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2017.9.17 精神障害者・ハンセン病患者に対する差別と最近の人権軽視への歩み (2017年9月21、24日、10月10日に追加あり)
  

(図の説明:左のグラフのように、精神病床の平均在院日数は日本が著しく高い。また、真ん中のグラフのように、統合失調症入院患者への向精神病薬投与量も日本が著しく高く、自閉症と診断される人もうなぎ上りに増えている。これは、日本人には特に重度の精神障害者が多いというわけではなく、診断と入院及び薬の投与方針の問題だろう)

  

(図の説明:左のグラフのように、ADHDと診断される子どももどんどん増え、子どもへの使用に関する安全性は疑問であるにもかかわらず、メチルフェニードの子どもへの処方が著しく増えている。これに加えて睡眠薬の処方も日本で著しく高いため、精神科の診断と睡眠薬を含む薬剤使用の妥当性について再検討する必要がある)

(1)精神障害者・知的障害者について
1)精神障害者を殺人犯になり易い人と理解するのは間違っていること
 植松容疑者が措置入院からの退院後に相模原市障害者施設「津久井やまゆり園」の入所者19人を殺害した事件を受けて、*1-1、*1-2のように、厚労省は、責任能力の有無を調べていると報道されている。これは、刑法第39条に、「①心神喪失者の行為は、罰しない」「②心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」という古い規定があり、心神喪失者・心神耗弱者の定義が不明確であるにもかかわらず、精神障害者や精神障害の病歴のある人がこれにあたると非科学的に決めつけているからで、これは大多数の精神障害者に対する人権侵害である。

 しかし、植松容疑者の障害者殺害事件は精神障害が理由ではないため、精神障害者に対する監視強化等は福祉目的ではなく意味のない防犯目的の差別である。私は、①精神障害者が引っ越せば、その自治体に支援計画と呼ぶ監視計画を引き継ぐ(精神障害者と殺人犯を結び付けて監視する人権侵害) ②自治体・警察・病院が参加する協議会を設置して病気の個人情報を共有する(精神障害者と犯罪者とを結び付けて個人情報を開示する人権侵害) ③障害者差別解消法の理念を啓発(共生社会の推進) ④障害者の地域生活を支援(共生社会の推進)のうち、①②は精神障害者への言われなき差別を助長して、③④をやりにくくするものだと考える。

 そして、*1-4のように、東京都港区で厚労省のキャリア官僚女性が弟に包丁で刺されて死亡した事件も、弟は精神疾患での通院歴があり、警視庁が男の責任能力の有無を調べていると報道されているが、これは刑法第39条の規定を根拠としており、このような報道が続けば「精神障害者=殺人犯予備軍」という先入観ができる。

 さらに、*1-5では、埼玉県熊谷市で小学生2人を含む6人が殺害された事件で、強盗殺人などの罪で起訴されたペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告について弁護側が請求して実施された精神鑑定では、さいたま地検の鑑定と異なり、「精神疾患がある」という診断結果が出たそうだが、弁護側も罪を軽減するために刑法第39条をよく使い、冤罪の際にも刑法第39条を使ってうやむやにすることがあるのは、「殺人犯=精神疾患」というイメージを一般の人につけるという意味で、精神障害者に対する差別を醸成する人権侵害である。

 そのため、今回の厚労省の精神障害者と殺人犯を関連付けて精神障害者を監視するという再発防止策は、精神障害者に対する差別や人権侵害を無くすために、これまで培われてきた精神科の歴史に逆行する程度の低いものである。

2)知的障害者施設「津久井やまゆり園」について
 神奈川県の「津久井やまゆり園」を再生する案が、*1-3のように持ち上がり、入所者の意思を尊重したものだとも評価されたそうだが、知的障害者である入所者も、自宅から離れた交通の便の悪い場所で滅多に家族にも会えず積極的に集団生活をしたかったわけではないだろう。

 そのため、公聴会で、「入所者の意向を聞くべきだ」「時代錯誤だ」との批判が続出し、大規模施設の建て替え案が撤回されたのはよかった。私は、セキュリティーが悪く、当直の職員が身をもって防衛することもなく、植松被告が殺人するに任せておいた他の職員の意識にも疑問を感じている。

3)「殺人犯=精神障害者」というイメージの社会では、精神障害者の雇用が進まないこと
 *1-6のように、佐賀労働局と佐賀県は、佐賀県の経営者協会など経済4団体に、障害者の積極的な雇用を要請したそうだが、ここで言う障害者に精神障害者は入っているのだろうか?

 「殺人犯=精神障害者」というイメージがついた社会では、トライアル雇用など労働条件の悪い雇用でも難しいと思われるが、それが政府とメディアがまき散らした精神障害者差別の大きな問題点なのである。

(2)“発達障害”について
 最近、*2-1のように、“発達障害”として、「落ち着きがない注意欠陥・多動性障害(ADHD)」「読み書きや計算など特定分野が苦手な学習障害(LD)」「対人関係をうまく築けず、限られた対象にこだわる傾向(アスペルガー症候群)」など、何でも異常だと言うことが多いが、言語や知能に遅れがなければ周囲の“常識的”な大人が理解できなくても全く問題ない。

 何故なら、将来、周囲の“常識的”な大人には想像もつかないことを行って“常識”を変える人物かも知れず、別の面でとびぬけた能力を持っている人かも知れないからである。

 にもかかわらず、*2-2のように、いちいち発達障害として病気扱いし、*2-3のように、全国学力テストの結果として文科省に報告さえせず、一人前と見做さないでいると、本当にその子の将来性をつぶしてしまう。そのため、何でも異常だとしてしまう最近の子どもへの扱いは問題であり、人権侵害である。

(3)ハンセン病患者に対する差別
 *3のように、国がハンセン病患者に対する不要な隔離政策を行い、司法が加担して「密室の法廷」で死刑判決を下し、ハンセン病患者の人権が無視された差別助長の歴史に対し、国は、元患者らを差別や偏見の中に置き続けて精神的苦痛を与えたり、人生を台無しにしたりした責任をとって損害賠償すべきだ。

 しかし、現在でも、国は「精神障害者=殺人犯、犯罪者予備軍」というレッテルを張って監視することにより、病気の人に対する人権侵害の過ちを繰り返そうとしているわけである。

<精神障害者と殺人犯の関連付け>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJD924FDJD9UBQU001.html (朝日新聞 2016年12月9日) 措置入院中から 退院後の支援計画
 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害された事件を受けて、厚生労働省は8日、再発防止策の報告書を公表した。精神保健福祉法に基づく措置入院中から都道府県や政令指定市が支援計画を作成。植松聖(さとし)容疑者(26)の退院後に事件が発生したことから、自治体や医療機関が連携して退院後も患者を孤立させない仕組みをつくることが柱だ。
■厚労省 相模原事件 再発防止策
 有識者9人による厚労省の検証・再発防止策検討チーム(座長=山本輝之成城大教授)がまとめた。厚労省は報告書を踏まえ、精神保健福祉法改正案を来年の通常国会に提出する方針。報告書では、措置入院を決める都道府県や政令指定市に対し、すべての患者について入院中から退院後の支援計画づくりを求めた。計画に盛り込む支援内容は入院先の病院や居住する自治体の職員による「調整会議」で検討。会議には患者本人や家族の参加も促す。現行法では退院後の支援体制が定まっていないため、退院後もチームで支援を続けられるようにする狙いだ。患者が転居した場合には支援計画を自治体間で引き継ぐことも明記した。
■「監視強化」の懸念も
 相模原市の事件を受けた厚生労働省の再発防止策は、措置入院患者の退院後の継続支援に重点を置いた。ただ、障害者の監視が強まることへの懸念は残った。東京都内の診療所で働く精神保健福祉士の男性(50)は、自治体や医療機関などによるチームで連携することで、継続支援をしやすくなると評価している。治療を拒否する患者は多く、措置入院と通院中断を繰り返し、通院を続けるようになって症状が安定する人もいるためだという。「治療継続の重要性を患者本人が自覚できる働きかけが必要で、ネットワークが大切になる」。一方、自身も精神障害者という「全国『精神病』者集団」運営委員の桐原尚之さんは、現行の措置入院について「『社会防衛的』に運用されることがあり、多くの精神障害者のトラウマになっている」と指摘。事件の再発防止を理由にした退院後の継続支援であることから、「福祉目的ではなく防犯目的であることは自明だ。精神障害者を監視する方向に秩序化されるのではないか」と心配する。こうした懸念に対し、報告書をまとめた厚労省の検証・再発防止策検討チームの山本輝之座長(成城大教授)は記者会見で「あくまでも退院後、孤立せず安心して暮らせる支援体制を築くもので、精神障害者の利益にもなる」と強調した。退院後にいつまで支援は続くのか――。報告書は「国が一定の目安を示す」として方向性を示さなかった。患者の症状によって期間が異なるうえ、長くなれば自治体の負担が増えるため調整がつかなかった。厚労省が別途議論を進め、年度内に結論を出す予定だ。事件における警察の対応については「法令に沿ったもの」と触れるにとどめ、再発防止につながる検証結果などは明らかにされなかった。
■再発防止策のポイント
【入院中の対応】
・国が心理検査や薬物使用に対応するガイドラインを作成し、それに基づいて治療
・都道府県や政令指定市が病院職員らを交えた「調整会議」などの意見を参考に退院後の支援計画を作成
【退院後の対応】
・保健所を持つ自治体が支援計画に基づいて支援
・患者が引っ越せば、その自治体に支援計画を引き継ぐ
・自治体や警察、病院が参加する協議会を設置し、情報を共有
【共生社会の推進】
・障害者差別解消法の理念を啓発
・障害者の地域生活を支援

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJCF6286JCFUTFL002.html
(朝日新聞 2016年11月14日) 措置入院の患者情報、自治体間で共有へ 厚労省の原案
 相模原市の障害者施設で入所者19人が刺殺された事件で、厚生労働省は措置入院をした患者の個人情報を共有できるような制度改正を盛り込んだ再発防止策の原案をまとめた。自治体間の連携強化が狙いで、14日の検証・再発防止策検討チーム(座長=山本輝之成城大教授)で提示。11月中にも最終報告書を公表する。植松聖(さとし)容疑者(26)は退院後、「東京都八王子市で家族と同居する」としていたが、相模原市と八王子市は連携できていなかった。個人情報は原則、自治体間で共有できない。そこで措置入院について定めた精神保健福祉法を改正し、特例的に患者の精神症状や住所地などの個人情報を共有できるようにする。原案には、措置入院を決めた都道府県や政令指定市が、患者の入院中から家族らの情報も踏まえて中長期的な支援計画をつくる方針も盛り込んだ。この計画をもとに、患者が居住する自治体が退院後の生活や治療の相談にのる。病院は相談員を選び、患者の地域での生活に目を配る。また、警察や病院、自治体が地域ごとに集まる協議会を設け、措置入院を決める際の仕組みを強化。措置入院や退院を判断する精神保健指定医の研修には、薬物に関する課程を加える。原案に対して検討チームでは「(措置入院患者は)年間7千人ほどいるので、自治体や病院の負担が大きい」などの意見が出た。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201709/CK2017090602000178.html(東京新聞2017年9月6日)【神奈川】やまゆり園再生案 入所者の意思尊重 評価
 昨年七月に殺傷事件があった知的障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市緑区)の再生基本構想案の説明会が五日、横浜市神奈川区で開かれ、全七回の説明会が終了した。この間、入所者の意思を尊重して居住先を決める仕組みを評価する意見が目立った一方、建て替え後も指定管理者が運営することに懸念を示す声もあった。神奈川区の説明会には、障害者団体の関係者ら約六十人が出席。「時間をかけて入所者の意思確認をする考えが盛り込まれて良かった」などと、構想案を前向きに捉える人が多かった。県が一月、定員百五十人規模での現地建て替えを発表した際の公聴会では、「入所者の意向を聞くべきだ」「時代錯誤だ」と批判が続出。県は大規模施設の建て替え案を撤回するとともに、入所者の意思を二年がかりで確認する仕組みを構想案の柱の一つにした。ただ、家族からは不安も漏2016年12月8日、措置入院患者の退院後の継続支援(支援と呼ぶ監視)という再発防止策を公表した。

*1-4:https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20170813-00000013-ann-soci (Yahoo 2017/8/13) 死因は出血性ショック 厚労省女性キャリア官僚刺殺
 東京・港区で厚生労働省のキャリア官僚の女性が弟に包丁で刺されて死亡した事件で、女性の死因が腹を刺されたことによる「出血性ショック」だったことが新たに分かりました。52歳の男は12日午前5時半ごろ、自宅マンションで、姉の厚労省関東信越厚生局長・北島智子さん(56)の腹を包丁で刺し、殺害した疑いで13日朝、送検されました。その後の警視庁への取材で、北島さんは腹を複数回刺されたことによる「出血性ショック」で死亡していたことが新たに分かりました。男は「私がやりました」と容疑を認めています。男には精神疾患での通院歴があり、警視庁は、男の責任能力の有無を含めて当時の状況を調べています。北島さんは男と同居する母親の介助のため、事件前夜から泊まりにきていたということです。

*1-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/462726 (佐賀新聞 2017年9月12日) ペルー人被告「精神疾患」の診断、埼玉・熊谷6人殺害事件で再鑑定
 埼玉県熊谷市で2015年9月14~16日、小学生2人を含む6人が殺害された事件で、強盗殺人などの罪で起訴されたペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(32)について弁護側が請求し実施された精神鑑定で、「精神疾患がある」との診断結果が出たことが12日、関係者への取材で分かった。さいたま地検が起訴前に実施した鑑定では「精神疾患なし」と診断されていた。裁判はさいたま地裁で年度内にも始まる見通し。異なる鑑定結果が出たことで、刑事責任能力が主な争点になる。事件は間もなく発生から2年となる。ナカダ被告は逮捕後の県警の調べに不可解な説明もみられた。

*1-6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/460108 (佐賀新聞 2017年9月2日) 障害者の積極雇用を 労働局と県が要請
■経済4団体に
 9月の障害者雇用支援月間に合わせて、佐賀労働局と佐賀県は1日、県経営者協会など経済4団体に、障害者の積極的な雇用を要請した。他の要請先は県商工会議所連合会、県中小企業団体中央会、県商工会連合会。松森靖佐賀労働局長は県経営者協会で、前年度の県内のハローワークにおける障害者の就職件数が8年連続で増加した点を踏まえつつ、「精神障害者雇用が全体に占める割合が7・3%にとどまっている。積極的な採用を」と促した。協会側は「トライアル雇用などの多様な手段を使いながら、障害者雇用の機運を高めていきたい」と応じた。県内の障害者雇用率は2・43%で全国5位(昨年6月現在)。法定雇用率達成企業の割合は73・1%で6年連続で全国トップを維持している。

<発達障害>
*2-1:http://www.asahi.com/topics/word/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3.html
(朝日新聞 2013年2月27日) 発達障害
 生まれながらの脳の機能障害が原因と考えられ、犯罪など反社会的な行動に直接結びつくことはないとされる。落ち着きがない注意欠陥・多動性障害(ADHD)、読み書きや計算など特定分野が苦手な学習障害(LD)などがある。アスペルガー症候群は対人関係をうまく築けず、限られた対象にこだわる傾向がみられるが、言語や知能に遅れがなく、周囲が障害を見過ごすケースも少なくない。文部科学省の調査(2012年12月)は、小中学校の通常学級の子の6.5%に発達障害の可能性があるとしている。

*2-2:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/lifestyle/article/302604 (西日本新聞 2017年1月20日) 発達障害、進学先と連携を 総務省が文科、厚労両省に勧告
 総務省行政評価局は20日、自閉症やアスペルガー症候群などの発達障害を抱える児童・生徒に対する個人別の支援計画を、進学時に引き継ぐ仕組みが不十分だとして、文部科学省と厚生労働省に改善を勧告した。全国の計42施設を抽出した調査で、中学は卒業生の15%、高校は6%しか進学先へ計画を引き継いでいなかった。小学校は79%、保育所は35%、幼稚園は47%だった。計画の作成対象が施設ごとに異なる実態も判明。文科省の通知などは「必要に応じて」計画をつくるよう学校側に求めているが、医師の診断書を必要としたり、特別支援学級の児童に絞ったりというケースもあった。

*2-3:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-570430.html (琉球新報 2017年8月30日) <“学力向上”の現場>障がいある子、全国学力テストを問う、全国学力・学習状況調査、全国学テ
◆点に入れないで/「手の掛かる子」対象外に
 「標準的な学力が身に付いていないなら、入れなくていい」。沖縄県内南部のある小学校で昨年、発達障がいがある生徒が受けた全国学力テストの結果を、文科省に報告しなくていいと管理職が断言した。担任らは「子どもたちの実力を把握するための調査なのだから出すべきだ」と主張したが、通らなかったという。文部科学省によると全国学テの対象は該当学年の学習内容を履修できている全児童・生徒。知的障がいの診断が付くと対象外にされるが「学習内容を履修できているか」の判断は学校に任される。診断が付いていないグレーゾーンや、発達障がいがある児童・生徒を一律に対象から外したり、点数によって選択したりすることが、少なくない県内学校で行われている。情緒障がいやADHD、学習障害などがある児童・生徒が、通常学級に在籍しながら必要に応じて別教室で指導を受ける「通級指導教室」。県内の設置数は右肩上がりで、2017年には過去最多を記録した。通う子どもたちに知的障がいはないが、一斉授業では力を伸ばしにくく、教科などによって得手不得手が出る場合もある。「通級の子どもは、学テを受けても結果は文科省に出さない」と多くの教員が口をそろえる。県は「数人の調査結果を抜いても学校の平均正答率は大きく上下しない。点数が悪いからと、結果を報告しないことは考えにくい」と否定するが、現場教員は「平均点が取れるなら入れて、取れないなら入れなくていいと言われることもある」と明かす。学テの目的は「義務教育の機会均等と水準の維持向上」だ。だがわずかな点差を競い合う中で、全ての子どもの学習を保障するはずの「学力向上」の現場から、平均から外れる子どもたちが排除されている。「誰かの指示というより慣例」で通級学級の児童の結果を除外すると説明していた若手の小学校教諭は、記者と話をするうち「学力向上の対象に通級の児童が入る認識がなかった。恐ろしいことをしていたのかもしれない」と表情を変えた。

<ハンセン病患者差別>
*3:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/354631/ (西日本新聞 2017年8月30日 ) ハンセン病差別 司法が加担した罪を問う
 「密室の法廷」で下された死刑判決は妥当だったのか、重大な疑義があるのに司法が検証を拒むのは不当-として、国家賠償を求める訴訟が熊本地裁に起こされた。ハンセン病患者の誤った隔離政策に司法が加担し、差別を助長した歴史を踏まえ、国はこの訴えを重く受け止めるべきだ。訴えたのは熊本県でハンセン病患者とされた男性が殺人罪などで死刑判決を受け執行された「菊池事件」を巡り、裁判のやり直しを求めてきた支援者の元患者らだ。隔離施設内に設けられた「特別法廷」で裁かれた男性について、元患者らは差別的な扱いを受けた冤罪(えんざい)の疑いが強いとして、検察自らが刑事訴訟法に基づき「公益の代表者」として再審を請求すべきだと主張してきた。しかし、最高検は「再審の事由がない」とこれを拒み、元患者らは差別や偏見の被害回復を求める権利が侵害され、精神的苦痛を被ったと訴えている。再審の道が開かれない中で、国賠訴訟を通じて事件の真相に迫るのが狙いだ。熊本県の元役場職員を殺害するなどした罪に問われた男性は一貫して無罪を主張しながらも1962年、3度目の再審請求が棄却された翌日に死刑が執行された。最大の問題は、人権尊重や裁判の公開をうたった憲法に反した疑いが強い特別法廷である。最高裁が1948~72年に開廷を認めた事例は全国で95件に上る。最高検は今年3月、隔離法廷に関与したこと自体は認め、最高裁や日弁連に続き謝罪した。菊池事件は特別法廷で下された唯一の死刑事案とされる。元患者らの弁護団は冤罪の新証拠などを示すとともに、特別法廷の違憲性を明らかにしていく方針という。ハンセン病問題は、国の隔離政策を違憲とした2001年の熊本地裁判決(確定)後、元患者の救済策が進む一方、今も差別と偏見に苦しむ家族が国を集団提訴するなど、全面解決にはほど遠い。菊池事件が問うのは人権侵害に対する司法全体としての姿勢だ。真相を闇に葬ってはならない。

<共謀罪と個人情報運用も人権侵害の方向>
PS(2017年9月21日追加):*4-1のように、犯罪を計画段階で逮捕でき、そのためには監視社会になる「共謀罪」法案も国民の反対を無視して可決された。これは、安倍首相が人権侵害を好む人なのでは全くなく、官僚機構やそれに便乗して民主主義(国民主権)の理念を護るためではなく他の目的のために働く国会議員やメディアに原因がある。そのため、誰が首相になっても余程の気概と力がなければ「共謀罪」の廃止はできないと思われる。
 また、*4-2のように、総務省は、①個人が健康状態や購買履歴等の情報を一括で企業に預けて報酬やポイントを得る仕組みを作り ②データを預かる事業者は個人情報を匿名化した上で情報が欲しい企業に提供できるようにする とのことだが、民間企業の利用によって歯止めがなくなる上、個人から同意を取る形で次第に個人の選択の余地もなくなるため、この規制緩和は個人情報の過度な開示や利用による人権侵害に繋がる。
 つまり、近年は、民主主義や人権尊重の歴史に逆行する改革が次々と行われているのだ。

*4-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201709/CK2017091602000145.html (東京新聞 2017年9月16日) 【社会】「共謀罪」廃止へ集結 「監視を恐れず」「改憲つながる恐れ」
 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の廃止を目指す市民団体や法律家団体などでつくる「共謀罪廃止のための連絡会」は十五日、東京都千代田区の日比谷野外音楽堂で「共謀罪は廃止できる!9・15大集会」を開いた。約三千人(主催者発表)が参加し、「共謀罪は絶対廃止」などと声を上げた。連絡会は今月七日、「SEALDs(シールズ)」の元メンバーらがつくった「未来のための公共」や日本消費者連盟など十四団体が結成した。アムネスティ・インターナショナル日本の山口薫さんは「今、市民活動は危機にさらされている。法は施行されたが廃止できる。監視を恐れず、萎縮せず活動したい」と話した。「共謀罪対策弁護団」の三澤麻衣子事務局長は多くの弁護士で、摘発された場合の対策や予防を考えるとした。世田谷区の会社員横山淳さん(46)は「共謀罪の強行採決はひどかった。計画段階で捕まり、監視社会が進む。改憲の流れにもつなげられるのでは」と話した。民進党など野党四党の国会議員らは、二十八日からの臨時国会への廃止法案の提出を明らかにした。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170828&ng=DGKKASFS25H54_X20C17A8MM8000 (日経新聞 2017.8.27) 個人情報 運用を一任、総務省、利用増へ事業者認定 データ利用先を自由に
 総務省は個人が健康状態や購買履歴などの情報を一括で企業に預け、ビジネスに役立ててもらって報酬を得る仕組みを作る。2020年をめどに、情報を預かって運用する事業者への認定制度を設ける。個人にとってはデータを預けて、その先の利用を運用者に任せる「簡易型」の仕組みだ。データの運用先まで個人が選ぶ「厳格型」と合わせて、政府は個人データをビジネスに利用する制度を整える。ビジネスに個人データを活用する仕組みは、実際に情報を使う企業まで個人が指定する「情報銀行(総合・経済面きょうのことば)」も政府内で検討が進んでいる。総務省が取り組むのは、運用者が一定のルールのもとで個人のデータを自由に利用できる仕組み。個人情報のビジネス利用は2本柱で設計が進む。総務省は新たな仕組みを「情報信託」と呼んで整理する。データを扱う事業者はIT(情報技術)系の企業やシンクタンクを想定する。個人はあらかじめ病院や銀行、旅行会社などのデータベースを事業者に指定し、病歴や資産情報、渡航履歴などの情報に運用担当者がアクセスできるようにする。データの開示範囲は個人が設定する。データを預かる事業者は個人情報を匿名化したうえで、情報を欲しい企業に提供する。医療や観光、金融といった企業のニーズを見込む。データをもらう企業は対価を払い、一部を特定のサービスに使えるポイントなどの形で個人に還元する。個人情報を適切に管理するため、データを運用する事業者に対し、民間が設立する団体による認定制度を導入する方針だ。提供元の個人との間ではデータを漏洩しない、提供先の企業との間では個人データを不正に使わない、などの約款を交わすことを義務付ける。18年度予算の概算要求に実験費用を盛り込む。政府はIT総合戦略本部を中心に、個人が預ける情報を管理・運用する仕組みとして「情報銀行」を検討している。ただ、「どの企業にどのデータを提供する」といった具合にデータの提供先まで個人が指定する方法が議論されている。銀行方式は最終的にデータを使う企業が分かる。個人に詳細なデータを出してもらうかわりに、大きなポイントを出すといった個別の設計をしやすい。総務省の方式はデータ運用の自由がある一方、個人がデータ提供をためらう可能性はある。政府は個人の使い勝手に応じて2案を設け、流通の仕組み作りを進める。日本は海外と比べて個人データの外部提供への抵抗感が強いとの調査もある。信託方式はデータ管理のルール作りとともに、認定制度の信頼を高めることが課題になる。

<子どもへの人権侵害>
PS(2017年9月24日追加):*5-1のように、1000人あたりの向精神薬の処方件数を算出し、年齢層ごとの処方件数の経年変化を統計解析で比較したところ、2002年~2004年と2008年~2010年の比較で、13歳~18歳のADHD治療薬使用が2.49倍、統合失調症などに使う抗精神病薬が1.43倍、抗うつ薬が1.31倍と増加し、小学生でもADHD治療薬が1.84倍、抗精神病薬が1.58倍となっており、病気も効果も安全性も確立していないのに子どもへの適応外処方や多剤併用が浮上しているのだ。また、*5-2のように、以前はADHDという名前の病気はなく、子どもに元気があるのは当たり前で、そういう人が大人になってもやはり元気に仕事をしているため、「子どもに落ち着きがないから、ADHDが疑われる」などとして、すぐ子どもを異常扱いして薬漬けにするのは疑問が多い。

*5-1:https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20150120-OYTEW54767/ (読売新聞 2015年1月20日) 「子供に向精神薬処方増」のなぜ?
 1月13日の朝刊社会面で、「子供に向精神薬処方増」のニュースを書いた。臨床現場では以前から指摘されていた傾向が、初の全国調査で確かめられたのだ。いささか硬い内容になるが、子どもへの投薬を考える上で重要なデータが多く含まれているので、今回は調査結果を詳しく紹介してみたい。調査を行ったのは、医療経済研究機構研究員の奥村泰之さん、神奈川県立こども医療センター児童思春期精神科医師の藤田純一さん、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部室長の松本俊彦さん。2002年~2010年の外来患者(18歳以下)の診療報酬明細書と調剤報酬明細書の一部、計23万3399件をもとに、1000人あたりの向精神薬の処方件数などを算出し、統計解析で年齢層ごとの処方件数の経年変化などを比較した。2002年~2004年と2008年~2010年を比較すると、13歳~18歳では、注意欠如・多動症に使うADHD治療薬が2・49倍、統合失調症などに使う抗精神病薬が1・43倍、抗うつ薬が1・31倍と増加した。2008年~2010年の同年代の人口1000人あたりの処方件数は、抗不安薬・睡眠薬が4・8件、抗精神病薬が3・9件、抗うつ薬が3件、気分安定薬が3件だった。小学生(6歳~12歳)への向精神薬処方も増え、2002年~2004年と2008年~2010年の比較では、ADHD治療薬が1・84倍、抗精神病薬が1・58倍となった。依存性のあるベンゾジアゼピン系薬剤を中心とする抗不安薬・睡眠薬は、この年代では0・67倍と減少した。同年代の人口1000人あたりの処方件数は、気分安定薬が3・6件、ADHD治療薬が1・5件、抗精神病薬が1・2件、抗うつ薬が1・2件だった。件数は少ないが、0歳から5歳の幼児に対しても、抗精神病薬などの処方が確認された。処方件数増加の背景について、調査報告書は、受診者数の増加(厚生労働省の患者調査では、未成年の精神疾患受診者数は2002年に9万5000人、2008年は14万8000人)や、思春期外来の増加(2001年は523施設、2009年は1746施設)、ADHD治療薬など新薬の承認、などの影響を挙げている。
●適応外処方と多剤併用の問題も浮上
 果たして診断や投薬は適切に行われているのだろうか。過剰診断や誤診、不適切投薬の症例はないのか。診療報酬明細書などを基にした今回の統計調査では、個々の状況が分からず、処方が適正か否かの判断はできない。だが、疑問点はいくつも浮かび上がる。特に、処方件数が増えている向精神薬の多くが、子どもに対しては「適応外」であることは認識しておく必要がある。現在使われているADHD治療薬は、子どもに対する臨床試験を行って適応(6歳以上)を得ているが、抗精神病薬や抗うつ薬、抗不安薬・睡眠薬などは、子どもを対象とした大規模な臨床試験が日本では行われておらず、有効性や安全性の確認が十分ではない。このような向精神薬の添付文書(薬の説明書。インターネットで簡単に読める)には、子ども(小児)への投与について、「安全性は確立していない」「使用経験がない」などの記述があるので、関心のある方は確認していただきたい。子どもへの薬の適応外処方は、向精神薬以外にも行われることが多く、すぐに「悪」と決めつけることはできない。本物の薬か偽の薬を、ランダムにグループ分けした子どもたちに飲ませ、効果を比較する臨床試験への抵抗感が日本では根強く、実施しにくい事情もある。大切な子どもたちを、薬の「実験」に巻き込みたくないのだ。しかし一方で、成長期の脳に作用する向精神薬が、「安全性は確立していない」「使用経験がない」とされながらも、実際には使用が拡大している。子どもたちを守りたいがゆえに、子どもたちを未知のリスクにさらす。そんな矛盾した状況が生じているのだ。子どもに対する臨床試験が行われなければ、副作用の種類や発生頻度は分からず、市販後の副作用調査も徹底されないなど、被害を組織的に防ぐ手立てが乏しくなってしまう。さらに、深刻な問題が起こった時の救済策も、適応外処方の場合は不十分になりかねず、善意で処方した医師が責任を問われる可能性もある。このような状況で、誰が得をするというのだろうか。この調査でもう一つ注目したいのが、一人の子どもに異なる向精神薬を複数処方する例が多いという指摘だ。向精神薬が、他の種類の向精神薬と併用される割合は、気分安定薬で93%、抗うつ薬で77%、抗不安薬・睡眠薬で62%、抗精神病薬で61%に上った。言い方を変えると、例えば抗精神病薬を処方される子どもの61%は、抗不安薬・睡眠薬や抗うつ薬など、他の種類の向精神薬も併用処方されている、ということになる。調査報告書は「この数値は欧米と比べて著しく高い」と指摘し、欧米での未成年への向精神薬併用処方割合について、米国19%、オランダ9%、ドイツ6%という数字を示した。医療提供体制の違いや調査対象の等質性などの点から、この結果だけで「安易に『わが国では、向精神薬の不適切な多剤併用処方の割合が異様に高い』と結論づけるのには慎重であるべき」と注意を求めたが、「今後、わが国の多剤併用処方の割合が欧米よりも高くなる理由について、検討していく必要がある」とした。当然の指摘だろう。日本では以前から、成人患者に対して抗精神病薬を何種類も使う多剤大量処方が続き、国際的にも問題視されてきた。ベンゾジアゼピン系薬剤を漫然と長期間処方され、常用量依存に苦しむ人も多い。カウンセリング技術の未熟さや診療時間の短さ、マンパワーの少なさなど様々な事情から、薬に過度に頼る医師が多いのだ。そして更に、過剰な処方が子どもたちにも及んでいるとすれば、早急に歯止めをかけなければならない。日本の子どもへの多剤併用処方や適応外処方は、どのような根拠で、どのような必要に迫られて行われているのか。処方医や患者、家族を対象とした詳細な実態調査が求められている。

*5-2:http://healthpress.jp/2015/07/adhd-1.html (Health Press 2015.7.8) 覚せい剤に似た性質を持つADHD薬。子どもへの処方は本当に害はないのか?
 近年、ADHD(注意欠陥・多動性障害)など発達障害と診断される子どもが増えている。ADHDの特徴は、集中力や注意力に欠けたり、衝動性や多動性が見られたりすることだ。詳しい原因はわかっていないが、脳の機能障害ではないかといわれている。しかし、以前はADHDという名前の病気はなく、"元気があること"はその子どもの個性だと思われていた。そして、そうした子どもたちも、たいていは成長するにしたがって落ち着いて生活できるようになっていた。今は病気というレッテルを貼られ、薬漬けにされる時代だ。メディアでこの病気が取り上げられるようになると、「この子も落ち着きがないのでADHDではないか」と、親や教師など周囲の大人が心配し、子どもを受診させるケースが多くなった。また、少しでも兆候があるとADHDとみなし、脳の中枢神経に作用する強い向精神薬を処方する医師も増えている。
●向精神薬を服用していた米銃撃事件犯の少年たち
 この向精神薬の代表的な薬のひとつに、リタリン(塩酸メチルフェニデートの一般製剤)がある。すでに、スウェーデンでは1960年代後半に同剤の発売が禁止されており、1970年代にはヘロインと同等の依存性があると指摘されていた。それにもかかわらず、アメリカではADHDの特効薬として患者への投与を継続。また、子どもへの投与だけではなく、大人の間でも「活動的になり仕事や家事がはかどる」という理由で、急激に広まっていった。リタリン生産量は1990~1999年に全世界で700%という高い伸びを示し、その9割がアメリカで使用されていた。だがそうしたなか、少年たちによる銃乱射事件が学校内で多発する。彼らは学習機能障害と診断され、リタリンなどの向精神薬を投薬されていた。コロラド州ではその後、厳密な検査を行わず安易に診断を下されたADHDの子どもに対して、リタリンを強制投与することを禁止した。日本において、ADHDはリタリンの適応外であったものの、うつ病の患者に処方されてきた。だが、2007年、ある男性が複数の病院を受診して安易にリタリンを処方され、同剤の依存に陥り自殺するという事件が起こる。このことからうつ病も適応外となり、ナルコレプシーのみの適応となった。2008年からは登録された専門医にしか処方できなくなっている。現在、日本でADHDと診断された子どもに処方されるのは、コンサータ(メチルフェニデート徐放剤*)という薬だ。しかし、このコンサータには覚せい剤に似た性質があるため、承認にあたって"コンサータ錠適正流通管理委員会"を設置し、処方できる医師や調剤できる薬局を登録制にするという厳しい規制が設けられた。また、薬局はリストにない場合は拒否しなければならないなど、流通・処方状態の管理がしっかり行われている。このように、子どものADHDに処方される薬は、厳重な規制を必要とする危険な薬だ。これを子どもに与え続けて、果たして悪影響がないといいきれるのだろうか。ADHDが疑われるからといって子どもを安易に薬漬けにしてしまう医療には、疑問を持たざるを得ない。何らかの弊害が起こらないよう、親をはじめとする周囲の大人たちが、子どもに投与される薬には、どのようなリスクがあるのかを十分理解するべきである。
○徐放剤:成分の放出を遅くし、服用回数を減らせるように開発された薬。血中濃度を長時間一定にすることで、副作用を回避できる。

<精神障害者差別>
PS(2017年10月10日追加):*6-1のように、「①ラスベガスで銃乱射事件があった」「②容疑者の動機は謎に包まれている」「③米ABCは事件の数カ月前から容疑者の精神状態が悪化していたと報じた」と朝日新聞が報道し、日本の多くのメディアは、「原因は米国が銃社会であることだ」としているが、①は事実であるとしても、②の動機は、容疑者の弟が「最近、金額の大きなカケをしていた」と証言していることから、私は「カケで破産するほどの大損をしてラスベガスに恨みを持った」のが動機ではないかと考える。しかし、この容疑者の弟の証言は相手にされず、③のように「容疑者は精神状態が悪化していた」ということになっており、この「精神状態の悪化」の定義は全く曖昧で、それが銃乱射を行う動機になるとは思えない。にもかかわらず、こういう報道が堂々となされることは、国連の「障害者権利条約」や日本の「障害者基本法」「障害者差別解消法」などに反しており、精神障害者への差別を助長して社会参加をやりにくくするとともに、その尊厳を無視する見識の低いものである。
 そのような中、*6-2のように、「農福連携」して農業を障害者雇用の場とする取り組みが始まっている。私は、衆議院議員時代(2005~2009年)に、伊万里市の障害者福祉施設で精神障害者が有田焼の絵付けをしているのを視察したことがあるが、この仕事は自閉症でも問題なく、集中する分だけ出来は上々で、高級品を作らせればそれにも対応できそうに思われた。

*6-1:http://digital.asahi.com/articles/ASKB55F2ZKB5UHBI018.html (朝日新聞 2017年10月6日) ラスベガス銃乱射容疑者、精神状態悪化か 米報道
 米史上最悪の銃乱射事件を起こしたスティーブン・パドック容疑者(64)の動機は、いぜん謎に包まれている。解明のかぎを握ると思われた交際相手の女性(62)は帰国後、「全く知らない」と困惑した。容疑者の精神状態が悪化していたとの報道も出ているが、なおはっきりしない。「こんな事件を計画していたとは全く考えられなかった」。女性が4日、事件後初めて弁護士を通じて出した声明には、突然捜査対象となった困惑とともに、容疑者への思いがにじんだ。「親切で思いやりのある、静かな人だった。私は彼を愛していて、将来をともにすることを望んでいた」。容疑者は、事件前に女性にフィリピンに帰るための航空券を買い与えていた。女性は9月15日に日本を経由してマニラに到着。その後、容疑者から「フィリピンの家族のために家を買うお金」として10万ドルの入金があった。米メディアによると、女性が容疑者と知り合ったのは、地元のカジノだった。女性は接客担当をしており、度々訪れる容疑者と親しくなり、交際を始めた。ネバダ州の地元紙リノ・ガゼット・ジャーナルによると、女性は容疑者と知り合った当時、別の男性と結婚していたという。2013年、女性は夫と暮らしていた家を出て、パドック容疑者が所有していた同州リノのアパートに引っ越した。それから2年後、女性は夫と離婚した。女性が元夫と暮らしていた当時の隣人は「家でパーティーをしたり、近所の子どもたちを家に泊めてあげたりしていた。近隣の皆に好かれ、とてもすてきな女性だった。家族に会いによくフィリピンへ往復していた」と話し、事件に衝撃を受けていたという。しかし、容疑者と暮らし始めてから、女性の近隣の人は全く違った印象を語る。「2人とも見た覚えがない」。事件直前まで2人が暮らしていた家の隣人はそう話す。他の近隣住民も、つきあいのあった人はほとんどいなかった。オーストラリアに住む女性の姉妹は米NBCの取材に「彼女は何も知らぬままフィリピンに行かされた。(容疑者が)計画を邪魔されたくないと思ったのだろう」と涙ながらに訴えた。一方、米ABCは4日、事件関係者の話として、容疑者は事件の数カ月前から精神状態が悪化していたと報じた。体重が減り、身なりも汚くなり、女性の元夫に対する妄想にとりつかれていたという。確たる動機が見えぬまま、捜査関係者のいらだちは高まっている。ラスベガス警察のロンバルド保安官は4日の会見で「1人で全てやったとは信じがたい」と話し、協力者がいた可能性も視野に入れていることを示唆した。同保安官は、容疑者が9月下旬に高層コンドミニアムの一室を予約していたことも明らかにした。その時期、今回の事件と同じように、ここから見下ろせる場所で別の音楽祭が開かれていた。警察は「理由は不明」としているが、容疑者が当初、この音楽祭を狙おうとした可能性もある。ラスベガス警察は、これまで事件での死者を59人としていたが、自殺した容疑者を除く58人に訂正。けが人も489人とした。

*6-2:http://special.nikkeibp.co.jp/NBO/businessfarm/bizseed/05/ (日経BP 2017.2.28) キーワードは“ノウフク”、浸透し始めた「農福連携」、「働き手」が欲しい農と「働く場」を求める福祉、両者のニーズが合致
 「農福連携」と呼ばれる取り組みが活発化している。農業を福祉の現場に取り入れる試みは従来からあるが、どちらかというと障がい者支援が中心だ。引きこもりやニートなどの生活困窮者への支援は、それほど多くなかった。最近になって、生活困窮者の支援にも手が広がる。また、農作物の生産・加工・販売を広く手掛けたり、農家からのニーズに応じて農作業の委託請負をしたりする法人が少しずつ増えている。一般にはまだそれほど馴染みがないが、「農福連携」という言葉がじわじわと浸透し始めている。農福連携とは、文字通り、農業の現場と福祉の現場が連携することだ。具体的には、障がい者や生活困窮者などの社会的に弱い立場にいる人たちが、農園で畑仕事に従事したり、農産物の加工・販売をしたりして、自分の働く場所と居場所を手に入れる取り組みを指すことが多い。農業の現場では、高齢化などにより担い手の減少が止まらず労働力不足が悩みの種だ。一方の福祉サイドでは、障がい者・生活困窮者の働く場所がなかなか見つからない。農業の「働き手がいない」という問題と、福祉の「働く場がない」という問題を解決し、補完してくれるのが農福連携というわけだ。
●農福連携のシンポジウムやフォーラム、マルシェ
 最近、農福連携を冠したシンポジウムやフォーラム、マルシェなどの催しが頻繁に開かれるようになった。農業・福祉関係者だけでなく、行政や一般の人も巻き込みながら、大きなうねりになろうとしている。この2月14日には、農林水産省の政策研究機関である農林水産研究所主催の「農福連携」シンポジウムが開催された。「農業を通じた障害者就労。生活困窮者等の自立支援と農業・農村の活性化」というテーマが掲げられ、障がい者や引きこもり、ニートなどを実際に引き受けている事業者をはじめとして、農業関係者、行政の担当者、自治体、研究機関など多くの人たちが集結。農福連携の最前線について報告が行われ、活発な議論が交わされた。3月には農福連携の取り組みを全国レベルで推し進める「全国農福連携推進協議会」が設立される。ここに全国の福祉事業所や農家、行政や研究者、企業など、多くの賛同者が参加する。行政の側でも、該当省庁でもある農林水産省と厚生労働省の関心度は高い。協力しながら、積極的に連携を推し進めている。「農福連携マルシェ」などはその一例だろう。2015年6月に初のマルシェを霞が関で開催。2016年5月には官庁街を出て東京・有楽町、その後全国規模で開かれている。予算面でも、両省庁に農福連携を意識したものが少しずつ目立つようになってきた。
●取り組みには2つの方向がある
 一般社団法人JA共済総合研究所主任研究員で、長らく農福連携分野の研究を先導してきた濱田健司氏は、今、農福連携の取り組みとして大きく2つの方向があると分析する。1つは、障がい者や生活困窮者が身を寄せる福祉関係の事業者が取得したり借りたりした農地で農業生産を行う方向だ。生産だけでなく、できた農産物の加工・製造や販売まで手掛けるところも多い。もう1つは、農家や農業生産法人などに対して農作業の請負契約を結ぶというもの。こちらは、障がい者や生活困窮者が農業側の田畑やハウスに出向いて、いわゆる施設外就労として農作業に従事する。直接生産を手掛ける事業者の中には、独自の工夫で、持続可能な事業にしているところもある。代表例は、農福連携のパイオニアとしても知られる農事組合法人「共働学舎新得農場」だ。共働学舎は、北海道十勝地方・新得町に約120ha(120万㎡)の農地を構え、酪農、チーズや有機野菜の生産、工芸品づくりなどを行っている。ここには障がいを持つ人をはじめ、引きこもりやホームレスなど、様々な困難を背負った人たちが集まり共同生活をしながら農業生産・販売を行う。ここで生産されるチーズなどの農産物や工芸品はその品質の高さで知られ、学舎の経営にも寄与する。共働学舎の総売上高は約2億2千万円にのぼり、代表宮嶋望氏によれば「生活に必要な経費は賄えるほど」だという。後者でよく知られている取り組みは、特定非営利活動法人(NPO法人)香川県社会就労センター協議会の例だ。生産者と同協議会が農作業の請負契約を結んで、協議会から障がい者施設に作業の参加を募集・依頼する。農作業の対価として工賃が支払われる。請け負う農作業は、野菜類の苗の植え付けから収穫、除草、出荷調整に至るまで多種多様だ。協議会を中心として、障がい者施設と地域行政、JA、生産者の間で協力し合う仕組みを構築し、上手に連携している例といえる。生活困窮者への支援をする団体も増えている。厚生労働省が2015年4月にスタートさせた「生活困窮者自立支援制度」の中には、生活困窮者に対する就労訓練事業を行う社会福祉法人や生活協同組合で条件を満たすところに対して、支援をする仕組みがある。内容も地域によって違ってくるが、固定資産税や不動産取得税などの一部を非課税にする措置や、事業を立ち上げる時の経費の補助、自治体による商品の優先発注がある。農林水産省でも、いわゆる「福祉農園地域支援事業」という、福祉農園の全国展開を支援する事業を進めている。平成29年度の予算でも、同様の施策が取られていて、「農山漁村振興交付金」といわれるものの中に、福祉農園を支援する枠が設けられた。こちらはNPO法人、民間企業、一般社団法人も申請できる。
●生活困窮者への就労訓練の場としても注目
 こうした制度の充実に伴って、引きこもりやニートなどの生活困窮者に対して就労訓練をする団体が今後増えてきそうだ。ホームレスの就農支援プログラムを手掛けるところも出てきている。JA共済総合研究所の濱田氏は、こうした一連の動きを、「単なる社会貢献や福祉という範疇を超えて、障がい者や生活困窮者はいまや農業にとって必要な人材だと見る動きだ」と語る。担い手不足に悩む農業の現場からのニーズは今後ますます高まってくるだろう。社会的な弱者といわれる人たちが、農業を通じて働く場と収入を得て自立できれば、それだけ社会保障費の削減につながる。同時に、農業の衰退にも一定の歯止めがかかり、生産の拡大に寄与する可能性もある。もちろん解決しなければいけない問題は山ほどある。現在のセーフティネットにアプローチできなかったり、しなかったりする人もまだまだ多い。受け入れる側の意識や体制もまだまだだ。しかし、農福連携には大きな可能性が秘められている。今後の進展に大きな期待がかかっている。

| 日本国憲法::2016.6~ | 04:45 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.6.8 壊される平和主義、壊されそうな主権在民(国民主権=民主主義)、壊された基本的人権の尊重 (2017年6月10、11、14、15、19日に追加あり)
(1)壊される平和主義
 自民党が、*1-1のように、憲法9条1項・2項を残して自衛隊の存在を新たに憲法に明記する方針で改憲の原案づくりに向けた作業をスタートさせたそうだが、私も、憲法・安保基本法・自衛隊法等の個別法と合わせて法体系を整理し、自衛隊の存在から安全保障の全体像にまで及ぶ総合的な議論をすることが必要だと考える。その理由は、国民が知らないうちに、自ら平和主義を壊して危険な社会を作るという事態を招かないためである。

 しかし、我が国では、現在のように自衛隊への文民統制が定められていても、自衛隊出身の政治家が防衛大臣を務めることもあり、これはいろいろな意味で文民統制のうちに入らないと思われるため、運用にも気を付けるべきだ。

 また、*1-2に、「①憲法の理想と現実の間には隔たりがあるが、現実を理想へと近づけることこそが正義の姿である」「②だから九条の平和主義を高く掲げよ」と述べ、「③被爆国日本の役割、不戦の国の誇り、自衛隊らしい人助け、非戦は国家戦略である」「④戦後七十年余の長きにわたって戦争をせず今日に至ることのできたのは、それが国民多数の願いであり、願いの象徴的文言が九条である」と書かれているが、私は、①は全くそのとおりで、現実を理想に近づける努力をするのが当たり前であるにもかかわらず、現在は「理想と現実は異なる」として理想を諦め、現実に妥協することが正義のようになっているのが問題だと考える。さらに、②③のように、非戦はまさに国家戦略であり、④のように70年以上に渡って戦争をせずに今日に至ったことが、破壊や武器等への後ろ向きの支出がなく、我が国が富を蓄積できた大きな理由だと考える。

 そのため、日本国憲法・安保基本法・自衛隊法等の個別法を総合して、自衛隊の存在から安全保障の全体像に及ぶ中身のある総合的な議論をすることが必要だ。

(2)壊されそうな民主主義(主権在民=国民主権)
1)有権者に投票根拠となる事項を開示するよう公職選挙法を改正すべきこと
 *2-1に、「①国政選挙と首長選では、法定はがきやビラ以外にマニフェストの冊子が配布可能になったが、地方議員選挙ではマニフェストを配れない」「②新たな配布物が増えると資金力による候補者間の格差が生じるのが慎重論の根拠」「③民進党は2015年に公選法改正案を国会に提出し、自民党は2019年の統一地方選には間に合わせるが、この都議選での解禁は難しいとした」と書かれている。しかし、有権者に候補者の公約や人となりを正確に知らせることは、誰に投票するかを決める上で、最も重要なことなのである。

 しかし、①については、ビラは集会に集まった人にだけ配れるのであって、どこででも配ってよいわけではないため、集会で大人数を集めたり、組織的にボランティアを行う団体(≒政策によって利益誘導される団体)に支援されている候補の方が有利である。また、②は、資金力とビラやマニフェストの配布場所は関係なく、ビラに公約を書けば追加費用はかからないため、屁理屈にすぎない。そのため、③のように、民進党が公選法改正案を国会に提出しても、自民党はなるべく変えたくないのだと思われる。

2)高齢者を1人の有権者と考えないとする暴論の出現
 *2-2に、1964年生まれ(ゆとり教育世代)の京都大博士(経済学)で、公共経済学・人口経済学専門と標榜する岡本岡山大教授が、①経済学的に育児支援と年金削減が望ましい ②全体利益ある政策も現選挙制度では否決される(これがポピュリズムと呼ばれる) ③そのため、余命投票方式が効果が大きいが導入への壁が高い として、根拠薄弱で自信過剰な暴論を書き連ねておられる。

 私が、*2-2を、根拠薄弱で自信過剰だと書く理由は、①で「育児支援と年金削減が望ましい」としているのが、社会保障間の予算のやり取りしか考えられない厚労省の算術を基にした政策に乗っているにすぎず、公共経済学・人口経済学を専門とする京都大卒経済学博士の大学教授が調査・分析をして得た結果とはとても思えないからである。さらに、②のように、全体利益を口実にして個人の権利をないがしろにする政策が現選挙制度で否決されるのをポピュリズムと評しているのは、稚拙な論理をふりかざしての独裁であり、民主主義の否定にすぎない。

 また、①には「経済学的に」とも書かれているが、*2-4のように、これからの経済成長の源泉は人口で多数を占める高齢者の需要に応える財・サービスの開発と生産で、*2-2は経済学的にはマイナスであり、日本の経済学者はこの程度かと思わざるを得ないのである。

 そして、その結果、③のように、余命投票方式の方が効果は大きいが導入への壁が高いため、ドメイン投票方式や世代別選挙区制度を組み合わせるのがよいとして、*2-3の日本国憲法第15条「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」という条文とその内容の価値を無視している。つまり、日本では、日本国憲法も年金・医療・介護の重要性も理解しておらず、単純な算術しかできない人が経済学の専門家として公共経済学・人口経済学専攻と称しているのが、最も大きな問題なのである。

3)*2-2の文章の稚拙さについて、具体的に述べる


 2016.9.20  家計収入と消費支出の推移    出生数と      年齢別潜在的
  日経新聞   総務省家計調査報告   合計特殊出生率の推移  労働力率と就業率

(図の説明:政府は物価上昇を目的として異次元の金融緩和を続け、円安にもなったが、一番左のグラフのように物価はあまり上昇しなかった。その理由は、物価上昇・利子率低下・消費税増税・社会保障の負担増・給付減で、65歳以上の人が人口に占める割合が27.3%になっている我が国の高齢者の可処分所得を減少させたからである。また、2014年4月から消費税が8%に上げられたため、左から2番目のグラフのように、2014年5月以降の家計収入・消費支出はマイナスとなり、消費税増税や社会保障の負担増・給付減は、福利を低下させ経済にも悪影響を与えている。さらに、人口における高齢者の割合が増加した理由は、右から2番目のグラフのように、第二次世界大戦後の第一次ベビーブームの後、国の家族計画によって合計特殊出生率がゆるやかに低下し始め、ベビーブーム世代が出産期を迎えた1965~75年の第二次ベビーブーム期に出生数は増加したものの、合計特殊出生率は一貫して下がっているからだ。合計特殊出生率が一貫して下がった理由は、戦後教育を受けた女性の社会進出が増えても、厚労省が育児に対する社会的支援を行わず、多くの女性が結婚や出産で正規の仕事を辞めた後にはパートしか仕事がない状態が続いたからで、それにより女性は結婚や出産を先延ばししたり、諦めたりし、その状況が、一番右のグラフのように、今でも女性は労働力率が低く、M字カーブがあることに現れている)

   
年金に関する論戦    2016.11.2東京新聞     2016.1.28    2016.10.21 
                           朝日新聞     佐賀新聞

(図の説明:2007年度の年金制度見直し時に、国民がもらえる年金額の確定(=政府債務の確定)のために、年金特別便や年金定期便を提案したのは私なのでよく知っているのだが、その時挙げられた①年金制度の不合理 ②不正免除など年金保険料回収の杜撰 ③年金積立金の運用における杜撰 ④管理の杜撰 等々の問題は、いまだに実質的には改善されていない。それにもかかわらず、積立金が足りなくなると少子高齢化を理由として給付減・負担増を言い出すのはやめるべきだ。また、年金定期便で確認された金額から減額するのは契約違反であるにもかかわらず、左から2番目の図のように、賃金か物価のどちらかが下がれば、その低い方に合わせて年金支給額を下げる変更は、(子どもの世話にならずに)年金生活をしている高齢者の生活設計を破壊する。さらに、年金受取額が多い厚生年金には正規労働者の会社員と公務員しか入れず、非正規労働者や無職者が入る国民年金は自営業者向けに設計されたもので定年を想定していないため、負担額が大きく給付額は小さい。その上、年金支給は保険料を支払った人すべてに行われるのではなく25年以上支払った人に対してのみで、2017年8月1日からは10年以上であれば支給されることになったものの、10年以上支払わなければもらえないというのもおかしい)

 *2-2の文章は、学位論文だとしても落第だ。何故なら、「①巨額の政府債務を抱えて財政再建が急務であり、プライマリーバランスの黒字化を当面の目標とするが、年金、医療などの社会保障給付が拡大する半面、若年の意見が政治に反映されにくい」として、 “当面の”プライマリーバランス黒字化を目標とし、これまで長期間かけてできた政府債務の原因究明をせず、若者に寄り添うふりをしながら社会保障給付を削減することを目的とする文章であり、真実に基づいて問題を解決しようという姿勢が全く見られないからである。

 真実は、これまでの政府債務の増大は、景気対策と称して支出した膨大な無駄遣いによるものだ。また、年金・医療・介護などの社会保障は契約により保険料を徴収して給付しているものであるため、給付時に足りなくなった金額は厚労省の杜撰な管理・運用により積立金が足りなくなったことが原因で、そうなった真の原因を追究して改善すべきなのである。

 また、*2-2の「②分析の結果、育児支援の促進政策と年金給付の削減政策はともに経済学的に望ましい政策であることが示された」と書かれているのは、突然、結論だけが出てきて根拠が書かれておらず、実際には、日本だけでなく世界で人口に占める割合が増える高齢者の年金・医療・介護給付を減らすことが経済学的に望ましいことなどあり得ない。

 その後、「③“無限先”の将来世代の効用までを考慮した上で、経済厚生全体のパイが拡大するため、世代間での適切な資源配分によりすべての世代が改革前と同じか、改革前よりも良い状態に移行できる」として、突然、時間を“無限先”にして出生率上昇によるパイの拡大を効用として挙げている。こうすれば“無限先”には人口が増加してパイが拡大するという馬鹿なモデルを想定しているが、このように個人を犠牲にすることを何とも思わず、老後が保障されない国で、支出ばかりが多い子育てをするよりも、正社員として働き続けて貯蓄しておかなければ自らの生活が危うくなるため、考えのある人ほど出生率は低くなるだろう。

 さらに、「④少子高齢化・人口減少が急速に進展する中、少子化対策を拡充する必要性が認識されているが、日本の家族政策に対する公的支出は国際的にみて低水準」というのは、1970年代後半から長期的に起こってきたことで、厚労省がそれこそ長期的視野で対応してこなかったまさに失政の結果である。そのため、何故、そのような怠惰なことを続けてきたのかを徹底して原因究明し、改善しなければ解決しないのだ。

 にもかかわらず、「⑤人口比率の高い高齢者の政治への影響力増大は、世代間不公平につながり、若者の政治的無関心を引き起こしている可能性があるため、シルバー民主主義に弊害がある」というように、高齢者に一票の選挙権があるのが問題だという違憲の結論を導き出している。このように変に若者を甘やかし、若者のためにならない議論のシャワーを浴びせられて育った若者が、成長すれば正義感にあふれた社会に役立つ人材になるということはあり得ないため、モチベーションが高くてやる気にあふれ、高齢者に親切な外国人労働者を導入した方がずっとよいというのが、今後の日本が辿る道になる。

 なお、このように、厚労省の重大ミスを隠して官にはミスがないと強弁し、屁理屈を付けて国民を分断しながら国民にしわ寄せするという発想は、*2-5のように、憲法に天皇を元首として位置付けようとする昔帰りの発想をする人たちが、(特に自民党)政治家の中に多いことにも起因している。何故なら、官は選挙で選ばれるのではなく天皇の官吏であって判断ミスなど犯すわけがなく、官が犯したミスは国民か政治家が悪いため、問題とされた時点でたまたま大臣をしている政治家を引責辞任させ、国民の溜飲を下げればよいという発想になるからだ。

 もちろん、官の走り使いとして形だけの民主主義を演じている政治家は、本当の意味での国民代表ではないが、官に都合のよい政治家が官によって選挙の便宜を図られることは多く、回を重ねて当選した人が大臣や首相になるのである。また、日経新聞はじめメディアも官の太鼓持ちが多く、「言論の自由」「表現の自由」を標榜している割には真実で中身のある言論や表現は少ないため民主主義を下支えするには堪えず、国民はそれも見抜いて変えなくてはならない。

4)成長戦略が成果を出せない理由
 政府の成長戦略がなぜ成果を出せないのかについて、*2-4を土台にして説明すると、政府(特に官である経産省)は、成長戦略として二番煎じのAI・ビッグデータ・ロボットを活用して課題解決する社会の実現ばかりを掲げているが、そこには機械に対する狭い興味しか反映されておらず、国民の福利を増そうという発想がないからである。それは、最終需要者である国民の所得が減れば全体の需要も減るという経済学の基本原則を無視している。

 また、「日本経済の最大の課題は、成長力の強化と財政健全化の両立だ」と書かれているが、何故、経済成長(正しくは経済拡大)しなければならないのかについての考察がなく、国の経済拡大だけを目的としているようであり、国民の福利を無視している。さらに、ベビーブームがあったからには適正人口まで人口が減るのは当然で、その局面では経済拡大よりも個人の豊かさを増す財やサービスの提供の方が重要だという発想もない。その結果、「財政健全化には、消費税増税と社会保障の削減しかない」という算術(足し算と引き算のみ)に基づく愚かな政策提言しかできていないのだ。

 さらに、日銀による異次元の金融緩和による物価上昇は、消費税増税とあいまって人口に占める割合の多い年金受給者の実質所得を減らした。その上、社会保障の負担増・給付減がめじろおしであるため、日本経済の潜在成長率が2014年時点の0.8%台から16年後半には0.6%台まで下がったのは当たり前で、今後も高齢者の生活を締め付ければ締め付けるほど、人口の多くを占める高齢者に対応した新しい技術や製品開発は進まず、現在から将来にわたって世界で需要される財・サービスの開発を邪魔することになるのである。

 なお、自動運転車やEVも、日本発のアイデアでありながら抵抗勢力のため世界に出遅れて税収増の機会を失ったが、このようなことになる原因分析を行わずに、古い技術に大きな予算をつけ、官が作った法律を通しさえすれば実績をあげたなどと考えている政治家は、官の走り使いとして形だけの民主主義を演じている信念なき政治家にすぎない。

(3)壊された基本的人権の尊重
 「テロ等準備罪」と名を変え、表題と内容の異なる「共謀罪」法案が、自民党・公明党・維新の会の賛成多数で衆議院を通過し、現在は参議院で審議中だ。これに対しては、*3-1のように、国連のプライバシー権に関する特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏が懸念を表明し、それに対する菅官房長官の抗議に対して、「中身のないただの怒り」「内容は本質的な反論になっておらず、プライバシーや他の欠陥など、私が多々挙げた懸念に一つも言及がなかった」と批判するとともに、プライバシーが侵害される恐れに配慮した措置を整える必要性をあらためて強調している。そして、私も、全くそのとおりだと考える。

 また、*3-2のように、衆院憲法審査会は2017年5月25日、「新しい人権」などをテーマに審議を行い、「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案に対し、野党の委員から「(新しい人権の一つとされる)プライバシー権の侵害で、違憲立法」などの批判が相次いだそうだ。しかし、日本国憲法は、第21条で「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」と定めており、プライバシー権は、1947年(昭和22年)5月3日に施行された日本国憲法に規定されている権利であって、最近になって初めて認められた新しい権利ではない。

 そして、共謀罪の捜査で最も有力なツールとなる盗聴・盗撮については、*3-3のように、米国家安全保障局(NSA)による大規模な個人情報収集を告発し、現在はロシアに亡命中の米中央情報局のスノーデン元職員が、モスクワで共同通信と会見し、①NSAが情報監視システムを日本側に供与した ②日本政府は個人のメールや通話等の大量監視を行える状態にある ③「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案は個人情報の大規模収集を公認することになる ④これまで日本に存在していなかった監視文化が日常のものになる として、共謀罪法案に懸念を表明した国連特別報告者ケナタッチ氏に「同意する」と述べたそうだ。

 その上、*3-4のように、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)締結のため政府が必要と言う共謀罪法案について、国連の「立法ガイド」を執筆した刑事司法学者のニコス・パッサス氏は、「1)条約はテロ防止を目的としたものではない」「2)英国は長年TOC条約のメンバーだが、条約を締結するだけではテロ防止にはならない」「3)新たな法案等の導入を正当化するために条約を利用してはならない」「4)非民主的な国では政府への抗議活動を犯罪とみなす場合があるので、イデオロギーに由来する犯罪は除外された」「5)現行法で条約締結の条件を満たさなければ、既存法の改正か新法導入で対応しなければならない」「6)条約はプライバシーの侵害に繋がる捜査手法の導入を求めていない」と述べ、条約を新たな施策導入の口実にしないよう注意喚起したそうだ。

 私は、ロンドンでテロが多発したとしても、英国と日本は歴史が異なる上、日本は自衛戦以外の戦争をしないため、他国のテロが日本での立法理由にはならないと考える。

 佐賀新聞は、2017年6月7日の記事で、*3-5のように、「民主主義社会において発言や行動の自由がいかに大切かをあらためて確認する必要がある」と述べている。確かに、「共謀罪」「特定秘密保護法」などは、「何を行えば罰になるのか」が曖昧で、憲法21条に違反しているが、これまでメディアや野党が行ってきた言いたい放題の言論も、疑惑どまりのくだらない人格攻撃が多く、民主主義を守るために体を張って行った言論や表現とはとても言えず、言論の自由や表現の自由で守られる価値のあるものだけだったわけではないため、猛省すべきだ。

 そのような中、*3-6のように、法律の専門家である日本労働弁護団が「衆議院法務委員会における共謀罪法案の採決強行に抗議する声明」を出している。また、*3-7のように、真宗大谷派《東本願寺》宗務総長の但馬氏も「テロ等組織犯罪準備罪(共謀罪)法案に反対する声明」を発表しておられ、さらに、*3-8のように、カトリック団体も戦中の弾圧に言及して「共謀罪」法案の衆院通過に反対する声明を出しておられる。つまり、普段は温厚で熟考するタイプの方々が、歴史に基づいて次々と反対表明を出しておられるのは重視すべきだ。

 最後に、*3-9のように、国際ペンクラブのジェニファー・クレメント会長も、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案が国会で審議されていることを受け、「共謀罪は日本における表現の自由とプライバシーの権利を侵害する」と題する声明を発表しておられる。同法が成立すれば、日本における言論・表現の自由やプライバシーの権利は必ず脅かされる。しかし、それでも党議拘束だからと言ってすべての議員が党の決定に従うのであれば、日本には、国あって国民がない(人が主役でない)のと同様に、党あって議員がいないのであり、その「組織あって個人なし」の発想こそがわが国で最も大きな問題なのだ。

<壊される平和主義>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170601&ng=DGKKZO17153520R00C17A6EA1000 (日経新聞社説 2017年6月1日)9条論議は安保基本法を含め総合的に
 安倍晋三首相が火をつけた憲法9条の改正論議が広がりを見せている。自民党が改憲の原案づくりに向けた作業をスタートさせ、日本維新の会も調整を本格化。経済団体に加え、民進党の支持団体である連合も議論をはじめる。憲法施行70年、9条問題にわれわれ自身も真っ正面から向き合うときがいよいよ来たようだ。首相がこれまでに明らかにしている方向は、9条の1項と2項は残しつつ、新たに自衛隊の存在を憲法に明記するというものだ。自民党としての改憲案を年内にまとめ、2020年の新憲法の施行をめざすとしている。これは、自民党が野党当時に決めた12年の改正案を捨てて、公明党の主張である現行憲法をそのままにして必要なものを加える「加憲」の考え方に沿ったものだ。民進党の一部にも9条3項などのかたちで自衛隊の存在を明記する意見があるのもにらんでいる。自民党内では首相の唐突な見解表明を批判する声があるように、従来の議論と異なったものであるのは間違いない。そうだとしても、本社調査で51%の有権者が自衛隊の明記に賛成している世論の動向を踏まえた場合、しっかりした議論を通じて方向性を見いだしていくことが望まれる。必要なのは単に自衛隊を明記するのが是か非かといった形式的な憲法論ではなく、安全保障のあり方を含めた総合的な議論だ。そのとき参考になるのが12年当時、自民党が集団的自衛権の行使を容認する際に定めようとしていた国家安全保障基本法案だ。もし自衛隊を憲法上で明文化するのなら、自衛隊に対する文民統制、安全保障基本計画の策定といった同基本法案に盛り込んだ規定なども改めて検討すべきだ。憲法、安保基本法そして自衛隊法などの個別法と法体系を整理し、自衛隊の存在から安全保障の全体像にまで及ぶ議論が求められる。その前提として21世紀の国家のあり方を含めた中長期的なビジョンも必要になってくるだろう。9条改正消極論のひとつとして、目ぼしい成果があらわれていない成長戦略や規制改革などのテーマに政権の力を集中すべきだといった声があるのは事実だ。首相の宿願である改憲を実現するためにも、国民の多くが望む経済再生につながる政策を断行し、具体的な果実を示していく努力もまた必要になる。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017051502000118.html (東京新聞社説 2017年5月15日) 日本の平和主義 9条の精神を壊すな
 憲法記念日に、安倍首相が自民党総裁としてとことわりつつも、九条改正を唱えたのを聞き、皆さんはどう思われただろう。自衛隊の存在を書き込むだけなら認めていいと思われたか、それとも不安を覚えられたか。私たち論説室は今年の元日前後に「日本の平和主義」と題した連載型の社説を掲げた。安保法が成立し次にはどんな形であれ、改憲の動きが出てくる。そうなれば焦点は九条、日本の平和主義が危うくなると考えたからだ。連載の初回(十二月三十日)は、ずばり「憲法改正が来年の大テーマとなるでしょう」と書き出して、憲法の理想と現実の間には隔たりがあるが、現実を理想へと近づけることこそが正義の姿であると述べた。だから九条の平和主義を高く掲げよ、と。私たちのその姿勢は今ももちろん変わらない。連載は被爆国日本の役割、不戦の国の誇り、自衛隊らしい「人助け」、「非戦」は国家戦略であると続けた。訴えたかったのは、戦後七十年余の長きにわたり戦争をせず今日に至ることのできたのは、それが国民多数の願いであり、願いの象徴的文言が九条であるということだ。政治に知恵を絞らせもした。自衛隊はたしかに憲法の字句外にある。戦力不保持をいう憲法下で発足し、国連PKО(平和維持活動)の名の下に今は外国へも行く。しかしそれでも九条を侵しはしない。守るべきは専守防衛。他国の侵害はしない。首相は九条の一、二項、すなわち戦争放棄と戦力不保持を維持したうえで、自衛隊を認める明文を加えたいという。巧みな言い方である。しかし、そもそも歴代の政府も多くの国民もその存在を認めてきた自衛隊を、急いで書き込む理由は何なのか。しかも今の自衛隊は安保法により違憲濃厚な集団的自衛権を付与されている。展開次第では九条が歪(ゆが)められ、日本の平和主義は変質してしまうかもしれない。父や母、祖父や祖母、戦争体験者たちが命がけで守ってきた戦後日本の思いが霧消してしまう。キナ臭い現実をまだ見えぬ理想に近づけよう。現実の追認は未来への否認である。人類の正義は理想へ向かう行動にある。九条の精神を壊してはなるまい。

<壊される民主主義>
*2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201705/CK2017052202000114.html (東京新聞 2017年5月22日) 【政治】都議選で公約ビラ配れない 法改正、間に合わぬ見通し
 国政選挙と地方の首長選では公約が書かれた冊子やビラを配れるが、地方議員選では配れない-。東京都議選を前に、こうした公職選挙法の規制を見直すよう求める声が高まっている。だが、六月二十三日の告示が一カ月後に迫り、法改正は間に合わないとの見方が強い。国政選挙は二〇〇三年の公選法改正により、法定はがきやビラ以外にマニフェスト(政権公約)の冊子が配布可能になった。さらに〇七年の法改正で、地方首長選もA4判以下の一枚紙のローカル・マニフェストが配れるようになった。国政選挙や首長選に比べ、地方議員選は不特定多数に政策を訴える色合いが薄いのが実態。「新たな配布物が増えると、資金力による候補者間の格差が生じる」との慎重論も根強い。一方、政策本位の選挙に向け、地方議員選での解禁を求める声は強い。早稲田大マニフェスト研究所(マニ研)によると、〇六年から今年にかけて千葉、神奈川、長野など八県議会と東京都町田市、岐阜県多治見市など二十二市町議会が地方議員選での解禁を求める意見書を可決した。全国の地方議員でつくるローカル・マニフェスト推進地方議員連盟は昨年、都議選に間に合う法改正を求める決議を採択。学識者や弁護士でつくる選挙市民審議会も今年一月の中間答申に、地方版マニフェスト配布自由化を盛り込んだ。国会も放置しているわけではない。一六年の公選法改正の際、衆参の特別委員会は解禁について「速やかに検討を進める」と付帯決議。自民党は選挙制度調査会が全国地方組織にヒアリングを実施し、民進党は民主党時代の一五年に公選法改正案を国会に提出した。ただ、自民党関係者は「一九年の統一地方選には間に合わせるが、この都議選での解禁は難しい」と打ち明ける。都議会の定数一二七は、全国の地方議会で最多。都議選は「ビラが配布できない最も大規模な選挙」になる公算が大きい。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170505&ng=DGKKZO15995160S7A500C1KE8000 (日経新聞 2017.5.5) 経済教室:シルバー民主主義を考える(下)選挙制度の大胆改革急げ 、まず「世代別選挙区」導入を 岡本章・岡山大学教授
 現在の日本では「シルバー民主主義」の弊害が指摘されることが多くなっている。巨額の政府債務を抱えて財政再建が急務であり、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化を当面の目標とするが、その達成は遠のくばかりだ。年金、医療などの社会保障給付が拡大する半面、少数派の若年層の意見が政治に反映されにくくなっている。また少子高齢化・人口減少が急速に進展する中で、少子化対策を拡充する必要性が認識されているにもかかわらず、日本の家族政策に対する公的支出は国際的にみて低水準のままだ。さらに高齢層の政治への影響力の増大は、世代間の不公平につながり、若者の政治的無関心を引き起こしている可能性がある。政策決定にあたっては、今生きている現在世代のみならず、子どもの世代、さらには今後生まれてくる将来世代への影響も考慮する必要がある。こうした問題を分析するため、筆者は乃村能成・岡山大准教授と共同で「人口内生化世代重複シミュレーションモデル」を構築した。そして政府の育児支援の促進政策と公的年金給付の削減政策が、各世代の生涯効用(人が商品やサービスを消費することで得られる満足度)に与える影響を定量的に分析した。その結果、政策の変更の影響は世代により大きく異なることが示唆された。これら2つの政策は1970~75年以降生まれの若い世代や将来世代の効用を改善する半面、それより前に生まれた世代や高齢世代の効用を悪化させる。本研究では、無限先の将来世代を含むすべての世代の効用を総合的に考慮して、改革案が全体の経済厚生(経済学的な「効率性」を表す)に与える影響を厳密に分析した。分析の結果、育児支援の促進政策と年金給付の削減政策はともに経済学的に望ましい政策であることが示された。無限先の将来世代の効用まで考慮したうえで経済厚生全体のパイが拡大するため、世代間での適切な資源配分によりすべての世代が改革前と同じか、改革前よりも良い状態に移行できる。問題は、全体にとって望ましい改革ではあるものの高齢者が損をするため、こうした改革案は政治的に実現されにくいことにある。そこで現行の日本の選挙制度の下でこれらの政策が政治的に実現可能かどうかについて検討した。育児支援の促進政策は、若い世代や将来世代の効用を改善する半面、高齢世代では税負担が増えるだけで受益がないために効用が悪化する。シミュレーションの結果、損得は2014年時点の44歳と45歳の間で分かれる。投票にあたって、改革により効用が改善する者は賛成票を、悪化する者は反対票を投じるものとする。現行の日本の選挙制度や有権者の各年齢での現実的な投票率の下では、圧倒的な差(20対45)で育児支援の促進政策は否決される(表参照)。公的年金給付の削減政策の政治的な実現可能性についても分析したが、ほぼ同様の結果が得られた。以上のように現行の選挙制度や現実的な投票率の下では、全体にとって望ましい政策(育児支援の促進・年金給付の抑制)が否決され、シルバー民主主義の弊害が如実に表れる結果となった。その理由として日本での高い高齢者人口比率、若者の低い投票率、および改革により効用が改善する選挙権年齢以下の若い世代と将来世代が投票に参加できないことが挙げられる。こうした問題を解決するには、子どもや孫世代の利益を尊重する高齢者の良識に期待するだけでなく、制度として若い世代の声を政治に反映させる仕組みを構築する必要がある。ここでは3つの選挙制度の改革案を取り上げる。まず「ドメイン投票方式」は、米国の人口学者ポール・ドメイン氏が考案したもので、投票権を持たない未成年に投票権を与え、親が子どもの代わりに投票する。次に「世代別選挙区制度」は、井堀利宏・東大名誉教授と土居丈朗・慶大教授により提唱されたもので、有権者を年齢階層別にグループ分けし選挙区を構成する。例えば30代以下を青年区、40~50代を中年区、60代以上を老年区とする。各グループから有権者数に比例した定数の議員を選ぶため、青年区の投票率が低くても必ず若年層を代表する議員を議会に送り出せる。最後に「余命別選挙制度(余命投票方式)」は、竹内幹・一橋大准教授により提唱されたもので、余命に応じて投票権に重みをつけ、若い人の一票を高齢者の一票よりも重くする。例えば20歳の有権者の一票を64票とカウントする一方、80歳の一票を10票とカウントすることが考えられる。ただし表をみると、シルバー民主主義を克服するには、3つの代表的な選挙制度改革案の中から一つを導入するだけでは不十分で、最もドラスチックな改革である余命投票方式とさらにもう一つ別の選挙改革を同時に実施する必要があることが示唆される。3つの改革案の中で、最も効果が弱いのは世代別選挙区制度だ。日本では既に少子高齢化の水準が深刻な状況にあり、そもそも高齢者と若者の人口比率自体が大変ゆがんだものとなっているからだ。余命投票方式の効果は大きいが、年齢により一票の価値が異なる。ドメイン投票方式では未成年にも選挙権を与える。劇的な変化を伴うため、導入へのハードルは高い。政治的な実現可能性の点から当面はまず世代別選挙区制度の導入から始めるべきだろう。この制度の導入を契機として現在の危機的な状況についての理解が深まり、子どもや孫世代の利益を尊重する機運が高まることも期待される。世代別選挙区制度の導入は理念的な話にとどまらない。東京都狛江市の内山恵一氏は民間企業を定年退職した後、市民団体に所属しながら、次世代のため同制度を導入すべく地元の市議会に働きかけている。漠然としたイメージの同制度を憲法上の問題に配慮しつつ、具体的で実用的な改革案に練り上げた。この案は現行憲法の下で実現可能であり、公職選挙法の改正で済むと考えられる。改革の実現は困難を極めているが、この案の存在が広く社会に認識されて、他の自治体にも論議が波及し、早急に改革に着手することを期待している。シルバー民主主義に伴う低水準の家族政策が子育て環境を悪化させ、さらに少子高齢化・人口減少の流れに拍車をかけることもその弊害として挙げられる。こうした悪循環を断ち切るために、大胆な発想に基づいた選挙制度改革を断行すべき時期に来ている。もはや時間的猶予はない。今すぐに実施しなければ、たとえ実現できても効果は限られたものになる。現在の日本では子どもを産み、親になる可能性のある女性の数自体が急激に減少しているからだ。選挙制度の改革には大きな痛みを伴うが、長期的な視野の下で全体の経済厚生が高まる経済学的に望ましい改革であることを認識してほしい。ともかく改革を実施するのが大事で、もし改革を実施できれば得られる果実は大きい。改革により経済成長が促進されるため、たとえ損失を被る高齢者へ損失分の補償をしたとしても、まだ余りある。若者世代にまん延する閉塞感を取り除き、時間軸の長い施策が実行可能となる。そして財政破綻や急激な人口減少を回避することにより、長期的に持続可能な社会を構築し、未来への展望を切り開くことが可能となるだろう。
<ポイント>
 ○経済学的に育児支援と年金削減望ましい
 ○全体利益ある政策も現選挙制度では否決
 ○余命投票方式は効果大だが導入へ壁高い
*おかもと・あきら 64年生まれ。京都大博士(経済学)。専門は公共経済学、人口経済学

*2-3:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html より抜粋
第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
  2  すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
  3  公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
  4  すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に
     関し公的にも私的にも責任を問はれない。

*2-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170531&ng=DGKKZO17106690R30C17A5EA1000 (日経新聞社説 2017.5.31) 成長戦略はなぜ成果を出せないのか
 政府が今年の成長戦略(日本再興戦略)の素案をまとめた。人工知能(AI)やビッグデータ、ロボットを活用し、さまざまな社会課題を解決する「ソサエティー5.0」の実現を掲げた。その目標が悪いわけではない。問題は、安倍晋三政権が過去の成長戦略で示しながら、なお実現できずにいる難題と十分に向き合っていない点である。日本経済の最大の課題は成長力の強化と、財政健全化の両立である。日銀による異次元の金融緩和と、2度にわたる消費増税延期で時間を買っている間に、経済の実力を高めることができたか。残念ながら、日銀の推計では、日本経済の潜在成長率は2014年時点の0.8%台から16年後半に0.6%台まで下がった。この厳しい現実を政府は直視する必要がある。安倍政権は法人税の実効税率を20%台まで下げ、農業や医療などの岩盤規制改革に取り組んだ。企業統治も強化した。さらに今年の成長戦略が、IT(情報技術)を使った医療・介護の効率化策を示したのは妥当だ。高速道路での自動運転や、金融とITを融合したフィンテックの推進を打ち出したのも理解できる。しかし、こうした新政策を次々と繰り出す一方で、過去の政策目標が未達に終わった原因をしっかり分析していない。数値目標を言いっ放しで、軽々しく扱うのは民間企業ではあり得ない対応だ。たとえば、20年までに世界銀行のビジネス環境ランキングで「先進国3位以内に入る」という目標を掲げながら、昨年時点の順位は26位まで下がってしまった。ほかにも「開業率・廃業率を米英レベル(10%台)に」「外国企業による対内直接投資残高を倍増」といった目標の達成はほぼ絶望的だ。新陳代謝を促す規制改革や、信用保証制度の見直しなどが不十分だからではないか。時間に縛られない「脱時間給」という働き方を解禁する労働基準法改正案は国会で棚ざらしにされ、一般の自家用車で利用客を送迎するライドシェア(相乗り)のサービスは進まない。100ページ超に及ぶ文書をまとめて「やってる感」を国民にアピールするだけでは困る。決めたことを着実に実行する。結果を厳しく検証し、不断の改革に挑む。そんな政策のサイクルを徹底していない政府に猛省を求めたい。

*2-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/436170 (佐賀新聞 2017年6月8日) 自民、天皇の元首明記提案、改憲論議巡り、民進反対
 衆院憲法審査会は8日午前、「天皇制」をテーマに議論した。自民党は、国家および国民統合の象徴としての地位を「元首」と定義した上で、憲法に天皇を「元首」と位置付けることも改憲論議の対象になり得るとの認識を示した。国旗や国歌、元号を憲法に明記する可能性にも触れた。民進党は、天皇の元首化は必要はないとして反対した。天皇の地位を巡り、2012年の自民党改憲草案は「天皇は日本国の元首であり、日本国および日本国民統合の象徴」と明記。「国旗を日章旗とし、国歌を君が代とする」と盛り込んでいる。

<壊される基本的人権の尊重>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201705/CK2017052302000119.html (東京新聞 2017年5月23日) 【国際】「共謀罪」書簡の国連特別報告者 日本政府の抗議に反論
 安倍晋三首相宛ての公開書簡で、「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案に懸念を表明した国連のプライバシー権に関する特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏は二十二日、菅義偉(すがよしひで)官房長官が同日の記者会見で抗議したと明らかにした日本政府の対応を「中身のないただの怒り」と批判し、プライバシーが侵害される恐れに配慮した措置を整える必要性をあらためて強調した。電子メールで本紙の取材に答えた。ケナタッチ氏によると、「強い抗議」は十九日午後、国連人権高等弁務官事務所を訪れた在ジュネーブ日本政府代表部の職員が申し入れ、その後、約一ページ余りの文書を受け取った。しかし、内容は本質的な反論になっておらず「プライバシーや他の欠陥など、私が多々挙げた懸念に一つも言及がなかった」と指摘した。抗議文で日本側が、国際組織犯罪防止条約の締結に法案が必要だと述べた点について、ケナタッチ氏は「プライバシーを守る適当な措置を取らないまま、法案を通過させる説明にはならない」と強く批判。法学者であるケナタッチ氏自身、日本のプライバシー権の性質や歴史について三十年にわたって研究を続けてきたとし、「日本政府はいったん立ち止まって熟考し、必要な保護措置を導入することで、世界に名だたる民主主義国家として行動する時だ」と訴えた。ケナタッチ氏は日本政府に引き続き、法案の公式な英訳文とともに説明を求めている。菅官房長官は二十二日、ケナタッチ氏の書簡に「不適切だ」と反論していた。犯罪の合意を処罰する「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案を巡り、衆院議院運営委員会は二十二日の理事会で、衆院本会議を二十三日に開くことを佐藤勉委員長(自民党)の職権で決めた。与党は「共謀罪」法案を採決し、衆院を通過させる方針。二十四日の参院での審議入りを目指している。与党が理事会で「共謀罪」法案の採決を提案したのに対し、民進、共産両党は、与党が衆院法務委員会で法案の採決を強行したことに反発して拒否。双方が折り合わず、佐藤氏が本会議開催を決めた。「共謀罪」法案を採決するかどうかは与野党の協議に委ねた。法案を巡っては、安倍晋三首相(自民党総裁)が二十二日の党役員会で「今国会での確実な成立を目指す」と強調。高村正彦副総裁も「二十三日に間違いなく衆院通過させる」と話した。民進党の野田佳彦幹事長は記者会見で「審議は不十分だし、この間のやり方は極めて遺憾だ」と与党の国会運営を批判した。与党は法案の成立を確実にするため、来月十八日までの今国会の会期延長も検討している。  
<国連特別報告者> 国連人権理事会から任命され、特定の国やテーマ別に人権侵害の状況を調査したり、監視したりする。子どもの人身売買や、表現の自由に関する人権状況などの報告者がいる。政府や組織などから独立した専門家で、調査結果は理事会に報告する。

*3-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201705/CK2017052602000135.html (東京新聞 2017年5月26日) 【政治】共謀罪は「プライバシー権侵害」 憲法審で委員から「違憲」
 衆院憲法審査会は二十五日、「新しい人権」などをテーマに審議を行った。衆院を二十三日に通過した「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案に対し、野党の委員からは「(新しい人権の一つとされる)プライバシー権の侵害で、違憲立法」などの批判が相次いだ。民進党の山尾志桜里氏は、犯罪の共謀を処罰することは「包括的なプライバシー情報の収集なしには実現できない」と指摘。「共謀罪」法案について「プライバシー権の核心を侵しかねない」と訴えた。共産党の大平喜信氏も、「共謀罪」法案について「表現の自由をはじめ、憲法が保障する国民の権利を幾重にも侵害する」と指摘。プライバシー権に関する国連特別報告者ケナタッチ氏が法案に懸念を示したことに触れ「安倍政権は、この指摘を重く受け止めるべきだ」と求めた。また、民進党の辻元清美氏は、学校法人加計学園の獣医学部新設を巡る記録文書問題について「(新しい人権の)『知る権利』以前の問題。政府の隠ぺい体質そのもの」などとして、憲法審として調査を求めた。一方、共産党の赤嶺政賢氏は、自民党が年内にも改憲案をまとめる作業を始めたことについて「憲法審査会の議論は無視して、安倍晋三首相主導で改憲案をまとめようとしている」と批判。自民党の中谷元氏は、憲法審での議論は「首相に縛られるものではない」と強調した。

*3-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201706/CK2017060202000125.html (東京新聞 2017年6月2日) 【国際】「共謀罪で監視が日常に」 元CIAのスノーデン氏が警鐘
 米国家安全保障局(NSA)による大規模な個人情報収集を告発し、ロシアに亡命中の米中央情報局(CIA)のエドワード・スノーデン元職員(33)が一日までにモスクワで共同通信と単独会見した。元職員は持ち出して暴露した文書は全て「本物」と述べ、NSAが極秘の情報監視システムを日本側に供与していたことを強調した。日本政府が個人のメールや通話などの大量監視を行える状態にあることを指摘する証言。元職員は、参院で審議中の「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案が、個人情報の大規模収集を公認することになると警鐘を鳴らした。元職員によると、NSAは「XKEYSCORE(エックスキースコア)」と呼ばれるメールや通話などの大規模監視システムを日本側に供与。同システムは、国内だけでなく世界中のほぼ全ての通信情報を収集できる。米ネットメディア「インターセプト」は四月、元職員の暴露文書として、日本に供与した「エックスキースコア」を使って、NSA要員が日本での訓練実施を上層部に求めた二〇一三年四月八日付の文書を公開した。元職員は共謀罪について「日本における(一般人も対象とする)大量監視の始まり。日本にこれまで存在していなかった監視文化が日常のものになる」と指摘。法案に懸念を表明した国連特別報告者に「同意する」と述べた。

*3-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201706/CK2017060502000127.html (東京新聞 2017年6月5日) 【国際】「共謀罪」崩れる政府根拠 「条約はテロ防止目的でない」
 国際組織犯罪防止条約(TOC条約)締結のため、政府が必要であるとしている「共謀罪」法案をめぐり、各国が立法作業をする際の指針とする国連の「立法ガイド」を執筆した刑事司法学者のニコス・パッサス氏(58)が本紙の取材に、「条約はテロ防止を目的としたものではない」と明言した。三日にロンドン中心部で起きたテロなどを指し、「英国は長年TOC条約のメンバーだが、条約を締結するだけでは、テロの防止にはならない」と語った。さらに「新たな法案などの導入を正当化するために条約を利用してはならない」と警鐘を鳴らした。政府は東京五輪・パラリンピックに向けたテロ対策として、共謀罪の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案を成立させ、条約を締結しなければならないと主張。法案を参院で審議している。パッサス氏は条約を締結する国が、国内の法律や制度を整備する際の指針を示した国連の立法ガイドを執筆した。同氏はテロ対策に関して、それぞれの国に異なった事情があり、まずは刑法など国内の制度や政策を活用するものだと主張。条約はあくまで各国の捜査協力を容易にするためのものという認識を示した。また、TOC条約については「組織的犯罪集団による金銭的な利益を目的とした国際犯罪が対象」で、「テロは対象から除外されている」と指摘。「非民主的な国では、政府への抗議活動を犯罪とみなす場合がある。だからイデオロギーに由来する犯罪は除外された」と、条約の起草過程を振り返りつつ説明した。TOC条約を締結するため新法の導入が必要かとの問いには、「現行法で条約締結の条件を満たさなければ、既存法の改正か、新法の導入で対応しなければならない」と指摘。一方で「条約はプライバシーの侵害につながるような捜査手法の導入を求めていない」と述べ、条約を新たな施策導入の口実にしないよう注意喚起した。さらに、当局に過剰な権力を与え、プライバシー侵害につながる捜査ができるようにすることを懸念するのは「理解できる」と発言。捜査の主体や手法、それらを監督する仕組みを明確にするよう助言した。
<Nikos Passas> 1959年2月、ギリシャ・アテネ生まれ。アテネ大やパリ第二大で法学などを学び、欧米各地の大学で犯罪学や刑事司法を研究。現在は米ボストンにあるノースイースタン大犯罪学・刑事司法学科教授。
<国際組織犯罪防止条約(TOC条約)> 「国際的で組織的な犯罪集団」の対策に向け、2000年11月の国連総会で採択。組織による重大事件の合意を犯罪とみなし、マネーロンダリング(資金洗浄)などによる犯罪収益の没収や、犯人引き渡しなどでも相互協力するよう定める。「金銭的な利益その他の物質的利益」を目的とする集団を対象とし、テロについては全く触れられていない。今年4月時点で187の国・地域が締結しているが、日本は「条約を実施するための国内法が未成立」との理由で締結していない。

*3-5:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/435789 (佐賀新聞 2017年6月7日) 表現の自由、意義を再確認したい
 民主主義の社会において発言や行動の自由がいかに大切か。今、その意義をあらためて確認する必要があろう。犯罪の計画を罰する「共謀罪」の構成要件を取り込んだ組織犯罪処罰法改正案や2014年に施行された特定秘密保護法、権力の強権的な姿勢など一般市民や報道機関を萎縮させかねない抑圧の動きへの危惧が強まるからだ。現状の問題点を指摘する声や多数意見に対する異論は議論を喚起し、その声を取り込んで政治や社会は進展してきた。例えば、人権や生活を保障するさまざまな制度はこうして築かれたものだ。「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」という憲法21条は、国民が政治の意思決定に参加する権利を定めた規定だ。「表現の自由」の重要性を再確認し、抑圧の動きに対抗したい。まず「共謀罪」法案から指摘しよう。その問題点の一つは「何を行えば罰になるのか」の線引きがあいまいなことだ。不明確な線引きのため「もしかしたら罰せられるかもしれない」と恐れた市民は萎縮して発言や行動を控える可能性がある。先日の衆院本会議で民進党の山尾志桜里衆院議員はこの点を指摘。「線引きの明確性や安定性を欠いた刑罰法規は自由の範囲を不明確、不安定にする」と強調し、「迷ったら、やめておこうという自発的な萎縮をもたらし、いったん萎縮した自由を取り戻すのは並大抵ではない」と主張した。計画段階の動きを把握するため捜査当局による監視が拡大する懸念も拭えない。国際ペンクラブのジェニファー・クレメント会長も声明を発表し、「共謀罪は日本の表現の自由とプライバシーの権利を侵害する」と批判している。もっと直接的な抑圧の動きもある。沖縄県で米軍基地移設への抗議活動を続ける反対派リーダーの山城博治さんは、米軍訓練場近くで有刺鉄線を切った器物損害の疑いなど逮捕、起訴され、微罪で約5カ月間も拘束された。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは「抗議活動への参加をためらう人が出始め、市民に平和的な表現や集会の権利の行使を思いとどまらせる悪影響が出ている」と警告したが、これも萎縮の問題だ。危惧が強まる状況の中で重要なのは報道機関の役割だろう。だが現状はどうか。国連人権高等弁務官事務所は5月末、言論と表現の自由に関する特別報告者デービッド・ケイ米大学教授の対日調査報告書を公表。特定秘密保護法で日本のメディアが萎縮している可能性や、政府が放送局を規制できる放送法によってメディアの「自由と独立」に不当な制約が課せられる懸念を指摘している。報告書は国連としての見解ではないが、近く国連人権理事会で説明される。日本政府は「伝聞情報に基づき不正確で不十分な内容だ」と反論する。だが国際的な視点からの指摘を謙虚に受け止めるべきだろう。国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が発表する世界の報道自由度ランキングで日本は10年の11位から17年は72位に落ち込んだ。侵される「表現の自由」の問題は、報道機関の在り方も問うている。権力を監視するという本来の役割を果たせているのか。自主規制に陥っていないか。報道機関の重い責任も再確認したい。

*3-6:http://roudou-bengodan.org/topics/4745/ (日本労働弁護団 2017/5/19) 衆議院法務委員会における共謀罪法案の採決強行に抗議する声明   <共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会、社会文化法律センター代表理事 宮里邦雄、自由法曹団団長 荒井新二、青年法律家協会弁護士学者合同部会議長 原和良、日本国際法律家協会会長 大熊政一、日本反核法律家協会会長 佐々木猛也、日本民主法律家協会理事長 森英樹、日本労働弁護団会長 徳住堅治、明日の自由を守る若手弁護士の会共同代表 神保大地・黒澤いつき>
 衆議院法務委員会での採決の強行を受けて、労働弁護団も加わる共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会で声明を発表しました。本日,衆院法務委員会において、共謀罪(「テロ等準備罪」)法案を含む組織犯罪処罰法改正案の採決が強行された。来週にも本会議への上程を計画していると伝えられる。私たちは,この暴挙に対し,満腔の怒りをもって強く抗議する。そもそも、刑法は、どの行為が犯罪とされるかを定めているが、裏返せば、犯罪とされずに自由に行動できる範囲を定めているといえる。犯罪とは人の生命や身体自由名誉財産に被害を及ぼす行為と説明され、法益の侵害又はその現実の危険性が生じて初めて事後的に国家権力が発動されるというシステムは,我々の社会の自由を守るための制度の根幹である。約300もの多くの犯罪について共謀の段階から処罰できることとする共謀罪法案は、既遂処罰を基本としてきた我が国の刑法体系を覆し、人々の自由な行動を制限し、国家が市民社会に介入する際の境界線を、大きく引き下げるものである。私たちは沖縄ですでに弾圧の道具に使われている威力業務妨害罪の共謀罪が法案化されていることに警鐘を鳴らしたい。1999年に制定された組織犯罪処罰法によって、組織的威力業務妨害罪、組織的強要罪、組織的信用毀損罪が作られ、法定刑が長期3年から5年に引き上げられ、廃案となった2003年法案で共謀罪の対象犯罪とされた。これらの犯罪は、もともと構成要件があいまいで、労働運動などの弾圧法規として使われてきた問題のある犯罪である。この共謀罪はひとつだけでも治安維持法に匹敵する著しい危険性を持っている。自民党の2007年小委員会案では、これらの犯罪は共謀罪の対象から外されていたのに、これを何が何でも共謀罪の対象としようとしている安倍政権には、市民の異議申し立て活動に対する一網打尽的弾圧の意図を疑わざるを得ない。「組織犯罪集団」の関与と「準備行為」を要件としても、法案の適用範囲を厳しく限定したものとは評価できない。首相は、一般人は処罰の対象にならないと説明しているが、同法案では、原発反対運動や基地建設反対運動などに適用され得る組織的威力業務妨害罪や、楽譜のコピー(著作権法違反)や節税(所得税法違反)など市民が普通の生活の中で行う行為が犯罪に問われかねないものも,対象犯罪に含まれている。そもそも、同法案には一般人を対象としないなどという文言はなく、「計画」と「準備行為」があれば、条文解釈上、誰でもが処罰対象となり得る規定となっている。現在の審議状況では、到底、私たち市民が納得できるだけの充分な説明が尽くされたとは言えない。警察は今でも,市民運動に関わる人の情報を収集したり,イスラム教徒だというだけで調査の対象とするなどの違法なプライバシー侵害を繰り返しているが,共謀罪が制定されれば、今以上に,市民の行動や,人と人との会話、目配せ、メール、LINEなど、人の合意のためのコミュニケーションそのものが広く監視対象とされる可能性が高い。政府は,共謀罪の制定が国連越境組織犯罪防止条約(TOC条約)の批准のために不可欠であるかのように主張するが,諸外国の例を踏まえれば、このような広範な共謀罪法案を成立させることなく国連条約を批准しても、国際的な問題は全く起きるものではない。また,この条約の目的はマフィアなどの経済的な組織犯罪集団対策であり、テロ対策ではない。日本は、国連の13主要テロ対策条約についてその批准と国内法化を完了している。法案には「テロリズム集団その他の組織犯罪集団」という言葉は入れられたものの、テロリズムの定義もなく、法の適用範囲を限定する意味はない。共謀罪法案をめぐる衆議院法務委員会の審議・運営は,政府が野党議員の質問にまともに答える姿勢を放棄して「一般市民は捜査の対象にもならない」など根拠のない答弁を機械的に繰り返したり,野党議員が大臣に答弁を求めたにもかかわらず政府職員が勝手に答弁するなど,異常かつ非民主的という他ないものであった。5月17日,野党議員が金田法務大臣の解任決議案を提出したことは,道理にかなったものである。こうした異常な審議の挙句,いまだ審議すべき重要問題が多数積み残されたまま,本日,採決が強行されたことは,暴挙といわざるを得ない。5月16日報道された朝日新聞の世論調査では、共謀罪法案を今国会で成立させる必要はないという意見は64%に達し、必要とする意見18%を大きく上回った。共謀罪法案反対の世論は急速に広がっており,国民の多数は、この間の審議を通じて浮かび上がってきた法案の多くの問題点について,審議を深めることを願っている。私たち共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会は、我が国の人権保障と民主主義の未来に大きな禍根を残す共謀罪法案の成立を阻止するため、引き続き全力を尽くす決意である。      以上

*3-7:http://www.higashihonganji.or.jp/news/important-info/19796/ (真宗大谷派《東本願寺》宗務総長但馬弘 2017年5月18日) 「テロ等組織犯罪準備罪(共謀罪)法案に反対する声明」を発表
 真宗大谷派では5月18日、宗務総長名による「テロ等組織犯罪準備罪(共謀罪)法案に反対する声明」を発表しました。
       *テロ等組織犯罪準備罪(共謀罪)法案に反対する声明*
 現在、テロ等組織犯罪準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案が、国会で審議されています。当然テロ等の犯罪行為は、決して許されるものではありません。しかしこの法案は、実際の行為がなくとも、犯罪とみなされる計画をしただけで処罰することができる、いわゆる「共謀罪」の内容が盛り込まれており、市民の日常生活に重大な制約をもたらす恐れがあります。どのような計画が犯罪になるのかは捜査機関の判断によることから、恣意的な検挙が行われ、市民の思想や言論、表現の自由全般が損なわれる可能性は否めません。さらに犯罪の事実を立証するために、日常的にプライバシーが侵害され、市民どうしが相互に監視する社会をつくりだしてしまうことを危惧します。宗祖親鸞聖人は、時の権力によって「専修念仏」が罪とされたことにより、同行たちが斬首され、聖人自身も流罪となった承元の法難を経験されました。権力側が欲する秩序を護るために個を抹殺しても厭わない当時、宗祖は「主上臣下、法に背き義に違し」との痛みをもった厳しい言葉を残しておられます。また明治期の日本では、国家による思想弾圧事件として、多くの人たちが無実の罪で死刑、無期懲役となった「大逆事件」が起こりました。国全体が戦争へと突き進む中、宗祖の教えに生きんとし、非戦と平等を説いた当派僧侶・高木顕明師もこの事件に連座した一人でありました。思想や信条は、他から侵害されてはならないものです。そして、思想や信条の自由は、一人ひとりが声をあげてこそ守られるものと考えます。すべての人が共に生き合える同朋社会の実現をめざす教団として、テロ対策という名のもとに政府が市民を監視し、私たち個人の思想や言論、表現を統制しようとする今回の法案に対して、真宗大谷派は強く遺憾の意を表明し、廃案を求めます。

*3-8:http://www.christiantoday.co.jp/articles/23810/20170524/kyobozai-catholic-council-for-justice-peace-statement.htm (Christian Today, Japan 2017年5月24日) 「共謀罪」法案衆院通過、カトリック団体が反対声明 戦中の弾圧にも言及
 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の内容を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する「組織犯罪処罰法」の改正案が23日、自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数により、衆院本会議で可決された。これを受け、日本カトリック正義と平和協議会は24日、反対声明を発表。戦中の宗教弾圧により拷問を受けて亡くなった外国人神父の存在についても触れ、同法案の撤回、廃案を強く求めた。同協議会は、同法案に反対する理由を4つ挙げている。最初に挙げたのは、社会に対して実際に損害をもたらした犯罪のみを処罰するという「行為原理」や、刑罰を科す範囲をあらかじめ明確に定めるという「罪刑法定主義」などの近代刑法の原則に反することだ。「犯罪の範囲はいっきに拡大し、犯罪の『共謀』『計画』をはかったという理由で、犯罪を実行していない人間の意思や内心が処罰の対象となり、国家による恣意的な処罰、自白の強要によるえん罪の危険が高まります」と警告している。また、任意の捜査と情報収集の幅が拡大することで、プライバシーの侵害が頻発し、監視社会になってしまうと危惧。自首した場合の免罪が盛り込まれていることから、仲間うちでの密告が推奨され、社会の中に深刻な相互不信を作り出すとしている。さらに、恣意的な捜査や逮捕が可能になった監視社会では、実際の監視行動がなくても市民活動が萎縮し、憲法が保障する思想、信条、信教の自由、集会・結社の自由が破壊されかねないとしている。第2次世界大戦下では、治安維持法により多くの宗教弾圧が行われ、日本のカトリック教会でも司祭や修道者、信者らが逮捕・勾留されることは多くあった。パリ外国宣教会のシルベン・ブスケ神父は、天皇への不敬言動やスパイ活動などの容疑をかけられ、拷問を受けて亡くなった。同協議会は声明でこうした過去の弾圧について触れ、「私たちの信仰するカトリックの教義が、権力にとって都合の悪い危険思想と見なされたからです」と説明。同法案が国家に恣意的に用いられた場合の危機感をにじませた。さらに戦中は、こうした宗教弾圧により「信徒は萎縮し、警察への密告が行われ、教会は分断されました」と言い、「教会に、私たちが希求する愛と信頼に基づいた世界と正反対の出来事が起こりました。このようなことは、いかなる場所においても、もう二度と繰り返されてはなりません」と訴えている。

*3-9:http://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-509218.html (琉球新報 2017年6月5日) 「共謀罪」で国際ペン会長が声明 「日本の表現の自由を侵害」
 いわゆる「共謀罪」法案について記者会見する日本ペンクラブの浅田次郎会長。上は国際ペンクラブのジェニファー・クレメント会長の顔写真=5日午後、東京都中央区
「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案が国会で審議されていることを受け、国際ペンクラブのジェニファー・クレメント会長は5日、「共謀罪は日本の表現の自由とプライバシーの権利を侵害する」と題する声明を発表。日本ペンクラブ(浅田次郎会長)が同日記者会見し、明らかにした。声明は「いわゆる『共謀罪』という法律を制定しようという日本政府の意図を注視している。同法が成立すれば、日本における表現の自由とプライバシーの権利を脅かすものとなるであろう」と警告。「日本国民の基本的な自由を深く侵害することとなる立法に反対するよう、国会に対し強く求める」としている。


PS(2017.6.10追加):*4のように、「集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法は憲法違反」として、自衛官の家族や元教員が札幌地裁に同法に基づく自衛隊派遣の差し止めと慰謝料の支払いを国に求めたそうで、私は、北海道の人も頑張っていると思うが、集団的自衛権のすべてが違憲なわけではないため、違憲になる部分を具体的にリストアップして提訴しなければ勝訴しにくいと考える。また、野党の主張には手続き論が多いが、それでは手続きさえよければよいということになって本質的な問題提議にならないため、市民の共感は得られないだろう。

*4:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/society/society/1-0408956.html (北海道新聞 2017.6.10) 「安保法、手続きも違憲」 札幌訴訟初弁論 原告が主張
 集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法は憲法違反として、自衛官の家族や元教員ら268人が同法に基づく自衛隊派遣の差し止めと慰謝料の支払いを国に求めた訴訟の第1回口頭弁論が9日、札幌地裁(岡山忠広裁判長)であった。国側は派遣差し止めの請求却下と、慰謝料の請求棄却を求めた。原告は、安保法成立で平和的に生きる権利を脅かされたとして、1人につき10万円の慰謝料を求めている。原告側は6人が意見陳述し「安保法は内容も成立までの手続きも、憲法の恒久平和主義、立憲主義、民主主義に違反する」と強調。自衛官の息子を持つ70代男性は「自衛官の家族は、いつ大事なわが子、夫、父親の命が奪われるかもしれない恐怖と不安の中で過ごしている」と訴えた。


PS(2017年6月11日追加):*5のように、「取り調べの可視化を検討することを附則に盛り込む」ことによって、どこまでの範囲の取り調べ可視化が約束されるかについては全く期待できない。また、警察のシナリオに沿った自白をしない人に対するカメラには映らない取り調べ中の嫌がらせも多い。さらに、最高裁で「令状無しの捜査は違法だ」という判決が出たGPS捜査を合法化するために法律を変更するのは、プライバシーの侵害や人権侵害を合法化するものであり、憲法違反である。それでも与党は、「一般人は対象にならない」等々と強弁しているが、この場合の“一般人”の範囲はかなり狭いため、ここで言う「一般人」「普通の人」の定義も明らかにすべきで、その結果、共謀罪法案は廃案にすべきだということは自明である。

*5:http://www.news24.jp/articles/2017/05/11/04361244.html (日テレNEWS24 2017年5月11日) 自公と維新の会“共謀罪”修正案で合意
 自民・公明両党と日本維新の会は11日、共謀罪の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を修正し、取り調べの可視化を検討することなどを附則に盛り込むことで合意した。修正協議では日本維新の会が取り調べの録音・録画を義務づける「可視化」を求めた。このため修正案では「捜査の適性の確保に十分配慮する」とした上で、附則に「取り調べの録画・録音の制度を検討する」などと明記することになった。また、最高裁判所で令状無しの捜査は違法だとの判決が出た全地球測位システム(=GPS)を使った捜査については、立法措置の検討を附則に盛り込むという。自民・公明両党と日本維新の会は12日にも修正案を共同提出し、18日の衆議院通過を目指している。一方、民進党などは「政府案は人権侵害につながる上、テロ対策にもなっていない」として廃案を求めており、独自案を衆議院に提出した。組織的な詐欺などに限り犯罪の準備行為を「予備罪」として罰することや、ハイジャック防止に向け国が空港の保安体制を強化することを義務づけていて、速やかな審議入りを求めている。


PS(2017年6月14日追加):*6のように、法務委員会で議論している最中で疑問ばかりの「共謀罪」法案だが、法務委員会の採決を省略して6月15日未明に本会議で採決しそうである。これでは内容だけでなく手続きも異例で、未明に本会議で採決するなど、“働き方改革”を提唱している人たちのすることかと呆れるばかりだ。

*6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201706/CK2017061402000252.html (東京新聞 2017年6月14日) 【政治】「共謀罪」の委員会採決省略を提案 自民、本会議へ 民進は拒否
 自民党の松山政司参院国対委員長は十四日、民進党の榛葉賀津也(しんばかづや)参院国対委員長と国会内で会談し、「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案について、参院法務委員会での採決を省略し、同日午後の参院本会議で「中間報告」を行った後、採決すると提案した。榛葉氏は「法務委で議論している最中だ」などとして拒否した。民進党など野党四党は内閣不信任決議案の提出も視野に成立阻止を図る方針。自民党の竹下亘国対委員長は十四日午後、党本部の会合で「中間報告の形で可決することを今日中にやらないといけない」と語った。法案は通常、委員会で審議・採決された後に本会議で採決されるが、国会法は「特に必要があるとき」は、本会議での中間報告を経て、本会議採決できる手順を定める。報告は通常、委員長が行うが、動議により委員長以外が行うこともできる。現在、参院法務委員長は公明党の秋野公造氏。十四日午後の参院本会議では、「共謀罪」法案を巡り、民進、共産両党が提出した金田勝年法相の問責決議案を与党などの反対多数で否決する見通し。自民党は、この本会議の後に「共謀罪」法案に関する中間報告と採決に踏み切ると提案した。与党は十五日に参院法務委員会で「共謀罪」法案を採決する意向だった。民進党の山井和則国対委員長は十四日昼、党会合で「近いうちに内閣不信任決議案の提出も視野に入ってくる」と指摘。自民党提案の中間報告については「強権政治は許さない」と反発した。民進党の蓮舫代表は党参院議員総会で「共謀罪」法案について「安倍内閣は充実した審議より採決ありきの姿勢だ。共謀罪は絶対に通すべきではない」と、成立阻止を訴えた。民進、共産両党は十三日、「共謀罪」法案の審議を巡り、金田法相の答弁能力が欠けるとして、問責決議案を共同提出。法務委の審議が中断した。参院本会議は十四日午前、山本幸三地方創生担当相の問責決議案を与党などの反対多数で否決した。学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)問題に関し、国家戦略特区制度を担当する山本氏が「事実の隠蔽(いんぺい)に加担している」などとして、民進党が十三日提出した。


PS(2017年6月15日追加):*7-1のように、犯罪を計画段階で処罰する“テロ等準備罪”を新設する改正組織犯罪処罰法が、実行後の処罰を原則としてきた日本の刑法体系を変える重大な岐路であるにもかかわらず、参院法務委員会の採決すら省略して、6月15日朝の参院本会議で自民党・公明党・日本維新の会などの賛成多数により強硬採決されたが、これは警察の監視社会・捜査権乱用と密告社会に繋がるものである。
 この法案は、地下鉄サリン事件を例に説明されることが多かったが、地下鉄サリン事件は松本サリン事件(犯罪)が起こった時、被害者を守る主張をする筈の被害者の夫を犯人に仕立て上げ、真犯人を探さなかった警察の不作為と冤罪によって起こったもので、原因と解決法が合わない。基督教関係団体・真宗大谷派住職・浄土真宗本願寺派住職・金光教教会副教会長など多くの宗教家が、*7-2のように、その歴史的教訓や宗教の理念から“テロ等準備罪(共謀罪)”に反対しておられるが、創価学会の皆様は公明党の態度に納得しておられるのだろうか。
 なお、「共謀罪」の対象となる277の犯罪には、*7-3のように、騒乱・放火・水道汚染・組織的な威力業務妨害・海底電信線の損壊・自動車道における自動車往来危険・他人の森林への放火・放射線の発散・けしの栽培・強制わいせつ・強姦・無資格自転車競走・特許権/著作権等の侵害・所得税/法人税の免脱・偽証など、テロとは関係なく犯罪実行後に処罰すればよいものが多く含まれ、放射線の発散のように、むしろ政府や東電に当てはまると思われるものもあって、“テロ等準備罪”の成立によってメリットがあるのは権力側につく警察だけである。

*7-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017061501000632.html (東京新聞 2017年6月15日) 「共謀罪」法が成立、自公強行 委員会採決省略、懸念置き去り
 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が15日朝の参院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数により可決、成立した。自公は参院法務委員会の採決を省略するため「中間報告」と呼ばれる異例の手続きで採決を強行。同法は実行後の処罰を原則としてきた日本の刑法体系を大きく変える内容で、野党は「監視社会や捜査権乱用につながる懸念を置き去りにした」と猛反発した。安倍内閣への不信任決議案は15日未明の衆院本会議で否決された。法務省は、法施行は7月11日になる見込みだと発表した。

*7-2:https://kansaisyukyosya.wixsite.com/kyobozai/blank、https://kansaisyukyosya.wixsite.com/kyobozai/blank-1(2017年6月13日)私たちは「共謀罪」に反対します。
【呼びかけ人】
浅野献一  (日本基督教団室町教会 牧師)
菴原淳   (真宗大谷派 教福寺 住職)
一木千鶴子 (日本基督教団高石教会 牧師)
今給黎真弓 (日本バプテスト連盟豊中バプテスト教会 牧師)
大仁田拓朗 (日本基督教団兵庫教区 議長、鈴蘭台教会 牧師)
大薮朝祥  (日本基督教団 長崎飽之浦教会 牧師)
小倉雅昭  (浄土真宗本願寺派宣光寺 住職)
上内鏡子  (日本基督教団神戸イエス団教会 牧師)
清川泰司  (日本カトリック正義と平和協議会大阪教区担当 司祭)
古郝荘八  (日本基督教団高石教会 牧師)
後藤正敏  (日本基督教団京都上賀茂教会 牧師)
斎藤成二  (日本基督教団大阪東十三教会 牧師)
斉藤 壹  (日本聖公会  司祭)
佐々木基文 (西光院 名誉住職)
高木孝裕  (大阪宗教者平和協議会 理事長 日蓮宗)
高島保   (金光教稗島教会 副教会長)
佃真人   (日本基督教団宝塚教会 牧師)
長田譲   (真宗仏光寺派正念寺 住職)
中道基夫  (関西学院大学神学部学部 教授)
袴田康裕  (神戸改革派神学校 教授)
樋口洋一  (日本基督教団島原教会 牧師、九州教区平和・人権部門 委員長)
水野隆一  (関西学院大学神学部 教授)
森口あおい  (日本基督教団大阪西淀川教会 牧師)
森田幸男   (日本キリスト教会 大阪北教会  牧師)
矢野太一  (天理教平和の会 会長)
山本有紀  (日本基督教団尼崎教会 牧師)
弓矢健児  (日本キリスト改革派千里山教会 牧師)
<声明文>
 私たちは、今国会で審議されている「組織犯罪処罰法改正案」(以下、「「共謀罪」法案」)に対して深い憂慮を抱き、その成立に反対します。この法案は、具体的な犯罪行為の前段階で取り締まる法案となっており、日本の刑法が拠って立っている原理である「行為原理」に反する法案であるとの指摘がなされています。また、「共謀罪」を取り締まるためには市民の日常的な会話や行動が監視対象となり、それによって市民生活が萎縮し、自由、ことに集会や思想信条の自由が制限されることが危惧されています。さらに、告発による罪の軽減も含まれているために、市民同士がお互いを監視し、告発し合う、「警察社会」の出現やえん罪の増加すら、引き起こしかねないと思われます。「共謀罪」法案の持つ問題については、国連人権委員会の任命した特別報告者も懸念を表明し、日本政府に対して説明を求めています。「共謀罪」法案が成立すれば、すべての宗教団体がその監視対象となることが危惧されます。政府の当初の説明では、対象は「組織的犯罪集団」のみが適用の対象となるとしてきましたが、その定義は曖昧であり、「普通の団体」も「その性格が一変すれば」対象となる事がありうると国会答弁で答えています。また、犯罪の構成要件も非常にあいまいであり、各宗教団体が行う、祈り、礼拝などの、日常的な宗教行為まで、「共謀罪」、準備行為とみなされる可能性があります。政府は、犯罪の構成要件は犯罪の具体的計画を立て、合意をし、その「準備行為」を行うことであると説明しています。しかし、その合意は集会に参加したり、SNS・メーリングリスト等でその合意が行われたグループに参加したりしているだけでも成立することがありうると指摘できます。つまり、日常的に行われる各宗教団体の集会における法話や説教で語られたことも、信者の集まりで話合われたことも、果ては、信者同士の何気ない会話も「共謀」とみなされる可能性があることは否定できません。歴史を振り返れば、「治安維持法」も「言論文章の自由」を最大限尊重すると答弁されていたにもかかわらず、多くの宗教団体が国家権力によって、監視され、自由な宗教活動は制限されました。私たちは、自らの宗教者としての信条に基づき、戦争や「国体」に反対し、それゆえ、「治安維持法」により逮捕され、拷問すら受けた宗教者のあったことを想い起こします。その一方、宗教団体が組織として、国家による弾圧を恐れて、自らの教説を曲げてまで「聖戦完遂」のために協力した歴史もあったことを認識しています。私たちが「共謀罪」法案に反対するのは、このような歴史に対する反省の上に立っています。国会審議の過程では、オウム真理教による事件が、テロ組織に変貌した宗教団体による事件の例として言及されました。彼らのような犯罪を企てることは決してありませんが、私たちが所属するそれぞれの宗教の教説には、理想的な社会の実現を信じ、そのために力を尽くすことが含まれています。「治安維持法」下では、これが「国体」を否定し、転覆させようとしたと見なされました。今回の「共謀罪」法案でも、今現在の社会を、民主的な手段で、あるいは、教育や福祉という方法で、よりよいものに変革しようとするグループすら「組織的犯罪集団」と見なされかねない危険があることが指摘されています。社会をよりよくしようとするすべての人々と手をたずさえて協力し合うことは、自らの教説に基づいており、また、これまで宗教が担ってきた社会における役割の一つであることを、私たちは認識し、これからもその役割を果たすものでありたいとの願いも、「共謀罪」法案反対の理由です。以上のようなことに鑑み、私たちは、良心の自由、思想信条の自由、集会の自由、表現の自由を守っていくため、この「共謀罪」法案に強く反対します。

*7-3:http://www.chunichi.co.jp/s/article/2017061590040437.html (中日新聞 2017年6月15日) 政治:「共謀罪」の対象犯罪
 「共謀罪」の対象となる277の罪は次の通り。
【テロの実行に関する犯罪=110】
(刑法)内乱等ほう助▽騒乱▽現住建造物等放火▽非現住建造物等放火▽建造物等以外放火
  ▽激発物破裂▽現住建造物等浸害▽非現住建造物等浸害▽往来危険▽汽車転覆等
  ▽水道汚染▽水道毒物等混入▽水道損壊及び閉塞(へいそく)▽傷害▽未成年者略取及び
  誘拐▽営利目的等略取及び誘拐▽所在国外移送目的略取及び誘拐▽被略取者等所在国
  外移送▽営利拐取等ほう助目的被拐取者収受▽営利被拐取者収受▽身代金被拐取者収
  受等▽電子計算機損壊等業務妨害▽強盗
(組織犯罪処罰法)組織的な殺人▽組織的な逮捕監禁▽組織的な強要▽組織的な身代金目的
  略取等▽組織的な威力業務妨害▽組織的な建造物等損壊
(爆発物取締罰則)製造・輸入・所持・注文▽ほう助のための製造・輸入等▽製造・輸入・所
  持・注文=第1条の犯罪の目的でないことが証明できないとき
(海底電信線保護万国連合条約罰則)海底電信線の損壊
(外為法)国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなる無許可取引等▽特定技術提供目的
  の無許可取引等
(電波法)電気通信業務等の用に供する無線局の無線設備の損壊等
(文化財保護法)重要文化財の損壊等▽史跡名勝天然記念物の滅失等
(道路運送法)自動車道における自動車往来危険▽事業用自動車の転覆等
(森林法)他人の森林への放火
(刑事特別法)軍用物の損壊等
(有線電気通信法)有線電気通信設備の損壊等
(武器等製造法)銃砲の無許可製造▽銃砲弾の無許可製造▽猟銃等の無許可製造
(ガス事業法)ガス工作物の損壊等
(関税法)輸入してはならない貨物の輸入▽輸入してはならない貨物の保税地域への蔵置等
  ▽無許可輸出等▽輸出してはならない貨物の運搬等
(自衛隊法)自衛隊の所有する武器等の損壊等
(高速自動車国道法)高速自動車国道の損壊等
(水道法)水道施設の損壊等
(銃刀法)拳銃等の発射▽拳銃等の輸入▽拳銃等の所持等▽拳銃等の譲り渡し等▽営利
  目的の拳銃等の譲り渡し等▽偽りの方法による許可▽拳銃実包の輸入▽拳銃実包の
  所持▽拳銃実包の譲り渡し等▽猟銃の所持等▽拳銃等の輸入に係る資金等の提供
(下水道法)公共下水道の施設の損壊等
(道交法)不正な信号機の操作等
(新幹線特例法)自動列車制御設備の損壊等
(電気事業法)電気工作物の損壊等
(海底電線等損壊行為処罰法)海底電線の損壊▽海底パイプライン等の損壊
(ハイジャック防止法)航空機の強取等▽航空機の運航阻害
(火炎瓶処罰法)火炎瓶の使用
(熱供給事業法)熱供給施設の損壊等
(航空危険行為処罰法)航空危険▽航行中の航空機を墜落させる行為等▽業務中の航空
  機の破壊等▽業務中の航空機内への爆発物等の持込み
(人質強要処罰法)人質による強要等▽加重人質強要
(生物兵器禁止法)生物兵器等の使用▽生物剤等の発散▽生物兵器等の製造▽生物兵器
  等の所持等
(流通食品毒物混入防止法)流通食品への毒物の混入等
(化学兵器禁止法)化学兵器の使用▽毒性物質等の発散▽化学兵器の製造▽化学兵器の
  所持等▽毒性物質等の製造等
(サリン等人身被害防止法)サリン等の発散▽サリン等の製造等
(感染症予防法)一種病原体等の発散▽一種病原体等の輸入▽一種病原体等の所持等
  ▽二種病原体等の輸入
(対人地雷禁止法)対人地雷の製造▽対人地雷の所持
(公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律)公衆等脅迫
  目的の犯罪行為を実行しようとする者による資金等を提供させる行為▽公衆等脅迫目的
  の犯罪行為を実行しようとする者以外の者による資金等の提供等
(放射線発散処罰法)放射線の発散等▽原子核分裂等装置の製造▽原子核分裂等装置の
  所持等▽特定核燃料物質の輸出入▽放射性物質等の使用の告知による脅迫▽特定核
  燃料物質の窃取等の告知による強要
(海賊対処法)海賊行為
(クラスター弾禁止法)クラスター弾等の製造▽クラスター弾等の所持
【薬物に関する犯罪=29】
(刑法)あへん煙輸入等▽あへん煙吸食器具輸入等▽あへん煙吸食のための場所提供
(大麻取締法)大麻の栽培等▽大麻の所持等▽大麻の使用等
(覚せい剤取締法)覚醒剤の輸入等▽覚醒剤の所持等▽営利目的の覚醒剤の所持等
  ▽覚醒剤の使用等▽営利目的の覚醒剤の使用等▽管理外覚醒剤の施用等
(麻薬取締法)ジアセチルモルヒネ等の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等の製剤等▽営利目的
  のジアセチルモルヒネ等の製剤等▽ジアセチルモルヒネ等の施用等▽営利目的のジアセ
  チルモルヒネ等の施用等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽営利目的のジ
  アセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の製剤等
  ▽麻薬の施用等▽向精神薬の輸入等▽営利目的の向精神薬の譲り渡し等
(関税法)輸出してはならない貨物の輸出
(あへん法)けしの栽培等▽営利目的のけしの栽培等▽あへんの譲り渡し等
(医薬品医療機器法)業として行う指定薬物の製造等
(麻薬特例法)薬物犯罪収益等隠匿
【人身に関する搾取犯罪=28】
(刑法)強制わいせつ▽強姦(ごうかん)▽準強制わいせつ▽準強姦▽人身売買
(労働基準法)強制労働
(職業安定法)暴行等による職業紹介等
(児童福祉法)児童淫行
(船員職業安定法)暴行等による船員職業紹介等
(入管難民法)在留カード偽造等▽偽造在留カード等所持▽集団密航者を不法入国させる行為等
  ▽営利目的の集団密航者の輸送▽集団密航者の収受等▽営利目的の難民旅行証明書等の
  不正受交付等▽営利目的の不法入国者等の蔵匿等
(旅券法)旅券等の不正受交付等
(売春防止法)対償の収受等▽業として行う場所の提供▽売春をさせる業▽資金等の提供
(労働者派遣法)有害業務目的の労働者派遣
(入管特例法)特別永住者証明書の偽造等▽偽造特別永住者証明書等の所持
(臓器移植法)臓器売買等
(児童買春・ポルノ禁止法)児童買春周旋▽児童買春勧誘▽児童ポルノ等の不特定又は多数の者
  に対する提供等
【その他資金源犯罪=101】
(刑法)通貨偽造及び行使等▽外国通貨偽造及び行使等▽有印公文書偽造等▽有印虚偽公文書
  作成等▽公正証書原本不実記載等▽偽造公文書行使等▽有印私文書偽造等▽偽造私文書等
  行使▽私電磁的記録不正作出及び供用▽公電磁的記録不正作出及び供用▽有価証券偽造等
  ▽偽造有価証券行使等▽支払用カード電磁的記録不正作出等▽不正電磁的記録カード所持
  ▽公印偽造及び不正使用等▽墳墓発掘死体損壊等▽収賄▽事前収賄▽第三者供賄▽加重収賄
  ▽事後収賄▽あっせん収賄▽窃盗▽不動産侵奪▽事後強盗▽昏睡(こんすい)強盗
  ▽電子計算機使用詐欺▽背任▽準詐欺▽横領▽盗品有償譲り受け等
(組織犯罪処罰法)組織的な封印等破棄▽組織的な強制執行妨害目的財産損壊等▽組織的な強制
  執行行為妨害等▽組織的な強制執行関係売却妨害▽組織的な常習賭博▽組織的な賭博場開帳
  等図利▽組織的な信用毀損(きそん)・業務妨害▽組織的な詐欺▽組織的な恐喝▽不法収益
  等による法人等の事業経営の支配を目的とする行為▽犯罪収益等隠匿
(外国貨幣の偽造に関する法律)偽造等▽偽造外国流通貨幣等の輸入▽偽造外国流通貨幣等の
  行使等
(印紙犯罪処罰法)偽造等▽偽造印紙等の使用等
(郵便法)切手類の偽造等
(金融商品取引法)虚偽有価証券届出書等の提出等▽内部者取引等
(競馬法)無資格競馬等
(自転車競技法)無資格自転車競走等
(小型自動車競走法)無資格小型自動車競走等
(文化財保護法)重要文化財の無許可輸出
(地方税法)軽油等の不正製造▽軽油引取税に係る脱税
(商品先物取引法)商品市場における取引等に関する風説の流布等
(投資信託及び投資法人に関する法律)投資主の権利の行使に関する利益の受供与等について
  の威迫行為
(モーターボート競走法)無資格モーターボート競走等
(森林法)保安林の区域内における森林窃盗▽森林窃盗の贓(ぞう)物の運搬等
(関税法)偽りにより関税を免れる行為等
(出資法)高金利の契約等▽業として行う高金利の契約等▽高保証料▽保証料がある場合の
  高金利等▽業として行う著しい高金利の脱法行為等
(補助金適正化法)不正の手段による補助金等の受交付等
(特許法)特許権等の侵害
(実用新案法)実用新案権等の侵害
(意匠法)意匠権等の侵害
(商標法)商標権等の侵害
(所得税法)偽りその他不正の行為による所得税の免脱等▽偽りその他不正の行為による
  所得税の免脱▽所得税の不納付
(法人税法)偽りにより法人税を免れる行為等
(著作権法)著作権等の侵害等
(廃棄物処理法)無許可廃棄物処理業等
(貸金業法)無登録営業等
(消費税法)偽りにより消費税を免れる行為等
(種の保存法)国内希少野生動植物種の捕獲等
(不正競争防止法)営業秘密侵害等▽不正競争等
(保険業法)株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
(スポーツ振興投票法)無資格スポーツ振興投票
(種苗法)育成者権等の侵害
(資産の流動化に関する法律)社員等の権利等の行使に関する利益の受供与等について
  の威迫行為
(民事再生法)詐欺再生▽特定の債権者に対する担保の供与等
(電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律)不実の署名
  用電子証明書等を発行させる行為
(会社更生法)詐欺更生▽特定の債権者等に対する担保の供与等
(破産法)詐欺破産▽特定の債権者に対する担保の供与等
(会社法)会社財産を危うくする行為▽虚偽文書行使等▽預合い▽株式の超過発行▽株主等
  の権利の行使に関する贈収賄▽株主等の権利の行使に関する利益の受供与等について
  の威迫行為
(放射性物質汚染対処特別措置法)汚染廃棄物等の投棄等
【司法妨害に関する犯罪=9】
(刑法)加重逃走▽被拘禁者奪取▽逃走援助▽偽証
(組織犯罪処罰法)組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等
(爆発物取締罰則)爆発物の使用、製造等の犯人の蔵匿等
(刑事特別法)偽証
(国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律)組織的な犯罪に係る証拠隠滅等▽偽証


PS(2017年6月19日追加):*8-1のように、共謀罪法に反対する大学教授が抗議声明を出して共謀罪法の廃止を求めておられるのは心強いが、反政府的な運動を弾圧することを政府が容認するという妄想のためではなく、政府が行ってきた現在も含む歴史上の弾圧の事実のために反対しているのであり、「司法は正しいことしかしない」という考えの方がよほど妄想である。
 また、公職選挙法や政治資金規正法が共謀罪法に含まれていないのはよいことで、その理由は、公選法違反や政治資金規正法違反を用いて、*8-2のように、警察が罪を捏造して選挙結果を歪めることが少なくないからであり、志布志事件の例では県議の任期終了後に無罪が確定している。県警と自民党が共謀するのは、県警を管理する公安委員会が知事の下部組織で、知事が与党であれば自民党の影響を受けやすいからである。さらに、裁判所も財務省の予算付けに弱く、最高裁判事は内閣が任命するため、与党との繋がりが深い。これらは、公選法違反で挙げられるのが、自民党以外の候補や警察への仕返しをしない落選候補が多いことからも明らかで、学者であれば、①どのような候補が ②何を理由として公選法違反や政治資金規正法違反とされ ③それがどういう役割を果たしたか について統計をとるくらいの調査はすべきだ。
 なお、民主党代表だった小沢一郎氏が、本当は間違ってすらいなかった政治資金規正法違反を挙げられて権力の座を追われたことも記憶に新しく、民主党が政権を失ってから氏の無罪判決が出たが、このように公選法違反・政治資金規正法違反は権力闘争に用いられているのだ。さらに、氏に対するメディアの印象操作もものすごく、日本国憲法に定められている「表現の自由」「言論の自由」は、「基本的人権の尊重」「民主主義」に優先する権利ではないのに、小沢氏に対する警察捜査時の報道が連日だったのと比較して、氏の無罪確定後にメディアは謝罪していない。そして、こういうことは、私を含む他の政治家に対しても、しばしば行われているのだ。
 さらに、*8-3のように、共謀罪の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法が成立し、警察が犯罪計画を把握するための監視を強めるそうだが、これは憲法に定められている「通信の秘密」に反する。また、「ポスト真実」と言われるように、盗聴・盗撮されたデータもどうにでも加工され得る。これを妄想と言う人もいるのだろうが、実際には、*8-4の足利事件のように、最新の科学を使った筈のDNA鑑定で菅家さんは誤って犯人と認定された。しかし、DNAは、一卵性双生児なら全く同じであり、ポイントのみ調べるのであれば血縁関係の近い人なら同じであることも多い上、意図的に証拠を捏造すれば何とでも言える。そして、先端技術であるだけに、そうされたことを証明するのは難しいのである。

*8-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK6L5S6DK6LUTIL020.html (朝日新聞 2017年6月18日) 「共謀罪」法、学者ら廃止訴える「内容も手続きも暴挙」
 犯罪を計画段階から処罰できる「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織的犯罪処罰法の成立を受け、反対する立場の大学教授らが18日、抗議声明を出した。「法律の内容も、国会での手続きも民主主義を破壊する暴挙だ」と批判。法律の廃止を訴えている。安全保障関連法に反対する学者の会」(約1万4千人)の呼びかけ人の62人。参院で委員会採決を省略する「中間報告」の手続きを使ったことについて、「特に緊急を要する場合にしか認められず、国会法に違反する」と主張。表現の自由の観点から法案に懸念を示した国連の特別報告者に政府が抗議したことにも触れ、「国連との関係悪化は日本の国益を侵害する」とした。この日、7人が東京都内で会見し、高山佳奈子・京都大教授は「テロ対策の主要な国際条約を批准し、すでに国内法の整備は終わっている。五輪の安全のため、テロ対策のためという政府の説明は虚偽だ」と話した。内田樹(たつる)・神戸女学院大名誉教授も「反政府的な運動を弾圧することを政府が容認しているという妄想をこの法律が生む素地がある」と述べた。7月9日午後1時半から「自由が危ない」と題した市民向け集会を早稲田大学(東京都新宿区)で開く。
■共謀罪法案の強行採決に対する抗議声明
 2017年6月15日に、自民党・公明党・日本維新の会は、参議院において、組織的犯罪処罰法改正法案につき、法務委員会での採決を経ることなく本会議での採決を強行した。内容的にも、手続的にも、民主主義を破壊する暴挙である。閣僚・与党および法務省は本法案を「テロ等準備罪」を創設するものと称したが、当初明らかになった案には「テロ」の語が存在しなかった。その後も「テロリズム集団その他」の語が挿入されただけで、テロ対策を内容とする条文は全く含まれない。しかも、日本はテロ対策主要国際条約をすべて批准し、国内法化を終えていることから、組織的なテロの準備行為はすでに網羅的に処罰対象である。本立法にテロ対策の意義はない。内閣が法案提出にあたって理由とした国連国際組織犯罪防止条約も、その公式「立法ガイド」の執筆者が明言するとおり、テロ対策を内容とするものではない。本改正法の処罰対象は、犯罪の計画の合意と「実行準備行為」から成る、国際的に共謀罪(conspiracy)と理解されるものにほかならない。主体の要件とされる「組織的犯罪集団」には、一般の団体の一部をなす集団の性質が犯罪的なものに変化すれば該当することとなり、人権団体や環境保護団体として組織されたものも対象たりうることを政府答弁は認めている。「実行準備行為」は実質的な危険を含まない単なる「行為」で足り、無限定である。約300に及ぶ対象犯罪は、テロにもマフィアにも関係のない多数の類型を含む一方で、警察の職権濫用(らんよう)・暴行陵虐罪や公職選挙法違反など公権力を私物化する罪や、民間の商業賄賂罪など組織的経済犯罪を意図的に除外しており、国連条約の趣旨に明らかに反している。こうした点について国会で実質的な議論を拒み、虚偽の呼称により国民をだまし討ちにしようとする政府の姿勢は、議会制民主主義への攻撃である。さらに参議院での採決は、委員会採決を経ない手続を「特に緊急を要する」場合にしか認めない国会法に違反している。これらの内容・手続の問題点を問いただす公式の書簡がプライバシー権に関する国連特別報告者から首相宛てに出されたにもかかわらず、政府は質問に回答するどころかこれに抗議した。国連人権委員会においては、表現の自由に関する特別報告者によって、日本の政治家の圧力によるメディアの情報操作も公式に報告されている。国連との関係の悪化は、北朝鮮問題の解決や国連国際組織犯罪防止条約への参加を要する日本の国益を侵害している。ここに、本強行採決に強く抗議し、今後、市民の自由を侵害する怖(おそ)れのある法が悪用されないよう厳しく監視することと、立憲主義と民主主義を回復する勢力によって、この法を廃止することを広く社会に対して呼びかける。
<安全保障関連法に反対する学者の会・呼びかけ人一同>
     ◇
「安全保障関連法に反対する学者の会」の呼びかけ人
・青井 未帆 (学習院大学教授 法学)
・浅倉 むつ子 (早稲田大学教授 法学)
・淡路 剛久 (立教大学名誉教授・弁護士 民法・環境法)
・池内 了 (名古屋大学名誉教授 宇宙物理学)
・石田 英敬 (東京大学教授 記号学・メディア論)
・市野川容孝 (東京大学教授 社会学)
・伊藤 誠 (東京大学名誉教授 経済学)
・上田 誠也 (東京大学名誉教授 地球物理学/日本学士院会員)
・上野 健爾 (京都大学名誉教授 数学)
・上野 千鶴子 (東京大学名誉教授 社会学)
・鵜飼 哲 (一橋大学教授 フランス文学・フランス思想)
・内田 樹 (神戸女学院大学名誉教授 哲学)
・内海 愛子 (恵泉女学園大学名誉教授 日本―アジア関係論)
・宇野 重規 (東京大学教授 政治思想史)
・大澤 眞理 (東京大学教授 社会政策)
・岡野 八代 (同志社大学教授 西洋政治思想史・フェミニズム理論)
・小熊 英二 (慶応義塾大学教授 歴史社会学)
・戒能 通厚 (早稲田大学名誉教授 法学)
・海部 宣男 (国立天文台名誉教授 天文学)
・加藤 節 (成蹊大学名誉教授 政治哲学)
・金子 勝 (慶応義塾大学教授 財政学)
・川本 隆史 (国際基督教大学特任教授 社会倫理学)
・君島 東彦 (立命館大学教授 憲法学・平和学)
・久保 亨 (信州大学教授 歴史学)
・栗原 彬 (立教大学名誉教授 政治社会学)
・小林 節 (慶応義塾大学名誉教授 憲法学)
・小森 陽一 (東京大学教授 日本近代文学)
・齊藤 純一 (早稲田大学教授 政治学)
・酒井 啓子 (千葉大学教授 イラク政治研究)
・佐藤 学 (学習院大学教授 教育学)
・島薗 進 (上智大学教授 宗教学)
・杉田 敦 (法政大学教授 政治学)
・高橋 哲哉 (東京大学教授 哲学)
・高山 佳奈子 (京都大学教授 法学)
・千葉 眞 (国際基督教大学特任教授 政治思想)
・中塚 明 (奈良女子大学名誉教授 日本近代史)
・永田 和宏 (京都大学名誉教授・京都産業大学教授 細胞生物学)
・中野 晃一 (上智大学教授 政治学)
・西川 潤 (早稲田大学名誉教授 国際経済学・開発経済学)
・西崎 文子 (東京大学教授 歴史学)
・西谷 修 (立教大学特任教授 哲学・思想史)
・野田 正彰 (精神病理学者 精神病理学)
・浜 矩子 (同志社大学教授 国際経済)
・樋口 陽一 (憲法学者 法学/日本学士院会員)
・広田 照幸 (日本大学教授 教育学)
・廣渡 清吾 (東京大学名誉教授 法学/日本学術会議前会長)
・堀尾 輝久 (東京大学名誉教授 教育学)
・益川 敏英 (京都大学名誉教授 物理学/ノーベル賞受賞者)
・間宮 陽介 (青山学院大学特任教授 経済学)
・三島 憲一 (大阪大学名誉教授 哲学・思想史)
・水島 朝穂 (早稲田大学教授 憲法学)
・水野 和夫 (法政大学教授 経済学)
・宮本 憲一 (大阪市立大学名誉教授 経済学)
・宮本 久雄 (東京大学名誉教授・東京純心大学教授 哲学)
・山口 二郎 (法政大学教授 政治学)
・山室 信一 (京都大学教授 政治学)
・横湯 園子 (中央大学元教授・北海道大学元教授 臨床心理学)
・吉岡 斉 (九州大学教授 科学史)
・吉田 裕 (一橋大学教授 日本史)
・鷲谷 いづみ (中央大学教授 保全生態学)
・渡辺 治 (一橋大学名誉教授 政治学・憲法学)
・和田 春樹 (東京大学名誉教授 歴史学)

*8-2:http://cocologsatoko.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/post-595e.html (飯山一郎 2015.5.15) 志布志事件の真相は? 県警と自民党の共謀
 志布志事件とは、警察が犯罪をデッチアゲた事件である。買収などの選挙犯罪を一切ヤっていないのに、鹿児島県警が虚偽の自白を強要して犯罪をデッチアゲた悪質な事件である。犯罪者は、むしろ警察である。なぜ? 鹿児島県警は無実の人間を次々に逮捕してウソの自白を強要し、悪質な犯罪デッチアゲ事件を犯したのか?鹿児島県警は無実の市民を強引に犯罪者に仕立てあげた!この志布志事件の動機は何だったのか? このことを明らかにしないかぎり、警察の犯罪はなくならない。

*8-3:http://qbiz.jp/article/112247/1/ (西日本新聞 2017年6月18日) SNS、防犯カメラ…監視を「受容」 情報提供のルールない「共謀罪」法成立
 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法が成立し、警察が犯罪の計画を把握するために市民への監視を強めるとの懸念が強まっている。ITの発展で行政や企業が膨大な個人情報を持つようになった一方、捜査機関への提供に関するルールはほとんど整備されていない。国民が安全や利便性を追求すれば、意図しなくても監視を受け入れざるを得ない状況の中、専門家からはプライバシー保護のための仕組みを求める声が上がっている。
●歓迎 
 道路の脇に電柱と並んで長いポールが立っている。千葉県松戸市の住宅街。視線を上げると、地上に向けて設置された防犯カメラが行き交う車や通行人の姿を捉えている。「防犯カメラ作動中」の表示に気付く人は、ほとんどいないようだ。松戸市では3月に小3女児が行方不明になり、通っていた小学校の保護者会長が殺人などの疑いで逮捕された。住民の要望で、市は学校の近くに3台の防犯カメラを設置。映像はインターネット回線を通じて山梨県にある民間企業のデータセンターに送られ、1週間保存されることになった。近くに住む女性(67)は「設置されたことは知らなかったけど、悪いことをしてないから気にならない。犯罪抑止につながればいい」と歓迎。市の担当者は「任意でも提出を求められれば映像は警察に提供する。行政の責務だ」と話す。早稲田大の西原博史教授(憲法学)によると、かつては行政が防犯カメラを直接設置したり、補助金を出したりするのは商業地区が多かったが、近年は住宅街にまで広がっているという。
●丸裸 
 電子データの保存コストが大幅に下がった今、自治体や企業はカメラの映像を長時間蓄積することが可能になっている。会員制交流サイト(SNS)を飛び交う無数のやりとりも保管される。西原教授は「警察がこれらの情報を結び付ければ、人々のあらゆるコミュニケーションが丸裸になる」と指摘。「自分は捜査の対象にならないと安全・安心を求め、監視を受け入れることは自由を差し出すことと同じ。やがて、本当の自分のままでいられる空間を失う」と警鐘を鳴らす。警察は現在でも「捜査関係事項照会」などの任意捜査で、クレジットカードや出入国、銀行口座の履歴など広範囲にわたって市民の情報を集めている。だが、企業などがどういう場合に、どの程度の情報を警察に提供しているのかは“ブラックボックス”だ。無料通信アプリを運営する「LINE」(東京)は今年4月、2016年7〜12月に警察などから1500件の情報提供を求められ、うち928件を開示したことを公表。裁判所の令状に基づく強制捜査なのか任意の「照会」なのかも明らかにした。大半は強制捜査だった。LINEは「透明性を保つことが利用者の利益になる」との立場だが、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの携帯電話大手3社は、いずれも取材に「義務はない」として件数すら公表していない。
●保証 
 プライバシー権に詳しい中央大の宮下紘准教授は「監視社会の気味悪さは、権力を持つ側がどれだけの情報を集めているのか分からないことにある」と言う。企業や自治体が捜査機関から照会のあった件数を積極的に公表することで一定程度は乱用を抑止できるとし、捜査機関に国会への報告を義務付ける制度を設けるべきだと提言する。「乱用しないという政府の説明だけでは何の保証にもならない。『監視に対する監視』のシステムをつくることで、初めて市民のプライバシーが守られる」
●警察からの要請件数など公表、LINE
 警察などから情報提供の要請があった件数を明らかにしているLINE(ライン)の法務担当執行役員、中山剛志氏に公表の理由などを聞いた。
−なぜ公開するのか。
 「私も一利用者の立場から言えば、自分の情報がどう扱われているのか分からないと気持ちが悪い。公表することで少しでも不安が払拭(ふっしょく)できればと考えた。今後も透明性を高めていきたい」
−全ての要請に対応しているのか。
 「プライバシー保護を担当する部署で審査し、請求の範囲が広過ぎるなど問題があると判断した場合は、対応しない」
−どういう情報を提供しているのか。
 「裁判所の令状に基づく強制捜査では、利用者のトークの内容を明らかにしなければならない。ただし利用者が暗号化機能を解除していなければ、捜査機関にも知られることはない」。「任意捜査である捜査関係事項照会に開示するのは利用者の氏名、電話番号などの登録情報やプロフィル画像までで、トーク内容は開示しない」
−同業他社の対応は。
 「グーグルやフェイスブックなどのグローバル企業は、捜査当局などから情報提供を求められた件数を公開している。ラインも世界中でサービスを提供しているので、同水準の情報開示をすべきだと考えた」

*8-4:http://www.nikkei.com/article/DGXDASDG2603L_W0A320C1CC1000/ (日経新聞 2010/3/27) 足利事件再審 宇都宮地裁判決要旨
【再審までの経緯】
 1990年5月、栃木県足利市で4歳の女児が誘拐、殺害された。被害者が着用していた半袖下着に付着した体液と菅家利和さんの体液のDNA鑑定が行われ、同型だった。逮捕、起訴された菅家さんは1992年12月の第6回公判で否認したが、第7回公判で再び認め一度結審。弁論再開後、全面的に否認する供述をした。1993年の一審判決は(1)DNA鑑定(2)自白――を主な証拠とし菅家さんを犯人と認定。無期懲役とした一審判決が確定した。菅家さんは2002年、再審を請求。東京高裁は再審開始を決定した。
【DNA鑑定】
 東京高裁は2009年、鈴木広一大阪医大教授らを鑑定人に命じ、被害者の下着に付着した体液と菅家さんの血液のDNA再鑑定をし、同一の男性に由来しないと判定された。菅家さんが犯人でないことを如実に示す。最高裁が証拠能力を認めた当時のDNA鑑定は、鈴木鑑定の結果、証拠価値がなくなり、具体的な実施方法にも疑問を抱かざるを得ない。現段階においては証拠能力を認めることができず、証拠から排除する。
【菅家さんの自白】
 鈴木鑑定の結果は、捜査段階や公判での菅家さんの自白を前提とすると到底説明がつかず、自白は信用できない。起訴後でも公判維持に必要な取り調べはできるが、慎重な配慮や対応が求められる。森川大司検事は既に2度の被告人質問が行われた後の1992年12月7日、別件の取り調べで菅家さんが突如、本件の否認を始めたことから翌日、本件の犯人ではないかと追及する取り調べをした。弁護人への事前連絡を一切せず、黙秘権告知や弁護人の援助を受ける権利も説明しておらず、当事者主義や公判中心主義の趣旨を没却する違法な取り調べだった。取り調べで、DNA型が一致したとの鑑定結果を告げられたことが、菅家さんが自白するに至った最大の要因。捜査段階の自白の任意性には影響しないが、その信用性には大きく影響している。自白の証拠能力自体に影響する事情は見当たらないものの、再審公判で明らかとなった当時の取り調べ状況や、強く言われるとなかなか反論できない菅家さんの性格からすると「当時の新聞記事の記憶などから想像を交えて捜査官の気に入るように供述した」という控訴審での菅家さんの供述は信用性がある。自白は信用性が皆無で、虚偽であることが明らかだ。
【結論】
 犯人のものと考えられるDNA型が菅家さんの型と一致しないことが判明し、自白が虚偽であることが明らかになったのだから、菅家さんが犯人ではないことは誰の目にも明らかになった。

| 日本国憲法::2016.6~ | 03:04 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.5.11 日本国憲法の変更と共謀罪・安全保障法制について (2017年5月12、14、15、18、20、24日追加)
(1)日本国憲法の変更について

  
     2016.8.12東京新聞     昭和天皇の御名御璽  戦争放棄と国民の権利・義務  

(図の説明:これまで「敗戦後に日本の国力を弱めるため米国によって押し付けられた」と説明されることが多かった日本国憲法9条は、実は幣原首相が提案したものだと米上院でマッカーサーが証言している。その憲法には、①国民主権 ②平和主義と戦力不保持 ③基本的人権の尊重 が記載されており、現在でも最先端の内容だと考える。そのため、足りない部分があると言う人は、a.どこが b.どう足りないので c.どう修正したいのか を具体的に指摘すべきだ)


 
   憲法変更前に拡張された安全保障法制          特定秘密保護法   

(図の説明:安全保障法制の拡大により、自衛権の発動と称すればどこででも戦争ができるようになったが、私は、これは違憲立法だと考える。また、特定秘密保護法は、民主主義の根幹である国民の”知る権利”を制限する上、秘密を漏らしたと称すればいつでも逮捕できるようになり、憲法の主権在民(民主主義)を脅かしている。また、特定秘密保護法の適性評価制度は、2014年3月15日に、日本精神神経学会が、①精神疾患・精神障害に対する偏見・差別を助長し、患者、精神障害者が安心して医療・福祉を受ける基本的人権を侵害する ②医療情報の提供義務は、医学・医療の根本原則(守秘義務)を破壊する ③精神科医療全体が特定秘密保護法の監視対象になる危険性が高い 等の理由で反対しているものだ《https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/20140315.pdf 参照》)

 安倍首相(=自民党総裁)は、*1-1のように、2017年5月8日の党役員会で憲法9条への自衛隊明記について議論開始を求め、*1-2のように、①憲法改正は自民党立党以来の党是だ ②少子高齢化・人口減少・経済再生・安全保障環境の悪化など、我が国が直面する課題に対し、次の70年に向けて日本がどういう国を目指すのか、真正面から立ち向かって未来への責任を果たさなければならない ③自衛隊の存在を憲法に位置づけ、『自衛隊が違憲かもしれない』という議論が生まれる余地をなくすべく、憲法9条1項、2項を残しながら自衛隊を明文で書き込む ④義務教育だけでなく高等教育も無償化する旨、憲法に書き込む ⑤新しく生まれ変わった日本が動き出す2020年を新しい憲法施行日にしたい などを語られている。

 しかし、①のように、憲法改正は自民党立党以来の党是であるため、②のように、近年我が国が直面している課題に対して未来への責任を果たすために憲法を改正するというのは、国民が騙されやすい言葉を並べただけの嘘である。また、④の教育無償化は、*1-5のように、憲法を変更しなくてもできるにもかかわらず財源を理由としてやっていないだけであり、憲法の変更を行うだしにすぎない。

 ③については、私は、自衛隊は既に存在するため安全保障法制制定前なら憲法に書き加えた方がよいと思っていたが(例えば、3項に「前項の規定にかかわらず、自衛目的のために自衛隊を有する」と付け加えれば、条文上は問題ない)、*1-4のように、安全保障法制が制定され自衛戦だと主張しさえすればどこででも戦えるようになった現在では、日本国憲法のみが戦争を踏みとどまらせるツールになるため、憲法は変更すべきではなくなったと考える。

 また、*1-3のように、日本国憲法第13条は「すべて国民は、個人として尊重される」としており、これは「どういう個性(思想・信条・価値観・性etc.)を持つ人も尊重されるという意味だが、自民党憲法改正草案は「個人」を「人」に変え、草案作りに携わった礒崎参議院議員は、憲法13条は「個人主義を助長した」「個人という異様な思想」「個人という思想が家族観を破壊した」などと自らのHPに記載しているそうだ。

 これは、日本国憲法施行前の我が国で、同じ人間として扱われてすらいなかった女性の犠牲の上になりたっていた家族観や、思想・信条・価値観・身分の異なる人を差別したり、迫害したりした我が国の負の歴史を無視しており、「すべての国民を個人として尊重する」という規定の重さを理解していない。そして、そのような人たちが、自民党憲法改正草案を作ったのだから、国民は安心して笑顔でいる場合ではないのである。

 さらに、*1-3の自民党憲法改正草案前文に加えられた「和の精神」は、角突き合わさず、みんな仲良くすることだそうだが、加害者と被害者が存在する時に「和の精神」を説けば、やりたい放題になって不公正となり、このように対立する利害を公正に調整するために、基本的人権の尊重・男女平等・三権分立などが近代憲法や下部の法律で定められているのである。そのため、今さら聖徳太子の時代に戻ってよいわけがない。

 私は、日本国憲法の理念は素晴らしく、制定から70年経過しても最先端であり、決して古くなっていないと考える。そのため、*1-5のように、まさに現憲法の理念を実現することが先で、その理念を実現すれば、個人主義と利己主義を混同して「個人主義は家族観を破壊した」などと言う人はいなくなり、民主主義も徹底するだろう。そのため、「今の段階では、現憲法を変更しない」というのも立派な対案だと、私は考えている。
 
(2)基本的人権の尊重と共謀罪

     
   共謀罪に関する政府の説明     共謀罪新設で変わること   警察の通信傍受

 何度も廃案になった「共謀罪」法案が、*2-2のように、277の罪を対象とし、「テロ等準備罪」と名を変えて国会に提出されたが、このうち本当にテロの実行に関するものは110に留まるそうだ。政府は「組織的犯罪集団が対象で、一般市民が対象になることはない」と説明しているが、ここに示された罪の多くは一般市民に関係するもので、組織で行われるとは限らないものだ。つまり、法令の名前も政府の説明も事実とは異なり、日本のTVもこういう事実を正確に報道しなければ、日本国憲法に定められた主権在民(民主主義)は機能しない。

 「現在ではテロ対策が必要だ」という人は多く、それが「テロ等準備罪」制定の根拠とされているが、平和主義の国日本では、これまでサリン事件という犯罪以外は起こっておらず、今後、もしテロが起こるとすれば安全保障法制によって同盟国について行き、理不尽な戦争をして恨みを買った場合だろう。そのため、あの安全保障法制は、抑止力になるどころか国内でテロが起こるリスクを増加させているのだ。

 また、*2-3のように、現行の刑事法の下では、罪を犯した者を罰するのが原則であるため、捜査は基本的に事件が発生してから始まるが、「テロ等準備罪(=共謀罪)」は計画段階の犯罪を処罰対象とするため、事件もないのに証拠収集や取り調べを行うことが可能になり、これは日本国憲法の基本的人権の尊重に反する。これに対し、政府は「捜査権の乱用はない」と強調しているが、捜査当局が前のめりになって人権侵害したケースは過去から現在まで多い。

 さらに、政府は、テロ組織や暴力団などの組織的犯罪集団が対象で、摘発には資金・物品の手配・現場の下見などの「準備行為」が必要だと説明しているが、その適用団体の定義は曖昧で、犯罪集団か否かは捜査機関が自ら判断する上、準備行為が事件に関係していることを裏付けるために供述証拠に頼ることになる。その場合、犯罪実行前に自首した場合は刑を減免するという規定があるため、他人に罪をなすりつける虚偽供述や密告・冤罪がはびこる社会になりかねず、証拠収集のための通信傍受も広がるに違いない。

 そこで、*2-1のように、民進党は、「テロ等準備罪」を新設する政府提出の組織犯罪処罰法改正案の対案として、人身売買や組織的詐欺の予備罪新設などを柱とした法案をまとめたそうだ。そのため、TVも客観性に欠け分析力を疑うようなくだらないニュースばかり報道していないで、日本国民の人権の根幹に拘わる政策の違いや理由をわかりやすく解説すべきである。

 また、*2-4、*2-5のように、法律の専門家集団である弁護士会は、かねてから明確に、①“共謀罪”法案は、現行刑法の体系を根底から変容させるものであること ②犯罪を共同して実行しようとする意思を処罰の対象とする基本的性格はこの法案においても変わらず維持されていること ③テロ対策のための国内法上の手当はなされており、共謀罪法案を創設することなく国連越境組織犯罪防止条約について一部留保して締結することは可能であること ④仮にテロ対策等のための立法が十分でないとすれば個別立法で対応すべきこと などを指摘し、廃案を求めている。TVメディアの組織には、これらの内容を読み解ける人材が一人もいないのだろうか。

 なお、信濃毎日新聞は、*2-6のように、「憲法の岐路 強まる監視 拒否する意思示す時」「共謀罪は弾圧に道を開く」として反対しており、そのとおりである。

<憲法変更>
*1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/427756 (佐賀新聞 2017年5月8日) 首相、改憲へ議論加速を指示、自民役員会、9条改正巡り
 安倍晋三首相(自民党総裁)は8日の党役員会で、憲法9条への自衛隊明記などを掲げた自らの発言を踏まえ、党内論議を加速するよう指示した。「わが党は現実的かつ具体的な議論をリードする責任がある。それが歴史的使命だ」と述べた。これに先立つ衆院予算委員会では、野党に対して衆参両院の憲法審査会での活発な議論を求めた。民進党の蓮舫代表は反発し、次期衆院選の争点になるとの認識を示した。首相が2020年の改正憲法施行を目指すと3日のビデオメッセージで表明したのを受けた与野党の動きだが、自民党と民進党が改憲で合意点を見いだすのは難しい状況が改めて浮かび上がった。

*1-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK03H16_T00C17A5000000/?nf=1 (日経新聞 2017/5/3) 憲法改正に関する首相メッセージ全文
 安倍晋三首相(自民党総裁)のビデオメッセージの全文は次の通り。ご来場のみなさま、こんにちは。自由民主党総裁の安倍晋三です。憲法施行70年の節目の年に、「第19回 公開憲法フォーラム」が盛大に開催されましたことに、まずもってお喜び申し上げます。憲法改正の早期実現に向けて、それぞれのお立場で精力的に活動されているみなさまに心から敬意を表します。憲法改正は、自由民主党の立党以来の党是です。自民党結党者の悲願であり、歴代の総裁が受け継いでまいりました。私が首相・総裁であった10年前、施行60年の年に国民投票法が成立し、改正に向けての一歩を踏み出すことができましたが、憲法はたった1字も変わることなく、施行70年の節目を迎えるに至りました。憲法を改正するか否かは、最終的には国民投票によって、国民が決めるものですが、その発議は国会にしかできません。私たち国会議員は、その大きな責任をかみしめるべきであると思います。次なる70年に向かって、日本がどういう国を目指すのか。今を生きる私たちは、少子高齢化、人口減少、経済再生、安全保障環境の悪化など、我が国が直面する困難な課題に対し、真正面から立ち向かい、未来への責任を果たさなければなりません。憲法は、国の未来、理想の姿を語るものです。私たち国会議員は、この国の未来像について、憲法改正の発議案を国民に提示するための「具体的な議論」を始めなければならない、その時期にきていると思います。わが党、自由民主党は未来に、国民に責任を持つ政党として、憲法審査会における「具体的な議論」をリードし、その歴史的使命を果たしてまいりたいと思います。例えば、憲法9条です。今日、災害救助を含め、命懸けで24時間、365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く、その任務を果たしている自衛隊の姿に対して、国民の信頼は9割を超えています。しかし、多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が、今なお存在しています。「自衛隊は違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれ」というのは、あまりにも無責任です。私は少なくとも、私たちの世代のうちに、自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置づけ、「自衛隊が違憲かもしれない」などの議論が生まれる余地をなくすべきである、と考えます。もちろん、9条の平和主義の理念については、未来に向けて、しっかりと堅持していかなければなりません。そこで「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という考え方、これは国民的な議論に値するのだろうと思います。教育の問題。子どもたちこそ我が国の未来であり、憲法において国の未来の姿を議論する際、教育は極めて重要なテーマだと思います。誰もが生きがいを持って、その能力を存分に発揮できる一億総活躍社会を実現するうえで、教育が果たすべき役割は極めて大きい。世代を超えた貧困の連鎖を断ち切り、経済状況にかかわらず、子どもたちがそれぞれの夢に向かって頑張ることができる、そうした日本でありたいと思っています。70年前、現行憲法の下で制度化された、小中学校9年間の義務教育制度、普通教育の無償化は、まさに、戦後の発展の大きな原動力となりました。70年の時を経て、社会も経済も大きく変化した現在、子どもたちがそれぞれの夢を追いかけるためには、高等教育についても、全ての国民に真に開かれたものとしなければならないと思います。これは個人の問題にとどまりません。人材を育てることは、社会・経済の発展に確実につながっていくものであります。これらの議論の他にも、この国の未来を見据えて議論していくべき課題は多々あるでしょう。私はかねがね、半世紀ぶりに夏期の五輪・パラリンピックが開催される2020年を、未来を見据えながら日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだと申し上げてきました、かつて、1964年の東京五輪を目指して、日本は大きく生まれ変わりました、その際に得た自信が、その後、先進国へと急成長を遂げる原動力となりました。2020年もまた、日本人共通の大きな目標となっています。新しく生まれ変わった日本が、しっかりと動き出す年、2020年を新しい憲法が施行される年にしたいと強く願っています。私は、こうした形で国の未来を切りひらいていきたいと考えています。本日は、自由民主党総裁として、憲法改正に向けた基本的な考え方を述べました。これを契機に、国民的な議論が深まっていくことを切に願います。自由民主党としても、その歴史的使命をしっかりと果たしていく決意であることを改めて申し上げます。最後になりましたが、国民的な議論と理解を深めていくためには、みなさまがた「民間憲法臨調」、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」のこうした取り組みが不可欠であり、大変心強く感じております。憲法改正に向けて、ともにがんばりましょう。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12920934.html (朝日新聞社説 2017年5月3日) 憲法70年 先人刻んだ立憲を次代へ
 時代劇で江戸の長屋に住む八っつぁん熊さんが万歳三唱をしたら、脚本家は落第である。あれは日本古来の振る舞いではないと、NHK大河ドラマなどの時代考証を手がける大森洋平さんが著書で書いている。1889年、明治憲法の発布を祝うために大学教授らが作り出した。ちゃぶ台も洗濯板も、明治になって登場した。動作や品物だけではない。西欧の思想や文化に出会った当時の知識人は、その内容を人々に伝えようと苦心し、新しく単語をつくったり、旧来の言葉に意味を加えたりした。いまでは、それらなくして世の中は成り立たないと言ってもいい。
■消えた「個人」
 個人、もその賜物(たまもの)の一つだ。「すべて国民は、個人として尊重される」。日本国憲法第13条は、そう定めている。根底に流れるのは、憲法は一人ひとりの人権を守るために国家権力を縛るものである、という近代立憲主義の考えだ。英文では〈as individuals(個人として)〉となっている。翻訳家の柴田元幸さんはここに、固有の権利を持つ人間というニュアンスを感じたという。もし〈as humans(人間として)〉だったら「単に動物ではないと言っているだけに聞こえます」。ひとり、一身ノ身持、独一個人(どくいつこじん)と〈individual〉の訳語に試行錯誤した福沢諭吉らがこの話を聞いたら、ひざを打ったに違いない。『文明論之概略』で福沢は、日本の歴史には「独一個人の気象」がないと嘆いた。個人の尊厳をふまえ、幸福を追い求める権利をうたいあげた13条の文言には、洋の東西を超えた先人たちの思いと労苦が息づいている。ところが自民党は、5年前に公表した憲法改正草案で「個人」を「人」にしてしまった。安倍首相は昨年、言い換えに「さしたる意味はない」と国会で答弁した。しかし草案作りに携わった礒崎陽輔参院議員は、自身のホームページで、13条は「個人主義を助長してきた嫌いがある」と書いている。
■和の精神と同調圧力
 「個人という異様な思想」「個人という思想が家族観を破壊した」。首相を強く支持する一部の保守層から聞こえてくるのは、こんな声だ。一方で、草案の前文には「和を尊び」という一節が加えられた。「和の精神は、聖徳太子以来の我が国の徳性である」と草案のQ&Aは説明する。角突き合わさず、みんな仲良く。うまくことを進めるうえで「和」はたしかに役に立つ。しかし、何が歴史や文化、伝統に根ざした「我が国」らしさなのかは、万歳三唱やちゃぶ台の例を持ち出すまでもなく、それぞれの人の立場や時間の幅の取り方で変わる。国内に争乱の記録はいくらもあるし、かつて琉球王国として別の歴史を歩んだ沖縄は、ここで一顧だにされていない。一見もっともな価値を掲げ、それを都合よく解釈し、社会の多様な姿や動きを封じてしまう危うさは、道徳の教科書でパン屋が和菓子屋に変わった一件を思いおこせば十分だ。検定意見の根拠は「我が国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着をもつ」と定めた学習指導要領だった。ただでさえ同調圧力の強いこの社会で、和の精神は、するりと「強制と排除の論理」に入れ替わりうる。
■近代的憲法観の転覆
 「個人」を削り、「和」の尊重を書きこむ。そこに表れているのは、改憲草案に流れる憲法観――憲法は歴史や伝統などの国柄を織り込むべきもので、国家権力を縛るものという考えはもう古い――である。だから、人は生まれながらにして権利を持つという天賦人権説を西欧由来のものとして排除し、憲法を、国家と国民がともに守るべき共通ルールという位置づけに変えようとする。これは憲法観の転覆にほかならない。経験知を尊重する保守の立場とは相いれない、急進・破壊の考えと言っていい。明治憲法を起草した伊藤博文は、憲法を創設する精神について、第一に「君権(天皇の権限)を制限」し、第二に「臣民の権利を保護する」ことにあると力説した。むろん、その権利は一定の範囲内でしか認められないなどの限界はあった。だが、時代の制約の中に身を置きながら、立憲の何たるかを考えた伊藤の目に、今の政権担当者の憲法観はどう映るか。明治になって生まれたり意味が定着したりした言葉は、「個人」だけではない。「権利」も「自由」もそうだった。70年前の日本国憲法の施行で改めて命が吹き込まれたこれらの概念と、立憲主義の思想をより豊かなものにして、次の世代に受け渡す。いまを生きる私たちが背負う重大な使命である。

*1-4:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20170504/KT170503ETI090003000.php (信濃毎日新聞社説 2017年5月4日) 首相改憲発言 身勝手な使命感の表明
 安倍晋三首相が改憲について踏み込んだ発言をした。「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と初めて具体的な時期を示している。なぜ、それほど急ぐのか。唐突な決意表明である。東京都内で開かれた憲法改正を訴える会合に自民党総裁として寄せたビデオメッセージだ。具体的な項目として9条や教育無償化に触れている。憲法を尊重し、擁護する義務を負う首相が憲法記念日に改憲を主張する。強い違和感を抱かせる発言である。改憲時期について「半世紀ぶりに夏季のオリンピック、パラリンピックが開催される2020年を未来を見据えながら日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだ」とし、20年施行という目標を明示した。期限をはっきりさせることで論議を加速させたいのか。衆参両院の憲法審査会では各党の主張の隔たりが大きい。改憲項目の絞り込みが進まず、国民的な議論も熟していない状況で3年後に施行とはあまりにも性急な提示だ。9条については、戦争放棄の1項、戦力不保持の2項を残しつつ自衛隊を明文で書き込むという考え方を示し、「国民的な議論に値するだろう」とした。多くの憲法学者や政党の中に自衛隊を違憲とする議論が今なお存在するとし、憲法に位置付けることで「違憲かもしれない」などの議論が生まれる余地をなくすべきだとも述べている。「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と定める2項を残し、どのように書き込もうというのか。専守防衛の枠から自衛隊が踏み出すことにならないか。疑問は尽きない。安倍政権は一内閣の判断で憲法解釈を変更し、違憲との批判を顧みることなく集団的自衛権行使の安全保障関連法を定めた。立憲主義を軽んじる首相の提案に乗ることはできない。首相は、未来と国民に責任を持つ政党として憲法審査会での「具体的な議論」をリードし、歴史的使命を果たしていきたいとも述べた。世論調査では、安倍政権下での改憲に過半数が反対と答えている。自身の悲願を果たしたいだけの身勝手な使命感ではないか。改憲派の会合での一方的なメッセージである。見過ごすことはできない。首相は自身の考えを国会できちんと説明する必要がある。

*1-5:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-490324.html (琉球新報社説 2017年5月5日) 首相改憲表明 現憲法の理念実現が先だ
 安倍晋三首相が憲法記念日の3日、改憲を実現し、2020年の施行を目指す方針を表明した。改定内容として、戦争放棄などを定めた憲法9条に自衛隊の存在を明記する文言を追加することや、教育無償化などを挙げた。「憲法改正は自民党の立党以来の党是だ」と述べる安倍首相にとって、国会での憲法論議は遅々として進んでいないと見えるのだろう。しかし、あと3年で憲法改定まで進むというのは拙速に過ぎる。9条は条文上、あらゆる武力行使を禁止し、自衛隊の活動に一定の歯止めをかけてきた。しかし集団的自衛権の行使容認という憲法解釈の変更で事実上、自衛隊の任務は国際紛争の場にまで広がった。さらに自衛隊が明文化されれば、武力行使の歯止めは利かなくなるのではないか。共同通信の全国世論調査でも日本が戦後、海外で武力行使しなかった理由について「9条があったからだ」とする回答は75%に上った。国民に一定評価されている9条改定の機運が熟したとは思えない。安倍首相が同時に、高等教育の無償化を理由に挙げたことも解せない。教育の無償化は憲法を改定せずともできることだ。現に民主党政権は高校の無償化を実現させた。自公政権になってから所得制限を設けたため、安倍首相が言う「全ての国民に真に開かれた」ものではなくなったのだ。共同通信調査では、安倍首相の下での改憲に51%が反対し、賛成は45%だった。本紙の世論調査でも、戦争放棄や戦力不保持を定めた9条を「堅持すべきだ」が44・2%で最も多く、「改正すべきだ」の21・7%を22・5ポイント上回った。県内では9条堅持を望む声が高い。憲法を変えるよりも先に行うべきことがある。先月の衆院憲法審査会では4人の参考人全員が、沖縄県に米軍基地負担が集中し、政府と対立する現状を問題視して、それぞれ異なる道筋を示しながら、沖縄の自治権強化を求めた。地方自治を保障した現憲法下でも、基地が偏在し、沖縄の自治がないがしろにされている。参考人として出席した学識者全員が現状を変えるよう促したのだ。安倍首相は改憲を唱える前に、現憲法の平和希求や地方自治の理念を実現するよう努力すべきだ。

<基本的人権の尊重と共謀罪>
*2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017050801001796.html (東京新聞 2017年5月8日) 民進が「共謀罪」の対案決定 予備罪新設、テロ対策強化
 民進党は8日、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する政府提出の組織犯罪処罰法改正案の対案として、人身売買や組織的詐欺の予備罪新設などを柱とした法案をまとめた。テロ対策も強化する。政府が法改正の根拠とする国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の締結を見据え、責任野党をアピールする狙い。9日の「次の内閣」会合で正式に決定し、週内にも衆院に提出する。蓮舫代表は8日の党会合で共謀罪について「一般の方も対象になるリスクが相当大きく、明確に反対したい」と述べ、廃案を目指す考えを重ねて表明した。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/ASK3102FVK2XUTIL05K.html (朝日新聞 2017年3月1日) 「共謀罪」法案、対象となる法律と罪名
 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案の全容が判明した。対象は91の法律で規定した277の罪。政府の分類では、「テロの実行」に関するものはこのうち110罪にとどまる。277の罪名は次の通り。
     ◇
【刑法】内乱等幇助(ほうじょ)▽加重逃走▽被拘禁者奪取▽逃走援助▽騒乱▽現住建造物等放火▽非現住建造物等放火▽建造物等以外放火▽激発物破裂▽現住建造物等浸害▽非現住建造物等浸害▽往来危険▽汽車転覆等▽あへん煙輸入等▽あへん煙吸食器具輸入等▽あへん煙吸食のための場所提供▽水道汚染▽水道毒物等混入▽水道損壊及び閉塞(へいそく)▽通貨偽造及び行使等▽外国通貨偽造及び行使等▽有印公文書偽造等▽有印虚偽公文書作成等▽公正証書原本不実記載等▽偽造公文書行使等▽有印私文書偽造等▽偽造私文書等行使▽私電磁的記録不正作出及び供用▽公電磁的記録不正作出及び供用▽有価証券偽造等▽偽造有価証券行使等▽支払用カード電磁的記録不正作出等▽不正電磁的記録カード所持▽公印偽造及び不正使用等▽偽証▽強制わいせつ▽強姦(ごうかん)▽準強制わいせつ▽準強姦▽墳墓発掘死体損壊等▽収賄▽事前収賄▽第三者供賄▽加重収賄▽事後収賄▽あっせん収賄▽傷害▽未成年者略取及び誘拐▽営利目的等略取及び誘拐▽所在国外移送目的略取及び誘拐▽人身売買▽被略取者等所在国外移送▽営利拐取等幇助目的被拐取者収受▽営利被拐取者収受▽身の代金被拐取者収受等▽電子計算機損壊等業務妨害▽窃盗▽不動産侵奪▽強盗▽事後強盗▽昏酔(こんすい)強盗▽電子計算機使用詐欺▽背任▽準詐欺▽横領▽盗品有償譲受け等
【組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律】組織的な封印等破棄▽組織的な強制執行妨害目的財産損壊等▽組織的な強制執行行為妨害等▽組織的な強制執行関係売却妨害▽組織的な常習賭博▽組織的な賭博場開張等図利▽組織的な殺人▽組織的な逮捕監禁▽組織的な強要▽組織的な身の代金目的略取等▽組織的な信用毀損(きそん)・業務妨害▽組織的な威力業務妨害▽組織的な詐欺▽組織的な恐喝▽組織的な建造物等損壊▽組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等▽不法収益等による法人等の事業経営の支配を目的とする行為▽犯罪収益等隠匿
【爆発物取締罰則】製造・輸入・所持・注文▽幇助のための製造・輸入等▽製造・輸入・所持・注文(第1条の犯罪の目的でないことが証明できないとき)▽爆発物の使用、製造等の犯人の蔵匿等
【外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造ニ関スル法律】偽造等▽偽造外国流通貨幣等の輸入▽偽造外国流通貨幣等の行使等
【印紙犯罪処罰法】偽造等▽偽造印紙等の使用等
【海底電信線保護万国連合条約罰則】海底電信線の損壊
【労働基準法】強制労働
【職業安定法】暴行等による職業紹介等
【児童福祉法】児童淫行
【郵便法】切手類の偽造等
【金融商品取引法】虚偽有価証券届出書等の提出等▽内部者取引等
【大麻取締法】大麻の栽培等▽大麻の所持等▽大麻の使用等
【船員職業安定法】暴行等による船員職業紹介等
【競馬法】無資格競馬等
【自転車競技法】無資格自転車競走等
【外国為替及び外国貿易法】国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなる無許可取引等▽特定技術提供目的の無許可取引等
【電波法】電気通信業務等の用に供する無線局の無線設備の損壊等
【小型自動車競走法】無資格小型自動車競走等
【文化財保護法】重要文化財の無許可輸出▽重要文化財の損壊等▽史跡名勝天然記念物の滅失等
【地方税法】軽油等の不正製造▽軽油引取税に係る脱税
【商品先物取引法】商品市場における取引等に関する風説の流布等
【道路運送法】自動車道における自動車往来危険▽事業用自動車の転覆等
【投資信託及び投資法人に関する法律】投資主の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【モーターボート競走法】無資格モーターボート競走等
【森林法】保安林の区域内における森林窃盗▽森林窃盗の贓物(ぞうぶつ)の運搬等▽他人の森林への放火
【覚せい剤取締法】覚醒剤の輸入等▽覚醒剤の所持等▽営利目的の覚醒剤の所持等▽覚醒剤の使用等▽営利目的の覚醒剤の使用等▽管理外覚醒剤の施用等
【出入国管理及び難民認定法】在留カード偽造等▽偽造在留カード等所持▽集団密航者を不法入国させる行為等▽営利目的の集団密航者の輸送▽集団密航者の収受等▽営利目的の難民旅行証明書等の不正受交付等▽営利目的の不法入国者等の蔵匿等
【旅券法】旅券等の不正受交付等
【日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法】偽証▽軍用物の損壊等
【麻薬及び向精神薬取締法】ジアセチルモルヒネ等の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等の製剤等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等の製剤等▽ジアセチルモルヒネ等の施用等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等の施用等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の製剤等▽麻薬の施用等▽向精神薬の輸入等▽営利目的の向精神薬の譲渡等
【有線電気通信法】有線電気通信設備の損壊等
【武器等製造法】銃砲の無許可製造▽銃砲弾の無許可製造▽猟銃等の無許可製造
【ガス事業法】ガス工作物の損壊等
【関税法】輸出してはならない貨物の輸出▽輸入してはならない貨物の輸入▽輸入してはならない貨物の保税地域への蔵置等▽偽りにより関税を免れる行為等▽無許可輸出等▽輸出してはならない貨物の運搬等
【あへん法】けしの栽培等▽営利目的のけしの栽培等▽あへんの譲渡し等
【自衛隊法】自衛隊の所有する武器等の損壊等
【出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律】高金利の契約等▽業として行う高金利の契約等▽高保証料▽保証料がある場合の高金利等▽業として行う著しい高金利の脱法行為等
【補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律】不正の手段による補助金等の受交付等
【売春防止法】対償の収受等▽業として行う場所の提供▽売春をさせる業▽資金等の提供
【高速自動車国道法】高速自動車国道の損壊等
【水道法】水道施設の損壊等
【銃砲刀剣類所持等取締法】拳銃等の発射▽拳銃等の輸入▽拳銃等の所持等▽拳銃等の譲渡し等▽営利目的の拳銃等の譲渡し等▽偽りの方法による許可▽拳銃実包の輸入▽拳銃実包の所持▽拳銃実包の譲渡し等▽猟銃の所持等▽拳銃等の輸入に係る資金等の提供
【下水道法】公共下水道の施設の損壊等
【特許法】特許権等の侵害
【実用新案法】実用新案権等の侵害
【意匠法】意匠権等の侵害
【商標法】商標権等の侵害
【道路交通法】不正な信号機の操作等
【医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律】業として行う指定薬物の製造等
【新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法】自動列車制御設備の損壊等
【電気事業法】電気工作物の損壊等
【所得税法】偽りその他不正の行為による所得税の免脱等▽偽りその他不正の行為による所得税の免脱▽所得税の不納付
【法人税法】偽りにより法人税を免れる行為等
【公海に関する条約の実施に伴う海底電線等の損壊行為の処罰に関する法律】海底電線の損壊▽海底パイプライン等の損壊
【著作権法】著作権等の侵害等
【航空機の強取等の処罰に関する法律】航空機の強取等▽航空機の運航阻害
【廃棄物の処理及び清掃に関する法律】無許可廃棄物処理業等
【火炎びんの使用等の処罰に関する法律】火炎びんの使用
【熱供給事業法】熱供給施設の損壊等
【航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律】航空危険▽航行中の航空機を墜落させる行為等▽業務中の航空機の破壊等▽業務中の航空機内への爆発物等の持込み
【人質による強要行為等の処罰に関する法律】人質による強要等▽加重人質強要
【細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約等の実施に関する法律】生物兵器等の使用▽生物剤等の発散▽生物兵器等の製造▽生物兵器等の所持等
【貸金業法】無登録営業等
【労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律】有害業務目的の労働者派遣
【流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法】流通食品への毒物の混入等
【消費税法】偽りにより消費税を免れる行為等
【日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法】特別永住者証明書の偽造等▽偽造特別永住者証明書等の所持
【国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律】薬物犯罪収益等隠匿
【絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律】国内希少野生動植物種の捕獲等
【不正競争防止法】営業秘密侵害等▽不正競争等
【化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律】化学兵器の使用▽毒性物質等の発散▽化学兵器の製造▽化学兵器の所持等▽毒性物質等の製造等
【サリン等による人身被害の防止に関する法律】サリン等の発散▽サリン等の製造等
【保険業法】株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【臓器の移植に関する法律】臓器売買等
【スポーツ振興投票の実施等に関する法律】無資格スポーツ振興投票
【種苗法】育成者権等の侵害
【資産の流動化に関する法律】社員等の権利等の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律】一種病原体等の発散▽一種病原体等の輸入▽一種病原体等の所持等▽二種病原体等の輸入
【対人地雷の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律】対人地雷の製造▽対人地雷の所持
【児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律】児童買春周旋▽児童買春勧誘▽児童ポルノ等の不特定又は多数の者に対する提供等
【民事再生法】詐欺再生▽特定の債権者に対する担保の供与等
【公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律】公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者による資金等を提供させる行為▽公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者以外の者による資金等の提供等
【電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律】不実の署名用電子証明書等を発行させる行為
【会社更生法】詐欺更生▽特定の債権者等に対する担保の供与等
【破産法】詐欺破産▽特定の債権者に対する担保の供与等
【会社法】会社財産を危うくする行為▽虚偽文書行使等▽預合い▽株式の超過発行▽株主等の権利の行使に関する贈収賄▽株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律】組織的な犯罪に係る証拠隠滅等▽偽証
【放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律】放射線の発散等▽原子核分裂等装置の製造▽原子核分裂等装置の所持等▽特定核燃料物質の輸出入▽放射性物質等の使用の告知による脅迫▽特定核燃料物質の窃取等の告知による強要
【海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律】海賊行為
【クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律】クラスター弾等の製造▽クラスター弾等の所持
【平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法】汚染廃棄物等の投棄等

*2-3:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0113272.html (北海道新聞 2017/5/7) 「共謀罪」と捜査 前のめりの危険性高い
 現行の刑事法の下では、捜査は基本的に事件が発生してから始まる。罪を犯した者を罰するのが原則だからだ。だが、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」は計画段階の犯罪を広く処罰対象とする。事件がないのに、証拠収集や取り調べが行われる可能性がある。そこに、共謀罪の本質的な危険が潜んでいる。政府は国会審議で、捜査権の乱用はないと強調するが、当局が前のめりになって人権を侵害する恐れはまったく拭えていない。政府はテロ等準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案について、テロ組織や暴力団など組織的犯罪集団が対象だと説明。摘発には資金や物品の手配、現場の下見など「準備行為」が必要だという。だが、適用団体の定義は曖昧で、犯罪集団かどうかは捜査機関が自ら判断する。その危うさは重ねて指摘してきた。加えて、準備行為が事件に関係していることを、客観的な証拠で裏付けるのも困難ではないか。たとえば、銀行の現金自動預払機(ATM)からのお金の引き出しや、花見会場の下見である。一見、日常的な行為に過ぎず、その目的を探る捜査は供述に頼らざるを得なくなるだろう。供述偏重の捜査は、冤罪(えんざい)につながりかねない。過去の数々の事件が証明済みだ。金田勝年法相は「捜査に当たっては、客観証拠や供述の裏付け証拠の収集が重視される」と国会で答弁しているが、具体的な方法は明らかにしていない。一般的に、密室性の高い謀議の立証はハードルが高い。結局、証拠収集のための通信傍受が、なし崩し的に広がるのではないか。さらに注意すべきは、犯罪の実行前に自首した場合は刑を減免する―という規定である。他人に罪をなすりつける虚偽供述や、密告がはびこる社会になりかねない。それが心配だ。金田法相は、捜査機関の令状請求を審査する裁判所が、行きすぎた捜査を防ぐ歯止めになるとの見解も示している。しかし、令状審査は捜査側の言い分で判断するため、形式的になっているのが実情だ。最高裁が違法と断じた衛星利用測位システム(GPS)捜査は、そもそも警察が令状を取っていなかった。なのに、法相がもっともらしく令状主義を持ち出すのは、いかにも都合が良すぎる。

*2-4:https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2017/170331.html (日本弁護士連合会会長 中本和洋 2017年3月31日) いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案の国会上程に対する会長声明
 政府は、本年3月21日、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案(以下「本法案」という。)を閣議決定し、国会に本法案を上程した。当連合会は、本年2月17日付けで「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書」(以下「日弁連意見書」という。)を公表した。そこでは、いわゆる共謀罪法案は、現行刑法の体系を根底から変容させるものであること、犯罪を共同して実行しようとする意思を処罰の対象とする基本的性格はこの法案においても変わらず維持されていること、テロ対策のための国内法上の手当はなされており、共謀罪法案を創設することなく国連越境組織犯罪防止条約について一部留保して締結することは可能であること、仮にテロ対策等のための立法が十分でないとすれば個別立法で対応すべきことなどを指摘した。本法案は、日弁連意見書が検討の対象とした法案に比べて、①犯罪主体について、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団と規定している点、②準備行為は計画に「基づき」行われる必要があることを明記し、対象犯罪の実行に向けた準備行為が必要とされている点、③対象となる犯罪が長期4年以上の刑を定める676の犯罪から、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定される277の犯罪にまで減じられている点が異なっている。しかしながら、①テロリズム集団は組織的犯罪集団の例示として掲げられているに過ぎず、この例示が記載されたからといって、犯罪主体がテロ組織、暴力団等に限定されることになるものではないこと、②準備行為について、計画に基づき行われるものに限定したとしても、準備行為自体は法益侵害への危険性を帯びる必要がないことに変わりなく、犯罪の成立を限定する機能を果たさないこと、③対象となる犯罪が277に減じられたとしても、組織犯罪やテロ犯罪と無縁の犯罪が依然として対象とされていることから、上記3点を勘案したとしても、日弁連意見書で指摘した問題点が解消されたとは言えない。当連合会は、監視社会化を招き、市民の人権や自由を広く侵害するおそれが強い本法案の制定に強く反対するものであり、全国の弁護士会及び弁護士会連合会とともに、市民に対して本法案の危険性を訴えかけ、本法案が廃案になるように全力で取り組む所存である。

*2-5:http://www.kanaben.or.jp/profile/gaiyou/statement/2017/post-268.html (2017年4月26日 神奈川県弁護士会会長 延命政之) いわゆる「共謀罪」法案の廃案を求める会長声明
1.  政府は、本年3月21日、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法一部改正案(以下「本法案」という。)を閣議決定し、衆議院に提出した。当会は、2016年12月8日付けで「いわゆる共謀罪新法案の国会提出に反対する会長声明」を発しているところであるが、それにもかかわらず本法案が提出されたことは極めて遺憾であり、改めて本法案に対する当会の意見を表明する。
2.  本法案では、①犯罪主体について、従前「組織的犯罪集団」とされていた規定が「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と改められており、また、②対象犯罪を676から277に減じたとされている。①の「テロリズム集団」の文言は、テロ対策を標榜しつつテロとの関係が明らかでなかった政府原案に対する批判を受けて急遽追加されたものであるが、本法案には「テロリズム集団」の定義規定はない。「組織的犯罪集団」の意義が捜査機関によって恣意的に解釈され、摘発される対象が拡大する危険性が高いという問題点は何ら解消されていない。すなわち「テロリズム集団」の文言が加わったとしても、処罰範囲の限定にならないことは明白である。また、②についても、仮に対象犯罪が277に減じられたとしても、組織的犯罪やテロ犯罪と無縁のものも依然として対象とされている。共謀罪は、「行為」を処罰する我が国の刑法の基本原則を否定するものである以上、いかに対象犯罪数を減らそうとも、軽々に認められるものではない。つまり、本法案は、過去3回も廃案になった共謀罪の問題点が何ら解消されていないのである。  
3.  当会が従前指摘していたとおり、構成要件が不明瞭であって罪刑法定主義にも反する本法案は、共謀という意思の連絡自体が犯罪として捜査対象となるために、通信傍受の対象とされた場合監視社会化を招き、憲法の保障する思想・良心の自由、表現の自由、通信の秘密及びプライバシーなどを侵害し、基本的人権の行使に対して深刻な萎縮効果をもたらすおそれがある。当会は、本法案の閣議決定および衆議院提出に対して、改めて抗議すると共に、本法案の廃案を求めるものである。  

*2-6:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20170501/KT170428ETI090010000.php (信濃毎日新聞 2017.5.1) 憲法の岐路 強まる監視 拒否する意思示すとき
 新たな米軍基地建設のため、海を埋め立てる工事が強行された沖縄・辺野古。基地反対運動の先頭に立ち続けてきた山城博治さんの姿がそこにない。昨年秋に逮捕、起訴され、勾留は5カ月にも及んだ。この3月に保釈が認められたものの、事件関係者と接触を禁じる条件がつき、現場に行けない日が続く。有刺鉄線を1本切ったことが器物損壊に、工事車両の進入を阻もうとコンクリートブロックを積んだことが威力業務妨害にあたるとされた。逮捕する必要性すら疑わしい事案だと、多くの刑事法学者が指摘している。言論・表現の自由は憲法が保障する基本的人権の核を成す。政治的な意見の表明は、民主主義による意思決定の基盤としてとりわけ尊重されなければならない。
●弾圧に道開く共謀罪
 基地建設を強権的に進める政府に抗議するのは何ら不当なことではない。反対運動の中心人物の行動を強制力をもって封じることは弾圧にほかならない。沖縄で起きていることに目を凝らすと、政府・与党が今、強引に成立させようとしている共謀罪法案の怖さが際立ってくる。市民運動へのさらに厳しい弾圧に道を開きかねないからだ。犯罪の実行に至らなくても、共謀しただけで処罰の対象にする。合意した人すべてに網がかかる。何をもって合意したと判断するかは明確でない。相づちを打つことも合意とみなされ得る。誰か1人が準備行為をすれば、他の人を含めて一網打尽にできる―。安倍晋三首相の答弁が、本質を映し出している。共謀罪が設けられる犯罪は幅広い。組織的な威力業務妨害も含まれる。原発再稼働や公共事業への抗議運動を含め、政府の方針に反対する人たちが、妨害行為を計画したとして一掃される恐れさえ、ないとは言えない。準備行為として挙げた資金・物品の手配や下見は、日常の行動と見分けにくい。事前に共謀を察知しなければ、準備と判断しようがない。当局が目をつけた組織や市民の動向を把握することが、捜査を名目に正当化される。欠かせないのが盗聴だ。通信傍受法の対象犯罪に共謀罪を加えることを政府は「検討課題」としている。憲法が保障する「通信の秘密」が有名無実化しかねない。室内に盗聴器を置く会話傍受も、いずれ認められないか心配だ。警察の権限が強まり、監視と個人情報の収集が一段と進むことは間違いない。プライバシーが侵され、公権力が内心に踏み入ってくる危険は増す。密告を促す規定もある。当局の監視にとどまらず、人と人が互いに監視し合う息苦しさを生み、社会を表情のない人の群れに変えていかないか。
●戦時治安国家の様相
 戦時下、思想・言論の弾圧によって人権が著しく損なわれた反省から、現憲法は刑罰権の乱用を防ぐ詳細な規定を置いた。刑法も刑罰権に縛りをかけることに本来の役割がある。思想でなく行為を罰することは根本原則だ。共謀罪はそれを逸脱し、処罰の枠組みを一気に押し広げる。人権を守り、自由を確保するための憲法の骨組み全体が揺らぐ。政府が持つ情報を広く覆い隠す特定秘密保護法。集団的自衛権の行使を容認し、憲法の平和主義を変質させた安全保障法制。そして共謀罪。次々と進む法整備によって、日本は再び“戦時治安国家”の様相を帯びていないか。その先に安倍政権が目指す改憲がある。自民党の改憲草案は、権利全体に〈公益及び公の秩序に反してはならない〉と枠をはめた。人権の主体である「個人」は、単に「人」と変えられている。国民の権利と自由の前に、国家が大きく立ちはだかる。公権力の横暴にさらされても、対抗するためのよりどころはそこにない。日本の現在の状況は、昭和3(1928)年に似ている―。九州大名誉教授の内田博文さん(刑事法)が著書で指摘している。31年の満州事変に始まる15年戦争の“前夜”にあたる時期だ。
●今はまだ引き返せる
 25年に制定された治安維持法は3年後のこの年の改定で「目的遂行罪」が設けられた。何であれ、「国体変革」の目的を遂行するための行為と当局が決めつければ取り締まれる。それによって処罰の対象が歯止めなく広がったことは、共謀罪と重なる。治安維持法の廃止を含め、「引き返す」選択もあり得たのに、当時の日本は放棄してしまった、と内田さんは述べる。けれど今はまだその道が残っている、と。監視が強まり、権力が内心に踏み込んでくるのを黙って認めるわけにはいかない。一人一人が自分の言葉で拒否の意思を示したい。押しとどめる力は、声を積み重ねることでしか生まれない。


<軽視された民主主義>
PS(2017年5月12日):安倍内閣が、*3-1のように、「教育勅語を憲法や教育基本法に反しない形で教材として用いることまでは否定されない」という答弁書を閣議決定したそうだが、教育勅語は、天皇主権に基づき、天皇の臣民である国民は事が起きれば天皇のために命を捧げよと言っているのであり、ここで述べられている親孝行や家族愛も家制度の下で家父長や親への服従を強いたものである。そのため、教育勅語は、日本国憲法の主権在民(民主主義)・基本的人権の尊重・男女平等などに根本的に反しており、私も、*3-2のように、歴史教育以外では、憲法や教育基本法に反せず教育勅語を学校教育で使用することは不可能だと考える。

*3-1:http://blogos.com/article/216902/ (BLOGOS 2017年4月4日) 教育勅語を教材で使用認める閣議決定は時代錯誤
 安倍内閣が、教育勅語について、「憲法や教育基本法に反しない形で教材として用いることまでは否定されない」という答弁書を閣議決定しました。これは、時代錯誤でしかないと思います。教育勅語は、終戦後の1948年、衆議院で排除の決議が、参議院で失効の決議がされているものです。参議院決議では、「われらは日本国憲法ののっとり、教育基本法を制定し、わが国とわが民族を中心とする教育の誤りを払拭し、真理と平和を希求する人間を育成する民主主義的教育理念を宣言した。教育勅語がすでに効力を失った事実を明確にし、政府は勅語の謄本をもれなく回収せよ」としています。今回の閣議決定は、これと対立するものです。森友問題をめぐって、稲田防衛大臣が「教育勅語に流れているところの核の部分は取り戻すべきだ」と答弁したことが、直接のきっかけになった、とも言われています。教育勅語は、天皇中心の国体観に基づき、事が起きれば天皇のために命を捧げるという考え方であり、憲法や教育基本法に反するから排除されたものです。親孝行や家族愛、友達を大切に等は、今も必要ということのようですが、それは教育勅語によらなくても教えられるはずです。戦後レジームからの脱却を掲げてきた総理や、現在の政権の体質に強い危惧を持ちます。

*3-2:https://sites.google.com/site/kyoikuchokugonikansuruseimei/home (2017年4月27日 教育研究者有志) 教育現場における教育勅語の使用に関する声明
【要約】
 次世代を担う子どもたちの成長に対し重要な責任を負う教育において、現憲法下での国民主権に反する教育勅語を復活させることは弊害が大きい。しかし、最近の政府は「憲法や教育基本法の趣旨に反しない」という条件をつけながらも、「教員および学校長の判断において」教育勅語の学校教育での使用を容認する姿勢を示している。これは教育勅語そのものが憲法と教育基本法に反しているとした過去の国会決議や政府発言を根拠なく変更するものである。それゆえ我々は、「教育現場において、教育勅語の全体及び一部を、その歴史的な性格に対する批判的な認識を形成する指導を伴わずに使用することを認めない」という決然たる姿勢を政府に求めるとともに、教員・学校長・所轄庁のいずれもが、民主主義・国民主権・基本的人権と相対立する教育勅語の思想や価値観と決別することの必要性を、強く訴える。
【全文】
 現代においては、国境を超えた人々や情報の交流が進むとともに、人々の生活や人生の多様化も進んでいる。このような中で次世代を担う子どもたちは、多様な他者との協同のもとで、全ての人々の基本的人権を尊重し民主主義的な社会を築く主体となることが期待されており、そのために教育は重要な責任を負っている。それゆえ、戦前の大日本帝国憲法下における「国家元首かつ統治権の総攬者」としての天皇や国体思想を前提とし、現憲法下での国民主権に反するかつての教育思想を現在に復活させることは、いかなる面から見ても弊害が大きいことは論を俟たない。しかるに今、教育勅語を教育現場で使用することに対する政府の容認的姿勢が目立ち始めている。政府は、2017年2月27日に逢坂誠二議員より提出された「教育基本法の理念と教育勅語の整合性に関する質問主意書」に対する答弁書において、学校教育法上の学校において教育のために教育勅語が使用されること、教育勅語を繰り返し暗唱させることに関して、「お尋ねのような行為が教育基本法(平成十八年法律第百二十号)や学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に違反するか否かについては、個別具体的な状況に即して判断されるべきものであり、一概にお答えすることは困難である。その上で、一般論として、仮に、同法第一条の「幼稚園」又は「小学校」(以下これらを合わせて「学校」という。)において不適切な教育が行われている場合は、まずは、当該学校の設置者である市町村又は学校法人等において、必要に応じ、当該学校に対して適切な対応をとり、都道府県においても、必要に応じ、当該学校又は当該学校の設置者である市町村若しくは学校法人等に対して適切な対応をとることになる。また、文部科学省においては、必要に応じ、当該学校の設置者である市町村又は当該都道府県に対して適切な対応をとることになる。」と答弁している。その後も国会答弁、文部科学省記者会見、質問主意書に対する答弁において、政府は「憲法や教育基本法の趣旨に反しない限り」、「教員および学校長の判断において」教育勅語の学校教育での使用を容認し、不適切な場合は「所轄庁が適切に指導する」という発言を繰り返している。むろん、個々の教師は思想信条の自由を保障されるべきであり、また私立の学校は建学の理念に即した教育を行うことが認められている。しかし、教育勅語という対象への上記のような政府の姿勢は、過去の国会決議や政府見解に照らせば、従来の方針に対して重大な変更を恣意的に加えたものと言わざるをえない。すでに1948年の時点で、衆参両院は、「根本理念が主権在君並びに神話的國体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ國際信義に対して疑点を残すもととなる」(1948年6月19日衆議院・教育勅語等排除に関する決議)との理由から、教育勅語の排除・失効を決議している。それゆえ、教育勅語そのものが憲法と教育基本法に反しているのであり、「それらに反しない」形での使用とは、「教育勅語は憲法と教育基本法に反している」ことを教える場合のみであるということになる。また歴代文部大臣は、「敗戰後の日本は、國民教育の指導理念として民主主義と平和主義とを高く揚げましたが、同時に、これと矛盾せる教育勅語その他の詔勅に対しましては、教育上の指導原理たる性格を否定してきたのであります」という1948年6月19日第2回国会衆議院本会議における森戸辰男文部大臣発言、およびある私立高校が学校行事で教育勅語を朗読していることが問題とされた際の「昭和二十一年及び二十三年、自後教育勅語を朗読しないこと、学校教育において使わないこと、また衆参両議院でもそういう趣旨のことを決議されております。(中略)教育勅語の成り立ち及び性格、そういう観点からいって、現在の憲法、教育基本法のもとでは不適切である、こういうことが方針が決まっておるわけでございます」という1983年5月11日第98国会参議院決算委員会における瀬戸山三男文部大臣発言等、これを教育理念とすることを明確に否定してきた。過去の国会決議や政府発言と比べて、今回の政府見解等は、教育勅語への容認の度合いを根拠なく強めるものであり、正当性を欠いている。さらに、以下の諸点において、前記の政府の姿勢は、子どもたちが民主主義的な社会の担い手として成長を遂げる過程に対し、教育現場で教育勅語が不適切な形で使用される事態を防ぐためにはきわめて不十分である。第一に、その成り立ちや性格全体から切り離して、憲法や教育基本法の趣旨と一見合致するような教育勅語の一部分が教育現場で使用された場合、教育勅語全体の性質や歴史的背景についての批判的理解が子どもたちに形成されないおそれがある。第二に、実際に学校教育法上の学校(幼稚園を含む)において教育勅語の朗読等が長期にわたり行われていた複数の事例が存在することからもわかるように、憲法や教育基本法の趣旨と反する思想をもつ教員や学校長が教育勅語を使用し、所轄庁の発見や指導が遅れたり不十分となったりするケースは容易に想定される。その場合、子どもたちは、そのような教育が行われなければ実現されていたはずの成長を阻害されるという点で、多大な損害を被ることになる。これらの理由により、教育現場における教育勅語の不適切な使用に対しては、より実効ある防止策が求められる。それゆえ、我々は、過去の政府見解も踏まえ、「教育現場において、教育勅語の全体及び一部を、その歴史的な性格に対する批判的な認識を形成する指導を伴わずに使用することを認めない」という決然たる姿勢を政府に求めるとともに、教員・学校長・所轄庁のいずれもが、民主主義・国民主権・基本的人権と相対立する教育勅語の思想や価値観と決別することの必要性を、強く訴えるものである。


PS(2017年5月14日追加):*4のように、警察は自らストーリーを描き、それに合わせて供述や証拠を集めるため、聞く耳を持たず強引になる。さらに、そのストーリーは、裁判で確実に罪にするため、過去の判例で犯罪とされたことのあるものに近くなるよう設定されるので、古くて陳腐化したものになる。もちろん、その原因には、一般社会と切り離された生活をしている警察官の想像力の限界や権威主義もあるだろうが、どんな理由があるにせよ、捜査による冤罪被害者が長期間拘束された後で無罪であることがわかっても、その間の人権侵害や名誉棄損等の人生における被害は、取り返しのつくものではないのだ。

*4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12936582.html (朝日新聞 2017年5月14日) 筋書き通りの自白、危惧 「共謀罪」少ない物証、供述頼みに?
 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案は、犯罪を実行前の計画段階で処罰するため、物証が少なく自白重視の捜査になる、との指摘がある。2003年の鹿児島県議選をめぐる冤罪(えんざい)事件「志布志事件」=キーワード=で無罪となった元被告たちは、取り調べで虚偽自白を迫られた自らの体験から「強引な捜査が行われるのでは」と危惧する。
●「『共謀罪』ができたら、いま以上に怖い社会になる」
 鹿児島県志布志市の酒造会社社長、中山信一さん(71)は14年前、県議に初当選した直後に逮捕、起訴された。会合を開いて有権者に現金を配った公職選挙法違反(買収)の疑い。裁判でアリバイが認められ、判決は、会合自体が存在しない「架空の事件」だったことを示唆。起訴された12人全員の無罪が確定した。「共謀罪」の国会審議で政府は「一般人は対象外」「裁判所による令状審査が機能しており、恣意(しい)的な運用はできない」などと答弁している。ただ、一般人かどうか、嫌疑の有無などの判断をするのは捜査当局だ。中山さんは「一度決めれば、あらゆる手段を使って、描いた筋書き通りに『犯人』を仕立てる危険がある」と感じる。志布志事件では、警察からは「自白」を迫られ、否認すると395日間勾留された。取調官は「認めなければ娘も息子も逮捕する」などと怒鳴った。ともに逮捕された妻が自供したので罪を認めるように、と迫られたこともある。心が折れそうになったが、否認を貫いた。後で妻は自供しておらず、取調官がうそをついていたことを知った。「警察はシナリオを書いたらあの手この手で認めさせようとする。みな自分に関係ないと思っているのだろうが、自分に降りかかってきてからでは手遅れだ」
■「警察聞く耳もたなかった」
 志布志事件では6人が、捜査側に強要されてうその自白をした。そのひとり、藤山忠(すなお)さん(69)は逮捕前に14日間、約138時間事情聴取された。逮捕後も含めると、取り調べ時間は計538時間。結局、虚偽の自白をし、容疑を認めた。「いくらやっていないと言っても、警察は聞く耳をもたなかった。『共謀罪』で政府が『恣意的な捜査はしない』『適正に運用する』と言っても信用できない」。元被告以外にも多くの住民が「任意捜査」の名のもとで厳しい取り調べを受けた。同市でホテルを経営する川畑幸夫さん(71)は「ちょっと話を聞かせて」と連れていかれた警察署で、朝から晩まで取り調べを受けた。「警察という組織はバックすることを知らない。こっちの話は全く聞かず、そのまま突っ走る。法案を成立させるなら、任意の段階から取り調べを全面的に可視化し、すべてを録画・録音するべきだ」
    ◇
 国会でも「供述頼みの捜査が加速する」との懸念が議論になっている。政府は「共謀罪」で「通信傍受(盗聴)はしない」と説明。容疑者が犯罪を「共謀」したことを示す証拠として、メールやLINEのほか、関係者の供述が重視されることになるとみられる。一部の野党は違法な取り調べを避けるため「録音・録画を義務づけるべきだ」と主張。与党と日本維新の会は、条文に「取り調べを含む捜査の適正確保への配慮」を明記し、「付則」に「可視化を検討する」などと盛りこむ法案の修正に合意した。ただ、可視化も条文に明記すべきだとの意見もある。
◆キーワード
<志布志事件> 2003年の鹿児島県議選で当選した県議が同県志布志市の住民らと買収の会合を開き計191万円の授受をしたとして、鹿児島県警が公職選挙法違反容疑で15人を逮捕。うち13人が起訴された(うち1人は公判中に死亡)。07年、鹿児島地裁で被告全員の無罪判決が確定。元被告らが起こした民事訴訟で、捜査の違法性が認定された。


<教育基本法に定められている義務教育の無償・教育の機会均等・生涯教育>
PS(2017年5月14日追加): *5-2のように、①義務教育は授業料をとらず ②高等教育は機会均等になるようにし ③生涯教育を充実する ということが、教育基本法で立派に定められているため、より充実したければ教育基本法を改正して幼稚園から高校までを義務教育(無償)とし、大学以降は授業料の引下げ、学生寮の充実、奨学金の拡充などを行うのが合理的だと考える。そして、その財源は、景気対策と称して行う無駄遣いや廃止すべき補助金の廃止で何十兆円も出る筈で、財源の問題は高等教育までの無償化を憲法に記載するか否かとは無関係だ。そのため、*5-1に書かれているとおり、防衛の重大な転機とする憲法変更のだしとして教育無償化を使うのはやめてもらいたい。

 
   幼稚園利用率推移     保育所利用率推移     幼稚園と保育所の違い   
(図の説明:幼稚園と保育所の利用率は、5歳児では95%以上、3歳児でも76%以上であり、保育所の待機児童数は多い。一方、幼稚園は教育機関として幼児教育を行うのに対し、保育所は家庭と同じ居場所の位置付けにすぎない。しかし、働いている親も、幼児教育をしてくれた方が有り難く、必要な場合は長時間預かって欲しいため、3歳以上は義務教育とし、それ以外の時間帯に預かる場合は学童保育とするのがよいと思われる。なお、義務教育なら授業料は無料だ)

      
       高校進学率推移         大学・短大・専門学校進学率推移
(図の説明:高校進学率は平成20年度でも97%程度であるため、義務教育として授業料を無料にするのがよいと思われる。しかし、大学・短大・専門学校は、合わせても平成27年度で71%程度であるため、授業料の低減、奨学金の充実、安価で質の良い学生寮の整備などの方が公正で効果的だと考える)

*5-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK5C4J02K5CUTIL018.html (朝日新聞 2017年5月14日) 教育無償化に改憲必要? 木村草太教授「法律で十分だ」
 安倍晋三首相が憲法改正の項目として打ち上げた、大学や短大、専門学校といった高等教育の無償化。だが、民主党政権は、改憲ではなく法律で高校授業料の無償化を実現した。さらに自民党は高校無償化に強く反対し、その文言は今でも党のホームページにある。そんな政権の矛盾した姿勢に、「憲法改正の方便だ」との声が相次ぐ。「高等教育についても、全ての国民に真に開かれたものとしなければならない」。安倍首相(自民党総裁)は今月3日、憲法改正を訴える団体が開いた集会に寄せたメッセージでこう述べた。「義務教育は、これを無償とする」とした憲法26条を評価したうえでの発言だった。9日の参院予算委員会では、教育無償化を憲法に盛り込むべきだとする日本維新の会の片山虎之助氏が「(憲法改正の項目に)教育を入れていただいたのは何かお考えがあるのですか」と質問。これに対し、首相は「世代を超えた貧困の連鎖を断ち切り、家庭の経済事情にかかわらず、子どもたちが夢に向かって頑張ることができる日本でありたい」と応じ、9条と並ぶ改憲項目に位置づけた。しかし、憲法学者の間では「高等教育の無償化に憲法改正は必要ない」という見方が大勢だ。高校無償化についてはすでに民主党政権で立法によって実施済み。首都大学東京の木村草太教授(憲法学)も「法律で必要十分だ。自民党が日本維新の会が出している教育無償化の法案に賛成すればいいだけだ」と指摘する。憲法に書けば、無償化が実現しない場合に違憲訴訟が起こせるなど、時の政権への強制力が増すことも考えられるが、木村教授は「本当に無償化が必要だと思うのなら、時間がかかる憲法改正ではなく、今すぐ法律でやるべきだ」と話す。
■自民、野党時は高校無償化批判
 加えて、自民党はそもそも高校無償化に後ろ向きだった経緯があり、野党からは、教育無償化が改憲のための大義名分に過ぎないといった見方が出ている。自民党は野党時代、民主党政権が提案した公立高校の授業料の無償化と私立高校生への就学支援金の導入に反対した。国会審議では「ある種のばらまき的な政策」「一律に無償化するのではなく、低所得者にもっと拡充するべきではないか」などと追及。11日現在でも、党のホームページに「高校授業料無償化の問題点!」として、「理念なき選挙目当てのバラマキ政策には反対です」と掲げる。また、自民党政権は1979年に批准した国際人権規約で、中等教育と高等教育に対する「無償教育の漸進的な導入」を掲げた部分について、「日本では私立学校の割合が高く、私学を含めた無償教育の導入は、私学制度の根本原則にも関わる」と主張し、適用されないよう「留保」。高校無償化を実現した民主党政権が2012年に撤回した。現在、日本は高等教育への公的な財政支出が少なく、先進国の中で最低レベルだ。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、13年時点で、高等教育機関に対する私費負担の割合は65%。韓国に次いで高く、OECD平均30%の2倍以上にのぼる。矢野真和・東京工業大名誉教授(教育経済学)の試算によると、大学の授業料の無償化には約2・5兆円が必要で、維新の試算によると、0歳児から大学院までの無償化に約4・3兆円の財源が必要だという。矢野名誉教授は「これまで『財源がない』として教育予算を減らしてきた中で、どう財源を確保するのかのグランドデザインを議論するほうが先だ」と話す。こうした安倍政権や自民党の姿勢に対し、民進党の野田佳彦幹事長は8日の記者会見でこう批判した。「我々が高校の授業料の無償化をやった時には『バラマキ』と言って反対してきたにもかかわらず、今度は無償化を憲法改正に位置づけようという話だ。一貫性を感じない」(杉原里美)

*5-2:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO120.html 教育基本法 (平成十八年十二月二十二日法律第百二十号)
 教育基本法(昭和二十二年法律第二十五号)の全部を改正する。我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。ここに、我々は、日本国憲法 の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。
 前文
 第一章 教育の目的及び理念(第一条―第四条)
 第二章 教育の実施に関する基本(第五条―第十五条)
 第三章 教育行政(第十六条・第十七条)
 第四章 法令の制定(第十八条)
 附則
  第一章 教育の目的及び理念
(教育の目的)
第一条  教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
(教育の目標)
第二条  教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一  幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二  個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三  正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四  生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五  伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
(生涯学習の理念)
第三条  国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。
(教育の機会均等)
第四条  すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
2  国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
3  国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。
  第二章 教育の実施に関する基本
(義務教育)
第五条  国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
2  義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
3  国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。
4  国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。
(学校教育)
第六条  法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
2  前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。
(大学)
第七条  大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
2  大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。
(私立学校)
第八条  私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。
(教員)
第九条  法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
2  前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。
(家庭教育)
第十条  父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。
2  国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。
(幼児期の教育)
第十一条  幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。
(社会教育)
第十二条  個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。
2  国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。
(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)
第十三条  学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。
(政治教育)
第十四条  良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。
2  法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
(宗教教育)
第十五条  宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。
2  国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
  第三章 教育行政
(教育行政)
第十六条  教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。
2  国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。
3  地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。
4  国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。
(教育振興基本計画)
第十七条  政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。
2  地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。
  第四章 法令の制定
第十八条  この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない。
   附 則 抄
(施行期日)
1  この法律は、公布の日から施行する。


PS(2017年5月15日追加):憲法とは関係ないが、*6のように、「教員の長時間労働は深刻で、中学校の6割が過労死ライン」というような記事が多い。具体的には、①教諭は1日11時間以上働いている ②小学校教諭の約2割と中学校教諭の約4割が労災認定基準の「過労死ライン」に触れている などだ。しかし、公認会計士・税理士として働いてきた私から見ると、i)教員は夏休み・冬休み・春休みがあるので1年間を平準化すればそれほど長時間の拘束になるわけがない ii)教科の内容が毎年大きく変わるわけではないため、過去の蓄積が利用できる iii)事務作業は、担任ではなく新人教諭や事務員に任せられることも多い iv)部活も教諭よりうまく教えられる監督も多いため、そういう人を使えばよい 等々、業務の効率化・合理化により、教育の質を高めながら拘束時間を減らす解決策があると考える。そもそも、新人教諭が見習い期間もなく、採用後、直ちに経験豊富な教諭と同様の担任になるのは無理があろう。
 また、*5-2の教育基本法第9条で「教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」「教員の使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない」とされており、これを実現させるために、第16条で「国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない」と規定されているため、教育の質を上げながら必要な改善をするのも教育関係者の仕事の一つだ。

*6:http://digital.asahi.com/articles/ASK4Z7SG9K4ZUBQU00D.html (朝日新聞 2017年5月1日) 教員の長時間労働、深刻 中学の6割「過労死ライン」
 公立小中学校の教員の勤務時間が10年前と比べて増えたことが28日、文部科学省の調査で分かった。授業の増加が主な理由とみられ、教諭の場合は1日あたり30~40分増え、11時間以上働いている。教育現場が深刻な長時間労働に支えられている実態が、改めて裏付けられた。調査は昨年10~11月、全国の小中学校400校ずつを抽出し、校長や副校長、教諭や講師らフルタイムで働く教員を対象に実施された。小学校は8951人、中学校は1万687人が答えた。その結果によると、小学校教諭は平均で平日1日あたり11時間15分(2006年度比43分増)、中学校教諭は同11時間32分(同32分増)働いていた。労災認定基準で使われる時間外労働の「過労死ライン」は、1カ月100時間または2~6カ月の月平均80時間とされている。今回の結果をあてはめると、小学校教諭の約2割と中学校教諭の約4割が100時間、小学校の約3割と中学校の約6割が80時間の基準に触れている。文科省は「脱ゆとり」にかじを切った08年の学習指導要領改訂で、小中学校の授業時間を増やした。今回の調査と06年度を比較すると、授業と準備時間の合計は小学校教諭で1日あたり35分、中学校教諭で30分増えており、授業の増加が反映された形だ。その一方、成績処理や学級経営などの時間は減っておらず、結果的に総時間が膨らんでいる。管理職の勤務時間も増えている。小中ともに平日の勤務がもっとも長いのは副校長・教頭で、小学校は12時間12分(06年度比49分増)、中学校は12時間6分(同21分増)に上った。文科省は「地域や保護者への対応、学校からの情報公開など組織として対応しなければいけない仕事が増えた」と説明する。文科省が同様の調査を実施したのは06年度以来、10年ぶり。松野博一文科相は28日の会見で「看過できない深刻な事態が裏付けられた」と述べ、中央教育審議会で教員の働き方改革の議論を本格化させたい考えを明らかにした。


PS(2017年5月18日追加):安全保障関連法で国連憲章第51条を根拠とするフルスペックの集団的自衛権を認めたのは日本国憲法違反であり、最高裁が違憲立法審査権を持っているが、憲法を変更すれば議論の余地もなく合憲となるため、*7のように、安全保障関連法の方を見直すべきだと、私も思う。つまり、具体的に自国の領土・領海を護る範囲を超える集団的自衛権は、どんなに屁理屈をつけても違憲であり、現在では憲法だけが行き過ぎを抑えるツールになっているわけなのだ。また、兵站(英語はMilitary Logistics:広義には軍隊の「総務・管理」を意味し、狭義には武器弾薬・食料・燃料等の物資補給や兵器の輸送・メンテナンス)も、少し長期戦になると勝利を決する決定的な要素になるため、「日本は後方支援しかしていないので、戦争には参加していない」という屁理屈は、世界のどこでも通用しないだろう。さらに、現在の安保法は、シビリアンコントロールの点からも問題が多くなっている。

*7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017051802000145.html (東京新聞 2017年5月18日) 日本の平和主義 見直すべきは安保法だ
 現行憲法に自衛隊を規定した項目はない。それでも東日本大震災があった翌二〇一二年の内閣府の世論調査で自衛隊に「良い印象を持っている」と答えた国民は初めて九割を超えた。次に行われた一五年の調査でも九割を超え、各地の災害救援で献身的に働く隊員の姿が自衛隊の評価を押し上げている。本来任務の国防をみると、「必要最小限の実力組織」(政府見解)とされながらも、毎年五兆円前後の防衛費が計上され、世界有数の軍事力を保有する。自衛隊は安全・安心を担う組織として広く国民の間に定着している。変化を求めているのは安倍晋三首相ではないのか。憲法解釈を一方的に変更して安全保障関連法を制定し、他国を武力で守る集団的自衛権行使を解禁したり、武力行使の一体化につながる他国軍への後方支援を拡大したり、と専守防衛の国是を踏み越えようとするからである。安倍政権は、自衛隊に安保法にもとづく初の米艦防護を命じた。北朝鮮からの攻撃を警戒する目的にもかかわらず、北朝鮮の軍事力が及びにくい太平洋側に限定したことで安保法の既成事実化が狙いだったとわかる。米艦を守るために他国軍と交戦すれば、外形的には集団的自衛権行使と変わりはない。安保法で改定された自衛隊法は、武器使用を決断するのは自衛官と規定する。集団的自衛権行使を命じることができるのは大統領と国防長官の二人だけとさだめている米国と比べ、あまりにも軽く、政治家が軍事を統制するシビリアンコントロールの観点からも問題が多い。米艦を防護しても国会報告は必要とされておらず、速やかに公表するのは「特異な事態が発生した場合」だけである。今回、報道機関の取材で防護が明らかになった後も政府は非公表の姿勢を貫いた。国会が関与できず、情報公開もない。政府が恣意(しい)的な判断をしても歯止めは利かないことになる。安保法により、自衛隊は軍隊の活動に踏み込みつつある。憲法九条に自衛隊の存在を明記するべきだと発言した安倍首相の真意は名実ともに軍隊として活用することにあるのではないのか。現在の自衛隊が国民から高く評価されている事実を軽視するべきではない。必要なのは憲法を変えることではなく、安保法を見直し、自衛隊を民主的に統制していくことである。


PS(2017年5月20日追加):*8-1のように、日本国憲法は第21条で「集会・結社・言論・出版・その他一切の表現の自由を保障する」「検閲をしてはならない」「通信の秘密を侵してはならない」と規定しているが、その下位の法律で、*8-2のように、盗聴法(通信傍受法)が拡大されて立会人なしで盗聴が可能となり、警察が何を盗聴しているかを第三者が監視することはできなくなった(ちなみに、私はこれを織り込み済みなので電話やインターネットで重要なKey部分の話をしないが、不便である)。そして、盗聴されたことを立証するのは困難で、共謀罪の創設により犯罪と関係のない人が盗聴されるケースは確実に増えるだろう。

*8-1:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html (日本国憲法 抜粋)
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
 ○2  検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

*8-2:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/184173 (日刊ゲンダイ 2016年6月24日) 盗聴法改悪で国民のプライバシーがさらされる
 先月、極めて問題の大きい重要法案が可決した。刑事訴訟法や組織犯罪処罰法などいくつかの法律を一本化して改正した「刑事訴訟法等改正法案」がそれだが、この中に含まれていた通信傍受法、いわゆる「盗聴法」の拡大により、我々のプライバシーがのぞかれ、警察の暴走を招く恐れがあるのだ。足立昌勝著「改悪『盗聴法』その危険な仕組み」(社会評論社 1700円+税)では、今回の法案によって何が変わり、今後どんな事態がやってくるのかを詳しく解説している。従来までも、犯罪捜査のため盗聴することは合法的に許されていた。しかし、1999年に成立した盗聴法には厳しい制約があり、対象となるのは薬物・銃器・集団密航・組織的殺人の4罪種。つまり、主に暴力団が行う犯罪や組織犯罪に限定されていた。盗聴に至る手続きも複雑で、全国どこの警察も通信会社本社のある東京に出向き、通信会社社員の立ち会いでの盗聴が条件とされていた。使い勝手が悪いことで、警察による盗聴の悪用を防いでいたと言える。ところが今回の盗聴法では一般刑法犯罪も対象となり、殺人や放火はもとより、傷害、窃盗、ポルノ処罰法違反としての提供罪および製造罪など、大きく拡大された。そして、指定した日数分の通話やデータを通信会社から送ってもらうことで、立会人なしでの盗聴が可能となった。警察が何を盗聴しているか、第三者による監視ができなくなったのだ。さらに、“将来の犯罪”も盗聴対象となった。例としては、薬物や銃の密売からの売りさばきなどが挙げられているが、対象が一般刑法犯罪になった今、警察が怪しいと感じた場合は誰もが盗聴対象となり、今後は予防的に捜査されたり、逮捕されるような事態も招きかねない。犯罪撲滅のみに利用されるのならいい。しかし、2013年に成立した特定秘密保護法もある。警察のやりたい放題を招く恐れはないのか、目を光らせたい。


PS(2017年5月24日):このような中、下の写真のように、多くの国民が危険性を感じて反対している「共謀罪」法案が、対テロを名目として形ばかりの審議を30時間で終え、自民党・公明党・維新の党の全議員の賛成で衆院を通過した。*9-1、*9-2のように、この法案が参議院も通過すれば、日本が監視社会・密告社会になることは明らかであるにも拘らず、「(決めてはいけない法律も)景気回復名目で集めた多数派与党の力で強引に決める政治がよい」とするのは、民主主義を理解していないおかしな話だ。

   

*9-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201705/CK2017052402000121.html (東京新聞 2017年5月24日) 「対テロ」名目で心も捜査 「共謀罪」の危険な本質 参院で熟議を
 政府与党の都合で三十時間で打ち切られた衆院の審議では、政府が「心の中」の処罰や一般人の処罰につながるといった共謀罪が抱える本質的な危険を隠そうとするあまり、答弁をはぐらかす姿勢が目立った。例えば、最大の論点だった「一般人」が捜査や監視の対象になるか、という問題。「組織的犯罪集団」の構成員かどうかを、捜査機関が判断するには捜査してみなければ分からない。しかし金田勝年法相は、一般人とは「何らかの団体に属しない方や、通常の団体に属して通常の社会生活を送っている方」という意味なので「捜査対象になることはあり得ない」と言い続けている。これでは「犯罪に関係ない人は捜査されない」という当たり前のことを言っているに等しい。「心の中で考えたことが処罰や捜査につながり、言論の萎縮を招く」といった野党の指摘に対し、政府は「準備行為があって初めて処罰の対象とするので内心を処罰するものではない」と答え続けていた。金田氏は、採決が強行された十九日の衆院法務委員会で、「心の中」にある目的が捜査対象になることや、警察が目を付けた人物の知人が捜査対象になることを認めた。政府は「テロ対策」を強調しているが、その必要性を証明しきれていない。そもそも共謀罪は、意思の合致があったときに成立するもので、心の中に踏み込まなければ証明できない。参院では、政府はそうした危険性を認めた上で熟議をすべきだ。

*9-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-501374.html (琉球新報社説 2017年5月24日) 共謀罪衆院可決 その先にあるのは独裁 立憲主義の破壊許さず
 衆院は、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」法案を本会議で強行採決し、自民、公明両党と日本維新の会の賛成多数で可決した。法案は内心の自由を侵害し、憲法が保障する思想の自由に抵触する。捜査機関が団体や市民生活を常に監視し、取り締まりの対象とするため表現の自由、集会・結社の自由に重大な影響を与える。治安維持法下の戦前戦中のような監視社会を招いてはならない。十分な論議もなく憲法に反する法案を強行採決したことに強く抗議する。立憲主義・民主主義の破壊は許されない。廃案しかない。
●監視社会招く
 政府は法律の適用対象を「組織的犯罪集団」とし、具体的な「合意」と、現場の下見や資金調達などの「準備行為」を処罰する。安倍晋三首相は当初、一般市民は対象外として、過去に3度廃案になった共謀罪法案とは別物と強調した。しかし後に「犯罪集団に一変した段階で一般人であるわけがない」と答弁を変えている。対象は際限なく広がり、労働組合など正当な目的の団体であっても、捜査機関が「組織的犯罪集団」として認定すれば処罰対象になる可能性がある。治安維持法の下で、言論や思想が弾圧された反省を踏まえ、戦後日本の刑法は、犯罪が実行されて結果が出た段階の「既遂」を罰する原則がある。しかし共謀罪は、実行行為がなくても2人以上が話し合って合意することが罪になる。基準が曖昧である。「内心」という人の心の中を推し量って共謀の意図があるかどうかを捜査機関の判断に任せてしまえば、恣意(しい)的な運用に歯止めがかからなくなる。国連も法案を懸念している。プライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがあるとして、国連特別報告者が安倍首相宛てに書簡を送った。これに対し日本政府が「不適切」と抗議すると「深刻な欠陥がある法案をこれだけ拙速に押し通すことは絶対に正当化できない」と批判している。安倍政権はこの批判を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。共謀罪がない今ですら、辺野古新基地と高江ヘリパッド建設に反対する沖縄平和運動センターの山城博治議長らを、微罪で逮捕し長期勾留した。共謀罪法案が成立したら、より広範かつ日常的に室内盗聴や潜入捜査などによって市民が監視され、捜査当局の都合で逮捕・勾留が可能になる。
治安維持法も文言が曖昧で漠然としていたので拡大解釈された。暴力や不法行為の実態がなくても処罰の対象になり、監視社会を招いたことを忘れてはならない。
●印象操作にすぎない
 政府は共謀罪法案の必要性をテロ対策強化と説明し、罪名を「テロ等準備罪」に変更した。「テロ対策」を掲げて世論の賛同を得ようとしたが、同法なくしては批准できないとする国際組織犯罪防止条約は、テロ対策を目的としていない。麻薬など国境を越えた犯罪を取り締まる条約だ。テロ対策に必要だというのは印象操作にすぎない。日弁連が主張するように、関連する多少の法整備をするだけで条約批准は可能である。日本では現在、既遂、未遂ではなくても罪に問えるものとして陰謀罪8、共謀罪15、予備罪40、準備罪9が既に存在している。過去を振り返ると、治安維持法が成立した最大の要因は、憲政会と政友会が連立政権を組み、衆院の多数を確保していたからである。「一般人には関係ない」と説明し数の力を使って成立させた。共謀罪法案は、内容に問題があるからこそ過去に3度廃案になった。4度目の今回、実質審議はわずか30時間である。しかも委員会審議で法案の提案者である法務大臣が内容を理解していなかった。数の力によって表現の自由だけでなく思想の自由まで制限する悪法を成立させてはならない。その先にあるのは独裁国家だ。

| 日本国憲法::2016.6~ | 02:21 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.7.8 日本国憲法を変えたい勢力は、①何のために ②何を改正しようとしているのか ③改正した場合の効果 について正面からの説明が必要である - 日本国憲法、自民党改正草案の「前文」「天皇」「憲法改正要件」「緊急事態条項」「道州制」について (2016年7月11、13日に追加あり)
       
2016.7.8西日本新聞 憲法改正必要論の理由 憲法改正要件国際比較 日本国憲法に署名した人 

    
  憲法改正   自民党憲法 自民党憲法改正案    日本国憲法は     憲法改正世論調査
   手続き  改正案のポイント 緊急事態条項  今でも最先端であること

(1)「自民党憲法改正草案」は、改正ではなく改悪である
1)敗戦後の占領下で作られたから悪いわけではないこと
 今回の参議院議員選挙では、上の一番左の表のように「日本のこころ(自民党の中でも右だった人の分派)」が、「占領下で制定された日本国憲法をまるごと変えて自主憲法を制定したい」という憲法改正理由を書いており、これが憲法改正を強く主張する勢力の本音だ。この発想は自民党も同じであるため、上の左から2番目の表のように憲法改正理由の第一に、「敗戦後の占領下で作られ、日本国民の自由な意思を反映していないので、国民の手によって憲法を制定する」というのがあがっているわけだ。

 そして、自民党が、平成24年4月27日に総務会を通して党として決定した憲法改正草案(https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/policy/130250_1.pdf 参照)は、結論から言ってひどい改悪だと考える。分量が多いため、今日は国の形を現す最も重要な部分である「前文」と「天皇の地位」を中心に記載するが、他の部分にも戦前への郷愁が散見される。

2)前文について
 日本国憲法の前文は、*1-1のように、「①日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、・・主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」「②国政は、国民の厳粛な信託によるもので、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」「③日本国民は、恒久の平和を念願し、・・平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」「④われらは平和を維持し、・・国際社会において名誉ある地位を占めたいと思ふ」「⑤われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」としており、現在でも通用する立派なものである。

 この文章中にある「公正と信義に信頼して」という文章はテニヲハの使い方が誤りだと言う人もいるが、私は、文語調で訳した法律用語であるため、違和感を感じない。

 そして、ここで重要なのは、「国政は国民の信託によるもので、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その結果生じる福利は国民が享受する」というように、国民を主人公とする徹底した国民主権が述べられていることである。つまり、国民が主であり、国という組織を主として国民が国という組織のために尽くすのではない民主主義の発想が明確に記されており、日本国憲法は、第二次世界大戦とその敗戦で多くのものを失ったが、唯一得ることができた資産だと私は考える。*1-2の日本国憲法原文(The Constitution Of Japan)が、「We, the Japanese people, 」や「We」を主語としているのを見れば、一人一人の国民が主体であることがさらに明確になる。

 一方、自民党憲法改正草案は、*1-3のように、「①日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家である」「②日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り」「③基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」「④自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる」「⑤日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する」としている。

 しかし、①は国を主体とする国家の成り立ちに関する自慢話が多すぎ、これについては科学的・文化的に正確な歴史書で述べるべきである。また、②で国民は国と郷土(いずれも組織)を守るための存在になり下がり、③は基本的人権を尊重するとさらっと書いてはいるものの、和を尊び家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成することこそ大切だとして個人の人権に制限を加え、④は国民の福利より国を成長させることが重要だというメッセージを発している。そして、⑤では、国民を国家存続のための道具と位置付けている。つまり、自民党憲法改正草案は、国が主であり、国の存続のためとして国民の福利をないがしろにし、「国民の国民による国民のための政治」という資産がなくなっているのである。

 つまり、占領下だったからこそ国民同士が争うことなく大きな改革をして国民主権にできた日本国憲法を、100%とまでは言わないにしても、国を主にしてかなり戦前回帰させているため、自民党憲法改正草案は改悪なのである。

3)天皇について
 日本国憲法における天皇の地位は、*2-1のように「日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴」とされているが、自民党憲法改正草案における天皇の地位は、*2-2のように「日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴」とされ、「元首」という言葉が加わっている。

 国家元首(英訳:head of state)とは、対外的に代表権を持つ存在であり、大日本帝国憲法では第4条で天皇を元首と規定していたが、日本国憲法には天皇を元首とする規定はなく、国事行為に関する規定があるのみだ。国民主権の国で世襲による天皇を対外的代表権を持つ存在である“元首”と位置づけるのは矛盾であり、これも自民党憲法改正草案の戦前回帰であるため、とても賛成できない。

(2)改憲論議は、現在の憲法をしっかり護り、その考え方が国民に浸透してからにすべきである
 東京新聞によると、*3のように、安倍首相は「ニコニコ動画」の党首討論会で、「参院選の結果を受け、どの条文を変えていくか、条文の中身をどのように変えていくかについて議論を進めたい。次の国会から、自民党総裁として憲法審査会をぜひ動かしたい」と述べられたそうだ。憲法改正は自民党にとっては結党以来の党是であり、自民党憲法改正草案は安倍首相が作ったものではなく、自民党憲法改正推進本部(本部長・保利耕輔衆院議員《当時》)が作ったものである。

 私は「いくらなんでも天皇が元首とは・・」と思ったので、地元の離島関係の会合で保利浩輔氏にお会いした時に、「天皇が元首というあの憲法改正草案は、いくらなんでも駄目ですよ」と言ったところ、保利耕輔衆院議員(当時)は「今までと同じことをするんだし、(自民党の)総務会も通ったもん」と言っておられたので、この憲法改正草案には憲法改正に執着する自民党議員の考え方が多く含まれていると考える。

 従って、野党の「安部政権の下での憲法改正に反対する」という批判は、感情論に終始して問題を矮小化している。私は、日本人が日本国憲法を本当に遵守し、そのよさを理解した上で、それよりもよい方向に改正できる時がくるまで、憲法改正は止めるべきだと考える。

<憲法前文の比較>
*1-1:http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM (日本国憲法)
前文 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものてあつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

*1-2:http://japan.kantei.go.jp/constitution_and_government/frame_01.html (THE CONSTITUTION OF JAPAN)
 We, the Japanese people, acting through our duly elected representatives in the National Diet, determined that we shall secure for ourselves and our posterity the fruits of peaceful cooperation with all nations and the blessings of liberty throughout this land, and resolved that never again shall we be visited with the horrors of war through the action of government, do proclaim that sovereign power resides with the people and do firmly establish this Constitution. Government is a sacred trust of the people, the authority for which is derived from the people, the powers of which are exercised by the representatives of the people, and the benefits of which are enjoyed by the people. This is a universal principle of mankind upon which this Constitution is founded. We reject and revoke all constitutions, laws, ordinances, and rescripts in conflict herewith.
 We, the Japanese people, desire peace for all time and are deeply conscious of the high ideals controlling human relationship, and we have determined to preserve our security and existence, trusting in the justice and faith of the peace-loving peoples of the world. We desire to occupy an honored place in an international society striving for the preservation of peace, and the banishment of tyranny and slavery, oppression and intolerance for all time from the earth. We recognize that all peoples of the world have the right to live in peace, free from fear and want.
 We believe that no nation is responsible to itself alone, but that laws of political morality are universal; and that obedience to such laws is incumbent upon all nations who would sustain their own sovereignty and justify their sovereign relationship with other nations.
 We, the Japanese people, pledge our national honor to accomplish these high ideals and purposes with all our resources.

*1-3:http://www.saga-s.co.jp/senkyo/sanin/30402/320758 (佐賀新聞 2016年6月9日) 自民党憲法改正草案全文(抜粋)
自民党が2012年に発表した憲法改正草案は11章、102条から成る。前文など、日本国憲法を大幅に手直しした部分が少なくない。日本国憲法とともに、その全文を紹介する。
■自民党憲法改正草案全文
 (前文)
 日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。

<天皇についての比較>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/senkyo/sanin/30402/320757 (佐賀新聞 2016年6月9日) 日本国憲法(抜粋)
  第一章 天皇
第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する
      日本国民の総意に基く。
第二条 皇位は世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
第三条 天皇の国事に関するすべての行為には内閣の助言と承認を必要とし、内閣がその責任を負ふ。
第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
      天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
第五条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を
      行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。
第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
      天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
 一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
 二 国会を召集すること。
 三 衆議院を解散すること。
 四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
 五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状
   を認証すること。
 六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
 七 栄典を授与すること。
 八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
 九 外国の大使及び公使を接受すること。
 十 儀式を行ふこと。
第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に
      基かなければならない。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/senkyo/sanin/30402/320758 (佐賀新聞 2016年6月9日) 自民党憲法改正草案(天皇) 
第一章 天皇
 (天皇)
第一条 天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴であって、その地位は、
      主権の存する日本国民の総意に基づく。
 (皇位の継承)
第二条 皇位は世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
 (国旗及び国歌)
第三条 国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。
 2 日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない。
 (元号)
第四条 元号は、法律の定めるところにより、皇位の継承があったときに制定する。
 (天皇の権能)
第五条 天皇は、この憲法に定める国事に関する行為を行い、国政に関する権能を有しない。
 (天皇の国事行為等)
第六条 天皇は、国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、内閣の指名に基づいて
     最高裁判所の長である裁判官を任命する。
 2 天皇は、国民のために、次に掲げる国事に関する行為を行う。
 一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
 二 国会を召集すること。
 三 衆議院を解散すること。
 四 衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行を公示すること。
 五 国務大臣及び法律の定めるその他の国の公務員の任免を認証すること。
 六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
 七 栄典を授与すること。
 八 全権委任状並びに大使及び公使の信任状並びに批准書及び法律の定めるその他の外交文書を
    認証すること。
 九 外国の大使及び公使を接受すること。
 十 儀式を行うこと。
 3 天皇は、法律の定めるところにより、前二項の行為を委任することができる。
 4 天皇の国事に関する全ての行為には、内閣の進言を必要とし、内閣がその責任を負う。ただし、
    衆議院の解散については、内閣総理大臣の進言による。
 5 第一項及び第二項に掲げるもののほか、天皇は、国又は地方自治体その他の公共団体が
    主催する式典への出席その他の公的な行為を行う。
 (摂政)
第七条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名で、その国事に
    関する行為を行う。
 2 第五条及び前条第四項の規定は、摂政について準用する。
 (皇室への財産の譲渡等の制限)
第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が財産を譲り受け、若しくは賜与するには、法律で
     定める場合を除き、国会の承認を経なければならない。

<憲法改正手続き>
*3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201606/CK2016062002000120.html (東京新聞2016年6月20日)安倍首相「次の国会から改憲議論」 参院選後 具体的に条文審査
 安倍晋三首相は十九日、インターネット動画中継サイト「ニコニコ動画」の党首討論会で、改憲について「参院選の結果を受け、どの条文を変えていくか、条文の中身をどのように変えていくかについて、議論を進めていきたい。次の国会から憲法審査会を動かしていきたい。自民党の総裁としてぜひ動かしたい」と秋の臨時国会から、衆参両院に設置されている憲法審査会で、具体的な改憲項目の議論を与野党で進めたい考えを示した。首相は在任中の改憲に意欲を示している。首相の自民党総裁としての任期が切れる二〇一八年九月までに改憲の国民投票を終えるためには、来年秋の臨時国会で原案を審議し、発議する必要がある。そのためには、今年後半から国会で議論を始め、来年前半の通常国会までに原案をまとめる必要がある。参院選で与党が改憲の争点化を避けていると野党側が批判したのに対し、首相は「(改憲は)自民党結党の精神。選挙で争点とすることは必ずしも必要はない」と反論。「私たちは党草案を示しており、何も隠していない」と強調した。一方、公明党の山口那津男代表は「改憲について、国民に問いかけるほど議論が成熟していない。議論を深めて国民の理解を伴うようにしなければならない」と慎重な議論を求めた。民進党の岡田克也代表は「立憲主義を理解している首相でないと、非常に危ない。(首相は)最後は力で押し切る。改憲はよほど慎重でなければならない」と首相をけん制した。改憲には原案を衆院百人以上、参院五十人以上の賛同で提案。その後、両院の憲法審査会で審査した後、衆参の本会議でともに三分の二以上の賛成で可決し、国民に発議しなければならない。発議後、六十~百八十日以内に国民投票が行われ、承認には過半数の賛成が必要となる。討論会には、首相を含む与野党九党の党首が参加した。


<憲法の改正要件について>
PS(2016年7月11日追加):参院選の結果、*4-1のように、参議院でも改憲勢力が3分の2を超えた。「改憲項目が異なるので3分の2を超えても問題ない」とする勢力もあるが、両院で3分の2を超えると、*4-2の憲法改正要件を緩和するという姑息な改正を行うことも可能となり、上の図のようにこれを改正項目の一つとする人もいるため要注意だ。なお、我が国の憲法改正回数は0だが、それは国民が憲法改正の必要性を感じなかったからで我が国の憲法改正要件が世界の中で特に厳しいからではない。

*4-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/332433
(佐賀新聞 2016年7月11日) 議席確定、改憲勢力で3分の2超、野党共闘及ばず
 第24回参院選は11日午前、全121議席が確定した。安倍晋三首相(自民党総裁)が目指す憲法改正に賛同する改憲勢力は、非改選議席と合わせ165議席となり、国会発議に必要な全議席の3分の2(162議席)を超えた。自民党は55議席、公明党は14議席へ伸ばし、与党で改選過半数(61議席)を上回り、勝利した。民進党は32議席。民進、共産、社民、生活の野党4党は32の改選1人区で候補を一本化し、3分の2阻止へ共闘したが及ばなかった。おおさか維新の会は7議席、共産党は6議席で伸長した。自民党は無所属1人を追加公認したが27年ぶりとなる単独過半数に届かなかった。

*4-2:http://www.saga-s.co.jp/senkyo/sanin/30402/320757
(佐賀新聞 2016年6月9日) 日本国憲法全文(抜粋)
 第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、
          国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は
          国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
          憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を
          成すものとして、直ちにこれを公布する。


<緊急事態条項と道州制について>
PS(2016年7月13日追加):上の下の段の左から3番目の表、*5-1、*5-2のように、自民党憲法改正草案は「緊急事態条項」を新設し、①武力攻撃 ②内乱 ③大災害 の時に、内閣総理大臣は国会の事後承認で緊急事態を宣言でき、緊急事態が宣言された時は、基本的人権を最大限尊重はするものの何人も国や公的機関の指示に従わなければならないとのことである。しかし、最も賛同を得やすい③でさえ、内閣総理大臣が緊急事態を宣言するより地方自治体が最前線で救援を行い、国は最前線から必要と言われるものを援助した方が効果的だという意見が多い。まして、①の武力攻撃はどういう理由で起こり、その時に何をすることが想定されているのか、②はどういう状態を内乱(犯罪とは異なる)と定義して国が鎮圧するのか について説明する必要がある。全体から見ると、「緊急事態条項」は、民主主義・基本的人権の尊重・平和主義という日本国憲法の三大原則から離れており、戦前の戒厳令や国家総動員法を思わせるため、決して入れるべきではないと私は考える。
 さらに、*5-2で触れられている道州制については、地方自治法を改正して県が合併すればよいため、憲法改正はいらない。しかし、北海道、九州、四国については道州の区切りに異論が出にくいものの、他地域については堺目をどこにするかについても異論が出やすい。そのため、まとまりになれる県が先に合併していくのがよいだろうが、県が合併したくない場合は道州制は成立しない。

*5-1:http://qbiz.jp/article/90492/1/
(西日本新聞 2016年7月11日) 改憲 まず9条以外 緊急事態条項 参院改革 環境権
●抵抗少ない項目から議論
 憲法改正論議の対象項目として、大規模自然災害時の国会議員任期延長を含む「緊急事態条項」新設や、参院選の合区解消に向けた参院改革などが浮上している。自民党は「本丸」の9条改正について、憲法の基本原則である平和主義に関わるため野党や国民の抵抗感が強いと判断。最初の改憲対象にはせず、比較的理解を得やすいと思われる項目で改憲の「実績」をつくりたい考えだ。自民党は昨年5月の衆院憲法審査会で緊急事態条項以外に、良好な自然環境を享受する権利の「環境権」、野放図な国の借金拡大を防いで財政の健全性を確保する「財政規律条項」の新設を提示した。首相が今秋の臨時国会から開始したい意向を示した衆参両院憲法審査会の議論でも、引き続き候補になるとみられる。自民党改憲草案の緊急事態条項は、国会議員任期延長以外に(1)首相による緊急事態宣言発出(2)内閣への権限集中(3)国民に国の指示に従うよう義務付け−などを規定。自然災害以外に他国からの武力攻撃、内乱時も列挙した。野党や弁護士会からは、過度な人権制限や政府による乱用の危険性が指摘されている。合区解消は、「1票の格差」に関係なく、改選ごとに各都道府県から参院議員を選出する趣旨の条文を盛り込むべきだとの主張だ。今回の参院選から鳥取・島根、徳島・高知の二つの合区が導入され、自民党参院議員や地方自治体が「地方切り捨てにつながる」と強く批判している。おおさか維新の会が改憲項目として参院選で公約した道州制導入を含む「統治機構改革」なども、議論の対象になる可能性がある。
 ◇  ◇
●壁高き改憲 世界では実現、ドイツ60回 米国27回 フランス24回
 世界の多くの国は日本と同様、憲法改正に一般の法律よりも厳格な手続きを定めている。高いハードルを乗り越えて改正にこぎ着けた回数や具体例は、国によってさまざまだ。ドイツでは、旧西ドイツで1949年に制定された憲法を「基本法」と呼ぶ。議会事務局によると、改正は旧西ドイツ時代に36回、東西統一後に24回の計60回に上る。「文化財の国外流出防止」を国の義務とするといった、日本では一般の法律で規定するような内容も基本法に盛り込まれていることが、改正が多い理由の一つ。ナチス時代の反省から、人権尊重などを定めた条文は改正できない。世界最初の近代的成文憲法である米合衆国憲法は、1787年に制定された。これまで27回修正され、奴隷解放や婦人参政権のほか、銃所持の権利を保障するとされる「武装の権利」などを明文化した。修正には連邦議会で上下両院の出席議員の3分の2以上が賛成した上で、全米50州の州議会のうち、4分の3以上の賛成が必要。超党派の幅広い支持が最低条件となるため、容易ではない。1958年に制定されたフランス現行憲法の改正は24回。これによって大統領直接選挙制などが実現した。

*5-2:http://www.saga-s.co.jp/senkyo/sanin/30402/320758 (佐賀新聞 2016年6月9日) 自民党憲法改正草案全文 (第九章 緊急事態 《抜粋》)
(緊急事態の宣言)
第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、
        地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要が
        あると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発す
        ることができる。
      2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なけれ
        ばならない。
      3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の
        宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要が
        ないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに
        解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、
        百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
      4 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。こ
        の場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。
(緊急事態の宣言の効果)
第九十九条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の
        効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その
        他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
      2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認
        を得なければならない。
      3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言
        に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発
        せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、
        第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、
        最大限に尊重されなければならない。
      4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が
        効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙
        期日の特例を設けることができる。

| 日本国憲法::2016.6~ | 10:34 AM | comments (x) | trackback (x) |
2016.7.5 日本国憲法は、同性婚を禁止しておらず環境権も含んでいるため加憲の必要はなく、地域主権・議員の選出方法・裁判所の違憲立法審査権行使にも憲法改正は不要であること (2016年7月5、9、10日《図表を含む》に追加あり)

       2015.4.28朝日新聞       2015.5.3朝日新聞     2014.12衆院選時の  
         有権者の意見                        憲法改正賛否 集団的自衛権賛否

 
 2016.6.26佐賀新聞   2016.6.28            2016.7.1日経新聞
                  西日本新聞

 *1-1のように、「憲法をめぐる議論は9条に集中しがちだが、『同性婚』や『環境権』などの新しい権利も憲法と深く関わる」として、同性婚や環境権などの加憲を餌に、一気に憲法改正を進めようとする勢力もあるため、同性婚を認めたり、環境を守ったりするのに加憲は不要であることについて述べる。

 なお、下の段の一番左のグラフのように、今回の参院選で憲法改正を重視する人の割合は低いが、憲法は、日本が今後どういう方向に進んで行くかの羅針盤であるため、最も重要なテーマだ。

(1)環境権や同性婚の加憲は不要である
1)同性婚について
 *1-1に「憲法24条は同性婚の禁止を意味するかが議論になっている」と書かれている。しかし、*2のように、日本国憲法24条は、「1項:婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により維持されなければならない」「2項:配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない」としている。

 この憲法24条の立法趣旨は、それまで大日本帝国憲法(明治憲法)の家制度の下で、本人同士の意志とは関係なく決められることが多かった結婚相手を、個人の尊厳と両性の本質的平等に基づいて民法を定めて具体化せよということであり、まさにライフスタイルに関する「自己決定権」を認めたものである。

 では、「両性」とは男女でなければならないかと言えば、日本国憲法成立当初は男女しか意図していなかったかもしれないが、「両性」は異性でなければならないとは書かれていないため、夫婦役をする2人が同等の権利を有することを基本とし、個人の尊厳を維持しながら相互協力により婚姻関係を維持すればよく、同性婚を禁止しているのではないと解せられる。

 しかし、現在の日本は過度のジェンダー(生物学的ではなく社会的に要請される「男らしさ」「女らしさ」)を要求するため、それと正面から闘えない人は、性同一性障害でなくても性同一性障害のような気になってしまうのではないかと私は危惧している。しかし、ともかく同性婚のために憲法を改正する必要はなく、例外として民法に同性婚を書き加えればよいだろう。

2)環境権について
 私は、結論から言って、*1-1のように、「環境権」を憲法に加える必要はないと考える。何故なら、憲法25条は、「1項:すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」「2項:国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と定めており、国民が健康で文化的な生活を営むためには、良好な環境の維持が不可欠だからだ。

 また、*3の環境基本法は、①国民が健康で文化的な生活を確保するためには環境保全が不可欠であると明確に述べ ②人の活動により環境に負荷をかけること(公害を出すこと)を禁止し ③事業者は事業活動を行うに当たって、煤煙、汚水、廃棄物等の処理を適正に行い、公害を防止して自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有するとし ④環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築が必要 としているので、Perfect(完全)に近い。

 そのため、現在、環境に悪いことがまかり通っているのは、法律が不備なのではなく、環境を守るという意識が薄いからにすぎない。従って、これは、憲法を改正したから変わるというものではなく、国民が自らの健康で文化的な生活を護るために環境を守るという意識を高めなければならないのだ。

(2)原発事故と健康被害、及び、それを隠すためにさらに環境破壊を行う環境意識の低さ
 *1-2のように、日本と米国の専門家は、福島原発事故で漏洩した放射能汚染物質は太平洋をまたぎ、北米西海岸に影響を及ぼしていると発表したそうだ。そして、東京海洋大学副学長、日本海洋学会副会長の神田穣太氏は、「セシウム137が福島原発事故の放射能漏れの最も中心的な物質で、1−2万テラベクレルが海洋に流出した」とし、この数値を5万テラベクレルと見積もる研究者もいるそうだ。そして、1万5000テラベクレルは、広島原爆168発分とのことである。

 そして、「福島原発事故の海洋への影響は、空前絶後」で、この放射能汚染に関して日本はすでに多くの調査結果を出しているそうだが、メディアは、一般の人が見る時間には、この事実を報道していない。

 また、*1-3のように、東京電力福島第一原発事故事故後、子どもたちの甲状腺検査を進めてきた福島県は有識者による検討委員会などで、罹患統計から推定される有病数に比べ「数十倍のオーダーで多い甲状腺がんが発見されている」と認めながら、科学的とは言えない根拠で「放射線の影響とは考えにくい」と主張しており、憲法にも環境基本法にも違反している。

 その上、*1-4のように、環境省の有識者検討会が、放射性物質濃度が基準以下となった除染土(放射性セシウム濃度が1キログラム当たり5千~8千ベクレル以下)を全国の公共工事で使うとする再利用方針案を大筋で了承したそうで呆れた。何故なら、コンクリートで枠を作って漏れ出さないようにし、もともと放射性物質濃度の高い場所の防潮堤に使うならまだしも、汚染土を全国の道路などの公共工事に使って拡散すれば、工事中の作業員や周辺住民の環境からの年間被曝線量が1ミリシーベルト以下であったとしても、地下水に溶けて長期間日本全国を汚染するからだ。

 その効果は、「日本全国で心臓病や癌が増えているので、心臓病や癌が増えた理由は原発事故のせいではなく高齢化のせいだ」と言うことができるようになるという恐ろしいものだが、大手メディアは、お天気、災害、テロ事件、舛添氏の政治資金問題の表面的な追求ばかりを行い、このような事実の報道はしていない。

<現在の状況>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160703&ng=DGKKASDG02H7X_S6A700C1CR8000 (日経新聞 2016.7.3) 「9条以外も議論して」 同性婚や環境権 憲法めぐり当事者ら
 参院選は与党などが改憲を発議できる議席数を確保するかどうかが焦点の一つ。憲法をめぐる議論は9条に集中しがちだが「同性婚」や「環境権」などの新しい権利も憲法と深く関わる。改憲の是非は別として、当事者たちは選挙を機会にこうしたテーマの議論が深まることを期待している。
■国に拒まれたみたい
 「婚姻届が受理されないのは、国から『あなたたちの関係はダメ』と拒まれるようなもの。少数派も尊重してほしい」。自らレズビアンだと公表し、昨年4月に女性同士で結婚式を挙げたタレントの一ノ瀬文香さん(35)は訴える。憲法は24条で「結婚は両性の合意のみに基づく」と規定すると同時に、14条では性差別を禁じている。これが同性婚の禁止を意味するかが議論になっている。民法に同性婚の規定はない。国の研究班が昨年実施した意識調査では、同性婚の法制化に「賛成」「やや賛成」は計51%で反対を上回ったが、20代は71%が賛成なのに70代は24%と、賛否は世代で大きく割れている。一ノ瀬さんは同性婚をきっかけに、憲法に関心を寄せるようになった。「改憲せず民法改正で同性婚を実現すべきだ」との立場だが、多くの人が議論することが大切と考えている。「憲法や民法を通じて、少数者や多様性を尊重することを皆が考えてほしい」と話す。
■新章設置訴え
 大気や水、日照など良好な自然環境を享受できる「環境権」。環境問題に取り組むNPO「環境文明21」は憲法に環境専門の新章を設け、基本原則のひとつにすべきだと訴える。共同代表で環境庁出身の加藤三郎さん(76)は「昨年末の第21回気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定は、覚悟を決めて環境問題に取り組むよう世界に求めた」と強調。「国内の環境問題を巡る議論は以前より低調だ。この機会に改めて活発な議論を促したい」
■広がる新たな権利
 中絶や尊厳死、ライフスタイルなど、一定の個人的事柄を公権力の干渉を受けることなく、幅広く自分で決められるとする「自己決定権」を憲法で認めるべきだとの意見もある。衆参両院の憲法審査会では、自己決定権を憲法上の権利として明記すべきだとの意見が出た。一方で、明文規定がないことがこうした権利の実現にとって障害になっているわけではないとの声もあり、議論の方向性は明確になっていない。木村草太・首都大学東京教授は「憲法には9条以外にも様々なテーマがあり、日常生活と密接につながっている。どんな国にしていくかという理念を考えることが、憲法改正について考えることになる」と話す。

*1-2:http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2016-05/26/content_38539636.htm (中国網日本語版 2016年5月26日) 福島原発事故、原爆168発分のセシウムが漏えい 太平洋全体にほぼ拡散へ
 日本と米国の専門家は、福島原発事故から5年が経過するが、漏えいした放射能汚染物質は潮の流れにより太平洋をまたぎ、北米西海岸に影響を及ぼしていると発表した。東京海洋大学副学長、日本海洋学会副会長の神田穣太氏によると、セシウム137は福島原発事故の放射能漏れの最も中心的な物質で、1−2万テラベクレルが海洋に流出したという。この数値を5万テラベクレルと見積もる研究者もいる。ベクレルは放射性物質の計量単位だ。厚生労働省は福島原発事故後、安全に食用できる野菜・穀物・肉類などの食品中の放射性物質の新たな基準値を、1キロ当たり500ベクレルとした。1テラベクレルは1兆ベクレル。日本政府は2011年に発表した報告書の中で、福島原発の原子炉3基が放出したセシウムは1万5000テラベクレルに達するとしていた。米国が第二次大戦中に広島に投下した原爆は、89テラベクレルのセシウムを放出していた。1万5000テラベクレルは、広島の原爆168発分だ。しかし日本政府内には、原爆を福島原発が放出した放射性物質と、単純に比較することはできないとする観点もある。神田氏によると、太平洋東部のセシウム濃度は西部より高めとなっている。これはセシウムが潮の流れにより、米国西海岸に到達したことを意味する。多くの専門家が同じ観点を持つ。福島原発事故後まもなく、日本原子力研究開発機構の中野政尚研究員が行った研究によると、セシウムは潮の流れにより5年後に北米に到達し、10年後に一部がアジア東部に回帰し、30年後に太平洋全体にほぼ拡散するという。福島大学環境放射能研究所の青山道夫教授も2015年、1年内に約800テラベクレルのセシウムが北米西海岸に到達すると予想していた。北米の科学界は、すでに実地調査によりこれを裏付けている。米国科学アカデミー紀要が昨年掲載した、カナダのベッドフォード海洋学研究所の報告書によると、北米西海岸で福島原発事故による放射性物質が検出されている。米ウッズホール海洋研究所の専門家は、「1986年のチェルノブイリ事故による放射能漏れは福島原発事故の10倍だが、海洋への影響は後者の方が大きい。漏えいした放射性物質の8割が海に入ったからだ。福島原発事故の海洋への影響は、空前絶後と言える」と指摘した。この放射能汚染は、魚介類と海の生態系に影響を及ぼす恐れがある。日本はすでにこれに関する、多くの調査結果を出している。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/ASJ4H3JLHJ4HUGTB007.html
(朝日新聞 2016年4月18日) 福島)甲状腺がんの県見解、ロ報告書と矛盾 尾松氏講演
 チェルノブイリ原発事故から30年の26日を前に、「避難の権利」を明記したチェルノブイリ法を日本に初めて体系的に紹介したロシア研究者の尾松亮氏がこのほど、東京都内で講演した。「ロシア政府報告書」を取り上げ、県や県立医大が県内の小児甲状腺がんの「多発」について原発事故の影響を否定する論拠にした「チェルノブイリ後の事実」とは異なる事実が報告されている、と指摘した。東京電力福島第一原発事故事故後、子どもたちの甲状腺検査を進めてきた県は有識者による検討委員会などで、罹患(りかん)統計から推定される有病数に比べ「数十倍のオーダーで多い甲状腺がんが発見されている」と認めつつ、「放射線の影響とは考えにくい」と主張。その論拠として、チェルノブイリ事故後に甲状腺がんが多発したのは①事故から5年後②5歳以下であるのに対し、福島では①がん発見が1~4年で早い②事故当時5歳以下の発見がない③被曝(ひばく)線量がはるかに少ない――などとしてきた。2011年発表のロシア政府報告書を詳細に検討した尾松氏は、報告書の内容が、県側の説明と「大きく食い違う」と批判。同報告書では甲状腺がんは①事故翌年から著しく増え(年平均1・7倍)、4~5年後にさらに大幅に増加②事故時5歳以下に急増するのは事故約10年後で彼らが10代半ばになって以降③被曝推計の最高値比較では大差があるが、低線量被災地でも増加――などと分析していることを明らかにした。そのうえで尾松氏は「現時点でデータは少ないが、チェルノブイリ後の10代での増え方などは違いより類似が目立つ」とし、「先例となる被災国の知見をゆがめて伝えることで、教訓を生かせなくなるのではないか」との懸念を表明した。

*1-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016060701001850.html
(東京新聞 2016年6月7日) 公共工事で除染土を再利用へ 全国の道路、防潮堤に
 東京電力福島第1原発事故に伴う除染廃棄物の減量と再利用に向けた環境省の有識者検討会は7日、東京都内で会合を開き、放射性物質濃度が基準以下となった除染土を全国の公共工事で使うとする再利用の方針案を大筋で了承した。近く同省が正式決定する。方針案によると、管理責任が明確で、長期間掘り返されることがない道路や防潮堤などの公共工事に利用先を限定。工事中の作業員や周辺住民の年間被ばく線量が1ミリシーベルト以下となるよう、用途や期間に応じて放射性セシウム濃度を1キログラム当たり5千~8千ベクレル以下と定めた。

<日本国憲法の規定>
*2:http://www.jicl.jp/kenpou_all/kenpou.html 日本国憲法(抜粋)
第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、
        相互の協力により、維持されなければならない。
      2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他
        の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなけ
        ればならない。
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
      2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進
        に努めなければならない。

<環境基本法>
*3:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H05/H05HO091.html 環境基本法 (平成五年十一月十九日法律第九十一号) 最終改正:平成二六年五月三〇日法律第四六号
第一章 総則
(目的)
第一条  この法律は、環境の保全について、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。
(定義)
第二条  この法律において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
2  この法律において「地球環境保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。
3  この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。第二十一条第一項第一号において同じ。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。以下同じ。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。
(環境の恵沢の享受と継承等)
第三条  環境の保全は、環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること及び生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており人類の存続の基盤である限りある環境が、人間の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきていることにかんがみ、現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように適切に行われなければならない。
(環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等)
第四条  環境の保全は、社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減することその他の環境の保全に関する行動がすべての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われるようになることによって、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨とし、及び科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が未然に防がれることを旨として、行われなければならない。
(国際的協調による地球環境保全の積極的推進)
第五条  地球環境保全が人類共通の課題であるとともに国民の健康で文化的な生活を将来にわたって確保する上での課題であること及び我が国の経済社会が国際的な密接な相互依存関係の中で営まれていることにかんがみ、地球環境保全は、我が国の能力を生かして、及び国際社会において我が国の占める地位に応じて、国際的協調の下に積極的に推進されなければならない。
(国の責務)
第六条  国は、前三条に定める環境の保全についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、環境の保全に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第七条  地方公共団体は、基本理念にのっとり、環境の保全に関し、国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(事業者の責務)
第八条  事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずるばい煙、汚水、廃棄物等の処理その他の公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有する。
2  事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が廃棄物となった場合にその適正な処理が図られることとなるように必要な措置を講ずる責務を有する。
3  前二項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が使用され又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するように努めるとともに、その事業活動において、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、役務等を利用するように努めなければならない。
4  前三項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境の保全に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。
(国民の責務)
第九条  国民は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、その日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。
2  前項に定めるもののほか、国民は、基本理念にのっとり、環境の保全に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。
(環境の日)
第十条  事業者及び国民の間に広く環境の保全についての関心と理解を深めるとともに、積極的に環境の保全に関する活動を行う意欲を高めるため、環境の日を設ける。
2  環境の日は、六月五日とする。
3  国及び地方公共団体は、環境の日の趣旨にふさわしい事業を実施するように努めなければならない。
(法制上の措置等)
第十一条  政府は、環境の保全に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
(年次報告等)
第十二条  政府は、毎年、国会に、環境の状況及び政府が環境の保全に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。
2  政府は、毎年、前項の報告に係る環境の状況を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。
第十三条  削除
   第二章 環境の保全に関する基本的施策
    第一節 施策の策定等に係る指針
第十四条  この章に定める環境の保全に関する施策の策定及び実施は、基本理念にのっとり、次に掲げる事項の確保を旨として、各種の施策相互の有機的な連携を図りつつ総合的かつ計画的に行わなければならない。
一  人の健康が保護され、及び生活環境が保全され、並びに自然環境が適正に保全されるよう、大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること。
二  生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保が図られるとともに、森林、農地、水辺地等における多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて体系的に保全されること。
三  人と自然との豊かな触れ合いが保たれること。
    第二節 環境基本計画
第十五条  政府は、環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全に関する基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。
2  環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一  環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱
二  前号に掲げるもののほか、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3  環境大臣は、中央環境審議会の意見を聴いて、環境基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4  環境大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、環境基本計画を公表しなければならない。
5  前二項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。
    第三節 環境基準
第十六条  政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。
2  前項の基準が、二以上の類型を設け、かつ、それぞれの類型を当てはめる地域又は水域を指定すべきものとして定められる場合には、その地域又は水域の指定に関する事務は、次の各号に掲げる地域又は水域の区分に応じ、当該各号に定める者が行うものとする。
一  二以上の都道府県の区域にわたる地域又は水域であって政令で定めるもの 政府
二  前号に掲げる地域又は水域以外の地域又は水域 次のイ又はロに掲げる地域又は水域の区分に応じ、当該イ又はロに定める者
イ 騒音に係る基準(航空機の騒音に係る基準及び新幹線鉄道の列車の騒音に係る基準を除く。)の類型を当てはめる地域であって市に属するもの その地域が属する市の長
ロ イに掲げる地域以外の地域又は水域 その地域又は水域が属する都道府県の知事
3  第一項の基準については、常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない。
4  政府は、この章に定める施策であって公害の防止に関係するもの(以下「公害の防止に関する施策」という。)を総合的かつ有効適切に講ずることにより、第一項の基準が確保されるように努めなければならない。
    第四節 特定地域における公害の防止
(公害防止計画の作成)
第十七条  都道府県知事は、次のいずれかに該当する地域について、環境基本計画を基本として、当該地域において実施する公害の防止に関する施策に係る計画(以下「公害防止計画」という。)を作成することができる。
一  現に公害が著しく、かつ、公害の防止に関する施策を総合的に講じなければ公害の防止を図ることが著しく困難であると認められる地域
二  人口及び産業の急速な集中その他の事情により公害が著しくなるおそれがあり、かつ、公害の防止に関する施策を総合的に講じなければ公害の防止を図ることが著しく困難になると認められる地域
(公害防止計画の達成の推進)
第十八条  国及び地方公共団体は、公害防止計画の達成に必要な措置を講ずるように努めるものとする。
    第五節 国が講ずる環境の保全のための施策等
(国の施策の策定等に当たっての配慮)
第十九条  国は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境の保全について配慮しなければならない。
(環境影響評価の推進)
第二十条  国は、土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業を行う事業者が、その事業の実施に当たりあらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、その事業に係る環境の保全について適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
(環境の保全上の支障を防止するための規制)
第二十一条  国は、環境の保全上の支障を防止するため、次に掲げる規制の措置を講じなければならない。
一  大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染又は悪臭の原因となる物質の排出、騒音又は振動の発生、地盤の沈下の原因となる地下水の採取その他の行為に関し、事業者等の遵守すべき基準を定めること等により行う公害を防止するために必要な規制の措置
二  土地利用に関し公害を防止するために必要な規制の措置及び公害が著しく、又は著しくなるおそれがある地域における公害の原因となる施設の設置に関し公害を防止するために必要な規制の措置
三  自然環境を保全することが特に必要な区域における土地の形状の変更、工作物の新設、木竹の伐採その他の自然環境の適正な保全に支障を及ぼすおそれがある行為に関し、その支障を防止するために必要な規制の措置
四  採捕、損傷その他の行為であって、保護することが必要な野生生物、地形若しくは地質又は温泉源その他の自然物の適正な保護に支障を及ぼすおそれがあるものに関し、その支障を防止するために必要な規制の措置
五  公害及び自然環境の保全上の支障が共に生ずるか又は生ずるおそれがある場合にこれらを共に防止するために必要な規制の措置
2  前項に定めるもののほか、国は、人の健康又は生活環境に係る環境の保全上の支障を防止するため、同項第一号又は第二号に掲げる措置に準じて必要な規制の措置を講ずるように努めなければならない。
(環境の保全上の支障を防止するための経済的措置)
第二十二条  国は、環境への負荷を生じさせる活動又は生じさせる原因となる活動(以下この条において「負荷活動」という。)を行う者がその負荷活動に係る環境への負荷の低減のための施設の整備その他の適切な措置をとることを助長することにより環境の保全上の支障を防止するため、その負荷活動を行う者にその者の経済的な状況等を勘案しつつ必要かつ適正な経済的な助成を行うために必要な措置を講ずるように努めるものとする。
2  国は、負荷活動を行う者に対し適正かつ公平な経済的な負担を課すことによりその者が自らその負荷活動に係る環境への負荷の低減に努めることとなるように誘導することを目的とする施策が、環境の保全上の支障を防止するための有効性を期待され、国際的にも推奨されていることにかんがみ、その施策に関し、これに係る措置を講じた場合における環境の保全上の支障の防止に係る効果、我が国の経済に与える影響等を適切に調査し及び研究するとともに、その措置を講ずる必要がある場合には、その措置に係る施策を活用して環境の保全上の支障を防止することについて国民の理解と協力を得るように努めるものとする。この場合において、その措置が地球環境保全のための施策に係るものであるときは、その効果が適切に確保されるようにするため、国際的な連携に配慮するものとする。
(環境の保全に関する施設の整備その他の事業の推進)
第二十三条  国は、緩衝地帯その他の環境の保全上の支障を防止するための公共的施設の整備及び汚泥のしゅんせつ、絶滅のおそれのある野生動植物の保護増殖その他の環境の保全上の支障を防止するための事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
2  国は、下水道、廃棄物の公共的な処理施設、環境への負荷の低減に資する交通施設(移動施設を含む。)その他の環境の保全上の支障の防止に資する公共的施設の整備及び森林の整備その他の環境の保全上の支障の防止に資する事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
3  国は、公園、緑地その他の公共的施設の整備その他の自然環境の適正な整備及び健全な利用のための事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
4  国は、前二項に定める公共的施設の適切な利用を促進するための措置その他のこれらの施設に係る環境の保全上の効果が増進されるために必要な措置を講ずるものとする。
(環境への負荷の低減に資する製品等の利用の促進)
第二十四条  国は、事業者に対し、物の製造、加工又は販売その他の事業活動に際して、あらかじめ、その事業活動に係る製品その他の物が使用され又は廃棄されることによる環境への負荷について事業者が自ら評価することにより、その物に係る環境への負荷の低減について適正に配慮することができるように技術的支援等を行うため、必要な措置を講ずるものとする。
2  国は、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、製品、役務等の利用が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。
(環境の保全に関する教育、学習等)
第二十五条  国は、環境の保全に関する教育及び学習の振興並びに環境の保全に関する広報活動の充実により事業者及び国民が環境の保全についての理解を深めるとともにこれらの者の環境の保全に関する活動を行う意欲が増進されるようにするため、必要な措置を講ずるものとする。
(民間団体等の自発的な活動を促進するための措置)
第二十六条  国は、事業者、国民又はこれらの者の組織する民間の団体(以下「民間団体等」という。)が自発的に行う緑化活動、再生資源に係る回収活動その他の環境の保全に関する活動が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。
(情報の提供)
第二十七条  国は、第二十五条の環境の保全に関する教育及び学習の振興並びに前条の民間団体等が自発的に行う環境の保全に関する活動の促進に資するため、個人及び法人の権利利益の保護に配慮しつつ環境の状況その他の環境の保全に関する必要な情報を適切に提供するように努めるものとする。
(調査の実施)
第二十八条  国は、環境の状況の把握、環境の変化の予測又は環境の変化による影響の予測に関する調査その他の環境を保全するための施策の策定に必要な調査を実施するものとする。
(監視等の体制の整備)
第二十九条  国は、環境の状況を把握し、及び環境の保全に関する施策を適正に実施するために必要な監視、巡視、観測、測定、試験及び検査の体制の整備に努めるものとする。
(科学技術の振興)
第三十条  国は、環境の変化の機構の解明、環境への負荷の低減並びに環境が経済から受ける影響及び経済に与える恵沢を総合的に評価するための方法の開発に関する科学技術その他の環境の保全に関する科学技術の振興を図るものとする。
2  国は、環境の保全に関する科学技術の振興を図るため、試験研究の体制の整備、研究開発の推進及びその成果の普及、研究者の養成その他の必要な措置を講ずるものとする。
(公害に係る紛争の処理及び被害の救済)
第三十一条  国は、公害に係る紛争に関するあっせん、調停その他の措置を効果的に実施し、その他公害に係る紛争の円滑な処理を図るため、必要な措置を講じなければならない。
2  国は、公害に係る被害の救済のための措置の円滑な実施を図るため、必要な措置を講じなければならない。
    第六節 地球環境保全等に関する国際協力等
(地球環境保全等に関する国際協力等)
第三十二条  国は、地球環境保全に関する国際的な連携を確保することその他の地球環境保全に関する国際協力を推進するために必要な措置を講ずるように努めるほか、開発途上にある海外の地域の環境の保全及び国際的に高い価値があると認められている環境の保全であって人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するもの(以下この条において「開発途上地域の環境の保全等」という。)に資するための支援を行うことその他の開発途上地域の環境の保全等に関する国際協力を推進するために必要な措置を講ずるように努めるものとする。
2  国は、地球環境保全及び開発途上地域の環境の保全等(以下「地球環境保全等」という。)に関する国際協力について専門的な知見を有する者の育成、本邦以外の地域の環境の状況その他の地球環境保全等に関する情報の収集、整理及び分析その他の地球環境保全等に関する国際協力の円滑な推進を図るために必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(監視、観測等に係る国際的な連携の確保等)
第三十三条  国は、地球環境保全等に関する環境の状況の監視、観測及び測定の効果的な推進を図るための国際的な連携を確保するように努めるとともに、地球環境保全等に関する調査及び試験研究の推進を図るための国際協力を推進するように努めるものとする。
(地方公共団体又は民間団体等による活動を促進するための措置)
第三十四条  国は、地球環境保全等に関する国際協力を推進する上で地方公共団体が果たす役割の重要性にかんがみ、地方公共団体による地球環境保全等に関する国際協力のための活動の促進を図るため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるように努めるものとする。
2  国は、地球環境保全等に関する国際協力を推進する上で民間団体等によって本邦以外の地域において地球環境保全等に関する国際協力のための自発的な活動が行われることの重要性にかんがみ、その活動の促進を図るため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(国際協力の実施等に当たっての配慮)
第三十五条  国は、国際協力の実施に当たっては、その国際協力の実施に関する地域に係る地球環境保全等について配慮するように努めなければならない。
2  国は、本邦以外の地域において行われる事業活動に関し、その事業活動に係る事業者がその事業活動が行われる地域に係る地球環境保全等について適正に配慮することができるようにするため、その事業者に対する情報の提供その他の必要な措置を講ずるように努めるものとする。
    第七節 地方公共団体の施策
第三十六条  地方公共団体は、第五節に定める国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた環境の保全のために必要な施策を、これらの総合的かつ計画的な推進を図りつつ実施するものとする。この場合において、都道府県は、主として、広域にわたる施策の実施及び市町村が行う施策の総合調整を行うものとする。
    第八節 費用負担等
(原因者負担)
第三十七条  国及び地方公共団体は、公害又は自然環境の保全上の支障(以下この条において「公害等に係る支障」という。)を防止するために国若しくは地方公共団体又はこれらに準ずる者(以下この条において「公的事業主体」という。)により実施されることが公害等に係る支障の迅速な防止の必要性、事業の規模その他の事情を勘案して必要かつ適切であると認められる事業が公的事業主体により実施される場合において、その事業の必要を生じさせた者の活動により生ずる公害等に係る支障の程度及びその活動がその公害等に係る支障の原因となると認められる程度を勘案してその事業の必要を生じさせた者にその事業の実施に要する費用を負担させることが適当であると認められるものについて、その事業の必要を生じさせた者にその事業の必要を生じさせた限度においてその事業の実施に要する費用の全部又は一部を適正かつ公平に負担させるために必要な措置を講ずるものとする。
(受益者負担)
第三十八条  国及び地方公共団体は、自然環境を保全することが特に必要な区域における自然環境の保全のための事業の実施により著しく利益を受ける者がある場合において、その者にその受益の限度においてその事業の実施に要する費用の全部又は一部を適正かつ公平に負担させるために必要な措置を講ずるものとする。
(地方公共団体に対する財政措置等)
第三十九条  国は、地方公共団体が環境の保全に関する施策を策定し、及び実施するための費用について、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるように努めるものとする。
(国及び地方公共団体の協力)
第四十条  国及び地方公共団体は、環境の保全に関する施策を講ずるにつき、相協力するものとする。
(事務の区分)
第四十条の二  第十六条第二項の規定により都道府県又は市が処理することとされている事務(政令で定めるものを除く。)は、地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号 に規定する第一号 法定受託事務とする。
   第三章 環境の保全に関する審議会その他の合議制の機関等
    第一節 環境の保全に関する審議会その他の合議制の機関
(中央環境審議会)
第四十一条  環境省に、中央環境審議会を置く。
2  中央環境審議会は、次に掲げる事務をつかさどる。
一  環境基本計画に関し、第十五条第三項に規定する事項を処理すること。
二  環境大臣又は関係大臣の諮問に応じ、環境の保全に関する重要事項を調査審議すること。
三  自然公園法 (昭和三十二年法律第百六十一号)、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律 (昭和四十五年法律第百三十九号)、自然環境保全法 (昭和四十七年法律第八十五号)、動物の愛護及び管理に関する法律 (昭和四十八年法律第百五号)、瀬戸内海環境保全特別措置法 (昭和四十八年法律第百十号)、公害健康被害の補償等に関する法律 (昭和四十八年法律第百十一号)、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律 (平成四年法律第七十五号)、ダイオキシン類対策特別措置法 (平成十一年法律第百五号)、循環型社会形成推進基本法 (平成十二年法律第百十号)、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律 (平成十二年法律第百十六号)、使用済自動車の再資源化等に関する法律 (平成十四年法律第八十七号)、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号)、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律 (平成十六年法律第七十八号)、石綿による健康被害の救済に関する法律 (平成十八年法律第四号)、生物多様性基本法 (平成二十年法律第五十八号)及び愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律 (平成二十年法律第八十三号)によりその権限に属させられた事項を処理すること。
3  中央環境審議会は、前項に規定する事項に関し、環境大臣又は関係大臣に意見を述べることができる。
4  前二項に定めるもののほか、中央環境審議会の組織、所掌事務及び委員その他の職員その他中央環境審議会に関し必要な事項については、政令で定める。
第四十二条  削除
(都道府県の環境の保全に関する審議会その他の合議制の機関)
第四十三条  都道府県は、その都道府県の区域における環境の保全に関して、基本的事項を調査審議させる等のため、環境の保全に関し学識経験のある者を含む者で構成される審議会その他の合議制の機関を置く。
2  前項の審議会その他の合議制の機関の組織及び運営に関し必要な事項は、その都道府県の条例で定める。
(市町村の環境の保全に関する審議会その他の合議制の機関)
第四十四条  市町村は、その市町村の区域における環境の保全に関して、基本的事項を調査審議させる等のため、その市町村の条例で定めるところにより、環境の保全に関し学識経験のある者を含む者で構成される審議会その他の合議制の機関を置くことができる。
    第二節 公害対策会議
(設置及び所掌事務)
第四十五条  環境省に、特別の機関として、公害対策会議(以下「会議」という。)を置く。
2  会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
一  公害の防止に関する施策であって基本的かつ総合的なものの企画に関して審議し、及びその施策の実施を推進すること。
二  前号に掲げるもののほか、他の法令の規定によりその権限に属させられた事務
(組織等)
第四十六条  会議は、会長及び委員をもって組織する。
2  会長は、環境大臣をもって充てる。
3  委員は、内閣官房長官、関係行政機関の長及び内閣府設置法 (平成十一年法律第八十九号)第九条第一項 に規定する特命担当大臣のうちから、環境大臣の申出により、内閣総理大臣が任命する。
4  会議に、幹事を置く。
5  幹事は、関係行政機関の職員のうちから、環境大臣が任命する。
6  幹事は、会議の所掌事務について、会長及び委員を助ける。
7  前各項に定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
   附 則
 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第四十三条及び第四十四条の規定は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
   附 則 (平成一一年七月一六日法律第八七号) 抄
(施行期日)
第一条  この法律は、平成十二年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一  第一条中地方自治法第二百五十条の次に五条、節名並びに二款及び款名を加える改正規定(同法第二百五十条の九第一項に係る部分(両議院の同意を得ることに係る部分に限る。)に限る。)、第四十条中自然公園法附則第九項及び第十項の改正規定(同法附則第十項に係る部分に限る。)、第二百四十四条の規定(農業改良助長法第十四条の三の改正規定に係る部分を除く。)並びに第四百七十二条の規定(市町村の合併の特例に関する法律第六条、第八条及び第十七条の改正規定に係る部分を除く。)並びに附則第七条、第十条、第十二条、第五十九条ただし書、第六十条第四項及び第五項、第七十三条、第七十七条、第百五十七条第四項から第六項まで、第百六十条、第百六十三条、第百六十四条並びに第二百二条の規定 公布の日
(環境基本法の一部改正に伴う経過措置)
第二十七条  施行日前に第五十三条の規定による改正前の環境基本法第十七条第三項の規定により内閣総理大臣の承認を受けた公害防止計画は、第五十三条の規定による改正後の同法第十七条第三項の規定により内閣総理大臣の同意を得た公害防止計画とみなす。
(国等の事務)
第百五十九条  この法律による改正前のそれぞれの法律に規定するもののほか、この法律の施行前において、地方公共団体の機関が法律又はこれに基づく政令により管理し又は執行する国、他の地方公共団体その他公共団体の事務(附則第百六十一条において「国等の事務」という。)は、この法律の施行後は、地方公共団体が法律又はこれに基づく政令により当該地方公共団体の事務として処理するものとする。
(処分、申請等に関する経過措置)
第百六十条  この法律(附則第一条各号に掲げる規定については、当該各規定。以下この条及び附則第百六十三条において同じ。)の施行前に改正前のそれぞれの法律の規定によりされた許可等の処分その他の行為(以下この条において「処分等の行為」という。)又はこの法律の施行の際現に改正前のそれぞれの法律の規定によりされている許可等の申請その他の行為(以下この条において「申請等の行為」という。)で、この法律の施行の日においてこれらの行為に係る行政事務を行うべき者が異なることとなるものは、附則第二条から前条までの規定又は改正後のそれぞれの法律(これに基づく命令を含む。)の経過措置に関する規定に定めるものを除き、この法律の施行の日以後における改正後のそれぞれの法律の適用については、改正後のそれぞれの法律の相当規定によりされた処分等の行為又は申請等の行為とみなす。
2  この法律の施行前に改正前のそれぞれの法律の規定により国又は地方公共団体の機関に対し報告、届出、提出その他の手続をしなければならない事項で、この法律の施行の日前にその手続がされていないものについては、この法律及びこれに基づく政令に別段の定めがあるもののほか、これを、改正後のそれぞれの法律の相当規定により国又は地方公共団体の相当の機関に対して報告、届出、提出その他の手続をしなければならない事項についてその手続がされていないものとみなして、この法律による改正後のそれぞれの法律の規定を適用する。
(不服申立てに関する経過措置)
第百六十一条  施行日前にされた国等の事務に係る処分であって、当該処分をした行政庁(以下この条において「処分庁」という。)に施行日前に行政不服審査法に規定する上級行政庁(以下この条において「上級行政庁」という。)があったものについての同法による不服申立てについては、施行日以後においても、当該処分庁に引き続き上級行政庁があるものとみなして、行政不服審査法の規定を適用する。この場合において、当該処分庁の上級行政庁とみなされる行政庁は、施行日前に当該処分庁の上級行政庁であった行政庁とする。
2  前項の場合において、上級行政庁とみなされる行政庁が地方公共団体の機関であるときは、当該機関が行政不服審査法の規定により処理することとされる事務は、新地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。
(手数料に関する経過措置)
第百六十二条  施行日前においてこの法律による改正前のそれぞれの法律(これに基づく命令を含む。)の規定により納付すべきであった手数料については、この法律及びこれに基づく政令に別段の定めがあるもののほか、なお従前の例による。
(罰則に関する経過措置)
第百六十三条  この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(その他の経過措置の政令への委任)
第百六十四条  この附則に規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定める。
2  附則第十八条、第五十一条及び第百八十四条の規定の適用に関して必要な事項は、政令で定める。
(検討)
第二百五十条  新地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務については、できる限り新たに設けることのないようにするとともに、新地方自治法別表第一に掲げるもの及び新地方自治法に基づく政令に示すものについては、地方分権を推進する観点から検討を加え、適宜、適切な見直しを行うものとする。
第二百五十一条  政府は、地方公共団体が事務及び事業を自主的かつ自立的に執行できるよう、国と地方公共団体との役割分担に応じた地方税財源の充実確保の方途について、経済情勢の推移等を勘案しつつ検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
第二百五十二条  政府は、医療保険制度、年金制度等の改革に伴い、社会保険の事務処理の体制、これに従事する職員の在り方等について、被保険者等の利便性の確保、事務処理の効率化等の視点に立って、検討し、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
   附 則 (平成一一年七月一六日法律第一〇二号) 抄
(施行期日)
第一条  この法律は、内閣法の一部を改正する法律(平成十一年法律第八十八号)の施行の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
二  附則第十条第一項及び第五項、第十四条第三項、第二十三条、第二十八条並びに第三十条の規定 公布の日
(職員の身分引継ぎ)
第三条  この法律の施行の際現に従前の総理府、法務省、外務省、大蔵省、文部省、厚生省、農林水産省、通商産業省、運輸省、郵政省、労働省、建設省又は自治省(以下この条において「従前の府省」という。)の職員(国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条の審議会等の会長又は委員長及び委員、中央防災会議の委員、日本工業標準調査会の会長及び委員並びに これらに類する者として政令で定めるものを除く。)である者は、別に辞令を発せられない限り、同一の勤務条件をもって、この法律の施行後の内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省若しくは環境省(以下この条において「新府省」という。)又はこれに置かれる部局若しくは機関のうち、この法律の施行の際現に当該職員が属する従前の府省又はこれに置かれる部局若しくは機関の相当の新府省又はこれに置かれる部局若しくは機関として政令で定めるものの相当の職員となるものとする。
(別に定める経過措置)
第三十条  第二条から前条までに規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要となる経過措置は、別に法律で定める。 (以下略)


<地域主権は憲法改正を要しないこと>
PS(2016.7.5追加):「地域主権のために憲法改正が必要」と主張して憲法改正にこぎつけようとしている勢力もあるが、*4-1のように、日本国憲法は、第92条で「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて法律で定める」としており、これにより地方自治法が定められている。そのため、地域主権にしたければ地方自治法を改正すればよいのだが、*4-2のように、地方自治法はかなり地域主権であり、問題があるとすればその大部分は運用にあるだろう。 

*4-1:http://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~kazyoshi/constitution/jobun/chap08.html (日本国憲法)  第8章 地方自治
第92条(地方自治の基本原則)
地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
第93条(地方公共団体の機関、その直接選挙)
1.地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
2.地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
第94条(地方公共団体の権能)
地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
第95条(特別法の住民投票)
一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

*4-2:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO067.html (地方自治法)
第一編 総則
第一条  この法律は、地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする。
第一条の二  地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。
2  国は、前項の規定の趣旨を達成するため、国においては国際社会における国家としての存立にかかわる事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動若しくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務又は全国的な規模で若しくは全国的な視点に立つて行わなければならない施策及び事業の実施その他の国が本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本として、地方公共団体との間で適切に役割を分担するとともに、地方公共団体に関する制度の策定及び施策の実施に当たつて、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない。(以下略)


<議員定数の都道府県割も憲法改正を要しないこと>
PS(2016年7月9日追加):*5-1のように、「自民党が各都道府県から改選ごとに少なくとも一人の参院議員を選出できるよう憲法改正することを盛り込む」とのことだが、*5-2のように、憲法は第43条で「両議院は全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」「両議院の議員定数は法律でこれを定める」、及び、第44条で「両議院の議員及びその選挙人の資格は法律でこれを定める」「人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない」と規定しているだけで、地域による一票の重み格差(差別?)については言及していないため、議員定数の都道府県割を目的とする憲法改正は不要であり、公職選挙法を変更すれば足りる。そのため、何でも憲法改正に結び付けようとしているのは見苦しく、このような主張をする人は日本国憲法を読んだこともないのかと思われる。

*5-1:http://www.sankei.com/politics/news/160404/plt1604040023-n1.html (産経新聞 2016.4.4) 「参院議員は都道府県から必ず1人選出」 自民党が参院選公約に盛り込みへ 憲法改正案に規定を追加
 自民党が夏の参院選公約に、各都道府県から改選ごとに少なくとも一人の参院議員を選出できるよう憲法を改正することを盛り込む検討を始めたことが3日、分かった。「一票の格差」是正に向け、今回の参院選から一部選挙区が合区されることに対し、党内に「地方の声がかき消される」との懸念が根強いことから、安倍晋三政権が掲げる「地方創生」と合わせて参院選で訴える方針だ。夏の参院選では、改選1人区だった鳥取、島根、徳島、高知4県が、それぞれ「鳥取・島根」「徳島・高知」の2選挙区に合区される。自民党は2選挙区でともに現職の青木一彦氏(島根)と中西祐介氏(徳島)を擁立するが、合区のままの選挙が続けば、1人も参院議員を選出できない県が出る可能性がある。

*5-2:http://www.saga-s.co.jp/senkyo/sanin/30402/320757 (佐賀新聞 2016年6月9日) 日本国憲法全文(抜粋)
第四章 国会
第四十一条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
第四十二条 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。
第四十三条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
         両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。
第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、
         社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。
第四十五条 衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に
         終了する。
第四十六条 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。


<裁判所の違憲立法審査権行使にも憲法改正は不要であること>
PS(2016年7月10日追加):*6-1のように、おおさか維新の会は「憲法の恣意的解釈を許さないため憲法裁判所の設置が必要」としているが、*6-2のように、現行憲法は第81条で「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と規定している。そして、*6-3のように、「個別の法律などについて抽象的に憲法違反を訴えることはできない」と制限していることこそ憲法違反であり、裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを判定すべきなのだ。なお、政府の意向を受けるため最高裁判所でさえできないこと(実は、これは三権分立違反だが)は、憲法裁判所などという小さな組織を作れば、さらに政府の意向に沿った決定しかできなくなるだろう。

*6-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12418837.html
(朝日新聞 2016年6月21日) 参院選公約(要旨) おおさか維新の会 (抜粋)
◆憲法改正し教育無償化
■古い政治を壊す。新しい政治を創る。
1 憲法改正で教育無償化、道州制含む統治機構改革、憲法裁判所設置
 教育無償化を憲法で規定、国に予算措置と立法を義務づけ▽自治体を広域自治体の「道州」と「基礎自治体」の二層制にする▽恣意的憲法解釈を許さない憲法裁判所を設置

*6-2:http://www.saga-s.co.jp/senkyo/sanin/30402/320757
(佐賀新聞 2016年6月9日) 日本国憲法全文(抜粋)
第八十一条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

*6-3:https://kotobank.jp/word/%E9%81%95%E6%86%B2%E7%AB%8B%E6%B3%95%E5%AF%A9%E6%9F%BB%E6%A8%A9-431676 (朝日新聞 2013..5.3 朝日新聞掲載「キーワード」の解説より) 違憲立法審査権
 法律や行政行為が憲法に違反していないか審査する権限。日本では、憲法81条により、最高裁に最終的な権限が与えられていることから、最高裁は「憲法の番人」とも呼ばれる。この規定により、地裁や高裁も憲法判断できる。日本の場合、個別の法律などについて抽象的に憲法違反を訴えることはできないとされており、具体的な争いの中で合憲・違憲が判断される仕組みになっている。

| 日本国憲法::2016.6~ | 12:00 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.6.26 日本国憲法や教育基本法を護ることが重要で、教育の無償化に憲法改正は不要であること ← 日本国憲法、教育基本法と教育について (2016年6月27、28日、7月2、3日に追加あり)
     
2016.6.20 働き手の比率低下 2016.5.31   女性の労働力率      2015.5.31  
 東京新聞               日経新聞                      佐賀新聞

 
   上  高校進学率      65歳以上の   産業別・国籍別外国人労働者数 日本の難民認定数
(97%超の人が高校に進学) 労働力率世界比較                    2015.9.4朝日新聞

 「憲法は権力のみを縛るもので、国民を縛るものではない」と主張する勢力があるが、これは日本国憲法になるべく影響されずに国政を進めたいと考えた日本国憲法導入当初の人たちが法学部教育を通じて行った解釈の拡散ではないかと、私は考える。

 何故なら、具体的事例として、*1-1の憲法第26条2項に定められているとおり、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ」とされ、憲法は義務を設けて国民をも明確に縛っているからだ。また、日本国憲法は、「義務教育は、これを無償とする」と定めているが、「義務教育以外は有償でなければならない」とは定めていないため、教育を無償化するのに憲法改正は不要である。それどころか、*1-2の教育基本法には「教育の機会均等」が定められており、消費税増税とは関係なく、誰もが教育を受ける機会を保証されなければならないことになっている。

 さらに、「憲法改正しない」というのも明確な代替案であるため、「憲法改正草案を出していない党は代替案を示していない」という批判は当たらない。つまり、各政党、行政、メディアなどが主張している議論には事実に反するものが多いため、主権者たる国民はしっかり勉強して騙されないようにチェックしなければならないのである。

 なお、*1-2の日本国憲法の理念から導かれた教育基本法はPerfect(完全)であり、憲法改正の理由に教育の無償化を掲げるのは、「消費税を社会保障財源にする」と主張するのと同様、憲法改正を進めるためのごまかしにすぎない。私は、教育については、まず日本国憲法と教育基本法の理念をしっかり実現することこそ、最も重要だと考える。

<*立憲主義(https://kotobank.jp/word/%E7%AB%8B%E6%86%B2%E4%B8%BB%E7%BE%A9-148946) 法の支配 rule of the lawに類似した意味を持ち、権力保持者の恣意によってではなく、法に従って権力が行使されるべきであるという政治原則をいう。狭義においては、特に政治権力を複数の権力保持者に分有せしめ、その相互的抑制作用を通じて権力の濫用を防止し、もって権力名宛人の利益を守り、政治体系の保全をはかろうとする政治原則>

(1)義務教育と無償化の範囲
 *1-3に書かれているとおり、保育所や学童保育の待機児童は子育て問題の一部にすぎず、大学や塾などの教育にかかる費用は増加し、インフレと比較して賃金上昇率は低く、実質賃金が下がって子育ての経済的負担は大きく、第二子、第三子となるにつれて高くなる児童手当は子の生活費に差をつけており金額も少ない。また、非正規労働者には、奨学金の返済も負担である。

 しかし、産業の付加価値を上げられず、その結果として一人当たりの分配が小さくなるのは、労働者の教育の不十分さ(単なる学歴を言っているのではない)とイノベーション不足に由来するところが大きい。その上、教育費が高くなれば、親の貧富の差が子の教育格差となり、十分な教育費を出せない親の子はハンディを背負って、次世代もまた貧しい生活を強いられるという悪循環になる。

 そのため、私は以下のことを提案する。
  1)学校外教育費の負担を減らすため、公教育を充実させること
  2)義務教育を3歳~18歳までとし、幼児教育と高校教育を義務教育として無償化すること
    学校の幅広い選択権を保護者に与え、教育内容は前倒しして、飛び級も可能にすること
  3)保育園は0~2歳とし、この間も生活習慣や外国語などの家庭ではできない教育を行うこと
  4)貸与型ではなく給付型の奨学金を増やし、条件を満たす人は大学や大学院も無償にすること

(2)財源 ← 教育は投資であり、社会保障と同様、財源が消費税でなければならない理由はない
 民進党の公約では、*1-4のように、①消費税増税を2年間再延期するかわりに行政改革を徹底して財源を捻出し社会保障を充実させる ②返済不要の給付型奨学金創設など「人への投資」で経済成長を図る としている。私は、行政改革を徹底すれば消費税を増税しなくても社会保障費や教育費は出る上、教育を充実させて教育された人材を有効に使えば産業の付加価値を上げることができるため、消費税増税は不要であると考える。

 何故なら、よく勉強した人材は、*1-5の「朝三暮四」のような算術でしかものを考えられないのではなく、「消費税を増税しないから社会保障財源がない」「痛みがあるからよい改革だ」「国会議員が身を切ったから増税を飲む」などの馬鹿な詭弁を信じない、論理性や創造力を持った人材になれるからである。

(3)小・中・高校について
 馳文科大臣は、*2-1のように、かつての「ゆとり教育」には戻らないとする見解を公表したが、これは、公教育を充実して貧しい家庭の子にも十分な教育を受けさせるために重要なことだ。知識は思考するためのツールとして不可欠であるため、仮に小・中・高の教育関係者が、「『ゆとり教育』か『詰め込み教育』かといった選択しかできないとすれば、それこそが重要な問題である。

 なお、日本に限らず、親を失って学校に行きたくても行けない子もいる。そのため、*2-2のように社会奉仕活動を重視するライオンズクラブの会員のような人たちが、外国からでも親のない子を引き取ってもう一人(もしくは兄弟・姉妹)を育てる取り組みを進めれば、①不幸な子が減り ②少子化による労働力減少の影響が緩和でき ③育った子どもたちが生まれた国と日本との懸け橋になる。そして、その里親の負担を軽くするためにも、やはり義務教育を3歳~18歳までとして無償化し、給付型の奨学金を増やして大学や大学院も無償で行けるようにすることが必要なのである。

(4)大学について
 *3のように、東京大学など東京都内の有名5大学で、今春の入試合格者の75~55%を首都圏の高校出身者が占め、その比率は30年間で約1.4倍に増えており、理由は、①公教育のゆとり化の結果、塾や受験指導に力を入れる男女別学の私立中高一貫校が多い都市部の子が学力習得に有利になったこと ②地方からの進学者の経済的負担増(家賃を含む) などだそうだ。

 これは、中央省庁(農水省、国土交通省、総務省、経産省、厚労省、財務省、内閣府を含む)、大企業、大手メディアなどにも首都圏の男女別学の私立中高一貫校出身者の採用が増えるという結果をもたらし、政策作成やメディアの論調に歪みをきたしている。そのため、地方は、それ以上、ゆとりを追求している場合ではないことを忘れないで欲しい。

(5)職場において
 *4-1の三菱自動車の燃費偽装事件は、燃費のよさで税金を軽減するという馬鹿な制度に根本的原因があると思うが、(空気を読んでか)それを誰も正面から指摘することなく長期間机上で不適切な測定をし続けたのは、エンジニアのあるべき姿ではない。しかし、何かそうさせてしまうものが、現在の教育や企業の指揮命令系統の中にあると思われ、その本質が問題であるため、社長が引責辞任すれば問題解決するというものではないだろう。

 なお、*4-2のように、女性研究者の国際的人材ネットワークの創設が行われるそうだが、研究開発においても女性の視点は重要であるため、(30~60年遅れではあるが)「男女差に対する偏見の解消」や「女性研究者を活躍させる職場環境の整備」は大切だ。島尻担当相は「仕事と家事の両立で困っている日本のリケジョ(理系女性)に海外のロールモデルを示せば大いに刺激になる」などとしているが、実際には、日本女性の意識が低いのではなく女性を育成する環境がなかったことがポイントで、家事・子育てもハードワークで第一線の仕事と両立するのは困難であるため、海外と同様に、女性を差別しない職場環境を整え、お手伝いさんを雇って家事・子育ての負担を軽減しやすくするのが効果的である。

*1-1:http://www.mext.go.jp/b_menu/kihon/about/a002.htm
(日本国憲法より抜粋)
第23条  学問の自由は、これを保障する。
第26条  すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を
      有する。
2  すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。
   義務教育は、これを無償とする。

*1-2:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO120.html
教育基本法より抜粋 (平成十八年十二月二十二日法律第百二十号)
●前文
 教育基本法(昭和二十二年法律第二十五号)の全部を改正する。我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。
●第一章 教育の目的及び理念
(教育の目的)
第一条  教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
(教育の目標)
第二条  教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一  幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二  個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三  正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四  生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五  伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
(生涯学習の理念)
第三条  国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。
(教育の機会均等)
第四条  すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
2  国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
3  国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。
●第二章 教育の実施に関する基本
(義務教育)
第五条  国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
2  義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
3  国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。
4  国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。
(学校教育)
第六条  法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
2  前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。
(大学)
第七条  大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
2  大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。
(私立学校)
第八条  私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。
(教員)
第九条  法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
2  前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。
(家庭教育)
第十条  父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。
2  国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。
(幼児期の教育)
第十一条  幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。
(社会教育)
第十二条  個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。
2  国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。
(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)
第十三条  学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。
(政治教育)
第十四条  良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。
2  法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
(宗教教育)
第十五条  宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。
2  国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
●第三章 教育行政
(教育行政)
第十六条  教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。
2  国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。
3  地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。
4  国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。
(教育振興基本計画)
第十七条  政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。
2  地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。
●第四章 法令の制定
第十八条  この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない。
   附 則 抄
(施行期日)
1  この法律は、公布の日から施行する。

*1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/322021 (佐賀新聞 2016年6月12日) 収入増「実感ない」85% 地方ほど高い割合、子育て世代、大きな経済負担 全国面接世論調査
 アベノミクスの一環として経済界に賃上げを求めてきた安倍政権だが、2012年12月の第2次政権発足以降に給与などの収入が増えたという実感がないと答えた人は「あまりない」も含め85%に上った。地方ほどこの割合は高まり、景気が回復したとの感覚が得られていない現状が浮き彫りとなった。収入増の実感がないと答えた割合を衆院比例代表のブロック別にみると、四国が94%で最も高かった。中国は92%、東北は91%と高かった。収入が増えたとの実感があると答えた人は「ある程度ある」も含め全体で13%だった。ブロック別では東京の19%が最高で、南関東、近畿がいずれも16%。景気回復を感じている人は大都市圏に偏っていた。政権発足以降に経済格差が広がったと思うかどうかを尋ねると「変わらない」が59%で最も多くを占めた。「広がった」は36%で、「縮まった」との回答は2%しかなかった。経済格差の認識について年代別に見ると、年齢層が高くなるほど格差が広がっていると感じていた。「広がった」と答えた人は、中年層(40~50代)は34%、高年層(60代以上)は44%だった。一方、若年層(20~30代)では「変わらない」が72%にまで高まり、「広がった」という人は25%だった。
■子育て世代大きな経済負担
 池本美香・日本総研主任研究員の話 子育て支援などの少子化対策を社会保障の重要項目に挙げた人が増えたのは、待機児童や保育所建設中止の問題が昨今大きく報道されたことが背景にあるのだろう。しかし、保育所不足は少子化や子育て問題の一部にすぎない。大学や塾など教育にかかる費用は増加の一途だが、世帯収入は伸びておらず、子育て世代は経済的負担に苦しんでいる。具体的な支援策に「施設整備」と並んで「費用の負担軽減」を求める人が若年層に多いのはその現れだ。「奨学金を返すのに精いっぱいで結婚や子育てなんて考えられない」という声もよく聞く。貸与型ではなく給付型の奨学金を増やしたり、学校以外の教育費負担を減らしたりするなどの思い切った支援や若い世代が安定した収入が得られるような雇用対策が必要だ。

*1-4:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/322370
(佐賀新聞 2016年6月14日) 民進、行革徹底で社会保障充実、成長目指し「人への投資」
 民進党が参院選で掲げる公約の全容が13日、判明した。消費税増税の2年再延期を表明。行政改革を徹底して財源を捻出し、社会保障を充実させると強調した。憲法9条改正に反対し、安全保障関連法の撤回も求めた。党独自の経済政策として返済不要の給付型奨学金創設など「人への投資」で経済成長を図る一方、大企業や富裕層に税負担を求め、格差を是正する姿勢を打ち出した。アベノミクスに対抗し、経済政策を前面に押し出すことで、安倍晋三首相の「経済対案がない」という批判をかわす狙いがあるとみられる。

*1-5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12416400.html
(朝日新聞社説 2016年6月19日)参院選 社会保障の将来 給付と負担の全体像を
 たくさんの猿を飼っている人が、家計が苦しくなって餌のトチの実を減らすことにした。朝は三つ、夕方に四つ与えると言うと猿たちが怒ったので、朝に四つ、夕方は三つにすると言ったら喜んだ。「朝三暮四」の由来になった中国の寓話だ。目先を変えて言いくるめるたとえである。参院選での社会保障をめぐる議論もさながらこの話のようだ。各党は選挙公約で「充実策」を競い合う。その先にある「痛み」を覆い隠すように。だが、そんなその場しのぎは有権者に見透かされるだろう。むしろそうした姿勢が、制度への不信や将来への不安を高め、消費を冷やし、経済低迷の一因となっているのではないか。「子育て世帯を支援していく決意は揺らぎません」。消費増税の再延期を表明した記者会見での安倍首相の言葉だ。「アベノミクス」の成果と誇る税収の増加分を使い、保育や介護の「受け皿」を増やし、保育士と介護職員の賃金アップに優先して取り組むという。
■財源危うい「充実」
 だが、保育所を増やせば運営費として毎年約1千億円がかかる。保育士や介護職員の待遇改善には年に約2千億円が必要とされる。景気次第の税収増は、安定した財源とは言えない。そもそも子育て支援では、「税と社会保障の一体改革」で決めた施策が置き去りになっている。消費税収などを財源に保育士の配置を厚くするといった充実策を進めるはずなのに、いまだに財源のあてがない。子育てだけではない。低所得者の介護保険料の負担を軽くする、無年金の人を減らすといった対策も、消費増税の再延期で宙に浮いている。国民は今、さまざまな不安を感じている。子育て、医療や介護、雇用、貧困・格差の拡大……。これらを解消していくために社会保障を立て直す。そのために必要な財源を確保する。一体改革で示した対策は国民への「約束」であり、いずれも喫緊の課題ではなかったのか。約束をなし崩しにしているのは、首相が率いる自民党だけではない。一体改革をともにまとめた公明党や民進党も消費増税の延期に賛成し、安定した財源のめどがないままにもっぱら充実策を言っている。置き去りになっているのは、充実・強化の約束だけではない。少子高齢社会のもとで制度をどう維持していくかという議論が一向に聞こえて来ない。
■高まる抑制の圧力
 日本の総人口が減っていく一方で、2025年には「団塊の世代」が75歳以上になり、社会保障費は増えていく。医療費は今より約1・4倍、介護費は約1・9倍に膨らむと見込まれている。国の財政は国債発行という将来世代へのつけ回しに頼っており、国の借金は1千兆円を超えてなお増え続ける。社会保障費は政府予算の約3割を占め、財政難と表裏の関係にある。一体改革では、消費税の増税分をすべて社会保障に充てるとされたが、その大半は借金が増えるのを抑えるのに使われ、新たな「充実策」には約1%分しか回らない。社会保障を支える財政の状況はそれほど厳しい。さらに、消費税率を10%にしてもそれだけでは借金の増加は止まらない。安倍政権は、社会保障費の毎年度の増加を高齢化に伴う「自然増」程度に抑える目標を掲げている。そのための方策として、高齢者の医療費の負担増、介護保険の利用者負担の引き上げ、要介護度の低い人へのサービスの見直しなどが検討課題に挙がっている。しかし本格的な議論は参院選後に先送りされた。
■政治の役割は何か
 選挙では充実ばかり唱え、終わった途端に負担増や給付減を言い出すのか。そんなやり方は、政治や社会保障への国民の不信を強めるだけだろう。制度のほころびを繕い新たなニーズに対応する。全体の費用はできるだけ抑えていく。これをどう両立させるのか。経済的に余裕のある人には、高齢者であっても負担を求める流れは加速するだろう。だが、それにも限界はある。これ以上の給付の抑制・削減が難しければ、国民全体でさらなる負担増も考えねばならない。既存の制度をどう見直し、限りある財源をどこに振り向けるのか。必要な財源をどうやって確保していくか。選択肢を示し、合意を作っていくことは、まさに政治の責任だ。税・社会保障一体改革は、与野党の枠を超えて「給付」と「負担」の全体像を示し、国民の理解を得ようとする「覚悟」だったはずだ。だが、参院選に臨む3党の姿勢は一体改革の土台を自ら掘り崩すかのような惨状である。このままずるずると「一体改革前」へと後戻りしていくのか、それとも踏ん張るのか。3党の責任はとりわけ重い。

<小・中・高校>
*2-1:http://mainichi.jp/articles/20160510/dde/041/100/065000c
(毎日新聞 2016年5月10日) 馳文科相、「脱ゆとり」を宣言 次期指導要領 「知識軽視」誤解解く
 馳浩文部科学相は10日、今年度中に予定されている次期学習指導要領改定に向け、授業内容を減らしたかつての「ゆとり教育」には戻らないとする見解を公表した。次期指導要領では、児童・生徒が討論や体験などを通じて課題を探究する学習形態「アクティブ・ラーニング」の全面的な導入を目指しているが、教育関係者の一部から「ゆとり教育の理念を復活させる」と誤解されていることを受けた対応という。馳氏は10日の閣議後の記者会見で「『ゆとり教育』が『緩み教育』というふうに間違った解釈で現場に浸透してしまった。どこかで『ゆとり教育』との決別宣言を明確にしておきたいと思った」と話した。馳氏は「教育の強靱(きょうじん)化に向けて」と題する見解で「学習内容の削減を行うことはしない」と強調。「『ゆとり教育』か『詰め込み教育』かといった、二項対立的な議論には戻らない。知識と思考力の双方をバランスよく、確実に育む」とした。そのうえでアクティブ・ラーニングについて「知識が生きて働くものとして習得され、必要な力が身につくことを目指すもの。知識の量を削減せず、質の高い理解を図るための学習過程の質的改善を行う」と説明している。指導要領の改定はほぼ10年ごとに実施される。前回の2008年は、詰め込み教育の反省で1970年代から軽減されてきた授業内容を約40年ぶりに増やし、「脱ゆとり」と呼ばれた。今年度改定される指導要領では、思考力や表現力の育成を重視する方針だが、これが一部で「知識の軽視」との誤解を招いており、改めて文科省としての考え方を示したという。

*2-2:http://qbiz.jp/article/89285/1/
(西日本新聞 2016年6月22日) ライオンズクラブ活動紹介パネル展 福岡市・天神
 福岡市で24日に開幕する「第99回ライオンズクラブ国際大会」にちなんで、クラブの活動を紹介するパネル展が21日、福岡市・天神のエルガーラ・パサージュ広場で始まった=写真。県内116団体のクラブの歴史のほか、献血や青少年育成など社会奉仕活動を約120枚のパネルで説明。岩田屋本店本館7階では22日から、来年創立100周年を迎えるライオンズクラブ国際協会の取り組みを紹介するパネル展も開催される。いずれも国際大会が閉幕する28日まで。国際大会は福岡ヤフオクドーム(中央区地行浜)をメイン会場に、国内外から約3万8千人が訪れる。パネル展の問い合わせは大会ホスト委員会事務局=092(407)8199=へ。

<大学>
*3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12337211.html
(朝日新聞 2016年5月1日) 東京5大学合格、大半が首都圏高 東大・早慶など、30年で1.4倍
 東京大など東京都内の有名5大学で、今春の入試合格者の75~55%を首都圏の高校出身者が占め、30年間で約1・4倍に増えていることがわかった。下宿生の経済負担増などが背景にあるとみられる。地方出身者の東京離れを食い止めようと、大学側は奨学金新設などの対策を始めている。進学情報誌を発行する大学通信と毎日新聞出版は毎年、主要大学の出身高校別合格者を調査。1986年と2016年のデータ(16年分は朝日新聞出版も調査に参加)を元に、東大、東京工業大、一橋大、早稲田大、慶応義塾大の合格者(早大と慶大は一般入試のみ対象)を分析した。その結果、首都圏(東京都、埼玉、千葉、神奈川県)の高校出身者は、東大は86年の47・3%に対し今春は55・2%。ほかは東工大61・6%→74・7%▽一橋大44・7%→69・4%▽早大51・8%→73・9%▽慶大56・0%→72・6%と、いずれも増えていた。東京地区私立大学教職員組合連合の15年度の調査では、都内で下宿する私大生への平均仕送り月額は86年度比で16%減少。一方で家賃は76%上がった。また、受験指導に力を入れる学校が多い私立中高一貫校は、全国の約4割が首都圏にある。高校関係者や専門家からは、こうしたことが影響しているとの指摘がある。学生の画一化などを懸念する大学側は、地方出身者の確保策に乗り出した。早大や慶大は近年、地方出身者向けの奨学金制度を新設している。

<職場>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12364251.html
(朝日新聞 2016年5月19日) 三菱自社長、引責辞任へ 燃費偽装、新たに5車種
 三菱自動車は18日、すでに燃費偽装が発覚している軽自動車の4車種(日産自動車向け含む)のほか、新たに5車種でデータを机上計算する偽装があったと発表した。不適切な測定をしていた車種を含め、軽4車種を含む13車種のうち12車種で問題があった。相川哲郎社長と中尾龍吾副社長は、6月24日の株主総会日付で引責辞任する。相川氏は「不正があった開発部門に長く在籍してきた。その風土で育った私が社長として残っていては、改革の妨げになる」と辞任理由を語った。軽4車種以外の販売は続ける。燃費を測り直したところカタログ値との隔たりが最大3%ほどにとどまったとして、中尾氏は「お客さまに迷惑をかけるレベルではない」と述べた。三菱自によると、新たに偽装がわかった5車種は、人気のスポーツ用多目的車(SUV)やミニバン。法定の実走試験を省き、机上の計算によって燃費測定の元データとなる「走行抵抗値」を出していた。「RVR」は別のセダンのデータを元に机上計算。「アウトランダー」「パジェロ」「(プラグインハイブリッド車の)アウトランダーPHEV」と「デリカD:5」のガソリン車は、車体に所定の重さを加えない軽い状態で実走試験をし、机上計算でデータを補正した。さらに「パジェロ」のガソリン車では、空気抵抗が小さい別の車のデータを流用する偽装も見つかった。また、これらと一部重複する6車種では、国の定めと違う不適切な方法で走行抵抗値を測定。試験日や天候も、国土交通省に事実と違う報告をしていた。生産・販売を止めている軽4車種では、三菱自本社の性能実験部幹部が、子会社「三菱自動車エンジニアリング」の管理職にデータ不正を指示していたことを正式に認めた。相川氏の後任社長は未定。今月12日に日産との資本業務提携で基本合意しており、年内をめどに34%の出資を受けて日産傘下に入る方針。その後、新たな経営陣で再建をめざす。益子修会長兼最高経営責任者(CEO)は「新体制が誕生するまで現職にとどまる」としつつ、その間の報酬はすべて自主返納するという。

*4-2:http://mainichi.jp/articles/20160515/k00/00m/040/112000c
(毎日新聞 2016年5月15日) 「リケジョ」人材ネット創設へ
 15日に茨城県つくば市で開幕する主要7カ国(G7)科学技術相会合の共同声明に、女性研究者に特化した国際的な人材ネットワークの創設が盛り込まれる見通しであることが分かった。議長を務める島尻安伊子科学技術担当相が14日、毎日新聞などの取材に明らかにした。同会合では「保健医療」「海洋の未来」など六つのテーマが議論される。このうち「次世代の人材育成」の議題について、島尻担当相は研究人材の多様性確保の観点から、女性研究者を支える国際協力の必要性を強調。17日にまとめる共同声明「つくばコミュニケ」に、▽国際人材ネットワーク作りの支援▽女性研究者の模範例の共有▽男女差に対する偏見解消▽女性研究者が活躍できる政策や職場環境の整備−−を盛り込む考えを示した。国際人材ネットワークでは、海外の企業や研究機関の採用情報などを共有し、行き来しやすくする仕組みを整えることで、女性研究者のキャリアアップにつなげてもらうという。科学技術分野では、男性に比べ女性の割合が少ない国が大半。日本の女性研究者は約13万人で、20年前からほぼ倍増したが、全体に占める割合は2014年で14.6%と国際的に最低レベル。英国(37.8%)やイタリア(35.5%)など同会合参加国と比べ著しく低い。島尻担当相は「仕事と家事の両立などで困っている日本のリケジョ(理系女性)に海外のロールモデルを示せば大いに刺激になるし、国内の対策にも生かせる」と話した。


<給食費と食育・食器>
PS(2016年6月27日追加):*5のように、公立小中学校の給食費は無償化してよいと私も思うが、文科省は「財源や給食を実施していない自治体との公平性を考える必要がある」として、いつものとおり最悪に合わせる形の公平性を主張している。しかし、「給食は食育にも活用されており、教材でもある。無償とする義務教育の範囲に給食を入れるべきだ」というのは尤もだ。また、食育には食材だけでなく食器の使い方も含まれるため、磁器による食器の画像を掲載しておく。

  
   従来の食器              強化磁器の食器           佐賀県鳥栖市の食器
(エサの入れ物のようだ) (強化磁器はよいが、模様がイマイチだにぱっ)   (トレイ以外はGood)

*5:http://qbiz.jp/article/89584/1/
(西日本新聞 2016年6月27日) 給食費、負担に地域差 九州の市町村、3割が補助制度
 公立小中学校の給食費について2015年度、九州7県の全233市町村の約3割、64市町村が全額または一部を補助していることが西日本新聞のまとめで分かった。人口減対策で子育て環境を整えようと補助制度を導入する自治体は増加傾向にある一方、食材費高騰から値上げも相次いでおり、負担の二極化が進んでいる。保護者からは地域間格差の是正、一律無償化を求める声も出ている。九州の各県教育委員会によると、64市町村は生活保護や就学援助とは別に、すべての小中学生無料や、小1と中1が無料、第2子以降は半額などの補助制度を設けている。県別では鹿児島が21市町村と最も多く、熊本(15市町村)、福岡(14市町村)、宮崎(6町村)、佐賀(5市町)、長崎(3市町)と続いた。大分はゼロだった。制度導入の背景には、人口減少に対する自治体の危機感がある。民間提言機関による「消滅可能性都市」に含まれる佐賀県太良町。手厚い支援で子育て世代の流入と流出防止を図ろうと、15年度に全額無償に踏み切った。16年度も制度を新設、拡充する自治体は増え、福岡県古賀市は第3子以降を無償化(これまでは半額)。熊本県人吉市も全ての児童生徒に対する月額千円の補助を始め「最終的には全額補助が目標」(担当者)という。宮崎県小林市は、ふるさと納税を財源に半額補助に乗り出している。一方、給食費は近年の消費税増税や食材費の上昇を受けて値上がり傾向にある。文部科学省の調査によると、14年度の平均月額給食費は小学校4266円、中学校4882円。5年前に比べてそれぞれ153円、200円上がった。福岡市は15年度、小学校で300円増の月額4200円、中学校は400円増の同5千円に値上げした。中1と小4の母親(40)=福岡市西区=は「わずかな値上げでも毎月必要な給食費は負担感が大きい。地域によって異なるのは不公平でおかしい」と疑問の声を上げる。一律無償化について、文科省健康教育・食育課は「財源や給食を実施していない自治体との公平性を考える必要がある」との姿勢。名古屋大大学院の中嶋哲彦教授(教育行政学)は「給食は食育にも活用されており、教材でもある。無償とする義務教育の範囲に給食を入れるべきだ」と指摘している。学校給食 公立小中学校では、学校給食法に基づき学校を設置する各自治体などが実施。食材費は保護者負担、給食にかかる施設整備や人件費は自治体の負担と定めている。文部科学省によると、公立の小学校の99.7%、中学校の93.7%で実施(2014年度)。また、同省の12年度の抽出調査では、児童生徒の0.9%が給食費を納めておらず、その理由の6割は「保護者の責任感や規範意識の問題」、3割が「保護者の経済的な問題」などとなっている。政府の経済財政諮問会議の民間議員は4月の同会議で、給食費の免除制度を充実させるよう政府に提言している。

<IT教育とデジタル教科書>
PS(2016年6月27日追加):*6-1のように、タブレット端末の導入が全3学年に行き渡った佐賀県の県立高で来年度以降に導入する学習用パソコンをキーボード付にするかどうか検討する会合が開かれたそうだが、キーボード操作は、(日本に限らない)大学に進んだり、会社で仕事をしたりして文章を書く時に必要不可欠であるため、キーボード操作にも慣れさせておくことを、私は薦める。
 そのような中、*6-2のように、生徒の上達と比較して、情報を管理する「校務支援システム」のセキュリティーは甘すぎたらしく、「最先端の佐賀県システムが破られた」として文科省担当者がショックをあらわにしたそうだ。しかし、小中学生3万4,739人、高校・特別支援学校などの県立学校生5万6,590人、教職員7,987人という大量の個人情報をまとめて保存し、校外からアクセスできるシステムにしておくのは、個人情報の意味やセキュリティーについてあまりにも疎すぎると言わざるを得ない。
 なお、*6-3のように、最近は「デジタル教科書」があり、私も雑誌「ニュートン」が作ったデジタル教科書で地球46億年の大陸移動や日本列島ができる様子を動画で見たことがあり、とてもわかりやすくて最近の生徒を羨ましく思ったほどだ。しかし、デジタル教科書は紙の教科書のようにめくったり全体を一覧したりすることはできないため、紙の教科書と併用するのがよいと考える。

*6-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/320345
(佐賀新聞 2016年6月8日) 県立高の使用端末、次期機種選定で会合
 生徒一人一人へのタブレット端末の導入が全3学年に行き渡った県立高について、来年度以降に導入する学習用パソコンの在り方を協議する専門委員会の初会合が7日、佐賀県庁で開かれた。学校現場の意見を踏まえながら次期機種選定に向け、秋ごろ佐賀県教委に提言する。専門委は藤原久嗣県情報統括監や学校長ら7人で構成。渡辺健次・広島大大学院教授が委員長を務める。機種の選定はせず、キーボード付きのタブレットで続けていくかどうかや、OS(基本ソフト)は何にするかなどを論議する。委員からは「英語のリスニング学習で効果的に使われている」「工業系資格試験対策で作業手順を何度も動画で確認できる」といった事例が報告された。「今まで構築した教材がそのまま使えるか不安」と現行機種を望む声や、使い勝手向上のため変更してもよいとする意見も紹介された。渡辺委員長は「県民の中には導入を『やめろ』という意見もあるかもしれない。必要性を説明するためには、ICT利活用を県の教育目標でどう位置付けるか、もう一度確認しないといけない」と語った。

*6-2:http://mainichi.jp/articles/20160627/k00/00e/040/156000c
(毎日新聞 2016年6月27日) 「最先端の佐賀県システム破られるとは」
●文科省担当者はショックをあらわに
 「ICT(情報通信技術)化が最も進んでいる佐賀県のシステムが破られた。とても驚いている」。佐賀県立高校の生徒の成績などが流出した事件で、文部科学省の担当者はショックをあらわにした。同省は27日、佐賀県教委に事実関係の早急な報告を求めた。全国の公立小中高校の普通教室に設置されている電子黒板の整備率(2015年3月時点)は全国平均が9%なのに対し、佐賀県は76.5%で全国1位。パソコンの整備状況も生徒2.6人に1台と全国トップで、国が第2期教育振興基本計画(13〜17年度)で定める目標の3.6人に1台を唯一超えており、ICT化の先進地域として知られていた。同省によると、児童や生徒の学籍や成績などの情報をコンピューターで管理するシステムは「校務支援システム」と呼ばれ、各地の学校で導入が進んでいる。教職員同士が情報を共有することできめ細かな指導をしたり、教員の校務負担の軽減を図ったりするメリットがあるとされる。佐賀県のシステム「SEI−Net(セイネット)」は全国に先駆けて13年度から導入された。学校側が授業支援のためのデジタル教材を提供し、児童生徒が家庭でダウンロードして予習や復習に利用したり、ネット経由で相談に乗ったり、学校行事の確認をしたりすることも可能にしていた。佐賀県教委によると、このシステムには5月1日現在で小中学生3万4739人、高校や特別支援学校などの県立学校生5万6590人、教職員7987人の情報が登録されていた。教職員が成績や住所などの個人情報にアクセスするには、校内ネットワークに接続したうえでIDとパスワードを入力する必要がある。児童生徒はIDとパスワードを入力すれば、校外からでもネットに接続して、自分のテスト結果や電子教材などは閲覧できるという。

*6-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10206/318376
(佐賀新聞 2016年6月2日) デジタル教科書、20年度から、当面は紙と併用、文科省中間案
 文部科学省の有識者会議は2日、タブレット端末などを使う「デジタル教科書」を、次期学習指導要領が実施される2020年度から、紙の教科書と併用する形で導入するとの報告書の中間まとめ案を大筋了承した。4月に示した案から大きな変更はなかった。年内に報告書をまとめる予定。当面は紙の教科書を基本とし、単元によってデジタル版だけを使う形を認める。教育効果や健康への影響などを調べた上で、教育委員会の判断で紙かデジタル版のどちらかを選ぶ制度も将来的には考えられるとした。


<社会科の学び方>
PS(2016.6.28追加):*7で公民科が適切に教えられるのか否かは不明だが、日本国憲法の理念は正しく教えるべきである。また、地理と歴史は相互関係が深く、時代によって国境線も変化し、日本は古代から世界と無関係に存在していたわけではない。そのため、日本史と世界史を総合的に学習するのは真実を理解するためによいことで、そうすることによって社会科が単なる暗記科目ではなく、人類の歴史の壮大な物語として理解できるだろう。

*7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160628&ng=DGKKASDG27HDD_X20C16A6CR8000 (日経新聞 2016.6.28) 現代社会を廃止 高校必修、公共・歴史総合に 次期指導要領で中教審案
 中央教育審議会の専門部会は27日、2022年度以降に導入する高校の次期学習指導要領の地理歴史・公民について、科目の構成やおおまかな学習内容を取りまとめた。公民科は選挙権年齢の18歳への引き下げを踏まえ「公共」を新設。法律や経済の仕組みに加え、社会保障の現状などを学び問題点を理解する。学習内容が重複する「現代社会」は廃止する。地理歴史科は近現代史の理解度が低いことから、18世紀以降を中心に日本史と世界史を関連づけて学ぶ「歴史総合」を新必修科目とする。近代化やグローバル化の流れを学習の中心に据える。近代以前の歴史も含めてより深く学習する「日本史探究」「世界史探究」は選択科目とする。「地理総合」も新たに必修科目に。環境問題など、全世界が直面する共通の課題と国際協力の在り方などを学ぶ。地図情報をコンピューターで加工する「地理情報システム(GIS)」の使い方も学習する。選択科目の「地理探究」は世界の民族・宗教や産業、資源などをより深く知ることを目指す。現行の学習指導要領では、公民科は「現代社会」1科目か「倫理」「政治・経済」の2科目が必修。地理歴史科は「世界史A」「世界史B」から1科目、「日本史A」「日本史B」「地理A」「地理B」から1科目が必修となっている。


<地方の人手不足>
PS(2016年7月2、3日追加):*8-2の高齢化率が高いという結果は、出生率や死亡率の統計を見れば1980年代から予想できたことで、その原因を究明して政策を作るのが当然だったわけである。しかし、*8-3の人手不足をカバーする方法もあり、それは日本人女性や高齢者を採用したり、雇用が不足している国から外国人労働者を採用したりすることだ。そのため、外国人労働者の生活基盤を準備した上で、九州でまとまって海外募集を行ってはいかがかと考える。なお、社会保険の観点から、女性・高齢者・外国人労働者も正規労働者として人権をないがしろにしない採用をすべきだ。

     
主な企業の外国人採用     高齢者の雇用条件     女性管理職比率   給与・雇用・議員数 
2016.5.3西日本新聞    <同一労働同一賃金?>   <何とかかんとか言って日本の職場
                                       における男女平等度は低いので、
                                       *8-1の憲法27条、労働基準法、
                                       男女雇用機会均等法を護るべきだ>

*8-1:http://www.jicl.jp/kenpou_all/kenpou.html 日本国憲法(抜粋)
第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。

*8-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS29H27_Z20C16A6000000/?n_cid=NMAIL002 (日経新聞 2016/6/29) 全都道府県で子供より高齢者多く 15年国勢調査人口
 総務省は29日、2015年国勢調査の抽出速報集計結果を公表した。65歳以上の高齢者人口は10年の前回調査比で14%増の3342万人となり過去最高だった。高齢者の割合は26.7%で、5年前の調査に続き世界各国で最も高い。15歳未満の子ども人口の割合も12.7%と過去最低で、調査開始以来初めて全都道府県で高齢者人口が子ども人口を上回った。労働力人口は5年間で294万人減少した。15歳以上人口に占める働く意欲のある人の比率である労働力率は59.8%と10年比1.4ポイント低下した。少子高齢化により全体の就労者が減るなか、女性の労働力率は49.8%と0.2ポイント上昇した。女性は25~29歳の労働力率が初めて8割を超え、35~39歳も72.4%と4.4ポイント上昇。出産による退職などで女性の30歳代の労働力率が下がり、育児後に再び上昇する「M字カーブ」の底が上昇した形だ。

*8-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/329364
(西日本新聞 2016年7月2日) 豊かさはどこに(上)雇用 人材確保に悩む中小企業
■大手の求人増、経営に逆風
 「自動車メーカーが押し上げ、大手企業の夏のボーナスは過去3番目の高水準です」。喜々として伝えるテレビのアナウンサーに、佐賀市の自動車部品メーカーの専務(35)はいら立ちを隠さなかった。「うちの社員が変に期待してしまうから、こんなニュースは流してほしくない」。これ以上、賃上げをする余力がないことを強調した。安倍政権の経済政策「アベノミクス」は円安を誘導し、自動車メーカーなど輸出企業の業績を回復させた。その孫請け企業が潤う「トリクルダウン効果」はあったのか。「何も恩恵はない」と専務。コスト削減ばかり求められ、受注単価は横ばいか微減。受注量はリーマンショック前の水準にすら戻っていない。むしろ円安で原材料費が10%値上がりし、利幅は目減りしている。安倍晋三首相が参院選で強調する雇用改善。佐賀労働局によると、県内の5月の有効求人倍率は1・11倍で、バブル期の水準までに回復した。6カ月連続で1倍を超える。年度別にみても、アベノミクスが始まった2012年から急速に数値は上向いている。自動車部品メーカーの専務はそれも実感できずにいる。毎年数人採用してきた新入社員は期待をかけて仕事を丁寧に教えても、半年たたずに辞めてしまう。「ものづくりに魅力を感じず、楽で給料がいい業種に移ってしまうのか」。若手の引き留め策で新たな手当を導入し、月給を最大28万円に引き上げた。それでも求人票には反応がない。今春卒の高校生の県外就職率は44・3%。過去10年で4番目に高い水準となった。佐賀市内の高校の進路担当教諭は2年前から、大手・中堅の製造業、建設業の求人が県外から急増していると明かす。「保護者が安定を求めるからなのか、優秀な学生ほど大企業に挑戦したがる」と説明する。先の自動車部品メーカーの従業員は約20人で、平均年齢は30代後半。一人前に育てるには5年かかり「50代の工場長がしっかりして、仕事が回る今のうちに技術を継承したいのだが…」と専務は危機感を口にした。派遣社員は短い期間で入れ替わるため育成が難しいだけに、産業用ロボットの導入を本気で検討し始めた。人材不足は製造業だけの問題ではない。佐賀市のIT企業は、年3回の会社説明会を倍に増やした。社員だけでは対応できなくなり、外部に業務委託せざるを得なくなった。経営幹部はコストがかさむ現状に「首都圏の雇用改善が私たちの足かせになっている」と困惑する。円安の恩恵を享受してきた大企業も、英国の欧州連合(EU)離脱で風向きが変わった。県内の大手電子部品メーカーは「円高が1円進むだけで6億円の利益が吹き飛ぶ。コスト削減に努める以外に方法はない」。為替リスクに左右される無常感を口にした。


PS(2016年7月3日追加):*9に、「現代の学校教育では美術、音楽の時間がないがしろにされており、活動は実質20分程度で芸術は育たない」と書かれているが、義務教育を3歳から始めれば時間にゆとりがあるため、適時に適切な時間を芸術やスポーツにも当てることができる。しかし、現在、学んでいる知識や服飾技術などもすべて人類の文化に入るため、*9で言う「文化」とは具体的に何なのか書いてなければわからない。また、世界の第一線で活躍できる人を育てるには、時間さえとればよいというものではなく、ベースを教える指導者も本物でなければならない。そのため、児童・生徒に時間の無駄をさせず、その魅力を教えて効果を上げられる人材を、日本人に限らず探してきて揃えるべきだと考える。

*9:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/329649
(佐賀新聞 2016年7月3日) 候補者へ(11) 文化教育の充実を
 現代の学校教育では美術、音楽の時間がないがしろにされている。40分授業なら準備、後片付けもあって活動は実質20分程度。そんなんじゃ芸術は育たない。このような状況は家庭にも悪影響を及ぼし、子どもたちから文化の芽を摘む。世界の第一線で活躍する芸術家を育てるには、まずはベースから。家庭でも文化を愛する教養が育まれるような素地をつくらないと。フランスがそうであるように、芸術は世界中から人を呼び寄せる経済的資源になり得る。芸術や文化に敬意を払う政策を願いたい。

| 日本国憲法::2016.6~ | 03:19 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.6.26 マイナンバー制度による国民の管理しすぎは人権侵害に繋がるということ
   
       2015.6.11西日本新聞     非正規社員数の増加  2015.6.20日経新聞
                                 上
    (注:男女の均等待遇を義務化した改正男女雇用機会均等法が1997年に成立し、
       1999年4月に施行された後の2000年から、派遣社員が目立って増加した)

(1)マイナンバーのリスクについて
1)マイナンバー制度とは
 *1-1に書かれているとおり、政府が導入を決めたマイナンバーは、国民一人一人に番号を割り当て、税・年金・医療・介護等の情報を一括して管理する制度である。最初は、社会保障・税・災害などの3分野に限定していたが、改正法案では、予防接種・検診情報・預金口座への適用を盛り込み、将来は、戸籍・パスポート・証券分野まで拡大を目指すそうだ。

 しかし、プライバシーは、一度漏れたら「覆水盆に返らず」で、頭を下げられたからといって損害が回復するものではなく、多くの情報をまとめればまとめるほどそれが漏れた時の被害は大きい上、その情報を入手したいという動機づけは等比級数的に大きくなる。さらに、その情報を取り扱う人は、日本年金機構から大量の個人情報が流出した事例を見ればわかるように、非正規雇用・派遣社員・契約社員が多い上、正規職員の危機意識も高くはなく、サイバー攻撃の技術と対策はいたちごっこなのだ。

 なお、*1-2のように、日本年金機構は社会保険庁時代から、国民が支払った年金保険料が記録にない「消えた年金」問題があったり、*1-3のように、国民年金の納付率を60%台のまま放っておいたりなど、民間企業では考えられないずさんさがあるが、第一次安倍政権時代にはこれを回復しようとしていたのであるため、これらについて安倍首相が悪いわけではない。この頃、(私の提案で)本人に確認するための年金特別便や年金定期便が送られ始めたことを国民は知っている筈だ。つまり、日本年金機構に、「年金資産は国民から預かった大切な資産だ」という意識が乏しいのが原因であり、その時、たまたまトップにいた政治家を叩いても改善はできないのである。

 それにもかかわらず、*1-6のように、経団連会長は、「マイナンバー制度は生活の利便性と経済性を考えると非常に重要。計画通り遅滞なく進めてほしい」と述べたそうだが、*1-3のように、東京商工会議所もサイバー攻撃を受けて大量の個人情報が流出しており、私は、マイナンバー制度の枠組みと広すぎる連結範囲を見直して、少なくとも税・年金・金融などの所得把握系と医療・介護・教育・保育・生活保護などのサービス給付系の社会保障は、番号を分けるべきだと考えている。

2)マイナンバー制度で、個人情報の守秘義務は保たれるのか 
 *1-4のように、サイバー攻撃は日々巧妙化し、情報セキュリティーを維持するためのシステム構築は非常に遅れており、個人情報が漏れれば、憲法で保障された人権を侵害する可能性が高い。また、情報処理推進機構(東京)の調査によると、2013年度にウイルスに感染、または発見した企業の割合は約7割に上り、情報セキュリティー大学院大の田中教授は「コンピューターウイルスに感染することは避けられず、適切な処理で実害を防ぐことが重要」としている。

 しかし、サイバー攻撃への対策は、攻撃そのものよりも一歩遅れるのが通常である上、完璧な防護システムを作っても人的な情報漏出はなくならない。そのため、個人情報に関する守秘義務が護られるためには、個人情報にアクセスできる人をその情報の重要性と意味が理解できる専門的担当者に限定して守秘義務を課すべきなのである。例えば、市役所の職員、税務職員、年金保険機構の職員、金融機関の職員などが、医療に関する個人情報にアクセスする可能性があるような制度にするのは間違いであり、介護職員に医療情報を開示する場合でさえ、本当に必要な担当者に限定すべきなのである。

3)では、どういうシステムにすべきか
 日本年金機構の事例で述べると、①データベースをインターネットに接続しない ②地方支部との接続は専用線で行う ③個人情報の意味を理解し守秘義務を守れる担当者を使い、非正規社員、アルバイト、派遣社員などの流動性の高い社員を守秘義務のある情報に近づかせない ④守秘義務のある情報の取り扱いに関するマニュアルを定めた上で職員の教育を徹底する などが考えられる。

 これに対し、*1-5のように、標的型攻撃を受けてから、①初期潜入 ②侵入範囲拡大 ③端末内の情報の窃取の3段階に分けて各段階で不正通信の遮断の方法を示し、④事後的に攻撃者を特定しやすくするため、インターネット接続事業者に接続通信履歴を最長1年保存するよう要請する などとしているのは、「国民の情報漏出は、覆水盆に返らずの人権問題である」という意識に欠けており、甘すぎる。

(2)高齢者福祉削減が目的の負担増・給付減について
 *2-1のように、マイナンバー制度を活用して医療費の高所得者負担増が検討されており、金融資産の保有状況を考慮した仕組みを検討して、医療費や介護サービスの利用料に関して、高所得者に負担増を求めるそうだ。しかし、所得の再配分は、所得税・相続税・保険料の支払いで果たされるため、(保育料もその例だが)同一のサービスを提供する時に利用者の負担額を変えるのは、税や保険料の二重負担となって理論的に誤りである。

(3)医療費などの社会福祉と税の連結の妥当性について
 *2-2のように、日経新聞でマイナンバー制を使って医療費控除の領収書を不要にすると書かれている。これは、税務当局がマイナンバー(税と社会保障の共通番号?)でひも付けられる健康保険のデータを使うことでのみ実現するが、本人の許可なく税務当局が健康保険のデータを閲覧できるようにすると、(1)2)で述べた問題が生ずるので、適切ではない。

<政府のセキュリティー意識>
*1-1:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-244338-storytopic-11.html
(琉球新報社説 2015年6月16日) マイナンバー 拙速な導入は危な過ぎる
 政府が安全性を強調すればするほど、疑念は膨らむ。立ち止まって考えるべきではないか。国民一人一人に番号を割り当て、税や年金などの情報を管理するマイナンバー制度の法改正案が国会で審議中だ。マイナンバー法は2013年に成立し、来年1月に運用開始の予定だが、政府は運用前に適用範囲を拡大する法改正案を提出した。当初は社会保障と税、災害の3分野に限定していた。だが改正法案では予防接種や検診の情報、預金口座への適用も盛り込んだ。安倍晋三首相は「(将来は)戸籍、パスポート、証券分野までの拡大を目指す」とまで言い切った。日本年金機構から大量の個人情報が流出したばかりだ。新たに適用を目指す分野は個人にとって秘匿したい分野ばかりである。ひとたび流出すれば被害はこれまでと比較にならないほど甚大だろう。政府は「仮に一つの機関から漏えいしても他の情報が芋づる式に漏れる制度設計にはなっていない」と説明する。だがこうした情報漏えいはいつも対策と攻撃のいたちごっこだ。現状では芋づる式に引き出せないとしても、未来永劫(えいごう)そうだとは限らない。情報が関連づけられれば、それだけリスクが高まると見るのが自然ではないか。現状でも、例えば一部情報を基に偽造免許証が造られることもあるのは、過去の犯罪で実証済みだ。偽造免許証を基に住所などの情報を書き換えれば、本人に成り済ますことも可能である。対象情報の大幅拡大は危険過ぎる。年金機構は制度の中軸ともいえる機関だ。そこからですら簡単に流出したのである。過去には財務省、農水省、外務省からも流出した。今後は絶対に流出しないなどと、どうすれば信じられるだろう。加えて、今後は民間分野も対象になる。企業にとって対策は人手や資金の面で負担が重い。県内企業でも現時点で対策を取っているのは2割にすぎず、情報漏えい防止策に限れば0%だ。こんな状態で拙速に導入する必要がどこにあろう。プライバシーは「覆水盆に返らず」である。ひとたび流出すれば被害の完全な回復は不可能だ。サイバー攻撃が巧妙化する現在、もはや攻撃は防ぎ得ないとの前提に立つべきだ。国民を守れない制度の安易な導入は許されない。法改正は見送り、来年の施行も延期して必要性をもう一度吟味すべきだ。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015060302000136.html
(東京新聞 2015年6月3日) 「消えた年金」幕引き直前 国民の不信 再燃も
 安倍政権は日本年金機構の年金情報約百二十五万件の外部流出に神経をとがらせている。第一次安倍政権は、支払った年金保険料が記録にない「消えた年金」など年金記録問題が打撃になって退陣した。記録回復に向け設置した組織を廃止する矢先の新たな問題発覚に対し、安倍政権は官邸主導で対応する方針だ。菅義偉(すがよしひで)官房長官は二日の記者会見で「機構の認識の甘さがあった。責任は免れない」と批判した上で「受給者の皆さんになりすましなどで迷惑を掛けないよう、政府を挙げて対応策に全力で取り組んでいる」と検証委員会などを立ち上げ、原因究明や再発防止策を徹底する考えを強調した。機構を所管する厚生労働省任せにせず官邸主導で問題解決に乗り出すのは、安倍政権にとって年金問題は苦い記憶があるためだ。第一次政権の二〇〇七年、持ち主不明な「宙に浮いた年金」約五千万件などの年金記録問題が発覚。旧社会保険庁の不祥事が次々と明るみに出る中、政権の対応が遅れ国民の不信が高まった。安倍首相は「最後の一人まで記録をチェックし年金を支払う」と理解を求めたが、同年の参院選で惨敗し退陣につながった。国民からの記録回復の申し立てを審査する総務省の第三者委員会は六月末で廃止する。「消えた年金」問題に幕引きを図ろうとしていたところだけに、今回の情報流出がきっかけとなって、国民の年金不信が再燃する可能性がある。国民一人一人に番号を割り振るマイナンバー制度でも、情報流出への懸念が高まる。一六年一月の制度開始に向け、国会で審議が進むマイナンバー法改正案に関し、菅氏は「今回の件はあったが、対応策を取る中で、早期成立に努力していきたい」と述べた。
◆情報流出問題をきょう集中審議
 衆院厚生労働委員会は二日の理事懇談会で、日本年金機構の年金情報が流出した問題に関し、三日に集中審議を実施すると決めた。民主党など野党は塩崎恭久厚労相らの監督責任や、日本年金機構の対応などを厳しく追及する構えだ。与党は当初、審議中の労働者派遣法改正案の質疑を求めたが、情報流出の実態解明を優先すべきだとの野党の主張を受け入れた。

*1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/201663
(佐賀新聞 2015年6月26日) 国民年金の納付率60%台、2年連続、14年度
 厚生労働省は26日、2014年度の国民年金保険料の納付率は63・1%で前年度から2・2ポイント改善したと発表。2年連続で60%台に乗り、上昇は3年連続。景気の回復に加えて、未納者への督促強化が上昇に結び付いたとしている。ただ、所得が低く納付の全額免除や猶予を受けている人が加入者全体の3分の1に当たる602万人いる。免除者などを含めて計算した実質的な納付率は40・6%にとどまる。全都道府県で13年度よりも納付率が上昇。島根の76・7%が最も高く、新潟75・3%、富山74・4%と続いた。最低は沖縄の45・2%で、大阪54・0%、東京58・8%だった。

*1-4:http://qbiz.jp/article/64147/1/
(西日本新聞 2015年6月10日) 標的拡大、遅れる防御 サイバー攻撃巧妙化、東商PC感染
 東京商工会議所が日本年金機構と同じくメールを使ったサイバー攻撃を受け、大量の個人情報が流出した。石油連盟も同様の攻撃を受けていたことが発覚、ハッカーの標的は省庁や大企業から業界団体や中小企業に広がってきた。手口も巧妙化し、防御策は追い付いていないのが実情だ。
@標的型メール
 「職員への教育が不足していたと言わざるを得ない」。10日に記者会見した東商の高野秀夫常務理事は、沈痛な表情で謝罪した。東商の会員は主に中小企業で、情報セキュリティー対策が十分でない会社も多い。東商はサイバー攻撃の防止策などのセミナーを開き、専用窓口も設けて会員を指導してきた。それだけに、今回のウイルス感染は「恥ずかしい」(担当者)との声が漏れる。特定の部署や職員を狙いウイルスを忍び込ませたメールを送る「標的型メール」は、年金機構に対する攻撃と同じ。受け取る側の業務に関連した表題や内容に偽装しているため、不用意に開けてしまうことが多い。東商では個人情報を保管するファイルにパスワードが設定されていなかったという甘さもあった。
@踏み台に利用
 東商や石油連盟のような業界団体は、多くの加盟企業や関係者の名簿を保有、管理している。情報セキュリティーの専門家の間では、攻撃者はそうした情報が狙いだったとの見方が出ている。また、攻撃対象は中小企業にも広がっている。大企業と取引がある一方で、セキュリティー対策は大企業より甘いとされ、中小を「踏み台」に大企業のシステムへの侵入を図るといわれる。独立行政法人の情報処理推進機構(東京)の調査によると、2013年度にウイルスに感染、または発見した企業の割合は約7割に上る。従業員300人未満の企業に限っても6割弱と高水準で、企業規模にかかわらず被害は広がっている。中でも、同機構に寄せられた標的型メールに関する相談件数は、13年の97件から14年は509件と5倍以上になった。「同僚や取引先からのメールを装うなど、開封させるための文面が巧妙になっている」と同機構は指摘する。
@「感染不可避」
 菅義偉官房長官は10日の記者会見で「(東商が)原因の分析や対処をしっかりするように、経済産業省を通じて指導していく」と述べた一方、「政府も気を引き締めて対応していく必要がある」と強調した。国会では連日のように年金情報流出問題の集中審議が開かれ、再発防止策を求める声も強い。情報セキュリティ大学院大の田中英彦教授は「コンピューターウイルスに感染することはもはや避けられない。いかに早く、適切な処理で実害を防ぐかが重要だ」と話す。攻撃を受けた企業や組織は、積極的に情報を開示すべきだとも田中氏は指摘する。「攻撃が広範囲に及び、類似の手口やウイルスが見つかることもある。サイバー攻撃対策は、官民一丸で取り組まなければならない」
◆セミナー名簿など1.2万人分の情報流出
 東京商工会議所は10日、延べ1万2139人分の会員企業の個人情報が流出した恐れがあると発表した。ウイルスに感染した電子メールの添付ファイルを開封したことが原因とみられる。警視庁公安部は不正指令電磁的記録供用容疑などを視野に捜査を始めた。東商の高野秀夫常務理事は東京都内で記者会見し「多くの方々に迷惑、心配をかけ、深くおわびする」と謝罪した。サイバー攻撃の一種で、メールに添付されたファイルを開くとウイルスに感染する「標的型攻撃」とみられる。日本年金機構(東京)の年金情報が大量に外部に流出した問題もウイルスメールが原因だった。流出した疑いがある個人情報は氏名や住所、メールアドレスなどで、銀行の口座番号といった金融関連の情報はないという。東商の国際部が主催したセミナーの参加者名簿が主体で、一部に会員企業以外の個人も含まれる。東商によると、ウイルスメール1通が送られ、職員1人が開封し、この職員のパソコン(PC)1台が感染した。5月11日にセキュリティー関連の専門機関から不審な信号を検知したと指摘を受け調査を依頼。22日に感染が判明した。6月3日に警視庁丸の内署に相談した。東商は東京23区内の中小企業が加盟する経済団体で会員数は3月末現在で約7万7千。経営支援や政策提言などを業務としている。

*1-5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150622&ng=DGKKASFS22H0M_S5A620C1MM0000 (日経新聞 2015.6.22) 情報盗むメール、全機関で遮断 政府がサイバー新防衛策 通信事業者は履歴を最長1年保存
 日本年金機構から年金情報が流出した問題を踏まえた政府のサイバー対策が明らかになった。攻撃者がコンピューターから情報を抜き出すウイルスを秘めた「標的型メール」を送った場合、それを遮断する措置を特殊法人を含めたすべての政府機関に徹底させる。政府が月内にも閣議決定するサイバーセキュリティ戦略に盛り込む。年金情報の流出問題では日本年金機構の職員がインターネットに接続した端末で個人情報を扱うなど情報管理の甘さが指摘されている。政府機関向けの対策は内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が指針を作成。各省庁だけでなく日本年金機構など特殊法人や独立行政法人にも順守するよう求める。指針は政府機関の端末がウイルス感染したことを前提とし、端末から情報が流出しないよう対策の手立てを示す。具体的には、標的型攻撃を(1)初期潜入(2)侵入範囲拡大(3)端末内の情報の窃取――の3段階に分け、各段階で不正通信の遮断の方法を示す。攻撃者がファイアウオールを破って機関内のパソコンに侵入した場合、ほかのパソコンと遮断する手法を示している。政府は攻撃者を特定しやすくするため、インターネット接続(プロバイダー)事業者には、個人利用者がインターネットに接続した通信履歴を最長1年保存するよう要請する。総務省の指針を月内にも改正する。ネットに接続する際に必要となるIPアドレスをプロバイダー事業者が割り当てた記録を消去しないよう求める。保存期間は原則として半年、必要に応じ1年とする。

*1-6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150609&ng=DGKKASFS08H4T_Y5A600C1EE8000 (日経新聞 2015.6.9) 経団連会長「計画通りに」
 経団連の榊原定征会長は8日の記者会見で、日本年金機構の個人情報流出問題に関して「まさにあってはならない問題。国民への説明をしっかり果たしてほしい」と強調した。今年秋に個人番号の通知が始まる社会保障と税の共通番号(マイナンバー)制度については「生活の利便性と経済性を考えると非常に重要。計画通り遅滞なく進めてほしい」と述べ、年金問題の悪影響が広がることがないように、政府に万全な対応を求めた。

<高齢者福祉が標的の負担増・給付減>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/198237
(佐賀新聞 2015年6月16日) 医療費、高所得者の負担増検討、骨太方針の原案判明
 政府が策定している経済財政運営の指針「骨太方針」の原案が16日、分かった。医療費や介護サービス利用料に関し、高所得者に負担増を求める方向性を明記。国民に番号を割り当てるマイナンバー制度を活用し「金融資産の保有状況を考慮した仕組みを検討する」ことも盛り込んだ。2020年度の財政健全化目標に向けて、経済成長による税収増と歳出抑制策の両面を挙げたものの、歳出に関する具体的な数値目標は明記を見送る。政府は22日の経済財政諮問会議で示し、月内に閣議決定する。富裕層の負担アップは17年の消費税再増税を控え、幅広い層への影響を避けながら財政再建を進めるのが狙い。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150619&ng=DGKKASFS30H76_Y5A610C1MM8000 (日経新聞 2015.6.19)
医療費控除 領収書不要に、17年メド、マイナンバー活用
 政府は家族の医療費が一定額を超えた場合に税負担を軽くする医療費控除(総合2面にきょうのことば)を使いやすくする。現在は1年分の領収書を保存、確定申告の際に提出しなければならないが、税と社会保障の共通番号(マイナンバー)制度で集積する医療費のデータを使うことで、大半の領収書は出さなくてよくなる。インターネットで手続きする場合でも領収書の内容を入力する必要がなくなる。2017年夏をメドに始める。6月中にまとめる新しい成長戦略に盛り込む。来週、加藤勝信官房副長官を座長とする政府の検討チームが発表。財務省は医療費控除の法令改正の準備に入る。医療費控除の対象になるのは、1年間の家族の医療費から保険で補填された額を引いた額が10万円を超える場合だ。基準から超えた額を所得から差し引き、課税所得を減らせるため、税負担が減るメリットがある。現在は領収書の保存の煩わしさや医療機関名や投薬の内容、自己負担額などの入力の手間が面倒で、申告を諦めている人が多いという。毎年約700万人が使っているが大幅に増えそうだ。領収書を不要にする役割を果たすのがマイナンバー。17年夏までに健康保険のデータが、マイナンバーにひも付けられる。これが今回の仕組みの土台となる。現在は国民健康保険や健康保険組合から郵便などで届く「医療費通知」が、マイナンバーの個人用サイト「マイナポータル」に送られるようになる。利用者はこのデータを税務署にネット経由で送れば、領収書を出さなくてよくなる。ドラッグストアで購入した市販薬の代金や、通院のためのタクシー代なども医療費控除の対象だが、医療費通知からは漏れるため、これまで通り、領収書の保存と提出が必要だ。厚生労働省はこれにあわせて健保加入者に通知する医療費通知の基準を統一する。税務署がネット経由で受け取った医療費通知に対応できるようにするためだ。マイナンバーは10月から通知を開始。来年1月に導入する。17年7月からは国や地方自治体の情報を連携する。日本年金機構の情報流出問題で、年金分野へのマイナンバーの適用が遅れる可能性はあるが甘利明経済財政・再生相は「全体のスケジュールは予定通り進める」としている。政府は多額の税金をかけて構築するマイナンバーを有効活用するため、医療費控除以外の利便性向上策も併せてまとめる。低所得者や学生らが国民年金の保険料の減免手続きをする際、マイナンバーの個人用サイトから簡単にできるようにする。税と年金保険料の納付はネット上で、クレジットカードで一括でできるようにする。

| 日本国憲法::2013.4~2016.5 | 03:45 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.6.15 論点を間違えている集団的自衛権に関する批判、及び安保関連法案は解釈改憲ではなく違憲であること (2015年6月16、24、26日、7月15日に追加あり)
       
安保法制案の全体像   同組立   想定事例(??)      憲法9条 

(1)集団的自衛権の定義
 *1-1、*1-2のように、集団的自衛権とは、国連憲章第51条で加盟国に認められている自衛権の一つで、ある国が武力攻撃を受けた場合、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、密接な関係にある他国が共同して防衛にあたる権利で、行使に当って国連加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならないとされている。

 そのため、日本も主権国として国連憲章第51条により個別的及び集団的自衛権の双方をを有しているが、憲法9条で戦争放棄と戦力不保持を規定しているため、これまで集団的自衛権は憲法の容認する自衛権の限界を超えると解され、行使しないとされてきたのだ。

 そして、*1-1のように、平成26年(2014)7月に自公連立政権の閣議決定により従来の憲法解釈を変更して、一定の要件を満たした場合に集団的自衛権の行使を容認する見解が示されたとされ、武力行使が許容される要件には、①日本と密接な関係にある他国への武力攻撃により日本の存立が脅かされ、国民の生命・自由・幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある ②日本の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない ③必要最小限度の実力を行使すること が挙げられた。

 私は、「日本も主権国として国連憲章第51条により個別的及び集団的自衛権の双方を有しているが、憲法9条の範囲内でのみそれを行使することにしている」というのが正しいと考える。

(2)それでは、憲法9条の範囲内とはどこまでか(ここが重要)
 結論から言って、日本の領土・領海・領空を占領する目的で武力攻撃が行われた場合には自衛権を行使することができ、それは個別的であるか集団的であるかを問わないと考える。つまり、警察官が駆けつけてくるまで夫と協力して自分の家に入った強盗とは闘うが、隣の家やまして遠くの家に出かけて行ってまでは闘わないということだ。

 しかし、これまで個別的自衛権のみが憲法9条の範囲内だと主張されていたのは、「集団的自衛権=日本が外国を護るために外国で闘うこと」と解釈されていたからであり、日本を護るのを外国に手伝ってもらうことや隣近所と力を合わせて日頃から周辺を警備しておくことを集団的自衛権行使の範囲に入れていなかったからである。

 なお、*1-3のように、公明党は6月12日に集団的自衛権を使える範囲を日本周辺の有事に限定したうえで認めるかどうかの検討を始めたそうだが、私も、現行憲法下では、日本の領土・領海・領空を武力攻撃された場合と力を合わせて周辺を警備する場合に限るべきだと考えている。

(3)審議中の安保関連法案は、解釈改憲ではなく違憲である
 *1-2の国連憲章により、日本も主権国家として国連憲章第51条により個別的及び集団的自衛権の双方を有しているが、日本国憲法9条の範囲内でのみその行使は容認され、それは専守防衛であるため、*2-1のように、現在審議中の安保関連法案は違憲である。

 また、憲法は最高法規であり一般法より上位であるため、*2-2のように、下位法で改憲することは許されない。しかし、私は、現在の自民党の「憲法改正草案」はお粗末な上、変更点が多岐にわたり、改正後の国家観は現行憲法よりも劣るため、これなら憲法の変更はしない方が余程よいと思っている。

 憲法変更の理由とされている「現行憲法は敗戦後に短期間で作られ連合国に押しつけられた」というのは事実とは異なり、日本国内では英語を学ぶことすら禁止されていた終戦前から、連合国は終戦後の統治を考えて日本文化を調べあげ草案を練っていたことを、ルース・ベネディクトが著書「菊と刀」にかなり正確な日本文化の分析とともに記載している。そのため、8日間くらいの短期間で作ったものではなく、連合国が理想とする国民主権、基本的人権の尊重、平和主義のようなわが国の終戦前と比べれば民主主義への革命的な変更が憲法に織りこまれ、これらは敗戦でなければフランスなどのように国民同士が血を流して闘いとらなければならなかった理想的規範なのである。

 なお、「孫子の兵法」で有名な孫子も、「敵を知らず己を知らざれば百戦あやうし。敵を知り己を知れば百戦百勝す」「百戦百勝は善の善なるものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」などの現代にも通じる有名な言葉を遺している。

(4)国民の意見
 *3-1のように、集団的自衛権行使を容認し、自衛隊の活動範囲を広げる安保関連法案への反対を訴える集会やデモ行進が2015年6月13日、九州各地であった。また、*3-2のように、長野駅近くで、赤いスカーフやTシャツ、帯などを身に着けた女性約70人がデモ行進し、憲法を学ぶ会もできている。さらに、*3-3のように、神奈川県内の鉄道やトラック、港運などの労働者でつくる労働組合「神奈川県交通運輸産業労働組合協議会(神奈川交運労協)」も、同日、「われわれは戦争のための輸送はしない」と訴えながらデモ行進している。

(集団的自衛権とは)
*1-1:https://kotobank.jp/word/%E9%9B%86%E5%9B%A3%E7%9A%84%E8%87%AA%E8%A1%9B%E6%A8%A9-77203 【集団的自衛権】
 国連憲章第51条で加盟国に認められている自衛権の一。ある国が武力攻撃を受けた場合、これと密接な関係にある他国が共同して防衛にあたる権利
[補説]日本は主権国として国連憲章の上では「個別的または集団的自衛の固有の権利」(第51条)を有しているが、日本国憲法は、戦争の放棄と戦力・交戦権の否認を定めている(第9条)。政府は憲法第9条について、「自衛のための必要最小限度の武力の行使は認められている」と解釈し、「個別的自衛権は行使できるが、集団的自衛権は憲法の容認する自衛権の限界を超える」との見解を示してきたが、平成26年(2014)7月、自公連立政権下(首相=安倍晋三)で閣議決定により従来の憲法解釈を変更。一定の要件を満たした場合に集団的自衛権の行使を容認する見解を示した。武力行使が許容される要件として、(1)日本と密接な関係にある他国への武力攻撃により日本の存立が脅かされ、国民の生命・自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある、(2)日本の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない、(3)必要最小限度の実力を行使すること、を挙げている。

*1-2:https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/unch.htm
国際連合憲章(要点のみ)
署名
1945年6月26日(サン・フランシスコ)
効力発生
1945年10月24日
日本国
1952年3月20日内閣決定、6月4日国会承認、6月23日加盟申請、
1956年12月18日効力発生、12月19日公布(条約第26号)
 われら連合国の人民は、われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し、正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進すること、並びに、このために、寛容を実行し、且つ、善良な隣人として互に平和に生活し、国際の平和及び安全を維持するためにわれらの力を合わせ、共同の利益の場合を除く外は武力を用いないことを原則の受諾と方法の設定によって確保し、すべての人民の経済的及び社会的発達を促進するために国際機構を用いることを決意して、これらの目的を達成するために、われらの努力を結集することに決定した。よって、われらの各自の政府は、サン・フランシスコ市に会合し、全権委任状を示してそれが良好妥当であると認められた代表者を通じて、この国際連合憲章に同意したので、ここに国際連合という国際機関を設ける。
第1章 目的及び原則
第1条〔目的〕
国際連合の目的は、次の通りである。
1 国際の平和及び安全を維持すること。そのために、平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること並びに平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること。
2 人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること並びに世界平和を強化するために他の適当な措置をとること。
3 経済的、社会的、文化的又は人道的性質を有する国際問題を解決することについて、並びに人種、性、言語又は宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成すること。
4 これらの共通の目的の達成に当って諸国の行動を調和するための中心となること。
第2条〔原則〕
この機構及びその加盟国は、第1条に掲げる目的を達成するに当っては、次の原則に従って行動しなければならない。
1 この機構は、そのすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている。
 すべての加盟国は、加盟国の地位から生ずる権利及び利益を加盟国のすべてに保障するために、この憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならない。
2 すべての加盟国は、加盟国の地位から生ずる権利及び利益を加盟国のすべてに保障するために、この憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならない。
3 すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない。
4 すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。
5 すべての加盟国は、国際連合がこの憲章に従ってとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ、国際連合の防止行動又は強制行動の対象となっているいかなる国に対しても援助の供与を慎まなければならない。
6 この機構は、国際連合加盟国でない国が、国際の平和及び安全の維持に必要な限り、これらの原則に従って行動することを確保しなければならない。
7 この憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく、また、その事項をこの憲章に基く解決に付託することを加盟国に要求するものでもない。但し、この原則は、第7条に基く強制措置の適用を妨げるものではない。
(中略)
第51条〔自衛権〕
 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。
(以下略)

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/ASG6D64K7G6DUTFK017.html
(朝日新聞 2014年6月13日) 集団的自衛権、公明に限定容認論 72年見解を根拠に
 公明党は12日、集団的自衛権を使える範囲を日本周辺の有事に限定したうえで認めるかどうかの検討を始めた。党幹部の中に、集団的自衛権の行使を朝鮮半島有事など極めて狭い範囲に限ることで、党内や支持者の理解が得られないかとの意見が出始めたためだ。ただ、行使容認そのものに慎重な意見もなお根強く、党内がまとまるかは予断を許さない。山口那津男代表、北側一雄副代表ら幹部は12日、国会内などで断続的に集団的自衛権の行使を認めるかどうかを協議した。1972年に自衛権に関する政府見解で「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」に限り自衛措置が認められるとした部分を根拠に、集団的自衛権が使えるか議論することにした。与党協議のメンバーの一人は、使える場合を「生命や権利が根底から覆される」という日本人に直接影響が出るケースに限定することで、政府が示した朝鮮半島有事から避難する邦人を乗せた米輸送艦を守る事例だけが容認されるとみる。別の幹部も「首相が想定する米国に向かう弾道ミサイルの迎撃や、中東のホルムズ海峡での機雷除去はできなくなる」と話す。だが、72年の政府見解は同時に、「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」と結論づけている。公明が、限定的とはいえ見解を行使の根拠とすれば矛盾することになる。安倍晋三首相が集団的自衛権の行使へ、今国会中の閣議決定を指示したことから、公明内には「反対するだけではすまない」(幹部)との声も上がっており、限定的な容認を検討することにした。政府・自民内には、公明内に容認に向けた動きが出てきたことから、22日が会期末の今国会中の閣議決定見送りを容認する意見も出ている。

<解釈改憲ではなく違憲>
*2-1:http://www.shinmai.co.jp/news/20150611/KT150610ATI090029000.php
(信濃毎日新聞 2015年6月11日) 安保法案「法治国家として危うい」 日弁連、19日に反対要請
 日本弁護士連合会の村越進会長(64)=上田市出身=は10日、都内で信濃毎日新聞の取材に応じ、今国会で審議中の安全保障関連法案に反対するため、長野県弁護士会など全国52の弁護士会の会長がそれぞれの地元選出国会議員に法案廃案を訴える一斉要請を19日に行うと明らかにした。日弁連は18、19日に都内で理事会を開く予定。これに合わせて各弁護士会長が法案反対の声明などを携えて衆参両院の議員会館を回る。日弁連が安全保障関連法案について反対の国会議員要請を行うのは初めて。村越会長は「弁護士会は会員それぞれの政治的信条を超えて、立憲主義を守る法律団体として法案は違憲だと考えている」と強調。衆院憲法審査会で自民党推薦を含む憲法学者3人が関連法案を「違憲」と明言した意味は重いとし、「その法案が国会多数の賛成で通ってしまうことになれば最高法規としての憲法の意義が失われる。法治国家として危うい」とした。政府に対しては「改憲論者も含め、政府解釈を理解した上で違憲だと指摘した。政府は自分たちの解釈はこうだと繰り返すのではなく、憲法学者の意見を真摯に受け止めるべきだ」と求めた。憲法審査会での憲法学者の発言をきっかけに、各論に入りつつあった国会審議が「そもそも合憲なのか違憲なのか、原点に立ち返ったのは好ましい」とし、「さらに議論が深まることを期待したい」と述べた。

*2-2:http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201505/0008016555.shtml
(神戸新聞社説 2015/5/12) 2段階改憲/「お試し」と呼ぶしかない
 自民党は、大災害などに備える緊急事態条項と環境権、財政規律条項の3項目について改憲を優先的に議論してはどうかと提案した。改憲の本命は9条だが、その前に各党の協力を得やすい項目に絞って実現を目指す2段階戦略を描いている。9条改正への抵抗感を和らげ、国民に改憲に慣れてもらう。そんな狙いが透けて見える。「お試し改憲」と呼ぶしかない。自民党の船田元・憲法改正推進本部長は「全ての憲法改正は真剣だ」と「お試し」を否定する。だが、「各党が関心事項として挙げているところから議論を始めるのは自然な流れ」とし、国論を二分する9条を後回しにしたことは認めている。9条改正の正面突破を避けるやり方はこれまでも繰り返されてきた。安倍晋三首相は第2次政権が発足した直後、憲法改正の国会発議要件を緩和する96条改正に意欲を示した。中身の議論を棚上げし、改正手続きのハードルを下げる。強引な戦術には国民の反発が強く、撤回するしかなかった。一方、政府は昨年7月の閣議決定で9条の解釈を変更し集団的自衛権の行使を容認した。それを反映した安全保障関連法案を国会に提出する構えで、憲法の空洞化も同時に進んでいる。審査会では、維新の党が緊急事態条項について「早急に検討すべき」とし、次世代の党も同調した。民主党は、「押しつけ憲法」を改正の理由とすることについて、「議論の前提として各党の考え方を確認すべき」とけん制し、「お試し改憲」も批判した。共産党は「国民の多数は憲法改正を求めていない」と反対する。公明党は環境権など新しい権利を加える「加憲」を主張しているが、審査会では「冷静かつ慎重な議論を進めるべきだ」と、改憲論議の加速化にはくぎを刺した。改正の発議には衆参両院の3分の2以上の賛成が必要になる。そのため自民党は公明党や野党と一致できる枠組みづくりを優先させる。2017年の国会発議などとスケジュールが語られ、改憲ありきの姿勢が目立つ。議論が深まる前に「簡単なところから」と「お試し」を画策する。あまりに危うい動きだ。

<国民は>
*3-1:http://mainichi.jp/select/news/20150614k0000m040062000c.html
(毎日新聞 2015年6月13日) 安保法制:九州各地で反対集会「戦争法案いらんばい」
 集団的自衛権の行使を容認し、自衛隊の活動範囲を広げる安全保障関連法案への反対などを訴える集会やデモ行進が13日、九州各地であった。福岡県弁護士会は、福岡市中央区の市民会館で「憲法違反の集団的自衛権に反対する市民集会」を開き、弁護士200人を含む約1700人が参加した。日本弁護士連合会憲法問題対策本部の伊藤真副本部長が講演。集団的自衛権の行使が容認されれば、交戦権を認めていない憲法9条が空文化されると指摘して「どんな国にしたいのかは私たち自身が決めること。憲法の番人は私たち国民だ」と訴えた。集会後は市内中心部をデモ行進し、「戦争法案いらんばい」とシュプレヒコールした。佐賀県鳥栖市では、市民団体が主催する「戦争立法に反対する学習会」があり、約30人が参加した。同県弁護士会の東島浩幸弁護士が集団的自衛権について「行使したら国際紛争の当事国となり、相手から攻撃を受ける可能性がある」と指摘した。参加した鳥栖市の無職、山元睦美さん(63)は「戦争は絶対にいけない。外交で解決していくべきだ」と話していた。一方、長崎県佐世保市では、陸上自衛隊相浦駐屯地と海上自衛隊佐世保教育隊などの約630人が商店街をパレードした。恒例行事で新入隊員の市民へのお披露目が目的だが、佐世保地区労などはパレードに反対する集会を開催。参加者約100人は「戦争にいかせたくありません」などのプラカードを掲げた。今夏までに安保関連法案の成立を目指す政府に対し、地区労の豊里敬治議長は「政府は隊員の命や人権をもっと見つめるべきだ」と批判した。

*3-2:http://www.shinmai.co.jp/news/20150614/KT150613FTI090002000.php
(信濃毎日新聞 2015年6月14日) 安保法案論議 母親立つ 県内 デモや憲法学ぶ動き
 安倍政権が安全保障関連法案の早期成立を目指す一方、法案に反対の意思表示をしたり、憲法を学び直したりする動きが長野県内の女性たちに広がっている。国会審議では複雑な法解釈や主張が飛び交うが、女性たちは子どもを産み、育てる立場から、基本となる憲法や集団的自衛権について理解を深めようとしている。13日は、同法案に反対を訴える女性たちが長野市でデモ行進した。「女は戦争を許さない」「子どもを守ろう」。この日、同市の長野駅近くをデモ行進したのは、赤いスカーフやTシャツ、帯などを身に着けた女性約70人。新日本婦人の会県本部などが呼び掛けた「レッドアクション」で、1970年代にアイスランドの女性たちが地位向上を求めて赤いストッキングを履いた運動をモデルに全国に広がっているという。「安倍首相は『徴兵制は絶対にない』と言うけれど、20年後はどうか」。参加した市内の会社員女性(31)は3人の男の子を育てる。「子どもの将来を考えると、米国の戦争に協力できるような法案には反対したい」と話した。長野市では昨年6月、憲法を学ぶ「自分で考えるために学ぶ会」ができた。東京電力福島第1原発事故を機に子どもの食の安全を考えてきた母親らが、集団的自衛権の行使容認に疑問を感じて発足。ほぼ毎月学ぶ会を開き、10人ほどで憲法と自民党の改憲草案を読み比べている。会員の西林薫さん(37)も2児の母。「最低限の力として自衛隊は必要」と考えるが、自民党が改憲草案で「国防軍」と記したことに不安を感じた。安保関連法案の説明で、政府が中東・ホルムズ海峡の機雷掃海が可能になると例示したことも、「資源獲得のために武力を使っていいのか」と疑問。「今までいかに政治を『お任せ』してきたか分かった。母親として見過ごせない」と話した。6歳と2歳の男児を育てる松本市職員の今井留衣さん(39)は、信州大大学院法曹法務研究科の成沢孝人教授(憲法学)を講師に7月11日から全5回の憲法学講座を開こうと準備を進めている。子どもの未来に関わると感じて安保関連法案の国会中継を見るようになった。ただ、法案の合憲性論議では「72年政府見解」「砂川事件判決」といった言葉が飛び交い、「よく分からないことばかり」。ママ友との話題にもなりにくい。「賛否を決める前にまずお父さん、お母さんが気楽に学び合える場をつくりたい」と意気込んでいる。下伊那郡阿智村では昨年10月、40~70代の女性10人ほどが「女性のための平和学習会」をつくった。今年5月下旬には憲法や集団的自衛権を分かりやすく解説する紙芝居を発表。老人クラブや婦人会の会合で上演している。事務局の原佐代子さん(68)は「紙芝居を見たお年寄りから『孫を戦争に取られないか心配』との声を聞く。子育て教室などでも上演したい」と話している。

*3-3:http://news.nifty.com/cs/domestic/societydetail/kanaloco-20150614-102526/1.htm (niftyニュース 2015年6月14日) 横浜で安保法案反対デモ 「武器運びたくない」
 県内の鉄道やトラック、港運などの労働者でつくる労働組合「神奈川県交通運輸産業労働組合協議会(神奈川交運労協)」は13日、国会で審議中の安全保障関連法案に反対するデモを横浜市内で行った。参加者は「憲法違反の戦争法案を許すな」「われわれは戦争のための輸送はしないぞ」と訴えながら約2キロを練り歩いた。デモに先立つ集会では、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に批判が集まった。安保政策における専守防衛の基本を大転換させた解釈改憲が新たな安保法制の前提となっていることから、神奈川交運労協の本間秀明議長は「安倍政権は勝手な憲法解釈を国民に押しつけようとしている。これを許せば、日本は戦争国家になってしまう」と強調した。デモには約720人が参加(主催者発表)し、トラック運転手の男性(49)は「戦争に使う武器をわれわれが運ぶことになるかもしれない。そうした仕事はしたくない」と切実さを込めて話した。別のトラック運転手の男性(59)は「(集団的自衛権が行使できるよう安保法制を)変えたいのなら、国民に問うという手順を踏むべきだ」と批判した。


PS(2015年6月16日追加): *4-1、*4-2のように、自民党は、他国からの武力攻撃や大災害・感染症の際に、首相の権限を強化する緊急事態条項を衆院憲法審査会などで最優先に議論する方針を固めたそうだが、他国からの武力攻撃と災害・感染症は全く性質の異なる事態であるため、①何を緊急事態とするのか ②その際の首相の権限をどう強化するのか ③それがBestな方法なのか について議論すべきだ。何故なら、それによって、自民党が本音では何をしたいかがわかるからである。

*4-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015052301001447.html
(東京新聞 2015年5月23日) 緊急事態条項を最優先 憲法改正、自民党方針 
 自民党は憲法改正に関し、他党の賛同が得やすいとみる緊急事態条項、環境権、財政規律条項の中で緊急事態条項を衆院憲法審査会などで最優先に議論する方針を固めた。自民、公明両党内に慎重論がある他の2項目に比べ、合意形成が見込めると判断した。自民党幹部が23日、明らかにした。26日に審議入りする安全保障関連法案をめぐり与野党対立の激化が予想され、審査会での改憲議論は停滞する可能性もある。緊急事態条項は、大災害や他国からの武力攻撃の際、首相の権限を強化することなどが柱。

*4-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015052701001671.html
(東京新聞 2015年5月28日) 参院憲法審、改正で各党が見解 自民、緊急条項新設訴え
 参院憲法審査会が27日、国会内で開かれ、各党が憲法改正をめぐり見解を表明した。自民党が最優先で議論を進めたいとしている大規模災害などに対応する緊急事態条項について、同党はあらためて必要性を訴えた。他の党からは、一定の理解を示しつつも、慎重論議を重ねるべきだとの意見が出た。自民党の佐藤正久氏は「緊急事態には、外国からの攻撃や感染症などが想定される。個別の法律で対処するのは限界がある」と主張。緊急事態条項の憲法明記へ議論を急ぐよう求めた。公明党の西田実仁氏は、同条項を取り上げる必要性は認めた上で「人権制限が行われる懸念がある」と指摘。


PS(2015年6月24日追加): *5のように、(他地域も同様だろうが)長野県内の36市町村議会が、国会審議中の安全保障関連法案について廃案や慎重審議を求める意見書案を可決したそうで、私は、こちらの方が正しいと考える。特に原発や使用済核燃料をかかえている市町村議会の意見を知りたい。

*5:http://www.shinmai.co.jp/news/20150624/KT150623ATI090031000.php
(信濃毎日新聞 2015年6月24日) 県内意見書可決 計36市町村会に 安保法案「反対」「慎重に」
 中野市、千曲市、上伊那郡箕輪町、木曽郡上松町、東筑摩郡朝日村、下水内郡栄村の6議会は23日、国会審議中の安全保障関連法案について廃案や慎重審議などを求める意見書案を可決した。安倍晋三首相らに提出する。県内市町村議会の6月議会で同様の可決は少なくとも36件になった。中野市議会は議員提出の「国民的合意のないままに、安全保障体制の見直しを行わないことを強く求める」意見書案に、議長を除く19人中18人が賛成。安保法制の整備は「国際紛争の場に自衛隊を派遣するということ」とし、「憲法9条に逸脱している」と主張している。千曲市議会は、十分な国民的議論と国会での慎重審議を求める議員発議の意見書案を全会一致で可決した。「国民の間には政府の考える『(集団的自衛権の)行使の対象・範囲』など具体的な事例に対して、十分な理解が得られていない」としている。箕輪町議会は、法案の今国会での成立断念を求める意見書案を全会一致で可決。「自衛隊が戦争に巻き込まれる」「歯止めのない自衛隊の海外活動が展開される」といった不安が広がっていると主張している。上松町議会は法案の撤回・廃案を求める意見書案を全会一致で可決。法案は「戦争を放棄した平和国家日本の在り方を根本から変えるもので、容認できない」とした。朝日村議会は、慎重審議を求める議員発議の意見書案を全会一致で可決した。「国の根幹に関わる重要法案にもかかわらず、現在国民の間で十分理解されているとは考えられない」とし、「今国会での強行成立は避け、広く国民の合意を形成するよう要請する」としている。栄村議会は法案の慎重審議を求める意見書案について、議長とこの日欠席した議員を除く10人全員が賛成。「拙速な議論ではなく、徹底的な審議と多面的な検討」を求めている。一方、下伊那郡阿智村議会は、沖縄県名護市辺野古への米軍基地移設問題に絡み、地方自治の尊重を政府に求める意見書案を全会一致で可決した。沖縄県民が移設に反対の意を表しているのに「国の姿勢は県民の自主性や自立性を尊重しているか疑問」としている。県内市町村議会での6月定例会で同様の可決は少なくとも4町村となった。


PS(2015年6月26日追加): *6-1、*6-2のように、百田氏が、集団的自衛権の行使容認に賛成の立場を表明した上で「沖縄の2つの新聞はつぶさないといけない。沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」と主張した見識の低さには呆れる。木原稔議員は通常はリベラルな人なのだが、講師に百田氏を招いた責任はあるだろう。そして、「憲法改正に悪影響を与えている番組を発表し、スポンサーを列挙し、経団連に働きかけて広告料収入がなくなるようにしてマスコミを懲らしめて欲しい」と発言した人の方が重大な問題であり、その人も国民に選出された現職の国会議員であるため、その人の名前を報道するか、この人たちにTVの前で話をさせるのがよいと考える。何故なら、主権者である国民は、事実(ここが重要)を知って選択と判断をすべきであり、メディアはそのためのインフラだからだ。
 
*6-1:http://www.asahi.com/articles/ASH6T5W6FH6TUTFK00X.html
(朝日新聞 2015年6月25日) 「経団連に働きかけ、マスコミ懲らしめを」 自民勉強会
 安倍政権と考え方が近い文化人を通し、発信力の強化を目指そうと、安倍晋三首相に近い若手議員が立ち上げた勉強会「文化芸術懇話会」(代表=木原稔・党青年局長)の初会合が25日、自民党本部であった。出席議員からは、広告を出す企業やテレビ番組のスポンサーに働きかけて、メディア規制をすべきだとの声が上がった。出席者によると、議員からは「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番。経団連に働きかけて欲しい」「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」など、政権に批判的な報道を規制すべきだという意見が出た。初会合には37人が参加した。官邸からは加藤勝信官房副長官が出席し、講師役に首相と親しい作家の百田尚樹氏が招かれた。同会は作家の大江健三郎氏が呼びかけ人に名を連ねる「九条の会」などリベラル派に対抗するのが狙い。憲法改正の国民投票まで活動を続けたい考えだという。

*6-2:http://www.nikkansports.com/general/news/1497679.html
(日刊スポーツ 2015年6月25日) 百田尚樹氏「沖縄の2つの新聞はつぶさないと」発言
「文化芸術懇話会」の初会合で講演する作家の百田尚樹氏(右)(共同) 安倍晋三首相に近い自民党の若手議員約40人が25日、憲法改正を推進する勉強会「文化芸術懇話会」の初会合を党本部で開いた。安全保障関連法案に対する国民の理解が広がらない現状を踏まえ、報道機関を批判する意見が噴出した。講師として招いた作家の百田尚樹氏に助言を求める場面も目立った。出席者によると、百田氏は集団的自衛権の行使容認に賛成の立場を表明した上で、政府の対応について「国民に対するアピールが下手だ。気持ちにいかに訴えるかが大事だ」と指摘した。出席議員からは、安保法案を批判する報道に関し「マスコミをこらしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働き掛けてほしい」との声が上がった。沖縄県の地元紙が政府に批判的だとの意見が出たのに対し、百田氏は「沖縄の2つの新聞はつぶさないといけない。あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」と主張した。懇話会は木原稔青年局長が代表で、首相側近の加藤勝信官房副長官や萩生田光一・党総裁特別補佐も参加した。出席者の一連の発言について、自民党中堅は「自分たちの言動が国民からどのような目で見られるか理解していない。安保法案の審議にマイナスだ」と指摘。公明党幹部は「気に入らない報道を圧力でつぶそうとするのは情けない。言葉を尽くして理解を求めるのが基本だ」と苦言を呈した。


PS(2015年7月15日追加):違憲の法律は安保関連法案だけでなく、他にも多い。そのため、現在は限定的にしか運用されていない違憲立法審査権(法律・命令・規則・処分が憲法に適合するか否かを審査する裁判所の権限で、最高裁判所が終審裁判所)を使いやすくし、三権分立がもっと有効に働くようにして、問題のある一般法を見直すべきである。

*7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015071502000125.html
(東京新聞 2015年7月15日) 反安保 大学にも拡大 「憲法を無力化」「今声上げねば」
 安全保障関連法案に反対する動きが各地の大学に広がっている。「民意や立憲主義に反し、戦争につながる」と教員有志が危機感を募らせ、緊急声明や集会を重ねている。十四日は市民団体や学者グループによる声明も相次いだほか、実戦となる恐れもあったイラクへの自衛隊派遣の検証を求める声も上がった。十四日昼、東京都港区の明治学院大の教室で「声明を語る会」が開かれ、教職員と学生ら計二十人が集まった。教員有志十五人は六日、「憲法の平和主義が無力化される」と法案への反対声明を発表。学内に掲示し、百七十人超の賛同人を集めている。「語る会」はこの日を含め四回開催。昼休みにランチを食べながら、日本の戦後責任や九条、言論への圧力といった問題をテーマに挙げた。今後も続ける予定で、呼び掛け人の猪瀬浩平准教授(文化人類学)は「法案は多様な問題を含む。開かれた対話の場としての大学の役割を果たせれば」と語る。国会審議が本格化した六月から、法案に反対する大学有志の声明が出始め、東京大でも今月十日、学生や教職員、OBらによる抗議集会に三百人が集まった。国際基督教大の稲(いな)正樹客員教授(憲法)は十三日、政治学、国際関係学の異分野の三人で声明を発表。「法の支配の根本が覆される事態。今声を上げなくては、研究を続けてきた意味がない」と危機感を募らせる。立命館大の法学部と法科大学院の教員有志六十四人も同日、「戦争準備法の性格を持つ」と法案に反対する声明を発表。他学部の教員が入り、全学で賛同を募る活動もインターネットで始まった。憲法学者の多くが「違憲」とする法案を強行しようとする政権の動きに、小松浩教授(憲法)は「専門知を軽視し、学問を侮辱する政権への憤りが広がっている」と厳しく批判した。東京学芸大の教員有志七十八人は十四日、法案の撤回を求めて緊急アピールを発表。とりまとめた教育学部の及川英二郎准教授(近現代史)は「強行採決を何としても阻止したいと賛同を募った」。十六日に学内集会を開く。
◆学者9000人「廃案を」「採決反対」市民団体 
 ■「安全保障関連法案に反対する学者の会」は14日、緊急要請行動として会の呼び掛け人14人が
   衆院特別委員会の自民、公明、民主、維新、共産各党の理事や委員の議員室を衆院議員会館に
   訪ね、強行採決せず廃案とするよう訴えた。参加したのは佐藤学・学習院大教授(教育学)ら。
   思想家の内田樹氏ら4人は与党側筆頭理事を務める江渡聡徳前防衛相(自民)の議員室を訪れ
   「9000人以上の学者が法案に我慢しきれず反対の意思表示をしている事実を重く受け止めて
   ほしい」と秘書に伝えた。社会学者の上野千鶴子氏は江渡氏の議員室を訪ねた後に「憲法に違反
   する法律をつくったら、立法府まるごと、議員全員が憲法違反を犯すことになりますよ」と強調した。
   会には6月の発足からこの日までに、呼び掛け人61人、賛同者9766人の計9827人の学者が
   名を連ねている。
 ■海外で人道支援や協力活動をする団体の有志がつくった「NGO非戦ネット」は14日、自衛隊が
   海外で武力を行使すれば、非政府組織(NGO)の活動環境は著しく危険になるなどとして、安全
   保障関連法案の採決に反対する声明を発表した。声明では、安保法案は日本を戦争ができる国
   にしようとするもので、憲法の平和主義に反すると指摘。非軍事の国際貢献が必要だとしている。
 ■市民団体のピースボート(東京)と韓国の環境NGO「環境財団」は14日、安全保障関連法案の
   採決に反対する共同声明を出した。声明は「憲法解釈を変えて集団的自衛権行使を容認する
   ことは相互不信を増幅し、アジアの緊張を高める」と政府を批判。近隣諸国の市民の声に耳を
   傾け、立憲主義を尊重するよう求めている。

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2014.6.3 集団的自衛権は、どこまで認められるのか (2014.6.4追加あり)
(1)日本国憲法について
1)憲法9条の解釈の変遷
 *1-1のように、日本国憲法は、前文で「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」として主権在民であることを明確化しており、英文のオリジナルは、「We ,the Japanese people,~」で始まるため、国民が主語であり主体であることが、より明確である。

 また、憲法9条1項では、「戦争と武力行使を、国際紛争を解決する手段としては、永久に放棄する(戦争放棄)」とし、同2項で「この目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は保持しない、国の交戦権も認めない(戦力不保持)」としている。

 憲法9条の解釈の変遷は、*1-2に記載されているとおり、1959年に最高裁判決が出た砂川事件の時代には、一審の東京地裁は「安保条約での米軍駐留も憲法9条に反する」としたのに対し、最高裁が、「安保条約や在日米軍については高度の政治性を有し、司法裁判所の審査にはなじまない」として判断を避け、「日本は、主権国として持つ固有の自衛権は否定されていない」とした。つまり、この時代は、憲法9条に照らして、安保条約や自衛権の存在も争われていたことがわかる。そして、戦力である自衛隊は、1954年7月1日に、「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるもの」として設立された。私は、「必要に応じて公共の秩序の維持に当たる」の具体例がどういうものか、昔の憲兵のようなものでないのかは、確認しておきたい。

 一方、*1-3の東京弁護士会会長声明は、「砂川判決は、たとえ個別的自衛のためであっても戦力を持てるかどうかについては判断していない」「ましてや個別的自衛権とは異なる集団的自衛権を肯定しているなどとは言えない」「砂川判決は駐留米軍が戦力にあたらないと判断しただけである」「岸信介首相(当時)も、砂川判決直後の1960年(昭和35年)3月31日の参議院予算委員会において、『集団的自衛権は日本の憲法上は、日本は持っていない』と答弁している」としている。

2)自主憲法であることは重要な要素か
 日本国憲法は、昭和20年(1945年)8月15日のポツダム宣言受諾後、連合国軍の占領中に連合国軍最高司令官の監督の下で「憲法改正草案要綱」が作られ、昭和21年(1946年)11月3日に公布されて、翌年の昭和22年(1947年)5月3日から施行された。この経緯から、「日本国憲法は日本国民が自主的に作った憲法ではないので自主憲法を作ることこそ重要だ」と主張する人がおり、自主憲法の制定は自民党の党是とされている。しかし、自民党員や自民党議員も現行憲法下で生まれた人が多いため、全員が自主憲法の制定が必須と思っているわけではないだろう。

 私自身は、無所属だが、自民党の憲法改正草案(https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf 参照)より現行憲法の方が格調高く、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の理念を高らかに謳っており、よいと思う。現行憲法は、民主主義を獲得するために苦労してきた欧米諸国が敗戦国としての日本に強制したからこそできた理想の憲法であるため、自民党の憲法改正草案のようなものが出てくるようなら、日本が憲法改正を語るのは、かなり時期尚早だと考える。

(2)自衛権について
1)個別的自衛権・集団的自衛権と自衛権の関係
 憲法改正を行えば、どういう憲法になるかわからないため、憲法改正はせず、自衛権の中に個別的自衛権と集団的自衛権があり、どちらにしても、日本は最高法規である日本国憲法により、真に自衛に属する武力行使以外は行わないとするのが妥当だと考える。これは、ご都合主義の憲法解釈の変更と言うより、憲法解釈の進化と考えてよいのではないだろうか。

 もちろん、日本国憲法の98条で、「この憲法は国の最高法規であり、これに違反する法律、命令、詔勅、国務行為は効力を有しない(憲法の最高法規性)」としているので、日本国憲法違反の法律、命令、詔勅、国務行為は効力を有しないのであり、このブログの2014.3.6に記載したとおり、日本の領土・領海が直接攻撃された場合のみ、集団的自衛権も行使できると考えるのが妥当だろう。

2)集団的自衛権、集団安全保障、日米安全保障条約の関係
 *2-1に書かれているように、政府が「基本的な方向性」に盛り込む予定の事例が下のようになったとのことであるため、私の感覚から○、×、△(日本領土の自衛に資するものか否かの判断を要す)をつけると、下のようになる。
 【集団的自衛権】←下の事例の中には、日本領土の自衛に資するものがないため、○はない。
  ●公海上で米艦船への攻撃に対する応戦 △
  ●米国に向かう弾道ミサイルの迎撃 △
  ●日本近隣で武力攻撃した国に武器を供給するために航行している外国船舶への立ち入り検査 △
  ●米国を攻撃した国に武器を提供した外国船舶への検査 △
  ●日本の民間船舶が航行する外国の海域での機雷除去 ×
  ●朝鮮半島有事の際に避難する民間の邦人らを運ぶ米航空機や米艦船の護衛 × 
 【集団安全保障】←但し、「国際平和活動」の定義は厳格にすべきである。
  ●国際平和活動をともにする他国部隊への「駆けつけ警護」など自衛隊の武器使用 ○
  ●国際平和活動に参加する他国への後方支援 ○
 【グレーゾーン事態】←領土、領海への進入対処こそ自衛であり、グレーゾーンではないだろう。
   また、結果を確実にするためには、これこそ集団的自衛で行うべきである。
  ●日本の領海に侵入した潜水艦が退去要請に応じない場合の対処 ○
  ●日本領土の離島に上陸した武装集団への対処 ○ (←上陸させないことの方が先だ)

 *2-2で、「安倍晋三首相や自民党幹部が限定的な行使容認を目指す姿勢を強調しており、『必要最小限』だから心配は要らない」と言っており、「必要最小限」の範囲は日本国憲法9条1項に記載され、98条には「憲法に違反する法律、命令、詔勅、国務行為は効力を有しない」と記載されているのだから、首相がどう答弁しようと、集団的自衛権の範囲が止めどなく広がることは不可能であり、それを監視するのはメディアと国民の役割だ。なお、このような状況であるから、わが国では、日本国憲法を改正する前に、現行憲法に照らしてものを考え、違憲立法でないか、既存の法律をReviewする必要がある。

(3)日本はリスク管理できる国か
 *3のように、神戸新聞が社説で、「集団的自衛権、首相は行使のリスク語れ」と記載しているが、日本が安保条約を締結している米国を守るためなら何でもするような国になれば、日本も米国と同様、世界で一番狙われる国になるだろう。しかし、日本には、林立して使用済核燃料を大量に補完している原発、集中した石油施設や工業地帯など、戦争になればリスクの高い場所は枚挙に暇がない。

 また、人材も、原発事故や尖閣諸島での航空機の異常接近を想定外や不測の事態と説明したり、北方領土の返還に前向きで日本通のプーチン大統領を欧米と一緒になって制裁したりしている思考力であるため、残念だが、これでは自衛戦でも武力行使はおぼつかないと考える。

*1-1:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html 
日本国憲法 (昭和二十一年十一月三日公布)
  (われわれ)日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
(中略)
  第二章 戦争の放棄
第九条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
○2  前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
(中略)
第九章 改正
第九十六条  この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
○2  憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
   第十章 最高法規
第九十七条  この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
第九十八条  この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
○2  日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
第九十九条  天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASG526SMMG52UTFK00W.html?ref=reca
(朝日新聞 2014年5月6日) 「国の存立脅かされる」事態とは 中東での行使も想定
 政府が集団的自衛権を使う際の新たな要件として検討する「我が国の存立が脅かされる」事態とは、どんなケースなのか。具体性に欠け、自衛隊が活動できる範囲に「歯止め」がかからない恐れがある。政府が検討にあたって最も重視する最高裁判決にも、公明党や憲法学者から解釈の仕方に疑問の声があがる。新たな要件では、自衛隊の活動範囲をできるだけ縛らないようにする――。これまで政府が示してきた事例や発言からは、そうした姿勢が透けて見える。首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)。政府側がこの中で、ペルシャ湾・ホルムズ海峡を念頭に置いた機雷除去を「我が国の存立」を脅かす可能性のある事態として持ち出したことがある。ホルムズ海峡は日本が輸入する原油の8割が通過する。政府側は懇談会に「機雷が放置されれば、我が国の経済及び国民生活に死活的な影響があり、我が国の存立に影響を与えることにならないか」と問題提起した。委員らはこうした事態では、集団的自衛権を行使すべきだと賛同した。中東のような日本から遠く離れた場所で発生した他国への攻撃でも、政府が「我が国の存立」にかかわると判断すれば集団的自衛権を行使する。その可能性を示した議論だった。安倍晋三首相も先月8日のBS番組で、遠隔地での集団的自衛権の行使について、「例えば日本人を守ると考えた時、近くなら守るが(地球の)裏側なら助けに行かないのか」と述べ、含みを残した。これまでの3要件は、武力行使の基準がはっきりしていた。日本が直接攻撃されたときに限られ、「急迫不正の侵害」がいつ発生したと政府が判断するかも、具体的な国会答弁が積み重ねられてきた。例えば、北朝鮮を念頭に置いた弾道ミサイルについての国会答弁。政府は、日本に向けて発射された時点で、日本への武力攻撃が発生したと判断する、としている。また、相手国から「東京を火の海にしてやる」などの表明があって、ミサイルの燃料が注入され、ミサイルが発射できる態勢になった場合についても「武力攻撃の着手」と認め、個別的自衛権の発動が許されることもありうるとしてきた。一方、集団的自衛権は「憲法上認められない」としてきたこともあり、どういう場合に行使が許されるか、政府の公式な見解はない。政府が想定するのは、ホルムズ海峡に加えて、朝鮮半島有事だ。朝鮮半島で戦闘が拡大すれば、北朝鮮が日本国内の米軍基地をミサイル攻撃するなど、「日本有事」につながる可能性がある。そのため、米国や韓国への攻撃を「我が国の存立が脅かされる」事態と判断するケースもありうる、という理屈だ。だが、具体的にどの時点でそう判断するのかは不透明だ。
■「砂川判決」根拠に、公明は反発
 新たな要件の背景にあるのが、1959年、米軍駐留の合憲性が問われた「砂川事件」での最高裁判決だ。判決では「自衛権」について「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置」と定義した。自民党の高村正彦副総裁は今春、「判決は必要最小限の措置であれば、集団的自衛権も排除されないとしている」と主張しはじめた。最高裁判決では、「集団的自衛権」という文言はないが、45年制定の国連憲章では個別的、集団的自衛権双方を規定しているため、「当時の裁判官が、集団的自衛権を全く視野に入れていなかったとは考えられない」という。しかし、集団的自衛権に直接言及していない最高裁判決を、行使の根拠にするには無理がある、という意見も根強い。公明党の山口那津男代表は「判決のころは自衛隊が発足して間もないころで、日米安全保障体制が憲法違反という人も多かった。当時、集団的自衛権を視野に入れて判決が出された、という人はいなかったと思う」と指摘する。改憲論者である小林節・慶応大名誉教授も「30年以上憲法学者をやってきたが、集団的自衛権の論議で、砂川事件は教わったこともないし教えたこともない。自民党が苦し紛れにやっている」と批判している。
    ◇
〈砂川事件の最高裁判決〉 東京都砂川町(現立川市)の旧米軍立川基地の拡張に反対した7人が基地に入り、日米安保条約に基づく刑事特別法違反に問われた事件で1959年に言い渡された。一審の東京地裁は安保条約での米軍駐留は憲法9条に反するとして全員無罪としたが、最高裁が破棄した。安保条約や在日米軍については「高度の政治性を有し、司法裁判所の審査には原則としてなじまない」と判断を避けた。日本の自衛権については「主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではない」「(国の)存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうる」と言及した。

*1-3:http://www.toben.or.jp/message/seimei/post-357.html (東京弁護士会 2014年5月2日) 砂川事件判決を集団的自衛権の根拠とすることに反対する会長声明
 砂川事件最高裁判決を根拠として、集団的自衛権の行使を容認する動きが伝えられる。すなわち、同事件の最高裁判決に「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうる」とあることを根拠に、「最高裁は、わが国の存立を全うするのに必要な範囲で、個別的か集団的かという区別をせずに自衛措置を認めている」として、集団的自衛権の限定容認を正当化しようとする試みである。しかし、当会は、法律家団体として、集団的自衛権の行使を容認する根拠に砂川判決を援用することは余りにも恣意的な解釈であって、不適切であると考える。砂川事件は、1957年(昭和32年)、米軍が使用する東京都下の砂川町にある立川飛行場の拡張工事を始めた際に、工事反対派のデモ隊が乱入し、旧日米安全保障条約第3条に基づく行政協定に伴う刑事特別法違反として起訴された事件である。争点は、旧安保条約に基づく米軍の駐留が憲法9条2項の「戦力」にあたるかどうかであった。
 最高裁判所は、駐留軍が憲法9条2項の「戦力」に該当するから違憲だとした一審の東京地方裁判所の判決を取消し、次の理由で事件を差し戻した。第1に、「戦力」とは「わが国自体の戦力を指し、外国の軍隊は、たとえそれがわが国に駐留するとしても、ここにいう戦力には該当しない」から駐留米軍は「戦力」にあたらない。第2に、駐留の根拠となる旧日米安保条約は高度の政治性を有するものであって、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限り、司法裁判所の審査には馴染まない。砂川判決が示したのは、この2点である。
 一般に、判決文として示されたなかで判例として拘束力をもつのは、判決の結論を導く直接の理由付けであり、それ以外は傍論であって拘束力を持たない。砂川判決は、第1の判断の過程で「わが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく」、「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」と述べているが、それは、米軍が日本に駐留していることと国家固有の自衛権が矛盾しないことを傍論として説明したものに過ぎず、先の第1、第2のいずれの結論の根拠となるものではない。このような傍論を安易に一般化し、それを最高裁判所の判決の趣旨であるかのように主張することは、判決の引用の仕方としては恣意的とのそしりを免れない。そのことは、1976年(昭和51年)3月30日参議院予算委員会の答弁において、高辻正己内閣法制局長官(当時)が砂川判決が駐留米軍の合憲性以外のことについて判断を下していないと明言していることからも明らかである。しかも最高裁判決が傍論において「固有の自衛権」として認めているのは、「他国」ではなく「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な」限りでの自衛権であるから、それは個別的自衛権にほかならない。他方、砂川判決は、たとえ個別的自衛のためであっても戦力を持てるかどうかについてはあえて判断していないのであって、ましてや個別的自衛権とは異なる集団的自衛権を肯定しているなどと言えないことは明らかである。それゆえ、岸信介首相(当時)も、砂川判決直後の1960年(昭和35年)3月31日の参議院予算委員会において、「集団的自衛権は日本の憲法上は、日本は持っていない」と答弁しているのである。以上のように、砂川判決は駐留米軍が戦力にあたらないと判断したに留まり、自衛権について触れた傍論が認める「固有の自衛権」もあくまでも個別的自衛権を指すだけであり、集団的自衛権を含んでいない。したがって、砂川判決を根拠として集団的自衛権を認める余地はないのである。当会は、砂川事件最高裁判決の趣旨を歪曲して集団的自衛権行使容認の根拠とすることに強く反対する。

*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11131666.html (朝日新聞 2014年5月13日) 政府、行使事例提示へ 「基本的な方向性」の概要判明 集団的自衛権
 他国を守るために武力を使う集団的自衛権の行使容認をめぐり、政府が与党に示す事例集の概要が分かった。集団的自衛権では朝鮮半島有事の際に避難する民間人を運ぶ米艦船の防護を例示。さらに尖閣諸島での中国との対立を念頭に、有事に至らない「グレーゾーン事態」の法整備も求めている。行使容認に慎重な公明党や世論を引き込む狙いがある。安倍晋三首相は、行使を認める憲法解釈の変更を閣議決定で行う考えだ。しかし、ときの政権の意向で憲法の根幹である9条の解釈が変えられることには、公明党や世論の中にも強い懸念がある。首相側は週内に、事例集を中心にした「基本的な方向性」を与党に示して検討を要請。閣議決定に向けた具体的な手続きに踏み出す。首相側が示す事例は、集団的自衛権に加え、国連の加盟国が一致して制裁を加える「集団安全保障」、相手国から武力攻撃を直接受けていない「グレーゾーン事態」の3分野に及ぶ。これまで政府は、米国に向かう弾道ミサイルの迎撃などの事例を示してきたが、公明党の理解を得るために、新たな事例を追加することが明らかになった。例えば、集団的自衛権では、朝鮮半島有事の際に、韓国から避難する邦人ら民間人を運ぶ米航空機や米艦船を自衛隊が護衛する事例だ。さらに「グレーゾーン事態」では、尖閣諸島での中国との対立を念頭に、離島に上陸した武装集団への対処を追加することもわかった。これは公明党が「集団的自衛権より先に検討すべきだ」と主張している。首相側が打ち出す「基本的な方向性」は当初、「政府方針」と呼んでいた。しかし、公明党からの反発に加え、政府内にも「政府の考えを押しつけるイメージになる」(関係者)との意見があり、名称を変えることにした。首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は週内に、行使容認を政府に求める報告書を提出。これを受け、首相は「基本的な方向性」を同日にも示す。与党はこれを受けて協議を始める。
■政府が「基本的な方向性」に盛り込む予定の事例
【集団的自衛権】
●公海上で米艦船への攻撃に対する応戦
●米国に向かう弾道ミサイルの迎撃
●日本近隣で武力攻撃した国に武器を供給するために航行している外国船舶への立ち入り検査
●米国を攻撃した国に武器を提供した外国船舶への検査
●日本の民間船舶が航行する外国の海域での機雷除去
○朝鮮半島有事の際に避難する民間の邦人らを運ぶ米航空機や米艦船の護衛
【集団安全保障】
●国際平和活動をともにする他国部隊への「駆けつけ警護」など自衛隊の武器使用
●国際平和活動に参加する他国への後方支援
【グレーゾーン事態】
●日本の領海に侵入した潜水艦が退去要請に応じない場合の対処
○離島に上陸した武装集団への対処
 【注】●は政府がこれまで安保法制懇に示した事例。○は今回、新たに追加された事例。

*2-2:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/91830
(西日本新聞 2014年5月31日) 集団的自衛権 早くも広がる行使の範囲
■安全保障を考える■ 
 集団的自衛権について、安倍晋三首相や自民党幹部は、限定的な行使容認を目指す姿勢を強調している。これまでの枠は破るが、「必要最小限」だから心配は要らない‐という論理である。しかし一方で、「必要最小限」の範囲が止めどなく広がり、やがては日本が大義のない戦争に参加することになるのではないか、と不安に思う人々もいる。今週、国会で集団的自衛権に関する本格的な論戦が始まった。国会審議での安倍首相の答弁を聞く限り、「行使の範囲拡大」の懸念は一層強まったといえる。象徴的なのは、首相が記者会見で持ち出した「米艦による邦人退避」の事例だ。朝鮮半島有事を念頭に、在留日本人を日本に向けて輸送中の米艦船を自衛隊が防護するため、集団的自衛権の行使を容認すべきだと主張している。各党の委員がこの事例を突っ込んで質問したところ、首相は「日本人が乗っていないから駄目だということはありえない」「米国の船以外は駄目だと言ったことはない」などと述べ、日本人が乗船していない艦船や、米船籍以外の船舶も防護の対象とする考えを示した。首相は論議開始早々、自ら示した事例の範囲を大きく広げた。また、野党の委員が「自衛隊が戦闘地域に行ってはならないという歯止めは残すのか」と質問すると、首相は「(戦闘、非戦闘)地域の概念にはさまざまな議論があった。さらに精緻な議論をする必要がある」と答え、自衛隊が活動可能な「非戦闘地域」の概念を拡大する可能性を示唆した。「日本人を守る」という事例を前面に押し立てて集団的自衛権の行使を認めさせ、その後は状況に応じていくらでも行使の範囲を広げていく‐。それが首相と自民党の戦略なのだろうか。集団的自衛権の行使容認論者の中にも「歯止め」の重要性を訴える人は少なくない。「必要最小限」とは具体的に何なのか、国会でもっと掘り下げて議論してほしい。

*3:http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201405/0007008398.shtml
(神戸新聞社説 2014/5/31) 集団的自衛権/首相は行使のリスク語れ
 集団的自衛権をめぐる集中審議が衆参両院で行われた。安倍晋三首相が行使容認に向けた憲法解釈変更の検討を表明して初の国会論戦だ。議論の焦点は、なぜ今、集団的自衛権の行使が必要なのか、それを憲法解釈の変更で認めていいのか、この2点に集約される。戦後日本が掲げてきた平和主義の大転換につながる問題だ。国民には慎重な意見が多く、わずか2日間の審議で懸念を解消するのは難しい。引き続き国会の場で議論を尽くす必要がある。安倍首相は、日米同盟を維持するために集団的自衛権の行使が必要だと繰り返したが、想定する事例の矛盾点を突かれると曖昧な説明に終始した。「行使容認ありき」の前のめりの姿勢があらわになった格好だ。
 例えば「有事に邦人を乗せた米艦の防護」は、首相が記者会見でパネルを使い「日本人の命を守れなくてよいのか」と熱弁を振るった事例だ。ところが国会答弁では「日本人が乗っていなければ駄目ということはない」「米国以外の船は駄目とは言っていない」などと軌道修正した。中東のホルムズ海峡を念頭に、海上交通路の機雷除去にも集団的自衛権を使う必要があるとの認識を示した。憲法解釈で禁じられてきた「他国の武力行使との一体化」の制限緩和を検討する方針も示した。自衛隊の活動範囲が海外へ、戦闘地域へと際限なく拡大する恐れがある。実際に武力行使するかどうかは「時の内閣が総合的に判断し、慎重に決断する」とも述べた。行使は「限定的」「最小限度」とするが、具体性に欠ける。これでは時の政権を縛る明確な歯止めはないも同然だ。安倍首相は集団的自衛権を行使しなければ国民の命を守れない、と強調する。一方で、行使に伴うリスクについては一切語ろうとしない。他国のために自衛隊員が血を流し、戦争当事国とみなされて国民が危険にさらされる。本当に行使容認に理解を得たいなら、首相はこうした可能性についても国民にきちんと説明すべきだ。政府は年末の日米防衛協力指針見直しまでに閣議決定するスケジュールを描くが、答弁を聞けば聞くほど疑問が膨らむ。国会審議で徹底的に問題点を洗い出さねばならない。政権の暴走に歯止めをかける国会の存在意義が問われている。


PS(2014.6.4追加):下図及び*4のように、政府は、国際協力で、「戦闘地域」での多国籍軍等への自衛隊による後方支援範囲を大幅に広げる見直し案を示し、(1)支援する他国部隊が戦闘を行っている (2)提供する物品・役務が戦闘行為に直接使われる (3)支援場所が戦闘現場である (4)支援内容が戦闘行為と密接に関係する を掲げ、この4基準のすべてに該当しない限り、後方支援ができるとしたそうだが、何故、それでよいのかは説明がない。実際には、誰から見ても(敵から見ても)、平和主義の国が行う国際協力だという認識が共有できなければ、世界に敵を増やして、平和主義でいられなくなる。そのため、(1)~(4)の一つでも該当すれば、後方支援はしないという方向の方がよいと考える。

   
     *4の記事より
*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140604&ng=DGKDASFS0304N_T00C14A6PP8000
(日経新聞 2014.6.4) 安保法制、新たな火種 「戦闘地域」でも後方支援、公明反発「事例で説明を」
 政府は3日、自民、公明両党の安全保障法制見直しに関する会合で、国際協力で多国籍軍などへの自衛隊による後方支援範囲を大幅に広げる見直し案を示した。従来は認めていなかった「戦闘地域」での活動も可能となる内容。反発した公明党は、政府が想定する支援の具体例を示して説明するよう求める構え。政府・自民党は焦点の集団的自衛権の論議に入る前に、新たな火種を抱えた。政府は3日の「安全保障法制整備に関する与党協議」で新しい基準を示した。(1)支援する他国部隊が戦闘を行っている(2)提供する物品・役務が戦闘行為に直接使われる(3)支援場所が戦闘現場(4)支援内容が戦闘行為と密接に関係する――を掲げ、この4基準にすべて該当しない限りは原則、後方支援ができるとした。単純に解釈すれば、自衛隊が戦闘地域に出向いて他国軍に水や食糧を提供したり、負傷兵を治療したりするなど幅広い支援が可能となる。新基準でも認められないのは、戦闘中の他国軍に現場で武器弾薬を直接渡すことなど極めて限定的なケースになる見通しだ。政府は過去の自衛隊の後方支援では「活動は非戦闘地域に限る」との制約をかけてきた。憲法9条が海外での武力行使を禁じているためだ。戦闘中の場所で他国軍に支援することは「他国の武力行使と一体化する」と見なし、憲法違反になるとの解釈をしている。政府は他国の武力行使と一体化する活動を認めないとの解釈を維持。そのうえで「戦闘地域」と「非戦闘地域」など曖昧な概念で線を引いて「一体化か否か」を判断してきた従来の基準を見直す。政府関係者は「新しい概念で線引きを明確にして自衛隊の活動範囲を広げるべきだ」と訴える。公明党の北側一雄副代表は協議後、記者団に「新基準では相当広い支援ができるようになる」と自衛隊の野放図な活動拡大に懸念を表明。党幹部は戦闘地域での支援は認められないと強調した。自民党にも戸惑う声が上がった。幹部の一人は「自衛隊派遣のリスクが大きくなり国民から理解を得られるか分からない」と漏らした。公明党の理解を得やすいと考えてきた分野でも火種が生じたことに頭を抱える。自公は3日、週1回ペースだった協議回数を増やすことを確認。安保法制見直しで掲げた15事例のうちまだ1事例も対処方針で合意しておらず、安倍晋三首相が意欲を示す集団的自衛権の行使容認に関する事例は議論にも入れていない。このままでは公明党がさらに議論に時間をかけるのは必至だ。政府内には支援の拡大範囲を抑える軌道修正を図るべきだとの声も出ている。

| 日本国憲法::2013.4~2016.5 | 04:55 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.3.6 集団的自衛権は、現行日本国憲法下でどこまで認められるか (2014.3.7追加あり)
   
 *2-3より             (図をクリックすると大きくなります)

(1)日本国憲法9条と集団的自衛権の関係について
 私は、日本国憲法は世界に誇れる立派な憲法で、その三大原則である基本的人権の尊重、国民主権、平和主義及び男女平等は、国内からでは実現できなかったものであるため、太平洋戦争で得た唯一最大の財産だと思っている。

 そして、*1のように、日本国憲法の9条1項には「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と規定され、2項には「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と規定されている。

 このうち、「国際紛争を解決する手段としての戦争を永久に放棄する」というのは、放棄していない戦争があるということだが、それは、国際法上認められている自衛戦争(自国の領土を攻められた時に守る戦争)である。その自衛のやり方に、個別的自衛と集団的自衛があるため、私は、日本の領土を攻められた時に守る目的の集団的自衛は現行憲法でも認められていると思う。ただし、2項の戦力不保持は、1954年、自衛隊が発足した日に形骸化したのだが、自衛戦争目的ということで合理化されているのだ。

(2)日本はどこまでの集団的自衛権なら行使できるのか
 *2、*3に賛否と経過が記載されているが、現行の日本国憲法の下で日本が行使できる集団的自衛権は、日本の領土を攻められた時に守る権利を行使するための戦争だけであって、他国を守るために集団的自衛権を行使することはできないと解するのが自然であり、これがけじめだと、私は思う。

(3)具体的事例で考える
   
       ウクライナとロシア           尖閣諸島         北朝鮮
1)ロシアに対する態度はどうあるべきか
 *4-1のように、ウクライナもクリミアも内部に異なる民族を抱えているので気の毒だが、仮にロシアがウクライナに軍を投入することを決定してヨーロッパ諸国や米国と対立したとしても、日本はそれにかかわるべきでない。

 何故なら、国連安全保障理事会で決議が行われたとしても、イラク戦争のような欧米の我田引水のようなこともあるし、日本は自らそれを判別した上で先見の明ある公正な態度を決定できる国ではないからである。その理由は、日本が島国であり、国内に多様な民族や文化のぶつかり合いを抱えた上でそれをまとめた経験がないためか、視野の狭さがあるからだ。そのため、ウクライナとロシアの件では、憲法9条に基づき、日本は中立でいるのが正解だろう。

2)中国が尖閣諸島に侵攻する場合はどうすべきか
 *4-2のように、中国は、沖縄県石垣市の尖閣諸島久場島沖の接続水域内を中国海警局の公船「海警」2隻に航行させ、世界に尖閣諸島は中国の領土であることをアピールしている。これに対し、日本は海上保安庁の巡視船が領海に入らないよう警告したりしているものの、日本政府は太平洋戦争の歴史を否定したり、日本国憲法をアメリカから押し付けられたという理由で“改正”しようとしたりしているため、他のことで同盟国を敵にしており、肝心の尖閣諸島に関する広報戦で中国に完敗している。

 しかし、尖閣諸島は沖縄県石垣市であり、間違いなく日本の領土であるため、ここを自衛するのは憲法9条にも反せず、集団的自衛権も認められる筈だが、アメリカの態度は中国と対立したくないため曖昧で、肝心のところで日米安保条約や集団的自衛権が生きていないが、日本は、台湾とも協力しながら、あらゆる方法で目的を達するべきである。

3)北朝鮮の場合はどうか
 *4-3のように、安倍首相は、「米国が北朝鮮に攻撃された場合、日本が北朝鮮に武器弾薬を運ぶ船に強制的な検査を可能にすべき」と答弁したとのことだが、米国が北朝鮮に攻撃されるのは日本の領土を侵害されるものではないため、そもそも日本国憲法9条に合致した集団的自衛権の行使ではないし、米国は、世界の警察と自負していろいろな国で戦争をしているため、米国が攻撃されるのにいちいち日本がつき合っていたら、日本は、世界一戦争をする国となってしまう。

 そして、*4-4のように、名古屋高裁も、自衛隊が行う補給活動や米兵の輸送もまた「武力行使」「戦闘行為」と認定し、憲法9条に違反するとしており、こちらの方が常識的でわかりやすい判断だ。

(4)日本における原発等の危機管理について
 *5のように、ウクライナのデシツァ外相は、原発などの核施設防護について、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)に協力を要請する書簡を送り、治安の悪化で「チェルノブイリ原発事故のような核災害が起きることは誰も望んでいない」と指摘したそうだが、日本にも54基もの原発があり、それぞれの使用済核燃料プールには使用済核燃料が大量に保管されている。これらは、冷却装置が働かなくなっただけで大惨事になるものであるため、日本は、戦争の「せ」の字を語る前に、使用済核燃料を迅速に処分すべきである。

*1:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html
日本国憲法 (昭和二十一年十一月三日公布)  <関係個所のみ>
前文
 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
第二章 戦争の放棄
第九条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 2  前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
第三章 国民の権利及び義務
第十条  日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
第十一条  国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第十二条  この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第十四条  すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

*2-1:http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2014021100231
(時事ドットコム 2014/2/11) 憲法解釈、閣議決定で変更=集団自衛権容認へ首相方針
 安倍晋三首相は11日、集団的自衛権の行使を可能にするための憲法解釈変更について、閣議決定により行う方針を固めた。政府の安全保障政策に関わる重要な意思決定で、これに伴い法改正も予定しているため、拘束力の強い形で政府見解を確立する狙いからだ。ただ、閣議決定には全閣僚の署名が必要で、行使容認に反対する公明党の太田昭宏国土交通相の対応が焦点になりそうだ。首相は5日の参院予算委員会で、集団的自衛権の行使容認に向け想定する手順について、(1)憲法の解釈変更(2)行使のための根拠法の整備 (3)行使するかどうかの政策的判断 の3段階と説明した。具体的には、政府の有識者会議が4月にまとめる提言を踏まえ、与党内調整を経て6月22日までの今国会中に解釈変更を閣議決定。秋の臨時国会で自衛隊法など関連法の改正を目指すとみられる。これに対し、公明党は「現状の憲法解釈を今直ちに変えなければいけないという認識は持っていない」(井上義久幹事長)などとして解釈変更に反対する構えを崩していない。太田国交相は5日の参院予算委で、与党内や国会での与野党間の論議を見守る考えを示すにとどめている。内閣法制局によると、政府が過去に憲法解釈を変更したのは、当初は文民としていた自衛官を、1965年に文民ではないと変えた1例のみ。その際は、当時の高辻正己内閣法制局長官が衆院予算委員会で「自衛官は文民にあらずと解すべきだ」と答弁し、続けて佐藤栄作首相が「法制局長官の答弁した通り」と答弁、これを追認した。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2641106.article.html
(佐賀新聞 2014年3月1日) 集団的自衛権で個別法10超改正 / 政府方針、秋の臨時国会で
 政府は、集団的自衛権の行使を可能にするため、秋の臨時国会で有事に備える武力攻撃事態法や自衛隊法など10本を超える既存の個別法を改正する方向で調整に入った。行使容認の理念を盛り込む新法として想定していた「国家安全保障基本法」の制定は当面先送りする方針だ。政府関係者が1日、明らかにした。安倍政権は4月に安全保障に関する有識者懇談会(安保法制懇)から集団的自衛権の行使容認に向けた報告書を受け取り、6月22日の今国会会期末までに行使できないとしてきた従来の憲法解釈変更を閣議決定。その後、必要な法整備を図る段取りを描いている。

*2-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014030602000129.html (東京新聞 2014年3月6日) 自衛権3要件 拡大検討 首相表明で揺らぐ専守防衛
 安倍晋三首相は五日の参院予算委員会で、集団的自衛権の行使を容認するための解釈改憲に向けて、自衛隊の武力行使を限定した「自衛権発動の三要件」の拡大解釈を検討していると明らかにした。専守防衛の基本方針を具体化した三要件が変更されれば、憲法の平和主義の理念は大きく揺らぐ。 (後藤孝好)
Q 三要件って何?
A 他国から攻撃を受けた際、自国を守るための武力行使を抑制的に認めた憲法解釈だ。(1)わが国に対する急迫不正の侵害がある(2)これを排除するために他の適当な手段がない(3)必要最小限度の実力行使にとどまる-の三つを満たす場合しか、武力行使ができない。
Q いつからあるのか。
A 一九六八年、当時の内閣法制局長官が国会答弁で、憲法に基づいた自衛権の範囲の政府解釈として三要件を示した。その後の歴代政権も長年、解釈を維持してきた。
Q 集団的自衛権との関係は。
A 自分の国ではなく友好国が攻撃された時、一緒に武力行使する集団的自衛権は「わが国に対する急迫不正の侵害」には当たらず、「必要最小限度の実力行使」も超えているとして、憲法上行使が禁じられていると歴代政権は解釈してきた。
Q 首相はどこを変えようとしているのか。
A 首相は参院予算委で「『わが国に対する急迫不正の侵害』に至らなくても、事実上、わが国の生存権に大きな影響があるのではないかということも議論している」と指摘した。礒崎(いそざき)陽輔首相補佐官も五日の討論会で「必要最小限に入る集団的自衛権は何か、今、検討している」と表明した。
 「急迫不正の侵害」の対象を「わが国または密接な関係にある国」などとして他国への攻撃でも日本の武力行使を容認し、「必要最小限度の実力行使」に集団的自衛権の行使も含めようとしているようだ。
Q 大きな方針転換になる。
A 拡大解釈で武力行使のハードルが下がれば、自衛隊が海外の紛争地に出向いて、なし崩し的に戦闘に参加することにもなりかねない。

*3-1:http://mainichi.jp/opinion/news/20140212k0000m070079000c.html
(毎日新聞社説 2014年2月12日) 集団的自衛権の行使 今は踏み出す時でない
 集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈変更をめぐる議論が、国会で始まった。安倍政権は集団的自衛権を行使できるとした上で、政権の政策判断や関係する法律、国会承認によって歯止めをかけ、限定的に行使する方針を今国会中にも閣議決定するとみられている。しかし、安倍政権の外交姿勢や歴史認識を見ていると、いったん集団的自衛権の行使を認めてしまえば、対外的な緊張を増幅し、海外での自衛隊の活動が際限なく拡大され、憲法9条の平和主義の理念を逸脱してしまうのではないか、との危惧を持たざるを得ない。行使容認が日本の総合的な国益にどんな結果をもたらすか、慎重に考える必要がある。
◇政権の外交姿勢に懸念
 私たちは、冷戦期とも冷戦後とも異なる複雑な時代を生きている。2010年代に入って中国の経済的・軍事的な台頭が顕著になり、米国から中国へのパワーシフト(力の変動)が進行している。日本や国際社会を取り巻く脅威の内容も大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散、テロ、サイバー攻撃など多様化している。こうした安全保障環境の変化を踏まえ、安倍政権は、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」を基本理念に掲げた。積極的に国際社会の平和と安定に寄与することにより、日本の平和と国益を守るという。集団的自衛権の行使容認もそのために必要なことだと位置づけられている。安保環境変化への安倍政権の問題意識は、私たちも理解する。日本が集団的自衛権を行使することで、朝鮮半島有事への効果的対応が可能になる側面はあるだろう。安倍政権には中国の軍備拡張や海洋進出に対する日米同盟の抑止力を強化する狙いもあるようだ。だが、さまざまな観点から私たちは、集団的自衛権の行使容認に今踏み出すべきではないと考える。安倍晋三首相の私的懇談会の議論では、行使が想定される具体例として、公海上で自衛隊艦船の近くで行動する米軍艦船の防護、米国向け弾道ミサイルの迎撃、シーレーン(海上交通路)の機雷除去、周辺有事の際の強制的な船舶検査(臨検)などがあがっている。「今の憲法解釈のままでは、こうしたこともできない」事例として集められたものだ。だが現実には、これらの活動だけを限定して行うのは難しい。戦闘地域で機雷除去や臨検を行えば、国際法上は武力行使と見なされる。他国軍から反撃され、双方に戦死者が出ることも覚悟しなければならない。

*3-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014030502000131.html (東京新聞 2014年3月5日) 作家ら「解釈改憲に反対」 「戦争させない委員会」結成
 安倍政権が意欲を示す憲法の解釈変更による集団的自衛権の行使容認に反対する作家や学者らが四日、東京・参院議員会館で「戦争をさせない千人委員会」の発足集会を開いた。憲法学者の奥平康弘東大名誉教授やルポライターの鎌田慧さんら八十七人が呼び掛け人となった。記者会見で奥平氏は「解釈改憲は憲法改正と同じ。内閣の解釈で九条をないがしろにしてはならない」と訴えた。鎌田氏は「戦争前夜が迫っている。政党や労組だけでなく、運動のネットワークを広げたい」と語った。作家の雨宮処凛(あまみやかりん)さんは「(安倍政権が)本性をむき出しにした。この国を根本からものすごいスピードで変えようとしている」と指摘。「九条が空文化する方向への動きが加速している」と危機感をあらわにした。会見に先立つ集会には約百二十人が出席。「戦争準備を進め、秘密国家をつくろうとする政府への批判行動を強める」とのアピールを出した。委員会は各都道府県で同様の組織をつくり、署名や国会要請行動をする。他の呼び掛け人は作家の落合恵子さんや評論家の佐高信さん、俳優の菅原文太さんら。

*4-1:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2641102.article.html
(佐賀新聞 2014年3月2日) ロシア、軍投入決定 / 欧米との対立決定的
 【モスクワ、キエフ共同】ロシアのプーチン大統領は1日、ロシア系住民の保護を理由に、ウクライナに軍を投入する方針を表明、憲法の規定に従い上院の同意を求め、全会一致で承認された。ウクライナの政変で生じた混乱に乗じ、公然と軍事行動に踏み切る立場を鮮明にしたことで、欧米との対立は決定的となる見通しだ。部隊はロシア系住民が多いウクライナ南部クリミア自治共和国に投入するとみられる。ロシアが国外で軍事行動に踏み切るのは、2008年にグルジアから独立を求める南オセチアを支援する名目で軍事介入して以来。国連安全保障理事会は日本時間2日午前、緊急協議を開催する。

*4-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140304-00000445-yom-soci
(読売新聞 2014年3月4日) 尖閣接続水域に中国「海警」2隻…海保警告
 第11管区海上保安本部(那覇市)によると、4日午前9時現在、沖縄県石垣市の尖閣諸島・久場島沖の接続水域(領海の外側約22キロ)内を、中国海警局の公船「海警」2隻が航行している。海上保安庁の巡視船が、領海に入らないよう警告している。

*4-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11011742.html?iref=comkiji_redirect
(朝日新聞 2014年3月5日) 北朝鮮を念頭、「米有事に臨検」 集団的自衛権で首相
 安倍晋三首相は4日の参院予算委員会で、集団的自衛権行使の具体例として、米国が北朝鮮に攻撃された場合を念頭に「攻撃した国(北朝鮮)に武器弾薬を輸送している日本の近傍を通っている船を臨検できなくていいのか」と答弁した。北朝鮮へ武器弾薬を運ぶ船に対する強制的な検査を可能にすべきだとの考えを示したものだ。社民党の福島瑞穂氏が「朝鮮半島有事で米国が攻撃されている時、日本も有事に参加する可能性があるのか」と質問したのに答えた。首相は「朝鮮半島で自衛隊が活動することは想定していない。米国を攻撃するための武器弾薬が運ばれている中、私たちはそれを阻止する能力がある」とも答弁し、日本の役割として臨検を強調した。米国が攻撃された場合、北朝鮮に武器弾薬を運ぶ船への臨検を可能にするには、集団的自衛権の行使に加え、強制力を持って警告射撃などをできるよう武器使用基準を緩和することも必要になる。

*4-4:http://asahisakura.nobody.jp/nagoyakousaihanketukakutei.htm
(2008年4月17日) 4.17名古屋高裁・自衛隊イラク派兵違憲判決
 1422名が提訴した「自衛隊イラク派兵差止訴訟」の控訴審判決が名古屋高裁で出された。
判決は歴史的なものである。
1、本判決は「自衛隊派兵の撤退」という控訴人の主張を直接に認めたものではない。しかし画期的な意義を有する内容である。
 第1に、自衛隊機が発着するバグダッドを「戦闘地域」、自衛隊が行う米兵の輸送を「武力行使」とそれぞれ認定し、政府の憲法解釈を前提としても、自衛隊のイラク派兵は「特措法」と憲法9条に違反するとした。判決は「現代戦において輸送等の補給活動もまた戦闘行為」と断じ、「非戦闘地域」規定のあいまいさを突くもので、今後の自衛隊派兵反対運動に強力な根拠を与えるものである。第2に、控訴人の主張する憲法前文の「平和的生存権」を「憲法の基本的精神や理念を表明したに留まるものではない」とし、9条とあわせ「裁判所に対してその保護・救済を求め法的強制措置の発動を請求しうる」具体的な権利としたことである。昨今、「前文」や9条、さらには25条「生存権」も、たんなる理念にすぎないという論調がはびこるなかで画期的である。改憲阻止運動にとっても重要な光明といってよい。第3に、自衛隊とその活動の違憲性を問う裁判では、長沼ナイキ訴訟札幌地裁の自衛隊違憲判決をのぞいて、司法は全て判断を逃げてきた。それが「平和的生存権」に立脚し高裁レベルで真正面から自衛隊の具体的な活動とイラクの状況を精査し、違憲との判断をくだしたのも画期的である。2、名古屋高裁違憲判決は、3.13鉄道運輸機構東京地裁判決、4.11立川ビラ配布事件最高裁判決と、司法の義務を放棄した反動判決が続く中で、限りない勇気を与えるものである。それは全国各地で幾度負けてもくりかえされてきた違憲訴訟の成果である。私たちは判決を武器に憲法闘争をさらに前進させよう。当面、自衛隊海外恒久派兵法制定の動きを止めさせよう。あきらかな武力行使と司法が判断した「後方支援」も「戦闘地域」のあいまいさも、すべて「恒久派兵法」の根幹をなしている。自民党・公明党に、「恒久派兵法」与党案策定のプロジェクトを始動させてはならない。民主党は継続審議となっている同党の「テロ根絶措置法案」をとりさげるべきである。

*5:http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2014030400544 (時事ドットコム 2014/3/4) 核施設防護で協力要請=EUなどに書簡-ウクライナ
 ウクライナのデシツァ外相は3日、原子力発電所などの核施設の防護について、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)に協力を要請する書簡を送ったことを明らかにした。地元通信社が報じた。EUなどの回答を待っている段階だという。具体的にどのような支援を求めたのかは不明だが、治安悪化を受けた措置とみられる。外相は「チェルノブイリ原発事故のような核災害が起きることは誰も望んでいない」と指摘した。ウクライナにはフメリニツキー、ザポリージャなど四つの原発があり、国内全発電量の約半分のシェアを占めている。ロシアによる占拠が進んでいるクリミア半島に原発はない。


PS(2014.3.7追加):*6のように、内閣法制局元長官の阪田氏から、「集団的自衛権行使を認めようとする憲法解釈の変更に反対」という意見があった。これまでの経緯があるのかも知れないが、私は、憲法9条2項については、憲法改正なき超解釈がなされていると思う。

*6:http://digital.asahi.com/articles/ASG3662WZG36UTFK00R.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2014年3月6日) 法制局元長官、再び政権批判 憲法解釈変更に反対
 内閣法制局の阪田雅裕・元長官が6日、都内の日本記者クラブで会見し、憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使を認めようとする安倍政権を改めて批判した。「(改憲)手続きが面倒くさいから解釈(変更)というのは憲政の王道では決してない」と述べ、国民投票を経る憲法改正で臨むべきだとの考えを強調した。阪田氏は行使を認める解釈の変更を「解釈の域を超えている。無視に近い」と批判。海外での自衛隊の武力行使につながるおそれもあり、「大きな転換で国民の覚悟もいる」と述べた。「(内閣法制局は)理屈をしっかりと申し上げることができるかどうかが全てだ。そこが失われたら、法制局が国会でなにを言おうと『政府の使い走りをやっているだけだ』と見られてしまう」とも述べ、解釈変更に関わることで内閣法制局への信頼が損なわれかねないとの懸念を示した。

| 日本国憲法::2013.4~2016.5 | 11:03 AM | comments (x) | trackback (x) |

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