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2013,12,12, Thursday
*1で日弁連会長が声明を出しているとおり、2013年12月6日に参議院を通過した特定秘密保護法は、民主主義の根幹である「知る権利」を侵害する。また、重罰化や適性評価におけるプライバシーの侵害、*5に書かれている有効なチェック機関の不存在など、成立後も様々な問題をかかえている。そのため、*3の多くの団体や研究者、映画界などから廃案を求める意見が出されているとともに、*4のように、長野県では県内の19市長のうち12市長が「運用に不安」としているのである。 さらに、外国では、*2のように、世界の作家500人が、国連に、国家による監視の制限を要求し、「民主主義の基礎となる柱は、人格を不可侵のものとする個人の尊厳である。すべての人は、見張られず、妨害されない権利がある。しかし、大衆監視を目的とした国家と企業による技術開発の乱用により、この基本的人権が全く無視されている」と述べているのは、そのとおりだと思う。 また、*2の「監視下に置かれた個人は自由ではなく、監視下に置かれた社会は民主主義ではない。民主的権利の有効性を保つには、実世界と同様に仮想空間でもそれが認められなければならない」というのもそのとおりであるため、これが、現在の世界の常識であることを再確認して実現すべきだと考える。 *1:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2013/131206_3.html (2013年12月6日 日本弁護士連合会会長 山岸 憲司) 特定秘密保護法の採決強行に抗議する会長声明 本日、参議院本会議において特定秘密保護法案の採決が強行され、特定秘密保護法が成立した。同法は、国民の知る権利を侵害し、国民主権を形骸化するものである。衆議院における4党修正案によっても、官僚が恣意的に特定秘密を指定する危険性を除去する実効的な方策は規定されておらず、その危険性は何ら変わっていない。そのため、同法案に対しては、報道、研究、映画界等様々な分野から廃案を求める意見が出されてきたところである。 ところが、国会で審議が開始されてからも、衆議院においては、政府側からの答弁に不一致や変遷が起きるなどして審議が混乱し、みんなの党及び日本維新の会からの修正案を取り入れた4党修正案についてもわずか数時間の審議で採決がなされてしまった。参議院では、衆議院で検討が不足していた論点について、十分な検討がなされるべきであったが、参考人や公述人の多くが反対意見や問題点を指摘する意見を述べたにもかかわらず、これらの意見についても十分に検討がなされないまま、短時間の審議で採決が強行された。これは、およそ重要法案の審議とはいえず、国会の存在意義を自ら否定するに等しい。 よって、同法案の採決を強行したことは、内容面・手続面いずれにおいても国民主権・民主主義の理念を踏みにじるものであり、到底容認されるものではない。この点について強く抗議する。当連合会では、民主主義社会の根幹である国民の知る権利や報道の自由の侵害、重罰化、適性評価によるプライバシー侵害のおそれをはじめとした様々な問題点が残されている同法について、引き続きこれらの問題点の克服のための活動を行っていく所存である。あわせて、国民主権確立のために不可欠な情報公開制度・公文書管理制度の改正、特定秘密保護法の有無にかかわりなく整備されるべき秘密指定の適正化のための制度策定に向け全力を尽くし続けることを誓うものである。 *2:http://www.afpbb.com/articles/-/3004911 (AFPBBニュース 2013年12月12日) 国家による監視の制限、世界の作家500人が国連に要求 500人を超える世界の著名作家が10日、国家による大衆監視は基本的自由を侵害する行為だとして、国際法の制定を求める署名を国連(UN)に提出した。南アフリカのJ・M・クッツェー(J.M. Coetzee)氏やドイツの ギュンター・グラス(Gunter Grass)氏などノーベル文学賞受賞者も名を連ねている。米政府による監視活動については今年6月、米国家安全保障局(National Security Agency、NSA)に勤務していたエドワード・スノーデン(Edward Snowden)容疑者によって暴露された。「大衆監視に反対する作家たち(Writers Against Mass Surveillance)」と銘打った署名は、国家による広範囲なインターネット通信傍受を民主主義の侵害と位置づけ、そうした監視を制限する「デジタル著作権」を定める国際法の新設を求めている。世界80か国以上、562人の作家が署名し、英ガーディアン(Guardian)紙など各国の新聞約30紙に掲載された。 作家たちは署名と共に声明を発表し、大衆監視がすべての市民を容疑者と疑って扱うものだと批判した。「大衆監視の規模は、この数か月で誰もが知るものとなった。マウスを数回クリックするだけで、国家は個人の携帯端末や電子メール、ソーシャルネットワーク、インターネット検索などにアクセスできる。インターネット企業との連携の下、個人の政治的な傾向や活動を追跡することができ、個人のデータを収集・保管している」。「民主主義の基礎となる柱は、人格を不可侵のものとする個人の尊厳である。すべての人には、見張られず、妨害されない権利がある。しかし大衆監視を目的とした国家と企業による技術開発の乱用により、この基本的人権がまったく無効とされている」。「監視下に置かれた個人はもはや自由ではなく、監視下に置かれた社会は民主主義ではない。民主的権利の有効性を保つには、実世界と同様に仮想空間でもそれが認められなければならない」。 作家たちはまた、自分のデータがどのように収集され、保管されるかを自分で決め、そのデータがどのように使用されているのかを知り、不正な利用があれば削除を要求できる権利を求めた。「すべての国家と企業に、これらの権利を尊重するよう要求する。国連には、デジタル時代における市民的権利の保護が最重要課題であるとの認識、そしてデジタル著作権に関する国際法の制定を求める。また各国政府にはその協定に調印し、従うよう求める」。 ■署名した主な作家 ノーベル文学賞受賞者ではクッツェー氏とグラス氏に加え、オーストリアのエルフリーデ・イェリネク(Elfriede Jelinek)氏、スウェーデンの詩人トーマス・トランストロンメル(Tomas Transtroemer)氏、トルコのオルハン・パムク(Orhan Pamuk)氏の計5人が署名している。 ブッカー賞受賞者ではマーガレット・アトウッド(Margaret Atwood)氏、ジュリアン・バーンズ(Julian Barnes)氏、トーマス・キニーリー(Thomas Keneally)氏、カズオ・イシグロ(Kazuo Ishiguro)氏、イアン・マキューアン(Ian McEwan)氏、マイケル・オンダーチェ(Michael Ondaatje)氏、アルンダティ・ロイ(Arundhati Roy)氏らが署名した。 さらにコルム・トイビン(Colm Toibin)氏やマーティン・エイミス(Martin Amis)氏、ライオネル・シュライバー(Lionel Shriver)氏、ルイ・ド・ベルニエール(Louis de Bernieres)氏、アービン・ウェルシュ(Irvine Welsh)氏などの著名作家も名を連ねた。 *3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/list/CK2013120802100004.html (東京新聞 2013年12月8日) 【特定秘密保護法案】法廃止へ揺るがず 監視国家 広がる「反対」 国民の「知る権利」を侵す恐れのある特定秘密保護法は六日深夜の参院本会議で、与党の賛成多数で可決、成立した。野党は慎重審議を求めたが、与党が採決を強行した。だが「秘密保護法案反対」を訴えていた人たちの声は、消えることはない。「法律廃止」へと変わるだけだ。国民の権利を守ろうという全国の幅広い層による活動は続く。法成立に強く反対してきた「特定秘密保護法案に反対する学者の会」は七日、名称を「特定秘密保護法に反対する学者の会」に変え、活動継続を宣言。学者の中には、法律は違憲立法だとして法廷闘争に持ち込む準備を始める動きもある。 女性関係の三十六団体でつくる「国際婦人年連絡会」は、法成立を受けて近く集会を開催する。戦争体験を持つ女性が多く所属しており、秘密保護法が脅かしかねない平和の尊さを広く訴えることの重要性を確認する。連絡会の世話人で、女性の地位向上に尽くした政治家の故市川房枝氏の秘書を務めた山口みつ子さんは、秘密保護法が成立したのは「昨年末の衆院選と今年の参院選の低投票率の弊害だ」と分析。「有権者が政治への関心を高めないと、権力的な政治がさらにまかり通る」と訴える。 アイヌの有志でつくる「アイヌウタリの会」は、法律廃止への賛同を広く募っていくことを決めた。 弁護士有志による「自由法曹団」も法律の廃止を求めた。自民党の石破茂幹事長がデモとテロを同一視した問題を挙げ「政府に反対する声がテロとして排斥され、密告・監視が横行する。こんな国と社会は許されない」と訴えた。 日本ジャーナリスト会議も、衆参両院での採決強行を「憲政史上、前例のない最悪の暴挙」と非難。安倍政権を「国民の目と耳と口をふさぎ、民主主義を否定する」と批判し、衆院を解散して国民に信を問うべきだと主張した。 *4:http://www.shinmai.co.jp/news/20131212/KT131211ATI090012000.php (信濃毎日新聞 2013年12月12日) 特定秘密保護法、県内19市長見解 12市長が「運用に不安」 特定秘密保護法について、県内19市長のうち12人が運用面で不安を感じていることが11日、信濃毎日新聞の取材で分かった。13日の同法の公布から1年以内に予定される施行までに必要な対応(五つの選択肢から二つ以内で選択)については「特定秘密のチェック体制など適正な運用に向けた環境整備」「国民への丁寧な説明」を挙げた市長がそれぞれ14人に上り、国会審議や国民への説明が不足していると感じている市長が多いことがうかがえる。同法の運用面で不安を「感じる」とした12人からは「特定秘密の範囲が不明確で、秘密指定の妥当性を監視する仕組みづくりも明確でない」(今井竜五・岡谷市長)や、「説明が足りず、急ぎすぎている」(池田茂・中野市長)といった意見があった。 一方、不安を「感じない」とした加藤久雄・長野市長は「首相が丁寧に説明していくとしており、適正な運用に向けた検討も行われている」とした。5人は「何とも言えない、分からない」と回答を留保した。このほか、牧野光朗・飯田市長は選択肢からは回答を選ばずに「どんな運用がなされるのか、しっかり注視していく必要がある」とだけ答えた。 今後必要な対応について、ほかの選択肢では4人が法律の「修正」を選択。牛越徹・大町市長は「(特定秘密の妥当性などについて)どのような方法でチェックするのか法律に明記すべきだ」と述べた。小口利幸・塩尻市長は「修正」または「廃止」を求めた。「その他」を選んだのは2人で、「課題と考えられることの国会での十分な論議を」(三木正夫・須坂市長)といった意見があった。 *5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/list/CK2013121002000262.html (東京新聞 2013年12月10日) 【特定秘密保護法】 秘密保護法 識者ら訴え 独立の監視機関必要 数々の不安や懸念が解消されないまま、特定秘密保護法が成立した。政府は制度の細部を詰め、一年以内に施行する予定。識者は、恣意的な運用や国民の「知る権利」の侵害を防ぐため、独立性のある第三者機関のチェックが「最低限の条件」だと強調する。問題点を追及する報道や、国民が関心を持ち続けることが重要との声も上がった。 政府は法成立の直前、秘密のチェック機関として(1)指定や解除、適性評価の基準を定める「情報保全諮問会議」(2)警察庁長官や外務、防衛両省の事務次官らで組織する「保全監視委員会」(3)公文書廃棄の可否を判断する「独立公文書管理監」(4)外務、防衛両省の職員ら二十人規模で内閣府に置く「情報保全監察室」-の設置を打ち出した。さらに成立後、石破茂自民党幹事長が秘密の内容を監視する常設の委員会を衆参両院に置く考えを示した。しかし、田島泰彦上智大教授(メディア法)は「行政機関のほぼ一存で、非常に広範な情報を秘密に指定できる根本に手を付けず、チェックするのには限界がある。法施行させないことが一番だ」と指摘する。その上で「施行するならば最低限、行政の外部に監視機関を設け、独立した立場で秘密にアクセスする必要がある。この要件を満たさなければチェックの役割は果たせない」と言い切る。公文書管理に詳しい都留文科大講師の瀬畑源さん(日本現代史)も「保全監視委員会は政府内部で秘密を統制するにすぎない。各省庁で、その人たちの部下に当たる官僚がメンバーの情報保全監察室が、独立した公正な立場でチェックできるわけがない」と批判する。監視のシステムを少しでも良くするにはどうすればいいのか。瀬畑さんは「人事院のように監察室に内閣からの独立性を担保し、秘密を解除する権限も持ってチェックさせる。さらに諮問会議が監察室の活動を監視する。少なくともこの仕組みは必要」と根本的な見直しを求めた。 田島教授は、法の内容を十分知る必要性を訴える。「情報源に厳罰を科す法律が施行され、情報が出なくなれば、知る権利は実現できない。メディアはより明確に、より深く問題点を提示して、法を施行させない取り組みを続けてほしい」。精神科医の香山リカさんは「市民感情としては『特定秘密』という言葉に警戒心を抱いているのが現状だろう。関心を持ち続けることが大事」と語った。多くの映画監督や作家、学者などが反対の声を上げたことには「この件は政治的スタンスを問わず、幅広い層が『問題だ』と思っている。もっともっとアピールすべきだ」と話している。
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2013,12,11, Wednesday
(1)特定秘密保護法の成立とその危険性 *2に記載されているとおり、機密の漏洩に厳罰を科す特定秘密保護法の成立を受け、政府は特定秘密の内容をチェックする機関の設置を表明したが、それは、本来は、政府・行政から独立した第三者が監視する仕組みを設けることだった。 しかし、実際には、内閣官房への「保全監視委員会」の設置と、内閣府への「情報保全監察室」「独立公文書管理監」の設置であり、行政内部の身内にポストを増やしただけに終わっているため、国会にも「安全保障に支障を及ぼす」と言えば、資料を出さなくてすむ。そして、漏洩事件の裁判でも、裁判官に特定秘密を見せなくてよくなるため、行政に権力が集中して、三権分立が形骸化する。 そのため、*4のように、成立前にも反対意見や反対運動が多かったし、成立後の現在でも、*3のように、秘密保護法の撤廃を求めて緊急集会やデモが行われ、また、*5のように、多くの刑法学者が反対しているのである。 (2)特定秘密保護法における罰則の異常性 特定秘密保護法は、その罰則においても異常性がある。例えば、第23条において、「①特定秘密の取扱いの業務に従事する者がその業務により知得した特定秘密を漏らしたときは、10年以下の懲役に処し、又は情状により10年以下の懲役及び1,000万円以下の罰金に処する。特定秘密の取扱いの業務に従事しなくなった後においても、同様とする。」と規定されている。しかし、「1,000万円以下の罰金」というのは、他の法律では見たことがない高額であり、まず、他の罪とのバランスがおかしい。 また、「②当該提供の目的である業務により当該特定秘密を知得した者がこれを漏らしたときは、5年以下の懲役に処し、又は情状により5年以下の懲役及び500万円以下の罰金に処する。」等とも規定されているが、①では、特定秘密の取扱い業務に従事する者がその業務により知得した特定秘密を漏らしたときは、取扱いの業務に従事しなくなった後でさえ1,000万円の罰金が課されるのに対し、②では、当該提供の目的である業務により当該特定秘密を知得した者がこれを漏らしたときは、量刑・罰金とも①の半分になるというのがおかしい。何故なら、①と②は、同様に職務担当者の秘密漏洩だからである。 さらに、第25条等で、上記の犯罪に関し、共謀・教唆・煽動した者も、5年以下の懲役に処すると規定されているが、「共謀」「教唆」「煽動」の定義が明確でないため、どんな行為でもそれに当たると判断される可能性がある。このように、特定秘密保護法は、行政の都合によって、行政に都合の悪い人を、意図的に重罪に陥れて排除することができる法律なのである。 (3)今度は、共謀罪創設 ?! (2)でも記載したように、特定秘密保護法は、「共謀」「教唆」「煽動」した者を5年以下の懲役に処するとしているが、「共謀」「教唆」「煽動」の定義は明確でない。これに加え、*1のように、実行行為がなくても謀議に加われば処罰対象となる「共謀罪」の創設を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を来年の通常国会に提出する方向で検討に入ったそうだが、謀議に加わったことはどうやって証明するのだろうか? 盗聴などが盛んに行われるのかもしれないが、盗聴では、その会議の中でのその人の役割(推進していたのか、止めていたのか、黙って別のことを考えていたのか、寝ていたのか)はわからない。また、密告や自白は、動かぬ証拠がないため、意図的なものになりやすい。とにかく、共謀罪が適用されれば、盗聴や密告を含む国家の監視が正当化され、国民の言論の自由が阻害されることは明らかである。 *1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2594906.article.html (佐賀新聞 2013年12月11日) 政府、共謀罪創設を検討 / 組織犯罪処罰法改正で 政府は10日、殺人など重要犯罪で実行行為がなくても謀議に加われば処罰対象となる「共謀罪」創設を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を来年の通常国会に提出する方向で検討に入った。政府関係者が明らかにした。共謀罪が広く適用されれば、国による監視が強化される恐れがある。機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法に続く国権強化の動きといえる。秘密法成立で言論・情報統制が強まる不安が広がっているだけに、論議を呼ぶのは確実だ。政府は、2020年の東京五輪開催に向けてテロ対策の必要性が高まったと判断している。 *1-2:http://www.shinmai.co.jp/news/20131212/KT131211ETI090007000.php (信濃毎日新聞 2013年12月12日) 共謀罪 内心の自由を侵さないか 人を殺傷するテロ行為を未然に防ぐこと自体に異論はない。ただ、テロに限らず話し合っただけで処罰の対象にするのは行き過ぎだ。権力の意図的な運用を可能にし、憲法が保障する内心の自由を侵す恐れがあるからだ。組織犯罪処罰法に「共謀罪」を新設する動きが表面化した。菅義偉官房長官はきのう午前の会見で「まだ決めていない」としたが、政府関係者は同法改正案を来年の通常国会に提出する方向で検討に入ったことを明らかにしている。この法律は、組織的に実行された犯罪の刑を重くすることなどを定め、2000年に施行された。テロ行為だけでなく、市民団体のデモや「人間の鎖」などに適用される可能性がある威力業務妨害なども対象だ。国連は同年、国際組織犯罪防止条約を採択し、参加国に共謀罪の創設を求めた。条約に署名した日本政府は03年以降、同法改正案を3回、国会に提出。日弁連や野党などが強く反対し、いずれも廃案になった。 特定秘密保護法案にも共謀罪が盛られた。実際に秘密をつかんでいなくても、何とか得ようと話し合っただけで処罰される場合がある。しかし、この問題は国会でほとんど議論されないまま法案は強行採決され、成立した。これを機に、政府は20年東京五輪のテロ対策を理由にして組織犯罪処罰法にも共謀罪を広げる考えのようだ。 意思を通じ合ったというだけで処罰する手法は戦前、戦中に反政府的な考えを持つ人の弾圧に使われた。治安維持法の「協議罪」を多用して、何も実行していない人たちを次々に取り締まった。共謀罪にはこうした危険性が付きまとう。日本の刑事法は、犯罪の実行行為があって初めて罰することを原則とする。例外として未遂や予備(準備)といった罪があるが、共謀はさらに実行から遠い段階だ。しかも物的証拠がないので自白偏重になりやすい。現行の組織犯罪処罰法にも未遂や予備の罪はある。共謀罪を検討するなら、これらの罪では対応できない合理的根拠を示すべきだ。 気を付けなければいけないのは、共謀罪を盛った特定秘密保護法も改正自衛隊法も、自首による刑の免除や減軽の規定をセットにしていることだ。捜査側が、罪に問わないことを理由に密告の奨励や協力者工作をしやすくなる。共謀罪には監視社会をつくりだす危険性もある。 *2:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-216465-storytopic-11.html (琉球新報社説 2013年12月10日) 秘密監視機関 国の暴走の歯止めにならぬ 機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法の成立を受け、政府は特定秘密の内容をチェックする機関の設置を表明している。しかし政府が秘密指定の妥当性を監視する仕組みとして、複数の機関やポストの新設を次々と打ち出したのは、5日の採決直前だった。国民の知る権利や表現の自由を侵害する法律を通す作業は、あまりにずさんで稚拙だった。法案審議で争点となったのは政府による秘密指定を「政府の外」から監視する仕組みを設けることだったはずだ。行政による恣意的な秘密指定を防ぐ必要性から、野党の一部が独立した公正な立場の監察機関の設置を求めていたのもこのためだ。しかし政府が表明したのは内閣官房への「保全監視委員会」、内閣府への「情報保全監察室」と「独立公文書管理監」の設置だ。全て行政内部、身内だ。 保全監視委員会は警察庁長官や外務、防衛両省の事務次官らで構成され、情報保全監察室は外務、防衛両省の職員ら20人規模の組織だ。秘密指定の適否を検証するものだ。独立公文書管理監は審議官級を充て、公文書の廃棄の可否を判断する。官僚組織による秘密指定を身内の官僚が精査するのだから、茶番劇というほかない。こんな組織やポストがいくら設置されても「官僚による官僚のための情報隠し」(民主党の海江田万里代表)に歯止めがかからないのは明白だ。政府は3組織とは別に、報道や専門家ら有識者による「情報保全諮問会議」も設置する方針を示すが、この組織は具体的な特定秘密はチェックできない。これではお飾り、絵に描いた餅だ。国会も蚊帳の外に置かれる。国会の秘密会から求めがあれば、行政機関の長は特定秘密の提出が義務づけられている。しかし「安全保障に支障を及ぼす」と一言いえば、出さなくていい。漏えい事件の裁判でも裁判官に特定秘密を見せなくてもいい。政府の暴走を止める手段はない。あまりにも危険な法律だ。 国連のピレイ人権高等弁務官は同法について「日本の憲法や国際人権法が定める情報へのアクセス権や表現の自由に対する適切な保護規定を設けずに、法整備を急ぐべきではない」と述べ、政府と立法府に対し、国内外の懸念に耳を傾けるよう促した。安倍政権はボタンの掛け違いを認め、この法律をいったん廃止し、立法の是非を国民に問い直すべきだ。 *3:http://www.nnn.co.jp/news/131210/20131210001.html (日本海新聞 2013年12月10日) 秘密保護法の撤廃求め 米子で緊急集会とデモ行進 特定秘密保護法が6日国会で成立したのに抗議し、鳥取県米子市内で9日、同法の撤廃を求める緊急集会とデモ行進があった。参加者がJR米子駅前の目抜き通りを歩きながら、強行採決に踏み切った安倍政権への批判と同法の撤廃を訴えた。市民団体「平和・民主・住みよい米子をつくる会」が他団体や市民に呼び掛けて実施。約60人が集まった。参加者は米子市文化ホール前広場で気勢を上げた後、米子商工会議所前までの約1キロをデモ行進。「秘密保護法撤廃」と書かれたプラカードを掲げながら、「秘密保護法は憲法違反」「安倍内閣は総辞職せよ」などとシュプレヒコールを繰り返した。同会代表世話人の1人、大谷輝子さん(77)は「署名運動をした際も賛同してくれる市民が多かった。あの戦争の暗黒時代を再現させることがあってはならない」と話した。 *4:http://digital.asahi.com/articles/TKY201312030244.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2013年12月3日) (新ポリティカにっぽん)秘密保護法案、いまこそ再考を 世の中もこの法案の危うさにじっとしていられないということだろうか、街に「反対」の声が響く。国会会期末は6日、圧倒的多数の与党と「すりより野党」によって成立してしまうのかどうか、特定秘密保護法案の参院審議が大詰めである。 ■「平和」掲げる公明党が、なぜ? それにしても、いったい公明党は何を考えているのだろうか。「平和」の党であることを誇りにしていたのに、「戦争」がちらつく法案にかくも血道をあげるなんて。11月26日、この法案が自民、公明の与党とみんなの党の賛成で衆院を強行通過したその夜、明治大学で行われたジャーナリストのリレートークに参加した私は公明党への疑問を呈した。それが伝わったのか元参院議員の平野貞夫氏から電話がきた。「1985年、中曽根内閣のときのスパイ防止法案に一番強く反対して廃案に追い込んだのは公明党でしたよ。こんどの秘密保護法案は、そのスパイ防止法よりも戦前の治安維持法よりもタチが悪い」。平野氏は衆院事務局に長く勤め、かつては公明党の相談にも乗り、参院議員になってからは小沢一郎氏の知恵袋として有名である。ムムム、希代の悪法、治安維持法よりタチが悪いって? 公明党の母体である創価学会は戦前、治安維持法によって弾圧された歴史がある。初代会長牧口常三郎と2代会長の戸田城聖は、国家神道の「神札」受け取りを拒否して、「国体」すなわち天皇制国家を否定する不穏分子として投獄され、1944年11月18日、牧口は獄死した。今年のその日、牧口を偲(しの)ぶ70回忌法要が行われ、池田大作名誉会長はメッセージで、牧口の死をもたらしたのは「権力の魔性」と述べている。池田氏は著書「人間革命」第1巻で治安維持法についてこう書いている。「共産党弾圧のためのこの立法は、無数の故なき罪人をつくった」「次第に、ただ軍部政府を守るための弾圧法と化していった」「信教の自由が(大日本帝国)憲法に保障されていたにもかかわらず、この悪法のために、会長牧口常三郎は獄中で死ななければならなかった」「権力者の自分勝手な考えによって裁かれるべきではない」。 これらの記述からうかがわれるのは、悪法は自己増殖するということである。治安維持法は、初めは「国体の変革」と「私有財産否認」をめざすもの、つまり共産党をターゲットにして、作家小林多喜二を築地署で惨殺したりした。しかし、次第に対象を拡大して漸進思想の教授らを大学から次々と追放し、さらには当時、有力だった大本教を「天皇に代わってみろくの世をめざす」邪宗として殿堂をダイナマイトで破壊し、蔵書8万4千冊を焼却するなどの宗教弾圧に発展、ついに創価学会にも累が及んだ。池田氏は「すべての立法の意図を、われわれは改めて吟味する必要がある」と書く。特定秘密保護法案しかり。いったい公明党の議員諸兄は、「人間革命」をちゃんと読んでいるのだろうか。 ■法案通せば、「議会政治の葬式」に ところで平野さん、特定秘密保護法案が治安維持法よりタチが悪いというのは、具体的にはどういうこと? 「罪の内容が明確でない。『安全保障』というあいまいな概念のもと、何が『特定秘密』か、結局は官僚が選び出す。経済、エネルギー、食糧も安全保障だといって、いくらでも対象が広がっていくよ」。治安維持法は「国体」を持ち出せばみんなひれ伏した、こんどは、そこのけそこのけ「安保」が通るということですかね。「国体」よりはるかに広い範囲で罰せられることになりそうだなあ。「いまや、情報は米や水や空気と同じなんです。しかも、ほとんどの情報は公権力がかかわる。『知る権利』というのは、単に報道の自由ということと違って、国民の生活の権利なんだ。マスコミの認識も、まだ浅い」。 国会議員もわかっているのかな? 「何が特定秘密かわからないのだから、国会議員の国政調査権も萎縮させますよ。これは政治家に対する官僚の逆襲だな。官僚の無駄遣いや天下りが批判されているから、官僚が情報を独占管理すれば、逆に政治をコントロールできるという腹でしょう」。平野氏は高知県の出身。自由民権のふるさとといわれるこの地では、明治の昔、「高知新聞」が発禁になって「新聞の葬式」を催した故事がある。会葬者はなんと5千人を超えた。平野氏は危惧する。「特定秘密保護法案を通せば、それは議会政治の葬式になる」。安倍総理大臣、中国が防空識別圏などと持ち出してくるから、何かと心配なのはわからないでもない。しかし、コトは民主主義の根幹にかかわる。秘密のヨロイを着た息苦しい国家はよくない。将来、悪用する権力者が現れないとも限らない。ここは踏みとどまって再考しないか。 *5:http://digital.asahi.com/articles/SEB201312110002.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2013年12月11日) 刑法学者23人、秘密法廃止求める抗議声明 13日に公布される特定秘密保護法について、刑法学研究者23人が11日、速やかな廃止を求める抗議声明を発表した。声明は(1)何が特定秘密かが極めてあいまいで罪刑法定主義の原則に反し、違憲と言わざるを得ない(2)特定秘密の内容が明らかにされないまま公判が開かれれば、憲法82条の裁判公開原則に反する、などと刑事法の観点から問題点を指摘している。声明の呼びかけ人の代表は村井敏邦・一橋大名誉教授ら2人で、九州大、北海道大、大阪大などの教授や弁護士らが名前を連ねている。
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