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2019.5.26 人類の移動経路・本能・歴史など (2019年5月27、28、29、30、31日、6月1、2、3日に追加あり)

2018.12.21読売新聞 日本人のルーツ    イヌイットの女性 現生人類の世界への拡散

(図の説明:左図は、北海道礼文町船泊遺跡で発掘された縄文女性の臼歯に残っていたDNAから復元された顔で、現在の日本人にもよく見かける顔だ。その日本人は、左から2番目の図のように、3000年以上前に渡来した縄文人と3000年前以降に渡来した弥生人に分けることができるが、渡来は何度も起こっており単純ではない。しかし、縄文人やアイヌ人が先住民であることは確かで、右から2番目の現在のイヌイット人女性の顔と似ている。なお、右図のように、現生人類の共通祖先は20万年前にアフリカで誕生し、他の人類と混血しながら世界に広がったことがわかっているが、今後の研究には法医学等の医学分野の貢献も期待される)

(1)人類の本能と文化
1)DNAから科学的に人類史を紐解くことができるようになった生命科学の革命
 中学・高校で「縄文人」「弥生人」などと使用した土器による分類を教わった時には、「納得できない」「歴史は暗記科目だ」と感じたが、現在ではDNA解析・比較文化・行動学などから科学的に現生人類であるホモサピエンスの発生と移動経路をトレースできるようになり、これは画期的なことだ。また、どの民族にも現生人類の移動経路は興味深く、移動経路が判明すれば人種差別や戦争を収束させる力にもなるだろう(http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/087/research/1.html 生命誌ジャーナル参照)。

 そのような中、*1-1のように、遺伝子を高速で読み取る装置を使って、1998年に日本列島北端の北海道礼文町船泊遺跡で発掘された縄文人の臼歯内DNAの遺伝情報(ゲノム)の99%を解読することに成功し、約3800年前の縄文人女性の顔が再現された。特徴は、「シミの目立つ濃い肌の色」「細く縮れた髪」「血液型はA型」「湿り気のある耳あか」「酒に強い」「脂肪の多いアシカなどを狩猟していた船泊の縄文人は、極端な高脂肪食でも健康を保てるよう適応した可能性が高い」などで、その顔は現在の日本でもよく見かける女性だ。

 この脂肪を分解しやすい遺伝子変異は、*1-2のように、北極圏に住むイヌイット等の7割で見つかるが、狩猟をしなくなった現在の日本人にはほとんど見られない。しかし、この遺伝子によって作られる酵素は、また高脂肪食になった日本人の高脂血症の解決に役立ちそうである。

 このような現生人類の移動経路や混血状況を調べるには、古代の日本人だけでなく現在の日本人・近隣や世界の人々の遺伝情報を比較する必要があり、それは既に始まっている。これに加えて、食物・農耕・言語・文字・宗教などの文化を比較すれば強力な裏付けになるわけだ。

 なお、古代人のDNA解析は、2010年に目覚ましい成果が相次ぎ、ドイツなどの研究チームがネアンデルタール人と現生人類との間に混血があったことを証明した。また、南シベリアのデニソワ洞穴で見つかった「デニソワ人」は、現在のパプアニューギニア人にDNAの一部を残しており、東アジア全体で暮らしていたとのことである。

2)差別に見られる意識の低さ
ア)部落差別について
 日本維新の会が今夏の参院選比例代表公認候補に決定していたフリーアナウンサーの長谷川氏が、*1-3のように、江戸時代に士農工商の下にあった穢多・非人に言及し、無知と偏見に基づく差別発言を行ったそうだ。

 しかし、非差別部落は士農工商の厳しい身分制度の下で、農工商の民衆を統治するために、さらに下の身分を作って「上を見るな、下を見ろ」と言って不満のはけ口とし、為政者が民衆を分断したのだということは日本史で勉強済である。また、2016年には部落差別解消推進法が成立しているため、今でもそれを繰り返しているのは、無知で情けない人たちだ。

 なお、人権意識の高まりによって、反差別のテーマが在日外国人・女性・障害者などへと裾野を広げたのはよいことだが、差別を助長するインターネット上の書き込みが多いのは何とかすべきである。

イ)高齢者差別について
 ざっくり言うと、人類を含む哺乳類は、食物が不足するなどの親の生存も危うい場合を除いて、子が生まれるといとしく感じて授乳し、子を護る本能がある。また、そういう本能を持たない個体のDNAは、子孫を残せないため残っていない。

 一方、親を大切にする本能は、種の保存に不可欠ではないので組み込まれておらず、人類は「親孝行」という言葉や文化を作って道徳として大切にしてきた。それが「親孝行」という言葉があっても、「子孝行」という言葉がない理由だと言われている。

 このような中、最近は、*1-4のように、若者と高齢者を対立軸として分断し、どちらに社会保障を振り向けるかという論調を政治家・行政・メディアが氾濫させており、一般人にもそうことを言う人が増えた。しかし、これは、これまで政府がサボってきた社会保障財源の引当不足という失政を、国民を若者と高齢者に分断して対立させることによってごまかす手段のお先棒をメディアが担ぎ、賢明でない国民が騙されているいつか見た光景である。

 さらに、*1-4は、「①投票者の4割を占める高齢者の意見が反映されやすいシルバー民主主義はよくない」「②社会保障給付は医療・年金・介護が約9割を占め、対象は主に高齢者」「③少子高齢化が進み、若い世代ほど給付より負担が重い」「④高齢者に給付の抑制や負担を求める案が現実的だが、当事者は受け入れがたい」「⑤『頑張って保険料を納付してきたのに、年金を減らされることは認められない』という高齢者は、冷静でなく感情的だ」としている。

 しかし、①の「高齢者割合が高まる」というのは、平均寿命から見て高齢者とされる年齢が低すぎるし、全体の傾向は人口構造を見ればずっと前からわかっていたことで、その人たちが働き盛りの間に納付した保険料を発生主義で引当てず、関係のないところに無駄遣いしていたのは、完全に政府の失政であり高齢者の責任ではない。さらに、シルバー民主主義は問題などとして、年齢で票の重みを変えるなどという発想は、民主主義を理解していないことが明らかだ。

 なお、「投票率は若者が低く、高齢者が高い」のは、これから働いて稼ぐことが可能な若者が政治に頼らず働くことに専念するのは自然であり、高齢者は選挙権を大切にしていると同時に、高齢になるほど既に保険料を支払っており、やり直しがきかないため、政治への依存度が高くなるからだ。また、日本のTV番組がぼやっとして普段から政治の論点を適格に議論して伝えていないのは、有権者全体が政治に無関心になるのを促進している。

 私自身は、自分の知識と経験から、子育て支援や教育無償化を一生懸命に進めてきたが、だからといって、②③④⑤のように、その財源は高齢者の社会保障分から分捕ればよいという本能丸出しで文化を捨てたような発想はしたことがない(マニフェスト・プロフィール参照)。

ウ)外国人差別について
 このような中、*1-5のように、2019年4月1日から本格的な外国人労働者の受け入れが始まったが、差別・暴言・冤罪の押し付けはなくなるだろうか。女性もまた、外国人同様、そのことを理由に、誹謗中傷や侮辱をされるなどの差別的対応を受けることが多いが、日本社会を支えている人に対する前近代的で不合理な価値観の押し付けは早々にやめるべきである。

(2)日本史の真実は・・
1)卑弥呼の里、佐賀県吉野ヶ里町と神崎市
 当時の文字による歴史記録である魏志倭人伝によると、*2-3のように、倭国は、末盧國、伊都国、奴国など玄界灘湾岸の国であることは明らかで、その南にあるとされる邪馬台国の位置は、中国の専門家が指摘するとおり、音と方角に注目すればよい。そのため、「日の国」邪馬台国は、九州の肥前と肥後の間、つまり*2-1の吉野ケ里遺跡の場所になると思われる。

 従って、女王に従わない邪馬台国の南にある狗奴国は、球磨国(熊本県)の聞き違いであると思われ、邪馬台国から水行20日とされる投馬国(とうまこく:所在地不明)は、投与国(とよこく)の読み違いで、それなら豊前と豊後のある大分県になる。

 なお、大分県宇佐市には宇佐神宮があり、それは八幡宮の総本社で古くから皇室の崇敬を受けており、主祭神は神功皇后、応神天皇、宗像三女神だ。また、大分県臼杵市は石仏で有名だ。また、何故なくなったのかは不明だが、『日本書紀』の神功紀に引用される『晋起居注』に、泰初2年(266年)に倭の女王の使者が朝貢したとの記述があり、現存する『晋書』武帝紀と四夷伝には、266年に倭人が朝貢したことは書かれているが、女王という記述は無いとのことである。

 そのため、卑弥呼の宗女とされる13歳の女王壹與(トヨ)は、投与国(大分県)の人で神功皇后だと考えられる。その後、日本書紀に書かれているとおり、応神天皇(=神武天皇と言われている)が東遷して大阪・奈良付近に都を作り、大和朝廷になったのだろう。

 *2-2には、「卑弥呼の死と壹與の王位継承は、それ程年月が経っていない」と書かれているが、その間に「倭国大乱」があったため、ある程度の時間はあったと思われる。そのため、今後の真実の追及には、遺伝子調査、まっすぐな視線での日本書紀や神社伝承などの再解読、中国史や中国の専門家による意図的でない裏付けが必要だ。

 また、*2-4のように、「百舌鳥・古市古墳群」の仁徳天皇陵古墳(大山古墳、堺市)などを日本政府がユネスコの世界遺産委員会に推薦し、6月に世界遺産への登録が決まるそうだが、この「仁徳天皇陵」をしっかり調査すれば古代史の真実がさらに明らかになると言われている。しかし、日本の考古学の専門家は未だにあまり調査していないのだ。

2)現代の皇室と邪馬台国・大和朝廷の関係

    
   2019.5.8東京新聞    2019.5.13朝日新聞   2019.5.14西日本新聞

(図の説明:左の2つは、奈良時代そのままの衣装で「期日奉告の儀」に望まれる天皇・皇后両陛下で、右から2番目は、「斎田点定の儀」で亀卜に使った亀の甲羅。一番右は、「百舌鳥・古市古墳群」の仁徳天皇陵だ)

 大嘗祭で神々に供える米を作る都道府県を選ぶ「斎田点定の儀」が、2019年5月13日午前に皇居で行われ、そのやり方は、*3のように、亀卜と呼ばれる亀の甲を焼く占いで、火であぶったひび割れの具合で吉凶を判断し、「吉」と出た都道府県を選ぶのだそうだ。

 亀卜は卑弥呼が行っていた占いと同じで、中国では殷代に既に亀卜を行っており、殷墟から見つかった卜亀は淡水性や陸ガメの甲羅であるのに対し、日本で出土する卜亀は全て海亀の甲羅で、『延喜式』によると、亀甲の調達は紀伊(伊勢神宮のある場所)が最も多く、卜部は対馬から10人、壱岐から5人、伊豆から5人が選ばれることが多いそうだ。

 そのため、現代の皇室の祖先は、大陸からの渡来系稲作民族で(それでも十分古い家系)、しばらく九州にいた後、東遷して大阪・奈良地域に行き、儀式には今でも亀卜などの歴史上重要な伝統が受け継がれていることがわかる。

注)日本国憲法に定められた「言論の自由」「表現の自由」は、こういうことを書いた時に、「不敬罪」等に問われないために作られた規定である。

・・参考資料・・
<人類の本能と文化>
*1-1:https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/feature/CO036740/20181221-OYTAT50007/ (読売新聞 2018/12/14) 縄文人の姿遺伝子で再現
 年間企画「平成時代~DNAの30年」最終部となる第4部は、遺伝子研究で活躍する各分野の専門家にその最前線や将来像などを聞く。初回は、古代人の骨に残されたDNAから人類史を解き明かす神澤秀明・国立科学博物館人類研究部研究員(33)だ。「船泊のDNA解析がうまくいったのは、根気と『骨運』が良かったおかげ」と話す神澤さん(茨城県つくば市で)「船泊のDNA解析がうまくいったのは、根気と『骨運』が良かったおかげ」と話す神澤さん(茨城県つくば市で)。東京・上野の国立科学博物館で、今年3月に公開された約3800年前の縄文人女性の顔(粘土像)は、少し風変わりだった。茶色い目。シミの目立つ、濃い色の肌。細く縮れた髪の毛。まるで見てきたようなこれらの特徴はすべて、昨年解読された縄文人女性の遺伝子データを基にした、国内初の復顔だった。「血液型はA型で、耳あかは湿り気があり、もしお酒があるなら強い女性だった。ここまで突き止められたことには自分も驚いた」。女性は1998年、日本列島の北端にある礼文れぶん島(北海道礼文町)の船泊ふなどまり遺跡で骨が発掘された。骨の形などから高齢の女性とまでは推定され、その後は札幌医科大で長く保管されていた。
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 2000年代後半、遺伝子を高速で読み取る装置「次世代シーケンサー」が普及し、ごく微量のDNAも解析可能になった。ただDNAは歳月を経ると分解するため、古代人の骨から採れる保証はない。「特に日本のような高温多湿な環境では分解しやすい。船泊は日本列島にある遺跡の中で最も寒く、DNAが残りやすいと目を付けた」。3年前に研究に着手。下あごの骨から抜いた臼歯の中を丁寧に削った試料を使って、試行錯誤を重ねながら解析した。その結果、現代人とほぼ同じ高い精度で、全遺伝情報(ゲノム)の99%を解読することに成功した。世界でもトップクラスの成果だ。この女性に特有の遺伝子の変異を調べると、脂肪をあまり代謝しない体質とわかった。現代では脂肪からエネルギーを採れないと低血糖などの病気になりかねない体質だが、脂肪が多いアシカなどを狩猟していた船泊の縄文人は、極端な高脂肪食でも健康を保てるように適応した可能性が高いという。「これまで想像するしかなかった祖先の本来の姿に加えて、どのような能力を持ち、どのような生活を送っていたのかまで、ゲノムでわかる時代になった」
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 生物の高校教師を目指して大学に進んだ。4年生だった08年、古代人のDNA解析を紹介する1冊の入門書に出会う。「日本人の起源を自分で解明できたら面白い。人類の歴史にDNAから切り込める可能性に、魅力を感じた」。大学院に進み、古代のDNA解析が先行する海外の論文を読んで手法を学びながら技量を磨いた。DNA解析の進歩で、何人ぐらいの集団で暮らしていたのか、どこの地域から渡ってきたのかもわかるようになったという。だが大陸から離れた列島に暮らす日本人のルーツにたどり着くには、日本に残っているDNAだけでは不十分だ。「東アジアに広げて解析すれば、稲作などの文化がどのように伝わってきたのかも見えるだろう」。古代史の扉を開く夢は、まだ始まったばかりだ。
◇古代人解析から新種発見
 古代人のDNA解析は、2010年に目覚ましい成果が相次いだ。ドイツなどの研究チームは絶滅した旧人・ネアンデルタール人のDNA情報を公開し、現生人類と混血していることを示した。アフリカから6万年前には移動を始めたとされる我々の祖先との間に、子どもを作っていたことになる。南シベリアのデニソワ洞穴で見つかった3万~5万年前の指などの骨は、新種の旧人と判明。全身骨格はなく、DNA解析で“発見”された初の人類で「デニソワ人」と命名された。現在のパプアニューギニアなどに住む人にDNAの一部が残っており、東アジア全体で暮らしていたらしい。日本でも三貫地さんがんじ貝塚(福島県)、伊川津いかわづ貝塚(愛知県)などから出た縄文人の骨の解析が進んでいる。
◇言語に関わる発見楽しみ
 アフリカで誕生したとされる人類は猿人、原人、旧人を経て現生人類(新人)になったと、学校で習った記憶がある。現生人類以外の人類は絶滅したが、DNA解析で判明した旧人と現生人類との混血は、現生人類の進化が複雑だったことを示している。絶滅した古代人類の能力を、私たちはDNAを通じて手に入れた可能性もある。言語の習得に必要とされる遺伝子のルーツが解明されれば、人類がいつどこで言語を獲得したのか、わかるかもしれないという。どんな新発見が広がるか、楽しみだ。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14012895.html (朝日新聞 2019年5月14日) 縄文人は脂っこいもの好き? 脂肪分解しやすい遺伝子解析
 北海道にいた縄文人は脂っこい食べ物が好きだった? 国立科学博物館などの研究チームは13日、北海道礼文島の船泊(ふなどまり)遺跡から出土した縄文人の全ゲノム(遺伝情報)について、世界で初めて高精度な解析に成功したと発表した。北極圏に住む人たちのように、脂肪を分解しやすい遺伝子の変異が見つかった。遺跡からは海獣の骨が見つかっており、アシカなどを狩猟していた生活様式が遺伝子情報からも裏付けられた形だ。科博の神澤秀明研究員らは、礼文島で発掘された約3800年前の女性の臼歯からDNAを抽出することに成功。高い精度で解析した遺伝子の特徴から、この女性は、脂っこい食べ物を食べてもおなかを壊したり、体調を崩したりしないような高脂肪食の代謝に有利な特徴があることがわかった。こうした特徴は、イヌイットら北極圏に住む人たちの7割で見つかるが、狩猟生活をしなくなった現在の日本人にはほとんど見られなくなっているという。当時、中国大陸ではすでに農耕が始まっていたが、縄文人はなお狩猟に頼っていたらしい。チームは昨年、遺伝子情報の解析結果の一部から、この縄文人女性は目が茶色で髪の毛は細く縮れ、肌は色が濃く、シミがあったと推測。今回さらに、お酒に強く、耳あかは湿ったタイプだったこともわかった。神澤さんは「古代人のゲノム研究で常に参照されるデータになる。現代人にみられる遺伝的な病気の起源を知ることにも重要だ」と話している。

*1-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/512841/ (西日本新聞社説 2019/5/24) 部落差別発言 「人権」の原点に立ち返れ
 無知と偏見に基づく看過できない差別発言である。全国的に顔が知られているフリーアナウンサー長谷川豊氏(43)が講演で、江戸時代の身分制度に言及した。部落解放同盟が出した抗議文によると、「士農工商の下に、穢多(えた)・非人(ひにん)、人間以下の存在がいる」と発言した。さらに「人間以下と設定された人たちも性欲などがあります。当然、乱暴なども働きます」と述べた。一般的な暴漢からの身の守り方に話をつなげたかったようだ。
▼問題点どこにある
 どこが差別に当たるのか-。第一に「穢多・非人」のくだりである。実際に存在した身分だ。劣悪な住環境に置かれ、まさに「人間以下」の扱いを受けていたとされる。為政者による民衆の分断支配に利用されたのだ。その呼称は今、差別をなくす研究や運動の中では歴史的な用語として、むしろ積極的に登場する。ただ、一般的には被差別部落へのさげすみの言葉としてしばしば用いられる。長谷川氏のように、何の注釈もなく世にさらせば「差別語のばらまき」にすぎない。第二は、そうした被差別者を「プロなんだから、犯罪の」と決めつけ、集団暴行を働くかのように発言している点だ。解放同盟の抗議文は21日付で出され、当該部分について根拠をただしている。長谷川氏は翌日、自身の公式ホームページで、こう釈明した。〈今、自分で(講演録を)読んでも訳が分かりません。まず身分制度の話と暴漢に襲われる話が全くリンクしていません〉。その上で〈弁解の余地のない差別発言〉と認め、〈これから「人権」について全力で真剣に学んでいく〉と記した。講演全体の趣旨がどうあれ、当然の対応である。長谷川氏については、日本維新の会が、今夏参院選の比例代表公認候補に決定していた。超党派による議員立法で2016年に部落差別解消推進法が成立している。長谷川氏が、そうした法律にものっとって人権を擁護すべき国会議員の候補として、適格性に欠けるのは明らかではないか。以前、人工透析患者の尊厳を踏みにじる暴言もあった。同氏が元はフジテレビアナウンサーだったことも、報道メディアの一員として私たちは問題提起し、自省もしなければならない。言葉は人の命さえ奪う「凶器」になる-。言論人として最も肝に銘じなければならないことだ。12年には、週刊朝日(朝日新聞出版)が橋下徹大阪市長(当時)の出自と被差別部落の地名を一方的に暴く形で、橋下氏に関する連載を始めた。同氏の名を差別的、侮辱的な呼び方で記すなどして社会的批判を浴びた。連載は1回で打ち切られた。1970年代に社会問題化した部落地名総鑑事件に匹敵する確信犯的な差別事件だ。私たちがショックを受けるのは、運動団体を中心に長年にわたって行政、教育機関、メディアなどが、時には激しくぶつかり合いながら築いてきた「反差別」の取り組みが、こんなに簡単に足元から崩れ去るのかという現実だ。日本の反差別運動の原点は、被差別部落の人々が22年に結成した全国水平社にある。解放同盟の前身だ。有名な宣言文で「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と高らかにうたった。
▼同和は終わったか
 「穢多・非人」という身分は1871年、明治政府による解放令で廃止された。だが、実態は何ら変わらなかった。水平社誕生の歴史的背景だ。水平社の運動は当初、差別言動を行った個人に対する糾弾闘争が主だった。それでも差別はなくならない。偏見を生む劣悪な住環境などを改善しない限り、差別は続くのではないか。そうした問題意識から「同和問題の解決は国の責務であり国民的課題」として1969年に初の事業法が制定された。学校や職場で教育や啓発が進んだ。その後、反差別のテーマは在日コリアン、女性、障害者、性的少数者(LGBT)などへと大きく裾野を広げていった。人権運動の歴史的な前進である。一方で、懸念された問題が今、現実化しているように思えてならない。「同和問題は終わった」とする風潮である。近年、大きな問題となっているのは差別を助長するようなインターネット上の書き込みだ。「部落差別」を初めて法律名に入れた差別解消推進法は、そうした新しい事態への対応策として生まれた。反差別運動は今、原点に立ち返る時期を迎えているのではないか。私たちはそう考える。

*1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26419410R00C18A2000000/ (日経新聞 2018/2/2) 進むシルバー民主主義 65歳以上が投票者の4割
 国会議員はよく「国民や有権者の意見を聞く」と口にする。この「国民」「有権者」とは、どのような人をイメージしているのだろう。若者なのか、高齢者なのか。少子高齢化が続くなか、近年は高齢者の意見が反映されやすい「シルバー民主主義」という言葉が広がっている。国会議員を選ぶ票はどの世代が投じているのかを分析した。「頑張って保険料を納付してきたのに、年金を減らされることは認められない」。日本維新の会の足立康史幹事長代理は最近、こう言われて驚いた。相手は年配の支持者。普段は冷静な人だが、高齢の富裕層に年金抑制を求める政策案への意見を尋ねると、急に感情的になったからだ。社会保障給付はいま医療・年金・介護が約9割を占め、対象は主に高齢者。少子高齢化が進み、若い世代ほど給付より負担が重い。高齢者に給付の抑制や負担を求める案が現実的だが、当事者は受け入れがたい。選挙区を回る政治家はその空気を肌で感じる。いまは「シルバー民主主義」といわれている。高齢者の投票行動が大きな影響力を持つ2つの構造的な現象があるからだ。(1)急速な少子高齢化で、人口に占める高齢者の割合が高まっている(2)投票率は若者は低く、高齢者は高い――という要素だ。まず高齢者の割合だ。2017年10月時点の総務省の人口推計の概算値は1億2672万人。このうち65歳以上は27.7%。一方、20~30歳代は21.7%にとどまる。次に投票率をみてみよう。同省が昨年10月の衆院選で年齢別投票者数を抽出調査した結果をみると、投票率は年齢が上がるごとに高くなる傾向が顕著だ。5歳ごとの年齢階層別では、60~64歳から75~79歳までは全て7割を超える高水準だ。それが50歳代は6割台、40歳代は5割台、30歳代は4割台、20歳代は3割台と、きれいに下がっていく。2つの調査をもとに、実際に投票した有権者の数を推計してみた。5歳ごとの年齢階層別で最も投票者が多いのは65~69歳で、700万人を超えた。この層は、第2次世界大戦直後のベビーブームに生まれた「団塊世代」。子育てを終えて年金を受給し始めている人が多い世代が、選挙で「大票田」になっている。65歳以上の高齢者は投票者全体の4割近くにのぼる。65~69歳を除く40歳以上の各世代はそれぞれ500万人前後。それが30歳代以下では若くなるほど投票者が減り、20~24歳は200万人を割った。18~39歳は全体の2割にとどまる。子育て世代やこれから結婚や出産を考える世代の票は存在感が薄い。過去の推定投票者数と比べると、団塊世代が年をとるにつれ「高齢者の声」がどんどん大きくなることが分かる。1980年の衆院選で最も投票者が多かった年齢層はこの時に30~34歳だった団塊世代で、800万人近くいた。年齢階層別の投票者数の分布は、年齢が上がるほど先細りになる右下がりの三角形に近い。子育てまっただ中の世代の票が厚みを持ち、65歳以上の高齢者は全体の約13%と、存在感は大きくなかった。その20年後の2000年衆院選。団塊世代は50~54歳になり、やはり最多投票層だった。投票者数の分布は高齢者と若年層が少ない山の形。この時は「大票田」の年齢層はまだ働く現役世代だった。これまでの傾向を考えれば、今後も投票者数の分布はさらに右肩上がりの三角形になる可能性がありそうだ。安倍晋三首相は昨年の衆院選で「全世代型社会保障」を打ち出した。財政健全化に充てる財源の一部を、子育て支援や教育無償化に回す。借金返済は将来に先送りする。「若者と高齢者の対立ではなく、生まれる前の将来世代にツケを押し付け、若者も高齢者も給付を受けているのが現実だ」。中部圏社会経済研究所の島沢諭主席研究員はこう指摘する。シルバー民主主義は、有権者間の世代間不公平から、有権者と非有権者の間の不公平の時代に入ろうとしている。問題は高齢者の発言力が強いことだけではない。18歳未満やこれから生まれてくる世代の声を誰がどのように政治に反映するかだ。
■将来世代の意思は?
 シルバー民主主義への問題意識から、若者の投票をできるだけ政治に反映させる工夫も出てきている。2016年からは選挙権年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に下げ、若い有権者を増やした。13年にはインターネットを使った選挙活動を解禁し、若者の政治参加を促した。それだけでは足りない――。そう考える学者は選挙制度改革も提案している。例えば「世代別選挙区制度」。選挙区を年齢階層別に分け、各世代の代表の政治家を選ぶ構想だ。30歳代以下は青年区、40~50歳代は中年区、60歳代以上は老年区と分け、各世代の有権者数に比例した定数を割り当てる。若い世代の投票率が低くても、各世代の人口に比例した議会構成にできる。政治が短期的な視点にならない仕組みにするのは「余命別選挙制度」。余命に応じて投票権に重みをつけ、若い人の一票を高齢者の一票よりも重くする。投票権を持たない将来世代に配慮する制度もある。「ドメイン投票方式」だ。投票権を持たない未成年に投票権を与え、その親が代わりに投票する仕組みだ。とはいえ、こうした選挙制度改革が実施できるかというと、かなり難しい。いま大きな影響力を持つ高齢者の世代が反対するのは必至だからだ。理論としての研究にとどまり、現実政治の俎上(そじょう)に上ることは期待薄だ。八代尚宏・昭和女子大学特命教授は「借金依存の年金制度は現時点で大きなリスクがある。高齢者に自分の問題だと説明すれば、ある程度の負担増は受け入れられる」と強調する。高齢者票の反発を恐れず説明しなければならない。
■各世代で応分負担を
 大阪市長などを務めた橋下徹氏が、70歳以上の市民が無料で乗車できた市営地下鉄・バスについて、利用者の負担を求めたことがある。橋下氏がその後、政治生命を懸けて「大阪都構想」の住民投票に臨み、反対多数で敗れた。報道各社がその時に実施した出口調査では、20~60歳代は過半数が賛成していた。一方で70歳代は6割以上が反対だった。市民の人気が高いとされていた橋下氏は「高齢者層に負けた」とも言われた。有権者の年齢別の割合をみると、国・地方問わずどんな政策でも高齢者の存在は無視できない。だが将来世代にツケを残すことは許されない。政治家は遠回りでも、社会保障や財政の実態を正面から説明し、各世代に少しずつ負担を求めるしかないのではないだろうか。

*1-5:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181024-00010000-wordleaf-bus_all (The Capital Tribune Japan 2018/10/24) 本格的に外国人労働者を受け入れへ、差別や暴言はなくなるのか
 安倍政権が本格的な外国人労働者の受け入れに舵を切ったことで、今後、より多くの外国人労働者が日本にやってくることになりました。コンビニ業界や外食産業などは外国人労働者がいないと業務が成り立たない状況ですが、日本人の利用客による暴言など、日本側がこの状況に対応できないケースも目立ちます。都市部のコンビニでは従業員のほとんどが外国人というケースも珍しくありませんが、一部の利用客が、日本語がそれほど上手ではない店員に対して「まともな日本語を話せ」「何言ってんだかわかんねーよ」などといった暴言を浴びせているという事例がネットで報告されています。基本的にコンビニの場合、一定以上の日本語能力がなければ採用されませんので、まったくコミュニケーションが取れないという状況ではないと考えられます。あるコンビニでは店舗のオーナーが「暖かい目で見て欲しい」とわざわざ張り紙を出した事例もあります。法務省の調査によると、外国人であることを理由に侮辱されるなど差別的な対応を受けた経験のある外国人は約3割となっています。もっとも多いのは「見知らぬ人」で全体の53.3%、続いて、職場の上司や同僚、取引先など仕事関係が38%、近隣住民が19.3%、公務員や公共機関の職員が12.9%となっています。諸外国でも移民やマイノリティに対して一部の国民が暴言を吐くというのは時々見られる光景ですが、都市部を中心にここまで外国人労働者が増えているにもかかわらず、日常的な場所でこうした暴言が散見されるというのは、同質社会である日本ならではといってよいでしょう(ニューヨークなどに行くと、英語をほとんど話せないタクシー運転手がいたりしますので、これにいちいちクレームを付けていてはキリがないというのが現実です)。日本で仕事をするなら日本とまったく同レベルの会話ができなければ困るという意見もあるようですが、彼等は日本に押しかけているわけではありません。深刻な人手不足に対応するため、むしろ政府が積極的に外国人労働者を招致しているというのが現実です。日本の相対的な賃金レベルは下がる一方ですから、日本の方から積極的にお願いしないと日本に来てくれなくなるかもしれません。日本はいまだに前近代的なムラ社会の風習を引きずっていますから、同じ日本人同士でも、ライフスタイルや価値観が違う人とはうまくコミュニケーションを取れない人が少なくありません。外国人とうまくコミュニケーションできない本当の理由はこのあたりにありそうです。しかし、日本は国民の選択として外国人の積極的な受け入れを決断したわけですから、対応は待ったなしといってよいでしょう。

<日本史の真実>
*2-1:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/saga/article/510436/ (西日本新聞 2019年5月16日) 人気呼ぶ吉野ケ里歴史公園 多彩な遊具や体験イベント 2年連続で来園者最多 [佐賀県]
 吉野ケ里歴史公園(神埼市、吉野ケ里町)が人気を集めている。昨年度の年間来園者数は77万3969人に達し、2年連続で過去最多を更新。歴史ファンというよりも、家族連れが目立つ。来園者の声を聞き、その魅力を探った。「子どもが『行こう』ってせがむんです」。伊藤明美さん(38)は福岡市から長男の類都君(5)を連れて遊びに来た。自宅近くの公園は狭く、老朽化などで遊具が撤去されたところも少なくないという。吉野ケ里歴史公園は面積約104ヘクタールと広大。西口に近い「古代の原ゾーン」の「遊びの原」が類都君のお気に入りだ。トランポリンのように軟らかいドーム形の遊具「ふわふわドーム」で、1時間以上飛んでいることも。「毎日でも来たい」と類都君。アスレチックやローラー滑り台などの大型遊具が充実し、そばにスタッフが常駐して安全に遊べる。お昼時になると、「野外炊事コーナー」から食欲を誘う香りが漂う。利用を申し込めば火気が使用でき、テントを張ってバーベキューを楽しめる。家族や友人とパーティーを開いていた鳥栖市の池田秀さん(29)は「近くに病院もトイレもあり、小さい子どもが一緒でも気軽にアウトドア気分を味わえる」。芝生広場「弥生の大野」で、長女と大玉を転がしていた佐賀市の江口あいさん(41)は「歴史を勉強するための場所というイメージが強かったが、こんなに楽しめるとは思わなかった」。雑貨などを販売する公園北口のイベントに訪れたが、子どもが一日中遊べる場所があると「ママ友」に聞き、西口エリアにも足を伸ばした。来園者の増加を後押しするのは、家族連れをターゲットにした料金見直しもある。子ども連れの入園料が無料になる県発行の招待券「子育てし大“券”」(期間限定)の配布が2016年度に始まり、昨年4月から中学生以下の入園料が無料となった。人気の西口エリアから、復元された竪穴住居などが並ぶ東口エリアの「環壕集落ゾーン」に来園者を呼び込もうと定期的にイベントを開催。熱気球に乗って上空から遺跡を見学できる遺跡展望は毎回子どもたちに人気だ。今月は18、19の両日午前9時から開かれる。今年の来園状況も順調だ。4月28日~5月6日までの10連休には昨年同期比で約2万人増の12万8633人が訪れた。公園担当者は「身近で楽しい『公園』として足を運んでもらうことから、遺跡の歴史にも興味を持ってもらえたらうれしい」と話している。
●来園者数の推移
 吉野ケ里歴史公園の来園者は開園初年度の2001年度に68万1041人となったが、3年後の04年度には41万5079人にまで落ち込んだ。火おこしなど古代体験ができる施設などを整備し、イベントなどを打ち出したことで、来園者は増加傾向に転じた。15年度に初めて70万人台を突破すると、17年度は73万5770人となり、過去最多を更新。18年度は、さらに約3万8千人上回った。

*2-2:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%B0%E4%B8%8E (ウィキペディア、台与より抜粋) 
●臺與
 臺與(「とよ」あるいは「いよ」、生没年不詳)は、日本の弥生時代3世紀に『三国志 (歴史書)』、魏志倭人伝中の邪馬台国を都とした倭の女王卑弥呼の宗女にして、卑弥呼の跡を13歳で継いだとされる女性である。魏志倭人伝中では「壹與」であるが、後代の書である『梁書』『北史』では「臺與」と記述されている。「台与」は「臺與」の代用。臺與の表記・読みについては異説が多く詳細は後記。
●事跡
 魏志倭人伝によると、正始8年(247年)に帯方郡太守として王頎が着任した。倭国は帯方郡へ載斯烏越ら使者を派遣し、親魏倭王の女王卑彌呼に未だ従わない狗奴国の男王卑弥弓呼を攻撃中であると(王頎に)報告した。太守は塞曹掾史の張政らを派遣し、詔書および黄幢(魏帝軍旗)を難升米(なしめ)に授けて和平を仲介した。後に女王卑弥呼が死ぬと径百余歩の大きな塚を作り、奴婢百余人を殉葬した。ところが、後継者として立てた男王を不服として国が内乱状態となり、千余人が誅殺し合った。改めて卑彌呼の宗女である壹與を13歳の女王として立てた結果、倭国は遂に安定した。張政らは(幼くして新女王となった)壹與に対し、檄文の内容を判りやすく具体的に説明した。壹與は倭国大夫率善中郎將の掖邪狗ら二十人を随行させた上で張政らを帰還させた。その際、男女生口三十人を献上すると共に白珠五千孔、靑大勾珠二枚および異文雑錦二十匹を貢いだ。とされる。 張政が倭に渡った正始8年から卑弥呼の死と壹與の王位継承は、それ程年月が経っていないと思われる。『日本書紀』の神功紀に引用される『晋起居注』(現存しない)に泰初(「泰始」の誤り)2年(266年)に、倭の女王の使者が朝貢したとの記述がある。現存する『晋書』武帝紀と四夷伝では、266年に倭人が朝貢したことは書かれているが、女王という記述は無い。卑弥呼#神功皇后説にもあるように、江戸時代にはこの女王は卑弥呼と考えられていたが、卑弥呼は249年(正始10年)までに逝去(『梁書』)してしまっていることから、近年ではこの倭国女王は台与のことであると考えられている。なお、この正始10年(4月に改元されて嘉平元年)(249年)は、中国では曹操に始まる曹氏の魏から、司馬懿に始まる司馬氏の晋へ禅譲革命が行われる265年12月(泰始元年)に至る契機となった年である。この朝貢の記録を最後に中国の史書から邪馬台国や倭に関する記録が途絶え、次に現れるのは150年の後の義熙9年(413年)の倭王讃の朝貢(倭の五王)である。台与と後のヤマト王権との関係は諸説あってはっきりしない。人物の比定については諸説ある。

*2-3:https://blog.goo.ne.jp/ikejun_2018/e/27ebfe56cbbabe9e590698fe8cfd7248 (Goo 2018.4.30より抜粋) 「魏志倭人伝」 晋の時代の台与(トヨ)
 「魏志倭人伝」の最後に登場するのが、卑弥呼の宗女とされる13歳の女王 台与(トヨ)。魏志倭人伝をまとめたのが、晋の時代の陳寿で、台与が貢物を贈り、国づくりを学んだのも晋の国からです。台与の存在の信ぴょう性は非常に高いです。急に年齢13歳とまで紹介されています。一方で、台与の宮殿がどこになったのかは記載がありません。
理由
1、漢の時代の倭国
  伊都国、奴国など玄界灘湾岸の国々+その南にある21国
2、魏の議題の倭国
  1に加えて、さらに南にある邪馬台国と水行20日で行ける投馬国。女王に従わない邪馬台国の南にある狗奴国
3、晋の時代の倭国
  2に加えて、「瀬戸内海の国々+近畿」と広がりがあった。と考えます。つまり、台与の宮殿は、奴国、邪馬台国でも投馬国でもなく、まだ名前が付けられていない。西日本のどこかにあった国ではないでしょうか。そして、張政らは(幼くして新女王となった)壹與に対し、檄文の内容を判りやすく具体的に説明した。壹與は倭国大夫率善中郎將の掖邪狗ら二十人を随行させた上で張政らを帰還させた。つまり大陸から国づくりを教わった。大陸主導の元で新しい国づくりが行われた。その際、男女生口三十人を献上すると共に白珠五千孔、靑大勾珠二枚および異文雑錦二十匹を貢いだ。そのお礼に台与が貢物を贈ったと云うことに・・・。後の大和朝廷の聖徳太子らが隋に遣隋使、唐に遣唐使を派遣しますが、それより以前に台与が大陸の文化や国の統治の方法を学んだと云うことです。台与が参考にした大陸の晋の国も滅び、五胡十六国の戦国時代へ、宋、隋、唐と大国がまとめたのは、6世紀ぐらい、日本では飛鳥時代になります。台与の記述を最後の中国大陸の歴史書「史記」から倭国の記載がなくなります。

*2-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44296100W9A420C1000000/?n_cid=BMSR3P001_201905140021 (日経新聞 2019年5月16日) 「仁徳天皇陵」含む古墳群、世界遺産に 諮問機関が勧告
 世界文化遺産への登録を目指す「百舌鳥(もず)・古市古墳群」(大阪府)について文化庁は14日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関が登録すべきだと勧告したと発表した。仁徳天皇陵古墳(大山古墳、堺市)など日本政府が推薦していた49基の古墳すべてが対象。6月に始まるユネスコの世界遺産委員会で正式に登録が決まる見通しだ。諮問機関は国際記念物遺跡会議(イコモス)。14日未明に記者会見した文化庁の説明によると、勧告は古墳群を「傑出した古墳時代の埋葬の伝統と社会政治的構造を証明している」と評価。「顕著な普遍的価値」を認めた。資産の価値に関する疑問点などの指摘はなかったという。日本政府は古墳群を古代日本の政治や文化、建築技術を知る貴重な資産として推薦。仁徳天皇陵をはじめ宮内庁が皇室の祖先の墓とする「陵墓」が29基含まれており、陵墓が世界遺産に登録されれば初めてとなる。世界遺産委は6月30日~7月10日にアゼルバイジャンのバクーで開かれる。日本国内には文化遺産が18件、自然遺産が4件あり、古墳群が登録されれば23件目。日本からの登録は7年連続となる。古墳群は大阪府南部の百舌鳥地域(堺市)と古市地域(羽曳野市、藤井寺市)にあり、当時の政治や文化の中心地の一つに当たる。現存する89基のうち形がよく残っている4世紀後半から5世紀後半の49基を構成資産とした。

<現代の皇室と邪馬台国・大和朝廷の関係>
*3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14012750.html (朝日新聞2019年5月13日)亀の甲で占い、「吉」は栃木・京都 宮中三殿「斎田点定の儀」 「大嘗祭」の米産地選ぶ
 天皇の代替わりに伴って11月に行われる皇室行事「大嘗祭(だいじょうさい)」で、神々に供える米を作る都道府県を選ぶ「斎田(さいでん)点定の儀」が13日午前、皇居・宮中三殿で行われた。亀卜(きぼく)と呼ばれる亀の甲を焼く占いで、東から栃木県が、西から京都府が選ばれた。アオウミガメの甲羅を将棋の駒形(縦24センチ、横15センチ)に加工したものを火であぶり、ひび割れの具合で吉凶を判断し、「吉」と出た都道府県を選ぶ神事。宮内庁によると、大嘗祭で供えられる米をつくる地方を定める亀卜は、古くから行われてきたという。東京を中心に東日本の18都道県を「悠紀(ゆき)の地方」、残りの西日本29府県を「主基(すき)の地方」とし、米を作る「斎田」を設ける都道府県が一つずつ選ばれる。平成の大嘗祭に伴う儀式では、秋田、大分両県が選ばれた。儀式は13日午前10時ごろ、国中の神々をまつる神殿の前庭に設けた「斎舎(さいしゃ)」の幕内で始まり、40分ほどで終了した。天皇陛下は立ち会わず、山本信一郎長官から宮殿で結果の報告を受けて決裁する。その後、宮内庁が選ばれた自治体に連絡し、協力を依頼。具体的にどこに「斎田」を設けるかなどを今後協議していく。同庁によると、古来、斎田で作られた米は皇室に献上されてきたが、日本国憲法下で初めて行われた平成の代替わりの際は、生産者に代金を支払って購入した。今回も、同様の対応をとるという。

<女性天皇・女系天皇について>
PS(2019年5月27日追加): 皇位継承資格を男系に限定していたのは、科学的な生物学・遺伝学が広まっていなかった時代に、生殖に関しては「男が種、女は畑」と考えられていたからで、畑が肥えていようがいまいが、大根の種を蒔けば大根、キャベツの種を蒔けばキャベツしかできないのと同じに考えていたからだ。しかし、現在では、科学的に「男性も女性も種を作るのに半々に貢献しており、その上、女性が畑も提供している」ことが明らかになったため、皇位継承資格を男系に限る必要はなくなったのである。
 また、男子に限定したのは、大日本帝国憲法第11条で天皇に軍の統帥権を持たせた明治以降からであり、それ以前は女性天皇が何人もいる。従って、日本国憲法の下では男子というのも不要な制限であり、女性・女系天皇はもはや何の問題もなく、女性・女系天皇に対する反対は根拠なき女性差別になっているため、*4の結果になっているのだ。

 
       2019.5.27朝日新聞            2019.5.27毎日新聞

(図の説明:令和天皇初の国賓としてトランプ米大統領が来られ、よい歓迎を受けられた。ただし、いつも思うのは、雅子皇后の帽子は大きすぎ、それを目深にかぶるため顔が半分くらいしか見えず、おしゃれでない。そのため、自分の美しさを殺さず活かすファッションや姿勢を工夫されてはいかがかと存ずる。よいファッションアドバイザーをつけるのも一考かもしれない)

*4:https://www.jiji.com/jc/article?k=2019041200827&g=soc (時事 2019年4月12日) 女系・女性天皇に賛成7割=時事世論調査
 時事通信の4月の世論調査で、男系男子に限られている現在の皇位継承資格を女系・女性皇族にも広げるべきか尋ねたところ、「広げるべきだ」が69.8%だった。「広げるべきではない」は11.2%、「どちらとも言えない・分からない」は19.0%だった。政府は女系・女性天皇に慎重な姿勢を示しているが、回答者の約7割が女系・女性天皇を容認していることが明らかになった形だ。皇族数の減少対策となる女性宮家創設の賛否に関しても、「賛成」69.7%、「反対」10.3%、「どちらとも言えない・分からない」20.0%となった。現在の天皇陛下にどのような感情を抱いているかについては、「尊敬の念を抱いている」44.0%、「好感を抱いている」39.5%、「特に何の感情も抱いていない」15.5%などだった。

<生命科学のもう一つの革命、再生医療>
PS(2019年5月28、30日追加):*5のように、人工透析患者の皮膚から人工血管を作製し、その患者さんに移植して人工透析をやりやすくする臨床研究が始まるそうだ。人工血管もいろいろな場所で役立つが、人工透析患者に使うのなら腎臓を作って移植した方が透析不要になって患者さんの幸せに繋がりそうである。そして、人工腎臓もバイオ3Dプリンターでできるかも知れないが、絹糸や絹布などの蛋白質素材で腎臓の形を作って土台にし、患者さんの幹細胞を培養すれば、複雑な形も比較的簡単にできそうに思う。
 また、*5-2のように、東京大と米スタンフォード大などのチームが、造血幹細胞を市販の液体のりの成分で大量培養することに成功し、専門家もびっくりしたそうだ。こうなると、培養しながらの3Dプリンター等での造形が容易になるだろう。

*5-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/513677/ (西日本新聞 2019/5/28) 人工血管を患者に移植 バイオ3Dプリンターで作製 佐大チーム
 佐賀大医学部の中山功一教授(臓器再生医工学)らの研究チームが、人間の細胞から立体的な構造体をつくる「バイオ3Dプリンター」を使い、人工透析患者の皮膚から人工血管を作製し、患者に移植する臨床研究を始める見通しとなった。国から認可された審査委員会に研究計画を申請済みで、承認後に着手する。中山教授によると、人工素材を使わずにヒトの細胞から人工血管を作るため、アレルギー反応や細菌の感染リスクを抑制する効果が期待できるという。バイオ3Dプリンターは、患者の脇や脚の皮膚から採取した細胞を培養し、約1万個の細胞の塊(直径約0・5ミリ)をつくり、その塊を剣山のように並べた針に刺して積み重ね、3次元データの設定通りに形成する。複数の串刺し状の塊がくっつき、直径約5ミリ、長さ約5センチのチューブ状の人工血管ができるという。人工透析は、腎不全の患者の体内から血液を取り出し、機械で浄化して戻す治療法。血液を取り出しやすくする血管(シャント)が必要になるが、樹脂製の血管は内部が詰まる場合があるという。このため、シャントの代わりに3Dプリンターで作った人工血管を3-4人の患者に移植し、半年ほどかけて安全性や効果を確認する。中山教授は「バイオ3Dプリンターで作製した人工血管の移植は世界でも珍しい。他の臓器の作製にも応用できるだろう」としている。

*5-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14035348.html (朝日新聞 2019年5月30日) 造血幹細胞、のりで大量培養 高価な培養液以上、専門家びっくり 東大など、マウスで成功
 白血病の治療で重要な細胞を大量に培養することに、東京大と米スタンフォード大などのチームがマウスで成功した。これまでは高価な培養液でもほとんど増やせなかったのが、市販の液体のりの成分で培養できたという。白血病などの画期的な治療法につながる可能性があり、専門家は「まさにコロンブスの卵だ」と驚いている。白血球や赤血球に変われる造血幹細胞は、0・5リットルで数万円するような培養液でも増やすことが難しい。このため、白血病の治療はドナーの骨髄や臍帯血(さいたいけつ)の移植に頼る場面が多かった。東京大の山崎聡特任准教授らは、培養液の成分などをしらみつぶしに検討。その一つであるポリビニルアルコール(PVA)で培養したところ、幹細胞を数百倍にできたという。PVAは洗濯のりや液体のりの主成分。山崎さんは実際、コンビニの液体のりでも培養できることを確認した。共著者で理化学研究所で細胞バンクを手がける中村幸夫室長は「結果を疑うほど驚いた。研究者はみんな目からウロコではないか」と話した。論文は30日に英科学誌ネイチャーに掲載される。

<知的障害者・精神障害者差別が起こる理由、犯人の前職など>
PS(2019年5月29日、6月1、2、3日追加):*6-1のように、昨日、川崎市内のバス停で多くの小学生が刃物で襲われる事件が起き、小6の女児と見送りに来た父親が犠牲になった。2001年には大阪教育大附属池田小学校で小学生の無差別殺傷事件が発生しており、このような場合に必ずほのめかされるのが「精神障害者か知的障害者の犯行」だ。これは、刑法が39条で「心神喪失者の行為は罰しない、心神耗弱者の行為は刑を減軽する」と規定しているのが原因だが、メディアがこぞって心神喪失者か心神耗弱者(注:どちらも定義なし)の犯行であるかのように言い立て、近年おかしな病名が増えた精神科の専門家が「予備軍は多い」などと語るのも問題だ。何故なら、それなら「予備軍」と考えられる人はすべてあらかじめ閉じ込めておくのが「登下校中の子どもをあらゆる悲劇から守る手立て」になるが、これは差別に基づく著しい人権侵害に至る危険な思想だからである。
 なお、*6-2のように、私立カリタス小学校の児童ら19人を殺傷して自殺した岩崎容疑者(51歳)は、刃渡り30cmの2本の包丁を黒い手袋を着用した両手に持って短時間で多数の人を殺傷したそうだが、こんな長い包丁を使って短時間に何人も殺せる人の前職は自衛官か肉屋・魚屋か、自殺までしたのなら元自衛官が誰かに頼まれて行ったのかと疑問に思われ、前職が全く開示されないのが不思議だった。
 さらに、*6-3のように、福岡市博多区板付の路上で、息子(40代)が「10年くらい前から引きこもりで仕事をしないため注意した」という母と妹を襲った後、自殺したと書かれている。10年くらい前の2008年にはリーマン・ショックがあり、企業は介護保険制度の支払いが40歳から始まるため40歳前後の人を解雇することが多く、その後は正規雇用の仕事がないまま10年近くを過ごして犯行に及んだのかもしれない。これは、岩崎容疑者にも近いが、中途退社すると就業上の不利益を受ける社会はおかしく、「引きこもり=異常」というのも変である。ちなみに、出産直後の主婦は買い物にも行けないほどの引きこもり状態を強制されるし、夫の転勤について行った専業主婦も引きこもらざるを得ないことが多いため、これは何とかすべきだ。
 このような中、*6-4のように、元農水次官が「引きこもり」と思われる44歳の長男を刺殺したそうで、偏見に満ちた報道で「引きこもり」の当事者は最後の居場所を無くしている。また、*6-5のように、引きこもりの経験者や家族会が、「①事件と引きこもりを先入観で短絡的に結びつける報道は、無関係な引きこもり当事者を深く傷つけ、誤解と偏見を助長する」「②引きこもり状態にある人が、このような事件を引き起こすわけではない」「③無関係な他者に対し危害を加えるような事態に至るケースは極めてまれだ」と、メディアにおける事件の報じ方に言及し、危機感を表明したのは当然のことだ。しかし、ここで、「バッシングではなく支援を」と精神科医が過去の西鉄バスジャック事件や新潟の少女監禁事件を引き合いに出しているのは「引きこもり⊂精神障害者=他者に危害を加える人、殺人犯予備軍」というレッテルを貼っており、「犯罪防止」や「支援」という名目でやろうとしていることが問題なのである。
 そして、「犯罪防止」という名目で行われ始めた人権侵害には、*6-6のような大きく規制緩和されて6月1日から施行されている改正通信傍受法(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64915 参照)に基づく警察の通信傍受がある。そのため、これを正当化するために「日本にも、危険な人はこんなに多い」とメディアを使って差別的な広報をしているのなら、とんでもない話だ。また、通信傍受する理由はどうにでもつけられるため、犯罪とは無関係な人でも意図的に傍受されることがありえ、この法律は日本国憲法21条の「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」に反するわけである。
 なお、障害者差別に関して、*6-7のように、「福岡トライアスロン」が約100人の障害者をボランティアスタッフとして参加させるのは、爽やかな明るさのあるトライアスロンらしい貢献で好ましいが、裏方ではなく競技に参加させることはできないのだろうか?

*6-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14033840.html?iref=comtop_tenjin_n (朝日新聞 2019年5月29日) (天声人語)朝のバス停の悲劇
 「あの日、駅で『行ってきます』って笑顔で言ってくれたよね。あの笑顔が最後だった。もうお話しできないんだね」。大阪・付属池田小事件(2001年)で亡くなった小2女児、山下玲奈さんの遺族が翌年、そんな手記を本紙に寄せた▼感情を抑え、思い出を淡々とつづる。「車の中で宇多田ヒカルさんの歌、よく歌ってくれたよね」「小学生新聞の作文コーナーに応募したいと言って、作文用紙を買ったね」。普段着のように自然な口調が哀(かな)しみを誘う▼手記に胸を打たれた音楽家らが、鎮魂の楽曲「子守歌」を作る。「もう一度会いたいよ」「何のためにこの世に出てきたのでしょうか」「ずっと一緒だからね」。母の思いがメロディーに乗り、人々の胸に届けられてきた▼多くの小学生らが刃物で襲われるという凄惨(せいさん)な事件がまたしても起きた。犠牲者の一人は小6の女児である。いつもと変わらぬ朝を迎え、いつものバス停に立った。スクールバスに乗り込む直前に未来が絶たれるなど、だれに予測できただろう▼川崎市内の現場にはきのう、雨の中、住民らが次々に献花に訪れた。白いユリ、紅のガーベラ、黄色のヒマワリ……。登下校中の子どもをあらゆる悲劇から守る手立てはないものか。花々を見ながら考え込んだ▼〈逆縁の花の別れでありにけり〉山崎美代子。かつて本紙の俳壇に載った句である。病気であれ事故であれ、子に先立たれた親の苦しみは海より深い。時がたっても遺族の悲しみが消えることはない。

*6-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/380373 (佐賀新聞 5月29日) 手袋着用、短時間で多数殺害図る、川崎19人殺傷、動機を捜査
 川崎市多摩区でスクールバスを待っていた私立カリタス小の児童ら19人が殺傷された事件で、自殺した岩崎隆一容疑者(51)=同市麻生区=が襲撃時、手袋を着けていたことが29日、神奈川県警への取材で分かった。県警は凶器の包丁が滑らないようにし、短時間に大勢を殺害できるよう周到に準備したとみて捜査。同日の家宅捜索でノートなど数十点を押収した。動機や計画を示唆するものは見つからなかった。県警によると、岩崎容疑者は自宅最寄りの小田急線読売ランド前駅と登戸駅の防犯カメラ映像では手袋をしていなかった。現場近くでは手袋をした姿が写っており、襲撃直前に着用したとみられる。

*6-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/514897/ (西日本新聞 2019/6/1) 母と妹襲い男自殺か 2人重傷「生活巡り口論」 博多区
 31日午後5時10分ごろ、福岡市博多区板付4丁目の路上で、通行人から「女性が倒れており、家族に殴られたと話している」と119番があった。博多署によると、女性は「帰宅したら兄に刺されたので逃げてきた」と話し、近くの市営板付南住宅の一室で、男女2人が血を流して倒れていた。3人は病院に搬送され、男は死亡し、女性2人は重傷。3人は母親と兄、妹とみられる。署によると、路上で倒れていた40代の女性は、刃物によるとみられる刺し傷が胸にあった。室内にいた母親とみられる70代の女性は署員に「息子は引きこもりで仕事もせず、注意したら口論になり殴られた」という趣旨の話をしたという。頭を金づちのような物で殴られていた。この団地の一室では、署員が駆け付ける直前に、布団などが燃える火災もあった。死亡した男は腹部から出血しており、署は2人を襲った後に自殺したとみて、殺人未遂事件として調べる。近所の小学6年の女児(11)は「部屋で友達と遊んでいたら、隣の住民から『火事だから外に出て』と言われた。頭が血で染まった女性が救急車に運ばれているのを見た。本当にびっくりした」と話した。一家と長年付き合いのある70代女性は「母親と一昨日に会った際も変わった様子はなかった。息子さんは10年ぐらい前に1人暮らしを始めたと聞いていたので、戻ってきたのも知らなかった。最近は会っていない」と驚いた様子だった。

*6-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14039677.html (朝日新聞 2019年6月2日) 元農水次官、殺人容疑 44歳長男を刺す 警視庁捜査
 自宅で長男(44)を刺したとして、警視庁は1日、東京都練馬区早宮4丁目、元農林水産事務次官の熊沢英昭容疑者(76)を殺人未遂の疑いで現行犯逮捕し、発表した。熊沢容疑者は調べに「間違いない」と供述し、容疑を認めているという。長男は搬送先の病院で死亡し、同庁は容疑を殺人に切り替えて調べている。練馬署によると、逮捕容疑は1日午後3時半ごろ自宅で、長男の無職英一郎さんの胸などを包丁で複数回刺し、殺害しようとしたというもの。同40分ごろ熊沢容疑者から110番通報があり、署員が駆けつけると、英一郎さんが1階和室の布団の上で仰向けに倒れていた。熊沢容疑者は妻、英一郎さんと3人暮らし。同庁は当時の詳しい状況や動機の解明を進める。熊沢容疑者は旧農林省出身で、農林水産審議官などを歴任し、2001年から事務次官。05年から駐チェコ大使も務めた。近くに住む男性(86)は「一家は10年ほど前に引っ越してきた。長男らしい男性は一度も見たことがない」と話した。

*6-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14039661.html (朝日新聞 2019年6月2日) ひきこもり報道、偏見が怖い 川崎殺傷で「懸念」声明相次ぐ
 川崎市の路上で児童らが殺傷された事件で、直後に自殺した岩崎隆一容疑者(51)が、長期間就労せずひきこもり傾向にあったことが関連して報じられていることについて、「ひきこもる人への偏見を助長しかねない」と懸念する声が当事者からあがっている。ひきこもり経験者や家族会が1日までに相次いで見解、声明を公表した。
■事件と結びつけ「当事者傷つく」
 「ひきこもりは危険という偏見をこれ以上かぶせられるのはたまらない」。東京都内で1日に開かれた「ひきこもり親子・公開対論」。中高年ひきこもりの当事者や家族らが集う「ひ老会」の主宰者、ぼそっと池井多さん(57)は事件を報じるメディアの影響に言及し、危機感を表明した。自ら長期のひきこもり経験がある。「私だってむしゃくしゃしてブラックな気分になることはある。でも、それは私が50代でひきこもりだから、なのか。そうは思わない」。ひきこもり経験者でつくる「ひきこもりUX会議」(林恭子・代表理事)は31日、声明を公表した。「『事件を悲しみ犯行を憎むこと』が『ひきこもる人たちをひとくくりに否定すること』に向かいかねない」と危惧。事件とひきこもりを先入観で短絡的に結びつけるような報道は、「無関係のひきこもり当事者を深く傷つけ、誤解と偏見を助長する」とし、報道機関に慎重な対応を求めた。一方、KHJ全国ひきこもり家族会連合会(伊藤正俊、中垣内正和・共同代表)も1日に声明を公表。「自分の子も事件を起こしてしまうのでは」と衝撃を受けた親からの相談が増えている実態を明かしたうえで、「ひきこもり状態にある人が、このような事件を引き起こすわけではない」「無関係な他者に対し危害を加えるような事態に至るケースは極めてまれ」だと指摘した。そのうえで、縦割りをこえた行政の支援構築や、家族会などの居場所につながることの重要性を訴えた。
■バッシングではなく支援を
 精神科医の斎藤環・筑波大教授の話 過去に、西鉄バスジャック事件や新潟の少女監禁事件でも、当事者へのレッテル貼りとバッシングがセットでなされ、支援の充実にはつながらないということが繰り返され、今回も懸念している。一方で、当事者たちがこれだけ発信していることは、20年前からすると大きな一歩だ。支援を当事者主体のものに変えていくきっかけにしてほしい。

*6-6:https://digital.asahi.com/articles/ASM2G4RCVM2GUTIL01M.html (朝日新聞 2019年2月15日) 警察の通信傍受、昨年1万回超 12事件で82人を逮捕
 法務省は15日、全国の警察が昨年1年間に通信傍受法に基づいて傍受した携帯電話の通話は計1万359回だったと発表した。傍受した通話のうち、犯罪に関連するものは約1割の1318回だったという。12の事件で計82人の逮捕につながったという。2000年8月に施行された通信傍受法は当初、対象犯罪を薬物、銃器、組織的殺人、集団密航の4類型に限定していた。16年12月施行の改正法で窃盗、詐欺、恐喝、児童ポルノの提供・製造など9類型が追加された。昨年1年間の12事件のうち、8事件が改正法で新たに対象犯罪になった犯罪だった。捜査幹部によると、法改正で想定していたのは組織的な窃盗団や特殊詐欺の犯行グループへの実施という。法務省は傍受を実施した都道府県警や事件の内容は明らかにしていない。

*6-7:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/515303/ (西日本新聞 2019/6/3) 障害者100人が運営スタッフに 30日、福岡トライアスロン
 福岡市東区の西戸崎と志賀島を舞台にした「福岡トライアスロン」(30日)に、市内の福祉施設に通う約100人の障害者がボランティアスタッフとして参加する。これほど多くの障害者がスポーツ大会運営の裏方として活動するのは珍しいという。医師など市民有志でつくる大会実行委員会は「共生のまちづくりの一歩にしたい」と話している。大会は2017年に初開催され、2回目。約600人が出場予定で、バイクの受け渡しやコース管理など運営業務が多岐にわたるため、千人以上のボランティア確保が必要になっている。今年、福岡市で「障がい者差別解消条例」が施行されたこともあり、実行委は「働きやすい環境を整備すれば、障害に関係なく責任を持って大会を支えてくれる」と市内の関係団体に協力を呼び掛けた。大会には身体や知的、精神などの障害がある約100人が参加、健常者とともにチームを組んで選手を支える。具体的には選手に配るゼッケンなどの袋詰めのほか、大会前日の選手受付、当日の給水、表彰式なども支援する。障害者施設で作った物品販売や飲食コーナー、楽器演奏、ダンスでも大会を盛り上げる。実行委は車いす利用者が使いやすいようテーブルの高さを統一し、言葉で理解が難しい人には絵や写真で業務を説明した。協力に応じたNPO法人「福岡市障害者関係団体協議会」の中原義隆理事長は「これほどの規模でボランティア参加する大会は初めて。本人たちにとっても自信になる」と話している。

<近年の人類移動事情>
PS(2019年5月31日追加):*7-1のように、外国人就労拡大をする改正入管難民法の4月施行を受け、福岡県・市町村・業界団体・留学生支援団体などの官民56団体が、2019年6月に九州初となる「福岡県外国人材受入対策協議会」を発足させるそうで、他地域でも参考になる。
 また、*7-2のように、新在留資格「特定技能」外食分野の第2回国内試験の受験申し込みが外国人食品産業技能評価機構HPで始まると、申し込み殺到で受け付け開始直後から申し込みフォームが開けなくなったそうだ。しかし、*7-4のように、日本に移住して日本人妻や家族と故国のイタリア野菜を生産するイタリア人シェフや田舎暮らしに憧れて循環型の農業を目指す地域おこし協力隊のスペイン人のような方もおり、外国人だからこそ思いつくことも多い。さらに、*7-3のように、カンボジア(カボチャの古里)から来た農業実習生が新在留資格「特定技能1号」に移行するそうだが、様々な可能性を持って働く人たちであるため、せっかく日本語が通じるようになった真面目な外国人を追い出すようなことがないようにすべきだ。
 なお、最近、うちの近くでベトナム人をよく見かけるようになったが、同時にスーパーでパクチーが売られるようになり、うどんに入れて食べると爽やかで美味しい。ベトナムでは米粉麺(フォー)に入れて一般に食べられるが、その米粉麺とスープが売られていないのは残念だ。

*7-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/513963/ (西日本新聞 2019/5/29) 福岡県、外国人材受け入れへ協議会 官民56団体連携
 外国人就労を拡大する改正入管難民法の4月施行を受け、福岡県や市町村、業界団体、留学生支援団体などは6月に「県外国人材受入対策協議会」を発足させる。生活、労働情報や課題を共有し、受け入れ環境向上を図る狙いだ。外国人材に関連した官民の横断的な組織の設立は九州で初めて。県は9月にも市町村と連携した広域の外国人相談窓口の設置を予定している。法務省によると、県内の在留外国人は7万3876人(昨年6月現在)。改正法は新たな在留資格「特定技能」を創設。県内でも農業、介護、建設などの分野に従事する外国人数の増加が見込まれる。協議会は県に事務局を置き、福岡市、北九州市、県市長会、県町村会、福岡労働局をはじめ、農業や介護のほか外食、宿泊、建設など13業種の業界団体を含む計56団体で構成。アンケートなどで就労や生活面の不安、事業者が抱く制度の課題点や困り事を把握し、必要な対策につなげる。新設する相談窓口は「県外国人相談センター」(仮称)。政令市を除く58市町村に寄せられる相談をセンターと共有できるネットワーク体制を構築する。(1)外国人と担当の市町村職員(2)センターのスタッフ(3)通訳業者‐の3者が機器で同時通話できるシステムを活用。スタッフが生活、就労、医療など相談内容次第で各専門機関にもつなぐ。県は、関連経費として計約2300万円を2019年度一般会計当初予算案に計上する方針。

*7-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/512757/ (西日本新聞 2019/5/24) 外食特定技能試験のHP申し込み殺到 数時間アクセス困難に
 外国人労働者受け入れ拡大で創設された在留資格「特定技能」の外食分野の第2回国内試験(全国7会場)の受験申し込みが23日、外国人食品産業技能評価機構のホームページ(HP)上で始まったものの、申し込みが殺到しアクセスしにくい状態が数時間続いた。3月下旬に募集した初回分は半日で定員に達したため、機構はサーバーの容量を増強し備えていたが「予想を上回った」(事務局)という。東京会場分はこの日で定員(640人)に達した。外食分野の第2回試験は札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、岡山、福岡で6月24-28日に実施。定員は計2032人で、この日の午前10時に受け付けを始めた。本紙「あなたの特命取材班」に寄せられた情報によると、受け付け開始直後から申し込みフォームが開けなくなり、機構によると、昼すぎまでその状態が続発。その後も申し込みに必要な仮登録メールが送信されないトラブルが起きた。申請締め切りは今月29日だが、機構は「トラブルが起きた場合に対応が難しいため、土日は受け付けを停止する」としている。特定技能の在留資格を得るためには、各分野の技能測定試験に加えて、日本語能力試験に合格する必要がある。両方の試験に合格した後に出入国在留管理局に申請し、審査を経て資格を取得することになる。外食分野を管轄する農林水産省によると、外食業では留学生を中心に約14万人の外国人が働いている。特定技能では今後5年間で最大約5万3千人の受け入れを見込んでいる。

*7-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/506135/ (西日本新聞 2019/4/27) 特定技能1号 初認定 カンボジア農業実習生2人 登録支援機関は福岡など8件
 外国人労働者の受け入れを拡大する新制度で、出入国在留管理庁は26日、農業に従事する技能実習生でカンボジア国籍の20代女性2人が新たな在留資格「特定技能1号」に移行すると発表した。4月に運用が始まった新制度での認定は初めて。受け入れ企業に代わって外国人の生活をサポートする「登録支援機関」には、福岡県と鹿児島県の中小企業各1件を含む8件が全国で登録された。特定技能は人手不足が深刻な介護や建設、農業など14業種で、今後5年間で約34万人を受け入れる。外国人労働者は日本語能力と技能試験に合格すれば最長5年間働くことができる。特定技能1号にはアジアの元技能実習生23人、日本で実習中の4人の計27人が申請、2人が認められた。2人は大阪府の会社で受け入れられ、和歌山県御坊市で農業に従事。新制度では3年以上の技能実習修了者は技能試験が免除されることになっており、2人はこの要件で移行した。26日に在留資格の変更許可の通知書を送付。手続きが終われば、特定技能1号の在留カードが交付される。登録支援機関には人材派遣会社や日本語学校など1176件の申請があり、うち行政書士など個人2件、中小企業など法人6件が登録された。九州7県を管轄する福岡局への申請は78件。入管庁の佐々木聖子長官は「在留資格の変更や(本国からの)呼び戻しが多いのは予想通りで、これから審査をして徐々に増やしていく。登録支援機関が社会に定着していくようにしたい」と述べた。

*7-4:https://www.agrinews.co.jp/p47783.html (日本農業新聞 2019年5月29日) 海越えて移住「満足」 日本が古里
 日本は第二の古里──。遠く離れた異国に移住し、日本人の妻や家族と共に農業や農村暮らしに夢を描く外国人がいる。故国のイタリア野菜を生産するシェフや、田舎暮らしに憧れ循環型の農業を目指す農場を立ち上げた地域おこし協力隊員。必死に取り組む姿に地域の人々も、目を細める。積極的に地域の活動にも関わり、欠かせない存在になっている。
●故国の野菜80種 農家シェフ順風 イタリア→福岡県福津市 シルビオさん夫妻
 福岡県福津市に、国内で流通するイタリア野菜の草分けがいる。イタリア出身のカラナンテ・シルビオさん(41)と同市出身の花田愛さん(40)夫妻だ。日本に移り住んだ11年前は国内でイタリア野菜が手に入らず、自ら作り始めた。現在は、3・5ヘクタールの畑で年間80種の野菜を栽培する。トロペア、渦巻きビーツ、アーティチョーク……。夫妻が手掛ける野菜は、どれも一般のスーパーでは見掛けないマイナー品目だ。現在は種苗メーカーから種子が販売され作る農家も出てきているが、移住した当初は手に入らなかった。シルビオさんはイタリアで修業を積んだ料理人。日本の野菜でも代用できないか試したが、思った味が出せなかった。農業は素人だったが、自ら作ることを決意。周辺農家の指導を受けつつ、小さな畑から栽培を始めた。イタリア野菜は、日本で作るのが難しいとされる。気候の違いからだ。夫妻は、さまざまなイタリア野菜を育てて味見。同市の気候に適した種を探した。独特の香りや苦味が弱いなど、課題があった場合は植え付け時期や水管理を変えて工夫。地域に合った作り方を少しずつ研究していった。料理人とあってイタリア野菜の味わいに精通していたことも役立った。「味や食感を確かめながら、本場の味に近づけた」と振り返る。風変わりな野菜を作る異国人とその妻。当初は地域住民も遠巻きにしていたが、真面目に農業に取り組む2人の姿を見て協力するようになった。3・5ヘクタールと広大な農地も、地元民の声掛けで集まったという。2018年度には宗像市、福津市、JAむなかたでつくるむなかた地域活性化機構から、農業功労賞を受けるなど、今では同市を代表する農家の一人となった。17年12月には、イタリア料理店アプテカ・フレーゴを開店。生産したイタリア野菜を巧みに使い、振る舞っている。地場産のタコをメイン食材にしたパスタも、自家製の新鮮なハーブ「フェンネル」を添えると、本場の味に変貌する。店には直売コーナーを設け、料理に使った食材を並べる。シルビオさんの料理を気に入った客が、購入していく。店で使う分は一部。作った野菜のほとんどは、福岡市内のスーパー、全国のイタリア料理店や和食店などに卸す。営業活動はほとんどしていないが、口コミで出荷先がどんどん広がっているという。農業を始めてから、自分で汗を流して食材を作り、調理して食べる生活に魅了されたという夫妻。「移住して感じた食の大切さを、店に来た客にも伝えていきたい」と話す。
●豊かな水と人情 夢は循環型農業 スペイン→新潟県上越市 エミリオさん
 スペイン出身のガルシア・バランコ・エミリオさん(38)と瀧田典子さん(32)夫妻は、畜産農家を目指して2人の子どもと共に新潟県上越市柿崎区にやって来た。エミリオさんは現役の地域おこし協力隊員。活動を通して地域に溶け込み、2017年に農場「黒岩パーマカルチャーファーム」を立ち上げ、循環型農業の実践に夢を描く。パーマカルチャーは、オーストラリアで提唱された永続的な農業を指す概念で、世界各地で取り組まれているという。農場ではウコッケイの他、水田2アールでアイガモ農法に挑戦。有機野菜作りにも汗を流す。ウコッケイは10羽から50羽に増やし、卵の販売に乗り出した。有精卵は、地域の直売所や飲食店で1日約10~20個(1個120円)を販売。「こくがある」と、評判は上々だ。来日して愛知県で3年間過ごした後、16年に上越市の地域おこし協力隊に就任。今秋に任期を終える。「自然を大切にして、田舎で暮らしたい」と柿崎区に飛び込んだ。豊かな湧き水と森林、温かい人情が移住の決め手だったという。今後はウコッケイを250羽、ヤギ7頭を100頭に増やす計画。6月にはブロイラー40羽を飼育する予定だ。飼っている動物のふんから堆肥を作り、土を守る農業を実践していく。エミリオさんは「再生可能な農業でコミュニティーをつくり、新たな移住者5家族ほどを呼び込みたい」と将来の夢を描く。夫妻は、地域活動に積極的に参加し、住民から頼りにされるまでになった。今後は、豚や牛の導入も視野に循環型の永続的農業を取り入れていく考えだ。

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2019.5.3~4 GAFAの課税問題と個人データ保護問題 (2019年5月5、6、7、8、9、10、11、13、22、23、24日追加)
  
     2019.1.2産経新聞

(図の説明:左図のように、GAFAの創業は、アップル1976年、アマゾン1994年、グーグル1998年、フェイスブック2004年と、パソコンなどのハードを作ってきたアップル以外はインターネットが一般的になってから芽生えた若い企業だが、株価時価総額や売上高は兆円単位であり、時代のニーズに合ったサービスを行えば成功することがわかる。しかし、近年は、個人データの勝手な使用や移転、検索サイト等での人権侵害など、ニーズからかけ離れた横暴も見られる。また、中央の図のように、国際課税制度がグローバル企業の行動様式に追いついておらず、課税漏れも発生している。そのため、右図のような規制が検討されているわけだ)

(1)GAFAの問題について
 「GAFA(ガーファ)」とは、巨大IT企業であるグーグル・アップル・フェイスブック・アマゾンの頭文字をとったもので、*1-1のように、課税問題と個人データ保護の問題があるが、これは巨大企業だから生じる問題ではないと、私は考える。

1)課税問題について
 課税問題については、元・米グーグル副社長の村上氏が、*1-1で主張されているとおり、「GAFAは税金を払っていない」と言われることが多いが、現行税制下で脱税(税法違反の違法行為)をしているわけではなく、節税(税法に従って無駄な税金を節約すること)をしているにすぎないため、私も感情的な議論には反対だ。

 現行税制下で、日本等で営業している企業が納税しなくて済む理由は、税法が「企業は、進出国で支店や工場などの恒久的施設を持たなければ法人税を課されない」という規定になっており、GAFAなどのIT企業は配信拠点を外国に置いたまま恒久的施設を持たずに営業することができるからだ。

 しかし、倉庫が恒久的施設と認定された判例(http://www.bantoh.jp/article/14476063.html 参照)もあり、これは日本国内の倉庫で商品の保管・梱包・日本語版取扱説明書の同梱・宅配便での発送などが日本の従業員によって行われていたケースで、アマゾンの営業の一部はこれに当たるだろう。

 さらに、GAFAを含むグローバル企業は、タックスヘイブンに利益を集めれば合法的に税負担を軽くすることができるので問題になっているが、これもタックスヘイブン税制と外国税額控除を使って合法的に行われており(https://www.eyjapan.jp/library/issue/info-sensor/2017-06-07.html 参照)、上の判例のケースも、倉庫をタックスヘイブンに置き、そこで作業を行えば課税の軽減ができるわけである。

 そのため、私は、各国が、商法に「営業する国には、支店などの恒久的施設をおかなければならない」という規定を置いて、ある国で挙げた利益に対する税はその国で支払うことを義務付けるとともに、商品やデータ保護などにクレームがある場合も、その国の恒久的施設をその国で訴えればよいようにすれば、税制とデータ保護の問題が同時に解決できると考える。

 従って、「巨大企業だから、GAFAが悪い」と感情的に煽るのではなく、2019年6月の日本で開催されるG20財務相・中央銀行総裁会議で、各国がその国に恒久的施設を置くことを義務付ける点で合意すればよいだろう。

(注:タックスヘイブンとは、法人税や源泉課税などがゼロor低税率という税制優遇措置をとっている国・地域で、キュラソー、ケイマン、スイス、パナマ、バハマ、ルクセンブルクなどがこれにあたる。日本も、過疎地などで企業誘致したい場所の法人税率を下げればよいのでは?)

2)個人データ保護問題について
 *1-1にも書かれているとおり、検索やSNS等のサービスを提供するグーグルやフェイスブックなど「プラットフォーマー」と言われる企業は、インターネットやデータビジネスで強いポジションを握っているプラットフォーマーで、欧州では個人データ保護などのGAFA規制が強まっているそうだ。

 私は、個人データはその人のものであるため、便利さとの引き換えに勝手に他の目的に流用されること自体が人権侵害であり、欧州の個人データ保護規制が良識的だと考える。そのため、「米国が勝った」ではなく、米国も日本も人権侵害がないように必要な規制をしながら、誠実に事業を行わせなければならないのであり、これは中国・ロシアなど他の国々でも同じだ。

 アマゾンは、「いずれ注文しなくても必要な時に必要な商品が届くサービスも可能になる」「そのためには個人データの開示が必要だ」などと公言しているそうだが、これは過去の行動のみから判断するため、一度買ったらずっと同じ商品の広告が出たり、毎月同じものを買わされたりして役に立たないだけでなく、無駄なものを買わされて迷惑なこともある。従って、IoTによる技術革新も、個人の自由やプライバシーなどの基本的人権を踏みにじらない範囲でのみ許されることを、決して忘れてはならない。

(2)GAFAの規制について
1)問題は独占なのか?
 マッキンゼーの日本支社長だった経営コンサルタントの大前氏が、*1-2のように、「①GAFAなどのデジタルプラットフォーマーに対する規制圧力が世界中で強まっているが、この問題は『個人データの独占』と『課税』の2つがある」「②個人データの独占問題は、消費者がスマホやパソコンで検索や買い物をすると、その履歴が消費者の同意なくターゲティング広告に活用される行為が独占禁止法に違反する」「③課税問題はデジタルプラットフォーマーがタックスヘイブンや法人税率の低い国・地域に拠点を置き、実際に収益を上げている国で税金を納めていない」などの要点を書かれている。

 私は、①②については、(1)2)に記載したとおり、検索や買い物をするとその履歴が残ることまでは仕方がないが、これを消費者の同意なくターゲティング広告に利用したり、他企業に売却したりすることは人権侵害の問題であり、これは中小企業でも同じであるため独占の問題ではないと考える。つまり、アクセスデータを集めるところまではプラットフォーマーの特権になるが、個人データは個人のものであるため、その人の同意なく移動したり利用したりするのは人権侵害という憲法違反の問題なのだ。そのため、データの悪用を決して行わない信頼できるプラットフォーマーが現れれば、市場原理によってそちらの方が勝つと思われる。

 また、①③については、(1)1)に記載したとおり、各国が、営業する国に恒久的施設を置くことを義務付けることで合意すれば解決できる。

2)規制の妥当性
 現在、*1-2のように、世界中で個人データの取扱規制や新税導入などの動きが加速し、日本の公正取引委員会も、デジタルプラットフォーマーが不当に個人情報を集めた場合、「優越的地位の濫用」を個人との取引にも適用して独占禁止法を適用する方針を固めたそうだ。

 しかし、検索サービスやSNSサービスの対価として個人の情報を集めることは、デジタルプラットフォーマー以外の企業もやっており、「巨大な」「プラットフォーマー」「不当に集めた」という線引きが問題になるのは独占禁止法を適用しているからだ。そのため、個人情報やプライバシーを人権として護る消費者保護サイドの規制を作れば、境界の問題は生じない。

(3)個人データの悪用について
 政府が世界の巨大IT企業「プラットフォーマー」の規制に向けた議論を本格化させていることを受けて、*2-1のように、巨大IT、GAFA、プラットフォーマーについて、基本的な定義が示されている。

 しかし、私は、ネット経済の特性は、独占・寡占が進みやすいということよりも、少ない資本で誰でも起業でき、成功すれば急成長することだと思う。あとは、どういうサービスを提供するかというアイデアの勝負であり、個人情報の流出や人権侵害などの悪用を行う企業は、誠実で質の高い競争相手が出て来れば淘汰されるだろう。

 例えば、三越・高島屋・イトーヨーカドー・イオンなどが世界の流通ネットワークを活用して良いものを仕入れ世界に向けてネット通販したり、農協・漁協・真珠専門店などがよい産物を世界に向けてネット販売したりすれば、実質経済に根を下ろしているだけに、アマゾンより有利な位置から始められる筈だ。

 そのような中、*2-2-1のように、2018年5月にEUで施行された一般データ保護規則(GDPR)で、個人データ保護を厳しく企業に求めたのは重要なことだ。何故なら、巨大か否かを問わず、ITプラットフォーマーが勝手に個人データを流用すれば、個人は抗しきれないため、消費者保護の問題になるからだ。

 しかし、*2-2-2のように、日本政府がEUと交渉して互いの進出企業が現地で得た個人データを域外に持ち出すことを例外的に認める枠組みを作ったのだそうで、グローバル企業の事業拡大を後押しするためだと説明されているが、この発想の中には、消費者ニーズや個人情報を勝手に使われないようにして個人を護るという意識が全くないのである。

 日本が自由なデータ流通にこだわっているのは、産業振興のためには個人消費者を犠牲にすることを厭わないという全体主義的な発想からである。また、このような発想の国が、マイナンバーを使って個人管理を行い始めたのだから、日本人は気を付けなければならない。

 その巨大IT規制の政府案は、*2-3・*2-4のように、①取引条件の開示義務 ②独占禁止法での処分 ③個人情報の保護 を盛り込んでいるそうだが、個人情報保護に関しては、個人情報保護や人権侵害に鈍感な企業に消費者が近づかないよう企業名を公表するなどの厳格な態度が必要なのであり、企業の負担になる規制強化を避けようなどというのは論外である。

・・参考資料・・
<GAFAの課税問題と解決法>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM365H4FM36UPQJ00K.html (朝日新聞 2019年3月17日) GAFA納税不十分? 元グーグル副社長「税制に問題」
 「GAFA」(ガーファ)と呼ばれるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン。こうした巨大IT企業への風当たりが世界的に強まっている。もっと納税すべきだ、という批判もその一つ。格差が広がる世界経済のいまを映すこの問題、どう考えれば良いのか。
●元・米グーグル副社長 村上憲郎さん「情緒的な規制、避けるべきだ」
 GAFAは支払うべき税金をきちんと払っていない、などと言われますが、違法な脱税をしているわけではないでしょう。節税をしている。それを問題視するなら、「納めなくても済む」という税制の方にこそ問題があるんですよ。税制を整えれば、それに従って、適法に納税すると思われます。最近は税金に限らず、データの集積などの問題も含めてGAFAへの批判が高まっています。ただGAFAもサービスを提供して対価を得るという商行為をしているわけで、情緒的に「GAFAが悪い」とあおることは即刻、やめるべきです。世界的に社会の格差が広がる中、特定の誰かに対する不満をあおることは負のエネルギーを生み、全体主義の復活にもつながりかねない。日本もGAFAへの規制に乗りだそうとしていますが、情緒的なアプローチだけは絶対避けるべきです。富の集中による不公平の存在は多くの人の指摘の通りですが、再分配をどうするかは難しい問題です。GAFAを生んだ米シリコンバレーでは高額所得者が集まった結果、住居費が上がりすぎ、普通の地元の人たちが住めなくなっています。米国の分厚い中間層も失われてきています。これまでの資本主義とは様相を異にしてきています。特に若い世代の格差をいかに少なくするかを根本的に議論すべき時期に来ている。ただそれは特定の私企業の責任ではありません。検索やSNSなどのサービスを提供するグーグルやフェイスブックなど「プラットフォーマー」と言われる企業は最強のポジションを握ってはいます。全てのビジネスの基盤となるからです。ただインターネットでのビジネスは、その上に幾層も重なるレイヤー構造です。動画配信大手のネットフリックスもプラットフォーマーですが、テレビ受像機をつくる企業、動作のアプリをつくる企業、番組などコンテンツをつくる企業など多くの層があります。それら全てが繁栄しないとプラットフォーマーも繁栄しません。「一人勝ち」はありえないんです。欧州では課税強化や個人データ保護などGAFAへの規制が強まっていますが、米国の本音は「勝った」でしょう。欧州にもそれなりの企業はあるけれど、データへのアクセスを罰則つきで規制されれば事業を大きくすることはできません。インターネットにつながる家電などのIoT(モノのインターネット)が成長分野ですが、データへのアクセスを制限された欧州企業は何もできず、地力を失っていくと思います。個人データの問題でもGAFAはやり玉にあがっていますが、便利さとの引き換えで利用者が判断すべき問題です。GAFAが最終的に提供しようとしているのは「執事サービス」です。執事は主人のすべてを知り尽くし、冷蔵庫に好物を常備しておく。アマゾンはいずれ、「注文しなくても必要な時に必要な商品が届く」サービスも可能になると公言している。そのためには全部見せる、つまり個人データの開示しかありません。私の見立てでは、21世紀は中国の圧勝になる。中国は東大も京大も東工大も10校ずつあるという感じで、米国で教育を受けた優秀な人たちも帰国し、一党独裁のもとで量子コンピューターなどの技術に集中投資できる。GAFAもいずれ、中国企業に取って代わられるかもしれない。GAFAを規制している場合じゃないんですよ。そんな世界で、日本はどうするか。もう若い人たちにやりたいようにやらせるしかありません。IoTの時代には車や産業ロボットなど、インターネットにつながるリアルな「モノ」がカギになります。日本はその「モノづくり」では蓄積があります。でも、そこで年寄りが威張るのではなく、若い人にこそ任せるべきです。
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むらかみ・のりお 1947年生まれ。日立電子(現日立国際電気)を経て米国系IT企業数社の日本法人代表を歴任。2003年~08年に米グーグル本社副社長兼日本法人社長。
●デロイトトーマツ税理士法人パートナー 山川博樹さん「データ時代に新しい税制を」
 グローバル企業に相応の課税ができていないのではないか、という議論が盛んになったのは、2000年ごろからです。対象は必ずしもIT企業だけではありませんでした。経済協力開発機構(OECD)はこの問題について、従来の国際ルールを元に、部分的な修正をしました。08年のリーマン・ショックがさらにこの議論を後押ししました。各国で財政が悪化し、所得増税などで国民の負担が増えた一方、グーグルやアップル、スターバックスなどが税負担を回避する仕組みを使っていることが次々と明るみに出ました。なかでもIT企業は各国で存在感を高め、利益も巨額なのに、納税のレベルが極端に低いのは不公平だ、という人々の意識が高まりました。フランスでは国民の怒りが、課税できない政府にも向かいました。なぜ課税できなかったのか。理由は大きく二つあります。まず、現行のルールでは企業が進出先の国で工場などの「恒久的施設」を持たなければ、法人税をかけられません。たとえば日本でアマゾンから電子書籍や映画を購入しても、配信拠点が米国にあれば法人税は米国で払い、日本には納めないことになります。もう一つは、税負担の少ないタックスヘイブン(租税回避地)などにほとんど実態のない子会社を作り、利益を移すとても高度な仕組みが作られていたことです。公開データによると、米IT企業など40社以上がこのやり方を使っていました。これは脱税ではありません。税制が追いついていないのです。ただ企業の存在感が大きくなったいま、もっと課税すべきだという声が出てくるわけです。OECDは15年、「税源浸食と利益移転(BEPS)に関する行動計画」をもとに、国際的な課税の共通ルール作りを始めました。世界中の国が同じルールにしないと抜け道が生まれるためです。現在、プロジェクトに約120の国・地域が参加しています。ただネット上の取引の扱いは積み残されました。既存ルールの根幹に関わる難しさがあるからです。ところが、この1年弱ほどの間にこの問題が急に進展し始めました。積極的に関わろうとしなかった米国が、議論に参加し始めたことが大きな理由です。トランプ政権は、GAFAなど米国企業だけが「狙い撃ち」にされるのはたまらないと思ったのでしょう。もう一つの背景は、一部の国が独自にIT企業に課税すると表明したことです。フランスは見切り発車で「デジタル課税」を始めると発表しました。米国も無視できず自ら関わらざるを得なくなりました。ただ欧州でも、アイルランドやルクセンブルク、オランダなど低い税率でIT企業を誘致してきた国と、それ以外の国との間で不協和音が起きています。いま求められているのは、データをビジネスにする時代に合った新しい税の考え方です。シリコンバレーのIT企業が持つ重要な価値は「アルゴリズム」です。市場のある国の利用者1人分のデータには意味がなく、集積して解析することで価値が生まれます。そしてこの活動は米国で行われています。では市場のある国でどういう理屈で課税するのか。また、各国で使われるアルゴリズムの開発やデータ管理の費用などをどう計算し、法人所得を算出するのか。極めて難しい問題です。新しいルールづくりで重要なのは、二重基準にならず、現行の制度から大きく乖離(かいり)しないこと。また、各国の税務当局や納税者、紛争を解決する裁判所などにとっても論理的に理解できるものにすることです。途上国も対応できるよう、簡素な計算式を使うなど実務的でなければなりません。6月には日本でG20財務相・中央銀行総裁会議が開かれる予定ですが、議論の進展を期待しています。
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やまかわ・ひろき 1959年生まれ。82年に国税庁に入り、調査査察部調査課長などを歴任。国際課税を長年担当してきた。14年からデロイトトーマツ税理士法人。

*1-2:https://www.news-postseven.com/archives/20190411_1348635.html (週刊ポスト 2019年4月19日号) 「GAFA独占」問題をどう解決するか、大前研一氏が分析
 商品やサービスを提供するプラットフォーム企業のうち、特に巨大なアメリカのIT企業4社は「GAFA」と呼ばれている。最近では、世界中でこの巨大企業が個人情報をかき集め、独占し、納税も巧みに逃れていることが問題となっている。経営コンサルタントの大前研一氏が、「GAFA独占」問題の解決について解説する。
 * * *
  「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などの「デジタルプラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業に対する規制圧力が、世界中で強まっている。この問題は、大きく分けて「個人データ独占」と「課税」の二つがある。まず個人データ独占問題は、消費者がスマホやパソコンで検索や買い物をすると、その履歴などの個人データが利用した企業に蓄積される。それをデジタルプラットフォーマーは世界規模で膨大に集めて事実上独占し、消費者の同意なくターゲティング広告(※ユーザーが閲覧したサイト、検索履歴、検索キーワードなどを基にユーザーの興味や関心、嗜好性を解析し、それに的を絞った広告を配信する手法)などの事業に活用して莫大な利益を上げている。そういう行為が独占禁止法に違反するとして、各国で批判が高まっているのだ。もう一つの課税問題は、デジタルプラットフォーマーがタックスヘイブン(租税回避地)や法人税率が低い国・地域に拠点を置き、法の抜け穴を利用して実際に収益を上げている国で税金を納めていないことである。この“税逃れ”をどう防ぐかが、世界中の政府の課題になっているのだ。だが、その解決は容易ではない。たとえば、もともと日本の独占禁止法の目的は「公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすること」であり、市場メカニズムを正しく機能させるために「私的独占」「不当な取引制限」「不公正な取引方法」などを規制している。具体的には、不当な低価格販売などの手段を用いて競争相手を市場から排除したり、50%超のシェアを持つ事業者がいる市場で需要やコストが減少しても価格が下がらないなどの弊害が認められる場合に適用される。だが、デジタルプラットフォーマーの場合、それらのいずれも当てはまらない。それどころか、グーグルやフェイスブックは普通に利用する分にはタダであり、むしろ消費者の利便性や効率を高めている。また、そもそもデータは検索や買い物を通じて消費者自身が提供している。となると、GAFAなどが個人データを独占して莫大な利益を上げているのは企業努力の結果であり、それを規制するルールがあるかと言えば、従来の独占禁止法のどこを探しても見当たらないのだ。ただし、タダで便利なように見えて、実のところデジタルプラットフォーマーは様々な情報を吸い上げて利用者を“丸裸”にしている。情報シェアを高めることによって販売効率を高めるというのは昔からマーケティングの人間が憧れていたことであり、それをデジタルプラットフォーマーはほぼ自動的にやっているわけで、これほど一握りの大企業が情報を独占するという状況は、誰も想定していなかった。この巨大化したデジタルプラットフォーマーにタガをはめるため、世界中で個人データの取り扱い規制や新税導入などの動きが加速している。すでにEU(欧州連合)欧州委員会は3月20日、グーグルに対し、インターネット広告の分野でEU競争法(独占禁止法)に違反したとして14億9000万ユーロ(約1900億円)の制裁金を科した。日本の公正取引委員会も、デジタルプラットフォーマーが不当に個人情報を集めた場合、これまで企業間の取引にしか適用してこなかった「優越的地位の濫用(※取引上優越した地位にある企業が、取引先に対して不当に不利益を与える行為。独占禁止法により、不公正な取引方法の一つとして禁止されている)」を個人との取引にも適用し、独占禁止法を適用する方針を固めたと報じられている(『朝日新聞』3月6日付)。しかし、検索サービスやSNSサービスの対価として個人の情報を集めることは、デジタルプラットフォーマー以外の企業も、細々とではあってもみんなやっている。その線引きをどうするのか、中小企業は規制しなくてよいのか、という問題がある。また、課税問題については、各国での売り上げに応じてそれぞれの国で納税させる新たな税制が多くの国で検討されている。たとえばフランスは3月、国際収益が年間7億5000万ユーロ以上(国内での収益が同2500万ユーロ以上)のデジタル企業を対象にした「デジタル税」を導入すると発表した。イギリスやイタリア、スペイン、インドなども同様の新税を導入すると報じられている。しかし、これは国ごとではなく「グローバル課税」にしないと、根本的な解決策にならないと思う。ネットの世界はグローバル・ビレッジなので、国別に課税するという概念がなじまないからである。フランスやイギリスなどのように、単にその国での売上高に応じて納税させるのではなく、グローバルな収益から、その国の売上高に比例して納税させるべきだろう。なぜなら、GAFAは国別の収益を公表しないし、国別の経費もあまり意味を持たないからだ。したがって、企業本社での最終純利益を国別の売上高で按分する、という考え方である。これは日本の外形標準課税(*1)やアメリカのユニタリータックス(*2)に近い。
【*1:資本金・売上高・事業所の床面積・従業員数など、企業の事業規模を外形的に表す基準をベースに課税する方式。*2:アメリカの州が課す税で、州外の親会社・子会社・関連会社を一体のものとみなして全所得を合算し、その州における売上高や資産などで比例配分したものを州事業税の課税対象にする方式】

<個人データの悪用について>
*2-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/298464 (佐賀新聞 2018/11/6) 【共同】巨大IT、代表格はGAFA
 政府が世界の巨大IT企業「プラットフォーマー」の規制に向けた議論を本格化させています。
Q プラットフォーマーとは何ですか。
A 世界中で消費者と接点を持ち、購買行動や関心事項といった個人情報を収集、分析して各種サービスを提供している巨大IT企業のことです。膨大なデータを握ることで、企業がこれらIT企業を介さずには事業展開できないほど圧倒的な存在となっており、英語で基盤や土台を意味する「プラットフォーム」から命名されました。
Q 具体的な企業は。
A 代表格は「GAFA(ガーファ)」とくくられる米国の4社です。検索のグーグル、iPhone(アイフォーン)のアップル、会員制交流サイト(SNS)のフェイスブック、インターネット通販のアマゾン・コムの頭文字を取って、こう呼ばれています。
Q なぜ世界中に影響力を広げたのですか。
A 中小企業がネット通販を経由して世界で商品を販売する基盤を提供したり、交流サイトを使って海外の人々と連絡が取れたりと、利便性が非常に高いためです。
Q 問題点は。
A 主導権を握った企業の優位性が加速するネット経済の特性から、独占や寡占が進みやすく、取引企業や利用者への影響力が大きくなりすぎると指摘されています。人工知能(AI)を使ったサービスの不透明さや、個人情報の流出・悪用も課題となっています。

*2-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO42098900W9A300C1M11200/ (日経新聞 2019/3/7) データ保護規制 世界に波紋、EUのGDPR、施行9カ月
 2018年5月に欧州連合(EU)が施行した一般データ保護規則(GDPR)が世界に波紋を広げている。個人データの保護を厳しく企業に求めており、大量のデータを握る米IT(情報技術)大手への攻勢を強めている。GDPRを契機として、データの自由な流通圏の構築を目指す日米欧と、国家主導のデータ管理を目指す中国との間でデータエコノミーを巡る覇権争いも激しくなってきた。

*2-2-2:https://www.sankei.com/politics/news/190123/plt1901230031-n1.html (産経新聞 2019.1.23) 欧州の個人データの移転規制、日本例外で発効
 日本と欧州連合(EU)との間で、互いの進出企業が現地で得た個人データを域外に持ち出すことを例外的に認める枠組みが23日に発効した。日EUは相互に個人情報保護の水準が十分であると認め、データ移転の際に個別の契約を求めるなどする規制をなくすことで、グローバル企業の事業拡大を後押しする。EUは昨年5月に企業などを対象に個人情報の保護を厳しくする一般データ保護規則(GDPR)を導入。仏当局は21日、米グーグルにGDPRに違反したとして5千万ユーロ(約62億円)の制裁金を科すなど、厳格な個人情報の取り扱いを求めている。

*2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190425&ng=DGKKZO44146570U9A420C1EA2000 (日経新聞 2019年4月25日) 巨大IT規制、多面的に、政府案公表、成長との両立図る
 政府は24日、プラットフォーマーと呼ばれる巨大IT(情報技術)企業に対する規制のうち、公正な競争を求める案をまとめた。取引条件の開示義務に加え、独占禁止法での処分も盛り込んだ。25日には個人情報保護法改正に向けた原案も公表する。企業活動や消費者の利便性と調和を図りつつ、巨大IT企業を多面的に規制していく方針がみえてきた。政府は現在、公正競争、個人情報保護、デジタル課税という3つの政策的な観点から巨大IT企業の規制を検討している。公正競争の規制案は経済産業省、公正取引委員会、総務省と有識者が合同で協議する「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」がまとめた。データ寡占の防止や中小企業との取引適正化などが目的だ。今後は年央に出す政府の成長戦略に向け、各省庁が制度の具体化を進める。巨大IT企業はグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムを示す「GAFA」などが代表例だ。利便性の高いSNS(交流サイト)やネット通販、動画・音楽配信などを手掛けて急成長を続けるが、近年はその負の側面にも注目が集まる。例えば、ネット通販モールに出品する中小企業に対し、不利な取引条件を押しつけているとの懸念がある。公取委が巨大IT企業の取引先企業に実施した調査では「規約を一方的に変更され不当な不利益を受けている」との声が多く上がった。巨大IT企業は当初「場の提供者」にすぎないと位置づけられてきたが、その存在が消費者に広く受け入れられるようになった。扱う商品やサービス内容も膨大に増えており、取引先企業に対しても強い影響力を持つようになっている。取引企業の多くは守秘義務契約などに縛られて外部に窮状を訴えにくい。巨大IT企業はビジネスモデルが目まぐるしく変化するという性質も持つ。このため政府は独禁法の運用を見直し、今後は強制力を持つ「40条調査」も含めて業界全体の実態把握を定期的に進める方針だ。取引条件の開示を義務付ける新法もつくる方針だ。企業に自主改善を促しながら段階的に規制を強めていくなど、独禁法を補完する役割を担う。まず開示方法を行動規範として定めさせ、対外的に説明させる体制をつくる。法律や行動規範に違反した場合の初期対応として、該当する企業名や問題行為を公開し、自主的な改善を促す。ネット通販などインターネットを通じたビジネスは、消費者や取引先の評判に左右されやすい。政府は社名公表が一定の自主改善を促す効果があるとみる。公表後も改善されない場合は、新法に基づき業務改善命令など行政処分で対応する。それでも対応が不十分なら、企業規模や取引の依存関係などで優位にある企業が取引相手に不利な条件を押しつける独禁法上の「優越的地位の乱用」を適用して処分する方針だ。巨大IT企業の活動を抑制するような規制を強めるほど成長の勢いがそがれ、利用者の利便性が低下したりコスト負担が増したりする恐れがある。有望な市場の成長や技術革新を阻む懸念があり、政府はそうした副作用を抑えるように規制していくことになる。この規制案の厳しさは、欧州と米国の中間に位置する。欧州連合(EU)は競争法(独禁法)で高い課徴金の納付を命じるなど厳しい規制を持つ。逆に、多くの巨大IT企業の発祥の地である米国は取り締まり強化に慎重だ。日本は処分の前段階として「取引の透明化」に重きを置き、規制と成長の両立を図る。

*2-4:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20190425&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO44146570U9A420C1EA2000&ng=DGKKZO44148390U9A420C1EA2000&ue=DEA2000 (日経新聞 2019年4月25日) 仕組み作り、入り口段階 課税、各国の足並み乱れ
 プラットフォーマーと呼ばれる巨大IT企業を巡っては、個人情報保護の規制強化と課税ルールの見直しも重要な課題だ。強すぎる支配をけん制する仕組み作りは、まだ入り口の段階だ。個人情報保護委員会は25日、2020年に向けて検討している個人情報保護法改正の原案を公表する。巨大IT企業への規制強化は米フェイスブックの個人データのずさんな管理などが相次いで発覚したのがきっかけだった。保護法の見直しは避けられない論点だ。原案では、個人が企業に対し自分の個人情報の利用を止められる「利用停止権」の新設を盛りこむ。一方で情報を削除させられる「忘れられる権利」の導入までは踏み込まない。自分のデータを持ち運ぶ「データポータビリティー」も保護法には含めず、競争政策の一環として限定的な導入を目指す。保護法の改正は、個人情報を厳しく管理する欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)を参考にしている。だが企業の負担になる規制強化を避けようとする方向性も目立つ。24日に発表した独禁法の面からのIT企業規制案と同様、政府は個人情報保護でも「規制を強めすぎると企業の技術革新を妨げかねない」との懸念を持つからだ。規制強化と産業育成の両立という難題を前に、慎重な議論を続ける。最も検討が難航するのが課税ルールの見直しだ。IT大手は支店などの拠点を持たず、ネットを通じて国境を越えたビジネスで収益を上げる。既存の法人税ルールで対応できないとの指摘も多い。新ルールを作るには国際間の合意が必要だが、より多くの税収を求める各国で意見が合わない。20カ国・地域(G20)と経済協力開発機構(OECD)は20年までに、デジタル経済に合った課税ルールの見直しに合意することを目指す。しかし欧州を中心にプラットフォーマーへの厳しい課税強化を求める声が上がる一方、米国などは「特定企業の狙い撃ちは間違っている」と反発。企業が持つブランド力や顧客データなどの「無形資産」への課税強化で代替する案も浮上する。意見のまとまりを待たず、英国やフランスが独自の「デジタル課税」の導入に動く。イスラエルやインドなど新興国の一部も同調し、各国の足並みは乱れる一方だ。国際課税ルールの見直しは、6月に日本で開かれるG20の財務相・中銀総裁会議や大阪での首脳会議(サミット)で主要議題のひとつになりそうだ。日本は議長国の役割が期待されるが、バラバラに分かれた意見のとりまとめは簡単ではない。

<求められる人材と教育>
PS(2019年5月5、6日追加):*3-1のように、「①次世代通信規格『5G』の特許出願数は、中国34%、韓国25%、米国14%、日本5%」「②出願件数が最も多い企業はファーウェイで、シェアは15.05%、研究開発費は年間100億ドル(約1兆1100億円)以上」「③特許を押さえた企業が主力プレーヤーになるため、特許数は自動運転など各国の新産業の育成や次世代の国力を左右する」と書かれている。
 ①③については、EVや自動運転技術を最初に開発し始めたのは日本なのに、このように遅らせてしまったのは政策や経営方針の問題であるため、原因を徹底的に追究した上で改善しなければ、今後も同じことが続くだろう。また、②の研究開発費は、物価水準と購買力平価を考慮すれば、日本なら10兆円以上の価値になるため、(長くは書かないが)物価上昇政策は百害あって一利なしだった。さらに、日本人が特許権に関する米中摩擦であたかも第三者であるかのように米国を批判するのはもってのほかで、自らの特許権も護らなければならない筈である。
 そのような中、経団連会長の中西氏が、*3-2のように、「イ. 日本は働けば豊かになる時代が終わった」「ロ. 過去に固執したらロクなことがないが、そこに気がついた人と気づかなかった人がいた」「ハ. 経団連の成長戦略は変化を受け止めようという内容で、いかに知恵でメシを食うかだが、科学技術をうまく使ったイノベーションは大きなヒントで、消費者の需要を引き出すことが元になり、新しい商機をつくる責任は民間が負う」「ニ. 環境を整えるのが政府の役割だ」「ホ. 日本は、高度成長という世界でもまれな成功体験があるので、なかなか変われない」「ヘ. 新時代を見通したとき、懸念するのはエネルギーの問題だ」「ト. インセンティブをつけてグリーンエネルギーに転換する総合的なシナリオを作り直すべきだ」「チ. 再生エネルギーを普及させるには、発電した電気をどう運び、どう蓄えるかという全体を設計しないといけない」「リ. 送配電網もデジタル技術で次世代化する投資が要る」「ヌ. 原発ももっと長い目でみた議論をすべきで、化石燃料を使いきったあと、原子力以外に生活や工業を支えるエネルギーはない」とおっしゃっている。
 しかし、イ. ロ. ハ. ニ.は経営学の分野では、ドラッカーなどが50年以上も前から言っていることで、ホ.の「日本の高度成長は世界でも稀な成功体験」というフレーズもよく耳にはするが、敗戦後の日本ではすべての物資が不足し労働力も減っていたため、働きさえすれば何を作っても売れ、賃金も安かったため加工貿易が成立したが、現在はそうではなく、多くの低賃金の国が世界経済に参入してきたため、本当に必要とされる高付加価値のものを作らなければ、国内でも売れないし、輸出もできなくなったのである。なお、エネルギーについては、チ. リ.はそのとおりだが、ヌ.の「化石燃料を使いきったら原子力」というのは、失礼ながらまだわかっていないようなので、勉強しなおしてもらいたい。
 なお、現在の経団連会長で日立の社長までやった人が、何故こういう初歩的なことを言うのかについては、中西氏が東大工学部電気工学科卒業のコンピュータエンジニアで、優秀ではあろうが経営学・経済学を本格的に勉強したことがないからだと思われる。そのため、高校・大学では経営学や政治・経済をもっと本格的に勉強させるべきで、日本では、民間企業も役所も学校も専門分野を早くから細かく分けすぎるため、全貌を見渡せるリーダーが育たないのである。
 このような中、*3-3のように、高校生の7割が在籍する普通科の在り方を議論している政府の教育再生実行会議が、各校ごとに重視する教育を明確にし、「国際化対応」「地域に貢献する人材育成」などに特色を類型化するよう提言するそうだ。しかし、生徒は、進学したいから普通科を選択しているのであり、地域の農林水産業も輸出入を行っており、科学技術に関する学会は国際学会(共通語は英語)であるため、「地域に貢献する人材や科学技術分野を牽引する人材に国際化は不要」とするのは、あまりにも現実離れしている。ただ、大学入試で文系・理系の両方の科目を問うのは、自分で考えて判断することのできる人材を育成するために必要不可欠だ。
 経済・会計・統計・民主主義のいずれも理解していない日経新聞論説フェローが、*4のように、「①令和デモクラシーへの道」として、「②政治に求められるのは人口減少社会での給付と負担の合意づくり」「③少子化に歯止めがかからず高齢化が進み、現在1億2600万人余の人口は2040年には1億1000万人ぐらいになって社会が縮む」「④社会保障費がかさむのは明らかで、負担を増やすか、給付を低下させるか、その両方かしか選択肢はない」「⑤産業競争力の劣化、弱体化は深刻なところに来ている」「⑥政治休戦のもと与野党合意で痛みを伴う課題を処理していくべき」「⑦チャーチル英首相の演説と同じく『千年後に最も輝かしい時だった』と言われるように、千年後の人たちから『あの頃みんなで我慢して危機を乗り越えたから今の日本がある』と言われるような令和の時代にしたい」などと堂々と記載している。
 しかし、このうち③は、日本が高度経済成長をしていた時期の日本の人口は1億人以下であったことから、人口減と産業の衰退は関係がなく、単に危機感を煽っているにすぎないことがわかる。それでも危機感を煽る理由は、②④のように、とにかく高齢者の負担増・給付減を行うことが目的という非道徳的で情けない有様なのだ。⑤は、ニーズに合った財・サービスを提供すれば産業競争力が強くなるのであるため、課題先進国の日本で高齢者向けのサービスや福祉を充実することは重要だ。そのため、⑥のように、政治休戦のもとで与野党合意で痛みを伴う課題を処理していくのは、国家総動員法の再来のようであり、これが①の令和デモクラシーであれば、令和天皇が可哀想すぎる。また、⑦のチャーチル英首相が演説した千年後に最も輝かしい時というのは、全体主義から民主主義を守った戦争のことであり、みんなで我慢して全体主義に戻す理念なき政策とは正反対である。また、②④は、単純な算術しかできない人の言うことだ。


 日本の人口推移  実質経済成長率推移 介護サービスと保険料推移 外国人労働者数推移

(図の説明:日本の人口は、左図のように、明治初期には3500万人しかおらず、急激に増加して1億人を超えたのは1966年のことだ。これは、多産多死型だった社会が産業革命で生産力を上げ、医学や学問の普及もあって多産少死から少産少死型に変わる過程で起こったことで、近年の少子化は、いつまでも女性に戦前の自己犠牲の価値観を押し付けて保育所を整備しなかったため、少産が行き過ぎたものである。また、左から2番目の図のように、日本の経済成長率が最も高かったのは人口が1億人以下だった時期であり、人口は経済成長率の重要な要素ではない。重要な要素は、消費者が必要とする財・サービスが生産され売れることであり、高齢化社会で不可欠な介護サービスは2000年に開始して以降、瞬く間に10兆円市場となった。そのため、介護は全世代型にするとともに、全体として労働力が足りなければ女性・高齢者の就業機会を増やし、右図のように、まだ少子型社会になっていない国から労働力を導入する方法もある。そして、労働力は量だけでなく質も重要で、日経新聞の論説フェローがこのレベルでは困るわけだ)

*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190503&ng=DGKKZO44412620T00C19A5MM8000 (日経新聞 2019年5月3日) 5G特許出願 中国が最大 世界シェア3分の1、自動運転など主導権狙う
 次世代通信規格「5G」に関する特許出願数で中国が34%と、現行の4Gの1.5倍以上のシェアを握ることがわかった。4Gでは欧米が製品の製造に欠かせない標準必須特許(SEP、総合2面きょうのことば)を握ったが、次世代産業のインフラとして注目される5Gでは中国が存在感を増す。特許数は自動運転など各国の新産業の育成や次世代の国力をも左右する。SEPは事業を進める上で代替の効かない技術の特許で、現在の4Gのスマートフォン(スマホ)では出荷価格のおよそ2%が特許使用料だという。国内の知財関係者によると総額は年間1兆円以上にのぼるといい、特許を押さえた企業が主力プレーヤーになる。独特許データベース会社のIPリティックスによると、3月時点の5G通信で必須となるSEPの出願数で中国は34.02%のシェアを持つ。出願件数が最も多い企業は華為技術(ファーウェイ)で、シェアは15.05%だった。中国勢は5位に中興通訊(ZTE)が、中国電信科学技術研究院(CATT)が9位に入った。通信技術で先行した米欧は3G、4Gで主力特許を保有した。そのため中国などは欧米企業に多くの特許利用料を支払わねばならなかった。そこで中国は次世代情報技術を産業政策「中国製造2025」の重点項目に位置付け、国を挙げて5G関連技術の研究開発を後押ししてきた。ファーウェイの5Gを含む研究開発費は年間100億ドル(約1兆1100億円)以上とされる。ファーウェイは基地局の開発などにかかわる特許の申請が多いとみられる。スウェーデンのエリクソンやフィンランドのノキアをしのぐ。ZTEも基地局などでシェアを伸ばしている。韓国はシェア3位のサムスン電子と4位のLG電子がけん引し、全体で25.23%と4Gから2ポイント以上シェアを高めた。一方、米国は14%と4Gに比べてシェアを2ポイント下げた。スマホの半導体などの特許を持ち、4Gの主力プレーヤーである米クアルコムも5Gではわずかにシェアを下げ、6位になっている。ただ、通信の場合、技術特許は積み重ねであり、5Gになっても3G、4Gの特許が引き続き使われる。クアルコムの優位性が一気に失われるとは考えにくい。同社の1~3月期の知財ライセンス部門の売上高は11億2200万ドルにのぼる。日本も5%と約4ポイントシェアを下げている。企業別シェアで12位の富士通は「狙った場所に電波を飛ばす技術など5G関連で様々な特許を持つ」という。SEPを持つ企業は特許収入で潤い、5G対応の基地局やスマホといった新たな設備を提供する際の価格競争力を高められる。一般的にSEPを多く持つ企業を抱える国ほど5Gインフラを安価に広げられ、次世代サービスで主導権を握りやすくなる。出願数に加え、使われる頻度の高い重要な特許を握れるかどうかも大きい。米国は安全保障上の理由で5Gに関してファーウェイなど5社からの政府調達を禁じる方針だ。しかし同社は5G製品の開発に欠かせない多くの特許を押さえており「ファーウェイは米国で製品を売ることができなくても特許利用料は獲得できる」(IPリティックスのティム・ポールマン最高経営責任者=CEO)。莫大な開発費と長期的なプランのもと、5Gの技術開発で中国は通信の世界で存在感を増している。その基盤の上で展開する各種サービスでも中国が米国をしのぐ存在になる可能性がある。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190503&ng=DGKKZO44277290W9A420C1MM8000 (日経新聞 2019年5月3日) 令和を歩む(1)経団連会長 中西宏明氏 変化受け止め、次の革新 
(*なかにし・ひろあき コンピューター設計者として日立製作所に入社。2010年に社長に就き、巨額赤字に陥っていた同社をV字回復させた。14年から会長。欧米での経営経験も持つ。18年5月に経団連会長に就任した。73歳)
 平成の約30年はものすごく変化が大きかった。冷戦が終結し、国際秩序を主導する存在がいない「Gゼロ」の世界になった。日本は働けば豊かになる時代が終わり、お金を持っている人も金利では稼げず、リスクをとらないとリターンが得られなくなった。電機業界も激動だった。良いモノを作れば売れるという価値観が通じなくなり、大赤字になった事業が次々と消えた。特に半導体の製造は他国にも可能になり、市場構造ががらがらと変わった。社会や文化の基盤が変わり、過去に固執したらロクなことがない。そこに気がついた人と気づかなかった人がいた。
●デジタル活用へ
 日本は社会基盤が変化するというデジタル革新の本質を受け止めきれないまま、ここまできてしまった。いまこそ変化を受け止め、先端技術で課題を解決する社会を目指すべきだ。経団連が2018年11月に示した成長戦略はこの変化を受け止めようという内容だ。いかに知恵でメシを食うか。日本は世界のなかで決して悪いポジションにいるわけではないが、高度成長という世界でもまれな成功体験があるので、なかなか変われない。いったんご破算にしたほうがいい。採用の問題も教育の問題もそうだ。教育では科学技術、工学、数学だけでなく、芸術も融合した「STEAM教育」が重要になる。デザインという言葉があるが、うまく人をコーディネートして新しい文化をつくるような仕事の組み立て方が注目される。日本には、これをお手本にすれば食べていけるという産業がない。ちがう発想で考えないといけない。産業政策も今あるものを守る発想は全部やめたほうがいい。次に挑戦する分野をどのように創っていくかという発想に立たないと、ずるずる後退していく。科学技術をうまく使ったイノベーション(革新)は大きなヒントだ。消費者の需要を引き出すことが、そのもとになる。新しい商機をつくる責任は民間が負う。環境を整えるのが政府の役割だ。新時代を見通したとき、懸念するのはエネルギーの問題だ。かつての電力会社は電力債の発行で得た資金で投資し(総括原価方式で)確実に回収できた。いまは将来を十分に見通せないため、15年間も投資が停滞している。電力会社に投資能力がないのに他の会社が入ってくる環境もない。
●競争力の危機
 経験から言えば、15年間も投資しなかった産業部門は国際競争力をなくす。経済は投資して回収するというお金が回る仕掛けのなかで技術が発展して資本が蓄積する。この仕組みが壊れている。民間の投資を呼び込むため、インセンティブをつけてグリーンエネルギーに転換する総合的なシナリオを作り直すべきだ。再生エネルギーを普及させるには、発電した電気をどう運び、どう蓄えるかという全体を設計しないといけない。送配電網もデジタル技術で次世代化する投資が要る。原発ももっと長い目でみた議論をすべきだ。化石燃料を使いきったあと、原子力以外に生活や工業を支えるエネルギーはない。日本は変わらなければならない。

*3-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/education/edu_national/CK2019042902000183.html (東京新聞 2019年4月29日) 高校普通科の画一化脱却を 政府会議提言へ
 高校生の七割が在籍する普通科の在り方を議論している政府の教育再生実行会議が、各校ごとに重視する教育を明確にし、特色を類型化するよう提言することが二十八日、関係者への取材で分かった。普通科の区分は維持しつつ、各校が示す特色により「国際化対応」「地域に貢献する人材育成」などの枠組みに分けることを想定。画一的とされる普通科の学びの改革を促す。五月中旬にまとめる第十一次報告に盛り込み、安倍晋三首相に提出する。高校段階での学びは、生徒の進学や職業選択に大きく影響する。ただ、グローバル化や、人工知能(AI)などの技術革新が進み、社会環境が大きく変わろうとする中、普通科では、大学受験を念頭に置いた指導や授業編成が大半で、生徒の多様な能力や関心に十分に応えられていないとの指摘がある。このため、文部科学相の諮問機関である中教審の今後の議論でも大きなテーマとして扱うことになっている。関係者によると、実行会議では、画一的な指導の原因として、各校が具体的な教育目標を掲げていないことに着目。提言で全国の高校に「どういう力を持った生徒に入学してほしいか」「特に力点を置く学習内容」「履修単位の認定方針」を明確にするよう求める。それらを踏まえた上で普通科を(1)国際的に活躍(2)科学技術の分野をけん引(3)地域課題を解決-といった各校の人材育成のイメージに応じて分類し、学びの変化を促す。具体的な分類や履修単位の設計については、中教審の議論に委ねる。また、今後、文系・理系の枠組みを超えた思考力が一層求められるとして、授業編成で文理分断型にならないことが重要と強調。大学入試でも文系・理系の科目をバランス良く問う方式に留意するよう言及する。提言では、高校教科書の見直しにも触れる。特に情報や工業などの技術革新が目覚ましい分野は、通常の四年ごとの改訂を待たず、弾力的に中身を変えられる仕組みの検討を要請する。

*4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190506&ng=DGKKZO44264550W9A420C1TCR000 (日経新聞 2019年5月6日) 令和デモクラシーへの道、論説フェロー 芹川 洋一
 ふしぎなくらいに、元号とともに日本政治は動いてきた。なぜか改元のころの問題がその時代のメインテーマになるからだ。後講釈とばかりいえないほど、元号を通して見えてくる政治がある。明治はいうまでもなく維新で、天皇を中心にした国づくりが肝だった。自由民権運動もあり、立憲制をめざした。大正改元の直後には、第1次護憲運動がおこる。大正デモクラシーの起点だ。1918年には初の本格的な政党内閣である原敬内閣が誕生する。昭和は26年の改元と45年の敗戦で分ける必要がある。はじまりの時期は政党内閣制の定着が焦点で、そのあと崩壊して戦争へと突き進んでいった。戦後は国の再建、豊かな生活の実現が課題だった。自民党長期政権は利益分配でそれを達成しようとした。その行きづまりがはっきりしたのが89年の平成改元のころだ。政治とカネのスキャンダルが政治改革を促し、平成政治の基調となった。そして現在である。国力の回復と少子化・高齢化が主テーマであるのは論をまたない。とりわけ政治に求められるのは人口減少社会での給付と負担の合意づくりだ。その実現に令和デモクラシーの成否がかかっている。令和政治を考えるとき、今という時代をどうとらえるかが出発点になる。グローバル化、デジタル化の波のなか企業の国際競争力は落ちる一方で、この国を引っ張っていく産業のかたちがみえない。少子化には歯止めがかからず高齢化は進み、社会がどんどん縮んでいく。現在、1億2600万人余の人口は、2040年に1億1000万人ぐらいになると推計される。その間、生産年齢人口は減りつづけ、社会保障費がかさんでいくのは火を見るより明らかだ。財政は1000兆円を超える公的債務を抱える。負担を増やすか、給付を低下させるか、その両方かしか選択肢はない。それなのに奇妙な安定が支配しているのが今の日本だ。18年の内閣府の国民生活に関する世論調査では、現在の生活に満足している人の割合が74.7%に達し調査をはじめた57年以降で最高だという。「平成は日本敗北の時代だった」と言い切る経済同友会の小林喜光前代表幹事は「ゆでガエル日本」とも喝破する。カエルがぬるま湯につかっていてやがて熱い湯になり逃げだせず死んでしまうように、このままでは日本は立ち行かなくなるというわけだ。自民党中堅切っての論客である斎藤健・前農相も「産業競争力の劣化、弱体化は深刻なところに来ている。国際環境も大きく変わり、安全保障、通商政策を組みなおしていく外交力が問われているのに危機感がない」と嘆く。危機感がないのが最大の危機といっていいのかもしれない。いや応なく痛みや負担を迫られるとして、それを実現するための政治のあり方を、政府・与党と与野党の間でいかに整えるかがカギだ。まず政府・与党の問題は、政策を強力に推し進めていく政権のありように絡む。忖度(そんたく)政治や各省の思考停止など批判はあっても、正副官房長官と「官邸官僚」によって政権の中枢ができあがっている安倍晋三政権はひとつのモデルだ。チームで回していくしっかりした政権でないと「負担分配」を政治スケジュールにのせることなど不可能に近い。別の問題もある。父の福田康夫首相の秘書官をつとめた達夫衆院議員は「(07年)官邸に入ってびっくりしたのは引き継ぎ書類が一枚もなかったことだ。あったのはなぜか爪切り1個だけ。ゼロベースで首相が交代するのは国家的にも良くない」と振り返る。政権中枢のチームづくりと政策の継続性は、派閥が体をなさなくなった以上、政党が担うしかない。もうひとつは国会である。18年に当選3回で抜てきされ、いきなり外国人労働者の法案審議で矢面に立たされた山下貴司法相は「与党と野党がダメだしをするばかりでは政治不信を深めるだけだ。国会論戦でもっと論点をはっきりさせ、真の争点は何なのか国民に分かるようにしなければならない」と力説する。とくに負担と給付の問題は与野党による批判の応酬では済まなくなる。大枠で一致して乗り越えていく方法はないものか。その平成モデルが社会保障と税の一体改革についての12年の3党合意だった。平成デモクラシーの理論的支柱だった佐々木毅・元東大総長は「ほかのテーマは違っていてもいいから、領域を限定して休戦協定を結ぶ。その間は選挙をしないなど、かんぬきをかけて管理する方法はないだろうか」と語る。解散権をしばって、政治休戦のもと与野党合意で痛みを伴う課題を処理していく考え方だ。ここでも政党がその役割を果たせるかどうかにかかっている。思いおこしたい先人の言葉がある。40年6月、ナチス・ドイツが進軍、フランスが降伏寸前で、次は英国攻撃かと緊迫していたときのチャーチル英首相の演説だ。「もし大英帝国が千年つづいたならば(後世の)人びとが『これこそ彼らのもっとも輝かしいとき(ゼア・ファイネスト・アワー)であった』と言うように振る舞おう」。千年後の人たちから、あのころみんなで我慢して危機を乗り越えてくれたから今の日本がある、と言われるような令和の時代にしたいものだ。

<障害者雇用について>
PS(2019年5月7日追加):現行の障害者法定雇用率は、民間2.2%、国・地方公共団体2.5%で、対象は①身体障害者手帳を持つ身体障害者 ②療育手帳又は知的障害者判定機関の判定書を持つ知的障害者 ③精神障害者保健福祉手帳を持つ精神障害者のうち就労可能な人とされており、手帳や公的判定書を持たない人は、障害者のうちに入らない(https://snabi.jp/article/133#bn64a 参照)。しかし、2018年6月1日の実績では、国1.22%、都道府県2.44%、市町村2.38%で、いずれも法定雇用率を下回り、国には手帳や公的判定書を持たない人を障害者に数えたごまかしもあり、障害者に対する根強い差別意識が残っているようだ。
 このような中、*5のように、法定雇用率を達成した佐賀県内の民間企業割合が、8年連続で全国トップとなり、障害の回復に資する「ノーマライゼーション」の考え方が浸透しているのはよいことだ。さらに、雇用の場や収入がない障害者には生活保護費や障害者年金を支払わなければならず、“障害者”であってもできることはでき、“健常者”より得意なこともあるため、気を使いすぎずに雇用して支えられる側から支える側にまわってもらうのがWinWinである。

*5:https://digital.asahi.com/articles/ASM4B551BM4BTTHB00K.html?iref=comtop_list_biz_f01 (朝日新聞 2019年5月7日) 障害者の法定雇用率、達成した企業の割合 1位再び佐賀
 障害者の法定雇用率を達成した佐賀県内の民間企業の割合が、8年連続で全国トップとなった。厚生労働省佐賀労働局が4月、発表した。労働局は、障害がある人とない人が区別されずに暮らす「ノーマライゼーション」の考えが浸透しているのではないかなどと分析している。障害者雇用促進法では、従業員の一定割合以上の障害者を雇うことを事業主に義務づけている。現在、一般民間企業の法定雇用率は2・2%、国や地方自治体は2・5%などとなっている。労働局の集計(昨年6月1日時点)によると、雇用障害者数は2439・5人で6年連続、実雇用率は2・55%で5年連続でそれぞれ過去最高を更新。実雇用率は全国平均が2・05%の中、全国4位だった。県内の対象企業(従業員数45・5人以上)は603社。法定雇用率を達成した企業の割合は全国平均が45・9%に対し、佐賀県は66・3%で全国トップ。労働局は結果について「何か数字があるわけではない」としつつ、「小さい県ながらの良さがあると思う。『隣の企業がやっているからうちもやらなきゃ』というようなところも含めて、障害者雇用に対する『当たり前感』というような、ノーマライゼーションの考えがうまく浸透しているのではないか」と分析した。未達成企業203社のうち、障害者を1人も雇用していないのは106社だった。労働局は「1人目の雇用が障害者雇用の難しさとも言われている。丁寧に啓発、指導に取り組んでいきたい」としている。佐賀労働局は昨年12月、県内の公共機関の障害者雇用状況(昨年6月1日時点)を発表している。これによると、県の知事部局や県警、県教委はいずれも法定雇用率を満たさず、市町の機関も33機関中17機関が未達成だった。地方独立行政法人の県医療センター好生館も法定雇用率に達していなかった。障害者雇用を巡っては、昨年、中央省庁などでの雇用数の水増しが発覚し、問題となった。

<教育の視点から>
PS(2019年5月8、9、10、11日追加): *6-1に、「幼児教育・保育を無償化する子ども・子育て支援法改正案が9日に採決される」として、これについて「①実態は幼稚園・保育所に近いのに対象外になる施設がある」「②対象外施設は不公平だと反発している」と書かれている。しかし、幼児期も重要な教育期間であるため、①については、単なる居場所ではなく幼児教育・保育をきちんと行う施設を認可して無償化の対象にする「質の充実」が伴わなければならない。そして、②の対象外施設は、運営上の制約を避けるため認可施設になっていなかったとしても、預かっている子どもに認可施設よりよい環境を与えているのに変な制約を課されるので認可外でやってきたのであれば認可をとるようにしなければならないし、幼児教育・保育はしていないが預かる場所が必要だったので運営してきたのであれば、学童保育(それでも単なる居場所では困る)等に変更するか、幼児教育・保育ができる環境を整えるかすべきだ。何故なら、今回の変革は、無償で、幼児教育・保育をどの子にも与えることを重視したものだからである。
 また、*6-2のように、「細かすぎる校則」があるというのは、細かい校則がなければ何をするかわからない生徒が多いからかもしれないが(私は、そういう学校に行ったことがないのでよくわからないが)、理由も説明できずに「ルールはルール」としか答えられない教諭がいたとすればレベルが低すぎる。私は、生徒総会の要望をすべて認める必要はないと思うが、要望する人もデータや資料に基づく根拠を示し、要望を通すか通さないか決める人も、それらを基にして議論し検討した結果と結論に至った理由を示して、お互いが納得できるようにしなければならないと思う。つまり、教師は、日頃からそういう指導ができる人でなければならないのである。
 なお、2019年5月8日、*6-3のように、大津市の県道交差点で車2台がぶつかって保育園児の列に突っ込んだ事故があった。直進車と右折車がいる場合は直進車優先なので、事故の映像を見れば右折車が交通違反していることが一目瞭然だったが、何故か被害者の運転手も逮捕され批判された。また、保育園関係者の記者会見では、被害者である保育園の園長が泣いてばかりいて状況を説明しようともせずに隣の男性職員が説明していたのは、園長としての資質が疑われた。保育園側に過失はないが、園庭もないような環境だったため、もっとよい環境で子どもを預かれるように、市が小学校の空教室や空地などの便宜を計ったらどうかと思われた。
 そのような中、*6-4のように、2019年10月から幼児教育・保育を無償化する「子ども・子育て支援法改正案」が参院内閣委員会で可決され一歩前進した。これまでは「預かってくれるならどこでもよい」という選択肢のない状況だったが、今後は、産業界はじめ中等・高等教育関係者・保護者を含めて「どのような人材を育てたいのか」という観点から幼児教育・保育のあり方を検討し、国・地方自治体が指導監督やサポートをすることが重要だ。
 また、*6-5のように、低所得世帯の子どもを対象に高等教育負担を軽減する法案も参院文教科学委員会で可決され、一歩前進した。しかし、1970年代の国立大の授業料は年間1万2千円~3万6千円だったのに現在は54万円であり、この50年間に物価水準は3倍程度にしかなっていないため、教育費だけが著しく上がったのである。学生アルバイトは勉強にさしつかえない範囲にしなければ進学した意味がなく、県外に進学するか否かもその人の人生設計とそれに応えるべき大学の魅力によるため、高等教育の授業料は、誰でも無理なく負担できる範囲にすべきだ。なお、特に人材不足が懸念される分野は、さらに授業料を減免することも考えられる。
 2019年5月11日、*6-6のように、東京新聞が「①待機児童問題が深刻な都市部で園庭のない保育園が増加し、東京都文京区は78カ所の認可保育園のうち6割に園庭がない」「②東京都で2017年度に新設された認可保育園約270カ所のうち、基準通りに園庭を備えた園は2割に留まる」「③待機児童対策に追われる中、都心部ではすべての園に園庭を造るのが難しい」「④厚生労働省は、子どもの発育に重要な園外活動は今後も積極的に取り入れるよう求めている」と報じている。しかし、①②③は、これがまさに東京一極集中と狂ったような土地価格の弊害であり、地方の保育園の方がずっと恵まれている。また、小学校に空き教室が増えているので小学校に併設したり、安全対策を行ってビルの屋上に園庭のある保育園を作り、植物を植えるなどの工夫をすればよいと思うが、それもしていない。④の園外活動も重要だが、少子化そのものを問題にするよりも、園庭で安全に運動したり、外の風や季節を感じたりすることができる当たり前の保育施設を準備して誰でも入園できるようにし、育児しやすい環境を創るべきなのである。

  
  2019.5.8東京新聞       2018.11.9毎日新聞   教育費と物価水準の推移

(図の説明:左図のように、認可保育所と幼稚園の3~5歳児は保護者の働き方と関係なく原則として全世帯で全額無料、0~2歳児は住民税非課税世帯のみ無料となり、認可外保育所は一部補助となる。また、中央の図のように、給食費は3~5歳児は実費で、0~2歳児は保育料に含むとされている。なお、右図のように、教育費は物価水準と比較して著しく増加している)

*6-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201905/CK2019050802000140.html (東京新聞 2019年5月8日) 幼保無償化 あす参院委採決 対象外施設は反発「不公平」
 参院内閣委員会は七日の理事懇談会で、幼児教育・保育を無償化する子ども・子育て支援法改正案を九日に採決することを決めた。与党などの賛成多数で可決し、早ければ十日の参院本会議で成立する見込み。原案通り成立すると、実態は幼稚園や保育所に近いのに無償化対象から外れる施設が出る。認可外保育施設では、利用料補助は共働き世帯などに限られる。利用者らからは「政府が掲げる『三~五歳の原則無償化』と矛盾する」との声が上がっている。「お水がいっぱいたまっているよ」。四月中旬、千葉県松戸市の「小金原保育の会幼児教室」の園庭で、子どもたちが水たまりや砂場で元気に遊んでいた。団地の一角にあるこの教室は一九七五年に保護者らが設立し、障害児を含む多様な児童を受け入れてきた。運営上の制約を避けるため認可施設にならず、認可外施設として運営。改正案では、こうした施設は共働き世帯などに限り上限付きの補助が出る。ここでは大半の利用者が対象外だ。改正案は幼稚園や保育所などの認可施設では、保護者の働き方に関係なく無償化する。認可外施設で対象を絞るのは、やむなく認可外施設を利用する家庭への配慮だが、本来は認可施設に預けるのが望ましいとの原則に立つためだ。同教室の武中悦子事務局長は「幼稚園に断られた児童や共働きが難しい家庭を支え、行政の不備を補ってきたのに不公平だ」と嘆く。東京都西東京市で六二年から続く、自治会運営の「たんぽぽ幼児教室」は独自の運営を目指し、認可外施設の届け出をしていない。改正案では全利用者が無償化の対象外だ。平賀千秋・幼児教室部長は「保護者から選ばれなくなれば、存続できない」と心配する。自然体験を通じて子どもを育てる「森のようちえん」も同じ悩みを持つ。園舎なしや親の運営への参加などの柔軟性が強みだが、認可外施設でなければ無償化の枠から外れる。約二百団体が参加する「森のようちえん全国ネットワーク連盟」は昨年、全利用者の無償化を政府に要望したが、一律の無償化は見送られた。国会審議でも、与野党が一部の施設が無償化から漏れることを問題視したが、これまで法案の修正には至らず、衆院通過の際、五年後をめどに扱いを検討するという付帯決議を行うにとどまった。明星大の垣内国光(かきうちくにみつ)名誉教授(保育政策)は「自治体が評価する施設は対象にするなど、柔軟な運用をすべきではないか」と語った。

*6-2:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/anatoku/article/508167/ (西日本新聞 2019年5月7日) 細かすぎる校則、変える妙案は 「ルールはルール」生徒の発案を押し返す教員も
 校則の必要性は認めつつも、細かな規定には疑問がある。これまでの取材を通して学校現場からはそうした声が多く聞かれた。校則は変えられないのか。各学校では生徒会執行部を中心に模索が始まっているが課題も多い。
●意見集約 押し返す現場
 校則の改廃について多くの学校は運用で決め、明記しているケースは少ない。取材班が入手した福岡県内の県立高校・中等教育学校の校則に関する資料で全文が記された学校でも規定は見当たらなかった。ただ、変える仕組みはあっても、事実上機能していない学校もある。「生徒総会で意見を吸い上げるようにしているが、声があっても(教師でつくる)生徒指導部で押し返してきた」。同県内の県立高校の男性教諭は打ち明けた。際限のない規制の緩和により学校が荒れることを心配する管理職ら教師側の都合がそうさせているという。学校側の姿勢に疑問を抱く教諭は「ダイバーシティ(多様性)を尊重する時代なのに息苦しさを感じる。『ルールはルール』としか言えず、根拠を持って指導できているかいつも思い悩んでいる」と話した。
●生徒会が議論する場に
 取材班は3月下旬、福岡県内の高校生徒会役員有志でつくる「福岡県高校生徒会連盟」の会合で校則の現状について尋ねた。連盟はそれぞれの学校が抱える課題について意見交換し解決策を探る目的で昨年4月に発足。これまでの活動には公私立の20校余のメンバーが参加している。男子生徒の一人は「そもそも校則って何なのでしょう」と問題提起。「生徒手帳に載っていなくても、ルールになっているものがあり、そういうものほど先生の解釈が分かれる」と訴えた。学校の決まり事の多くは生徒手帳に記されているが、その他の目に見えない規定や学校の「慣例」といった存在が混乱と不信感を招いているようだ。生徒からは「文化祭の異装規制の緩和を求めたが認められなかった」「学校に弁当以外の食べ物は絶対に持ち込めないのだろうか」といった声が聞かれた。あくまでイベントを盛り上げたり、空腹を補ったりするもので、そもそも風紀を乱す意図はない。生徒側の要望に工夫の余地があるとの指摘もあった。「生徒のアンケートを取るなど、きちんとした裏付けと議論の上で学校側を説得する姿勢が重要ではないか」。生徒の声を集約することは、学校側を話し合いの席に着かせるためにも効果的な手法だろう。「先生たちの信頼を得るために、今の校則をしっかり守る実績をつくることが必要だ」という声もあった。一方、ある男子生徒は「校則をころころと変えるのは良くない。でも、どうせ変えられないから仕方がないという姿勢も良くない」と話した。自分たちが学校生活を送る上でどんな校則が必要で不要か。そして生徒会執行部はどう関わるべきか。「校則を変えるために、校則の持つ意味を見つめ続けるのが生徒会の役割だ」と強調した。連盟の代表で西南学院高3年の田口夏菜さんは「校則の問題も含めて、これからもそれぞれの学校で悩んでいることを共有し、議論していきたい」と語った。
●理解示し柔軟な対応も
 学校側の抵抗を強く感じる校則の改廃だが、取材班が実施した福岡県立高校へのアンケートでは、生徒の要望を受けて実現した例がいくつも寄せられた。カーディガンやタイツの着用、マフラーの色の自由化、制帽や指定靴の廃止などだ。「生徒総会で議決された内容は前向きに検討する」「生徒のアンケートを参考にした」とする学校もあった。ある学校はPTAと生徒会が合同懇親会を毎年開き、保護者も一緒になって考える機会を設けていた。中でも目立ったのが携帯電話やスマートフォンに関する規定。時代の流れや防犯上の効果もあり、校内では使用禁止だが持ち込みを認める学校が増えてきているようだ。生徒たちの負わされる義務が増え、自由と権利が狭められているとも指摘される校則。変化の兆しはあるものの、学校と生徒の認識にはなおずれがある。次回は、インターネット上での校則を巡る意見から現状を考える。
    ×      ×
▼生徒会 中学、高校で自主的活動を促し、集団の一員としての資質を育成することを目的に全校生徒で構成する自治的な組織。学習指導要領の特別活動の一つで、生徒は主体的に組織をつくり、役割を分担すること。また、学校生活の課題を見いだして解決するために話し合い、合意形成を図って実践することとしている。生徒会長や会計などでつくる執行部(役員会)が生徒を代表して活動の推進を図り、他に体育委員会などの各種委員会がある。小学校は児童会。

*6-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM584SD0M58PTIL017.html (朝日新聞 2019年5月8日) 容疑者「前をよく見ていなかった」 大津の園児死亡事故、子どもの交通事故を防ぐ
 8日午前10時15分ごろ、大津市大萱(おおがや)6丁目の丁字路の県道交差点で車2台がぶつかり、うち1台がはずみで保育園児の列に突っ込んだ。滋賀県警によると、近くのレイモンド淡海(おうみ)保育園に通う伊藤雅宮(がく)ちゃん(2)=同市大江5丁目=と原田優衣(ゆい)ちゃん(2)=同市大江2丁目=が死亡。男児(2)が意識不明の重体となっている。ほかに2~3歳の園児10人が重軽傷、引率していた保育士3人も軽傷を負った。県警は、車を運転していた無職の新立(しんたて)文子容疑者(52)=同市一里山3丁目=と無職の下山真子(みちこ)さん(62)=同市=を自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)容疑で現行犯逮捕。下山さんについては、8日夜に釈放された。県警によると、交差点で右折しようとした新立容疑者の乗用車と、直進してきた下山さんの軽乗用車が接触。その後下山さんの車が、散歩中に信号待ちをしていた園児らがいる歩道へ突っ込んだとの目撃証言があるという。新立容疑者は「前をよく見ていなかった」、下山さんは「右折車をよけようとハンドルを左に切った」との趣旨を供述。2人は、それぞれ別の大型量販店から帰宅する途中だったという。2人にけがはなく、同乗者もいなかった。現場はJR琵琶湖線瀬田駅の北西約1・5キロの湖岸道路。約200メートル南に、園児らが通うレイモンド淡海保育園がある。

*6-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14007853.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2019年5月10日) 幼保無償化、参院委可決
 10月から幼児教育・保育を無償化するための子ども・子育て支援法改正案が9日、参院内閣委員会で自民党と公明党、国民民主党、日本維新の会の賛成多数で可決された。10日の参院本会議で成立する見通し。認可外保育施設で国の指導監督基準を満たさない場合も5年間は無償化対象とすることが焦点の一つとなっている。9日の内閣委で安倍晋三首相は「待機児童問題により、やむを得ず認可外保育施設を利用せざるを得ない方々についても、負担軽減の観点から経過措置を設けることとした」と説明。「都道府県などによる指導監督の充実を図る」と理解を求めた。一方、立憲民主党の牧山弘恵氏は「劣悪施設の不適切な延命につながる可能性がある」と指摘。立憲民主と共産などは、採決では改正案に反対した。

*6-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14007852.html (朝日新聞 2019年5月10日) 「高等教育無償化」成立へ 中間所得層への支援継続は不透明 参院委可決
 10月に予定される消費増税を財源に、低所得世帯の子どもを対象に高等教育の負担を軽減する関連法案が9日、参院文教科学委員会で与党と一部野党の賛成多数で可決された。10日の参院本会議で可決、成立する見通しで、2020年4月から、授業料減免と給付型奨学金の支給が始まる予定だ。ただ、法案の審議では、制度の対象とならず、支援を受けられなくなる学生の扱いなど、解決すべき課題も浮かんだ。負担軽減策の柱は、授業料の減免と給付型奨学金の拡充だ。対象となるのは「両親と大学生、中学生」のモデル世帯で年収380万円未満の場合。収入ごとに減免額は3段階に分かれ、270万円未満の住民税非課税世帯は、国公立大が年間54万円で一部の大学を除き全額が免除、私立大は最大で70万円が減額される。奨学金は、非課税世帯なら国公立大の自宅生で約35万円、私大の下宿生ならば約91万円支給される。文部科学省は新制度で低所得世帯の大学などへの進学率が、現在の4割程度から全世帯平均の約8割まで上昇し、支援対象者が最大75万人になると推定。必要な予算は約7600億円と試算している。支援策は、低所得層の支援が手厚くなる一方、一定の収入を超えると全く受けられない。現在も多くの大学が収入や家族構成などに応じて授業料を減免しているが、国立大の場合は各大学で基準が異なり、個別の状況に応じて支援する学生を決めている。私大には減免額の半分を国が補填(ほてん)する仕組みがあり、給与所得者なら年収841万円以下の世帯まで対象にできる。こうした学生が今後どうなるか、まだはっきりしない。国会審議でも立憲民主党などから「現在、減免を受けている学生が制度の対象外になるのでは」との質問が相次いだ。柴山昌彦文科相は「対象とならない学生も生じうる」と認め、対策は「学びを継続する観点から、実態などをふまえて配慮が必要か検討する」と述べるにとどまった。文科省の担当者は「在学生を救いたいが、財務省との厳しい予算の折衝になる」と話す。文科政策を担当する財務省の中島朗洋主計官は「新制度は支援を低所得層に重点化するもの。中間所得層の在学生の支援は、大学が自らの経営判断で続ければいい」と語る。母子家庭で育ち、現在は姉と2人で東京都内で暮らす東京大3年の岩崎詩都香(しずか)さん(20)は「新しい制度になっても支援を受け続けられるのか」と不安を感じている。1年生の時から年間約54万円の授業料を免除されているが、新制度の対象とならない場合は生活が一変しそうだ。「アルバイトをかなり増やすことになると思う。疲れて勉強に差し支えが出ないか心配だ」
■県外に進学、加速か
 新制度によって、思わぬ影響が発生する可能性もある。大和総研は4月、文科省の試算を元に「約17万人が新たに大学や専門学校に進学し、対象者は約81万人にのぼる」との予測を公表した。この結果、島根、佐賀、秋田など9県では毎年、高校卒業者の4~5%が県外に進学し、首都圏では流入の方が多くなると予想。学生の大都市への集中が加速するとみる。さらに生活費などの心配が少なくなることで、学生アルバイトが数十万人規模で減ると予想もしている。人手不足に拍車をかける可能性があるとして、金融調査部の坂口純也研究員は「学生バイトに依存する業界は、人手を確保する対策が必要になるだろう」と指摘する。大学生らも支払う消費税の増税部分を使って、一部の学生の負担を軽減する制度にも疑問の声が上がっている。高等教育無償化を目指す学生らで作る「FREE」は3月、全国140の大学・短大・専門学校の学生1457人へのアンケート結果などをもとに声明を発表し、「消費増税は学生の暮らしと直結する。それを財源に使うことは新制度の大きな矛盾だ」と指摘した。

*6-6:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201905/CK2019051102000121.html (東京新聞 2019年5月11日) 園庭ない保育園 増える首都圏 外遊び必要だけど安全どう確保
 大津市で散歩中の保育園児と保育士の列に車が突っ込み、園児二人が死亡した事故を受け、首都圏各地の保育園は園外活動の安全確保に気をもんでいる。待機児童問題が深刻な都市部では、園庭のない保育園が増加。関係者は「外遊びは必須。安全対策を重ねて散歩させたい」と頭を悩ませている。七十八カ所の認可保育園のうち六割に園庭がない東京都文京区。その一つで働く保育士は「事故を受け、全職員で散歩での注意点を見直している」と話す。他の職員からは「信号待ちでは車道から離れるべきだ」と意見が出た。だがこの保育士は「歩くスピードが遅い子どもが青信号で渡り切るには離れすぎもよくない」と考える。こうした判断の難しさから「運転する人には気を付けてほしい」とあらためて願う。荒川区の園庭のない保育園の女性園長は「同じ場面に出くわしたら、仕事を続けられるだろうか」と声を落とす。四季を感じ、自然と触れ合う大切さから、毎日の散歩は欠かせない。散歩中は普段から保育士同士で声を掛け合うが「事故に遭った保育士も注意していた。命を守ることはすごく難しい」と実感している。都によると、二〇一七年度に新設された都内の認可保育園約二百七十カ所のうち基準通り園庭を備えた園は二割にとどまる。残りの八割は「公園の活用を前提に開設している」と都の担当者は話す。社会福祉法人信和会(中央区)が都内で運営する二つの保育園にも園庭がない。園内のホールで体操などをするが、外出は欠かせない。同法人の中田純子理事は「待機児童対策に追われる中、都心部では、すべての園に園庭を造るのは難しい。これからも、園外で子どもたちが安全に遊べるようにしたい」と話した。一方、園庭のある保育園でも、散歩時の安全を再点検している。横浜市中心部にある認可保育園では、大津市の事故翌日の九日に職員会議を開き、ガードレールのない散歩コースの変更を検討。保育士は「事故を受けて十日まで散歩は中止し、園庭遊びだけ。週明けから、安全確認できたコースで再開する」と話した。東京都大田区の認可保育園の園長は「事故当日から職員同士で危険箇所を出し合ったほか、警察署にもアドバイスを頼んでいる」と説明。「園外活動は交通ルールなどを学ぶ社会との接点。園庭があっても欠かせない」と力を込めた。
◆厚労省が注意喚起
 大津市で保育園児2人が亡くなった交通事故を受け、厚生労働省は10日、全国の認可保育園などに、散歩時の安全確保を呼び掛ける事務連絡を、都道府県を通じて出した。厚労省によると、大津市の事故では保育園側に問題はないと考えられるため、これまで各園で実施してきた危険箇所や交通量チェックを再度徹底するよう要請。その上で、子どもの発育に重要な園外活動は今後も積極的に取り入れるよう求めている。担当者は「危ないから園外に出てはだめ、という考えはよくない」と話した。

<女性蔑視を利用した偽情報による選挙妨害もあること>
PS(2019年5月9、24日追加): *7-1に書かれている週刊文春2007年10月4日号に掲載された記事は、佐賀県議会議員選挙の最中に発行されたもので、これにより私が立場をなくし、私を応援していた県議が落選した。また、週刊文春2008年1月24日号が発行されたのは、私と保利氏が公認争いをしていた最中で、選対委員長は菅(現官房長官)氏で、「勝つ候補を公認する」というふれこみだった。どちらの記事もキャリアウーマンを見下げた悪評の散布だったため、自民党から公認されずに落選した後に、私が週刊文春を提訴し、「記事の重要な部分で真実と信じる相当の理由があったとは認められない」とされて勝訴した。にもかかわらず、未だに「①メンバーに信用できない人たちがいます」「②とくに広津前議員は、真偽の程はわかりませんが、以下の記事を読む限りでは、かなり“電波”な人では?」「③およそ政治信条とか理念などの類を持ち合わせている候補とは思えない」等々、事実でもないのに政治家としての信用を貶める内容がHP上に掲載され続けており、IT会社は削除しないのである。これには選挙妨害の意図があるのが明白だが、メディアやIT企業の良識はこの程度なのだ。
 そして、*7-2-1のように、このように勝手に作りあげられた“個人情報”が不正利用されているわけだが、これは公正性・人権の両視点から許されるものではない。*7-2-2には、「『忘れられる権利』も要る」と書かれているが、忘れられる権利どころか、このような偽情報による名誉棄損や侮辱による違法行為に対しては毅然として対応し、逸失利益も十分に損害賠償させるという裁判所の意識改革が必要不可欠だ。そのため、「使わせない権利」で利用停止や削除を依頼するだけでなく、原則として「同意がなければ使わせない」という個人情報の保護規定が必要なのであり、EUのGDPRの方が信頼できるわけである。そのような中、*7-2-3のように、自民党の経済成長戦略本部が成長戦略提言案をまとめ、「第4次産業革命において最大の資源となる『データ』を利活用できる環境をいち早く整備する」と強調したそうだが、データは個人のものであるため、“データの自由な流通”を提唱するなど人権侵害も甚だしい。
 なお、2019年5月24日、*7-3のように、愛媛新聞が「①ヘイトクライムを防ぐため、ヘイトスピーチ法を見直して差別撤廃へ実効性を高める必要がある」「②現行法では、憲法が保障する表現の自由を侵害する恐れがあるとして禁止規定や罰則を設けていない」「③ヘイトスピーチを『違法』と位置づけていないので、ネット等で脅迫や中傷を受けた場合に大半が処罰されない」「④差別に基づく侮辱や脅迫はヘイトクライムであり、通常より厳しい処罰も検討すべき」「⑤野放し状態となっているネットへの対策強化も急務だ」等を記載している。①③④⑤は全くそのとおりで、②の憲法が保障する「表現の自由」も、他者を差別する表現を自由化するものではなく、戦争に向かって権力が暴走した時に反対を唱え易くするような志の高いもので、同じ日本国憲法に定められている「基本的人権の尊重」や「差別の禁止」より優先して適用されるわけではない。つまり、憲法が「表現の自由」を保障しているから暴言でもフェイクニュースでも何でも書いてよく、それによって損害を蒙る人がいてもよいということではないのである。

*7-1:http://www.asyura2.com/09/senkyo69/msg/142.html (阿修羅 2009 年 8 月 12 日) Re: たしかに、政策はいいと思いますが、メンバーに信用できない人たちがいます
「みんなの党」は、政策はいいと思いますが、メンバーに信用できない人たちがいます。「自民党から小選挙区で公認してもらえなかったから」。「自民党の比例区の名簿で優遇してもらえなかったから」。という理由で来たらしい候補がいますね。元・自民党の清水前議員とか、同じく元・自民党の広津前議員とか・・・。およそ、政治信条とか理念などの類を持ち合わせている候補とは思えない。とくに広津前議員は、真偽の程はわかりませんが、以下の記事を読む限りでは、かなり“電波”な人では?
●武部幹事長弁当事件 83会の「奇人変人リスト」
 「その瞬間、議員一同、凍りつきました」(山崎派議員)。山崎派の会合でのこと。山崎卓氏が「総裁選(の出馬)も考えてみたい」と言うと、一人の女性議員が手を挙げた。“ミセス空気が読めない女”と呼ばれる小泉チルドレン。誰もがひやりとしたのも遅く……。佐賀三区のがばい刺客、広津素子議員(54)は真顔で山崎氏に進言した。「山崎先生は女性スキャンダルでイメージが悪いので、難しいと思います」。自民党議員が笑いを噛み殺しながら言う。「“今週の広津語録”と言われるくらい、破壊的な発言が永田町を駆け巡っています。有名になったのは、佐賀の日本遺族会の方が東京に挨拶にみえた時。話を聞いた後、広津さんは、『遺族、遺族って、一体、何の遺族ですか』と(笑)。〇五年の郵政選挙の大量当選が生んだ珍現象です」。東大卒で公認会計士という経歴をもつ広津女史。「エキセントリックな点があり、ストレートにモノを言う。党本部や国会内の会合での質問に、いつも場が凍る」(別の自民党議員)。伊吹文明幹事長が党税調小委員長だった時、伊吹氏の説明が終わると、新人・広津氏が挙手をするや……。「伊吹先生の説明ではわかりにくいと思いますので、代わって私が説明します」。絶句したのは伊吹氏だけではない。農政の会合で農家による説明が終わると、広津氏が総括(?)した。「皆さん、農業をやめて転職したらいいと思います」。極めつけが「牛肉弁当事件」。チルドレンの親分、武部勤幹事長(当時)が、「いつでもメシを食いに来なさい」と新人たちに声をかけると、本当に広津氏は幹事長室に行って、置いてあった牛肉弁当を勝手に食べてしまったというのだ。その恨みではないだろうが、武部氏は新人議員のグループ「新しい風」に広津氏を誘っていない。抗議する彼女に、武部氏は「あれは仲良しクラブだから」と逃げたつもりが、逆に「私は仲良しじゃないんですか!」と怒らせてしまった。広津氏は小誌の取材に「全部まったくのウソです」と否定するが、広津語録は議員の間で今も更新中だ。
                            週刊文春07年10月4日号より
●派閥のドン山拓に「引退勧告」しちゃった広津素子センセイ
 “ミセス空気が読めない女”と呼ばれる、小泉チルドレンの広津素子議員(54)。昨年末、彼女は所属する派閥のボス山崎拓氏(71)にこう直談判したと言う。「先生はもう七十歳を超えている。辞めるべきだと思います!」。話は次期衆議院選挙、佐賀三区の公認問題を巡って切り出された。広津議員は現在、郵政造反・復党組である保利耕輔議員(73)と激しい公認争い中。保利氏に対して前述のように「七十歳を超えて~」と批判し、「山崎さんから若い人に道を譲るように言って下さい」と続けた。山崎派議員が苦笑しながら語る。「山崎先生は保利先生と同世代。保利先生に年だから辞めろなんて、山崎先生の口から言える訳がありません。広津さんの言葉を聞いて山崎先生は、『それは俺にも辞めろと言っているのか!』と激怒したようです」。ちなみにヤマタクが総裁選への意欲を示したときも、「山崎先生は女性スキャンダルでイメージが悪いので難しいと思います」(小誌〇七年十月四日号既報)。と広津氏は直言している。山崎派の重鎮、野田毅議員が新人を集め食事会を開いたときもこんな事件が。野田氏が「地方経済は疲弊している。今こそ地方への配慮が必要だ」などと持論を語り終えたあと、広津氏はこう言い放った。「先生は古いタイプの政治家ですね」。出席していた一年生議員が振り返る。「一瞬、場が凍りつき、われわれも冷や汗をかきました。野田さんは明らかに不機嫌だった。ご馳走になっているのに、普通そういうことを言いますか?(苦笑)」。東大卒で公認会計士という経歴の広津氏は、「自らの考えが正しいと信じて疑わないタイプ」(同前)。「昨年九月の安倍改造内閣が発表される前も、『次は私が女性代表で大臣になる』と公言し周囲を唖然とさせた。福田内閣の人選が進められているときには、官邸に電話して『私を副大臣か政務官に入れるべきだ』と直談判したという伝説もある」(全国紙政治部記者)。地元の評判も芳しくない。「人の名前を覚えないから人望がない。すぐ問題を起こすから会合等に呼ばないようにしているのですが、呼ばないと『女性蔑視だ!』と大騒ぎ。問題は人間性なんですけど・・・・・・」(自民党佐賀県連関係者)。そんな言動が災いしてか、事務所も大混乱の様子。「広津さんは入りたての秘書に、『明日から佐賀に行って後援会を作ってきてちょうだい』とか無茶ブリがすごいようです」(同前)。本人に取材すると、「すべてデタラメです。一体誰が言っているんですか」とご立腹。いや、みんな言ってるんですけど。郵政総選挙でも広津氏と対峙した保利氏は、周囲にこう公言しているという。「彼女が出る以上、私も絶対次の選挙に出る。それが佐賀県のためだ」
                             週刊文春08年1月24日号より

*7-2-1:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20190508_3.html (京都新聞 2019年5月8日) 個人情報の保護  利用規制は国際潮流だ
 政府が個人情報保護法の大幅な見直しに乗り出した。2020年に提出を目指す改正法案にデータ漏えい時の報告の義務付けや罰則強化などを盛り込む方針だ。デジタル化の進展で本人の知らないうちに個人情報が不正利用される懸念が高まっており、議論を注視したい。現行の改正法は17年5月に全面施行され、3年ごとに見直す規定がある。これを踏まえ、政府の個人情報保護委員会が改正案に関する中間整理を公表し、意見公募手続きに入った。見直しの柱の一つは、企業が収集する住所や氏名といった個人情報について広告などへの利用停止を個人が求めた場合、適切な対応を義務付ける点だ。「使わせない権利」の新設とも言える。現行法は個人情報を保護する一方で、国家戦略としてビッグデータ活用を後押しする狙いもある。企業は収集した膨大な個人データを人工知能(AI)で解析し、サービス改善や生産性向上に活用しているが、情報流出による不正利用やプライバシーの侵害など負の側面が問題となっている。例えばインターネットで検索や買い物後、関連商品、サービスの広告がダイレクトメールなどで再三届くことがある。検索サイトを運営する企業などが検索履歴や購入記録を再利用しているためだ。企業側が情報の利用停止や削除に応じなければならないのは、現行法では情報の不正取得などに限られ、消費者の不満が強かった。「使わせない権利」で自身に関わるデータを管理しやすくなる。国境を越えて活動する巨大IT企業によって個人情報の独占が進み、データ乱用への懸念は強い。欧州連合(EU)は昨年、個人情報保護を強化する一般データ保護規則(GDPR)を施行し、個人データの運用を厳しく規制している。プライバシー権を重視し、立場の弱い利用者を守るのは国際的な潮流であろう。ただボーダーレス化した世界で個人情報を保護するには、国内法の規制だけでは済まない。政府は海外に拠点を置く企業にも適用する仕組みを検討しているが、欧米など各国との連携が欠かせない。EUが導入した「忘れられる権利」も課題だ。ウェブサイトに流出した写真や過去の犯罪歴の検索結果など、本人にとって不都合な情報の削除を、ネット事業者に求められる仕組みを法案に盛り込むかどうか。引き続き検討するとしたが、人権侵害を防ぎ、救済する観点から議論を急ぎたい。

*7-2-2:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190427/KT190426ETI090002000.php (信濃毎日新聞 2019年4月27日) 個人情報保護法 「忘れられる権利」も要る
 ネットで買い物や検索をすると、その後しばらくの間、関連する商品、サービスの広告がスマホやパソコンに届く。煩わしく思う人は多いだろう。ターゲティング広告と呼ぶ。買い物、検索サイトの会社がデータを第三者に売っているのだ。広告などへの利用停止を個人が求めた場合、応じるよう企業に義務付ける方向を政府の個人情報保護委員会が打ち出した。いわば自分の情報を「使わせない権利」だ。個人情報保護法改正の中間取りまとめに盛り込み、パブリックコメントを始めている。買い物や検索の履歴は本人のものだ。知らないところで第三者の手に渡るのは望ましくない。規制するのは当然だ。今の個人情報保護法では、情報の利用停止や削除に企業が応じなければならないのは、不正に取得したり、目的外で使ったりした場合に限られる。通常は、請求に応じる義務はない。ただし、流れは変わりつつある。欧州連合(EU)は昨年7月に施行した「一般データ保護規則」、略称GDPRにより、個人情報の収集、取り扱い方法について利用者の同意を得ることを企業に義務付けた。その少し前には、米交流サイト大手フェイスブックの利用者の個人情報流出が表面化した。情報は英国の政治コンサル会社の手に渡り、2016年の米大統領選でトランプ陣営の支援に利用された可能性が指摘されている。この問題をきっかけに、「使わせない権利」を求める声は米国でも高まった。今後、世界に広がっていくだろう。問題は、グーグル、アマゾンなど国境を超えて活動する巨大IT企業への対応だ。「使わせない権利」をボーダーレスの世界で保障するには、米欧など各国との連携が欠かせない。法律にうたうだけでは済まない。個人情報を巡っては、流出した写真や犯罪歴の検索結果など本人にとって不都合なデータの削除、消去もかねて課題になっている。「忘れられる権利」だ。中間取りまとめでは、改正案にこの権利を盛り込むかどうかは引き続き検討するとされた。欧州のGDPRには、市民は企業に個人情報を消去させることができる、との規定が盛り込まれている。日本でも成文化すべきだ。半面、政治家が自分に都合の悪い情報を消去させるようでは国民の知る権利が損なわれる。仕組みは慎重に検討したい。

*7-2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190509&ng=DGKKZO44532230Y9A500C1PP8000 (日経新聞 2019年5月9日) データ流通新法、個人情報保護法と両輪 司令塔機能の組織新設
 自民党の経済成長戦略本部がまとめた成長戦略の提言案は「第4次産業革命において最大の資源となる『データ』を利活用できる環境をいち早く整備する」と強調した。安倍晋三首相は6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議で議長を務め、データの自由な流通に向けた枠組み作りを提唱する方針だ。与党からも国内でのデータの収集や管理などの枠組み構築を求め、日本主導の国際ルール作りを後押しする。提言案は政府が2020年に向けて検討する個人情報保護法の改正と新法を「車の両輪として、データ駆動社会における戦略的枠組みを構築する」と記した。個人情報保護法の改正案は個人が巨大IT(情報技術)企業のサービスを使う際に、購買履歴や位置情報などの個人情報を不正に利用された場合は利用を止められるようにするなどが柱となる。国際的なデータ流通に対応するため、政府内に司令塔機能となる「デジタル市場競争本部」(仮称)を早期に新設することも盛り込んだ。各省庁横断で専門家を交えて構成する。独占禁止法など関係法令に基づく企業への調査結果を聴取したり、米欧など主要国の競争当局と連携したりするための権限を与える。公正取引委員会と新組織が連携しながら巨大IT企業を監視する仕組みだ。

*7-3:https://www.ehime-np.co.jp/article/news201905240017 (愛媛新聞社説 2019年5月24日) ヘイトスピーチ法3年 差別根絶に向け不断の見直しを
 特定の人種や民族への差別をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)をなくすための対策法が成立して3年がたった。「不当な差別的言動は許されない」との宣言の下、抑止条例の施行などの取り組みが進んだが、根絶には程遠いのが現状だ。とりわけ昨年来、元徴用工や慰安婦問題で一層冷え込んだ日韓関係を背景に、街宣活動やインターネット上での過激な言動は収まる兆しがみえない。先月からは外国人労働者の受け入れ拡大が始まり、環境整備が不十分な中で、新たな差別も懸念される。憎悪犯罪(ヘイトクライム)を防ぐためにも、法改正を含めて不断に見直し、差別撤廃へ実効性を高める必要がある。現行法では、憲法が保障する表現の自由を侵害する恐れがあるとして、禁止規定や罰則を設けていない。ヘイトスピーチを「違法」と位置づけていないことから、ネットなどで脅迫や中傷を受けた場合、加害者の罪を問うには刑法を適用することになる。しかし、大半は不起訴となるなどして処罰されず、これまでに立件され、刑事罰が科されたことが判明したのは2件にとどまる。侮辱罪で科料9千円、名誉毀損(きそん)罪で罰金10万円の略式命令が下されたが、刑罰が軽いとの指摘がある。民事訴訟のケースでも被害者の負担は大きい。証拠を集める際、自身への悪意に満ちた言動に再び向き合わなければならなくなり、精神的苦痛を受ける。時間や費用もかかる。差別に基づく侮辱や脅迫はヘイトクライムであり、通常より厳しい処罰の検討も必要だろう。国は事件化しやすくしたり、被害者を救済したりする仕組みづくりを進めなければならない。野放し状態となっているネットへの対策強化も急務だ。法務省は3月、ネット上のヘイトスピーチに関して削除などの救済措置の対象を、個人だけではなく集団も含めるよう全国の法務局に通知した。不当な差別的言動は集団に向けられたものも多い。国には被害者からの申告がない場合でもネット業者に対して差別投稿を削除するよう要請するなど、積極的な対応を求めたい。取り組みが自治体任せとなっている点も是正しなければならない。川崎市や京都府が、公共施設でのヘイトスピーチを事前規制するガイドラインを施行しているほか、大阪市は条例でヘイトスピーチ認定後に個人や団体名を公表している。だが、ほかの多くの自治体は「表現の自由」への配慮を巡って対応に苦慮し、有効策を打てていない。国は、表現の自由の扱いや、何がヘイトスピーチに当たるかといった基準をできるだけ具体的に示し、取り組みを後押しすべきだ。条例の策定などを通して、行政や市民らが、差別を許さないという毅然(きぜん)とした態度を示すことが、ヘイトクライムの抑止力強化につながると再認識してもらいたい。

<本当の男女雇用機会均等へ>
PS(2019年5月13日追加): *8-1のように、パリで開かれた先進七カ国(G7)男女平等担当相会合が、2019年5月10日、「女性の人権や男女平等の促進のために法制度の拡大が必要」という認識で一致し、これは大統領が男女平等促進を重要政策に掲げるフランスが議長国だった成果であり、そのことはフランス以外が新法導入の約束に消極的だったことからもわかる。しかし、女性に対する暴力は、身体的なものだけではなく、女性蔑視を利用して自己に利益誘導しようとする精神構造も入るため、徹底した法制度の拡大が必要だ。
 例えば、*8-2の「IQ(論理的思考)とEQ(情緒的感性)には明確な男女差・年齢差がある」というように、あたかも科学的調査を行ったかのようだが、実際には差別意識を植え付ける記事がそうである。内容は「①CIYの診断結果で個人の様々な特性が明らかになるが、その中で特に『論理的に思考するタイプ』と『情緒的・感覚的に思考するタイプ』」で男女間に明確な差が出た」「②論理的に思考するタイプは全年齢層で男性割合が高く、情緒的・感覚的に思考するタイプは全年齢層で女性割合が高い」「③男性では新社会人(23歳~29歳)から40代にかけて論理的に思考するタイプが増加し、女性では高校・大学・社会人となるにつれて情緒的・感覚的に思考するタイプが増える」「④組織の中で男性は論理的であること、女性は情緒的で共感し合うことを求められる結果、年齢とともにそれぞれの思考性が変化する」「⑤男女で年齢とともに思考性が変化していく傾向があり、結果的に男性は論理的、女性は情緒的で共感力が高いという集団ができる」「⑥世代別では、男性ではゆとり第一世代~団塊ジュニア世代まで論理的に思考するタイプが高くなっており、女性では世代別の変化は見られない」「⑦個性や性格の半分は遺伝で決まり、残りの半分はその他の要因によって決まると言われている」「⑧男性で30−40代が論理的に思考するタイプが多く、50代をすぎると情緒的、感覚的に思考するタイプが増えていくので、年齢とともに性格が変化していると感じられる」などが書かれている。
 しかし、調査方法については、何を質問してどう答えれば「論理的」「情緒的・感覚的」と判定しているのか不明であり、判定する人の主観や分析力も見逃せない。さらに、①②のように見えたとしても、その要因は、高等教育で何を専攻し、どの職種でオン・ザ・ジョブ・トレーニングを受け、どういう立場(非正規・正規のヒラ・管理職・社長、専業主婦等)で働いてきたかによって考え方が変わるため、③④⑧の結果になる可能性もある。これについて述べているのが、*8-3の上野元東大教授だが、東大入学者の女性比率は現在では全体で約18.6%にまで増えているものの、法学部19.1%、経済学部17.9%、文学部28.8%、教育学部37.2%、教養学部30.2%、工学部8.9%、理学部12.2%、農学部26.6%、薬学部23.9%、医学部19.8%と工学部と理学部は10%前後であり、これは就職を考慮して専攻を決定した結果だろう。その結果、就職後のオン・ザ・ジョブ・トレーニングも異なり、東大以外では家政学系・芸術系・文学系に進学する女性も多いことから、社会全体の男女の育成方法や期待の違いが*8-2の結果を生んでいると思われる。ただ、⑤⑥のように、年齢で変化するか否かについては、現時点の異なる世代間比較をしても受けた教育や過ごした社会環境が異なるため正確な比較にならず、同じ世代を多変量解析でコホート分析した方が要素毎の影響がわかりやすい。⑦については、半々かどうかはわからないが、遺伝と環境の両方の要因で変化し、同じ人でも欧米と日本で振舞いを使い分けなければならないことさえある。つまり、日本は、“文化”の名の下に女性蔑視している国なのである。
 なお、*8-3には、「サークル選びは袋詰めで渡されたビラの束から『東大男子と○○大女子のサークル』と書かれたものを捨てることから始めなければならなかった」とも書かれているが、私が入った社交ダンスクラブは東大女子が少ないので日本女子大や東京女子大と合同で行っていたが、行けば東大女子もWelcomeだった。ただ、やるのは社交ダンスでも、幼い頃からバレエや日本舞踊を習っていた人はバシッと形が決まり、そうでない人はとてもかなわないため、*8-4の「習い事の低年齢化」はあってよいと考える。これを、「エリート志向の押し付け」とか「習い事は協調性を養う」などと言っている人は、クラブ活動以外はやったことがないように思われる。何故なら、子どもが主体性を示す年齢から始めては遅いものが多く、例えば、日本語をはじめとする語学・音感・楽器・ダンスなどは幼い方が覚えが早く、これらの基礎ができていると後の勉強に役だったり、(最近の日本では数と運動量で勝負しているらしい)アイドルが1人で歌っても聞くに堪える歌唱力を持てたりする底上げ効果があるからだ。


 欧米と日本の女性役員・管理職比率     2019.5.10西日本新聞(*8-2より)

(図の説明:1番左と左から2番目の図のように、日本の女性役員・女性管理職比率は、他国と比較して著しく低い。これは、合理的に見せかけた女性に対する頑固な差別があるからで、その差別の一つに、男性の論理性と女性の情緒性・感情性理論がある。しかし、1番右と右から2番目の図を見ると、日本では男女とも、またどの世代においても、情緒的・感情的なタイプが圧倒的に多く、論理的に思考できるタイプは半分以下しかいないことがわかる。そして、グラフに出ている男女の違いは、与えられた教育や職場環境による変化の程度だ)

*8-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201905/CK2019051202000118.html (東京新聞 2019年5月12日) 男女平等促進へG7「新法導入を」 担当相会合で一致
 パリで開かれた先進七カ国(G7)男女平等担当相会合は十日、女性の人権や男女平等の促進へ法制度の拡大が必要だとの認識で一致、共同声明で「男女の格差はここ数十年で総体的に減少したが、世界中で進展がかなり鈍っている」と指摘した。マクロン大統領が男女平等促進を重要政策に掲げる議長国フランスは、外部の諮問委員会がまとめた世界の男女平等促進法を参考にG7各国がそれぞれ新法を導入することを提案。ただ共同声明は「(他国の)優れた実践は名案の源となる」とするに留まり、導入の約束には至らなかった。ある参加国筋は「立法は議会の仕事だ」と述べ、フランス以外は新法導入の約束に消極的だったとの見方を示した。女性活動家ら三十人以上で構成する諮問委のメンバーの一人、女優のエマ・ワトソンさんは記者会見で「女性に対する暴力と闘う意欲的な法枠組みをG7構成国が早急に導入するよう期待する」と訴えた。諮問委は今後、模範となり得る各種の法律に関する最終報告をまとめ、各国に提示する。日本から出席した中根一幸内閣府副大臣は「男女平等の推進にはトップの意識改革が重要だ」と述べた。

*8-2:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/news_release/article/509065/ (西日本新聞 2019年5月10日) IQ(論理的思考)とEQ(情緒的感性)には明確な男女差が
 COLOR INSIDE YOURSELF( https://ciy-totem.com/ )は43万人以上が利用する、自己診断サービスです。 43万人以上の診断結果をビッグデータ解析した結果みえてきた、個性や性格に関する興味深い統計データをお届けします。
●IQ(論理的思考)とEQ(情緒的感性)には明確な男女差が
 COLOR INSIDE YOURSELF(以下「CIY」)の診断結果では、個人の様々な特性が明らかになりますが、その中でも特に、「論理的に思考するタイプ」と「情緒的、感覚的に思考するタイプ」では、男女間で明確に差がでました。年齢別の診断結果の割合を多項式近似曲線で表すと、「論理的に思考するタイプ」は全年齢層で男性の割合が高く、逆に「情緒的、感覚的に思考するタイプ」では、全年齢層で女性の割合が高くなっています。ステレオタイプに言われているような「男性は論理的に考えるのが得意、女性は共感力が高い」というイメージに近い結果となりました。
●男女によって、求められる思考性が異なる?
 さらに、ライフスタイル別の統計結果を見ると、男性では新社会人(23歳~29歳)から40代にかけて「論理的に思考するタイプ」が増加しています。女性では、高校から大学、社会人になるに従って「情緒的、感覚的に思考するタイプ」が増えており、30代からは緩やかに減っていきます。
●年齢とともに性格が変化する要因は、何でしょうか?
 A:組織の中で、「男性は論理的であること、女性は情緒的で共感し合うこと」を求めら
   れた結果、年齢とともにそれぞれの思考性が変化していく
 B:そもそも男女で年齢とともに思考性が変化していく傾向があり、結果的に「男性は
   論理的、女性は情緒的で共感力が高い」という集団ができていく
 いずれの要因かまでは分析結果からはわかりませんでしたが、ここまで明らかになると、さらに興味深い洞察が得られそうです。
●年齢とともに性格は変わるのか?
 世代別の結果では、男性では「ゆとり第一世代~団塊ジュニア世代」までが、やや「論理的に思考するタイプ」が高くなっているようです。(女性では、世代別の変化は、あまり見られません。上述の通り、年齢や社会的なポジションに伴って性格が変わっていくのか、特定の世代に限って「論理的に思考するタイプ」がそもそも多いのかについても、興味深いポイントです。個性や性格の半分は遺伝で決まり、残りの半分はその他の要因によって決まると言われています。そのため加齢による性格の変化はそこまでないはずですが、男性で30−40代が「論理的に思考するタイプ」が多く、50代をすぎると「情緒的、感覚的に思考するタイプ」が増えていくという傾向を見ると、年齢とともに性格が変化しているとも感じられます。今後も継続的に結果を分析することで、年齢による変化なのか、特定の世代による傾向なのかを明らかにしていきたいと思います。

*8-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM4R3V9HM4RUTIL011.html?iref=pc_rellink(朝日新聞 2019年4月24日)東大ジェンダー論講義、立ち見の盛況 上野さん祝辞反響
 社会学者の上野千鶴子さんが、12日の東大入学式で述べた祝辞が反響を呼んでいる。入学者の女性比率が約2割に過ぎないことなどを挙げて「性差別は東京大も例外ではない」と述べるなど、「おめでとう」一辺倒ではない祝辞。東大生たちはどう受け止めたのか。24日夕、東大駒場キャンパスであった「ジェンダー論」の授業。祝辞の影響か、3週連続で536席の教室に多数の立ち見が出た。担当する瀬地山角(せちやまかく)教授によると、前回の授業後に提出させた感想には、東大のジェンダー意識の現状を憂える男子学生のものが複数あった一方、上野さんの祝辞の間、鼻で笑っている男子学生がいた、との記述もあったという。このため、この日の授業は例年と順番を入れ替え、男女雇用機会均等法(1985年制定)ができるまでの女性が置かれていた状況について伝える内容に変更した。東大はこれまで、女子学生を増やそうと、女子高校生向けの説明会を開いたり、冊子を作ったりしてきた。2017年度からは、女子学生向けの家賃補助制度も始めた。それでも、今年度入学者の女子学生の比率は18・1%。前年度の19・5%を下回った。教授の女性比率も1割に満たない。04年度以降、上野さん以外に入学式で祝辞を述べた女性は、10年度の緒方貞子さんだけだ。瀬地山教授は「男女比は、大学だけで解決できる問題ではない。上野さんの祝辞は社会に向けた投げかけでもあった」とみる。上野さんは祝辞で「東京大学は変化と多様性に拓(ひら)かれた大学です。わたしのような者を採用し、この場に立たせたことがその証しです」と語った。上野さんに依頼した理由について、東大は「祝辞を行う者の選定経緯は公表していない」とするが、新入生の受け止めは様々だ。「日本最高峰の大学で、これだけ学生数に男女差があるのは問題だと私も思っていた。入学式の場で指摘してくれたのはよかった」。埼玉県の私立共学校から文Ⅲに進学した女子学生はそう話す。高校では国公立大をめざす女子も多かったが、祖父母世代から「女の子がそんなに難しい大学に行かなくても」と言われた経験がある子が複数いたという。都内の私立共学校から文Ⅰに進んだ男子学生も、「男女差別が残っているんだとわかり、驚いた。祝辞はつまらないのが相場だが、目を覚まされたような思いだった」。一方、神奈川県の私立男子校から理Ⅰに進学した男子学生は「説教されている気分になった。式で言うべきことか、と複数の男子が言っていた」と打ち明ける。「入学したての今はピンとこなくても、いずれじわじわと心に響いてくるのでは」と言うのは、東大出身でフリーランスの広報やライターとして働く平理沙子さん(28)だ。バイト先で大学名を言うと「すごく驚かれ」、就職活動では、同じサークルの男子学生たちは早々に内定を得ていくのに、女子たちは苦戦。面接では「なぜ東大に入ったのか」と根掘り葉掘り聞かれ、東大女子が「こだわりが強すぎる人」のように見られていると感じた。「高校までは男女平等と思っていたけれど、大学、就活、就職と進むうちに、男女の置かれた状況の違いに違和感が増していった」。「祝辞を評価しますか」「祝辞で取り上げられた東大の問題を、以前から認識していましたか」。祝辞への反響を受け、東大新聞は5月10日まで、大学内外の人を対象に賛否などを尋ねるウェブアンケートを実施中だ。これまでも上野さんが祝辞で触れた「東大女子参加不可」のサークルの存在など、東大のジェンダー問題について特集を組んできた。女性編集部員で、大学院2年の矢野祐佳さんは「6年間思ってきたことを、上野さんが代弁してくれた」と言う。「東大女子参加不可」のサークルは、入学時に怒りを感じたことの一つだ。サークル選びは、袋詰めで渡されたビラの束から「東大男子と○○大女子のサークル」と書かれたものを捨てることから、始めなければならなかった。「女子が2割というのは異常。東大の学生や教授の男女比が変われば、社会にもプラスの影響があると思う」。男性編集部員で工学部3年の高橋祐貴さんは「『祝辞にふさわしくない内容だった』と思っている人は、入学式の性質を理解していない。大学が全学生にメッセージを伝える場は入学式とガイダンスくらいしかなく、祝辞は重要なもの。いまジェンダーを取り上げたのは時勢にかなっていると思う」と指摘する。上野さんは祝辞で、3年前に起きた東大生5人による強制わいせつ事件にも言及した。高橋さんは「ここ数年、東大のジェンダー問題のひどさが露呈する出来事が相次ぎ、新入生の女子比率も下がった。そこに大学も危機感をもっているのだろう。祝辞は、新入生や東大の構成員、そして社会に向けた『男女比を改善しなければ』という東大からの強いメッセージだと思った」と受け止める。

*8-4:https://ryukyushimpo.jp/column/entry-917087.html (琉球新報 2019年5月13日) 習い事の低年齢化
 5歳、4歳、3歳、0歳―。順番にフィギュアスケートの浅田真央さん、羽生結弦さん、卓球の福原愛さん、水泳の萩野公介さんが競技に触れた年齢だ
▼トップアスリートには幼少の頃に競技人生の一歩を踏み出した人が目立つ。各界で若い人材が活躍したり成功を収めたりしているのを見て自分の子供も、と刺激を受ける親は多いだろう
▼習い事の低年齢化が進む。笹川スポーツ財団の2018年の調査では4~11歳の未就学児の72%が何らかのレッスンを受けていた。一番多いのは水泳。上位14位以内でサッカー、体操などスポーツ系が九つを占めた
▼未就学児のスポーツクラブへの加入率は15年の32・8%から17年は40・1%に増えた。背景には20年開催の東京五輪・パラリンピックの影響もあるだろう。単一か複数を幅広くさせるのか一長一短あるにせよ本人が望む習い事をさせるのは悪いことではない
▼ただ幼少期からの高度なトレーニングで体を痛める危険性もある。エリート志向の押し付けで競技へのやる気をそいでは元も子もない。プロで活躍できるのはごく一握りだが、習い事は協調性や集中力を養うことにも役立つ
▼最近、幼い子どもへのスポーツ指導者の役割として、遊びを先導する重要性が指摘される。体を動かす楽しさを感じさせるのである。大事なのは子どもたちの主体性を尊重することだ。

<ふるさと納税について>
PS(2019年5月22日追加):ふるさと納税制度は、生産年齢人口が都市部で働き、保育・教育・医療・介護費用を負担している地方には税収が集まりにくい構造になっているため、私が2005年に衆議院議員になってから提唱し始めて2008年にできた制度で、多くの方の御協力で大きく育った。しかし、所得税を計算する際に2000円は負担させる仕組みになっているため、この制度を利用した人は返礼品がなければ、その分だけ多く税金を払うことになる。そこで、考案されたのが、地場産品を返礼品にして地域振興しながら寄付金を集める方法で、私は名案だと思う。しかし、地場産品以外を返礼品とし、知恵を絞って多額の寄付を集めた大阪府泉佐野市、静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町が、*9-1のように、ふるさと納税制度から除外された。しかし、泉佐野市の担当者が言う通り、ルール制定以前の募集を考慮するのは横暴で租税法定主義にも反するため、この取り扱いに関して提訴すれば勝訴できるだろう。また、大阪府泉佐野市、静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町にも地場産品の生産者がおり、いつまでもふるさと納税制度から除外されたままでは不利益を蒙るため、市町がふるさと納税制度に復帰できるまで、大阪府、静岡県、和歌山県、佐賀県が代行する方法もある。
 なお、*9-2に、ふるさと納税流出額が1600億円になりそうだと書かれているが、生産年齢人口を集めた都市部では打撃というほどの金額ではなく、地場産品がないか、あっても工夫しなかった地域でもあるため、ここから流出するのは立法趣旨そのものである。

   

(図の説明:左図のように、ふるさと納税額は日本全国で著しく増加しており、この制度は当たったことがわかる。しかし、左から2番目の図のように、想定外の返礼品で稼いだ市町があり、制度から除外されてしまったが、これは違法な除外である。また、右から2番目の図のように、農漁業地帯が健闘しているのは制度の狙いどおりで、右図の市町村の順位も興味深い)

*9-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM5K4KF5M5KULFA02C.html (朝日新聞 2019年5月17日) ふるさと納税、除外4市町の早期復帰を認めず 総務相
 石田真敏総務相は17日、ふるさと納税制度から外すと決めた大阪府泉佐野市など4市町の早期の制度復帰を認めない姿勢を示した。閣議後会見で「(他自治体に)正直者が損をすることをすべきではないという声がある」と述べた。4市町は泉佐野市、静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町。通知を守らずに多額の寄付を集めていたと総務省が判断し、少なくとも来年9月末までは復帰できないことが決まっている。総務省令に基づく告示により、自治体は寄付の集め方や受け入れ額を今後も問われ続ける。石田氏は「募集実態や、ルール外返礼品で受け入れた寄付額の規模などに応じて検討する」と述べ、4市町の復帰時期に差をつける可能性を示唆した。一方、泉佐野市は週明けにも石田氏に質問状を送り、対象外とされた理由などを問う方針を明らかにした。同市の阪上博則・成長戦略担当理事は17日、石田氏の発言について「いつもの脅しではないか。過去の寄付募集を考慮すること自体が問題だ」と批判した。

*9-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190522&ng=DGKKZO45105200S9A520C1MM0000 (日経新聞 2019年5月22日) ふるさと納税 流出1600億円 今年度本社調査 2割増、横浜が最多
 全国の主要市区で2019年度、ふるさと納税の影響で流出する住民税の金額(税額控除額)が前年度比で2割以上増えることが日本経済新聞の調査でわかった。金額では約1600億円に上り、横浜市や東京都世田谷区など首都圏の流出が目立つ。返礼品競争でふるさと納税が拡大する一方、都市部の自治体の財政への打撃が大きくなってきた。ふるさと納税は出身地や好みの自治体に寄付すると、寄付額から2000円を引いた金額が所得税や住民税から控除される仕組み。住民税の控除は寄付した翌年度に適用され、住民が地域外に寄付した自治体は住民税が減ることになる。調査は2~4月、全国792市と東京23区の815市区を対象に実施。寄付の受け入れ額は810市区から、税額控除額は622市区から回答を得た。19年度の流出額が最も多いのは横浜市で、18年度比31%増の136億円となる見通し。名古屋市は75億円(24%増)で、世田谷区が53億円(29%増)だった。622市区の流出額は21%増の1581億円となった。国から地方交付税を受け取る自治体は流出額の一部が地方交付税で穴埋めされるが、交付税を受け取らない自治体はそのまま流出額となる。19年度の流出額のベースとなる18年度の寄付受け入れ額の810市区の合計額は、17年度比29%増の2704億円。首位はアマゾンギフト券を返礼品とした大阪府泉佐野市の497億円だった。2位は宮崎県都城市(83億円)で、北海道根室市(50億円)が続いた。ふるさと納税を巡っては、総務省が6月から、対象自治体を指定して返礼品を「寄付額の3割以下の地場産品」に限定する新制度を導入する。

<フェイクニュースとファクトチェック>
PS(2019年5月23日):*10-1のとおり、選挙で立候補した候補者への選挙妨害を目的とする情報が、噂という無責任な形でネット空間を飛びかう時代だが、ファクトチェックが必要なのは、ネットだけではなくメディアも同じだ。何故なら、女性蔑視に基づいて女性の能力や実績を過小評価する“常識的”な判断で、私が不利益を蒙ったことはすこぶる多いからである。
 例えば、上記のように、「ふるさと納税制度は私が提案してできた」と書くと、それが事実であるにもかかわらず、「女がそんなことをできるわけがない」「女がそんなことを言うのは謙虚でない」と受け取ったメディアが多く、その結果、ふるさと納税の発案者は、*10-2の福井県知事と制度導入時にたまたま総務大臣だった菅氏ということになった。
 しかし、それでは、「2人は長期間政治家であったのに、何故、2006年までふるさと納税制度を発案しなかったのか?」、「何故、ふるさと納税の盛んな県は、佐賀県はじめ九州に多く、福井県でないのか」「菅氏は力ある政治家なのに、何故、ふるさと納税制度を弁護しないのか」という疑問に全く答えられない。つまり、大多数のメディアがフェイクニュースを発信しており、ファクトチェックが甘いのである。そして、これはほんの一例にすぎない。
 その点、誰もがHPで自分の主張を述べられるようになったのは、政治家がメディアに変なことを一方的に言われっぱなしだった時代と比べれば革命的な進歩であり、ネットだけでなくメディアも、もっと公正・中立で深い分析に裏付けられた報道を行うべきなのである。

*10-1:https://ryukyushimpo.jp/special/entry-799530.html (琉球新報 2019年2月28日) ファクトチェック フェイク監視
 ネットで広がっているさまざまな情報。それをそのままうのみにするのは危険です。選挙でも立候補した候補に対して、さまざまな情報やうわさが飛び交っています。その情報は確かなものなのでしょうか。真実なのか、うそなのか判断がつかない情報をそのまま受け取ってしまっては正しい判断ができません。「フェイクニュース」というものが、2016年の米大統領選でネット上において大量に拡散され問題になりました。琉球新報は30日投開票の知事選に関するデマやうそ、フェイク(偽)情報を検証する「ファクトチェック―フェイク監視」を随時掲載し、特集ページの1コーナーとしてまとめます。ぜひ、読んでいただき投票に生かしてもらえれば、と思います。

*10-2:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181124-00010003-wordleafv-pol (Yahoo2018/11/24)返礼品競争が過熱 ふるさと納税発案の福井知事が語る「本来の趣旨」
 「ふるさと納税」といえば、寄付した自治体から「返礼品」がもらえるお得なサービス、というイメージを持つ人が少なくないかもしれない。今年は、この返礼品のニュースが世間を騒がせた。ブランド牛肉やコメ、家電製品などの豪華な返礼品をめぐり、総務省が9月、調達額が寄付額の3割を超える返礼品や地場産品ではないものの場合は制度の対象から外す方針を表明したのだ。自治体からは「特産品の豊富な町とそうでない町に格差が生じる」などと反発の声が上がる一方、脱・返礼品に向け、制度本来の趣旨の浸透を目指して「自治体連合」を立ち上げた自治体もある。この自治体連合を立ち上げたのは福井県。だがなぜ福井なのか疑問に思う人もいるだろう。実はふるさと納税は「国」ではなく、「地方」からの提案で誕生したもので、その発案者が福井県の西川一誠知事なのだ。西川知事に、制度スタートから10年たったふるさと納税の現状と今後について聞いた。
●広辞苑にも掲載された「ふるさと納税」
 2008(平成20)年にスタートしたふるさと納税。今年1月に改訂された岩波書店の「広辞苑」には、「スマホ」「上から目線」「LGBT」などの言葉とともに、「ふるさと納税」も新たな項目に追加された。西川知事は「普通名詞のような、国民的な認知をいただいた」と喜ぶ。「ふるさと」と銘打ってはいるが、生まれ故郷以外の特別ゆかりのない自治体に対しても寄付することが可能で、寄付金の一部が現在住んでいる自治体の住民税から控除されるという制度だ。ふるさと納税が誕生したきっかけは、1本の新聞記事だった。2006年10月の日本経済新聞に掲載された「経済教室」の欄で、西川知事が「故郷(ふるさと)寄付金控除」制度の導入を提案する記事を出したところ、学者や政治家の関心を引き、特に当時の菅義偉総務相の目に止まって制度化が実現した。
●地方と都市のアンバランスを税制で是正
 ふるさと納税にはどんな狙いがあるのか。西川知事は3つの理由を挙げるが、その1つが人口流出と一極集中が取りざたされる「地方と都市」の関係だ。「福井県は『幸福度』日本一で、東京は2位。『日本一』の県でお金をかけて育てて、『2位』の東京に行く」。西川知事は「幸福度ランキング」(日本総合研究所の)で3回連続1位に輝いた福井県から東京へ人口が流出する実状について嘆く。「若者は自然に大都市に行ってしまう。田舎では彼らを一生懸命教育する。つまり地方で出生してから、高校卒業まで地元で行政サービス受けて、進学などを機に大都市に出る。そのまま就職して大都市の自治体に納税する。このアンバランスな状況を税制で直したい」。福井県では、進学などで毎年約2500人が上京するが、戻ってくるのは600人程度だという。2つ目は「納税者主権の促進」。会社員の場合、給与などから源泉徴収されるので、自分が税金をいくら収めているか意識している人は必ずしも多くないだろう。ふるさと納税には、返礼品だけではなく、自治体の具体的な事業を選んで寄付できるものがある(プロジェクト応援型)。そうした行為を通じて地方政治に関与することで「自分はどの自治体に寄付して、どれくらいの控除を受けるのか、税の使いみちを自覚したい。一人ひとりの納税者としての意思と権限を促進したい」と語る。最後は「自治体政策の競争と向上」だ。寄付を集めるために、各自治体が政策や返礼品などで自分たちの魅力をアピールしたり、寄付がどう活用されたかなどの成果を説明したりすることが必要になる。それが自治体の政策づくりに創意工夫を生み、自治体間の切磋琢磨につながるという。「納税者主権を発揮してもらうことで、自治体側も政策の自主性を発揮する。こういういい循環が期待できる」

| 経済・雇用::2018.12~2021.3 | 09:55 PM | comments (x) | trackback (x) |

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