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2016,06,26, Sunday
2016.6.20 働き手の比率低下 2016.5.31 女性の労働力率 2015.5.31 東京新聞 日経新聞 佐賀新聞 高校進学率 65歳以上の 産業別・国籍別外国人労働者数 日本の難民認定数 (97%超の人が高校に進学) 労働力率世界比較 2015.9.4朝日新聞 「憲法は権力のみを縛るもので、国民を縛るものではない」と主張する勢力があるが、これは日本国憲法になるべく影響されずに国政を進めたいと考えた日本国憲法導入当初の人たちが法学部教育を通じて行った解釈の拡散ではないかと、私は考える。 何故なら、具体的事例として、*1-1の憲法第26条2項に定められているとおり、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ」とされ、憲法は義務を設けて国民をも明確に縛っているからだ。また、日本国憲法は、「義務教育は、これを無償とする」と定めているが、「義務教育以外は有償でなければならない」とは定めていないため、教育を無償化するのに憲法改正は不要である。それどころか、*1-2の教育基本法には「教育の機会均等」が定められており、消費税増税とは関係なく、誰もが教育を受ける機会を保証されなければならないことになっている。 さらに、「憲法改正しない」というのも明確な代替案であるため、「憲法改正草案を出していない党は代替案を示していない」という批判は当たらない。つまり、各政党、行政、メディアなどが主張している議論には事実に反するものが多いため、主権者たる国民はしっかり勉強して騙されないようにチェックしなければならないのである。 なお、*1-2の日本国憲法の理念から導かれた教育基本法はPerfect(完全)であり、憲法改正の理由に教育の無償化を掲げるのは、「消費税を社会保障財源にする」と主張するのと同様、憲法改正を進めるためのごまかしにすぎない。私は、教育については、まず日本国憲法と教育基本法の理念をしっかり実現することこそ、最も重要だと考える。 <*立憲主義(https://kotobank.jp/word/%E7%AB%8B%E6%86%B2%E4%B8%BB%E7%BE%A9-148946) 法の支配 rule of the lawに類似した意味を持ち、権力保持者の恣意によってではなく、法に従って権力が行使されるべきであるという政治原則をいう。狭義においては、特に政治権力を複数の権力保持者に分有せしめ、その相互的抑制作用を通じて権力の濫用を防止し、もって権力名宛人の利益を守り、政治体系の保全をはかろうとする政治原則> (1)義務教育と無償化の範囲 *1-3に書かれているとおり、保育所や学童保育の待機児童は子育て問題の一部にすぎず、大学や塾などの教育にかかる費用は増加し、インフレと比較して賃金上昇率は低く、実質賃金が下がって子育ての経済的負担は大きく、第二子、第三子となるにつれて高くなる児童手当は子の生活費に差をつけており金額も少ない。また、非正規労働者には、奨学金の返済も負担である。 しかし、産業の付加価値を上げられず、その結果として一人当たりの分配が小さくなるのは、労働者の教育の不十分さ(単なる学歴を言っているのではない)とイノベーション不足に由来するところが大きい。その上、教育費が高くなれば、親の貧富の差が子の教育格差となり、十分な教育費を出せない親の子はハンディを背負って、次世代もまた貧しい生活を強いられるという悪循環になる。 そのため、私は以下のことを提案する。 1)学校外教育費の負担を減らすため、公教育を充実させること 2)義務教育を3歳~18歳までとし、幼児教育と高校教育を義務教育として無償化すること 学校の幅広い選択権を保護者に与え、教育内容は前倒しして、飛び級も可能にすること 3)保育園は0~2歳とし、この間も生活習慣や外国語などの家庭ではできない教育を行うこと 4)貸与型ではなく給付型の奨学金を増やし、条件を満たす人は大学や大学院も無償にすること (2)財源 ← 教育は投資であり、社会保障と同様、財源が消費税でなければならない理由はない 民進党の公約では、*1-4のように、①消費税増税を2年間再延期するかわりに行政改革を徹底して財源を捻出し社会保障を充実させる ②返済不要の給付型奨学金創設など「人への投資」で経済成長を図る としている。私は、行政改革を徹底すれば消費税を増税しなくても社会保障費や教育費は出る上、教育を充実させて教育された人材を有効に使えば産業の付加価値を上げることができるため、消費税増税は不要であると考える。 何故なら、よく勉強した人材は、*1-5の「朝三暮四」のような算術でしかものを考えられないのではなく、「消費税を増税しないから社会保障財源がない」「痛みがあるからよい改革だ」「国会議員が身を切ったから増税を飲む」などの馬鹿な詭弁を信じない、論理性や創造力を持った人材になれるからである。 (3)小・中・高校について 馳文科大臣は、*2-1のように、かつての「ゆとり教育」には戻らないとする見解を公表したが、これは、公教育を充実して貧しい家庭の子にも十分な教育を受けさせるために重要なことだ。知識は思考するためのツールとして不可欠であるため、仮に小・中・高の教育関係者が、「『ゆとり教育』か『詰め込み教育』かといった選択しかできないとすれば、それこそが重要な問題である。 なお、日本に限らず、親を失って学校に行きたくても行けない子もいる。そのため、*2-2のように社会奉仕活動を重視するライオンズクラブの会員のような人たちが、外国からでも親のない子を引き取ってもう一人(もしくは兄弟・姉妹)を育てる取り組みを進めれば、①不幸な子が減り ②少子化による労働力減少の影響が緩和でき ③育った子どもたちが生まれた国と日本との懸け橋になる。そして、その里親の負担を軽くするためにも、やはり義務教育を3歳~18歳までとして無償化し、給付型の奨学金を増やして大学や大学院も無償で行けるようにすることが必要なのである。 (4)大学について *3のように、東京大学など東京都内の有名5大学で、今春の入試合格者の75~55%を首都圏の高校出身者が占め、その比率は30年間で約1.4倍に増えており、理由は、①公教育のゆとり化の結果、塾や受験指導に力を入れる男女別学の私立中高一貫校が多い都市部の子が学力習得に有利になったこと ②地方からの進学者の経済的負担増(家賃を含む) などだそうだ。 これは、中央省庁(農水省、国土交通省、総務省、経産省、厚労省、財務省、内閣府を含む)、大企業、大手メディアなどにも首都圏の男女別学の私立中高一貫校出身者の採用が増えるという結果をもたらし、政策作成やメディアの論調に歪みをきたしている。そのため、地方は、それ以上、ゆとりを追求している場合ではないことを忘れないで欲しい。 (5)職場において *4-1の三菱自動車の燃費偽装事件は、燃費のよさで税金を軽減するという馬鹿な制度に根本的原因があると思うが、(空気を読んでか)それを誰も正面から指摘することなく長期間机上で不適切な測定をし続けたのは、エンジニアのあるべき姿ではない。しかし、何かそうさせてしまうものが、現在の教育や企業の指揮命令系統の中にあると思われ、その本質が問題であるため、社長が引責辞任すれば問題解決するというものではないだろう。 なお、*4-2のように、女性研究者の国際的人材ネットワークの創設が行われるそうだが、研究開発においても女性の視点は重要であるため、(30~60年遅れではあるが)「男女差に対する偏見の解消」や「女性研究者を活躍させる職場環境の整備」は大切だ。島尻担当相は「仕事と家事の両立で困っている日本のリケジョ(理系女性)に海外のロールモデルを示せば大いに刺激になる」などとしているが、実際には、日本女性の意識が低いのではなく女性を育成する環境がなかったことがポイントで、家事・子育てもハードワークで第一線の仕事と両立するのは困難であるため、海外と同様に、女性を差別しない職場環境を整え、お手伝いさんを雇って家事・子育ての負担を軽減しやすくするのが効果的である。 *1-1:http://www.mext.go.jp/b_menu/kihon/about/a002.htm (日本国憲法より抜粋) 第23条 学問の自由は、これを保障する。 第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を 有する。 2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。 義務教育は、これを無償とする。 *1-2:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO120.html 教育基本法より抜粋 (平成十八年十二月二十二日法律第百二十号) ●前文 教育基本法(昭和二十二年法律第二十五号)の全部を改正する。我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。 ●第一章 教育の目的及び理念 (教育の目的) 第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。 (教育の目標) 第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。 一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。 二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。 三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。 四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。 五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。 (生涯学習の理念) 第三条 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。 (教育の機会均等) 第四条 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。 2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。 3 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。 ●第二章 教育の実施に関する基本 (義務教育) 第五条 国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。 2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。 3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。 4 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。 (学校教育) 第六条 法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。 2 前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。 (大学) 第七条 大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。 2 大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。 (私立学校) 第八条 私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。 (教員) 第九条 法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。 2 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。 (家庭教育) 第十条 父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。 2 国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。 (幼児期の教育) 第十一条 幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。 (社会教育) 第十二条 個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。 2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。 (学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力) 第十三条 学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。 (政治教育) 第十四条 良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。 2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。 (宗教教育) 第十五条 宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。 2 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。 ●第三章 教育行政 (教育行政) 第十六条 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。 2 国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。 3 地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。 4 国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。 (教育振興基本計画) 第十七条 政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。 2 地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。 ●第四章 法令の制定 第十八条 この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない。 附 則 抄 (施行期日) 1 この法律は、公布の日から施行する。 *1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/322021 (佐賀新聞 2016年6月12日) 収入増「実感ない」85% 地方ほど高い割合、子育て世代、大きな経済負担 全国面接世論調査 アベノミクスの一環として経済界に賃上げを求めてきた安倍政権だが、2012年12月の第2次政権発足以降に給与などの収入が増えたという実感がないと答えた人は「あまりない」も含め85%に上った。地方ほどこの割合は高まり、景気が回復したとの感覚が得られていない現状が浮き彫りとなった。収入増の実感がないと答えた割合を衆院比例代表のブロック別にみると、四国が94%で最も高かった。中国は92%、東北は91%と高かった。収入が増えたとの実感があると答えた人は「ある程度ある」も含め全体で13%だった。ブロック別では東京の19%が最高で、南関東、近畿がいずれも16%。景気回復を感じている人は大都市圏に偏っていた。政権発足以降に経済格差が広がったと思うかどうかを尋ねると「変わらない」が59%で最も多くを占めた。「広がった」は36%で、「縮まった」との回答は2%しかなかった。経済格差の認識について年代別に見ると、年齢層が高くなるほど格差が広がっていると感じていた。「広がった」と答えた人は、中年層(40~50代)は34%、高年層(60代以上)は44%だった。一方、若年層(20~30代)では「変わらない」が72%にまで高まり、「広がった」という人は25%だった。 ■子育て世代大きな経済負担 池本美香・日本総研主任研究員の話 子育て支援などの少子化対策を社会保障の重要項目に挙げた人が増えたのは、待機児童や保育所建設中止の問題が昨今大きく報道されたことが背景にあるのだろう。しかし、保育所不足は少子化や子育て問題の一部にすぎない。大学や塾など教育にかかる費用は増加の一途だが、世帯収入は伸びておらず、子育て世代は経済的負担に苦しんでいる。具体的な支援策に「施設整備」と並んで「費用の負担軽減」を求める人が若年層に多いのはその現れだ。「奨学金を返すのに精いっぱいで結婚や子育てなんて考えられない」という声もよく聞く。貸与型ではなく給付型の奨学金を増やしたり、学校以外の教育費負担を減らしたりするなどの思い切った支援や若い世代が安定した収入が得られるような雇用対策が必要だ。 *1-4:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/322370 (佐賀新聞 2016年6月14日) 民進、行革徹底で社会保障充実、成長目指し「人への投資」 民進党が参院選で掲げる公約の全容が13日、判明した。消費税増税の2年再延期を表明。行政改革を徹底して財源を捻出し、社会保障を充実させると強調した。憲法9条改正に反対し、安全保障関連法の撤回も求めた。党独自の経済政策として返済不要の給付型奨学金創設など「人への投資」で経済成長を図る一方、大企業や富裕層に税負担を求め、格差を是正する姿勢を打ち出した。アベノミクスに対抗し、経済政策を前面に押し出すことで、安倍晋三首相の「経済対案がない」という批判をかわす狙いがあるとみられる。 *1-5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12416400.html (朝日新聞社説 2016年6月19日)参院選 社会保障の将来 給付と負担の全体像を たくさんの猿を飼っている人が、家計が苦しくなって餌のトチの実を減らすことにした。朝は三つ、夕方に四つ与えると言うと猿たちが怒ったので、朝に四つ、夕方は三つにすると言ったら喜んだ。「朝三暮四」の由来になった中国の寓話だ。目先を変えて言いくるめるたとえである。参院選での社会保障をめぐる議論もさながらこの話のようだ。各党は選挙公約で「充実策」を競い合う。その先にある「痛み」を覆い隠すように。だが、そんなその場しのぎは有権者に見透かされるだろう。むしろそうした姿勢が、制度への不信や将来への不安を高め、消費を冷やし、経済低迷の一因となっているのではないか。「子育て世帯を支援していく決意は揺らぎません」。消費増税の再延期を表明した記者会見での安倍首相の言葉だ。「アベノミクス」の成果と誇る税収の増加分を使い、保育や介護の「受け皿」を増やし、保育士と介護職員の賃金アップに優先して取り組むという。 ■財源危うい「充実」 だが、保育所を増やせば運営費として毎年約1千億円がかかる。保育士や介護職員の待遇改善には年に約2千億円が必要とされる。景気次第の税収増は、安定した財源とは言えない。そもそも子育て支援では、「税と社会保障の一体改革」で決めた施策が置き去りになっている。消費税収などを財源に保育士の配置を厚くするといった充実策を進めるはずなのに、いまだに財源のあてがない。子育てだけではない。低所得者の介護保険料の負担を軽くする、無年金の人を減らすといった対策も、消費増税の再延期で宙に浮いている。国民は今、さまざまな不安を感じている。子育て、医療や介護、雇用、貧困・格差の拡大……。これらを解消していくために社会保障を立て直す。そのために必要な財源を確保する。一体改革で示した対策は国民への「約束」であり、いずれも喫緊の課題ではなかったのか。約束をなし崩しにしているのは、首相が率いる自民党だけではない。一体改革をともにまとめた公明党や民進党も消費増税の延期に賛成し、安定した財源のめどがないままにもっぱら充実策を言っている。置き去りになっているのは、充実・強化の約束だけではない。少子高齢社会のもとで制度をどう維持していくかという議論が一向に聞こえて来ない。 ■高まる抑制の圧力 日本の総人口が減っていく一方で、2025年には「団塊の世代」が75歳以上になり、社会保障費は増えていく。医療費は今より約1・4倍、介護費は約1・9倍に膨らむと見込まれている。国の財政は国債発行という将来世代へのつけ回しに頼っており、国の借金は1千兆円を超えてなお増え続ける。社会保障費は政府予算の約3割を占め、財政難と表裏の関係にある。一体改革では、消費税の増税分をすべて社会保障に充てるとされたが、その大半は借金が増えるのを抑えるのに使われ、新たな「充実策」には約1%分しか回らない。社会保障を支える財政の状況はそれほど厳しい。さらに、消費税率を10%にしてもそれだけでは借金の増加は止まらない。安倍政権は、社会保障費の毎年度の増加を高齢化に伴う「自然増」程度に抑える目標を掲げている。そのための方策として、高齢者の医療費の負担増、介護保険の利用者負担の引き上げ、要介護度の低い人へのサービスの見直しなどが検討課題に挙がっている。しかし本格的な議論は参院選後に先送りされた。 ■政治の役割は何か 選挙では充実ばかり唱え、終わった途端に負担増や給付減を言い出すのか。そんなやり方は、政治や社会保障への国民の不信を強めるだけだろう。制度のほころびを繕い新たなニーズに対応する。全体の費用はできるだけ抑えていく。これをどう両立させるのか。経済的に余裕のある人には、高齢者であっても負担を求める流れは加速するだろう。だが、それにも限界はある。これ以上の給付の抑制・削減が難しければ、国民全体でさらなる負担増も考えねばならない。既存の制度をどう見直し、限りある財源をどこに振り向けるのか。必要な財源をどうやって確保していくか。選択肢を示し、合意を作っていくことは、まさに政治の責任だ。税・社会保障一体改革は、与野党の枠を超えて「給付」と「負担」の全体像を示し、国民の理解を得ようとする「覚悟」だったはずだ。だが、参院選に臨む3党の姿勢は一体改革の土台を自ら掘り崩すかのような惨状である。このままずるずると「一体改革前」へと後戻りしていくのか、それとも踏ん張るのか。3党の責任はとりわけ重い。 <小・中・高校> *2-1:http://mainichi.jp/articles/20160510/dde/041/100/065000c (毎日新聞 2016年5月10日) 馳文科相、「脱ゆとり」を宣言 次期指導要領 「知識軽視」誤解解く 馳浩文部科学相は10日、今年度中に予定されている次期学習指導要領改定に向け、授業内容を減らしたかつての「ゆとり教育」には戻らないとする見解を公表した。次期指導要領では、児童・生徒が討論や体験などを通じて課題を探究する学習形態「アクティブ・ラーニング」の全面的な導入を目指しているが、教育関係者の一部から「ゆとり教育の理念を復活させる」と誤解されていることを受けた対応という。馳氏は10日の閣議後の記者会見で「『ゆとり教育』が『緩み教育』というふうに間違った解釈で現場に浸透してしまった。どこかで『ゆとり教育』との決別宣言を明確にしておきたいと思った」と話した。馳氏は「教育の強靱(きょうじん)化に向けて」と題する見解で「学習内容の削減を行うことはしない」と強調。「『ゆとり教育』か『詰め込み教育』かといった、二項対立的な議論には戻らない。知識と思考力の双方をバランスよく、確実に育む」とした。そのうえでアクティブ・ラーニングについて「知識が生きて働くものとして習得され、必要な力が身につくことを目指すもの。知識の量を削減せず、質の高い理解を図るための学習過程の質的改善を行う」と説明している。指導要領の改定はほぼ10年ごとに実施される。前回の2008年は、詰め込み教育の反省で1970年代から軽減されてきた授業内容を約40年ぶりに増やし、「脱ゆとり」と呼ばれた。今年度改定される指導要領では、思考力や表現力の育成を重視する方針だが、これが一部で「知識の軽視」との誤解を招いており、改めて文科省としての考え方を示したという。 *2-2:http://qbiz.jp/article/89285/1/ (西日本新聞 2016年6月22日) ライオンズクラブ活動紹介パネル展 福岡市・天神 福岡市で24日に開幕する「第99回ライオンズクラブ国際大会」にちなんで、クラブの活動を紹介するパネル展が21日、福岡市・天神のエルガーラ・パサージュ広場で始まった=写真。県内116団体のクラブの歴史のほか、献血や青少年育成など社会奉仕活動を約120枚のパネルで説明。岩田屋本店本館7階では22日から、来年創立100周年を迎えるライオンズクラブ国際協会の取り組みを紹介するパネル展も開催される。いずれも国際大会が閉幕する28日まで。国際大会は福岡ヤフオクドーム(中央区地行浜)をメイン会場に、国内外から約3万8千人が訪れる。パネル展の問い合わせは大会ホスト委員会事務局=092(407)8199=へ。 <大学> *3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12337211.html (朝日新聞 2016年5月1日) 東京5大学合格、大半が首都圏高 東大・早慶など、30年で1.4倍 東京大など東京都内の有名5大学で、今春の入試合格者の75~55%を首都圏の高校出身者が占め、30年間で約1・4倍に増えていることがわかった。下宿生の経済負担増などが背景にあるとみられる。地方出身者の東京離れを食い止めようと、大学側は奨学金新設などの対策を始めている。進学情報誌を発行する大学通信と毎日新聞出版は毎年、主要大学の出身高校別合格者を調査。1986年と2016年のデータ(16年分は朝日新聞出版も調査に参加)を元に、東大、東京工業大、一橋大、早稲田大、慶応義塾大の合格者(早大と慶大は一般入試のみ対象)を分析した。その結果、首都圏(東京都、埼玉、千葉、神奈川県)の高校出身者は、東大は86年の47・3%に対し今春は55・2%。ほかは東工大61・6%→74・7%▽一橋大44・7%→69・4%▽早大51・8%→73・9%▽慶大56・0%→72・6%と、いずれも増えていた。東京地区私立大学教職員組合連合の15年度の調査では、都内で下宿する私大生への平均仕送り月額は86年度比で16%減少。一方で家賃は76%上がった。また、受験指導に力を入れる学校が多い私立中高一貫校は、全国の約4割が首都圏にある。高校関係者や専門家からは、こうしたことが影響しているとの指摘がある。学生の画一化などを懸念する大学側は、地方出身者の確保策に乗り出した。早大や慶大は近年、地方出身者向けの奨学金制度を新設している。 <職場> *4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12364251.html (朝日新聞 2016年5月19日) 三菱自社長、引責辞任へ 燃費偽装、新たに5車種 三菱自動車は18日、すでに燃費偽装が発覚している軽自動車の4車種(日産自動車向け含む)のほか、新たに5車種でデータを机上計算する偽装があったと発表した。不適切な測定をしていた車種を含め、軽4車種を含む13車種のうち12車種で問題があった。相川哲郎社長と中尾龍吾副社長は、6月24日の株主総会日付で引責辞任する。相川氏は「不正があった開発部門に長く在籍してきた。その風土で育った私が社長として残っていては、改革の妨げになる」と辞任理由を語った。軽4車種以外の販売は続ける。燃費を測り直したところカタログ値との隔たりが最大3%ほどにとどまったとして、中尾氏は「お客さまに迷惑をかけるレベルではない」と述べた。三菱自によると、新たに偽装がわかった5車種は、人気のスポーツ用多目的車(SUV)やミニバン。法定の実走試験を省き、机上の計算によって燃費測定の元データとなる「走行抵抗値」を出していた。「RVR」は別のセダンのデータを元に机上計算。「アウトランダー」「パジェロ」「(プラグインハイブリッド車の)アウトランダーPHEV」と「デリカD:5」のガソリン車は、車体に所定の重さを加えない軽い状態で実走試験をし、机上計算でデータを補正した。さらに「パジェロ」のガソリン車では、空気抵抗が小さい別の車のデータを流用する偽装も見つかった。また、これらと一部重複する6車種では、国の定めと違う不適切な方法で走行抵抗値を測定。試験日や天候も、国土交通省に事実と違う報告をしていた。生産・販売を止めている軽4車種では、三菱自本社の性能実験部幹部が、子会社「三菱自動車エンジニアリング」の管理職にデータ不正を指示していたことを正式に認めた。相川氏の後任社長は未定。今月12日に日産との資本業務提携で基本合意しており、年内をめどに34%の出資を受けて日産傘下に入る方針。その後、新たな経営陣で再建をめざす。益子修会長兼最高経営責任者(CEO)は「新体制が誕生するまで現職にとどまる」としつつ、その間の報酬はすべて自主返納するという。 *4-2:http://mainichi.jp/articles/20160515/k00/00m/040/112000c (毎日新聞 2016年5月15日) 「リケジョ」人材ネット創設へ 15日に茨城県つくば市で開幕する主要7カ国(G7)科学技術相会合の共同声明に、女性研究者に特化した国際的な人材ネットワークの創設が盛り込まれる見通しであることが分かった。議長を務める島尻安伊子科学技術担当相が14日、毎日新聞などの取材に明らかにした。同会合では「保健医療」「海洋の未来」など六つのテーマが議論される。このうち「次世代の人材育成」の議題について、島尻担当相は研究人材の多様性確保の観点から、女性研究者を支える国際協力の必要性を強調。17日にまとめる共同声明「つくばコミュニケ」に、▽国際人材ネットワーク作りの支援▽女性研究者の模範例の共有▽男女差に対する偏見解消▽女性研究者が活躍できる政策や職場環境の整備−−を盛り込む考えを示した。国際人材ネットワークでは、海外の企業や研究機関の採用情報などを共有し、行き来しやすくする仕組みを整えることで、女性研究者のキャリアアップにつなげてもらうという。科学技術分野では、男性に比べ女性の割合が少ない国が大半。日本の女性研究者は約13万人で、20年前からほぼ倍増したが、全体に占める割合は2014年で14.6%と国際的に最低レベル。英国(37.8%)やイタリア(35.5%)など同会合参加国と比べ著しく低い。島尻担当相は「仕事と家事の両立などで困っている日本のリケジョ(理系女性)に海外のロールモデルを示せば大いに刺激になるし、国内の対策にも生かせる」と話した。 <給食費と食育・食器> PS(2016年6月27日追加):*5のように、公立小中学校の給食費は無償化してよいと私も思うが、文科省は「財源や給食を実施していない自治体との公平性を考える必要がある」として、いつものとおり最悪に合わせる形の公平性を主張している。しかし、「給食は食育にも活用されており、教材でもある。無償とする義務教育の範囲に給食を入れるべきだ」というのは尤もだ。また、食育には食材だけでなく食器の使い方も含まれるため、磁器による食器の画像を掲載しておく。 従来の食器 強化磁器の食器 佐賀県鳥栖市の食器 (エサの入れ物のようだ) (強化磁器はよいが、模様がイマイチだ) (トレイ以外はGood) *5:http://qbiz.jp/article/89584/1/ (西日本新聞 2016年6月27日) 給食費、負担に地域差 九州の市町村、3割が補助制度 公立小中学校の給食費について2015年度、九州7県の全233市町村の約3割、64市町村が全額または一部を補助していることが西日本新聞のまとめで分かった。人口減対策で子育て環境を整えようと補助制度を導入する自治体は増加傾向にある一方、食材費高騰から値上げも相次いでおり、負担の二極化が進んでいる。保護者からは地域間格差の是正、一律無償化を求める声も出ている。九州の各県教育委員会によると、64市町村は生活保護や就学援助とは別に、すべての小中学生無料や、小1と中1が無料、第2子以降は半額などの補助制度を設けている。県別では鹿児島が21市町村と最も多く、熊本(15市町村)、福岡(14市町村)、宮崎(6町村)、佐賀(5市町)、長崎(3市町)と続いた。大分はゼロだった。制度導入の背景には、人口減少に対する自治体の危機感がある。民間提言機関による「消滅可能性都市」に含まれる佐賀県太良町。手厚い支援で子育て世代の流入と流出防止を図ろうと、15年度に全額無償に踏み切った。16年度も制度を新設、拡充する自治体は増え、福岡県古賀市は第3子以降を無償化(これまでは半額)。熊本県人吉市も全ての児童生徒に対する月額千円の補助を始め「最終的には全額補助が目標」(担当者)という。宮崎県小林市は、ふるさと納税を財源に半額補助に乗り出している。一方、給食費は近年の消費税増税や食材費の上昇を受けて値上がり傾向にある。文部科学省の調査によると、14年度の平均月額給食費は小学校4266円、中学校4882円。5年前に比べてそれぞれ153円、200円上がった。福岡市は15年度、小学校で300円増の月額4200円、中学校は400円増の同5千円に値上げした。中1と小4の母親(40)=福岡市西区=は「わずかな値上げでも毎月必要な給食費は負担感が大きい。地域によって異なるのは不公平でおかしい」と疑問の声を上げる。一律無償化について、文科省健康教育・食育課は「財源や給食を実施していない自治体との公平性を考える必要がある」との姿勢。名古屋大大学院の中嶋哲彦教授(教育行政学)は「給食は食育にも活用されており、教材でもある。無償とする義務教育の範囲に給食を入れるべきだ」と指摘している。学校給食 公立小中学校では、学校給食法に基づき学校を設置する各自治体などが実施。食材費は保護者負担、給食にかかる施設整備や人件費は自治体の負担と定めている。文部科学省によると、公立の小学校の99.7%、中学校の93.7%で実施(2014年度)。また、同省の12年度の抽出調査では、児童生徒の0.9%が給食費を納めておらず、その理由の6割は「保護者の責任感や規範意識の問題」、3割が「保護者の経済的な問題」などとなっている。政府の経済財政諮問会議の民間議員は4月の同会議で、給食費の免除制度を充実させるよう政府に提言している。 <IT教育とデジタル教科書> PS(2016年6月27日追加):*6-1のように、タブレット端末の導入が全3学年に行き渡った佐賀県の県立高で来年度以降に導入する学習用パソコンをキーボード付にするかどうか検討する会合が開かれたそうだが、キーボード操作は、(日本に限らない)大学に進んだり、会社で仕事をしたりして文章を書く時に必要不可欠であるため、キーボード操作にも慣れさせておくことを、私は薦める。 そのような中、*6-2のように、生徒の上達と比較して、情報を管理する「校務支援システム」のセキュリティーは甘すぎたらしく、「最先端の佐賀県システムが破られた」として文科省担当者がショックをあらわにしたそうだ。しかし、小中学生3万4,739人、高校・特別支援学校などの県立学校生5万6,590人、教職員7,987人という大量の個人情報をまとめて保存し、校外からアクセスできるシステムにしておくのは、個人情報の意味やセキュリティーについてあまりにも疎すぎると言わざるを得ない。 なお、*6-3のように、最近は「デジタル教科書」があり、私も雑誌「ニュートン」が作ったデジタル教科書で地球46億年の大陸移動や日本列島ができる様子を動画で見たことがあり、とてもわかりやすくて最近の生徒を羨ましく思ったほどだ。しかし、デジタル教科書は紙の教科書のようにめくったり全体を一覧したりすることはできないため、紙の教科書と併用するのがよいと考える。 *6-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/320345 (佐賀新聞 2016年6月8日) 県立高の使用端末、次期機種選定で会合 生徒一人一人へのタブレット端末の導入が全3学年に行き渡った県立高について、来年度以降に導入する学習用パソコンの在り方を協議する専門委員会の初会合が7日、佐賀県庁で開かれた。学校現場の意見を踏まえながら次期機種選定に向け、秋ごろ佐賀県教委に提言する。専門委は藤原久嗣県情報統括監や学校長ら7人で構成。渡辺健次・広島大大学院教授が委員長を務める。機種の選定はせず、キーボード付きのタブレットで続けていくかどうかや、OS(基本ソフト)は何にするかなどを論議する。委員からは「英語のリスニング学習で効果的に使われている」「工業系資格試験対策で作業手順を何度も動画で確認できる」といった事例が報告された。「今まで構築した教材がそのまま使えるか不安」と現行機種を望む声や、使い勝手向上のため変更してもよいとする意見も紹介された。渡辺委員長は「県民の中には導入を『やめろ』という意見もあるかもしれない。必要性を説明するためには、ICT利活用を県の教育目標でどう位置付けるか、もう一度確認しないといけない」と語った。 *6-2:http://mainichi.jp/articles/20160627/k00/00e/040/156000c (毎日新聞 2016年6月27日) 「最先端の佐賀県システム破られるとは」 ●文科省担当者はショックをあらわに 「ICT(情報通信技術)化が最も進んでいる佐賀県のシステムが破られた。とても驚いている」。佐賀県立高校の生徒の成績などが流出した事件で、文部科学省の担当者はショックをあらわにした。同省は27日、佐賀県教委に事実関係の早急な報告を求めた。全国の公立小中高校の普通教室に設置されている電子黒板の整備率(2015年3月時点)は全国平均が9%なのに対し、佐賀県は76.5%で全国1位。パソコンの整備状況も生徒2.6人に1台と全国トップで、国が第2期教育振興基本計画(13〜17年度)で定める目標の3.6人に1台を唯一超えており、ICT化の先進地域として知られていた。同省によると、児童や生徒の学籍や成績などの情報をコンピューターで管理するシステムは「校務支援システム」と呼ばれ、各地の学校で導入が進んでいる。教職員同士が情報を共有することできめ細かな指導をしたり、教員の校務負担の軽減を図ったりするメリットがあるとされる。佐賀県のシステム「SEI−Net(セイネット)」は全国に先駆けて13年度から導入された。学校側が授業支援のためのデジタル教材を提供し、児童生徒が家庭でダウンロードして予習や復習に利用したり、ネット経由で相談に乗ったり、学校行事の確認をしたりすることも可能にしていた。佐賀県教委によると、このシステムには5月1日現在で小中学生3万4739人、高校や特別支援学校などの県立学校生5万6590人、教職員7987人の情報が登録されていた。教職員が成績や住所などの個人情報にアクセスするには、校内ネットワークに接続したうえでIDとパスワードを入力する必要がある。児童生徒はIDとパスワードを入力すれば、校外からでもネットに接続して、自分のテスト結果や電子教材などは閲覧できるという。 *6-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10206/318376 (佐賀新聞 2016年6月2日) デジタル教科書、20年度から、当面は紙と併用、文科省中間案 文部科学省の有識者会議は2日、タブレット端末などを使う「デジタル教科書」を、次期学習指導要領が実施される2020年度から、紙の教科書と併用する形で導入するとの報告書の中間まとめ案を大筋了承した。4月に示した案から大きな変更はなかった。年内に報告書をまとめる予定。当面は紙の教科書を基本とし、単元によってデジタル版だけを使う形を認める。教育効果や健康への影響などを調べた上で、教育委員会の判断で紙かデジタル版のどちらかを選ぶ制度も将来的には考えられるとした。 <社会科の学び方> PS(2016.6.28追加):*7で公民科が適切に教えられるのか否かは不明だが、日本国憲法の理念は正しく教えるべきである。また、地理と歴史は相互関係が深く、時代によって国境線も変化し、日本は古代から世界と無関係に存在していたわけではない。そのため、日本史と世界史を総合的に学習するのは真実を理解するためによいことで、そうすることによって社会科が単なる暗記科目ではなく、人類の歴史の壮大な物語として理解できるだろう。 *7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160628&ng=DGKKASDG27HDD_X20C16A6CR8000 (日経新聞 2016.6.28) 現代社会を廃止 高校必修、公共・歴史総合に 次期指導要領で中教審案 中央教育審議会の専門部会は27日、2022年度以降に導入する高校の次期学習指導要領の地理歴史・公民について、科目の構成やおおまかな学習内容を取りまとめた。公民科は選挙権年齢の18歳への引き下げを踏まえ「公共」を新設。法律や経済の仕組みに加え、社会保障の現状などを学び問題点を理解する。学習内容が重複する「現代社会」は廃止する。地理歴史科は近現代史の理解度が低いことから、18世紀以降を中心に日本史と世界史を関連づけて学ぶ「歴史総合」を新必修科目とする。近代化やグローバル化の流れを学習の中心に据える。近代以前の歴史も含めてより深く学習する「日本史探究」「世界史探究」は選択科目とする。「地理総合」も新たに必修科目に。環境問題など、全世界が直面する共通の課題と国際協力の在り方などを学ぶ。地図情報をコンピューターで加工する「地理情報システム(GIS)」の使い方も学習する。選択科目の「地理探究」は世界の民族・宗教や産業、資源などをより深く知ることを目指す。現行の学習指導要領では、公民科は「現代社会」1科目か「倫理」「政治・経済」の2科目が必修。地理歴史科は「世界史A」「世界史B」から1科目、「日本史A」「日本史B」「地理A」「地理B」から1科目が必修となっている。 <地方の人手不足> PS(2016年7月2、3日追加):*8-2の高齢化率が高いという結果は、出生率や死亡率の統計を見れば1980年代から予想できたことで、その原因を究明して政策を作るのが当然だったわけである。しかし、*8-3の人手不足をカバーする方法もあり、それは日本人女性や高齢者を採用したり、雇用が不足している国から外国人労働者を採用したりすることだ。そのため、外国人労働者の生活基盤を準備した上で、九州でまとまって海外募集を行ってはいかがかと考える。なお、社会保険の観点から、女性・高齢者・外国人労働者も正規労働者として人権をないがしろにしない採用をすべきだ。 主な企業の外国人採用 高齢者の雇用条件 女性管理職比率 給与・雇用・議員数 2016.5.3西日本新聞 <同一労働同一賃金?> <何とかかんとか言って日本の職場 における男女平等度は低いので、 *8-1の憲法27条、労働基準法、 男女雇用機会均等法を護るべきだ> *8-1:http://www.jicl.jp/kenpou_all/kenpou.html 日本国憲法(抜粋) 第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。 2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。 3 児童は、これを酷使してはならない。 *8-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS29H27_Z20C16A6000000/?n_cid=NMAIL002 (日経新聞 2016/6/29) 全都道府県で子供より高齢者多く 15年国勢調査人口 総務省は29日、2015年国勢調査の抽出速報集計結果を公表した。65歳以上の高齢者人口は10年の前回調査比で14%増の3342万人となり過去最高だった。高齢者の割合は26.7%で、5年前の調査に続き世界各国で最も高い。15歳未満の子ども人口の割合も12.7%と過去最低で、調査開始以来初めて全都道府県で高齢者人口が子ども人口を上回った。労働力人口は5年間で294万人減少した。15歳以上人口に占める働く意欲のある人の比率である労働力率は59.8%と10年比1.4ポイント低下した。少子高齢化により全体の就労者が減るなか、女性の労働力率は49.8%と0.2ポイント上昇した。女性は25~29歳の労働力率が初めて8割を超え、35~39歳も72.4%と4.4ポイント上昇。出産による退職などで女性の30歳代の労働力率が下がり、育児後に再び上昇する「M字カーブ」の底が上昇した形だ。 *8-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/329364 (西日本新聞 2016年7月2日) 豊かさはどこに(上)雇用 人材確保に悩む中小企業 ■大手の求人増、経営に逆風 「自動車メーカーが押し上げ、大手企業の夏のボーナスは過去3番目の高水準です」。喜々として伝えるテレビのアナウンサーに、佐賀市の自動車部品メーカーの専務(35)はいら立ちを隠さなかった。「うちの社員が変に期待してしまうから、こんなニュースは流してほしくない」。これ以上、賃上げをする余力がないことを強調した。安倍政権の経済政策「アベノミクス」は円安を誘導し、自動車メーカーなど輸出企業の業績を回復させた。その孫請け企業が潤う「トリクルダウン効果」はあったのか。「何も恩恵はない」と専務。コスト削減ばかり求められ、受注単価は横ばいか微減。受注量はリーマンショック前の水準にすら戻っていない。むしろ円安で原材料費が10%値上がりし、利幅は目減りしている。安倍晋三首相が参院選で強調する雇用改善。佐賀労働局によると、県内の5月の有効求人倍率は1・11倍で、バブル期の水準までに回復した。6カ月連続で1倍を超える。年度別にみても、アベノミクスが始まった2012年から急速に数値は上向いている。自動車部品メーカーの専務はそれも実感できずにいる。毎年数人採用してきた新入社員は期待をかけて仕事を丁寧に教えても、半年たたずに辞めてしまう。「ものづくりに魅力を感じず、楽で給料がいい業種に移ってしまうのか」。若手の引き留め策で新たな手当を導入し、月給を最大28万円に引き上げた。それでも求人票には反応がない。今春卒の高校生の県外就職率は44・3%。過去10年で4番目に高い水準となった。佐賀市内の高校の進路担当教諭は2年前から、大手・中堅の製造業、建設業の求人が県外から急増していると明かす。「保護者が安定を求めるからなのか、優秀な学生ほど大企業に挑戦したがる」と説明する。先の自動車部品メーカーの従業員は約20人で、平均年齢は30代後半。一人前に育てるには5年かかり「50代の工場長がしっかりして、仕事が回る今のうちに技術を継承したいのだが…」と専務は危機感を口にした。派遣社員は短い期間で入れ替わるため育成が難しいだけに、産業用ロボットの導入を本気で検討し始めた。人材不足は製造業だけの問題ではない。佐賀市のIT企業は、年3回の会社説明会を倍に増やした。社員だけでは対応できなくなり、外部に業務委託せざるを得なくなった。経営幹部はコストがかさむ現状に「首都圏の雇用改善が私たちの足かせになっている」と困惑する。円安の恩恵を享受してきた大企業も、英国の欧州連合(EU)離脱で風向きが変わった。県内の大手電子部品メーカーは「円高が1円進むだけで6億円の利益が吹き飛ぶ。コスト削減に努める以外に方法はない」。為替リスクに左右される無常感を口にした。 PS(2016年7月3日追加):*9に、「現代の学校教育では美術、音楽の時間がないがしろにされており、活動は実質20分程度で芸術は育たない」と書かれているが、義務教育を3歳から始めれば時間にゆとりがあるため、適時に適切な時間を芸術やスポーツにも当てることができる。しかし、現在、学んでいる知識や服飾技術などもすべて人類の文化に入るため、*9で言う「文化」とは具体的に何なのか書いてなければわからない。また、世界の第一線で活躍できる人を育てるには、時間さえとればよいというものではなく、ベースを教える指導者も本物でなければならない。そのため、児童・生徒に時間の無駄をさせず、その魅力を教えて効果を上げられる人材を、日本人に限らず探してきて揃えるべきだと考える。 *9:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/329649 (佐賀新聞 2016年7月3日) 候補者へ(11) 文化教育の充実を 現代の学校教育では美術、音楽の時間がないがしろにされている。40分授業なら準備、後片付けもあって活動は実質20分程度。そんなんじゃ芸術は育たない。このような状況は家庭にも悪影響を及ぼし、子どもたちから文化の芽を摘む。世界の第一線で活躍する芸術家を育てるには、まずはベースから。家庭でも文化を愛する教養が育まれるような素地をつくらないと。フランスがそうであるように、芸術は世界中から人を呼び寄せる経済的資源になり得る。芸術や文化に敬意を払う政策を願いたい。
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2016,06,17, Friday
①国会議事堂 ②2016年度予算案 ③主な事業 ④TPPについて 2016.6.5西日本新聞 2015.12.24毎日新聞 2015.12.24朝日新聞 2016.4.8東京新聞 (図の説明《2016.6.21追加》):①国会議事堂には修学旅行生の見学が多く、これは政治に対する意識を高める効果がある。②国の会計も複式簿記にして資産・負債を正確に認識し、網羅性・検証可能性を担保する必要があるが、現在は単式簿記で歳入歳出はキャッシュフロー計算書のようになっている。そのため、国債純増額は「34兆4,320億円(歳入より)-23兆6,121億円(歳出より)=10兆8,199億円(純増)」である。なお、現在は金利が0かマイナスであるため、無利子国債を発行してすべての国債を置き換えれば、国債利払費(約10兆円)が節約できる。また、歳入側の税外収入が小さいが、排他的経済水域内で資源を採掘して採掘料を受け取るのが最も大きな金額になり、資源国はこうして税負担を小さく福祉を充実しているのだ。さらに、燃料電池やEVなどの先進技術を育てれば、原油代を外国に支払わずにすむため国内企業の利益が上がって税収が増える。歳出は、まず社会保障用資産の管理・運用をまともにすべきだ。地方自治体も税外収入や税収を増やす工夫をして地方交付税に甘えずにすむ体質にしてもらいたい。さらに、公共事業費は、ヘリコプターマネーを廃止して本当に役立つものだけにすべきだ。文教・科学振興は予算だけが問題なのではないが、予算は小さすぎるだろう。③予算案の主な事業のうち、後ろ向きで悔しいのは放射性物質で汚染された土壌の除染費5,224億円で、原発事故がなければ不要だったものだ。その他プラスにならない支出はばっさり廃止すべきである。④TPPにより米の輸入をすることになったが、それを国が買い入れるなどの生産性を上げない補助金も無駄遣いで、このように本当の無駄遣いは社会保障ではなく他にいくらでもある。) (1)不純な動機による選挙権の18歳への引き下げ *1-1のように、「①前回の2013年参院選で有権者の4割を占めた60歳以上の投票率は62.4%で、3割いた20~30代の投票率は39.2%」「②当選した政治家が『有権者の声を聞く』と言い、高齢者向けの政策に重点を置く」「③こうした政治は、『シルバー民主主義』と呼ばれる」「④実際に政府の予算配分は高齢者向けが圧倒的に多く、年金・介護などの政府支出は13年度で54兆6,247億円で、保育所整備や児童手当、育児休業給付といった子育て向けは6兆568億円」「⑤政治家に『子育て世代に応えないと落選する』という恐怖をどれだけ与えられるかが重要」「⑥この生活では2人目を考える気持ちにはならない」「⑦国が男性に育休取得を義務づけるなど、社会全体で子育てをする機運をつくるべき」などとしているが、これは、メディアでよく言われる高齢者と若者を利害対立させて厚労省の怠慢を隠す論調であり、思慮が浅い上に本質を突いていない。 例えば、①は若い世代は将来に希望を持てたり、下位のサラリーマンなら政治に関心を持たなくても不自由がないのに対し、上級管理職などの決定権を持つ人や社会保障で支えられることが不可欠になった高齢者が、政治により多くの関心を持つのは当然なのである。また、高齢者は男女平等の普通選挙権が与えられた感動を知っているため投票権を大切にするが、戦後生まれは投票権を持つのが当たり前となり男女平等の普通選挙権に有難味を感じていないことが、若い世代で投票率が低い理由の一つだろう。 ②については、政治家が有権者の声を聞き高齢者向けのみの政策に重点を置いているわけではなく、③のように、高齢者の声を聞く政治を「シルバー民主主義」と呼んで高齢者の権利をないがしろにしてきた結果、*3-4のように、払ってきた年金が給付段階になって不当に減額されるという契約違反により、収入を奪われて困窮する高齢者が増えている現実がある。そのため、⑤の「政治家に『子育て世代に応えないと落選する』という恐怖をどれだけ与えられるかが重要」というのは的外れの運動で、若い世代にこういう考え方をさせるよう煽った人々には重大な責任がある。 さらに、④のように、実際に政府の予算配分は高齢者向けが圧倒的に多いかもしれないが、本当はそこから保険で支払ってきた年金・医療・介護を除いて考える必要があり、「子育て世代への支出を高齢者への給付から差し引かなければならない」とか「社会保障は消費税で賄わなければならない」などという意図的に間違った情報に基づいて議論しても、誤った結論しか出ない。 なお、子育て世代が、⑥のように、「この生活では2人目を考える気持ちにならない」というのは、私は東大医学部保健学科卒で1970年代に母子保健を勉強し、公認会計士・税理士としてBig4で働き続けるためにDINKSを選んだ人間なので1人も生まなくてもわかっているが、舛添都知事は土日に湯河原の別荘に通っただけであれだけ批判され、これは女性知事・女性議員はじめ責任ある仕事をしている人なら男女とも同じであるため、⑦のように、「すべての仕事で国が男性に育休取得を義務づけるなど、社会全体で子育てする機運をつくる」というのは不可能であり、他に代替案があるので不要でもある。 そのため、*1-1のような論理に基づいて、*1-2のように、平成27年6月、選挙権年齢を満18年以上に引下げて有権者の若者数を増やしたのは、不純な動機による変更だ。18歳と20歳の間に、さほど大きな差はないかもしれないが、いくら選挙権年齢を18歳に引き下げても、有権者に真実の本質的情報を提供しないメディアを介してでは、年齢にかかわらず正しい意思決定はできない。 (2)「高齢者vs若者」という設定が誤りなのである 佐賀県弁護士会は、*1-3のように、鳥栖工業高校に出向いて授業を行い、生徒708人に対し、主権者教育として、「世代間の投票率の差が政策に色濃く反映され、政治家は投票する60代向けの政策を優先するようになる結果、若者に使われるお金は少なくなる。気付かないうちにそういうツケが回ってくる」と指摘したとのことだ。もちろん、弁護士が主権者に投票の意義や民主主義について教育したことは有意義であるが、「高齢者vs若者」という設定で「高齢者からぶんだくって子育て支援に振り向けるべき」と説いているのは、倫理観に欠け、人権を護るべき弁護士としての見識が疑われる。 また、*1-4のように、伊万里農林高校では、伊万里市の選挙管理委員会職員が若者の投票率の低さをデータで示し、「年齢が上がれば社会経験を重ねて投票率が上がるのが通常だったが、最近は若い時の投票率の低さが年齢を経てもそのまま推移している」「若者は人口が少ない上に、投票率が低いので意見が反映されにくくなっており、普段から政治に目を向けることが重要」と訴えたそうだが、どの政党もマニフェストで示したことを裏切って官由来の政策を行い、メディアの報道は多くの虚偽を含む浅薄なもので、政治家は金に汚く不完全なものとしてしか報道されないため、政治に関心を持てない人が増えるのは当然だ。そして、その状態を歓迎するのが、政治を自らの意のままにしたいグループなのである。 (3)主権者教育を始めたのはよいことだが・・ 佐賀県教委は、*2-1のように、選挙権年齢が18歳に引き下げられることを受け、主権者教育の高校授業を研究するチームを近く立ち上げて先進的な事例を集め、現実の政策を教材にするなど生徒自身が考えて判断できるような授業を目指すそうで、よいことだ。 しかし、*2-2のように、全国の高校に配布された副教材「私たちが拓く日本の未来(http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/senkyo/senkyo_nenrei/01.html 参照)」は、政策に関する討論や模擬選挙の進め方などを解説する「実践編」が6割を占め、選挙制度や投票行動の手続きに重点が置かれて、身近な問題にどう関心を持たせるかという一番大事な点が欠落して教師任せになっているそうだ。 そのため、せっかく主権者教育をするのなら、新聞を読んで社会に関心を持つだけでなく、政治に繋がる身の回りのことについて市長や議員がどう考えて政治を進めているかについて話を聞き(党派が偏らなければ問題ない)、生徒に質問させるのが、最も印象に残ってその後の役に立つと考える。 (4)具体的事例を示して考えさせるのがよい 女性も普通に働いている時代、*3-1のような事例で、子どもが急病になったらどうすればよいのかについて、①現状 ②予算などの制約要因 ③政治にやってほしいこと 等を男女の生徒にまず調べさせ、子育て経験のある女性の先生や市長の話などを伺い、どうすればよいかを皆で考えさせる というのは、印象に残り、政治が身近な問題の解決策であることを認識するよい機会になると考える。 また、*3-2のように、学童保育や街の再生を行っている人に話を聞いたり、*3-3のように、踏切事故で子どもが犠牲になったが、どういう街づくり(社会づくり)をすればよいかについて市議や県議とディスカッションしたり、*3-4のように、年金を減額すれば高齢者が困るので高齢者の生活を脅かさない方法はどうあるべきかを考えたり、TPPについてなど、本当の民主主義を教えながら、生徒の印象に残るようにして、主権者としての責任を醸成するのがよいと考える。そして、統計資料や事例集は、身近な事例を日本全国や世界と比較しながら作れば、問題点が明らかになり興味をそそるだろう。 <不純な動機による選挙権18歳引き下げ> *1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12412756.html (朝日新聞 2016年6月17日) (2016参院選 アベノミクスを問う:3)「保育園落ちた」遠い政治 予算、高齢者向けに偏重 「保育園落ちた! 選挙攻略法」。こんなイベントが5月下旬に東京都内で開かれた。集まったのは子ども連れの親たち約120人。フェイスブックなどのSNSを通じて呼びかけた同志社大院生の對馬果莉(つしまかり)さん(30)は「子育て世代が声をあげないと政治は動かない。選挙で思いを届けませんか」と訴えた。参院選を控え、保育所に入れない待機児童の解消を訴える親たちの怒りの矛先が政治家に向かう。「政治家に『子育て世代に応えないと落選する』という恐怖をどれだけ与えられるかが重要」「自分の選挙区の候補者にメールでもファクスでもいいから要望を届けて」……。こんな議論が交わされた。前回の2013年参院選では、有権者の4割を占めた60歳以上の投票率は62・4%で、3割いた20~30代の投票率は39・2%。当選した政治家が「有権者の声を聞く」と言い、高齢者向けの政策に重点を置く。こうした政治は、「シルバー民主主義」と呼ばれる。実際に政府の予算配分は高齢者向けが圧倒的に多い。国立社会保障・人口問題研究所によると、年金や介護などの政府支出は13年度で54兆6247億円で、保育所整備や児童手当、育児休業給付といった子育て向けは6兆568億円。日本は人口に占める高齢者の割合が大きいとはいえ9倍の開きがある。欧州各国と比べても偏重ぶりは際立つ。安倍晋三首相が昨年9月に発表した「アベノミクス第2ステージ」では、そこに焦点を当てた。「希望出生率1・8」を掲げ、「将来の夢や希望に大胆に投資していく」と胸を張った。昨年4月の保育の受け皿は約263万人分。それまでの2年間で約22万人分が増えた。安倍首相は「政権交代前の2倍のペースで拡大した」と誇ったが、昨年4月時点の待機児童は5年ぶりに増え、2万3167人だった。昨年末に編成した15年度補正予算では、小規模保育所の整備費補助や保育士の業務負担軽減策などに1245億円を計上。一方、低年金の高齢者らに3万円を配る臨時給付金には3624億円をかけた。保育事業を手がけるNPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表理事(36)は、今月13日に都内で開かれたシンポジウムで憤りをあらわにした。「子どもにお金を使わない国で少子化対策なんか進まない。気合で、竹やりでB29を落とせと言っているのと同じですよ」 ■進む待機児童対策に懸念も 「数だけ確保、質置き去り」 17年度末までの「待機児童ゼロ」を掲げる安倍政権は、保育の受け皿を増やす切り札として基準の緩和を進めている。4月には企業主導型保育事業を始め、自治体の認可がなくても企業が主に社員向けの保育所を設置できるようにした。婚活支援を手がけるパートナーエージェント(東京都)は来月、東京都三鷹市に保育所を開設する。昨年春から複数の自治体に相談していたが、保育所の経営実績や職員の経験年数といった独自の認可条件があり、整備できずにいた。企業主導型ではそうした条件が不要で、担当者は「社内の保育ニーズに合わせ、スピード感を持って整備できる」と喜ぶ。保育の質も重視しており、保育士の処遇改善や研修に力を注ぐ。ただ、企業主導型の仕組み自体は保育士の配置基準が緩和され、職員の半数以上の保育士がいれば補助対象となる。政府が3月に出した緊急対策では、保育士配置や部屋の面積基準について国の基準より手厚く設定している自治体に国基準まで緩めるよう求めた。基準緩和には懸念の声も出る。保育事故の遺族らでつくる「赤ちゃんの急死を考える会」は16日、企業主導型に反対する考えを内閣府などに表明。会員の藤井真希さん(36)は「数だけ確保しようという間違った方向に進んでいる。質の高い保育は置き去り、後回しにされている」と訴えた。保育の受け皿を増やすだけでなく、「子育ては母親任せ」という社会の風潮を変えることも重要だ。厚生労働省によると、14年度に民間企業の男性が育休を取得した割合は2・3%で、女性の86・6%と比べて大きな開きがある。東京都渋谷区の女性会社員(31)は4月から長男(1)を認可外保育所に預けられるようになり、復職した。だが、仕事を終えても分刻みで育児と家事をこなさなければならない。夫(47)の協力はわずかで、両親は遠方で頼れない。「この生活では2人目を考える気持ちにはならない。国が男性に育休取得を義務づけるなど、社会全体で子育てをする機運をつくるべきだ」 *1-2:http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/senkyo/senkyo_nenrei/ 選挙権年齢の引下げについて 平成27年6月、公職選挙法等の一部を改正する法律が成立し、公布されました(平成28年6月19日施行)。今回の公職選挙法等の改正は、年齢満18年以上満20年未満の者が選挙に参加することができること等とするとともに、当分の間の特例措置として選挙犯罪等についての少年法等の適用の特例を設けることを目的として行われました。 *1-3:http://www.saga-s.co.jp/column/18senkyo/25001/312784 (佐賀新聞 2016年5月18日) 県弁護士会が主権者教育 鳥栖工高で出前授業、はじめの1票 18歳選挙権さが 夏の参院選から選挙権が18歳に引き下げられるのを前に、佐賀県弁護士会による主権者教育の出前授業が17日、鳥栖市の鳥栖工業高校(山口光一郎校長)で始まった。生徒708人が投票の意義や、世代間の投票率の差が政策に色濃く反映されることなどを学び、間近に迫った「1票」デビューに備えた。「18歳選挙権」を受け、県弁護士会が選挙の前提となる法律の知識や仕組みを伝え、投票に行ってもらおうと初めて実施した。年度内に約20校に出向く。授業は県弁護士会法教育委員会委員長の吉田俊介さん(35)が講師を務めた。日本が立憲主義と間接民主制を採用していることに触れ、「投票できる一人一人が主権者。国を動かす力を持っている」と説明した。60代の約7割が投票しているのに対し、20代は約3割にとどまっていることを紹介し、「政治家は投票する60代向けの政策を優先するようになる。その結果、若者に使われるお金は少なくなる。気付かないうちにそういうツケが回ってくる」と指摘した。3年の岩永涼馬さん(18)=神埼市=は「憲法に反した事は法律でも決められないなど、詳しく理解していなかった。自分たちの世代向けの政策を充実してもらうためにも初めての選挙には必ず足を運びたい」と決意していた。 *1-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/323186 (佐賀新聞 2016年6月16日) 普段から政治に関心を 選管、伊万里農林高で講話 伊万里市の伊万里農林高校(青木久生校長、352人)で13日、参院選を前に「18歳選挙権」に伴う主権者教育があり、全校生徒が選挙の意義や重要性を学んだ。伊万里市選挙管理委員会職員の松尾省吾さんが若者の投票率の低さをデータで示し、「年齢が上がれば社会経験を重ねて投票率が上がるのが通常だったが、最近は若い時の投票率の低さが年齢を経てもそのまま推移している」と分析。公示目前となった参院選に向けて、選挙の流れや候補者の情報の集め方を説明し、「若者は人口が少ない上に、投票率が低いので意見が反映されにくくなっている。普段から政治に目を向けることが重要」と訴えた。今月17日に18歳の誕生日を迎える3年生の犬山秀人さんは「若者の投票率の低さに驚いた。若い人の考えを政治に生かすのは大事なこと、参院選は必ず投票に行く」と話していた。同校では昨年の生徒会と農業クラブの選挙で、伊万里市選管から投票箱を借り、本番の雰囲気を味わいながら選挙を実施した。社会科の授業を通じても、選挙について学んでいる。 <主権者と主権者教育> *2-1:http://www.saga-s.co.jp/column/18senkyo/25001/314628 (佐賀新聞 2016年5月23日) 佐賀県教委、高校の授業研究チーム発足へ、事例集め公開授業 選挙権年齢が18歳に引き下げられることを受け、佐賀県教委は主権者教育の充実へ向け、高校の授業を研究するチームを近く立ち上げる。先進的な事例を集め、現実の政策を教材にするなどして生徒自身が考えて判断できるような授業を目指す。年度内に4校で公開授業を行い、各学校のヒントにしてもらう。研究チームは、公開授業をする高校の教員と県教委の指導主事ら数人で構成する。6月上旬までに立ち上げ、情報収集や授業案作り、実践などの検討を重ねる。公開授業をする学校や時期は未定。これまでも公民の授業で選挙の制度や意義を教えていたが、特別活動や総合的な学習など幅広い枠でもできる複数の授業モデルを作る。話し合いといった生徒自身が合意形成に至るまでの過程を重視し、総務省が作成している模擬選挙の活用なども視野に入れる。県内の高校では、全生徒に総務省と文部科学省が作成した副教材を配布しているほか、全体の約7割が各市町の選挙管理委員会や県弁護士会などから外部講師を招く計画を立てている。主権者教育では学校の政治的中立を守りながら、子どもたちの政治的活動の尊重が求められ、指導の在り方で学校現場から不安の声も上がる。県教委は「まずは生徒に関心を持ってもらう必要がある。これまでにない新しい形の授業が求められており、いろいろな方法を検討したい」としている。 *2-2:http://www.saga-s.co.jp/column/18senkyo/25002/318573 (佐賀新聞 2016年6月3日) はじめの1票 第2部 主権者教育 (5)方向性 ■社会への関心、日常から 「身近な問題にどう関心を持たせるかという一番大事な点が欠落し、教師任せになってしまっている」。県教委が4月に開いた教師向けの研修会で、総務省と文部科学省が発行した主権者教育の副教材の内容に疑問の声が上がった。副教材「私たちが拓(ひら)く日本の未来」は昨年12月、全国の高校に配布された。初年度の発行部数は実に約370万部。政策に関する討論や模擬選挙の進め方などを解説する「実践編」が6割を占め、選挙制度や投票行動の意思決定の過程に重きが置かれている。この方向性に反論するように、佐賀北高(佐賀市)の森勝俊教諭(58)は「主権者教育は普段着の実践でいい」と強調する。公民科の立場から、身近な問題について普段から考えさせ、その関心を社会的課題につなげることを重視してきた。関心を深掘りするために、数年前から取り組んでいるのが「朝コラム」だ。3年生が10分間の朝読書の時間に新聞のコラムや社説を読み、感想をまとめる。明石泰輝さん(17)は「もともと文章は苦手だったが、自分なりに意見が書けるようになった」と効果を感じている。森教諭は「生徒が感じる学校と現実社会の大きなギャップを埋め、行動につなげる意味で投票の機会を生かしたい」。日頃の学習の延長線上に投票行為を位置付ける。「選挙教育」への偏りとともに、本格的な主権者教育が高校から始まることへの批判もある。教育に新聞を生かすNIE活動に取り組む厳木中(唐津市)の光武正夫教頭(50)は「高校には行かない生徒もいる。社会に関心を持つことが主権者教育の原点であり、義務教育の段階から力を入れるべき」と指摘する。佐賀大学大学院学校教育学研究科の平田淳教授(教育行政学)は「学級会でのルール作りなど、学校生活の全てが主権者教育の場であり、学校の外でも自分で意思決定することは多い。自分たちのことは自分たちで決めるという経験を、学校の内外でどれだけ積ませることができるか」。社会の担い手としての主権者を育てる鍵は、生徒の日常にある。 <具体的事例から考える> *3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160105&ng=DGKKASFS04H7V_V00C16A1MM0000 (日経新聞 2016.1.5) 急病の子 預けやすく、厚労省、保育施設の普及後押し 看護師常駐求めず 厚生労働省は急な病気になった子どもを一時的に預かる施設の普及を後押しする。対象となるのは民間が運営する「病児保育」と呼ばれる施設で、子どもが風邪で熱を出したが仕事を休めない共働きの親などが利用している。看護師と保育士の配置に関わる規制を緩め、一定の条件を満たせば常駐を不要とし施設の人件費負担を減らす。施設の新設にかかる費用も助成する。子どもをもつ母親などが安心して働ける環境を整える狙いだ。規制緩和と資金支援からなる今回の対策は、安倍政権が掲げる「一億総活躍社会」の実現に向けた取り組みの一環だ。一般の保育所は37.5度以上の熱があったり、湿疹が出たりした子どもは預けられないケースが多い。共働きの家庭では親が仕事を休まなければならず、女性の社会進出の妨げになっている。そこで政府は2020年度までに病児保育の利用児童数を150万人とする目標を掲げたが、今の利用率はその4割弱にとどまる。病児保育の不足が理由で、受け皿の拡大は急務だ。対策では、まず看護師や保育士の配置にかかわる規制を緩める。いまのルールは子ども3人あたり保育士1人と、10人あたり看護師1人の配置を義務付ける。ただ利用する子どもがいないときまで看護師や保育士が常駐すると人件費負担が重くなる。いまは子どもがいないときのルールは明確でないが、看護師や保育士を常駐させなくてよいとする規定を新たにつくる。さらに病院などに併設されている病児保育の場合は、看護師がすぐに駆けつけられる体制をとっていれば子どもを預かっていても看護師の常駐は不要とする。4月をメドに病児保育の運営ルールを定めた自治体向けの実施要綱を見直す。病児保育は採算を取りにくいとされるが、人件費負担が減れば新たに参入する業者も増えると厚労省はみる。同省は施設の増設に向けた補助金も拡充する。現在、補助しているのは人件費など運営費の一部のみ。これに加え4月からは施設の建設費など初期投資の一部も補助して新規参入のハードルを下げる。具体額は2月をメドに決める。また病児保育には一般の保育所で体調を崩した子どもが移ってくることも少なくない。病児保育側が子どもを迎えに行った場合は、交通費や付き添いをする看護師の人件費も新たに支援する。補助金の財源には企業が年金などと一緒に国に納めている「子育て拠出金」を充てる。政府は16年度から拠出金の料率を従業員の給与の0.15%から0.20%に引き上げる方針。これによる840億円近い財源増額のうち、約27億円を病児保育の普及策に充てる。 *3-2:http://qbiz.jp/article/80759/1/ (西日本新聞 2016年2月16日) 空き部屋ホテル、学童保育… 日の里再生へ提案続々 宗像市 昭和40年代に開発され、現在は高齢化が進む福岡県宗像市日の里団地の再生について、現地調査をした九州大大学院芸術工学研究院の学生が14日、住民約200人の前で研究発表をした。空き部屋をホテルとして活用したり、空き店舗を図書館やギャラリーの複合施設にしたりする夢のあるプランを住民は熱心に聞いていた。学生たちは昨年5月の調査開始以来、団地を歩いて住民へのヒアリングを重ね、課題を絞り込んだ。高齢化率が3割を超え空き部屋も増える一方、緑が豊かで、専門知識のある人材が多いことなど潜在的な価値が高いことも分かった。空き部屋、商業活性化などの項目別に、7人の学生が調査結果と再生プランを提言した。古い集合住宅に学童保育、仕事帰りの保護者が立ち寄るカフェなどを併設する「地域まるごと託児所構想」や、空き部屋を利用して住民が観光客をもてなす「団地民泊構想」などユニークな発想に会場から拍手が起きた。商業活性化について発表した韓国からの留学生、張栄さん(24)は「調査した店の人たちは、どんな街にしたいかという問題意識が高かった。続けて再生に関わりたい」と話した。 *3-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10102/253929 (佐賀新聞 2015年11月27日) 浜玉で列車にはねられ子ども死亡、JR筑肥線小浜踏切付近 近くの小3男児か 26日午後6時ごろ、唐津市浜玉町渕上のJR筑肥線の小浜踏切付近で、子どもが福岡空港発西唐津行き下り普通列車にはねられ、死亡した。現場近くに住む小学3年の男児の行方が分からなくなっており、唐津署は身元の確認を進めている。同署によると、列車の乗務員が子どもをはねたのに気付いて緊急停車し、唐津駅職員を通じて110番した。現場は警報機や遮断機のある踏切の近くだったという。男児の母親が現場の近くでいなくなった男児を探していた。JR九州によると、列車は6両編成で約140人が乗車していたが、けが人はいなかった。約1時間50分後に運転を再開した。事故の影響で上下線21本に最大2時間の遅れが生じ、約4千人に影響が出た。 *3-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150720&ng=DGKKZO89497900Y5A710C1TCR000 (日経新聞 2015.7.20) 年金減額で訴訟、国にも弱み、給付額少ない人どう守る 本社コラムニスト 平田育夫 厚生年金や国民年金の減額を取り消すよう国に求める訴訟が相次いでいる。寿命が延び、少子化が進んで、今や年金は「百年安心」と言えない。給付を減らさないと制度が持たず現役世代や後世代にツケが回る。だから減額はやむを得ないのだが、実は訴えられた国にも弱みがある。月5万円以下といった少ない年金を、20万円以上など多めの年金と同率で減らすのは酷な話。低年金の人を守れる制度に改めないと必要な給付減額を滞らせることにもなりかねない。訴えたのは全労連傘下の全国年金者組合に加入する年金受給者ら。26都道府県の地裁に提訴、最終的には45都道府県で約3500人の訴訟になるという。彼らは2種類の減額を問題にする。一つは払いすぎの解消。給付額は物価と連動する建前だが、物価下落でも据え置いた期間があり本来の水準より2.5%高くなった。政府はこの分を2年前から段階的に解消した。訴えでは2年前の1%減額分の撤回を求めた。だが訴訟の“本丸”はもう一つのほう。寿命の延びと働き手の減少に対応して給付の伸びを物価上昇率より0.9%低く抑える実質的な減額だ。「マクロ経済スライド」と呼ぶ年金の持続性向上策で、今年4月から開始した。今後30年近く続き、減額幅が約3割になる可能性がある。訴状では減額取り消しを求める理由を様々あげているが、特に強調するのは低年金者への打撃だ。国民年金(基礎年金)だけの人の平均受給額は月5万円で単身者には不十分。少ない年金の減額は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」をうたう憲法25条に反する―と。なるほど。だが原告のうち国民年金だけの人は数%だ。あとの九十数%は厚生年金や共済年金の受給者。給付額が多めの彼らが自らも減額を免れるため「低年金者への打撃」をだしに使うのならいただけない。厚生年金の平均受給額は月約14.5万円。これは加入者本人の基礎年金と報酬比例年金で、それに配偶者の基礎年金を加えると20万円近い。少し減らしても生存権は守れる。むしろ年金財政の実態からは給付が多すぎる人が大半だ。受給者の増加と保険料を納める人の減少で年金の台所は逼迫。厚生年金の積立金は二十数年後に底をつく恐れがある。国費には頼れないし保険料引き上げもほぼ限界。今の高齢者を含め年約1%ずつ実質給付を減らすマクロ経済スライドを進めるしかない。それが遅れると後の世代は減額幅が大きくなり大打撃を被る。ただし月五万円未満などの少ない年金も減らすべきかは別問題だ。消費増税に伴い低年金者には最大月5千円の支援金を出すが、十分とは言えない。低年金の人は生活保護で補ってもらえるが「資産がないことが原則」などハードルは高い。また国にとっては、税金で賄う生活保護が膨らめば財政がさらに悪化する。年金の制度を改めて最低限の金額を保証できれば、それが一番。なにより、年金減額反対の運動に「低年金者の保護」という口実を与えないために必要だ。外国は収入の少ない高齢者をどう守っているのか。スウェーデンは保険料を財源にした所得比例年金を中心とし、この年金が少ない人に限り税金で加算する。同国の年金庁に聞くと、所得比例年金がゼロの場合でも、単身者で最大月11.4万円受け取れるという。カナダの年金は全額を税金で賄う、いわば基礎年金があり、その上に保険料による所得比例年金が乗る。政府は高所得者からこの“基礎年金”の一部または全部を返還させ、低年金者への加算に回す。所得比例年金が出ない人でも単身者の場合で最大月12.7万円を受け取れる。さて日本にはどんな制度がよいか。保険料の未納や払った期間が短いなどの理由で低年金や無年金になる人も救えるのは、基礎年金の全額(今は半額)を消費税で賄う方式。居住年数つまり消費税を払った年数に応じた金額を支給する。日本経済新聞社は7年前の紙面で日本に40年住んだ人はだれでも65歳から月6.6万円受け取れる制度を提言した。基礎年金の保険料を廃止し代わりに消費税を5%引き上げる。この案を支持する専門家は多い。税金の投入をあまり増やさずに低年金者を守るならカナダかスウェーデンのやり方が参考になる。安倍政権は所得が多い人の基礎年金を減らす方針。それで浮く税金を低年金者に回せばカナダ方式に似てくる。しかし減額対象者の候補は年収850万円超の人で受給者のわずか0.9%。もっと年収の低い人も削減対象にしないと低年金の人に回す余裕は少ない。一方、鈴木亘学習院大学教授の案はこうだ。基礎年金についてはマクロ経済スライドによる減額を停止する。さらに低年金を引き上げ、住宅を持つ人の場合で月6~7万円を保証する。そのため厚生年金の報酬比例部分は今の年0.9%より大幅な率で減らすほか、年金の支給開始年齢引き上げなどで財源を確保する。やり方は様々ありうる。今回の訴訟で原告の主張が通るとは思えないが、これをきっかけに減額反対の機運が盛り上がるかもしれない。低年金の人を守りながら、それ以外の人への実質給付を着実に減らすため制度の手直しが急がれる。 PS(2016.6.20追加):*4-1のように、「国債運用が基本だった年金資金が、運用難でリスク投資に向かい始めた」とのことだが、高リスク高リターンの投資をすれば元本割れするリスクも高いため、年金のように生命にかかわる資産は安全な債券(外国債・地方債を含む)で運用するのが世界の常識である。にもかかわらず、年金資産を余剰資金のように運用してもよいと考えている年金資産の管理者は信頼性に欠けるとともに、このような管理者の無責任な意識がこれまでも年金資産をすってきたのが大問題なのだ。その上に、保険料回収の不完全性や管理の杜撰さ、非正規雇用割合の増加なども問題である。 また、*4-2のように、30年1日の如く(馬鹿の一つ覚えで)外国の航空会社への航空機リースを行っているが、例えば東日本大震災や熊本地震で破壊された地域に太陽光発電を完備した住宅地の再開発を行ったり、地方の鉄道整備を行ったりなどを同様のリース方式で行えば、地方や日本全体にとってメリットがあり、投下資本の回収が可能で、金融緩和された金が第三の矢として働く。さらに、*5-1のような自治体向け地熱発電や、*5-2のようなEV普及も、日本で始まったがすっかり遅れをとっているので、これらの活用に向けてインフラ整備を行うのも無駄金にならず第三の矢として働く。つまり、政策判断には総合的考察力が必要で、それを培うためには通常科目をしっかり勉強しておくことも重要なのだ。 *4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160620&ng=DGKKASFS04H0H_Z10C16A6MM8000 (日経新聞 2016.6.20) リスク資産に最大6兆円 ゆうちょ銀、運用難で、不動産やインフラ 代替投資、公的年金も7兆円 国債運用が基本だった貯金や年金などのお金がリスク投資に向かい始める。日本郵政グループのゆうちょ銀行は今後5年程度で国内外の不動産や未公開企業などの代替投資(総合・経済面きょうのことば)に最大6兆円を振り向ける。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も今年から7兆円を上限に投資。マイナス金利で国債に依存した運用が難しくなった状況に対応する。今後は運用資産の目利き力やリスク管理が課題になる。国内銀行で最大規模の資産を持つゆうちょ銀と世界最大の機関投資家であるGPIFがリスク資産に投資するのは、運用環境が厳しさを増しているためだ。日銀が2月にマイナス金利政策を導入したことで大部分の国債の利回りがマイナス水準に低下。年明け以降の円高・株安で外国債券や日本株などでの運用も難しくなっている。高リスク高リターンの投資を増やすことで、資産の毀損リスクも高まることになる。半面、国内有数の運用機関が不動産などに投資対象を広げれば、日銀が市中に流す潤沢なマネーが成長分野やインフラにも流れやすくなり、実体経済の活性化が見込める。ゆうちょ銀の運用資産は約200兆円。今年度から海外の不動産やインフラ、未公開企業などへの直接投資を開始。中長期的に収益確保が期待できる案件を選ぶ。代替資産の具体的な構成は今後決めるが、投資先を広げて収益拡大と同時にリスク分散も進める。認可が必要ないファンドを通じた投資は始めているが、不動産などに直接投資するには金融庁と総務省の認可が必要で、申請準備を急ぐ。他の民間銀行と違って融資業務が原則禁止され、これまで国債などで運用してきたが、最近は市場金利の低下を背景に外債などリスクを伴う資産への投資も増やしている。GPIFも運用利回りの向上を狙い、運用対象を広げる。すでにカナダのオンタリオ州公務員年金基金(OMERS)と共同で代替投資を始めているが、ファンドを通じた方法に限られ、手数料負担などで運用効率が高まっていない。厚生労働省は今年夏にも年金部会を開き、運用手法の拡大を容認する政令の追加案を示す。LPS(リミテッド・パートナーシップ)という組合を通じた共同投資で、GPIF自身は個別に投資判断を行わず、投資家として参加する。GPIFの約140兆円の年金資産のうち、代替投資の割合は0.04%とごくわずか。今後は資産の5%(昨年末時点で約7兆円)を上限にリスク運用を増やす。リスク運用を広げる場合、対象資産の選定やリスク管理が重要になる。ゆうちょ銀は1月にリスク管理部門を新設し、約100人を配置。メガバンクからリスク管理の責任者を迎えるなど内部管理体制の強化を進める。GPIFも今年から「オルタナティブ投資室」を設置した。今年秋にも運用リスクを総合的に管理する新システムを導入する。 *4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160620&ng=DGKKZO03804960Z10C16A6NN7000 (日経新聞 2016.6.20) 三井住友信託銀、航空機リースのファンド 200億円規模で 三井住友信託銀行は世界の航空会社に航空機をリースするファンドを立ち上げ、国内の投資家から出資を募る。当初の運用総額は2億ドル(約210億円)の見通し。新興国の経済成長や格安航空会社(LCC)の普及で今後も航空機リースは堅調な需要が見込まれ、10%程度の投資利回りを想定する。低金利で運用難が続くなかで、投資家の需要が期待できる。新ファンドは航空会社に航空機をリースする特別目的会社(SPC)の株式を取得し、SPCは外部からの借り入れを活用しながら機体を買う。出資した投資家は航空会社が支払うリース料などを原資として配当を受け取る。ファンドの運用にあたっては、航空機リースの実績があるノーヴァス・アビエーション・キャピタル(スイス)から助言を受ける。運用総額は2億ドル程度を予定するが、投資家の引き合い次第で3億ドルまで増やす可能性がある。運用期間は5年だが、さらに最大3年まで延長できるようにする。 業界の推計では、世界の航空機は現在の約2万機から20年後には4万機以上に増える。航空会社がリース機を使う比率も約4割から約5割に伸びるとされ、一段の成長が見込まれている。 *5-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160620&ng=DGKKZO03804360Z10C16A6NN1000 (日経新聞 2016.6.20) 地熱発電、専門家が助言 資源機構 自治体向けに 独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は6月から地熱発電の開発案件を抱える自治体に地質学などの専門家が助言するサービスを始めた。事業の採算性や環境への影響をデータで示し、地元の理解を得やすくする。政府が掲げる2030年までに地熱発電の規模を3倍以上に増やす目標の達成につなげる。JOGMECは地質や環境などの専門家20人ほどで構成する「地熱資源開発アドバイザリー委員会」を立ち上げた。地熱発電への参入を目指す事業者は増えているが、周辺の温泉組合や住民の理解が得られずに断念するケースが多い。このため調整役の自治体が地元の関係者から開発への理解を得やすいように環境への影響などを分析したデータを提供して実現を支援する。地熱発電は二酸化炭素(CO2)の排出がほぼゼロで政府も拡大を後押ししている。 *5-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160620&ng=DGKKASGM31H2Q_Z10C16A6MM8000 日産、中国で低価格EV 今夏にも、3割安く 東風汽車と共同で 日産自動車は価格を現行モデルより3割程度抑えた「低価格EV(電気自動車)」を中国市場に投入する。提携先の中国自動車大手、東風汽車集団と共同開発する。中国は大気汚染の改善や産業育成を狙い、国を挙げてEVの普及を進めている。今後、EV市場が急拡大する可能性をにらみ低価格車で需要を取り込む。日産は2014年に「リーフ」を改良したEV「ヴェヌーシアe30」を中国で発売した。今回、車両価格をe30より20~30%安い20万元(約315万円)前後に抑えた新型車を中国で生産し、早ければ夏にも発売する。搭載する電池も含め基幹部品の現地調達を拡大。輸入部品を減らして関税や輸送費などコストを削減し価格を地場メーカーのEVと同水準にする。政府の補助金活用後の実売価格は地域により10万~15万元と、同クラスのガソリン車並みを狙う。日産は低価格EV投入で、EV市場でのシェアを15年の2%から数年で5~10%にする。中国政府は、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)を「新エネルギー車」と定め普及を進めている。EV購入者への補助金は中央政府が最大5万5千元。地方政府の別途支給分を含む実質的な補助総額は最大で11万元に達する。一連の補助策で15年に年33万台だった新エネルギー車の販売台数を20年までに累計500万台に増やす。日本や欧米では価格の高さやインフラの未整備が普及のネックとなっているが「中国では国主導で急速に広がる可能性がある」(日産のカルロス・ゴーン社長)という。 PS(2016年6月20日追加):*6-1のように、全国知事会などが参院選公約の評価結果を公表するとわかりやすくてよいが、注目したポイントが限られているので、憲法改正、安全保障法制、特定秘密保護法、TPPなどへのいろいろな立場の専門家や利害関係者からの評価も欲しい。なお、*6-2の安倍農政の評価も具体的でよいが、国民の食生活が変わって誰もが栄養バランスに気をつけている中で、農家が米頼みを続けるのは無理があるとともに、本当の需要を逃している。 全国知事会 実質賃金等 収入増の実感 農政 安全保障法制 の公約評価 2016.6.12佐賀新聞 2016.6.20佐賀新聞 2016.6.20日本農業新聞 *6-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/324772 (佐賀新聞 2016年6月20日) 全国知事会、参院選公約の評価結果を公表、自民の地方創生を歓迎 全国知事会は19日、与野党9党が参院選公約に盛り込んだ地方関連施策の評価結果を発表した。自民党が地方創生や国土強靱化(きょうじんか)への取り組みと、分権改革をにらんだ地方財源の確保を明記したことを歓迎。公明党も政府機関の地方移転を掲げたことを評価した。民進党は地方が自由に使える一括交付金の復活を盛り込んだものの、地方分権改革に触れていないと指摘した。共産党には「地方を巡る諸課題について一切触れていない」と厳しい見方を示した。おおさか維新の会が地方分権改革を明記したことに期待を表明。社民党、生活の党、新党改革は地方創生につながる企業の本社移転に触れていない点を批判した。日本のこころを大切にする党は、地方活性化に必要な施策に触れていないとしている。評価特別委員長の飯泉嘉門徳島県知事は、参院選の争点に関して「地方創生や分権改革の議論が薄まっている」と述べ、各党の論戦を訴えた。知事会は5月、地方創生や分権改革の強化など10項目の重点要望をまとめ、各党に公約への反映を要請。重点要望に基づいて参院選公約を評価した。公約評価は政権選択が問われる衆院選は点数で評価するが、参院選では各項目へのコメントにとどめている。 *6-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37969 (日本農業新聞 2016/6/20) [2016年 参院選] 検証「安倍農政」3年半 「攻めの農業」道半ば 米 落ち込み顕著 22日公示・7月10日投開票の参院選では、3年半の「安倍農政」の是非も問われる。安倍晋三首相は「攻めの農業」に向けて農政改革を進め、輸出額や法人経営は増えたが、農業総産出額や農家の所得は増えていない。また生産基盤の弱体化も止められていない。農水省の統計から検証した。 ●輸出、法人増も所得減 首相は2012年12月の就任以来、アベノミクスの成長戦略の柱の一つに「攻めの農林水産業」を位置付ける。13年6月には、10年間で農業・農村全体の所得を倍増させる目標も閣議決定した。その象徴が輸出だ。農林水産物・食品の輸出額は15年に過去最高の7451億円で、原子力発電所事故の影響も大きかった12年より7割近く増えた。首相は今月、19年に輸出額1兆円とする新たな目標を明示。環太平洋連携協定(TPP)も活用する考えだ。だが食肉や野菜、果実の生鮮農産物に限れば15年の輸出額は383億円で、農家所得増には必ずしも結び付いていない。農業総産出額や、農家の所得に当たる「生産農業所得」は、12年と14年を比べると、いずれも微減した。要因は米だ。14年産の相対取引価格は60キロ当たり1万1967円で、持ち越し在庫などを原因に、12年産より3割近く下落。一方、飼料用米の拡大で生産調整を達成した15年産は同1万3176円に戻している。米消費量の減少も歯止めをかけられず、主食用米の生産数量目標は、12年から16年の間に50万トン減った。13年秋に安倍政権は、18年産から国による生産数量目標の配分の廃止を目指す方針を決めたが、米の需給が安定しなければ、農家所得の減少にも直結する。需給調整の鍵を握る飼料用米の生産量は増えているが、助成金頼みの面もある。農業の生産基盤の縮小も止められていない。農業就業人口は3年で40万人以上減少。安倍政権は「新規就農して定着する農業者」の倍増を目標とするが、微増にとどまる。また担い手への農地集積率を23年度に8割にする目標を掲げ、農地中間管理機構(農地集積バンク)を創設したが、現状ではまだ5割強だ。一方で安倍政権は農外の企業も新たな担い手に位置付ける。農地をリースして参入した一般法人の数は、3年で9割増えた。農地を所有できる農業生産法人(「農地所有適格法人」に改称)も2割近く増。15年の農地法改正では、同法人の農業関係者以外の出資要件などを緩和しており、一層の増加が予想される。ただ、こうした法人が離農者の手放した農地などをどこまでカバーできるかは見通せない。荒廃農地の面積は増え続けており、肉用牛の飼養頭数は3年で20万頭以上減った。15年に閣議決定した新たな食料・農業・農村基本計画では、食料自給率の目標を「実現可能性を重視」して25年に45%としたが、現状は39%を維持するのが精いっぱいだ。 <原発は壮大な無駄遣い> PS(2016年6月21、23日追加):*7-1の伊藤鹿児島県知事の「日本の置かれた経済状況から、原発はあと30年稼働せざるを得ないというのが正しい」等の発言を聞くと、法学部卒は科学にも工学にも経済学にも弱く、モノを言う時には裏付けを要しないという教育を受けているのではないかと思われる。そして、官僚出身者だからさらに無責任なのかもしれない。しかし、相手候補の元テレビ朝日コメンテーターの三反園氏(58)も「川内原発を一度止める」と訴えているだけで対立軸になっていないため、鹿児島県・宮崎県産の農林水産物が放射能汚染で福島県産と同じになる(これを“公平”と呼ぶ人もいるのが驚き)日も近いと思われて残念だ。そもそも、原発こそ未来に大きな負担を残す無駄遣いであり、*7-2のように、将来世代に対して無責任なものである。 *7-1:http://qbiz.jp/article/89175/1/ (西日本新聞 2016年6月21日) 鹿児島知事が川内の運転延長容認 「あと30年は稼働を」 鹿児島県の伊藤祐一郎知事(68)は20日、全国の原発で唯一稼働中の九州電力川内原発(同県薩摩川内市)について「あと30年稼働せざるを得ない。日本の置かれた経済状況などからそれが正しい」と述べ、原則40年と定める原発の運転期間の延長を容認する考えを初めて示した。23日告示の知事選公約を発表した記者会見の中で問われ、答えた。原発の運転期間は電力会社が原子力規制委員会の許可を受ければ、1回に限って20年を限度に延長できる。川内原発は1号機が1984年、2号機は85年に運転が開始され、あと8、9年で「期限」の40年を迎える。知事選では伊藤氏が4選を目指すのに対し、新人1人が出馬を取りやめ、無所属の元テレビ朝日コメンテーターの三反園訓氏(58)に一本化。三反園氏側は「川内原発を一度止める」と訴えており、伊藤氏がこれを意識し、原発政策を鮮明にしたとの見方もでている。 *7-2:http://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_19857.html (宮崎日日新聞 2016年6月23日) エネルギー政策 ◆脱原発の道筋 活発に論戦を◆ 参院選が公示された。各党は、原発やエネルギー政策に関する公約を掲げている。「徹底した省エネ、再生可能エネルギーの最大限の導入などにより、原発依存度を低減させる」「原発の新設を認めず原発に依存しない社会・原発ゼロを目指す」「40年運転制限を厳格に運用。2030年代原発ゼロに向け、あらゆる政策資源を投入する」などさまざまだが、主要な争点とはなっていない。しかしエネルギーや原発政策は、国の将来を左右する重要課題であり、争点とするにふさわしい。各党は脱原発を望む過半の世論に正面から向き合い、論戦すべきだ。 ●政府の計画には矛盾 参院選公示の直前、原子力規制委員会は、運転開始から40年以上経過した老朽原発の関西電力高浜1、2号機(福井県)の運転延長を認可した。現在の法律は「原子炉を運転することができる期間は40年」と明記している。最大20年、1回だけの延長はあくまでも特例だ。だが今回の措置は、全長約1300キロに及ぶ電気ケーブルの防火対策について、全交換でなく防火シートで包むなどの関電の提案を了承するなど、「特例」にはほど遠い、甘い決定だ。40年ルールを形骸化させ、本来、特例であるはずの長期運転を当たり前のものとすることは、過半の市民が脱原発を求めているという世論に反する。規制委はあらためて40年ルールを徹底し、期間延長はあくまでも例外的だとの方針を明確にすべきである。運転期間延長の背景にあるのは「原発依存からの脱却」を言う一方で、原発を重要なベースロード電源と位置付けて2030年度に電力の20~22%を供給するとした政府の矛盾に富んだ長期計画だ。今後、廃炉になる原発が増えることなどを考えると、多くの原発で運転期間を延長しない限り、この目標の達成は困難だ。「政治からの独立」を掲げる規制委が、この政策に配慮したのではないかとの疑念を抱かざるを得ない。 ●将来世代に無責任だ 原発やエネルギー政策は、将来に大きな影響を与える。長期的視野を持ち、広く合意形成を図りながら決めていくべき重要課題だが、議論は十分と言えるだろうか。東京電力福島第1原発の事故は、国民にリスクの大きさを知らしめ、再生可能エネルギーと省エネを基礎にした、持続可能なエネルギー社会づくりに向けた大改革の必要性を認識させた。それから5年、日本のエネルギー政策が、求められる改革に道を開いたとは言い難い。なし崩し的に原発依存を続けるのか、脱原発に進むのかは不明確なままだ。再生可能エネルギーの拡大に不可欠な電力システム改革も、中途半端だと言わざるを得ない。これでは今なお避難生活を続ける原発事故の被災者に対しても、将来世代に対しても無責任だ。 PS(2016年6月22、24日追加):*8-1のEUと英国の離脱のような海外の政治状況を主権者教育に使うのもよい。何故なら、EUの前身であるEC(ヨーロッパ経済共同体)の父、リヒャルト・ニコラウス・栄次郎・クーデンホーフ=カレルギー伯爵は、母が日本人でミツコという香水の名前にもなっている人だが、EUになってからは金融・財政政策・外交・防衛・治安など国の主権にかかわることまで統一することを要求するようになっており、これは主権の侵害だからで、それに対して英国が国民投票という民主主義の手法で意思決定するのは重要な事例だからである。私自身は、*8-2のような意見が日本のメディアには多いが、国が考えなければならないことは目先の経済や為替レート・株価ではないため、大英帝国と言われたこともある規模の大きな島国である英国の立場で考えれば、ヨーロッパ大陸内の小国とは異なり、何もかもEUに合わせなければならない方がディメリットが大きいと考える。そのため、EUから離脱して、EUとFTA(自由貿易協定)を結べば、ディメリットをなくしてメリットだけをとれるだろう。なお、ヨーロッパ大陸内の小国でも、スイスは金融に秀でた永世中立国という独自性を失わないためかEUには入っておらず、スイスのツェルマットでは20年以上も前から電気自動車と馬車しか走れない規制があり、環境意識が徹底している。従って、スイスはじめヨーロッパは、完全EVのよい市場となるだろう(22日)。 結局、英国民は、*8-3のように、EUからの離脱を選択した。国民投票の投票率は72.2%、離脱51.8%、残留48.2%で、焦点は移民問題と主権を取り戻すことだったそうだ。若者がEUからの離脱に不安を感じるのは、英国が1973年にECに加盟したためEC・EU時代しか知らないせいだが、新しい世界の経済環境を考えれば、離脱は経済的リスクよりも大英帝国時代の縁を使って速やかにアフリカ・アジア諸国と協調することによる発展可能性の方が大きく、これは北部スコットランドも同じだろう(24日)。 スイスのマッターホルン山麓にあり、電気自動車と馬車しか走れない街、ツェルマット (解説は、http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1002/03/news010.html) *8-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/325469 (佐賀新聞 2016年6月22日) 英、EU離脱の賛否巡り火花、最終盤、各地で訴え EU離脱の是非を問う英国の国民投票を23日に控え、ロンドン市内で21日夜、離脱、残留両派の政治家らによる討論会が開かれた。6千人の観衆を前にそれぞれ持論を展開し、火花を散らした。離脱の賛否は依然として拮抗している。選挙管理委員会は21日、国民投票で投票登録をした有権者の総数が4649万人余りになったと発表。態度未定の層を取り込もうと両派は最終盤の訴えを続けており、この日は全国各地で集会を開いたりビラ配りをしたりした。討論会は離脱派から前ロンドン市長のジョンソン下院議員ら、残留派からはカーン現ロンドン市長らの各3人が登壇した。 *8-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160622&ng=DGKKASDZ21I98_R20C16A6MM8000 (日経新聞 2016.6.22)EU離脱なら「英事業見直し」2割 欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う英国の国民投票が23日に実施されるのを前に、日本経済新聞社は21日、「社長100人(緊急)アンケート」を実施した。英国がEU離脱した場合、自社の英国事業の戦略を「見直す」「見直しを検討する」と回答した経営者は約2割に上った。投票結果がわからない段階でも、経営トップが危機感を抱いていることが浮き彫りになった。日本経済新聞社が日本の主要企業の社長(会長などを含む)を対象に実施し、123社から回答を得た。「英国で事業を手掛けている、もしくは事業を計画、予定している」のは96社、78.0%。そのうち17.7%が「戦略見直しを検討する」、2.1%が「見直す」と答えた。対象としては投資の削減、拠点の縮小、人員スリム化が挙がった。離脱票が多かったとしてもすぐEU離脱となるわけではないが、既に戦略見直しを経営者は頭に入れているようだ。全ての経営者に「残留」「離脱」どちらを支持するか尋ねたところ「残留」が71.5%と最も多く、「どちらかといえば残留」も10.6%。「離脱」「どちらかといえば離脱」はゼロで、11.4%の経営者は設問に答えなかった。伊藤忠商事の岡藤正広社長は「離脱となれば金融市場がかく乱され悪影響が及ぶ。他のEU加盟国で反EUの声が高まり欧州分裂につながりかねない」と懸念を示した。日立製作所の東原敏昭社長は「EUが強く結束しオープンな単一市場であり続けることが、欧州の繁栄や日立の事業にとって好ましいと考えている」とコメントした。 *8-3:http://digital.asahi.com/articles/ASJ6R7WSFJ6RUHBI03W.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2016年6月24日) 英国がEU離脱へ BBC「確実」と速報、初の脱退例 23日に投票が行われた欧州連合(EU)からの離脱を問う英国の国民投票で、英公共放送BBCは24日午前4時40分(日本時間午後0時40分)ごろ、開票状況を独自集計した結果、離脱が多数になることが確実になったと速報した。28カ国からなるEUから加盟国が脱退する初の例となる。拡大と深化を進めてきた欧州統合は大きな転換点を迎える。離脱派の英国独立党(UKIP)のファラージ党首は24日午前4時、ロンドン市内の集会で「独立した英国の夜明けが来ようとしている」と述べ、事実上の「勝利宣言」をした。投票は23日午後10時(同24日午前6時)に締め切られ、ただちに開票が始まった。英BBCによると、24日午前5時40分(同午後1時40分)時点で、382地区のうち364地区で開票が終了。離脱が1625万2257票(51・8%)、残留が1513万139票(48・2%)となっている。全国的な集計結果は、24日午前(同午後)にも中部マンチェスター市庁舎で発表される見通し。選管によると、有権者数約4650万人で投票総数は3356万8184票、投票率は72・2%だった。昨年5月の総選挙の投票率66・1%を上回った。開票の結果、労働党支持者が多く、残留派が多いと見られていた中部の工業都市ニューカッスルでは、残留が50・7%、離脱が49・3%と得票率が伯仲。日産自動車が工場を置く近郊のサンダーランドでも離脱が61%を占めるなど、各地で離脱派が予想以上に得票を伸ばした。一方、残留派が優勢とみられていた地区では、投票率が伸び悩んだ。北部スコットランドの主要都市グラスゴーでは残留票が過半数を占めたが投票率は56%台と他地域に比べて低かった。残留派が優勢とされた中部マンチェスターも投票率は60%を下回った。ロンドンを含む英南東部は22日夜から豪雨に見舞われた。投票日の23日も断続的な大雨で浸水の被害が発生したり、交通網が大きく乱れたりした。荒天が有権者の出足を鈍らせた可能性もある。国民投票に向けたキャンペーンで、離脱派は移民問題に焦点を絞り、「EUにとどまる限り移民は減らせない」と主張。「主権を取り戻せ」と訴えた。またEUから出ることで、英議会の主導権を取り戻すべきだと説いた。一方、キャメロン首相が率いる残留派は、経済のリスクを前面に掲げた。オバマ米大統領ら各国首脳も残留を呼びかけた。投票日1週間前の16日に残留支持だった女性下院議員の射殺事件が発生。残留派が巻き返したものの、離脱派の勢いが最後まで伸長した。英国は今後、EU基本条約の規定に従い、2年をかけてEU側と離脱の協定を結ぶ交渉に入る。ただ加盟国の全会一致で交渉期間は延長できる。また英国は欧州の単一市場へのアクセスを失うため、改めてEU側と貿易協定の交渉を行うことになる。今後は、残留を訴えたキャメロン首相の進退が焦点となる。残留派の多い北部スコットランドでは、EU離脱を嫌う住民の間で英国からの独立運動が再燃する可能性もある。 <日本人の若者について> PS(2016年6月23日追加):*9-1、*9-2、*9-3のように、佐賀新聞は若い有権者の選挙に関するメッセージ・ボードを募集・選抜して掲載したが、*9-1は、よいメッセージだと思う。しかし、*9-2の「①介護職を目指して就職活動中で、福祉分野はどこも人手不足」「②就職先は人間関係が良好なところがよく、若者を使い捨てるような『ブラック企業』は論外」「③初めての選挙に周りでも『行かなきゃ』って盛り上がっており、福祉のこととか関心あるけれど、政治家の言葉って、なんか難しい。もっとかみ砕いて説明して」については、「ブラック企業」の定義はあるものの、医療・看護・介護は9時~5時では終わらない仕事であるため、一人前になる前からこのようなことばかり言っている若者にははじめから期待できない。また、①の状況でも、ハングリー精神を持ち勉強して日本に来る有資格者の外国人は多く、そちらの方がよほどレベルが高い。さらに、③については、離乳食ではあるまいし、新聞や私のブログくらいは読んで理解できるようでなければ主権者としておぼつかない。その上、*9-3については、言論の自由が保証されている民主主国家で「剣を持つなら覚悟を」などという状況があってはならず、仮に私に向かってこれを書いたとすれば、このように女性を過小評価している環境の中で私は男性の3倍の努力をして地位を獲得してきたので、君のようにチヤホヤされて甘ったれたガキには想像もできないくらいシビアなのだと言わざるを得ない。そして、佐賀新聞も女性を過小評価する偏見を持っており、選択が悪い。 *9-1 *9-2 *9-3 外国人労働者 外国人介護士 外国人労働者の推移 2016.4.3佐賀新聞 *9-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/325442 (佐賀新聞 2016年6月22日) 参院選2016 メッセージボード(3)、=さが選挙チャンネル= 佐賀新聞社は、若い有権者を対象に、選挙に関するメッセージ・ボード=写真参照=を募集します。ツイッターやフェイスブックの佐賀新聞公式アカウントからも配信します。応募は、メール 18senkyo@saga-s.co.jp に写真や動画を添付し、氏名・郵便番号・住所・電話番号を明記してください。締め切りは7月8日24時。 *9-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/325994 (佐賀新聞 2016年6月23日) 「若者にも分りやすい政治を!」 冨田梨奈さん(19)、候補者へ(1)=参院選2016= 介護職を目指して就職活動中です。福祉分野はどこも人手不足。学校に来る求人票も増えていて、遠くは関東からも届きます。就職先は人間関係が良好なところがいいな。若者を使い捨てるような「ブラック企業」は論外。先生たちは注意して選別してくれているみたいだけれど、もっと政治家も対策に乗り出してくれないと。初めての選挙に、周りでも「行かなきゃ」って盛り上がっています。福祉のこととか関心あるけれど、政治家の言葉って、なんか難しい。もっとかみ砕いて説明して。(唐津市相知町 冨田梨奈さん・佐賀女子短大) *9-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/326017 (佐賀新聞 2016年6月23日) 2016さが参院選 メッセージボード(4)、=さが選挙チャンネル= 佐賀新聞社は、若い有権者を対象に、選挙に関するメッセージ・ボード=写真参照=を募集します。ツイッターやフェイスブックの佐賀新聞公式アカウントからも配信します。応募は、メール 18senkyo@saga-s.co.jp に写真や動画を添付し、氏名・郵便番号・住所・電話番号を明記してください。締め切りは7月8日24時。 PS(2016年7月1日追加):「政治家は若者の関心をどうやって高めるの」などと若者が問い掛けているそうだが、*10-2のように、男女平等の普通選挙権は主権者の権利であって義務ではないため、権利放棄するのは自由であり、権利行使したい人は大人と認めて選挙権を与えられたのだから甘ったれることなく、日頃から政治に関心を持ち論点を整理して正確な判断ができるようにしておくべきだ。そのためには、授業の工夫、議員の政治報告会参加、家族や友人との意見交換などいろいろな方法がある。また、政治家は特定の有権者におべっかを使うことなく、公正に振舞うのがあるべき姿だ。しかし、メディアは、(自分たちがわかっていないらしく)①お天気 ②事件 ③スポーツ ④政治家の些細な金銭問題ばかりを放送し、政治課題に関しては行政の意向に沿ったコメントを流しているにすぎない。そのため、有権者が政治に関わる重要な論点を正確に把握することは困難で、*10-1のように、若者に限らず有権者の政治への関心(→投票率)が低くなるのも当然であり、メディアは本当の民主主義を機能させるためのツールであるにもかかわらず、その役割を十分に果たしていないのが最も重要な問題なのである。 *10-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/328971 (佐賀新聞 2016年7月1日) 「こんな結果になるなら投票すべきだった」 18歳から選挙権が与えられ、初めての国政選挙になった参院選。新たな「主権者」として脚光を浴びる若者は問い掛けます。「大人でさえ投票に行かない時代。政治家は若者の関心をどうやって高めるの」。公示前、高校生らが国会議員に直接質問をぶつけたイベントで、淺川きららさん(17)。若者向けの政策の本気度を問います。各陣営や政党は選挙戦であれこれアピールしているようですが、もともと投票率が低い若年層。ある政党関係者は打ち明けます。「10代の票を試行錯誤して取りに行くのは、選挙戦略として非効率」。若者と政治との距離を縮めるせっかくの機会をふいにしないか。依然として打算で語られがちな政治風土が気掛かりです。海の向こうの国民投票では、英国がEUを離脱する結果に。政治への不満が世界経済をも揺るがします。「こんな結果になるなら投票すべきだった」。残留派で、在外投票を見送った佐賀女子短大准教授のジョナサン・モクスンさん(47)は嘆きます。参院選では、こうした悔いが残らないようにしたいもの。(以下略) *10-2:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html (日本国憲法) 第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。 2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。 3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。 4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し 公的にも私的にも責任を問はれない。
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2016,06,09, Thursday
日本の出生率推移 難民認定率 G20農相会合宣言 佐賀の小麦 宮崎県産木材 2015.9.11 2016.6.4 2016.5.21 2016.6.4 毎日新聞 農業新聞 佐賀新聞 西日本新聞 (1)国内の人手不足 厚労省が5月31日に発表した4月の有効求人倍率は、*1-1のように、東京で2倍を超し、全都道府県で1倍以上と1991年11月以来の高水準だったそうだが、1991年11月はバブルがはじける前年で、現在も金融緩和でバブル状態になっており、復興事業も多いため、当たり前のことではある。 そして、正社員の有効求人倍率(季節調整値)は0.85倍であり、完全失業者数(原数値)が減ったとしても、勤労者が悪い条件をのんで就職した結果だ。 (2)日本企業の外国人採用 しかし、人手不足・海外展開・訪日外国人客向けサービスの拡充などに対応するため、*2-1のように、国内の大企業も外国人を正社員として採用する動きが広がっており、ローソンは新卒採用の1~3割、富士通・日立は2017年度新卒採用予定の約1割を外国人が占めているそうだ。 なお、海外事業を拡大するにあたっては、社内で対象国出身の人を増やす多国籍化が不可欠だが、採用するのは日本への留学生が多く、優秀な人材を求めて海外の説明会に参加したり、アジアの理系大学生に現地でアプローチしたりなどもされている。 (3)林業と外国人労働者 また、「中国木材」が、*2-2-1のように、建築材をあらかじめ加工し、建築現場の負担軽減・工期短縮・加工精度向上・廃材削減などを可能にするプレカット工場を伊万里事業所内に新設して生産態勢を強化するそうだが、集成材にすることにより、これまで低質材とされてきた木材も利用可能になり、強度が増すため、堀川社長が「地元雇用と県産材の利用に貢献したい」としておられるのは期待できる。 また、*2-2-2のように、宮崎県では、製材業界の国産材回帰や輸出増加等が勢いを見せている。現在は、戦後植林された人工林が伐採期を迎え、政府が国産材供給量を2025年までに2014年の約1.7倍にする目標を掲げていることもあって業界関係者が注目しているが、日本は森林面積が国土の約3分の2に当たるにもかかわらず、木材自給率は2014年に26年ぶりの30%台を回復したにすぎない。 しかし、現在の林業は人手不足で、森林の管理・育成のための間伐、手入れ、伐採が「林道がないからできない」と言われることも多いため、これまで盛んに林業を行っていたが今ではすたれつつある地域から、日本の森の育成のために、*2-2-3のようなゾウ使いをゾウ付で林業従事者として募集し、外国人労働者として受け入れてはどうかと思う。日本人より贅沢を言わず、生産性が上がるだろう。 (4)移民・難民の受け入れについて 難民 *3-1のように、アメリカの有望ベンチャーのうち約半数は移民が創業したという調査結果が発表され、「移民は急成長する新興企業の源泉」と結論付けられた。これは、異文化が接触して融合されることにより新しいビジネスが生まれることを考えれば必然性があるため、日本でも、女性活躍と同時に移民・難民の受け入れも始めた方がよいと考える。 そのうち、シリアについては、*3-2のように、政府は内戦が続くシリアの難民を留学生として来年からの5年間で最大150人を受け入れると発表したそうだが、「日本に憧れるすべてのシリア人の若者に平等にチャンスを与えてほしい」「募集人数を増やしてほしい」という声は、日本の少子高齢化の実情から見ても反映させた方が良く、5年間なら少なくとも15,000人の男女の国費留学生を地方の大学も含めて増やしてはどうかと思う。その理由は、人生に希望が持てればテロリストにはならず、日本のアラビア語圏との貿易(特に農産物の輸出)や、戦争終了後のシリア復興に不可欠な人材となるからだ。 そのため、留学生に配偶者や子どもがいる場合も、空室が多くなった団地を改修して学生寮にしたり、日本人も入れる国際的な学生寮を建てたりなど、大学が所在する地方自治体の知恵と協力を得ながらやれば良いだろう。 (5)地方自治体の移住者募集 地方の農業振興に繋げるため、地方自治体の大半が移住促進政策に力を入れており、*4-1のように、鳥取市は、国、県、市、町内会、NPOなどが連携して移住者を呼び込んでいる。そのため、移住者は、日本人の若者だけでなく移民や難民が含まれてもよいと思われ、日本人と外国人が気持ちよく共存できるためのノウハウが必要だ。ただ、信教の自由があり男女平等の日本国内では、郷に入っては郷に従い、女性にどこででもスカーフやブルカのような異様な服を身につけさせるのはやめるという誓約書にサインすることを入国条件にすべきで、そうした方がアラブ女性の今後の地位向上にも役立つと考える。 また、*4-2のように、長野県と長野県JAグループは、協定を結んで農業者の所得増大を目指した農業振興をはじめ、農村地域の暮らしの維持や人口定着など幅広い範囲で連携して、インフラ維持や移住促進を行い、多様な農業の担い手を支援するとのことである。 阿部長野県知事は、「農村の活性化は県の活性化と密接不可分」とし、JA長野中央会の大槻会長も「JAの総合事業と地方創生が目指す方向は同じ。当たり前のことをやっていく」と言っておられるため、移住してくる人の国籍が異なっても対応して、農業生産法人やJAが難民の中から農業に従事する人を募集してきてもよいと思われる。 アジサイ(紫陽花) <人手不足> *1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160531&ng=DGKKASGC31H05_R30C16A5MM0000 (日経新聞 2016.5.31) 4月の求人倍率、東京で2倍超す、74年以来、全国1.34倍に上昇 就業地別は全都道府県で1倍超 厚生労働省が31日発表した4月の有効求人倍率(季節調整値)は前月と比べて0.04ポイント上昇の1.34倍だった。1991年11月以来、24年5カ月ぶりの高水準だった。上昇は2カ月連続。幅広い業種で深刻な人手不足が続いており、求人数が押し上げられている。都道府県別の有効求人倍率は東京都が2.02倍となり、1974年6月以来の高い水準となった。有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。雇用の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月より3.9%増の89万4530人だった。訪日外国人客の増加を背景に、宿泊・飲食サービス業や卸売・小売業などで高い伸びとなった。厚労省では「雇用情勢は着実な改善が進んでいる」としている。正社員の有効求人倍率(季節調整値)も0.85倍と、04年11月の調査開始後で最高となった。これまでは非正規社員を中心とした求人数の増加が求人倍率を押し上げてきたが、正社員の雇用環境も一定の改善が進んできた格好だ。また、求人票の就業地別で算出した都道府県ごとの有効求人倍率(同)は05年2月に集計を開始して以来、初めてすべての都道府県で1倍を上回った。求人票を受け付けたハローワークの場所別に見た有効求人倍率は、鹿児島と沖縄で0.9倍台と依然として1倍を下回っている。総務省が同日発表した4月の完全失業率(同)は3.2%で、前月から横ばいだった。4月の完全失業者数(原数値)は前年同月比10万人減の224万人だった。減少は71カ月連続。内訳は勤め先や事業の都合による離職が前年同月比で2万人減った。自己都合の離職は1万人の増加だった。 <日本企業の外国人採用> *2-1:http://qbiz.jp/article/86126/1/ (西日本新聞 2016年5月3日) 外国人採用、大企業で拡大 ローソン3割、富士通1割…海外展開にらむ 国内の大企業で外国人を正社員として採用する動きが広がってきた。ローソンはここ数年、新卒採用の1〜3割程度が外国人で、富士通や日立製作所は2017年度新卒採用予定の約1割を占めている。従来は人手不足の中小企業が採用の中心だったが、大企業も海外展開や訪日外国人客向けのサービス拡充に対応するため、社内の多国籍化を迫られている。ただ、あいまいな点が多い日本の雇用慣行に戸惑う外国人は多く、企業が採用を本格化するには、福利厚生や研修の強化、人事・賃金制度の見直しも課題となっている。海外事業拡大をにらむローソンでは、15年春に28人、16年春に16人の外国人が入社し、17年度も増やす。富士通は500人の新卒採用のうち50人程度、JXエネルギーは大卒などの110人の約1割が外国人になる見通し。資生堂は16年度に過去最多の8人を採用し、さらに増やしていく。共同通信が主要企業に実施した採用アンケートでも「将来的に外国人社員を増やす方針か」との問いに対し、回答した28社の半数近い13社が前向きな姿勢を示した。三菱化学や旭化成などのメーカーから高島屋や三井住友海上火災保険、オリックスまで幅広い。採用するのは日本への留学生が多く、ローソンは「日本人と採用プロセスは同じ」とするが、日立のように優秀な人材を求めて海外の説明会に参加する企業も増えている。富士通はアジアの理系の大学生に現地でアプローチし、日本で外国人向けのインターンシップを実施している。今後の課題では、「キャリアに関する(会社側と本人の)考え方のすりあわせ」(川崎重工業)といった人事・処遇面に加え、「在留資格の認定手続きに時間がかかる」(富士通)といった問題を指摘する声が出ている。外国人社員の定着に向けて「職場表記や朝会の英語化」(第一生命保険)といった工夫を凝らす企業もある。 *2-2-1:http://qbiz.jp/article/85577/1/ (西日本新聞 2016年5月10日) 中国木材 佐賀・伊万里に新工場 市と協定、17年2月操業 プレカット増産 製材大手「中国木材」(広島県呉市)は、佐賀県伊万里市山代町の伊万里事業所内にプレカット工場を新設して生産態勢を強化する。市と4月18日、立地協定を結んだ。2017年2月の操業開始を目指し、21年10月までに計40人を新規雇用する。同社によると、新工場では建築材をあらかじめ加工し、建築現場の負担軽減や工期短縮、加工精度の向上、廃材削減を図る。全国的な建築職人の不足を受けた対応で需要は高いという。新工場は既存のプレカット工場を移転拡大する形で隣接地に建設する。延べ床面積1万6200平方メートルで、投資額は設備機械も含めて18億6400万円。完成後の生産能力は現在の月間150棟分から250棟分以上に増える。17年度は22億円、5年後は37億円の売り上げを見込む。伊万里事業所は2003年に開設。北部九州の原木を使うプレカットや集成材の工場、バイオマス発電施設などがあり、従業員数約220人。伊万里港からの中国、韓国などへの輸出にも力を入れる。堀川智子社長は「事業所を発展させ、地元雇用と県産材の安定利用に貢献したい」と話している。 *2-2-2:http://qbiz.jp/article/88177/1/ (西日本新聞 2016年6月4日) 宮崎のスギ生産、過去最高 国産材に需要、発電用も増 スギの丸太生産量が25年連続日本一を誇る宮崎県の林業が活気づいている。昨年の生産量は過去最高の約164万立方メートルを記録した。国産材は長らく安い外国産材に押され低迷してきたが、同県では製材業界の国産材回帰や木質バイオマス発電所への燃料供給、輸出増加といった動きが従来にない勢いを見せる。戦後に植林された国内の人工林は伐採期を迎えており、政府は国産材の供給量を2025年までに14年の約1・7倍にする目標を掲げる。国内有数のスギ産地の動きが全国に波及するか、業界関係者も注目している。 ●産地へ進出 同県日向市の臨海部。約34ヘクタールの敷地にスギ丸太を積み上げた小山がびっしり並ぶ。製材の国内最大手「中国木材」(広島県呉市)が15年6月に本格稼働した新工場だ。初年度は約30万立方メートルの丸太を加工し、本年度は約45万立方メートルを予定する。これまで同社は主に北米産のベイマツを輸入・加工してきたが、北米材は近年、中国の需要増で価格変動が大きいため、豊富な国産材に注目。約300億円を投じ、スギ産地の宮崎に国内最大の国産材工場を建設した。石橋正浩九州事業本部長は「国産材は安定供給できれば、国内外が商圏になる。世界の木材会社とも勝負できる」と力を込める。 ●低質材活用 低質材や製材時に出る端材の活用も進み、追い風になっている。 12年に国の再生可能エネルギー固定価格買い取り制度が始まり、宮崎県内では昨年、バイオマス発電所4カ所が売電を開始。曲がっているなどの理由で山に捨てられていた低質材が燃料として1トン7千円程度で売れるようになった。その結果、高質材の価格が値崩れしにくくなったという。同県西都市の伐採会社「松岡林産」の松岡明彦社長は「立木の値段が上がり、山主は売りやすい状況になりつつある」とみる。海外への輸出も伸びている。同県串間市の南那珂森林組合は12年から、近隣の組合と共同で韓国への輸出を本格化。中国へも販路を拡大し、年間売上高は当初の約9千万円から14年度は約3億3千万円にまで増えた。低質材に加え、太く成長しすぎて加工しにくい丸太も、海外で土木工事の足場材や棺おけに利用される。同組合の清水賢次木材流通促進室長は「国内の住宅着工戸数が減っており、今後は内装材など製材品の輸出が重要になる」と指摘する。 ●自給率拡大 ただ、国産材の復権は緒に就いたばかり。林野庁によると、1970年代に1立方メートル当たり3万円台だった国産スギの丸太価格は、長期的な下落傾向から脱しつつあるが、それでも15年は平均約1万2700円。木材自給率も14年に26年ぶりに30%台を回復したにすぎない。日本の林業政策に詳しい東京大の安藤直人名誉教授(木質構造学)は「伐採期のまとまった量の木材資源を加工して供給する動きが、宮崎県からようやく出てきた。今後は、全国でそうした流れが出てくるはずだ。林業は、きちんと再造林されて持続可能な産業になれば、復活を迎えるのではないか」と話している。 ■国内の森林資源 2015年度森林・林業白書によると、国内の森林面積は国土の約3分の2に当たる約2500万ヘクタール。このうち約4割の1千万ヘクタールがスギやヒノキなどの人工林で、多くは戦後の高度成長期に植林され、本格的な利用期を迎えている。立木の体積は年々増加し、半世紀前の約5・4倍の約30億立方メートルに達した。林野庁は「木材産業にとって安定的な経営基盤になり、今後は伐採や製材など供給体制を効率化することが重要になる」としている。 *2-2-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12384665.html (朝日新聞 2016年5月31日) (世界発2016)ゾウは家族、絶滅から守れ ベトナム、森林開発進み140頭に ベトナム中部の高原で少数民族と家族のように暮らすゾウが、絶滅の危機にさらされている。ベトナム戦争中の枯れ葉剤に加え、ドイモイ(刷新)政策後の開発で多くの森林が失われたためだ。「ゾウを守ろう」と地元の人々とともに奮闘する日本人女性もいる。褐色の肌に赤い布を羽織ったゾウ使いが、勇ましく雄たけびをあげる。ムチを振り下ろすと、横一線に並んだ6頭のゾウが砂ぼこりをあげ、一斉に駆け出した。3月中旬、ベトナム中部ダクラク省で行われたゾウ祭りの人気イベント、「競ゾウ」だ。祭りはゾウと暮らしてきた少数民族の伝統を伝えるため、2年に1度開かれている。ゾウは川渡りやボールを蹴り合うサッカーも披露し、国内外からの観光客を大いに沸かせた。「でも今後5、6年で、飼育ゾウは絶滅してしまうかもしれません」と地元ヨックドン国立公園のド・クアン・チュン園長は言う。 ■戦争で枯れ葉剤 国営紙によると、ベトナムには1985年、504頭のゾウが飼育・管理され、野生ゾウと合わせて千頭以上いたとされる。ベトナム戦争中に米軍が枯れ葉剤をまいて多くの森林が被害を受ける前は、さらに多かったとみられる。現在、飼育ゾウは約60頭まで激減、野生ゾウと合わせても140頭ほどしかいない。なぜ減ったのか。中国などで高値で取引される象牙目当ての密猟と、「経済発展に伴う開発の影響が大きい」と園長は指摘する。75年のベトナム戦争終結後、政府は86年からドイモイ政策で市場経済に力を入れてきた。中部の高原地帯はコーヒーやコショウ、ゴムなどの農園として開墾することが奨励され、多くの入植者がやってきた。75年に約34万人だったダクラク省の人口は現在、約170万人にまで増えた。その結果、土地の約6割を占めた森林面積が4割以下に減少。ゾウは「1日200キロ必要」とされる食糧を求め、人里近くに現れるようになった。サトウキビやトウモロコシの畑を荒らし、農民らに殺される悪循環も生まれた。 ■「繁殖止まった」 ベトナムではインドやタイなどと比べて群れの規模が小さく、繁殖が滞る。「ゾウの繁殖が止まってしまった」。少数民族ムノン族のゾウ使いのイ・ク・エバンさん(47)は憂える。3歳からゾウに乗り、材木や米など農作物の運搬をゾウと担った。「戦争中は武器も運んだ」。ムノン族や同じく少数民族のエデ族の人々は古くからゾウを調教して飼い、労働力としてきた。人は高床式の家で暮らし、ゾウはその下や近くの木につながれて寝る。エバンさんが飼っているのは31歳のオス象タヌオン。狩猟は禁止されているため、2002年に約15万円で知人から買った。高価だが、観光客を1日乗せれば約7500円の収入になることもある。貴重な生活の糧だ。だが最近、観光客が増え、村のゾウは働く時間が長くなって疲弊気味。オスとメスが森で出合う時間も減った。このため、ダクラク省では80年以降、飼育ゾウの繁殖はほとんど確認されていない。「ゾウは家族。一緒に暮らす伝統を守りたいが、いい解決方法がない」。政府はゾウの環境を守ろうと92年に国立公園を整備し、違法な森林伐採や密猟の取り締まりを強化した。11年には「ゾウ保護センター」を設立し、わなにはまって傷ついたゾウの保護にも乗り出した。だが、センターのスタッフは18人だけ。ゾウの世話のほか、11万5千ヘクタールもある国立公園内のパトロール、野生ゾウの生態調査もしたいが、手が回らない。チュン園長は「ベトナムには動物保護のノウハウが乏しく、遠隔操作できる監視カメラもない」と訴える。 ■東京の76歳元教諭、保護団体を立ち上げ 「人間のせいで動物が絶滅するなんて、見過ごせないでしょ」。東京都国分寺市の元中学校教諭・新村洋子さん(76)は14年間で約40回もベトナムに渡り、森の保護を訴えてきた。定年退職後に趣味で始めた写真撮影のため、02年にベトナムの農村を訪れた。少女を撮っていると、後ろをゾウが横切り、夢中でシャッターを押したが、見失った。近くにいた少数民族の女性が「森に帰ったのよ」と教えてくれた。ゆったりとして優しげな姿に魅了された。ゾウに会いたい一心で、たびたびダクラク省の森を訪れるようになった。写真を撮りため、06年に写真絵本「象と生きる」(ポプラ社)を出した。撮影を通じ、ゾウが減っている実情を知った。09年に「ヨックドンの森の会」という象の保護団体を日本で立ち上げた。支援金を集め、国立公園にゾウの生息状況を監視できるカメラを寄贈したり、「象と生きる」のベトナム語版を作ってベトナムの子どもたちに配ったりしてきた。最近は国立公園のスタッフをタイの大学の研修に参加させるなど、専門家の育成にも力を入れる。今年は、野生ゾウの生態調査や密猟・違法伐採の監視態勢強化のため、他の団体などと協力し、計700万円を集めて国立公園に寄付するつもりだ。国立公園の職員や少数民族のゾウ使いは「ヨーコ」と呼んで慕う。長野県飯田市生まれ。「森に囲まれて育ったので、自然への思い入れが強いのかもしれません。小さな取り組みですが、一歩ずつ広げていきたい」 ◆キーワード <アジアゾウの減少> 世界自然保護基金(WWF)によると、アジアゾウは20世紀初頭に10万頭以上生息していたが、現在は5万頭前後に減っている。国際自然保護連合による国別の推計の頭数(2000年)では、インドが2万~3万、ミャンマー4600~5千、タイ1300~2千、ラオス950~1300、ベトナム109~144。 <移民・難民> *3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/312987 (佐賀新聞 2016年5月18日) 米有望企業、約半数は移民が創業、排斥すれば活力低下も 米株式市場で上場が見込まれるような有望なベンチャー87社のうち、約半数の44社は移民が創業したとの調査結果を、18日までに米シンクタンクが発表した。移民は「急成長する新興企業の源泉だ」と結論付け、査証(ビザ)の発給要件の緩和を促している。米大統領選でトランプ氏は移民排斥発言を繰り返しているが、移民流入を抑制する政策が採用されれば企業の活力をそぐ恐れがありそうだ。企業価値10億ドル以上で株式上場の可能性がある企業を87社選び、米シンクタンク「ナショナル・ファンデーション・フォー・アメリカンポリシー」が創業者の出身地などを調査した。 *3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12374632.html (朝日新聞 2016年5月25日) (難民 世界と私たち)日本留学、シリアにともす灯 「150人受け入れ」現地の若者は 主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)を前に、政府は内戦が続くシリアの難民らを留学生として、来年からの5年間で最大150人を受け入れると発表した。日本が中東の難民を政策的に受け入れるのは初めて。期待に胸を膨らませる現地の若者らの思いを聞き、課題を探った。「日本留学のチャンスが増えるのは、とてもうれしい。留学生に選ばれれば必ず日本に行きます」。アレッポ大3年のアフマド・アスレさん(24)は19日、電話取材に声を弾ませて日本語で答えた。「シリア内戦の最激戦地」と呼ばれる北部アレッポの中心部に住む。政権軍と反体制派の戦闘地域は自宅からわずか数キロ先だ。この日、日本政府によるシリア人留学生受け入れ拡充をフェイスブックで知った。日本に留学中のシリア人の学生が新聞記事をアラビア語に訳してくれた。生活は過酷だ。4月下旬にはアレッポ大の卒業生で、一緒に日本語を学んだ友人女性が迫撃砲弾の直撃を受けて死亡した。アスレさんの自宅はスナイパーの狙撃を避けるため、全ての窓に灰色のシートを張っている。砲撃がひどい時は地下室に避難する。電気を使えるのは1日数時間。食品やガソリンは値上がりする一方だ。でもいつかは内戦が終わると信じ、家族とともに耐えてきた。「世界遺産も市場も住宅地も破壊された。戦争が終わった後、街を元通りにするには高度な技術を持つ日本の助けが必要。私は懸け橋になりたい」。シリア最大の国立総合大学のダマスカス大学には2002年、シリア初の日本語専攻学科ができた。だが、内戦で日本人教師が国外に退避。教員不足で、14年秋から募集を停止した。宮崎駿監督に憧れる2年生のガザル・バラカートさん(20)は日本語学科に入れず、考古学科で学ぶ。今年2月の「停戦」発効で状況が落ち着くまで、迫撃砲弾の着弾におびえながら通学した。初歩的な日本語を話せる先輩から日本語を学び、日本留学の機会を探る。発表は朗報だが、どこに問い合わせればいいか分からない。日本政府は12年3月、在シリア日本大使館を閉鎖した。「日本に憧れるすべてのシリア人の若者に平等にチャンスを与えてほしい」。トルコ・イスタンブールのシリア難民向けの小学校教師イヤード・ダムラヒさん(32)はアレッポ出身。内戦前の10年4月から日本で日本語学校に通い、大学進学を目指した。ところが翌年3月、東日本大震災が発生。両親に戻るよう説得され、アレッポに戻ったが、内戦で国外に逃れた。日本の大学で日本の教育を学びたい。「礼節や、皆で掃除をしたり、給食の配膳をしたりする相互協力は、とてもユニーク。深く学びたいと思った。募集人数を増やしてほしい」 ■支援者「新たな一歩」 留学生受け入れを埼玉県に住むシリア難民のジャマールさん(24)は「素晴らしいニュースだ」と喜ぶ。空爆で家が壊され、ダマスカス大の学生だった13年に母国を脱出。親類を頼って母、妹と来日し、昨年3月に日本が初めて難民と認めたシリア人の一人になった。日本語を学び、東京の大学進学を目指す。「最も大切なのは最初の半年間に日本語をきちんと教えること。日本社会になじみ、働くチャンスもできる」。日本はこれまで紛争から逃れた人を難民とは認めていない。11~15年に難民申請をしたシリア人65人で認められたのは6人。留学生受け入れを政府に提言した学生グループ「P782」メンバーで東工大4年の富重博之さん(24)は「難民が孤立しないよう社会のサポートも重要」と話す。NPO難民支援協会(東京)は「難民を『難民』として受け入れる方針が示されなかったのは残念だが、人道危機に対する責任の分担への新たな一歩を踏み出そうとしていることを歓迎する」とした。 ■受け入れ態勢や選考、課題 日本政府は留学生受け入れの態勢作りを始めた。政府関係者によると、留学生に配偶者や子がいる場合、同伴できるよう検討中だ。課題も多い。留学生の選考はレバノンやヨルダンで難民登録に携わる国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の協力を想定するが、シリア難民の最大受け入れ国のトルコは政府が独自に難民登録しており、UNHCRが選考できるか不透明だ。対象はシリアにとどまっている国内避難民も含むが、選考方法は未定。同伴家族の滞在資格をどうするかも詰める。今回の取り組みは、本格的な難民受け入れにつながるのか。外務省幹部は「今後は未定だが、これで終わりだと考えているわけではない」。欧州では、無制限な流入を抑えようとする動きが進む。UNHCRは難民の受け皿として、難民認定による保護に加え、大学に通う間の奨学金とビザの支給、病気やけがをした難民に医療を提供する間の滞在許可、条約上の難民と認められない人などに一時滞在を認める「人道ビザ」の発行などを呼びかける。人道ビザはブラジルが8450人、スイスが4700人のシリア人にそれぞれ発行した。周辺国に逃れた難民を第三国が受け入れる「第三国定住」の拡充も訴える。4月までに各国が計約16万人分の受け入れを表明。カナダや米国のように数万人規模を受け入れる国もある。 ■シリア難民受け入れの枠組み ◇国際協力機構(JICA)の技術協力制度 20人/年→政府の途上国援助(ODA)を活用 ◇国費外国人留学生制度 10人/年→文部科学省が実施 (2017年から5年間で最大150人を受け入れ予定。留学生として日本各地の大学で学ぶ) <移住者募集> *4-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37444 (日本農業新聞 2016/5/11) 移住者呼び込め 地方創生 連携が鍵 鳥取市の事例調査 農中総研リポート 農林中金総合研究所は、地方創生をテーマに研究成果をまとめた。地方の農業振興につながる可能性があるとして、官民が連携して移住者を呼び込む鳥取市の事例から移住促進策の可能性と課題を探った。移住者を呼び込む鍵として、国や自治体、民間非営利団体(NPO)などの連携体制を挙げた。地方創生に関する取り組み内容や数値目標などを定めた都道府県版総合戦略が2015年度末までに策定されたことなどを受け、テーマを設定。農中総研は「農業が基幹産業の地域は多い。地方経済が活性化すれば農業にも波及することから、地方創生は重要な動きだ」(編集情報室)とする。このうち、自治体の大半が力を入れているとされる移住促進政策に着目。若者を中心に市外から転入する移住者・世帯数が06年以降増え続けている鳥取市の取り組みを調査した。成功要因について、国や県、市、町内会、NPOなどの連携体制を敷いた点を指摘。関東、関西での開催も含めた相談会の実施に加え、移住前に暮らしを体験してもらう「お試し移住」の機会を設けたり、就業支援・不動産の情報を提供したりするなど切れ目のない支援をしているという。一方、地方創生の動きが加速する中、自治体間での移住者獲得の競争が激化するといった懸念も指摘した。この他、地方財政改革と地方創生の実現に向けた課題の研究や、農業・農山村振興をテーマに1月に行われたシンポジウムでの講演の内容を盛り込んだ。農林中央金庫の『農林金融』5月号に掲載している。『農林金融』は農中総研のホームページでも閲覧できる。 *4-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36291 (日本農業新聞 2016/2/13) 地方創生へ役割発揮 全国初、県と連携協定 JA長野県グループ 県とJA県グループは協定により、農業者の所得増大を目指した農業の振興をはじめ、農村地域の暮らしの維持や人口の定着など幅広い範囲で連携する。地方創生の県総合戦略には「JA長野県グループと連携・協働する」と明記した。 ●インフラ維持、移住促進も 具体的には、中山間地域でJAの空き店舗を活用した地域住民のふれあいの場づくりや移動購買、移動診療の充実などを想定。また、地域に密着した医療・介護福祉サービスやガソリンスタンドの運営、金融・共済事業の提供など、JAは総合事業を通じて地域のライフラインとしての役割を発揮する。人口減少対策でもJAへの期待が高い。独自の基金を活用した新規就農者への支援の他、「田舎暮らし」や「農ある暮らし」を目指す多様な農業の担い手を支援。定年帰農者やU・Iターン者への直売所への出荷の呼び掛けや、必要な農業研修などをJAに積極的に担ってもらう考えだ。JA県グループも、長野中央会や厚生連などでつくる「JA長野県くらしのセンター」を4月に開設。自己改革として協同活動の推進や高齢者福祉事業への支援を加速するとともに、同協定による地方創生に関わる窓口を設ける。長野市の県庁で12日行った調印式で、阿部守一知事は「農村の活性化は県の活性化と密接不可分。農村の暮らし全般に深く関わっているJAとの連携は大変心強い」とあいさつ。JA長野中央会の大槻憲雄会長は「JAの総合事業と地方創生が目指す方向は同じ。当たり前のことをやっていく」と決意を述べた。全中によると、県とJA県グループが地方創生に関して、農業や暮らしなど広範囲にわたって連携するのは全国でも初めて。「全国大会決議で掲げた地方創生への積極的な参画のモデルとなる事例」(組合員・くらしの対策推進部)と評価する。 PS(2016年6月11日追加):*5のように、佐賀県でも3,200人超の外国人労働者が働いているそうだが、「技能実習生」という名目で労働法規の例外となるような雇用をすると、結局は恨みを買って国益にならない。また、本当に技術移転をし続ければ、日本の技術を無料で新興国に移転することになって技術で差別化できなくなり、日本の競争力が弱まる。そのため、勤務時間短縮や残業代不払いのような馬鹿の一つ覚えの小さなことばかりではなく、時代に合わせて、雇用における女性差別や外国人差別を是正するのが、労働基準監督署の重要な役割であろう。 *5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/321658 (佐賀新聞 2016年6月11日) 県内企業、外国人労働者3200人超、人手不足で拡大 ■法令違反も潜在 雇用環境の改善急務 人手不足を背景に、佐賀県内でも外国人労働者を受け入れる企業が広がり、1年前より350人増えて3200人を超えている。一方、佐賀労働基準監督署が立ち入り調査した技能実習先企業の7割(2014年)で賃金不払いや上限を超えた長時間労働などの不法行為が見つかっている。外国人労働を巡る問題は表面化しにくく、雇用環境の改善が急務となっている。「他業種よりも賃金など条件面で見劣りするため、社員が集まらない。短期間でも外国人に頼らないと仕事が回らない」。数年前から中国人実習生を雇う県内の縫製会社は打ち明ける。県内の外国人労働者は昨年10月末、留学生を含め3264人。製造業を中心に卸売や小売、飲食業など525社が受け入れている。中国人が千人と最も多く、ネパール人700人、ベトナム人640人と続く。うち外国人技能実習制度で来日した実習生が4割を占める。技能実習制度は本来、新興国への技術移転が目的。ただ、3年前からフィリピン人実習生6人を雇い入れている金属加工業者は「それは建前にすぎない」と言い切る。「うちの実習生も残業をしたがる。日本でお金を稼ぎたい外国人と、低賃金で労働力が確保できる企業の利害で成り立っている側面もある」と制度のほころびを認める。政府は経済界の要請も受け、実習生の受け入れ期間延長や介護にも対象を広げる方針だが、雇用環境の整備は遅れ気味だ。佐賀労基署が14年に立ち入り調査した実習先企業46社のうち、32社で法令違反が見つかった。12社が労使で定めた残業時間の上限を超えて働かせていたほか、残業代を支払っていなかった企業も6社あった。外国人を雇用している企業の半数は30人未満の小規模事業所で、労基署は「人員体制面で管理が行き届いていないことが要因」とみる。労基署への相談は年数件だが、管内に外国語に対応した相談窓口はなく、「表面化していない問題がないとは言えない」という。「休みを取ったら上司に蹴られた」「安全靴を履かずに建設現場で働き、けがをした」-。佐賀市で日本語教室を開く越田舞子さんは実習生からこんな相談を受けることがある。「日本語が十分に話せなかったり、渡航費を親類から借りて来日したりして、誰にも相談できずに我慢して働き続けている人もいる」。問題の根深さを指摘する。 ■12日、アバンセで技能実習制度学習会 技能実習制度の在り方を考える学習会が12日午前10時から、佐賀市のアバンセで開かれる。県内の労働組合でつくる「はたらくものの命と健康を守るネットワークさが」が企画し、越田さんと、外国人労組「首都圏移住労働者ユニオン」書記長の本多ミヨ子さんが課題を語る。参加無料。問い合わせは県労連、電話0952(25)5021へ。 PS(2016年6月16日追加):*6の「①大量の農薬を使って土地が痩せる悪循環が起きた」「②農薬を使いすぎて魚が減った」「③有機栽培で安全な野菜を作っても評価されず、収益向上に役立たなかった」等々は、日本では40年くらい前から指摘され始め、次第に解決されてきたものだ。そのため、佐賀県などノウハウを持つ自治体が有機農法を伝授したり、家畜の糞や下水の現代的な利用法を教えたりするのは良いことで、これらは、JICAが予算を付けて地道なODAとして行うことも可能だ。また、もともと緑だったが砂漠になってしまった地域を元に戻せば、そこに移住できるので多くの紛争が鎮まると考える。 *6:http://qbiz.jp/article/88845/1/ (西日本新聞 2016年6月15日) ミャンマー 佐賀の有機農法を伝授(上) 農薬の代わりに木酢液 戦前は世界最大のコメ輸出量を誇った農業国ミャンマー。国民の7割が農村に住み、潜在性が大きいと期待されるが、近代化の遅れや知識の不足で生産性が上がらない上、海外から流入する農薬で安全も確保できていない。地球市民の会(TPA、佐賀市)はそんな状況を改善しようと、農業が盛んな北東部シャン州南部で長年、有機農法を指導。裾野が広がり始めた。観光地としても有名なインレー湖に近いシャン州南部の主要都市タウンジー郊外に、TPAが運営する「ナウンカ村落開発センター」がある。5月下旬、周辺の村から集まった若者を前に、ベテラン教師ミョー・ミン氏が教壇に立っていた。「インレー湖の水は湖岸や湖上の農業で農薬を使いすぎて飲めなくなり、魚も減った。木酢液で虫を近寄らせなければ、殺す必要はない」。木酢液とは、ここで教える「循環型農業」で要の一つとなる忌避剤のこと。座学の後、ミョー・ミン氏と若者らは外の畑に出て、精米後の籾(もみ)殻から酢液をつくる実技に移った。センターは2005年に完成、2エーカー(約8千平方メートル)ほどの土地に教室や宿泊所のある母屋、畑や養鶏場、精米所などを備える。ここで月1回、農家20人ほどを集めた7日間研修が行われるほか、年に1度は若手10人ほどを対象とする3カ月の長期研修も実施。近隣の村を中心に州内外から集まる研修生はセンターに泊まり込み、寝食を共にしながら学ぶ。研修は延べ80回を数え、受講者は1,000人を超えた。近隣の村への出張研修も行っており、裾野は広がりつつある。TPAのミャンマー国代表、柴田京子氏は「土地が痩せて困って研修を受けにくる農家が多い」と話す。国境を接するタイや中国から安価な化学肥料が大量に流れ込み、農家はビルマ語の使用書もないまま、業者の言いなりに大量の農薬を使い、土地が痩せる悪循環が起きているという。センターで教える農法の柱は、農薬や化学肥料の代わりに、土地に生息する菌を増やして堆肥にする「土着菌堆肥」、鶏糞や油かすを使う「ぼかし肥」、炭焼きなどで出る液を忌避剤にする「木酢液」の3つだ。5月下旬の7日間研修に近隣の村から参加していたウィン・チョンさん(30)は、「ハトマメを植えたら初年はできたが、2年目は減り、3年目は全く実らなくなった。ミカンも昔は何年でも実ったが、いまは実らない。収量があがらないので参加した。肥料を昔の牛糞(ふん)から化学肥料に切り替えたせいかもしれない」。研修で学ぶ循環型農業は「環境にも自分にも良いので、実践しようと決めた」と話した。過去に3カ月研修を受けたというトゥン・ナインさん(29)も、「化学肥料を使うようになって土が硬くなった」として参加した。研修で習った堆肥の作り方やコメの植え方を実践している。ただ化学肥料や農機が普及する一方で牛は減り、堆肥に使う糞なども買わなければならなくなった。 ■成果示し悪循環絶つ ミョー・ミン氏は自身も農家で、TPAが引き継ぐ以前に別の団体がタウンジーで循環型農業を教えていた1999年から教師を務める。「農家は30年前から化学肥料を多く使っていたが、近年は特に広がった」と危機感を強めている。タイから輸入されるハイブリッド種は化学肥料の使用を前提とした種。在来種・固定種であれば種取りができ、何年でも実るが、ハイブリッド種は毎年、種も買わなければならない。生産コストが上がり続ける一方、収入はなかなか伸びない。一方、ミョー・ミン氏が指導したインレー湖畔のテレーウー村では、土着菌を生かす農法で1エーカー(約4千平方メートル)当たりのコメ収穫量が国内で一、二を争うまでに高まるという成果を挙げた。実績を示すことが農薬や化学肥料に頼る悪循環を絶ち、他の地域への循環型農業の普及を後押しすると期待する。TPAでは、約10の農家からなる農業組合も組織して、有機栽培の振興に取り組む。センターのスタッフの案内で周辺の村を回ると、研修所で学んだ農家が、「隣の農家も循環型農業を実践している」と教えてくれた。研修を受けた人が周囲に広げたり、近隣の村への出張研修に参加した人が実践したり。タウンジー駐在のTPAプロジェクトアドミニストレーター、鈴木亜香里氏も「この広がりには驚いた」と言う。当初は研修に参加しても自分の畑に持ち帰って実践する人ばかりではなかった。有機栽培で安全な野菜を作っても、卸先のブローカーが評価してくれず、収入向上に役立たなかったからだ。ブローカーは見た目重視で、農薬の有無は意に介さない。農家が実践するには、販路が必要だった。 PS(2016年11月6日追加):必要な労働力を確保するのに移民・難民を受け入れると、*7-1のように、海外出身の児童の教育体制を整えなければならないが、移民・難民の大人にも夜の小中学校の校舎などを使って日本における基本的なことを学んで理解する機会を準備した方がよいだろう。しかし、溶け込む(日本人と同じになって目立たなくなる)ことを強制しすぎるのは、日本人とは異なることによって持っている長所を消失させてしまう場合もあるためよくない。むしろ地域の人は、(内容にもよるが)ありのままの相手を受け入れることによって、心のグローバル化が進むと考える。なお、1970年代から増えている日本人帰国子女は、両国語が流暢で両国の文化に通じていることを活かして活躍している人が多く、この場合は、日本人学校に入れられることの多い男の子よりも、現地の学校に放り込まれることの多い女の子の方が、徹底したバイリンガルとして活躍していると言われている。 また、*7-2のように、2016年の耕地面積(田畑計、7月15日現在)は447万1000ヘクタールで、1961年の608万6000ヘクタールをピークに減り続け、その理由は、耕作放棄や宅地への転用だそうだ。そして、前年と比較しても2016年は田が1万4000ヘクタール、畑が1万1000ヘクタール減少し、我が国は大きな資産を失った。それなら農業人材となる移民を募集し、最初は農業生産法人やJAが雇用して耕作すれば、生産物(小麦・オリーブ・葡萄等)の国内販売や母国への輸出が可能であるため、農地を失いながら農地をつぶして作った住宅も空き家にしているより、ずっとよいと思われる。 2016.11.6、2015.11.30 食料自給率国際比較 2015.6.18朝日新聞 日本農業新聞 (図の説明:日本は、他の先進国と比較して食料自給率を著しく減らしながら、農業の就業人口と耕作地の両方を減らし続けてきたため、これは、減反農政の失敗だ。それを回復するに当たっては、大規模化・技術革新・生産性の向上が重要だが、農業従事者としての移民・難民の受け入れも選択肢になる) *7-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/373899 (佐賀新聞 2016年11月6日) 現場を行く 海外出身児童や帰国子女 「授業」「溶け込み」に課題 日本語が苦手な海外出身の児童や帰国子女が佐賀県内で増えていることを受けて本年度、日本語指導教員が佐賀市の小学校2校に1人ずつ配置されている。適切な指導方法を探りながら、周りの児童に異なる文化や習慣を受け入れる素地をどう育むか。模索する現場を歩いた。 ■佐賀市の日本語指導教員、模索 ネパールから来日して2年になる小学4年の女の子が母国を紹介する文章を考えていた。9月下旬の本庄小学校。隣に座る日本語指導教員の西村常裕さん(53)が「てにをは」の誤りを消しゴムで消してあげて、適切な表現を考えさせる。授業を受ける普段のクラスとは別の教室。女の子は数字を漢字で書いているとき「はあ、きつい」と漏らしたが、正しく書き上げて「素晴らしい」と褒められると、笑みを浮かべた。 ■周囲の理解促進識者「学校も努力を」 県教育委員会によると、県内で日本語の指導が必要な小中学生は5月1日現在、37人いる。外国籍が24人、日本国籍が13人で増加傾向にあるという。母国語や得意な言語は中国語、英語、韓国語が多い。指導教員は小学校教諭の免許を持ち、学級担任を補助する。県内の定住外国人の3割が暮らす佐賀市では例年、海外出身者が転入する。指導教員は、児童が比較的に多い本庄小と神野小に県教委が4月に配置した。児童は日常会話ができても学習用語は苦手だ。「辺が平行とか直角に交わる線とか、単語の意味を理解し学習に結びつけるまでは時間がかかる」。神野小の指導教員、伊井喜也さん(43)は話す。来日前に成績が優秀でも、つまずくと自信を失いかねない。教科書に読み仮名を振ったり、絵を使った副教材を活用したりして理解を助けている。1対1の個別授業は、周りの目を気にせず、児童の学習進度に応じて学習できるという利点がある。一方で、在籍するクラスへの帰属意識が薄れないように配慮も必要になる。本庄小では、全校集会で指導教員が児童の母国語のあいさつを教え、教室では外国語でのあいさつも飛び交う。落ち着いた学校生活を送るためには、家庭との意思疎通も欠かせない。担任や指導教員は児童の転入前、保護者と面談し、宗教の儀礼や口にできない食材を確認している。普段の連絡事項は、保護者が日本語が得意ではない場合、来校してもらい、国際交流協会から派遣された通訳やALT(外国語指導助手)を介してやりとりをする。児童に通訳してもらうときもある。「児童が『受け入れられている』と実感できる雰囲気づくりが大切」。海外にルーツを持つ児童生徒に集いの場を提供している松下一世佐賀大学教授(60)=人権教育=は、指導教員の役割をこう強調する。その上で「学校は集会や教室づくりを通して、周りの児童が異なる国や文化に興味を持つように促していく必要もある」と指摘し、共生社会の実現につながるきっかけづくりを求めている。県教委は本年度末に成果をまとめ、日本語指導を必要とする別の学校と情報を共有する考えだ。 *7-2:https://www.agrinews.co.jp/p39379.html (日本農業新聞 2016年11月6日) 耕地0.6%減 447万ヘクタール 山間部中心に荒廃増 前年割れ55年連続 2016年の耕地面積(田畑計、7月15日現在)は447万1000ヘクタールと、前年より2万5000ヘクタール(0.6%)減ったことが農水省の調べで分かった。前年割れは55年連続。山間部などの条件不利地を中心に、荒廃農地が増えたのが最大の要因となった。九州では熊本地震などの自然災害が響いた。耕地面積は1961年の608万6000ヘクタールをピークに減り続いている。高齢化による耕作放棄や宅地への転用などで、これまでに約3割の農地が失われた。16年も田が243万2000ヘクタールで前年比1万4000ヘクタール減、畑が203万9000ヘクタールで1万1000ヘクタール減と、いずれも前年を割り込んでいる。耕地面積の前年より減少した分(2万5000ヘクタール)の6割を占めるのが荒廃農地だ。16年は1万6200ヘクタールと前年より2700ヘクタール増え、過去10年間で最大を更新した。このうち畑は9170ヘクタールと、田を3割上回った。特に畑に含まれる樹園地の減少が目立っており、高齢化による労働力不足で管理が行き届かなくなっている実態を示した。一方、田の増えた面積は1690ヘクタールで前年の8割にとどまった。畑は4700ヘクタールで3割増。特に熊本県で、熊本地震により水稲の作付けが困難になったことへの対策として、田の畑地化が進んだ。地域別に見ると、田畑の面積が前年より最も落ち込んだのは関東・東山と九州で、ともに5300ヘクタール減った。関東・東山は宅地化の増加、九州は熊本地震などの自然災害が響いた。次いで東北が5200ヘクタール減で、高齢者が多い山間部を中心に田畑が減った。
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2016,06,03, Friday
(1)警察は民主主義を阻害してきた歴史があり、今も阻害していること
*1-1のように、警察庁長官が全国会議で「買収など選挙の公正を著しく害する事件に捜査の重点を置き、積極的な摘発を図ってほしい」と述べたそうだが、私は、2009年の総選挙で、公職選挙法で適法であるにもかかわらず、選管に届け出ていた運動員にアルバイト代を支払ったことを「買収(!?)」とされ、選挙期間中に大々的にメディアで報じられた打撃で多くの票を失った。しかし、「買収」とは、金があり金で票を買いたい候補者が行うもので、専門家が顔を見て少し話せば「買収」とすべきか否かの区別はすぐできる筈であるため、健全な民主主義の発展のためには、警察が取り締まりを過熱させて古株の議員に貢献することこそ問題にすべきだ。 なお、*1-2のように、佐賀県警も選挙違反取締本部を設置して1,190人体制で取り締まり、ウェブでも選挙違反の情報提供を求めているそうだが、今回の候補者は、1,190人もの警察官をあてて取り締まりを行わなければならないほど選挙違反のリスクが高い候補者とは思えない。そのため、「選挙の自由と公正を確保するため、厳正・公平に取り締まる」のではなく、与党ではない特定の人をターゲットにしていると思われる。 また、候補者に対し、*1-3のように、県警担当者は「①文書配布 ②看板・ポスター掲示 で違反とならないよう十分確認して」と呼び掛けたそうだが、①②で細かく候補者を縛ると、新人候補者の選挙運動をやりにくくし、明るくきれいな選挙運動を促進するどころか、地元に利益誘導したり、普段から地元回りをしたりすることのできる現職議員(及び世襲議員)に有利になり、そのため公職選挙法にこの規定があって、なくならないのだと言っても過言ではないのだ。 そのため、まず選管が言う「明るくない」「きれいでない」選挙とはどういうもので、それに①②が入るのか否か、これを言いすぎることは憲法の表現の自由を害するのではないか などを吟味すべきだ。何故なら、このように候補者の手足を縛って選挙をやりにくくする異常な規則は、他の民主主義国にはなく、候補者をよく知って投票しなければならない有権者(ひいては国)のためにならないからである。 (2)捜査の転換は、暗黒時代への逆戻りだ この選挙に先立ち、2016年5月24日、*2-1の刑事訴訟法などの改正案が衆院で可決・成立した。その内容は、①警察と検察に取り調べの一部可視化を全事件の約3%義務付ける ②容疑者や被告が共犯者らの犯罪の解明に協力すれば起訴を見送るなどの司法取引を導入する ③捜査で電話を盗聴したり、メールを傍受したりできる犯罪の対象を大幅に拡大する などで、新たな冤罪を生み、国民のプライバシーを侵害する多くの問題が指摘されていたにもかかわらず、それが改善されることはなかった。 そのため、*2-2の「刑事司法改革は冤罪を防ぐ原点に立ち返れ」、*2-3の「盗聴拡大、密告で冤罪、改悪刑訴法」というような意見は多く、私も同感である。 (3)警察は、国民の立場に立って国民を護る組織ではないということ それでは、民主主義の代表を選ぶにあたって1,190人もの警察官を割り振って取り締まっている警察は、本当に国民の側に立ち国民を護る組織なのかを検討すると、*3-1のように、ストーカーの危険を警察署で訴えていた女性アイドルは刺傷され、警察署はTVドラマとは違い、「一般相談」と判断して犯罪を予防することができなかった。そして、捜査幹部は「ファン心理とストーカー心理との線引きが難しい」などという言い訳をしており、専門部署まで作ったのはポストの増加目的で、国民の命を護るための専門知識はなかったようなのだ。 そして、*3-2のように、ストーカー事件は前から起きており、そのたびに「対策研究会」や「人身安全関連事案総合対策本部」などの新組織を作るが、犯罪は防げていない。 (4)それでは自衛隊は何を護っているのか - 防衛と防災を混同すべきではないこと *4-1のように、「佐賀空港への自衛隊新型輸送機オスプレイ配備計画で、若宮防衛副大臣が6月3日に佐賀県庁を訪れ、山口知事らに格納庫や弾薬庫などの施設配置案を示した」そうだが、これを「九州地方の一大防災拠点としての役割、機能を担うことになる」と説明するのはおかしい。何故なら、防災拠点には弾薬庫は必要ではなく、倉庫など別の物が必要だからだ。 さらに、*4-2のように、陸上自衛隊は宮古島と石垣島のそれぞれ22㌶に駐屯地を設けるそうだが、空自や海自ならともかく、離島に陸自はいらないことから考えても何を目的としているのか不明であり、ポストを増やすべく基地の増設をしているのではないかと思われる。 <民主主義を護っているのではないこと> *1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10203/318312 (佐賀新聞 2016年6月2日) 参院選「積極的な摘発を」、全国会議で警察庁長官 7月の参院選に向け、警察庁は2日、全国の警察本部で選挙違反の取り締まりを担当する課長らを集めた会議を東京都内で開いた。冒頭、金高雅仁長官は「買収など選挙の公正を著しく害する事件に捜査の重点を置き、積極的な摘発を図ってほしい」と訓示した。今回の参院選から選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたことを受け、「新たな有権者層の支持を巡る各陣営の運動が過熱することも予想される」と警戒強化を訴えた。警察庁は同日、庁内に選挙違反取締対策室を設置した。 *1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/318616 (佐賀新聞 2016年6月3日) 佐賀県警、選挙違反取締本部を設置、1190人体制 ウェブで情報提供を 佐賀県警は2日、参院選(22日公示、7月10日投開票)の選挙違反取締本部を設置した。県警本部と全10警察署の約1190人体制で取り締まる。捜査2課によると、これまでにポスターの掲示方法が不適切で事前運動に当たるとして、1件を警告した。「選挙の自由と公正を確保するため厳正、公平に取り締まる」と話す。県警はウェブサイトに選挙違反の情報提供を受け付ける専用コーナーも設けている。2013年の前回参院選は、公選法違反(投票干渉)で1人を書類送検し、ポスターの掲示違反などで33件を警告した。インターネットを使った選挙運動が解禁されて初の国政選挙だったが、ネットでの違反はなかった。 *1-3:http://www.saga-s.co.jp/senkyo/sanin/30401/318614 (佐賀新聞 2016年6月3日) 参院選佐賀選挙区 立候補説明会に3陣営、自民 福岡、民進 中村、幸福 中島氏 参院選佐賀選挙区(改選1)の立候補届出事務説明会が2日、佐賀市の県自治会館で開かれ、立候補を表明している自民党の福岡資麿氏(43)、民進党の中村哲治氏(44)、政治団体・幸福実現党の中島徹氏(41)の3陣営が出席した。参院選は22日公示、7月10日に投開票される。県選管事務局が、書類の事前確認や立候補届けの受け付けなど今後の手続きを説明した。県警の担当者は選挙運動の注意点を挙げ「文書の配布や看板・ポスターを掲示をする場合は違反とならないよう十分確認して」と呼び掛けた。県選管の大川正二郎委員長は「公職選挙法にのっとり、明るくきれいな選挙運動を展開してほしい。選挙権年齢が引き下げられるので、若い世代にも政策をしっかり訴えてもらえたら」と述べた。 <捜査の転換> *2-1:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20160525/KT160524ETI090009000.php (信濃毎日新聞 2016年5月25日) 捜査の転換 危うさはらむ法改正 捜査のあり方を大きく変える刑事訴訟法などの改正案がきのう、衆院で可決、成立した。新たな冤罪(えんざい)を生む、国民のプライバシーを侵害するなど多くの問題が指摘されたのに、改善されることなく見切り発車した。改正の柱は三つある。▽取り調べの可視化(録音、録画)を警察と検察に義務付ける ▽容疑者や被告が共犯者らの犯罪の解明に協力すれば、起訴を見送るなどの恩典を与える司法取引の導入 ▽捜査で電話を盗聴したり、メールを傍受したりできる犯罪の対象を大幅に拡大する―。密室での強引な取り調べが数々の冤罪を生んできた。言った、言わないの争いを法廷で長時間費やしてきた。これらを考えると、可視化自体は取り調べの適正化の担保として評価できる。問題はその対象の狭さだ。殺人や放火など裁判員裁判になる重要事件と検察の独自捜査事件に限られた。全事件の3%程度にすぎない。 <一部可視化は前進か> 冤罪は痴漢や選挙違反など対象外の事件でも起きている。事件の限定は不合理だ。それでも一歩前進だ、という見方がある。民進党など野党の一部が賛成に回ったのはそのためだ。本当にそうだろうか。可視化されるのは対象事件で逮捕、勾留された容疑者の取り調べだ。逮捕前の任意の取り調べは含まない。実際には、任意の段階で容疑を認めたとして逮捕される例が少なくない。この場合、肝心の自供に至る過程が可視化されない。捜査側に都合のいい部分だけが可視化され、証拠にされる可能性がある。その懸念が表れた例が、先月、被告に無期懲役の判決が出た栃木県の女児殺害事件だ。検察は法施行に先行して被告の取り調べを可視化した。被告は偽ブランド事件で別件逮捕された。この取り調べの中で殺人も初めて自白したとされる。その場面は録画されておらず、殺人での取り調べだけがDVDに収められ、裁判員裁判で再生された。弁護側は、録画されていない部分で取調官に誘導されたと無罪を主張したが「映像に重みがある」との印象を裁判員に与えた。改正法には対象事件であっても取調官が十分な供述を得られないと判断した場合、可視化しなくてもよいなどの例外規定がある。中途半端な可視化は一歩前進どころか、後退する危険をはらむ。全事件を対象に任意調べを含めた全過程の可視化をすべきだ。 <無実の人を巻き込む> 司法取引は日本で初めて導入される。贈収賄や詐欺、横領などの経済事件や薬物、銃器といった組織的な犯罪が対象だ。末端の容疑者に起訴しないと約束すれば、上部の関与を話しやすくなるかもしれない。それはもろ刃の剣だ。自分の罪を逃れたいために、うそをついて他人を巻き込む。そんな心配も増す。実際、司法取引の“先進国”米国では多発している問題だ。冤罪の2割強は、司法取引での誤った証言が原因との研究報告がある。法案の修正で、容疑者と検察官との取引の協議の場に容疑者の弁護人が必ず立ち会うことになった。注意しなければならないのは、弁護人は容疑者の利益を図る立場にあることだ。無実の他人を巻き込まないかのチェック機能は期待できない。そもそも、罪を犯しても他人を売れば助かるという仕組みが国民の倫理観になじむのか。議論は不十分なままだ。犯罪捜査で電話盗聴などを認める通信傍受法は、17年前に強行採決で成立した。プライバシーが侵害されるとの強い批判を受け、対象を薬物、銃器犯罪など4類型に限定し、通信事業者が立ち会う制約も設けていた。 <プライバシーに懸念> 今回の法改正では対象を詐欺や盗み、傷害など日常的な犯罪に広げた。しかも、通信内容を暗号化して警察署に電送すれば、立ち会いも不要とした。裁判所の令状が形式だけにならないか。犯罪に関係ある会話かどうかは聴いてみないと分からない。だから通話開始から一定時間聴く「スポット傍受」を繰り返す。これまでに傍受された通話総数の8割余が犯罪に関係のない通話だった。聴かれた方は確かめようもない。第三者の立ち会いがないので恣意(しい)的な傍受が可能になる。例えば、デモで警察とぶつかった時の傷害容疑で市民団体の内部情報を収集したり、相手をだまして特定秘密を取得しようとした詐欺容疑でマスコミの取材源を探ったりすることもできる。刑事法学者らが指摘していることだ。法改正の出発点は、相次いだ冤罪事件を防止することにあったはずだ。わずかな可視化の見返りとして、捜査機関の権限が拡大され、新たな冤罪を生む危険性が増した。大きな矛盾を抱えた法律だ。運用を厳しく監視し、絶えず見直しを求めていく必要がある。 *2-2:http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201605/0009117066.shtml (神戸新聞 2016/5/25) 刑事司法改革/冤罪防ぐ原点に立ち返れ 改正刑事訴訟法などが国会で成立し、取り調べを録音・録画する可視化が初めて義務付けられた。大きな一歩だが、冤罪(えんざい)を防ぐという刑事司法改革の原点から見て十分な内容とはとても言えない。焦点だった可視化義務付けは対象事件が極めて限定された。裁判員裁判事件と検察の独自捜査事件で、全事件の約3%にすぎない。取調官が十分な供述を得られないと判断すれば、録音・録画をしなくてもいいという例外規定も設けられた。取り調べの可視化は、任意の事情聴取を含む全捜査過程で実施されなければ、冤罪を防ぐどころか捜査当局の新たな武器になりかねない。そうした危惧を抱かせたのが、4月に宇都宮地裁で無期懲役が言い渡された女児殺害事件の裁判員裁判だ。取り調べの映像が検察側の証拠に使われた。検察側が見せたのはほんの一部だが、裁判員は法廷で無実を訴える被告の姿より、自白の映像を重視した。他に決定的な客観証拠がない中で、有罪を判断する決め手となったとされる。費用の問題があるとはいえ、すべての事件で、すべての取り調べを可視化し、弁護士がチェックする。そうでなければ、かえって真実をゆがめる恐れがある。今回の法改正では司法取引や通信傍受の拡大なども認められた。可視化の義務付けと引き換えに、当局が求めたものだ。司法取引では、容疑者や被告が共犯者の罪を供述したり証拠を示したりすれば、検察は起訴を見送ることや求刑を軽くすることができる。容疑者や被告が捜査当局の描いた事件の構図に沿って供述すれば、第三者を犯罪に巻き込む恐れがある。罪を他人にかぶせることも起こりうる。新たな冤罪を生むようなことになれば、何のための改革なのか。通信傍受は通信業者らの立ち会いがなくても可能になった。乱用やプライバシー侵害の恐れもある。可視化は限定され、捜査の武器は増える。当局に都合のいい形で法改正が進んだと言わざるを得ない。「可視化して 防げ罪なき 人の罪」。刑事事件の取り調べの全面可視化PRで、大阪弁護士会が3年前に募集した川柳の大賞作品だ。冤罪防止の原点を見据え、検証を重ねるとともにさらなる法改正に取り組むべきだ。 *2-3:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-05-25/2016052501_03_1.html 盗聴拡大、密告で冤罪、改悪刑訴法が成立、衆院本会議 盗聴法拡大・刑事訴訟法改悪案が24日、衆院本会議で採決され、自民、公明、民進、おおさか維新などの賛成で成立しました。日本共産党と社民党が反対しました。日本共産党は、捜査機関の盗聴自由化、司法取引導入、取り調べの部分的録音・録画を柱とした違憲の治安立法だと主張してきました。盗聴法拡大では、捜査官が犯罪に無関係な通信を根こそぎ盗み聞きすることが可能になります。市民のプライバシー情報がひそかに侵害され、あらゆる警察活動に利用されうることになります。改悪刑事訴訟法は、取り調べの部分録画が盛り込まれたことで、捜査官が強要した虚偽自白の録画が、有罪立証の証拠に使われ、司法取引の導入では密告によって他人を罪に陥れる危険があります。施行は、部分録画が3年後、司法取引は2年後、盗聴法の拡大は6カ月後です。日本共産党は、乱用を許さない国会内外のたたかいはこれからだと呼びかけています。 <警察は国民を護っているのではないこと> *3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12374758.html (朝日新聞 2016年5月25日) 警察、ストーカー対応せず SNSは対象外 アイドル刺傷 冨田さんを刃物で襲ったとして殺人未遂容疑などで逮捕、送検されたのは京都市右京区太秦中筋町の会社員岩埼(いわざき)友宏容疑者(27)。捜査関係者によると、冨田さんは5月9日に武蔵野署を訪れ、岩埼容疑者の名前を挙げて「ツイッターで執拗な書き込みがされている」と相談。書き込み内容を印刷した紙を署の担当者に渡し、「友達にまで迷惑をかけているから、やめさせてほしい」と訴えた。署では書き込み内容を確認した上で「一般相談」と判断したという。ストーカー規制法では、電話やメールを執拗に繰り返す行為を「つきまとい等」として規制しているが、ツイッターなどSNSを使った同様の行為は対象としていない。警察庁の有識者会議は2014年、SNSによる行為も対象に加えるよう提言している。岩埼容疑者が送ったとみられるツイッターの書き込みは、冨田さんのツイッターに直接送るものだった。送信は1月18日に始まり、冨田さんが送信を受け付けない「ブロック」を設定する4月28日まで、101日間で計340件に上っていた。岩埼容疑者は、冨田さんへのファンレターで自分の名前や住所を伝えており、冨田さんは署へその住所も伝えたが、署は電話での連絡ができなかったため接触していなかったという。 ■専門部署、生かされず ストーカー対策をめぐっては、2013年10月に東京都三鷹市の女子高校生が元交際相手に殺害された事件で、事前にストーカー行為の相談があったのに防げなかったことから、警視庁が新たな取り組みをまとめ、現在の「人身安全関連事案総合対策本部」となる部署も新設した。三鷹市の事件を教訓に、警視庁は、警察署がストーカー相談を受けた場合、新設された対策本部の専門チームに報告し、そこで事態の危険性や切迫性を評価することにした。しかし今回は、女性の訴えを受けた武蔵野署が「ストーカー相談」として扱っていなかったため、署から対策本部への報告はなかったという。ある捜査幹部は「憧れるアイドルに近づきたいというファン心理と、ストーカーの心理との線引きは難しく、一般人同士の関係性と比べて判断しにくいケースもある」と話す。5月4日には、冨田さんの母親が、岩埼容疑者の自宅を管轄する京都府警右京署に「どう対処すべきでしょうか」と電話で相談。署員は、冨田さんの自宅近くの警察署に相談するよう伝えたという。警視庁は今回の対応について、「ただちに相談者の身に危険が及ぶ可能性は低いと判断した」と説明。今後、今回の対応が適切だったかどうかを検証するという。 *3-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160530-00000050-nksports-soci (日刊スポーツ 2016年5月30日) ストーカー事件被害者兄が語る「GPS監視」方法も 東京都小金井市で、アイドル活動をしていた私立大3年の冨田真由さん(20)が刺され重体となった事件で、殺人未遂容疑で送検された岩埼友宏容疑者(27)はSNSなどで執拗な書き込みを続けていた。冨田さんは警察に相談していたが、事件は起きた。神奈川県逗子市で2012年に起きた逗子ストーカー殺人事件で殺害された三好梨絵さん(当時33)の遺族で、学識者らで作る「ストーカー対策研究会議」共同代表として活動を続ける梨絵さんの兄(44)に、思いを聞いた。SNSでの書き込みはストーカー規制法の対象外だ。武蔵野署は冨田さんの相談をストーカー事案として扱っていなかった。しかし、岩埼容疑者はブログに「死にたい死にたい」「死ねよ死ねよ」という危険な文言を繰り返し記していた。梨絵さんの兄は「非常に残念だった」と語る。「うちの事件(逗子事件)、三鷹事件の後、本庁の刑事部と生活安全部が一緒に取り組む人身安全関連事案総合対策本部ができた。署で受けたストーカー相談は必ず文書にして対策本部に上げることになった。態勢は前進していたのに。署で相談を受けた署員の1人が、相談本部出身の人だったというのもショックでした」。適切に判断していれば、結果は違っていたかもしれない。兄は「情報を本部に上げていれば防げたかは分からない。ただ、年間2万件を超す相談がある中で、緊急性のある、危ない事案を見抜く能力が重要。警察も対策本部で経験値の高い人材を育てる取り組みを進めていますが、経験が足りていない」と話した。岩埼容疑者は約3年前に都内の当時10代のアイドル、昨年12月には滋賀県の女性とトラブルになり、いずれも警察に相談があった。しかし、事件が起こるまで、今回の相談との関連は把握されていなかった。「加害者は自分を被害者と思っているから繰り返してしまう人が多い。繰り返す人のリストを作り、都道府県警の枠を超えて情報を共有し、場合によってはGPSによる監視という方法もある。人権上の問題で、まだ議論すらされていないが、事件は起きている。社会的な議論が必要だ」。兄は、14年11月にストーカー対策研究会議を立ち上げた。被害者だけでなく、加害者が最悪の犯行に及ぶ前に止めることで加害者を救う視点での研究も進めている。ただ、警察も禁止命令、警告など、逮捕の前に行える手段が限られているのも現状だ。「警察へのバッシングだけでは被害は止まらない。加害者やその家族を、早期に専門のカウンセリング機関につなぐ命令など、逮捕前に加害者にアプローチできる仕組みを増やしていく必要がある」 ◆逗子ストーカー殺人事件 2012年11月6日、神奈川県逗子市の自宅アパートで三好梨絵さん(当時33)が、元交際相手の無職の男(当時40)に刺され、死亡。男は首つり自殺した。男は11年6月、神奈川県警逗子署に逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受けた。保護観察中の12年春、再びメールが来て、梨絵さんは署に相談したが、当時メールはストーカー規制法の対象外(13年6月に対象に改正)で署は捜査を断念。同年11月、男は11年の逮捕時に署員が読み上げた住所の一部を頼りに探偵を使って住所を割り出し犯行に及んだ。 ◆三好梨絵さんの兄は事件から2年後の14年11月、妹と同じ被害にあう次の被害者を1人でも救いたい思いから、ストーカー事件を法学、心理学、社会学などの研究者の視点で研究するストーカー対策研究会議を立ち上げた。加害者は厳罰だけでは止められないとの思いから、被害者を守る視点のほか、加害者や加害者の家族に早期にアプローチし、問題解決を支援することで犯行を止めるという視点での研究も続けている。 <自衛隊は何を護るのか(防衛と防災の混同)> *4-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/318713 (佐賀新聞 2016年6月3日) 【速報】防衛副大臣「佐賀空港を防災拠点に」知事に説明、オスプレイ配備計画 佐賀空港への自衛隊新型輸送機オスプレイ配備計画を巡り、若宮健嗣防衛副大臣が3日午前、佐賀県庁を訪れ、山口祥義県知事らに格納庫や弾薬庫などの施設配置案を示した。「九州地方の一大防災拠点としての役割、機能を担うことになる」と配備に向けた新たな根拠を示し、理解と協力を求めた。若宮副大臣は熊本地震で米軍オスプレイも投入された支援活動や自衛隊の救援活動を強調し、「今後の災害に備え、(オスプレイ配備により)九州地方の安心、安全を確保していきたい」と述べた。山口知事は「国防の重要性は認識しているが、県民の安心安全にもかかわる。確認、精査させていただきたい」と答えた。 *4-2:http://www.y-mainichi.co.jp/news/29860/ (八重山毎日新聞 2016年5月25日) 駐屯地面積、宮古と同規模 陸自計画 石垣島に陸上自衛隊の配備を計画している防衛省は24日夜、市民を対象にした2度目の説明会を石垣市健康福祉センターで開いた。駐屯地の面積について、沖縄防衛局の森浩久企画部長は配備部隊が同じ宮古島の22㌶を例示し、「大きくかけ離れることはない」と記者団に語った。宮古島は700ー800人規模、石垣島は500―600人規模が計画されている。説明会には約200人が出席した。平得大俣東を配備先候補地に選んだ理由について森部長は「軍事的視点があるので具体的な説明はできないが、配備先は平たんで十分な地積、標高が必要。地形的要件を考えた」と回答。具体的な配備時期については「皆さんの理解をいただいて作業が進めば、具体的なスケジュールができると思う」と述べた。今回の説明会は、4月22日の前回説明会で事前に受け付けた質問141項目に対する回答がメーンとなり、会場からは「回答をして説明会をすべきだ。順序が違う。アリバイづくり」「ルールを守るべきだ。そうでないと議論が深まらない」などの批判があった。森部長は「事前に回答をした上で説明会に臨むべきだった。おわびしたい」と陳謝した上で「今回の説明会は市に求められて実施した。この機会にていねいに説明できればと考えた」とした。141項目の質問についてはまだ一部で回答を作成していないため、ホームページ上での掲載時期は現段階では未定という。次回の説明会について森部長は「今後、検討したい」とした。フロアからはこの日も反対、賛成の声が相次いで上がり、やじが飛び交う場面も。「賛成、反対の市民が市民会館大ホールで互いに議論して石垣島の将来をどうするか決めるべきだ」「具体的には住民投票がふさわしい」などの意見も出た。
| 民主主義・選挙・その他::警察が勝手な拡大解釈を行った運動員の逮捕事件 | 02:33 PM | comments (x) | trackback (x) |
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