の企業募集 2部門、佐賀労働局
 佐賀労働局(田窪丈明局長)は、女性の能力発揮や仕事と育児・介護との両立支援に積極的に取り組む企業を表彰する「均等・両立推進企業表彰」の対象企業を募集している。女性の能力発揮の促進へ積極的な取り組みを進める「均等推進企業」部門と、仕事と育児・介護との両立支援の取り組みを実施している「ファミリー・フレンドリー企業」部門の2部門。部門ごとに厚労大臣優良賞、佐賀労働局長優良賞、佐賀労働局長奨励賞を選び、両部門ともに優れた企業には厚労大臣最優良賞を贈る。応募書類審査の後、各都道府県労働局の雇用均等室がヒアリングを実施。表彰基準を満たす企業の中から候補企業を選び、厚労大臣に推薦。厚労大臣が推薦企業の中から、受賞企業を決定する。過去10年の県内の受賞企業は、均等推進企業部門が4社、ファミリー・フレンドリー企業部門が2社。佐賀労働局は「人材確保の面などで良いPR材料になる。積極的に応募して」と呼び掛ける。3月31日締め切り。問い合わせは同局雇用均等室、電話0952(32)7218。

<外国人介護職の処遇>
*6:http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201502/0007762437.shtml
(神戸新聞 2015/2/23) 外国人と介護職/実習生の活用は筋違いだ
 介護の現場では、慢性的に労働力が不足している。他業種に比べて給与が低く、仕事がきついなどの理由で人材確保が困難なためだ。そうした問題を解消するため、厚生労働省は外国人の技能実習生を活用する方針を固めた。日本の介護技能を学ぶという名目で、2016年度にも受け入れを始める。高齢化が進む中、人材確保が課題であることは間違いない。しかし、このやり方は大いに問題がある。技能実習制度は本来、新興国への技術移転や人材育成の支援が目的だ。日本国内の労働力の穴埋めに使うのは筋が違う。しかも、実習期間は最長で3年。政府は延長を検討しているが、それでも5年で日本を去る。現場を支える力を海外に求めるなら、労働者としてきちんと受け入れるべきだ。日本は経済連携協定(EPA)に基づき、介護分野の労働者をインドネシア、フィリピン、ベトナムから受け入れている。国内の施設で働きながら介護福祉士の資格取得を目指す。これまで約240人が合格した。だが、日本語の壁の高さなどで合格率は2割に満たない。一方、国内の介護労働力は約177万人で、離職率が高く、毎年17%が職場を去る。厚労省は、団塊の世代が75歳以上になる25年度に約250万人を確保する目標を掲げる。だが、全産業の平均給与より月額で10万円ほど低い待遇もあって計画通りに増えないのが実情だ。特別な対策を取らなければ将来約30万人が不足するという推計もある。実習生はこれから技能を身に付ける人たちで、即戦力と期待するのには無理がある。それでなくても、技能実習の現場では、低賃金労働や時間外労働の強制などの違反行為が相次いで発覚している。介護現場でも同じような問題が繰り返されないという保証はない。支援の対象者には、寝たきりの高齢者や認知症の人もいる。必要なのは個々のニーズに応えるプロの介護力だ。実習生頼みでは、混乱やサービスの低下を招く恐れがある。介護には、利用者や家族の声を聞き取る高い日本語能力と技能、経験が要求される。実習生を活用するというのであれば、言語と専門技能を習得した段階で正規の戦力として迎える道を考えた方がよい。

<40歳定年制 !?>
*7-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150129&ng=DGKKASDZ21HOQ_S5A120C1TJ2000 (日経新聞 2015.1.29) 「40歳定年」で次の挑戦 スキル・知識を磨き直し
 年金の支給開始年齢引き上げや医療の発達などで、60歳を超えて働く人が増えている。就職から40~50年働く時代。働き手は会社とどう向き合い、どうスキルを高めるべきか。「40歳定年制」を唱える東大大学院の柳川範之教授に聞いた。
―40歳定年制を唱える理由は何でしょうか。
 「75歳まで長く働けるようにするためだ。20歳すぎから同じ会社で75歳までバリバリ働くのは厳しい。時代の変化に応じ、知識やスキルを磨き直す機会が必要だ。いわば燃料補給だ」。「勉強したいという30~40代の働き手は多い。制度上、この年代で休むのが当たり前の社会にすればいい。自分を磨いたうえで同じ会社で働き続けてもいいし、転職してもいい。働き盛りの社員を休ませるのは難しいという会社は多いが、最初からその前提で人事を回せば不可能ではない」。
●企業の研修限界
―企業内でもスキルの向上はできるのでは。
 「企業内の人事・研修制度は限界にきている。まず産業の浮き沈みが激しくなっており、余剰人員の『適所』が社内にあるとは限らない。企業がM&A(合併・買収)で成長事業を手に入れても、衰退事業から全員をシフトできない限り、『社内失業』が発生する」。「社内教育も難しい。知見のない異分野のことを社内で教えるのは無理だ。外部講師を雇おうにも企業の研修予算はバブル期に比べ減っている」
―40歳での解雇の合法化と受け止め、不安視する働き手もいます。
 「知識やスキルが陳腐化した働き手を待つのは社内失業だ。企業が彼らを65歳とか70歳まで抱えられるならいいが、実際には経営が傾くと真っ先にリストラ対象になる。スキルアップの機会がないまま、55歳、60歳で職を失うほうがはるかにリスクは大きい。企業に余裕がなくなり、200万~300万人ともされる社内失業者が本当の失業者になると大変だ。再就職できるスキルを早めに身につけてもらう必要がある」。
●実践的な教育を
―参考になる海外の事例はありますか。
 「北欧諸国は解雇規制を緩くする一方で、失業者の再教育に資金を投じている。ただ金銭を与えるだけの『セーフティーネット(安全網)』ではなく、再就職のための反転力を身に付けてもらう『トランポリン型セーフティーネット』だ」。
―社会人への再教育を担える教育機関はあるのでしょうか。
 「大学を想定しているが、もっと実践的なカリキュラムが必要だ。企業の人にも参画してもらい、スキルアップのための教育プログラムを作らないといけない。専門学校や高等専門学校を拡充するアイデアもある」。
―副業を持つことも勧めています。
 「スキルアップの機会がないなら、副業を持つことで働き手のリスクを軽減できる。情報漏洩などの恐れがあるものは禁じるべきだが『ウチの仕事に全力を傾けろ』というだけの副業禁止規定はやめるべきだ。企業は働き手のキャリア選択をもっと応援してほしい」。
*やながわ・のりゆき 慶大経済学部の通信教育課程から東大大学院に進み博士号取得。2011年から現職。専門は経済学。長い海外生活が常識にとらわれない発想の原点だ。51歳。

*7-2:http://www.buaiso.net/business/economy/19313/ (BUAISO.net 2013年3月21日) 「40歳定年制」の真意~東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授 柳川範之氏~
●終身雇用という幻想
 「終身雇用についてまず総括しておきましょう。ひとつの企業の中でみんなが長く働き続けることには大きなメリットを感じますし、それが日本企業の特徴でもあると思います。しかし、残念ながら現在、ひとつの企業が50年、100年単位で成長を続けることはかなり難しい。経済環境の変化は昔に比べて格段に早くなっており、個人が20代のころに学校や企業で身につけた能力が40~50年間通用することも難しくなって、多くの場合、厳しい現実が待ち受けています。
この現状を踏まえると、皆でずっと同じ企業で働こうと思っても、外部環境の変化によって職種自体が消滅することが起き得るわけです。現在の仕事を遂行するための高度なスキルを身につけていても、技術革新や海外へのアウトソーシングなどで仕事自体が失われた場合、自身に代替するスキルがなければ、ただ企業に在籍して社会保障的に給与を受け取るだけの存在になるかもしれません。日本経済が全般的に好調で、かつ財務状況に恵まれた企業に所属していれば『優雅なリタイア』も可能かもしれませんが、実際は企業も国際競争にさらされていて、すべての人を雇い続けていく余裕はないでしょう。終身雇用制と呼ばれるような長期雇用と年功賃金の組み合わせを実現できた企業は、ごく一時期のごく一部の企業に過ぎません。実際には多くの人々が正規・非正規ともに解雇や転職を経験しています。こうした現状を踏まえると、解雇されないことに神経を集中させるよりも、産業構造や外部環境の変化に適応してどのような能力を身につけるのか、一定のサイクルで自身をプラニングすることが大切かと思います」。柳川氏は、仕事全体をクリエイティブ職、事務処理職、単純労働職という3つに分類し、自動化やアウトソーシングの進展で事務処理職の仕事が減り、成熟国ではクリエイティブ職と単純労働職の二つに集約されていくだろうと予測する。既に事務処理職全体の仕事のパイが小さくなっているように、職そのものがなくなるというのは静かに進行している。
●人生の長期化、変化の高速化、能力の陳腐化
 産業革命により分業システムが確立した結果、ある程度の専門性を持っていれば職業人として長く活躍できるという前提があった。しかし今、大きな転換期が次々に訪れ、人生の長さと産業構造の移り変わりの尺度が合わない気がするというのが社会に生きる人の実感だろう。長い人生をお金を稼いで生きながらえるためには、何か根本的なところで人間が変化しなければならないのかもしれない。
「それがまさに40歳定年制を提言したひとつの大きなポイントなのです。幸せなことに人間の寿命は延びています。iPS細胞の開発などでさらに延びるかもしれません。しかし一方では、産業構造の変化が急速なため、技術や能力が10年から20年で陳腐化することも多々あります。昔なら若い時に身につけた能力や知識が死ぬまではある程度役に立ちました。環境が変わっても次の世代の若者に新しい技術を身につけてもらえば十分、という時代がずっと続いていました。だから企業は『終身的』雇用ができるし、個人は一度身につけた能力を磨き上げることで働き続けることができていたわけです。
 ところが、寿命が延びる、スキルは陳腐化する、となるとどうでしょう。一回の充電(学び)で終着駅に向かうというのは無理で、2回か3回か、どこかの停留所で環境の変化に合わせた能力開発か何かの学び直しの充電をしないと長く働くことができないですよね。実はこれは世界的に起きている問題です。多くの国で若年失業とある程度年をとった人の働く場所の確保が同時に問題になっているのです。環境変化に合わせた能力開発を提供できないために若年者の雇用にしわ寄せがいくという構造のため、変化に合わせた新しい能力をどのように各世代に身につけさせるかということが課題になっています。そこでどの国も『教育、教育』と言い出しているんですね。世界のあらゆる場所に共通する構造的な潮流があるのだと思います」そして、急速に少子高齢化が進む日本では、この流れがより顕著な形で現れてきているのです。
*柳川範之(やながわのりゆき)
 1963年生まれ。小学校をシンガポールで卒業、高校時代をブラジルで過ごした後、大学入学資格検定試験合格。慶応義塾大学経済学部通信課程卒業。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。東京大学大学院経済学研究科 経済学部 教授。著書に『法と企業行動の経済分析』(日本経済新聞出版社)、『独学という道もある』(ちくまプリマー新書)、投資家水野弘道氏、プロ陸上選手為末大氏との共著『決断という技術』(日本経済新聞出版社)などがある終身雇用という幻想


PS(2015.2.26追加):*8は、文脈から見ると、韓国にはまだ女性にのみ姦通罪があったようで、日本より男女不平等である。 ぎょ

*8:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/160710
(佐賀新聞 2015年2月26日) 韓国が姦通罪廃止、憲法裁が違憲判決
 韓国の憲法裁判所は26日、同国の刑法にある姦通罪は憲法違反だとする判決を出し、同罪は即時廃止された。憲法裁は過去4回同罪を合憲と判断していたが、異性との性的関係の自己決定権を重視すべきだとの社会の風潮が反映された。2008年の最後の合憲判決後に同罪で起訴された約5400人が再審を申請すれば全員無罪になる。憲法裁が違憲判断を出すには9人の裁判官のうち6人が同意する必要があるが、今回7人が違憲だと判断した。

| 年金・社会保障::2013.8~2019.6 | 12:02 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.7.13 社会保障積立金の運用利回り低迷と日本企業の利益率・配当率低迷の理由など (2014.7.14、16に追加あり)
    
2014.4.2佐賀新聞  2014.6.3佐賀新聞         *6より 

(1)給付削減しか思いつかない政府の“改革”方針はおかしい
 *1-1に書かれているように、厚労省は年金給付水準を物価に関わらず毎年抑制する方針で、その理由は少子高齢化だそうだ。しかし、年金資金が不足した理由は①保険料の集金が杜撰だった ②運用や管理が杜撰だった ③サラリーマンの専業主婦のみ優遇するなど仕組みも悪かった など、厚労省の責任であることは、誰もが覚えている。また、少子化も、働く女性のインフラとなる保育所や学童保育を整備せず、未だに待ち行列が存在する貧弱な状況であり、これもまさに厚労省の責任なのである。

 この厚労省の体質は、社会保険庁が看板を掛け替えて日本年金機構になったからといって変わったわけではなく、誰も責任を取らずに(膨大な年金資産喪失の責任などとれるわけがない)、保険料を支払ってきた年金受給者に責任を押し付けているものであり、このような変更を“改革”とは呼ばない。それにもかかわらず、*1-2のように、「改革先送りこそリスク」として、非科学的な人口推計に基づき、退職給付会計も導入せずに、厚労省に協調する意見を開陳する人が多いのが、我が国の現状なのである。なお、「年金は現役所得の50%を確保すればよい」というのが定説になっているが、ここで想定している現役所得の金額と現役所得の50%でよいという合理的根拠も、私は見たことがない。

 しかし、*1-3のように、高齢者に入る年齢を70歳(もしくは75歳)と変更し、雇用と年金の両方を同時に変えるのなら、平均寿命が伸び、体力ある高齢者も多いので、筋が通る。消費者に高齢者が増えれば、車や家電の設計・説明書の記載にも高齢者の視点が必要なので、単なる労働力不足の緩和を超えた効果があると私は思う。また、働いている方が体力が衰えないため、医療・介護制度にもプラスだ。

(2)政府の医療・介護保険制度“改革”もおかしい
 *2-1では、保険料収入が伸び悩んでいるとして、財源確保の必要性が述べられている。しかし、保険料率引き上げ以前に、①集金もれの回収 ②元手を失わない運用・管理 ③不公正な給付制度の改正 などの改革を行うべきだ。そういう見直しもなく安定財源を確保しても、規模を大きくした無駄遣いが増えるだけである。

 *2-2には、負担増・給付減という介護保険利用者に厳しい医療・介護改革法が成立したと書かれており、患者や要介護者の急増で制度がもたなくなる恐れがあるためだそうだ。しかし、介護保険制度は、1995年頃の私の提案で始まり、1997年に介護保険法が成立して、2000年から施行されたため、まだサービスを充実させるべき時期であり、サービス減や保険料支払者の負担増を議論するような時期ではない。そして、その財源は、現在の「40歳以上の医療保険制度に加入している人」を「医療保険制度に加入している人全員」に広げるべきなのである。

 また、「少子高齢化で需要が減る」という論調もよく見かけるが、人口構成が変われば必要なものが変わるのであり、需要が減るわけではない。そのうちの介護サービスは増える需要であるため、これに対応すべきで、それは今後、世界で増える需要なのだ。にもかかわらず、削減ばかりの政策になるのは、政策を作っている人が介護制度の必要性を感じない人だからだろう。

(3)政府による株価操作
 *3-1のように、約130兆円の国民の年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人が“改革”して、日本株への運用比率を引き上げるそうだ。年金の運用は元手の喪失をなくすため、90%以上は国債などの安全資産で行うのが世界の常識であるにもかかわらず、*3-2のような官製相場のにおいがする日本株への運用割合の増加を提示するのは呆れるほかない。日本の病根はここまで進んでいるわけだ。

 ただ、JRやゆうちょ銀行など、これまでの国有企業が上場するにあたり、年金基金が市場価格で株式を購入するのは、それほどリスクが高くはないかもしれない。

(4)日本企業の実質利益率や株式配当率が低い理由
 *4-1に書かれているとおり、STAP細胞を発見した小保方氏の論文へは、いちゃもんが多く、ついに理研のiPS細胞研究者が、「小保方氏が検証実験に参加するなら、まだ始まっていない患者さんの治療の中止も含めて検討する」とツイッターに投稿し、(長くは書かないが)やはりiPS細胞を伸ばすためのSTAP細胞の否定だということがわかった。何故なら、STAP細胞で再生医療ができるようになれば、こちらの方が副作用がなく優れているため選択され、iPS細胞の研究は不要になるからである。しかし、iPS細胞研究グループの都合でSTAP細胞の発見や開発を妨害する行為は、結局は日本企業の競争力を奪うものであり、このようなことがあってはならない。

 また、*4-2のユーグレナは、家畜や養殖魚の餌として画期的なコスト低減をもたらすと思うが、「次世代航空機燃料」は空に公害をまき散らさない水素にすべきであり、石油類似の液体燃料に固執すべきではない。しかし、燃料は石油に近い液体でなければならないと考える人も多く、これが技術革新をやりにくくしている。

 さらに、事故時に大きな公害をもたらす原発に代替する発電方法は、このブログで何度も提示したが、それにはいちゃもんをつけ、*4-3のように、原発再稼働に固執する論調も多い。このように、過去の固定観念で古い技術にしがみつき、新しい技術の導入を阻むのも、結局は、日本や日本企業の競争力を奪っているのである。

 以上は、本来、技術革新やイノベーションは積極的に行わなければならないのに、それを阻んだり邪魔したりして大切にしない体質が、日本企業の本当の利益率や株価を低迷させている原因であることを示したものである。

<政府の改革方針>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140617&ng=DGKDASFS13054_W4A610C1MM8000 (日経新聞 2014.6.17) 年金、来年度から給付抑制、厚労省、物価下落でも減額 制度持続へ法改正検討
 厚生労働省は公的年金の給付水準を物価動向にかかわらず毎年度抑制する仕組みを2015年度に導入する方針だ。いまの制度では物価の上昇率が低い場合は給付を十分抑制できないが、少子高齢化の進展に合わせて必ず給付を抑える。すでに年金を受給している高齢者にも負担を分かち合ってもらい、年金制度の持続性を高める。少子高齢化にあわせて毎年の年金給付額を抑えるマクロ経済スライド(総合2面きょうのことば)と呼ぶ制度を見直す。15年の通常国会への関連法案提出を目指す。現在のルールではデフレ下では年金を削減できず、物価の伸びが低い場合も、前年度の支給水準を割り込む水準まで減らすことはできない。年金は物価水準に連動して毎年度の給付水準が調整されるが、物価下落以外の理由で名目ベースの年金額が前年度より目減りすることを避けているためだ。今後は物価や賃金の動向に関係なく、名目で減額になる場合でも毎年度0.9%分を削減する方針だ。この削減率は平均余命の伸びや現役世代の加入者の減少率からはじくので、将来さらに拡大する可能性もある。改革後は、例えば物価の伸びが0.5%にとどまった場合、翌年度の年金は物価上昇率から削減率0.9%を差し引き、前年度より0.4%少ない額を支給する。物価がマイナス0.2%のデフレ状況なら、翌年度の年金は1.1%減る。マクロ経済スライドは04年の年金制度改革で導入した。15年度は消費増税の影響で物価が大幅に上昇しているので、現行制度のままでも年金は抑制される。ただ、将来デフレや物価上昇率が低くなった局面では給付を抑えられないので、今のうちに改革を急ぐ方針だ。厚労省が3日に公表した公的年金の財政検証では、年金制度の危うい現状が明らかになった。女性の就労が進まないケースでは、約30年後の会社員世帯の年金水準は現役世代の手取り収入の50%を割り込み、現行制度が「100年安心」としていた前提が崩れる。これから年金を毎年度削減するようになれば、現役世代が老後にもらう年金の水準は改革をしない場合よりは改善される。厚労省の試算では経済が低迷した場合でも、現役収入と比べた給付水準を最大5ポイント引き上げる効果があるという。現役世代は04年の改革に沿って保険料率を毎年着実に引き上げられている。会社員が加入する厚生年金は17年に保険料率が18.3%(これを労使折半で負担)になるまで0.354%ずつ引き上げが続く。改革は現役世代だけでなく、年金の受給者にも着実に負担を求めるのが狙いだが、高齢者の反発で法改正に向けた調整は難航する可能性もある。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140617&ng=DGKDZO72807670W4A610C1KE8000 (日経新聞 2014.6.17)
改革先送りこそリスク  駒村康平 慶応義塾大学教授
 今月3日、社会保障審議会年金部会から公的年金の財政検証が公表された。5年に1度の財政検証では100年後の経済や人口に一定の想定を置きながら、保険料を2017年度に固定しつつ年金財政の将来見通しを示す。年金財政の持続可能性の要件を満たさない場合、年金制度改革を実行することになっている。その要件とは、モデル世帯の厚生年金(基礎と報酬比例の合計)の所得代替率(現役世代の平均的な手取り額に対する年金の割合)が65歳の受給開始時点で50%を確保できること、おおよそ100年後に1年分の給付に相当する積立金を保持すること、という2点である。
 14年は共済年金と厚生年金の被用者年金一元化のもとでの最初の検証であるほか、13年8月の社会保障制度改革国民会議の報告による指摘に応えるという特徴がある。国民会議は所得に応じた保険料負担が望ましいことや、少子化と長寿化に連動して年金給付水準を引き下げるマクロ経済スライドがもたらす基礎年金の過度の給付水準の低下という課題を挙げた。
 今回の財政検証では、足元の経済成長、将来の経済成長、特に全要素生産性(TFP)の伸びや既婚女性や高齢者の労働力率の上昇などの仮定を組み合わせて8通りの見通しが示された。TFPの伸び率が1983~93年の状態まで経済が回復し、同時に高い労働力率を確保できると想定した5つのケースは50%の代替率を確保したが、そうした想定をしない3つのケースは50%を下回り、改革の必要があるという結果になった。全8ケースの単純平均は47%となった。
 50%を確保したうち最低のケースEと50%を下回るなかでは最高のケースFを比較してみよう。Eでは報酬比例年金の低下幅は5%だが、基礎年金の水準は29%低下する。Fではそれぞれ11%の低下、39%の低下となる。基礎と報酬比例の合計で50%の代替率を維持できるA~Eでさえ、基礎年金の給付水準が30%程度低下する。09年推計と違って基本ケースがないなかで、8つのケースをどう評価するかは論者によって異なるだろう。経済さえ回復できれば年金制度の維持は可能であり、当面改革は必要ないという評価もある。しかし財政検証は、高いTFPの伸びや労働力率の見通しという楽観的な見通しで評価すべきではない。
 今回の検証は、年金制度は直ちに破綻するような状況ではないものの、安心して何もしなくてもよいような状態ではないことを示した。年金財政の安定には保険料の引き上げ、保険料納付期間の長期化、国庫負担の増加という収入面の強化と、マクロ経済スライドによる年金水準の引き下げ、満額年金に必要な納付期間の長期化、支給開始年齢の引き上げなどの支出抑制の対策がある。保険料や国庫負担の引き上げは難しく、事実上、支出抑制策に限られる。
 年金財政を安定させるオプション(選択肢)として厚生労働省は(1)デフレ期のマクロ経済スライド(2)非正規労働者などへの厚生年金の適用拡大(3)国民年金の45年加入制度(現行の20~59歳に加え、60~64歳も国民年金に加入する)の導入――の効果を推計し、いずれも財政安定効果があることが確認された。
 (1)のマクロ経済スライドは現在、インフレ期しか発動されず、デフレになると給付水準は相対的に高止まりし、その財政のツケは将来世代が担う。デフレ期にマクロ経済スライドが発動されると、たとえば1%のデフレ経済では、年金額は1%引き下げられ、さらにマクロ経済スライドによって追加で1%程度引き下げられることになる。厳しいが、世代間の公平性を改善するためには必要である。
 (2)は拡大規模が220万人と1200万人のケースがある。後者なら年金加入者に占める国民年金(1号)加入者の割合は23%から11%に低下する。1号の保険料は定額負担で逆進性の問題があり、未納率も高い。適用拡大は非正規労働者も所得に応じて保険料を支払うことになり、制度的に望ましく、国民会議の指摘に応えることにもなる。
 (3)の45年加入の評価は難しい点もある。現在、60~64歳の被用者の多くは厚生年金に加入しており、保険料負担の点であまり影響はない。表面的な変化は1号被保険者も60~64歳の間、加入するという点であるが、国民年金の任意加入制度の新設とみれば、それほどの効果はない。
 これが強制加入となり、基礎年金の計算対象期間になれば財政効果は複雑になる。基礎年金財政には国民年金と厚生年金から、基礎年金拠出金という、加入数に案分比例した財政負担が投入されている。60~64歳がその計算対象に加わることになる。
 ケースE(デフレ期のマクロスライドなし)を用いて現行制度での予測と比較すると、45年加入により、厚生年金の支出に占める基礎年金拠出金の割合は高まる。他方、厚生年金財政の収入は変化せず、報酬比例部分のマクロスライド期間が1年ほど長期化することになる。
 60~64歳の加入者の増加が見込まれる分だけ国民年金の財政は改善し、マクロスライドは短縮されて基礎年金の水準は回復する。他方、基礎年金の2分の1を賄う国庫負担額も、基礎年金期間が増えることで40年以降、13~15%ほど増えることになる。
 このように45年加入は国民会議が指摘したマクロスライドによる基礎年金の低下の防止策としては有効であるが、自営業者らの60~64歳の未納率が上昇するおそれがあるほか、追加的な国庫負担が必要になるという課題もある。
 基礎年金と報酬比例年金からなる現在の2階建て年金制度の原型は85年の改革で構築されたフレームである。マクロ経済スライドはその形を保ちながら財政規模や給付水準を小さくする効果をもたらした。しかし肝心な基礎年金の水準低下が大きすぎて年金としての機能を失いつつある。
 85年フレームを維持しながら、国民会議が指摘した「基礎年金の水準が低下し続ける」という懸念に応えるのならば、45年加入は有力な改革の選択肢になる。しかし、高所得の年金生活者に対する基礎年金国庫負担分の給付抑制など、ほかにも検討すべき選択肢はある。非正規労働者への適用拡大の徹底や、低所得の高齢者向けの年金生活者支援給付金も組み合わせたうえで年金制度を眺めると、85年フレームの形は次第に変化することになるであろう。
 このほかオプションとしては明示されていないが、基準になる支給開始年齢の引き上げも検討すべきであろう。Gのような厳しいケースでは65歳で代替率の50%割れが発生する。しかし、66歳まで支給開始年齢を引き上げれば、50%の確保は可能になる。開始年齢の引き上げは社会全体の支え手の増加を意味し、医療保険、介護保険の財政改善効果も期待できる。高齢者雇用の改革を伴うため、長い準備期間が必要であり、早めに議論を始めなければならない。
 年金制度は社会・経済の変化に応じて調整や手直しが必要になる生き物である。制度の連続性を維持しながら、他方で、社会経済の変化に対応した柔軟な制度見直しも必要である。国民の反発が厳しいからといって財政の健康診断を軽視し、改革を先送りすれば、改革の選択肢はどんどん減少する。必要な時に必要な改革を断行すべきである。政治の近視眼的行動こそが年金制度の最大のリスクである。
〈ポイント〉
○年金財政は直ちに破綻しないが安心できず
○慎重な想定に基づき支出抑制策の検討急げ
○国民年金の45年加入は将来の国庫負担増も
こまむら・こうへい 64年生まれ。慶大院博士課程単位取得退学。専門は社会保障

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140622&ng=DGKDASDF1600C_W4A610C1NN1000 (日経新聞 2014.6.22) 
「高齢者は70歳から」になれば… 年金・雇用改革を後押し
 いつから65歳以上を高齢者と定義するようになったのだろうか。国連経済社会理事会が1956年にまとめた報告書に由来するとされるが、世界保健機関(WHO)は「国連に標準的な数値基準があるわけではない」という。あれ?だったらいっそのこと「高齢者は70歳以上」という日本独自の基準をつくってしまってはどうか。政府の「選択する未来」委員会もいまの15~64歳という生産年齢人口の定義を「70歳まで」に変えるよう提言した。日本は世界最速で高齢化が進んでいる。注目したいのは、65歳時点の平均余命だ。男性の場合、2012年の18.9年から60年にかけて22.3年、女性は23.8年から27.7年まで延びる。国連の報告書とほぼ同じ時期の55年時点の男性の平均余命は約12年。平均して余命10年あまりを高齢者として迎える期間と考えると、平均余命の延伸にあわせて高齢者入りする年齢を引きあげるのは一理ある。高齢者の体力は向上している。意識も変わった。内閣府が団塊世代に「何歳から高齢者か」と尋ねたところ、「70歳以上の年齢」とこたえた人が約8割を占めたという。高齢者の定義を70歳以上に変えれば、生産年齢人口の厚みは増す。たとえば、生産年齢人口を15~69歳とした場合、40年時点で900万人近くも潜在的な働き手が増える。もちろん60代後半がもっと働いても総人口の減少は止まらないが、工夫しだいで企業にとっては人手不足を和らげる貴重な戦力となる。ポイントは70歳まで働き続けられる環境をいかにつくるかだ。身体機能の低下にあわせて短時間勤務がしやすい働き方や、年功的な賃金体系の見直しも必要だろう。社会保障にも好影響が見込める。高齢者の就業率の高い地域ほど医療費は小さく、元気に働く60代が増えれば医療費の伸びも抑えやすくなる。60代後半が年金をもらう側から保険料をおさめる側にまわれば、年金財政の悪化を緩和できる。年金生活に入る時期を遅らせると個人にも利点はある。みずほ総合研究所の堀江奈保子氏が標準世帯を想定して試算したところ、いまの年金制度の下でも年金の支給開始時期を70歳に繰り下げた場合、65歳を選んだ場合よりも82歳時点で年金受取総額が上回る。その差は90歳まで生きると600万円超になる。「70歳まで現役」という目標を社会で共有できれば、年金や医療、雇用の抜本改革への突破口になる。岩田克彦・国立教育政策研究所フェローは「68歳から70歳程度までの年金支給開始年齢引き上げは不可避」と語る。「75歳まで働いて」とスウェーデンのラインフェルト首相が唱えたのが3年以上前。オーストラリアは最近、70歳まで年金支給開始年齢を引き上げる改革を打ち出すなど、海外の動きは急だ。「70歳まで働ける企業の実現」は、06年当時の小泉純一郎政権で官房長官だった安倍晋三首相が主導した再チャレンジ推進会議が提言した。首相がこの課題に再チャレンジする価値はある。

<政府の医療・介護保険改革>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140617&ng=DGKDZO72807950W4A610C1KE8000 (日経新聞 2014.6.17) 点検・社会保障(3) 高まる公的負担の役割
 社会保障には、年金や医療、介護のように被保険者が納める保険料を財源として給付が行われる社会保険の性格をもつものがある。他方、生活保護のように、公的負担(国及び地方公共団体)により給付されるものもある。前者については、保険料収入だけでなく、公的負担にも依存しているが、給付の増加に対応する形で、保険料率の引き上げが行われている。もっとも、保険料のベースとなる給与の低迷などを背景に保険料収入は伸び悩んでいる。こうしたなか、年金や医療、介護の財源として、公的負担が果たす役割は大きくなっている。2011年度の社会保障給付費全体でみると、公的負担は43.5兆円に達しており、財源の4割近くを占めている。09年度には、長期的な給付と負担の均衡を図り、年金制度を持続可能なものとすることを目的に、基礎年金部分の国庫負担割合は2分の1に引き上げられた。しかし、その安定的な財源を確保することができなかったことから、12年度と13年度には年金特例国債(各2.6兆円)を発行することとなった。このように公的負担の増加は政府支出の増加を通じて、財政赤字を拡大させる一因となっている。社会保障給付の財源を確保するために、今後も保険料率を引き上げ続けることも考えられる。しかし、今後、減少すると見込まれる現役世代に負担の多くを依存する形で制度を維持することには限界があろう。増加が続く社会保障給付の安定財源をいかにして確保するかが課題となっている。

*2-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140618-00000054-asahi-pol
(朝日新聞 2014年6月18日) 介護保険利用者に厳しい大改正 医療・介護改革法成立
 高齢化がピークを迎える「2025年問題」を見据え、医療・介護制度を一体で改革する「地域医療・介護推進法」が18日、成立した。患者や要介護者の急増で制度がもたなくなる恐れがあり、サービスや負担を大きく見直す。とりわけ介護保険は、高齢者の自己負担引き上げなど制度ができて以来の大改正で、「負担増・給付縮小」の厳しい中身が並ぶ。人口減と高齢化が同時に進む日本。医療・介護制度は、高齢者の急増、支え手世代の減少、財政難の「三重苦」に直面する。厚生労働省によると、25年には医療給付費がいまの37兆円から54兆円に、介護給付費は10兆円から21兆円に膨らむ。病院にかかれない高齢患者があふれ、介護保険料は負担の限界を超えて高騰。そんな近未来の予測が現実味を帯びている。サービスを提供する人手の不足も深刻だ。こうしたなかで保険財政立て直しを目指す介護保険分野は、利用者の痛みにつながるメニューが目立つ。負担面では、一定の所得(年金収入なら年280万円以上)がある人の自己負担割合を1割から2割に上げる。低所得者の保険料を軽減する一方、高所得者は上乗せする。高齢者にも支払い能力に応じて負担を求める方向が鮮明だ。

<政府の株価操作>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140616&ng=DGKDASGD1204T_S4A610C1PE8000 (日経新聞 2014.6.16) 動く巨象GPIF(1)株価こそ政権の命綱
 「成長のエンジンとするための具体策を打ち出していく」。5日、ベルギーのブリュッセルで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)。首相の安倍晋三(59)は議長役の英首相のキャメロン(47)から経済問題の最初の発言者に指名され、成長戦略を説明した。安倍が具体策の柱としてあげたのは、自身が旗を振る法人実効税率の引き下げと、約130兆円の国民の年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の改革だ。6月中にまとめる新しい成長戦略への自信をアピールした。
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 サミットへの出発を控えた3日、安倍は首相官邸で厚生労働相の田村憲久(49)に年内を予定していたGPIFの基本構成の見直しを9~10月に前倒しするよう指示した。同日、GPIF運用委員長に就任して以来、市場の注目を集めていた早大教授の米沢康博(63)がインタビューで、日本株の比率を引き上げる意向を示したと伝えられ、日経平均株価は1万5000円台を回復した。「GPIFの話ってこんなに関心があるんだね」。安倍は周囲にこう漏らしている。世界最大級の機関投資家であるGPIF。巨象が少し動いただけでも、周囲は大きく揺れ動く。4月、資産運用業界に衝撃が走った。GPIFが日本株の運用委託を見直し、大半の国内運用会社との契約を解除。日本株運用にもかかわらず、外資系運用会社が10社と委託先の7割を占めることが決まったためだ。「公的年金がこれほど思い切った選抜に踏み切るとは」。米ディメンショナル・ファンド・アドバイザーズの日本代表、ジョン・アルカイヤ(58)は採用されたことを喜びつつ、カタカナの社名が並ぶ委託先リストを見て目を丸くした。公的年金の運用改革は実は2度目だ。最初は1995年。当時は年金福祉事業団だったGPIFが、信託銀行と生命保険会社に「お任せ」の運用を見直し、日本株や海外株に特化した投資顧問会社を初めて採用した。当時を知るアルカイヤは、GPIFの「名付け親」でもある。2001年、米モルガン・スタンレー資産運用子会社の日本法人社長だったアルカイヤに政府関係者が英語名を相談。「分かりやすい名称がいい。ガバメント・ペンション・インベストメント・ファンドでどうか」と即答した。「(国内勢中心の)ホームカントリーバイアスを断ち切り、世界で最も強い会社を選ぶようになった」。アルカイヤの目には今回の改革は真剣だと映る。GPIFは初めから外資系優位を想定していたわけではない。13年4月に運用委託を公募すると、国内外の約60社が名乗りをあげ、約1年にわたる選考過程が始まった。運用部長の陣場隆(54)は当初「日本株運用だから国内勢が多くなる」と予想していた。GPIFには譲れない一線がある。「唯一の使命は運用で国民の年金を増やすこと」。選考が進むにつれて、運用成績がぱっとしない国内勢は姿を消す。海外勢は「独自の運用スタイルを守り、日本株投資で優秀な成績をあげている」。シカゴ、テキサス、シンガポール……。世界の運用会社を訪問し、面談を繰り返した陣場は痛感した。
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 「有識者会議で改善を求められている状況ではあるが、我々がさぼってきたわけではないことを理解いただきたい」。GPIFの運用戦略を練る調査室長の清水時彦(51)は14年4月、金融関連のセミナーで聴衆にこう訴えた。政策研究大学院大教授の伊藤隆敏(63)が座長を務める公的年金改革の有識者会議は13年11月に報告書を公表。国債中心の運用の見直しを筆頭に改革案を提示した。株式運用では東証株価指数(TOPIX)のみだった運用指標(ベンチマーク)を多様化し、新しい指数の採用を求めた。「運用効率を上げるにはTOPIX偏重を脱するしかない」。有識者会議の提言を待つまでもなく、GPIF内部では清水を中心に議論を重ねていた。13年7月に外部に調査を依頼。14年4月、資本効率に着目した「JPX日経インデックス400」を含む新指数に沿った運用を開始した。内なる改革を上回る規模とスピードで、政治からの圧力が押し寄せる。株価を命綱とする安倍政権にとって、株式比率の引き上げを柱とするGPIF改革は成長戦略の目玉だ。しかし年金運用という本来の目的を外れ、目先の株価対策に使われるなら、将来に禍根を残すことになりかねない。
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 運用改革が大詰めを迎えたGPIF。市場がその一挙手一投足を固唾をのんで見守る世界最大の公的年金の動きを追う。(敬称略)

*3-2:http://www.nikkei.com/money/column/teiryu.aspx?g=DGXNMSFK1303W_13062014000000 (日経新聞 2014.6.16) 
マネー底流潮流フォローする 「官製相場」のにおい、気迷う株式市場
 前週末の日経平均株価は1万5000円台でほぼ高値引け。米国株は週半ばから軟調、円相場も底堅く、外部環境が良好とはいえない中での堅調ぶりだった。成長戦略の発表を前に、市場では「株内閣」と呼ばれる安倍政権がどんな株高カードを切ってくるのか、それとも空砲で終わるのか、見極めるまでは売れないというムードが広がっていた。一方、日経平均を1万4000円から1万5000円に押し上げたのは公的マネーとの見方が強く、足元の堅調さを素直に評価していいものか、疑心暗鬼の市場参加者もいる。政府の成長戦略やイラク情勢・原油価格の動向をにらみながら、今は静かな海外勢が次にどんな動きを見せるかが、今後の相場の方向性を決めそうだ。
■信託銀行、異例の買い上がり
 「今日も信託銀行のバスケット買い。地球防衛軍の出動ですよ」。米国株安などを受けて安寄りした後、午後に急速に切り返した前週末。ある証券会社のベテランは相場の底堅さの理由について、そんな解説をしていた。日経平均は一時1万4000円割れした5月19日からほぼ一本調子で上昇し、6月3日に1万5000円を回復した。外部環境に大きな変化が見られないなかで、この間、一貫して買い手となって上げ相場を主導したのは信託銀行だった。東証発表の投資主体別売買動向によると、信託銀行は5月第1週に買い越しに転じ、第4週(買越額1781億円)から第5週(2499億円)、6月第1週(1112億円)と3週連続で大幅に買い越した。信託銀行の買越額が3週以上続いて1000億円を上回ったのは、2011年8月(第4週から4週連続)以来ほぼ3年ぶり。それだけでも目を引くが、何より異例なのがその買い方だった。通常、公的年金や企業年金などの運用資産を預かる信託銀行は、相場が下がると買って、上がると売るという逆張り型の売買が中心。過去に大きく買い越したのも、リーマン危機時の08~09年など、例外なく相場の下落局面だった。ところが今回、信託銀行は日経平均が1万5000円を回復する過程で買い上がってきた。
■買い手は共済3兄弟か、GPIFか
 信託銀行のその先にいる投資家は誰だったのか――。市場では国家公務員共済組合(KKR)、地方公務員共済組合、私立学校教職員共済の「共済3兄弟」という見方がもっぱらだ。15年10月に予定される3共済と厚生年金との年金一元化を前に、3共済は資産構成の比率も、厚生年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と横並びの水準に変更する見通し。資産に占める日本株の比率(12年度末時点)はKKR(6.8%)、地方公務員共済(13%)、私学共済(10.5%)と、3共済ともGPIF(14.6%)を下回る。大和証券の熊沢伸悟ストラテジストは「確かなことはわからないが、3共済が株式の比率を上げるためにリバランスを実施した可能性がある」と指摘する。一方、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長が唱えるのは「GPIF説」だ。「本来なら基本ポートフォリオの見直しに伴うリバランスはまだ先の話だが、(資産規模が巨大で)急には比率を変えられないため、徐々に株式を買い増し始めているのではないか」という。そういえば、前週は債券市場でGPIFからとみられる大口の国債売りが出て、ひとしきり話題になっていた。このほか、「PKO(株価維持策)ほど露骨ではないが、安倍内閣の思いに配慮してゆうちょ銀行や企業年金連合会なども動いているのでは」(国内運用会社)との声も。真相はやぶの中だが、「安倍内閣は株価を政権維持の重要指標とみているし、演出も上手」(矢嶋康次ニッセイ基礎研究所チーフエコノミスト)といわれるだけに、市場には様々な臆測が飛び交いやすい。誰が買っているにせよ、市場参加者が気になるのは相場の持続性だ。何やら「官製」のにおいがする相場をどこまで信じていいのか、どこまで相場に乗っていいものやらと、市場には気迷いムードも漂っている。仮に共済3兄弟のリバランスがあったとしても、それは一時のこと。国民の資産を預かる公的年金が、相場を買い上がるような買い方を今後も続けるとは思えない。
■カギは海外勢の成長戦略評価
 需給面でここから上を買う可能性がある投資主体は限られそうだ。まず、昨年末の高値の信用期日が間もなく明けて、身動きが軽くなりそうな信用取引の個人。ただ、信用の個人に単独で相場全体を押し上げる力があるわけではない。日経平均が次の目標である1万6000円を目指すには、やはり海外投資家の力に頼るほかない。その海外勢は6月第1週に大きく買い越したが、熊沢氏によると「動いたのは先物を売買するCTA(商品投資顧問)など超短期の投資家。現物株は先物高に伴う裁定取引で買われた面が強い」。グローバル・マクロなどのヘッジファンドや、ロングオンリーと呼ばれる海外年金などに動きはほとんど見られないという。当面、中長期で投資する海外勢が日本株を見直すきっかけになりそうな国内の材料は、安倍内閣の成長戦略しか見当たらない。「成長戦略に対する海外投資家の評価が、相場の今後を占う最大の注目点」との見方が市場のコンセンサスになっている。一方、海外要因として急速に警戒感が強まってきたのがイラク情勢だ。今では石油輸出国機構(OPEC)で第2の産油国となったイラクの混乱は「世界経済に与える影響はウクライナよりはるかに大きい」(藤戸氏)。どれだけ事態が拡大するか、早期に収束するかはわからないが、ヘッジファンドはこれを収益機会にしようと虎視たんたんのはず。すでに米原油先物市場で売買が活発になるなど、イラク情勢の緊迫を機に、しばらく静かだった世界のマーケットが再び動き出す兆しもある。どうやら、公的マネーの動きやサッカーのワールドカップばかりに気を取られてはいられないようだ。ボラティリティー(変動率)の低さに安穏としていた市場が虚を突かれるとき、ショックは意外に大きくなりかねないことにも留意が必要だ。

<本物の利益率上昇と株価上昇を妨げているものは何か>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11222012.html?iref=comtop_pickup_03 (朝日新聞 2014年7月3日) STAP、5カ月で幕 論文撤回 小保方氏、検証に参加
 STAP細胞の論文が2日、英科学誌ネイチャーから撤回され、その発見は発表から約5カ月で根拠を完全に失った。しかし、理化学研究所は、STAP細胞の存在を確認する検証実験を続けており、7月からは、撤回された論文の筆頭著者である小保方晴子ユニットリーダーが参加する事態になっている。論文の撤回で、STAP細胞は仮説のひとつになったが、小保方氏はその存在を主張している。「ないというには本人が参加して、どうしても再現できませんでしたねというまでやることが最善」。理研発生・再生科学総合研究センター(CDB、神戸市)の相沢慎一・実験総括責任者は2日の会見で、「論文を撤回するのに検証実験をする意味があるのか」との問いにこう答えた。撤回に抵抗していた小保方氏が一転、共著者の求めに応じて撤回への同意書に署名したのは6月3日。小保方氏の代理人を務める弁護士は「応じなければ懲戒解雇され、検証実験に参加したくてもできなくなるかもしれないという重圧があった」と説明していた。ただ、STAP細胞には別の万能細胞のES細胞ではないかとの疑義も出ており、小保方氏の参加には批判もある。大阪大学の篠原彰教授(分子生物学)は「小保方氏が疑義に対して何ら説明をしない段階で参加させるべきではない。不正があっても後から確認できればよいという誤ったメッセージを発することになる」と語る。山本正幸・基礎生物学研究所所長(分子生物学)は「論文が撤回されても、研究過程で何が起きていたのかを明らかにする必要がある」と指摘する。
■第三者立ち会い/24時間監視
 CDBが始めたSTAP細胞の存在の有無を検証する実験に参加するため、小保方晴子ユニットリーダーが2日、出勤した。CDBは同日、実験の手順を公表。第三者が立ち会い、2台のカメラで24時間、実験室を監視する。実験室の出入りは電子カードで管理し、細胞の培養機器には鍵をかける。今週中には、実験室の改修を終える見通しだという。CDBによると、小保方氏の検証実験は、丹羽仁史・プロジェクトリーダーらの検証チームが4月から進めている実験とは分けて、別の建物で実施する。CDBが提供したマウスを使って細胞を酸につけ、STAP細胞とされる細胞を作製する段階まで、小保方氏が1人で実験する。作製した細胞をマウスの胚に注入して、万能細胞かどうかを確かめる実験は、技術をもつ別の研究者が担当する。酸につけた細胞に万能性を示す遺伝子の働きがみられない場合、期限に定めた11月末よりも早く、検証を終了する可能性もあるという。万能性が部分的に確認できた場合には、期限の延長を検討する。
■iPS臨床研究、「中止も」投稿 理研・高橋リーダー、即日否定
 iPS細胞を使った世界初の臨床研究について、CDBの高橋政代プロジェクトリーダーは2日、「まだ始まっていない患者さんの治療については中止も含めて検討いたします」と簡易投稿サイト「ツイッター」に投稿した。投稿による混乱を受け、高橋氏は同日夜、「中止の方向で考えているのではない」と否定するコメントを発表した。「慎重にならざるを得ないというのが真意」だったという。高橋氏らの臨床研究は、加齢黄斑変性の患者にiPS細胞で作った網膜の細胞を移植するもの。昨年7月に厚生労働省が承認し、早ければ今夏にも1例目の移植が始まる予定になっている。
◆キーワード
<ネイチャー> 1869年に創刊され、世界的に権威のある科学雑誌の一つ。毎週木曜日に発行される。学術論文のほかに、解説記事やニュース、科学者によるコラムなどもある。掲載される論文は同誌の編集者と各分野の専門家によって審査され、年に約1万本の投稿論文のうち1割以下しか掲載されない。そのため、掲載は研究者にとって高い業績と評価される。

*4-2:http://qbiz.jp/article/41605/1/
(西日本新聞 2014年7月9日) 航空バイオ燃料、20年実現を 日航、ユーグレナなど工程表
 日本航空や全日本空輸、米ボーイング、東京大学などが参加する組織「次世代航空機燃料イニシアティブ」は9日、二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に減らすバイオ燃料の2020年の実用化を目指すと発表した。各社が共同で工程表の策定を始めた。来年4月までの取りまとめを目指す。バイオ燃料の開発や普及は世界各地で進められている。日本では33の企業・団体による「次世代航空機燃料イニシアティブ」が5月に発足。工程表はこの組織が中心となって策定する。国交省もオブザーバーとして参加している。日本はバイオ燃料のトウモロコシなどの国内での調達が難しく、家庭ごみなどを原料にする。この組織には、バイオ燃料に使うミドリムシの培養を進め、佐賀市とも共同研究の契約を交わしているユーグレナ(東京)も参加している。

*4-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140625&ng=DGKDASFS2403G_U4A620C1EE8000 (日経新聞 2014.6.25) 
川内原発、再稼働は秋以降、九電、申請書を再提出 電力需給、西日本で厳しく
 九州電力は24日、川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県)の再稼働の前提になる審査の申請書を原子力規制委員会に再提出した。申請書の記載ミスで時間を費やしたことが響き、再稼働は秋以降にずれ込むのが確実。1965年以来ほぼ半世紀ぶりに電力需要が最も多い8月に国内で原発が1基も動かないことになり、原発依存度が高い西日本で特に需給は厳しくなる。規制委には現在、9電力会社が12原発19基の審査を申請済み。このうち川内原発は3月に規制委から優先審査の対象に選ばれており、再稼働の第1号になるのが確実だ。ただし審査に最終合格するには、規制委からの指摘事項を踏まえ、まず電力会社が3種類の申請書を提出する必要がある。九電が24日に提出したのは、このうち安全対策の大枠を記した「設計の基本方針」の申請書。九電は4月末に一度提出したが、規制委から42件の記載ミスを指摘され、再提出を求められていた。当初、九電は5月末に再提出できるという見通しを示していたが、規制委から追加確認を求められるなどで修正が申請書全体に広がり、分量が7200ページから8600ページへと膨らんだ。手続きの日程も当初予定から2カ月ほどずれ込んだ形だ。再提出を受けて規制委は今後、合格証明書にあたる「審査書案」づくりの詰めの作業に入る。審査書案ができあがるのは現状では7月上~中旬ごろの見通し。その後、1カ月かけて意見を募るので、審査書がまとまるのは8月下旬ごろにまでずれ込みそう。9月中の再稼働もギリギリの状況で、10月にずれ込む公算が大きくなっている。電力需要は例年8月にピークを迎える。川内原発の審査が長引いたことで今夏は原発が1基も動かない見通しだ。九州電力と、川内再稼働後の九電からの電力融通をあて込んでいた関電の管内で電力需給が厳しくなる。昨夏は動いていた関電大飯原発(福井県)は昨年9月から定期検査で運転を停止。さらに九電管内では大型火力が今夏、事故でフル稼働できなくなった。電力需要に対する供給余力をあらわす「予備率」は関電が1.8%、九電が1.3%。安定供給に最低限必要とされる3%を下回る。自前で十分な電力を確保できない関電と九電は東京電力から計58万キロワットの融通を受けることになった。震災後初となる大規模な融通により、関電と九電の予備率はぎりぎり3%に達する。それでも西日本全体の予備率も3.4%と昨年の5.9%を大きく下回る。電力各社は原発のかわりに火力をフル稼働させている。ただ運転40年超の老朽火力の比率は火力全体の26%に達し、事故による火力の停止件数は震災前から16%増えている。西日本は100万キロワット級の火力が停止すれば供給不足に陥る。安定供給に不安を抱えたまま夏を迎える。


PS(2014.7.14追加):*5のように、年金受給者の立場から記載された記事は少ないが、私が衆議院議員をしている間に地元(佐賀三区)を廻った時、「船賃が払えないので病院に行けない(離島)」「もらっている年金の金額は月に3万円くらいで、家のまわりに畑を作って食べている(一人暮らし)」「孫が来たとき以外はクーラーをつけない」などの声があった。そのため、多くの年金受給者にはこちらが実態だと思うが、「老人は金持ちだから」という理由で、このような政策が押し進められた。私は、このような政策を押し進める政治家や官僚は、見ている相手や住んでいる世界が、狭くて特殊なのだと考える。

*5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11241558.html (朝日新聞 2014年7月14日) (報われぬ国 負担増の先に)老い、振り向かぬ国 番外編・年金の将来を考える
 「報われぬ国」では、わたしたちの老後は安心なのかを取材しています。その老後を支える一つが年金です。厚生労働省は6月、将来の年金がどうなるかという見通しを発表しましたが、年金はさらに減り、くらしは厳しさを増します。今回は「番外編」として、高齢者のくらしの現場から年金の将来を考えました。
■持病の悪化で家賃払えず
 群馬県でひとり暮らしをする男性(71)は4月、アパートの家主から「家賃をこれ以上滞納したら出ていってもらう」と通告された。それまでに家賃2カ月分の約5万4千円を払っていなかったからだ。2月に持病の糖尿病が悪化し、入院費用がかかってしまった。アパートの契約更新の支払いも重なり、合わせて7万円を特別に出費しなければならず、家賃が払えなくなった。年金は月に約8万9千円もらっている。ここから、家賃を約2万7千円、光熱費を1万円余り、かつて滞納した分を含めた国民健康保険料と介護保険料を合わせて1万円払う。残った生活費は4万円ほど。糖尿病の治療のために病院に週4回通う費用も出さなければならず、生活はぎりぎりだ。食事はできるだけパンと牛乳ですませる。ご飯を炊くときはレトルトのカレーやハヤシライスをかける。まともな食事は月に1回、群馬県内に住む姉が来てつくってくれるときだけだ。「病気がなければやっていけるかもしれないが、そろそろ生活保護を考えてもいい」。数年前に男性の借金を整理してから相談に乗っている司法書士の仲道宗弘(むねひろ)さんはこう感じる。生活保護を受ければ、生活保護で定められた支給水準と年金の差額をもらえるので、年金と合わせて月に10万円前後を受け取れる。さらに通院などの医療費、国保や介護保険の保険料支払いも免除される。男性はトラック運転手として30年近く働き、厚生年金の保険料も払ってきた。その後に独立してからも余裕のあるときは国民年金の保険料を払った。その積み重ねでもらえる年金は、年に約107万円しかない。だが、これは特別に低いわけではない。厚労省が2010~11年に調べたところ、働いていない年金生活者の年収は100万円以下が49%を占める。150万円以下になると、63%にものぼる。このため、年金だけでは暮らせず、生活保護を受ける人は多い。厚労省の11年の調べでは、65歳以上の高齢者で生活保護を受けるのは約64万世帯あり、このうち年金をもらっている高齢者は約37万世帯にのぼる。今年3月には生活保護を受ける高齢者は約74万世帯にふくらみ、生活保護を受ける世帯の半分近くを占める。この3年で高齢者世帯は19%増え、高齢者以外は3%しか増えていない。
■リストラされ狂った人生
 60~70代には、働いていたころにリストラされ、人生設計が狂った人も多い。北関東に住む60代男性は00年代半ばにリストラで会社を辞め、マイホームを手放した。いまは妻と娘と借家で暮らす。マイホームは40代後半のころ、約3千万円の一戸建て住宅を25年ローンで買った。当時は会社も順調でリストラされるとは想像もしなかったが、会社を辞めた途端に行き詰まった。追い打ちをかけたのが、市役所からの請求だ。リストラで家の固定資産税と家族3人の国民健康保険料を滞納していたため、合わせて約50万円の滞納分の支払いを求められた。滞納分には年14・6%(今年から9・2%)の延滞金が加わり、このほかに通常の国保料が月に1万数千円かかる。滞納分と国保料を合わせて月に4万円払わなければならない。男性は「延滞金がかかるので、なかなか滞納分が減っていかない。妻と相談し、無理してでも返そうと思っている」と話す。いまは仕事を二つかけ持ちして月15万円ほど稼ぐ。加えて、厚生年金の一部である「報酬比例部分」が出ているので、それを月7万円ほど受け取る。合わせて月22万円ほどの収入から、6万円の家賃と滞納分や国保料などの4万円をなんとか払う。心配なのは将来だ。65歳から「基礎年金」も受け取れるが、会社を辞めた後に国民年金の保険料を払う余裕がなかったため、月6万円に満たない。逆に65歳になれば仕事の一つは定年になり、もう一つもいつまで働けるかわからない。合わせて月13万円ほどの年金に頼るだけの生活になったとき、家賃や国保料などを払いながら暮らせるのか。この先の人生設計は立っていない。
■制度維持のための「マクロ経済スライド」
 将来の年金はもっと厳しい。厚労省は6月、将来の年金がどうなるかの試算を発表した。安倍政権の成長戦略がうまくいく場合からうまくいかない場合まで8シナリオを示している。このシナリオでわかるのは、たとえ経済成長して現役世代の賃金が上がっても、年金額はそれに追いつけず、高齢者は置き去りにされるという事実だ。厚労省のモデルでは、14年度は現役サラリーマンの手取り月収を平均約34万8千円として、サラリーマンが入る厚生年金は月に平均約21万8千円(夫婦2人分)になっている。現役の月収に対する年金額(代替率)は62・7%の水準だ。試算では、成長戦略が最もうまくいく「ケースA」の場合、30年後の44年度に現役の月収が59万円、年金が月に30万1千円になる。なぜ金額が増えているかというと、物価が年2・0%上がり、現役の賃金が物価より年2・3%上回って伸びる計算だからだ。だが、現役の月収に対する代替率は50・9%に下がる。わかりやすくするため、代替率を使って年金額を14年度の賃金水準に置き換えると、約17万7千円だ。いまの約21万8千円から約2割も下がる。成長戦略がうまくいかない場合の「ケースH」では、55年度に代替率が30%台まで下がる。14年度の賃金水準に置き換えると、13万6千円まで落ち込む。なぜ成長していても年金だけが置き去りにされるのか。これは「マクロ経済スライド」という仕組みを使うからだ。年金を受け取り始める時点で、保険料を払った時より賃金水準が高くなっていても、支給額の引き上げを抑制する。この仕組みを使うのは、年金保険料を払う現役世代が減るため、年金支給額を抑えていまの年金制度を維持しようと考えているからだ。厚労省はこれで100年後も1年間分の年金積立金は確保できるという。安倍政権と日本銀行は物価上昇率を「年2%」にする目標をたてている。だが、年金受給者はこれから物価の上昇からも取り残され、生活は厳しさを増す。さらに、今後は貯蓄が少ない低所得の人たちが増え、非正規で年金保険料を払っていない人も多い。このままでは年金で暮らせるのはゆとりがある人たちで、生活保護に頼らざるを得ない高齢者が増える。厚労省の年金財政は維持できても代わりに生活保護費がふくらむばかりで、低所得者向けを中心に年金のあり方を見直す必要がある。
◇「報われぬ国」は原則として月曜日朝刊で連載します。今回は番外編ですが、第2部の「福祉利権」を今後も続けます。ご意見をメール(keizai@asahi.com)にお寄せください。


PS(2014.7.16追加):*6のように、核家族化が進んで老老介護が増えているため、介護を配偶者だけでこなすのは困難だ。また、最後に残った人には介護する人がおらず、これらは女性であることが多い。つまり、現在の介護サービスのさらなる削減は論外なのである。

*6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140716&ng=DGKDASDG15H0Q_V10C14A7EA2000
(日経新聞 2014.7.16) 「老老介護」5割超す 厚労省13年調査、急速な高齢化浮き彫り
 介護が必要な65歳以上の高齢者がいる世帯のうち、介護する人も65歳以上である「老老介護」の世帯の割合が51.2%に達し、初めて5割を超えたことが15日、厚生労働省がまとめた2013年の国民生活基礎調査で分かった。急速な高齢化の進展が改めて浮き彫りになった。調査結果によると、介護保険法で要介護認定された人と、介護する同居人が共に65歳以上の高齢者である老老介護世帯は、10年の前回調査から5.3ポイント増の51.2%となり、01年の調査開始以来、最高となった。介護が必要になった原因のトップは脳卒中で、認知症、高齢による衰弱が続いた。団塊世代の約半数が65歳以上になっていることから、老老介護の世帯は今後も増加が見込まれるとともに、同世帯の高齢化も、より進むとみられる。介護を担う人については、同居する家族が61.6%で前回調査から2.5ポイント低下し、事業者が14.8%で同1.5ポイント増えた。介護する人の約7割は女性で、性別の偏りが見られた。続柄では配偶者、子が共に2割を超え、子の配偶者が約1割だった。介護している人の悩みやストレスの原因を聞いたところ、「家族の病気や介護」を上げる人が最多で、「収入・家計・借金など」や「自由にできる時間がない」を回答する人も目立った。厚労省は「少子化対策とともに高齢者世帯への対策も重要になってくる」と指摘。介護を担っている配偶者や子など家族へのサポートも含めた体制整備が課題となりそうだ。一方、全国の世帯総数は13年6月現在で5011万2千世帯だった。このうち65歳以上の高齢者だけか高齢者と18歳未満の子供だけの「高齢者世帯」は過去最多の1161万4千世帯で世帯総
数の約4分の1を占めた。65歳以上の高齢者が1人でもいる世帯は、2242万世帯で、世帯総数の半数近くに達した。調査は13年6月に全国の世帯から約30万世帯を無作為抽出して実施した。介護の状況は、原則自宅で介護されている約6300人の家族から、世帯の人員構成については約23万4300世帯からの回答から推計した。

| 年金・社会保障::2013.8~2019.6 | 03:18 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.5.5 「高齢者に手厚い予算」を「少子化対策」にというのは大きな考え違いであり、公的年金は、契約どおり支払われるべきである。(2014年5月6日、13日、18日に追加あり)
   
日本の人口推移     *1-1より   GDP成長率推移  日本の公債残高推移

(1)高齢者から子育て世代への予算移転のための屁理屈がすぎる
 *1のように、「①このままでは日本の人口が2060年(50年後)に約8600万人まで減る見通しであるため、2020年ごろまで集中的に対策を進めて、人口減少に歯止めをかけ、2060年代にも人口1億人程度を維持する中長期の国家目標を日本政府が設ける」という論調は多く、「②そのために、高齢者に手厚い予算配分を現役の子育て世代に移す経済・社会改革を進められるかが課題になる」と続く。

 また、「③1人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率は12年で1.41。60年に同2.07以上に引き上げ、人口1億545万人程度にすることを目指す」というフレーズも何度も聞いたが、そのため「④出生率の改善のため、資源配分は高齢者から子どもへ大胆に移す」と結論づけるのである。

 さらに、「⑤費用は現在世代で負担」し、「⑥国債発行を前提に高齢者に厚く配分している社会保障予算を見直す考え」ときたのには呆れた。

 そして、これらは、このブログの年金・社会保障のカテゴリーに何度も書いているとおり、高齢者から子育て世代への予算移転という結果ありきの屁理屈であるため、①~⑥について、どこが屁理屈なのかを記載する。
①について
 通常、短期的な視点でしかものを考えない人が、急に50年後を推計したのが下心の証拠だが、推計結果と結論は、やはり高齢者から子育て世代へ予算を移転することだった。そして、その推計の根拠は稚拙だが、日本の人口が50年後に約8600万人まで減ったとしても、それは上のグラフの1950年頃と同程度で、決して少なすぎるわけではない。また、上のグラフのGDP成長率と人口の関係を見れば、人口が急激に増えている最中でもGDP成長率は段階的に下がっており、GDP成長率鈍化の原因は、人口減少ではなく、このブログの2012年5月18日に記載したように、政策が時代に合わず、愚かだったからである。また、GDP成長率の鈍化に伴って、景気対策と称して本質的な改革や投資ではない雇用確保のためのばら撒きに税金が使われた結果、上のグラフのように、団塊の世代が生産年齢人口にあり、人口が増えている期間に、わが国の債務は膨らんだ。

    
 日本の食料自給率推移   主要先進国食料自給率推移     *1-2より

 また、上のグラフの人口と食料自給率の関係を見れば、人口が9000万人程度で、今より農業従事者が多かった1965年でも食料自給率は73%しかなく、人口が1億2774万人の2010年の39%まで、踊り場はあったものの一貫して下がり続けており、世界の人口が激増している中で、わが国は国民を養える国とはとても言えないのである。ちなみに他の先進国の食料自給率は、2005年時点で、アメリカ・フランスが120%以上、ドイツが80%前後、イギリスが75%程度あるにもかかわらず、日本は40%であり、それでも人口を増やしたり維持したりすべきだとは言えない。

②について
 ②には、この記事の目的である「高齢者に手厚い予算配分を現役の子育て世代に移す経済・社会改革を進められるかが課題」という結論が書かれているが、「社会保障は消費税からしか充当してはならない」とか「社会保障は社会保障同士でやりくりしなければならない」と決まっているわけではないため、スウェーデンや以前のイギリスとは異なり、ただでさえ薄い高齢者への予算から移転させなくても、原発等への無駄遣いをやめたり、エネルギー価格を下げて法人税を自然増させたりし、海底資源からも収入を得る体制にすれば、教育や社会保障の原資はできるし、そうすべきである。

③について
 現在は、寿命が延びて2世代ではなく3~4世代が共存しているため、合計特殊出生率が2.07(1960年くらいの合計特殊出生率)では、人口は安定せずに増加している。また、日本の人口1億545万人程度というのも、食料自給率や一人当たりの豊かさから考えると多すぎる。そして、「人口減少で約1800の地方自治体が消滅する可能性が高く、地方で集落消滅の危機」というが、それは、人口集中のひどい大都市から、住みやすい地方への人口移動を促し、そのためには農林漁業を所得の多い産業にしたり、地方に付加価値の高い産業を作ったり、地方都市が教育や文化で大都市に劣らないようにしたりするのが、抜本的解決策である。都会の男女で、豊かな自然や農林業に関心のある人は多いのだから。

④について
 「出生率の改善のため、資源配分は高齢者から子どもへ大胆に移す」などという政策や新聞のキャンペーンは、「高齢者はお荷物で若者の負担になるから、国費を使わず早く死ね。」という人の道に反する考えを持つ人を大量に作り出す。このような人材に仕事を任せても、心のこもった仕事ができるわけがないため、*1-2のような外国人労働者を使った方がよいと判断する企業が多くなるだろう。それも、日本人の補完ではなく、日本人よりも、真面目でよく働き、奉仕の精神を持つ、よりよい労働力としてである。

⑤について
 「費用は現在世代で負担」としているが、これでは、国民は年金に関して二重負担し、管理・運用が杜撰だった年金保険機構は社会保険庁時代の雰囲気のまま温存される。そのため、このブログの2012年12月18日に記載したとおり、国は、速やかに元の積み立て方式に戻して年金債務を確定し、それと現在の積立金との差額は50年くらいで償却すべきだ。

⑥について
 「国債発行を前提に高齢者に厚く配分している社会保障予算を見直す考え」としているのは、年金や医療のことだろうが、どちらも契約に基づいて保険料として支払ってきたものを受け取っているものであるため、国債発行を前提にしなければ支払えなくなったのは、管理者の無計画、杜撰、無責任な管理・運用の結果だ。そのため、積立金が足りなければ、管理・運用を行ってきた国が責任を取るべきであり、保険契約どおり支払ってきた国民に不払いや減額でしわ寄せすべきではない。つまり、契約に基づいて保険料を支払い、高齢時の生活がかかっている年金の需給や医療・介護は、マージャンと異なり、“痛み分け”で解決すべきものではないのだ。

(2)年金資産の管理・運用の杜撰さについて (もともと若者から高齢者への仕送りではない)
 *2-1のように、年金を減額するための新聞記事が後を絶たないが、今の年金のマクロ経済スライドを、2000~2002年度の賃金や物価の下落時に適用しなかったとしても、消費者物価は、この2年間で金融緩和(→円の購買力低下)と消費税増税の影響で25%くらい上がっているため、下落した物価の分はとっくに取り戻しておつりがきている。それを正確に把握せず、年金の支給額を減らしたいためにご都合主義の議論を展開するようでは、高齢者は、憲法で定められた健康で文化的な生活ができない。

 また、「年金の『所得代替率50%』を下限としているのは、何かと物入りな現役世代の半分くらいの収入で生活してもらうというイメージ」だそうだが、食費、消費税、公共料金等の生活費は年齢による区別がない上、高齢になると医療・介護・知人の葬儀など、若い頃とは異なる費用で物入りであるため、現役世代の50%で老後の生活は支えられると考えているのは、年齢による差別である。

 また、このブログの2013.7.19にも書いているように、年金はもともと積み立て方式で始まって自分の年金を積み立てていたにもかかわらず、年金制度開始当初から続いていた旧社会保険庁の管理・運用の杜撰さをカバーするために、知らないうちに賦課方式に変えられていたものである。そのため、高齢者は若い頃にせっせと積み立てた自分の貯金を使って老後を過ごしていると考えるのが正しく、「社会で扶養されている」などと言うのは事情を知らない人の大きな誤解だ。そのため、年金受給者に対して、「社会全体で扶養する『国民仕送りクラブ』」などと言うのは失礼にもほどがあり、一生懸命に働いて多額の税金を支払い、こういう馬鹿者を育てるための教育費に充てられたのならば、その分は返してもらいたい。

 なお、年金資産の管理・運用の杜撰さは、*2-2のように、公的年金運用委員長に米沢氏を充て、リスク投資を拡大して、リスクの高い株式・不動産にシフトするよう主張しているくらいであり、損しても責任をとれるわけがなく、年金資産に対する責任感が全くない体質は今も変わっていない。これは、*2-3のように、厚生年金基金なら解散になるくらいの杜撰さだが、厚生年金・国民年金は基本的な年金であるため、受給者にしわ寄せしてすむ話ではない。そのため、メディアは、この体質を批判すべきなのである。

(3)生産年齢人口と女性・高齢者・外国人労働者の活用
 *1で、労働力人口の減少に備えて、「年齢、性別に関わらず働ける制度を構築する」として、20歳以上70歳未満を「新生産年齢人口」と定義し、雇用制度などの社会保障政策を設計して女性や高齢者の労働参加も進めるというのは、実際に雇用があってそれが進めば、生産年齢人口の増加と年金支給額の減少という効果を期待することができる。しかし、まだ働ける環境でもないのに、配偶者控除のみを先行して減らせば、それは単なる増税になる。

 また、外国人の活用については、「移民政策としてではなく、外国人材を戦略的に受け入れる」としているが、日本人の生産年齢人口の男性以外を人間として差別すれば、また大きなしっぺ返しがあるだろう。

(4)社会保障の削減ばかりが目につく
 *2-4のように、厚生労働省は、2000~2002年度の物価下落時に、特例で年金額を据え置いたことで、もらいすぎが発生したとして、2014年度の年金支給を0.7%減額する決定をしたそうだが、これは、前にも書いたように、現在の物価上昇を反映していない。それにもかかわらず、このように物価下落時の物価スライドを反映することのみに熱心なのが、官の体質なのである。

 また、毎年、年金保険料が0.354%ずつ引き上げられるというのは、これまで厚労省が、年金資産の杜撰な管理・運用を行い、時代にあった少子化対策や雇用政策をしてこなかったことへの大きなつけであり、年金保険料を支払っていた国民には何の責任もない。また、女性の生産年齢人口への参入もやっと本気で行い始めているが、これが進んでいれば少子高齢化の影響以上に労働力は増えており、雇用の受け皿の方が心配なくらいだった。それらの責任を、マージャンのように、痛み分けとして年金生活者にしわ寄せすることしか思いつかない思考力が、この状況を生んだのである。

*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140504&ng=DGKDASFS03014_T00C14A5MM8000 (日経新聞 2014.5.4) 人口 50年後に1億人維持、政府が初の目標、少子化に対応 予算、子育て世代に
  ★人口1億人維持に向けた主な論点★
    ○高齢者に手厚い予算・税制を改められるか
    ○子育てと就労の両立促進
    ○雇用・医療などの規制緩和は進むか
    ○外国人を積極活用できるか
 政府が「50年後(2060年代)に人口1億人程度を維持する」との中長期の国家目標を設けることが3日明らかになった。日本の人口(総合・経済面きょうのことば)はこのままでは60年に約8600万人まで減る見通しのため、20年ごろまでに集中的に対策を進め、人口減少に歯止めをかける。高齢者に手厚い予算配分を現役の子育て世代に移し、経済・社会改革を進められるかが課題になる。政府が人口維持の明確な目標を打ち出すのは初めて。人口減は成長や財政、社会保障の持続に多大な悪影響を与えると判断。国を挙げて抜本対策をとるため、目標の提示に踏み切る。政府の経済財政諮問会議の下に置いた「選択する未来」委員会(会長・三村明夫日本商工会議所会頭)が5月中旬に中間報告として諮問会議に提言する。6月にまとめる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に盛り込む。提言は日本経済の課題に「人口急減と超高齢化」を挙げ、50年後に人口1億人を維持することを目標に掲げる。1人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率は12年で1.41。60年に同2.07以上に引き上げ、人口1億545万人程度にすることを目指す。出生率の改善のため、国費ベースで3兆円規模の出産・子育て支援の倍増を目指す。「資源配分は高齢者から子どもへ大胆に移す」「費用は現在世代で負担」と明記し、国債発行を前提に高齢者に厚く配分している社会保障予算を見直す考え。労働力人口の減少に備え「年齢、性別に関わらず働ける制度を構築する」として女性や高齢者の労働参加も進める。出産・育児と仕事を両立させ、働く高齢者を後押しする政策を今後検討する。労働力に関する現行の統計とは別に新たな指標もつくる。20歳以上70歳未満を「新生産年齢人口」と定義し、雇用制度などの社会保障政策を設計していく考えを示す。経済改革では「ヒト、モノ、カネ、情報が集積する経済を目指す」と指摘。「起業・廃業の新陳代謝で産業の若返りを進める」として産業構造の変更を迫る大胆な規制改革の必要性を打ち出す。外国人材の活用に関しては「移民政策としてではなく、外国人材を戦略的に受け入れる」とする。人口減少で約1800の地方自治体は「40年に523が消滅する可能性が高い」と指摘。市町村の「集約・活性化」を掲げ、東京圏への一極集中も抑制するとしている。「20年ごろを節目に経済社会システムを大きく変える」と明記。一連の改革は今後5年程度で集中的に具体策を検討し、実施する方針を示す。提言は13年に1億2730万人の人口がこのままでは60年に8674万人になると推計。経済・社会の抜本改革をしなければ、国際的な地位や国民生活の水準が低下し、財政破綻を招くと警鐘を鳴らしている。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140118&ng=DGKDASFS1704S_X10C14A1MM8000 (日経新聞 2014.1.18) 外国人の就労拡大検討 新成長戦略、実習期間を延長 法人税率下げも 課税対象拡大
 政府が6月にまとめる新たな成長戦略の検討方針案が明らかになった。少子高齢化による労働力人口の減少を補うため、外国人の受け入れ環境を整備、最長3年の技能実習制度の期間延長や介護分野への拡大を検討する。焦点の法人実効税率の引き下げに向け、法人税を納める企業を増やす課税ベースの拡大も協議する。専業主婦を優遇する配偶者控除などの見直しも取り上げる。20日の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)で決め、具体策を練る。昨年の成長戦略「日本再興戦略」で踏み込み不足との指摘が出た分野が中心。関係業界の抵抗が強い「岩盤規制」が多く政権の実行力が試される。併せて昨年の成長戦略の実行計画も決定する。製造業や農漁業などで外国人労働者を受け入れる技能実習制度について、優秀な実習生は最長3年の期間を延ばしたり、介護も対象に加えたりする方向を明記した。同制度は発展途上国への技術移転が名目で、68業種で受け入れを認めている。近年の在留者は15万人前後。人手が足りない現場を支える労働力として期待する声が多い。介護は同制度の対象外のため経済連携協定(EPA)の介護福祉士候補生として受け入れている。福祉士の資格を取れば日本で働き続けられるが、国家試験が難しい。実習生なら働く期間は制限されるものの、受け入れ人数は増やしやすい。国税と地方税を合わせた法人実効税率は2014年度から2.37%下がり35.64%(東京都の場合)になるが、他の主要国の25~30%より高く、首相は引き下げに意欲を示す。1%下げると4000億円の税収減。財務省や自民党税制調査会は代替財源が確保できないなどの理由で反対だ。このため役割を終えた政策減税(租税特別措置)の縮小や廃止、法人税以外の引き上げを検討する。女性の就労促進策もまとめる。放課後に小学生を預かる学童保育や、ベビーシッターなど家事・育児支援サービスの利用者への税制優遇措置などを想定する。配偶者の年収が103万円以下なら会社員は課税所得の計算の際に年収から38万円を差し引ける。130万円未満なら保険料を払わずに夫の年金や健康保険に加入できる。こうした制度が女性の働き方を制約しているとして見直しを図る。複数の医療法人や社会福祉法人をまとめて運営できる「非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)」を創設。病院や介護施設を一体運営できれば経営の効率化が見込め、施設間の役割分担が進めやすくなる。持ち株会社の仕組みの解禁によりグループ内の部門を統合しやすくなる。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に関連する農業分野では、農協や農業生産法人の改革をテーマにあげた。

*2-1:http://www.asahi.com/paper/editorial.html
(朝日新聞 2014年4月30日) 年金の未来(中)―「生活習慣病」から脱する
 年金を受け取っている方々は「とんでもない」と思うかもしれない。だが、いまの年金の水準は本来の姿よりも高くなっている。前回(21日付)の社説で紹介した通り、少子高齢化にあわせて年金水準を抑える仕組み(マクロ経済スライド)は、賃金や物価の下落時には適用しない決まりだからだ。その分、将来世代の年金を下げざるをえない圧力がかかっている。人の体にたとえれば、生活習慣病の状態である。手をこまねいていれば、いずれ致命傷になりかねない。
■将来世代に影響
 年金制度は5年に1度、「財政検証」という健康診断を受ける。年金水準はその重要なチェック項目で、「所得代替率」で診る。受け取る年金が現役世代の手取り収入に対し、どのくらいの割合かという数値だ。今の制度は、サラリーマンと専業主婦の世帯が年金を受け取り始める時点で「所得代替率50%」を下限としている。何かと物入りな現役世代の半分くらいの収入で生活してもらうというイメージだ。日本では老後の平均所得の7割弱は公的年金で、年金しか収入のない人も6割いる。老後の生活を支える水準を確保しないと、社会が成り立たない。それを、代替率50%に設定したわけだ。このラインを下回ると、年金を増やす検討に入ることがルール化されている。一方、代替率が高すぎるのもまずい。今の年金受給者には良くても、年金のお金の入りと出を調整する積立金を多く取り崩したりしなければならず、将来世代が受け取る年金が減ってしまうからだ。
■国民に「痛み」迫れず
 04年の年金改革の時点で、代替率は59・3%。これを5年で57・5%に引き下げる予定だった。ところが、09年の健康診断では逆に62・3%へと上がってしまった。一番の原因は、前述したように、現役世代の収入が下がったのに、それに見合って年金を下げられなかったことにある。年金は高齢者を社会全体で扶養する「国民仕送りクラブ」のようなものだ。支える側の現役世代の暮らしぶりと、年金という仕送りでの生活とのバランスが崩れれば長続きしない。国はこの問題の是正に手を付けないできた。いずれデフレが解消され、マクロ経済スライドも機能し始めるという立場だったが、内実は「将来世代のために今の年金を削る」というつらい措置について、国民を説得する気構えも体力もなかったといえる。体力を奪ったのは、04年以降に相次いだ旧社会保険庁の不祥事だ。年金記録ののぞき見や「宙に浮いた年金」など、ずさんな運営が露呈するなか、厳しい見通しを示して痛みを迫れば不信感を増幅する。そう恐れたのかもしれない。「抜本改革」を求める声が強まった背景には、こうした年金不信の高まりがある。その流れを振り返ってみよう。厚生労働省は09年5月、野党だった民主党の求めに応じ、賃金や物価などの経済前提を「過去10年の平均」にした場合、年金の先行きはどうなるかという試算を公表する。結果は衝撃的だった。マクロ経済スライドが機能しないために、所得代替率が72%まで上がり、2031年に積立金が枯渇するというものだった。もっとも、試算の前提となった「過去10年」は、長期の景気拡大時を含んでいたとはいえ、平均すれば実質経済成長率も賃金・物価もマイナスだった時期だ。これがずっと続けば、年金どころか日本の経済や社会自体が立ちゆかない。
■政権交代からの教訓
 民主党は「破綻しかけている年金を抜本改革する」と主張。最低保障年金の創設を掲げ、国民全員に月7万円以上の年金を約束して政権の座についた。大胆な外科手術の提案である。しかし、与党としての3年3カ月、民主党案は実現の兆しすら見えなかった。制度変更に伴う国民の負担が重くなりすぎるからだ。結局は自民、公明の両党と話し合い、漸進的な修正に立ち戻るしかなかった。生活習慣病には、食事制限と運動を地道に積み重ねるしかない。経済全体の体力を回復させつつ、将来世代も考えて妥当な給付水準を設定する。それが年金をめぐって、政権交代から得た貴重な教訓だろう。安倍政権のもと賃金や物価は上昇基調に転じ、マクロ経済スライドの発動開始も視野に入ってきている。ただ、長期にわたり年金額を抑制していく措置には相当な反発があるはずだ。将来世代への責任を果たすため、政治には強い覚悟が求められる。
   ◆
 来月上旬の最終回では、公的年金の足腰を強くする具体策について検討する。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140425&ng=DGKDASFS24036_U4A420C1EE8000 (日経新聞 2014.4.25) 公的年金運用委員長に米沢氏 リスク投資拡大へ改革 株式・不動産へシフト主張
 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は24日、運用委員会を開き、米沢康博・早大大学院教授を委員長に選んだ。米沢氏は、株式などのリスク投資を拡大すべきだと主張しており、安全性を重視する国内債券中心の運用見直しを求めた政府有識者会議のメンバーだった。リスク投資を増やす方向で運用改革が進みそうだ。米沢氏は「日本経済の再生にGPIFはもっと貢献できる」と述べるなど、株式投資の拡大に理解を示す。インフラや不動産などにも投資対象を広げるように主張する。運用委は8人の外部有識者で構成し、GPIFの運用方針について助言する。今回は6人の委員が交代。委員長代理には堀江貞之・野村総合研究所上席研究員が就いた。ゴールドマン・サックス証券の西川昌宏金融商品開発部部長は、「前委員長の植田和男・東大教授時代とは変わり、株式投資拡大を求める声に配慮するだろう」とみる。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/ASG4S7JZBG4SULFA049.html?ref=nmail
(朝日新聞 2014年4月28日) (報われぬ国)「素人」運用、消える年金
 この3月、京都府南丹市の国際交流会館に集まった建設業者らは不安に包まれていた。「まったく落ち度がないのに負担を強いられないといけないのか」。京都府建設業厚生年金基金が開いた解散説明会だった。この基金は、府内の中小建設業者約180社が社員の厚生年金とそれに上乗せする企業年金を出すためにつくったが、大きな損失を抱えて今年度中にも解散することになった。引き金は、2012年2月に発覚したAIJ投資顧問の巨額詐欺事件だ。AIJは年金の積立金などを集め、いろいろな金融市場に投資して高い利益を目指す「デリバティブ(金融派生商品)」で運用すると説明していた。ところが、実際は運用の失敗をごまかしながらお金を集め、74の厚生年金基金から預かった約1600億円の多くを返せなくなった。京都の基金もAIJに約15億円を預け、ほとんどを失った。昨年11月には、米国の金融商品に投資するプラザアセットマネジメント(東京都)に預けた5億円も失ったことがわかった。そのつけは基金に加入する建設業者に回される。厚生年金を支給するのに必要な積立金が運用の失敗で十数億円足りなくなり、業者らで穴埋めしなければならないからだ。「負担は1千万円ほどになりそうだ。社員のためにと思っていたのに、基金の恩恵はなく、負担ばかりが増えてしまった」。ある業者は頭を抱える。社員の老後資金も細る。解散すれば、公的年金である厚生年金は穴埋めで予定通りもらえるが、上乗せされる予定の企業年金はなくなる。厚生労働省の標準モデルでは、年金のうち月に約7千~1万6千円の企業年金が失われるという。
■退職後もバイト
 福岡県に住む元タクシー運転手のキヨノブさん(62)はすでに企業年金を失っている。08年、勤めていたタクシー会社が福岡県乗用自動車厚生年金基金から脱退したからだ。この基金はリーマン・ショックによる金融危機で運用悪化に拍車がかかり、厚生年金に必要な積立金が半分ほどに落ち込んだ。もっと損失が広がると判断した会社は、社員分の損失を穴埋めして脱退した。脱退した時、キヨノブさんはタクシー会社2社に計12年間勤めた分の企業年金として一時金を受け取った。28万円だった。18歳から働き、いくつかの中小企業に勤めながら厚生年金の保険料を払ってきた。44年払うと特例で年金の満額支給が始まるため、44年たった昨年暮れにタクシー会社をやめた。しかし、安い賃金で働いてきた影響で厚生年金は月に14万円ほどにとどまり、厚生労働省が示す40年加入モデルの約16万円より低い。企業年金が十分にあれば、低い分をカバーできるはずだった。いまは農作業のアルバイトをして年金では足りない生活費を補う。それでもこう思う。「企業年金はないけど、一時金を28万円もらえただけよかった。今後はもらえなくなる人が出てくるんだから」。タクシー会社が入っていた基金は、今年9月に解散することが決まった。年金を受け取っている約1万7千人は企業年金分がカットされ、現役の社員約5千人は企業年金がなくなる。解散するのは、運用成績を立て直せなかったからだ。さらに昨年11月、プラザアセットに預けていた30億円が戻ってこなくなり、積立金が厚生年金の支給に必要な278億円の半分に満たなくなった。「安定資産」という説明を信じて契約した運用だった。プラザは17の厚生年金基金から約86億円を預かって米国の金融商品に投資していた。だが、損失が出て基金のお金をほとんど返せなくなった。この商品は日本では認められていない。多額の生命保険を多くの保険契約者から買い取って保険料を払い、契約者が亡くなると保険金を受け取るという。だが、何らかの理由で保険料を払えなくなり、保険契約が失効したとみられる。福岡県のタクシー会社社長は言う。「基金は理事会にもかけず、説明をうのみにして預けた。穴埋めのお金があれば、少しでも社員の待遇を良くできたのに」。
■つけは受給者へ
 AIJ事件やプラザ問題の背景には、厚生年金や国民年金などを運営していた厚労省・旧社会保険庁(10年から日本年金機構に業務を移管)が厚生年金基金を天下り先にしていた歴史がある。積立金の運用や管理の十分な知識がないまま基金を運営してきた。厚労省によると、09年5月時点で614基金のうち399基金に旧社保庁などの国家公務員の天下り職員が計646人いた。「天下りは基金の設立を認可する際の条件で、社保庁の人事にも組み込まれていた。みんな運用の素人なのに、厚労省は放置した」。大手銀行出身のある基金の常務理事は明かす。京都府建設業厚生年金基金の関係者によると、事務局を取り仕切る常務理事は旧社保庁出身だった。AIJもプラザも、知り合いの旧社保庁OBが紹介したセミナーで知ったという。九州の建設関連業者の基金もAIJ事件で約30億円を失った。当時の旧社保庁出身の常務理事がOBのつながりで運用を任せた結果だ。8月に解散する方向だが、年金を受け取る人は平均で月に約1万2千円の企業年金分がなくなる。いまの常務理事は「天下りが自分の仕事を守るために解散も延ばし、損失が広がった。そのつけが年金受給者と加入企業に回される」と憤る。中小企業のサラリーマンの老後資金が天下りや投資ゲームに利用されたあげく、細っている。
〈厚生年金基金〉 厚生年金基金は、サラリーマンが入る厚生年金の積立金の一部(代行部分)を国から預かり、厚生年金に上乗せする企業年金といっしょに運用している。主に中小企業が業界ごとに集まってつくっている。基金が積み立てる保険料は、代行部分を企業と社員が半々で払い、企業年金部分を企業が払う。1990年代までは約1900基金あり、1200万人を超えるサラリーマンが入っていた。しかし、高齢化が進んで年金を受け取る人が増える一方、保険料を払う現役社員が減ったり、企業業績が悪化したりして基金を存続させるのが厳しくなった。バブル経済崩壊後は株価低迷などで運用も難しくなっている。このため、02年度に厚生年金の代行部分を国に返す「代行返上」が認められると、大企業がつくる基金などが代行返上をして企業年金だけになったり、解散したりした。今年4月1日時点では527基金まで減り、加入者は約400万人になった。このうち466基金が中小企業などが業界ごとにつくった基金だ。AIJ事件をきっかけに、厚労省は今年度から5年間、加入企業が厚生年金の積立金不足の穴埋めを最大30年に分割できるなどの特例を取り入れ、解散しやすくした。74基金がこの特例を使う方針で、さらなる解散ラッシュが始まろうとしている。

*2-4:http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC31005_R30C14A1MM0000/?dg=1
(日経新聞 2014/1/31) 14年度の年金支給、0.7%の減額決定
 厚生労働省は31日、2014年度の公的年金支給額を0.7%引き下げると発表した。国民年金と厚生年金を受給する全ての人が対象で4月分から変更する。国民年金を満額で受け取っている人は13年度と比べ月額で475円減の6万4400円となる。厚生年金を受け取る標準世帯では同1666円減の22万6925円だ。年金生活者の家計は厳しくなりそうだ。4月分の年金は6月に支払われる。公的年金の支給額は毎年、前年の物価や賃金の変動を反映する。00~02年度に、物価が下落しているにもかかわらず特例で年金額を据え置いたことで、もらいすぎの「特例水準」が生じた。政府は段階的に解消することにし、今年4月分から1%減額する予定だった。ただ、物価や賃金が上昇したため、減額幅を0.3%縮める。国民年金も厚生年金も04年度の制度改正で保険料を17年度まで毎年、引き上げることが決まっている。14年度の国民年金の保険料は現在の月額1万5040円が4月分から210円上がり、1万5250円になると発表した。厚労省は4月に、2年間の年金保険料を前払いできる制度を導入するため、15年度の保険料も公表した。15年度は14年度から、さらに月340円引き上げ、1万5590円になる。会社員が加入する厚生年金の保険料は毎年0.354%引き上げられており、今年9月分から17.474%(労使折半)になる。毎年、0.354%ずつ引き上げられている。保険料の引き上げは年金財政が少子高齢化の影響で厳しくなっているためだ。年金を受給する世代が増えて支給額が増大する一方、保険料を支払う制度の支え手は減る傾向にある。保険料の支払いが増え続ければ、現役世代の個人消費に影響がでる。支給額が減る年金生活者、現役世代ともに痛みの分かち合いが続くことになる。


PS(2014.5.6追加):*1に「人口減少で約1800の地方自治体が消滅」と書かれており、それに関して詳しく述べた記事が*3である。*3では、「日本は2008年をピークに人口減少に転じ、推計で2048年に1億人、2100年に5000万人を下回る」とされており、この推計は、「一個体当たりの縄張りが大きくなれば(暮らしやすくなれば)、その生物の繁殖力は上がる」という生物学の基礎を知らない人が描いた直線グラフを元にしており、稚拙だ。人間社会の経済を語るには、数学、統計学、生物学、社会学、経済学の知識が必要である。また、持続可能な経済を作るには、生態系や地球環境も考慮しなければならない。そのため、出生率低下と人口移動のみを言い立て、「消滅の危機」「絶望的」と煽るのは感心しない。

 しかし、「東京と地方のあり方を見直し、人口の社会移動の構造を根本から変える必要がある」というのは賛成で、もうやり始めるべき時である。それには「若者の地方から東京への流出を抑える」「高齢者の東京から地方への移住を促す」等が書かれており、それも一理あるが、生物学や工学を使って農林漁業を高付加価値でスマートな産業にすれば、*4のように、大都市で生まれ育った若者が自然豊かな地方に移住して農林漁業に従事することも十分にありうる。また、「住民が高齢化して運転できなくなる」としているのも、自動車が自動制御装置を標準装備すればかなり解決でき、そういう車は世界でもヒット商品になると思うので、イノベーションを重視すべきだ。

*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140403&ng=DGKDZO69267240S4A400C1KE8000 (日経新聞経済教室 2014.4.3) 
地方戦略都市に資源集中、増田寛也 元総務相・前岩手県知事
〈ポイント〉
  ○人口減は東京集中と地方消滅が同時に進行
  ○地域の戦略都市は研究機能高め雇用を創出
  ○東京は国際化や高齢者の地方移住も検討を
 日本は2008年をピークに人口減少に転じた。推計では48年に1億人、2100年には5000万人を下回る。人口減少は容易には止まらない。合計特殊出生率は05年以降反転し、12年は1.41まで回復したが、出生数は前年より1万3000人減少した。子どもを産む女性の人数が減ったからだ。鍵を握るのは人口の再生産力をもつ20~39歳の若年女性人口で、9割以上の子どもがこの年齢層から生まれる。第2次ベビーブーム世代(1971~74年生まれ)は外れつつあり、それ以下の世代の人数は急減する。仮に30年に出生率が人口減少を食い止めるのに必要とされる2.1になっても、出生数の減少が止まるのは90年ごろとなる。日本特有の人口移動がこれを加速する。高度成長期やバブル経済期、地方から大都市圏へ大規模な人口移動があった。東京圏は現在も流入が止まっていない。政治・経済・文化の中心として集積効果が極めて高く、首都直下地震のリスクが叫ばれつつも全国から若者が集まり続ける。実に国全体の3割、3700万人が東京一極に集中している。先進各国では大都市への人口流入は収束しており、日本だけの現象だ。どの国も人口が密集する大都市圏の出生率は低く、東京都も1.09と全国最下位である。一極集中が人口減少を加速している。問題は、さらなる大規模な人口移動が起こる可能性が高いことだ。若年層が流出し続けた地方は人口の再生産力を失い、大都市圏より早く高齢化した。今後は高齢者が減り、人口減少が一気に進む。一方、大都市圏は流入した人口がこれから高齢化していく。特に東京圏は40年までに横浜市の人口に匹敵する388万人の高齢者が増え、高齢化率35%の超高齢社会となる。15~64歳の生産年齢人口の割合は6割に低下し、医療や介護サービスの供給不足は「深刻」を通り越し「絶望的」な状況になる。地方から医療介護の人材が大量に東京に引っ張られる可能性が高い。日本の人口減少は東京への人口集中と地方の人口消滅が同時に進む。都市部への人口集中が成長を高めると言われる。短期的には正しいが、長期的には逆だ。高齢者減少と若者流出という2つの要因で人口減少が進み、一定の規模を維持できなくなった地方は必要な生活関連サービスを維持できず消滅していく。東京は当面は人口シェアを高めていくが、やがて地方から人口供給が途絶えたとき、東京もまた消滅することになる。筆者は経営者や学識者有志とともに、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(13年3月推計)」を用いて国土全体を俯瞰し、地域ごとの将来像を推計してみた。現在の出生率が続いた場合、若年女性人口が30年後(40年)に半減する地域は、出生率が2.1に回復しても流出によるマイナス効果が上回り、人口減少が止まらなくなる。このうち一定規模の人口(1万人を想定)を維持できない市町村は「消滅可能性」が高い。結果は人口移動が収束する場合、消滅の可能性が高い市町村は243(全体の13.5%)に対し、人口移動が収束しない場合は523(29.1%)と大幅に増えることがわかった。北海道、青森、山形、和歌山、鳥取、島根、高知の7道県ではこうした市町村の割合が5割を超える。
 東京と地方のあり方を見直し、人口の社会移動の構造を根本から変える必要がある。若者の東京流出を抑え、東京の高齢者の地方移住を促す。地方では生活関連サービス機能の維持に向け、郊外の高齢者の中心地移住を促進する。国土全体を俯瞰し、地域ブロックごとに戦略的拠点都市を絞り込み、バラマキではなく集中的に投資することが必要になる。「国土の均衡ある発展」でも「多極分散型国土形成」でもなく、地域の特徴を踏まえた戦略的開発とネットワーク化を通して日本全体の総合力を向上していく。若者の社会移動対策で必要なのは産業政策の立て直しである。戦略的拠点都市を中心に雇用の場をつくり、若者を踏みとどまらせる「ダム」とする。東京は労働や土地などの生産コストが高く日本の高コスト体質を生んでいる。上場企業の5割が本社を首都に置くような国は日本だけであり、変える必要がある。地方の産業政策としては円高による空洞化を経験した現在、工場誘致には限界がある。若者の高学歴化も視野に、時間はかかっても産業の芽となる研究開発機能の創出に取り組むことが必要だ。政策の一環に人材供給やイノベーション(技術革新)の基盤である地方大学の機能強化を組み込み、インフラなど環境整備と連携させていく。地元で学び、地元で働く「人材の循環」を地域に生み出す。農業の立て直しも重要だ。先の推計でも農業振興に成功した秋田県大潟村は消滅を免れる結果となった。職業として農業を志向する若者は増えている。東日本大震災を契機に地元に戻り、IT(情報技術)を生かした農業を始めたり、総務省の「地域おこし協力隊制度」で地方に移住して大学院出のキャリアを生かして地域活性化に貢献したりする事例が各地でみられる。こういう意欲ある若者が活躍できる社会に変えることが、これからの政策の中心となる。地方の高齢者対策では生活関連サービスの多機能集約化が必要である。地域ブロックごとに医療介護の戦略拠点をつくり、そこを中心に多様なサービス機能を集約する。直近10年、地方の雇用を支えたのは高齢者の増加に合わせて拡大した医療介護だったが、高齢者が減っていけば広域で医療介護を支えることは難しくなる。若者の雇用を守るためにも医療介護機能を集約し、高齢者を誘導して街全体のコンパクトシティー化を進める必要がある。問題となるのが、自動車での移動を前提に開発された郊外宅地だ。住民が高齢化して運転できなくなり、生活困難者となる可能性がある。中心地への移住を希望しても、不動産に買い手がつかないケースもある。コミュニティーバスなどでの支援も考えられるが、対象区域が拡大していけば、やがて難しくなるだろう。農地中間管理機構の住宅版として郊外住宅地管理機構のようなものをつくって住宅地を借り上げ、若者に安価に提供するような施策を検討する必要がある。一方、東京は世界の金融センターとして国際競争力を高め、グローバルに高度人材が集う国際都市にしていくことが望ましい。大学の国際化や企業の雇用多様化をもっと大胆に進めていく必要がある。国際機関の本部機能の誘致も重要だ。現在、日本には約40の国際機関事務所があるが、多くは欧米に本部を持つ機関のブランチにすぎない。超高齢化への対策も必要だ。医療介護人材の育成に全力を挙げないと東京はいずれ立ち行かなくなる。地方で余る介護施設の活用を視野に高齢者の地方移住の促進も真剣に取り組むべきだろう。地方の医療介護を中心としたコンパクトシティー化に東京も関わり、東京の高齢者の受け皿としていくべきだ。老後もできる限り住み慣れた土地で過ごしたいと考える人は多い。元気なときに地方にセカンドハウスを持つことを支援するような施策も必要となる。人口が減れば、国民1人当たりの土地や社会資本は増える。これをいかに有効活用できるかが、これからの日本の豊かさを左右する。国には都市や農地といった行政区分を超え、国家戦略として国土利用のグランドデザインをつくり直すことを強く求めたい。
*ますだ・ひろや 51年生まれ。東京大法卒、旧建設省へ。野村総合研究所顧問


PS(2014.5.13追加):今から50年後であれば、*4のように人口減少で労働力が足りなくなることを心配する前に、まず、働きたい人が悪すぎる労働条件でなく働き、一人一人の国民が豊かに暮らせるようにすべきである。そうでなければ、成長あって豊かさなし、国民不在の政治だ。

*4:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2678418.article.html
(佐賀新聞 2014年5月13日) 50年後に1億人維持 / 政府が初の人口目標、調査会提言
 政府の経済財政諮問会議の下に設置された専門調査会は13日、日本経済の持続的な成長に向けた課題をまとめた中間整理案を公表した。出生率を高めるため子どもを生み育てる環境を整え、「50年後に人口1億人程度の維持を目指す」との目標を盛り込んだ。政府が人口に関して明確な数値目標を打ち出すのは初めて。日本の人口は出生率が回復しない場合、現在の約1億2700万人から2060年には約8700万人まで減少する見通し。人口減少で労働力が足りなくなると国の経済成長や財政に大きく影響するため、維持に向けた対策は急務となっている。


PS(2014年5月18日追加):*5のように、公的年金が契約通り支払われても、老後になってからの経済的な備えが足りないと感じている人は66・9%に上り、「生活費を得たい」というのが主な理由で65歳を超えても働きたい人が約76%いる。これは、65歳以上の“老後”が長くなった現在では自然なことであり、定年退職年齢を設けない、もしくは定年退職年齢を設けても最低70歳にするなど、雇用の方からの対応が求められる。

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/64577
(佐賀新聞 2014年5月18日) 「老後の備え不足」67%
 35~64歳を対象にした内閣府の調査で、老後になってからの経済的な備えが足りないと感じている人が66・9%に上ることが17日、分かった。現役世代が公的年金や、貯蓄・退職金の取り崩しだけでは老後の暮らしに不安を抱いている実情が浮き彫りになった。65歳を超えても働くことを希望する人は約半数に上った。調査結果は6月に閣議決定する高齢社会白書に盛り込まれる。調査は昨年11~12月に約6千人を対象に実施。老後の経済的な備えについては「かなり足りない」が50・4%、「少し足りない」が16・5%で、両方を合計した「足りない」は66・9%。5歳ごとに分析すると、「足りない」は40~44歳が74・4%で最も多く、年代が上がるにつれて下がる。一方、「十分だ」と答えた人はわずか1・6%。「最低限はある」の21・7%と合わせると計23・3%だった。老後に生計を支える収入源を三つまでの複数回答で尋ねたところ、「厚生年金などの公的年金」の82・8%が最多で、「貯蓄や退職金の取り崩し」46・2%と「自分か配偶者の給与収入」45・6%が続いた。「子どもなどからの援助や仕送り」「親族からの相続」はいずれも4・0%だった。必要と思う貯蓄額は2千万円(19・7%)、1千万円(19・5%)、3千万円(19・1%)となり、ほぼ同じ割合で並んだ。何歳まで働きたいかについては、「65歳ぐらい」が31・4%。65歳を超えても働くことを希望する人は50・4%で、このうち「働けるうちはいつまでも」が25・7%だった。60歳以降も働きたい理由(三つまでの複数回答)は「生活費を得たいから」が76・7%で圧倒的に多く、「自由に使えるお金が欲しい」の41・4%が続いた。厚生労働省によると、日本人の平均寿命は、2012年には女性86・41歳、男性79・94歳だった。60年には女性90・93歳、男性84・19歳になると推計されている。

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2014.4.12 消費税増税と年金・医療・介護の削減が「税と社会保障の一体改革」だが、こういう愚策しか思いつかないのは何故だろうか? (2014.4.13追加あり)
  
   日本の人口推移      *1-1より      *1-2より

(1)高齢者及び高齢世帯割合の増加
 このブログの2014.4.12に記載したように、医学の進歩で寿命が延びたにもかかわらず、それに見合って出生率が下がらなかった戦後の数年間に、団塊の世代が形成された。団塊の世代は、完全な戦後世代であり、就学時には学校不足、就職時には雇用不足で苦労し、多額の税金や社会保険料を支払い、日本経済を発展させてきた。

 しかし、上のグラフのように、高齢者の全人口に占める割合が次第に大きくなるので、*1-1のように、高齢世帯・高齢者の一人暮らしや、*1-2のような特別養護老人ホームの待機などが、国に新たな対応を迫っているわけである。

 つまり、これらは新しい需要で、「若者の割合が減るから、需要が減少する」という主張は間違いであり、「若者の人口が減るから若者向けの需要は減るが、高齢者向けの需要は確実に増えており、供給が需要の変化に対応しきれていない」と言うのが正しい。なお、保育所、学童保育、介護制度など、働く女性の世帯を前提とした需要にも、供給は全く対応しきれていない。

(2)「年金・医療・介護制度は若者へのつけ回し」とか「高齢者からまき上げよ」と主張する不道徳
 *2-1では、「効率追求し、若者へのつけ回し断て」として、これまで社会保険料を支払ってきた高齢者への給付を若者との対立の構図として減らすよう主張しているが、本当は、団塊の世代の人口ボーナスで払い込まれた社会保険料の管理・運用が杜撰だったこと、これからもその杜撰さが解消されないことが問題なのであって、ポイントは、高齢者と若者の対立ではなく、払い込まれた税金や社会保険料の管理責任、運用責任の問題なのである。

 なお、日経新聞(=官の考え)は、「医療・介護費の合計がGDP比10%を超えたときは、抑制策をとるよう求めた」と主張しているが、医療・介護は、高齢者が多い社会の新たな需要であり、成長の第三の矢の大きな一つになるものだ。無駄を省くのはよいが、何が無駄かの判断には誤りが多すぎる。

 また、*2-1には、「効率化の飽くなき追求こそが制度の持続性を高め、若い世代の保険料や税負担の増大をくい止める抜本策だ」とも書かれているが、若者も、両親の世話や自分の老後に関わることであるため、保険料や税負担の増大をくい止めさえすればよいのではなく、原発に使う無意味な支出をやめ、自然エネルギーや国産資源を開発するなどの第4、第5の矢を育てて、老後の心配のない国を作ってもらった方が有難いのだ。つまり、頭を使えば、国民に痛みを押し付けない改革も可能である。

 さらに、*2-2では、「高齢者マネーを孫へ、教育資金贈与非課税1年」と書かれており、「個人金融資産のうち、6割は60歳以上の高齢者に集中し、子育て世代への資産移転が加速すれば、個人消費への追い風にもなる」などとしているが、高齢者は使わなければならないから貯蓄しているのであり、定年退職時に個人金融資産が多いのは当たり前である。それを子や孫に渡せば、老後、自分は医療や介護も満足に受けられなくなるだろう。そのため、特別富裕な高齢者のために教育資金贈与を非課税にするよりも、誰でも行ける公立学校での教育を充実しようとするのがまっとうな人の考え方である。

(3)消費税増税、地球温暖化対策税について
    
        日本の消費税の推移      *4-1より *4-3より *5より

 金融緩和と円安で物価が上昇した上に、*3のように、消費税率8%となり、物価はさらに3%上昇した。そのため、*4-1の公的年金支給減と併せて、高齢者の生活はさらに苦しくなった。これは、高齢者の生死にもかかわることであり、これと教育資金贈与非課税1年という税制を考えた人には呆れる。

 しかし、地球温暖化対策税でガソリンが値上がりしたというのは、エコカーに変えればCO2排出量が減った上、お釣りがくるし、多くが電気自動車になれば、国富の流出も避けられる。そのため、地球温暖化対策税は、エコなインフラを作ったり、CO2吸収源である森林を手入れしたりするのに使って欲しい。

(4)社会保障の削減について
 *4-1には、社会保障も負担増になり、「受け手である高齢者の年金が減るなど各世代で一定の痛みを分かち合う」としているが、実際には、しわ寄せは全て高齢者に行っている。「消費増税しなければ持続可能な制度にできない」というのも、これまで、このブログで記載してきたように、ためにする議論であったし、国民の幸福を考えた政策ではないのだ。

 *4-2には、「少子高齢化が原因で、高齢者の収入は、徐々に現役世代の50%に近づく見通し」とも記載されているが、外国人労働者や女性を労働に参加させれば、少子高齢化の影響は消すことが出来るので、これもためにする議論である。また、電気代、ガス代、賃料(又は固定資産税)などの諸経費は高齢者でも同じである上、医療・介護費用は高齢者の方が若者よりもかかるため、高齢者の収入は現役世代の半分程度でよいという根拠は不明だ。

 また、「厚生年金と国民年金の積立金は2038~40年に枯渇し、この試算は経済前提として想定利回りを2.5%、物価上昇率を1%と現実的なものにしている」とのことであるが、これだけ日本企業の利回りや収益率が低いのは、まだ原発にしがみついて再生可能エネルギーに移行しなかったり、独占や寡占による高コスト構造を維持していたり、いつまでも加工貿易国でありうると考えて資源を探さなかったりなど、経産省の方針の古さや方針の誤りによるところが大きい。

 *4-3では、厚生労働省が、「割高な入院費を得ようと、病院が患者に入院・退院を短期間に繰り返させる事例が多発しているので、入院医療のルールを見直す」とし、「厚労省は病院から在宅への医療体制のシフトを進めている」とのことだが、在宅医療サービスを充実させて在宅療養を可能にしたり、特別養護老人ホームの待機をなくしたりしてからにしなければ、難民の高齢者が出ることになる。何故なら、患者が入退院を繰り返しながら長期入院しているのは、現在は病院でしかケアできない人がいることが原因だからである。

 *4-4では、「40~64歳が負担する介護保険料が、2014年度は過去最高を更新し、一人当たり月額5,173円となる見込みであることが厚生労働省の推計で分かった」そうだ。しかし、現在、介護保険料は、40歳以上からしか徴収しておらず、65歳以上の保険料は全額自分で払うのが原則で、年齢による差別が甚だしい。18歳以上は大人ということであれば、18歳以上で所得のある人は支払うべきである。何故なら、介護保険制度により、仕事を辞めて家族を介護しなければならない状態になるリスクが避けられ、自分や家族もまた、いざという時には介護の対象になれるからである。

*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140412&ng=DGKDASFS1103B_R10C14A4MM8000 (日経新聞 2014.4.12) 
高齢世帯4割超に 2035年推計、一人暮らし1845万人、企業・社会保障に対応迫る
 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が11日発表した世帯数の将来推計によると、世帯主が65歳以上の高齢世帯は2035年に40.8%と初めて4割を超える。すべての世帯に占める一人暮らしは、3分の1を上回る1845万世帯になる。高齢世帯の急増は生活様式を変え、住宅や家電製品などの消費に大きな影響を及ぼす。企業と政府は先を見越した対応を迫られる。同研究所が10年の国勢調査に基づいて、35年まで5年ごとの都道府県別の世帯の数を推計した。高齢世帯の割合は10年時点では31.2%だが、35年までに約10ポイント上がる。30年から35年にかけての上昇幅は1.5ポイントと、25年から30年にかけての0.9ポイントを大きく上回る。総人口の推計では、65歳以上の比率は60年に39.9%。世帯主の年齢をもとにした世帯数の将来推計はそれよりも25年早く4割に達する。世帯全体の数は20年の5305万世帯をピークに減少に転じる。世帯主の主な収入が年金などに限られたり世帯数そのものが少なくなったりすれば、消費の低迷など経済活動への影響は避けられない。内訳をみると、高齢世帯が40%以上の都道府県は10年時点では秋田県だけだが、35年には41道府県に急増。秋田県はトップで52.1%と初の5割の大台に乗り、世帯主の2人に1人が65歳以上になる。高齢者増加に加え、若者が流出するためだ。都市部でも高齢化が急速に進む。東京都や神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県などは35年までの25年間で、高齢世帯の実数が3割以上増える。高齢世帯に占める一人暮らしの割合は10年の30.7%が、35年には37.7%になる。核家族化は一段と進み、高齢者の孤独死といった社会現象につながる懸念もある。世帯全体に占める一人暮らしの割合は、25年には全都道府県で一人暮らしが最多。35年には37.2%に達する。若者の間でも結婚しない人が増え、家庭の3分の1以上が一人で暮らすという。企業は先を見据えて動く。住宅大手は予想される新築案件の落ち込みを補うため新事業を開拓。積水ハウスはケアの専門家が常駐する高齢者住宅を販売。介護用ロボットの開発も始め、15年の製品化を目指している。セブン―イレブン・ジャパンが力を入れる弁当の宅配サービスは、利用客の6割が60歳以上だ。社会保障制度を持続していくための見直しは欠かせない。日本総合研究所の西沢和彦上席主任研究員は「負担の増加や、富裕層への給付の絞り込みが必要だ」と指摘する。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014032602000135.html (東京新聞 2014年3月26日) 特養待機52万人 5年で10万人増
 厚生労働省は二十五日、特別養護老人ホームへの入所を希望しているのに入所できていない「待機者」と呼ばれるお年寄りが全国で約五十二万二千人いるとの今年三月の集計結果を公表した。二〇〇九年十二月の前回集計の約四十二万一千人から約十万人増えた。高齢化が進み需要が膨らむ一方、施設整備が追いつかない現状が明確になった。在宅の待機者約二十五万八千人のうち、心身の症状が重く、特に入所を必要とする中重度の「要介護3~5」は計約十五万二千人で軽度の「要介護1、2」は計約十万六千人。サービス付き高齢者住宅やグループホームなど自宅以外で暮らす待機者は要介護1~5で約二十六万四千人だった。この五年間で特養の定員は約17%増えたが、待機者の増加率が約24%と上回った。調査は各都道府県が把握している入所申し込みの状況をまとめた。最多は東京都の四万三千三百八十四人で、宮城県の三万八千八百八十五人、神奈川県の二万八千五百三十六人が続いた。宮城県は一度に複数の申し込みをした人を重複して数えているため、実数と差がある。
◆潜在化 在宅支援も後手
 特別養護老人ホームの入所待機者が五年前より十万人も増加した。政府は二〇一五年四月から新規入所者を原則として中重度の要介護3~5に絞る。待機者を減らす効果は不透明な上、本当に必要な人がサービスを受けられなくなることが懸念される。待機者のうち要介護3~5は三十四万四千人。一方で特養の定員は五年前の集計時から約七万五千人しか増えていない。待機者が多い都市圏では、特養を運営する市町村などの財政難や土地確保が容易でないことから、新しく建てることは難しくなる一方だ。特養の入所者限定方針は政府が今国会に提出した地域医療・介護総合確保推進法案に盛り込まれている。対象外になる要介護1、2は家庭で虐待を受けたり、認知症で徘徊(はいかい)したりする可能性があれば、特例として入所が認められる。入所は実質的に施設が判断する。厚生労働省は「特養はより困っている人に使ってもらう」と説明。軽度の人は「自宅で受けられる介護サービスを充実させ、より長く暮らせるようにしたい」として自宅での生活を支える巡回サービスや在宅医療の充実、サービス付き高齢者住宅の整備などに取り組む。だが、高齢化の進展に追いつけるか疑問だ。淑徳大の結城康博教授(社会保障論)は「高齢化が進んだとはいえ、入所を申し込む人が大幅に増えたのは、厚労省の政策への疑問の表れだ」と指摘。特養の新設や在宅サービスの充実に必要な介護人材の確保策などを急ぐ必要性を強調した。

*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140215&ng=DGKDZO66870150V10C14A2EA1000 (日経新聞社説 2014.2.15) 効率追求し若者へのつけ回し断て
 1949年に生まれた最後の団塊世代がことし65歳になる。総人口に占める高齢者の割合は一段と高まる。日本人が長命になったのは喜ばしいが、それは医療・介護サービスを旺盛に消費する層が劇的に増えるのを意味する。国民医療費と介護保険サービス費を合わせた額は、足元で年50兆円を突破し、国内総生産(GDP)の10%を超えたもようだ。
●GDPの10%を突破
 アベノミクスは成長路線への回帰を追求しているが、医療・介護費の膨張ペースはもっと速い。日本経済新聞社は2010年3月に公表した改革提言で、医療・介護費の合計がGDP比10%を超えたときは、抑制策をとるよう求めた。今がそのときである。しかし制度が内包する無駄を省き、サービス提供を効率化させ、医療・介護費が膨れあがるのを抑える意欲は与党の自公両党、厚生労働省ともに薄い。4月の消費税増税が社会保障費のやり繰りをいっとき楽にすることも、改革への意欲をそいでいる。効率化の飽くなき追求こそが制度の持続性を高め、若い世代の保険料や税負担の増大をくい止める抜本策である。政府・与党はタガを締め改革にまい進してほしい。1人あたり医療費は現状、次のようなものだ。生涯に消費する医療費は男2359万円、女2609万円に達する。11年度は75歳以上の後期高齢者が92万円を使ったのに対して現役世代は20万円だ。負担・給付の世代間格差が浮き彫りなのは、年金と同じ構図だ。安倍政権は4月から70代前半の窓口負担を法定の原則20%にする。しかし70歳になる人から順に適用するので、すべての対象者を20%にするのに5年の歳月を費やす。法の定めどおり全対象者を一度に20%にするのが筋だった。13年末の財務、厚労両相の閣僚折衝を経て政権は診療報酬を14年度に0.1%増額する。これは消費税増税で病院・診療所の仕入れ費がかさむ分の手当てを含む。具体的にどう手当てするか。厚労相の諮問機関、中央社会保険医療協議会は初診料を120円、再診料を30円上げるよう答申した。初再診料という基本料金の引き上げは、すべての患者にその分が転嫁される。企業の健康保険組合や市区町村が運営する国民健康保険の給付もその分、増大する。これは本来、消費税がかからないはずの保険診療費に消費税を課しているのと変わりない。ならば診療報酬を課税対象にして患者や健保運営者に税の負担意識をもたせるほうがすっきりするのではないか。15年10月に予定している再増税時の検討課題にしてほしい。政権は14年度に人口高齢化に即した病棟再編を促すため、国と地方自治体の分を合わせ900億円強の基金をつくる方針だ。財源は消費税収と看護師養成などに使っていた一般財源を充てる。急性期の患者に対応する病床は減らし、慢性期対応の病床を増やしたり在宅医療を拡充したりするという。
●基金ばらまき排せ
 しかし政府や自治体がカネを配れば医療の提供体制がすんなり変わるとは考えにくい。医療法人などが運営する民間病院に高度な急性期医療を担いたいという意欲をもつ経営者が少なからずいるなかで、この基金が実効を上げられるのか。数ある官製ファンドと同様に、基金を単なる病院へのばらまき原資にしてはなるまい。これから著しく増える後期高齢者のなかには慢性疾患をかかえ、いくつかの病気を併発している人が少なくない。治療より介護が必要な人も増えている。その観点から、首相官邸の社会保障制度改革国民会議が昨夏、病院完結型の医療から地域完結型の医療への移行を提言したのは的確だった。問題はその方法だ。日本の患者は大学病院など設備が整った病院への志向がつよい。そうした病院は重篤な急性期患者の治療に専念するのが本来の役割だが、だれもが行きたい病院にかかれる自由アクセス制がその発揮を阻んでいる面がある。そうした弊害を減らすには、どんな病気もひと通り診られる家庭医の養成を急ぐのが有効である。保険財政、提供体制の両面で推し進めるべき医療改革は山積している。その行程を明確にするのが政府・与党の責務である。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140407&ng=DGKDASGC0300L_T00C14A4NN7000 (日経新聞 2014.4.7) 
高齢者マネー、孫へ 、教育資金贈与非課税1年 信託4行で4300億円
 祖父母から孫への教育資金の贈与が1500万円まで非課税になる制度が始まって、4月1日で1年がたった。贈与額は大手信託銀行4行の合計で4300億円、契約数は6万5千件に達する。当初は2015年末までに5万4000件を見込んでいたが1年で上回った。高齢者マネーがゆっくりと動き出した。東京都に住む大沢隆治さん(仮名、81)は、りそな銀行の「きょういく信託」を利用し7人の孫に教育費として300万円ずつ贈与した。「孫のためになるならと決断した。相続対策になるのもありがたい」と語る。仮にこの制度を使わなかった場合、約130万円が贈与税として課税された計算になる。すでに塾代や修学旅行費として数十万円が引き出された。3人の子供に贈与を受けた娘の大沢美智代さん(仮名、50)は「浮いたお金で車をワゴン車に買い替えた」と話す。日本の1600兆円の個人金融資産のうち、6割は60歳以上の高齢者に集中している。りそなホールディングスの東和浩社長は「子育て世代への資産移転が加速すれば、個人消費への追い風にもなる」と強調する。同社は旧大和銀行の部門を引き継ぐ信託兼営。当初、15年末までに7500件を見込んでいた契約数がすでに1万件を超えた。三菱UFJ信託銀行も約2万9000件、三井住友信託銀行は約2万件と想定を上回る契約数となった。好調な実績を受けて、信託協会では15年末で終了する予定の非課税制度の恒久化を国に要望する方針だ。協会長の中野武夫みずほ信託銀行社長は「出産や育児への非課税対象の拡大も要望できないか検討したい」と話す。もっとも贈与信託は信託設定時の手数料をとっておらず「商品の収益性は低い」(信託関係者)。信託銀行は贈与信託を入り口にした関連ビジネスの拡大で収益確保につなげる考えだ。三井住友信託銀行は、贈与信託の契約者に定期預金の金利や遺言信託の手数料を優遇して取引を広げている。2月末までに預金は200億円、遺言信託は約100件が集まった。高齢富裕層をターゲットに投資信託も広げ、これまでに約170億円を販売している。三菱UFJ信託銀行でも、ここ1年間で資産形成の相談を受けるコンサルタントを2倍超の400人に増員。今後さらに数十人増やし、全国の支店に配置する方針だ。全国の地方銀行も、贈与非課税制度を使った預金商品を取り扱う。横浜銀行や千葉銀行などの大手地銀では数十億円の預金を集めた。高齢富裕層との関係強化を目指す地銀にとっては、制度を追い風に関連ビジネスの拡大を図る狙いもある。今後の課題は贈与を受けた7万人近い孫と、その親世代とのビジネスをいかに手掛けるかだ。高齢者が顧客の中心である信託銀行では「若年層との取引拡大が課題」(大手信託銀行幹部)。給与振込口座として利用してもらえる施策を打ち出すなど対応を急ぐ。

*3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/20140402/CK2014040202000150.html (東京新聞 2014年4月2日) 消費税8%「生活さらに苦しく」 お年寄りらため息
 消費税率が5%から8%に上がった一日。県内のお年寄りや主婦からは「生活がさらに苦しくなる」とため息が漏れた。増税後の出費を少しでも減らそうと、先月末に大勢の客が詰め掛けた小売店や定期券売り場などは、この日は客足が遠のき閑散としていた。
■暮らし
「さらに暮らしにくい世の中になった」。秩父市で一日、病院の帰りでバスを待っていた女性(85)は「年金は下がるし、自宅で食べるための畑仕事も病気やけがで最近はできなくなった。政治家はお金持ちばかりで、生活に困っている人のことが分からないのでは」と苦言を呈した。熊谷市の無職千田(ちだ)吉夫さん(78)も妻(77)と年金暮らしだ。「生活がさらに苦しくなる。これまで買っていたちくわは九十八円だが、これからは七十八円の方にする。新聞の折り込みチラシなどを見て、安い商品を選ぼうと思う」。買い物帰りの川口市の主婦(31)は「モノの値段が上がったのは確認したけど、まだ実感がない。これからじわじわ来ると思う。幼児三人の育児真っ最中で食費もかかる。不要な物は買わないようにしたい」と話した。
■大手企業
 客離れを防ぐため、看板商品などの価格を据え置いた県内企業も。首都圏で中華料理チェーン「日高屋」を展開するハイデイ日高(さいたま市大宮区)は、「うまい中華そば 税込390円」と店舗の看板にも掲げているラーメンの価格を据え置き、実質値下げした。他の商品で十円単位の値上げを行うなどしている。担当者は「低価格での商品が基本なので単純には上げられない。できる範囲で対応した」と話す。全国で約千八百店の衣料品店を運営するしまむら(さいたま市北区)も、先月三十一日までに店頭に並んでいた商品は、表示価格を改定せずに本体価格を下げる実質値下げに踏み切った。同社は「値札付け替えなどの作業量、コストが膨大なため」と説明。四月以降の入荷商品からは新しい税率を反映させているという。
■小売店
 消費税と地球温暖化対策税のダブル増税により、レギュラーガソリンは一日から一リットル当たり五円程度値上がりした。さいたま市浦和区の国道17号沿いにあるガソリンスタンドでは先月三十一日は通常の倍の約一万二千リットルを販売したが、一日は閑散としていた。店長の男性は「しばらくは通常の半分くらいの販売量になると思う」と話した。JR浦和駅近くのバス定期券売り場。先月三十一日には最長十五メートルの行列ができたが、一日は時折、三、四人が並ぶ程度だった。この日定期券を購入した四十代女性は「忙しくて増税前に間に合わなかった。六カ月定期で千五百円ほど上がったので、もったいなかった」と悔しがった。

*4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140401&ng=DGKDASFS3102B_R30C14A3EE8000 (日経新聞 2014.4.1) 
社会保障も負担増に 70歳医療費、窓口で2割 公的年金支給は0.7%減
 4月から医療や年金の負担が増える。現役世代や企業の保険料は毎年のように上がってきた。今年は受け手である高齢者の年金が減るなど各世代で一定の痛みを分かち合う。消費増税で財源確保に一歩踏み出すが、持続可能な制度にするには給付見直しが課題になる。70~74歳の医療費の窓口負担は、4月から段階的に1割から2割に上がる。具体的には4月2日以降70歳になった人が2割負担となる。もともと70~74歳の窓口負担は法律上、2008年度から2割となるはずだった。だが高齢者の反発を恐れた歴代政権が、特例として毎年約2千億円もの補正予算を組んで1割負担にとどめてきた。医療分野では1日から診療報酬が改定され、医療機関に支払う料金が上がる。消費増税に伴い、医科の初診料は、2700円から120円増の2820円にする。再診料は現行の690円から720円にする。窓口負担が3割の現役世代では、846円を初診料として支払う。残りは健康保険組合が負担する。年金分野は高齢者の給付が減り、現役世代も保険料負担が増す。公的年金の支給額は、4月分(受け取りは6月)から0.7%下がる。国民年金を満額で受け取っている人は13年度と比べ月額475円減の6万4400円となる。厚生年金を受け取る標準世帯では1666円減の22万6925円になる。第一生命経済研究所の試算によると、年金と介護の14年度の負担は、家計全体では前年度より4300億円、企業は3800億円増えるという。

*4-2:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDC0600M_W4A300C1EA2000/?n_cid=TPRN0003 (日経新聞 2014/3/7) きしむ公的年金、改善探る 「100年安心」へ検証開始
 「100年安心」をうたう公的年金の財政検証が始まった。厚生労働省は6日開いた社会保障審議会の専門委員会で、積立金の運用利回り目標などを5年に1度検証するための経済前提を示した。利回り想定は3~6%と幅を持たせつつ、標準シナリオは4.2%とし、国債偏重の運用から脱却するよう報告書に盛り込み、高い利回りの実現を狙う。厚労省は6月をメドに検証結果をまとめる。運用見直しや年金改革の行方と課題を探った。現行制度は公的年金の給付水準を「現役世代の収入の5割」とし、法律で保証している。2009年の前回検証では、100年にわたって50%を割ることはないとの検証結果が出て、年金制度改革は行われなかった。09年度の給付水準は62%だが、少子高齢化で徐々に50%に近づく見通しだ。12年度の年金支払額は約50兆円なのに対し、保険料収入は30兆円にすぎない。残りは税金と約129兆円ある積立金の取り崩しで補っている。09年の検証では保険料の落ち込みと年金額の増加を補うために、利回り目標を04年の3.2%から4.1%に修正。運用益の想定をかさ上げして、100年は積立金が枯渇しないというシナリオで帳尻を合わせた。金融危機直後だったにもかかわらず、高い利回り目標は「実態とかけ離れている」との強い批判を浴びた。そこで今回、厚労省は安倍政権の経済政策「アベノミクス」が成功して日本経済が成長するケースのほか、低成長で推移するなどの8つのシナリオを用意した。しかし専門委では植田和男東大教授らが「(高成長シナリオの)実現可能性は非常に低い」と指摘。目標の実現を疑問視する意見が相次いだ。学習院大学の鈴木亘教授が昨年8月に出した財政試算では、12年11月以降の株高を勘案しても、厚生年金と国民年金の積立金は2038~40年に枯渇してしまうという。この試算は経済前提として想定利回りを2.5%、物価上昇率を1%と現実的なものにしている。高い利回りを実現するため、専門委は公的年金の資金をあずかる年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用は「国内債券中心とする必要はない」と指摘した。13年末時点でGPIFは全資産の55%を国内債券に振り向けている。10年物国債の流通利回りは現在0.6%程度にすぎず、高い利回りはとうてい期待できない。さらに、財政検証では物価上昇率を0.6~2%とした。インフレが長期金利の上昇(債券価格の下落)につながると、見た目の債券利回りは改善する。だがGPIFが保有している債券は値下がりし、含み損を抱えてしまう恐れもある。社保審の報告書は、国内外の株式をはじめ、物価連動国債や不動産投資信託(REIT)なども投資対象として幅広く検討するよう求めた。そこで厚労省とGPIFは財政検証と並行して運用方針の見直しを進める。新たな投資先としては株式への運用を増やすことが有力だ。6日の東京市場では国債中心の運用からの脱却方針が伝わると、日経平均株価は大幅に上昇し、節目の1万5000円を回復した。株式の比率を高めれば相場変動による損失のリスクは大きくなるが、「運用比率を1%上げるだけで日本株には1兆円超の買い需要が出る」(大和証券の塩村賢史シニアストラテジスト)との推計もある。「GPIFが円建ての債券を売り、ドル建ての外国債券や株式を買えば円安要因。日本株には二重に追い風」(ドルトン・キャピタル・ジャパンの松本史雄ファンドマネージャー)と期待する声も出ている。確かに、アベノミクスによる株高の追い風で、GPIFは12年度で9.5%の運用利回りを実現した。一方でリーマン・ショックが起きた08年度にはマイナス6.8%に落ち込んだこともあり、3~6%の利回りを安定的に確保するのは難しい。年金積立金の自主運用を始めた01年度から12年度までの平均利回りは2.2%どまり。GPIF設立後の06~12年度の平均は1.5%で、今回の目標の下限である3%にも届かない。運用改革だけで目標を達成するのは至難の業だ。運用改革で足りないとすれば、年金給付を抑え、保険料負担を増やすといった年金制度そのものの大胆な改革に踏み込めるかどうかに注目が集まる。厚労省は今回の検証で初めて保険料の納付期間を延長した場合や、マクロ経済スライドと呼ぶ給付抑制策をデフレ下でも発動した場合について特別に試算する方針だ。現行制度では、保険料は20歳から60歳まで払うことになっている。しかし、60歳定年が崩れ、65歳までの高齢者雇用が定着すれば、支払期間を65歳まで延長するのが自然との考えからだ。このほか、年金を受け取り始める年齢を現行の65歳から後ずれさせる支給開始年齢の引き上げも検討課題となりそうだ。厚労省は3月中に特別試算の枠組みを決める。厚労省はさまざまなパターンの試算を出すことで、年金制度改革の議論を活発化したい考えだ。

*4-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140326&ng=DGKDASFS2503B_V20C14A3MM8000 (日経新聞 2014.3.26) 
再入院、病院の乱用防止 定額払い、基準厳しく 厚労省、医療費膨張に歯止め
 厚生労働省は4月から入院医療のルールを見直す。割高な入院費を得ようと、病院が患者に入院・退院を短期間に繰り返させる事例が多発しているためだ。再入院までの期間を長くしたり、受け入れ可能な症状を絞り込んだりして再入院を認める基準を厳しくする。患者負担を抑えながら、膨らみ続ける医療費に歯止めをかけ、病院から在宅医療への移行を進める。医療費は年40兆円近くあり、高齢化の進展に伴って1兆円規模で毎年膨らんでいる。入院費は全体の4割の15兆円。定額払いだけで4兆円程度に上っており、今回の見直しで数百億円の費用が抑制できるとみている。新ルールは診療報酬改定にあわせて実施。入院費の定額払い制度を利用する医療機関が対象だ。定額払いは2003年の導入後、全国に7500ある一般病院のうち1600近くに広がった。定額払いは手術料など出来高払いの部分を除き、入院直後の料金が高く、期間が長くなると安くなる。例えば肺炎で入院した場合、7日までは1日あたり2万7800円、14日までは2万円強、30日までは1万7千円台と下がっていく。ところが今のルールでは、退院から3日を超えると、入院直後の料金からやり直すことになる。厚労省調査によると、一時退院後1~3日以内に再入院したケースは年3万件。4日後の再入院は2万件、5日後は3万5千件と大幅に増える。入院初期の高い料金を目当てに患者を一時的に帰宅させ、再入院させる傾向が否めない。ルール見直しは、知らず知らずのうちに高い入院費を払っていた患者にとって費用負担が減る利点がある。新ルールでは再入院を認める基準を厳格化し、まず再入院までの期間を最低7日間空ける。7日に満たない場合、それ以前の入院が続いているとみなし、料金請求の仕切り直しを認めない。症状も絞り込む。現行ルールを使い、最初に患者を受け入れた症状と異なる症状にして再入院を繰り返す医療機関があるためだ。これまでは500超の症状で再入院を認めてきたが、18分野に絞り、病院による意図的な病名の書き換えを防ぐ。再入院が難しくなることで長期入院が本当に必要な患者までが排除される懸念も残る。厚労省は病院から在宅への医療体制のシフトを進めているが、在宅医療サービスを充実させる政策のバランスが問われている。

*4-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014021902000125.html (東京新聞 2014年2月19日)介護保険料現役5000円超 厚労省推計 制度開始時の2.5倍
 四十~六十四歳が負担する介護保険料が二〇一四年度は過去最高を更新し、一人当たり月額五千二百七十三円となる見込みであることが十八日、厚生労働省の推計で分かった。現役世代の保険料見込みが五千円を突破するのは初めて。介護保険制度を開始した〇〇年度の二千七十五円から約二・五倍に膨らんだ。高齢者の増加と現役世代の減少が保険料の上昇につながっており、厚労省は今後もこの傾向が続くとみている。サラリーマンの場合、二五年度に保険料が一二年度の約二倍になるとの政府試算もある。今後も厚生年金の保険料率引き上げが予定通り実施されるなど、現役世代の負担は重くなる一方で、増大する社会保障給付との均衡をどう図っていくかが課題だ。利用者負担分を除いた一四年度の介護給付費は、介護予防事業も含め総額九兆三千三十一億円になる見通し。消費税増税に伴う物価上昇や高齢化の進行で膨張が見込まれるためだ。給付費の50%を保険料で賄い、うち四十~六十四歳が29%分、六十五歳以上が21%分を負担する。四十~六十四歳の保険料は、厚労省の推計を基に健康保険組合など公的医療保険の運営主体が毎年度改定する。一三年度は四千九百六十六円(推計)だが、今年四月分から三百七円増える計算だ。本人が払うのは原則半額で、医療の保険料と合算して徴収される。支払額は加入者の所得などで異なる。六十五歳以上の保険料は三年ごとに見直される仕組みで、一二~一四年度は一人当たり月額四千九百七十二円(全国平均)。一五~一七年度の保険料は各市町村が一五年三月までに決めるが、こちらも五千円を超える可能性が高い。今回の推計は、介護給付費の見込み額から現役世代の負担分を仮定し、想定される加入者数で割るなどして算出した。
<介護保険料>介護保険運営のため40歳以上が払う保険料。介護サービスにかかる総費用は、利用者が1割を負担し、残りを公費と保険料で半分ずつ賄う仕組み。40~64歳(2号被保険者)の保険料は加入する公的医療保険を通じて納め、自己負担は原則半額。サラリーマンなら事業主が、自営業者なら公費で残りを負担する。65歳以上(1号被保険者)の保険料は全額自分で払うのが原則で自治体が所得に応じて段階的に設定する。低所得者には負担軽減措置がある。


PS(2014.4.13追加):*5のような電話世論調査は、質問の仕方によって回答が変わるが、年金生活者やぎりぎりで生活している人には、消費税率が8%に引き上げられて以降、「消費金額はこれ以上減らせないが、消費数量は減っている」という選択肢を作るべきだったと思う。何故なら、それが実情だからだ。なお、「景気、景気」と言って内容のないものに惑わされるのは、生活者として家計管理をしていない人(主に男性)ではないだろうか。

*5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014041302000137.html
(東京新聞 2014年4月13日) エネ計画53%評価せず 消費増税後に不安67%
 共同通信社が十一、十二両日に実施した全国電話世論調査によると、消費税率が8%に引き上げられた四月一日以降、消費を「控えていない」とした人は63・7%で、「控えている」の34・8%を上回った。ただ増税後の日本経済の先行きに不安を感じているとの回答は「ある程度」を含め計67・5%に上った。不安を感じていない人の割合は計30・5%にとどまり、今後の景気への不安感が根強い現状がうかがえる。 集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更に反対は52・1%、賛成は38・0%だった。安倍内閣の支持率は59・8%で前回三月二十二、二十三両日の調査より2・9ポイント上昇した。不支持率は26・7%。 二〇一五年十月に予定される消費税率10%への引き上げに賛成は36・2%、反対は57・8%。食料など生活必需品の税率を抑える軽減税率を導入する方がよいとの回答は81・0%に達した。原発再稼働を進める方針を明記した政府の「エネルギー基本計画」を評価すると答えたのは39・0%で、評価しないは53・8%。武器輸出三原則に代わる新たな輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」には賛成36・2%、反対50・4%だった。政党支持率は自民党が42・4%で前回から1・7ポイント増。民主党5・3%、公明党4・0%、日本維新の会3・8%、共産党3・2%、みんなの党0・9%、社民党0・6%、結いの党0・4%、生活の党と新党改革が0・1%で、支持政党なし38・3%だった。みんなの党は全国電話世論調査の対象となった〇九年八月三十一日、九月一日の調査以来最低となった。

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