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2014.4.30 その男女雇用機会均等法を最初に作り、1997年に改正したのは誰か知っていますか? - 思慮の浅い記事を書いた朝日新聞へ (2014.5.3追加あり)
    
  キャリア・ウーマン    銀行員       一級建築士     警察官

(1)本物の先駆者は誰か
1)男女雇用機会均等法に関する記述の間違い
 *1には、男女雇用機会均等法の説明として、「1986年の施行で、企業に対して募集や採用、昇進などで性別を理由に差別することを禁じた。妊娠や出産により女性を降格したり、不当な配置換えをしたりすることも禁じている。職場に残る男女間の格差をなくすため、政府に対しても、企業が女性の登用を増やすことを後押しするよう求めている」と書かれている。

 しかし、この中には、事実を報道すべき新聞にあってはならない故意の間違いが2箇所ある。故意だと考える理由は、改正の経緯はちょっと調べればわかる筈で、この間違いにより男女平等を推し進めたのが実際には反対していた人たちであったかのような誤解を与えているからである。最近のメディアは、研究者のデータ改ざんがあったとして、世紀の発見をした研究論文のあら探しをして些細なことで研究者に謝罪させて喜んでいるが、最も大きな罪は内容で嘘を書き、国民をミスリードすることだ。そのため、朝日新聞は、データ改ざんよりも重要な意図的な内容の間違いについて、真摯に謝罪すべきである。

 その間違いは、「http://wol.nikkeibp.co.jp/article/column/20091207/105154/」に書かれているように、1)1986年に施行された男女雇用機会均等法は、周囲の抵抗が強くて性別を理由に差別することを禁じることができず、努力義務になったこと 2)禁止規定になった改正男女雇用機会均等法は、1997年に成立して1999年4月1日から施行された ということだ。

 そして、その最初の男女雇用機会均等法を作ったのは、東大が女性の入学を許した最初の頃に東大法学部に入学して卒業し、厚生労働省の婦人少年局長(後に文部科学大臣)をした赤松良子さんであり、男女雇用機会均等法をまとめるのには苦労したと聞いている。また、1997年の改正は、私が、当時の通商産業省・経済企画庁を通して行ったもので、この時は、「日本経済のためにも女性の登用は不可欠」という切り口で進めたため、赤松良子さんが、「最初に比べれば、とても信じられなかった」と言われたほど、すんなり通った。私は、公認会計士として多くの機会をもらって真剣勝負で働いていたが、同時に社会のジェンダーによるやりにくさも感じていたため、男女雇用機会均等法の改正を進めたのだ。

 なお、*1には、「安倍政権も女性の登用を促している」と書かれているが、安倍首相に最初に各国の調査資料を添付して手紙を送り、女性の登用を促してもらっているのも私だ。

2)すでに存在する制度の中で頑張っただけの人を先駆者とは言わないだろう
 *1のように、「大手の銀行や証券会社で、この春、女性役員が相次いで生まれている」というのは結構なことだが、これを「均等法第1世代が先駆者」と言うのは言いすぎだろう。何故なら、まだ努力義務だったとはいえ、1986年に男女雇用機会均等法が施行され、「男女の機会均等があるべき姿だ」と法律で定められた中では、働く女性に対してあからさまな差別はなかったからである。もちろん、巧妙に行われる差別はそれ以後もずっとあるが、「先駆者」という言葉は、男女雇用機会均等法を作った赤松良子さんや、与謝野晶子、市川房江などのように、すこぶる先進的な発想で道なきところに道をつけ、後世のためになった人に使うべきである。

 *1には、旧住友銀行の工藤禎子さんのことも記載されている。日本の銀行は1986年以降も女性の登用に消極的で女性管理職はおらず、ケミカルバンク(1986年頃、私はプライス・ウォーターハウスでここの監査を担当していた)の女性管理職が、取引先である日本の銀行に電話をすると、「上の人を出せ(女の子の相手はしないという意味)」と言われるので、「うちは、どこまで行っても女です」と返したことが語り草になっていたくらいである。つまり、せっかく女性を登用する会社があっても、取引相手の理解がないとやりにくいのであり、金融機関が今頃やっと最初の女性役員を出しているようでは、銀行の女性経営者に対する融資に偏見があることは推して知るべしだ。

(2)女性上司に対する部下のあるべき態度
 *1に、「課長に昇進した年、男性中心の職場で部下への接し方に悩むこともあった」等々が書かれているが、私の場合は、悩むことなく男性上司と同じ行動をした。その時の男性部下の苦情には、「お母さんみたいにやさしくない」「威張っていて女らしくないから嫌い」というものがあった。

 しかし、部下の方が、男性上司には望まない「やさしさ」や「細かい気配り」や「謙虚さ」を女性上司に求めるべきではない。何故なら、女性上司にはこれらを求め、男性上司には「厳しさ」や「決断力」や「リーダーシップ」を求めるのはジェンダーそのものであり、女性を上司としてやりにくくするからである。

(3)日本が1%台の理由
1)省庁、建設、警察では、2015年から本格的に取組み
 1986年に最初の男女雇用機会均等法が施行されたにもかかわらず、*2のように、首相官邸は2015年度採用で、キャリア組と呼ばれる総合職の事務系の女性比率を30%以上とする目標を各省に指示したそうだ。30%は、採用者の割合であり、管理職の割合ではない。

 また、*3のように、建設業に占める女性の割合は約3%で、国土交通省と日本建設業連合会など業界5団体が、人手不足が深刻な建設業で女性が就労しやすい環境を整備していくことで一致したそうだ。しかし、ビル・住宅の設計や街づくりは、女性の感性を生かせば、もっと環境によくて住みやすく、無駄のないものができたはずであり、一級建築士の女性も多いにもかかわらず、今までその能力が活かされなかったのは残念だ。

 さらに、*4のように、警察庁では、安倍政権の掛け声で、今年度からキャリア官僚の採用は3割が女性となるが、管理職は昨年1月で女性が3%もいない。「被害者が女性のときは、同じ女性のほうが心情を理解しやすいこともあるし、相手も心を開いてくれるかもしれません」と書かれているが、容疑者が女性の場合も、現在の警察の事件に関するストーリーがステレオタイプで稚拙なのは、捜査官に女性が多ければ変わると思う。

(4)何故、日本の主な企業の役員に占める女性の割合は1%台なのか
 *1には、「日本の主な企業の役員のうち女性が占める割合は1%台にとどまる。女性総合職の採用がまだ少ないからだ」としか記載されていないが、正確には、1986年(今から30年くらい前)に、男女雇用機会均等法が施行されたにもかかわらず、官庁を始めとする日本企業が、女性を採用、教育、配置、昇進で差別して、戦力としないための工夫をしてきたからである。そのため、採用が少なかっただけでなく、その女性を採用した後も、女性が働き続けて管理職となるのに適した環境を与えなかったが、決して候補者が少なかったわけではないのだ。そして、これが、女子差別撤廃条約締結以来、まともな努力をした諸外国との差となっているわけである。

(4)では、差別したがるのは誰だったのか
 *5で、東京大学教授 大湾秀雄氏が、女性の活躍に向けた大きな障害で、女性の管理職が少ないことに繋がる理由として、単なる長時間労働ではなく、「遅い昇進」と「ラットレース均衡」を挙げているのは、本当に管理職候補者である女性を知って言っていると思う。

 私のケースでは、東大卒の夫や東大関係者、公認会計士関係で私を知っている人などは、女性である私の実力を評価して協力してくれたが、何としても自分の方が優位に立ちたいが自分の方が劣っていると考えている人が、差別という卑怯な手を使ってそれをやり遂げようとしたという経験がある。

*1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11108361.html?ref=nmail
(朝日新聞 2014年4月28日) 女性役員、先駆者たちは 金融大手、均等法「第1世代」を登用
 大手の銀行や証券会社でこの春、女性役員が相次いで生まれている。男女雇用機会均等法の「第1 世代」が実績をつみ、社員を束ねる力が認められてきたからだ。安倍政権も女性の登用を促しているが、海外と比べると、企業で活躍する管理職の女性はまだ少ない。
■適応力に評価/専門分野切り開く
 厳しいノルマを課され、転職する人が多かった証券界で、真保(しんぽ)智絵さん(48)は最大手の野村証券で25年働き、この4月からグループ子会社の野村信託銀行の社長に就いた。国内の銀行では初めての女性トップだ。真保さんは1989年、雇用機会均等法の施行4年目に入社した。日々の仕事を補助する「一般職」ではなく、将来の幹部候補とされる「総合職」での採用だった。証券市場はバブル最盛期の活況で、連日長時間の残業が当たり前だった。「結果を残さないといけないと、肩ひじ張って仕事をしていた」という。課長に昇進した01年、男性中心の職場で部下への接し方に悩むこともあった。だが、同僚との話し合いを重ねて仕事をこなすうちに「女だから、ということは考えなくなった」。05年には社長秘書に昇格し、グループ全体の経営を見渡す仕事にたずさわった。社内では「どの部門でも結果を残す適応力の高さは抜群」と評価される。部下への細やかな気配りもできるとして、432人を抱える野村信託銀のトップに抜擢(ばってき)された。この春、大手金融機関でトップや役員に登用された女性4人は、均等法ができた直後に入った「第1世代」だ。入社当時は、受け入れ側もまだ試行錯誤だった。旧住友銀行(現三井住友銀行)に女性総合職の1期生として入った工藤禎子(ていこ)さん(49)は、目標にできる女性行員の先輩がいなかったため、どうやって仕事を続けていけばいいか不安だった。そこで、だれにも負けない専門分野をつくろうと考えた。海外の大型事業などに貸す「プロジェクトファイナンス」(事業融資)を担当したとき、「専門性が高いこの分野が、自分の居場所だ」と道が開けた。今年4月、同期入行のトップで執行役員になったのも、銀行の成長を引っ張る注目事業として専門分野が認められ、「第一人者」としての力量を期待されたからだ。みずほ銀行の有馬充美さん(51)は、子育てをしながらM&A(企業の合併・買収)事業で専門性を磨き、生え抜きでは初の執行役員になった。経験を生かし、「女性が働きやすい職場になるようにしたい」。
■日本、わずか1%台
 だが、日本の主な企業の役員のうち女性が占める割合は1%台にとどまる。女性総合職の採用がまだ少ないからだ。長時間労働が当たり前になっているため、育児を担うことが多い出産後の女性が離職せざるをえなかったり、責任のある仕事をまかせてもらえなかったりすることも背景にある。野村信託銀の真保さんは、これまで職場では旧姓の鳥海(とりうみ)の名で通してきた。だが、社長になると会社登記の際には旧姓を使えなかったという。女性の昇進には、こうした制度上の問題もある。安倍政権は昨年6月、成長戦略の柱の一つに「女性の活躍」を据え、2020年までに管理職などに就く女性の割合を3割にする目標を掲げた。まずは上場企業すべてに女性役員を最低1人置くよう求めている。金融界で女性役員が相次いだのはこれも影響している。女性の職場環境に詳しい関西学院大学経営戦略研究科の大内章子准教授は「育児をしながら働く女性の仕事を適正に評価する体制づくりが急務だ」という。
■ノルウェー、4割超える 割り当て制、義務化で成果
 女性役員の比率が世界トップクラスのノルウェーは、出産後も仕事を続けられる仕組みが整っている。 オスロ郊外の広告会社のオフィス。夕方4時になると社員が一斉に帰路につく。市場分析部門長を務めるビョルグ・カリ・パウルセンさん(41)も同じ時間に毎日仕事を終え、小学校と保育園へ2人の男の子を迎えに行く。「男性も女性も管理職も午後4時に帰るのが普通」とパウルセンさんは言う。残業を極力なくすよう政府が促し、子育てと両立できるようになっている。ノルウェーでも、10年ほど前までは女性役員の比率が8%台にとどまっていた。そこで2004年、上場企業で取締役会に出る役員の4割以上を女性にする「クオータ(割り当て)制」を世界で初めて導入した。06年には法律で義務づけ、女性役員の比率は直近の国内調査では40%を超えている。ノルウェーのように具体的な女性役員の比率を企業に割り当てる制度は、フランスやオランダ、スペイン、イタリアなどにも広がっている。情報公開を通じ、女性の登用を促す国もある。豪州では12年から上場企業に、従業員や役員の女性の割合や男女別の賃金を報告するよう義務づけた。日本と同じく登用が遅れている韓国でも、実態を政府に報告させ、女性登用率が大幅に低い企業には改善を促す仕組みがある。日本でクオータ制の議論は本格化していない。女性管理職の比率や目標について企業に公表を義務づけるよう求める声は与党などから出ている。
◆キーワード
 <男女雇用機会均等法> 1986年の施行で、企業に対して募集や採用、昇進などで性別を理由に差別することを禁じた。妊娠や出産により女性を降格したり、不当な配置換えをしたりすることも禁じている。職場に残る男女間の格差をなくすため、政府に対しても、企業が女性の登用を増やすことを後押しするよう求めている。

*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKDZO70346220U4A420C1KE8000 (日経新聞 2014.4.25)公務員制度改革を読む 「女性の活躍」阻む官の事情 国会改革も不可欠
 改革と並行して議論が本格化しているのが、安倍晋三首相が旗を振る「女性の活躍」をお膝元の官でどう推進するかだ。首相官邸は2015年度採用で、キャリア組と呼ばれる総合職の事務系の女性比率を30%以上とする目標を各省に指示した。「男社会」の印象が強い財務省もこの4月、22人中で女性を過去最多の5人入省させている。女性がキャリアと家庭・子育ての両立を目指せる職場環境の見直し論議も各省で始まっている。文部科学、国土交通、厚生労働各省に続き、他省でも保育所新設の検討が進む。入省年次で横並びにしがちな人事も出産・育児期を考慮に入れ、柔軟なキャリアパスを用意する役所も出てきた。未明でも明かりが消えない霞が関の「不夜城」。深夜、休日も問わない長時間労働が常態化してきたことも「女性の活躍」の壁の一つだ。厚労省出身の中野雅至神戸学院大教授は「予算編成、法令審査、国会待機が構造的な三悪」と指摘する。予算編成は秋から年末に実務が集中する。査定する財務省は、時間外や休日は各省からの説明聴取を控える原則を申し合わせ、改善に努める。だが官だけで変えられないのが国会議員の質問に答弁書を用意するための夜間待機だ。議員は前日夕までの審議を見てから質問を通告するのが実態で、各省の作業が深夜にずれ込む。佐々木毅東大名誉教授らは「質問通告は2開庁日以前とする原則の徹底」などの国会改革を提言。自民党は23日、通告期限を前々日の午後6時とする新ルールを決めた。

*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140425&ng=DGKDASDF24017_U4A420C1EE8000 (日経新聞 2014.4.25) 
女性の建設就労倍増へ 国交省と業界、夏メドに行動計画
 国土交通省と日本建設業連合会など業界5団体が24日に会合を開き、人手不足が深刻な建設業で女性が就労しやすい環境を整備していくことで一致した。女性の技術者や技能労働者を5年以内に現状の2倍にあたる約18万人へ増やすのが目標で、夏ごろに行動計画を取りまとめる。太田昭宏国土交通相は会合で「女性の感性が生かせる造園だけでなく、土木など多くの業種で活躍してほしい」と述べた。計画には建設現場の女性用トイレの設置や、研修の充実などが盛り込まれる見通し。建設業に占める女性の割合は約3%で、製造業(約30%)など他産業に見劣りしている。

*4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11082966.html
(朝日新聞 2014年4月13日) (政治断簡)「女には向かない職業」…ホント? 政治部次長・秋山訓子
 岩手県警本部長の田中俊恵さんが26年前、大学4年生だったときのことだ。国家公務員を志し官庁訪問をしていたら、ある女性官僚からこう言われた。「女性は男性以上に頑張らなくては駄目ですね」。それを聞き、田中さんはあえて、それまで男性しか採っていなかった警察庁を訪問する。「そのほうが逆にやりやすいかなと思って」。警察庁の女性キャリア第1号となり、滋賀県警防犯少年課長、埼玉県警捜査第2課長を務めて事件捜査の指揮も執った。そして、今の立場になった。
  *
 安倍政権の掛け声で、今年度からキャリア官僚で採用の3割が女性となる。とはいえ幹部になった女性はまだ少なく、昨年1月で管理職のうち女性は3%もいない。警察庁、そして防衛省は女性管理職が少ない代表的な省庁だ。事件捜査や災害対応といったハードな現場を最前線で担っているせいか、女性を採用し始めた歴史も浅い。霞が関は別にして、そもそもそういう現場は、女性にはふさわしくないと思われているのだろうか。英国の推理小説家P・D・ジェイムズのロングセラーに「女には向かない職業」がある。探偵事務所に勤めるコーデリアという女性が主人公。あちこちで「探偵は女には向かない」と言われ、困難にぶつかりながらも事件に取り組む物語だ。捜査は女性に向いていないのか。田中さんは言う。「被害者が女性のときは、同じ女性のほうが心情を理解しやすいこともあるし、相手も心を開いてくれるかもしれません。でも最終的には男女という問題ではないと思います」。防衛省でも今年初めて生え抜きの女性キャリアの課長職が誕生した。広瀬律子さん。自衛隊の最前線で活動することはないが、自衛隊員の規律の維持や表彰などの仕事をする。「東日本大震災では自衛隊が注目されましたが、女性自衛官が現地に行くと、被災者の女性も安心して話してくれますし、きめ細かい支援が可能になります」と言う。
  *
 男性に向いていることも、女性に向いていることもあれば、男女関係ないことだってある。女性が無理して男性のように、それ以上に頑張らないといけないのも変だ。でも、私たちは気づかないうちに、自分たちで勝手に設けた前提条件で物事を考えていないだろうか。これは男性向きとか女性向きとか。男女の問題に限らないが、立ち止まって考えてみれば、前提が間違っていることも結構あるのではないか。一線の捜査も、官僚組織を統率することも。田中さんに、仕事を辞めたいと思ったことはありますか?と尋ねると、「一回もありません」と明快だ。いま、警察庁を志しながらも、性差を気にする女子学生に相談されると、躊躇(ちゅうちょ)なくこう答えるそうだ。「大丈夫。女性でもまったく問題ありません」。もちろん、小説のコーデリアも最後には見事、事件を解決する。

*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140424&ng=DGKDZO70291530T20C14A4KE8000 (日経新聞 2014.4.24) 
良い組織・良い人事(8) 女性の昇進を阻む制度 東京大学教授 大湾秀雄
 安倍晋三政権は成長戦略の中で女性の活躍支援をうたい、指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%程度とする政府目標を掲げています。目標達成に向けた大きな障害は何でしょうか。日本の「遅い昇進」と、必要以上に長時間労働するという意味のラットレース(ネズミの競走)均衡は、女性の管理職が少ないことにもつながります。昇進してから出産・育児を経験できれば、高い給料で保育園やベビーシッターを確保できます。会社もせっかく投資した優秀な社員の離職を防ぐ努力をするため、出産からの職場復帰が比較的スムーズとなり、キャリアと家庭の二者択一を迫られることもないでしょう。しかし現状は「遅い昇進」制度の下、多くの女性が管理職に上がる前に出産・育児を経験します。管理職昇進のために要求される長時間労働をすることは難しく、女性は昇進競争からの離脱を余儀なくされます。ラットレース均衡が社会全体で生じると、女性が家庭内労働に専業し、夫は会社に尽くすという家庭内分業を個々の夫婦の判断としては合理的なものにします。総務省の社会生活基本調査によると、子供のいる共働き家庭で1日のうち、妻が家事・育児に費やす時間は5時間弱なのに対し、夫は40分弱にすぎません。こうした家庭内分業が社会的な規範になると、女性に家庭内労働の負担が重くのしかかるため、男性のように長時間労働することは不可能となり、ビジネスの世界で女性が排除されてしまいます。実際、企業の中のどういう部署で女性が管理職に昇進しているか見ていくと、他部署との調整が少ない専門職が多いようです。しかし、経営陣に参加するためには、幅広い職務経験が有利であることを過去の研究が示しています。専門職で課長まで昇進する女性を増やせても、役員にまで多くの女性が進めるようにするためには、現在の均衡を変える必要があるのかもしれません。


PS(2014.5.3追加):*6のように、黒人がサルに似ているとして侮辱をこめてバナナの皮を投げ込んだ観客を批判せず、それを拾って皮をむき一口ほおばってこともなげに競技を続けた選手を褒める日本のメディアがあるが、その思慮の浅さには眉をひそめざるを得ない。観客を相手にして、サッカー選手ができる抗議行動はそれ以外になかったのだろうが、日本女性の場合も、差別されたことを抗議すると、それを「大人気ない」と言う日本人がおり、本末転倒である。
 「差別」は、された側が抗議しなければ決してなくならないものであるため、抗議することは重要なのだ。日本の男性が「差別される側の気持ち」を理解しないのは、国内では差別する側として心地よくやっているからだと思うので、ここでわかりやすい例を出して説明しよう。★あなたは、侮蔑をこめて「JAP」と呼ばれたら、「はいはい、そのとおりです。みんなそうです。」と皆で言ってへらへら笑い、そうするのがよいことだと思っているのか?★ 
 大人なら、自分がその立場になったらどう思うかを考えればすぐにわからなければならないし、わからず屋が多い場合は、自由と平等の敵を法律で定めなければならないだろう。

*6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11116824.html?ref=pcviewpage
(朝日新聞 2014年5月3日) (天声人語)広がる「バナナの輪」
 「バナナの輪」が世界に広がっている。先月末、サッカー・スペインリーグの試合で、観客がブラジル人選手に向けてバナナを投げ込んだ。サル扱いを意味する侮辱であり、人種差別である▼当の選手はこともなげに拾って皮をむき、一口ほおばって競技を続けた。そのクールな態度が称賛を呼んだ。ブラジルのスター、ネイマール選手はバナナを手にした自分の画像をネットに掲げ、「俺たちは皆サルだ」と書いて抗議の意思を示した▼元日本代表監督のジーコさんやインテル・ミラノの長友佑都選手も輪に加わった。誰に指図されたのでもないだろう。差別反対を訴えるうねりの、あっという間の広がり方は爽快ですらある。この世界にはまだ希望があると感じさせる▼最近の我が世相を顧みる。サッカー競技場に「日本人のみ」の横断幕が出現した。四国の遍路道でも外国人排斥の貼り紙が現れた。ヘイトスピーチの当事者は、憲法が保障する表現の自由を盾に正当性を主張する▼もとより差別は自由を奪う。例えばナチスの記憶を受け継ぐドイツは、自由の敵には自由を与えない。ヘイトスピーチは法で罰せられる。不寛容を許さない姿勢は「たたかう民主制」と呼ばれる▼ただ、そこには、誰が敵かを権力が恣意的に決める危険性も潜む。だから、日本国憲法は自由の敵を初めから排除はしていない。この場合、敵にまず立ち向かわなければならないのは社会であり、個々人ということになる。そう、あのバナナの輪のように。

| 男女平等::2013.12~2014.6 | 03:02 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.4.29 バリアフリー社会では、司法の“社会通念”も、このような踏切事故の責任は鉄道会社に帰属させるべきで、そうすれば、鉄道の高架化は、リスク管理上、必要不可欠になるということ
  
                      踏み切り                動物に注意
(1)社会の変化とともに、司法判決も変えるべき
 *1、*2に書かれているように、認知症の91歳の男性がJR東海の電車にはねられて死亡した事故について、JR側が遺族に賠償を求めた訴訟で、一審の名古屋地裁は男性の妻(85歳)と長男(63歳)が「見守りを怠った」として、JR側の請求通り720万円の支払いを命じていたが、名古屋高裁判決では、「監督不十分な点があった」として妻の責任だけを認めることにした。しかし、これは、鉄道事故の責任を被害者家族に押し付けており、次の点で、間違っていると思う。

 1)鉄道優先の発想は、明治5年(1872年)10月14日、「新橋~横浜」間に日本初の鉄道が開通
   した時に作られ、当初の踏み切りは横断できる余裕が十分にあったが、現在はそうではない
 2)鉄道優先の発想ができた頃は、高齢者や認知症の人は少なかったが、現在はそうではない
 3)21世紀になってから、高齢者や障害者に対するバリアフリーが徹底して行われ始めている
 4)在宅医療に移行しつつあるが、介護制度は不十分で、核家族化による「老老介護」が多い

 そのため、この名古屋高裁判決は、被害者とその家族を鞭打つものであり、判決は取り消されるべきであり、被害者家族の弁護士は、むしろ、「*3のように、高齢者が巻き込まれる踏切事故が多発しているにもかかわらず、JR東海が危険な踏み切りを放置していたこと」を反訴して、事故による精神的被害と裁判になったことによる金銭的被害について損害賠償請求すべきである。そうすれば、裁判所も、世の中の流れを察知して判決を出せると思うが、「可哀想の論理」でしか弁護できないところに、わが国の司法の、世界では闘えない論理性のなさがあるのだ。

(2)妻に監督責任を認めた名古屋高裁判決は間違っており、責任はむしろ危険な踏切を放置していた鉄道会社側にある
 *3、*4に書かれているように、名古屋高裁は、被害者である男性の長男の監督責任はないとしたが、「見守りを怠った」「センサーを作動させる措置を取らず、監督不十分な点があった」などとして要介護1の認定を受けていた当時85歳の妻に監督責任を認定して359万円の損害賠償を命じており、問題である。何故なら、踏切事故に遭った被害者の男性は、仮にセンサーが作動していたとすれば外に出なかったかどうかも疑問であるし、認知症の人を施設などに入れずに無理をしながらも家で介護して夫を亡くした妻に対して、そういう責任を求めるのは、妻に二重三重の苦痛を与えるからだ。

 また、介護で24時間見守るのは不可能であり、そうするには部屋に閉じ込めたり、縛ったりするしかないため、介護施設でそういう措置をとるようになると、バリアフリーの理念から外れる。バリアフリーとは、施設ではなく自宅を中心とする地域の中で自然に生活させ、周囲がそれを受け入れる社会への転換を目指しているものであるため、この判決は国の方針にも矛盾するのである。

(3)歩道橋は、渡るのに不便で不十分
 *3に、「高齢者が踏切を渡りきれずに犠牲になる事故がなくならず、高架化や地下化には費用の壁があるため、臨時の歩道橋を造ったり、高齢者向けに簡易エレベーターを設置したりする対策が必要だ」とも書かれているが、道路に架かっている高い歩道橋は私でさえ渡るのが大変で、「自動車の方が上がったり降りたりすべきだ」と日頃から思っているため、歩道橋が高齢者や障害者の役に立つとは思えない。従って、そういうことに金を使うよりも、万障繰り合わせて、早急に電車を高架化もしくは地下化すべきである。なお、このブログの2014年4月19日等に記載しているとおり、高架化にも多くの手法がある。

(4)認知症への地域の向き合い方
 「認知症に優しい町」宣言をしたベルギーの地域のように、認知症の高齢者が人間らしい生活を維持できるように、自宅で暮らすことを前提として、市役所、警察、タクシー、宅急便、郵便局、駅、施設などが有効な連絡網をつくり、行方が分からなくなっても、すぐに発見できるシステムを構築すべきである。

(5)踏切事故は、都会の開かずの踏切だけではない
 *5のように、踏切事故は都会だけにあるのではなく、JR九州でも、シカなどが列車と衝突して遅れた「鳥獣類による輸送障害」が、2013年度に過去2番目となる計456回に上っているが、環境という視点から、鳥獣類ならひき殺してもよいということはない。また、滅多に列車の来ない踏切では、つい油断しがちになり、30分に1本しか来ない列車に出会って事故を起こす人間の子どもや車も少なくない。

*1:http://www.saga-s.co.jp/news/ronsetu.0.2671624.article.html
(佐賀新聞 2014年4月29日) 認知症事故の賠償 家族に責任を問うのは酷
 愛知県で徘徊症状がある認知症の91歳男性が電車にはねられ死亡した事故をめぐり、名古屋高裁が男性の妻の監督責任を認定し、359万円の損害賠償を命じた。超高齢化社会で在宅介護が奨励されている中、同居家族の責任を問うのは論議を呼びそうだ。厚生労働省によると、認知症の人は65歳以上の15%を占め、全国で約462万人(2012年度)と推計されている。佐賀県内は約2万人。そのうち3割が介護者も高齢の「老老介護」とみられている。徘徊に伴う事故が増えるのは避けられず、判決は決して人ごとではない。男性は2000年ごろから認知症の症状が出始め、1人で外出し行方不明になることもあった。事故が起きたのは07年12月7日。デイサービスから帰宅して、当時85歳の妻がうとうとしていた数分の間に、近くのJR駅構内で電車にはねられて死亡した。JR東海は遺族に損害賠償を請求したが、話し合いがつかず訴訟に発展した。一審の名古屋地裁は「徘徊を防止する措置を怠った」などと家族側の責任を認めた。これを不服とした控訴審で遺族側は「24時間一瞬の隙もなく、認知症高齢者に付き添うのは不可能」と主張していた。JR側は「男性には資産もあり、ヘルパーを頼むなど防止措置はとれたはず」と過失を指摘していた。鉄道事故が起きた場合、乗客の振り替え輸送費や人件費、設備修理費などを遺族側に請求するのが通例という。しかし、徘徊は認知症の特性であり、完全に防ぐことは難しい。スタッフがそろった施設でも防げない場合がある。認知症の男性には責任能力がなく、判決は監督者の法的責任を認めた。法律論では正しくても、老老介護の実態からは釈然としない思いが残る結論だ。自宅で懸命に介護してきた人が家族を事故でなくした上、多額の賠償を負わされるのは酷である。介護の専門家から「家族は精いっぱいやっているという実態を抜きにした判決」と憤る声が出るのも当然だろう。国土交通省によると、12年度に全国で発生した鉄道事故は811件で死者は295人。認知症患者の事故統計はないものの、高齢者が踏切などで列車にはねられる事故は県内でも起きている。交通事故を含めて社会的な対応がいる。男性は改札口を通ってホームに行ったとみられ、判決はJR側の監視が不十分だった可能性にも言及している。鉄道会社の社会的責任として、ホームや踏切などの安全対策を向上させると同時に、認知症について学ぶことも必要になりそうだ。全国1万1千人の会員を持つ「認知症の人と家族の会」は、今回の裁判に関し、認知症の行動から出た被害や損害については家族の責任にしてはいけないと主張している。解決策の一例として、介護保険制度の中に損害賠償の仕組みを設けることを提案している。ぜひ検討すべきだ。田村憲久厚労相は「今回のような事故が起こり得ること自体が大きな課題。どう防ぐかを念頭に置き、政策をつくりたい」と述べている。政府を挙げた自殺対策が成果を生んだように、啓発活動にとどまらず実効性のある取り組みを求めたい。

*2:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-224387-storytopic-11.html
(琉球新報社説 2014年4月27日) 徘徊事故高裁判決 家族に責任を押し付けるな
 認知症の高齢者を抱える家族にとっては酷な判決であり、理不尽の極みだろう。徘徊症状がある認知症の91歳の男性がJR東海の電車にはねられ、死亡した事故をめぐり、JR側が遺族に賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁は男性の妻(91)の責任を認定し、359万円の支払いを命じた。昨年8月の一審判決は、男性の妻と長男(63)が「見守りを怠った」として、JR側の請求通り720万円の支払いを命じていた。高裁判決は「JR側の駅利用客への監視が十分で、ホームのフェンス扉が施錠されていれば事故を防げたと推認される」などとして減額した。妻の責任だけに変更したとはいえ、家族に責任を課す司法判断の本質は何も変わっていない。認知症患者の介護に当たる家族の実態を理解せず、高齢化社会が直面する問題に正面から向き合おうとしない判決だと指摘せざるを得ない。事故は2007年12月に発生。認知症で「要介護4」の認定を受けた愛知県大府市の男性がJR駅構内で電車と衝突して死亡。同居していた妻と近くに住む長男の嫁が目を離した隙に外出していた。男性の家族は、夜間の徘徊を防ぐため自宅玄関にセンサーを設置するなどの対応を取っていたが、高裁判決は「センサーを作動させる措置を取らず、監督不十分な点があった」とし、要介護1の認定を受けていた妻の責任を認めた。高裁判決は、高齢者が介護に当たる「老老介護」の厳しい実態にも目を閉ざし、非情ですらある。施設を利用している高齢者でさえ、徘徊で行方不明になる事例を考えると、在宅介護の厳しさは察するに余りある。徘徊の責任を家族に押し付ける司法判断がまかり通れば、認知症のお年寄りを社会から隔離し閉じ込めてしまうことになる。在宅介護を放棄してしまう家族も出てくるだろう。厚生労働省の調べでは、認知症高齢者は12年時点で462万人と推計される。にもかかわらず、認知症の理解と社会で支える仕組みは追い付いていないのが現状だ。国や自治体をはじめ、企業や学校など地域が連携した取り組みは待ったなしだ。今回の高裁判決は、介護する家族の意欲を大きく減退させるだけでなく、社会全体で認知症対策を考える機運をそぐ。判決は取り消されてしかるべきだ。

*3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11110013.html?ref=nmail
(朝日新聞 2014年4月29日) 踏切、高齢者置き去り 渡りきれぬ場所、解消進まず
 高齢者が長い踏切を渡りきれず、犠牲になる事故がなくならない。理想は立体交差化を進めて長い踏切をなくすことだが、費用の壁は高い。進む高齢化にどう対応すればよいのか。現場を歩いて考えた。東京都足立区にある東武伊勢崎線の踏切。今年2月6日の夜、自転車を押していた女性(当時76)が、北千住駅を出発した急行列車にはねられて死亡した。踏切は長さ23メートル。普通、急行、快速など様々な列車が通るため、線路は5本ある。警視庁などの調べでは、女性が2本目にさしかかったころ、警報機が鳴り始めた。後ずさるように引き返し、1本目まで戻ったところではねられた。音が鳴り始めてから遮断機が下りるまで約20秒、その約20秒後に電車が通過した。今年3月、25歳の記者が実際に歩いてみると、18秒で渡りきった。だが、近くの羽室万里子さん(76)は32秒かかった。2~3年前から足腰が悪く、背中もやや丸い。踏切内は急ぎ足で進むようにしているが、向かいからの歩行者や自転車は、止まらないとよけられない。「危ないからできれば通りたくないけど、買い物に行くには一番近道なので」。踏切は北千住駅から約800メートルの場所にあり、朝夕は登下校の子どもや通勤する人、昼間は買い物客が多い。1時間に40分以上閉まることがあるとして国土交通省が認定する「開かずの踏切」の一つで、東武鉄道によると、ラッシュ時は1時間に49分閉まったままになる。遮断機が上がってすぐ、再び警報音が鳴ることも珍しくない。近所の遠峰良輔さん(68)は、渡りきれずに遮断機をくぐって外に出る人をよく見かけるという。「若い人はいいかもしれないけど、年寄りには不親切」と不満を漏らす。
■高架・地下化、費用の壁
 国交省は、歩行者の速度を成人並みの時速5キロ(秒速約1・39メートル)と想定し、警報機の鳴り始めから遮断機が下りるまでの標準時間を15秒としている。だが国立長寿医療研究センターの鈴木隆雄所長によると、75歳女性の平均歩行速度は秒速1メートル。高齢者は急がないと、長さ15メートル以上の踏切は渡りきれない計算になる。また、鈴木所長は「認知機能が低下した高齢者は、警報が鳴り出しても前に進むべきか戻るべきか瞬時に判断できない。パニックになっているうちに事故に遭いかねない」と指摘する。現状には、同じ国の機関からも疑問が示されている。総務省近畿管区行政評価局が大阪府内で長さ15メートル以上の踏切20カ所を調べたところ、4カ所で遮断機が下りるまでに電動車いすが渡りきれない可能性があった。同局は昨年10月、「高齢者や障害者に配慮していない」と国交省近畿運輸局などに指摘した。遮断機が下りるまでの時間を延ばす手もあるが、国交省鉄道局は「開かずの踏切がますます開かなくなり、渋滞が悪化する」と否定的。線路の高架化や地下化で踏切をなくすことを目指している。開かずの踏切を含めた全国の「危険な踏切」は2007年4月時点で1428カ所あった。そのうち13年3月までの6年間でなくなったのは130カ所だけ。土地の取得や建設に巨額の費用がかかるうえ、地権者との協議に時間がかかり、なかなか進まないという。JR東日本は、約7千カ所ある踏切の約4割に障害物検知装置を付けているが、対象は車だ。歩行者用は「動物やごみにも反応するため、導入予定はない」という。閉じ込めなどの事例には、約6割の踏切に設置した非常ボタンで対応する姿勢だ。ただ、列車の停止まで数百メートルかかることもあり、「押した後は中に入らないで」と呼びかける。(工藤隆治)
■臨時の歩道橋を
 鉄道事故に詳しい関西大の安部誠治教授(公益事業論)の話 都市部の踏切事故をなくすには、究極的には立体交差化が有効だ。少しずつ進んではいるが、一気に解消するのは難しい。立体交差化までのつなぎとして、臨時の歩道橋を造ったり、高齢者向けに簡易エレベーターを設置したりする対策が必要だ。
■周囲が見守って
 踏切事故の遺族でつくる「紡ぎの会」の加山圭子代表の話 高齢者や車いすの人が長い踏切を渡ろうとしている際は、周りの人が渡り終えるのを見届けたり、声をかけあって一緒に歩いたりしてもらえれば。そうすれば、万一、踏切内に取り残されそうになっても、すぐに非常ボタンを押したり、周囲に助けを求めたりでき、事故を防げるのではないか。
◆12年度は死者121人
 <高齢者の踏切事故> 2012年度に起きた全国の踏切事故295件のうち、60歳以上の通行者が巻き込まれたのは48%にあたる142件。死者数は121人で、ここ十数年ほぼ横ばいの状態が続いている。
■高齢者が巻き込まれた主な踏切事故
 <2014年1月 長さ:10m>
 神奈川県座間市の小田急線で杖をついた認知症の女性(84)が死亡
 <13年11月 長さ:9m>
 東京都世田谷区の東急大井町線で手押し車を押した女性(96)が死亡
 <13年10月 長さ:12m>
 横浜市緑区のJR横浜線で倒れた男性(74)を助けようとした女性(40)が死亡
 <13年8月 長さ:22m>
 横浜市鶴見区のJR横須賀・京浜東北線で杖をついた男性(88)が死亡
 <12年10月 長さ:9m>
 大阪府豊中市の阪急宝塚線で酸素ボンベのカートを引いた女性(73)が死亡
 <05年8月 長さ:41m>
 横浜市鶴見区のJR東海道・横須賀・京浜東北線で腰の悪い女性(80)が死亡


*4:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=68092
(沖縄タイムス社説 2014年4月29日)  [認知症徘徊事故]地域で支える仕組みを
 認知症の介護現場に目をつぶり、介護家族を苦境に追いやりかねない。愛知県大府市で2007年12月、徘徊症状がある認知症の91歳男性がJR東海の電車にはねられ死亡した。この事故をめぐり、JR東海が遺族に振り替え輸送代などの損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁は「見守りを怠った」などとして、男性の妻(91)の責任を認定し359万円の支払いを命じた。一審名古屋地裁では、遠くで別居する長男(63)の監督責任も認め、計720万円の支払いを命じていた。高裁判決は監督責任から長男を除いたものの介護家族の責任を問うたことに変わりはない。死亡した男性は認知症で「要介護4」、妻も「要介護1」と認定されていた。妻がまどろんでいるすきに男性は外出していた。判決は「男性が通常通っていた事務所入り口のセンサーを作動させなかった」と妻を非難したが、とても納得できるものではない。認知症の介護で24時間片時も目を離さず見守るのは不可能だ。そうするには部屋に閉じ込めるしかない。介護施設でも責任を恐れ、同じ措置をとるようになるだろう。国の「認知症施策推進5カ年計画(オレンジプラン)」は、施設から自宅を中心とする地域の中で生活することへの転換を目指している。介護家族を萎縮させるような判決は国の方針にも反する。判決はJR東海に対しても監視体制が十分でホームの扉を施錠していれば事故が防げたと推認されると指摘した。だが家族やJRだけの責任負担にしないためにも賠償制度の仕組みづくりが必要だ。
   ■    ■
 認知症は誰でもなる可能性がある。これからもさらに増加することが確実であることを考えると、決して人ごとではないからである。厚生労働省は、65歳以上の認知症高齢者は12年時点で、約462万人と推計している。予備軍の軽度認知障害は約400万人に達し、それを含めると、計約862万人に上る。65歳以上の実に4人に1人が該当する「認知症時代」が到来しているといっても過言でない。認知症徘徊に関し、ショッキングなデータがある。警察庁によると、認知症が原因で行方不明になったとして12年に9607人の届け出があった。沖縄県警にも63人。12年中に確認できた人は、それ以前から行方不明になった人を含め9478人。このうち359人は死亡していた。
   ■    ■
 国内でも地域ぐるみで認知症対策に取り組んでいる自治体があるが、NHKテレビで「認知症に優しい町」宣言をしたベルギーの地域が紹介されていたことを思い出す。住み慣れた自宅で暮らすことを前提に、NPOが中心となって市役所、警察、病院、商店街などに呼び掛け、緊密なネットワークをつくる。行方が分からなくなった場合でも情報を共有し、いち早く発見できるシステムを構築していた。認知症の高齢者が人間らしい生活を維持するために地域全体がどう向き合うか。ベルギーの事例は多くのヒントを与えるのではないだろうか。

*5:http://qbiz.jp/article/36591/1/
(西日本新聞 2014年4月26日) シカと衝突、最多317件 JR九州、鳥獣被害が倍増
 JR九州は25日、2013年度の運転事故発生状況を発表。シカなどが列車と衝突し遅れが発生する「鳥獣類による輸送障害」が、過去2番目となる計456回に上った。集計を始めた06年度の2倍超に増加。いずれも乗客にけがはなかった。同社によると、里山の荒廃などにより、線路沿いにシカやイノシシが出没するケースが増え、列車との衝突事故が年々増加。特にシカは13年度に317回で過去最多だった。豪華寝台列車「ななつ星in九州」でも計10回発生し、うち8回はシカだったという。同社は05年から、肥薩線でシカが線路内に侵入しないよう防護ネットを設置。日豊線、日田彦山線などでも同様の対策を進めている。同社は「防護ネット区間を延長し、衝突事故の減少に努めたい」としている。

| まちづくりと地域振興::2014.4~2015.4 | 05:41 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.4.27 再生可能エネルギー利用の自動車・住宅・農林漁業で、原発の必要性はなくなる (2014.4.28、29に追加あり)
   
    *1より                 スマートハウス               *4より
(1)自動車の進歩
 *1のように、住友化学は電気自動車(EV)に使うリチウムイオン2次電池の高温に強い絶縁材の生産能力を現在の2.3倍にし、米テスラ・モーターズのEVが搭載するパナソニック製の電池向けに供給するそうだ。これにより、テスラ・モーターズのEVは、1回の充電で500キロメートル走れるようになり、環境負荷や燃費も考慮すれば、軽くガソリン車を越えるEVとなった。

(2)住宅の進歩
 *2のように、積水ハウスは、2003年から販売している断熱性に優れた同社の省エネ住宅をリフォームし、太陽光発電システムや都市ガスによる燃料電池を設置して、省エネ型の空調設備などへ切り替える提案をしており、これにより光熱費(電気・ガス料金)を実質的に0にできるそうだ。

 このようなエネルギー自給型住宅は、経済性、環境負荷、災害時の危機管理に優れているため、特定の住宅だけでなく、多くの住宅に応用できるように、それぞれの機器のデザインやラインナップが増えれば、日本だけでなく、世界で爆発的に売れると思う。特に、電力インフラが頼りない地域では、これしかない必需品になるだろう。

(3)自家発電住宅、農漁業の協力が脱原発を可能にする
 自家発電による電力自給型の住宅が普及すれば、住宅は、電力の需要者ではなく供給者となる。また、*3のように、JAは、「環境が破壊されて一番困るのは農業者」として、第26回全国大会で「将来的な脱原発と再生可能エネルギーの利活用」を決議し、広い面積での太陽光発電や小水力発電・バイオマス発電、発電残さの肥料への活用などを進めているため、原子力発電からの脱却はすぐにでも可能だ。

(4)原発立地自治体は、他の産業へシフトを - 佐賀県玄海町の事例から
 脱原発が行われれば、原発立地地域も原発収入への依存から脱却しなければならないため、それぞれの地域の特性を生かした産業を育てなければならない。

 例えば、すでに九州大学と薬草の研究を進めている玄海町は、苺とタバコの産地でもあるため、*4のような付加価値の高い農産物を作る方法がある。実に有効な物質を含んで人間の歯肉炎を軽減する苺やワクチンの成分を作るタバコ、アルツハイマーの予防に役立つダイズなどを生産することもできるし、その他の製品を作ることも可能だろう。

 ともかく、脱原発のためには、多くの人が原発立地地域の産業振興に協力することが必要である。

*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140425&ng=DGKDASDZ240E1_U4A420C1TJ2000
(日経新聞 2014.4.25) 住友化学、EV電池部材を倍増 50億円投資、米テスラ向けに
 住友化学は電気自動車(EV)に使うリチウムイオン2次電池の部材を増産する。大江工場(愛媛県新居浜市)で50億円を投じて2015年春までに、高温に強い絶縁材の生産能力を現在の2.3倍に当たる1億1000万平方メートルへ増やす。一般的なEV10万台以上で使う量に当たる。米テスラ・モーターズのEVが搭載するパナソニック製の電池向けに供給する。高耐熱の絶縁材を採用すれば電池の容量が大きくなり、EVの走行距離を伸ばせる。住友化学はテスラの生産拡大を部材面で支える。他のEVメーカーへの供給も視野に入れている。増産するのはリチウムイオン2次電池の主要部の絶縁材であるセパレーター。樹脂フィルムにアラミド樹脂などを塗って耐熱性を高めた。住友化学はセパレーター市場で世界5位前後の大手メーカー。耐熱性を高めた高機能製品に特化し、この分野では旭化成や東レ、米セルガードなど競合他社に先行している。テスラのEVは一般的なEVの約3倍に当たる最大85キロワット時の高容量電池を積み、1回の充電で500キロメートル走れる。

*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140426&ng=DGKDASDZ250BO_V20C14A4TJ1000 (日経新聞 2014.4.26) 積水ハウス、電気・ガスを実質無料に リフォーム提案
 住宅最大手の積水ハウスは一般家庭の住宅向けに、電気やガスの料金を抑えられるリフォームサービスを始めた。同社が建築した6万戸以上の省エネ住宅が対象で、新たに太陽電池システムなどを設置する。初期費用は約420万円。売電収入を見込めるため、15年程度で回収できるという。積水ハウスがリフォームを提案するのは、2003年から販売している断熱性に優れた同社の省エネ住宅。リフォームでは太陽光発電システムのほか、都市ガスを使って電気や湯をつくる燃料電池を設置する。省エネ型の空調設備などへの切り替えも提案する。同社の試算によれば4人家族で生活した場合、電気・ガス料金は年間約26万円。発電出力が4.6キロワットの太陽電池と700~750ワットの燃料電池を取り付け、効率の高い燃料電池の利用などで消費電力を抑えられる。約28万円の売電収入も見込め、電気・ガスが実質的に無料になるという。

*3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27093
(日本農業新聞 2014年4月14日) JAの取り組み報告 脱原発フォーラム
 原子力発電からの脱却を目指す市民団体や研究者らは13日、脱原発フォーラムを東京都千代田区で開いた。JA全中の村上光雄副会長、JA福島中央会の川上雅則参事が参加し、JAグループの再生可能エネルギーの利活用などを発表した。市民ら820人ほどが参集した。原発と経済、食や生活への影響、JA、生協、漁協の取り組みなどの報告があった。研究者や弁護士らで組織する原子力市民委員会が作成した政策提言集「市民がつくる脱原子力政策大綱」も紹介した。全中の村上副会長は福島県の被災農地の状況などを話し、「なぜ素晴らしいふるさとで農業ができないのか。環境が破壊されて一番困るのは農業者」と強調。第26回JA全国大会で、将来的な脱原発と再生可能エネルギーの利活用を決議したことを説明した。村上副会長は再生可能エネルギーの事例として、中国地方の小水力発電を紹介した。電力は概ね1000キロワット以下で、大きなダムを作らずに川から水路を引き農業用水などを利用して発電していることなどを解説した。福島中央会の川上参事は農業の復興に向けた取り組みを説明した。「地域営農ビジョンを進めていくことが福島の復興再生に重要になる」と述べた。地域で再生可能エネルギー事業に取り組み、脱原発に向けた循環型社会をつくる方策を示した。売電収入による収益の安定化や、バイオマス発電の熱を施設園芸に使用して周年栽培する構想を説明。被災農業者らの雇用にもつなげる考えだ。これまで取り組みのあった耕畜連携をもとに、畜産酪農家から牛の糞尿や飼料作物を再生可能エネルギー施設に提供してもらうことや、発電残さを肥料に活用することなども説明した。川上参事は「地域営農ビジョンの単位ごとに、地域資源がどれだけあるか見極めて運営することが大切」と話した。

*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140427&ng=DGKDZO70432930V20C14A4MZ9000 (日経新聞 2014.4.27) 薬の成分、植物内で生産
 遺伝子組み換え技術を使って様々な医薬品を植物の中で作る「植物創薬」の時代が幕を開けた。この創薬技術は生産コストを大幅に減らせることに加え、新型の感染症の流行時に素早くワクチンを供給できるなどの利点もある。動物用の治療薬がこのほど商品化され、人間向けでも開発が進んでいる。札幌ドームの近くにある産業技術総合研究所北海道センター(札幌市)。その敷地に、完全に密閉された環境で遺伝子組み換え作物を栽培する工場がある。防じん服に着替えて工場内に入り、窓越しに栽培室をのぞくと、鮮やかな緑色の苗が目に飛び込んできた。これはイチゴで、農薬メーカーのホクサン(北海道北広島市)が栽培している。夏には赤く実る予定だが、食用ではない。「インターフェロンという物質が実の中で大量に作られる」と、ホクサンの田林紀子動物薬課長は説明する。イチゴの実は収穫されると、別の部屋ですりつぶされて凍結乾燥される。その後、医薬品製造に求められるGMPと呼ぶ国際的な基準を満たす工場で最終製品となる。同社は3月、イヌの歯肉炎を軽減する薬として発売した。遺伝子組み換え植物を原料とする医薬品は世界初という。工場は遺伝子の拡散を防ぐため、周囲よりも気圧を低くして空気が外に流れないようにしている。排気はフィルターでろ過し、排水も滅菌処理する。遺伝子組み換え作物を栽培する場合、カルタヘナ法にもとづいて厳重管理しなければならない。この工場は同法(第2種産業利用)に適合した国内初の施設として2007年に国の認定を受けた。遺伝子組み換え技術を使って医薬品を作る場合、今は大腸菌や動物の細胞を使うのが一般的だ。大量に培養し、医薬品となるたんぱく質などを抽出・精製する。ただ、細胞や細菌の培養や有効成分の抽出、精製に手間がかかって費用がかさむ。食べられる植物なら、すりつぶすだけで有効成分も一緒に取り出せる。建設に数億円かかるが、季節や天候などに左右されず、一年中栽培できる。「医薬品のような高付加価値製品を作ると、生産コストの削減につながる」と、産総研の松村健・植物分子工学研究グループ長は強調する。産総研の工場の隣には、別の植物工場がある。北海道科学技術総合振興センターが12年に設立したグリーンケミカル研究所だ。出光興産や北興化学工業など5社が入居し、医薬品などを作る遺伝子組み換え作物の開発に取り組んでいる。5つある栽培室の1つで、ダイズが青々と生い茂っている。室内はセ氏23度前後に保たれており、1年に3~4回収穫できる。「アルツハイマー病に効果が見込める物質が含まれている」。北興化学の寺川輝彦研究部長はダイズの実を見せながら説明する。アルツハイマー病の予防に役立つワクチンとなる成分で、実1グラムにつき3ミリグラム含まれるという。弘前大学の研究チームがアルツハイマー病を発症するように遺伝子を操作したマウスに、このワクチン成分を与えたところ、発症を遅らせる効果があるとわかった。原因物質とされるβアミロイドと呼ぶたんぱく質が脳に蓄積する量も減っていた。動物実験をさらに進め、数年後に人間で臨床試験(治験)を始めたい考えだ。ダイズを粉末にしてカプセルに詰め、飲んでもらうことを想定している。植物創薬を目指す動きは世界で活発になっている。遺伝子組み換え作物を栽培する完全密閉型の植物工場は、ドイツのフラウンホーファー研究機構や米バイオベンチャーのケンタッキー・バイオプロセシング(ケンタッキー州)など、少なくとも世界に8カ所ある。田辺三菱製薬は13年に子会社化したカナダのベンチャー企業で、インフルエンザワクチンの成分を作る遺伝子組み換えタバコを生産する。今のように鶏卵を使うと6カ月かかるワクチン製造を1カ月に短縮できるという。5年後の実用化を目指している。遺伝子を組み換えた微生物を使って製造する医薬品が増えつつある。今後はコストや生産調整のしやすさから、遺伝子組み換え植物を使う医薬品製造が広がるとみられる。


PS(2014.4.28追加):漁業における太陽光発電の設置事例を追加する。このほか、養殖施設に風リング風車を設置した例もある。

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2661728.article.html
(佐賀新聞 2014年4月12日) オリックスと契約 ノリ施設に太陽光発電
 佐賀県有明海漁協(草場淳吉組合長)は、太陽光発電装置の設置場所として屋根を約20年間貸し出す契約をオリックス(東京)と交わした。貸出料は年間約200万円。同社は、ノリ加工・集荷施設30カ所の屋根に太陽光パネル約1万1千枚を設置して売電する。草場組合長とオリックス国内営業統括本部地域営業担当の井尻康之執行役が佐賀市の同漁協本所で調印した。井尻執行役は「高い建物がなく、全国有数の日射量を誇る好立地」と選定理由を説明。草場組合長は「再生可能エネルギーの推進に一役買えれば」とあいさつした。年間総発電量は約286万6300キロワット時、一般家庭800世帯分を見込む。パネルは、川口スチール工業(鳥栖市)が独自工法で設置する。5月に着工し、9月までに全施設での稼働を目指す。オリックスは金融サービス事業が主な業務で、2012年度から太陽光発電事業に取り組んでいる。


PS(2014.4.29追加):*6のように、コンビニやスーパーに電気自動車の急速充電器があると便利で、高速道路のサービスエリアにもこのタイプの店舗があれば、電池切れの心配なく快適に高速道路を走れる。また、イートインコーナーは、20分程度で飲食を済ませなければならないため、そこで買ったものを座って食べられるスペースにすればよいのではないだろうか。

*6:http://digital.asahi.com/articles/photo/AS20140428003756.html
(朝日デジタル 2014年4月29日) ファミマ500店に電気自動車充電器 1回617円
 ファミリーマートは28日、電気自動車(EV)用の急速充電器を年内に全国500店で設置すると発表した。約20分の充電中に買い物をしてもらったり、「イートインコーナー」で飲食してもらったりするねらい。大手コンビニエンスストアが本格的に充電器を置くのは初めてという。充電器は幹線道路沿いの店などの駐車場に置く。1台あたり300万~500万円の費用がかかるが、政府や自動車メーカーの補助を使うため、ファミマの負担はほぼゼロという。EVのほかにプラグインハイブリッド車も使えて、客は1回617円(税込み)で充電できる。充電サービスを提供するジャパンチャージネットワーク社の有料会員になれば、1回308円(同)で済む。業界団体によると、急速充電器は国内では自動車販売店や公共施設などに約2千カ所ある。24時間使えるコンビニに設置されれば、さらに普及が進む。

| 環境::2012.12~2015.4 | 04:18 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.2.28 野生動物と接触させないスマート鶏舎・畜舎にすれば、発電で稼ぎながら、伝染病を防げるということ
  ⇒ 
            開放型畜舎                太陽光発電付密閉型畜舎
(1)家きんや家畜の伝染病感染が多いのは何故か
 *1に書かれているように、熊本県で高病原性鳥インフルエンザの発生が見付かり、多良木町と相良村で5万6000羽づつ殺処分し、付近の養鶏農家26戸の家きんの移動、搬出が制限された。死亡鶏の感染ウイルスはH5亜型と確認され、感染経路は野鳥だったと言われている。

 また、*2のように、豚流行性下痢(PED)が発生し、半年過ぎても全国(33道県)で急激に広がっている。前に口蹄疫発生で家畜の全頭殺処分となった宮崎県川南町の遠藤威宣さんは、再度、被害を受けたそうだ。また、4年前に発生した口蹄疫は、人の移動が活発だったゴールデンウイーク後に感染が拡大したが、今回の豚流行性下痢はゴールデンウイーク前であり、いのししなどの野生動物との接触も影響があるのではないかと思う。

(2)ウイルスの抜本的対策は、予防で対応して感染させないことである
 ウイルスは、生物の要件とされる細胞を持たず、遺伝子だけを持ち、他の生物の細胞を利用して増殖するという生物と物質の中間的特徴を持っている。そのため、細胞に働きかけて殺すタイプの消毒剤ではウイルスを殺すことはできず、消毒薬や消石灰での消毒に助成しても、あまり意味がない。

 「それでは、どうすればよいのか」と言えば、予防が一番で、そのためには、①密閉できる鶏舎や畜舎を作って野生鳥獣と接触しないようにする ②世話をする人もウイルスを運ばないようにする ③餌や水の清潔を保つため管理をしっかりする ということが挙げられる。

 「それでは、コストがかかりすぎる」と思う人もいるだろうが、密閉できる鶏舎や畜舎を作り、太陽光発電や地中熱を使って温度・湿度・空気をスマートにコントロールし、低コストで快適な環境を作って、適切な餌を与えれば、生産性が上がるとともにリスクが回避されるため、結局は、利益が増えると思う。ここでも、鶏舎や畜舎に働いてもらうのが、省力化と高生産性の鍵ではないだろうか。

*1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27091
(日本農業新聞  2014年4月13日)  鳥インフル 熊本で確認 国内で3年ぶり
 農水省は13日、熊本県で高病原性鳥インフルエンザの発生が見付かったと発表した。国内では2010年11月から11年3月にかけて9県で発生して以来、3年ぶりとなる。県南部の多良木町、相良村の当該2農場で家きんを殺処分、焼埋却し、農場の半径3キロ以内は家きんを移動させない「移動制限区域」、3~10キロ以内は区域外からの持ち出しを制限する「搬出制限区域」に設定。当該農場だけでなく養鶏農家26戸の家きんの移動、搬出を制限した。まん延防止に向けて、全都道府県に早期発見の徹底を呼び掛けた。農水省によると熊本県が13日午前までに、多良木町で5万6000羽を飼養するブロイラー養鶏場で1100羽の死亡を確認。死亡した5羽を簡易検査し全て陽性だった。当該農場の管理者は相良村で5万6000羽の養鶏場も管理していた。このため県は相良村の農場も発生農場と判定。12日夜から両農場で家きんの移動を制限している。死亡鶏の感染ウイルスは13日、遺伝子検査でH5亜型であることを確認された。最終的な確定には早くて3日程度かかるが、農水省は「ほぼ感染とみて間違いない」(動物衛生課)とみる。一連の事態を受け、安倍晋三首相は13日、林芳正農相に対応を指示。(1)現場の情報収集(2)農水省と関係府省が緊密に連携し、防疫措置を徹底(3)国民への正確で迅速な情報提供――を命じた。首相の指示を踏まえ、林農相は13日に開いた農水省の対策本部で「まん延防止は初動対応が何よりも重要」と強調。当該農場での防疫措置に加え、移動・搬出制限区域設定や当該農場周辺の主要道路11カ所の消毒ポイント設置などを通じ、感染拡大を防ぐ方針だ。全国単位でも注意を呼び掛けるため農水省は13日、全都道府県に早期発見、通報などの徹底を促す通知を発出した。食料・農業・農村政策審議会の家きん疾病小委員会(小委員長=伊藤壽啓鳥取大学教授)も同日開き、専門家の意見を踏まえて今後の留意点を確認した。高病原性鳥インフルエンザ防疫指針に基づく防疫措置の徹底、感染経路究明の疫学調査などを重点的に進める。熊本県は、高病原性鳥インフルエンザ防疫指針に基づき、当該2農場の家きんの殺処分と焼埋却を始め、周辺は移動・搬出制限区域に設定した。同県の蒲島郁夫知事は「初動が最も大事だと認識している。まん延を防ぎ、一刻も早い清浄化を目指す」と話した。

*2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27354
(日本農業新聞 2014/4/25)  豚流行性下痢 GW前 拡散防止が鍵 
 7年ぶりに発生した豚流行性下痢(PED)が止まらない。発生から半年過ぎても、全国で急激に広がっている。PEDウイルスが農場外でまん延すれば、防ぐことは一層難しくなる。4年前に発生した口蹄(こうてい)疫では、人の移動が活発だったゴールデンウイーク(GW)後に感染が拡大しただけに、連休前の拡散防止が鍵となる。(鹿住正人)
●人の移動 活発化警戒 農場外まん延怖い
 口蹄疫発生で家畜の全頭殺処分となった宮崎県川南町。経営再開し、母豚400頭を飼育する遠藤威宣さん(60)の養豚場で3月、PEDが発生した。「子豚が600頭死んだ。一貫経営のため子豚がいなければ生産は落ちる」。遠藤さんは危機感でいっぱいだ。川南町を管内に持つJA尾鈴は、南九州でのPED発生を受け、消毒薬と消石灰を農家に無償で配布。2月から町と協力して消毒ポイント2カ所で車両を消毒する。
●国道も防疫を
 防疫態勢を整えても警戒は続く。遠藤さんの農場はPED発生後、ウイルスを封じ込めたが、周辺では発生が相次いでいる。「県道や町道だけでなく、国道でも防疫対策が必要だ」と訴える。町内には東九州を縦断する国道が通る。人や車の往来が激しくなる5月の連休後、口蹄疫の発生が急増。その結果、牛、豚の全頭殺処分となり、遠藤さんにとってつらい記憶が残っている。JA畜産部の松浦寿勝部長も「農場外でウイルスの密度をいかに下げることができるか。それが肝心だ」と指摘する。
●発生は33道県
 PEDは昨年10月に沖縄県で確認されて以来、半年間で33道県(4月21日現在)に拡大し、約8万3000頭が死んだ。2月末まで発生は7県だったが、3月20日以降は21道県で発生。人の動きが激しい春休みや年度の替わり目に発生は一気に広がった。感染防止に向け、各地の農場では防疫を徹底している。愛媛県今治市で年間約1万7500頭の肉豚を出荷する、JA全農えひめグループのJAえひめアイパックス直営農場「せと風ファーム」もその一つだ。農場では、普段から敷地内に入るゲートの前で全車両を消毒。従業員は一日に何度もシャワーと着替えを繰り返し、担当以外の畜舎に入らないようにするなど、対策を徹底している。だが、PED拡大を受けて対策をさらに強化。車両は全てフロアマットまで消毒。従業員は食事や退社の時間をずらすなど接触を極力減らし、畜産関係の車両も出入りを制限するほど。
●消毒に支援策
 入場を規制できない出荷車と飼料運搬車は消毒後30分、ゲート前で待機。出荷者の運転手は農場内で車から降りない。松田行雄場長は「防疫は周辺の協力が欠かせない」と必死だ。豚の観察も徹底し、異常があればすぐに家畜保健衛生所へ通報する。「万一発生すれば、ウイルスを増やさない、拡散させない責務がある」と話す。ゴールデンウイークに入れば、海外を含めて人の移動は激しくなる。このため農水省は「地域で実施する消毒には助成がある。農場の周辺や入り口の消毒にも使える」(動物衛生課)と、支援策を活用した防疫の徹底を呼び掛ける。

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2014.4.26 自然の大きさやすごさを知らないリーダーが多いのは何故か ― 「フクシマで、地下水バイパス専用井戸や凍土壁を作れば汚染水が防げる」「火山は滅多に噴火しない」という決め付けが起こった事例から
   
                2014.4.21西日本新聞より

(1)原発の立地は、火山の噴火も想定外にするのだろうか
 *1-1のように、西日本新聞には、九電の川内原発などへの火山の影響を検討した原子力規制委員会の議論は不十分とする火山研究者の批判が相次いでいることが書かれている。そして、国内の巨大噴火は約1万年に1回発生してきたとされているが、桜島はいつも噴火しているし、普賢岳が噴火しだしたのは最近で、その後、東日本大震災が起こっているため、巨大噴火が近い将来ではないという保証はなく、阿蘇で巨大噴火が起これば、九州全域に数時間で1メートル以上の降灰があるそうだ。

 そのため、*1-2のように、原子力規制委員会が再稼働の前提になる審査で、九州電力川内原発1、2号機の火山影響評価を議論し、より厳しい基準を設けるよう注文したそうだが、他から言われて初めて気がつくようでは、このほかにも気づいていないリスクが沢山ありそうだ。

 しかし、*1-3に書かれているように、日経新聞は、「川内原発が今夏再稼働すれば、九電管内の電力の余力は14.2% あると経産省が試算し、九電で余った電力は関西電力などに融通することも可能だ」と再稼動推進の姿勢で報道しており、これは、目先の小さな利益のために九州全域を人質にする愚行である。

(2)富士山も噴火が近そうだ
 *2-1のように、300年間、噴火がなかった富士山も、2011年3月11日の東日本大震災と(これから起こる)南海トラフ地震の誘発により、噴火の可能性があることを火山学者らが指摘している。私も、「東京⇔福岡」間を飛行機でよく往復するが、2012年頃、富士山の途中が少し盛り上がり、その部分を起点とする見慣れない雲ができているのを見て、その部分の温度が高くなっており、富士山の噴火も近いのではないかと思ったことがある。

 また、*2-2のように、中部電力が再稼働を原子力規制委員会に申請した浜岡原発4号機は、南海トラフ巨大地震の想定震源域でもあるため、浜岡原発を動かしてはならないことに全く同感である。それだけでなく、速やかに使用済核燃料を取り出して、廃炉にすべきだ。

(3)フクシマの汚染水対策は、地下水の水量や動きを想像できない人の発想だ
 *3-1の産経ニュースは、「原子力規制委員会は、原子炉建屋の地盤沈下、周囲環境への影響、安全性、安定的な管理、地下水の動きの把握などの問題を指摘して認可しないため、規制委と経産省が対立しており、規制委の反対で汚染水問題の解決そのものが停滞する可能性がある」と報道している。しかし、規制委と経産省が必ず同じ意見であれば規制委は役割を果たさないのであり、このような違いを「対立」と報道すること自体、規制委と経産省の関係がわかっていない。

 私も、経産省と東電が建設を進める「凍土遮水壁」については、最初に聞いた時から、①壁で地下水を防ぐことは出来ない ②四方を長期間凍らせ続けるためには莫大な費用がかかる ③核燃料のスラグを地下水で冷やし続けているのではないのか など、多くの疑問を感じていた。

 さらに、*3-2のように、東電の地下水バイパス計画で掘った「くみ上げ専用井戸」については、そもそも井戸でくみ上げれば地下水が減ると考えるのは甘いし、爆発で放射性物質が撒き散らされ、汚染水タンクからも汚染水が漏れているため、付近の地下水は次第に汚染されると考えるのが自然だ。そのため、地下水の放射性物質濃度が東電の基準値を上回った井戸ごとに運用を停止することになるのであれば、井戸を掘った費用は一体いくらかかったのかと思う。

 そして、*3-3のように、人為的とも思われる汚染水トラブルが相次ぎ、多核種除去設備(ALPS)は機能していない。そのため、この調子では原発の地元だけでなく、関東までも深刻である。

(4)全体としては、リーダーを出せない地方の公教育が問題なのだろう
 経産省、東電、メディアなどの対応を見ていると、全体として、「自然の大きさの中では人間の力は微々たるものである」ということを知らない人ばかりのようである。また、「情報を操作しても真実は変わらない」「言い方を変えても内容は同じだ」というようなことも忘れているようだ。

 そのため、「どうして、このようなリーダーばかりになっているのか」を考えたところ、都市部の中高一貫校出身者が東大はじめ有名大学に多く進学し、そのうちの法学部卒が多くの場所でリーダーになっていることに気がついた。つまり、日本のリーダーの多くは、コンクリートで作られた人為的な都市で生まれ育ち、大学では「人間が法律や基準を定めれば世の中はそれに従って動く」と勉強し、本物の自然の大きさやすごさ、その中での人間の小ささを感じたことがなく、本物の自然の美しさも知らない男性が大半だったのである。

 つまり、都会育ちの同じタイプの人ばかりが、各場所(財務省・経産省ばかりでなく、国交省・農水省・メディア・企業等も)でリーダーになっていることの弊害が出ているわけだが、これは、男女を問わず多くのリーダーを出せない地方の公教育の遅れに原因があると考える。

*1-1:http://qbiz.jp/article/36135/1/ (西日本新聞 2014年4月21日) 巨大噴火無いと言えぬ 原発再稼働へ議論不足 火山研究者批判続々
 全国の火山研究者に行った西日本新聞のアンケートで、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)などへの火山の影響を検討した原子力規制委員会の議論を「不十分」とする批判が相次いだ。国内では約1万年に1回発生してきた「巨大(破局的)噴火」が、最大60年と短期間の原発稼働中に起きるか予測できないが、発生すれば被害は計り知れない。研究者は「リスクを国民に伝えた上で再稼働するかを判断すべきだ」と注文する。規制委による川内原発の審査で、九電は桜島を含む近距離の姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾北部)などが稼働期間に噴火に至る可能性を否定。「マグマだまりが破局的噴火直前の状態ではない」などとの理由だが、多くの研究者は異論を唱える。熊本大の横瀬久芳准教授は「(常時観測している)桜島や雲仙の噴火ですら定量的に予測できていない。科学的な根拠があるとは思えない」と批判。そもそも、地下のマグマ量を把握する方法が確立されていないというのが共通の意見だ。九電は川内原発の再稼働後、地殻変動などを監視して噴火の前兆を把握する方針だ。岩手県立大の伊藤英之教授は「異常が検知されて巨大噴火に至るのか、終息するのか正確な予知は難しい」と明かす。九電は送電線の火山灰を洗浄装置で落とす対策などを示しているが「装置の必要数など、未検討の事項が多い。議論は極めて表層的だ」(東日本の国立大教授)との見方もあった。
  ◇    ◇
 地下のマグマが一気に地上に噴出する巨大噴火で懸念されるのは、火山灰と火砕流の被害だ。阿蘇で巨大噴火が発生すれば、九州全域は数時間で1メートル以上の降灰があるとの試算もある。雨が降れば灰の重さは約2倍に膨れて電線が切断され、電力供給が滞る可能性は強まる。火砕流は火山灰、軽石などが有毒ガスと一緒に時速100キロ超で流れる現象。数百度の高温で、山を乗り越えて四方100キロを上回って広がることもある。巨大噴火による被害について、アンケートでは「周辺の多くの人が火砕流で死亡」(23人)、「九州などは生活できなくなる」(20人)と甚大な被害を指摘する回答が大半を占めた。ある研究者は「火砕流が川内原発を直撃すれば、運転員の生存は見込めない。原発は制御不能となる」と予測。静岡大の小山真人教授は「原発が火砕流に襲われた場合、どのくらいの放射性物質が放出される恐れがあるのか検証されていない」と批判する。東工大の寺田暁彦専任講師は「阿蘇など最大級のカルデラ噴火では、火砕流で100万人単位の死者が出るはず。深刻な放射能汚染は世界に広がる」と懸念。「確率が低くても、過酷な噴火被害の可能性がある場所に原発を立地すべきでない」と首都大学東京の鈴木毅彦教授は警鐘を鳴らす。規制委は、火山研究者による専門委員会の設置などには否定的だが、群馬大の早川由紀夫教授は「火山学者を入れた議論が不可欠だ」と提案する。

*1-2:http://qbiz.jp/article/36398/1/
(西日本新聞 2014年4月24日) 川内原発の火山監視体制「厳格に」 規制委、九電に再考要求
 原子力規制委員会は23日、再稼働の前提になる審査で、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の火山影響評価を議論した。九電はカルデラの巨大噴火の兆候を判断する基準や監視体制を説明したが、規制委はより厳しい基準を設けるよう注文。規制委としても今後専門家から意見を聞いて慎重に判断する方針を示した。今後、火山噴火への対応が長引けば、川内原発の審査終了がずれ込む可能性がある。川内原発の敷地周辺では、最も近い姶良カルデラ(鹿児島湾北部)の過去の噴火による火砕流の痕跡が3カ所見つかっている。九電は「敷地に火砕流が到達した可能性は否定できない」として、姶良を含む5カルデラの監視活動の具体策を提示。巨大噴火の兆候や対応について「マグマが増える速さが10倍になれば、地殻変動などの観測を詳細に実施する」とした。これに対し島崎邦彦委員長代理は「10倍になるまで何もしないのはあり得ない」と指摘。もっと早くマグマがたまることを想定して基準を作るよう求めた。九電は、事故時の対応をまとめた保安規定を5月末に提出する予定。噴火の兆候の判断基準や対応策は、この規定に明記しなければならない。内容について、原子力規制庁幹部は「今後審査会合の場で検討する」としており、議論が長引く可能性もある。島崎委員長代理は23日の会合で、火山の影響評価について「われわれもしかるべき検討が必要だ」と言及し、専門家に意見を聞く考えを示した。規制委はこれまで、外部の意見を聞くことに否定的だったが、「火山の審査や新規制基準は不十分だ」との指摘が相次ぎ、方針転換したとみられる。

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140426&ng=DGKDASFS2504K_V20C14A4EE8000
(日経新聞 2014.4.26) 川内原発、今夏再稼働なら九電管内の余力14.2% 経産省が試算
 経済産業省は25日、九州電力川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県)が今夏に再稼働すると、九電管内の電力需給の余力をあらわす予備率が14.2%になるとの試算を明らかにした。川内原発が動かなければ、予備率は安定供給に最低限必要な3%ちょうどだった。川内原発が再稼働すれば昨年より電力需給が厳しい西日本全体でも余力が生まれる可能性がある。経産省が同日開いた電力需給検証小委員会(委員長・柏木孝夫東工大特命教授)に示した。原子力規制委員会による安全審査が進む川内原発の再稼働は8月以降の見通し。予備率は8月に1基の再稼働が間に合えば8.9%に、2基なら14.2%に上がるという。川内原発が2基動けば需要に対する供給の余力が51万キロワットから238万キロワットに増す。仮に100万キロワット級の火力発電所が停止しても供給力にまだ余裕がある。九電で余った電力は関西電力などに融通することも可能。西日本では今夏、関電の予備率が3%ちょうど。経産省は川内原発の再稼働による融通の拡大効果は見込まなかったが、関電管内の電力需給にもゆとりが出る可能性もある。同小委は中部電力と北陸電力を含む西日本の今夏の予備率が3.4%との報告書を正式に了承した。昨夏より2.5ポイント悪化しており、政府は5月中に全国への節電要請の内容を決める。

*2-1:http://thepage.jp/detail/20140303-00000011-wordleaf
(THE PAGE 2014.3.3) 300年間沈黙の富士山 巨大地震で噴火誘発か?
 2月23日は「富士山の日」。昨年はユネスコの世界遺産リストに登録され、“日本のシンボル”としても世界にアピールする富士山だが、その一方で懸念されているのが噴火の可能性だ。300年間も噴火もなく優美な姿を見せ続ける富士山に対して、特に2011年3月11日に起きた東日本大震災、さらには静岡県沖から四国・九州沖で発生が予測される“南海トラフ地震”の誘発による噴火の可能性を、火山学者らは指摘する。美しさを翻して突然襲いかかる自然の猛威に、いっそうの心構えや防災の準備は必要だ。
●世界の巨大地震と火山噴火
 これまで世界各地で発生したM(マグニチュード)9クラスの巨大地震は、「例外なく火山噴火を誘発した」と指摘するのは火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長(東京大学名誉教授)だ。1952年のカムチャツカ地震(M9.0)、57年のアンドレアノフ地震(M9.1)、60年のチリ地震(M9.5)、64年のアラスカ地震(M9.2)、2004年のスマトラ島沖地震(M9.0)では、いずれも近くの複数の火山が翌日から数年以内に噴火した。地震が火山の噴火を誘発するメカニズムのうち最も有力なのは、地震によって岩盤内の応力が変化し、火山の地下にある“マグマだまり”の圧力が減少する。するとマグマの二酸化炭素などの揮発性成分が発泡して軽くなり、上昇を始める。いったん上昇しだすと、さらにマグマの圧力が下がるので、どんどん発泡が促進され、さらにマグマが深くから供給されてくる、という仕組みだ。東日本大震災での地震も、M9.0という巨大地震(東北地方太平洋沖地震)だった。この巨大地震の発生直後、北海道から九州に至る20の火山の直下で一時、地震活動が活発化した。多くは1~2日で収まったが、箱根山(神奈川・静岡県)や焼岳(長野・岐阜県)では人に感じる有感地震もあった。また、震災4日後の3月15日夜には富士山の直下約15キロを震源とするM6.4の地震が発生し、静岡県富士宮市で震度6強が観測された。「このまま富士山噴火につながるのでは…」と、多くの火山学者らに一時緊張が走った。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S10979957.html?iref=comkiji_redirect
(朝日新聞社説 2014年2月15日) 浜岡原発 動かしてはならない
 中部電力が浜岡原発4号機(静岡県)の再稼働を、原子力規制委員会に申請した。浜岡を動かしてはならない。その再稼働の可否は、規制委の審査の次元を超えている。国全体のリスク管理の一環として、政府が主導して廃炉にしていくべきだ。理由ははっきりしている。浜岡原発が、南海トラフ巨大地震の想定震源域に立地しているからだ。複合災害を含め、どんな被害が生じるかはまさに未知数である。必ず「想定外」のことが起きる。そこを出発点に、あらためて原発の必要性を問い直し、できるだけ危険性を小さくすることが、福島での過酷事故を経験した私たちの義務だ。福島第一原発の事故で避難指示の対象となった被災者は8万人以上にのぼる。浜岡原発から30キロ圏内の防災重点区域の人口は約86万人。事実上、避難は不可能と考えるべきだ。近くには東名高速、新東名高速、東海道新幹線が通り、人やモノが日々、大量に行き交う交通の要所である。放射能漏れが起きれば、東西を結ぶ大動脈が断たれ、日本全体がまひしかねない。自動車産業を中心に製造業が集積する拠点でもある。経済活動への世界的な影響ははかりしれないだろう。「そもそも建てるべきではなかった場所にある原発」といわれるゆえんである。再稼働には地元の合意が必要だが、静岡県知事は慎重な姿勢を崩していない。中部電力が安全協定を結んできた4市でも、例えば牧之原市議会は「確実な安全・安心が担保されない限り永久停止」を決議している。原発の潜在リスクが企業の立地回避や、お茶など農産品の風評被害につながりかねないという懸念がある。浜岡原発が廃炉となれば、中部電力の経営には打撃になる。廃炉に向けて、政府はさまざまな支援を講じる必要もあろう。ただ、中部電力は発電設備に占める原発の比率が10・6%と、他の大手電力より低い。このため原発停止後の燃料費増を受けた電気料金の値上げ幅も小幅にとどまっている。原発に依存しないぶん、大阪ガスとパイプラインを構築したり、東京電力管内での電力販売に名乗りを上げたりと、経営に独自性をみせる電力会社だ。今後の電力システム改革の中で、いち早く競争力をつける可能性がある。浜岡の再稼働にこだわらず、負荷をチャンスへと転じる好機ととらえてはどうか。

*3-1:http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140418/dst14041820530009-n1.htm (産経ニュース2014.4.18)「凍土壁」6月着工困難に 規制委と経産省の対立露呈 福島第1原発
 東京電力福島第1原発事故の汚染水問題で、経済産業省と東電が建設を進める「凍土遮水壁(とうどしゃすいへき)」について、原子力規制委員会は18日の検討会で、原子炉建屋が地盤沈下したり周囲環境に影響を与えたりする可能性があるなど、安全性の問題を次々と指摘した。会合では経産省と規制委との対立が露呈し、政府が目指す6月の着工は困難になった。規制委の更田豊志委員は「どれだけ安定的に(凍土壁を)管理できるか。不測の事態に何が考えられるか検討したい」と述べ、経産省と東電に対し質問リストを出すことを明らかにした。凍土壁は汚染水対策として、政府が昨年9月に国費約320億円の投入を決定。東電は今年3月、規制委に凍土壁設置の申請書を提出し、規制委は安全性と有効性の点から設置の認可を検討してきた。会合では、安全性に疑問を示す規制委側に対し、経産省側は「過去に一線級の専門家に集まってもらい検討した」と強調したが、更田委員が「一線級だろうが関係ない。データや根拠を示してほしい」と声を荒らげる場面もあった。規制委側は特に、凍結管を地中深くまで掘って設置することから「帯水層に影響が出ないか」「大規模な凍土壁は前例がなく制御できるか」と懸念。また電気代など毎年維持費に数十億円かかるという点についても疑問視している。検討会のメンバーである高木郁二・京都大教授も「地下水の動きをちゃんと分かっているわけではない。(データの把握に)すごく時間がかかるかもしれない」と述べた。規制委は現状では認可しない構えだが、東電はすでに本格着工に向けた試験ボーリングを開始。今年度中の完成を目指しているが、規制委の反対で汚染水問題の解決そのものが停滞する可能性がある。

*3-2:http://www.minyu-net.com/news/news/0426/news8.html
(2014年4月26日 福島民友ニュース)基準値超の井戸、運用停止 第1原発・地下水バイパス
 東京電力福島第1原発の地下水バイパス計画で、赤羽一嘉経済産業副大臣は25日、くみ上げ専用井戸12本について、地下水の放射性物質濃度が東電の基準値を上回った井戸ごとに運用を停止する方針を示した。同日、県庁で面会した佐藤雄平知事に伝えた。個別の井戸で基準値を超えても東電はくみ上げ継続を強調してきたが、国の方針を受けて対応を急きょ転換し、運用停止を決めた。地下水バイパス計画は、井戸12本の水を集めた段階で分析し、基準値を下回れば海に放出する計画だが、赤羽氏は「地下水バイパスを慎重に運用していく観点から、井戸の水が(基準値を)上回った場合はいったんくみ上げを停止する」と運用停止を表明。基準値を超えた井戸でもくみ上げを継続するとしていた東電の方針については「慎重で安全に運用するよう指導する」と井戸の運用に積極的に関与する考えを強調した。

*3-3:http://373news.com/_column/syasetu.php?ym=201404&storyid=56243
(南日本新聞 2014.4.18) [汚染水トラブル] コントロールに程遠い
 東京電力が福島第1原発の汚染水約200トンを誤って移送した、と発表した。使わないはずのポンプ4台が動き、別の建屋の地下に高濃度汚染水が流入したという。にわかに信じがたい理由である。この発表の2日後には、汚染水対策の切り札とされる多核種除去設備(ALPS)でも、高濃度汚染水約1トンが漏れている。予定していた今月中の本格稼働は絶望的な状況だ。安倍晋三首相が「状況はコントロールされている」と明言したのは昨年9月だった。それから半年以上たったのに、現実はコントロールに程遠い状況である。汚染水処理につまずけば、本格的な廃炉作業は遅れるばかりだ。地元住民の不安、不信も一向に解消されない。首相は「国が前面に出る」と繰り返してきた。有言実行を求めたい。最大の疑問は使う予定のないポンプ4台が、なぜ作動したかだ。東電は配電盤にあるスイッチを作業員が故意に操作した可能性も含め、調査を進めている。当然ながら原子力規制委員会は監視体制の強化を東電に求めた。具体的には配電盤の施錠、監視カメラの設置などだ。誤送は2月にも起きている。誤って送られた高濃度汚染水が地上タンクからあふれ、タンクを囲むせきの外に約100トンが漏れた一件である。この時も閉めているはずの配管の弁が開いていた。後に何者かが誤って開け、そのミスを隠蔽(いんぺい)した疑いが出てきた。調査はうやむやに終わり、東電は弁に施錠し、監視カメラを強化した。どうして同様の対策をポンプでも講じなかったのか。異常に気づきながら現場確認は翌日とした対応を含め、緊張感に欠けると指摘されても仕方あるまい。汚染水が海に流出したり、タンクから漏れたりといったトラブルは昨年も相次いだ。その度に東電は後手後手の対応を厳しく批判された。いつまでも教訓を生かせないのは残念である。汚染水処理の現場では、1日約400トンの汚染水を貯蔵タンクの増設でしのぐ状況が続いている。「コントロール」どころか、深刻化の一途にあるとの危機感を持つべきだ。東電は廃炉、汚染水対策に特化した社内分社「福島第1廃炉推進カンパニー」を今月発足させた。汚染水を減らすための地下水バイパス計画も先週始まった。机上の計画は許されない。夏に向けて熱中症対策など、作業環境の改善にも努めるべきである。

| 原発::2013.11~2014.5 | 08:10 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.4.24 TPPと尖閣諸島が日米安全保障条約の範囲内か否かは、交換条件になる話ではない (2014.4.26最終更新)
  
   TPPのISD条項       TPPで妥協を迫られる日本と他国の食品安全基準

(1)TPPと尖閣への安保適用は、もともと関係のない事項である
 *1-1の環太平洋経済連携協定(TPP)は、日本の農業とこれまで努力してきた農業従事者の生活がかかっているだけでなく、ISD条項でわが国の主権を脅かされる可能性もあるため、*1-2の「尖閣への安保適用」を引き出す“カード”として使うなど、とんでもないことである。

 また、「自動車産業を“カード”として農業の妥結を進める」というのも、それぞれの産業において損害を受ける当事者は異なるため、“カード”と言われて損害を受ける人はたまったものではないだろう。つまり、これらの産業の当事者の努力と営みを、“カード”に使って譲歩することしかできない人は、産業を語る資格も通商交渉をする資格もないということだ。

 さらに、経済産業省の古さは、いつまでも開発途上国型の輸出に固執している点だ。しかし、自動車産業などのグローバル企業は、経営上の見地から生産拠点を市場国に移しているため、関税が下がることによってわが国の輸出増加が見込めることはあまりなく、農業の方は輸入増加で打撃が大きくなるため、その差が、安全保障の“カード”として使えるくらいだということなのである。

 しかし、*1-2のように、オバマ大統領は共同声明を出す時に、しぶしぶ「今までと変わらず、アメリカは尖閣諸島の領有権に関しては中立だが、日米安全保障条約は日本の施政権の及ぶ範囲のすべてだ」と語ったにすぎず、それは、メディアが報じるほど日本有利ではないように聞こえたので、オバマ大統領のスピーチの全文を記載してもらいたい。

(2)TPPをめぐる関係者の行動
 *3のように、農業者を代表して、JA全中の萬歳会長は22日、内閣府を訪れ、西村康稔副大臣に、環太平洋連携協定(TPP)交渉で国会決議を順守することを要請したそうだが、国民主権の国でマニフェストを掲げて選挙を行い、その結果、国会決議を行ったのだから、当然のことである。

 また、TPPは、農業だけでなく、食品の安全基準や国民皆保険制度にも影響を与えるため、*4のように、子育て中のママがTPP反対を訴え、草の根で米国ルールの押し付けに抗議を続けている。

 そのような中、*2のように、経産省の応援団である日本経団連や経済同友会が全米商工会議所などと、TPP交渉の日米協議の早期決着を求める共同提言を発表したが、その内容は、「日本は全品目の関税撤廃を目標にすべきだ」として、「センシティブな分野の譲歩を念頭に、政治的に困難な決断を下すよう求めた」というのだから、これは合理的な根拠のない結果ありきの結論であり、確かに「どこの国の利益を代弁しているのか」と思われるほど無責任きわまりないので、私も呆れている。

*1-1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK24015_U4A420C1000000/
(日経新聞 2014/4/24) 「TPP交渉は日米協議を継続」安倍首相
 安倍晋三首相は24日のオバマ米大統領との首脳会談後の共同記者会見で、焦点となっている環太平洋経済連携協定(TPP)交渉について、「日米間の懸案を解決すべく精力的な協議を継続することになった」と述べた。「この後も閣僚間で交渉を続け、共同声明の発表はその結果をみてからになる」とも語った。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140424&ng=DGKDASFS2303Q_T20C14A4MM8000 (日経新聞 2014.4.24) 「尖閣に安保適用」 米大統領、表明へ
 オバマ米大統領は23日夜、大統領専用機で羽田空港に到着した。24日に安倍晋三首相との首脳会談に臨み、沖縄県の尖閣諸島について日米安全保障条約に基づく防衛義務の対象だと表明する方向。海洋進出を強める中国をけん制する狙いだ。米大統領が国賓待遇で来日するのは1996年のクリントン氏以来、18年ぶり。オバマ大統領就任後の来日は3度目で、今回は2泊3日。23日夜は都内のすし店で首相と非公式の夕食会に出席した。この後、首相は記者団に「日米同盟関係が揺るぎない強固なものであるとのメッセージを世界に発信する首脳会談にしたい」と語った。オバマ氏は来日前の一部メディアとのインタビューで、尖閣諸島について「日本の施政下にあり、日米安全保障条約5条の適用対象だ」と述べた。米ホワイトハウスが23日、発言内容を発表した。安保条約第5条は「日本の施政下にある領域での武力攻撃、共通の危険に(共同で)対処する」として、米国が日本を守る義務を負うと定めている。尖閣諸島の米国の防衛義務について米大統領が明言したのは初めて。オバマ氏は「尖閣諸島への日本の施政権を損なおうとするいかなる一方的な行為にも反対する」とも強調した。日本政府関係者は「米国の意思は固まっており、首脳会談でも言及する方向だ」と語った。日本側は首脳会談後に発表する共同声明への明記も求めている。

*2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27304
(日本農業新聞 2014/4/23)  日本は全関税撤廃を TPPで経団連 米団体と提言
 日本経団連が全米商工会議所などと共に、TPP交渉の日米協議の早期決着を求める共同提言を発表した。だが、日本は全品目の関税撤廃を目標にすべきだとしており「自ら譲歩の姿勢を示す敗退的行為」と自民党内の反発を招いている。
●自民農林議員が苦言 どこの国の利益代弁?
 共同提言は21日付で発表し、日本に「農産物を含む全ての物品について、最終的な関税および非関税障壁の撤廃を目標として交渉のテーブルに乗せることが必要」としている。また農産物の重要品目など、センシティブ(慎重を要する)な問題についても「この原則に沿った形で対応すべきだ」と求める。これに対しある自民党農林幹部は「米国にみすみす首を差し出すようなもの」とあきれ顔。「農業団体は自動車で譲歩しろとは言わないのに、なぜ経団連が農産物で譲歩するようなことを言うのか」と苦言を呈する。別の同党農林幹部も「日本の経済界の代表という自覚がない」と指摘。全米商工会議所や米日経済協議会などとの共同提案であることを踏まえ、「どこの国の利益を代弁しているか」と、その姿勢を疑問視する。経済同友会も22日付で在日米国商工会議所と共同声明を出し、センシティブ分野の譲歩を念頭に「政治的に困難な決断」を下すよう求めた。日本を代表する両経済団体が同じような動きを見せている。

*3:http://image.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27312
(日本農業新聞 2014/4/23) 国会決議の実現を 内閣府副大臣に要請 TPPで全中会長
 JA全中の萬歳章会長は22日、東京・永田町の内閣府を訪れ、西村康稔副大臣に、環太平洋連携協定(TPP)交渉で農業の重要品目を関税撤廃などの対象から除外することを求めた国会決議を順守することを要請した。西村副大臣は、決議を踏まえて交渉する考えを示した。要請では、日本とオーストラリアの経済連携協定(EPA)交渉で合意された牛肉関税の引き下げなどの影響が検証されないまま、TPPがヤマ場の交渉に入っていることに「生産現場では動揺と将来への不安、危機感が高まっている」と訴え、決議の実現を求めた。全中によれば、西村副大臣は「安倍晋三首相から米国のオバマ大統領に、農業が壊滅的な打撃を受けるような政治決断はできない、と伝えている」と答えた。日米の閣僚会談でも、甘利明TPP担当相が同様の主張をしているという。要請には、JA共済連の横井義則理事長、農林中央金庫の河野良雄理事長、全中の冨士重夫専務らが同行した。

*4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27335
(日本農業新聞 2014/4/24) TPP反対 子育てママ団結 草の根運動展開 東京都三鷹市
 環太平洋連携協定(TPP)から子どもの未来を守りたい――。東京都三鷹市在住の子育て中のママ6人が、TPP反対を訴えるチームを結成、草の根で抗議活動を続けている。インターネットで輪を広げ、毎週のように勉強会を開いてTPPの問題点を共有、「ママデモ」も展開する。24日の日米首脳会談に向けてオバマ大統領へのメッセージを書いた手作りの横断幕も作成、ママ目線で「反TPP」を訴える。
●子どもの未来 守りたい
 呼び掛けたのは、三鷹市在住のアロマセラピスト、魚住智恵子さん(49)と子育てママたち。TPPの問題は、昨年夏の参院選をきっかけに知り、勉強を始めた。「子どもに安心できる国産の米や肉、野菜を食べさせ続けることができるのか」「政府はなぜ、全て秘密交渉で進めるのか」。知れば知るほど、疑問が湧いてきた。メンバーの多くが子育て中ということもあり、食に関心が高く、「子どもの未来を思えば、無関心でいられない」と行動を起こした。「女性は出産を通して、命の重みを日々感じながら生きている。TPPは食や医療、雇用など命に直結する」と魚住さん。早速、インターネットで問題を発信。市民グループが主催する反TPPの官邸前デモなど抗議行動にも参加し、講師を呼んで勉強を重ねた。3月末には都内で初の「ママデモ」を開催。ネットなどを通じて女性を中心に500人が集まり、「政治は私たちの問題」「子どもを守ろう」などと訴えた。家事と子育て、仕事の合間を縫って行動するため、メンバーの睡眠時間は数時間。それでもめげない。2児の母親、杢大(もくだい)美根子さん(41)は「子どものことを考えたら、TPPを推進する政府に黙ってなんかいられない。寝る間なんて惜しくない。子どもの未来のためにという一点で女性は一つになれる」と思いは熱い。女性こそ、TPPにもっと関心を知ってほしいと呼び掛ける。日米首脳会談を控え、最大のヤマ場となる今週は、仕事を休んで東京・永田町の首相官邸前や議員会館前に集合、抗議行動を展開する。横断幕には、オバマ大統領のイラスト付きで「日本の母親の力でTPPを蹴散らしたい」と英文のメッセージを添えた。2児の母、廣岡彩さん(31)は「怖い顔で反対と訴えるだけでなく、生活のいろいろな問題にTPPが関わっている事実を思いを込めて伝えたい。米国ルールの押し付けは日本の母親が許さない」と声を張り上げる。


PS(2014.4.25追加):当然のことではあったが、*5のようにアメリカのオバマ大統領が、尖閣が条約適用の対象だと明言されたことで、尖閣に関する安堵感が大きくなった。現在、尖閣諸島は、沖縄県石垣市に所属するため、石垣市が、灯台や漁船・観光船の休憩地となる港を作ったらよいのではないかと思う。離島は風力発電に向いているため、船も電動船にすれば、燃油高騰を気にせず安価な燃料で漁に出ることができるし、尖閣諸島の住所は、南小島:沖縄県石垣市登野城2390、北小島:同2391、魚釣島:同2392、久場島:同2393、大正島:同2394(国有地)なのだから・・。

   
      尖閣諸島            電動船          離島の風力発電
*5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014042502000137.html 【東京新聞社説 2014年4月25日】 <日米首脳会談>尖閣「安保」適用 対中信頼醸成に力点を
 日米首脳会談でオバマ大統領は、沖縄県の尖閣諸島を日米安全保障条約第五条の適用対象だと明言した。中国の海洋進出をけん制する狙いだろうが、対中関係は信頼醸成にこそ、力点を置くべきだ。大統領は首脳会談後の記者会見で「日本の施政下にある領土、尖閣も含めて安保条約第五条の適用対象となる」と述べた。尖閣が条約適用の対象だと明言した米大統領はオバマ氏が初めてだという。同条約第五条は「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」に「共通の危険に対処するように行動する」ことを定める。尖閣諸島は日本が有効に支配しており、侵攻時に米軍が出動するのは条約上の義務だ。オバマ氏の発言は、当然の内容である。にもかかわらず、歴代の米大統領は安保条約の適用対象だと明言することを避けてきた。領有権をめぐる二国間対立には関与しないという米国の外交政策に加え、経済などで相互依存関係を強める中国との間で無用な摩擦を起こしたくなかったのだろう。オバマ氏はシリアやウクライナ問題で、外交姿勢が弱腰と批判されている。東シナ海や南シナ海での中国による「力による現状変更の試み」はこれ以上許さないと、尖閣問題では強い姿勢を示す必要があると判断したようだ。環太平洋連携協定(TPP)交渉で日本の譲歩を引き出すため、安全保障政策を重視する安倍晋三首相に配慮したのかもしれない。ただ中国は、尖閣対象発言への反発を強めている。日本と極東地域の平和と安全を守るための安保条約が逆に、地域の緊張を高めることになっては本末転倒だ。大統領は尖閣対象発言の一方、首相との会談で「事態がエスカレートし続けるのは正しくない。日中は信頼醸成措置をとるべきだ」との立場を鮮明にした。当然のことをあえて確認して中国の反発を招くよりも、どうやって信頼関係を築くのかに知恵を絞った方が建設的だ。首相は会談で「集団的自衛権の行使」の容認に向けた検討状況を説明し、大統領は「歓迎し、支持する」と述べたという。集団的自衛権の問題は国論を二分する大問題である。米大統領の支持という「外圧」を、憲法改正手続きを無視した「解釈改憲」の正当化に悪用してはならない。


PS(2014.4.26追加):*6の「聖域守れねば脱退が筋」という主張はもっともで、北海道新聞は堂々と正論を書く点が評価できる。

*6:http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/535710.html
(北海道新聞社説 4月26日) TPP合意せず 聖域守れねば脱退が筋だ
 環太平洋連携協定(TPP)交渉をめぐる日米協議は、安倍晋三首相とオバマ米大統領との首脳会談後も続行する異例の展開となったが、結局、大筋合意には至らなかった。米国は牛肉と豚肉の関税を撤廃か大幅削減することを求めていたもようだ。牛肉・豚肉は、衆参両院の農林水産委員会が段階的な関税撤廃も認めないと決議した聖域の重要5農産物に含まれる。わずかでも関税を残せば守ったことになるといった言い訳は通らない。拒否して当然だ。国会決議は聖域が確保できない場合、脱退も辞さないとしている。交渉の出発点となった約束を忘れてはならない。安全保障を人質に強硬に譲歩を迫る米国との交渉は困難さを増している。政府は妥結ありきではなく、毅然(きぜん)たる態度を貫くべきだ。両国が合意を見送ったことで、交渉全体の遅延を懸念する声も上がっているが、国民にとって、むしろ停滞は望ましい。TPPの交渉内容は秘密にされている。国民に中身を伝えずに、首脳会談などの節目をとらえて妥結を急ぐやり方は、目隠しをして前進を促すようなものだ。この機会にいったん立ち止まり、交渉の経緯を振り返って、TPPが抱える問題点をじっくり検証する必要がある。
◇あまりに強引な米国
 そもそも、日本政府の見通しは甘かった。最初から、米国には聖域に配慮する考えなどなかったと言わざるを得ない。昨年2月の日米首脳会談で「聖域なき関税撤廃が前提ではない」ことが確認できたとして、首相はTPP交渉参加を決断した。ところが、米国の対応はあまりに強硬だった。関連業界が安易な妥協を認めず、11月に中間選挙を控えた米議会もオバマ大統領に通商交渉権限を与えようとしない。議会などを説得するため、米政府は目に見える成果をなりふり構わず追求した。要求の中には、一定台数の米国車をそのまま日本に輸出できるように、日本の安全基準を緩和するものまであったという。これでは、もはや通商交渉とは呼べず、ほとんど米国車の押し売りに等しい。日米共同声明には「2国間の重要な課題について前進する道筋を特定した」と記された。筋違いの要求をのまされ、聖域を危うくするような道筋だとしたら、断じて容認できない。
◇秘密主義は通らない
 通商交渉のたびに、日本の農産物が焦点とされ、自由化に抵抗する過保護でわがままな農家や農協といった批判が繰り返される。だが、このような紋切り型の見方は、TPPの問題を矮小(わいしょう)化してしまう。TPPは経済に限らず、環境、医療、労働などさまざまな分野にかかわり、社会や暮らしのありようを変える可能性をはらむ。例えば、医療関係者は、米製薬会社が医薬品を高く売ることができるように、米国が日本の薬価算定ルールの変更を要求してくることを懸念している。医薬品が高騰すれば、健康保険財政を圧迫し、国民皆保険を弱体化させる要因となりかねない。政府は守秘義務を盾に、根拠も示さず、ただ「国民皆保険を守る」と言うだけだ。聖域さえ守り通す保証がないのに、こんな言い分をうのみにはできない。
◇不公平の疑念拭えぬ
 TPPの目的は、関税を原則として全廃した上で、企業活動や投資をしやすくする統一ルールを設定することにある。国有企業への優遇策は撤廃を目指す。投資先の国の政策変更で損害を被った企業が、相手国を訴えることができるISDS条項も用意されている。これは大企業、とりわけ国境を越えて事業を展開する米国などの多国籍企業に好都合な仕組みと言える。多国間で貿易・通商の共通ルールをつくる試みは重要だとしても、当然ながら、その中身と決め方は公平であるべきだ。米国の基準に合わせ、各国・各地域の文化、伝統に根ざした制度や慣行を「非関税障壁」と決めつけて踏みにじるものであってはならない。こうした弊害を避け、公正さを担保する前提は、情報の公開と民主的な合意形成だ。TPPにはこれが決定的に欠けている。生活全般に影響を及ぼす協定の内容が、批准の時まで国民に隠されるというのは異常だ。日米同盟強化の名の下に、国民の未来に不安をもたらすならば、受け入れるわけにはいかない。

| 環太平洋連携協定(TPP)::2012.11~ | 08:18 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.4.23 車の進化も、日本よりドイツの方が科学的・合理的で、やはり勉強は大切だ。

              *1より
(1)燃費規制への対応が、ガソリン車の改善とハイブリッド化という先見性のなさ
 *2のように、スズキは、新興国でも燃費規制が広がるという理由で、ガソリン1リットル当たり40キロメートルを目指す方針を明らかにしたそうだが、日本では、スズキの軽自動車は、公共交通機関が頼りにならない地方で、女性が生活の足として使っているものだ。そのため、環境影響や燃料費のコストダウンが大切で、ガソリン車での長距離ドライブの快感を求めてスズキの軽自動車に乗る人はまずいない。

 そのような中、現在は、電気自動車のラインナップが少なすぎるのが問題であるため、スズキの軽自動車を発展させるには、ガソリンエンジンを改良するよりも、クリーンさと安全性を追求した電気自動車にした方が、女性はじめ環境意識の高い人に好まれて将来性があると考える。また、例えば、スーパーの駐車場に太陽光発電の屋根を取り付け、安く電気自動車に充電する急速充電器を設置しておけば、そのスーパーの客も増えるだろう。

 そして、*1に書かれているように、電気自動車は将来の本命として既に進み始めており、インド、中国、東南アジアでも排気ガスを出せる時代ではなくなるため、軽自動車のガソリンエンジンを今から改良したり、ハイブリッド化したりするのは、先見性がないと思う。

(2) 「特定の病気」への差別を助長する「自動車事故厳罰化法」を定めた人の不見識
 *3に書かれているように、「自動車運転死傷行為処罰法」が2014年11月20日に参院で可決成立したが、この法律の問題点は、「故意による無謀運転」に「特定の病気」を含めたことで、この「特定の病気」に関する条項に対しては、日本てんかん学会や日本精神神経学会などの専門家が反対の声を上げていた。その理由は、問題なく運転できる「患者」が大半を占めるにもかかわらず、特定の病気であれば自動車を運転できないとか、厳罰に付される可能性があるという認識が広まり、病気に対する差別が助長されて、「患者」の社会参加を妨げるからである。

 これに対し、ドイツのBMWは、上の図のように、アクセルから足を離せば、ブレーキが強力に利いて一気に減速するという形で自動車を改良しており、前にも書いたが、こちらの方が正しい解決法である。

*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140423&ng=DGKDZO70275290T20C14A4TJH000 (日経新聞 2014.4.22) 電気自動車(EV) 、BMW 三菱自動車 日産自動車
 化石燃料を使わず、排ガスを出さない電気自動車(EV)は、次世代エコカーの有力候補だ。1充電当たりの走行距離が短いこともあり、まだ街角で見かけることは少ないが、ここにきて急速充電器が増えるなどインフラ整備も進み、価格も下がってきた。各社は「環境に優しい」「静かで力強い走り」などの特長を前面に押し出して売り込んでいる。EVは家庭の専用電源で数時間、商業施設などに設置されている急速充電器なら30分程度充電すれば、100キロメートル以上走れる車種が多い。ただ、実際の走行距離は暖房使用や急加速など使い方次第でカタログ値の2~5割も短くなる。
■樹脂製車体を採用
 独BMWの「i3」はフル充電で229キロメートルの走行が可能だ。発電用エンジン搭載車だと最大約440キロメートルまで伸ばせる。骨格はアルミニウム合金、車体は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を採用。重いバッテリーを搭載しながら車両重量を抑えるとともに、高い剛性を実現した。ガソリンエンジンは高回転域で出力が高まるが、モーターは始動後すぐに最大の力を発揮。「i3」は車体の軽さを生かして、時速100キロメートルまで7.2秒で加速する。操作性に優れる後輪駆動を採用し、「EVといえど走って楽しい車に仕上げた。日本仕様では立体駐車場に対応して全高を下げた」(日本法人の田島崇・BMWiプロダクトマネジャー)。2009年に発売された三菱自動車の「i―MiEV(アイ・ミーブ)」は13年11月に一部改良した。カーナビなどのぜいたく装備をそぎ落とした都市部での2台目使用に割り切った仕様で、1充電走行距離は120~180キロメートルと控えめだ。「加速性能は過給器(ターボ)付き車をやや上回る水準に設定して、回生ブレーキの利き具合などを含めガソリン軽自動車と同じ走行感を目指した」(長田鉄也・商品企画部マネージャー)。EVはプラグインハイブリッド車(PHV)などと同様に、国や自治体などから計数十万円の購入補助金がもらえる。アイ・ミーブは軽自動車規格のため、税金や保険料などの維持費も安い。
■計器類の視認性高く
 日産自動車の「リーフ」は世界累計販売台数10万台超のEVベストセラー車。12年11月の一部改良で廉価車種を導入し、周囲の状況がわかるアラウンドビューモニターなど装備を充実させた。その後も価格を下げたため、国の補助金も下がったがユーザー負担230万円程度から購入できる。リーフ車両開発主管の門田英稔氏は「専用設計でモーターとバッテリーの最適化を考え、出足のスムーズさに気を使った」と語る。1充電走行距離は228キロメートル。エコ運転状況、バッテリー残量表示、回生状態など多様な情報を示すメーター類の視認性が高いのも特長だ。

*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKDASDZ160FE_W4A410C1TJ1000
(日経新聞 2014.4.17) スズキ、1リットル40キロめざす 新興国展開、優位に
 スズキは16日に燃費改善に向けた新技術を発表し、ガソリン1リットル当たりで40キロメートルを目指す方針を明らかにした。軽自動車「アルトエコ」は同35キロとすでにトップの燃費を実現しているが、「42.195キロ」を目標に掲げているダイハツ工業に対抗するとともに、新興国展開を優位に進める。
●スズキは今後、ハイブリッド車の開発を始める(会見した本田副社長)
 「低燃費化の流れは新興国で一段と強まる」。同日開いた技術説明会で本田治副社長はこう強調した。スズキが燃費にこだわるのは、2020年ごろに新興国でも燃費規制が広がり、インドや東南アジアなどにも技術が生かせると考えているためだ。「シンプルで低価格の制御システムを取り入れる」(本田副社長)。スズキは今後、ハイブリッド車(HV)の開発を始めるが、小型車は利幅が薄いためトヨタ自動車やホンダのように複雑でコストが高いシステムは取り入れにくい。既存技術の改良で燃費改善を進める。減速時にためた電気を電装品などに利用する独自のシステム「エネチャージ」を改良。加速時の駆動補助にも電気が使えるようにする。車の骨組みとなる4つの車台は軽量の3タイプに集約して15%軽くし、ガソリンエンジンの燃焼効率も高める。スズキのインドの子会社は同国での自動車販売でシェア首位。インドではイタリアのフィアットからディーゼルエンジンを調達していたが、2気筒で排気量800ccのタイプは新たに自社で開発し、同国市場で韓国の現代自動車やタタ自動車の引き離しを狙う。

*3:http://www.bengo4.com/topics/974/ (弁護士ドットコム 2013年11月21日)  「特定の病気」への偏見を助長する!? 自動車事故「厳罰化法」の問題点とは?
 悪質な自動車運転で他人を死傷させた場合の罰則を強化する「自動車運転死傷行為処罰法」が11月20日、参議院で可決、成立した。新法の柱は、悪質な運転に適用される「危険運転致死傷罪」に、新しいルールが盛り込まれたことだ。飲酒や薬物使用、特定の病気の影響により「正常な運転に支障が生じる恐れがある状態」で事故を起こした場合の罰則を、死亡事故は懲役15年以下、負傷事故は懲役12年以下とする、という内容だ。ところが、この「特定の病気」に関する条項に対して、日本てんかん学会や日本精神神経学会などは反対の声を上げていた。「特定の病気」には、てんかんや統合失調症などが想定されているからだ。この「特定の病気」に関する条項は、なぜ盛り込まれたのだろうか。また、反対があるのは、なぜなのだろうか。重大な交通事故案件を多く扱う宮田卓弥弁護士に聞いた。
●新法の背景には「てんかんの発作」によって起きた事故がある
 「今回の法律に病気に関する条項が含まれることになった直接の背景は、2011年に栃木県鹿沼市で発生した死亡事故です。この事故の加害者(運転手)は、クレーン車を運転中にてんかんの発作を起こし、6名の児童を死亡させました。加害者にはてんかんの持病がありましたが、運転免許の取得や更新の際に持病を申告せず、薬の服用を怠っていました。加害者はまた事故当時、別の事故で有罪判決を受け、執行猶予中でした」。この事故をめぐり、どのような議論があったのだろうか。「加害者には当初、危険運転致死罪(最高刑・懲役20年)の適用が検討されましたが、この罪の処罰対象である『故意による無謀運転』があったかどうかが問題となり、最終的に同罪の適用は見送られました。この加害者は結局、自動車運転過失致死罪(最高刑・懲役7年)で処罰されましたが、遺族らは刑があまりにも軽すぎると指摘し、法改正を求めていました」。今回の法律は、こうした状況に対する立法府のリアクションで、高いハードルがあった「危険運転致死傷罪」と、それ以外の「自動車運転過失致死傷罪」(最高刑・7年以下の懲役)とのギャップを埋めるため、その中間となる「新類型」を作りだした、ということだ。「今後、政令によって、てんかんが『特定の病気』として定められれば、鹿沼市の事故と同じような事故が起きた際に、この『新類型』で処罰できるようになります。その意味では、今回の法案は、刑罰に被害者の意向を重視しようとする最近の傾向に沿った形といえます」
●問題なく運転できる「患者」が大半を占めている
 この新ルールには、どんな問題点があるのだろうか。「いま懸念されているのは、法律が病名を特定することによって、その病気が自動車の運転に支障を及ぼす危険なものである、との誤った偏見を形成・助長するおそれです」。どういうことだろうか?「特定の病気の患者が事故を起こせば、すぐにこの条項が適用されると考えるのは『誤解』だということです。本来、この法律が処罰しようとしているのは、たとえば、てんかんの持病を申告せずに運転免許を取得し、服薬を怠って運転し、てんかんの発作により運転が困難になった結果、人を死傷させたような場合です。現実的には、てんかん患者であっても、治療により運転適性を有する状態を維持している人が大半を占めています。このような方々は、新しい法案の処罰対象には含まれてこないでしょう」。残念ながら、こうした話は、まだ十分周知されているとは言えなさそうだ。「このままだと、特定の病気だけを理由に処罰されるという『誤解』が国民に広まってしまう可能性があります。そうなってしまえば、病気に対する差別が助長され、患者の社会参加を妨げることにつながりかねません」。ごく一部に悪質なケースがあったからといって、それが患者全体の差別につながるような事態は、絶対に避けなければならないだろう。宮田弁護士のこうした思いが、一人でも多くの読者に伝わることを願いたい。

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2014.4.22 新たな教育改革の必要性 (2014.4.22追加あり)
  
    幼稚園就園率      義務教育の就学率       高校・大学進学率
(下から3歳児、4歳児、5歳児)

(1)教育の必要性と現在の教育制度について
 2012.12.1の記事を始め、このブログの「教育・研究開発」のカテゴリーに多面的に記載したように、先端の人材を育成するためにも、質の良い労働力を育てるためにも、教育は不可欠であり、よい教育を受ける機会を与えられた人は、それだけ考えるツールが増し、幸福になれる機会も多い。

 そして、現在の教育の基礎となった教育改革は、*1に書かれているように、米国教育使節団が教育の機会均等を基本理念とした報告書をまとめ、1947年に義務教育の小・中学校から高校、大学へと進む6・3・3・4制を定めて、すべての子どもに差別なく9年間の義務教育を受けさせ、高学歴への道も開いたものだ。1946年に公布され1947年から施行された日本国憲法には、国民が等しく教育を受ける権利を有することが明記され、これによって、1947年に教育基本法と学校教育法が公布・施行されている。

(2)では、なぜ新たな教育改革が必要なのか
 戦後すぐに行われた教育改革は、戦前の6年間の義務教育とその先にあった複雑な高等教育を、すべての子どもに対し、9年間の義務教育と高学歴への道を開くというものだった。これにより、上の真ん中のグラフのように、義務教育の就学率は1970年代に100%近くなり、高校進学率も右のグラフのように1990年台には96%以上となって、その時代の経済に資する質の良い労働力を育成する目的を果たした。

 しかし、現在、高校は、96%以上の進学率でありながら、義務教育ではないため無償化されておらず、親の経済力が子の進学に影響したり、少子化の原因になったりしている。また、進学率50%を超える大学も同様だ。さらに、幼児教育を行う幼稚園の就園率は、上の左のグラフのように、1990年前後の65%を最高として、共働きの影響で保育園にシフトして幼稚園の就園率が減少傾向にあるとはいえ、現在も4歳児と5歳児では53~54%、3歳児でも41~42%の就園率になっている。

 そのため、産業がグローバル化・高度化して、高度な人材や労働力が求められる現在、新しい時代にあわせた教育改革は、必要であるとともに、合理的だと考える。

(3)新しい時代にあわせた教育改革とはどういうものか
 *1によると、安倍首相が、学制改革への意欲を表明したそうだ。私は、(2)の現状や教育における貧富の差の解消、子どもを産めない理由の一つとなっている親の学費負担を考えれば、3歳から18歳までを義務教育として無償化し、教育内容を体系化し直して、必要なことはゆっくり学ばせるのがよいと思う。勉強が難しく感じられるのは、教育を短期間で行い、よく理解しないうちに先に進むからで、時間をかけてしっかりやれば、誰でもついていけるだろう。

 そのため、3歳~8歳までの6年間(初等教育)、9歳~12歳までの4年間(前期中等教育)、13歳~18歳までの6年間(後期中等教育)というように、義務教育を6・4・6制に移行し、中等教育以降は、必要な事項を学習し終われば飛び級させたり、外国から来て下の学年の勉強をしたい人がいれば、必要な科目を履修させるなどして、柔軟な選択が出来るようにしてはどうかと思う。

(4)「勉強すること=学歴偏重、名目主義」というのは変な論理
 *1には、「①大学の名前で一生が決まる」「②恐るべき試験地獄」などとして、「③学校教育の充実=学歴偏重、学歴社会、偏差値教育、過度の受験競争」と書かれており、そのために「ゆとり教育」になり、学力低下を招いたことが記載されている。

 しかし、現在、①をやっているのは官庁くらいで、この記事を書いた朝日新聞の人事も①ではない筈だ。何故なら、①のような人事をしていれば、一番よい記事を書ける人が残らず、読者が減って利益が上がらないというように、大学卒の学歴だけでできるような甘い仕事はないからである。なお、公平・公正に選抜した結果、一部の大学卒の人が多くなるのは、自然現象であって学歴偏重ではない。

 また、②については、勉強することが地獄にならないために、時間をかけて無理なくしっかり理解させることが必要なのである。③については、学校教育の充実と学歴偏重は次元が異なり、学歴社会か否かを問わず、必要なことは学んでおかなければ考えることもできない。また、偏差値教育というのも、狭い範囲の周囲と比較して優劣を競いたがる社会の意識の問題であって、教育の充実と直接結びつくものではない。また、「過度の受験競争」というのも、どれくらい以上を過度と呼んでいるのかわからないが、受験があるから一生懸命勉強したという人も多いだろう。

(5)では、どういう改革をすべきなのか
 私は、幼児教育の一般化に伴い、義務教育の早期化による幼児教育の無償化を実現し、すべての幼児に充実した幼児教育を提供することに賛成だ。しかし、この際には、働く女性のことを考慮して、学童保育の整備も必要である。また、新たな学校区分へ移行することにも賛成で、現在の小中高を再編して前倒しに教育課程の検討を行い、学び直し、飛び級、早期卒業も可能にすべきだろう。

 しかし、専門高校等を活用した5年一貫職業教育や普通高校と専門高校の適正比率の検証については、普通高校から大学への進学希望者がこの60年間一貫して増加し、学歴を積んで勉強したい人が増えており、それが進歩した時代の要請にかなっている以上、希望ではなく無理に普通高校と専門高校に振り分けるのは、不必要な挫折者を出してよくないと考える。何故なら、専門は、高専や大学、大学院以降でも十分に勉強でき、普通高校程度の基礎知識は、誰にでも必要だからだ。

*1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11064493.html
(朝日新聞 2014年4月3日) (教育2014)学制改革、狙いはどこに
 みんなが同じように進級・進学して、それぞれの学歴を獲得していく戦後日本の学校制度。その仕組みを根本から変えようと、2012年に政権与党に返り咲いた自民党は「平成の学制大改革」を掲げ、安倍晋三首相が意欲を示す。なぜいま、学制改革なのか。
■戦後 義務教育以降の道、平等に
 義務教育の小・中学校から高校、大学へと進む6・3・3・4制が定まったのは、日本が米国の占領下にあった1947年のことだ。その年の2月15日付朝日新聞の1面には、こんな見出しが躍っている。「六・三制即時実施せよ 特権階級から教育開放 南原氏質問」。論戦の舞台は、帝国議会本会議。45年の終戦直後に東京帝大総長となり、吉田茂首相直属の教育刷新委員会で学制改革に取り組んだ貴族院議員の南原繁氏が、吉田首相に改革断行を迫った。議事録によると、南原氏はこう切り出した。「最も重要な一つの分野が取り残されている。それはほかならぬ、教育に関する改革の問題であります」。その前年、米国教育使節団が教育の機会均等を基本理念とした報告書をまとめた。柱は6・3・3・4制と、無償の義務教育を6年から9年に延ばすこと。戦前は一握りの特権階級のためだった高学歴への道を、すべての子どもに開くものだった。南原氏は「祖国再建の成否は国民の新しき教育にある」と訴え、財政難で動きが鈍かった政府の背中を押した。「もしも政府が財政上の理由からこの実現を遅らせるということがあるならば、国民国家にとって極めて大なる損害と不幸と思う」。吉田首相は「実現に努める」と応じ、翌年度からのスタートが本決まりに。3月には教育基本法や学校教育法が公布された。戦後の混乱期で学校整備は難航したが、新しい教育への国民の期待は大きかった。帝国議会は46年に「渾身(こんしん)の努力を教育の再建に傾注しなければならない」と政府に求める決議を採択。各地では学校再建のための募金活動が広がっていた。戦前の義務教育は6年間の初等教育のみ。そこから先の高等教育への道は、複雑で階級的な「複線型」の狭き門だった。帝国大学を頂点に、旧制高校や旧制中学、高等女学校、高等小学校、実業学校(職業学校)、師範学校(教員養成)などに分かれ、年限もバラバラだった。それが戦後、みんなが同じように階段をのぼるシンプルな「単線型」に変わった。憲法は、国民が等しく教育を受ける権利を有することを明記。すべての子どもが平等に教育を受け、高等教育への道をめざせるシステムができあがった。
■現在 脱「6・3・3」へ、首相意欲
 安倍首相(自民党総裁)は3月3日の参院予算委員会で、学制改革への意欲を表明した。「戦後の6・3・3制をもう一度見直そうと、学制の大改革にもいま挑戦し、議論をしているところだ」。自民党教育再生実行本部の「平成の学制大改革部会」が昨年5月にまとめた提言は、6・3・3制を弾力化し、4・4・4制や5・4・3制などへ移行することをうたう。小中一貫の義務教育学校(仮称)の創設や、後期中等教育の複線化に向けて5年一貫職業教育の検討も明記した。これも踏まえ、首相直属の教育再生実行会議は昨年10月から、学制の見直し論議をスタートさせた。安倍首相は悲願とする憲法改正をはじめ、米国の占領時代に土台が固まった戦後レジーム(体制)からの脱却を掲げてきた。いまの学制改革論議も、その流れに沿ったものだ。これまでも大規模な学制改革を唱えた提言はあった。1971年、文部相の諮問機関だった中央教育審議会(中教審)による通称「46(よんろく)答申」だ。答申は「敗戦という特殊な事情のもとに学制改革を急激に推し進めたことによる混乱やひずみも残っている」とし、4・4・6制への移行を念頭に、幼児学校や中高一貫の先導的導入を提言した。だが、これには学校現場などから「国民の十分な信頼のもとにすでに安定している小学校教育をなぜ変えようとするのか」と強い反発が起き、答申はたなざらしになった。それから40年余。安倍首相は「(いまの学制が)子どもの発達段階に即したものになっているか、能力や個性に柔軟に対応できるものになっているかなど、改めて問い直す時期」としつつ、「幅広い観点から丁寧に議論を重ねていくことも必要だ」と慎重に進める構えも示す。(編集委員・前田直人)
■子どもの個人差イメージして 国立教育政策研究所総括研究官・山森光陽さんに聞く
 学校の制度改革を考えるとき、私たちはどんな点に注意したらいいのか。教育心理学が専門で、学級規模の研究に取り組む山森光陽(こうよう)・国立教育政策研究所総括研究官に話を聞いた。
       ◇
 教育心理学は、子どもがどうなるのかを研究対象とした学問です。制度が子どもに与える影響を研究していますが、その影響は個人差によって様々です。私が研究している学級規模についても同様で、少人数学級を実施してもそれがクラスの全員に同じような効果があるとはいえません。進級・進学の制度がどんな影響を子どもたちに与えるのか、答えは簡単には出ません。6・3・3・4制改革にしても「大事なところだからつなげる」「大事なところだから切る」という両論があり得ます。発達段階は、全員が同じというわけではない。また、子どもが制度の変化を経験することでどういう影響があるのかを考えることも必要でしょう。飛び級は、一定の学力がついたかを重視する修得主義的な発想です。明治の前期は修得主義で、いわゆる等級制で同じ級にいろんな年齢の人たちがいました。その後、一定期間の就学を重視する履修主義となって次第に学級は同一年齢の集団になり、以降、先生が工夫を積み上げてきたわけです。それぞれ利点と難点があって、折り合いをつけるのは難しいと思います。昔と今で子どもを取り巻く環境も変わりました。学校の制度をめぐる議論が出ることは自然なことです。子どもたちは先生の指導の仕方から影響を受けます。制度は先生を介して間接的な効果をもたらすものですから、先生が授業しやすくなるかどうかも大事。子どもに優しい視点と言ったらいいのでしょうか。子どもの立場に立って、個人差をイメージしていくことが大切だと思います。
■学歴偏重、見えぬ是正策
 教育機会の均等をめざした戦後の学制のもとで新たに生まれた社会問題が、受験競争を過熱させる学歴社会の弊害だった。1966年、ソニー創業者の盛田昭夫氏が学歴社会を批判する「学歴無用論」を著した。「政府も人づくりと言えば、大学さえつくればいいということになり、駅弁大学という言葉が生まれるほどに大学を設けるし、大学の名前で一生が決まるという、不可解な現実が、この恐るべき試験地獄をつくりあげてしまった」。中教審も66年の答申で「学校中心の教育観にとらわれて社会の諸領域における一生を通じての教育という観点を見失ったり、学歴という形式的な資格を偏重したりすることをやめなければならない」と指摘した。是正に乗り出そうとしたのは、首相直属の臨時教育審議会をつくった中曽根康弘元首相だ。1986年1月、国会で、こう答弁している。「偏差値教育の問題は学歴偏重の社会的風潮、過度の受験競争といういろいろな問題が絡み合っている。そういう面についてメスを入れていかなければ、抜本的改革はできない」。臨教審は学歴社会の弊害の是正策として、生涯学習、学校教育改革、企業・官公庁の採用改善の3点を指摘。受験競争の過熱や偏差値偏重、詰め込み教育を改めようとした中曽根政権の問題意識は「ゆとり教育」へとつながった。しかし、学歴偏重をめぐる議論は次第に下火に。のちに「ゆとり教育」は学力低下を招いたとの批判を浴び、第1次安倍政権も「脱ゆとり」の流れを加速させた。学歴社会の弊害をどうただすかという問いかけへの答えは、出ていない。
■自民党教育再生実行本部「平成の学制大改革部会」提言(要旨)
 結果の平等主義から脱却し、社会状況や子どもの実態等に応じて、学校制度を多様化・複線化
【1】幼児教育の無償化の実現
 すべての3~5歳児に充実した幼児教育を提供
【2】6・3・3・4制の見直しと義務教育の充実
 新たな学校体系への移行を目指し、6・3・3制を弾力化。4・4・4、5・4・3など新たな学校区分へ移行▽小中一貫校「義務教育学校(仮称)」の制度を創設▽小中高一貫教育、義務教育の早期化の検討▽学び直しのための体制整備、飛び級・高校早期卒業の制度化などにより、個人の能力・適性に応じた学びの保証システムを実現▽先導的取り組みに対する財政支援を創設
【3】後期中等教育等の複線化
専門高校等を活用した5年一貫職業教育(目標200校)の検討▽普通高校と専門高校の適正比率の検証
■飛び級「賛成」51%
 朝日新聞社が2月15、16の両日実施した全国定例世論調査(電話)で、成績が優秀な子どもが学年を飛び越えて進級する「飛び級」を義務教育で認めることへの賛否は、賛成が51%で反対の38%を上回った。


PS(2014.4.22追加):*2のように、全国学力テストの①全員参加方式が復活 ②学校別の成績については各学校の判断だったが、区市町村教委の判断で公表が可能になった ③文科省は条件付きで区市町村教委が学校名を示した成績を公表できるよう実施要領を改めた といういずれにも驚く。何故なら、①については、全員参加して調査しなければ正確な状況はわからず、日本国内での比較もできないからだ。本来は、正確な状況を把握した上で、その原因を究明して改善すべきである。また、②については、これまで学校別の成績は公表しなかったのは何のためか思うが、学校は子どもの教育のためにあることを忘れてはならない。さらに、③については、文科省もそれを黙認し、「過度の受験競争」をやめるとして「ゆとり教育」に進ませたが、中高一貫の進学校から東大を卒業した都市部出身の文科省官僚の場合はそうでも、地方では、ただでさえのんびりしていたので、それ以上「ゆとり」や「脱競争」でのんびりすれば、必要な学力もつかないだろうと思っていた。

*2:http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20140422-OYT8T50315.html
(読売新聞 2014年4月22日)  成績公表解禁、「学テ」始まる…224万人参加
 今年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が22日朝から始まった。昨年度に全員参加方式が復活してから2度目の実施で、国公私立の小6、中3の計約224万1000人が、国語、算数・数学の、それぞれ基本問題(A)と応用・思考力をみる問題(B)に臨んだ。参加するのは、国公立は計3万186校。私立は457校で全体の47%だった。全国学力テストについては、今回から、学校別の成績について区市町村教委の判断で公表が可能になっており、どの程度情報公開が進むか注目される。これまでは、区市町村別の成績については区市町村教委の判断で公開可能とし、学校別は、各学校の判断としていた。だが、文科省は昨年11月、条件付きで、区市町村教委が学校名を示した成績を公表できるよう実施要領を改めた。保護者のニーズがあり、各校での改善策につながると判断した。

| 教育・研究開発::2013.11~2014.7 | 05:30 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.4.20 原発事故後のオートラジオグラフ(放射線画像) ← レントゲン写真のことを考えればできて当然のことなのに、どうして今初めて公開することになり、情報非開示のために無用な被曝をしてしまった人は、どうすればいいのか?
    
自殺した酪農家が書き残した文字 4.19東京新聞      *2-1より     *3より

(1)「原発さえなければ」などと、二度と言わせないで欲しい
 *1のように、東京電力福島第一原発事故後、福島県飯舘村で自殺した酪農家と村民を描いたドキュメンタリー映画「遺言 原発さえなければ」の上映が始まったそうだ。放射線の人体への悪影響については、「見えない放射能の恐怖におびえる」という表現がよく使われるが、見えず、匂いもしないものは怖くないというのは変で、これは原発推進派の筋書きに沿っていると、私は前から思っていた。もし、見えず、匂いもしないものは怖くないというのが本当なら、一酸化炭素中毒や薬の副作用、水俣病などの公害も怖くない筈だが、人間は、それほど無知で想像力のない生き物ではないからだ。

 しかし、*2-1、*2-2のように、写真家の加賀谷雅道さんが、東京電力福島第一原発事故の被災地に残された動植物や生活道具の被曝の様子を、東大名誉教授の森敏さんの協力を得て、「オートラジオグラフ」(放射線写真)にし、このうち約二十点を展示する「放射線像展」を23日から28日まで、東京のギャラリーで開くそうである。展示する放射線写真は、コイ、蛇、モミジなどの動植物や、長靴、箒、はさみなどの生活道具だ。

 4月22日は、報道関係者向けのプレオープンなので、ギャラリーを訪ねられない地方の人のために、報道機関は、しっかりした解説も含めて、「放射線像展」を報道してもらいたい。                

(2)原発事故後、すぐ行うべきだった被曝情報の開示を今頃やっているのか
 *3によれば、「屋外作業する農家は事務職に比べて、2倍程度の被曝可能性があるとの結果だったが、この現実は1年近くも前に東京新聞や自治体が調べたデータが示しており、原発事故から3年たった今ごろになって政府がようやく現実を追認するのはあまりにも遅い」とのことだが、そのとおりである。

 そして、上下の写真の動植物のように農作物にも放射性物質が含まれるため、これは、「家の中に農地の土を持ち込まない」とか「家屋の放射線を遮る対策を練る」などの対策ではすまない。

 なお、*4のように、政府は2014年4月18日、福島県の川内村、飯舘村、田村市の避難指示解除準備区域などで行った個人被曝線量の最終調査結果を発表したが、これは、事故から3年以上経過した後である。茂木敏充経済産業相は、閣議後の会見で、「心配をかけたことについては申し訳なく思っている」と陳謝されたそうだが、陳謝すべきは「心配をかけたこと」ではなく、「迅速に必要な情報を正確に公開しなかったため、防げる被曝を防げず、避難する人を悪く言うことによって、家庭や地域を分断して大きな二次的被害を与えたこと」である。

 また、推計値は、内閣府の委託を受けて日本原子力研究開発機構などがまとめたそうで、「個人線量は空間線量に0・7をかけた値にあたると算出した」そうだが、被曝を過小評価するための仮定が多く、科学的でないため、被曝被害が小さめに出ていることは間違いない。そのため、人間も放射線写真をとっておけば、発症した病気との因果関係を追跡しやすいと思われる。

   
           フランス リベラシオーンの記事

*1:http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20140420/CK2014042002000049.html
(中日新聞 2014年4月20日) 飯舘村の苦しみ映画に シネマスコーレで上映開始
 東京電力福島第一原発事故後、福島県飯舘村の村民を描いたドキュメンタリー映画「遺言 原発さえなければ」の上映が19日、名古屋市中村区椿町のシネマスコーレで始まった。撮影・監督したフォトジャーナリストの1人、豊田直巳さん(57)=東京都東村山市=が同日、名古屋を訪れ、「見えない放射能の恐怖におびえる人たちのありのままを記録。数字では表せない被害や苦しみを感じてほしい」と語った。約二年にわたる取材をまとめた三時間四十五分に及ぶ作品。静かで美しい村を一変させた原発事故。作品は、東日本大震災の翌日から福島に入った豊田さんと、共同監督の野田雅也さん(39)が知り合った飯舘村の酪農家たちを中心に進む。村が汚染され、搾った牛乳を捨て牛を処分する。全村避難が決まり、酪農をあきらめ、散り散りになる仲間たち。ナレーションはなく、生の言葉で悲哀がつづられていく。撮影を続ける中、飯舘村に隣接する同県相馬市の酪農家が自殺。壁に書き残した「原発さえなければ」の文字がタイトルの由来となった。豊田さんはイラク戦争や、チェルノブイリ原発事故による汚染地域の取材を経験してきた。福島に入り、住民が「見えない戦場で戦っているみたい」と漏らす言葉を聞いた。「世界史に残るような事故。記録するのが自分たちの責任だ」と撮りためてきた映像を映画にしようと決めたのは、二〇一二年夏。回想シーンやデータなどは使わず、「全編が『今』を切り取った記録。映画として成立する酪農家たちの物語もあった」と語る。今年三月から東京、福岡と順に公開してきたが、予想を超える反響。「三年が過ぎ、関心が薄れていると思っていたが、潜在的にはまだまだある」と実感した。映画は昨年四月までの取材内容に基づくが、「福島の苦しみは今も続いている。これからも追い続けていきたい」と話す。上映は一日一回。二十五日までが午後二時二十分開始、その後、最終日の五月二日までが午後零時二十分開始。問い合わせは、シネマスコーレ=電052(452)6036=へ。

*2-1: http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014042002000098.html (東京新聞 2014年4月20日) 被ばく、くっきり 23日から写真展
 目に見えず、臭いもしない放射能による汚染の実態を見せたいと、写真家の加賀谷(かがや)雅道さん(32)が、東京電力福島第一原発事故の被災地に残された動植物などの被ばくの様子を「オートラジオグラフ」(放射線写真)と呼ばれる写真にした。このうち、約二十点を展示する「放射線像展」を二十三日から二十八日まで、東京都品川区上大崎の「ギャラリー・やさしい予感」で開く。展示するのは、コイやモミジなどの動植物のほか、長靴、ほうきなど生活道具の写真。原発事故で放射能に汚染され、住民が避難を強いられている福島県飯舘村や浪江町で集めた被写体を、東大名誉教授の森敏(さとし)さん(72)の協力を得て放射線写真にした。放射線写真は、放射線に感光する特殊な板に動植物などの被写体を載せ、被写体から放出される放射線を撮影する。放射性物質が付いたり蓄積したりした部分が影や黒い点となって板に写り、被ばくの様子を可視化できる。被ばく量が多いほど、被写体の元の形がはっきりわかるという。加賀谷さんは「放射能汚染を知るのに、放射線量の数字だけではわかりにくい。写真を見ることで汚染に対する想像が広がると思う」と話す。入場料五百円(学生は無料)。 

*2-2:http://moribin.blog114.fc2.com/blog-entry-1854.html?q=%CA%FC%BC%CD%C7%BD%B1%F8%C0%F7 放射線像展
●4月23日(水) - 4月28日(月) 11:00-20:00 (最終日は17:00まで)
●場所:「Gallery やさしい予感」
JR目黒駅東口から徒歩5分 TEL:03-5913-7635. hppt://www.yokan.info
●入場料 : 500円 学生無料(学生証をご提示ください)
●22日(火)17:00-20:00 報道関係者向けプレオープン
社員証と名刺をご持参ください(入場無料)。
インターネットまたはWifi接続が可能なタブレットや画面の大きなスマートフォンをお持ちの方は、ぜひご持参ください。展示された放射線像に関連した映像やさらに詳しい解説をご覧いただけます。                      
●付記
1. 小生(森敏)の放射線画像も数点展示されています。
2. 昨日の東京新聞夕刊第一面ぶち抜きでに以下の記事が掲載されました。 (以下略)

*3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014041902100005.html (東京新聞 2014年4月19日) 農家被ばく、事務職の倍 福島第一周辺 政府ようやく推計
 東京電力福島第一原発事故で避難を強いられている住民が帰還した場合の年間被ばく線量の推計値を、十八日に政府が公表した。比較的線量の少ない地域でも、屋外作業する農家などは事務職に比べ、二倍程度の被ばくをする可能性が高いとの結果だった。ただ、この現実は一年近くも前に本紙や自治体が調べたデータが示しており、今さら感がぬぐえない。原発事故から三年たった今ごろになって、政府がようやく現実を追認するのはあまりにも遅い。家の中に農地の土をいかに持ち込まないようにするかや、家屋の放射線を遮る対策を練るなど実効性のある施策が求められる。推計値は、内閣府の委託を受け、日本原子力研究開発機構(原子力機構)などがまとめた。全村避難が続く飯舘村、今月下旬から長期宿泊が認められる川内村、四月に避難指示が解除された田村市都路地区の三地域を対象に、屋内や農地などで測った線量から算出した。表の通り、飯舘村では屋内にいる時間が長い事務職でも年間被ばく線量は最低三・八ミリシーベルトと、一般人の線量限度(一ミリシーベルト)の四倍近い。農林業ではもっと多く被ばくする計算だ。帰還が始まった都路地区でも、事務職やほとんど家の中にいる想定の高齢者は一ミリシーベルトを下回ったが、農林業では最大二・三ミリシーベルト。川内村ではどの職種でも一ミリシーベルトを超え、農林業は一段高い値となった。森林の除染は人家周りを除いて手つかずで、農地の表土をかき混ぜても放射性物質は減らない。本紙が昨年、福島県各所で調査した際も、農地の線量は屋内の二倍程度あった。熱心に作業する農家ほど被ばくするのは当然ともいえる。同様の傾向は伊達市の実測データでも確認されていた。

*4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11092365.html
(朝日新聞 2014年4月19日) 線量公表遅れ、大臣陳謝 経産省、調査自体明かさず
 政府は18日、福島県の川内村、飯舘村、田村市の避難指示解除準備区域などで行った個人被曝(ひばく)線量の最終調査結果を発表した。政府が昨年10月11日に依頼先から個人線量データなどの中間報告を受け取ったにもかかわらず、半年間公表しなかったことについて、茂木敏充経済産業相は閣議後の会見で「心配をかけたことについては申し訳なく思っている」と陳謝した。調査を依頼した内閣府の田村厚雄参事官は会見で「(事務方の)担当ラインで共有した」として、茂木氏や赤羽一嘉経産副大臣ら政務三役に相談せず、事務方の判断で公表見送りを決めたと説明した。政府は今月1日には調査対象になった田村市都路地区で、避難指示を解除した。帰還の判断材料となる調査結果について事務方が政務三役に報告もせず、独断で公表を見送ったことになる。地元からは「経産省は相変わらず隠蔽(いんぺい)体質だ」(民主党の増子輝彦参院議員)との批判が上がる。中間報告を受けた昨年10月は、原子力規制委員会の有識者会議が従来の空間線量で被曝量を管理する方式から、個人線量計で管理する方式への転換を議論していた。しかし、調査を行っていること自体、委員会に明かさなかった。内閣府は「調査が完遂していなかったから」と釈明した。中間報告を半年間、公表しなかったことについて、放射線防護に詳しい独協医科大の木村真三准教授は「結果をただちに明らかにしていれば、自治体や住民はどう対応していくか改善策を考え立てることができた」と指摘する。
■対象、児童も検討
 調査は昨年8~9月に実施。空間線量と個人線量の比較から個人線量は空間線量に0・7をかけた値にあたると算出した。個人線量の測定結果に職業別の生活実態などを加味して推計。安倍政権が7月にも住民の帰還を目指す川内村では、年間3ミリシーベルトとなり、除染の長期目標の年1ミリシーベルトを上回った。現在、政府は除染の長期目標を、空間線量ではなく個人線量を指標にすることによって、緩和することを検討している。だが、今回の0・7という係数を使い、目標を年間約1・4ミリシーベルトに緩和することについて、調査した日本原子力研究開発機構の百瀬琢磨部長は「(科学的には)できないと思います」と否定した。今回は成人のみを対象にしたが、今後は児童についても検討するとした。

| 内部被曝・低線量被曝::2012.9~2014.4 | 03:55 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.4.19 高架化と新しい街づくり (2014.4.21追加あり)
   
            東京の街             福岡の街       佐賀の街

(1)踏切高架化の必要性
 *1-1のように、歩行者や自転車・原付バイクが電車と衝突した死亡事故の90%近くが「開かずの踏切」で発生したが、高架化などの抜本対策をしたのは1カ所しかなかった。その上、*1-2のように、踏切の開閉基準に高齢者や障害者らの歩行速度が考慮されていないため、高齢化、バリアフリー化が進む中、抜本対策が必要になっている。

 また、踏切の高架化は、大都市だけではなく、「地方の踏切の安全化」「単線の複線化」「高架下の有効活用」にも有効だ。

(2)踏切高架化の費用は、まちづくりと一体になって行えば出せる
 *1-1のように、踏切をなくして高架化することができない理由は、各鉄道会社の予算不足だ。しかし、*2-1のように、国土交通省は高速道路の高架下の有効活用策として、土地を貸し出す基準を緩和し、コンビニエンスストアの出店などをしやすくする方針を決め、今国会に提出する道路法改正案に盛り込む。これと同じことは、鉄道の高架下でも当てはまり、賃貸料で高架化の予算不足がカバーできる。

 また、*2-2のように、鉄道会社は、駅ナカの百貨店・スーパーや保育園・デイケアセンター、高架下の商店街や駐車場などの多角経営に取り組むことが可能だ。このような駅ナカ、駅チカは、時間の節約が必要不可欠な通勤者にとって、最も便利な場所であるため、高生産性になるのである。

 なお、高架化は、「街ナカ」の再生にも影響を与えることができる。その理由は、高架化によってできる便利な場所に駅前商店街を移動し、これまでの駅前商店街を再開発をすることが可能だからだ。つまり、自治体と協働して高いシナジー効果を出せば、鉄道会社だけで苦労して高架化することはなく、自治体も、まちづくりや再開発が早く進んで一石二鳥なのである。

 そして、まちづくりや再開発にあたっては、*3-1のように、緑の増加で動植物が戻って自然と共生できる街を作ったり、*3-2のように、高齢者や障がい者が自立して住める住宅を作ったりなど、20世紀には重視されなかったが、21世紀に重視されるようになったコンセプトを、早急に実現する必要がある。

(3)福岡市や佐賀市でも街づくりが始まったが・・
 *4-1のように、福岡市天神では、再開発を目指す「天神明治通り街づくり協議会」が地区内のビルの容積率を上乗せできる特例制度を活用する方針を決めて、魅力ある市街地環境の形成を目標に掲げたそうだ。飛行機から見ると、現在の福岡市は、東京より緑が少ないので、新しい街づくりに期待したい。

 また、*4-2のように、佐賀市も2014年度から中央大通りのにぎわいづくりに乗り出すそうだが、美しさや輝きは、厚化粧や手入れをすれば出るものではなく、内にある喜びや自信から発せられるものであるため、予算の制限はPFI方式や容積率の緩和などで何とかして、「美しくなれる通り」よりも、「美しくて便利な街」を作った方が、結果的に美しい女性や若者も増えると思う。現在の佐賀市は、電線が張り巡らされて風景がよくないため、電線を地中化して風景を改善し、水と緑に育まれたおしゃれな街を作ってもらいたい。なお、佐賀市の場合は、佐賀県を南北に走る唐津線の高架化・複線化とあわせて街づくりを行うと、いろいろな問題を同時に解決できるのではないだろうか。

*1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014040302000141.html (東京新聞 2014年4月3日) 17踏切 事故前に「危険」 電車と衝突死、都内20カ所
 東京都内の踏切で二〇一一~一三年、歩行者や自転車・原付バイクが電車と衝突した死亡事故(自殺を除く)二十二件のうち、十九件が「開かずの踏切」など国土交通省が七年前に抜本的な改善の必要性を指摘した十七カ所の踏切で発生していた。このうち事故後に踏切をなくす抜本対策をしたのは一カ所しかなく、危険性が認識されながらも踏切の解消がなかなか進まない実態が浮き彫りとなった。警視庁によると、二十二件の死亡事故が起きた踏切は二十カ所。このうち国交省が指摘していた踏切は九区三市の十七カ所。半数超の十二人が六十代以上と高齢だった。四十~五十代が三人、二十~三十代が四人。内訳は、通勤・通学ラッシュのピーク時の遮断時間が一時間あたり四十分を超す「開かずの踏切」が八カ所。それ以外の踏切のうち、歩行者が多く混雑しやすい「歩行者ボトルネック」は七カ所、車の渋滞が起こりやすい「自動車ボトルネック」が二カ所あった。路線別では西武新宿線の五カ所が最多だった。「開かずの踏切」は遮断時間が長いため、踏切をくぐるなどの行為を招きやすい。事故概要をみると、警報が鳴ったり、遮断機が下り始めた後に横断し始め、渡り切れなかったケースが九件。遮断機を押し上げたり、またいだりして踏切内に入った例は八件あった。国交省は〇七年四月、この十七カ所を含む都内の約四百五十カ所の踏切について、立体交差化による踏切の解消といった抜本対策の検討が必要だと公表。都道府県などから申請を受け、認可した抜本対策事業に補助金を出すなど、解消を促している。しかし、十七踏切で事故後に抜本対策が完了したのは京浜急行本線・空港線の京急蒲田第13踏切(大田区)のみ。〇〇年に始まった六キロ区間の高架化事業に伴い、廃止された。このほか、京王線下高井戸5号踏切(世田谷区)の立体交差化事業が国交省に認可され、JR埼京線仲原踏切(北区)でも立体交差化に向けた調査が始まっているが、ほかに具体的な動きはない。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014020802000099.html (東京新聞 2014.2.8) 速すぎる踏切基準 健常者並み 徒歩秒速1.39メートル
 高齢者が踏切を渡りきれない事故が相次いでいる。六日には東京都足立区で七十六歳の女性が死亡した。踏切の開閉基準に高齢者や障害者らの歩行速度は考慮されていない。高齢化社会が進む中、基準見直しを求める声も出ている。歩行者が安全に渡りきれるよう鉄道会社が踏切を設置する際の国の基準は、二〇〇二年施行の省令の解釈基準で「歩行者の歩く速度を時速五キロ」と想定。秒速では一・三九メートルで、不動産広告で使われる徒歩速度(同一・三三メートル)より速い、健常者の歩行ペースだ。しかし、田井中幸司千葉科学大准教授の調査では、八十代女性が止まった状態から十メートル歩いた通常歩行速度の平均値は秒速〇・八七メートルで、最高でも一・二一メートルだった。このため、総務省近畿管区行政評価局は昨年十月、「人が時速五キロで踏切道を通過するとして、警報開始から遮断完了までの時間が設定されており、高齢者や障害者に配慮したものとなっていない」とする行政評価の調査結果を、国土交通省近畿運輸局などに通知し改善を促した。とはいえ、高齢者や障害者でも安全に渡りきれる歩行速度に基準を下げる動きは「現在のところない」(国交省鉄道局)。ピーク一時間当たりの遮断時間が四十分以上の「開かずの踏切」は全国に約五百カ所あるが、鉄道局の担当者は「歩行速度の基準を下げると遮断時間が長くなり、開かずの踏切が増える」と指摘。「国の基準は目安としての例示。個々の開閉時間などは鉄道各社の判断」と説明する。JR東日本などの担当者も「国の省令に基づいて運用している」と口をそろえる。国の指示で、鉄道会社はおおむね五年に一度、踏切ごとに列車運行時間帯の車や歩行者の通行量や遮断時間などを調べるが、高齢者や障害者らの利用実態までは把握していない。明治安田厚生事業団の永松俊哉体力医学研究所長は国交省基準について「自転車や足元に気を取られることを考えると、高齢者には速めの設定で明らかに検討を要する問題」と指摘。「核家族化で高齢者の一人暮らしが増え、買い物や病院につえをついてでなければいけない時代に踏切は非常にリスクが高い」と話した。

*2-1:http://qbiz.jp/article/31919/1/
(西日本新聞 2014年2月9日) 高速高架下の土地 貸し出し基準緩和 国交省方針
 国土交通省は8日、高速道路の高架下の有効活用策として、土地を貸し出す基準を緩和し、コンビニエンスストアの出店などをしやすくする方針を決めた。高速道路会社が土地の利用料収入を維持管理費用に充てるのが狙いで、今国会に提出する道路法改正案に盛り込む。現行制度で、第三者が高架下の土地を借りて利用するには「ほかに用地を確保できず、やむを得ない」ことが条件になっている。結果として、地方自治体が造る公園などに用途が限られていた。改正案では、ほかで用地を確保できるかどうかを問わずに借りられるようにする。立地の良い場所で、希望者が複数出た場合に備えて、入札制度も設ける。一般道の高架下も同様の扱いとし、道路管理者の自治体などが貸しやすくする。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140202&ng=DGKDZO66231270R00C14A2MZA000 (日経新聞 2014.2.2) 
多角化進む鉄道経営 採算性高い小売事業 早稲田大学教授 野口智雄
 日本の鉄道は、いわゆる「本業」である運賃収入での採算を前提としながらも、それを補完するため、これまでターミナル駅の百貨店、駅ビル、観光・レジャー、不動産などの「多角経営」に取り組んできた。そして今、さらに高度な多角経営が求められている。それは、マイカー・航空機との競争激化、少子化による通学客の減少、巨額の新線投資の困難さなどにより、本業のみで採算を図ることがいよいよ難しくなってきたからだ。今日の鉄道会社の多角経営のうち、特筆されるべきは小売事業であろう。この分野は、非常に採算性が高いのだ。例えば、JR東日本の駅ナカビジネス(駅スペース活用事業とショッピング・オフィス事業)の売上高は6431億円(2013年3月期)と巨額だが、なんといっても驚異なのが売上高営業利益率の水準だ。わが国トップ小売企業のイオングループが3.3%(同2月期)、セブン&アイ・ホールディングスが5.9%(同2月期)であるのに対し、JR東日本の駅ナカは16.4%(同3月期)にも上っている。
●有利な出店環境
 このような駅ナカビジネスの高生産性の理由について、『鉄道会社の経営』(中公新書・13年)の著者、佐藤信之は一種の「温室」状態を挙げる。これは、駅という人通りに恵まれた出店環境、自社が排他的に利用できるスペース、グループ外企業との直接競争の不在といった特殊環境が幸いしているとするのだ。確かに駅ナカは、乗降客をダイレクトにつかむことができ、成果も高くなり、駅周辺エリアへの影響も絶大だ。20年に山手線内に30番目の駅ができるという構想を通じ、駅ナカの凄味(すごみ)を強調するのが市川宏雄著『山手線に新駅ができる本当の理由』(メディアファクトリー新書・12年)だ。市川によると、JR東日本が品川車両基地跡地の再開発に本気で取り組み始めた理由は、「鉄道事業以外のビジネスでも儲(もう)かる」ことを発見したからだという。その発見物が、駅ナカだ。複合商業施設のエキュートが00年代、大宮駅、品川駅、立川駅に作られ、東京駅にもグランスタがオープンし、大きな成果を上げた。これらの成功体験をバックに、品川周辺の新駅建設と都市再開発事業への本格参入を決断したと市川は推察する。駅ナカビジネスの高成果はマネー・インフラの革新も一因だ。ICカードのSuica(スイカ)が01年に世に出て以降、駅改札の通過はスムーズになった。『ペンギンが空を飛んだ日』(交通新聞社新書・13年)の著者でスイカの開発者である椎橋章夫は、スイカはわれわれのライフスタイル自体を変化させたと説く。
●電子マネーの力
 この電子マネーの利用範囲は、鉄道輸送だけにとどまらないからだ。駅ナカの小売店はもとより、自動販売機、飲食店などの支払いに利用できる。活用範囲は「駅ナカ」を超え、「街ナカ」まで広がる。マネー・インフラの革新が人々の購買スタイルを変え、本業の鉄道事業と多角化事業とを緊密化させ、シナジー効果を発生させる原動力になったのである。ただ、日本の鉄道業全般を考えれば首都圏の黒字路線だけでなく、廃線目前の赤字ローカル線も少なくない。厳しいローカル線こそ、多角経営に取り組まねばならないだろう。堀内重人の『チャレンジする地方鉄道』(交通新聞社新書・13年)には、豊富な対応事例が盛り込まれている。例えば、ぬれ煎餅で本業をはるかに凌(しの)ぐ副収入を上げている銚子電気鉄道のケース。また高島屋と提携し、同社の運営ノウハウを取り入れてターミナルビルの店舗運営を行う伊予鉄道のケースなど。猫のたまが駅長に就任して一世を風靡した和歌山電鉄が、貴志駅のカフェで地元産のイチゴのスイーツを提供して会社と地域の活性化を図ったケースも有名だ。今日の鉄道会社は業容の大小に関わらず、多角経営に取り組むことの意義を再確認させられる。そして、その際に常に念頭に置くべきことは、本業とのシナジーをいかにして実現できるかという点だろう。

*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKDASGG18002_Y4A210C1MM0000 (日経新聞 2014.2.18) 
動植物、都市に戻る 公園増加で住みやすく 自然との共生、街の価値高める
 東京や大阪など大都市で貴重な動植物を目にする機会が増えている。大規模開発で一度は姿を消したが、公園の増加や環境規制の強化、住民意識の高まりで、野生生物が住みやすい環境が復活してきた。自然が戻れば都市の魅力が高まる。自然と共生する開発は経済にも好影響を与えそうだ。「森の妖精」が愛称の小鳥、エナガの目撃が23区で相次ぐ。日本野鳥の会東京によると明治神宮では2008年ごろから定着。新宿御苑などにも出没する。都市の森にはオオタカなども集まる。都心の緑地面積は減ったが、残った木々が大きく育ってエサとなる実や虫などが増えた。23区で都市公園がこの10年で5%増加。住みやすい環境が整ってきたことに加え、野鳥も都会の暮らしに適応している。鮮やかな水色の羽を持つカワセミも日比谷公園や小石川後楽園などで目撃される。05年以降はほぼ都内全域で見られる。野鳥研究者らからなる都市鳥研究会の川内博代表は「分布は戦前よりも広がったはず。珍しい鳥ではなくなった」と話す。近郊では、希少な植物が戻ってきた。東京都立川市の湿地では、高さ2~5センチメートルのアズマツメクサが3年前に発見された。30年近く目撃されず、都は絶滅したとみていた。雑草を刈って小さな草にも日光が当たるようになったためという。大阪市近郊の吹田市や堺市などでは、外来種に押されていた在来種のカンサイタンポポが復活している。大阪自然環境保全協会の5年ごとの調査では、府内の外来種の分布は10年に68.7%と05年より1.4ポイント減った。大規模造成が一巡し、自然が戻ってきたことが大きいとみられる。環境規制で水質が改善した多摩川では昨春、アユが645万匹遡上したと東京都は推定する。最多だった12年の1194万匹より減ったが、10年以前の3倍以上の水準。河口付近では、準絶滅危惧種のヤマトシジミ(貝)も確認された。立教大学の田島夏与准教授は「自然の豊かさは住宅や土地の付加価値を高める」と指摘する。

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140215&ng=DGKDZO66865150U4A210C1TJ1000 (日経新聞 2014.2.15) 
トーハンが高齢者住宅 学研と組む 18年度までに10棟 異業種から参入、一段と
 出版取次大手のトーハンはサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)事業に参入する。同事業2位の学研ホールディングスと提携し、2018年度までに支店跡地などに10棟(計約500戸)を建設する。学研から運営ノウハウの提供を受け、さらに拠点を増やす。高齢化の進展でサ高住は急拡大しておりパナソニックなど異業種の参入が相次ぐ。トーハンの参入はサービス競争を一段と促すことになりそうだ。トーハンは雑誌など書籍の発行部数の減少による影響が避けられず年間売上高は約5千億円で伸び悩んでいる。介護事業を新たな経営の柱に据える。2年半前から子会社が介護講座を運営するなど介護事業への参入を検討してきた。学研は現在、サ高住を52棟運営する。約100棟を展開するメッセージに次ぐ2位。サ高住に診療所などを併設した複合施設の運営などを多く手掛ける。トーハンとの業務提携を通じ、学研グループでサ高住を強化し、保育所や学童保育、学習塾などとともにサービス事業の多様化を急ぐ。トーハンはまず横浜市に15年4月に第1号のサ高住を開業する。3月末に老朽化した神奈川支店を本社に移転するのを契機に6億円を投じて新設する。4階建ての2階以上に51戸設ける。個室は広さ18平方メートルで月額の利用料は食費や共益費、サービス料込みで約20万円と中級クラスの価格帯にする。要介護度に応じた介護保険料の1割負担がこれに加わる。学研グループで介護事業を手掛ける学研ココファン(東京・品川)がサ高住の運営責任者となるトーハン社員の研修を担当する。現場に勤務する介護スタッフへの教育も始めるほか、開設計画や収益性など運営も支援する。建物の1階には、学研グループで保育事業を手掛ける学研ココファン・ナーサリー(同)が入居する。サ高住と認可保育所を併設し利用者同士が交流できるようにするなど他社にはない特色を出す。トーハンは支店の土地の有効活用のほか、新規の用地も取得しサ高住を増やしていく方針だ。

*4-1:http://qbiz.jp/article/9836/1/
(西日本新聞 2012年12月19日) 天神「明治通り」都市計画提案へ 福岡市の容積率特例を活用
 福岡市・天神の明治通り周辺地区約17ヘクタールで一体的な再開発を目指す「天神明治通り街づくり協議会」(会長=倉富純男西日本鉄道常務)は、地区内のビルの容積率(敷地面積に占める延べ床面積の割合)を上乗せできる市の特例制度を活用する方針を決めた。特例適用に必要な都市計画決定を受けるため、再開発の目標を定めた「地区計画方針」を年内に市へ提案する。九州最大の商業・ビジネス地区の再開発の動きが加速しそうだ。協議会がまとめた地区計画方針は「都市機能強化や魅力ある市街地環境の形成」を目標に掲げ、建物の低層階や地下の集客・交流機能を高めたり、必要に応じて建物の用途やデザインを制限したりする方針を明記。提案に必要な全271地権者の3分の2以上の同意を得ており、市都市計画審議会の承認などを経て、来年秋にも都市計画決定される見込み。容積率の特例制度を受けるには、再開発の具体的ルールなどを定めた「地区整備計画」も必要となり、協議会は今後、地区内を4ブロックに分けた計画案を順次まとめる。福岡地所(福岡市)が数年後のビル建て替えを計画している「天神1丁目南ブロック」などで計画案の策定作業が先行するとみられる。市の特例は、老朽化した都心ビルの建て替えを促すため2008年に導入。「アジア」「環境」「安全安心」など五つのまちづくり項目に該当すれば、現行法で800%が上限の容積率を最大400%上積みできる。公開空地の設置で一段の上積みも可能となる。協議会は08年6月、同地区にビルを持つ西日本鉄道、九州電力、福岡銀行などで結成。現在は35地権者が加盟している。 

*4-2:http://qbiz.jp/article/32798/1/
(西日本新聞 2014年2月26日) 佐賀市「中央大通り」再生へ 県都のシンボルロードに
 佐賀市は2014年度から、佐賀駅と佐賀県庁を結ぶ中央大通りのにぎわいづくりに乗り出す。22年の九州新幹線西九州(長崎)ルート開業を見据え、県都の「シンボルロード」として再生を図る。方針の柱となるのが「美」。美容や服飾関連の店舗が多い特徴を生かし、人を呼び込む狙いだ。関連事業費計1300万円を一般会計当初予算案に盛り込んだ。市は駅周辺と、佐賀玉屋や白山名店街の周辺をそれぞれ人の集まる「核」とし、その間を商店の並ぶ中央大通りで結ぶ「2核1モール構想」を基にした中心市街地活性化基本計画を1998年に策定。その後、駅前の再開発が中止になって計画は変更され、「まずはできるところから」(秀島敏行市長)と白山周辺への公共施設の集約を進めてきた。佐賀商工ビルの完成で白山周辺の再開発が一段落することから、中央大通りの活性化に着手することにした。市の昨年の調査によると、中央大通り沿いにある121店舗のうち、美容室やエステ、服飾販売店など美容に関する店が約3割を占め、最も多かった。「“美しくなれる通り”として広めたい。女性や若い人が増えると活気が増す」と市経済部の池田剛部長。各店舗と連携したイベントを14年度中に2回開催する計画を立てている。事業費は450万円。中央大通りの「再生計画」も14年度中に策定する。有識者や地元関係者の協議組織を設置。通り沿いの建物や土地の現況調査や美に関するイベントの結果を踏まえ、企業や店舗の進出を促す方策などを考える。事業費は調査費や委託料などで850万円。秀島敏行市長は「駅前の再開発ともつなげて通りの在り方の議論が緒に就いた」と話す。 


PS(2014.4.21追加):下のような蓄電池電車を使えば、電線はいらず、使用する電気は、鉄道会社の駅、ホーム、線路部分、駅前などに、太陽光発電をデザインよく使用して自給できる。また、電力会社の電線や超伝導電線を高架に敷設させて使用料をもらえば、高架化にかかる費用の一部を補填できる。

    
           太陽光発電を設置したホーム、駅、駅前広場、駐輪場

    
    唐津線                      蓄電池電車

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2616396.article.html
(佐賀新聞 2014年1月29日) 蓄電池電車でGO! JR東日本 / 国内初、栃木で導入へ
 JR東日本は営業車両としては国内で初めて、蓄電池で駆動する電車を開発し、宇都宮市内の施設で29日、報道各社に公開した。3月から2両編成で栃木県内の東北、烏山線に導入する。大容量のリチウムイオン電池を搭載、電化された区間は充電しながら、電化されていないディーゼル区間は蓄電池を使って走る。最高時速は100キロ。フルに充電すれば平地なら約40キロ走行できるという。ディーゼル車と比べ、二酸化炭素の排出量を大幅に削減でき、騒音も抑えられる。電車は3月15日のダイヤ改正に合わせて、電化区間の東北線宇都宮―宝積寺と非電化の烏山線宝積寺―烏山に乗り入れ運行する。

| まちづくりと地域振興::2011.8~2014.4 | 05:13 PM | comments (x) | trackback (x) |

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