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2022.6.26~ 環境・原発・核兵器・防衛について
・・工事中ですが・・

(1)原発事故と原発
1)エネルギーと環境に関する各党公約について
1)原発推進派及び容認派
 エネルギー・環境に関する与党の公約は、*1-1のように、自民党は、①エネルギー・物資の安定供給のため、内外資源を開発し再エネは最大限導入 ②安全が確認された原発は最大限活用 ③カーボンニュートラル実現のため水素・アンモニアの商用化に繋がる技術開発と実装に向けて支援 ④脱炭素を成長分野と位置づけ、今後10年で150兆円超の官民投資を実現 で、公明党は、⑤経済安全保障の観点から一次エネルギー供給の国産化推進 ⑥年間20兆円に及ぶ化石燃料輸入の最小化 ⑦徹底した省エネや再エネの主力電源化に取り組み ⑧原発依存度を着実に低減し、原発に依存しない社会を目指す である。

 このうち、①④⑤⑥⑦⑧は賛成だが、②は、日本に安全が確認された原発などないことがロシアのウクライナ侵攻によって明るみに出た。また、③の水素の商用化に繋がる技術開発や実装は遅すぎるくらいだが、アンモニアはコスト面でも生産量でも頼れるエネルギーにはなり得ないため無駄遣いだ。

 また、日本維新の会は、⑨フクイチ事故を踏まえて原発再稼働にかかる国の責任と高レベル放射性廃棄物の最終処分等に係る必要な手続きを明確化するため「原発改革推進法案」を制定 ⑩原発再稼働にあたっては各立地地域に地域情報委員会を設置して住民との対話と合意形成の場を作り ⑪水素等の活用や研究開発に積極的に取り組む とし、国民民主党は、⑫電気料金の値上げと電力需給の逼迫を回避し、海外への富の流出を防ぐため、法令に基づく安全基準を満たした原発は再稼働する ⑬次世代炉等への建て替えを行う ⑭再エネへの投資を加速し、分散型エネルギー社会の構築を目指し、洋上風力・地熱の活用に注力する としている。

 ⑨⑩は、「原発なら何でも国の責任」というのは、原発に関する国の予算の無駄遣いが大きすぎるので卒業すべきだし、いくら地域住民と対話しても環境と安全を重んじる人が原発維持に合意することはない。さらに、⑫も、原発再稼働や新設をしたい経産省が再エネの普及を阻害して、未だに電力需給の逼迫などと言っているのであり、法令に基づく安全基準を満たしたからといって安全でもないことが既に明らかになっているため、原発再稼働を進めるのは反対だ。

 さらに、⑬の「次世代炉は完全に安全」などと言っている人もいるが、人は避難できるが田畑・山林・海は避難できないため、本当に“完全に安全”と思う次世代炉なら地産地消するために経産省・日経新聞本社・自分の地元などに作ることで地域住民と対話して合意形成を行えばよろしかろう。なお、⑭は、今は当たり前なので、できない理由を並べず徹底すれば、次世代炉も含めて原発は不要になる。

2)原発撤廃派
 立憲民主党は、①2030年の温室効果ガス排出を2013年比で55%以上削減、2050年までの早い時期にカーボンニュートラル実現 ②2030年までに省エネ・再エネに200兆円を投入 ③2050年に2013年比で60%省エネ、再エネ100% ④化石燃料・原発に依存しない社会実現 ⑤原発の新増設は認めず で、日本共産党は、⑥2030年度までにCO2を2010年度比で50~60%削減目標 ⑦省エネ(エネルギー消費4割削減)と再エネ(電力の50%)を組み合わせて実行 ⑧即時原発0 ⑨石炭火力から計画的に撤退し2030年度に原発と石炭火力の発電量0 である。

 このうち、⑥⑦⑧⑨は、①③④⑤をより厳しいものにして数値目標を明確に記載したもので、可能であるため、私は賛成だ。また、②のように、省エネ・再エネの普及に補助金をつけた方がよいかもしれないが、200兆円という金額ありきではなく、必要額を環境税(化石燃料・原発に関連づける)と並行して行うのがよいと思う。

 また、れいわ新選組は、⑩2030年の石炭火力発電0 ⑪2050年のカーボンニュートラル達成のため、大胆な「自然エネルギー」の地域分散型普及 ⑫自然エネルギー100%達成までの繋ぎのエネルギー源の主力はガス火力 ⑬原発は即時禁止して国有化 ⑭立地地域への補助金は継続し ⑮新産業への移行に国が責任が持つ とし、社民党は、⑯脱原発を進める ⑰「原発ゼロ基本法案」を成立させ、原発・原子力関連施設の廃止に向けた具体的なロードマップ作成 ⑱老朽原発の再稼働を許さない ⑲2050年までに自然エネルギーへの完全転換と温室効果ガス排出0達成 ⑳そのために地球環境と両立する産業の育成や雇用の創出を推進 としている。

 このうち、⑩⑪⑫⑬⑮⑯⑰⑱⑲⑳は賛成だが、⑭は補助のしすぎだと思う。何故なら、立地地域は、現在、既に使用済核燃料の保管に対し「危険料」として税をかけており、電力の購入者が電力料金としてそれを支払うことで補助金の役割をしているからで、それでも早く原発と使用済核燃料を撤去して原発より安全で付加価値の高い新産業に移行したいからである。

3)原発事故で国の責任を認めなかった最高裁の判決は妥当か
 東京電力福島第一原発事故で被害を受けた住民らが国に損害賠償を求めた4件の集団訴訟で、最高裁第二小法廷は、*1-2-1のように、国の責任を認めない判決を言い渡した。

 判決は、①フクイチ事故以前の津波対策は防潮堤の設置が基本で、それだけでは不十分という考えは有力でなかった ②2002年に国が公表した地震予測「長期評価」に基づいて、東電子会社が2008年に計算した最大15.7mの津波予測は合理性を有する試算だった ③現実の地震・津波は想定より大規模で、防潮堤を設置させていても事故は防げなかった ④国が東電に対策を命じた場合、試算された津波に対応する防潮堤が設置されたと考えられるが、仮に防潮堤を設置していても海水の浸入を防げず、実際の事故と同じ事故が起きた可能性が相当ある ⑤国が規制権限を行使しても事故は防げず、国家賠償法上の違法性はない が多数意見だったのだそうだ。

 そして、この判決の結果、原発政策は「国策民営」で進められてきたが、賠償義務は従来通り東電だけが負うことになり、後続の同種訴訟でも国の責任は否定されそうとのことである。

 しかし、2011年4月6日、*1-2-3のように、東電の福島第一原発が津波に襲われた後、被害が拡大した理由に非常用ディーゼル発電機等の設置場所に安全設計上の問題があった疑いが浮上し、原子力技術者が、⑥各建屋に繋がれている電気ケーブル・パイプ等をコンクリートで覆って岩盤と接するよう工夫した工事などは繰り返されたが ⑦非常用ディーゼル発電機の設置場所や海水ポンプがむき出しの状態で置かれていたことを見直す検討はなかった ⑧想定した津波高で原子炉建屋は安全な位置にあると判断していたことが理由としてあるが、発電機の位置等を変えようとしても原子炉建屋の中に収納できるスペースはなく、設計の大幅変更に繋がり ⑨もし改修に踏み切ったら大規模な工事になって多額のカネがかかり ⑩当時は設計通りに作ることが至上命題だった と証言している。

 その背景には、1960~70年代の建設当時、原発先進国・米国の技術を移入して日本はそれを学ぶ過程にあり、⑪福島第一原発はGEの設計を東芝と日立製作所が試行錯誤しながら学ぶ練習コースのようなもので、福島第一原発に六つある原子炉のうち1~5号機はGEが開発した沸騰水型炉で非常用発電機の場所やポンプの構造はGEの基本設計通りだった ことがあるそうだ。

 私も、⑦の非常用ディーゼル発電機等が地下に置かれていたのを津波に襲われた映像を初めて見た時に変だと思ったが、非常用ならあらゆる事態を想定しておくのが当たり前であるため、発電機の位置を変えるとすれば、⑧の原子炉建屋内ではなく背後の丘陵に新建物を作るのが当然だと思う。何故なら、そうすれば原子炉建屋内で事故が起こっても非常用ディーゼル発電機は無事であり、⑨のような大工事にもならないからである。

 また、⑩⑪のように、「原発先進国米国の技術を移入して日本はそれを学ぶ過程にあったため、非常用発電機の場所やポンプの構造をGEの基本設計通りにした」というのも、米国の広い国土と日本の狭い国土に地震津波が頻発する自然環境の違いを無視しており、「次世代炉は完全に安全」などとして、また同じことを繰り返そうとしているのには呆れるほかない。

 さらに、朝日新聞は、2011年4月9日、*1-2-2のように、⑫東電は2011年4月9日、福島第一、第二原発の東日本大震災による津波被害の調査結果を公表し、第一原発1~4号機(標高10m)の海側壁面で確認された津波の高さは14~15mで、地上から4~5mの高さまで波が達した ⑬元々は津波は敷地に達しない想定(高さは5.7m)だった ⑭東日本大震災が起きる前から想定以上の津波が起きる危険性は指摘されていたが ⑮防波堤を後から高くすると当初の津波対策は甘かったという指摘を受けるということで改良せず ⑯国の規制も改良を妨げたという指摘もある と記載している。

 これらは取材して書かれているため証言と考えてよいが、⑬のように、最初に想定た津波が5.7mと低すぎ、⑫のように、実際には標高10mの海側壁面で確認された津波高が14~15mで、最初の想定以上の津波が起きる危険性は、⑭のように前から指摘されていたにもかかわらず、⑮⑯の理由で改良しなかったのであるため、原発事故が想定外とは全く言えないのである。

 そのため、2021年3月10日に共同通信が、*1-2-4で⑰平安時代の869年に起きた貞観地震の大津波が福島沿岸に及んだことが解明され始め、政府の地震調査委員会が貞観津波の研究成果を公表すると知った経済産業省原子力安全・保安院に対し、東日本大震災の4日前に東電は以前から社内で計算していた高さ15.7mの津波想定を初めて報告した と記載しているのは変で、「国には責任がない」というこの判決を導くためのお膳立てのように見える。

 なお、*1-3のように、政府の地震調査研究推進本部が2002年に地震予測の「長期評価」を公表し、福島沖を含む太平洋側の広い範囲でマグニチュード8クラスの大地震が起こる可能性を指摘し、大津波の恐れも警告し、これを根拠に東電の子会社が2008年に福島第1原発に最大で約15.7mの津波が到達すると試算していたのであるため、想定すべきことを想定していなかったことを「想定外だった」として免責するのはおかしいし、適切な対策をとっていれば事故は回避できたと思われる。

 加えて、このブログの2011年10月3日に「注水が止まれば30分で燃料棒がメルトダウンすることは前からわかっていたということと爆発の映像」と題して私が記載しているように、フクイチ事故以前に、注水が止まれば30分で燃料棒はメルトダウンし、3時間で圧力容器を貫通することを説明した動画があって、それは311以前に作られたものだった。つまり、津波が到達しなくても、強い地震が起これば地震の揺れで配管が破断したり、使用済核燃料プールにひびが入ったり、プールが傾いて水が外に漏れたりする可能性があることは想定内だったのである。

4)今後の原発政策に関する結論
 日経新聞は、2022年6月27日、*1-4-3の社説はじめ全面で、①エネルギー危機克服へ2022年の参院選で原発の役割を問え ②無駄を排しエネルギー消費を減らす節電の定着は重要だが ③電気が足りない異常事態を招いた問題の原点に戻って長期的対策を急がねばならない ④各党は脱炭素社会への移行を睨み再エネ重視で大きな違いはないが、分かれるのは原発の活用で ⑤自民党は安全確認された原発の最大限の活用を公約に掲げ ⑥維新は安全確認できた原発の再稼働を訴え ⑦国民民主は既存原発の再稼働と次世代軽水炉・型モジュール炉等への建て替えにも言及し ⑧公明党は再稼働を認めた上で将来は原発に依存しない社会を目指し ⑨立民は原発の新増設を認めない立場だが ⑩原発は稼働中、CO2を殆ど出さない特長があり ⑪ウクライナ危機はエネルギー安全保障の重要性を再認識させたため ⑫参院選で、原発がなぜ必要か、国民の理解をどう得るか、原発をやめるなら代替手段をどう確保するかについて議論すべきだ と、原発推進の記事を掲載している。

 このうち、②③はそのとおりだが、⑪は、ウクライナ危機はエネルギー安全保障の重要性と同時に原発の危険性も再認識させたため、このように原発推進に都合の悪いことは無視する体質が変わっていないようだ。

 また、⑩については、原発は、稼働中にCO2は出さないが、CO2よりずっと有害な「放射性物質」を放出して国民に迷惑をかけた上、その処分費用負担させる。また、普段からトリチウムを含む温排水を排出して海を温めていることも見逃せず、これらを都合よく無視するのも原発の特徴だ。

 ④⑤⑥⑦⑧⑨については、既に1)2)に記載しているとおりで、このように合理的な説明をしても、①⑫のように、「参院選で、原発がなぜ必要か、国民の理解をどう得るか、原発をやめるなら代替手段をどう確保するかについて議論すべき」などと、「原発が必要だ」と言わない国民は理解していないかのように書くところが、全体が見えてもいないくせに傲慢なのである。

 このような中、*1-4-1のように、⑬最高裁判決がフクイチ事故に「国の責任はない」とし ⑭住民側弁護団の馬奈木弁護士は 「それでも私たちはまだ原発をやり続けるんですかと最高裁から問われたようなものだ」と言い ⑮事故から11年経過しても住民が避難先から帰れない自治体があって ⑯事故の廃炉作業もおぼつかないのに ⑰与野党から原発再稼働を求める声が上がり ⑱政権は6月に「原発を最大限活用する」という方針を閣議決定した のだそうだ。

 私は、今、最も問われているのは、現在の意思決定権者の科学に対する総合的な理解力だと思う。また、経産省にあった旧原子力安全・保安院の担当者が、私が衆議院議員時代に私の議員会館事務所を訪れて、「原発は、絶対安全です」と何度も繰り返したのを鮮明に覚えているが、「3条委員会」になっても、原子力の専門家だけで構成され、「原発を稼働させたい」という動機のある規制委に、独立性があるとはとても言えない。

 何故なら、初代規制委員長の田中氏は、「ロシアが原発を攻撃してテロ対策施設がより重要になったのに、その施設がなくても稼働するという議論にするのがおかしい。急いで(対策を)やれというのが普通でしょう」と指摘しておられるが、こういうことを言い始めると規制委員長交代になるからである。

 また、*1-4-2は、⑲原発事故の翌年に原発に頼らない電気を届けるため設立された「グリーンコープでんき(福岡市)」が、「原発事故の賠償負担金を経産省の省令によって電気代に上乗せされたのはおかしい」と国を相手に起こした ⑳「託送料金(送電線使用料)」に使用済み核燃料の再処理費用など原発のコストが含まれ、フクイチ事故の賠償が膨らんだ分のうち約2兆4千億円も託送料に上乗せして消費者から薄く広く回収できるよう、経産省が2017年に省令を改正した と記載している。

 ⑲⑳は本当におかしいし、これは再エネの普及を阻んで原発を推進したい経産省の企みだと、私は思う。何故なら、他国は、再エネ普及に補助金を出し、再エネ普及のための送電線整備も行っているのに、日本は、大手電力会社が地域独占して総括原価方式を採用していた時代に整備した送電線で再エネ電力を送電させ、再エネ電力の送電料に利用者には電源選択の余地がなかった原発のコストや原発事故の処理費用まで含めているからである。

 結論として、私がこのブログで何度も述べたように、大手電力会社の既存の送電線を使って送電するのではなく、地域間の電力融通は鉄道や道路の敷地を用いて超電導電線を通すことによって行い、小売電力の配電は水道管・ガス管に沿って電線を埋設することによって行えば、既存の電力会社から独立した送配電システムになって関係のない経費は加算されない。そして、そのための経費は、変動費0の再エネを普及させるための投資なので、国が補助金を出せばよいのだ。

(2)核禁条約会議と被爆国の役割
1)被爆国の使命と日本政府の行動
 核兵器禁止条約は、核兵器の非人道性に焦点を当て、核兵器の製造・保有・使用や核兵器による威嚇を全面的に禁止する国際条約で、現在の批准国は62カ国・地域となっている。しかし、非人道性を訴え続けた日本の被爆者の運動が結実したのに、*2-1-1のように、日本政府は、署名・批准をしていない。

 核兵器に関する日本の重要性は、広島・長崎の惨禍を知る唯一の戦争被爆国で、「核兵器を絶対に使ってはならない」というメッセージを国際社会に広げる牽引役にふさわしいことだが、日本政府は核禁条約不参加の理由に、①核兵器国が1ヶ国も参加していない核禁条約は非現実的 ②核禁条約に反対している米国(同盟国)との信頼関係 を挙げて、③日本政府としては、オブザーバー参加もしないと表明した。

 しかし、④日本と同じ米国の「核の傘」の下にあるNATO加盟国のドイツ・ノルウェーやウクライナ危機を受けNATO入りに転換したフィンランド・スウェーデンはオブザーバー参加しており、これはロシアの核の脅威に欧州が直接向き合う中でも、核廃絶の目標を見据えて核禁運動に協調していく決意の表れに見える。

 そのため、*2-1-2も、⑤ロシアのウクライナ侵略により世界が高い核のリスクに晒されている今こそ「核兵器を許さない」と声を上げ、核廃絶への連帯を強める時で ⑥日本政府が参加しないのは極めて残念だ ⑦大国が核で張り合う恐怖の均衡の上に平和は成り立つのか と記載している。

2)「核保有≒抑止力」と言えるか?
 核禁止条約第1回締約国会議が、*2-2-1・*2-2-2のように、オーストリアの首都ウィーンで開かれ、最終日(2022年6月23日)に、*2-3-1のように、「ウィーン宣言」が採択された。会議の中で「長崎県被爆者手帳友の会」会長で医師の朝長さんが英語で演説し、「核保有国の加盟に向け、最大限の圧力をかけなければならない」「米国の『核の傘』の下にあって条約に参加していない日本について、とても悲しく被爆者は泣いている」と表明された。

 核禁止条約締約国会議の初代議長に選出されたのは、オーストリア外務省のクメント軍縮局長で、①ロシアのプーチン大統領が核兵器使用を示唆し、国際社会に動揺が広がる中 ②会議場には核軍縮の機運をこれ以上後退させてはならないとの切迫感があり ③条約に猛反発した米国などの核保有国には軟化の兆しもかすかに見えるが ④「唯一の戦争被爆国」である日本は米国の核抑止力に固執し、国際社会に落胆が広がった とのことである。

 日本政府は、⑤核保有国が参加しておらず、条約には実効性がない ⑥保有国と非保有国の橋渡し役こそ日本の目指すべき道だ と強調しており、⑦北朝鮮の核・ミサイル開発・中国の軍拡の中で米国の核抑止力に傾斜を深めたい本音があり ⑧各国関係者の間には日本の締約国会議欠席に批判が広がった のだそうだ。

 私は、武器はどれも非人道的だが、核兵器のように無差別大量虐殺を行う兵器は、やはり禁止すべきだと思う。さらに、①のように、核を持っていれば抑止力になるとは限らず、自国にマイナスのことをされれば(核など持っていなくても)懸命に闘うのが人間の習性であるため、他国にマイナスのことはしないよう心掛け、必要なことは率直に言うが、なるべく仲良くしておくのが最も戦争の抑止力になると考える。

 その点、日本の場合は、*2-2-4の尖閣諸島の例を挙げると、⑨中国艦船の領海侵入が常態化しているのに ⑩石垣市が尖閣諸島の字名変更に伴い、各島への標柱設置のための上陸を国に申請すると不許可にし ⑪尖閣周辺海域の現状は中国艦船が攻撃性を増し「乗っ取られている」という危機感があるのに ⑫政府は「遺憾である」「力による現状変更は認められない」の二言で片づけ ⑬国際社会に我が国の領土であることを明確に示していない のである。

 つまり、何をされても⑫⑬のように、自国の領土であることを主張することさえしなければ外交以前であり、本当に乗っ取られても誰も味方しないだろう。そのくせ、自国は大したこともないのに、むやみに他国を馬鹿にしたり批判したりして、敵を増やすだけ増やし、自らが被爆国であることも忘れて、⑤⑥⑦のようなことを言っているのだから、救いようがないわけである。

3)核兵器禁止条約第一回締約国会議で「ウィーン宣言」「ウィーン行動計画」採択
 核禁条約第一回締約国会議は、*2-3-1・*2-3-2のように、日本時間の6月23日夜遅く、①「核なき世界」の実現を国際社会に呼びかける「ウィーン宣言」と、②核廃絶に向けた具体的な取り組みをまとめた「ウィーン行動計画」 を採択して閉幕したそうだ。

 「ウィーン宣言」は、③核廃絶を実現する決意を再確認。核兵器が二度と使われない唯一の方法は核廃絶 ④核の使用や威嚇は国際法違反 ⑤未だ9か国が約1万3000の核兵器を保有していることを深く憂慮 ⑥核兵器保有国と核の傘の下にある同盟国が核兵器依存を弱めるために真剣に取り組まず、逆に核兵器を維持・強化していることは遺憾 ⑦核兵器は不名誉で正当性がないという強固な国際規範を構築 ⑧国際機関、NGO、被爆者、核実験被害者、若者団体などと連携 ⑨核軍縮と不拡散の基礎である核拡散防止条約は核兵器禁止条約と相互補完関係 ⑩核兵器禁止条約にまだ参加できない国にも「核兵器のない世界」という共通目標への協力を呼びかけ、核兵器の非保有国が条約に参加することを妨げる核保有国の行為を憂慮 等とした。
 
 また、「ウィーン行動計画」は、⑪条約の締約国を増やすため取り組む ⑫被爆者や核実験の被害者への支援や救済を進める ⑬核拡散防止条約とは補完し合う関係 ⑭「2つの条約の調整役」を任命する 等としているそうだ。

 なお、日本政府は核禁条約第一回締約国会議にオブザーバー参加もしなかったが、広島市の松井市長と長崎市の田上市長が出席し、国際NGO・平和首長会議を代表して演説されて、「(核兵器が)使われれば(世界)全体が滅ぶ」「人類全体の課題だ」「核兵器廃絶しかない」「日本政府がオブザーバー参加しなかったことは残念」等と、議場で訴えられたそうだ。

(3)日本の外交と安全保障について
イ)各政党の公約について
 外交・安全保障に関する各党の政策は、*3-1のとおりで、外交・安全保障としながら、これまでの他国へのバラマキ以外の外交の不十分さには触れず、防衛力強化の路線だけが目立つことには注意すべきだ。

 まず自民党は、①国家安全保障戦略を改定して新たに国家防衛戦略・防衛力整備計画を策定し ②NATO諸国の国防予算(GDP比2%以上)を念頭に、真に必要な防衛関係費を積み上げ ③来年度から5年以内に防衛力抜本的強化に必要な予算水準を達成し ④弾道ミサイル攻撃を含む我が国への武力攻撃に対する反撃能力を保有する としている。

 次に公明党は、⑤専守防衛の下、防衛力を着実に整備・強化し ⑥予算額ありきでなく、具体的に何が必要かを個別具体的に検討して真に必要な予算を確保する ⑦唯一の戦争被爆国として核共有に断固反対し ⑧非核三原則を堅持しつつ、核兵器禁止条約批准の環境整備をする としており、私は賛成だ。

 ④は、「反撃能力」と名を変えた「敵基地攻撃能力」であり、先制攻撃との線引きが危うい上、どういう状況の下で、どの国を対象にするのかについて疑問が多く、外交で解決できる場合も多いと思われる。

 また、①は防衛力強化だが、②③は、i)どこが敵国で ii)どういう装備を持っているので iii)外交でどう対処をしながら iv)追加的に必要な最小限の防衛装備は何で v)どの国と共同して防衛するのか を示しておらず、国の配置や歴史が異なるNATO諸国の国防予算(GDP比2%以上)と同レベルにするだけの話であるため、思考停止であると同時に無駄遣いが多すぎる。

 さらに、日本維新の会は、⑨日本の安全保障に対する不安を根本的に解消し、将来にわたり戦争を起こさず、国民の生命・財産を確実に守るため「積極防衛能力」を構築 ⑩防衛費のGDP比2%への増額、最先端の技術革新を踏まえた防衛力整備 ⑪憲法9条に自衛隊の明記等を行った上で核拡大抑止についてタブーなき議論をする としている。

 ⑨⑩⑪については、「積極防衛能力」を持てば、何故、国民の生命・財産を確実に守り、日本の安全保障に対する不安を根本的に解消できるかについての説明がない。むしろ、戦争によって国民の生命へのリスクは上がり、防衛費に割かれる予算のために年金・医療・介護・教育・保育などの社会保障予算が削られ、国民の財産は物価上昇や税・社会保障の負担増によって目減りすることを考慮していない。

 なお、国民民主党は、⑫自分の国は「自分で守る」理念に基づき、自立的安全保障体制を目指し ⑬同盟国・友好国との協力を不断に検証し ⑭抑止力の強化と自衛目的の反撃力を整備し ⑮サイバー、宇宙なの新領域に対処できるよう専守防衛に徹しつつ必要な防衛費を増額する としている。

 ⑫⑮の「新領域」「専守防衛」「自分で守る」理念は当然で、同盟国・友好国に頼りすぎは禁物だが、⑬は口先だけでなく真摯に検証して態度を決めなければ、同盟国は頼りにならず、周囲は敵ばかりという結果になるだろう。また、⑭は、核による抑止力の強化と敵基地攻撃能力の強化を言っていると思うが、これは昭和時代(一世代前)の戦争形態だ。

 一方、立憲民主党は、⑯弾道ミサイルなどの脅威への抑止力と対処能力強化重視 ⑰日米同盟の役割分担を前提としつつ着実な防衛力整備 ⑱防衛費は総額ありきでなく、メリハリのある予算で防衛力の質的向上を図り ⑲「核共有」は認めない ⑳尖閣諸島はじめ我が国の領域警備に万全の体制で備えるため「領域警備・海上保安体制強化法」を制定 とする。

 このうち、⑯は核による抑止力の強化と敵基地攻撃能力の強化を言っていると思うが、既に他国への侵略は悪とされ、核軍縮と核不拡散の基礎である核拡散防止条約と核兵器禁止条約が締結されている時代であるため、これは昔の戦争形態である。このような中、⑰⑱⑲⑳は、i)利害対立する敵国はどこか ii)それに対する防衛方法のイメージは何か iii)適切な外交を先に行ったか iv)それが効かない場合のみの防衛に焦点を絞ったか を明確にし、必要最低限の防衛予算を作るべきだ。

 また、日本共産党は、21)「敵基地攻撃能力」の保有など、「専守防衛」を投げ捨てて日本を「戦争する国」にする逆行を許さず 22)安保法制を廃止して立憲主義を取り戻し 23)軍事費2倍化を許さない 24)核兵器禁止条約に参加して唯一の戦争被爆国として核兵器廃絶の先頭に立つ とする。

 私も、21)、 23)、24)に賛成だ。また、22)も、法律の成立過程で内容が適切か否かの吟味があまりなされず、わかりにくくしたまま議論を進めて可決になだれ込んだ感があったため、何を想定し、どこまで外交で解決を図った後に、何が起これば、どういう論理で、集団的自衛権行使に移行するのかを、0ベースで検討しなおすべきだと考える(https://toyokeizai.net/articles/-/77597、https://www.nichibenren.or.jp/activity/human/complicity_secret/secret/problem.html 参照)。

 れいわ新選組は、25)専守防衛と徹底した平和外交で周辺諸国との信頼醸成を強め 26)日本は国連憲章の「敵国」条項によって、敵基地攻撃能力や核配備など重武装は不可能なので 27)唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約を直ちに批准し、「核なき世界」の先頭に立つことにより地域の安定をリードする とする。

 また、社民党は、28)ウクライナ情勢に便乗した防衛力大幅増強や「核共有」に反対 29)平和憲法の理念を活かし、外交の力で平和を実現  30)非核三原則を守り、核兵器禁止条約に署名・批准し、被爆国として核なき世界を目指す 31)沖縄の在日米軍普天間基地の閉鎖・撤去、県内移設断念を強く求め、辺野古に新基地は作らせない とする。

 私は、25) 29)には賛成だが、国同士の利害対立は外交だけでは解決しないこともあるため、防衛は外交のバックアップができるようにすべきで、無力では役立たないと思う。また、26)は事実だが、戦後75年も経過しているのに、未だに国連憲章に「敵国」条項があることを変えるべきではないのか? ただし、国連憲章の「敵国」条項がなくなったとしても、敵基地攻撃能力や核配備は一世代前の戦争方法であり、現在は使えない武器で無駄遣いにしかならないため、28) 30)には賛成だ。

 さらに、31)については、在日米軍普天間基地を閉鎖・撤去し、辺野古に新基地を作らなくても、(4)で述べるとおり、離島に基地を作っているため、あれもこれもは必要ない筈である。

ロ)「専守防衛」をどこまで問い直すのか
 神戸新聞は、6月20日の社説で、*3-2のように、①岸田首相はバイデン米大統領に防衛費の相当な増額の決意を伝えた ②専守防衛は戦争放棄と戦力不保持を定めた憲法9条に基づき、安全保障を巡る議論は「平和国家」としての戦後日本の歩みを踏まえたものでなければならない ③何を見直し何を守るのか、熟考と冷静な判断が求められる ④自民党は参院選の公約で「抑止力と対処力の強化」を掲げ ⑤防衛費はNATOが掲げるGDP比2%以上の目標を引用し ⑥5年以内に必要な予算水準の達成を目指すとしており、これまで1%程度だった防衛費が約5兆円上積みされ ⑦高市早苗政調会長は「必要なものを積み上げれば10兆円規模になる」と述べられた と記載している。

 ①④⑤⑥⑦のように、他国の現状を見つつ、国の位置関係や歴史的背景は無視して真似するだけでは、いくら金を使っても防衛はできず、無駄遣いにしかならない。何故なら、有効に防衛するには、その国固有の状況を分析して防衛の方針をたて、それに沿った外交・防衛計画を作って、ピンポイントで必要最小限の予算を充てるべきだからである。

 しかし、日本の場合は、太平洋戦争時に、この歴史的・地理的・経済的・科学的分析を行わず、満州事変では自作自演の鉄道爆破を行い、軍部が予算獲得のために争って、「やれやれ、どんどん」と他国に侵略して、敗戦に至った。

 そして、それが過去のことなら良いが、今でもその感覚が変わっていないと思われる局面が散見されるため、先人たちが決定した②は、今でも重要であり続けており、③のように、時代に合わせて何を見直し、何を守るかは、慎重な判断が求められるわけである。

ハ)憲法9条の変更について
 私は、岸田政権が憲法9条を変えたがっているというよりは、自民党にそういう声が強いのだと思うが、*3-3のように、①ロシア軍のウクライナ侵攻を利用して、日本の防衛力強化や核シェアリングを主張する人が少なくなく ②「日本に憲法9条があるから、ウクライナのゼレンスキー大統領は日本に武器支援を求めなかった」というのは事実で ③9条のおかげで日本は世界の信頼を勝ち得てきたし ④「9条を高く掲げることが日本の平和を守り抜く唯一の道だ」というのも本当で ⑤参院選では憲法9条を守ろうとする候補者を増やすべきであり ⑥「軍事費を増やせば、社会福祉・医療・介護・教育等の費用が使えなくなる」というのも事実だと思う。

 そもそも、「社会福祉・医療・介護・教育等の費用は、消費税から支払うものだ」と決めつけている人がいるのも、それなら他の税は何に使うのかと思われ、世界で唯一の非論理的な税の使い道を唱えているのも日本だけなのである。

(4)武力攻撃事態における離島の国民保護計画について
 琉球新報が、6月20日、*4-3のように、①(沖縄戦の教訓から)有事に沖縄県民140万人の避難は非現実的 ②(台湾有事を想定して米軍が南西諸島に臨時の攻撃拠点を置くという報道から)攻撃すれば沖縄が反撃されるのは当然で、沖縄から移動すべきは住民ではなく軍事基地 ③(ウクライナで成人男性の出国が制限されていることについて)戦争に国民を動員する権力の姿勢は疑問 ④女性への性暴力がない戦争はなく、自分が犠牲になることも踏まえて考えるべき 等の意見を掲載した。
 
 このうちの③④について、「ウクライナの成人男性は出国が制限されて気の毒だ」「戦争が始まると性暴力に至らなくても、男性が威張り出してたまらないな」と、私は感じていた。さらに、経済の視点から見ると、戦争が始まれば生産活動をやめて破壊活動に移るため、命がけで働いても物資が不足しインフレが起こる。そのため、戦争によいことはないが、侵略されたら自衛するしかないだろう。

 また、①については、*4-1に記載されているように、「軍隊は住民を守らない」という沖縄戦の教訓があり、「自衛隊がある程度は取り残された人を守りながら戦闘することも想定されるが、中短距離弾道ミサイルや巡航ミサイルの攻撃に耐えながら住民を避難させる余力はないため、自治体にやってもらうしかない」というのが実態かもしれないが、こういう場合、他国はどうしているだろうか?

 ②については、安倍元首相が「台湾有事は(存立危機事態に当たるため)日本有事」と言われたが、日本が「(台湾を含めて)1つの中国」としている限り、台湾への支援は無理があろう。

 しかし、(日本の領土である)尖閣諸島で不測の事態が発生した場合は沖縄県が戦場になり、沖縄県民は人間の安全保障を要求しているが、有事の際の国民保護法による島外避難には大量の航空機や船舶を必要とするため、全住民の島外避難はほぼ困難だと記載されている。

 そして、*4-1・*4-2は、他国からの武力攻撃事態などの有事に備え、自治体が住民の避難誘導をする国民保護計画に基づいて、石垣市・宮古島市の全市民避難に必要な航空機の数や避難所要期間を見積もったところ、宮古島は150人搭乗の航空機で381機(観光客分を含む)、石垣島は同435機で1日45機運航した場合には全市民の避難にかかる期間が「9・67日」と見込まれたそうだ。

 ただし、⑤武力攻撃事態等の有事が何の予兆もなく起こって、まだ観光客がおり ⑥150人搭乗の航空機しか使えず ⑦あらかじめ避難した住民は全くいない という条件設定は不自然だ。そして、現在は人間第一に考える時代であるため、離島に自衛隊基地を作るからには沖縄本島か本土の希望する場所にあらかじめ住宅を提供し、普段から使えるようにしておいて、戦闘が近づいてから避難しなければならないのは働き盛りの屈強な人のみにし、(自衛隊機の方が危ないため)大型の民間機で避難させるのが当たり前だろう。

(5)おかしな日本外交の事例
 日本の外交は、他国に甘えながら理屈の通らない苦情を言うことが多い。その一つが、*5-1の①中国が東シナ海の日中中間線の中国側海域で、ガス田の掘削施設を完成させたのを確認し ②日本外務省が「度重なる抗議にもかかわらず、一方的な開発を進めていることは極めて遺憾」として中国に強く抗議した という事実だ。

 何故なら、①については、日中中間線付近であっても中国側の海域でガス田掘削施設を完成させるのは、中国の自由で他国に相談する理由はないため、②のように、「一方的な開発」として「度重なる抗議」をするのがおかしいからである。そのため、「遺憾(=期待したとおりにならず、残念に思うこと)」という程度の抗議しかできないわけだが、もともと期待に筋が通っていないため誰も気に留めず、抗議する度に日本外交の質の悪さが露呈するだけなのだ。

 本当に天然ガスが必要なら、日本もその近くでガス田開発をしたり、もっと運搬に便利な岩船沖油ガス田(新潟県胎内市の沖合約4km)はじめ阿賀沖油ガス田・磐城沖ガス田・片貝ガス田・申川油田・東新潟油ガス田・南関東ガス田・南長岡ガス田・勇払ガス田など日本列島近くのガス田を活用したり、メタンハイドレート(メタンガスが海底下で氷状に固まっている物質)を採取したりすればよく、自分は何の工夫も努力もせずに他人の妨害をすることばかり考えているのは、日本国民から見ても最低なのである。

 一方、*5-2-1・*5-2-2のように、スペインで開催されたNATOの首脳会議への岸田首相の出席に合わせ、日本政府は韓国・オーストラリア・ニュージーランド4ヶ国に首脳会合を提案して開催し、インド太平洋で存在感を増す中国を念頭に安全保障や経済をめぐる懸案について協議し、ロシアによるウクライナ侵攻に対する連携の強化も確認した。

 そのため、*5-3-1・*5-3-2は、③ロシア議会で6月に地下資源法が改正され、資源開発に携わる外国企業の株式譲渡が盛り込まれ ④ロシアのプーチン大統領が日本商社も出資する「サハリン2」の運営をロシア企業に譲渡する大統領令に署名し ⑤発表で初めて知った萩生田経産相は「直ちにLNG輸入ができなくなるわけではないが、不測の事態に備えた万全の対策をとる必要がある」と言い ⑥日本はG7主導のロシア制裁に足並みを揃えてロシア産石炭・石油の段階的禁輸を決めたが ⑦LNGは増産余地が少なく代替調達先を見つけるのも難しいので、今後もロシアから輸入を続ける考えだったが ⑧首相がロシア・中国を非難して日本とNATOの関係強化を強調したのはロシアだって嫌だっただろう などとしている。

 しかし、日本の外交は、⑥のロシア産石炭・石油の段階的禁輸ほか資産凍結(支払規制・資本取引規制)、輸出入禁止、ロシア連邦政府等の日本での新規証券発行・流通禁止、G7サミットでのロシア産金の輸入禁止決定等を既に行い、ロシアに対して既に宣戦布告をしているも同然の状態であるため、③④はロシアから見れば日本に対し「目には目を」という当たり前のことをしたにすぎないだろう。そのため、そういうことも覚悟せず、⑤のように「経産相が発表で初めて知った」などと言うのはお話にならず、⑦は戦争をふっかけながらロシアに甘えているにすぎないため、⑧のように「ここまでしたから嫌だっただろう」などという話ではないのだ。

 そのため、私は、北海道に自衛隊を手厚く配備した方がいいのではないかと思っているくらいだが、一方で、ロシアの決定は、サハリン2から手を引き、国内産のLNGと再エネに代替するチャンスにもなった。

 従って、今後は、⑨家で節電・創電する ⑩電動車に乗る ⑪再エネを無駄にせず、利用し尽くす ⑫LNGは国内産で代替する ⑬「電気はタービンを回さなければできない」「日本は島国で資源がないから、エネルギー自給率が低いのは当然」などという先入観を捨てる ⑭それをやるための法整備やインフラ整備を全力で行う などが必要になる。

 また、全国知事会は、*5-4-1のように、「原発に対しミサイル攻撃が行われる事態になった場合は、自衛隊による迎撃態勢や部隊配備に努めること」「原子力防災対策必要地域が30km圏内まで拡大されたので、社会基盤を整備するため電源三法交付金対象区域を拡大すること」を提言案に盛り込んだそうだが、ミサイル攻撃への自衛隊の迎撃については、私が現職中に自民党の部会で既に質問し、「迎撃しても100発100中ではない」という答えを得ている。また、風向きや地形によって異なるため、「30km圏」よりもSPEEDIの方が正確な汚染範囲の表示に近いが、電源三法交付金が原発のコストに含まれることは間違いないのである。

 従って、玄海原発の地元である佐賀新聞が、*5-4-2に、⑮強力な気候変動対策を進めることは急務であり ⑰先進国の殆どが気候変動対策として石炭火力の廃絶を決め、再エネの急速な導入を進め、発送電分離も実現済で ⑱再エネ価格は急速に下がって多くの国で最も安い電源となったが ⑲日本は豊かな再エネ資源があるのに、火力発電への依存が続いて、再エネの普及が遅れている ⑳ガソリン高騰対策補助金・海外化石燃料調達・既存原発早期稼働等の目先の対策ではなく、エネルギーの海外依存を減らし、いかに安定供給を実現するかという長期的な視点に立った政策論争が欠かせない 等と記載しているのに、全く賛成だ。

・・以下、工事中・・

・・参考資料・・
<原発事故と原発>
*1-1:https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/sangiin/pledge/policy/06/ (NHK 2022年6月16日) 各党の公約「エネルギー・環境」
●自由民主党
 エネルギー・物資の安定供給のため、内外の資源開発や再生可能エネルギーの最大限の導入、安全が確認された原子力の最大限の活用を図る。カーボンニュートラル実現のカギとなる水素・アンモニアの商用化につながる技術開発と実装に向けた支援措置を新設する。脱炭素を成長分野として位置づけ、今後10年で150兆円超の官民投資の実現に向け措置を行う。
●立憲民主党
 2030年に温室効果ガス排出を2013年比で55%以上削減し、2050年までの早い時期にカーボンニュートラルを実現する。2030年までに省エネ・再エネに200兆円を投入する。2050年に2013年比で60%省エネする一方、再エネ電気を100%にし、化石燃料、原子力発電に依存しない社会を実現する。原子力発電所の新増設は認めない。
●公明党
 経済安全保障の観点から一次エネルギー供給の国産化を強力に推進し、年間20兆円に及ぶ化石燃料の輸入の最小化を目指す。徹底した省エネや再エネの主力電源化に向けた取り組み等を通じて、原発の依存度を着実に低減しつつ、将来的に原子力発電に依存しない社会を目指す。
●日本維新の会
 東電福島第一原発事故の教訓を踏まえ、原発の再稼働にかかる国の責任と高レベル放射性廃棄物の最終処分などに係る必要な手続きを明確化するため、「原発改革推進法案」を制定する。原発再稼働にあたっては、各立地地域に地域情報委員会を設置し、住民との対話と合意形成の場をつくる。水素などの活用や研究開発に積極的に取り組む。
●国民民主党
 電気料金の値上げと電力需給のひっ迫を回避し、富の海外流出を防ぐため、法令に基づく安全基準を満たした原子力発電所は再稼働するとともに、次世代炉等への建て替えを行う。 再生可能エネルギー技術への投資を加速し、分散型エネルギー社会の構築を目指し、洋上風力、地熱の活用に注力する。
●日本共産党
 2030年度までにCO2を50~60%削減する(2010年度比)ことを目標とし、省エネルギーと再生可能エネルギーを組み合わせて実行する。エネルギー消費を4割減らし、再生可能エネルギーで電力の50%をまかなえば60%の削減は可能。即時原発ゼロ、石炭火力からの計画的撤退をすすめ、2030年度に原発と石炭火力の発電量はゼロとする。
●れいわ新選組
 2030年の石炭火力発電ゼロ、2050年のカーボンニュートラル達成のための大胆な「自然エネルギー」の地域分散型の普及を目指す。自然エネルギー100%達成までのつなぎのエネルギー源の主力はガス火力とする。原発は即時禁止し、国有化する。立地地域への補助金は継続、新産業への移行には国が責任が持つ。
●社会民主党
 脱原発を進める。「原発ゼロ基本法案」を成立させ、原発・原子力関連施設の廃止に向けた具体的なロードマップを作成する。老朽原発の再稼働を許さない。2050年までに自然エネルギーへの完全転換や温室効果ガス排出ゼロを達成する。そのために、地球環境と両立する産業の育成や雇用の創出を推進する。
●NHK党
 安定的なエネルギー供給のために、多様なエネルギー源を採用するべき。原子力発電は極めて重要なエネルギー源として位置づけ、安全が確認された原発について、現状においては電力供給の重要な選択肢として再稼働の検討を政府に積極的に求めていく。

*1-2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15327572.html?iref=pc_shimenDigest_top01 (朝日新聞 2022年6月18日) 原発事故、国の責任認めず 最高裁、避難者訴訟で初判断 対策命じても「防げず」 裁判官の1人、反対意見
 東京電力福島第一原発事故で被害を受けた住民らが国に損害賠償を求めた4件の集団訴訟で、最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)は17日、国の責任を認めない判決を言い渡した。「現実の地震・津波は想定よりはるかに大規模で、防潮堤を設置させても事故は防げなかった」と判断した。裁判官4人のうち3人の多数意見で、1人は国の責任を認める反対意見を述べた。原発政策は「国策民営」で進められてきたが、賠償義務は従来通り東電だけが負うことになる。後続の同種訴訟でも国の責任は否定されていくとみられる。菅野裁判長、草野耕一裁判官、岡村和美裁判官による多数意見はまず、福島第一原発の事故以前の津波対策について「防潮堤の設置が基本だった」と位置づけ、「それだけでは不十分との考えは有力ではなかった」とした。そのうえで、2002年に国が公表した地震予測「長期評価」に基づき、東電子会社が08年に計算した最大15・7メートルの津波予測は「合理性を有する試算」と指摘。国が東電に対策を命じた場合、「試算された津波に対応する防潮堤が設置されたと考えられる」とした。一方で現実に発生した地震や津波は長期評価の想定よりも「はるかに大規模」で、仮に防潮堤を設置させていても「海水の浸入を防げず、実際の事故と同じ事故が起きた可能性が相当にある」と判断。国が規制権限を行使しても事故は防げず、国家賠償法上の違法性はないと結論づけた。原告側は事故の防止策として、防潮堤に加えて重要設備の浸水対策も検討できたと主張していた。しかし多数意見は、事故の前に浸水対策を定めた法令や知見はないなどと退けた。地裁、高裁段階で主要な争点になった長期評価そのものの信頼性や、長期評価に基づく巨大津波の予見可能性については、明確な判断を示さなかった。一方、反対意見を述べた検察官出身の三浦守裁判官は、国の規制権限は「原発事故が万が一にも起こらないようにするために行使されるべきもの」と強調した。信頼性が担保された長期評価を元に事故は予見でき、浸水対策も講じさせれば事故は防げたと指摘。国は東電と連帯して賠償義務を負うべきだと主張した。東電と国を訴えた集団訴訟は全国で32件あり、約1万2千人が計約1100億円の賠償を請求している。最高裁は、先行した福島、群馬、千葉、愛媛の4訴訟について判断。東電に対しては3月に約3700人に計約14億5千万円の賠償を確定させた。この日は、高裁段階で結論が割れた国の責任について初の統一判断を示した。判決後、松野博一官房長官は会見で「引き続き被災された方々に寄り添い、福島の復興再生に全力で取り組みたい」と述べた。
■<解説>不作為のそしり、免れない
 対策を取ったとしても事故は防げなかった、だから国に責任はない。東京電力福島第一原発事故をめぐる最高裁判決は、こう言っているに等しい。津波予測の信頼性や、何度も対策を求める機会があったことには踏み込まず、事故を回避できたかどうかだけで判断した。当時の「緩い」規制の水準を追認。国が命令を出さなかった妥当性について論じることを避けたとも言える。原発は国策で推進されてきた。事故の被害は取り返しがつかないからこそ、国の規制は専門性を踏まえて最善を尽くすことが期待されてきた。「深刻な災害が万が一にも起こらないように――」。1992年の四国電力伊方原発をめぐる最高裁判決は、こう説いた。しかし、その「万が一」が起きてしまった。2002年の予測公表から9年近くの時間があり、津波が弱点であること、炉心溶融に至る可能性があることも議論されていた。にもかかわらず、東電も国も動きが鈍いままだった。事故の結果の大きさを考えると、「規制当局に期待される役割を果たさなかった」という仙台高裁判決の指摘はなお重い。今回の最高裁判決での反対意見も「規制権限の行使を担うべき機関が事実上存在していなかった」と国の対応を批判した。機器の防水など最低限の対策をしていれば、被害は少しでも小さくなったかもしれない。不作為のそしりは免れない。岸田政権が閣議決定した骨太の方針には、原発の最大限活用が盛り込まれた。安全最優先をうたうものの、原子力規制委員会は審査を済ませた原発でもリスクは残ると明言している。事故は、対策の落とし穴を突いて起こるものだ。事故が起きても国は責任を取らない。その事実を踏まえたうえで、原発活用の是非は議論されるべきだろう。
■判決骨子
 ・福島第一原発の事故以前の津波対策は防潮堤の設置が基本だった
 ・国の地震予測「長期評価」に基づく東電の津波予測には合理性があった
 ・だが、実際の地震・津波は長期評価に基づく想定よりはるかに大規模だった
 ・国が長期評価を前提に東電に防潮堤を設置させても事故は避けられなかった

*1-2-2:https://www.asahi.com/special/10005/TKY201104090495.html (朝日新聞 2011年4月9日) 津波の高さは地上から4~5メートル、福島第一原発
 東京電力は9日、福島第一、第二原発の東日本大震災による津波被害の調査結果を公表した。第一原発1~4号機(標高10メートル)の海側壁面で確認された津波の高さは14~15メートルで、地上から4~5メートルの高さまで波が達したとした。元々は敷地には達しない想定(高さは5.7メートル)だったが、東電は「今後検証する」としている。壁面の変色などの痕跡から高さを求めた。このほか、上空からの写真に津波による浸水状況を示した画像や、第二原発の敷地内に流れ込んだ津波の様子を撮影した写真なども公開した。

*1-2-3:https://www.asahi.com/special/10005/TKY201104060163.html (朝日新聞 2011年4月6日) 福島第一原発の安全不備 非常設備は改修せず
 東京電力の福島第一原発が津波に襲われた後、被害が拡大した理由に、非常用ディーゼル発電機などの設置場所など安全設計上の問題があった疑いが浮上した。1970年代から第一原発の運転を続ける中で、東電は改良工事など対策を講じることはできなかったのか。
■「大工事になり金かかる」関係者証言
 「福島第一原発は、ほかの原発と比べても極端に津波に弱い」。原発の安全確保の基本方針を決める原子力安全委員の一人は、事故から復旧の見通しが立たない中で、こう指摘した。福島第一原発は、国内の商業用原発としては最も古い部類に入り、60年代から70年代にかけて建設された。その後、耐震性などを強化するため、70~80年代にかけて大規模な改良工事が行われた。この工事にかかわった元東電社員の原子力技術者によると、各建屋につながれている電気ケーブルやパイプなどをコンクリートで覆い、岩盤と接するように工夫した工事などが繰り返されたという。ただ、今回、津波の被害を拡大させた疑いがある、非常用ディーゼル発電機の設置場所や、海水ポンプがほぼむき出しの状態で置かれていたことを見直すことについては、この技術者は「検討課題にはなっていなかった」。この理由について、原子力技術者は「想定した津波の高さで原子炉建屋は安全な位置にあると判断していることがまずあるが、発電機の位置などを変えようとしても、原子炉建屋の中に収納できるようなスペースはなく、設計の大幅な変更につながる。その発想は当時なかった」。また、東電の中堅幹部は、「もし、改修に踏み切ったとしたら、大規模な工事になり、多額のカネがかかる。当時は設計通りに作ることが至上命題だった」と話した。この背景には、60~70年代の建設当時、原発先進国・米国の技術を移入し、日本側はそれを学ぶ過程にあったことがある。東電元幹部はこう説明する。「福島第一はゼネラル・エレクトリック(GE)の設計を東芝と日立製作所が試行錯誤しながら学ぶ練習コースみたいなものだった」。福島第一原発に六つある原子炉のうち、1~5号機はGEが開発をした、「マーク1」と呼ばれるタイプの沸騰水型炉。関係者によると、福島第一の非常用発電機の場所や、ポンプの構造は、GEの基本設計の通りだという。一方、6号機からは、原子炉建屋により余裕のある「マーク2」が採用され、70年代中ごろから90年代にかけて建設された福島第二と、柏崎刈羽両原発では「マーク2」の改良炉が主になっている。非常用発電機の位置やポンプを覆う建屋の建設も、東芝や日立製作所が経験を積み、改良していった点だ。だが、後発の原発に盛り込まれた安全設計の進展が、福島第一に活用されることはなかった。原子力技術者は「福島第二などの建設からも何年もたっているわけで、なぜ、福島第一に安全思想をリターンしなかったのかという点は、この大震災があったからこそ悔やまれる。東電は今後、厳しく検証を迫られることになるだろう」と指摘した。
■「後から直すと、当初の対策が甘かったと指摘される」
 一方、「日本では大きな原発事故はありえない」という、「安全神話」に頼る意識も影響した。東日本大震災が起きる前から、想定以上の津波が起きる危険性は指摘されていた。「防波堤をもっと高くできたはずだ」という声は東電社内でも起きている。ただ、東電の中堅幹部がかつての上司に「なぜ改良しなかったのか」と聞いたところ、「後から高くすると、当初の津波対策は甘かったという指摘を受ける。それを避けたかった」ということを言われたという。この中堅幹部は「非常用発電機を原子炉建屋に移すことについても、同じ考えがあったと思う」と話す。安全確保を目的とした、国の規制も改良を妨げたという指摘もある。原子力安全委員の一人は「日本は非常用発電機一つの位置を変えるにも、複雑な許認可が伴う。いまさら言っても遅いが、そのあたりが硬直化している」と話した。

*1-2-4:https://nordot.app/741559458874146816 (共同 2021/3/10) 震災4日前、東電が報告した大津波の想定、「砂上の楼閣―原発と地震―」第9回
 2008年夏、東京電力は福島第1原発を襲う可能性がある大津波の想定について、対応を「先送り」した。だが、新たな難題が持ち上がる。平安時代の869年に起きた貞観地震の大津波が、福島沿岸に及んだことが解明され始めたのだ。政府の地震調査委員会が貞観津波の研究成果を公表すると知った経済産業省原子力安全・保安院に対し、東電は以前から社内で計算していた高さ15・7mの津波想定を初めて報告した。東日本大震災の4日前のことだった。

*1-3:ttps://www.kochinews.co.jp/article/detail/572334 (高知新聞社説 2022.6.19) 【原発避難判決】「想定外」なら免責なのか
 東京電力の福島第1原発事故から11年余り。避難した住民らが国に損害賠償を求めた集団訴訟で、最高裁は「想定外」の災害を理由として、国の賠償責任を否定した。東電を規制する立場にある国の法的責任の有無について事実上、決着した格好だ。後続の関連訴訟に大きな影響を及ぼすことになる。同様の裁判は全国で約30件あり、今回は福島、群馬、千葉、愛媛の各県で2013~14年に提訴された4件の統一判断。国とともに被告となった東電に関しては最高裁でことし3月、約14億5千万円の賠償責任が確定している。国の責任は高裁段階で群馬訴訟が否定。ほかの3件は認めており、判断が割れていた。一連の裁判では、巨大津波を予測できたか、対策をとっていれば事故を回避できたかどうかが大きな争点となってきた。政府の地震調査研究推進本部が02年に地震予測の「長期評価」を公表し、福島沖を含む太平洋側の広い範囲で、マグニチュード(M)8級の大地震が起こる可能性を指摘。大津波の恐れを警告した。これを根拠に東電の子会社が08年、福島第1原発に最大で約15・7メートルの津波が到達すると試算している。原告の住民側は、それらの予測に基づいて国が防潮堤設置や建屋の浸水対策を命じていれば、全電源の喪失による事故は免れたと主張。一方の国は、長期評価は精度や確度を欠いていたと反論していた。だが、最高裁は津波の予見性に関する評価を避け、「想定外」の自然災害で事故は回避できなかったと結論付けた。実際の津波は規模などが試算を超えており、国が対策を命じていたとしても浸水の可能性は高かったとした。東電の説明をうのみにする旧原子力安全・保安院の規制権限の機能不全を批判しつつも、結果論から極めて形式的に因果関係を否定したと言える。「想定外」なら免責されるというに等しい。安全性を担保すべき規制と事故に因果関係がないのであれば、原発活用の前提そのものが説得力を失おう。何の落ち度もないにもかかわらず、古里を失い、人生を狂わされた住民らには、極めて非合理な結論と映ったに違いない。ただ、事故との直接的な因果関係は認められなくても、国は原発を推進してきた道義的な責任から逃れることはできまい。裁判が長期に及び、原告約3700人のうち、110人以上が古里に戻ることなく亡くなった。なかには自殺とみられるケースもあった。この事実を政府、東電とも改めて重く受け止めなければならない。避難者はいまもなお、約3万人に上る。今回の4件の訴訟を含めた一連の裁判では、文部科学省の「原子力損害賠償紛争審査会」が11年8月に策定した指針を上回る損害が認められている。国は避難者が提訴しなくても被害実態に見合う賠償がきちんと受けられるよう、真摯(しんし)に対応する責任がある。

*1-4-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15328653.html (朝日新聞 2022年6月19日) (「国策」の責任 原発訴訟:中)試される規制委の独立性
 「それでも私たちはまだ原発、やり続けるんですかと、最高裁から問われたようなものだ」。17日午後、東京都内で開かれた記者会見で、住民側弁護団の馬奈木厳太郎弁護士はそう訴えた。最高裁判決が東京電力福島第一原発の事故について、国の責任はないとしたからだ。事故から11年が過ぎた今も住民が避難先から帰れていない自治体がある上、廃炉作業もおぼつかない。事故は現在進行形だ。だが、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰や電力不足などを背景に、与野党から原発再稼働を求める声が上がる。「電気料金の値上げにどう向き合うかが足りない。再稼働にもう一歩踏み込んでほしい」。5月、エネルギー問題に関する首相への提言を議論した自民党の会議で、細野豪志衆院議員はそう発言した。今は自民党だが、原子力規制委員会発足時の民主党政権の環境相。規制委の「生みの親」でもある。求めたのは、テロ対策に関わる施設が未完成でも再稼働を認めること。地震や津波の対策と比べ、優先順位が低いという。政権も前のめりだ。岸田文雄首相は4月、再稼働への審査について「合理化、効率化を図る」と言及。「どこまで再稼働ができるかの追求をしなければならない」と述べた。政権は6月、原発を「最大限活用する」方針を閣議決定した。問われているのは、規制委の独立性だ。原発は「国策民営」で進められてきた。事故当時、規制を担っていた旧原子力安全・保安院は、経済産業省にあり、推進と規制が同居。国会事故調査委員会が報告書で、電力会社の言いなりになる「規制の虜(とりこ)」だったと指摘するほどだった。そのため規制委を、大臣から指揮や監督を受けず、独立して権限を行使する「3条委員会」にした。原発事故の反省と教訓から発足した規制委。安全対策の新たな基準は、事故前に比べてさまざまな面で厳しくなった。それを一度クリアした原発でも、新たな知見が出てくれば基準を引き上げ、対策を義務づける「バックフィット」制度を採用。規制委の会合は原則公開し、電力会社などと面会した場合は議事録をつくるルールを導入した。そもそも規制委を3条委員会にすることは、野党時代の自民、公明両党が求め、当時与党だった民主党政権提出の法案を修正して実現した。規制の独立は事故の教訓の本質とも言える。初代の規制委員長を務めた田中俊一氏は取材に対し、ロシアが原発を攻撃したことでテロ対策の施設がより重要になっているとして「その施設がなくても、という議論にすることがおかしい。急いで(対策を)やれ、というのが普通でしょう」と指摘。「規制委を(独立性の高い)3条委員会にしたのは自民党。初心を忘れている」と話す。規制委の審査を通った原発であっても、事故のリスクは残る。国の責任は結局、あいまいなままだ。

*1-4-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15328869.html (朝日新聞 2022年6月20日) (「国策」の責任 原発訴訟:下)負担は国民、議論なく 賠償、電気代に上乗せ
 福岡地裁で一番広い101号法廷に5月16日、生協の組合員ら約30人が詰めかけた。初めて参加した幼い子連れの母親もいた。「原発事故の賠償負担金を経済産業省の省令によって電気代に上乗せしたのはおかしい」。電力小売事業者「グリーンコープでんき」(福岡市)が、国を相手に起こした訴訟の7回目の口頭弁論だった。「難しくて頭に入らなかった」「裁判官の理解も深まっているのでは」。報告集会で思い思いに感想を述べあった。「でんき」の母体は、九州などで食料品の購買事業などを営むグリーンコープ生協(組合員約42万人)。原発事故の翌年、原発に頼らない電気を届けるため設立された。2016年から電力小売りにも参入した。自分たちが使う電気がどんな電気なのか知りたい。それが出発点だった。野菜の産地や肥料、農薬を調べるように、電気料金の仕組みをひもとくと「託送料金(送電線使用料)」に使用済み核燃料の再処理費用など原発のお金が含まれていた。さらに、事故の賠償が膨らんだ分のうち約2兆4千億円を託送料に上乗せし、消費者から薄く広く回収できるよう、経産省は17年に省令を改正した。国会審議を通さず、経産省の判断で決められる。「どう考えてもおかしい」。組合員の声を受け、代表理事だった熊野千恵美さん(56)らが弁護士を交えて問題点を話しあった。経産省によると、負担額は標準世帯で月18円程度。回収期間は40年。組合員の討議では「負担してもよい」という意見も出た。お金が足りなければ被害者救済が遅れるおそれがある。それでも、経産省が勝手に大事なことを決めるやり方は、子どもたちの未来のためにも認められなかった。「国民に義務を課すには法律が必要。民主主義の根幹を問う裁判だ」。弁護団の馬場勝弁護士はそう説明する。政府は原発事故の賠償費用を東電のほか、原発を持つ大手電力会社や、新電力会社にも負担させた。一方、事故の法的な責任については何も言わなかった。原子力損害賠償法では、事故が起きたときの国の役割は、事業者の「援助」に限ってきたためだ。国から被害者への謝罪もない。「経産省からおわびが一言もないのは理解に苦しむ」。11年3月31日。経産省の会議室に、総務官僚だった岡本全勝氏の強い口調が響いた。当時、津波被災地域を支援する事務方トップだった。原発事故の対応は、津波被災者の支援体制に比べ大幅に遅れた。会議は経産省が主催。津波対策をまねて、福島の避難者を支援する組織を立ち上げようと、各省庁の局長級を集めた。だが、経産省は各省庁に課題と報告をさせるだけで方針をはっきり決めない。原発事故が起きた後に被災地や住民がどうなるかの想定を全くしてこなかった。それが露呈した。各省庁の担当者はいら立ちを感じていた。岡本氏が発言すると、出席者は一様に頷(うなず)いたという。その後、復興庁次官や福島復興再生総局事務局長になっても、岡本氏は経産省から復興庁に出向してくる官僚らに言い続けた。「なぜ経産省は謝らない。原子力安全・保安院がお取りつぶしになり、謝る組織がなくなったからか」。今月5日、東電は原発避難者訴訟のうち、3月に判決が確定した「いわき訴訟」の原告団を福島県双葉町の福島復興本社に呼んだ。集団訴訟の原告団に初めて謝罪する場を設けた。「人生を狂わせ、心身ともに取り返しのつかない被害を及ぼしたことなどに心から謝罪します」。社長名の文書を代表が読み上げただけだが、公の場で非を認めたことに、原告からは一定の評価もあった。政府関係者によると、17日の最高裁判決で国の責任が認められた場合、岸田文雄首相による謝罪も検討されていた。だが、国が勝訴したことで必要はなくなった。不作為の説明も謝罪もないまま、事故処理のお金を国民が負う構造は続く。

*1-4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220627&ng=DGKKZO62073210X20C22A6PE8000 (日経新聞社説 2022.6.27) 参院選2022エネルギー危機克服へ原発の役割問え
 電気やガス料金が急速に上がり、電力不足への警戒が強まるなかでの参院選である。エネルギーは私たちの暮らしや企業活動を支える血液だ。誰もがいつでも、手ごろな価格で利用できるようにすることは国家の責務である。これをどう取り戻すのか、各党は道筋を示すことが求められる。岸田文雄首相は「電気料金の上昇を抑制し、需給の安定を確保する対策が必要だ」と語り、節電に協力した家庭にポイントを付与し、電気料金の負担を軽減する新制度の導入を表明した。無駄を排しエネルギー消費を減らす節電の定着は重要だ。ただし、「電気が足りない」という異常事態をなぜ招いたのか。問題の原点にたち返り、長期的な対策を急がねばならない。争点となるのは供給力の整備である。脱炭素社会への移行をにらみ、再生可能エネルギーを重視する点で各党の主張に大きな違いはない。分かれるのは原子力発電の活用だ。岸田首相は「様々なエネルギーをミックスする形で将来を考える。一つの重要な要素が原発だ」と語り、自民党は「安全が確認された原発の最大限の活用」を公約に掲げる。野党でも日本維新の会が「安全性を確認できた原発の再稼働」を訴える。国民民主党の公約は既存原発の再稼働とともに、「次世代軽水炉や小型モジュール炉(SMR)などへの建て替え」にも言及する。これに対し、与党の公明党は再稼働を認めたうえで、「将来的に原発に依存しない社会を目指す」と主張する。野党の立憲民主党は「原発の新増設を認めない」との立場を示す。2011年の東京電力福島第1原発の事故から11年が経過しても、国民が原発に向ける視線は厳しい。一方で原発には稼働中、二酸化炭素(CO2)をほとんど出さないという特長がある。ウクライナ危機はエネルギー安全保障の重要性を再認識させた。参院選は原発の位置付けを問う機会だ。原発がなぜ必要なのか。そのために国民の理解をどう得るのか。原発をやめるなら代替手段をどう確保するのか。説得力ある形で示す必要がある。長期視点で議論をたたかわせてほしい。

<核禁条約会議と被爆国の役割>
*2-1-1:https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/817800 (京都新聞社説 2022年6月19日) 核禁条約会議 被爆国の使命果たすべき
 「核兵器を絶対に使ってはならない」という国際社会の確固たるメッセージを広げることが、今こそ求められている。21日から核兵器禁止条約の第1回締約国会議がオーストリアで開かれる。発効1周年の1月の予定から2度延期されての初会議である。この間にロシアはウクライナへ侵攻し、核使用の脅しをかける現実的脅威に世界は直面している。核禁条約は、核兵器の非人道性に焦点を当て、製造や保有、使用や威嚇も全面的に禁止する史上初の国際条約である。批准国は増え続け、既に60カ国を超えている。歴史的な局面に初結集し、核による脅しと軍拡競争の危うさに抗して、核なき世界への確かなうねりを広げることを願いたい。けん引役を担うべきは、広島、長崎の惨禍を身をもって知る唯一の戦争被爆国のはずだ。その非人道性を訴え続けてきた被爆者らの運動が結実した核禁条約なのに、いまだ日本は署名、批准をしていない。岸田文雄首相は、初の締約国会議に日本政府としてオブザーバー参加もしないと表明した。被爆者をはじめ、高まる核の脅威を危ぶむ国際社会から失望の声が上がっており、残念極まりない。岸田氏は「核兵器国は1カ国も参加していない」として核禁条約は非現実的だとし、反対する立場の「同盟国・米国との信頼関係」重視を不参加の理由にあげた。一方、日本と同じく米国の「核の傘」の下にある北大西洋条約機構(NATO)加盟国のドイツとノルウェーは、締約国会議にオブザーバー参加する。ウクライナ危機を受けてNATO入りへ転換したフィンランド、スウェーデンも同様だ。ロシアの核の脅威に欧州が直接向き合う中でも、廃絶の目標を見据え続け、核禁運動に協調していく決意の表れと見える。核軍拡競争を自制する重要な動きともいえよう。岸田氏が、広島選出の首相としても核なき世界の実現を掲げ続けるなら、被爆国が担う使命に背を向けるべきではない。米国に追従するばかりと各国に見られたままでは、政府が自任する「保有国と非保有国の橋渡し役」は務まるまい。締約国会議は3日間にわたり、条約が掲げる核廃絶に向けた行動計画を議論し、核軍拡の加速に警鐘を鳴らす「政治声明」や保有国への軍縮要求なども行う構えだ。核実験を含め世界各地の「ヒバクシャ」への救済策もまとめる予定にしている。オブザーバー参加でも、日本の被爆者医療・支援の蓄積が大いに貢献できるはずではないか。一方で、政府は開幕前日の20日に開かれる「核兵器の非人道性に関する国際会議」に被爆者団体の2人を含む代表団を送った。過去3回の同会議での被爆者の訴えが核禁条約制定の原動力になったとされる。今回も現地の「核禁ウイーク」に集う各国の若者や市民団体などに体験を語っている。核被害の実相を伝える役割はかけがえがないことを深く認識する必要がある。

*2-1-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/942983/ (西日本新聞社説 2022/6/20) 核禁会議と日本 政府は核廃絶へ連帯せよ
 ロシアのウクライナ侵略により、世界は冷戦終結後、最も高い核のリスクにさらされている。今こそ核兵器の使用は許さないと声を上げ、核廃絶へ連帯を強める時である。オーストリアで21日に始まる核兵器禁止条約の第1回締約国会議は、その重要な場となる。日本政府が参加しないのは、極めて残念だ。核禁条約は人道的観点から核兵器の生産や使用、威嚇などを全面的に違法と定め、62カ国・地域が批准している。唯一の戦争被爆国として核兵器がもたらす惨禍を会議で伝え、核廃絶の国際世論を喚起する。長崎や広島の被爆者らはその役割を日本政府が担うことを願ったが、岸田文雄首相は背を向けた。会議は核兵器廃棄の過程や期限、核使用・実験の被害者に対する援助などを議論する予定だ。被爆者医療や放射能汚染の知見を持つ日本には幅広い貢献が期待されている。日本は国の防衛を米国の核戦力に頼る。首相は条約に一定の意義を認めながらも核保有国の不参加を重視し、「米国との信頼関係の下に現実的な取り組みを進める」と語る。国際政治の力学という「現実」への配慮だろう。核保有国が動かなければ核廃絶は実現しない。だが、核保有国が約束した核軍縮に反し、兵器の小型化や拡散が進む。業を煮やした非保有国や被爆者らが条約制定に動いたことを忘れてはならない。大国が核で張り合う恐怖の均衡の上に平和は成り立つのか。その危機感と脅威をなくすことへの切望が広がる「現実」にも目を向けるべきだ。会議前日に開かれる核兵器の非人道性を話し合う国際会議には、日本の政府当局者が被爆者と出席する。かつて被爆者が証言し、条約制定の土台をつくった会議だ。それが精いっぱいの関与なのか。政府以外の動きは活発だ。長崎市の田上富久市長は締約国会議でスピーチする予定で、長崎大は被害者支援の政策を提言している。非政府組織(NGO)の発信も目立つ。「政府こそ締約国会議に出て、率先して被爆の実相を訴える役割を担ってほしい」。政府から「ユース非核大使」を委嘱され、締約国会議に参加する長崎市出身の大学生、中村涼香さん(22)の言葉に共感する人は多いだろう。米国の「核の傘」に入る国の中には日本と異なる対応も見られる。北大西洋条約機構(NATO)に加盟するドイツとノルウェーは条約を批准していないが、意思決定の権限がないオブザーバーの資格で会議参加を決めた。岸田首相は先月、バイデン米大統領と会談し、共同声明で「核兵器のない世界」を目指す意思を示した。締約国と同じ目標である。核保有国と非保有国の対立は根深い。「将来は条約に核兵器国を結びつける」のが日本の役割と考えるなら、核廃絶に向けて有志国との協調も強めてもらいたい。

*2-2-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/873682 (佐賀新聞 2022/6/22) 核兵器禁止条約第1回締約国会議 深まる核危機、打開模索、抑止固執の「戦争被爆国」
 ロシアによるウクライナ侵攻で核使用の危機が深まる中、核兵器禁止条約の歴史的な初会合が21日開幕した。軍縮推進派の国々や市民社会は「核なき世界」に向け、事態打開の突破口を模索する議論を本格化させた。条約に猛反発した米国など核保有国には軟化の兆しもかすかに見え始めているが、「唯一の戦争被爆国」を掲げる日本は米国の核抑止力に固執し、国際社会に落胆が広がる。
▽切迫感
 「核なき世界の一刻も早い達成は全人類の悲願だ」。割れんばかりの拍手で幕を開けた核禁止条約第1回締約国会議。初代議長に選出されたオーストリア外務省のクメント軍縮局長が、世界への力強いメッセージになると宣言すると、高揚した様子の各国代表団が握手し合う場面も見られた。ロシアのプーチン大統領が核兵器使用を示唆し、国際社会には動揺が広がる。会議場に通底するのは、核軍縮の機運をこれ以上後退させてはならないとの切迫感だ。2017年の条約採択から5年、21年の発効から約1年半。核を違法化した初の条約に命を吹き込み、核保有国を縛る規範力を持たせるための外交努力が今後活発化する。
▽割れた判断
 各国代表団や核実験による被ばく者らが議論に熱を込める会場に、核廃絶を巡る国際的議論を主導してきたと自認する日本政府の姿はなかった。「核保有国が参加しておらず、条約には実効性がない」。政府筋は保有国と非保有国の橋渡し役こそが日本の目指すべき道だと強調する。北朝鮮の核・ミサイル開発、中国の不透明な軍拡で東アジアの安全保障環境が厳しさを増す中、米国の核抑止力に傾斜を深めようとする本音も透ける。対照的だったのは、同じ米国の「核の傘」に依存しつつも、オブザーバー参加に踏み切った国々だ。米同盟国のオーストラリア、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のドイツやオランダなどは、核禁止条約を巡る立場の違いを超え、会場の議論に耳を傾けていた。
▽兆し
 核禁止条約に背を向け、非核保有国の批准阻止を図ってきた核保有国が、水面下で同盟国の会議へのオブザーバー参加の黙認に転じたことを示唆する情報も出てきた。「核保有国は核禁止条約への『攻撃』をやめるべきだ」。今月開かれた核拡散防止条約(NPT)関係国の非公式会合で英国がこう述べたと、欧州軍縮筋は明かす。オーストラリアの軍縮筋は「米国が締約国会議を欠席するよう求める圧力を緩めた」との見方を示す。ウクライナ危機で揺れる核の国際秩序維持のため、保有国と非保有国の亀裂をこれ以上深めるのは得策でないとの判断が働いた可能性もある。「見るに堪えない事態だ」。各国関係者の間に、日本の締約国会議欠席に批判が広がる。政府は会議開幕に合わせるかのように、岸田文雄首相が8月開催予定のNPT再検討会議に首相として初出席すると発表した。「何を成し遂げるかが問題だ。美しい演説をするだけでは十分ではない」。言行不一致は許されないと関係筋はくぎを刺した。

*2-2-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/874014 (佐賀新聞 2022/6/22) 核保有国の加盟に「圧力を」、被爆医師の朝長さんが演説
 オーストリアの首都ウィーンで開かれている核兵器禁止条約の第1回締約国会議で22日、「長崎県被爆者手帳友の会」会長で医師の朝長万左男さん(79)が英語で演説し、核保有国の加盟に向け「最大限の圧力をかけなければならない」と強調した。「被爆者は人生の終盤で、核禁止条約の成立を見届けることができてとても幸せだった」と述べた一方、米国の「核の傘」の下にあり、条約に参加していない日本については「私たちの国が核兵器に依存していることがとても悲しい。被爆者は泣いている」と表明した。

*2-2-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/873788 (佐賀新聞 2022/6/22) 「核被害国と協力」明記、行動計画草案、核禁止条約会議
 オーストリアの首都ウィーンで開催中の核兵器禁止条約第1回締約国会議が最終日の23日に採択を目指す「ウィーン行動計画」の草案が22日、判明した。「核兵器の影響を受けながらも未加盟の国と協力する」と明記、唯一の戦争被爆国の日本や核実験の被害を受けた国を念頭に、核廃絶に向けた協力推進を打ち出した。共同通信が入手した草案は6月8日付で8ページ。国名には直接言及していないが、日本や、英国の核実験が行われたオーストラリアは条約に加盟していない。そうした国々に禁止条約への支持を訴え、核の被害者支援など条約が掲げる目標の達成のため密接に協力するとした。

*2-2-4:https://news.yahoo.co.jp/articles/52528298022c883638e67486c0f329a957fa009f (Yahoo、八重山日報 2022/6/18) 尖閣「上陸する必要ある」 中国の侵入常態化で石垣市長
 石垣市の中山義隆市長は17日の一般質問で、尖閣諸島周辺海域で中国艦船の領海侵入が常態化している問題について「決して許されることではない」と非難。「国に対して領土領海を守るようお願いすると同時に市が上陸を行い、国際社会に我が国の領土であると明確に示す必要がある」と訴えた。市は尖閣諸島の字名変更に伴い、各島に標柱を設置するための上陸を国に申請したが、国は不許可とした経緯がある。尖閣諸島問題は市議会で仲間均氏が取り上げた。自ら漁業者として尖閣周辺に出漁している仲間氏は「中国船の動きを見ると、これまでの手法とは全く異なる」と述べ、中国艦船がより攻撃的になっていると指摘。尖閣周辺海域の現状について「乗っ取られている」と危機感を示した。中国側の狙いについて小切間元樹企画部長は、国の見解とした上で「中国艦船の尖閣付近での領海侵入は、既存の国際秩序とは相容れない『力による現状変更の試み』と見られる」と述べた。仲間氏は「日本の領土なのに(政府は)『遺憾である』とか『力による現状変更は認められない』の二言で片づけている。ここに行く船がいつ事故に遭うかも知れないが、誰かが漁をしないと日本の領海ではなくなるという思いだ」と訴えた。

*2-3-1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220623/k10013686021000.html?word_result=・・・ (NHK 2022年6月24日) 核兵器禁止条約 初の締約国会議「ウィーン宣言」など採択
 ロシアによる軍事侵攻によって核兵器が使用されることへの懸念が高まる中で開かれた、核兵器禁止条約の初めての締約国会議は、3日間の日程を終え、「核なき世界」の実現を目指す「ウィーン宣言」と、具体的な取り組みをまとめた「ウィーン行動計画」を採択して閉幕しました。オーストリアの首都ウィーンで今月21日から開かれていた核兵器禁止条約の初めての締約国会議は、最終日の23日、日本時間の23日夜遅く、▽「核なき世界」の実現を国際社会に呼びかける「ウィーン宣言」と、▽核廃絶に向けた具体的な取り組みをまとめた「ウィーン行動計画」を採択し、閉幕しました。このうち「ウィーン宣言」は、ロシアの名指しは避けながらも「核兵器を使用するという威嚇に憂慮し落胆している。いかなる核による威嚇も明確に非難する」として、核の使用や威嚇を行わないよう、強く求めています。そのうえで「核兵器の存在はすべての国の安全とわれわれの生存を脅かしている。核兵器は不名誉で正当性がないという、国際規範を築く」と訴えています。また「ウィーン行動計画」は50の項目からなり、▽条約の締約国を増やすために取り組むことや▽被爆者や核実験の被害者への支援や救済を進めることなどが盛り込まれています。さらに▽核保有国に核軍縮の取り組みを課すNPT=核拡散防止条約との関係については、「禁止条約とNPTは補完し合う関係だ」として、「2つの条約の調整役」を任命するとしています。初めての締約国会議には、条約を批准した国に加え、条約に参加していないNATO=北大西洋条約機構の複数の加盟国もオブザーバーとして出席し、3日間にわたって合わせて80か国以上が議論を行いました。議長を務めたオーストリア外務省のクメント局長は「各国が協力して成果を上げ、条約に懐疑的な国も議論に参加したことが重要だ。今後は条約を軽視することが難しくなるだろう」と述べ、会議の意義を強調しました。世界の核軍縮をめぐっては、ことし8月、7年ぶりにNPTの再検討会議も開かれる予定ですが、ウクライナ情勢を受け核保有国同士の対立が続く中、行き詰まった核軍縮の方向性を示すことができるかが、問われることになります。
●「ウィーン宣言」のポイント
 核兵器禁止条約の初めての締約国会議で採択された「ウィーン宣言」のポイントは以下の通りです。
 ▽核廃絶を実現する決意を再確認する。核兵器が二度と使われない唯一の方法は核廃絶だ。
 ▽核の使用や威嚇は国連憲章を含む国際法に反するもので、いかなる核による威嚇も明確に
  非難する。
 ▽いまだに9か国がおよそ1万3000の核兵器を保有していることを、深く憂慮する。
 ▽核兵器保有国と核の傘のもとにある同盟国のいずれの国々も、核兵器への依存を弱め
  るために真剣に取り組むことなく、逆に核兵器を維持、強化していることを、遺憾に思う。
 ▽核兵器は不名誉で正当性がないという、強固な国際規範を構築する。
 ▽国際機関やNGO、被爆者、核実験の被害者、若者の団体などと、連携していく。
 ▽NPT=核拡散防止条約は核軍縮と不拡散の基礎であり、核兵器禁止条約とは相互に
  補完する関係にある。
 ▽条約にまだ参加できないという国にも、「核兵器のない世界」という共通の目標に向か
  って協力を呼びかける。核兵器の非保有国が条約に参加することを妨げる核保有国の
  行為を憂慮する。
●議長 “核の脅威が高まる中でこそ核兵器禁止へ議論進めるべき”
 核兵器禁止条約の初めての締約国会議の閉会後、会議の議長を務めたオーストリア外務省のクメント軍縮軍備管理局長は記者会見を行い、NATO=北大西洋条約機構の加盟国を含めた30を超える国が会議にオブザーバーとして出席したことについて「明るい兆しだ。これらの国々が政治的に複雑な立場に置かれているのは理解しているが、禁止条約にとっては前向きな一歩であり、次回の会議にはより多くの国が出席してくれることを願う」と評価しました。さらに「締約国は核兵器による人道上の影響やリスクについて科学的な証拠に基づいて議論していることを示し、国際社会全体にとって極めて重大な問題であることを提起した。これまで懐疑的だった人たちもそれを認め、いまこそこの問題の解決に関わるべきだ」と述べ、核の脅威が高まる中でこそ核兵器の禁止に向けた議論を進めるべきだと訴えました。また、ICAN=核兵器廃絶国際キャンペーンのフィン事務局長は「これだけ多くの国の代表が集まり、核の脅威や核抑止政策を非難したことは、不確実な世界において極めて重要だ」と述べ、会議の意義を強調しました。そのうえで「核保有国が影響力を強めようと、あらゆる手をつくして各国を軍事的に取り込もうとしているのを、私たちは知っている。いま核兵器を禁止しなければ、さらに多くの国が核兵器を持ち、核の傘に頼り、同盟をつくって世界を分断し、実際に核兵器が使われてしまうかもしれない」と述べ、核抑止に頼らない安全保障政策を模索すべきだという考えを示しました。
●広島 松井市長 各国代表と会談
 オーストリアの首都・ウィーンで開かれた核兵器禁止条約の締約国会議は日本時間の23日、最終日を迎え、会議の合間に広島市の松井市長は各国の代表と会談を行いました。次の締約国会議の議長国となるメキシコの代表との会談で松井市長は、「若い世代に被爆の実相を理解していただく活動をしっかりやっていきたい。メキシコで活動する際には支援をしてほしい」と求めました。これに対し、メキシコ政府代表部のカンプザーノ特命全権大使は、「若者の協力はとても大切です。できる限りの協力をしたい」と応えていました。また、今回の会議にオブザーバーとして出席したノルウェー代表との会談で、松井市長は「NATOの加盟国として揺るぎない立場を示しながらも核軍縮、不拡散を今まで以上にしっかりするという話を伺った。こういう立場でオブザーバー参加できることを改めて見せていただいた」と述べました。これに対し、ノルウェー外務省のオスムンセン特命軍縮大使は「歴史的な経験をしている広島、長崎の被爆者から証言を聞くことはとても力強く本当に感謝している。ヨーロッパの安全保障状況は厳しい状況だし、これまで以上に核軍縮のために努力することが重要です」と話していました。
●広島 松井市長「大きな世論を動かす大事なきっかけになる」
 広島市の松井市長は現地で取材に応じ、ロシアによるウクライナ侵攻を念頭に、「この危機的な状況の中でしっかりしたメッセージを出せたことは核兵器のない世界に向けての大きな世論を動かす大事なきっかけになる。次の会議の手続きも決まり、国際会議で一番重要な中身を議論するための段取りが確保できたことはとても意味あることだ」と述べました。また、オブザーバー参加した国々の発言について、「自分たちの立ち位置をしっかり説明した上で、核のない世界に向けての議論をするチャレンジをしていただいた。手順を尽くせば、議論ができることを示した」と評価しました。そのうえで「日本政府がオブザーバー参加しなかったことは残念だが、今後もこうした会議は続くのでほかの国の知見を踏まえて対応を考えていただきたい」と訴えました。
●長崎 田上市長 ノルウェー外務省の特命軍縮大使らと面会
 23日、長崎市の田上市長はオーストリアのウィーンで開かれた核兵器禁止条約の締約国会議の合間に広島市の松井市長とともにノルウェー外務省のオスムンセン特命軍縮大使と面会しました。田上市長によりますとこのなかで田上市長がノルウェーが核兵器禁止条約には参加せず、締約国会議にオブザーバー参加した理由などを尋ねたのに対し、オスムンセン大使は対話が重要であり、締約国会議に参加することに意義があるという考えが示されたということです。面会の後、田上市長は記者団の取材に対し、「オブザーバー国のスタンスはこれからに向けて非常に大切なあり方を示してくれていると感じた。被爆者や広島・長崎の役割の重要性についてもヒントをいただいた」と話し、核兵器廃絶を目指す今後の取り組みの参考にしたいという考えを示しました。また、田上市長は23日、広島の松井市長とともに核兵器禁止条約に批准しているメキシコのカンプサーノ大使と面会しました。この中で田上市長が「私たちに期待することや果たしてほしい役割があったら教えてほしい」と尋ねたのに対しカンプサーノ大使は「これからも被爆の実相を世界に届けてほしい」と述べました。
●長崎 田上市長「第一歩となった会議」
 締約国会議での一連の日程を終えた長崎市の田上市長は「核兵器禁止条約をこれからの世界のルールにしていくという道が今、始まったという会議でした。第一歩となった会議だと思うし、この条約の意義・意味を多くの人たちに伝えていく必要があると思います」と話しました。また条約に参加していないものの、オブザーバー参加した国々について「オブザーバーの国々は『核兵器廃絶のゴールは共有しているがこういう理由で今は参加できない。でも自分たちも核軍縮は大事だと思うので、できることはしっかりやっていく』という率直で良いスピーチを行っていました」と述べました。そのうえで「日本政府がオブザーバー参加をしなかったのは残念ですが、今回の会議の内容を日本政府に伝え、次回以降は日本がオブザーバー参加するよう引き続き求めていきたいです」と話しました。また田上市長は「若い人による核兵器廃絶を目指す活動が増えていると、各国のさまざまな方々が話をしていました。核兵器のない世界という未来を作っていくためにそうした若い人と一緒になって取り組んでいくのが非常に重要だと感じました」と話していました。
●長崎の被爆者は
 締約国会議が閉幕したあと、長崎の被爆者で医師の朝長万左男さんは「締約国会議には核兵器国や日本のような国が参加しなかったが、オブザーバーの国がある程度参加したので、それなりに良いスタートを切ったのではないかと思います。第1回の締約国会議は成功だったと思います」と話しました。また長崎の被爆者で、日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会の事務局長の木戸季市さんは「会議に来て本当に良かったです。世界の人々や国々が核兵器を本当になくさないと人間は守れないという思いが伝わってきました。私の残された人生は核兵器廃絶に向けてとことん取り組んでいこうという思いで決意を新たにしました」と話していました。長崎の被爆者でことし8月9日の、長崎原爆の日の式典で被爆者代表を務める宮田隆さん(82)は「被爆者として期待を持って締約国会議に参加しましたが会議の成果は十分あったと思います。今回の会議でやっと、一歩を踏み出したと思います」と話していました。そのうえで「日本は世界のリーダーとして頑張っていかなければならないという責任があると思います」と話していました。
●木原官房副長官「現実的な取り組みを進めていきたい」
 木原官房副長官は、記者会見で「わが国は会合には参加していないので会合の結果などをコメントすることは差し控えたい」と述べました。そのうえで「まずは国際的な核軍縮不拡散体制の礎石であるNPT=核拡散防止条約の維持・強化に向けて、8月に開かれる運用検討会議で意義ある成果を収められるよう全力を尽くしていく。唯一の戦争被爆国として核兵器のない世界に向け現実的な取り組みを進めていきたい」と述べました。

*2-3-2:https://digital.asahi.com/articles/ASQ6Q3SLVQ6QPTIL00L.html (朝日新聞 2022年6月22日) 日本政府が参加せぬ中 広島、長崎市長「核廃絶」訴え 核禁条約会議、核といのちを考える
 核兵器を全面的に禁じた核兵器禁止条約の初めての締約国会議が21~23日、オーストリア・ウィーンで開かれています。日本政府が参加を見送る一方、被爆地の広島、長崎両市長が出席し、21日には「核兵器廃絶しかない」と議場で訴えました。広島、長崎両市長は、国際NGO・平和首長会議を代表し、締約国会議初日の21日に演説した。
●日本政府は不参加 
 会長の松井一実(かずみ)・広島市長は「被爆者の『こんな思いをほかの誰にもさせてはならない』という切実な思いは今、痛ましい戦争において被害を受けている人々にも共通する」と述べ、ロシアのウクライナ侵攻で被害を受けた市民に思いをはせた。ロシアのプーチン大統領は核兵器使用を示唆する発言を繰り返してきた。松井氏はそれを止めるため、「核軍縮の進展と核兵器廃絶しかない」と指摘し、「各国や市民社会が一丸となり、核兵器禁止条約を実効性のあるものにする作業に早く着手する必要がある」と訴えた。田上(たうえ)富久・長崎市長も、プーチン氏の発言を念頭に「条約の意義は非常に大きくなっている。『今ここにある危機』を明確に禁止するのは核兵器禁止条約だけだからだ」と語った。田上氏は「道を見失ってしまいそうな時こそ、被爆者の声を思い起こし、勇気にかえてください」と続け、「核兵器を絶対に使わせないという共感の連鎖を世界中に広げていきましょう」と呼びかけた。
●核兵器が使われれば、滅ぶ」
 松井氏は終了後、報道陣の取材に「(核兵器が)使われれば(世界)全体が滅ぶとわかってもらいたい。世界中の都市と情報交換し、一部の国の一部の仕事ではなく、人類全体の課題だとわかってほしい」と述べた。田上氏は「参加したことで関係国や、NGOのみなさんと連携をとれて有意義だ」とした一方、「日本政府がオブザーバー参加しなかったことはとても残念。締約国会議は定期的に開かれるので、ぜひオブザーバー参加してほしいと思う」と話した。
●松野官房長官「核兵器国が参加していない」
 日本政府のオブザーバー参加は、核兵器廃絶を求める国内外のNGOや被爆者らが強く求めてきた。ただ、松野博一官房長官は21日の閣議後の記者会見で、「政府としてオブザーバー参加はしない」と明言した。そのうえで、「(条約に)核兵器国は1カ国も参加していない」と不参加の理由を説明した。

<安全保障について>
*3-1:https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/sangiin/pledge/policy/05/ (NHK 2022年6月16日) 外交・安全保障
●自由民主党
 国家安全保障戦略を改定し、新たに国家防衛戦略、防衛力整備計画を策定する。NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)も念頭に、真に必要な防衛関係費を積み上げ、来年度から5年以内に、防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指す。弾道ミサイル攻撃を含むわが国への武力攻撃に対する反撃能力を保有し、これらの攻撃を抑止し、対処する。
●立憲民主党
 弾道ミサイルなどの脅威への抑止力と対処能力強化を重視し、日米同盟の役割分担を前提としつつ着実な防衛力整備を行う。防衛費は総額ありきではなく、メリハリのある予算で防衛力の質的向上を図る。「核共有」は認めない。尖閣諸島をはじめとする我が国の領域警備に万全の体制で備えるため「領域警備・海上保安体制強化法」を制定する。
●公明党
 専守防衛の下、防衛力を着実に整備・強化する。予算額ありきではなく、具体的に何が必要なのか、個別具体的に検討し、真に必要な予算の確保を図る。唯一の戦争被爆国として、核共有の導入について断固反対する。非核三原則を堅持しつつ、核兵器禁止条約批准への環境整備を進める。
●日本維新の会
 日本の安全保障に対する不安を根本的に解消するため、将来にわたり戦争を起こさず、国民の生命と財産を確実に守るための「積極防衛能力」を構築する。防衛費のGDP比2%への増額、最先端の技術革新を踏まえた防衛力の整備、憲法9条への 自衛隊の存在の明記などを行った上で核拡大抑止についてもタブーなき議論を行う。
●国民民主党
 自分の国は 「 自分で守る」との理念に基づき、自立的な安全保障体制を目指す。同盟国・ 友好国との協力を不断に検証し、「戦争を始めさせない抑止力」の強化と、攻撃を受けた場合 「自衛のための 打撃力 (反撃力) 」を整備する。サイバー、宇宙など新たな領域に対処できるよう専守防衛に徹しつつ必要な防衛費を増額する。
●日本共産党
 「敵基地攻撃能力」の保有など、「専守防衛」を投げ捨て、日本を「戦争する国」にする逆行を許さない。安保法制を廃止し、立憲主義を取り戻す。軍事費2倍化を許さない。核兵器禁止条約に参加し、唯一の戦争被爆国として核兵器廃絶の先頭にたつことを求める。
●れいわ新選組
 専守防衛と徹底した平和外交によって周辺諸国との信頼醸成を強化していく。日本は国連憲章の「敵国」条項によって、敵基地攻撃能力や核配備など重武装は不可能。唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約を直ちに批准し、「核なき世界」の先頭に立つことにより地域の安定をリードしていく。
●社会民主党
 ウクライナ情勢に便乗した防衛力大幅増強の動きや「核共有」に反対する。平和憲法の理念を活かし、外交の力で平和を実現する。非核三原則を守り、核兵器禁止条約に署名・批准し、被爆国として核なき世界を目指す。沖縄の在日米軍普天間基地の閉鎖・撤去、県内移設断念を強く求め、辺野古に新基地はつくらせない。
●NHK党
 現実的な国防力を整えるために防衛費を国際標準とされるGDP2%程度へ引き上げるべき。いわゆる「敵基地攻撃能力」については国民の命と財産を守るため必要な程度を必ず保有すべきと考え、憲法も含めた法整備について国会での議論を求めていく。

*3-2:https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/202206/0015401133.shtml (神戸新聞社説 2022/6/20) 安全保障/何をどのように守るのか
 安全保障が参院選の主要な争点の一つに浮上してきた。岸田文雄首相が米国のバイデン大統領に防衛費の「相当な増額」の決意を伝え、議論を呼んだばかりである。選挙戦ではそれにとどまらず、日本の国是である「専守防衛」を問い直す論戦にも発展しそうだ。ロシアによるウクライナ侵攻が国際社会の平和と安定を揺るがし、北朝鮮の弾道ミサイル発射や中国の海洋進出が日本周辺を脅かす。国の安全に関する国民の関心や懸念が高まっていることは確かだろう。ただ、専守防衛は戦争放棄と戦力不保持を定めた憲法9条に基づく。安全保障を巡る議論は「平和国家」としての戦後日本の歩みを踏まえたものでなければならない。何を見直し、何を守るのか。熟考と冷静な判断が求められる。自民党は参院選の公約で「抑止力と対処力の強化」を掲げた。防衛費の増額と敵基地攻撃能力を改称した「反撃能力」の保有が柱だ。防衛費については、北大西洋条約機構(NATO)が掲げる国内総生産(GDP)比2%以上の目標を引用し、「5年以内に必要な予算水準の達成を目指す」とする。1%程度にとどめてきた防衛費を倍増すれば、約5兆円の上積みになる。高市早苗政調会長は「必要なものを積み上げれば、10兆円規模になる」と述べた。専守防衛を逸脱する恐れがある反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有と併せ、これまでの制約をなくす狙いが透ける。岸田首相自身はリベラル派閥を率いているが、選挙をにらみ、安倍晋三元首相をはじめとする保守層の支持を意識したようだ。これに対し、連立与党の公明党は増額方針を容認しつつ「予算ありきでなく」とくぎを刺すが、野党の一部に自民に同調する動きがある。日本維新の会と国民民主党は、増額だけでなく、敵基地攻撃能力保有にも前向きの立場だ。維新は、岸田首相が「政府として議論しない」と明言した米軍との「核共有」の議論も始めるとし、防衛力を必要最小限度とする規定も見直すとするなど、他党以上に踏み込んでいる。立憲民主党は「総額ありきではない」とけん制し、「専守防衛の堅持」を強調する。ただ、批判勢力は共産党や社民党などにとどまる。共同通信社の世論調査では、43%が防衛費を「ある程度増やすべきだ」と答えているが、「今のまま」も36%で、「大幅に増やすべきだ」は12%にとどまる。国民もどうあるべきか思案している状況だろう。抑止力だけでは軍事的な緊張が増す。平和を回復し守るための外交努力や人道支援などの多様な施策について、活発な論戦を期待したい。

*3-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/184620 (東京新聞 2022年6月20日) 「岸田政権は変えたがっている」 都内で憲法改悪に反対する集会 参院選「9条守る候補者に投票を」
 22日の参院選公示を前に「憲法9条改悪を絶対許すな!緊急集会」が20日、東京・永田町の衆院第一議員会館であった。参加者らは、ロシア軍のウクライナ侵攻を受けて日本の防衛力強化や核シェアリング(共有)が必要だとする主張に反対し、対話による外交努力を積み重ねるよう訴えた。主催した「村山首相談話の会」の藤田高景理事長が「岸田文雄政権は、憲法9条を変えたがっている。だが9条があったから、日本は世界の信頼を勝ち得てきた。9条を高く掲げることが日本の平和を守り抜く唯一の道だ」と述べた。山口大の纐纈厚名誉教授は「専守防衛は『必要最小限の防衛力』だったが、このままでは『不必要な最大限の攻撃力』になる」と指摘。元経産官僚の古賀茂明氏は「9条は空文化している。だがウクライナのゼレンスキー大統領は、日本に9条があるから武器支援を求めなかった」と語った。94歳の経済学者暉峻淑子さんは、ウクライナ南東部マリウポリのアゾフスターリ製鉄所から脱出した子どもたちがおなかをすかせていた姿と、戦中戦後の自分の姿が重なったとし「戦争を止めるために国会に野党議員を送り込めるチャンスだ」と、参院選では憲法9条を守る候補者に投票するよう呼び掛けていた。ジャーナリストの竹信三恵子さんは「軍事費を増やせば、社会福祉や介護、教育費が使えなくなる。そういうことをもっと発信していきたい」と話した。神奈川大の羽場久美子教授は「戦争を始めたら、国内の原発と基地のある沖縄が狙われる。SNSなどで個人が発信し、今日の集会のように市民や研究者、芸術家など皆が戦争をさせないために連帯し、行動していくことが必要だ」と訴えた。

<国民保護計画について>
*4-1:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1536480.html (琉球新報社説 2022年6月21日) 国民保護計画の試算 現実離れした想定だ
 島しょ県である沖縄では、有事の際の島外避難に大量の航空機や船舶が必要で、全住民の避難が、ほぼ困難であることが明らかになった。「軍隊は住民を守らない」という沖縄戦の教訓から県民は人間の安全保障を要求してきた。ロシアによるウクライナ侵攻を機に「力の論理」に頼り対中強硬論を振りかざすのでは問題は解決しないだろう。有事を回避する最大の国民保護策は「命どぅ宝」の思想の実践と国際協調である。安倍晋三元首相は昨年、「台湾有事は日本有事」と述べた。今年5月には岸田文雄首相が台湾を念頭に「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」と発言した。台湾や尖閣諸島で不測の事態が発生した場合、沖縄が戦場になる可能性が高まる。2004年に施行された国民保護法は、外国から武力攻撃などを受けた際、国民の生命、財産を守るための国や自治体の権限や手続きを定めている。この法律に基づく避難計画のひな型となる「避難実施要領のパターン」を県内41市町村のうち宮古島、石垣など7市町が策定している。石垣市の場合、石垣空港の1日の運航可能便数を45機とし、民間機1機に150人が搭乗すると仮定。石垣市民・竹富町民・観光客合計で6万5300人の避難が必要になる。この想定に沿って計算すると、延べ機体数は435機となる。宮古島市の場合は、石垣と同様に1機に150人が搭乗すると仮定すると住民が363機分、観光客が18機分、500人を運べるフェリーの場合は住民が109隻分、観光客が5隻分を必要とする。果たして、これほどの航空機や船舶を一度に確保できるだろうか。現実離れした想定である。77年前の沖縄戦の直前に、県外疎開が実施された。しかし制海権と制空権を失った中で県関係者を乗せた船舶26隻が米軍に撃沈され、4579人が犠牲になった。離島周辺で戦闘が始まった場合、避難用の航空機や船舶の安全確保は難しいだろう。元自衛艦隊幹部は、有事の際に敵国による南西諸島に対する海上封鎖を予想する。海上を封鎖されると船舶による避難は困難だ。中京大学の佐道明広教授(防衛政策史)は「現実には、自衛隊がある程度取り残された人々を守りながら戦闘するという展開が想定される」と指摘する。しかし、島に配備された自衛隊が中短距離弾道ミサイルや巡航ミサイルの攻撃に耐え、かつ住民の安全を確保することは可能だろうか。自衛隊制服組幹部は「自衛隊に住民を避難させる余力はないだろう。自治体にやってもらうしかない」と発言している。沖縄戦で4人に1人が犠牲になった沖縄戦から77年。米軍との軍事一体化を強化する政府の姿勢と沖縄戦の教訓は相容れない。

*4-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1536000.html (琉球新報 2022年6月20日) 石垣では全員避難に10日、宮古は航空機381機必要 市が国民保護計画で試算
 他国からの武力攻撃事態など有事に備え、自治体が住民の避難誘導をする国民保護計画に基づき、石垣市と宮古島市が全市民の避難に必要な航空機の数や期間などを見積もっていたことが19日までに分かった。宮古島は観光客分を含む避難に必要な航空機の総数を381機と試算。石垣は1日45機運航した場合、全市民避難の所要期間を「9・67日」と見込んでいる。石垣の想定に沿って本紙が試算すると、避難に必要な延べ機体数は435機となる。台湾有事の懸念を踏まえ、先島など離島からの住民避難の必要性について議論が起こっている。沖縄戦前の県外疎開では、米軍に周辺の制海権を握られる中の海上輸送で、児童や一般の疎開者を乗せた対馬丸が撃沈された。国民保護でも、有事が迫る中で避難用航空機の安全が確保されるか懸念がある。両市は国民保護法に基づく避難計画のひな形となる「避難実施要領のパターン」で試算した。国民保護法に基づく住民避難は国が要避難地域を認定して、都道府県が住民の避難経路などを明示、市町村が避難誘導をする。県によると、県内41市町村のうち読谷村を除く40市町村で国民保護の体制を規定する基本計画を策定済みだが、パターンを策定したのは宮古島、石垣を含め7市町にとどまる。2019年に策定し、5月に市HPに掲載された石垣のパターンでは、石垣空港の1日の運航可能便数を45機とし、民間機1機に150人が搭乗すると仮定。石垣市民・竹富町民・観光客合計で6万5300人の避難が必要になる。この想定に沿って計算すると、延べ機体数は435機となる。宮古島も同年に策定。石垣と同様に150人搭乗の航空機の場合は住民が363機分、観光客が18機分、500人を運べるフェリーの場合は住民が109隻分、観光客が5隻分を必要とする。石垣市の担当者は「民間機の確保や自衛隊対応などについて、国や県と細かい調整が必要だ」と強調した。宮古島市の担当者も「輸送力確保は県が行う。県の計画も踏まえ、国や県と意見交換していきたい」としている。

*4-3:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1536101.html (琉球新報 2022年6月20日) 有事に沖縄県民140万人の避難は「非現実的」 登壇者ら「移動すべきは基地」 沖縄戦の教訓学ぶ講演会
 「慰霊の日」の23日を前に、沖縄戦の教訓を学ぶことを目的としたノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会主催の講演会が19日、那覇市の教育福祉会館で開かれた。5人が登壇し、沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さんは有事に県民140万人が避難するのは非現実的だと指摘。台湾有事を想定し、米軍が南西諸島に臨時の攻撃拠点を置くとの報道に「攻撃をすれば沖縄が反撃されるのは当然だ。沖縄から移動すべきは住民ではなく軍事基地だ」と批判した。具志堅さんはこの日も糸満市の荒崎海岸に行き、遺骨と朽ち果てた手りゅう弾を回収したことを報告した。国の責任で戦没者遺骨の収集や返還に取り組む意義について「(やめれば)命を使い捨てにされたことをわれわれが認めたことになる。犠牲者の命を『一銭五厘』(召集令状の切手代)とばかにした責任をとってもらわないといけない」と述べ、過ちを繰り返さないためにも命の重さを知らしめる重要性を訴えた。沖縄国際大名誉教授の石原昌家さんは、ウクライナで成人男性の出国が制限されていることに言及。ひめゆり学徒隊に動員された生徒たちが、学校側から脅されてやむなく動員されたとの「証言と重なる」と述べ、戦争に国民を動員する権力の姿勢を疑問視した。沖縄女性史家の宮城晴美さんは「長い戦争の歴史で、女性への性暴力がない戦争はない」と強調し「いつ自分が犠牲に遭うか分からないことも踏まえ、戦争のことを考えてほしい」と訴えた。この日の講演は動画投稿サイト「ユーチューブ」で23日に公開する。講演会は26日午後1時からも行われる。

<外交>
*5-1:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-1536471.html (琉球新報 2022年6月20日) 中国、東シナ海のガス田施設完成 日本抗議「一方的開発は遺憾」
 日本外務省は20日、中国が東シナ海の日中中間線の中国側海域で、ガス田の掘削施設を完成させたのを確認したと発表した。施設完成を受け「度重なる抗議にもかかわらず、一方的な開発を進めていることは極めて遺憾だ」として中国に強く抗議した。外務省によると、海上自衛隊が20日、中国側海域にある構造物に掘削機材が据え付けてあるのを発見。分析した結果、ガス田の掘削施設に間違いないと判断した。同省の船越健裕アジア大洋州局長が、在日中国大使館の楊宇次席公使に抗議を申し入れた。船越氏は、東シナ海ガス田開発に関する日中交渉についても、速やかに再開するよう求めた。

*5-2-1:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-1536417.html (琉球新報 2022年6月20日) 日韓豪NZの4国首脳会合を検討 対中けん制、NATOで
 日本政府が、スペインで今月下旬に開かれる米欧の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に合わせ、岸田文雄首相と韓国、オーストラリア、ニュージーランドの首脳による4カ国首脳会合を開催する案を検討していることが分かった。韓国大統領府関係者が20日、日本から提案を受けたと記者団に明らかにした。海洋進出を強める中国をけん制する狙いがあるとみられる。韓国政府は、日本政府案について今後判断する。会合では「自由で開かれたインド太平洋」推進に向けた協力について意見交換するほか、中国が影響力を急速に拡大している太平洋の島しょ国への支援策も議題になる可能性がある。

*5-2-2:https://www.fnn.jp/articles/-/382371 (FNN 2022年6月29日) 日韓豪NZ 4カ国首脳が会談
 NATO(北大西洋条約機構)の首脳会議に出席するため、スペインを訪問中の岸田首相は日本時間29日午後7時過ぎ、韓国、オーストラリア、ニュージーランドとの4カ国首脳会談に臨んだ。
NATO首脳会議には、日本のほか、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの首脳が、インド太平洋地域の「パートナー国」として招待されていて、NATOの会議出席を前に、日本時間の29日午後7時過ぎから、4カ国で首脳会談を行った。インド太平洋で存在感を増す中国を念頭に、安全保障や経済をめぐる懸案について協議したほか、ロシアによるウクライナ侵攻に対する連携の強化を確認したものとみられる。これに先立ち、岸田首相は、NATO加盟を目指す北欧スウェーデンのアンデション首相とも会談し、「加盟申請という歴史的決断を支持する」と伝えた。スウェーデンと隣国のフィンランドは、NATO加盟に反対してきたトルコが支持に転じ、加盟に向けて大きく前進している。

*5-3-1:https://digital.asahi.com/articles/ASQ716K8NQ71ULFA01N.html?iref=comtop_7_01 (朝日新聞 2022年7月1日) ロシアによる「究極のいじわる」 岸田首相の行動が「刺激」の見方も
 ロシアのプーチン大統領が、日本の商社も出資するロシア極東の液化天然ガス(LNG)・石油開発事業「サハリン2」の運営を、ロシア企業に譲渡するよう命令する大統領令に署名した。西側諸国と同調して制裁を強める日本に対し、ロシアは「LNG」という日本の急所を突いて、揺さぶりを仕掛けてきた。ロシアがこうした行動に出る予兆はあったが、とれる対抗手段も限られている。電力やガスの安定供給にも大きな影響が懸念される。「ただちにLNG輸入ができなくなるわけではないと思うが、今後、不測の事態に備えた万全の対策をとる必要がある」。1日夕、経済産業省内で報道陣の取材に応じた萩生田光一経産相はこう語った。政府関係者によると、ロシア側から事前説明はなく発表で知ったという。このため政府は発表内容の精査や情報収集に追われた。日本はこれまで、主要7カ国(G7)が主導するロシア制裁に足並みをそろえ、ロシア産の石炭や石油の段階的な禁輸を決めた。一方、日本の商社が出資するサハリン2のLNGについては「エネルギー安全保障上、極めて重要なプロジェクト」(萩生田氏)とし、撤退しない方針を維持してきた。
●外務省幹部「やるなよ、やるなよ」
 石炭や石油と違って、LNGは増産の余地が少なく、サハリン2に代わる調達先をすぐに見つけるのが難しい。「長期かつ安価なエネルギーの安定供給源」(萩生田氏)として、今後もロシアからの輸入を続ける考えを示していた。日本の足元を見透かすかのように、ロシアが「反撃」に出る予兆はあった。外務省によると、ロシア議会では6月、地下資源法が改正され、資源開発に携わる外国企業の株式譲渡が盛り込まれた。この動きがサハリン2などに波及する可能性もあるとし、外務省と経産省が対応などを検討していたという。サハリン2をめぐっては、2006年にロシア政府の意向で、国営ガス会社が運営会社の株式の50%超を握ることになった「先例」がある。外務省幹部は「『やるなよ、やるなよ』と思っていたが、『やっぱり来たか』という感じだ」と本音を漏らした。ロシアが発表した時期については、岸田文雄首相の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議への出席がロシア側を刺激したとの見方がある。首相は首脳会議で、ロシアや中国を非難し、日本とNATOの関係強化を強調した。日本政府関係者は「NATOへの出席が影響しているだろう。日本がNATOであそこまで言うのはロシアだって嫌だ」と指摘する。政府は、ロシアの示した条件を慎重に見極めながら対応策を検討している。外務省幹部は言う。「これを守ったら、しっかり先に道があるのかを確認していく作業だ。あちらの条件をのんだのに、結局損をしたら意味がない」
●サハリン2がストップすればどうなる
 「サハリン2」からのLNGがストップすれば、エネルギーの安定供給への影響は避けられない。日本は輸入するLNG全体の8・8%(2021年)をロシアに依存している。その大半がサハリン2で、発電用の燃料や都市ガスの原料に使われている。東京電力と中部電力が出資する火力発電会社JERAや東北電力、九州電力のほか、東京ガス、東邦ガス(名古屋市)、大阪ガス、広島ガスなどがサハリン2のLNGを調達し、電気・ガスを売っている。東邦ガスは、自動車を中心に製造業が集まる東海地区に都市ガスを供給する。LNGの約2割はサハリン2という。昨年末でカタールからの長期調達契約が終了し、サハリン2への依存度が高まった。東邦ガスは「譲渡は報道で知った。事実確認中のためコメントできない」(広報)としている。調達量の半分近くをサハリン2が占める広島ガスは「関係各所から情報収集中で、特に何かお答えすることはない」(広報)としている。LNGを高騰が続く短期契約の「スポット市場」で買うことになれば、電気代やガス代のさらなる値上がりにつながりかねない。この夏は「電力不足」も懸念されている。政府は1日、7年ぶりとなる全国的な節電要請を出し、休止中の発電所も再稼働させて乗り切ろうとしている。LNG火力発電所は、日本の発電量の4割弱を占める主力電源だ。LNGが不足して発電所が運転できなくなれば、電力不足はさらに深刻になる。あるエネルギー関連企業の幹部は「ロシア側は日本の状況が分かっているはず。これはロシアによる究極のいじわるだ」と話す。

*5-3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC016R60R00C22A7000000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2022/7/2) ロシアのプーチン大統領は6月30日、極東の資源開発事業「サハリン2」の運営を新会社に移管するよう命じる大統領令に署名した。日本はサハリン2から液化天然ガス(LNG)需要量の約1割を輸入し、総発電電力量の3%程度をまかなう。電力逼迫のさなか、途絶えることになれば影響は甚大だ。日本のエネルギー戦略、暮らしへの影響を3つのポイントで解説する。
 (1)サハリン2とは? どのように日本へガスを運んでいるのか。
 (2)代替できるのか?
 (3)ガス調達できなくなる場合、いつか?
(1)サハリン2とは? どのように日本へガスを運んでいるのか。
 電気は太陽光以外では、燃料をもとにタービンという大きな羽根を回すことでつくる。火、水、原子、風などの燃料があり、火力はさらに石炭、ガスなどに分かれる。なかでもガス火力発電は日本の消費量全体の4割を占め、有力なエネルギー源となっている。日本のエネルギー全体の自給率はわずか1割程度。古くからエネルギー安全保障、LNG、原油の調達の一極集中が課題で、いびつなバランスの修正にはロシアを組み込むことが必要で、1992年からサハリン2に日本が参画した。ロシア国営ガスプロムが約50%、三井物産が12.5%、三菱商事が10%を出資する。出資だけでなく、生産量のうち約6割が日本向けであることが特徴だ。ガス大国のロシアは、地続きである欧州へはパイプラインを建設して天然ガスとして供給している。しかし、日本は島国であるため、パイプラインで調達することができない。低温で加圧して液化したLNGの形で、日本に送り込まれている。具体的には、ロシア極東のサハリン沖でガスを採掘し、サハリン島の最南端のプラントで液化し、船で運んでいる。出荷を開始したのは2009年だ。日本では東京湾などでLNG船を受け入れている。サハリン2のLNGは日本の電力やガス会社に供給される。航路は3日程度で、2週間程度の中東より短い。機動力、コストなどの面でも日本のエネルギー戦略の大きな位置を占めてきた。
(2)代替できるのか?
 サハリン2のLNG生産量は年1000万トンで、うち日本向けは約600万トン。日本のLNG輸入量の約1割を占める。今回、プーチン大統領が署名したことにより、サハリン2には日本から参加する三井物産や三菱商事が今後、運営の枠組みから排除されるリスクが浮上してきた。その場合、一切、日本が調達できなくなる可能性もある。現状、日本の代替案となるのはスポット(随時契約)市場しかない。長期の契約に基づくものではなく、短期的に調達する手法だ。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻によって、世界のエネルギー勢力図は激変している。LNG調達のライバルは多く、量の確保は極めて難しい。ガスの脱ロシアを掲げる欧州はロシア産ガスを7000万トン超減らす代わり、スポット市場からのLNG調達や省エネの促進などで需給を保とうと試みる。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は2022年のLNGの追加供給余力は世界で600万トンにとどまり、LNG市場の需給は数千万トンの不足に陥る可能性があると分析する。このため、現時点で、日本がサハリン2の代替分を取れる保証はない。さらに、代替できたとしても、企業や家庭の負担は増す。サハリン2の調達価格は単位熱量当たり10ドル前後とされ、スポット価格の数分の1。代替で2兆円近いコストが発生するとの試算もあり、国民に重くのしかかる。
(3)ガス調達できなくなる場合、いつか?
 猛暑・発電所トラブルなどが重なり、「電力需給逼迫注意報」が出るような状況での、今回のプーチン大統領による署名。主要7カ国首脳会議(G7サミット)が開催されたタイミングでもあり、日本へ揺さぶりをかけてきた。そもそも、「日本の電気が足りない」は、今年夏は厳しく、冬はさらに深刻、との声が多かった。これがやや楽観論であり、すでに停電リスクが足元に迫ってきていることを浮き彫りにした。ロシアの単なる揺さぶりで、ガス途絶は先、との楽観論もあるが、ドイツは既に、ロシアからパイプラインを通じたガス供給を一部削減され、「非常警報」を発令した。もう一段、危険度が上がれば、ガスの配給制に追い込まれるという。日本に対して、ロシアがガス供給をどうしていくか、現時点で不透明だ。このため、「いつからか」については、「いつサハリン2からのガスがなくなってもおかしくない」のが実情だ。日本は今後、省エネを強化していく方針だが、停電リスクが極めて身近になってきていることを考えなければならない。

*5-4-1:https://news.yahoo.co.jp/articles/65f42716ff1bffaa7c70f135a5a085265a003cf8 (Yahoo 2022/6/30) ”原発の武力攻撃に備える”提言に盛り込む 全国知事会原子力発電特別委員会
 6月30日に全国知事会の原子力発電特別委員会がウェブで開催された。21道府県の知事や担当者が参加し、島根県の丸山知事は委員長として出席。7月に全国知事会に提出する原発の安全対策や防災対策に関する提言案について意見交換した。提言案には、原発に対する武力攻撃などへの対処についても盛り込まれ、ミサイル攻撃が行われるような事態になった場合には、自衛隊による迎撃態勢や部隊の配備に努めることなどが付け加えられている。島根県 丸山達也知事:「この1年間で、状況の変化があったことについて、アップデートしていくと」。また提言案には原子力防災対策が必要な地域が、30キロ圏内まで拡大されたことをふまえ、社会基盤を整備するために使われる電源三法交付金などについても、対象区域を拡大することなどが新たに盛り込まれている。

*5-4-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/878349 (佐賀新聞 2022/7/1) 参院選―原発・エネルギー 問題から目をそらすな
 6月としては異例の猛暑や冷房需要の増加による電力供給の逼迫(ひっぱく)などが大きなニュースとなる中での参院選だ。ロシアのウクライナ侵攻後、ただでさえ上昇傾向にあった原油や天然ガスの価格はさらに高騰し、電力やガソリン料金の値上げにつながった。一方、世界各地で熱波や干ばつ、大規模な豪雨災害などが多発、化石燃料利用を可能な限り減らし、強力な気候変動対策を進めることも急務だ。多くの難題の同時解決が必要なエネルギー政策は国の将来を左右する重要な課題だ。にもかかわらず、選挙の主要な争点となっていないのは大きな問題である。エネルギーや電気の使い方に多くの注目が集まっている今こそ、各党は原子力発電の扱いを含めたエネルギー政策について積極的に論争し、有権者の信を問うべきだ。日本のエネルギー政策と他の先進国とのギャップは非常に大きい。先進国のほとんどが気候変動対策として石炭火力の廃絶を決め、再生可能エネルギーの急速な導入を進めている。発電事業者と送配電網を所有する企業とを完全に分離する発送電分離も多くの国で実現済みだ。再生可能エネルギーの価格は急速に下がり、多くの国で最も安い電源となった。一方で、原発の建設コストは高騰し、多くの国で競争力を失っている。ウクライナ危機をきっかけに欧州諸国は短期的な化石燃料の調達や利用に取り組む一方、再生可能エネルギーの一層の拡大を通じて海外の化石燃料への依存から脱却する政策を打ち出した。だが、日本では気候変動の原因となる火力発電、それも石炭火力への依存が続き、再生可能エネルギーの普及は遅れている。資源小国と言われる日本には、豊かな再生可能エネルギー資源がある。温室効果ガス排出を抑え、資源の海外依存を解消するためには再生可能エネルギーの一層の拡大が不可欠である。日本でも2011年の東京電力福島第1原発事故後、電力市場の自由化が進んだが、欧州並みの発送電分離は実現していない。電力会社から独立した業者によって、透明性が高く、公平な送配電網へのアクセスが保証されていれば、再生可能エネルギーへの投資はもっと進むし、広域の融通も容易になり、需給に余裕も生まれる。日本の課題は多く、難問が山積している。ガソリン高騰対策としての補助金や海外の化石燃料の調達、既存の原発の早期稼働といった目先の対策では解決できないものばかりだ。国政選挙の場では、温室効果ガス排出の早急かつ大幅な削減を実現する一方で、エネルギーの海外依存を減らし、いかに安定供給を実現するかという長期的な視点に立った政策論争が欠かせない。太陽光などの価格が急降下する中、高コストで事故のリスクも高い原発の利用を拡大することに合理的理由があるのか。短期間で一層の再生可能エネルギーの導入や省エネを実現するため、具体的にどのような政策や規制を導入するのか。世界の流れに抗して石炭火力依存を続けることのリスクをどう考えるのか。各党には論争の中で、政策の根拠と将来へのビジョンを明確に示すことが求められている。それが、未来の社会に対する政治家の責任だ。

<社会保障と国民生活>
*6-1:https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/sangiin/pledge/policy/02/ (NHK 2022年6月16日) 各党の公約「社会保障」
●自由民主党
 全ての世代が安心できる持続可能な年金・医療・介護などの全世代型社会保障の構築に向け、計画的に取組みを進める。出産育児一時金の引上げなど、出産育児支援を推し進め、仕事と子育てを両立できる環境をさらに整備する。健康長寿、年齢にかかわらない就業や多様な社会参加などによって長生きが幸せと実感できる「幸齢社会」を実現する。
●立憲民主党
 年金の切り下げに対抗し、当面、低所得の年金生活者向けの年金生活者支援給付金を手厚くする。政府がコロナ禍で行う後期高齢者の医療費窓口負担割合の1割から2割への引き上げを撤回する。公立・公的病院の統廃合や病床削減につながる「地域医療構想」を抜本的に見直す。
●公明党
 社会保障を支える人を増やし、全世代型社会保障の構築を進める。公的価格の引き上げなどにより、医療・介護・障がい福祉等の人材確保策を強化する。高齢者の所得保障の充実に向けて、高齢者が働きやすい環境整備とともに基礎年金の再配分機能の強化に向けた検討を進める。
●日本維新の会
 現在の年金に代わって、すべての国民に無条件で一定額を支給する「ベーシックインカム」などを導入し、持続可能なセーフティーネットを構築する。医療費の自己負担割合は、年齢ではなく、所得に応じて負担割合に差を設ける仕組みに変更する。
●国民民主党
 給付と所得税の還付を組み合わせた新制度「給付付き税額控除」を導入し、尊厳ある生活を支える基礎的所得を保障する。マイナンバーと銀行口座を紐付けて必要な手当や給付金が申請不要で自動的に振り込まれる「プッシュ型支援」を実現する。これらの組み合わせで「日本型ベーシックインカム」を創設する。
●日本共産党
 物価高騰下での公的年金の支給額の引き下げを中止する。年金削減の仕組みを廃止して、物価に応じて増える年金にする。〝頼れる年金〟への抜本的な改革として、基礎年金満額の国庫負担分にあたる月3.3万円をすべての年金受給者に支給し、低年金の底上げを行う。75歳以上の医療費2倍化を中止・撤回させる。
●れいわ新選組
 社会保険料の国負担を増やして、国民の負担を軽減する。年金支給は減らさない。保険料の応能負担も含めた制度の改革を提案していく。介護・保育従事者の月給について、全産業平均との差を埋めるため、月給10万円アップが必要。
●社会民主党
 75歳以上の医療費窓口負担の引き上げを中止し、後期高齢者医療制度を抜本的に見直す。非正規労働の拡大に歯止めをかけ、正規労働への転換を進め、雇用の安定を実現する。労働者派遣法を抜本改正し、派遣労働は一時的・臨時的な業務に厳しく制限する。
●NHK党
 持続可能な社会保障制度のためには、社会保障費の削減を目指すべきであると考える。高齢者の医療費の自己負担を3 割に引き上げることをタブー視しない。年金の支給開始年齢の引き上げの検討をすべき。

*6-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220624&ng=DGKKZO62009960U2A620C2MM0000 (日経新聞 2022.6.24)消費者物価2.1%上昇 2カ月連続2%超
 総務省が24日発表した5月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が101.6となり、前年同月比2.1%上昇した。上昇率は2カ月連続で2%を超えた。資源高により電気代やガソリン価格などエネルギー関連が大きく上昇し、原材料高で食料品の上昇も目立った。家庭用の耐久消費財にも上昇が波及した。4月は携帯電話の料金値下げの影響が薄まったことで、7年1カ月ぶりに2%を超えて2.1%の上昇となっていた。5月の生鮮食品も含む総合指数は2.5%上がった。生鮮食品とエネルギーをともに除いた総合指数は0.8%の上昇となった。それぞれ上昇率は4月と変わらなかった。品目別に見ると、エネルギー関連が17.1%上昇した。4月(19.1%上昇)に続いて高水準の伸びとなった。ガソリン補助金拡大の影響で上昇率は鈍化した。エネルギーだけで総合指数は1.26ポイント高まった。電気代は18.6%、ガソリンは13.1%上がった。生鮮食品以外の食料は2.7%上がり、上げ幅は4月(2.6%)をやや上回った。上げ幅は7年2カ月ぶりの大きさ。原材料価格の高騰で、食パン(9.4%)やハンバーガー(7.6%)が上がった。調理カレー(11.4%)、ポテトチップス(9.0%)などの上昇も目立った。食用油は36.2%の大幅な上昇になった。生鮮食品は12.3%上がり、4月(12.2%)から伸びがやや加速した。たまねぎは2.3倍となり、キャベツ(40.6%)なども大きく上昇した。生鮮魚介(12.2%)も上昇が続いており、まぐろは16.6%上がった。家庭用耐久財にも上昇が波及してきた。5月の上昇率は7.4%で前月(5.0%)より伸びが大きくなった。中国の都市封鎖で物流が滞ったことや半導体不足により、ルームエアコン(11.0%)が上昇した。電気冷蔵庫(15.8%)やソファ(8.8%)も上がった。天然ゴム価格上昇の影響で、自動車タイヤ(3.2%)も上がった。インフレは、年内は続く公算が大きい。日本経済研究センターがまとめた民間エコノミスト37人の経済見通し「ESPフォーキャスト調査」によると、物価上昇率は4~6月期が前年同期比2.08%、7~9月期が2.11%、10~12月期が2.17%となっている。電気代や食品価格は、燃料高や小麦の国際価格上昇が時間をかけて反映される。他の主要先進国に比べると物価上昇はまだ鈍い。米国は5月に8.6%と3カ月連続で8%を超えた。ユーロ圏は8.1%、英国は9.1%と高水準だった。政府は電気などエネルギーや食料品の価格上昇を抑える政策を実施する。事業者が節電した場合には電力会社が実質的に電気代を下げる制度を導入する。食料価格抑制のため、飼料や肥料の価格高騰対策もとる。

*6-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220624&ng=DGKKZO62004470U2A620C2EA2000 (日経新聞 2022.6.24) 物価高「2.5%」高齢層ほど痛み、食費・光熱費割合大きく
 国民生活を揺さぶる物価高が参院選で論戦の争点になっている。4月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.5%上がり、消費増税の影響があった時期を除くと1991年12月以来30年ぶりの伸びになった。インフレへの警戒感は高齢層で際立ち、参院選では各党が対策を競う。CPIは変動の大きい生鮮食品を除く総合指数でも前年同月比2.1%上昇し、消費増税の影響があった2015年3月(2.2%)以来、7年1カ月ぶりに2%を超えた。日本経済研究センターがまとめた民間予測の平均では、22年中は2%台で推移する。各党とも物価高対策を訴えるのは、多くの人が選挙に足を運ぶ高齢層でインフレの「痛み」が強まっているからだ。総務省がまとめた前回19年参院選の投票率は48.80%。年代別では60歳代が63.58%、70歳代以上が56.31%と平均を上回る。30歳代の38.78%、40歳代の45.99%と対照的だ。高齢層はインフレに強い警戒感を抱く。内閣府がまとめる消費動向調査によると、5月の消費者態度指数(原数値)は1年前に比べて1.1ポイント下がった。年齢別では30歳代や40歳代が1ポイント超改善したのに対し、60歳代は2.2ポイント、70歳代以上は2.8ポイント下がった。高齢層は収入が限られるうえに、支出に占める食費や光熱費の割合が大きい。そのため、高齢者ほど近い将来にさらに物価高が進むと感じている。同調査によると60歳代の61%、70歳代以上の57%が「1年後も5%以上の物価上昇」と回答する。30歳代(40%)や40歳代(49%)を上回る。各党の公約をみると、具体的な対策で違いがある。自民党は激変緩和措置として、ガソリンなどの燃油価格を補助金で抑えると訴える。公明党は新たな政労使合意で賃上げを目指すとした。野党はほぼそろって消費税の軽減を打ち出した。立憲民主党は時限的に税率を5%に下げるとするほか、日本維新の会も食品などに適用されている8%の軽減税率を3%に下げると主張する。国民民主党は消費減税とともに、ガソリン税の一部を減税する「トリガー条項」の凍結解除による負担減を訴える。共産党は減税とともに、後期高齢者の医療費負担増の中止を主張する。れいわ新選組、社民党、NHK党も税率引き下げや廃止を公約に盛る。物価高は欧米でも政治情勢に影響している。5月の消費者物価は米国が8.6%の上昇で、約40年ぶりの高さとなった。上昇率はユーロ圏が8.1%、英国も9.1%と日本を大きく上回る。暮らしの負担感は政治への不満につながりやすい。19日投開票されたフランス国民議会決選投票では、マクロン大統領が率いる与党連合が議席を大きく減らし、過半数を下回った。インフレ対策を掲げる野党に票が集まった。米国も11月の中間選挙に向けて、インフレ対策が最大の争点だ。このため各国政府も悪影響の緩和に躍起だ。フランスはガソリン1リットル当たり15ユーロセントを割り引き、ドイツもガソリン販売価格を抑える措置を打ち出す。バイデン米大統領もガソリンへの一時的な課税停止を議会に要請した。経済協力開発機構(OECD)によると、独、仏、イタリアでの資源高対策にかかる政策コストは国内総生産(GDP)比で1%に達する見込みだ。OECDは「対象を絞らない支援策は財政コストが高く、省エネルギーの推進や脱炭素への投資を損なう恐れがある。数カ月以上継続すべきではない」と強調する。英国は低所得の800万世帯に照準を絞り1200ポンド(約20万円)の支援策を公表し、効率の高い施策にしようとしている。

*6-2-3: https://mainichi.jp/articles/20220623/k00/00m/010/251000c (毎日新聞 2022/6/23) 「改憲」影潜め…参院選のメイン争点に「物価高」 有権者の関心高く
 22日に公示された参院選の一番の争点に、「物価高」が浮上してきた。公示前日の与野党9党の党首討論会でも、ほとんどの党首が「最も訴えたいこと」として触れた。一方、改憲に前向きな4党で3分の2の議席を得れば改正の発議が可能になることから「憲法改正」も主要なテーマと言われてきたが、街頭演説で触れられる機会は少ない。主婦ら有権者からも「物価高への対応を投票先選びの参考にしたい」と声が上がるなど、今の生活に密着する課題への関心は高まっている。専門家は「政治は物価高を克服する対策を具体的に示し、有権者もその内容を比較して」と語る。「物価高やインフレ、政権が何も手を打たないから物の値段が上がってみんなが大変な思いをしている。『(ウクライナの)戦争のせいだから我慢をしてください』って。人ごとですよ」(東京選挙区の野党候補者)。「何もしなければ(ガソリン1リットル当たり)210円くらいまで上がっているものを(政府の対策で)170円になんとか抑え、小麦の価格にしても(上昇を)2割3割でなんとか抑えている」(自民党の首相経験者)。公示日の22日に東京都内であった各党の街頭演説。与野党問わず、多くの候補者や応援で訪れた党幹部が物価高や上がらない賃金を俎上(そじょう)に載せ、有権者に訴え掛けた。物価高は深刻だ。商品やサービスの価格がどのくらい変動したかを示す4月の全国消費者物価指数(2020年=100、天候不良などで変動の大きい生鮮食品を除く)は、去年の同じ月に比べ2・1%上昇し、101・4だった。上昇率が前年を上回るのは8カ月連続で、消費増税の影響を除けば08年9月の2・3%以来、約13年半ぶりの高い水準だ。品目別では、食料(生鮮食品を除く)2・6%▽電気代21%▽ガス代17・5%――など、軒並み前年の同じ月よりも高くなった。東京・上野のアメ横商店街の食料品店主は「3月ごろから物価高を実感し始めた。最初は輸入品で、4月以降は国産品にも広がった」と振り返る。帝国データバンクが6月、約1700社を対象にインターネットで調査したところ、4月以降に値上げを「実施済み」「今後する予定」と回答した企業は約7割に上った。飲食料品企業では、その割合が9割に達した。有権者の関心も高い。夫と年金生活を送る東京都杉並区の女性(70)は「野菜も肉もほとんど全てが値上がり。日銀の偉い人が『家計が値上げを許容している』と言っていたが、許容なんてしていない。すでに食費は切り詰めていて、買い控えもできない。どうにかしてほしい」と訴える。大阪府吹田市の男性会社員(42)は「生きていくのに必要な食材費や光熱費は上がっているのに、給料は上がらない」と嘆き、「資本家のためではなく、まじめに働く人が苦しまない資本主義を実現してくれる政治家に1票を投じたい」と、物価高への対応を投票先選びの材料とするつもりだ。こうした関心に、各党も敏感に反応している。公示前日の21日、与野党9党首の討論会。冒頭に「一番訴えたいこと」を聞かれ、9党首中7党首が物価という単語を使って「物価高騰から暮らしを守る」などと訴えた。憲法改正は、1党が「9条を変えさせない」と述べるにとどまった。その後、各党首がそれぞれ1人を指名してテーマを決めて討論する場面でも、1巡目では6党首が物価を選び、憲法改正で議論した党首はいなかった。フランスでは、19日にあった国民議会(下院)総選挙の決選投票で与党連合が過半数を大きく割り込んだ。その背景には物価高騰への有権者の不満があったとされる。日本でも物価高がメインの争点に浮上した背景について、政治ジャーナリストの角谷浩一さんは「国民の目の前にある分かりやすい不安だからだろう。物価を下げるという話に反対する有権者はほとんどおらず、各党がテーマに掲げやすい」と分析。改憲は「有権者それぞれで考えが分かれ、党の主張が全ての有権者に届くわけではない」と違いを指摘した。そのうえで「大切なのは、物価高でも困らない程度までサラリーマンの給料を引き上げたり、セーフティーネットを充実させたりするなどの具体的な政策に踏み込んで議論を深められるか。参院選は3週間近くあるので、各党が物価高の先に描くビジョンを明確に示してほしい」と注文した。

*6-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220624&ng=DGKKZO62003870U2A620C2MM8000 (日経新聞 2022.6.24) 医療再建(下) 迫られる負担の「脱・年齢」 給付のメリハリ欠かせず
 日本の医療が少子高齢化を乗り越えるには負担と給付の発想を転換する必要がある。だが改革の動きはあまりに鈍い。「マイナンバーを活用すること等により、金融資産等の保有状況を考慮に入れた負担を求める仕組みを検討する」。政府が経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に記した文言だ。といっても今年の骨太方針ではない。安倍晋三政権が2015年に閣議決定したものだ。「団塊の世代」の全員が75歳以上になる25年以降は医療費の膨張が加速する。現役世代の負荷を緩和するため、資産のある高齢者にはもっと負担してもらう。こんな問題意識があった。ところが25年が迫ってきても実現する気配はない。厚生労働省の社会保障審議会が16年末に「金融資産を正確に把握する仕組みがない現状では尚早」と課題を指摘しただけ。政府がその後、マイナンバーを活用した資産把握の実装を急いでいるようにもみえない。閣議で「検討する」と決まった改革が実際には「検討しただけ」で尻すぼみになる。霞が関文学の典型だ。高齢者の医療費の窓口負担は70~74歳は2割、75歳以上は1割が原則だが、今後は現役世代と同様に3割負担を原則とすることも課題だ。そのうえで年齢に関係なく、所得や資産の状況から支援が要る人だけ負担割合を1~2割に下げる。こんな負担の全世代型改革を進める必要がある。会社員らの健康保険組合は加入者の賃金水準が新型コロナウイルス前に戻らない中で、高齢者医療を支えるために毎年3兆円超を拠出している。22年度は全体の7割にあたる963組合が赤字予算を組んでいる。現役世代の苦境は今後さらに深刻になる。政府の推計では40年の医療給付費は68.5兆円と20年度の約1.7倍に増える一方、20~64歳の現役人口は2割近くも減ってしまうためだ。荷を軽くするには給付の取捨選択も避けられない。今は有効性と安全性が確認された治療法や医薬品はすべて公的保険でカバーしている。今後は医療上の有用性などの視点で保険適用の可否を判断すべきだ。例えばフランスでは医薬品について有効性や安全性だけでなく、疾病の重篤度、治療の特性、公衆衛生への影響など医療上の有用性の観点で評価している。一般患者なら一律で70%給付の日本と異なり、給付率は5段階ある。抗がん剤など他で代替できない薬は100%給付だが、重要度が下がるにつれて65%、30%、15%、0%と給付率が下がる。有用性が低い薬ほど患者負担が重くなる。治療法の評価も見直しが要る。例えば、同じ病気の治療で内視鏡手術の患者が開腹手術の患者よりも早期に退院できるなら、それは病気の治療だけでなく「日常生活により早く戻る」という便益も提供されていることになる。特別な治療法を選択した患者には、追加的な自己負担を求める考え方も検討すべきだ。こうした改革を進める前提として、保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」を禁止するルールは見直し、柔軟に併用できるようにしたほうがよい。国民皆保険を守るためにも聖域を廃した改革が必要だ。

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2022.3.5~9 日本人の非科学性・非論理性は、無意識の差別や人権侵害に繋がっていること (2022年3月10、11、12、13、14、17、19、21、22、30日、4月1、2、3日追加)

   2022.2.25スポニチ     2022.3.4西日本新聞   2022.3.30朝日新聞

 私も、戦争の最中に自分の祖国やその同盟国の批判をしたくはないが、これは、言わなければならないから、損得勘定抜きで言っているのである。そして、「言論の自由」というのは、こういう時に必要なものなのだ。

(1)誹謗中傷の嵐は攻撃である
 フィギュアスケート金メダル候補のワリエワ(15歳)から採取された検体から、2021年12月25日にトリメタジジン(心臓病の狭心症・心筋梗塞等の治療で使われる薬で、血管を広げて血流をよくし、アスリートの心肺機能を上げる効果があるとされる)が検出されたと、*1-1のように、2022年2月11日、ドーピング検査を管轄する国際検査機関(ITA)が明らかにした。

 トリメタジジンは“ドーピング薬”に入っているが、筋肉増強効果があるのではなく、リカバリー促進効果を狙う薬で、健康な成人に経口投与した場合は血中からの消失半減期が11.5時間なので、46時間(11.5X4)で6.25%(0.5⁴)まで減少する。そのため、2021年12月25日にワリエワの尿からトリメタジジンが検出されたとしても、オリンピックの時には効果は続いていない筈だ(https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2171007F1210_1_02/2171007F1210_1_02?view=body&lang=ja参照)。

 にもかかわらず、ITAが、2022年2月11日に明らかにしたのは、世界中に「ロシアは闇が深く汚い」というイメージを刷り込むためではなかったかと、私は推測せざるを得ない。

 なお、トリメタジジンだけではワリエワの意図的な接種を断定できなかったためか、ニューヨーク・タイムズが、*1-2のように、「ワリエワからトリメタジジンのほかに、2つの薬物が検出された」と付け加えた。しかし、他の2つの薬物はドーピング防止当局によって禁止されているものではなかった。つまり、“ドーピング”の定義やルールにも問題があるのに、ルールを振りかざしてケチをつけた感があるのだ。

 また、朝日新聞は社説で、*1-3のように、「①スポーツの土台である公正・公平を揺るがす」「②他の選手も巻きこんで混乱を招いた罪は大きい」「③ロシア薬物問題を速やかに真相解明すべき」「④スポーツ仲裁裁判所は、ワリエワが引き続き試合に出ることを認める裁定をした」「⑤選手の健康を守ることが何より大切だ」「⑥2014年のソチ冬季五輪後、ロシアの大規模な薬物使用が発覚し、国家ぐるみの関与と隠蔽が認定された」「⑦ワリエワ問題を機に浮上した疑念と批判は、IOCに対する不信の表明でもある」等と批判し、日本のメディアは、一斉に同じような批判の嵐を吹き荒れさせた。

 しかし、⑤については、拍手喝采を浴びるために万難を排して練習してきた選手に対し、競技の最中に②③⑦を述べ立てて混乱させることこそ、精神の健康にとって最悪である上、危険でもある。そのため、④のように、スポーツ仲裁裁判所がワリエワの出場を認める裁定をしたのはよかったのだが、このような環境の下でのワリエワのフリーの出来は散々で、私は、このようにして金メダル候補を貶めた競技の結果が、①の公正・公平にあたるとは思えない。

 さらに、⑥のように、「2014年のソチ冬季五輪後、ロシアの大規模な薬物使用が発覚し、国家ぐるみの関与と隠蔽が認定された」として、ロシアの選手はROCとしてしか出場させず、金メダルをとっても国歌は演奏しないというロシア差別をしていた上、*1-4のように、ロシアは「全く悔い改めない」「五輪を複数大会欠場する必要がある」等と、IOCのパウンド氏(カナダ)やWADAのクレイグ・リーディ元会長(スコットランド)が語ったのは、明らかにロシアの選手に対する差別である。そのため、このような状況の下で、ロシアのプーチン大統領が怒りを覚えたとしても、全く不思議でも不自然でもない。

 なお、*2-3のように、アメリカのマルコ・ルビオ上院議員などが、「ウクライナに軍事侵攻したロシアのプーチン大統領の精神状態を疑問視する」としたそうだが、五輪の件だけでなく、何でもここまで悪く言われれば、怒るのが当たり前で正常だと思う。

 その証拠に、日本語が上手で普段は温厚かつ論理的でもあるガルージン駐日ロシア大使も、プライムニュース(BSフジ)でしつこく追及された時に、やはり顔を赤らめて怒っていた。日本のメディアは、コメンテーターを日本人に偏らせ、予定調和の結論ありきの見解ばかりを披露させる傾向があるが、相手国の専門家もバランスよく出演させて率直な意見を聞くべきである。

(2)戦争はいつ始まったのか?
1)反ロシアキャンペーンとロシアへの経済制裁が戦争の始まりであろう
 フランスのルメール経済相は、*2-1のように、「制裁は恐ろしいほど効果的で、ヨーロッパの決意を曖昧にしたくない。われわれはロシアとの経済、金融上の戦争に入る」と述べ、侵攻を続けるロシアに対する断固とした姿勢を示されたそうだが、私も、“経済制裁”は武力を使わない戦争開始だと思う。

 そのため、*2-2のように、中国が日米欧の対ロ制裁について「①あらゆる違法な制裁に断固反対する」「②制裁は問題を解決せず、争いをエスカレートさせるだけだ」「③中国とロシアは引き続き正常な貿易協力を進めたい」「④正常な金融取引を保つ」としているのはわかる。

2)ロシアのウクライナへの軍事侵攻
 ロシアがウクライナに対する軍事侵攻に踏み切って1週間経った現在も、*2-4のように、ロシア軍とウクライナ軍の戦闘が続き、多くの死者・負傷者・難民が出ていることには、私も心を痛めている。

 ロシアは停戦条件としてウクライナの「中立化」「非軍事化」を要求しており、その理由は理解できる。一方、ウクライナはEUやNATOへの加入を望んでおり、両者には隔たりがある。アメリカのブリンケン国務長官は、「われわれはウクライナ支援の用意がある」「ロシアの要求は度を越しており、交渉の対象にもならない」「われわれはロシアが見せかけの外交を行ってきたことを繰り返し見てきた」とし、アメリカはロシアとベラルーシに対して経済制裁を発表した。

 しかし、武力であれ、制裁であれ、ウクライナもロシアも脅されたから引き下がるような国ではない。そして、これは、どの国も基本的には同じだ。そのような中、松野官房長官が「ウクライナから避難した人の日本への受け入れに人道的観点から対応する」という考えを示されたのはよかったが、日本がロヒンギャなどのアジア人に冷たくし続けていることに対して、私は日本にも人種差別があると感じる。

 なお、「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐって開かれていた国連総会の緊急特別会合では、ロシア軍の即時撤退等を求める決議案が欧米・日本等の141か国の賛成多数で採択され、ロシアの孤立がいっそう際立つ形となった」とも書かれているが、ロシア・ベラルーシ・北朝鮮など5か国は反対し、中国・インドなど35か国は棄権したそうだ。欧米や日本から見ていてもわからないが、インド・中国は、ユーラシア大陸の視野でロシアと普通に商取引してきた長い歴史があるからだろう。

3)原発への武力攻撃が想定外とは・・
 ロシア軍が、ウクライナで事故を起こしたチェルノブイリ原発に続いて、欧州最大規模のザポロジエ原発を制圧したそうだ。これについて、*2-5-1は「①稼働中原発への軍事侵攻は前例がない」「②国際社会に大きな衝撃」「③原発への軍事攻撃は、ジュネーブ条約で禁止」「④システム故障や電源喪失が起きれば破滅的な過酷事故にも繋がる」「⑤世界中の原発を攻撃でき、原子力安全の根本が揺らぐ」「⑥原発占拠で脅しや交渉材料になることが分かってしまった」「⑦ウクライナの電源構成の5割近くが原子力」「⑧核燃料は原子炉内に入ったままで使用済核燃料プールもある」「⑨日本の原発は軍事攻撃想定外」と記載している。

 しかし、③については、戦争になれば負けないためには何が起こるかわからず、④⑥は当たり前であるため、①②⑤⑦⑧⑨が、想定外と安全神話を繰り返す原発に関する甘い予想である。

 日本国内の原発に関しては、フクイチ事故後、テロ対策施設設置を義務化して安全対策を強化したとしているが、原子力規制庁幹部が「テロ対策はしたが、他国の軍隊による武力攻撃は想定していない」としている。これは、想定を最小限にして対応した形だけを作ったことの証明だが、これで「敵基地攻撃能力」などと言っているのだから、考えが甘いにも程があるのだ。

 つまり、日本の原発は、*2-5-2のように、テロ対策で義務付けられた設備も再稼働した原発の一部でしか完成しておらず、ミサイル攻撃等で原子炉建屋が全壊するような事態は想定さえしていないのだ。これについては、国会で何度も取り上げられたが、政府は「武力攻撃は手段、規模、パターンが異なり、一概に答えることは難しい」と逃げ、原子力規制委員会は「(電力会社に)弾道ミサイルが直撃した場合の対策は求めていない」と説明した。原発が事故を起こした場合は、人が短期間避難すればすむわけではなく、避難などできない田畑で食料生産をしているため、無責任も甚だしいのである。

4)中華人民共和国が中華民国を併合できる理由はない
 1721年に成立したロシア帝国は、ロシア革命で1917年にソビエト連邦となり、1991年のゴルバチョフ大統領によるペレストロイカでソビエト連邦が崩壊して、東欧の脱共産化・東西ドイツの統一などが一気に進んで、東西冷戦は終わった。

 それと前後して、ソビエト連邦からリトアニア共和国・ラトビア共和国・グルジア共和国・ウズベキスタン共和国・モルドバ共和国・ウクライナ共和国・ベラルーシ共和国・トルクメニスタン・アルメニア共和国・タジキスタン共和国・カザフスタン共和国が独立し、ロシア連邦がソ連邦の後継となったのは多くの人が知っているとおりだ。

 つまり、国は「現状維持して安定」どころか、時代に合わせて変化しているのであり、革命を起こした人は、既存の政府からは、テロリストとして追跡され、処罰されてきたのだということを忘れてはならない。

 一方、中華人民共和国の李克強首相は、*2-6のように、2022年3月5日に開幕した全人代の政府活動報告で、「武器や装備の現代的な管理システムをうちたて、国防科学技術のイノベーションを強化し、新時代の人材強化戦略を実施して、軍の質の高い発展を推進する」と述べた。

 具体的には、「経済成長率目標5.5%」とし、「2035年に人民解放軍の現代化をほぼ実現し、今世紀半ばに世界一流の軍隊にする目標で国防費予算の伸び率を7.1%とする」「『祖国統一を後押ししなければならない』と述べて台湾統一に意欲を示した」とのことだが、台湾は中華民国という中華人民共和国とは別の独立国であるため、武力で併合することが許される筈はない。

 これは、1991年前後に上記の地域を独立させたソ連邦とは全く逆の動きであるため、ロシアのウクライナ侵攻と台湾問題を似たものとして関係付けることは本末転倒である。しかし、日本政府は、「力による一方的な現状変更の試みを非難する」としているだけで、①力によらなければ変更してもよい(←制裁ならよい?) ②一方的でなければよい(←合意を強いることも可?) ③現状変更が悪く、現状がBestである(←よりよい方向なら変革すべき) というおかしなメッセージを発しているだけで、論理性ややる気のある準備を見せていないのである。

(3)日本のエネルギー政策について
 日経新聞は、2022年3月1日の時点で、*3-1のように、「①ロシアのウクライナ侵攻が、エネルギー供給でのロシアの存在感とロシア依存へのリスクをあらわにした」「②ロシアの天然ガス生産量は世界2位、石油は3位で、国際決済網からのロシア排除で、さらに高騰しそう」「③ロシアにエネルギーを頼る欧州は強く出られず、その自信がプーチン大統領を侵攻へと動かした」「④脱原子力発電を掲げたドイツは天然ガスのロシア依存を深めていた」「⑤消費国は脱炭素とエネルギー安全保障の両立を探らなければならない」「⑥フランスは原発への回帰に踏み出し、EUも原発を環境に貢献するエネルギーと位置付けた」「⑦日本は再エネの導入が遅れ、原発の再稼働は進んでいない」と記載している。

 しかし、①②は事実だが、③は誤りだ。何故なら、欧米諸国は論理的に重要性の順位を考え、ロシアのプーチン大統領もウクライナ侵攻にあたっては諸般の事情を総合的に考慮したに違いないからだ。

 また、日本政府の広報版と言われる日経新聞は、3月1日時点で、ロシアのウクライナ侵攻を基に、④⑤⑥⑦のように、「(EUが天然ガスと原発を環境に貢献するエネルギーと位置付けたのだから)原発回帰や原発再稼働を早く進めるべきだ」としているが、原発が原爆と同じかそれ以上に危険であることは、プーチン大統領によって示してもらった筈である。それでも、安全保障のためとして原発を推進するつもりか? こういうことを、事前に、総合的に考慮することもできないから、馬鹿としか言えないのである。

 また、ロシアのウクライナ侵攻による原油価格高騰への対応として、*3-2のように、政府はガソリン価格抑制のため石油元売りに配る補助金上限を25円/リットルに引き上げる方針としたが、これは地元からの要請に基づいた与野党国会議員の圧力によるものだろう。しかし、私が現職時代の2006年頃から同じことを言っていたため、15~16年間も同じことを言っているという生産性の低さなのだ。しかし、その間に省エネやエネルギー変換をする時間は十分あったため、補助金とトリガー条項の凍結解除はともに不要である。

 なお、地球人口の増加や1人当たりエネルギー消費量の増加は確実に起こるため、(環境や気候危機を考慮しなかったとしても)化石燃料価格の高騰は確実で、再エネへのエネルギー変換とエネルギーの国産化は急務だったのである。

 そのような中、*3-3のように、「時限的・緊急避難的激変緩和措置」とされたガソリン補助金を何かと理由を付けて延長し、トリガー条項の凍結まで解除するというのは、金を使って再エネへのエネルギーの変換と国産化を遅らせるものである。そのため、このようなバラマキをする金があったらさっさとエネルギーの変換と国産化のためのインフラ投資をすべきであり、これは、物流についても同じなのである。高い物流コストを上乗せして高価になりすぎた製品(それが市場価格)なら、消費者は買えないから買わない選択をするだけだ。

(4)気候危機とシベリア


 2020.6.23bbc    2020.6.23bbc    IEuras(シベリア鉄道:北京⇔モスクワ)

(図の説明:左と中央の図は、シベリアで38°Cという最高気温を記録し、森林が火災を起こしたというBBCのニュースだ。また、右図は、北京・モスクワ間を往復しているシベリア鉄道で、その車窓からは広大な草原が見えている)

 国連の専門機関である世界気象機関(WMO)が、2021年12月15日、*4-1のように、「①ロシアのシベリアで2021年6月に記録された気温38度が、北極圏の観測史上最高気温だったと認定し」「②当時はシベリア一帯から北極圏まで広がる熱波が到来中で、シベリアの北極圏の平均気温は通常よりも10度上がり、地球規模での気温上昇や山火事・海氷喪失に繋がった」「③この新たな記録は私たちの抱える気候変化問題について警鐘を鳴らしている」とした。

 北極圏は世界平均の2倍のペースで温暖化が進み、シベリアの永久凍土は凍土層が解けていると言われている。そして、私が、近年、航空機でヨーロッパに行った時、シベリアの上空を飛ぶと北極圏とは思えないような広大な草原が広がっていた。

 もちろん凍土が解けると困ったことが多いのだが、温暖化でできた草原は農地や再エネの宝庫として使える上、氷の解けた北極海は不凍港として使える。従って、ロシアは新たに広大な利用可能地域を得たことになるため、ウクライナとは中国を仲介役として早期に和解し、大人口を抱えて食料・エネルギーが不足しがちな中国と協力してシベリア開拓を行えばよいと思う。

 なお、IPCCの報告書には「①人為起源の気候変動は異常気象の頻度・強度を増し、広範囲にわたる悪影響と損失・損害を引き起こしている」「②生態系と33億~36億人の人間が気候変動に対し非常に脆弱な状況」「③短期的には、地球温暖化のレベルは1.5度に達して複数の気候災害が増加し、生態系と人間に複数のリスクをもたらして完全になくすことはできない」「④中長期的にも、気候変動は自然と人間のシステムに大きなリスクをもたらし、食糧不安はより深刻になる」「⑤一時的に1.5度を超える場合でも、(メタンなど)さらなる温室効果ガスの排出を引き起こし、温暖化を低減しても元に戻すことはできない」「⑥氷床・氷河の融解、加速する海面上昇で特定の生態系・インフラ・低地の沿岸集落等に回復不可能な影響」等が書かれていると、*4-2は記載しており、そのとおりだろう。

(5)日本国憲法で国民に約束された生存権と社会保障

  
  2020.1.6介護ワーカー    事業構想2020.12月号    2020.9.3日経新聞
   
(図の説明:左図は、自助・共助・互助・公助の考え方であり、家族間扶養は自助に入るとする。中央の図は、「全国47都道府県議会議事録横断検索」からの議会質問と答弁に出た「自助・共助・公助」という言葉の数で、1989年以前にはなく1990年から登場しており、2011・2012年の増加は東日本大震災が背景だそうだ。右図は、メディアが大合唱している「高齢化で社会保障費が膨らむ」というグラフだが、それは当然のことなので予算全体として「入るを計って出ずるを制す」べきであり、無理に社会保障費を減らせば生存権の侵害で憲法25条違反になる)

 日本国憲法は25条で、「①すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。②国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障,公衆衛生の向上と増進に努めなければならない」と定め、国民の生存権とそれを護るために国が保障することを規定している。

1)医療・介護について
イ)日本の新型コロナ対応
 「感染症は何よりもまず検査が重要であるのに、検査・隔離・診断・治療の4層体制が最初から繋がっていなかったことが日本の新型コロナウイルス対応の最大の失敗だ」と阿部知子衆院議員(東大医学部卒、小児科医)が、*5-1のように述べておられ、おおむね賛成だ。
 
 具体的には、「①ダイヤモンド・プリンセス号で陽性でも無症状の人がいることが明らかになったのに、無症状者の存在をふまえた検査体制が全く取られず」「②無症状者も含めた広範な社会的検査で対策の基礎データが得られるのに、政府のコロナ対策は基礎となるデータが全く不十分で」「③緊急事態宣言などで人の行動を縛ることばかりに意識が向いて感染症を扱う基礎が作られず」「④緊急事態宣言からワクチン接種まで現状を把握する検査データが無いまま政策を組み立てるので、感染が拡大するまで方針を決められなかった」「⑤従って、対策を取っても、国民に理由を説明できない」ということだ。

 このうち、①②については、新たな感染症を防ぐために経験を科学的に活かすことをせず、③のように、人の行動を縛ることばかりに専念し、新型コロナを口実に日本国憲法に緊急事態条項を入れる必要性にまで言及する人が出たのは、日本が医療を軽んじて人権侵害を行う方向に進んでいる証拠だと思った。

 また、④⑤については、日本の政策は何事もそうで、為政者が殆ど丸暗記型の文系で「科学的根拠を基に、理由を国民に説明しなければならない」という発想がなく、「他国と足並みを揃えて孤立さえしなければよい」と考えている面があるからだ。しかし、足並みを揃えることが重要なのは馬車馬のように決まった単純な仕事をやり続ける場合で、自分でモノを考え判断する人間のやるべきことではないため、根本的にはやはり教育の問題である。

 さらに、日本の公衆衛生は、「⑥明治時代の結核隔離政策から始まり」「⑦戦後はハンセン病のように医学上は不要なのに社会的に排除するために隔離した負の歴史があり」「⑧1980年代末ごろから『感染症はもう来ない』という前提の下に感染症病床が削減され」「⑨日本で検査数が少ないのは、感染症に対しては検査が基本であるという基礎が忘れられてしまったから」というのも、⑥はその頃の科学技術の水準から考えて仕方がなかったとしても、⑦⑧⑨は、科学的根拠もなく医療やそれを享受する人の人権を疎かにしてきた歴史そのものなのである。

 なお、「⑩水際の検疫も検査で陰性になれば市中に入るが、検査は完璧でないため変異株の侵入を防ぐには陰性でも一定期間は留め置くべき」「⑪PCR検査の利点は遺伝子解析ができることで、変異株対策はPCR検査で遺伝子的な特性を把握することが重要」「⑫その上で抗体検査も進めて遺伝子タイプによるワクチン効果の違いが把握できる」「⑬下水のコロナ検査も進んでおり、変異株も含めて地域的対応も可能となった」とも言われており、⑪⑫⑬はそのとおりだが、こうなった理由は、日本の厚労省と同専門家会議は一流の専門家を集めていないからだろう。

 そして、⑩の水際の検疫については、無駄に厳しいところがあった反面、ザルになっているところも多く、本当はしっかり防疫して国民を護る気がないのではないかと疑われた。

 「⑭ワクチン接種は、東京オリンピック・パラリンピックのため、集団免疫のため、国家のために接種しなければならないなどと言われたが、自分のためにするものだ」「⑮健康はその人にとって、最大、最高の主権だ」については全くそのとおりだと思うが、⑭には、政府・メディアの全体主義的発想があった。⑮は現行憲法で国民に保障された権利なのだが、国の理想を綴った日本国憲法さえ読んだことのない国民が多いのも教育の問題であろう。

ロ)日本が医療産業で二流三流なのは、今だけか?
 吉田統彦衆院議員(名大院卒、眼科医、ジョンズ・ホプキンス大学研究員)は、*5-2のように、「①コロナで日本の医療体制には余裕がないことがわかった」「②人材面では日本の頭脳が海外流出する流れを変え、優秀な研究者は巨額の資金をかけてでも国籍を問わず海外から集める必要があるが、報酬が低すぎて招聘できない」「③日本の大学教授は一人で医療と基礎研究の両方やるので、限界がきている」「④日本の医療が基礎研究で海外の後塵を拝している理由はここにある」としておられ、私も①②③④には賛成だ。

 しかし、「⑤国立感染研は、(疫学調査や検査だけでなく)ワクチンの開発や治療法の確立をする力が必要で、国民の危機を守ることができるナショナルセンターに生まれ変わらせるべき」「⑥それができる人材が必要」という点については、疫学調査や検査も十分にできなかった上、それを大学や民間の検査センターと手分けして行うこともせず、2年半も不十分な検査で済ませてきた国立感染研には厚労省管轄施設の限界を見た思いがしたため、国立感染研を大きくするよりは、大学・製薬会社等が研究・開発を行い、厚労省は治験に協力して承認を遅らせないための改革が必要だと思った。

 さらに、「⑦コロナの国産ワクチンが遅れた根本的問題は、医薬品・医療機器産業における日本のプレゼンスの低下」「⑧治療用の医療機器は世界から遅れている」については、日本の医薬品・医療機器産業は他の産業と比較して前から遅れており粗末でもあった。そして、「⑨生体吸収性ステントは京都医療設計が開発したが、日本より先にドイツで承認・販売された」というのも、最初に欧米で認められなければ日本で認められないという点で全く例外ではなく、そうなる理由は承認する側の人材の問題なのである。

 なお、「⑩日本の医療は、技術は一流だが、医薬品・医療機器産業はもう二流三流」「⑪遺伝子医療でも遅れるリスクが大きい」とも言われているが、日本の医薬品・医療機器産業が一流になったことはなく、遺伝子治療でもかなり遅れているが、そうなる理由も、その方面に進む人材・報酬・労働条件やその背景の問題であろう。

2)生活保護について
 毎日新聞は、2022年2月14日、*5-3のように、「①失職して生活に困窮した50代の男性が、住まいのある東京都杉並区で生活保護を申請したところ、区は『地方に暮らす80代の両親に扶養照会しなければ生活保護申請の手続きは進められない』と言った」「②路上生活者支援で80代以上の高齢者に出会うことは珍しくないが、親族に連絡が行くのを怖れて生活保護申請をしない人は少なくない」「③扶養照会が生活保護利用にあたっての最大のハードルとなっている」と記載している。

 この①②③は、上の中央の図のように、バブルがはじけ、人口の高齢化が言われ始めた1990年頃から議会で質問に登場した「自助・共助・公助」のうち、「自分や家族で対応する」自助を優先して公助を節約するという発想から来ているものである。

 しかし、「“扶養を頼める家族の範囲”はどこまでか」「高齢で扶養能力のない“家族”でも扶養義務を負うのか」等の問題から逃げて、公助を減らしたい一心であることがまる見えだ。そのため、これでは、「健康で文化的な最低限度の生活を送るために必要な社会保障」を行わずに、国民の生存権を危うくする。

 また、*5-3は、「④厚労省は各地方自治体に照会の範囲を限定した上で、申請者本人の意思を尊重することを求める通知を出した」「⑤生活保護法は親族の扶養は保護に優先すると規定している」「⑥そもそも扶養照会という法律に基づかない仕組み自体が必要なのか」とも記載している。

 ④は、何もしないよりはよいが、⑤については、“親族”がいても頼れない事情がある人は多い。そのため、親族の扶養が生活保護に優先するのはどういう親族の場合かを議論し、扶養義務のある“親族”の範囲を狭めるべきである。そのため、⑥については、本人が「“親族”には頼れない」と判断して扶養照会を拒んでいるのなら、その希望を優先すべきだろう。

・・参考資料・・
<誹謗中傷の嵐は攻撃そのものである>
*1-1:https://news.yahoo.co.jp/articles/1b2e8fd2ee8b9538b604e3a634cda0d2740971a3 (Yohoo 2022/2/14) ワリエワから検出されたトリメタジジン「リカバリー促進効果狙ったのでは」専門家
 フィギュア女子のカミラ・ワリエワ(15=ROC)から検出された、トリメタジジンとは、一体どんな物質なのか-。11日にドーピング検査を管轄する国際検査機関(ITA)が陽性反応を明らかにして表面化。北京オリンピック(五輪)代表選考試合の1つだったロシア選手権(サンクトペテルブルク)で12月25日に採取された検体から、持久力向上の効果があるとされる禁止薬物トリメタジジンが検出されたと発表した。トリメタジジンは、心臓の病気である狭心症、心筋梗塞などの治療などで使われる薬だという。血管を広げ、血流をよくしたり、血管の中で、液が固まることを防ぐ作用がある。アスリートが使用すると、心肺機能を上げる効果があるとされ、18年平昌五輪ではボブスレー女子のナジェジダ・セルゲエワ(OAR=ロシアからの五輪選手)が失格処分になった例がある。高島平中央総合病院スポーツメディカルセンター長の元島清香氏は「ドーピングというと、筋肉増強のイメージがありますが、今回のケースはリカバリーを促進する効果を狙ったのでは」と話す。「完璧な演技をするためには、いかに充実したトレーニングを持続するかが大事。たとえばハードトレーニングを3日に1回から2日に1回できるようになれば、当然、アスリートとしてはプラス。肉体疲労からの回復を促す効果を得た可能性もある」と推測した。

*1-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/beca1669dd072a2935d8b1506e36082864c73d67 (Yohoo 2022/2/16) ワリエワの体内からトリメタジジンのほかに2つの薬物検出 NYT紙「非常に珍しい」
 北京五輪フィギュアスケート女子に出場しているロシアオリンピック委員会(ROC)のカミラ・ワリエワ(15)を巡るドーピング違反問題で、陽性判定を受けたトリメタジジンのほかに心臓機能を向上させる2つの〝薬物〟が検出されたことが判明した。米紙「ニューヨーク・タイムズ」は「北京冬季五輪のドーピングスキャンダルの中心にいる15歳のロシアのフィギュアスケート選手のワリエワは昨年12月に行われたドーピング検査で心臓の状態を良くするために使用される3つの薬物について陽性だった」と報道。すでにトリメタジジンの陽性判定が明らかになっているが、さらに2つの薬物も検出されていたのだ。ただ「彼女のサンプルで見つかった3つの薬のうち、トリメタジジンだけがドーピング防止当局によって禁止されている」と説明。その上で「他に検出された2つの薬はハイポキセンとL―カルニチンで禁止はされていないが、ドーピング防止当局の関係者は若いエリートアスリートに3つの薬すべてが体内に存在することは非常に珍しいと語った」と指摘している。他の2つの成分は〝シロ〟ではあるものの、トリメタジジンと同様に心臓の機能を向上させ、それが持久力の強化や血液循環の改善を促す効果があるという。そして、すべての成分が同時に体内にあることは不自然だと同紙は追及。「いずれの効果も、高いレベルのフィギュアスケート選手に大きな競争上の優位性をもたらす可能性がある」と分析している。禁止薬物に加えて〝グレー〟の成分を摂取していたことも判明したワリエワ。ドーピング問題の闇は深そうだ。

*1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15205616.html?iref=comtop_Opinion_03 (朝日新聞社説 2022年2月16日) ロシア薬物問題 速やかに真相の解明を
 スポーツを成立させる土台である公正・公平を揺るがし、他の選手も巻きこんで混乱を招いた罪は大きい。北京冬季五輪にロシアから参加したフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ選手をめぐるドーピング問題だ。昨年末に採取された検体から禁止薬物が見つかった。資格の停止か解除か、判断が二転三転した後、スポーツ仲裁裁判所は引き続き試合に出ることを認める裁定をした。16歳未満を法的能力が十分でない「要保護者」とする規定があり、15歳の同選手はこれに当たることなどが考慮されたという。選手の権利を尊重した判断といえるが、いくつもの疑問が重なり、納得には遠い。まず薬物陽性の事実が、五輪が開幕し団体種目を終えた段階で公表されたことだ。通常は採取から10日ほどで結果が出る。検体がロシア国外の検査機関に運ばれたことや、コロナ禍で様々な動きが滞っていることを考えても、なぜ1カ月以上を要したか、理由は不明だ。万が一にも金メダルの最有力候補と目される同選手の参加を優先させるような思惑が働いたとしたら、とんでもない話だ。問題の薬物は狭心症や心筋梗塞(こうそく)の治療薬で、選手が使えば血流が増え、持久力を上げたり運動後の回復を早めたりする効果がある。食物などから誤って摂取する可能性は低いという。自分で飲んだのか、誰かが飲ませたのか。目的は何か。その解明もこれからだ。近年、一部の競技で低年齢の選手の参加・活躍が目立つようになった。裁定理由が悪用され、薬物使用の抜け道になることを恐れる。競技の公平性はもちろんだが、選手の健康を守ることが何より大切だ。世界反ドーピング機関を中心に徹底した調査を行い、事態の全容を速やかに明らかにすべきだ。国際オリンピック委員会(IOC)はワリエワ選手が絡むメダル授与などを実施しないことを決めた。すっきりしないまま試合が行われ、成績が定まらない可能性も高い。選手たちの動揺・落胆はいかばかりか。こうした状況を招いた大きな責任はIOCにもある。14年のソチ冬季五輪後、ロシアにおける大規模な薬物使用が発覚し、国家ぐるみの関与と隠蔽(いんぺい)が認定された。だがIOCは毅然(きぜん)とした対応をとらず、むしろロシア五輪委員会に対する資格停止処分を先んじて解除するなどした。薬物根絶を迫る機会を自ら放棄したに等しい。ワリエワ問題を機に浮上した疑念と批判は、この間のIOCに対する不信の表明でもある。五輪はまたも大きく傷ついた。

*1-4:https://hochi.news/articles/20220213-OHT1T51080.html?page=1 (スポーツ報知 2022年2月13日) IOCの最古参委員・パウンド氏、ロシアのドーピング問題に「全く悔い改めない。1、2、3大会五輪を欠場するべき」
 フィギュアスケート女子でロシア五輪委員会(ROC)のカミラ・ワリエワ(15)のドーピング違反報道を巡り、国際オリンピック委員会(IOC)の最古参委員であるディック・パウンド氏(79)=カナダ=が、「ロシアはオリンピックから“タイムアウト”する時かもしれない」と語った。12日にカナダの放送局「CBC」が報じた。CBCの電話インタビューに応じたパウンド氏は、ロシアの組織的ドーピング発覚後も「全く悔い改めない」と断じ、「ロシアは問題を抱えている。この問題を収拾できるまで、1、2、3大会五輪を欠場するべき」と語った。また、世界アンチドーピング機構(WADA)のクレイグ・リーディ元会長も、五輪を複数大会欠場する必要があると語ったと、露メディアが報じた。ワリエワは、昨年12月に採取された検体が陽性と判明。ロシア・アンチドーピング機構(RUSADA)は8日に選手資格を暫定的に停止し、ワリエワからの異議申し立てを受けて9日に処分を解除した。この決定を国際オリンピック委員会(IOC)とWADAが不服としてスポーツ仲裁裁判所に提訴。CASは12日、13日に公聴会を開き、14日午後に裁定を下すと発表した。露メディアによると、ワリエワのコーチのエテリ・トゥトベリゼ氏は12日、取材に応じ、「カミラは潔白だと確信している。それを証明する必要はない」と答えた。女子のショートプログラムは15日に行われる。

<経済制裁も攻撃である>
*2-1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220302/k10013508931000.html (NHK 2022年3月2日) ロシアへの経済制裁 フランス経済相「経済 金融の戦争」
 フランスのルメール経済相は1日、ニュース専門チャンネルの番組に出演し、ロシアに対する欧米各国の経済制裁について「制裁は恐ろしいほど効果的で、ヨーロッパの決意をあいまいにしたくない。われわれはロシアとの経済、金融上の戦争に入る」と述べました。ルメール経済相は、「戦争」という表現はふさわしくなかったとしてその後撤回しましたが、侵攻を続けるロシアに対する断固とした姿勢を示しました。また、ウクライナ情勢をめぐる経済的な影響について「経済、金融上の力関係は完全にEU=ヨーロッパ連合が上回っている。崩壊するのはロシアの金融システムであり、ヨーロッパへの影響は、物価のわずかな上昇だ」と述べ、必要であれば制裁をさらに強化する考えを示しました。

*2-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/d380e39ed2a1b8c35378582a93026e92df63036e (Yahoo、ANN 2021/3/3) 中国が日米欧の対ロ制裁に“違法”と反発「ロシアと貿易進める」
 ウクライナへの軍事侵攻を受けて各国がロシアへの経済制裁に乗り出す中、中国政府は「ロシアと正常な貿易協力を進める」と制裁に反対する姿勢を表明しました。中国外務省は2日の会見で、欧米や日本などによる経済制裁について「あらゆる違法な制裁に断固反対する」とし、「制裁は問題を解決せず、争いをエスカレートさせるだけだ」と主張しました。そのうえで「中国とロシアは引き続き正常な貿易協力を進めたい」と述べ、天然ガスなどの購入を続ける考えを強調しました。また、金融監督当局のトップも2日の会見で、「金融制裁に賛成しない」と明言しました。国際的な制裁の動きには参加せず「正常な金融取引を保つ」としています。

*2-3:https://www.fnn.jp/articles/-/322893 (FNN 2022年3月1日) プーチン大統領の精神状態に疑問論 アメリカの有力議員らから
 ウクライナに軍事侵攻したロシアのプーチン大統領について、アメリカの有力議員らから精神状態を疑問視する声が上がっています。アメリカの情報機関と近い関係にある、マルコ・ルビオ上院議員は、ツイッターに詳細を明かすことはできないと断った上で、「今言えるのはプーチン氏は何かがおかしいということだ」と書き込みました。また別の書き込みでは、「昔のプーチン氏は冷血で緻密な殺人犯だったが、むしろ今のプーチン氏の方が危険」と警鐘を鳴らしています。アメリカメディアによりますと、ルビオ氏はプーチン氏の精神状態について政府報告を受けているということです。一方、ホワイトハウスのサキ報道官は2月27日、テレビのインタビューで「(プーチン氏は)コロナ禍で明らかに孤立している」としたうえで、「プーチン氏の言動を深く懸念している」と話しました。ただ、専門家の中には「冷静で抑制的な対応をしている」として、精神不安を前提にプーチン氏に対処すべきではないとも出ています。

*2-4:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220303/k10013510551000.html (NHK 2022年3月3日) ロシア ウクライナに軍事侵攻(3日の動き)
 ロシアがウクライナに対する軍事侵攻に踏み切って1週間。現地では、今もロシア軍とウクライナ軍の戦闘が続いています。戦闘の状況や、関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる3日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。(日本とウクライナとは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
●IPC ロシアパラリンピック委員会とベラルーシの選手出場認めない
 国際パラリンピック委員会はロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて、4日開幕する北京パラリンピックにRPC=ロシアパラリンピック委員会と、ロシアと同盟関係にあるベラルーシの選手の出場を一転して認めないことを決めました。
●ロシアとウクライナ きょうにも交渉か
 ロシアとウクライナは先月28日に続いて停戦に向けた2回目の交渉の実施を調整してきました。これについてロシアの代表団のトップ、メジンスキー大統領補佐官はウクライナ側との交渉が3日にベラルーシ西部のポーランドとの国境付近で行われると明らかにしました。一方、ウクライナ大統領府の高官も2回目の交渉がまもなく行われるという見通しを示しています。ただロシア側は停戦の条件としてウクライナの「中立化」や「非軍事化」を要求していて、ウクライナ側の立場とは隔たりがあります。ロシアは各地で攻撃を激化させるなど軍事的な圧力を強めながらウクライナとの交渉でも強硬な姿勢を貫くとみられ、停戦につながるかは依然、見通せない情勢です。
●アメリカ ブリンケン国務長官 ロシア側の交渉姿勢に否定的な見方
 3日にも行われる見通しのロシアとウクライナの停戦に向けた2回目の交渉について、アメリカのブリンケン国務長官は2日の記者会見で「問題は、ウクライナが自国の利益を保護し、戦争を終わらせるのに役立つと考えるかどうかであり、われわれは支援の用意がある」と述べました。そのうえで、ロシア側が停戦の条件としてウクライナの「中立化」や「非軍事化」を要求していることを踏まえ、「ロシアの要求は度を越しており、交渉の対象にもならない。われわれはロシアが見せかけの外交を行ってきたことを繰り返し見てきた」と述べ、ロシア側の交渉姿勢に否定的な見方を示しました。
●アメリカ ロシアとベラルーシに対する経済制裁を発表
 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐりアメリカのホワイトハウスは2日、ロシアとベラルーシに対する経済制裁を発表しました。ロシアで軍用機や軍用車両、ミサイルなどを製造している合わせて22の軍事企業を対象にしたほか、石油や天然ガスの生産に使う設備のロシアへの輸出を規制し、主要産業に打撃を与えるとしています。
またロシア軍の侵攻拠点の1つベラルーシに対しては、ハイテク製品の輸出規制を実施し、こうした製品や技術がベラルーシを経由してロシアに流出するのを防ぐとしています。
●松野官房長官 日本受け入れ 人道的観点で対応も
 ウクライナから避難した人の日本への受け入れについて、松野官房長官は記者会見で、日本の在留資格を持つおよそ1900人のウクライナ人の親族や知人を想定していると明らかにしたうえで、そのほかの人も人道的観点から対応する考えを示しました。また、松野官房長官は、記者会見で「1日の時点で確認されている在留邦人はおよそ110人であり、現時点までに邦人の生命・身体に被害が及んだとの情報には接していない。松田大使ら大使館員は陸路を使い、一時的にウクライナを出国しモルドバに到着しているが、松田大使は近く、リビウの連絡事務所に戻る予定だ」と説明しました。
●アメリカ国防総省 ICBMの発射実験延期を発表
 ロシアのプーチン大統領が核戦力を念頭に抑止力を特別警戒態勢に引き上げるよう命じたのを受け、アメリカ国防総省は2日、今週予定していたICBM=大陸間弾道ミサイルの発射実験を延期すると発表しました。国防総省のカービー報道官は記者会見で「アメリカとロシアは核兵器の使用が壊滅的な結果をもたらすと長い間、合意してきた。アメリカとして誤解を招くような行動をする意図がないことを示す」と述べ、ロシアとの間で緊張を高めないよう冷静に対応する考えを示しました。一方で「われわれは自国や同盟国などを守る能力は損なわれず、準備ができていることに変わりはない」と述べて、発射実験の延期の影響はないと強調しました。
●アメリカ国防総省 首都キエフ侵攻のロシア軍 依然停滞の認識
 アメリカ国防総省のカービー報道官は2日、記者会見で、ウクライナの首都キエフに向けて南下しているロシア軍の部隊について、「依然として動きは停滞している」と述べ、この一日で大きな進展は見られなかったとの認識を示しました。理由についてカービー報道官は、ロシア軍がウクライナ側からの抵抗に加えて燃料などの物資の不足に直面していると指摘する一方、侵攻の遅れを取り戻すため部隊の再編成を行っている可能性があるとの認識を重ねて示しました。一方で、「ロシア軍は燃料だけでなく、食料の補給にも問題が出るなど複数の過ちを犯してきたが、今は克服しようと取り組んでいる」と述べて、ロシア軍は態勢が整いしだい、キエフへの攻勢を強めるという見方を示しました。またカービー報道官は、ロシア軍は人口の多い主要な都市はいずれも奪えていないとの認識を示しました。このうちロシア国防省が完全に掌握したと発表している南部の都市ヘルソンについては「激しい戦いがまだ続いていると見ている」としたうえで、南部の戦闘の状況について「北部と比べてウクライナ軍の抵抗が少ないようだ」と指摘しました。
●アメリカ ブリンケン国務長官 ヨーロッパ訪問へ
 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続く中、アメリカ国務省は2日、ブリンケン国務長官が3日から8日までの日程で、ヨーロッパなどを訪問すると発表しました。ブリンケン長官は、ベルギーの首都ブリュッセルでNATO=北大西洋条約機構やG7=主要7か国の外相会合などに出席し、ロシアへの追加の経済制裁を含む今後の対応について意見を交わすとしています。5日には、ウクライナの隣国ポーランドでラウ外相と会談し、安全保障面での支援やウクライナから避難してきた人たちへの人道支援などをめぐって協議するということです。その後、同じくウクライナの隣国、旧ソビエトのモルドバでサンドゥ大統領などと会談し、避難民の受け入れなどについて意見を交わすとしています。さらにブリンケン長官はロシアの軍事侵攻に対し懸念を強めるバルト3国のリトアニアとラトビア、エストニアを訪問し、NATOの抑止力の強化やウクライナへの支援などをめぐって協議する予定です。
●国際刑事裁判所 戦争犯罪や人道に対する罪について捜査始める
 オランダのハーグにある国際刑事裁判所は2日、ウクライナで行われた疑いのある戦争犯罪や人道に対する罪について、捜査を始めると発表しました。国際刑事裁判所のカーン主任検察官の声明によりますと、フランスやドイツ、イギリスなど裁判所の39の加盟国からウクライナでの状況について捜査するよう要請があり、ウクライナも加盟国ではないもののすでに捜査に同意しているとしています。捜査の対象となるのは、2014年にロシアが一方的にウクライナのクリミア半島を併合した前後の時期から今回の軍事侵攻までの期間で、カーン主任検察官は先に発表した声明の中で「予備的な調査の結果、ウクライナで戦争犯罪や人道に対する罪が行われたと考える合理的な根拠がある」としていました。
●仏マクロン大統領 停戦に向けた仲介続ける考え
 フランスのマクロン大統領は2日夜、テレビ演説を行い、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐり、改めてプーチン大統領を非難したうえで「プーチン大統領に武器を捨てるよう説得するため連絡を取り続ける」と述べ、停戦に向けた仲介のためプーチン大統領との連絡を続ける考えを示しました。また「ヨーロッパは平和のために代償を支払うことを受け入れなければならない」と述べ、ヨーロッパ各国がロシアからの天然ガスへの依存度を下げエネルギー自給率を上げていくべきだという考えを示しました。そのうえでマクロン大統領は、今回の事態を受け浮き彫りになったヨーロッパのエネルギー面での課題や安全保障の在り方をめぐり、今月10日からパリ近郊で開かれるEU=ヨーロッパ連合の非公式の首脳会議で議論する考えを示しました。
●バイデン大統領 国連総会決議棄権の中国とインドを批判
 アメリカのバイデン大統領は2日、国連総会の緊急特別会合でロシアを非難し、軍の即時撤退などを求める決議案が賛成多数で採択されたことについて中西部ウィスコンシン州で行った演説の中で、「141か国がロシアを非難した。いくつかの国は棄権した。中国は棄権した。インドも棄権した。彼らは孤立している」と述べ棄権した35か国のうち中国とインドを名指しで批判しました。そのうえで「彼らはNATO=北大西洋条約機構やヨーロッパ、そしてアメリカを分断することができると考えているのだろう。そんなことは誰にもできないと世界全体に示そう」と訴えました。
●プーチン大統領 インド モディ首相と電話会談
 ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は2日、関係強化を進めるインドのモディ首相と電話会談を行いました。ロシアとインドは伝統的な友好国で、軍事的な結び付きも強いことから先月25日に国連安全保障理事会でロシア軍の即時撤退などを求める決議案が採決にかけられた時にはインドは棄権し、ロシアに対する制裁にも慎重な姿勢を示しています。ロシア大統領府によりますと、会談ではウクライナ東部のハリコフで退避できずにいるインド人の留学生たちをロシアを経由して退避させる方策について話し合ったということです。ハリコフで1日、現地の大学に通っていたインド人の医学生が戦闘に巻き込まれて死亡し、インド国内でロシアの軍事侵攻への批判の声が強まることも予想されていたことから、プーチン大統領としては、インドへの配慮を示すことで良好な関係を維持するねらいがあるものとみられます。
●ロシア報道官 “ロシア軍兵士498人死亡”と発表
 ロシア国防省のコナシェンコフ報道官は2日、これまでの軍事作戦でロシア軍の兵士498人が死亡し、1597人が負傷したと発表しました。今回の戦闘でロシア側が自国の兵士の具体的な被害状況を明らかにしたのは初めてです。一方、コナシェンコフ報道官はロシア軍による攻撃でこれまでに2870人以上のウクライナ軍の兵士を殺害したほか、ウクライナ国内の1533の軍事施設などを破壊したとしています。
●ウクライナ東部ドネツク州 住宅などに大きな被害
 ロイター通信は2日、ウクライナ東部ドネツク州の親ロシア派が事実上支配している地域で、双方の戦闘で住宅などに大きな被害が出ていると伝えました。現地の映像では、砲撃で激しく壊れたアパートで地元の人たちが部屋の中に散乱するがれきを撤去する作業などに追われていました。地元に住む男性は「私のことばが責任ある人たちに届くのなら自分の親や子どもが戦火にさらされることがどれだけつらいものか分かってほしいです」と涙ぐみながら話していました。
●キエフでは多くの市民が地下での避難生活続ける
 首都キエフでは、多くの市民が安全を確保しようと地下での避難生活を続けています。2日の現地からの映像ではシェルターとなっている地下鉄の駅構内に多くの人が集まり、毛布にくるまったり、家族で肩を寄せ合ったりしながら不安な様子で過ごしていました。市内に住む女性は「地下には子どももたくさんいてひどい状況です。暴力と残酷な行為が早く終わることを願っています」と話していました。またウクライナ軍の兵士として戦う婚約者がいるという女性は「21世紀にこんなことが起きるなんて誰も想像できませんでした。彼としばらく連絡が取れない時はとても不安ですが、正しいことをしている彼を誇りに思います」と話していました。
●国連総会の緊急特別会合 ロシア非難決議 賛成多数で採択
 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐって開かれていた国連総会の緊急特別会合で、ロシアを非難し、軍の即時撤退などを求める決議案が賛成多数で採択されました。決議案には、欧米や日本など合わせて141か国が賛成し、ウクライナ情勢をめぐるロシアの国際的な孤立がいっそう際立つ形となりました。採決は日本時間の3日午前2時前に行われ、賛成が欧米や日本など合わせて141か国、反対がロシアのほかベラルーシや北朝鮮など合わせて5か国で、3分の2以上の賛成を得て採択されました。中国やインドなど合わせて35か国は棄権しました。
●ウクライナ ゼレンスキー大統領「ロシア軍兵士 約6000人死亡」
 ウクライナのゼレンスキー大統領は2日、新たな声明を発表し「ロシアによる軍事侵攻が始まってから6日間で、およそ6000人のロシア軍の兵士が死亡した」と明らかにしました。そのうえで「ロシアはその代償に何を得たというのか。ロケットや爆弾、戦車、いかなる攻撃もウクライナを奪うことはできない」と述べました。また1日に首都キエフの中心部にあるテレビ塔がロシア軍の攻撃を受けたことについて、現場付近は第2次世界大戦中、ナチス・ドイツによって殺害されたユダヤ人を追悼する場所だとしたうえで「ロシア軍は私たちの歴史について何も知らない。ホロコーストの犠牲者を再び殺したのだ」と述べ、非難しました。

*2-5-1:https://mainichi.jp/articles/20220304/k00/00m/030/450000c (毎日新聞 2022/3/4) 原発が戦場 史上初、稼働中に攻撃 世界激震 「安全の根本揺らぐ」
 ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナで、今度は原発を舞台にした交戦という前代未聞の出来事があった。一体何が起きているのか。
●明確な国際法違反、常軌を逸した攻撃
 暗闇の中を激しい閃光(せんこう)が飛び交い、煙が立ち上ったーー。攻撃を受けたウクライナ南東部のザポロジエ原発。敷地内の監視カメラが捉えた映像は、インターネットなどを通して世界に広まった。稼働中の原発への軍事侵攻は過去に例がない。国際社会に大きな衝撃を与えた。AFP通信は、ウクライナ軍関係者の話として、火災が起きたのは敷地内の研修施設と研究所だと報じた。ウクライナ政府は国際原子力機関(IAEA)に対し、攻撃を受ける前後の放射線量に大きな変化は見られず、火災による「重要な設備」への影響はないと報告した。ウクライナの原子力規制当局は、同原発がロシア軍に制圧されたことを認めた。出力100万キロワットの原子炉を6基抱えるザポロジエ原発は、総出力で欧州最大規模の原発だ。このうち1~5号機は旧ソ連時代の1985年から89年にかけて営業運転を開始した。攻撃時には、検査などのため1基のみが運転中だった。ウクライナ政府は、クリミア半島から進撃する南部戦線のロシア軍が、同原発の制圧を目指しているとして危機感を強めていた。2日には原発の職員や周辺住民ら数百人が、原発に通じる道路を封鎖するバリケードを築いて侵攻に備えた。しかし、ロシア軍はこれを破って敷地に侵攻したとされる。原発への軍事攻撃は、ロシアも批准するジュネーブ条約で禁じられている。原子力の平和利用を目的にしたIAEA憲章にも反する。核問題に詳しい長崎大の鈴木達治郎教授は、「明確な国際法違反であり、ロシア軍は直ちに攻撃をやめるべきだ。システムの故障や電源喪失が起きれば、破滅的な過酷事故につながりかねない。これが許されるならば、世界中の原発が攻撃されることになり、原子力安全を巡る根本が揺らぐ」と危惧する。ウクライナのクレバ外相は4日、ツイッターで「もし爆発すれば、チェルノブイリ(原発事故)の10倍以上になる」と危機感をあらわにした。福島大環境放射能研究所の難波謙二所長は、この見方を「決して的外れではない」と指摘する。「(事故が起きれば)放射性物質による汚染はウクライナの国境を軽く越えて欧州全土や中東にまで広がる恐れがある。原発を占拠してしまえば、脅しや交渉の材料として使えるということが分かってしまった」。ロシア軍は2月24日には、86年に史上最悪の爆発事故を起こしたウクライナ北部のチェルノブイリ原発を占拠した。米ホワイトハウスなどによると、露軍は同原発で事故処理を続けていた職員らを人質に取っているとされる。IAEAはウクライナ政府の報告として、原発にとどまる職員らが「心理的重圧と精神的疲労」に直面しているとし、ロシア側に「重要業務を安全かつ確実に遂行できるよう休養と交代を認める必要がある」と警告した。IAEAによると、2020年時点でウクライナの電源構成の5割近くを原子力が占める。国内ではザポロジエを含む4カ所に15基の原子炉がある。ロシア軍の侵攻に備えて原子炉を停止すれば、全土の電力供給に支障が出る懸念もある。また停止した原子炉でも、外部電源を失って核燃料を冷やせなくなれば、東京電力福島第1原発事故のような炉心溶融(メルトダウン)が起きる。今後の判断は容易ではない。鈴木さんは、「ロシアのやっていることは常軌を逸している。今後何が起きるか分からない。今すぐできることは少ないが、ロシアに対して原発への攻撃をやめさせ、せめて施設の安全性確保に全力を尽くすことを保証させるしかない」と話した。
●私兵組織、露軍の統制利かず?
 砲撃のあったザポロジエ原発1号機は数日前から定期点検に入っていたが、同原発の広報担当者はウクライナのウニアン通信に対し、「核燃料はまだ原子炉内に入ったままで、取り出されていない。使用済み核燃料などを入れるプールもある」と話した。同原発の職員は、攻撃をしているのは「カディロフツィ」と呼ばれるロシア南部チェチェン共和国のカディロフ首長の私兵組織との認識を示し、「彼らは地雷を敷設しようとしている。全欧州を脅すつもりだ」と話したという。カディロフ氏の私兵組織はウクライナの首都キエフへの攻撃にも加わっているとみられ、ロシア軍の統制が十分に利いていない可能性もある。ロシア国防省のコナシェンコフ報道官は4日、「ウクライナの破壊工作グループ」が原発構内に侵入し、「恐ろしい挑発行為を試みた」と主張。警戒に当たっていたロシアの治安部隊と銃撃戦となった後、原発の訓練施設に潜んでいたこのグループが「撤収する際に放火した」と述べ、原発の火災はウクライナ側に責任があると訴えた。ロシアとウクライナの間では3日に2回目の停戦協議も開かれたが、ウクライナの非武装化や事実上の政権交代などを求めるプーチン露大統領は3日のマクロン仏大統領との電話協議で、「特別軍事作戦の任務は何があろうと達成する」と強硬姿勢を崩さなかった。停戦協議を長引かせるようなら「ウクライナにさらに追加の要求をする」と迫っている。2日にウクライナ南部の要衝ヘルソンを制圧したと発表したロシア軍は、黒海沿岸のオデッサ方面に向かうほか、ザポロジエ原発のあるドニエプル川沿いを北上し、ウクライナ中心部へも兵を進めている。ウクライナ国内の主要都市や重要インフラの制圧を進めることで、徹底抗戦を呼びかけるウクライナのゼレンスキー政権との停戦協議を有利に進める狙いもあるとみられる。
●日本の原発 「軍事攻撃は想定外」
 国内の原発は、東京電力福島第1原発事故を踏まえて安全対策が強化された。その一つが、テロ対策施設の設置の義務化だ。航空機の衝突などによるテロで原子炉建屋などが損傷した場合でも、放射性物質の周囲への拡散を防ぐ。しかし、原子力規制委員会の事務局を担う原子力規制庁の幹部は「軍隊による武力攻撃は想定していない」と話す。テロ対策施設は、原子炉を遠隔で制御するための「緊急時制御室」や、炉心を冷やすための「注水設備」、それらを動かすための「電源設備」などを備える。原子炉から十分に離れた所に設置できない場合、航空機を衝突させるテロ攻撃にも耐えられる頑丈さが必要になる。テロにより原子炉建屋などが損傷した場合、テロ対策施設からの遠隔操作や敷地内に配備した送水車による注水などで、原子炉格納容器を冷やして炉心溶融(メルトダウン)させないようにする。各原発のこうした施設はテロ対策の観点から、具体的な位置や設備の内容などは明らかにされていない。規制委の安全審査も非公開で実施されている。ただ、テロと軍事攻撃では被害の状況などが大きく異なる。「テロ対策施設にミサイルが撃ち込まれたら、多分だめだと思う。他国の軍隊が攻めてくるのは想定外だ」。規制庁の幹部はそう明かした。規制庁によると、テロ対策施設は現在、九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)と関西電力高浜原発(3、4号機、福井県)、四国電力伊方原発(愛媛県)の計3カ所に設置されている。高浜原発(1、2号機)など4カ所では建設中だ。安全対策などの工事計画が認可されてから5年以内の設置が義務付けられており、期限内の完成が間に合わなければ、再稼働後でも運転を停止しなければならない。関西電力美浜原発3号機(福井県)などでは期限に間に合わず、運転を止めた。

*2-5-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/163720 (東京新聞 2022年3月4日) 原発に攻撃、日本の備えは…「ミサイルで全壊、想定していない」 テロ対策施設の未完成、再稼働した5基も
 ロシア軍によるウクライナ最大のザポロジエ原発への攻撃。日本の原発は2011年3月の東京電力福島第一原発事故以降、地震津波対策は厳しくなったが、大規模な武力攻撃を受けることは想定外だ。航空機衝突などテロ対策で義務付けられた設備は、再稼働した原発の一部でしか完成しておらず、外部からの脅威に弱い。「武力攻撃に対する規制要求はしていない」。政府が次の原子力規制委員長の候補とした山中伸介規制委員は4日、参院の議院運営委員会で原発が戦争に巻き込まれた際の対策を問われ、答えた。規制委事務局で原発の事故対策を審査する担当者も取材に、「ミサイル攻撃などで原子炉建屋が全壊するような事態は想定していない」と説明した。原子炉は分厚い鉄筋コンクリートの建屋にあり、炉も厚さ20センチの鋼鉄製だ。どの程度の攻撃に耐えられるかは、規制委も電力各社も非公表。しかし炉が難を逃れても外部電源を失えば、原発停止後に核燃料を冷やせず、福島第一原発のようにメルトダウン(炉心溶融)に至るリスクを抱える。航空機衝突などで中央制御室が使えなくなった場合は、テロ対策として秘匿された構内の別の場所に設置する「特定重大事故等対処施設(特重)」で炉内の冷却などを続ける。ただ再稼働済みの10基のうち、特重があるのは5基。5基は特重が未完成のまま稼働している。廃炉中を含め全国18原発57基の警備は電力会社、警備会社、機関銃などで武装した警察、海上保安庁が担う。自衛隊が配備されるのは「有事」となってからだ。
◆国会で何度も質問も、政府「一概に答えられない」
 日本国内の原発への「軍事攻撃」に対する危険性は過去の国会で何度も取り上げられたが、政府側は言葉を濁してきた。2015年の参院特別委員会で、参院議員だった山本太郎氏(現れいわ新選組代表)は、原発がミサイル攻撃に備えているか質問。原子力規制委員会は「(電力会社に)弾道ミサイルが直撃した場合の対策は求めていない」と説明。当時の安倍晋三首相は「武力攻撃は手段、規模、パターンが異なり、一概に答えることは難しい」とかわした。民進党(当時)の長妻昭氏は17年の衆院予算委で、原発がミサイル攻撃を受ければ事故以上に被害が大きくなり「核ミサイルが着弾したような効果を狙える」と指摘し、対応を質問。規制委は「そもそもミサイル攻撃は国家間の武力紛争に伴って行われるもので、原子力規制による対応は想定していない」と答えた。同年の参院審議でも、自民党の青山繁晴氏がミサイル攻撃があった場合の避難想定の不十分さを指摘。「地域住民の不安、社会的混乱もすさまじいと思われる」と対策を求めたが、政府側は「武力攻撃による被害は一概に答えられない」としていた。

*2-6:https://mainichi.jp/articles/20220305/k00/00m/030/257000c (毎日新聞 2022/3/5) 中国の国防費3年ぶり伸び率 李克強首相「祖国統一を後押し」
 中国政府が5日に公表した2022年の国防費予算(中央政府分)は、前年比7・1%増の1兆4504億5000万元(約26兆3500億円)で、伸び率は21年予算(前年比6・8%)を上回った。国防費の伸び率が前年比で7%を超えたのは19年以来、3年ぶり。国防費予算の伸び率7・1%は、経済の成長率目標の5・5%よりも高かった。中国は35年に人民解放軍の現代化をほぼ実現し、今世紀半ばに「世界一流の軍隊」にするとの目標を掲げている。ここ数年は、成長率目標より国防費予算の伸び率を高く設定する傾向が続いている。李克強首相は5日に開幕した全国人民代表大会(全人代)の政府活動報告で「武器や装備の現代的な管理システムをうちたて、国防科学技術のイノベーションを強化し、新時代の人材強化戦略を実施して、軍の質の高い発展を推進する」と強調。先進的な兵器・システムの研究開発などにより一層、力を入れる姿勢を示した。中国は極超音速滑空体(HGV)を搭載できる新型弾道ミサイル「東風17」などの先端兵器の配備を進めている。李氏はまた「祖国統一を後押ししなければならない」と述べ、改めて台湾統一に意欲を示した。中国は近年、台湾の防空識別圏(ADIZ)に戦闘機を繰り返し進入させるなど、台湾海峡周辺での軍事的な活動を強化している。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、台湾では一部で中国による軍事的な圧力がさらに強まることへの懸念が出ている。ただ、国際社会がロシアへの非難を強める中で、中国政府はウクライナ侵攻と台湾問題を関連付けられることには一貫して反発している。今秋に共産党大会を控え、中国は国内外の安定を重視する。このため多くの専門家は、中国が台湾問題で極端な行動に出る可能性は低いとみている。

<日本のエネルギー>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220301&ng=DGKKZO58649540R00C22A3MM8000 (日経新聞 2022.3.1) ウクライナ侵攻 危機の世界秩序(4)エネ安保、不作為に警告
 原油価格が米市場で7年7カ月ぶりに1バレル100ドルを超えた。未曽有の高値圏にある欧州の天然ガス価格も急騰した。
●力そがれる不安
 ウクライナ侵攻があらわにしたのは、エネルギー供給におけるロシアの存在感と同国に依存するリスクだった。天然ガス生産量は世界2位、石油は3位。国際決済網からのロシアの排除により、さらに高騰するのではないかと世界は身構えている。ロシアは脱炭素が進み、歳入の4~5割を占める石油・ガス収入を失えば、軍事強国の地位も危うくなる。一方、今なら石油とガスの需給は逼迫している。世界の開発投資が急減したからだ。ロシアにエネルギーを頼る欧州は強く出られないのではないか。そうした自信がプーチン大統領を侵攻へと動かした。世界はエネルギー過渡期の弱さを露呈した。2日に開かれる産油国の「石油輸出国機構(OPEC)プラス」閣僚協議。消費国は増産加速を期待するが、主導権を握るロシアが同意するとは考えにくい。原油価格は1バレル130ドルを超えるとの見方も出てきた。今回の行動が、欧州に「ならず者国家に頼って大丈夫か」との恐怖を想起させるのは当然だ。ジョンソン英首相は「石油やガスのロシア依存を集団的にやめなければならない」と語った。プーチン体制と欧州の関係が侵攻前に戻ることはあるまい。脱炭素に傾斜する市場や投資家がロシアの石油・ガス排除を求める圧力は強まり、ロシアは自らの首を絞めることになるだろう。消費国は脱炭素とエネルギー安全保障の両立を探らなければならない。脱原子力発電を掲げたドイツは、天然ガスのロシア依存を深めていた。2014年にロシアのクリミア併合という国際秩序を無視した行為を見ながら、同年から20年までにロシアからの輸入量を46%も増やしていた。フランスは原発への回帰に踏み出した。欧州連合(EU)も原発を環境に貢献するエネルギーと位置付けた。アジアも例外ではいられない。この冬、米国からアジアに向かった液化天然ガス(LNG)船が相次いで欧州に進路を変えた。需給の逼迫した欧州での価格がアジアを上回るという、前例のない事態が出現したからだ。
●東アジアも火種
 「米欧アジアのガス市場は一体化した」。JERAグローバルマーケッツの葛西和範最高経営責任者(CEO)は指摘する。欧州の危機は瞬時にアジアに波及する。日本は再生可能エネルギーの導入が遅れ、原発の再稼働は進んでいない。ロシアの侵攻によって、石油やLNGに頼る脆弱さを改めてつきつけられた。東アジアも台湾などを巡って紛争の火種を抱えている。エネルギーのほとんどを海上輸送で輸入する日本に思考停止は許されない。危機が起きてからでは遅い。ロシアの暴挙はエネルギー安保の不作為に対する警告だ。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220226&ng=DGKKZO80495320V20C22A2EA3000 (日経新聞 2022.2.26) ガソリン補助、5倍の25円に、ロシアの軍事侵攻で高騰警戒、措置長引く可能性
 政府は3月からガソリン価格抑制のため石油元売りに配る補助金の上限を1リットルあたり25円に引き上げる方針だ。現行の5円の5倍になる。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けた原油価格の高騰に対応する。来週に詳細を発表する見通し。原油高が続けば措置が長引く可能性がある。岸田文雄首相は25日の参院予算委員会で「まず当面は今の激変緩和措置の拡充で対応したい」と述べた。ガソリン税を引き下げる「トリガー条項」の凍結解除については引き続き検討する考えを示した。「将来的にはさらなる原油高騰もありうるので、あらゆる選択肢を排除せず準備を進めたい」と語った。国民民主党の玉木雄一郎代表は2022年度予算案に賛成した理由として、トリガー条項を排除しない方針を示した首相答弁をあげている。補助金は毎週公表するガソリンの全国平均価格が基準に達したら元売りに支給して卸値の抑制に充てる仕組みをとる。ガソリン、軽油、灯油、重油の4種類が対象になる。支給額は発動開始から3週間目で現行の上限の5円に達した。2月21日時点のガソリン価格は172円。当初想定した170円に抑えられなくなった。野党が主張するトリガー条項を発動した場合の減税額は25.1円で、補助金の支給上限を25円に引き上げればほぼ同水準になる。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は24日に始まった。同日のニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は一時、1バレル100ドル台に上昇した。1バレル100ドルは日本でのガソリン価格で1リットル180円台前半の水準に当たる。補助金の上限が25円になれば170円程度にまで抑えられる。現在は基準額を4週ごとに1円ずつ切り上げている。24日から基準額は170円から171円に改めた。今回の補助金の拡充にあわせ、切り上げを倍のペースに早める。3月に拡充すれば夏には180円を超える。3月中はエネルギー対策特別会計の剰余金を使うほか、一般会計の予備費から数千億円を支出する。5円の補助を1カ月続けると500億円程度、25円の補助を1カ月続けると2500億円ほどが必要になる。

*3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220226&ng=DGKKZO80495350V20C22A2EA3000 (日経新聞 2022.2.26) ばらまき色、一段と濃く
 ガソリン補助金はもともと2022年3月までの「時限的・緊急避難的な激変緩和措置」だった。日本政府にとってウクライナ情勢の悪化は想定外だったとはいえ、大幅な拡充で当初目的が揺らぐ。所管する経済産業省には「延長後、いつ終えるか明確に示すのは難しい」との声が目立つ。ばらまき色が一段と濃くなってきた。ガソリンや軽油の価格が上がれば物流コストはかさみ、寒冷地で灯油は生活必需品だ。ウクライナの動向次第ではさらなる急騰も懸念されるが、それでもレジャー目的の乗用車のガソリン代まで税金で補助する意義は乏しい。「ガソリンに補助金を出す先進国なんて日本ぐらいだ」。制度設計にあたった経産省の内部からもこんな声が漏れる。21年秋の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の成果文書は「化石燃料に対する非効率な補助金の段階廃止に向け努力する」と盛り込んだ。日本も同意した経緯があり、国際社会からの視線は一層厳しくなる。どのように制度を終えるかという道筋を巡っては、仮に3月末で終了すると4月から各地で一斉に5円値上げする事態が想定されてきた。駆け込みで購入する人が押し寄せれば給油所の混乱につながる。政府は延長にあたり、補助を出す基準額を引き上げるペースを速める方針だ。支給額が徐々に減れば給油所の混乱を避けられるというのが経産省の見立てだが、想定より原油が高ければ補助は続く。期限が不明確という粗い制度で価格への公的介入を続けても「賢い支出」にはならない。

<気候危機とシベリア>
*4-1:https://digital.asahi.com/articles/ASPDH2R7RPDHUHBI00H.html (朝日新聞 2021年12月15日) シベリアで気温38度を記録 北極圏の観測史上、最高と認定 国連
 国連の専門機関、世界気象機関(WMO)は14日、昨年6月にロシアのシベリアで記録された気温38度が北極圏での観測史上最高の気温だったと認定し、気候変動について改めて警鐘を鳴らす記録と位置づけた。AP通信が同日伝えた。WMOが「北極圏よりも地中海にふさわしい」とする気温は昨年6月20日、ロシア東部の町ベルホヤンスクで観測された。WMOによると、当時はシベリア一帯から北極圏まで広がる熱波が到来中だった。これにより、シベリアの北極圏の平均気温は通常よりも10度上がり、地球規模での気温上昇や山火事、海氷の喪失につながったという。WMOのペッテリ・ターラス事務局長は声明で「この新たな記録は私たちの抱える気候の変化(の問題)について警鐘を鳴らしている」と述べた。

*4-2::https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220301&ng=DGKKZO58648050Y2A220C2EP0000 (日経新聞 2022.3.1) 温暖化、元に戻らぬ恐れ IPCC報告書の要旨 湿地や山岳、適応限界に
A.イントロダクション 本報告書は気候、生物の多様性を含む生態系、人間社会の相互作用に着目している。これまでのIPCC評価よりも、自然科学や生態学、社会科学、経済学の知識を統合した。
 生物多様性の損失や天然資源の持続的でない消費、急速な都市化などが世界で同時に進行していることを前提に、気候変動に適応するための対策や気候変動の影響・リスクを分析した。
B.観測された影響および予測されるリスク
 気候変動による影響とリスクは損害、被害、経済的・非経済的損失の観点から示されている。リスクは短期(2021-40年)、中期(41-60年)、長期(81-2100年)で各温暖化の水準などを予測している。
(1)気候変動による影響の観測 人為起源の気候変動は異常気象の頻度と強度を増し、自然と人間に対し広範囲にわたる悪影響と損失や損害を自然の気候変動の範囲を超えて引き起こしている。最も脆弱な地域とシステムが不均衡に影響を受けている。小さな島国では避難を余儀なくされ、アフリカと中南米では洪水や干ばつに関連して食糧不安と栄養不良が増加している。自然と人間のシステムはその適応能力を超えた圧力を受け、不可逆的な影響をもたらしている。
(2)生態系と人間の脆弱性 気候変動に対する生態系、人間の脆弱性は地域などにより大幅に異なる。社会経済の発展の形態、持続可能でない海洋や土地の利用、ガバナンスなどによって引き起こされる。およそ33億~36億人が気候変動に対して非常に脆弱な状況で生活している。生物種の大部分は気候変動に対して脆弱だ。人間と生態系の脆弱性は相互に依存しており、人間による生態系の劣化や破壊は人間の脆弱性を高める。現在の持続可能でない開発のあり方によって生態系と人々はますます気候災害の危険性にさらされている。
(3)短期的なリスク 近い将来、地球温暖化のレベルは1.5度に達する。複数の気候災害は不可避的に増加し、生態系と人間に複数のリスクをもたらす。リスクの度合いは脆弱性、暴露、社会経済の発展水準などの同時期の短期的傾向に依存する。地球温暖化を1.5度付近に抑えるような短期的な対策は、より高い水準の温暖化に比べて人間と生態系に対する損失と損害を大幅に低減できるが、完全になくすことはできない。
(4)中長期的なリスク 40年より先、地球温暖化の水準に応じて気候変動は自然と人間のシステムにおびただしいリスクをもたらす。特定した127の主要なリスクの中長期的な影響は、現在観測されている影響に比べて最大で数倍になる。気候変動の規模と速度、それによるリスクは短期的な緩和策や適応策に強く依存する。気候変動の悪影響やそれに関連する損失、損害は温暖化が進展するにつれて拡大する。地球温暖化の進展は生物多様性損失のリスクを高める。雪解け水や地下水の利用可能性も脅かす。食糧不安はより深刻になり、サハラ以南のアフリカ、アジア、中南米、小さな島に集中して栄養失調などを引き起こす。
(5)複合、混合、連鎖的リスク 気候変動の影響とリスクはますます複雑化し、管理が難しくなっている。複数の気候災害の同時発生、リスクが相互作用して全体のリスクが結びつき、部門や地域を横断して連鎖的にリスクが生じる。気候変動への対応の中には新たな影響やリスクをもたらすものもある。
(6)一時的なオーバーシュートの影響 地球温暖化が今後数十年以内、あるいはそれ以降に一時的に1.5度を超える場合(オーバーシュート)、多くの人間と自然のシステムはさらなる深刻なリスクに直面する。その規模と期間に応じ、さらなる温室効果ガスの排出を引き起こし、温暖化を低減したとしても元に戻すことができなくなる。今世紀中に1.5度を超える温暖化が起きた場合、氷床や氷河の融解、加速する海面上昇によって特定の生態系、インフラ、低地の沿岸集落などに回復不可能な影響をもたらす。
C.適応策と可能にする条件 
 現在の気候変動に対する適応は主に既存システムの調整によってリスクと脆弱性を減らすというもの。多くの適応策が存在し利用されているが、実行はガバナンスと意思決定プロセスの能力と有効性に依存している。
(1)現在の適応とその効果 適応策の計画と実施はすべての部門と地域にわたって見られ、複数の便益を生み出している。少なくとも170の国と地域が適応策を気候政策と計画のプロセスに盛り込んだ。
しかし適応の進展は不均衡でギャップがある。多くの取り組みでは即時、短期的な気候リスクの低減を優先しており、そのため変革的な適応の機会を減らしている。今後10年間での長期的な計画と迅速な実施が必要だ。
(2)今後の適応策と実現可能性 人と自然に対するリスクを低減できる、実現可能で効果的な適応の選択肢がある。適応策の短期的な実行可能性は部門や地域によって差がある。気候リスクに対する適応策の有効性は特定の状況、部門、地域について文献に記載されており、温暖化が進むと効果が低下する。
(3)適応の限界 人間の適応にはソフトな限界に達しているものもあるが、財政面、ガバナンス、制度面、政策面などの様々な制約に対処することで克服できる。沿岸湿地、熱帯雨林、極域と山岳の生態系など、一部の生態系はハードな適応限界に達している。地球温暖化が進展すれば損失と損害は増加し、さらに多くの人間と自然のシステムが限界に達する。
(4)適応の失敗の回避 第5次評価報告書以降、多くの部門、地域で適応に失敗した証拠が増加している。気候変動への適応の失敗は脆弱性やリスクの固定化を引き起こす。その変更は困難で費用がかかり、既存の不平等を悪化させる可能性がある。多くの部門やシステムに便益がある適応策を柔軟、部門横断的に長期に計画し、実施することで適応の失敗は回避できる。
(5)可能にする条件 人間システムと生態系において適応の実施、加速、維持を可能とするには重要な条件がある。政治的コミットメントとその遂行、制度的枠組み、影響と解決策に関する知識、財源の確保、モニタリングと評価、ガバナンスなどがそれにあたる。
(注)適応とは、被害の低減や有効活用のために、気候変動やその影響に適応するプロセスと定義。人間の介入で促進できる。その限界とは行動をとっても防げなくなることを指す。
D.気候変動に強いレジリエントな開発
(1)条件 第5次評価報告書での以前の評価に比べてさらに緊急性が高まっている。
(2) 気候変動にレジリエントな開発は、国際協力や、すべてのレベルの行政機関が教育機関や投資家、企業と協業することで促進される。それを可能にするには政治的な指導力、制度、ファイナンスを含む資源などによって支援されると最も効果的だ。
(3) 世界的な都市化の傾向は、短期的に気候にレジリエントな開発を進めるうえで重要な機会となる。都市での開発は、都市周辺の地域の製品やサービスなどのサプライチェーン(供給網)や資金の流れを維持し、都市化がそれほど進んでいない地域の適応能力も支える。
(4) 生物多様性や生態系の保護は、気候にレジリエントな開発に必須だ。最近の分析だと、地球規模での生物多様性などの維持は現在の地球の陸域、淡水、海洋の約30~50%の保全に依存すると示唆している。
(5) 気候変動が人間や自然のシステムを破壊していることは明白だ。過去から現在に至るまで、世界的な気候変動にレジリエントな開発は進まなかった。今後10年間の社会の選択と行動で将来の開発がどの程度レジリエントになるか決まる。現在の温室効果ガス排出量が急速に減少しない場合、特に地球温暖化が1.5度を超えた場合、実現の見込みはより低くなる。

<日本の非人道性>
*5-1:https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20210719/pol/00m/010/002000c (毎日新聞 2021年7月20日) 感染症対策の基礎「検査」を忘れたデータなきコロナ対策、阿部知子・衆院議員
 感染症はなによりもまず検査が重要だ。検査、隔離、診断、治療、この4層体制が最初からつながっていないことが日本の新型コロナウイルス対応の最大の失敗だ。
●無症状者をふまえた検査体制がない
 ダイヤモンド・プリンセス号の問題で、陽性になっても全く症状が出ない人が一定程度いることが明らかになった。インフルエンザなどで経験してきたこれまでの常識を変えるものだった。ところが、無症状者の存在をふまえた検査体制はその後も全く取られなかった。医療には「エビデンス・ベースド・メディスン」という言葉がある。証拠(データ)に基づいた医療という意味だ。ところが現在の政府のコロナ対策には、基礎となるデータが全く不十分だ。無症状者の把握も含めた広範な社会的検査をすることではじめて、対策の基礎となるデータが得られる。緊急事態宣言などで人の行動を縛ることにばかり意識が向き、感染症を扱う基礎が作られなかった。緊急事態宣言からワクチン接種にいたるまで、現状を把握する検査、つまりデータが無いままに政策を組み立てているため、感染が拡大するまで方針を決められない。対策を取っても、国民に理由を説明できず、国民と対話ができない。だからすべて後手後手になり、混乱する。
●感染症の研究体制がない
 なぜこうなっているのか。日本の公衆衛生は、明治時代の結核に対する隔離政策から始まった。戦後になって結核が減り、一方でハンセン病のように、医学上は不要なのに社会的に排除するために隔離した負の歴史があり、感染症の政策が空白になっていた部分がある。感染症はもう来ない、という前提のもとに1980年代末ごろから、感染症の病床は急激に削減された。そしてほとんどの大学で感染症が研究の中心から外れていく。日本で検査数が少ないのは、感染症に対しては検査が基本であるという基礎が忘れられてしまったからだ。感染症対策を立案するためには、もろもろの検査のデータを研究と結びつけなければならない。しかし、今の大学は必ずしもその役割を果たせていない。感染症は一般診療の問題とされ、研究のなかに占める割合が非常に小さくなっている。大学が新興・再興感染症の問題を研究する体制を再構築しなければならない。
●水際の検疫に問題
 水際の検疫にも問題がある。検査で陰性になれば隔離もされずそのまま市中に入る。しかし検査は完璧ではない。変異株の侵入を防ぐためには、陰性であっても一定期間、留め置くべきだ。また、現在、水際の検疫は抗原定量検査によって行っているが、変異株かどうかが迅速に分からない欠陥がある。PCR検査の利点は、遺伝子解析ができることであって、変異株が早く判明する。変異株対策についてはPCR検査で遺伝子的な特性を把握することが重要だ。そのうえで抗体検査も進め、遺伝子タイプによってワクチンの効果にどのような違いがあるかなども把握していく。これらによってはじめて、変異株を含めた感染の先行きを見通すことができる。また、最近は下水のコロナ検査も進んでおり、変異株も含めて地域的対応も可能となっている。
●伴走しない政治
 私は小児科医なので、特に強く感じるが、医師と患者の情報格差は非常に大きい。さらに政治が関わると裏付けになる情報はすべて政府が持っているにもかかわらず、国民に説明をしないことが起きる。
日本のコロナ対策の最大の問題点は、リテラシー(情報を入手、理解、評価して適切に意思決定できる力)が欠けていることだ。上から命令するばかりで「何が起きているから、どうしなければならず、だからどのように協力してほしい、行動してほしい」ということがない。以前は医療も、「医者の言うことを聞け」だった。しかし今は、医師は専門家であると同時に、患者と一緒に伴走することが大事だと変わってきている。しかし、政治はいまだに相変わらず、情報の差を利用して国民に言うことを聞かせようとしている。
●自分で判断を
 背後に命に関わる恐怖感があるだけに、このことには特に注意しなければならない。自分の健康に関わるため、かえって、しっかり考える前に流されてしまう。ワクチン接種について言えば、東京オリンピック・パラリンピックが開催されるから、あるいは集団免疫を作るため、みんなのため、さらに言えば国家のために接種しなければならないと思いがちだ。しかし、接種の判断は自分のために、自分でしてほしい。健康はその人にとって、最大、最高の主権だ。自分の命、自分の体のことは、可能な限り自分で理解したうえで決めてほしい。

*5-2:https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20220222/pol/00m/010/010000c (毎日新聞 2022年2月24日) 医療産業で二流三流になりつつある日本、吉田統彦・衆院議員
 コロナ禍で日本の医療体制に余裕がないことが国民にもよく理解されたと思う。私も提案したコロナ診療の診療報酬の引き上げは重要なことだ。しかし診療報酬の引き上げは患者負担につながる。それだけでは日本の医療を守ることはできない。
●ネックになるのは人材
 大切なのは人材面だ。日本の頭脳が海外に流出する流れを変えていかなければならない。一度海外に出た日本人がまた戻ってくる「ブレーンサーキュレーション」(頭脳循環)が大切だ。先日、世界のがん治療でトップに立つテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの日本人教授と話をした。日本に帰って働きたい気持ちはある、収入は減ってもいいと言う。しかしあまりにも減るようでは日本には行けない、年収5000万円なら、と言う。しかし、今の仕組みでは日本の政府や公的研究機関では5000万円の報酬で彼を招聘(しょうへい)することはできない。優秀な研究者を巨額の資金をかけてでも国籍を問わず海外から集め、短期間ではなく一定期間、日本で研究してもらう必要がある。これは国が真剣に取り組まないとできることではない。もう一つは日本の大学の構造的な問題がある。私が在籍していた米ジョンズ・ホプキンズ大学では、内科や外科など臨床系の教室でも、主任教授の下に複数の教授が存在し、もちろん医師の教授もいるが、医師免許を持たない研究者の教授もいる。ところが日本の大学教授は医療もやりながら基礎研究もする。スーパーマンだけれども、限界がきている。日本の医療が基礎研究で海外の後塵(こうじん)を拝している理由はここにある。
●国立感染研は抜本的改革が必要
 国立感染症研究所は、疫学調査や検査をやることも大事だ。しかし国立の研究機関に国民が期待している役割は、やはりワクチン開発や治療方法の確立ではないか。今回のコロナ禍ではそこまでの力は全然なかった。国民の危機を守ることができるナショナルセンターに生まれ変わらせるべきだ。これは国の安全保障の問題だ。ここでも人材の問題がある。定員を増やすだけではだめだ。ワクチンの開発ができるような技術があり、さらに開発チームの指揮をとって完成させることができる人材が必要だ。感染研はそうした人材を雇える態勢にない。発想の転換が必要だ。よく例にあげられる米国の疾病対策センター(CDC)には、政府の委託委員会で、CDCにワクチンに関する意見具申をするACIP(ワクチン接種に関する諮問委員会)がある。民主党政権時代に構想があったが、このような組織も必要だ。
●日本の医療産業のプレゼンス
 国民はなぜコロナの国産ワクチンがこれほど遅れたのかと疑問に思っている。根本的な問題は、医薬品、医療機器産業における日本のプレゼンスの低下にある。たとえばペースメーカーの国産品はない。診断用の機器は、胃カメラで使う内視鏡など分野によっては日本のシェアが高いものがある。しかし、治療用の医療機器は本当に世界から遅れている。なぜこんなことになるのか。金属製ではない画期的な「溶ける」(生体吸収性)ステント(血管などを内側から広げる器具)を京都医療設計という京都の会社が開発した。これが日本より先にドイツで承認され、販売された。象徴的だが、技術はあるのに、日本では生産できない、販売できないという状況がずっとあった。これが日本の医薬品、医療機器の開発能力が落ちた理由だ。ワクチン開発についても「もうすでに時遅し」になりつつあるのかもしれないが、そうは言いたくない。産官学が一体になって医薬品、医療機器産業を盛り上げていかないと本当に手遅れになる。日本の医療は技術としては一流だ。しかし、医薬品や医療機器の産業としてはもう二流三流になっている。
●遺伝子医療で「遅れる」リスク
 自公政権は患者の窓口負担割合を増やして医療費を浮かそうとしている。しかし、遺伝子医療にかんしては非常に高額な薬が出てきている。脊髄(せきずい)性筋萎縮症(SMA)の遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」の薬価は1患者あたり1億円を超えた。しかし遺伝子治療は大学や公的研究機関で完結することが可能な分野でもある。自分たちで作って、自分たちの医療機関で使えば、高品質なものが相当、安価で使える可能性がある。そうしたことを認めなければ、どんどん遅れていく。これからの遺伝子医療については、遅れると結局、国民負担がますます増えていく。そしてそれを保険で見ていくと医療財政が破綻する。これは非常に大きなリスクだ。

*5-3:https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20220210/pol/00m/010/003000c (毎日新聞 2022年2月14日) 「問答無用」で扶養照会を強行した杉並区 誤った制度の運用はいつになれば根絶されるのか、稲葉剛・立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授
●「どうしてもやる」
 「扶養照会はどうしてもやらなくてはならない。やるのは違法じゃない。ただでお金もらっているわけじゃないんだから」。昨年7月、失職して生活に困窮したAさん(50代男性)は、住まいのある東京都杉並区で生活保護を申請した。地方に暮らす80代の両親に心配をかけたくないと考えたAさんは、区に扶養照会(福祉事務所が親族に援助の可否を問い合わせること)を実施しないことを書面で求める申出書を事前に用意して、申請時に提出しようとしたが、対応した複数の職員は書面の受け取りをかたくなに拒否したという。「申出書をひっこめないと保護申請の手続きは進められない」とまで言われたAさんは、書面の提出を諦めざるをえなかった。生活保護が決定した後も、Aさんは担当となったケースワーカーに、親族に連絡をしないでほしいと口頭で伝えたが、それに対しての返答は冒頭に書いた言葉であった。Aさんが抗議すると、担当者は「ただでお金もらっているわけじゃない」という部分については謝罪したが、後日、親族への照会はAさんの意向を押し切る形で強行されてしまった。
●親族への連絡を恐れ申請をためらう
 生活困窮者支援の現場では、扶養照会が生活保護利用にあたっての最大のハードルとなっていることが問題視されてきた。路上生活者支援の夜回りの活動では、80代以上の高齢者に出会うことも珍しくないが、その中には親族に連絡が行くことを怖れて生活保護の申請をためらっている人が少なくない。
せめて、本人の意向を無視して「問答無用」で役所が親族に連絡をしてしまうことを止められないか。そう考えた私たち支援関係者は、昨年、扶養照会の運用改善を求めるネット署名に取り組み、厚生労働省に対して2度にわたる申し入れをおこなった。
●申請者の意思を尊重する厚労省の通知
 その結果、昨年3月末、厚労省から各地方自治体に対して、照会の範囲を限定した上で、申請者本人の意思を尊重することを求める通知が発出された。通知には、照会の対象は「扶養義務の履行が期待できる」と判断される者に限ること、生活保護の申請者が親族への照会を拒んだ場合、その理由について特に丁寧に聞き取りを行い、照会をしなくてもよい場合にあたるかどうかを検討するように、という内容が盛り込まれている。以前から厚労省は、「概(おおむ)ね70歳以上の高齢者」は「扶養義務履行が期待できない者」として扱ってよいとの解釈を示してきた。Aさんは申請時に、80代の両親が老老介護の状態にあることを職員に伝えており、区も彼の両親が援助を見込める状況にないことを承知していたはずである。本人の意向を尊重することなく、80代の両親に照会文書を送りつけることは、厚生労働省が示している方針に二重の意味で背くことになる。それなのに、なぜ杉並区は「問答無用」の照会を強行したのだろうか。区の姿勢の背後にある構造的問題には、ぜひ第三者による検証のメスを入れてほしいと願っているが、私はそもそも杉並区の担当者が法律や制度を正確に理解できていないのではないかと疑っている。
●扶養は保護の「要件」ではない
 生活保護法によると、親族の扶養は保護に「優先」するとされている。「優先」とはわかりにくい言葉だが、実際に親族からの仕送りが行われた場合にその金額の分だけ保護費が減額される、という意味であり、扶養は保護の「要件」や「前提」となっているわけではない。なお、法律には親族への照会に関する規定はなく、扶養照会は厚労省の局長通知に基づいて実施されているに過ぎない。だが、杉並区など一部の自治体のホームページでは、扶養が生活保護の「要件」や「前提」であるかのような記載が散見される。杉並区の場合、わざわざ生活保護に関するQ&A方式のページを作り、「保護を受けるための要件はありますか」という質問に対して、「保護を受ける前提」として「親・きょうだい・子どもなど扶養義務者からできる限りの援助を受けるようにしてください」と回答している。親族による扶養が保護の「要件」や「前提」であるという誤った解釈を披露するQ&Aは、杉並区が法律に反した制度運用を続けていることの証左となっている。「要件」や「前提」であるから、扶養照会は本人の意思を無視してでも実施されるべきだと区は考えているのだろう。
●区によって異なる対応
 ちなみに同じ東京都の特別区でも、足立区のホームページでは「親・子・兄弟姉妹等(民法に定める扶養義務者)から援助が受けられる場合には、可能な限り援助を受けてください」との文言はあるが、その下には「扶養義務者が扶養しないことを理由に生活保護を受けられないということはありません。『扶養義務の履行が期待できない』と判断される扶養義務者には、基本的には扶養照会を行わない取扱いとしています」との説明も併記されている。また、「扶養義務の履行が期待できない者」の例も列挙しており、その中には「概ね70歳以上の高齢者など」という記載もある。どちらの自治体が、法律や厚労省の通知に沿って制度を運用しようとしているかは明白だろう。
●一方的な扶養照会に歯止めをかける都の通知
 本人の意向を無視して扶養照会を強行した杉並区に対して、私たち支援団体は2月4日、申し入れを行った。私たちはAさんご本人を交えて話し合いの場を設定することを求めたが、区はコロナの感染拡大の影響で多忙であることを口実にして、話し合いに応じなかったため、「抗議・要請書」を書面で提出できただけであった。だが、その後、私たちが申し入れをしたのと同じ日に、区を指導する立場にある東京都が、都内の各自治体の福祉事務所に対して「生活保護に係る扶養能力調査における留意事項について」という保護課長名の事務連絡を発出していたことが判明した。都の保護課長はその通知の中で、「要保護者が扶養照会を拒否する書面を提出するケースが見受けられます」と「申出書」に言及した上で、「扶養が保護適用の前提条件であるといった誤解を与えないよう」にとくぎを刺し、「要保護者が扶養照会を拒否する場合は、理由を確認し、照会を一旦保留し理解を得るよう努めてください」と、従来の都の方針を再確認している。東京都の通知が私たちの申し入れに反応したものであるかどうかは不明だが、このタイミングでの通知発出は事実上、杉並区のように「問答無用」で扶養照会を強行する自治体に対して歯止めをかける効果をもたらすものだ。
●「本当に屈辱的」
 Aさんは扶養照会を拒否したいという意向を示すために「申出書」を作成して役所に持参したが、生活保護の申請手続きを進めてもらうために「背に腹は代えられない」との思いで、書面の提出をあきらめざるをえなかった。生活保護の申請に恣意(しい)的な条件を課す区の対応は申請権を侵害するものだが、その時の心境をAさんは「本当に屈辱的でした」と語っている。杉並区のAさんに対する対応は、厚労省や東京都の方針に幾重にも背くものであり、何よりAさんの尊厳を著しく傷つけるものであった。残念ながら同様の対応は他自治体でも散見されており、職員から「親族への照会はさせてもらう」と言われて、制度の利用を断念させられた人も少なくない。国や都も表向きは否定する「問答無用」の扶養照会は、いつになったら根絶されるのだろうか。そもそも扶養照会という法律に基づかない仕組み自体が必要なのか、という点も含め、国会や地方議会での活発な議論を期待したい。

<核と戦争>
PS(2022年3月10日追加):琉球新報が、*6-1-1のように、「①プーチン大統領は、ウクライナ侵攻を始めた2月24日の演説で『ロシアは世界で最も強力な核保有国の一つで、わが国を攻撃すれば悲惨な結果を招く』とした」「②核兵器を使用すれば核による報復の応酬で世界は破滅に向かう」「③ロシアは、1994年にソ連崩壊後のウクライナに残った約1800の核兵器放棄と引き換えにウクライナの安全を保障するとする『ブダペスト覚書』に米国や英国と共に署名し、それを反故にした」「④核兵器は、使えば互いの破滅を招くので実際には使えない兵器」「⑤核兵器禁止条約で世界の核軍縮に道筋を付けることが大国の役割」等と記載している。
 このうち①については、「核戦力を持っているぞ、持っているぞ」と言わなければ抑止力にもならないため言うのだろうが、②の理由で、④のように核兵器は使えない兵器だ。NATOが経済制裁で留めているのも、ロシアを相手に第三次世界大戦を引き起こしたくないからである。そのため、③のような『覚書』をもう一度締結し、同時に⑤の核兵器禁止条約を世界で強化して、使えない核兵器を世界から無くすべきである。しかし、核兵器を積まないミサイルでも同じ効果が出ることは、*6-1-2のように、ロシア軍がチェルノブイリ原発・ザポロジエ原発を占拠したことで、誰の目にも明らかになった。原発の中には使用済核燃料や未使用核燃料として大量の核物質が存在し、戦闘で冷却システムが破壊されたり、管理せずに放置されたりすれば自然に爆発する。従って、原発を使いながら核兵器禁止条約を強化しても意味がないのだ。
 そのような中、*6-2-1のように、中国の王毅外相は、2022年3月7日、ウクライナ情勢に関して「⑥必要な時に国際社会とともに必要な仲裁をしたい」「⑦我々は公正な態度で問題を判断する」「⑧問題解決に必要なのは冷静さと理性で、火に油を注いで食い違いを激化させることではない」「⑨矛盾が大きいほど腰を据えて話さなければならず、中国は建設的な役割を果たしたい」「⑩ロシアとは互いに最も重要な隣国で戦略的パートナーだ」「⑪国際情勢が危うくなっても、中ロ双方は戦略的なコントロールを維持し、新時代の全面的戦略パートナーシップを前進させていく」と述べておられる。ウクライナ・ロシア双方と戦争状態にない国しか仲裁はできないため、中国のスタンスは重要だ。また、*6-2-2のように、2022年3月10日、G20の議長国を務めるインドネシアのジョコ大統領は、「⑫途上国の再エネ転換を支援する方策を主要議題にする考えを示し」「⑬ロシアのウクライナ侵攻に深い懸念を示して『主権と領土の一体性はすべての当事者に守られるべきだ』と強調し」「⑭制裁は最善の解決策にならず市民が犠牲になる」「⑮すべての国が緊張を緩和し事態のエスカレートを避けて交渉に集中するよう努めることが重要」「⑯ウクライナとロシアはインドネシアの友人」「⑰互いの利益、価値観、国際法を尊重すれば、良い関係が維持される」「⑱ウクライナ侵攻したロシアに停戦を呼びかけ、交渉による解決を促した」等としている。
 ウクライナのゼレンスキー大統領の与党は、2022年3月8日、*6-2-3のように「⑲北大西洋条約機構(NATO)への加盟を当面棚上げし、ロシアを含む周辺国と新たな安全保障の取り決めを結ぶ構想を明らかにした」ということであるため、これで十分かどうかはわからないが、G20やNATO諸国の支持があれば交渉による解決が近づきそうだ。


  2022.2.19毎日新聞   2022.3.1読売新聞 2022.3.1日経新聞 2022.3.10日経新聞

(図の説明:ウクライナを巡るロシアと米国の立場の違いは、1番左の図のとおりだ。また、核兵器に関するプーチン大統領の発言は左から2番目の図のとおりで、ロシアのウクライナ侵攻後、各国政府や企業は右から2番目の図のような対応をしている。そして、ウクライナ・ロシア間の戦闘が激しくなり、G20議長国インドネシアのジョコ大統領が、仲裁しようと、1番右の図の発言をしている)

*6-1-1:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1479619.html (琉球新報社説 2022年3月4日) ロシア核使用威嚇 国際社会は暴走阻止を
 ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領が「核の脅し」を続けている。ひとたび核兵器を使用すれば核による報復の応酬となり、破局に向かう。国際社会が結束してプーチン氏の暴走を止めなければならない。交渉戦術であろうと核使用をちらつかせることは断じて認められない。北朝鮮の非核化が遠のくなど、核不拡散体制を機能不全に陥らせかねない。核廃絶の意志を世界が一致して示すことが必要だ。プーチン大統領はウクライナに侵攻を始めた2月24日の演説で「ロシアは世界で最も強力な核保有国の一つだ。わが国を攻撃すれば壊滅し、悲惨な結果になることに間違いない」と強調し、核戦力行使の可能性を示唆した。同27日には核兵器を運用する部隊を高い警戒態勢に置くよう軍部に命令した。ウクライナの隣国ベラルーシでも同27日に国民投票が行われ、核兵器を持たず中立を保つという条項を削除する憲法改正が賛成多数で承認された。これによってベラルーシにロシアの核兵器が配備される恐れが出ている。ロシアは1994年、ソ連崩壊後のウクライナに残った約1800の核兵器を同国が放棄するのと引き換えに、ウクライナの安全を保障するとした「ブダペスト覚書」に米国や英国と共に署名した。覚書は冷戦後の一連の核軍縮に大きく貢献する歴史的な意義があった。プーチン大統領によるウクライナへの侵攻と核による威嚇は国際合意の違反だ。非核化を受け入れたウクライナの決断を反故(ほご)にするものであり、断じて許されない。ストックホルム国際平和研究所によると、ロシアの核弾頭保有数は6255発で、米国の5550発を上回って世界最大だ。その核大国のトップが核戦力の行使を持ち出すことは、核保有国が核軍縮に取り組む義務を規定した核拡散防止条約(NPT)に逆行する暴挙である。核兵器は使われれば互いの破滅を招くため、実際には「使えない兵器」と言われる。米中ロ英仏の核保有五大国は1月に、「核戦争に勝者はおらず、決して戦ってはならない」とうたう画期的な共同声明を発表したばかりだ。昨年1月には核兵器禁止条約が発効している。世界の核軍縮に道筋を付けることこそが大国の果たすべき役割だ。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは、ロシア軍が非人道的な兵器として知られるクラスター(集束)弾を使用したと発表している。殺傷能力の高い燃料気化爆弾を使用した可能性も指摘されている。一刻の猶予もない。ロシアは直ちに軍を撤退させるべきだ。日本でも右派の政治家が米国との「核共有」の議論を持ち出すなど、危機に便乗したような言動が出ている。被爆国の日本は核廃絶の流れを絶対に後退させてはならない。

*6-1-2:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6420515 (Yahoo、ロイター 2022/3/10) ロシア占拠のザポロジエ原発、核監視データ停止=IAEA
 国際原子力機関(IAEA)は9日、ロシア軍が占拠したウクライナ南東部のザポロジエ原子力発電所について、核物質監視システムからの通信が途絶えていると発表した。IAEAは前日、ウクライナ北部のチェルノブイリ原発についても、放射性廃棄物施設からのデータ送信が途絶えたと明らかにしている。IAEAは声明で「(グロッシ事務局長は)使用済み、もしくは未使用核燃料などの形で大量の核物質がある両原発からIAEA本部へのデータ送信が突然途絶えたことを懸念している」と述べた。原因は定かでなく、データ送信が止まった機器の状態は不明とした。ウクライナの他の原発からのデータ送信は続いているという。IAEAによると、ザポロジエ原発からの報告では、外部の高圧電線4本のうち2本が損傷し、現在使用できるのは2本になっている。必要なのは1本で、5本目が待機しているほか、バックアップのディーゼル発電機もあるという。また、原子炉1基の変圧器について、同原発一帯で戦闘が起きた今月4日以降に冷却システムに損傷が見つかり、緊急修理が行われているとした。

*6-2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASQ376H8VQ37UHBI02V.html?iref=pc_rellink_01 (朝日新聞 2022年3月7日) 中国の王毅外相「必要な時に必要な仲裁したい」 ウクライナ情勢巡り
 中国の王毅(ワンイー)国務委員兼外相は7日、北京で開催中の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)にあわせて記者会見し、ウクライナ情勢に関して「必要な時に国際社会とともに必要な仲裁をしたい」と述べた。ロシアに近い中国の貢献を求める国際社会の声に押された形だが、具体的にどう導くかは言及しなかった。中国はロシアともウクライナとも良好な関係にあり、ロシアのウクライナ侵攻後、王氏は双方の外相と電話で協議している。中国は、現在もロシアの行動を「侵攻」とは認めていない。これに関して、王氏は「中国の立場は何度も明らかにしている。我々は公正な態度で問題を判断する」と従来の説明を繰り返した。そのうえで、「問題解決に必要なのは冷静さと理性であり、火に油を注いで食い違いを激化させることではない」と訴えた。ロシアとウクライナの和平交渉には期待を表明しつつ、「情勢が緊迫するほど和平交渉は必要で、矛盾が大きいほど腰を据えて話さなければならない。中国は建設的な役割を果たしたい」と語った。市民を避難させる「人道回廊」などの動きについては「人道主義の行動は必ず中立の原則を守り、政治問題にしてはならない。国連が人道支援で役割を果たすことを支持する」とした。ウクライナからの自国民の退避遅れが指摘されていた問題については、「習近平(シーチンピン)総書記自ら関心を寄せ、安全確保を何度も指示している。現地の大使館などが火中に入り、中国人が避難する道を開いた」と十分な対応をアピールした。一方、ロシアとの二国間関係については、「互いに最も重要な隣国であり、戦略的パートナーだ。我々の協力は世界の平和と安定にも有益だ」と強調。「国際情勢がいかに危うくなろうとも、中ロ双方は戦略的なコントロールを維持し、新時代の全面的戦略パートナーシップを前進させていく」と述べ、ウクライナ問題は中ロ関係に影響しないとの見方を示した。

*6-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220310&ng=DGKKZO58946800Q2A310C2MM8000 (日経新聞 2022.3.10) 侵攻のロシアに停戦要求 インドネシア大統領インタビュー、G20議長 エネ転換支援を議論
 インドネシアのジョコ大統領は日本経済新聞の単独インタビューに応じた。ウクライナを侵攻したロシアに停戦を呼びかけ、交渉による解決を促した。2022年の20カ国・地域(G20、総合2面きょうのことば)の議長国として途上国の再生可能エネルギーへの転換を支援する方策を主要議題にする考えを示した。インドネシアは東南アジアで唯一、日米欧の先進国に加え、ロシア、中国、インドなどの新興国を含むG20に名を連ね、22年に初の議長国を務める。ジョコ氏がG20の議長として外国メディアのインタビューに応じるのは初めて。ジョコ氏はロシアのウクライナ侵攻について深い懸念を示し「主権と領土の一体性はすべての当事者に守られるべきだ」と強調した。「すべての国が緊張を緩和し事態のエスカレートを避け、交渉に集中するよう努めることが重要だ」と指摘。「戦争はやめよ」と訴えた。インドネシアが国際社会の対ロシア制裁網に加わるかに関し「制裁は最善の解決策にならず、市民が犠牲になる」と否定的な考えを表明した。同国は22年を通じてG20議長国として秋にバリ島で予定する首脳会議(サミット)など首脳や閣僚レベルの関連会議を開く。ジョコ氏は「G20は経済協力(の枠組み)だ」とし、ウクライナ侵攻を踏まえ会議からロシアを締め出すことには現時点で慎重な姿勢を示した。ジョコ氏がロシアに厳しい制裁を科す米国や欧州などと一線を画す根底には「非同盟」を軸にする同国の外交方針がある。「ウクライナとロシアはインドネシアの友人だ」と強調した。G20サミットでは資金面での支援を中心に途上国に再生可能エネルギーへの転換を促す方策を議論したい考えを示した。「革新的な財政支援のメカニズムと技術移転の促進が極めて重要だ」と語った。インドネシアは60年に温暖化ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の目標を掲げる。ジョコ氏は同国を含め多くの途上国が発電を石炭に依存している現状に言及し「もし国際社会の財政支援があれば60年より前に目標を達成できる」と述べた。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた世界的な保健医療体制の強化もG20サミットの主要議題に据える。医療機器や医薬品、ワクチンの製造など保健のサプライチェーン(供給網)の構築をめざす。このほか途上国経済のデジタル化の支援を議論する方針だ。ジョコ氏はクーデターにより国軍が権力を掌握するミャンマーの情勢に関し、自身が主導した21年4月の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳特別会議の5つの合意を履行するよう、国軍に促した。合意を実現しない状況が続けば、改めて首脳会議を開く可能性に言及した。米国を中心とする民主主義の国々と、中国やロシアなどの権威主義の国々による対立が激化する国際情勢に関し「競争や対立をしている時期ではない」と世界はコロナ対応に集中すべきだとの考えを示した。「互いの利益、価値観、国際法を尊重すれば、良い関係が維持される」と指摘した。中国が実効支配を進める南シナ海の情勢については「インドネシアは平和で安定した海であることしか望まない」と強調。当事者が国際法を守るよう求めた。インドネシア領ナトゥナ諸島周辺の排他的経済水域(EEZ)では中国公船が動きを活発化させ対立が強まっている。インタビューは日本経済新聞の井口哲也編集局長が西ジャワ州のパティンバン港近郊で実施した。同港は日本が約1200億円の円借款を供与し整備が進んでいる。

*6-2-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15228898.html (朝日新聞 2022年3月10日) NATO加盟、棚上げ案 ウクライナ与党が構想 地元報道
 ウクライナのゼレンスキー大統領の与党「国民のしもべ」は8日、声明を出し、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を当面棚上げし、ロシアを含む周辺国と新たな安全保障の取り決めを結ぶ構想を明らかにした。地元メディア「ウクライナ・プラウダ」などが報じた。声明は「(NATOが)ウクライナを最低15年は受け入れる用意がないことは明白だ」と指摘し、NATO加盟までは「ウクライナの安全を完全に保障するしっかりとした取り決め」を、ロシアを含む周辺国や米国、トルコと結ぶ必要があると主張した。声明に先立ち、ゼレンスキー氏は米ABCのインタビューで「ずいぶん前にNATOがウクライナを受け入れる用意がないと理解し、この問題に冷静になっていた」と加盟を求めないことを示唆。「(NATOは)ロシアとのもめ事や対立を恐れている」とも述べた。

<日本外交の不手際>
PS(2022年3月11日追加): ロシアによるウクライナ侵攻について、*7-1のように、衆議院は2022年3月1日、参議院は同年3月2日、「①ロシア軍の行動は、明らかにウクライナの主権および領土の一体性を侵害している」「②欧州にとどまらず、アジアを含む国際社会の秩序の根幹を揺るがしかねない」「③最も強い言葉で非難する」という決議案を採択した。
 そこまではかっこよかったかもしれないが、ロシアのプーチン大統領は、2022年3月9日、*7-2のように、北方領土と千島列島に進出する企業に、20年間税金を減免する等の優遇措置を与える法律に署名し、日本政府は「④ロシア側がこのような制度の導入に踏み切ったことは遺憾だ」「⑤北方四島に関する日本の立場や首脳間の合意に基づき日ロ間で議論をしてきた北方四島における共同経済活動の趣旨と相いれない」という日本側の立場をロシア側に申し入れただけである。しかし、④⑤の「遺憾」は「期待どおりにならず残念だ」という意味でしかなく、「①②③を行った日本は、ロシア側の期待どおりにならなかったので報復したまでだ」とロシアに言われれば返す言葉がない。また、「日本側の立場をロシア側に申し入れた」と言うのも、「日本はそういう立場だが、私自身はそう思っていない」と解釈できるため、本当に北方領土返還を求めている言葉とは言えない。このように、日本は自国の領土問題に関して曖昧な言い方に終始し、「そこは、日本の領土だ」という明確な証拠を示すために必要な手続きも行わず、形式的な抗議や非難を繰り返しているだけなのだ。そのため、「日本の男性は甘やかされて育ち過ぎて、考えの甘い人が多い」と言わざるを得ない。
 なお、*7-3は、「⑥ロシア軍は、2022年2月1日~15日、北海道に面する日本海とオホーツク海南部で、潜水艦やミサイル観測支援艦を含む24隻のロシア艦艇が連動するように航行し、軍事演習した」「⑦昨年10月には、中ロ艦艇が計10隻で隊列を組み、津軽海峡を太平洋側へ抜けて鹿児島県の大隅海峡を通り東シナ海へ向かう日本列島を周回する航行をした」「⑧中ロ機が編隊を組んで尖閣諸島に向け南下し、ロシア国防省が国営メディアで中ロで東シナ海と日本海上空で共同警戒監視活動を行ったとした」としている。しかし、そもそも、⑥⑦のように、外国の艦艇が津軽海峡を抜けて日本列島の近くを周回できるままにしておくのが、不作為で無防備である。また、⑧の尖閣諸島も、日本政府は「領土問題はない」「力による現状変更に抗議する」「航行の自由作戦」としか言っておらず、日本の領土であるか否かは曖昧にしているため、世界が中ロの行為を妥当だと理解しても不思議ではない状態なのである。

*7-1:https://www.sankei.com/article/20220301-K653CGDIIJOK7E36VTI6FC3TFQ/ (産経新聞 2022/3/1) 衆院、ロシア非難決議を採択「最も強い言葉で非難」
 衆院は1日の本会議で、ロシアによるウクライナ侵攻について「最も強い言葉で非難する」との決議案を採択した。力による一方的な現状変更は認められないと強調し、ロシアに「即時に攻撃を停止し、部隊をロシア国内に撤収するよう」強く求めた。参院も2日の本会議で採択する。決議では、ロシア軍の行動を「明らかにウクライナの主権および領土の一体性を侵害している」と指摘。「欧州にとどまらず、アジアを含む国際社会の秩序の根幹を揺るがしかねない」と懸念を示した。政府には、制裁を含む迅速で厳格な対応によりウクライナの平和を取り戻すよう要請した。衆院でウクライナ情勢をめぐる決議を採択したのは2度目。2月8日の前回は、ロシアがウクライナ国境周辺に大規模な部隊を結集させた段階で採択したため、ロシアを名指しで非難していなかった。

*7-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15230124.html (朝日新聞 2022年3月11日) 北方領土進出企業を優遇 ロシアが新法、日本政府反発
 ロシアのプーチン大統領は9日、極東のクリル諸島(北方領土と千島列島のロシア側呼称)に進出する企業などに、税金を20年間減免するなどの優遇措置を与える法律に署名した。ウクライナ侵攻をめぐり米欧や日本が厳しい経済制裁を科すなか、極東に国内外の投資を呼び込む狙いだ。ただ、日本政府は「遺憾だ」と反発している。対象は2022年1月以降、同諸島に進出した企業など。法人税や固定資産税の免除などが含まれる。プーチン氏が昨年9月、ウラジオストクで開かれた「東方経済フォーラム」で発表していた。当初、優遇措置は10年間としていたが、その後、20年間に延ばした。これに対し、松野博一官房長官は10日の記者会見で、ロシアの北方領土での税制優遇措置について「ロシア側がこのような制度の導入に踏み切ったことは遺憾だ」と批判した。松野氏は「北方四島に関する日本の立場や首脳間の合意に基づき日ロ間で議論をしてきた北方四島における共同経済活動の趣旨と相いれない」と主張。こうした日本側の立場について、あらためてロシア側に申し入れたと明らかにした。

*7-3:https://digital.asahi.com/articles/ASQ385VTNQ31UTIL05N.html?iref=pc_extlink (朝日新聞 2022年3月9日) ロシア軍が日本周辺でも 中国と歩調合わせ、防衛省内「不気味」
 ウクライナに侵攻したロシア軍は近年、日本周辺でも活動の活発化が確認されている。海洋進出を強める中国と歩調を合わせるような動きも目立ち、自衛隊が警戒している。今月1日。ウクライナ侵攻について、岸信夫防衛相は会見で「アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがす行為であって、明白な国際法違反」と非難し、こう述べた。「我が国の安全保障の観点からも決して看過できない」。日本周辺でのロシア軍の異例の動きは、ウクライナ侵攻開始の直前にも確認された。2月1日~15日、北海道に面する日本海とオホーツク海南部で、24隻ものロシア艦艇が連動するように航行。軍事演習の一環とみられ、潜水艦やミサイル観測支援艦も含まれていた。ミサイル発射訓練が行われた可能性もある。岸防衛相は「異例」「ウクライナ周辺における動きと呼応する形で、東西で活動しうる能力を誇示するため活動を活発化させている」と指摘。自衛隊の哨戒機などが警戒に当たった。近年、日本周辺での動きが活発化しており、目立つのは、東シナ海や南シナ海で海洋進出を強める中国と歩調を合わせた動きだ。昨年10月には、中ロ艦艇が計10隻で隊列を組み、日本列島をぐるりと周回するような「異様」(政府関係者)な航行が確認された。津軽海峡を太平洋側へ抜け、鹿児島県の大隅海峡を通り東シナ海へ向かうルートだった。東シナ海には中国の公船が領海侵入を繰り返す尖閣諸島もある。岸防衛相は「我が国に対する示威活動を意図したもの」と非難。防衛省内では「不気味」「挑発だ」との声が漏れた。2019年夏には上空で緊張が走った。7月23日、島根県の竹島上空付近でロシア機と中国機が合流し、ロシア機が日本領空を侵犯。竹島を実効支配する韓国の戦闘機が、約360発の警告射撃を行った。中ロ機はそのまま編隊を組み尖閣諸島に向け南下。自衛隊機が緊急発進し警戒する中、尖閣の領空直前で二手に分かれ、去っていった。ロシア国防省はすぐに国営メディアを通じ、中ロで東シナ海と日本海の上空で初の共同警戒監視活動を行ったと明かした。同様の飛行は20年12月、21年11月にも確認されている。
●ロシア軍、規模感は?
 軍事大国とも言われるロシアの軍とはどんなものなのか。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所の推計では、2020年度のロシアの軍事費の推計額は約617億ドル(約7兆円)で米中インドに次ぐ世界4位。核弾頭の保有数は米国(約5800発)を上回る世界最多の6375発に上る。日本の防衛白書によると、軍の総兵力は約90万人。国全体を四分割して管轄しており、日本に面する極東地域を管轄する「東部軍管区」の司令部は、札幌市の北西約800キロのハバロフスクにある。同管区の核戦力には、オホーツク海を中心に配置されている潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載した潜水艦3隻や、約30機の爆撃機(TU95)がある。陸海空の戦力ごとに見ると、陸上戦力は約8万人で、変則的な軌道で飛翔(ひしょう)し迎撃が難しいとされる地上発射の短距離弾道ミサイル「イスカンデル」などの新型装備を保有。海上戦力はウラジオストクなどを拠点に主要艦艇約20隻、潜水艦約20隻を含む計約260隻が、航空戦力は戦闘機など約320機が配備されている。部隊は返還交渉中の北方領土にもあり、防衛省の資料によると、択捉、国後両島に約3500人を配置。ミサイル、戦車、戦闘機などが置かれ、地上から艦艇を狙うミサイル「バスチオン(要塞〈ようさい〉)」には、オホーツク海での原潜の活動を担保する役割があるとされる。ロシア軍の動向に詳しい小川和久・静岡県立大特任教授(安全保障)は、オホーツク海に連日、ロシアの原潜の情報をつかもうと米軍機が飛行し、ロシア軍が緊急発進を繰り返していると指摘し、「日本は米軍の戦略的な拠点で、当事国の一つと認識せざるを得ない」と話した。

<経済制裁はやはり戦争である>
PS(2022年3月12日追加):「①衣服は生活必需品」「②ロシアは日本のすぐそばなのに、ロシアの人が日本に悪感情を持つのはよいことか」として、3月4日時点で事業を継続する方針だったファーストリテイリングは、*8-1のように、50店を展開するロシア事業の一時停止を決めた。しかし、私は、①②とともに、「独立自尊の商人」とする柳井社長の見解は正しいと思うし、ファーストリテイリングの大損害に同情する。また、これに先立って、ファーストリテイリングは、*8-4のように、中国がウイグル族に対して強制労働や強制避妊させた「人道に対する罪」の隠匿の疑いでフランス当局の捜査も受け、「取引先の縫製・紡績工場では強制労働がなく人権が守られていると確認した綿のみを使っている」と説明していた。そのため、捜査の結果がどうだったかを是非知りたい。何故なら、これは、アフガニスタンと同様、女性には大した教育もせず、保護すると称して家に閉じ込め、多くの子どもを産ませるイスラム教に対する中国の過渡期の政策であり、日本における優性保護法による強制避妊とは異質だと思うからである。
 なお、このジェノサイド(集団殺害)や人権侵害という言葉は、*8-3のように、ロシアのウクライナ侵攻の理由としても使われたが、そう主張する根拠については、国際司法裁判所に提訴するのが筋であり、制裁や戦争という圧力で決めることではない。しかし、国際司法裁判所の使い勝手の悪さや公平性・公正性・強制力への疑問は残る。また、国の独立宣言は、独立される側の国が認めることは滅多にないため、独立する国が一方的に行うのが普通だが、ウクライナもそうやってロシアから独立したのではないだろうか?
 このようにして、制裁と武力行使が行われた結果、ロシア政府は、*8-2のように、「①ロシアから撤退する外資系企業の資産を差し押さえ」「②非友好国の資本が25%超などの企業を対象として外部から管理し」「③接収後、ロシア寄りの経営者に事業を委ねる」ことも想定して検討中だそうだ。しかし、ロシアのデフォルトを目的として行っている制裁もまた戦争の一つであるため、平時の国際法が通用しそうにはない。そのため、「非友好国」の民間企業は、資本が25%以下になるよう対応を迫られるわけだが、例えば、ファーストリテイリングの場合なら、i)ロシア国内の従業員に75%以上の株式を売却してロシア事業の独立性を高める ii)「友好国(例えば中国)」の子会社に75%以上の株式を持たせる などの選択肢があり、臨時株主総会を開いて対応を決定すればよい。グローバル企業は、現地でローカライズしてその国の優秀な人を雇用すれば、さらに多様な製品を作り出すことができ、出てきたアイデアを逆輸入することによって日本の製品も豊かにすることができるので、ローカライズした方がプラスになる場合が多い。

    
2022.3.1毎日新聞 2022.2.24日経新聞 2022.3.4西日本新聞 2022.3.12日経新聞

(図の説明:1番左の図のように、ロシアへの経済制裁はロシアのデフォルトを目的として行われており、左から2番目の図が、ロシアの「非友好国」が行っている対ロ制裁だ。そして、右から2番目の図のように、日本企業はロシアの「非友好国」として対応しており、「営業を継続する」としていたファーストリテイリングも変更を余儀なくされた。そのため、ロシアは1番右の図のような対抗措置を行いそうである)

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220312&ng=DGKKZO59020360R10C22A3EA5000 (日経新聞 2022.3.12) ユニクロ、世界の目厳しく ロシア事業一時停止へ転換、政治・ビジネス不可分に
 ファーストリテイリングは「ユニクロ」50店を展開するロシア事業の一時停止を決めた。「衣服は生活必需品」(柳井正会長兼社長)との考えのもと、当初はロシア事業を継続する方針だった。しかしウクライナ情勢が混迷を深め、国際社会でロシアへの批判が強まるなか、修正を余儀なくされた形だ。「企業はそれぞれだと思う。そこに消費者がいる以上はサービスを提供する。当社がアップルのように米国企業ならすぐ止めるかもしれない。でもロシアは日本のすぐそば。ロシアの人々が日本に悪感情を持つことがいいことなのか」。柳井氏は2日に日本経済新聞の取材に応じ、ロシア事業を続ける意義についてこう語っていた。だが方針は一転し、21日から全50店と電子商取引(EC)サイトを休止することを決めた。ウクライナに侵攻したロシアに対して国際社会の批判は強まっている。ファストリの事業継続を巡る反応も、柳井氏の想像以上に厳しかった。駐日ウクライナ大使はユニクロのロシア営業継続方針について「残念だ」と名指しで批判していた。海外でも批判的な受け止めが多く、不買運動の動きも出ていた。休止決定後、米国のラーム・エマニュエル駐日大使はツイッターに「さすがファーストリテイリングとユニクロ、ロシアに英断を下しました。また一つの大企業が私たちとともに立ち向かっています。次に続くのは誰でしょう?」と投稿した。ファストリの2021年8月期の欧州事業の売上高は約1100億円。欧州の全117店のうちロシアは4割超を占め、欧州最大の店舗もモスクワにある。期待の成長市場だったことも、ファストリの事業継続の判断の背景にはあったようだ。しかし、侵攻開始から2週間以上がたち、ロシア軍は病院といった民間施設にまで攻撃を強めている。「一般のロシア国民の生活を助けるということが理解を得られなくなっている」(ファストリ関係者)。社内でも事業継続のリスクやレピュテーション(評判)リスクについて急速に議論が進み、社外取締役などから方針転換を求める声が出ていた。「独立自尊の商人」。柳井氏は自らをこう表現する。21年秋の会見では「自らの信念と現実が違っていたら、勇気を持ってそれは違うと言わないといけない」と強調した。「安易に政治的立場に便乗することはビジネスの死を意味する。これが商人としての私の信念」と語っていた。柳井氏は衣服は生活必需品との考えのもと、周囲の批判にも屈せず店を開け続けることを重視している。11年の東日本大震災では電力不足からの節電要請があっても、売り場の照明は落とさずに営業を継続した。また、20年春の新型コロナウイルスの緊急事態宣言下では多くの企業が営業自粛する中、商業施設に入るテナント店以外の自前店舗を開け続け、コロナ禍中に旗艦店も新規開業した。当時、多くの消費者はこうしたユニクロの行動を支持した。今回、「ロシアの人々にも生活する権利がある」(柳井氏)としたことは、これまでの姿勢とも一貫するものだ。ただ、政治とビジネスは不可分の関係になっている。欧米では企業やスポーツ選手も政治的なスタンスを示すことが当たり前だ。中立の立場を示しても、曖昧な姿勢ととられかねず逆に批判も受けやすい。ファストリは海外での売り上げが国内を上回る日本の小売業ではまれな存在だ。ファストリもウクライナに対しては、約11億5000万円と衣料品約20万点の寄付という日本企業で最大規模の支援を打ち出している。だが、ロシアでの事業継続ばかりが目立ち、評価する声は少ない。柳井氏の信念が世界には通じなかった格好だ。今回のユニクロの動きには、多くの日本企業にとって教訓が含まれている。

*8-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220312&ng=DGKKZO59029290S2A310C2EA2000 (日経新聞 2022.3.12) 対ロ経済封鎖、企業に試練、ロシア政府「撤退なら資産接収」 協定違反、法廷闘争も
 ロシア政府は、同国から撤退する外資系企業などの資産を差し押さえる検討を始めた。企業の撤退の動きを抑え、日米欧による経済制裁の影響を緩和する狙いだ。国際的な投資協定(きょうのことば)違反とみられる強硬策で、法廷闘争に発展する可能性もある。ロシアに進出する世界の企業は試練に直面する。ロシア政府は、ロシアでの事業停止や撤退を判断した外資系企業の資産を差し押さえるなどの草案を作成。プーチン大統領は政府幹部とのテレビ会議で「(事業を閉じる企業を)外部から管理」と発言した。現地報道によると「非友好国」の資本が25%超などの企業を対象とすることを検討中という。接収後にロシア寄りの経営者に事業を委ねることも想定される。ロシアは外資系企業の締め付けを急速に進める。3月に入り大統領令で1万米ドル超の外貨の国外持ち出しを禁じ、国内の保有資産の売却も制限。いずれも同国からの撤退を防ぐ狙いとみられる。資産接収策の検討は、その決定打ともいえる。既に英BPやシェル、米エクソンモービルなど多くの欧米企業がいち早くロシア事業からの撤退などを表明している。日本企業も事業見直しの検討を進めており、ソニーグループは映画やゲームなどロシアの全事業を停止した。ソニーは、ロシア政府が資産接収策を検討していることについて「コメントを控える」とした。事業の停止や撤退は難路が予想される。まず直面するのは合弁の解消などを巡って起こりうるロシア企業との訴訟リスクだ。こうしたビジネス紛争に備え、国際的な企業契約では公正を期すために第三国での国際仲裁で解決すると定めることが多い。だがロシアは2020年に民事訴訟法を改正。「制裁対象になっている場合などでは、契約の内容にかかわらずロシアの裁判所で紛争を解決しなければならなくなった」(小原淳見弁護士)。ロシア裁判所の判事は国家公務員で、外国企業に不利な判断が出る懸念がある。撤退に関する企業間の交渉が円滑に進んだとしても、ロシア政府が資産を接収する恐れがある。資産接収は、日ロ両国が相互の企業や投資財産を保護するために締結している「投資協定」に違反する可能性が高い。同協定の5条は投資家(企業)の財産に関し「補償を伴う場合を除き収用もしくは国有化の対象としてはならない」などと定めている。藤井康次郎弁護士は「協定違反の場合、日本企業はロシア政府を訴えることができる」と指摘する。この場合は米国など第三国での「投資仲裁」の手続きで争うことになるが、ロシア側の反論などで決着まで難航する可能性もある。企業は難しい判断を迫られる。政府と対立したまま撤退すれば、大きな損失を被るだけでなく将来の事業機会まで失う恐れもある。他方で事業を続ければ投資家や消費者の反発などを受け、企業の評判が落ちることも懸念される。ロシアの強硬姿勢は同国のカントリーリスクを高め、日米欧の企業を遠ざけることにつながりそうだ。ある大手商社は「民間企業の資産接収が進めば中長期的にロシア事業の大きなリスクとなる」と警戒している。対ロ投資が激減することも予想される。

*8-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220312&ng=DGKKZO59028000R10C22A3EA3000 (日経新聞 2022.3.12) 「住民保護のため」ロシアの常套句、08年ジョージア、14年クリミアでも 周辺国、危機感強める
 ロシアがウクライナ侵攻の口実に「住民保護」を掲げたことへの批判が国際社会で高まってきた。ロシア系住民を守るという理屈は2008年のジョージア(グルジア)紛争や14年のクリミア併合でも用いたが、その根拠は乏しい。ロシア系を多く抱える周辺国は懸念を強める。「特別作戦の目的は8年以上にわたりキエフ政権から大量虐殺を受けている人々を守ることだ」。ウクライナへの侵攻を始めた2月24日、ロシアのネベンジャ国連大使は国連安全保障理事会の会合でこう訴えた。人々とはロシアが一方的に独立を承認した「ルガンスク人民共和国」と「ドネツク人民共和国」に住むロシア系住民を指す。ウクライナ東部にあるルガンスク、ドネツク両州の親ロシア派が事実上支配してきた地域だ。慶大の広瀬陽子教授によると、両地域の住民の2割程度はロシアのパスポートを保有しているという。ロシアは19年、住民がロシアのパスポートを簡単に取得できるようにする措置を導入して地ならしを進めた。ブリンケン米国務長官は3月1日の国連人権理事会で「攻撃を無理やり正当化しようとするロシアの試みを拒否しなければならない」と述べた。神戸大の坂元茂樹名誉教授は「ロシアが主張する虐殺の事実は確認されておらず、武力行使は国際法違反だ」と断じる。ジェノサイド(集団殺害)があったとするロシアの主張にウクライナは全面的に反論しており、国際司法裁判所(ICJ)に提訴した。3月7日に始まった審理をロシアは欠席した。周辺国への軍事介入の際に住民保護を名目にするのはロシアの常套(じょうとう)手段だ。08年のジョージア紛争は同国領内の南オセチア、アブハジアの分離独立を主張する親ロシア勢力とジョージア政府が対立した。ロシアは「自国民保護」を打ち出して軍事介入し、南オセチアなど2地域を支援して独立を一方的に承認した。広瀬氏によるとロシアは南オセチアとアブハジアの住民にパスポートを付与し、08年時点で90%近くの住民が保有していたという。ロシアは14年、ロシア系住民が過半数を占めるウクライナ領クリミア半島に軍事介入した際も住民保護を掲げた。ロシアの圧力のもとで実施された住民投票を経て一方的に併合した。国際法上、自国民を保護するための自衛権に基づく武力行使は場合によっては容認される余地がある。日本政府も「ほかの救済手段がないような極めて例外的な場合」などを条件に認められる可能性はあるとの見解を示す。14年5月の参院外交防衛委員会で当時の外務省国際法局長が「保護、救出するために必要最小限度の実力を行使することが自衛権の行使として国際法上は認められることがあり得る」と答えた。ロシアは根拠に乏しいにもかかわらず国際法の論理を歪曲(わいきょく)して用い、正当な行為であるかのように強弁してきた。ロシアが住民保護を名目に武力によって国境変更を試みようとするのを周辺国は警戒する。旧ソ連の支配下にあった東欧や中央アジア諸国には主にロシア語を話したり、自らをロシア人と認識したりするロシア系住民が多く住む。バルト3国のエストニア、ラトビアはいずれもロシア系住民が2割強に上る。中央アジアに位置するカザフスタンは19%を占める。広瀬氏は「こういった国々ではロシアからの侵攻に対する恐怖が潜在的にある」と指摘する。バルト3国が携行型のミサイルを供与するなどウクライナ支援に乗り出しているのはこうした認識が背景にある。ロシアは住民保護に加え、ウクライナ侵攻は「ルガンスク人民共和国」と「ドネツク人民共和国」への集団的自衛権の発動との主張も展開している。ネベンジャ大使は国連安保理会合で両共和国から軍事支援の要請を受けたと説明し「(個別的・集団的自衛権を容認する)国連憲章51条に基づき決定した」と強調した。

*8-4:https://news.yahoo.co.jp/articles/986cf5be8d6a5ef5098604b7e1e180e56d068480 (Yahoo 2021/7/1) 仏当局、ユニクロなど捜査 新疆強制労働で利益と告発
 中国新疆ウイグル自治区での人権問題を巡り、フランス当局は、人道に対する罪の隠匿の疑いで、衣料品店「ユニクロ」のフランス法人を含む衣料・スポーツ靴大手の4社の捜査を始めた。フランスメディアが1日報じた。ニュースサイト、メディアパルトによると、中国の少数民族ウイグル族に対する強制労働など人権抑圧に関するフランス当局の捜査は初めて。捜査は6月末に始まった。ユニクロを展開するファーストリテイリングは、取引先の縫製・紡績工場では強制労働がなく人権が守られていると確認した綿のみを使っていると説明している。

<原発に対する地元の意識>
PS(2022年3月13、19、30日追加):佐賀新聞は、*9-1のように、「①ロシア軍のチェルノブイリ原発占拠やザポロジエ原発・核関連施設への攻撃により」「②フクイチ事故から11年後の3月11日に、原発の巨大リスクを再認識し、脱原発への歩みを速める機会としたい」「③大量の冷却水が必要な原発が直面する災害リスクも外部電源喪失の危険度が大きくなる一方だ」「④戦争や災害で原発が止まれば、膨大な量の電力が一挙に失われ、原発依存は電力の安定供給上も大きなリスクがある」「⑤これが戦時に原発が標的となる理由の一つで」「日本の場合は燃料のウラン資源が海外依存」としており、完全に賛成だ。
 また、「⑥再エネや蓄電池の価格は急激に低下しているため」「⑦今ある技術を最大限駆使して、国産資源である太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーを増やして省エネを進めることが答えで」「⑧政策決定者は、今こそ勇気を持って政策の大転換に取り組まねばならない」としているのもそのとおりであり、これが玄海原発地元の新聞に記載されているのだということを、岸田首相は認識して欲しい。なお、これに先立ち、佐賀新聞は、佐賀県内21市町の首長にアンケート調査を行って下の左図のような回答を得ており、福井県・新潟県・福島県の首長がどう考えているかは興味深い。
 *9-2は、「①日本政府は、ロシア軍のウクライナ原発攻撃で、原発の安全を確保するため自衛隊の迎撃ミサイル配備や平時からの警護を検討する」と記載している。しかし、「②原発がミサイルなどで武力攻撃を受けた場合はどうするのか」という質問は、衆議院議員時代の2006年に、私が、九電・経産省・防衛省を招いて行った自民党の部会で既に行い、その時、九電は「③民間企業は対応できません」と言い、防衛省は「④すべてのミサイルを撃ち落とすことはできない」と言ったのである。そのため、それから16年経過した今でも「⑤日本の原発の安全対策は地震・津波などの自然災害とテロ対策に軸足を置いてきた」「⑥2国間の紛争による武力攻撃は想定していないので対策を要求していない」などと言い、「⑦原油・LNGの価格高騰で原発は火力発電を補完する選択肢の一つになる」としてリスクに目をつぶり、屁理屈を付けて原発を再稼働させ、当時より進歩したミサイル(敵は馬鹿ではない)を「自衛隊で護れる」などと言っているのは許せない。これでは「歴史は繰り返す」という言葉が真実になってしまうだろう。
 さらに、*9-3のように、「自衛隊が原発を守るには、原発周辺に陸自の駐屯地を作ることも検討課題だ」等と言っている人もいるが、そうすると「軍事施設を狙う」と言って遠慮なく原発周辺を攻撃できるため、リスクが高まる。つまり、原発や核の出る幕はもうないのだ。
 2022年3月30日、全国知事会の平井会長が、*9-4のように、首相官邸で磯崎官房副長官に原発へのミサイル攻撃対策強化を要請し、磯崎官房副長官は「自衛隊以外にも警察・海上保安庁とも連携して対策をとる」と説明されたそうだが、日本の自衛隊はミサイルを100%撃ち落とすことはできず、サイバー攻撃にも対応しておらず、ましてや警察や海上保安庁がミサイル攻撃に対応できるわけがないため、日本が原発にこれ以上の資金を投入するのは、自己満足のための無駄遣いの上積みにすぎない。

   
 2022.3.12佐賀新聞    EwaveTokyo      2021.11.8東京新聞

(図の説明:左図のように、佐賀県21市町の首長で原発の運転継続に賛成なのは玄海町長のみで、「条件付で賛成しながらも、将来的には廃止」を望む人が最も多く、最終処分場を受け入れる考えのある人はいない。中央の図は、半径100kmで描いた原発影響区域で、日本の多くの地域をカバーしているが、原発の多い福井県・福島県は特に色が濃くなっている。仮に原発を攻撃するとすれば、風向きや地形を考えながら効果的に行うだろうが、日本には甚大な被害を及ぼす。右図は、フクイチ事故後10年半が経過した2021年11月における山の恵みの汚染状況だ)

*9-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/823421 (佐賀新聞 2022.3.12) 原発事故から11年、リスクを再認識しよう
 ロシア軍によるウクライナの原発や核関連施設への攻撃、チェルノブイリ原発の占拠という異常事態が伝えられる中、東京電力福島第1原発事故から11年の3月11日を迎えた。人類史上初めて、多数の原発が稼働する国が本格的な戦場となり、原発が標的となった。原発が広範囲かつ長期間の放射性物質の汚染を引き起こすリスクは津波以外にも多い。11年後のこの日を、原発の巨大なリスクを再認識し、脱原発への歩みを速める機会としたい。事故後、原発が抱えるリスクは果たして小さくなっただろうか。答えは否だ。政情が不安定な中東で原発建設が進んでいる。ロシアの所業は原発が容易に戦闘の標的となることを明確にした。制圧されたザポロジエ原発は欧州最大級で大事故への懸念は大きい。建設コストの高騰で先進国の原発産業が衰退する中、新規の建設はロシアと中国が中心だ。いずれも平和利用に重要な「民主・公開」の原則とはほど遠い国だ。深刻な事故の際に、国際社会に迅速かつ十分な情報が提供されるとは思えない。ここ数年、気候危機が深刻化し、高潮や暴風雨、干ばつといった自然災害の規模が拡大している。沿岸や川沿いに立地することが多く、大量の冷却水の安定的な確保が必要な原発が直面する災害リスクも、外部電源喪失の危険度も大きくなる一方だ。戦争や災害で原発が止まれば、膨大な量の電力が一挙に失われるので、原発依存は電力の安定供給上も大きなリスクだ。11年前、多くの人が突然の計画停電で大きな影響を受けたことを忘れてはいけない。そして、これが戦時に敵国の原発が標的となる理由の一つだ。ウクライナ危機の中、天然ガスなど海外からの化石燃料の高騰が日本経済に大きな影響を与えている。エネルギー安全保障の観点からも、気候危機への対応からも、輸入化石燃料への依存度を下げることも急務だ。ここで聞こえてくるのが「脱炭素、脱化石燃料には原発が不可欠だ」という議論だ。だが、この間、気候危機対策としての原発の重要度は小さくなるばかりだ。福島事故の影響もあって、原発の建設コストは膨れあがり、工期も延びている。一方で、再生可能エネルギーや蓄電池の価格は急激に低下した。産業革命以降の気温上昇を1・5度に抑え、気候危機の影響を可能な限り小さくするためには2030年までに温室効果ガスの排出を大幅に減らすことが必要なのだが、この点への原発の貢献度は小さい。しかも日本の場合、燃料のウラン資源は海外依存だ。不安定化する世界と深刻化する気候危機の中、日本は多くのエネルギー問題に直面している。対応は急務だが、それは高価で高リスクの原発の再稼働や、化石燃料関連産業への補助金などといった安直な対策でも、アンモニアや水素といった未知の新技術への投資によっても解決できない。今ある技術を最大限駆使して、国産資源である太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーを増やし、省エネを進めることが答えだ。日本ではこの11年間、既得権益に配慮する旧態依然としたエネルギー政策が続いてきた。政策決定者は今こそ、勇気を持って政策の大転換に取り組まねばならない。

*9-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA116HC0R10C22A3000000/ (日経新聞 2022年3月18日) 原発防衛に軍事攻撃も想定 政府、自衛隊活用を検討
 政府は原子力発電所の安全を確保するため、自衛隊を活用した迎撃ミサイルの配備や平時からの警護といった対策を検討する。ロシア軍によるウクライナ侵攻で、原発への国家による軍事攻撃が現実の脅威となったためだ。国家安全保障戦略など年内に改定する文書に反映する。日本の原発の安全対策は地震や津波などの自然災害とテロ対策に軸足を置いてきた。2013年に決定した現行の国家安保戦略は原発が他国軍から攻撃される場合の記述がない。「国際テロ対策の強化」に関する項目で「原子力関連施設の安全確保」に言及しているだけだ。原子力規制委員会の更田豊志委員長は原発の安全審査について「2国間の紛争による武力攻撃は想定していないので対策を要求していない」と説明する。国際人道法の一つであるジュネーブ条約第1追加議定書が原発への攻撃を禁止していたことが背景にある。ロシアによるウクライナ侵攻では国際法に反する原発攻撃が起こり得ると明らかになった。ウクライナ政府はロシア軍が4日に欧州最大級のザポロジエ原発を砲撃したと公表した。原子炉への被害はなかったが、原発は周辺の送電網や配管が損傷しただけでも重大事故が生じる恐れがある。原発が立地する福井県の杉本達治知事は8日、防衛省で岸信夫防衛相に会い、原発防衛に関する要望書を渡した。ミサイルの迎撃態勢に万全を期すことを求め、原発が集中立地する同県嶺南地域への自衛隊配備も要請した。岸田文雄首相は16日の記者会見で原発の防衛策について問われ「防衛力の強化が十分なのかを検討していく。国家安保戦略をはじめとする文書の見直しの中で具体的に考えていく」と言明した。国家安保戦略と同時に改定する防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画に外国軍からの原発攻撃を想定した自衛隊の防衛体制を盛り込む方向だ。ウクライナ侵攻による原油や液化天然ガス(LNG)の価格高騰で、原発は火力発電を補完する選択肢の一つになる。絶対条件となる安全確保を強化する。懸念する事態の一つは弾道ミサイルや巡航ミサイルによる攻撃だ。飛来するミサイルを撃ち落とす地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)部隊を原発周辺に配備するなどの案が選択肢になる。相手のミサイル発射拠点をたたく「敵基地攻撃能力」の保有に関する議論も原発防衛につながる。中国や北朝鮮が開発を進める極超音速ミサイルは迎撃が難しく、反撃する能力を備えることが抑止になりえる。政府・自民党内には武力攻撃を受ける前段階の平時から自衛隊が警護する案もある。外国軍が原発施設に侵攻してから離れた場所で待機する陸上自衛隊が出動したのでは時間を要し、その前に制圧されかねない。現在も警察と自衛隊の共同訓練はあるものの、警察が対処しきれない重武装のテロリストが攻撃してきた場合などに限った出動を念頭に置く。こうした「治安出動」は政府内や都道府県との間で手続きも必要になる。自民党は13年、国会承認なしで自衛隊が動ける「警護出動」の対象に原子力関連施設を加える法改正を検討したことがある。現在の規定では自衛隊や在日米軍の施設などに限定されている。自民党の高市早苗政調会長は「ウクライナの問題で世の中の危機感が変わった。政府が原発警護に自衛隊を活用する方針なら賛同する」と話す。原発の防護に詳しい元陸上自衛隊陸将補の矢野義昭氏によると、米国は米原子力規制委員会(NRC)が一元的な警備基準をつくり、州兵や民間警備会社の従軍経験者が守る場合が多い。「どの国でも軍隊か準軍隊の組織が警備するのが常識だ」と指摘する。ミサイルだけでなく外国軍の特殊部隊やサイバー攻撃への対応も不可欠だと主張する。

*9-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA186NH0Y2A310C2000000/ (日経新聞 2022年3月18日) 平時から原発警護へ自衛隊法改正を 自民党外交部会長
 政府は原子力発電所の安全を守るために自衛隊の活用の検討に入った。陸上自衛隊出身の自民党の佐藤正久外交部会長に受け止めを聞いた。外交・防衛の基本方針である「国家安全保障戦略」など3文書に自衛隊による原発の警護を明記すべきだ。自衛隊が原発を守るには平時から警察や発電所と擦り合わせる必要がある。自衛隊法を改正し自衛隊の警護出動の対象に原発を加えたほうがいい。自衛隊の駐屯地と原発との距離が離れている地域は多い。部隊の常駐は難しいとしても、原発への攻撃の緊張が高まった時点で警備できるようにしなければいけない。有事になってから動くのでは手遅れだ。特殊部隊が原発に侵入したり、外部電源を狙われたりしたら極めて危険だ。警察では特殊部隊に太刀打ちできない。原発周辺に陸自の駐屯地をつくることも検討課題になる。

*9-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA3039K0Q2A330C2000000/ (日経新聞 2022年3月30日) 原発へのミサイル攻撃、対策強化を 全国知事会
 全国知事会の平井伸治会長(鳥取県知事)は30日、首相官邸で磯崎仁彦官房副長官と面会し原子力発電所へのミサイル攻撃の対策の強化を要請した。ロシアのウクライナへの侵攻で原発の安全を巡る懸念が高まる。平井氏は自衛隊による迎撃態勢や部隊の配備に万全を期すよう求めた。「政府として緊急事態、武力攻撃になった場合は原発と住民の安全を守ることを明確にしてほしい」と語った。磯崎氏は自衛隊以外にも警察、海上保安庁とも連携し対策をとると説明した。

<サハリン2と天然ガス>
PS(2022年3月14日追加):対ロシア制裁が強まる中で極東ロシアのガス開発事業「サハリン2」については、*10-1のように、英シェルは撤退を表明したが、日本の三井物産・三菱商事は追随しない方針を維持している。そして、「拙速な撤退は危険で、撤退はロシアや中国を利する」としているが、日本の国益から考えても「短期的には安定供給、中長期的には脱ロシア・脱海外依存」として次第に他国の天然ガスから手を引くチャンスでもある。
 何故なら、*10-2のように、新潟県上越沖等の日本海側で表層型の資源量が多いメタンハイドレートの採取が容易なガスチムニーが1742カ所あることが確認され、「ロシアなどの海外から天然ガスを購入したほうがコストが安い」という課題は、回収だけでなく地域経済の活性化や安全保障等の総コストを考慮すればクリアできるからだ。なお、エネルギー自体は再エネや水素に変換すべきであるため、メタンガスの使い道は化学工業における石油の代替になり、そうなるとメタンガスのパイプラインや輸送は不要で、必要最小限の貯蔵基地を作って採掘地付近で加工すれば地域でつける付加価値が増すわけである。
 なお、短期的(10年程度)な安定供給には、中立の立場をとっている国又はタックスヘイブン国(リベリア等)に特定目的会社を作り、そこからの投資に切り替える方法がある。

  
2022.3.13日経新聞  https://finding-geo.info/basic/methane_hydrate.htmlより

(図の説明:左図のように、サハリンで進めている天然ガスの開発が、対ロシア制裁が強まる中で暗礁に乗り上げそうだが、中央と右図のように、日本近海にはメタンハイドレートが多量に存在する。そのため、その採掘と加工による地域活性化と安全保障を両立できる日は近い)

*10-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220313&ng=DGKKZO59034860S2A310C2EA5000 (日経新聞 2022.3.13) サハリン2進退、2商社苦悩 「安定供給に支障」
 極東ロシアのガス開発事業「サハリン2」。2月28日に英シェルが撤退を表明したが、権益を持つ三井物産と三菱商事は追随しない方針を維持する。日本の液化天然ガス(LNG)輸入量の1割近くを占めるサハリン2を手放せば、安定供給やエネルギー安全保障への影響が避けられない。米欧の対ロシア制裁が強まる中、日本勢は板挟みの状態が続く。「サハリンの権益を巡る立ち位置は日本と欧米で大きく異なります」。3月初旬、商社のエネルギー担当は経済産業省の幹部に迫った。資料では「拙速な撤退は危険」「撤退はロシアや中国を利する」との文言が並ぶ。経産省幹部も「非常に重要な権益」と応じた。サハリン2はロシア初のLNGプロジェクトだ。ロシア国営ガスプロムが約50%、シェルが約27.5%、三井物産が12.5%、三菱商事が10%を出資する。2009年に出荷を始めた。年1000万トンの生産量のうち約6割は日本向けだ。ロシアからのLNG輸入量のほぼ全量に相当する。サハリン2のLNGは日本の電力やガス会社に供給される。長期契約で量やコストは安定。航路は3日程度で2週間の中東より短い。日本勢は自国の供給網として組み込んでおり、大半を極東やアジアで売るシェルとは重要性が異なる。政府と商社らは撤退時のリスクを分析した。撤退なら代替分の多くをスポット(随時契約)市場で調達する必要があり、現状で「2兆円近い追加コストが出る」(商社)。ただでさえ上昇基調の電気やガス料金への上昇圧力は一段と強まる。撤退なら「中国に権益を取られる」(政府関係者)懸念もある。日本が撤退してもサハリン2の操業は続くため、政府や商社は「権益を手放してもロシアへの制裁にならない」とみる。日本勢が抜け、中ロが極東の資源権益を独占すれば外交やエネルギーの安全保障上の急所になりかねない。経産省や伊藤忠商事、丸紅などが参画する原油開発事業「サハリン1」も事情は同じだ。原油輸入量の3.6%を占めるロシア産のうち約4割がサハリン1だ。一度権益を手放せば再び得るのは容易ではない。今のところ政府や商社では、サハリン撤退は選択肢にない。日本が注視するのが欧州連合(EU)の動向だ。EUは原油の3割弱、天然ガスの45%をロシアに頼り、エネルギー分野を制裁の例外にしたままだ。ただ仮にEUがロシア産の原油やガスの調達を止めれば日本も現状維持ではいられない。対ロの国際協調から外れてまで権益を優先すれば、台湾有事など東アジアの地政学リスクが表面化した際、友好国間の関係に影響しかねない。投資家の批判が強まり国際社会の信頼を落とす懸念もある。サハリン事業について、経産省幹部は「短期的には安定供給、長期的には脱ロシア戦略にかじを切らざるを得ない」と話す。撤退の損失と継続のリスク、どちらがより国益に響くか。てんびんにかける日々はしばらく続く。

*10-2:https://www.sankei.com/article/20210707-X4I36HCGAFNTZMG5AG4VK42L2Y/ (産経新聞 2021/7/7) メタンハイドレートで地域活性化 新潟県などで高まる期待と課題
 資源小国の日本で、自前のエネルギー資源の一つとして注目されているメタンハイドレート。日本海では新潟・上越沖が最も資源量が多いとみられ、新潟県は日本海沿岸の府県とともに開発推進への活動を展開している。ただ、低コストな生産技術の確立や、国が打ち出した2050年カーボンニュートラルとの整合性など、越えなくてはいけないハードルもある。
●有望な上越沖
 国の海洋基本計画では、メタンハイドレートの商業化に向けた民間企業主導のプロジェクトを令和5~9年度ごろに開始することになっている。国はこの計画に基づき、平成25~27年度にかけて日本海側の資源量調査を実施。メタンハイドレートの〝通り道〟とみられる箇所(ガスチムニー)が1742カ所あることが確認された。これらの中で資源量的に有望視されているのが新潟・上越沖である。長年メタンハイドレートの調査研究に携わっている東大名誉教授、松本良氏は「この調査により、上越沖のガスチムニーに400万立方メートルのメタンハイドレートが存在することがわかった。これはメタン量にして6億立方メートルに相当し、かなり高い濃集になっている」と指摘する。
●新潟県も活性化に期待
 地域経済の活性化が重要課題の新潟県もメタンハイドレートに期待を寄せる。「県内の企業とともにメタンハイドレートの回収技術で貢献したい。また、新潟県は国内の天然ガス生産の8割を占めており、メタンハイドレートを商業化できれば、エネルギー安定供給にも寄与できる」(県新エネルギー資源開発室)。県は29年、県内の企業に事業参入を促すため、県メタンハイドレート活用構想を策定。商業化が実現した場合、貯蔵基地やパイプライン、陸上輸送などの分野で、ガスや建設業など約50業種に参入可能性があるとみている。また、県内39の大学、企業、自治体からなる県表層型メタンハイドレート研究会では、最新情報の収集と共有を行い、参入に向けた環境整備を進めている。5月下旬には、新潟県など日本海沿岸の12府県からなる「海洋エネルギー資源開発促進日本海連合」が、経済産業省の江島潔副大臣とテレビ会議方式で会談し、生産技術開発や海洋調査などで地元の大学、中小企業を積極的に活用することや、来年度予算での調査費拡充などを要望。新潟県からは佐久間豊副知事が参加した。
●商業化への課題
 地域から大きな期待が寄せられる一方、商業化には課題も多い。最大のハードルは、海底からメタンハイドレートを回収し、メタンを生産する技術をどれだけ低コスト化できるかだ。海外から天然ガスを購入したほうがコスト的に安いとなれば、開発のメリットは薄れる。さらに政府が掲げる2050年カーボンニュートラルとの整合性も出てくる。50年に向けて脱化石燃料が進むとみられる中、化石燃料のメタンハイドレートに開発コストを投下することに、国民のコンセンサスが得られるのかという問題が頭をもたげる。壁を乗り越え開発を進めることになった場合、地元の新潟県は何をすべきか。松本氏は「沖合での資源探査と回収を進めるには漁業者との調整が必須。自治体として協力を取り付ける環境づくりが必要になる」と指摘する。
*【メタンハイドレート】 天然ガスの主成分メタンが水とともに氷状になったもので、〝燃える氷〟とも呼ばれる。海底の表層に存在する「表層型」と、海底下で砂とまじり合って存在する「砂層型」がある。前者は日本海側、後者は太平洋側を中心に存在する。

<ロシア・ウクライナはじめ欧米の食べ物について>
PS(2022年3月17日追加):*11-1のように、ロシアのウクライナ侵攻を受け、ロシアに850以上の店舗があり、関係企業を含めて約10万人の従業員がいるマクドナルドが、ロシア国内の全店舗の一時閉鎖を決め、最後の営業日には多くの人が惜しんだとのことだ。私も英語圏でない国に旅行した時は、メニューに何が書いてあるかわからないため、何が出てくるか予想できるマクドナルドや中華料理店を利用することが多いが、マクドナルドのメニューは健康によくない。
 ちょうど、*11-2に、WHOの統計で、平均寿命はウクライナ(男性68.0歳、女性77.8歳)・ロシア(男性68.2歳、女性78.0歳)はヨーロッパで4番目と3番目に短く、健康寿命はウクライナ(男性60.6歳、女性67.8歳)・ロシア(男性60.7歳、女性67.5歳)がヨーロッパで2番目と3番目の短さだと書かれていたが、(死亡原因をよく見なければわからないものの)癌や白血病が多ければ原子力の多用、心臓病が多ければ肥満などの生活習慣病が考えられる。一方、フィギュアスケートや体操でアジア系の人やワリエワのような大人の身体になる前の女性が有利な理由は、小さい方が激しい動きをしやすいからであり、大人になって体重の増加が著しすぎるのは食ベ物の影響だろう。そのため、マクドナルドの店舗を使わないのなら、従業員が独立してロシア国内で採れる作物から蕎麦・海鮮料理・中華料理などの動物性脂質が少なくて美味しい物を作って出したらどうかと思う。そもそも、血管を広げて血流をよくしたければ、トリメタジジンを飲まなくても、①風呂に浸かる(温泉ならなおよい) ②血流をよくする食べ物を食べる(ショウガ、玉ねぎ等)などの方法があり、これなら「ドーピング」などと言われることはない。つまり、現代栄養学だけでなく、*11-6のような東洋の「薬膳料理」も参考にできる。
 しかし、*11-3のように、ウクライナから戦火を逃れて国外脱出した避難民が、2022年3月15日までに300万人を超え、バランスのよい食事どころか食事を摂れるかどうかも危うい状況となり、大半の避難民をポーランド・スロバキア・ハンガリー・ルーマニア・モルドバが引き受け、国連は400万人に達するとの想定に基づいた人道支援を計画しているのだそうだ。避難後のことも考えれば文化や言語の近い近隣諸国にいた方が安心だろうが、夫はウクライナに残って母子家庭になりそうな困難は察するに余りある。しかし、*11-4のように、NATOは3月15日・24日に臨時の首脳会議をブリュッセルの本部で開き、バイデン大統領は同日のEU首脳会議にも出席して、ウクライナに侵攻したロシアの脅威が高まる東欧諸国などの防衛に関与する姿勢を明確にし、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの対応や欧州の防衛について話し合うそうだ。ゼレンスキー大統領は、昨日、米議会でオンライン演説し(それは日本でも同時通訳で放送された)、「ロシアのミサイルと飛行機から我々の領空を守ることがどれだけ重要か理解してほしい」とし、米国は制裁等を通じたロシアへの圧力強化や武器供与等の支援を行うそうだ。
 日経新聞は、2022年3月17日、*11-5のように、「①ロシアのウクライナ侵攻は多くの人を不確実な状況に陥れたが、一つだけ確かなことはロシアと西側諸国は戦争状態にあることだ」「②欧米の当局者は、『NATOとロシアの戦闘機が直接衝突する事態は避けたい』と言っているが、史上最も厳しい経済制裁を科し、殺傷能力の高い武器をウクライナに供与し、ロシアを孤立させようする欧米は宣戦布告したに等しい」「③国連総会が3月2日に採択したロシアへの非難決議で、ロシアとともに反対票を投じたのはベラルーシと北朝鮮、シリア、エリトリアに留まる」「④中国の将来は経済成長できるかどうかにかかっているため、中国政府はロシアのウクライナ侵攻を非難はしないが、西側の制裁にある程度は従う可能性が高い」と記載している。私は、事実上の宣戦布告をどちらが先に行ったかは疑問である上、国連非難決議での「棄権」は「賛成できない」という意味であるため、棄権と反対を合わせると地球人口の半分が宣戦布告に賛成していなかったと思うのである。


  キエフの街   破壊されたオデッサの街  モスクワの街  2022.3.12西日本新聞

(図の説明:1番左がウクライナのキエフの街で、左から2番目が破壊されたウクライナのオデッサの街だ。右から2番目は、ロシアのモスクワの街で、1番右がロシアへの経済制裁の影響だ)

*11-1:https://www.fnn.jp/articles/-/330923 (FNN 2022年3月14日) ロシア マック最終日に大勢の客 ユニクロも混雑続く
 ロシアのウクライナ侵攻を受けて、ロシア国内の全店舗の一時閉鎖を決めたマクドナルドが、13日、最後の営業日を迎えた。1990年から営業を続けてきたマクドナルド1号店には、朝から多くの人が訪れた。「食べ納め」を惜しんで、テーブルクロスや花を用意し、ハンバーガーと一緒にワインを楽しむ客の姿も見られた。マクドナルドは、ロシアに850以上の店舗があり、関係企業を含めると、およそ10万人の従業員がいるが、給与などの支払いは継続するとしている。マクドナルドの客「時代が終わったと感じている」。ロシアで50店舗を展開するユニクロでも、事業の一時停止を発表した日から、大勢の利用客が訪れ、混雑が続いている。一方、モスクワ市内では13日、抗議デモで、これまでに1,000人近くが拘束されている。

*11-2:https://mainichi.jp/premier/business/articles/20220310/biz/00m/020/015000c?cx_fm=mailbiz&cx_ml=article&cx_mdate=20220315 (毎日新聞 2022年3月13日) 平均寿命が短い「ウクライナ」人口減が加速する危機
 ロシア軍によるウクライナ侵攻で、民間人に多数の死傷者が出ていると発表されている。ポーランドをはじめとする東欧のウクライナ隣接国は避難民を受け入れており、避難民の国外への動きは当分収まらないだろう。実はウクライナは1990年代以降、人口が大きく減少してきた。今回は、同国の人口減少に関するデータを見ていく。
●世界で最も人口減少の激しい国の一つ
 まず、ウクライナの近年の人口推移をおさえる。同国は、91年にソビエト連邦(ソ連)の崩壊で独立国となった。国連の統計(World Population Prospects 2019)によると、独立時の人口は約5146万人だったが、2020年には約4373万人に減少している。人口の年平均増減率は90~00年にマイナス0.5%、00~10年にマイナス0.6%、10~20年にマイナス0.5%で推移し、世界で最も人口減少の激しい国の一つとなっている。背景には、移民となって国外に人口が流出している問題もあるが、基本的には低い出生率と高い死亡率による自然減が強く影響している。国連や世界銀行などの分析によると、飲酒、喫煙、肥満、高血圧、エイズのまん延などが高い死亡率の原因とされている。
●平均寿命と健康寿命が短い
 世界保健機関(WHO)の統計(Global Health Observatory data)をもとにヨーロッパの平均寿命(19年)について見てみる。ウクライナは男性が68.0歳、女性が77.8歳だ。男性は、ヨーロッパでトルクメニスタンとタジキスタンにつぐ短さとなっている。同国を侵攻しているロシアの平均寿命は男性が68.2歳、女性が78.0歳で、いずれもウクライナにつぐ短さだ。今回の侵攻は、平均寿命の観点で見ると「ヨーロッパで4番目に男性平均寿命が短いロシアが、3番目に短いウクライナを攻めている」となる。また、健康寿命(健康上の理由で日常生活が制限されることなく過ごせる年齢寿命、19年)を見ると、ウクライナは男性が60.6歳、女性が67.8歳となる。ロシアは男性が60.7歳、女性が67.5歳だ。男性は、トルクメニスタンについでそれぞれ2位と3位の短さだ。ウクライナもロシアも平均寿命と健康寿命が短い。一方的な侵攻による激しい戦闘が起きていることは不幸としかいいようがない。
●ウクライナは男性の割合が低い
 もう一つ注目すべき点として、ウクライナは人口性比(女性100人に対する男性の数)が86.3(国連の統計、20年)で、ヨーロッパではラトビアとリトアニアについで低いことがあげられる。ロシアは86.4で、この点でもウクライナにつぐ水準だ。これは、両国で、飲酒などを原因とした男性の平均寿命の短さが、人口に占める男性の割合の低さとなってあらわれているものとみることができる。今回の侵攻を受けて、ウクライナ政府は18~60歳の男性の出国を禁じた。18~60歳の予備役を最大1年にわたって招集するとしている。今後、戦闘で多くの兵士の生命が失われれば、男性の割合はさらに低下する恐れがある。
●人口は50年までに19%以上減少の予測
 国連の人口予測(中位推計、19年)によると、ウクライナの人口は20年の約4373万人から、50年には約3522万人へと19%以上減少する。この予測は侵攻が起こる前のものだ。
今回の侵攻で多くの兵士や市民が犠牲となったり、国外への避難民が増え続けたりすれば、ウクライナの人口減少は加速する可能性がある。何より、戦闘によるこれ以上の人道上の悲劇をくいとめなければならない。即時停戦でロシア軍の侵攻が止まることを切望する。

*11-3:https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-border-300-idJPKCN2LC22G (Reuters 2022年3月16日) ウクライナ難民300万人超、ポーランドが6割受け入れ=国連
 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の集計によると、ウクライナから戦火を逃れて国外に脱出した避難民が、15日までに300万人を超えた。ウクライナ西部リビウ近郊の軍事施設にも攻撃が行われた13日以降、これまで比較的安全とみられていた西部からも避難する人々が出始めたという。難民は300万0381人に上った。大半がウクライナと国境を接するポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、モルドバに滞在しており、中でもポーランドは6割の180万人を受け入れている。またUNHCRによると、これまでに30万人がさらに西の西欧諸国に移動したという。北東部ハリコフから逃れてきたジャンナさん(40)はポーランドのウクライナ国境近くのプシェミシル駅で「ロシア軍がリビウへの攻撃を始めるまでは、ウクライナ西部は安全だと誰もが思っていた」と話した。国内で避難するつもりだったがリビウなどへの攻撃が始まり、小さな子どもがいるため、国外への避難を余儀なくされたと語った。夫はウクライナに残ったという。国連はウクライナからの避難民が400万人に達するという想定に基づいた人道支援を計画しているが、近いうちに拡大する必要もあるとの見解を示している。欧州連合(EU)のヨハンソン欧州委員(内務担当)はウクライナからの難民受け入れについて「われわれがベストを尽くして団結すれば、(この難題にも)対処できる」と強調した。

*11-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220316&ng=DGKKZO59120000W2A310C2MM0000 (日経新聞 2022.3.16) 米大統領が訪欧 NATO臨時首脳会議に出席へ、24日、東欧防衛関与を明確に
 北大西洋条約機構(NATO)は15日、24日に臨時の首脳会議をブリュッセルの本部で開くと発表した。バイデン米大統領らが参加する。バイデン氏は同日の欧州連合(EU)首脳会議にも出席し、ウクライナに侵攻したロシアの脅威が高まる東欧諸国などの防衛に関与する姿勢を明確にする。両会議ではウクライナへの侵攻を続けるロシアへの対応や欧州の防衛について話し合う見通しだ。NATOのストルテンベルグ事務総長は声明で「この重要な時期に北米と欧州はNATOのもとでともに立ち向かわねばならない」と訴えた。米ホワイトハウスのサキ大統領報道官は15日の記者会見で、バイデン氏がNATO首脳会議に参加し「欧州の首脳と直接会い、ウクライナの現状を評価する」と説明。「ロシアによる不当なウクライナ攻撃に対する抑止力と防衛努力について議論し、NATOの同盟国への鉄壁の関与を再確認する」と述べた。NATOの根幹は集団安全保障を定めた北大西洋条約の第5条で、締約国への武力攻撃を「全締約国への攻撃とみなすことに同意する」と定める。非加盟のウクライナと異なり、防衛義務が生じる。米国防総省はポーランドやルーマニアなどNATO加盟国に米軍を増派しており、バイデン氏は「NATO諸国の領土を隅々まで守る」と繰り返す。ロシアの脅威に対峙する東欧などの抑止力を強化する狙いがある。EUは24~25日にブリュッセルで首脳会議を開く。バイデン氏は24日の討議に対面形式で参加する。EU首脳会議には、ミシェルEU大統領らEU首脳に加え、マクロン仏大統領やショルツ独首相ら27カ国の加盟国首脳が参加する予定だ。サキ氏は「ロシアに代償を科すための努力、影響を受けた人々への人道支援など共通の懸念を話し合う」と強調した。訪欧に合わせてウクライナのゼレンスキー大統領と会談するかを問われ、現時点で決まっていないとも話した。米メディアによると、バイデン氏がウクライナ西隣のポーランドを訪れる案も検討している。ゼレンスキー氏は15日、カナダ議会下院でオンライン演説し「ロシアのミサイルと飛行機から我々の領空を守ることがどれだけ重要か理解してほしい」と語り、NATO諸国にウクライナ上空に飛行禁止区域を設定するよう求めた。16日には米議会向けにオンラインで演説する。制裁などを通じたロシアへの圧力の強化や、武器供与などの支援を米国に求めるとみられる。

*11-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220317&ng=DGKKZO59124770W2A310C2TCR000 (日経新聞 2022.3.17) 後戻りできないロシアと世界 米ユーラシア・グループ社長 イアン・ブレマー氏
 ロシアのウクライナ侵攻は多くの人を不確実な状況に陥れたが、一つだけ確かなことがある。ロシアと西側諸国はいまや戦争状態にあるという点だ。欧米の当局者は、北大西洋条約機構(NATO)とロシアの戦闘機が直接衝突する事態は避けたいと言い続けている。しかしいままでで最も厳しい経済制裁を科し、殺傷能力の高い武器をウクライナに供与し、ロシアを孤立させようとする欧米の取り組みは宣戦布告に等しい。世界はいままさに転換点にある。NATOとロシア軍が直接の武力衝突を避けられたとしても、プーチン大統領の譲歩という、いまや想像しがたい事態が起きない限りロシアと西側は「新冷戦」に直面する。だが、こうした対立は多くの点で20世紀の冷戦ほど危険ではないだろう。ロシアの国内総生産(GDP)は米ニューヨーク州よりも小さく、低迷するロシア経済は制裁により今後1年間で10%以上縮小する可能性が高い。かつロシアの金融システムは崩壊の危機にひんしている。かつてソ連と東欧の衛星国の経済システムは西側と切り離されていたため、西側の経済的圧力の影響は(経済圏には)及びにくかった。いまや欧州は米国と結束し、足並みをそろえているのに対し、旧ソ連圏はプーチン氏の引力に逆らおうと抵抗もしている。ソ連には、世界の民衆や政治家を引き付けるイデオロギーの魅力もあった。いまのロシアには特にイデオロギーはなく、政治的価値観を共有する同盟国にも乏しい。国連総会が2日に採択したロシアへの非難決議で、ロシアとともに反対票を投じたのはベラルーシと北朝鮮、シリア、エリトリアにとどまった。キューバですらプーチン氏の軍事行動を支持せず、棄権に回った。ロシアとの関係強化が懸念されている中国はどうか。ロシアに理想的な選択肢があるとはいえない。中ロは米国の国際的な影響力をそぎ、欧州の強硬姿勢を抑えるという点では同じ考えを持つ。だが、中ロ関係ではロシアの立場が弱い。ロシアの10倍の経済規模である中国は、ロシアが西側に売れなくなった石油・ガス、鉱物などを買い、ロシア経済を支えるとみられる。一方で中国は、資源を買いたたこうともするだろう。中国の将来は経済成長できるかどうかにかかっており、欧米とつながり続けられるかがポイントになる。中国政府はロシアのウクライナ侵攻を非難しないだろうが、西側の制裁にある程度は従う可能性が高い。1980年代に中距離核戦力(INF)廃棄条約が発効するなど、欧米とソ連の首脳はアジアやアフリカ、中南米の紛争がエスカレートし、欧州に壊滅的な打撃が及ぶのを防ぐ壁を設置できていた。西側とロシアが新たな外交基盤と信頼回復を築くには、長い年月がかかるだろう。当事国と世界経済にとってはるかに危険な点もある。新冷戦下の武器はさらに強力になっている。両陣営の本当のサイバー能力はわからないが、いずれも金融システムや送電線など社会インフラを標的にし、壊滅的打撃を与えられるとみられる。サイバー兵器は20世紀後半の重火器よりもコストが低く、計画が容易で広範囲に使えるだろう。例えば、4月のフランス大統領選は新たな戦略を試すチャンスになる。11月の米中間選挙なども同様だ。ロシアは、ウクライナをプーチン氏の支配下に置くために攻撃を続けるだろう。だがロシア軍が全土を制圧したとしても、ウクライナ国民は戦いを止めず、西側の首脳はウクライナを支援し続けるだろう。史上最も厳しい制裁はさらに強化されることになる。新冷戦への道はもはや後戻りできない。

*11-6:https://www.yomeishu.co.jp/health/3371/ (Yomeishu) 薬膳とは? いつもの食材でできる薬膳の基本
●食の知識
 薬膳は手間がかかる、高そうな食材を使いそう...と思われがちですが、いつもの食材で簡単に作ることができます。昔から食材には薬と同じような効能があると考えられてきました。薬膳の知恵を使って、季節や自分の体質、体調に合った食材を組み合わせ、毎日を健やかに過ごしましょう。(中略)
●自然界を5つに分類する考え方「五行」
 薬膳で基本となるもう1つの考え方に「五行」があります。五行とは、自然界に存在する物質を「木・火・土・金・水」の5つの性質に分けたものです。
●自分の体と向き合うために「五味」を知る、5つの味でバランスよく
 「五味」とは「酸味・苦味・甘味・鹹味([かんみ]塩からい味)」のことです。それぞれに対応する五臓があり、その臓器に吸収されやすいといわれています。例えば「肝」の動きが過剰になってイライラしたり、頭痛があったりするときは、「肝」の働きを抑える「辛味」のものをとるとよいとされています。
●五味の作用と働き
 健康な人であれば、普段の生活のなかで、五味をバランスよく食べるようにすればよいでしょう。
食材の温める力・冷やす力を活かして
●体を「平性」に保ちましょう
 食材には体を温めたり冷やしたりする性質(五性)があり、5つのグループに分類されます。体を温める「温性」、体を極端に温める「熱性」、体を冷やす「涼性」、体を極端に冷やす「寒性」、体を温めも冷やしもしない「平性」です。うるち米など毎日食べている食材には平性の物が多くあります。とうがらしやトマトのように、熱性・寒性の物は合わせる食材を工夫してバランスを崩さないように調理し、それだけとることは避けましょう。また、旬の食材にはその季節にふさわしい性質をもつ物が多いのが特徴です。食は毎日のこと。そこに薬膳の考え方をプラスして、賢く料理をしませんか。毎日3回、美味しいと思う食事が365日続いたら、それは幸せな時間を積み重ねていることになります。そこに薬膳の知恵があれば、健康も積み重ねていくことができるのです。

<現在の“経済制裁”は効果より副作用の方が大きい>
PS(2022年3月21、22日追加):*12-1のように、日本メディアの多くは、「制裁の抜け穴にならないよう対ロ制裁でアジアの結束に一層の努力が必要」とし、岸田首相も率先して対ロシア政策で制裁に共同歩調をとるようインド・カンボジアに呼びかけられた。また、バイデン米大統領は、「中国がロシアを軍事・経済面で支援すれば、制裁を科す」と示唆されたが、“経済制裁”ではロシア・中国は参らないと思う。その理由は、ロシア・中国は冷戦後の30年間に西側企業を誘致して必要な技術や経営ノウハウを吸収し、既に自国生産が可能になっているからだ。そのため、原料・エネルギー・労働力を持つ国は自国生産に切り替えれば経済制裁に対抗できるが、それらを海外依存している国は物資不足になる。そのため、現在では、日本が“経済制裁”をすると、自国の経済への悪影響の方が大きいと思われるのだ。
 また、*12-2のように、バイデン米大統領が中国への制裁も念頭に、中国が対ロ支援した場合の影響と結果について警告すると、中国の習国家主席は「①制裁がエスカレートすれば、世界経済や貿易、金融、エネルギー、食糧、産業、供給網に深刻な危機をもたらす」「②既に低迷している世界経済をさらに麻痺させ、取り返しのつかない損失を引き起こす」と言われたそうで、私は①②が本当だと思った。また、「③制裁の切り札と見定めるのが、世界の基軸通貨としての米ドルが強い影響力を持つSWIFTからのロシアの締め出し」とも書かれているが、経済・金融を武器として使い続ければ、“制裁”される側もそれに対応して準備するため、基軸通貨としての米ドルへの信用が下がるのも否めないわけである。
 なお、*12-3についても、“経済制裁(=戦争)”しながら「平和条約交渉」はないため打ち切られるのが当然で、政府がメディアと一緒になって「日本には日本の国益がある」ということを考えず、適時に必要な手も打ってこなかったことに原因があるため、どうしようもない。

   
2022.2.23   2022.3.20  2022.3.20      2022.2.27TV朝日
 毎日新聞    福井新聞   毎日新聞  

(図の説明:1番左の図のように、2月21、22日には欧米と日本が相次いでロシアへの制裁を行い、左から2番目の図のように、3月19日に岸田首相はインドに対ロ非難を促した。また、右から2番目の図のように、バイデン米大統領は、3月19日に習近平中国国家主席と会談して対ロ支援した場合の対抗措置を警告している。さらに、1番右の図のように、ロシアをSWIFTから排除して決済困難にし、世界的に孤立させる制裁も早々に決定されている)

*12-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220321&ng=DGKKZO59262820R20C22A3PE8000 (日経新聞社説 2022.3.21) 対ロ外交でアジアの結束に一層の努力を
 岸田文雄首相とインドのモディ首相が会談し、ロシアのウクライナ侵攻を念頭に「力による一方的な現状変更はいかなる地域においても許してはならない」と確認した。国際社会で外交努力が加速しており、日本もアジア諸国などの結束に指導力を発揮すべきだ。日印両国と米国、オーストラリアは5月にも日本で「Quad(クアッド)」の首脳会談の開催を予定する。岸田首相がロシアと伝統的な友好関係にあるインドを今年初めての外国訪問先に選び、首脳間の信頼関係づくりに努めたのは評価できる。ロシアへの制裁措置をめぐり日米欧と一線を画すインドとの溝もあらためて浮き彫りになった。岸田首相が対ロシア政策での共同歩調を呼びかけたのに対し、モディ首相はロシアを名指しはせず、両首脳の共同声明にもロシアという言葉が入らなかった。国連総会のロシア非難決議でインドが棄権したのは極めて残念だ。印ロ首脳は昨年末に会談し、武器調達など軍事協力も進める。対ロ政策でインドと完全に足並みをそろえるのは難しくとも、制裁の抜け穴にならないよう民主主義陣営に引き付けておくのが肝要だ。岸田首相が次に訪れたカンボジアは、東南アジア諸国連合(ASEAN)の今年の議長国だ。日米が主導する「自由で開かれたインド太平洋」の実現に欠かせない地域であり、カンボジアなど中ロとの関係が深い国々にも粘り強く協調を働きかける必要がある。林芳正外相は同時期にトルコ、アラブ首長国連邦(UAE)を訪問した。トルコはロシア、ウクライナ両国と緊密な関係を保ち、今回も積極的な仲介外交を重ねる。原油市場の安定に向け、日本の原油輸入先で第2位のUAEとの協力強化も意義がある。こうしたなか米中首脳がテレビ会議形式で協議した。バイデン米大統領は、中国がロシアを軍事、経済面で支援すれば制裁を科すと示唆した。中国はロシアへ影響力が大きく、その対応次第では世界秩序を大きく左右しかねない。大事な局面を迎えている。権威主義国家の暴挙を許さず、東アジアへの波及を阻止しなければならない。民主主義や法の支配を守るのは日本の責任でもある。中国と歴史的、人的関係の深い日本が米国と連携し、中国を完全にロシア側に付かせないための巧みなアプローチが求められている。

*12-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15239690.html?iref=pc_shimenDigest_top01 (朝日新聞 2022年3月21日) (経済安保 米中のはざまで)米ドル覇権、制裁の効果左右 SWIFT、中国・ロシアは対策
 「制裁がエスカレートすれば、世界経済や貿易、金融、エネルギー、食糧、産業、供給網に深刻な危機をもたらす」。18日のテレビ電話による米中首脳会談。中国の習近平(シーチンピン)国家主席は、バイデン米大統領が中国への制裁も念頭に、中国が対ロ支援をした場合の「影響と結果」について警告すると、逆にこう切り返した。習氏はさらに「すでに低迷している世界経済をさらにまひさせ、取り返しのつかない損失を引き起こす」とも強調。あえて「世界経済」を持ち出し、米国が対ロ支援を理由に中国に制裁を科すことがないよう牽制(けんせい)した。一方、米国は中ロの接近を警戒。軍事介入を見送りつつ、経済・金融を「武器化」してロシア封じ込めを狙う。とりわけ、制裁の切り札と見定めるのが、世界の基軸通貨としての米ドルが強い影響力を持つ「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からのロシアの締め出しだ。締め出しをくらえば、お金のやりとりが難しくなる。この制裁の厳しさを、ロシア側は「宣戦布告にあたる」(メドベージェフ元首相)とかねて牽制してきたほどだ。だが、中国がロシアを支援すれば、その制裁の効果は薄まる。米国の懸念の伏線は、2月の北京冬季五輪での中ロ首脳会談にあった。開会式出席のため、北京を訪問したロシアのプーチン大統領は、中国国営メディアに「一方的な制裁のマイナスの影響を取り除こうと、我々は自国通貨での決済を拡大し、システムを構築してきた」と寄稿。米ドル覇権が及ばない仕組みを構築してきたことを自負した。実際、外交筋によると、同月4日の習氏との会談で、SWIFTから排除された場合の対応策について協議したという。ドルは国際決済額の4割、各国政府が対外支払いのために持つ外貨準備の比率で6割を占める。米国が関わらない二国間の貿易でも、多くの取引で米ドルが使われる。仲介するのも米金融機関だ。制裁でドル取引が禁じられれば、貿易や投資は著しく滞る。米ドルの威力を最小限にとどめられないか――。ロシアはこれまでも外貨準備から米ドルの比率を減らし、2014年のクリミア併合による対ロ制裁を機に、ロシアの通貨ルーブル版SWIFTとして「SPFS」と呼ばれる組織を設立。外国からはカザフスタンなどの数十行しか参加せず、代替にはほど遠いのが現状だ。SWIFTからの締め出しでロシアの国内総生産(GDP)の5%が吹き飛ぶともいわれる。「備え」を着々と進めているのが中国だ。15年には、SWIFTを使わず、人民元で決済できるシステム「CIPS」を設立。参加国・地域は100を超える。世界的な金融産業の業界団体・国際金融協会(IIF)はウクライナ侵攻を受けた2月28日の報告書で、中ロの決済システムの連携を「運用可能なのかは不透明」としつつ、制裁が「ロシアを中国との関係強化へと押しやる無視できないリスクがある」と警告した。通貨は国家の安全保障の根幹を担い、経済安全保障の核心を握る。米ドルと人民元の力の差は、米国と中国の軍事力の差よりもはるかに大きい。だが将来、「米ドル覇権」が崩れるのか、通貨秩序は国際秩序にも影響する。

*12-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB2149G0R20C22A3000000/?n_cid=NMAIL006_20220322_A (日経新聞 2022年3月22日) ロシア、平和条約交渉打ち切り 日本の制裁に反発
 ロシア外務省は21日、日本が米欧と歩調を合わせて発動した対ロ経済制裁を巡り「日本との平和条約締結に関する交渉を継続するつもりはない」との声明を発表した。ロシアとの間で領土問題を解決して平和条約を締結するとの日本の一貫した立場が拒否された。ロシアはウクライナへの軍事侵攻を巡り、欧米諸国だけでなく日本からも厳しい制裁を受けた。ロシア外務省は「明らかに非友好的な立場を取り、我が国の利益に損害を与えようとしている」と反発した。ロシア外務省は21日の声明で、平和条約締結交渉を拒否するとともに、ロシアが実効支配する北方領土にビザなしで訪れることができる「ビザなし交流」の廃止も発表した。旧島民の簡素化された北方領土訪問もなくすとした。さらに日本との間で進めていた北方領土での共同経済活動の実現に向けた話し合いも放棄する考えを示した。黒海の周辺国でつくる黒海経済協力機構のパートナー国としての日本の資格延長にも応じないと明記した。声明では、こうした対抗措置を発表したうえ、日ロ関係悪化の責任は「反ロシアの方針を選択した」日本政府にあると一方的に非難した。日本とロシアの前身であるソ連は1956年、日ソ共同宣言に調印し、第2次世界大戦後の2国間関係の再建に着手した。同宣言では平和条約締結後に北方領土のうち歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すと明記した。安倍晋三首相(当時)は2018年、プーチン大統領との会談で、同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意していた。ロシアが日ロ平和条約の締結交渉を一方的に拒否したことは、戦後、両国が取り組んできた関係改善の道筋を閉ざすことを意味する。

<日本は化石燃料資源もないのに、外国の化石燃料にしがみつく国である>
PS(2022年4月1日追加):*13-1のように、ニューヨーク・マーカンタイル取引所では、米政府が大規模な戦略石油備蓄の追加放出を発表して、原油先物相場は1バレル100.28ドルと反落したが、日本では、*13-2-1のように、自民、公明、国民民主の3党が原油価格高騰対策として石油元売りへの補助金と、ガソリン税の「トリガー条項」凍結解除を政府に迫っているそうだ。また、*13-2-2のように、米欧と一緒になってOPECプラスに大幅な追加増産を要請し、今後も強い増産圧力を続けるそうだが、原油備蓄は日本も行っており、現在の相場は戦時の一時的なものでもあるため、備蓄を放出すればよい。また、1年前より7割高い程度なら、ガソリン車からHV・EVに変え、再エネや省エネ設備を導入すれば吸収できる筈で、そういう根本的な解決をしないから製造業の輸出競争力もなくなり、エネルギー・食糧を大きく輸入に依存しつつ補助金をばら撒いて現状維持に汲々とすることになるのであり、判断ミスも甚だしいのだ。
 さらに、*13-3のように、①電力会社の発送電分離は既に終え ②都市ガス会社のパイプラインを製造部門と小売部門とに分ける「導管分離」が4月1日に実施されるそうだ。しかし、①は、安定供給への責任という論理を振りかざして地域独占による無競争状態に胡坐をかいていた大手電力だけでなく、新電力にも電力市場を開放するのに必要不可欠だったが、②のパイプラインの製造・小売部門の分離は、2社以上のガスを1導管で運搬できるわけではないため、あまり意味がありそうに見えない。さらに、100%近くを外国に依存している化石燃料の価格上昇を原因として、何かといえば「安定供給への責任」を言い立てて何十年も状況を改善しないのは、日本独特の不合理な現状維持である。

*13-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220401&ng=DGKKZO59605800R00C22A4MM0000 (日経新聞 2022.4.1) NY原油反落、一時100ドル割れ 米の備蓄追加放出で
 3月31日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物相場は反落した。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近の5月物は前日比7.54ドル(7.0%)安の1バレル100.28ドルで取引を終えた。一時は1バレル100ドルを割り込んだ。米政府が大規模な戦略石油備蓄の追加放出を発表し、原油需給の逼迫が和らぐとの見方から売りが出た。

*13-2-1https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220331&ng=DGKKZO59555460Q2A330C2PD0000 (日経新聞 2022.3.31) ガソリン補助金「必要」 自公国が実務者協議
 自民、公明、国民民主の3党は30日、国会内で原油価格高騰の対策について実務者の協議を開いた。ガソリン税を一時的に下げる「トリガー条項」の凍結を解除するかどうかにかかわらず、石油元売りへの補助金が必要との認識で一致した。

*13-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR31CD60R30C22A3000000/ (日経新聞 2022年3月31日) OPECプラス、原油増産ペースを実質維持 対ロ協調重視
 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」は31日、現行の段階的な原油増産を実質的に据え置いた。ウクライナに侵攻し米欧と対立するロシアとの協調の枠組みを重視し、米欧が期待した大幅な追加増産を見送った。OPECプラスは同日オンラインで開いた閣僚協議で、5月は増産幅を日量43万2千バレルにすることで一致した。毎月日量40万バレルずつ増産してきた従来の合意を「再確認する」としたうえで、基準となる生産量を微修正した。次回は5月5日に協議する。協議後の声明で、原油相場の激しい値動きは「ファンダメンタルズでなく、進行中の地政学的な展開によるものだ」と表明。ロシアのウクライナ侵攻で生じた供給懸念の責任を負わない姿勢をにじませた。国際エネルギー機関(IEA)はロシアからの石油輸出が日量250万バレル減ると予測し、穴埋めの余力を持つサウジアラビアなど中東産油国に対し、米欧日が相次いで増産を働きかけていた。他の産油国が代わりに大幅増産すればロシアにとっては敵に塩を送る行為になり、OPECプラスの結束を揺るがす。どの産油国にとっても原油高は追い風で、高値を維持したいのが本音だ。サウジとバイデン米政権との間に吹く隙間風も、増産要請に応じない一因との見方がある。サウジはイエメンの親イラン武装勢力との戦いで米国の支援が弱いと感じ、イラン核合意の再建にも不満を抱く。対照的に中国との関係強化の動きを強めている。ニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は31日、一時1バレル100ドル前後と前日比7%下落した。バイデン米政権が日量100万バレルの石油備蓄を最大180日間にわたり放出することを検討していると報じられ、売りが広がった。IEAも4月1日に石油の協調放出を協議すると伝わった。中国での新型コロナウイルスの感染拡大もあり、相場は上昇一服感があるが、なお1年前より7割高い。OPECプラスの増産が進まず、ロシア産原油も調達しにくくなるなかで、有力な代替先が米国だ。米エネルギー情報局(EIA)は2022年の生産量を日量1200万バレルと、前年より85万バレル増えると予測。23年はさらに同100万バレル近く増える見通しだ。それでもロシア産原油の供給減少分をすべて補えるわけではない。サウジなどOPECプラス構成国が需給の鍵を握る状況は変わらないため、今後も消費国からの強い増産圧力が続きそうだ。

*13-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220331&ng=DGKKZO59558010Q2A330C2EA1000 (日経新聞社説 2022.3.31) 電力・ガス改革は不断の改善を
 都市ガス会社のパイプライン部門を、製造・小売部門と法的に分ける「導管分離」が4月1日に実施される。東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの3社が対象となる。電力会社の発送電分離はすでに終えた。今回の導管分離によって、1990年代から段階的に進めてきた電力・ガス市場改革はひとまず完成する。ただ、足元で電力・ガス供給は改革のひずみともいえる様々な問題が表面化している。安定供給を確保し、競争を促す制度への不断の見直しを続ける必要がある。導管分離はガス事業への企業参入を促すのが狙いだ。都市ガスを需要家に届けるパイプラインの運用を中立化し、新規事業者がより公平な条件で使えるようにして競争環境を整える。20年に実施した発送電分離では、沖縄電力を除く全ての大手電力会社が分離の対象になった。190社以上ある都市ガス会社では一定規模以上のパイプラインを持つ大手3社が対象となる。全額出資の子会社を設立し、3社以外は企業内で会計上の分離を求める。電力・ガスの小売り全面自由化以降、電力は700以上、ガスは90以上の事業者が新たに参入した。全販売電力量に占める新電力のシェアは2割を超え、家庭用ガスは15%超が契約先を変えた。電力会社がガスを売り、ガス会社が電力を売る相互参入も進んだ。地域独占を転換し、消費者が事業者を選べるようにしてサービスや料金の競争を促す狙いは、一定の成果があったといえる。一方、足元では燃料価格の上昇により、新電力が販売用電力を調達する卸電力市場の価格が急騰している。増大する費用を転嫁できずに業績が悪化し、撤退も相次いでいる。都市ガス原料の液化天然ガス(LNG)も高値が続く。3月22日には関東・東北で危機的な需給逼迫が起きた。電力もガスも、誰が安定供給に責任を持つのかを明確にしたうえで、そのための仕組みの改善を続けていかなければならない。

<“民主主義国”と言いながら、人(=人材)を人間として大切にしない国、日本>
PS(2022年4月2、3日追加): 日経新聞は、2022年3月19日、*14-1-2のように、①ロシアが侵攻したウクライナで人道危機が深まり ②ウクライナ国内で避難生活をしている住民が推計650万人にのぼり ③国外への避難民とあわせて総人口の1/5以上の1000万人に迫り ④さらに1200万人以上が攻撃で退避を阻まれており ⑤南東部マリウポリを包囲していたロシア軍が中心部に入って市街戦になった と報じ、読売新聞は、2022年3月30日、*14-1-1のように、⑥国外に逃れたウクライナ難民が400万人超えた と報じている。
 そして、日経新聞は、*14-1-3のように、2022年4月2日、⑦ロシア軍が包囲するマリウポリでICRCの支援チームが50台以上のバスで市民を退避させる筈だった住民退避が難航し ⑧人道支援物資の搬入が拒否され ⑨マリウポリ市内にはなお約17万人が残され ⑩市内は長引く包囲と無差別攻撃で水・食料・医療品が欠乏して人道危機が深刻になり ⑪米戦争研究所はマリウポリが数日以内に陥落すると分析している と報じており、平穏な生活をしていたウクライナの人々には地獄の日々が続いているようだ。しかし、*14-1-2のように、ゼレンスキー大統領はじめ西側諸国は、⑬ロシア軍による当初の計画は失敗した ⑭対話はロシアが過ちによる被害を減らす唯一の手段だ と豪語しており、こういうことを言っている限り、ロシアは後に引けず攻撃が続くだろう。そして、交渉が続いている間、生き地獄は続くのである。
 そのような中、*14-2-1のように、林外相が、4月1日の夜、現地ニーズや避難民受け入れの課題を把握して今後の支援に繋げるため、ポーランドに向けて羽田空港から政府専用機で出発され、帰国の際に受け入れを希望する避難民を政府専用機に同乗させるそうだが、そもそも日本には、3月2日~30日に337人のウクライナ避難民しか入国していない。また、政府は4月1日、UNHCRを通じてウクライナ避難民に毛布とビニールシート、スリーピングマットを配布することを決めたそうだが、いずれも一時的な避難を前提としており、長期滞在するための支援に欠けている。そのため、私は、*14-2-3の米ハーバード大のティーンエージャー2人が立ち上げた避難民に受け入れ先を紹介するサイト「ウクライナ・テイク・シェルター」は本当にクールだと思った。これは、ウクライナ政府も太鼓判を押すサイトで、避難民が所在地を入力すると世界中の受け入れ候補が表示され、受け入れ先・利用可能な部屋数・ペットの可否・使える言語・滞在可能期間が一覧で表示され、開設から約3週間で数千人以上が利用したそうだ。日本政府は、この「ウクライナ・テイク・シェルター」に表示された受け入れ先と日本国内の受け入れ先との条件を比較すれば、現地ニーズや避難民受け入れの課題を容易に把握できそうだ。
 *14-2-2は、⑮日本政府はウクライナ避難民の受け入れに積極姿勢を示し、支援に手を挙げる地方自治体も相次ぐ ⑯岸田首相は『ウクライナの人々との連帯を示し、人道的な観点から対応する』として避難民受け入れを表明した ⑰避難民らの入国時の在留資格は基本的に旅行者と同様の90日間の「短期滞在」の在留資格になった ⑱古川法相は3月15日、短期滞在から就労可能な1年間の「特定活動」への変更を認めると追加支援を発表し ⑲首都圏では神奈川や茨城が県営住宅、横浜が市営住宅を提供する方針を表明し ⑳人道支援の募金も始めた と記載しているが、いずれも「可哀想だから」という理由で一時的滞在を認めているにすぎず、難民になった人の生活や人生の再建を考えていない。
 また、*14-2-2は、㉑海外で紛争や弾圧がある度に、国や自治体が今回のウクライナ侵攻と同じ素早さと手厚さで対応しているわけではなく ㉒ミャンマー人の在留期間は6カ月が基本で就労時間に週28時間の上限が設けられる人もおり ㉓人道的配慮をアピールしても腹の底ではミャンマー人に疑いの目を向けるいやらしさが漂い ㉔日本には50万人超が国内避難民となり約5万人が隣国に逃げているクーデター後のミャンマー避難民を受け入れる特別な仕組みはなく ㉕緊急避難措置でも8割が難民認定されておらず ㉖差別的意識は変わっていないし、日本がトルコ出身のクルド人を難民認定した例はない とも記載している。つまり、ウクライナの避難民の受け入れは積極的な方で、ミャンマー人・クルド人等の難民については、受け入れる仕組みさえないが、本当は難民は多様な人材の宝庫でもある。そのため、このように差別と排除の論理を駆使している日本が世界のリーダーになれるわけがなく、(私にとっては残念ながら)そういう国が世界のリーダーになっては困ると言わざるを得ないのだ。


   2021.6.3、2021.8.29日経新聞        2021.6.17Goo

(図の説明:左図は、2019年の難民認定率で、日本は0.4%と極めて低く、少子高齢化で生産年齢人口の割合が減り、やるべき仕事もできずに産業が衰退しているにもかかわらず、人材鎖国している状態だ。また、中央の図は、アフガニスタンから退避支援した人数で、日本のために働いていたアフガニスタン人すら退避させるという発想がなかった。右図は、2019年のミャンマー出身者の難民認定数と認定率で、これも極めて低い)

*14-1-1:https://www.yomiuri.co.jp/world/20220330-OYT1T50261/ (読売新聞 2022/3/30) ウクライナ難民が400万人超える…UNHCRの最大想定人数、5週間で上回る
 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は30日、ロシアのウクライナ侵攻に伴い国外に逃れた難民が400万人を超えたと発表した。当初のUNHCRによる最大想定人数を約5週間で上回った。

*14-1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB191QM0Z10C22A3000000/ (日経新聞 2022年3月19日) 避難民1000万人迫る ウクライナ国民5人に1人、大統領、ロシアに和平協議促す
 ロシアが侵攻したウクライナで人道危機が深まっている。国連機関は18日、ウクライナ国内で避難生活をしている住民が推計650万人にのぼると発表した。国外への避難民とあわせると1000万人に迫る。総人口の5人に1人以上にあたり、さらに1200万人以上が攻撃で退避を阻まれているという。BBCは18日、南東部マリウポリを包囲していたロシア軍が中心部に入り、市街戦になっていると報じた。首都キエフ市は同日までに民間人60人を含む222人が死亡したと発表した。英国防省はロシアが戦略転換を迫られ「消耗戦」に移ったと分析する。ウクライナのゼレンスキー大統領は19日のビデオ声明で「対話はロシアが過ちによる被害を減らす唯一の手段だ」と述べ、即時の和平協議を促した。英BBCはトルコ高官の話として、ロシアのプーチン大統領がゼレンスキー氏との会談に意欲を示したと伝えた。停戦条件を巡る双方の主張は隔たり、攻撃による被害は拡大している。ゼレンスキー氏は「ロシア軍による当初の占領計画は失敗した」と述べた。いま対話を始めなければロシアの損失が膨らみ、数世代にわたり悪影響が及ぶと訴えた。同氏は侵攻前からプーチン氏に直接協議を求めていたが、ロシアは応じてこなかった。ロシアは駆け引きを続けている。BBCによると、プーチン氏は17日のトルコ大統領との電話協議で、侵攻を止める条件にウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟断念や中立化の確約、ロシアに脅威を与えない形での「非武装化」などを挙げた。直接会談での決着に前向きな構えも示したという。交渉の長期化も懸念される。ウクライナ政府高官は18日、和平協議は数週間以上かかる可能性があるとの見解を示した。米ブルームバーグ通信が報じた。ロシアの対話姿勢が時間稼ぎにすぎないとの見方もある。ロシア通信は19日、国営宇宙開発企業ロスコスモスのロゴジン総裁が「米国が全地球測位システム(GPS)からロシアを切り離すことを検討している」と述べたと報じた。ロシア独自の測位衛星「グロナス」があるため、問題は生じないと主張した。

*14-1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR01EWZ0R00C22A4000000/ (日経新聞 2022年4月2日) マリウポリに赤十字入れず 住民退避の支援難航
 ロシア軍が包囲するウクライナ南東部の港湾都市マリウポリで1日に計画された住民の退避で、支援に向かっていた赤十字国際委員会(ICRC)が同日の現地入りを断念した。2日に再度試みるとしたが、焦点の住民の脱出が難航しているもようだ。一方でウクライナのゼレンスキー大統領は1日、3000人強がマリウポリを脱出したと明らかにした。ICRCの支援チームは50台以上のバスを先導しマリウポリから市民を退避させる運びと伝えられていた。ICRCは1日「民間人の安全な退避促進のためマリウポリに向かったチームが、引き返さざるを得なくなった」との声明を出し、前進が「不可能」とした。これに先立ち、人道支援物資の搬入が拒否されたと報じられ、ロシア側の妨害との見方が出ていた。ロシアは一時停戦して住民を逃す「人道回廊」を1日に設けるとしていた。マリウポリ市内にはなお約17万人が残されているとの見方がある。ロシアは要衝マリウポリの掌握を目指しており、住民を退避させたとして近く総攻撃をかける恐れがある。米戦争研究所はマリウポリが数日以内に陥落すると分析している。市内では長引く包囲と無差別攻撃で、既に水や食料、医療品が欠乏し、人道危機が深刻になっている。一方、トルコのエルドアン大統領は1日、ロシアのプーチン大統領とウクライナ情勢を巡って電話で協議し、トルコでプーチン氏とゼレンスキー氏との首脳会談を開きたいとの意向を伝えた。両国の声明でプーチン氏の反応には言及がなく、前向きな回答はなかったとみられる。

*14-2-1:https://mainichi.jp/articles/20220401/k00/00m/030/237000c (毎日新聞 2022/4/1) 林外相ポーランドに出発 ウクライナ避難民、政府専用機同乗も調整
 林芳正外相は1日夜、ウクライナ避難民の受け入れ状況などを把握するため、ポーランドに向けて羽田空港から政府専用機で出発した。帰国の際、受け入れを希望する避難民を政府専用機に同乗させ、日本に渡航してもらう準備も進めている。日本には5日に戻る予定で、林氏は1日の記者会見で「現地のニーズや避難民受け入れの課題を把握し、今後の支援につなげていく」と述べた。政府は当初、古川禎久法相を首相特使として派遣する予定だったが、古川氏が新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者になったため林氏の派遣が決まった。中谷元・首相補佐官(人権問題担当)と津島淳副法お相も同行し、ポーランド政府要人との会談や避難民を支援する国際機関との意見交換、支援現場の視察などを実施する。松野博一官房長官は1日の記者会見で、3月2日から同30日までに337人のウクライナ避難民が日本に入国したと明らかにした。また、政府は1日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を通じてウクライナ避難民に毛布とビニールシート、スリーピングマットを配布することも決めた。UNHCRの要請を踏まえた措置。

*14-2-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/166673 (東京新聞 2022年3月20日) ウクライナとミャンマー、避難民受け入れ、なぜ差があるの? 入管、政治や経済に目配せ「同じように助けて」
 ロシアの侵攻を受けたウクライナからの避難民について、日本政府が受け入れに積極姿勢を示している。支援に手を挙げる地方自治体も相次ぐ。難民認定者数が極めて少なく、「冷たい」と言われてきた日本。人道主義に覚醒し、困窮する外国人に分け隔てなく門戸を広げる国に変身した? いや、ウクライナ以外の国への対応に目をやると、答えは「イエス」ではなさそうだ。
◆就労可能な1年間の「特定活動」認める
 ロシアのウクライナ侵攻から6日後の2日、岸田文雄首相は記者団に「ウクライナの人々との連帯を示す」と強調し、避難民の受け入れを表明した。1日5000人というコロナ禍対応の入国者数制限からも除外。「日本に親族や知人がいる人の受け入れを想定しているが、それにとどまらず人道的な観点から対応する」と語った。この方針のもと、出入国在留管理庁(入管庁)によると、2日以降15日までにウクライナの避難民57人が入国した。避難民らの入国時の在留資格は基本的に、旅行者と同様、90日間の「短期滞在」の在留資格になる。古川禎久法相は15日の記者会見で、短期滞在から就労可能な1年間の「特定活動」への変更を認めると、追加のサポートを発表した。国の動きを受け、全国の自治体が次々、協力姿勢を見せた。首都圏では神奈川や茨城が県営住宅、横浜が市営住宅を提供する方針を表した。水戸市は市長自ら庁舎にウクライナ国旗を掲揚。人道支援の募金も始めた。神奈川や横浜はウクライナの州や市と友好関係を持つが、同国と特段の縁がない自治体も名を連ねた。
◆ミャンマー人には制約も
 ただ、海外で紛争や弾圧がある度に、国や自治体が今回のウクライナ侵攻と同じ素早さと手厚さで対応しているわけではない。例えば、昨年2月1日に軍事クーデターが起きたミャンマー。政府は約4カ月たった5月末、母国の情勢不安のため日本に残りたい在日ミャンマー人に「特定活動」の在留資格を与える緊急避難措置を導入した。入管庁によると、今年2月末までに約4500件の申請があり、約4300件が措置の対象になった。表面上の数字は、ミャンマー人の滞在に寛容にも見えるが「1年間でフルタイムの就労可」のウクライナ人と比べ、制約が多い。まず、在留期間は、特例的に1年のケースもあるが、6カ月が基本だ。就労時間に週28時間の上限が設けられる人もいる。入管庁の担当者は「両国を比較して検討したわけではない」としつつも、ミャンマー人の中に、技能実習や留学の資格で入国後、就労制限なく長期滞在できる「難民」の認定を受けようとする人たちがいる点を制約の理由に挙げる。つまり、在留の根拠が微妙な人たちが、緊急措置に乗っかり、格段に条件のよい在留資格を得ないようにする対策というわけだ。人道的配慮をアピールしつつ、腹の底ではミャンマー人に疑いの目を向けるいやらしさが漂う。
◆ウクライナ支援は一種の「ブーム」か
 クーデター後、自治体レベルでミャンマー人支援の広がりはない。先述のウクライナ支援をする首都圏の自治体も、ミャンマー人向けの施策は講じていない。水戸市の担当者はウクライナ支援について「市長が音頭を取り、市を挙げて活動すべきだという方向性になった」と「トップダウン」をにおわせる。
確固たる人道上の信念に基づく支援というより、全体の流れに合わせた一種のブームなのではないか。
◆「ミャンマーの国民も苦しんでいる」
 ミャンマー現地の人権団体「政治犯支援協会」によると、クーデターから18日までに1700人近くが国軍に殺害された。国連難民高等弁務官事務所によると、1日現在で50万人超が国内避難民となり、約5万人が隣国に逃げている。国連人権理事会が設置した独立調査機関は2月1日、国軍の市民への弾圧が「人道に対する罪や戦争犯罪に相当する可能性がある」とする声明を発表した。隣国に侵攻されたウクライナと違いはあるが、深刻な人権侵害が起きている。だが、クーデター後の避難民を受け入れる特別な仕組みは日本にない。「ミャンマーの国民も苦しんでいる。ウクライナの人と同じように受け入れてほしい」。関東地方の40代のミャンマー人女性は、切実な胸中を吐露する。ミャンマーには高齢の親を含む家族がいる。家族はクーデターへの抗議活動に加わったため、転居しながら、国軍の弾圧を避けている。安全な日本に来たがっているが、在留資格を得られないため、叶わない。女性は在日ミャンマー人の仲間と日本で抗議活動をしている。「自分の活動で母国の家族が逮捕や拷問をされないか、私たちはぎりぎりの思いで闘っている」。緊急避難措置では、在日ミャンマー人の難民認定申請者について、迅速に審査し、難民と認められなくても、特定活動の在留資格を与えるとの規定もある。
◆「緊急避難措置」でも8割が難民認定されず
 入管庁によるとクーデター後、11月末までにミャンマー人16人が難民認定された。だが、措置導入後約10カ月たっても、中ぶらりんの人が多くいる。「緊急とは名ばかりで、遅々としている」。全国難民弁護団連絡会議代表の渡辺彰悟弁護士は批判する。渡辺氏が関わるミャンマー人の難民認定申請者165人のうち、約8割の129人に結論が出ていない。結果が出た36人も、難民認定は1家族5人のみ。残りは特定活動だった。結論が出ていない東京都内の女性(38)は14年間にわたり、入管施設収容を一時的に免れる「仮放免」の扱いだ。就労はできず、生活費は友人らに頼る。女性は国軍との内戦が続く少数民族カチン人。2006年以降、4回の難民認定申請をしている。認定を求めて提訴し、20年に地裁で勝ったが、高裁で覆り、不安定な立場のままだ。「緊急避難措置で在留資格を得られると思ったが、入管から連絡がなく、がっかりする毎日」と漏らす。
◆背景に入管の政治的思惑が
 渡辺氏は「入管が政治や経済に目を向けている」と根本的な問題を指摘する。冷戦時代の仮想敵で、北方領土を争うロシアに対しては、日本はウクライナ人保護を含め、欧米と共同歩調で対峙しやすい。一方、ミャンマーには日本は累計117億ドル(約1兆4000億円)の政府開発援助(ODA)を支出。11年の民政移管後は「アジア最後のフロンティア」と官民こぞって進出を図った。関係が悪化し、権益をライバル中国に譲りたくないという思惑が政財界にある。さらに日本はクーデター後、ミャンマーには、対ロシアのような制裁を科していない。軍政にも配慮する姿勢がミャンマー人の処遇に跳ね返るという構図だ。1990年代まで使われた入管職員の教材には、非友好国と比べ、友好国出身者の難民認定は、相手国との関係から慎重になり得るとの記述があった。差別的な意識は「変わっていない」と渡辺氏は厳しくみる。実際、日本国内の難民支援団体によると、日本が「友好国」のトルコ出身のクルド人を難民認定した例はない。2020年の認定総数は47人。年1万人以上の欧米の国々と格段の開きがある。助けを求める人々に対して、格差のある扱い。渡辺氏は「ミャンマーやウクライナの問題を機に見直すべきだ」と訴える。

*14-2-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/167926 (日経新聞 2022年3月26日) ウクライナ避難民の懸け橋に 世界中の受け入れ先検索サイトを米名門大生2人が開設
 ロシアによるウクライナ侵攻を受け、避難民に受け入れ先を紹介するサイト「ウクライナ・テイク・シェルター」が話題を呼んでいる。避難民が所在地を入力するだけで世界中の受け入れ候補が表示され、開設から約3週間で数千人以上が利用している。ウクライナ政府も太鼓判を押すサイトを立ち上げたのは、米ハーバード大のティーンエージャー2人だ。「ウクライナ・テイク・シェルター」で、東京都で検索した画面。受け入れ先と、利用可能な部屋数やペットの可否、使える言語や滞在可能期間が一覧で表示される。「ウクライナ・テイク・シェルター」で、東京都で検索した画面。受け入れ先と、利用可能な部屋数やペットの可否、使える言語や滞在可能期間が一覧で表示される。
◆所在地入力すれば近くの受け入れ先がずらり
 「サイトに登録したら、数分後に避難民から連絡が来た」—。サイトをつくった米南部フロリダ州のアビ・シフマンさん(19)のもとには1日に何通も連絡が入る。17歳で新型コロナウイルスの感染状況を分析する世界的に有名なサイト「nCoV2019.live」を立ち上げ、米医療顧問トップのファウチ国立アレルギー感染症研究所長から表彰された経歴を持つ。シフマンさんは2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻に「初めて戦争というものを見て、正気の沙汰とは思えなかった」と、4日後にロシアへの抗議集会に参加。「公園で声を上げるのも大事だけど、自分にはもっと多くの人に役立つグローバルなものをつくることができるはずだ」と感じたという。デモ参加当日に「難民と近隣諸国の受け入れ先を結び付けるサイトを立ち上げたら、クールだろうな」とツイッターに書き込み、大学の友人マルコ・バースタインさん(19)に声をかけて3月3日にサイトを開設した。所在地さえ入力すれば近くの受け入れ先がずらりと並び、使える言語や部屋数など必要情報を一覧してすぐに申し込める。サイトは現在16カ国語に対応しており、極限状態にある避難民のことを考え操作を簡単にした。
◆3週間で数千人を受け入れ 今後は求人情報も
 利用した避難民の数は把握できないが、埋まった受け入れ先の数から「少なくとも数千人」と推測する。避難民の受け入れもこれまで2万5000人が手を挙げており、「近いうちに数10万人になるだろう」。日本からも「片言の英語だけど」「ロシア語を話せる」と支援を申し出る人が後を絶たないという。ウクライナ政府もシフマンさんのツイッターに「重要な仕事をありがとう」と書き込んだほか、メンデル大統領報道官が15日に「若い2人がサイトを立ち上げた」と紹介。シフマンさんは「今後は難民向けの求人情報も載せるとか、シリアやアフガニスタンなど世界中の難民も使えるようにするとか、いろいろ考えていきたい」と、サイトを進化させ続ける考えだ。

| 外交・防衛::2019.9~ | 12:00 AM | comments (x) | trackback (x) |
2020.1.23 現在の日米同盟の必要性・コスト・リスクと今後に向けての再検討 (2020年1月24、25、27、28、29、30、31日、2月1、2、5、7、8、11、12、13、15、16、19、23日追加)
  

(図の説明:左図のように、米軍基地は関東と沖縄に集中しており、中央と右図のように、沖縄は約2億3千万m₂と日本全体の約74%を占める。これは、太平洋戦争後の状況に応じて設置されたもので、現在の自衛ニーズに合わせた配置ではない。また、首都圏に6箇所もの広大な基地があるのは土地の無駄使いである上、合目的的でもなく、沖縄は全体が基地の島になっているのに尖閣諸島の領海に中国船が頻繁に入っているのは、自衛のニーズに合っていない証拠である)

(1)日米同盟の必要性
1)日米リーダーの認識
 2020年1月19日で日米安全保障条約改定から60年となるのに合わせ、米国のトランプ大統領は、*1-3のように、「①60年間の強固な同盟関係は、米国、日本、インド太平洋地域、そして世界平和、安全、繁栄に不可欠だった」「②安全保障環境が変わって新たな課題が出てくる中、同盟をさらに強化・深化させることが不可欠で、日本の貢献が増すことを求める」という声明を発表し、米国国務省のオータガス報道官も、2020年1月17日、「③負担は公平でなければならない」とした。

 日本の安倍首相は、2020年1月19日、日米安全保障条約署名60周年を記念する式典で、*1-4のように、「④日米安保条約は、アジアとインド太平洋、世界の平和を守り、繁栄を保証する不動の柱だ」「⑤60年・100年先まで日米同盟を守って強くしていこう」と呼びかけた。

 私は、日本のみでは自衛することも不可能で、人権や世界情勢に疎い日本政府のみの判断で猛進されるとむしろ危険であるため、日米同盟は必要だが、それには、以下に述べる多くの問題点を解決することが必要だと考える。

2)問題点
 信濃毎日新聞は、*1-1のように、「①日米安全保障条約は、朝鮮戦争中の1951年に締結され、米軍の日本駐留がサンフランシスコ講和条約を結ぶ上での条件だった」「②1960年1月19日に改定され、米国の日本防衛義務が5条に盛られると同時に、日本に防衛力の維持・発展を義務付け、在日米軍を守る義務も課した」「③60年経過したので、そろそろ外交の基軸を築き直せ」と記載している。

 1991年にイラクがクウェート侵攻した時は、日本は、平和憲法のおかげでExcuseできて自衛隊を派遣せずにすんだが、130億ドル(約1兆3千億円)の資金拠出をしても、今一つ感謝されなかった。その後、日本は、海賊から自国の船を護るためと言いつつ自衛隊を海外派遣するようになったが、集団的自衛権は認めていないというExcuseにより、米国と一緒に戦争に参加することはなかった。

 しかし、2000年代になって米中枢同時テロ後、日本は、テロとの戦いを宣言した米国を支持してテロ対策特別措置法を成立させ、海上自衛隊をインド洋での給油活動に従事させた。また、国連決議のないイラク戦争でも、日本はイラク復興支援特措法を設けて、サマワに陸上自衛隊を駐屯させた。集団的自衛権も自衛権のうちだが、それを認めた現在では、米軍の活動に対する自衛隊支援の地理的制約が機能しにくくなった。

 このような中、日本は、米国から兵器を大量購入し、米軍との連携領域を宇宙やサイバーへと広げ、唯一の被爆国でありながら核兵器禁止条約に参加できず、防衛費や在日米軍経費を膨らませ、日米地位協定の改定もせずに、内政面でも不利な日米貿易協定を呑んだ。

 また、北海道新聞が、*1-2に記載しているように、戦後の日本は、冷戦の中で米国と経済・安保の両面で協調することによって発展を遂げたが、国際情勢は冷戦期から大きく変わり、米国はトランプ政権の下で「世界の警察官」の立場から降りようとしている。また、米軍との連携を目的にした自衛隊の中東派遣は、海外での武力行使を禁じた日本国憲法に違反しており、行き過ぎた対米追従は平和憲法という宝を失う行為となる。

 そのため、「外交・防衛は、親分の米国を頼って日米安保のみ」という構図は考え直し、米国とは密に連携しながらも多国間協調や平和を大切にする独立した大人の外交が、今後の日本には求められる。

(2)日米同盟の具体的なコストと効果
1)膨張する防衛費は、専守防衛に適合したものか?
 政府は、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍拡など安全保障環境の厳しさを強調し、防衛費を拡大させ、*2-2・*2-3のように、トランプ米大統領の求めに応じて対外有償軍事援助(FMS)として米国製の高額な最新鋭兵器を買っているが、日本の厳しい財政事情の下、その目的と費用対効果は厳しく吟味すべきだ。

 つまり、2020年度の当初予算案で、防衛費は5兆3133億円で、文教・科学振興費の5兆5055億円に匹敵し、公共事業費の6兆8571億円に近づく規模だからで、「防衛費のために社会保障費を削る」というのは、国民生活を直撃することによって個人の命をないがしろにしており、それこそ「国民の命を護る」という理念から外れる。

 私は、外交や防衛の専門家ではないが、会計・税務・財務の専門家として、31億円もかけて護衛艦を空母に改修するのは、艦の安全性を害さないのか、ミサイル時代に意味があるのか、について疑問に思う。また、そこで運用される米国製の最新鋭ステルス戦闘機F35Bも6機で793億円もし、陸上配備型迎撃ミサイルシステムは、(配備先がまだ決まっていないのに)米国からの発射装置の取得等に129億円を投じ、最終的には東西2基で5千億円を超える巨額だそうで、他にもあるだろうから、これこそ合計額とその明細を明らかにすべきである。

 そして、昨年末に改定された「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」は、「陸海空のみならず宇宙・サイバー空間などの新たな領域への対応」を掲げており、これらは日本の専守防衛の方針に合致しているのか疑問であるため、国会の予算審議では導入の必要性や是非から議論してもらいたく、これらの議論は、刑事事件にならない「桜を見る会」やちゃちな公選法違反の追及よりも、文字通り桁違いに重要なのである。

 ただ、トランプ米大統領の強い要請から、安倍首相が米国への政治的配慮をせざるを得ない事情はわかる。それは、親分である米国を頼って好き勝手なことをしながら、日本国内のメディアがトランプ大統領をコケにする報道をしたり、交渉の担い手である安倍首相の続投を危うくさせたりしているからで、これではトランプ大統領には、とりわけ高い報酬をもらわなければ、安倍首相と交渉して日米同盟を続けるメリットはないわけである。

 つまり、日本メディアの問題点は、官僚が政策のKeyを握っており、(それを知っているにもかかわらず)責任だけを政治家にかぶせ、本当はあまり力のない政治家を批判して権力と闘っているポーズをとっていることで、この形だけの民主主義は本物の民主主義国では通用しないということなのである。

2)辺野古新基地と馬毛島・グアム移転の並立は不要な筈である
 沖縄県名護市辺野古の新基地建設は、日本を護るための費用対効果が低すぎるため、日米同盟の維持に不可欠というよりも、公共事業者への利益誘導に変質してしまったようだ。

 具体的には、*2-4-1・*2-4-2のように、米軍普天間飛行場の移設は、辺野古に軟弱地盤が存在するため、地盤改良5年、埋め立て5年、施設整備3年を要し、合計13年以上かかり、総工費は最大2兆6500億円まで膨らむそうだ。政府の試算は確かに杜撰であるため、費用対効果からみた辺野古新基地建設の必要性を早急に再検討すべきだ。

 また、埋め立て予定海域への外部の土砂の投入も生態系を破壊しており、*2-4-3のように、鹿児島県の馬毛島に基地のうち日本の防衛に必要な部分を移転すれば、埋め立てや自然破壊は不要である。にもかかわらず、政府が前のめりに突き進んでいるのは、米政権の意向より、政府の対面や公共事業の既得権益の影響の方が大きいのではないだろうか。

 さらに、日本の防衛に不必要な部分は、*2-4-4のように、グアムに移転すればよく、米軍は2024年10月から約5千人の海兵隊員が移転を始め、約一年半かけて完了させる方針だそうで、米国もまた安全保障環境の変化に応じて柔軟に対応すればよいのである。

 そして、2012年に日米両政府が修正合意した米軍再編計画では、在沖縄海兵隊約1万9千人のうち約9千人をグアムやハワイなどへ移転させることや、米軍普天間飛行場の辺野古移設が盛り込まれたそうだが、石垣島や宮古島に自衛隊基地ができ、自衛隊と米軍の運用の一体化がいっそう進む以上、もっと多くの海兵隊員をグアムやハワイ、場合によっては台湾やその他の地域に移転させることが可能であろう。

3)「思いやり予算」について
 第二次世界大戦終結から75年、冷戦終結から30年が経過して、安全保障環境が変化した結果、米国は、*2-5のように、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を約20億ドルから約80億ドル(80億ドルX109円/ドル=8720億円)に増額することを要求している。

 これは、米国にとって日本に置く基地の必要性が下がったということであるため、米軍は世界規模でやるべきことが他に山ほどあることにも鑑み、トランプ大統領に米軍駐留経費負担を現在の4倍以上に増額することを求められたのをよい機会として、日本の自衛のために役立っている米軍基地だけを残して日本にある米軍基地を1/4以下に減らし、駐留経費を現状維持するか、それ以下に下げるのが日本にとっても都合がよいと考える。

4)日米安保条約60年の平和主義を前提とした効果的な再構築は?
 熊本日日新聞も、*2-1のように、「①日米安全保障条約は2020年1月19日で60年を迎えた」「②戦後の復興と繁栄を支える土台となった安保体制の重要性は今後も変わらない」「③日本では、米国の戦争に巻き込まれるリスクへの懸念が根強く、過度な一体化を危ぶむ声もある」「④日本は憲法が掲げる平和主義を前提に、米国との関係をどうつくるのかを再検討する時期に来ている」「⑤在日米軍人らの特権を認めた日米地位協定も抜本的な見直しが急務だ」としており、そのとおりだと思う。

(3)中東への自衛隊派遣について
 政府は、*3-1・*3-4のように、トランプ大統領の要請に応じ、自衛隊を中東に独自派遣する方針となったが、徳島新聞が記載しているとおり、この局面での日本のトランプ大統領への追従は高リスクだと私も思う。

 このように、民主主義国である米国の行動に問題がある中で、中国との関係修復を進めているが、中国は国内の民主化が課題の国であり、日本は、日本国憲法に基づいた独立的な距離感を持つことが求められる。

 なお、*3-2・*3-3のように、ホルムズ海峡周辺への自衛隊派遣は、自衛隊法に基づいておらず、自衛隊の海外派遣を日常化させたい日本政府が米国からの有志連合への参加呼びかけを「渡りに船」で選択したものだと言われており、安保法制の下で日本が紛争に巻き込まれたり、日本が武力行使を行うことになる恐れがある。そのため、外国での武力による威嚇や武力行使を禁止する日本国憲法9条に反すると思う。

・・参考資料・・
<日米同盟の必要性>
*1-1:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200119/KT200118ETI090005000.php (信濃毎日新聞 2020.1.19) 日米安保60年 「外交の基軸」を築き直せ
 1991年秋、米国の大学に留学中の筆者は、教室で学生からの“総口撃”にさらされた。イラクのクウェート侵攻を受けた湾岸戦争から半年余り。「なぜ日本は自衛隊を派遣しなかったのか」「カネでは協力にならない」「そんな同盟国は要らない」。日本が対米傾斜を深め、自衛隊の海外派遣に道を開いた戦争だったことは後で知った。いまなら米国の学生たちに、どんな意見を返すだろう。
<湾岸戦争を契機に>
 日米安全保障条約は朝鮮戦争さなかの1951年に結ばれた。日本が防衛手段を持つまでの「暫定措置」とされたものの、米軍の日本駐留は、サンフランシスコ講和条約を結ぶ上での条件だった。米国がこの権益を手放すことはなく、60年前のきょう、新日米安保条約に改定されている。旧条約で曖昧だった米国の日本防衛義務が5条に盛られた。日本に防衛力の維持・発展を義務付け、在日米軍を守る義務も課した点は見落とせない。米国が防衛力増強と負担分担を、日本に繰り返し迫る根拠となった。条文は在日米軍の活動範囲を日本と極東に限っている。が、ベトナム戦争や70年代からの中東危機で、この制約は当初からないがしろにされてきた。安保体制が大きく変容し始めたのは冷戦が終わってからだ。湾岸戦争を前に、米国は日本に人的貢献を求めた。海部俊樹政権は「平和憲法がある」とし、130億ドル(約1兆3千億円)の資金拠出で応えている。この対応は「小切手外交だ」との猛烈な批判を招く。米国に見限られる―。日本の外務・防衛当局に不安が広がったという。海部政権は結局、初の自衛隊海外派遣に踏み切り、戦後のペルシャ湾で機雷掃海に当たらせた。冷戦終結で薄れつつあった安保の意義は、極東条項を離れ「アジア太平洋地域の安定と繁栄の基礎」に再定義される。「湾岸のトラウマ」と呼ばれた政府の経験は、世紀が変わって間もなく起きた米中枢同時テロ後の反応となって表れる。テロとの戦いを宣言した米大統領を小泉純一郎首相はいち早く支持し、おざなりな国会審議でテロ対策特別措置法を成立させる。海上自衛隊はインド洋での給油活動に従事した。国連決議のないイラク戦争も日本は認めた。イラク復興支援特措法を設け、陸上自衛隊は安全とは言えないサマワに駐屯する。安保の定義は「世界課題への対処」へとさらに範囲を広げている。
<際限なき軍拡より>
 違憲性も安保条約の枠も顧みず、米国の世界戦略に追随する路線を安倍晋三政権も踏襲する。憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認。在日米軍の活動範囲と自衛隊による後方支援の地理的制約を取り払った。台頭する中国へのけん制を意図し、専守防衛から懸け離れた兵器を大量に購入、米軍との連携領域を宇宙やサイバーへと広げつつある。安倍政権は日米同盟を「外交の基軸」に据える。国際社会への協力と対米協力が同義となった日本の外交と政策は主体性を失っている。トランプ米政権がパリ協定から離脱しても意見できない。唯一の被爆国でありながら、イラン核合意や中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄も止められず、米国の反発を恐れて核兵器禁止条約への参加に二の足を踏む。内政面でも、不利な日米貿易協定をのまざるを得なかった。防衛費や在日米軍経費は膨らみ、基地を抱える地域の危険除去に欠かせない日米地位協定の抜本的な改定すら言い出せずにいる。あのころの米国の学生たちに、こう伝えてみたい。「小切手外交」も無意味ではなかった。東日本大震災の際、クウェートでは「私たちが支援する番だ」との声が上がり、多額の義援金が寄せられた。たくさんの原油を無償提供してくれた。戦後の経済支援は東南アジアで日本への信頼を培った。日本が本気になって多国間協調による地域の平和構築を提唱すれば、戦禍を被ったアジアの国々が背を向けるとは思えない、と。そのためには、凝り固まった外交=安保の構図を解きほぐす必要がある。アジアや国際社会の安定に向けた日本の役割を整理する。安保の適用範囲を極東に戻して米国の世界戦略と一線を画し、自律した外交構想に組み入れたい。不安定な世界情勢で安保体制の見直しは現実的でない―。そんな声が聞かれる。際限のない軍拡競争は対立の大本を正しはしない。条約を逸脱した日米安保の現状こそが、北東アジアの秩序を揺さぶっている現実に、もっと目を向けなくてはならない。

*1-2:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/384535 (北海道新聞 2020.1.19) 日米安保60年 追従ばかりでは危うい
現行の日米安全保障条約の署名から、きょうで60年を迎えた。戦後日本は米国と経済、安保両面で協調することによって発展を遂げてきた。だがいま、安保協力の中身と、取り巻く国際情勢は、冷戦期から大きく変質している。その一つは、安倍晋三政権が自衛隊と米軍の一体化を加速させていることだ。今月には米軍との連携を事実上の目的にした自衛隊の中東派遣に、国会の熟議もなく踏み切った。憲法は海外での武力行使を禁じている。専守防衛を逸脱しかねない行き過ぎた対米追従は危うい。米国はトランプ政権の下で自国第一主義に走っている。「世界の警察官」の立場から降りようとし、同盟国には見返りを求めている。安保条約の趣旨は、日本が米国の言いなりになることではない。中国が軍事面でも台頭し、テロも多極化する中、日本が平和国家の道をどう歩み続けるのか。対米連携とともに、多国間の協調に軸足を置いた外交・安保に力を注ぐのが取るべき道だろう。今年直面するのが米軍駐留経費を巡る特別協定の改定交渉だ。トランプ政権が11月の大統領選を見据え、日本に一層の負担増を求めてくることは間違いない。本来は米側が支払うべき人件費などについて、日本側が負担する「思いやり予算」は本年度、1974億円に上る。日本の負担割合は同盟国の中で突出して高く、すでに8割を超えているとされる。にもかかわらず、米側は昨年夏、瀬踏みをするかのように現行の5倍の負担を求めてきたという。論外である。米軍は中国や北朝鮮、ロシアなどの脅威を見据え、在日米軍基地をアジア・太平洋地域の戦略拠点としている。こうした米側の利益を踏まえ、一方的な主張に対しては明確に反論すべきだ。日米安保によって、沖縄には国内の米軍専用施設の7割が集中する。戦後はまだ終わっていない。県民が反対する中、安倍政権が工事を強行する、米軍普天間飛行場の辺野古移設がその象徴だ。米海兵隊の輸送機オスプレイの訓練が今週から道内で実施される。沖縄の負担軽減を名目に、日本全体にその負担がじわじわ広がっていることも見過ごせない。米軍の特権的な法的地位を定めた日米地位協定は一度も改定されていない。米国に追従する前に安倍政権がなすべき懸案は山積している。

*1-3:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200119/k10012250921000.html (NHK 2020年1月19日) 日米安保60年 トランプ大統領が同盟の意義を強調
 日米安全保障条約の改定から19日で60年となるのに合わせ、アメリカのトランプ大統領は「60年にわたり両国の強固な同盟関係は世界の平和、安全、繁栄に不可欠なものだった」などとする声明を発表しました。1960年に改定された今の日米安全保障条約は、19日で署名から60年となります。これに合わせ、アメリカのトランプ大統領は18日、声明を発表しました。この中でトランプ大統領は、「過去60年にわたり、両国の強固な同盟関係はアメリカ、日本、インド太平洋地域、そして世界の平和、安全、繁栄に不可欠なものだった」と同盟の意義を強調しています。そのうえで、「安全保障をめぐる環境の変化が続き、新たな課題が生じる中で、日米同盟を一層強化し深めることが不可欠だ。今後、相互の安全保障への日本の貢献がさらに増し、同盟関係が引き続き発展していくと確信している」として、日本のさらなる貢献に期待を示しました。日米同盟をめぐっては、アメリカ国務省のオータガス報道官が17日、NHKとの単独インタビューで、「負担は公平でなければならない」と述べるなど、トランプ政権はことし夏にも本格化する見通しの日本とのアメリカ軍の駐留経費をめぐる交渉で、日本に対しさらなる負担を求めていく姿勢を示しています。

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200120&ng=DGKKZO54579580Z10C20A1MM8000 (日経新聞 2020.1.20) 首相、日米安保条約は「不動の柱」 署名60年記念式典で
 安倍晋三首相は19日、現行の日米安全保障条約署名60周年を記念する式典に出席した。日米安保条約に関し「今やいつの時代にもまして不滅の柱。アジアとインド太平洋、世界の平和を守り、繁栄を保証する不動の柱だ」と述べた。「60年、100年先まで日米同盟を堅牢(けんろう)に守り、強くしていこう」とも呼びかけた。首相は「宇宙、サイバースペースの安全や平和を守る柱として、同盟を充実させる責任がある」と強調し、新たな課題に対処するため同盟関係の拡充をめざす考えを示した。日米同盟を「希望の同盟」と表現し「歩むべき道はただ一筋。その希望の光をもっと輝かせることだ」と語った。トランプ米大統領は記念式典に先立ち、18日に声明を発表し「安全保障環境が変わり新たな課題が出てくるのに伴い、同盟をさらに強化し深化させることが不可欠だ」と訴えた。「日本の貢献の拡大と同盟の発展が続くことを確信している」との期待感も示した。19日に都内で開いた記念式典には日本側から麻生太郎副総理・財務相や茂木敏充外相、河野太郎防衛相らが出席した。米側からはヤング駐日臨時代理大使やシュナイダー在日米軍司令官らのほか、条約署名時に大統領だったアイゼンハワー氏の孫らも参加した。現行の安保条約は1960年1月19日に、首相の祖父である当時の岸信介首相とアイゼンハワー氏のもとで結んだ。岸氏とハーター国務長官らが署名し、51年に結ばれた旧条約を全面改定した。首相は記念式典で「岸は日本の首相として米大統領とゴルフをした最初の人物だった。2番目は私だ。アイゼンハワーと岸が培った友情は新しい安保条約となって実を結んだ」と振り返った。

<日米同盟の費用対効果>
*2-1:https://kumanichi.com/column/syasetsu/1329075/ (熊本日日新聞 2020年1月21日) 日米安保条約60年 平和主義前提に再構築を
 日本と米国の相互協力をうたった現行の日米安全保障条約は、19日で署名から60年を迎えた。米国に日本防衛の義務を課す一方、米軍に基地を提供する条約は、日本の外交・安全保障政策の基軸と位置付けられてきた。戦後の復興と繁栄を支える土台となった安保体制の重要性は、新しい時代においても変わらないだろう。しかし「米国第一主義」を掲げるトランプ米大統領は、批判の矛先を日米安保にも向ける。さらに中国の台頭や北朝鮮の核危機など国際情勢は不安定さを増している。こうした中で日本は、憲法が掲げる平和主義を前提に米国との関係をどうつくるのか、再検討する時期に来ている。冷戦後の日米安保体制は、1996年の安保共同宣言が転機となった。湾岸戦争や朝鮮半島危機を経て、同盟の目的を「アジア太平洋地域の安定的繁栄」と再定義。翌97年に自衛隊と米軍の役割を定めた日米防衛協力指針(ガイドライン)を改定し、自衛隊と米軍の運用の一体化がいっそう進んだ。さらに、2015年に安倍晋三政権下で成立した安全保障関連法は、集団的自衛権の行使を解禁し、地理的な制約なく米軍の後方支援を可能とした。日本では、米国の戦争に巻き込まれるリスクへの懸念は根強く、過度な一体化を危ぶむ声もある。こうした対米追随の進行にもかかわらず、日米同盟は盤石とは言えない。トランプ氏は、防衛義務と基地提供という「非対称」の負担を、「不公平だ」と主張する。改定交渉が本格化する在日米軍駐留経費は、負担増が求められるに違いない。米政権が迫る巨額の米国製の防衛装備品の調達により、防衛予算は膨らみ続けている。安保条約と同時に署名され、在日米軍人らの特権を認めた日米地位協定も、抜本的な見直しが急務だ。沖縄をはじめ各地で住民の暮らしが脅かされる状況が続く限り、国民の信頼は得られない。内向き志向を強める米国は、国際社会での影響力低下は避けられないだろう。日本は日米安保体制を基軸としながら、中国との互恵関係や、対北朝鮮での韓国との連携など多角的な外交を展開し、これからの時代に合った安全保障の枠組みを築いていく必要がある。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14303890.html (朝日新聞社説 2019年12月23日) 膨らむ防衛費 ゆがみを生む対米配慮
 トランプ米大統領の求めに呼応するかのように、米国製の高額な最新鋭兵器を買いまくることが、防衛予算のあり方をゆがめはしないか。厳しい財政事情の下、その費用対効果が厳しく吟味されなければならない。
安倍政権が決めた2020年度の当初予算案で、防衛費が今年度当初に比べ、1・1%増の5兆3133億円となり、6年連続で過去最大を更新した。文教・科学振興費(5兆5055億円)に匹敵し、公共事業費(6兆8571億円)に近づく規模である。社会保障費の自然増などで財政の硬直化が進むなか、防衛予算を聖域化することなく、国民生活全体に目配りした配分が必要だ。専守防衛からの逸脱だとして、朝日新聞の社説が一貫して反対してきた護衛艦の空母への改修に31億円が計上された。そこで運用される米国製の最新鋭ステルス戦闘機F35Bは、まず6機を793億円で購入する。陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」には、配備先がまだ決まっていないというのに、米国からの発射装置の取得などに129億円を投じる。最終的には東西2基で5千億円を超える巨額の事業である。国会の予算審議では、導入の是非から議論するよう、改めて強く求める。安倍首相は1月の施政方針演説で、安全保障環境の激変に対応した防衛力の構築に向け、「従来とは抜本的に異なる速度で変革を推し進める」と語った。その帰結が米国製兵器の大量購入だとすれば、トランプ氏への政治的配慮が優先され、妥当性の分析がおろそかになっていると言わざるを得ない。安倍政権下ではすでに、米政府から直接兵器を買う有償軍事援助(FMS)が急増している。11年度の432億円が、19年度は7013億円に。20年度も4713億円と高い水準だ。高額な兵器は複数年の分割払いとなるため、「後年度負担」が将来の予算を圧迫する。20年度の契約に基づき、21年度以降に支払われる額は2兆5633億円にのぼり、訓練など本来必要な予算にしわ寄せが及ぶことが懸念される。昨年末に改定された「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」は、陸海空にとどまらず、宇宙やサイバー空間といった新たな領域への対応を掲げた。ただ、今回の予算案全体を見渡しても、さまざまな課題への優先順位は明確でない。徹底した取捨選択を進め、効率的な防衛力のあり方を主体的に考え抜かねばならない。近隣外交による緊張緩和を地道に進めながら、日本の安全保障を確かなものとすべきだ。

*2-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/570817/ (西日本新聞社説 2019/12/24) 膨張する防衛費 「専守」から逸脱しないか
 その規模の膨張だけでなく、中身の変質にも重大な懸念を抱かされる。2020年度政府予算案の防衛関係費のことだ。過去最高の5兆3133億円が計上された。第2次安倍晋三政権発足後、8年連続の増額となる。政府は、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍拡など安全保障環境の厳しさを強調し、防衛費を拡大させる一方だ。総額を押し上げた要因に、米政府から直接、兵器を購入する対外有償軍事援助(FMS)がある。20年度も4713億円と安倍政権下で実に4倍に増えた。トランプ米大統領からの強い要請に応じたのではないか。地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」関連費も計上したが、まだ配備先も確定していない状況である。その必要性について十分に吟味したのか甚だ疑問だ。ここでも米国への政治的配慮が目立つ。さらに政策の変質もうかがえる。戦後日本が安全保障の基本原則としてきた「専守防衛」から、自衛隊が逸脱してしまうのではないかと疑念を生じさせる内容が含まれている。専守防衛とは、他国から攻撃されて初めて、自衛のため最小限度の防衛力を行使する-憲法9条に基づく考え方である。自衛隊は「盾」の役割に徹するため、攻撃型空母や戦略爆撃機は保有できないというのが、長年の政府見解だった。そこから変質した象徴が「いずも」型護衛艦の「空母化」改修費だ。米国から初めて取得する最新鋭ステルス戦闘機F35Bの搭載を想定し、離着陸できる甲板に改修する。遠洋でも運用可能にする計画である。今年の防衛白書では、戦闘機搭載は「必要な場合」に限り「多機能な護衛艦に変わりない」と記した。だが実態は専守防衛とは相いれない「敵基地攻撃能力」に該当するのではないか。政府は、戦闘機に搭載し、敵の射程圏外から反撃できる長距離巡航ミサイル「JSM」も導入する方針だ。護衛艦の空母化とともに、従来の政府見解との整合性を国内外に分かりやすく説明すべきだろう。自衛隊と米軍の一体化が進む中、自衛隊の運用面で専守防衛が有名無実化する恐れは否定できない。安倍政権は集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法制定をはじめ、専守防衛を空洞化させる動きを進めてきた。国民の理解を得ないまま既成事実を積み重ね、安保政策の基本をゆがめることは許されない。予算案には宇宙やサイバー、電磁波など新領域に備える組織の関連費用も盛られた。専守防衛を課された自衛隊がどこまで対応するのか。年明けの国会審議で徹底した議論を求めたい。

*2-4-1:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1047123.html (琉球新報社説 2019年12月24日) 辺野古埋め立て 血税の浪費直ちにやめよ
 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、埋め立てに10年程度を要すると政府が見積もっていることが分かった。軟弱地盤が存在するためだ。順調に進んだとしても、普天間飛行場の返還は2030年代になる。辺野古移設が普天間の早期の危険性除去につながらないことは明らかだ。沖縄の民意に反するばかりか、貴重な自然を破壊し、血税の浪費につながる新基地建設は即刻中止すべきだ。県は昨年の時点で、地盤改良に5年、埋め立てに5年、施設整備に3年を要し、合わせて13年以上かかると指摘していた。大幅に長期化するという見通しの正しさが裏付けられた格好だ。県の試算によると、総工費は最大2兆6500億円まで膨らむ。投入される国費が莫大(ばくだい)な金額になるのは間違いない。だが政府は、埋め立て工事に要する総事業費を「少なくとも3500億円以上」としか説明していない。いつ完成するのか、費用はいくらかかるのか、といった肝心の部分を置き去りにしたまま、見切り発車で工事を始めたからだ。政府のやり方は泥縄式であり、ずさんの極みと言うほかない。日米両政府が13年に合意した現行の基地返還計画は、埋め立てに5年、施設整備に3年を見込み、普天間飛行場の返還は「22年度またはその後」とされた。工事は当初計画よりも大幅に遅れ、埋め立て工事の進捗(しんちょく)率は県の推計で全体の1%にとどまっている。埋め立てに「10年程度」かかるというが、実際はさらに長引く可能性もある。大浦湾側に軟弱地盤が存在することは昨年3月、市民が情報開示請求で入手した沖縄防衛局の地質調査報告書によって公になった。防衛省は把握していたが、認めたのは今年1月だ。都合の悪い情報を隠してきたのである。地盤の改良が必要な海域は73ヘクタールにも及ぶ。深いところでは海面から約90メートルに達している。砂を締め固めたくいを約7万7千本打ち込む工法が示されている。国内で前例のない難工事である。そもそも実現性さえ疑わしい。防衛省は地盤改良工事に入るための計画変更を年明け以降に県に申請するという。県は承認しない構えだ。新基地建設反対は玉城デニー知事の公約なのだから当然である。今後、新たな法廷闘争につながる可能性もある。埋め立ての賛否が問われた2月の県民投票で投票者の7割超が反対した。民意の重みをないがしろにし、問答無用で新基地建設を強行するさまは、およそ民主主義国家の振る舞いとは思えない。政府は新基地の建設を断念し、県内移設を伴わない普天間飛行場の速やかな全面返還を米国に提起すべきだ。この先10年以上も普天間飛行場の脅威が続く事態は断じて容認できない。

*2-4-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1049092.html (琉球新報社説 2019年12月27日) 辺野古9300億円 埋め立てを即時中止せよ
 防衛省は25日、名護市辺野古の新基地建設の総工費を9300億円、完成までの期間を約12年とする試算を示した。大浦湾側に広がる軟弱地盤への対応で、総工費は2014年に明示した3500億円の約2・7倍になり、22年度以降とした普天間飛行場の返還時期は30年代以降にずれ込むことが確実になった。県が指摘してきた通り、国の新基地建設計画は大幅な見直しを余儀なくされた。県内の公共事業としては空前の規模だが、国民の反発を避けるため数字を過小に見積もったと見た方が妥当だ。国内に前例のない難工事であり、工費も期間もさらに膨れ上がる可能性が大きい。沖縄防衛局によると、移設事業に投じた予算は既に約1471億円に上っている。現時点で投入された土砂は埋め立て区域全体の1%程度にすぎないにもかかわらず、当初示した3500億円の3分の1以上を使っている。さらにこれから大規模な地盤改良工事が始まるというのに、9300億円でとどまるとは到底考えにくい。どのような工法でどれほどの費用を見込むのか、積算の根拠をまず説明すべきだ。そもそも政府は、大浦湾側に軟弱地盤が広がることを把握しながら、その存在を国民にひた隠しにしてきた。16年3月にまとめられた沖縄防衛局のボーリング調査報告書には、地盤の強さを示すN値がゼロという「マヨネーズ」並みの軟弱さを示す結果が示されていた。18年3月に市民の情報開示請求で報告書が明らかになった後も、政府は軟弱地盤の存在を明確にしなかった。同年9月の県知事選で、政権が支援する候補者に不利になると考えたからではないか。新基地建設に反対する玉城デニー知事が当選すると、政府は知事選までの間は止めていた海上工事を再開。昨年12月に、埋め立て予定海域への土砂の投入を強行した。費用や期間が大幅に膨れ上がると知りながら、土砂投入に突き進んだ。埋め立ては止められないという既成事実をつくるためとみられる。沖縄の民意の無視はもちろん、税金で基地建設費を負担する国民を欺く行為だ。国の借金は国内総生産(GDP)と比べた比率で、主要国最悪の水準だ。富を生み出さない米軍基地の建設に、天文学的な額の税金を費やすなどばかげている。玉城知事は総工費が最大2兆6500億円、完成までの年数は13年以上という独自の試算を示し、普天間の危険性除去について新たな道を探る対話を政府に訴えた。軟弱地盤をはじめ基地建設に適さない条件を抱える辺野古は、もはや唯一の解決策ではない。 現計画に固執すれば、国の財政規律をゆがめ、普天間の危険性除去が一層遠のく。政府は埋め立て工事を即刻中止し、県との協議に臨むべきだ。

*2-4-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/569722/ (西日本新聞 2019/12/20) 馬毛島買収、評価額の3倍超に疑問も 米艦載機の訓練移転用地
 米軍艦載機の訓練移転候補地として、政府が進める鹿児島県・馬毛島(西之表市)の買収に疑問の声が上がっている。地権者と再合意した買収金額約160億円は、政府が2016年度に算定した評価額の3倍超に。国の公害等調整委員会が「森林法への抵触」を認定した、地権者による独自工事の費用を上乗せしたためとみられる。なりふり構わぬ買収劇の背景には、安全保障に「応分の負担」を迫る米トランプ政権の圧力がある。政府は11月29日、馬毛島(約8平方キロ)の99%を所有する開発会社「タストン・エアポート」(東京)と売買の再合意にこぎ着けたが、それまでには紆余(うよ)曲折があった。関係者によると、タストン社には土地売却後も島に拠点を残し、資材の供給などで訓練場建設に参画したい意向があり、交渉過程で「4万坪(0・13平方キロ)は訓練場の完成まで売らない」と主張。防衛省は島全体の国有化を目指しており、一時期は決裂寸前になった。だが、菅義偉官房長官、和泉洋人首相補佐官を中心とする首相官邸が「全面譲歩」を防衛省に指示。政府はこの4万坪を買収する際、タストン社の要求に応じ、さらに5億円程度を追加して支払うことも検討しているという。「国の用地買収としては異例の譲歩」(官邸幹部)を重ねたプロセスだった。
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 政府が前のめりに突き進んだのは、米政権の意向が大きい。馬毛島で計画されているのは、陸地を空母に見立てて離着陸を繰り返すFCLPと呼ばれる訓練で、「空母の能力を維持する上で最も重要」(防衛省幹部)。現在は硫黄島(東京)で行われているが、艦載機部隊の置かれる米軍岩国基地(山口県)から約1400キロと遠く、米国は航続距離の短い機種には危険が伴うと懸念していた。平たんな無人島の馬毛島は岩国から約400キロの位置にあり、日米両政府は11年6月に訓練移転候補地として合意したが、年月が経過していた。政府関係者によると、トランプ大統領は安倍晋三首相に対し、「マゲシマ」の名前を挙げてFCLPの早期移転を重ねて要求。トランプ氏が在日米軍駐留経費(思いやり予算)の大幅な増額を求める構えを崩していないこともあり、日本政府はこれをなだめる「ディール(取引)」の材料として馬毛島を位置付け、買収交渉を加速させた。タストン社は、当初の日米合意を見越して独自に島に滑走路を造成し、その建設費用も含め400億円台での売却を主張していた。一方、防衛省は16年度に行った不動産鑑定で島の評価額を45億円と積算。両者の隔たりは大きかったが、官邸はタストン社に歩み寄る形で買収金額を約160億円まで引き上げた。タストン社も、親会社の経営悪化などから資金繰りに窮して態度を軟化させ、今年1月の仮契約を経て再合意となった。「今回の買収合意は、最近の日米関係で最大のヒットだ」。菅氏は周囲にこう誇る。政府は、中国軍が海洋進出を活発化させていることをにらみ、馬毛島を南西諸島の防衛拠点として整備し、日米による“不沈空母化”も検討している。
      ■ 
 ただ、タストン社が実施した滑走路造成については国の公害等調整委員会が16年、「森林法の許可申請、届け出の範囲を超える開発、伐採が推認される」と認定している。滑走路も織り込んだ買収は、政府が違法造成を容認したと受け取られかねない。この点をただした共産党の田村貴昭衆院議員の質問主意書に対し、政府は今月17日、「森林法違反で何らかの処分が行われたとは承知していない」とする答弁書を閣議決定。約160億円の積算根拠も「購入手続きに支障を及ぼす」と説明を拒んだ。日米安保緊密化の名の下に急展開した馬毛島買収に対し、「強引すぎる」との声は与党幹部からも漏れている。

*2-4-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201905/CK2019050402000125.html (東京新聞 2019年5月4日) グアム移転 24年10月にも 沖縄海兵隊 米軍が現地に伝達
 日米両政府が合意している在沖縄海兵隊の米領グアムへの移転計画で、米軍が二〇二五米会計年度の前半(二四年十月~二五年三月)に移転を始め、約一年半かけて完了させる方針を地元議会に伝えていたことが分かった。建設中の新たな海兵隊基地の名称は「キャンプ・ブラズ」となる予定。米軍筋が共同通信の取材に明らかにした。米軍筋によると、移転する海兵隊員は約五千人と見込まれ、このうち約千七百人がグアムに常駐し、残りは半年ごとに入れ替わる部隊となる。沖縄から移転する隊員数はこれまで約四千人と公表されていた。米軍は今年二月四日、移転計画の最新案をグアム議会のティナ・ムニャバーンズ議長に説明した。米軍筋は、トランプ政権の方針や来年の米大統領選の結果などによって、移転計画の遅延や変更もあり得るとしている。海兵隊の新基地はグアム北部のアンダーセン空軍基地近くに建設中で、二六年までに完成予定。名称は海兵隊准将やグアム選出の米下院準議員を歴任した地元出身の故ベン・ブラズ氏に由来する。アンダーセン空軍基地近くのフィネガヤン地区では、日本政府からの資金提供も活用し、下士官用宿舎などの整備も進んでいる。隊員の家族を帯同することから、島内では人口増加に対応しようと道路や医療施設なども建設されているが、労働者不足のため整備の遅れが指摘されている。一二年に日米両政府が修正合意した米軍再編計画には、在沖縄海兵隊約一万九千人のうち約九千人をグアムやハワイなどへ移転させることや、米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古(へのこ)への移設が盛り込まれた。沖縄では昨年十二月、辺野古沿岸部への土砂投入が始まり、今年二月二十四日実施の県民投票では、埋め立て反対が多数となっていた。日米はグアム移転を、普天間飛行場移設の進展とは切り離し二〇年代前半に始めることを確認している。
<在沖縄海兵隊のグアム移転> 日米両政府は2012年4月、在沖縄米海兵隊約9000人を国外へ移転し、米領グアムなどに分散するとの内容を盛り込んだ在日米軍再編見直しの共同文書を発表した。グアム移転は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設の進展状況とは切り離して進めることでも合意しているが、菅義偉官房長官は昨年10月の記者会見で「結果的にリンクしている」と発言し、移設が実現しなければグアム移転も進まないとの認識を示した。

*2-5:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/11/post-13400.php (NewsweekJapan 2019年11月16日) トランプが日本に突き付けた「思いやり予算」4倍の請求書、21年3月末の日米特別協定更新の期限を前に、日本が負担している約20億ドルを約80億ドルに増やすことを日本政府に求めた
トランプ米大統領が日本政府に対し、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を大幅に増やすよう要求していることが分かった。事情を知る米政府関係者および元米政府関係者がフォーリン・ポリシー誌に語った話によれば、トランプ政権は日本政府に米軍駐留経費負担を現在の4倍以上に増額することを求めているという。7月に日本を訪問したジョン・ボルトン国家安全保障担当大統領補佐官とマット・ポティンジャーNSCアジア上級部長(いずれも当時)が要求を伝えたとのことだ。米政府が米軍駐留経費の負担増を要求しているアジアの同盟国は、日本だけではない。ボルトンとポティンジャーは韓国にも、経費負担を現在の約5倍に増やすよう求めたと、同じ消息筋は語っている。日本には約5万4000人、韓国には約2万8500人の米兵が駐留している。「このように法外な要求を一方的に突き付けるやり方は、反米感情に火を付けかねない」と、元CIA分析官でもあるヘリテージ財団のブルース・クリングナー北東アジア担当上級研究員は懸念する。「同盟が揺らぎ、米軍のプレゼンスが縮小して抑止力が弱まるようなことがあれば、恩恵に浴するのは北朝鮮や中国、ロシアだ」
●基地整備や兵器購入も
 トランプ政権の日韓両国政府への要求は、世界規模で同盟国に国防支出を増やさせようとする動きの一環と位置付けられる。トランプは以前から、ヨーロッパの同盟国の国防予算が少な過ぎると批判していた。そうした圧力は効果を発揮したらしい。NATO諸国は来年末までに、国防予算を2016年の水準に比べて1000億ドル以上積み増すことにした。トランプがNATOの次に目を向けたのがアジアの同盟国だったようだ。アジアでは、中国が軍事力を増強している上に、北朝鮮の軍事的脅威も再び高まっている。日本は、アメリカとの特別協定の下、米軍駐留経費として約20億ドルを拠出している。現在の特別協定は、21年3月末に更新期限を迎える。3人の元米国防総省当局者によれば、米政府は協定更新に向けた交渉が本格化するのを前に、この予算を約80億ドルに増やすことを日本政府に求めた。韓国も年内に同様の協定の更新期限を迎える。ある元米国防総省当局者によれば、米政府は韓国政府に対し、駐留経費負担を約50億ドルに引き上げるよう要求している。しかし、日本と韓国は既に米軍の活動のために莫大な費用を負担している。米議会調査局によると、日本は、第二次大戦後の米軍外国基地建設プロジェクトの中でもとりわけ大規模な3つに関して費用のかなりの部分を負担する。具体的には、沖縄県の普天間飛行場代替施設建設に121億ドル(費用の全額)、山口県岩国の海兵隊航空基地建設に45億ドル(費用の94%)、そして、海兵隊員4800人が沖縄から移転することになるグアムの施設に31億ドル(費用の36%)である。日本の経済的負担は、米軍駐留経費だけではない。日本は防衛装備品の90%以上をアメリカ企業から購入している。ロッキード・マーティン社の最新鋭ステルス戦闘機F35やボーイング社のKC46空中給油機などだ。膨張し続けるトランプの要求に対して、日本政府は頭を悩ませることになりそうだ。

<中東への自衛隊派遣>
*3-1:https://www.sankei.com/politics/news/191027/plt1910270009-n1.html (産経新聞 2019.10.27) 自衛隊中東派遣、ホルムズ海峡排除せず どうなる武器使用
 政府は、緊張が高まっている中東海域での情報収集態勢を強化するため、早ければ年明けに自衛隊を独自派遣する方針だ。ただ、派遣の方法や法的整合性の検討、部隊への教育訓練の実施期間を踏まえると来春にずれ込む可能性がある。国家安全保障局を中心に外務省、防衛省などで活動場所や時期の調整を進めている。政府内には「与野党から反対や慎重な意見が相次いでいる。3カ月後(年明け)というのは難しいのではないか」(防衛省幹部)との声もある。自衛隊派遣の検討を具体化したのは、サウジアラビアの石油施設への攻撃、イラン国営会社所有のタンカーの爆発など情勢が緊迫化する中、石油輸入を中東に依存する日本が主体的に情報収集に関わらざるを得なくなったからだ。得た情報は米国主導の有志連合構想に加わる国などに提供する方向で調整している。菅義偉(すが・よしひで)官房長官は18日の記者会見で、派遣先として「オマーン湾」「アラビア海北部」「バべルマンデブ海峡東側」を中心に検討すると発表。事態が最も緊迫し、情報収集の必要性が高いホルムズ海峡には言及しなかった。河野太郎防衛相は25日の記者会見で「中東地域のどこかを特筆して排除していない」と述べ、ホルムズ海峡で活動する可能性も排除せずに検討する考えを示した。
     ◇
 政府は自衛隊の中東派遣の具体的な方法について、海上自衛隊の護衛艦1隻を新たに派遣する案を軸に検討している。すでに中東近隣で海賊対処の任務についている海自のP3C哨戒機2機のうち1機の任務を今回の情報収集に変更することも選択肢に入る。防衛省の統合幕僚監部の検討チームでは、さまざまな事態を想定しながら必要な装備などについてケーススタディーを進めている。河野太郎防衛相は25日の記者会見で「新規の船(護衛艦)の派遣と、ジブチを拠点とするP3C哨戒機や護衛艦の活用も検討対象にしている」と説明した。すでにソマリア沖アデン湾での海賊対処のため、護衛艦1隻とP3C哨戒機2機がアフリカ東部のジブチを拠点に他国と連携して活動している。ジブチは情報収集を目的とする今回の派遣候補地に近い。このため、日本から護衛艦1隻を追加派遣して計2隻態勢とすれば、「1隻は既存の海賊対処を継続し、もう1隻は新たな情報収集」という2つの任務の両立が可能となる。海上自衛隊が保有する護衛艦は48隻で、能力や装備が今回の任務に適しているのは20隻余り。中国の海洋進出が強まる中、「東シナ海などに展開する護衛艦を減らして警戒監視を弱めるわけにいかない。現場のやりくりに余裕はない」(自衛隊幹部)と不安視する向きもある。ただ、海賊対処部隊は平成28年、海賊事案の減少に伴い2隻態勢だったのを1隻に減らした。防衛省関係者は「『もともと2隻だろう』といわれれば、その通りだ」と語る。一方、派遣済みのP3C哨戒機2機のうち1機を海賊対処から情報収集に転用する場合、活動場所はバべルマンデブ海峡東側の公海の上空になる公算が大きい。オマーン湾はジブチから2千キロ余り離れており、所要時間や航続距離を考えると往復するだけでほぼ終わってしまうからだ。今回の派遣は、防衛省設置法で定められる省の担当業務「調査・研究」を法的根拠としている。常日頃の日本周辺海域での警戒・監視の根拠規定にもなっている。つまり、中東派遣は通常の任務の延長線上に位置づけられる。正当防衛以外での武器使用はできず、日本関係船舶を武器を使用して護衛することは法的に難しい。

*3-2:https://2019constitution.fc2.net/blog-entry-1.html (憲法研究者 2019/11/1) ホルムズ海峡周辺へ自衛隊を派遣することについての憲法研究者声明
1、2019年10月18日の国家安全保障会議で、首相は、ホルムズ海峡周辺のオマーン湾などに自衛隊を派遣することを検討するよう指示したと報じられている。わたしたち憲法研究者は、以下の理由から、この自衛隊派遣は認めることができないと考える。
2、2019年春以来、周辺海域では、民間船舶に対する襲撃や、イラン・アメリカ両国軍の衝突が生じている。それは、イランの核兵器開発を制限するために、イラン・アメリカ等との間で結ばれた核合意から、アメリカ政府が一方的に離脱し、イランに対する経済制裁を強化したことと無関係ではないだろう。中東の非核化と緊張緩和のために、イラン・アメリカ両国は相互に軍事力の使用を控え、またただちに核合意に立ち戻るべきである。
3、日本政府は、西アジアにおける中立外交の実績によって、周辺地域・周辺国・周辺民衆から強い信頼を得てきた。今回の問題でもその立場を堅持し、イラン・アメリカの仲介役に徹することは十分可能なことである。またそのような立場の外交こそ、日本国憲法の定めた国際協調主義に沿ったものである。
4、今回の自衛隊派遣は、自衛隊の海外派遣を日常化させたい日本政府が、アメリカからの有志連合への参加呼びかけを「渡りに船」で選択したものである。
 自衛隊を派遣すれば、有志連合の一員という形式をとらなくとも、実質的には、近隣に展開するアメリカ軍など他国軍と事実上の共同した活動は避けられない。しかも菅官房長官は記者会見で「米国とは緊密に連携していく」と述べているのである。ほとんどの国が、この有志連合への参加を見送っており、現在までのところ、イギリスやサウジアラビアなどの5カ国程度にとどまっている。このことはアメリカの呼びかけた有志連合の組織と活動に対する国際的合意はまったく得られていないことを如実に示している。そこに自衛隊が参加する合理性も必要性もない。
5、日本政府は、今回の自衛隊派遣について、防衛省設置法に基づく「調査・研究」であると説明する。
 しかし防衛省設置法4条が規定する防衛省所掌事務のうち、第18号「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと」とは、どのような状況において、自衛隊が調査・研究を行うのか、一切の定めがない。それどころか調査・研究活動の期間、地理的制約、方法、装備のいずれも白紙である。さらに国会の関与も一切定められていない。このように法的にまったく野放し状態のままで自衛隊の海外派遣をすることは、平和主義にとってもまた民主主義にとってもきわめて危険なことである。
6、わたしたちは安保法制のもとで、日本が紛争に巻き込まれたり、日本が武力を行使するおそれを指摘してきた。今回の自衛隊派遣は、それを現実化させかねない。 第一に、周辺海域に展開するアメリカ軍に対する攻撃があった場合には、集団的自衛権の行使について要件を満たすものとして、日本の集団的自衛権の行使につながるであろう。第二に、「現に戦闘行為が行われている現場」以外であれば、自衛隊はアメリカ軍の武器等防護をおこなうことができる。このことは、自衛隊がアメリカの戦争と一体化することにつながるであろう。第三に、日本政府は、ホルムズ海峡に機雷が敷設された場合について、存立危機事態として集団的自衛権の行使ができるという理解をとっている。しかし機雷掃海自体、極めて危険な行為である。また戦闘中の機雷掃海は、国際法では戦闘行為とみなされるため、この点でも攻撃を誘発するおそれがある。このように、この自衛隊派遣によって、自衛隊が紛争にまきこまれたり、武力を行使する危険をまねく点で、憲法9条の平和主義に反する。またそのことは、自衛隊員の生命・身体を徒に危険にさらすことも意味する。したがって日本政府は、自衛隊を派遣するべきではない。  

*3-3:https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2019/191227.html (2019年(令和元年)12月27日  日本弁護士連合会会長 菊地裕太郎 ) 中東海域への自衛隊派遣に反対する会長声明
 2019年12月27日、日本政府は日本関係船舶の安全確保に必要な情報収集活動を目的として、護衛艦1隻及び海賊対策のためにソマリア沖に派遣中の固定翼哨戒機P-3C1機を、中東アデン湾等へ派遣することを閣議決定した。2018年5月に米国がイラン核合意を離脱後、ホルムズ海峡を通過するタンカーへの攻撃等が発生していることから、米国はホルムズ海峡の航行安全のため、日本を含む同盟国に対して有志連合方式による艦隊派遣を求めてきた。これに対し日本は、イランとの伝統的な友好関係に配慮し、米国の有志連合には参加せずに上記派遣を決定するに至った。今般の自衛隊の中東海域への派遣は、防衛省設置法第4条第1項第18号の「調査及び研究」を根拠としている。しかし、同条は防衛省のつかさどる事務として定めている。そもそも、自衛隊の任務、行動及び権限等は「自衛隊法の定めるところによる」とされている(防衛省設置法第5条)。自衛隊の調査研究に関しても、自衛隊法は個別規定により対象となる分野を限定的に定めている(第25条、第26条、第27条及び第27条の2など)。ところが、今般の自衛隊の中東海域への派遣は、自衛隊法に基づかずに実施されるものであり、防衛省設置法第5条に違反する疑いがある。日本国憲法は、平和的生存権保障(前文)、戦争放棄(第9条第1項)、戦力不保持・交戦権否認(第9条第2項)という徹底した恒久平和主義の下、自衛隊に認められる任務・権限を自衛隊法で定められているものに限定し、自衛隊法に定められていない任務・権限は認めないとすることで、自衛隊の活動を規制している。自衛隊法ではなく、防衛省設置法第4条第1項第18号の「調査及び研究」を自衛隊の活動の法的根拠とすることが許されるならば、自衛隊の活動に対する歯止めがなくなり、憲法で国家機関を縛るという立憲主義の趣旨に反する危険性がある。しかも、今般の自衛隊の中東海域への派遣に関しては、「諸外国等と必要な意思疎通や連携を行う」としていることから米国等有志連合諸国の軍隊との間で情報共有が行われる可能性は否定できず、武力行使を許容されている有志連合諸国の軍隊に対して自衛隊が情報提供を行った場合には、日本国憲法第9条が禁じている「武力の行使」と一体化するおそれがある。また、今般の閣議決定では、日本関係船舶の安全確保に必要な情報の収集について、中東海域で不測の事態の発生など状況が変化する場合における日本関係船舶防護のための海上警備行動(自衛隊法第82条及び第93条)に関し、その要否に係る判断や発令時の円滑な実施に必要であるとしているが、海上警備行動や武器等防護(自衛隊法第95条及び第95条の2)での武器使用が国又は国に準ずる組織に対して行われた場合には、日本国憲法第9条の「武力の行使」の禁止に抵触し、更に戦闘行為に発展するおそれもある。このようなおそれのある活動を自衛隊法に基づかずに自衛隊員に行わせることには、重大な問題があると言わざるを得ない。政府は、今回の措置について、活動期間を1年間とし、延長時には再び閣議決定を行い、閣議決定と活動終了時には国会報告を行うこととしている。しかし、今般の自衛隊の中東海域への派遣には憲法上重大な問題が含まれており、国会への事後報告等によりその問題が解消されるわけではない。中東海域における日本関係船舶の安全確保が日本政府として対処すべき課題であると認識するのであれば、政府は国会においてその対処の必要性や法的根拠について説明責任を果たし、十分に審議を行った上で、憲法上許容される対処措置が決められるべきである。よって、当連合会は、今般の自衛隊の中東海域への派遣について、防衛省設置法第5条や、恒久平和主義、立憲主義の趣旨に反するおそれがあるにもかかわらず、国会における審議すら十分になされずに閣議決定のみで自衛隊の海外派遣が決められたことに対して反対する。

*3-4:https://www.topics.or.jp/articles/-/305910 (徳島新聞社説 2020年1月6日) 国際展望 トランプ追従は高リスク
 トランプ米大統領の決断が、幕が開いた2020年の世界を震わせている。イランのソレイマニ司令官爆殺は「宣戦布告」に等しい。イランは引くに引けず、報復に出る可能性が高まっている。トランプ氏は作戦実行後、「強い米国」をアピールするように、写真投稿アプリに星条旗の画像だけを掲げた。大統領選挙に勝つためなら何でもやりかねない。そんなトランプリスクが、今年の世界を覆っている。少なくとも、北朝鮮の非核化は、実現が遠のいたと言えるだろう。11月の米大統領選は、一層の関心事となった。焦点はトランプ政治の継続か否か。民主党の候補が誰になろうが変わらない。敗れるなら、米国の政策は一変する。温暖化抑制、移民対策、銃規制など、多くの分野で逆方向に動き出すだろう。鍵を握るのは、対抗馬が持つ「勢い」だ。トランプ氏は白人の農家や労働者に底堅い支持基盤を持つが、広がりはない。支持者が喜ぶ政策を実行し、相手をおとしめて勢いをそぐ。戦術はそれしかない。共和、民主両党が拮抗する「スイングステート(揺れる州)」が勝負を決める。前回の勝利に直結した中西部「ラストベルト」の諸州は、今回も注目の的だ。楽勝が見通せない中で、トランプ氏は米国第一主義を強める。激戦州の有権者に受ける成果を求め、国際関係に及ぼす長期的な悪影響など省みない。その典型が、米軍撤収で混迷を深めたシリア情勢だ。昨年10月、「イスラム国」(IS)掃討で共に戦ったクルド人勢力を見捨て、トルコ軍のシリア侵攻を誘発した。同盟への「裏切り」がアジアで再現されない保証はない。民主党の候補者を絞り込む予備選は2月上旬のアイオワ州で始まり、13州が集中する3月3日で流れが固まる。現在の主要論点は、医療保険制度や移民問題など日常に関わるテーマだ。外交は隅に置かれている。だからこそ、現役候補にとって独占的なアピール手段となりやすい。一方、民主党が政権を奪還しても、中国への強硬姿勢には大きな変化がない、との見方が有力だ。安全保障を理由とした「技術冷戦」は、既に超党派の動きとなり、目先の妥協を許さない状況だ。昨年始まった米中貿易戦争は、人工知能(AI)や宇宙空間を巡る長期的な覇権争いの幕開けにすぎない。習近平国家主席は昨年末、共産党政治局から「人民の領袖」とたたえられ、かつての毛沢東に匹敵する権威を確立しつつある。絶対的な権力の下で、ウイグル自治区で起きているような人民管理体制は強固になっていく。米国との対立と反比例するように、日本への接近姿勢は強まっている。春には習主席の国賓来日が予定される。わが国の立ち位置が問われる局面が増えるだろう。トランプ追従一辺倒では通用しない。

<「軍事力による現状変更を認めない」の意味は何?>
PS(2020.1.24追加): 尖閣諸島を領有していると主張する中国は、*4-3のように、国防白書に「①南シナ海の諸島や沖縄県の尖閣諸島(中国名・釣魚島)は、中国固有の領土と強調し」「②武器使用も放棄せず、一切譲歩しない」等としている。これに対し、安倍首相はじめ日本の関係者は、*4-1のように、「③中国が軍事力などを使って現状を変更する試みは、受け入れられない」と繰り返し述べるに留まり、日本の外務省は、*4-2のように、「④尖閣諸島が日本固有の領土であることは、歴史的・国際法上明らか」「⑤日本が実効支配している」「⑥従って尖閣諸島をめぐって解決しなければならない領有権の問題は存在しない」「⑦日本は領土を保全するために毅然かつ冷静に対応する」とする。
 しかし、③の言い方では、「軍事力を使わない(中国の国内法による)変更ならよい」と思われても仕方なく、④の尖閣諸島が日本固有の領土であることも主張していない。また、本当に固有の領土であれば、現状変更をせずに永遠に放置する必要はない。さらに、⑤は事実だが、①②を前提として中国船が領海内に頻繁に侵入しても、⑥のように「領有権の問題は存在しない」として、⑦の領土・領海の保全もしておらず、自衛権の行使もしていないのが現状なのである。それでも、米軍基地や自衛軍は必要か?

*4-1:https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK27001_X20C14A1000000/ (日経新聞 2014/1/27) 首相「軍事力による現状変更認めず」 中国けん制、米CNNインタビューで
 米CNNテレビは26日、安倍晋三首相とのインタビューを報じた。CNNによると、安倍氏は「中国が軍事力などを使って現状を変更する試みは、いかなるものも受け入れられないと理解することが重要だ」と述べ、中国をけん制した。沖縄県・尖閣諸島をめぐる問題を念頭に置いた発言。CNNの英語通訳によると、安倍氏は中国が過去20年間、軍事費を毎年約10%も増加させてきたと指摘し「アジア各国と同様に日本の懸念材料だ」と批判。軍備拡張は中国の経済成長や繁栄に貢献しないとし、中国側がこれを確実に理解するよう取り組んでいきたいと述べた。また、中国と軍事的に対抗する意図はないと強調。一方で、首相として日本の領海や領土を守る責任を果たしていくと訴えた。安倍氏は政権の経済政策、アベノミクスの「三本の矢」にも言及。成長戦略のための構造改革について「抵抗する人たちにも、私が行ってきたことを正しいと納得させ、取り組むようにさせることが重要だ」と語った。インタビューは、安倍氏が世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)出席のため、スイスを訪れた際に行われた。

*4-2:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/index.html (外務省 平成28年10月18日) 日本の領土をめぐる情勢、尖閣諸島について
 尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らかであり, 現に我が国はこれを有効に支配しています。したがって,尖閣諸島をめぐって解決し なければならない領有権の問題はそもそも存在しません。日本は領土を保全するために毅然としてかつ冷静に対応していきます。日本は国際法の遵守を通じた地域の平和と安定の確立を求めています。

*4-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47712610U9A720C1000000/ (日経新聞 2019/7/24) 尖閣諸島は「固有の領土」 中国が4年ぶり国防白書、台湾統一に「武力放棄せず」
 中国政府は24日、「新時代の中国の国防」と題した国防白書を発表した。国防白書の発表は2015年5月以来、4年ぶり。南シナ海の諸島や沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)は「中国固有の領土だ」と強調した。台湾を巡っても統一のため「武器使用は放棄しない。あらゆる措置をとる」と主張し、領土・領海問題を巡り周辺国に一切譲歩しない考えを強調した。米国など関係国とのあつれきが高まるのは必至だ。白書は世界情勢について「覇権主義や強権政治が台頭し、国際的な秩序は衝撃を受けている」と指摘した。米国を名指しして「単独主義に走り大国間の競争を引き起こし、軍事費を大幅に増やしている」と批判。日本についても「戦後体制を突破し、軍事の外向性を強めている」と主張した。

<沖縄の地の利と気候、さくらを見る会>
PS(2020年1月25日、2月14日追加):*5-1のように、名護市の名護城公園周辺を約1万本のヒカンザクラが彩り、「第58回名護さくら祭り」が始まり、気温が25度を超える陽気となった那覇市では、*5-2のように、かりゆしウエアを着た会社員の姿が目立ち、かりゆしウエアの制服や通年着用を認める会社も多いそうだ。私自身は模様の多すぎる「かりゆしウエア」は好きでないが、「沖縄は冬服がいらないので経済的だ(=冬服を着る機会はない)」と言う人もおり、沖縄は地の利と気候を生かして基地よりも生産性の高い産業を作ることができる筈である。
 このように予算に関する重要案件が多い中、*5-3のように、「『桜を見る会』懇親会の契約主体が個々人だというのは不自然で首相の説明通りだったとしても脱法行為だ」などと予算委員会で野党の国会議員が桜の会ばかりを追及しているのは、白でもグレイか黒だと印象付けて議員の価値を貶める自殺行為だ。何故なら、私は地元が九州で旅行代金が高くなる上、秘書の手も廻らなかったのでそういう企画はしなかったが、野田聖子さん(岐阜が地元)はじめ地元からバスで東京に来れる範囲の国会議員は、旅行会社を通して後援会の中の希望者を東京にバス旅行させ、そこに国会見学を組み込んで議員が国会案内等をする人が多かったからだ。その際の旅行代金はもちろん個々の後援会員の負担だと思われるが、そうでなければ旅行に参加した後援会員と参加しなかった後援会員の間に不公平が起こる。安倍首相のケースでも、ホテルと会費支払いの契約を結んだ主体は個々の参加者であり、首相の事務所が会費を受け取ってホテルに渡したのは、煩雑な仕事を手伝ったにすぎないと思われる。さらに、そのホテルの得意先だったり、このように煩雑な事務を手伝ったり、立食パーティーに参加者全員分ではなく40~50%分の食事を出したりすることによって、1人5千円の会費支払いで済ませることは経済合理性もある。そのため、政策に関する議論をさしおいて、政治資金規正法違反等の刑事事件もどきに仕立てあげ、辞めさせたい政治家の根拠なき人格攻撃を行うのは、民主主義の議論の仕方ではないと思う。なお、私は、会計・監査・税務の専門家で、衆議院議員だった時に現在の政治資金規正法改正に加わり、これは単式簿記に基づいて作成されるため網羅性・検証可能性に乏しく、監査証明も限定されているため完全とは言えないものの、一昔前のような大きな不正・買収は起こらなくなっているので、メディアはじめ皆が頭を切り替えるべき時だと考える。


                   *5-1より       *5-3より
(図の説明:左図のように、沖縄は、地球の海水面が低かった時代には、九州から台湾まで続く陸地だったようだ。現在は、中央の図のように、既に桜が咲き始めている常夏の島である。また、右図は、「さくらを見る会」の話だが、宛名なしの領収書は(推奨はしないが)一般によく見られるものであるため、推論に人格攻撃を目的とした強引さがある)

*5-1:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1063110.html (琉球新報 2020年1月25日) 名護さくら祭りが開幕 ピンク色の彩り、観光客たちが楽しむ 26日まで、オレンジレンジのライブも
 沖縄本島北部に位置する名護市の名護城公園周辺を約1万本のヒカンザクラが彩る「第58回名護さくら祭り」(同実行委員会主催)が25日、同公園などで始まった。26日まで仮装パレードやオレンジレンジのライブなどでさまざまなイベントが開かれる。実行委員会によると現在の開花状況は二~三分咲き。晴天となった名護城公園ではピンクや白に色づき始めた桜が名護市民や観光客を楽しませていた。25日、名護城入口でオープニングセレモニーが開かれ、渡具知武豊名護市長が「たくさんの花と樹木がお待ちしている。各種イベントも時間が許す限り楽しんでほしい」と呼びかけた。

*5-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1062912.html (琉球新報 2020年1月25日) 冬だけど「かりゆし」  暑い沖縄、通年着用の人増えてます
 「暑いし、かりゆし」。一年で一番寒い時期にもかかわらず、連日夏日を記録し“常夏”の雰囲気も漂う沖縄では、一年中かりゆしウエアを着る人がじわじわ増えている。県内企業では一年を通してかりゆしウエアでの出勤を認めている会社もあり、通年着用を後押ししている。気温が25度を超え汗ばむ陽気となった24日の那覇市。県庁北口交差点ではセーターを着込んだ観光客の姿を尻目に、かりゆしウエアを着た会社員の姿が目立った。ランチタイムを終えた昼すぎ、明るい緑のかりゆしウエアを着た医療事務の高江洲達さん(31)=那覇市=は「今日からかりゆし」と笑顔で語る。3年ほど前まで福岡で生活していたこともあり「沖縄はずっとかりゆしでいける。楽だし、私服っぽいのが好き」と仕事に戻っていった。国際通りにある店舗で勤務する40代男性は「制服がかりゆしなので一年中かりゆしを着ている。寒い時は上から羽織る」と語る。実際、かりゆしウエアを制服にしたり、通年での着用を認めたりする会社は多い。「元祖紅いもタルト」でおなじみの御菓子御殿は「紅芋カラー」のかりゆしウエアが制服。日本トランスオーシャン航空(JTA)は乗客と接触しない本社勤務などの「間接部門」で通年着用を許可している。同社担当者によると、夏日の24日は「かりゆしが多かった」と語った。この動きに縫製業者も機敏に反応している。メーカー関係者は「観光客の需要もあるが、1月の売り上げは伸びている。いつでも新作を投入できるように急ピッチで準備を進めている」と明かした。沖縄が冬でも暖かくなったのは地球温暖化の影響で、もろ手を挙げて喜べないが、“常夏”が進めばかりゆしウエアの需要はさらに伸びるかもしれない。

*5-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/202002/CK2020021402000135.html (東京新聞 2020年2月14日) <点検「桜を見る会」>懇親会 「契約主体は個々」不自然
 安倍晋三首相の後援会が「桜を見る会」前夜に東京都内のホテルで毎年開いてきた懇親会。首相は後援会の主催としながらも、ホテルと会費の支払い契約を結んだ「主体」は、あくまで個々の参加者だったと主張している。後援会の指示に従って会費を払っただけの参加者が「ホテルと契約した」との解釈は不自然だが、首相は国会答弁でこの説明を繰り返している。後援会がホテルと契約していないとの見解を変えない理由は、政治資金収支報告書に、懇親会の収支が記載されていないことを正当化するためとみられる。政治団体の収支があったにもかかわらず不記載だった場合は、政治資金規正法に違反するからだ。首相は、一人五千円の会費の支払いについて「集金した全ての現金を、その場でホテル側に手渡す形で、参加者から支払いがなされた」と話す。首相の事務所は、会費を受け取ってホテルに渡しただけなので、後援会に入金や出金はなかったという理屈だ。さらに首相は「(ホテルとの)段取りを行ったにすぎない事務所職員は、契約上の主体にはならない」とする。だが一方で、会場を予約したのは事務所の職員で、昨年の懇親会の準備経費は自身の選挙区支部から支出したと認めている。これに対し野党は、ホテルと主体的に契約したのは後援会だと指摘。首相の説明通りであったとしても脱法行為に当たると批判している。

<外交に役立つ国際貢献>
PS(2020年1月27、29、30日、2月2日追加):*6-1のように、中国では、春節時・流通の要所である武漢市という最大の間の悪さで新型コロナウイルスによる肺炎が発生し、国内での死者数が80人に達したそうだ。このため、武漢市では、①病院に診療待ちの人があふれ ②医療従事者用の白い防護服などの物資が不足し ③上海市などの大都市から医師団が続々と武漢市へ派遣され ④武漢市は市内の交通を遮断する封鎖措置に踏み切るなどして感染の拡大防止策を採り ⑤中国政府は、海外への感染拡大を防止するため海外団体旅行中止を通達したそうだ。日本は、「イ.空路で来日したバスツアーの旅行客に新型肺炎の感染者を確認した」「ロ.客のキャンセルが相次いで困った」などと騒いでいるだけでなく、日本政府や日頃から中国と関係のある日本企業は、電子レンジか湯煎で温めれば食べられるような餃子・シュウマイなどの中華料理やみかん(ビタミンCが豊富)・マスク等を武漢市民に寄付したらどうか?
 東日本大震災の時と同様、人は困った時に助けられるのが最も有り難いため、これが今後の外交や食品輸出に寄与することは間違いなく、日本は、*6-2のように、「i)恒久の平和を念願し」「ii)偏狭を地上から永遠に除去しようと努め」「iii)全世界の国民が恐怖と欠乏から免がれて平和に生存する権利を有することを確認し」「iv)いずれの国家も自国のことのみに専念して他国を無視してはならないと信じ」「v)日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う」とする立派な日本国憲法を持っており、国民は、「こんなのは理想に過ぎないから、現実に合わせてレベルを落としたい」とは思っていないのである。
 しかし、*6-3のように、「①自民党女性局は平易な文章にイラストを織り交ぜ、『女性に読んでほしい』と憲法冊子を作成し」「②憲法は幸せのカタチを守る基本的なルールで、幸せのカタチは時代によって変わっていく」「③三原じゅん子局長は『憲法の話は苦手と思っている女性にこそ読んでほしい』と話した」「④『青年に音楽を演奏する機会を与える』と書かれたスイス憲法や「⑤同性婚を認める」アイルランド憲法などの例を紹介している」とのことだ。
 このうち①③については、日本国憲法は義務教育である中学校社会科(現在は、公民)の教科書に添付されて勉強したため、男女とも「読んだことがない」と言うのは不可能で、「女性は平易な文章でなければ理解できない」「女性は憲法の話は苦手」などと決めつけるのは女性蔑視である。また、憲法(原文:The Constitution of Japan)は国の骨格と方針を定めたもので、その13条に「すべて国民は、個人として尊重される(原文:All of the people shall be respected as individuals.)」と書かれているとおり、個人は自由な生き方を尊重され、②のように「国や憲法が(個人の)幸せのカタチを決める」わけではない。
 さらに、④は、第26条で「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と定めているため、音楽のみを取りださなくても政府の意思決定次第で教育できる。また、⑤については、24条で「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」としているが、この両性は異性でなければならないとは書かれていないため同性婚を排除しておらず、14条で「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」としているため、敢えて憲法で同性婚を認めると取り上げて書く必要はないと考える。それよりも、もともと人間は多様なのに「多様性≒同性婚、障害者」というような誤った議論が多いのが問題だ。つまり、「現行憲法は時代に合っていない」などと言っている人の話をよく聞くと、その人こそ現行憲法を理解していなかったり、読んですらいなかったりするのである。
 このような中、*6-4・*6-5のように、大分市はじめ東京都・他の地方自治体・日本政府などが、武漢市(湖北省)への民間チャーター機の往路等で中国政府にマスクや防護服などの緊急援助物資を運び、「雪中送炭」と中国のネット上で感謝の声が広がったそうだ。なお、メディアでは武漢市にあるユニクロがクローズしているところが報道されたが、伸縮性のある布で顔にフィットするマスクを急いで作り、店先で販売したらよいだろうと思った。
 *6-6のように、台湾でもマスクが不足して「1人3枚まで」にしているそうだが、台湾と関係の深い自治体や民間企業は寄付したらいかがか? 

*6-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54875690X20C20A1AM1000/ (日経新聞 2020/1/27) 新型肺炎、拡大加速 「患者1000人増加も」武漢市長、春節連休を3日間延長
 中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の猛威が止まらない。武漢市の周先旺市長は26日夜、記者会見し、今後患者数は「1000人近く増加する可能性がある」と話した。中国国内の死者数が27日時点で80人に達するなど感染拡大を受け、中国政府は同日、春節(旧正月)の連休を2月2日まで延長すると発表した。武漢市を中心に医療機関の受け入れ体制や物資の不足なども深刻化している。「新型肺炎の疑いがある患者が2209人、発熱外来が643人。このうち45%前後に新型肺炎の診断が下る可能性がある」。周市長は26日夜、武漢市内の診療状況について説明した。武漢市のある湖北省では既に約700人が新型肺炎にかかり76人が死亡している。市民がSNS(交流サイト)に投稿した動画などによると、武漢市では病院内に診療待ちの人があふれかえっており、医療従事者用の白い防護服などの物資が不足しているという。武漢市は急増する患者の診察・治療体制の整備を急ピッチで進めている。国営新華社通信によると、同市内で少なくとも2つの新型肺炎に特化した病院を建設する予定で、ベッド数は計2千床を超えるとみられる。また上海市などの大都市から医師団も続々と武漢市へ派遣されている。中国では武漢市が23日から市内の交通を遮断する封鎖措置に踏み切るなど感染の拡大防止策を採っているが、食い止められていない。中国の保健当局は27日、国内の患者数は累計で2744人となり、死者は80人にのぼると発表した。直近半日で患者は約700人増えた。さらなる感染防止措置として国務院(政府)は27日、春節休暇を従来の1月30日までから2月2日まで3日間延長すると発表した。新型肺炎は発熱など患者の自覚症状がないケースもあるという情報があり、こうした人からオフィスや学校などでウイルスが広まるのを防ぐ狙いだ。国内の対応とともに海外への感染拡大防止にも動いている。中国政府は27日から海外団体旅行を中止するよう国内の旅行会社に対して通達した。ただ春節休暇を利用した中国人による海外への渡航ピークは既に過ぎている。日本の厚生労働省は26日、国内で4例目の新型肺炎の感染者を確認したと発表した。武漢市から観光で来日した40代の男性で愛知県の医療機関に入院している。男性はバスツアーの旅行客で、22日に空路で来日したという。陸路で中国本土とつながる香港とマカオは独自の入境制限に踏み切った。香港政府は26日夜、27日から中国湖北省の居住者と過去14日間に同省を訪れた人の入境を禁止すると発表した。マカオ政府も湖北省の居住者が入境する際に感染していないとする医師の証明書を提示するよう求める。一方、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は26日、新型肺炎への対応を協議するため北京へ向かっていると、SNS上で明かした。WHOはこれまでの会合で、加盟国の検疫体制の強化などが求められる「緊急事態宣言」を見送った。しかし、その後も日本など中国国外でも患者数が増加しているため、事務局長自らの中国入りを判断したとみられる。

*6-2:http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail_main?id=174 (昭和二十一年十一月三日公布の日本国憲法より抜粋) 日本国憲法前文
 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果とわが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。日本国民は恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

*6-3:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-1064852.html (琉球新報 2020年1月28日) 自民、世論喚起へ憲法冊子を作成 「女性に読んでほしい」
 自民党女性局は28日、憲法改正を目指す党の考え方をまとめた小冊子を作成した。平易な文章にイラストを織り交ぜた仕上げで、改憲への世論喚起が狙い。「憲法は幸せのカタチを守る基本的なルール」などとしている。三原じゅん子局長は取材に「憲法の話は苦手と思っている女性にこそ読んでほしい」と話す。「青年に音楽を演奏する機会を与える」と書かれたスイス憲法、同性婚を認めるアイルランド憲法などの例を紹介。「幸せのカタチは時代によって変わっていく」と改正の意義を説いた。小冊子は見開きA5判10ページ。党の各都道府県連に2千部ずつ配布する。

*6-4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/579783/ (西日本新聞 2020/1/30) 「武漢頑張れ」激励込めマスク3万枚を大分市が寄贈 中国から感謝も
 新型コロナウイルスによる肺炎が拡大する中国で、日本の支援に称賛の声が広がっている。大分市が27日、友好都市の湖北省武漢市に「武漢加油(頑張れ)」のメッセージを添えてマスク3万枚を送ったところ、短文投稿サイト微博(ウェイボ)に「感動した」などの投稿が続出。閲覧数は3億7千万回を超えた。邦人を帰国させるため武漢入りした日本政府のチャーター機が物資を届けたことにも感謝の投稿が相次いだ。大分市のマスク寄贈は、中国共産党機関紙の人民日報が28日に報じた。マスクの入った段ボール箱に「武漢加油!」の紙が貼られていたことや、大分市が財政的に余裕がない中で支援に乗り出したことを伝えた記事は微博で瞬く間に拡散。「中国語の“頑張れ”には本当に心がこもっている」「裕福でないのに、こんなにたくさん寄付してくれるなんて」「大分市に行ってお礼を言いたい」といった書き込みが相次いだ。政府チャーター機が28日にマスクなど支援物資を運んだニュースも、微博の閲覧数が7千万回を超えた。2008年の四川大地震で日本の救援隊がいち早く現地入りしたことに触れ「あの時も助けに来てくれた」と感謝する投稿や、中国人客の減少で苦境に陥っている日本の観光地を励ます書き込みも見られた。大分市は29日にも防護服200着を武漢市に送った。マスクを送った際、他に不足している物資を尋ねる手紙を添えたところ、武漢市側から要望があったという。防護服は地元医師会の協力を得て集めた。大分市には市民などから物資の支援や寄付金の申し出が相次いでおり、市は今週にも受け入れ態勢を整える予定。担当者は「反響の大きさに驚いている。武漢は長く交流してきた友人のような存在で、早く平穏な生活に戻ってほしい」と話した。

*6-5:https://digital.asahi.com/articles/ASN1Z3VHBN1YUHBI04J.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2020年1月30日) 日本の援助、「いいね」中国で15万超 新型肺炎めぐり
 日本政府は、新型コロナウイルスによる肺炎が発生した中国・武漢市(湖北省)への民間チャーター機の往路で、中国政府への緊急援助物資を運んだ。中国のネット上では感謝の声が広がっている。328日深夜に武漢に到着した第1便には、中国向けに日本政府が手配したマスク約1万5千枚や手袋5万組、防護眼鏡や防護服などが積み込まれた。30日に到着した第2便も、地方自治体からの支援物資を運んだ。東京都は二つの便の合計で約2万着の防護服を提供しているという。外務省によると、茂木敏充外相が26日にあった中国の王毅(ワンイー)外相との電話協議で協力を申し出て、中国側から求めがあった物資を送った。昨年はエボラ出血熱が流行するコンゴ民主共和国へ防護服を支援するなど、政府は感染症の流行に見舞われた地域への緊急援助を続けている。日本政府からの支援が届いたというニュースは、中国版ツイッターの「微博(ウェイボー)」で広く拡散されており、15万を超える「いいね」がつけられた投稿もある。全国的に交通機関の停止や商業施設の閉鎖などが相次ぐ苦境の中の明るい話題として称賛を集めている。28日午後には、武漢市と友好都市の関係にある大分市が医療用マスクを送り、その箱に「武漢加油(がんばれ)」と記されているというニュースが投稿された。「中国語で書いてくれるなんて」「心の底からありがとう」などと感動を伝える書き込みがあふれ、関連する投稿の閲覧総数は、29日までに3億8千万回にも上っている。ほかにも、日本国内の店などが中国人向けに掲げた「同舟共済(ともに乗り越えよう)」「最重要的朋友(一番大切な友だち)」などといったメッセージの画像も、SNSで広く拡散されている。2008年の四川大地震の被災地での日本の救援隊の活動を記憶している人も多く、つらいときに本当に必要な物を送ってくれることを意味する「雪中送炭」という四字熟語とともに、感謝を伝える人もいる。「日本に行ってみたくなった」と記す人もいるが、中国では感染拡大を防ぐために、27日から海外への団体旅行は禁止されている。ただ、中国客の激減で日本の観光地が打撃を受けていることも広く知られており、こんな書き込みもあった。「ウイルスが去ったら絶対日本に応援に行く」「微力でも、今度は私があなたたち日本の経済に貢献します」

*6-6:https://digital.asahi.com/articles/ASN21645BN21UHBI02T.html?iref=pc_rellink_01 (朝日新聞 2020年2月1日) 台湾、マスク販売を統制「1人3枚まで、1枚は20円」
 新型コロナウイルスによる肺炎でマスク需要が高まるなか、台湾当局はマスクを販売する際、1人3枚までに制限し、価格も一律1枚6台湾ドル(約20円)と定める措置を始めた。2月中旬まで続く見通しで、中国など海外へのマスクの輸出も禁じている。台湾で初の感染者が確認された1月21日以降、台北市内の雑貨店では「マスク売り切れ」の貼り紙が掲げられ、入荷してもすぐに無くなる状況が続く。春節の休みも影響し、マスクの生産量は1日に約400万枚にとどまる。約2300万人の市場の需要には追い付かない状況だ。

<日米安保条約の見直しについて>
PS(2020年1月28日追加):これに先立ち、G20サミット後の記者会見で米国のトランプ大統領は、*7-1に佐賀新聞が記載しているとおり、「①日本が攻撃されたら米国は日本のために戦わなくてはならないが、米国が攻撃されても日本は戦わなくてよいため、日米安全保障条約は米国にとって不公平だ」「②条約破棄は全く考えていないが、以前から安倍首相にも問題提起している」としていた。現在の日米安全保障条約は、*7-3のように、どちらからでも条約終了の意思を通告することができ、その場合、通告後1年で終了することになっているが、日本は、*7-4のように、日本国憲法で戦争を放棄し、陸海空軍その他の戦力は保持しないことになっているため、国際連合憲章に定める自衛のためにも日米安全保障条約は必要なのである。
 また、新潟日報は、2020年1月27日、*7-2のように、「③日米安全保障条約が1960年1月に改定署名されてから60年経過した」「④宇宙やサイバーの新たな領域で日米同盟を強化することも必要になった」「⑤日米同盟の下で、日本は軽武装政策を取って戦後の驚異的経済成長を成し遂げることができた」「⑥米国の戦争に巻き込まれるリスクが高まらないか」「⑦条約改定60年の節目に同盟関係のゆがみを正すのは、戦後外交の総決算を掲げる安倍首相にふさわしい仕事」等と記載しており、何とか軽武装で自衛する方法を考える必要があるわけだ。

*7-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/395893 (佐賀新聞 2019年7月4日) 日米安保見直し発言、認識を正し、本質の議論を
 米国のトランプ大統領が日米安全保障条約について「米国にとって不公平な合意だ」と主張し、見直しに言及した。20カ国・地域首脳会議(G20サミット)後の記者会見での発言で、「条約破棄は全く考えていない」としたものの、以前から安倍晋三首相にも問題提起していると述べた。戦後日本の安保政策の基軸となってきた日米安保条約に関わる、極めて重大な発言である。だが、トランプ氏の主張は正確な認識に基づかず、一方的過ぎる。日本政府は日米間で条約見直しの議論は一切ないと否定するが、まず大統領に認識を正すよう求めていく必要があろう。発言の背景には、日米貿易交渉に安保政策を絡めて取引材料とする狙いもあるだろう。その真意を見極めたい。日米の同盟関係は近年、自衛隊と米軍の一体化が進んでいる。今回の発言も日本の役割拡大を求める圧力の一環ともみられる。その現状でいいのか。あるべき同盟関係の姿や、今後の日本の安保政策について本質的な議論に取り組むべきだ。トランプ氏は記者会見で「日本が攻撃されたら米国は日本のために戦わなくてはならないが、米国が攻撃されても日本は戦わなくてもいい。不公平だ」と述べた。2016年の大統領選中にも同様の主張をしているが、現職大統領としての発言であり、看過できない。まず、その認識を正すべきだ。1960年に全面改定された日米安保条約は、第5条で日本有事の際に米国が日本を守ると義務付ける一方、第6条で日本が極東の安定確保のため米軍に基地を提供すると定めている。それぞれのリスクとコストが非対称的なため、以前から米国に不満があったのも事実だ。トランプ氏の発言には来年の大統領選をにらんだ国内向けの側面もあるだろう。だが在日米軍基地は、世界に展開する米軍の戦略的拠点として米国のメリットになっている。一方、日本は年約2千億円の在日米軍駐留経費のほか騒音対策費など応分の負担をしている。「双方の義務はバランスが取れている」というのが日本政府の見解だ。この認識を改めて確認すべきだ。トランプ氏の発言には、この夏から本格化する貿易交渉で日本に譲歩を迫る戦略や、対日貿易赤字削減のための巨額の防衛装備品購入を求める狙いもあるだろう。駐留経費負担の増額を要求してくる可能性もある。だが、圧力の下で交渉の主導権を握られる事態は避けなければならない。公正な交渉を進めるべきだ。解せないのは、G20の際に行われた首脳会談での安倍首相の対応だ。安保条約に対するトランプ氏の不満は来日直前に米メディアが報じていた。にもかかわらず首相は真意をたださなかったという。トランプ氏の会見後、首相は「自衛隊と憲法の関係で何ができるかは説明してきた」と述べたが、日米間でどういう協議があったのかを国民にきちんと説明すべきだ。安倍政権の下、安保政策は対米偏重が進んできた。集団的自衛権の行使を解禁する安保関連法を制定、日米防衛協力指針(ガイドライン)を改定し、日米連携の一層の緊密化を掲げる。だが、米国の戦略に巻き込まれる懸念も膨らむ。近隣諸国との関係構築に努め、安保環境を整備していく構想に日本が主体的に取り組むべきではないか。

*7-2:https://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20200127521024.html (新潟日報 2020年1月27日) 安保改定60年 同盟の在り方が問われる
 日本を取り巻く安全保障環境が大きく変容する中で、条約に基づく日米同盟はどうあるべきか。その在り方が問われる。現行の日米安全保障条約が、1960年1月に改定署名されてから60年が過ぎた。米軍による日本駐留や内乱鎮圧を認めた旧条約を全面改定した現行の安保条約は、米国の対日防衛義務や日本による米国への基地提供義務を定めている。安倍晋三首相は署名60年の日本政府主催の記念式典で、「今や日米安保条約は、いつの時代にも増して不滅の柱。世界の平和を守り、繁栄を保証する不動の柱だ」と表明した。同時に、宇宙やサイバーの新たな領域で日米同盟を強化する意向も強調した。日米安保条約とそれに基づく日米同盟は日本外交の基軸である。同盟の下で、日本は軽武装政策を取り、戦後の驚異的な経済成長を成し遂げたといえる。冷戦終了後、北朝鮮の核の脅威や中国の軍事力増強など北東アジアに緊張が解けない中でも、大きな役割を担ってきた。一方で、米国第一主義を唱え国際社会の分断を増幅するような政策を打ち出しているトランプ米政権の存在は同盟を巡る不安要因となっている。懸念するのは、日本の対米傾斜が加速すれば米国の戦争に巻き込まれるリスクが高まらないか、ということだ。日米安保体制は冷戦終結や湾岸戦争などを機に、たびたび変質してきた。91年のソ連崩壊後には、安保体制の目的を「アジア太平洋地域の安定的な繁栄」へ再定義し、安保条約の「日本と極東」の範囲を踏み越えた。こうした米国の世界戦略に引っ張られる形で進んだ自衛隊と米軍の一体運用が、安倍政権になって加速している。安倍政権は歴代政権が憲法上許されないとしてきた集団的自衛権の行使を容認し、安全保障関連法を成立させた。対日赤字の是正を求めるトランプ氏に対しては、最新鋭戦闘機F35といった米国製武器を大量購入している。それでもトランプ氏は「米国第一」優先、同盟関係軽視の姿勢を改めない。日米安保条約は「不公平」と批判し、日本側にさらなる負担を迫っている。「豊かな国が十分な負担をしないで、米軍の抑止力の恩恵を受けるのは米国を食い物にする行為だ」とし、在日米軍の駐留経費負担(思いやり予算)の5倍増を求めているという。だが日本は米軍駐留経費のうち7割以上を負担している。沖縄をはじめ、米軍機の騒音や事故リスクなど基地周辺の市民生活に与える負の影響は大きい。さらに、米兵の法的地位や基地の運用を定めた日米地位協定の抜本的な見直しは実現していない。これでは対等な同盟とは言えまい。条約改定60年の節目を機に、同盟関係のゆがみを正す。それは、「戦後外交の総決算」を掲げる安倍首相にふさわしい仕事のはずだ。

*7-3:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/jyoyaku.html (外務省) 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
 日本国及びアメリカ合衆国は、両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、また、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的安定及び福祉の条件を助長することを希望し、国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、よつて、次のとおり協定する。
第一条 締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。
第二条 締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。
第三条 締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。
第四条 締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。
第五条 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。
第六条 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。
前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。
第七条 この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。
第八条 この条約は、日本国及びアメリカ合衆国により各自の憲法上の手続に従つて批准されなければならない。この条約は、両国が東京で批准書を交換した日に効力を生ずる。
第九条 千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約は、この条約の効力発生の時に効力を失う。
第十条 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。
もつとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。千九百六十年一月十九日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。

日本国のために         アメリカ合衆国のために
  岸信介             クリスチャン・A・ハーター
  藤山愛一郎           ダグラス・マックアーサー二世
  石井光次郎           J・グレイアム・パースンズ
  足立正
  朝海浩一郎

*7-4:http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail_main?id=174 日本国憲法 昭和二十一年十一月三日憲法より抜粋
第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

<日本のみで防衛することが危険な理由>
PS(2020.1.28追加):厚労省をはじめとする日本政府は、*8-1のように、「マクロ経済スライドによって年金給付額の上げ幅を賃金水準や消費者物価上昇率よりも低くすることによって、年金保険料支払時よりも年金給付額を目減りさせる」という契約違反(≒詐欺)を行った。そして、日経新聞はさらに、「①年金財政が行き詰まるのを防ぐため、高齢世代に痛みを求めるのは当然」「②現役世代が不利益を被ることがないように年金のマイナス改定を可能にする制度改革が不可欠」「③マクロ経済スライドの制度化以降、日本経済は長期デフレに直面したため、実質年金額は上がる傾向にある」等と記載している。しかし、①は、私がこのブログに何度も記載したとおり、本質的原因のないところに原因を押し付けて35%にも達する65歳以上の高齢者の生活を困窮させ、③の状況を導いているものだ。また、上記のように無駄遣いが多い中、②のように、国民を現役世代と高齢者とに分断し、高齢者のせいにして年金のマイナス改定を要求するような人権侵害体質であるため、日本だけで物事を決めると人権を護れず危険なのである。
 なお、*8-2に「④三菱電機に大規模なサイバー攻撃があり」「⑤個人情報や企業機密が外部に流出した可能性がある」「⑥防衛・電力・鉄道などの情報や取引先との製品の受注・開発に関する情報、幹部会議の資料などが流出した情報に含まれている」等が書かれているが、このような情報は専用線を使うなどして外部からアクセスできない状態にしておくことが1980年代から専門家の中では常識であったため、中国系のハッカー集団が関与していたとしても、防衛以前の緩さで運用している日本側に問題がある。このように、超時代遅れで、国民負担により費用だけ莫大に使う体質であるため、日本のみで防衛を行うことは不可能なのだ。



(図の説明:左図のように、人口構成が変わるのは1970~80年代には既にわかっていた。それにもかかわらず、対応をとらずに年金積立金を無駄遣いしてきたのが日本の厚労省なのであり、その結果、中央の図のように高齢化率が30%を超え、現在は「年金給付額を下げればよい」などとと言っているのだ。また、右図のように、「日本の人口が0になりそうだ」などと少子化自体を問題視して煽る論調もよく見かけるが、人間も生物であるため減り方はこのようなカーブにはならない上、少子化を人口減少と結び付けて「産めよ、増やせよ」論にしてしまう態度も、女子差別撤廃条約に反する人権侵害なのである)

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200128&ng=DGKKZO54893990X20C20A1EA1000 (日経新聞社説 2020.1.28) 年金のマイナス改定を可能に
 厚生労働省は2020年度の年金支給額を0.2%引き上げる。04年の年金改革法に定めたマクロ経済スライドによって、現役世代の賃金水準や消費者物価の上昇幅より年金の上げ幅を低くする。賃金・物価情勢との比較で年金の増額幅を抑えるのは2年連続になる。将来、年金財政が行き詰まるのを防ぐために高齢世代に一定の痛みを求めるのは当然である。だがマクロスライドには欠陥がある。原則、名目年金額を前年度より減らさない仕組みだ。現役世代が大きな不利益を被ることがないよう、年金のマイナス改定を可能にする制度改革が不可欠だ。マクロスライドをひと言で表すと、年金の実質価値を毎年度小刻みに目減りさせる仕組みになる。もっとも制度化以降、日本経済は長期のデフレに直面してきた。このため名目年金額を減らさない仕組みに阻まれ、年金の実質価値は逆に上がる傾向にある。当初、厚労省は19年間で年金の減額調整を終える計画だった。しかし先送りを繰り返した結果、今後さらに30年近く調整を続ける必要があるという見通しを、19年の財政検証に際して出している。これは、高齢者が年金をもらいすぎていることにほかならない。会計検査院は国の17年度決算の検査報告にあわせ、この欠陥がなければ04年度以降に3兆3千億円の税財源が節約できたと推計した。年金マイナス改定によって経済情勢の影響を受けないようにすれば現役世代の不利益は和らぐ。無年金・低年金に陥る可能性がある現役世代への対策も必要だ。就職氷河期世代に代表されるように、無職だったり望まないのに非正規社員として働き続けたりしている人は、保険料を払う余裕に乏しく、満足な年金をもらえない将来を感じとっている。年金の最低保障機能を強めるために、基礎年金に限ってマクロスライドの適用を外すのが一案だ。確定拠出年金を充実させるのも、厚生年金などの実質価値目減りを補うのに有効である。

*8-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54586740Q0A120C2MM0000/ (日経新聞 2020/1/20) 三菱電機にサイバー攻撃 中国系か、防衛情報流出恐れ
 三菱電機は20日、大規模なサイバー攻撃を受け、個人情報や企業機密が外部に流出した可能性があると発表した。流出した情報には防衛や電力、鉄道などの社会インフラに関する情報や、取引先との製品の受注・開発に関する情報、幹部会議の資料などが含まれているもようだ。三菱電機は「社会インフラに関する機微な情報や機密性の高い技術情報、取引先に関わる重要な情報は流出していないことを確認した」としている。関係者によると、中国系のハッカー集団「Tick(ティック)」が関与した可能性がある。三菱電機は「(流出を確認するための)ログが消去されており実際に流出したかどうかの確認はできない」とし、一部が流出した恐れがあるという。同社によると、国内外のパソコン、サーバーの少なくとも数十台以上で不正に侵入された形跡が見つかった。不正アクセスされたデータ量は文書を中心に約200メガバイト。防衛省や原子力規制委員会、資源エネルギー庁などの官公庁に加え、電力や通信、JR・私鉄、自動車大手など国内外の企業に関する複数の情報が不正アクセスを受けた。同社が不正アクセスに気づいたのは2019年6月28日で、国内拠点のサーバーで不審なファイルの動作を検知した。同様のファイルが中国など複数国の拠点で見つかったため、大規模なサイバー攻撃を受けた可能性があるとし、対象端末について外部からのアクセスを制限した。同社は社内調査を理由に公表していなかった。同社は企業など向けにセキュリティー対策を講じる事業を手掛けており、今回の不正アクセスが影響する可能性もある。公共施設やオフィスビル、データセンターなどの制御システム向けサイバーセキュリティーサービスを19年7月から提供。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」を導入した工場がサイバー攻撃を受けた箇所を特定する技術も開発している。

<新型肺炎患者や中国人に対して差別をするのは無知すぎること>
PS(2020年1月30、31日、2月1、5、7、8、11、12、13、16、19、23日追加): 中国の武漢市で新型コロナウイルスによる肺炎が発症し、世界に感染が広がったが、*9-1・*9-2のように、一般的なインフルエンザと同様、せきエチケット・こまめな手洗い・人混みを避けることなどで予防でき、症状も軽そうだ。にもかかわらず、ハンセン病の強制隔離を彷彿とさせるような感染者に対する差別や強制隔離の要請が多いのは気にかかる。なお、手洗いは、いつでもこまめで丁寧に行うのが原則で、最近、アルコールを手にすり込めば消毒が終わったと考える人が多いのは、その手でいろいろなものを触るので問題である。また、せきやくしゃみが出る人がマスクを着けるのは当然のマナーであるのに、電車の中などで大きな口を開けて平気でせきをする人がいるのは、新型コロナウイルスに限らず迷惑だ。そのため、私はいつでも電車に乗る時はマスクをして予防しているが、本当は、感染している人にマスクをしたり、せきエチケットを守ったりして欲しいのである。
 また、新型コロナウイルスは、最初は動物から人に感染したかもしれないが、ウイルスもDNAを変化(進化)させながら代を重ね、一代の時間は短く、そのうち人から人に感染する性質を得たものだけが次の人に感染するため、人から人にも感染する性質に変わる。従って、ウイルスの特徴は最初から最後まで一定ではなく、ウイルスに抗生物質は効かず、抗ウイルス薬なら効くとされている(https://weathernews.jp/s/topics/201811/080175/)。しかし、ウイルスに効くものには、このほか身体が備えている免疫があるため、日頃から栄養を十分取って免疫を強くしておくことが重要だ。しかし、抗生物質を使って他の細菌を排除し、自分の免疫(兵力)をウイルスに集中させる方法もあるというのが、私の経験だ。なお、最も感染しやすい場所は、マスクを買うための行列や混み合った医療機関の待合室だろう。
 なお、武漢からチャーター便で帰国した人をどう扱うかについては、*9-3・*9-4のように、中国の衛生当局が新型ウイルスは発症していない人からも感染する可能性があるとしているため、①フランスは1カ所に集めて14日間経過観察 ②オーストラリアは2週間の離島隔離 ③米国は適切な証拠に基づく公衆衛生対策を講じ、3日~2週間の隔離が必要になるかもしれない としているが、私は、オーストラリアの2週間の離島隔離がBestだと思う。日本の場合なら、例えば沖縄空港に着陸して琉球大学で検査し、暖かい場所で14日間過ごして、症状のない人や回復した人は開放するというイメージだ。
 このような中、*9-5のように、厚労省は、チャーター機の第1便で帰国した日本人のうち3人が感染していたと発表し、このうち2人は国立国際医療研究センターで検査を受けた後、発熱やせきなどの症状がないため千葉県内のホテルに相部屋で滞在させられ、陽性の結果を受けて県内の医療機関に入院したそうだが、中国では、感染しても症状が出なかったり、症状が出ないまま他の人に感染することが報告されていたため、厚労省の担当者が「想定外だった」としているのは、とても専門家の判断とは思えない。
 そのため、*9-6のように、経産省がフクイチ汚染処理水の処分方法について、①前例ある海洋と大気への放出が現実的選択肢 ②放射性物質監視の面から海洋放出の方が確実に実施可能 ③(危険と言うのは風評被害にすぎないため)風評被害対策の徹底が必要 としていることに、想定外はないと言えるのか? 実際には、想定外ばかりであるため、その後に起こることについて誰がどういう形で責任を持つのか明確にすべきだ。誰かが辞めても何の意味もない。
 2020年2月1日、*9-7のように、日本農業新聞が、「①低所得者ほど栄養バランスの取れた食生活ができず、子どもや高齢者が十分な栄養を取れずに健康が脅かされている」「②低所得層の子どもは、成長に欠かせないタンパク質、カルシウム、鉄の摂取量が少ない」「③所得の低いお年寄りほど健康な体を維持するために必要な栄養素が足りない『低栄養』に陥っている」「④多くの人が依然、主食・主菜・副菜を組み合わせた栄養バランスの取れた食生活をしていない」「⑤注目したいのは子どもに無料か低額で食事を提供する『子ども食堂』だが、国の支援が欠かせない」「⑥食育も忘れてはならない」「⑦所得200万円未満の人に主食・主菜・副菜を組み合わせられない理由を聞くと、『時間がない』という回答が多かった」などを記載している。
 農業界が栄養バランスに問題意識を持ってくれたのはよいことで、その結果は、「主食の米さえ作ればよい」という発想を変えることに繋がると思うが、①③は、高齢者の負担増・給付減など高齢者に関する施策が貧しすぎることが原因で、②④⑥のために給食を充実させようとしているのだが、その意味を理解していない学校も少なくない。さらに、女性は必要な栄養学を中学・高校で学んでいるが男性は学んでいないため、食事作りや政策・経営に関する意思決定に栄養学の知識がいかされず、この問題の本質は教育なのである。また、⑤を実践している人には敬意を表するが、夫婦2馬力で子育てすれば食品くらいは不自由しない世の中になっているため、よく考えて結婚相手を選び離婚せずに育児を行うようにして、国に甘えすぎるのはやめて欲しい。⑦についても、野菜ジュース・牛乳・卵・総菜など、共働きや単身者を前提とした比較的安価で時間のなさを補う製品も多く出たため、現在は栄養の知識があるか否かが分かれ目になっている。
 なお、佐賀新聞が、*9-8に、「小泉環境相の『育休』どう考える?」という記事を掲載しているが、「父親が取得する育児休暇のアピールにはなったが、育児のために早退や欠席をすると職場での不利益に繋がるのは男女とも同じで、8日間くらいなら有給休暇をとればよいだろう」と、私は思った。実際、このくらいの期間なら、お手伝いのお手伝いくらいしかできないため、この程度なら休みであって「育休をとった」「子育てをした」などと胸を張るのはおこがましい。また、男女にかかわらず、出産や子育ては夫婦2人の労働だけではできない大変さがあるため、「(同じ職業の人の)男女間格差を放っておきながら、(職業の違う人の)女性間格差が問題だというようなくだらないことを言わずに、家事労働への外国人労働者の導入を行えばよい」と、私は30年近く前から言ったり書いたりしていたわけである。
 2020年2月5日、*9-9のように、さだまさしさんが「存在理由」と名付けたオリジナルアルバムを制作しており、アルバムの軸に「中村医師に捧げる歌を据えたい」とされているそうで楽しみだが、職業の違う人と生きざまが違うからといって落胆する必要はなく、自分の存在理由(私にもある)を存分に発揮すればよい。中村医師が医療をさておき農業・食料増産に努められたのは、下の図のように栄養失調・不潔・過労などの状態にありながら薬で病気の治療だけを行っても、焼石に水だからである。
 日本政府が、*9-10のように、米ホーランド・アメリカ・ラインの「ウエステルダム」に石垣港に入港しないよう求めたのは、観光立国を標榜する日本としては逆の行動だ。「ウエステルダム」が石垣港の後に那覇に行く予定だったのなら、まっすぐ那覇港に入港させて12.5日間船内に隔離し、「ダイヤモンド・プリンセス」と同様に検査して陽性の患者は琉球大学病院で適切にケアし、同時に船に医薬品や食料品等を補給させるのが筋である。台湾・韓国・フィリピン・ベトナム等が事実上拒否しているからといって医療観光も視野に入れている日本が拒否すべきではなく、むしろ他国でケアできないクルーズ船も入港させて同じようにケアするのが今後のためだ。いざという時に入港を拒否して景気の心配をしているのは、誤りだ。
 なお、日本政府の対応は、*9-11のように、福岡市の高島市長がクルーズ船の入港や外国人観光客の入国を制限できる基準とルールを定めるよう求める意見書を法務省に提出し、宮崎政務官が出入国在留管理庁に対してその対応を指示されたのだそうだが、福岡なら対処できる病院も多い筈で、検査が済みリスクがなくなるまで乗客をクルーズ船から降ろさなければ問題はないため、両人そろって不合理で非人道的な行動を戸惑いもなく行った点が怖いのである。
 また、*9-12のように、クルーズ船の寄港にむけて一生懸命に商談しており、クルーズ船会社や自治体の関係者を集めた商談会が2月6日に福岡県で予定されていたのに、外国の船会社関係者が出席できずに商談会が中止となり、営業活動に影響が出ているそうだ。唐津市には5月14日に中国の上海を出発した客船が寄港する予定になっており、担当者が「その頃までに感染が終息していればいいが」とこぼすのも無理はない。
 2020年2月11日には、*9-13をはじめ、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で新たに検査結果が判明した103人のうち65人の感染が確認され、全体で135人の感染が判明したので拡大が止まらない事態だと報道しているメディアが多いが、①乗客乗員約3700人のうちの135人は3.6%にすぎないこと ②潜伏期間(感染したけれども症状が出ていない期間)に発症する人がいるのは当然であること から、船内で隔離された後に感染したのでなければ、隔離に成功したと言える。そのため、必要なものを補給しながら潜伏期間が過ぎるのを待つ方が、乗客にとって快適だろう。また下船する際の全員のウイルス検査は実施した方が安心だろうが、潜伏期間が過ぎても発症していない人は感染していなかったと言えるため、検査キットや人材が足りない中で優先順位をつけるのは仕方がない。それより、*9-14のように、新型肺炎に対応するため急にマスクを買うというのは、インフルエンザの時期で、放射性物質も飛んでいる関東では、あまりに無防備だ。また、その不備に乗じて、マスクの買い占めをするなど論外である。
 2020年2月12日には、「『ダイヤモンド・プリンセス』の船内では医療行為が行われないため、乗客を全員降ろしたらどうか」と主張するメディアがあるが、医療行為が必要な人のみを降ろし、必要なものを補給しながら潜伏期を過ぎるのを待つべきだと考える。何故なら、「可哀想だから、乗客全員を降ろす」ということになれば、国内で新型コロナウイルスによる肺炎の感染が拡大するため、クルーズ船の寄港自体に反対運動が起きるからだ。例えば、*9-15の日本への入国を断られたクルーズ船「ウエステルダム号」は、入港させる国がなく、こちらの方が深刻で人道に反する行為である。また、「人権があるから、何も強制できない」と主張する人もいるが、日本国憲法は「12条:この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」「13条:すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定めており、公共の福祉に反しても自由にする権利があるとはしていないのである。
 また、*9-16に、「新型肺炎で寄港を拒否され、海をさまようクルーズ船はどこが助けるのか」という問いに対し、国交省が「①明確な決まりはなく、船籍や自国民の割合で国が対応するかどうか考える」「②人命の危機が迫っていれば人道的な面から近隣国ということもある」「③船には入港しないよう要請し、港湾を管理する自治体には入港を認めないよう頼んでいる」「④条約の想定外なので、国際ルールが必要」等と答えているが、③については、あらかじめ入港を許可していたクルーズ船に入港しないよう要請すれば、契約違反による損害賠償が発生しそうだ。さらに、①②④については、病人が出たため海難救助に準じて予定していなかった港にでも寄港させるというのならありうるが、病人が出たので予定していた港にも寄港させず、医療を受ける機会を逃させるというのは、自国民でなくても人道に反すると考える。
 2020年2月13日、日本農業新聞が、*9-17のように、新型コロナウイルスのため中国で人の移動が制限された結果、収穫や流通が停滞して中国産野菜の日本への輸入が滞り始めたと記載している。日本で使われているマスクの80%が中国製というのにも驚いたが、2月の財務省貿易統計では、タマネギ・ニンジン・ネギ・キャベツなどの8割以上が中国産とのことで、日本では耕作放棄地を増やしながら農業を粗末にし、外国人労働者の入国制限も厳しくして柔軟な対応をせず、中国で割安に加工まで行う業務用野菜の輸入に頼って中国が風邪を引いたら日本で品不足が起こる状態になっている。他にも多くの仕事が中国に流れたため、(作っている場所で磨かれる)技術も日本からなくなるのは時間の問題で、優越感だけではやっていけないのである。
 *9-18のように、新型コロナウイルスの感染が起きている大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号に米国人やその家族が約380人乗っており、米国民を退避させるために在日米国大使館がチャーター機を手配しているのはよいことで、船内感染が起こっていたのなら米国内でもう2週間隔離するという米国の判断は正しいし、他国も速やかにそうすればよいだろう。私はクルーズ船を病院船に使って徹底的にケアするのが、乗客が最も快適に過ごせる隔離方法だと考えていたが、感染症の検疫官とは思えないような無防備な検疫官が船内感染していたり、感染した乗員に乗客のケアをさせていたり、船内が不潔であったりしたのなら、日本国内でもさらに2週間隔離したいくらいであり、「既に国内で散発的に流行し始めたから、水際での阻止は不要だ」という議論にはならない。そのため、*9-19のように、ダイヤモンド・プリンセス号の全乗客をウイルス検査して、陰性の場合は14日間の経過観察期間が終わる19日から健康状態に問題がなければ順次下船させるというのは、船内感染させたのはクルーズ船の船主と日本政府の失敗だから仕方がないとしか言えない。なお、*9-20のように、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて各国・地域の政府が相次いでクルーズ船の入港を拒否したが、これが最も人道に反する行為であり、クルーズ船を入港させた上でクルーズ船を病院船として使って乗客を隔離したり、陽性の人を陸上の病院や自衛隊の病院船で治療したりするのがあるべき姿だったと思う。
 *9-21のように、感染症対策に詳しい神戸大医学部の岩田教授が、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船し、「①船内の2次感染リスクの管理が不十分だった」「②クリーンゾーンとレッドゾーンが区分けされていなかった」「③熱のある方が部屋から出て歩いて医務室に行っていた」「④感染症のプロなら、あの環境では怖い」と指摘された。私も、乗員の検査は最初に行い、外部の人を含めたクリーンな人のみが乗客へのサービスを行うべきで、食事もクリーンで栄養バランスのとれたものを外部から運んだ方がよかったと思う。しかし、クルーズ船内では香港で下船した乗客が新型コロナウイルスに感染していたことがわかった後も、2月5日までビュッフェスタイルで食事が出され、乗員・乗客は近距離で接していたため、高齢者を多く乗船させている割には衛生管理に疎いと思われ、衛生意識が今後のクルーズ船の改善点だ。なお、自民党にも医師の議員はいるため、そういう人を厚労省の大臣・副大臣・政務官のいずれかに任命しておかなければ、専門知識のない素人ばかりでは状況に応じた判断ができないのである。
 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客を14日間も船に止めおきながら、その期間中に必要な検査をしなかったという*9-22のミスがあったのは、厚労省の仕事のレベルの低さを露呈するものだ。そのため、米国・カナダ・英国・韓国・香港などの14日間の施設隔離は妥当で、日本は厚労省や保健所でトリアージなどしているより、早急に検査と治療の体制を整えるべきだ。そもそも、今の時代に病院が複数の患者を同室に入院させるのは、感染症でなくても治療環境が悪すぎるし、感染症は新型肺炎だけではないのである。


        インフルエンザによる死亡率        耐久消費財の世帯普及率推移

(図の説明:左図の1900年以降の日本におけるインフルエンザ死亡率を見ると、1955年頃からみるみる減少し、1990年以降は人口10万人当たり3人以下になっている。これは、医療の進歩の影響よりも、右図の耐久消費財の普及で現わされる日本における栄養状態・清潔に関する意識・正しい情報の共有・文化度の向上による影響の方が大きいと言われている)

*9-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/579261/ (西日本新聞 2020年1月27日) コロナウイルス感染 どう防ぐ? 新型肺炎対策を専門医に聞いた
●手洗い、せきエチケット…「正しい方法」で
 中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の発症者が急増し、米国やタイなど世界的に感染が広がっている。中国政府は「人から人への感染が認められる」としており、日本国内で発症者が増える可能性も否定できない。専門家は「現段階では、一般的な風邪やインフルエンザの予防策の徹底」を呼び掛ける。あらためて感染予防に必要なことを聞いた。コロナウイルスは、人や動物に感染するウイルスの一種。国立感染症研究所(東京)によると、コロナウイルスが原因となる風邪は10~15%(流行期35%)で、軽い症状にとどまるものが多い。ただ、中には2003年に中国で流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)や、中東地域で発生している中東呼吸器症候群(MERS)のように重症化しやすいものもある。輸入感染症に詳しい国立国際医療研究センター国際感染症センター(東京)の忽那賢志(くつなさとし)医師は「新型ウイルスの感染力はまだ比較が難しいが、重症化するリスクや致死率はSARSやMERSに比べて低い」とみる。ただ、高齢者や持病がある人など抵抗力が低下している人は注意が必要という。国内での感染拡大については「感染から発症まで時間があるため、感染者が知らずに入国し、ウイルスが侵入するリスクはある」。その上で「発症者が受診した医療機関で迅速に診断し、的確に対応する備えが重要だ」と強調する。市民生活では「外出を控えるなどの過剰な反応は必要なく、手洗いやせきエチケットなどを正しい方法で行えば十分」と話す。飯塚病院(福岡県飯塚市)感染症科の的野多加志(たかし)部長も「風邪やインフルエンザの一般的な予防法を徹底することが大切」と言う。手洗いは、指の間や手首などもせっけんを使って念入りに洗うなど、正しい方法でこまめに行う。水やせっけんがない場合はアルコール消毒も有効だ。せきやくしゃみが出る人はマスクを着ける。手のひらで口や鼻を押さえると、付着したウイルスを周囲に広げてしまうため、マスクがない場合は、ハンカチやティッシュペーパーか、二の腕で押さえると良い。「意外と正しい方法を知らない人も多いので、この機会に確認してみてほしい」と的野部長。また、インターネットなどで過度に不安をあおる誤った情報が拡散していることを懸念。「厚生労働省や国立感染症研究所などの信頼できる情報源から正しい情報を収集し、冷静に対応して」とも呼び掛けている。

*9-2:https://digital.asahi.com/articles/ASN1Y74S9N1YULBJ00Y.html (朝日新聞 2020年1月29日) 新型肺炎、SARSより強い感染力か 致死率は低く推移
 中国国内の新型コロナウイルスによる肺炎の感染者は、中国政府の29日の発表で5974人。同じコロナウイルスによって起き、2002~03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の中国国内の感染者数5327人(世界保健機関=WHO調べ)を上回った。SARSと比べて、新型ウイルスはどんな特徴があるのか。WHOなどによると、SARSでは患者のおよそ20%が呼吸不全などで重症化し、中国国内では7%、世界全体では9・6%が亡くなった。一方、新型ウイルスではこれまでに約20%が重症化し、2・3%が死亡している。SARSの流行時にWHOで封じ込めに当たった東北大の押谷仁教授(ウイルス学)は、新型ウイルスによる致死率がSARSよりも低いことに着目。「重症な肺炎に進行せず、発熱やせき、くしゃみといった症状で収まる人が今回は多いのでは」とみる。一方、患者数は最近急増している。WHOは23日、新型ウイルスが1人の患者から1・4~2・5人に感染していると発表したが、「実際にはもっと多く、感染はさらに広がるのではないか」。その理由として押谷さんは、新型ウイルスはより軽症の患者でも、感染力を持っているためではないか、と推測する。SARSは、重症の患者を見つけて隔離して感染の広がりを防げたから封じ込めに成功した。今回は、軽症の患者が感染に気付かないまま、ほかの人に広げている可能性があるという。いまのところ、今回の患者の8割ほどは軽症とみられている。ただ、東京医科大の濱田篤郎教授(渡航医学)は、軽症にみえても、高齢者では発熱しないまま呼吸不全に陥ることがあり、注意が必要だという。感染者や死亡者についての情報は日々、変わっている。国立感染症研究所の鈴木基感染症疫学センター長は、「最初の感染者が発表されてまだ1カ月余りで、現地での調査もまだ十分できているとはいえないようだ。病原性などについても正確な数値はまだ分からない」としている。
●こまめな手洗いが有効
 新型肺炎の感染はどうやったら防げるのか。東北医科薬科大の賀来満夫特任教授(感染制御学)によると、ウイルスは鼻や口、目などの粘膜から入ることで感染すると考えられるという。様々な物を触る中で手に付着しやすいため、予防には「手についたウイルスをこまめな手洗いで洗い落とすことが有効」と話す。日常生活で目や口、鼻など顔を触るくせのある人は注意してほしいという。こうした点は、かぜやインフルエンザの予防と同じだ。患者がマスクを着けると感染を広げない効果があることは分かっている。健康な人のマスク着用は「立証は難しいが、一定の効果があると考えていい」という。ただ、手洗いもマスクも感染を完全には防げない。組み合わせてリスクを下げてほしいという。厚生労働省は28日、国民からの相談を受け付ける電話相談窓口(03・3595・2285)を設置した。医学的知識を持った職員が相談に答える。今後は外国語にも対応する予定という。受付時間は土日祝日を含む午前9時~午後9時。
●医師「新型インフルの教訓も生かして」
 国内でも新型コロナウイルスのヒトからヒトへの二次感染が初めて確認され、国内流行の懸念が高まっている。この先どんなことが起き、何に気をつければいいのか。2009年に海外から持ち込まれ、国内で推計2千万人がかかった「新型インフルエンザ」の教訓について、元厚生労働省技官の沖縄県立中部病院、高山義浩医師(49)に聞いた。ヒトからヒトに感染する新型の豚インフルは09年、4月にメキシコや米国で確認され、世界的に拡大した。日本では5月に神戸市で国内感染が判明し、8月に初の死者が沖縄県で出るなど全国に広がった。09年度の推計国内患者は2061万人で、約200人が死亡した。厚労省の感染症専門医として奔走した高山さんは「今回と同様、専門医も病原性や感染力が十分わからない中で初期対応を迫られ、混乱が起きた」と振り返る。市民に大きな影響が出たのが「新型インフルにかかったかどうか、検査が受けられなくなった」ことだ。厚労省や都道府県の方針では、発生当初は封じ込めのため軽症でも感染が疑われる人はウイルス検査をし、隔離のために入院するなど手厚い対応をとる。一方、一度流行が確認された後は、死亡や重症患者を減らすために健康リスクの高い人が手厚い対応を受けられるよう方針が変わる。このため軽症の人が医療機関にかかってもウイルス検査が受けられずに帰宅を求められ、「そんな話は聞いていない」と押し問答になったこともあった。高山さんは「医療機関の検査体制にも限界がある。国内での流行とともに検査対象が絞り込まれていくことを知っておいてほしい」。新型コロナウイルスも流行後は医療機関のパンクを避けるため、軽症者に受診を控えるよう呼びかける可能性があるという。受診できる医療機関も制限がかかる可能性がある。新型インフルは当初、感染が疑われる人に専門で対応する「発熱外来」が地域の中核病院などに設置された(現在は名称が「帰国者・接触者外来」に変更)。受診前には電話をする必要がある。一方で、若い患者が多かった新型インフルと異なり、新型コロナウイルスの死者は高齢者や持病のある人が多いとされる。高山さんは「高齢者施設ではマスクやグローブなどの感染対策の資材が、病院に比べてそろっていない恐れがある。入居者の通院を一時的に訪問診療で集約するなど、病院に行かなくても済む方法を検討すべきだ」。肺炎リスクを下げるため、肺炎球菌やインフルワクチンの接種も勧める。「現時点では(02~03年にアジアで流行した)重症急性呼吸器症候群(SARS)ほどの致死率はなく、感染力もインフルほどはないと考えられる。適切な感染対策でリスクの高い人も守れる可能性はある」と高山さん。「新型インフルが流行した10年前と比べて国外からの観光客が増え、新興感染症は常に持ち込まれる恐れがある。手洗いやせきエチケットなどインフルと同様の対策を取り、感染が不安な人は人ごみを避けてほしい」と話している。

*9-3:https://www.cnn.co.jp/world/35148651.html (CNN 2020.1.29) 武漢からの帰国者は隔離すべきか、当局が迫られる難しい判断
 中国湖北省武漢市から退避する米国人を乗せたチャーター便が、現地時間の29日に米カリフォルニア州オンタリオに到着する。同便に搭乗している約240人の中には、新型コロナウイルスの感染者がいる可能性もある。同便が到着した時点で、衛生当局は難しい選択を迫られる。たとえ症状が出ていなくても、人との接触を避けるためにオンタリオで隔離すべきなのか。隔離する場合、どの程度の期間が必要なのか。中国の衛生当局は、新型ウイルスは発症していない人からも感染する可能性があるとの見解を示した。しかし米衛生当局は、それが事実かどうかの確証はないとしている。そうした事情が、武漢市から帰国する米国人にどう対応すべきかをめぐる判断を一層難しくしている。乗客の中には、30人あまりの外交官やその家族が含まれる。28日に記者会見した米保健福祉省のアレックス・アザー長官も、乗客に対する具体的な対応については言葉を濁し、「適切な証拠に基づく公衆衛生対策を講じる」と話すにとどめた。カリフォルニア州サンバーナーディノ郡の当局者は同日、チャーター便で到着する人は、3日~2週間の隔離が必要になるかもしれないと説明。感染の兆候が出ている人はいないとしながらも、隔離された場所にベッドや携帯電話の充電器、テレビを用意していることを明らかにした。空港でも公共エリアには立ち入らせず、米疾病対策センター(CDC)が許可を出すまでは一般の人と接触させないとしている。一方、フランスの衛生相は26日、武漢から帰国させるフランス人は1カ所に集めて経過を観察し、14日間拘束すると説明していた。

*9-4:https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3892022.html (TBS 2020.1.29) オーストラリア政府、帰国者を2週間 離島隔離へ
 オーストラリアのモリソン首相は29日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中国・武漢市などに滞在しているオーストラリア人を退避させ、2週間、離島で隔離する方針を明らかにしました。「私たちはけさ、武漢で孤立しているオーストラリア人の出国支援に取りかかることを決断しました」(オーストラリア モリソン首相)。モリソン首相は29日、チャーター便などで移送される帰国者を離島で2週間隔離し、新型コロナウイルスの感染検査を行う予定だと明らかにしました。オーストラリア政府によりますと、現在、武漢市のある湖北省には、600人以上のオーストラリア人が滞在登録をしています。帰国者が隔離されるのはオーストラリアの北西に浮かぶクリスマス島で、密航者の収容施設などがある離島です。退避計画の詳細は現在検討中だということですが、子どもや高齢者、短期旅行者が優先的に移送されるとみられています。

*9-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14347707.html (朝日新聞 2020年1月31日 より抜粋) 症状ない帰国者2人感染 新型肺炎、厚労省「想定外」
 中国の湖北省武漢市を中心に新型コロナウイルスによる肺炎が広がっている問題で、厚生労働省は30日、チャーター機の第1便で帰国した日本人のうち3人が感染していたと発表した。このうち2人は、発熱やせきなどの症状がない国内初の感染例だった。また、東京都と三重県、京都府でも新たに感染が確認された。国内の感染者は14人となった。厚労省によると、チャーター機で帰国後、症状がないのに検査で陽性反応が出たのは40代男性と50代女性の2人。国立国際医療研究センター(東京都新宿区)で検査を受け、千葉県内のホテルに滞在していた。陽性の結果を受け県内の医療機関に入院した。2人はそれぞれ別の帰国者と相部屋だったが、ほかに症状を訴えている人はいないという。感染しても症状が出ない「不顕性感染」か、症状が出る前だった可能性がある。自覚のないまま感染を広げる恐れがあり、中国では報告されていたが、厚労省の担当者は「想定外だった」と話した。これを受け、安倍晋三首相は30日、「新型コロナウイルス感染症対策本部」の会合で「水際対策などのフェーズをもう一段引き上げていく必要がある」と語った。武漢市など感染者の多い地域に滞在したことがあるすべての入国者の健康状態と日本国内での連絡先を確認する方針だ。第1便の帰国者は、検査で陰性反応が出ればホテルから自宅に戻れる予定だったが、2週間は待機してもらうことにした。相部屋もやめる。第2便の帰国者も、症状がなくても基本的に警察大学校(東京都府中市)と西ケ原研修合同庁舎(同北区)に滞在してもらう。厚労省によると、3人のうちもう1人は50代男性。羽田空港に到着した時は症状がなかったが、その後、鼻水やのどの痛みが出て都内の病院に入院していた。容体は安定しているという。また、検査に同意せずに帰宅していた2人も、30日になって検査を受けたいと申し出てきたという。ほかに感染が確認されたのは、中国湖南省から東京に来ていた30代女性と三重県在住の50代男性、京都府在住の20代女性。いずれも武漢市に一時滞在していたという。世界保健機関(WHO、スイス・ジュネーブ)は30日、専門家委員会による緊急会合を始めた。
■第2便、入院26人
 武漢市から帰国を希望する日本人を乗せた日本政府の民間チャーター機の第2便が30日、羽田空港に到着し、210人が帰国した。13人が体調不良を訴え、空港から東京都内の医療機関に搬送。このほか症状のなかった13人も帰国後の検査の後に医師の判断で入院し、入院者は計26人になった。第3便も30日夜、羽田空港を出発。帰国者を乗せ、31日午前に日本に到着する予定。外務省によると、約200人を乗せるとしている。第4便は来週の派遣になる見込みという。第2便では、搭乗前の中国当局の検査で熱やせきの症状があった2人の出国が認められなかった。政府によると、30日時点の帰国希望者は約300人だが、人数が増える可能性もある。
     ◇
 中国国家衛生健康委員会は30日、感染者は前日より1737人増の7711人、死者は38人増の170人に達したと発表した。チベット自治区でも初の感染者が確認され、感染は中国本土の全ての省・自治区・直轄市に広がった。
■新型肺炎の感染者数(日本時間30日午後11時現在。各国・地域の政府発表・報道から累計)
 中国      7711(死亡170)
 日本        14
 香港        10
 タイ        14
 シンガポール    13
注)10人未満の国・地域は省略したが、数字からは新型肺炎を中国国内に封じ込めることに、だいたい成功していると言える。

*9-6:https://www.nishinippon.co.jp/item/o/580192/ (西日本新聞 2020/1/31) 処理水、海洋放出の利点強調
 東京電力福島第1原発で増え続ける処理水の処分方法などを議論する政府小委員会で、経済産業省は31日、前例のある海洋と大気への放出を「現実的な選択肢」とし、うち放射性物質監視などの面から「海洋放出の方が確実に実施できる」と強調する提言案を新たに示した。地元など幅広い関係者の意見を丁寧に聴きながら方針決定するよう政府に要請。放出に際しては風評被害対策の徹底を求めた。小委は地層注入、水素放出、地下埋設も含めた五つの処分方法を検討し、経産省は前回会合で、国内外で処分実績のある海洋と大気の放出を軸にした具体的な3案を示したが今回、こうした書きぶりは修正した。

*9-7:https://www.agrinews.co.jp/p49889.html (日本農業新聞 2020年2月1日) 低所得者の食生活 栄養格差の解消を急げ
 低所得者ほど栄養バランスの取れた食生活ができていない──。そんな結果が厚生労働省の2018年国民健康・栄養調査で出た。所得の違いで、子どもや高齢者が十分な栄養が取れず、健康が脅かされる事態は見過ごせない。栄養格差の解消に国は一層力を入れるべきだ。調査は生活習慣病対策の参考にするため、健康増進法に基づき毎年実施。今回は18年11月、5032世帯を対象に行い、1月中旬に公表した。浮かび上がったのは、多くの人が依然、主食・主菜・副菜を組み合わせた栄養バランスの取れた食生活から遠ざかっているという厳しい現実だ。栄養バランスの取れた食事を、どのくらいの頻度で取っているか聞いたところ、1日2回以上が「ほとんど毎日」という人は男性45・4%、女性49%で半数に満たない。「ほとんどない」も男性、女性いずれも1割前後いた。「ほとんどない」の割合を年間世帯所得別に見ると、より深刻な問題が見えてきた。所得が最も低い「200万円未満」の割合は男性20・8%、女性13・4%。所得が最も高い「600万円以上」と比べ、男女ともに2倍近く高かった。低所得者ほど栄養バランスの取れた食生活が送れていない栄養格差が浮き彫りになった格好だ。「低所得層の子どもは、成長に欠かせないタンパク質や鉄の摂取量が少ない」「所得の低いお年寄りほど健康な体を維持するために必要な栄養が足りない『低栄養』に陥っている」。こうした栄養格差は研究者のこれまでの調査でも明らかになっている。厚労省が定める国民健康づくり運動「健康日本21」(13~22年度)では、「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」を重点に掲げ、低栄養や生活習慣病などの予防・改善活動を展開しているが、解消には至っていない。栄養格差の解消に何が必要か。低所得者への経済的支援の充実はもちろんだが、注目したいのは子どもに無料か低額で食事を提供する「子ども食堂」だ。設置数は19年が3718カ所。各地で広がりをみせる一方、運営資金が課題となっており、国の支援が欠かせない。子ども食堂に食材を無償提供するJAも増えており、こうした動きを広めることも有効だろう。食育も忘れてはならない。今回の調査では、所得200万円未満の人に主食・主菜・副菜を組み合わせられない理由を聞くと、「食費の余裕がない」よりも「手間がかかる」「時間がない」という回答が多かった。栄養バランスの取れた食事の重要性を地道に訴え、理解を深めてもらう必要がある。農水省は新しい食育推進基本計画を来年3月に策定する予定で、近く議論を本格化させる。栄養格差の解消へ、どのような処方箋を描けるか。知恵を絞り、意欲的な目標と効果的な方針・施策を打ち出してほしい。

*9-8:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/483693 (佐賀新聞 2020年2月1日) 小泉環境相の「育休」どう考える? 佐賀県内男性の取得鈍く トップ、上司次第で意識変化も
 第1子が誕生した小泉進次郎環境相が「育児休業」を取得する意向を表明した。「大臣という要職にありながら大丈夫か」と懸念する意見がある一方、「率先して範を示し、今後につなげてほしい」と歓迎する声も上がる。佐賀の男性の育児休業取得事情を調べてみた。佐賀県選出の山下雄平参院議員も4歳の娘がいて、小泉環境相の育休取得を歓迎している一人だ。山下議員も政治活動で地域の会合に出席する機会が多いが、「育児のために早退したり、欠席したりするのは言いづらい雰囲気がある」と語る。子どもに熱が出て病院に連れて行く時さえも「なかなか言い出しづらい」といい、小泉環境相の育休取得が、議員に限らず男性も子育てをするという雰囲気につながればと期待する。総務省から鳥取県庁に出向中、3人目の子どもが生まれ、2週間の育児休業を取得した山口祥義知事も小泉環境相の育休宣言を「英断」と評価する。佐賀県庁では、出産後の「出産補助休暇」(3日間)と出産前後の「配偶者出産時育児休暇」(5日間)を合わせた「8日間の育児休暇」の取得を促す。2016年度は知事部局の対象職員82人中21人(25%)、17年度は70人中36人(51%)、18年度は86人中51人(59%)が取得し、年々増加している。だが、「育児休業」の取得率となるとめっきり減る。育児休業は子が2歳までに1度、1日から長期まで選んで取れるが、18年度の男性職員の取得率は対象81人中わずか4人(4・9%)。県人事課は「育児休暇の取得率を高めつつ、利用促進を図りたい」と話す。民間事業所内でも男性の育休取得の動きは鈍い。県労働条件等実態調査をみると、調査事業所では2006~09年度は0%で、以降も1割にも届いていない。そのような状況の中、先進例と言えるのが半導体や液晶パネル向け精密化学品製造の「JSRマイクロ九州」(佐賀市、約110人)。1週間から約3カ月といった期間で、これまでに7人の男性社員が育児休業を取得した。最初の一人は、上司や同僚が取得を強く促して実現したという。その後は「子どもが誕生したら取るもの」という認識が広がった。父親の育児参加を支援するNPO法人ファザーリング・ジャパン九州の森島孝理事(40)は、男性の育休取得が広がらない大きな要因を「会社の雰囲気」や「周りに迷惑がかかる」などの思いがあると指摘する。一方で、業務の見える化や効率化ができていなければ育休取得を促すのは難しく、そうした環境の改善は「会社の考え方や体制を見直し、働きやすく、強い会社をつくるチャンスでもある」と強調する。JSRマイクロ九州もワークライフバランスの充実を図り、会社の付加価値を高める視点で取り組んでいるという。男性、女性社員に関わらず長期育休で欠員が出れば一時的に派遣社員を雇用してバックアップするなど環境を整えている。「『育休の対象者は限られていて、独身者や子育てが終わった世代は関係ない』と思われているのが現状では」と森島さん。「育休は会社のトップや上司が取ると取りやすくなる。『大臣が取ったから』と言えばもっと取りやすくなる。小泉環境相の発言は、意義が大きい」と話す。
●記者の目 「当たり前」変える契機に
 5年ほど前、会合で沖縄の新聞社を訪れた。「うちの職場は2人が育休中で」。そう話す社員に、そういえば私は取らなかったと明かすと、「なぜ取らないんですか?」と奇異な目で見られた。当時、私には男性社員が育休を取るという考え自体がなかった。意識の違いで、これほどまでに「当たり前」が違ってくる。取材中、育児休業は本来、仕事を継続していくための準備期間という位置づけなのだと聞いた。実際、ある取得者は「育休を取っていなかったら仕事を理由に子育てに参加しなかったかもしれない。夫婦で互いにサポートする体制を手に入れたことが何より」と話していて、準備期間だという話に深く納得がいった。一言に「育児休業」と言っても、本来の狙い、目的や取得による効果や影響など、知っているようで知らないこと、誤解したままのことは多いのではないかと感じた。小泉環境相の取得宣言をきっかけに、多くの「当たり前」を変えていくために必要なことを考えていきたい。

*9-9:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/581518/ (西日本新聞 2020/2/5) 「中村哲医師にささげる歌を」 さだまさしさんがアルバム制作へ
 長崎市出身のシンガー・ソングライターさだまさしさん(67)が、「存在理由」と名付けたオリジナルアルバムを制作している。デビューから46年、あえて自らの立ち位置を問い直すテーマに取り組むきっかけとなったのは、アフガニスタンを支援する非政府組織(NGO)「ペシャワール会」現地代表、中村哲医師=享年73=の非業の死だったという。「中村医師のことが胸から離れない」と語るさださん。アルバムの軸には「中村医師にささげる歌を据えたい」とも話している。さださんは、自ら提唱して建設したナガサキピースミュージアム(長崎市)の主催で2004年に中村さんの講演会、10年にはペシャワール会の活動報告展を開いたが、直接の面識はない。ただ、「お互い侠客(きょうかく)の血を引く者として常に意識してきた」存在だという。中村さんの祖父は、北九州・若松港の石炭荷役請負業「玉井組」を率いた玉井金五郎。金五郎の長男、火野葦平の自伝的小説「花と龍」のモデルとして知られ、中村さんも生前、金五郎の生きざまに大きな影響を受けたと語っている。さださんの母方の曽祖父、岡本安太郎も明治時代、長崎港で港湾荷役を取り仕切った「岡本組」の元締。最盛期には気性の荒い沖仲仕(おきなかし)500人を束ね、任侠(にんきょう)の大親分として地元で語り継がれている。中村さんの行動は「無私の精神」で知られるが、東日本大震災や豪雨などの被災地で支援ライブを続けるさださんの行動理念にも義と情の部分で共通するものがある。一方で、ルーツは似ていても実際の生きざまの違いに落胆しているとも言う。「玉井金五郎の孫と岡本安太郎のひ孫があまりにも差がありすぎて、正直めげている」「俺は今まで何をやってきたんだと、自分のアイデンティティーに疑問を持っているところ。のうのうと生きてきたなあとね」。中村さんが銃弾に倒れた時、さださんはすでにアルバム制作に取り掛かっていたが、その死が頭から離れず「花と龍」を再読。わが身と照らし合わせながらたどり着いた答えが、自らの「存在理由」をテーマに据えることだったという。「とりあえず自分に問いかけてみる。『いったい歌作りの矜持(きょうじ)とは何ぞや』と。大したものはできないかもしれないが、やらずにはいられない」。中村さんにささげる歌は「まだ格闘中」(さださん)だが、アルバムと同じく「存在理由」と銘打ったコンサートツアーは4月中旬にスタート。アルバムは5月ごろ発売の予定だ。

*9-10:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55373830X00C20A2EA2000/ (日経新聞 2020.2.7) 新型肺炎、さまようクルーズ船 入港拒否相次ぐ
 新型コロナウイルスによる肺炎を巡り、日本や中国周辺を回る大型クルーズ船の運航に支障を来す例が相次いでいる。横浜に到着した船の乗客多数が感染していたことを受け、日本やアジアの国や地域で入港を拒否する動きが広がっているためだ。1月以降に中国を訪れた大型船21隻は全てアジア・オセアニア地域にとどまり、うち複数の船が次の寄港地が決まっていない。向かう先で入港できず、次でも断られ、行き場を失う船が出てきた。日本経済新聞は情報会社リフィニティブとIHIジェットサービス(東京都昭島市)がそれぞれ展開する船舶の位置情報配信サービスを活用し、過去の航跡と現在位置を地理情報システムなどを使って分析した。日本時間7日午後5時までの航跡をみると、日本が石垣入港を拒否した米ホーランド・アメリカ・ラインの「ウエステルダム」(定員約1960人、乗組員約800人)は、1日に香港を出航した。台湾の高雄経由で、6日午後に石垣港の南西約100キロメートルまで近づいたが、入港しなかった。当初はその後那覇に行く予定だったが、太平洋を南下する針路を取っている。イタリアのコスタクルーズ社が運航する「コスタ・セレーナ」と「コスタ・ベネチア」は、韓国周辺の東シナ海上にとどまっている。米シーボーンクルーズラインの「シーボーン・オベーション」は2日ごろ香港を出港、フィリピン方面に向かったものの、途中でベトナムに向けてほぼ直角に針路を変えて同国中部沖まで航行した。しかし港に寄らずに南下し、7日朝タイ中部の港にようやく入った。日本政府は7日、ウエステルダムが石垣港に入港しないよう求めたことを明らかにした。乗員乗客の大多数が外国人だった。赤羽一嘉国土交通相は同日「8日の那覇寄港を取りやめ、当面のスケジュールを白紙とし、次の寄港地を検討すると連絡が入った」と述べた。台湾や韓国、フィリピン、ベトナム当局も事実上拒否している。1月以降に中国に寄港したクルーズ船は合計21隻ある。許可がおりる港を探して移動を続けている船のほか、次の寄港地がみつからず、港にとどまっている船も多数あるとみられることがデータから読み取れる。中には横浜の「ダイヤモンド・プリンセス」のように、乗客乗員が船から出られないケースも出ている。クルーズ船は数百~数千人の乗客とその半数程度の乗務員を乗せている。一般的に寄港地に半日~1日程度停泊し、一部の乗客を入れ替えながら現地ツアーを開く。東アジアでは日本や中国、東南アジア諸国などを回ることが多い。海上移動は数日かかることもあり、その間、乗客乗員は同じ空間で過ごす。日本には日本郵船系の「飛鳥2」や商船三井系の「にっぽん丸」など外航クルーズ船が3隻あり、ほとんどのツアーは乗客の9割以上が日本人だという。外国籍の船では日本発着でも外国人が半数程度を占めているとみられ、アジアでは中国人客が最も多い。データ分析では、1月以降に中国に寄港した21隻のうち11隻が日本に入港したことも分かった。運べる旅客数は最大計3万5000人に上り、乗務員も含めると5万人程度に及ぶとみられる。福岡や長崎、那覇に複数回入港した船もあった。新型肺炎の影響拡大で、世界の主要クルーズ企業が加盟するクルーズライン・インターナショナル・アソシエーションの加盟各社は、過去14日間に中国本土に出入りした乗客乗員の乗船を拒否する対応をとっている。中国への寄港はできず中国ツアーは中止や目的地変更が相次ぐ。米プリンセス・クルーズは「ダイヤモンド・プリンセス」の沖縄・台湾行き2本を中止した。MSCクルーズ(スイス)や米ロイヤル・カリビアン・インターナショナルも上海発着をやめた。日本クルーズ客船の「ぱしふぃっくびいなす」は9日の三亜(中国海南省)と11~12日のアモイ(福建省)から台湾の台南と高雄、花蓮に寄港地を変えた。同社によると「例年に比べキャンセルが増えてきている」という。旅行各社はキャンセル対応に追われ、日本旅行は「事態が長期化すると困る」とこぼす。国交省によると、外国籍クルーズ船は2月に123回来る予定だったが、75回に減った。クルーズ旅行は世界的に人気が高まっており、寄港地経済への恩恵が大きい。各地で打撃が出る可能性もある。外資系クルーズ大手の日本代理店は「クルーズ自体にネガティブなイメージが付かなければいいが」と心配する。運航会社の株価にも影響が出ている。グループ会社がダイヤモンド・プリンセスを運航する米カーニバルの株価は、6日の終値が19年末から13.9%下落した。

*9-11:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/582424/ (西日本新聞 2020/2/7) 「有事の際の入国基準を」 福岡市長が新型肺炎拡大で国に意見書
 福岡市の高島宗一郎市長は7日、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受け、クルーズ船の入港や外国人観光客の入国を制限できる基準とルールを定めるよう求める意見書を、法務省に提出した。高島市長は1月30日、自身のブログで「当面は中国本土からのクルーズ船の寄港を拒否すべきだと思っている」と主張していた。7日、宮崎政久法務政務官と面会した高島市長は「例えば、下船する際に解熱剤を飲んで検疫をすり抜けるようなケースもあると聞いている。国には有事の際の入国基準をしっかり策定してほしい」と要望。宮崎政務官は、出入国在留管理庁に対し遺漏のない対応をするよう指示を出したとした上で、「市民の不安を拭い去るため、現場の皆さんと緊密に連携していく」と応じた。面会後、高島市長は「われわれの考えに共感してもらえた。国には経済対策も併せて対応をお願いしたい」と話した。

*9-12:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/486420 (佐賀新聞 2020.2.8) 唐津市「寄港キャンセルなし」 新型肺炎でクルーズ船
 小型の高級客船の誘致に成功し、寄港数を伸ばしている佐賀県唐津市。昨年の唐津港への寄港数は過去最多の11回で計3827人が上陸、今年は9回の寄港予約が入っているが、新型コロナウイルス感染拡大の影響について唐津市は「現在のところはキャンセルは出ていない」と話す。ただ、営業活動に影響が出ている。クルーズ船会社や自治体の関係者を集めた商談会が6日、福岡県で予定されていたが、外国の船会社関係者が出席できず中止になった。市みなと振興課の担当者は「新型コロナウイルスへの対応で商談どころではなくなったようだ。販路拡大に向けた貴重な営業の場がなくなってしまった」と肩を落とす。市には5月14日、中国・上海を出発した客船が寄港する予定になっている。担当者は「そのころまでに感染が終息していればいいが」とこぼした。

*9-13:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202002/CK2020021102000171.html (東京新聞 2020年2月11日) 新型肺炎感染 クルーズ船 新たに65人 全員検査 判断揺れる
 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で起きた新型コロナウイルスの集団感染で、厚生労働省は十日、新たに検査結果が判明した百三人のうち六十五人の感染が確認されたと発表した。クルーズ船では検査した延べ四百三十九人のうち百三十五人の感染が判明し、拡大が止まらない事態になっている。中国湖北省武漢市から帰国した邦人らを合わせると、国内の検査で陽性となった感染者は百六十一人となった。厚労省は、船内に待機する約三千六百人の乗客乗員全員に対し、下船する際のウイルス検査の実施を検討していると明らかにした。全員検査を実施する場合、結果を待ってからの下船になるとした。加藤勝信厚労相は検討理由について「国民の不安や懸念にしっかり対応する必要がある」と述べた。一方、菅義偉官房長官は会見で、全員検査は難しいとの認識を示した。船内の感染者数が百三十人を超えたことについて、厚労省の幹部は「乗船者に客室待機してもらう対策を講じた後に増えているのかどうかは分からない。疫学調査や専門家の意見を踏まえて判断したい」と述べた。日本環境感染学会は拡大を防ぐために感染制御に詳しい医師や看護師の専門チームを十一日にクルーズ船に派遣する。厚労省は九日も、検査結果が判明した五十七人のうち六人の感染を確認したと発表した。うち五人は乗員で陽性の結果が出るまで業務に従事していた。不足する医薬品については、九日までに乗客延べ約千八百五十人分の要望があり、同日までに同約七百五十人分を船内に搬入。残りも手配を急ぐ。
◆「一般病院も受け入れ可」 厚労省転換に自治体困惑
 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客らに新型コロナウイルスの感染者が相次いでいる問題で厚生労働省が「感染症の指定医療機関でなくても、患者を受け入れて良い」と全国の都道府県などに通知していたことが十日、分かった。厚労省は「感染症法に沿った対応」と説明、個室など一定の設備がある病院を前提とするが、一般の病院での感染者受け入れにつながる突然の方針変更に、自治体は困惑している。厚労省の通知は九日付。感染症法は「緊急その他やむを得ない理由があるとき」は、指定医療機関以外の病院で指定感染症の患者を入院させられると定めている。感染者が増えていることから、規定に沿って通知を出したという。現在、感染者を受け入れている神奈川、東京、埼玉、千葉、静岡にある指定医療機関は四十九病院計三百四十五床。室内の空気や細菌が流出しないよう気圧を低くする陰圧制御や、他室とは独立させた換気設備などを備えている。通知を受け、関東地方のある自治体は十日、管轄病院に感染者を受け入れられるかの確認に追われた。ただ、この自治体の幹部は一般の病院で受け入れが決まったわけでないとしながら「地域がパニックになるのではないか」と不安を隠さない。
◆態勢整う病院あるか
<岡山大の津田敏秀教授(環境疫学)の話> 病院には体の弱っている人や高齢者がいる。一般の病院で受け入れるとき注意しないといけないのは院内感染だ。だが、例えば感染した人を受け入れるために急に一フロアを空けるなどということができる病院が、どれだけあるのだろう。これまで国の対応は後手後手に回ってきた。仕方のない面もあるが、これからは先を見て対応することが大事だ。中国での湖北省以外の感染者がどのように推移するか。日本での広がりを考えるうえで参考になるのではないか。

*9-14:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202002/CK2020021002100042.html (東京新聞 2020年2月10日) 新型肺炎で「マスク狂騒曲」止まらず 欠品、高値転売、詐欺まで
 新型コロナウイルスによる肺炎が広がる中、感染への不安心理による「マスク騒動」が収まらない。買い占めによって店頭から消え、売り上げは例年の9倍近くまで跳ね上がる。インターネット上では高額転売が横行し、騒ぎに便乗したサイバー攻撃まで登場。一体、どこまで広がるのか。(中沢佳子)
◆どこにもない…定価の数倍で転売
 「購入はお一人さま二点まで」。七日に東京・銀座のドラッグストアを訪れると、そんな張り紙が掲げられていた。しかし、そこにあるのは商品名と値段が書かれた札のみ。「売り切れなんです。次回の入荷も全く分からなくて」と店員の女性。周辺の五店回るも、どこも「メーカー在庫希薄のため欠品」「入荷は未定」と断り書きが出ていた。高額転売も横行。フリーマーケットアプリ「メルカリ」では、公式ブログが「適切な範囲での出品・購入にご協力を」と呼びかけていながら、この日も箱入りマスクなどが定価の数倍以上で出品されていた。
◆マスク売上、例年同期比の8.9倍
 市場調査会社「インテージ」によると、一月二十七日~二月二日の全国のスーパーやコンビニ、ドラッグストア計四千店のマスクの売り上げは約百八十七億一千六百万円。同時期の例年平均の約八・九倍に上る。二〇〇九年の新型インフルエンザ拡大のピーク(約六十五億四千万円)をはるかに超え、手指消毒剤やマスク用除菌スプレーの売り上げも例年の十倍以上だった。「過去にない異常な事態。メーカーはどこもフル稼働で増産し、毎日出荷している」と明かすのは、マスクやおむつなどのメーカーでつくる「日本衛生材料工業連合会」の高橋紳哉専務理事。この時期は花粉症やインフルエンザへの備えで出荷が増えるとはいえ、例年の比ではないという。「購入量が多すぎて生産が追い付かない。節度ある買い方をしてほしいのだが」
◆詐欺サイトにつながるサイバー攻撃も
 サイバー攻撃も現れた。ネットセキュリティー専門会社「トレンドマイクロ」によると、「マスクを無料送付、確認をお願いします」というメッセージが拡散。URLをクリックすると詐欺サイトに誘導され、クレジットカード情報が盗まれる恐れがある。保健所からの注意喚起を装い、ウイルスに感染するファイルを添付したメールも登場している。物が消える不安から買い占めに走る群集心理は今も昔も変わらない。一九七三年のオイルショック時は、トイレットペーパーがなくなるといううわさに、人々が血眼になって店に殺到した。記録的な冷害でコメ不足に陥った九三年は、外米の輸入でしのごうとした政府の思惑をよそに国産米を求める行列が絶えず、「平成のコメ騒動」といわれた。
◆「正しい情報がパニックを防ぐ」
 「買い占めは不安を解消するための獲得競争であり、自衛行動」と東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害・リスク心理学)は指摘する。無駄になるかもしれないと思っても、あれば買ってしまう。今回のように感染症の被害状況や先行きが見通せない時に目立つといい、冷静な行動を促すには不安の増幅に歯止めをかける必要があると説く。「客船での足止めやマスクの買いだめなどがショッキングに報道され、不安があおられている面もある。感染の広がりやマスクの供給状況など、正しい情報やデータを出すことがパニックを防ぐ方策だ」

*9-15:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200212&ng=DGKKZO55498990R10C20A2TJC000 (日経新聞 2020.2.12) 日本が拒否したクルーズ船 タイも国内反発で拒否
 タイ政府は11日、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大防止で日本に入国を断られたクルーズ船「ウエステルダム号」について、タイも入港を拒否すると発表した。当初は受け入れる予定だったが、国内で反発があり、方針転換した。同号はタイに向かっていたが、今後、どのような針路を取るかは不透明だ。同号の運航会社は10日、「13日にタイに入国し、乗客は空路で帰国する」と明らかにしていた。タイ政府はこの情報がインターネット上に広がり、パニックになったことを入港拒否の理由の一つに挙げた。今後、他のクルーズ船の受け入れも拒むかは不明だ。フィリピンやベトナムに入国を断られた別のクルーズ船「シーボーン・オベーション号」はタイに入港を認められ、7日に着岸した。他のクルーズ船にもタイへ向かう動きがみられていた。

*9-16:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202002/CK2020021202100021.html (東京新聞 2020年2月12日) 新型肺炎で海をさまようクルーズ船 どこが助けるの?
 新型コロナウイルスによる肺炎の影響で、港に入れないクルーズ船が日本近海をさまよっている。クルーズ船は寄港先で食料や燃料を補給していく。どこにも受け入れてもらえなければ、いずれ乗客乗員の人命にかかわる事態になる。そんな状況になったらどの国が責任を負うのか。専門家に聞くと、どうやら国際的な取り決めは、ない。
◆あちこちで寄港を拒否され…
 台湾・高雄から横浜へ向かっていたクルーズ船「ウエステルダム」。寄港予定だった沖縄県・石垣島や那覇で入港を「拒否」された。乗客乗員計二千人余りの一部に新型肺炎の発症者がいたためだ。十日現在も寄港先が決まっていない。六日に那覇を出発したクルーズ船「スーパースター・アクエリアス」は、行き先の台湾、出港した那覇から寄港を拒否される事態に陥った。結局、台湾が受け入れることになり、予定より遅れて八日に到着した。東南アジアを巡っている日本船籍のクルーズ船「ぱしふぃっくびいなす」は台湾での寄港を拒否され、長崎港へ向かっている。横浜・大黒ふ頭に着岸している「ダイヤモンド・プリンセス」も、乗客乗員は中に留め置かれている。つらい状況だろうが、海の上をさまよっている船があることを考えると、まだましなのかもしれない。
◆食料は10日ほどで尽きる
 入港させてくれる港がなければ、船はどうなるのか。あり得なさそうな事態が、日本近海で起こりそうになっている。「豪華客船は数千人乗客乗員がいる。食料は一週間か十日間でなくなり、燃料も補給しないといけない。通常は寄港先で調達するのだが…」と、神戸大の若林伸和教授(航海システム学)は語る。つまり、客船が洋上にさまよっていられる日数は、この程度。これより長くなると、人道上の問題になりかねない。どの国が救いの手を差し伸べる決まりになっているのか。
◆船籍や自国民の割合を考慮
 外国からの船の入港には、検疫、出入国、港湾の管理で三つの役所がかかわる。入港拒否は港湾を所管する国土交通省の担当だ。問い合わせてみると…。「明確な決まりはない。事案に応じて適切に対処するとしか言えない」。海事局外航課の長井総和課長はこう説明し、「頭の体操になってしまうが、船籍や自国民の割合で、国が対応するかどうかを考える。人命の危機が迫っていれば人道的な面から近隣国ということもあるだろう」と続けた。ちなみに、国交省に制度上、入港拒否権はなく、「船に入港しないよう要請するとともに、実際に港湾を管理している自治体に入港を認めないよう頼んでいる」(長井課長)という。
◆条約の想定外 国際ルールが必要
 今回の事態をみると、日本政府は、日本人の比率を重視して対応を変えているようだ。ダイヤモンド・プリンセス号は乗客の半分が日本人だったのに対し、寄港拒否された二つの船では、乗客が外国人中心だったからだ。若林氏は「ダイヤモンド・プリンセス号は、邦人保護の観点から入港が許されたのだろう」と語る。現在の扱いは「検疫法に基づく検疫が続いているという整理で乗客を留め置いている」(厚生労働省結核感染症課の加藤拓馬課長補佐)という状態だ。若林氏は「海上のさまざまな権益を取り決める国連海洋法条約では、今回のような寄港先が決まらないという事態は想定されていなかった。どの国が船に対して責任を持つのか、早急に議論して国際ルールを作るべきだ」と警鐘を鳴らす。

*9-17:https://www.agrinews.co.jp/p50006.html (日本農業新聞 2020年2月13日) 新型肺炎の混乱 野菜にも 中国産輸入が停滞 移動制限で収穫できず 国産切り替えも
 猛威を振るう新型コロナウイルスの影響で、中国産野菜の日本への輸入が滞り始めた。例年2月はタマネギやニンジンなどの輸入野菜が多くなり中国産が主力だ。現地で人の移動が制限され、収穫や流通が停滞し、解消の見通しは立たない状況だ。混乱が長期化する様相の中、一部の流通業者には国産に切り替えようとする動きが出ている。生鮮野菜の輸入量は、年間で2、3月が特に多い。昨年2月の財務省の貿易統計では、タマネギやニンジン、ネギ、キャベツなどの8割以上が中国産だ。中国政府は、ウイルスまん延を防ぐため、人の移動を厳しく規制している。地域によっては「3人以上集まってはいけない」などと制限。人員確保が難しく野菜を収穫できず、出荷適期を過ぎても畑に放置されている模様だ。今の時期、日本に輸入される中国産タマネギは、前年10月に内陸部の甘粛省で収穫、貯蔵後、山東省の加工場で皮をむき、袋詰めしたものが多い。日本の輸入業者によると「山東省政府は1月末、省内の各企業に2月9日まで加工場などを稼働しないよう通達を出した」という。10日から一部で稼働は再開したが、「出荷量は限定的。野菜を梱包(こんぽう)する段ボールやビニール工場などの稼働遅れも問題になっている」(同)。青ネギやニンジンは、主産地が山東省から福建省に移っている。「産地移行に合わせ、山東省の労働者が福建省に出稼ぎに行き、加工を担うことが多い」(同)が、移動制限で作業が停滞している。輸出する港でも混乱が生じている。港で働く従業員の多くが春節期間中に帰省したが、移動規制で職場に戻れず、人員不足による作業遅れで積み下ろしや積み替えを待つコンテナが増えている。主要な輸出港の天津港(天津市)。90人の従業員が働くコンテナ運営会社によると、同社は通常、毎日150~200個のコンテナをさばく。だが、従業員の6割が現場復帰できず、6000個のコンテナが港で滞留。同社は「港に処理待ちのコンテナがあふれている」と指摘。冷蔵・冷凍コンテナで運ぶが、電力不足で野菜などは品質低下が発生している。影響の程度や期間が見通せない状況を受け、国産需要が高まりそうだ。日本の輸入業者は「中国産タマネギの仕入れ値は2倍近くに上がっている。現時点は各業者が輸入在庫を抱え、国産へのシフトは限定的。ただ、3月以降も長期化すれば状況は変わってくる」とみる。業務用カット野菜の製造業者も「今後の調達が大変」と漏らす。国内主力のタマネギ産地、ホクレンは「2月に入って、大手外食チェーンなどから問い合わせがある」(玉ねぎ馬鈴しょ課)と説明する。北海道産タマネギは潤沢で量はそろうが、「国内の皮むき加工業者は人手不足」(同)で、需要が増えた場合にどれだけ対応できるかは不透明という。

*9-18:https://digital.asahi.com/articles/ASN2J0FFJN2HUTIL025.html?iref=comtop_8_04 (朝日新聞 2020年2月16日) 米から救出機「遅すぎ。乗らない」 拒むクルーズ船客も
 新型コロナウイルスの集団感染が起きている大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号。横浜港に停泊中の船から米国民を退避させるため、在日米国大使館はチャーター機を手配していると15日に公表した。米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、船には米国人やその家族が約380人乗っている。船室内からも出られない状況が続き、ツイッターやフェイスブックなどで窮状を訴えたり、情報発信や交流をはかったりする人もいる。その中に「チャーター機には乗らない」と話す人がいた。カリフォルニア州から妻と乗船しているマシュー・スミスさん(57)だ。スミスさんは船内のアナウンスや食事などの様子とともに、「船内が危険だというネット上のデマにだまされないで」といった趣旨のツイートをした。15日、米政府がチャーター便を手配すると発表すると、「船内で検疫を終えた方がいい」とも発信した。朝日新聞の電話取材に応じたスミスさんの説明は次のような内容だった。予定された14日間の検疫期間が終わるまではあと数日。そのタイミングでの米政府のチャーター機派遣という決定は、「遅すぎた」。また、「検疫期間中でウイルスの検査結果も出ていない人々をまとめてバスに乗せ、飛行機で帰国させるという対応は、ここまで船室内で我慢してきた努力を無駄にするようなものだ」とも話した。その上で「しかも米国内でさらにもう2週間検疫するという。シンプルにばかげている」。感染の有無を調べる検査を受けていなかったり、検査の結果がまだ出ていなかったりする多くの人とともにバスや飛行機に乗る方がリスクが高い――。スミスさん夫妻はそう考え、船にとどまることを選んだという。また、チャーター機に持ち込める荷物は1人1個で70ポンド(約30キロ)までとされていることも問題だと話す。船に残した荷物がどうなるのかについても米大使館から説明がないため、戸惑っている米国人の乗客もいるという。大使館は、チャーター機で帰国しない米国人は一定期間、米国への入国は認められないと説明している。だが、その期間がいつまでなのかも明らかにされていないという。スミスさんは言った。「船で検疫を終え、検査結果が陰性となった時点で日本政府が上陸を許可してくれればいい。帰国できるようになるまでの間、東京に滞在するかもしれない」

*9-19:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200216&ng=DGKKZO55697760V10C20A2CC1000 (日経新聞 2020.2.16) クルーズ船、全乗客検査へ
 新型コロナウイルスの集団感染が発生し、横浜港で検疫中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」を巡り、加藤勝信厚生労働相は15日、全乗客をウイルス検査する方針を明らかにした。同船では新たに67人の感染が確認されたことも発表し、同船の感染者は計285人となった。同船には当初、乗客乗員約3700人が乗船。検査能力の限界から全員一斉の検査は見送っていた。厚生労働省は民間検査機関などに協力を要請。年齢などで区切って順次検査を進めることで、乗客全員を検査できるメドが立ったという。感染者と同室だった人を除く70歳以上の高齢者には検査を実施しており、70歳未満の乗客についても16日をめどに順次、検査を実施。陰性と判明した場合は、14日間の経過観察期間が終わる19日から健康状態に問題がなければ順次下船する。東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授(感染症学)は「より早い段階で全員のウイルス検査に踏み切るべきだったが、受け入れ施設や検査体制の確保でやむを得なかった面もある」と話す。「下船した乗客の感染を確認した香港や、船籍国の英国、運航会社のある米国との情報共有を徹底していれば、横浜到着前に検査や感染防止の体制を整えることができた可能性がある」と指摘している。

*9-20:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200216&ng=DGKKZO55697800V10C20A2CC1000 (日経新聞 2020.2.16) 入港拒否、各地で相次ぐ 国際ルールに穴
 新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受け、各国・地域の政府によるクルーズ船の入港拒否が相次いだ。根拠が不明確なケースもあるが、感染症を想定した国際的な取り決めはなく、ルールの穴が浮かんでいる。日本人5人を含む約2200人を乗せたオランダ籍のクルーズ船「ウエステルダム」が13日、カンボジア南部の港に到着し、14日から一部乗客の下船が始まった。同国のフン・セン首相は「私たちは責任をもって乗客を助けなければならない」と表明した。米国企業が運航する同船は2月1日に香港、5日に台湾・高雄を出て沖縄・石垣港に向かっていたが、日本政府から「新型肺炎を発症した恐れのある人が確認された」として外国人の乗客乗員の入国を拒否された。11日にはタイ政府からも入港を拒否されていた。香港の企業が運航するバハマ籍の「スーパースターアクエリアス」も台湾で寄港を断られて那覇に向かっていたところ、7日に日本政府から入港辞退を求められた。その後、台湾は受け入れに転じ、台湾当局の検疫では乗客乗員に感染者は確認されなかったとされる。国土交通省の外航課は「乗客らに感染の可能性がある場合、受け入れは個別判断になる。運航会社の拠点、船籍国、乗客の多い国が判断要素となる」と説明している。香港や韓国、フィリピンなどもクルーズ船の入港を事実上拒否しているが、個別の船について感染者の有無は必ずしも明らかではない。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は12日に「科学的な証拠に基づいたリスク評価をしていないことが多い」と苦言を呈した。

*9-21:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200219-00000029-mai-pol (毎日新聞 2020/2/19) クルーズ船「乗船」の神戸大教授が対応批判 菅氏は「感染拡大防止を徹底」と反論
 感染症対策に詳しい神戸大医学部の岩田健太郎教授が18日、政府の許可を得て、横浜港で検疫中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船した経験として、船内の2次感染リスクの管理が不十分だったと指摘する動画を公開した。菅義偉官房長官は19日の記者会見で「感染拡大防止に徹底して取り組んできている」と反論したが、政府高官は「いろいろな指摘には謙虚に耳を傾けたい」と述べた。岩田氏の説明によると、厚生労働省の協力を得て、災害派遣医療チーム(DMAT)の一員として18日に乗船した。18日夕方に下船後、動画投稿サイトで「ウイルスが全くない安全なグリーンゾーンと、ウイルスがいるかもしれない危ないレッドゾーンが、ぐちゃぐちゃになっていて、どこが危なくて、どこが危なくないのか全く区別がつかない」「熱のある方が自分の部屋から出て、歩いて医務室に行っている」「感染症のプロだったら、あんな環境に行ったら、ものすごく怖くてしょうがない」などと訴えた。菅氏は19日の会見で、「レッドゾーンとグリーンゾーンがぐちゃぐちゃ」との指摘に対して、「イエスかノーで答えることはできない」と回答。また感染対策の例として「乗員はマスクの着用、手洗い、アルコール消毒などの感染防御策を徹底するとともに、乗員の感染が確認された場合には同室の乗員も自室待機にするなど感染拡大防止を徹底している」と述べた。しかし、岩田氏の指摘は、こうした「感染確認後の対応」ではなく、それ以前の「検疫の初期段階にとるべき対応」に関するものだ。菅氏自身、18日の会見でクルーズ船への対応について「良かった点も、悪かった点もある」と認めている。クルーズ船は19日から下船が始まったが、政府は今後、一連の対応について検証する方針を示しており、岩田氏の指摘についても議論になるとみられる。

*9-22:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/491777 (佐賀新聞 2020.2.23) 下船の1人、新型肺炎発症、栃木の女性、感染確認
 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)集団感染で、栃木県は22日、検査で陰性となり19日に下船した60代の日本人女性1人の感染が確認されたと発表した。クルーズ船を下船して帰宅した人の陽性確認は初めて。厚生労働省は22日、下船した乗客23人について、2月5日以降の健康観察期間中にウイルス検査をしなかったミスがあったと発表。加藤勝信厚労相は「深く反省する。こうしたミスが起きないよう徹底したい」と謝罪した。政府が乗客乗員約3千人超に2週間にわたって船内待機を求め、実施した大規模検疫と下船の判断は大きな課題を残した。栃木県によると、女性は21日に発熱があり、22日のウイルス検査で陽性と確認された。下船後は公共交通機関で栃木県内に戻り、最寄り駅から自宅までは友人が車で送った。移動中はマスクをしていた。厚労省によると、検査漏れのあった23人の内訳は日本人19人と外国人4人。下船後の精査で判明した。23人には再検査を要請し、3人は陰性だった。残る20人とは検査時期を調整する。感染拡大防止策を取った5日以前に一度検査していずれも陰性だったが、下船前に改めて検体を取る際に部屋に不在だったり、検査時期を確認しなかったりしたのがミスの原因という。症状が出れば地元で対応する。政府は新型肺炎対応策をまとめた基本的対処方針を25日にも公表する見通し。厚労省は、船内で作業をした同省職員は医療関係者らを除き、検査をすることも22日公表した。対象は41人。下船後2週間は自宅勤務する。22日は感染者と同室だった濃厚接触者89人が下船した。健康観察のため、埼玉県和光市の税務大学校に滞在する。日本人乗客らの下船はほぼ終了した。下船者の感染確認は、外国政府のチャーター機で帰国した人にも相次いでいる。厚労省によると計25人の感染が判明。米国籍の18人、イスラエル国籍の1人、オーストラリア国籍の6人だった。下船者への対応は日本と海外で異なる。米国やカナダ、英国、韓国、香港は14日間、施設で隔離。日本では日常生活に戻り、健康状態を2週間チェックし、不要不急の外出自粛を求めている。

<個性から新品種へ>
PS(2020年2月2日追加):冬枯れになる冬は、花が少なく閑散とした街並みが多いが、*10のように、JA庄内みどりが冬に咲く桜「啓翁桜」を栽培したそうだ。今後は、広大な敷地での栽培や管理にドローン・自動草刈機等での省力化を必要としているそうだが、輸出だけでなく国内にも植えて欲しい。国内の桜は、4月前後に一斉に咲いて短い期間で散り、華やかな期間が短すぎるため、季節をずらして咲く桜があれば、一年にわたって寂しくないからだ。このように、最初は「狂い咲き」と呼ばれながら個性の違いで生じた桜を繁殖させて新品種にすると、その希少さが価値を高くする。他の花にも、季節のずれた品種があればよいと思う。

 
     椿       蝋梅      水仙        白とピンクの梅
(図の説明:1番左は12月・1月に咲いていた椿、左から2番目は今咲き始めた蝋梅《ろうばい》、中央の水仙と右2つの梅はこれから咲く花だが、これに桜その他の花が加わると、冬も明るいだろう)

*10:https://www.agrinews.co.jp/p49902.html (日本農業新聞 2020年2月2日) 輸出拡大へ省力化を 北村地方創生相 山形県を視察
 北村誠吾地方創生担当相は1日、地域のニーズを把握するために山形県を訪れ、JA庄内みどりを視察した。同JAが輸出に取り組む、冬に咲く桜「啓翁桜」の栽培を見学した。意見交換したJAや生産者は輸出やスマート農業への支援を求めた。JAは啓翁桜を県内でも先駆けて香港やベトナムに輸出し、年々栽培規模を拡大させている。田村久義組合長は「新規の輸出先としてロシアと商談中」と説明。北村担当相は「ロシア大使館に魅力を伝え、売り込みたい。関係省庁で連携し、産地を支援していく」と応えた。JA花木専門部長の高橋正幸さん(53)は、啓翁桜の栽培法や広大な敷地を管理する苦労を説明。北村担当相は「ドローン(小型無人飛行機)や自動草刈り機の導入など、迅速な省力化の必要性が分かった」と述べた他、「啓翁桜の栽培体験など、教育機関と連携して子どもたちに特産物について教えてほしい」と地域での魅力発信にエールを送った。JAの視察後は、水田に囲まれ「庄内のウユニ塩湖」と呼ばれる宿泊施設「ショウナイホテル スイデンテラス」や、木を基調にした児童遊戯施設「キッズドーム ソライ」などを巡った。

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| 外交・防衛::2019.9~ | 02:54 PM | comments (x) | trackback (x) |

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