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2014.5.24 配偶者控除廃止論について-所得税法改正以前に、まず女性の無償労働を有償化すれば、どれだけの所得に当たるかを計算すべきである。(2014年5月25日追加あり)
       

(1)その世帯の本当の所得はいくらか?←女性の無償労働も考慮に入れるべき
 *2の改善はまあよいが、保育利用料の上限が据え置かれても、年収470万~640万円の世帯が、3歳以上6歳以下の子(4万1500円/月)と0~2歳までの子(4万4500円/月)の二人を保育園に通わせて働いていると、正規の保育料だけで8万6000円/月(103万2000円/年)を支払わなければならない。時間外や子どもの病気などで保育園を利用できない時に、保育ママ等を利用すれば、子育ての経費はさらに高くなる。

 女性がフルタイムで働く場合は、家事はあまりできないため(両方を普通にやれば過重労働になる)、お手伝いさんを雇ったり、掃除を外注したり、中食(なかしょく)のために調理済食品を買ったりと、家事を外部委託することが多くなるが、それも女性が外で働くための経費である。この費用を、小さく見積もって毎月8~10万円程度だとすれば、前期の保育料と合わせて、女性が働くために家事を外部化した費用は、約16.6~18.6万円/月(199.2~223.2万円/年)になる。その逆に、0~2歳と3歳以上6歳以下の2人の子を自分で育て家事を外部化していない専業主婦は、少なく見積もっても約16.6~18.6万円/月(199.2~223.2万円/年)という金額を稼ぎ出しているのであり、これまでは、とかく家事労働の対価は無償として計測されなかったが、外部の人に頼めば、これだけの報酬を要求されるものなのだ。

 これは、*3、*4の介護も同じで、外で働くことにより得る収入が、働くために増加する経費よりも小さい人は、仕事をやめて自分でやるのが、その時点の経済性だけ見ると合理性のある選択となる。

 なお、私は、「保育サービス」は役務提供であるため、電気料金、郵便料金、運賃などと同様、所得によって料金が変わるのはおかしいと思っている。同じサービスは同じ料金で提供するのが当然であるにもかかわらず、保育サービスの料金体系は、頑張る夫婦にペナルティーを課しているかのようだ。所得の再分配機能は所得税で果たしているため、保育料でまで行う必要はないにもかかわらずである。

(2)負担力主義の所得税制下で、無償労働の対価をどう扱うべきか→2分2乗方式へ?
 税は負担力のある人が応分の負担をする仕組みであるため、無償労働には負担力が無いという理由で所得税がかからない。また、共働き夫婦が支払う家事の外部委託費用は経費として考慮されないため、共働き世帯と片働き世帯の税負担には不公平が生じる。これは、*1のような、たった年間38万円の配偶者控除を残すとか廃止するとかで解決する問題ではない。

 わが国は、*5に書かれているように、1950年のシャウプ勧告以来、個人単位課税方式を採用するようになり、私も、これは合理的だと思うが、アメリカ(2分2乗方式も選択可)と同様、法律婚をしている場合には世帯単位課税も選択できるようにするのがよいと考える。世帯単位課税が選択できれば、働いているのに無報酬の配偶者の所得がもう一方の配偶者の課税時に考慮され、低い所得税率が適用されて所得税が低くなり、夫婦間の所得の組み合わせによって課税額が異なることがなくなるからだ。

(3)扶養家族の数も考慮したn分n乗方式の方が、さらによいのでは?
 *5に書かれているように、フランスでは夫婦合算の所得を子どもも加えた世帯人数に分割して課税するn分n乗方式が採用されている。この制度では、扶養家族も1/2として人数に入れるため、子どもの数が多い世帯は所得税がそれだけ低くなる。そのため、この税制は、当然のことをしながら、人口政策に効果を発揮する。

(4)結論
 確定申告を要件とし、世帯単位課税を選択した方が課税額が小さくなるように税率を設定して、世帯単位での課税を選択することも可能にすれば、結婚する動機付けが増すメリットがある。また、フランス型のn分n乗方式なら、子どもの数が増えるとそれに応じて所得税が低くなるため、人口政策にもなる。そして、それは、たった38万円の扶養控除を認めるよりも、実態に即しており合理的である。

 そのため、わが国は、個人所得課税を基本としながらも、家族があってそちらの方がメリットのある人は、フランス型のn分n乗方式を選択できるようにし、どちらを選択した場合でも、一定の家事外部委託費用は経費として認めるのがよいと考える。

*1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014042102000123.html (東京新聞社説  2014年4月21日) 配偶者控除 女性就労の壁は本当か
 安倍晋三首相の意向で政府税制調査会が始めた「配偶者控除」廃止議論は到底理解できない。女性就労の妨げとの論理の乱暴さもさることながら、廃止による大幅増税は家計への打撃が大きすぎる。配偶者控除をめぐっては「百三万円の壁」という言葉が定着している。たとえばサラリーマンの妻がパート勤めで年収が百三万円を超えると、本人に所得税がかかるうえ、夫には配偶者控除が適用されなくなって所得税額が増える。そのため妻が百三万円を超えないよう労働時間を抑え、それが壁になっていることを指す。政府は過去に「壁」の解消をねらって「配偶者特別控除」を追加し、百四十一万円未満までは、夫の年収が一千万円以下であれば一定の控除が受けられるようにした。だが、特別控除による恩恵はそれほど大きくないため、「百三万円の壁」が依然として高い。それなら配偶者控除を廃止すれば女性の就労は進むだろうというのが廃止論者の考えであり、女性の社会進出拡大を成長戦略の一つに掲げる安倍首相の意向である。しかし、話はそんなに単純ではあるまい。女性の社会進出を阻んでいる大きな要因は、保育所の待機児童や介護施設の定員不足に代表される「子どもを預けられず、介護も女性任せ」で、とても安心して働きには出られない社会構造にあるのではないのか。女性の就労促進といいながら、パートなど低賃金労働の選択肢しかない状況で女性を都合よく活用しようという政府や経済界の意図が透けてみえるようである。配偶者控除の廃止が女性の就労促進につながるかは、はっきりせず、ほとんど効果がないとの研究もある。逆に、廃止が家計に与える影響の甚大さは明白だ。財務省によると、「配偶者控除」の適用者は約一千四百万人で、減税額は六千億円に上る。「配偶者特別控除」も約百万人、三百億円だ。もし配偶者控除が廃止になると、年収五百万円の家庭で約七万円の増税になる。消費税率8%への引き上げと、すでに廃止された年少扶養控除を合わせれば年間負担増は二十五万円を超える。相次ぐ増税と物価上昇で家計は疲弊する。増税分をまかなうために女性はもっと働け、ということか。それが成長戦略なのか。自民党は昨年の参院選、一昨年の衆院選で「配偶者控除の維持」をマニフェストに掲げていた。公約違反は許されないはずだ。

*2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11150429.html
(朝日新聞 2014年5月23日) 保育利用料、上限ほぼ据え置き 新制度の価格案公表
 来年4月に始まる保育・幼児教育の新制度で、政府は22日、利用者の負担額や、事業者に払われるサービスごとの「公定価格」の案を公表した。利用料の上限はほぼ今の水準に据え置く。サービスの質の向上に取り組む施設の収入は、今より1割程度増えるようにする。新制度は、消費増税を元手にした社会保障充実の目玉。制度づくりはほぼ終わり、今後は各市町村が具体的な運用の検討に入る。保育の利用料は、国が決めた上限額の範囲で各市町村が決める。上限より安くするケースが多く、差額は自治体が負担する。新制度の上限額は、認可保育所や、保育所と幼稚園の機能を併せ持つ認定こども園、小規模保育などで共通。保護者の所得で額は変わる。利用が1日最長11時間(標準時間)の場合、上限額はほぼ現行通りとする。最長8時間(短時間)の利用では、標準より1・7%ほど安くする。金額は子の年齢で二つの区分があり、多くの場合、「0~2歳」を「3歳以上」より月3千円高くする。新制度では、利用料が割高といわれる認可外の保育所や保育ママなども、条件を満たせば認可制度に入れるようになる。多くの利用者で負担が軽くなるとみられる。また幼稚園でも上限額は基本的に今と同程度とする。ただ、独自の幼児教育サービスなどの費用を別に徴収することもできる。一方、事業者に払われる「公定価格」では、質の向上をねらったさまざまな項目を導入。私立施設で働く職員の賃金を平均3%上げるために単価を引き上げるほか、3歳児向けに職員を手厚く配置すると加算される仕組みなどを設ける。その結果、消費税率が10%になり、必要な財源の確保が見込まれる2017年度には、標準的な規模の認可保育所や認定こども園などの各施設が質の向上を進めた場合、収入が今より1割前後増える見通しだ。ただ、待機児童の解消策では、中途半端になった点もある。政府は、認定こども園向けのサービス単価を高めに設定し、定員割れが目立つ幼稚園からの移行を促すことを検討した。だが結局、幼稚園や認定こども園、保育所などであまり単価に差をつけなかった。自民党関係者によると、保育所などの業界団体が「公平な価格設定」を政府や与党に働きかけた結果という。内閣府は「移行を望む施設に、整備の支援などを行っていく」と説明するが、認定こども園がどれほど増えるかは不透明だ。政府は、公定価格や利用者負担の案を26日の「子ども・子育て会議」で示す。正式には年末の15年度予算編成で決める。
■保育新制度の利用者負担の上限(月額)
◇所得区分(モデル世帯での年収)
<1>3歳以上  <2>0~2歳
    *
◇生活保護受給
<1>0円  <2>0円
◇市町村民税非課税(年収およそ260万円未満)
<1>6000円  <2>9000円
◇市町村民税課税・所得税非課税(同260万~330万円)
<1>1万6500円  <2>1万9500円
◇市町村民税の所得割課税額9万7千円未満(同330万~470万円)
<1>2万7000円  <2>3万0000円
◇同9万7千円以上~16万9千円未満(同470万~640万円)
<1>4万1500円  <2>4万4500円
◇同16万9千円以上~30万1千円未満(同640万~930万円)
<1>5万8000円  <2>6万1000円
◇同30万1千円以上~39万7千円未満(同930万~1130万円)
<1>7万7000円  <2>8万0000円
◇同39万7千円以上(同1130万円以上)
<1>10万1000円  <2>10万4000円
※負担額は「標準時間」(1日最長11時間)利用の場合。「短時間」(同8時間)利用ではこれより1.7%程度低くなる。モデル世帯は「夫婦・子2人で、夫はフルタイム、妻はパートタイム労働」の想定

*3:http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=319740&nwIW=1&nwVt=knd
(高知新聞 2014年5月8日)  【介護離職】仕事と両立できる社会に
 家族の介護のために仕事を辞める「介護離職」が深刻だ。総務省によると、2012年までの5年間で家族の介護や看護を理由に約43万9300人が離職している。こうした状況を受け、政府は仕事と介護の両立に有効な支援制度を実際に企業に導入してもらって課題を探る実証実験を始めた。14年度中に効果的な事例をまとめ、企業に普及啓発していく。今後5年間で団塊世代がすべて70代になり、家族を介護する働き盛りの40~50代の急増が懸念されている。家族の介護は予測がつかず、仕事とどう両立するかは待ったなしの課題だ。実効性のある取り組みにつなげたい。問題の背景には少子化がある。介護を必要とする世代が増える一方で、子どもの世代はきょうだいの数が少なく、未婚率も高い。独身男性が高齢の親の面倒を見るケースも少なくない。精神的に追い込まれた末の「介護殺人」という悲劇も起きている。さらに介護問題に対して理解が進まない企業の風土もある。育児・介護休業法は通算93日までの介護休業の取得を企業に義務付けている。大企業を中心に1年以上の休業期間を設けるなど、介護を担う社員を支援する動きも広がってきた。だが介護が長期化すると復職か退職かの選択を迫られる。特に男性は悩みを打ち明けられずに、離職を選ぶことが多いという。働き盛りの社員を失うことは企業にとっても大きな損失だ。相談体制を充実させるとともに、勤務時間の短縮や在宅勤務制度の導入など柔軟な働き方を進めてほしい。仕事を辞めても現実は厳しい。家計経済研究所の調査では、在宅介護に掛かる自己負担額の平均は月約6万9千円にも上る。介護保険でカバーされる部分があるにしても、収入が途絶えた中で介護が家計を圧迫しているのは間違いない。再就職の道は険しく、自らの老後にも不安が残る。介護離職は大きなリスクを抱えることにもなる。仕事と子育ての両立と同様に介護との両立も避けられない時代となった。政府は施設入所から在宅介護への移行を促しているが、その前に働きながら介護できる仕組みを整える必要がある。国と企業が力を合わせ、両立できる社会を実現させたい。

*4:http://qbiz.jp/article/37720/1/
(西日本新聞 2014年5月15日) ボランティア介護、限界 「要支援1、2」が市町村に移管へ 
 衆院厚生労働委員会は14日、介護保険と医療提供体制の見直しを盛り込んだ地域医療・介護総合確保推進法案を自民、公明両党の賛成多数で可決した。介護サービスの低下や利用者の負担増につながるなどとして野党が反対する中、与党が採決を強行。15日に衆院を通過させ、参院に送付する方針で、今国会で成立する公算が大きい。14日の理事会で与党が同日中の採決を提案。野党側は審議時間が不十分だと反発し、審議継続を求めた。そのため、与党は質疑が終了後、動議で審議を打ち切った。14日午後の委員会には安倍晋三首相も出席。首相は「負担増ばかり強調されているが、所得の高い方に負担を求める一方で、低い方には保険料を軽減する。持続可能な介護保険にする」と理解を求めた。法案は、介護の必要度が低い要支援1、2の一部サービスを市町村事業に移すほか、一定以上の所得がある利用者の自己負担割合を2015年8月に1割から2割に引き上げる。特別養護老人ホームへの入所は原則、要介護3以上に限定する。地域医療・介護総合確保推進法案は、地域の介護ボランティアなどにも波紋を広げている。法案には、比較的症状が軽い要支援1、2の人向けのサービスのうち、訪問介護と通所介護(デイサービス)を2015年度から3年間で市町村事業に移管することが盛り込まれている。国はボランティアやNPO法人を担い手にして経費削減をもくろむが、ボランティアへの過度の負担や、自治体によるサービスの地域格差も懸念されている。「上を向いて歩こう」のメロディーに合わせて、椅子に座った24人の高齢者がゆったりと腕を上げ下げしていた。介護予防の先進地とされる福岡県行橋市。西宮市(にしみやいち)3区の集会所で開かれる「いきいきサロン」だ。週に1度約2時間、ダーツや卓球を楽しむ日もあれば、講演会やバスハイクの日も。年会費1200円で38人が登録するが、介護認定を受けている人はいない。介護制度が変われば、こうしたサロンに通う地域住民も、要支援の人を支えるボランティアとして期待される。高齢者世帯が多いこの地区では2年前、孤独死が相次いだ。サロンは「近所付き合いを楽しみつつ健康維持を」と、住民が中心になって始めた。ただ、参加者は普段から活発に出歩く人ばかり。「一番来てほしい人が来ない。迎えに行こうか」。共同代表の野本玲子さん(69)はそう提案したことがあるが、「けがをしたら誰が責任取るの」と反対が相次ぎ、断念した。
■先進地も戸惑う
 九州で同様に介護予防の先進地とされる長崎県佐々町は、6年前に介護予防ボランティアの養成を始めた。多くは自らも高齢者。今は約50人で買い物や家の掃除、ごみ出しなどを手伝う生活支援サービスなど、多彩な展開をしている。両市町は「介護保険に頼りすぎない町づくり」を掲げ、介護予備軍の健康増進を図ってきた。先進事例としてしばしば紹介してきた厚生労働省は、新制度では両市町のような取り組みが地域介護の新たな受け皿になる、と期待する。ただ、要支援の人の中には、ボランティアには対応が難しい初期の認知症患者もいる。親などを最長9時間のデイサービスに預けて仕事をしている人も少なくない。サロン運営を支援する行橋市社会福祉協議会の担当者は「ボランティアでできることには限界がある。本来は国がみるべき分野なのに、お金がないからボランティアにやってもらおう、という発想はおかしい」と疑問を口にする。
■老老介護に不安
 要支援1の身で、要介護2の妻(82)の面倒をみる福岡市東区の長家昌一さん(84)にとって、介護制度の変更は深刻な問題だ。通所介護を嫌がった妻を「俺も一緒に行くから」と説得し、2年前から週1回デイサービスセンターに通う。妻は病弱だ。足もともおぼつかず、四六時中、目が離せない。「関東から引っ越してきたので地域に頼れる人も少ない。センターは家内の世話をお願いし、自分のことができる唯一の場所なのに…。来られなくなったら、とても困る」。福岡市の要支援1、2は約1万9800人。市は「今、サービスを受けている人になるべく影響が出ないようにしたいが、利用制限や費用負担をお願いする可能性もある。そこを補えるよう、ボランティア育成に力を入れたい」とする。
◆自治体間格差に懸念
 2013年4月現在、要支援1、2の人は154万人で、介護保険認定者の27%。国はその人たちへのサービスを市町村事業に移管することで、毎年5〜6%ずつ増え続ける介護費用を、後期高齢者(75歳以上)数の伸びと同じ3〜4%に抑えることを目標にしている。要支援向けのサービスは掃除や洗濯、買い物など軽度なケアがほとんどだ。その一部をボランティアやNPO法人に任せて、介護費用を安く上げようという考えだ。ただ、長崎県佐々町のように介護予防ボランティアの活動が根付いている市町村は少ない。「要支援1、2の人は市内で千人以上。支援体制をわずか3年で整えるのは難しい」(福岡県嘉麻市)など、自治体からも悲鳴が漏れる。国は団塊の世代全員が後期高齢者となる25年に向け、中学校区単位で医療や介護を一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築を目指す。ただ、福岡県の場合、拠点となる地域包括支援センターは149カ所だけで、公立中学校の339校に遠く及ばない。立教大の芝田英昭教授(社会保障論)によると、要支援1、2向けの訪問介護と通所介護サービスにかかる費用は年約3千億円で、介護費用全体の数%にすぎない。芝田教授は「ボランティア任せになると高齢者の症状が悪化し、逆に介護費用が増える恐れもある。自治体の財政力によってサービスに差が生じ、高齢者にしわ寄せがいきかねない」と、制度の変更には懐疑的だ。

*5:http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h9/wp-pl97-01504.html
(経済企画庁 平成9年11月) 国民生活白書 働く女性 新しい社会システムを求めて
第I部 女性が働く社会
第5章 働く女性と社会システム
第4節 税  制
 女性の就労に関しては税制面からの影響も少なからずあるものと考えられる。税制の準拠すべき一般的基準について1988年の我が国の税制改革では,税負担の公平性,経済に対する中立性,税制の簡素化が基本理念とされているが,女性の就労という観点からは,このうち中立性からの視点が重要と思われる。すなわち特段の政策的目的がない限りは,働くという個人の生活上の選択に対して,税制がそれを有利にしたり,不利にしたりして特段の影響を与えることがない方がよいと考えられるようになってきている。こうした観点からは所得税の課税単位の問題を考える必要がある。すなわち課税単位を個人に設定するか,あるいは世帯に設定するかの問題である。前者は稼得者を単位として課税するものであり,後者は実際の消費生活の単位である世帯を課税単位としている。本節では,所得税の課税単位の問題を中心に我が国と諸外国の税制を概観し,翻って我が国の税制を検討する。
1. 我が国の税制
 我が国では,1887年の所得税創設以来,家族制度を反映して戸主及び同居家族の所得を合算し,その総額に所定の税率を適用ずる合算非分割方式の世帯単位課税であった。しかし,戦後は1950年にシャウプ勧告を契機に合算方式は廃止され,各人の所得税はその所得の大きさに従って課税されるようになり,個人単位の課税方式が採られるようになった。これに配偶者控除や扶養控除などの人的控除を導入し世帯的要素を加味したものとなっている。
2. 欧米諸国の税制
 近年,先進国においては女性の社会進出を始め女性のライフスタイルは多様化が著しい。このことは,就労,未婚,結婚等の選択が多様化しているだけでなく,自らのライフサイクルの中でも多様な選択を行っていることになる。以下ではこのような社会的背景を踏まえ,主に所得税を中心に欧米諸国の税制がどのように変化してきたのか,課税単位や人的控除を含めた各国の税制を概観することとする。
(各国の課税単位)
 欧米諸国の課税単位をみると,個人単位課税を採る国は,イギリス,イタリア,スウェーデン,ベルギー,オランダ,デンマーク,オーストリア,フィンランド,ギリシア,カナダの10カ国と最も多く,個人単位と世帯単位の選択制を採る国は,アメリカ,ドイツ,アイルランド,ノルウェー,スペインの5カ国,世帯単位課税を採る国は,フランス,ポルトガル,ルクセンブルクの3カ国となっている。
(主要国の税制)
 課税単位を巡る問題は,所得税が納税者の負担能力に配慮して累進税率となっていることに起因しており,各国の課税単位については以下のような変遷がみられた。
1)アメリカでは,48年まで個人単位課税を採用していたが,州によっては夫婦の所得分割が認め
  られたこどにより,累進税率の高まりとともに州間での不公平が問題となり,現在では世帯単
  位課税の1類型である2分2乗方式(夫婦の合算所得の2分の1に税率をかけ2倍したもの)も
  選択できることになっている。この方式では単身世帯が不利になるため,複数の税率表(独身
  者,夫婦合算申告,夫婦個別申告,特定世帯主)を使っている。人的控除は本人,配偶者,子ども
  等の扶養家族を対象に1人あたり2,550ドル(96年)の所得控除がある。
2)ドイツでは,世帯単位課税のうちの合算非分割方式を採用していたが,この制度では単身者より
  も夫婦に重い負担がかかるため,57年の違憲判決を契機に個人単位課税と2分2乗方式の選
  択制となった。人的控除としては扶養子女控除がある。
3)フランスでは,45年以来夫婦合算の所得を子どもも加えた世帯人数に分割し,課税するn分n乗
  方式が採用されている。この制度では子どもの数が多いほど,また高所得者ほど有利になる。
  戦後の人口政策との見方もある。この制度の導入自体が扶養負担に応じた控除制度の意味
  をもつものであり,配偶者,扶養子女を対象とした人的控除はない。
4)イギリスでは,1799年の所得税創設以来,夫婦を課税単位とする合算非分割の課税方式を採用
  してきたが,女性の社会進出を背景に,1972年に妻の所得を夫の所得から切り離して課税する
  ことが選択可能になった。その後,90年以降は完全な個人単位課税となった。人的控除としては,
  夫婦控除(96年)が65歳未満が1,790ポンド,65歳以上75歳未満が3,115ポンド,75歳以上が
  3,155ポンドとなっている。また,アメリカと同様,妻が働いているかどうかがこの控除の適用に
  関係することはない。
5)スウェーデンでは,71年に夫婦合算非分割の世帯単位課税から個人単位課税にかわった。また,
  非勤労者配偶者控除(税額控除)が設けられていたが,控除対象者の減少により現在では廃止
  されている。所得区分に応じた人的所得控除が認められており,扶養子女については児童手当
  の支給がある。
 以上みたように,欧米諸国では個人単位の課税方式を採る国が多く,例えばイギリス,スウェーデンでは女性の社会進出等から課税単位を世帯から個人に変更している。またドイツでも課税単位を世帯から個人及び世帯の選択制に変更している。しかし,アメリカでは州間での公平を図るため逆に個人単位の課税方式から2分2乗方式と個人単位方式の選択制に変わり,フランスでは世帯単位の中でも珍しいn分n乗方式を戦後一貫して採用しており,各々の歴史的,社会的事情を反映している。また,配偶者控除については,アメリカ,イギリスで就労の有無にかかわらず一定額の所得控除がある。
3. 課税単位からみた我が国税制の評価
 個人単位課税は,個人間の中立性は確保できるが,夫婦間の所得の組み合わせによって課税額が異なるため,節税目的のための所得分割の可能性が指摘されている。一方,世帯単位課税は,実際の生活単位である家庭をひとしく課税するもので,世帯間の公平性は確保できるが,合算非分割方式では,働いていた男女が結婚すると課税額が増える等の問題がある。結局,両制度とも一長一短あることになるが,女性の就労という点に関していえば,世帯単位課税では,女性の稼得した所得は夫の所得に合算され,累進税率の下では高い税率が適用されるため就労抑制的になる。我が国が個人単位課税を戦後一貫して採用してきたことは,女性の就労やライフスタイルの多様化という今日的な課題に照らして賢明な選択であったと考えられる。しかし,配偶者控除や配偶者特別控除の存在は,女性の社会進出が増大する中で中立性を損なうのではないかとの指摘がなされている。この問題については人的控除の基本的なあり方に関する問題として,今後検討していくことが適当と思われる。


PS(2014年5月25日追加):上のように、財務省、厚労省、文科省、経産省、農水省など、複数の省庁が協力して問題解決に当たるべき問題について、縦割意識の強い省庁では合理的な解決策が作れない。そのため、*6のように、縦割ではない政治主導や内閣府・地方自治体の関与は重要だ。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10202/67023
(佐賀新聞 2014年5月24日) 内閣人事局に女性登用部署、課長級交流拡大へ指針
 安倍政権は、府省庁の幹部人事を一元管理する内閣人事局に女性の幹部登用を推進する専門部署を設置する方針を固めた。また男女問わず課長級の人事交流を拡大するため規模や基準を示す指針を策定する。政府関係者が24日、明らかにした。内閣人事局は30日に発足する。政権は「政治主導の徹底を図る」(幹部)方針で、成長戦略に盛り込んだ「女性の活躍」の実現を図る。女性登用の専門部署では、女性幹部の割合を増やすため、官民人事交流の一環として弁護士や公認会計士など一定の資格を持つ民間人の採用を進める。審議官や課長級のポストに積極的に女性を配置する人事を検討するほか、女性公務員の育成や働きやすい環境に向け制度を設計する。課長級の府省庁横断人事は、政策立案の中枢を担う中堅幹部の「縦割り意識」を排し、多様な人材を育成する狙い。現在も実施されているが、政権は指針策定によって交流枠を広げ「霞が関が一枚岩になって諸課題の改革に取り組む」(菅義偉官房長官)との姿勢を示したい考えだ。安倍晋三首相は、内閣人事局の初代局長に加藤勝信官房副長官を充てる方針を固め、7月にも予定される幹部人事に向けて作業を進める。政治主導には官僚側から「情報が偏るのではないか」との懸念も出ている。

| 人口動態・少子高齢化・雇用 | 01:53 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.2.18 雇用形態差別がなくても職務上の配慮はできるのに、労働者を非正規社員、派遣社員、契約社員、限定正社員などとして差別するのはおかしい。 ← 世界標準は、中途入社、中途退職など出入り自由な社会である。
         

(1)世界標準の雇用形態
 *1のアンドレア・シュライヒャー氏の発言のように、世界標準の雇用は、新卒一括採用ではなく、中途採用・中途退社などの労働移動が可能で、男女を問わず、就職後に学位や資格を取る目的・育児目的などで休職・退職して後、元の企業に復帰することも可能であり、他の企業に転職しても、それまでの経験を評価されて「1から出直し」というような不利益を受けることはないというものである。

 そして、新卒を一括採用して終身雇用や年功序列を保証するという雇用形態ではなく、労働移動が容易なシステムの上で、正規労働者でも人員調整できるため、企業は、採用時に過度に慎重になる必要はない。

(2)社員への配慮目的なら、雇用形態による差別は不要な筈である
 日本では、“労働者が多様な働き方を選択できるようにするため”として、「非正規社員」「契約社員」「限定正社員」「派遣労働者」「有期雇用」などに社員を分ける方向になっている。しかし、正規労働者でなければ、労働基準法や男女雇用機会均等法などによる労働者の権利が制限されるため、非正規雇用の労働者は、正規雇用の労働者よりも労働条件が悪く、むしろ合法的に差別されている状態で、自ら望まないのに他に仕事がないため非正規労働者になっている人が多い。

 これは、労働者にとって不幸なことで、*2、*3のように、現在、自ら望まない非正規雇用労働者の割合が上がり、非正規雇用が働く人の4割近くを占めて、正規雇用との所得格差や社会保険・年金などの福利格差が大きくなっている。ここで派遣労働が規制緩和されれば、正規社員から派遣労働者への切り替えが進み、さらに正規雇用が減るだろう。このように、“多様な雇用形態”というのは、実は、企業の要請を重視して労働法を出しぬく手口となっているが、これにより社会保険料の支払いも減っているのだ。

(3)収入の高い専門職の労働条件は悪くてよいというのは変である
 *4には、弁護士や公認会計士など収入の高い専門職に限って、「有期雇用」の労働者の契約期間を5年から最長10年に延ばす方針を決めたと書かれている。しかし、一般の人が正規雇用で働く場所で、勉強して難関の試験を通り、経験を積んだ弁護士や公認会計士が、わざわざ一般の人より条件の悪い「有期雇用」で働くわけがないし、そうしなければならない理由もない。それにもかかわらず、こういう政策を作ろうとしている厚労省の役人は、的外れで不公正な愚か者としか言いようがないのである。

 なお、*5では、非正規社員の待遇を改善する手段として、仕事内容や勤務地を限定する「限定正社員」を普及させたいとのことだが、「この場所、この職種だけで正規並みに働きたい」という要望は、雇用形態として不利な条件で差別されながら働かなくても、中途採用・中途退社などの労働移動が自由にできれば、正規社員として望む場所に転職することによって解決できるものだ。

       

*1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S10980050.html?iref=comkiji_redirect
(朝日新聞 2014年2月15日) 産学協同の拡充を 採用・職業訓練・女性雇用 OECD教育局次長のシュライヒャー氏
 経済協力開発機構(OECD)教育局次長のアンドレア・シュライヒャー氏(49)は13日、朝日新聞などのインタビューに応じ、「日本の経済社会の発展のためには、経済界と大学などがもっと協力を拡大すべきだ」と語った。具体的な協力課題として、(1)新卒一括採用を見直し、いつでも企業などの採用試験が受けられるようにする(2)就職後も技能を向上させる職業訓練と、学位や資格を取れるような生涯学習の機会を保障する(3)大学や高校でインターンシップを拡大し、採用につながりやすい環境をつくる(4)女性の雇用を拡大する、などを挙げた。新卒一括採用を通年型の採用に切り替えることについては「若者が卒業時に大量に失業してしまうようなリスクを減らし、経済社会全体の損失を回避することができる」と指摘。また、「日本は労働移動が柔軟にできるような社会にすべきだ」としたうえで、「スウェーデンのように卒業後も資格や学位を取って有利な転職ができる環境にするため、大学が協力してほしい」と、産学の協同を拡大する利点を強調した。シュライヒャー次長はOECDが実施している「生徒の学習到達度調査」(PISA)や「国際成人力調査」(PIAAC)を担当。大震災後の福島県などの教育現場視察のため来日。経団連幹部や国会議員らとも意見交換した。「教師や子どもたちの熱心さに胸を打たれた」と語る一方、「PISAについては順位ばかりに関心を寄せるのではなく、各国がよりよい教育方法を学び合い、改革を進めてほしい」と述べた

*2:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2617610.article.html
(佐賀新聞 2014年1月31日)  非正規雇用の割合36・6%/13年、過去最高更新
 総務省が31日発表した2013年平均の労働力調査(基本集計)によると、雇用者全体に占めるパートやアルバイトなどの非正規労働者の割合は前年比1・4ポイント増の36・6%となり、過去最高だった。完全失業率が改善傾向にある一方、不安定な非正規雇用の広がりに歯止めがかかっていないことが示された。13年の非正規労働者数は93万人増の1906万人。内訳はパートが928万人、アルバイトが392万人、契約社員が273万人などだった。非正規割合を男女別でみると、男性が1・4ポイント上昇の21・1%で、女性が1・3ポイント上昇の55・8%となった。

*3:http://www.sanyo.oni.co.jp/news_s/news/d/2014020308560096/
(山陽新聞社説 2014.2.3) 派遣労働見直し 「非正規」の拡大招かぬか
 労働者派遣法の見直しに向けて、労働政策審議会の部会が報告書をまとめた。現在は3年となっている派遣受け入れ期間の上限をなくし、3年ごとに働く人を入れ替えれば同じ職場で派遣を使い続けられるようにする。派遣労働者を臨時的・一時的な仕事に限定してきた従来の原則を大きく変えるものである。企業にとっては、人員調整がしやすい派遣労働者を活用できる範囲が広がり、事業転換などもしやすくなる。安倍政権は成長戦略の柱の一つに労働規制緩和を掲げ、「世界で一番企業が活躍しやすい国」を目指している。その意向を踏まえ、産業界の要請をくみ取った内容といえよう。企業側は、多様な働き方の一つとして派遣を選ぶ人のニーズに沿っており、派遣労働者の保護にもつながると評価している。懸念されるのは、正社員の仕事が派遣に置き換えられ、非正規雇用がさらに広がりかねないことだ。報告書は、労働組合が派遣継続に反対した場合は企業に再検討するよう義務付けた。だが、労組に拒否権はなく、最終判断は経営者に委ねられる。際限のない派遣拡大に歯止めをかけられるかは疑問が残る。派遣会社に対しては、期限を迎えた労働者が希望すれば、派遣先の企業に直接雇用を求めたり、次の派遣先を紹介するよう義務付けた。派遣労働者に教育訓練を実施することや、キャリア形成支援制度の整備も求めている。派遣会社が、より重い責任を担うことに意義はあるが、派遣先がきちんと応じるかは未知数だ。派遣先が限られる地方の業者などは対応に苦慮するのではないか。負担に耐えられず撤退する中小事業者が出る事態も予想される。現在、非正規雇用は働く人の4割近くを占めている。所得格差も広がっている。厚生労働省には、正社員を希望する人の処遇が改善するよう、しっかりと派遣会社を監督することが求められる。部会では、正社員と同じ仕事をする派遣労働者には同水準の賃金を払う「均等待遇」の導入も議論になった。経営側の反対で報告書に盛り込まれなかったが、実現すれば企業が正社員を派遣に置き換えるメリットは薄れるため、非正規雇用拡大を食い止める効果が期待できた。派遣労働は1999年の法改正で一部を除いて対象業務が原則自由化され、2004年には製造業でも解禁された。08年のリーマン・ショックで大量の「派遣切り」が社会問題化し、民主党政権時代の12年、日雇い派遣を原則禁止する改正が行われた。自民党への政権交代を機に、労働者保護から規制緩和へ政策転換が行われようとしている。分厚い中間層に支えられた安定した社会づくりに、雇用安定と待遇改善は不可欠だ。改正法案を審議する今国会で、そのための方策を丁寧に議論していく必要がある。

*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140215&ng=DGKDASGC1401H_U4A210C1EE8000 (日経新聞 2014年2月15日) 
有期雇用、専門職は10年に 厚労省方針、高齢者も更新可能
 厚生労働省は14日、非正規労働者など働く期間が区切られた「有期雇用」の労働者の契約期間を5年から最長10年に延ばす方針を決めた。弁護士や公認会計士など収入の高い専門職に限って適用する見通しだ。関連法案を今国会に出し、成立を目指す。定年後の高齢者について5年の有期雇用の後に、有期の契約を更新して雇えるようにする規定も盛り込んだ。2015年4月の施行を目指す。現行法では企業が有期雇用の労働者を5年間同じ職場で雇用した場合、本人が希望すれば無期雇用に変えなければいけない。新しい法律には企業が一部の人材に関して有期雇用の労働者を雇いやすくする措置を入れる。例えば今の制度に基づく有期雇用なら5年後の19年までしか働けないが、新法の成立後は今から6年後の20年の東京五輪に向けたプロジェクトでも有期雇用で働けるようになる。最長10年まで有期雇用を認める対象の職種は、法成立後に決める。年収で1千万円以上などと制限をかける案もある。定年退職後の高齢者について有期雇用で5年すぎた後に、1年単位などの有期契約で改めて雇えるようにする仕組みは、企業が求めていた。高齢者が5年の期間後に無期雇用に変わると、企業はずっと雇い続けなければいけなくなる。企業側の事情で、5年たつ前に雇用をいっせいに止めるといった行為を防ぐ効果も見込む。5年の有期契約の見直しは、昨年、政府が進める「国家戦略特区」での規制緩和の一環として浮上した。ただ「全国一律でなければ、企業間で不公平になる」(厚労省)と反発が出て、特区ではなく全国で実施することになった。

*5:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS10005_Q3A111C1000000/
(日経新聞 2013/11/10) 経財相、限定正社員の普及へ環境整備 連合は警戒
 甘利明経済財政・再生相は10日のNHK番組で、非正規社員の待遇を改善する手立てとして仕事内容や勤務地を限定する「限定正社員」を普及させたい考えを示した。「日本の雇用形態は正規と非正規の2極しかない。その中間を作りたい」と強調した。政府は限定正社員の導入に向けた検討を進めている。経財相は「二者択一ではなく『この場所、この職種だけで正規並みに働きたい』という要望はかなりある。そういう多用な働き方に対応できる社会を作っていかないといけない」と述べた。連合の古賀伸明会長は同番組で「社員をどういう処遇にするかは労使で話し合ったらいい。国が一律的に制度として確立するものではない」と指摘。「あくまでも国は(企業が)制度を導入している好事例を紹介していけばいい。解雇規制(の緩和)まで考えているだろうと想定せざるを得ない」と警戒感を示した。経団連の宮原耕治副会長は「企業にとっても多様な働き方を持つことが重要だ。すでに約半数の企業が限定正社員を導入している。好事例を紹介しながら労使で話し合い、政府に環境づくりをお願いする」と語った。政府、経済界、労働界は9月からデフレ脱却に向けた課題を協議する「政労使会議」を開いており、限定正社員もテーマになっている。

| 人口動態・少子高齢化・雇用 | 07:43 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.7.17 非正規雇用・限定正社員という雇用形態の異常性について
 
      *1より                日経新聞より

(1)非正規雇用、限定正社員という身分による労働者の差別
 非正規雇用という労働者の身分は、正規雇用の社員には労働基準法・男女雇用機会均等法が適用され、役所や大企業では、終身雇用・年功序列も一般的であることから、企業のために生まれた労働基準法・男女雇用機会均等法の脱法のための雇用形態である。非正規雇用を自由な働き方として推奨する人も多く、それならば本人の希望で正規・非正規のどちらになるかを選べなくてはならない筈だが、実際にはそうではなく、*1のように、立場の弱い労働者を非正規社員として悪い労働条件で働かせているのである。これこそ、搾取であろう。

 つまり、非正規雇用という身分は、正規雇用の労働者に手厚い労働法をすっぱ抜くために考え出されたものであるし、限定正社員に近い制度は、最初の男女雇用機会均等法適用期(1985~97年)には、女性労働者を補助職にするという形で行われていた。そのため、1997年の改正男女雇用機会均等法施行後には同一企業内で補助職という形で女性労働者を差別することが禁止され、そのかわりに他企業からの派遣労働者という形の非正規雇用が普及したのであり、非正規雇用は男女平等に男性にも存在するものの、女性にすこぶる高い割合で存在するのである。

(2)非正規雇用という身分が労働者及び社会に与える影響
 非正規雇用という不安定な雇用形態は、①経験の継続性や教育・研修の機会が限られるため労働者の質が上がらないという本人及び社会の損失がある ②雇用の継続や昇進が保証されないため、労働者本人の自己実現の喜びがなく、本物のやる気が出ないため生産性が上がらないという本人及び社会の損失がある ③非正規雇用では生活が安定しないため、結婚や出産が躊躇され、人を幸福にしない上に少子化を加速するという本人及び社会の損失がある ④非正規雇用は、所得が低く社会保険も負担しないので、国にとっては税収や社会保険の支払者(支え手)が減る上、本人にとっても社会保障の恩恵を受けられない など、社会に対するマイナスの影響がある。そのため、非正規雇用や限定正社員という身分を作るのはやめるべきである。

(3)本当は、どうあるべきなのか
 そもそも、正規雇用であれば日本全国どこへでも赴任しなければならず、どんな分野の仕事でもしなければならず、解雇が大変難しいという日本の正規雇用の慣行がおかしい。例えば、極端な例だが、法務部に弁護士を採用した企業がその弁護士を工場に配置したり、経理部に採用した公認会計士や税理士を販売店に配置したりすれば、生産性が上がるわけがないのである。

 つまり、正規雇用の社員であっても、その人の専門性や特技を活かす配置をしなければ、雇用者にとっては人材を有効に使えず、被雇用者にとっては不幸なのである。また、男性か女性かを問わず、夫婦とも一生懸命に働いている時に、本人の承諾もなく日本全国に赴任することを義務づければ、自然と別居生活を強いることになり、子育てなどとてもおぼつかないため、出産すること自体がリスクになる。

 結局、限定正社員として実現しようとしていることは、普通の正社員でも行うべきことであり、それをうまくやるのが人事部の仕事だ。また、非正規社員のような搾取の形態をいつまでも許すべきではない。そのかわり、Fairに実力を測定して実績主義を貫くことにより、硬直した雇用慣行を変える必要があるし、労働慣行も見直すべきなのである。

*1: http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1203R_S3A710C1EA1000/
(日経新聞 2013/7/13) 非正規社員比率38.2%、男女とも過去最高に
 パートやアルバイトなど非正規社員として働く人が増えている。総務省が12日発表した就業構造基本調査では、役員を除く雇用者のうち非正規社員は全体で約2043万人となり、初めて2000万人を突破した。比率も38.2%と過去最大を更新した。産業構造がパート比率の高いサービス業に転換していることなどが背景にある。20年前の調査と比べると、非正規の比率は16.5ポイント上昇した。男性・女性ともに過去最大の比率となった。正社員の比率が大きい製造業は生産拠点の海外移転などで雇用が減り、パートの多い小売やサービス業で働く人の割合が高まったことが背景だ。なかでもパートやアルバイトとして働く人が多い女性は非正規の比率が57.5%と、半数を大きく上回る。正社員だった人が転職の時に非正規になる流れも強まっている。調査で過去5年の間に転職した人を見ると、転職前に正社員だった人のうち40.3%が非正規になった。2007年の前回調査と比べると3.7ポイント上がっている。逆に非正規社員が転職するケースでは、正社員になったのは4人に1人にあたる24.2%にとどまる。この比率も5年前より2.3ポイント下がった。仕事を変える時に、正社員を選ぶのは5年前よりも難しくなったといえる。
 50代~60代の有業率は5年前と比べ男性では下がる一方、女性は上昇した。家計を補おうとパートで働く女性が増えた可能性がある。一方で非正規で働く人の割合が高い若年層は男女とも雇用が不安定なことが結婚・出産をためらう一因との指摘が多い。仕事探しをあきらめた若者にあたる「ニート」も解消していない。15~34歳に占めるニートは5年前に比べて約1万5000人減ったものの、比率は2.3%と0.2ポイント上がった。働く意欲を失った若者が増えれば、経済の活力がそがれる。将来、低年金や生活保護の受給者になる可能性もある。
 産業別に見ると、「卸売業・小売業」では約282万人、「医療・福祉」では約176万人の女性がパートやアルバイトとして働いている。高齢化に伴い伸びる福祉分野やサービス産業ほど女性が働く機会が多く、非正規の比率拡大にもつながる形だ。過去5年間に介護や看護のために職を離れた人は約48万7000人。このうち女性は38万9000人で、8割に達する。高齢化に伴う介護や家事の負担が女性にしわ寄せされやすい状況も、女性が安定して質の高い働き方をするための壁になっている。調査では、介護をしている全国の557万人のうち、60歳以上が約5割を占めることも分かった。「老老介護」の問題が深刻になっている現状も浮き彫りになった。

*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130717&ng=DGKDZO57421900X10C13A7EA1000
(日経新聞社説 2013.7.17) 「子を持てる社会」へ具体策競え
 「少子化」を一層、実感するときが近づいている。2012年までの10年間に、出生数は1割減った。推計によると22年までの10年間には減少幅は2割に拡大する。各党は公約で子育て支援拡充をうたうが、これまでの政策をあらためて掲げたものも多い。出産や子育てを阻む障壁をいかになくすか。限られた予算にどう優先順位をつけるのかを含め、実現への具体的な道筋を示してもらいたい。自民党、民主党ともに公約にあげたのが、仕事と子育ての両立支援や認可保育所に入れない待機児童の解消だ。自民党は「2年間で約20万人分、17年度末までに約40万人分の保育の受け皿を新たに確保」と数値目標を示した。4月に安倍晋三首相が成長戦略として打ち出したものを踏襲している。だが待機児童の解消は、長年にわたり実現しなかったテーマだ。保育士の確保や、整備促進に有効な民間企業の参入をどう促すかなど、課題は山積する。
 財源確保にも懸念がある。自民党は幼児教育の段階的無償化もうたう。無償化には総額7800億円が必要との試算もあり、保育の拡充とどう両立させていくのか。民主党は「子ども・子育て支援の予算を増額する」などとするが、より具体的な策を示してほしい。若い世代の将来への不安を和らげる政策も必要だ。少子化の大きな要因は、未婚率の上昇だ。非正規雇用が増え、結婚や出産を願っても家計の状況などから踏み切れない人も多い。就業支援や非正規労働者の処遇改善などの課題を、少子化対策としてしっかり位置付け、各党で競い合う必要がある。
 結婚するか、子どもを持つかは個人の選択の問題だ。だからといって社会が、結婚や出産を選択しやすい環境の整備を怠っていいということにはならない。国民が持つ結婚や出産の希望がかなえば合計特殊出生率は1.75程度になるとの試算もある。希望がかない子どもが増える政策が欠かせない。

| 人口動態・少子高齢化・雇用 | 08:11 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.7.12 婚外子の相続分に関する規定は憲法違反ではない。
    

 各紙で、*1のような「『民法900条4号ただし書き(*2参照)』の規定は婚外子差別であり違憲だ」という感情的なプロパガンダが行われたが、私は、「出生は子の意思や努力では変えられないが、それを理由に婚外子の相続分を同じにすべきだという結論には飛躍があり、違憲ではない」と考える。何故なら、被相続人である父親が子の相続分を同じにしたいと考えれば、遺言、生前贈与など、生前にとれる選択肢があったからである。

 さらに、*2の該当条文、民法900条4号ただし書きの「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし」という部分が問題にされているが、同時に「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする」とも書かれており、婚外子を差別する規定にはなっていない。この部分は、その相続財産を形成した親の子でない場合に、相続分を他の兄弟姉妹の2分の1にするという意図であり、法律婚の夫婦が形成した財産も、父親が形成した分に当たる2分の1の割合では婚外子にも相続権があるとされているのである。連れ子も同様で、これは、自分のDNAを引き継ぐ子に遺産を相続させたいと思う人間の本能を反映した妥当な規定と言えよう。

 そして、民法900条の1号、2号、3号を合わせて見れば、相続財産が一部は先祖から引き継がれ、残りは相続発生時点の法律婚の夫婦によって築かれたものだという前提がある。しかし、現代では、いろいろなケースがあるため、正確な相続分を算定するためには、①先祖から引き継いだ財産はいくらか(←直系尊属や被相続人の兄弟姉妹に配分する合理性がある) ②夫婦で築いた財産はいくらか(←配偶者とその子で配分すべきである) ③夫か妻の一方で築いた財産はいくらか(←誰に配分するかは本人の自由である) を、正確に計算して関係者に配分すべきだろう。これに、4号のような複雑な家族構成を加味する必要があるわけだ。

 しかし、相続時の配分額を正確に計算するにあたっては、妻の働きに金銭換算されないものが多く、妻の働きは過小評価され、そのため夫名義となった財産を妻が相続する場合でも、小さな金額で贈与税や相続税がかかったり、子がいない場合には財産形成には何の関係もなかった直系尊属や兄弟姉妹への相続が発生したりすることの方が、法の下の平等に反する憲法違反である。故に、*1のような新聞発表は、「婚外子でも何でもいいから、とにかく産めよ、増やせよ」というプロパガンダのようで、感心しない。

*1:http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_gnavi#Edit1
(朝日新聞 2013年 7月 11 日) 婚外子差別―是正の機会を逃すな
 生まれついた巡り合わせによる差別をこれ以上、放っておいてはいけない。結婚していない男女間の子の相続分を、結婚した夫婦の子の半分にする民法の規定は憲法にかなうのか。最高裁がきのう、大法廷で弁論を開いた。違憲の判断や、判例を変えるときは大法廷でしかできない。最高裁はこの規定について、18年前に合憲とする決定を出したが、今回はその判断を改める可能性が大きくなっている。理不尽な差別をただす機会を逃してはならない。この規定は「家」制度をとる明治時代の旧民法から引き継がれた。法律婚の尊重と婚外子の保護のバランスを図ったものだと説明されてきた。しかし、出自は本人の意思や努力で変えられず、それを理由に差別するのは筋違いだ。家族のあり方や価値観が多様になった現代社会には通用しない。問題は、経済的な相続だけにとどまらない。婚外子が婚内子より社会の立場上、劣っているかのような差別の土壌をつくってきた面もある。相続はこの規定通りにしなくてはならないわけではなく、実際には家族ごとの意思で配分されている。だとしても、法律が当事者の判断に先んじて子どもを区別する必要はない。
 同様の規定をもっていたドイツやフランスなども法改正しており、先進国では日本だけが残った。国連の人権機関は、国際基準に反するとして政府に繰り返し勧告してきた。改めて問われるのは、問題を放置してきた国会の怠慢だ。法務省は96年、相続差別をなくす民法改正の要綱案をまとめた。だが一部国会議員が「男女の婚外関係を促すことになる」などと反対した。法案提出もされず棚上げされてきた。95年の最高裁の合憲判断には15人の裁判官のうち10人が賛成した。だが、その10人のうち4人は補足意見で、立法による解決への期待を述べた。その後の判断でも、小法廷が補足意見で法改正を促してきた。国会のだらしなさは、一票の格差をめぐる問題でも見飽きた光景だ。裁判所に違憲と言われないと動けない、言われても動きが鈍い。そんな国会では、正義を実現できる代表機関とは言いがたい。最高裁が法令を違憲としたのは戦後8件しかない。だが、少数者である婚外子の声は小さくとも、法の下の平等という重い価値が問われている。もはや司法による救済しかないのではないか。

*2:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M29/M29HO089.html#1005000000003000000002000000000000000000000000000000000000000000000000000000000 民法
第900条  同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
1 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
2 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
3 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
4 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

| 人口動態・少子高齢化・雇用 | 11:40 AM | comments (x) | trackback (x) |
2012.6.5 典型的な少子化論では足りず、メディアは思考停止して同じことばかり言っているので、人間の行動学と人口論から考えてみました。もう、言うべき時でしょうから。
 下のように、日経新聞に、まさにステレオタイプな少子高齢化論が掲載されていましたので、30年近くの間、共働きの働く女性として人生を過ごしてきた経験を踏まえて、コメントします。この記事に足りないことは、個々の人間の幸福を願うヒューマニズムがなく、人間を社会保障費の支払者、生産者、次世代生産者という経済的視点からのみとらえていることです。そして、これは、消費税増税、社会保障費削減を主張する自民党の主張に似たところがありますが、元は官の発想でしょう。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO42251870W2A600C1EA1000/ (日経新聞 2012/6/6) 加速する人口減への危機意識が足りない

記事のポイント1:2011年の出生数は105万人と過去最少になり、1人の女性が生涯に産む子供の数の推計である合計特殊出生率は前年と同じ1.39にとどまった。ともに05年を底にほぼ回復基調にあったが、ブレーキがかかった。死亡数は125万人と戦後最多を更新。日本の人口は約20万人の自然減になった。これは神奈川県小田原市の人口に匹敵する規模である。11年は東日本大震災もあって、少子化や人口減少の動きは政府が考えていたよりも急である。なぜこんな事態になっているのか。政府が社会保障と税の一体改革で掲げる子育て支援策は待機児童の解消を目指したもので、すでに生まれた子供に力点が置かれている。だが、少子化問題の解決には出生数が増える施策が必要だ。そのためには若い世代に広がる将来への不安を和らげることに、もっと目を向けるべきだ。内閣府の調査によると、20~39歳の未婚男女の約9割が結婚したいと考えているが、その半数以上が経済的な不安を抱いている。20~49歳の男女に、希望する数の子供を持たない理由を聞いた別の調査でも、「お金がかかりすぎる」が最多だった。

<記事のポイント1に関する私の見解>
 

 左のグラフは合計特殊出生率の推移であり、この30年は、1985年の1.76を最高にして次第に下がり、2005年の1.26を最底として少し上りつつある。そして、出生率低下に伴い、日本の人口は右のグラフ(出典:財務省HP)のように2004年に最高値12,779万人となり、その後、2005年以降は急に減るかのように描かれているが、2010年以降は予測値である。そのため、この予測は正しくないことを、ヒトの行動学・社会学の視点から説明する。
①最低だった2005年で都道府県別合計特殊出生率が低いのは、東京都1.00、北海道1.15、神奈川県1.19、京都府1.18、奈良県1.19など、北海道以外は、都市化が進み人口が集中した地域である。それは、人口集中による居住条件の悪化(家の狭さ、通勤距離の長さ、祖父母等の支援のやりにくさ等)や低所得及び女性の高学歴化に伴う有職業率の増大(保育所の不足・学童保育の未整備など)が原因と思われる。
②2005年で都道府県別合計特殊出生率が高いのは、沖縄県1.72、福井県1.50、島根県1.50、福島県1.49、鹿児島県1.49など、人口密度の低い地方都市である。なぜなら、地方都市は人口密度が低いため、園庭が広く質の良い保育所が十分にあり、保育所の待ち行列はなく、通勤距離は短く、祖父母や周りの人の支援も得られやすいからだ。また、女性の学歴・地位・仕事の選択肢が都会と比較して低いため、古い女性観が多く残っていることもあろう。
③2005年を最低として出生率が少し回復したのは、この年に小泉政権の下で、女性で初めて“小泉チルドレン”の猪口邦子氏が少子化・男女共同参画担当大臣となり、少子化の原因解決に本当に迫る少子化対策を行ったことである。それは、働く女性が仕事か子育てかの選択を迫られないこと、子育てにかかるコストを一部社会が負担することなどであった。その内容は、保育所をニーズに合わせて増設し、認定子ども園など幼保一体化を進め、子どもの医療費負担を軽減し、児童手当を創設したものである。これには、私も大きく関与した。

 つまり、①②を単純化して説明するために、シャーレに飼っている大腸菌を例に挙げれば、シャーレいっぱいに繁殖した後は生存条件が悪くなるので、大腸菌の繁殖スピードが落ちるという生物現象が働いているのが、人口密度の高い都会で特に出生率が下がっている原因の一つである。そのため、人口が減るに従って生存条件がよくなるため、人口現象のスピードは遅くなり、緩やかなカーブを描いて漸近線(日本の適正人口)に近づくグラフになるはずである。しかし、人間は、高等動物であり将来まで考慮して子どもを産むため、適切な所得や女性の高学歴化による自己実現の欲求増大との両立などが担保されなければ、意識として出生率は上がらず、それを少し解決したのが③なのである。

記事のポイント2:子育て世代の年収分布(07年)をみると、20代では200万円台前半の割合が最も多く、300万円台が最多だった10年前より懐事情が厳しくなっている。30代も収入の減少傾向がみられる。若い世代は失業率が高く、非正規で働く人たちも多い。就業支援や非正規労働者の処遇改善は非婚・少子化対策になるはずだ。女性の就労対策も十分ではない。働く女性の6割が出産を機に退職する状況は、この20年間変わっていない。その4分の1は、育児と仕事を両立できず職場復帰を断念している。

<記事のポイント2に関する私の見解>
 下のグラフや総務省による非正規雇用割合からも、現在の生産年齢人口に当たる世代は、失業率が上がり、非正規雇用割合の増加から、経済的に苦しく出生率が下がる傾向にあることがわかる。そして、これは、仮に出生率が上がって若い世代が増えたとしても、しかるべき仕事と雇用がなければ、十分に能力を発揮して生産年齢人口として稼働することはできないことを示している。そのため、①景気をよくする(少なくとも消費税導入などで景気を悪くしない) ②本物の雇用を作る展望を持った産業政策をとる ③企業は正規雇用として労働者を雇う という3原則がなければ、人口だけが増えても社会を支える良質な働き手は増えないということである。
 なお、女性の雇用は非正規労働者で高止まりしているとのことであるが、男女雇用機会均等法は、正規労働者でなければ十分に機能しないので、この状況では、採用・配置・昇進・退職などにおける女性差別はなくならないし、出産・育児休暇なども保障されにくい。また、正規労働者であった女性が出産・育児のために退職すれば、次に就職する時は非正規労働者にしかなれないのであれば、その生涯所得の差は出産・育児のコストとなるため、出産・育児のコストは、「子ども手当」くらいではとても埋め合わせることのできない膨大なものとなり、出産・育児は、選択できないことになる。そして、その影響は、よい条件で正規社員として働いている女性ほど大きいだろう。これを解決するには、きちんと能力を評価した中途入社の自由化も必要である。

就業者数の推移(1980~2012年) - 世界経済のネタ帳 失業率の推移(1980~2012年) - 世界経済のネタ帳

http://www.fukeiki.com/2012/02/non-regular-employee-2011.html
(ポイント)総務省が発表した2011年平均の労働力調査(速報)によると、正社員数は前年比25万人減の3185万人となり、パート・アルバイト・派遣社員・契約社員などの非正規社員数は同48万人増の1733万人だった。また、全雇用者に占める非正規社員の割合は、35.2%で過去最高を記録し、男女別で見ると、男性は19.9%、女性は54.7%となり、景気低迷を受けて、正社員としての採用が落ち込む一方、55歳以上の年齢層における非正規化の動きが顕著となり、女性における非正規社員数の高止まりなどから今回の結果となった。

記事のポイント3:少子化が進むと、年金や医療など社会保障制度の土台は根底から揺らぐ。若い世代が安心して家庭を持ち、出産に踏み切れる施策を早急に打ち出さなければ、日本の将来は危うい。企業は社員のワークライフバランス(仕事と生活の調和)に力を入れ、子供を産み育てやすい環境をつくってほしい。人口減による購買力低下や労働力不足を和らげることにつながる。自社の収益にも影響を与えかねないという危機感を持って、企業も少子化対策に取り組むべきだ。

<記事のポイント3に関する私の見解>
 私の解決策は、前に書いたように、下のことである。
① 都市への過度な人口集中を避け、心がなごみ、住みやすい国づくりをすること 
② 生産年齢人口に当たる人が、働きやすく子育てしやすい環境を作ること 
③ 現在、生まれてきている人が、幸福を追求し、購買できる環境を整えて、景気をよくすること 
④ 年齢や性別による雇用上の差別を禁止し、いる人が生産年齢人口に加わりやすくすること 
⑤ 本物の雇用を作れる、展望を持った産業政策をとること 
⑥ 企業は正規雇用として労働者を雇い、非正規雇用として労働者に不当な労働条件を強要すること
  なく、社会保険の負担をすること
⑦ 諸外国と同様、正規雇用としての中途入社を自由に行うこと

| 人口動態・少子高齢化・雇用 | 11:12 AM | comments (x) | trackback (x) |

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