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2015,05,29, Friday
*1-2より *2-1より 日本の地方自治体がこれまで培ってきたノウハウは、開発途上国のインフラづくりにも応用でき、例えばネパールのような人口の多くない地域のインフラ作りは、同じような自治体の経験が有用だろう。なお、定年を延長して増えた人員をこのような事業に投入することで、地方自治体の生産性が向上したり、税外収入が増えたりする。 (1)上下水道整備や廃棄物管理、防災、地域開発における国際協力 *1-1のように、国際協力機構(JICA)が、2014年11月25日、「第1回地方自治体による海外展開推進のための自治体連携強化セミナー」を開催し、日本の地方自治体の上下水道、廃棄物、災害対策、地域開発、農村開発の多様な経験やノウハウは、現在の多様化する途上国のニーズに合致するとしているが、私もこれに同感だ。そして、JICAと自治体が連携して行う国際貢献は、開発途上国への貢献と同時に、それを行う地方自治体側の海外展開や地域振興、安全保障の足がかりになると考える。 帯広市(北海道)、東松島市(宮城県)、横浜市(神奈川県)、駒ヶ根市(長野県)大阪市(大阪府)、北九州市(福岡県)、那覇市(沖縄県)などは、既にJICAとの国際協力に取り組んでおり、*1-2のように、北九州市は、2013年2月6日、JICAと包括連携協定を締結してグリーンシティ北九州モデルを活用した環境配慮型都市づくり分野における国際戦略および国際協力を推進するとしている。 (2)佐賀市の挑戦 *2-1、*2-2に書かれているように、佐賀市は、東芝、ユーグレナ、日環特殊、日本下水道事業団、日水コンなどと共同で、下水処理時に発生するバイオガスから抽出した二酸化炭素(CO2)と処理水を使い、栄養成分が豊富な藻類ミドリムシを培養する実証事業を始める。 佐賀市の下水浄化センターは、1日約5万立方メートルの下水を処理し、これによりCO2が約4割を占めるバイオガスが1日約5千立方メートル発生するが、ミドリムシはCO2と下水処理水に含まれる窒素やリンを使って光合成を行うため、ミドリムシの培養で下水処理場の処理コストが軽減され、培養されたミドリムシ(藻類)は栄養豊富で、家畜や養殖魚向けの飼料・肥料など高付加価値資源としての利用が期待できる。東芝などとの調印後、秀島市長は「必ず実用化につなげて、地球にやさしい技術を全国、世界に広げたい」としている。 佐賀市の事業は、国土交通省の2015年度革新的技術実証事業に採択されたが、このような資源の徹底利用は、どこに持って行っても歓迎されるだろう。 なお、*2-3のように、主食米の生産抑制と飼料自給率向上の目的で、農水省は飼料用米の作付面積を増やす政策を行っているが、飼料も米だけでは栄養が偏るため、ミドリムシを混ぜるとよい。 (3)福岡市のODA参加 *3のように、福岡市が、ミャンマーの最大都市ヤンゴン市で行われる政府開発援助(ODA)の水道整備事業に参加し、浄水場建設の調査事業を受注したそうだ。福岡市が、節水・漏水対策の技術協力を行う覚書を結んだのはよいが、私は、福岡市の水道は節水しすぎで、福岡空港の水道はちょろちょろしたシャワーのようになっており、手もよく洗えず、歯も磨きにくいため、改善すべきだと思っている。 *1-1:http://www.jica.go.jp/topics/news/2014/20141211_01.html (JICA 2014年12月11日要点のみ) 上下水道や防災など「国際協力先進自治体」のノウハウを共有――「第1回自治体連携強化セミナー」開催 上下水道整備や廃棄物管理、防災、地域開発――。日本の地方自治体は市民の生活向上のために日々さまざまな課題に取り組み、解決を図っている。その経験やノウハウを、開発途上国への国際協力に生かして、地域活性化を進める日本の地方自治体が増えている。そうした先進事例を全国の自治体と共有するため、JICAは11月25日、「第1回地方自治体による海外展開推進のための自治体連携強化セミナー」をJICA研究所(東京都新宿区)で開催した。セミナーでは、JICAの事業などを活用して国際協力に積極的に取り組む、帯広市(北海道)、東松島市(宮城県)、横浜市(神奈川県)、駒ヶ根市(長野県)大阪市(大阪府)、北九州市(福岡県)、那覇市(沖縄県)の7自治体がそれぞれの事例を発表。41自治体などから参加した107人が熱心に聴き入った。都市運営や地域開発の経験が海外で生きる全世界人口の半数以上が都市に住み、2050年には10人のうち7人が都市の住民になると予測されているが、急激な都市化の90パーセントは途上国で起こっている。一方、日本の地方自治体は上下水道や廃棄物、災害対策などの都市運営のほか、地域開発や農村開発などにも多彩な経験を持っている。このノウハウや課題対応経験が、現在の多様化する途上国の支援ニーズに合致している。横浜市や北九州市は自らの都市経営の経験を活用し、1990年代から積極的に途上国への支援を進めている「国際協力先進自治体」だ。JICAは両市の途上国の課題解決に役立つ豊富な知見を活用するため、2011年10月に横浜市、2013年2月に北九州市と包括連携協定を締結し、連携を強化している。また大阪市は上下水道などの研修やプロジェクトで、東日本大震災での復興経験を持つ東松島市は防災・災害復興分野で、那覇市は島しょ部ならではの経験を生かした廃棄物などの分野で、JICAと連携した協力が進んでいる。帯広市(北海道)や駒ヶ根市(長野県)はJICAの国内拠点を活用しながら、地域の特徴を生かし開発途上国との協力を深めてきた。 ●「国際協力」を日本の地域振興の一助に セミナー冒頭のあいさつで、外務省国際協力局の石兼公博局長は、「自治体や地方企業の国際展開を支援し、地方産業振興や国際化などの地域社会の活性化に貢献することは、政府が最重要課題として掲げる『地方創生』の理念に合致する」と述べ、今後の展開に大きな期待を寄せた。JICAの黒柳俊之理事は、「ODAはさまざまな知見を有する地方自治体や企業などとの連携があって初めて成立する。JICAと自治体との連携が、途上国開発への貢献とともに、地域振興の一助になれば」と自治体の海外展開を後押しした。その後、JICA国内事業部の小林雪治次長が、自治体との連携事例と活用可能な事業を紹介。地方自治体の強みは、1)都市経営に関する豊富な経験、2)公共サービスの包括的なノウハウ、3)地元企業とのネットワークなどであるとした上で、「JICAの強みは、海外約100ヵ所にある拠点と、50年以上の協力で培われた途上国とのネットワークだ。また、途上国への海外展開を考える際に、JICAの国内拠点を積極的に活用してほしい」と呼びかけた。 *1-2:http://www.jica.go.jp/press/2012/20130206_01.html (JICA 2013年2月6日) 北九州市と包括的連携協定を締結 -開発途上国の発展と北九州の海外戦略に貢献へ- 国際協力機構(JICA)は2月6日、北九州市と包括連携協定を締結しました。これは、JICAが取り組む開発途上地域への国際協力事業と北九州市が取り組む国際戦略にかかわる事業の連携を強化することにより、国際協力事業をさらに質の高いものとし、ひいては開発途上地域の発展と北九州市の国際競争力の強化、地元企業の活性化に貢献することを目的としています。北九州市役所で行われた締結式には、田中明彦JICA理事長と北橋健治北九州市長が出席し、協定に署名しました。JICAが自治体と包括的な連携協定を締結するのは2011年10月の横浜市に次いで2例目となります。JICAと北九州市は国際協力における連携を長年進めており、特に1989年のJICA九州の開設以降は、緊密な協力関係を構築してきました。北九州市は自らの公害克服の経験と、環境と経済を両立した都市づくりを進めてきたノウハウを生かし、環境分野での国際協力を多く行ってきました。特に近年は、自らの経験を踏まえた「グリーンシティ」(注)としての視点から、産官学連携による環境国際戦略を推進しています。JICAも、ODAを活用した日本国内の地域活性化に向けた取り組みを強化しており、開発途上地域に対する国際協力のさらなる発展と、北九州市による海外戦略への貢献の双方が期待されるとして、包括的な連携協定の締結に至ったものです。本協定の締結により、JICAと北九州市が連携を促進・強化し、大学、企業、NGOなど多くのパートナー、関係者の方々の参画も通じて、「グリーンシティ」の視点も踏まえた国際戦略および国際協力を進めます。具体的には、以下のような取り組みを目指しています。 1. グリーンシティ北九州モデルを活用した環境配慮型都市づくり分野における国際戦略および 国際協力の推進 2. 官民連携および産官学連携の促進・支援 3. 技術研修員の受入れ、技術協力専門家の派遣、技術協力プロジェクト、草の根技術協力、 開発調査、協力準備調査などの実施 4. 無償資金協力および有償資金協力(円借款)の実施への支援 5. 北九州市が有する技術・ノウハウを活用したJICA事業への助言および協力 6. 青年海外協力隊など、JICAボランティア事業への北九州市民の参加促進 7. 多文化共生促進を目的とした開発教育/国際理解教育の推進 (注)北九州市は、環境政策と経済成長を両立した都市として、経済協力開発機構(OECD)が選定する「グリーンシティプログラム」に、アジア地域から初めて選定されました。 <佐賀市の先進的挑戦> *2-1:http://qbiz.jp/article/62074/1/ (西日本新聞 2015年5月14日) 佐賀市の藻類培養、下水道施設でも 全国初、年明け開始 佐賀市は13日、下水処理時に発生するバイオガスから抽出した二酸化炭素(CO2)と処理水を使い、栄養成分が豊富な藻類ミドリムシを培養する実証事業を始めると発表した。東芝などと共同で年内に市下水浄化センター敷地内に実証プラントを建設し、年明けから培養を始める。下水処理時の発生物を活用した藻類の培養は全国初という。同センターは1日約5万立方メートルの下水を処理。下水汚泥を減らすためのメタン発酵で、CO2が約4割を占めるバイオガスが1日約5千立方メートル発生している。ミドリムシは光合成で増える際、CO2と下水処理水に多く含まれる窒素やリンが欠かせず、下水処理場での培養でCO2の排出抑制や処理コストの軽減にもつなげる狙い。東芝は2013年から市清掃工場でごみ焼却時の排気からCO2を回収する技術を提供。今回の実証事業を手掛けるのは東芝のほか、ミドリムシの培養と活用を行うベンチャー企業ユーグレナ(東京)、日本下水道事業団など6団体による共同研究体。国土交通省の15年度革新的技術実証事業に採択され、プラント整備費は国が全額負担する。プラントはCO2の回収装置や9千リットルの培養槽などで構成。安定的な培養のほか、処理水に含まれる窒素、リンの低減効果を確認する。培養したミドリムシは家畜や養殖魚向けの飼料、肥料としての活用を探る。東芝などとの調印後、秀島敏行市長は「必ず実用化につなげて、地球にやさしい技術を全国、世界に広げたい」と期待を込めた。 *2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/186417 (佐賀新聞 2015年5月14日) 佐賀市、東芝など藻類を培養、再資源化 国プロジェクト ◆下水からCO2回収 市浄化センターに実証設備 佐賀市と東芝など5社・団体は13日、下水処理で発生するガスから二酸化炭素(CO2)を分離、回収する全国初の実証事業に取り組むと発表した。市下水浄化センターにプラントを設置し、回収したCO2を利用して、ミドリムシなどの藻類を培養する。国交省のプロジェクトの一環で、10億円程度の事業費を見込む。廃棄していたガスのCO2を資源として活用する試みで、国は新技術を実用化し、国内外への普及展開を狙う。実証事業に参加するのはほかにユーグレナ、日環特殊、日本下水道事業団、日水コン。CO2の分離回収技術を持つ東芝が代表企業となり、他の企業が藻類培養や汚泥処理、システム設計、施工などを担う。市は西与賀町にある下水浄化センターの設備や敷地の一部を貸して協力する。市や東芝によると、下水浄化センター内にCO2を分離回収するプラントと藻類培養設備を設置する。培養は先進メーカーのユーグレナが手がける。藻類は、飼料や肥料など高付加価値資源として活用が見込めるという。実証では、CO2だけでなく汚泥の脱水過程で生じる分離液から、藻類の栄養となる窒素やリンを取り出し、供給することも試みる。窒素やリンを含む分離液は赤潮の発生原因となるため、通常は再処理して排水するが、窒素、リンを回収することで再処理が不要になるという。今後、敷地内にプラントを設置し、来年2月ごろの稼働を目指す。東芝は実証期間を本年度から2年間と見込み、終了後はプラントを市に引き継ぐ方針。佐賀市と東芝は、市清掃工場の排ガスからCO2を回収する研究で連携してきた経緯から、国のプロジェクトに応募した。会見した秀島市長は職員時代に下水道事業に関わった経験に触れながら「当時は安全第一だったが、今は下水から資源を取り出す時代になった。平成の日本の革命的な事業として100年、150年後に世界遺産となるような取り組みにしたい」と述べた。 *2-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=33479 (日本農業新聞 2015/5/29) 飼料米 各地で面積倍増 一層積み上げ 需給改善へJA推進 各地のJAで飼料用米の作付面積を前年より倍増させる動きが出ている。ただし、JAグループが目標に掲げる60万トンを達成するには、前年実績の3.3倍に広げなければならない。出来秋の米の需給環境を整えるためにも、主食用米からの切り替えを中心に一層の作付面積の積み上げが欠かせない。 ●手取り安定が魅力 「主食用米より手取りは確実にいい」。岐阜県瑞穂市で137ヘクタールを経営する巣南営農組合の小川勝範理事長は、こう言う。昨年は飼料用米を生産しなかったが、今年は水稲106ヘクタールのうち32ヘクタールで栽培を手掛ける。品種は主食用ながら多収性の「みつひかり」。地元のJAぎふは「最低でも10アール10俵(1俵60キロ)を収穫できる。地域平均より25%ほど多い」と見積もる。国の飼料用米への数量払い交付金の上限である10アール10万5000円は「確実にとれる」(小川理事長)とみる。同JAは、巣南営農組合をはじめ約200の中心的な担い手で組織する協議会に対し、昨夏から飼料用米の作付けを集中的に提案。「飼料用と主食用、半分ずつ生産すれば飼料用米の交付金は確実に入り、主食用の価格が回復した場合も恩恵が得られると説明してきた」(同JA)という。こうした地道な提案活動の結果、今年の飼料用米のJA集荷量は、昨年からほぼ倍増し約2900トンになる見込みだ。JAグループは都道府県ごとに目標数量を設定している。岐阜県の目標は1万1800トンだが、現状でその8割近くに達する見通し。JA岐阜中央会は「今後も全農と連携し、主食用からの切り替えを各JAに働き掛け、一俵でも多く積み上げたい」と説明する。青森県でも増産が進む。昨年の県内の飼料用米の生産実績は1万6000トンだが、JA全農あおもりによると「今年は3万5000トンは確保できる見通しだ」という。目標の2万7800トンを大幅に上回る。農家の作りやすさを考え、主食用品種で取り組む場合でも産地交付金で10アール1万円以内を支援。米価低迷に苦しむ中、飼料用米は安定した手取りが見通せるため農家の理解が広がった。栃木県も、農水省が4月末時点の集計で目標を達成する見込みと発表。同県のJAしもつけ管内では飼料用米の生産量が昨年の約3000トンから約6500トンに増え、主食用米とほぼ同じ数量になる見通しだ。JAは集落座談会や生産者との出荷契約の話し合いの際、需給バランスの崩れた生産が続けば、米価の回復はないと伝えてきた。「様子見をしていた農家が低米価で痛い思いをし、飼料用米の栽培に乗り出した」(同JA)という。飼料用米の面積が目標(900ヘクタール)の1.6倍になる見通しの茨城県のJA北つくばは、6月に職員が「コシヒカリ」以外の主食用品種を栽培する農家を中心に回る予定。営農計画書の提出期限が近づく中、「需給改善に向け取り組みが欠かせないことをあらためて訴えたい」と強調する。 <福岡市のODA参加> *3:http://qbiz.jp/article/62310/1/ (西日本新聞 2015年5月16日) 福岡市、ミャンマーの水道事業でODA参加 地場の海外進出支援 福岡市は、ミャンマーの最大都市ヤンゴン市で行われる政府開発援助(ODA)の水道整備事業に参加する。市内に拠点を持つ共同企業体(JV)が市と連携し、浄水場建設の調査事業を受注。市も調査の一部を担う。ヤンゴン市への水道技術支援を進めてきた市は「国際協力をさらに進め、地場企業の海外でのビジネスチャンスを増やしたい」としている。市が民間と連携し、ODAに参加するのは初めて。事業は、国際協力機構(JICA)が発注したヤンゴン市西部で2022年の稼働を目指す浄水場の建設に向けた事前調査。上下水道の設計やコンサルを手がける企業3社(いずれも本社・東京)のJVが市と連携して調査することを提案し、約1億4千万円で受注した。市もJVから請け負う形で、浄水場の運営や施設の維持管理に関する調査を行う。市の受注額は約500万円。事業は来年3月まで。市は12年から3年間、JICAを通じて水道局の職員をヤンゴン市に派遣し、漏水を防ぐノウハウを指導。昨年は節水・漏水対策の技術協力を行う覚書を両市間で結んでおり「現地と築いてきた信頼関係が今回の受注につながった」(担当者)という。市は昨秋、今回のJVに加わる2社を含め、市内に本社や支店がある企業約50社と海外でのビジネス展開を目指す組織を設立。今夏、この組織の参加企業とともに製品や技術を売り込むため、ヤンゴン市を訪ねる予定だ。 PS(2015年6月20日追加):*4を解決するには、バスの便を減らすのはほどほどにして、すべての市内バスを電気自動車にし、乗客の少ない路線は小型化して燃料費を節約するのがよいと考える。なお、広告料をもらって佐賀の名産やメッセージを宣伝しながら走るのもよいが、これは景観を悪くしない上品でセンスのよい広告に限るべきだ。 なお、自動車会社の立場から見ると、電気自動車は、このように世界中でフロンティア領域だ。 市営バス(横浜) レストランバス(ローマ) はとバス(東京) 電気バス(富山) <すべて電動バス> *4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/199079 (佐賀新聞2015年6月19日)県が全バス路線で実態調査 8割の便乗客10人以下、平日と休日延べ2000便超 枝線3割利用者ゼロ 佐賀県は、県内を走るバスの全路線に始発から最終便まで調査員が乗り込んで乗客からアンケートを取るという、全国的に珍しい調査結果をまとめた。平日と休日の2回、延べ2000便以上を対象にした。バス停ごとの乗降数のデータは存在するが、乗客一人一人の乗車区間や利用目的を明らかにした広域調査は前例がなく、「8割の便で最大乗客は10人以下」「鉄道とのすみ分けができていない」実態が明らかになった。県は市町にデータを提供し、人口減少により衰退する公共交通の再構築に乗り出す。移動実態調査は昨年9~10月、2139便を対象に実施した。別に佐賀市営バスから1261便分の提供を受けた。費用は約2000万円。タクシーも県内5地区、12事業者の協力で運転手が乗客に聞き取り調査し、5725サンプルを集めた。国土交通省九州運輸局によると、「事業者の営業戦略に関わる調査だけに、まず表に出てこない。それを県が実施した例は聞いたことがなく、省としても注目している」という。調査は、複数の市町(合併市町含む)をまたぐバス路線を「幹線」(50路線)、人口密集地を走る「市街地路線」(16路線)、それ以外の「枝線」(34路線)に分類した。ほとんどの路線で8割の便が、最大乗客は10人以下だった。特に枝線は利用者ゼロの便が3割、乗客3人以下が7割を占めた。主流の中型バスが定員57人ということを考慮すると、「11人乗りのジャンボタクシーなどの代用も検討される」と分析した。乗客ごとの乗車区間をみると、幹線は枝線や市街地路線に比べ、長い区間乗る傾向があるが、幹線のなかでも鉄道と並行して走る路線は、短区間の利用が多かった。ある路線で始発から終点まで乗車したのは98人中1人だけで、県は「複数市町で本当に長距離バスが必要なのか」と指摘する。乗客の年齢と利用目的を分析すると、平日は22歳以下の若年層で通学、23~59歳の中間層が通勤、60歳以上の高齢層で通院目的が増える「オーソドックスな利用形態」(県)だった。休日はどの年代でも買い物利用の割合が増え、特に中間層は観光が増えた。「平日に比べて休日は枝線での観光利用が増える。これまで路線バスに観光の視点はなかったが、一定の需要はある」とみる。タクシーの利用状況をみると、高齢者が31・5%を占め、会社員の39・2%に次いで多かった。目的地を調べると、高齢者は他の職業に比べて病院や商業、文化娯楽施設など日常的な生活圏での利用が多い一方、駅やバス停など公共交通の乗り継ぎ地点への利用が少なかった。県は「高齢者が日常的に公共交通として利用している実態が見えた。さまざまな施策を考える材料になる」としている。少子高齢化や過疎化で地方の公共交通の維持が課題となるなか、2013年に成立した交通政策基本法は自治体が主体となって住民の移動手段を確保するよう定めた。県は知事と20市町の首長で構成する協議会を発足、検討を進めている。
| 公的部門と公会計制度::2015.3~ | 03:03 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2015,05,26, Tuesday
<フクシマ原発事故による放射能汚染の範囲とそれが人間に与える影響>
2015.3.10Friday 2015.5.27東京新聞 2015.5.23NHK 2015.5.21、22東京新聞 2015.3.10Friday (1)放射能が人体に与える影響 *1-1に書かれているように、首都圏も放射能汚染され、東京ドーム(毎時1.34マイクロシーベルト:日本政府が定める除染基準値0.23マイクロシーベルト超、つまり年間2ミリシーベルト超の5倍)、成田空港(毎時0.45シーベルト)、ディズニーランド(毎時0.42マイクロシーベルト)などで高い測定値が出ている。これは、静岡県まで含む広い範囲の燕の巣でセシウムが検出されていることからも納得できる。 そして、福島原発事故以降、福島県では心筋梗塞などの循環器系疾患による死者数が急増し、日本全国の急性心筋梗塞による死亡率は人口10万人当たり12.1人であるにもかかわらず、福島県は2013年に27.5人とその2倍以上になっている。また、悪性リンパ腫なども増加傾向だが、この実態を日本のメディアは科学的に取り上げて報道することなく、殺人事件や同性愛者のニュースばかり報道しているのは、メディアの記者や編集者の知識不足と意識の低さだけが原因だろうか? (*なお、医療用放射線は、浴びるディメリットと診療上のメリットを比較した上で、患者本人の同意をとり、医師の管理下で必要最小限を浴びるものであるため、強制的に被曝させられるディメリットのみの被曝被害とは全く異なる) このような中、*1-2のように、双葉町の井戸川前町長が、原発事故直後に国の避難指示が遅れたため大量に被曝し、「国の避難指示が遅れたため大量に被ばくし、この先、自分の体がどうなるか分からないという怖さを感じている。放射能の心配をしないで希望に満ちた日々を過ごしたかった」として、国と東京電力に対し、精神的な苦痛への慰謝料約1億5000万円の損害賠償を求める訴えを起こされたそうだが、これは、原発事故で汚染された全地域に該当することである。 (2)原発事故の被害者及び日本国民への人権侵害 *2-1のように、自民党東日本大震災復興加速化本部は、「居住制限区域」と「避難指示解除準備区域」について、2017年3月までに解除するよう求める提言案をまとめたそうだ。それは、避難指示を解除するのは、居住制限区域(年間積算放射線量20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下)と避難指示解除準備区域(同20ミリシーベルト以下)で、年間積算放射線量50ミリシーベルト超の地域のみ避難指示を継続するという“過激”な内容である。 旧ソ連のチェルノブイリ原発事故では、5ミリシーベルトを超える場合は移住義務、1~5mSv/年で移住権利が発生するため、日本の20ミリシーベルトや50ミリシーベルトという基準が如何に高いかがわかる。もちろん、日本人がロシア人より放射能に強いわけではなく、チェルノブイリの方が国際基準に準拠しているため、50ミリシーベルト以下なら避難指示を解除し、*2-3のように、帰還させるべく自主避難者の借り上げ住宅などの提供を終了するというのは、原発事故の被害者に対する人権侵害だ。 また、原発事故後、ただちに真実の情報を開示しておけば、避難するかしないかで家族間対立などする必要はなく、さらに4年間も無駄に待ち続けることもなく、*2-4のように、故郷を奪われたのはもちろん大変なことだっただろうが、損害賠償を受け、まとまって移住して今頃は次の生活が軌道に乗っていた人も多い筈なのだ。これが、日本政府が原発事故の真実を隠した人災による二次的被害だ。 なお、*2-5のように、日本政府は、韓国がフクシマ原発事故による放射線の影響を理由に、福島県はじめ8県の全水産物の輸入を禁止していることについて、科学的根拠がないとして世界貿易機関へ提訴するそうだ。しかし、これについては日本政府の方が科学的ではなく、「産業を守るために汚染された食品を食べろ」というのは、日本国民に対する政府による人権侵害そのものである。 (3)原発の経済性と国民の費用負担 原発に大甘の 電源別コスト 原発追加安全策 処分場の方針 地元アンケートと行動 2015.5.24 2015.5.17 2015.5.22 2015.4.30 2015.5.17西日本新聞 朝日新聞 東京新聞 日経新聞 南日本新聞 原発事故の被害はこれだけ大きく、住めない場所を作って多くの人にすべてを失わせるため、これこそ日本政府が自ら引き起こした存立危機事態である。そのため、今後も再稼働などしてよいわけがないのに、*3-1、*3-2のように、原発の新規制基準により追加安全対策費が大手電力九社で少なくとも総額2兆3700億円を上回り、九電は災害発生時の後方支援拠点を作り、これが電気料金から支払われるが、もったいない話だ。金は、もっと経済効果のある使い方をすべきだ。 さらに、*3-3、*3-4のように、経産省は、原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場を受け入れる自治体に対し、さらなる原発関連研究拠点整備などの新たな財政支援策を設けたり、文献調査で最大20億円、ボーリング調査などの概要調査時に最大70億円を電源立地地域対策交付金から支給したりするそうだが、これは税金から支払われ、原発のコストに入らない。その上、*3-6のように、「暫定保管場所としては原発立地地域以外が望ましく、それに50年もの時間をかける」など、どれだけの金と時間を使って日本列島全体を放射能まみれにすれば気が済むのか、それこそ非科学的かつ未来への負担の先送りなのである。 *3-5に、かつての希望地も「もう、でけん」と書かれている。その理由は、環境汚染に対するこれほど鈍感な日本政府と国民への人権侵害を見た後の事実に基づく国民の判断である。 (4)原発地元の意見 *4-1のように、南日本新聞社が、九電川内原発1、2号機の再稼働について鹿児島県内で実施した電話世論調査によると、「反対」「どちらかといえば反対」が59.9%で、「賛成」「どちらかといえば賛成」が37.3%だったそうだ。しかし、なかなか声が届かないため、*4-2のように、「ストップ再稼働3・11集会実行委員会」を中心にしたリレーデモ隊が鹿児島市を出発して鳥栖市に入り、再稼働の不当性を訴えている。 また、*4-3のように、「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」「プルサーマルと佐賀県の100年を考える会」などは、佐賀県知事の責任にも触れ、「さまざまな質問に対して『国の考えを聞いてから考える』と回答しているが、知事として県民の命を守る確固たる意思を見せてほしい」等々、言っている。 <放射能汚染が人体に与える影響> *1-1:http://saigaijyouhou.com/blog-entry-5838.html (真実を探すブログ) 週刊誌が首都圏の放射能汚染を特集!ディズニーランドや東京ドームで高い値!原発近隣住民の間で「悪性リンパ腫」多発の兆しも! 週刊誌フライデーの2015年3月20日号が「放射能は減っていない!首都圏の【危】要除染スポット」というタイトルで首都圏の放射能汚染を特集しました。この記事には東京ドームやディズニーランド等のメジャースポットを中心に測定した放射能測定値が掲載されています。記事に掲載されている測定場所で一番高い線量を観測したのは東京ドームの毎時1.34マイクロシーベルトで、政府の定めている除染基準値(毎時0.23マイクロシーベルト以上)の5倍に匹敵していました。また、成田空港も毎時0.45シーベルトと高く、ディズニーランドの毎時0.42マイクロシーベルト等の値がそれに続いています。これは震災から4年が経過した今になっても放射能汚染が酷い事を示唆しているデータだと言えるでしょう。フライデーと同じく今月発売の月刊宝島2015年3月号にも興味深いデータが掲載されていました。月間宝島は福島原発事故で避難対象となった7町村の放射能被ばく状況を調査し、福島県で心筋梗塞などの「循環器系の疾患」で死者数が急増していることを突き止めています。急性心筋梗塞の全国での死亡率は12.1人(10万人あたり)となっていますが、福島県では福島原発事故後に急増して2013年は27.5人となりました。他にも悪性リンパ腫が増加傾向にあることを政府の発表しているデータを分析することで発見しています。首都圏の放射能汚染と福島県の避難町村で頻発する病気。当ブログでは何度か書いていますが、東日本の広い範囲で同様の傾向が見られます。これから放射能汚染の影響が表面化することになるかもしれませんが、その時に備えて覚悟が必要なのかもしれませんね。いずれの記事も現在発売中なので、興味のある方は是非とも読んでみてください。 ☆調査スクープ!原発近隣住民の間で「悪性リンパ腫」多発の兆し ~誰も書けなかった福島原発事故の健康被害 【第5回】~ URL http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150309-00010000-takaraj-soci 引用: 手紙の趣旨は、急性心筋梗塞以外の循環器系疾患にも目を向けてほしい──というものだった。指摘を受けて本誌取材班は、最新の「2013年人口動態統計」データを入手し、福島県における「循環器系の疾患」による死者数の推移を検証することにした。まずは、急性心筋梗塞である。【表1】は、過去5年間の福島県とその周辺県の「急性心筋梗塞」死者数で、【表2】は、福島県と全国の「急性心筋梗塞」年齢調整死亡率の推移だ(注1)。【表2】を見てほしい。全国の値が右肩下がりで減少し続ける中、福島県は原発事故発生翌年の12年に「人口10万人当たり29.8人」(男性は同43.7人)という全国ワーストの値を記録。翌13年は同27.5人(男性は同42.1人)と、少々下がったものの、いまだに原発事故前の値(10年は同25.3人。男性は同36.9人)を上回り続け、高い死亡率のまま推移している。急性心筋梗塞で亡くなる方の13年全国平均は同12.1人(男性は同17.9人)。福島県の同死亡率はその2倍以上ということになる。原発事故以降の福島県での急性心筋梗塞多発という“異常さ”が、3年連続で際立つ結果となった。 *1-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150520/k10010085951000.html (NHK 2015年5月20日) 前双葉町長 事故直後の被ばくで国を提訴 原発事故の影響で全域が避難指示区域になっている福島県双葉町の前の町長が、国の避難指示が遅れたため事故直後に大量に被ばくしたと主張して、国と東京電力に対しておよそ1億5000万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。東京地方裁判所に訴えを起こしたのは、双葉町の井戸川克隆前町長(69)です。4年前、町長として原発事故の対応に当たった井戸川前町長は、「国の避難指示が遅れたため大量に被ばくした」と主張して、国と東京電力に対し、初期被ばくによる精神的な苦痛への慰謝料など合わせて1億4850万円の損害賠償を求めています。井戸川前町長は会見で、「この先、自分の体がどうなるか分からないという怖さを感じています。放射能の心配をしないで希望に満ちた日々を過ごしたい」と話していました。弁護団によりますと、初期被ばくに伴う精神的な被害について裁判所への提訴は今回が初めてだということです。訴えについて国は「訴状が届いていないのでコメントできない」としています。また東京電力は「請求内容や主張を詳しく伺ったうえで真摯に対応してまいります」とコメントしています。 <被曝者への人権侵害> *2-1:http://mainichi.jp/select/news/20150514k0000m010117000c.html (毎日新聞 2015年5月13日) 福島原発事故:17年3月までに避難指示解除…自民提言案 東京電力福島第1原発事故で政府が設定した避難区域のうち、放射線量が比較的低い「居住制限区域」と「避難指示解除準備区域」について、2017年3月までに解除するよう求める提言案を自民党東日本大震災復興加速化本部(額賀福志郎本部長)がまとめたことが13日分かった。近く政府に提出する。政府は避難住民の帰還時期を明示しておらず、帰還に向けた議論が活発になりそうだ。提言案は「第5次復興提言」の原案。両区域に関し「遅くとも事故から6年後までに、全て避難指示を解除し、住民の帰還を可能にしていく」と明記した。居住制限区域(年間積算放射線量20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下)の避難住民は約2・3万人。避難指示解除準備区域(同20ミリシーベルト以下)は約3・2万人で、計5・5万人が指示解除の対象となる。原発に最も近い福島県双葉町と大熊町などからなる帰還困難区域(同50ミリシーベルト超)の約2・4万人への避難指示は継続する。提言案では「インフラと生活関連サービスの復旧や、除染などの加速に取り組む」としており、早期に放射線量を低減させることが課題となる。政府は今年度限りの集中復興期間の終了後も、除染は全額国費で実施する方針だ。避難指示の解除は政府と地元自治体の合意で行われ、14年4月に田村市、同10月に川内村の一部で解除された。ともに避難指示解除準備区域で、これまで居住制限区域の解除例はない。14年度に福島県東部の11市町村が行った住民意向調査では、避難住民の約4割が指示解除後も事故前の居住市町村に帰還しない意向で、復興は住民の意向が鍵を握りそうだ。 *2-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015052202000117.html (東京新聞2015年5月22日)自民復興5次提言 原発慰謝料18年3月終了 避難指示は17年に解除 自民党の東日本大震災復興加速化本部(額賀福志郎本部長)は二十一日、総会を開き、震災からの復興に向けた第五次提言を取りまとめた。東京電力福島第一原発事故による福島県の「避難指示解除準備区域」と「居住制限区域」の避難指示を二〇一七年三月までに解除するよう正式に明記し、復興の加速化を政府に求めた。賠償では、東電が避難指示解除準備区域と居住制限区域の住民に月十万円支払う精神的損害賠償(慰謝料)を一八年三月に一律終了し、避難指示の解除時期で受取額に差が生じないようにする。既に避難指示が解除された地域にも適用するとした。提言は自民党の総務会で正式決定後、今月中に安倍晋三首相に提出する。額賀本部長は「古里に戻りたいと考える住民が一日も早く戻れるよう、生活環境の整備を加速化しなければならない」と述べ、避難指示解除の目標時期を設定した意義を強調した。だが、福島県の避難者からは「二年後の避難指示解除は実態にそぐわない」と不安の声も上がっており、実際に帰還が進むかどうかは不透明だ。避難指示区域は三区域あり、居住制限区域と避難指示解除準備区域の人口は計約五万四千八百人で、避難指示区域全体の約七割を占める。最も放射線量が高い「帰還困難区域」については避難指示の解除時期を明示せず、復興拠点となる地域の整備に合わせ、区域を見直すなどする。集中復興期間終了後の一六~二〇年度の復興事業は原則、国の全額負担としながらも、自治体の財政能力に応じ、例外的に一部負担を求める。また一六年度までの二年間、住民の自立支援を集中的に行うとし、商工業の事業再開や農業再生を支援する組織を立ち上げる。その間、営業損害と風評被害の賠償を継続するよう、東電への指導を求めるとした。提言には、第一原発の廃炉、汚染水処理をめぐり地元と信頼関係を再構築することや風評被害対策を強化することも盛り込まれた。 *2-3:http://digital.asahi.com/articles/CMTW1505210700006.html (朝日新聞 2015年5月21日) 住宅提供終了、自主避難者から反対の声 「命綱を切らないでほしい」。原発事故に伴う自主避難者向けの借り上げ住宅などの無償提供をめぐる問題で、20日に都内で集会を開いた自主避難者や支援者たち。県の2016年度での提供終了の方針を批判し、撤回を求めた。「福島市には(放射線量が高い)ホットスポットが点在している。汚染土が身近に山積みになっているのは普通の暮らしではありません」。子どもとともに、京都市に自主避難している女性はそう訴えた。 今月15日、住宅提供の長期延長を求める約4万5千人分の署名を出すため、避難者の団体とともに県庁を訪れていた。その後、県が提供終了に向けて自治体と調整していることを朝日新聞の報道で知り、ショックを受けたという。東京電力が自主避難者に払う賠償金は、避難指示区域内の人に比べて少ない。そのため、多くの自主避難者にとって、無償の住宅提供は生活を支える頼みの綱になっている。県が避難者全世帯を対象に2月に実施したアンケートでは、避難指示区域外の回答者のうち、住宅について「入居期間の延長」を望んだ人は46.5%。13年度の44%から微増している。生活で不安なことを聞くと、「生活資金」を選んだのは54.8%で、13年度(61.7%)よりも減ったものの半数を超えており、避難指示区域内の人の回答(36.3%)よりも割合が高かった。自主避難者らを支援する河崎健一郎弁護士は「打ち切りは早すぎるし、当事者不在の手続きになっている」と述べた。 *2-4:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150514-00000041-mai-soci (毎日新聞 2015年5月14日) <福島原発事故>浪江町の住民100人が集団提訴へ 東京電力福島第1原発事故を巡り、避難区域の中で最も放射線量が高い「帰還困難区域」(年間積算放射線量50ミリシーベルト超)に指定された福島県浪江町津島地区の住民が、帰還に向けた除染計画も策定されず古里を奪われたとして、国や東電を相手取り損害賠償を求める集団訴訟を起こす。約100人が参加する見通しで、今夏にも福島地裁いわき支部に提訴する。帰還困難区域の地区住民が集団提訴するのは初めて。賠償請求額は検討中。 ◇帰還困難区域で初 津島地区は福島第1原発の北西約30キロにある山林地帯。米、タバコ栽培などの農業や林業、酪農が盛んで約1400人が暮らしていた。住民らは訴訟を通じ、何世代にもわたり築き上げてきた田畑や地域の伝統文化、地域コミュニティーが破壊され、元に戻らない現実を訴える方針だ。長期間にわたり古里を奪われた精神的苦痛に対する慰謝料に加え、徹底した除染による原状回復も求める。提訴を決断した要因の一つに、浪江町民約1万5000人が申し立てた国の原子力損害賠償紛争解決センターの裁判外紛争解決手続き(原発ADR)が不調となっていることがある。センターは昨年3月、東電が現在支払っている1人当たり月10万円の精神的賠償を15万円に増額する和解案を提示したが、東電は他の自治体との公平性などを理由に拒否し続けている。和解案に法的拘束力はない。訴訟に参加予定の住民は「和解案を拒否され、それを許している国に不信感が募った。除染を含め責任を取らせるため決断した」と話している。帰還困難区域について環境省は現在も除染計画を示していない。自民党東日本大震災復興加速化本部は「避難指示解除準備区域」(年間積算放射線量20ミリシーベルト以下)と「居住制限区域」(同20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下)の避難指示解除を2017年3月までに求める提言案をまとめたが、帰還困難区域は対象外。提訴を準備する弁護士によると、地区住民による集団訴訟は、旧緊急時避難準備区域(同原発20~30キロ圏)の同県田村市都路地区の約340人が「地域共同体が崩壊した」などとして計37億円の損害賠償を求めているが、帰還困難区域では初めて。 *2-5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150522&ng=DGKKASFS21H69_R20C15A5PP8000 (日経新聞 2015.5.22) 政府、韓国をWTO提訴へ 水産物輸入制限巡り 政府は21日、韓国が一部の日本産の水産物を不当に輸入制限しているとして、世界貿易機関(WTO)への提訴に関する手続きに入ったと発表した。日本が韓国に対して同様の手続きに入るのは初めて。韓国は福島第1原子力発電所による放射線の影響などを理由に、福島をはじめ8県の全水産物の輸入を禁止しているが、日本は科学的根拠がないと主張している。同日、WTO協定に違反しているとして、WTOを通じた2国間協議を韓国側に要請した。要請から60日以内に解決できない場合、第三国の法律家や科学者などでつくる紛争処理小委員会(パネル)の設置を求める。韓国は2011年の原発事故を受け、8県でとれるウナギやスズキなど一部の水産物の輸入を禁止。13年9月からは全ての水産物に対象を広げ、放射線量の検査も厳しくした。日本は外交ルートを通じて撤回を求め、韓国も専門家を日本に派遣し現地調査を実施してきたが「規制緩和に向けためどが全く立たない」と判断した。農林水産物の貿易をめぐっては15日、台湾が日本産の全ての食品に産地証明書の添付を義務付けるなど、輸入規制を強化している。中国やシンガポールなどでも依然として一部で規制が残っている。提訴を通じて、他国をけん制する狙いもあるとみられる。 <原発の経済性と費用の負担者> *3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015051702000120.html (東京新聞 2015年5月17日) 原発安全費2.3兆円増 13年新基準後、揺らぐ経済性 福島第一原発事故後に施行された原発の新しい規制基準で必要になった追加の安全対策費が大手電力九社で少なくとも総額二兆三千七百億円を上回る見通しであることが本紙の調べで分かった。経済産業省が二〇一三年秋に公表した調査結果は約一兆六千五百億円で、一年半の間に四割、金額にして七千億円増加していた。各社によると、まだ試算すらできていない原発もあり、費用はさらに膨らみそうだ。安全対策費の一部は既に原発維持に必要な経費として電気料金に上乗せされ、企業や家庭が負担。対策費の増加は原発の発電コストを押し上げる要因になり、経済性を理由に再稼働を目指す政府や電力業界の主張が揺らぐことにもなる。本紙はことし四月、原発を保有していない沖縄電力を除く九社を対象にアンケートを実施。東京電力福島第一原発事故後、追加の安全対策として行っている工事や計画している工事などについて尋ねた。それによると、関西電力を除く、八社が経産省の調査時点から軒並み増額。関電は「最新の数値は公表できない」として経産省の調査以前の一二年十一月時点の金額を回答した。このうち北海道電力は、九百億円から二千億円台前半と二倍以上に膨らんだ。同社は泊原発1~3号機(北海道泊村)の再稼働に向け原子力規制委員会で審査中だが、規制委から火災の防護対策が不十分との指摘を受け「必要な工事が大幅に追加となった」(広報部)としている。同じく島根原発2号機(松江市)が審査中の中国電力も二千億円超と、ほぼ倍。浜岡原発(静岡県御前崎市)敷地内に海抜二十二メートルの防潮堤などを建設している中部電力は三千億円台後半で、当初から五百億円以上の上積みになる見通し。アンケートでは九社のうち北海道電、中部電、関電、中国電、四国電力の五社が「審査の進展に伴い工事内容の見直しや追加を行う可能性もある」(中部電)などと回答、今後さらに増額する可能性があると答えた。関電は運転開始四十年前後の老朽化した高浜原発1、2号機(福井県高浜町)の再稼働も目指している。電力九社以外では、敦賀原発(福井県敦賀市)など三基を保有する日本原子力発電は九百三十億円超と回答。建設中の大間原発(青森県大間町)を持つ電源開発(Jパワー)は千三百億円を安全対策費として投じるという。 <原発の新規制基準> 福島第一原発の事故を受けて2013年7月8日に施行。津波対策としての防潮堤建設や全電源喪失事故に備えた非常用発電設備の設置、重大事故の影響を緩和するフィルター付きベントなども義務づけた。一方、航空機衝突などのテロ対策拠点となるバックアップ施設は5年間猶予。地元自治体の避難計画については定めていない。電力各社が15原発の24基の適合審査を原子力規制委員会に申請している。 *3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/189777 (佐賀新聞 2015年5月23日) 原発防災計画 九電、支援拠点を追加 佐世保と福岡市に 九州電力は22日、原子力事業者としての防災業務計画を修正し、原子力規制委員会などに届け出た。玄海原発(東松浦郡玄海町)の災害発生時に後方支援拠点となる候補地に、長崎県佐世保市と福岡市城南区の自社施設2カ所を追加した。後方支援拠点は、災害時に資材などを置く施設となる。これまでの計画では、原発から約10キロの唐津市の唐津火力発電所と、約20キロの伊万里市の伊万里変電所の2カ所だった。新たな2カ所は、原発からの方向や距離を考慮し、約40キロ離れた佐世保配電所と約50キロの福岡市の社員研修所を加えた。このほか、災害時などに原発作業員の内部被ばく量を測定する車載型の移動式ホールボディーカウンター1台を福岡市内の資材センターに配備したことを盛り込んだ。 *3-3:http://qbiz.jp/article/62297/1/ (西日本新聞 2015年5月16日) 核のごみ最終処分場 経産省、追加財政支援の意向 経済産業省は15日、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分に関する有識者会議で、処分場の建設を受け入れる自治体に対し、原発関連の研究拠点整備など新たな財政支援策を設ける方針を示した。選定に必要な調査は3段階あり、第1段階の文献調査で最大20億円、第2段階のボーリング調査などの概要調査時に最大70億円を電源立地地域対策交付金から支給する支援策が既にある。経産省は新たに、第3段階の実証実験や処分場建設決定後について追加の財政支援策を設け、計画を推進させたい意向。難航する処分場建設をめぐっては、政府が2013年末に従来の自治体の公募方式を転換。政府が「科学的有望地」を示した上で、処分場の建設に向けた調査を要請する方向で準備を進めている。 *3-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150522&ng=DGKKASGG22H07_S5A520C1MM0000 (日経新聞 2015.5.22) 高レベル放射性廃棄物(核のごみ)とは ▼高レベル放射性廃棄物(核のごみ) 原子力発電所から出る使用済み核燃料を再処理し、まだ利用できるウランやプルトニウムを取り出した後に残る廃液。きわめて強い放射線を出し、人がそばに立つと20秒以内で死ぬといわれる。強い放射線は非常に長い期間出るため、数万年以上隔離する必要がある。政府は核のごみをガラスと一緒に固めたうえで、地上で30~50年かけて冷やし、地下300メートルより深い安定した地層に数万年にわたって閉じ込める計画だ。 *3-5:http://qbiz.jp/article/62823/1/ (西日本新聞 2015年5月23日) 【核のごみ国主導で処分場選定】かつての希望地「もう、でけん」 核のごみ処分にめどが立たないまま推進される原発政策に国民が厳しい視線を送る中、政府は22日、国主導で有望地を探す新たな方針を閣議決定した。処分場は、過疎地の一部では活性化策の一つとして期待された時期もあったが、福島第1原発事故で状況は変わった。九州でも、かつて名前の挙がった地域の多くが今は冷ややかだ。一方、原発の立地自治体は、再稼働と処分場建設をどう同時に進めればいいか頭を悩ます。「もう、でけんでしょう。今はまったく考えていない。福島の事故で状況は一変した」。かつて核のごみ処分場の誘致話が持ち上がった熊本県の離島、天草市御所浦町。旧御所浦町議会議長で現市議の脇島義純さん(64)はそう言い切った。2004年、議会が町側に処分場の応募を要請したが、当時の町長が拒否した。22日に閣議決定された新方針には、国が科学的な有望地を示すことが盛り込まれたが、脇島市議は「国が強制できるとですか」と実効性に疑問を呈した。市民の抵抗も強く、島おこしグループ代表の松永英也さん(40)は「みんな頑張って地域活性化に取り組んでいる。子どもたちに禍根を残したくない」と、誘致に「絶対反対」と語る。05年、同じく誘致話が持ち上がった長崎県新上五島町。地元関係者によると、民家がない地区が候補地となったものの、反対者が多く立ち消えになった。町には世界文化遺産登録を目指す教会群の構成資産もある。地元関係者は「処分場があったら観光客は減る。どこかが受け入れなければならないのは分かるが、人の少ない離島だから構わない、というのは違う」と訴える。一方、原発推進を訴える原子力国民会議理事で九州大の清水昭比古名誉教授(核融合工学)は「処分場は技術的に不可能、というのは誤解。国が前面に出て探すのは一歩前進だ」と評価した。06年に誘致の動きがあった長崎県対馬市のある市議は「前向きな人たちは今もいる。市民の声をよく聞いて判断していく必要がある」と、受け入れに含みを残した。 □ □ 「非常に広範な問題で今一括して答えるべきではない」。今夏にも再稼働が見込まれる九州電力川内原発がある鹿児島県の伊藤祐一郎知事は22日の定例会見で、政府の新方針に対する明確な意見表明を避けた。知事はこれまで「県内に処分場は造らせない」と明言してきた。ごみを増やす再稼働を容認しながら、やっかいなごみの処分は県外とする姿勢が反発を招くことを懸念したとみられる。政府の新方針が打ち出されても最終処分場がいつできるかはなお判然としない。新方針には使用済み核燃料を容器に一時保管する中間貯蔵施設の立地推進も入った。燃料貯蔵プールが満杯に近い九電玄海原発がある佐賀県玄海町の岸本英雄町長は「中間貯蔵施設の建設申し入れがあったら町民や議会に意見を聞いて判断する。欧州視察の経験から安全性に不安はない」と受け入れを示唆するが、一部住民らの反発は必至で曲折が予想される。 *3-6:http://qbiz.jp/article/62826/1/ (西日本新聞 2015年5月23日) 【核のごみ国主導で処分場選定】専門家の評価は 核のごみの処分推進に向け、政府が新たな方針を閣議決定したのを受け、九州大の出光一哉教授(原子力学)と東京工業大の今田高俊名誉教授(社会システム論)に今後の課題を聞いた。 ◇処分場探し、待ったなし−出光一哉・九州大教授 基本方針改定で東京電力福島第1原発事故後に止まっていた最終処分場探しのスタートラインに、再び立つことができた。国が「科学的有望地」を示し、より前面に出て対処するというのは、全国で処分場探しの議論を活性化させる大きなきっかけになると思う。処分場探しは、待ったなしだ。現状でも約1万7千トンの使用済み核燃料が各地にたまっている。原発推進の是非にかかわらず、今の世代で処分の道筋を付けなければならないことに異論はないだろう。処分場探しが難航し、数十年かかってしまう可能性もある。放射能を早期に人工的に減らす核変換技術の開発に期待し、それを待つ「暫定保管」の考え方もあるが、処分場はいずれにしても必要になり、先送りはできない。ただ、国内で「一番最適な場所」を科学的に証明し、選択するのは無理だ。火山の位置などを考慮して定めた「ここ以外なら問題ない」という広いエリアの中から、原子力に理解のある地域に絞っていく、というのが海外の先行例だ。エネルギー資源を持たない日本では原発が今後も必要だ。各原発の使用済み燃料の貯蔵プールが満杯に近づき、再処理工場の稼働も遅れており、中間貯蔵施設の設置も急がなければならない。 ◇国民の理解が最優先−今田高俊・東京工業大名誉教授 日本学術会議の検討委員会で委員長を務め、4月末、核のごみ処分についての政策提言をまとめた。趣旨は、副題の「国民的合意形成に向けた暫定保管」に集約される。放射性廃棄物を一時的に容器で保管する「暫定保管」に似た言葉に「中間貯蔵」もあるが、それ以上に「安全研究と国民の理解を最優先する」という意味を込めた。暫定保管の期間は原則50年。最初の30年で国民の合意形成と地層処分の候補地選定を行い、残りの20年で処分地の建設を行っていく。50年もの時間をかけるのは、福島第1原発事故を受け、政府も電力会社も、国民の信頼を失っているからだ。まず信頼を回復しなければ、安全性を説明しても本当にそうなのかと疑われてしまう。それには相当の時間を要する。国民の意見を政策に反映する政府機関「総合政策委員会」の設置や、再稼働の条件として「暫定保管の計画策定」を提言したのは、真摯(しんし)に国民の不安に答えることが必要だからだ。国民は、本意か不本意かにかかわらず原発の受益者であることを自覚し、核のごみの議論に積極的に関わってほしい。提言では、暫定保管場所として「原発立地地域以外が望ましい」と踏み込んだ。立地地域に押しつけず、全国民で取り組まなければ問題は決して解決しない。 <地元の意見> *4-1:http://373news.com/modules/pickup/index.php?storyid=66018 (南日本新聞 2015.5.1) 川内再稼働、59%が反対 南日本新聞世論調査 南日本新聞社が、九州電力川内原発1、2号機(薩摩川内市)の再稼働をテーマに鹿児島県内で実施した電話世論調査によると、再稼働に「反対」「どちらかといえば反対」と答えた人は、前年の調査に比べ0.4ポイント増の計59.9%に上った。「賛成」「どちらかといえば賛成」と回答した人は、0.5ポイント増の計37.3%だった。 *4-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/190461 (佐賀新聞 2015年5月25日) 川内原発再稼働反対のリレーデモ隊が鳥栖入り 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に反対する市民グループ「ストップ再稼働3・11集会実行委員会」を中心にしたリレーデモ隊が25日、鳥栖市に入り、国道沿いや市中心部を歩き、再稼働の不当性を訴えた。今月16日に鹿児島市を出発した一行は、九州各地の市民グループと交流しながら国道3号を北上し、この日は午前10時半に鳥栖市の曽根崎交差点に到着した。原発を考える鳥栖の会(野中宏樹代表)のメンバーも合流し、約20人が「原発ゼロ」と書いたのぼりなどを掲げ、福岡県太宰府市まで歩いた。岩下雅裕団長(65)=薩摩川内市=は「住民の避難計画など未解決の問題が多く、再稼働は絶対に許されない」と訴えた。12日間で約300キロを行進し、27日午後2時に福岡市の九州電力本社に到着する予定で、九電に再稼働中止や住民説明会開催を求める約11万人分の署名を提出する。 *4-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/189498 (佐賀新聞 2015年5月22日) 反原発団体、「主体性ない」と知事に再質問 原発再稼働に反対する市民団体が22日、佐賀県庁を訪れ、避難計画や原子力災害対策についての認識を尋ねる質問書を山口祥義知事宛てに提出した。4月の知事回答に対する再質問で、市民団体関係者は「主体性のない回答ばかりで残念だった。知事として責任ある具体的な説明をしてほしい」と求めた。質問書は「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」の石丸初美代表、「プルサーマルと佐賀県の100年を考える会」の野中宏樹共同世話人が連名で県の担当者に手渡した。両団体を含む反原発6団体は山口知事と4月17日に面会したが、今回はその前の4月9日付回答に対する質問となっている。4月22日に改定された原子力災害対策指針で「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」を活用しないことや、半径30キロ圏外の避難は事故後に規制委が判断することになった点について、「県民の命に関わる重大な改定で、国に対して市町や住民への説明を求めるべきではないか」とした。知事の責任にも触れ、「さまざまな質問に対して『国の考えを聞いてから考える』と回答しているが、なぜ県独自の姿勢を示さないのか。知事として県民の命を守る確固たる意思を見せてほしい」としている。県の担当者は「知事に伝えて文書で回答する」と答えた。 PS(2015.5.26追加):民主主義は、主権者が日頃から真実の情報を知り、候補者の政策や行動を知って投票しなければ有効に働かない。そこで配布するチラシやポスターは、候補者にとっては自分の政策や行動をアピールする表現手段であり、有権者にとっては候補者の人となりを知る手段である。しかし、上のようにメディアが真実の情報を伝えなかったり、*5-1の佐賀県警の事例のように、選挙違反として文書頒布を制限し過ぎたりすると、有権者は、どういう考えの誰が立候補しているのかさえわからず、選挙の内容に関心を持てない。そして、*5-3のように投票率が低くなり、これは投票年齢を18歳に下げたとしても同じである。しかし、*5-2に書かれているとおり、このように極端な選挙規制を行っているのは日本だけであり、連呼だけのむなしい日本的選挙運動を改善するには、公選法の事前運動や文書配布規制を、日本国憲法の表現の自由に反しないよう改正し、当たり前の選挙運動ができるようにすることが必要である。民主主義の先輩国である英国では、戸別訪問が基本になっているそうだ。 *5-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/190824 (佐賀新聞 2015年5月26日) 佐賀県警、地方選の違反取締本部を解散 佐賀県警は26日、3月24日から設置していた統一地方選の選挙違反取締本部を解散した。県議選と6市町の首長・議員選で警告は計84件で、知事選も行われた4年前の前回に比べ10件多かった。公選法違反による摘発はなかった。捜査2課によると、県議選での警告は69件で、内訳は戸別訪問1件、事前運動に当たる内容のチラシを配るなどの文書頒布違反12件、ポスターを指定場所以外に張る文書掲示違反56件。首長・議員選は警告が15件で、文書頒布2件、文書掲示13件だった。インターネットで事前運動したことによる警告も県議選で3件あった。 *5-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11726446.html?_requesturl=articles%2FDA3S11726446.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11726446 (朝日新聞 2015年4月27日) 低投票率と無投票、解決策探る 統一地方選 今回の統一地方選では、多くの自治体で投票率の戦後最低記録を更新し、無投票当選も相次いだ。最も身近なはずの選挙で、なぜ有権者は棄権し、首長や議員のなり手は出てこなかったのか。低投票率と無投票当選の背景と解決策を探った。 ■知らない候補・似た主張…投票棄権 今回、投票率が36・02%と東京都内の区議選で最低だった港区。六本木の39階建てタワーマンションに住む会社員女性(48)は26日夕、冷蔵庫に貼った投票所の入場券を忘れたまま買い物に出かけ、棄権した。「平日は帰宅が遅く、一度も演説を聞かなかった。区議選を忘れていた」。国政選挙や都知事選は欠かさず投票したが、今回は選挙公報も目にせず、知っている候補はゼロ。夫と2人暮らしで子育て政策に関心は薄く、健康診断も区より勤務先の方が充実している。「区政に関心が持てない」。港区選挙管理委員会は今回、選挙公報を印象づけようと候補の顔写真をカラーにした。新聞に折り込んでも全世帯には届かないため、マンションでは各戸のポストに啓発チラシを配ることも試みた。だが、区選管の井上茂次長は「管理人がほとんど受けてくれない」と嘆く。前回の投票率が40・45%で埼玉県内の町議選で最低だった伊奈町。今回は39・05%と、さらに下がった。都内に通勤・通学する「埼玉都民」が多い。「生活の基本は東京。平日昼間は町内にいないし、どんな人が立候補しているかわからない。週末は選挙より家族サービス」。前回に続き、町議選を棄権した会社員男性(43)は言う。町選管の担当者は「投票率が低い30~40代が人口の中心。若年層に向けたアピールをしなければ」と言うが、妙案はないという。大阪市に隣接する吹田市長選は、大阪市をなくして特別区を設ける「大阪都構想」が焦点となった。都構想を掲げる大阪維新の会推薦の現職と、自民、公明が推薦する新顔や元職ら計4人の激戦となったが、投票率は前回をやや下回った。会社員の女性(33)は「候補者のイメージが湧かない。演説も少し聞いたけど、都構想がどうとか言われても、全然ピンと来ない」と明かす。茶わんや皿など「瀬戸もの」の陶磁器で知られる愛知県瀬戸市。名古屋近郊ながら高齢化や若者流出が課題だ。市長選では新顔4人が争ったが、投票率は55・01%で過去最低だった。棄権した自動車部品会社員の男性(37)は「選挙公報を見ても似たり寄ったり。画期的な政策を打ち出す人がいれば投票に行くが、新顔が争うというだけでは……」と話す。「誰かを選ばなくても、誰でも一緒」と考え、26日は妻子と買い物に出掛けた。 ■40年ぶり選挙戦「票に思い込めた」 宮崎県諸塚村長選は1975年以来の選挙戦となった。95%が山林で、林業やシイタケ栽培などが主産業の山村。村政の継承を訴えた元副村長の西川健(けん)氏(64)が、変革を唱えた元村議の中本洋二氏(42)を破り、初当選した。40年前も一騎打ちで村を二分した激戦となった。村民に争いは嫌だとの空気が広がり、助役らに後を託す無投票が続いた。生まれて初めて村長選で投票した農業男性(56)は「投票権を得て村政を真剣に考えた。選挙になってよかった」。別の農業男性(64)も「親戚も地区も関係なく、思いを込めて票を投じた」。26日夜、西川氏は「貴い一票を頂いたことに重みを感じる」と語った。一方、北海道栗山町議選は今回、20年ぶりに無投票となった。議会改革の象徴とされる「議会基本条例」を06年、全国で初めて制定した先進議会だ。無投票を避けようと、定数を1減らして12にして臨んだが、候補者は12人どまりだった。議員は議会報告会などで忙しくなったが、報酬は上がらない。鵜川和彦議長(58)は農業団体幹部や商店主ら7、8人に声をかけたが断られた。「選挙がなければ楽だけど、議員は劣化する」とため息をつく。議会事務局長として議会基本条例制定に関わった東京財団研究員の中尾修さん(66)は「行政サービスが削られ、議員は住民の要望をかなえる立場から、住民負担の説得役に変わった。荷が重い仕事と思われるようになった」と指摘する。 ■<考論>投票率を上げるには 政治と接点、普段から 若者の政治参加を促すNPO法人「Youth Create」の原田謙介代表 今の制度を前提にすれば、短い選挙期間で有権者が候補者を吟味するのは無理だ。投票率を上げるには、自治体や市民団体、NPOなどが普段から有権者に政治に興味を持ってもらう工夫をするしかない。私たちは2012年11月から全国で地方議員と若者の交流会を開いている。「議員って普通の人なんだ」という感想も多く、議員が遠い存在でなくなり、投票へ行くきっかけになる。こうした試みを広げることが重要だ。 ■<考論>無投票を防ぐには 女性候補増やす必要 女性候補者らの支援団体「WIN WIN」の赤松良子代表(元文相) 無投票を防ぐためには、新しい候補者を増やす必要がある。特に、男性に比べてまだ数が圧倒的に少ない女性の進出が求められる。地方議会は子育てなど生活に身近な課題が多く、解決には女性の視点が必要だ。韓国など女性政治家が増えた国では、候補者の一定割合を女性にするなどの「クオータ制」を採用している。日本もクオータ制の導入を進めるべきだ。女性の立候補には配偶者の反対も多く、家庭の理解も不可欠だろう。 ■<考論>公選法に課題は 選挙運動、自由拡大を 憲法学者の水島朝穂・早稲田大学法学学術院教授 低投票率の背景は、国政選挙の場合は制度の問題が大きい。しかし地方選では、短い選挙期間と報道の少なさが影響している。今のままでは有権者の関心は高まらない。先進国に例をみない極端な選挙運動規制と選挙期間の短縮が繰り返され、町村長、町村議員の選挙は1週間にも満たなくなった。連呼だけのむなしい日本的選挙運動を改善するには、公選法による事前運動や文書配布の過度な制限を見直し、選挙運動の自由を拡大することが必要だろう。 ■<考論>外国の事例は 英は戸別訪問が基本 英国の地方議会の実地調査を重ねる自治体議会政策学会の竹下譲会長 英国の選挙運動は戸別訪問が基本だ。候補者が玄関先で有権者に直接、自らの政策を披露する。選挙区も小さいから候補者も少なく、顔が見えやすくなって代表を選びやすい面がある。選挙カーから名前を連呼する日本の選挙のやり方では、自分の考えに合った候補者を選ぶのは難しい。住民と議員が日常的に切り離されている現状を改めるべきだ。英国のように戸別訪問を解禁し、選挙区を細分化する改革が必要ではないか。 *5-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/135854 (佐賀新聞 2014年12月15日) 推定投票率52%、戦後最低に、前回から7ポイント低下 衆院選の投票率は、共同通信の15日午前1時現在の推計で52・38%となり、戦後最低だった2012年の前回衆院選(小選挙区59・32%、比例代表59・31%)を7ポイント程度下回る見通しだ。期日前投票者数は前回から9・23%増の1315万1966人だったが、14日に投票した有権者が大幅に減った。北日本から西日本の日本海側を中心に大雪が降った影響もあるとみられる。都道府県別の投票率(推定を含む)で最高は島根の59・24%。2位以下は山梨59・18%、山形59・15%が続いた。最低は青森の46・83%で、徳島47・22%、富山47・46%の順だった。 PS(2015.5.26追加): 再稼働反対リレーデモは、鹿児島から福岡まで九州を縦断し、川内原発再稼働反対の11万2846人分の署名を提出して頑張った。これが民意で、今は原発0で廻っているのに、再度、リスクを犯して再稼働することがあってはならない。 *6より 2015.5.13西日本新聞より *6:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/171735 (西日本新聞 2015年5月28日) 再稼働反対デモ、九電本店に 11万人分の署名提出 再稼働反対を訴えながら九州を縦断してきたリレーデモ隊は27日午後2時すぎ、福岡市中央区の九電本店前に到着。デモを主催した市民団体「ストップ再稼働!3・11鹿児島集会実行委員会」の向原祥隆事務局長は、集まった約200人を前に「九電は一度も住民の前に出てきていない。公開説明会を開くべきだ」と訴えた。九州各県の反原発団体のメンバーも次々とマイクを握り、気勢を上げた。約100人はその後、本店内を訪れ、川内原発再稼働の反対を求める11万2846人分の署名を提出。応対した広報担当者から、4月に提出していた公開質問状に対する回答を口頭で受けた。質問は原発周辺の活断層や基準地震動など詳細に及び、4時間を過ぎてもやりとりはほとんどかみ合わなかった。午後7時すぎ、広報担当者が「予定の時間を2時間以上過ぎている」として議論を打ち切ろうとすると、デモ参加者らが詰め寄り、もみ合いに。110番で警察官約20人が駆けつけ、仲裁する騒ぎになった。向原事務局長は、質問状への納得のいく回答を求め、再稼働前にあらためて話し合いの場を設けるよう、28日に九電に申し入れるという。 PS(2015年5月29日、6月7日追加):このような中、東日本大震災から3年5カ月が過ぎた2014年8月3日、*7-2のように、鹿児島県の口永良部島が34年ぶりに噴火して噴火警戒レベル3(入山規制)になっていたが、*7-1のように、4年2カ月過ぎた今朝、爆発的噴火が起こり、噴火警戒レベルが5(避難)に上げられた。日本列島は、プレートの大きな移動により、火山活動が活発化しているようだ。 なお、東日本大震災時に、押し込まれにくかった部分がはずれて太平洋プレートが北米プレートに早く押し込まれ始めると、マントルは粘性は高いが液体であるため、フィリピン海プレートにも圧力がかかり、フィリピン海プレートがユーラシアプレートに押し込まれる速度も早くなって、日本列島のあちこちで火山活動が活発化すると考えられる。つまり、池に薄く張った氷を叩いて4つに割り、そのうちの一つを押すとすべての氷が動き、動けない場合は重なるのと同じ理屈だ。 *7-2より 2015.5.29西日本新聞 日本列島とプレート *7-1:http://qbiz.jp/article/63294/1/ (西日本新聞 2015年5月29日) 鹿児島県・口永良部島で噴火 気象庁によると、29日午前9時59分ごろ、鹿児島県の口永良部島で爆発的噴火が発生した。同庁は噴火警戒レベルを3(入山規制)から5(避難)に引き上げた。 *7-2:http://qbiz.jp/article/51432/1/ (西日本新聞 2014年12月9日) 見捨てられた火山島 検証「口永良部噴火」 観測機は全滅、国会議員視察もゼロ 黄土色の山肌に転がる無数の岩と、山頂から絶えず上がる噴煙が、約3キロ離れた本村港からくっきり見える。「緑の火山島」と防波堤の案内板がうたう鹿児島県屋久島町の口永良部島(くちのえらぶじま)。一面に木々が生い茂っていたという新岳を今、想像するのは難しい。「海岸線までずーっと木が枯れとるでしょうが。火砕サージ(火山ガスや灰がまじった火砕流の一種)が通った跡よ。元に戻るのに数十年かかる」。島でただ一人の町職員、川東久志さん(54)がつぶやいた。8月3日午後0時半前、島の真ん中にある新岳が34年ぶりに噴火した。現在も噴火警戒レベル3(入山規制)。火口から半径2キロは立ち入り禁止のまま。気象庁が24時間監視する全国47火山のうち、警戒レベル3が出されているのは他に、9月27日の噴火で戦後最悪の被害が出た御嶽山(おんたけさん)=長野、岐阜県=と、年に千回以上噴火する桜島(鹿児島県)だけだ。屋久島から北西に約12キロ。136人(11月末現在)しかいない島で、火山は最大の観光資源だった。「一歩違えば、ここは御嶽山より先に全国に注目されたかもしれなかったんですよ」。民宿を営む貴船森さん(42)はこう話す。規制が一切ない警戒レベル1(平常)から突然、噴石を伴う噴火があったのは日曜日。土曜日の正午前に噴いた御嶽山とほぼ同じ状況だ。死者57人行方不明者6人の御嶽山に対し、口永良部島は負傷者ゼロ。その背景には、台風の接近で島へのフェリーが欠航し、新岳に登る予定だった観光客が来なかったという偶然があった。 ◆ ◆ 「本当なら、あの時間は山頂で昼ご飯を食べていたはずです」。鹿児島県屋久島町口永良部島(くちのえらぶじま)。噴火当日、東京の高校生12人と新岳に登る予定だった民宿経営の貴船森さんは、フェリーが来なかったことで九死に一生を得た。8月3日午後0時24分。新岳火口から約2・2キロの集落にある民宿の庭にいた。バリバリバリバリ−。山を見ると空に上がった煙が斜面を駆け下りてきた。「あっ火砕流!」。宿には地域活性化を研究中の大学生グループが滞在中だった。「おまえらすぐ出てこい」。軽ワゴン車に家族や学生10人がぎゅうぎゅう詰めで坂を下った。バックミラーに灰色の煙が迫る。途中、走って逃げる数人を見かけたが、車に乗せる余裕はなかった。煙は坂をまっすぐ下っていった。「煙に巻かれた人は亡くなったと思っていましたよ」。島には警察官も消防士も医師もいない。住民を守るのは貴船さんも所属する消防団だけだ。火口から約1・5キロ地点では、噴火予測に使う地震観測機の設置工事中だった。死亡したと思っていた作業員から電話が鳴った。「助けてくれ」。山に向かうと、灰まみれの5人がいた。前後の区別もつかず目だけが真っ赤。視界がなくなり、横一列で手をつなぎ一歩ずつ逃げてきたという。「おれ、生きていますよね」。作業員はうつろな表情で何度も繰り返した。工事現場の数百メートル先には、数十センチ大の噴石がいくつも転がっていた。 ◆ ◆ 11月15日。島には福岡管区気象台の職員2人の姿があった。火山ガスの放出量などを計測するため、チャーターした漁船で山の風下側を何度も往復する。「こうして地道にやるしかないんです」と職員は話した。気象台が火口付近に設置していた観測機は、噴火でほぼ全滅。安全上の理由から代替機を設置できず、観測は月に1度の麓からの調査に頼る。気象台も噴火の前兆現象を把握するのは困難と認める。噴火から4カ月がたつ今も、島は非常事態にある。コンクリート製造工場が立ち入り禁止区域に入り、島の経済を担う公共工事も観光客も止まったまま。小中学校では教員の車を校舎脇に止め、すぐに子どもを避難させられる態勢を取る。11月14日に実施した噴火後初の避難訓練では、避難場所を従来より新岳から遠くに変更した。「火山観測の態勢を見直す」「災害に強いまちづくり」。衆院選の各政党の公約には力強い言葉が並ぶ。安倍晋三首相は公示前、長野県北部地震の被災地を訪れた。だが、新岳噴火後、島を視察した国会議員はゼロ。有権者が100人ほどの島には選挙中に候補者が来る予定もない。「見捨てられとるんよ」と港のそばに住む松本章さん(70)。火山噴火予知連絡会は11月末、火山の観測強化を求める提言を出した。国も対策に乗り出したが、動きはあくまで御嶽山(おんたけさん)の災害を受けたものだ。「犠牲者が出んと国は動かん。口永良部で噴いたことを政治家は知っとるんやろうか」。島民の視線は冷めている。
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2015,05,18, Monday
2015.5.13佐賀新聞 横田基地 普天間基地 (基地所在地の目的適合性も考えるべき) オスプレイ 軍用ヘリ ドクター・ヘリ 農業用無人ヘリ (騒音・振動の低下、安全の徹底、価格の妥当性は、どれもやってもらいたい) (1)オスプレイの横田基地配備と佐賀空港配備について *1-1の米軍オスプレイの横田基地への配備については、そもそも朝鮮半島や中国有事に備えるのならば、発進した時に騒音と墜落のリスクをまき散らして日本を横断しなければならないような大都会の真ん中に空軍基地が存在すべき理由はない。むしろ横田基地(*3参照)を、日本海側の半島か離島、もしくは日本アルプスの高い場所に移動した方が目的適合的だと考える。また、「具体的な訓練空域や運用の説明が米側からない」などというのは、日本の上空を飛行する以上、あり得ない。 さらに、*1-3のように、佐賀空港への配備が取り沙汰されている自衛隊の新型輸送機オスプレイ17機についても、「海洋進出を図る中国への抑止力を高める」という説明しかなく、それではオスプレイがそのためにどういう役割を果たすのか、それを佐賀空港に配備しなければならない理由は何かという合理的な説明がないため、地元の納得もない中で、勝手に日米間で約束を交わすのは、民主主義の国とは言えない。 私は、航空機の利用が多くなり空港が手狭になっているため、次世代の航空機は滑走距離を半減するか滑走なしで飛びあがれるようにすべきだと思う。そのため、垂直離着陸でき、固定翼機並みの速度で長距離飛行ができるオスプレイはよいアイデアだとは思うが、*1-3のように、現在のオスプレイは米政府が売却総額を17機で約3600億円と見込んでいるように、機能の割に高価すぎる。その上、*1-4のように、まだ事故が多い。そのため、まず騒音や墜落などのリスクについては文句なしの機体を作った上で、何に使うのか、どこに配備するのか、目的適合的か、価格は妥当かなどの検討をすべきである。 (2)オスプレイの飛行について *1-1で、中谷防衛相が「具体的な訓練空域や運用の説明が米側からないため、防衛省幹部が情報収集に努める」としており、*1-2に「低空飛行や夜間訓練をする」と書かれているが、騒音の問題だけでなく、軍用機が住宅地の上空を低空飛行で飛んで何をするのかは重要な問題である。そのため、「米軍から説明がない」とか「情報収集に努める」というような感覚では、日本の防衛相は任せられない。 (3)財政規律とオスプレイの必要性 *2のように、陸上自衛隊への新型輸送機オスプレイ売却について、米政府の通知文書は「陸上自衛隊の人道支援、災害復旧活動、水陸両用作戦の能力を大幅に強化する」としており、これと尖閣諸島をめぐる中国との緊張の高まりを踏まえた離島防衛態勢強化の関係については明記されていない。 さらに、本当に尖閣諸島離島防衛の「水陸機動団(離島奪還作戦を担う部隊)」の輸送手段だとすれば、その部隊が長崎県佐世保市におり、輸送手段であるオスプレイの配備先が佐賀空港というのは、あまりにも悠長であるし、国の借金が1千兆円を超す厳しい財政下で、利用価値の低い高額な輸送機を導入する妥当性も問われるべきである。 *1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/186005 (佐賀新聞 2015年5月13日) 夜間、低空訓練も実施 米軍オスプレイ横田配備、正式発表 自衛隊と一体運用へ 日米両政府は12日、米空軍が新型輸送機CV22オスプレイ10機を2017年から横田基地(東京都福生市など)に配備すると正式発表した。17年後半に3機、21年までに7機を追加配備する。夜間や、原則として上空150メートル以上の低空飛行訓練も実施される見通し。国内では、米海兵隊が普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)にタイプの違うMV22オスプレイ24機を配備済みで、沖縄以外では初めてとなる。外務、防衛両省は福生市など5市1町と東京都を順次訪れ、配備計画を説明したが、住民らの反発が予想される。福生市の加藤育男市長は「不安を払拭してもらわないと受け入れ難い」と反対の姿勢を示した。国内では、海洋進出を図る中国への抑止力を高めるため、自衛隊も佐賀空港(佐賀市)に17機のオスプレイ配備を計画。日米が一体となって運用を拡大する方針だ。普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古移設への理解を求めるため、沖縄の基地負担軽減をアピールする思惑もありそうだ。岸田文雄外相は記者会見で、オスプレイの横田配備に関し「日米同盟の抑止力向上につながり、アジア太平洋地域の平和に資する。周辺自治体に丁寧に説明し、理解を得たい」と強調した。中谷元・防衛相は、機体の安全性について「十分に確認されている」と述べた。ただ具体的な訓練空域や運用の説明が米側からないため、防衛省幹部は「情報収集に努める」とした。米国防総省は日本時間12日、オスプレイの安全性を強調した上で、横田配備は日本防衛への「不動の決意」を反映したものだと表明した。米空軍は当初、嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)への配備を検討した。だが、日米両政府は普天間飛行場の辺野古移設をにらみ、沖縄の負担増は避けるべきだと判断。横田配備を決めた。 ■CV22オスプレイ 主翼両端にあるプロペラの角度を変えることでヘリコプターのような垂直離着陸と、固定翼機並みの速度での長距離飛行ができる。CV22は特殊作戦用のため、主に輸送機として使用する海兵隊仕様のMV22に比べ、夜間や低空飛行など過酷な条件下での運用が多い。防衛省によると、最新の事故率はMV22が10万時間当たり2.12、CV22は7.21と約3倍。日本政府は、CV22の飛行実績がまだ少ないため事故割合が高くなっていると指摘。任務の違いによって装備機器は異なるが、機体構造や基本性能はMV22と同一で、問題はないとの立場だ。 ◆「安全」前面に既成事実化 米政府は、米軍横田基地(東京都福生市など)への配備を正式発表した新型輸送機オスプレイについて「優れた安全性」を前面に打ち出し、オスプレイへの抵抗感が根強い日本での配備と運用の既成事実化を進める狙いだ。米軍関係者は「オスプレイは米軍が通常使用している安全な機材だ。危険だと言っているのは日本ぐらいだ」と日本の世論に不満を隠さない。米政府は今月5日、オスプレイ17機を日本に売却する方針を議会に通知した。東日本大震災での救助活動などが評価され、今年1月の内閣府世論調査で好感度が92%に達した自衛隊が運用を始めれば「オスプレイへの信頼は確実に高まる」(関係筋)と期待を込める。沖縄県の米軍普天間飛行場に配備された海兵隊のオスプレイをめぐっては、米側は沖縄県内の飛行訓練を半減させる安倍政権の目標に協力する意向を示してきた。だが、沖縄県以外の自治体は訓練の受け入れに消極的で、訓練の県外移転は思うように進んでいない。このため首都圏の横田基地周辺でオスプレイが飛行することになれば、日本各地での飛行訓練がしやすくなるとの計算もありそうだ。 *1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/186008 (佐賀新聞 2015年5月13日) 夜間や低空飛行、住民不安-米オスプレイ、横田配備計画 米軍はCV22オスプレイの横田基地配備後、低空飛行や夜間の訓練をする方針だ。沖縄に配備されたMV22の低空飛行訓練に想定されているルートは全国に七つあり、CV22でも同様の訓練が行われる可能性もある。直下の自治体や住民からは不安の声が上がった。山形県上山市はルートの一つ「グリーンルート」が通る。地元の観光協会関係者は「オスプレイがどのくらいの大きさで、どの程度の音量で飛ぶのか想像もできない」と困惑。観光への打撃も不安視されるが「訓練によって影響が出るかも全く分からない」と話した。「ブルールート」下に位置する群馬県。以前から米軍機の騒音で住民から苦情が寄せられ、昨年度は731件に上った。県担当者は「オスプレイ配備で飛行が増えればさらに苦情が増える。低空飛行訓練は自粛してほしい」と要望する。岐阜県高山市の田中知博・危機管理室主査は「富山県から山岳地帯を南北に縦断するルートになっており、万一のことがあれば地元住民に加え登山客にも影響する可能性がある」として「訓練は安全を確保した上で行ってもらいたい」と話す。新潟県では村上市の女性会社員(29)が「オスプレイに限らず米軍機が地元を飛ぶ光景は想像したくない。国にとって本当に必要なら我慢するが、納得できる説明を誰もしない」と不満げな様子。同県糸魚川市の自営業の男性(60)も「沖縄の負担軽減と言われれば反対しにくいが、戦争が身近になってきているような気がする」と話した。「オレンジルート」が設定されている高知県の中岡誠二危機管理・防災課長は「南海トラフ巨大地震などの大災害時に負傷者の搬送がより効率的にできるなど、防災の備えにもなるのではないか」とプラス面にも評価しながら「危険のない訓練を」と注文を付けた。 *1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/184321 (佐賀新聞 2015年5月8日) 日本にオスプレイ17機 佐賀県反応 ◆「頭越し」市民不信感 佐賀空港への配備が計画されている自衛隊の新型輸送機オスプレイ17機に関し、米政府が日本への売却方針を議会に通知したことを受け、佐賀県の山口祥義知事は7日、「それぞれでお考えになること。どういう考えでやっているのかについて申し上げることはない」と報道陣に語った。山口知事は、米政府による日本への売却方針について「(県として)申し上げることはない」とし、「この問題では防衛省に配備計画の全体像と将来像を明確にしてほしいと求めていて返事を待っている。これに尽きる」と従来の姿勢を強調した。佐賀市の御厨安守副市長も、「あくまでも米政府内の手続きの話であり、市としてコメントする立場にない」と述べた。冷静な反応の県や市に比べ、地元住民らは困惑した表情を浮かべた。佐賀空港のある佐賀市川副町の男性(74)は「(4月下旬の)代用機のデモフライトが終わったばかりで、詳しい結果も知らされていないのに…」と首をかしげる。「オスプレイの騒音さえ実感できないでいるのに、売却話なんて時期尚早。政府は、佐賀県や地元を軽視しているんじゃないか」。日米で交わされる「頭越し」のやりとりに不信感を募らせた。 ■「いい買い物と思えぬ」基地問題に詳しい植村秀樹流通経済大学教授(安全保障論)の話 米側は、オスプレイの開発費が高かったので純粋に売りたい。ヘリに比べて割高でも、日本側は新しいものを欲しがる。新型機で機体には改良の余地があり、実際の使い勝手はよくないだろう。必要性を含めて、いい買い物とは思えない。日本側は防衛費を押し上げるような高い買い物をして、もてあますわけにはいかない。関連部品の供与を求めているのは、稼働率まで計算しているのではないか。代替エンジンなどの保管場所は佐賀空港ではなく、整備拠点化の構想がある陸自の木更津駐屯地(千葉県)と考えた方が自然だ。沖縄の民意が示したように、日米政府で決めたことを自治体に通告するだけでは理解は得られない。こうした売却話も検討段階から情報を公開し、決定の主体に国民を加えるべきだ。 *1-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/187815 (佐賀新聞 2015年5月18日) ハワイでオスプレイ着陸失敗、12人が病院搬送 ◆米海兵隊の訓練中 米ハワイ州オアフ島で海兵隊の新型輸送機MV22オスプレイが17日、着陸に失敗し炎上、隊員12人が病院に搬送された。AP通信が報じた。当時21人が乗っていたとみられ、米テレビは少なくとも2人が重傷と伝えた。事故はオアフ島の基地で発生。カリフォルニア州に拠点を置く海兵隊の遠征隊が訓練中だった。MV22は物資や人員の輸送が主な任務で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)にも配備されている。 <必要性と財政規律> *2:http://www.shinmai.co.jp/news/20150510/KT150508ETI090009000.php (信濃毎日新聞 2015年5月10日) オスプレイ 自衛隊に必要な装備か 陸上自衛隊への新型輸送機オスプレイ導入に向けた動きが日米間で進んでいる。米政府は先ごろ、17機を日本に売却する方針を議会に通知した。必要な装備なのか、疑問が拭えない。配備先に考えている自治体の合意も得ていない段階だ。十分な説明や議論がないまま、既成事実にするわけにはいかない。米政府の通知文書は「陸上自衛隊の人道支援・災害復旧活動や水陸両用作戦の能力を大幅に強化する」としている。安全保障に関する「負担の共有」が進むとの期待感も示した。外国への売却例はなく、このまま決まれば初の輸出先となる可能性が高い。防衛省は、2018年度までの中期防衛力整備計画(中期防)にオスプレイ17機の調達を明記している。沖縄県・尖閣諸島をめぐる中国との緊張の高まりを踏まえた離島防衛の態勢強化の一環に位置付けられる。運用について、長崎県佐世保市に設ける「水陸機動団」の輸送手段とする方針を示している。離島奪還作戦を担う部隊で、米海兵隊のような機能を持つ。米軍では陸海空と並ぶ4軍の一つで、主として敵の支配地域に乗り込む先遣隊の役割を担う。自国の守りに徹する専守防衛を旨とする日本が持つべき部隊、装備なのか。他国に攻め込める装備として周辺に脅威を与えることにならないか。本来、しっかり吟味する必要がある。場合によっては軍拡競争を助長しかねない。オスプレイの配備先は佐賀空港を考えている。昨年7月、地元に計画を提示した。当時の古川康知事が受け入れに前向きだったのに対し、1月に就任した山口祥義知事は「白紙」の姿勢だ。米政府の売却方針に地元では「話が勝手に進んでいる」との声もある。開発段階で事故が相次いだ輸送機だ。安全性について米政府は実証済みとの認識を示すものの、国民の不安は解消していない。住民にとっては騒音や風圧などの不安もある。地元を置き去りにして先を急ぐ事柄ではない。日本政府はオスプレイ本体のほか、エンジンやミサイル警戒システムといった関連装備や部品の供与も求めているという。米政府は売却総額を30億ドル(約3600億円)と見込んでいる。国の借金が1千兆円を超す厳しい財政下、高額な輸送機を導入する妥当性も問わねばならない。 <横田基地について> *3:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%AA%E7%94%B0%E9%A3%9B%E8%A1%8C%E5%A0%B4 (ウィキペディア 2015.5.13要点のみ抜粋) 横田飛行場 横田飛行場は、日本の東京都多摩地域中部にある飛行場。アメリカ空軍と航空自衛隊の横田基地(よこたきち、Yokota Air Base)が設置されている。 ●概要 福生市域の衛星写真。右側が横田基地。左側が多摩川。下部左から合流しているのが秋川。在日アメリカ軍司令部及び第5空軍司令部が置かれている、極東におけるアメリカ軍の主要基地であり、極東地域全体の輸送中継ハブ基地(兵站基地)としての機能を有している。また朝鮮戦争における国連軍の後方司令部も置かれている。2012年3月からは、移転再編された航空自衛隊の航空総隊司令部なども常駐するようになり、日米両国の空軍基地となった。拝島駅の北側で東福生駅の東側に位置し、福生市・西多摩郡瑞穂町・武蔵村山市・羽村市・立川市・昭島市(構成面積順)の5市1町にまたがる、沖縄県以外の日本では最大のアメリカ空軍基地であり、事実上、日本の行政権の及ばない治外法権地区である。沖縄県の米軍基地のように民有地がなく、そのほとんどが国有地で占められている。軍用機に混じり、軍人及びその家族の本国帰省用に定期チャーター便(パトリオット・エクスプレス)の民間旅客機が飛来する。また、ユナイテッド航空やデルタ航空などアメリカの航空会社の定期便のダイバートや米本国間米軍チャーター (MAC) などで使用されることがある(通常は発着しないものの、何らかの理由によるチャーター便運行時やダイバート発生時に着陸できる許可を得ているため)。貨物便はエバーグリーンインターナショナル航空など複数の航空会社が乗り入れている。さらに、近年は北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるフランス空軍輸送機(エアバスA340-200型機)の、フランス本国からニューカレドニアなどの海外県への移動の際のテクニカルランディング地として使用されることもある。東京都調べによる2005年5月時点の基地関係者数は、軍人3,600人、軍属700人、家族4,500人、日本人従業員2,200人の、合計約11,000人である。なお、日米地位協定により米軍人、軍属、家族は出入国の手続きを必要としない。このため、アメリカの高位高官が出入国してもそれが日本側に告知されない限り、日本はその事実を知ることができない。 ●沿革 1943年、多摩飛行場(現・横田基地)において陸軍航空審査部により試験中のキ84増加試作機(のちの四式戦「疾風」)。基地南東、立川方。分断されたかつての五日市街道。1940年、帝国陸軍航空部隊の立川陸軍飛行場(立川飛行場)の付属施設として建設された、多摩陸軍飛行場(たまりくぐんひこうじょう、多摩飛行場)が前身。同年4月1日、新鋭戦闘機を筆頭とする各種航空兵器の審査を行う官衙である飛行実験部が立川より多摩に移転、太平洋戦争(大東亜戦争)中の1942年10月15日には、飛行実験部は拡充改編され陸軍航空審査部となり審査業務を行いつつ、末期の本土空襲時には部員と器材を使用し臨時防空飛行部隊(通称・福生飛行隊)を編成し戦果をあげた。敗戦後は1945年9月4日に米軍に接収された。戦中、米軍は偵察機から従来把握していなかった日本軍飛行場の報告を受け、その基地を横田飛行場と名づけたため、また横田基地と呼ばれるようになった。接収後に基地の拡張工事が行われ、1960年頃にはおおむね現在の規模となった。拡張に際しては、北側で国鉄八高線や国道16号の経路が変更され、南側で五日市街道が分断された(この為、この周辺では常時渋滞している)。朝鮮戦争当時はB-29爆撃機の出撃基地として機能し、ベトナム戦争時も補給拠点として積極活用されていた基地である。2012年3月26日に航空自衛隊の航空総隊司令部などが府中基地より移転し、航空自衛隊横田基地の運用が開始された。(基地の沿革についての詳細は、瑞穂町の資料等を参照) PS(2015年5月18日追加):*4のように、ドローンは、高画質の4K動画やタブレット端末を使った細かいカメラの装備も可能であるため、プライバシーの侵害を防止するための規制が必要だ。何故なら、盗聴器も盗撮機も売りたい放題・買いたい放題では、安全で安心して暮らせる国に程遠いからである。 *4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/187907 (佐賀新聞 2015年5月18日) ドローン操縦安全に 販売店が体験会 ■性能や整備、法令解説 急速に普及する無線操縦の無人航空機「マルチコプター(ドローン)」への理解を深めてもらおうと15日、鳥栖市の都市広場で操縦体験会があった。空撮、測量などの業務使用を検討中の民間業者社員ら約20人が参加し、操作方法と安全に飛ばすためのマナーを学んだ。全世界で6~7割のシェアを誇る大手メーカー「DJI」(本社・中国)の日本支社が主催した。同社の代理店で、国内での販売などを行っている「快適空間FC」(福岡市)の岡田信一氏(45)が性能などを解説。最新鋭機では高画質の4K動画が撮影できるほか、タブレット端末を使った細かいカメラの設定も可能であることを紹介した。安全面では、バッテリー残量など飛行前の整備の重要性や、航空法、電波法など順守すべき法令などを例示。業務使用時の対人、対物の賠償責任保障の保険にも触れ、「操縦には必ずリスクが伴う。何かあっても安全に対応できる場所でのみ飛ばして」と注意を促していた。屋外での操縦体験では、上昇や下降、前後左右への移動、旋回など、基本的な操作を確認。操作しやすさと、画面に映し出される鮮明な映像に参加者からは驚きの声が上がっていた。宮崎県から参加した測量会社社員の男性(39)は「これまで有人飛行機を飛ばして行っていた業務が、マルチコプターを使えばより迅速、安価にできる」と期待を寄せていた。ドローンをめぐっては、4月に首相官邸の屋上で見つかった事件を受け、政府が飛行範囲の規制などを検討している。その一方で、さまざまな業界が利活用に向けた動きを本格化させている。 PS(2015.5.23追加): *5のように、市議会報告会を開いて住民が質問や意見を言うのは、まさに民主主義であるため、いろいろなテーマについて他地域でもやればよいと思う。住民が情報を共有することで、名案が出ることもあるし、どちらかに意志決定した際の対応が主体的かつ整合的になる。なお、私自身は、オスプレイの佐賀空港配備については、安全性の問題のみならず目的適合性も乏しく、佐賀空港の活用は、観光や農水産物・食品輸出など、より産業に役立つ解決策の方がよいと考えている。 *5より 佐賀県産麦 同大豆 佐賀県の田植え 有明海の海苔養殖(養殖海域及び種付けから収穫まで) *5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/189782 (佐賀新聞 2015年5月23日) 住民「オスプレイ安全なのか」 米で墜落事故、揺れる川副町 ■市議会報告会 住民から疑問の声 佐賀空港への自衛隊新型輸送機オスプレイ配備計画で揺れる地元の佐賀市川副町で22日、市議会報告会があった。ハワイで米軍機のオスプレイ墜落事故があった直後でもあり、住民からは「オスプレイは安全なのか」「情報がない中で(市議会の)特別委員会は一定の方向性を出すことができるのか」など次々と疑問の声が上がった。市議会特別委の審議報告では、「参考人招致した防衛省担当者の説明は歯切れが悪く、十分な情報がない状況」としつつ、特別委として約3カ月後に一定の見解をまとめる方針を伝えた。住民からは「ハワイで墜落したばかりで、機体は安全なのか」「十分な情報がない中で、特別委は見解を示せるのか」「オスプレイ以外に(陸上自衛隊)目達原ヘリの移駐もある。地元へのメリット、デメリットを教えてほしい」などの質問が出た。市議側は「個人的な考え」と前置きした上で、「特別委は計画を受け入れる、受け入れないという答申をするものにはならないと考えている。両論を入れる形になる可能性もあり得る」と説明した。オスプレイの安全性は、「大前提の部分で、しっかり確認していく」と述べるにとどめた。ノリ漁業者の男性が「この前ハワイで墜落があったばっかりで、海に落ちたらどうなるのか」と語気を強める場面もあった。報告会は4人の市議が説明、住民ら23人が参加した。6月20日までに16カ所で開く。 PS(2015.5.24追加):*6のように、農業にドローンを使うのは、人の多い街中や住宅地ではなく敷地内の飛行であるためよいと思う。また、農業への利用を研究をするのなら、北海道・東北・九州等で放牧している家畜の見張り・誘導、害獣の追い払いなどもできるようにすると、その機械は輸出も可能だ。 放牧(肉牛、乳牛、羊、豚) *6:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=33428 (日本農業新聞 2015/5/23)生育調査 農薬散布 農業利用へ 操縦自動化めざす JAXAなど研究着手 宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの研究グループが今年度から、無人航空機のマルチコプター(ドローン=ことば)の農業利用に向けた研究に着手する。生育状況の調査や農薬散布などの試験を重ね、それぞれの用途に適した機体を開発。離陸から着陸までの操縦を自動化し、誰でも簡単に使えるシステムにする。精密農業を身近なものにし、省力化や生産性向上につなげる。 ●誤差1メートル以内に改善 農業利用への研究は、JAXAの長谷川克也研究員と九州大学農学研究院の岡安崇史准教授、農研機構・九州沖縄農業研究センターの深見公一郎主任研究員が共同で取り組む。3年間の計画で、文部科学省の科学研究費助成事業に採択された。無人航空機として農業で利用するヘリコプターは、価格が1000万円以上と高い。操縦にも高度な技術と免許が必要になる。これに対し、市販のドローンは数万円程度からあり、比較的簡単に操縦できる。JAXAは5年ほど前からドローン研究に取り組んでおり、強風時でも安定飛行できる機種や積載重量50キロ(一般的な市販機は1~5キロ)の機種などを開発。福島県での放射線測定などにも活用した。こうした実績を踏まえ、農業利用の研究に入る。長谷川研究員は「農作業に応じて求められる性能が異なる。農業用の専用設計が必要であり、JAXAの技術を活用していく」と説明する。基盤となる技術の一つは、JAXAが運用する準天頂衛星。既存の衛星利用測位システム(GPS)では5メートル程度の精度だったものが、1メートル以内になり、精密な作業に対応できる。研究グループは安全性や機能面だけでなく、コストも重視する。モーターやバッテリーなど多くの部品は市販品を活用するため、実験機の部品代は積載重量5キロのもので約5万円、50キロのタイプでも20万円を上回る程度で済む。農作業は、農薬散布や生育状況調査が中心。生育調査には葉色センサーや放射温度計などを利用する。作物は水稲や麦、大豆などを想定。上空から見ることで、生育のばらつきや病虫害の被害も早期に気付き、対処ができる。これまでも人工衛星や航空機による測定はあったが、岡安准教授は「農家が自分たちだけで、安く、必要な時に飛ばせるようになればメリットは大きい」と指摘する。自然災害時の情報収集や物資輸送といった利用も検討する。長谷川研究員は「農村部でさまざまな用途に活用できる。農家をはじめ全ての人が簡単に使えるものを開発したい」と意気込む。 <ことば> ドローン 3枚以上の複数の回転翼を持つ無人航空機。近年、空中撮影の用途を中心に急速に普及が進んでいる。現行の法規制では、空港の付近や高度250メートル以上の空域以外では、届け出をしなくても飛行できる。
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2015,05,13, Wednesday
2015.5.8 電源構成 発電コスト試算 2015.5.12 ゼロ及びネットプラス 西日本新聞 経済産業省 西日本新聞 エネルギービル *1-2 *4-3 (アッパレ) (1)川内原発について *1-1、*1-2のように、鹿児島地裁が川内原発再稼働差し止めの仮処分を却下する決定をしたが、私がこのブログの5月7日にも記載したとおり、それは原発の新規制基準を「合理的」と判断した点で危機管理に甘い。そのため、住民側は最後の希望を託して福岡高裁宮崎支部に即時抗告するとのことだが、確かに鹿児島地裁の決定は福島事故後の司法判決に逆行しているため、日本国憲法で定められた三権分立が本当に機能しているか否かがここでわかる。 九州の一般人は、*1-3のように、鹿児島県の脱原発団体「ストップ再稼働!3・11鹿児島集会実行委員会」が5月16日から、鹿児島市の照国神社をスタートし、脱原発を訴えながら主に徒歩で九電本店を目指して約311キロをデモし、5月27日に九電本店に到着後、この日に予定されている九電との交渉に臨む。また、九州各地の脱原発団体が合同で「ストップ再稼働!3万人大集会−川内原発のスイッチは押させない」を6月7日に福岡市の舞鶴公園で九州最大規模の脱原発集会を開くそうだ。 (2)経産省と規制委の態度について しかし、*2-1、*2-2のように、経済産業省は5月11日に有識者会合を開き、2030年時点の発電コストを電源毎に再検証した報告書を大筋で承認し、その報告書は原発のコストを1キロワット時当たり少なくとも10.3円と火力や太陽光など他の電源との比較で最も低くしているそうだ。しかし、このコスト計算は、2030年時点の電源構成比率を正当化する目的で、仮定の多い見通しやコンピューター解析のみで行っているため、殆ど意味がない。 そして、*2-3のように、規制委の最悪の想定は、それ以外の専門家から「作業遅れの影響評価が不十分で甘い」「炉心溶融が起きるような過酷事故は、MCCIや水素、水蒸気爆発などのきわめて複雑な事象が起きるので、川内原発などの対策が十分とは言えない」「原子力規制委の審査水準が十分ではない」などの意見が出されている。 そのような中、*2-4のように、エネルギー問題の調査で実績のある米国企業系「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」(BNEF)が、原発の発電コストは世界的には1キロワット時当たり平均14セント(約15円)で太陽光発電とほぼ同レベル、陸上風力発電や高効率天然ガス発電の8.2セントに比べてかなり高いとの試算をまとめたが、今回の分析には事故対策費用は含んでいないとのことである。 (3)欧州の脱原発と日本の脱原発首長会議 *3-1のように、発電量の4割を原子力に頼る原発大国スウェーデンは、原発業界に何も補助しないことを決め、廃炉を強制しない代わりに政府からの財政支援を一切しないそうだ。私も、原発は商業運転を始めてから既に40年が経過しており、再エネは5年も経過していないため、政府からのエネルギー関係支出は原発への補助をやめ、再エネに集中すべきだと思う。そうすれば、これまでの電源地域も、原発から再エネ産業に転換することで、打撃を回避することが可能だ。 また、*3-2のように、日本でも38都道府県の市区町村長やその経験者108人でつくる「脱原発をめざす首長会議」が、5月10日に兵庫県宝塚市で総会を開き、2030年の電源構成比率で原発を20〜22%とする政府案に反対する緊急決議を採択して、安倍首相への申し入れ書を今月中にも提出するとのことである。その中で、政府案が自民党の政権公約と食い違っていることや原則40年の運転期間を超えた稼働を前提としていることを批判し、脱原発が日本経済をより確かなものにするというシナリオを提示するそうだ。私も、原発をやめて再エネにエネルギー転換した方が、国富が海外に流出せず国民が豊かな生活を送れるとともに、経済成長にも資すると考えている。 (4)再エネの発展 *4-1のように、中国政府の研究機関が、中国の総発電量に占める再エネの割合を、2030年に53%、2050年に86%まで拡大可能とする報告書をまとめ、今後、①建物への太陽光発電パネルの設置 ②地方から都市部への送電網整備 ③炭素税の導入などを行えば可能としている。私もそう思うため、日本の2030年の電源構成での再エネ割合22〜24%は、あまりにも現状維持でつまらない。 また、*4-2のように、アイスランドは必要な電力のうち約3割を地熱、約7割を水力で賄う「再生可能エネルギー大国」で、自動車だけが例外とのことである。日本は、地熱はアイスランドと同様に豊富で、自動車も電気自動車や水素による燃料電池車ができ、建物もゼロエネもしくはネットプラスエネになるため、再エネで完結することが可能だ。また、*4-3のように、五島沖で、洋上風力による水素製造の実証試験も始まっている。 <川内原発> *1-1:http://www.saga-s.co.jp/column/genkai_pluthermal/20201/179781 (佐賀新聞 2015年4月23日) 川内原発差し止め認めず 鹿児島地裁決定 ■新基準評価、高浜と相違 九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の地震対策は不十分として、周辺住民らが再稼働の差し止めを求めた仮処分申し立てで、鹿児島地裁(前田郁勝裁判長)は22日、却下する決定をした。原発の新規制基準を「合理的」と判断した。関西電力高浜原発3、4号機をめぐり、14日の福井地裁が「緩やかすぎて不合理」として再稼働を認めない仮処分決定をしており、司法判断が大きく分かれた。住民側は近く、福岡高裁宮崎支部に即時抗告する。7月に1号機の発電を開始する九電の計画は、再稼働を認めたこの日の決定によって現実味を帯びる。原子力規制委員会の優先審査により、新基準下で最初に合格した川内原発が再稼働に向け一歩進んだ形。菅義偉官房長官は記者会見で、政府の再稼働方針に変わりはないとの考えを示した。争点は(1)地震対策が十分かどうか(2)火山による危険性の有無(3)避難計画の実効性-。決定理由で前田裁判長はまず新基準について「東京電力福島第1原発事故の経験を考慮し、最新の科学的知見に照らした」と評価。その上で原発の耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)が「自然現象の不確かさを考慮して定めており、新基準に適合するとした判断に不合理な点はない」と認定した。耐震設計も、実験結果から十分な余裕の確保を確認。保安設備の追加により、事故が起きても放射性物質の外部放出を相当程度防げるとも指摘した。住民側は「過去の噴火で、周辺のカルデラから火砕流が原発の敷地に到達した可能性がある。避難計画も不十分」とも主張。決定は「カルデラ噴火の可能性は小さいと考える学者の方が多い。避難計画も現時点で一応の実効性を備えている」としていずれも退けた。福井地裁決定と違いが生じた背景に、原発の安全性に対する考え方の違いがうかがえる。鹿児島は「一般的に科学技術は危険性をゼロとするような絶対的安全性の確保は不可能。原発はより安全側に立つ必要があるが、重大事故の危険性を社会通念上無視できる程度に小さく保つのが相当」と指摘したが、福井は「深刻な災害が万が一にも起きないようにすべきだ」との立場を示した。このため福井は、過去の地震の平均値に基づいて設定した基準地震動のあり方にも疑問を投げかけた。仮処分は、川内原発の運転差し止めを求める訴訟の原告団の一部が昨年5月、暫定的な判断を求めて申し立てていた。 *1-2:http://qbiz.jp/article/61638/1/ (西日本新聞 2015年5月8日) 川内仮処分で即時抗告、反論ポイントは 九州電力川内原発1・2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働を認めた鹿児島地裁決定を不服として、差し止め仮処分申し立てを却下された住民12人が6日、福岡高裁宮崎支部に即時抗告した。九電が全国の原発に先駆けて7月中旬の再稼働を目指している中、住民側は抗告状に「最後の希望を託す」と記し、全面的に争う姿勢を明確にした。抗告状で住民側は、争点となった基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)の妥当性、火山の危険性、避難計画の3点全てで地裁決定に対して詳細な反論を挑んだ。決定が「不合理な点はない」と評価した新規制基準については「地裁決定は新基準が国の厳格な『安全目標』を基にしたことを根拠にしたが、安全目標に法的根拠はない」と批判。基準地震動に関して、2005年以降に国内の4原発で基準地震動を超える揺れが5回起きたことを指摘し、「今後も起きると考えるのが自然だ」と主張した。火山対策では、周辺火山の噴火の影響をめぐる地裁決定の判断に火山学者から強い批判が出たことを新聞記事から引用し、「決定は事実誤認」と主張した。今後、決定を批判した学者に抗告審に出す意見書の作成も依頼するという。抗告状が全体として強調するのは「地裁決定は福島事故の教訓を生かしていない」との主張だ。避難計画をめぐっては、福島事故で患者の避難中の死者が多数出たことに触れ、移送手段の不備を訴えた。福島事故前の訴訟で原発の危険性を小さいと認定した裁判官の反省も紹介。大飯、高浜両原発の再稼働差し止めを認めた福井地裁の判決と決定を踏まえ、「鹿児島地裁の決定は福島事故後の司法の流れに逆行している」と結論づけている。記者会見した住民側の白鳥努、大毛裕貴(だいもうゆうき)両弁護士によると、当事者が裁判官の前で主張を戦わせる「審尋」を高裁でも開くよう、月内にも申し入れる。白鳥弁護士は「高裁は再稼働前に決定を出してほしい」と強調しつつ、拙速な判断を懸念して「しっかりと時間をかけて審理してもらいたいとの思いもある」と語った。 *1-3:http://qbiz.jp/article/62012/1/ (西日本新聞 2015年5月13日)九州で最大規模の脱原発集会 6月7日、福岡市・舞鶴公園で 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働が今夏にも迫る中、九州各地の脱原発団体が合同で「ストップ再稼働!3万人大集会−川内原発のスイッチは押させない」を6月7日、福岡市中央区の舞鶴公園で開く。九州では過去最大規模の脱原発集会となりそうだ。川内原発の再稼働手続きが進んでおり、反対を訴える市民団体の動きが活発化してきている。主催は、九州各地の団体による「原発いらない!九州実行委員会」。集会の呼び掛け人には、経済評論家の内橋克人氏、作家の落合恵子氏、ルポライターの鎌田慧氏ら著名人が名を連ねる。全国の五つの脱原発団体も協賛する。舞鶴公園での集会は、2011年(参加数は主催者発表で約1万6千人)、13年(同約1万人)に次いで3度目となる。集会では、福島第1原発事故の影響でいまだ避難者が多い福島県の現状報告などがあり、九州各県の呼び掛け人らも脱原発の思いを訴える。終了後、福岡市中央区の九電本店までデモ行進し、本店を取り囲む計画。集会代表世話人の青柳行信さん(68)は「大多数の国民が再稼働に賛成していない。集会でそのことを発信していきたい」と話す。一方、地元の脱原発団体「ストップ再稼働!3・11鹿児島集会実行委員会」は今月16日から、鹿児島市の照国神社をスタート地点とし、脱原発を訴えながら徒歩(一部は車を使う)で九電本店を目指す。その距離約311キロ。27日に九電本店に到着後、この日に予定されている九電との交渉に臨むという。 <経産省と規制委> *2-1:http://qbiz.jp/article/61824/1/ (西日本新聞 2015年5月11日) 2030年時も原発コスト最低に 経産省会合が報告書承認 経済産業省は11日、有識者会合を開き、2030年時点の発電コストを電源ごとに再検証した報告書を大筋で承認した。報告書では、原発のコストを1キロワット時当たり少なくとも10・3円とし、火力や太陽光など他の電源との比較で最も低くなった。発電電力量の最新の見通しを踏まえ、先月示した原案の10・1円から修正した。東京電力福島第1原発事故後の新規制基準に沿った安全対策の費用を反映し、11年に試算した8・9円から引き上げたが、安全対策の強化によって事故の頻度が下がるとして上乗せ額は1・4円にとどめた。火力は石炭が12・9円、液化天然ガス(LNG)は13・4円とし、燃料高を見込んで11年試算よりいずれも引き上げた。再生可能エネルギーでは、太陽光が12・5〜16・4円、風力が13・6〜34・7円、地熱が16・8円とし、割高なコストが引き続き導入拡大に向けた課題になるとの認識を示した。政府はこうした再検証結果を踏まえ、30年時点で目指す電源構成比率に関し原発を「20〜22%」、再生エネを「22〜24%」などとする案を固めている。与党との調整を経て最終決定する考えだ。 *2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11748091.html (朝日新聞 2015年5月12日) 原発の発電コスト「10.3円」に微増 経産省試算 経済産業省は11日、4月末に示した2030年の電源構成(エネルギーミックス)案を踏まえ、修正した新たな電源別の発電コストを公表した。原発は、30年時点で1キロワット時あたり0・2円高い「10・3円以上」としており、下限で比べた場合の電源別ではこれまで通り最安だった。同省の発電コスト検証ワーキンググループで了承された。電源構成案で原発割合を20~22%としたため、前回の試算で前提としていた年間発電電力量が減少。これで原発立地のための交付金や研究費といった「政策経費」が割高になり、原発の発電コスト全体も上がった。10・3円「以上」とするのは、原発事故の賠償費用などがさらに増える可能性があるため。発電量が天候に左右される再生可能エネルギーの「火力の調整」などの対策費は、電源構成案で示された22~24%を前提に、年間4700億円と試算。これまでは年間4千億~7千億円としていた。 *2-3:http://qbiz.jp/article/55962/1/ (西日本新聞 2015年2月16日) 規制委、最悪の想定甘く 原発「過酷事故」審査 専門家が疑問視 注水遅れ試算10分まで 原発が新規制基準を満たしているかどうかを判断する原子力規制委員会の審査が「不十分」とする声が専門家の間で高まっている。特に原子炉(鋼鉄製)内で核燃料の温度コントロールがきかなくなり、核燃料などが超高温になって炉を破損する過酷事故対策を疑問視。事故ともなれば大混乱が予想されるが、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の場合、九電は注水作業の遅れを計画より10分遅れまでしか想定していないのに、規制委は新基準に適合とした。専門家の試算では35分遅れると事故は防げない恐れが高まり、「作業遅れの影響評価が不十分だ」と指摘する。問題点を指摘するのは、旧原子力安全委員会事務局で8年間、技術参与だった滝谷紘一さん(72)=埼玉県所沢市=ら。大地震などで原子炉につながる配管が破断し、注水によって核燃料を冷やせなくなった場合、電力会社は移動式発電機車をつなぎ、原子炉格納容器内で注水を再開。原子炉下のキャビティーと呼ばれるスペースに水をため、落下する燃料などの炉心溶融物を徐々に冷やす対策を行う計画だ。溶融物を冷やせないと事故の進行を止められず、外部に放射性物質が漏れ出す恐れが一気に高まる。九電は、この事故発生から原子炉が破損し、炉心溶融物が流出するまでの時間を川内1、2号機では約90分と推定。だが作業員の人員態勢などを基に49分後には注水を再開し、キャビティーには水位約1・3メートルの水をプールのように貯水でき、落下溶融物を十分に冷やせるとした。さらに、注水作業が計画より10分遅れ、事故発生から59分後に始めても、水位約1メートルの貯水が確保できることをコンピューター解析で確認したとしている。滝谷氏は、東京電力福島第1原発事故直後の大混乱を念頭に、この作業遅れを10分までしか想定していない点を疑問視する。規制委は昨夏、注水再開が35分遅れた場合の過酷事故の進行モデルを公表している。これに基づき滝谷氏が試算したところ、35分遅れでは川内原発の貯水水位はわずか20センチ、玄海3、4号機では、注水前に溶融物が落下することになり、冷却が難しくなる。ところが規制委は、過酷事故対策で作業の10分遅れまでしか想定していない川内原発について、新基準を満たすとした「審査書」を決定した。12日に審査書を決定した関西電力高浜原発の過酷事故対策も、川内原発とほぼ同じだ。滝谷氏は「35分遅れる想定だと、事故を食い止められない解析結果となるのを恐れ、あえて計算、審査しなかった疑いがある。福島の事故を考えると、さらに作業が遅れることもあり、規制基準を満たしているとは言えない」と批判。原子力規制庁も「10分以上作業や判断が遅れれば、この対策が機能しなくなる恐れが出てくる」と認めている。 ▼「審査水準十分ではない」原子力規制委 過酷事故対策に対し、原子力規制委員会の審査レベルが十分ではないことは規制委自体も認めている。過酷事故である炉心溶融が発生すれば、原子炉から溶融物が漏れ出し、格納容器下部のコンクリートと反応し、水素や一酸化炭素などが発生、格納容器の爆発につながる恐れも指摘されている。規制委の更田豊志委員長代理は昨年9月末の記者会見で、九州電力川内原発1、2号機の対策評価についてコメントする中で、次のように述べた。「(コンピューター)解析コードの成熟度がMCCI(溶融炉心・コンクリート反応)を取り扱うようなレベルに達しているという判断にはありません」。ところが更田氏は同じ会見で「事業者の解析結果が妥当であることを審査の中で確認しています」とも述べた。これに対し旧原子力安全委員会事務局の技術参与だった滝谷紘一氏は「更田氏の見解は論理的に筋が通っていない。本当のところは、MCCIについて審査を行えるレベルに、規制委自体が達していないということだ」と指摘する。東京大の井野博満名誉教授(金属材料学)も「炉心溶融が起きるような過酷事故は、MCCIや水素、水蒸気爆発などのきわめて複雑な事象が起きる。川内原発などの対策が十分とは言えない」と問題視する。MCCIを防ぐ方法として、海外ではプールのように圧力容器下に水をためる方法ではなく、「コアキャッチャー」と呼ばれる溶融物を受け止める設備が、新設炉で広がり始めている。ただ、規制委は「コアキャッチャーを設置するには発電所を全部解体して組み直さなければならず、新設のようなもの。既設炉を想定した新規制基準が求めるものではない」などと説明している。 *2-4:http://www.47news.jp/47topics/e/257032.php (47ニュース:共同通信2014/9/17)【原発の発電コスト】原発の電力、風力より高い 太陽光とも同レベル 米企業系調査機関が試算 原発の発電コストは世界的には1キロワット時当たり平均14セント(約15円)で太陽光発電とほぼ同レベル、陸上風力発電や高効率天然ガス発電の8・2セントに比べてかなり高いとの試算を、エネルギー問題の調査機関として実績のある米国企業系「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」(BNEF)が16日までにまとめた。東京電力福島第1原発事故後の安全規制強化もあって建設費や維持管理にかかる人件費などが世界的に高騰していることが主な理由。再生可能エネルギーのコストの低下が続く中、原子力の優位性が薄れていることを印象付ける結果となった。2004年の日本政府による試算では、原発発電コストは1キロワット時当たり5・9円だった。BNEFは、原子力やバイオマス、地熱、水力など23の発電手法について、14年上期時点の世界各国の設備費、燃料費、資金調達に必要な債務費などを調べ、施設の耐用年数などでならしたコストを算出した。炉心溶融などの深刻な事故を防ぐための対策強化が求められるようになった結果、原発の発電コストは近年上昇しており、設備利用率を92%と高く見積もっても1キロワット時当たり14セントとなった。地熱(同6・5セント)、小水力発電(同7・7セント)、陸上風力(同8・2セント)などの再生可能エネルギーに比べてかなり割高だった。石炭火力は9・1セント、天然ガス火力は8・2セントだった。原発コストには、放射性廃棄物処分のために電力会社が積み立てている費用を含むが、廃炉費用は含んでいない。太陽光発電は近年、発電コストが下がって14・9セントとなっている。日本では、海外に比べ高価な国内製機器が使われることから32・9セントと高いが、BNEFは「安価な輸入品機器の利用拡大で、コストは低下傾向にある」としている。風力発電も日本は機器コストが高く、稼働率が欧米に比べて低いため、19セントと割高だった。BNEFは、米国大手情報サービス企業「ブルームバーグ」の傘下。原発の発電コスト:日本の原発の発電コストは2004年の政府の審議会の試算で1キロワット時当たり5・3円とされ、他の電源に比べて有利だとされてきた。だが、東京電力福島第1原発事故後に政府の「コスト等検証委員会」で見直しが行われ、事故対策費などを含めると最低でも同8・9円と試算された。今回のブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの分析は、同委員会の試算手法とは異なり、事故対策費用などは含んでいない。 <欧州の脱原発と日本の脱原発首長会議> *3-1:http://www.saga-s.co.jp/column/genkai_pluthermal/20202/185228 (佐賀新聞 2015年5月11日) =欧州と原発=(4) 脱原発(下)市場原理で「自然死」へ ■安全対策コスト競争不利 福島第1原発事故後、ドイツが脱原発を急激に進める一方、発電量の4割を原子力に頼る原発大国スウェーデンは、別の手法で脱原発の実現を指向している。「ドイツのように期限を切って原発廃止を求めることはない。イギリスやフィンランドで原発新設の話はあるが、政府補助や価格保証がないとやっていけない。スウェーデンは原発業界に何も補助しないことを決めた」。イブラヒム・バイラン・エネルギー担当相は、廃炉を強制しない代わりに、政府から財政支援は一切しないと強調する。 〈コストに合わず〉 1979年の米スリーマイル島原発事故を受け、スウェーデンは80年の国民投票で2010年までに全12基の廃止を決めた。しかし、経済状況などで廃止は2基にとどまる。廃止期限とした10年には、現10基を廃炉にして敷地内で建て替える「リプレース」を認めるよう法改正した。一見、脱原発の撤回にも映るが、バイラン氏は「福島事故後の安全対策強化を含め、原発の建設費は高い。その一方で電力価格は安くなっており、建設コストに合わない。今の状況で新たに原発を造る事業者はいない」と指摘する。政府が政策誘導するのではなく、自由化された電力市場の中で競争力のない原発は淘汰され、いわば「自然死」するとの見方を示す。緩やかな脱原発だが、その代替電源の検討はこれから。現在の電源構成は水力45%、原子力40%の二つが基幹電源で、残りは風力と火力(石油・ガス)だ。現政権は再生可能エネルギー100%を目指しており、エネルギーミックスの議論を各政党と重ねている。バイラン氏は言う。「一番大きな可能性があるのはバイオマス。風力も海洋を含めて伸びており、水力もまだ開発できる」。期限のない脱原発だからこそ、逆に再生エネ普及にも一定の余裕を持って取り組めるとの認識も示した。 〈日本は「回帰」〉 スウェーデンが描く自然消滅のシナリオは、日本の原発政策の将来像と重なるように見える。経産省は4月、30年時点の電源構成の政府案を公表した。焦点の原発比率は「20~22%」。東日本大震災が起きた10年度の28・6%よりは減らしたが、20%台を維持し、「原発回帰」を鮮明にした。ただ、20%台という比率は、既存原発の40年以上の運転延長や新増設がないと達成できない数字だ。原発の新規制基準で定める「原則40年廃炉」を厳格に適用すれば、新増設がない限り30年の20%台はおろか、40年には原発ゼロになる。福島第1原発事故以降、国民の原発に対する見方は依然として厳しい。共同通信の4月末の全国世論調査では、再稼働に58・4%が反対し、賛成は31・6%だった。とてもリプレースを含む新増設を議論できる状況にはない。それでも、電力業界は将来的な検討に期待を寄せる。玄海原発(東松浦郡玄海町)1号機の廃炉を決定した九電の瓜生道明社長は、玄海でのリプレースに関し「当然、将来的には検討課題になる。玄海の地質、自然環境を踏まえると、いい地点だ」と明言する。原発を重要なベースロード電源と位置付ける政府や電力業界と、世論との意識の乖離(かいり)は大きく、日本の原発政策の行方は不透明な状況が続いている。 *3-2:http://qbiz.jp/article/61799/1/ (西日本新聞 2015年5月11日) 「原発20〜22%」首長ら反対決議 「脱原発会議」総会 38都道府県の市区町村長や経験者108人でつくる「脱原発をめざす首長会議」は10日、兵庫県宝塚市で第4回年次総会を開き、2030年の電源構成比率で原発を20〜22%とする政府案に反対する緊急決議を採択した。同内容の申し入れ書を今月中にも安倍晋三首相らに提出する。緊急決議では、政府案が自民党の政権公約と食い違っていることや、原則40年の運転期間を超えた稼働を前提としていることを批判した。総会には日本原子力発電東海第2原発がある茨城県東海村の村上達也前村長ら14人が参加。15年度の活動方針として「『脱原発が日本経済をより確かなものにする』という現実的なシナリオを提示する」との方針を確認したほか、立地自治体の原発依存を変えるための具体策を示すフォーラムを開くことも検討すると決めた。総会前には、元経済産業省官僚の古賀茂明氏が講演。「原発をやめた方が成長できる」と主張した。首長会議には、熊本以外の九州6県の市町村長8人が加わっている。 <再エネの発展> *4-1:http://mainichi.jp/select/news/20150509k0000m040155000c.html (毎日新聞 2015年5月9日) 中国再生エネ:2050年86%可能 政府機関報告 中国政府の研究機関が、中国の総発電量に占める再生可能エネルギーの割合を2030年に53%、50年に86%まで拡大可能とする報告書をまとめたことが8日、分かった。中国は世界の温室効果ガス排出量の4分の1を占める最大排出国だが、再生エネの最大限の導入によって25年までに減少に転じることが可能と分析している。中国の20年以降の温室効果ガス削減目標案にどこまで反映されるかが注目される。中国の経済政策を担う国家発展改革委員会傘下のエネルギー研究所がまとめた。米エネルギー省も分析に参加している。報告書によると、11年の総発電量は二酸化炭素(CO2)排出量が多い石炭火力発電が75%を占める。今後、建物への太陽光発電パネルの設置▽地方から都市部への送電網整備▽炭素税の導入−−などによって、風力発電を50年までに11年比で55.1倍、太陽光発電を862倍に増やすことが可能と試算した。さらに原発を7.3倍に増やせば、石炭火力は50年までに3分の1以下に抑えられるとしている。また、再生エネの拡大は経済成長にも好影響を及ぼし、再生エネ関連産業が国内総生産(GDP)に占める割合は10年の0.9%から50年には6.2%に増加、1200万人の雇用創出効果があると見込んだ。11〜12月にパリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)に向け、各国は20年以降の削減目標を国連に提出することになっている。中国は6月末までに提出する意向で、習近平国家主席は昨年11月の米中首脳会談で、20年ごろまでに非化石燃料の割合を約20%にする方針を示していた。日本は削減目標の前提となる30年の電源構成で、再生エネの割合を22〜24%としている。 *4-2:http://www.saga-s.co.jp/column/genkai_pluthermal/20202/186053 (佐賀新聞 2015年5月13日) =欧州と原発=(6) 再生エネルギー ■アイスランドほぼ100% 地熱利用の観光施設も 九州の2・5倍ほどの面積に約32万人が暮らすアイスランド。領土の一部が北極圏に入る北大西洋上の島国だが、島内には原発も火力発電所もない。必要な電力のうち約3割を地熱、約7割を水力で賄う「再生可能エネルギー大国」だ。 ■自動車だけ例外 ユーラシアプレートと太平洋プレートの境界上に位置する火山国で、豊富な地熱資源を有す。国内には7カ所の地熱発電所があり、2013年時点で総出力容量は66万7千キロワットに上る。もともと地熱は発電ではなく、学校や家庭の暖房などに使う「熱源」としての直接利用が主だった。発電を含めた地熱の本格利用に取り組み始めたのは1970年に入ってからだ。アルナドッティル産業商業相は「石油ショックがきっかけとなって、原油の輸入を減らしていくことが必要だった」と、政府主導で政策転換した経緯を説明する。現在、地熱エネルギーは、暖房43%、発電40%のほか、野菜の温室栽培や魚の養殖、プールなど用途が広がっている。70年には地熱4割、石油5割だった暖房用の熱源は、いま地熱9割、地熱発電1割と全てを再生エネで供給する。再生エネで賄えていないのは、自動車の燃料ぐらいだ。首都レイキャビックの西約30キロに位置するヘットリーズヘイジ地熱発電所は、国内最大の出力30万キロワットを誇る。施設を説明した担当者は「ここは2千メートルほど掘れば熱湯が出る地域」と言い、その蒸気で発電する一方、市街地まで張られたパイプを通して暖房用の熱湯を送っているという。ただ、地下水枯渇を懸念し「使い終わった水はパイプを通して地中に戻すことが非常に重要」と指摘する。地熱発電の副産物として世界の注目を集める施設がある。発電所から出る温水がたまってできた巨大な露天温泉「ブルーラグーン」。いまや年間70万人が訪れる国内最大の観光施設だ。白濁したお湯はシリカを含有し美肌効果もある。化粧品の研究開発や皮膚病の治療施設も併設し、地熱を使った複合的な産業振興につながっている。 ■「日本でも可能」 安定的なエネルギーとして期待される地熱。火山列島でもある日本は、実は2350万キロワットを超える世界第3位の地熱資源国だ。しかし、実際の発電容量は全国17発電所の54万キロワット、潜在量の3%以下で、大型原発1基の半分程度。国内の総発電量に占める割合は0・3%にすぎない。地熱発電が伸びない背景には、適地の多くが国立公園や国定公園など開発が難しい地域にあるほか、開発時間の長さ、温泉の枯渇を心配する地元観光関係者の反発などがある。一方で、季節や天候に左右されず、安定的に一定量を発電する「ベースロード電源」としての魅力も大きく、政府は規制を緩和し、開発を後押しする。それでも4月に示した30年の電源構成で地熱の比率は1%程度。とてもベースロードとは呼べない目標にとどまっている。日本もアイスランドのような地熱開発はできるのか。アルナドッティル産業商業相は「地熱と自然保護が合致しないと考えている人が多いのではないか。発電所は自然と両立できるし、ブルーラグーンのように観光とも一体化できる。日本でもできるはずだ」と有望視する。地熱開発に限らず、太陽光や風力といった再生エネ拡大に向けた日本の取り組み全般に対する助言にも聞こえる。 *4-3:http://qbiz.jp/article/61893/1/ (西日本新聞 2015年5月12日) 洋上風力で水素製造 五島沖で世界初の実証開始 環境省は長崎県五島市の椛島沖で浮体式洋上風力発電の余剰電力を使って水素を製造する世界初の実証試験を始めた。液体水素にして二酸化炭素(CO2)を全く出さない再生可能エネルギーの燃料電池に活用する構想で、2040年代の本格的実用化を目指す。試験中の風力発電機は高さ172メートル、羽根の直径80メートルで、海底に固定せず浮いた状態で設置されている。最大出力は2千キロワット。電気は約1キロ離れた椛島へ海底ケーブルで送り、九州電力の送電網で一般家庭に供給している。椛島沖では13年10月から発電試験を重ね、今年4月から水素作りを開始した。水素は、余った電力で水を電気分解して取り出し、液体にして貯蔵する。環境省によると、陸上の風力発電で水素を製造する事例はドイツにあるが、浮体式洋上風力発電では前例がないという。長期貯蔵と運搬ができるので、将来は他の離島で乗用車や小型船の動力源として利用を見込む。同省は「実用化できれば、余剰電力の再利用になり、離島の再生可能エネルギーの新たなモデルになる」と期待する。風力発電は陸上よりも洋上の方が強い風が得られ、発電の安定性が高いといわれる。環境省は20年に洋上風力発電を100万キロワット以上に増やす目標を立て、特に離島の地産地消型エネルギーとして活用する考えだ。椛島沖の実証試験には戸田建設や九州大などが参画。15年度が最後の年で、事業化に向けた課題を検証する。 PS(2015年5月14日追加): *5のように、原発は割に合わないとアレバが証明しつつある中、これ以上、国が原発建設を補助するのは無駄遣いだ。また、高齢者福祉を無駄遣いとして削減し、原発、環境を害する埋め立てや堤防建設、高すぎるオスプレイに支出するのは、国民生活を無視している。 *5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015051402000184.html (東京新聞社説 2015年5月14日) 仏アレバ危機 原発は割に合わない 世界最大の原子力企業体が苦境に立たされた。巨額の赤字を抱えた仏アレバ社の経営危機は深刻で、再建策として政府とのさらなる連携も模索する。もはや原発は一企業の手に負えるものではない。アレバ社は、世界各地で原発の建設などを手掛けてきた。青森県六ケ所村の核燃料サイクル施設もアレバの技術に依存するなど、国際的にも強い影響力を持つ。従業員四万五千人。株式のほとんどを仏政府が所有する国営企業といっていい。アレバを窮地に追い込んだのは、フランスとフィンランドで建設中の新型原発だ。欧州加圧水型(EPR)というその原子炉は、一九七九年の米スリーマイル島原発事故を教訓にした安全性が売り物だった。事故で炉心溶融(メルトダウン)を起こしても、「コアキャッチャー」と呼ばれる巨大な皿が溶けた核燃料を受け止める。貯水タンクの水が自動的に流れ込み、冷やす仕組みになっている。二〇〇一年、9・11米中枢同時テロが発生すると、大型旅客機の衝突に備えて、強化コンクリートの分厚い壁で原子炉を取り囲む必要に迫られた。安全を追求すればするほど経費はかさみ、工期は延びる。フィンランドで〇五年に着工したオルキルオト原発3号機は、〇九年に完成するはずだった。ところが、資材調達の遅れや設計の不具合といったトラブルが続いて工期延長が相次ぎ、建設費の見積もりは当初の三倍に膨れ上がって、一兆円を突破した。仏西部のフラマンビル原発3号機も同様で、建設費は当初の二倍になる見込みという。そして福島の事故を経て、原発の安全に対する要求は一段と高まった。欧州で建設中の原発は、オルキルオトとフラマンビルの二基だけだ。シェールガスへの転換が進む米国でも、スリーマイルの事故以来、原発の新増設はない。日本政府は、三〇年の原発比率を20~22%にしたいという。四十年寿命の決まりを守っていれば、建て替え、新増設なしには達成できない数字である。そのために、どれだけ費用がかかるのか。電力事業が自由化されても採算が取れるのか。英国のように国費をつぎ込むのだろうか。フクシマが時代を変えた。原発は、もはや割に合わないと、斜陽のアレバが証明しつつあるではないか。 PS(2015年5月15日追加): *6のように、台湾が都道府県別の産地証明書を義務付けるのは科学的でないなどと批判しているメディアもあるが、私はこの規制は妥当だと考える。何故なら、私も食品を購入する時には漁獲海域や製造地域をチェックしており、漁獲海域や都道府県別の産地(加工食品の場合は原料の産地)を明確に表示して欲しいと思っていたからだ。これを“風評被害”などと言う人もいるが、放射性物質の汚染が不明なものは買わず、自分と家族の健康や安全を守る権利は当然ある。 *6:http://qbiz.jp/article/62257/1/ (西日本新聞 2015年5月15日) 対応に戸惑う九州の企業 台湾が日本食品の輸入規制強化 台湾当局が、日本から輸入する食品に都道府県別の産地証明書を義務付けるなど規制を強化した15日、九州の企業からは対応に戸惑う声などが聞かれた。農産物輸出を手掛ける福岡農産物通商(福岡市)は今年から、台湾にヨーグルトの輸出を始めた。「農産物は以前から検疫のため産地証明が必要だったが、加工食品は要らなかった。どんな証明書が必要なのか、台湾の業者に確認したい」と気をもむ。「輸出手続きが煩雑になるだろうが、対応したい」と話すのは、台湾でも味付け油揚げの販売が好調なオーケー食品工業(福岡県朝倉市)。昨年から台湾での棒ラーメン販売が増えているマルタイ(福岡市)は「すでに産地証明を付けて取引しているので影響はない」とみている。福岡商工会議所には、地場企業からの問い合わせが相次いだ。担当者は「必要書類の様式などが判明するまでは、動向を見守るしかない」と話した。 PS(2015年5月16日追加):*7のように、IAEAが福島事故に関する最終報告書の要約版を加盟国に配布し、原発は安全との思い込みが主因と指摘したそうだ。そのため、日本政府が日本国民に対し、自らの都合の悪い点を非公開にし、まだ「安全」という思い込みを続けさせていくのはやめさせるべきである。 *7:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/science/science/1-0134065.html (北海道新聞 2015.5.15) 福島事故、IAEAが最終報告書 安全思い込み主因、対策に不足 【ウィーン共同】国際原子力機関(IAEA)は14日、東京電力福島第1原発事故を総括する最終報告書の要約版をまとめ、同日、加盟国に配布したと発表した。報告書は非公開。発表によると、天野之弥事務局長は報告書で、原発は安全との思い込みが東電をはじめ日本に広がっており、事故の主因になったと指摘、「政府の規制機関も疑わなかった」と批判した。IAEAによると、要約版は約240ページで事故原因の分析や、東電と日本の規制当局などの対応への評価などが盛り込まれ、6月のIAEA定例理事会で議論する。9月の年次総会には詳細な報告書を提出。
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2015,05,10, Sunday
国会議員の 下院女性比率 道府県議 議会に占める 管理職・役員の 女性割合 の世界順位 女性当選者 女性割合 女性比率世界比較 (1)女性議員が少ない理由 1)飲み会への出席がネックではない *1-1に、女性衆議院議員が少ない理由として「政策より飲み会出席競争」と書かれているが、実際に私が衆議院議員として活動していた時には、飲み会や行事に出てコミュニケーションしていても、「飲み会に出てこない」「コミュニケーションが悪い」とか、よい政策を作っても「よい政策を作ったわけがない。もし、本人がそう言うのなら、それは本人が自分を知らず、謙虚さがないからだ」というように、女性の活動や能力を過小評価し、それを否定する女性は謙虚さや反省が足りないとする世論が多かった。そのような中、この記事は、女性は昼間だけしか働けず、飲み会にも出にくい人材だとしている点で、(サラリーマンではない)女性国会議員への偏見をさらに助長している。 そもそも国会議員はサラリーマンではなく自営業であるため、上司はおらず、客は有権者で、お得意さんは後援会の人だ。政党に入っている議員は、フランチャイズの店長に似ている。また、国会議員の仕事は、国会に出席することだけでも、選挙運動することだけでも決してなく、最も重要なのは、多様な人とコミュニケーションして問題の本質を知り、政策を考えて実行することだ。 そこで、政策を作るための情報収集手段としては、国政報告会や座談会を開いて地元の人と意見交換したり、一軒一軒のお宅を廻って環境を見ながらその家の人と話をしたり、行事に出て参加者の主張を聞いたり、食事会や飲み会に参加してざっくばらんな本音を聞いたりなど、いろいろな方法の組み合わせがあるわけだ。従って、「飲み会という方法はとりたくない」と思えば、ざっくばらんな本音を聞く機会が少し減るかもしれないが、本人の判断でそれは可能である。 ただ、議員は、土日・祭日・夜を返上して地元廻りをし、多様な人とコミュニケーションするのが重要な仕事であるため、「夜の活動は、出産・育児との両立の問題を生む」という状況の人は、子どもを一定の年齢まで普通に育てた後で議員になった方がよいと考える。何故なら、議員は、大会社のような終身雇用でも年功序列でもなく、子育ての経験もキャリアの一つとなり、選挙に当選すればなれるものだからだ。 2)本当は、主権者の女性に対する過小評価がネックなのである *1-1に書かれているように、「女性は『チルドレンン』『ガールズ』などの『ブーム』があったから当選したのであって、能力があるから当選したのではない」というような女性の能力を過小評価する女性蔑視の記事は、私が衆議院議員の頃からメディアに多く存在していた。そして、それが繰り返される度に、国民の頭には女性議員は能力がないと叩き込まれ、女性議員の評価を低めて、女性議員の議員活動や選挙戦をやりにくいものにしたのである。何故なら、どの有権者も、つまらない人に人の上に立って欲しくないし、ましてや国民を代表する議員になどなって欲しくはなく、そのための寄付や協力もしないからである。 しかし、実際は、世の中には、自らが「ブーム」を作った女性議員もおり、男性議員より能力も経験も豊富な女性議員も多く、すべての女性議員がブームのおかげで当選したわけではない。そのため、このような女性を見下げた記事の連続こそが、永田町から去る女性を増やした本当の理由である。 なお、野田聖子議員は、「女性であることで軽く見られる」「政策より顔や容姿で判断される」とされたそうだが、「美しい女性は能力がなく、能力のある女性は美しくない」とか「キャリアのある女性や上昇志向の女性は、わがままで性格が悪い」というような変な価値観もあり、私はそういう価値観を基に書かれた週刊誌やブログの「セクハラ記事」で長所を否定された上、虚偽の短所を流布され、その結果として落選させられた。これについては、当然のことながら非常に怒っており、被害者の私に落ち度や努力不足があったわけではないため、私が変わってはならず、社会に意識変革させなければならないと考えている。 最近は、(私が提案して始まった)安部首相の「女性活躍社会の推進」により(*3-2参照)、佐賀新聞も*1-2のように、「重い扉、佐賀の女性と議会、根深い蔑視」というような連載記事を掲載し、「繰り返される問題発言」「女性は花を添えるもの」「国会議員7人のうち女性は0」「佐賀県議会は定数38に対し女性は1」「市区町村議会に占める女性の割合は、6.02%で全国最下位」など、日本が世界から30年も遅れている状況を連載するようになり、これはよいことだと思う。 しかし、私が衆議院議員の時には、佐賀新聞主催の催しに行くと国会議員の席ではなく一般人の席に座らされたり、その行事に参加している国会議員のうち私だけを除いた写真を撮って佐賀新聞に掲載し、地元の行事にも参加しない落下傘議員と言う評判を作られたり、目立たない席に座らされて挨拶もさせないため、その行事に出席していることが隠されるような扱いだったことがある。さらに、佐賀新聞に掲載された私に関する記事は女性蔑視の評価を含むものが多かったため、佐賀新聞が「国会議員7人のうち女性は0」などと言える立場にはなく、その状態を作ってきた理由の大半は、自らも男性中心社会である佐賀新聞はじめメディアが担っていると言える。そのため、ここでメディアの猛省を促すとともに、日本のメディア(週刊誌も含む)における女性役員比率や女性管理職比率も公開させるべきだと考えている。 (2)現在のメディアが描く“理想の女性” *2-1に、NHK大河ドラマ「花燃ゆ」は、吉田松陰の妹を主人公にしたが、視聴率が10%を切る回もあると書かれている。私は、その理由は、「吉田松陰」という本当の主人公の見るに堪えない不遇が視聴者に与えるストレスとその妹が握り飯を出して男性を支える女性でしかなく、自らはチャレンジ精神も主体性もないため、主人公たりえないことにあると思う。その点、同様に無名の女性が主人公でも高視聴率を誇った「お花はん」は、今から約50年前に造られたNHKの連続テレビ小説であるにもかかわらず、主人公の女性は、主体性とチャレンジ精神のある女性だった。 つまり、「花燃ゆ」は、題名からも明らかなように、女性を花を添えるものとしか捉えておらず、周囲の男性を支えて日常を生きるだけの徹底して月のような女性(今から100年以上前の明治44年《1911年》に、平塚らいちょうが書いた言葉)を理想像として描いたところが現代の価値観に合わず、主人公が女性であるにもかかわらず、女性からも支持されないドラマになったのだ。 そのような中、*2-2のように、「女性が衆議院議員になるには家庭との両立が壁」とするのもジェンダーである。そもそも衆議院議員になれば、家事を外部委託できるくらいの歳費はもらえるため、家事との両立が壁になることはない。それにもかかわらず、「家庭との両立が壁」だとすれば、女性が衆議院議員に少ない理由は女性自身の個人的理由に依ることになるが、本当は、「①男性中心の地域では、女性の能力が正当に評価され、周囲から推薦されて公認されるところまでいかないので、当選することもない」「②選挙費用や事務所の運営費用がかかるのに寄付は少なく、経済的損失になるので家族が反対する」「③さらに痛くもない腹を探られるので、みんなやっていられないと思う」などが理由なのである。 しかし、いつも逆の立場から社会を見てきた女性国会議員が増える必要はある。ただし、「女性は、結婚・出産していなければ、母親の思いを理解し、政策などに反映して政治活動をすることができない」というのは、男性は子どもがいても自分で育てた人は少なく、家事のみならず選挙さえ妻に手伝ってもらっている人が多い中で、女性にだけ課した高いハードルであり、また結婚・出産していなければ母親の思いを理解できないというのも事実ではないため、*4で広げるべき間接差別の対象である。 (3)日本の女性管理職 *3-1のように、日本では会社の管理職に占める女性割合は現在でも10%程度で世界でも低く、役員に占める女性割合は2%にも満たずさらに低いが、この人たちが社会人になった時点では、ずっと働き続けるつもりだった人が6割弱おり、課長相当の管理職以上に昇進・昇格したいと思っていた人も2割弱いたにもかかわらず、その希望がかなわなかった人が多いのであるため、その原因を明らかにして改善することこそ重要である。 さらに、役員になった女性は子どものいない人が7割を占め、企業の部課長の男性8割に子どもがいるのと比較すれば、女性は仕事か子どもか(注:「仕事か結婚か」ではない)を選ばされていたのであり、これは、この30年以上、最前線で働く女性をしてきた私の経験からも納得のいく数字だ。 つまり、少子化の原因を女性に責任転嫁するのは本当の責任者である政府の責任逃れであり、戦後、日本国憲法で職業選択の自由を得て女性が働いて普通に昇進したいと思った当然の要求を満たす社会を作ったのか、そして、政府は、そのためにどんな政策をとってきたのかが問われ反省されなければならないのである。なお、女性議員割合、女性役員割合、女性管理職割合などの国際比較を見れば、女性の能力ややる気の問題ではなく日本の労働政策の問題だったことは明白であり、この差別の構造を、これまでのように「日本の伝統・文化」や「結婚・出産・育児」の名の下に容認することがあってはならない。 なお、*3-2のように、安倍首相が、「女性が輝く社会をつくる」として、働く女性を後押ししておられるのは有り難く思うが、「保育所」や「働く時間」の問題だけが重要なのではない。それよりも、女性の能力を過小評価する習慣を改めることこそが、労働時間ではなく成果で公正に評価し、一度退職して再就職(転職)しても、不利に扱われることなく働けるための必要条件なのである。 <女性議員は何故少ないのか> *1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11740356.html (朝日新聞 2015年5月6日) (女が生きる 男が生きる)女性衆院議員 政策より飲み会出席競争 国会議員の仕事は、昼だけではない。「遅くなりすみません」。今年2月の午後8時すぎ、甲府市中心部の居酒屋に、自民党の宮川典子衆院議員(36)が走り込んだ。支持者の男性9人に「かわいいね」「ありがとうね」と迎えられ、ワイン片手に選挙の情勢を語る。1時間で切り上げ他の店へ。別の男性らと日本酒を酌み交わし、教育問題などを談議。午後10時、さらに1軒。終わった時、日付は変わっていた。衆院で小選挙区制度が導入されたのが1994年。同じ政党の候補者が争い、「金がかかる」などの批判を受けた中選挙区制から政策本位をめざした。だが実態は。飲み会、冠婚葬祭、行事の参加――。有権者との対話は政治家の基本だ。アルコールが入って、胸襟を開き話せることもあるだろう。だが政策本位より、飲み会出席競争に傾いてみえる時がある。両方の制度で選挙をした高市早苗総務相(54)は「得票率の目標が中選挙区と違う。(行事に)出るかどうかが、大きな影響を受ける」。夜の活動は、出産や育児との両立の問題を生む。ほかにも、複数の女性議員が「当選する前は、飲み会でセクハラされても文句は言えなかった」。少数派の女性というフィルターを通すと、政策本位と対極にある日本の政治土壌が見える。「飲み会文化」は有権者だけではない。「政治は夜動く」「料亭政治」という言葉がある。民主党の小宮山泰子氏(50)は先輩議員によく赤坂のクラブに連れて行かれた。党派を超え集まる議員と、グラス片手に政治の内幕や選挙の話。昼間の公式な場では知り得ない情報や本音が飛び交う。「政治の世界のコミュニケーションは夜」と知った。「相手の立ち位置や落としどころを探れる夜の場は、ポストにもつながる」とも感じた。小宮山氏には、飲み会が「男同士の結束を確認する場」と感じられて入りづらく、「私がいない方が楽しめるんじゃないか」と申し訳なく思ったこともあった。 ■「ガールズ」への視線 3月上旬、中川郁子農林水産政務官(56)の「路上キス」写真が週刊誌に掲載された。相手は妻子がいる国会議員だが、話題はもっぱら独身の中川氏に。大臣が辞任した日。しかも「亡夫の後継」を強調し当選してこの行動、と批判された。本人に責められるべき点はもちろんある。マドンナ、ガールズ……。女性議員には、興味本位ともみえる視線が注がれる。自民の野田聖子氏(54)は「女性であることで軽く見られる。政策より顔や容姿で判断される」。もてはやし、そっぽを向くメディアに問題はある。が、「ブーム」の終焉(しゅうえん)と共に永田町から去った女性が少なくないのはなぜだろう。自民党の小池百合子氏(62)は共著書で、政治などで女性が活躍するため三つの改革が必要だとした。性別役割分担に関する世の中の「意識」、女性の活躍を支える「制度」、女性自身が意識を高め立ち上がるための「自己」改革だ。民主党の「小沢ガールズ」と呼ばれた太田和美氏(35)。06年、衆院補選で当選。小沢一郎氏と共に12年に離党。その後落選を重ね、引退も考えた。だが、東日本大震災の原発事故で相談にきた母親たちを忘れられなかった。維新に移り昨年の総選挙に出馬、比例復活した。 ■「党に覚悟が必要」 政治で女性を増やす「制度」の改革は、少しずつだが変化の兆しがある。小池氏は12年に党の特命委員会委員長として、女性候補が少ない政党への政党助成金を減らす改正法案を提案した。委員会の最高顧問には安倍晋三氏も。その後、安倍氏は首相に就いたが、提案はたなざらし。小池氏は「党に意思と覚悟が必要。経済界などに女性の登用を2020年に3割と言って、一番の足元でやっていないのはちょっと違うのではないか。政党なら、党のトップが決めればよいことだと思う」。女性議員を増やすため100カ国超が、女性の候補者や議員の割合を定めるクオータ制度を導入済みだ。日本でも2月に「クオータ制」の導入を目指す議員連盟が発足、全政党から約50人の議員が参加する。 ■夫が支える例、半数 男性議員の場合、本人に代わり妻が地元などで活動するのは珍しくない。女性議員はどうだろう。自民党の稲田朋美政調会長(56)が初当選したのは05年。立候補の背中を押したのは、夫だった。前回衆院選では夫が仕事を休み、地元で来客対応や企業訪問などを手伝った。稲田氏は「夫がいなければ国会議員になっていなかった」と振り返る。野田聖子氏は、夫が家事や育児を担う。重い障害がある長男(4)がいるが「夫が私を支えてくれて、政治活動が成り立つ」。2人のように夫が女性を支える例は多数派ではない。「パートナーが自身の政治活動をサポートしているか」の問いには、既婚議員で「している」が12人、「していない」が12人で同数だった。「妻が選挙や地元の活動を支えている男性をうらやましいと思うか」には、「思う」が19人、「思わない」が21人でほぼ同じ。「妻の代理出席は重みがある」という声の一方、「男性が妻のために頭を下げてもプラスにならない」と抵抗がある議員は少なくない。 ◇この記事は、相原亮、伊東和貴、榊原一生、高橋末菜、田中聡子が担当しました。ご感想を、メールikiru@asahi.comまでお寄せください。 *1-2:http://www.saga-s.co.jp/senkyo/senkyosaga/30108/177470 (佐賀新聞 2015年4月16日) =重い扉 佐賀の女性と議会=(1) 根深い蔑視 ■繰り返される問題発言 女性議員割合全国で最下位 世界的に見て、女性の議員が圧倒的に少ない日本。その中でも、佐賀県や県内市町の議会は女性が極めて少なく、4町は「女性ゼロ議会」だ。最も身近な自治の代表者を選ぶ「統一地方選」まっただ中の今、現職議員や議員経験がある女性らに現状を聞き、男女の人口構成とはかけ離れた議会にはらむ課題を追った。「ついていかんぎ、よかったったい」。3月17日の唐津市議会一般質問。市教育委員会指導主事のセクハラ問題について、市教委の対応を問題視していた社民党議員が質問すると、保守系会派の議席から、被害者の心をさらに傷つけるやじが飛び出した。昨年6月、東京都議会で塩村文夏議員が質問に立った時に、男性議員から「早く結婚した方がいい」とやじられたことが、大きな社会問題となった。その記憶が残る中、県内でも…。一報を伝える佐賀新聞の記事の切り抜きを手元に置きながら、佐賀中部で市議を務めていた女性は「逆行している」。怒りと悲しみを表情に浮かべた。 ■「花を添える」 元市議は15年ほど前の議場を、鮮明に覚えている。一般質問に立った男性議員が女性消防団を「出初め式に花を添えるもの」と表現し、趣向を凝らした式となるよう提案。これに対し、消防長が「花を添える活動になるように検討する」と答弁した。終了後、女性議員4人で議長に「見過ごせない発言」と抗議、訂正を求めた。消防長の答弁は訂正されたが、執行部席に居並ぶ男性幹部も「何があったと」といぶかしげ。議場で発言を聞いていたほとんどの男性は、その不適切さに気づくことさえなかった。住民の代表であるはずの議員。だが、職場や地域の常識から外れたことが、議場や議会視察などで、たびたび繰り返される。10年以上、議員を務める女性は初めて同僚議員と勉強のために訪れた視察先での懇親会を忘れられない。会場に足を運ぶと、そこには3、4人のコンパニオンの姿があった。しかも彼女たちの派遣費は公費から。帰佐して「おかしい」と訴え、懇親会のあり方を変えた。こうした問題は「過去のもの」なのか。佐賀新聞社が昨年6月、県内の女性議員に取材したところ、表沙汰になっていなかった嫌がらせや暴言の数々が聞こえてきた。「俺の女になれと交際を迫られ、拒絶すると嫌がらせを受けた」「女になんができるかと言われた」「セクハラをやめるよう指摘したら、飛びかかってこられたことがある」。 ■38分の1 佐賀県関係の国会議員7人のうち女性はゼロ。12日、統一地方選の前半戦で実施された九州の7県議選では、4県で女性が議席数を伸ばしたが、女性の立候補者が1人にとどまった佐賀県議会は定数38に対し1のままだ。内閣府が1月にまとめた都道府県、市区町村議会に占める女性の割合(2013年12月31日現在)によると、佐賀は399人中24人で6・02%。全国最下位となっている。 <現在のメディアが描く女性> *2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11732844.html (朝日新聞 2015年5月1日) (クロスレビュー)NHK大河ドラマ「花燃ゆ」 半世紀を超える歴史を誇るNHKの大河ドラマ。1月から放送中の「花燃ゆ」は、吉田松陰の妹、杉文(すぎふみ)(井上真央)を主人公にしたが、視聴率は10%を切る回もある(ビデオリサーチ調べ)。「無名の女性主人公」「イケメンパラダイス」「青春群像劇」「ホームドラマ」といった、これまでにない売り出し方が、うまく支持を広げられていないようだ。魅力と課題を探った。 ■浮つかぬイケメンに「萌え」 小日向(こひなた)えり 「歴女(れきじょ)」(歴史好きの女子)が歴史上の人物を見る時のポイントは「萌(も)え」だ。当初は「イケメン大河」と聞き、浮ついた感じはどうかと思っていた。ところが、長身で素朴な久坂玄瑞、涼しげな高杉晋作、狂気を帯びた吉田松陰と、史実のイメージを崩さず、キャラクターを盛った感じがとてもいい。国の行く末を考える長州藩の面々にあって、特に松陰には、公に生きる精神を強く感じた。演じている伊勢谷友介さんは社会起業家でもあり、現代での生きざまも重ねて見た。20代の私たちは豊かな時代に育ち、リスクをとらないと言われる世代。でも、お金より社会貢献を大切に考える人が増えている。そうした若者が自己啓発本の感覚で見られるドラマだ。 ■女性の描き方が美しすぎる 中町綾子 主人公の文が玄瑞と黒船を見に行く回や、彼の松下村塾への入塾に一役買う回は見応えがあり、視聴率もいい。文と歴史上の人物の関わりが描かれているから。だが兄の松陰らを見守る役どころだけだと、キャラクターが淡く、彼女の生き方が見えにくい。女性主人公で成功した「篤姫」では、したたかな側面が描かれていた。やはり毒の部分もないと、大河のヒロインとしては物足りない。女性の描き方として「美しすぎる」と思えてしまう。もっと複眼的であってほしい。時代ならではの苦しみはなかったか。大河では、1回も見逃せないエピソードの積み重なりがだいご味。入りやすさを優先した構成は、大河の魅力を損なったかもしれない。(日本大学教授=ドラマ表現分析) ■無名の人物、なぜ主人公に 木村和久 ほとんどの大河ドラマを見てきたけれど、大切なのは少年ジャンプのテーマと一緒で、「努力・友情・勝利」。でも「花燃ゆ」には勝利がない。主人公は群馬県令と再婚するが、それが勝ちとは思えない。松陰が死んでしまい、ドラマの山場が終わってしまったのでは。キャラクターが弱い、無名の人物を主人公に選んだのが、最大の疑問。ジョン万次郎や乃木希典でよかった。万次郎は世界を回り、福沢諭吉が教えを請うた人物。市井の人に戻る生き方も日本人好みだ。よっぽどドラマチックに描けるだろう。NHKが安倍晋三首相の出身地、長州で主人公を探したのではと勘ぐりたくもなる。早めに終わらせて、年末まで別のドラマを放映したら、籾井勝人会長を評価するけど。 ■生活者が見た歴史、新しい 成馬零一(なりまれいいち) これまでの大河は、伊達政宗や黒田官兵衛ら歴史を作った人物を主人公とする男の物語。「花燃ゆ」は主人公が無名の女性で、歴史の大状況には介入できない。周囲のために食事を作り、恋をして、ひたすら自分の日常を生きる。生活者が歴史をどう見たかという視点は新しく、興味深い。歴史ドラマは状況を俯瞰(ふかん)する三人称になるのが常だが、日常を描くことで一人称の歴史ドラマが生まれた。ただ、当初はなぜ文が主人公なのかがわからず、兄の松陰の物語が続くので、視聴者が離れてしまった。文を入り口にして、松下村塾の面々を見れば、従来のファンも楽しめるはず。松下村塾ができた辺りから「学園もの」というコンセプトも生きてきた。 *2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11740381.html?_requesturl=articles%2FDA3S11740381.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11740381 (朝日新聞 2015年5月6日) (女が生きる 男が生きる)家庭と両立、半数が「壁」 女性衆院議員調査、41人回答 次いで多かったのは「家族・親族の反対」(17人)、「金銭的な問題」(16人)、「男性中心の地域社会」(16人)だった。「女性国会議員が増える必要があると思うか」には39人が「ある」と答えた。「女性であることや結婚・出産をしていること」が、「なんらかの形で政治活動を制約しているか」には、「している」が12人、「していない」は27人だった。同様に「有権者や政治家などから批判されたことはあるか」には、「ある」が14人、「ない」が26人。「女性であることや結婚・出産をしていること」が「どのように政治活動に生かされているか」は「女性や母親の思いを理解し、政策などに反映できる」と答えたのが32人の一方で、「あえて女性や母親であることをアピールしない」が10人、「自分が女性や母親であることで、支持を獲得している」が3人だった。「政治と家庭を両立するためには、何が必要だと思うか」は、「家族の理解・サポート」が30人で最も多く、「国会内保育所など育児環境の整備」(15人)、「女性議員への政党のサポート」(14人)と続いた。 <日本の女性管理職> *3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150328&ng=DGKKZO84890100W5A320C1TY5000 (日経新聞 2015.3.28) 役員への道、彼女らの場合 日本の会社役員の女性はまだわずかだ。役員までの道のりはどのようなものだったのか。後輩たちへの助言は? 役員の女性たちに聞いた。「中途採用で入社し社歴20年弱の50歳。既婚で子どもはいない」。日本経済新聞が行った調査から見える平均的な女性役員像だ。 ●3人に1人は新卒採用 とはいえ、50歳代が約半分を占めたが、30歳代後半もいる。約3人に1人は新卒採用で、中途採用組も役員で入社した人がいた一方で半分は役職なく入社していた。採用時の職種も総合職が65%と多いものの、一般職や事務職もあった。男女雇用機会均等法施行(1986年)前後に社会人になり、ロールモデルもいないこともあってか、社会人になった時点で「(転職を含め)ずっと働き続けるつもりだった」人は6割弱。「結婚を機に働くのはやめるつもりだった」(11%)「出産を機にやめるつもりだった」(16%)「結婚・出産を機にやめ、再就職するつもりだった」(3%)と、結婚や出産でやめる派も3割にのぼった。社会人になった時点で、課長相当職の管理職以上に昇進・昇格したいと思っていた人は2割弱。課長相当職になった頃にさらに昇進したい人は3割に増えた。 ●昇進とともにやりがい 昇進・昇格への意識が変わったきっかけを聞いたところ、現在は「さらに昇進したい」という50代の執行役員は「希望したわけでもなく管理職になったが、『仕事の大きさだけ成長する』『大きな仕事は面白い』『やりたいことは裁量が大きい方が実現しやすい』などを実感した」と回答。同様に、昇進とともに裁量ややりがいが拡大した経験を挙げた人が目についた。後輩の女性社員に管理職になることを勧めるかどうかでは、「勧めない」「あまり勧めない」を選んだ人はおらず、「適任と思う人には勧める」が68%、「全般的に勧める」が30%だった。その理由でも、やりがいや経験、成長の大きさを挙げた人が多かった。「適任と思う人に」とした理由は、「誰もが管理職になりたいわけではない」や「適任でない人に勧めても良い結果にならない」といった意見に大別された。「男女かかわらず勧める」としたのは「全般的に」派の方に多く、ほかに「背中を押してあげる必要がある人が女性の方に多いと思われる」との理由もあった。自分が役員になれた要因と、一般に女性が役員になるための要因をそれぞれ複数回答してもらった設問で、両者とも最も多かったのが「引き立てたり機会を与えたりする上司の存在」。自分では68%が、一般では73%が選んだ。謙遜の可能性もあるが、一般で70%と2番目に多かった「能力」は自分では35%と半分で、自分での2番目は「運」(57%)。「昇進意欲」は一般で46%が選んだが、自分では11%と少なかった。「女性活躍推進の追い風」は自分で38%、一般で22%が挙げた。各企業が女性登用の数値目標を設けることに「積極的に賛同しないが、やむを得ない」という人が一番多く8割が賛成・容認派だ。女性であることを「有利」(11%)「どちらかというと有利」(57%)と感じている人が、「どちらかというと不利」「不利」を大きく上回った。どのような時に感じるかでは、少数派であるがゆえの利点や活躍推進の追い風を有利と感じる半面、「日本は圧倒的な男性社会で対等に見られない」という声も目立った。 ●「子どもいない」7割 プライベートでは未婚が4割と、日本人女性の50歳までの未婚率1割に比べ高い。また子どものいる人は27%。労働政策研究・研修機構による2012年の調査では企業の部課長の男性の8割に子どもがいたことと比べると、女性は仕事と家事・育児の両立が難しかったことがうかがえる。実際、子どものいる人に育児を主にどのようにしてきたか聞いたところ、「シッターなど経済的に対処してきた」と答えた人が一番多く、次いで多かった「親(義理の親も含む)の協力が大きかった」を合わせると7割を占め、夫婦以外の助けも活用していた。リクルートワークス研究所の石原直子主任研究員は「欧米でもスポンサー(引き立てたり機会を与えたりする上司)の存在が重要とされており、日本の役員の女性たちが同じことを強く感じている点が興味深い。スポンサーがつくには、与えられた仕事で成果を出し、それを高い地位にある人にきちんと認めてもらうことが大事だ」と話す。調査は2月下旬から3月中旬、日経リサーチが2月現在の全上場企業を通じ女性役員(会社法上の社内役員と執行役員)に調査を依頼、インターネットで37人の回答を得た。 *3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150423&ng=DGKKZO86027390T20C15A4EE8000 (日経新聞 2015.4.23) 数字で知る日本経済2(2)女性管理職30%目標に 意識変え人手不足補う 自分の会社の役員や管理職に女性が何人いるかを思い起こしてみよう。まだまだ男性中心の日本の会社。こうした現状を変えることが日本経済の課題になっている。「女性が輝く社会をつくる」。安倍晋三首相はあの手この手で働く女性を後押ししている。保育所を増やす。残業や転勤がないタイプの正社員制度を広げる。いずれも子育てと仕事を両立しやすくするのが狙いだ。いまは働く女性の6割が、最初の子どもを産んだときに退職してしまう。政府は国民の意識を変えようと、2020年に管理職の30%を女性にする目標を掲げた。13年の実績はわずか7.5%。女性の採用や昇進を増やすよう企業に呼びかけ、欧米諸国並みに引き上げることを目指している。産業能率大学の新入社員アンケートを見ると、「管理職を目指す」という女性は29%しかいない。お手本になる先輩が増え、仕事を続けた場合のキャリアを見通せるようになれば、出産後に仕事を辞めてしまう人は減るのではないか。そんな効果を期待している。なぜ国が働く女性を増やそうと旗を振るのか。最大の理由は日本の人口が減り続けることで、経済を引っ張る労働者が少なくなってしまうからだ。働く意欲のある人は現在約6600万人。このままだと2030年には900万人減る。今よりも多くの女性が働くようになれば働き手の目減りを補うことができる。もっと女性の視点を生かして商品やサービスを改善すれば、今までにない良いモノが生まれ、消費が増えるのではないかという期待もある。日産自動車は新車の開発チームに女性が入り、長い爪でも開け閉めしやすいドアノブをつくった。戦後から高度成長期の日本の会社では、女性は結婚したら退職するのが当たり前という風潮があった。男性と同等の戦力とはみなさず、女性だけ定年を30歳にする会社も珍しくなかった。雇用での男女差別を禁じる男女雇用機会均等法ができて今年で30年。企業も男性社員の認識も大きく変わりつつある。ただ管理職目標には摩擦もある。女性登用の数値目標をつくった大手企業の担当者は「中堅層に女性社員が少ないため、目標を達成するために女性を優先して登用している。男性社員からは不満も出ている」と明かす。第一生命経済研究所の的場康子氏は「女性の働き手を増やすには、企業は中長期的な視点で採用や育成に取り組む必要がある」と指摘する。 <間接差別> *4:http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000059264.pdf#search='%E9%96%93%E6%8E%A5%E5%B7%AE%E5%88%A5' 男女雇用機会均等法で禁止している間接差別の対象範囲拡大(要点のみ) 平成26年7月1日から、改正「男女雇用機会均等法施行規則」等が施行されます。これまで総合職の労働者を募集、採用する際に、合理的な理由がないにもかかわらず転勤要件を設けることは、「間接差別」として禁止されてきました。 ●「間接差別」となるおそれがあるものとして禁止される措置の例 性別以外の事由を要件とする措置であって、他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるものとして省令で定めている措置(※以下の①〜③)を、合理的な理由なく、講じることをいいます。 ①労働者の募集または採用に当たって、労働者の身長、体重または体力を要件とするもの ②コース別雇用管理における「総合職」の労働者の募集または採用に当たって、転居を伴う転勤に応じることができること(「転勤要件」)を要件とするもの ③労働者の昇進に当たって、転勤の経験があることを要件とするもの ②労働者の募集もしくは採用、昇進または職種の変更に当たって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とするもの ●事業主の皆さまへ すべての労働者の募集、採用、昇進、職種の変更をする際に、合理的な理由がないにもかかわらず転勤要件を設けることは、「間接差別」として禁止されます。 PS(2015年5月13日追加):*5のように、市役所や教員の場合は、男女とも法律通りに育休をとり、一人で子育てする時間の苦労を味わうと、その後のサービスの改善に活かされて仕事にも有用だろう。これは、幼い子の安全も配慮すべき自動車、住宅、家具、電化製品、公共交通機関など他の産業でも同じだ。また、高齢の男女も排除せずに勤務させた方が、スイッチや説明書を高齢者にもわかりやすくするなど、これから人口の割合が増える高齢者のニーズを先取りした製品やサービスが作りやすいと考える。 *5:http://qbiz.jp/article/61982/1/ (西日本新聞 2015年5月13日) 部下の育休取得率アップでボーナスもアップ!? 北九州市がイクボス宣言へ 部下の仕事と家庭の両立を応援する上司「イクボス」を目指し、北九州市の管理職約560人が19日、“イクボス宣言”をする。研修会で育児休業を取りやすい環境づくりなどを学び、その実践度をボーナスの査定に反映させる。子育て環境の向上や女性の活躍促進につなげたい考えだ。市によると、宣言するのは課長級以上の全員で、政令市で初の試み。「私生活の時間を取りやすいよう、会議の短縮や書類の削減などを進める」「両立のための支援制度の利用を促す」など、イクボス10カ条をまとめており、19日に式を行って参加者が宣誓する。7月には研修会を開き、意識向上を図る。各管理職は、部下の育休取得や時間外勤務の削減について1年間の目標を立て、年度末に達成度を確認。結果は人事考課の材料となり、部下の意見を評価に加味することも検討する。市は、2013年度に6・1%だった男性職員の育休取得率について、19年度までに20%に引き上げるとしており、イクボスが目標達成を後押しする。
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2015,05,07, Thursday
2011.3.16福島第一原発 汚染範囲 2015.5.5東京新聞 2015.4.17佐賀新聞 *1-4 (1)経産省の2030年電源構成比率目標における恣意性と環境意識の低さ *1-1のように、東京新聞が、5月4日の社説で、経産省が2030年の電源構成目標を液化天然ガス(LNG)27%、石炭26%、再生可能エネルギー22~24%、原子力20~22%と公表したことについて、「再生可能エネルギーを抑え、原発利用を最大限に見込んで原発再稼働に頼るのでは、日本の未来は見えない」としているが、全くそのとおりだ。 何故なら、これは、再生可能エネルギーという日本がトップランナーの先端技術を抑え、著しい公害をもたらす古い技術に逆戻りする政策だからだ。さらに、温室ガス削減目標を2030年までに2013年比で26%としたのも、クリーンでスマートなエネルギーを発展させる意欲に欠ける低い環境意識である。 また、*1-2のように、毎日新聞は4月29日に、「原発ホワイトアウト」を書いた若杉冽氏に、2030年の原発割合を20〜22%とする政府案について聞き、「①原発事故前に戻ったようでびっくり」「②事故前に低く見積もられてきた原発のコストをきちんと見直さず、有識者委も作られたシナリオを追認するだけで茶番」「③『原発やむなし』の空気は電力会社が巨額の資金で政治家を動かす仕組みの下でできており、献金者等の名前の透明化が必要」としている。 その様な中、*1-3のように、フランスでさえ、エコロジー省管轄の環境エネルギー管理機関(ADEME)が、「2050年に原発ゼロは実現可能」とする報告書をまとめたそうだ。報告書は、「2050年の電力供給を再生エネで全て賄った場合と原子力5割・再生エネ4割で賄った場合の費用は同水準になる」と結論づけており、再エネも普及・進歩して大量生産されればコストが下がるため、それが当たり前である。 (2)鹿児島地裁の結論ありきの再稼働差止却下について *1-4のように、九電川内原発1、2号機(鹿児島県)の再稼働差し止めを却下した鹿児島地裁の決定内容は、上図のように、主な論点とされた避難計画や巨大噴火リスクに関する事実認定に大きな問題のあることが浮かび上がったそうだが、全くそのとおりだ。 鹿児島地裁は、①原発の新規制基準に不合理な点はない ②避難計画の具体化や物資の備蓄も進んでいる ③多数の専門家が巨大噴火の可能性は小さいとしている などとした。しかし、②について、鹿児島地裁は鹿児島県が調整システムを整備して迅速な避難先の変更に備えていると認定したものの、地区ごとに避難先が指定されている30キロ圏内の住民でさえ、風向きによっては避難先施設が放射能汚染で使えなくなる可能性があり、その場合の対応は殆どなされていなかった。 また、③の巨大噴火について、鹿児島地裁は、「九電の火山監視の手法や能力に、専門家から異論はなかったため問題ない」としたが、その専門家とされる当の東大地震研究所の中田節也教授らは、「曲解された」「事実誤認だ」としているのである。 そのような中、*1-5のように、桜島の爆発的噴火は、今年の4カ月余りで昨年1年間の450回を超え、気象台は活動が活発化しているとしている。2013年8月18日には、桜島の昭和火口で噴煙の高さが5千メートルに達する噴火が発生し、鹿児島市などに大量の灰が降って交通機関に影響が出ている。 (3)日本のメディアは、まだフクシマの真実を語っていない *2-1のように、西日本新聞が「全電源喪失の記憶 証言・1F汚染」という特集で、2011年3月15~16日にフクシマ原発事故で起こったことを記載している。それによると、2011年3月16日、陸上自衛隊の中型ヘリで、東電社員が1〜4号機上空から状況を確認したところ、1号機は原子炉建屋上部が骨組みを残して天井が崩れ落ち、3号機は爆発でめちゃめちゃに壊れて原子炉の真上あたりから大量の白い煙がもうもうと上がり線量は毎時247ミリシーベルトを記録したそうだ。そして、これは1~3号機の使用済核燃料プールは水で満たされておらず、3号機は水素爆発ではなく原子炉爆発だったことを示す。 しかし、こうなってしまってから原発に水をかけても焼け石に水なのだが、*2-2のように、ヘリは上空90メートルより下がると毎時200ミリシーベルトを超えるため、高度300フィート(約91メートル)を20ノット(時速約37キロメートル)で飛びながら3号機に水をかけた。しかし、原発にはあまりかからず、やはり効果はなかった。 ビデオニュース・ドットコムでは、*2-3のように、元京都大学原子炉実験所助教は「東電が計画している格納容器を補修して水を張り、メルトダウンした核燃料を上からつまみ出す方法は放射線量が高くて不可能で、格納容器のどこに穴があいているかを調べることさえ困難な状態」「そのため、福島第一原発はチェルノブイリ原発のように石棺で封じ込める以外に収束させる方法はない」としている。 しかし、上の写真や*2-1、*2-2の1~3号機に関する記述から、「石棺を作成する前提として1~3号機の使用済核燃料プールに残る1,393体以上の使用済核燃料を安全な場所に移す必要がある」というのは、まず使用済核燃料プールにどれだけの使用済核燃料がどういう形で残っているかに関する正確な情報が必要なのである。 (4)原発による公害について ← 憲法に環境権など作らなくても、現行憲法で「基本的人権(11条)」「個人の尊重と幸福追求権(13条)」「生存権(25条)」「財産権(29条)」などが規定されており、政府がこれを守る意志があるのか否かがポイントなのである *3-1のように、2011年の東電福島第1原発事故以降、北関東でオオタカの繁殖成功率が低下しており、その要因は空間線量の高まりと分析されているが、オオタカの餌は地面に住む野生動物が多いため、土壌の放射能汚染により餌となる動物が汚染され、食物からの内部被曝や巣の材料の汚染で繁殖成功率が下がった可能性が高い。 また、*3-2のように、避難指示区域からの避難者や区域外の自主避難者、住民らの訴訟を支える「原発事故被害者支援・全国弁護団連絡会」は、原告数が2015年4月末現在で計9992人に達したと発表した。殆どの訴訟が国家賠償法に基づいて国も訴えている。これまでの公害裁判では、沖縄県の米軍嘉手納基地の周辺住民が2011年に騒音被害などを訴えた第3次訴訟の原告数が2万人を超えており、福島の原発事故も異例の大規模な集団訴訟となるそうだ。 (5)日本の世論 *4-1のように、南日本新聞社が、九電川内原発1、2号機(薩摩川内市)の再稼働をテーマに、鹿児島県内で実施した電話世論調査によると、再稼働に「反対」「どちらかといえば反対」と答えた人が計59.9%、「賛成」「どちらかといえば賛成」と回答した人が37.3%だった。 また、*4-2のように、大間原発(青森県大間町)建設差止訴訟が争点となった北海道函館市長選でも、現職の工藤氏(65)が再選を果たし、市民は訴訟による原発差し止めを選択している。 <経産省・裁判所の恣意性> *1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015050402000137.html (東京新聞社説 2015年5月4日) 15年後の電源 まだ原発に頼るのか 経済産業省が二〇三〇年に目指す電源の種類別の発電比率案を公表した。再生可能エネルギーは抑え、原発利用を最大限に見込んだ。原発再稼働に頼るのでは、日本の未来は見えない。公表された目標は、液化天然ガス(LNG)が27%、石炭が26%、再生可能エネルギーが22~24%、原子力が20~22%などとなっている。省エネと再生可能エネルギーで、二酸化炭素(CO2)の排出を減らすのが狙いだ。この案を基に、先月三十日、温室ガス削減目標が三〇年までに一三年比で26%と決まった。発電比率案はその二日前の有識者会合で了承された。再生可能エネルギーの割合が低いとの意見もあったが、事務方が「現実的な数字」と説明しただけで、議論されることはなかった。分厚いパブリックコメントの資料は無視され、坂根正弘委員長の「時間になりました」という言葉で終了。原案は一字一句変わることはなかった。「原発は稼働から四十年で廃炉」の原則を守れば、三〇年には発電比率が14~15%まで下がる。ある委員は「時間がたてば新増設の話もできる」と言った。実際には、原発は建設を計画してから運転開始まで長い年月がかかる。新増設は「現実的な話」ではない。20%超の目標は、老朽原発を四十年を超えて稼働させる余地を残すための感が否めない。再生可能エネルギーを導入すると電力料金が高くなるので、原発を使うという方針だが、これも疑問だ。計算には実際の原発ではなく、モデルプラントを使った。発電コストは三〇年で「一〇・一円以上」。各電源の中でもっとも安いが、「以上」と付くのは原発だけだ。「青天井ではないのか」と疑問を呈した委員もいたが、上限が示されることはなかった。再稼働に際しては、個々の原発の発電コストの公開を求めたい。リスクがゼロではなく、被害は電力会社だけでは負いきれないのだから、当然の要求だと考える。福島第一原発事故調査委員会(国会事故調)の黒川清委員長は「事故は『変われなかったこと』で起きた」と指摘した。有識者会合を見ていると、3・11後も政府は変わっていない。ただ、希望もある。同案は需要を過大に見込んでいるといわれる。原発の20%超は、需要の下振れと、家庭と職場での省エネで大幅に減らせるかもしれないのだ。国に頼ってもダメ、というのも3・11の教訓だ。 *1-2:http://mainichi.jp/select/news/20150429k0000m040155000c.html (毎日新聞 2015年4月29日) 電源構成政府案:若杉冽氏はこう見る 2030年の総発電量に占める原発割合を20〜22%とする政府案について、政官と電力会社の癒着を小説「原発ホワイトアウト」(講談社)などで描いた現役キャリア官僚、若杉冽(れつ)氏(ペンネーム)に聞いた。 −20〜22%とするには原発の増設か40年廃炉ルールを超えた運転延長が必要になる。 ◆今も十数万人が避難している福島の現状と本気で向き合っているなら、そんな数字にはならない。民主党政権時の「2030年代原発稼働ゼロ」は討論型世論調査で国民の声を聞いて決まった。その決定をひっくり返すなら、同じ手順を踏むべきなのに、結論を先に設定し、やらずに済ませようとしている。 −将来の電源構成を巡る経済産業省の有識者委員会の議論をどう見たか。 ◆原発事故前に戻ったようで、びっくりする。原発事故前に低く見積もられてきた原発のコストがきちんと見直されていない。経産省は「安い、安い」と言い続け、有識者委も作られたシナリオを追認するだけの場になっており、茶番だ。 −原発の再稼働に反対する声は多い。 ◆官僚や電力会社社員でも原発に懐疑的な人はいる。ただ、「原発やむなし」という空気は、電力会社が巨額の資金で政治家らを動かす仕組みの下でできており、個々の力では変えられない。献金者やパーティー券購入者の名前を少額でも公表する仕組みに変えるなど、透明化を図ることが必要だ。 *1-3:http://mainichi.jp/select/news/20150417k0000m030066000c.html (毎日新聞 2015年4月16日) フランス:「50年に原発ゼロ可能」公的機関が報告書 【パリ宮川裕章】フランス政府所管の公的機関が「2050年に原発ゼロは実現可能」とする報告書をまとめ、波紋を広げている。仏議会は25年までに電力の原子力依存率を現在の75%から50%に削減する「エネルギー移行法案」の最終審議中で、報告書は影響を与えかねない内容だからだ。この機関の14日のシンポジウムで議論される予定が中止となり、「政府からの圧力では」と仏メディアで臆測を呼んでいる。報告書は「2050年、再生可能エネルギー100%に向けて」と題し、仏エコロジー省管轄の環境エネルギー管理機関(ADEME)が作成。複数の仏メディアが報告書の全文を入手して報じた。50年の電力供給を再生エネで全て賄った場合と、移行法案が想定する原子力5割、再生エネ4割の電力構成の場合を比べて試算し、「費用は同水準になる」と結論づけている。試算は、11年の東京電力福島第1原発の事故後、仏国内で厳格化された原発の安全基準を根拠としている。58基の原子炉は19年以降、半数近くが40年の耐用年数を過ぎるが、運転期間延長のための保守・改修費が上昇。新型炉建設でも、主力として期待される「欧州加圧水型炉」(EPR)は建設中の北西部フラマンビルで度重なる事故を起こしており、建設費が当初見通しを大きく上回っている。一方、報告書は風力や太陽光などの再生エネの発電量を今後、約5割増加させることを前提とし、気象条件による不安定さなど再生エネの不利な点も考慮した上での試算結果と説明している。報告書はADEMEが14日からパリで開催中のシンポジウムで取り上げる予定だったが、プログラムが中止されたことで、政府内からの圧力の可能性を示唆する報道が相次いでいる。ルモンド紙の取材にロワイヤル・エコロジー相は「もし政府側がADEMEに政府の政策と矛盾がないよう求めたとしても、それは正しい判断だ」と答えた。同紙は「報告書によって政府の方針や、原発ゼロに反対のロワイヤル氏の態度が変わることはないだろう」と予想している。 *1-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015050502000123.html (東京新聞 2015年5月5日) 地裁差し止め却下 「川内」事実認定に問題 九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の再稼働差し止めを却下した鹿児島地裁の決定内容を、本紙が検証したところ、主な論点とされた避難計画や巨大噴火リスクに関する事実認定に大きな問題のあることが浮かび上がった。先月二十二日の地裁決定は、原発の新規制基準に不合理な点はなく、避難計画の具体化や物資の備蓄も進み、多数の専門家が巨大噴火の可能性は小さいとしているなどとして、住民らの訴えを退けた。しかし、地裁決定には、いくつもの疑問点がある。三十キロ圏の住民は、地区ごとに避難先が指定されているが、風向きによっては放射能汚染で使えなくなる可能性がある。地裁は、県が調整システムを整備し、迅速な避難先の変更に備えていると認定した。県に取材すると、風向きの入力で避難先施設の候補がリスト化される程度のもの。必要な人数を収容できるかや、汚染状況は一件一件、現地とやりとりする必要がある。入院患者らの避難先についても、病院の空きベッド数データがないため地道な確認が必要だ。半年前、避難者受け入れに向けた計画ができていなかった鹿児島県霧島市など十二市町に取材すると、指定先の学校や公民館などへの説明や、避難所の運営方法などの協議はいずれもされていなかった。一方、巨大噴火への備えについて地裁は、九電の火山監視の手法や能力に「専門家から異論はなかった」と問題ないと評価した。しかし、専門家とされた当の東大地震研究所の中田節也教授らからは「曲解された」「事実誤認だ」との声が上がっている。住民側は近く福岡高裁宮崎支部に抗告する予定だ。 *1-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/183228 (佐賀新聞 2015年5月3日) 桜島の噴火回数、はや昨年超え、気象台が注意呼び掛け 鹿児島地方気象台は3日、活発な火山活動が続く桜島(鹿児島市)の爆発的噴火が、ことし4カ月余りで昨年1年間の450回を超えたと明らかにした。気象台は「活動が活発化している」として、降灰や噴石に注意するよう呼び掛けている。気象台によると、爆発は4月23日、400回に達し、5月2日午後11時50分ごろに451回目を観測した。桜島の爆発的噴火の最多記録は2011年の996回。桜島の昭和火口では13年8月18日、噴煙の高さが5千メートルに達する噴火が発生、鹿児島市などに大量の灰が降り、交通機関に影響が出た。 <フクシマ> *2-1:http://qbiz.jp/article/61204/1/ (西日本新聞 2015年5月6日) 【全電源喪失の記憶 証言・1F汚染】第1章(8) 水は、あった 3月16日午後4時半ごろ、東京電力福島第1原発上空に北側から進入した陸上自衛隊のUH60中型ヘリコプターは5、6号機を通り過ぎ、1〜4号機の東側に差し掛かっていた。少し前まで降っていた雪はやみ、空は晴れていた。第1原発第1保全部の山下理道(43)は変わり果てた構内の様子に言葉を失った。東電社員が上空から原発の状況を確認したのは事故後、これが初めてだった。水素爆発した1号機原子炉建屋上部は骨組みを残して天井が崩れ落ち、建屋の周囲には無数のがれきが散乱していた。ヘリはゆっくりと進む。3号機は爆発でめちゃめちゃに壊れ、がれきが積もった建屋上部に、使用済み核燃料プールがある5階部分が見えた。ビデオカメラを片手に窓からのぞき込むと、原子炉の真上あたりから大量の白い煙がもうもうと上がっていた。なんだ、これは…。原子炉の構造に詳しい山下は背筋が寒くなった。炉内から何かが出てきているのではないか…。「この時は嫌でしたね。すごく気持ち悪い光景ですから」。ヘリは3号機上空で線量を測定するため、しばらくホバリング(空中静止)した。線量は毎時247ミリシーベルト。山下は生きた心地がしなかった。こんなところで止まんないでくれよ―。3号機だけではない。隣の2号機だって、いつ爆発するか分からないじゃないか、と山下は考えていた。ヘリは再びゆっくりと空中を移動する。4号機建屋からは灰色の煙が上がっていた。4号機ではこの日早朝に火災が確認されていた。煙は何かの油が燃えたのではないかと、山下は推測した。3号機に比べれば、恐怖を感じることはなかった。その時、山下の目が建屋の崩れた壁の合間の一点にくぎ付けとなった。風に揺れる水面に西日が当たりキラキラと反射していた。プールだ。水が、あった!米政府が強い懸念を抱いていた4号機プールは水で満たされていた。 *2-2:http://qbiz.jp/article/61207/1/ (西日本新聞 2015年5月7日) 【全電源喪失の記憶 証言・1F汚染】第1章(9) 「原発は最悪の状況」 3月16日午後4時ごろ、JR仙台駅の南東約4キロ、仙台市若林区にある陸上自衛隊霞目駐屯地で、第1輸送ヘリコプター群(千葉県)の群長、大西正浩(49)の目の前を、機体の前後に大きなローター(回転翼)を付けたCH47大型輸送ヘリ2機が相次いで飛び立っていった。2機はつり下げたバケットと呼ばれる大きな容器に海水をくみ、東京電力福島第1原発の原子炉建屋に投下することになっていた。既に原発上空ではUH60中型ヘリが空間放射線量の測定を始めていた。東日本大震災と原発事故発生を受けて大西は12日、ヘリ部隊とともに霞目駐屯地に派遣された。以来、ほとんど寝ずに被災地での負傷者や孤立者の救助、緊急物資の空輸を指揮してきた。特に前日15日からは一睡もしていない。「原発に水かホウ酸、もしくはホウ酸溶液を投下するための実施要領の検討を始めてくれ」。大西にそう命令が下ったのは15日朝のことだった。ホウ酸が中性子を吸収し臨界を抑制する効果がある物質だということを、大西はこの時、初めて知った。予想外の任務だった。「原発は相当最悪な状況になっているんだなと感じました。起きていることに対応するのがわれわれの務めです。どうしたらいいか、必死で考えました」。UH60は15日にも3号機上空600メートルから下方へと高度を変えながら放射線量を測定していた。大西はデータを入手し、夜を徹して分析した。線量は高度を下げるほど高くなり、上空90メートルより下がると毎時200ミリシーベルトを超えることが分かった。大西が実施要領をまとめ終えた時には東の空がうっすらと明るくなっていた。大西の結論では高度300フィート(約91メートル)を20ノット(時速約37キロメートル)で飛ぶことが、乗員の被ばくを抑えつつ、一定の効果を上げられるぎりぎりのラインだった。これ以上遅い速度ではヘリは安定して飛ぶことができない。作戦決行か否か。間もなく現場上空から連絡が入るはずだった。 *2-3:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150429-00010000-videonewsv-soci (ビデオニュース・ドットコム 2015年4月29日) 福島第一原発は石棺で封じ込めるしかない 小出裕章・元京都大学原子炉実験所助教が会見 原子力の研究者でありながら原発の危険性を一貫して訴え、この3月に京都大学を定年で退官した元京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏が4月25日、外国特派員協会で会見し、福島第一原発はチェルノブイリ原発のように石棺で封じ込める以外に、これを収束させる方法はないとの考えを示した。小出氏は、東京電力が計画している、格納容器を補修して水を張り、メルトダウンした核燃料を上からつまみ出す方法について、放射線量が高くてそのような作業を行うことは不可能だと指摘。東電は溶け落ちた炉心の一部は圧力容器の底に残り、残りは格納容器の底にたい積していると主張しているが、実際は格納容器内に広く散乱している可能性が高いため、取り出すことが難しい。しかも、格納容器のどこに穴があいているかを調べることさえ困難な状態で、そのような方法ではいつまでたっても廃炉にすることはできないと語った。その上で小出氏は、溶け落ちた燃料の取り出しは出来ない以上、チェルノブイリ原発のように石棺で封じ込めるしかないとして、まずは汚染水を大量に生み出している現在の水冷方式を諦め、金属冷却か空冷を採用し、上からカバーをすることで放射能の飛散を防ぐ必要があるとの見方を示した。また、その際に地下水の流れを止めるために、地下ダムが必要になるとも指摘した。ただし、石棺を作成する前提として、まずは1~3号機の使用済み燃料プールに残る1,393体にのぼる使用済み核燃料を安全な場所に移す必要があるが、その作業に何年かかるのかさえ見通しが立っていないとして、福島原発が「アンダーコントロール」と考えるのはまったくの間違いだと語った。 <原発公害> *3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015042201001899.html (東京新聞 2015年4月22日) 「原発事故でオオタカ繁殖低下」 高線量影響か 11年の東電福島第1原発事故以降、栃木県など北関東で国内希少野生動植物種オオタカの繁殖成功率が低下していることが、名古屋市立大とNPO法人「オオタカ保護基金」(宇都宮市)の研究で判明。要因を統計解析し、空間線量の高まりが大きく影響したと推計している。餌の変化など他の要因の影響は小さかった。事故前の推計繁殖成功率78%が、事故後は50%近くに低下。時間経過に伴い空間線量は下がり成功率も回復すると予想されたが、12、13年とますます悪化した。市立大の村瀬准教授は「放射線の外部被ばくだけでなく、餌を通じて内部被ばくの影響を受けた可能性もある」と指摘する。 *3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11739289.html?_requesturl=articles%2FDA3S11739289.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11739289 (朝日新聞 2015年5月5日) 原発賠償原告、1万人規模に 福島第一事故 訴訟を支える「原発事故被害者支援・全国弁護団連絡会」によると、原告数は4月末現在で計9992人に達した。今年に入っても約900人増えており、1万人超えは確実だ。ほとんどの訴訟が国家賠償法に基づいて国も訴えている。これまでの公害裁判では、沖縄県の米軍嘉手納基地の周辺住民が2011年に騒音被害などを訴えた第3次訴訟の原告数が2万人を超える。福島の原発事故をめぐっても異例の大規模な集団訴訟となる。原告は避難指示区域からの避難者や区域外の自主避難者、住民ら。福島県双葉郡などからの避難者が2012年12月に起こしたのを皮切りに、札幌から福岡まで20地裁・支部で25件の裁判が起こされている。原発事故の賠償をめぐっては、政府の原子力損害賠償紛争審査会が賠償の指針をまとめ、それに沿って東電は、避難生活への慰謝料や営業損害などの賠償金を支払ってきた。しかし、原告らは、これに納得せず、放射線量率が下がるまでの慰謝料や、「ふるさと喪失」への慰謝料などを求めている。 <日本の世論> *4-1:http://373news.com/modules/pickup/index.php?storyid=66018 (南日本新聞 2015年5月1日) 川内再稼働、59%が反対 南日本新聞世論調査 南日本新聞社が、九州電力川内原発1、2号機(薩摩川内市)の再稼働をテーマに鹿児島県内で実施した電話世論調査によると、再稼働に「反対」「どちらかといえば反対」と答えた人は、前年の調査に比べ0.4ポイント増の計59.9%に上った。「賛成」「どちらかといえば賛成」と回答した人は、0.5ポイント増の計37.3%だった。 *4-2: http://mainichi.jp/select/news/20150427k0000m010056000c.html (毎日新聞 2015年4月26日) 統一地方選:「大間差し止め」現職が再選…函館市長選 国とJパワー(電源開発)を相手取った大間原発(青森県大間町)の建設差し止め訴訟が争点となった北海道函館市長選は、現職の工藤寿樹氏(65)=無所属=が、訴訟の取り下げを掲げた新人で元衆院議員秘書の広田知朗氏(54)=同=を破り再選を果たした。地方自治体が国を訴える異例の訴訟への民意を問う初の選挙だったが、市民は訴訟による原発差し止めを選択した。広田氏は大間原発建設反対を掲げながらも、訴訟で市が国と対立していることについて、「国とコミュニケーションが取れなくなっている」と批判。保守層の一部有権者からは「補助金が減らされないか」などの懸念も出ていた。工藤氏は「私は『反原発』『脱原発』の立場で発言したことはない。大間原発の建設を凍結しろと言っている」と、原発再稼働を進める自民党の支持層に配慮。広田氏の主張については「訴訟の取り下げは、建設を容認することと同じだ」とけん制し幅広い有権者に浸透した。 PS(2015.5.8追加):*5-1のように、太陽光発電は、「太陽光の発電量が増えて電力の需給バランスが崩れると停電が起きる可能性がある」として何の工夫もなく出力抑制され、*5-2のように、サニックス(福岡市)は主力の太陽光発電関連部門の不振で希望退職を約600人募ることになった。これは、*1-1のように、経産省が電源構成比率を決めたために起こったことで、太陽光発電の普及には妨害となるが、種子島にはJAXAの宇宙センターもあり、科学技術先進地域であるため、離島のスマートグリッドを完結させたり、それでも余った電気で水素を作ったり、やれることは多いと考える。また、種子島では電気自動車か燃料電池車しか走らせないことにすると、鉄砲のように、それが全国に広がるかもしれない。 *5-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11741708.html (朝日新聞 2015年5月8日) 再生エネ、送電停止を要請 九電、種子島の業者に 全国初 九電によると、500キロワット以上の発電設備をもつ島内の事業者8社のうち1社に対して4日に出力制御を指示し、5日午前9時から午後4時まで発電を停止させた。種子島は九州本土と送電網で結ばれておらず、好天で太陽光の発電量が増えて電力の需給バランスが崩れると、停電が起きる可能性があるという。FITをめぐっては、電力の買い取り条件を厳しくした新ルールが1月に施行されたが、今回は補償なしで年間30日まで出力抑制を求められる旧ルールに基づいて九電が停止を求めた。今後も天候や需要予測をもとに、8社に順番に送電を止めてもらう計画だ。九電は先月28日、天候次第で種子島の発電事業者に送電停止を求める、と発表していた。他の離島でも太陽光発電設備の建設が増えており、送電停止の対象地域が広がる可能性がある。 *5-2:http://qbiz.jp/article/61627/1/ (西日本新聞 2015年5月7日) サニックス、600人希望退職募集 太陽光不振、拠点も削減 サニックス(福岡市)は7日、主力の太陽光発電関連部門の不振を受け、希望退職を約600人募ると発表した。6月までにグループ従業員3625人(3月末時点)の2割近くに相当する人員を減らし、西日本地区の営業所の削減にも踏み切る計画。2015年3月期連結決算の純損益の赤字額が従来予想の1・8倍の49億9千万円に膨らむとの見通しも公表した。同社によると、希望退職は6月22日付で、5月14〜29日に募集する。対象者には特別退職金約50万円を加算支給し、再就職も支援する。九州など西日本地区(中部地方を含む)の太陽光関連部門の営業所も統廃合を進め、現在より20カ所少ない45カ所に減らすことで、年間約26億円の経費削減を見込んでいるという。15年3月期の連結業績予想も下方修正。売上高は従来予想比1・4%減の956億3千万円となり、経常損益の赤字額は従来予想の2・4倍の34億4千万円に膨らむとしている。同社は、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度が12年7月に始まったのを受け、太陽光発電設備の販売・施工業で業績を拡大した。しかし九州電力などが昨秋以降、急増した太陽光の新規契約を一時中断するなどしたことで事業環境が一変、事業の整理を余儀なくされている。 PS(2015.5.9追加):日本政府がくだらないことに時間を費やしている間に、中国は、*6のように、米国で電気バスと動力電池を本格的に製造し始めた。誰も待ってはいない。これも、“バスに乗り遅れないように”、あわてて追随する? *6:http://qbiz.jp/article/61701/1/ (西日本新聞 2015年5月8日) BYDの電気バスが日本市場に続いて米国市場へ進出 4月30日、米国ロサンゼルス市でロサンゼルス郡都市圏輸送当局( LACMTA)に大型電気バスK9を引き渡す比亜迪(BYD)の董事長兼総裁の王伝福氏(中央)。中国の独自ブランドである比亜迪は2011年10月、ロサンゼルスに北米本社を設立し、2013年にはロサンゼルス北部ランカスターに中国企業としては初めて独資で完全電気路線バス工場と動力電池工場を建設した。2014年には初めての米国現地生産の大型電気バスを生産、また米国運輸省の安全テストを通過し、2015年には米国で世界初の完全電気長距離観光バスを生産した。現在、比亜迪は多くの米国の顧客と大型電気バスk9、電気SUVのe6といった一連の新エネルギー自動車の生産と販売の契約を結んでおり、米国という伝統的な自動車王国に中国が作った自動車が進出するという夢を実現した。新華網が伝えた。 PS(2015.5.9追加):*7のように、川内再稼働反対デモは、鹿児島市の照国神社前を出発して、熊本市、熊本県水俣市、福岡県久留米市、太宰府市を通り、九電本店のある福岡市までの311キロを市民が歩くリレーにするそうで、深刻さの中にも、どこか歴史の重みと楽しさがありますね。 *7:http://qbiz.jp/article/61723/1/ (西日本新聞 2015年5月9日) 川内再稼働反対 311キロリレーデモ 16日、鹿児島から福岡へ向け出発 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に反対する鹿児島市の市民団体「ストップ再稼働! 3・11鹿児島実行委員会」は8日、鹿児島市から九電本店のある福岡市までの311キロを市民が歩いて、再稼働反対を唱える「リレーデモ」を実施すると発表した。「川内原発で事故が起きれば九州全域に関わる問題になる。反対の機運を九州各地で盛り上げて、その意思を九電に示したい」としている。デモは16日に鹿児島市の照国神社前を出発し、27日まで12日間の日程。日替わりで20人規模が参加し、再稼働反対を唱えながら国道3号を徒歩で北上する。熊本市、熊本県水俣市、福岡県久留米市、太宰府市など11カ所に宿泊し、地域住民と意見交換もする。27日午後に九電本店に到着し、原発30キロ圏での住民説明会を九電が主催するよう求める10万人分の署名を提出する計画だ。県庁で記者会見した実行委の向原祥隆事務局長は「311キロを歩き通し、再稼働の不当性を訴えたい」と決意を語った。
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2015,05,05, Tuesday
ADBとAIIB AIIB 2015.3.24NHKより 2015.4.18日経新聞より の比較 参加表明国 *1-1 *3-3 (1)最初は、AIIBの不透明性と中国の駆け引きに繋げる論調だった *1-1のように、中国が新しい国際金融機関AIIBの構想を発表した時、中国がAIIBの設立を目指す理由を、日本のメディアは、「①中国は自らを含む途上国の国際社会での発言権が拡大しないことに不満を強めている」「②そのため国際的な発言権の拡大と経済成長の後押しが中国の狙い」「③AIIBを通じてアジアでインフラ事業を進めることで中国企業の輸出を後押しし、自国の経済成長を図る狙いがある」とし、「④参加国を増やし、銀行の国際的な地位を高めたい中国は“時限戦術”に出た」「⑤国際金融をリードしてきた欧米や日本とこれに風穴を開けようという中国のAIIBを巡る駆け引きが激しさを増している」という報道ぶりで、中国を蔑みながら悪く言う論調が主流だったが、これは中国に対して失礼だ。 もちろん尖閣諸島の領有権問題で日本は中国と対立しているが、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という感情論は、敵国を「鬼畜米英」としていた時代から進歩がなく、他国を説得することができないため、日本のためにもならない。 そのような中、*1-2で、麻生財務相が「(日米が主導する)アジア開発銀行(ADB)の金で開発をやる場合でも日本企業が受注する比率は0.5%ぐらい」「AIIBへの参加・不参加にかかわらず、中国主導になった場合の比率はもっと下がり、AIIB関連の入札で日本企業が受注するのは難しい」と言っているのは、私もそのとおりだと思う。何故なら、日本も自らが主導するADBではできるだけ日本企業にチャンスを与えようとするが、それでもADBが資金協力した工事契約でさえ日本企業の受注割合は2013年で0.21%で中国企業の受注割合は20.9%であり、この差は価格競争で敗れた結果だからである(従って、物価上昇・賃金上昇は、日本企業の輸出競争力を落としていることがわかる)。 また、*2-1のように、日米は、アジアの発展途上国の経済発展を支援する国際金融機関ADBを主導しており、同じように重要性を感じた場合には、ADBがAIIBと協調融資することができ、「創設メンバー」になっても多くの国が参加している中国中心のAIIBで日本企業に有利な融資をすることなどできるわけがないため、英国、オーストラリア、ドイツが続々とAIIBに参加表明したからといって、「孤立」や「裏切り」などと考える必要はなく、意見が一致する場合は協調融資すればよいと考える。 なお、*1-3に、「AIIBはいかにして運営ルールの懸念に答えるか、中国の能力不足を疑う声も聞こえてくる」と書かれており、「①AIIB運営で透明性が保たれるか?」「②投資対象となるインフラプロジェクトは、環境保護の面で厳しい融資条件を満たすことが可能か?」「③管理能力を備え、合理的な制度設計や管理体制を実現し、リスク管理の水準を保つことができるのか?」といった点に疑問が集中しているとのことだが、日米が中心となっているADBは①②③を満たしているのか、「Time is money(だから利子がある)」の金融分野で、時間稼ぎや不作為の弁解として“環境影響評価”を使っており、本当に環境を大切にしているのではないのではないかなどを、*4-1、*4-2から、しっかり反省すべきである。 (2)融資の内容について (1)でも述べたように、また*2-1のとおり、アジア開発銀行(ADB)とアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、意見の一致する融資については協調融資を行えばよい。これは、日本国内でも、日本政策投資銀行、日本輸出入銀行、国際協力銀行、農林中央金庫、一般金融機関等があり、それぞれ目的に応じた融資を行いつつ、融資に関する意見が一致する場合は協調融資をしているのと同じであり、一行しか存在してはいけないということはないのである。 また、*2-2のように、政治リスクのある国にも日本からのインフラ投資を拡充するのは必要なことで、その場合は官民一体で行わなければ政治リスクに対応できず、国際協力機構(JICA)とアジア開発銀行(ADB)との協力は、これまでもやってきたことである。そして、中国の現代版シルクロードを構築する「一帯一路」構想も、アジアの魅力を増すのに面白く、その東端は日本なのだ。 なお、*2-3のように、日本のトップランナーである北九州市は、ベトナムのハイフォン市で環境マスタープランを策定し、「工場の排熱を利用した発電」など3事業については環境省が「国際協力枠」として本年度予算で調査費を計上し、北九州市は設備納入やメンテナンスで地場企業の「インフラ輸出」を期待しているそうだ。 その経緯は、ベトナム政府が2020年までに二酸化炭素(CO2)の排出量を「2010 年比20%削減」を目指しており、人口約190万人のハイフォン市は環境マスタープラン策定の協力を北九州市に要請し、①セメント工場の排熱を回収して蒸気タービンを回す発電 ②鋳物工場団地で金属を溶かす石炭炉の電炉化 ③世界遺産登録を目指す離島カットバ島での太陽光発電の導入と電気バス20台の運行 など、CO2削減効果が期待される3事業に環境省が調査費として4,500万円を計上することになったことである。そして、このような新しいインフラの敷設事業は、日本の他の都市や民間企業もできそうだ。 (3)欧州諸国が参加表明すると、「バスに乗り遅れる」という論調に変わった *1-1、*3-1に、「イギリスの参加表明で世界に衝撃が走った」と記載されているが、その後、同じG7のドイツ、フランス、イタリアが相次いでAIIBへの参加を表明し、さらに金融立国のルクセンブルクやスイスも追随し、日本政府はようやく事態の深刻さに気づいたと書かれている。しかし、「他国が参加したのに、日本が参加しなかったから事態が深刻だ」とするのは、単なる「バスに乗り遅れてはいけない」という論理にすぎず、反省点が的を外れている。 一方、*3-2に、日米がAIIBを牽制し、日米欧と新興国の20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議で、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)と世界銀行などの既存の国際機関による協調融資が重要との認識で一致したと書かれているが、それでよいだろう。また、*3-3のように、「新興国の発言権を高める国際通貨基金(IMF)改革の実現に米国の批准を強く促す」と明記し、AIIBに新興国の期待が集まる背景には、経済が急伸した新興国の既存の国際機関での発言権が低く据え置かれていることへの不満があるそうで、聞けばもっともなことである。 (4)日本人は「本質は何だから、どうすべきか」という真の議論をしない人が多い このように、日本人は、「本質は何だから、どうすべきか」という真の情報に基づいたまともな議論をせずに、感情論や廻りがどうしているかを基準として物事を決めようとする人が多いのが欠点である。それが欠点である理由は、それでは自分の行動や立ち位置を論理的に説明することができず、集団的に意思決定を誤りがちである上、誰も納得させることができないからだ。 *1-1:http://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2015_0324.html (NHK 2015年3月24日) AIIBを巡る駆け引き 最近、このことばをニュースで見かける機会が増えたと感じる方も多いと思います。中国が提唱する新しい国際金融機関の構想ですが、この銀行に参加するかしないか、世界の国々の判断が、今注目を集めているのです。とりわけ、これまで一貫して参加に慎重だったヨーロッパの国々の間で”異変”が起きています。中国が目指す銀行設立のねらいと日本をはじめ各国の思惑を、経済部・財務省担当の中山俊之記者と中国総局の井村丈思記者、ロンドン支局の下村直人記者が解説します。 ●イギリス参加表明の衝撃 3月12日、世界に衝撃が走りました。イギリス政府が、G7=先進7か国で初めて、AIIBへの参加を表明したのです。オズボーン財務相は声明で「世界最速の成長市場であるアジア・太平洋地域との結び付きを強める」と強調しました。 ●“アジア支援”の大義名分 イギリスが突然、参加を表明したAIIB。中国が設立を提唱し、アジアの発展途上国のインフラ整備を支援するため、鉄道や高速道路などの投資や融資を行うとされています。アジアは世界経済のけん引役として成長が期待されていますが、各国のインフラ整備の資金が足りないと言われています。2020年までに年間100兆円近い投資の需要があるとの試算もありますが、アジアの開発支援をリードしてきた「ADB=アジア開発銀行」など、既存の機関だけでは、その膨大な資金需要に応えきれていないという指摘が出ています。このため、AIIBが資金を提供すること自体は、既存の国際機関も評価しています。問題は運営の方法です。中国側の説明では、AIIBは本部を北京に置く計画で、12兆円余りの資本金の出資比率は、GDP=国内総生産の大きさに応じて、中国が50%まで出資できるとしています。具体的な銀行の枠組みは今後の交渉次第ですが、設立を提唱する中国が大きな影響力を持つのは間違いありません。 ●AIIB主導、中国のねらいは 中国がAIIBの設立を目指す理由は大きく2つあります。1つは、国際的な発言権の拡大です。中国は今や世界第2の経済大国ですが、アメリカが主導する国際的な金融秩序の下、みずからを含む途上国の国際社会での発言権が思うように拡大しないことに不満を強めています。習近平指導部は、中国の影響力を強めようと、新しい国際的な枠組み作りに力を入れていて、なかでも各国の賛同を得やすいAIIBは重要な枠組みと位置づけられています。もう1つは、経済成長の後押しです。中国はこのところ景気が減速しています。ただ、成長の速度より質を重視する方針を掲げる中国政府としては、巨額の財政出動で景気を刺激する政策をとるのは難しいのが現状です。こうしたなか、AIIBを通じてアジアでのインフラ事業を進めることで、中国企業の輸出を後押しし、自国の経済成長を図るねらいがあるとみられます。 ●歓迎する途上国、慎重な先進国 去年10月、AIIBへの参加を希望する国々の代表が北京に集い、設立に向けた覚書を交わしました。東南アジアや中東などの21か国。南シナ海で中国と島々の領有権を争うフィリピンとベトナムも加わりました。しかし、日本とアメリカは、銀行をどう運営するのか明確になっていないなどとして参加に慎重な立場を表明しました。日本とアメリカが中心となって運営してきたADBとの役割分担がはっきりしない点も懸念されているのです。オーストラリアと韓国も、この時点では参加を見送り。中国が経済力を背景に、領土問題などで外交的な圧力を強めることをおそれた日米が、水面下で働きかけを行ったためとみられています。財務省の幹部は安どの表情を浮かべました。 ●中国の一手は 参加国を増やし、銀行の国際的な地位を高めたい中国は“時限戦術”に出ます。楼継偉財政相は3月6日の会見で「3月31日までに参加表明した国が創立メンバーだ」と発言。銀行の枠組み作りに加わるには、3月中に参加の意志を表す必要があるとして、各国に決断を迫ったのです。 ●イギリスはなぜ決断? これに反応したのがイギリスでした。そのねらいは中国の通貨・人民元の取り引きの囲い込みだとみられています。国際金融センターである「シティー」を抱えるイギリスは、貿易などで急速に存在感を増す人民元の海外取引の拠点になろうと、中国と金融面の協力を強化してきました。ただ、現実にはドイツやルクセンブルクなどと、その座を激しく争っています。イギリスの金融関係者は「この争奪戦に敗れれば、国際金融センターの地位を失いかねない」と、危機感をあらわにしていました。そこで、いち早く参加を表明することで中国に恩を売り、ライバルに差をつけたいというねらいがあったとみられます。 ●雪崩を打つヨーロッパ イギリスの決定は、ヨーロッパの流れを一気に変えました。17日には、同じG7のドイツ、フランス、イタリアが相次いでAIIBへの参加を表明したのです。さらに金融立国のルクセンブルクとスイスも追随しました。大手自動車メーカーなどを抱えるドイツとフランス。高級衣料品などの輸出産業が経済の柱となっているイタリア。ともに中国は重要な貿易相手であり、出遅れるわけにはいかない事情がありました。 ヨーロッパの景気低迷が続くなかで、各国の経済成長にとって重要な、いわゆるチャイナマネーを呼び込み、インフラ分野でのアジア市場への参入につなげたいというねらいもあったようです。 この“ドミノ現象”を、ある外交筋は「地理的に中国と離れているヨーロッパは、安全保障上の懸念も薄く、実利を重視した」と分析しました。また、中国にとっても、信用力のあるヨーロッパ各国が加わることで、AIIBが市場から資金を調達する際に高い格付けが得られる可能性が高まったという点で、大きな援軍になったと言えそうです。 ●揺らぐ日本 ヨーロッパの変化に頭を悩ませるのが日本です。AIIBが手がける投資に携われるのは参加国にかぎられるという見方もあり、日本が参加しなければ、日本企業が将来、工事に入札できないなど不利な扱いを受けるおそれもあるからです。24日、麻生副総理兼財務大臣は会見で、日本の参加には慎重な考えを改めて示すと同時に、組織運営の透明性が確保されればADBと協調していくことが望ましいという認識を示しました。これも、日本が置かれた微妙な立場を反映したものといえるかもしれません。それでも、今の支配的な見方は「仮に日本が参加しても、恩恵を受けることは現実的に難しい」というものです。銀行内での発言権を確保するためには一定の出資が必要ですが、国と地方を合わせて1000兆円に達する巨額の債務を抱える今の日本には、財政的な余力がかぎられているからです。日本は今後、アメリカと連携して対応を検討していくことになりますが、財務省の幹部はAIIBを巡る一連の動きについて、悲哀を込めてこう話しました。「第2次世界大戦後の、アメリカを中心とする世界の金融体制の1つの転換点とも言えるものだ。日本の国際的な影響力の低下は明らかだ」 ●新銀行に支持は広がるか AIIBへの参加を表明した国は、3月23日現在で33か国まで増えました。当面の節目である3月末に向けて、ほかの国々の対応が焦点となります。国際金融をリードしてきた欧米や日本と、これに風穴を開けようという中国。AIIBを巡る駆け引きが激しさを増しています。 *1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASH434QW7H43ULFA01J.html (朝日新聞 2015年4月4日) アジア投資銀参加見送り「マイナスない」 麻生財務相 日本が不参加の場合、AIIBが融資する案件の入札で日本企業が不利になるとの見方がある。これに対し、麻生氏は日米が主導するアジア開発銀行(ADB)を引き合いに出し、「ADBの金で開発をやる場合でも、日本企業が受注する比率は0・5%ぐらいだろう」と指摘。「中国資本になった場合、比率はもっと下がる」と語り、AIIBへの参加・不参加にかかわらず、AIIB関連の入札で日本企業が受注するのは難しい、との見方を示した。ADBが資金協力した工事などの契約を日本企業が受注した割合は、2013年で0・21%。一方、中国企業が受注した割合は20・9%で、日本企業が主に価格競争で敗れている。一方、麻生氏は「国際会議の場でAIIBが話題になることはあると思う」とし、5月にドイツで開かれる主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議の場などで協議するとの見通しを示した。 *1-3:http://qbiz.jp/article/60490/1/ (西日本新聞 2015年4月17日) AIIB、いかにして懸念に答えるか 15日、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設メンバーの顔ぶれが最終的に確定した。米国と日本の参加をめぐる論議や分析、動向が世界中から注目されたが、国際世論の注目が徐々に、今後のAIIBの運営ルールにシフトしていることは明らかだ。まさに「準備は整った。後は東風が吹く(最後の重要な条件が整う)のを待つのみ」という状態で、後はメンバー国がいかにAIIBを運営していくかにかかっている。国際世論はAIIBについて、「中国にとって大きな挑戦となる」と見なしている。さらには、中国の能力不足を疑う声も少なからず聞こえてくる。これらの疑問は、「今後のAIIBの運営において、透明性が保たれるのか?」「投資対象となるインフラプロジェクトは、環境保護の面で、厳しい融資条件を満たすことが可能なのか?」「管理能力を備え、合理的な制度設計や管理体制を実現し、リスク管理の水準を保つことができるのか?」といった点に集中している。確かに、中国にとって、AIIBのような多国で構成される国際金融機関を主導するのは今回が初めてだ。初めてのことに挑戦する時には、当然、さまざまな壁にぶつかる。だが中国には「克服できない困難はない」ということわざがある。ピンチはチャンス、成果を得るためには、挑戦を避けては通れない。挑戦は改革を後押しし、各方面がAIIB規約の制定を首尾よく行うことを促す。透明性は、中国がAIIB設立を提唱した当初から、最も多く、最も頻繁に取り上げられた問題のひとつだ。だが、注意深く見てみると、米国と日本が参加を見送った以外は、ほぼ全ての先進国が創設メンバーとなっている。このような多国で構成される国際金融機関が、不透明な状態でいることは難しく、もし不透明ならば、多くの先進国が自ら「自国は不透明」と宣言するようなものだ。また、広く関心が集まったのは環境問題だ。確かに、中国はこれまで「まず汚染、対策は後回し」という遅れた発展プロセスを経てきた。だが、今の中国は持続可能な発展を可能とする理論と実践を備えており、「金山銀山を求め、さらに、青山緑水(セイザンリョクスイ)を求めるのではない。「青山緑水こそが金山銀山だ」の言葉の通り、環境保護に対する理念は、人々の心に深く浸透しており、どのようなインフラ建設プロジェクトも、スタートする際には、厳しい環境保護基準をクリアしなければならない。ましてや、AIIB創設メンバーには、ドイツのような世界トップの環境保護の「達人」が入っており、今後、インフラ建設プロジェクトが環境を汚染する恐れがあるといった悩みが生じる可能性など有り得ない。環境保護を疎かにすることは、中国やドイツはもちろん、全参加国にとって断じて許されないことだ。このような状況から、AIIBの初のインフラ建設プロジェクトが高く注目されることは間違いなく、AIIBの「試金石」と言っても差し支えない。互いに力を合わせれば、必ず良い結果が生まれる。世界はひとつの「地球村」で、誰もが「運命共同体」だ。みんなに関わることは、一緒に相談して対処すれば良い。「大国」とは、地域ひいては世界の平和と発展に対して、大きな責任を担う国家のことで、決して地域や国際社会で「大きなシェア」を占めているという意味ではない。これらのことから、AIIBメンバーが平等な話し合いを通じ、叡智を集結し、知恵を最大限活かし、公正かつ合理的な運営規則を確立することは、間違いないと思われる。規則の制定にあたっては、世界銀行(世銀)、国際通貨基金(IMF)、アジア開発銀行(ADB)、欧州投資銀行(EIB)、米州開発銀行(IDB)など各種国際金融機関の有益な経験と教訓を参考とし、AIIBの投資特色にもとづき、きめ細やかな配慮と力を結集し、正確な位置づけを意図して行われるであろう。AIIBは、既存のADBに取って代わることはできない。ADBや世銀などの国際金融機関と共に歩み、それらに花を添え、互いに補い合い、歩調を合わせて発展し、アジア金融協力体制の構築を推進する役割を担っている。アジア金融体制プラットフォームの構築を探求し、アジアの相互連携・疎通を加速させ、アジアの経済・社会発展を促し、各方面の相互利益とダブルウィン実現を目指す。 *1-4:http://qbiz.jp/article/60013/1/ (西日本新聞 2015年4月10日) AIIB、米が日本の参加疑う 「裏切り」続出で孤立感 中国が設立を主導している国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)をめぐり、米国が「日本が参加を決めたのでは」と疑い、日本側に不信感を伝達していたことが10日、分かった。日本政府は参加見送りの方針を伝えたが、英国をはじめオーストラリアなど同盟国が続々と参加表明する「裏切り」を目の当たりにし、米国が孤立を懸念していたことが浮き彫りとなった。複数の日米関係筋が明らかにした。日本と米国はアジアの発展途上国の経済発展を支援する国際金融機関、アジア開発銀行(ADB)を主導。ADBはAIIBと協力関係を模索するとみられるが、既存の枠組みに挑戦する中国の動きに対し日米両国は今月26日から予定されている安倍晋三首相の訪米などを通じ、戦略の立て直しを迫られそうだ。米関係筋によると、米側が日本側の意向を確認するきっかけになったのは「数カ月以内に日本がAIIBに参加する可能性がある」と報じた3月31日付の英紙フィナンシャル・タイムズの記事。木寺昌人駐中国大使への取材に基づいた内容としている。同日はAIIBの「創設メンバー」になるための申請期限。報道を受け、米政府関係者は日本側に「記事の内容は事実なのか。日本はAIIBに加入しないはずだったのではないか」と真意を尋ねた。日本側は「記事の内容は誤りだ。特定の期限を念頭に置いていることはない」と説明し、米側は最終的に理解を示した。日本側は以前にも、参加表明を見送る方針を米側に伝えていた。菅義偉官房長官は同日の記者会見で報道は「全く違う」と否定。岸田文雄外相も「木寺大使が日本の参加見通しについて発言した事実はない」と述べた。政府筋は「日米の強固な関係にくさびを打ち込もうとする意図的な報道だ」と批判した。AIIBの参加国は50以上の国・地域となる見通し。 <資金利用について> *2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150503&ng=DGKKZO86418560T00C15A5MM8000 (日経新聞 2015.5.3) アジア開銀、アジア投資銀と協調融資 国際基準の尊重で一致 アジア開発銀行(ADB)=総合・経済面きょうのことば=の年次総会が2日、アゼルバイジャンの首都バクーで開幕した。中尾武彦総裁は記者会見で、中国主導で創設されるアジアインフラ投資銀行(AIIB)と協調融資を実施する考えを表明した。AIIB側と融資の際に国際基準を尊重することで一致したためだ。ADBの増資についても前向きに検討する考えを示した。中尾総裁はAIIB総裁に就任する見通しの金立群・中国元財政次官と1日に会談した。中尾氏は「社会環境保全などの基準の重要性について意見が一致した」と述べた。ADBは自行と同等の国際基準を満たすことを協調融資の条件と表明しており、AIIB側がこれを受け入れた形だ。アジアでは年間8000億ドル(約96兆円)のインフラ需要が見込まれる。ADBだけ満たすのは難しいため、中尾総裁はAIIBとの協調融資に「様々な相乗効果が期待できる」と語った。ADBは2日、自己資本と低所得国向け基金を2017年に統合し、融資枠を1.5倍の200億ドルに拡大することで正式に合意した。総裁は「近い将来の増資や出資比率の見直しについても引き続き検討する」と述べた。 *2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/183267 (佐賀新聞 2015年5月3日) 日本のアジア向け投資拡充、麻生氏表明、官民一体で 麻生太郎財務相は3日、アゼルバイジャンの首都バクーで開かれたアジア開発銀行(ADB)のセミナーで演説し、日本からアジア向けのインフラ投資を官民一体で拡充する方針を表明した。国際協力機構(JICA)とADBとの協力枠組みを創設し、人材、資金面などで一段と貢献するとした。一方、中国の楼継偉財政相もセミナーで、現代版シルクロード経済圏を構築する「一帯一路」構想への参加を各国に呼び掛けており、アジアでの日中の主導権争いが本格化してきた。アジアの開発支援をめぐっては、中国がアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立作業を本格化させている。 *2-3:http://qbiz.jp/article/61301/1/ (西日本新聞 2015年4月30日) 越・ハイフォン市依頼の環境総合計画、全容判明 北九州市策定 北九州市が、ベトナム第3の都市・ハイフォン市の依頼で策定した環境マスタープラン(総合計画)の内容が分かった。大気汚染の自動観測など15事業から成り、このうち「工場の排熱を利用した発電」など3事業について、環境省が「国際協力枠」として本年度予算で調査費を計上する方針だ。北九州市は同プランに関連し、設備納入やメンテナンスで地場企業の「インフラ輸出」を期待する。ベトナム政府は2020年までに二酸化炭素(CO2)の排出を「10年比で20%削減」を目指している。人口約190万人のハイフォン市は政府方針を踏まえ、環境マスタープラン策定のため、浄水場の技術支援などで関係が深い姉妹都市の北九州市に協力を要請、市が昨年4月から着手していた。プランは交通▽上下水・雨水排水▽環境保全▽(生ごみ堆肥化による有機野菜栽培など)グリーン生産−など7分野15事業で構成。このうち(1)セメント工場の排熱を回収し蒸気タービンを回す発電(2)鋳物工場団地で金属を溶かす石炭炉の電炉化(3)世界遺産登録を目指す離島・カットバ島での太陽光発電の導入と電気バス20台の運行など、CO2削減が期待できる3事業に環境省が調査費として4500万円を計上する見通し。北九州市によると、現地企業は省エネによる生産コスト削減につながるため「導入に前向き」という。市は高温・高圧用バルブやリチウムイオン電池の性能検査機、バス運行システム開発といった関連製品の納入や技術指導などで地場企業の受注を見込んでいる。マスタープランは、北橋健治市長が5月8〜12日の日程でハイフォン市を訪ねて説明する予定。 <ヨーロッパ諸国の参加> *3-1:http://digital.asahi.com/articles/ASH4B3SV5H4BULFA00V.html?_requesturl=articles%2FASH4B3SV5H4BULFA00V.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASH4B3SV5H4BULFA00V (朝日新聞 2015年4月12日) ドイツ参加、官邸に衝撃 アジア投資銀ショックを検証 3月17日朝、首相官邸に衝撃が走った。英紙フィナンシャル・タイムズ電子版が、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)にドイツ、フランス、イタリアが参加を決めた、と伝えていた。正午過ぎ、慌ただしく官邸に駆けつけた財務、外務両省の幹部は、首相の安倍晋三に「これはアプローチだけの違いです」と説明した。官邸には、両省から当初、「主要7カ国(G7)から参加はない」との情報が伝えられていた。G7では、英国が12日に参加を表明していた。だが、5月の総選挙を控え、経済的メリットを打ち出したい英政府の特殊事情と分析し、危機感は乏しかった。欧州連合(EU)のリーダーであるドイツの参加で、日本政府はようやく事態の深刻さに気づいた。G7各国は、AIIBの組織の運営方法や融資基準の不透明さに対して懸念している。英独仏伊がAIIBの内部から中国に疑問をぶつけるならば、日米は外からただせばよい――。財務省幹部らのそうした説明に安倍は理解を示しながらも、ドイツの参加が腑(ふ)に落ちない様子だった。その8日前の3月9日、安倍はドイツ首相のメルケルと会談した。夕食会を含め5時間余りを一緒に過ごした。「AIIBは一緒に条件をきちんと見ていきましょう」。政権幹部によると、2人はそう確認し合ったという。メルケルは参加の意向は示さなかった。「まずかった。官邸に早めにチームを作っておけば、メルケルに伝えるメッセージも違っただろう」(官邸幹部)。政府の甘い見通しによる楽観的な想定は、音を立てて崩れていった。 ◇ 約50の国・地域が参加を表明したAIIB。中国が提唱する新たな金融の枠組みによって、米国が築いてきた戦後の国際的な秩序が揺さぶられている。米国とともに表明を見送った日本政府の対応を検証する。 ◇ ■不参加ありき、G7の「雪崩」読み切れず 日本政府が事態の重大さに気づくのは遅かった。「英国が西側主要国で初めてAIIBの創設メンバーになることを発表できて喜ばしい」。北京で開会中の中国の全国人民代表大会(全人代)に花を添えるように、英財務相のオズボーンは3月12日、英語と中国語の声明を発表した。日本政府が英国から連絡を受けたのはその直前だった。官邸幹部は「えっと思った。あれでG7の共同歩調が乱れた」と振り返る。だが、それでも政府全体で参加の是非を検討する動きはなかった。その後の「雪崩」につながる大きなうねりをつかみきれていなかった。なぜ読み間違えたのか。「我々はあくまでも、AIIBの中に入らないつもりで来た」。財務省幹部は初めから「不参加ありき」だったことを明かす。関係者によると、2013年10月にAIIB構想をぶち上げた中国政府が、日本に参加の働きかけを始めたのは昨年初めだった。ただ、歴代総裁をアジア開発銀行(ADB)に送り込んできた財務省は、中国主導のAIIBは戦後の国際金融秩序への「挑戦」と受け止めた。昨夏に来日した中国財務省の国際局長に対しても、AIIBの組織や融資基準が不透明だとして「これでは参加できない」とつっぱねた。米国の存在も大きい。中国の影響力増大を警戒するオバマ米政権は慎重姿勢で、米議会も出資を認める可能性は低い。日本に直接、不参加を求めることはなかったが、「お互いがどういう問題意識を持っているか当然共有しているし、認識は一致している」(外務省幹部)。対米関係を重視する外務省も「不参加」で財務省と足並みをそろえていた。そうした前提のもと、情勢分析が甘かったことは否めない。17日の「ドイツ・ショック」を境に、両省への不信感が噴出し、官邸主導色が一気に強まる。財務省は急きょ、参加の利点や懸念をまとめた表をつくって官邸に説明するなど対応に追われた。「完全に政治の話になった」。財務省幹部はつぶやいた。 ■中国、日本の懸念に「一切答えず」 官邸主導になっても、打てる手は限られていた。「理事会が案件の審査をするのか」「環境や社会への配慮は確保されるのか」――。政府はこうした懸念への回答を中国に求めてきたが、「答えをいただいていない」(財務相の麻生太郎)まま時が過ぎた。3月24日にオーストラリア、26日には韓国。アジアにおける米国の同盟国の参加報道も続いた。しかも、正式発表に際して、韓国は「中国が前向きな意思を表明した」、オーストラリアも「運営、透明性で良い進展があった」とそれぞれ説明。日本は「中国は日本の問い合わせには一切、答えていない。日本だけ排除しようという意図が明確だ」(経済閣僚)と疑いを募らせた。政府は「米の意向を無視して日本単独の判断はあり得ない」(経済閣僚)と対米協調路線に一段と傾くことになる。オバマ政権が土壇場で方針を変えても、対中強硬派が多い米議会が承認しないとの判断が支えだった。それでも疑念がなかったわけではない。「米国はぽきっと折れることがある」(財務省幹部)、「米国が入れば日本も入る」(官邸幹部)との声が漏れていた。北京で30日にあった米財務長官のルーと中国首相の李克強(リーコーチアン)との会談の行方を不安げに見守った。そして迎えた創設メンバーの参加期限の31日。午後2時すぎから官邸で、安倍晋三は財務、外務両省の幹部とふたたび向き合った。「中国から答えは返ってきていません」との報告に耳を傾けていた安倍は答えた。「慌てることはない」。ただ、安倍は一方で、同じ日、自民党外交部会長の秋葉賢也らに「大いに活発に議論してほしい」と党に指示した。アジアでAIIBに参加表明していないのは、北朝鮮、アフガニスタン、ブータンなどわずかにとどまる。参加国が設立協定に署名する6月末を見据え、参加も含めた政治判断ができるようにしておくため、とみられている。(敬称略) ◇ ■日米抜きで主導 中国、見せつけた影響力 AIIBに参加するかしないかで、どんな利益、損失があるのかは、いまだ不透明だ。参加すれば、AIIBが融資するインフラ事業の入札で、自国企業に有利に働く期待があり、政府内にも「早く入った方がよい」との声もある。ただ、運営ルールはまだ決まっていない。日本企業が13年にADB関連事業で受注した割合はわずか0・21%で、参加で有利になるとも言い切れない。不参加だと日本企業が中国国内のビジネスで不利に扱われかねないとの懸念もあるが、根拠があるわけではない。政府は参加する場合に払う出資金額を最大30億ドル(約3600億円)と試算する。財務省は「巨額の財政負担とメリットが見合わない」(幹部)と慎重だ。ただ、中国主導の枠組みに約50の国や地域が賛同し、日米抜きで話が進んだという事実は、AIIBの成否を超えた衝撃がある。中国は新たな経済秩序づくりで影響力を見せつけた。AIIBは、中国が掲げる陸路と海路のインフラ整備を通じて欧州と結ぶ「一帯一路(二つのシルクロード経済圏)」構想の中核だ。日本政府はAIIBの「中国による独自の影響力拡大のための恣意(しい)的な利用」を懸念するが、インフラ資金の不足に苦しむ途上国は歓迎した。商機を期待する欧州諸国も、中国と地理的に離れていて安全保障上の脅威にならないうえ、出資金もアジアの日本よりも少ないため、相次いで参加を表明した。アジア太平洋に軸足を移すリバランス(再均衡)政策を掲げてきたオバマ米政権は、指導力や求心力の衰えを内外に印象づけた。カーター米国防長官が8日、日米主導の環太平洋経済連携協定(TPP)が戦略的に「空母と同じくらい重要だ」と語った言葉には、失地回復への焦りもにじむ。「AIIBの失態で、米国はTPPを形にしたい思いが強くなっているはずだ」と日本の経済閣僚は言う。日本も、新しい現実を踏まえた外交戦略の練り直しを迫られている。 ◇ 〈アジアインフラ投資銀行(AIIB)〉 中国が提唱し、途上国で道路や鉄道などのインフラ整備の資金を貸し出す銀行。年内の設立を目指し、50以上の国・地域が参加を表明した。法定資本金は1千億ドル(約12兆円)。出資比率などは6月末までに決める。中国が過大な発言権を持つことへの懸念などから、日米は参加に慎重な姿勢をとる。 *3-2:http://qbiz.jp/article/60531/1/ (西日本新聞 2015年4月18日) 日米がAIIBけん制、G20 「既存機関と協調融資を」 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が16日午後(日本時間17日午前)、米ワシントンで開幕した。開幕に先立ち麻生太郎財務相はルー米財務長官と会談し、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)と世界銀行など既存の国際機関による協調融資が重要との認識で一致した。G20は17日午後(同18日未明)に共同声明を採択して閉幕する。G20は、世界経済の成長力強化に向け、民間資金を活用して道路や鉄道などのインフラ投資を拡大することが重要との認識で一致。9月までに各国が投資戦略を取りまとめ、議長国トルコの南部アンタルヤで11月に開かれるG20首脳会合に提出する。創設メンバーが57カ国に上るAIIBには投資拡大への貢献で期待が高まっている。日米の両財務相は中国の恣意的な運営をけん制するため、協調融資を通じてAIIBに融資や組織運営などの面で国際基準を守らせる狙いとみられる。日米欧の先進7カ国(G7)の財務相らも非公式会合を開催。AIIBへの対応を協議したもようだ。日米はAIIBへの参加を見送り、ドイツなどは創設メンバーに加わって対応が分かれたが、透明性のある組織運営が必要との認識では一致している。G20は、日本と欧州の経済の改善を歓迎したが、一部の新興国に景気減速懸念があるため、財政政策や金融政策で景気を下支えすることが必要であることを確認。米国が年内に予定する利上げで金融市場が混乱する可能性があることから、影響を最小限に抑えるため市場動向を注意深く観察し、各国で情報共有を進めることでも一致した。 *3-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150418&ng=DGKKZO85860950Y5A410C1MM0000 (日経新聞 2015.4.18) G20、米にIMF改革批准促す、共同声明、新興国の発言権に配慮 主要国経済の回復を歓迎 日米欧と新興国の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は17日午後(日本時間18日未明)、主要国経済の回復を歓迎する共同声明を採択して閉幕した。新興国の発言権を高める国際通貨基金(IMF)改革の実現へ、米国の批准を「強く促す」と明記。焦点となっていた中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)はG20会議そのものでは大きく扱わなかった。中国が年内発足を目指すAIIBは英独仏の欧州勢を含む57カ国が創設メンバーで、日米は参加を見送っている。インフラなどへの投資を扱った17日のG20会議では、中国がAIIBの計画を紹介し話題には上った。ただ、本格的なやり取りには至らず、共同声明でAIIBには直接言及しなかった。AIIBに新興国の期待が集まる背景に、経済が急伸した新興国の既存の国際機関での発言権が低く据え置かれていることへの不満がある。中国など新興国のIMFへの出資比率を引き上げる2010年の改革案について、共同声明は「引き続き、米国に対し可能な限り早期に批准することを強く促す」と明記。改革の遅れが改めて関心を集める中で、拒否権をもつ米国の行動を求めた。共同声明は主要国経済の回復を歓迎し「特にユーロ圏と日本で最近改善している」と言及した。新興国は国によってばらつきがあると指摘。石油価格下落の影響は「全体としてプラスと見込まれる」とした。米利上げが近づいているとの予測を念頭に、金融政策の「負の波及効果を最小にするため、明確にコミュニケーションが行われるべきだ」と盛り込んだ。 <開発途上国の意見> *4-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM17H1U_X10C15A4EAF000/ (日経新聞 2015/4/17) アジア投資銀を歓迎 発展途上国の財務相らが声明 アジアやアフリカ、南米などの比較的経済力が高い発展途上国(G24)は16日、米ワシントンで財務相らの会議を開き、経済成長にはインフラ投資が極めて重要で、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を歓迎するとの声明を採択した。G24のメンバーには中国のほか、AIIBに参加するインドやフィリピン、エジプトが含まれている。声明では「インフラを含めた長期投資には効果的な手法と革新的な機関が必要だ」と指摘した。このほか、世界銀行グループの国際開発協会(IDA)や国際通貨基金(IMF)に対し、最貧国への柔軟な融資を求めた。 *4-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM22H6C_S5A420C1FF2000/ (日経新聞 2015/4/23) インドネシア、「大国」誇示 バンドン会議主宰 22日に開幕したアジア・アフリカ会議(バンドン会議)記念首脳会議を主宰するインドネシアのジョコ大統領が、勢ぞろいした新興諸国を前に「大国」としての威信誇示に力を注いでいる。国連や世界銀行など欧米主導の既存体制を批判し、新興勢力による新しい秩序の構築を主張。首脳会談の合間を縫った2国間会談でも、影響力を見せつけようと躍起だ。「アジア・アフリカ諸国は国連に改革を迫らなければならない」。ジョコ大統領が開会の演説でこう述べると、会場から拍手が起こった。パレスチナ自治政府による国家樹立の苦闘などに触れ「世界は不正義にあふれ強国とのギャップはなお大きい」と語気を強めた。ジョコ氏はまた「3億人の富める人々の陰で12億人が飢えている」とし、貧困や開発の問題を提起。「世界銀行や国際通貨基金(IMF)、アジア開発銀行(ADB)で解決できるという考え方は時代遅れで捨て去るべきだ」と切って捨てた。「新興国の盟主」を意識して振る舞うジョコ氏。昨年10月の就任後、アジア太平洋経済協力会議(APEC)や東アジア首脳会議、20カ国・地域(G20)首脳会議など国際会議に出席してきたが、居並ぶ先進国や中国、インドなどの間で埋没感は否めなかった。今回は大きな国際会議で初のホスト役を務めると同時に、参加約100カ国の大半はインドネシアが主導的な立場を示しやすい後発新興国だ。1955年のバンドン会議は当時のスカルノ大統領や中国の周恩来首相、インドのネール首相ら、新興独立国の「雄」が集まって結束を呼び掛けた。今回はインドのモディ首相、南アフリカのズマ大統領らが欠席し、インドネシアの存在感は際立つ。国内の財政改革やインフラ整備など内向きな政策ばかり注目されてきたジョコ氏が、外交でも指導力を発揮できることを内外に見せつける絶好の機会だった。こうした好機を生かし、ジョコ氏は首脳会議の合間を縫って2国間会談も積極的にこなした。安倍晋三首相との会談では、インドネシアと日本が人材や技術、資金面で連携するかたちでアジア・アフリカ開発に取り組むことで合意。母子保健や農業、理数科などの教育、産業人材育成の4分野を指定した。中国が強硬姿勢をみせる南シナ海問題でも責任を果たしていくことを確認した。約1時間後には中国の習近平国家主席とも会談した。インドネシアは中国が主導して設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加するだけでなく、本部の誘致も狙ってきた。会談では日本が事業化調査で先行しているジャカルタが起点の高速鉄道計画について、中国とも「具体的な協議をした」(政府筋)という。同計画は安倍首相も同日の会談で売り込んでいた。日本をてんびんにかけつつ「新たなグローバル経済の秩序」(ジョコ氏)づくりで意見交換したものとみられる。一方、アジア・アフリカ諸国に対しては、工業製品の輸出拡大などを呼びかけた。ジョコ氏は21日、カンボジアのフン・セン首相と会談し、インドネシア製の兵器や輸送機を熱心に売り込んだ。ジョコ大統領は「我が国の人口はイスラム教徒数で世界最多、民主主義国としても世界3位であり、グローバルな役割を演じる用意がある」とも強調した。中東ヨルダンのアブドラ国王とも会談し、世界のイスラム教徒の連帯で歩調を合わせることで一致した。
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2015,05,02, Saturday
<その他は無料の画像集より> 2015.4.29朝日新聞 (1)ネパール大地震 *1-1、*1-2、*2-3 に書かれているように、ネパールで起きたマグニチュード7・8の大地震は、発生から2日で1週間になり、死者は現在わかっているだけで6,363人となり、北東部シンドパルチョーク地区では約3,000人が行方不明だそうだ。 また、*2-1、*2-2のように、地震の発生から5日たった30日、首都カトマンズ郊外の村サンクに、ようやく水や食料が届き始めたが、自治体の住民名簿が整備されていないため配給が進まず、食料品などの物資は役場で留め置かれた状態で、地方では、被害の実態がわからないまま孤立し、支援も届かない集落が点在しているそうだ。 さらに、交通や通信事情の悪い山間部については、ネパール政府も被害状況が把握できておらず、救援活動用のヘリコプターが足りないため、ネパール内務省が、4月30日、国際社会にヘリの派遣や貸与を訴えているとのことである。 (2)ODAによる日本の援助 ネパールは、2014年の名目GDPが188ヶ国中107位で196.4億 USドルであり、同じ年の日本の名目GDPは3位で46,163.4 億USドルだ。さらに、日本は、4年前の東日本大震災で災害時のヘリによる救出や食料配布に慣れており、最近は不要になった仮設住宅も増えている。 そのため、速やかにオスプレイなどのヘリを出し、ODAで、大量にある備蓄米を配布したり、比較的手の空いている山陰や九州などの建設業者が出向いて瓦礫を取り除き、仮設住宅を建てればよいと思う。そのためには、被災地まで重機を持っていくか近くで調達する必要があるが、人は、本当に困っている時に助けてくれた人を忘れないものである。 (3)復興とまちづくり *2-4のように、ネパール大地震で殆どの家が全壊し、石や煉瓦や木材ががれきの山となって、人々が茫然としている状態を見てわかったことは、この地域は地震地帯であるにもかかわらず、建物が耐震設計になっていないことである。これも日本の得意分野であるため、耐震基準や建物の作り方については技術供与できる分野であり、日本の建設会社が復興やまちづくりに協力することもできるだろう。 また、世界遺産も、次は耐震性を持たせ、世界が得意分野で協力しながら、次第に復元すればよい。ここは、原発事故がなかったので、復興を速やかに行えるのが慰めである。 *1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/182607 (佐賀新聞 2015年5月1日) ネパール地震、死者6千人超、3千人不明情報も 【カトマンズ共同】ネパール内務省は1日、同国の大地震による死者は6204人になったと明らかにした。近隣国を含めた犠牲者数は6300人を超えた。1日付の地元紙ヒマラヤン・タイムズによると、北東部シンドパルチョーク地区では約3千人が行方不明となっている。犠牲者は、さらに増える恐れが出てきた。ロイター通信によると、内務省当局者は4月30日、被災した山村地域での救援活動に使用するヘリコプターが不足しているとして、国際社会にヘリの派遣や貸与を訴えた。同当局者によると、ネパールでは現在、インドから派遣された機体を含め、約20機のヘリが救援活動中。 *1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11734822.html?_requesturl=articles%2FDA3S11734822.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11734822 (朝日新聞 2015年5月2日) ネパール地震、犠牲者6300人超 きょう1週間 ネパールで起きたマグニチュード(M)7・8の地震は、発生から2日で1週間になる。同国内では6254人が死亡、インドや中国など周辺国を加えると、死者は6363人になった。交通や通信事情が悪い山間部では、政府も被害の把握ができていない。震源に近く、孤立した中部の山あいの村に1日、記者が入った。 *2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASH511634H4ZUHBI044.html (朝日新聞 2015年5月1日) ネパール地震、死者6300人超 登録不備で配給に遅れ ネパール内務省などによると、ネパール地震による同国内の死者は1日朝までに6198人が確認された。インドなど周辺国を合わせると、死者は全体で6307人になった。 ■被災者に不満「政府は何もしてくれない」 ネパールで4月25日に起きた地震で、同国内には今なお救援物資を待つ人たちがいる。発生から5日がたった30日、首都カトマンズ郊外の村サンクには、ようやく水や食料が届き始めた。しかし、自治体の住民名簿が整備されていないため配給が効率的に進まず、食料品などの物資は役場で留め置かれた状態だ。政府の不手際に、被災者の不満が高まっている。「水は届き始めたが、お米や油はもらえない」。30日、サンク中心部に住む主婦モティ・マヤさん(67)は目に涙をためて窮状を訴えた。地震後は近所の住民に食べ物を分けてもらい、空腹をしのいでいるという。全壊した自宅から15メートルほどの距離にある役場には食料品などが積んである。しかし、「名前が登録されていないため渡せない」と職員に言われた。政府は地域住民に平等に配給を進めようとしているが、そのための名簿が整備できていない。役場の入り口では、食料を求める人たちが職員と押し問答をしていた。サンクは伝統的なれんが造りの民家が密集する街道沿いの村で、「千軒の家」の別名を持つ。しかし、地震で住民60人がこれまでに死亡。地元の観光ガイドによると「9割以上の建物が被害を受けた」という。細い路地は倒壊した建物でことごとくふさがれていた。地震直後から行方がわかっていない住民もいる。住む家を失った人たちが身を寄せるのは、郊外に広がるトマト畑だ。ビニールハウスで雨をしのぎ、食べ物は民間ボランティアの配給を分け合う。半壊した家から取り出した毛布を地面に敷き、寝床にしている。「固定資産税も、農業の税も払ってきた。それなのに政府は何もしてくれない」。7世帯計70人と一つのビニールハウスに同居する農業マヤ・デビさん(67)は政府への怒りを隠さなかった。「私たちには戻るところがない。毎日あしたが怖い」 *2-2:http://digital.asahi.com/articles/ASH4Y5GW9H4YUHBI01J.html (朝日新聞 2015年4月30日) 山間部に孤立した集落点在 ネパール地震、物資届かず ネパールを襲った地震から4日たった29日、首都カトマンズでは一部の商店が開き、バスも走り始めた。だが、地方では、被害の実態がわからないまま孤立し、支援も届かない集落が依然として点在している。カトマンズ北方の山あいの村に記者が入った。鋭いカーブが折り重なり、急傾斜の山道が続く。至るところで地震による土砂崩れが発生し、木の根やおよそ2メートル大の岩が道の一部をふさいでいる。道幅はわずか3~5メートルほど。道路の右側は、切り立った崖だ。車はスピードを落とし、岩や土砂を避けながら慎重に進んだ。カトマンズ中心部を出発して1時間半後、シンドゥパルチョーク郡のニブ村と呼ばれる小さな集落が現れた。一帯では10軒以上の家屋が倒壊。石と粘土でできた壁が崩れ、そこら中にちらばったままだ。村人たちが、そのがれきを少しずつ、素手で片付けていた。「誰も助けに来ない。これからどうしたらいいのか」。自宅前の庭にしゃがみ込んでいた女性、ムイサニ・タマンさん(59)が、ため息をついた。地震で2棟の自宅は完全に倒壊。偶然にも一緒に暮らす親族11人全員が屋外にいたため、難を逃れた。それからは、庭にシートやトタンを屋根にしたテントを二つ張り、雨露をしのいでいる。最大の悩みは食料不足だ。次男のディーパクさん(30)によると、5月末までは、昨年に収穫して家に貯蔵しておいた米を食料に暮らすはずだった。その残り1カ月分の米が、すべてがれきの中に埋もれてしまった。被害が比較的小さかった近所の家から米を少し分けてもらい、何とか食いつないでいるが、互いに厳しい状況の中で限界に来ている。28日に地元警察が集落を訪れ、各家庭に4キロずつ米を配給したが、それ以外は支援が届いていない。「地震から、ずっと悪夢の中にいるようです。まだ信じられない」。ムイサニさんは、頭を抱えた。周辺の山岳地域には、こんな孤立集落が多数点在している。車では近づけない険しい山肌にも、崩れ落ちた家屋がたくさん見えた。ニブ村から車でさらに約1時間。ラットマテ村では、ほとんどの家屋が倒壊していた。数十人が土砂崩れや家屋の下敷きになって死亡したという。カトマンズ市内で暮らす大学生、ナレイン・ドラさん(20)は家族を心配し、地震翌日に丸1日かけて徒歩で実家に戻ってきた。ナレインさんによると、外国の救助隊がヘリコプターで負傷者の救出に来たが、食料や生活物資の配給は一度も来ていないという。ナレインさんの家も全壊した。家族ら13人はトタン屋根で作った粗末なテントの下で暮らす。停電で、夜は真っ暗になる。野生動物や寒さから身を守るため、テントの前で一晩中たき火をたいているという。育てている野菜を近隣の集落と物々交換しながらしのいでいるが、食料の盗難も発生し始め、事態は悪化する一方だ。「食料と住む場所が必要です。ぜひ記事で伝えてほしい」。ナレインさんは、強く訴えた。 ◇ ネパール警察当局は29日、地震の死者数を5027人と発表。周辺国を合わせると計5135人となった。日本の国際緊急援助隊医療チームの46人が同日、カトマンズに到着した。 *2-3:http://www.asahi.com/articles/ASH520DN7H51UHBI04C.html?iref=comtop_6_01 (朝日新聞 2015年5月2日) 「ヘリ足りない」 物資届かず自衛隊にも影響 ネパール 2日で発生から1週間となり、死者が6千人を超えたネパールの地震で、山間部での被害の実態が次第に明らかになってきた。大きな揺れで道路に崩落などが起きたほか、もともと車で行かれない場所も多く、ヘリコプターの数の不足が救援活動を難しくしている。国際社会にヘリや航空機の提供を求める声が強まっている。震源地に近い北西部ゴルカ郡ポハラター村。土砂崩れで砂利道が埋まり、車では進むことができない。食糧などの運搬はすべて人力だ。被害状況を調べに来た国連の災害調査チームのブルノー・ブリアクさんは「被災した村があちこちに散らばっている。ヘリコプターを使わないと、物資を運べない場所も多い」と言う。ネパール政府の被害状況把握や救援活動は、山間部では遅れている。その理由は、ヘリなど交通手段が乏しいことにある。ネパール内務省のダカル報道官によると、救援救助活動に従事しているヘリコプターは、応援に来たインド軍機なども入れて20機。救助活動に加え、孤立地域への救援物資の投下作業を地震から4日後に開始したが、はかどっていない。ダカル氏は「ヘリが足りない。テントや食糧も不足している」と訴える。日本から医療援助のため派遣された自衛隊も、ヘリ不足など輸送力の問題で行動が制約される。自衛隊の医療援助隊は1日に本隊が到着し、総勢114人となった。今のところ、医療活動はカトマンズ周辺で行う予定だ。被害のひどい山間部では道路が寸断され、装備を運ぶにはヘリが必要になる。だが、ネパール軍などからヘリを借りるめどはたたず、空港の受け入れ能力の問題などで日本から持ち込むのも難しいという。自衛隊は輸送機に積み込めるタイプの多用途ヘリを所有し、2005年のパキスタン北部地震でも輸送機で現場に派遣された。だが、救援要員や物資を運ぶ各国の航空機が殺到するカトマンズ空港は滑走路が1本、駐機場も8機分しかない。常に多くの飛行機が上空で旋回を繰り返し、着陸の順番を待っている状態だ。輸送機を長時間止めてヘリを取り出し、その場で組み立て直す場所と時間を確保できないという。 ◇ ネパール警察当局は1日午後10時現在(日本時間2日午前1時15分)の死者数を6621人と発表した。インドなど周辺国と合わせて全体の死者は6730人となった。 *2-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11734880.html (朝日新聞 2015年5月2日) 震源近く、立ちすくむ村 8歳娘、目の前で失う ネパール地震 ほとんどの家が全壊し、石や木材ががれきの山となって斜面に取り残されている。あちこちで、押しつぶされた家畜のヤギや牛が横たわり、ハエがたかっている。カトマンズから車で計8時間。震源に近い未舗装の山道の先は、土砂崩れで完全にふさがれていた。車を降り、林や段々畑の広がる急斜面を1時間ほど登ると、壊滅した集落があった。約200人が住むゴルカ郡ポハラター村。住民たちが、屋内に貯蔵していた米や穀類をがれきの隙間からかき出して集めていた。村人らによると、この村では家屋40戸のほぼすべてが倒壊し、12人が死亡した。ヒム・ラナマガーさん(37)、スニタ・ラナマガーさん(32)夫妻は、3棟あった自宅がすべて壊れ、次女ビピサさん(8)を失った。地震発生時、ヒムさんは仕事で他の村にいた。急いで戻ると、胸から下が近所の家の下敷きになった状態で、ビピサさんが倒れていた。住人たちと手作業でがれきを取り除いて助け出したが、手遅れだった。背中をけがした長女のビニタさん(14)は、妹を亡くしたショックでしゃべれなくなった。ときどき、自宅のあった場所で1人で泣いているという。ヒムさんは「食事も寝るのも、ビピサと一緒だった。ビピサに会いたい」と声を絞り出した。人々は、農業と牧畜で自給自足の生活をしてきた。ふもとの小さな発電所から電気も引いていた。だが、いまは重機を入れるスペースもなく、がれきは地震発生直後のまま。みなテント生活を送っている。4月27日から、ボランティアチームなどが、ふもとまで米などの食料を届けるようになった。ほぼ毎日、村の青年たちが背負って運んでいる。ビンマル・タパモガーさん(22)は「とても重いし大変だ。地震の前は清潔で豊かな暮らしだったのに。元通りにするには、50年ぐらいかかるんじゃないか」と話した。ゴルカ郡では約400人が死亡したとされる。現地で支援活動をしている国連児童基金(ユニセフ)のネパール事務所によると、震源地付近を含む山間部に近づくのは難しく、援助が十分に行き届いていない。ポハラター村のふもとまで被害状況を調べに来ていた国連の災害調査チームのブルノー・ブリアクさんは「今回の支援の難しさは、被害を受けた村があちこちに散らばっていることにある。ヘリコプターを使わないと、物資を運べない場所も多い」と話した。 ■世界遺産の街「客消えた」 カトマンズ近郊、バクタプル市の世界文化遺産「ダルバール広場」。ヒンドゥー教寺院の本殿は崩れ、土台しか残っていない。他の建物の多くも崩れている。「予約で埋まっていたのに地震で客が消えた」。近くの宿で働くサンジェイ・ナガさん(45)は嘆いた。カトマンズ首都圏にある世界遺産は7カ所。バクタプル、カトマンズ、パタンの3市では、15世紀以降の旧王宮や寺院群が集まる同名の「ダルバール広場」が、それぞれ世界遺産に指定されている。国連教育科学文化機関(ユネスコ)のネパール事務所によると、3カ所では寺院の5~8割が倒壊。マンハート所長は「復元には10年はかかる」と言う。同国観光省によると、世界遺産やヒマラヤの山々を目当てに2013年には80万人の外国人が訪れ、4億1300万ドル(約500億円)を消費した。観光業で100万人以上が働く。ゴータム観光局長は「観光資源が失われた。復活を目指すしかない」と話す。カトマンズ中心部、ふだんは外国人観光客が多いタメル地区では1日、通りに面した土産物店などは半分が営業を再開。稼働し始めたATMの前に市民らが長い列を作っていた。観光客の姿はほとんど見えない。公園にできたテント村では、4月30日を境に野営者が減った。市内で電気の供給が戻り、自宅に帰る人が増えた。テント生活を続けるシバ・プラサド・ポウデルさん(64)も「水も食料も足りている」と話した。ネパール山岳協会によると、雪崩が起きたエベレストでは、ベースキャンプから希望者全員が下山した。登山の継続を希望する登山者ら約50人が残っているとの情報もある。被害の全容は政府も把握できていない。内務省のダカル報道官は「行方不明者数も集計できていない」。復興には、50億~100億ドル(約6千億~1兆2千億円)が必要との試算や見通しが、米シンクタンクなどから出ている。最大でネパールの国内総生産(GDP)の半分に当たる規模で、国土の再建には相当の時間がかかりそうだ。 PS(2015.5.3追加):*3に書かれているように、「ネパールでは、議会が空転を続け、憲法制定も進んでおらず、政争や腐敗で機能不全」とは言っても、前の王制に戻った方がいいわけはないだろう。しかし、せっかく支援物資を持ってきてもうまく配布できずに追い返されるようでは困るため、徐々に調整ができてきているのはよいことだ。なお、自衛隊も災害救助のための出動時には、迷彩服ではなく赤・オレンジ・黄・緑・青などの鮮やかな色の制服を着た方がよいと思う。何故なら、鮮やかな色の服の方が目立つため探しやすく、迷彩服は人助けではなく戦闘目的にあった保護色の服だからだ。 2015.5.2朝日新聞 <その他は無料の画像集より> *3:http://digital.asahi.com/articles/ASH525R8NH52UHBI015.html (朝日新聞 2015年5月3日) 被災者に怒り、救助隊は現場で混乱 ネパール地震一週間 2日で発生から1週間になったネパールの大地震。死者数は周辺国を合わせて6950人になった。多くの人が避難を余儀なくされるネパールでは、食料や水、テントなどの配布が進まず、人々はいらだちを募らせる。ネパール政府が十分に機能していないため、各国の救助隊も現場で混乱している。自衛隊の医療チームが仮設診療所で活動を始めたカトマンズ中心部ラトナ公園。ここで寝泊まりするプレム・タマングさん(39)は「あの診療所は日本がつくった。水と食べ物はインド軍。ネパール政府は何をしてくれたと言うんだ」と怒りをぶちまけた。公園には被災者ら2500人以上が寝泊まりする。一部にはテントが与えられたが、タマングさんは地震発生から1週間、公園の隅で過ごす。食料や水、テントなどの供給が進まない状況に市民らは怒りを募らせ、視察に訪れたコイララ首相が罵声を浴びせられる騒ぎも起きた。ラトナ公園でも数日前、訪れた首相に「出て行け」との声が上がった。首相は4月29日に、市内の文化遺産「ダルバール広場」で救助活動中の日本の国際緊急援助隊・救助チームを激励する予定だったが、その前に市民に罵声を浴びせられ、日本隊に会わないまま去った。ネパールでは2008年に王制を廃止し、新しい憲法を作るための制憲議会選挙が行われた。だが、各党派の対立などからボイコット合戦が続いて議会は空転を続け、憲法制定プロセスは進んでいない。国民生活の低迷を尻目に続く政争と腐敗、そして機能不全に、地震発生の前から国民の怒りは高まっていた。政府の混乱は、救助活動にも影を落とす。各国から到着する救助隊は政府と国連の調整のもとで活動することになっているが、十分に機能していないのだ。ダルバール広場では、市民らががれき撤去に汗を流す脇で、スウェーデン政府が派遣した救助チームの2人がきょろきょろしながら歩いていた。「救助できる場所を探しているが、なさそうだ。帰国するしかない」とケント・コックム隊員は疲れた様子で話した。総勢40人のスウェーデン隊は到着後、ネパール政府の要請で、トラックに食料やテント、医薬品を積んで震源地に近いゴルカ郡に向かった。だが、到着するとネパール軍に「軍がやるから不要」と追い返されたという。日本の救助チームも苦労している。到着翌日の4月29日、カトマンズ近郊バクタプルで地元警察に案内された場所に着くと、すでに中国や韓国のチームが活動していた。1日に別の地域で活動場所を見つけたが、2日は担当区域外のはずのメキシコ隊と共同作業となった。メキシコ隊のマカレナ・オラサバル調整官は「ネパール政府が調整できていない」とこぼした。9歳の息子が生き埋めになっているというサパナ・シュレシュタさん(33)は「ポルトガル、インド、中国、トルコの救助隊が来て去って行った。今度は日本とメキシコ。とにかく助けてほしい」と話した。バレリー・エイモス人道問題担当国連事務次長兼緊急援助調整官は1日、カトマンズでの会見で「調整は徐々に効果的になっている」と話した。国連は、各国の救助チームにがれき撤去や建物の安全評価を要請する方針だ。
| まちづくりと地域振興::2014.4~2015.4 | 03:00 PM | comments (x) | trackback (x) |
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