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2019.6.13 高齢者の困窮と高齢者の就業を妨げる高齢者差別 (2019年6月14、15、17、19、20、21、22、23、24、25、26、28、29日に追加あり)
(1)高齢者の生活と年金

 
                               2019.6.3YAHOO
(図の説明:左図のように、65歳の夫と60歳の妻の“標準的”夫婦は、年金だけでは毎月5万5千円、30年で約2千万円が不足するので貯蓄や資産運用が必要だと金融庁が公表し、右図のような対策を推奨している。しかし、ここで前提とされている高齢者のイメージは、現在の50代、60代、70代の人から見ると、かなり昔のものであることに注意が必要だ)

 

(図の説明:左図のように、“平凡な”夫婦の場合、65歳から貯蓄を取り崩し始め、夫の死後は年金給付額が減るためか取り崩しのカーブが急になり、90歳程度で貯蓄が底をつくようだ。また、中央の図のように、高齢者が貯蓄を取り崩すに従って家計貯蓄率は低下し、さらに右図のように、60歳以上の人が購入する品の物価上昇率は他に比べて大きいそうである)

 「65歳の夫と60歳の妻の“標準的”夫婦の場合、年金収入だけでは毎月5万5千円、30年で約2千万円が不足し、貯蓄や資産運用が必要」と金融庁が公表した報告書について、参院決算委員会で、*1-1のように、野党が「年金『100年安心』は嘘だったのか」と追究したが、制度の持続が100年安心なのであり、国民生活が100年安心なのではないことは、年金制度の改定内容を見ればわかる筈である。

 実際、少ない年金だけでは暮らせず、高齢になっても働き続けたり、蓄えを取り崩したりしている人は多く、(少子高齢化のせいにしているが、本当は引当不足が原因)の年金水準のさらなる(調整と称する)引き下げが予定されている。そのため、誰もが納得する形で年金引当不足を解決するには、年金を賦課方式から発生主義による引当方式に戻し、引当不足分は国有資源から生じる収益で埋めていくしかないだろう(このブログのマニフェスト参照)。

 なお、金融庁の報告書は夫婦が揃っている間の収支しか述べていないが、実は妻が1人で残った家計の方がずっと苦しく、貯蓄が底をつくこともある(女性の皆さん、どうするか考えていますか?)。また、国民全体としては、貯蓄を取り崩す高齢者の割合が増えるにつれて家計の貯蓄率は下がり、それとともに投資が抑制される。

 その上、「高齢者は金づるだ」と言わんばかりに、高齢者が購入する製品の物価を高くしたり、高齢者のみに高額の介護保険料を課したりして、全世代に年金・医療・介護の将来不安を残したままでは、誰もが消費を抑えて将来に備える必要があるため、経済にも悪影響を及ぼす。

 また、「95歳まで生きるには夫婦で2千万円の蓄えが必要」と試算した*1-2の金融庁審議会報告書は、「物価の伸びより年金給付の伸びを抑える『マクロ経済スライド』を適用してさらに年金を減額していくため、(インフレ政策をとり続ければ)中長期的には年金給付額の実質的低下が見込まれる」と明記しており、地域によって物価水準は異なるものの、2千万円蓄えても不足する人が多いというのが正しいと思われる。

 一方、参院選前なので、寝た子を起こしてはならないと、*1-3のように、自民党は金融庁金融審議会報告書に抗議して撤回を要求し、公明党の山口代表も不快感を示している。

 最後に、*1-4の「将来への議論封じるな」とする記事もあり、確かに報告書が公的年金の先細りを指摘して自助努力を促し、高齢社会の資産形成に役立つ(?)とする投資のみに言及しているのは偏りがあるため、非正規労働者の増加・年金給付水準の低下・高齢者の貧困拡大などを前提に、参院選を控えた今だからこそ、最近の年金制度改定を復習して議論を深め、それぞれの候補者がどう考えて行動してきたのかを明確にして、有権者の判断に資すべきである。

(2)改訂しても高齢世代と40代以上のみに保険料を負担させる介護保険制度

  
                                 2019.6.15東京新聞
(図の説明:左図のように、介護保険料は増加の一途を辿っているが、地域や所得によってさらに高い。また、中央の図のように、所得によって利用料の負担率が異なるが、所得によって保険料も異なるため、これは二重負担になる。そして、右図のように、金融庁の報告書には、介護が加わるとさらに最大1千万円必要だと書かれているそうだ)

 2018年度の介護保険制度改訂で、①所得が高い人の利用料3割負担の導入 ②所得が高い人の高額介護サービス費の自己負担上限引き上げ ③要介護・要支援認定有効期限の延長 ④「介護療養病床」に代わり「介護医療院」を新設 ⑤福祉用具貸与価格の適正化 ⑥共生型サービスの開始 ⑦市町村に対する財政的なインセンティブの導入 が行われたそうだ(https://www.sagasix.jp/knowledge/hoken/kaigohoken-seido-kaisei/ 参照)。

 このうち①②は、「世代間・世代内の公平性を確保しつつ、制度の持続的な可能性を高める目的で、平成30年8月から所得が特に高い一部の利用者層(年金収入などが年間340万円以上の利用者)の負担割合が3割とした」とのことだが、世代間の公平性確保なら、介護保険制度で自らの介護負担が軽減された働くすべての人に介護保険料を課すことが必要だ。何故なら、介護保険制度が無かった時代は、介護保険料の支払いは不要だったが、そのかわり家族が全ての介護をしなければならず、この負担の方が重かったからである。さらに、現在は現役世代のうち40歳以上に介護保険料を課しているため、40歳定年制などが言われているからだ。

 また、世代内の公平性として利用料3割負担の導入や自己負担上限の引き上げが行われたことについては、年金収入等が年間340万円以上の利用者が“所得が特に高い一部の利用者層”に入るというのは大いに疑問である上、所得が上がれば高い保険料を徴収し、サービス提供時にも利用料を増やすというのは、同じ所得に対する二重負担(二重課税と同じ)である。

 ③~⑦は、変更の内容を検討しなければ何とも言えないので省くが、①②を見ただけでも厚労省及び関係議員のセンスのなさがわかる上、世代間・世代内の公平性には程遠いわけだ。

(3)生活の不安は全員に

  
                        2019.5.16東京新聞

(図の説明:左図のように、老後の生活に不安を感じているのは、全世代では81.3%に上るが、非正規雇用の多い40代の91.0%は特に高い。しかし、中央の図のように、就業機会も65歳までの就業継続は義務化されたが70歳までは努力義務にしかなっていないため、平均余命の伸びや年金給付の不足額を考慮すれば、70歳までの義務化は急務である。ただ、右図のように、日本・アメリカは就労希望理由の1位が「収入」であるのに対し、ドイツ・スウェーデンは「遣り甲斐」であり、これがあるべき姿であって羨ましい)

1)高齢者の就労について
 *2-1のように、政府は未来投資会議で、成長戦略として70歳まで働ける場を確保することを、企業の「努力義務」として規定することを盛り込んだそうだ。私も、人手不足の中、労働者が長く働けるようになれば、教育研修費を節約しながら生産性を上げることができると考える。

 しかし、年金制度を国民サイドからの100年安心プランにするためには、高年齢者雇用安定法を改正して70歳までの雇用は義務化すべきだ。その際、同一労働・同一賃金は、全世代及び男女から見て当然のことである。

 そのような中、*3-1、*3-2のように、高齢運転者による事故をTVの全局で毎日取り上げ、「高齢者は全員運転能力がなくなるため、免許返納すべきだ」という世論を作っているのは目に余る。それこそ、運転支援機能がある自動車に限定した運転免許制度を創設したり、全自動車に運転支援機能をつける技術開発を行ってその装備の装着に補助金を出すなど、世界で進む高齢化社会のニーズに対応する技術開発に重点を置いた方がよほど賢い。

 しかし、*2-2は、①日本の労働生産性は主要7カ国で最下位 ②産業の新陳代謝を促して付加価値の高い分野に人を動かす抜本策が必要 ③70歳までの就業機会確保は少子高齢化への処方箋の一つとして評価できるが、単なる雇用延長だけでは日本全体の生産性の足を引っ張りかねない ④そのため、裁量労働制の対象拡大や解雇規制の緩和などが必要だ としている。

 革新を嫌ってカンフル剤の投入ばかりやってきたため、①は当然だが、②の実現には能力の高い人を必要とする企業がヘッドハントして雇用できるシステムが必要なのであり、④の裁量労働制の対象を拡大することによって労働者から搾取したり、解雇規制の緩和で解雇された人を他の企業に転職させたりすればよいわけではない。また、③の70歳までの雇用延長だけでは生産性の足を引っ張りかねないというのは、年齢・性別・勤務年数にかかわらない能力給の比重を増して、公正な評価を行う必要がある。

2)高齢者は能力がないとアピールする高齢者差別
 このような中、*3-1のように、「福岡市で高齢者が逆走し、追突事故後に加速して600~700メートル、ブレーキ痕がなかった」というニュースがあったが、運転していたのは81歳男性で76歳の妻とともに亡くなったと書かれている。

 これは、事故を起こした人も気の毒な話なのだが、*3-2のように、池袋で起こった高齢者の事故とあいまって、「子どもが犠牲になるのは痛ましいから、高齢者は全員免許返納すべきだ(話が飛躍しすぎており、子どもの事故をなくすために全高齢者が引きこもるべきだという考え方は問題だ)」「海外には免許の定年制もある(運転支援車の技術を進歩させた方が役にたつ)」という愚かな結論になった。
 
 私は、このような事故を繰り返し報道して、*3-3のように、「高齢者に免許を返納させ、生活支援の体制整備をすればよい」と結論付けるのはよくないと考える。何故なら、事故を起こすのは高齢者だけではないし、仕事や外出に運転が必要な高齢者も多いからだ。また、「75歳以上の層は70~74歳に比べて、事故が2倍多く発生」と書かれているのも層分けの幅が同じでない上に、高齢者全員が事故を起こしているわけではない。

(4)科学技術の進歩を活かせ
 政府は、*4-1のように、75歳以上の高齢ドライバーを想定して新しい運転免許制度を創設し、安全運転支援システムを搭載した自動車に限定して運転を認めるそうだが、年金生活者が新車に買い替えるのは容易ではない。そのため、プログラムを更新したり、小さな器械を装着したりすれば安全運転支援システムを搭載できるようにし、それに補助金をつけることが望まれる。

 また、*4-2のように、九電が買い取り単価7円/kw時で、FIT期限終了後の家庭発電の太陽光を買い取るそうで、これなら原発や火力発電と十分に競争できる。FIT期限が終了した家庭は、①九電への売電継続 ②新電力会社への変更 ③蓄電池を活用した自家消費などを選択できるそうで、言うことはない。経産省は大手電力各社に料金プランを示すように求め、四電が7円/kw、関電が8円/kw、東北電が9円/kwと発表しているそうで、これとEVの運転支援車を併用すれば、21世紀の移動手段になるわけだ。

 さらに、蓄電池の材料になるので次の油田と言われている「レアアース」は、*4-3のように、南鳥島周辺や沖縄付近の海域に埋蔵されているそうだ。いつまでも原油に拘泥して産業化せず、これも中国・韓国・インド・ロシアなどに大きくリードされないように願いたい。

・・参考資料・・
<高齢者の生活と年金給付>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14050522.html (朝日新聞社説 2019年6月11日) 「年金」論戦 まずは政府が説明を 
 安倍首相と全閣僚が出席する参院決算委員会がきのう開かれた。衆参の予算委員会の開催を与党が拒むなか、広く国政の課題をめぐる質疑に首相が応じたのは2カ月ぶりだ。野党の質問が集中したのは、夫婦の老後の資産として2千万円が必要になるとの、金融庁が先に公表した報告書だ。65歳の夫と60歳の妻の場合、年金収入だけでは毎月5万5千円、30年で約2千万円が不足する――。そんな試算に基づき、貯蓄や資産運用の必要性を呼びかけた。「年金は『100年安心』はうそだったのか」「勤め上げて2千万円ないと生活が行き詰まる、そんな国なのか」。野党の追及に、首相や麻生財務相は「誤解や不安を広げる不適切な表現だった」との釈明に終始したが、「表現」の問題にすり替えるのは間違っている。年金だけでは暮らせず、高齢になっても働き続けたり、蓄えを取り崩したりしている人は少なくない。少子高齢化が進み、今後、年金水準の引き下げが予定されているのも厳然たる事実だろう。制度の持続性の確保と十分な給付の保障という相反する二つのバランスをどうとるのか。本来、その議論こそ与野党が深めるべきものだ。国民民主党の大塚耕平氏は「制度を維持・存続する意味での安心で、国民の老後の安心ではない」とただしたが、首相は「みなさんに安心してもらえる制度の設計になっている」と述べるだけだった。年金の給付水準の長期的な見通しを示す財政検証は、5年前の前回は6月初めに公表された。野党は今回、政府が参院選後に先送りするのではないかと警戒し、早期に明らかにするよう求めたが、首相は「政治的に出す、出さないということではなく、厚労省でしっかり作業が進められている」と言質を与えなかった。年金の将来不安を放置したままでは、個人消費を抑え、経済の行方にも悪影響を及ぼしかねない。財政検証を含め、年金をめぐる議論の土台となる正確な情報を提示するのは、まずは政府の役割である。日米の貿易交渉や日朝関係、防衛省が公表したデータに誤りがあった陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備など、国会で議論すべき課題は山積している。しかし、4時間弱のきのうの審議では、年金以外のテーマはほとんど取り上げられなかった。夏の参院選で、有権者の判断材料となるような審議こそが求められている。今国会の会期末まで2週間余り。政権与党は逃げの姿勢を改め、国民の前で堂々と論戦に応じるべきだ。

*1-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/CK2019061102000140.html (東京新聞 2019年6月11日) 「老後2000万円」報告書 野党追及 年金目減り記述削除
 安倍晋三首相は十日、参院決算委員会で、九十五歳まで生きるには夫婦で二千万円の蓄えが必要と試算した金融庁の審議会の報告書について「不正確であり、誤解を与えるものだった」と釈明した。野党は、当初案にあった年金給付水準の目減りなどに関する記述が報告書から削除されたことなども指摘。「国民を欺いている」(立憲民主党の蓮舫参院幹事長)と批判した。報告書は金融庁の金融審議会が今月三日に公表。平均的な無職の高齢夫婦世帯で月五万円の赤字が見込まれ、三十年間で二千万円が不足するとした。自公政権は二〇〇四年の年金制度改革で、制度が「百年安心」との看板を掲げてきた。だが老後には公的年金以外に多額の自己資金が必要なことが明確に示されたことで、不安が広がっている。蓮舫氏は決算委で「国民は『百年安心』がうそだったと憤っている」と批判。麻生太郎副総理兼金融担当相が報告書について「冒頭の一部、目を通した。全体を読んでいるわけではない」と明かした点も「問題だ」と指摘した。首相は、公的年金の積立金運用益が六年間で四十四兆円となったことを強調。本年度の年金給付が、物価の伸びよりも年金給付の伸びを抑える「マクロ経済スライド」を適用した上でも「0・1%の増額改定となった」と反論した。麻生氏は報告書に関して「二千万円の赤字であるかのように表現した点は、国民に誤解や不安を与える不適切な表現だった」と繰り返した。蓮舫氏は、先月二十二日に審議会がまとめた報告書案の段階では、年金給付水準について「中長期的に実質的な低下が見込まれている」と明記されていたことも追及した。今月三日の報告書で削除した理由について、金融庁の担当者は「より客観的な表現に改めたものを提出した」と説明した。蓮舫氏は、年金制度の健全性を五年に一度チェックする財政検証についても「早く出さないと国会で審議できない。まさか参院選後ということはないか」と確認を求めた。首相は「厚生労働省でしっかりと作業が進められている」と、公表時期を明言しなかった。

*1-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/385861 (佐賀新聞 2019年6月11日) 自民、金融庁に報告書の撤回要求、公明代表「猛省促す」
 自民党は11日、金融庁に対し、老後資金として2千万円が必要とした金融庁金融審議会の報告書への抗議を伝え、撤回を要求した。林幹雄幹事長代理が国会内で金融庁幹部に伝えた。公明党の山口那津男代表は記者会見で「いきなり誤解を招くものを出してきた。猛省を促したい」と不快感を示した。自民党の二階俊博幹事長も「2千万円の話が独り歩きして国民の不安を招き、大変憂慮している」と自民党本部で記者団に語った。報告書の撤回を要求した理由に関し「参院選を控えており、党として候補者に迷惑を掛けないよう注意していかねばならない」と説明した。

*1-4:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20190613_4.html (京都新聞 2019年6月13日) 「老後」報告書  将来への議論封じるな
 国民の「老後」に関する議論まで封印しようというのだろうか。95歳まで生きるのに夫婦で2千万円の蓄えが必要と試算した金融庁金融審議会の報告書の受け取りを、政府が拒否した。内容を巡って野党をはじめ各方面から強い批判が上がっていた。夏の参院選への影響を排除しようとしたことは明らかだ。確かに、報告書は公的年金の先細りを指摘して自助努力を促し、投資を勧めているとも読み取れる。違和感を感じさせる内容だ。麻生太郎財務相は「世間に不安や誤解を与えた。政府の政策スタンスとも異なる」と受け取り拒否の理由を述べた。だが、報告書はその麻生氏の諮問を受けてまとめられており、公的な性格を持つ。内容が妥当でないというなら、政府内や国会で議論を尽くすのが筋ではないか。報告書の門前払いは、審議会が提起した年金の将来に関する問題まで封じてしまいかねない。自ら諮問しておきながら、選挙で不利になりそうだと見るや一転して突き放し、はしごを外す-。麻生氏のこうした姿勢も、政治に対する不信を招きかねない。報告書はもともと、高齢社会の資産形成に関するものだが、公的年金制度の限界を政府が認めたと受け取れることや、元本割れリスクもある投資を促すなどの内容は衝撃的だった。批判が拡大したのは、非正規労働者の増加や高齢者の貧困拡大など、国民が抱く生活実感とつながる面があったからではないか。その意味では、年金の給付水準低下や長い老後への備え方など、報告書が示唆する課題を国民に示し、幅広く考えるきっかけにできる可能性があった。参院選を控えた今だからこそ、与野党を超えて議論を深めなければならないはずだ。報告書をなかったことにするのは、そうした機会の放棄に等しい。今年は5年に1度行われる年金の財政検証の年だが、政府は検証結果の公表時期をいまだ明らかにしていない。参院選での争点化を避けるため、選挙後に先送りするとの見方も出ている。そうだとすれば、年金制度の現状と先行きの見通しを覆い隠そうとするもので、極めて不誠実だ。批判を強めている野党も、政権の姿勢を責めているだけでは済むまい。年金制度の持続可能性や負担と給付のあり方に踏み込んだ具体策をぶつけ、実りのある議論につなげる気構えが欲しい。

<高齢者の就労について>
*2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14045073.html (朝日新聞 2019年6月6日) 70歳就労、企業に努力義務 成長戦略素案 人手不足、効率化狙う
 政府は5日の未来投資会議(議長=安倍晋三首相)で、今年の成長戦略の素案を示した。70歳まで働ける場を確保することを、企業の「努力義務」として規定することなどが盛り込まれている。人手不足が深刻化するなか、限られた労働の担い手がより長く働けるようにして、生産性を上げる狙いがある。今月下旬にも閣議決定する。盛り込まれた施策について、必要な法律の改正案は2020年の通常国会に提出する。安倍首相はこの日の会議で、「急激な変革の時代にあって、人や資金が柔軟に動けるよう、これまでの発想にとらわれない大胆な政策をスピーディーに実行していかなければならない」と述べた。「目玉」と位置づけるのは、高年齢者雇用安定法を改正して、70歳まで働きたい人が働けるようにすることだ。希望する人に働く場を提供するため、定年廃止や定年延長、他企業への再就職、起業支援など七つの選択肢を示す。どれを採り入れるかは各社の労使などで話し合う仕組みだ。いずれかの方法で70歳まで雇用することを当初は罰則のない「努力義務」として企業に課し、定着するかをみる。運転手不足が深刻な運送分野も重点的に盛り込まれた。一つは、マイカーによる有償での運送だ。「白タク」行為として原則禁止されており、現在は過疎地域などで限定的に「自家用有償旅客運送」として認められている。今回、この制度をさらに緩和。民間のタクシー会社が配車手続きなどで参入しやすくする。タクシーに見知らぬ人同士を乗せる「相乗り営業」については、今年度中にも通達を出して実現させる。そのほか、地方銀行と地方のバス会社が合併しやすくする特例法案を提出し、単独で生き残りが難しい地域での企業再編を促す。また、以前の成長戦略から継続する政策として、高齢運転者による事故防止策を明記。安全運転支援機能がある自動車に限定した高齢者の運転免許制度の創設に向けて、今年度内に方向性を定める。今後の課題として、戦略では「個人が組織に縛られ過ぎず、付加価値の高い仕事ができる社会を実現する必要がある」と提言。兼業・副業を広めるための議論を加速させるとした。一方、昨年の成長戦略で重点施策として掲げられた152項目のうち、4割が1年で達成すべき目標に満たなかった。ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次・チーフエコノミストは「本来、成長戦略は企業活動を活発にするための規制緩和を掲げるべきものだ」とした上で、「夏に選挙があるため、風当たりのきつくない政策を並べている。成長力アップにどの程度役立つのか疑問だ。目新しい政策を並べるより、過去に掲げた目標を点検し、不十分な分野を加速させるべきだ」と話した。
■成長戦略実行計画案に盛り込まれた主な施策
◆70歳までの就業機会確保を企業の「努力義務」として規定
◆マイカーの有償運送にタクシー事業者らが参画しやすくする規制緩和
◆タクシーに見知らぬ人同士が乗る「相乗り営業」の解禁
◆100万円を超える銀行業以外の送金
◆地方銀行、乗り合いバス事業者の経営統合や共同経営を容易に

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190606&ng=DGKKZO45748260W9A600C1MM8000 (日経新聞 2019年6月6日) 「新陳代謝」に遅れ 雇用改革踏み込めず
 人口減少が進む日本で人手不足を「成長の天井」にしないためには、効率よく働いて成果を高める「労働生産性の向上」の道を歩む必要がある。今回の計画では地銀の再編支援などを盛り込んだ。だが産業の新陳代謝を促し、付加価値が高い分野に人を動かす抜本策は踏み込み不足だ。日本生産性本部の国際比較によると、日本の労働生産性(就業1時間あたり付加価値)は2017年に47.5ドルだった。10年代以降、米国の3分の2程度の水準が続き、主要7カ国では最下位が定位置だ。原因の一つは成長分野への人材再配置の遅れにある。「日本再興戦略」と称した第2次安倍政権で初の成長戦略では、「開業率・廃業率10%台を目指す」と明記していた。それぞれ当時は4~5%程度。17年度の開業率は5.6%どまりで、廃業率は逆に3.5%まで下がった。目標未達の検証は十分でない。本来は企業の存続と雇用の問題は切り離し、生産性の低い企業には退出してもらうのが筋だ。企業の再編も既存の事業を救うためでなく、産業の入れ替えにつなげる必要がある。70歳までの就業機会の確保は少子高齢化への処方箋の一つとして評価できる。ただ単なる雇用延長だけでは日本全体の生産性の足を引っ張りかねない。裁量労働制の対象拡大や解雇規制の緩和など、ハードルが高い本丸の課題はなお積み残されている。

<高齢者は能力がないとアピールする高齢者差別>
*3-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/516005/ (西日本新聞 2019/6/5) 追突事故後に加速 600~700メートル ブレーキ痕なし 福岡市の高齢者逆走
 福岡市早良区百道2丁目の交差点付近で4日夜、6台が絡み9人が死傷した多重事故で、交差点に突っ込んだ乗用車は反対車線を約600~700メートル逆走して次々と車と衝突し、事故現場には目立ったブレーキ痕も残っていなかったことが5日、捜査関係者への取材で分かった。福岡県警は、乗用車が同じ車線を走行する前方の車に追突した最初の事故直後に逆走を開始し、加速を続けて猛スピードで交差点に突っ込んだとみて調べている。
●死亡は運転81歳男性と76歳妻
 福岡県警は乗用車を運転し、死亡した2人の身元について、同区原3丁目、小島吉正さん(81)と妻節子さん(76)と発表。自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)容疑で、5日午前から乗用車と関係車両の計6台の実況見分を始めた。車の破損状況などを調べ、事故の詳しい経緯や原因の解明を急ぐ。事故は4日午後7時5分ごろに発生。県警の調べや目撃者の話を総合すると、乗用車は県道を交差点に向けて北上中、同区藤崎2丁目の動物病院付近で前方を走る車に追突、直後に対向車線にはみ出して逆走した。その後、前から走ってきた車やタクシーに次々と衝突、交差点で右折しようとした車2台にもぶつかり、うち1台は歩道に乗り上げてひっくり返った。信号待ちをしていた歩行者の男性も巻き込んだ。県警によると、10~80代の関係車両の8人と通行人1人が病院に搬送された。小島さん夫婦はその後、死亡が確認された。残る7人は負傷したが、命に別条はないという。当日、孫の送迎で県道を交差点に向けて走行していた同区の70代男性は「動物病院近くでガシャーンと音がした後、『ププッ』とクラクションの音がして、猛スピードで(小島さんが運転していた)乗用車に右側から追い抜かれた。自分は中央線寄りの車線を走っていたので、乗用車は逆走で反対車線を真っすぐ走っていった。80キロ以上は出ていた気がする」と話した。県警によると、県道の制限速度は時速50キロ。乗用車は、追突事故をきっかけに何らかの理由で加速し、制限速度を大幅に上回るスピードを出していたとみている。

*3-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/516217/ (西日本新聞 2019/6/6) 高齢者免許返納ためらう地方 海外は場所制限、定年制も
 高齢者が運転する車による悲惨な事故が相次ぐ中、運転免許制度はどうあるべきか‐。東京・池袋で4月、87歳が運転する車が暴走し母子2人が死亡。福岡市早良区では81歳の車が逆走で交差点に突っ込んだ。都心部では免許返納者が増えているが、交通の便が悪い地方で車は「生活の足」で返納にためらう人も少なくない。海外には運転する場所などを制限する高齢者向け「限定免許」や定年制を採用する国もあり、高齢ドライバーの事故防止に各国が試行錯誤している。「(池袋と)同じような事故を起こすかもしれないと恐ろしくなった」。同区の平野澄雄さん(84)は5月23日、免許を返した。元タクシー運転手で無事故運転が自慢だったが、妻の不安などが背中を押した。福岡県警によると、池袋の事故後、免許返納者は増加傾向で、例年の倍の105件に上った日もあった。交通機関が充実した都心部でも事情は一様ではない。同市城南区の主婦(72)は「加害者になってしまったら…」と恐怖がよぎる一方で、夫(78)の病院への送迎や買い物に車は「手放せない」と悩む。地方では返納に「高いハードル」がある。高齢者の免許返納率が九州で最も低い熊本県の八代市泉町に住む森山和俊さん(78)は「車がないと何もできない」と訴える。買い物や病院、老人クラブの会合場所は約30キロ離れ、バスは1日4~6便のみ。「免許は自立の証し。衰えも感じないし、返納は考えてない」
   ◇    ◇ 
 警察庁によると、昨年の免許保有者10万人当たりの交通事故件数は494件。65~74歳はこれより少なく、75~79歳は533件▽80~84歳604件▽85歳以上645件と年齢とともに増加。一方、16~19歳1489件、20~24歳876件と若者の事故率の方が高い。ただ、山梨大の伊藤安海教授(交通科学)は「高齢者の運転能力は加齢に伴う目の衰えなどにより、若い人に比べて個人差が出やすい」と指摘する。「事故を予防するためにも『限定免許』を導入し、限定免許になった時点で返納後の生活設計もするべきだ」と話す。ドイツやスイスが導入している限定免許は、運転は昼間に限り、場所も制限する。速度制限を設ける国もある。日本も政府が2017年から導入を検討しているが、結論は出ていない。オーストラリアや米国では運転技能を見極める実技試験を取り入れている州もある。日本は70歳以上に講習を義務付け、75歳以上には認知機能検査も加わるが、実技試験はない。九州大の志堂寺和則教授(交通心理学)は「高齢者の中には運転能力を過信する人もいる。免許更新時に運転技能を確かめる仕組みが必要」と強調する。「年齢の上限が必要」‐。池袋の事故後、インターネット上には、定年制を支持する書き込みも目立った。中国は70歳までの定年制を採用する。福岡県警幹部は「年齢と運転能力は別。年齢で一律で区切って“返納しろ”は行き過ぎ」と慎重だ。

*3-3:https://www.agrinews.co.jp/p47834.html (日本農業新聞論説 2019年6月4日) 高齢運転事故防止 生活支援の体制整備を
 高齢ドライバーによる交通事故が後を絶たない。子どもらが犠牲になる痛ましい事故も相次いでいる。だが、免許の自主返納を勧めるだけでは、問題は解決しない。返納しても生活に困らない支援体制づくりや、先進技術を活用した運転支援など総合的な対策が急務だ。高齢者の運転については、農山村で暮らす農家らの関心が高く、日本農業新聞にもさまざまな声が寄せられている。免許を自主返納し、その後は電動自転車やタクシーなどの代替手段を使って支障なく暮らしている人もいる。しかし、交通事情や行政の支援、農業経営の規模など個人や地域で差があり、返納をちゅうちょする人もいる。70代後半の男性は「返納したいが、そうすると暮らしていけなくなる」と切実に訴える。返納の有無にかかわらず、対策が遅れているのが実態だ。政府は5月末、相次ぐ高齢者による事故を受けて、交通安全対策に関する関係閣僚会議を開いた。安倍晋三首相は、①高齢者の安全運転支援②免許を返納した場合の日常生活支援③子どもの移動経路の安全確保──を指示、早急な対策を求めた。60歳以上を対象にした内閣府による高齢者の経済・生活環境調査(2016年)では、買い物に行くときの手段で6割が「自分で自動車などを運転」と回答。公共交通機関や家族の運転する車、タクシーを利用するとの回答は計1割にも満たなかった。17年交通安全白書で、免許人口10万人当たりの死亡事故件数は、最多が75歳以上(8・9件)で、次いで16~24歳(7・2件)となった。75歳以上の層は、70~74歳に比べ2倍多く発生しており、高齢になるほど死亡事故につながりやすい。原因は視力や認知力、判断力の低下によるものとみられている。だが、免許を返納して交通手段が絶たれると、困るのが買い物と通院だ。近年は、こうした高齢者の生活や外出を支援しようと、国や行政の助成事業を活用して地域住民自身が高齢者の通院や買い物に付き添う支援をしたり、ショッピングセンターなど買い物ができる場所にミニデイサービスを設置したりする動きも出てきた。運営に携わる関係者は「地域住民に困り事を聞き取ったところ、草刈りとともに『買い物や病院に行く手段がない』が最も多かった。この悩みは全国共通。国や行政が本格的に支援体制をつくるべきだ」と指摘する。ブレーキとアクセルを踏み間違えた際のスピード抑制装置などが搭載された「先進安全自動車(ASV)」導入への補助も必要だ。高齢者を対象にした購入支援の検討は始まったばかりだが、早期に実現すべきだ。政府は早急に、高齢者の生活・外出支援体制を整備すべきだ。JAは行政と連携し、生活支援事業の推進に力を入れてほしい。年を重ねても安全に暮らし続けられる地域をつくることが求められている。

<科学技術の進歩を活かせ>
*4-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45930890R10C19A6000000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2019/6/11) 高齢者向け新免許創設 メーカーは安全機能の開発競う
 政府は75歳以上の高齢ドライバーを想定し、新しい運転免許制度を創設する方針です。安全運転の支援システムを搭載した自動車に限定して運転を認める枠組みで、新免許は新型車の買い替え需要を促しそうです。75歳以上の高齢ドライバーは2018年末時点で563万人で、18年の高齢者による死亡事故は全体の約15%を占めています。最近でも福岡市や東京・池袋で高齢ドライバーによる死亡事故が相次ぎ発生。高齢ドライバー対策を求める世論が高まったことから、政府も制度面の検討を急ぐ必要があると判断しました。企業も対策に動き始めています。08年に富士重工業(現SUBARU)が安全運転支援システム「アイサイト」を開発。10年に乗用車「レガシィ」に搭載しました。トヨタ自動車は15年から先進安全システム「トヨタセーフティセンス」を導入。「アルファード」や「ヴェルファイア」といった上級ミニバンなどに夜間の歩行者を検知する自動ブレーキを標準搭載しました。トヨタとデンソーはアクセルとブレーキの踏み間違いなどによる事故を防ぐ後付け装置を開発。19年内には「プリウス」や「ヴィッツ」など12車種に取り付けられるようにします。

*4-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/516218/ (西日本新聞 2019/6/6) 九電、買い取り単価7円 家庭発電の太陽光 FIT後方針
 九州電力が11月以降に家庭の太陽光発電で余った電力の10年間の買い取り期間が終了する契約者について、新たな買い取り単価を1キロワット時7円程度とする方針を固めたことが5日分かった。固定価格買い取り制度(FIT)が始まった2009年度に契約した家庭の単価は48円だった。九州で19年度中に期限を迎える契約は約10万件(出力約42万キロワット)に上る。九電が6日に発表する。九電と契約を結んでいる太陽光10キロワット未満の家庭などは2月現在で約37万件(同約170万キロワット)ある。期限が終了した家庭は、九電への売電継続や新電力会社への変更、蓄電池を活用した自家消費などを選択できる。FITは太陽光など再生可能エネルギーを普及させる目的で始まり、従来の単価は高く設定されていた。電力会社が再エネ電力を買い取る費用は「賦課金」として電気料金に上乗せされているため、消費者の負担軽減のために単価は段階的に下落し、九州は19年度で26円になっていた。電力会社はFITによって住宅用太陽光の余剰電力を10年間買い取ることを義務付けられているが、期限終了後は二酸化炭素(CO2)を排出しない電源としての価値などを勘案して電力各社が個別に単価を設定できる。経済産業省は大手電力各社に6月末までに料金プランを示すように求めている。既に四国電力が7円、関西電力が8円、東北電力が9円などと発表。一方、16年4月に電力小売り事業を始めた西部ガスは、FIT終了後の余剰電力を買い取るかどうかを検討している。他の新電力は九電の単価設定を踏まえ、九州地域での買い取り単価を公表する見通し。

*4-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39489620Y8A221C1TJM000/ (日経新聞 2019/1/4) 深海の「レアアース泥」本格開発へ、資源量把握急ぐ
 深海底にある鉱物資源の開発が本格化する。産業技術総合研究所や海洋研究開発機構などのチームが国の支援のもと、2月に南鳥島周辺の海域でレアアース(希土類)を高濃度で含む泥「レアアース泥」の含有量を調査する。沖縄周辺の海域にある「熱水鉱床」の開発でも研究は進む。産業化には正確な埋蔵量や品質の把握が欠かせない。「予定よりも早く調査が進んでいる」。内閣府の研究プログラム「SIP」の一環で海底資源の開発に挑む石井正一プログラムディレクターは笑顔を見せる。2018年秋に先行して実施した航海では、南鳥島周辺の水深5000メートルの海底の25カ所から試料を採った。18年度内に解析する。19年も海底の地質調査を進め、海洋機構や産業技術総合研究所などがレアアース泥の量を正確に推定する。22年度には南鳥島近海で試験採掘をする計画だ。南鳥島近海では14年ころから、東京大学や企業約30社などがつくる民間団体が調査や採掘技術の開発を進めてきた。東大の加藤泰浩教授らが13年に磁石に使うネオジムなどを高濃度で含むレアアース泥を発見し、国も開発の支援に動き出した。加藤教授は「市場価値の高いレアアースが多く含まれており、泥から鉱物を取り出す工程も簡単だ」と話す。専用の管で泥を海上へ引き揚げ、酸に浸すと泥の中の鉱物が溶けて取り出せる。石井プログラムディレクターは「資源量を正確に把握し、なるべく早く産業化したい」と話す。国はこれまで、より浅い海底にある熱水鉱床の開発に力を入れてきた。熱水鉱床は金属を含む熱水が噴き出してできたもので銅や亜鉛、金などを含む。水深1000メートル前後にあり、比較的調査しやすく研究が進んでいる。17年には沖縄周辺で採掘試験に成功した。まだ産業化には調査不足だ。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、産業化には1日あたり5000トンの採掘規模が必要だという。この規模で何十年も採掘を続けられる資源量があるかは不明だ。現状ではどちらの資源も採算は不明だ。熱水鉱床の場合、経産省の試算では設備投資に1183億円、運営に年232億円かかり、採掘期間を20年とすると834億円の赤字になる。レアアース泥の場合、加藤教授らの13年の試算では約750億円の設備投資を約16年で回収できる。ただどちらも様々な仮定を伴う。石井プログラムディレクターは「民間の参入を促すには、産業化した場合の全体像を示すことが必要」と話す。SIPでは詳細調査を進めて、企業の事業判断に必要な情報をそろえる考えだ。中国や韓国、インド、ロシアでも海底資源の埋蔵量の調査が進む。国連下部組織の国際海底機構は、20年をめどに環境影響などを考慮した海底資源開発のルールを作ろうとしている。「採掘が海底の環境に与える影響を調べる技術で日本は先んじている」(資源エネルギー庁)。このリードを生かしつつ産業につなげるには、企業を巻き込んだ調査結果に基づく議論が欠かせない。

<できないということを威張るな>
PS(2019年6月14、15日追加):*5-1には、「①老後の生活費が2千万円不足するとした金融庁の報告書をめぐって野党の追及が、年金制度を所管する厚生労働省にも向かっている」「②厚労省側は『年齢が上がると支出が減るので、厚労省は[5.5万円×12カ月×30年で2千万円不足]という単純な議論はしない』と主張」「③100年安心は制度の『安定』が原点で、現在の年金制度は、向こう100年持続可能性があるという意味」「④政府は2004年改革で、『マクロ経済スライド』を導入した」「⑤日本の公的年金は『仕送り方式』なので、高齢化に伴って現役世代の負担増か高齢者への給付減が起きる」「⑥年金に魔法の杖はなく、制度への批判は簡単だが大きな改革は難しい」などが書かれている。
 しかし、①は野党に頑張って追及して欲しいが、②の厚労省の答弁のうち「年齢が上がると支出が減る」というのは誤った仮定である。何故なら、高齢になる程に、医療・介護費、葬儀等の交際費がかかる上、家事も自分でこなすことが大変になって外注が増えるからだ。つまり、消費が減るのではなく、消費の内容が変わるのである。また、③は、年金制度が継続しても国民生活はより不安になるというふざけた話で、④については、マクロ経済スライドを導入したのは2016年の改訂であるため、虚偽だ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284.html 参照)。さらに、⑤⑥については、1985年以前は積立方式(自分用に積み立てる形式)だったが、1985年にサラリーマンの専業主婦を3号被保険者にすると同時に賦課課税方式(国が取り立てて他の人に仕送りする形式)に変更し、徴収が不完全な上に目的外使用も多くて積立金不足になったのだから、国が責任を持って発生主義による引当方式に変更し、引当金不足額は税外収入で補えというのが、私の趣旨である。 
 なお、これは「魔法の杖」ではなく「技術進歩」の力ででき、*5-2のように、日本以外の国は既に海底資源を採掘しており、日本近海の排他的経済水域にもメタンハイドレートの形で大量のLNGが存在する。そして、サハリン沖の石油ガス開発事業には、三井物産や三菱商事が参加しているのだ。
 このような中、安倍首相がイランを訪問している最中の昨日、*5-3のように、日本の海運会社が運航するタンカーが、ホルムズ海峡付近で攻撃を受けたとしてイランに疑いがかかった。しかし、国営イラン通信は「イランの捜索チームが、2隻から船員44人を救助してイラン南部の港に運んだ」と報じており、イランが日本のタンカーを攻撃する理由もメリットもないため、私もイランが犯人ではないと思った。しかし、この“攻撃”の後、「ホルムズ海峡は日本の生命線」という報道が多くなって安全保障法制を正当化しており、(エネルギーを外国産原油に頼りきって)未だにここを“生命線”と呼んでいること自体が兵糧攻めに弱すぎて防衛失格だと思われる。
 また、中東ホルムズ海峡近くでタンカーが沈まない程度の騒ぎがあって、“敵”が誰かもわからないのを“攻撃”と呼ぶのはおかしいと思ったが、*5-4に、「①自民党の防衛相経験者の1人が『やはり安保法は必要だった』としている」「②2015年に成立した安保法では、ホルムズ海峡が機雷封鎖され日本への原油供給が断たれて政府が『存立危機事態』に当たると判断すれば、集団的自衛権の行使が可能」と書かれている。これらから、参議院議員選挙前に安保法を正当化するため、日本が自作自演の騒ぎを起こしたのではないかと考える。しかし、ホルムズ海峡経由の原油が絶たれると存立危機事態に陥るような国は、実力から見ても戦争はできない。

 

(図の説明:左図の2019年度予算を見て、年金・医療費等の金額が大きいのでこれを減らしさえすればよいと考える人がいる。しかし、それでは1人当たりのサービスが低下する上、保険料を支払って給付を受けているのに、税金投入額が大きいのはおかしい。これについては、「仕送り方式だから」「少子高齢化で支え手が減ったから」という説明がよくなされるが、右図のように、ベビーブーム世代が高齢化すれば高齢者が増えるのは当然なので、その世代が働き手だった間に退職給付相当額を引き当てておかなければならなかったのだ。そして、この退職給付会計は、世界では1985年に導入され、日本では《私の提案で》1998年6月にできて2000年4月以降に始まる事業年度から適用された。現在は、民間大企業の殆どが退職給付会計を採用している)

*5-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14054990.html (朝日新聞 2019年6月14日) 「老後2000万円」厚労省弁明 元データを提示、報告書関与は否定
 老後の生活費が2千万円不足するとした金融庁の報告書をめぐり、野党の追及の矛先が、年金制度を所管する厚生労働省にも向かっている。2千万円と計算する際の元データは厚労省が提出していたからだ。年金批判の高まりを回避したい厚労省は、報告書は金融庁が独自に作ったものと距離を置くのに躍起で、制度の持続可能性を強調している。報告書を作った金融庁の審議会の議事録によると、厚労省の課長は4月の会合で、主に年金で暮らす高齢夫婦の家計について「実収入と実支出との差は月5・5万円程度」と資料を示して説明。資産形成の重要性にも言及していた。13日の参院厚労委員会では、この厚労省の説明が焦点となった。社民党の福島瑞穂氏は「公的年金だけでは暮らしていけない、あとは自己責任でやれということか」と批判。厚労省の局長は、課長はあくまでオブザーバーとしての参加であり、「5・5万円」は総務省の家計調査から引用したデータだったと強調した。さらに局長は、月5・5万円の赤字が30年続く想定とした報告書のとりまとめへの関与も否定。「協議を受けていない。向こう(金融庁)の責任で作成された」とした。根本匠厚労相も「課長は2千万円不足すると説明はしていない」。厚労委に先立つ野党の合同ヒアリングで、厚労省側は「年齢が上がると支出が減るので、厚労省は『5・5万円×12カ月×30年で2千万円不足』という単純な議論はしない」と主張した。2004年の年金制度改革のキーワード「100年安心」を巡る綱引きも激しさを増している。野党は、年金が老後の安定を保障しないことが報告書で明らかになったと攻め込むが、厚労省は「年金は老後生活の柱だが、年金だけで暮らせると言ったことはない」と反論。現在の年金制度は、向こう100年を見通した上で持続可能性のある仕組みと説明する。政府は04年改革で、現役世代の負担増に上限を設けつつ、現役世代の減少や平均余命の伸びに応じて年金額を自動的に引き下げる「マクロ経済スライド」を導入した。ただ、この仕組みでは少子高齢化に伴う年金水準の低下は避けられない。モデル世帯(40年間働いた会社員と専業主婦)が受け取る厚生年金が、現役世代の平均収入の何割かを示す「所得代替率」は14年時点で62・7%だったが、一定の経済成長を見込んでも43年度には50・6%に低下すると厚労省は試算している。民主党政権になる直前の09年時点でも、38年度に50・1%となる見通しが示されている。菅義偉官房長官は13日の記者会見で、報告書について「世間に著しい誤解や不安を与えた」と釈明。「公的年金が老後の生活設計の基本。(報告書は)政府のスタンスと異なる」として、正式な報告書としては受け取らない政府の立場を繰り返した。
■<視点>年金に魔法の杖ない
 金融庁の報告書問題を機に、「年金不安」の声が上がっている。制度への批判は簡単だが、大きな改革が難しいのも現実。旧民主党が挑んで挫折し、その後、政権も手放したことは記憶に新しい。高齢社会を迎え、年金の将来は有権者の関心事。それだけに、誤解を生む言葉も語られる。野党が攻勢でたびたび使う「100年安心」は代表格だろう。2003年の総選挙当時、坂口力・厚生労働相を出していた公明党が使い始めた。日本の公的年金は、現役世代が払う保険料を高齢者に渡す「仕送り方式」だ。高齢化に伴い、現役世代の負担増か高齢者への給付減が起きる。そこで、100年間を見通して収支を調整するしくみがマクロ経済スライド。現役の保険料に上限を設け、高齢者への給付をその範囲に抑える。100年安心は制度の「安定」が原点だった。有権者の耳には「十分な給付額」と届きやすい。年金への誤解を招くため、厚労省などは使うのを避けてきた。それだけに、安倍晋三首相が10日の参院決算委員会で「マクロ経済スライドで、100年安心という、そういう年金制度ができた」と答えたのは罪深い。給付の「安心」には、経済を成長させるとともに、より多くの人がより長く働いて保険料を払う社会をつくる努力が必要だ。制度改革に、魔法の杖はない。与野党が地に足をつけた年金論戦をすることこそ、報告書問題を機に有権者が最も望むことではないか。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190614&ng=DGKKZO46052490T10C19A6MM8000 (日経新聞 2019年6月14日) ロシア、LNG生産5倍に エネルギー相、最大7割アジア太平洋向け
 ロシアのアレクサンドル・ノワク・エネルギー相はモスクワで日本経済新聞と会見し、2035年までに液化天然ガス(LNG)の生産量を現在の約5倍に増やすと表明した。北極圏のLNG生産(総合2面きょうのことば)の拡大などで「世界市場のシェアを約20%に高める」方針だ。生産量の最大70%をアジア太平洋に輸出すると述べ、日本とエネルギー分野での協力関係を強化する。プーチン大統領は6月28~29日に大阪で開く20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席する。サミット期間中の日ロ首脳会談では、エネルギー分野を中心とした経済協力も議題になる見通しだ。ロシアのLNG生産能力は、三井物産や三菱商事が参画するサハリン沖の石油ガス開発事業サハリン2と、北極圏のヤマルLNGなどを合わせて約2800万トン。ノワク氏は「35年までに1億2000万~1億4000万トンに引き上げる計画だ」と明言した。18年時点で約6%にとどまる世界の市場シェアを約20%まで引き上げる。LNG市場での18年の国別シェアはカタールやオーストラリアが20%を超える。シェールオイルの増産が進む米国も存在感を高めている。ロシアはカタールなどに並ぶLNG輸出大国をめざす。ただロシアの大幅な増産は、世界的なLNGの供給過剰に拍車をかける可能性が高い。LNG増産に関し、ノワク氏は「ロシアの北極圏だけで74兆立方メートルの天然ガスがあり、多くの未確認の埋蔵量もある」と指摘した。ロシアのガス大手ノバテクが計画するアークティック2やサハリン2の増設など新規プロジェクトを念頭に「20%のシェア獲得へ必要な資源や競争力など潜在力はすべてある」と自信を示した。

*5-3:https://mainichi.jp/articles/20190614/ddm/003/030/023000c (毎日新聞 2019年6月14日) タンカー攻撃 日本の生命線で誰が ホルムズ海峡緊張増す
 日本の海運会社が運航するケミカルタンカーが、中東のホルムズ海峡付近を航行中に攻撃を受けた。安倍晋三首相がイランを訪問し、緊張緩和を呼びかけていた最中の事件。日本に衝撃を与えるとともに、米国とイランを軸にした中東地域の緊迫化がさらに進みそうだ。13日に起きたタンカー2隻への攻撃について、バーレーンに司令部を置く米海軍第5艦隊は「早朝に二つの遭難信号を受信し、救援に向かった」との声明を発表。一方、国営イラン通信は「イランの捜索チームが、2隻から船員44人を救助してイラン南部の港に運んだ」と報じており、対立する米・イラン双方が共に「救助にあたった」との主張を展開する。(以下略)

*5-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/CK2019061502000162.html (東京新聞 2019年6月15日) 自衛隊派遣論 緊迫進めば高まる恐れも
 岩屋毅防衛相は十四日、中東ホルムズ海峡近くでの日本のタンカー攻撃に関し、現時点での自衛隊派遣を否定した。日本人に被害がなく、攻撃した相手も不明だからだ。ただ、米・イラン関係や現地情勢がさらに緊迫すれば、自民党内から安全保障関連法による自衛隊派遣を求める声が上がる可能性もある。岩屋氏は閣議後の記者会見で「現時点で自衛隊へのニーズ(需要)は確認されておらず、部隊を派遣する考えはない」と述べた。日本が直接攻撃された際に反撃する個別的自衛権発動の要件は満たさないとの見解を示した。一方、自民党の防衛相経験者の一人は「やはり安保法は必要だった」と自衛隊派遣に意欲を隠さない。安保法の施行で「あらゆる事態」に応じて自衛隊を海外に派遣できるようになったことが念頭にある。例えば、米・イランが戦争状態になり、ホルムズ海峡が機雷封鎖された結果、日本への原油供給が断たれ、政府が「存立危機事態」に当たると判断すれば、集団的自衛権の行使が可能になる。二〇一五年に成立した安保法の審議の際には、安倍晋三首相が海上自衛隊によるホルムズ海峡での機雷除去を集団的自衛権行使の事例に挙げた。政府は、戦時の掃海活動は機雷をまいた国の防御力をそぐ「武力行使」とみなされる可能性があり、実施するには集団的自衛権行使を認めなければならないと主張。首相は審議の終盤、当時の国際情勢からは海峡封鎖は想定できないとして事例を撤回したが、今後の展開次第ではこうした派遣論が再浮上しかねない。名古屋学院大の飯島滋明教授(憲法学)は本紙の取材に「安保法が成立した今、機雷敷設が現実になれば、自衛隊が米軍の求めに応じて掃海艇を派遣せざるを得ないことはあり得る。米国に追従する姿が反米勢力の反発を買い、自衛官が危険にさらされる恐れがあるだろう」と懸念を示した。

<生活できるためには?>
PS(2019年6月17日追加):*6-1のように、問題になった金融審議会報告書は、将来の公的年金給付水準について、当初は「中長期的に実質的な低下が見込まれる」と記載したが、最終的には「調整されていくことが見込まれる」に修正したそうだ。本当は、「『マクロ経済スライド』を導入してインフレ政策をとることにより、給付水準を低下させる」と言うのが正しく、国民を犠牲にして年金制度を維持するという知恵も工夫もない愚策である。さらに、言葉を曖昧にすれば実態が変わるわけではないので、国民に実態を見えにくくしたにすぎない。
 そのような中、*6-2のように、就職氷河期に高校・大学を卒業した氷河期世代は、新卒時に正社員になれず、今も無職や派遣・アルバイトなどの非正規雇用割合が他の世代より高く、厚生年金に入れないため無年金・低年金予備軍となっているそうだ。そのため、*6-3のように、社会保障の支え手を拡大し、正社員としての勤務年数が短い氷河期世代や女性・高齢者・外国人が損をしない能力給中心の給与体系に変え、公正な評価をする仕組みに変える必要があるわけだ。また、「70歳までの就業機会確保」「勤労者皆保険制度」は、必要である。
 そうすると、これまで差別によって優遇されてきた男性労働者から不満が出るかも知れない。また、世代間の公平性がないと言う人もいるが、年金制度がなかった時代は、年金保険料は支払わなくてもよいが、親に直接仕送りしたり、親と同居して経済的・物理的援助をしたりしなければならなかった。一方、現在それを求める親は殆どおらず、年金保険料は支払わなければならないものの、より自由な職業選択ができ、活躍できそうな新産業も次々と芽生えている。
 例えば、*7-1のように、農業も現代化しつつあり、「マーケットイン」「スマート農業」「輸出」などを目標にして、成長産業になりつつある。また、戦後植林した木が伐採期を迎えて林業も有望な産業になっている。*7-2のように、「国有林を大規模に伐採・販売する権利を民間業者に与える改正国有林野管理経営法が、2019年6月5日の参院本会議で自民・公明・国民民主・日本維新の会などの賛成多数で可決・成立した」というのは、国民の資産を二束三文で民間に譲渡するもので大規模なドロボーの合法化だが、このような国民全員の財産を相当の料金をもらって民間企業に伐採させ、税外収入を得て政府のこれまでの年金政策の失敗をカバーすれば、林業や森林の維持管理も重要な産業になりつつあるだけに問題解決に近づく。
 さらに、*7-3のように、2030年までに世界の海底地形図を作って資源探査することが可能になり、日本近海での資源開発にも役立ちそうだ。ただ、日本で鉱業を行うには、日本には鉱業会計すらないため、国際会計基準(IFRS)の鉱業会計を早急に採用する必要がある。

  
 2019.6.16東京新聞  三菱UFJリサーチ&コンサルティング    総務省統計局

(図の説明:左図のように、金融庁金融審議会報告書は、「マクロ経済スライド」による公的年金水準の低下に関する表現を曖昧にし、中央の図のように、資産形成によって不足分を補うよう奨めているが、ここでモデルとされているような家計はむしろ少ない。なお、右図は、2012年時点の産業別営業利益率だが、現代のニーズに合ったことをすれば、新市場を作ったり、売上高や利益率を劇的に上げたりできることが介護市場を見れば明らかである)

*6-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/CK2019061602000142.html (東京新聞 2019年6月16日) <「消された」報告書を読む>(中)年金給付水準「調整」 実質は「低下」表現修正
 老後に公的年金以外で二千万円の蓄えが必要と試算した金融庁金融審議会の報告書は、将来の公的年金の給付水準について「今後調整されていくことが見込まれている」と記した。先月二十二日に示された当初の報告書案には、給付水準について「中長期的に実質的な低下が見込まれている」と「低下」の文字があったが、最終的に「調整」に修正した。「調整」とは、現役世代が支払う保険料の上限を定め、現役世代人口の減少や平均余命の伸びに応じ給付水準を徐々に引き下げる「マクロ経済スライド」という仕組みを指す。年金制度を維持するための仕組みだ。厚生労働省が二〇一四年に公表した年金の財政検証では、この「調整」の結果、年金給付水準は約三十年後の四三年度まで下がり続ける見通しを示した。財政検証によると、現役世代の平均手取り収入に対し、夫婦で受け取ることができる年金額の割合を示す「所得代替率」は、一四年度に62・7%だったが、その後は二〇年度が59・3%、四〇年度が51・8%、四三年度の50・6%まで低下することを示した。修正前の報告書案に記された「実質的な低下」という表現は、こうした試算に合致する内容だ。当初の報告書案には、この他にも年金の給付水準を巡り「今までと同等だと期待することは難しい」「今後は公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある」などの厳しい表現が並んでいた。みずほ証券の末広徹氏は、報告書の表現が当初案から変更されたことについて「国民が萎縮しないようバランスを考えて調整したと思うが、給付水準が実質的に低下するとの見通しは厚労省の財政検証の結果なので、ストレートに伝えるべきだった」と指摘する。また末広氏は、年金財政の負担と給付に関する正面からの議論を、政府が避けようとする傾向について「今回もうやむやにして先送りすれば、次に年金問題が注目された時は、この程度のショックでは済まないだろう」と懸念する。 

*6-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190616&ng=DGKKZO46163500V10C19A6EA1000 (日経新聞社説 2019年6月16日) 氷河期世代の支援にもっと知恵を絞れ
 就職氷河期という言葉がある。バブル経済の崩壊後、1993年からの10年あまりの間、日本企業が新卒採用を極端に絞った長期低迷期を指す。この期間に高校・大学を卒業した氷河期世代は30代半ば~40代後半になっている。無職や非正規雇用の割合がほかの世代より高いのが特徴だ。日本の中核的な層が不安定雇用に甘んじているのは、本人にも日本経済にもマイナスが大きい。産業界と政府・自治体が知恵を出し合い、効果的に支援する必要がある。氷河期世代は第2次ベビーブームの1970年代前半に生まれた団塊ジュニア世代を含む。明確な定義はなく、2300万人を超すという見方がある一方、政府は1700万人程度とみている。新卒時に正社員になれず、今なお派遣やアルバイトで生計を立てる人の割合が相対的に高い。無職者は40万~55万人、不本意なまま非正規社員を続けている人は50万~70万人と推計されている。社会保障についても不利益を強いられがちだ。国民年金の保険料を払う経済的余裕が乏しいのに減免手続きを怠り、未納を放置している人が多いとみられる。無年金・低年金者の予備軍だ。数十年後には生活保護に頼る人が続出することが想定される。経済面の制約から未婚者が多く、少子化の原因にもなっている。介護を家族に頼れない不安もある。本人の職への意識を高める必要があるのは言うまでもないが、非正規雇用の固定化などを本人の責任だけに帰すのは酷だろう。再チャレンジ支援に熱心な安倍晋三首相の意を受け、政府の経済財政諮問会議が氷河期支援を提起した。政権は今週まとめる骨太の方針に、3年間に30万人を正社員化する政策目標を盛り込む。重要なのは、根拠に基づく実効性が高い支援策だ。職業訓練・資格取得・学び直しのメニューを漫然と羅列したり、たんに人手不足が著しい業界に送り込もうとしたりしても、正社員として定着するのは難しいだろう。企業経営者も支援に責務を負っているが、正社員化の目標が独り歩きするようでは意味がない。一口に氷河期世代といっても置かれた状況はさまざまだ。例えばこの世代が得意とするデジタル技術の習熟度を高めてもらい、自宅で仕事を請け負う環境を充実するのも一案だ。企業側と本人双方の意欲と工夫が問われている。

*6-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20190616&bu=BFBD9496EABAB・・ (日経新聞 2019年6月16日) 支え手拡大へ雇用改革 社会保障維持へ骨太素案 、氷河期世代、正規30万人増へ 女性・高齢者、年功から能力給に
 政府が11日示した経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の素案では、社会保障の支え手拡大に軸足を置いた。働く高齢者や女性は増えており、雇用形態にかかわらず能力や意欲を評価する仕組みに変えていけるかが課題だ。今年の骨太で焦点を当てた就職氷河期世代が生まれたのは新卒採用に偏重した雇用慣行にある。年功序列と一括採用を前提にした日本型雇用の転換が急務だ。骨太の素案では「全世代型社会保障への改革」を柱に据えた。70歳まで就業機会を確保するよう企業に定年延長などの環境整備を求める。パート労働者すべてが厚生年金などに加入する「勤労者皆保険制度」の実現を掲げた。長く働き、税金や社会保険料を負担する人を増やす政策だ。厚生年金は年収106万円を超えると、保険料を払う必要がある。その負担を回避する目的で就労調整するパート労働者は多い。政府は年金保険料を負担するパートを増やすため、年収基準の引き下げを含めた公的年金の改正法案を2020年の通常国会に提出する。女性や高齢者を中心に社会保障の支え手である就業者は増えている。総務省によると、18年(平均)の就業者は6664万人となり、過去最高だ。過去5年間に増えた分の7割を占めたのが女性。一般に子育て期とされる30歳代前後の女性で就業率が下がる「M字カーブ」は緩やかになってきた。さらに年齢別では65歳以上の高齢者が35%増と高い伸びを示す。ただ、女性や高齢者は社会保障の支え手として1人あたりの稼ぐ力は十分とはいえない。女性や高齢者の雇用形態はパートなど非正規が多い。例えば、65歳以上になると非正規比率は75%を超す。パート労働者の平均賃金は月10万円弱。30万円台の正規社員と比べれば格差は大きい。日本企業の間では一定の年齢になると退職・再雇用の扱いとなり、賃金を一律で3割下げるといった措置がある。女性は育児休業で勤続年数が短くなると、男性に比べ賃金は低くなりやすい。年功型から能力に応じた制度へと変える必要がある。25年には団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者になる。その時点で75歳以上の人口は2180万人となり、15年比で3割以上も増える。一方、60歳代は約2割減る。社会保障の支え手として高齢者の働き手を増やし続けるのはいずれ限界が来る。働く高齢者の年金を減らさないよう、在職老齢年金の廃止を含めて働く意欲や質を高める政策も課題になる。「就職氷河期世代への対応は、わが国の将来に関わる重要な課題だ。計画を策定するだけでなく、実行こそが大事だ」。安倍晋三首相は11日の経済財政諮問会議でこう語り、関係閣僚に対応を指示した。素案では今後3年間を「集中支援期間」とし、30代半ばから40代半ばの氷河期世代の就職を支援する考えを示した。この世代の正規雇用で働く人を3年間で30万人増やすことをめざす。全国の支援拠点と連携し、就業に直結しやすい資格取得などを促す。氷河期世代が卒業したのは1993年から04年ごろ。バブル経済の崩壊やその後の金融危機の影響で、企業が新卒採用を大幅に絞った時期だ。他の世代に比べ、正規で働きたくても働けない不本意な非正規が多い。氷河期世代で非正規や働いていない人は90万人を超す。高齢化すると十分な年金を受け取れず、生活保護に頼る世帯が急増すると懸念されている。この世代を正規社員として働けるようにするには、新卒一括採用と終身雇用の見直しが欠かせない。景気後退期に就職活動する世代が希望通りの仕事に就けない問題は潜在的にある。新たな氷河期世代を生まないためにも中途採用の拡大を進めていく必要がある。

*7-1:https://www.agrinews.co.jp/p47681.html (日本農業新聞 2019年5月17日) 新時代の農業技術 消費者意識して導入を
 時代を先読みした技術を取り入れよう。キーワードは「マーケットイン」と「スマート農業」。消費者が求めているものを的確に把握し、それに応じた生産に取り組むとともに、新しい技術をどう生かしていくか。時代のニーズに応じた生産や技術の導入が求められている。マーケットインの生産とは、消費者ニーズを栽培に取り入れようとする取り組み。日本農業新聞営農面の「農業技術ネクストエイジ」では平成の時代に開発されたり、広く普及したりした技術や品種を連載した。その中で、かんきつのマルチ・点滴かん水同時施肥法(マルドリ栽培)や根域制限栽培を紹介した。水分を与える量を制御することで、糖度を高める技術だ。消費者が求める甘いかんきつが生産できるとして、産地に広く普及した。出荷作業も同様だ。果実を切ることなく、糖度を測ることができる光センサーを取り上げた。花きのバケット輸送システムは、生花を長く楽しみたいという声に応えた技術。バラなど鮮度保持が難しい品目でも、日持ちの向上につながった。安全・安心は当たり前になった。化学合成農薬を減らし、天敵などを取り入れた総合的病害虫・雑草管理(IPM)は、広く普及した。一方、長期的な影響を踏まえ「安心できない」という消費者心理が働いた遺伝子組み換え(GM)技術や体細胞クローン技術は、普及につながらなかった。今夏にも流通する可能性があるゲノム編集で作られた作物も、消費者が安心して購入するのか。産地は見極めが必要だ。少子高齢化に伴う人口減で日本の「胃袋」は年々小さくなっていく。貿易自由化で輸入農産物は増え、消費者に選ばれる産地をどうつくるかが、重要になっている。食味や鮮度、安全性、食べやすさ、便利さなど時代のニーズに的確に応えられる技術が求められる。農村の高齢化や担い手不足に対応するため、連載企画では水稲の直まき栽培や不耕起V溝直播(ちょくは)、高密度播種育苗が進んだことを取り上げた。少ない労働力でも、大きな面積を耕作することができる技術だ。果樹の樹体ジョイント仕立ては高密度に苗を定植し、隣の木に接ぎ木する手法。樹高が一定で直線状に作業ができ、効率が高まる。酪農は規模拡大に合わせたユニットミルカーやミルキングパーラー、搾乳ロボットを紹介した。労働力不足は今後、さらに深刻化する。それを補う人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)、ドローン(小型無人飛行機)などを駆使したスマート農業は課題解決の一つの手法ではあるが、農業のあらゆる課題を解決できるわけではない。ゴールは、作る側と食べる側がつながり日本農業を再生することだ。そのためにも、消費者を意識した技術の導入が不可欠である。

*7-2:https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190605/k00/00m/010/113000c (毎日新聞 2019年6月5日) 改正国有林法が成立 大規模伐採を民間開放
 全国の国有林を最長50年間、大規模に伐採・販売する権利を民間業者に与える改正国有林野管理経営法が、5日の参院本会議で、自民、公明両党や国民民主党、日本維新の会などの賛成多数で可決・成立した。立憲民主、共産両党などは反対した。安倍政権は国有林伐採を民間に大きく開放して林業の成長産業化を掲げるが、植え直し(再造林)の失敗による森林の荒廃や、中小業者が淘汰(とうた)される懸念を残したまま、改正法は来年4月に施行される。改正法は、政府が「樹木採取区」に指定した国有林で伐採業者を公募。業者に与える「樹木採取権」の期間は50年以内と明記し、対価として樹木料などを徴収する。再造林の実施は農相が業者に申し入れるが、業者への義務規定はない。改正法では明文化されず今後の運用に委ねられた部分が多い。政府は当面全国で10カ所程度、計数千ヘクタールの樹木採取区を想定。「伐採期間は10年が基本」(吉川貴盛農相)と強調し、再造林は伐採業者との契約にも盛り込んで担保すると繰り返した。ただ、林野庁は現行の小規模な伐採でも、再造林の成功率などを示す全国のデータを把握していない。5日の採決に先立つ反対討論で、共産党の紙智子氏は「数ヘクタールの再造林で苗木が育たない山があるのに、数百ヘクタールを伐採すれば荒廃しかねない」と強調した。また改正法は中小業者の育成を掲げ、政府は業者の選定で財務基盤や取引先の優劣のほか、雇用増加などの地域貢献も「総合的に評価」すると答弁している。だが具体的な基準は明示されず、立憲民主党の川田龍平氏は討論で「超長期のリスクを取るのは中小業者には不可能だ。特定企業のみに50年の権利を設定するのでは、という疑念がぬぐえない」と批判した。改正法に賛成した与野党からも慎重な運用を求める声が続出し、政府は来春までに運用のガイドラインを作ってパブリックコメント(国民の意見公募)を実施する方針だ。

*7-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM6753MSM67ULBJ00X.html?iref=comtop_list_sci_n01 (朝日新聞 2019年6月13日) 海底3億6千万平方キロを探れ 30年までに地図作成へ
 ロボット潜水艇で海底を測量し、地形図の正確さや範囲を競う国際探査レースで、海洋研究開発機構などの「チームKUROSHIO(クロシオ)」が準優勝し、日本人が参加する国際チームが優勝した。地球の7割を占める海の底は、月や火星より未知の領域が多い最後のフロンティア。海底にはどんな尾根や谷があり、どんな生き物がいるのか。レースで得られた知見をもとに、探査が本格化する。「世界の海の8割以上に詳しい地形図がない。新しい生き物や資源の探査には欠かせないのに」。レースを主催した米Xプライズ財団のジョーティカ・ヴァルマーニ事務局長は、1日にモナコであった表彰式で海底探査の意義を強調した。私たちが目にする世界地図の海底地形には、深い海溝や海底火山が描かれているが、ほとんどは解像度が1キロほどとデータが粗い。逆に、高温の熱水が噴き出す熱水鉱床などの周囲は、珍しい海洋生物や貴重な鉱物資源が集まるため詳しく調べられているものの、調査範囲が狭い。この間を埋める、詳しくて広い範囲の地形図が、開発や研究の現場から求められていた。しかし、船から人が潜水艇を操作する従来の探査では、1日に10平方キロほどを測量するのがせいぜいで、3億6千万平方キロに及ぶ広大な海を調べ尽くすのは無理がある。そこで、自動で調査できる水中ロボットの開発を後押しする国際探査レースが企画された。決勝は昨年11~12月、ギリシャ沖であった。出場したのは日米独などの5チーム。海洋機構や九州工業大、三井E&S造船、KDDI総合研究所などでつくるKUROSHIOは、全長5・6メートルの潜水艇と通信用の無人船を投入。悪天候で急きょ調査海域が変更になるなか、山手線の内側の面積の倍にあたる長さ34キロ、幅5キロの測量を成功させ、準優勝した。中谷武志共同代表は「海底を無人調査するなんて、レース前は20~30年先の技術と思っていた。造船や通信といった専門家たちが知恵を出し合って実現できた」と喜んだ。優勝は、日本財団が財政支援し、海上保安庁の職員も参加した国際チーム「ジェブコNFアルムナイ」だった。海底地形図づくりのプロを育てる米ニューハンプシャー大の研究コースの卒業生16人が日米ロなど10カ国以上から集まり、潜水艇の遠隔制御などそれぞれの得意分野を生かした。日本財団などは今後、ほかのチームにも参加を呼びかけて2030年までに世界の海底地形図をつくる構想だ。詳しい地形がわかれば、未知の生物がいそうな場所はないか、海底ケーブルをどう設置すればより安全か、新しい油田を探すのにどこが候補になりそうかなど開発や発見に役立つ。財団の海野光行常務理事は「私たちの支援はレースのためだけではなく、その先を見据えたもの。ここからが始まりだ」と話した。

<高齢化による新市場の出現>
PS(2019年6月19日追加):佐賀県吉野ケ里町が、*8-1のように、高齢者が地域で安心して暮らせるよう、セブン-イレブン2店と高齢者見守り協定を結んだそうだが、このように新しいニーズをとらえて対応すると、新市場ができたり、従来の営業のプロモーションになったりする。しかし、*8-2のように、「高齢者=認知症≒子ども」というような単純な発想で、看護師・介護師に親しすぎる言葉で話しかけられるのは、(人によっては)尊厳を無視されたようで嫌なのである。そのため、看護師・介護師は、相手の言葉遣いや態度から、相手の要望を見分ける必要がある。私の女学校卒の大叔母は、90代の時、「『ちーちーぱっぱ』のようなくだらない歌を歌わされるので、ショートステイには行きたくない」と言っていた。そのため、介護施設も、「高齢者≒子ども」という扱いは慎み、相手のニーズに合ったことをすべきだと思う。
 なお、人口動態において先進国の日本は、「高齢者が本来もらう筈だった年金や社会保障を削減する」という最も安易で工夫のない政策をとらなければ、このような新しく必要となる財やサービスを作りだして世界に普及する先進国になった筈だ。何故なら、世界もまた、*8-3のように、次第に高齢者の割合が増えていき、日本と似た道を辿るからである。

  
主要国の人口高齢化率長期推移        日本の人口ピラミッドの変化

*8-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/519143/ (西日本新聞 2019/6/17) セブン-イレブン2店が高齢者見守り 吉野ケ里町と協定
 吉野ケ里町は13日、地域の高齢者を見守り、異変に気づいた際には連絡をしてもらえるようコンビニチェーンのセブン‐イレブン・ジャパンと協定を結んだ。高齢者がいつまでも地域で安心して暮らせることを目的に、住民と接する機会の多い企業などと協力して高齢者の見守りを図る「吉野ケ里町ふれあいネットワーク」事業の一環。セブン‐イレブン側は以前から他の自治体で来店したり商品の配達サービスを利用したりする高齢者などへの声掛けに取り組んでおり、町に打診し協定が実現した。協定をもとに、町内の2店舗は商品の配達時などに高齢者の安否を確認し、認知症の可能性など異変を感じた場合は町の地域包括支援センターに知らせる。協定の締結式で伊東健吾町長は「(見守りを通じて)町づくりに貢献していただければうれしい」とあいさつした。

*8-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190619&ng=DGKKZO46283280Z10C19A6MM8000 (日経新聞 2019年6月19日) 春秋
 「はい、あーんして」「ごっくんしようねー」。病院でいたたまれなくなる光景のひとつは、医師や看護師が高齢者に、赤ちゃん言葉で接している場面である。つい先日も、認知症が進んでいるらしい女性に幼児語を連発するスタッフがいた。見ていて、とてもつらい。▼悪意はないのだろう。むしろみんな、熱心に仕事をしているはずである。かつて東北地方などでは恍惚(こうこつ)の境地に入った人を「二度童子(わらし)」と呼んだという。人間は年老いて、また子どもに還(かえ)りゆくものなのかもしれない。しかし……。長い人生をひた走り、辛酸をなめ、それぞれに足跡を残してきた人々の尊厳はどこにある。▼政府がきのう、認知症対策の新たな大綱を閣議決定した。患者が暮らしやすい社会をめざす「共生」と、発症や進行を遅らせる「予防」とを柱にするそうだ。数値目標は批判を浴びたため参考値にとどめたが、予防に役立ちそうな努力を求める雰囲気はなお拭えていない。当初案では「予防」が「共生」よりも上にあった。▼いかに「共生」を唱えても、まだまだ社会は戸惑い、誰もがたじろいでいる――。むしろ、そんな思いを募らせる大綱であり、あちこちで聞く赤ちゃん言葉なのである。認知症はまさに誰でもかかる。そして症状が進んでも、さまざまな感情は心を離れない。蛇足ながら、かつて身内に患者を持って知らされたことである。

*8-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190619&ng=DGKKZO46250640Y9A610C1FFJ000 (日経新聞 2019年6月19日) 変わる人口地図 国連報告から(1) 50年、6人に1人高齢者
 国連の最新の予測によると、世界人口のうち65歳以上の高齢者の割合は2050年に16%と、6人に1人を占めるようになる。現在は11人に1人(9%)だが「歴史的な低さの出生率と寿命の延びで、事実上すべての国が高齢化していく」という。日本が直面する高齢者の社会保障や労働力の確保といった問題が、多くの国に共通する課題になりそうだ。地域別にみると高齢化は欧州・北米で特に進み、50年には4人に1人に当たる26%が高齢者になる。次いで日本を含む東・東南アジアで、19年の11%から24%に上昇する。ペースは緩やかだが、アフリカや中南米にも高齢化は広がる。世界全体では、65歳以上の人の数は19年から50年までに2倍以上に膨らむ。18年に史上初めて、5歳未満の子どもの数を上回り、50年には15~24歳の若者の数をも追い越すと国連は予測する。平均寿命は世界平均で72.6年から77.1年に延びるという。一方で出生率は、現在の2.5から2.2に下がると予測した。途上国で乳幼児の死亡率が下がり、先進国では女性の社会進出が広がっているのが背景とみられる。1990年には3.2だったが、低下に歯止めが掛からない。
     ◇
 変わる人口地図は世界の経済や社会にどう影響するのか。国連が17日公表した人口推計を基に解説する。

<産業のイノベーションと人材不足>
PS(2019年6月20日追加):*9-1のように、政府がやっと温暖化対策戦略で水素を柱の一つに掲げてG20サミットで話題にするそうだが、日本で水素エネが実用段階に入っても普及しなかったのは、太陽光発電と同様に経産省の愚かなエネルギー政策が邪魔したからであり、外国で実用化されて初めて慌てるのが日本の情けないところだ。なお、再生可能エネルギー由来の電力で水を電気分解して水素を作るのは、環境先進国では、理想ではなく理念に基づく現実だ。
 また、*9-2のように、林業も人材不足で、人材確保には労働環境の改善等も重要だろうが、若くして退官させられる航空自衛隊や陸上自衛隊のOBが中心になるのが、体力・技術面で適任ではないかと考える。そして、国有林は現役自衛官が訓練を兼ねて、整備や作業を行いつつ、植生・野生動物の生存数・断層などを含めた正確な地図を作ったらどうだろうか?
 さらに、*9-3のように、JR九州が事業承継ファンドを設立して自社と関連性の高い地場企業に資本や人材を投入して支援するのは、銀行の出資で設立されるファンドとは異なる視点で有意義だ。このようにして人材を入れれば、従来の事業も次第に21世紀型にできる。


2019.6.11朝日新聞     国民年金の場合      あいちのICT林業活性化構想

(図の説明:左図のように、老後、どのような生活をするかによって老後必要な貯蓄額は大きく異なる。また、中央の図のように、国民年金世帯は、不足額が大きい。しかし、右図の林業のように、現在は人手不足で、スマート化によって生産性の高い産業にできそうな分野も多い)

*9-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190620&ng=DGKKZO46303940Z10C19A6TCS000 (日経新聞 2019年6月20日) 水素で温暖化を防げるか
 政府は温暖化対策の長期戦略で水素の活用を柱の一つに掲げた。20カ国・地域首脳会議(G20サミット)でも話題になる見通しだ。温暖化ガスを出さない理想のエネルギー源として期待は高いが、思うように実用化が進んでいない。普及へ向けての課題と解決への道筋を日欧の官民の代表に聞いた。
  ◇  ◇
■政策誘導で実用化を 環境相 原田義昭氏
 日本は二酸化炭素(CO2)排出量を2050年までに80%減らす長期目標を掲げている。パリ協定の目標と照らし合わせると不十分と言われており、実質ゼロにしたいが足元の対策は必ずしもそこへ向かっていない。「究極の環境型エネルギー」である水素エネルギーをどれだけ活用できるかが、決め手の一つになる。水素エネは理論研究を経て実用段階に入っているが、思うように普及しない。有力な応用分野である燃料電池車(FCV)は水素ステーションが増えず、頭打ちだ。自動車メーカーは燃料電池車よりハイブリッド車(HV)などを重視していた。そこで水素エネの利用に広がりをもたせるため、列車や船などの公共交通に使えないかと考えている。燃料電池列車を製造しているフランスの鉄道車両大手アルストムの幹部と話す機会があり、ドイツ北部の路線で試乗もした。いま大事なのは、水素エネを使う技術や製品の需要を創出することだ。いつまでに確実にどのくらい使う、というコミットメント(約束)があればメーカーも動く。それには政府の関与が必要だ。日本でも、たとえば国がJRと組んで燃料電池列車の開発にトライすれば刺激策になる。その後、民間主体のインフラ整備へと移行すればよい。フランスでは無人の水素ステーションも見た。安全管理面などの規制緩和やルールづくりの参考になる。省庁の垣根を越え、オールジャパンで水素エネの利用を推進するつもりだ。過去を振り返ると、日本は10年ほど前には太陽光技術で圧倒的に強かったのに、いまや惨憺(さんたん)たるものだ。技術は優れていても商売で中国などに負ける。人工知能(AI)やロボット技術も同様だ。水素技術で同じ轍(てつ)を踏むようなことがあってはならない。先日、九州大学の水素エネの研究室を訪れた。毎週のように中国から見学者が来るそうだ。中国の水素エネの研究開発や関連事業への投資は日本に比べ桁違いに大きく約2兆円だという。金額ではとてもかなわないが、選択と集中で強いところを伸ばし、民間による事業化を促す。水素は再生可能エネルギーを使い、水を電気分解してつくれれば理想的だ。化石燃料由来の電力を使う場合にはCO2の回収・貯蔵(CCS)技術などと組み合わせる工夫がいる。(CO2の排出が多い)石炭火力発電所の延命策になるという見方があるのも知っている。しかし、温暖化対策に逆行する新設の石炭火力は環境影響評価(アセスメント)の段階で基本的に認めないなど、厳しい姿勢で臨んでいる。安倍晋三首相が言うように、これまでの延長線上にない非連続なイノベーションも追求する。政策当事者として、こんなことができるとよいという具体的なものを示していきたい。水素社会への移行をめざす考えは、20カ国・地域(G20)エネルギー・環境相会合でも説明した。賛同を得られ、実現へ向けた機運が高まったと思う。

*9-2:https://www.agrinews.co.jp/p47966.html (日本農業新聞論説 2019年6月18日) 林業の人材不足 労働環境の改善を急げ
 わが国の森林は、人工林を中心に木材資源の本格的な利用期を迎えている。林家の高齢化や林業経営体の弱体化で伐採できず、宝の持ち腐れになる恐れが指摘されている。人材確保に向け、林業経営体の労働環境の改善を急ぐ必要がある。林野庁は3本の柱をてこに林業改革に取り組む考えだ。第一に、森林所有者に代わって民間企業等が主伐や間伐、造林ができる新しい「森林経営管理制度」の導入だ。これを“エンジン”に、本格的な山の手入れや伐採に乗り出す考えだ。林業経営に適さない森林は、所有者に代わって市町村が管理する。第二に、森林環境税の導入だ。1人当たり年1000円を個人住民税に上乗せして徴収し、年間600億円の財源を確保。森林の管理や、間伐、担い手確保、木材利用の促進などに充てる。そして、第三が人材育成・確保である。「伐(き)って、使って、植える」という循環利用を担うための人材を確保することである。2018年度の林業白書は人材の確保に焦点を置き、当面する大きな課題と位置付けた。その認識に異論は無い。事実、地域の森林整備の担い手で、植林、下刈り、間伐の受託面積の6割を占める森林組合の9割が人材不足だ。また、民間事業体も中小規模が多く、後継者の確保が課題であることを浮き彫りにした。安い外材に頼って国内林業を軽視してきた結果である。人材不足の解決の方向として白書は、機械化や情報通信技術(ICT)などの新たな技術の導入でコスト削減を進め、林業従事者の労働条件の改善に取り組む必要性を強調した。実際に成果を上げた事例も示した。労働条件の改善は、人材確保の有効な手段であり、方向性は一定に理解できる。しかし、全産業的な労働力不足の中で、人材を確保することは容易ではないはずだ。賃金や休日の確保などの労働環境の改善を国家的に支援するとともに、林業の魅力を若い人にPRする必要がある。林野庁は、その具体策を早急に示すべきだ。林野庁が取り組む改革で懸念されるのが、伐採だけが進んで“はげ山”になることだ。民有林に加え、国有林に関する法改正では長期の「樹木採取権」を企業に与えることになった。植林を怠らないよう適切に指導すべきだ。また、山村振興に取り組む小さな林業経営を排除するようなことがあってはならない。今後、森林管理で市町村の役割が高まるが、林業に詳しい職員はごく一部に限られる。市町村の林務担当職員を増やすなど市町村の体制充実も必要だ。森林をきちんと維持するための基本は、現地に住む林家の経営を安定させ、きめ細やかな森の管理が行えるように環境を整えることだろう。後継者が育つように新しい技術の指導や国産材の販売先の確保などでの支援が必要だ。急ぐべきである。

*9-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/519457/ (西日本新聞 2019/6/18) JR九州が事業承継ファンド設立へ 利益増、地域支援も
 JR九州が、後継者不足に悩む地場中小企業の受け皿となる事業承継ファンドを設立する方針を固めたことが分かった。鉄道関連や飲食など、自社の事業と関連性が高い地場企業に資本や人材を投入。利益拡大とともに地域経済の下支えにつなげる考え。事業承継ファンドは地方銀行などの出資で設立されるケースが多いが、鉄道会社が乗り出すのは全国的にも珍しい。鉄道部品関連や食品、流通分野などから投資対象となる地場企業を探し、1社当たり数千万円から数億円を投じて経営権を取得するなどする。各事業に精通した人材もJR九州側から派遣する。6月1日付で社内に担当人員を配置。本年度中にも資本提携や買収による経営参画を始めてノウハウを積み上げ、早ければ2021年度にもファンドを設立する。通常の合併・買収(M&A)と違い、ファンドは機動的な投資判断が可能になるなどの利点がある。運営には専門会社を入れることも検討する。中小企業の後継者不足は全国で深刻化。帝国データバンクの調査で「後継者がいない」と答えた九州の企業の割合は、18年は61・2%に達した。廃業する中小企業が増えれば、沿線人口の減少や地域衰退につながる。JR九州は本業の鉄道事業で実質赤字が続いており、自社の多角化の経験を活用することで、利益の底上げを図る狙いもある。

<保守系議員の女性蔑視と参院選の野党共闘>
PS(2019/6/21追加):*10-1、*10-2に、超党派の保守系議員でつくる日本会議国会議員懇談会は、「①男系男子による皇位継承を維持し、女性宮家創設に反対」「②126代にわたって例外なく維持されてきた男系による皇位継承の伝統に基づく男系男子孫による皇位継承が可能となる方策を要望」「③Yはずっと形が変わらず続いていき、Xとは違う」「④皇族の減少に伴い、女性皇族が結婚を機に皇族の身分を離れた後も活動を継続できるよう政府に申し入れる」としたそうだ。③の「Y染色体はXと異なり、形が変わらない」というデータはないので科学的根拠にはならない。ただ、次世代に誰の遺伝子が伝わるかを見ると、愛子さまが天皇となられる事例では、その次の世代には雅子さま由来のX遺伝子と美智子さま由来(天皇経由)のX遺伝子が伝わる確率が1/2ずつあり、どちらも上皇由来ではないが、男系男子のY染色体なら必ず天皇・上皇由来である。しかし、ヒトの染色体は23対あり、XY染色体はそのうちの1対にすぎない上、ミトコンドリアや細胞質からの遺伝は母方からのみだ。従って、①②も、「126代も続いた伝統だから男系男子」という気持ちは伝わるが、伝統も最新の科学や社会環境を考慮して変化しなければ、それ自体が続かなくなることを無視していると思う。さらに、④は、「(大した働きは期待しないが)人手不足だから、既婚女性は非正規かボランティアで働け」という、これまで日本女性に採ってきたのと同じ失礼な態度で、やはり女性蔑視である。
 そのような中、*10-3に「参院選野党共闘は、明確な選択肢打ち出せ」と書かれており、誰がやろうとよい政策を進めてもらえばよいため「安倍一強打破」は国民にとっての選択肢にはならないが、「市民連合」が示す①改憲反対 ②安保法制廃止 ③消費税凍結 などの政策は選択肢になる。年金に関しては、今の野党は「有権者の立場に立った社会保障の姿」を示しているとは言えず、発生主義に基づく引当方式への移行と移行期間における全世代の二重負担排除くらいは掲げるべきで、国民のストックである国有財産をうまく使えば、それは可能なのである。
 改憲については、安倍首相は、*10-4のように、「①憲法について、ただ立ち止まって議論をしない政党か」「②正々堂々と議論する政党か」を選ぶ選挙にしたいと言われたそうだ。しかし、これまでの議論で自民党の改憲案とその理由を理解した上で、「改憲を議論するのは、現在の日本国憲法の理念がもっと議員や国民に浸透してからにすべきであり、現在は時期尚早だ」という判断もあり、スタンスは①②だけではない。そして、安心して議論できるためには、強行採決して国民投票に懸けられないよう、参議院の改憲勢力は2/3未満にすべきだ。

*10-1:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190620-00000157-kyodonews-pol (Yahoo 2019/6/20) 男系男子の皇位継承維持 女性宮家創設に反対
 超党派の保守系議員でつくる「日本会議国会議員懇談会」は20日、国会内で総会を開き、男系男子による皇位継承を維持し、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」創設に反対する内容の基本方針を決めた。今後、具体的な方策や提言案をまとめ、政府や各党に要望する。基本方針は、安定的な皇位継承を確保するための解決策について「126代にわたり、古来例外なく維持されてきた男系による皇位継承の伝統に基づき、男系男子孫による皇位継承が可能となる方策」を要望した。皇族の減少に伴い、女性皇族が結婚を機に皇族の身分を離れた後も活動を継続できるよう政府に申し入れるとした。

*10-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2019061101051&g=pol (時事 2019年06月11日) 「Y染色体」に触れ男系継承評価=自民・古屋氏
 自民党の古屋圭司元国家公安委員長は11日、皇位が男系でのみ継承されてきた歴史について、男性に特有の「Y染色体」に触れ、「何百年、何千年前は遺伝子工学の知識はなかったと思うが、先人の素晴らしい知恵だったと思う」と評価した。人間の性を決める染色体にはXとYの2種類があり、古屋氏は「Yはずっと形が変わらない、続いていく。Xとは違う。男女差別という問題ではなく、あくまでも染色体の科学的根拠がベースだ」と語った。古屋氏は、超党派の保守系議員で構成する「日本会議国会議員懇談会」会長として、同懇談会の皇室制度に関する検討チームの会合であいさつした。

*10-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019062102000199.html (東京新聞 2019年6月21日) 参院選野党共闘 明確な選択肢打ち出せ
 予想される参院選投票日まで一カ月。野党は二〇一六年に続き、焦点となる三十二の改選一人区で候補を一本化し戦う態勢を整えた。一強多弱構造を崩す対立軸となり得るか、共闘の真価が問われる。立憲民主、国民民主、共産など五党派の候補者一本化協議は、四月の統一地方選後に急進展した。政府・与党内から衆参同日選の観測が漏れ出し、立民、国民を支援する連合からは「(安倍)一強政治を何としても打破しないといけない」(神津里季生会長)と、悲壮な声も飛び出した。野党票が分散すれば、一人区で与党候補に漁夫の利を与えるのは明らかだ。危機感が共有され、二十四区に公認を立てていた共産も相次ぎ候補取り下げに応じた。前回の野党共闘では地域事情に合わせた協議の積み重ねで候補を絞り込んだのに対し、今回は一月の野党党首会談で合意し中央レベルで協議を進めた影響も大きい。ただ、一本化は共闘の「スタートライン」にすぎず、選挙の公示が迫っても共通公約や相互支援の在り方は明確でない。政策は、民間の「市民連合」が五党派に九条改憲反対、安保法制廃止、十月の消費税増税見送りなど十三項目を要望し、各党派代表が署名した。しかし、扱いについては党派ごとに認識が異なり、共通の「旗」となっていない。にわかに広がった年金不信を踏まえ、有権者の立場に立った社会保障の将来像など選択肢を共同で示すことができれば、野党の存在感は一段と高まるのではないか。相互支援態勢では、五党派間で「最大限の協力で勝利を目指す」と合意したにすぎない。各党派の相互推薦は無所属候補にとどまる見込みだ。公認も含む全一本化候補に対し、実効性のある協力関係が築けるかが今後の課題となる。一人区の野党側の戦果は一六年参院選で十一勝二十一敗。共闘が整わなかった一三年が、当時の三十一選挙区中二勝二十九敗だったのと比べると善戦だった。さらに一七年衆院選の比例代表で見ると、立民、旧希望、共産、社民の合計票は約二千六百十万票で自民、公明両党の票を六十万票近く上回る。昨年以降、沖縄では野党系の「オール沖縄」候補の大勝が相次ぐ。参院選でも与党候補に十分対抗可能だろう。旧民進党分裂に伴う主導権争いや基本理念の違いが表面化しがちな野党共闘だが、残り一カ月。有権者の信頼を集める政権批判の受け皿づくりに努める局面だ。

*10-4:https://www.jiji.com/jc/article?k=2019062101353&g=pol (時事 2019年6月21日) 憲法改正、参院選争点に=安倍首相「議論する政党選ぶ選挙」
 安倍晋三首相は21日夜のインターネット番組で、憲法改正が夏の参院選の主要争点になるとの考えを強調した。「憲法について、ただただ立ち止まって議論をしない政党か、正々堂々と議論する政党か、それを選ぶ選挙だ。そのことを強く訴えていきたい」と表明した。首相は、衆参両院の憲法審査会の論議が進まない現状に関し「真剣にどういう国をつくっていくかを議論する大切な場で議論がなされていない」と述べ、野党の対応を批判。改憲について「最終的には国民が国民投票で決める。その国民の権利すら奪っている」と指摘した。

<社会保障の充実とその財源としてのエネルギー資源>
PS(2019年6月22、28、29日追加):*11-1のように、熊本市は環境省の委託を受けて熊本大等と運行実験を行い、実用性やCO2の排出削減効果を確認していたEVバス1台を2019年12月から熊本城の周遊バスに採用するそうだ。EVは、再生可能エネルギー由来の電力を使う限りCO2排出量が0であり、海外に支払っている燃料代を節約して国内で廻せるメリットもある。しかし、日本では、EVバスの新車が8千万円、中古でも4千万円もするそうで、必ず価格の高さが日本製普及のネックになるが、これは高コスト構造が原因だ。ちなみに、中国のEV最大手BYDは、*11-2のように、航続距離200km、充電時間3時間の新小型EVバスを日本市場に投入し、その価格は税抜き1950万円だそうだ。私は、日本の環境先進都市は、BYDの小型EVバスだけでなく主力の乗用車もタクシーとして導入すれば、日本メーカーの刺激になってよいと思う。
 日本政府は、*11-3のように、2019年度の経済財政運営と改革の基本方針を、①就職氷河期世代への支援 ②最低賃金上げ ③70歳までの就業確保策の検討 ④幼児・高等教育の無償化 ⑤終身雇用や年功序列など日本型雇用の見直しや兼業・副業解禁など企業改革を促す とする閣議決定をしたそうだ。私は、①はよいが、②は地域によって物価水準が異なるのに全国一律の最低賃金を採用したり、生産性と合わないほど最低賃金を引き上げたりすると、雇用が減少すると思う。また、③については、*11-4のように、努力義務ではザル法となり、高齢者をワーキングプアにするので不十分だ。さらに、④及び⑤のうちの年功序列見直しは重要だ。
 これに対し、日経新聞等のメディアは、⑥社会保障の持続性確保のための消費税率10%引き上げ後の国民の負担増・給付減に繋がる改革に踏み込まなかった ⑦国と地方の基礎的財政収支(PB)の黒字化目標を25年度まで先延ばしした などと旧来型の思考停止した批判を繰り返している。しかし、社会保障財源については、これまで述べてきたようなエネルギー改革、雇用改革、国の収支を管理しながら国有財産を有効に使う行財政改革等を行えば、消費税増税は不要なのである(このブログのマニフェスト参照)。
 また、*11-5のように、共産党が参院選の公約に、⑧マクロ経済スライドの廃止 ⑨低年金者への月額5000円の上乗せ給付 ⑩最低賃金は全国一律とし時給1500円をめざす ⑪消費税率10%引き上げの中止 ⑫安全保障法制の廃止 を盛り込んだそうだが、このうち⑧⑪⑫は賛成だが、⑨の月額5000円の上乗せ給付では殆ど役に立たず、⑩は行き過ぎだろう。なお、将来、納めた保険料に応じた額を所得比例部分として上乗せする年金制度(=発生主義による引当方式≒積立方式)にするのなら、月5万円の最低保障年金とマクロ経済スライド廃止の財源を高所得者の年金保険料の上限廃止に求めても文句はないが、これまで高所得者の年金保険料に上限があったり、徴収漏れのケースが多すぎたりしたのがおかしかったのである。さらに、歳出の見直しという視点から、金食い虫の原子力発電所の再稼働を中止して全ての原発で廃炉のプロセスに入るのは、将来の負債やリスクを少なくするために重要なことだ。
 なお、社民党が、*11-6のように、「⑪改憲反対」「⑫社会を底上げする経済政策」「⑬最低賃金全国一律時給1500円を目指す」「⑭消費税率10%への引き上げ中止」「⑮マクロ経済スライドによる基礎年金の給付抑制中止」「⑯保育士給与の月5万円引き上げ」「⑰財源確保策として大企業への法人課税強化や防衛費の見直し」などを参院選の公約にしたそうで、⑪⑫⑭⑮は賛成だが、⑬は物価水準が異なる地域で生産性以上の時給を課せば、事業(特に中小企業)が成り立たなくなるため賛成できない。また、⑯も、幼児教育・保育を無償化した上で、義務教育開始年齢を3歳にするなどの全体的な教育改革が必要なので、保育士さえ増やせばよいわけではないだろう。⑰の防衛費の見直しについては、単価が高いだけで役に立たないものも多そうなので重要だ。「大企業への法人課税強化」は役割を終えた租税特別措置法の見直しは有益であるものの、世界競争をしているので大企業だからゆとりがあるとも限らないため、具体的に言うべきだ。また、共産党がよく使う「富裕層への課税強化」は、“富裕層(年収380万円以上?!)”の定義を明確にしなければ、一億総中流階級意識の日本では殆どの有権者を敵に廻す。何故なら、現在は「蟹工船」「女工哀史」のような「資本家は金持ちで欲張りな搾取者」「労働者は貧しい被搾取者」という時代ではなく、出資している事業者の方が不利な点も多いからである。
 最後に、日本維新の会は参院選のマニフェストで、*11-7のように、⑱年金は「賦課方式」から「積立方式」に変更 ⑲年金支給開始年齢は段階的引き上げ ⑳税金と年金等の保険料を一括徴収する「歳入庁」を設置 ㉑消費税増税凍結 ㉒財源は「身を切る改革」をして国会議員報酬・定数は3割減、国家公務員人件費は2割減 としているようだ。私は、⑱には賛成で、必要な積立金額を長期の低利(orマイナス金利)国債で賄うのがよいと考える。⑲は、定年の廃止や定年年齢の引き上げと連動しなければ困るが、働いていた方が医療費や介護費も少なくてすむので一石二鳥だ。⑳は、税金と年金等の保険料を一括徴収しても年金や医療・介護費用の源資は、(ごっちゃにするのではなく)きちんと分けて保管・運用するのならよい。これにエネルギー改革・歳出改革と女性や外国人労働者の活躍を加えれば7~20兆円は簡単に出る筈で、消費税は消費に対するペナルティーとして働くため廃止も視野に入れるべきだ。なお、日本維新の会は、「身を切る改革」を看板として民主主義のコストである議員報酬や定数削減をよく言われるが、これによって節約される金額は桁が小さすぎ、議員報酬が減ったからといって年金を減らされるいわれはないし、報酬が低ければ優秀な人が集まらず、金持ちばかりが議員になって生活感のない政策を行うため、国民にとっては利益がないと考える。

    
現役・再雇用・年金時代の家計収支  2019.6.21東京新聞   2019.6.22東京新聞

(図の説明:左図のように、子育中の貯蓄は困難であるため、子育後に老後資金を準備をしなければならないが、再雇用での貯蓄は難しく、年金時代は貯蓄を取り崩す生活になる。従って、中央の図の「マクロ経済スライド」は本当に廃止すべきだ。また、右図の改正高齢者雇用安定法による高齢者雇用は非正規での再雇用を認めているため、再雇用後、著しく減収する人が多い)

*11-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/519998/ (西日本新聞 2019年6月20日) EVバスで熊本城周遊 市が導入、12月から運行
 熊本市の大西一史市長は19日、電気自動車(EV)のバス1台を、12月から市が運行する熊本城周遊バス「しろめぐりん」に導入する考えを明らかにした。EVバスは昨年2月から1年間、市や熊本大などが環境省の委託を受けて運行実験を行い、実用性や二酸化炭素(CO2)排出の削減効果を確認していた。県内で路線バスへのEV導入は初めて。市によると、導入するEVバスは乗客乗員27人乗り。1回の充電で約50キロ走行でき、熊本駅から熊本城周辺の1周約10キロを1日に4、5便運行する。CO2排出量はほぼゼロの見込みで、車体にはEVをアピールするラッピングを施す。災害時には、登載バッテリーから外部への電気の供給もできるという。運行実験に参加したイズミ車体製作所(大津町)が保有する中古バスをEVに改造する。バスはリース会社が保有し、市は5年間のリース契約を結ぶ。市は5月に国から事業計画の認可を受けており、改造費など市の負担は約4千万円を見込む。市によると、全国ではEVバスの新車導入例はあるが、中古バスを改造してEV化するのは珍しいという。市は「EVバスを新車で購入すると約8千万円かかるとされ、費用が抑えられる」としている。

*11-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42874120V20C19A3916M00/ (日経新聞 2019/3/25) BYD、日本で新EVバス 24年に1000台
 中国の電気自動車(EV)最大手である比亜迪(BYD)の日本法人、ビーワイディージャパン(横浜市)は25日、新たな小型EVバスを日本市場に投入すると発表した。国内の小型EVバスとして航続距離は最長となるという。同日から予約を受け付け、中国で製造し、2020年春から納車する予定。24年までに1000台の販売を目指す。新型車は全長7メートル、車幅2メートル、車高3メートル。地方の細道でも走れるように小回りの効く大きさにした。1回の充電は3時間で済み、航続距離は従来車より1.3倍の200キロとなった。一般的なEVバスの価格は1億円台とされ、高い価格が課題になっていた。新型車は税抜き1950万円と購入しやすい価格帯に設定した。BYDグループは、世界50カ国・地域で5万台のEVバスを納めている。日本では15年に京都市でEVバスを納車後、4つの自治体で計21台の大型・中型のEVバスを納品している。日本車メーカーでは20年の東京五輪で、トヨタ自動車が燃料電池車(FCV)のバスやEVなど3000台を走らせる計画で開発を進めている。また日野自動車が12年にEVバスを販売し、東京都羽村市が導入した。世界では二酸化炭素(CO2)や排出ガスの環境規制が厳しくなっており、自動車メーカーは環境対応が求められる。だが主要な日本車メーカーはEVバスの開発に消極的な姿勢のままだ。ビーワイディージャパンは緊急時に運転手が操作する「レベル3」の自動運転機能を後付けできる製品も、20年に販売するという。日本で導入済みのEVバスや今後販売の小型EVバスに搭載可能で、自動運転バスでも先陣を切りたい構えだ。25日に都内で記者会見した同社の花田晋作副社長は、主力の乗用車を日本市場に投入することに関し、「EVの市場規模が小さく、日本での展開はない」と強調。他の日本車メーカーとの提携も「求めがあれば、そのような出会いもある」とした。最後に「交通弱者の高齢者が増え、地方では路線バスの需要が増える。低価格でEVを普及し、電動化社会を進めたい」と話していた。

*11-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190622&ng=DGKKZO46415190R20C19A6EA1000 (日経新聞社説 2019年6月22日)厳しい改革を忘れた骨太の方針
 政府は21日、2019年度の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)を閣議決定した。7月の参院選を意識したのか、就職氷河期世代への支援や最低賃金上げなど有権者に聞こえのよい政策が並んだ。消費税率10%引き上げ後の社会保障・財政改革など国民の負担増につながる厳しい改革には踏み込まなかった。成長戦略を含む骨太の方針では、70歳までの就業確保策の検討、幼児・高等教育の無償化のほか、就職氷河期世代への支援策などを盛り込んだ。成長戦略の実行計画では、日本が第4次産業革命を世界で主導できるかどうかは「この1、2年が勝負」としたうえで、組織に閉じこめられている個人を解放し、自由に個性を発揮できる社会の実現を提唱。終身雇用や年功序列など日本型雇用の見直しや兼業・副業解禁など企業に改革を促した。民間の変革努力は必要だが、政府の改革の取り組みは十分だろうか。巨大IT(情報技術)企業との公正競争を促す組織・法制整備、業態別の縦割り金融規制を見直す法整備などを盛り込んだが、成長を促す改革は迫力不足だ。何よりも問題なのは「経済財政運営と改革」という主題がぼやけてきていることだ。安倍晋三政権は昨年、当初は20年度としていた国と地方の基礎的財政収支(PB)の黒字化目標を25年度まで先延ばしした。骨太の方針では10月に消費税率を10%に予定通り上げることは明記したが、黒字化目標への道筋は描いていない。さらに高齢化がピークに達し、医療・介護など社会保障費が増大する40年度までについては議論すら進んでいない。社会保障・財政健全化の取り組みは消費税率の10%への引き上げで完結するわけではない。長期の政権を担う安倍首相にはその後の改革の青写真もしっかりと描く責任がある。当面の課題は、団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる22年以降に増大する医療など社会保障費をどう抑制するかだ。この問題については「20年度の骨太の方針で、給付と負担のあり方を含め社会保障の総合的かつ重点的に取り組むべき政策をとりまとめる」と具体策には踏み込まなかった。社会保障の持続性確保には、歳出抑制や負担増などの議論は避けられない。政府は国民に事実を正直に説明し政策を訴えるべきだ。

*11-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201906/CK2019062202000157.html (東京新聞 2019年6月22日) <働き方改革の死角>高齢ワーキングプア誘発 定年後の再雇用「ザル法」
 政府の成長戦略で柱とされる高齢者の雇用機会確保。企業に「70歳までの雇用延長」を努力義務として課すが、現状でさえ不安にさらされる高齢者雇用の断面を見た。「Aさんは明日から契約社員になり、営業の仕事からは離れます」。神奈川県内にある投資コンサルタント会社に勤めるAさん(60)。定年日当日の今月中旬、会社は突然、社員を集めて発表した。「こんな強引なやり方が許されるのか」。Aさんはショックを受けた。外資系銀行での資金運用経験など金融知識を買われ、転職してきて以来十年間、営業最前線で成果を上げてきた。会社は「定年後も営業をやってもらう。給料も従前どおり」と言っていたが、定年が間近に迫った今月初め、態度をひょう変させた。定年後再雇用に際し、会社が労働条件通知書に記した給料は、定年前の六割減。仕事内容は「簡単な事務作業」。頭の中が真っ白になったAさん。以来、定年後の条件を巡って会社と押し問答を続けてきた。大学に入学したばかりの子どもがいる。給料も仕事内容も受け入れがたいが、「(辞めるのは)悔しい」と子どもに言われ、Aさんはとりあえず働き続けることにした。
    ◇  ◇ 
 高齢者雇用の根幹となる高年齢者雇用安定法(高年法)。「六十五歳までの安定した雇用を確保する」と謳(うた)い、企業に(1)定年の引き上げ(2)継続雇用(再雇用)(3)定年制廃止-のいずれかを義務付けている。だが、実際には厚生労働省調査では企業の八割が(2)の再雇用を選んでいる。「雇用契約をいったん切ると、待遇切り下げが可能になるから」。労働問題に詳しい安元隆治弁護士が言う。

*11-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190622&ng=DGKKZO46413490R20C19A6EA3000 (日経新聞 2019年6月22日) 年金給付の抑制廃止 共産が参院選公約
 共産党は21日、7月の参院選の公約を発表した。高齢者が受け取る年金を抑える「マクロ経済スライド」の廃止や、低年金者への月額5000円の上乗せ給付などを掲げた。最低賃金は全国一律とし時給1500円をめざす。消費税率10%引き上げの中止や安全保障法制の廃止を盛り込んだ。志位和夫委員長は記者会見で「年金問題が大きな争点になってきた」と指摘した。マクロ経済スライド廃止の財源は、高所得者の年金保険料の見直しなどで賄う。将来は全ての高齢者に年金を月5万円保障したうえで、納めた保険料に応じた額を上乗せする年金制度に変えるとした。最低賃金は「ただちに全国どこでも1000円に引き上げ、速やかに1500円をめざす」と記した。原子力発電所に関しては「再稼働を中止し、全ての原発で廃炉のプロセスに入る」と記した。

*11-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190628&ng=DGKKZO46645440X20C19A6PP8000 (日経新聞 2019年6月28日) 社民公約、最低賃金一律1500円
 社民党は27日、「社会を底上げする経済政策」を柱に据えた参院選公約を発表した。最低賃金を全国一律とし、時給1500円を目指すと明記した。消費税率10%への引き上げ中止や憲法改正反対を掲げた。「マクロ経済スライド」による基礎年金の給付抑制中止や、保育士給与の月5万円引き上げも訴えている。これらの財源確保策として大企業への法人課税強化や防衛費の見直しを挙げた。

*11-7:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019062601002289.html (東京新聞 2019年6月27日) 維新公約、年金は積み立て方式に 消費増税は凍結
 日本維新の会が夏の参院選で掲げるマニフェスト(政権公約)の全容が26日、判明した。現役世代が納めている保険料を今の年金受給者への支払いに充てる現行の「賦課方式」から、自分が積み立てた保険料を老後に取り崩して受け取る「積み立て方式」への移行を提起。国会議員や公務員の給与を削減して財源を捻出し、消費税増税を凍結する。27日に発表する。看板政策とする「身を切る改革」の必要性を改めて強調。国会議員の報酬と定数をそれぞれ3割カット、国家公務員の人件費を2割削減する。年金支給年齢の段階的な引き上げ、税金と年金などの保険料を一括徴収する「歳入庁」設置も提案した。

<「マクロ経済スライド」の廃止について>
PS(2019年6月23日追加):*12-1のように、「マクロ経済スライド」は国民にわかりにくくしながら年金を7兆円減らす仕組みで、これが完全に実施されると年金給付は7兆円削減される。それに消費税増税とインフレ政策が加わるので、今でも生活費が不足している高齢者はますます困窮する。少し前、私が、暗くなってスーパーから帰ろうとしたところ、高齢の男性が道に座り込んで荒い息をしておられたので具合でも悪いのかと思って声をかけたら、たった一つモノが入ったスーパーのカートを押して走ってきた万引きだとわかった。そのため、そっとそのまま帰ったが、高齢者からぶんだくることしか考えない政策を作った人たちの一食分にも満たない金額を支払えない高齢者が、今の日本には少なからずいることを忘れてはならない。
 なお、*12-2のように、「骨太の方針」が出て消費税率10%への引き上げを明記し、増税後の景気下支えのための臨時経済対策費の計上が示されたそうだが、何かと理由をつけては経済対策を行うため、消費税導入後、国の債務は増え続けている。私は、「幼児教育・保育の無償化」はよいと思うが、未だ教育の質の向上と連動していないのが残念だと思う。また、幼児教育・保育を無償化すれば、それが景気対策になる筈であり、「社会保障財源は消費税」と(世界で唯一)決めつけるのもやめるべきだ。

 
税収・歳出・国債残高 2018.12.18東京新聞 2018.12.21西日本新聞 2018.3.19東京新聞

(図の説明:1番左と左から2番目の図のように、1989年《平成元年》の消費税導入後、景気対策と称する歳出拡大が続いた結果、国の財政状態はむしろ悪化した。また、弥縫策のような歳出が多いため、右から2番目の図のように、実質GDP成長率は0付近で推移している。さらに、人口に占める割合の多い高齢者の収入を削減する政策になっているため、1番右の図のように、エンゲル係数《貧しさの指標》は上がりつつあり、本当に必要とされる消費財の需要も増えない)

*12-1:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-06-23/2019062301_01_1.html (赤旗 2019年6月23日)年金7兆円減 首相認める、マクロ経済スライド廃止が最大焦点に
 年金給付を自動的に削減する「マクロ経済スライド」が完全実施されると、年金給付は7兆円も削減される―。高齢者のくらしを貧困に突き落とすマクロ経済スライドの恐るべき実態が、安倍晋三首相自身の口から明らかにされました。安倍首相は22日に出演した民放テレビ番組「ウェークアップ!ぷらす」(日本テレビ系)で、日本共産党のマクロ経済スライド廃止の提案に言及し、「やめてしまってそれを保障するには7兆円の財源が必要です」と発言しました。この問題をめぐって安倍首相は、19日の国会の党首討論で日本共産党の志位和夫委員長がマクロ経済スライドの廃止を提案した際、「ばかげた案だ」などと批判し、唐突に7兆円という数字を持ち出していました。民放番組で安倍首相自ら、マクロ経済スライドが7兆円の年金給付削減という痛みを国民に押し付ける仕組みだと明らかにしたことで、マクロ経済スライドを続けて年金給付を7兆円削るのか、それとも廃止して「減らない年金」をつくるのかが、年金問題の最大焦点に浮上しました。党首討論後、志位氏の求めに厚生労働省が提出した資料によれば、7兆円はマクロ経済スライドによる基礎年金(国民年金)給付の減額幅を示したもので、2040年時点で本来約25兆円になるはずの給付額は18兆円に抑制されることになっていました。基礎年金給付の実に3分の1がマクロ経済スライドで奪われる計算で、現在でも6万5000円にすぎない基礎年金の満額はさらに約2万円も削り込まれることになります。基礎年金しか入っていない低年金者ほど打撃が大きい、最悪の「弱者いじめ」の仕組みであることが浮き彫りになりました。日本共産党は21日に発表した参院選公約で、マクロ経済スライドを廃止するための財源として、年収1000万円を超えると保険料負担率が低くなる高所得者優遇の保険料制度の見直し、200兆円もの巨額積立金の計画的取り崩し、最低賃金引き上げや非正規雇用の正社員化による保険料収入増加を掲げています。

*12-2:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/318070 (北海道新聞 2019/6/23) 骨太の方針 問題の先送りも同然だ
 政府はおととい、経済財政運営の基本指針である「骨太の方針」を閣議決定した。予定通り10月に消費税率を10%に引き上げることを明記し、増税後の景気を下支えするため本年度に続き来年度予算でも臨時の経済対策費を計上する方針を示した。米中貿易摩擦などにより景気悪化のリスクが高まれば、新たな経済対策を講じることも示唆した。就労促進で内需を支えようと、就職氷河期世代の正社員化や最低賃金の引き上げ、在職老齢年金制度の廃止検討も盛り込んだ。景気対策が色濃くにじむ内容だが、裏付けとなる財源をどう賄うのかはほとんど触れていない。社会保障改革についても具体策には踏み込まず、来年の骨太の方針で重点政策をまとめるという。これではあからさまな懸案の先送りではないか。参院選を意識して聞こえのいい政策ばかりを列挙したようにしか見えない。財政健全化では、国と地方を合わせた基礎的財政収支を2025年度に黒字化する目標を据え置いた。だが今回盛り込んだ景気対策などの新たな財源を確保できなければ目標達成が遠のきかねない。働いて一定の収入がある高齢者の年金を減らす在職老齢年金制度も、年金財政に影響させずに廃止するには1兆円の財源が必要だ。年金額が減ることを理由に就労意欲がそがれるのを防ぐことで、元気に働ける高齢者を増やし、社会保障の支え手に回ってもらうことは期待できよう。とはいえ、将来世代へつけ回すことは許されない。高所得の高齢者優遇にならない仕組みを含め、丁寧な制度設計が求められる。消費税増税対策も理解に苦しむ。対策費は本年度当初予算と同規模の2兆円程度となる公算が大きい。これは増税に伴う実質的な国民負担増に匹敵する額である。膨らむ社会保障費を皆で賄うことが本来の理念のはずだが、これでは何のための増税なのか。増税する一方で景気対策を打つ。アクセルとブレーキを同時に踏む、つじつまの合わない経済運営と言わざるを得ない。増税に耐えうる経済状況にないなら増税自体を見送るのが筋だ。安倍晋三政権の看板政策で、消費税の増税分を財源とする「幼児教育・保育の無償化」を10月に始めるために税率引き上げを見送ることもできないなら本末転倒だ。「骨太」と呼ぶにはもろさが目立つ。経済安定への道しるべとは到底言えまい。

<支え手・労働力不足の解決へ>
PS(2019年6月24、25、26日追加):*13-1のように、シリア・アフガニスタンなどの中東やミャンマーのロヒンギャが上位を占める難民は、2018年末に7080万人となり、その半数が子どもだそうだ。その解決策として、「①緊急の生活支援」「②難民を受け入れている周辺の貧しい国への支援」「③日本はUNHCRへの拠出額で5番目だが、2018年の難民認定申請者数1万493人に対して認められたのは42人」「④難民を出さない取り組みが必要」「⑤難民の自立を助け、安全な帰還を促す」「⑥シリア難民を最大150人留学生として受け入れている」「⑦難民の雇用を始めたファーストリテイリングは、2019年4月末で59人が地域限定社員等として働く」などが書かれている。
 このうち①②③は、決して自国民が豊かとは言えない日本が、難民を受け入れることはせず金で解決しようとしている点で、いつもながらの貧しい発想力である。④⑤は、難民発生国、難民受入国の課題であり、第三者である日本ができることは殆どない。そのような中、支え手が不足している日本で、⑥⑦のように難民を受け入れて教育したり、労働力として活躍させたりするのがよいと、私は考える。
 そのため、*13-2の「世界に開かれた国として多くの留学生を受け入れ、高度な技術や専門性を育成し、それによって日本の国際競争力を高め、留学生には母国との懸け橋として活躍してもらうことを目的として、留学生30万人を受け入れる」という計画はよい。現在は、農林漁業・製造業・サービス業の人手不足が顕著になっており、多様な人材を育てれば文明の相乗効果でより有用な財・サービスを作りだすことができると思う。そのため、東京福祉大のような最悪のケースを持ち出して今後の留学生拡大まで否定するのではなく、例えば、九州でも、今後必要となる分野なら大学のみならず高校や高専も留学生を増やしてよいだろう。*13-3のように、高等教育の費用も生活保護世帯の自宅生や児童養護施設の入所者など収入の少ない人は、特に給付型奨学金の増額や授業料の減免などがある時代になったのは大きい。
 なお、*13-4のように、日本の「女子学生の制服100年の歩み」は、1世紀前の1919年を境に制服が和装から洋装へと切り替わり、一般の人は当時の身の回りの“普通”にこだわったものの、私立女学校の校長だった山脇房子氏のデザインによる紺色のワンピースと白エリの制服を皮切りに洋装が広がり、昭和に入ってセーラー服が優勢になったそうだ。つまり、学生の制服は、一般の人に服装から新しいよい習慣を身につけさせる働きもしてきたわけである。そのため、女性にスカーフやヒジャブ・ニカブなどを強制する地域から来た外国人・難民の子女には、まずは学校と制服で女性を宗教による女性差別の制約から解放してあげたいと思う。

    

(図の説明:『ところざわのゆり園(西武グループ運営、https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/iitokoro/enjoy/kanko/flower/syogyo_20140508131620678.html 参照)』は、約3万平方メートルの自然林に50種・約45万株のユリが咲き誇って森林浴と散策が楽しめるそうだが、森林に花を植えてもよいわけだ。そのコンセプトは、目から鱗だった)

*13-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190624&ng=DGKKZO46463940S9A620C1PE8000 (日経新聞社説 2019年6月24日) 難民問題は最大の人道危機だ
 増え続ける難民にどう対処するか。日本を含む世界に突きつけられた課題である。20日の「世界難民の日」にあわせ国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が報告書を発表した。2018年末の難民は7080万人と過去最高を更新した。1年前に比べ230万人増加し、その半数が子どもだった。上位を占めたのは、シリアやアフガニスタンといった中東からのほかミャンマーのロヒンギャ難民など。第2次世界大戦以降で最大級の人道危機に直面していることを、国際社会は認識すべきだ。まずは、緊急に必要な生活支援を的確に、かつ効果的に行わなければならない。難民を周辺の貧しい国が受け入れているという現実があり、その負担を軽減する国際的な体制作りが不可欠だ。難民の自立を助け、安全な帰還を促すとともに、そもそも難民を出さないようにする多角的で中長期的な取り組みが重要になる。難民を生む原因である紛争や対立の根っこには貧困があるからだ。日本にとってもひとごとではない。UNHCRへの拠出額では5番目で、国際協力機構(JICA)を通した開発協力などを実施している。しかし、18年の難民認定申請者数1万493人に対し、認められたのはわずか42人だった。17年より22人増えたが、先進国のなかでは極端に少ない。これとは別枠で、シリア難民を最大150人留学生として受け入れるプログラムなどを実施している。しかし、十分とはいえない。もっと受け入れを増やすのか、海外での支援を重視するのか。議論が深まらないのは国民の関心が低いからだろう。その意味で、民間企業で動きが出ているのは評価したい。難民の雇用を始めたファーストリテイリングでは今年4月末現在、59人が地域限定社員などとして働く。支援物資を海外の難民キャンプに送る企業も増えている。こうした取り組みが、問題を身近に考えるきっかけになることを期待したい。

*13-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/521175/ (西日本新聞社説 2019/6/24) 留学生30万人 内実伴わぬ計画の検証を
 世界に開かれた国として多くの留学生を受け入れて高度な技術や専門性の育成を図る。それによって日本の国際競争力を高め、留学生には母国との懸け橋として活躍してもらう-。そんな理念をうたった国家戦略と現実の落差が浮き彫りになった。戦略とは、2020年までの実現を目指した政府の「留学生30万人計画」、現実とは、東京福祉大で大量の留学生が所在不明になった問題のことだ。計画策定の08年当時、全国で約12万人だった留学生は現在ほぼ30万人に達し、数字の上では目標が達成されている。ところが内実は伴っていない。文部科学省などによると、東京福祉大は定員の明確な規定がない「学部研究生」の枠を大幅に広げるなどして13年度以降、留学生を10倍以上に増やし、18年度は5千人余を受け入れていた。ただ、アパートやビルの一室を教室にするなど教育環境は貧弱だった。この3年間で研究生を中心に留学生1610人が所在不明になっていたという。「大学が真に留学を目的としない外国人を大量に受け入れることは想定外だった」と柴山昌彦文科相は言う。苦し紛れの釈明である。留学名目で大学や専門学校などに籍を置き、在留資格を得る。けれども実態は出稼ぎ目的の事例が多いと、かねて指摘されていた。日本側の人手不足も手伝い、外国人を積極雇用する企業も増えている。東京福祉大は結果として、そうした「需要」の受け皿になっていたのではないか。少子化が進む中、日本の大学は学生の確保に苦慮している。留学生の受け入れ拡大が「ビジネス色」を帯びた面も否めない。政府は東京福祉大に学部研究生の募集を当面見合わせるよう指導した。全大学に留学生の在籍管理の厳格化を求める仕組みを設ける方針も打ち出した。それも遅きに失した感がある。政府はこれまで留学生の数値目標にこだわり、問題を半ば黙認してきた印象が拭えないからだ。留学生の不法残留は近年増加の一途をたどり、今年1月の法務省調査では過去10年間で最多の4708人に上った。政府の計画が、大学のずさん経営や企業の低賃金雇用、外国人の人権侵害、さらには犯罪を助長しているとすれば本末転倒である。無論、大学の自治を尊重し、意欲ある留学生を支援することは重要だ。それを踏まえつつ、政府は「30万人計画」の検証を進めるべきだ。大学の活性化や日本の国際競争力の向上などにどれだけ寄与しているのか。そうした視点での検証作業は、今春スタートした外国人労働者受け入れ拡大策の適正、円滑な実施にも資するはずだ。

*13-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/o/521462/ (西日本新聞2019/6/25) 生活保護世帯は奨学金を増額
 政府は25日、低所得世帯を対象にした大学や短大、高専、専門学校の無償化制度を来春から導入するのを前に、給付型奨学金の額や授業料の減免額を正式に定める政令を閣議決定した。生活保護世帯の自宅生や児童養護施設の入所者は、給付型奨学金の支給額を通常より4100~8300円高い月2万5800円~4万2500円とする。文部科学省によると、夫婦と子ども2人(うち1人が大学生)の家庭の場合、支給額が満額となる世帯年収の目安は270万円未満。年収380万円未満の場合は、支給額が満額の3分の1~3分の2となる。

*13-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14069003.html?iref=comtop_tenjin_n (朝日新聞 2019年6月25日) (天声人語)制服100年の歩み
 女子学生の服装史をさかのぼると、ちょうど1世紀前、1919(大正8)年が大きな節目だった。その年を境に通学服の流れが和装から洋装へと切り替わったからだ。東京の弥生美術館で今月末まで開催中の「ニッポン制服百年史」展を見て学んだ▼内田静枝学芸員(50)によると、明治の初め、女子の通学服と言えば着物だった。官立学校は袴(はかま)を勧めたが、生徒には不評。政府が欧化を急いだ鹿鳴館の時代には一転、ドレスが推奨されるが、浸透しなかった▼1919年夏、画期的な制服を考案したのは私立の女学校長だった山脇房子氏だ。紺色のワンピースと白のエリ。斬新すぎて恥ずかしいとためらう生徒も少なくなかったが、校長自ら率先して着用した▼着物より安くて動きやすい。これを皮切りに洋装が広がる。昭和に入るとセーラー服が優勢に。戦時下には、もんぺ姿を強いられ、嘆く声が聞かれた。戦後の成長期にはセーラー服に加えてブレザーも人気を広げた▼80年代以降、制服のデザインを一新した高校で受験者が急増するなど、制服は学校の経営にも影響を及ぼした。「明治以来、いくら政府や学校、親たちが強制しても、着る本人たちに愛されないと女子の制服はすぐ廃れました」と内田さん▼「女子でもスラックス制服を選べます」――。性的少数者への配慮などから、近年は性別を超えて制服の選択を認める自治体も出てきた。新旧の展示品を見て回りながら、制服は時代の制約と変化の縮図のように感じた。

<ドアホな政策が産業の低迷を生み、国民負担を増やすのだということ>
PS(2019年6月26日追加):再生可能エネルギー由来の電力で豊富な水を電気分解すると、水素と酸素が発生する。つまり、再生可能エネルギーと水が豊富な日本は、水素燃料を自給した上、輸出までできる国であり、(副産物として自然にできるのでなければ)石炭・原油・天然ガスなどの化石燃料から作るよりもCO₂フリーで超安価なのだ。にもかかわらず、*14-1のように、経産省が「水素を軸としてこのような国際協調の輪を広げ」「将来にわたって日本のエネルギー調達を安定させる」などとしているのは、ドアホとしか言いようがない。しかし、このようなことが起こるのは、馬鹿な議員を何度も当選させたり、行政の言うことだから正しいと考えたりなど、主権者たる有権者の責任にほかならないのである。
 また、輸送手段も水素燃料を使えば水しか排出しないため、陸上交通やジェット機だけでなく、*14-2の海運も水素燃料か電力に変更すべきだ。記事には「変更に多額のコストがかかる」と書かれているが、現在は港を汚し公害(外部不経済)を垂れ流して国民に負担させているため、液化天然ガス(LNG)に代替する手間とコストを省き、エンジンだけをすぐに燃料電池に換えたり、船舶を燃料電池船に更新したりすれば、全体としてはより安価にすむだろう。

 
 FCV航空機(IHI製) FCVバス(東京) FCV電車(ドイツ)   FCVトラック


        EV航空機            EV船(石垣島)   EV軽トラック

*14-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190626&ng=DGKKZO46558320V20C19A6EE8000 (日経新聞 2019年6月26日) 水素エネ普及 資源国と連携、サウジで燃料電池車 豪と輸送実験 技術提供テコに協力主導
 政府は水素エネルギーの普及へ資源国との連携を強化する。サウジアラビアで日本の技術を提供して水素ステーションを設けたほか、オーストラリアでは石炭からつくる水素の輸送実験を手掛ける。化石燃料は温暖化対策に逆行すると批判されている。現状ではコストが高いものの環境負荷の小さい水素の開発を通じ、日本は次のエネルギーに注目する資源国との結びつきを強める。「水素など新しい分野での協力も進めたい」。17日、世耕弘成経済産業相と都内で会談したサウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相はこう呼びかけた。水を電気分解してつくる水素は燃やしても水が出るだけで、二酸化炭素(CO2)を排出しない。環境への負荷が小さく「究極のクリーンエネルギー」とされる。サウジアラビアは原油販売への依存を減らすため国内産業の多角化を進めており、原油から生産できる水素に期待をかける。そのサウジアラビアの国営石油会社、サウジアラムコは今月中旬から、水素を供給する「水素ステーション」の実証実験を始めた。トヨタ自動車の燃料電池車(FCV)を導入し、水素活用の方策を探る。技術面で日本が協力し、原油から水素を取り出す技術の実用化なども進める考えだ。水素は石炭などからもつくることができる。このため埋蔵する化石燃料を環境に配慮した形で活用したい資源国が注目しており、水素開発の技術を持つ日本との連携を強める動きが広がる。豪州は炭化が不十分で低品位な「褐炭」をガス化して水素をつくる。2020年度にも専用設備を備えた船で日本に運ぶ計画だ。30年ごろの商用化を視野に入れている。ブルネイでも未利用の天然ガスを水素に変え、日本に運ぶ計画がある。日本は川崎重工業や千代田化工建設など水素のプラント建設や輸送に強みを持つ企業が多い。FCVを含め、世界的に高い水準の技術をテコに協力国を増やす考えだ。水素は天然ガスなど他のエネルギーと単純比較して供給コストが数倍に上り、まだ普及していない。採算性の向上が課題だが、クリーンエネルギーとしての将来性には各国が期待を寄せる。経産省によると、中国は30年にFCVを100万台導入する目標を掲げる。経産省など日米欧の当局は6月中旬、水素分野での協力を盛り込んだ共同宣言を出した。長野県で開かれた20カ国・地域(G20)エネルギー・環境相会合に合わせて開催したのは、日本が開発を主導する姿勢を国際社会でアピールするためだ。世耕経産相らが議長役を務めたG20の同会合でも、共同声明に水素に関する文言を盛り込んだ。9月には日本が主導した関係閣僚会議の2回目の会合も控える。経産省は水素を軸としたクリーンエネルギーの国際協調の輪を広げることが、将来にわたって日本のエネルギー調達を安定させる戦略を支えるとみている。

*14-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190626&ng=DGKKZO46488060U9A620C1QM8000 (日経新聞 2019年6月26日) <海運環境規制 広がる波紋(上)>燃料転換、コスト重荷、硫黄分、大幅削減迫る
 海運業界に新たな環境規制が迫っている。国連の専門機関である国際海事機関(IMO)は、2020年から船舶燃料の硫黄分を大幅に減らすよう海運会社に求める。規制を満たすには多額のコストがかかる。海上運賃や燃料油など、商品市況への影響は広範に及ぶ。「ほかの環境規制に比べあまりに規模が大きい」。海運大手の担当者はこうぼやく。新たな規制は、あらゆる船舶の燃料油に含まれる硫黄分の上限を3.5%から0.5%と大幅に引き下げるよう義務付ける。国内外を問わず全ての海域で守らなくてはならない。目的は大気汚染の原因となる硫黄酸化物(SOx)の排出削減だ。海域や稼働年数などによって対象にならなかった船もあった従来の環境規制に比べ、適用範囲は広い。海運業界の対応方法は主に2つある。1つは燃料の切り替えだ。これまで使っていたC重油に代わり、硫黄分の少ない軽油と重油を混ぜた「適合油」を使う。硫黄を含まない液化天然ガス(LNG)の代替使用も選択肢になる。もう1つは船への脱硫装置(スクラバー)の設置だ。C重油を燃やした際の排ガスから硫黄分を除去する。どの方法にしてもコスト増は避けられない。スクラバーの設置に5億円前後が必要との見方もある。LNGは主要な港ごとに必要な補給体制の整備が進んでいない。現時点で最も現実的な対策は適合油だ。製造に使う軽油はアジア市場の指標となるシンガポール市場で1トン620ドル前後。船舶用C重油(420ドル前後)に比べ5割高い。「従来の船舶用重油に比べ、最低でも1トン5千~6千円(1割程度)高くなるだろう」(市場関係者)との声すら聞かれる。海運会社は大手を中心に、適合油の確保を進める。商船三井は燃料油の補給港で最大のシンガポール港で、19年内に切り替える予定の適合油を先行調達した。20年1~3月分も「6割確保した」(エネルギー輸送営業本部の中野道彦燃料部長)。一方で適合油には硫黄分以外の明確なスペックが確立していない。「複数の企業から調達した燃料がタンクで混ざると、エンジンに問題が起きないか」との不安を訴える海運会社もある。日本船主協会(東京・千代田)の武藤光一会長(商船三井前会長)は「(対応策の)選択の是非で経営内容に大きく差がつき、業界地図が塗り替わるかもしれない」と話す。海上運賃への影響は避けられそうにない。

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2019.6.10 自民党の参院選公約について (2019年6月11、12、13日追加)
   
  シャクヤク     アジサイ       ハナショウブ      ヒマワリ

(1)外交について
1)北朝鮮
 自民党は、*1-1のように、北朝鮮に対しては、「現在実施している制裁措置の厳格な履行に加え、さらなる制裁の検討を行う」と公約したそうだ。しかし、拉致問題については、選挙前になると拉致被害者家族の話を聞くが、通常は北朝鮮の核保有を批判したり、金正恩氏を(批判というより)口汚く罵ったり、馬鹿にしたり、圧力をかけたりしているため(これは放送・新聞・SNS等を通じて北朝鮮にも同時に配信されている)、拉致被害者を取り戻すことを第一に考えて行動してきたとはとても思えない。

 そのため、(すべてを公表することはできないかも知れないが)拉致被害者を取り戻す明確な戦略を示さない限り、信用できなくなったわけである。

2)北方領土
 北方領土については、安倍首相は対ロ交渉への悪影響を懸念して「固有の領土」との表現を封印されたそうだが、自民党の公約は「北方領土はわが国固有の領土」と明記しており、*1-1のように、それではその矛盾をどうするかについての戦略と道筋を示さなければ、外向きと内向きでは言うことが異なるという主権者を馬鹿にした公約になる。

 そのため、小さな“不正行為”の追及に過度の時間を費やすのは時間の無駄だと思うが、北方領土に関する両国の認識の矛盾とそれを突破する戦略を、首相や外務大臣が放送される委員会で説明することは必要不可欠で、そうでなければ言いっぱなしの公約になる。

(2)改憲について
 自民党の参院選公約は、*1-1のように、「早期の憲法改正を目指す」と記しており、改憲項目は、①9条への自衛隊明記 ②緊急事態対応 ③合区解消 ④教育充実 の4項目を改憲案として記しているそうだ。

 しかし、私は、「他国は何度も改憲しており、外国に押し付けられた憲法だから、改憲自体が必要である」という改憲理由は何度も聞いたことがあるが、上記④に改憲を要する納得できる理由を聞いたことはない。何故なら、④は、教育基本法で既に定められており、不足部分は教育基本法を改正したり、財源を確保したりすればすむことで、改憲は不要だからだ。

 また、③の合区解消も、衆議院・参議院のどちらかは全員比例代表にした方が、同じ方法で選ぶのではないため二重チェックがしやすく、死票も少ない。しかし、あくまでも小選挙区制にこだわるのなら、憲法には「一票の格差」に関わる問題は書かれていないので、合区解消のためには公職選挙法に必要事項を記載すればすむと考える。

 さらに、①については、憲法は自衛権の範囲を定義していないため、個別自衛権なら合憲で集団的自衛権なら違憲とはならない。しかし、安全保障関連法の定め方を見て平和主義の国とはとても思えなかったため、選挙で勝った途端にすべての政策を信任されたと主張して①の改憲を進められては困る。従って、有権者は、冷静で厳しい目を持って公約を見る必要があるわけだ。
 
 最後に、②については、*2に書かれているとおり、非常事態の際に政府に権限を集中させ、国民の権利を制限するという内容が盛り込まれており、これは憲法の基本原則である国民主権や三権分立を停止して行政が何でもできるとするものであるため、暴走するリスクがある。そのため、言われている必要性が妥当であったとしても、それは改憲以外の方法で行うべきだと考える。

 なお、野党連合は、自民党の参院選公約について、*1-2のように、反論している。

*1-1:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190609/KT190608ETI090009000.php (信濃毎日新聞 2019年6月9日) 自民参院選公約 党総裁の説明を聞きたい
 政権与党として責任のある公約なのか。自民党が参院選の公約を発表した。党総裁である安倍晋三首相が進める「外交」を前面に打ち出したことが特徴である。北朝鮮やロシア外交の行き詰まりが鮮明になる中、政府と異なる方針を打ち出した。安倍首相は党総裁として、理由を説明しなければならない。北朝鮮に対し、現在実施している制裁措置の厳格な履行に加え、「さらなる制裁の検討を行う」と記した。北方領土は「わが国固有の領土」と明記している。安倍首相は無条件での日朝首脳会談開催を目指し、北朝鮮に「圧力を加える」と言及することを避けている。北方領土では対ロ交渉への悪影響を懸念して「固有の領土」との表現は封印中だ。それでも自民党の岸田文雄政調会長は「これまでの政府、与党の方針を踏襲した」としている。野党は衆参両院の予算委員会で、首相に外交方針の変更などについて答弁することを求めてきたのに、与党は予算委の開催を拒否している。首相は詳細を明らかにしないまま、外国向けと国内向けで異なる方針を使い分けるのは無責任である。これまで最重要項目だった経済政策アベノミクスは、主張の2番手に後退させた。景気の後退傾向が出ている中で政策の限界を示している。「強い経済で所得を増やす」と記しているものの具体策は明記されていない。過去の実績をアピールしても、有権者の関心は今後にあるはずだ。現状を分析した上で対策を打ち出すのが筋である。改憲では、首相が掲げる2020年という目標年次の明示を見送り、「早期の憲法改正を目指す」と記した。「野党を刺激しても得にならない」という判断とみられている。さらに9条への自衛隊明記、緊急事態対応、合区解消、教育充実の4項目も党改憲案として記した。一方で改憲が必要な理由や今後の道筋を明らかにしていない。安倍政権は一内閣の判断で憲法解釈を変更して、違憲との批判を顧みないで集団的自衛権行使を容認する安全保障関連法を定めている。立憲民主党など野党は安倍政権下での改憲に反対し、議論に応じていない。具体策を示さないまま、選挙を終えた途端に信任されたと主張して、議論を一方的に進めるのではないか。有権者は厳しい視線で公約を見つめる必要がある。

*1-2:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-06-09/2019060902_04_1.html (赤旗 2019年6月9日) 自民党の参院選公約 5野党との対決鮮明
 自民党が7日発表した参院選公約で、安倍政権と日本共産党など5野党・会派の対決点がより鮮明になりました。民意を踏みにじって憲法改定、消費税10%増税、沖縄・米軍辺野古新基地建設、原発再稼働などを宣言した自民党公約に対し、野党党首が5月29日に合意した参院選の「共通政策」は安倍政治の転換を掲げています。
●憲法
自民 早期の改憲めざす
野党 国会発議させない
 自民党は参院選公約の重点項目で「早期の憲法改正を目指します」と明記。改憲は春の統一地方選公約や2017年の総選挙公約にも盛り込まれていましたが、新たに「早期改憲」と時期に踏み込みました。自民党は衆参憲法審査会への改憲4項目の提示を狙っており、選挙で早期改憲を公約にし、改憲論議の促進をはかる狙いです。17年に安倍晋三首相が9条への自衛隊明記を提案したときは、「北朝鮮情勢が緊迫し、安全保障環境が一層厳しくなっている」(「読売」5月3日)ことを強調しましたが、今度の公約では「北朝鮮の脅威」を強調できなくなっています。野党は共通政策で、▽安倍政権が進めようとしている憲法「改定」とりわけ第9条「改定」に反対し、改憲発議そのものをさせないために全力を尽くす▽東アジアにおける平和の創出と非核化の推進のために努力し、日朝平壌宣言に基づき北朝鮮との国交正常化、拉致問題解決、核・ミサイル開発阻止に向けた対話を再開する―などとしています。
●消費税
自民 10月に引き上げ
野党 増税中止めざす
 自民党は消費税増税については、重点項目では触れず、後段の各種政策集の中に「本年10月に消費税率を10%に引き上げます」と記述しました。争点化の回避をねらう意図が透けて見えます。公約では「誰もが安心、活躍できる人生100年社会をつくる」と掲げ、幼児教育・保育の部分的な無償化や低所得者世帯の学生への支援などをアピールしていますが、財源は低所得者ほど負担が重い消費税増税です。実際には誰もが不安でいっぱい。「年金の水準が当面低下する」ことなどにより、老後の資金が夫婦で2000万円不足すると自助を呼び掛けた金融庁の審議会の報告書案に対して、「『100年安心の年金』との説明はどこにいったのか」と批判が集中。政権が修正や釈明に追われています。公約で「目指す」とした最低賃金も「全国加重平均1000円」にすぎません。一方、野党は共通政策で▽10月の消費税率引き上げの中止と税制の公平化▽地域間格差を是正しつつ目指す最低賃金「1500円」を目指す▽保育、教育、雇用予算の飛躍的拡充▽選択的夫婦別姓の実現―などを掲げています。
●外交・安保
自民 軍事力を拡充・強化
野党 軍事費を他分野に
 自民党は重点項目の六つの柱の第一に「外交・防衛」を掲げ、「日米同盟をより一層強固にし、ゆるぎない防衛力を整備する」としました。政策集には、軍拡や基地強化、米国とともに海外で戦争する国づくりを加速させる項目が並びました。「防衛力の質と量を抜本的に拡充・強化」するなど軍拡路線を強調。「平和安全法制」(戦争法)で可能になった任務に関して「態勢構築や能力向上を着実に進めます」と明記しました。さらに、沖縄県民の民意を無視して「普天間飛行場の辺野古移設」を「着実に進める」としました。これに対して、野党は共通政策で▽膨張する防衛予算、防衛装備を憲法9条の理念に照らして精査し、他の政策の財源に振り向ける▽安保法制、共謀罪法など立憲主義に反する諸法律を廃止する▽沖縄県名護市辺野古における新基地建設を直ちに中止し、普天間基地の早期返還を実現し、撤去を進める―と打ち出しています。

<緊急事態条項について>
*2:https://www.huffingtonpost.jp/2018/05/03/kinkyu-jitai-joukou_a_23426043/ (Huffingtonpost  2018年5月3日) 憲法改正「緊急事態条項」は本当に必要なのか? 被災者を支援してきた弁護士が分析 有効性は? そして歯止めは?
 憲法改正が議論される中、改正理由のひとつとされているのが「緊急事態条項」だ。自民党が3月に示した案では、非常事態の際に政府に権限を集中させ、国民の権利を制限するという内容が盛り込まれている。権限の集中は、効果的な場面がある一方で、暴走のリスクもある。今回、取り沙汰されている緊急事態条項には、どれぐらいの必要性があるのか。そして、歯止めは十分なのか。岩手県宮古市で東日本大震災の被災者支援に携わった経験があり、災害時の法律問題にくわしい小口幸人弁護士に解説してもらった。2018年3月25日に開かれた自民党大会で示された、憲法改正「条文イメージ・たたき台素案」。このうち、緊急事態条項の部分である新73条の2と新64条の2について分析する。《第七十三条の二 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。② 内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない。》
第1 新73条の2
1 独立命令の制定権限を付与する案
 一見すると少しわかりにくいが、ザックリいうとこれは、内閣だけで法律をつくったり改正したりできるようにする案である。以下詳しく述べる。まず、学校で教わったように、国会が定めるのが「法律」、内閣が定めるのが「政令」である。現行憲法では、常に政令は法律の「下」にあり、法律の定める範囲内に限って定めることができる。内閣が、国会で定めた法律に反することを、政令で定めても無効だし、政令で法律を変えることはできない。新73条の2は、「大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるとき」に、内閣に、法律と同一の効力のある政令(俗に言う「独立命令」)を制定できるようにする案だ。このときに限り、内閣は政令で法律を変えたり、新たにつくったりすることができるようになる。2項で、「速やかに国会の承認を求めなければならない。」とすることで、歯止めを設けているつもりなのであろう。自民党は、2012年の憲法改正草案98条で、「法律と同一の効力を有する」政令制定権限を、内閣に認めていたが、新73条の2はその改訂版だ。歴史的には、戦前の大日本帝国憲法が定めていた緊急勅令の復活案と整理することができる。実際、緊急勅令の条文と新73条の2のつくりは似ている。なお、大日本帝国憲法8条2項は、議会が承認しなかった場合、緊急勅令の効力が将来に向かって失われると定められていた。しかし、新しい憲法73条の2、第2項には効力を失うとは書いていない。
2 歴史が語る独立命令の危険性
 法律は国会しか制定できない。国民が直接選んだ国会しか法律を制定できないという仕組みは、民主主義の根幹だ。内閣だけで、法律と同じ効力がある政令を制定できる独立命令は、この根幹を変えるものであり、三権を分立した意味を失わせかねない危険な枠組みである。濫用の恐れがあることは言うまでもない。戦前のドイツの憲法、ワイマール憲法は20歳以上の男女に普通選挙権を認めるなど、当時最も民主的だと言われた憲法であった。しかし、その48条には、「公共の安全、秩序に重大な障害が生じる恐れがあるときは、大統領は、公共の安全および秩序を回復させるために必要な措置をとることができる」という定めがあった。1933年2月27日に国会議事堂が放火されるという事件が起きるなり、当時第一党の党首であったヒトラーはヒンデンブルグ大統領に迫り、48条に基づき独立命令を制定させ、言論・報道・集会・結社の自由、通信の秘密を制限。さらに、令状によらない逮捕・拘束を行った。戦前の日本の憲法、大日本帝国憲法8条の緊急勅令も濫用されたことがある。1928年、帝国議会に出された治安維持法の改正案は、異論が噴出し、廃案となった。しかし、緊急勅令により法改正が強行された。1920年代、30年代、そして戦争の教訓を踏まえて制定されたのが日本国憲法だ。独立命令は、国家を運営する者にとっては実に便利なものだが、民主主義の根本原則に反し、濫用の危険を払拭できないとして、日本国憲法には定められなかった。つまり、大日本帝国憲法にあった緊急勅令も廃止された。こういった経緯を観れば、仮に必要性があったとしても、安易に、内閣だけで法律と同一の効力を有する政令(独立命令)を制定できる権限を与えてはならないことがわかる。法案の内容は慎重に検討されなければならない。濫用された過去を踏まえ、歯止めは十分にしなければならない。
3 歯止めは不十分
 しかし、この法案には、歯止めが不十分だ。問題点を挙げていこう。
(1) 対象に限定なし
 濫用された場合の弊害を小さくするためには、独立命令を制定できる対象をあらかじめ制限しておくことが考えられる。例えば、自然災害直後の避難者の避難に関する事項に限る等である。しかし、新73条の2は対象を一切限定していない。つまり、刑法や刑事訴訟法、公文書管理法、情報公開法、民法、土地収用法等はもちろん、公職選挙法、国会法、裁判所法、警察法、地方自治法等の改正もできる案になっている。濫用されたら令状なしの逮捕も、新たな罪を設けることも、都合の悪い文書の一切を破棄することも何でもできる。
(2) 手続きの制限なし
 濫用される場合を少しでも減らすため、手続きを厳格にしたり、段階を踏ませたり、期間を制限することも考えられる。例えば、2012年の自民党憲法改正草案も事前に「緊急事態宣言」という手続きを必要とした上で、100日という期間制限を設け、継続するには国会承認が必要という枠組みにしていた(無論、これでも不十分である)。しかし、新73条の2については、「法律で定めるところにより」としか書かれておらず、何の制限もかけていない。内閣はある日突然、独立命令を制定できてしまう。しかも、「法律で定めるところにより」の「法律」自体も独立命令で変えることができてしまう。
(3) 国会が承認しなくても効力は失われない
 先に述べたように、新73条の2第2項には、国会の承認が得られなかったときの効果が定められていない。大日本帝国憲法の8条2項でさえ、将来にわたって効力を失わせると定めてあったのに何もないのである。なお、現在の憲法54条3項には、緊急集会で参議院がとった臨時の措置について、「次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。」という定めが置かれており、その構造は新73条の2第2項とよく似ている。よく似ているのに、54条には効力を失うと明記されている一方、新73条の2には明記されていないとなったとき、この「違い」には意味があるとするのが、普通の法解釈だ。つまり、新73条の2については、国会が承認しなかったとしても、独立命令の効力は失われないということになる。そのため、仮に、独立命令のせいで何らかの被害を受けた国民が、事後に裁判を起こして補償等を求めたとしても、「当時は適法だった」となり、原則補償されないことになる。
(4) 自然災害に限られていない
 「災害」という文字をみると「自然災害」だけを思い浮かべてしまうが、法律ではそうではない。例えば、災害対策基本法2条1号は、「災害」の中に大規模な爆発を含んでいる。爆発の原因がテロや戦争でも「災害」に含まれる。改正案が、「自然災害」ではなく「災害」という文言を使っているのは、有事全般を対象にするためだと見るべきであろう。テロや戦争は、つねに「異常」事態だから、残る歯止めは「大規模」と、「国会による法律の制定を待ついとま」の有無だけになる。
(5) 内閣だけの判断で可能
 新73条の2は、内閣だけで独立命令を制定できる。国会や裁判所の承認等は不要である。「異常かつ大規模な災害」にあたるかどうか、「国会による法律の制定を待ついとま」があるかどうかは、内閣だけで判断されることになる。さて、内閣だけの判断に委ねて大丈夫だろうか。例えば、現在の安倍政権は、2017年6月22日に総議員の4分の1以上が要求した臨時国会の召集を実質的に無視した。憲法53条が、召集「しなければならない」と定めているにもかかわらずである。さらに同年8月10日、国会で北朝鮮のミサイル発射実験が、存立危機事態、すなわち「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」にあたるか否かが問われたが、安倍政権はこれを否定しなかった。「根底から覆される明白な危険」なんて、どう見てもないにも関わらずだ。こうした実情をふまえれば、内閣だけの判断で独立命令を制定できるのは余りにも危険だ。
(6) 国会も裁判所も歯止めになれない
 実は国会は、召集されているときしか力を発揮できない。そして、国会を召集する権限は内閣にある。つまり、国会が開かれていないときに、内閣が暴走しだしたら国会は歯止めになれない。もちろん、国会は内閣に召集を求める権限を持っているが、すでにこの権限は、2017年に安倍政権により無視されたことがある。では裁判所はどうか?残念ながら、我が国の裁判所は、具体的に誰かが被害を受けて訴え出ない限り判断してくれない。具体的な被害が訴えられたときでも、高度に政治的な問題については「統治行為」だからといって、判断を避けがちなのが我が国の裁判所だ。内閣に独立命令の制定権限を付与するなら、国会や裁判所が歯止めになれるよう、これらをパワーアップする改正を同時に検討すべきだが、自民党の案は内閣をパワーアップさせるだけなので、国会も裁判所も歯止めになれない。
4 新73条の2はあまりに酷い
 以上のように、新73条の2には権力濫用の歯止めがみあたらず、2012年の自民党憲法改正草案や、戦前の大日本帝国憲法8条と見比べても、酷いと言わざるを得ない。近代立憲主義は、権力の暴走を防ぎ基本的人権を遵守するための英知だ。しかし、新73条の2は、内閣は暴走しないという前提に立っており、憲法の何たるかを誤解している恐れすら感じさせる。なお、自然災害に絞ってみると、そもそも災害が起きた後、中央である内閣に権限を集中させて対処するという発想自体が間違っている。災害直後、国に各地の情報が集まるのはだいぶ後になってからである。国に権限を集め現場を「指示待ち」にさせてはならない。情報のある「現場」に権限と人を送るのが基本的な対処法であり、我が国の災害法制はそのようにできている(地方公共団体に権限を委譲する方向)。そもそも、災害が起きた後、泥縄式に慌てて法律をつくっても上手く機能しない。混乱するだけである。事前に対処法を決めておき、それが実践できるよう、平時から訓練を重ねておかない限り、災害直後は役に立たない。なお、政府が2015年3月30日にまとめた「政府の危機管理組織の在り方について(最終報告)」にも同様のことが書いてある。つまり、実は政府(官僚)は災害対策を結構ちゃんとやっていて(安倍総理ら政治家が、どの程度把握しているかは怪しい)、内閣に独立命令を制定できるようにする「必要」はないことを知っている。憲法を変えたがっている人が、災害をダシにている、そしてついに改正案までできあがったというのが現在の状況だ。
第2 新64条の2
 新64条の2は、俗に言う国会議員の任期を延長する条文である。その必要性については、これまで次のように説明されてきた。憲法は、参議院の緊急集会という制度を設けて、衆議院が解散され、衆議院議員がいない場合の対策はしている。しかし、衆議院議員が、任期満了によりいなくなった場合の対策が抜けている。仮に、大規模災害が起きて選挙の実施が困難になると、機能不全に陥りかねない。そこで、憲法を改正し、大災害などで選挙ができないときに、国会議員の任期を延長できるようにする必要がある、という説明である。しかし、この説明には大きな落とし穴がある。まず、衆議院議員の任期が満了になったのは戦後一回しかない。残りは全て解散総選挙である。そして、選挙が大規模災害で延期になったのも二回しかない。阪神淡路大震災のときと、東日本大震災のときだ。つまりこの議論は、戦後一回しかないできごとが、戦後二回しか起きていないような大災害のときに偶然重なるという、めったにない場合に備える議論でしかない。さらに、災害が起きて選挙ができないという問題があるなら、その対策は、選挙制度を改善して災害が起きても影響を受けにくいものにすることなのに、その検討は一切されていない。選挙が災害の影響を受けるのは、今の選挙が、決められた投票所に足を運ばないと投票できないという、限りなくアナログな方法になっているからだ。それこそ、スマホで、郵便局のATMで投票できるなら、災害による影響も最低限で済む。なお、日本弁護士連合会は、公職選挙法を改正して選挙制度を改めれば、首都直下地震や南海トラフ地震が起きても選挙は実施できると具体的に提言している。以下、自民党の改正案(新64条の2)を検討してみる。
1 期間の限定がない
 災害で選挙が実施できないのであれば、任期を延ばすのも一つの解決方法ではある。しかし、我が国は民主主義国家で、選挙は国民が直接意思を表示できる唯一の機会だから、延長は最小限度にしなければならない。政府の南海トラフや首都直下地震の被害想定に照らせば、延長期間としては1~2カ月程度だろう。しかし、新64条の2は、「任期の特例を定めることができる」とするだけで、特例の内容を限定していない。つまり、1年延ばすのはもちろん、3年、5年、10年延長するのも可能な案となっている。任期が伸びれば伸びるほど、国会や政府の正当性は失われていき、それが一定限度を超えたら、我が国は実質的に民主主義国家はなくなってしまう。国会議員の任期を延ばすというのは、実はそれぐらい危険なものであるにもかかわらず、改正案は、延ばせる限界を全く明記していない。
2 お手盛り
 国会議員の任期を国会で延期できる、まさにお手盛りである。よって、どんなに要件を厳しく定めても、運用が甘くされてしみあう恐れがある。自分のこととなると、甘くなってしまうのは人も国会も同じだ。3分の2というハードルも、小選挙区導入後、与党の議席が3分の2を超えることが頻繁になっている現状に照らせば高いとは言えない。国会の多数派が、自らの保身のため、いたずらに任期が延長される恐れも否定できない。
3 「適正な」という言葉の恐怖
 改正案は、「選挙の実施が困難」ではなく、「選挙の適正な実施が困難」としている。前者なら物理的、時間的な話だとわかるが、「適正な」という三文字が入るだけで濫用の恐れは飛躍的に高まる。いま選挙をしたら政権交代が起きてしまうと思った多数派が、何らかの理由で、任期を延ばす恐れはないだろうか。フェイクニュースが際限なく広がっており選挙の適正な実施が困難だ、ミサイルが飛んでくる恐れがあるという危機的な状況にあるから選挙の適正な実施は困難だ、リーマンショック再来の兆候がある今選挙の適正な実施は困難だなどなど、色々な濫用のケースがが頭をよぎる。はっきり言って、ここに「適正な」という文字を挿入するのは余りにもナンセンスだ。「濫用の恐れ」という発想、それ自体が欠落している恐れすら感じゾッとする。
4 対応できない場合が多すぎる
 憲法改正までするわりには、実は、新64条の2で対応できるケースは多くない気がする。まず、新64条の2は国会議員の任期を延ばすだけだから、解散の場合は対応できない。解散の場合はこれまでどおり、参議院の緊急集会で対応することになる。次に、新64条の2に基づいて国会議員の任期を延長するためには、国会の決議が必要だから国会開会中しかできない。召集には10日以上かかる。仮に国会開会中であったとしても、議員は毎週末地元に帰っている。大規模災害直後、交通網が遮断されている中、東京に集まるには時間がかかるだろう。さらに、起きた災害が首都直下地震だったらどうだろうか。その直後、余震や本震の発生が懸念されているときに、国会議員を国会議事堂に集めるのは果たして適切だろうか。
4 新64条の2よりは優れた方法
 以上のように、新64条の2は、濫用とお手盛りの危険がある上に、対応できるケースが実は多くない。そもそも、任期満了より圧倒的に多い「解散」の場合の対応を、今後も参議院の緊急集会で行うなら、任期満了のときも緊急集会で対応すればいい。それなら濫用の恐れもない。もし今の憲法ではできないというなら、改正して任期満了のときも緊急集会を開けるようにすればいい。なお、現在の憲法のままでも、つまり改正しなくても、衆議院の任期満了時に緊急集会を開催できるという有力な説がある。憲法制定当時の帝国議会の答弁と、解散と任期満了の問題状況(衆議院の欠缺)が同じであることから、類推適用できるという解釈だ。
第3 最後に
 自民党は、長い時間をかけて緊急事態条項の検討をしてきた。2012年の案にも明記されているし、特に2015年以降、党内の憲法改正推進本部で検討が重ねられてきたはずだ。それにもかかわらず、なぜ最終案がここまで酷いものになったのか。一連の経過を見てきた者としては、正直残念である。戦後直後の帝国議会、その憲法改正委員会では、大日本帝国憲法にあった緊急勅令(独立命令)が廃止された。独立命令は国家を運営する者にとって便利なものであることを率直に認めた上で、便利だが国民の意思を無視する制度であり、民主政治の根本原則に反するからという理由で廃止された。憲法改正を党是とする自民党が熟慮を重ねた結果できあがったのが、国会を不要としかねない新73条の2と、選挙の機会を失わせかねない新64条の2という、民主政治の根本原則に真っ向から反するものであった。このことを、国民は重く受け止め、改正への賛否を検討すべきであろう。

<年金問題について>
PS(2019年6月11、12日追加):*4-1のように、参院選前に年金問題が浮上し、「①国民が怒っているのは、公的年金の100年安心がウソだったこと(野党)」「②自分で2千万円貯めろとはどういうことか(野党)」「③100年安心と言っていたのに国家的詐欺(野党)」「④100年安心はウソではなく年金制度の持続可能性を担保できる(首相)」「⑤首相が100年安心とする根拠は、現役世代の平均的手取り収入の50%を割り込まない所得代替率とマクロ経済スライド(年金加入者の減少・平均寿命の延び・社会の経済状況を考慮して年金の給付金額を変動させる制度)」「⑥公的年金の水準は今後調整されていく(金融庁)」等の論戦が行われた。
 このうちの④⑤は、発生主義で年金資金を引き当てず、管理も徴収もいい加減だった厚労省(政府)管轄の社会保険庁の失政を給付抑制によって解決しようとするもので、そのやり方は、2016年に高齢者は現役平均所得の50%を割り込まなければ生活できるとする所得代替率の概念とマクロ経済スライドを導入し、インフレにして⑥のように年金を目減りさせて調整しようとするものであり、まさに③の詐欺なのである。
 また、①②は、これらの法改正があったにもかかわらず、高齢者の生活が100年安心だと思っていたこと自体が甘すぎ、さらに2000万円貯めれば十分であるとも限らない。そのため、私は、年金を大きな争点として参院選を戦うことに賛成で、その結果として、これまで既に年金保険料を支払ってきた国民に二重払いさせることなく、必要な年金支払額を発生主義で引き当てるようにしてもらいたい。そして、これは可能なことである(マニフェスト参照)。
 与党は、*4-2のように、参議院議員選挙を前に集中審議を拒否しているが、野党には追及のための追及ではなく、年金支払額へのマクロ経済スライド導入など高齢者を生活困窮者にする制度改革の是非を徹底的に追究してもらいたい。また、与党はそれなりに考えがあってやったことだろうから、参議院議員選挙の前に、その考え方と根拠を示してもらいたい。何故なら、その内容によって、政権を託すに足るか否かがわかるからである。

    
          2019.3.7東京新聞            2019.6.11東京新聞 

(図の説明:左図は、現時点の全国平均年金支給額と生活費支出額を比較したものだが、マクロ経済スライドによる給付水準の低下により将来の年金受取額は次第に減少する。また、支出額は、全国平均にしているので、参考にならない。それにしても、右図のように、次々と制度を変更し、国民が気づかないようにしながら年金受取額を減少《“調整”と表現している》させるマクロ経済スライドは、年金保険料を支払ってきた人に対する詐欺行為だ)

*4-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM6B51DLM6BUTFK012.html?ref=mor_mail_topix1 (朝日新聞2019年6月11日)年金は安倍政権の鬼門?「老後2千万円」野党争点化へ
 参院選を控えた与野党論戦の論点に、老後の資産形成における「2千万円不足」問題が急浮上した。安倍晋三首相ら全閣僚が顔をそろえた10日の参院決算委員会で、野党側はこの問題に照準を合わせて政権を追及。これと合わせ、消費税率引き上げや安倍首相が掲げる憲法改正、米国との貿易交渉などへの批判を強め、参院選の争点に位置づける構えだ。「国民が怒っているのは(公的年金が)『100年安心』がウソだったことだ。自分で2千万円をためろとはどういうことか」。10日の参院決算委。4月の同委の質疑以来、初めて全閣僚が出席した論戦の場で、立憲民主党の蓮舫副代表は強い口調で「2千万円不足」問題を取り上げた。3日公表された金融庁の報告書にある「公的年金の水準は今後調整されていくことが見込まれる」との記載について、蓮舫氏は「足らざる部分のためにもっと働け、と。公助から自助にいつ転換したのか」と質問を投げかけた。首相は「老後に月5万円、30年で2千万円の赤字であるかのような表現は、誤解や不安を広げる不適切な表現だった」と釈明。だがその後、簡潔な答弁を求める石井みどり委員長(自民)の注意をよそにたたみかけた。「100年安心はウソではない」。反論の材料にしたのは、首相が「100年安心」の根拠としている「所得代替率」だ。所得代替率とは、現役世代の平均的な手取り収入に対する年金支給額の割合を示す数値で「100年安心」で約束したのは50%。厚生労働省によると今は約6割で、当面は50%を割り込まない見通しだ。首相はこの点を踏まえ「(現行制度で)給付と負担のバランスは取れている」とし、野党の批判は当たらないという認識を示した。首相はさらに「マクロ経済スライド」という、平均余命の延びなどに応じて年金支給を調整する仕組みの説明を駆使して反論した。2019年度の支給額の見直しで4年ぶりにこの制度を適用し、賃金の伸び率(0・6%増)を下回る0・1%増に支給額を抑制しつつ、プラス改定ができた成果を強調。これにより年金制度の持続可能性を担保できたとして、「現在の受給者、将来世代の双方にプラスになる。公的年金の信頼性はより強固になった」と胸を張った。今回の「2千万円問題」の議論では、現役世代の負担で高齢者の生活を支える年金制度について、制度の持続可能性という「根幹」を守るのか、支給水準を重視するのかという認識のギャップも浮かぶ。少子高齢化で現役世代が受給世代を支える年金制度の仕組みが限界に近づきつつある、との指摘もある。金融庁の報告書も年金が老後の収入の柱であることは認めつつ、支給額の目減りは避けられないという文脈で作成された。同庁幹部は「あくまで平均的なモデルケース」として「2千万円」と明示したとするが、野党側は政権追及の好材料を得たとして批判を強める。この日、共産党の小池晃書記局長は「100年安心と言っていたのに、いつの間にか年金は当てにするな、と。国家的詐欺に等しい」と追及すると、首相は「100年安心は仕組みとして確保する。給付と負担のバランスを取る」と答弁し、給付よりも制度を維持することを重視する考えをにじませた。
●記録問題、受給開始時期繰り下げ…野党追及
 参院選に向けて弾みをつけたい野党は、今回の「2千万円問題」をきっかけに「年金」に戦線を拡大させる構えだ。第1次安倍政権の07年、年金記録のずさん管理が発覚。持ち主不明の年金記録は約5095万件にのぼり、この年金記録問題なども影響し、自民党はこの年の参院選で大敗し、安倍政権退陣につながった。年金は有権者の関心も高く、「安倍政権にとって鬼門」(野党中堅議員)とみるためだ。蓮舫氏はこの日、麻生太郎財務相兼金融相に金融庁の報告書を読んだかどうかをただし、麻生氏から「全体を読んでいるわけではない」との答弁を引き出し、「国民の間で怒りが蔓延(まんえん)している大問題なのに」と突き放した。さらに、いまなお2千万件弱の記録の持ち主が不明のままの年金記録問題も取り上げ、当時「最後の1人まで徹底的にチェックし、全て支払う」と発言した首相に「口約束だったじゃないか」と迫った。一方、国民民主党の大塚耕平氏が問題視したのは、日本年金機構が年金の受給開始(原則)65歳を前に送付する年金請求書だ。現行制度では、受給開始時期を繰り下げると年金額は増額され、70歳開始の場合は65歳開始と比べて年金額は42%増える。このため、請求書には「年金額を増額させますか?」などの設問があり、受給開始を繰り下げる場合は請求書の提出は不要だとしている。大塚氏は「70歳まで繰り下げる方に誘導しているのではないか」と指摘した。平均余命よりも前に死亡した場合、65歳からの受給開始に比べて受け取る年金額が少なくなりうるため、大塚氏は「年金請求書を『年金詐欺』と言う人たちがいる」と批判した。さらに大塚氏は、年金財政の「定期健診」と言われ、5年に1度のその健全性を確認する「財政検証」も取り上げ、「(物価上昇率など)非現実的な前提で出てきたら大論争になって、これまたかんかんがくがくの議論が続く」と牽制(けんせい)した。財政検証を巡っては、14年の発表が6月3日だったため、今回も6月初めとなる見通しだったが、厚労省幹部は「まだしばらくかかる」。野党は参院選で年金問題が争点化するのを避けるため、政権が意図的に遅らせようとしているとの疑念を深めており、「財政検証は参院選前に速やかに出すべきだ」(国民・玉木雄一郎代表)と問題視している。野党側は参院選に向け、10月に予定される消費増税や、首相が目指す改憲に反対姿勢を強め、米国との貿易交渉や、日ロ、日朝関係など安倍政権の外交姿勢なども争点化する構えだ。ただ、金融庁の報告書をきっかけに年金問題が急浮上。旧民主党政権も年金制度の抜本改革を掲げつつ実現できなかった経緯があり、野党にとっても無傷ではいられないテーマだが、国民民主党の玉木雄一郎代表は10日、「年金を大きな争点として参院選を戦わなければならない」と山形市内で記者団に強調した。こうした野党側の攻勢を受け、10日の自民党役員会では改選組の参院議員から「2千万円問題は参院選に影響がある」と懸念する声が出た。二階俊博幹事長はその後の記者会見で「(金融庁の)報告書は老後に備えて個人の置かれた状況に応じ有利な資産形成ができるようにという観点からの提言。年金制度の信頼性とは別のものではないか」と火消しに回った。
●主要野党が参院選で争点化を狙うテーマ
・老後「2000万円不足」問題・年金問題
・安倍政権の姿勢・体質
・日米貿易交渉問題
・10月の消費増税の是非
・アベノミクスの功罪
・日朝・日韓・日ロ外交
・自民党が掲げる9条改憲の是非

*4-2:https://adclick.g.doubleclick.net/aclk?sa=L&ai=Cg2afcH8AXfaGKMXzrQTxj4・・ (佐賀新聞 2019年6月12日)与党、集中審議の開催拒否、老後2千万円で攻防激化
 参院予算委員会は12日午前、理事懇談会を開いた。与党は、野党が求めていた安倍晋三首相出席の集中審議開催を拒否した。95歳まで生きるには夫婦で2千万円の蓄えが必要と試算した金融庁金融審議会の報告書に関し、野党は安倍政権を徹底追及する方針で、参院選を前に、与野党攻防が激化した。野党は、麻生太郎副総理兼金融担当相が報告書受け取り拒否を表明したことを報告書が「消された」と批判した。自民党の森山裕国対委員長は記者団に「政府は報告書を受け取っておらず、予算委にはなじまない」と、衆参の所管委員会での議論が望ましいと指摘した。

<皇位継承を男系男子に限るのなら、公約に書くべき>
PS(2019年6月13日追加):「皇位継承を男系男子に限る」とする人がおり、*5に書かれている5人だけではないが、それは女性を男性より一段低い存在とみる女性を馬鹿にした態度だ。そのため、そう主張する議員の名前(政党としてそう判断するのなら、その政党の公約に記載すべき)とその主張の根拠を、参院選前に明らかにしておいてもらいたい。

*5:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-935213.html (琉球新報 2019年6月12日) 自民有志、男系の皇位継承を 年内提言へグループ発足
 自民党の保守系有志議員が12日、父方に天皇を持つ男系の皇位継承を求める議員グループ「日本の尊厳と国益を護る会」を発足させた。旧宮家(旧皇族)の皇籍復帰を検討する。女性天皇、父方に天皇がいない女系天皇のいずれにも慎重な立場を取る。年内に提言をまとめ、安定的な皇位継承策に関する政府の議論に反映させたい考えだ。グループは他に、中国など外国資本による土地取得を制限する立法を目指し、外国スパイの活動を阻むための法整備も働き掛ける。発起人は鬼木誠、高木啓、長尾敬の3衆院議員と青山繁晴、山田宏両参院議員の計5人。

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2019.6.5 北方領土の話 ← 日本の外交とそれに対する国内からの妨害も含めて (2019年6月6、9日追加)
 
 北方領土の地図  知床のシャチの大集合         羅臼のシャチ  

(図の説明:一番左が北方領土と呼ばれる地域の地図で、国後島も日本の湾の中に入っているため、せめて国後島までは変換してもらいたいものだ。しかし、この地域では漁業もできなかったため、餌が豊富らしく、知床(左から2番目)や羅臼(1番右と右から2番目)にはシャチの大集合する場所があり、世界自然遺産の名に値する地域となっている)




  優勝チーム   2019.6.9福島民報   JR九州のチーム  サハリンからのチーム
           会津チーム
(図の説明:上の段と下の段の左は、札幌市で開催されたYOSAKOIソーラン祭りで元気に踊る地元チーム。下の段の右3つは、会津・九州・サハリンから参加して、趣向を凝らした面白い演舞を披露しているチーム)

(1)北方領土に関するロシアの認識
 私自身は、北海道出身の友人の話や2005~2009年の間の衆議院議員として現地訪問した経験から、「歯舞、色丹、国後、択捉の北方4島は、歴史的に一度も外国の領土になったことのない日本固有の領土であるため、返還してもらいたい」と思うが、ロシア外務省は、*1-1のように、「日本政府は南クリルの『帰属変更』について住民の理解を得る必要がある」と発言し、上月駐ロシア大使を呼び出して注意を喚起したそうだ。

 また、日本の内閣府HPは、「ソ連が北方領土領有を主張する最も有力な根拠とする太平洋戦争終盤に行われたヤルタ協定は、米英ソ三国間の秘密協定であるため日本が拘束される理由はなく、同協定が領土移転の法的効果を持つものではないことは当事国である米国政府も公式に明らかにしている」としている(https://www8.cao.go.jp/hoppo/mondai/01.html参照)。

 そして、安倍首相とロシアのプーチン大統領は、2018年11月の首脳会談で、歯舞、色丹の2島の日本への引き渡しを明記した日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速することで合意したそうだが、「ロシア側からは、戦争でとった領土なので、返してもらいたければ戦争をするか」という発言が出たこともあるわけだ。

(2)丸山衆議院議員の戦争発言について
 このような中、*1-2のように、北方四島ビザなし交流の訪問団の一員として国後島を訪問していた丸山衆議院議員(元日本維新の会)は、元島民の男性に対し、「戦争をしないと取り返せない」「ロシアと戦争して取り返すのに賛成か反対か」などと発言して問題になった。

 これに関し、*1-4のように、衆院議院運営委員会の与野党筆頭理事は、2019年6月4日、戦争で北方領土を取り返すことの是非に言及した丸山議員(元日本維新の会)に弁明書の提出を求め、その書面で丸山議員が「人民裁判」と反論し、議員辞職に否定的な考えを示したため、直ちに進退判断を迫る「糾弾決議案」を共同提出する方針で一致したそうだ。しかし、国会議員は国民の代表であるため国会による議員辞職勧告は無理筋であり、「多数派の意見と異なるから辞職せよ」というのも危険な発想だ。

 その丸山議員は、女性に対する破廉恥な発言もあったようだが、これを言いだすと丸山議員だけではないという話になるため、戦争発言に論点を絞ると、*1-3のように、「①戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」「②ロシアが混乱しているときに取り返すのはOKですか」「③戦争しないとどうしようもなくないですか」と言っているのがポイントのようだ。

 このうち、①は、ロシアに真っ向から対立すればそうなるが、それは日本人を含む誰も幸福にしない。②は、25年前のソ連邦崩壊直後で日本が豊かだった1990年代なら千載一遇のチャンスで、「技術支援や資金援助と引き換えに4島とも返還してもらう」という話もあり得たが、それから25年後の現在では遅い(https://blogos.com/article/179399/ 参照)。

 また、③だからこそ、もっと賢い方法を考えるべきだったのだが、現在はロシアが長期間実効支配した後で、日本は現状維持と称する長期間の不作為の後であるため、時間が経つほどに旧住民は減り、権利放棄に近づいてしまったわけである。

 私は、戦争するかしないかは決して議論してはいけない話題ではないが、戦争をすれば不幸な人が増え、日本国憲法違反であり、日本政府の長期間の外交不作為の後始末の方法を元島民に問いかけるのは酷だと考える。そういう意味で、丸山議員は思慮が浅かったと思う。

(3)北方領土問題の経緯
 安倍首相は、*2-1のように、北方領土問題に関して北方4島のうち色丹島と歯舞群島の引き渡しをロシアとの間で確約できれば、日ロ平和条約を締結する方向で検討に入ったそうだ。「2島決着」に傾いた背景には、4島をロシア領と位置付けるプーチン氏に択捉、国後の返還を求め続けた場合、交渉が暗礁に乗り上げ、1956年の日ソ共同宣言に明記された色丹と歯舞の引き渡しも遠のきかねないとの判断があるそうだ。

 ロシアのプーチン大統領は、もともとは親日派だったが、*2-2のように、「パラダイス文書」でプーチン大統領に近いガス会社がどうとか、娘婿がどうとかをさんざん言われた上、ウクライナ等の事件がある度に、日本はロシアの敵側についてきた。従って、反日になっても全くおかしくなく、全体として日本の政策は思慮も計画性もなかったと言わざるを得ないのである。

 そのため、北方領土問題に関する交渉の不調を、丸山議員の言動のせいのように書いたメディアもあったが、それは全くの責任転嫁である。

・・参考資料・・
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM1B1QSXM1BUHBI002.html (朝日新聞 2019年1月10日) ロシアが日本に注意喚起 北方領土「帰属の変更発言」
 ロシア外務省は9日、「日本政府が南クリル(北方領土のロシア側呼称)の『帰属の変更』について『住民の理解を得る必要性がある』などと発言した」として、モルグロフ外務次官が同日、上月豊久駐ロシア大使を呼び出し、注意を喚起したと発表した。
●プーチン大統領「対話の継続を期待」 安倍首相に書簡
 安倍晋三首相が4日の年頭記者会見で「北方領土には多数のロシア人が住んでいる。日本に帰属が変わることについて納得していただくことも必要だ」と述べており、これを批判したとみられる。同省は「1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速するとした日ロ首脳の合意の本質をゆがめ、交渉の内容について両国の世論をミスリードするものだ」などとした。また、同省は日本側が「(ロシアによる)『戦後占領』について、ロシアから日本や日本の元住民への賠償を求めない案」についても言及したとも批判している。ロシア・メディアは8日、「平和条約交渉で日本政府が、北方四島の元島民らの財産権侵害に関するものなど、賠償請求権を互いに放棄するよう提起する方針を固めた」とする日本側の一部報道を伝えていた。安倍首相とロシアのプーチン大統領は11月の首脳会談で、歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)の2島の日本への引き渡しを明記した日ソ共同宣言を基礎に、平和条約交渉を加速することで合意した。

*1-2:https://mainichi.jp/articles/20190513/k00/00m/010/160000c?fm=mnm (毎日新聞 2019年5月13日)北方領土「戦争しないと…」維新・丸山議員 国後元島民へ発言
 北方四島ビザなし交流の訪問団の一員として国後島を訪問した日本維新の会の丸山穂高衆院議員(35)=大阪19区=が11日夜、滞在先の国後島古釜布(ふるかまっぷ)で元島民の男性に対し、北方領土問題について「戦争をしないとどうしようもなくないか」「(戦争をしないと)取り返せない」などと発言し、トラブルになった。同行記者団によると、丸山氏は11日午後8時ごろ、訪問団員との懇談中、元国後島民で訪問団長の大塚小弥太(こやた)さん(89)に「ロシアと戦争で(北方領土を)取り返すのは賛成か反対か」と語りかけた。大塚団長が「戦争なんて言葉を使いたくない」と言ったところ、丸山氏は「でも取り返せない」と反論。続いて「戦争をしないとどうしようもなくないですか」などと発言した。丸山氏はロシア人島民宅で飲酒した後で、訪問団員らの制止を聞かずに大声で騒いだり外出しようとしたりしたという。このため複数の団員が「日露友好の場にそぐわない」として丸山氏に抗議。丸山氏は12日、滞在先の古釜布で全団員の前で「ご迷惑をかけたことをおわび申し上げます」と謝罪した。一方、13日に北海道・根室港に戻った後の記者会見では「(マスコミに)発言を切り取られており心外。団員の中では領土問題についてタブーが無く話せると聞いており、団長にも考えを聞いた」などと述べた。発言を受け、日本維新の会の松井一郎大阪市長は同日、大阪市内で記者団に「(丸山氏を)厳重注意した」と語った。丸山氏は当選3回。衆院沖縄北方問題特別委員会の委員を務めている。

*1-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM5F7G81M5FIIPE02T.html?iref=pc_extlink (朝日新聞 2019年5月13日)「戦争で取り返すの賛成か反対か」丸山議員の音声データ
 「戦争で島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」――。北方四島ビザなし交流の訪問団の一員として同行した日本維新の会の丸山穂高衆院議員(大阪19区)が訪問団長に質問を繰り返した。同行記者団の音声データに基づく、丸山議員と元島民とのやりとりは次の通り。
●維新・丸山氏「戦争しないと」 国後島で訪問団長に詰問
 丸山氏「今日行ったお墓は、本当に骨が埋まっていないんですよね」
 元島民「と私は思っているんです。もしあれでしたら千島連盟(千島歯舞諸島
     居住者連盟)の担当者に確認します」「骨があるかないかは、それは
     掘り返したわけじゃないから分かりません。(国後島の)古釜布に住ん
     でいた人たちは、おれたちの墓はここじゃないと言っているわけですよ。
     違うところだと言っているわけですよ」
 丸山氏「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」
 元島民「戦争で?」
 丸山氏「ロシアが混乱しているときに、取り返すのはオーケーですか」
 元島民「戦争なんて言葉は使いたくないです。使いたくない」
 丸山氏「でも取り返せないですよね」
 元島民「いや、戦争するべきではない」
 丸山氏「戦争しないとどうしようもなくないですか」
 元島民「戦争は必要ないです」
 【中略】
 丸山氏「何をどうしたいんですか」
 元島民「何をですか」
 丸山氏「どうすれば」
 元島民「どうすれば、って何をですか」
 丸山氏「この島を」
 元島民「率直に言うと、返してもらったら一番いい」
 丸山氏「戦争なく」
 元島民「戦争なく。戦争はすべきではない、これは個人的な意見です」
 丸山氏「なるほどね」
 元島民「早く平和条約を結んで解決してほしいです」

*1-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/382907 (佐賀新聞 2019年6月4日) 丸山氏、異例の糾弾決議案可決へ、6日にも、与野党が共同提出合意
 衆院議院運営委員会の与野党筆頭理事は4日、国会内で会談し、戦争で北方領土を取り返すことの是非に言及した丸山穂高衆院議員=日本維新の会を除名=について、直ちに進退判断を迫る「糾弾決議案」を共同提出する方針で一致した。6日にも衆院本会議で可決される見通しだ。丸山氏は3日に提出した弁明文書で「人民裁判」と反論。議員辞職にも否定的な考えを改めて示した。丸山氏に関して、与党が提出したけん責決議案と野党の議員辞職勧告決議案は取り下げる。衆参両院事務局によると、国会議員への糾弾決議案提出は例がないという。

<北方領土問題の経緯>
*2-1:http://qbiz.jp/article/147433/1/ (西日本新聞 2019年1月21日) 安倍氏、2島決着案を検討 北方4島返還「非現実的」
 安倍晋三首相は北方領土問題に関し、北方四島のうち色丹島と歯舞群島の引き渡しをロシアとの間で確約できれば、日ロ平和条約を締結する方向で検討に入った。複数の政府筋が20日、明らかにした。2島引き渡しを事実上の決着と位置付ける案だ。4島の総面積の93%を占める択捉島と国後島の返還または引き渡しについて、安倍政権幹部は「現実的とは言えない」と述べた。首相はモスクワで22日、ロシアのプーチン大統領との首脳会談に臨む。「2島決着」に傾いた背景には、4島をロシア領と位置付けるプーチン氏に択捉、国後の返還を求め続けた場合、交渉が暗礁に乗り上げ、1956年の日ソ共同宣言に明記された色丹と歯舞の引き渡しも遠のきかねないとの判断がある。だが2島決着に実際に踏み切れば、日本固有の領土である択捉と国後を放棄したとの批判を招く可能性がある。首相は世論の動向を見極めながら、最終決断を下す構えだ。交渉経過については、公表を避ける意向。先に色丹と歯舞、後に択捉と国後の返還を目指すとした「2島先行返還」の実現可能性についても、首相は悲観的な見方を強めている。首相に近い政府高官は「プーチン氏は同意しない。あり得ない」と強調した。2島先行返還は、首相が当初思い描いていたとされる解決方式。共同宣言にある色丹と歯舞の引き渡しを巡っては、妥協の余地がないと結論づけた。日ロ関係筋によると、首相は昨年11月のシンガポールでの日ロ首脳会談で、宣言に言及し「日本としてこのラインは譲れない」とプーチン氏に伝えていた。同氏は理解を示したとされる。ただプーチン氏は、宣言にある色丹と歯舞の引き渡しに関し、必ずしも主権譲渡を意味しないとの認識を示している。主権引き渡しを求める日本との隔たりは大きい。首相が22日の会談で、難交渉を強いられる展開も予想される。北方領土交渉を巡り日ロ首脳は2016年12月の会談で、北方領土での共同経済活動に向けた協議開始で合意。だが協議は進展せず、昨年11月の会談で、双方は共同宣言を基礎に平和条約締結交渉を加速する方針を新たに確認した。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/ASKBV7JKHKBVUHBI03S.html (朝日新聞 2017年11月6日) 米閣僚、ロシア企業から利益 「パラダイス文書」を入手
 米トランプ政権のウィルバー・ロス商務長官が、タックスヘイブン(租税回避地)にある複数の法人を介して、ロシアのプーチン大統領に近いガス会社との取引で利益を得ていたことが、朝日新聞が提携する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の調べでわかった。ガス会社の主要株主には、プーチン氏の娘婿や、米国の制裁対象である実業家らが含まれている。商務長官は外国への制裁判断にも影響力を持ち、複数の専門家が「深刻な利益相反の恐れがある」と指摘している。英領バミューダ諸島などに拠点がある法律事務所「アップルビー」などから流出した膨大な電子ファイル「パラダイス文書」を元に、ICIJがロス氏の資産報告など複数の公文書と合わせて取材した。「ロシア疑惑」に揺れるトランプ政権にとって、新たな火種となることは必至だ。ロス氏は大富豪として知られる投資家だ。2月の商務長官就任時に、米国の法律に従い、保有資産を公開。職務と利益相反になりうるとして大半の資産を手放すことを宣誓し、米上院から承認された。しかし今回の取材で、タックスヘイブンである英領ケイマン諸島で、長官就任後も株を保有する複数の法人を通じて、海運会社「ナビゲーター」(ナビ社)と利害関係を保っていたことがわかった。ナビ社はロシアのガス石油化学会社「シバー」にガス輸送船を貸し出している。両社の取引が拡大すれば、ロス氏も利益を得る構図だった。シバー社はロシアの元国営企業で、プーチン氏の娘婿が取締役を務めるなど、同国政府と密接な関係にある。大株主の実業家も米国の制裁対象で、米国企業は取引が禁じられている。ICIJに対し、米商務省の報道官は「ロス長官は、ロシアなどへの米国の制裁政策を広く支えてきた。高い倫理基準を守っている」などと書面で回答した。(野上英文、高野遼、サーシャ・シャフキン(ICIJ)、マーサ・ハミルトン(ICIJ))

<漁獲量について>
PS(2019/6/6追加):近年、世界でイカなどの水産物漁獲量が増え、それに伴って資源量が減っている。そこで、*3-1のように、スルメイカの資源量も減っているわけだが、日本は世界第6位の排他的経済水域を保有しているため、本来なら有利な筈である。なお、日本人1人あたりの生鮮魚介類購入量は減っているが、*3-2のように、外食・中食による消費は増えており輸出を増やすこともできるので、不漁が続くようなら資源管理だけでなく放流や養殖も考えられる。


              冬生まれ群の     日本人1人あたり      日本の
 世界のイカ漁獲量    スルメイカ資源量   年間生鮮魚介類購入量  排他的経済水域

*3-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/312445 (北海道新聞 2019/6/6) スルメイカ豊漁期待、函館から中型船出港
 日本海のスルメイカ漁の主力を担う中型船(30トン以上200トン未満)3隻が5日、函館港を出港した。石川県沖の好漁場「大和堆」を目指し、イカの回遊に合わせて北上しながら操業する。港では、家族ら約350人が見守る中、漁船が汽笛を鳴らしながら順次出港した。幸雄丸(184トン、乗組員8人)の島森憲一船長(71)は「不漁が続いているが、イカをたくさん函館に水揚げしたい」と意気込んだ。乗組員の父の見送りに来た北斗市の木村絵未さん(31)は「事故なく帰ってきてほしい」と漁船に向かって大きく手を振っていた。

*3-2:https://www.agrinews.co.jp/p47833.html (日本農業新聞 2019年6月4日) 6次化販売額2・1兆円 小規模事業の底上げ課題 農水省17年度調べ
 農業関連の6次産業化の年間総販売金額(2017年度)が2兆1044億円に上り、2年連続で2兆円を超えたことが農水省のまとめで分かった。関連の雇用者数は28万人に上り、前年度から10%増えるなどの成果も出ている。一方、1事業体当たりの年間販売額は1000万円未満が76%を占め、全体の底上げには結び付いていない。一層の積み増しができるかどうかが課題となっている。農業の6次産業関連の年間総販売金額の内訳を見ると、最も大きいのは、農産物直売所の1兆790億円。前年度から4・5%増えた。次いで農産物加工が9413億円で3%増だった。観光農園は402億円、農家レストランは383億円、農家民宿は57億円で推移。直売所と加工が6次産業化の柱となっている構図が続いている。販売額増加の背景として、同省は「地域ではブランド化などの取り組みが進んでいる。さらに行政による補助事業や相談などの支援も後押しになった」(産業連携課)とみる。6次産業化の進展に伴い、雇用も増えている。農業の6次産業化関連の雇用者数は、28万3400人に上り、前年度比10%増となった。常時雇用、 臨時雇用ともに女性が7割を占めており、6次産業化の拡大に女性が貢献している。農業関連の1事業体当たりの年間販売額は、3392万円に上る。だが販売規模で分けると、100万円未満が最も多く31・8%。100万円以上500万円未満が30・5%と続き、500万円以上1000万円未満は13・5%となっている。半面、年間販売金額が1000万円以上となっている事業体は全体の24・2%と、一部に限られる。小規模事業者を含め、各地の取り組みをいかに伸ばしていくかが問われている。

<日本で夢の新技術が停滞する理由>
PS(2019年6月9日):*4-1のように、「①EVはゼロ・エミッション車と呼ばれるが、発電時に火力発電所等でCO2が出る分を勘案して、ガソリン1リットルで45キロメートル走るエンジン車と同じ環境負荷が発生すると考えて新規制を作った」「②米カリフォルニア州や中国が採用しているEVなどの販売目標台数をメーカーごとに設定するZEV規制は導入しない」「③欧州などの環境先進地でも未導入のこの手法を日本が取り入れたのは一定の意義がある」「④最終の燃費目標を達成するためにどんなエコカーに力を入れるかは各メーカーの選択に委ねる『技術中立的』な規制体系」とのことである。しかし、①は、すべてのEVは火力発電所の電力を利用して走るという架空の仮定に基づいており、再生可能エネルギーの普及も阻んでいる。そのため、③のように、日本以外ではこいう馬鹿な規制を導入しないのである。さらに、この規制は、燃費のみに焦点が当てられており、環境汚染防止の理念はないが、それなら需要者の選択に任せれば経済合理性に基づいて選択するので、政府の介入はいらないのである。そして、②④は、日本政府が、どういう自動車を推進して環境を守るかという理念に欠けていることを示している。
 このように、政策の誤りで企業資金を無駄遣いさせている間に、世界一だったEV技術はどんどん遅れ、再生可能エネルギー技術も遅れた。そして、石油大国のアメリカでさえ、*4-2のように、米ウォルマートと独フォルクスワーゲン(VW)の米子会社エレクトリファイ・アメリカが、米国内のウォルマート120店への電気自動車(V)の急速充電スタンド設置を完了し、今後も順次設置店舗を増やして将来的には全米展開も視野に入れているのだから、充電器の標準規格も日本から離れるだろう。このような日本政府の理念なき政策誘導が、日本の新技術を停滞させてきたのである。
 なお、*4-3に、IMFのラガルド専務理事が、「①世界経済は下振れリスクが存在しており、貿易摩擦が重大なリスクになっている」「②関税がどうなるか不確実だと貿易は利益や繁栄につながらないと指摘した」と書かれており、日本は「まあまあ、緊張緩和しさえすればよいだろう」というように纏めることが多い。しかし、米国が主張している知的財産権の保護や進出企業の技術移転の強制廃止などは、公正な市場を形成するためにどの国にとっても必要な要件であるため、緊張緩和して自由貿易しさえすればよいわけではないのである。

  
    北陸電力より
(図の説明:左図のように、世界の太陽光発電設備は、2006年の6GWから2016年の303GWへと10年で約50倍になり、中央の図のように、世界では最も安価な電力となった。また、まだ発電量の中には入っていないが、右図のような有機薄膜型太陽電池もでき、設置できる場所が著しく広がっている)

*4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190609&ng=DGKKZO45875160Y9A600C1EA1000 (日経新聞 2019年6月9日) 新燃費規制テコに車の革新を
 経済産業省と国土交通省が2030年度までに新車の燃費を16年度の実績値より32%改善することを自動車メーカーに義務付ける新たな燃費基準を定めた。ガソリン1リットル当たりの走行距離を全車種平均で25.4キロメートルに引き上げるというかなり高めのハードルだが、日本車各社は強みとする環境技術に一段と磨きをかけてほしい。地球温暖化問題への貢献と競争力強化の両立こそ、日本車が21世紀も繁栄を持続する道だ。今回の新たな規制には、諸外国に比べて大きな特長が2つある。1つは電気自動車(EV)のような電池で動き、ガソリンを消費しないクルマについても、燃費の考え方を導入したことだ。例えば日産自動車のEV「リーフ」の燃費は45キロメートル程度になるという。EVは走行時にCO2を出さず、ゼロ・エミッション車(ZEV)と呼ばれるが、実際は動力源の電力をつくる際に火力発電所などでCO2が出る。その分を勘案すると、ガソリン1リットルで45キロメートル走るエンジン車と同じ環境負荷が発生する、という考え方だ。環境性能を走行時だけでなく、発電所などの源流に遡って評価する手法を「ウェル・ツー・ホイール(油井から車輪へ)」と呼ぶ。欧州など環境先進地でも未導入のこの手法を日本が先駆けて取り入れたのは一定の意義があり、EVなどの環境性能のさらなる向上を促す効果を期待したい。もう1つは米カリフォルニア州や中国が採用しているEVなどの販売目標台数をメーカーごとに設定するZEV規制を導入しなかったことだ。特定の技術や車種に政府が肩入れするのではなく、最終の燃費目標を達成するためにどんなエコカーに力を入れるかは各メーカーの選択に委ねる「技術中立的」な規制体系といえる。最近は欧州や中国でも、日本が生みの親であるハイブリッド技術を再評価する機運が高まっている。日本メーカーは新燃費規制をテコに環境技術の革新を加速し、世界をリードしてほしい。

*4-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45808630X00C19A6000000/ (日経新聞 2019年6月7日) ウォルマート、EV充電器120店に設置完了 全米展開も
 米ウォルマートと独フォルクスワーゲン(VW)の米子会社エレクトリファイ・アメリカは6日、米国内のウォルマート120店への電気自動車(EV)の急速充電スタンド設置が完了したと発表した。今後も順次設置店舗を増やしていく方針で、将来的には全米展開も視野に入れる。両社は2018年7月、初のEV用充電スタンドをアーカンソー州に置いた。その後約1年で34州にある店舗を対象に、1店あたり平均4~6台の充電スタンドを追加した。出力は150~350キロワットで「車種にもよるが平均20~30分程度」(エレクトリファイの担当者)での急速充電が可能という。ウォルマートでエネルギー部門を担当するマーク・バンダーハイム副社長は「消費者に、環境に配慮した持続可能な選択肢を与えることができる」と説明。「今後はさらに2~3倍の規模までスタンド設置を広げたい」と意気込みを述べた。ウォルマートは全米に約5千の店舗を持ち、その多くが移動に車を必要とする地方にある。利用者が充電を待つ時間に店舗に立ち寄ってもらう狙いもある。現在、EV充電スタンドは需要のある東海岸と西海岸に集中している。エレクトリファイは今後10年で20億ドルを投資し、米南部でも徐々にスタンド設置を広げたい考えだ。同社のブレンダン・ジョーンズ最高執行責任者(COO)は「ウォルマートと共同でゼロエミッション車の普及に貢献したい」と述べた。VWは排ガス不正問題を受けてカリフォルニア州当局との合意に基づきエレクトリファイを設立した。

*4-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45874530Y9A600C1EA2000/ (日経新聞 2019/6/8) 世界経済「貿易摩擦のリスク重い」 IMF専務理事
 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に出席するため福岡市を訪れている国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は8日、日本経済新聞などのインタビューに答え、世界経済について「下振れリスクが存在しており、明らかに貿易摩擦が重大なリスクになっている」と指摘した。米中対立を念頭に、緊張緩和に向けた協議の進展に期待を示した。ラガルド氏は日経新聞、テレビ東京、日経BPとの共同インタビューで、2019年後半にかけて世界経済が持ち直すというこれまでの見通しを改めて示した。そのうえで「(貿易摩擦の)当事者は緊張を取り除き、合意するために交渉すると決めている」と語った。トランプ米大統領が7日、メキシコ製品に対する5%の関税発動の見送りを表明したことに関しては「関税がどうなるか不確実だと貿易は利益や繁栄につながらない」と指摘し、歓迎した。「明白なことだが、我々は常に貿易が経済成長のエンジンであるという理念を支持してきた」と改めて強調した。

| 外交・防衛::2014.9~ | 05:42 PM | comments (x) | trackback (x) |

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