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2013,05,25, Saturday
*3:原発避難区域と5ミリシーベルト地帯(当時) →2013.5.28 避難指示区域決定(日本農業新聞) 多くのメディアで報道していないが、*1のように、国連の人権理事会が、一般住民の被曝基準について、現在の法令が定める年間1ミリシーベルトの限度を守り、それ以上の被曝をする可能性がある地域では住民の健康調査をするよう、日本政府に要求し、国が年間20ミリシーベルトを避難基準としている点については、「人権に基づき1ミリシーベルト以下に抑えるべき。年間1ミリシーベルトを超える地域について、避難に伴う住居や教育、医療などを支援すべきだ」としているが、まさに正論である。 つまり、この勧告は、これまでの放射線防護に関する知見から見て当たり前なのだが、*3のように、日本政府は、年間20ミリシーベルト以下の地域で帰還準備を本格化しようとしており、避難に関する基準は安全性よりも、避難者数、避難地域、経済性に配慮して作られていると言わざるを得ない。ちなみに、チェルノブイリ事故のケースでは、避難地域・農業禁止区域は、*2のとおりである。 また、原発被災者支援法の基本方針の策定が放置されていることを批判している*4の記事でさえ、子ども以外には放射線被曝の影響がないかのような書きぶりになっているのは驚くほかない。さらに、*5では、暫定許容値(1キロ当たり400ベクレル)以下の牛ふん堆肥を使って、大豆づくりを始められることを喜んでいるが、そもそも暫定基準は甘い基準である上、濃度が基準値内であっても総量が多ければ、それで栽培された作物がどうなるかについては保証の限りではない。そして、そのようなことに気をつける人を、「風評被害を撒き散らす人」と決めつける論調が多いが、これは人権侵害であり、日本産農産物全体の安全性という価値も落としている。 *1:http://mainichi.jp/select/news/20130524k0000e040260000c.html (毎日新聞 2013年5月24日) 福島第1原発事故:国連報告書「福島県健康調査は不十分」 東京電力福島第1原発事故による被ばく問題を調査していた国連人権理事会の特別報告者、アナンド・グローバー氏の報告書が24日明らかになった。福島県が実施する県民健康管理調査は不十分として、内部被ばく検査を拡大するよう勧告。被ばく線量が年間1ミリシーベルトを上回る地域は福島以外でも政府が主体になって健康調査をするよう求めるなど、政府や福島県に厳しい内容になっている。近く人権理事会に報告される。報告書は、県民健康管理調査で子供の甲状腺検査以外に内部被ばく検査をしていない点を問題視。白血病などの発症も想定して尿検査や血液検査を実施するよう求めた。甲状腺検査についても、画像データやリポートを保護者に渡さず、煩雑な情報開示請求を要求している現状を改めるよう求めている。 また、一般住民の被ばく基準について、現在の法令が定める年間1ミリシーベルトの限度を守り、それ以上の被ばくをする可能性がある地域では住民の健康調査をするよう政府に要求。国が年間20ミリシーベルトを避難基準としている点に触れ、「人権に基づき1ミリシーベルト以下に抑えるべきだ」と指摘した。このほか、事故で避難した子供たちの健康や生活を支援する「子ども・被災者生活支援法」が昨年6月に成立したにもかかわらず、いまだに支援の中身や対象地域などが決まっていない現状を懸念。「年間1ミリシーベルトを超える地域について、避難に伴う住居や教育、医療などを支援すべきだ」と求めている。 ◇グローバー氏の勧告の骨子 <健康調査について> ・年間1ミリシーベルトを超える全地域を対象に ・尿や血液など内部被ばく検査の拡大 ・検査データの当事者への開示 ・原発労働者の調査と医療提供 <被ばく規制について> ・年間1ミリシーベルトの限度を順守 ・特に子供の危険性に関する情報提供 <その他> ・「子ども・被災者生活支援法」の施策策定 ・健康管理などの政策決定に関する住民参加 *2:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%96%E3%82%A4%E3%83%AA%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80%E4%BA%8B%E6%95%85 チェルノブイリ原子力発電所事故(ウィキペディアから抜粋) およそ1週間後の1986年5月までに、当該プラントから30km以内に居住する全ての人間(約11万6000人)が移転させられた。その他、当該プラントから半径350km以内でも、放射性物質により高濃度に汚染されたホットスポットと呼ばれる地域においては、農業の無期限での停止措置および住民の移転を推進する措置が取られ、結果として更に数十万人がホットスポット外に移転した。ソ連の科学者の報告によると、28,000km2が185kBq/m2を超えるセシウム137に汚染した。当時、約83万人がこの区域に住んでいた。約10,500km2が555kBq/m2を越えるセシウム137に汚染した。このうち、ベラルーシに7,000km2、ロシア連邦に2,000km2、ウクライナに1,500km2が属する。当時、約25万人がこの区域に住んでいた。これらの報告データは国際チェルノブイリプロジェクトにより裏付けられた *3:http://digital.asahi.com/articles/TKY201305240624.html?ref=pcviewer (朝日新聞 2013年5月24日) 帰還基準厳格化、見送る 民主政権時、原発避難増を懸念 福島第一原発の事故で避難した住民が自宅に戻ることができる放射線量「年20ミリシーベルト以下」の帰還基準について、政府が住民の安全をより重視して「年5ミリシーベルト以下」に強化する案を検討したものの、避難者が増えることを懸念して見送っていたことが、朝日新聞が入手した閣僚会合の議事概要や出席者の証言で明らかになった。民主党政権が2011年12月、三つの避難区域に再編する方針を決め、安倍政権も継承。再編は今月中に川俣町を除く10市町村で完了し、20ミリ以下の地域で帰還準備が本格化する。避難対象や賠償額を左右する基準が安全面だけでなく避難者数にも配慮して作られていた形で、議論が再燃する可能性がある。 5ミリ案が提起されたのは11年10月17日、民主党政権の細野豪志原発相、枝野幸男経済産業相、平野達男復興相らが区域再編を協議した非公式会合。議事概要によると当初の避難基準20ミリと除染目標1ミリの開きが大きいことが議論となり、細野氏が5ミリ案を主張した。チェルノブイリ事故では5年後に5ミリの基準で住民を移住させた。年換算で5・2ミリ超の地域は放射線管理区域に指定され、原発労働者が同量の被曝(ひばく)で白血病の労災認定をされたこともある。関係閣僚は「5ミリシーベルト辺りで何らかの基準を設定して区別して取り組めないか検討にチャレンジする」方針で一致した。 ところが、藤村修官房長官や川端達夫総務相らが加わった10月28日の会合で「20ミリシーベルト以外の線引きは、避難区域の設定や自主避難の扱いに影響を及ぼす」と慎重論が相次いだ。5ミリ案では福島市や郡山市などの一部が含まれ、避難者が増えることへの懸念が政府内に広がっていたことを示すものだ。11月4日の会合で「1ミリシーベルトと20ミリシーベルトの間に明確な線を引くことは困難」として20ミリ案を内定。出席者は「20ミリ案は甘く、1ミリ案は県民が全面撤退になるため、5ミリ案を検討したが、避難者が増えるとの議論があり、固まらなかった」と証言し、別の出席者は「賠償額の増加も見送りの背景にある」と語った。 *4:http://www.iwate-np.co.jp/ronsetu/y2013/m05/r0522.htm (岩手日報 2013年5月22日) 原発被災者支援法 基本方針策定なぜ放置 「原発事故直後、子どもを屋外に出した。健康不安を背負っていかなければならない。早期発見、早期治療の徹底をお願いしたい。関東の被害者も見捨てないでほしい」。栃木県から横浜市に避難した女性は訴えた。「年末を迎えるたび、『来年も暮らせるだろうか』と不安になる。住宅支援がいつ打ち切られるか心配だ。支援法に基づき、継続的で体系的な支援策をつくってほしい」。福島市から札幌市に自主避難している男性の声だ。発言したのは、「原子力事故による子ども・被災者支援法」をテーマに福島市内で開かれたフォーラムの場。支援法は全会派共同提案・全会一致の議員立法により昨年6月に成立した。東京電力福島第1原発事故で被災した住民の生活を支えるのが趣旨だ。子どもや妊婦に対する医療費の減免、子どもの健康診断の実施、親と離れて暮らす子どもの支援などを盛り込んだ。自主避難者も対象に含めて、国が住宅の確保や就業を支援するとしている。しかし、成立から1年近くたつのに、施策推進に必要な基本方針策定は棚上げされたままだ。国会議員の総意でつくったはずだが、政府の腰は重い。最大の課題は対象地域の未決定。同法の対象は「避難区域に住んでいた人」か、「一定基準以上の放射線量が計測された地域に住んでいたか、住み続けている人」だが、この一定基準が決まらない。一つの目安となりうるのは追加線量が「年間1ミリシーベルト以上」の汚染状況重点調査地域。これだと本県を含む8県の約100市町村に及ぶ。設定によっては対象者が拡大し、財源負担が膨らむ。実際、被害を受けているのは広範囲にわたる。それこそが原発の過酷事故がもたらす恐るべき影響だ。支援法は、原子力政策を進めてきた国の社会的責任を明記した。住民や避難者に対して手だてを講じる努力を政府は惜しんではならない。フォーラムの実行委員長を務めた熊坂義裕・社会的包摂サポートセンター代表理事(前宮古市長)は、同センター運営の電話相談に寄せられる被災者たちの苦しい状況を紹介し、「支援法に魂を入れていかなければならない」と訴える。復興庁は3月、「原子力災害による被災者支援施策パッケージ」を公表したが、「全く不十分」(日弁連)と批判が強く、支援法が求める水準を満たすものではない。原発再稼働にシフトする政権だが、原発事故被害者の救済こそが政府に求められる優先施策のはずだ。被害者を置き去りにしたまま原発に回帰する政策は許されない。 *5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=21149 (日本農業新聞 2013/5/24) 滞留堆肥やっと日の目 大豆畑散布スタート 福島県白河市 東京電力福島第1原子力発電所事故の影響で、福島県内の畜産農家の敷地に滞留していた国の放射性物質の暫定許容値(1キロ当たり400ベクレル)以下の牛ふん堆肥が、事故から2年2カ月を経てようやく動きだした。東京電力が費用を負担し、畜産農家の敷地から耕種農家の畑に運搬・散布することが決まり、23日、第1弾として白河市内で作業が始まった。他の地域でも順次作業が始まり、14年6月までには滞留が解消する見通しだ。 ●許容値以下 来年は解消 この日は作業を受託するJAしらかわの子会社、(株)JAしらかわアグリが、白河市大信地区の畜産農家3戸の堆肥舎から堆肥を運び出し、同地区の大豆畑に散布した。作業は6月7日までの予定で、堆肥277トンを大豆畑13・6ヘクタールに施用する。JA管内では、推定2000トン以上が滞留しているという。今後、管内の他の地域でも作業を始める。同地区で乳牛80頭を飼育する佐藤房義さん(39)は「これでやっと(滞留していた)堆肥が動きだす」と胸をなでおろした。同地区で大豆1ヘクタールを栽培する渡辺一男さん(64)は、散布作業を見ながら「堆肥で地力が向上すれば、いい大豆ができる」と期待を込めた。作業員として参加した、同地区で肥育牛30頭を飼育する國井孝士さん(62)は「今年は堆肥のもらい手が見付からず、自分の水田に通常の2倍の量をまいた。今回の取り組みを契機に、何とか前に進んでいくしかない」と語った。作業に立ち会ったJAの小室信一組合長は「(問題解決に向け)一歩進んだ。畜産、耕種両方の農家にとって意義がある」と強調した。県によると、県内では暫定許容値を下回っていても、作付け制限や自粛による耕作面積の減少や、「風評被害」で堆肥の利用が進まず、推計15万トンが滞留している。今後、地域ごとに設置した、市町村やJAで構成する協議会が畜産農家と耕種農家のマッチングや運搬・散布計画を決め次第、作業に入る予定だ。
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2013,05,24, Friday
日本の原子炉輸出第1号となった台湾の第4原発建設反対を訴え、デモ行進する市民 (台北市、2013年5月19日) *1、*2、*3のように、広い範囲に放射性物質を撒き散らして、生物に悪影響を及ぼし、他産業に大損害を与えながら、被害を過小評価するのは、もういい加減にすべきです。 そして、国内では新設はおろか再稼働もできないため、*4のように、かわりに外国に輸出するというのでは、あまりにも倫理観がなさすぎます。いくら「世界一安全」と繰り返しても、そうなるものではないことは、技術的にも危機管理意識の上でも、すでに明らかになっているのです。つまり、あれでは、とても無理なのです。それより、クリーンな再生可能エネルギーを進めるのが、日本の使命であり、スマートでしょう。 *1:http://www.minpo.jp/news/detail/201305238580 (福島民友 2013/5/23) 地下水放出、来月判断 30日と7日に説明会 東京電力が福島第一原発の汚染水増加対策として、敷地内の地下水を海に放出する計画について、国と東京電力が今月末から県内の漁協組合員向け説明会を2回開催することが県漁連への取材で分かった。国と東電は漁協の理解を前提に、6月中に実施の可否を判断する。説明会は5月30日と6月7日、いわき市と相馬市で県内の漁協組合員を対象にそれぞれ開催。放出する地下水は、原子炉建屋に流入して放射性物質が混ざった汚染水と異なり、放射性セシウムの値は検出限界以下か国の基準値を下回っている。国と東電はこうした点を説明し理解を求める。 *2:http://digital.asahi.com/articles/TKY201305170093.html (朝日新聞 2013年5月17日)ウナギから基準超セシウム 研究者通報、都県は調査せず 東京都と千葉県の県境を流れる江戸川で釣り人が取ったウナギから国の基準を超す放射性セシウムが検出されたとする研究者の調査結果について、3月末ごろ把握した都と千葉県が、独自調査や情報の公表を先送りしていたことがわかった。両都県は「漁業でなく流通しないので調査しなかった」と説明している。調査したのは近畿大の山崎秀夫教授(環境解析学)。東京都葛飾区で自営業女性(47)が3月9日に釣ったウナギから、国の基準値(1キロあたり100ベクレル)を上回る147・5ベクレルの放射性セシウムが検出された。ゲルマニウム半導体検出器で調べた。女性は、報道で江戸川下流にセシウムがたまっていると知り、山崎教授へ送ったという。公的調査の裏付けや、他の魚種への影響を調べる必要性を考えた山崎教授は3月末、水産庁へ通報。同庁は都と千葉県へ知らせたが、両都県は16日までに調査をしていない。都水産課は「流通に回るものが基本的な検査対象。ウナギ漁は夏から」、千葉県漁業資源課は「県内になりわいでとっている人がいない」としている。水産庁は「食べている実態があれば調査するよう都県に連絡した」と説明。17日、山崎教授が保存する検体の調査を始めた。山崎教授の調査によると、4月と5月に同じ女性が江戸川で釣ったウナギ4匹で1キロあたり97・4~129・6ベクレルを検出し、3匹で基準値を上回った。江戸川周辺は趣味のウナギ釣りが盛んで釣り雑誌にも紹介されている。これまで公的機関では、江戸川で取れたウナギで基準値超えは確認されていない。 ◇ 〈江戸川河口などでセシウムの魚介類への影響について調べる東大・鯉渕幸生准教授(沿岸環境学)の話〉 ウナギが雑食で、川にいる魚はセシウムをとりこみやすく、捕獲した所が川底にセシウムがたまる河口近くなど、複数の要素が重なったまれなケースではないか。河口付近の他の魚や貝を調べているが、セシウムは検出されていない。ただ、注意深く調査を続けることが必要だ。 *3:http://www.minyu-net.com/news/news/0517/news4.html (2013年5月17日 福島民友ニュース) 山菜4品目が出荷停止 相馬や須賀川で基準値超え 政府は16日、原子力災害対策特別措置法に基づき、相馬市のコシアブラや須賀川市のゼンマイなど10市町村で採取した山菜4品目について、県に出荷停止を指示した。福島県による放射性物質検査で、食品の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を上回る1キロ当たり110~5400ベクレルの放射性セシウムが検出されたための措置。県は同日、各市町村などに政府の指示を伝えた。基準値超の山菜はいずれも出荷前のため、市場には流通していない。 *4:http://mainichi.jp/feature/news/20130522dde012010007000c.html (毎日新聞 2013年5月22日) 相手国の民主化ブレーキも 恥ずかしいぞ原発輸出 エコノミックアニマルから「野獣」へ トップセールスの売り言葉は「世界一安全」−−。アベノミクスの成長戦略として原発輸出を掲げ、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)を訪れ、原発輸出を約束した安倍晋三首相。いまだ16万人もの原発事故の避難者がいることを思えば、「恥ずかしいからやめてくれ」と言いたくなる。なりふり構わず利益を追求する姿は、経済活動に血道を上げ、エコノミックアニマルとやゆされた時代よりも深刻ではないか。福島第1原発の事故後、官民一体で具体化させた4月30日からの中東歴訪。安倍首相は現地で「原子力の安全向上に貢献していくことは日本の責務」と、原発輸出を成長戦略の柱に据える考えを強調した。サウジアラビアでは「(日本は)世界一安全な原発の技術を提供できる」とアピール。一方、国内向けには2月の施政方針演説(衆院)で「できる限り原発依存度を低減させる」と表明、国内外で言葉を使い分けている。「リコール中の自動車を他国で販売するようなもの。日本独自の経済倫理思想のかけらもない。たとえグレーゾーンであってももうければ良いという考えを私は『修羅の経済思想』と呼んでいますが、まさにそれです」。中央大学総合政策学部の保坂俊司教授(比較文明論)は、原発輸出を切り捨てる。 保坂さんによると、日本の伝統的な経済倫理思想を表す言葉は「三方善(よ)し」だ。近江商人に由来するもので、経済活動は生産者、流通者、消費者それぞれが、自己の利益ばかりを優先せずに他者の立場で考えるという発想だ。エコノミックアニマルという言葉は1960年代後半から70年代にかけて、日本人が利己的に振る舞い、経済的利益ばかりに血道を上げることを示す言葉として流行した。保坂さんは「当時でも他者の利益を考え、その上で自らの利益を上げるという姿勢はまだ残っていた。金が金を生むバブル経済の崩壊を経て『他者性』は失われました」という。例として挙げるのが、日本国内だけで独自の進化をしたといわれる携帯電話。生産者側の価値観で作られ、利用者が使わない、使いこなせない機能がたくさんある。「付加価値をつけることで単価を上げ、利益を得てきた」と指摘する。トルコとは、総事業費が2兆円超のシノップ原発建設の優先交渉権で合意した。輸出する側には大きな利益だが、福島原発では、最近も汚染水漏れや停電による冷却システムの停止が起きている。相手に「原発は有益」と胸を張って言い切れるのか。保坂さんは「もしも原発事故があった場合に、他者(相手国)に対して製造者としての責任を果たせるのか。そういう視点を持っているのでしょうか」と疑問を投げかける。
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2013,05,22, Wednesday
*1のように、欧米などの先進国では原発建設が鈍化し、中東やアジアはエネルギー需要の増加を背景に原発新設に動いているのは、中東やアジアでの環境意識と産業振興の程度が、欧米先進国よりも、30年以上遅れているからである。
このような中、日本が特定企業の利益のために、国内では建設できなくなった原発の輸出をトップセールスで行い、原発のリスクヘッジに日本国民の税金を使う約束をするのは、あまりにも後ろ向きの支出であり、決して前向きの支出ではない。また、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、イラン、インドは太陽光発電の適地であるとともに、原発を持つには危険すぎる国でもある。 そのため、日本は、*1、*2のように、世界の技術進歩と、核なき世界への移行を、逆行させないようにすることこそ、与えられた使命だと思う。 *1:http://www.saga-s.co.jp/news/ronsetu.0.2459599.article.html (佐賀新聞 2013年5月21日)「原発輸出」国内政策との整合性を 日本経済復活のため「アベノミクス」を掲げる安倍晋三首相が医療、原発、防災などのインフラ(社会資本)システム輸出へ、積極的な経済外交を展開している。現在の10兆円を2020年までに30兆円に拡大する方針という。なかでも1基当たり数千億円とされる原発輸出に力が入っている。首相は連休中のサウジアラビア、トルコなど中東歴訪で、原発を積極的に輸出していく姿勢を鮮明にした。近々にインド、6月中旬には東欧4カ国を訪問する予定で、そこでも原発輸出が議題になる見込み。「世界中のどこへでもトップセールスに出かける」と首相は意気盛んだ。「原発ゼロ」を掲げた民主党政権も原発輸出を推進した。安倍政権はアベノミクス三本の矢のうち、最も重要な成長戦略に位置づけた。民間の設備投資を喚起する施策であるものの、東京電力福島第1原発の事故が収束していない中で、輸出に前のめりになるのは違和感がある。中東やアジアはエネルギー需要の増加を背景に原発新設に動いている。原発を持たないサウジは30年までに16基、アラブ首長国連邦は今後14基を造る考えという。原発輸出は本体に加えて道路や港湾、送電網の整備など多岐にわたる。巨額の利益が見込めるため、メーカーも政府の後押しを期待している。欧米など先進国では原発建設が鈍化している。日本国内にとどまれば原子力産業の先細りは避けられないが、福島事故の原因究明も終わっていない現状で輸出推進はどうだろうか。地震のリスクのほか、大量の水を使う原発が乾燥地帯に合うのか素朴な疑問もある。最大の懸念は原子力技術が核兵器開発に転用される恐れがあることだ。発電など民生用に使われるならいい。イランや北朝鮮も当初は「平和利用」を訴えていたが、北朝鮮は今や核保有を国是とした。イランもウラン濃縮を試みて核兵器開発能力を手にしたとみられている。そのイランと対立するのがサウジである。これまで日本は国際原子力機関(IAEA)の条約締結国を選んで原子力協定を結んできたが、サウジは締結国ではなく、締結の意思も表明していない。原発輸出によって中東で「核ドミノ現象」を引き起こすことにもなりかねず、慎重の上に慎重を期すべきだ。オバマ米大統領は「核なき世界」を提唱した。現実には核不拡散と核軍縮は極めて困難な道になっているが、核兵器のない世界という到達点を目指す必要がある。日本は唯一の被爆国で、未曽有の原発事故を体験した。その国が核なき世界のビジョンを逆行させるようではいけない。政府は年末までにエネルギー基本計画を策定する。将来の原発の姿をどのように描くかが最大の焦点だが、国内の位置づけを示さないまま、輸出だけを促進するのは矛盾となる。首相は「できるだけ原発依存度を低減させる」としている。その方針との整合性も問われるだろう。最近の共同通信の世論調査では、政府の原発輸出の方針について「賛成」が41.0%、「反対」が46.2%と賛否は分かれた。原発再稼働では反対が大きく上回るなど安全に関しては不信感が根強い。国際的にも説明責任を尽くす必要がある。 *2:http://qbiz.jp/article/17637/1/ (西日本新聞 2013年5月21日) 北海道でメガソーラー建設見直し ソフトバンク ソフトバンクは21日までに、北海道安平町の2カ所と八雲町の計3カ所で計画していた大規模太陽光発電所(メガソーラー)について、建設計画の見直しを決めた。中止も含めて検討する。北海道電力が売電申請を認めなかったことが理由。関係者によると、3カ所で計18万キロワット以上の発電を予定していた。北海道電は4月、固定価格買い取り制度導入に伴う大規模な太陽光発電の受け入れは、出力2千キロワット以上で40万キロワット程度が限度と発表。天候で出力が変わる太陽光発電の割合が増えると電力供給が不安定になるためと説明していた。北海道電によると、2千キロワット以上の売電申請は4月末時点で87件、156万8千キロワットに上り、7割以上が実現困難な見通しとなっている。ソフトバンクの孫正義社長は16日、東京都内で開かれた会合にビデオメッセージを寄せ、「北海道電力だけでなく、他の電力会社も同様に上限を設けて拒否する構えだ。日本の再生可能エネルギーはここでストップしてしまう」と電力各社の姿勢を批判していた。
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2013,05,21, Tuesday
*1より 私は、①あれだけ銃弾が飛び交う中、精神的に高ぶっている猛者集団に軍の規律を維持するため従軍慰安婦が必要だったのは誰だって分かる ②世界各国が持っていたのに、なぜ日本だけが取り上げられるのか ③沖縄で海兵隊員に風俗業者を活用させるよう求めた という橋下氏の一連の発言を聞いた時、売春の正当化と品のなさに、うんざりした。しかし、本当は何がいけないのか、少し事情を知っている女性として、私の意見を書こう。 (1)橋下氏だけがそういう意見なのか? ①で、橋下氏が「誰だって分かる」と言っているように、維新の会の石原代表をはじめとして政治家、官僚、メディアも含め、少なからぬ人がそういう考えを持っていることを明言したい。メディアは、ここぞとばかりに橋下氏のみをバッシングするのではなく、政治家の誰が、どういう女性観を持って、そういう考え方をしているのかについて、アンケートを取って一覧表にし、本質を議論するのが、日本女性も被害者である女性蔑視を解決するための道筋であると思う。何故なら、性的対象とのみ見るその偏った女性観こそが、具体的性行為に至らずとも、現在でも日本社会において、言葉の端々で本音として出され、女性差別となって表れているからである。そして、この発想は、日本では、政治家のみならずメディアや財界にも、少なからず存在する。 (2)従軍慰安婦は、本当に国が強制したのではないのか? 「従軍慰安婦は国が強制したのではなく、民間が自主的に行ったものだ」という弁解もある。それならば、確かにこの時代には禁止されていなかったが、その弁解は本当だろうか。仮に本当であれば、軍の内部に従軍慰安婦がいるのではなく、兵隊が軍の外にある売春宿に通わなければならないはずだが、そうではなく、慰安婦は日本軍に従軍して移動していたのである。ということは、やはり軍の命令で、一般女性を守るという名目で設置されたものと考えるのが自然ではないだろうか。似たような仕組みは、敗戦後の米軍占領下で、官僚の肝入りによって、日本国内にも作られたではないか。 (3)世界各国が売春制度を持っていたのに、なぜ日本だけが取り上げられるのか? 日本だけが取り上げられる理由の一つには、終戦後価値観が大きく変わり、日本は敗戦国だからというのがある。もう一つには、日本は、そういう女性をとりわけ蔑んで扱ってきたからだと思う。私は、1989年頃、ビッグ4の税務部門で、大蔵省を退職してきた人が上司におり、当時のことを話す時、「女は便所の扱いだった」と言っていたのを聞いたことがあり、私は、当然、げんなりした。こういう感覚で扱っていたから、日本は、とりわけ憎まれ、批判されるのではないだろうか。 (4)従軍慰安婦に対する日本軍の強制があったとしても、何度、謝ればいいのか? しかし、私がしっくりこないのは、従軍慰安婦に対する日本軍の強制があったとしても、誰が、何度、謝ればすむのかということだ。当時の価値観では、敗戦国の日本だけに売春制度があったわけではなく、また、戦争責任に関する断罪はすでに終わっている。そして、謝罪するための税金は、自らも女性蔑視の被害者である日本女性を含む日本国民全員が支払ったが、その女性蔑視の元となっている儒教の精神は、中国、朝鮮半島から日本に伝わったものだ。そのため、日本から金を引き出すツールとして、何度も、現在の日本人全員に対して戦争に関する歴史責任を持ちだすのは、やめてもらいたいと思う。 *1:http://digital.asahi.com/articles/TKY201305190413.html?ref=comkiji_redirect&ref=nmail (朝日新聞 2013.5.19) 維新混乱、崖っぷち 石原・橋下氏会談、収束へ注文次々 頼みの世論離れる紙面で読む 日本維新の会の橋下徹、石原慎太郎の両共同代表が19日、名古屋市内で会談した。橋下氏は旧日本軍の慰安婦などをめぐる発言に伴う混乱を陳謝した。ただ、朝日新聞の世論調査で維新への期待感は下がっており、党の立て直しは難しさを増している。会談は事態収拾へ石原氏が要望した。同席した松井一郎幹事長らによると、橋下氏は一連の発言について「申し訳なかった。丁寧に説明していきます」と陳謝。ただ、発言そのものは撤回しなかった。石原氏は「色々な問題提起をするなら国政だ」と述べ、参院選への立候補を改めて要請。だが、橋下氏は「勘弁して下さい。それはどうしてもできない」と固辞した。石原氏の要求は続いた。橋下氏が続けるツイッターを問題視して「やめなさい」と注文。慰安婦発言についても「きちんと論文にまとめて発表した方がよい」と助言した。一方で先の大戦を「侵略」とする橋下氏と、「侵略ではない」とする石原氏は真っ向から対立。橋下氏が「世代の違いがある」と主張すると、石原氏は「もっと歴史の勉強をしなさい」。最終的に「侵略」の党見解は統一しないことで一致した。橋下氏の一連の発言は世論にも影響している。朝日新聞の18、19日の世論調査で参院選比例区の投票先に維新を挙げた人は7%で、1月の調査(16%)に比べ半分以下に落ちた。慰安婦や風俗業をめぐる発言についても、4分の3が「問題がある」と回答。国会議員団には橋下氏への不満が高まっており、若手議員は「全部、発端は橋下さん。素直に謝るしかない」。 好調を維持する自民党からは維新と距離を置く発言が相次ぐ。小泉進次郎青年局長は19日、山形市で記者団に「(維新とは)全くスタンスが違う。連携は頭の中にまったくない」と強調。党幹部も「我々は公明党との関係を大事にしていけばいい」と話す。参院選で維新の議席が伸び悩むと、安倍政権が目指す憲法改正の可能性が遠のきかねないが、派閥会長の一人は「憲法改正はじっくり時間をかけてやっていくしかない」と語った。維新に流れた支持層を取り戻したい民主党。海江田万里代表は19日、京都市内で記者団に「維新を支持していた人が民主党にそのまま来るとは思っていない。0・1%でもいいから、支持を広げる地道な努力をするしかない」と語った。 *2:http://digital.asahi.com/articles/TKY201305190451.html?ref=comkiji_redirect&ref=nmail_20130520mo&ref=pcviewpage (朝日新聞 2013.5.19) 元慰安婦「平和でなければ」 韓国の87歳・84歳、沖縄・広島で語る 旧日本軍の「慰安婦」だった韓国の女性2人が19日、沖縄と広島でそれぞれ体験を語った。日本維新の会の橋下徹共同代表による慰安婦問題をめぐる発言が波紋を広げるなか、参加者からも政治家の言動に怒りや懸念の声が相次いだ。「過去の過ちは今の政府が解決しなければならない」。沖縄県の本土復帰41年に合わせ、宜野湾市で開かれた集会。元慰安婦の金福童(キムボットン)さん(87)はこう呼びかけた。日本統治下の朝鮮半島で生まれた。14歳だった1941年、家に来た日本人に脅され、中国、インドネシア、マレーシアなどの戦場に送られた。目や足が悪く、支えられて歩く状態だが「二度と私のような被害者を生まないように」と伝えたかったという。「慰安婦は必要だった」と発言した橋下氏には、「必要というなら自分の娘を送れるのか。妄言で過去の歴史は変えられない。若い人には真実を学んでほしい」と感じる。この集会は沖縄本島で17日から続いていた「5・15平和行進」の締めくくりだった。激しい雨の中、主催者発表で約3500人が集まった。「県民を愚弄(ぐろう)する発言は許さないぞ!」。集会では橋下氏の発言を糾弾するシュプレヒコールがあがった。主催した沖縄平和運動センターの山城博治事務局長(60)は「本土は彼が政治家を続けることを許すのか。我々は世論も問題視している」と話す。 広島市では元慰安婦の吉元玉(キルウォノク)さん(84)が体験を語る集会があった。11歳の時、中国東北部(旧満州)の慰安所で働かされた。「悔しくて、胸が痛くて。いつも心は寂しい」。いまも残る心の傷を語った。体調が悪く、車いすと付添人がなければ動くことができない。日本の政治家が元慰安婦を苦しめる発言を繰り返す現状を憂慮する。「日本がまた戦争の準備をしているように感じる。平和でなければ、私みたいな人をまたつくってしまう」。会場には予定を上回る220人が訪れた。その一人、広島県呉市の久保浩之さん(81)は被爆者だ。「自分の国がしてきたことにきちんと目を向けて反省しなければ、世界に原爆の悲惨さも伝わらないのではないか」と語った。 *3:http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/editorial/42499.html (福井新聞 2013年5月15日) 橋下市長「慰安婦」発言 正当化してどうなるのか 安倍政権が誕生して以来、過去の歴史認識に対する見直し発言が相次ぎ、国内外から右傾化を懸念する声が高まっている。この機に乗じたか、日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長が、旧日本軍の従軍慰安婦に関し「軍の規律を維持するために必要だった」と容認する発言をした。こうした発言がさらに国際問題化し、日本批判が高まる現実をどう認識するのか。橋下氏はこれまでも過激な発言を繰り返し、既成政党との違いを鮮明にしながら、維新の会を地方政党から衆院第3党の地位まで拡大させた。それは既成概念や古びた常識に対する挑戦でもあった。その延長線上に従軍慰安婦発言があるのだろうか。そうであるならば、記者の質問や個人のツイッターではなく、堂々しかるべき公の場で発言すべきではないか。「あれだけ銃弾が飛び交う中、精神的に高ぶっている猛者集団には必要なのは誰だって分かる」とし、「世界各国が持っていた。なぜ日本だけが取り上げられるのか」とも述べた。それだけではない。先日、沖縄の米軍普天間飛行場を視察した際には、幹部に対して海兵隊員に風俗業者を活用させるよう求めたことも明らかにした。こうした一連の発言は、単に「率直な話」というだけでなく「確信犯」であり、反響の大きさを十分意識しての言動だろう。たとえ、戦時下の修羅場に必要な存在だったとしても、現代に正当化することは許されない。沖縄では少女暴行事件などが多発し、米軍への不信感が根強い。それなら風俗の女性を活用すればいい、という発想があるとすれば、女性を性行為の対象としかとらえない男性の差別意識であり、人権侵害である。「建前論では人間社会は回らない」とする橋下氏。ならば、欲望むき出しの本音の社会は平和で心豊かなのか。慰安婦を生んだ忌まわしい歴史、戦争責任と向き合い、それを乗り越えていく責務が政治家にはある。もう一方の共同代表、石原慎太郎氏も「軍と売春は付きものだ」と擁護する。維新の会は昨年の衆院選以降、急激に失速している。参院選に向け発信力ある橋下氏のスタンドプレーにも見える。陰る人気を反応のいいツイッターでカバーしようとするなら、浅薄で悲しい戦略だ。海外だけでなく、安倍政権内からも批判が出ている。その政権だが、安倍首相は「侵略戦争」に対して「侵略の定義は国際的にも定まっていない」と述べ、米国内からも懸念の声が上がると軌道修正し、沈静化を図った。だが先日、自民党の高市早苗政調会長は植民地支配と侵略を認めた1995年の村山富市首相談話に関して「違和感がある」と述べた。政権の歴史認識は、本音のところでは何も変わっていない。こうした発言が国益につながるとは思えない。4月に英国で開かれた主要国(G8)外相会合は「紛争下での性暴力防止」が主テーマだったはずだ。「個人の発言だ」と火消しに躍起となる政府や維新の会幹部の姿に、政治の劣化が止まらない現状が透けて見える。 *4:http://www.shinmai.co.jp/news/20130515/KT130514ETI090007000.php (信濃毎日新聞 2013年5月15日)橋下氏の発言 女性の尊厳踏みにじる 日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長が従軍慰安婦を認める発言を繰り返し、波紋を広げている。戦争で女性が兵士に利用されるのは仕方ない、と言っているようなものである。個人的な見解であったとしても女性の人権や尊厳を踏みにじる言葉で、容認できない。過去の歴史をめぐって中国や韓国と緊張が高まる中、事態をより悪化させることにもなりかねない。政治家として軽率に過ぎ、資質が厳しく問われよう。この発言は13日、大阪市役所で記者団とのやりとりで出た。「猛者集団に休息を与えようとすると慰安婦制度が必要なのは誰だって分かる」「軍を維持し、規律を保つために、当時は必要だった」などと語った。一方、戦争の結果なので慰安婦になった女性には配慮が要るとも述べている。翌日も「人間、特には男に、性的な欲求を解消する策が必要なことは厳然たる事実」とし、慰安婦制度そのものを是認するような発言を続けた。橋下氏は従軍慰安婦問題について、かねて旧日本軍が強制した証拠はないと主張していた。今回の発言はさらに踏み込んだ。このほか、在日米軍の幹部に、米兵による風俗業者の利用を促したことも明らかにしている。橋下氏の発言に、韓国政府関係者は「歴史認識と女性の人権尊重意識の深刻な欠如を露呈した」と批判し、在日米軍の高官は「われわれが米兵に徹底させようとしている価値観と相いれない」と苦言を呈した。安倍晋三内閣の閣僚や与野党幹部、国内の市民団体などからも批判が続出した。安倍政権からも歴史認識をめぐって危うい発言が続く。安倍首相は過去の侵略と植民地支配を謝罪した村山談話を「そのまま継承しているわけではない」と国会で答弁。中韓は反発し、米国からは懸念の声が出ている。結局、菅義偉官房長官が歴代内閣同様に引き継ぐと明言し、軌道修正を図った。その直後には自民党の高市早苗政調会長が再び、安倍政権の歴史認識は歴代とは異なるとの認識を示し、党は火消しに追われている。橋下氏の発言で、歴史認識問題が終盤国会における論戦の焦点になる可能性が出てきた。慰安婦問題への対応では、日本政府は国連など国際社会からも厳しくみられていることを忘れてはならない。政治家が国際的な人権感覚や常識を疑われるようでは、国の先行きはおぼつかない。 PS(2013年5月24日追加):オランダ人で、第二次大戦中に旧日本軍により慰安婦にさせられた被害者の記事か掲載されていました。これによれば、強制であるだけではなく、レイプであり、慰安婦は公娼ではありませんので、当時の法律に照らしても違法です。メディアは、正確な情報を提供すべきです。 *5:http://mainichi.jp/select/news/20130524k0000e030263000c.html (毎日新聞 2013年5月24日) オランダ人元慰安婦:「償い事業」責任者が証言集出版 第二次大戦中に旧日本軍により慰安婦にさせられたオランダ人被害者に対する「償い事業」の実施責任者だった女性が、元慰安婦8人の証言記録集「壊された花」を8月15日に出版する。元慰安婦は死ぬまで心的後遺症に苦しめられたという。元責任者は「大多数の元慰安婦が死ぬ一方、政治家が歴史をねじ曲げている。若い人に悲惨な事実を学んでほしい」と話す。筆者はオランダ・ハーグ在住のマルガリータ・ハマー・モノ・ド・フロワドビーユさん(71)。「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)がオランダで実施した元慰安婦への支援事業(1998〜2001年)で、事業実施委員長を務めた。ハマーさんは79人の元慰安婦を認定する作業の中で被害者と親しくなり、そのうちの8人から当時の状況やその後の人生を聞き、まとめた。元慰安婦の一人、エルナさん(仮名、06年に81歳で死亡)は証言集に「若く咲き誇っていたあの日/血塗られた太陽に花は壊された/傷は永遠に続く」との詩を死の数カ月前に寄せた。血塗られた太陽は日の丸を指す。 日本軍は1942年、当時オランダの植民地だったインドネシアに進攻。オランダ人民間人9万人、軍人4万人を収容所に入れた。エルナさんは43年に母親とジャワ島中部アンバラワの収容所に入れられた。44年2月に軍の将校が来て18歳だったエルナさんを含む17〜28歳の女性17人をスマランに連行。エルナさんは軍医による性病検査の後、将校に強姦(ごうかん)され、軍医にも強姦された。拒否しても「収容所の家族を殺す」と脅された。2カ月後、慰安所は軍幹部の命令で閉鎖され収容所に戻されたが、妊娠がわかり中絶した。戦後、スマランの慰安所を設置した軍人や民間人10人がBC級戦犯としてバタビア臨時軍法会議で死刑を含む有罪判決を受けた。エルナさんは戦後、オランダ兵と結婚したが度々、慰安所を巡る悪夢に悩まされた。特に夫が亡くなってからは心的外傷が強まり眠れない日が続いた。「慰安婦にされた被害者の人生全体が台無しにされ、傷が癒えることはなかった。慰安婦制度が必要だったなどという政治家の発言はおかしい」とハマーさんは話す。
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2013,05,16, Thursday
東京新聞より *1、*2のとおり、公明党が改憲容認に転じるように、96条と環境権をセット改正する案が浮上しているが、私は、96条改正は邪道であり、必要な改正は今の条件のまま、一つづつ国民に問う形で行うべきだと思っている。また、環境権の創設は必要ない。 何故なら、良い環境に住む権利(=環境権)は、現行憲法でも、第25条の「健康で文化的な生活の保証」という規定で確保されており、それは、*4の環境基本法で「現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的」として、具体的に規定されているからである。 しかし、*3のように、水俣病が起こり、被害者救済の判決が出るのに57年も要した。その理由は、日本国憲法も骨抜きにされ、第25条の「国民の健康で文化的な生活の保証」は徹底されず、公害を黙認して被害者を犠牲にし、産業を優先したことにある。もちろん、産業は大切だが、産業や経済の発展のためには何をしてもよいという価値観がよくないのだ。そして、この価値観は、今でも、原発再稼働推進派の意見や、福島第一原発事故後の情報開示と避難誘導、居住制限区域の設定等で健在ぶりが示されているが、そもそも、産業の育成・発展は、国民がより健康で文化的な生活を送るために行うものであるため、本末転倒なのである。 では、どうすればよいのかと言えば、*4の環境基本法に罰則規定をつけ、人間を始めとする生物が、生命を維持して心地良く住める環境を守ることを義務付ければよい。これは、普通の法律改正であるため、国会がその気になれば、すぐに行うことができる。それに伴い、一般国民が、「環境を守ることは、健康で文化的な生活を送るための必要条件である」ということを認識できるよう、環境省、司法、メディアが運用を改めるべきなのである。 *1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013050602000121.html (東京新聞 2013年5月6日) 公明ジレンマ 参院選 改憲ブレーキ役 夏の参院選へ改憲が大きな争点となりつつある中、公明党の対応が揺れている。「平和の党」を看板に、与党として保守色を強める自民党のブレーキ役を自負するものの、改憲慎重の一辺倒では取り残されるとの焦りからだ。公明党が改憲容認に転じれば、参院選後に改憲勢力が三分の二に達する可能性が高まる立場の重みも苦慮する一因になっている。公明党の斉藤鉄夫幹事長代行は四月三十日、与野党の改憲勢力による推進会合に出席し「党の憲法への考えは『加憲』だ。最も現実的、穏当だと確信している」と主張した。公明党は完全な護憲勢力ではないが、政権復帰後は改憲問題で「時期尚早」との立場を取った。国会で再開された憲法審査会の議論を見守るべきだと訴え、改憲に注目が集まる参院選での争点化は避けたいのが本音だ。しかし、最近は幹部が党方針の「加憲」を強調している。加憲とは、九条の「戦争の放棄」などの根幹部分は堅持しつつ、時代の変化に応じ環境権などを新設する考え方だ。幹部の転換は、改憲要件を定めた九六条問題で、与野党の改憲勢力が緩和を先行させる意見集約に向かっているのが大きい。公明党は九六条先行論にも、国民に浸透していないと異論を唱えてきたが、改憲勢力の自民、日本維新の会、みんなの三党が先行論で固まれば、反対するだけでは歯止めにならなくなる可能性が出てくる。三党が参院選で、改憲の発議に必要な三分の二の議席を得る可能性は低いが、先行論が勢いづきかねないとの懸念もある。最近、公明党幹部が九条など重要な条文を切り離し、それ以外なら要件緩和もあり得るとの柔軟姿勢を示したのも、自民党をけん制する狙いからだ。公明党は参院選公約で、改憲をどう位置付けるのか議論の最中。山口那津男代表は「自民党との連立は揺るがない」と強調するが「平和の党」の存在意義が問われている。 *2:http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013051300966 (時事ドットコム 2013/5/13) 96条先行「難しい」=環境権とセット改正も-自民・船田氏 自民党の船田元・憲法改正推進本部長代行は13日夜、BS11の番組で、憲法改正の発議要件を定めた96条の先行改正について、「96条単独ではかなり厳しい」との認識を示した。船田氏は「(憲法の)どこをどう変えるか分からないうちに96条改正というのは、危機感や懸念が国民に結構あると思う」と指摘。同時に「新しい人権や環境権など比較的多くの政党が賛成するものとセットで出すことも考えなければならない」と述べた。 *3:http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130419/trl13041903170001-n1.htm (MSN産経ニュース 2013.4.19) 水俣病判決 なぜ57年もかかったのか 水俣病の患者認定をめぐって、最高裁が国の認定基準(判断条件)で患者と認められないケースでも、司法により独自認定できる道を開いた。行政の審査ではねられた被害者を、訴訟を通じて救済する新たな仕組みである。長い間、認定を求め続けてきた人々にとって朗報だ。ただ、来月で水俣病の公式確認から57年になる。なぜこれほどの年月がたってしまったのか。かたくなな対応を続けた環境省、甘い判断しかできなかった政治家ら関係者は、厳しく反省すべきだ。司法も判断が遅すぎたという批判を免れない。最高裁は、熊本県水俣市の女性の遺族の行政訴訟では水俣病と認定するよう命じた2審福岡高裁判決を支持した。遺族側の勝訴が確定し、最高裁で患者と認定された初のケースとなった。大阪府豊中市の女性の訴訟では、水俣病と認めなかった2審大阪高裁判決を破棄して審理を差し戻した。患者としての認定を求める人々に立ちはだかってきたのが、昭和52年の旧環境庁による現行の認定基準だ。感覚障害や運動失調、視野狭窄など複数の症状が重なっていることが大原則で、行政審査は今回の原告のような感覚障害のみの場合は認めようとせず、「患者切り捨て基準」と批判された。事実、潜在患者が20万人ともいわれる中で認定患者は2975人(今年3月末時点)と少ない。最高裁は「個々の事情と証拠を総合的に検討して個別具体的に判断すべきだ」との判断を下し、感覚障害だけの原告を患者と認定した。行政よりも柔軟な姿勢を示したといえる。今回の判決を受け、環境省は「国の判断条件は否定されていない」と認定基準を見直さない考えを示したが、基準の運用に幅を持たせることは必要である。水俣病は、工場から海に垂れ流されたメチル水銀が魚介類に蓄積され、それらを食べた人々が病気になった健康被害である。日本が急激な経済発展を続ける中で生み出された成長の負の部分で、「公害の原点」といわれている。公害を克服する努力は重ねられたが、近年もダイオキシンやアスベストなど新たな健康被害が起きている。そうした事態を未然に防ぎ、起きてしまった場合の補償制度を確立するため、政治や行政は一層、知恵を絞ってほしい。 *4:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H05/H05HO091.html (環境基本法) (目的) 第一条 この法律は、環境の保全について、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。 (定義) 第二条 この法律において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。 2 この法律において「地球環境保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。 3 この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。第二十一条第一項第一号において同じ。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。以下同じ。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。 (環境の恵沢の享受と継承等) 第三条 環境の保全は、環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること及び生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており人類の存続の基盤である限りある環境が、人間の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきていることにかんがみ、現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように適切に行われなければならない。 (環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等) 第四条 環境の保全は、社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減することその他の環境の保全に関する行動がすべての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われるようになることによって、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨とし、及び科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が未然に防がれることを旨として、行われなければならない。 (国際的協調による地球環境保全の積極的推進) 第五条 地球環境保全が人類共通の課題であるとともに国民の健康で文化的な生活を将来にわたって確保する上での課題であること及び我が国の経済社会が国際的な密接な相互依存関係の中で営まれていることにかんがみ、地球環境保全は、我が国の能力を生かして、及び国際社会において我が国の占める地位に応じて、国際的協調の下に積極的に推進されなければならない。 (国の責務) 第六条 国は、前三条に定める環境の保全についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、環境の保全に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。 (地方公共団体の責務) 第七条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、環境の保全に関し、国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。 (事業者の責務) 第八条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずるばい煙、汚水、廃棄物等の処理その他の公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有する。 2 事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が廃棄物となった場合にその適正な処理が図られることとなるように必要な措置を講ずる責務を有する。 3 前二項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が使用され又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するように努めるとともに、その事業活動において、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、役務等を利用するように努めなければならない。 4 前三項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境の保全に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。 (国民の責務) 第九条 国民は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、その日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。 2 前項に定めるもののほか、国民は、基本理念にのっとり、環境の保全に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。 <以下は、「続き▽」というボタンをクリックすれば見られます> 続き▽
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2013,05,14, Tuesday
(出典:内閣府 平成23年版男女共同参画白書) *1の記事に、「長年の取り組みにもかかわらず、具体的な成果はなかなか出てこない」と書かれているが、日本には、いまだに保育園の待ち行列があり、学童保育は貧しく、女性労働がM字カーブを描き、子育てをすれば生涯所得が大きく減少する環境である。そのような中では、自己実現としての仕事と家庭の両立という当たり前の希望がかなえられず、社会が女性に仕事か子育てかの選択を迫っているのであって、少子化が女性の問題であるわけがない。むしろ、このように基本的人権を行使できない環境におかれた日本女性は、被害者である。 そのため、*1のように言われると、私は、成果が出ないのは当然なのに、何を言っているのかと思う。また、「妊娠、出産についての正しい知識を伝えるための手帳を作る案」が出ているとのことだが、子どもを産み育てる環境が整っていない以上、子育ての知識を得れば得るほど、また、現状を知れば知るほど、責任感のある人は「子どもを産まない」という意志決定になるのだということを忘れてはならない。そして、それが、こりごりして、子どもを一人だけで止める人の多くの理由である。 なお、多くの女性を非正規雇用の低賃金労働者として雇っている日本社会の現状では、それらの女性は、労働基準法や男女雇用機会均等法による保護は受けられないため、「これまでの施策のどこが足りず、今後どこを強化すべきか」などと言う方がおかしく、「施策は骨抜きにされ、重要な部分は変わっていなかった」と言うべきである。 *1:http://www.nikkei.com/article/DGXDZO54949800T10C13A5PE8000/ (日経新聞 2013/5/13) 少子化対策は広い視野で 何度やってもうまくいかないと、あきらめたり、つい手近な対策に飛びついたりしたくなる。そんな瀬戸際にあるのが少子化対策かもしれない。長年の取り組みにもかかわらず、具体的な成果はなかなか出てこない。だが、少子化対策に王道はない。これまでの施策のどこが足りず、今後どこを強化すべきか。限られた予算の中で優先順位をつけながら、社会全体の問題として取り組んでいくことが必要だ。少子化対策の範囲は広い。最初は仕事と子育ての両立支援を中心に始まり、男性を含めた働き方の見直しなどにも広がった。だが、いずれも十分な成果が出たとはいいがたい。1人の女性が生涯に産む子どもの数の推計である合計特殊出生率は、2011年時点で1.39だ。国民が持つ結婚や出産の希望がかなえば1.75程度になるとの試算もある。こうした希望の実現を妨げている原因を一つ一つ取り除かなければならない。このため3月に、内閣府に有識者会議が設けられた。育児だけでなく、結婚や妊娠、出産についての対策を考える場だ。これまで手薄だった分野であり、意義は十分にある。ただ、ここで大事になるのは、「妊娠、出産は女性の問題」などと小さくとらえないことだ。妊娠、出産についての正しい知識を伝えるための「手帳」を作る案が出ているが、知識の必要性は女性に限ったことではないし、知識不足ばかりが少子化の原因ではない。若いうちから不妊に悩む夫婦もいれば、仕事や家計の状況から結婚・出産に踏み切れないカップルもいる。とりまとめはこれからという。優先順位を含め、十分な議論が必要だろう。「女性の問題」ととらえる限り、関心を持つ人は減り、少子化対策は前進しない。多様な視点からの、多様な取り組みが欠かせない。少子化の問題は、一人ひとりに突きつけられた課題と受け止めなければならない。
| 男女平等::2013.5~2013.11 | 01:37 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,05,10, Friday
今日の*1の記事は、前半はそのとおりだが、最後の「スーパーウーマンの呪縛から解き放たれてこそ・・・」というのはおかしい。何故なら、「スーパーウーマン」の定義が間違っているからである。例えば、サッチャー氏はスーパーウーマンである。もし、彼女が独身だったり、子どもがいなかったりすれば、スーパーウーマンではないのかと言えば、そんなことはなく、サッチャー氏がスーパーウーマンであることに変わりはない。
早く言えば、(当然のことだが)仕事の評価は仕事ですべきであり、仕事の評価にプライバシーを持ち込むのが間違いだということである。何故なら、仕事の評価を仕事でしなければ、仕事をした結果として生産される財やサービスの質と仕事の能力が連動しなくなり、これは、個人がよい仕事をするために努力しようとする意欲をそぐとともに、経営上も、よい結果をもたらさないからである。そして、それは、男性か女性かを問わず同じだ。つまり、例えば、おもちゃ会社の役員として、子育ての経験をしたことのある人が優れていたとすれば、子育ての経験をキャリアとして活かすことができたと言えるが、子育ての経験のみが仕事の能力を形成しているわけではなく、また、すべての仕事にそれが当てはまるわけでもないため、結婚や子育て自体が仕事の能力に影響するとは限らないということなのである。 *1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130510&ng=DGKDASGU2801Y_Q3A430C1MM8000 世界を動かす(2) ガラスの天井破る 企業トップ、誇りと試練 オバマ政権下の軍事予算削減で揺れる米国の防衛産業。重厚長大の代表格で「男の牙城」だったこの業界で、女性登用が瞬く間に進んでいる。 ●軍事大手幹部に ロッキード・マーチンで1月、女性初の最高経営責任者(CEO)にマリリン・ヒューソン(59)が就任。ゼネラル・ダイナミックス、BAEシステムズ米国法人を合わせ米防衛大手3社のトップに女性が並んだ。女性の昇進を阻む見えない障壁「ガラスの天井」を突き破った女性たちはさらに続く。ロッキードは最大事業の最新鋭ステルス戦闘機F35担当副社長に女性のロレーン・マーチン(50)を起用。1月に事業運営全般を統括する副社長にリンダ・ミルズ(63)を据えたノースロップ・グラマンは幹部の半数が女性だ。軍事予算削減の非常時だからこそのイメージ先行ともとれるが、ミルズは「様々な人材が新たな価値を生み出すことはデータが裏付けている」と女性登用は経営戦略の一つと強調する。実際、経営陣に女性がいる企業の業績はいいとの調査は多い。例えばクレディ・スイスが昨年発表した調査では、女性取締役がいる世界の企業の過去6年間の株価は、同規模の男性のみの企業より26%高かった。多様な人材効果などが影響したと分析する。ペプシコ、ヒューレット・パッカード、IBM、ヤフー……。世界的な米大手企業で女性トップが目に付くようになった。とはいえ米主要企業「フォーチュン500」社のうち女性が経営する企業は21社。過去最高だが4%にすぎない。地位ではガラスの天井を破っても試練がつきまとい、一挙手一投足が注目される。妊娠中にヤフーCEOに就き、2週間の産休後に復帰したマリッサ・メイヤー(37)。2月に在宅勤務廃止を打ち出すと、働く母親らの反感を買った。同時期に同じ方針を発表した家電量販大手の男性CEOは話題にならなかった。3月、フェイスブック最高執行責任者(COO)のシェリル・サンドバーグ(43)の著書「リーン・イン(一歩前へ)」が大論争を呼んだ。女性は社会や制度の影響もあって昇進を自制しているとの指摘に「背中を押された」との賛同の一方、30億円近い彼女の年収などを挙げて「一般女性とはかけ離れた立場での意見だ」と批判も上がった。 ●理想像の呪縛 女性学研究で知られるバーナード・カレッジ学長のデボラ・スパーは、社会は女性経営者に男性以上の資質を求め「スーパーウーマン」像を押しつけていると指摘。「スティーブ・ジョブズ(前アップルCEO)の父親ぶりは問われないが、女性は仕事に加え、良妻賢母ぶり、果ては外見まで評価される」。ハーバード経営大学院の研究者らの昨年の調査では、各国企業の男性役員の90%が既婚だったが、女性は72%。子供がいる役員は男性で90%、女性は64%にとどまった。 スパーは、全てを手にしたかのようなメイヤーらも含め「何も引き換えにせずにトップの地位についた女性はいない」と言い切る。日本より登用の進む米国だが、経営手腕が公平に評価され、スーパーウーマンの呪縛から解き放たれてこそ、企業の未来も広がる。
| 男女平等::2013.5~2013.11 | 06:12 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,05,09, Thursday
*5より
イギリスでは、*1のように、マーガレット・サッチャー氏が1979年に首相となり、何を言われても改革を貫徹して英国病を撲滅し、フォークランド紛争でも毅然として戦って領土を守った。先日、スペインの女性アナウンサーがサッチャーさんの死を悼んで「もし彼女がわが国の人だったら、フォークランド諸島はスペイン領になっていただろう」と言っていたのを聞き、そのウィットの効いた冗談に笑った。但し、現在の日本の福祉は1979年以前の英国より貧弱で、経済改革は30年遅れているにもかかわらず、後戻りしているため、現在の改革の方針については、単純に英国の真似をすればよいというものではない。 そして、*3で、日経新聞は「『鉄』はいらない。リーダー、自然体で輝く」と書いている。私もサッチャー氏と同じタイプなのでわかるが、サッチャー氏の場合は、自然体で改革を断行した結果、周囲に「鉄の女」に見えたに過ぎず、本人が無理をして生きたわけではない。しかし、自分が周囲に流されて生きてきた結果、得をしたタイプらしいこの日経新聞記者には、それが理解できないということだ。 また、*2のアメリカのケースを見て、日本人の中には、これが批判される理由がわからないという人も多いだろう。何故なら、日本は、*3のように、日経新聞という大メディアが、「鉄はいらない」「(女は)しなやかなのが良い」「男性ホルモンの時代は終わった」「レズビアンで、ありのままだ」「母性こそ力」「男と伍するのでなく自然体の指導者が受け入れられる時代」などと、性意識を前面に出し、まさに女性に対するジェンダー丸出しのメッセージを発しているレベルだからである。そして、日本では、このようなことが日常茶飯事であるため、これにクレームを言う女性の方が、逆に批判されることが多い。しかし、*2は、やはり評価における女性差別であり、アメリカには、それを直ちに指摘する土壌があって、オバマ米大統領は批判されたら本人に謝罪したのである。これが女性差別である理由は、女性の州司法長官に実力よりルックスでなったかのような発言をしたからであり、ハリス州司法長官が仕事の能力と実績で州司法長官になったことを軽視しているからである。つまり、アメリカでは、評価基準も男女平等であるべきだという価値観が、日本より浸透しているということである。 *3の記事で、「母性こそが力」「もう(男の)まねしない」と主張した日経新聞は、女性は、どの職業でも「母性さえあれば、優秀な人材としてやっていける」とでも考えているのだろうか。また、毅然として自分の意思を貫くリーダーの姿を「男のまね」と考え、女は「しなやか(姿態などがなよなよして、たおやかなさま)」なのが自然体だと思っているのだろうか。これは、女性に対して失礼なイメージの押し付けである。女性であれ、男性であれ、自然体で鉄の意志を持ち、特定の誰かと張り合わなくても男女全員の中でトップとなる能力を磨いてきた人はいるし、また、そういう人でなければ、指導者となる資格はないだろう。 なお、*4の記事では、「日本では政治家の登用進まず」と、例のごとく政治家の批判を行っている。しかし、*5のように、一般企業の女性登用は、部長級以上でも2.7%に留まり、取締役では2.6%あるものの、これには社外取締役で女性を登用してパーセンテージを上げているという現実がある。ちなみに、わが国の衆議院議員の女性比率は7.9%で、参議院議員の女性比率は14.0%である。 そのため、*3のような記事を書き、かつ、*4のように政治批判している日経新聞は、自らの記者、管理職、取締役に占める女性割合を公表すべきだ。そして、日経新聞の女性記者は、男のまねはせず、ワークライフバランスを保って自分で子育てしながら、母性だけで何人取締役になっているのか知りたいものである。こう言うと、「憲法に定められた男女平等は公務員のみを縛るもので、一般人には関係がなく、メディアは憲法で言論の自由・表現の自由が保障されている」などと言って逃げる人がいる。しかし、そのようなご都合主義の憲法解釈は、して欲しくない。また、長くは書かないが、”母性”というのは、現在、種々の疑問がある概念でもある。 *1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130410&ng=DGKDZO53803480Q3A410C1EA1000 (日経新聞社説 2013.4.9) サッチャー改革が日本に問い直すもの (ポイント)歴史を転換させた為政者が死去した。1979年から11年にわたり英国の首相を務めたマーガレット・サッチャー氏である。国の長期衰退に歯止めをかけ経済を復活させた元首相の足跡から、日本が学ぶものは今なお多い。英国は18世紀の産業革命により「世界の工場」に上り詰めたが、20世紀に入ると米国やドイツの追い上げを受け、70年代は衰退の一途だった。その様子を世界は「英国病」と名づけた。自国の復活を期してサッチャー氏がとった基本的な政治姿勢は、国の富を生むのは政府ではなく、企業や個人の自由な活動であるという考えを貫くことだった。そうした哲学にもとづき、強すぎる労働組合の権利制限、減税、外資の導入、規制緩和などの具体策を矢継ぎ早に打ち出した。そのなかで特にサッチャー氏が重視したのが、国営企業の民営化だった。批判や周囲との摩擦を覚悟で多くの経済改革を進めたサッチャー氏だが、究極の目的は「魂を変えること」と述べている。自立心あふれる企業と個人がまじめに経済活動をし、正当に報われる社会が理想の姿だった。 *2:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2431923.article.html (佐賀新聞 2013年4月6日) 米大統領、失言で謝罪 / 「彼女はルックス抜群」 オバマ米大統領が、女性のカリフォルニア州司法長官を「全米でも抜群にルックスが良い司法長官」と形容したことで批判を浴び、本人への謝罪に追い込まれた。カーニー大統領報道官が5日明らかにした。大統領は4日に同州内で開かれた民主党のイベントで、カマラ・ハリス州司法長官を紹介。その際にハリス氏の容姿を褒めた上で、聴衆に「事実じゃないか。そうだろう」と同意を求めた。これに対し、女性の成功を容姿と関連づけるのは「男女差別的」ではないかとの批判がメディアなどから上がり、大統領は同日中にハリス氏に電話をかけて謝罪した。 *3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130509&ng=DGKDASGU01004_R00C13A5MM8000 (日経新聞 2013.5.9) 世界を動かす(1) 「鉄」はいらない リーダー、自然体で輝く 女性(Woman)が政治、経済、社会などあらゆる分野で新たな扉を開こうとしている。未来へ向けたその動きを世界で追った。 ●もうまねしない ニューヨークで今、ひときわ脚光を浴びる女性政治家。来年退任するブルームバーグ・ニューヨーク市長の後任争いで有力候補に浮上した市議会議長のクリスティン・クイン(46)だ。大きな身ぶり手ぶりに、大口を開けて快活に笑う。前国務長官のヒラリー・クリントンら従来の米女性政治家と比べ「肝っ玉母さん」のような親しみやすさ。低所得者への住宅供給など政策は市民目線で「中産階級の生活を守る」と訴える。自然な振る舞いが好感を呼ぶ。2011年には女性弁護士と同性婚。支持者はいう。「この街で誰よりも活力に満ち、女性でレズビアンで、ありのままだ」。4月に死去した英国初の女性首相マーガレット・サッチャーは「鉄の女」と呼ばれた。男性支配の政界でサッチャーが示した男と張り合う姿勢は女性政治家の一つのモデルになった。 そして今、女性首相・大統領は20カ国・地域(G20)で5人、さらに10人ほどが世界各地で国を率いる。指導者心理に詳しいダブリン大教授のイアン・ロバートソンは「女性指導者が少ない時代は不安から男性の手法を模倣しがちだった。今や不安は薄れ自然体で臨めるようになった」と分析。しなやかで、時に決然とした清廉さや母性が危機や紛争後に力を発揮する。北欧の島国アイスランド。客室乗務員から政界に転じた同国初の女性首相ヨハンナ・シグルザルドッティル(70)は「聖ヨハンナ」と国民の敬愛を集めた。 「男性ホルモンの時代は終わった」。08年秋の金融バブル崩壊による経済破綻。シグルザルドッティルは国を危機に陥れた男性主導の政治との決別を掲げ、09年2月に首相に就いた。「人々の怒りが渦巻く中、ほかに国民の信任を取り付けられる人はいなかった」と元経済担当相のギルビ・マクノソンは振り返る。就任後、しきたりや特権層のなれ合いにくみせず、中央銀行総裁に転じていた元大物首相を更迭、失政の責任をとらせた。経済再建に向け与党すら反対した歳出削減や増税も断行。その副作用で4月27日の議会選で与党は敗北を喫したが、経済はプラス成長に転換した。政界引退を決めている彼女の「良薬」が効き始めているのは確かだ。 ●母性こそが力 03年まで長期の内戦が続いたリベリアの大統領エレナ・サーリーフ(74)も国民に「マー(おっかさん)」と親しみを込めて呼ばれる。内戦中は投獄や亡命を経験。内戦で傷ついた国民を「病気の子供」に例え「この国は献身的に面倒を見る母親を必要としている」と語り、06年にアフリカ初の公選による女性大統領になった。平和への貢献などが評価され、11年にノーベル平和賞を受賞した。世界銀行の総裁候補にもなったナイジェリア財務相のヌゴジ・オコンジョイウェアラ(58)はじめ、アフリカ各地の女性がサーリーフに続く。男と伍(ご)するのでなく自然体の指導者が受け入れられる時代。サーリーフは昨秋の訪日時、日本の女性を激励した。「あらゆる分野でリーダーを目指しなさい。日本で女性首相が誕生するように」。 *4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130509&ng=DGKDASGG0100B_R00C13A5EE8000 (日経新聞 2013.5.9) 日本では 政治家の登用進まず 閣僚、小泉内閣5人が最多 日本では女性首相は誕生していない。歴代内閣で女性閣僚が最も多かったのは2001年4月に発足した第1次小泉内閣の5人。目玉人事として田中真紀子氏を外相に起用した。昨年12月に誕生した第2次安倍内閣は、稲田朋美行政改革相と森雅子少子化相の2人だ。初の女性閣僚は1960年の池田内閣で厚相に起用された中山マサ氏。池田内閣で近藤鶴代氏も科学技術庁長官に就いたが、84年に中曽根内閣で石本茂氏が環境庁長官に就任するまで途絶えた。国会では93年に土井たか子氏が衆院議長に就任。衆参両院で初の女性議長となり、参院では扇千景氏が04年に議長に選ばれた。全国初の女性知事は、00年に大阪府知事に就いた元通商産業省審議官の太田房江氏。その2カ月後に熊本県、翌年に千葉県で女性知事が誕生した。北海道と山形、滋賀両県の現職3人を含め、計6人だ。 *5:http://news.mynavi.jp/news/2012/10/17/039/index.html (マイナビニュース 2012/10/17)日本企業の役員・管理職における女性の割合、"部長級以上"女性はわずか2.7% 経済同友会は16日、同法人所属企業を対象に実施した女性管理職・役員の登用および活用状況に関するアンケート調査の結果を発表した。同調査は、7月~8月の期間にFAXにて行われ、219社から有効回答を得た。同調査で女性従業員の登用について調べたところ、日本国内では従業員の41.0%が女性であることが分かった。業種別に見た場合、製造業では24.1%だったのに対し、非製造業では48.4%と倍以上の差が見られた。一方、海外拠点について見ると、製造業では37.9%、非製造業では32.3%となり、製造業の方が女性従業員の割合が高かった。 役員・管理職における女性の割合を尋ねてみると、OECD(経済協力開発機構)加盟国の多くが30%を超える中、日本企業では課長級以上で4.6%、部長級以上では2.7%にとどまることが判明。取締役では2.6%となり、このうち社外取締役については4.5%と女性登用を進めている状況がうかがえる。また、課長級では非製造業が6.9%、製造業が3.6%と、非製造業が製造業の倍近い割合となった。 女性役員の比率の推移はどのような傾向にあるか聞いたところ、13.0%が「増加傾向」にあると回答。それに対して、「女性役員はいない」は58.6%、「横ばい」は27.4%、「減少傾向」は0.9%だった。一方、女性管理職の比率の推移については、52.6%が「増加傾向」にあると答え、「女性管理職はいない」は8%、「横ばい」は37.6%、「減少傾向」は1.9%だった。女性管理職登用の具体的数値目標を設定していない企業は半数以上の58.0%。反対に、具体的数値目標を設定している企業は15.1%となった。これらの企業では現状の登用率も高く、管理職7.7%、意思決定ボード(部長、役員<取締役・執行役・執行役員>)4.3%、数値目標の平均は2016年までに女性管理職登用15.0%だった。また、数値目標を設定している企業のうち54.5%はCSRレポートを中心に対外的に公表していた。 2011年度総合職の新卒の女性採用実績は28.1%で、全従業員数に占める女性の割合と比べると12.9ポイント低い。業種別では、製造業が23.5%、非製造業が30.7%となっている。男性の育児休暇取得率は3.5%。中でも従業員5,000人以上の大企業は5.4%と取得率が高い傾向にある。業種別では、製造業が5.1%と、非製造業の2.7%より2.4ポイント多かった。また、男性育児休暇取得率を回答した企業の女性管理職登用は4.7%と全体平均より高くなっていた。女性の登用・活用のために必要と思う施策については、「行政による育児支援インフラの整備・強化を図る」が最も多く14.5%。以下、「仕事の継続を支援する両立支援施策を充実させる」が11.5%、「職務の明確化、男女差のない公正な評価・処遇制度を確立する」が9.8%と続いた。
| 男女平等::2013.5~2013.11 | 12:59 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,05,07, Tuesday
農業で働く女性 パイロットの女性 ハリス州司法長官(アメリカ) *1、*2、*3は、比較的、雇用における女性差別の問題点を正しく指摘しているが、以下のように、女性差別の原因を本人や家族の努力不足、理解不足のせいにしている点で正しくない。その理由は、女性差別は、正確には、雇用の調整弁として行われ、安価な労働力を確保するために便利に使われてきたものであり、うまく搾取されてきた女性やその家族に問題があるのではないからである。また、私が、このブログの2012年10月27日に記載しているとおり、世界では女子差別撤廃条約が1979年に第34回国連総会において採択され、1981年に発効して、わが国は1985年に最初の男女雇用機会均等法を作って、同年、その条約に批准した。そして、その後、他国は真面目にその対応を行ったにもかかわらず、わが国では、それを骨抜きにするための行動が多かったため、わが国の男女平等は他国より30年遅れた。その間、厚生労働省や労働基準監督署がこの骨抜きに対抗するため尽力したかと言えば、全く尽力していない。その総合的な結果が、現在の状態を導いたのである。 (1)「女性の社会進出=パートタイマー、時間と場所を選ばずに仕事ができる環境」は正しいか? *3に、「主婦の能力を引き出すには、時間と場所を選ばずに仕事ができる環境を整えることも必要」「主婦が働くことに対し、夫など家族が理解する機運も重要」と書かれているが、これは、安価な労働力として主婦を使う方法を正当化している。何故なら、多くの主婦は、他の選択肢があってパートタイマーになっているのではないからである。また、その底には、「主婦の女性は家庭責任を負っており、仕事は夫の手助け程度」という前提があるが、実際には、夫婦のどちらがより大きな「家庭責任を負うか」「所得獲得責任を負うか」は、働いた場合の夫婦の所得獲得能力の違いや社会の受入態勢で決まっており、主婦が働くことを夫が理解しないのではなく、家庭全体の所得を考慮した結果が出ているのだからである。 (2)なぜ、わざわざ「なでしこ」と命名しなければならないのか? *1の「東京証券取引所が女性社員を積極的に登用し、経営効率も高い「なでしこ銘柄」として花王など17社を選定した」というのはよいことだと思う。しかし、ここにどうしてわざわざ「なでしこ」と命名したのだろうか。そう命名した理由は、多分、社会進出をして上昇志向の女性は、「大和なでしこ(日本女性を可憐で繊細だが、心は強いナデシコの花に見立てて言う美称)」ではないという批判があるからだろうが、日本女性がすべて「可憐」で「繊細」であるわけがなく、それを押し付ける文化こそジェンダーであって、なくすべきものなのである。例えば、私自身は、毅然としてことに当たり、細かいことにはこだわらないが、これは公認会計士というプロフェッショナルとして重要な資質であるため、「繊細で可憐だが心だけ強い」などという先入観があれば、それは公認会計士としての能力と矛盾し、迷惑なわけである。 (3)管理職比率に男女差が生じることに女性の責任があるか? *2に、「なぜ管理職比率の男女差が生じるのか。採用や配置、仕事配分、人事評価など雇用の本質部分に、男女を差別する考え方が根強くはびこっている現実が透けて見える」と書かれており、これは正確な事実だ。それだからこそ、改正男女雇用機会均等法では、採用、配置、昇進、退職で差別してはならないと義務付けた。しかし、その男女雇用機会均等法改正後、企業は、女性労働者をパートタイマーにしたり、派遣労働者に置き換えたりして、男女雇用機会均等法で守られるべき女性の範囲を狭めたのである。そして、それを是として支える制度及び文化が、(1)及び(2)なのだ。 *2の「周囲の目を気にして女性が管理職登用を辞退するケースもある。女性の側にも、責任ある立場を敬遠しないなど、男女共同参画社会に向け新たな一歩を踏み出す覚悟が必要だろう」というのは、責任転嫁の居直りも甚だしい。気にしなければならない「周囲の目」があるとすれば、それが女性差別を是とするジェンダーであり、なくすべきものはそれなのである。 また、「女性の側にも責任ある立場を敬遠しないなど、男女共同参画社会に向け新たな一歩を踏み出す覚悟が必要だろう」と、女性に積極性、上昇志向、責任感がないかのような批判も述べられているが、私は、完全に積極性も上昇志向も責任感もあり、男性以上に努力もした上で、評価上の差別を受けたことがある。つまり、賃金格差や管理職割合の格差があることの責任を女性に転嫁するのは、すべての取り扱いが平等になってからにすべきだということだ。 *1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130416&ng=DGKDASFS15046_V10C13A4EA2000 (日経新聞 2013.4.16)女性の登用、情報開示促す 内閣府・5証取、役員数など企業に要請 内閣府と東京証券取引所など全国5証券取引所は企業で働く女性の活躍ぶりを示す情報の公開を強化する。全国の証券取引所が上場企業に提出を義務付けている「コーポレート・ガバナンス報告書」の中で、女性役員の人数や役員会における男女別の割合などの情報の開示を推奨する。女性登用の「見える化」に向け、各証取は近く全上場企業に要請を始める。 現在、同報告書で情報を開示するのは女性の登用に積極的な一部の企業に限られる。経済同友会が大企業を中心に昨年実施したアンケートでは取締役のうち女性は2.6%、管理職(課長級以上)も4.6%にとどまった。東証などは今月中にも新たに公表を求める項目の様式をまとめたガイドラインの送付を始める。実際に情報を公開するかは企業側の判断に委ねるが、女性を登用する企業ほど株式市場で評価される仕組みを整え、浸透を促す方針。政府は女性の活躍の場を広げるには情報開示を通じた「企業トップや社会全体の意識改革が必要」(内閣府男女共同参画局)とみている。情報開示が進めば、投資家が女性登用の具体的な取り組みを把握しやすくなり、投資する際の目安にもなる。東京証券取引所は2月から、女性社員を積極的に登用し、経営効率も高い「なでしこ銘柄」として花王など17社を選定し、個人投資家などを市場に呼び込むプロジェクトも実施。政府は資本市場の動きも通じ、女性の登用を促す。各証取の動きに合わせて、内閣府は今年度から全上場企業を対象に働く女性に関する情報公開のモニタリング調査を初めて実施する。 *2:http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2013/04/20130422s01.htm (河北新報 2013年4月22日) 男女賃金格差/「4月15日」の現実を知ろう 日本をはじめ世界約100カ国に活動拠点を置く女性団体・国際BPW(ビジネス・プロフェッショナル・ウーマン)が「イコール・ペイ・デー」という世界共通の基準を作り、男女の賃金格差是正に向けキャンペーンを展開している。「イコール・ペイ・デー」は「同じ賃金を手にする日」と訳される。男性が1年間働いて得られる賃金を、女性はどの程度働けば手にできるかを分かりやすく表す指標だ。日本BPW連合会によると、2013年の日本の「イコール・ペイ・デー」は4月15日だった。 男性が昨年12月末まで1年間で得た賃金を、女性は1年働いただけでは得られず、男性より3カ月と15日間、余計に働いてようやく手にできるという計算だ。女性の賃金が男性に比べいかに低い水準にあるかを、実感を伴って教えてくれる。昨年が「4月16日」だったので、1日分だけ男女格差が縮まったことにはなるが、先進国の中ではスイス(3月7日)、フランス(同15日)、ドイツ(同23日)、米国(4月12日)などに後れを取っている。日本の男女賃金格差は、厚生労働省も頭を悩ます社会問題だ。企業と経済界はもう一段高い意識レベルを持ち、格差解消に真剣に取り組むべきだ。厚労省の統計によると、昨年の月額平均賃金は男性32万9000円に対し、女性23万3100円と10万円近い開きがあった。男性賃金に占める女性賃金の割合は70.9%にとどまる。 賃金格差を生む大きな原因とされるのが、男女間における平均勤続年数と管理職比率の違いだ。賃金の男女差別は違法行為であり、各職場とも制度面では男女平等の原則が確立されているが、運用面では依然として改善の余地が多いと言える。女性の勤続年数が男性より短いのは、結婚や出産・子育てで退職する人が多いためだ。育児休業制度の普及で、仕事と子育てを両立する環境は整いつつあるものの、職場によっては、育児休業を取得しにくい状況が続いているとみられる。 一方、企業の課長担当職以上や管理的公務員といった管理職のうち、女性の占める割合は10年の統計で10.6%だった。米国は42.7%、ドイツは37.8%、英国は34.6%に上り、日本は他の先進国に大きく水を開けられている。なぜ、管理職比率の男女差が生じるのか。採用や配置、仕事配分、人事評価など雇用の本質部分に、男女を差別する考え方が根強くはびこっている現実が透けて見える。経済団体が先頭に立ち、企業トップの意識改革を大胆に図ることが根本的な改善に不可欠ではないか。小さな職場では、周囲の目を気にし、女性が管理職登用を辞退するケースもあるという。女性管理職に理解ある職場の雰囲気づくりが重要なのはもちろん、女性の側にも、責任ある立場を敬遠しないなど、男女共同参画社会に向け新たな一歩を踏み出す覚悟が必要だろう。 *3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130506&ng=DGKDZO54695670V00C13A5TJE000 (日経新聞 2013.5.6)労働参加見劣り 7割弱 30代女性 政府は4月、成長戦略の一環として「女性の活躍」を掲げた。保育所の充実などを通じ、出産や育児で離職しがちな女性の就業率を高める。「少子高齢化が進むなか、女性の潜在力を引き出すことは企業や社会の活力につながる」(厚生労働省雇用均等政策課)。総務省の調査によると、日本の女性の労働参加の割合(労働力率)は2010年に30~34歳と35~39歳がいずれも60%台。70%を超す20代後半、40代、50代前半に比べると低い。30代は子育てなどに忙しい時期だが、欧米やシンガポールなど70~80%台の国も多い。 政策に加え、企業側も産前産後や育児のための休暇の充実やキャリア形成の支援を進めるとともに主婦らを戦力に生かす工夫が求められる。「主婦が働くことに対し、夫など家族が理解する機運も重要」(福井ナビット社長)という。人件費などコストを大手企業ほどかけずに質の高い商品やサービスを提供することで成長をめざすベンチャー企業にとって、十分に発掘しきれていない主婦の活用がカギになる可能性がある。主婦の能力を引き出すには、時間と場所を選ばずに仕事ができる環境を整えることも必要だ。クラウドワークス(東京・渋谷、吉田浩一郎社長)は企業から注文を受けた業務をインターネットを通じて在宅者らに依頼する「クラウドソーシング」を手がける。同社は4月、ベネッセコーポレーションが運営する子育て中の主婦ら400万人が登録するコミュニティーサイト「ウィメンズパーク」で仕事の情報の提供を始めた。
| 男女平等::2011.12~2013.5 | 06:50 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,05,05, Sunday
2013.4.6東京新聞 2013.2.28NHK ウィキペディア *1、*3のように、安倍首相が先頭に立って、三菱重工業と仏アレバ連合のコンビで、トルコやサウジアラビアの原発を受注するとは、あまりにも思慮がなさすぎる。事故が起これば、また日本国民の税金が使われるではないか。さらに、仏アレバ社と言えば、福島第一原発事故の後、汚染水を浄化する設備を高額で受注して作り、代金は日本国民の税金で支払っているが、*4、*5のように、その汚染水処理は、現在、破綻寸前であって、地中に流れ出した汚染水は、土壌を汚染しているのだ。そして、海に流すのは、あの大きな太平洋でさえ被害が大きすぎる状況だ。その福島第一原発事故の原因は、本当は地震ではないかとも言われており、現在、「わかっていない」で済まされているが、トルコは地震国で、サウジアラビアは絶対君主国である。そして、どちらも太陽の国で、天然ガスも埋蔵されている。 また、原発が作る熱の2/3は海に捨てられるが、これは、日本海でさえ海水温の上昇に影響して生態系を変え、漁獲高を減らしていると言われている。その上、*2のように、トルコの黒海は湖のような海であり、ここに原発の廃熱を捨てれば、黒海の生態系が変わってしまい、水産業や環境に大きな被害を与えることは明らかだ。紅海も狭い入り江であり、同じだ。 ここまで、他産業への損害や人命を無視し、原発の新しい安全神話を作って、何ででも発電できるにもかかわらず、世界の原発を増やすことを、何故、日本の国民が税金を払って手伝わなければならないのか。わが国の使命は、原発の売込みではなく、世界の原発を止めるべく、最先端の自然の再生可能エネルギーを推進することであろう。それが地球のためだから、である。 *1:http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130502-OYT1T01293.htm?from=tw (日経新聞 2013.5.4)トルコと原発建設合意 首脳会談、三菱重工など受注確定 安倍晋三首相は3日、トルコのアンカラでエルドアン首相と会談した。黒海沿岸シノプでの原子力発電所の建設を巡りトルコ政府が日本に優先交渉権を与えることで合意した。両政府は日本の原発輸出を可能にする原子力協定と、シノプに原発を建設する土地をトルコが無償で日本側に提供することなど政府間協力を定めた協定に調印した。原発建設に関する政府間合意を結ぶことで、三菱重工業と仏アレバ連合の受注が事実上確定した。東京電力福島第1原発事故の後、日本勢による初の海外受注案件で、日本の原発輸出に弾みがつきそうだ。総事業費は2兆円規模。出力は4基で450万キロワット程度となる見通しだ。2023年までに第1号機の稼働を目指す。 首相は首脳会談後の記者会見で「過酷な事故の経験と教訓を世界と共有し、原子力安全の向上に貢献していくのは日本の責務だ」と述べた。原子力協定は核の不拡散や原発の安全利用を2国間で確認し、原発輸出の前提となる。トルコの原発計画は日中韓とカナダのメーカーが受注を競ってきたが、技術力や信頼性、価格などで日本勢の評価が上回った。両首相は両国関係を「戦略的パートナーシップ」に格上げする共同宣言に署名。(1)インフラ整備や医療、農業、人工衛星打ち上げの協力(2)次官級協議の枠組みを格上げし、外相の定期協議を開催(3)防衛当局間の協議促進――を盛り込んだ。共同研究を進めている経済連携協定(EPA)の交渉開始に向けた検討推進や、社会保障協定の交渉促進で一致。北朝鮮問題や中東情勢に関する連携も申し合わせた。 *2:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E6%B5%B7 黒海 黒海は、ヨーロッパとアジアの間にある内海。マルマラ海を経てエーゲ海、地中海に繋がる。 バルカン半島、アナトリア半島、カフカースと南ウクライナ・クリミア半島に囲まれており、ドナウ川、ドニエストル川、ドニエプル川などの東ヨーロッパの大河が注ぐ。アナトリアとバルカンの間のボスポラス海峡、マルマラ海、ダーダネルス海峡を通じて地中海に繋がっており、クリミアの東にはケルチ海峡を隔ててアゾフ海がある。黒海に面する国は、南岸がトルコで、そこから時計回りにブルガリア、ルーマニア、ウクライナ、ロシア、グルジアである。 *3:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/361286 (西日本新聞 2013年5月1日) サウジと原子力協定の事前協議へ 安倍首相とサルマン皇太子 サウジアラビアのサルマン皇太子(右)との首脳会談に臨む安倍首相=4月30日夜、ジッダ(代表撮影・共同) 【ジッダ共同】ロシア訪問を終えた安倍晋三首相は4月30日夜(日本時間5月1日未明)、2番目の訪問国となるサウジアラビアを訪れ、サルマン皇太子と会談し、日本の原発輸出を可能にする原子力協定締結交渉入りに向けた事前の事務レベル協議を開始することで一致した。政治・安全保障での関係強化を確認、外務・防衛当局間の安全保障対話の新設で合意した。首相は「東京電力福島第1原発事故後、原発の安全性を高めている」と強調。エネルギー安全保障を重視する観点から、サウジ側に引き続き日本への安定的な石油供給に協力を要請した。 *4:http://www.kahoku.co.jp/news/2013/04/20130418t63007.htm (河北新報 2013年4月18日) 汚染水処理破綻寸前 福島第1原発漏えい 福島第1原発の放射能汚染水漏えい問題で、東京電力の汚染水処理計画が破綻寸前に追い込まれている。水漏れの起きた地下貯水槽から地上貯水タンクに汚染水を移す作業を始めたが、地下水の流入で汚染水は増え続ける一方。タンクを増設して容量を増やす考えだが、将来的に飽和状態を迎えるのは確実で、急場しのぎの策にとどまっている。 <貯水槽の使用中止> 移送対象は1~3、6号貯水槽に保管される計約2万3000トン。漏えい問題を受け、東電は貯水槽を今後使用しない方針を示し、全量をタンクに移す。移送は16日に始まり、6月中の完了を見込んでいる。既存タンクの空き容量は約2万9000トンで、貯水槽の水を移せば余裕はあと約6000トン。構内では地下水が原子炉建屋に流れ込み、原子炉冷却水と混じって1日約400トンの汚染水が発生している。タンクの数が現状のままなら15日間でいっぱいになる計算だ。東電はタンクを増やしてしのぐ考え。試算では貯水槽の水の移送完了までに3度、空き容量が切迫する。6月上旬には空きが3600トンまで減ると予想され、トラブルが起きれば処理計画は行き詰まる。汚染水は放射性セシウムを取り除いた水。東電は試運転中の「多核種除去設備(ALPS)」を本格稼働させ、汚染水から62の放射性物質を除去するとしているが、トリチウムは残り、完全浄化はできない。 <海洋放出に現実味> 地下水の流入量を減らすバイパス整備も進めている。だが、減らせる量は1日100トンで決め手にならない。東電は2015年9月までに70万トンのタンクを増設して貯蔵量を確保する方針だが、汚染水の最終的な行き場はなく、敷地内にたまり続ける。将来的に海洋放出が現実味を帯びるものの、地元漁業者の反発が強く、実現は難しい。広瀬直己社長は17日、福島県楢葉町の福島本社で記者会見し、「汚染水は海に出さないよう努力する。タンクを造り続けて水を保管し、その間にトリチウムを取り除く対策を考える」と述べた。 ◎エネ庁連携「住民の望み」 独立性維持を強調 福島第1原発の地下貯水槽から高濃度汚染水が漏れた問題で、原子力規制委員会・原子力規制庁と経済産業省・資源エネルギー庁が連携を強めていることについて、規制委の田中俊一委員長は17日の記者会見で「政府一体の取り組みを住民は望んでいる」と述べた。両者は規制庁の池田克彦長官とエネ庁の高原一郎長官が11日に初会談したのを契機に、政府の廃炉対策推進会議への田中委員長の参画や両庁審議官の定期的な意見交換などを決めた。第1原発事故の反省で分離された原発の規制と推進の再接近を懸念する質問に、田中委員長は「問題が起きてから対応する『モグラたたき』では廃炉は進まず、規制側も現実的な対応が必要だ。独立性が保たれなくなるとは考えていない」と強調した。田中委員長はまた、青森県六ケ所村の使用済み燃料再処理施設の新規制基準で、対策を義務付けることにした重大事故の範囲について、「化学溶液の外部漏えいが心配だ。臨界事故の可能性は否定しないが、施設は多重制御されており、外部被害が生じない瞬間的な事故にとどまると思う」と述べた。 *5:http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2013042800007 (時事ドットコム 2013/4/28) 土壌の放射能濃度10倍に=1号貯水槽、2日前と比べ-福島第1 東京電力福島第1原発の地下貯水槽から放射能汚染水が漏えいした問題で、東電は28日、1号貯水槽の外側土壌で27日に採取した水の放射能濃度が、2日前と比べ10倍超に上昇したと発表した。貯水槽外側土壌での水採取場所は2カ所あり、今回上昇が判明した場所はこれまで濃度が低い状態が続いていた。東電は「原因は分かっていない。監視を続ける」としている。東電によると、放射能濃度が上昇したのは1号貯水槽の南西側土壌。27日に採取した水でストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質が1ミリリットル当たり1.1ベクレル検出された。26日は検出限界値未満で、25日は同0.099ベクレルだった。
| 原発::2013.5~7 | 02:12 PM | comments (x) | trackback (x) |
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