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2016,02,08, Monday
これまでの 歴代社長の粉飾決算への関与 当初指摘された 東芝の実績 企業統治の形骸化 2015.7.22西日本 2015.7.24西日本 2015.7.21日経 東芝の部門別売上 東芝の組織図 原子力事業 (1)東芝の不適切会計について(当初の報道による説明) 2015.7.21の日経新聞は、*1-1のように、「東芝の歴代3社長が、経営判断として現場に圧力をかけ、2008~2014年度12月期までに計1562億円の不適切会計を行った」「経営トップらを含めた組織的な関与」「歴代3社長が辞任して今後の再発防止策などを説明する」と報道した。 そして、不適切会計の方法は、①例えばパソコン事業では経営トップが社内カンパニーに対して「チャレンジ」と呼ぶ過大な収益目標と損益改善要求を課し、それを達成するために翌期以降の利益を先取りした ②そういう不適切会計を余儀なくさせる状況に追い込んだ ③現場に上司の意向に逆らえない企業風土があった ④内部統制が十分に機能していなかった ⑤監査法人に対して正しく説明せず、外部から発見されにくい手法で不適切会計がなされていた としており、従って、1)経営監査部、リスクマネジメント部の内部統制に問題があった 2)取締役会や監査委員会による監督機能が働かなかった などが問題で、再発防止には「チャレンジ」の廃止が必要だ と結論づけている。 また、*1-2は、「東芝の取締役会は16人のうち社外取締役が4人おり、監査委員会は生え抜きの取締役が委員長を務めて3人の社外取締役が加わっていたが、高い収益目標達成を求める歴代トップによるプレッシャーで組織ぐるみの隠蔽が行われ、さらに、東芝を担当する新日本監査法人の監査もすり抜けたため、今後、取締役会の過半数を社外取締役にするほか、監査委の委員長に社外取締役の伊丹敬之東京理科大教授を選任した」としている。 さらに、*1-3も、「a)不適切な会計処理が『チャレンジ』と呼ばれて全社に広がった」「b)高い収益目標達成がプレッシャーだった」としているが、チャレンジやプレッシャーがいけないという価値観は日本人の生産性を下げるためよくない。このような場合は組織ぐるみで不正を行うのではなく、その収益目標が合理的で達成可能か否か、収益改善のためには何が必要かを皆で考えることが必要なのだ。 なお、*5にも、「社外取締役の監督機能が働かなかったため、強化に向けた指針を策定する」と記載されているが、東芝の不適切会計は、本来の監督組織である監査委員会や取締役会だけでなく、社外取締役の監督機能も骨抜きになっていたのが問題なのであるため、社外取締役の法律上の監督機能を強化しても機能を骨抜きにすることは同様に可能だ。そのため、本当に検討すべき問題は、「①監査委員会・取締役会などの監督組織に不正を見抜く能力や経営者からの独立性があるか否か」「②不正があれば発見して経営者にアドバイスするのがよいと考える姿勢があるか否か」だが、実はないのである。 さらに、社長の経営判断による粉飾に内部統制が効かないのは、内部統制組織は社長の下部機関であるため当然だが、「損益の改善要求をされれば粉飾し、その異常性を指摘しない」という体質は問題で、このような場合は、目標の達成可能性や社長の指示の妥当性などを議論すべきである。 しかし、これらの事象や記事で使われている「チャレンジ」という言葉は、「目標に達しない数字をごまかすこと」になってしまっており、本当のChallenge(=やりがいのある難問に挑戦すること)ではないため、この言葉使いが日本人の常識として蔓延すれば、世界の常識から外れるとともに、日本では本当の意味のChallengeをする人もいなくなって問題だと考える。 (2)ウェスチングハウスの損失 (1)に関する記事では全く触れられていないが、大きな損失を出しそうなのは、「東芝が社運をかけて、2006年に企業価値の3倍(約6千億円)で買収した米国大手の原子炉メーカー、ウェスチングハウス」で、最大9千億円の損失になると、*2-1に記載されている。 私は企業価値の3倍以上も支払うのを上手な買い物だとは思わないが、「のれん代」として認識される企業価値との差額4千億円は、①原発ビジネスの急激な成長見込み ②燃料サイクル推進 ③官民一体の原発輸出計画 等を期待して支出したもので、フクシマ原発事故で原発事業が落ち込み、世界の原発市場も縮小するという急激な環境変化もあって、経営の足を引っ張ったようだ。 確かに、世界の原発事業は欧米を中心に市場が縮小しており、「アメリカで建設キャンセルが続き、チェコやハンガリーでも形にならず、その影響でフランスの原子炉メーカー・アレバも約6千億円の巨額負債を抱えて倒産した」という状況だ。そのため、第三者委員会が報告した1562億円の損失はまだ過小で、重要なのはウェスチングハウスののれん代減損4千億円なのだが、そうなると2011年3月期に計上された5千億円の繰延税金資産を取り崩す必要性が出るため、「4千億円+最大5千億円=合計9千億円」という新たな巨額損失となって、東芝が債務超過になる可能性もあるそうだ。 *2-2で、日経BP社は、「不正会計の動機は、三菱重工業が2000億円で買収しようとしていた米国原子力発電機器大手ウェスチングハウス(WH)を 6600億円という過大な価格で買収したことだった」としている。また、*2-3も、「原発事業」は世界的に衰退し始めているのに、外国では買い手を探している原発事業を過大な価格で買ったのは、経営意思決定の誤りだとする。 そして、フクシマ以降、先進国市場では原発ビジネスが終焉に向かい、巨額の案件を受注してきた大手メーカーがプロジェクトの破綻で泥沼にはまりつつあるのは東芝だけではなく、三菱重工も同じで、こちらはサンオノフレ原発の配管破損事故をめぐって75億7000万ドル(約9300億円)という巨額の損害賠償請求されている。また、原発大国フランスでも国有原子力大手アレバも2014年12月期に48億ユーロ(約6170億円)の最終赤字を計上して事実上破綻している。 にもかかわらず、*2-4のように、東芝は、2029年度までに64基の原発を新規に受注するという事業計画を発表し、原発部門の幹部でさえ「その計画は非合理的だ」と考えているにもかかわらず、苦し紛れに基数を増加させているのだそうだ。東芝は「全世界で約400基の新設計画がある」として原子力事業の利益が2018年度以降に急増するとするが、*2-5のように、東芝初の原発輸出は受注から6年経っても建設できず、ウエスチングハウスののれん代の減損が懸念材料になっており、今後15年で64基受注という計画は楽観的過ぎるだろう。また、*3のように、日本に好意的な国に、その国の国民の反対を押し切って官民で原発を押し付けると、後世に禍根を残すと考える。 なお、*2-6のように、2016年2月4日、NHKは「東芝は不正会計の問題の後、パソコンや家電事業の構造改革にかかる費用が増加したことなどから、今年3月期の1年間のグループ全体の最終損失は7100億円の赤字になった」と伝えた。しかし、これまで記載してきた理由から、不正会計の根源は、原発を作っていることにより不買運動されたパソコンやテレビ等の販売不振が主ではないだろう。 (3)監査法人による外部監査について 毎日新聞が、*4-1のように、「①利益水増しによる決算の下方修正額は2248億円(しかし、これでも過小だろう)に上り、歴代3社長が辞任した」「②新日本監査法人は会計監査を担当しながら適切な処理だと認めていたため、金融庁が公認会計士監査審査会の勧告により、公認会計士法に基づいて業務改善命令などの行政処分を行う」「③新日本監査法人はオリンパスの損失隠し事件でも金融庁から業務改善命令を受けている」と報じている。 また、日経新聞は、*4-2のように、「i)金融庁は東芝の会計不祥事をめぐり、利益操作を見抜く注意を怠ったという理由で新日本監査法人への行政処分を出した」「ii)3カ月間、新規業務の受注などを禁じるほか監査法人には初となる課徴金も科す」「iii)監査法人は、書面チェックだけでなく監査先企業の倉庫などを通告なしに調査するといった足を使った監査がいっそう求められる」としている。 しかし、実地棚卸の立会や外部確認などの事実とのチェックは、監査基準に定められ必ず実施することになっている監査手法であるため、書面だけで監査している監査人はいない。そのため、異常性を把握した時に、それを異常と感じる能力や疑う姿勢(専門用語:職業的猜疑心)に問題があったと考えられる。 なお、このケースは経営者の不正を見抜かなければならないので、経営者とざっくばらんに話をしてビジネスの現況や粉飾決算を行う動機の存在を予測し、その部分に気をつけて監査を行う必要があるが、原発事業への日本政府の対応や世界の対応に関する新聞はじめメディアの報道は、経営者の話を聞いて粉飾の可能性や話の真偽を判断すべき監査人の常識を醸成する上で、役立つものではなかった。 (4)間違った選択と集中 このように、ウェスチングハウスの損失は問題にされず、半導体、テレビ、パソコンにおける粉飾決算のみを問題にしてきたため、*6-1のように、東芝は「主力の半導体関連事業で工場の一部売却や閉鎖を行う方向で調整し、これに伴って希望退職を募り、人員削減規模は数千人に上る」とのことである。 そして、*6-2は、「東芝は家電の国内撤退の可能性もある」とし、*6-3のように、東芝、富士通、ソニーのパソコン部門が独立したVAIO(バイオ、長野県安曇野市)3社が、パソコン事業を統合する検討に入ったと伝えているが、家電や半導体をここまで統合してしまうと、瞬間的に規模だけは大きくなるものの、多様な長所や発展の可能性がなくなり、我が国のお家芸だった家電や半導体の選択肢は小さくなってしまうと考える。 つまり、リストラすべきは原発関連事業であり、お家芸の家電や産業の米である半導体は残しておかなければ、これまで東芝が蓄積してきた技術や人材を失って、東芝は稼げない会社になってしまうだろう。 <不適切会計の内容> *1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150721&ng=DGKKASGD20H0G_Q5A720C1MM8000 (日経新聞 2015.7.21) 東芝、組織的に利益操作 不適切会計で第三者委報告、1562億円、トップ関与 歴代3社長辞任へ 東芝は20日、不適切会計を調べてきた第三者委員会(委員長=上田広一・元東京高検検事長)がまとめた調査報告書を受理し、要約版を公表した。歴代3社長が現場に圧力をかけるなどして、「経営判断として」不適切な会計処理が行われたと断定。「経営トップらを含めた組織的な関与があった」と責任を厳しく指摘した。利益操作は2008年度から14年度の4~12月期まで計1562億円にのぼる。21日に田中久雄社長らが記者会見し、辞任を表明する見通しだ。東芝は21日午後に報告書の完全版を公表し、夕方に田中社長らが会見して、今後の再発防止策などを説明する。田中社長と前社長の佐々木則夫副会長の辞任を発表する予定。前々社長の西田厚聡相談役も辞任する方向だ。報告書によると、08年度からの決算修正額(税引き前利益ベース)は、第三者委が認定した1518億円に加えて、東芝の自主チェック分が44億円。長期プロジェクトの採算を管理する工事進行基準と呼ぶ会計処理で損失計上を先送りするなどしていた。この間の東芝の税引き前利益は5650億円で、不適切会計の金額は3割近くに相当する。報告書では、経営トップらが「見かけ上の当期利益のかさ上げ」を狙い、担当者らがその目的に沿う形で不適切会計を継続的に行ってきたと判断。原因を様々な角度から分析した。例えばパソコン事業では、経営トップが社内カンパニーに対して「チャレンジ」と呼ぶ過大な収益目標と損益改善要求を課していた。それを達成するために実質的に翌期以降の利益を先取りするなど、不適切な会計処理をせざるを得ない状況に追い込んだという。現場についても「上司の意向に逆らえない企業風土があった」と指摘。さらに監査法人などに対して正しく説明せず、不適切会計は外部から発見されにくい巧妙な手法でなされていた。こうした状況を把握し、是正すべき内部統制が十分に機能していなかった点も原因に挙げた。経営監査部、リスクマネジメント部の内部統制に問題があったうえ、取締役会や監査委員会による監督機能が働かなかった。再発防止には「チャレンジ」の廃止などが必要と指摘し、トップと現場の意識改革を強く迫った。そのうえで、少なくとも幹部職員(例えば部長職以上)については、関与の程度などを十分に検証して懲戒手続きを含む人事上の措置を適切に講じることが望ましいと踏み込んだ。報告書を受けて東芝は過去の決算を訂正するとともに、14年度決算を確定する。1562億円とは別に、事業の収益性の低下を反映させ、12年度決算を中心に半導体やパソコン事業などで計700億円規模の減損損失を計上する可能性がある。証券取引等監視委員会や金融庁は、不適切会計が金融商品取引法の違反(有価証券報告書の虚偽記載)にあたると判断し、課徴金処分を検討する。東京証券取引所は内部管理に問題ある企業として投資家に注意喚起を促す「特設注意市場銘柄」に指定する見通しだ。 *1-2:http://qbiz.jp/article/67482/1/ (西日本新聞 2015年7月25日) 【東芝 巨大企業の闇】〈下〉会計不正 「極秘の相談がある」 「サラリーマンなので期待に応えてしまう」(東芝グループ社員)。高い収益目標の達成を求める歴代トップによるプレッシャーが、巨額の利益水増し問題に発展した東芝。どの企業でも起こりかねない構図は、日本企業の会計への信頼を大きく揺るがしている。 ■機能不全 「極秘の相談がある」。社長を辞任した田中久雄氏は2013年9月、久保誠副社長(当時)にパソコン事業の利益のかさ上げを要求。会計問題を調査した第三者委員会の報告書は、組織的に不適切な会計処理を隠していた実態を描き出した。東芝は「委員会等設置会社」に早くから移行するなど社内のチェック体制の改革に積極的に取り組んだ。「正直言って驚いている」(JFEスチールの柿木厚司社長)との声が上がるほどで、水増し問題が発覚するまでは「企業統治の優等生」と期待されていた。しかし社外取締役らで構成する監査委員会は機能せず、利益水増しは長期間、社外に漏れなかった。東芝元幹部は「委員会は追認するだけの機関だった」と振り返る。「日本を代表する企業が組織的に利益を水増ししており、それなりに衝撃を受けた」。田中氏ら歴代3社長が辞任した21日に記者会見した第三者委員会の上田広一委員長は淡々と語った。 ■プロ欺く 組織ぐるみの隠蔽(いんぺい)は、東芝を担当する新日本監査法人の監査もすり抜けた。第三者委は「事実と異なるストーリーを組み立てた資料を提示し、事実確認が困難な状況を巧みに利用した」とプロの目もごまかした手法を報告書で分析した。第三者委は監査の適否について評価を避けたが、麻生太郎金融担当相は「会計士は何をしていたのか」と苦言を呈した。証券取引等監視委員会が検査する東芝だけでなく、監査法人も責任を問われる可能性がある。 ■信頼失墜 社会貢献を経営の理念に掲げ、財界や政府の要職にも人材を輩出した巨大企業の信頼は地に落ちた。東芝はチェック体制が機能しなかった反省から社外取締役の割合を増やすなど改革を急ぐが、外部の目は厳しい。投資家向け広報に詳しい戦略的グローバルIR協会のマイケル・オーエン代表理事は「米国なら経営トップは逮捕されている」と指摘。麻生金融担当相は東芝への不信感が募ると「日本のマーケットが信用されなくなる」と警告する。トップの意向をくみ取り、組織的にルールを破りかねない−。東芝の失態は、日本企業のイメージ悪化につながる恐れがある。 東芝のチェック体制 東芝の取締役会は、21日に8人が退任するまで16人の取締役のうち、元外務官僚や大学教授などの社外取締役が4人いた。執行役の職務が適正に行われているかをチェックする監査委員会は、生え抜きの取締役が委員長を務め、3人の社外取締役が加わっていた。利益水増し問題を受け、取締役会の過半数を社外取締役にする方針のほか、監査委の委員長に社外取締役の伊丹敬之東京理科大教授を選任した。 *1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150721&ng=DGKKASDZ20HAW_Q5A720C1NN1000 (日経新聞 2015.7.21) 東芝に「利益至上主義」、第三者委報告 「必達」トップが圧力 上司に逆らえぬ企業風土 東芝の第三者委員会の調査報告書では同社の利益至上主義や予算必達を求めるトップの圧力が不適切会計を招いたことが明らかになった。リーマン・ショックや東日本大震災など事業環境の変化で売上高を伸ばせないなか、目先の利益にこだわるトップの意向を受けて不適切な処理が全社に広がっていった。調査報告書は「コーポレートの経営トップら、または社内カンパニーのトップらが『見かけ上の当期利益のかさ上げ』を行う目的を有していた事実が認められる」と断じた。田中久雄社長や前社長の佐々木則夫副会長は第三者委の調査に損失計上の先送りの意図は無かったと否定しているが、現場は実質的な指示と受け止めた。 ●「チャレンジ」 本体の社長らがカンパニートップや子会社社長と面談する「社長月例」では「チャレンジ」と称した収益改善の目標値を設定。とりわけ佐々木副会長が社長を務めた2011、12年度は過大な目標が示されていた。報告書は「各カンパニーのトップらは目標を必達しなければならないというプレッシャーを強く受けた」と指摘した。これが不適切会計を助長する要因になったようだ。営業努力では不可能な数字を出すために各カンパニーは来期以降の利益を先取りしたり、当期の費用計上を先送り。その反動で次の期はさらに多額の不適切会計に染まるという泥沼に陥った。東芝OBは「リーマン・ショック後に広がった利益至上主義がこうした事態を招いた」とみている。東芝はリーマン前に7兆円を超えていた売上高が主力の半導体事業の不振もあり、一時は5兆円台後半まで沈んだ。東日本大震災でもう一つの柱と期待した原子力事業も国内外で原発新設計画が凍結され、先行きが不透明になった。将来の成長事業より目先の利益という風潮は広がる一方だった。「上司の意向に逆らうことができない企業風土が存在した」。報告書では上意下達が厳しい東芝の企業体質を指摘。「ルールに基づく会計処理よりも、上司の承認を得られなければ実行できないという事実上のルールが存在した」と批判した。 ●操作は経営判断 なぜ過ちを防ぎ、正すことができなかったのだろうか。報告書は会計処理の担当者から事業部長、社長に至るまで利益を優先し、「適切な会計処理に向けた意識が欠如していた」としている。企業会計についても一部で「十分な知識を有していない状況がみられた」という。不適切処理を想定した内部統制も構築されていなかった。第三者委は前々社長の西田厚聡相談役、前社長の佐々木副会長、田中社長と直近3代のトップに直接聞き取り調査した。予算必達への圧力が強まったのは西田氏の社長時代からで、佐々木社長時代にその傾向がより強くなった。田中氏はこれを追認したかたちだ。報告書では不適切会計が組織的に実行され、継続したと断定。「経営判断として行われたものと言うべきで、是正は事実上不可能だった」と結論づけた。 <ウェスチングハウスの損失> *2-1:http://dot.asahi.com/wa/2015072100110.html (週刊朝日 2015年7月31日号より抜粋 ) 9千億円の“巨額損失”が新たに発生? 東芝を食い潰した日米の原発利権 名門企業・東芝が揺れている。不適切な会計は当初500億円強とされたが、それは枝葉末節の話。東芝が社運をかけて2006年、企業価値の3倍の約6千億円で買収した米国大手の原子炉メーカー「ウェスチングハウス」が3.11以降、不良債権化。最大で9千億円の“損失”になるという。社長らの進退問題に発展した疑惑の裏で蠢(うごめ)く原発利権を追う。東芝は「ウェスチングハウス」に相場の3倍以上をも投じたが、その内訳はどうなっていたのか。会計評論家の細野祐二氏が説明する。「実体価値は2千億円ほど。そのほかは、のれん代などが4千億円だったとされています」。のれん代とは、ノウハウや顧客との関係など、無形の固定資産のこと。買収先企業の「見えない価値」への投資であり、6千億円が適正な金額と言えるのか。ただ、東芝は買収によって、原発ビジネスが約2千億円から15年には約7千億円、20年には約9千億円に拡大すると計画していた。「06年に経産省が『原子力立国計画』を発表し、既存原発の60年間運転、30年以降も原発依存度30~40%を維持、核燃料サイクルの推進、原発輸出を官民一体で行うとぶち上げました。東芝はその先陣を切ってコケた。計画を当時まとめたのが現在、安倍首相の秘書官として出向している経産官僚らです」(元政府高官)。しかし、原発事業は東日本大震災による福島原発事故を契機に落ち込んだ。世界の原発マーケットも冷え込み、大きく歯車が狂い、結果的に6千億円という過大投資が経営の足を引っ張る原因になったと見ていい。東芝の稼ぎ頭だった原発事業だが、欧米を中心に原発ビジネスのマーケットは縮小傾向だ。環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏は言う。「アメリカでは建設のキャンセルが続いているし、チェコやハンガリーでは建設しようとしても、なかなか形にならない。その影響でフランスの原子炉メーカー・アレバは約6千億円の巨額負債を抱え、事実上倒産しました。フィンランドのオルキルオト原発などは原発ビジネスがうまくいかない代表的なケースで『原発経済界のチェルノブイリ』と呼ばれています」。オルキルオト原発3号機は、アレバとドイツのシーメンスの合弁で09年の試運転を目指していた。しかし、当初の予算額をオーバーするなどして、シーメンスが撤退。いまだに営業運転のメドが立たない。「コストアップの要因は、安全設備の複雑化にあります。原発では、小さなものを含めれば山のように事故が起きています。よって、規制が厳しくなり、それに対応するためのコストが増していくのです」(飯田氏)。原発輸出に展望は見いだせない状況なのだ。細野氏は言う。「第三者委員会が言っている1500億円だとかいう金額は枝葉末節のこと。本丸はウェスチングハウスの減損です。原発事業が落ち込むなか、ウェスチングハウスののれん代などの4千億円は減損しなければならないでしょう」。減損すれば大赤字だ。そうなると、11年3月期に計上されていた5千億円の繰り延べ税金資産も取り崩す必要性が出てくる。繰り延べ税金資産は将来的に黒字になることを前提に資産に計上できる。赤字が続くと計上が認められなくなり、資産が一気に減る。「4千億円+最大5千億円で、合計9千億円のマイナスで新たな巨額損失となります」(細野氏)。ウェスチングハウスを減損すると繰り延べ税金資産が大幅に減り、債務超過となる危険性もある。原発事業の損失を他部門で埋めようとした焦りが、今回の利益水増しの動機になったとみられるのだ。 *2-2:http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/100463/090200027/?rt=nocnt (日経BP 2015.9.2) 東芝不正会計、過大な原発事業計画が失敗の原点 組織的に利益を水増ししていた「不適切会計」問題の責任をとり、東芝の田中久雄社長をはじめ歴代の3社長が7月21日付で辞任したことは以前の本コラムで書いた。この9月末から新体制が発足し、取締役会を構成する11人の取締役のうち、社内取締役が4人、社外取締役が7人で、半数以上が社外からとなる。 ●新体制発表も有価証券報告書提出を再延期 新たな社外取締役に三菱ケミカルホールディングス会長の小林喜光氏、アサヒグループホールディングス相談役の池田弘一氏、資生堂相談役の前田新造氏といった有力企業の社長経験者3人のほか、会計士2人、弁護士1人が就任する。新しい経営体制を発表し、イメージを刷新すると東芝が打ち出したのは8月中旬のことだが、8月31日、この日に予定していた2015年3月期の決算発表を再度延期した。米国子会社での不適切な会計処理など約10件が新たに判明したためだ。従業員の内部通報や監査法人の監査でわかったという。31日に都内の本社で会見した室町正志社長は「改めて深くお詫びする」と陳謝するとともに、9月7日までに決算発表と有価証券報告書の提出ができない場合には「進退も含めて考えたい」と述べた。 ●「不正会計の原点はウェスチングハウス買収」(日経ビジネス) 東芝の不正会計を調査した第三者委員会の報告書(7月20日発表)によると、2009年3月期から2014年4~12月期で計1518億円の税引き前利益を水増ししており、さらに568億円の追加修正額(8月18日発表)が明らかになっている。辞任した歴代社長が「チャレンジ」と称して各カンパニー社長に収益改善の目標値を示し、その達成を迫ったという。また経営陣はメールや電話で「工夫をしろ」などと圧力かけて利益のかさ上げを迫るなどして、多くの事業部門が不正の会計を組織的に行ってきたとされる。なぜ「名門」「老舗」と呼ばれた東芝がこんな過ちを犯したのか。その謎に迫る記事が、日経ビジネス8月31日号の特集「東芝 腐食の原点」に掲載されている。特集第2部の「不正の動機は何か 6600億円買収の誤算」と題したリポートだ。記事によれば、東芝が不正会計を処理するようになった原点は、米国の原子力発電機器大手ウェスチングハウス(WH)の買収だったという。2006年、東芝はウェスチングハウスを約5400億円で買収、後の追加出資分を含めると買収総額は6600億円になった。実は当初、ウェスチングハウスは三菱重工業が買収しようとしていた。その買収額は2000億円程度だったが、結局は買収を見送っている。この2000億円と比べれば、東芝の買収総額がいかに高いかが容易に想像できる。(以下、略) *2-3:http://www.huffingtonpost.jp/foresight/toshiba-nuclear-power_b_8131564.html (Huffpost Japan 2015年9月14日) 「東芝」だけではない「原発事業」の世界的衰退 9月7日、粉飾決算問題の渦中にある東芝が4カ月遅れでようやく発表に漕ぎ着けた2015年3月期決算。同日の夕刊各紙は1面トップで「東芝、利益減額2248億円」(日本経済新聞)、「東芝、不正会計2248億円」(朝日新聞)などと過去7年間の利益水増しの総額を見出しに取っていた。だが、重電業界担当のアナリストたちの注目の的は、同社の電力・社会インフラ部門、中でも原子力発電事業での損失計上の有無だった。案の定、米テキサス州で手がけていた原発建設プロジェクトで同社は新たに410億円の減損を余儀なくされた。4年前の東京電力福島第1原発事故をきっかけにパートナーの企業が相次ぎ撤退し、事実上頓挫したにもかかわらず、「誰も諦めたわけではない」と東芝幹部が強弁を続けてきた、いわくつきの案件である。 ●「品揃え効果」の案件だったが...... 正式名称は「サウス・テキサス・プロジェクト(STP)」。米電力大手NRGエナジー(ニュージャージー州)がテキサス州ヒューストン市近郊に出力134万kWの原発2基(3号機と4号機)を増設するという計画で、2008年3月に東芝が受注。建設費は100億ドル(約8000億円、外貨の円換算は公表当時の為替レートによる、以下同)、2015~2016年の運転開始を目指していた。このプロジェクトが東芝にとってとりわけ重要だったのは、受注した2基は沸騰水型軽水炉(BWR)の改良バージョン(ABWR)であり、加圧水型軽水炉(PWR)を専門とする子会社の米ウエスチングハウス(WH)ではなく、東芝自身の原発部門が初めてモノにした海外案件だったからだ。世界初の商用原発は、英国が1956年にカンブリア州コールダー・ホールで稼働させたマグノックス炉(黒鉛減速炭酸ガス冷却型原子炉)だったが、構造が複雑で頻繁な燃料交換が必要といった難点があった。1960年代半ば以降は減速材や冷却材に水を使う軽水炉が主流となり、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が世に送り出したBWRと、WHが開発したPWRが市場を席巻。日本勢では歴史的にGEと関係の深い東芝と日立製作所がBWRを、三菱重工業はWHと提携してPWRをそれぞれ手がけてきた。そんな業界の構図を一変させたのが、2006年に54億ドル(約6400億円)の値がついた東芝のWH買収である。BWR陣営の東芝がPWR陣営の旗頭であるWHを傘下に収めたわけで、社長の西田厚聰(71)はじめ当時の東芝経営陣は、「これで原子炉の品揃えが広がり、受注を取り逃がすことがなくなる」と胸を張ったが、そうした「品揃え効果」をまざまざと見せつけたのが、このSTP案件だった。 ●トップ判断で迷走 ところが前述のとおり、2011年3月11日に起きた福島原発事故がプロジェクトを暗転させる。実は、STPではNRGが22億ドル(持ち株比率88%)、東芝が3億ドル(同12%)を出資して「ニュークリア・イノベーション・ノース・アメリカ(NINA)」という事業会社を設立していたのだが、このNINAに東京電力が最大2億5000万ドル(約200億円)出資することが2010年5月に決まっていた。NRGはリスク分散を目的にジャパン・マネーの積極的導入に動き、(今となっては皮肉なことに)3.11以前は最優良企業だった日本の電力最大手に出資を持ちかけ、海外進出を次世代戦略に掲げていた東電も快諾していたのだが、福島原発事故で破綻に瀕した同社はそれどころではなくなり、出資を凍結。さらに事故から1カ月余り後の4月19日には、NRGが「株主に対してこれ以上の投資を正当化することができなくなった」(デイビッド・クレインCEO=最高経営責任者=)として、STPからの撤退を表明したのである。その後の東芝の往生際の悪さに比べると、当時のNRGの対応の素早さには刮目すべきものがある。撤退表明に伴い、NRGは2011年1~3月期に、すでに発注済みだったSTP原発3号機と4号機に関する減損を行い、4億8100万ドル(約400億円)の特別損失を計上した。事業会社NINAの88%の株式を保有していたNRGが撤退し、将来約10%を出資予定だった東電の事業参加も絶望的になったのだから、当然のことながら東芝もこの時プロジェクトを断念(少なくともNRGと同様にSTP関連資産の減損を実施)すべきだったのだが、「新たな提携先と交渉中で減損の必要はない」とし、その後もずるずると決断を先送りにしていった。当時の東芝社長は、今回の粉飾決算問題で「首謀者の1人」として辞任に追い込まれた前副会長の佐々木則夫(66)。原発部門出身でWH買収でも立役者の1人だった佐々木は、福島事故に続くSTPの頓挫が自身の権力基盤を揺るがし、この頃すでに兆候のあった前任社長の西田との主導権争いで不利に働くことを懸念していたらしい。結局、「STP案件は継続」とのトップ判断で、このプロジェクトは迷走を始める。 ●監査法人の「甘さ」 その端緒が垣間見えるのは、2年後の2013年9月。東芝は米テキサス州でシェールガス液化事業を手がける「フリーポートLNGプロジェクト」の権益を取得したと発表。同プロジェクトは3系列に分かれ、第1系列は中部電力と大阪ガスが、第2系列は英BPがそれぞれ取得済みで、東芝は韓国SKグループと組んで第3系列に触手を伸ばした。契約期間は2019年から20年間で、輸入量は年間220万トン、取得金額は非公表だった。当時はシェールガス・ブームの真っ盛り。ある業界誌は「衝撃!米LNGを輸入する東芝のしたたかな戦略」(「エネルギーフォーラム」13年12月号)とこのニュースに飛びつき、東芝は「世界の天然ガス火力市場へと営業を拡大していく」などと論評したが、社内事情に詳しい関係者は、真の狙いが「STP案件を延命させること」と密かに指摘していた。というのも、2013年当時、東芝は会計監査を委託している新日本監査法人から、STP案件の減損処理を執拗に迫られていた。「NRGに代わる新たな投資家を見つける」と減損を回避したい東芝は釈明を続けていたものの、2年が経過してもSTPの新たなスポンサーは一向に現れない。そこで東芝は、電力を大量消費するシェールガスのLNGプロジェクトに目をつけた。仮にSTP3、4号機が完成に漕ぎ着け、運転を開始した暁には、この原発が生み出す電力を購入してもらうことを条件にLNGの権益を取得したというわけだ。フリーポートは「STPの一助になればと考えて始まった案件」と、当時の関係者はすでに認めていた(「週刊ダイヤモンド」2014年1月25日号)。ただ、それでも新日本監査法人は完全に納得はせず、2014年3月期に東芝はこの時点でSTPに投じていた出資と融資の総額約600億円のうち、310億円の減損処理を余儀なくされた。NRGが撤退した2011年4月時点で、STP関連減損(総額4億8100万ドル)に占める東芝の持ち分は1億5000万ドル(約120億円)といわれていた。その後の2年間で東芝にとってのSTP関連のリスク資産は120億円から600億円へと5倍に膨らんでいたことになる。新日本の甘さは、フリーポートLNGという将来の電力の「買い手」が1社見つかったというだけで、プロジェクトとしてのSTPの頓挫が誰の目にも明らかだったにもかかわらず、310億円の減損で矛を収めたことにある。結局、粉飾発覚後の今回、東芝は2015年3月期にSTPについて410億円の追加減損(東芝は「現状での売電/投資の交渉経過を評価し、出資及び貸付金等で全額(減損を)実施」と説明)を計上した。2度の減損の総額は720億円。4年前の120億円の6倍である。 ●巨額訴訟に直面した三菱重工 欧米の先進国市場で原発ビジネスが終焉に向かっていることは否定しようがなく、巨額の案件を受注してきた大手メーカーがプロジェクトの破綻で泥沼にはまりつつあるのは東芝のケースに限らない。三菱重工が米カリフォルニア州のサンオノフレ原発の配管破損事故をめぐり、事業会社の米電力大手サザン・カリフォルニア・エジソン社(SCE)から巨額の損害賠償を請求されている問題もその1つ。事実関係は拙稿(「『廃炉』で訴訟される三菱重工――『原発輸出』のリスクとは」2013年7月31日)に詳しいが、かいつまんで説明すると、三菱重工が納入した同原発3号機の蒸気発生器の配管で2012年1月に異常な磨耗が発生して原子炉が緊急停止、放射性物質を含む微量な水が漏れ出した。その後、2号機でも同様な磨耗が確認され、米原子力規制委員会(NRC)は2基(ともにPWR)の原子炉の稼働を禁止するとともに、同年6月になって「三菱重工の不十分なコンピュータシミュレーションの分析が設計ミスを招いた」という調査結果を公表。その後、2基の原子炉に設置されている蒸気発生器にある約3万9000本の細管のうち、約3400本に擦(こす)れや振動による異常な磨耗が見つかり、破損箇所は1万5000カ所以上に上ったことも明らかになった。SCEは周辺住民の強い反対で再稼働を断念。2基の原発を廃炉にすることを決め、三菱重工に損害賠償を求める方針を明らかにしていた。廃炉の決定は2013年6月。これまでSCEは賠償金額を「40億ドル(約4000億円)以上」としていたが、今年7月27日、SCEは国際商業会議所(パリ)に証拠書類を提出し、正式に仲裁を申し立てた。提示された請求額はなんと75億7000万ドル(約9300億円)。三菱側はSCEの請求額について「交渉の経緯、契約履行の事実を正確に反映していない不適切な内容」とし、契約上の同社の責任は「1億3700万ドル(約169億円)が上限」という従来の立場を崩していない。だが、百戦錬磨の米電力大手が起こした訴訟だけに、株式市場ではこのニュースが伝わった7月28日以降、三菱重工株の急落を招いた。 ●前途多難の仏国有「アレバ」 原発大国フランスでは、フランス国有の原子力大手アレバが2014年12月期に48億ユーロ(約6170億円)の最終赤字を計上して事実上破綻。8割超の株式を保有するフランス政府は今春、アレバを原子炉部門と核燃料部門に解体し、このうち原子炉部門の株式の過半をやはり政府が8割強の株式を持つフランス電力公社(EDF)に譲渡して再建に取り組ませる方針を打ち出した。しかし、前途は多難だ。9月3日にEDF社長のジャン=ベルナール・レヴィは、フランス北部でアレバが建設を進めていたフラマンビル原発3号機の完成が従来の予定より1年以上遅れて2018年第4四半期にずれ込み、建設費も従来金額を24%上回る105億ユーロ(約1兆4000億円)に膨れ上がるとの見通しを明らかにした。フラマンビル原発3号機は、フィンランドで建設中のオルキルオト原発3号機と同じように、アレバが鳴り物入りで世界に売り込んだ最新鋭の欧州加圧水型原子炉(EPR)を採用。だが、いずれも工事が難航して進まず、建設費は嵩むばかり。フラマンビル3号機は工期が6年遅れて建設費は当初の33億ユーロから85億ユーロ、さらに今回105億ユーロに膨張。オルキルオト3号機も工期は9年遅れ(現在は2018年完成予定)、建設費は30億ユーロから85億ユーロ(約1兆1300億円)へと約3倍になり、それでも完成のメドが立たず、建設費の予算超過をめぐって発注元であるフィンランド産業電力(TVO)との間で係争が続いている。もはやリスクに見合うビジネスとはいえず、まともな経営者なら「一刻も早く逃げ出したい」というのが本音ではないか。(敬称略) *2-4:http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/120100165/?n_cid=nbpnbo_twbn&rt=nocnt (日経ビジネス 2015年12月2日) スクープ 東芝、原発幹部さえ疑う「64基計画」、経営幹部の電子メールを入手、不正会計問題は経営問題に発展へ 東芝がようやく米原発子会社ウエスチングハウスでの減損の詳細を開示し、事業計画を発表した。2029年度までに64基の原発を新規に受注するという計画は、原発部門の幹部さえ“非合理的”と認識していた。日経ビジネスはこれを裏付ける電子メール記録を入手した。東芝の不正会計問題は経営問題に発展してきた。東芝は11月27日、米原発子会社ウエスチングハウス(WH)の減損問題について記者会見し、新たな事業計画を発表した。2029年度までの15年間で、新たに「64基」の原発建設を受注するのがその骨子だ。2011年の東日本大震災以降、東芝・WHは原発の新設受注で苦戦している。にもかかわらず64基という極めて高い目標を掲げた裏側には、WHでこれ以上の減損を回避しなければならないという事情がある。東芝社内でさえこの目標が“非合理的”であると認識していることが、日経ビジネスが入手したWH首脳宛ての電子メール記録で判明した。そもそも東芝が不正会計に手を染めたのは、事業全体で稼ぐ力が弱体化しているため。社長の室町正志が「売却できる事業は売却する」と会見で述べるなど、否応なしに構造改革が迫られている。この状況で、WHがさらなる減損に追い込まれれば、東芝の屋台骨が揺らぐことになる。 ●「苦し紛れ」に基数を増加 東芝は本誌(日経ビジネス)が指摘するまでWHの経営状況を開示せず、2012年度と2013年度に巨額減損を計上し、赤字に陥っていたことを隠蔽してきた。室町は会見で「不十分な開示姿勢を深くおわびしたい」と陳謝。2006年の買収以降、WHが2億9000万ドル(約350億円)の累積営業赤字に陥っていることも明らかにした。一方で2014年10月の「減損テスト」の結果、東芝が連結で抱えるのれんについては減損が不要であると説明した。そのうえで発表したのが、冒頭の64基計画である。ただこの計画も、内部資料を基に分析すると“結論ありき”で策定されたものと言わざるを得ない。下のグラフで示したように、東芝は原子力事業の利益が2018年度以降に急増するとしている。電力・社会インフラ事業グループを所管する副社長の志賀重範は「全世界で約400基の新設計画がある」と強調。WHが米国と中国で計8基を建設している実績が、有利に働くと説明した。 *2-5:http://toyokeizai.net/articles/-/94709?utm_source=Twitter&utm_medium=social&utm_campaign=auto (東洋経済 2015年12月5日) 東芝、初の原発輸出が今も「塩漬け」だった、米国でWH以外にも厳しい案件が残っている 東芝初の原発輸出が、受注から6年経った今も建設が行われず、損失を出し続けている。この案件だけで2013年度310億円、2014年度410億円の合計約720億円の減損損失を計上。2006年に買収した、米原子力会社ウエスチングハウス(WH)社ののれん代(約3441億円)の減損が唯一の懸念材料と思われていたが、東芝自身の原子力事業も暗雲が漂っている。720億円もの減損損失を計上したのは、米テキサス州マタゴルダ郡でABWR(改良型沸騰水型原子炉)を2基建設する「サウス・テキサス・プロジェクト(STP)」だ。東芝は2009年2月、プラントの設計、調達、建設を一括受注。これを足がかりとして、原発輸出の加速を目指していた。当初の計画では、2012年に建設運転許可(COL)が下り、2016年~2017年に運転を開始するはずだった。ところが、2011年3月の東京電力・福島原発事故を受けて、米原子力規制委員会(NRC)が、稼働中の全原発について安全性確認の実施を決定。東芝とともに計画を進めていた、独立系発電会社で米電力大手のNRG社は、新規原発建設の認可獲得に時間とコストがかかることを懸念し、2011年4月に追加の投資中止を決定。早々とSTPに見切りを付けた。 ●代わりの出資者が見つからない STPは東芝とNRGの合弁会社が担当(当初の持分比率は、NRG88%・東芝12%)。NRGは2011年1月~3月期決算で、4.81億ドル(当時約400億円)の特別損失の計上を決定、うち1.5億ドル(当時約120億円)が東芝の負担だ。本来であれば、東芝も2011年度に減損すべきだったが、「新たな提携先と交渉中で、減損の必要はない」とし、損失を計上してこなかった。2013年度になり、急に減損したことを考えると、監査法人から迫られたことは想像に難くない。NRGが想定した通り、STPのCOL審査は長引き、2016年1月に建設許可が下りる見通しだ。東芝の志賀重範副社長は、「全ての審査が終了している」と説明するものの、肝心の出資者が見つかっていない。米国では外資100%出資の建設には制限があるため、東芝はNRGに代わるパートナーを、必ず見つけなければならない。とはいえ、NRGに続く出資者が4年も出てこないのは、福島原発事故の影響だけでない。STPの建設を計画しているテキサス州は、天然ガスが採掘できるため、原発のコスト優位性が低下しているのも一因だ。例えば三菱重工業も同じテキサス州で、2009年から別の原発建設に関わっていたが、2013年にCOL申請を中断。「米国市場での(原発に対する)減速などもあり、現地の電力会社が総合的に判断した」(三菱重工)と見切りをつけたのである。海外原発に詳しい研究者も、「天然ガスが多く採掘できるテキサス州で、原発は採算に合わないと判断したようだ」との見解を示す。 ●今後15年で64基受注という計画は楽観的過ぎる 事業説明会後、記者団に取り囲まれる室町社長出資者が見つからず、費用だけがかさむ状況下でも、東芝は「1月に建設許可が下りれば、建設の可能性を追求していく」(志賀副社長)と強気の姿勢は崩さない。東芝初の原発海外輸出だけに、諦めるわけにはいかないのだろう。11月27日に開かれた原子力事業説明会でも、東芝はアグレッシブな計画をぶち上げた。WHを含めた東芝全体の原子力事業で、2017年度に売上高6400億円(2014年度6178億円)、営業利益500億円(同29億円損失)、今後15年間で64基の建設をするというものだ。現在、WHが中国と米国で各4基の計8基を建設中だが、これらの案件は福島原発事故以前の2007年~2008年に受注したもので、事故後に建設を開始できた原発は一つもない。それどころか世界を見渡しても、2014年に新規着工された原発は、わずか3基にとどまる。それでもWHのダニエル・ロデリック社長は、「原子力の需要は高まっている。来年にはインドで契約が結べると考えている」と自信を見せる。だが、STPのほか、現状を鑑みるに、新たな64基受注計画も厳しいことは疑いない。東芝のあまりにも楽観的すぎる見通しに対し、今後ものれん減損など不安材料がつきまとう。 *2-6:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160204/k10010397131000.html (NHK 2016年2月4日) 東芝の最終赤字 過去最大の7100億円に拡大見通し 東芝は、不正会計の問題のあとパソコンなど家電事業の構造改革にかかる費用が増加したことなどから、ことし3月期の1年間のグループ全体の最終損失がさらに拡大して、7100億円の過去最大の赤字になる見通しとなりました。東芝が4日、発表した去年4月から12月までの9か月間のグループ全体の決算によりますと、売り上げは4兆4216億円と前の年の同じ時期と比べて6.4%減少したほか、本業のもうけを示す営業損益は2295億円の赤字に転落しました。これは、不正会計の問題のあと構造改革の対象となっている、パソコンやテレビの販売不振が続いていることや、主力の半導体事業も販売価格の下落などにより、収益が悪化したことなどによるものです。そのうえで、パソコンなど家電事業の構造改革にかかる費用が増加したことや、電力などのインフラ関連の不採算事業で損失の費用を計上したことなどから、ことし3月期の1年間の最終損失はさらに膨らみ、これまで予想していた5500億円の赤字から過去最大の7100億円に拡大する見通しとなりました。このため、東芝は、これまで行っている役員報酬の一部返上に加えて、課長級以上の管理職についても給与の減額を行うことを合わせて発表しました。HDDやヘルスケアで早期退職募集や配置転換東芝は構造改革の一環として、収益が悪化している「ハードディスクドライブ事業」や事業の見直しを決めている「ヘルスケア事業」について、早期退職の募集や配置転換を行うと発表しました。それによりますと、パソコンなどのデータの記憶に使われるハードディスクドライブ事業は今後、市場の縮小が見込まれるとして、国内事業に携わっているおよそ150人を対象に早期退職の募集や配置転換を行います。また、医療機器の製造や販売を行うヘルスケア事業についても、中核的な子会社の「東芝メディカルシステムズ」の株式の過半数を売却することをすでに決めていることから、国内事業に携わっているおよそ200人のうちおよそ90人を対象に、早期退職の募集や配置転換を行うということです。東芝は、今年度、家電や半導体の事業などで、国内で5800人の人員削減の計画をすでに決めています。これとは別に今月末から早期退職を募集する予定で、「希望者には、再就職の支援も行いたい」としています。室町社長「今年度、うみを出し切る」東芝の室町正志社長は会見で、ことし3月期の決算の見通しを過去最大の7100億円の最終赤字に下方修正したことについて、「大変遺憾であるが、業績予想を修正することになった。業績見通しを公表してから1か月余りで大きな修正となったことを深くおわびしたい」と陳謝しました。さらに室町社長は、「今年度なんとしてもうみを出し切って、来年度、業績をV字回復させたい」と述べたうえで、「金融機関からもうみを出し切るように言われている。また金融支援については全力を尽くすという話をいただいている」として、金融機関から新たな融資を受ける方向で調整していることを明らかにしました。西室氏と岡村氏 相談役を退任へ東芝の室町正志社長は、いずれも東芝の元社長で現在、日本郵政の社長を務めている西室泰三氏と日本商工会議所の前会頭の岡村正氏が相談役を退任することを明らかにしました。このうち、西室氏は来月末で、岡村氏は6月の株主総会を経て退任し、新たに設ける「名誉顧問」とすることにしています。これにより、東芝の相談役制度は廃止となり、室町社長は、「名誉顧問には、会社の経営とは一線を画し、社外の活動で、東芝の存在感の維持向上を図ってほしい」と述べました。 <日印原子力協定> *3:http://digital.asahi.com/articles/ASHDD5GMCHDDULFA00Q.html (朝日新聞 2015年12月12日) 日印首脳、原子力協定に「原則合意」 原発輸出可能に 安倍晋三首相は12日、インドのニューデリーでモディ首相と会談した。両首脳は、日本からインドへの原発輸出を可能にする原子力協定について「原則合意」した。インドは核不拡散条約(NPT)に加盟しておらず、日本が非加盟国と協定を締結すれば初の事例となる。また、両首脳はインドの高速鉄道計画をめぐり、一部区間で日本の新幹線方式を採用することも確認した。日印の原子力協定交渉は民主党政権時代の2010年に始まった。唯一の被爆国である日本は核廃絶を目指す立場から、核実験を1998年以来、一時停止しているインドが実験を再開した場合、日本の協力を停止する措置を盛り込むことを求めてきた。だが、この日公表された共同声明や別途署名された原子力協定に関する覚書にはこうした措置は盛り込まれておらず、今後の交渉に委ねられた。NPT非加盟のインドと協定を締結すれば、核不拡散を掲げる日本の原子力政策は大きな節目を迎えることになる。両首脳が会談後に発表した共同声明で、原子力協定については「技術的な詳細が完成した後に署名されることを確認」とした。安倍首相は会談後の共同記者発表で「日印間の平和的目的の原子力協力に基礎を与える協定につき、原則合意に至った」と述べた。日本側の説明によると、安倍首相は首脳会談で、万が一インドが核実験を行った場合は協力を止めることを伝えたという。日本政府はこの発言がインドへの歯止めになるとしている。また、会談では商業都市ムンバイとアーメダバード間(約500キロ)の路線で、日本の新幹線方式を採用することを確認。日本は総事業費約1兆8千億円のうち、最大81%の円借款を低金利で供与する。新幹線が導入されれば海外では台湾に次ぎ2例目となる。このほか、両首脳は海洋進出を強める中国を念頭に南シナ海情勢について「変化に留意する」との認識で一致。防衛装備品・技術移転や秘密軍事情報保護の協定も結び、安全保障分野で協力を進めることを確認した。 ■日印共同声明の骨子 ●防衛装備品・技術移転協定、秘密軍事情報保護協定の締結歓迎 ●日印米・日印豪3カ国対話など促進 ●原子力協定の合意歓迎。技術的な詳細が完成した後に署名されることを確認 ●日本の新幹線システム導入に関する覚書署名を歓迎 ●南シナ海における変化に留意。地域の緊張につながる一方的な行動回避を呼びかけ ●核兵器廃絶に向けたコミットメントを再確認 <外部監査> *4-1:http://mainichi.jp/shimen/news/20151119dde001020034000c.html?fm=mnm(毎日新聞2015年11月19日)東芝:不正会計問題 監査法人、処分へ 金融庁、改善命令など検討 東芝の不正会計問題で、金融庁が同社の会計監査を担当していた新日本監査法人に対し、公認会計士法に基づく行政処分を行う検討に入ったことが19日分かった。監査法人を指導・監督する公認会計士・監査審査会が年内にも金融庁に対し、新日本への処分を勧告し、これを受け金融庁が処分する見通し。業務改善命令などを検討している模様だ。東芝は今年9月、2009年3月期以降の決算を修正した結果、利益水増しによる決算の下方修正額は2248億円に上り、歴代3社長が辞任した。新日本はこの間の会計監査を担い、適切な処理だと認めていたため、不正会計を見抜けなかったとして責任を問う声が出ている。公認会計士・監査審査会は9月から新日本への立ち入り検査を開始。業界団体の日本公認会計士協会も調査を進めている。同審査会は新日本について、東芝に対する監査の適正さを確保する体制が十分でなかったとみている。新日本は12年にも、オリンパスの損失隠し事件で監査に不備があったとして、あずさ監査法人とともに金融庁から業務改善命令を受けている。 *4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151224&ng=DGKKZO95464410U5A221C1PE8000 (日経新聞社説 2015.12.24) 監査法人はなれ合い排し虚偽を見抜け 金融庁は東芝の会計不祥事をめぐり、同社の会計監査を担当した新日本監査法人への行政処分を出した。利益操作を見抜く注意を怠ったことなどが理由だ。3カ月間、新規業務の受注などを禁じるほか、監査法人に対しては初となる課徴金も科す。新日本監査法人は2012年にもオリンパスの粉飾事件に関連して、金融庁から業務改善命令を受けている。大企業の虚偽記載を相次いで止められなかったという事実は重い。監査法人としての信頼回復が急務となる。今回の問題を、新日本監査法人だけの話にとどめてはならない。東芝という著名な大企業の不祥事は、日本全体への国際的な信用に影響しかねない。経済の重要なインフラである監査制度の改革を進めるため、市場関係者が知恵を出し合うときだ。何よりも重要なのは、監査法人として不正な会計処理を見抜く力を高めることだ。米国ではエネルギー大手エンロンの粉飾事件をきっかけに、公認不正検査士という資格を持つ会計士が増えている。犯罪捜査の知見を備えた監査人のことで、世界各地にネットワークを持つ。日本の監査法人もこうした専門職を積極的に育成すれば、利益操作を見抜くだけでなく、不正を抑止する力も高まることになる。公認会計士を証券取引等監視委員会に研修に出し、不正摘発の実務を経験させることも有効だ。書面チェックだけでなく、監査先の企業の倉庫などを通告なしに調査するといった、足を使った監査がいっそう求められる。企業とのなれ合いを排する必要もある。日本では企業との緊張関係を保つため、監査人が一定期間で交代しなければならない。さらに、海外には欧州のように監査法人そのものを定期交代させる制度の導入に動く地域もある。今後、欧州の事例などを注意深く検証し、監査の実効性を高める仕組みづくりを進める必要がある。監査法人は企業が支払う監査手数料を収入源の一つとする。このため企業に遠慮して強くモノが言えないことがある。しかし、厳正さを欠いた監査は長い目で見て企業の利益を損なう。業績の水増しを続けてきた東芝が1万人もの人員削減や事業売却に迫られる事態を見れば、企業にとって厳しい監査が不可欠なことは明白である。 <誤った論点> *5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150722&ng=DGKKASDF21H0F_R20C15A7MM8000 (日経新聞 2015.7.22) 監督機能を明確に 社外取締役、内部通報窓口など 政府指針 政府は社外取締役の機能強化に向けた指針を策定する。社外取締役の主な役割を、会社の業務や取締役会に対する「監督」と明確にすることで、会社に対するチェックに集中できるようにする。東芝の不適切会計問題では社外取締役の監督機能が骨抜きにされていたため、実効性を持たせるための具体的な事例集も作る。会社法の新たな解釈指針として、経済産業省が週内にも発表する。法務省も参加する経産省内の研究会で、昨年12月から指針を検討していた。会社法では社外取締役は日々の業務執行に関わらないことが原則だ。しかし、業務執行以外での役割や責任の範囲は法律上明確ではなく、本来業務とそれ以外の線引きが難しかった。指針ではこれまでの判例や学説などを踏まえ、社外取締役の主な役割は主に経営陣や業務執行に対する「監督」にあることを明記した。そのうえで監督の中身を例示した。具体的には、会社から独立した内部通報の窓口になることや、不祥事が発生した場合の内部調査委員会のメンバーになることなどを挙げた。社内の法令順守体制を向上させることも役割として例示した。東芝の不適切会計問題では、社外取締役に情報が伝えられておらず、監督機能が無効化されていたことが第三者委員会の報告書で明らかになっている。そうした事態を防ぐための対策を取り上げた事例集も作る。社外取締役との連絡役の社内取締役を置き、社内の情報が常に伝わるようにする仕組みなどを紹介する。 <間違った選択と集中> *6-1: http://mainichi.jp/select/news/20151024k0000e020203000c.html?fm=mnm (毎日新聞 2015年10月24日) 東芝:画像半導体売却へ ソニーに 人員削減数千人規模か 不正会計問題で業績不振に陥っている東芝が、主力の半導体関連事業で工場の一部売却や閉鎖を行う方向で調整していることが24日分かった。デジタルカメラなどに使われる半導体の画像センサーを製造している大分工場の一部をソニーに約200億円で売却する方向。家電などに使われる単機能半導体などを製造する他工場の生産ラインも一部閉鎖を検討している。これに伴い希望退職を募り、人員削減規模は数千人に上る可能性がある。10月末にも正式決定する。東芝の半導体などの電子デバイス部門の売上高は2015年3月期で1兆7687億円。全体の約4分の1を占め、営業利益は2166億円に上る。収益の柱は、スマートフォンなどに使われる記憶装置「NAND型フラッシュメモリー」で、他の半導体事業は赤字になるなど業績が低迷している。同社では「主力の半導体事業でも利益の水増しが行われ、不採算部門のリストラが全く行われていなかった」(関係者)との指摘が出ていた。画像センサーで東芝のシェア(市場占有率)はわずかで事業拡大が見込みにくいため、同センサーで強みを持つソニーへの売却を検討している。一方、単機能半導体などは「買い手を見つけるのさえ難しい」(関係者)として生産ラインを閉鎖する方向だ。東芝の半導体事業では子会社も含めて国内に6カ所の工場があり、約1万2500人が勤務。うち大分工場では従業員約2600人を抱えている。東芝の室町正志社長は10月1日の毎日新聞などのインタビューに対し、半導体事業などのリストラ策の検討を進める意向を示したうえで「場合によっては従業員対策も必要。どこまで踏み込むべきか議論している」と述べ、人員削減も検討していることを明らかにしていた。人員削減は数千人規模に膨らみそうだ。半導体以外でも、家電では海外製造拠点の集約や撤退などの構造改革を進める方針。テレビやパソコンなど他の事業でも事業の大幅な縮小を検討し、財務基盤の強化を図る考えだ。 ◇東芝大分工場 東芝大分工場は、同社の国内有数の半導体生産拠点の一つで、1970年7月に操業を始めた。敷地面積は、東京ドームの8個分にあたる38万3000平方メートルで、従業員は約2600人。スマートフォン(スマホ)やカメラの画像センサー、車や医療機器関連のシステムLSI(大規模集積回路)などを生産している。東芝は九州・山口で、2012年に当時の円高と新興国との競争激化を理由に北九州工場(北九州市)を閉鎖している。大分工場の売却先として検討されているソニーは、九州に画像センサーを主力に製造する完全子会社のソニーセミコンダクタ(熊本県菊陽町)がある。生産拠点は大分県国東市、鹿児島県霧島市、長崎県諫早市など国内7カ所あり、最近はスマホ関連需要の増大を背景に生産を拡大している。 ◇東芝の不正会計問題 インフラ関連工事、半導体、テレビ、パソコンなど東芝の主要事業で利益の水増しが行われていた問題。損失計上を先送りしたり、売り上げを過大計上したりするなどの不正処理が判明し、東芝は2009年3月期以降の約7年間の損益(税引き前)について、計2248億円下方修正した。東芝が設置した第三者委員会は7月、不正会計で組織的な関与があったと認定。現場に対する強い業績改善圧力が指摘され、歴代3社長は引責辞任した。 *6-2:http://www.nikkei.com/markets/kigyo/gyoseki.aspx?g=DGXLASGD14HAV_14092015MM8000&dg=1 (日経新聞 2015/9/14) 東芝、家電国内撤退も 4~6月最終赤字122億円 東芝の室町正志社長は14日記者会見し、不振が続いているパソコン・家電事業で「国内撤退の可能性もある」と述べ、抜本的な合理化を急ぐ考えを示した。同日発表した2015年4~6月期の連結決算は最終損益が122億円の赤字(前年同期は167億円の黒字)。家電をはじめ主要部門すべてで損益が悪化し、不適切会計の陰で構造改革が遅れていた実態が浮き彫りになった。4~6月期の連結売上高は1兆3498億円と前年同期に比べ5%減った。営業損益は109億円の赤字(前年同期は476億円の黒字)。営業、最終損益とも3年ぶりの赤字になった。中でも不振が深刻なのが、洗濯機や冷蔵庫などの白物家電、パソコン、テレビを手掛けるライフスタイル部門だ。15年3月期決算で1000億円を超える部門営業赤字を出し、4~6月期も206億円の赤字(同51億円の赤字)だった。室町社長は「白物家電は製品の競争力そのものに問題がある」と分析。海外生産比率が高いため円安が足かせになっており、「中国やインドネシアなど海外の製造拠点の集約が必要」と話した。電力・社会インフラ部門では原子力や火力、水力など発電関連が苦戦して106億円の赤字(同100億円の黒字)。屋台骨の半導体も営業利益が27%減少し、全体を支えきれなかった。会計不祥事は東芝にとって「創業以来最大のブランドイメージの毀損」となった。室町社長は「今回の件で顕著に売り上げが落ちているとの認識はない」と話し、販売面への影響については明言を避けた。 *6-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151204&ng=DGKKASDZ03HSY_T01C15A2MM8000 (日経新聞 2015.12.4) パソコン3社 事業統合、東芝・富士通・VAIO交渉へ 国内シェア首位浮上 東芝、富士通、ソニーのパソコン部門が独立したVAIO(バイオ、長野県安曇野市)の3社はパソコン事業を統合する検討に入った。実現すれば国内シェアで3割強とNECレノボグループを抜いて首位のパソコン企業が誕生する。会計不祥事を受けて東芝が進めるリストラを機に、日本のパソコン勢が生き残りをかけて結集する再編が動き出す。3社は近く統合に向けた具体的な交渉に入る。年内にも基本合意し、来年4月に新体制を発足させたい考え。実現すれば国内のパソコンシェアで計3割強とNECレノボグループ(26.3%)を抜いて首位に躍り出る。VAIOが存続会社となり、各社が出資して事業を移管する案が有力。関連する人員も移し、国内外で開発から製造、販売までを一体運営する案を軸に検討するもようだ。東芝、富士通とVAIOの筆頭株主である投資ファンド、日本産業パートナーズ(JIP、東京・千代田)はそれぞれ3割前後を出資する意向とみられる。東芝は世界初のノートパソコンを世に送り出し市場をリードした老舗メーカー。現在も「ダイナブック」ブランドのノートパソコンが主力だ。富士通も個人向けの「FMV」ブランドやタブレット(多機能携帯端末)などを持つ。東芝は中国・杭州の製造子会社や海外販社を持ち、北米市場に強い。富士通は島根県出雲市やドイツに製造子会社があり、欧州市場が得意だ。2014年7月にソニーが切り離して発足したVAIOもブランド浸透度が高く、根強い人気がある。米調査会社IDCによると、14年の世界のパソコン出荷台数は3億836万台。中国レノボ・グループ、米ヒューレット・パッカード(現HP)、米デルが市場の約半分を占める。富士通と東芝、VAIOの3社のシェアは約6%で世界6位の米アップル(6.3%)に迫る。東芝のパソコン事業の売上高は14年度に6663億円だったが、白物家電などとともに赤字が続く。不適切会計問題が発覚した09年3月期から14年4~12月期のパソコン事業の利益水増し額は578億円にのぼり、事業の売却を含めた大幅リストラを検討していた。一方、富士通はパソコン事業を来年春に分社すると10月下旬に発表済み。14年度に470万台だったパソコン出荷実績は15年度は420万台に減る見通し。2社の事業とVAIOを統合することで間接費の削減や部品調達の交渉力を高める。3社は統合に向けてリストラ素案を作成中。統合効果が乏しいと判断すれば、白紙に戻る可能性もある。
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2014,06,13, Friday
2014.6.11日経新聞より 2014.6.13日経新聞より (1)“農協改革”提言の裏側 *1-1に書かれているように、「組合員を動員してTPPに反対したり、原発再稼動を阻止したり、気に入らないことをするから、その組織を廃止する」というのが、農協改革提言の裏側らしい。しかし、私がこのブログで何度も書いたとおり、TPP反対や原発再稼動阻止は、農協の方が的を得た指摘をしており、食料を生産する者として当然の態度であるとともに、他のTPP関連産業、食料の消費者、原発周辺住民にとっては心強い味方だった。 また、*1-1の「旧食管制度のもとで政府に高値でコメを買いとらせるため米価闘争で圧力をかけた」というのは、2005年以前の農水省や国会議員が、それしか思いつかず、選挙にも利用していたためだ。そう言える理由は、①農地の集約 ②転作 ③農産物のブランド化 ④農産物の加工販売 などを骨子とする2007年改革は、私が最初の提案者であり、衆議院議員に当選した2005年から佐賀県の農協を廻ってそういう話をし、佐賀県では農協を中心として先頭きってそういう改革を進めていたが、自民党内の西川公也氏を始めとする旧来型の農林族に押し戻され、佐賀県内では「猫の目行政」と言われた経緯があるからだ。つまり、リーダーであるべき農水省や国会議員が、旧来型の延長ではなく、実態に即し時代に合った有意な農業政策を作ってアドバイスできていれば、農業が停滞することはなかったのだ。 なお、*1-1には、「高齢化と農業就業人口減少で、日本の政治を揺さぶる農村票も、自民党の票田としてかつての勢いはなく、すでに虚像だ」とも書かれているが、このような見方は浅薄で冷酷である。規模を拡大する方法で豊かな農家や農業を作るためには、一定の農業就業人口の減少は必要であり、今は高齢化してこれまで農業に従事していた人がリタイアし、次世代の担い手に農地を集約していくチャンスであるため、それをやっているのだ。 つまり、今回の“農協改革”の提言の裏側には、農業の産業としての発展やそれに伴う農家の幸せ、農業の発展によるわが国の振興を願うのとは異なる下心があるため、改革の名に値しない提言になっているのである。それについては、*1-2のように、実情に詳しい農業新聞がかなり正確な報道をしており、自民党内でも森山裕氏が誠実な対応をされて、軟着陸となった。ゲーム感覚の無責任で冷たい改革もどきに対応するのは、実業を行っている人にとって時間とエネルギーの無駄遣いになるため、“改革”もどきはもう終焉にすべきだ。 (2)あら探しをされたSTAP研究の“改革”提言の異常さ *2-1、*2-3のように、これからSTAP細胞の存在を証明しようという疑義の段階で、外部“識者”による“改革”委員会が、STAP研究の舞台である理研の再生医療拠点を廃止し(!)、小保方氏の指導役である笹井芳樹副センター長の辞任も必要だという提言をし、*2-2には、「不正が起きた主因に、iPS細胞研究を凌ぐ画期的な成果を獲得したいとの強い動機があった」と書かれているが、研究者は誰でも、よりよいものを作るために研究しているのであり、そうでなければその研究をする動機はない。これが、過去の判例や外国の模倣、他との同一性ばかりを重視する日本の文系人材と異なり、新しいものを作ってきた理系人材の力の源泉なのである。 また、理研の再生医療拠点の廃止というのも極端で、*2-1には、「理研の発生・再生科学総合研究センターの廃止後は、理研の発生・再生科学総合研究センターに京都大学iPS細胞研究所と連携するよう求める」と書かれているが、これは、日本の再生医療はiPS細胞を中心とし、その他の方法はiPS細胞の劣後に置くという宣言になり、多くの独立した組織で自由に多様な研究を行うことにより、新技術開発の機会を増やすという理念に反する。(発電における原発に似てきたが、何故だろう) 確かに、小保方氏が発見したSTAP細胞と笹井氏が作ったES細胞は、遺伝子を挿入していない分だけ、iPS細胞より優れた万能細胞である。そのため、提言の内容から見て、これだけあら探しをした目的は、iPS細胞より優れた万能細胞の開発を遅らせるかやめさせるという結論ありきだったのではないかと思う。しかし、このようなことをしていれば、せっかく世界の中でも進んでいた日本の再生医療分野で、有望な研究をつぶし、日本が遅れることは明らかだ。そのため、これも、“改革”の名を借りた利己主義の追及であり、このようなことに優秀な研究者の時間とエネルギーを空費させるのは、日本の損失にほかならず、これで(本物の)高い経済成長率や高い利益率など望めるわけがないのである。 (3)頑張った人にペナルティーを与える国は、発展しない *3の「年収1000万円以上を対象に労働時間の規制を外し、それも専門職に限定」「職種は職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者」というのは、日本を、頑張る人にはペナルティーを課す国にしてしまい、国を発展させない。 ホワイトカラーの場合は、流れ作業で組み立てを行う工場労働者と異なり、労働時間と成果が比例しない。極端な例では、知識と経験が豊富なベテラン税理士が、顧客の質問に対して5分もかからずにその場で解答できることを、新人税理士が、税法や過去の税務調査事例を調べて税務署に確認し、途中でお茶も飲んで、5時間かかって解答したとすると、労働基準法により時間で残業手当をつければ、ベテラン税理士の答えの方が確かで喜ばれるにもかかわらず、新人税理士の方が60倍も報酬が高くなるというパラドックスが起こる。これは、営業職や一般事務職でも、程度の差こそあれ、起こっていることだ。 そのため、このようなホワイトカラーの仕事における問題の解決策は、年収の下限を決めて「ホワイトカラー・エグゼンプション」を導入することではなく、工場労働者を念頭に作られた労働基準法を改正し、「残業代の請求の仕方は会社が決め、適切な残業代の請求を行うよう社員を指導することを就業規則に記載すれば、その就業規則が合理的で違法でない限り認める」とする条項を入れることである。なお、「少なくとも1000万円以上の収入」という下限は、1000万円以上の収入を得ている人は、管理職や裁量度の高い職種であって、今でも残業手当はもらっていないため、あまり意味がない。 *1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140612&ng=DGKDASFS0401R_Z00C14A6EA1000 (日経新聞 2014.6.12) JA全中、衰える「政治力」 、政府・与党、権限縮小を決定 TPP反対で政権と溝 政府・与党が検討している農協改革で、全国農業協同組合中央会(JA全中)の見直しが焦点になっている。この組織にメスを入れることで、農業はどう変わるのか。コメや野菜を売り、農家に肥料を提供する現場の農協は全国に約700ある。こうした農協の経営を指導する役割を担っているのが中央会だ。県ごとの組織と、全国団体のJA全中がある。政府・与党はJA全中の役割を縮小するが、組織を残す方針は固めている。新たな組織の役割をどうするかは未定だ。これに先立ち、規制改革会議は中央会制度の廃止を提言していた。農協が独自性を発揮できるようにするのが目的だ。その背景には「画一的に指導している」とのイメージがある。結論から言えばこれは“虚像”だ。「飼料米を大幅に増産するよう各農協に頼んだが、ダメだった」。関東地方のある県の中央会の担当者はため息をつく。主食用のコメの生産を減らして米価を維持しようとしたが、まともに協力する農協はなかった。こうした状況はほかの地域でもほぼ共通だ。 ●組合員を動員 ではなぜ、規制改革会議は「中央会が現場の独自性を抑えている」と思ったのか。JA全中の幹部は「政策要求のために組合員を大量に動員する姿が、実態以上に力を強く見せているのではないか」と話す。ここに問題の核心がある。農協経営に強引に口出しする力はない。だが数を頼りに政治に働きかけるときは力をふるう。その象徴が、旧食糧管理制度のもとで政府に高値でコメを買いとらせるために圧力をかけた「米価闘争」。最近では安倍政権が重要課題とする環太平洋経済連携協定(TPP)への反対運動だ。5月18日、羽田空港。「JAは文句ばかりで礼の一つも言えないのか」。シンガポールでのTPP閣僚会合に向かう自民党の西川公也TPP対策委員長は、偶然会ったJA全中の万歳章会長に怒りをぶつけた。市場開放と農業保護のはざまでぎりぎりの交渉を続ける政府・与党に、反対ばかりを唱えるJA全中へのいら立ちが広がった。そして出した答えが「TPP交渉と農協改革をセットで進める」。標的となったのが、TPP反対の旗をふり続けるJA全中だった。この対立の構図をさかのぼると、コメ市場の部分開放を決めた1993年のガット・ウルグアイ・ラウンドにたどり着く。「あのころから農政と農協の方針がずれるようになった」。JA全中からこんな声が漏れる。ウルグアイ・ラウンドをきっかけに政府がつくったのが、有望な農家に政策の助成を集中する制度だ。国際競争力のある農家を育てるのが目的だったが、規模の小さい兼業農家を組合員に抱える農協は抵抗し続けた。 ●高齢化など響く 両者の対立はときに激しい形で表面化する。農林水産省は小規模農家を助成対象から外す制度を2007年に始めた。だが農協と農林関係議員の猛烈な巻き返しで、規模で選別する仕組みはすぐに姿を消した。零細農家を守るあまり、農業の衰退を招く皮肉な結果だ。一方、綱引きのカゲで政治と農協の関係も変化した。その転機は1996年の小選挙区制の導入だ。同じ選挙区に複数の議員がいた中選挙区制とは違い、農協の後押しだけで当選することは難しくなった。民主党政権下では農家の戸別所得補償になびき、自民党との関係はさらに悪化した。高齢化による農家の引退も影響した。農業就業人口は240万人と、ピークの6分の1。自民党の票田としてかつての勢いはない。「日本の政治を揺さぶる農村票」も、すでに虚像だ。中央会の見直しが、ついに論議の対象になった背景にはこうした事情がある。政府・与党の方針により、JA全中は役割を変えて存続はできる。だが政治を動かす力は今後ますます弱まるだろう。自民党ベテラン議員は「これから農相を務めるひとは楽になる」と話す。 *1-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=28194 (日本農業新聞 2014/6/11) JA、農委、農業生産法人 与党改革案を決定 自民党と公明党は10日、JAや農業委員会、農業生産法人の改革案「農協・農業委員会等に関する改革の推進について」を決めた。自民党案に公明党の考えを盛り込んだ。11日の政府の規制改革会議農業ワーキンググループ(WG)に与党案として示し、同会議が13日にまとめる答申に反映させる。自民党は10日、「新農政における農協の役割に関する検討プロジェクトチーム(PT)」(森山裕座長)と「農業委員会・農業生産法人に関する検討PT」(西川公也座長)の合同会議を9日に引き続いて開き、改革案を検討した。全議員が参加できる議論の機会が少なかったことなどから「反対」の声も上がったが、齋藤健農林部会長が「明日のWGでわれわれの意見をぶつけないと、(WGの)提案がそのまま答申になる」として了承を求め、農林幹部への対応一任を取り付けた。これを受け、森山、西川両PT座長は公明党の石田祝稔農林水産部会長、稲津久同部会長代理と協議。改革案について与党間で合意した。与党のJA改革案は、規制改革会議が求めた急進的な案に対し、JAグループの自主的な判断を尊重したことが特徴。最大の焦点だった農協法上の中央会制度については「新たな制度に移行する」としたが、具体的な在り方はJAグループ内の組織討議も踏まえて結論を得ることにした。ただ森山氏は10日の会合後、新たな組織について「農協法上で位置付けていく」との考えを記者団にあらためて示した。同会議は、与党案を踏まえて13日にJAなどの改革を含む規制改革案を決め、安倍晋三首相に答申。政府が月内にまとめる新たな成長戦略にも盛り込む段取りだ。 [解説] 自主的な判断尊重 自民・公明両党が決めたJA改革案は、規制改革会議の急進的な案を押し戻し、JAグループの自主的な判断を尊重したのが最大の特徴だ。それだけに、JAグループにはこれまで以上に踏み込んだ抜本的な自主改革が求められる。また改革案には「玉虫色」(自民党農林幹部)の部分もある。農協法の改正案提出に向け、中央会制度の廃止などの議論が再燃する可能性もあり、予断を許さない状況が続く。与党の改革案は、規制改革会議が廃止を求めた農協法上の中央会制度について、JAグループの組織討議も踏まえて「新たな制度に移行する」とした。JAが民間団体であることを考慮し、自ら改革を進めるよう促した格好だ。同会議が提起した「農林中金への信用事業の移管」については、各JAで判断できる「選択制」とした。JA全農の株式会社化や、JA厚生連の病院の社会医療法人への転換なども「可能」としたが、あくまで自主的に判断する。ここが、画一的・強制的な同会議の案と大きく異なる点だ。JAグループは3月に自己改革案「営農・経済革新プラン」を発表したが、政府・与党内には「踏み込み不足」「具体性に欠ける」との指摘がある。「今回の与党案はJAにとってラストチャンス。これでも自己改革できなければ、強制するしかない」(別の自民党農林幹部)との声もある。与党案は、来年1月の次期通常国会に関連法案を提出する考えも明記した。現行の農協法上の中央会制度から移行する「新たな制度」の具体的な在り方を含め、JAグループは組織討議を急ぐことも求められる。ただ今回の与党案には「いかようにも読める」(政府関係者)曖昧な部分がある。安倍晋三首相は9日の参院決算委員会でJA改革について「抜本的見直しを図っていく」と語るなど強い意欲を見せる。農協法改正に向けた議論の中では、あらためて急進的なJA改革を求める声が高まる可能性もある。政府には、実態を踏まえてまとめた与党案を尊重し、与党と一体で改革を進めることが求められる。自民党内には、少数の農林幹部だけで改革案を決めたとの批判がくすぶる。改革案の実効性を確保するには、今後の丁寧な説明で幅広い理解を得る必要もある。 ●女性や青年積極登用を 公明党 公明党は10日、与党としてまとめた改革案を政調全体会議で報告し、党内の了承を得た。最終的な案には、同党が求めた農業委員会への女性や青年の積極的な登用を盛り込んだ。政府の規制改革会議が13日に行う答申の素案が示された段階で、自民・公明両党は再び対応を協議する方針だ。 ●変更なく政府案に 自民農林幹部 農相に要請 自民党農林幹部は10日、東京・霞が関の農水省で林芳正農相に対し、農業改革に関する要請を行った。同日取りまとめた与党案に沿った内容で、政府が農業改革を決定するよう求めた。要請に訪れたのは、同党の中谷元農林水産戦略調査会長、齋藤健農林部会長、農業基本政策検討PTの宮腰光寛座長、新農政における農協の役割に関する検討PTの森山裕座長の4人。与党の改革案「農協・農業委員会等に関する改革の推進について」を林農相に手渡した。森山座長らは「(与党案から)変更がないように、その精神がきちんと生かされる形に、政府でまとめてほしい」と要請した。林農相は、与党案を踏まえ農業の成長産業化に対応していく意向を示したという。中谷会長は「農協も時代の流れに対応していかなければならない」と指摘。与党案について「今の時代に必要な変革という観点で非常に良い提言」と語り、政府の最終決定への反映を求めた。 ●自己改革まとめ急ぐ 全中会長 JA全中は10日、与党がJAなどの改革案をまとめたことを受け「組合員・組織の自らの意思に基づく農協改革の考え方を早急に取りまとめ、責任を持って事業を展開していく覚悟である」とする萬歳章会長の談話を発表した。萬歳会長は改革案について、JAグループの要請を踏まえ与党議員らが取りまとめたものとして評価。自己改革を後押しするものと受け止め、営農・経済事業の革新や新たな中央会制度の在り方などを検討、実行する考えを示した。 *2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140612&ng=DGKDASGG1101H_R10C14A6MM8000 (日経新聞 2014.6.12) 理研の再生医療拠点を廃止、提言へ 改革委 STAP研究の舞台 STAP細胞の論文を巡る問題で、理化学研究所が設置した外部識者による改革委員会(岸輝雄委員長)が、小保方晴子研究ユニットリーダーの所属する理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市、CDB)の廃止を提言に盛り込むことが11日、分かった。研究内容を一新し、再生医療の研究を続ける場合は京都大学iPS細胞研究所(山中伸弥所長)と連携するよう求める。提言は12日午後発表する。提言を受け、理研は同センターの廃止を含めた組織改革を検討する。同センターは2000年に設立。所属する研究者らは約500人で、あらゆる臓器になる万能細胞など再生医療の研究を主に手がける。研究者の多くが任期付きで雇用され、小保方氏は11年4月から所属している。STAP細胞の研究は小保方氏ら同センターが中心となって進めた。改革委は論文の不正が起きた原因について、小保方氏だけの責任ではなく同センターの組織的な問題があると指摘。廃止を含めた組織の大幅な見直しが欠かせないと結論付けた。廃止に伴って、竹市雅俊センター長や小保方氏の指導役である笹井芳樹副センター長の辞任も必要だとした。同センターの廃止後は研究内容を見直したうえで、新しいセンターの設立を求める。新センターが再生医療を続ける場合は、名称の変更や理研の他のセンターと合併することなどが欠かせないとした。ただし、世界初のiPS細胞による臨床研究を進める同センターの高橋政代プロジェクトリーダーらが研究を継続できるよう雇用の維持を提言する。提言では理研本部の責任も指摘。現在、研究やコンプライアンスを担当する理事を交代するなど責任を明確にするよう要求する。 *2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140613&ng=DGKDASGG1201Z_S4A610C1EA2000 (日経新聞 2014.6.13) STAP拠点、年内解体 理研改革委提言、 笹井氏ら4人辞任を STAP細胞論文の研究不正を受け、外部有識者による理化学研究所の改革委員会(岸輝雄委員長)は12日、再発防止策を盛り込んだ提言を発表した。STAP研究の舞台になった理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市、CDB)を遅くとも年内までに解体するよう求めた。竹市雅俊センター長、笹井芳樹副センター長、西川伸一顧問、相沢慎一顧問の4人の辞任も促した。小保方晴子研究ユニットリーダーについては、「研究不正行為は重大で極めて厳しい処分がなされるべきだ」と批判したが、理研の懲戒委員会が現在協議しており、処分内容まで踏み込まなかった。野依良治理事長の責任問題には触れなかったが、岸委員長は12日の記者会見で「理事長は(進退について)十分考えるだろう」と語った。今回の提言では理研に「構造的な欠陥」があり、STAP論文の不正を誘発して抑止できなかったと指摘した。不正が起きた主因に「iPS細胞研究をしのぐ画期的な成果を獲得したいとの強い動機があった」をあげた。京都大学の山中伸弥教授が世界で初めてiPS細胞を作製して以降、再生医療を巡る予算の獲得競争は激しい。日本の再生医療を引っ張ってきたCDBは「組織ぐるみ」で未熟な研究者の成果に疑いの目を向けず、論文として世に送り出したとみている。改革委の責任追及はCDBだけにとどまらない。科学技術立国のもとに加速器やスーパーコンピューター、遺伝子解析装置などあらゆる最新鋭機器を備え「肥大化した」理研本体にも向けられた。改革委は「責任の自覚の欠如と、希薄さがうかがえる」として、理研の管理体制の変更を求めた。今後は企業経営者らで構成する経営会議を理研内に立ち上げ、予算の執行や教育で理事会に助言をしていくべきだと提言。理事の人選にも関与させることを求めた。STAP細胞の有無を明らかにする再現実験にも注文をつけた。理研が4月から実施している検証手法ではなく、小保方氏の作製法に沿って実験をすべきだとしている。改革委は論文不正認定後の4月、理研の野依理事長の指示で発足した。研究不正の専門家や弁護士ら6人で構成し、不正再発防止策を計11回にわたって議論してきた。改革委の提言をどこまで理研が早急に実行していくかが今後の焦点になる。野依理事長は12日、「研究不正を抑止するために実効性あるアクションプランを策定し、具体的な実行に移していく」とのコメントを発表した。 *2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140612&ng=DGKDASDG1104R_R10C14A6CR8000 (日経新聞 2014.6.12) ES細胞の遺伝子か STAP論文、新たな疑義 理化学研究所が発表したSTAP細胞の論文で、新たな疑義が生じていることが11日、分かった。論文に掲載されたSTAP細胞の遺伝子情報を理研に所属する別の研究者が調べたところ、胚性幹細胞(ES細胞)という別の万能細胞の遺伝子である可能性が高いという。論文自体は撤回される見込みだが、STAP細胞の存在を疑う新たな結果といえそうだ。調べたのは、理研統合生命医科学研究センター(横浜市)の遠藤高帆上級研究員ら。インターネット上に公開しているSTAP細胞の遺伝子情報を分析したところ、細胞に含まれる8番目の染色体が通常は2本のはずだが、「トリソミー」という3本になる異常な状態だった。トリソミーになると、受精卵が成長してマウスの子として生まれてくるのは難しい。論文ではSTAP細胞は生後間もないマウスから作製したとしている。トリソミーはES細胞を長期間培養すると起きやすく、ES細胞をSTAP細胞と間違えた可能性もあるという。理研広報室は「把握していない。今後についても(調査するかどうか)コメントできない」としている。 *3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140612&ng=DGKDASDF1100V_R10C14A6MM8000 (日経新聞 2014.6.12) 年収 最低1000万円以上を対象に 労働時間の規制外す 専門職限定、関係閣僚が合意 政府は11日、労働時間規制の適用を外し、働いた時間ではなく成果に応じた給与をもらう働き方の対象者について、年収基準を「少なくとも1000万円以上」とし、専門職に限定することを決めた。改革が進まなかった労働規制に風穴があくが、今後の具体策しだいで対象者が極めて限られる可能性もある。甘利明経済財政・再生相や田村憲久厚生労働相ら関係4閣僚が月末にまとめる成長戦略に明記することで合意した。2015年の通常国会に労働基準法の改正案を提出。16年春の施行を目指す。1日8時間、週40時間という労働時間規制を外す「ホワイトカラー・エグゼンプション」と呼ぶ仕組みを導入する。長時間働いても給与は変わらないので効率的に働く効果を期待している。4閣僚の協議では対象を高収入の専門職に限ることで一致したが、年収の下限は「少なくとも1000万円以上」という表現にとどめ、具体的な金額設定は先送りした。職種は「職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者」とした。年収額を含む具体的な制度設計は労働政策審議会(厚労相の諮問機関)に委ねる。
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2014,05,21, Wednesday
日本の経済成長率推移 *1-1より *1-3より (1)日本の経済成長率が低くなっていった理由 このブログの2014.5.5(年金・社会保障のカテゴリー)に記載したように、わが国の経済成長率は、上の左のグラフのとおり、1955年体制から20年経過した1975年にオイルショックで下落し、異次元の金融緩和によってもたらされたバブルで何とか雇用を維持しながら20年経過した1995年のバブル清算時に、さらに落ちた。その理由は、バブル時の金融緩和で、次の時代に向けての変革と投資をしなかったからで、その状況は、このブログの2012.5.18(経済のカテゴリー)に、詳しく書いた。 そして、金融緩和に依る低金利は日本企業の利益率を低下させ、物価高騰による貨幣価値の低下と相まって、年金や貯蓄で暮らしている老人の財産や年金資産・保険資産に被害を与えた。つまり、生産性を上げ、新たに必要となったサービスに転換するという当然のことをせず、雇用維持のみに汲々とし、それを是としたわが国の文化がこの低成長率の原因なのだ。そのため、現在も行われている同じ行為を、(2)と(3)で説明しよう。 (2)中国・米国もEV(電気自動車)にシフトしている時、環境技術を提供してエンジンの燃費削減(!?) *1-1、*1-2のように、中国政府はEV購入への補助金を拡大し、排気ガス削減に取り組んでいる。日産自動車(ゴーン社長)はこの流れに乗り、EVの販売を拡大し、20%のシェアを占めようとしており、ヴェヌーシアブランドの新型車『R30』について「5万元(約80万円)よりもっと下の価格で出せる」と言っている。これは、環境と価格の両方の要請に対応した商品だ。 また、環境に関心が薄かったガソリン車の国、米国でも、フランスのEVシェアリング事業者が、米国トップクラスのカーレースイベントの開催地であるインディアナポリスに、EV500台、充電ステーション1200か所を投入して、EVシェアリング事業を始めるそうだ。 *1-4より *2より ヨーロッパでは、*1-4のように、スイスのマッターホルン山麓にあるツェルマットで、20年以上も前からEVが利用されており、ツェルマットの市街地は自治体の条例でEVしか走れないため、市街地を走るのはEVと観光用の馬車のみだ。私は、1998年にここを訪れ、バスに乗った時に、運転手さんに「電気自動車で坂道を走るのは馬力が足りないのではありませんか?」と聞いたことがある。これに対し、運転手さんは、「環境を守るというそれよりも大切なことのためには、我慢しなくちゃね」と答えたので感心し、日本なら十分に馬力があって不便のないEVが作れるだろうと思って経産省に提案し、EVの開発が始まった。そのため、日本で先頭を切ってEVが走っていても不思議はないのだ。 しかし、*2のように、トヨタやホンダなどの国内自動車8社は共同で、環境負荷の少ないディーゼルエンジンの研究を行い、二酸化炭素(CO2)排出量を2020年までに10年比3割減らす燃焼技術などを開発し、成果は各社がガソリン車も含めて実用化するという志の低さだ。これは、排気ガス0を目指して、世界がEVや燃料電池車を開発している時に、日本が先んじて開発した環境技術を世界に供与しながら、自らは過去にこだわって投資費用、研究費用をどぶに捨てているようなもので、このような意志決定とそれが行われる土台こそが、国民を犠牲にしながら経済成長率を上げられなかった理由である。 (3)発電技術も同じ *3-1のように、福島の子どもの甲状腺がんは、がんの診断が「確定」した人が50人、「がんの疑い」とされた人が39人になったそうだが、環境省は、これでも放射線の影響を否定している。また、*3-2のように、フクシマで原発所員は9割撤退し、その後、衝撃音がして原子炉圧力抑制室の圧力がゼロになった(爆発した)ことも隠されたままだった。 そして、*3-3のように、太陽光発電等の自然エネルギーによる発電機器も日本が一番進んでいたにもかかわらず、「火力発電用燃料の輸入増で国富は日々流出し、料金再値上げで国民の負担は増大する」という理由で国は原発の再稼働を急いでいるという、つきあいきれない先見の明のなさなのだ。 これらは、古いシステムにしがみついて、せっかく日本で最初にできた技術を世界で遅れさせてしまう行為だ。その根底には、役所のシステムや当面の雇用と既得権益者を守ればよいとする考え方があり、最初に日本で開発された技術が他国で開花したのを見て、バスに乗り遅れまいと、あわてて導入するという情けなさなのである。 (4)問題の解決法 先日のSTAP論文に対する報道を見ても、文科系の人でも科学的思考ができるようにすべきであり、同情論や妬みの論理しか言えないような人は作らず、他人の成功を祝福できる国民性を育てることが必要である。また、新しい複雑な事象が発生してそれにあった合理的なルールが必要な時に、既存の基準(ルール)を守ってさえいればよいとしか言えない人も作ってはならない。 これは、日本が低賃金労働で比較優位となる開発途上国を卒業して先進国となり、従順に上の指示を実行して他国を真似して一丸となって進めばよい時代から、他国の手本は無く、多くの人が頭脳を持って現在のニーズにあった付加価値の高いものを作るべき時代になったことに対する教育の対応である。 *1-1:http://qbiz.jp/article/38012/1/ (西日本新聞 2014年5月19日) 中国がEV補助金を拡大、日産はEV販売に本腰 中国政府は電気自動車(EV)購入への補助金を拡大しており、排気ガス削減に取り組んでいる。日産自動車はこの流れに乗り、EVの販売を拡大し、20%のシェアを占めようとしている。米ブルームバーグの5月14日の報道を引用し、環球網が伝えた。EVは「ゼロ排出」車であるが、価格が高額で、航続距離が限られており、充電スタンドが少ないことから、普及が進んでいない。アナリストは、2017年もしくは2018年までに、中国でのEV販売台数が10万台に達すると予想した。最も楽観的な予測によると、その販売台数は40万台に達する見通しとなっている。日産の中国合弁である東風汽車有限公司の関潤総裁は、「中国政府は新エネ車の普及を重視しており、他国では比にならぬほどの補助金を支給している。販売台数の増加に伴い、充電スタンドも増加するだろう」と語った。日産のリーフは、中国で最も売れているEVだ。リーフは昨年、値下げと航続距離の延長により、販売台数が76%増の7547台に達した。日産はその一方で、現地ブランド「ヴェヌーシア」によって、中国のEVの需要を満たすことを決定した。ヴェヌーシア初のEV「e30」が、今年度中に発売される。日産は大連、広州、襄陽などで協力を展開し、自社製EVの魅力を高めている。 *1-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140514-00000041-rps-bus_all (YAHOOニュース 2014年 5月14日) 日産関専務、ヴェヌーシアR30「もっと安くできる」 日産自動車の関潤専務執行役員兼東風汽車有限公司総裁は、近く中国で受注を開始するヴェヌーシアブランドの新型車『R30』について「本当に5万元以下でやっていけるのかとよく聞かれるが、実は我々、もっと下で出すつもりだった」と明かした。R30は4月に開催された北京モーターショーで初公開され、5万元を切る価格で、今後2か月以内に受注を開始することが伝えられた。関総裁はR30の価格について「探りの5万元」と表現した上で、「造れる量もいろいろ限られているので、造れる量とお客様の反応をみて、どれくらいでだそうかなと考えた。ポテンシャルではもっといけると思っている」と述べた。具体的なコストダウンに関しては「造りを少しリーズナブルにしたところはある。たとえばヘッドレストの分割をやめているとか、リアのハッチゲートをハッチガラスにするなど、シルエットを極端に変えないところで、競合他社がすでに安くした部品を、そのまま我々も導入して安くしている。またすでに償却が終わっているものを流用して安くしている」と説明。その一方で「中国のお客様が、この価格帯で要望されているものをちゃんと織り込んで喜んでもらうというのがポイントになるので、単純にビジネスでみていくというのではなく、そういったところから車をまず描いて、そうしたテクニックを織り込んで実現した」とも語った。 *1-3:http://www.afpbb.com/articles/-/2949802?pid=10888290 【AFP 2013年6月12日】 EVシェアリング、米インディ500開催市に進出 フランスの電気自動車(EV)シェアリング事業者が、米国トップクラスのカーレースイベントの開催地に目を付けた──インディアナポリス(Indianapolis)だ。パリ(Paris)でEVシェアリング事業を成功させた仏ボロレ(Bollore)は来年初め、EV500台、充電ステーション1200か所を、インディアナポリス500(Indianapolis 500)の開催地に導入する計画を立てている。総額3500万ドル(約34億円)の同プロジェクトは、ボロレ初のフランス国外での自動車シェアリング事業で、米国の各都市に進出する第一歩となる。ニューヨーク(New York)やシカゴ(Chicago)、サンフランシスコ(San Francisco)などの大都市と異なり、自動車シェアリングプログラムや公共交通機関の発達していない米中西部の広大な都市にとって、より良い公共交通機関には切迫したニーズがあり、インディアナポリスで始まる同プロジェクトはその要望に応えることができるだろう。プログラムは短距離の片道のEVレンタルが基本で、目的地の最寄りの充電ステーションに車載GPS(全地球測位システム)を通じて駐車スペースを予約しておくというもの。プログラム名はまだ決まっていない。 ■インディアナポリス皮切りに全米に広がるか 物流大手で、EV用電池と「スマート」電力システムを開発するボロレは、インディアナポリス市長が昨年、市の公用車を全台EVに変える計画を発表したことを受けて、同市に目を付けたという。また政治方針だけでなく、同市には、自動車シェアリングを活用できるような「非常にダイナミックなビジネス社会」と、大規模な学生人口が存在すると、プロジェクトを運営するボロレ子会社のゼネラルマネジャー(GM)は語る。充電ステーションは自家用のEVでも利用可能で、これによりインディアナポリスは米国有数の電気自動車都市となる。ボレロは米国の複数の都市とすでに接触しており、ボロレ子会社のGMによると、どの都市もEVシェアリングプログラムに関心を示しているという。「問題は、その関心をどうやったら実際のプロジェクトに変換できるかだ」と同GMは語った。 *1-4:http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1002/03/news010.html [松田雅央Business Media] 電気自動車と馬車しか走れない スイス・マッターホルン山麓にある「ツェルマット」は高級リゾート地として知られているが、市街地を走れるのは電気自動車(EV)と馬車のみ。最新技術のEVと前時代的な馬車が混在する街とは一体どのようになっているのか。現地をリポートする。 スイス・マッターホルン山麓にあるツェルマットは高級リゾート地として世界にその名を知られている。夏は登山、冬はウィンタースポーツを楽しむ人々でにぎわい、三角錐(さんかくすい)の頂を持つ名峰マッターホルンをはじめとした4000メートル級の山や氷河へ通じる山岳鉄道の基地でもある。 最寄の都市ヴィスプからツェルマットまでは道路も通じているが、主要交通機関は鉄道だ。雪深い土地のため狭い渓谷を縫うようにして走る道路は不便であり、またエンジン自動車の多用は排気ガスによる大気汚染を引き起こしてしまう。 特筆すべきはツェルマットの特異な「EV交通政策」だ。ツェルマット市街地は自治体の条例によりEV(電気自動車)しか走れない決まりになっており、市街地を走るのはEVと観光用の馬車のみ。最新技術のEVと前時代的な馬車が混在する光景は正直いって奇妙だが、環境と都市交通をテーマとしている筆者にとっては刺激的な組み合わせでもある。 ●EVが500台 EVの実用化に対する世界的な関心が盛り上がってきたのはここ数年なのに対し、ツェルマットがEV利用に取り組みだしたのは20年以上も前のこと。ツェルマット交通局のEV路線バス運行責任者ベアート氏もいつからEV交通政策が始まったのか正確には分からないそうだ。現在、ツェルマットを走るEVは計500台(EV路線バス6台)。にわかにEV利用を始めた都市とは歴史の長さが違う。ヴィスプからおよそ1時間ほどで列車は終点のツェルマットに到着する。タクシー、バス、配送用のクルマを含め、駅前に停まっているクルマはすべてEVだ。ただし、除雪車やブルドーザーなど、高いパワーを長時間要する作業用EVはまだ実用化されていないため、通常のエンジン車両が利用されている。住民がエンジン自動車を持つことは制限されていないが、市街地に乗り入れることはできないので市街地の端にある公共駐車場に停めなければならない。そこから自宅までは徒歩かEV路線バスを利用する。EVはタクシーや業務用に限られており、基本的に個人のEV所有はできない。さらに観光バスや観光客の自家用車の規制はもっと厳しく、ツェルマット市街地から数キロ離れた駐車場までしか乗り入れることができない。 (松田雅央プロフィール:ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ」) *2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140518&ng=DGKDASDZ1702M_X10C14A5MM8000 (日経新聞 2014.5.18) 日本車8社で新エンジン、欧州勢対抗へ研究 CO2を3割減 トヨタ自動車やホンダなど国内自動車8社は共同で、環境負荷が少ない自動車用エンジン(総合・経済面きょうのことば)の基礎研究に乗り出す。ディーゼルエンジンの二酸化炭素(CO2)排出量を2020年までに10年比3割減らす燃焼技術などを開発し、成果は各社がガソリン車も含めて実用化する。国際競争には燃費改善につながるエンジンの革新が欠かせない。大学などとも連携し、環境性能で競合する欧州勢に対抗する。東京大学や早稲田大学とも協力する。自動車への環境規制の強化は世界的な流れで電気自動車(EV)などの需要も拡大するが、エンジンは当面、動力源の主役であり続ける。20年の段階でも、世界で造る車の9割以上がエンジン車という予測もある。国内各社は基礎研究の成果をそれぞれのエンジン開発に生かす体制で国際競争に臨む。共同研究に参画するのはトヨタ、ホンダ、日産自動車、スズキ、マツダ、三菱自動車、ダイハツ工業、富士重工業。国内の乗用車メーカー8社すべてがそろう。技術者と資金を出し合い「自動車用内燃機関技術研究組合」を設立し、理事長にはホンダ子会社の本田技術研究所の大津啓司常務執行役員が就いた。各社は単独では取り組みにくい高度な技術課題としてディーゼルエンジンを選んだ。同組合を通じ、大学の研究室に技術者を派遣する。実務経験を持つ技術者と大学の研究者が共同で基盤技術の開発にあたる。ディーゼルが出す白煙の低減や排ガスからススを取り除く触媒装置のシミュレーション技術などを研究テーマとして検討する。研究プロジェクトに投じる資金は14年度からの3年分だけで20億円規模に達する可能性がある。初年度は3分の2を国の補助金で賄う。各社は研究成果をそれぞれのエンジン開発に生かす。この段階では、エンジンの最終的な性能や完成時期を競い合う関係になる。研究成果はガソリンエンジンの改良にも活用する。日本車メーカーは低公害・低燃費エンジンで長く優位を保ってきた。ただしBMWやフォルクスワーゲン(VW)などドイツ勢の猛追を受け、ディーゼルでは先行を許したとの見方が強い。マツダがエンジンなどの低燃費技術「スカイアクティブ」を開発するなど、日本メーカーは独自にエンジン開発を手がけてきた。競争環境の変化を受け、基礎研究での協力を通じ、業界のエンジン技術を底上げする。世界の自動車業界は中国市場の伸びや北米市場の回復を受け、日欧米韓の有力メーカーの主導権争いが激しくなっている。新興国市場では価格が高めのハイブリッド車(HV)や充電インフラが必要なEVの普及には時間がかかるもよう。エンジンの技術革新は成長市場の開拓に欠かせない。国内では環境分野を中心に、競合する車メーカーが足並みをそろえる動きが出てきている。トヨタ、日産、三菱自、ホンダの4社は国内でEVやプラグインハイブリッド車(PHV)の普及をめざし、充電インフラ整備を担う新会社を共同出資で近く設立する。 *3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10208/64578 (佐賀新聞 2014年5月18日) 福島の子ども甲状腺がん50人に 県、放射線の影響調査 福島県の全ての子どもを対象に東京電力福島第1原発事故による放射線の影響を調べる甲状腺検査で、対象者の約8割の結果がまとまり、がんの診断が「確定」した人は県が今年2月に公表した数より17人増え50人に、「がんの疑い」とされた人が39人(前回は41人)に上ることが17日、関係者への取材で分かった。検査は県内の震災当時18歳以下の約37万人を対象に県が実施。今年3月までに1巡目の検査が終わり、4月から2巡目が始まっている。チェルノブイリ原発事故では4~5年後に子どもの甲状腺がん増加が確認された。このため県は1巡目の結果を放射線の影響がない現状把握のための基礎データとし、今後、2巡目以降の検査でがんが増えるかどうかなどを確認、放射線の影響の有無を調べる。1巡目では、1次検査として超音波を使って甲状腺のしこりの大きさや形状などを調べ、大きさなどが一定以上であれば2次検査で血液や細胞などを調べた。3月までに約30万人が受診、全対象者の約8割に当たる約29万人分の1次検査の結果がまとまった。2070人が2次検査に進み、がんと診断が確定した人は50人、疑いは39人だった。手術で「良性」と判明した1人を加えた計90人は、震災当時6~18歳。このうち34人は、事故が起きた2011年3月11日から4カ月間の外部被ばく線量が推計でき、最も高い人は2・0ミリシーベルト以上2・5ミリシーベルト未満で、21人が1ミリシーベルト未満だった。国立がん研究センターによると、10代の甲状腺がんは100万人に1~9人程度とされてきた。一方で、環境省は福島県外の子どもの甲状腺検査を実施し、約4400人のうち、1人ががんと診断。「福島と同程度の頻度」として、福島での放射線の影響を否定している。 *3-2:http://digital.asahi.com/articles/ASG5L51KCG5LUEHF003.html (朝日新聞 2014年5月20日) 福島第一の原発所員、命令違反し撤退 吉田調書で判明 東京電力福島第一原発所長で事故対応の責任者だった吉田昌郎(まさお)氏(2013年死去)が、政府事故調査・検証委員会の調べに答えた「聴取結果書」(吉田調書)を朝日新聞は入手した。それによると、東日本大震災4日後の11年3月15日朝、第一原発にいた所員の9割にあたる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発へ撤退していた。その後、放射線量は急上昇しており、事故対応が不十分になった可能性がある。東電はこの命令違反による現場離脱を3年以上伏せてきた。 ■所員9割、震災4日後に福島第二へ 吉田調書や東電の内部資料によると、15日午前6時15分ごろ、吉田氏が指揮をとる第一原発免震重要棟2階の緊急時対策室に重大な報告が届いた。2号機方向から衝撃音がし、原子炉圧力抑制室の圧力がゼロになったというものだ。2号機の格納容器が破壊され、所員約720人が大量被曝(ひばく)するかもしれないという危機感に現場は包まれた。とはいえ、緊急時対策室内の放射線量はほとんど上昇していなかった。この時点で格納容器は破損していないと吉田氏は判断した。午前6時42分、吉田氏は前夜に想定した「第二原発への撤退」ではなく、「高線量の場所から一時退避し、すぐに現場に戻れる第一原発構内での待機」を社内のテレビ会議で命令した。「構内の線量の低いエリアで退避すること。その後異常でないことを確認できたら戻ってきてもらう」。待機場所は「南側でも北側でも線量が落ち着いているところ」と調書には記録されている。安全を確認次第、現場に戻って事故対応を続けると決断したのだ。東電が12年に開示したテレビ会議の録画には、緊急時対策室で吉田氏の命令を聞く大勢の所員が映り、幹部社員の姿もあった。しかし、東電はこの場面を「録音していなかった」としており、吉田氏の命令内容はこれまで知ることができなかった。吉田氏の証言によると、所員の誰かが免震重要棟の前に用意されていたバスの運転手に「第二原発に行け」と指示し、午前7時ごろに出発したという。自家用車で移動した所員もいた。道路は震災で傷んでいた上、第二原発に出入りする際は防護服やマスクを着脱しなければならず、第一原発へ戻るにも時間がかかった。9割の所員がすぐに戻れない場所にいたのだ。その中には事故対応を指揮するはずのGM(グループマネジャー)と呼ばれる部課長級の社員もいた。過酷事故発生時に原子炉の運転や制御を支援するGMらの役割を定めた東電の内規に違反する可能性がある。吉田氏は政府事故調の聴取でこう語っている。「本当は私、2F(福島第二)に行けと言っていないんですよ。福島第一の近辺で、所内にかかわらず、線量が低いようなところに1回退避して次の指示を待てと言ったつもりなんですが、2Fに着いた後、連絡をして、まずはGMから帰ってきてということになったわけです」。 第一原発にとどまったのは吉田氏ら69人。第二原発から所員が戻り始めたのは同日昼ごろだ。この間、第一原発では2号機で白い湯気状のものが噴出し、4号機で火災が発生。放射線量は正門付近で最高値を記録した。 ◇ 〈吉田調書〉 政府事故調が吉田氏を聴取した内容を一問一答方式で残した記録。聴取時間は29時間16分(休憩1時間8分を含む)。11年7月22日から11月6日にかけ計13回。そのうち事故原因や初期対応を巡る聴取は11回で、事務局に出向していた検事が聴取役を務めた。場所はサッカー施設Jヴィレッジと免震重要棟。政府事故調が聴取したのは772人で計1479時間。1人あたり約1・9時間。原本は内閣官房に保管されている。 ◇ ■全資料公表すべきだ 《解説》 吉田氏が死去した今、「吉田調書」は原発事故直後の現場指揮官が語る唯一の公式調書だ。肉声がそのまま書き残され、やりとりは録音されている。分量はA4判で400ページ超。事故対応を検証し、今後の安全対策にいかす一級の歴史的資料だ。ところが、政府事故調は報告書に一部を紹介するだけで、多くの重要な事実を公表しなかった。中でも重要な「9割の所員が待機命令に違反して撤退した」という事実も伏せられた。事故の本質をつかむには一つひとつの場面を具体的な証言から再現・検証する必要がある。国は原発再稼働を急ぐ前に、政府事故調が集めた資料をすべて公表し、「福島の教訓」を安全対策や避難計画にいかすべきだろう。吉田調書にはこのほかにも国や東電が隠している事実が多く含まれ、反省材料が凝縮されている。私たちは国や東電の事故対応の検証を続けていく。 *3-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140220&ng=DGKDASFS1903B_Z10C14A2EA2000 (日経新聞 2014.2.20) 長引く判断に終止符を 昨年7月に始まった原子力発電所の安全審査は長引き、再稼働のメドがたたない状態が続いてきた。火力発電用燃料の輸入増で国富は日々流出し、料金再値上げで国民の負担は増大する。東京電力福島第1原子力発電所の事故を経て、全国の原発は選別の局面に入った。まず安全な原発から稼働させるための施策が急務だ。「その手の要望は地方からこれくらい集まっている」。19日の記者会見で立地自治体からの原発稼働の要望についてたずねられた田中俊一規制委員長は、両手を大きく広げた。主要産業が動かない地方は疲弊が激しい。北海道電力は17日、再稼働の見通しが立たないとして家庭向け電気料金を再び引き上げる意向を示した。原発1基を動かせないと発電コストは1日2億~3億円増す。終わりの見えない審査に関係者は焦りを募らせる。原発の規制基準は全面的に見直され、規制委は申請のあった原発について並行して審査を進めてきた。だが膨大な作業を伴う審査は予想外に手間取るうえに、別の原発の申請が加わった。審査終了の先行きの見通せないなか規制委は重い腰を上げ、有望な原発を優先し、早期の合格を目指す方針を打ち出すに至った。早ければ春にも規制委の審査に合格する原発が出てくる。その後、立地自治体や国民を説得し再稼働にこぎ着けられるかどうかは政府の仕事だ。だが日本の将来のエネルギーで原発をどう位置付けるかが東京都知事選で争点になるのを避けるため、政府はエネルギー基本計画づくりも先送りした。原子力問題について、与党もはれものに触るような扱いだ。原発の必要性と安全性について、政府・与党は納得のいく説明をする覚悟が必要だ。いまの日本にこれ以上時間を空費する余裕はない。
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2014,05,03, Saturday
ルンバ その他のロボット掃除機 今日は、簡単な話題です。 (1)ロボット掃除機の市場は確実に拡大する 福島第一原発事故以降、自宅の放射線測定値が高かったので、私も、*1に書かれているアイロボットのルンバを購入して使っている。その理由は、自動的に動いて床のカーペットをかきわけ、徹底的にゴミを吸い出してくれるからで、心配していた隅のゴミも、ハケ状のブラシのおかげで普通の掃除機よりよく採れた。そして、そのハケ状のブラシは取り外し可能だ。 しかし、下のように、今ひとつ改良して欲しい点がある。 1)あちこち走り回ってゴミを掻き出すのはよいが、掻き出したゴミの吸い込み漏れがあるため、 普通の掃除機で、再度掃除しなければならない。そのため、掻き出したゴミは自分で完全に 吸い取るようにしてもらいたい。 2)走り回っている割には掃除残しがあるため、掃除残しがないようにプログラムして欲しい。 3)掃除中、アプライトピアノに何度もぶつかってピアノが傷んだが、家具などにさわる時は もっと柔らかく接するようにして欲しい。 日本企業は上のような細かい改良が得意であるため、日本の家電会社も頑張れば、*2のように、単身世帯・共働き世帯・高齢者世帯の増加で家事代行の需要が増えている中、ロボットにできることはロボットにさせた方が家事の生産性が上がるため、世界でヒットする新しい家電を作ることができると思う。 (2)掃除をロボット化するための家具と部屋のつくり 掃除ロボットが掃除しやすい家や家具もあり、例えば、家具の床から上がっている部分(パソコンラック、ベッド、ピアノなど)は、もう少し高く上げて掃除ロボットが入れるようにするか、床にぴったりつけてゴミが溜まりにくいようにして欲しい。また、家も、細かい凹凸がなく、床はバリアフリーの方がよい。 つまり、家具や家のつくりも、「お掃除ロボット対応」にすべきで、今後は、そういう家具や家の方が売れるだろう。また、お掃除ロボットの側も、もう少し薄くて小さければ、入れる家具の隙間が増え、普通の掃除機より優秀なパートナーになれるかもしれない。 *1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140416&ng=DGKDZO69927760W4A410C1TJH000 (日経新聞 2014.4.16) ロボット掃除機、アイロボットVSシャープ しゃがむ、かがむ、動かす、収納場所から出し入れする――。掃除機をかけるときは人手に頼る部分が多く、苦手な家事の筆頭に挙げる人も多い。助っ人として売り上げを伸ばしているのが、自ら動いて部屋をきれいにするロボット掃除機だ。草分けで最大手の米アイロボットと、独自の利用者とのコミュニケーション機能を打ち出すシャープの新製品を比べた。両製品はセンサーで部屋の広さや形状、汚れ具合などを検知し最適な動作を選ぶ。充電器につないだ状態からボタンを押して掃除を始める利用法を主に想定している。掃除を終えると自動的に充電器に戻る。アイロボットの「ルンバ880」は吸引力が前機種の5倍。モーターの駆動力を高めたことに加え、ごみをかきこむヘッド部分からハケ状のブラシをなくして強い空気の流れを作り出した。毛の長いじゅうたんにもしっかり対応でき、1回に吸い取るごみの量は前機種の1.5倍、集じん容積は1.6倍に増やした。 ■2センチの段差乗り越え 家具や壁際に接触して丹念に掃除する。ぶつかる前にはセンサーによって自動的に速度を落として衝撃を和らげる。約2センチメートルまでの段差なら乗り越えられるので、フローリングの床にラグを敷いた部屋でも使える。下向きの大きな段差を感知すると、ルートを変更して落下を避ける仕組みだ。付属の通信機器を部屋の境界に置いて部屋別の仕上がりにムラが出ないよう抑える機能も備えた。「隣の部屋に入らない」など、掃除する範囲の設定もできる。手入れもしやすく工夫した。ヘッド部分のローラーはハケ状のブラシを無くしたため、髪の毛などを取り除きやすい。フィルターの手入れをする際に手にちりなどが付きにくい。シャープの「ココロボRX―V200」はフローリングや畳など床の種類に応じて運転を調節する。衝突で傷付けることを防ぐため、センサーを使って壁や家具と接触しないようにする。「おまかせ」以外に壁際を重点的に掃除するモードも用意した。椅子の脚の間をすり抜けやすいよう、直径を約30センチメートルと小ぶりにした。このモデルの最大の特徴は、人工知能を搭載して音声認識機能による「対話」を可能にした点。掃除と関係ないことでも「天気を教えて」と呼びかけると、ネット上の情報倉庫であるクラウドを使って「今日の天気は雨だよ。おでかけには傘を持っていったほうがいいよ」などと答える。 ■スマホで遠隔操作 「きれいにして」と指示すると「分かった」と答えて掃除を始めたり、「調子はどう?」と問いかけると充電量などに応じて「まあまあかな」と返答したりする。応答パターンは前機種の2倍以上の114に増やした。スマートフォン(スマホ)をリモコン代わりにして遠隔操作できる。さらにスマホとこの掃除機を介して、外出先から自宅にあるテレビやエアコン、発光ダイオード(LED)照明、加湿空気清浄機などの電源を入れられる。対応する機器は従来のココロボはシャープ製品に限られていたが、RX―V200は赤外線通信機能があれば他社製品にも対応する。 *2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140425&ng=DGKDZO70376490V20C14A4TI0000 (日経新聞 2014.4.25) 1000億円市場 単身に需要 掃除や洗濯など家庭の主婦が担ってきた家事を外注する動きが広がっている。働く女性の増加を背景に家事代行サービスの市場は年率20%増のペースで成長。2013年度は1000億円の大台を突破したもようだ。「お願いするのは風呂やトイレなど水回りの掃除や冷蔵庫の整理。まるで別の部屋のようになるので(帰宅して玄関を開けると)疲れまで消える感じがする」。アパレル勤務の井上さおりさん(仮名、29)が使うのはベアーズ(東京・中央)の単身者向けプランだ。料金は1回90分で5658円。布団干しや室内の空気の入れ替えといった「不在にする日中だからこそできるメニューを選ぶ人が多い」(ベアーズ)という。家事代行の利用者は変化している。ベアーズでは数年前まで共働き世帯が7~8割を占めていたが、今では5割以下。代わって単身者が約2割を占める。働き盛りの独身者だけではない。進学や就職で一人暮らしを始めた子供を心配して「地方に住む親から依頼される例も目立つ」。矢野経済研究所(東京・中野)によると12年度の家事代行市場は前年度比21%増の980億円。新規参入もあり市場の成長ペースは上がっている。野村総合研究所は市場の潜在需要は5000億円規模と試算する。「家事代行は(富裕層が使う)ぜいたくなサービスや嗜好品ではなくなった」とベアーズの高橋ゆき専務は指摘する。実際、百貨店や家電量販店などで気軽に選べるサービスも登場している。イオン系のカジタク(東京・中央)の「家事玄人(クラウド)」は映画館を含め全国3200店で扱う。排水口の掃除やエアコンのカビ取りなど16種類のセットメニューを用意。説明書と認証用の番号を箱に詰めた。料金は一律1万2960円。来年春までに前年の約2倍にあたる延べ20万世帯の利用を見込む。箱を手に取った消費者は電話かネットで訪問時間を指定するだけ。「均一価格の安心感と見積もり不要の手軽さ」(楠見敦美取締役)が売りだ。高齢の両親にプレゼントする人も多い。既にカジタクの受注のうち約3割を贈答用が占める。
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2014,04,07, Monday
日本の人口推移 *1-2より 主な国の食料自給率推移 日本のエネルギー自給率推移 (1)日本の適正人口は一億人だろうか? *1に、「①外国からの移民を毎年20万人受け入れ ②合計特殊出生率が2.07に上がれば ③2110年の日本の人口は1億1404万人になり、100年後も人口は1億人超を保つことができる」「④さもなくば、日本の人口は、2012年の1億2752万人から、100年後は3分の1程度に減る」と書かれている。 しかし、上の一番左の図からわかるように、日本の人口は、1920年には5600万人、1945年には7200万人であり、ベビーブーム後の1967年に一億人を超えたが、それに従って食料自給率は低下し、現在ではカロリーベースで39%しかない。また、エネルギー自給率は、1960年には60%近かったが、現在では20%に満たない。 さらに、 日本の都会に住む庶民の住居はOECD加盟国のどの国と比較しても、価格が高い上に手狭だ。つまり、③の「日本の人口は1億人以上でなければならない」というのは根拠が乏しく、長い日本の歴史から見れば、最近、瞬間的に1億人を超えたが、それは、医学の進歩で寿命が延びたにもかかわらず、その割に出生率が下がらなかった戦後数年間の影響なのである。 なお、*1-2に書かれているように、世界の人口は増加中であるため、食料の6割を海外に依存する日本にとって、食料自給率の引き上げは最重要課題だ。 結論として、私は、日本の適正人口は、1950年時点の8000万人前後であり、戦後ベビーブームと寿命の伸びでいびつになった人口ピラミッドがなめらかな線になる頃には、一人当たりの生活水準が上がって出生率も調整され、人口が安定するため、④はためにする議論だと考える。また、寿命が延びて一人で3世代分生きるようになった現代では、②のように合計特殊出生率が2.07では、人口は安定せずに増加するので、高すぎるだろう。 (2)日本の労働力について 上のような事情でも、人口ピラミッドが逆三角形になると、介護はじめ、あらゆる部門で労働者が不足するため、(1)の①のように、世界では増加している人口を活用するために外国人労働者を受け入れたり、今まで雇用不足で労働市場から締め出していた女性や60代の人を労働市場に迎えたりするのはよい。 現在、*1-2の農林業、*1-3の建設業、*1-4の介護事業、*1-5の家事支援などで、外国人労働者に対する期待は高く、介護職員は2025年までに100万人増やす必要があるそうだが、インドネシア人やフィリピン人の介護士国家試験合格率は日本語が壁となって低い。しかし、ケアされる側の日本人は、戦後教育を受けた人なら老人でも簡単な英語は使えるため、日本語を流暢に使える人には報酬で報いつつ、そうでない人でも組織的にカバーしながら介護労働者として働いてもらえる筈である。 (3)外国人労働者の待遇について *1-4のように、外国人技能実習制度を使って、劣悪な環境で長時間労働を強いる事業者も散見され、移民政策を巡っては、慎重な声が根強い。 しかし、*1-5のように、働き手不足で、外国人の受け入れ拡大を経済界で要望している以上、*2のように、技能実習と偽って人権侵害に当たるような労働条件を課すのではなく、外国人労働者の労働条件も改善し、社会保険に加入させ、生活環境を整えて、数を調整しつつも、移民も認めるなどのことを行うべきだろう。 (4)外国人労働者の生活環境の整備について *3のように、国際人権法政策研究所は、「日本在住の外国人に教育が義務化されておらず、多数の子供が就学していないのは、国際人権規約に違反している」として実態調査や対策を文部科学省へ求めるそうだが、生活環境の整備には、学校教育だけでなく、病院や行政手続き等でのサポートも必要になる。そのため、同じ言語の人は、ばらばらではなく、まとまって住んでもらうと、低コストで済むそうだ。 外国人労働者 *1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S10997074.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2014年2月25日) 「年20万人」移民受け入れで人口1億人維持 内閣府試算 外国からの移民を毎年20万人受け入れ、出生率も回復すれば100年後も人口は1億人超を保つことができる――。こんな試算を内閣府が24日示した。何もしなければ、2110年には4286万人に減る。移民が、働き手の減少や社会保障の負担増に直面する日本を救うのか。政府は議論を本格化させる。政府の経済財政諮問会議の下で50年先を見すえた課題を話しあう専門調査会「選択する未来委員会」の第3回会合で示された。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計では、日本の人口は2012年の1億2752万人から、100年後は3分の1程度に減る。内閣府は、移民を15年以降に年20万人受け入れ、1人の女性が一生に産む子供の平均数にあたる「合計特殊出生率」も人口が維持できる水準とされる2・07に上がるケースを想定して人口を推計した。移民が定住したり、子どもが生まれたりして2268万人の「人口押しあげ効果」があると試算。出生率も回復すれば、2110年の日本の人口は1億1404万人になるとはじいた。今後は委員会の作業部会でも議論を進め、年内に報告書をまとめる。 *1-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26921 (日本農業新聞 2014/4/5) 人口減への対応課題 食料・農業・農村基本計画見直し本格化 食料・農業・農村基本計画の見直し論議が本格化してきた。食料の安定供給の在り方などを議論する上で今回、論点の一つになるのが、日本全体の高齢化・人口減少と、それに伴う食料需給の動向だ。需要面では、国内の人口が減少局面に入り、供給面でも農家の高齢化が急速に進むなどして生産基盤の縮小が深刻化する。食料の6割を海外に依存する日本にとって、食料自給率の引き上げは依然、最重要課題だが、同時に生産基盤そのものに着目した「自給力」の強化も重要性を増している。 ◇自給力の重要性高まる ・基幹従事者減少が加速 「日本の人口減少が本格化して初めての計画となる。今後の社会変化を見越して、従来よりも長期的な視点での議論が必要だ」。基本計画の見直し案を検討する農水省の食料・農業・農村政策審議会企画部会の中嶋康博部会長(東京大学大学院教授)は議論スタートに当たり、提起した。基本計画は10年間を見据えて策定する。今回は2015年にまとめるが、10年後の25年以降、日本では人口減少が加速している見込みだ。国立社会保障・人口問題研究所によると、15年の日本の人口は1億2660万人となり、10年と比べて2%減ると予測。それまでの増加傾向が減少に転じ、30年には1億1000万人台に落ち込むと見通す。人口が減れば食料の必要量も減るが、国内の生産基盤も揺らぐ。今ですら基幹的農業従事者174万人のうち、6割は65歳以上。半数超の農家が高齢者である半面、将来の食料生産を担う40代以下は1割しかいない。こうした前提の下、食料の安定供給をどう描くかが今回の基本計画見直しの大きな課題となる。自給率目標や「自給力」を表す指標を掲げるだけでなく、維持・向上に向けた道筋を具体的に描き、実践していくことが、特に重要になる。 ・「自給率」は実現性重視 現行のカロリーベース自給率目標は20年に50%の達成を目指しているが、12年は39%。目標と実際の数値には大きな差があり、最近5年間は08年の41%以降、少しずつ下がり続けている。このため企画部会や自民党内では、新たな目標設定に向けて「実現可能な目標を定めるべきだ」との指摘が出ている。企画部会メンバーの生源寺眞一名古屋大学大学院教授は、現行目標の「持てる資源を全て投入した時に初めて可能になる高い目標」という位置付けを疑問視。新たな目標は「国民の食べ方の移り変わりや生産体制の状況を踏まえ、可能性を積み上げた目標を設定するべきだ」と強調する。農水省も自給率低下の背景に「食生活の大きな変化」を挙げる。長期的な動きとして、自給率の高い米の消費が減り、低い畜産物などの消費が増えたと整理する。自給率目標は生産現場からの視点も欠かせない。萬歳章JA全中会長は部会の中で、人口や食生活の変化に加え「農業経営の視点からの検証」を提起している。農水省は自給率低下の要因を「消費の変化に国内の生産体制が対応できなかった」と分析するが、萬歳会長は「なぜ対応できなかったのか、多面的な分析が必要」と指摘する。 ・国際需給の逼迫に備え 今回の見直しでは「自給力」をどう定めるかも焦点だ。農水省は自給力について、輸入依存度が高い日本の食料事情を踏まえ、不測の事態に備えた「潜在的な供給能力」と位置付ける。ただ、詳細な定義は定まっていない。今回の見直しの中で明確にし、維持・向上の手立てを探る考えだ。農水省が自給力を検討課題に挙げたのは「将来、国内の食料安定供給に支障が出る可能性がある」(食料安全保障課)との危機感からだ。世界の人口は日本と違い、増加傾向にある。国連の推計によると12年に70億人を突破し、25年には80億人に達する見込み。人口増加などによって世界の食料需給が逼迫(ひっぱく)する可能性がある一方、日本国内の食料生産を支える農家や農地面積は減り続けている。こうした状況から農水省は、自給力の維持・向上が必要だと判断。自給力の構成要素は(1)農地・農業用水などの農業資源(2)農業者(担い手)(3)農業技術――と整理しており、この3点に基づき議論することになる。部会では「自給力は高める必要がある」との認識で一致している。「引き上げの目標を定めるべき」「国民に分かりやすく説明する必要がある」との意見が出ており、今後の議論で詰めていく。部会は今後、7月ごろまで現行計画の検証を集中的に進める。検証結果を踏まえて秋以降、計画案の取りまとめに入り、来年3月には決定する。 *1-3:http://qbiz.jp/article/35173/1/ (西日本新聞 2014年4月7日) 九州インフラの老朽化が深刻 維持補修費、財政を圧迫 高度成長期に整備された公共インフラの老朽化が九州でも深刻化している。九州7県と3政令市では、公営住宅(耐火構造)の4割近くが、改築の目安となる築35年を過ぎており、20年後には9割弱に達する。道路橋とトンネルでは1割超が、劣化が顕著になる築50年を経過、20年後には5割に及ぶ見通しだ。維持補修費は自治体財政を圧迫。人口減が続く中、補修の優先順位決めは不可避で、将来的には利用の少ないインフラの廃止を含めた見直しも迫られそうだ。西日本新聞が10県・市に取材。将来分については、抜本的な対策を施さない場合の数字を集計した。公営住宅は築35年を過ぎると建て替えに際して国から補助を受けることができ、既に10県・市では37・9%が対象となっている。20年後には佐賀、熊本両県でこれが95%を超え、全体でも86・9%に跳ね上がる。橋とトンネルで築50年を過ぎたのは13・9%だが、20年後には49・4%と加速度的に増加。北九州市は79・1%となる。架設時期が不明な橋がある自治体も多く、実際の割合はさらに高くなる。下水道管は20年後、法定耐用年数の50年を超える割合が北九州市で50%、福岡市で40%を超える。10県・市の橋とトンネル、公営住宅の維持補修額の合計は、2012年度の約470億円から、14年度は約500億円に増加(いずれも当初予算)。国土交通省の推計によれば、全国のインフラの維持管理や更新費用は33年度に年間5兆5千億円に達し、13年度の1・5倍に膨らむという。政府は昨年11月、「インフラ長寿命化基本計画」を策定。地方自治体に対し、全体の維持更新費の将来見通しなどを示す行動計画の策定を求めている。 *1-4:http://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20140405&c=DM1&d=0&nbm=DGKDASFS0404H_U4A400C1EA2000&ng=DGKDASFS0404N_U4A400C1EA2000&ue=DEA2000 (日経新聞 2014.4.5) 介護業界、期待強く 25年までに100万人増必要 現在、日本で働く外国人労働者は68万人。労働力人口全体に占める割合はわずか1%と、主要国で最も低い。政府は今回、外国人の受け入れ拡大に一歩踏み出すが、まずは建設、介護など国民の理解が得られやすい分野から始める。慢性的な人手不足に悩む介護分野。政府は団塊の世代が75歳以上となる2025年には介護職員数を現状から約100万人増やす必要があると推計する。だが「給与が上がりにくく仕事もきつい」(九州の有料老人ホーム経営者)ため、人材がなかなか定着しない。経済連携協定(EPA)に基づき、2008年に導入した外国人介護福祉士制度もうまく機能していない。インドネシア人とフィリピン人候補者の国家試験の合格率は4割程度。日本人も含めた全体の合格率(6割強)と開きがある。日本語による試験が壁だ。家事分野でも今後、働く女性がますます増え、共働き世帯による「代行のニーズが高まり人材不足感が強まる」と家事手伝いサービス、ベアーズの高橋ゆき専務は話す。建設業では人手不足で公共工事の担い手が現れない「入札不調」が頻発。2月の建設分野の有効求人倍率は2.94倍にのぼった。一方、外国人が日本で働く魅力を感じる環境づくりも課題だ。外国人技能実習制度では、劣悪な環境で長時間労働を強いる事業者も散見される。同日の会議で岸田文雄外相が「国際的批判に耐えうる制度の適正化が必要」と訴えた。民間議員からは、法律に基づいて事業者への厳しい立ち入り検査ができる仕組みが必要との指摘があった。移民政策を巡っては「社会的なあつれきも懸念される」(明治大学の飯田泰之准教授)と慎重な声が根強い。だが「人口減の中で、外国人を積極活用しなければならない現実がある」(法政大学の小峰隆夫教授)のも確かだ。 *1-5:http://qbiz.jp/article/35113/1/ (西日本新聞 2014年4月4日) 家事支援や介護に外国人活用 成長戦略で首相が検討指示 安倍晋三首相は4日、経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会議で「女性の活躍推進や経済成長の観点から、外国人材の活用の仕組みを検討してもらいたい」と述べ、女性の就労を促すため、家事支援や介護などの分野で外国人労働者を受け入れる制度の検討を指示した。製造業などに限られている現行の外国人技能実習制度も対象業種の見直しを指示。6月にまとめる新たな成長戦略に盛り込む方針だ。日本は人口減少による働き手不足が経済成長の妨げになると懸念されており、外国人の受け入れ拡大は経済界で要望が強い。一方、外国人の生活環境整備が十分ではないとの指摘や、低賃金で働く外国人が増えると日本人の賃金低下を招くとの見方もある。治安面や地域社会への影響といった観点からの慎重論も根強く、今後の議論の焦点になりそうだ。首相は合同会議で、外国人活用策に関して「移民政策と誤解されないよう配慮する」と説明。地域限定で規制緩和する国家戦略特区で先行して実施する考えも示した。諮問会議の民間議員は、就業を希望しながら育児や介護のため働けない女性が220万人強いるとし「外国人のサポートを検討するべきだ」と主張した。競争力会議の民間議員も、子育て世帯向けの家事支援サービスに加え、農林水産業での短期就労など、外国人向けの新たな就労制度を提案した。厚生労働省によると、2013年10月末時点の外国人労働者は約72万人。近年、増加傾向にはあるが、外国人技能実習制度の利用者などに限られている。 *2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11070232.html (朝日新聞社説 2014年4月6日) 技能実習拡充 これでは出稼ぎ労働だ 人手不足は深刻なのに、若者らは就職してくれない。ならば外国人に頼るしかない。ただ、定住してもらっては困る。日本で働ける期間を最長2倍に延ばすが、必ず帰国させる。政府が建設分野で決めた緊急対策は、突き詰めればそういうことになる。こんな場当たり的な対応でうまくいくだろうか。対策の中心は、外国人技能実習制度である。人づくりを通じて新興国や途上国の発展を支援することが目的で、3年を上限に働いてもらう仕組みだ。そこに「特定活動」という在留資格をからませる。在日外交官の家事使用人やアマチュアスポーツ選手らに出してきたビザで、技能実習を終えた人にも2~3年の滞在を認める。東京五輪が開かれる2020年度までの限定措置という。技能実習制度で働く外国人は全分野で約15万人。「途上国支援」という目的はかすみ、国内の人手不足を埋める手段になってきたのが実態だ。法律を無視した長時間労働や賃金の不払い、暴力などの人権侵害もたびたび明らかになっている。国会での議論や総務省の勧告、国際労働機関(ILO)や米国務省の報告書など、内外から対策をとるよう繰り返し促されてきた。政府は今回、受け入れ窓口となる団体や実習先の企業を優良なところに限ったり、国土交通省や建設業界による監視を強めたりすることを決めた。だが、まずは問題の根絶に全力をあげるべきではないか。外国人の受け入れを拡充しようという動きは、建設分野にとどまらない。技能実習の期間を3年から5年に延ばす。企業の従業員数に応じて決まる実習人数の枠を広げる。対象業種を増やし、介護分野などを加える――。自民党はこんな提言をまとめ、政府も経済財政諮問会議や産業競争力会議で検討を始めた。一方で、労働者の本格的な受け入れと定住、いわゆる移民問題には及び腰だ。「移民は考えていない」「国民的な議論が必要」などというだけだ。海外の基準に照らすと、5年も6年も働く外国人は移民にほかならないという見方がある。働き方の実態をみれば、「実習が基本だから」という理屈は国際的に通用しないだろう。多くの問題を放置したまま技能実習の拡充を急ぐ政府に対し、ある関係者は「まるで出稼ぎ労働の拡大だ」と批判する。安倍政権は、この指摘にどう答えるのか。 *3:http://mainichi.jp/select/news/20140301k0000e040264000c.html (毎日新聞 2014年3月1日) 在日外国人:子供の不就学1万人「国際人権規約に違反」 ◇研究者ら国に対策要請へ 弁護士や研究者らで作る国際人権法政策研究所(所長、本岡昭次・元参院副議長)は、日本在住の外国人に教育が義務化されておらず、多数の子供が就学していないのは「国際人権規約に違反している」として、3日、実態調査や対策を文部科学省へ求める。日本に住む、小中学齢期の外国人約10万1500人の4割弱、約3万8000人が日本の小中学校に通っていない。多くは文科省が正規の小中学校と認めない外国人学校に在籍するが、1万人以上は完全な不就学とみられる。文科省は、外国人不就学の詳細な全国調査をしていない。昨年4月、国連社会権規約委員会は、日本への勧告で「多数の外国人児童が学校に通っていない」と懸念を示した。国際人権法政策研究所のメンバーが会議を傍聴、この問題を調べている。文科省の学校基本調査によると、2013年5月1日現在、全国の小中学校に通う外国人は6万3497人。法務省の在留外国人統計(13年6月末現在)で、6〜14歳の外国人は10万1485人。約3万8000人(37%)が小中学校に通っていない計算になる。外国人学校などにも通わない完全な不就学者数は公式な統計がないが、従来の研究で、少なくとも1万人以上とされてきた。在日韓国・朝鮮人らは、ほぼ全員が学校に在籍するとみられる。逆に在日ブラジル人は、約2万1000人のうち完全な不就学者が推計8000人(38%)程度とされる。国際人権法政策研究所の戸塚悦朗事務局長は「外国籍の子供の義務教育は、在住国政府による保障が一般的だ。外国人学校も正規の小中学校と認めて助成などをし、さらに完全な不就学の子供も支援すべきだ」と話している。文科省大臣官房国際課の森祐介係長は「希望する外国人は日本の義務教育を受けられるうえ、日本語能力が不十分な児童生徒への対応もしている」とし、国連の勧告には「現在の施策の延長で就学率を上げたい」としている。 PS(2014.4.14追加):*4のように、日弁連では、2013年6月20日付けで、「外国人技能実習制度の早急な廃止を求める意見書」をまとめ、2013年6月26日付で厚生労働大臣、法務大臣に提出し、*4のHPにPDFファイルの完璧な意見書全文が掲載されているが、これが無視されたのは問題だ。 *4:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2013/130620_4.html (2013年6月20日 日本弁護士連合会) 外国人技能実習制度の早急な廃止を求める意見書 日弁連では、2013年6月20日付けで、「外国人技能実習制度の早急な廃止を求める意見書」を取りまとめ、6月26日付けで厚生労働大臣、法務大臣に提出いたしました。 <本意見書の趣旨> 1 外国人技能実習制度は、これを速やかに廃止するべきである。 2 外国人技能実習制度を廃止した上で、非熟練労働者の受入れを前提とした在留資格を創設し、外国人を受け入れることについて、その是非、その範囲及び制度が変更されるまでの間の現在の技能実習生の処遇などを、外国人の人権にも配慮した上で、早急に国会などの場で十分に検討するべきである。
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2014,01,18, Saturday
(1)脱デフレ(インフレ)はどれだけ進んだか
*1で「2%の物価上昇を目指す」として始まった金融緩和と円安の影響で、消費者物価は20~30%上昇した。私が、それに気がついたのは、去年と全く同じ買い物をした年末のスーパーでの支払いが、去年より20~30%程度多かったため、変に思ってその理由を考えたからだ。そうすると、2012.11.30に円は82円台、同12.31には85円台だったのが、2013.12.31には105円台だった。そのため、輸入食材を多く使っていれば、仕入れ値が20~30%上がるため、消費者の支払いが去年より20~30%多かったのは自然だ(根拠:105/82=1.28《28%アップ》、105/85=1.24《24%アップ》)。 そのため、*4で「年末年始の消費旺盛で、百貨店の売上高が2~8%増加した」というのは、輸入衣料品の単価は20~30%上がったが、消費者が購入数量を抑えて2~8%の増加に留まったと考えるのが妥当だろう。また、「4月の消費増税を控えた駆け込み需要も出始めた家電量販店は2ケタの伸びとなっている」というのは、単なる購入時期のずれであり、景気とは関係がない。また、そのほかに「景気が良くなった」としているものも、人の幸福を増す自然な景気のよさではないし、名目と実質を混同している。 (2)働く世代は、何%のベースアップなら同じ生活水準を守れるのか このような中、*1、*2、*3のように、「インフレ政策をとり、消費税率を10%まで引き上げよ」という声が、財務省を中心とする政府・経済界・メディアから出ている。 一方で、「景気が良くなれば、賃金のベースアップがある」という理屈もあるが、仮に物価が25%上がり、消費税が8%になった場合、賃金は28%(25+8-5=28)ベースアップされなければ、以前と同じ水準の生活は維持できない。つまり、*5の「全ダイハツ労連、今春闘で、ベースアップに相当する1%以上の賃金改善を要求する方向で検討」では、全く足りないのだ。しかし、企業は、その人の生産性以上の賃金を支払うことはできないため、賃金をベースアップできるためには、カンフル剤ではない本当の生産性向上が必要なのである。 さらに、*6のように、非正規雇用は最多更新が続き、その上、正規雇用減少の政策が進められようとしており、*7のように、「生活保護受給者は昨年10月に216万4000人となり、過去最多」となっているのだ。政府の政策はおかしい。 (3)「増えつつあるシニアの消費」という本物の需要を抑える政策は、ニーズに逆らう愚策である *8に書かれているように、現在は、「年280兆円規模の国内個人消費で、60歳以上の消費額が全体の5割近くを占め、社会保障分野を中心に潜在需要が多い」わけである。そのため、その自然のニーズにあった市場を伸ばすべきで、これは、今後、中国始め世界で増加するニーズであり、輸出も可能だ。 しかし、インフレ、消費税増税、高齢者負担増、年金削減などの政府の政策は、そういう支出に備えて蓄えてきた高齢者のぎりぎりの蓄えを目減りさせ、それと同じだけ国や企業の借金を目減りさせる。そのため、これがよいことだと主張する人は、人間の道徳と経済学を勉強し直すべきだ。 *1:http://www.asahi.com/paper/editorial.html (朝日新聞社説 2013年12月31日) アベノミクス1年―中長期の視点を忘れるな この1年、日本経済はアベノミクスを中心に回ってきたといえるだろう。安倍政権は「異次元」の金融緩和と大規模な財政出動を推し進めた。幸い、世界経済も落ち着きを取り戻した。これらが日本経済の沈滞したムードを一変させたのは間違いない。物価はプラスに転じ、政府は12月の月例経済報告で「デフレ」の文字を4年2カ月ぶりに削った。しかし、金融と財政が混然一体となった異例のデフレ脱却策は、財政破綻のリスクを膨らませてもいる。危惧するのは、安全保障の強化など「安倍カラー」の政策を進めるために支持率の維持が最優先となり、景気のわずかな停滞もなりふり構わず排除する姿勢が見えることだ。来春の消費増税への対策に5・5兆円もの国費を投入するのはその典型だ。目先の景気刺激を意識するあまり、構造的な財政悪化の是正という中長期の政策がおろそかになっては、手痛いしっぺ返しが来る。 ■インフレ期待の逆流 アベノミクスで、まず打ち出されたのは日銀による金融緩和である。正式には「量的・質的金融緩和」という。以前は、緩和策の終了に備えて満期3年までの国債を市場で買っていたが、現在は3年以上の国債も大量に買い込む。2年で日銀の資産を2倍に増やし、2%の物価上昇を目指す。金融緩和への強い姿勢を示すためだが、一方で金融政策のかじ取りは難しくなる。生命線は「インフレ期待」である。家計や企業が物価高を予想して早めに支出を増やし、それが経済を活性化させ、さらに物価上昇につながる好循環を想定している。現実に、物価は上がりつつある。だが、その相当部分は円安による輸入インフレで占める。値下げ競争でデフレの元凶だったパソコンや家電で価格低下が止まったのも、輸入依存度が高まったためだ。これだけでは家計を圧迫する「悪いインフレ」である。実質的な収入が増えなければ、日銀の想定とは逆に家計の財布のひもは固くなる。インフレ期待が「逆流」しかねない。先々のインフレ率の予想も伸び悩み、金融市場では追加緩和の催促が始まった。黒田日銀総裁は「緩和策の逐次投入はしない」というが、インフレ期待を維持するために追加緩和を続ける悪循環のリスクもちらつく。こうしたジレンマを覆い隠すのが、大盤振る舞いの財政出動だ。政権発足後、補正予算を含めると年間100兆円規模の大型歳出が続く。リーマン・ショック前の好況期に比べ15%ほど多く、国債依存率も上昇した。経済全体の財政依存は深まっている。消費増税対策の補正予算も、公共事業をはじめとするバラマキ型で、古い自民党時代の赤字膨張メカニズムさながらだ。 ■劣化する財政規律 そもそも消費増税は、社会保障を持続可能なものにするための第一歩である。国民に負担増を求める以上、中長期の歳出抑制につながる財政改革に力を注ぐべきだった。ところが、安倍政権では社会保障との「一体改革」という位置づけは遠景に退き、増税対策の名目で予算の分捕り合いが展開される。財政規律は「量的・質的」にむしばまれていると言わざるをえない。日銀の金融緩和が長期金利を抑え込んでいることが、政府与党の慢心を助長していることも否定できまい。結局、アベノミクスは金融と財政の「上げ底」ミックスに過ぎない―。いずれ、そんな疑念が深まるのを恐れる。それは、日銀の緩和策が財政赤字の穴埋めだという見方を広げ、国債暴落(金利急騰)の引き金になりかねない。安倍政権は、企業に対する賃上げ要請に力を入れている。9月から続いた政労使の協議は、合意文書で来年の春闘での「賃上げ」を明記した。インフレ期待の逆流を防ぐのに賃金上昇が重要であるのは事実だ。円安メリットを享受する主要企業が率先して労働者に還元すべきことも論を待たない。 ■暮らしの底上げを ただ、賃上げやベアはあくまで労使の努力で主体的に生み出すものだ。成果を急ぐような政府介入は弊害が大きい。春闘の中心は製造業の大企業であり、対象は正社員だ。むしろ政府が果たすべき役割は、サービス業や非正規労働者、中小企業での賃上げに向けた環境整備である。例えば、巨大な潜在需要がありながら、低賃金労働が一般化している福祉・介護の分野だ。介護保険など制度に縛られた面が大きく、ここを社会保障の改革の中で相応の所得を生む仕事に変えていく。暮らしの底上げを目指す成長戦略に目を向けるときだ。 *2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140107&ng=DGKDASFS06029_W4A100C1PP8000 (日経新聞 2014.1.7) 財務相「消費税10%達成を」 7~9月が重要と指摘 麻生太郎財務相は6日、職員向けの年頭挨拶で「(消費税率10%に)到達しなければ我々の本来の目的は達成できない」と述べ、税率上げに意欲を示した。政府は税率を4月に8%にした後、2015年10月に10%へ上げる予定。経済状況を慎重に見極めたうえで、年内をメドに安倍晋三首相が10%に上げるかどうかを最終判断する。麻生財務相は「4~6月、7~9月の結果がすべてを語る」とも指摘。今年4月の増税後に減速するとみられる景気が、7月以降に回復に向かうかが判断の分かれ目になるとの考えをにじませた。7~9月期の経済状況が重要なのは、首相判断の直前とみられる今年12月に、この時期の国内総生産(GDP)の改定値が発表になるためだ。日本経済研究センターがまとめた民間エコノミスト41人の経済予測の平均をみると、実質成長率は前期比年率で4~6月期がマイナス4.62%、7~9月期がプラス1.89%になる見通しだ。 *3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140108&ng=DGKDASFS0704D_X00C14A1PP8000 (日経新聞 2014.1.8) 「消費税10%必ず実現を」 経済3団体トップが年頭会見で一致 経団連、日本商工会議所、経済同友会の経済3団体トップは7日、新年の合同記者会見を都内で開いた。政府が2015年10月に予定する消費税率10%への再引き上げについて、社会保障の充実や財政再建の観点から「必ず実現すべきだ」(米倉弘昌経団連会長)との意見で一致した。安倍晋三首相は今年4月の消費税率8%への引き上げが日本経済に与える影響を慎重に見極めた上で、10%に上げるかどうかを年内をめどに最終判断する方針。米倉会長は「消費税を社会保障目的の税として手当てすることで財政健全化につながり、国際的な信認が強まる」と再引き上げの必要性を強調した。日商の三村明夫会頭も「8%への引き上げだけでは、社会保障と税の一体改革は達成されない」と指摘した。デフレ脱却に向けた賃上げの必要性でも足並みをそろえた。同友会の長谷川閑史代表幹事は「この機を逃すと、日本が成長軌道に戻るのは難しくなる。経済にプラスになることは協力する」と賃上げに前向きな考えを示した。米倉会長も「景気の好循環を目指して、会員企業に賃上げをお願いする」と語った。会見に先立つ3団体の新年祝賀パーティーには過去最高の1850人の経営者らが集まり、安倍首相も出席した。首相は「賃金と消費を拡大し、企業が収益を増やして設備投資するという好循環を実現したい」と強調した。 *4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140107&ng=DGKDASGF0606O_W4A100C1EA2000 (日経新聞 2014.1.7) 年末年始の消費旺盛 百貨店の売上高2~8%増 小売り各社の店頭がにぎわっている。ボーナス商戦から初売りまでの百貨店の売上高は前年同期比2~8%増え、4月の消費増税を控えた駆け込み需要も出始めた家電量販店は2ケタの伸びとなっている。個人消費の好調は増税直前の3月末まで続く見通しだ。百貨店では宝飾品などの高額品に加え、主力の衣料品も伸びた。株高の資産効果に加え、冬のボーナス支給額の増加も押し上げ要因になった。大手5社が6日発表した12月の既存店売上高(速報値)は全社が2カ月連続プラス。年明け以降は伸びが大きくなっている。三越伊勢丹の12月の売上高は6.6%増。旗艦店の伊勢丹新宿本店(東京・新宿)では宝飾・時計が30%増、婦人服が26%増だった。大丸松坂屋百貨店も12月は3.6%増。年明けの2~5日は冬物衣料のセールの効果もあり、プラス幅は5.7%に拡大している。家電量販店ではエアコンや冷蔵庫など白物家電が好調。ケーズホールディングスの12月1日~1月5日の売上高は10%増え、「高単価・高性能商品の売れ行きがよい」。ビックカメラでは1月に入り、20万円程度する白物家電に人気が集中。販売額はエアコンや冷蔵庫が70%増、洗濯乾燥機は60%増となっている。インターネット通販でも単価の高い商品が人気を集めた。12月の取扱高が過去最高となったヤフーの通販サイト「ヤフーショッピング」では家電や自転車などの取り扱いが30~40%増えた。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは12月の個人消費を前年同月比3%増の27兆1000億円と試算。先行きも1~3月は2%前後の伸びとなる一方、駆け込み需要の反動減などが見込まれる4~6月は3%台のマイナスになるという。ただ、景気回復による賃上げの期待感が高まるなか、百貨店業界では「前回の増税時より影響は軽微」(J・フロントリテイリング)といった見方も広がっている。 *5:http://qbiz.jp/article/30135/1/ (西日本新聞 2014年1月8日) 全ダイハツ労連、1%以上ベア要求へ 他労組に影響も ダイハツ工業グループの労働組合で構成する全ダイハツ労働組合連合会(約2万5千人)が、今春闘で、ベースアップ(ベア)に相当する1%以上の賃金改善を要求する方向で検討していることが8日、分かった。14日の中央委員会で正式決定する。自動車メーカーの労組では、全トヨタ労働組合連合会が具体的な金額を盛り込まずベアを要求する方向で調整している。具体的な賃上げ要求の数字が明らかになったのは全ダイハツ労連が初めて。今春闘での他労組の動きに影響を与えそうだ。ダイハツ工業は2013年9月中間連結決算で過去最高の売上高を計上。業績が上向いているため「目安を示した方が、春闘に臨みやすい」(労組関係者)と判断した。前年と比べて平均月給を1%以上増やすよう求めていく方針。年齢が上がるごとに賃金も上がる「定期昇給」に加え、賃金体系を底上げするベアにより、組合員の生活水準を向上させる。一律の賃上げか、若い世代に手厚く配分するかなど、具体的な要求内容は組合ごとに決めるという。上部組織の自動車総連はベアを要求する方針案を確認したが、「各社の業績にばらつきがある」などとして具体的な賃上げ額を示していない。ダイハツ工業はトヨタ自動車の子会社だが、全ダイハツ労連と全トヨタ労連は別組織として活動している。 *6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014010902000153.html (東京新聞 2014年1月9日) 非正規 最多更新続く 安倍政権 正規減少の政策推進 派遣社員やパートなど非正規労働者の数が過去最多を更新し続け、四割に近づいている。安倍晋三首相は経済政策の成果として、雇用の改善を挙げるが、実態は非正規労働者の急増に支えられ、正社員など正規雇用は減っている。安倍政権は企業の競争力を強化するため、正社員のさらなる減少につながる政策も推し進めようとしている。首相は年明け後も景気の回復を強調し、七日の会合では「今年も経済最優先で日本経済をしかるべく成長させていく」と述べた。だが、少なくともその恩恵は国民全体にまで広がっていない。総務省の労働力調査によると、非正規雇用者は昨年十一月時点で、千九百六十四万人と過去最多になった。雇用者全体に占める割合も増加傾向が続き、政権発足直後の昨年一月と比較して1・9ポイント増の37・2%。働く人の三人に一人が非正規雇用という水準を大きく超えている。 雇用改善を主張する首相の根拠は、全体の雇用者数が昨年一月から十一月までの間に百六万人も増え、五千二百七十四万人となった点だ。しかし、それは非正規にあたるパートやアルバイトが百十一万人増えたためで、正規雇用は逆に二十六万人減少した。厚生労働省がまとめた有効求人倍率にも同じ傾向が見られる。昨年一月に〇・八五倍だった有効求人倍率は、十一月には一・〇〇倍に回復。ただ、正社員に限れば〇・六三倍にとどまる半面、パートは一・三〇倍に上る。ここでも非正規雇用の求人が全体の倍率を押し上げている。安倍政権はさらに、正規雇用の減少につながりかねない政策に意欲を示す。昨秋の臨時国会で成立した国家戦略特区法では、規制緩和の一つとして、有期雇用期間の延長を検討している。現在は契約社員などの有期雇用者は、五年勤めれば正社員となれるように要求できるが、それを十年程度に延長する。政府は「期間を区切ったプロジェクトがやりやすくなり、専門家を集めやすくなる」というが、正規雇用になる道を狭めかねない。 *7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014010802000232.html (東京新聞 2014年1月8日) 生活保護受給216万4000人 昨年10月、過去最多 厚生労働省は八日、全国で生活保護を受けている人が昨年十月時点で二百十六万四千三百三十八人(前月比四千五百三十人増)となり、過去最多だったと発表した。これまで最も多かった昨年三月の二百十六万一千五十三人を七カ月ぶりに更新。受給世帯数も百五十九万四千七百二十九世帯(同三千八百十八世帯増)で、過去最多だった。厚労省は、低年金や無年金で生活保護に頼らざるを得ない高齢者が増えていると分析している。世帯別では、六十五歳以上の高齢者世帯が全体の約45%を占め、七十一万九千三百九十八世帯(前月比二千三百九十九世帯増)。働ける世代を含む「その他の世帯」は二十八万八千六百三十世帯(同四十五世帯増)だった。受給者は二〇一二年十二月に二百十五万人を突破し、その後も高水準で推移している。政府は生活保護費のうち食費や光熱水費に充てる「生活扶助」の基準額を今年四月に0・4%引き上げる。物価下落などに伴い実施する基準額引き下げ分と、消費税増税に伴う引き上げ分を相殺し、決定した。 *8:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140109&ng=DGKDASDC0800I_Y4A100C1EA1000 (日経新聞 2014.1.9) シニア消費 伸び鮮明 60歳以上の世帯46%占める 企業、市場発掘急ぐ 年280兆円規模の国内個人消費で、60歳以上の高齢者を世帯主とする家計の存在感が一段と高まっている。政府の家計調査によると、2013年11月の2人以上の世帯では65~69歳の消費額が前年同月比8.3%増え、全世帯の伸び率(2.1%)を上回った。60歳以上の消費額は全体の5割近くを占めるようになり、企業も生活支援サービスなど有望市場の発掘を急ぐ。社会保障分野を中心に潜在需要も多く、規制緩和も重要になる。11月の65~69歳以上の世帯の消費額は28万7807円。全世帯の平均額27万9546円を約1万円上回った。株式などの有価証券の約7割を60歳以上の世帯が保有しており、足元の株高効果でシニア消費の伸びが大きくなっている面がある。シニア消費は高齢者人口の伸びを上回っている。総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は00年の17.4%から13年には25.2%に上昇。一方、国内消費全体に占める65歳以上の世帯の比率は18.4%から34.2%(11月時点)まで上がった。60歳以上の世帯で見ると消費額は全体の46.6%を占め、従来の主力だった40~59歳の世帯の消費(40.8%)と比率が逆転した。晩婚化で60歳を過ぎても子供と同居する高齢者が増加。定年延長の影響で、2000年代後半に60歳以上になった「団塊の世代」を中心に働く人も増えている。シニア消費の存在感の高まりは企業データからも浮かぶ。イオンは12年秋に55歳以上向けの電子マネー「G・Gワオン」の発行を始めた。会員数は200万人を超え、平均利用回数は月10回とイオンの電子マネー全体(6~7回)を大幅に上回る。今後の有望市場は、一歩踏み込んだ生活支援サービスだ。「最も力を入れていくのは宅配サービスだ。潜在ニーズはすごく大きい」。セブン―イレブン・ジャパンの井阪隆一社長はこう語る。同社は現在、全国約1万6000店の8割近くで日替わり弁当や総菜などを届ける「セブンミール」を展開。受注が多い店舗には13年度中に超小型電気自動車「コムス」を1200台も配備。15年度をめどに宅配の売上高を12年度実績の5倍の1000億円に伸ばす。居酒屋チェーンのワタミは、高齢者向けの弁当宅配を居酒屋に代わる主力事業と位置付ける。同事業の14年3月期の売上高は456億円と前期比18%伸びる見通し。同じように考える企業は多く「新規参入が増え、競争は激化している」(同社)という。介護大手のセントケア・ホールディング(HD)は1月から、高齢者の買い物や通院などの外出を支援するサービスを開始。訪問入浴サービス大手のアースサポート(東京・渋谷)も家事代行業に参入した。外出支援や一部の家事代行には介護保険が適用されず自費負担になるが、単身の高齢者を中心に身の回りの世話を手伝ってほしいという需要は多い。民間企業の創意工夫が生きるように規制を緩和するなど、政府側の取り組みも不可欠だ。
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2014,01,07, Tuesday
(1)派遣労働者の多くは、自ら選んで派遣労働者になったわけではない *1に「労働者派遣法の見直しに向けた審議会の議論が続いているが、大事なのは派遣という働き方を選ぶ人が仕事に就く機会を狭めないことだ」と書かれている。しかし、記事の中に書かれているとおり、「賃金などの待遇は自助努力」というのが派遣社員の立場であり、「期限を切らずに派遣で働ける通訳、秘書」として働いているのは、圧倒的に女性が多い。そして、彼女らは、正規雇用の道があったにもかかわらず派遣という働き方を選んだのではなく、正規雇用の道がないから派遣で働いている人が殆どだ。そのため、働き方の多様化を確保するために派遣制度があるというのは、事実のすり替えも甚だしい。 なお、正規雇用であれば、雇用者は、男女雇用機会均等法により、女性労働者であっても仕事に必要な能力を高められるよう、男女平等に配置して昇進させる義務があるが、派遣労働者にはその義務がないため、派遣労働者がいくら学び続けて職業能力を高めても昇進はない。そして、*4のように、老いれば、正規社員よりずっと早く退職となる。そして、それこそが、派遣労働が導入された意味だった。 (2)非正規雇用・パート・有期雇用も、雇用上の差別である *2、*3の非正規雇用・パート・有期雇用は、正社員と同じ組織が雇用しているが、同じ権利は保障されない労働者である。仮に賃金単価が同じになったとしても労働条件が異なるため、労働者差別だ。そして、非正規・パートにも女性が多く、有期雇用には高齢者が多いが、自らの選択権を行使した結果、この雇用形態を選んだ人は少ない。そして、厚生労働省も労働基準監督署もこの状態を容認しているのであり、日本は、「生産年齢人口の日本人男性以外には、雇用上の不利益を与えてもよい」と考える国であることが問題なのである。 (3)外国人労働者に対する差別 *5のように、「政府、自民党は、国内の建設現場に受け入れるベトナムなどアジア諸国からの技能実習生を拡大する方向で検討している」とのことだが、”技能実習生”は、受入れ企業では労働者と同じに扱われることが多いにもかかわらず、研修期間中は労働者ではないとして労働関係法令が適用されないため、賃金や時間外労働等に関するトラブルが多発している。 そのため、私は、若い労働者が足りないから日本で働いてもらう外国人である以上、日本人と差別することなく日本の労働関係法令を適用すべきだと考える。何故なら、そうすることによって、本人が幸福であるだけでなく、日本の外交も明るくなるからだ。その理由は、日本に対して恨み骨髄で母国に帰った人と、日本に感謝しながら母国に帰った人とでは、帰国後の日本に対する態度が全く異なり、その積み重ねは、国の外交にも大きな影響を与えるからである。 (4)“ブラック企業”と厚生労働省、労働基準監督署 *6には、「厚生労働省が9月、全国5千社余りに実施した集中的な立ち入り調査で、実に82%の企業から長時間労働や残業代の不払いなどが見つかり、是正を勧告した」と記載されているが、流れ作業で作業している工場労働者と異なり、ホワイト・カラーの場合は、長時間働いた人が多くの仕事をしたとは限らない。例えば、同じ仕事を2人の人にやらせると、能力のある人は6時間で終わり、能力のない人が10時間かかって、能力のない人の方が2時間の残業代分だけ収入が高くなる場合もあるのだ。 そのため、仕事は、労働時間だけでなく、仕事内容も管理・指導しなければ、実質的に有用な仕事をしたかどうかは不明であるし、仕事上の教育効果も期待できない。それにもかかわらず、労働基準監督署が一律に“ブラック企業”のレッテルを張ることこそ問題である。何故なら、民間企業は、お役所ではないため、いればいいというものではないからである。 *1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140107&ng=DGKDZO64953020X00C14A1EA1000 (日経新聞社説 2014.1.7) 派遣で働く場を狭めず処遇を良くしよう 労働者派遣法の見直しに向けた審議会の議論が続いている。大事なのは、派遣という働き方を選ぶ人が仕事に就く機会を狭めないことだ。その点で有識者らの公益委員が昨年末に示した案は問題がある。派遣は雇用が不安定だから制限するという基本姿勢だからだ。働き方の多様化を踏まえ、派遣労働を否定的にとらえないことが求められる。そのうえで賃金などの待遇を自助努力で改善できるよう、職業能力を高めやすい仕組みを整える必要がある。こうした二段構えで、派遣で働く場を制限せず、同時に派遣労働者の処遇も引き上げていきたい。公益委員の案では、有期契約の派遣労働者が同じ職場で働ける期間を3年までとした。ただし人が3年ごとに交代すれば、企業は労働組合などの意見を聴いたうえで、同じ職場に派遣労働者を受け入れ続けることができる。企業は仕事を派遣労働者に任せやすくなる。しかし派遣で働く人にとっては、3年という期間制限によって就労が打ち切られる。ほかにも派遣で働きにくくなる場面が出そうだ。期限を切らずに派遣で働ける通訳、秘書などの「専門26業務」という区分は廃止するとしている。26業務に就いていた人は、派遣会社と無期雇用契約を結ばないと、3年で仕事を替わらなければならない。派遣会社に無期契約を結ぶ余裕があるかはわからない。派遣で働く人が困ることになりかねない。こうした規制の根っこには、派遣労働を「臨時的・一時的な働き方」とする考え方がある。その位置づけを改めてもらいたい。公益委員案は派遣会社に対し、派遣労働者に計画的な職業訓練を施したり、能力開発の相談に乗ったりすることを求めた。企業の活動する場が世界に広がり、経理や貿易事務など派遣の仕事も新しい知識が要る。派遣で働く人が処遇を上げるには、学び続けて職業能力を高める必要もある。派遣会社は契約を結ぶ際、その仕事でどのような技能を身につけられるか、能力向上に役立つ仕事をほかにも用意できるかどうかなどを示してほしい。学ぶ機会があれば意欲のある人材を集めやすく、派遣会社のためにもなる。公共職業訓練の充実や、人の能力を的確に評価する仕組みづくりなども課題だ。派遣法の見直しだけでなく、派遣労働者の処遇改善に多面的に取り組む必要がある。 *2:http://qbiz.jp/article/29912/1/ (西日本新聞 2014年1月3日) もがく非正規教員 05年比4割増、弱い立場に重責 「非正規公務員」が九州の市町村で増えている問題で、学校現場でも臨時や非常勤の教員が増加している。文部科学省によると、全国の公立小中学校の非正規教員は約11万人に上り、統計を取り始めた2005年から約4割増えた。少子化傾向の中、正規の教員を増やせないためだが、立場の弱い非正規に、不登校児童の対応など難しい仕事を任せるケースも出ている。自宅を訪ねると、学校に行かない非行少年がたむろしていた。福岡県内の小学校に勤める40代の女性教員は、かき分けるように奥へ入り、担当する児童に声を掛けた。「学校行こう」。不登校の児童の担当だったのは数年前。教壇に立つことはほとんどなく、児童宅に通うのが日課。保健室にしか通えない児童の悩みを聞き、保護者の対応に追われた。問題行動のある児童から罵声を浴びたり、度重なる家庭訪問に保護者から抗議を受けたりしたこともある。先輩教員から「あなたが病気にならないように」と忠告された。 女性は県教育委員会が採用した教員ではなく、自治体が独自に任用した非正規教員。いつ雇い止めされるかと考えると、どんな仕事も拒否できない。家族の介護で残業ができないため非正規の道を選んだ。教員歴は約10年。つらい仕事も多いのに月給は約20万円。正規の半分以下だ。ベテランになれば非正規でも責任ある仕事を任せられるが、研修さえ行かせてもらえない。正規との格差は歴然だ。長崎市の小学校で非正規教員を務める20代男性は昨春、初めて学級担任となった。ただ、契約は1年。今春からも仕事があるのか、不安は尽きない。「ちゃんとした先生じゃない、とは思われたくない」。児童にも保護者にも、非正規だとは明かしていない。大学卒業後の4年間、非正規にも任用されず他のアルバイトで暮らした年もあれば、病休教員の代理で数カ月の勤務を頼まれたこともある。「断れば次に声が掛からなくなる。他の仕事をするのは難しい」。毎年、県教委の採用試験に挑んできたが、全て不合格。日常の仕事に追われながら受けた昨夏の試験は散々な結果だった。「現場で経験を積むことで、逆に合格から遠のいている気がする」とため息を漏らした。 ◆非正規率、全国で16.4% 文科省によると、公立小中学校の教員数は全国で約70万人(2013年5月1日時点)。このうち、非正規は臨時的任用教員(常勤講師)6万3695人、非常勤講師5万2050人の計11万5745人で、全教員の16・4%に上る。非常勤講師をフルタイムで勤務したと仮定した場合、非正規率が最も高いのは沖縄の15・8%で、10%超が福岡、大分、宮崎の3県を含む14府県に及んだ。一方、財政に余裕がある東京が最低の3・2%だった。教員の人件費をめぐっては、04年度に都道府県の負担割合が3分の2に引き上げられたのに伴い、都道府県が教員の配置や給与額を決められるようになった。しかし、実際は、人件費抑制のため非正規を増やす自治体が増えている。文科省は「学校運営や教育内容への影響が心配され、非正規数を抑える必要がある」(初等中等教育局財務課)と問題視している。 *3:http://www.nikkei.com/article/DGXNZO64886560V00C14A1MM8000/?dg=1 (日経新聞 2014/1/5) パート、有期雇用も同待遇 正社員と同じ仕事なら 厚労省方針、1月にも改正案 厚生労働省は雇用期間に限りのあるパート労働者も、正社員と同じ仕事をしている場合は、賃金などの待遇面を正社員と同等にするよう法改正する。これまでは無期雇用のパート労働者のみが正社員と同待遇だったが、対象者を広げる。企業がパート労働者へのボーナスを増やしたり、福利厚生を充実させたりするのを促すのが狙い。1月にも労働政策審議会(厚労相の諮問機関)でパートタイム労働法の改正案をまとめ、次期通常国会に提出する。現行のパートタイム労働法では、(1)正社員と仕事内容や責任が同じ(2)人事異動がある(3)契約期間が無期――の3条件を満たすパート従業員について、賃金などの待遇面で正社員と差別してはならないと定めてある。今回の改正では(3)の条件をなくす。 法改正で、正社員並みの待遇を受けられるパート労働者は現在の約17万人(全体の1.3%)から10万人程度増える見通し。ボーナスや手当も正社員並みになり、福利厚生施設の利用や研修も正社員と同じように受けられるようになる。ただ、雇用期間以外の条件は法改正後も残るため、例えば人事異動がないパート労働者などは対象にならない。パート労働者の7割は女性が占める。安倍政権は女性の活用に力を入れており、厚労省はパート労働者の待遇の向上で労働意欲を高める。ただ、対象となるパート労働者を雇用する企業にとっては負担増になる。日本も加盟する国際労働機関(ILO)は性別や雇用形態で賃金などの待遇に差をつけない「同一労働・同一賃金」を実現するため、加盟各国に法整備を求めている。 *4:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2002Q_S3A221C1SHB000/?dg=1 (日経新聞 2014/1/3) 老いるニート、孤立化進む(家族のかたち) 自立支援の決め手なく 昨年11月の平日の昼下がり、思い立ってアパートを出た。髪を整えるのも、靴ひもを結ぶのも3カ月ぶり。青々としていたイチョウの葉はいつの間にか黄色く染まっていた。「まるで浦島太郎だ」。つぶやきが口をつく。千葉市の小沢猛さん(仮名、43)は9年前に退職してから働いたことがない。大卒後に正社員として就職できず、アルバイトや派遣を転々とした。最後は運送業。心身ともに疲れ果て、その後、求職活動はしなかった。 ■親の年金が頼り 毎月末、近所に住む母親(69)が振り込む15万円が唯一の収入源。部屋でテレビを見たり、ゲームをしたりするうちに日が暮れる。母親は「幼い頃から、私も夫も仕事であまり構ってあげられなかったからかも」と話す。年金生活で息子を支えるのは楽ではないが「罪滅ぼしのつもり」という。2005年の労働経済白書に「ニート」が登場してから9年。「通学や家事をせず、求職活動もしていない15~34歳」が国の定義だ。全国に約60万人と推計されている。そのニートが高齢化しつつある。玄田有史東京大教授が過去の国の調査を基に計算したところ、35~49歳の「中年ニート」は02年時点で49万人いた。バブル崩壊後の「就職氷河期」も背景に、現在はさらに増えている可能性がある。2001年に日本初の「ひきこもり外来」を設けた医療法人「佐潟荘」(新潟市)。週2回、引きこもり患者が集まる。雑談やゲームを通じ、人付き合いに慣れるのが目的だ。多い時で60人ほどで、35歳以上も約4割いる。10年前から通う男性(42)もその一人。「対人関係の疲れ」から引きこもった。仕事に就くあてはない。 *5:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2604035.article.html (佐賀新聞 2014年1月3日) 建設現場の外国人雇用拡大を検討 / 政府、五輪へ人手不足対策 政府、自民党が、国内の建設現場に受け入れるベトナムなどアジア諸国からの技能実習生を拡大する方向で検討していることが3日、分かった。2020年の東京五輪に向けた建設ラッシュが始まるのを前に、建設業の人手不足の緩和策として外国人労働者を増やす考えだ。技能実習の期間延長などを軸に、五輪までの時限措置とする案が有力で、14年中に入国管理の法令改正作業に入る見通し。建設現場の雇用は外国人に依存する形に変化する可能性がある。 *6-1:http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=313120&nwIW=1&nwVt=knd (高知新聞 2013年12月23日) 【ブラック企業】複合的に監視の強化を あらためて現代社会が抱える闇の一端が浮き彫りになった。過酷な働き方を強いて若者らを使い捨てにする「ブラック企業」のまん延である。厚生労働省が9月、全国5千社余りに実施した集中的な立ち入り調査で、実に82%の企業から長時間労働や残業代の不払いなどが見つかり、是正を勧告した。電話相談で寄せられた情報や離職率の高さを基に対象を絞ったとはいえ、法令違反のあまりの多さにその異常ぶりが表れている。企業にとって業績の重要さはいうまでもない。が、行き過ぎた利益至上主義には、社員やその家族の生活を守るという経営者の矜持(きょうじ)がみじんも感じられない。社会全体で複合的に監視を強め、包囲網を狭めていく必要がある。 日本ではいまだ早期離職は再スタートのハンディとなりかねない。ブラック企業は「代わりはいくらでもいる」と若者らの弱みに付け込み、重労働を強要していく。パワハラやセクハラ、いじめも多いという。従業員の7割が「名ばかり管理職」で残業代なし、8カ月も賃金を払わない―。調査で明らかになった実態はすさまじい。月100時間の時間外労働は過労死の認定基準になるが、なかにはパート従業員に170時間も残業させた悪質な事例もあった。これもごく一部にすぎないだろう。連合総研のアンケートでは20~30代の2割以上が自分の会社をブラック企業と答えている。その広がりはかなり深刻といえよう。 ブラック企業は社会問題化して久しく、労働行政の対応が後手に回っている印象は拭えない。最前線で取り締まる労働基準監督官が不足し、大幅な増員も見込めない状況という。だが、労働者から搾取するような経営手法を野放しにはできない。今回のような集中的な立ち入り調査を継続した上で企業名の公表など厳しい姿勢で臨み、まず法律の順守を徹底させなければならない。これほどまん延しては労働者側も自衛の意識が要る。現在、労働組合の組織率は過去最低の17・7%まで下がっている。労働者同士の横のつながり、労働相談を手掛けるNPOとの連携を深めるのも有効な対策となる。就職活動する学生も希望する職種などもあろうが、離職率といった情報を冷静に判断する目も養いたい。 *6-2:http://qbiz.jp/article/29801/1/ (西日本新聞 2013年12月28日) 84%が労基法違反 「ブラック企業」抜き打ち調査、九州・沖縄 福岡労働局は27日、過酷な労働で若者らを使い捨てる「ブラック企業」の疑いがある九州・沖縄の事業所に対する抜き打ち調査の結果をまとめ、公表した。対象とした697事業所のうち、84・9%で労働基準法違反を確認し、是正勧告した。1カ月に80時間超の残業があった事業所は22・9%。100時間超も14・6%に及び、過労死に至る恐れがある長時間労働が横行していた。調査は九州・沖縄の各労働局が9月に実施した。厚生労働省は全国の調査結果を17日に公表しており、労基法違反率の全国平均は82・0%。九州の県別では、高い順に大分89・6%、佐賀88%、熊本86・9%、福岡86・5%、鹿児島86・3%、長崎79・4%、宮崎79・1%だった。福岡労働局によると、労基法違反は、労使合意した残業時間を超えて働かせたり、残業代を支払っていなかったりしたケースが多かった。30・6%の事業所は、従業員の労働時間そのものを把握していなかった。同局管内では、西日本一円に店舗がある福岡市の小売業者が、月100時間近くの残業があるにもかかわらず労働時間を把握しておらず、残業代の未払いが疑われる事例などがあった。この企業は「シフト勤務なので、残業はそもそも発生しないと考えていた」などと説明しているという。過労による脳・心臓疾患の労災認定基準によると、(1)発症前1カ月間の残業が100時間(2)2〜6カ月間平均で80時間−を超すと「疾病との関連性は強い」と判断される。
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2013,11,14, Thursday
(1)小泉-細川元首相の「原発ゼロ」共闘は心強かった
私も、*3、*4に記載されているように、総理の持つ大きな力は多くの国民が協力できる壮大で夢のある事業に使って欲しいし、それができる時期に首相になっている安部首相は幸運だと思う。それを指摘した小泉-細川元首相の「原発ゼロ」共闘は心強く、小泉元首相の演説は確かにうまかった。 「小泉元首相の『政治で一番大事なのは方針を出すこと。そうすれば必ず知恵が出てくる』というのは無責任だ」と言う批判もあるが、知恵を出すのは民間企業や技術者・科学者であるため、事前に「こういう知恵がある」と全部列挙するわけにはいかない。しかし、方針が揺らぐと民間企業にとってはそれがリスクとなりチャレンジできないので、やはり「政治で一番大事なのは、全体の整合性がとれた矛盾のない方針を出し、揺らがないこと」であり、そうすれば、技術開発と応用が進むのである。 現在、野党は全部「原発ゼロ」の方針を出しているが、景気対策と電力自由化を公約にした自民党が衆院選、参院選ともに大勝したため、自民党から多くの賛成者が出なければ、「即原発ゼロ」は実現しない。しかし、自民党の政策が原発推進だから国民が自民党に投票したわけでないことは、世論調査から明らかである。 (2)「異業種参入」「石油・ガス会社の領域拡大」「電力会社の越境」で市場競争開始へ 改正電気事業法成立後に起こると予想していたことに、*2の「異業種参入」「他のエネルギー産業の領域拡大」「他地域の電力会社の越境」などがある。電力システム改革によって地域独占がなくなれば、工場で自家発電に慣れている企業や他のエネルギー産業が参入し、また、越境する大手電力会社も出る。中部電力は、10月から首都圏に参入し、関西電力も首都圏進出の計画を持つそうだが、自然エネルギー資源の豊富な北海道・東北・九州などからも首都圏に参入できるためには、2015年までの広域送電線整備に、電気抵抗が非常に小さい超電導電線(下左図)を使ってもらいたい。 (3)その結果、どうなる? 下のようなことが考えられる。 ①電力価格が下がる: 電力産業が地域独占でなくなり、総括原価方式を使わない企業とも競争する ことで、全体の電力価格が下がるため、電力を使用する企業の利益が増加する。 ②必要十分な電力が供給される: 電力需給が市場で調整されるため、消費者が発電方法を選択で き、電力が必要十分に供給される。 ③自然エネルギー・国産天然ガスエネルギーは、外国への支払いが生じない: 自然エネルギー・国 産天然ガスエネルギーで発電すれば、環境によいだけでなく、外国へのエネルギー代金の支払 いが生じないため、その資金を国内で循環させることができる。 ④電力輸出国になれる: 今から10年後のアジアでは、中国がエネルギー不足に陥りそうだが、日本 は電力や資源の輸出も可能だ。 ⑤結果: 消費税全額を地方に移管しても、国は国有資源からの収入と法人税により、年金・医療・ 介護、教育、保育などの資金に困らずにすむだろうし、是非とも、そうしなければならない。 *1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20131114&ng=DGKDASFS13031_T11C13A1EA2000 (日経新聞 2013.11.14) 電力市場、60年ぶり転機 改正電事法が成立、価格・サービス競争へ 地域独占を前提としてきた日本の電力市場が約60年ぶりの転機を迎えた。家庭向けを含む電力事業への新規参入を大幅に自由化する改正電気事業法が13日に成立。全国を舞台に発電や小売りの大競争が始まる。質の良いサービスを利用者が選べるようになり、料金競争を通じた恩恵も広がりそうだ。13日に成立した改正電気事業法は3段階で改革を進める。第1弾は全国10地域に事実上分断されていた市場の統合だ。2015年には地域間で電力を融通する広域機関を設立。九州の新電力会社が関東の企業に電力を売ったりしやすくなる。電力10社ごとの「縄張り」を解消、全国レベルの大競争のインフラを整える。電力事業は、発電、送配電、小売りに大別できる。1990年代から企業向け分野の自由化が始まったが大手電力による地域独占はほぼ手つかずで、新規参入は伸び悩んだ。広域機関の設立で、発電事業の採算性が高まれば新規参入の増加は確実。大手電力が独占してきた家庭向けの電力小売り事業も16年に自由化する。この結果、新規に参入した小売り事業者は全国どこの家庭向けにも販売できるようになる。利用者は「携帯電話と電力のセット販売」など、それぞれの実情にあったメニューから選べるようになる。電力会社は1人暮らし向けなどの多様なメニューを用意したり値下げしたりして顧客をひき付ける必要が出てくる。もっとも、送配電に関してはすでに大規模なインフラを持つ大手の独占が残る。政府は第3段階として18~20年に電力会社から送配電部門を分離。中立性を高めた送配電網を使って発電や小売りでの競争環境を整える。 公益産業の自由化で参考になるのは1985年の電電公社民営化。通信自由化では圧倒的な資本力があるNTTが市内通信網の独占をテコに優位な立場を温存し、新電電との競争がなかなか進まなかった。新規参入が思うように進まなければ規制なき独占が生まれ、料金が高止まりする可能性もある。電力自由化では新規参入を促すため、大手電力が持つ顧客情報の開示も義務付ける。通信自由化の際に既存業者と比べて新規参入への規制を緩めた「非対称規制」も検討の余地がある。 戦後長く続いた電力制度の改革が進み始めたのは福島第1原子力発電所事故などの影響で、業界の盟主だった東京電力が公的管理に置かれたためだ。だが、今後7年間の改革が、想定通り進むかはまだ判然としていない。「全面自由化のタイミングは慎重な検討が必要」。電気事業連合会は改革に反発している。13日成立した改正電気事業法でも小売り自由化は法律の本則ではなく付則にしか盛り込んでいない。経済産業省は14~15年度に自由化を進める追加の電事法改正案を国会に提出するが、この時点で改革の内容が修正される可能性も残っている。 *2:http://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20131114&c=DM1&d=0&nbm=DGKDASFS13031_T11C13A1EA2000&ng=DGKDASDC1300C_T11C13A1EA2000&ue=DEA2000 (日経新聞 2013.11.14) 東電の管内に3勢力が照準 異業種/石油・ガス/越境 電力システム改革のための改正電気事業法が成立し、競争環境の整備に道筋がついた。16兆円の国内電力市場の争奪戦が本格化する。「異業種の参入」「石油・ガス会社の領域拡大」「電力会社の越境」という3方からの新勢力が既存の電力会社に挑む。重点地域と位置付けるのは、日本の3割の需要を抱える首都圏。東京電力の管内だ。「発送電分離が実現すれば売り先の選択肢が広がる」。日本製紙の芳賀義雄社長は電力事業の拡大に意欲を見せる。計170万キロワットの発電設備を使い14年度から大口向けの小売りに参入する。送電網の利用コストが下がれば家庭向けも視野に入ると判断、能力を40万キロワット程度積み増す方針だ。 電力システム改革は大手電力の地域独占を崩す。すでに小売りが自由化されている大口需要家向けでは、全面自由化の前哨戦が始まっている。規模で存在感を示しているのは異業種からの参入となる製紙や鉄鋼といった素材大手。工場で培った自家発電の運営ノウハウを持つ。既に新電力事業を手がける王子ホールディングスも約300億円を投じて売電専用の発電設備を新増設する。燃料調達に強みを持つエネルギー企業も備えを進める。JX日鉱日石エネルギーが大口向け小売りに参入、4つの発電所を持つ東京ガスは大幅な出力引き上げを計画している。大阪ガスも能力増強が見込まれる。 もう一つの「新勢力」は越境により他社の管内に参入する大手電力会社。中部電力が10月から首都圏に参入、関西電力も進出計画を持つ。「他にも進出をうかがっている大手電力がある」(中堅新電力幹部)。各社が狙うのは首都圏だ。大口向けの小売りではすでに東電と新電力の競争が激化。東電が値上げした昨年4月以降は5~15%料金が安い新電力が契約を伸ばし、管内需要に占めるシェアは1割に達した。全国平均の約4%を大きく超える。 迎え撃つ東電はシステム改革のスケジュールより早く16年度にも燃料・火力発電、送配電、小売りの3部門を分社化する検討を始めた。他社に先がけて自由化に対応した体制を築き競争力を確保する狙いだが、福島第1原子力発電所事故の対応も残る東電にとって苦しい戦いは避けられそうにない。 *3:http://mainichi.jp/opinion/news/20131113k0000m070128000c.html (毎日新聞社説 2013年11月13日) 小泉氏の原発論 首相は耳傾け決断を 「総理の持つ大きな権力を、多くの国民が協力できる壮大で夢のある事業に使ってほしい」。小泉純一郎元首相は日本記者クラブで記者会見し、「原発ゼロ」の持論を改めて展開、安倍晋三首相への期待を語った。「今、総理が決断すればできる。郵政民営化の時より条件はよく、恵まれている」。小泉流の主張には説得力があった。安倍首相には、ぜひとも、耳を傾けてほしい。小泉氏の「原発ゼロ」主張に対しては、「ゼロを補う代案を出さないのは無責任で楽観的」といった批判がある。確かに、火力発電のたき増しによるコストはかさみ、二酸化炭素も増えている。懸念があることは否定できない。しかし、「政治で一番大事なのは方針を出すこと。そうすれば必ず知恵が出てくる」という小泉氏の反論はそのとおりだろう。オイルショックをきっかけに環境技術で世界をリードするなど、過去の歴史をみても、困難があればそれを解決する技術や方法が生み出されてきた。「原発依存度を下げる」といいつつ再稼働を推進する中途半端な政策を続けると、再生可能エネルギーや二酸化炭素の排出抑制への投資が進まず、原発から脱却できなくなる。本気でイノベーションを起こそうと思うなら、「原発に頼らない」という大方針こそが有効だ。「今すぐ原発ゼロ実現を」という踏みこんだ主張も、そうした点で理解できる。使用済み核燃料の最終処分場がないまま原発を動かしてきた「トイレなきマンション」問題も深刻だ。小泉氏はフィンランドの最終処分場を視察し、日本での場所決定は無理と感じたことも、「原発ゼロ」主張の理由としている。「処分場にめどをつけることが政治の責任」という反論はあるが、フィンランドの安定した地盤は日本とはまったく違う。大震災と原発事故で、自然の脅威を知り、原発技術への信頼が失われた日本で、最終処分場選定が非常に困難であることは確かだ。それがわかっていて核のゴミを増やしていくことの無責任さを考えないわけにはいかない。もちろん、原発ゼロを実現しても既存の使用済み核燃料は残る。その最終処分については現世代がめどをつけねばならない。ただ、原発ゼロを前提に核のゴミは増やさないと確約されていれば、解決のめどが立ちやすくなるのではないか。「本音を探れば自民党の中でも原発ゼロへの賛否は半々」と小泉氏は言う。安倍首相への遠慮から本音が言えないとしたら不健全だ。国民が声を出しつづけることも大切で、「原発ゼロ」論をきっかけに本音の議論を深めたい。 *4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013111290071127.html (東京新聞 2013年11月12日) 原発ゼロへ共闘 細川・小泉元首相「国民運動を」 細川護熙(もりひろ)元首相(75)は十一日、都内での本紙のインタビューで、安倍政権の原発再稼働路線を「犯罪的な行為だ」と批判し、「原発ゼロ」に向けた活動を国民的な運動に発展させたい考えを示した。講演会などで「原発ゼロ」を主張している小泉純一郎元首相(71)と会談したことを明らかにし「目的を達成するまで、主張し続けていきたい」と述べた。国民的な人気のあった首相経験者二人が立場を鮮明にしたことで、脱原発運動に新たな局面がひらける可能性がある。 細川氏は、安倍政権の原発推進政策に関して「ごみの捨て場がないのに再稼働しようとするのは、理解できない。原発について、根本から問い直さなければいけない」と強調した。「原発ゼロ」を目指す活動について「政局的な連携でない方が広がっていく。幕末も薩長土肥が攘夷(じょうい)で一致した」と、政党レベルではなく、国民運動として発展させていくべきだと訴えた。小泉氏とは約一カ月前に会談した。具体的な会談の内容は明らかにしなかったものの、「核廃棄物の最終処分場がないのにもかかわらず、再稼働を進めることに反対なのは、小泉さんと同じだ」と述べた。 ただ、「政局レベルの話ではない」と、自らの政界復帰や小泉氏と脱原発新党を結成することは否定。「原発ゼロ」を訴えることで連携し、国民運動推進の一翼を担っていく考えを示した。細川氏によると、会談は、フィンランドで建設中の核廃棄物最終処分場を視察した話を小泉氏から聞くために申し入れたという。小泉氏は十二日午後、都内の日本記者クラブで講演する。細川氏は、安倍晋三首相が九月の国際オリンピック委員会(IOC)総会で、東京電力福島第一原発事故の汚染水漏れ問題について「状況はコントロールされている」と発言したことについても「首相の言葉をどれだけの人が信じたか疑問だ」と批判した。 <ほそかわ・もりひろ> 1938年生まれ。上智大卒。新聞記者を経て参院議員(自民党)、熊本県知事を務めた後、92年に日本新党を結成。93年に衆院議員に当選、首相に就任したが、8カ月で辞任。98年に政界引退し、神奈川県湯河原町を拠点に陶芸、ふすま絵などアーティストとして活躍。 超電導電線 ハウスの太陽光発電 バイオマス発電 光選別型太陽光発電
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2013,11,07, Thursday
イノシシとイノシシ皮 シカとシカ皮のバッグ・手袋 今日は、アッパレな地方自治体の話題です。 (1)農業支援に特化した「ふるさと納税」が人気 *1のように、長野県阿南町は、農業支援に特化した「ふるさと納税」による寄付金が、今年度分で1億5000万円に達する見込みで、これには、寄付金1万円に対して新米20キロを贈るという企画に全国から反響が寄せられたことがあるそうだ。農業がなくては困り、輸入に頼ってばかりいてはわが国の食料自給率が下がるという問題意識は、もう国民に徹底していると思われるので、この取り組みは、他の自治体でも参考にできそうだ。「ふるさと納税」制度を作った私としては、このように工夫して、大いに利用していただくのは嬉しい。 (2)ジビエと皮の利用 *2のように、長野市は、“ジビエの町”として全国に発信しようという試みを始め、市とJAグリーン長野、市内の飲食店組合、日本ジビエ振興協議会などでつくる「若穂食のモデル地域実行協議会」が県庁で開かれ、同協議会の峯村代表が会見で、「利用先をしっかり確保することで狩猟者の意欲向上に繋がる」と話したそうだ。アッパレではあるが、イノシシの年間捕獲数の約3分の1しか活用しないのは目標が低すぎるのではないか?何故なら、イノシシはブタの近縁で野生であるため、脂肪が少なく、料理の仕方によっては美味しい食材で、健康食でもあるからだ。 このほか、現在は、シカも害獣になって困られているが、まだ組織的には利用されていない。しかし、シカ肉やシカ皮のバッグ・手袋は高級品になるので、もったいないことである。 (3)ゴミ焼却の二酸化炭素(CO2)と下水処理水の養分を利用 *3のように、佐賀市は、清掃工場でごみ焼却時に発生するCO2を活用して、光合成で増えるミドリムシを培養する実証研究を始めるそうだ。佐賀市は、すでに清掃工場の排気を施設園芸などに活用しようと、排気からCO2を取り出す実験に10月から着手しており、さらなる有効利用を図るために大量のCO2を吸収するミドリムシの培養にも乗り出すことにしたとのことである。培養には有機物を多く含む水も必要なので、有明海のノリ養殖への好影響が既に確認されている佐賀市下水浄化センターの処理水を使うことを想定しているそうだ。ミドリムシは、家畜や養殖魚の安価な飼料にもできるだろう。 このように、今まで邪魔にしていたものを資源として使い、付加価値のあるものを作り出すのは、アッパレだ。他には、そのような例はないのだろうか? *1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=24340 (日本農業新聞 2013/11/6) ふるさと納税1億5000万円 謝礼に新米が奏功 生産意欲向上に期待 長野県阿南町 長野県南部の阿南町は5日、同町役場で会見を開き、農業支援に向けて全国から集めた「ふるさと納税」による寄付金が、今年度分で1億5000万円に達する見込みだと発表した。寄付金をもとに、町内農家から買い取った新米を寄付者に謝礼として贈る仕組みで、全国の消費者が賛同。現在までに約5000人から寄付を受けた。米の新たな需要として町は農家の意欲向上などを期待している。 町はこれまで、ふるさと納税の寄付者に町の特産品を贈ってきたが、昨年までの5年間で、寄付金の総額が約1500万円と伸び悩んでいた。そこで米の販売が低迷する中、今年度から農業支援に特化した仕組みに一新。寄付金1万円に対し、新米20キロを贈るという企画で寄付を募集したところ、全国から予想を上回る反響が寄せられた。 町の水稲作付面積は140~160ヘクタールで、自家消費を除く流通量は約500トン。これに対し、寄付者に贈る米の必要量は300トンに及ぶ見通しで、町は「町内産米がこれ以上確保できない恐れがある」(振興課)。このため5日以降の問い合わせに対しては、寄付金の振込用紙の配布を締め切ることにした。米の買い取り価格は農家からの聞き取りを踏まえ、60キロ1万7000円に設定した。町によると、さらに高く買い取って農家に還元することも考えたが、従来の販売価格をつり上げないよう配慮した。ただ、現場の農家にとっては高値の水準となり、佐々木暢生町長は「作る意欲が増したとの声を聞く。経営規模の拡大や遊休農地の解消につながる」と期待する。 町が同日開いた会見で佐々木町長は、町の人口並みの寄付者があったことを報告。「農家の支援に賛同した」などの声が寄せられていることから「米や農業に対する国民の思いを感じた」と手応えを示した。今後は米だけでなく町内産農産物の提供も検討するという。 〈ことば〉ふるさと納税 在住、非在住を問わず任意の自治体(都道府県、市区町村)に対して、寄付した金額のうち2000円を超える部分について、住民税と所得税から控除を受けられる制度。一定の制限や限度がある。寄付金1万円に対し8000円の税額控除となり、阿南町の米支援の場合は、実質2000円の持ち出しで20キロの米が手に入る仕組み。制度について有識者からは「謝礼による寄付金の獲得競争につながる恐れがある」などと課題を指摘する声も出ている。 *2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=24218 (日本農業新聞 2013/10/30) [鳥獣害と闘う] 長野市を“ジビエの町”に JR駅前に飲食店街 土産物の開発も力 長野市を“ジビエの町”として全国に発信しようという試みが29日、始まった。市内の飲食業者や食品関連業、JAなどでつくる協議会は、野生鳥獣肉(ジビエ)の利用を通して地域振興を目指す。市内で捕獲したジビエが食べられる飲食店街をJR長野駅前に形成。土産物の開発にも力を入れる。農水省の「食のモデル地域構築計画」に認定され、2016年度までに年間2トン程度の利用を定着させる計画だ。 ●川上~川下 連携を強化 鳥獣の捕獲から食肉処理、加工、消費といった“川上から川下”までの連携が弱かった事業者が一体となり、ジビエの利活用を進めるのが狙い。市とJAグリーン長野、市内の飲食店組合、日本ジビエ振興協議会などでつくる「若穂食のモデル地域実行協議会」が県庁で同日開いた会見で今後の計画を明らかにした。同協議会の峯村聰代表は「利用先をしっかり確保することで、狩猟者の意欲向上につながる」と期待する。利用する肉は主にイノシシ。JAグリーン長野と地元 猟友会が運営する同市内の食肉処理施設で肉を加工し、飲食店や加工業者へと納入する仕組み。来年度の加工頭数は年間100頭、年間捕獲数の 約3分の1を活用することを目標にする。これまで捕獲した大半は山に埋めていただけに、関係者は「極めて高い利用率」という。販売を担うのは、JR長野駅前の飲食店でつくる「長野しまんりょ会」。各店舗の個性を発揮したメニューを開発し、ジビエが食べられる飲食店街として市内観光の人気スポットに育てる。また、固い部位や筋などの部位は、同JA女性部や福祉法人が加工して、余すところなく商品化する計画だ。取り組みは農水省の「日本の食を広げるプロジェクト」事業の一環。4カ年で事業を軌道に乗せる構想で今年度は600万円を支援し、商品開発やマーケティングを中心に活動を行う。同事業を担当するJAグリーン長野営農部の橋本寿雄さんは、ジビエの需要が増えれば「狩猟免許の取得者が増え、獣害対策も強化できる。管内のAコープでもイノシシ肉や加工品の販売して消費拡大につなげたい」と意欲を見せる。 *3:http://qbiz.jp/article/26711/1/ (西日本新聞 2013年11月7日) ミドリムシで産業誘致 ごみ処理活用、佐賀市が培養拠点 佐賀市は、市清掃工場でごみ焼却時に発生する二酸化炭素(CO2)を活用し、光合成で増えるミドリムシを培養する実証研究を始める。ミドリムシは栄養成分が豊富で健康食品に加工されているほか、油脂を含むため燃料としても実用化に向けた研究が進んでおり、CO2排出削減と産業誘致の一挙両得を狙う。ミドリムシの培養に自治体が取り組むのは珍しい。ミドリムシは藻類の一種で、光合成の効率が高く、CO2の吸収能力は稲の約80倍(2012年度環境白書)。ビタミンやミネラルなど多様な栄養素を含み、サプリメントや飲料に用いられている。一方、石油元売り大手は18年度までに油脂成分を使った燃料開発を目指している。 佐賀市は清掃工場の排気を施設園芸などに活用しようと、排気からCO2を取り出す実験に10月から着手。さらに有効利用を図るため、大量のCO2を吸収するミドリムシの培養にも乗り出すことにした。大量培養の技術を持つベンチャー企業ユーグレナ(東京)と協力し、来年度に予定。培養には有機物を多く含む水も必要で、有明海のノリ養殖への好影響が確認されている市下水浄化センターの処理水を想定している。 市清掃工場は1日約200トンのCO2を、下水浄化センターは1日約5万トンの処理水を排出しており、安定的に供給できる。市バイオマスエネルギー戦略室の井口浩樹室長は「用途が広がるミドリムシの培養拠点ができれば多様な企業を呼び込める」と期待する。 ■ミドリムシ 単細胞の藻類。体長0・1ミリ以下。光と水とCO2で育つ。先端にある1本の鞭毛(べんもう)を使って水中を動くことができ、原生動物としても分類される。通常の生物が生息できないCO2が高濃度の環境でも増殖する。地球温暖化防止と産業利用の側面から企業・大学で研究が行われている。
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2013,07,18, Thursday
(1)国民が豊かさを感じる国は、購買力平価換算の一人当たりGDPが高い国
世界の名目GDPの順位は、1位はアメリカ、2位は中国、3位は日本である。しかし、*2の購買力平価換算の一人当たりGDPでは、アメリカは7位、中国は93位、日本は24位だ。そして、国民一人一人がどのくらい満たされた生活を送れる国かという指標は、その貨幣で買える物を同じにして比較した購買力平価換算の一人当たりGDPだろう。 購買力平価とは、2つの通貨がそれぞれ自国内で商品・サービスをどれだけ購買できるかという比率で、一般に通貨の対内購買力はその国の物価指数の逆数となる。つまり、1000万円の貯金で100平方メートルの満足できる家を買えるA国と同じ家を4000万円出さなければ買えないB国とを比較すると、B国の購買力平価はA国の1/4であり、購買力平価換算の一人当たりGDPは、一人当たりGDPを物価水準で調整してから比較するわけである。 そして、購買力平価換算の一人当たりGDPで比較すると、*2のとおり日本は24位であり、日本国民はGDP3位というほど豊かな暮らしはしていない。ここで金融緩和してインフレにすると、それだけでは経済実態はかわらないため、インフレになった分だけ名目GDPは増加し、インフレで物価上昇した分だけ購買力平価が落ちて購買力平価換算の一人当たりGDPは変化しない。そのため、金融緩和政策では一人一人の国民を豊かにすることはできないのである。そして、特に打撃を受けるのは、物価上昇と比例して収入が増えない人たちである。 (2)人口が増えると、国民が豊かになるか? *1のように、①金融緩和こそが重要だ ②人口が減ると景気が悪くなる という論調は多い。しかし、(1)で述べたとおり、実体経済の変化が需要を捉えていない単なる通貨の価値下落では、国民を豊かにすることはできない。また、人口が増えただけでは、一人当たりGDPは下がりこそすれ、上がらない。大切なのは、その時いる人のニーズを捉えて、より豊かに生きるための財・サービスを提供することである。それを自然とやってきたのが、ドイツ、ポルトガル、ロシアであり、意図的に高齢者を冷遇して高齢者の需要を抑えているのが日本である。そして、政治の無力だけがその原因なのではなく、論理に弱い日本の経済学者や官僚とその尻馬に乗って報道しているメディアが戦犯なのである。 *1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130715&ng=DGKDASM210008_T10C13A7NN1000 (日経新聞 2013.7.15) 人口減、デフレの主因か 日本以外はインフレ圏 手すり付きの売り場、白内障でも見えやすい色の価格表示。ドラッグストア大手のサンドラッグが関東地方で始めた新型店舗は、シャッターを閉めた空き店舗が目立つ商店街の高齢者などに照準をあわせている。「需要不足となる人口減はデフレの主因か」。日本はこんな論争に時間を費やしてきたが、才津達郎サンドラッグ社長の見方は少し違う。「人口減で成長期待を失った日本は、増え続ける高齢者の需要をつかむ努力を怠ってきたのではないか」。海外を見渡すと約10年前から人口減少が始まったドイツでは、消費者物価が毎年2%程度上昇し続けている。ポルトガルやロシアも人口が減っているがインフレのまま。長期デフレに陥ったのは日本だけ。労働力供給も需要も減る人口減は必ずしもデフレに直結しない。海外の事例を傍証に人口減を巡る論争はこんな方向でひとまず収れんしつつある。だが、縮小均衡に陥りがちな日本経済の成長期待をどう高めるかという論点は残る。海外の有力投資家が日本の移民政策の動向に関心を寄せるのはそのためだ。待機児童解消で失敗を繰り返した政治の無力。マネーの力を出し惜しみした日銀。過去の迷走を教訓に、政府・日銀は新たな道を探るが、多くの課題がまだ残っている。 *2:http://ecodb.net/ranking/imf_ppppc.html 世界の一人当たりの購買力平価換算のGDP(USドル)ランキング 1位 カタール 102,211.00 中東 2位 ルクセンブルク 79,785.04 ヨーロッパ 3位 シンガポール 60,409.98 アジア 4位 ノルウェー 55,008.77 ヨーロッパ 5位 ブルネイ 54,388.65 アジア 6位 香港 51,494.15 アジア 7位 アメリカ 49,922.11 北米 8位 アラブ首長国連邦 49,011.59 中東 9位 スイス 45,417.81 ヨーロッパ 10位 カナダ 42,734.36 北米 11位 オーストラリア 42,640.28 オセアニア 12位 オーストリア 42,408.58 ヨーロッパ 13位 オランダ 42,193.69 ヨーロッパ 14位 アイルランド 41,920.73 ヨーロッパ 15位 スウェーデン 41,191.47 ヨーロッパ 16位 クウェート 39,888.76 中東 17位 アイスランド 39,223.96 ヨーロッパ 18位 ドイツ 39,028.39 ヨーロッパ 19位 台湾 38,749.20 アジア 20位 ベルギー 37,883.06 ヨーロッパ 21位 デンマーク 37,657.20 ヨーロッパ 22位 イギリス 36,941.06 ヨーロッパ 23位 フィンランド 36,395.01 ヨーロッパ 24位 日本 36,265.75 アジア 25位 フランス 35,547.96 ヨーロッパ 26位 イスラエル 32,312.42 中東 27位 韓国 32,272.12 アジア 28位 バハマ 31,382.41 中南米 29位 サウジアラビア 31,275.49 中東 30位 スペイン 30,557.47 ヨーロッパ 31位 イタリア 30,136.38 ヨーロッパ 32位 ニュージーランド 29,730.30 オセアニア 33位 オマーン 29,166.39 中東 34位 バーレーン 28,743.82 中東 35位 スロベニア 28,195.24 ヨーロッパ ↓ 93位 中国 9,161.97 アジア
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