■CALENDAR■
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31    
<<前月 2013年07月 次月>>
■NEW ENTRIES■
■CATEGORIES■
■ARCHIVES■
■OTHER■
左のCATEGORIES欄の該当部分をクリックすると、カテゴリー毎に、広津もと子の見解を見ることができます。また、ARCHIVESの見たい月をクリックすると、その月のカレンダーが一番上に出てきますので、その日付をクリックすると、見たい日の記録が出てきます。ただし、投稿のなかった日付は、クリックすることができないようになっています。

2013.7.31 本当に福島党首の責任だろうか? 私は、共産主義・社会主義を前提とする時代は終わったのではないかと思うが・・。
   

 社民党の福島瑞穂党首の今回の参院選における「強い国よりやさしい国」というキャッチフレーズは、「強くなければやさしくもできない」という意味で、私は賛成できなかった。しかし、私は、*1に記載されているように、参院選敗北の責任が、ひとえに福島党首にあるとは思っていないため、福島党首が辞任すれば社民党の党勢が回復するとは思わない。メディアが歪曲して報道したため、国民にはあまり伝わっていないが、福島瑞穂党首の発言には、ポイントをついた真実も多いのである。そのため、福島さんが、今後、あまりテレビに出なくなるのは残念だと、私は思っている。

 歴史ある政党で地方組織を持っているにもかかわらず、共産党や社民党が強くなれない理由は、共産主義経済や社会主義経済よりも市場主義経済の方がすぐれていることが、世界史上で既に証明されているからであり、共産党や社民党の個々の政策が国民の共感を得ていないからではないだろう。しかし、国民は、社会主義・共産主義・全体主義社会に変えたいとは思っておらず、共産党や社民党を与党としては選択しないため、候補者の人材も限られて、特に選挙区で当選しにくくなっているのだと思う。

 そのため、私は、共産党、社民党、みどりの風は合併して、市場主義経済を前提とする「みどりの党」になったらどうかと提案する。そうすると、「赤旗」は「みどりの未来」になって、アカと刷り込まれたイメージを変えるのにも都合がよいし、他の中小政党や無所属議員も、共産主義や社会主義を前提としなければ、個々の政策では近いため合流できるところもあるのではないだろうか。実は、このことは、社民党時代の阿部知子議員や共産党の笠井亮議員にも言ったことがあり、その時は、「歴史のある政党だから難しい」と言われたのだが・・。

  

*1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2502E_V20C13A7000000/
(日経新聞 2013/7/25) 社民、福島党首の辞任了承 党首は当面空席
 社民党の福島瑞穂党首は25日夕の記者会見で、参院選で1議席にとどまった責任を取り同日付で辞任することを党常任幹事会で了承されたと表明した。当面は党首を空席とし、党首代行を置く意向も示した。福島氏は「参院選で社民党が掲げた300万票で3議席獲得の目標に全く届かなかった。衆院選、参院選で敗北した責任はひとえに私にある」と語った。

*2:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2102N_R20C13A7PE1000/?
(日経新聞 2013/7/22) 生活・社民・みどり、選挙区全敗
 生活の党と社民党、みどりの風は苦戦した。比例代表を含めても生活とみどりは改選ゼロ議席で、社民も1議席にとどまった。みどりは比例代表で立候補した谷岡郁子代表が落選した。社民は全体で過去の最少議席だった2議席を下回った。福島瑞穂党首は21日夜のNHK番組で「街では脱原発や反環太平洋経済連携協定(TPP)など手応えがあった」と選挙戦を振り返った。生活は小沢一郎代表の地元である岩手選挙区でも議席が獲得できなかった。小沢氏は都内で記者団に「正直大変驚いている」と語った。議席がゼロだったことについては「国民の判断だから、事実としてきちんと受け入れ、今後の政治活動をしていく」と述べた。小沢氏は次の衆院選に向け「自民党対抗の新しい受け皿」をつくると、政界再編に意欲を示してきた。地元の岩手での敗北で政界内の求心力が一層弱まることは避けられない。民主党内で小沢氏と近い輿石東参院議員会長も参院選惨敗で影響力は低下する可能性が高く、連携の道は狭い。岩手で当選した無所属の平野達男前復興相には当初、自民党内で擁立論があった。選挙後の入党も取り沙汰されているが、河村建夫選挙対策委員長は同日夜、党本部で記者団に「ハードルはそう低くない」と慎重な姿勢を示した。みどりの谷岡氏は、2009年衆院選の太田昭宏公明党代表(当時)以来の党首の落選となる。1議席も得られず、政党要件を失う見通しだ。谷岡氏は同日夜のNHK番組で「大変残念だ。みどりの風は原発やTPP(問題)では力を入れている。しっかりと国民の世論づくりにがんばっていきたい」と語った。

| 民主主義・選挙・その他::2013.1~11 | 02:13 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.7.28 「世界最高水準の安全性」は、念仏のように唱えても達成できず、現在の総合的状況は、世界最低水準であることを認識すべきである。
  
玄海原発事故時の汚染の広がり方    同九州の汚染予測      *3より
 (SPEEDIによる最初の1時間)
 *1に「東電は岸壁近くの地盤に薬液を注入し水を通しにくくする」と書かれているが、本当に薬剤で土を固めると地下水を止められると思っているのなら、東電は、あまりに物理・化学に弱いのではないか?何故なら、それは、土に薬液を注入して固め、ダムの壁をつくるのと同じくらい耐久性がない上、薬液が溶け出す可能性もあるからだ。また、東電は、「放射性物質をほとんど除去した処理済みの水を海に流そうと福島県や関連漁協などに理解を求めようとしていた」とも書かれているが、放射性物質のうちトリチウム(H3)は、水から分離できない物質であり、これだけ汚染水に鈍感な人たちが、「放射性物質をほとんど除去した処理済みの水」と言っても、もはや信用できないのである。

 *2には、「東電はこれまで汚染水の漏出を認めてこなかったが、今月22日に一転して海への流出の可能性があるとの見解を示した」と書かれている。これについて、自らの産業に影響を受ける全漁連が東電に抗議するのは当然だ。食料を汚染された消費者も抗議したい。

 そのような深刻な状況の中、*3には、「溶け落ちた燃料が格納容器の底部にたまる1~3号機の取り出し作業も見通しが立たない」「小野明福島第1原発所長は、『放射線量が高く、人が入っての作業が難しいため、中の様子は分かっていない』と説明した」と書かれているが、人が入らなくても、放射性物質があれば放射線を出すので、映像にすることができる。そのため、「分かっていない」というのは、言い訳にすぎない。さらに、現場を視察して説明を聞いた後、経済同友会の長谷川氏が「思っていたより被害状況はひどいが、他の原発については経済への影響や、エネルギー安全保障の観点からも、早期再稼働を求める考えは変わらないと言い切った」というのは、あまりにも自ら判断する能力がなく、経済産業省のシナリオに従っているだけで、経済界のリーダーとしての見識がないと思う。

 そして、*4には、「全九州電気工事業協会の評議員大会が、7月18日、唐津市で開かれ、原発の早期再稼働を訴えるとともに、発送電分離には『電力の安定供給に支障が出る』として反対していくことを決めた」と書かれている。しかし、これは、再生可能エネルギーによる発電で利益を得る筈の多くの会員の要望ではなく、九州電力の旗振りによる既存の大企業のリーダーシップの結果であろう。また、九州電力の大島洋常務が、「世界最高水準の安全性を目指すことで、再稼働の理解を得たい」と言っているが、現在、福島第一原発事故の後始末、使用済核燃料の保管や処分、人権や環境への配慮など、総合的には最低の水準にあることを考えれば、そのようなことは無理と言うほかない。

 また、事故が起これば、1時間以内に居住不能区域となる唐津市でこのような会合を行うのは、ずうずうしいにも程があるし、玄海原発は九州の北西部に位置するため、放出された放射性物質は、殆どが市街地、田畑、山、海苔の養殖で有名な有明海に落下するという意味で、フクイチよりも深刻な被害になるのである。

*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130724&ng=DGKDZO57683210U3A720C1EA1000  (日経新聞社説 2013.7.24)  汚染水対策は破綻寸前だ
 福島第1原子力発電所の敷地内から高濃度の汚染水が海に流出していることが明らかになった。流出がわずかだとしても海の汚染が今なお続く事実は重い。東京電力が状況把握に手間取り、海洋流出を否定し続けたため、漁業者らは東電への不信を一段と強めた。極めて憂慮すべき事態だ。東電はタンクにたまり続ける汚染水の処置に苦慮し、放射性物質をほとんど除去した処理済みの水を海に流そうと福島県や関連漁協などに理解を求めようとしていた。実現すれば汚染水を減らす切り札になり得たが、今回の事態で見通しがつかなくなった。
 汚染水流出を止めるため、東電は岸壁近くの地盤に薬液を注入し水を通しにくくする。また流出源である疑いが濃い、原子炉建屋周辺のトレンチ(坑道)から汚染水を抜く計画だ。いずれも流出抑制に一定の効果が期待できるが、とりあえずの対症療法にすぎない。汚染水の発生を減らす抜本策を講じないと、増え続ける汚染水のせいで福島原発の収束作業が滞る事態が予想される。このことは今年4月に地下貯水槽からの低濃度汚染水の漏れが判明した時から指摘されてきた。東電の汚染水対策は破綻にひんしていると政府は認識すべきだ。もはや東電だけでは手に負えなくなりつつある。政府が一歩前へ出て世界の知恵を集め、長期的な展望にたった対策を考えて実行に移していく必要がある。汚染水流出で水産物の風評被害の再燃が懸念される。福島県の漁業者は昨年6月、タコ類など放射能の影響がきわめて少ないものから試験操業を始めた。現在は対象魚種を広げ、本格的な操業再開に向けて努力を続けている。福島県外の市場でも、水揚げした水産物の放射能を調べて消費者の信頼回復に取り組んできた。新たな汚染水流出は水産業の復興をめざす関係者の努力を台無しにしかねない。海の汚染状況の把握に政府と東電はもっと力を入れ、風評の払拭にも努めるべきだ。

*2:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2501P_V20C13A7CC0000/
(日経新聞 2013/7/25) 全漁連が東電に抗議 福島第1汚染水問題
 東京電力福島第1原子力発電所の汚染水が海に流出している問題で、全国漁業協同組合連合会(全漁連)などは25日午前、東電本社を訪れ、広瀬直己社長に抗議するとともに、再発防止を求める要望書を手渡した。全漁連の岸宏会長は広瀬社長に「全国の漁業者、国民に対する裏切り行為。強い怒りを抱く」と述べ、不快感をあらわにした。全漁連は東電に対し、汚染水漏出を早期に完全防止する対策を取るとともに、消費者の信頼を得るための海域モニタリングの徹底・強化を要請した。要望書を受け取った東電の広瀬社長は「申し訳なく思っている。対策をしっかりやっていきたい」と頭を下げた。東電はこれまで汚染水の漏出を認めてこなかったが、今月22日に一転して「海への流出の可能性がある」との見解を示した。

*3:http://qbiz.jp/article/20506/1/ (西日本新聞 2013年7月14日) 
「被害予想以上」「それでも再稼働を」 経済同友会、福島第1原発視察
 増え続ける汚染水との戦いに苦闘し、廃炉への道のりは遠く感じた−。13日、東京電力福島第1原発を視察した経済同友会の長谷川閑史(やすちか)代表幹事たちメンバー18人に同行して所内に入った。事故から2年4カ月たったが収束の見通しは立たない。原発の再稼働を強く求める経済界。長谷川氏は視察後、「それでも再稼働は必要」と強調した。視察はバスの車窓からに限られ、約40分かけて1周した。津波が襲った原子炉建屋のそばでは、ひしゃげたトラックや、ぐにゃぐにゃに曲がった鉄骨が残されたまま。放射線量は事故当時から大幅に下がったとはいえ、3号機のそばを通過する際は毎時1・15ミリシーベルトの放射線量を記録した。静まり返った車内に「ピ、ピ、ピ」と線量計の警報音が響いた。目下の課題は、増え続ける汚染水への対応。1〜4号機の西側から、原子炉建屋に1日400トンの地下水が流れ込む。東電は2016年度までに汚染水を収容するタンクの容量を、約80万トンに倍増する。敷地南側では急ピッチで造成工事が進められていた。汚染水の発生量そのものを減らすため、原子炉建屋西側に12本の井戸を掘削済み。建屋に入る前に地下水をくみ上げ、海に放出する計画も進める。東電は放出予定の水に汚染は無いとしている。だが、最近になって海側の井戸の水から放射性物質が検出された問題もあり、漁業者の同意は得られていない。視察に同行した東電の広瀬直己社長は「リスクを小さくする取り組みだと、何度でも説明したい」と話した。溶け落ちた燃料が格納容器の底部にたまる1〜3号機の取り出し作業も見通しは立たない。小野明福島第1原発所長は「放射線量が高く、人が入っての作業が難しい。中の様子は分かっていない」と説明した。5月末には、4号機の使用済み核燃料を取り出すための逆L字形の骨組みが完成。11月にも取り出しに着手する。所内には1日3千人の作業員が出入りする。約20キロ離れた「Jヴィレッジ」で行っていた防護装備の脱着などは、今月から発電所正門に新設した管理施設に移された。少しずつだが改善の兆しも出てきた。長谷川氏は視察後「思っていたより被害状況はひどいという印象」と述べたものの、他の原発については「経済への影響や、エネルギー安全保障の観点からも、早期再稼働を求める考えは変わらない」と言い切った。

*4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2516846.article.html
(佐賀新聞 2013年7月24日) 原発の早期再稼働訴え 九州電気工事業協
 全九州電気工事業協会(4735社)の評議員大会が18日、唐津市で開かれた。原発の早期再稼働を訴えるとともに、発送電分離には「電力の安定供給に支障が出る」として反対していくことを決めた。大会には九州8県から約250人が参加。花元英彰会長は「夏の節電が社会生活や生産活動に影響を及ぼし、火力発電による燃料費の負担増は電力会社の経営だけでなく日本経済全体に深刻な影響を与えている」と述べ、原発の早期再稼働の必要性を訴えた。来賓出席した玄海町の岸本英雄町長は「安く、質のいい電気を提供してもらうことが日本の発展には必要」と早期再稼働の持論を繰り返し、九州電力の大島洋常務は「原発の全炉停止以降、わが社の財務は大変厳しい状況にある。世界最高水準の安全性を目指すことで、再稼働の理解を得たい」と語った。

| 原発::2013.7~9 | 01:57 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.7.26 原発事故の被害を意図的に小さく見せると、それが原因で病気になった人が、保障を受けられずに苦しむということ
   
ストロンチウム分布(朝日新聞)     海の汚染(東京新聞)       フクイチ3号機爆発 

 原発推進派の中には、「原発事故で亡くなった人はいない」と言う人がいるが、*1のように、もともと健康だった人が甲状腺癌などの原発由来の病気になり、心配しながら生きていかなければならないこと自体が、既に大きな被害である。その上、*1では、「放射線の影響を明らかに示すものではない」として、原発事故由来であることを曖昧にしている。しかし、その気があれば、福島原発事故の影響を受けなかった西部地域で同じような母集団について同様の検査をして比較すれば、福島県の「県民健康管理調査」の結果が原発事故由来か否かは、すぐに判明する筈である。

 *2の意図的な甘さは、癌が増えるのは100ミリシーベルト以上の被曝をした人としていることである。実際には、生物の反応は正規分布になるので、100ミリシーベルト以上になると突然癌が増えるのではなく、なだらかなカーブを描いて増加する。このブログの2013.6.18の*2で引用したとおり、原発労働者は、累積被ばく線量5~130ミリシーベルトの被曝で白血病、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫として労災認定を受けている。

 *3の楢葉町井出の井出川河口付近で表面放射線量の高い破片4点が発見されたのは、福島第1原発事故の爆発で飛散したものと考えるのが自然だが、やはり「引き続き調べる」として曖昧にしている。これも、いつまでも不明としている点がおかしい。

 そのような中、*4の盛岡市(福島第一原発から約250km)の対応は、遅ればせながら適切である。実は、私の自宅の埼玉県(福島第一原発から200~250km)でも、屋内で0.15~0.25マイクロシーベルトを記録しているが、埼玉県は何の対応もしていないばかりか、放射線量を測ってすらいない。アメリカ政府は、事故直後、原発から80km圏内の米国人は退避するよう指示していたが、チェルノブイリ事故の際は風向きによっては最大600kmまで濃度の高い放射性物質が拡散したとのデータがあり、距離だけではなく風向きも重要な要素である。これからは、きちんと放射線量を計測して、年間1ミリシーベルトを超える場所は公表してもらいたい。何故なら、それによって、福島第一原発事故の本当の被害や原発のコストが明らかになるとともに、原発事故が原因で病気になった人がその保障を受けられるからである。

*1:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/science/article/7847
(西日本新聞 2013年6月5日)  甲状腺がん「確定」12人に 福島18歳以下、疑いは15人
 東京電力福島第1原発事故による放射線の影響を調べている福島県の「県民健康管理調査」の検討委員会が5日、福島市で開かれ、甲状腺がんと診断が「確定」した人は前回2月から9人増え12人に、「がんの疑い」は15人になったとの結果が報告された。甲状腺検査は、震災当時18歳以下の約36万人が対象。これまで1次検査の結果が確定した約17万4千人の内訳を、調査主体の福島県立医大が説明した。前回2月の検討委では、がん確定は3人、疑いは7人だった。検討委の星北斗座長は、記者会見で「現時点では放射線の影響を明らかに示すものではないと理解している」と述べた。

*2:http://www.asahi.com/national/update/0719/TKY201307180504.html
(朝日新聞 2013年7月19日)甲状腺被曝、公表の10倍 福島第一作業員、半数未受診
 東京電力福島第一原発事故で、がんが増えるとされる100ミリシーベルト以上の甲状腺被曝をした作業員が、推計も含め2千人いたことが分かった。対象を広げ詳しく調べ直したことで、昨年12月の公表人数より10倍以上増えた。東電は、大半の人に甲状腺の異常を調べる検査対象となったことを通知したというが、受検者は半数程度にとどまるとみられる。作業員の内部被曝の大部分は事故直後の甲状腺被曝だ。だが、厚生労働省も東電も、全身の線量だけで作業員の健康を管理しており、甲状腺被曝の実態把握が遅れている。国の規則が全身の被曝線量の管理しか求めていないためだ。東電は昨年12月、一部の作業員の甲状腺被曝線量を初めて公表した。世界保健機関(WHO)に報告していた、実測値のある522人のデータで、100ミリシーベルト以上の人は178人、最高は1万1800ミリシーベルトとしていた。東電はこれをきっかけに、対象を広げ、甲状腺の線量をきちんと実測しなかった作業員についても、推計した。さらに今年に入り、東電からデータの提供を受けた国連科学委員会が、作業員の甲状腺被曝線量の信頼性を疑問視していることが判明。厚労省も、東電と関連企業に内部被曝線量の見直しを指示した。実測値を再評価したほか、体内に入った放射性ヨウ素の量がはっきりしない場合、セシウムの摂取量をもとに、作業日の大気中のヨウ素とセシウムの比率などから推計した。この結果、100ミリシーベルトを超えた作業員は1973人と分かった。中には、線量見直しで甲状腺被曝が1千ミリ以上増えた人もいた。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の経験などから、甲状腺に100ミリ以上の被曝をすると、がんのリスクが高まると考えられている。従来は、40歳以上はがんが増えにくいとされていたが、最近は40歳以上でもリスクが増えるとの報告も出ている。  東電広報部は「甲状腺被曝線量が100ミリを超えていた作業員全員に対し、東電の負担で生涯、年1回の甲状腺の超音波検査を行う。検査対象者にはすでに通知した」としている。検査を受けた作業員の割合は確認中というが、関係者によると、甲状腺検査を受けた作業員は半数程度にとどまっている。
     ◇
〈甲状腺被曝(ひばく)〉 主に吸入などで体内に入った放射性ヨウ素による内部被曝。100ミリシーベルト以上被曝するとがんが増えるとされるが、チェルノブイリ原発事故では50ミリシーベルト以上でがんが増えたとの報告もあり、予防目的で甲状腺被曝の防護剤を飲む国際基準は50ミリシーベルトだ。

*3:http://www.minyu-net.com/news/news/0724/news11.html
(2013年7月24日 福島民友ニュース) 高線量は原発事故原因 楢葉で発見の破片4点
 避難指示解除準備区域となっている楢葉町井出の井出川河口付近で表面放射線量の高い破片4点が発見された問題で、東京電力は23日、破片に付着した放射性物質が福島第1原発事故によるものとする推定結果を発表した。破片に放射性物質が付着した経緯は不明で、水素爆発などで飛散したのかなどを引き続き調べるとしている。東電によると、破片に付着した放射性セシウムの量は、半減期の長いセシウム137が、半減期の短い同134に比べて多かった。このセシウム量の比率が、事故から2年後に検出されるセシウムの比率の試算と一致したため原発事故が原因と判断した。また4点のうち、最も表面線量が高かったのは長さと幅が約2センチ、厚さ約0.1センチのゴムシートのような破片で、毎時3万6千マイクロシーベルトあった。

*4:http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20130726_4
(岩手日報 2013/7/26) 盛岡市、除染基準を厳格化 多数の施設超過か
 盛岡市は空間の放射線量の除染基準を引き下げ、従来の「日常の生活空間毎時0・23マイクロシーベルト以下」、「雨どいの下など局所的に高い空間同1マイクロシーベルト以下」をいずれも「毎時0・19マイクロシーベルト以下」とした。県内市町村では最も厳しく、全国でもトップ級の厳しさ。大幅引き下げとなる局所的空間では基準超えが相次ぎ、今後多数の施設を除染することになる。市環境企画課によると、市内の小中学校、保育所、公園、学童保育クラブなど878施設を昨年測定したところ、従来基準を上回った施設はなかったが、新基準に照らすと局所的空間では164施設が上回った。基準引き下げに伴い、市は今年6月から、廃止した1施設を除く163施設を再測定。これまで測定を終えた約70施設の約7割に当たる約50施設が局所的空間で0・19マイクロシーベルトを超え、同課は「相当数の施設が新基準を超える」とみている。土壌調査は今月から学校や公園約270施設で行い、数値を公表する。 市は5月に基準を引き下げたが公表していなかった。市環境企画課の桜正伸課長は「従来の基準でも健康に悪影響を及ぼすことはないが、不安に思う市民のためより安心感を高めようという措置」と語り、公表しなかったことについては「測定の途中であり、除染の規模や方法を見定めた上で公表したいと考えていた」と説明する。

| 原発::2013.7~9 | 07:50 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.7.25 女性が中心となっている職業は賃金が低く、男性が中心だった職業に女性が入っていくと雇用及び昇進の差別があって、全体として女性の賃金が低く設定されているのは、女性差別に由来するものだということ

                             *1より                           

 *1によれば、「保育所を増やそうにも保育士が集まらない」とのことだが、「勤務内容に比べて給与が安い」ため、保育士養成校の入学定員より新卒の資格取得者がかなり少なく、保育士の資格を持っていてもそれを使わない選択をする人が多いのだから、厚労省が「新たな保育士確保策をスタートさせ、私立施設の保育士の平均給与は月額約21万円で全職種平均の約29万8000円より約9万円低いので保育士の処遇改善を行う」というのが、Keyの解決策である。*2のように、「認可保育所への移行を目指す認可外の保育施設のために、確保すべき保育士の基準を緩和して通常の3分の1で認める方針を固めた」というのでは、保育の質が落ち、子どもの健やかな育ちや安全を保てるのか、おぼつかない。

 そもそも、左図右下の保育士、幼稚園教諭、看護師、ホームヘルパー、介護福祉士など、女性が主体となって発展してきた業種の賃金は、男性が主体となって発展してきた業種の賃金よりも、かなり低く設定されており、生涯を通じた仕事として選択し、研鑽を積み続けるのは躊躇される程度である。さらに、男性が主体となって発展してきた業種に女性が入っていった場合には、このブログの2013.7.17にも記載しているように、何かと理由をつけて雇用差別、昇進差別が行われ、やはり、女性の賃金は低く設定されているのだ。これは、まさに男女間の賃金格差であり、仕事における男女差別に由来するものである。

 しかし、保育所や幼稚園に通わせる以上、プロによるケアや教育で、親にはできないことまでしてもらいたいし、子育てや教育がしっかりしていることが、次世代の質を左右し、わが国の発展の礎にもなる。そして、それができるのは、資格を持ち、研鑽を積んだプロであって、この部分で規制緩和をするのは感心しない。そのため、200兆円もの公共工事や原発の無駄遣いよりも、福祉関係者に対して仕事に見合った報酬を支払うことにより、すでにいる潜在的な資格保有者に働いてもらう方針を出すべきだ。そして、福祉財源は、このブログの2013年7月18日*2の資料で、工業化の進んでいない中東諸国が上位にきているように、早く海洋資源の採掘を始めるべきなのである。

*1:http://mainichi.jp/feature/news/20130327ddm013100008000c.html
(毎日新聞 2013年3月27日) いろはのい:増える待機児童 保育士不足がネックに
 子どもの保育所への4月入所がかなわなかった首都圏の母親たちが、各地で異議申し立てを起こすなど保育所待機児童の問題は深刻さを増しています。ただ、その一方で、保育所を増やそうにも保育士が集まらないという事態も起きています。
 ◇処遇改善に着手
 出産後も働き続ける女性や共働きする夫婦が増え、保育所に入る子どもは増えるばかり。だからといって、保育所の定員を増やしたくとも保育士を確保できないという悲鳴が各地で上がっています。厚生労働省が11年に都市部や待機児童の多い自治体を対象に実施した調査では、回答した130自治体の約8割が「保育士不足」と答え、その約8割は「長期的な課題」と回答しました。こうした状況を改善しようと、厚労省は新たな保育士確保策をスタートさせます。12年度の補正予算には438億円を盛り込みました。目玉は保育士の処遇改善です。12年の賃金構造基本統計調査によると、私立施設の保育士の平均給与は月額約21万円。全職種平均の約29万8000円より約9万円低く、幼稚園教諭などより低額です。同省の保育士を対象とした調査(11年)でも、「勤務内容に比べ給与が安い」と答えた人が半数を上回りました。09年の離職率は10%。平均勤続年数は8・4年で全産業平均の11・9年より2年以上短くなっています。厚労省は低待遇が離職につながっているとみて、補正予算のうち340億円を保育士の賃金アップに充てる意向です。対象は相対的に公立保育所より給与の低い私立保育所で、保育士の処遇改善に取り組む施設には保育士の平均勤続年数に応じて費用を補助します。同省は過去の介護職員の処遇改善策で平均月額賃金を1万5000円引き上げるなどの目標を掲げていました。今回は目標額こそ示していませんが、月収約30万円の保育士なら標準的なケースで約8000円増になるとみています。
 ◇資格取得を促進
 また保育士の資格取得者を増やす取り組みも進めます。保育士養成校の入学定員は長らく、増加傾向にあったのですが、資格を取得して卒業する人は減ってきていました。このため認可外保育施設で働く保育士資格のない人を支援し、資格取得を促します。受講費用の半分と、受講のために職員が仕事を休む際、その代替要員にかかる費用を補助します。認可保育所の保育者は全員有資格者なのに対し、認可外では有資格者が6〜7割という施設もあります。資格取得者を増やすことで、将来認可外から認可保育所へ移行しやすくする効果も狙っています。

*2:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/politics/article/3752
(西日本新聞 2013年6月4日)  保育士確保で基準緩和へ、厚労省 認可外の移行支援
 厚生労働省は4日、認可保育所への移行を目指す認可外の保育施設を支援するため、確保しなければならない保育士の基準を緩和し、通常の3分の1で認める方針を固めた。全国的な保育士不足が移行の大きな障壁となっているためで、5年以内に基準を満たすよう求めている。近く全国の自治体に通知する。厚労省は5年で保育所定員を40万人増やして保育の受け皿を確保する「待機児童解消加速化プラン」を掲げている。移行を目指す認可外施設への支援はその一環で、改修費や賃料、運営費の助成も打ち出している。条件緩和には、施設が面積などの基準を満たしていることが必要。

| 男女平等::2013.5~2013.11 | 01:57 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.7.24 今の民主党の問題点は、官僚的・サラリーマン的で、有権者のニーズを捉えていないことである。
 民主党の細野幹事長が、*1と同様、テレビのインタビューでも、7月23日に、「参院選敗北の引責辞任をする」と言っているのを聞いたが、その時は、「誰かが責任をとらなければいけないでしょう」とも付け加えており、「本当は自分の責任ではないが・・」という思いがこもっていた。そもそも引責辞任とは、誰かが責任を取って辞め、責任追及を終わりにすることである。

 しかし、細野幹事長は、福島第一原発事故が起こった時、「パニックになるのが嫌なので、国民に真実を言わなかった」と言っていた人であり、戦犯の一人である。海江田代表も真っ先に原発再稼動を指示した経済産業大臣で、答弁の時に泣いたりして、信用に値しない。そのため、この2人を代表、幹事長に選んだ時点で、民主党のセンスのなさが、あらためて明白になったのである。

 熱心に「脱原発」を求めた候補者は、*2のように無所属の山本太郎氏も当選し、「脱原発」のうねりは大きくなっている。さらに、参議院東京選挙区で、民主党は、6月23日の役員会において細野氏の主導で東京選挙区の民主党公認候補者を鈴木寛氏(東大法学部卒、通産省出身)に一本化し、女性の大河原雅子氏(国際基督教大卒、生活者ネット代表)を、突然、公認からはずした。これは大河原さんにとって、あまりにも酷だっただろうし、女性を議員に登用する流れからも外れている。そして、そのような状況の中で大河原さんを支援した菅元首相を離党か除名処分にするそうだが、私は、これで民主党はダメ押しになると思う。

 何故なら、菅元首相は、現在、脱原発を表明しており、菅元首相が作った電力買取制度のおかげで自然エネルギーが普及しているのであり、あのような場合に大河原さんを支援するのは人間として当然であり、逆に、議員を使い捨てにするような政党には、優秀な人材は集まらなくなるからである。また、民主党は、女性議員に対する考え方も意外と古いが、国民は、結構、見ているのである。

*1:http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130723-OYT1T00825.htm
(2013年7月24日 読売新聞) 鳩山・菅両元首相の問題、細野氏辞任までに結論
 民主党の細野幹事長は23日、党本部で記者団に参院選敗北の責任を取るとして、選挙総括を終える8月末に幹事長を辞任することを明らかにした。これに先立ち、細野氏は同党の海江田代表と会談、海江田氏は強く慰留したものの、辞任を了承した。海江田氏は現執行部体制での出直しを表明していたが、早くもつまずいた。会談後、細野氏は記者団に「(参院選で)17議席という結党以来最低の結果に終わった。責任を取るべきなのは幹事長である私だ」と語った。細野氏は22日に海江田氏に辞表を提出していた。23日の党役員会では、細野氏が自らの主導で候補を一本化した東京選挙区での敗北などを挙げ、「責任は免れない」と説明。改めて辞意を表明したが、複数の出席者から「個人の責任ではない」などと慰留する声が上がったという。役員会ではまた、東京選挙区で党公認を外された無所属候補を支援した菅元首相や、沖縄・尖閣諸島を巡り、「中国側から見れば、(日本が)盗んだと思われても仕方がない」などの発言を繰り返した鳩山元首相に対し、処分や何らかの措置を求める声が上がり、細野氏の辞任までに結論を出すことになった。

*2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013072302000131.html (東京新聞 2013年7月23日) 山本太郎氏当選 「脱原発」求めるうねり
 参院選東京選挙区では脱原発を訴えた無所属新人の山本太郎氏が当選した。圧勝した自民党は、原発の再稼働や原発輸出に前のめりだが、原発ゼロを求める有権者の意思を謙虚に受け止めるべきだ。 山本氏は、NHK大河ドラマにも出演した俳優だ。二〇一一年三月の東京電力福島第一原発事故を機に脱原発運動に身を投じ、昨年十二月の衆院選では東京8区に立候補。次点で落選したが、七万票余りを集めた。今回の参院選にも立候補し、「今も原発を続けようと思うことが理解できない。原発事故の影響がはっきり伝えられていない。どうして国会ではっきり言う人がいないのか。ぼくは被ばくしたくない、愛する人にも被ばくしてほしくない」などと訴え続けた。政党や大組織に属さず、ボランティアとカンパが戦いの支えだった。六十七万票近くを集め、自民党現職の武見敬三氏を上回る堂々の四位当選は、脱原発を求める有権者がいかに多いかを物語る。
 全国的には六十五議席を獲得した自民党の「圧勝」が報じられるが、東京選挙区では改選数五のうち、原発「容認」派は自民党の丸川珠代、武見両氏の二人にすぎない。公明党の山口那津男氏は「原発ゼロを目指す」、共産党の吉良佳子氏は「即時原発ゼロ」をそれぞれ掲げた。山本氏を含め東京では脱原発派が過半数を占める。神奈川、千葉、茨城で当選した民主党は三〇年代の、神奈川、埼玉で議席を得たみんなの党も二〇年代の原発ゼロをそれぞれ掲げており、首都圏では神奈川、埼玉両選挙区でも原発推進は少数派だ。
 全国的にも自民党が比例代表で得たのは改選四十八議席中十八議席。三十一ある改選一人区での二十九勝も、一人しか当選できない選挙制度によるところが大きい。原発再稼働、輸出が絶対的な支持を得たわけではないことを、安倍晋三首相をはじめ政権幹部はまず、肝に銘じるべきだろう。山本氏が「今がスタート地点」と指摘するように、本番はこれからだ。安倍内閣は参院選「圧勝」に意を強くして、原発再稼働や輸出の動きを加速するだろう。これに待ったをかけ、脱原発というエネルギー政策の大転換を図るには、それを目指す政治勢力がバラバラでは不可能だ。党利党略にとらわれず、小異を捨てて大同につく政治決断や、実現可能な工程表をつくり、それを着実に実現していく緻密な政治戦略もまた、必要なのである。

| 民主主義・選挙・その他::2013.1~11 | 03:57 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.7.23 どうして「風評被害」と断定できるのか?
    
放射性物質の海への拡散予測          水産庁の計測データ

 *1、*2のように、放射能汚染水の漏洩について、東京電力は言を左右にしながら2013年7月23日に限定的に漏洩を認め、公表が遅れた理由は東電社内の情報共有の失敗だと弁解している。しかし、このブログの原発のジャンルにずっと書いているように、そもそも、事故の状況から考えて、前から漏洩して魚を汚染していたと考えるのが自然である。

 そのため、私は、*3の記事に2013年7月1日に福島県沿岸でアワビの稚貝2万個を放流したと書かれていたのには呆れたが、これはまあ、放流はしても、収穫して食べる時に放射能検査をすればよいと考えていた。

 しかし、いわき市で7月15日に海水浴場で海開きをしたというニュースには驚いた。いわき市は月2回、海水の放射性物質濃度を検査して、13日時点の濃度は検出限界を下回ったと言うが、それは、いつでも、どの地点でも、安全であるということを示すわけではない。私は、そのような時に、子どもも含む人たちが、わざわざリスクを犯して、その近くの海で海水浴をする必要はないと思う。

 また、*4では、漁業者が「風評被害も厳しくなるだろう」と言ったそうだが、風評(実体のない噂)だけで実害はないという証明はできていない。さらに、*5では、「日本原子力研究開発機構が発注した除染モデル実証事業(2011~12年)で、中堅ゼネコンの日本国土開発(東京)が福島県南相馬市で生じた汚染水三百四十トン(同社推計)を、農業用水に使う川に流していた」とも報告されているが、水や食べ物の汚染に関する感覚があまりにもずさんである。これでは、健康でいたければ福島県及びその付近のものは口にしないという選択しかないではないか。

*1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/condition/list/CK2013071302000157.html?ref=rank
(東京新聞 2013年7月13日) 地下水セシウム急上昇 規制委、東電に早急対策促す
 今週(六~十二日)の東京電力福島第一原発では、2号機の取水口近くの汚染監視用の井戸で、放射性セシウム濃度が急上昇し、汚染拡大の可能性が高まった。原子力規制委員会は、東電に早急な対策を促した。これまで周辺の地下水からセシウムはほとんど検出されなかったが、五日に一リットル当たり三〇九ベクレルだったセシウム濃度が九日には三万三〇〇〇ベクレルへと急上昇した。タービン建屋地下などから高濃度汚染水が漏れている可能性が高まった。東電は、一昨年四月に取水口近くで漏れた高濃度汚染水の一部が土壌中に残留し、セシウムは土壌に吸着された-との説を唱えていたが、セシウムが検出されると、今度は採取した水に汚染土が「混入」した可能性を言いだした。いずれにしても、汚染源を特定し、早期に海への拡散防止策を進める必要がある。また、事故の発生直後から現場指揮を執った吉田昌郎元所長が九日、食道がんで死去した。作業員から信頼されるリーダーだったが公式取材に一回しか応じず、事故の核心は語られないままだった。

*2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013072302000110.html
(東京新聞 2013年7月23日) 東電 汚染水 海漏出認める
 東京電力福島第一原発敷地内の海側にある汚染監視用の井戸で高濃度の放射性物質が相次いで検出された問題で、東電は二十二日、高濃度汚染水が地下水と混じり、海に流出している可能性が高いことを初めて認めた。この問題では、原子力規制委員会から「海に汚染が拡大していると強く懸念される」と指摘されていた。東電は同日、福島県に謝罪した。井戸で高い放射能が検出され始めたのは五月下旬からで、事故発生当初に大量の高濃度汚染水が漏出した2号機取水口の周辺を中心に、相次いで井戸水の汚染が確認された。東電は、高濃度汚染水の一部が土壌中に残り、放射性セシウムは土に吸着され、残りのベータ線を発する放射性物質が地下水の影響で井戸に出てきた可能性が高いと説明してきた。しかし、その後、一部の井戸で高い濃度のセシウムも検出され、当初の説明ではつじつまが合わなくなっていた。規制委からの指摘もあり、東電は海に近い土中に薬剤を注入して固め、壁のようにするなど漏出防止対策を進める一方、1~4号機の取水口周辺の地下水の水位と、潮位や降雨量との関連も調査してきた。その結果、潮の満ち引きに応じて地下水位が変動するほか、雨が降ると地下水位が上昇し、特に3号機の取水口前では海水の放射能濃度が上昇する傾向が確認された。こうしたことから東電は、海に近い地点では、地下水と海水は行き来しており、敷地内の放射性物質が海に流れ込んでいる可能性が高いと判断した。ただ、専用港口の海水の汚染度には大きな変動がないことから汚染は取水口近くに限定されるとみている。

*3:http://www.47news.jp/CN/201307/CN2013070101001507.html
(共同通信 2013/7/1) 福島沿岸でアワビ2万個を放流 漁再開へ期待
 東京電力福島第1原発事故で漁の自粛が続く福島県沿岸で1日、震災後初めてアワビの稚貝2万個が放流された。放流はいわき市の4カ所で実施。全長約3センチだが、順調にいけば4年後には採取可能な9・5センチほどの大きさになるという。震災前は、県栽培漁業協会が福島県大熊町で放流用のアワビやヒラメを育てていたが、津波で施設が全壊。協会は、水産総合研究センターの増養殖研究所南伊豆庁舎(静岡県南伊豆町)に職員を派遣し、育てた。放流にはいわき市の地元漁師が協力。漁師の馬目正平さん(58)は「漁業が再開できる時までに無事に育ってほしい」と話した。

*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130723&ng=DGKDASDG22052_S3A720C1CC1000
(日経新聞 2013.7.23) 漁協「風評被害厳しく」 汚染水流出
 「やっと一歩を踏み出したところだったのに……」。東京電力福島第1原子力発電所の観測用井戸から高濃度の放射性物質が検出された問題で、東電が汚染水の海への流出の可能性を認めた22日、漁業者や観光業者には衝撃が広がり、失望の声が上がった。東電社内の情報共有の失敗による公表の遅れも判明。福島県は東電に対し、対策の徹底と原因の究明を強く求めた。「またしても東電に踏みにじられた」。9月から同県いわき市沖などで試験操業を始める予定のいわき市漁業協同組合(同市)に加盟する男性漁師(75)は憤る。試験操業は本格操業に向けたデータ収集が目的。魚種や海域を限定して漁を実施し、小規模な販売が可能となる。同漁協は6月、試験操業の計画を福島県漁業協同組合連合会(いわき市)に提出し、3年ぶりの漁再開へ準備を進めていたさなか。東電は、影響は原発の専用港の範囲にとどまるとしたが「信用できない。風評被害も厳しくなるだろう。本格的な漁の再開が遠のきかねない」と肩を落とした。昨年6月から同県相馬市沖などで試験操業を続ける相馬双葉漁業協同組合(相馬市)の佐藤弘行組合長(57)は「(汚染水流出を)東電はなぜすぐに認めなかったのか。やっぱりかという印象だ」とあきれる。県漁連の新妻芳弘専務理事も「ショックだ。魚の安全性に影響がないことを消費者に理解してもらえるか」と試験操業への影響を懸念。22日、説明に訪れた東電幹部に、県漁連は「とにかく大至急、対策を」と要望したという。
 いわき市では15日、2つの海水浴場が海開きをしたばかり。市観光交流課の担当者は「東電から何も説明がない。どういうつもりなのか」と声を震わせる。同市は月2回、海水の放射性物質濃度を検査しており、今月13日時点の濃度は検出限界を下回った。今後も汚染水の流出の状況を確認しながら「引き続き厳しい検査体制を敷く」。同市内の勿来(なこそ)海水浴場の昨年の海水浴客は例年の3%程度。担当者は「海水浴場は風評被害で苦しんでいる。東電が問題を起こすたびに死活問題に直面する」と話した。福島県庁には22日午後7時ごろ、東電福島第1安定化センターの高橋毅所長らが訪れ、長谷川哲也生活環境部長に社内の情報共有が不十分で海への流出の判明・公表が遅れた経緯などを説明し、陳謝した。長谷川部長は「以前から(汚染水処理に)英知を結集したと言っていたはずだ」と、東電の縦割り組織の弊害が依然強く残っていることを批判した。

*5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013071202000129.html
(東京新聞 2013年7月12日) 国の除染 農業用水に汚染水340トン
 日本原子力研究開発機構が発注した除染モデル実証事業(二〇一一~一二年)で、中堅ゼネコンの日本国土開発(東京)が福島県南相馬市で生じた汚染水三百四十トン(同社推計)を、農業用水に使う川に流していたことが十一日、共同通信の調べで分かった。原子力機構は、川に流すことを知りながら、排水経路に触れていない国土開発の計画書を了承、地元に提出していた。南相馬市は「排水の説明はなかった。排水されたことも知らなかった」と反発。福島県も説明は受けていないとしている。放射性物質汚染対処特措法(特措法)は正確な情報伝達を求めており、環境省は調査に乗り出した。原子力機構は「地元と合意書は交わしていないが、排水については口頭で説明したはず」と説明。国土開発は「機構が地元に説明をしたと聞いていたので、排水してもいいと理解していた。農業用水に使う川とは知らなかった」としている。同社は一一年十二月~一二年二月、大成建設(東京)を中心とする共同企業体に加わり、国の除染特別地域に指定されている南相馬市立金房小学校と周辺を除染した。共同通信が入手した国土開発の内部資料「回収水等の分析データ」と取材回答書によると、作業で出た汚染水六百九トンを回収。このうち、水処理業者が処理するなどした二百六十九トンとは別に、放射性物質を検出した三百四十トンを、一二年一月から二月にかけて側溝を通じ、南相馬市内を流れ水田に水を供給する飯崎川へ排水していた。経費節減が目的とみられる。「分析データ」によると、特措法の施行規則から、原子力機構が排水の目安として設けた放射性セシウムの管理基準(一リットル当たり最大九〇ベクレル以下)を超す一二一~一〇〇ベクレルの六十トンも含まれていた。流された放射性物質の総量は、一六〇〇万ベクレルに上った。だが、下水処理場のような常設施設からの排水ではないため、原子力機構はこの六十トンについては施行規則の対象外としている。
◆こちらに責任ある
<日本国土開発東北支店南相馬工事事務所の陣川幸雄現場代理人の話> 日本原子力研究開発機構が何回も地元に事業説明をしたので、(排水を)もうやっていいかなという理解だった。排水先が農業用水に使う川とは知らなかった。地元が排水を聞いていないというなら、こちらに責(任)がある。
<排水の管理基準> 放射性物質汚染対処特措法の施行規則(2011年12月)は、下水処理場のような常設施設の排水について「1リットル中の放射性セシウム134単独なら60ベクレル、137単独なら90ベクレル、混合の場合は60~90ベクレルの範囲」の各濃度以下と規制した。日本原子力研究開発機構はこれを「管理基準」とし、除染で生じた排水の目安とした。今回の日本国土開発の排水のうち12年1月5日、23日、2月4日の3回分はこの基準を超過したが、機構は、常設施設の排水ではないとして施行規則の対象外としている。

| 原発::2013.7~9 | 01:33 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.7.22 辺野古の埋め立ては、住民の民意を無視した上、無駄遣いであるため、沖縄県知事は、政治生命をかけても埋め立て申請を却下すべきである。
    
               辺野古の埋立予定地とその海
(1)沖縄の民意は、国外か県外で一致している
 沖縄県では、*2のように、普天間基地の国外移設を求めていた糸数慶子氏が参議院議員に当選し、沖縄県知事、市町村長、議員も全員が辺野古埋め立てに反対し、自民党沖縄県連も含めて県外移設を求めていた。そして、普天間基地を移設する先は、辺野古を埋め立てる以外には確保できないのかと言えば、九州の他県にも、すでに滑走路のある場所や広い土地を確保することができ、そちらの方が安上がりである上、環境への影響も小さい。

(2)何故、辺野古埋め立てに固執するのか
 それにもかかわらず、辺野古に固執する理由は、埋め立て業者や漁業者など、金をばら撒く相手がいるからとしか思えない。しかし、そのようなことのために、国民の血税を無駄遣いするくらいなら、福祉に使ってもらいたい。そのため、*1のような要請を受ければ、沖縄県知事は自民党系であるため、つらい面もあるだろうが、ここは、政治生命をかけても断固として申請を却下するのが、今後の日本及び沖縄のためになるだろう。それは、政治家として本望とも言える役割を果たすことになるのではないだろうか。

(3)予算の無駄使いをして環境破壊するのは、もうやめるべき時である
 沖縄県の漁業者は、保証金をもらって辺野古の埋め立てに同意したようだが、現在は、そのような無駄遣いをしながら環境破壊を許す時代ではなく、海は漁業者だけのものでもない。そのため、*3のように、ジュゴンの住む美しい海を、わざわざ見苦しく埋め立てて環境破壊する必要はない。

*1:http://digital.asahi.com/articles/TKY201307210238.html
辺野古埋め立て許可「知事に要請したい」 菅官房長官 
 菅義偉官房長官は21日夜のテレビ朝日の番組で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設のため県に埋め立てを申請していることについて、「知事に(年内の許可を)お願いさせていただきたい。(米軍基地の集中による)沖縄県民の負担をできる限り少なくすることに全力を尽くしている」と述べた。参院選沖縄選挙区で、県外移設を掲げる野党候補の勝利が確実になったことを受けて語った。

*2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130722-00000003-okinawat-oki
(沖縄タイムス  2013年7月22日) 参院選:政府、辺野古移設への影響懸念
 沖縄選挙区で自民党公認候補が落選し、野党が推した現職の糸数慶子氏が当選したことに対し、政府関係者からは、米軍普天間飛行場の移設進展への影響を懸念する声がある一方、政府方針が変わることはなく現行通り名護市辺野古への移設を進めていくべきだとする見方もあった。防衛省関係者は、普天間の「県外、国外」を訴えてきた糸数氏の再選が最新の沖縄の民意となることから「来年1月の名護市長選や、仲井真弘多知事の埋め立て承認申請の判断に少なからず影響を与えるのではないか」と指摘。ただ「自民党県連や仲井真知事も『県外』を求めている状況は同じで、政府として沖縄の理解を求めていく立場は変わらない」と引き続き溝を埋める作業が必要との考えを示した。ある官邸関係者は「自民候補の落選は、糸数氏個人の知名度の高さによるものか、基地問題をはじめとする政権や政府への県民の怒りなのか読み取りにくい」と話す。一方で「沖縄の民意は民意として受け止めるべきだが、立ち止まっていては政策が進まない」と、普天間の辺野古移設を進めるべきだとの立場を示した。

*3:http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-07-16_51755
(沖縄タイムス 2013年7月16日) 辺野古藻場保全の県民意見求める 日本自然保護協会
 日本自然保護協会(東京都)は15日、名護市辺野古の海域で海草藻場を観察し、周辺海域の保全を訴えた。同協会は、米軍普天間飛行場の移設に向けた埋め立て申請に対し「利害関係者の意見」として「より多くの県民に意見を出してもらいたい」と呼び掛けた。提出期限は18日。 同協会によると、辺野古や大浦湾には県内で最大の海草藻場が広がる。この日の観察では、ジュゴンの食(は)み跡は確認できなかったが、同海域で見られる海草7種のうち、リュウキュウスガモやウミジグサなど5種を確認。いずれも生育状況は良かったという。同協会保護プロジェクト部の安部真理子さんは、埋め立てが及ぼす生物への影響は甚大だと強調。「埋め立てを阻止するために、一人でも多くの県民に意見書を提出してほしい。正式に意見が出せるのは今回が最後のチャンスだ」と呼び掛けた。同協会はホームページでも、意見書の提出方法などを掲載している。

| 外交・防衛::2013.1~2014.8 | 03:25 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.7.21 国民は全員が有権者で主役であり、若者だけが主役ではないので、誤ったメッセージを発するべきではない。
        

(1)選挙権は権利か義務か
 結論から言って、選挙権は義務ではなく権利であり、権利を放棄するのは自由なのである。そのため、*2のように、若者の投票率が低いから若者にとって便利なツールを使って若者の気に入るようなメッセージを出すというのは、国民を平等な有権者として扱うべき選管の行動としては感心しない。千葉県の前回の参院選での20代の投票率は33.27%で60代の半分以下だったそうだが、それは、若者に問題意識や選挙権があることへの感謝の気持ちがないからではないだろうか。
 普通選挙による選挙権は、戦後初めてすべての国民に与えられたものであるため、高齢者はその権利を大切にして行使するのであり、“若者”は、選挙権が自分に与えられた権利であることも忘れて、晴れると選挙より行楽に出かける人が増えるという状況なのである。これは、メディアの日頃からの政治報道の仕方や教育における政治の取り上げ方にも責任があるだろう。

(2)しかし、問題意識のある若者は行動している
 TPP参加に関し、農業は農家、ISD条項や憲法は弁護士が行動している。政治は、まさに国民生活と直結するものであるため、その問題に関係のある人が行動を起こし、他の人にその問題意識を広めるのが自然だ。そして、あることに関して行動を起こすと、その原因となっている本質的な問題点や他の分野に関する問題も見えてくるため、行動を起こした人にとってもよい経験となる。私の場合は、公認会計士として年金制度・会計制度・税制、女性として女性差別や保育・介護に問題を感じて変えようとし、その他の問題にも入って行った経緯がある。

(3)厚生労働省の調査は正しいか?
 *3の佐賀新聞記事は、知り合いの宮崎勝さんのものだが、「2009年度の厚生労働省の調査では、年齢が高い層ほど『社会保障の水準を引き下げて、従来通りの負担を維持、もしくは負担を減らすべき』と考える割合が高くなっている」等々書かれており、高齢者福祉削減の根拠としている。しかし、省庁の調査が政策実現のための誘導になっているのは、どの省庁を見ても明らかであり、佐賀新聞であれば、佐賀県の実態を正確に調べて報道すべきだ。
 私は、衆議院議員をしていた期間、社会調査も兼ねて地元佐賀三区を一軒一軒挨拶廻りし、在宅の人とは話をし、懇談会も多く行ったので、生活状況や要望がわかった。一人きりになった老人が、「電気代を節約して、孫が来た時以外は、クーラーをつけない」と言っていたり、「船賃が高いからあまり病院に行けない」という離島の老人がいたりした。年金は、月に3万円程度ということだった。また、呼子朝市で魚を売っていたおばあさんからは、「消費税だけは、絶対に上げんどいてね」と言われた。一般の高齢者や消費者が本当はどういう生活をしているのか、消費税を上げて高齢者の社会保障の水準を引き下げると、公平・公正になるのか、自分で廻って調べてみるべきである。
 「親孝行」という言葉はあっても「子孝行」という言葉はない。その理由は、生物は、自分のDNAを残すために、本能的に子を大切にするが親は大切にしないため、人間は、文化として「親孝行」という道徳を持ったのだそうである。他の生物を観察すると、それは、もっとあからさまである。しかし、この頃、少子化を理由に、人間の道徳がないがしろにされてきており、どこか狂っていると思う次第である。

*1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=22020
(日本農業新聞 2013/7/4) 反TPPで弁護士決起 今月中に組織設立
 東京、大阪、名古屋市で活動する弁護士らは、今月中に「TPPに反対する法律家の会」(仮称)を立ち上げる。TPPで非関税分野の問題点となる投資家・国家訴訟(ISD)条項について法律家の視点から分析することが目的。国家主権に関わる懸念事項を市民に分かりやすく周知し、TPP反対の世論形成を進める。全国に賛同者を募り、会員数は少なくとも数百人規模になると見通しており、同会事務局は「TPPの本質を理解し、戦う弁護士を増やしていく」としている。同会は、日本弁護士連合会憲法委員会副委員長を務める名古屋市の川口創弁護士が組織化を提案し、大阪市の杉島幸生弁護士、名古屋市の岩月浩二弁護士らと月内の設立を目指し、準備している。都道府県弁護士会会長を務めた有力弁護士らに幅広く参加を呼び掛け、TPPへの態度を明らかにしていない日本弁護士連合会へ働き掛けたい考えだ。杉島弁護士は「それぞれ精通する分野を結集し、世論形成に生かしていきたい」と説明する。

*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130720&ng=DGKDASDG19051_Q3A720C1CC0000
(日経新聞 2013.7.20) あす投票へ行こう 選管も「最後のお願い」 - 散髪中に「選挙でしょ」 メールで「若者が主役」
 参院選投票日が翌日に迫った20日、各地の選挙管理委員会は投票を呼び掛ける「最後のお願い」を繰り広げた。争点が見えづらかった選挙戦。しかも投票日は小中学校が夏休みに入って最初の週末と重なる。理髪店や携帯電話会社など民間とタッグを組んだ作戦を展開し「選挙も忘れないで」と訴えた。(中略)投票率が低い若年層にターゲットを絞ったのは千葉県選管。「明日投票日です!」。20日午前からNTTドコモ、ソフトバンクモバイルと連携し、県内の20代の携帯電話加入者約12万9千人にメールを送る。決めぜりふは「さあ行こう 今日はあなたが 主人公」。同県の前回参院選での20代の投票率は33.27%と60代の半分以下。選管担当者は「携帯メールなら若者が必ずチェックしてくれるはず」と願う。(中略)今夏の最高気温が39度を超えた山梨県。甲府市選管は市内の投票所のうち、熱が籠もりがちな5カ所に扇風機を置いて、職員や投票に来た人の熱中症防止に努める。“適温”だと行楽に出かける人も増える。横浜市選管の職員は「投票日の気温は20度台後半、天気は曇りが好ましい」。海や山に家族で出かける前に投票してもらおうと、都選管は19日、「期日前投票は20日まで行っています」とツイッターでつぶやいた。

*3:http://www.saga-s.co.jp/news/ronsetu.0.2511396.article.html
(佐賀新聞 2013年7月20日) 参院選・世代間格差 シルバー民主主義を超えて
 少子高齢化が進み、有権者全体に占める高齢者の割合が増えている。高齢者の意見が反映されやすいこの政治状況は「シルバー民主主義」と呼ばれている。言い換えれば若い世代の声は届きにくい。参院選の投票日を前にこの現象を考えてみたい。戦後のベビーブームで生まれた「団塊の世代」が成人した1969年当時は、65歳以上の高齢者約700万人に対し、20代は3倍の約2千万人もいた。だが先月の人口推計では、20代は高齢者の半分にも満たない。30代を加えてもなお高齢者の方が多い。しかも投票率が高齢者は若年層に比べて高い。昨年12月の衆院選で投票率を年代別にみると、総務省の抽出調査で20代37・89%、30代50・09%に対し、60代74・93%、70代73・92%と政治参加に積極的だ。この傾向は今に始まったことではないが、若年層にしてみれば人数が減っている上、投票率が低ければ影響力はさらに低くなる。
 シルバー民主主義で語られる一例が、2006年に成立した医療制度改革関連法だ。70~74歳の医療費の窓口負担を08年に1割から2割に引き上げることを決めていた。だが当時の自公連立政権、続く民主党政権は1割の特例措置のまま据え置いた。与党に返り咲いた現政権も同じだ。引き上げれば高齢者の反発を招き、票を大きく失うと心配したからだと言われる。この特例措置のために毎年度2千億円を手当てしている。社会保障費は主に高齢者向けに使われている。人口構成に合った使われ方と言えるし、多数決で決める民主主義国家であれば、多数が好む政策が採用されるのは当然ではある。だが膨らみ続ける国の借金残高は1千兆円が目の前で、社会保障の公的負担は毎年1兆円ずつ増加している。公的年金制度のように世代間で助け合う仕組みでは、少子高齢化が進むほど現役世代の負担は重くなり、世代間の不公平が生じる。社会保障サービスを抑制し、増税など負担を上げることは避けられず、制度改革を先送りする政治は許されない。若年層が年を取っても、現在の高齢者と同水準のサービスを受けられそうにはない。働き方も終身雇用が望めない不安定な非正規雇用が増えている。就労環境が改善されたり、社会の支えが拡充されなければ、少子化の歯止めとなる出産・子育ては難しい。
 高齢者も自分のことばかり考えているわけではないだろう。やや古い09年度の厚生労働省の調査では、年齢が高い層ほど「社会保障の水準を引き下げて、従来通りの負担を維持、もしくは負担を減らすべき」と考える割合が高くなっている。持続可能な社会保障でなければ、自らの生活が脅かされる。世代間で痛み分け、協調することが大事だ。2060年の将来推計人口では、4割が65歳以上になると出ている。現状のままでは「何をしていたのか」と子どもたちから断罪される時がやがて来る。これから生まれる世代のことも考え、どう負担を分かち合うか。有権者にとって耳の痛い政策をどれだけ語っていたかも投票先を選ぶ参考材料になるだろう。佐賀県内では20代の投票率全国一を目指す取り組みがある。若い世代にも1票を無駄にすることなく投じてほしい。(宮崎勝)

| 年金・社会保障::2012.4~2013.7 | 04:40 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.7.19 年金、医療、介護などの社会保障について
       

(1)世代間闘争にもっていくのは、運営責任者の責任逃れである
 *1の「今後の社会保障を支えるのは若者なので、若者の意見を政策に反映してほしい」とか、*2の「年金や医療は高齢者を優遇する世代間格差を内包している」というような記事をよく見かけるが、このような論調は、今まで私たちが支払ってきた保険料を、退職後の給付に必要なだけ積み立ててこなかった運営主体の無責任に関して、高齢者と現役世代である若者の世代間闘争に仕立て上げて曖昧にするものであり、決して許してはならない。
 また、*1では「高齢者は増えているのに、制度を支える現役世代は減る一方」、*2では、「保険料・税の大半を払っている現役世代」とも書かれているが、そもそも、年金、医療、介護などの保険制度は、健康で働ける時に積み立て、必要になったら給付を受ける仕組みであって、誰でも年をとったら給付される側になるため、このような世代間闘争の構図を作るのがおかしい。そして、現役世代は、正規雇用でなければ制度を支えることは難しく、女性、外国人労働者でも一向にかまわないことから、「制度を支える現役世代は減る一方」というのは、本当は別の解決策があるのである。

(2)あるべき改革
1)年金について
 このブログの2012.12.18に記載したとおり、年金制度に関しては、私も現在の「賦課方式」から「積立方式」に変更するのが、責任が明確になってよいと思う。年金制度は、私が厚生年金に加入した1982年には「積立方式」であり、1985年に専業主婦を3号被保険者にした時に「積立方式」では賄えなくなって「賦課方式」に改められたものである。そのため、私の事例では、契約時は自分のための積立だったのに、給付時には若者からの仕送りなどと言われるのは、そもそも契約違反であり、とんでもないのだ。
 そのため、もとの積立方式に戻すのがよいと思うが、積立方式への移行期に、現役時代に支払った保険料が賦課方式とされ自分の積立にまわらなかった人の年金財源については、年金保険料を二重負担させることは社会正義にもとるため、長期国債を財源に充てて数世代で返済すべきである。また、年金制度が不備だった敗戦後の焼け野が原から現在の日本の基礎を作り、核家族化の波を受けて生活に窮している世代に対し、最低保証年金を渡すのは当然である。いくら少子化でも、これに苦情を言うような道徳観の欠けた若者(馬鹿者)はいらないし、子どもをそういう自分中心の人間に育ててはいけない。
 もちろん、最初の年金制度の設計時よりも平均寿命が15~20年延びたという幸せな誤算もあったが、支給開始年齢は5~10年しか引き上げられていない。そのため、*2、*3に記載されているように、定年の延長又は廃止を事前に行い、生活できるだけの収入がある場合には支給開始年齢を70歳に引き上げるのは妥当だと思う。そもそも、人間は、働いていた方が健康でいられるものである。
 
2)医療について
 *2の「窓口負担は年齢で差をつけるのではなく収入に着目する」というのは、確かに公平の観点からよいと思う。しかし、「診療報酬を上げるという民主党は財源をどうするのか」というのは、診療報酬で病院は成り立っており、赤字経営の病院が多い実態を直視すべきなのであって、使命を終えた原発に交付金を出したり、公共工事に200兆円出したりするより、こちらに支出する方がよほど重要である。
 また、*2には、「従業員と事業主が拠出する健康保険料の約半分は、高齢者が使う医療費に召し上げられている」とも書かれているが、人間は、若い頃は病気をせず、年をとってから病気をするものであるため、本来は、その人が保険料を支払った健康保険組合で最期まで医療費を支払うべきなのである。しかし、現在はそうなっていないため、健康保険組合から国民健康保険に支出しているので当然だ。
 さらに、*2の「自由診療を併用する混合診療は私費でまかなう医療を増やし・・」などというのは、国民皆保険制度に反する。自由診療を認めるのは、薬や治療に関する承認ラグくらいにすべきである。

3)介護について
 介護は、*4でも述べられているとおり、個人や家族の負担とすれば耐えられないほど重いものだから、介護保険制度を作ったのである。そして、介護もまた、将来は自分も利用するサービスであるため、介護保険制度の支払対象者は所得のある人すべての応能負担とし、介護サービスは必要とする人全員に提供されるべきである。そのため、「柔軟な働き方を促す仕組み」などとして非正規雇用を増やし、介護保険の支え手からはずすのは本末転倒である。

4)生活保護について
 *2に、「国民年金の保険料未払い問題にどう対処するのか。未納率は40%を超す。若い世代ほど高く、生活保護の予備軍を増やしている」と書かれているが、これは私がこのブログの2013.7.17に記載した非正規雇用の増加と関係している。雇用者は、正規雇用として社会保険も負担すべきなのであり、そのためには、需要のある財・サービスを生産して付加価値のある生産を行わなければならないのは、企業として当然のことである。

(3)「痛み分け」という発想の非論理性
 *2のように、財政について語る時、「痛みわけ」というような感情論をよく目にするが、こういうことを言う人は、大学時代に勉強をせず、マージャンばかりしていたのではないかと思う。本来は、①責任のある人が責任をとり、責任のない人は責任をとらない ②無駄遣いと必要な支出は明確に区別する ③契約違反はしない ④従って、誰もが平等に「痛み」を分担するのは不公正である というのが常識である。

(4)財政改革のあるべき姿について
 特に日経新聞は、財務省の主張そのものだが、年金・医療・介護など人権の本質をわきまえずに、他で大きな無駄遣いを許しながら人権をおろそかにするという質の悪さがある。また、社会保障費は、基本は保険料で支払うものであり、税金で支払うのはその保険設計時に想定外だった部分とするのが妥当である。そして、その税金は、消費税でなければならないという決まりはないため、消費税率引き上げのために福祉財源を主張するのは卑怯だ。

*1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013071302000134.html
(東京新聞 2013年7月13日) <政策 もっと知りたい>社会保障 分かれる自助、公助
 「社会保障の先行きが全く不透明だ。われわれのような高齢者は預貯金をなかなか消費に回そうという気持ちになれない」(浜松市中区、無職奥村克彦さん、68歳)。年金、医療、介護など社会保障制度の給付費は毎年約三兆円のペースで増え、二〇二五年度には一三年度の三割増、約百四十九兆円に達する見通し。少子高齢化の中、社会保障制度をどうするかは待ったなしの課題だ。自民党は公約で「自助、自立を第一に」と家族や地域の負担を重くし、社会保障費を抑える「自助」を前面に打ち出した。しかし、具体的な施策には触れなかった。公明党も現行制度維持の立場から、患者の自己負担が一定額を超えた分を払い戻す高額療養費制度の拡充や無年金・低年金者対策などを挙げた。政府は六月に閣議決定した中長期の経済財政運営に関する「骨太の方針」で、社会保障について「聖域なく見直す」と明記した。自公にどこを見直すのか質問したが、今後の議論に委ねるとの回答だった。自助よりも、税金で賄う「公助」を重視したのが民主、生活、社民、共産の四党。公約に、全額を税で賄う最低保障年金の導入を明記した。原則としてすべての人に月額五万~八万円を給付する。問題は財源だ。民主は与党時代、最大月七万円の最低保障年金を導入すると、消費税を10%に引き上げた後、七五年度に6%分の追加増税が必要との試算を公表した。四党に財源をどう手当てするのか質問すると民主は消費税増税が必要と回答。生活は金融資産への税制措置や特別会計の活用、社民は所得税や法人税を挙げた。共産は「所得税の累進課税を強化する税制改革」が必要だとした。高齢者は増えているのに、制度を支える現役世代は減る一方。愛知県津島市の男性(22)は「国の借金を返済し、今後の社会保障を支えるのは若者。もっと若者の意見を政策に反映してほしい」と意見を寄せた。現役世代を意識したのがみんなと維新。年金制度に関し両党は現役世代から高齢者への「仕送り」の形を取る現在の「賦課方式」から、自分で老後に備えて蓄える「積み立て方式」への変更を提案した。維新は年金の支給開始年齢のさらなる引き上げや、医療保険の高齢者の自己負担率引き上げにつながる一律化も掲げた。積み立て方式への移行期、現役時代に十分な積み立てができなかった人たちの年金財源はどう賄うのか。両党に聞くと「超長期」の国債などを財源に充てるとの回答だった。 みどりは年金に関しサラリーマン世帯らの専業主婦「第三号被保険者」制度について、保険料を納めなくてもよいことなどを念頭に見直すべきだとした。

*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130714&ng=DGKDZO57346830U3A710C1PE8000
(日経新聞社説 2013.7.14) 年金・医療と財政どう立て直すのか
 与野党とも積極的に語るのを避けているきらいがあるが、年金や医療制度をどう立て直し、財政再建にどうつなげるのか。未曽有の少子化、先進国で最速の高齢化という二重苦に直面する日本経済にとって、社会保障改革は国政選挙の普遍の課題である。
●高齢層にも「痛み」説け
 2013年度の国の予算をみると、年金と医療・介護、生活保護などに使う社会保障費は29兆円を上回り、地方交付税を除く政策経費の54%を占める。年金などにかかる社会保険料を含めた社会保障給付費は100兆円を優に超す。保険料・税の大半を払っている現役世代の人口減少は、今後さらに加速する。おまけに年金や医療費の一部は赤字国債に依存し、将来世代を苦しめている。自民、公明、民主3党の合意によって政府は消費税率を14年度から2段階で10%に上げる。年13兆5千億円の大型増税にもかかわらず、財政再建には力不足だ。年金や医療は高齢者を優遇する世代間格差を内包している。これをやわらげ、制度の持続性を高める改革を各党は前面に出してほしい。自民党の基本方針は、政府の社会保障制度改革国民会議の結論をふまえ改革するというもの。行政府の意向を尊重するだけでなく、政党色をもっと出してほしい。年金制度が根本からの改革が必要なのは論をまたない。積立金運用について年4.1%の「高利」を前提にした百年安心プランは砂上の楼閣だ。だが自民、公明の両与党は制度の刷新に距離をおく。たとえば国民年金の保険料未払い問題にどう対処するのか。未納率は40%を超す。若い世代ほど高く、生活保護の予備軍を増やしている。現行制度に問題はないと言うだけでは不信感は拭えまい。 民主党は最低保障年金の創設を公約した。これまでに何度も政権公約に盛りこんだ案だ。現役時代の所得が低い人に限って税財源の年金を支給する案は、未納問題の深刻さを考えれば理解できる。だがこの党に支給範囲を絞りこみ、必要額を示して増税に踏みこむ覚悟があるのか。鳩山、菅、野田の歴代政権はそれを怠った。理想型を漫然と公約に載せるだけでは有権者に愛想を尽かされよう。目を引くのは、加入者が掛け金を積み立て、現役を引退したときに自分のために取り崩す積み立て年金への衣替えを主張するみんなの党と日本維新の会だ。少子高齢化の時代に適した方式だが、移行時に生じる新たな負担をどの世代に担わせるのか。画餅に帰させないためにも、方法論と財源を示してほしい。医療制度は課題山積だ。しかし改革に正面から取り組む意志があまり伝わってこない。国民医療費はいまや年40兆円規模。保険財政を安定させるために70代前半の窓口負担を法の規定どおり20%にするのは当然だ。これは選挙の争点以前の問題である。10%への据え置きに政府は約1兆2千億円の借金をかさねた。この間、政権を担った自公両党と民主党はともに猛省してほしい。
●税財源を高齢者医療に
 そもそも窓口負担は年齢で差をつけるのではなく、収入や資産に着目したほうが、世代間公平の観点からもよいのではないか。自民党は国民健康保険の運営主体を市区町村から都道府県に広げる方針を出した。加入者が高齢化しており広域化は当を得ている。ただ保険料の徴収は市に、保険運営は県に、という股裂きは避けるべきだ。両機能を一体にしてこそ保険財政への規律がはたらく。診療報酬を上げるという民主党は財源をどうするのか。ここにもいいかげんさが見え隠れする。全般に各党とも企業の健康保険組合を軽視している印象だ。従業員と事業主が拠出する健康保険料の約半分は、高齢者が使う医療費に召し上げられている。14年度からの消費税の増税分を高齢者医療の一部に充てるなど、健保組合を支援する視点がほしい。保険診療と自由診療を併用する混合診療は私費でまかなう医療を増やし、医療技術のいっそうの革新を促す。みんなと維新は、その解禁や適用拡大を唱えている。財政再建を果たすには増税や保険料引き上げだけではなく、社会保障の給付切り詰めが不可欠だ。高齢層に一定の厳しい選択を迫らざるを得ない事実は、どの党が政権についても変わらないのだ。

*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130713&ng=DGKDASFS1202S_S3A710C1MM8000
(日経新聞 2013.7.13)国民会議、年金開始の引き上げ明記へ 社会保障、現役に手厚く
 政府の社会保障制度改革国民会議は12日、最終報告書のとりまとめに向けた調整に入った。高齢者に手厚く配慮する現行の制度から転換し、現役世代の支援に軸足を移していく方針を確認した。膨らむ給付の具体的な抑制策として、公的年金を受け取ることができる年齢の将来的な引き上げを盛り込むことがほぼ固まった。国民会議は最終報告書を8月上旬にまとめる。これを受けて政府は将来の改革のスケジュールを定める「プログラム法案」をつくり、秋の臨時国会に提出する。個別の政策はその都度法案化を目指す。医療・介護などの分野も含め、「痛みを伴う改革」をどの程度示せるかが焦点になる。12日は、昨年11月の初会合以降に出た指摘を事務方が整理して示した。報告書の「素案」に近い。効率化に向けた具体策は(1)年金の支給開始年齢の引き上げ(2)一部の薬の患者負担の見直し(3)全国どこでも自由に医療機関を利用できる仕組みの見直し(ゲートキーパーの導入)――を例示した。年金の支給開始年齢は現在の65歳から引き上げる方向で議論する。改革の道筋に関しては、いずれの政策も「5~10年先を見れば議論しておく(ことが)必要」との表現にとどめており、参院選後の最終報告でどこまで強められるかが課題だ。高齢者医療制度を支えるため、大企業の健康保険組合の負担を重くする「総報酬割」の全面導入の実施も報告書に盛り込む可能性が高まっている。

*4:http://www.nikkei.com/article/DGXDZO57374110W3A710C1PE8000/
(日経新聞 2013/7/16) 「仕事と介護」の両立がしやすい社会に
 仕事と子育ての両立は、少子化対策としても女性の活躍促進策としても、繰り返し語られてきた。加えて今後は「仕事と介護」の両立も、一段と重要な課題になる。高齢化が進み、特に介護が必要になりやすい75歳以上の人は2025年に12年の1.4倍となる。一方、子世代はきょうだいの数が少なく、未婚率も高い。親の介護に直面したとき、どう担っていくのか。待ったなしの課題として、行政も企業も一人ひとりも向き合い、備える必要がある。総務省がこのほどまとめた就業構造基本調査によると、働きながら介護をしている人は約290万人いた。うち働き盛りの40、50代の人は約170万人を占め、その4割は男性だ。子育てと異なり、介護の問題は表面化しにくい。「家庭内のこと」と周囲に相談しない人も多く、特に男性は抱え込みやすい傾向が指摘されている。両立に悩み、社員が仕事を辞めると職場にとっても損失だ。介護が必要になる前から広く社員に社内外の支援策を伝え、相談体制を拡充する企業もあるが、まだ少ない。介護の負担は、家庭の状況などにより大きく異なる。だが、柔軟な働き方や有給休暇などの取得がしやすければ、より両立しやすくなる。介護休暇を拡充したり、介護休業を分割取得しやすくしたりする企業もある。職場風土と働き方の見直しが大事だ。働く側も、事前に介護保険などの知識を持ち、家族で話し合うなど備えておく必要がある。介護保険外のサービスも組み合わせることで両立しやすくなることもある。自治体やNPOなどは、よりサービスを充実し、分かりやすく情報提供する工夫がいる。基本調査によると、介護による離職者は12年までの5年間の平均で約10万人にのぼる。離職に伴う経済的負担は大きく、再就職支援なども必要になるだろう。育児に比べ介護は、両立している人がどう工夫し、どう悩んでいるのかの情報が極めて乏しい。ケースを集め社会で共有していくことも欠かせない。介護する人をケアする場の拡大も必要だ。15年には育児・介護休業法の見直し論議が始まる。介護は先の見通しが立ちにくく、休業期間(家族1人につき93日)をいたずらに延長することは現実的ではない。柔軟な働き方を促す仕組みづくりこそが大事だろう。

| 年金・社会保障::2012.4~2013.7 | 08:18 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.7.18 人が住みたいと思う豊かな国とはどういう国か? ― その指標は、名目GDPではなく、購買力平価換算の一人当たりGDPが重要な要素である。
(1)国民が豊かさを感じる国は、購買力平価換算の一人当たりGDPが高い国
 世界の名目GDPの順位は、1位はアメリカ、2位は中国、3位は日本である。しかし、*2の購買力平価換算の一人当たりGDPでは、アメリカは7位、中国は93位、日本は24位だ。そして、国民一人一人がどのくらい満たされた生活を送れる国かという指標は、その貨幣で買える物を同じにして比較した購買力平価換算の一人当たりGDPだろう。

 購買力平価とは、2つの通貨がそれぞれ自国内で商品・サービスをどれだけ購買できるかという比率で、一般に通貨の対内購買力はその国の物価指数の逆数となる。つまり、1000万円の貯金で100平方メートルの満足できる家を買えるA国と同じ家を4000万円出さなければ買えないB国とを比較すると、B国の購買力平価はA国の1/4であり、購買力平価換算の一人当たりGDPは、一人当たりGDPを物価水準で調整してから比較するわけである。

 そして、購買力平価換算の一人当たりGDPで比較すると、*2のとおり日本は24位であり、日本国民はGDP3位というほど豊かな暮らしはしていない。ここで金融緩和してインフレにすると、それだけでは経済実態はかわらないため、インフレになった分だけ名目GDPは増加し、インフレで物価上昇した分だけ購買力平価が落ちて購買力平価換算の一人当たりGDPは変化しない。そのため、金融緩和政策では一人一人の国民を豊かにすることはできないのである。そして、特に打撃を受けるのは、物価上昇と比例して収入が増えない人たちである。

(2)人口が増えると、国民が豊かになるか?
 *1のように、①金融緩和こそが重要だ ②人口が減ると景気が悪くなる という論調は多い。しかし、(1)で述べたとおり、実体経済の変化が需要を捉えていない単なる通貨の価値下落では、国民を豊かにすることはできない。また、人口が増えただけでは、一人当たりGDPは下がりこそすれ、上がらない。大切なのは、その時いる人のニーズを捉えて、より豊かに生きるための財・サービスを提供することである。それを自然とやってきたのが、ドイツ、ポルトガル、ロシアであり、意図的に高齢者を冷遇して高齢者の需要を抑えているのが日本である。そして、政治の無力だけがその原因なのではなく、論理に弱い日本の経済学者や官僚とその尻馬に乗って報道しているメディアが戦犯なのである。

*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130715&ng=DGKDASM210008_T10C13A7NN1000
(日経新聞 2013.7.15) 人口減、デフレの主因か 日本以外はインフレ圏
 手すり付きの売り場、白内障でも見えやすい色の価格表示。ドラッグストア大手のサンドラッグが関東地方で始めた新型店舗は、シャッターを閉めた空き店舗が目立つ商店街の高齢者などに照準をあわせている。「需要不足となる人口減はデフレの主因か」。日本はこんな論争に時間を費やしてきたが、才津達郎サンドラッグ社長の見方は少し違う。「人口減で成長期待を失った日本は、増え続ける高齢者の需要をつかむ努力を怠ってきたのではないか」。海外を見渡すと約10年前から人口減少が始まったドイツでは、消費者物価が毎年2%程度上昇し続けている。ポルトガルやロシアも人口が減っているがインフレのまま。長期デフレに陥ったのは日本だけ。労働力供給も需要も減る人口減は必ずしもデフレに直結しない。海外の事例を傍証に人口減を巡る論争はこんな方向でひとまず収れんしつつある。だが、縮小均衡に陥りがちな日本経済の成長期待をどう高めるかという論点は残る。海外の有力投資家が日本の移民政策の動向に関心を寄せるのはそのためだ。待機児童解消で失敗を繰り返した政治の無力。マネーの力を出し惜しみした日銀。過去の迷走を教訓に、政府・日銀は新たな道を探るが、多くの課題がまだ残っている。

*2:http://ecodb.net/ranking/imf_ppppc.html
世界の一人当たりの購買力平価換算のGDP(USドル)ランキング
1位 カタール 102,211.00 中東
2位 ルクセンブルク 79,785.04 ヨーロッパ
3位 シンガポール 60,409.98 アジア
4位 ノルウェー 55,008.77 ヨーロッパ
5位 ブルネイ 54,388.65 アジア
6位 香港 51,494.15 アジア
7位 アメリカ 49,922.11 北米
8位 アラブ首長国連邦 49,011.59 中東
9位 スイス 45,417.81 ヨーロッパ
10位 カナダ 42,734.36 北米
11位 オーストラリア 42,640.28 オセアニア
12位 オーストリア 42,408.58 ヨーロッパ
13位 オランダ 42,193.69 ヨーロッパ
14位 アイルランド 41,920.73 ヨーロッパ
15位 スウェーデン 41,191.47 ヨーロッパ
16位 クウェート 39,888.76 中東
17位 アイスランド 39,223.96 ヨーロッパ
18位 ドイツ 39,028.39 ヨーロッパ
19位 台湾 38,749.20 アジア
20位 ベルギー 37,883.06 ヨーロッパ
21位 デンマーク 37,657.20 ヨーロッパ
22位 イギリス 36,941.06 ヨーロッパ
23位 フィンランド 36,395.01 ヨーロッパ
24位 日本 36,265.75 アジア
25位 フランス 35,547.96 ヨーロッパ
26位 イスラエル 32,312.42 中東
27位 韓国 32,272.12 アジア
28位 バハマ 31,382.41 中南米
29位 サウジアラビア 31,275.49 中東
30位 スペイン 30,557.47 ヨーロッパ
31位 イタリア 30,136.38 ヨーロッパ
32位 ニュージーランド 29,730.30 オセアニア
33位 オマーン 29,166.39 中東
34位 バーレーン 28,743.82 中東
35位 スロベニア 28,195.24 ヨーロッパ

93位 中国 9,161.97 アジア

| 経済・雇用::2013.7~2014.6 | 06:46 PM | comments (x) | trackback (x) |

PAGE TOP ↑