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2012,08,31, Friday
*3のように、日本生態系協会の池谷奉文会長(70)が、東京で開かれた講演会で、東京電力福島第一原発事故を受け「福島の人とは結婚しない方がいい」などと不適切な発言をしたと批判されているが、放射線によってDNAの遺伝情報が変わる場合が多いからこそ、癌になったり、*1、*2のように「福島で『ゲノム解析』をする」と環境相が表明したりしているのである。しかし、変異が見つかった場合には速やかに治療しなければ、原爆の調査時と同様、モルモット役になるだけだ。
また、放射線によってDNAの遺伝情報が変わるのは子どもだけではないため、子どもを調べるだけでは足りないが、いつも、まるで大人はどうでもよいかのような言い方をしているのには辟易する。また、子どもと妊婦だけで避難できるわけでもない。皆がよく知っている例を挙げれば、ショウジョウバエの突然変異種を作る時に、繁殖前の大人のショウジョウバエに放射線を当てると、その子どもに突然変異が多くできるのと同じ現象が起こるのである。 そのため、真実を語って注意を喚起した生物系の学者に対し、*3のような上げ足とりをしていると、その人たちも「放射能のリスクは言わない方が無難だ」という判断になり、誰も住民に放射能の危険を知らせず、避難も治療も損害賠償請求もできないまま、遺伝性の病気や癌・白血病をかかえる結果となる。 池谷奉文会長の「子どもを産むと奇形発生率が上がる」という発言が問題になったようだが、それに対して長崎大大学院の高村昇教授(放射線医療科学)が「科学的根拠はない」といくら断言しても、「奇形発生率は上がらない」という科学的根拠も全くなく、むしろあると考えるのが自然である。そして、実際に、妊婦はレントゲン検査も控えるのが通常だ。そのため、「結婚しない方がいい」というのは、結婚の意味を子作りのみに限定した狭い見方であるため感心しないが、リスクの程度がわからない場合は、皆、最大のリスクを予想して避難するなり、除染するなりの対応をするのが、自分自身のためである。 *1:http://www.minyu-net.com/news/news/0831/news8.html (福島民友ニュース 2012年8月31日 ) 県民の遺伝情報解析へ 子ども中心、13年度から 細野豪志環境相は30日、東京電力福島第1原発事故で被ばくした県民の遺伝子への放射線影響を調べるため、来年度から県民を対象に「全ゲノム(遺伝情報)解析調査」に着手する方針を明らかにした。福島市の福島医大で同日開いた原発事故による健康不安への対応を検討する私的懇談会(座長・長瀧重信長崎大名誉教授)の終了後、記者団に述べた。細野環境相によると、調査は、県の県民健康管理調査とは別に実施。調査には福島医大も関わるが、政府は遺伝子調査の専門機関との連携に向け、すでに具体的な検討を始めている。調査対象や人数などは今後詰めるが、環境省は子どもを中心に調べる方針。細野環境相は「長期的に健康影響を見ていくには、遺伝子レベルの健康影響の調査が極めて重要だ。将来の備えにつながる調査で、特に子どもを健康に育てようと考えている人の思いに応えたい」と語った。 *2:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2275893.article.html (佐賀新聞 2012年8月30日) 福島で「ゲノム解析」 / 被ばく調査で環境相表明 細野豪志環境相は30日、東京電力福島第1原発事故の被ばくによる遺伝子への影響を調べるため、来年度から福島県民を対象に「全ゲノム(遺伝情報)解析調査」に着手する考えを明らかにした。 福島県立医大(福島市)で開いた私的懇談会の終了後、記者団に述べた。 細野環境相は「政府としてしっかりと(福島に)向き合っていく。遺伝子の調査はすぐに不安の解消にはつながらないかもしれないが、人間の根源的な遺伝子を調べることで将来への予防になる」と語った。環境省は子どもを中心に調べる方針。 *3:http://www.minpo.jp/news/detail/201208303361 (福島民報 2012年8月30日) 生態系協会長 発言認める 「差別と思っていない」 日本生態系協会の池谷奉文会長(70)が東京で開かれた講演会で、東京電力福島第一原発事故を受け「福島の人とは結婚しない方がいい」などと不適切な発言をしたとされる問題で、池谷会長は29日、報道機関に対して講演記録の一部を公表した。記録には不適切とされた発言内容が含まれていた。ただ、池谷会長は「福島の人を差別するようなことは思っていない」と反論した。一方、講演会に参加した福島市議は同日、記者会見を開き、講演時の発言の撤回を求めることを明らかにした。 (長いので、全文は下の「続き▽」をクリックすると出てきます) 続き▽
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2012,08,10, Friday
2011.11.20の風向き SPEEDIを使った1時間後の拡散予測 2011.12.26に記載したように、グリーンピースが、「福島原発と同レベルの事故が起こった場合」という前提で、佐賀県に対してSPEEDI( 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の情報公開請求を行った結果、2011.11.20の午前8時に事故が発生したと想定したところ、上図のように、北北西12.5m/sの風が吹いており、放射性物質の拡散開始から、1時間くらいで佐賀県を突き抜けて、50キロ離れた有明海まで汚染が到達すると予測された。北北西12.5m/sの風というのは、この地域で通常吹いている風であり、放射性物質のこのような飛散の仕方は典型的な形と言える。 放射性物質の拡散の仕方はどの場合でもだいたい同じだから、*1のように、「ベント装置は大気中に放出する放射性物質を低減するフィルター付きで、放射性物質の放出量は容器内の千分の1程度に抑える」場合でも、フィルターで千分の1程度に抑えた後に、どのくらいの放射性物質が飛散するのか、また、事故時以外は飛散していないのかが気になるところである。なぜなら、平時においても、右図の細長い領域近くで白血病や甲状腺癌が多いと聞いたことがあり、私の実家もその領域付近にあるからだ。 なお、SPEEDIは、瓦礫の広域焼却処理をした時に、放射性物質が主にどの領域に飛散して集まるのかを知る上でも有用だそうだ。他の関連地域の皆さんも、調査しておいた方がいいのではないだろうか?調査方法には、病院から、原発立地地域及び近郊の地域で、白血病、癌、心疾患などの放射能関連疾患を発症した人の居住地を出してもらい(プライバシーがあるため、男女別、年齢は必要であるが、個人名は不要)、それとSPEEDIで予想される放射能の拡散及び濃度を比較する方法などが考えられる。 *1: http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2258093.article.html 玄海原発に免震棟 ベント装置も整備 (佐賀新聞 2012年8月1日) (ポイント)九州電力は31日、政府が4月に示した原発の安全基準に基づき、事故時に現場の対応拠点となる免震重要棟と、格納容器内の圧力を下げるためのベント装置を玄海原発(東松浦郡玄海町)に整備すると発表した。ベント装置については、玄海原発など格納容器が大きい加圧水型では「必要性は疑問」としながらも、「地元理解と安心安全のための措置」と説明。いずれも近く基本設計に入り、免震棟は2015年度、ベント装置は16年度内の整備を目指す。免震棟は、07年の新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発(新潟県)の事務棟が被災して使用不能となったことを教訓に、東京電力などが設置。福島第1原発でも事故対応で活用された。計画では、揺れを抑える構造の鉄骨鉄筋コンクリート造り3階建て(延べ床面積6平方メートル)1棟を建設。基準地震動(540ガル)の2倍程度まで耐えられる設計にする。放射性ヨウ素を除去する空調設備や原子炉の温度、圧力を監視するモニターのほか、事故対応に当たる作業員の高線量被ばくを避けるための休憩室や除染設備、非常用電源などを整備。首相官邸などとテレビ会議などができるように通信設備も整える。ベント装置は大気中に放出する放射性物質を低減するフィルター付きで、各基に一つずつ設置。九電は「放射性物質の放出量は容器内の千分の1程度に抑える」としている。
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2012,08,08, Wednesday
黒い雨被害者数の分布図 原爆ドーム 窓ガラスを伝った 黒い雨 広島、長崎への原爆投下後、放射性物質を含む粉じんが、雨で広範囲の地上に降ったことは明らかで、①直接身体に放射性物質があたって障害を起こした人 ②降った放射性物質が水、農作物、魚介類などに入り、それを食べて癌や白血病を起こした人 ③放射性物質を含む粉じんを呼吸で吸い込んで癌を起こした人など、人間が、いろいろな経路で放射性物質を取り込み、癌や白血病などの病気を起こしたことは間違いない。 しかし、その貴重な疫学データは、*1、*2のように、被爆から67年経つまで存在さえ明らかにされることなく被曝に関する研究を阻んだとともに、被爆者の救済には何の役にも立たなかった。福島原発事故でも、「わからない」とされていることの大半は、わかっているが言えないことなのであろう。 「国体を維持することが重要なのであって、一人一人の民の命や生活はどうでもよい」というのが、官主主義の判断である。そして、これが、主権者である国民が選挙で選んだ政治家が主導しなければ本当の民主主義が実現しない理由であるが、重要法案の内容について国会で審議を行っている最中に、オリンピックと政局しか報道しなかったメディアも、「依らしむべし、知らしむべからず」を信条とする官の側に立っており、国民に重要な情報を提供しないので、政治主導にもならないのである。 なお、この記事を書き終わってすぐ、*3のように、「内部被曝や低線量被曝による被害を訴える者は、“心理的被ばく”という半世紀後まで続く精神疾患の状態である」とする新聞報道があった。内部被曝や低線量被曝を原因とする損害賠償請求の封じ込めであろうが、「精神疾患」「心理的疾患」などという病気は、他のあらゆる原因がないことが明確に証明されて初めて言えるものであり、簡単に作ることが許される病気ではない。これを、無批判に受け入れて大々的に報道するメディアは、真の被爆者に対する差別を助長し、民の人権を無視する官の広報版であって、記者の無知ではすまされないものである。 *1:http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/0806/ 黒い雨 ~活(い)かされなかった被爆者調査~ (NHK 2012年8月6日) (ポイント)去年の暮れ、長崎の医師の問い合わせをきっかけに、被爆に関する「あるデータ」が突然公表された。原爆投下直後に降った放射性物質を含む雨「黒い雨」に、1万3千人もの人があったことを示す分布地図だ。どこでどれくらいの人が黒い雨にあったか、これまで「公式データ」はないとされてきただけに、広島・長崎は衝撃を受けた。データは、放射線の人体への影響を科学的に明らかにするためにアメリカの研究機関ABCCが集め、研究を引き継いだ放射線影響研究所(放影研)が保管していたものだった。多くの被爆者の協力のもと集められた“命の記録”だが、今まで、このデータを使って黒い雨の影響が研究されることはなかったという。なぜデータは、被爆から67年経つまで、その存在さえ明らかにされなかったのか。調査に協力した被爆者たちは、どんな思いを抱いてきたのか。被爆者追跡調査の歴史を追いながら、その実像に迫っていく。 *2:http://mainichi.jp/opinion/news/20120807k0000m070091000c.html 記者の目:「黒い雨」被害者切り捨て (毎日新聞 2012年8月7日) ◇国は核被害の実相を見よ (ポイント)米軍による広島への原爆投下から67年の今夏、「被爆者」と認められるはずの「黒い雨」被害者は切り捨てられた。厚生労働省の有識者検討会は7月、あまたある証言を無視して黒い雨の援護対象区域拡大を否定し、政府もそれを追認した。爆心地から幾重も山を越えた集落を訪ね歩き、原爆の影を背負って生きる人々の話に耳を傾けながら、私は何度、広島の方角の空を見上げただろう。核被害の実相に向き合わない政府に「被爆国」を名乗ってほしくない。「うそを言うとるんじゃない。事実はあるんじゃから」。1945年8月6日、広島の爆心地から約15キロ西の祖父母宅近くで、女性(76)は黒い雨を浴びた。神社で遊んでいると「痛いぐらい」の大雨が降り、その後、毎朝のように目やにが止まらなくなり、爪はぼろぼろに。30代半ばで甲状腺の病気を患い入院、白内障の手術も3回受けた。 *3:http://www.swissinfo.ch/jpn/detail/content.html?cid=33263756 長崎原爆目撃で心理的被ばく (共同通信社 2012年8月8日 ) 1945年8月9日の長崎原爆で、健康被害が出るほどの放射線被ばくはないと国がしている地域で原爆を目撃した人の多くは、半世紀を経ても精神疾患の危険性が高いとの調査結果を、国立精神・神経医療研究センター(東京)が8日までにまとめた。目に見えない放射性物質への不安による“心理的被ばく”と位置付け、その状態が長期間続く現状を示した。福島原発事故でも手厚い心のケアが求められそうだ。
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2012,08,03, Friday
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)では、*1のように放射線管理区域内で放射線業務に従事する原発労働者でも、被曝限度を「5年間につき100ミリシーベルトを超えず、かつ、1年間につき50ミリシーベルトを超えないようにしなければならない」「女性は、3月間につき5ミリシーベルトを超えないようにしなければならない」と定めている。そして、これは、自ら選択して放射線管理区域内で放射線業務に従事する屈強な原発労働者が対象であり、一日24時間被曝し続けるのではなく、放射線管理区域から外に出れば被曝しないことを前提としており、食品やチリなどから内部被ばくすることはない前提である。
一方、「帰還困難区域」「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」の新しい区分は*2のとおりで、避難指示解除準備区域(年間積算線量が20ミリシーベルト以下)は、一見、原発労働者の女性の基準をクリアしているかのように見えるが、もしここに住んでいれば、24時間被曝し続け、身体に回復の時間を与えないという意味で、原発労働者よりも過酷である。また、食品やチリなどから内部被ばくする機会も多く、住民は健康な人ばかりではない。その上、自分で選択してその状況を選び、リスク料として高い報酬を得ているわけではないのである。 従って、「避難指示解除準備区域」になったからといって、健康を害する心配がないわけではないことを、国は説明すべきである。その上で、居住する人に対しても損害賠償や健康管理が必要であり、移転・疎開する人にも、その自由、移転費用の負担、損害賠償、健康管理が必要である。これが、原発事故の大きさであり、原発のコストの一部なのである。なお、*3のように、福島の原発事故に対して捜査が開始され、地検が告訴・告発を受理したそうだが、住民に対して的確な情報を伝えず、命や健康を害させたことは十分に犯罪であるし、誤った組織決定に対して異議を唱えなかった個人も、人の命にかかわる判断において、あまりにも正義感に欠けすぎたという意味で責任があるだろう。 *1:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S47/S47F04101000041.html 電離放射線障害防止規則 (放射線業務従事者の被ばく限度) 第4条 事業者は、管理区域内において放射線業務に従事する労働者(以下「放射線業務従事者」という。)の受ける実効線量が5年間につき100ミリシーベルトを超えず、かつ、一年間につき50ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。 2 事業者は、前項の規定にかかわらず、女性の放射線業務従事者(妊娠する可能性がないと診断されたもの及び第6条に規定するものを除く。)の受ける実効線量については、3月間につき5ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。 *2:http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/20120514_01a.pdf#search='警戒区域%20居住制限区域' 避難指示区域内にご自宅・事業所のある皆様へ (平成24年5月 原子力被災者生活支援チーム) 【避難指示解除準備区域】 避難指示区域のうち、年間積算線量が20ミリシーベルト以下となることが確実であると確認された地域です。同区域は、当面の間は引き続き避難指示が継続されることになりますが、復旧・復興のための支援策を迅速に実施し、住民の方が帰還できるための環境整備を目指す区域です。 【居住制限区域】 避難指示区域のうち、年間積算線量が20ミリシーベルトを超えるおそれがあり、住民の方の被ばく線量を低減する観点から、引き続き避難を継続することを求める地域です。同区域は、将来的には住民の方が帰還し、コミュニティを再建することを目指して、除染を計画的に実施するとともに、早期の復旧が不可欠な基盤施設の復旧を目指す区域です。年間積算線量が20ミリシーベルト以下であることが確実と確認された場合には、「避難指示解除準備区域」に移行することとされています。 【帰還困難区域】 5年間を経過してもなお、年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らないおそれのある地域です。現時点で年間積算線量が50ミリシーベルト超の地域が相当します。 *3:http://www.asahi.com/national/update/0801/TKY201208010473.html (朝日デジタル 2012年8月1日) 福島の原発事故、捜査開始へ 地検が告訴・告発を受理 東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故をめぐり、東京地検と福島地検は1日、東電幹部や政府関係者に対する業務上過失致死傷容疑などでの告訴・告発をそれぞれ受理した。今後、刑事立件の可否を見極めるための捜査を始める。これまで検察当局は、事故調査への影響などを考慮して受理を保留してきた。先月23日に政府の事故調査・検証委員会の最終報告が出たことで、捜査が可能になったと判断した。今後、捜査態勢を検討するが、検察内部では刑事立件に消極的な声が多い。業務上過失致死傷容疑では(1)原発事故による被害だと断定できるか(2)事故の責任を特定の個人に負わせることができるかなどが焦点となり、立件は困難なケースが多いとみられる。
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2012,07,06, Friday
(1)癌による死亡率の上昇
2011.9.29に、このブログで述べたように、どうしても原発を続けるべきだという論拠の中には、原発を持っていれば原爆もすぐに作れるから、抑止力になるという意見もある。 しかし、年齢や生活習慣病の影響を最も受けない乳児死亡率で見ると、本来であれば滑らかな曲線で下降するはずの乳児死亡率が、始めは年ごとに下降していくが、途中で急に下降が止まり、それはネバダの核実験が始まった時である。そして、それ以降、核実験のたびに乳児死亡率も合わせて上昇する。これは、米ソ英による大気核実験停止条約が締結される1963年まで続き、*1の斜線部分と*2の黒の部分が、放射能のために余計に亡くなった乳児の数となる。原爆どころか核実験でさえこうなるのだから、人類に、武器として原爆を使うという選択肢はない。 *1:ニューハンプシャー乳児死亡率(1945~75) *2:米乳児死亡率(1935~1999) それでは、子どもだけが影響を受け、大人は影響を受けないのかと言えば、癌(悪性新生物)による死亡率は年々上昇し(*3の黒の折れ線グラフ)、1980年に脳血管疾患(点線)を抜いて一位となり、その後も増え続けて、現在、日本人の2人に1人は癌で亡くなると言われ始めた。つまり、大人の方が癌にかかる人が多く、癌による死亡率も高いのである。これについて、癌は高齢になってから発症する病気であるため、年齢修正後の死因別死亡率の推移では、癌による死亡率は低下しているのだという主張及びデータもあるが、それは、放射線などの影響がなかった場合の話であり、*4のように放射性物質がばら撒かれたフクシマ原発事故以降は、その曲線が不自然な急カーブで上昇することが予想される。その余分に亡くなった人が、原発事故による死亡者である。なお、癌だけでなく、心疾患も急カーブで上昇することが予想される。 *3:人口10万人あたりの死因別死亡率の推移 *4:フクシマとチェルノブイリの放射能汚染地図 (2)内部被曝の怖さ また、放射性物質を含む食品を食べると、それが消化管から体内に取り込まれ、至近距離から体細胞が被曝し続けることになる。さらに、空気中に飛んでいる放射性物質を含むチリを吸い込むと、鼻、気管支、肺に放射性物質が入り、同様に至近距離から体細胞が被曝し続けることになる。そして、体細胞が至近距離から長時間被曝し続けると、細胞分裂の際にDNAの複製が多数失敗し、免疫機構による身体の抵抗力にも限界があるため、癌細胞が増え始めるから、この内部被曝は怖いのである。従って、「放射性物質を含む食品を、協力して買え」「協力して瓦礫の広域処理を行え」というキャンペーンは、人の命や健康を無視した間違った行為である。さらに、このようなことをして日本全国で癌の発生率が高まると、後に*1、*2のような疫学調査をした時に、「癌による死亡率の上昇は、フクシマだけでなく日本全国で起こっているのだから、生活習慣病のせいであって福島原発事故由来の放射性物質のせいではない」という結論を導きやすいわけだ。 (3)フクシマ以降は複合的な犯罪であるということ そのような中、フクシマでは、大気中にも水中にも放射性物質が垂れ流されているままであり、その事実が報道されることはあまりない。そして、大飯原発が再稼働してから、国会事故調は、福島第一原発事故を人災と断定した。しかし、国会事故調も結果ありきの判定をしており、「脱原発依存(脱原発とは似て非なるもの)」「SPEEDIの活用は困難だった」「原子力規制庁を作れば問題は解決する」「菅首相の対応に問題があったのであり、他の首相ならうまくいった」「対策を行えば原発事故は起こらない」というような結論を導き出しているようだ。今後は、御用メディア、御用学者、原子力ムラ、癒着議員の知識・経験・判断とその背景を含む複合的な人災による癌や心疾患の死亡率上昇が起こってくるが、それは、人の命や健康を何とも思わない行為であって、故意・重過失のいずれにしても犯罪である。 http://www.asahi.com/politics/update/0705/TKY201207050175.html (朝日デジタル 2012年7月5日) 国会事故調が最終報告で、原発事故は「人災」と断定 東京電力福島第一原発事故を検証する国会事故調査委員会(黒川清委員長)は5日、最終報告書を決定し、衆参両院議長に提出した。東電や規制当局が地震、津波対策を先送りしたことを「事故の根源的原因」と指摘し、「自然災害でなく人災」と断定。首相官邸の「過剰介入で混乱を招いた」として、菅直人前首相の初動対応を批判した。東電が否定している地震による重要機器損傷の可能性も認め、今後も第三者による検証作業を求めた。 報告書は641ページ。事故調は延べ1167人に900時間以上の聴取を行い、関係先から約2千件の資料提供を得た。東電や電気事業連合会、文部科学省、原子力安全委員会などから入手した13点は非公開の前提で提供され、公表を見送った。 ■地震・津波対策「意図的な先送り」 報告書は地震、津波対策について、東電や経済産業省原子力安全・保安院などの規制官庁が「意図的な先送りを行った」と踏み込み、「何度も事前に対策を立てるチャンスがあったことに鑑みれば、事故は明らかに人災」と断じた。
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2012,05,15, Tuesday
*1の日弁連会長声明は、全くそのとおりだと思います。内部被曝のリスクが統計的に出ていないということは、それが安全であることの証明にはなりませんので、内部被曝に気を付けることは、過剰な規制でも、消費段階での混乱でも、風評被害でもなく、心疾患、癌、白血病等々の病気にならないための合理的な判断なのです。それにもかかわらず、国よりも厳しい自主基準の設定の動きを牽制するというのは、憲法25条に定められた「国民は健康で文化的な生活をする権利を有し、国は公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という国民の生存権を無視したものです。
しかしながら、*2の「原発の危険から子どもを守る北陸医師の会」のHPで述べられているように、内部被曝や低線量被曝の影響は、すでにチェルノブイリ事故で明らかになっており、世界でも、事実より何倍も小さくしか、公式発表されていないことがわかっているのです。 *1: http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2012/120511.html 食品中の放射性物質の自主検査に関する農林水産省食料産業局長通知に対する日弁連会長声明 (ポイント)農林水産省食料産業局長は、本年4月20日、食品産業団体に対し、「食品中の放射性物質に係る自主検査における信頼できる分析等について」と題する通知を発出した。同通知には、「過剰な規制と消費段階での混乱を避けるため、自主検査においても食品衛生法の基準値(中略)に基づいて判断するよう併せて周知をお願いいたします。」との記述があり、食品産業界が取り組む国よりも厳しい自主基準の設定の動きを牽制する内容となっている。 放射線が健康にもたらす影響、とりわけ低線量内部被ばくの影響については、科学的知見が十分でなく、また確率的なリスクであるとされていることから、個人や世帯によって対応が分かれることに合理性が認められる。また、食品中の放射性物質に関する国の新基準についても、内部被ばくのみに年間1ミリシーベルトの被ばく限度を割り当て外部被ばくを考慮していないなど、その妥当性には疑問が残る。 したがって、消費者が、食品中の放射性物質について、国が定める基準よりも厳しい基準に基づき食品を選択することは、消費者の権利として認められるべきである。また、こうした消費者の求めに応じようとする生産者や流通業者の取組は、むしろ促進されるべきであるにもかかわらず、本件通知の内容は、食品産業界に対し国よりも厳しい基準を打ち出さないよう自粛を求めたものと受け取られかねない内容となっており、消費者の期待に応えようとする食品産業界の自主的取組が萎縮させられるおそれがある。放射性物質の含まれた食品を継続的に摂取し続けることによる低線量内部被ばくの影響のように、科学的に安全性が確認されていない事柄については、殊更に安全性を強調したり、国が政策的に定めた基準を消費者に押し付けたりすることなく、網羅的、継続的な検査体制を敷いた上で、消費者に対して正確な情報を提供していくことが重要であるから、当連合会は、政府に対し、より積極的に、食品産業界による自主的な取組を制度的に後押しするような施策を実施することを求める。 *2 http://isinokai.blogspot.jp/2012/05/25who-2-1.html 、 原発の危険から子どもを守る北陸医師の会 (ポイント)原発事故はもう2度と起きてはいけませんね。もし、チェルノブイリ級の大惨事が日本で起きれば、私たちの健康と子どもたちの未来、そして美しい国土が失われます。 しかし、政府や原発の地元自治体、電力会社そして原子力を推進してきた学者たちは原発を再稼働させようとしています。彼らはもしかして放射能の健康被害の怖さを知らないのではないか、あるいは、知りたくないのではないか。チェルノブイリで起きたことをしっかり勉強していただければ、原発はすべて廃炉すべきであると思うはずです。そう信じて、私たちはこの報告書(論文集)を翻訳しました。したがって、このウェブサイトの目的は『原発廃止』です。 http://isinokai.blogspot.jp/2012/03/b-who-iaea-2005-9-iaea-who-who-iaea.html 原発の危険から子どもを守る北陸医師の会 (別のページ) (ポイント)セバスチャン・プフルークバイルが2005年にすでに指摘したが、報道発表とWHO報告、そしてその引用元(カルディス ら)には不一致があった。チェルノブイリ・フォ-ラムとIAEA、WHOは自らの分析に基づき、がんと白血病による死亡数は公式発表の数よりも実は2~5倍も高くなるだろうと予想している。 それから5年ほど過ぎ2011年になっても、国連機関のどの部門もこれらの数字を訂正していない。被害を受けた3つの国から多数の研究結果が報告されているにもかかわらず、チェルノブイリの健康被害に関する最新のUNSCEAR出版物では、それらをまったく無視している。子どもたちと青少年に起きた甲状腺がん及び汚染除染作業員に生じた白血病・白内障の人数が6,000症例 - これが、最新情報として報道発表に追加された唯一の数字である。 2011年、UNSCEAR委員会は次のように宣言した。「以前のUNSCEAR報告も含むここ20年間の研究をもとに、次のような結論に達した。ほとんどの人にとって、チェルノブイリ事故による深刻な健康被害を怖れる必要はまったくない。唯一の例外として、小児期または若年期に放射性ヨウ素にさらされた人々、そして、高用量の放射線を浴びた汚染除染作業員には、より大きな放射線障害の危険を予想しなければならない」と。
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2012,03,11, Sunday
下の図を見れば明らかなとおり、放射線防護の基準は、平時においては年間被曝の許容限度は1mSv以下である。そして、原発事故が発生した緊急時でも50mSvを超えれば避難すべきとされており、事故継続時に20~100mSv、事故収束時に1~20mSvまで許容する。
しかし、そもそも、この基準は、放射性物質の拡散が長く続くという前提で決められたものではなく、チェルノブイリ原発事故のように、事故が起こった後は速やかに事故を収束させ、人々を放射線量の低い地域に移動させるという前提で作られたものであるため、事故収束時というのは長い期間ではない。 従って、この図を見て、年間20mSv以下であれば、一般の人が何年も居住することが可能だと解釈するのは、我田引水の楽観主義である。むしろ、「年間20mSv以下であれば一般人が何年でも居住可能」という基準を原発事故の被災者に押し付けることにより、安全な地域に自主避難したい人に損害賠償がなされなかったり、健康をまもるために避難しようとする人が「利己的」「感情的」「風評に惑わされる人」などという罵声を浴びせられることとなり、非人道的である。 住民は、県や町の所有物ではない。住民の心筋梗塞、癌、白血病などの発症率が高くなり、統計的疫学データが出てからでは遅いので、住民の健康や命は最優先に考えるべきである。そうすれば、結果として、将来の医療保険や介護保険給付の莫大な支出も防げるだろうし、まとめて住民を受け入れることのできる地域(東北で津波の後に新しく整備する地域、九州、四国、北海道、オーストラリアなど)も手を上げてくれるはずだ。 放射線防護基準 福島の汚染状況(最新) 参考資料 http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2012/120308_3.html 福島原発事故における避難区域外避難者・滞在者への損害賠償の継続を求める日弁連会長声明 (抜粋)福島第一原発からは、いまだに毎時1000万から数千万ベクレルの放射性物質が大気中に放出されており、新たな放射性物質の拡散が続いている。除染作業については、多くの自治体で除染基本計画が定められた段階であり、実際の除染作業はようやく着手されたところで、その効果も未知の部分が大きい。そのため、区域外避難者(自主的避難者)の状況を見ても、放射線量が下がったことを理由に元住居への帰還を選択する避難者は決して多くなく、むしろ現在でも放射線の影響から逃れるために避難を検討している世帯が多数存在しており、特に学年末である3月を利用して避難を行う世帯が相当数存在することが見込まれる。線量が年間1mSvを超える放射線量が検出されている地域では、自主避難と損害賠償の対象とすべきであることについて、当連合会は意見書等において繰り返し述べてきたところである。
| 内部被曝・低線量被曝::2011.7~2012.8 | 01:45 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2011,09,16, Friday
上の図は、ICRPによる1Sv被曝した場合の癌死リスクの予測値であり、癌死リスクしかないが、発症して死亡していない人もいるので、発症リスクは、もっと高い。 そのため、少しでも内部被曝、外部被曝を防ぐための処置が必要だったのだが、政府は、パニックを防ぐという理由で情報隠匿の道を選び、マスメディアがこれに協力したため、国民には、個人の選択の前提としての正確な情報が伝えられなかった。 今後の問題は、原発事故の実態、放射能汚染の実態とその人体に対する影響の正確な開示が行われなければ、原発事故を原因として癌を発症した人に対する正確な診断や医療保障ができず、個人の体質や年齢のせいにされることである。 そのため、放射能汚染に関する正確な情報の開示、影響ある地域(ものすごく広い)での癌検診の充実、正確な診断と治療、被害者への適時の医療費保障が急務である。そして、これも原発のコストであることを認識すべきである。
| 内部被曝・低線量被曝::2011.7~2012.8 | 05:25 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2011,09,04, Sunday
今日の朝日新聞に、各地で観測された大気中の放射線量が載っており、さいたま市は、現在、0.049μSvと書いてある。日経新聞には、ずっと0.053μSvと記載してあったが、私が、ガイガーカウンター(線量計)を買って計ったところ、さいたま市から30分程度の距離の私のマンションのリビングで、0.16~0.20μSvを示すし、ベランダに出ると0.21μSvまで上がる。0.20μSvの放射線を一年間浴びると1.752mSvとなり、外部被ばくだけで、一般人の安全基準を超す。ここは、ホットスポットとは言われていないにもかかわらず、マスメディアで公表される値と屋内の生活空間との値に、これだけの違いが出るのである。
マスメディアが公表する値は、どの地点の値なのだろうか。これを記録として残せば、私の住む地域で癌になったとしても、それは福島原発事故のせいではないという根拠にされるだろう。 そのような中、行政は信頼できないという残念な理由で、市民の手で放射能汚染の状況を把握する活動が広がってきた。その結果を総合し、詳細な地点での正確な汚染マップの作成が望まれる。 ・・・以下、一部引用・・・ 都心部の千代田区六番町や市谷砂土原町、住宅地の大田区田園調布本町、練馬区大泉とい った地点でも、チェルノブイリでは第4区分とされた汚染地域と同じレベルのセシウムが検出され、 首都圏全体に放射能汚染が広がっていることが分かった。また、豊島区巣鴨で採取した、道路 わきに積もっていた砂を測定したところ6万ベクレルという高い値が検出されたという。(!) ・・・・・・・・・・・・・・
| 内部被曝・低線量被曝::2011.7~2012.8 | 01:17 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2011,07,25, Monday
東京電力福島第一原発の事故発生以前に、注水が止まれば30分で燃料棒がメルトダウンし、3時間で圧力容器を貫通することを説明したビデオがあったとのことであり、そのようなシミュレーションは、原発関係者にとっては常識だったそうである。
最悪の事態の中でも無駄な被曝を最少にし、国民の健康を守って、国民の安全・安心を担保できるよう、政府は、直ちに、避難勧告すべきだったではないか。総理大臣や閣僚もさることながら、国民の健康を守るべき組織である厚生労働省や環境省は、何をしていたのか。また、食料の安全・安心を守り、農林水産業を守るべき農林水産省も、何をしていたのか。さらに、消費者庁は、何をしているのか。 何故、早期に警告を発せず、東北・関東の住民や牛が被曝するに任せたのか。牛から放射能が出ているということは、同様に内部被曝した人、豚、鶏、魚、植物からも出るということである。 何故、牛だけ取り上げているのか。 国民を安心させるために、首相が牛肉を食べて見せたのは、あまりにも情けない。細野原発担当大臣は、国民がパニックを起こさないために、情報管理を行い、国民を安心させるための言葉のみ を発したと言っていた。その結果、国民の健康被害を最小にし、農林水産物の被害を最小にする行動をとるための呼びかけは行われなかった。 放射能の危険性を知らないにもほどがある。また、無頓着にもほどがある。なぜ、そのように、無知で適格な判断を行えない人物を担当大臣にしているのか、それこそが、大きな問題である。判断は、 誰がしても同じだとでも言うのだろうか。 私は、このような時の原発担当大臣にふさわしい人は、党派を超えて阿部知子衆議院議員だと思う。彼女は、東大医学部卒、小児科医で、放射線に関する常識があり、判断力・行動力に長けているか らだ。国会議員にも、適格な人がいるというのに、何故、このようなことになっているのか、その根本の発想こそを問いたい。
| 内部被曝・低線量被曝::2011.7~2012.8 | 08:04 PM | comments (x) | trackback (x) |
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