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2015,01,30, Friday
2014.12.13日経新聞 2015.1.14西日本新聞 2015.1.3日経新聞 (1)九電の再生エネ買取制限 *1-1のように、九電が再生エネルギーの新規契約を中断したことにより、鹿児島県内だけで太陽光・風力発電の新規契約への回答保留が約1万5千件に上り、契約違反で困っている人が多い。これについて、九電は「九州の太陽光発電量は全国の4分の1を占め、他地域より急速に再生エネが加速した。このままでは電力の需給バランスが崩れ、安定供給できなくなる」などと説明したそうだが、一方で、川内原発を再稼働させようとしており、九電の説明には無理がある。 もちろん、環境・景観・農業などを無視したメガソーラーの乱立は控えるべきだが、これは契約を結んで投資させる前に断らなければならないものであり、口頭の了承であっても契約は成立しており、契約違反には訴訟して損害賠償請求することができる。そのため、被害者は集団訴訟する方法もある。 また、*1-2のように、九州経済産業局が福岡市で新ルールの説明を行った時も、「ルール変更で採算性が見えなくなった」などの不安や疑問の声が上がったそうだが、一方的なルール変更(契約変更)による損害も損害賠償請求できるし、九電ではなく新電力に電力を販売する方法もある。新電力は電力不足で九電より高く電力を購入するが、再生エネの収益で原発や火力発電の穴埋めなどを行う必要がないため、採算が合うだろう。 そのため、*1-3のような「あきらめムード」にはなって欲しくないし、「九州では、再生エネ由来の電力が、電力需要を上回りそうなときに『出力抑制』を無制限に行えるように、一方的に契約を変更する」というのは、他の方法がないわけではないため、商取引の信義側に反している。そのため、一方的な契約変更による損害は、契約した事業者や個人の責任ではなく、契約変更した電力会社と国の責任であり、損害賠償請求ができるのだ。また、家庭用を含む全ての太陽光発電に出力抑制を拡大しつつ、安定電力がないから原発を再稼働させるというのは、今の時代、誰が聞いても呆れる。 (2)化石燃料の輸入に固執する日本政府 *2-1のように、石油元売り大手の東燃ゼネラル石油が高効率の火力発電所を建設し、液化天然ガス(LNG)船でLNGを輸入して、売電や電力小売りにコスト競争力の高い電源を確保するそうだ。しかし、LNGは日本にはメタンハイドレートという形で大量に埋蔵されており、それを使えばLNGは輸入どころか輸出でき、国庫にも税外収入が入る。 また、(1)の自然エネルギー由来の電力で水を電気分解すれば、水素と酸素がいくらでもできるのに、経産省は、2-2のように、「商業用水素発電所の実用化に向け国内調達だけでは水素が足りない」としてわざわざ化石燃料由来の水素を海外調達するために、来年度予算案に20億円を盛り込んだそうで、これは大変な無駄遣いだ。 経産省や商社が化石燃料由来のエネルギーを輸入したがるのは、これまで世界で最も高い価格で化石燃料を輸入してきた人員を擁しているからだろうが、高い価格で買うのは誰にでもでき、安い価格で買ったり、高い価格で売ったりすることが難しいのであって、後者の方が国民経済や産業のために役立つのである。そのため、そういう人材は、LNGや水素の輸出部門に移動させるのがよいと考える。 (3)韓国では・・ *3のように、韓国の現代自動車グループが、韓国南西部の光州を水素バレーに育てる計画を始め、水素と燃料電池車(FCV)で光州を世界トップの地位につけたいそうだ。そして、ディーゼル車100万台をFCVに置き換えれば、年間1兆5000億ウォン(約1600億円)の原油輸入代替効果をもたらし、二酸化炭素(CO2)排出量を年間210万トン減らせるとのことで、こちらの方がまともだ。 また、2030年の燃料電池市場は世界で400兆ウォン、2040年の燃料電池産業は韓国国内で107兆ウォン、生産誘発効果は約23兆5千億ウォン、雇用効果は17万3298人と見込まれるそうだが、私が最初に言って日本で始まった水素でさえ、日本は外国を見て真似することしかできないとは情けない。そして、この理由こそが、改革すべき岩盤なのである。 (4)政府公用車も燃料電池車と電気自動車にすべき そのような中、*4のように、九大は大学の公用車として燃料電池車(FCV)を3月中旬にも導入し、トヨタ自動車の「ミライ」を導入するそうだ。九大が水素エネルギー分野の研究に力を入れているのはGoodだが、政府や地方自治体も燃料電池車や電気自動車の優秀さを知り、普及に先だってインフラの課題を理解し解決するために、公用車は燃料電池車(FCV)か電気自動車に早急に変えるべきである。 <電力会社の急な再生エネ買取制限> *1-1:http://qbiz.jp/article/47065/1/ (西日本新聞 2014年10月3日) 怒号上がり会場騒然 鹿児島説明会に550人、再生エネ契約中断 九州電力は2日、再生エネルギーの新規契約を中断したことについて、鹿児島県内の事業者向けの説明会を鹿児島市鴨池新町の県市町村自治会館で開いた。定員の200人を大きく上回る約550人が詰めかけ、九電は急きょ追加の説明会を同市与次郎2丁目の九電鹿児島支社でも開催した。九電によると、鹿児島県内で太陽光・風力発電の新規契約への回答保留は約1万5千件に上る。説明会で九電側は「九州の太陽光発電量は全国の4分の1を占め、他地域より急速に再生エネが加速した。このままでは電力の需給バランスが崩れ、安定供給できなくなる」などと説明。保留した契約が将来どうなるのかについては「なるだけ早く示したい」と述べるにとどめた。参加者からは「時期を示せ」「自己破産したらどうしてくれる」と怒号も上がり、会場は騒然とした。九電は3日も午後1時半から県自治会館で説明会を開く。 ◆「老後どうなる」「無責任」 「このままでは倒産だ」「対応が無責任すぎる」−。鹿児島県での再生エネ新規契約中断の説明会の参加者からは、不安や憤りの声が相次いだ。大崎町の自営業男性(31)は、太陽光発電への設備投資に銀行から1億円を借り入れ、既に土地購入と造成で5千万円を使ったという。「九電の営業担当者の『大丈夫』という言葉を信じて投資したのに…。契約の一律中止は納得できない」と怒りをあらわにした。同様に鹿屋市の会社員男性(59)は、来年の定年に備えて千数百坪の土地を約400万円で山中に購入。九電に個人で売電契約を申し込んでいた。有給休暇を取って説明会に参加したが、九電から納得のいく説明はなく、「年金生活の足しにしようと思っていたのだが…。私の老後はどうなるのか」と漏らした。鹿児島市の不動産会社に勤める男性(33)は、福島第1原発事故後、太陽光発電設備向けの土地の販売業務に当たってきた。「これまで業績は順調だったが、土地が売れなくなると、2、3億円の損害は免れない」とため息をついた。霧島市の電気工事会社の社員の男性(48)は、回答保留になった顧客の申し込みを数十件抱えている。「顧客に説明するため来たが、こんな内容では何の説明もできない。説明会の会場も狭すぎるし、九電は真摯(しんし)に対応する気があるのか」と不信感を募らせた。説明会の質疑応答では、「個別事情は把握していない」などと繰り返す九電の担当者に対し、参加者から「川内原発が再稼働すればますます電気が余るので、大変ですね」と皮肉の声も上がった。 *1-2:http://qbiz.jp/article/54799/1/ (西日本新聞 2015年1月30日) 電力買い取り、新制度に不安 九州経産局が再生エネ説明会 太陽光発電など再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度のルール変更に伴い、九州経済産業局は29日、福岡市で新ルールの説明会を開催した。九州各地から集まった事業者や個人からは「ルール変更で採算性が見えなくなった」など不安や疑問の声が上がった。予定の300人を大幅に上回る500人以上が参加。経済産業省資源エネルギー庁の担当者が、26日から適用された新ルールで九州では、需要を上回りそうなときに電力会社が事業者に発電を止めてもらうなどの「出力抑制」を無制限に行えるようになったことなどを説明した。会場からは「時間制の出力抑制は、1回当たりどれくらいの長さか」「再生エネの接続可能量を定期的に見直すとしているが、どれくらいの期間か」などの質問が続出。これらに対し、同庁担当者は「出力抑制の公正、公平なルールを早期に整備したい」「接続可能量の見直し期間は決まっていないが、1年ごとぐらいになると思う」と答えた。終了後、再生エネ事業を展開する機械メーカー(東京)の担当者は「出力抑制が無制限となるため、事業性の試算ができなくなる。もともと国の制度設計に甘さがあった」と指摘。福岡市の事業者は「今後は、新規計画を進めるのは難しい」との見通しを示した。出力抑制は、出力500キロワット以上の大型設備だけでなく、家庭用を含む全ての太陽光発電に拡大。3月末までに契約した出力10キロワット未満の太陽光発電は対象から外れるが、4月からは新ルールが適用される。住宅用太陽光発電の施工を手掛ける福岡県筑紫野市の事業者は「お客から多くの相談を受けるが、説明会ではよく分からなかった」と困惑した表情。「2月4日にも九州電力の説明会があるので、そちらにも参加して対応を考える」と述べた。再生エネの買い取り制度について国は、価格改定を現在の1年ごとから半年ごとに変更するなどの検討を進めている。事業者や個人にとって、いかに採算予見性などを示せるかが、今後の普及の鍵となりそうだ。 *1-3:http://qbiz.jp/article/54799/1/ (西日本新聞 2015年1月30日) 再エネ事業化、あきらめムード 福岡、新制度説明会に500人超 太陽光発電など再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度のルール変更に伴い、九州経済産業局は29日、福岡市で新ルールの説明会を開催した。九州各地から集まった事業者や個人からは「ルール変更で採算性が見えなくなった」など不安や疑問の声が上がった。予定の300人を大幅に上回る500人以上が参加。経済産業省資源エネルギー庁の担当者が、26日から適用された新ルールで九州では、需要を上回りそうなときに電力会社が事業者に発電を止めてもらうなどの「出力抑制」を無制限に行えるようになったことなどを説明した。会場からは「時間制の出力抑制は、1回当たりどれくらいの長さか」「再生エネの接続可能量を定期的に見直すとしているが、どれくらいの期間か」などの質問が続出。これらに対し、同庁担当者は「出力抑制の公正、公平なルールを早期に整備したい」「接続可能量の見直し期間は決まっていないが、1年ごとぐらいになると思う」と答えた。終了後、再生エネ事業を展開する機械メーカー(東京)の担当者は「出力抑制が無制限となるため、事業性の試算ができなくなる。もともと国の制度設計に甘さがあった」と指摘。福岡市の事業者は「今後は、新規計画を進めるのは難しい」との見通しを示した。出力抑制は、出力500キロワット以上の大型設備だけでなく、家庭用を含む全ての太陽光発電に拡大。3月末までに契約した出力10キロワット未満の太陽光発電は対象から外れるが、4月からは新ルールが適用される。住宅用太陽光発電の施工を手掛ける福岡県筑紫野市の事業者は「お客から多くの相談を受けるが、説明会ではよく分からなかった」と困惑した表情。「2月4日にも九州電力の説明会があるので、そちらにも参加して対応を考える」と述べた。再生エネの買い取り制度について国は、価格改定を現在の1年ごとから半年ごとに変更するなどの検討を進めている。事業者や個人にとって、いかに採算予見性などを示せるかが、今後の普及の鍵となりそうだ。 <化石燃料の輸入と原発に固執する日本政府> *2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150129&ng=DGKKZO82516690Y5A120C1TJ2000 (日経新聞 2015.1.29) 東燃ゼネがLNG火力、最大200万キロワット、静岡ガスと連携 電力小売りにらむ 石油元売り大手の東燃ゼネラル石油は静岡市に高効率の火力発電所を建設する。液化天然ガス(LNG)を燃料とし最大200万キロワットの発電能力を備える。投資額は1500億~2千億円で、稼働は2021年以降の予定。静岡ガスなどとの連携を見込む。エネルギー事業の多角化を打ち出した東燃ゼネが大型火力発電設備を持つのは初めて。電力会社への売電や電力小売りに向けコスト競争力の高い電源を確保する。建設に必要な環境アセスメント(影響評価)に向け、前段階となる環境配慮書を28日に経済産業省と静岡県、静岡市に提出した。静岡市の清水港近くにある東燃ゼネの敷地内に建設する。同所には東燃ゼネの油槽所や、静ガスと共同出資するLNG貯蔵施設がある。LNG船を受け入れる桟橋など発電所運営に必要なインフラがそろっている。燃料費は石炭の方が安いが設備投資を抑えられる。発電はまず100万キロワット規模で始め、需要に応じ200万キロワットまで拡大できるように設計する。石油元売り、都市ガス大手など異業種が建設を計画している発電所は数十万~100万キロワット級が多く、200万キロワットが実現すれば最大級になる。電気は東京電力や中部電力への売電に加え、一部は16年に全面自由化される小売りに回すことも視野に入れる。東燃ゼネはエコカーの普及でガソリンなどの需要が減るなか電力事業を新たな収益源に育てる考えだ。出遅れ気味だったエネルギー事業の多角化では、今回のLNG火力が本格的な最初のプロジェクトとなる。発電事業には、電力小売り参入を表明している静ガスのほか、東電や三井物産も参加を検討している。東電は域外での電力販売に力を入れており、域外に電源を確保できるメリットがある。三井物産はLNG取引量を増やせる。コンバインドサイクル(複合発電)と呼ぶ高効率の火力発電方式を採用する。ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせて効率よく電気をつくる。二酸化炭素(CO2)や大気汚染物質の排出も抑えられる。建設資金は事業が生み出すキャッシュフローを返済原資とするプロジェクトファイナンスで調達する考えだ。大手銀のほか地元地銀や県などとも調整している。 *2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150129&ng=DGKKASDF28H0T_Y5A120C1EE8000 (日経新聞 2015.1.29) 経済水素発電の実用化を支援 経産省、企業の調達費補助 経済産業省は、商業用水素発電所の実用化に向け、企業支援に乗り出す。まず水素の海外調達などの取り組みにかかる費用の3分の2まで補助する制度を創設。来年度予算案に20億円を盛り込んだ。今後は水素発電の実証設備や安全規制などの整備を進める考えだ。水素は発電時に二酸化炭素を排出しないため注目されている。2030年以降、水素による電気が家庭にとどく環境を整える。工場などが自家発電で水素を使うケースはあるが、商業用の大型水素発電所はまだない。経産省は昨年10月、実用化に向けた有識者会議を立ち上げた。今年度中に水素発電の導入に向けた経済面や制度面の課題を整理し、政策に生かす。実現には、水素の流通量が少ないことが課題だ。経産省によると、今は1立方メートル当たり20円から30円台後半を中心に取引され、市場への流通量は年間3億立方メートルほど。100万キロワット級の水素発電所1基で年間約24億立方メートルの水素が必要とみられ、国内調達だけでは水素が足りない。 <韓国では> *3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150130&ng=DGKKZO82568680Z20C15A1FFE000 (日経新聞 2015.1.30) 現代自会長の「水素愛」 光州で産業集積進むか 現代自動車グループの鄭夢九(チョン・モング)会長の「水素愛」が、韓国南西部の光州で花開く。(政府の新産業育成施設の)光州創造経済革新センターが27日開かれ、光州を水素バレーに育てる計画が始まった。鄭会長は昨年、スポーツ多目的車(SUV)「ツーソン」がベースの燃料電池車(FCV)を披露しただけに、光州が世界トップの地位につける役割を果たすことが期待される。これは鄭会長が強調してきた「水素自動車の経済学」から始まった戦略に沿ったものだ。韓国自動車産業研究所によると、ディーゼル車100万台をFCVに置き換えた場合、年間1兆5000億ウォン(約1600億円)の原油輸入代替効果をもたらす。FCV100万台の運用で、二酸化炭素(CO2)の排出量は年間210万トンほど減らせる。日経BPクリーンテック研究所によると、2030年の世界の燃料電池市場は400兆ウォン。ブ・キョンジン・ソウル大教授は「40年の燃料電池産業は国内で107兆ウォンに達し、生産誘発効果は約23兆5千億ウォン、雇用効果は17万3298人と見込まれる」と説明する。光州のインフラは魅力的だ。現代自の関係者は「水素の生産基地である麗水産業団地が近く、光州科学技術院、全南大学など研究施設が充実している」と指摘。関連企業も多く、産学連携でFCV関連技術の競争力を引き上げる計画を示す。だが現代自グループは水素バレー構想には慎重だ。構想は光州圏の議員らが作ったもので、20年までに総額8347億ウォンを投じ、光州を自動車100万台生産都市にするという内容だ。現代自グループは光州に40万台を追加生産できる設備を整える必要があるが、人件費が中国の3倍かかり、対応できないとの立場を示している。 <政府公用車も燃料電池車と電気自動車にすべき> *4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150129&ng=DGKKZO82499970Y5A120C1TCQ000 (日経新聞 2015.1.29) 九州大、公用車に「ミライ」導入 九州大学は大学の公用車として燃料電池車(FCV)を3月中旬にも導入すると発表した。トヨタ自動車の「ミライ」を導入する。FCVは燃料電池の開発を含む研究に活用したり、学長が使用したりする。イベントなどで貸し出して住民への情報発信にも利用する。九大は現在、移転を進める伊都キャンパス(福岡市西区、福岡県糸島市)内で水素エネルギー分野の研究に力を入れている。キャンパス内ではFCVの燃料となる水素を製造、貯蔵する水素ステーションを備え、水素を電気に変える燃料電池を研究している。 PS(2015年1月31日追加):*5-1に、2030年時点の電源構成比率(エネルギーミックス)について、有識者会議の坂根委員長の発言が掲載されているが、「①再生エネはコスト高」「②理想と現実は分けるべき」「③温暖化対策の観点から原発は20%台必要」「④再生エネは出力が天候に左右される欠点がある」「⑤再生エネの買い取り価格も電気料金に上乗せされる」「⑥発電実績(13年度で11%)や国民負担のバランスを勘案すると、比率は20%台前半が現実的」などとして、「⑦新たなエネルギーミックスでも原発を一定水準確保する」と結論づけている。 しかし、①④は、再エネが導入されてから10年程度で機器や蓄電池・水素燃料などが進歩し、*5-2のように、建設してから50年以上経ても重要なことが何一つ解決していない原発とは比較にならないほど解決している。また、③は環境の視点で人にとって最も悪いのは原発由来の放射性物質であることを意図的に隠蔽しており、⑤については輸入化石燃料はすこぶる高い上、原発こそ最も国民負担の多いエネルギーだという証明済の事実を無視している。さらに、②のように「理想と現実は違う」として何でも妥協して短期的視野で安きに流れるのをよいこととするのが文系の駄目なところであり、こういう意識に基づいた判断がせっかくの先進技術を殺して日本経済を停滞させているのである。 また、⑥の発電実績は、太陽光発電は原発とは異なり、受け入れ電力会社が買取拒否するほど短期間に伸びたことで有用性が証明済であり、このように、⑦の結論を導くために再生エネへの言いがかりや論理の不備・こじつけが多すぎるのは、見兼ねるものがある。 2014.1.19 2015.1.31西日本新聞 2014.7.8京都新聞 西日本新聞 *5-1:http://qbiz.jp/article/54890/1/ (西日本新聞 2015年1月31日) どうなるエネルギーミックス 原発と再生エネが焦点 経済産業省は30日、有識者による「長期エネルギー需給見通し小委員会」(委員長・坂根正弘コマツ相談役)の初会合を開き、2030年時点の電源構成比率(エネルギーミックス)に関する議論を始めた。温暖化対策がテーマになるとみられる6月のドイツ・サミットまでに結論をまとめたい考え。委員会は再生可能エネルギーや原発、火力の発電コストを再検証し、安定供給や安全性、自給率、環境への適合性などを踏まえ最適な電源構成を決める。坂根委員長は「まずは省エネと再生エネをどこまで導入できるか、徹底的に議論したい」と述べた。会合では再生エネについて「エネルギーの自給率向上や温暖化対策につながる」と導入拡大を求める意見が出た一方で、「再生エネはコスト増につながる。中小企業は電気料金値上げであえいでおり、理想と現実を分けて考えるべきだ」と慎重な声も相次いだ。 ■ ■ 経済産業省が30日に始めた電源構成比率(エネルギーミックス)の議論は、東京電力福島第1原発事故や環境問題などを踏まえ、原発と再生可能エネルギーをどう位置付けるのかが最大の焦点だ。論点をQ&Aで整理する。 Q エネルギーミックスとは。 A 国民生活や企業活動に不可欠な電力の需要を、どう賄うかを示す重要な指標だ。経済性や環境性 などを勘案して原子力、火力、太陽光などの再生可能エネルギーの配分を決める。1960年代から 3〜5年ごとに見直し、2000年代以降はエネルギー基本計画に合わせて策定している。政府は 昨年4月に新しい計画を閣議決定したが、その際は電源構成比率は盛り込まなかった。前回は 民主党政権時代の10年に示されており、5年ぶりの見直しになる。 Q 注目点は。 A 原発の位置付けになる。前回は20年後(2030年)の原発比率を約50%とした。原発は二酸化炭 素(CO2)を排出せず環境に優しく、発電コストも低いという考え方だ。当時(09年度実績)の原発 の発電比率は29%。2倍近くに増えることになり、九州電力が川内原発(鹿児島県薩摩川内市)に 3号機建設計画を進めるなど、原発拡大の機運が高まった。それが、11年3月の福島第1原発事 故で一変。民主党政権は12年に原発ゼロ方針を打ち出した。ところが、政権を奪回した自民党は 原発活用路線に戻し、昨年4月のエネルギー基本計画に原発を「重要なベースロード電源」と明記 した。新たなエネルギーミックスでも原発を一定水準確保する方針だ。 Q 政府は、原発の運転期間を原則40年としている。原発の比率は自然に下がっていくのでは。 A ルールを厳格に適用すると、48基ある原発は30年に18基になる。建設が進む2基が稼働すれ ば発電比率は15%程度になる。ただ、原発は条件を満たせば60年まで運転を延長できる。 政府は「原発依存度を可能な限り低減する」としているが、温暖化対策の観点から20%台は必要 との声がある。 Q 再生エネはどうなりそうか。 A 国民の原発不信は根強く、政府は前回の「約20%」を上回る水準とする方針だ。再生エネは欧州 などで導入が進むが、出力が天候に左右されるなどの欠点もある。増やすには広域で電力を融通 するための連系線増強や補助電源の確保が必要で、多額のコストがかかる。コストも、再生エネ の買い取り価格も電気料金に上乗せされる。再生エネの発電実績(13年度で11%)や国民負担 のバランスを勘案すると、比率は20%台前半が現実的なところとみられている。 *5-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015012801001163.html (東京新聞 2015年1月28日) もんじゅ、未点検機器約7千点に 報告書で不備 日本原子力研究開発機構は28日、事実上の運転禁止命令が出ている高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)について、昨年12月に原子力規制委員会に提出した機器保全計画の見直し報告書に不備があり、未点検機器が約500点増え、7千点近くに上ると明らかにした。敦賀市役所で記者会見した機構幹部は「確認が甘かった」と謝罪した。機構によると、不備があったのは禁止命令解除に必要な報告書で、保安規定の変更申請とともに昨年12月、規制委に提出した。その後確認作業を進めると、1次系ポンプに関する機器などが未点検の数に含まれていなかったことが分かった。
| 資源・エネルギー::2014.10~2015.4 | 10:44 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2015,01,26, Monday
2015.1.24、25西日本新聞 2014.12.18佐賀新聞 2015.1.26西日本新聞 (1)既に一般的抽象論の時期は終わりだ 佐賀県の山口知事は、支持者の相当の努力で知事に当選したが、*1-1、*1-2のように、「玄海原発を視察して正確な情報開示を要請し、互いの信頼関係を築くため、嘘はつかず、風通しのいい関係で、あらゆる事象に対する危機管理を考えていきたい」という程度の一般論を言っているようでは、原発やその関連団体を知らなすぎて心もとない。何故なら、その程度の一般論は、現在では原発地元でなくても日本中で常識であり、本当はフクシマ以前もそうあるべきだったからである。 また、オフサイトセンター(唐津市)や4号機原子炉格納容器内に入り、福島第1原発事故を受けて策定された新規制基準に基づく過酷事故対策などを確認したとのことだが、私は、①一見しただけで何がわかったか ②どれだけの問題点を指摘できたか ③九電の技術者が自分の予想と異なる答えをした時、自分の知識に照らして議論し正しい判断ができるか が重要な問題点だと考えている。 さらに、視察で移動式大容量ポンプ車、代替緊急時対策所、原子炉建屋の中央制御室・格納容器内の水素再結合装置などの説明を受けたそうだが、どうも反応がのんびりしている。 そして、*1-6のように、松浦火力も川内火力もダウンして停止するような九電の瓜生社長が、「ハード、ソフト両面から原発事故対策を講じている」と述べても、それをまともに信用できるわけがなく、過酷事故時は、どの範囲の住民が、どこへ、どれだけの期間避難し、誰がどう除染すれば元通りに農業・水産業・製造業・サービス業などを行えるのか、そのためのコストは誰がどう負担するのかを考えておかなければ、原発再稼働などという話には到底ならない筈である。 なお、*1-3に書かれているように、九電玄海原発の過酷事故を想定した佐賀、長崎、福岡3県合同の原子力防災訓練が5000人の参加で行われたものの、この参加者は原発30キロ圏に住む約27万人のごく一部であり、さらに30キロ圏内だけが被曝するわけではないことは、既にフクシマ原発事故で証明済だ。そして、そのギャップを新しい安全神話で埋めるのはやめるべきである。 一方、原発で利益を受けていない一般市民は、*1-4のように、原発再稼働に反対して国と九電に玄海原発全4基の操業停止を求めて佐賀地裁に提訴しており、水俣病被害者団体代表の大石さんが、「これ以上、公害被害者を出してはいけない」と訴えたそうだ。水俣病問題では、今でも国や企業が被害者救済の責任逃れを行っており、私もフクシマの現実は、ミナマタと同根の日本の政治・行政の問題点だと考えている。 さらに、*1-5のように、女優の吉永小百合さんは、福島支援で脱原発の詩を読むなど、自分のできる最大のことをしておられ、いまどきのアイドルとは異なる知性が感じられる。また、山本太郎さんはじめ沢田研二さんなど、芸能界からも脱原発に応援があるのは、世論形成のために頼もしい限りだ。 (2)避難の範囲 *2-1で、西日本新聞が、佐賀、長崎、福岡3県で九電玄海原発の重大事故を想定した原子力防災訓練が実施され、3県から約5千人が参加したと記載しているが、30キロ圏に居住する約27万人のうち5千人というのは1.8%にすぎず、30キロの同心円で不十分なことは、既にフクシマ原発事故で証明されている。 そのため、*2-2のように、原子力規制委員会が、「SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)」を使わない方針を決めたのは間違いであり、まずはSPEEDIの予測で避難した後に、実測してさらに避難範囲を増やしていく必要があるのは、誰が考えても明白だ。それにもかかわらず、「福島事故の教訓として、放射性物質の広がりを正確に予測するのは不可能と分かった」などとして、30キロの同心円内の人しか避難しなくてよいことにするような国を信頼してよいわけがないのである。 (3)行政と政治家の知識レベル *3には、原子力防災担当相の望月氏が、川内原発視察時に、ピンクや青の付箋の付いた資料を棒読みし、時折視線を上げながら、「しっかり対策が講じられていた」などと述べ、原子力防災の課題を問われると、ついに言葉に詰まり、同席した小里泰弘副大臣が代わりに答えたことで、「この人に県民の命を委ねて大丈夫だろうか」と書かれている。 暗記して自分の言葉で答えたから真実で、資料を見て答えたからあやふやで理解していないとは単純に言えないが、地元で原発の取材をしている記者には、わかっていないのも伝わるものだ。私も、適材適所の判断に関して安部政権に疑問を感じることはよくあるが、それが安部政権だけではないのが日本の政治・行政の重要な問題なのである。 (4)経産省の原発・火力びいき *4-1のように、経産省は、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)で新たに始める出力規制ルールに対するパブリックコメントの結果をまとめ、3230件の中には反対意見も目立って、一部地域で新ルールの適用を見送るなどの対応が迫られたそうだが、いつまでも「再生可能エネルギーは不安定」として太陽光電力の受け入れを中断しつつ、*4-2、*4-3のように原発を推進するとは、経産省が第三の矢が放たれるのを妨害し、国民負担を増加させているわけである。 また、そのしわ寄せを高齢者に行い、高齢化社会のニーズである製品やサービスの発展を妨げ、もう一つの第三の矢を折っているのも政府であって、これらは馬鹿というほかない。 (5)電力自由化による新電力の参入を妨害 *5-1のように、電力自由化で電力会社以外の企業が電力小売りに参入し、新電力として経産省に届け出た企業が2014年末に468社と1年で3.7倍に増え、家庭向けの電力小売りも16年に自由化することを定めた法律が昨年6月に成立して一段と加速したのは安部内閣の功績である。また、「固定価格買い取り制度」は管内閣の実績だ。 しかし、まだ「販売先に安定して電気を供給するには太陽光など不安定な電源だけでは難しく、電力小売りを始めるハードルは高い」などと言っており、日本企業は工夫も技術進歩もないようだ。また、「家庭向け小売りは送電線や電柱をたくさん使う分、企業が電力会社に払う託送料が高い」などと言うのも、もう電柱の時代でもなく、私がいちいち書かなくてもやり方はいくらでもあるだろう。 そのような中、*5-2のように、大手電力会社でつくる電事連の八木会長(関西電力社長)が、電気事業法を改正して発送電分離を実施する条件として、①電力の安定供給を損なわない仕組みを整備すること ②原発再稼働が進み電力需給が改善していること などを挙げたそうだ。このように、原発という既得権益を岩盤として自然エネルギーや電力自由化を妨害し、国民に迷惑をかけるのは、いい加減にすべきである。 (6)火山のリスク *6-1のように、火山噴火予知連絡会の藤井会長(東京大名誉教授)は、「深層NEWS」で御嶽山の噴火などを例に挙げて火山活動の活発化を指摘し、「(日本列島が)火山の活動期に入ったかもしれない」と注意を呼びかけ、最近の桜島の火山活動については「大規模噴火の予兆とは言えないが、地下にマグマはたまっている。100年前と同じ大規模の噴火が起きる可能性はある」と話し、今の日本は「地震や噴火が相次いだ平安時代とよく似ている」と指摘した。 また、*6-2のように、阿蘇火山博物館(熊本県阿蘇市)学術顧問で火山学者の須藤氏が、薩摩川内市で講演し、火山灰堆積のリスクや噴火予測の困難さを具体的に指摘して「再稼働を進めるべきではない」と主張しているのだが、東日本大震災の津波高の予告を無視したのと同様、九電と国は、これらすべてを無視して川内原発を再稼働させるつもりだろうか。 <抽象論による判断は危険> *1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/148605 (佐賀新聞 2015年1月23日) 正確な情報開示要請 山口知事、玄海原発視察 佐賀県の山口祥義(よしのり)知事は22日、再稼働の前提となる原子力規制委員会の適合性審査が進む九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)と県オフサイトセンター(唐津市)を視察した。4号機の原子炉格納容器内にも入り、福島第1原発事故を受けて策定された新規制基準に基づく過酷事故対策などを確認した。九電の瓜生道明社長とも面会し、正確な情報開示を求めた。冒頭の概要説明で、瓜生社長は「安全性の確保が経営の最重要課題。規制基準にとどまらず、自主的、継続的な安全性向上に取り組んでいく」との考えを伝えた。山口知事は「互いの信頼関係を築くため、うそはつかず、風通しのいい関係で、あらゆる事象に対する危機管理を考えていきたい」と応じた。視察では、非常時に原子炉に冷却水を注入する移動式大容量ポンプ車や指揮所となる代替緊急時対策所のほか、原子炉建屋では中央制御室や格納容器内での水素爆発を防ぐ水素再結合装置などの対策について説明を受けた。過酷事故の際に国と県の現地対策本部が入るオフサイトセンターでは、内閣府原子力防災担当の審議官が非常時の住民避難の考え方などを説明。政府や県、自衛隊など関係機関との連携や放射線のモニタリング態勢も確認した。視察を終えた山口知事は「現場を知ることは、災害対応では極めて重要。原発の見られる部分はすべて見た」としつつ、九電の対策の評価については「まだコメントできる段階ではない」と言及しなかった。その上で、「危機管理はハードはもちろんだが、運用などのソフト面が重要。県の体制を含めて、あらためてチェックしたい」と述べた。 *1-2:http://qbiz.jp/article/54261/1/ (西日本新聞 2015年1月22日) 佐賀新知事「互いにうそつかず」 玄海原発視察、九電に注文 佐賀県の山口祥義知事が22日、九州電力玄海原発(同県玄海町)を就任後初めて視察し=写真、原子力規制委員会の審査が大詰めを迎えている3、4号機の安全対策を確認した。山口知事は、出迎えた九電の瓜生道明社長に対し「これから信頼関係を築くために約束をしたい。互いにうそをつかず、どこからでも発言できる風通しのいい関係をお願いしたい」と注文した。瓜生社長は「原発は大きな危険性を内包し、安全を守るのが事業者の使命。ハード、ソフト両面から対策を講じている」と強調。知事は、新規制基準に合わせた対策などの説明を受けた後、移動式ポンプ車などを備えた保管エリアや、重大事故時の指揮所となる「代替緊急時対策所」を巡った。山口知事は玄海原発の再稼働について、安全確保と住民の理解を得ることを条件に容認する考えを示している。 *1-3:http://qbiz.jp/article/54437/1/ (西日本新聞 2015年1月25日) 甘い計画、命守れるか 玄海原発合同訓練、再稼働迫るも準備後手 24日にあった九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の重大事故を想定した佐賀、長崎、福岡3県合同の原子力防災訓練は滞りなく終わった。ただ、参加者は原発から30キロ圏に住む約27万人のごく一部。実際の事故では相当な混雑が予想されるが、計画は不十分な部分もある。「事故時にうまくいくのか」。参加者からは懸念の声も漏れた。年内の玄海原発再稼働も視野に入る中、残された課題は多い。原発から約3キロにある玄海町の特別養護老人ホーム「玄海園」。この日は入所者役の18人を30キロ圏外の佐賀県多久市と小城市にある高齢者施設に避難させる訓練を行った。車いす利用者には職員1人が付き添い、寝たきりの人には自衛隊員が協力した。古川伸子施設長(58)は「入居者100人のうち自力で歩けるのは10人。全員を避難させるには職員だけでは無理」と不安を語った。事故の発生時間によっては職員も手薄になる。原発から約6キロの同県唐津市の特養ホーム「潮荘」の梅崎充茂施設長(65)は「夜間は職員が4人だけ。呼び寄せても、家族を残して原発に近い施設に来てくれるだろうか」と表情を曇らせた。福祉施設などでの訓練は長崎県と福岡県でも行われたが、長崎県では病院や福祉施設の避難計画が30キロ圏内の全44施設のうち4施設しか策定されていない。訓練に先立つ準備が不十分で、県福祉保健課は「受け入れ先の調整中。策定を急ぎたい」という。道路の渋滞も懸念材料だ。訓練で唐津市鎮西町の住民約30人はバスで約40キロ離れた場所に移動したが、市の計画はマイカーでの避難が原則。車が避難ルートに殺到するのは必至だ。車を持たない人は他の住民との同乗や市や県が手配するバス、タクシーで移動する手はずだが、その人数も手順も定まっていない。車を持たない同市の坂井菊一さん(73)は「避難が遅れないか」と心配する。一方、唐津市の七つの離島では島内に整備した一時退避施設(シェルター)を使った。原発から最短約8・7キロの馬渡(まだら)島では、住民59人が体育館に設置された放射性物質除去フィルター付きのテントに避難する訓練をしたが、テントの収容力は66人分で島民396人の2割にも満たない。計画中の追加工事完成後も収容率は約5割にとどまる。地元区長の浦丸宏さん(73)は「誰が先に入るのか話し合いもできていない。混乱を避けるには、全員が収容できる施設しかない」。長崎県壱岐市の島民約3万人は事態によっては福岡県に全島避難する計画だが、具体的な受け入れ先がまだ決まっていないなど不確定要素もある。福岡県糸島市の離島・姫島から糸島市街地に来た吉田初音さん(62)は「訓練だから落ち着いてできたが、本番は何が何だか分からなくなるはず」と話した。 ◇ ◇ ●30キロ圏外の避難も考慮を 国の原子力災害対策指針に基づく3県の地域防災計画に沿った今回の訓練は、玄海原発から30キロ圏内を対象とし、その範囲外の被害は想定しなかった。より深刻な事態を考えればさらに広域の避難が必要になるが、取り組みには自治体間で温度差も見られる。福島第1原発事故で指摘されたように、高線量の放射性物質は広範囲に拡散する可能性がある。30キロ圏外にある福岡市はこうした状況を懸念し、市民の50キロ圏外への避難を想定した独自の避難計画を昨年4月に策定したが、今回の訓練には福岡市の計画を考慮した内容はうかがえなかった。事故の際、30キロ圏内の住民の受け入れ先にもなっている福岡市。50キロ圏内に住む約56万人が避難することになれば、混乱が予想される。佐賀県や長崎県の自治体でも、風向きによっては現在の計画が成り立たなくなる事態も起こり得る。全国の原発周辺では30キロ圏外の自治体が避難計画を作る動きが相次いでいるが、玄海原発周辺ではまだ福岡市だけだ。まずは福岡市と福岡県の連携が必要だが、福岡県防災企画課は「国の指針が変わらなければ30キロを超えた計画は考えにくい」という。「想定外」の被害をなくすため、踏み込んだ対策が求められる。 *1-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10102/149026 (佐賀新聞 2015年1月24日) 水俣病の被害者 原発訴訟で陳述 佐賀地裁 原発の再稼働に反対する市民が国と九州電力に玄海原発全4基の操業停止を求めている訴訟の第11回口頭弁論が23日、佐賀地裁(波多江真史裁判長)であった。新たに原告に加わった水俣病被害者団体代表の大石利生さん(74)が意見陳述、原発事故と公害とを重ね合わせながら「これ以上、被害者を生み出してはいけない」と訴えた。大石さんは、水俣病問題で国や企業が現在も被害者救済の責任逃れを図っている実態を示し、「原発事故も市民の安全を軽視して起こるべくして起こった人災。水俣病と同様に実態を隠して被害者を放置し続ける懸念もあり、裁判所は生活と命の重みを受け止めて判断してほしい」と訴えた。また、原告になった評論家の佐高信さんも意見陳述した。 *1-5:http://www.nikkansports.com/entertainment/news/p-et-tp0-20150126-1426386.html (日刊スポーツ 2015.1.26) 吉永小百合、福島支援で脱原発の詩を読む 女優吉永小百合(69)が、東日本大震災と福島第1原発事故の復興支援のため、9年ぶり4枚目の朗読CD「第二楽章 福島への思い」を3月11日にリリースする。1986年(昭61)から広島、長崎原爆詩の朗読CDを出し続け、今作は、福島県民の「脱原発」への思いなどを読み上げている。取材では、経済優先の安倍政権に疑問を呈した。東日本大震災発生から約4年。福島を思い、吉永が「第二楽章」を作った。「『忘れないで』とメッセージを(世の中に)送り、(被災地に)寄り添って支えたい」という思いからだ。きっかけは、デザイナー三宅一生氏だった。11年7月、広島原爆の被爆者、三宅氏の依頼で原爆詩の朗読を行った際、東日本大震災の被災者、福島市の詩人和合亮一さんの詩を託され、読んだことだった。その後、福島第1原発事故で富岡町から避難した佐藤紫華子(しげこ)さんが、自費出版した詩集「原発難民」を知り、12年4月に福島市で朗読。13年3月に朗読CD制作を考え、昨年10月に制作を始めた。2人の詩に加え、和合さんが10年からプロデュースする福島の小中学生対象の「詩の寺子屋」から詩を選び、吉永の依頼を受けて尺八奏者の藤原道山が音楽を作曲した。終戦間近45年3月生まれの吉永にとって「-福島への思い」は、同じ時代の体験を基に作る初めての朗読CDだ。「(過去3作より)つらい。つらいだけじゃなく福島に戻れるといいという願いもある中、希望が見える詩を選びました」。吉永は「これだけ地震が多い国で原発はやめてほしい」と脱原発を訴える。昨年末には福島第1原発に近い帰還困難地域にマスクを着けて踏み込んだ。「4年で何も変わっていない。除染された土もシートをかけられ、あらゆるところに放置され…想像以上のショック」。その上で、安倍政権に厳しい言葉を並べた。「予算も経済最優先。政治家は福島の復興に対して、どう思っていらっしゃるのか。お金だけ避難している人にあげればいいのか。福島を住めるふるさとに戻すつもりがあるのか…私には見えない。世界でも大変なことが起こり、目を向けてしまえば忘れてしまう」。発売前日3月10日には東京・千駄ケ谷の津田ホールで完成記念朗読会を開く。「(朗読は)生きがい。でも、もう『第二楽章』を出すようなことは起きないでほしい。これで終わりにしたい」。印税は全て被災者のために寄付する。 ◆「第二楽章」 吉永が86年から被爆者の体験から生まれた詩の朗読を始め、「(悲劇を)忘れないためにも語り部としておだやかに語り、残す」スタンスから作った朗読CD。97年「第二楽章」(広島編)99年「-長崎から」を発売。06年には、沖縄戦を描いた野坂昭如氏の小説「ウミガメと少年」を朗読した「-沖縄から」をリリース。 *1-6:http://qbiz.jp/article/54161/1/ (西日本新聞 2015年1月21日) 九電、今度は川内火力が停止 松浦火力は復旧も 九州電力は21日午前、石油火力の川内発電所2号機(鹿児島県薩摩川内市、出力50万キロワット)のボイラーで蒸気漏れが見つかり、運転を停止したと発表した。配管の損傷が原因とみられるが、復旧の見通しは立っていない。26日以降の電力需給状況がやや厳しくなる可能性があり、九電は他電力からの融通の積み増しなどで供給力確保に努めるとしている。九電によると、運転中だった21日午前2時40分ごろ、社員が蒸気漏れを確認し停止。今後、ボイラーを冷却した上で復旧作業に入る。2号機は昨年9月にも、ボイラーの不具合で停止するトラブルが起きている。一方、ボイラー関連装置の不具合で19日に停止した石炭火力の松浦発電所1号機(長崎県松浦市、同70万キロワット)は、応急処置を施した上で20日に通常運転に復帰した。 <避難の範囲> *2-1:http://qbiz.jp/article/54431/1/ (西日本新聞 2015年1月24日) 玄海原発事故を想定、初の福祉・病院入所者移動も 北部3県訓練 佐賀、長崎、福岡3県は24日、九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の重大事故を想定した原子力防災訓練を実施した。合同訓練は2013年11月末以来2度目で、3県から約5千人が参加した。運転中の玄海原発3号機の全電源が喪失し、原子炉の炉心を冷却する機能が失われたとの想定。事故の一報を受けた3県と国は初めてテレビ会議を開き、情報の共有に努めた。課題だった福祉施設の入所者や病院の入院患者の移動訓練も初めて導入。3県それぞれが、原発から30キロ圏内にある施設から圏外の施設に移動する流れを確認した。長崎県壱岐市の住民約30人は海上自衛隊のエアクッション型揚陸艇(LCAC)で博多港を経由して福岡県太宰府市に、佐賀県唐津市の約30人は車で福岡県糸島市に向かった。玄海原発3、4号機は原子力規制委員会の審査が続く。原発から30キロ圏に居住するのは約27万人で、昨年4月に3県が発表した推計では、全員の避難が完了するのに最短で17時間5分かかるとしている。糸島市にバスで避難した唐津市の75歳の女性は「訓練はスムーズにいったが、実際の避難は渋滞や混乱もあるだろうからうまくいくか分からない」と不安そうに話した。 *2-2:http://digital.asahi.com/articles/ASH1M4417H1MUOHB006.html (朝日新聞 2015年1月22日) 新潟)「SPEEDI使わず避難」方針…住民に残る不安 原子力規制委員会が、原発で重大事故が起きた際の住民避難の判断に、放射性物質の広がりを予測する「SPEEDI(スピーディ)」(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)を使わない方針を決めて4カ月たった。東京電力柏崎刈羽原発周辺地域で理解が深まったとは言い難く、国は放射線量の実測で避難を判断する態勢を強化するものの、不安視する住民は少なくない。 ■「予測の情報、大切」 「住民避難など防護措置の判断にはSPEEDIの計算結果を使いません」。14日夜、柏崎市内であった住民組織「地域の会」の月例会合。規制委の事務局である原子力規制庁の担当者が、規制委が昨年10月に決めた運用方針を改めて説明した。SPEEDIは、原発事故で放射性物質が放出された際、拡散範囲や濃度を気象条件や地形をもとに予測し、地図上に示すシステムだ。避難指示を判断する要として期待されたものの、原子炉建屋の爆発が相次いだ福島第一原発事故では有効に使えなかった。放射性物質がいつ、どの程度放出されるかを示す「放出源情報」が得られなかったためだ。風向きなどの気象条件は刻々と変化するため、あいまいな放出源情報で計算した拡散予測に基づく避難は、かえって住民の被曝(ひばく)リスクを高めかねない。「福島事故の教訓として、放射性物質の広がりを正確に予測するのは不可能と分かったのです」。国の検証データを示しながら、担当者はSPEEDIが使えない理由を解説した。2012年に策定された国の原子力災害対策指針は、住民の避難を二段階に分けた。被曝の危険が最も高い半径5キロ圏を即時避難区域(PAZ)とし、住民は放射性物質の放出前に先行避難する。一方、5~30キロ圏は避難準備区域(UPZ)とし、住民は屋内退避した後、モニタリングポストで実測した放射線量をもとに避難の判断をする。一斉避難で起こる混乱を避けるのが狙いだが、UPZの住民は屋内退避や避難中に被曝する恐れが高い。このため、SPEEDIの拡散予測を避難指示の判断材料にしたいとする自治体は少なくない。この日の会合でも、住民側から「福島事故時とは違い、大規模な安全対策が進んでいる。放出源情報の把握は可能ではないか」「緊張感の中で暮らす住民にとって、予測に基づく情報発信は大切だ」など運用継続を望む意見が相次いだ。出席した県の放射能対策課の担当者も「県としては、予測と実測の両方を使いたい。再度の活用を検討してほしい」と要望した。規制庁は、フィルター付きベントなどを使って計画的に放出する場合でも、原子炉の状況は刻々と変化するため、放出の数時間前に放出源情報を把握するのは難しいとする。放出直前なら可能だが、その時点でSPEEDIを使っても避難に間に合わないという。モニタリングポストの増設など緊急時のモニタリング態勢を強化しながら、実測に基づく避難の円滑化を図る考えだ。 <行政と政治家の知識レベル> *3:http://qbiz.jp/article/54222/1/ (西日本新聞 2015年1月22日) 原子力防災担当相の「棒読み」に思う 川内原発視察 万が一、原発事故が起きた場合、この人に県民の命を委ねて大丈夫だろうか。本当に不安になった。 九州電力川内原発の過酷事故に供えた防災体制を視察するため、望月義夫原子力防災担当相が19日、鹿児島県を訪れた。伊藤祐一郎知事との会談を終え報道陣の前に現れた望月氏の手には、ピンクや青の付箋の付いた資料が。時折視線を上げながら、「しっかり対策が講じられていた」などと述べたが、ほぼ資料をそのまま読んでいた。その後も報道陣が質問するたび資料に目を落とす。原子力防災の課題を問われると、ついに言葉に詰まり、同席した小里泰弘副大臣が代わりに答えた。小里氏が資料を手にせず詳しく説明したため、望月氏の「棒読み」が一層際立った。原発再稼働には今なお国民の反対が根強い。その要因の一つが、避難計画の実効性への不安だろう。国は再稼働を推進する以上、こうした国民の不安を取り除く責任がある。その作業の先頭に立つのが原子力防災担当相だ。いくら環境相との兼任とはいえ、原発を抱える鹿児島県民の一人としては、もう少し自分の言葉で答えてほしかった。望月氏は「安全神話に基づいてはいけない」とも言った。その意味を自ら重く受け止めてほしい。 <経産省の原発・火力びいき> *4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11555207.html (朝日新聞 2015年1月17日) 固定買い取り、抑制に異論も 再生エネ、パブコメ3千件 新ルール、一部見送り 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)で、経済産業省は16日、新たに始める再生エネの出力抑制ルールに対する意見募集(パブリックコメント)の結果をまとめた。3230件の中には反対意見も目立ち、経産省は一部地域で新ルールの適用を見送るなど対応を迫られた。出力抑制は、火力発電を最大限減らしても、電気があまる時に、太陽光や風力の発電を一時的に止めてもらう仕組みだ。経産省は昨年、太陽光の申し込みが増えすぎて受け入れを中断する電力会社が相次いだため、抑制をしやすくする新ルールを決め、今月9日まで意見募集をしていた。公表された意見には、新たに住宅用の太陽光発電が出力抑制の対象になることに対し、「送電網への負担が小さい家庭用の出力抑制は不要」との指摘があった。経産省は、まだ再生エネの受け入れに余裕のある東京、関西、中部の3電力管内では当分の間、住宅用など50キロワット未満を対象外とすることにした。経産省が専門家と検証した電力各社の接続可能量についても480件の意見が集まり、「すべての原発の再稼働を前提とするのは問題だ」などの疑問が示された。政府がベースロード電源と位置づける原発は太陽光や風力の給電より優先されるため、原発の稼働を見込むと、再生エネの接続可能量が少なくなるからだ。電力会社間で電気の融通に使う地域間連系線の増強などを求める意見も108件あった。 ■全原発再稼働が前提 今回の運用見直しで突出しているのは、原発の優遇ぶりだ。再生可能エネルギーの「接続可能量」は電力需要から原子力、火力、水力など旧来型の発電方式の割り当て分を引いた残り。原発の割り当てが増えれば、その分、接続可能量は減る。接続可能量を公表した電力7社のうち、原発をもつ6社は各自の全原発の再稼働を前提にする。廃炉が見込まれる原発の発電分も、もれなく盛り込んだ。東北電力は、電源開発が青森県大間町に建設中の大間原発からの受電分を盛り込んだうえで、接続可能量を算出した。電源開発は「2021年度の稼働を目指す」とするが、工事が計画通りに進んでも、運転開始は7年後。それまで「空押さえ」状況が続く。福島県エネルギー課の佐々木秀三課長は「空押さえが再生可能エネルギー導入拡大の入り口を塞いでいる」と批判する。中国電力も島根原発1~3号機の発電分をすべて盛り込んだ。しかし、1号機は運転40年を超えて廃炉がとりざたされ、3号機は建設中で運転開始時期は「未定」(中国電)だ。太陽光発電などの事業者には不安が広がる。見直しで、「接続可能量」を超えた事業者には、どれだけ出力抑制を頼んでも、電力会社は補償金を払う必要がなくなるからだ。大分県内で太陽光を手掛ける「ECOW(エコー)」(東京都港区)は、出力抑制されない小水力事業への移行を考えている。橋場崇顕社長は「どれだけ出力抑制されるのか分からないと、事業計画が立てられない」という。会津電力(福島県喜多方市)は、計画中の約1千キロワットの太陽光発電が無補償の対象になる。「東北電力で出力抑制がどれくらいになるかの見通しを示してくれないと、銀行融資が厳しくなる」と折笠哲也常務はこぼす。「出力抑制が無制限になったら、もはやFITと呼べないのではないか」 ■FITの見直し案への主な意見と経済産業省の対応 ◇論点 a:主な意見 b:経産省の対応 * ◇再生エネの受け入れ可能量 a:全原発の稼働を前提にした試算は問題だ b:電源構成の見通しなどを踏まえ、継続的に再検証する ◇電力会社間の融通 a:地域間の連系線をもっと活用し、増強もすべきだ b:早急に検討していく ◇住宅用太陽光の出力抑制 a:対象外にすべきだ b:東京、中部、関西の3電力管内は当面、対象外にする ◇出力抑制時の補償の撤廃 a:30日を超えた場合は補償すべきだ b:補償費用で国民負担が増えるため、適切ではない ◇監視・情報開示 a:抑制見込みの事前公表や電力会社に対する監視が必要 b:事前公表を義務づけ、監視の仕組みを早急に整備する *4-2:http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150116-OYT1T50175.html (読売新聞 2015年1月17日) 原発比率20%軸に検討…再生可能エネと同程度 政府が、2030年の国内の発電量に占める原子力発電の割合について、太陽光など再生可能エネルギーと同程度の約20%を軸に検討を進める見通しになった。原発を可能な限り減らすとの方針に沿って、東日本大震災前(10年度)の28・6%から引き下げることになる。今月末から経済産業省に新設する有識者会議で、発電方法ごとにどの程度の割合にするかを示す最適な電源構成(ベストミックス)の議論に着手する。発電方法別のコストなどを検証し、今夏までに結論を出したい考えだ。政府は、14年4月に決めた新しいエネルギー基本計画で、将来の再生エネの割合を「約2割を上回る水準」と決めた。一方、原子力などは決定を先送りしていた。政府内では、「原発を減らしすぎると電力供給に支障が出るが、脱原発の世論を考えると再生エネ以上の活用は難しい」(政府関係者)などの見方が強まっている。宮沢経産相は、原発の割合を30%未満にする意向を昨年10月に表明している。 *4-3:http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/nuclearpower/62359.html (福井新聞 2015年1月21日) 原発建て替え必要と関西電力副社長 豊松氏「国の方針待ち具体化」 関西電力の豊松秀己副社長(原子力事業本部長)は20日、年頭のあいさつのため福井新聞社を訪れ、吉田真士社長らと懇談した。古い原発を廃炉にして敷地内に新しい原子炉を設置する建て替え(リプレース)に関して「関電としてリプレースをする必要があると思っているが、国の方針が出た後に具体的に動きだすことになる」と述べた。関電は、運転開始から40年を超える美浜原発1号機(福井県美浜町)の後継機設置の検討に向けた地質調査を2011年1月から着手したが、東京電力福島第1原発事故後に中断している。豊松副社長は「(運転期間の原則40年制限で)原発は減っていき、いずれゼロになってしまう。国の方針として原子力の比率をある程度維持するならば、リプレースは必要」としたが、「国の方向性が明らかにならないと、打って出ることはできない」と話した。原子力規制委員会の安全審査が進む高浜3、4号機(福井県高浜町)の再稼働時期については「電気料金の値上げの申請時に11月ごろと設定したが、できる限り早く動かしたい」と述べた。一方で大飯3、4号機は想定する地震の揺れが安全審査で大幅に引き上げられたため耐震補強工事に時間が掛かるとし、15年度中の再稼働は厳しいとの見通しを示した。立地自治体などと結ぶ安全協定に関しては、福島の事故を踏まえ「災害対策の30キロ圏外も当然情報は知りたいということはあり、覚書を結ぶケースはある」としつつ、「安全協定は立地市町や県が住民の安全を守るために積み重ねてきた歴史や信頼関係の上に立つので、基本的にはその延長上で考えなければならない」と強調した。八嶋康博・取締役常務執行役員、岡田雅彦・常務執行役員地域共生本部長、森中郁雄・常務執行役員原子力事業本部長代理、保田亨・広報室長らも同席した。 <電力自由化による新電力の参入には妨害> *5-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150120&ng=DGKKASFS19H84_Z10C15A1EE8000 (日経新聞 2015.1.20) 電力小売り参入 500社迫る、日立造船など自由化にらむ 電気料金上げ、商機 料金徴収などハードル 電力会社以外の企業が電力小売りに参入する動きが広がってきた。新電力として経済産業省に届け出た企業は2014年末に468社と1年で3.7倍に増えた。日立造船がごみ焼却施設で発電した電気を4月から販売するなど電気の調達方法も広がっている。電力会社の料金引き上げで相対的に価格が割安になるとみて参入意欲を高めているようだ。新電力の仕組みは00年から始まった。企業が発電所から仕入れた電気を、電力会社の送電線を通じて工場やオフィスに供給する。低コストを生かし、電力会社よりも電気料金を数%安く販売するケースもある。参入は11年の東日本大震災後に増加が目立ち始めたが、家庭向けの電力小売りを16年に自由化することを定めた法律が昨年6月に成立してから一段と加速。月30社のペースで参入が続く。太陽光など再生可能エネルギーで発電した電気の買い取りを電力会社に義務づける「固定価格買い取り制度」も参入を後押ししている。東京商工リサーチの昨年8月の調査では、新電力のほぼ半分が電気や電気機械、設備を扱う業種だった。「太陽光発電などを手がける中小企業の参入が圧倒的に多い」(経産省関係者)。日立造船は4月から、地方自治体が運営する最大50カ所のごみ焼却施設で発電した電気を販売する。ごみ処理で出た熱を活用するごみ発電は、再生エネの買い取り制度の対象。日立造船はもともとごみ発電の施工や運営を手がけており、ノウハウを電力小売りに生かせると判断した。電力会社の再値上げも新電力に参入するきっかけになっている。昨年11月に震災後で2度目の値上げに踏み切った北海道電力の管内では、異業種の参入が目立つ。北海道ガスは4月から自社グループの発電所などを活用して約50施設に電力の供給を始める。北海道電の再値上げ以降は「オール電化をガスに乗り換える動きが増えている」(同社)といい、電気とガスのセット販売も視野に入れる。コープさっぽろ(札幌市)も16年度から再生エネで調達した電気を組合員に販売する。ただ新電力のうち、実際に電気を売る企業は届け出数の1割強、60社程度にとどまる。1年で4割ほど増えたものの、電力小売りを始めるハードルは高い。販売先に安定して電気を供給するには太陽光など発電量が日によって不安定な電源だけでは難しいからだ。参入急増の背景には16年4月に家庭向けの小売りが自由化されることもある。ただ家庭向け小売りは送電線や電柱をたくさん使う分、企業が電力会社に払う託送料が高い。工場など大口向け電気料金のうち託送料が占める割合は1~2割だが、家庭向けでは4割程度に達する場合もある。「各家庭から料金を徴収するのは大変な作業」(大手電力関係者)との指摘もあり、実際にすべての参入企業が販売までこぎつけられるか不透明な部分もある。 *5-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11567257.html?_requesturl=articles%2FDA3S11567257.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11567257 (朝日新聞 2015年1月24日) 発送電分離法案、延期規定が必要 電事連会長が認識 大手電力会社でつくる電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)は23日の記者会見で、政府が2018~20年をめどに、電力会社の送配電部門を別会社にする「発送電分離」をめざしていることについて、「問題が生じる場合は、実施時期の見直しを含め、柔軟に改革を進める必要がある」と語った。経済産業省は、電気事業法改正案を来週から始まる通常国会に提出する方針で、八木氏の発言は、法案に発送電分離の実施時期を延期できる規定を盛り込む必要がある、との認識を示したものだ。八木氏は、発送電分離を実施する条件として、電力の安定供給を損なわない仕組みを整備することや、原発再稼働が進み、電力需給が改善していることなどを挙げた。その上で、国に対し、こうした課題が「解消したのか確認・検証する必要がある」と注文をつけた。 <火山のリスク> *6-1:http://www.yomiuri.co.jp/science/20150116-OYT1T50172.html?from=tw (読売新聞 2015年1月16日) 「列島、活動期に入ったかも」…噴火予知連会長 国の火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長(東京大名誉教授)が16日夜、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、「(日本列島が)火山の活動期に入ったかもしれない」と注意を呼びかけた。藤井会長は、御嶽(おんたけ)山(長野・岐阜県境)の噴火などを例に挙げ、火山活動が活発化していることを指摘。最近の桜島(鹿児島県)の火山活動について「大規模噴火の予兆とは言えないが、地下にマグマはたまっている。100年前と同じ大規模の噴火が起きる可能性はある」と話した。更に伊豆大島や三宅島でも「噴火の準備はできている」と説明。今の日本は「地震や噴火が相次いだ平安時代とよく似ている」と指摘した。 *6-2:http://qbiz.jp/article/54448/1/ (西日本新聞 2015年1月26日) 再稼働「進めるべきでない」 火山学者須藤氏 薩摩川内で講演 噴火のリスクを訴え 火山学者の立場で川内原発再稼働の危険性を訴えている阿蘇火山博物館(熊本県阿蘇市)学術顧問、須藤靖明氏の講演会が24日、鹿児島県薩摩川内市であった。火山灰堆積のリスクや噴火予測の困難さを指摘し「再稼働を進めるべきではない」と主張した。須藤氏は、1万3千年前と同規模の噴火で九州電力が最大15センチと想定している川内原発敷地内の火山灰堆積について「15センチ積もる事態になれば、鹿児島市など周辺地域の堆積量は何メートルにもなる可能性がある。原発につながる道路は使えなくなり、原発事故に備えた機材や人員を派遣することは難しくなる」と指摘した。また、巨大噴火の予測について「『前兆現象だった』と噴火後に分かるケースが多く、事前に前兆を捉えて原発を止めるのは難しい」と述べた。講演は、鹿児島市の天文館などで毎週金曜日に再稼働阻止を呼び掛けている市民団体「かごしま反原発連合」が主催。全国で金曜日に反原発集会を続ける100人が聴講した。 PS(2015年1月30日追加):私は、衆議院議員をしていた2006~2009年の間に、佐賀県の7つの離島のすべてを3回以上廻り、国の最前線の資料を配布して農業・漁業・食品・エネルギーなどの産業や医療・介護などについて島の人と懇談会をしたのでアドバイスできるのだが、離島は、高齢化が本土より早く進んでいるため、離島を見れば10年後に本土で必要になるものがわかるくらいである。なお、*7にも書かれているように、離島の要望は、島毎に老人のケア・ハウスや診療所、小学校を作り、人口が少ないため島毎に整備することができないものについては、呼子、名護屋、星賀、湊、千代田町などの本土側連絡船(離島の交通機関)発着場所近くに病院・スーパー・学校などを作って、舟で本土の港に着けばすぐ問題解決できるようにして欲しいということだった。つまり、連絡船と本土の交通機関や主要施設とのアクセスをよくすべきなのだ。なお、救急医療については、ドクターヘリを作ったので既に問題解決できており、イノシシは、困ってばかりいないで資源として使うべきである。 1)松島:主な特産品はオリーブとウニだが、島が小さいため生産量が少ない。そのため、ブランド化 するには、他の島でもオリーブやウニを生産してまとまった数量の出荷ができるようにすべきだ。 2)馬渡島:特産品は特にないが、「野生化した山羊が困りものだ」と言われている。しかし、それなら 山羊を飼って山羊皮はじめ山羊産物をコスメ構想に利用したり、草取り用に山羊のリースをしたり してはどうかと思う。また、野生のてんぐさも減ったとはいえ獲れるため、養殖すればかんてんの 産地になれると思う。そのため、それらをやる人を公募して育てる必要があろう。 3)向島:漁港施設は必要だが、本土と近くて人口が少ない島なので、舟で本土に行けば港の近くに小 中学校があるという形にすればよいだろう。産業はウニがとれたり民宿があったりするので、これを 伸ばしたいが、オリーブやアーモンド(花は桜に似ており、実がなるので桜より良い)もできそうだ。 4)離島の住民が目の前にある玄海原発の事故を不安視するのは当然で、海が汚されれば漁業は 壊滅し、日本海は狭いため太平洋よりも深刻になる。 5)「一番の心配は原発事故。どこの港からどういう船に乗ってどこに逃げるのか分かっていない」と 女性が玄海原発への不安を口にすると、山口知事は「この島は目の前に原発がある。気持ちは 分かります」と言われたそうだが、「気持ちはわかるけど、無用な心配だから無視する」とでも言う つもりだろうか?「屋内テントに3日も4日もいられない」と男性が訴えると、「そこは大丈夫」と応じ、 対策を講じる考えを示したというのも、どういう対策を講じれば大丈夫になると言うのか見もので はあるが、無駄遣いはせず、離島に本当に必要なことをして欲しい。 6)さらに、離島は風力・潮流などの自然エネルギーが豊富であるため、原発をやめて燃料を水素に 変えれば、離島は資源の宝庫であり、イノベーションが可能だ。そのために電動軽トラが開発さ れたのだが、このほか居住性のよい電動船や電動農機具の開発も望まれる。 アーモンドの花と並木 オリーブ畑 *7:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/151182 (佐賀新聞 2015年1月30日) 山口知事、離島3島視察 住民、原発事故への不安訴え ■「避難所整備進める」 唐津市 山口祥義(よしのり)知事は29日、唐津市の馬渡島など離島3島を訪問した。少子高齢が進む現状や特産品による地域活性化の取り組みなどを視察。3島は玄海原発から10キロ以内と近く、住民との意見交換では原発事故を不安視する声が相次いだ。訪問したのは向島、馬渡島、松島。馬渡島では24日の原子力防災訓練で収容人数や避難環境の問題が指摘された小中学校体育館の屋内テントに入り、「ここで何日も避難するのは厳しい」と感想を述べた。同島では約1時間、住民約30人と意見交換。「一番の心配は原発事故。どこの港からどういう船に乗ってどこに逃げるのか分かっていない」。女性が玄海原発への不安を口にすると、ほかの住民も「訓練では防災無線もよく聞こえなかった」「事故が起きるともう島には戻れないと思う」と率直な思いを話した。山口知事は「この島は目の前に原発がある。気持ちは分かります」と住民の不安に理解を示した。「屋内テントに3日も4日もいられない」と男性が訴えると、「そこは大丈夫」と応じ、対策を講じる考えを示した。3島では休校となっている小学校や漁港施設(向島)、診療所(馬渡島)、特産品化を目指しているオリーブ畑や水産品加工所(松島)なども視察した。住民からは少子化や若年者の流出、救急医療の現状やイノシシによる農作物被害などが報告された。原発再稼働容認の立場を取っている山口知事は、原発事故への不安が相次いだことについて「避難所の整備を進めなければならない。待避所に長くはいられないので、(避難後の)次のアクションの必要性を感じた。声を聞くことができ、しっかりやらなければという思いを強くした」と述べた上で、「4年間の任期でしっかり取り組む覚悟を持つことができた」と視察を総括した。 PS(2015年2月3日追加):*8及び左のグラフのように、佐賀県内の商工会経営指導員1人当たりの巡回指導件数が5年連続で全国一となり、頑張っているため、ここで、今後拡大する市場と経営アドバイスする人材についてコメントする。 *8より 人口ピラミッドの変化 2015.2.2日経新聞より 1)拡大する市場が、成長できる市場である。 ①真中のグラフのように、高齢者の割合が増え、その高齢者も戦後生まれの人の割合が次第に多く なっていくが、この人たちのニーズに合った財やサービスは、未だ十分ではないため、ここは今後 伸びる市場であり、フロンティアである。そして、これから人口が増える市場をターゲットにすれば 必ず成長できる。 ②右の図のように、今後、エネルギーのイノベーションが起こって水素や電力が主体となり、ここでは 誰もが0からの出発であるため、成長するフロンティア市場になる。 ③世界では人口増加で食品需要が伸びるため、世界を視野に展開すれば、農漁業は、これから 成長するフロンティア市場になる。 2)経営アドバイスに必要な人材は、補助金の提案、資金繰りの相談、信用保証など国の支援策をアドバイスする人も大切だが、以下の人も重要であり加えるべきだ。 ①会計を通してその主体の強みと弱みを把握した上で、改革や改善のアドバイスができる人 ②市場の視点を持っている人(例えば、地元の人ではなく購入サイドに立つ都会の人や高齢者向けの 財・サービスの開発が得意な人など) *8:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10103/152576 (佐賀新聞 2015年2月3日) 経営指導員1人当たり巡回数、5年連続全国一 県内商工会 ■負担重く、質向上課題 13年度 佐賀県内の商工会の経営指導員1人当たりの巡回指導件数(2013年度)は1097件で、5年連続で全国一となった。総件数は4年連続で5万件を超えた。会員企業の経営課題を把握し、改善を指導する貴重な機会になっている一方、指導員が減少しているため、職員の負担は重い。巡回の回数を確保するだけでなく、質の向上が課題になっている。県内17商工会の経営指導員は47人で、13年度の巡回指導の総件数は5万1586件。12年度と比べ約1割減ったものの、1人当たりの件数は全国平均403件の2・7倍と高水準を維持している。約7200の全会員を年に2回巡回するほか、重点会員はさらに4回追加。「全ての経営支援は巡回から」をスローガンに、全県を挙げて取り組んでいる。唐津市鎮西町、肥前町、呼子町と東松浦郡玄海町をエリアとする唐津上場商工会では、経営指導員4人と支援員7人で巡回。毎月第1、第3週に定例巡回を行い、それ以外の週も要望に応じて訪問する。ニーズに合った補助金などを提案するほか、窓口では切り出しにくい資金繰りの相談にも応じている。1月下旬には経営指導員と支援員のペアで、マリンパル呼子を訪問。省エネ設備の導入などを支援する国の補正予算メニューを説明した。中道清成社長(60)は「経営面に限らず、いろいろな情報交換ができる」と巡回指導を評価する。巡回指導の強化は、商工会合併によるエリア拡大が背景にある。「平成の大合併」に伴って商工会数は39から半分以下に減り、商工会との“距離”が広がることを心配する会員の声に応えた。一方で、経営指導員の数は合併前から約3割減り、業務負担は増大。県商工会連合会は本年度の事業計画で、「テーマを持った巡回を実施して質の向上を図る」と方針を掲げた。中道社長は「商工会にあまり足を運ばない会員は、役場のような堅いイメージを持っている。商工会の必要性を理解してもらうには、巡回指導が欠かせない」と訴える。連合会の陣内一博専務理事は「時間があれば巡回するのが商工会の原点。地域密着を貫きたい」と話す。
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2015,01,21, Wednesday
女性役員割合 女性管理職割合 就業者・管理職に占める女性割合 (1)日本における女性管理職の割合 *1-1のように、日本では、企業の管理職に占める女性割合は、平均6.2%で、男性だけの企業も半数を超え、今後増加すると見込む企業も20.9%にすぎない。 経団連の榊原会長は、*1-2のように、会員企業約1300社の全てに行動計画策定を要請し、2014年12月に公開することとし、安倍政権は「2020年に指導的地位に占める女性の割合30%を達成する」と女性の活躍を新しい成長戦略の柱の一つと位置付け、成長戦略に明記して、国・地方自治体・企業に、女性幹部登用目標や行動計画策定を義務付ける新法案を国会に提出する方針を示したそうだ。 しかし、経団連の「女性の活躍推進委員会」の前田共同委員長は、「企業や業種によって男女の採用人数などが異なり一律の対応は難しい」と説明し、これまで男性中心の職場として名高かったトヨタ、日立、全日空などは数値目標を掲げるに留めたそうだが、これらの男性中心企業こそ、女性の視点を積極的に取り入れた方が、女性が多くなる今後の市場ニーズに的確に合わせられると、私は考える。 また、私は、人間は生き方も目標も異なるため、すべての男女が育児や在宅勤務に携わる必要があるとは思わないし、そのような仕事の仕方では全うできない職種も多い。そのため、それぞれの人が個性に合わせた選択を行った場合に、その選択でやりくりできることが必要で、それには、例えば、家事の外部化、職住接近、子育て・教育における負担の軽減、介護の外部化などが必要なのである。 (2)女性は仕事の能力やリーダーシップがないため管理職にしないという偏見は、どうやって造られるか 企業の管理職に占める女性割合が低い理由は、まさに*1-1にあるように、①企業が、「女性の登用が進まない理由は、女性の仕事と家庭の両立の難しさだ」として、原因を女性に押し付け、自らが内蔵する真の女性差別を明らかにして解決しようとしていないこと ②問題を、働きながら出産・子育てする環境整備にのみ集約させ、実際には男性と同じ以上の働きをしている女性にも同じ処遇すらしていないこと ③何十年も前から出産・子育ての環境整備を語っているのに、まだ保育や学童保育が十分でなく、要するに口だけで真剣に取り組んでこなかったこと などが挙げられる。 そして、*1-1では、帝国データが、その理由を「古い企業文化が残っている影響だ」と指摘しているが、女性は仕事の能力やリーダーシップがないため管理職にしないという偏見が造られる古い企業文化の素になっているのは、実は、メディアが「表現の自由」「日本文化」と称して、女性蔑視や偏見満載の報道・ドラマ・歌を、日々、国民に垂れ流して醸成しているからである。 (3)女性管理職をやりにくくする事例と日本メディアの意識 日本のメディアが「表現の自由」として、女性蔑視や偏見を満載した報道を垂れ流しているわかりやすい事例は、このブログの2014年11月28日に記載した産経新聞が、すでに大統領になっている朴槿恵大統領に対し、「客船セウォル号が沈没した2014年4月16日に男性と私的な密会をしていて連絡が取れなかった」と書いた事実ではない噂レベルの記事である。上のグラフのとおり、日本と同様に女性管理職の割合が非常に低い韓国メディアも同様の報道をしていたそうだが、これは、男性大統領に対しては行わない、女性大統領の仕事への姿勢に対する侮辱的な報道だ。 また、私が異常だと思ったのは、*2-1、*2-2、*2-3、*2-4の展開であり、日韓の報道が、まるで同族会社の女性副社長である趙顕娥(チョヒョンア)氏叩きのようだったことである。 まず、*2-1では、2014年12月9日に、大韓航空を傘下におく財閥・韓進グループの会長の長女で大韓航空副社長の趙氏がニューヨークの空港で、搭乗していた自社航空機乗務員のサービスを問題視して、動き始めていた航空機を搭乗口に戻し、乗務員を降ろしたことが判明し、その理由は、①乗務員が客にナッツを配った際、袋のまま出されたことを「マニュアル通りになっていない」と咎め ②責任者にマニュアルの確認を求めたがすぐ対応できなかったことに激怒し ③搭乗口を離れていた航空機を引き返させて責任者を降ろし、④同機の仁川到着が11分遅れた と報道されている。 そして、*2-2で、2014年12月10日に、趙氏が、そのことで厳しい非難を浴びて辞表を提出したとされているが、本当はKeyであるはずの「サービス係の乗務員は、副社長の注意に対し、その時どういう態度をとったのか」については不問に付されている。そして、*2-3で、韓国の国土交通省や市民団体が、趙氏が乗務員らに暴言を吐いたとして告発し、趙氏は、ソウル西部地検に出頭させられたそうだが、社内規定を守らなかった部下を叱責した上司が暴言を吐いたとして告発され、検察に出頭させられるというのは、男性が上司の場合には聞いたことがない。 もちろん、私自身は、ナッツはすぐに食べる人ばかりではないため、袋から出さずに配る方がよいと思うが、マニュアルの規定や役員の選抜方法が適切か否かは、会社内部で決める問題であり、検察が関与する問題ではない上、何か理由があってマニュアルどおりにしなかったのであれば、サービス係は注意された時に、その場で理由を説明すればよかった筈だ。 さらに、*2-4では、ナッツの出し方に激怒して自社機を引き返させた大韓航空の趙前副社長を、12月24日に、検察当局が、機内サービスの責任者だった事務長を暴力や自分の権威を利用して旅客機から降ろし機内を混乱させた容疑と航空保安法違反や強要などの疑いで、逮捕状を請求すると発表したそうだが、パイロットではなく機内サービスの責任者を降ろしたのだから、逮捕しなければならないほど安全に支障をきたしたとは思われないし、いくらなんでもナッツの出し方だけでサービス係を降ろしたとも考えられないため、私は、女性上司に対するサービス係の態度も悪かったのではないかと考えている。 つまり、女性が上司である場合、殆どが男性のメディアや検察まで含めたこのような社会的差別に抗して勝っていかなければならないのが、日本や韓国で女性役員、女性管理職が少ない理由なのである。 (4)では、どのような女性がよいとされているのか → 女性は、受け付けか店員しか前提とされていないようである *3で日経新聞は、2015.1.5に、「正しい笑顔 できる人には福来る、姿勢・目線で好印象 仕事では状況で使い分け」として、女性の顔のイラストをつけて記事を書いている。 しかし、仕事や職種にもよるが、嬉しくもないのに、また小馬鹿にされているのに、顔に張り付いたような笑顔をしている人は、気持ちが悪い上に哀れである。なお、顔に張り付いたような笑顔とは、(1)目尻を下げ (2)目を細め (3)口元にしわができ (4)口角が上がり (5)口が開く という作り笑いのことである。そして、笑顔に測定器があるなど、馬鹿馬鹿しいにも程があるのだ。 さらに、「単純に背筋を伸ばして笑顔をつくると真っすぐで対等な目線になるため、相手が目上だったり、取引先に依頼する場面だったりすると不躾な印象を与える」とか、「背もたれに背をつけて座るとあごが上を向き目線は下向きになり、相手を見下すような印象になる」というのは、明らかに上司で意思決定していくリーダーの立場の女性向けではなく、受け付けか、店員などの女性向けのアドバイスであり、女性全体に同じことを言えば、失礼に当たるケースも多くなることを忘れてはならない。 そのため、日経新聞は、職場における女性の価値は、実力やリーダーシップではなく、感じのよさや場を和ませる力だという考えを持っていると思うが、これが、女性に対してメディアが発している偏見である。 <日本における女性管理職の割合> *1-1:http://qbiz.jp/article/43947/1/ (西日本新聞 2014年8月14日) 女性管理職は平均6・2% 1万社回答、半数超はゼロも 企業の管理職に占める女性の割合の平均は6.2%で、男性だけの企業も半数を超えることが14日、帝国データバンクの調査で分かった。今後増加すると見込む企業も20.9%にすぎなかった。安倍政権は成長戦略で「2020年に指導的地位に占める女性の割合を30%にする」との目標を掲げているが、実現には程遠い状況だ。調査は7月下旬に実施し、全国の1万1017社が回答した。企業からは登用が進まない理由として、仕事と家庭の両立の難しさを挙げる声があり、帝国データは「働きながら出産、子育てができる環境の整備が重要だ」と指摘している。調査によると、現状で女性管理職がいない企業が51.5%を占めた。管理職に占める女性の割合が30%以上の企業は5.3%にとどまっている。女性管理職の割合が過去5年間で「増加した」とする企業は17.4%で、「変わらない」が72.8%だった。今後についても「変わらない」が61.0%と多数で「増加する」は20.9%だった。業種別では、小売りや不動産、金融、サービスで管理職に占める女性の割合が高く、製造や建設、運輸・倉庫で低かった。規模別では大企業が最も低く、帝国データは「古い企業文化が残っている影響だ」と指摘している。 *1-2:http://qbiz.jp/article/41909/1/ (西日本新聞 2014年7月15日) 女性管理職登用を1300社に要請 経団連、計画策定47社公表 経団連は14日、女性の役員や管理職への登用に関する自主行動計画を47社が公表し、うち約6割に当たる27社が具体的な数値目標を設けたと発表した。安倍政権は女性の活躍を新しい成長戦略の柱の一つと位置付けており、榊原定征会長は会員企業約1300社全てに行動計画の策定を要請し、12月に公開する。政府は成長戦略で、国や地方自治体、企業に対し、女性幹部登用の目標や行動計画の策定を義務付ける新法案を国会に提出する方針を示している。政府は「2020年に指導的地位に占める女性の割合30%を達成する」と成長戦略に明記。ただ経団連の「女性の活躍推進委員会」の前田新造共同委員長(資生堂相談役)は「企業や業種によって男女の採用人数などが異なり一律の対応は難しい」と説明した。数値目標を公表した27社も、それぞれ経営戦略に基づき独自に設定している。経団連によると、27社のうち20年までに女性管理職3割以上の達成を明確に掲げたのは、資生堂、セブン&アイ・ホールディングス、損保ジャパンの3社だった。トヨタ自動車は現在101人いる女性管理職を20年に3倍、30年に5倍とする。日立製作所は20年度までに女性管理職を2・5倍の千人に増やすとし、全日本空輸は「女性役員2人以上」という数値目標を掲げた。 ◆女性登用、活用の取り組みは多様 男性が育児に携わる場合の支援強化を示すなど、経団連の加盟企業の女性の登用、活用に向けた取り組みはさまざまだ。ただ、現在は体力のある大企業が中心で、今後どれだけ広がるかが注目される。住友化学は2020年までに女性管理職の割合を、課長相当以上の役職では少なくとも現在の3・7%から10%以上に、係長相当は11・6%から15%以上に高める目標を掲げた。実現のために在宅勤務制度の導入や男性の育児参加を促す方針だ。日本生命保険も、女性管理職を18年4月に520人とする目標を定めた。14年4月と比べて約2割増やす計画だ。女性が活躍できる風土づくりの一環として男性の育児休業取得にも力を入れ、13年度には対象者全員が取得したという。日本生命は「しっかり継続していく」(広報)としている。トヨタ自動車は数値目標に加え、理系を目指す女子学生の支援のために奨学金支給や女性エンジニアの出前授業を行う「リケジョ基金・財団」の設立を検討。日本郵船は女性が海外勤務先でも仕事と育児を両立できるよう、今年5月にシンガポールで保育園の優先入園枠を確保した。 <女性管理職をやりにくくした事例> *2-1:http://www.asahi.com/articles/ASGD956JSGD9UHBI00Z.html?iref=reca (朝日新聞 2014年12月9日) 大韓航空副社長が自社サービスに激怒、航空機遅らせる 大韓航空の趙顕娥(チョヒョンア)副社長(40)がニューヨークの空港で、搭乗していた自社の航空機の乗務員のサービスを問題視し、動き始めていた航空機を搭乗口に戻して乗務員を降ろしていたことが判明した。趙氏は大韓航空を傘下におく財閥・韓進グループの会長の長女で、韓国内では「財閥令嬢による行き過ぎた行為」と非難が殺到。趙氏は9日、担当業務から退いた。韓国メディアによると、趙氏は5日、仁川行きの大韓航空機のファーストクラスに搭乗。乗務員が客にナッツを配った際、袋のまま出されたことを「マニュアル通りになっていない」ととがめた。本来はナッツを袋から皿にあけて出すことになっているという。趙氏は機内サービス責任者を呼び、マニュアルの確認を求めたがすぐに対応できなかったことに激怒。すでに搭乗口を離れていた航空機を引き返させ、責任者を降ろした。乗客への説明はなく、同機の仁川到着が11分、遅れた。大韓航空側は「非常な状況でなかったにもかかわらず、航空機が引き返して乗務員を降ろしたことは行き過ぎた行動だった」とし、乗客に迷惑をかけたことをわびた。ただ一方で「安全に問題はなく、趙副社長は機内サービスと機内食の責任を担う役員として、指摘したのは当然のこと」と擁護した。 *2-2:http://www.asahi.com/articles/ASGDB3SM6GDBUHBI00R.html (朝日新聞 2014年12月11日) 大韓航空副社長が辞表提出 CAのナッツの出し方に激怒 大韓航空の趙顕娥(チョヒョンア)副社長(40)が10日、辞表を提出した。趙氏は自社の乗務員の対応に怒り、動き始めていた航空機を搭乗口に戻して機内サービス責任者を降ろしたことで厳しい非難を浴び、9日に担当業務から退いた。だが、副社長にとどまったことでさらなる批判を受けていた。一方、韓国の市民団体は10日、趙氏の行為が航空法などに違反する疑いがあるとして、ソウル西部地検に告発した。趙氏はニューヨークの空港で5日、大韓航空のファーストクラスに搭乗。乗務員がナッツを袋のまま出したことを問題視し、機内サービス責任者にマニュアルの確認を求めたが、すぐに対応できなかったことに激怒したとされる。メディアやネットで「やり過ぎだ」との批判が広がり、大韓航空のパイロット労組も9日、経営陣全体の責任を問う声明を発表。趙氏は同日、担当の機内サービスやホテル事業の総括役から退いたが、副社長の肩書を維持したために批判が収まらずにいた。 *2-3:http://www.asahi.com/articles/ASGDK51QKGDKUHBI01F.html?iref=reca (朝日新聞 2014年12月17日) 大韓航空前副社長、「ナッツ・リターン」で検察に出頭 大韓航空の趙顕娥(チョヒョナ)・前副社長がナッツの出し方に激怒して、搭乗機を引き返させた問題で、趙氏は17日、ソウル西部地検に出頭した。趙氏は報道陣の質問に対し、「申し訳ありません」と繰り返し、深々と頭を下げた。趙氏をめぐっては乗務員らに暴言を吐いたとして、国土交通省や市民団体が告発していた。地検側は機内で腹を立てた理由や機内サービス責任者に暴行を加えたかなどについて事情を聴くとみられる。 *2-4:http://www.asahi.com/articles/ASGDR61B4GDRUHBI028.html (朝日新聞 2014年12月23日) 大韓航空前副社長の逮捕状請求へ ナッツ・リターン騒動 ナッツの出し方に激怒して乗っていた自社機を引き返させた大韓航空の趙顕娥(チョヒョナ)・前副社長について検察当局は23日、航空保安法違反や強要などの疑いで24日に逮捕状を請求すると発表した。趙氏は機内サービス責任者への暴行は否定していたが、逮捕状の請求には暴行容疑も加わる見通しだ。検察当局によると、趙氏は機内サービスの責任者だった事務長を暴力や自分の権威を利用して旅客機から降ろし、機内を混乱させたという。乗っていた旅客機についても、管制塔の許可を受けて空港内を移動中だったにもかかわらず、無理に引き返させて空港内の安全を脅かしたとしている。問題が発覚した後、大韓航空では、うその証言を強要するなど真相を隠そうとする行為が確認されたという。これにかかわったとされる同社の常務についても、証拠隠滅や強要などの疑いで逮捕状を請求するとした。 <日本メディアの女性蔑視> *3: http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150105&ng=DGKKZO81528210T00C15A1EL1P00 (日経新聞 2015.1.5) 正しい笑顔 できる人には福来る、姿勢・目線で好印象 仕事では状況で使い分け 仕事が多忙だったり、ストレスを抱えていたりすると、表情がつい厳しくなりがち。笑顔は自分の気持ちがリラックスし、その場の雰囲気も和らげやすいが、仕事では笑顔を控えた方がいい場合もある。ビジネスシーンに適した笑顔について専門家に聞いた。「笑顔が苦手という人は多いですね」。こう話すのは飲食店やホテル、百貨店など企業の研修向けに笑顔測定器「スマイルスキャン」を販売するオムロンフィールドエンジニアリング(東京・目黒)の世良弘さん。特に男性は女性に比べ鏡で自分の表情をじっくりみることが少ないため、笑顔をみせたつもりでも相手に十分に伝わらない傾向があるという。 ●鏡で5項目点検 ではどんな笑顔なら良い印象を与えやすいのだろうか。世良さんによると、笑ったときに(1)目尻が下がる(2)目が細くなる(3)口元にしわができる(4)口角が上がる(5)口が開く、の5つがポイントになるという。測定器は小型カメラが独自のセンサー技術で目や口の形を分析し、笑顔の度合いを0~100%で表示する。ただ仕事の場面では、やみくもに大きく笑えばいいというわけではない。「(口を大きく開けて歯を見せるなど)100%のビッグスマイルは初対面の相手が引いてしまいがち。30%、50%、70%などシーン別に笑顔を使い分けられるように研修で指導する企業も多い」(世良さん)。人材研修などを手掛ける新規開拓(東京・千代田)社長の朝倉千恵子さんも「プライベートの笑顔とは違い、仕事では会社代表として顧客に接する笑顔を身につけることが重要」と話す。取引先などを訪問する前は鏡で5つのポイントを点検し、仕事のシーンにあった笑顔の感覚をつかむことから始めよう。笑顔の効果を高めるコツも知っておこう。朝倉さんは「姿勢や目線によって笑顔の印象が変わる」と助言する。お勧めは背筋を真っすぐ伸ばしたうえで、上体を少し前傾にした姿勢。目線が少し下から相手を見上げる「敬い目線」になるからだ。サービス業などで相手に敬意を示すため膝をついて接客するときの目線に近くなる。「敬い目線は目元がやわらかくなる。前傾になって距離が少し相手に近づいても、不快感を与えにくい」という。注意したいのは姿勢を良くすればいいというわけではないこと。単純に背筋を伸ばして笑顔をつくると真っすぐで対等な目線になるため、相手が目上だったり、取引先に依頼する場面だったりするとぶしつけな印象を与えることがある。一方、背中を丸めたまま笑顔をつくると顔全体が下を向き、目線だけが上がる上目遣いになる。上目遣いはこびた印象を与えがちだ。逆に背もたれに背をつけて座ると自然にあごが上を向きやすい。目線は下向きになり、相手を見下すような印象になる。 ●緊張感ある場NG 仕事では笑顔がふさわしくない場合もある。社員研修を手掛けるインソース(東京・千代田)の井上彩さんは「上司から注意されたり、顧客から苦情を受けたりしているときに笑っていると真剣さが伝わらない」と指摘する。おわびや謝罪をしているときも同様だ。取引先でプレゼンテーションをする際や、契約交渉で条件や金額などを詰めているときに笑顔を見せるのは基本的に避けた方いい。「重要な場面で緊張感に欠けていると受け取られかねない」(井上さん)。もっとも緊張した場面が終われば、笑顔の効用を生かしたい。例えば上司に叱責された当日は神妙な面持ちで過ごし、翌朝は「おはようございます」と笑顔であいさつをする。十分に反省していることを示すとともに、上司との関係を円滑に保とうとする姿勢をみせることができるからだ。取引先との交渉がまとまったら、笑顔で話しかけるのもいい。「主張が対立したのはあくまでビジネス上のことだったと伝えやすい」(井上さん)からだ。「普段は真剣に仕事に取り組んでいる人が笑顔を見せると、印象に残りやすい」と朝倉さんは話す。感じのいい笑顔は場を和ませ、真剣な顔は誠実さを伝えることが見込める。笑顔を上手に使って、仕事の成果を高めよう。 PS(2015.1.22追加):保守の牙城と思われていた農業は、*4のように、食品・栄養・健康を対象とする産業であり、女性の方が知識があることも多いため、農協役員や6次産業化に女性進出が進み始めている。女性が普通に働き高齢者が増える社会で必要とされる食品は、(美味しく)加工や半加工を終えてあり、少し手を加えれば簡単に食卓に出せるものであるため、そのニーズに応えれば国内需要だけでなく輸出も増えると思う。 *4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31719 (日本農業新聞 2015/1/21) JA全国女性大会に期待 地域再生 手を携えて 萬歳章全中会長に聞く JA全国女性組織協議会は21、22の両日、東京都台東区で第60回JA全国女性大会を開く。JA女性組織3カ年計画の実践2年目として、若い世代の育成や社会参画などの成果や課題を共有する。地域の再生とJA自己改革に向けて女性組織への期待を、JA全中の萬歳章会長に聞いた。 ● JA女性組織3カ年計画が実践2年目を迎え、これまでの成果をどう見ていますか。 第26回JA全国大会で「次代へつなぐ協同」を決議した。女性組織も、次世代の育成に力を注いでいると聞く。若い世代がJAに関心を持ってもらうことはJAにとって大切なことだ。女性組織の支援はもちろん、JA女性大学の開講も進めていきたい。女性のJA運営への参画は着実に進み、女性役員は1277人に上る。その多くが女性組織の経験者だ。先頭役を買って出ていき、JAに新しい風を吹き込んでほしい。「和食」は、ユネスコの無形文化遺産に登録された。女性組織が積極的に伝えている伝統料理も和食。世界の関心事は「健康」なだけに、日本の長寿を支える和食を、女性からどんどん情報発信をしてほしい。 ● 農村での暮らしの活動には女性の力が欠かせません。JA女性組織の活性化に何が必要でしょうか。 農業者の半数を女性が占め、農村の暮らしは女性の力なしでは語れない。介護、助けあい活動など、細かな部分まで積極的に担ってくれていることをありがたく思う。高齢化が進む中、介護保険事業や助けあい組織の活動は一層大事になる。助けあい活動では、高齢者生活支援の行政受託など幅を広げるのもいい。フレッシュミズやI・Uターン者などの若い世代にも期待したい。先輩には知恵がある。若い世代は先輩に学び、フル回転していただきたい。また、組織の活性化には、料理講習や体操など興味・関心事に注目した活動で顔が見える場面をつくって幅広い交流を進めてほしい。 ● JA自己改革に当たり、JA女性組織に期待することは何ですか。 協同の理念を貫き、組合員の声に応えながら改革を進める上で、生活に密着した女性ならではの視点が必要だ。女性組織のメンバーは、JA自己改革を人ごとにせず、検討する場に積極的に参画してもらいたい。女性は、農産加工など多彩な手の技を生かし、JAのファーマーズマーケットに出荷するなど頑張っている。こうした6次産業化の取り組みを支援するとともに、期待したい部分だ。地域再生とJA改革に、男女が共に手を携えていきたい。 PS(2015.1.28追加):*5のように、労働局は、長時間労働に関わる有給休暇や残業のことしか問題にしないが、能率が悪くても長時間労働して満額の残業手当と終身雇用を要求できる正規労働者は恵まれた方であり、非正規の職しかなかったり、不当な扱いを受けて昇進を妨害され低賃金に据え置かれたり、簡単に退職を迫られたりする職場の女性差別の方が、ずっと深刻な問題である。それにもかかわらず、労働局が前近代的な意識で職場における女性差別を放置している理由には、労働局も男性中心の役人社会だという背景があるが、速やかに公的部門の男女平等を進め、女性に対して機会均等で公正な対応をしない民間企業にも厳しく対処するように、大きな意識改革をすべきだ(これも岩盤だが・・)。 *5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10103/149964 (佐賀新聞 2015年1月27日) 有給休暇の取得を 佐賀労働局、経済団体などへ要請 長時間労働是正などによる「働き方改革」を進めようと、佐賀労働局(田窪丈明局長)は26日、県経営者協会、県商工会議所連合会、県商工会連合会、県中小企業団体中央会の県内経済4団体と連合佐賀に対し、従業員の年次有給休暇の取得やノー残業デーの実施などを要請した。昨年6月に閣議決定した新成長戦略で長時間労働の削減など「働き方改革の実現」が盛り込まれ、各都道府県に推進本部を設置。県内は佐賀労働局内に今月7日付で設け、主要企業訪問による働きかけや自治体、労使団体などとの連携による機運醸成を図る。県経営者協会は、副会長の戸上信一・戸上電機製作所社長らが対応。佐賀労働局の横田哲労働基準部長から要請書を受けた戸上副会長は「会員各社に周知徹底したい」と答えた。2013年の県内の労働者の年間総実労働時間は1892時間で、全国3番目の長さ。有給休暇取得率は12年が47・2%で、政府目標では2020年に取得率70%を掲げている。 PS(2015.5.22追加):上のグラフのように、韓国は日本より女性役員比率や女性管理職比率が低く、女性の登用が遅れており、このような時代に役員に登用される女性は同族会社の社長の娘というケースが多くなる。そして、航空機の安全運航にはパイロットが責任を持っており、機長であるパイロットが「問題なし」と判断して引き返したにもかかわらず、*6のように、航空保安法上の航空機航路変更罪等として趙顕娥氏が起訴され、暴言を吐いたとして有罪判決を受けるというのは、韓国における幹部への女性登用や女性上司に対する意識の低さの結果である。 *6:http://qbiz.jp/article/62759/1/ (西日本新聞 2015年5月22日) 大韓航空前副社長に猶予判決 ナッツ事件 【ソウル共同】大韓航空機内で客室乗務員のナッツの出し方に怒り同機を引き返させたとして航空保安法違反罪などに問われ、一審で懲役1年の実刑判決を受けた同社前副社長、趙顕娥被告(40)の控訴審で、ソウル高裁は22日、懲役10月、執行猶予2年の判決を言い渡した。検察側は一審と同様、懲役3年を求刑していた。航空保安法上の航空機航路変更罪をめぐり一審判決は、ドアが閉まった後は運航中で、離陸前の引き返しも「航路の変更」に当たるとして同罪を認定した。
| 男女平等::2014.7~2015.5 | 01:56 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2015,01,19, Monday
佐賀県の養鶏場(無料の画像集より) *2の宮崎県の対応 (1)二つの農場の7万2900羽を全て殺処分し、周囲3〜10キロは区域外への搬出を禁じる搬出制限区域とすることが本当に必要とは思えないため、疫学・公衆衛生学の専門家は再検討して欲しい *1のように、「①佐賀県有田町の養鶏場の鶏7羽から鳥インフルエンザウイルスの陽性反応が出たため、この養鶏場の二つの農場で飼育していた7万2900羽は全て殺処分する」「②陽性であれば、発生農場から半径3キロ(13戸、約41万羽)は鶏や卵、堆肥などの移動を禁止する移動制限区域になり、3〜10キロ(佐賀県で19戸、約24万羽)は区域外への搬出を禁じる搬出制限区域になる」「③佐賀県は、県内の養鶏農家全163戸に移動の自粛や消毒の徹底を要請した」「④そのため、ブランド産地に衝撃だ」「⑤伊万里市はツルの休息地であるため、いつ佐賀で出てもおかしくないと警戒していた」「⑥朝にも石灰をまいて拡大防止に努める」「⑦風評被害も心配」などと記載している。 しかし、鳥インフルエンザ予防の視点から見ると、④⑤については、ウイルスを持つ野鳥や野生動物と接触させない造りの鶏舎にして、鳥インフルエンザを出さず、ブランドを護ることが重要だ。 しかし、①②については、隔絶された場所にいる鶏はインフルエンザに感染しないため、鶏舎の構造や距離にもよるが、離れた場所にある二つの農場で飼育している7万2900羽の全てを殺したり、発生農場から半径3キロの鶏や卵、堆肥などを移動制限したり、3〜10キロの区域外へ搬出制限したりするのは過剰反応だ。これは、列車の一つの車両にスペイン風邪の人が乗っていても、別の車両や後続列車に乗っている人には伝染しないのと同じ理屈だ。 つまり、感染しておらず、感染する疑いもない鶏やその生産物に制限をかける必要はなく、何が何でも何十万羽も殺処分するのには異なる目的があるように、私には思われた。また、*3のように、「鳥インフルエンザが恐れられるのはなぜか、作られた恐怖がパニックを招く」という神経内科医で医療社会学者が書いたHPもあるため、佐賀大学などの専門家は、ここまで大規模な殺処分と移動制限が本当に必要なのか否かを検討してもらいたい。 また、これだけ大規模に養鶏を行っているのなら、鳥インフルエンザへの感染や伝染のリスクを最小にするため、①鶏を野生動物と接触させず ②鶏舎をいくつかの小部屋に分け ③太陽光発電による電力など無料のエネルギーを使って外に換気する などが必要で、そのための鶏舎の設計が重要である。 (2)インフルエンザウイルスの消毒のために消石灰を撒くのは疑問 (1)の③⑥のように、インフルエンザウイルスを死滅させる(消毒する)ために消石灰を撒くというのも、それでインフルエンザウイルスが死滅するわけがないため、私は、無意味だと考える。ウイルスは、物質と生物(細菌)の間に位置する物体で、熱や薬に強いため、消石灰で死滅するとは思われず、免疫や予防が大切なのである。 (3)では、鳥インフルエンザへの過剰な対応はどうして起こるのか (1)(2)のように、私が鳥インフルエンザへの対応は変だと思っていたところ、*3のように、医師が書いたブログがあり、もっともだと思った。人間への強力な感染力を持つ鳥インフルエンザは、今のところ実在しておらず、その脅威は、既に起こっている原発由来の人工核種に依る放射線の脅威とは全く異なるため、必要以上に恐怖をあおって大げさな対応をするのは意図的のように思われる。 (4)宮崎県では農水副大臣と知事が鳥インフル対策の連携で一致とのこと *2に、「①宮崎県延岡市の養鶏場でH5型の高病原性鳥インフルエンザの遺伝子が確認されたことを受け、小泉農林水産副大臣は、16日、同県庁を訪れ、河野俊嗣知事と会談し、国と県が一体となり、ウイルスを封じ込めることなどで一致した」「②県と連携して封じ込めや風評被害の対策に当たる」「③国が対応しないといけない場合、要望してくれと申し上げた」と語り、河野知事は「④迅速な封じ込めに全力を挙げる」「⑤終息のめどが付くまで立候補している知事選(21日投票)の自身の活動は控える」と話したそうだ。 しかし、①③④⑤は、「知事は与党でなければ国と県が一体となってウイルスを封じ込めることはできない」というメッセージを発しており、これは地方選挙を与党有利に運ぶものである。また、②からは、「風評被害対策を行う」として、原発事故による農産物の汚染と混同させようとする意図が透けて見える。 これにより、実在していないインフルエンザに対する恐怖をあおり、ヒステリックに鶏を殺処分する過剰な反応を行う別の目的がわかった気がした。 *1:http://qbiz.jp/article/53968/1/ (西日本新聞 2015年1月18日) 佐賀で鳥インフルか 有田町の養鶏場、7万2900羽飼育 佐賀県は17日夜、有田町の養鶏場の鶏7羽から簡易検査で鳥インフルエンザウイルスの陽性反応が出たと発表した。佐賀県内で発生の疑いが出たのは初めて。この養鶏場は二つの農場で計7万2900羽を飼育しており、18日未明に判明する遺伝子検査の結果で陽性が確認されれば全て殺処分する。県は、県内の養鶏農家全163戸に移動の自粛や消毒の徹底を要請した。県によると、有田町の養鶏農家の鶏舎1棟で15日に鶏4羽が死んでいた。16日に7羽、17日には8羽と死ぬ数が増え、農家が家畜保健衛生所に連絡。2度の簡易検査で10羽中7羽から陽性反応が出た。陽性が確認されると、発生農場から半径3キロ(13戸、約41万羽)は鶏や卵、堆肥などの移動を禁止する移動制限区域に、3〜10キロ(佐賀県で19戸、約24万羽)は区域外への搬出を禁じる搬出制限区域になる。同区域には長崎県の四つの養鶏場も含まれる。有田町はブロイラー生産が盛んで15の養鶏場があり約47万羽を飼育。隣接する伊万里市は21カ所54万羽、武雄市は13カ所36万羽。いずれも昨年12月に宮崎県で発生後、渡り鳥などが潜入しないよう防鳥ネットを点検していた。 ◇ ◇ ●ブランド産地に衝撃 佐賀県有田町の養鶏場で鳥インフルエンザの疑いが出た17日、県内に衝撃が広がった。「ありたどり」「みつせ鶏」「骨太有明鶏」といったブランドの一大産地があり、感染が広がれば影響は計り知れない。県や九州農政局などによると、県内には163の養鶏場があり養鶏産出額(2013年度)はブロイラー75億円、鶏卵18億円。県の農業産出額全体の8%に当たる。「大変なことだ。最小限に食い止めるよう全力を挙げる」。有田町の山口隆敏町長は語気を強めた。隣接する伊万里市は、シベリアから鹿児島県出水平野に向かうツルの休息地。宮崎県でも発生し「いつ佐賀で出てもおかしくない」と警戒していた。養鶏農家に不安が広がる。鶏5千羽を飼育する佐賀市の女性(70)は「県から電話を受けびっくりした。消毒のため自宅や鶏舎の周りに石灰をまいているが広がらないか」。唐津市の40代の男性は「円安で飼料は高騰し、ただでさえ大変。拡大すれば大打撃だ」。武雄市で飼育し、卵を販売する男性(55)は「朝にも石灰をまいて拡大防止に努める」と険しい表情。太良町で6万羽を飼育する佐賀市の会社の男性社員(33)は「風評被害も心配だ」と話した。 *2:http://qbiz.jp/article/52043/1/ (西日本新聞 2014年12月17日) 農水副大臣と知事、鳥インフル対策の連携で一致 県庁で会談 宮崎県延岡市の養鶏場でH5型の高病原性鳥インフルエンザの遺伝子が確認されたことを受け、小泉昭男農林水産副大臣は16日、同県庁を訪れ、河野俊嗣知事と会談。国と県が一体となり、ウイルスを封じ込めることなどで一致した。約20分間の協議は非公開で行われ、終了後に会見した小泉副大臣は県の初動を評価した上で「県と連携して封じ込めや風評被害の対策に当たる。国が対応しないといけない場合、要望してくれと申し上げた」と語った。河野知事も「迅速な封じ込めに全力を挙げる」と述べた。また、終息のめどが付くまで立候補している知事選(21日投票)の自身の活動は控えると話した。 *3:http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/v/01/index.html (SAFTY JAPAN 神経内科医、医療社会学者 美馬達哉 2006年1月17日) 鳥インフルエンザが恐れられるのはなぜか、作られた「恐怖」がパニックを招く I)「常識」を少し疑えば、違う事実が見えてくる 恐るべき流行病が現実に存在しているわけでもないのに、「恐怖」という感情だけが流行病のように広がっていく――自身も医師でコラムニストのマーク・シーゲルは近著『偽りの警告 恐怖という流行病についての真実』(Wiley社)の中で、病気にならないための安心を求めてパニックとなった現代をこのように診断している。生物兵器テロについての政府筋情報、映画『アウトブレイク』のモデルともなったエボラ出血熱、新型肺炎であるSARS、人食いバクテリアのニュースなど、1990年代以降のアメリカのマスメディアは恐ろしい病気の話題であふれかえっていた。そうした背景のもとで、さまざまな恐怖という商品を取り揃えたショーケースに現れた“新製品”こそが、鳥インフルエンザと新型インフルエンザだというのだ。インフルエンザに対するパニックが日本も含めて世界に広がったという現状をみる限りでは、どうやらアメリカは「恐怖という流行病」を輸出することに大成功しているようだ。現代日本でも、恐ろしい病気についての話題が満載のTV健康番組があふれかえっている。さて、現実に起きるかどうかは別にして、インフルエンザが話題になる場合の恐怖のシナリオは大まかには次のようなストーリーである。2003年の冬以来、アジアを中心に、数百万羽単位での死亡を引き起こす鳥インフルエンザが猛威を振るっている。今のところはほぼ鳥類に限られた流行病であるが、人間にも感染するケースが見付かり始め、そのための死者もかなりの数に達している。今後、鳥インフルエンザのウイルスが突然変異して人間から人間に感染する能力を持ったならば、新型のインフルエンザとして大流行を引き起こしかねない。その理由は、鳥由来のウイルスであるために、これまで人類で流行してきたインフルエンザのウイルスとは異なっていて、だれも免疫を持っていないからだ。例えば、第一次世界大戦中の1918年に流行った『スペインかぜ』と呼ばれるインフルエンザの時には、それまで流行していたインフルエンザとウイルスのタイプが異なっていたために、戦争での死者数の数倍にあたる4000万人が世界中で死亡したといわれている。交通が発達した現在では、アジアでの鳥インフルエンザが新型インフルエンザとなって感染爆発を起こせば、その被害は1億人規模の甚大なものとなることが予測される――。「恐怖という流行病」を売り込むこの説得術に言いくるめられてしまう前に、立ち止まって医療社会学の目で少し考えてみることにしよう。医療社会学とは、その名前の通り、社会学という眼鏡をかけて医療という文化現象を観察する学問である。難しくは聞こえるが、その基本は、社会のなかで行われる医療・医学は、良かれ悪しかれ、特定の時代や地域、文化での特定の人々や、グループの価値観や利害に左右されているということを理解した上で、うまく医療・医学と付き合っていきましょうという態度のことだといってもよい。鳥インフルエンザに関して、まず、みなさんは次のような事実をご存じだろうか。 II)医療社会学から見たリスク ●新型インフルエンザのリスクを再考する (1)鳥インフルエンザによる健康被害は今のところはごくわずかであること 2003年から断続的に続く鳥インフルエンザによる鳥類(と養鶏業者)の被害はもちろん甚大である。だが、人間での死者は2006年1月14日現在までの世界中の合計でも79人である。日本での公式統計上はインフルエンザによる死亡は年間で500人から1500人ぐらいであることを考えれば、その少なさが際立つだろう。メディアで鳥インフルエンザや新型インフルエンザとして話題になっているのは、人間を苦しめている現実の病気ではなく、不特定な未来に発生するかもしれないと予測されているに過ぎない、いわば架空の病気についての架空のシナリオであることを、しっかりと確認しておこう。限られた医療資源や医療費を、今のところ誰もかかったことがない新型インフルエンザへの(必要になるかどうかも分からない)備えのために使ってしまってよいものかどうかは、パニックに踊らされることなく冷静に判断していく必要がある点だ。では本当に、「恐怖という流行病」の売り手たちが叫んでいるように、鳥インフルエンザの流行が起きたために、人間での新型インフルエンザのリスクが最近になって高まっているのだろうか。この点についてアセスメントするためには、次のような事実が参考になるだろう。 (2)鳥インフルエンザは、最近になって新しく出現した病気ではないということ いま話題となっている鳥での死亡率の高い(高病原性)インフルエンザは、おそらく19世紀から「ニワトリの疫病」として知られているものと同じ病気であり、少なくともこの40年間では鳥類での流行が獣医学者によって何度か確認されている。それどころか、最新の研究によれば、そもそも人間のインフルエンザのウイルスの祖先は鳥インフルエンザのウイルスであって、鳥から豚にまず拡がり、その後に人間に感染するようになったらしいという。つまり、鳥インフルエンザはおそらく一番古くから存在しているインフルエンザなのだが、最近になってメディアで取り上げられることが多くなったので新しいもののように感じられるに過ぎないということになる。要するに、人類はずっと気づかないままに鳥インフルエンザからの新型インフルエンザ発生というリスクと隣りあわせだったのだ。それでも、人間と鳥類との接触の度合いが昔よりも密接になったというなら、新型インフルエンザ発生のリスクは高まっているといえるだろう。その点についてははっきりとは分からない。ただ、第一次産業(農業・牧畜業・水産業・林業・狩猟業など)従事者が減少している以上は、ニワトリと日常的に接触するという人間の数はどちらかといえば減っているのではないか。また、ニワトリもケージで飼われて他の野鳥と接触する機会が少ない分だけ、鳥インフルエンザに感染することも少なくなっているのではないか(いったん感染すれば、狭いケージの中では爆発的に広がるだろうが)。現在の鳥類での鳥インフルエンザ流行は、これまでにない世界規模の激しいものであることは事実だ。その意味では、新型インフルエンザ発生のリスクは多少とも大きくなっているのかもしれない。だが、そうとも簡単には断言できないというのは、こんな事実があるからだ。 (3)あるタイプの鳥インフルエンザが感染力や毒性が強かったとしても、それに由来するウイルスが人間にとって感染力や毒性が強いとは限らないこと いま、アジアを席巻している鳥インフルエンザは鳥類に対して強い感染力や毒性を持っている。人間に感染した場合の死亡率も高く、人間に対しても毒性が強いようだ。ただし、鳥類から鳥類にはたやすく感染するが、鳥類から人間への感染はまれであり、人間から人間への感染はほとんどない。感染力の強さという性質は種の壁を越えることができないわけだ。将来、この鳥インフルエンザのウイルスが突然変異して人間から人間に感染するようになるかどうか。そして、たとえそう突然変異した場合でも同じような強い毒性を保ったままかどうかということは予測できないことである。このことを逆に言えば、鳥類での大流行がなかったとしても、突然変異によって人間に感染するインフルエンザとして大流行する場合があるということになる。先に紹介したスペイン風邪の場合はこれにあたっている。一般的な鳥インフルエンザのウイルスが、鳥類での大流行を引き起こすことなく、豚に感染して突然変異が起き、人間での大流行を引き起こしたと推測されているからだ。他の動物は無視して鳥類だけを、しかも鳥類での大流行だけを心配するというのは危機管理としてあまりにも杜撰(ずさん)である。実際のリスクの大きさとは無関係に、鳥インフルエンザの大流行が起きてばたばたとニワトリが死んでいるというイメージは、豚の体内での目に見えないウイルスの突然変異よりもはるかに、人間での新型インフルエンザの大流行という恐怖と結び付きやすい。このようなバイアスが、一見したときの分かりやすさを重視するマスメディアなどによって増幅されがちであることはよく知られている通りだ。鳥インフルエンザの大流行だけを問題視するという見当違いをしでかすことは、笑い話のなかに出てくる落し物を探す男によく似ている。その男は、暗い夜道で落とした財布を捜すために、落としたかもしれない場所ではなく、一カ所だけにあった明るい街灯の下だけを探したというのだ。そこが探すのに便利だったからという理由で。しっかりした歴史記録の残されている16世紀以来、インフルエンザ大流行は十年から数十年に一度の周期で発生している。20世紀での大きな流行は、1918年(スペインかぜ)、1957年(アジアかぜ)、1968年(香港かぜ)の3回であり、新型インフルエンザはそう遠くない時期に発生すると考えたほうがいいだろう。だが、そのことと、それがあたかも今年や来年であると確定しているかのように恐れて騒ぎ立てるということは別物である。最初に、「恐怖という流行病」という視点を紹介したが、これは何も病気にだけ限られていることではない。最近の日本社会では、「安全神話の崩壊」などともいわれるように、病気はもちろんだが事故や犯罪、天災などに対する恐怖が蔓延している。こうした問題に対応する際、恐怖心によって動かされてしまえば、パニックに陥って、インフルエンザをめぐる騒ぎと同じように、ちょっとした危険を過大視したり、見当違いの対策を練ったりすることにつながりかねない。『アメリカは恐怖に踊る』(草思社)で有名な社会学者のバリー・グラスナーは、「人間の弱い心を刺激して恐怖を売り歩く者には富と権力が約束される」から、恐怖やパニックがはびこるのだと指摘している。インフルエンザをめぐる「恐怖という流行病」への最良のワクチンとは、そのことで誰にどんな富と権力が約束されるのかを冷静に疑ってみることではないか。 PS(2015.1.19追加):*4に、「家畜伝染病予防法が発生源の農場を中心に、鶏や卵の移動を禁じる移動制限区域(半径3キロ)と、区域外への搬出を禁じる搬出制限区域(同3キロ〜10キロ)を設定している」と書かれているが、私が医療や畜産の専門家に依り検証を行うべきと考えるのは、この家畜伝染病予防法の内容である。どういう構造の鶏舎でも同じ扱いになるのもおかしい。 *4より 養鶏場(無料の画像集より) *4:http://qbiz.jp/article/53983/1/ (西日本新聞 2015年1月19日) 佐賀鳥インフル強毒性 有田の養鶏場 7万2900羽殺処分開始 佐賀県は18日、鳥インフルエンザウイルスの陽性反応が出た有田町の養鶏場の鶏7羽について、強毒性のH5型高病原性鳥インフルエンザウイルスの遺伝子を確認したと発表した。これを受け県などは未明から、この養鶏農家が管理する同町内の2農場の肉用鶏約7万2900羽の殺処分や埋却作業を開始した。同県内での発生確認は初めて。国内養鶏場での今季発生は、宮崎県延岡市、宮崎市、山口県長門市、岡山県笠岡市に次ぎ5例目となる。県や有田町職員らが同日午前2時50分から殺処分を開始。県から災害派遣要請を受けた陸上自衛隊が夕方から投入されるなど計約1100人が作業にあたった。午後9時現在の処分数は約9割にあたる6万4900羽で、19日未明までの作業完了を目指す。家畜伝染病予防法に基づき、発生源の農場を中心に、鶏や卵の移動を禁じる移動制限区域(半径3キロ)と、区域外への搬出を禁じる搬出制限区域(同3キロ〜10キロ)を設定。移動制限区域の養鶏場は7戸(24万7千羽)、搬出制限区域は隣接する長崎県にまたがり、佐賀県は19戸(24万羽)、長崎県は4戸(2万3千羽)に上る。両県は計18カ所に車両用の消毒ポイントを設置し、通行車両の消毒を24時間態勢で実施。両県とも県内養鶏農家に確認したところ、異常はみられないという。一方、農林水産省の疫学チームが18日、感染ルート解明のため現地入り。佐賀県庁を訪れた小泉昭男農水副大臣は山口祥義知事と会談し、被害農家への補償など国が全面支援することを約束した。
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2015,01,16, Friday
ソフトバンクの電力買取 燃料電池+太陽光発電 ハイブリッド発電 ハウスの太陽光発電 (1)玄海原発の再稼働について 佐賀県知事選の後、*1-1のように、山口新知事は、来週中にでも九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)を視察する考えを表明したそうである。しかし、「現場主義」は当たり前であり、現場を見ずに判断できることなど殆どなく、現場で何を見てどう判断するのかが重要である。そのため、就任直後に原発視察が実現したからといって、それが早期の原発再稼働の判断に繋がると考えるべきではない。 現在、原発再稼働の問題は、主に①過酷事故発生の可能性 ②過酷事故で汚染される地元の範囲 であり、私が、このブログにずっと記載しているとおり、①はゼロではなく、②の汚染される範囲は便宜的に30キロ圏内とされているものの、実際には奈良県まで達するわけである。このような中、鹿児島県の川内原発が、立地自治体である薩摩川内市と鹿児島県の同意だけで再稼働の手続きを終えたとしているのは、単なる手続主義であって、危機管理上の雛型には全くならない。 また、実際に過酷事故が起こったフクシマでは、事前の説明や事故後の対応への不信から、*1-2のように、福島県民は「負担増でも脱原発」という意見が4割を占め、また、*1-3のように、福島県民の7割が「原発再稼働反対」になっている。また、*1-4の東海村JCO 臨界事故の後、JCOから地元や国への通報が遅れて住民が危険に晒されたため、東海村村長も脱原発派になったのである。 そのため、*1-1に書かれているように、「山口新知事は茨城県東海村のJCO臨界事故の際に、内閣官房の担当者として現場で事故処理に当たり、危機管理分野の行政経験が豊富」というのなら、その時、どういう方針で事故処理に当たったのかが最も重要である。そして、その対応と判断の方針が、一般に法学部卒で行政官だった人には期待できない理由で、法学部教育の問題だと言われているのだ。 (2)水素と燃料電池の進歩により、原発の必要性はなくなったこと 農業現場で使われている電気自動車 トヨタのミライ 「①原発は安価」「②原発は安定電源」「③原発はCO2を出さないため無公害」などが、原発の利点としてよく言われてきたが、①は真っ赤な嘘であり、②は集中電源であるため広域停電の可能性があり、③は、CO2より深刻な放射能公害を引き起こすため、すべてが否定された。そして現在は、自然エネルギー由来で100%国産エネルギーのクリーンな水素燃料が実用化されている。 さらに現在は、*2-1のように、東京都が燃料電池バスに購入補助を行って普及を促し、トヨタ自動車は、*2-2のように、燃料電池車「MIRAI(ミライ)」の受注が1カ月で約1500台に達し、燃料の水素を補充する「水素ステーション」の整備が進められている時代である。ミライの個人購入者は男性が9割を占めるのは、燃料電池車のスタイルと価格帯のせいであり、女性の方が趣味の運転ではなく実用目的で車に乗っているため、ラインナップを増やせば、費用が安くて環境によい車を選択する傾向が強いだろう。 このような中、*3-1、*3-2のように、九電が太陽光発電などの余剰電力で水素を製造し、燃料電池車(FCV)などの燃料として活用するそうだ。これは、環境に優しい水素社会の実現に向けたモデルケースになるため、原発に交付金を与えるのではなく、この次世代エネルギーを補助して推進すべきなのである。日本では、これまで、離島など田舎に行くほど燃料費が高くて不利だったが、これによって地方でエネルギーが作られて新しい収入源になるため、これらを早急に実用化すべきだ。 (3)では、原発について佐賀県民がやるべきことは何か このまま原発再稼働をせずに脱原発すれば、佐賀県や玄海町、唐津市が原発交付金を得られなくなるのは事実だ。しかし、佐賀県民は、①今後もそういうリスクをとって交付金をもらう立場を続けるのか ②原発やオスプレイなどのリスクは引き受けずに、農林漁業、製造業、サービス業などの普通の産業で稼ぎだすのか についての選択をしなければならない。 そして、②の意志決定をすれば、今までもらっていた交付金を埋めるだけの産業振興方針と県民全体の頑張りが必要であるため、その覚悟を決めるためにも、原発再稼働一点に絞って県民投票をするのがよいと考える。そうやって卒原発すれば、他地域の雛型にもなるだろう。 私自身は、必要なインフラを整備して時代の変化の中で新しい産業に入り、本気でふるさと納税を集め、消費税を地方税化させれば、脱原発は可能であるし、そうしなければならないと考えている。なお、このブログの「まちづくり」等のカテゴリーで記載してきたように、インフラ整備にもいろいろな方法がある。 *1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/146046 (佐賀新聞 2015年1月16日) =選択の先に~山口新知事=(下)玄海原発再稼働 「できるだけ早急に、来週中にでも時間が取れればと思っている」。14日の就任会見。山口祥義知事は九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)を視察する考えを表明した。スケジュールを担当する秘書課職員に「最初の視察先」として指定したのは当選翌日の12日。「まずは玄海と決めていた」というように、その行動は速かった。「現場主義」。選挙中から声高に主張し続けた政治スタイルを早速、県政の最重要課題の舞台で実行してみせることになる。「まずは原発を見たいと言われていたが、就任直後に実現するとは。驚いている。早期の再稼働の判断にもつながる」。玄海町の岸本英雄町長は知事の言動を期待感を持って受け止める。 ▽二つの宿題 玄海原発の再稼働問題は、佐賀空港へのオスプレイ配備計画と同じく、古川県政時代から引き継がれた「宿題」だ。ただ、この県民世論を二分する二つの問題に対する山口知事のスタンスは微妙に違う。オスプレイ問題では「古川県政の承継ではない」と明言し、前知事が「民間空港の使用・発展に支障はない」とした判断を含めて再検証する考えを示し、前知事との違いを強調した。一方で原発再稼働をめぐっては、原子力規制委員会の審査に合格し、住民の理解を得られた場合は容認する考えで、前知事の路線を踏襲しているように映る。規制委の審査が終盤を迎えるなか、今後の焦点となるのは「地元同意の範囲」だ。先行する鹿児島県の川内原発は、地元の薩摩川内市と県の同意だけで手続きを終えた。ただ、玄海原発は、30キロ圏内の伊万里市が立地自治体並みの安全協定締結を求めて九電と交渉を続けている。「鹿児島方式の追従ではなく、周辺自治体の意見も聞くべき」。塚部芳和市長は「地元」を譲るつもりはない。山口知事は、地元の範囲については「国の話をしっかり聞くことが大事。その後に私の考えを伝えたい」と明言を避けた。伊万里市には「ぜひ、話を聞いてみたい」との考えも示したが、地元の範囲に含めるのか、方向性は見えていない。 ▽経験豊富 30キロ圏内の自治体や福祉施設などが策定している避難計画の検証も、再稼働を容認する山口知事にとって大きな課題になる。自身は茨城県東海村のJCO臨界事故の際、内閣官房の担当者として現場で事故処理に当たった。危機管理分野の行政経験も豊富で、「実効性ある防災計画や避難計画は必要」との認識だ。現在の計画に対して住民からは「いろんな想定に対処できておらず、絵に描いた餅」との批判も多い。30キロ圏内の福祉施設関係者も「根本的な部分から検証が必要。もっと深く現場のことを知ってほしい」と注文する。24日は玄海原発の重大事故を想定した原子力防災訓練が実施される。「危機管理のプロ」を自任する山口知事の目には、現在の防災、避難態勢はどう映るのか。不安を抱える住民や関係者との向き合い方を含めて、「現場主義」の真価が問われる。 *1-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141014-00010001-khks-soci (河北新報 10月14日) 福島県民「負担増でも脱原発」4割 福島県民の4割超が、脱原発に伴う電気料引き上げを容認する考えであることが河北新報社のアンケートで分かった。6割近くが原発に依存していない電力会社からの電力購入を望んでおり、福島第1原発事故を契機とした厳しい市民感情を裏付けた。家庭用を含めた電力小売りについて、国は2016年に自由化する方針を掲げる。経済的負担より脱原発を優先させる回答が一定数あったことは、原発再稼働を目指す東北電力からの顧客離れをうかがわせる。脱原発に伴う負担増は全体の42.5%が認めた。許容できる値上げ幅は「10%まで」が最多の21.0%。以下、「5%まで」16.5%、「20%以上でも」4.5%、「15%まで」0.5%と続いた。電気の購入先については「原発に依存しない電力会社」が58.5%と過半を占め、「依存する会社」との回答は2.5%にとどまった。「特に気にしない」は39.0%だった。東北電力は東通(青森県東通村)、女川(宮城県女川町、石巻市)両原発に計4基を所有している。同社が目指す再稼働に関しては「反対」「どちらかといえば反対」が64.0%となり、賛成意見は21.5%だった。再稼働に理解を示した人の中でも、原発に由来しない電力の購入を望む声が2割近くあった。再稼働反対派では8割に上った。調査は9月末から10月初めに福島、いわき両市で成人の男女計200人から聞き取った。福島県内では9日に知事選が告示され、26日に投開票される。立候補した6人は、原発事故からの復興の在り方をめぐり論戦を繰り広げている。 *1-3:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201410/20141015_63009.html (河北新報 2014.10.15) 福島県民「再稼働反対」7割 東北大大学院情報科学研究科の河村和徳准教授(政治意識論)の調査では、東日本大震災と福島第1原発事故後、岩手、宮城、福島の被災3県の有権者に原発再稼働への賛否や復興の進め方なども聞いた。原発再稼働について、「反対」「どちらかといえば反対」は福島が69.6%と最も高く、宮城62.2%、岩手60.6%と続いた。「賛成」「どちらかといえば賛成」は福島11.3%、宮城16.0%、岩手16.5%。再稼働反対の姿勢は、原発事故の影響が色濃く残る福島の有権者に強く表れた。震災からの復興を進める上で「合意形成」と「スピード」のどちらを重視するかの質問では、「スピード重視」が福島47.0%、宮城43.7%、岩手41.1%だった。原発事故からの復旧・復興の道のりが津波被災地に比べて不透明な中、福島の有権者が合意形成よりもスピードを重視していることが浮き彫りになった。県職員への信頼度を比較するため、現場の問題を速やかに改善・対処できるかどうかを尋ねた結果、「そう思う」「ややそう思う」は岩手31.1%、宮城31.0%に対し、福島は22.6%。「あまりそう思わない」「そう思わない」という否定的な見方は福島が63.7%で最も高く、岩手55.5%、宮城54.4%だった。同じ質問を市区町村の職員で比べたところ、肯定的な回答は岩手が40.7%で最も高く、宮城37.0%、福島32.0%だった。否定的な見方は福島58.8%、宮城53.1%、岩手49.9%。復興の最前線に立つ市区町村職員への信頼度が、県職員に比べ、やや高い傾向にあることが分かった。 *1-4:http://www.nuketext.org/jco.html 東海村JCO 臨界事故 (要点のみ抜粋) ●現場の動きと対応 1.まずJCOから地元や国への通報が遅れたことが問題です。消防本部への通報も正確さを欠いていました。JCOには、一斉送信システムも備えられていなかったそうです。 2.科学技術庁は約44分後に「臨界事故の可能性」について連絡を受けているのですが、政府が事故対策本部を設置したのはそれから3時間40分も経過しています。その間住民は危険に晒されていました。(この点について当時の野中官房長官は「・・・今回のような民間施設での事故は想像を絶する事態だった。・・・事故の深刻さの認識があまかったのを率直に認めなければならない。」と述べています。1999.10.2 朝日新聞) 3.東海村が国の判断を待たずに村の措置として住民に避難を要請したことは高く評価できますが、それでも避難開始までに付近の住民はかなり多量に被ばくをしていたと考えられます。 4.安全宣言については、放射性ガスの放出が約1ヶ月続いていることから考えて、判断が早すぎたと考えられます。 5.避難の範囲についても根拠があいまいでより広い範囲で被ばくの危険性があります。風向きの変化を含め避難の方法も再考すべき点がありました。 ●被ばくの実態 今回の事故では、わずか1mgのウランの核分裂が大きな被害をもたらしました。(ちなみに100万kw級の原子力発電所では、1 日当たり2~3kgのウランが核分裂しています)。 臨界による放射線の放出で、東海事業所内の人々はもちろん、付近の多くの住民までが被ばくしてしまいました。放射線の種類は、中性子線及びガンマ線、そして気体の放射性物質ですが、今回の被ばくの主な原因は中性子線でした。中性子線は透過力が極めて強く、厚いコンクリートも通り抜けます。中性子線を止めるのは水素を多く含むものです。人の体は多くの水でできているので、中性子線は人体によく吸収され、細胞を傷つけたり、死なせたりします。 <燃料電池について> *2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150106&ng=DGKKZO81575580V00C15A1L83000(日経新聞2015.1.6)燃料電池バス購入に補助 都方針、五輪までに100台目標 東京都は5日、燃料電池バスの購入補助制度を設ける方針を固めた。2015年度予算案に10億円を計上。高価な燃料電池バスを事業者が通常のバスと同程度の価格で買えるようにする。東京五輪のある20年までに都内で100台の普及を目指す。都は仕事始めの同日、15年度予算案の知事査定に着手した。舛添要一知事は査定に先立つ職員向けの新年挨拶で、20年五輪までの5年間について「東京と日本を復活させるビッグチャンスでありラストチャンス」と強調。「東京を世界一の街にする」と重ねて表明した。15年度の一般会計総額は14年度当初比4%増の6兆9500億円程度とする。都税収入は3500億円ほど増えて約5兆200億円となる見込みだ。5兆円台に乗るのは08年度決算以来、7年ぶり。企業の業績回復で法人税収が伸びるほか、消費税率8%への引き上げで都の取り分も増える。14年度の当初予算案は知事不在の1月に副知事以下で編成。このため2月に就任した舛添知事は既にできあがった案を事実上追認するにとどまっていた。今回は舛添知事が編成する初の本格予算となる。16日に原案を発表する。福祉の充実へ、男性向け不妊治療費助成制度なども創設する方針だ。 *2-2:http://qbiz.jp/article/53818/1/ (西日本新聞 2015年1月15日) MIRAI、1カ月で1500台受注 目標大幅に上回る トヨタ自動車は15日、2014年12月15日に発売した燃料電池車「MIRAI(ミライ)」の受注が約1500台に達したと発表した。発売から1カ月となる15年1月14日時点で集計した。15年末までに400台としていた国内販売目標を大幅に上回っている。受注の内訳は中央官庁や自治体、企業が約6割。中央官庁は経済産業省や国土交通省、環境省など。個人は約4割で、男性が9割を占め、60代以上が多いとしている。地域別では、燃料の水素を補充する「水素ステーション」の整備が進められている東京都や神奈川県、愛知県、福岡県が中心となっている。トヨタはミライの好調な受注を受け、15年末までに700台としていた生産台数を大幅に増やすよう調整している。 <九電が余剰太陽光電力で水素製造> *3-1:http://qbiz.jp/article/53645/1/ (西日本新聞 2015年1月14日) 九電、余剰太陽光で水素製造 再生エネ導入拡大に活路、離島での事業検討 九州電力が太陽光発電など再生可能エネルギーを利用し、離島で水素を製造する事業の検討に入ることが13日分かった。余剰電力を使って水素を製造し、燃料電池車(FCV)などの燃料として活用する試み。採算性などを見定めた上で、九州本土での導入も検討するとみられる。電力大手では極めて異例の取り組みで環境に優しい水素社会の実現に向けたモデルケースとして注目される。再生エネの固定価格買い取り制度に基づく太陽光発電の新規契約が頭打ちになりつつある中、余剰電力の用途に活路が開かれ、導入量の拡大も見込める。離島の取り組みで成果が出れば、九電が本格的に水素事業に乗り出す可能性もある。九電管内の離島では現在、主にディーゼル発電によって島内の電力を賄っている。出力の変動が大きい再生エネが大量に導入されると需給バランスが崩れ、供給が不安定になる恐れがあり、特に離島では調整力の確保が課題となっている。今回の検討では、余剰電力を使って水素を製造・貯蔵し、再び電力に戻したり、燃料として使ったりする事業の可能性を探る。作業のスケジュールなどは未定。水素の製造・供給コストの低廉化など課題は多く、事業化までは息の長い取り組みになりそうだ。九電関係者は「発電燃料となる石油の価格変動に左右されない、地産地消のエネルギーとして価値がある。再生エネで車が走るのも夢ではない」としている。再生エネの固定価格買い取りをめぐっては、九電は昨年7月から、長崎、鹿児島両県の6島で、新規契約を1年程度中断する措置を講じている。九州本土では昨年9月に新規契約を中断。今月中旬にも太陽光発電の契約手続きを再開する。中断対象設備の大半については、九電が無制限に発電抑制できるため、多くの事業者が導入を断念する可能性がある。 ■水素エネルギー 燃料電池の燃料として使われ、酸素と結び付いて高効率で発電する。二酸化炭素(CO2)などを排出しないため環境に極めて優しい。燃料電池車(FCV)や家庭用燃料電池の普及に伴う需要拡大が見込まれ、水素ステーション整備の動きも本格化しつつある。灯油、液化石油ガス、天然ガスなどの原料から取り出すことができ、水を電気分解することによっても造れる。 *3-2:http://qbiz.jp/article/53636/1/ (西日本新聞 2015年1月14日) 【解説】なぜ今、九電が水素製造事業か 九州電力が再生可能エネルギーを使った水素製造の検討に乗り出すのは、電力の安定供給を維持しながら再生可能エネルギーの導入拡大を実現することを目的としているが、二酸化炭素(CO2)を排出しない水素社会の実現に向け大きな可能性を秘めている。水素は現状、製鉄所などの工場で石炭などの化石燃料を燃やす際の副産物として造られることが多く、その過程でCO2が発生している。しかし、再生エネから水素を造れば、製造過程からCO2排出をゼロにできるため、地球温暖化問題などの解決につながる。水素をめぐっては、トヨタ自動車が昨年末に燃料電池車(FCV)として世界初の市販車「MIRAI(ミライ)」を発売し、他の自動車大手も追随する方針。都市ガスなどから水素を取り出す家庭用燃料電池の普及も進んでおり、市場拡大が見込まれている。電力小売りの全面自由化など国の電力システム改革が進む中、九電は電力事業以外も本格的に展開する「総合エネルギー企業」を目指す方針で、今後の有望なエネルギー源として水素にも着目。水素を生み出せる燃料や電気を大量に取り扱う大手電力が水素事業に参入すれば、水素社会の実現に弾みがつくとみられ、他の大手電力にも同様の動きが広がる可能性がある。ただ、水を電気分解して水素を造るには大規模施設が必要で、多くの電気も欠かせない。電力コストのほか貯蔵・運搬費用を抑える方法や安全性を確保できる技術力も課題になるとみられ、本格的な事業展開には他社との提携も必要となりそうだ。 PS(2015.1.16追加):*4のように、東芝は、水素を使って電力を大量貯蔵するシステムを2020年にも実用化するそうだ。一方、玄海町には農業や水産業もあり、放射能リスクは0でなければならないため、原発をやめてこちらに移行するのがスマートでよい。 *4より *4より *4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150116&ng=DGKKZO81990780W5A110C1TJ2000 (日経新聞 2015.1.16) 東芝、水素使い電力貯蔵、設置費用、蓄電池の半分 再生エネ事業者など向け 東芝は水素を使い電力を大量貯蔵するシステムを2020年にも実用化する。水を電気分解していったん水素にし、必要に応じ燃料電池で酸素と反応させ電気として取り出す技術にめどをつけた。既存の蓄電池に比べ電力を長期に大量保管しやすく、設置・運用費は半減できるという。再生可能エネルギーの発電事業者や自治体などにとって蓄電方式の選択肢が広がりそうだ。まず1万世帯が8時間使う電力に相当する4万キロワット時を蓄えられるシステムを提供する。システムは600平方メートルほどの敷地に燃料電池や電気分解装置、水素貯蔵タンクなどを組み合わせて構成。水を電気分解して得た水素をタンクにため、燃料電池で空気中の酸素と反応させ電気を作る。電力を熱にするなどエネルギーの形態を変えた際、元のエネルギーをどれだけ再現できるか示す「エネルギー変換効率」は東芝のシステムで8割に達する。電気でくみ上げた水を流下させて発電するダムの揚水発電の7割を上回る。一般的な蓄電池のエネルギー変換効率も8割程度とされるが、大容量化には電極部材が大量に必要だ。4万キロワット時の蓄電池の設置コストは20億円近いとされる。蓄電池は自己放電するなど長期保存の課題もある。水素を使う場合、漏出防止など安全技術を担保すればタンクの大きさの調整だけで大容量化でき、既存の蓄電池に比べ設置から運用までの総コストを半減できるという。太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーで作った電力が電力会社の受け入れ能力を超えるとして、きめ細かい発電出力の抑制措置が15年からとられる。再生エネの発電事業者にとって余剰分を低コストで貯蔵する仕組みを確保できれば、発電した電力を買い取ってもらえないリスクを減らせる。ほかにも災害時の非常用電源として自治体などの利用が見込める。東芝は350キロワット時の電力を貯蔵する小型実証設備を15年春に川崎市内に設置、太陽光発電と組み合わせ公共施設の非常用電源などに活用する。再生エネとの組み合わせで、地域の電力の自給自足につながる可能性もある。東芝は実証設備の成果に加え、水素を大量生産する技術や燃料電池の発電の高効率化で、大規模システムの実用化につなげる。 PS(2015.1.17追加):このように技術進歩している中で、*5のように、「脱原発世論の説得のために、原発と再生エネの比率を20%の同程度とする」「電源構成のベストミックスを決める」などというのは、結論ありきのこじつけであり、科学的ではない上に、経済学もわかっていない。そして、これが、日本の法学部を中心とする文科系のものの考え方の限界なのである。 *5:http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150116-OYT1T50175.html (読売新聞 2015年1月17日) 原発比率20%軸に検討…再生可能エネと同程度 政府が、2030年の国内の発電量に占める原子力発電の割合について、太陽光など再生可能エネルギーと同程度の約20%を軸に検討を進める見通しになった。原発を可能な限り減らすとの方針に沿って、東日本大震災前(10年度)の28・6%から引き下げることになる。今月末から経済産業省に新設する有識者会議で、発電方法ごとにどの程度の割合にするかを示す最適な電源構成(ベストミックス)の議論に着手する。発電方法別のコストなどを検証し、今夏までに結論を出したい考えだ。政府は、14年4月に決めた新しいエネルギー基本計画で、将来の再生エネの割合を「約2割を上回る水準」と決めた。一方、原子力などは決定を先送りしていた。政府内では、「原発を減らしすぎると電力供給に支障が出るが、脱原発の世論を考えると再生エネ以上の活用は難しい」(政府関係者)などの見方が強まっている。宮沢経産相は、原発の割合を30%未満にする意向を昨年10月に表明している。
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2015,01,15, Thursday
*1-2より *2-1より (1)「表現の自由」は、「名誉棄損」「侮辱」「人格権の侵害」に優先しないこと 1月8日に、パリ南部で仏週刊新聞「シャルリー・エブド」が襲撃を受け、記者ら12人が殺害された事件は、*1-1のように、多くの死亡者を出した後一段落したが、フランスの警戒態勢は現在も厳しい。 そして、この事件直後の1月11日、*1-2のように、「表現の自由」を尊重し、テロとの戦いを協力して進めることを確認して、「ペン(言論・表現の自由)は銃に負けない」「協力してテロとの戦いを進める」というメッセージを表現するため、オランド大統領、メルケル独首相、キャメロン英首相、レンツィ伊首相、ラホイ・スペイン首相らが腕を組んで行進し、これにイスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長ら約50カ国・地域の首脳・閣僚が参加して「反テロ行進」を実施した。そして、広場に集まった市民は100万人規模に上った。 それに対して私が違和感を感じたのは、テロの原因となった多くの風刺画や記事の妥当性の評価は一切せずに、メディアは何を書こうと「表現の自由」だとした点だ。しかし、欧米が準備した世界で最も理想的な憲法と言われる日本国憲法では、「表現の自由」「言論の自由」は保障するが、それは個人の「名誉棄損」「侮辱」「人権侵害」に優先するものではないとされており、私は、それが正しいと考えている。 仏週刊新聞「シャルリー・エブド」は、「私たちは表現したいものを表現しているだけ」として、メディアであるにもかかわらず、それによって誰かの名誉を棄損したり、人権侵害をしたりするかもしれないという考察は全くない。そして、事実か否かには関係なく風刺画を描いているため、その風刺画は、むしろ掲載して妥当性について皆で評価すべきである。これは、キリスト、マリア、ローマ法王、仏陀、エリザベス女王、天皇などが同じ様な笑い物の風刺画にされたら、眉をひそめる人が多いのと同じだ。 私は、もちろん「表現の自由」「言論の自由」は重要だと思っているが、それはまともに「イスラム教の内容は現代社会に合っていない部分が多いから改善したら?」というような議論をする自由だと考える。しかし、事実でもないことを馬鹿にした風刺画にして表現するのは、イスラム教を信じている人に失礼であり、そもそも「表現の自由」「言論の自由」は、そのようなために保証されているのではない。 (2)移民とその受け入れ国について *1-4のように、仏週刊紙「シャルリー・エブド」襲撃事件の後、反イスラム感情をかき立てる動きが欧州に広がり、「反イスラム」デモがあったそうだが、このような問題が起こっているのは、むしろ移民に国を開放している地域であるのが皮肉なことである。 しかし、「異文化に対する寛容さが大切」とは言っても、女性には職場や学校を含むあらゆる場所でベールや黒づくめの服で体を覆わせ、そうしなければ批判し、女性には教育もさせないなどの時代錯誤の習慣が広められては困る上、そちらの集団の方が子供が多く、将来はそればかりになりそうなのも問題だ。 つまり、移民になる人は、郷(行った国)に入っては郷(行った国の文化)に従うのでなければ、受け入れた国の文化がかき乱されて迷惑であるし、イスラム教も紀元600年頃に成立した当初とは社会状況が変化しているため、変わるべきなのである。 (3)ソニー・ピクチャーズの「ザ・インタビュー」も、殺人を示唆しており人権侵害である *2-1のように、北朝鮮の金正恩氏暗殺のコメディー映画「The Interview(ジ・インタビュー)」は、米ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)が、大規模なサイバー攻撃にさらされて一旦公開中止を決めた後、「表現の自由」と囃したてられ、米国内の200カ所以上の映画館で上映されることになった。そして、SPEのマイケル・リントン会長兼最高経営責任者(CEO)が「言論の自由の抑圧に対して立ち上がった」とコメントしている。 しかし、北朝鮮が脱北者に対して非人道的な処罰を行い、日本人を拉致して帰さないことと、金正恩第1書記を暗殺する映画をコメディーにすることとは別問題である。これは、各国首脳の暗殺計画がコメディー映画として多数の映画館で上映されたり、ゲームになったりすれば、亀裂が深まることを考えればわかる筈で、政治家だったり、トップだったりする人には侮辱や人権侵害をしてもよいという法律はない。そして、そのようなことをされれば、その国の人にとっては気持が良いわけがないため、*2-3のようなことが起こっても少しも不思議ではなく、ここから深刻な亀裂に発展する恐れもあるのである。 もちろん、北朝鮮の問題についても、「言論の自由」や「表現の自由」はあるが、それは、*2-2、*2-4のように、安全保障問題や人権問題として議論したり記述したりする自由であり、生存している一国のリーダーの暗殺計画をお笑いにする自由ではない。 <シャルリー・エブド社襲撃事件について> *1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150110&ng=DGKKASGM09H8I_Z00C15A1MM8000 (日経新聞 2015.1.10) 仏紙銃撃の容疑者死亡 部隊突入、人質を救出 別の籠城でも容疑者死亡 パリで起きたフランス週刊紙銃撃事件で9日、逃走しているアルジェリア系フランス人の兄弟がパリ北東の印刷工場に人質を取って立てこもった。一方、パリ南部で8日発生した別の銃撃事件に絡み、逃走していた実行犯とみられる男がパリ東部の商店に籠城した。9日午後5時すぎ(日本時間10日午前1時すぎ)、仏特殊部隊は2つの立てこもり地点に一斉に攻撃を開始、容疑者3人が死亡したもようだ。仏北東部の現場では、特殊部隊が包囲し、爆発音が聞こえるほか、煙が上がっている。仏メディアによると、兄弟は特殊部隊の攻撃で死亡。人質は無事という。カズヌーブ内相は9日午前、北東部ダマルタンアンゴエルで立てこもっている男らが週刊紙銃撃事件の容疑者兄弟と認めた上で「制圧する作戦が進行中だ」と述べていた。兄弟が立てこもっている際に「殉教したい」と語ったとの報道もある。女性警官が死亡した8日朝のパリ南部での銃撃事件では、実行犯とみられる男は9日昼すぎ、パリ東部バンセンヌの商店に押し入り、人質を取って立てこもった。仏部隊の攻撃で実行犯は死亡したと仏紙が報じた。複数の人質が保護された。 *1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150112&ng=DGKKZO81849440S5A110C1MM8000 (日経新聞 2015.1.12) 欧州首脳、反テロで結束 パリで100万人デモ行進 フランスの週刊紙銃撃事件など一連のテロを受け、欧州各国の首脳は11日、パリで一堂に会し、対テロで結束することで一致した。午後からオランド仏大統領の呼びかけで、パリで「反テロ行進」を実施。国際社会が「表現の自由」を尊重し、テロに屈しない姿勢を示した。欧米のテロ担当閣僚は同日、テロを事前に防ぐ対策強化で一致し、共同宣言を発表した。オランド大統領を中心にメルケル独首相、キャメロン英首相、レンツィ伊首相、ラホイ・スペイン首相らが腕を組み行進した。パレスチナ問題で対立するイスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長ら、約50カ国・地域の首脳・閣僚が参加した。共和国広場に集まった市民は100万人規模に上ったようだ。行進前には、オランド大統領が各国首脳らを大統領府(エリゼ宮)に招き、各国がテロとの戦いを協力して進めることを確認した。テロ対策を話し合う国際会議も同日開かれ、欧米12カ国の閣僚が出席した。採択した共同宣言には、インターネット事業者と協力し、テロにつながりうる情報を早期収集する仕組みの構築のほか、欧州の国境警備の強化、航空機に搭乗する顧客の情報収集を進めることを盛り込んだ。カズヌーブ仏内相は会議後、「合意事項を実行に移し、テロ防止につなげたい」と強調した。 *1-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11549127.html (朝日新聞 2015年1月14日) (時時刻刻)風刺か、侮辱か 仏紙、「涙のムハンマド」掲載へ 襲撃を受けて記者ら12人が殺害された仏週刊新聞「シャルリー・エブド」は、14日に発行する特別号で、イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載する。暴力に屈しない姿勢を示すという。一方で、事件発生後、風刺画を転載するかどうかをめぐって世界のメディアの対応は分かれている。 「私たちは表現したいものを表現しているだけ」 14日号の表紙の預言者ムハンマドの風刺画を描いた「ルズ」こと風刺漫画家レナルド・ルジエさん(43)は、13日夕に会見し、こう語った。数多くの同僚が殺害されただけに、憔悴(しょうすい)した様子で、時折大きく息をつきながら話し続けた。預言者はルジエさんが何度も描いてきた。特別号の表紙も自然に仕上げたという。ただ、描きながら涙がこぼれた。仏メディアによると、7日はルジエさんの誕生日で、出勤前にケーキを買いに行き、難を逃れたという。ルジエさんは「表現の自由は、表現の自由だ。『自由だ。だけれど……』などと留保をつける必要はない」とも語った。特別号の表紙は、「すべては許される」という見出しがつけられている。そこに、目から涙粒をこぼしながら、悲しそうな表情の預言者ムハンマドが、白い衣装をまとい、胸の前で連続テロに抗議する合言葉「私はシャルリー」が書かれたプラカードを掲げている。ジェラルド・ビアード編集長は13日、仏ラジオで「我々の預言者の表情は、過激派が体現する預言者よりもずっと優しい。表紙はテロの恐怖を表すものではなく心を揺り動かすもの、けれども(読者を)悲嘆させないものを選んだ」と説明した。同紙が、特別号であえて預言者を描くのは、テロや暴力に屈しない姿勢を示すためだ。同紙の弁護士は仏メディアに「我々は一切譲歩しない」と述べた。特別号の発行部数は海外向け30万部を含む300万部。仏語以外に少なくとも5カ国語で発行されるという。同紙は「デジタル版でアラビア語版も出す」という。日本語版が発行されるかは不明だ。 ■転載見送り、米・欧で イスラム教徒に配慮・テロ懸念 米ニューヨーク・タイムズは、事件発生を伝えた8日付の紙面でイスラム教関連の風刺画は載せず、代わりにオランド仏大統領らを描いた表紙を掲載した。読者からは「表現の自由の大切さを示すためにも、問題の漫画を載せるべきだ」という批判も寄せられたという。ディーン・バケー編集主幹は読者代表を務めるパブリックエディターに対し、多くの記者や編集者の意見を聞いたうえで、自分で判断したと説明。「読者、特にイスラム教徒の読者の受け取り方を考えて決めた。侮辱と風刺の間には境界があり、これらの多くは侮辱だ」と語った。イスラム過激派による暴力を懸念して、掲載を見送るメディアもある。05年9月に預言者ムハンマドの風刺画12枚を掲載して反発を招き、一連の風刺画問題の発端になったデンマークの保守系紙ユランズ・ポステンは9日、「シャルリー・エブド」が掲載した預言者の風刺画の転載をしないと社説で表明した。ロイター通信によると、ユランズ・ポステンは「我々は、テロ攻撃を受ける恐怖と共に9年間生きてきた。これが、私たちのものであろうと『シャルリー・エブド』のものであろうと再掲しない理由だ」と説明。「暴力や脅迫に屈することになるのはわかっている」とも記した。同紙は06年1月に反発を招いた風刺画の掲載を謝罪したが、デンマークの在外公館への放火や抗議活動が続いた。同紙は、いまも過激派に狙われている。ドイツでは今月11日、「シャルリー・エブド」の風刺画を転載した大衆紙「ハンブルガー・モルゲンポスト」が放火される事件が起きた。一方、フランスでは、保守系のフィガロを含むほぼすべての主要紙が、発生翌日の8日付の紙面でイスラム教や預言者ムハンマドの風刺画を転載した。ルモンドは9日付の紙面で宗教を扱ったイラストばかり6点を集めたページを設けた。アルノー・ルパルモンティエ副編集長(47)は「女性の裸など下品なものは除外し、イスラム教だけでなくキリスト教などを扱った風刺画も選ぶようにした」という。朝日新聞は「シャルリー・エブド」が出版した風刺画について、一部をのぞき、掲載を見送っている。長典俊ゼネラルエディターは「表現の自由は最大限尊重する。特定の宗教や民族への侮辱を含む表現かどうか、公序良俗に著しく反する表現かどうかなどを踏まえて判断している」と話している。 ■<考論>表現の自由、例外も 山田健太・専修大学教授(言論法)の話 表現行為に対する暴力が絶対に許されないのは言うまでもない。また、表現の自由が重要であることはどの国も変わりなく、世界の共通認識だ。その中でどのような例外を設けるかが、国によって変わってくる。欧州における例外は人種差別表現だ。ナチス・ドイツによるユダヤ人排斥の反省から各国が戦後、法律によってこの例外を決めた。イスラム国家での例外は宗教に関すること。まさに今回の問題は例外をどう扱うかが問われている。日本ではこの例外にあたる表現をあえて設けてこなかった。歴史的にはマスメディアが自主的に限界について「模範を示す」形で社会が合意してきた経緯がある。今回もほとんどのメディアが問題となった風刺画の掲載をしていないのは、そうした流れにあるものだ。 ■<考論>尊厳認め合う必要 長沢栄治・東大東洋文化研究所教授(中東地域研究)の話 偶像崇拝を禁じるイスラム教では、預言者ムハンマドの姿を描かないこと自体が信仰の表れだ。絵に描くことは一般的なイスラム教徒には受け入れ難く、その絵で侮辱するなどというのはあり得ない。一連の事件について、中東のイスラム諸国もテロを批判しているが、イスラム諸国の首脳や宗教指導者は、内心は欧米社会が過剰に表現の自由を振りかざすことにわだかまりを持っているはずだ。異なる価値観や宗教的背景を持つ人同士がわかり合うためには、人間の尊厳とは何かという点から議論を始めるべきだ。絶対的正義が自分の側にあると一方的に押しつけるべきではない。尊厳を認め合うための文明間の対話を、恒常的に続ける必要がある。 *1-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11549198.html (朝日新聞 2015年1月14日) 排外と融和、デモ応酬 欧州、反イスラム拡大 仏紙襲撃事件 仏週刊紙「シャルリー・エブド」襲撃事件の後、反イスラム感情をかき立てる動きが欧州に広がっている。ドイツ東部ドレスデンで12日夜、事件後初めてとなる大規模な「反イスラム」デモがあり、参加者は過去最多の約2万5千人(地元警察発表)に膨れ上がった。対抗して「寛容な社会」を訴える集会もドイツ各地であり、参加者は全国で約10万人に達した。12日夜、旧東独の古都ドレスデンの広場は国旗やプラカードを持った人々であふれた。「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人」(通称ペギーダ)を名乗る団体の反イスラム集会。参加者の腕や胸には、仏紙襲撃事件の犠牲者を悼む黒いリボン。同紙の風刺画を掲げた人もいる。壇上の男性が声を張り上げた。「パリの事件は我々の(反イスラムの)行動が正しいと証明した」。ペギーダは昨年10月から、毎週月曜にデモを開催。当初の数百人から規模を急拡大した。デモでは「イスラム化阻止」をスローガンに排外的な主張が目立つ。多くの参加者は一見して、老夫婦や若いカップルなど普通の市民たち。記者が話を聞くと、職業も年金生活者からサラリーマンまで様々で、デモ初体験という人もいた。地元報道によると、当局は極右組織の関与を確認したというが、ペギーダ側は否定している。ペギーダに呼応し、類似団体が次々と生まれており、小規模のデモを各地で繰り返す。背景には、経済格差が残る旧東独を中心に、豊かさと職を求めて流れ込む難民や移民への根強い反感がある。一方、ドイツでは、ナチスの過去の反省から人種差別や偏見に厳しい風潮がある。イスラム系移民が人口の5%を占め、難民の受け入れにも積極的に取り組んできた。DPA通信によると12日には、東部ライプチヒで約3万人や南部ミュンヘンで約2万人、首都ベルリンで約4千人など各地でペギーダに対抗する集会を開催。全国で計約10万人とペギーダを圧倒した。ペギーダの動きはドイツにとどまらない。スペインでは、マドリードのモスクの前で12日に集会を開くと呼びかけた。だが直前になってツイッターで「当局の許可が出なかった」と中止を表明した。「不寛容」に反対する地元の市民団体は、朝日新聞の取材に「この数週間、イスラム憎悪の動きがネット社会で生まれてきている。集会も当局に通報した」と話した。AFP通信によると、ペギーダは12日、ノルウェーの首都オスロで集会を開き、約200人が集まった。スイスやオーストリアでも計画があるという。 <ソニー・ピクチャーズの「ザ・インタビュー」について> *2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASGDS2SXKGDSUHBI007.html?_requesturl=articles%2FASGDS2SXKGDSUHBI007.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASGDS2SXKGDSUHBI007 (朝日新聞2014年12月24日)正恩氏暗殺映画、200カ所上映へ オバマ氏、決断称賛 北朝鮮の犯行とされるサイバー攻撃の引き金になり、公開中止が決まった米ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)のコメディー映画「The Interview(ジ・インタビュー)」が一転して、米国の一部の映画館で上映されることになった。米国内の200カ所以上の映画館が個別に上映を決め、SPEも了解したと23日、米メディアが報じた。AP通信によると、テキサス州の映画館などが上映を決め、SPEもこれを認めた。米CNNによると、他の州でも同調する動きが広がっており、米東部時間23日午後7時(日本時間24日午前9時)で全米の200カ所以上の映画館が公開を決めたという。大半は、当初の予定通り25日から上映する。独立系の映画館が多いという。SPEのマイケル・リントン会長兼最高経営責任者(CEO)は「これはまだ一歩に過ぎないが、言論の自由の抑圧に対して立ち上がったことを誇りに思う」とコメントした。監督兼主演のセス・ローゲン氏は「人々が声を上げた! 自由が勝利した! ソニーはあきらめなかった!」と自身のツイッターに書き込んだ。映画は、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)第1書記が暗殺されるコメディー。SPEは11月下旬から大規模なサイバー攻撃にさらされ、大量の社内情報が流出した。映画館を攻撃するとの脅迫もあり、劇場側が公開を次々と中止し、12月17日にはSPE自体が上映中止を決定した。米政府は、北朝鮮が国としてサイバー攻撃を行ったと非難。オバマ大統領は19日、ソニー側の判断について「誤りだった」と語っていた。米国では「テロに屈するべきではない」「表現の自由を守るべきだ」などの声が上がっていた。米ホワイトハウスのシュルツ副報道官は23日、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)第1書記が暗殺されるコメディー映画の上映に、一部の映画館で踏み切ることにしたソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)と映画館の決定を支持する声明を発表した。シュルツ氏は「大統領はソニーの決断を称賛している」とした上で、「人々は映画について自ら選択できるようになる。我々はこの結果を歓迎する」などと述べた。 *2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141224&ng=DGKKASGM23H5F_T21C14A2FF2000 (日経新聞 2014年12月24日) ソニー「映画公開へ努力続ける」 ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)の弁護士を務めるデービッド・ボーイズ氏は北朝鮮の金正恩第1書記を題材にした「ザ・インタビュー」について、「ソニーは公開に向けた努力を続けている」と語った。21日に出演した米NBCテレビの番組で明らかにした。現状では公開に応じた映画館も、インターネットでの配信を申し出たビデオオンデマンド業者もいない。ボーイズ氏も公開方法に関しては「未定だ」とした。国連安全保障理事会は22日、北朝鮮の人権問題について、メンバー15カ国中11カ国の賛成により、初めて議論した。シモノビッチ国連事務次長補(人権担当)は、日本人を含む外国人の拉致問題にも言及、「北朝鮮周辺地域の緊張を和らげるには、まず人権問題へのリスペクトがないといけない」とした。一方、当事国の北朝鮮はこの日の会合は欠席し、中国の劉結一国連大使は「安保理は人権問題を取り上げるフォーラムではない」と反対意見を述べた。 *2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141224&ng=DGKKASGM23H45_T21C14A2FF2000 (日経新聞 2014年12月24日) 北朝鮮、ネット接続不安定、サイバー攻撃受ける? 米「作戦の詳細は公表せず」 北朝鮮のインターネットが19日から断続的に接続できなくなっていることが22日分かった。米専門家によると、北朝鮮が何らかのサイバー攻撃を受けた可能性もあるという。米国務省のハーフ副報道官は22日の記者会見で北朝鮮への報復を含めた作戦の詳細は「公表しない」と述べ、米政府が攻撃に関与したかへの言及は避けた。攻撃の背後関係は謎のままだが、米朝の対立が深まるのは避けられそうにない。米ネット技術会社のダイン社によると、北朝鮮のネット接続は断続的に不安定になっており、22日には9時間半にわたり完全に停止した。北朝鮮国営の朝鮮中央通信や、朝鮮労働党の機関紙労働新聞のウェブサイトも接続できなかったもようだ。北朝鮮がネット経由で「何らかの攻撃を受けていてもおかしくない」(マドリー・インターネット分析部長)という。北朝鮮には4本の基幹ネットワーク回線があり、4本とも中国を経由している。接続不能の原因としては、標的に多数のアクセスを仕掛けて機能停止に追い込む「DoS攻撃」などを北朝鮮が受けたことが考えられる。外部からのサイバー攻撃だとすれば、中国の回線を経由した可能性がある。だが中国外務省の華春瑩副報道局長は23日の定例記者会見で中国の関与を否定した。そのうえで「米国と北朝鮮は意思疎通してほしい」と述べた。ハーフ氏は22日、北朝鮮のネット状況について「司法当局や米国土安全保障省が状況を注視している」としたうえで「我々は様々な選択肢を検討しているが、作戦の詳細は公表しない」と述べた。「実施した選択肢の一部は表に出るが、一部は出ない」とも付け加えた。ロイター通信によると、複数の米政府関係者は北朝鮮へのサイバー攻撃に米は関与していないと述べた。米紙ニューヨーク・タイムズは北朝鮮自身がサイバー攻撃に備えて遮断した可能性に触れている。ただ、オバマ米大統領は19日、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)へのサイバー攻撃に北朝鮮が関与したと断定。テロ支援国家への再指定も視野に「相応の対応を取る」と北朝鮮に対抗措置を取ると警告した。北朝鮮の攻撃封じ込めのため、日中韓などにも協力を呼びかけている。米国は今回の北朝鮮へのサイバー攻撃に関与したかをあえて否定も肯定もせず、対抗措置を視野に入れ続けていることを強調した。一方、北朝鮮の国防委員会は21日「サイバー戦を含むすべての戦争で米国と対決する万端の準備を整えている」との声明を発表している。 *2-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141224&ng=DGKKASGM23H6L_T21C14A2FF2000 (日経新聞 2014年12月24日) 北朝鮮人権問題 安保理で初議論 国連安全保障理事会は22日、北朝鮮の人権問題について、メンバー15カ国中11カ国の賛成により、初めて議論した。シモノビッチ国連事務次長補(人権担当)は、日本人を含む外国人の拉致問題にも言及、「北朝鮮周辺地域の緊張を和らげるには、まず人権問題へのリスペクトがないといけない」とした。一方、当事国の北朝鮮はこの日の会合は欠席し、中国の劉結一国連大使は「安保理は人権問題を取り上げるフォーラムではない」と反対意見を述べた。 PS(2014年1月16日追加):ローマ法王が、*3のように、「神の名のもとに人を殺すのは、常軌を逸しており、正当化できない」「自分の母親が侮辱されたら殴りたくなるものだ」「人の信仰を挑発したり、侮辱したり、笑いものにするべきでもない」と述べられたのは、全くその通りである。しかし、その内容を、NHKは「信仰に関わる場合、表現の自由には限度がある」というように、信仰という狭い範囲に対象を限定して表現の自由の限度について報道しているのが意図的であり、これは日本のメディアがいつもやっている「表現の自由」という言葉の乱用に対する自己防御である。 *3:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150116/k10014723061000.html (NHK 2014年1月16日) ローマ法王「表現の自由に限度」 武装した男らに襲撃されたフランスの新聞社が最新号に掲載したイスラム教の預言者の風刺画について、表現の自由か宗教の尊重かを巡る議論が広がるなか、ローマ法王のフランシスコ法王は、「人の信仰に関わる場合、表現の自由には限度がある」という考えを示しました。今月7日、武装した男らに襲撃され12人の犠牲者を出したフランス・パリの新聞社「シャルリ・エブド」は、事件から1週間後に発行した最新号でイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載しました。フランスでは表現の自由だと肯定的に捉える人が多い一方で、預言者の顔を描くことは教えに反すると考えるイスラム教の国々からは、批判の声が上がり、表現の自由か宗教の尊重かを巡り議論が広がっています。こうしたなか、ローマ・カトリック教会の指導者であるローマ法王のフランシスコ法王は15日、訪問先のスリランカからフィリピンに向かう機中で記者団から事件について尋ねられたのに対し、「神の名のもとに人を殺すのは、常軌を逸しており、正当化できない」と述べました。そのうえで、フランシスコ法王は、「自分の母親が侮辱されたら反応したくなるものだ」とたとえ話を示しながら、「人の信仰を挑発したり、侮辱したり、笑いものにするべきでもない」と述べ、信仰に関わる場合、表現の自由には限度があるという考えを示しました。
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2015,01,14, Wednesday
伊万里市大川内山 古伊万里 鍋島 (1)玄海原発30キロ圏内の伊万里市の要望 *1のように、玄海原発から30キロ圏内にある伊万里市の塚部市長は、原発再稼働問題について、新しく選出される佐賀県知事に対し、「伊万里市と九電との原子力安全協定が締結されない中では、再稼働の同意をしないよう求めたい」と述べている。原発事故が起きれば、玄海町と同じ被害にあう伊万里市としては当然のことだろう。 さらに、伊万里市は、*3の大川内山という鍋島藩窯があったところで、日本が鎖国をしていた江戸時代から古伊万里と呼ぶ磁器をヨーロッパに輸出していた歴史的にも価値のある場所だ。そのため、ここは世界遺産に立候補することこそあれ、放射能汚染で入れない場所にするなど、決してあってはならない。 (2)伊万里市への定住促進 *2-1のように、伊万里市は若手職員によるワーキンググループを作って、西九州自動車道の延伸に伴う交流人口の拡大や定住促進をテーマにアイデアを出し合うそうだが、それには、*2-2のような “逆指名”で移住者を募集するのが効果的だと考える。何故なら、都市には、自然に近く、食べ物が美味しくて、かつ便利な場所に住みたい自然派の人が多いが、移住後の生活の目途が立たなければ、それは実現できないからである。 そのため、移住者にとって欠かせない①雇用条件 ②入居可能な住宅 ③教育・保育、医療・介護、生活圏に関する情報 ④問い合わせすべき市町村の担当部署 などの情報を記載した上で、地域が求める移住者を具体的に明記して、UターンやIターンを募集するのがよいと思う。もちろん、①②③の条件は、総合的には前に住んでいた場所よりも魅力的なものになるようにしなければならない。 (3)日本の農産物輸出額が過去最高になった 日本では農産物は輸入するものであって輸出するものではないかのような錯覚が最近まであったが、*4のように、フクシマ原発事故があったにもかかわらず、努力し始めてから10年足らずで農林水産物・食品の輸出額は過去最高を更新し、2014年1~11月の輸出額は5482億円になるそうだ。伊万里市は、牛肉をはじめとする農林水産物も良質なものができるため、それを担う人材は増えた方がよい。それには、都会でいろいろな経験を持つ人を募集してはどうだろうか。 *1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/142722 (佐賀新聞 2015年1月7日) 再稼働同意、新知事に注文 「伊万里市の協定後に」 伊万里市の塚部芳和市長は6日の定例会見で、玄海原発再稼働問題について、新しく選出される県知事に対し「伊万里市と九電との原子力安全協定が締結されない中では、再稼働の同意をしないよう求めたい」と述べた。市と九電の協定締結を、知事の再稼働同意の条件とするよう要請する。伊万里市は九電に立地自治体の玄海町と同等の事前了解を含む安全協定の締結を求めている。塚部市長は「現時点でスタンスは変えない」と従来の主張を強調した。県はこれまで伊万里市と九電の交渉に関与しない立場をとってきたが、「前知事の考えと違ってくるかもしれないので、ぜひ伊万里市の考えを伝えたい」と新知事に期待を寄せた。また、塚部市長は2月1日に西九州自動車道が市内(南波多谷口インター)まで延伸することに関し、「交流人口や観光客の増加につなげたい」と期待する一方で、「逆に福岡都市圏に買い物客や人口が流出する恐れがある」と不安も語った。近く若手職員10人による「伊万里に来てくんしゃい対策チーム」を立ち上げ、観光や定住対策などで柔軟にアイデアを出し合うという。 *2-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/145164 (佐賀新聞 2015年1月14日) 伊万里に来てくんしゃい 若手職員で対策チーム ■西九州道延伸観光客増と定住促進 伊万里市は13日、20~30代の若手職員によるワーキンググループ「伊万里に来てくんしゃい対策チーム」を発足させた。西九州自動車道の延伸に伴う交流人口の拡大や定住促進をテーマにアイデアを出し合う。2月中旬ごろまで会合を重ね、塚部芳和市長に具体策を提案する予定。西九州道が2月1日に市南波多町の南波多谷口インターチェンジまで延伸することを受け、塚部市長が若手職員中心での論議を指示した。各部署の部長が推薦した10人がメンバー。勤務後の時間帯などに会議を開き、観光客の増加と定住促進を主なテーマに、若手ならではのアイデアを出す。初会合では、江頭興宣副市長が「西九州道をどういかすかが、伊万里市の大きな課題。これまでの事業にとらわれず新鮮なアイデアを出してほしい」と要望した。メンバーは自己紹介の後、意見交換を行い、「伊万里の親元から大学に通えれば若者の流出防止につながる。高速バス運行を充実できないか」「伊万里の魅力を集約したような場所がほしい」などの意見を出し合った。 *2-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31611 (日本農業新聞 2015/1/14) 牧場作業員、薬剤師・・・ “逆指名”で移住募集 島根県が事業 島根県は、市町村やふるさと島根定住財団と協力し、地域が求める移住者像を提案する事業に乗り出した。移住希望者に就いてほしい仕事、住宅・生活圏の情報などをパッケージで提供する。全19市町村が計100のパッケージ情報を発信している。県は「移住後の生活がイメージしやすく、移住希望者から反響が大きい」(しまね暮らし推進課)と意義を強調する。 ●職種や住環境まとめて提供 同県が、若者の移住支援策として新たに打ち出したのが2014年度スタートした定住パッケージ事業だ。移住者が地域に溶け込めるよう、事前に受け入れ側の要望を分かりやすく示す必要があると判断した。パッケージ情報には、移住者にとって欠かせない(1)雇用条件(2)入居可能な住宅(3)学校や病院、スーパーなど生活圏情報(4)市町村の担当部署――などを盛り込む。その上で「行事への積極的な参加」「農業への強い意欲」など地域が求める移住者像を具体的に明記する。飯南町の来島地区は、移住者に勧める仕事として「乳牛飼育する牧場作業員」、住宅として新築社宅を提示。求める移住者像としては「乳牛の健康状態や気持ちを的確に感じ取る人。動物に対する優しさ、時には厳しさを持って接することができる人」を挙げている。こうした求める移住者像は、地域によって違う。薬剤師や育林作業員を探していたり、古民家で暮らしたい人を募集していたりと、地域ごとにさまざまな要望がある。県は「求める移住者像を明確にすることで、若者の希望と地域の要望のミスマッチを解消できる。それぞれの地域への定住化に結びつけたい」(同課)と期待する。他の自治体でも、移住者のターゲットを絞って支援する動きが広がりだした。徳島県神山町は高速通信網を整備し、IT起業家やウェブデザイナーなど移住してほしい人を“逆指名”する形をとる。町は「過疎高齢化が進む中で、若い人の移住が必要だった。逆指名型をとることで、IT企業の進出が増えて、雇用にもつながった」(産業観光課)と成果を説明する。長野県も子育て世代や若手起業家など特定層をターゲットに情報発信や移住相談会を始めた。県は「ぼんやりとした募集ではなく、移住したい人のニーズも踏まえることができる」(地域振興課)と話す。九州大学の小川全夫名誉教授は「こういう人に来てほしいと要望し、優遇策を提示する手法は、ある意味で契約型移住だ。明確な目的が共有でき、定住率が高まる」と指摘。政府が地方創生を進めることを踏まえ「全国の行政が移住支援に力を入れ始めたが、不特定多数でなく、ターゲットを絞るなど多様な戦略を練ることが求められる」と主張する。 *3:http://sagasubanta.com/sagayoyo/yokatoko/okawachiyama/ 江戸時代、肥前地区で焼かれた焼物(磁器)は、伊万里の港から積み出され、国内はもちろん、遠くヨーロッパまでも運ばれたので、伊万里が焼物の代名詞となり、これらの焼物の総称が「古伊万里」と呼ばれています。現在では、特に赤絵に金を施した物を「古伊万里様式」と呼んでいます。日本で最初に磁器を完成させた鍋島藩は、より高い品質と技法の維持に努め「藩窯」を組織し、1675年には有田から大川内山に藩窯を移して、その技法が他に漏れないようにしました。この藩窯では大名や将軍家、朝廷に献上するための高品位な焼物を、明治4年まで焼き続けました。この焼物が鍋島と呼ばれています。鍋島藩窯のあった大川内山では、明治4年の藩窯解散以後、藩窯で培われた高度な技法を守り、受け継いできました。現在でも、鍋島の技法はもちろん、新たな技術も取り入れた多くの窯元が大川内山にあり、伊万里焼の中心となっています。伊万里焼は鍋島等の様式美を受け継いだ物から、現代の生活感覚にマッチした焼物まで、多くの種類があります。 *4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31621 (日本農業新聞 2015/1/14) 農産物輸出額 過去最高へ 米3割、牛肉4割増 14年1~11月 2014年の農林水産物・食品の輸出額が過去最高を更新する見通しだ。13日に農水省が公表した同年1~11月の実績は過去最高を記録した前年同期と比べて11%増と好調に伸びている。農産物では米が3割、牛肉で4割伸びた。円安による割安感が後押ししたことに加え、検疫協議などで各国が輸入規制を緩和したことなどがプラス材料になった。ただ輸出の多くを占めるのは水産物や加工食品のため、輸出増を農家の所得向上につなげられるかが課題だ。14年1~11月の輸出額は5482億円。過去最高となった13年の5505億円(通年)と同水準で、14年1年間では過去最高を更新するのが確実だ。品目別では米(援助米を除く)が12億円で33%、牛肉が71億円で41%、リンゴが64億円で39%それぞれ増え、数量ベースでもそれぞれ4割増えた。農水省は輸出増の要因について、円安による追い風に加え、日本食ブーム、動植物検疫協議が進んだこと、東京電力福島第1原子力発電所事故を受けた日本産食品の輸入規制が各国で緩和されたことなどを挙げる。特に牛肉は、5億人の市場を抱える欧州連合(EU)向けの輸出が解禁され、1~11月に3億円輸出が増えて牛肉全体の輸出増を押し上げた。輸出増に向け、環境整備が課題になる。原発事故を受けた輸入規制は、14年にEUや米国など8カ国・地域が緩和したが、輸出先で上位を占める中国や韓国が厳しい規制を続けている。輸出構成を見ると、水産物(39%)、みそ・しょうゆ、ソースなどの加工食品(29%)に対し、畜産品(7%)、穀物(4%)などの割合は少ない。
| まちづくりと地域振興::2014.4~2015.4 | 09:21 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2015,01,13, Tuesday
*2-1より 2014.11.20日本農業新聞 2014.7.31日本農業新聞 (1)佐賀県知事選では改革が否定されたのではなく、自民党の“改革”方針が悪すぎるのだ *1-1に書かれているように、自公の推薦を得た元武雄市長の樋渡氏に対し、佐賀県民は元総務官僚の山口氏を立て、農協が中心となって佐賀県知事選に勝利した。私は、この記事で、「政権側の方が、規制改革色が強い」「切り込む官邸」としているのは間違いだと考える。何故なら、政権が主張する“農協改革”は、TPPに反対している農協の力を弱め、TPPを導入して現在の農業者を農業から撤退させ、食料自給率を下げる“改革”の名に値しないものだからである。 また、政府の規制改革会議は、上図のように、①全国農業協同組合中央会を農協法で位置づける必要はない ②地域農協の監査権を公認会計士の会計監査で代替する ③経営指導権を法律で位置づける必要はない 等としている。①③は、法律で位置づけなくても、農協内の社内規定で明確にすればよいが、②は、公認会計士監査に替えるにしても、公認会計士監査は内部統制に依拠する上、業務監査は行わず、地域農協毎に公認会計士監査を行えば全体としてはかえって費用がかさむため、現在の内部監査の規模は縮小した上でこれを残し、全体を公認会計士に監査してもらった方がよいと考える。また、④の意見具申は、法律で位置づけなくてもどの業界もやっているので、実質的な変更はないだろう。 しかし、佐賀県は、私が公認会計士として国内、国外の多くの製造業・サービス業を見てきた目で、衆議院議員時代に地元の農協を廻って農業におけるブランド化やコスト削減に関するアドバイスを行い、中央の政策に関する情報を農協や地元自治体に送り続け、農協が先頭に立ってそれを実践してきた経緯がある。そのため、佐賀県の農業は、日本で一番進んでおり、それには農協の実績が大きく、東北などの他地域とは異なる。そして、政府の方針の方が盲目的なところがあり、政府の農業改革よりも佐賀県の自治体と農協が進めてきた農業改革の方が、地に足をつけて進んでいるのだ。 そういう経緯があるため、*1-1のように、佐賀県知事選では、自ら改革を進めてきたという自負のある農協が、政権側が擁立した前武雄市長の樋渡氏を応援せずに、元総務官僚の山口氏を立てて、*1-2、*1-3のように勝利したのはもっともなのである。従って、これを、「改革に切り込む官邸が悪い岩盤である農協に敗北した」と解説するのは、失礼だと思う(これも表現の自由だと言うのか?)。 なお、*1-4のように、政権幹部は、「政策では支持されたが、候補者で支持されなかった」「今後も農業改革などに変更はない」などとしているが、正確に分析すれば、佐賀県は衆院選では、小選挙区と比例代表で、自民党・民主党の両方の候補者を通しており、与党が一方的に勝利したわけではない。しかし、知事選では、①衆院選後の政策や農協改革にたまりかねて農業団体が他の候補者を探してきて支援した ②樋渡氏は自民党の言う“改革(改悪も多い)”を推進する候補者だった ③樋渡氏はその逆風をはね返すほどには人間的に信用されていない面があった などが敗因だと考えている。 (2)農協が岩盤規制なのではない *2-1や*2-2で日経新聞は、「政府は、JA全中の指導・監査権を3年で全廃して任意団体に転換し、JAグループ内でのJA全中の強制力をなくす」と書いているが、私は法的強制力がなくても、ある程度の大きさのエリアをまとめて経営指導や内部監査を続けるのが、全中にとっても農協にとっても経営合理性があると考えている。 また、「地域農協や農家が農産物の価格やサービス、流通経路を自由に競い合えるようにする」とも書かれているが、現在は20年前と異なり、自由に競い合って勝てる農家は既にそうしているのだ。そして、それをやれない零細な経営主体が農協に集まって地域ブランドを作り、地方自治体もこれを応援しているのである。何故なら、このような零細な経営主体は、放っておくと皆が同じ物を作って過当競争になり、共倒れになって市場の失敗が起こるからである(これは経済学のイロハで他国でも同じ)。 さらに、地域の農産物(例えば、肉、野菜、果物等)は既に競争しており、JAが独占販売しているわけでもない。また、これまでの農家がなくなって株式会社が作ったものや外国産ばかりになれば、日本の消費者のためにではなく利益追求のために農産物が作られるため、日本の消費者はむしろ、有機農業で土づくりからこだわった自然派の農産物のような優良な農産物を選択するチャンスがなくなる。 なお、農協は、零細農家や兼業農家などの規模の小さい農家だけの集まりではなく専業農家も入っており、農家が作った農産物の検品・販売・会計処理を請け負ったり、農家に肥料や農機具などの資材を販売したり、繁忙期の労働力を手配したり、情報を提供して技術進歩を先導したりもしている。そして、農産物の半分は農協を通さずに販売されているのであり、現在は、それも自由にできるのだが、それにもかかわらず半分が農協経由になっているのは、農協に包括ケアしてもらった方が生産に集中しやすいと感じる農家が多いからである。 また、「農家には、農協のサービスはどこも画一的で、手数料も割高だといった不満も多い」と記されているが、そう感じる農家は農協を使わない方法をとればよく、近年は資材の専門店や農産物を直接仕入れるスーパーも多い。そのため、農協を弱体化させるのではなく、そちらを頑張らせるべきなのだ。 このように、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を進めるために、かなり前の実態から見た論理づけがなされているが、農協を弱体化させることを目的とする法律を通しても、農協経営は効率化するどころか非効率となり、それに伴って農家も弱り、国際競争力を高めるどころか弱めることになる。また、政府関係者が「地域農協が商品開発や輸出強化で自由に競争できるようになる」と指摘しているとのことだが、国際競争をする時には、地域農協は競争するより協力して、よりよいブランド品をまとまった量で生産しなければ、外国に太刀打ちすることはできない。 なお、「JA全中は監査代などで地域農協などから毎年80億円程度の負担金を集めており、任意団体になれば負担金がなくなり、地域農協の自由度が高まる」と書かれているが、監査のみでそれほどの金額がかかるわけはないため、他のサービスも行っているのを分けずに書いているのではないだろうか。ここは、私が分析すればBestな案を出せると思うが、現在、それを分析する立場にないのが残念である。 また、*2-1、*2-2の日経新聞記事は、「商社サービス機能を持つ全国農業協同組合連合会(JA全農)は、株式会社に転換できることを明記する」とし、*2-3では日本農業新聞が反論しているが、株式会社にしさえすれば問題が解決するかのような株式会社への盲信をしているのは問題である。生産資材は、大規模な主体が交渉した方が安価に仕入れることができるが、これまでは農業中心ではなく、製造業中心に補助金を見越した価格設定がなされていたため、値段が高い割に粗末だったのだ。 そのような中、*2-2のように、全中を廃止したり、農協の力を弱めたりすることが目的の“農協改革”に、約700の地域農協を束ねる全国農業協同組合中央会(JA全中)が対決姿勢を鮮明にしたのは当然である。改革は、壊すことを目的とするのではなく、よりよくすることを目的として行うべきだ。私は改革派であって守旧派ではないが、「改革」とは、常時よくなる方向へ向かって行い続けるべきものであり、それは改悪することでは決してないと断言しておく。 <佐賀県知事選で示した農協の意志> *1-1:http://www.asahi.com/articles/DA3S11536527.html (朝日新聞 2015年1月6日) 政権・農協、佐賀知事選で激突 規制改革めぐり攻防 安倍政権と自民党の支持団体である農協が、佐賀県知事選(11日投開票)を舞台に火花を散らしている。政権側が規制改革色の強い前同県武雄市長を擁立したのに対し、農協側は元総務官僚を担いだ。背景には、規制改革の象徴として政権が取り組む「農協改革」をめぐる攻防がある。 ■切り込む官邸、地元が対抗 「自信と責任を持って推薦しました」。前佐賀県武雄市長の樋渡啓祐氏(45)の集会では、安倍晋三首相がこう語る映像が流れる。政権を挙げて樋渡氏を推す、という演出だ。これまでも、菅義偉官房長官や竹下亘復興相らが応援に駆けつけ、5日には自民党の谷垣禎一幹事長が同県伊万里市の演説会に出席。「樋渡氏は武雄市長として、ツタヤで図書館をうまく活性化させたりした。あるいは(ハーブの一種の)『レモングラス』なんて、その辺にあるものをブランド品にしてしまう。こういうことがないと地方創生はうまくいかない」と持ち上げた。稲田朋美政調会長も8日に応援に入る。特に、首相の最側近である菅氏は樋渡氏の支援に力を入れる。市長時代、地元医師会の反対を押し切り、市民病院の民間移譲を進めるなどした姿勢が、アベノミクスの規制改革の方向性と一致すると評価。農業でも、レモングラスを農協を通さずに販売しており、菅氏は「樋渡氏は改革派で押し出せる」と周囲に語る。しかし、そうした樋渡氏の手法に、農協など業界団体などを中心に自民党の支持組織は警戒感をあらわにした。地元農協の政治組織「県農政協議会」が主導し、一部の自民党県議や県内の首長と擁立したのが元総務官僚の山口祥義氏(49)だ。県農政協議会の中野吉實(よしみ)会長は、JAグループの中核、全国農業協同組合連合会(JA全農)会長を務める。佐賀では、2007年参院選で民主党に敗れるまで自民が20連勝。正組合員約5万5千人のJAグループが、保守王国・佐賀を支えてきたという自負もある。農協と関係の深い自民党農林族議員の一人は「知事選の結果が、農業改革に突き進む安倍政権への牽制になる」ともくろむ。政府の規制改革会議は昨年5月、農協法で地域農協の指導などが認められている全国農業協同組合中央会(全中・万歳章会長)の「廃止」を提案。党農林族議員が猛烈に巻き返し、「廃止」の表現を撤回させた。これに対し、推進派は昨年10月、稲田氏のもとに「規制改革推進委員会」を設置。族議員に対抗する場をつくった。衆院選で議論は中断したが、今月中にも再始動する予定で、政権と農協は再び激突することになる。安倍政権が掲げる農協改革とこれに対する懸念。農協改革が隠れた争点になる中、山口氏は3日に伊万里市で開いた総決起大会で「農協は団結して佐賀の農業をつくってきた。守るべきものは守らなければならない」と訴えた。 ■「勝っても負けてもしこり」 知事選の選挙結果は、国政に少なからず影響を与えそうだ。安倍政権は樋渡氏が勝てば、農協の発言力は低下し、農協改革に弾みがつくとみる。官邸幹部は「自民党守旧派が山口氏に乗るのなら、一緒につぶすしかない」と闘争心を隠さない。一方、農協側が推す山口氏が勝てば、農協の組織力を見せつけられる結果になる。今春の統一地方選や来夏の参院選をにらみ、自民党内や地方組織から、支持団体である農協の改革に懸念の声が噴き出す可能性がある。党幹部の一人は「農協改革が『農協つぶし』と受け取られてはならない」と指摘。樋渡氏の応援で現地入りしたベテラン議員でさえ、「このままでは勝っても負けてもしこりが残る」と心配する。政権の目指す農協改革に党内外の反対が強まれば、政権が掲げる規制改革による成長戦略の失速につながる可能性もある。農協グループの司令塔である全中の中にも、知事選での激突で政権と抜き差しならない関係になることを心配する声がある。JAグループ幹部の一人は「衆院選が終わり、これからの自分たちの防御のことで精いっぱいだ」と話す。 飯盛良隆(いさがいよしたか) 44 無新 農業 樋渡啓祐(ひわたしけいすけ) 45 無新 [元]武雄市長 〈自〉〈公〉 山口祥義(やまぐちよしのり) 49 無新 [元]総務省室長 島谷幸宏(しまたにゆきひろ) 59 無新 九大院教授 (届け出順、敬称略。〈 〉内の政党は推薦。年齢は投票日現在) *1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/144467 (佐賀新聞 2015年1月12日) 樋渡氏「私の力不足」 改革派、夢絶たれる 「改革派首長」の次なる挑戦が絶たれた。樋渡啓祐さん(45)の事務所に「山口氏当確」の報が入ると一瞬にして静まり返り、重苦しい雰囲気になった。武雄市長時のユニークな政策で抜群の知名度があったものの、県農政協議会を中心とした強大な組織力に立ちふさがれてあと一歩届かなかった。樋渡さんは「私の力不足が今回の結果を招き、申し訳ありません」と深々と頭を下げた。事務所では県連会長の福岡資麿参院議員や古川康衆院議員ら4人の国会議員も並んで、支持者を前に頭を下げた。福岡会長は「私たちの力が及ばず、責任の重さを受け止めている」と苦渋の表情を見せた。教育改革を武雄市で進める樋渡さんは「投げ出し」の批判覚悟で市長辞職と知事選挑戦を決断した。自民党の推薦を受けたものの、保守分裂が起こり、自民の有力団体の県農政協が元総務官僚の候補を応援する事態に。党本部も乗り出して官房長官や幹事長らが続々と応援に駆け付けるなど国政選挙並みの態勢がとられた。一方で党本部の露骨な介入に反発も強まり、相手陣営の結束を誘引した。前知事の古川衆院議員との運動で「後継者」をアピールし、民間と連携した改革の実績や即戦力も示して訴えたものの、相手候補の猛追を止められなかった。武雄市を全国区の知名度に押し上げた情報発信力も、市長時代の政治手法や言動に対する批判の声にかき消された。最終盤に「潮目が変わった」と振りかえる樋渡さん。「佐賀を良くしたいという政策を訴えたが、思いが届かなかった」と淡々と語った。 *1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/144469 (佐賀新聞 2015年01月12日) 山口氏歓喜の輪 「佐賀のことは佐賀で決める」 ■「県民党」激戦制す 「佐賀のことは佐賀で決める」。自公政権が国政選挙並みに幹部を送り込んだ異例の知事選を制した元総務省過疎対策室長の山口祥義(よしのり)さん(49)。歓喜の渦の中、「県民一人ひとりの力がどれほど強いか、日本中に示した」とつぶれた喉で叫んだ。事務所には、自民党の推薦する樋渡啓祐さんの政治手法に反発するJAグループ佐賀の政治団体・県農政協議会や多くの首長、地方議員ら約300人が詰め掛け、「ヤマグチ」コールで新知事を迎え入れた。何度も万歳して喜び合った。選挙戦を通じ、旗印に掲げたのが党派の垣根を越えた「県民党」だった。反樋渡の一点で、民主党議員や連合佐賀も参戦。集会では過去の選挙でしのぎを削った者同士が席を並べた。国対地方の構図は「佐賀の乱、佐賀の百姓一揆だ」(与党筋)と注目を集めた。中でも県内最大の政治団体である農政協は「かつてないほど死に物狂いで動いた」(幹部)。集落単位に張り巡らされた2千数百の生産組合の末端まで指示を下ろし、圧倒的な動員力で決起大会の会場を毎回、満杯にした。それでも、立候補表明が告示9日前と出遅れ、知名度不足をばん回できないまま、各報道機関の情勢分析でも苦戦が伝えられた。事務所開きでは司会に名前を「よしひろ」と間違えられ、陣営幹部も「先ほど本人とお会いしたばかり」と繕うほどだった。もともと地方自治や防災対策の経験が豊富で、誰とでもすぐに打ち解ける明るい性格。陣営内での認識も反樋渡の「みこし」から、「この人に知事になってほしい」へと変化していった。最終盤の県都決戦では大半の佐賀市議らが「自分の選挙でも記憶にない」ほど汗をかき、大逆転で勝利をもぎ取った。出馬を決意したのが昨年12月12日。1カ月前は無名の官僚が佐賀県知事になった。「奇跡の30日間だった。県民一人ひとりの声に耳を傾け、現場目線で改革を進める。選挙が終わればノーサイド」。山口さんは持ち前の気さくな笑顔で支援者らと抱き合った。 *1-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/144748 (佐賀新聞 2015年1月13日) =知事選= 政府与党「政策は支持された」 ■敗因検証求める声も 11日の佐賀県知事選で自民、公明両党の推薦候補が、農業団体が支援する候補に敗れたことについて、政府与党の幹部らが12日、相次いで言及した。安倍政権が取り組む農協改革や、4月の統一地方選への影響を否定する一方、敗因の検証を求める声も上がった。甘利明経済再生担当相は、首相官邸で記者団に「政策では支持されたが、候補者で支持されなかったというのが今回の結果だと思う」と述べ、安倍政権が進める農協改革への影響はないとの見方を示した。甘利氏は「アベノミクスは衆院選で支持された」として、政権の経済政策が知事選での敗因ではないと強調。環太平洋連携協定(TPP)交渉への影響についても「ありません」と否定した。自民党の稲田朋美政調会長は「農協改革にブレーキがかかることはない」と記者団に語った。二階俊博総務会長は記者会見で「衆院選で勝ったから、他は取りこぼしても良いとはならない。なぜ勝てなかったか考えるべきだ」と指摘した。公明党の山口那津男代表は、官邸で記者団の質問に「佐賀のいろいろな要因があり、地域の特性に応じた選挙が展開されるので、統一地方選に特に影響はない」との見方を示した。農協改革に関しては「いろいろな声がある。謙虚に受け止め今後に生かすことが重要だ」と述べた。 <農協が岩盤規制なのではない> *2-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS30H5V_T00C15A1MM8000/ (日経新聞 2015/1/4) JA全中の農協指導権「全廃」案 政府、任意団体に 政府は今月始まる通常国会に提出する農業協同組合法改正案の骨格を固めた。全国の農協組織を束ねる全国農業協同組合中央会(JA全中)の指導・監査などの権限を3年で全廃して任意団体に転換する。JAグループ内でのJA全中の強制力をなくし、地域農協や農家が農産物の価格やサービス、流通経路を自由に競い合えるようにする。消費者も安価で魅力的な国産品を買える可能性が高まる。JA全中の下部組織である地方中央会は原則5年、最長10年以内に任意団体に変える。JA全中を岩盤規制の象徴と見なしてきた安倍晋三政権は農協法改正案の骨格を1月にも与党に示し、今春をめどに改正案を国会に提出したい考えだ。地域農協は零細農家や兼業農家など生産規模の小さい農家の集まりで、全国に約700ある。農家が作った農産物の販売を請け負ったり、肥料や農機具などの資材を農家に販売したりする。地域農協の頂点に立つのがJA全中で、都道府県ごとに設けた地方中央会を通じて統制している。全国の農家が出荷したコメや野菜などの農業総産出額約8兆5000億円のうち、約半分は農協経由で、JAグループの価格影響力は強大。ただ農家には「農協のサービスはどこも画一的で、手数料も割高だ」といった不満も多い。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を背景に強い農業の確立が急務になるなかで、改正案は農協の経営を効率化させ、国際競争力を高める狙いもある。改正案には、指導・監査権や、行政に意見を述べる建議権などJA全中が持つ法的権限を3年後にすべてなくし、ほかの業界団体と同じ一般社団法人や法的権限のない農協の連合会に転換させる内容を盛り込む。政府関係者は「地域農協が商品開発や輸出強化で自由に競争できるようになる」と指摘する。JA全中は監査代などで地域農協などから毎年80億円程度の負担金を集めている。任意団体になれば負担金がほぼなくなり、地域農協の自由度が高まる。政府内には、負担金を使ったTPP交渉や企業の農業参入などの反対運動を封じることができるとの思惑もある。地方中央会は原則5年で任意団体に転換。農相が認可すれば、さらに5年の猶予期間を設ける。今春の統一地方選を前に与党内に「選挙戦で集票マシンとして機能する地方中央会は残すべきだ」との声が強いためだ。商社サービス機能を持つ全国農業協同組合連合会(JA全農)は、株式会社に転換できることを明記する。当面は地域農協が出資する状態を維持するが、将来は経営合理化につながる農協外からの出資受け入れに含みを持たせる。合理化で生産資材などの価格が下がれば、生産者の競争力が高まるとの期待がある。企業や農家でつくる農業生産法人への企業の出資比率も原則25%から50%未満に引き上げ、企業の参入障壁を低くする。 *2-2:http://www.nikkei.com/article/DGKKZO79398060X01C14A1EA2000/?bu=BFBD (日経新聞 2014/11/7) JA全中、農協改革で政府と対立鮮明 独自案を公表 経営指導権の維持狙う 安倍晋三政権が掲げる農協改革に、約700の地域農協を束ねる全国農業協同組合中央会(JA全中)が対決姿勢を鮮明にしている。JA全中は6日、自ら組織改革案を公表したが、各農協を指導する監査権限などを従来通り維持する方針を強調した。政府・与党は年末までに農協改革案をまとめるが、JA全中は自民党農林族を取り込んで巻き返しており、調整は難航しそうだ。農協の多くは農家からの農産物の買い取り価格や経営指導が画一的で、企業の農業参入にも否定的だった。政府は成長戦略で農産物輸出の拡大などを掲げ、大胆な農協改革を迫っている。中でもJA全中の全国一律の経営指導に問題があるとみていた。JA全中の万歳章会長は6日の記者会見で「自らの組織改革を自らの手でやり遂げるという決意でまとめた」と述べた。全中が公表した自己改革案は「新たな中央会は農協法上に措置することが必要」と明記した。首相は10月3日の衆院予算委員会で「農協法に基づく現行の中央会制度は存続しないことになる」と明言しており、両者の考えは真っ向から対立することになる。安倍政権は農協法で定めた全中の位置づけを廃止し、経団連などほかの業界団体と同じ一般社団法人への転換をめざす。各農協が独自の経営判断で農産物の開発や流通ルートの開拓に取り組むようにする。農協が監査代の対価などとして全中に支払う年間70億円程度の「負担金」もなくなり、経営の自由度は増す。だが全中は6日の改革案で経営指導権は「経営相談」に名称変更するものの、農協法で制度を存続する方針を盛り込んだ。社団法人化も見送った。農林水産省幹部は「政府と隔たりが大きい」と困惑する。安倍政権には農協改革に熱心な菅義偉官房長官らがおり、強硬姿勢を崩さない。来春には統一地方選を控え、自民党内には農協の集票力に期待がなお残る。「岩盤規制」の突破を掲げる安倍政権の改革姿勢を問われることにもなり、年末に向けて議論は波乱含みだ。 *2-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31440 (日本農業新聞 2014/12/29) 良識ある自民党議員へ期待 株式会社 盲信を正せ 評論家・ノンフィクション作家 関岡 英之 年明けの通常国会は、農協法改正問題で波乱含みとなるだろう。JA全中が現状通り同法上の組織として存続できるかどうかが最大の焦点だ。一部報道によると、政府原案には全中の一般社団法人化が盛り込まれるという。規制改革会議の農業ワーキンググループは、5月に公表した「農業改革に関する意見」で中央会制度の廃止を提言した。これに対し自民党内から異論が噴出したため、6月に閣議決定された「規制改革実施計画」では「新たな制度に移行する」という表現に弱められた。 ●中央会廃止狙う しかし安倍総理は10月3日の衆議院予算委員会で「農協法に基づく現行の中央会制度は存続しないことになる」と明言していることから、同法改正の真意が中央会制度の「廃止」にあることは明白である。全中から監査権限を奪い、民間企業と同様、単協にも公認会計士の会計監査を受けさせることが狙いの一つだろう。それ以外にも、全農の株式会社化、単協・連合会の分割・再編や株式会社等への移行、民間企業の経営経験者の理事会参入、単協の信用事業を農林中金へ移管した上で農中・全共連を株式会社化するなどといった規制改革会議の提言が実現する可能性も排除できない。これら一連の“改革”案に通底しているのは、協同組合の存在否定と民間企業への盲信だ。だが、農協を解体して株式会社化すれば、我が国の農業が抱える複雑な問題が一挙に解決できるなどというのは、控えめに言っても誇大妄想である。よく目を開けて、大企業の経営者たちの情けない実情を見てみるがよい。ひたすら内部留保を溜(た)め込むだけでリスクテイクする気概もなく、賃上げや国内投資に踏み切ろうとしない。自動車会社は内外でリコール騒ぎを繰り返し、家電メーカーは新興国企業の追い上げになすすべもない。銀行は不良債権の山を築いて国民の血税で救済される体たらくで、いまだに預金者へまともな利息を払わない。東証一部上場企業に14年間勤務した経験のある筆者は断言できるが、株式会社を万能の救世主として神聖視するなど愚の骨頂である。 ●問題をすり替え そもそも、農家の高齢化や後継者難、耕作放棄地の増加など、農業の衰退を全て農協のせいだと決め付けるのは、事の本質から国民の目をそらすことを狙った問題のすり替えだ。我が国の農業が長年にわたって苦境に陥ってきたのは、米国の貿易自由化圧力がもたらしたものであることは誰でも知っている。だが、政府の役人やマスコミはこの歴然たる事実を見て見ぬ振りを決めこみ、国民の目を誤魔化(ごまか)そうと躍起になっている。政府とマスコミ、背後に控える財界は「農業が衰退したのは農協が悪いからだ」と居丈高に叩(たた)く。それはまるで、子どもを真冬に裸でベランダに放置しておきながら、「衰弱したのはお前が悪い子だからだ」と子どもを虐待する鬼畜のごとき理不尽な言い草ではないか。良識ある自民党議員の奮起を期待したい。 <プロフィル> せきおか・ひでゆき 1961年東京都生まれ。早稲田大学大学院修士修了。年次改革要望書による米国の内政干渉を解明した『拒否できない日本』、TPPに関する『国家の存亡』、『TPP黒い条約』『検証アベノミクスとTPP』など著書多数。 PS(2015年1月14日追加):*3をはじめとして、1月11日の佐賀県知事選を取り上げた記事は多いが、これを「佐賀の乱」と例えるのは、意味もなく歴史の知識を遊んでいるだけであり適切でない。何故なら、佐賀の乱は明治政府内の意見対立だが、今回の知事選は主権在民にのっとって行われた国民の意志表示だからだ。なお、現在は、殆どが改革派であり、「どう変えるか」に焦点が移っている。その点、樋渡氏は、ツタヤと組んで市立図書館を刷新したが、ツタヤと市立図書館のとり合わせには疑問を感じた人もいたし、市民病院は黒字ならいいというものでもないため、民間移譲がBestな選択だったかどうかは疑問だ。また、(岩盤の?)地元医師会の反発を押し切ったからよいことをしたというものでもなく、武雄市を挙げて、まじめに医療改革の内容と方法を問うた闘いであったため、新聞記者も勉強して報道の質を向上させてもらいたい。 *3:http://www.asahi.com/paper/editorial.html (朝日新聞社説 2015年1月14日) 自民の敗北―佐賀の乱で見えたこと 地方選には地域固有の事情が反映する。それを安易に国政に結びつけるべきではないにしても、安倍政権にとっては痛い結果だったに違いない。前知事の衆院選立候補に伴う11日の佐賀県知事選で、元総務官僚で新顔の山口祥義(よしのり)氏が当選した。衆院選で大勝した自民、公明両党推薦の樋渡(ひわたし)啓祐・前佐賀県武雄市長らを破っての「番狂わせ」である。知事選では、県内にある九州電力玄海原発の再稼働や、自衛隊のオスプレイ佐賀空港配備といった問題よりも、政権が進める農協改革をめぐる「政権対農協」の争いがクローズアップされた。政権が支援する樋渡氏に対し、改革に否定的な地元農協などが反旗を翻す形で山口氏を推したからだ。2006年から武雄市長を務めた樋渡氏は、レンタル大手ツタヤの運営会社と組んで市立図書館を刷新、全国的な注目を集めた。また、地元医師会の反発を押し切っての市民病院の民間移譲なども進めた。市長としての行動力に高い評価を得ると同時に、強引な手法への批判もまた根強かった。農協改革など規制改革に力を入れる政権が樋渡氏を全面的に支援したのは、「改革派」の側面を買ったからだ。農業県の知事選を制すれば、抵抗が大きい農協改革にも弾みがつくとの狙いだ。しかし、地元の側には、農協改革だけでなく、中央主導のトップダウンで知事選を仕切ろうとした政権のやり方への反発も強かったようだ。日本の農業が行き詰まりつつあるのは明らかだ。農政とともに農協の改革は避けられないという政権の意図はわかる。一方で、改革を進めようとすれば摩擦が生じる。突破するには強いリーダーシップが必要だとしても、同時に指導者の考え方を丁寧に説明し、議論を通じて異論をすくいとっていくプロセスもまた欠かせない。原発再稼働が問われた滋賀県、米軍普天間飛行場の県内移設が争点になった沖縄県。昨年来、自民党が支援する候補が敗れた知事選を振り返ると、いずれも地元の意思よりも「国策」を優先しようとする政権の姿勢が拒否されたという構図が浮かび上がる。4月の統一地方選を控え、安倍首相はきのうの党役員会で「敗因分析をしっかりしたい」と述べた。今回の結果を、農協改革の是非という狭い枠組みだけでとらえるべきではなかろう。問われたのは、民意に対する安倍政権の姿勢そのものだ。 PS(2015/1/14追加):私も、今回の農協改革は、農業所得向上にも食料自給率向上にも結び付くようには思えず、何のためにやっているのか不明確だと思うので、農協改革をしようとする人は、それらを理路整然と説明すべきだし、その論理は改革をしようと思った時にはわかっているのが当然であって、聞かれて初めて考えているようでは話にならない。しかし、「(公認会計士監査の方が監査する側の)権限が強くなり、厳しく見ていく方に働くのではないか」というのは、「監査は、まあまあの方がよい」という前提に立っているが、それでは監査の目的が達せられず、単なる無駄遣いになってしまうのである。 *4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31619 (日本農業新聞 2015/1/14) 農協改革 目的見えず 閉会中審査 野党が追及 衆院農水委 衆院農林水産委員会は13日、閉会中審査を開いた。農政での最大の課題に浮上している農協改革をめぐり、野党側は政府が目指す農業所得向上にどう結び付くのか見えず、目的がはっきりしないと追及したが、政府側からは明快な答弁はなかった。農協改革の目的は何か、来週から本格化する政府・与党内の議論でもあらためて論点の一つとなりそうだ。政府は今春に農協法改正案を国会に提出する方針。政府・与党内の議論が今月下旬から本格化する見通し。政府は農協改革の目的を「農業所得の向上」と位置付け、焦点となる農協監査では「JA全中の強制監査権限はなくす」として単位農協が全中による監査を受ける義務付けをなくし、公認会計士による監査の導入を検討している。この日の委員会で民主党の玉木雄一郎氏は「強制権限を取れば、なぜ農家の所得が増えるのか。この強制権限の有無と所得増大、このことの因果関係がいまひとつよく分からない」と政府の見解をただした。西川農相は「身内が身内を監査するという状況を脱して、自由な発想でやるけれども、公認会計士などでしっかり監査しましょうと(いうこと)」「とにかく(単協の経営の)自由度を高めていきたいという考え方」などと説明した。ただ、玉木氏は「今の答弁を農家が聞いて、なぜJA全中の強制監査権限を外せば所得が増えるのか、今のままだとなぜ所得が増えないのか分からない」と反論。「むしろ(公認会計士監査の方が監査する側の)権限が強くなり、厳しく見ていく方に働くのではないか」とも指摘した。農協監査に公認会計士監査を導入することをめぐっては、現行の会計・業務一体の監査ができなくなり、費用負担も大きく増すなど問題が多い。この日の委員会では維新の党の村岡敏英氏も農協改革を取り上げ、農業関係者の不信が高まっていると指摘。「農協関係者の思いを把握しないで改革は進められない」とし、十分な話し合いを行った上で、現場の意向を踏まえるよう政府に迫った。
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2015,01,11, Sunday
*5より *5より 電気自動車関係 (1)公害を地球温暖化しか思いつかない経産省は思考停止状態 *1-1のように、経済産業省が審議会で「2050年の目標として原発を世界の地球温暖化対策に不可欠と位置づける」とい事務局案を示したところ、委員から「世界の地球温暖化対策に不可欠なゼロエミッション電源として、(原発が)重要なオプションとなることを目指す」などと批判が相次いだそうだが、原発は地球温暖化よりも深刻な放射能公害を引き起こし、核燃料も外国から輸入しているため、ゼロエミッション電源ではない。本物のゼロエミッション電源は、国内の自然エネルギー由来電力である。 そのため、*1-2のように、東京新聞は新年の社説に、「福島の事故などなかったかのように3.11以前にも勝る原発過保護が始まったが、原発ゼロへ再出発すべきだ」と書いており、全くそのとおりだ。 (2)佐賀県知事選は重要な選択になる 九州の地元紙である西日本新聞が、*1-3のように、「玄海再稼働、オスプレイ…民意、割れる賛否 候補者語らぬ賛否、佐賀県知事選」という記事を書いているとおり、今回の佐賀県知事選は、重要政策をテーマに争っているが、国がこのような状態であるため、知事選は重要になる。川内原発再稼動に対する鹿児島県知事の判断は、他の原発の雛形にはならないため、佐賀県知事の対応は重要であり、全国規模で*1-4のようなブログも出ている。 (3)フクシマの原発汚染水と水産物 フクシマでは、今でも一日300トンの汚染水が流され続けており、*2-1のように、韓国は、現在、福島県などの水産物の輸入を禁止している。そして、*2-2のように、韓国政府は、2014年12月に続いて、1月に再び専門家を日本に派遣して岩手県や青森県などで現地調査を行うことになり、一連の調査結果を踏まえて輸入禁止措置を継続するか否かを判断することにしているそうだ。つまり、原発事故は、これだけ水産業や観光にも悪影響を与えているのだ。 (4)放射線公害をなかったことにする日本は、ロシアより人権侵害の国ではないのか *3-1、*3-2に、月刊宝島が「WHO『福島県でガン多発』報告書” 国と記者クラブが無視!」「汚染地域に暮らしていた(もしくは暮らし続けている)若年層における甲状腺ガン、白血病、乳ガン、固形ガンの多発を予測するWHO報告書はなぜ無視され続けるのか?」という記事を書いている。そして、結果から見てWHO報告書の方が現実に近く、しばらくすれば、こうして隠せなくなることは初めからわかっていたのである。 (5)日本は資源がない国というのは嘘であり、エネルギーは自給できる 「日本のエネルギー自給率は5%程度にとどまるため、日本は資源がない国」と言うような人は多いが、*4-1のように、日本は、排他的経済水域内にメタンハイドレートを多く埋蔵している。それにもかかわらず、「昨年12月27日に初めて、政府がメタンハイドレートの開発促進を閣議決定した」というのがおかしいのである。 また、*4-2のように、発電、給湯、暖房から車や船の動力源まで、水素を暮らしや産業に使う社会を作り、脱化石燃料になれば、資源枯渇問題と地球温暖化防止の両方が解決でき、日本のエネルギー自給率を100%にするエネルギー革命を起こすことができる。この水素は、自然エネルギーから作った電力を使えば、日本国内において無公害でいくらでもできるため、この水素をサハリン、アラスカ、アイスランドなどで作り、化石燃料を使い燃料費をかけて輸入するなど、何を考えているのかということだ。 (6)無公害の燃料、水素へ *5のように、日経新聞が「水素社会元年が到来」としているように、トヨタの「ミライ」ほか、東京ガスが首都圏初の商用水素スタンドを開いた。水素そのものは燃焼すれば水しか出ないため無公害だが、多くの自動車が水素燃料になると、トンネルの中で酸素が不足して息苦しくなる事態も出るだろう。そのため、水素は、やはり水を電気分解して作り、副産物としてできた酸素も使えるようにしておくべきである。 <公害は地球温暖化しか考えない経産省は思考停止状態> *1-1:http://mainichi.jp/select/news/20150109k0000m020135000c.html (毎日新聞 2015年1月9日) 温暖化対策:経産省「原発不可欠」 審議会委が批判次々 原発の安全性向上などを議論する経済産業省の審議会の8日の会合で、2050年の目標として原発を「世界の地球温暖化対策に不可欠」と位置づける事務局案を同省が示したところ、委員から「国民の視点に立っていない」などと批判が相次ぎ、案を作り直すことになった。原発利用拡大を図りたい経産省の姿勢に待ったがかかった。この審議会では、原発の安全技術や人材育成の目標を定めたロードマップを5月までに策定する。経産省は日本原子力学会に協力を求め、20年、30年、50年の目標案をこの日の会合で示した。案では、50年の原発の姿として「世界の地球温暖化対策に不可欠なゼロエミッション(無排出)電源として重要なオプション(選択肢)となることを目指す」とした。しかし、複数の委員から「原子力関係者が『あるべき姿』として作っているとしか見えない」「50年もこれだけ前のめりに原子力を使うのが大前提なのか」などと批判が続出。経産省の担当者は「5月までに再検討する」と釈明した。 *1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015011002000176.html (東京新聞社説 2015年1月10日) 年のはじめに考える 原発ゼロへの再出発 3・11以前にも勝る原発過保護が始まったのか。福島の事故など、なかったように。後ろ向きに時代の坂を駆け降りる、そんな新年にしてはいけません。やっぱりゼロが焦点でしょう。新年六日、東京電力の広瀬直己社長が新潟県庁を訪れ、泉田裕彦知事と一年ぶりに会いました。柏崎刈羽原発の再稼働に理解を求める広瀬社長に、泉田知事は、政府の事故調査・検証委員会による調書のうち、勝俣恒久会長ら当時の東電役員分を公開するよう要求した。広瀬社長は「同意するかどうかは個人の問題」と、それをはねつけました。 ◆なぜ公開を拒むのか 勝俣氏らは、なぜ、かたくなに公開を拒むのでしょう。口を閉ざせば閉ざすほど、原発の安全性に疑念が募るというのに、です。泉田知事は「それでは、安全性の議論はスタートラインに着けない」と断じています。事故のさなかに、東電トップが何を考え、どんな判断を下して、どのような指示を出したか。そんなことも分からないまま、知事として県民に、原発の安全性を説明できるわけがありません。再稼働に同意できるわけがない。全性の議論は、まだ始まってもいない-。泉田知事の立ち位置は、新潟県民だけでなく、国民の多くが抱く不安の代弁だと言えるでしょう。原子力規制委員会は、九州電力川内原発や関西電力高浜原発が、3・11後の新たな規制基準に適合するとは言いました。しかし、安全を保証してくれるという人は、まだ誰もいないのです。政府は原発から三十キロ圏内の自治体に、避難計画を策定するよう義務付けました。どこへどうやって逃げるのか。ほとんどの市や町が、苦慮しています。そもそも、本当に安全なら、どうして避難計画が必要なのか。原発事故は二度と起こしてはならないものではないですか。昨年夏の電力需要期は、原発なしで支障なく乗り切った。この冬も電気が不足する気配はありません。それなのに、政府と電力業界は、再稼働への道のりをひたすら急ぎます。年末の衆院選の前後から、その足取りは加速しました。四月に閣議決定された国の新たなエネルギー基本計画は、原発を「重要なベースロード電源」と位置付けた。一方で「原発依存については、可能な限り低減させる」と明記しました。将来的には、できるだけゼロに近づけるという意味ではなかったでしょうか。 ◆安全配慮というよりは ところが自民大勝に終わった衆院選後、「重要なベースロード電源」だけが独り歩きし始めます。原発ゼロをめざすどころか、原発神話の復活と永続を意図したような、政府のあからさまな“原発びいき”が目立ちます。暮れに開かれた原子力政策の方向性を議論する経済産業省の小委員会では、老朽原発を廃炉に導く一方で、敷地内で建て替え(リプレース)を進めるべきだとの意見が多く出ました。四十年を超えて原発を運転するには、規制委の特別点検を受ける必要があり、安全対策を含めて一基一千億円以上の費用がかかるとされています。電力各社は、日本原電敦賀原発1号機など、五基の廃炉を検討しています。出力三十五万キロワットから五十五万キロワットという小型のものばかりです。安全配慮というよりは、もうけの少ない小型を整理して、大型に置き換え、効率よく利益を生み出そうとの考え方が基本にある。その先には新増設さえ、見え隠れし始めました。これでは原発依存を解消できるはずがありません。このほかにも原発の優遇策は、小委員会の話題になりました。たとえば価格保証です。来年、家庭用電力の小売りが自由化され、原発を擁し、地域独占を謳歌(おうか)してきた電力会社も競争にさらされる。原発の電気が消費者に支持されず、市場価格が一定の水準を下回った場合には、差額を補填(ほてん)する仕組みを設けるべきだという。原発の運転コストは安いはずではなかったか。なりふり構わぬ原発過保護ではないか。3・11被災者の悲哀を忘れ、福島の事故など初めからなかったかのような原発依存への急旋回は、一体誰のためでしょう。 ◆国民的議論がないと 逆流する時間を止めて、私たちは何をすべきでしょうか。泉田知事の言うように、まずは事故原因の徹底的な究明です。そして情報公開です。それに基づく科学的判断と国民的議論です。安全か、安全ではないか。最後に決めるのは、私たち国民です。人は痛みを忘れることで過ちを繰り返す。新しい年を忘却と後戻りの年にしてはなりません。 *1-3:http://qbiz.jp/article/53190/1/ (西日本新聞 2015年1月7日) 玄海再稼働、オスプレイ…民意、割れる賛否 候補者語らぬ賛否、佐賀県知事選 11日投開票の佐賀県知事選は、九州電力玄海原発の再稼働や自衛隊の新型輸送機オスプレイの佐賀空港配備計画という国策への対応が争点の一つだ。新知事の判断が重みを持つ国政課題だが、有権者はこの二つの国策をどう考えているのか。期日前投票をした有権者への調査では、同じ候補者に1票を託した人でも賛否が分かれている実情が浮き彫りになった。西日本新聞社は期日前投票が始まった昨年12月26日から県内7カ所の投票所で出口調査を実施。今月6日までに392人から回答を得た。原発再稼働については、「賛成」17・9%、「どちらかといえば賛成」24・8%で、計42・7%が支持。一方で反対派は、「反対」35・0%、「どちらかといえば反対」16・1%で計51・2%。反対派が賛成派をやや上回った。投票先との比較では、再稼働を進める与党が推薦する元佐賀県武雄市長の樋渡啓祐氏(45)に投票した人の50・3%が賛成、43・3%が反対の考えを示した。再稼働を容認する元総務省官僚の山口祥義(よしのり)氏(49)に投票した人も、賛成は41・3%、反対は52・0%と意見が分かれた。オスプレイ計画への賛否は、賛成派が「どちらかといえば」を含め計46・3%。反対派は計46・3%。賛否が真っ二つに分かれた。計画を「条件付き賛成」とする樋渡氏を選んだ人でも反対が35・1%いた。賛否を明確にしていない山口氏を選んだ人は賛成44・7%、反対48・6%と意見がきっこうしている。また、再稼働にもオスプレイ計画にも反対を掲げる九州大大学院教授の島谷幸宏氏(59)を選んだ人は、ほとんどが反対の立場を示した。農業の飯盛(いさがい)良隆氏(44)の投票者は、どちらも賛否が50%ずつだった。他方、再稼働反対派の25%がオスプレイ計画には賛成だった。佐賀市の20代男子学生は「どこかが負担を引き受けないといけない」と同計画を支持したが、「危険だ」として再稼働には反対。同市の20代会社員女性は「説明不足のオスプレイ計画は反対」と回答し、再稼働については「経済が回らなくなる」として賛成の考えを示した。重視する施策は、「景気・雇用問題」を選んだ人が30・4%で最も多かった。「玄海原発再稼働の可否」は7・7%、「オスプレイ配備計画の可否」は9・2%だった。 *1-4:http://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-18794 (中村隆市ブログ 「風の便り」 2015/1/10) 原発問題 神様知恵をください 9歳の小学生の願い 福島県の死因ワーストランキング 福島県の慢性リウマチ性心疾患死亡率(増加と全国比較) 福島県の急性心筋梗塞死亡率 福島県の甲状腺検査結果 チェルノブイリの基準 佐賀県の皆さんに大事なお願いがあります。原発の再稼働について、9歳の小学生が新聞に投稿した「声」に耳を傾けてほしいのです。そして、絶対に明日の県知事選挙を棄権しないでほしいのです。あなたが持っている1票が子どもたちの人生を左右します。通常、子どもの甲状腺がんは、100万人に1人か2人、未成年の甲状腺がんも100万人に数人と言われていました。しかし、福島県では38万人に84人もがんが見つかっています。「がんの疑い」28人を加えると112人にもなります。手術した54人のうち8割超の45人は腫瘍の大きさが10ミリ超かリンパ節や他の臓器への転移などがあり、2人は肺にがんが転移していました。特に心配なのは、検査をするほどに2次検査(精密検査)をしなければならない子どもたちが増えていることです。福島原発事故後、3年間の子どもの甲状腺検査で分かったことは、表を見るとよくわかりますが、甲状腺がんが増えただけでなく、がんになる可能性がある結節やのう胞が年ごとに急増していることです。5ミリ以上の結節が、0.5% → 0.7% → 0.9% と、この2年で1.8倍に急増し、のう胞も、36.2% → 44.7% → 55.9% と激増(3人に1人が2人に1人以上に)そして、2次検査(精密検査)が必要な子どもも1.8倍になっています。そして、福島で増えている病気は、甲状腺がんだけではありません。2013年の統計で、全国平均より福島の死亡率が1.4倍以上高い病気は、内分泌・栄養及び代謝疾患(1.40倍)、皮膚がん(1.42倍 )、脳血管疾患(1.44倍)、糖尿病(1.46倍) 脳梗塞(1.60倍)、結腸がん、腎臓病、消化器系の疾患などは、原発事故後に急増しています。 (表は宝島から拝借) そして、セシウムが蓄積しやすい心臓の病気は、急性心筋梗塞の死亡率が2.40倍、慢性リウマチ性心疾患の死亡率が全国平均の2.53倍で、どちらも全国1位になっています。 *2010年以前から全国1位。原発事故が起こった2011年から急増。2014年1~3月 福島の477人は、3か月間に急性心筋梗塞で亡くなった人の実数。全国の実数は、12,436人。福島県の人口は、全国の1.53%なので、12436×0.0153=190人 全国平均なら福島は190人ですが、その2.51倍の477人が亡くなっています。原発事故以前から全国1位という数字を見て思い出すのは、原発周辺では事故を起こさなくても白血病やがんが多いというドイツ政府やフランスでの発表と福島には原発が10基もあったこと、そして、2011年の原発事故前から「小さな事故」が多発していたこと、さらに事故の隠ぺいが日常化し、29年間も臨界事故が隠されていたことです。同じ心臓病の「慢性リウマチ性心疾患」は、急性心筋梗塞より1年遅れの2012年から死亡率が急増しています。グラフにするとその急激な増加がよくわかります。赤色が全国平均、紺色が福島県です。こうした状況にありながら日本政府は、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアが制定している被ばく線量を減らすための法律(「チェルノブイリ法」)をつくろうとしません。年間1ミリシーベルト以上は「避難の権利」があり、5ミリシーベルト以上は「移住の義務」があることを柱としている「チェルノブイリ法」は、移住のための費用や医療費などの手厚い補償があります。移住を選んだ住民に対して国は、移住先での雇用を探し、住居も提供。引越し費用や移住によって失う財産の補償なども行われています。日本でもできるだけ早く「チェルノブイリ法」をつくる必要があります。 ————————————- ◆原発問題 神様知恵をください 小学生 藤澤 凛々子 (東京都武蔵村山市 9 ) (2012年7月14日 朝日新聞 投稿欄) この前、ギリシャ神話を読みました。 人間に火を与えた神プロメテウスに、全能の神ゼウスは言いました。 「人間は無知で、何が幸せで何が不幸かわからないからだめだ」 私はずっと人間は他の動物よりかしこいと思っていました。 火を使い、便利で幸せな生活を送っているのは人間だけだからです。 でも、大い原発が再稼働したというニュースに、 ゼウスの言う通り人間は無知なのかもと思いました。 福島第一原発事こは、まだ終わっていません。 放しゃ能で大変な事になってしまうのに、 この夏の電力や快てきな生活を優先したのです。 大い原発は幸せな未来につながるのでしょうか。 私が大人になるまでに日本も地球もだめになってしまうのではないかと心配です。 神様、どうか私に目先の事だけでなく未来のことまで考えて 何が幸せで何が不幸かわかる知恵をください。 その知恵で人も他の動物も幸せにくらせるようにしたいです。 ———————————— 佐賀県の皆さん 知事選の候補者で原発再稼働に反対している候補者は一人だけです。どうか大切な1票を子どもたちのために生かして下さい。「自分にとって損か得か」でなく「子どもや孫たち世代の幸せ」のために、そして、「人も他の動物も幸せにくらせるように」投票する人が増えることを願っています。 ◆原発は事故を起こさなくても周辺住民の病気を増やしている 「原発は事故を起こさなくても(日常的な放射性物質の放出によって)周辺住民の病気を増やしている」ということが、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、韓国などでの調査でわかっています。ドイツ政府の調査では、原発から5km圏内の小児ガンは全国平均の1.61倍、 小児白血病は2.19倍となっており、フランス国立保健医学研究所の発表では、15歳以下の子どもは白血病の発症率が1.9倍高く、5歳未満では2.2倍高くなっています。韓国の調査では、原発から5キロ以内に住む女性の甲状腺がんの発生率は、全国平均の2.5倍になっています。また、原発は、燃料のウランを掘る段階で採掘地の環境を破壊し、放射能で汚染して、鉱山作業員と住民に被曝させ、原発で働く人たちの被曝労働や海の生態系を破壊する温排水吸水の問題。核燃料再処理工場からの膨大な放射能の排出問題。さらに、100万年後まで毒性が消えない「放射性廃棄物」の問題などがあります。(全文はコチラ) ◆佐賀県知事選:オスプレイ、原発再稼働…全国級の争点も (2014年12月25日 毎日新聞) ◇25日告示に新人4人が出馬 25日に告示された佐賀県知事選(来年1月11日投開票)は、自民党推薦の候補に対抗し、自民の有力支持団体である県農政協議会が別の候補を推薦する異例の展開となった。加えて県有明海漁協も県農政協に同調、保守分裂が激しさを増し、自民に危機感が漂う。一方、県内は陸上自衛隊の新型輸送機オスプレイ配備計画や原発再稼働など重要課題を抱えるが、保守分裂のあおりで争点がぼやけかねないとの懸念が出ている。 「首長は独善的であってはならない。政策も必要だが、その前に人柄だ」。県農政協が推薦した元総務官僚、山口祥義(よしのり)氏(49)の出陣式。集まった多久市長ら県内の首長や自民県議の一部、農漁協、商工会関係者らを前に、総括責任者を務める佐賀市の秀島敏行市長が自民、公明両党推薦の樋渡(ひわたし)啓祐氏(45)を暗に批判した。樋渡氏は同県武雄市長時代、市図書館運営の民間委託や市立小学校への学習塾の指導法導入など個性的な政策を実現させ、武雄の名を全国区に押し上げた。しかし、「樋渡流」といわれる行政運営が「強引」などとして自民の身内が反旗を翻し、山口氏を擁立。自民支持の県有明海漁協も24日、推薦を決め、民主県連も表向きは自主投票だが一部で支援する。農業県・佐賀で県農政協の支援が得られず、さらに衆院選佐賀1区で民主に敗れた自民党は穏やかでない。樋渡氏の出陣式には、県連会長の福岡資麿氏や前知事の古川康氏ら国会議員が並んだ。福岡氏は「人間ですから欠点はありますが、この突破力はまねできません」と樋渡流への批判を意識しつつ、「安倍(晋三)首相が自信を持って推薦している」と自民の本命候補であることを強調。28日には菅義偉官房長官の応援も予定に入った。しかし、両候補の出陣式は樋渡流への是非に終始し、政策論に乏しかった。オスプレイ配備計画がある佐賀空港(佐賀市)近くに住む会社員の石丸泰男さん(73)は「オスプレイ問題をあいまいにすべきではない。争点はオスプレイ1本に絞ってもいいくらいだ」。反原発の市民団体代表を務める佐賀市の石丸初美さん(63)も「佐賀は原発当事県であり、原発問題の議論を活発にしてほしい」と注文する。これに対し、立候補した九州大学院教授の島谷幸宏氏(59)は出陣式で「原発も再稼働も止めましょう。オスプレイ導入も軍事基地につながる可能性が非常に高く、阻止していきたい」と反原発、反オスプレイの立場を鮮明にした。安全性の高い原子炉などに限って原発再稼働容認を唱える農業、飯盛(いさがい)良隆氏(44)も立候補した。 ◆福島の子どもの甲状腺がんが転移している報道 http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1793 http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG2803U_Y4A820C1CR8000/ <フクシマ汚染水と水産物> *2-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150109/k10014555401000.html (NHK 2015年1月9日) 日韓 水産物禁輸協議も具体的進展なし 8日、日本と韓国の外務次官級の協議が行われ、協力関係を強化することを確認したものの、韓国が福島県などの水産物の輸入を禁止している問題では、具体的な進展はありませんでした。外務省で経済問題を担当する長嶺外務審議官は、8日、ソウルを訪れて韓国外務省のアン・チョンギ(安總基)経済外交調整官と協議を行いました。協議では、ことしが日韓の国交正常化から50年になることに関連して、エネルギー分野などで共同プロジェクトを第三国で行うことや、双方の観光客誘致などについて両政府が支援していくことを確認しました。一方で、日本側は、福島県など8つの県の水産物に対する輸入禁止の措置を早期に解除するよう求めましたが、韓国側は安全だという国民の認識が得られることが重要だとして、来週行われる韓国側の専門家による2回目の現地調査への協力を求めるにとどまり、具体的な進展はありませんでした。さらに、戦時中に動員や徴用された韓国人労働者などが日本企業に対し損害賠償を求めている裁判で、支払いを命じる判決が韓国で相次いでいることについても話し合われました。これについて長嶺審議官は協議後、「日韓の経済、ビジネス関係にも悪影響を及ぼしかねないと従来から指摘しており、日韓の経済関係にマイナスにならない対応を求めている」と述べて韓国政府に対処を求めましたが、韓国側は司法手続きを見守る必要があるという従来の立場を繰り返したということで、双方の溝は埋まりませんでした。 *2-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150109/t10014567211000.html (NHK 2015年1月9日) 水産物輸入禁止の韓国 岩手などで再調査へ 東京電力福島第一原子力発電所の汚染水問題で、東北などの水産物の輸入を禁止している韓国政府は、先月に続き、来週再び専門家を日本に派遣し、岩手県や青森県などで現地調査を行うことになりました。農林水産省の発表によりますと、今回、韓国政府が行う調査は、今月13日から4日間の日程で行われます。9人の専門家が、輸入を禁止している8つの県のうち、岩手県久慈市と青森県八戸市の卸売市場などを訪れて、水産物が販売されている様子や放射性物質の検査の状況などを視察することにしています。また、韓国の専門家は、輸入禁止の対象となっていない北海道も訪問し、札幌市と室蘭市の卸売市場などで水産物の輸出手続きの状況や水揚げの様子を視察します。韓国政府は、福島第一原発の汚染水問題を理由に、おととし9月から東北と関東の8つの県の水産物の輸入を禁止しており、この措置を継続するかどうかを検討するため、先月、専門家が来日し、福島第一原発などを視察しており、今回の調査は2回目となります。韓国政府は、一連の調査結果を踏まえて、輸入禁止の措置を継続するかどうか判断することにしていますが、時期については明らかにしていません。 <国土をも喪失させる放射線公害> *3-1:http://blog.takarajima.tkj.jp/archives/1940402.html (月刊宝島 2014年12月14日) 【告発スクープ】 “WHO「福島県でガン多発」報告書” 国と記者クラブが無視! ~誰も書けなかった福島原発事故の健康被害 【第3回 前編】~ガンのアウトブレイクに備えよ――汚染地域に暮らしていた(もしくは暮らし続けている)若年層における甲状腺ガン、白血病、乳ガン、固形ガンの多発を予測するWHO報告書はなぜ無視され続けるのか? ■日本の「専門家」はなぜWHO報告書を嫌った? 10月20日、環境省が所管する「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」(以下、専門家会議)の第12回会議が東京・港区で開かれた。この日、専門家会議は、世界保健機関(WHO)と原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の2つの国際機関から出されていた線量評価報告書のうち、「福島での被曝によるガンの増加は予想されない」というUNSCEAR報告書のほうが「より信頼性が高い」として絶賛。そして、 ●福島第一原発事故の被曝線量はチェルノブイリ原発事故よりもはるかに少ない ●懸念されるのは甲状腺(こうじょうせん)ガンだけであり、そのリスクも疫学的にかろうじて増加するかどうかという程度としたUNSCEARの健康リスク評価について「同意する」と表明した。これぞ“我が意を得たり”ということのようだ。一方、WHOの健康リスク評価に対しては、昨年2月の同報告書公表以来、専門家会議は「過大評価の可能性がある」と敵視し続けてきた。そしてこの日、WHO報告書を事実上無視する構えを鮮明にしたのだった。そのWHO報告書はこれまで、「がん疾患の発症増加が確認される可能性は小さい」(『毎日新聞』2013年2月28日)「大半の福島県民では、がんが明らかに増える可能性は低いと結論付けた」(『朝日新聞』同年3月1日)などと報じられてきた。報道を見る限り、UNSCEAR報告書の内容と大差はなく、専門家会議がそこまで嫌う理由が全くわからない。そこで、WHO報告書の原文を取り寄せ、精読してみたところ、驚くべき「評価内容」が浮かび上がってきた。 ■WHOは若年層での「ガン多発」を明言していた WHOは昨年2月28日、東京電力・福島第一原発事故で被曝した福島県民たちには今後、健康面でどのようなリスクがあるのかを検証した『WHO健康リスク評価報告書』(注1)を発表していた。英文で160ページ以上にも及ぶ同報告書では、ガンと白血病の発症リスクを詳細に評価。その結果、深刻な放射能汚染に晒(さら)された原発近隣地域の住民の間で、甲状腺ガンをはじめとしたガンが増加し、特に若い人たちの間でガンが多発すると明言している。この報告書をまとめるにあたり、主な「評価対象」とされたのは、避難が遅れた浪江町と飯舘村の「計画的避難区域」に暮らしていた住民たちだ。評価では、汚染地帯から避難するまでに4カ月かかったと仮定。他にも、汚染された福島県産の食材を食べ続けたと仮定するなど、過小評価を避けるための仮定を積み重ねたうえで、住民の推定被曝線量を弾き出している。WHO報告書によると、多発が極めて顕著なのは小児(注2)甲状腺ガン。被災時に1歳だった女児の場合、浪江町では事故発生からの15年間で発症率は9倍(被曝前の発症率0.004%→影響を考慮した発症率0.036%)に増え、飯舘村でも15年間で6倍(同0.004%→同0.024%)に増えると予測した(同報告書64ページ。【図1】)。もともと幼少期の甲状腺ガン発症率は非常に低い。従って、幼少期に被曝した場合のリスクを、原発事故発生からの15年間に絞って計算すると「小児甲状腺ガンと被曝との関係性がより明白になる」と、WHO報告書は言う。ひょっとするとこの部分が、原発事故による健康被害は「ない」とする評価を続ける環境省や専門家会議の癇に障ったのかもしれない。多発が予測されたのはそれだけではない。小児甲状腺ガンほどではないにせよ、小児白血病も多発するという。被災時に1歳だった男児の場合、浪江町では事故発生からの15年間で発症率は1.8倍(同0.03%→同0.055%)に増え、飯舘村では15年間で1.5倍(同0.03%→同0.044%)に増える。1歳女児の場合、浪江町では事故発生からの15年間で発症率は1.6倍(同0.03%→同0.047%)に増え、飯舘村では15年間で1.3倍(同0.03%→同0.04%)に増える(同報告書62ページ。【図2】)。そして、乳ガンも増える。被災時に10歳だった女児の場合、浪江町では事故発生からの15年間で発症率は1.5倍(同0.01%→同0.015%)に増え、飯舘村では15年間で1.3倍(同0.01%→同0.013%)に増える(同報告書63ページ。【図3】)。さらには、固形ガンも増える。被災時に1歳だった男児の場合、浪江町では事故発生からの15年間で発症率は1.14倍(同0.08%→同0.091%)に増え、飯舘村では15年間で1.08倍(同0.08%→同0.086%)に増える。1歳女児の場合、浪江町では事故発生からの15年間で発症率は1.24倍(同0.08%→同0.099%)に増え、飯舘村では15年間で1.14倍(同0.08%→同0.091%)に増える(同報告書62~63ページ。次ページ【図4】)。つまり、福島県の若年層におけるガンは、甲状腺ガン、白血病、乳ガン、固形ガンの順に増加すると、WHO報告書では予測している。 (注1)同報告書の英語名は『Health risk assessment from the nuclear accident after the 2011 Great East Japan Earthquake and Tsunami』。URL はhttp://apps.who.int/iris/bitstream/10665/78218/1/9789241505130_eng.pdf?ua=1 (注2)本稿中の「小児」の定義は、0歳から16歳までとする。 ■「過大評価」したのか?それとも「過小評価」か? WHOの健康リスク評価では、原発事故発生からの1年間に被曝したと思われる推定線量をもとに、地域を4つのグループに分けている。12~122ミリシーベルトの被曝とされた浪江町と飯舘村が「グループ1」。3~48ミリシーベルトの被曝とされた葛尾村、南相馬市、楢葉町、川内村、伊達市、福島市、二本松市、川俣町、広野町、郡山市、田村市、相馬市が「グループ2」。1~31ミリシーベルトの被曝とされた他の福島県内の自治体や福島県以外の都道府県が「グループ3」。そして、0.01ミリシーベルト(=10マイクロシーベルト)以下の被曝とされた近隣国が「グループ4」だ。問題は、福島第一原発の立地自治体である双葉町と大熊町、そして大熊町に隣接する富岡町の3町が、どのグループにも入っておらず、評価の対象から外されていることである。これらの町の住民は「速やかに避難」したからなのだという。しかし、3町の住民もまた、避難開始前から環境中に漏れ出していた放射能によって相当な被曝をしていた。具体例を挙げよう。福島第一原発の直近から避難してきた一般市民が被曝していることが判明し始めた2011年3月12日、放射線測定器で1万3000カウント(CPM。1分ごとのカウント)以上を計測した人のすべてを「全身の除染が必要な被曝」とみなし、シャワーで体を洗い流していた。この日、全身の除染が必要とされた住民は3人。そして翌3月13日、福島県は、原発の3キロメートル圏内から避難してきた19人にも放射性物質が付着していたと発表する。住民の被曝は22人となった。だが、翌3月14日、福島県は突然、除染基準を引き上げる。国が派遣したという「放射線専門家」の意見を聞き入れ、基準を7倍以上の「10万CPM以上」としたのだ。そしてこの日以降、「今日は何人の市民を除染」といった類いの情報が、報道から消えていた──。コントロール不能に陥っていた原発から、事故発生からの数日間だけで77京ベクレル(77×10の16乗ベクレル)にも及ぶ放射能が漏れ出す中、防護服もゴーグルも防塵マスクも着けずに避難していた彼らを評価に加えていないところが、この健康リスク評価における「過小評価」部分であり、最大の欠点でもある。人によっては、前掲の「発ガンリスク」以上の健康リスクを背負わされている恐れがある。しかも、放射線被曝による健康被害はガンばかりではない。甲状腺疾患(機能低下や良性結節など)や視覚障害(水晶体混濁や白内障など)、循環系疾患(心臓や脳血管の疾患)、生殖器官の機能不全、催奇性(さいきせい)リスク、遺伝子への影響、高線量の被曝に伴う急性放射線障害などもある。だが、これらの疾患は「発生の増加は予想されない」として、WHOの報告書では詳細評価の対象外としていた(注3)。つまり、専門家会議が危惧する「過大評価」どころか、その正反対の「過小評価」に陥っている懸念さえあるのだ。(注3)WHOが詳細評価の対象外としていたからといって、ガン以外の疾患を舐(な)めてかかってはならない。飯舘村の高汚染地域に調査目的で何度も滞在した後、白内障に罹(かか)っていた人が相当数いることを、筆者は具体的に知っている。高レベルの汚染が判明している地域に立ち入るのを極力控えるか、それとも防護服姿で訪問するかしないと、こうした疾患のリスクは減らしようがない。 (全文は『宝島』2015年1月号に掲載) *3-2:http://blog.takarajima.tkj.jp/archives/1940410.html (月刊宝島 2014年12月15日) 【告発スクープ】 “WHO「福島県でガン多発」報告書” 国と記者クラブが無視! ~誰も書けなかった福島原発事故の健康被害 【第3回 後編】~ガンのアウトブレイクに備えよ――汚染地域に暮らしていた(もしくは暮らし続けている)若年層における甲状腺ガン、白血病、乳ガン、固形ガンの多発を予測するWHO報告書はなぜ無視され続けるのか?(後編) ■甲状腺ガン、白血病、乳ガン、固形ガン…… にもかかわらずWHOは、ガンに関してだけは「若年層で多発する」との評価を下していた。報告書のサマリー(要約版)には、次のような一文がある。「市民の健康監視のため、今後数年間で(注意を払うべき病気や地域の)優先順位を設定するために貴重な情報を提供します」。WHO報告書がまとめられた一義的な目的は、被曝した市民の健康被害対策において何を優先すべきかを決める際の参考資料として活用してもらうためだった。従って、WHO報告書の正しい読み方は、そこに挙げられている推定被曝線量やガン発症率の数字だけに目を奪われるのではなく、評価を通じて炙(あぶ)り出された病気や地域に着目し、対策を取ることなのだ。ガン以外の健康被害が詳細評価の対象外とされたのも、WHOなりに「優先順位」を考えた末の話なのだと割り切れば、腑(ふ)に落ちる。どうしてもガン以外の健康被害が気になるのであれば、WHOに過度な期待など抱かず、日本国民が自らの手で「詳細評価」すればいいのである。ともあれ、今後、私たちが最大限の注意を払うべき対象は、WHOでも心配していた、「汚染地域に暮らしていた(もしくは暮らし続けている)若年層における甲状腺ガン、白血病、乳ガン、固形ガン」ということになる。ここで言う「汚染地域」とは、何も浪江町や飯舘村の「グループ1」地域だけに限らない。3~48ミリシーベルトの被曝とされた「グループ2」地域と、1~31ミリシーベルトの被曝とされた「グループ3」地域も、れっきとした「福島第一原発事故による汚染地域」である。対策地域を1ミリシーベルト以上の「グループ3」地域まで広げておけば、健康被害対策としてはとりあえず及第点をもらえるだろう。 ■「子どものガン多発」に目をつぶる大人たちの罪 今年7月16日に開かれた第8回の専門家会議では、このWHO報告書の提言を健康被害のアウトブレイク対策に積極的に活かそうという重大な提案があった。発言したのは、疫学と因果推論などが専門の津田敏秀・岡山大学大学院教授。津田氏はこの日、専門家会議の場に講師として招かれていた。同日の議事録によると、津田教授発言の要旨は次のようなものだ。 ----- 米国のCDC(疾病管理予防センター)は、甲状腺ガンの潜伏期間は大人で2.5年とし、米国科学アカデミーは、子どもにおいては最短の潜伏期間は1年であるとしている。1歳未満の乳児が甲状腺ガンになった症例の報告もある。従って、原発事故の翌年から甲状腺ガンの多発が起こったところで何の不思議もないし、これだけ大規模に被曝した人がいれば、その中には被曝に対する感受性の高い(=ガンになりやすい)人もいる。WHO報告書も、甲状腺ガン・白血病・乳ガン・固形ガンの多発が、特に若年層で起こるということに言及している。事故3年後の福島でも、甲状腺ガンの多発が明瞭に観察されている。多発に備える対策とその準備が、早急に必要だ。白血病は、累積ガンマ線被曝が5ミリグレイ(ミリシーベルトとほぼ同じ)を超えると、統計的有意差が出てくる。白血病を除く全ガンも、15ミリグレイの累積被曝によって多発してくる。妊娠中に放射線を浴びたために小児ガンが多発するという調査報告も、世界各国で相次いでいる(注4)。病院のX線撮影室の入ロに表示してある「妊娠している可能性がある方は、必ず申し出てください」という表示は、こうした調査報告を根拠にしたものだ。福島県では今もなお、妊婦を含む全年齢層が被曝している状態であるということを、きちんと考えていただきたい。今、福島第一原発事故に絡んで語られている「100ミリシーベルト以下ならガンが出ない」というような話は、必ず撤回させる必要がある。(除染を完了したとされる地域への)帰還計画も延期すべきだと思う。 ----- この提案に対し、長瀧重信座長(長崎大学名誉教授)をはじめとする専門家会議委員は、「福島ですでにガンは増えている」という見方が委員会の結論となるのを断固阻止すべく、いっせいに反発を示す。会議の司会を務める長瀧座長は、津田教授に反論するよう委員らを焚(た)きつけつつ、自身は疫学の専門家でないにもかかわらず、津田教授の見解を「非常にユニーク」だとして切り捨てようとする。だが、津田教授も負けておらず、「私は、オックスフォード大学出版局から出ている『フィールド疫学 第3版』という教科書にもとづいて話している。(ユニークだと言う)先生のほうがユニークです」と切り返す。WHO報告書をめぐる議論は、ここで打ち切られた。そして、その後の専門家会議でもWHO報告書にもとづく健康被害対策が検討されることはなく、10月20日の第12回会議で、ついにWHO報告書は正式に無視されるまでに至っていた。津田教授にコメントを求めたところ、こんな答えが返ってきた。「特に感想はないですが。もともと、あの委員会の先生方には、健康影響を論じるのは無理な話なのですから」 ----- 推定被曝線量の高低や、予測された発症率の高低ばかりに気を取られ、「過大評価か否か」に固執する環境省や専門家会議。そして、「がんが明らかに増える可能性は低い」などと報じていたマスコミ。そのどちらも、WHO報告書の意味を180度取り違えていた。その結果、WHO報告書の提言は福島県民の健康被害対策に生かされず、そのことを批判するマスコミ報道もない。こうして「若年層でのガン多発」というアウトブレイクに備えた対策は、今日まで何も取られていない。かわいそうなのは、こんな大人たちにこれからの人生を翻弄される、子どもたちである。(注4)妊婦の腹部への被曝が生誕後の小児ガンの原因となるということは、半世紀ほど前から知られていた医学的知見でもある。研究自体は1950年代から世界的に行なわれており、子宮内で胎児が10ミリグレイ(=10ミリシーベルト)程度のX線被曝を受けると、小児ガンのリスクが必然的に増加するという結論がすでに出ている。(全文は『宝島』2015年1月号に掲載) <燃料は自給できる> *4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150103&ng=DGKKASDF27H19_S5A100C1NN1000 (日経新聞 2015.1.3) メタンハイドレート 採取調査10カ所超に、経産省、来年度に埋蔵量把握 23年以降の商業化にらむ 経済産業省は2015年度に、次世代の国産エネルギー資源として期待されるメタンハイドレートの調査を本格化させる。海底表層の調査に北海道周辺の2海域を新たに加え、8海域に拡大する。採取を伴うサンプル調査も14年度の2海域3カ所から新たな海域も含めた10カ所超に増やす。23年以降の商業化をにらみ、エネルギーの輸入依存からの脱却を目指す。政府は昨年12月27日に閣議決定した経済対策に「メタンハイドレートの開発促進」を明記した。今後、具体的な採取カ所を選び、追加費用として20億円弱を14年度補正予算案に計上する。メタンハイドレートには海底の表層付近で取れる「表層型」と海底からさらに地下深くの地層に含まれる「砂層型(深層型)」がある。経産省は13年3月に太平洋側の愛知県沖で砂層型のサンプル採取に成功したが、技術やコストの面で課題が多い。一方、13年度以降に始まった「表層型」の埋蔵量調査では14年12月25日に上越沖、秋田県・山形県沖の2海域3カ所の掘削でサンプルの採取に成功したと発表した。将来的には「砂層型」に比べ低いコストで回収できるとの見方が多い。そこで15年度は北海道周辺の2海域などへ表層型の調査海域を広げることに加え、上越沖や隠岐周辺など日本海側の有望海域でサンプル採取を本格化させることにした。より正確な埋蔵量が確認できれば、日本のメタンハイドレート開発は大きく前進することになる。太平洋側に眠るメタンハイドレートも含め、15年度以降は資源を低コストで採掘する技術開発などを加速させる。経産省は米アラスカ州政府と連携し、同州でメタンハイドレートの低コスト掘削技術を向上させる試験もこのほど始めた。日本のエネルギー自給率は5%にとどまる。原油や天然ガスを輸入に頼っていた米国がシェール革命で純輸出国に転じたように、政府はメタンハイドレートを中長期的な日本の自給率向上の切り札として開発を加速させる方針だ。 *4-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ17HAV_X11C14A1TJ2000/ (日経新聞 2014/11/20) 胎動、水素社会 東芝、エネルギー革命先導へ名乗り 発電、給湯、暖房から車や船の動力源まで――。水素を暮らしや産業に活用する社会の実現に向け、日本企業の勢いが増してきた。化石燃料依存からの脱却は資源枯渇問題と地球温暖化防止の両面で世界的課題だ。供給量確保やコスト低減といった壁を越えエネルギー革命を起こせるか。「水素で強じんなエネルギーシステムをつくる」。東芝の田中久雄社長は約50人体制で今春発足させた次世代エネルギー事業開発プロジェクトチームに号令する。火力、原子力発電に強い同社が次に狙うのは水素だ。チームにはサハリン、アラスカ、アイスランドなど水素製造の適地を洗い出した資料がある。風力発電の電気で水を電気分解して水素を量産し、船で日本に運び発電に使う。この流れを2020年代に確立する構想だ。水素は一般に石炭や天然ガスから得ているが、これなら環境負荷も低い。日本のエネルギー自給率は6%(12年)。経済協力開発機構(OECD)加盟国で2番目に低い。東日本大震災後の原子力発電所停止で電力の火力依存度は9割近い。化石燃料輸入額(発電用以外も含む)も震災前より10兆円増えた。13年度の二酸化炭素(CO2)排出量は過去最高だった。東芝は15年度に再生可能エネルギーを利用した水素発電の第一歩を踏み出す。太陽光発電の電気を使って水から得た水素を燃料電池に送り発電する実証試験を川崎市と始める。想定出力は30キロワット程度と小規模だが、実証と並行して「災害時用として(新システムの)販売を始めたい」(田中社長)と実用化を急ぐ。水素の源は水だけではない。大阪市では下水処理場で汚泥をメタン発酵させて得た水素を燃料電池に使う実験が進む。実験に参加する水処理大手のメタウォーターは「エネルギーを自給自足できる下水処理場も実現可能だ」(宮田篤新事業技術部担当部長)とみる。水素は「燃える空気」として248年前に英国の化学者が発見した。水素と酸素を反応させ発電する燃料電池の原型は1839年に英国で生まれた。水素エネルギーの歴史は古い。だが石炭や石油の世紀が続き、その陰に長く隠れてきた。水素を直接燃やす発電技術も進む。当面は天然ガス火力に水素を混ぜる混焼が軸だが、大気汚染の原因となる窒素酸化物(NOx)の発生量は多くなる。川崎重工業は燃焼制御技術を駆使。6割を水素にしてもNOx発生量を天然ガスだけの場合と同程度に抑えられるタービンを開発中だ。15年度の市場投入を狙う。資源エネルギー庁の試算では、100万キロワットの水素専焼の発電所で1年に使う水素は燃料電池車223万台分にあたる。発電での利用が進めば量産効果で、石炭や天然ガスより割高な水素価格を下げる道が見えてくる。「水素社会についての包括的な検討を進めるべき時期に差し掛かっている」。政府は4月に閣議決定したエネルギー基本計画でこう宣言した。世界に先駆けて水素の可能性を解き放てたとき、日本は「次世代社会」のデザイナーになれる。 <無公害の燃料へ> *5:http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO81696140X00C15A1TJ1000 (日経新聞 2015.1.8) 燃料電池車 「水素社会元年」が到来 「数年前まで1台1億円といわれていたので縁遠いと思っていたが」。トヨタ自動車の燃料電池車(FCV)「ミライ」。水素と酸素の反応で生み出した電気で走り、二酸化炭素(CO2)を排出しない。昨年12月中旬、発売直前に公道を試走した30代男性は名残惜しげに運転席を離れた。国の補助金を合わせた実質価格は約520万円。まだ高価だが、手が届く範囲に近づいてきたことを実感したようだ。トヨタは「ずっと待っていても前に進まない」(加藤光久副社長)と世界初の市販に踏み切り、FCV関連特許の無償公開で他社の参入も促す。ホンダは2015年度中にFCVを投入する方針。車選びに新たな選択肢が加わるとともに、水素関連の部材・機器開発や新事業を呼ぶ「水素社会元年」が到来する。ミライの心臓部となる発電装置「燃料電池スタック」。電極基材には炭素繊維を使った厚さ数百マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの「カーボンペーパー」を用い、発電効率を高めた。供給する東レの日覚昭広社長は「炭素繊維は戦略製品。自動車メーカーのニーズに応えていく」と意気盛んだ。50年来開発してきた素材が新たな舞台に立つ。トヨタ紡織は特殊なプレス技術を駆使し、軽くて強いが延ばしにくいチタンを「セパレーター」と呼ぶ燃料電池の板状部品に仕上げた。FCVという革新的製品が企業の技術力を鍛える。水素は口紅やマーガリンなど身近な製品の製造にも使われるが、なじみは薄い。FCVが日常の中に水素を連れてくる。昨年暮れ、東京・練馬にある都内最大級の「光が丘団地」のすぐ近くに、東京ガスが首都圏初の商用水素スタンドを開いた。都内ではJX日鉱日石エネルギーも1月に八王子市、2月に杉並区に開設する。都は25年までに官民連携で80カ所にする目標を掲げる。等距離に設置されると仮定すると、10分程度走ればスタンドが見つかる計算だ。調査会社の富士経済は、FCV向けの国内水素燃料市場だけでも15年度の約4億円から25年度には1千億円近くに拡大すると予測する。川崎重工業が気体の水素を運びやすい液体に変えるプラントを開発するなど、連動した動きも出てきた。FCV普及は緒に就いたばかりだが、暮らしの風景や企業戦略を変える可能性を秘めている。
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2015,01,10, Saturday
電気軽トラックは実用化済 太陽光発電機器も進歩あり (1)農機具も脱化石燃料化すべき *1のように、農機具の大手クボタは世界第3位で、インドで工場建設を検討して1台130万円以下の安価なトラクターを売り出し、インド市場を本格的に開拓するとのことである。 しかし、日本国内で販売されているトラクターの価格も高すぎるため、インドで1台130万円以下のトラクターを売り出すことができるのなら、日本でもトラクターの価格を下げれば農家がコストダウンしやすくなる。また、農機具がいつまでも化石燃料に固執しているのは、太陽光発電による自家発電が可能な農家の需要を汲んでいない上、太陽光発電とセットで電動トラクターを売った方が地球環境にも貢献する。 現在は、*2-1のように、テスラが電気自動車(EV)の特許を公開し、電気自動車の生産能力を5割引き上げようとしている時代で、*2-2のように、トヨタも燃料電池車の特許5680件を全公開する時代だ。そのため、新しい農機具の動力を、電動や燃料電池に変更するのは、まさに今だろう。 (2)農地及び農業用施設での自家発電 一方、*3のように、農業用施設や農地への太陽光パネル設置は条件つきで可能であり、支柱の基礎部分は3年間(問題がなければ再許可可能)一時転用許可の対象となり、農産物の生産や営農に支障がなければ、農地への太陽光発電の設置も可能でなのである。ソーラーシェアリングに適した作物は、いちご、ほうれんそう、わさび、レタス、春菊などの半陰性植物だそうだ。 最近は、太陽光発電装置も、右2つの膜のように進んできているため、いろいろとスマートな取り付け方ができるだろう。 <農機具も脱化石燃料すべき> *1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150110&ng=DGKKASDZ09I2M_Z00C15A1TJ1000 (日経新聞 2015.1.10) インドに専用農機 クボタ、販売店も倍増 クボタはインドで農機事業を拡大する。水田や畑作など多くの用途に使えるトラクターの現地専用製品を年内に投入し、約130店の販売店を今後5年で270店に増やす。現地での工場建設も検討し、年間8000億円超とされるインド市場を本格的に開拓する。クボタは農機の世界3位企業で、欧米では大規模農家向けに高性能製品販売に力を入れている。インドでは現地の需要にあわせて1台が130万円以下と安価なトラクターを売り出す。エンジン出力は40馬力と50馬力の2種類で、日本の多くの農家が使っている製品と同程度。インドではトラクターで悪路を走って農作物を運ぶことが多いため、専用機はけん引力やブレーキの耐久性を高めた。タイ工場で生産してインドに輸出する。現地工場を将来建設する布石として部品の6割はインド国内で調達し、部品メーカーと関係を深める。インドで競合するトラクターの価格は約100万円。価格差を3割以内に抑えて操作性の良さや故障の少なさを前面に打ち出し、需要を取り込む。現在の販売店は南部に多い。今後は北部にも店舗網を広げる。 <現在の電気自動車・燃料電池車> *2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150110&ng=DGKKASDZ09HO0_Z00C15A1TJ2000 (日経新聞 2015.1.10) テスラ、EV生産能力5割増 年内に年5万台 米テスラ・モーターズは8日、2015年末までに米カリフォルニア州の工場で電気自動車(EV)の生産能力を5割引き上げると明らかにした。現在の年産能力は3万5千台で、15年末までに5万2500台に増やす。高級セダン「モデルS」の販売が伸びているほか、15年秋に予定する多目的スポーツ車(SUV)「モデルX」の生産増に対応する。同日、増設した自動化ラインなどを報道陣に公開した。昨年秋に組み立て工程でロボット増設などの設備投資を実施していた。投資額は明らかにしていない。増産に備え、同工場で新たに342人の契約社員を採用した。現在は工場棟などで約4千人が働いている。組み立て工程では車体を運ぶ大型ロボットが効率的に稼働できるようレイアウトを変更。部品の取り付けにかかる時間を5割短縮したほか、溶接工程などで最新のロボットを10台増やした。テスラのEVはパナソニック製リチウムイオン電池を搭載している。1台に約7000個の電池セルを使う。テスラは電池セルを加工して車に組み込む工程にもロボットを追加しており、1日に100万個の電池セルを加工できるという。テスラは現在、パナソニックと共同でネバダ州にEV用の電池工場の建設を進めている。 *2-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK05H88_V00C15A1000000/ (日経新聞 2015/1/6) トヨタ、燃料電池車の特許5680件を全公開 トヨタ自動車は5日、同社が持つ燃料電池車の関連特許約5680件をすべて無償で提供すると発表した。「究極のエコカー」と呼ばれる燃料電池車を定着させるためには、トヨタ1社の努力では不十分と判断。早期に普及させるためにライバル同士や業界の垣根を超えた開発競争を促す、極めて異例の取り組みに打って出る。自動車メーカーが次世代技術の特許を不特定の企業や団体に対して全公開するのは極めて珍しい。ホンダと米ゼネラル・モーターズ(GM)は燃料電池車で互いの特許を全公開する提携を結んだが、対象は両社に限定している。トヨタもこれまでエコカー技術の特許を有償で公開したことがあるが、あくまで提携先の企業に対象を絞ってきた。ハイブリッド車(HV)ではマツダや富士重工業、米フォード・モーターに一部特許の使用を許可した上で、トヨタが主導してHVを開発することで技術の流出を防いできた。燃料電池車ではこの方針を根本的に転換する。今回、提供するのはトヨタが単体で保有する燃料電池車の特許。グループの部品企業が持つ特許は対象外。水素と酸素を反応させて発電させる中核部品の「スタック」と、燃料タンク、システム制御関連の計5610件に関しては、2020年末までの特許実施権を無償とする。水素ステーションの関連特許約70件については、公共性が高いため無期限で無償提供する。 <農地及び農業用施設での自家発電> *3:http://panerou.com/helpful_information/qa/nouchi_tenyo/8289/ 農地への太陽光パネル設置は可能(条件つき) 農地転用の手続きを行わなくても、一時転用許可を農業委員会に申請することで太陽光パネル設置は可能になります。地目が農地の状態で太陽光発電するにはいくつか条件があります。 ■支柱の基礎部分について一時転用許可の対象とする。一時転用許可期間は3年間(問題がない場合には再度許可可能) ■一時転用許可に当たり、周辺の営農上支障がないか等をチェック。 ■一時転用の許可の条件として、年に1回の報告を義務付け、農産物生産等に支障が生じていないかをチェック。 上記を満たせば太陽光発電の設置は可能です。これらをソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)といいます。最近では農業振興地域などが原因で、農地から地目を変更できずに断念した方が多くいらっしゃいます。農林水産省に一時転用許可を申請することで、太陽光発電を設置することが可能かもしれません。一時転用許可の手続きは施工・販売業者の方、もしくは行政書士にお願いするとよいでしょう。代理申請の費用に関しては、設置者本人で1万円、行政書士は約20万円です(施工・販売業者は各業者によって異なります)。詳細は農地転用にかかる費用をご覧ください。ソーラーシェアリングに適した作物は?いちご、ほうれんそう、わさび、レタス、春菊などです。これらは全て半陰性植物になります。一時転用許可が出るまでの時間は?各農業委員会によってまちまちとなっています。また、全国的にソーラーシェアリングは発展途上にあるため、一時転用許可→発電開始までにかなりの時間がかかります。一時転用の制度は2013年3月からはじまったばかりなので、農業委員会事務局も過去に事例がなく、話がスムーズに進んでいないのが現状です。 PS(2015.1.13追加):*4のような自動トラクターを日本でも普通に使えるようになったり、知識の粋を集めて、砂漠やシベリアを豊かな農地に変えたりできるといいと思う。 *4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150113&ng=DGKKZO81854770S5A110C1TJM000 (日経新聞 2015.1.13) 準天頂衛星「みちびき」、トラクターを豪で無人走行 誤差5センチ以内 日立造船や総務省などは日本版全地球測位システム(GPS)として期待される準天頂衛星「みちびき」を使い、オーストラリアの農地で無人トラクターの走行実験に成功した。農作業に必要な誤差数センチの精度を実現した。衛星は日本からオーストラリアまでの上空を8の字で飛んでおり、アジア各国・地域も利用に関心を示しているという。 ●農作業に必要な精度を実現した 準天頂衛星は政府の新しい宇宙基本計画でも7基体制の運用を目標に掲げている。2010年に1基を打ち上げ、みちびきと名付けた。トラクターの走行実験では、オーストラリアの農地で現地時間の夜、みちびきと米国のGPS衛星の信号を組み合わせて高い精度で位置を測り、トラクターを5センチ以内の誤差で制御した。GPS衛星だけでは1~10メートルの誤差があったという。今後はトラクターにセンサーを取り付け、1月末から3月末にかけ、イネの生育状況や水温の無人測定を試みる。植え付けや刈り取りなどほぼ自動でできると期待している。マレーシアや台湾も今回のシステムを使う農業の無人作業に興味を持っているという。11年には日立造船や北海道大学が国内で無人トラクターを数センチの誤差で動かす実験に成功していた。この時は地上にある電子基準点も活用して、トラクターを正確に動かした。オーストラリアでは近くに電子基準点が無い地域でも正確に位置を測れたという。
| 資源・エネルギー::2014.10~2015.4 | 04:30 PM | comments (x) | trackback (x) |
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