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2018.10.9 新技術によるイノベーション投資が、本物の経済成長とより豊かな社会を作り出すこと (2018年10月10、11、12、13、15、16、19、20、21日に追加あり)
  
                               2017.11.6朝日新聞

(図の説明:癌細胞は、日頃から細胞分裂の失敗などで一定割合できるが、左図のように、免疫力が強くて健康ないうちは免疫細胞の方が勝ち、免疫力が弱くなると増殖し始める。癌細胞は、もともとは自分の細胞であるため免疫が効きにくく、中央の図のように、これまで放射線療法・外科的療法・化学療法が標準治療だったが、これに堂々と免疫細胞が加わったわけだ。今回のノーベル賞受賞は、右図のように、「CTLA―4」という蛋白質が働かないようにして効果を出す免疫療法だ。私は、本人の免疫細胞を使えば、化学療法のように無差別に健康な細胞まで攻撃して副作用を起こすことがなくなるため、最も効果的な治療になる筈だと考える)

(1)今年のノーベル賞
 今年のノーベル賞は、免疫を使った癌治療、生物・物理の研究者が使うレーザー応用技術、進化をまねた薬品の開発、気候変動や技術革新と経済成長を結び付けた理論など、私が指摘していた医学・生物・生態系分野の受賞が多くて嬉しいものだった。しかし、日本人のノーベル賞受賞者には、これまで女性が一人もおらず、これは、日本における女性研究者の軽視によるだろう。

1)ノーベル医学・生理学賞
 ノーベル医学・生理学賞は、*1-1、*1-2のように、京大の本庶佑特別教授と米テキサス大学のジェームズ・アリソン教授が受賞された。本庶氏らは免疫を使って癌を治療する方法を開発し、小野薬品とブリストル・マイヤーズスクイブが治療薬「オプジーボ」「ヤーボイ」を共同開発して、現在は皮膚癌・肺癌・胃癌などの癌に効くとされ、60カ国以上で承認されている。

 癌は、自分の細胞のDNAが変化したものであるため自身の免疫が効きにくいのだが、免疫が癌をたたく作用を抑制する「CTLA―4」という蛋白質が働かないようにすることで、効果を出したのだそうだ。そして、「オプジーボ」や「ヤーボイ」は、*3-3のように進行癌にすら効くのだから、それ以前のステージの癌で免疫を弱くする治療をしていない人なら、さらによく効く筈である。

 なお、現在は高額な薬価が問題になっているが、対象となる患者が増えて大量に生産されるようになれば、他の製品と同様、安くなる。さらに、現在、副作用とされているものの中には、大量の癌細胞を死滅させるため、一時的にショック状態を起こすものもあるようだ。

2)ノーベル物理学賞
 物理学賞は、*1-2のように、米国のアーサー・アシュキン(96)、フランスのジェラール・ムル(74)、カナダのドナ・ストリックランド(59)の3氏で、レーザーの応用技術で医学・工学などで研究を支えているものだそうだ。

 アシュキン氏が開発したのは「光ピンセット」と呼ばれる技術で、生物物理学の研究者の多くが使っているもので、ムル氏とストリックランド氏が開発したのは「チャープ・パルス増幅法(CPA)」という高強度の超短パルスレーザー技術で、近視矯正手術(レーシック手術)で使われているのだそうだ。

3)ノーベル化学賞
 化学賞は米国のフランシス・アーノルド(62)とジョージ・スミス(77)、英国のグレゴリー・ウィンター(67)の3氏で、生物の進化をまねることで作る医薬品開発に有用な蛋白質をつくる手法を開発されたのだそうだ。

 ただ、「①常に厳しく『なぜ』を問いつめる」「②若い人とも同じ目線で議論する」と書かれているうち、①は、科学者なら当然で、②も、よい発想をする(ここが重要)若い研究者なら研究を前進させるために当然なので、特に書くのがおかしいくらいであり、それをやっていない人がいるとすれば、その方が変である。

4)ノーベル経済学賞
 ノーベル経済学賞は、*1-3のように、気候変動や技術革新が持つ要素と経済成長を結び付けた業績を評価して、ウィリアム・ノードハウス米エール大教授(77)とポール・ローマー米ニューヨーク大教授(62)に授与されることになったそうだ。
 
 これまでの経済学は、環境や技術革新を無視していたが、ノードハウス氏は気候変動と経済成長の関係を定量モデルで説明して炭素税のような政策介入がもたらす効果を説明され、ローマー氏は技術革新が経済成長を促す「内生的成長理論」を確立されたそうで、これらは、確かに世界に役立つ研究だ。

 なお、メディアの中には、ノーベル経済学賞を受賞したのが日本人でないことを残念がるところもあったが、日本は、*1-4のように、大規模な金融緩和を行い、物価を上げ、そうすれば個人消費が増えるなどと言っている国だ。実際には、それによって、円の価値が下がり、モノの価値が上がって、円建の債権や預金を目減りさせているだけであり、日本の経済学者の多くが思考停止している。そのため、これで「ノーベル経済学賞・・」と言うのはおこがましすぎる。

(2)新技術が生む新しい市場とその技術の普及を阻む厚労省
 ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑氏が、免疫細胞による攻撃から癌細胞が逃れる仕組みを解明し、*2-1のように、小野薬品とブリストル・マイヤーズスクイブが癌免疫薬を開発して5兆円市場を生み出し、世界中の製薬会社がこの仕組みを応用した新薬の開発にしのぎを削っているそうだ。

 にもかかわらず、*2-2のように、厚労省が再生医療などの細胞を用いる治療の監視体制を強めるという馬鹿な方針を決め、「がん免疫療法」も効果がはっきりしないとして制限するそうだが、これは、癌治療のイノベーションを邪魔している。治療効果は、それを使って治療しなければいつまでも検証できないが、*3-3のように、進行癌でさえ治るという効果は他の治療法より優れているため、駄目な理由を挙げるのではなく、使えるように力を貸すべきだ。

(3)「オプジーボ」や「ヤーボイ」などの癌治療薬
 小野薬品の「オプジーボ」やBMSの「ヤーボイ」などの癌免疫薬は、*3-1のように、免疫細胞のオン・オフを制御する分子に作用するため「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれ、癌細胞が免疫細胞にかけたブレーキを解除し、攻撃開始のスイッチを入れるのだそうだ。

 しかし、免疫による攻撃力が弱っていれば、いくらブレーキを解除しても癌細胞を攻撃して死に至らしめることはできない。そのため、進行癌よりも初期の癌、化学療法・放射線療法・リンパ節切除などで免疫力の弱くなった身体よりもその前の身体の方が効きがよいだろうし、*3-2のように、免疫細胞の攻撃力を高めるのも有効だろう。

(4)人材育成
 「百里の道も一歩から」と言われるように、ノーベル賞を受賞する科学者をトップとすれば、その下には、ピラミッド型に多くの人材がいる。その「初めの一歩」は小中高校での教育だが、これについて、*4のように、「教科の数値評価をなくす」という議論がされているそうだ。

 しかし、教科毎に行う数値評価をなくした上で、各教科で「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」などを項目ごとに「ABC」といった形で評価する「観点別評価」だけにするというのは、たいした知識もない小中高生に思考力や判断力を求めることになり、評価する先生の価値観やレベルにもばらつきがあるため、評価の客観性を無くし、勉強する目標や動機付けを失わせることになって、とりかえしがつかない。

 私は、児童生徒や保護者が数値評価のみに注目するのも問題だが、それを無くして知識獲得の目標や動機を失わせる方がよほど問題だと考える。日本人全員が手を繋いで仲良くサボっても、世界は待っていてはくれないのだから。

*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181002&ng=DGKKZO35987710R01C18A0MM8000 (日経新聞 2018年10月2日) ノーベル生理学・医学賞に本庶氏、がん免疫療法開発
 スウェーデンのカロリンスカ研究所は1日、2018年のノーベル生理学・医学賞を京都大学の本庶佑特別教授(76)と米テキサス大学のジェームズ・アリソン教授(70)に授与すると発表した。本庶氏らは人の体を守る免疫の仕組みを利用してがんをたたく新たな治療法開発に道を開いた。研究成果を応用して、肺や腎臓など様々ながんに効く新しいがん治療薬が続々と登場している。日本のノーベル賞(総合2面きょうのことば)受賞者は16年の東京工業大学の大隅良典栄誉教授に続き26人目(米国籍を含む)。生理学・医学賞は計5人となった。授賞理由は「免疫抑制の阻害によるがん治療法の発見」。がんは先進国、新興国を問わず死因の上位に位置しており、カロリンスカ研は「世界で年間で数百万人もの命を奪うがんとの闘いで、本庶氏の発見に基づく治療法は極めて高い効果を示した」と評価した。同日、京大で記者会見した本庶氏は受賞の喜びを述べた上で、「私は基礎研究をしているが、医学で何らかの治療につながらないかと常に考えている」と語った。本庶氏は「PD―1」と呼ぶたんぱく質を免疫細胞の表面で発見し、92年に発表した。後にこのたんぱく質が、がんをたたく免疫の機能を抑えるよう働いていることを突き止めた。本庶氏の成果を生かし、小野薬品工業と米製薬大手ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)が治療薬「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)を共同開発。14年に世界に先駆けて日本で皮膚がんの薬として発売された。その後、肺や胃などのがんに対象が広がり、60カ国以上で承認されている。アリソン氏は90年代半ば、免疫ががんをたたく作用を抑制する「CTLA―4」という別のたんぱく質を働かないようにすることで、マウスのがんを治療することに成功し、論文を発表した。従来は体内で病気と闘う免疫の機能はがんにはうまく働かないことが大きな課題だったが、両氏の成果は新たな発想の治療法の道筋をつけた。免疫を利用してがんをたたくがん免疫薬は世界の製薬会社が開発に力を入れる。市場規模は17年で1兆円ともいわれる。一部の患者では薬が効いて長期間の生存を可能にする一方、高額な薬価が議論を呼んだ。本庶氏は同日、日本経済新聞のインタビューに「よい(研究の)タネなら必ず成功する。よいタネを生み出し育てることが最も重要だ」と強調した。授賞式は12月10日にストックホルムで開く。賞金は900万スウェーデンクローナ(約1億1500万円)。2氏で分け合う。
*本庶佑氏(ほんじょ・たすく) 1942年京都市生まれ。66年京都大学医学部卒業。京大大学院医学研究科博士課程修了後、米国立衛生研究所(NIH)や東京大学、大阪大学での研究を経て84年京大医学部教授。免疫細胞の表面にあるたんぱく質「PD―1」を発見し92年に論文発表。新たながん治療薬開発に道を開いた。13年文化勲章、16年京都賞。17年から現職。76歳。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13707921.html (朝日新聞 2018年10月4日)ノーベル賞、3賞決まる 医学生理学賞に本庶さん、物理学賞に3氏、化学賞に3氏
 今年のノーベル賞は1~3日、自然科学系3賞が発表され、医学生理学賞に京都大の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授らが選ばれた。物理学賞はレーザー技術を発展させた欧米の3氏に、化学賞は薬やバイオ燃料などの新たな作成法に道を開いた米英の3氏に贈られる。授賞式は12月10日にある。
■がん免疫治療法、切り開く チェックポイント阻害剤につながる発見 医学生理学賞に本庶佑さん
 医学生理学賞に決まったのは、京都大の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授(76)と、米テキサス大MDアンダーソンがんセンターのジェームズ・アリソン教授(70)。それぞれの研究がきっかけとなり生まれた「免疫チェックポイント阻害剤」は、進行したがんは治らないとされるこれまでの常識を変えつつある。治療への活用はさらに広がろうとしている。こうした免疫治療薬は、免疫療法の一部。免疫療法は手術や抗がん剤、放射線に続く「第四の治療法」と期待されてきたが、これまでの大半は効果が確認されていない。本庶さんらは1991年、「PD―1」を見つけた。大学院生として本庶さんの研究室に所属し、発見に関わった滋賀医科大の縣保年(あがたやすとし)教授(53)によると、当初は細胞が自ら死ぬ現象にかかわる分子とみられていたが、その機能はなかなかはっきりと分からなかった。PD―1が相手役のたんぱく質とくっつくと免疫細胞の作用にブレーキがかかるらしいことが分かったのは、99年のことだった。やはり研究室の大学院生だった岩井佳子・日本医科大教授は2002年、抗体という物質でPD―1と相手役がくっつくのを邪魔すれば、抑えつけられた免疫のブレーキを外してがん細胞への攻撃力を高められることを報告。この物質が免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」につながった。縣さんは「まさに点と点がつながるように、一つひとつの研究が積み重なって大きな成果につながった。本庶先生の指導力がそれだけ大きかった」と語る。オプジーボの効果は驚くほどだった。九州大病院の中西洋一・呼吸器科教授らは3年前、抗がん剤が効かずに状態が落ちていた肺がん患者に、オプジーボを初めて使った。数日のうちにがんが縮小し、患者は元気を取り戻した。この薬は、効く人には効果が長く続きやすいという特徴がある。千葉大腫瘍(しゅよう)内科の滝口裕一教授は「がんが転移しもう治らないと考えられた状態の人が、がんが増大しないまま数年間生き続けているケースも少なくない」と話す。アリソン教授も同じころ、免疫のブレーキにかかわる別の分子「CTLA―4」の研究を進め、この作用を利用したがん治療薬「ヤーボイ」の開発に道を開いた。本庶研で06~15年にPD―1の研究をした慶応大学の竹馬俊介講師によると、オプジーボはヤーボイよりも幅広い種類のがんの治療に使われ、臨床での評価はより高いという。東京都立駒込病院の吉野公二・皮膚腫瘍科部長は「オプジーボとヤーボイなど2種類を使うとさらに効果が高まることがあり、こうした手法が広がりそうだ」と話す。
■「オプジーボ」課題も
 課題もある。これらの薬には重症筋無力症や劇症1型糖尿病といった、従来の抗がん剤にあまり見られない副作用がある。また、免疫チェックポイント阻害剤は高価で、よく効くのは2~3割の人にとどまる。効くかどうかを事前に予測するのは難しい。最近、がん細胞の中の遺伝子変異が多い人では効きやすいらしいことがわかってきた。細胞中の数百の遺伝子を同時に調べて遺伝子変異の量をみる「パネル検査」という手法が開発され、来年にも国内で保険適用される可能性がある。
■レーザー応用技術、研究に寄与 物理学賞に米・仏・加の3氏
 物理学賞に決まったのは、米国のアーサー・アシュキン(96)、フランスのジェラール・ムル(74)、カナダのドナ・ストリックランド(59)の3氏。レーザーの応用技術を大きく発展させ、医学や工学など幅広い分野でいま、研究を支えている。アシュキン氏が開発したのは「光ピンセット」と呼ばれる技術だ。レーザーによって、細胞やウイルスといった微小な物体を自由自在に動かすことができる。大阪市立大の東海林竜也講師(分析化学)によると、光には物をとらえる力があることはわかっていたものの、だれも実証できなかった。アシュキン氏は1970~80年代にかけて、レーザーの光をレンズで集めることで、水溶液中の粒子を自由に動かせることを実証した。アシュキン氏の発見が、たんぱく質や分子を壊すことなく、自由に操る技術につながった。筋肉中の分子を操作する研究に使っている大阪大の柳田敏雄特任教授(生物物理学)は「分子やたんぱく質をつかまえることを通して、体の中のことがより分かる。生物物理学の研究者の多くが、いまは光ピンセットを使っている」とその業績をたたえる。ムル氏とストリックランド氏が開発したのは「チャープ・パルス増幅法(CPA)」という高強度の超短パルスレーザーの技術だ。レーザーのパルスの幅をいったん広げるなどしてから強度を高める独創的な手法を編み出した。東京大物性研究所の板谷治郎准教授は「それまで高強度のパルスを得るには、巨大な施設が必要だった。CPAの登場によって、実験室規模の装置ですむようになった」と話す。応用も幅広い。よく知られるのは近視矯正手術(レーシック手術)。京都大先端ビームナノ科学センターの橋田昌樹准教授によると、超短パルスレーザーは切れ味がよく、熱も出にくいので角膜を切るのに適している。また、装置の小型化を見込んで、がんの重粒子線治療の加速器などへの応用も検討されている。
■抗体医薬の開発加速 化学賞に米・英の3氏
 化学賞は米国のフランシス・アーノルド(62)とジョージ・スミス(77)、英国のグレゴリー・ウィンター(67)の3氏に決まった。生物の進化をまねることでバイオ燃料や医薬品の開発に有用なたんぱく質をつくる手法を開発した。アーノルド氏は、「指向性進化法」と呼ばれる自然界で起こる「選択」に似た方法で、さまざまな酵素を改良する手法を確立した。東京大学大学院総合文化研究科の新井宗仁教授は「洗剤に入っている酵素など、たんぱく質が壊れやすい環境でも働くように安定した酵素を作り出した。私たちも微生物から軽油をつくる研究を進めている」と話す。かつてアーノルド氏の研究室に在籍し共著の論文もある産業技術総合研究所の宮崎健太郎研究グループ長は「常に厳しく『なぜ』を問いつめる人で、若い人とも同じ目線で議論する人だった。そんな姿勢が今回の受賞につながったと思う」。スミス氏の開発した「ファージディスプレー」という技術は、抗体医薬などの開発につながった。ねらった標的に最もよくくっつく抗体を取り出す手法。ウィンター氏はリウマチなど自己免疫の病気に使われる「ヒュミラ」の開発につなげた。抗体医薬は乳がんなどの治療にも適用されている。東京大の菅裕明教授は、「彼らの技術は、抗体医薬の開発を加速させた」と高く評価。本庶佑氏が開発にかかわった免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」の開発にも役立てられたという。

*1-3:http://qbiz.jp/article/142019/1/ (西日本新聞 2018年10月8日) ノーベル経済学賞に米の2教授 気候変動、技術革新巡り  
 スウェーデンの王立科学アカデミーは8日、2018年のノーベル経済学賞を、ウィリアム・ノードハウス米エール大教授(77)とポール・ローマー米ニューヨーク大教授(62)に授与すると発表した。気候変動や技術革新が持つ要素と、経済成長を結び付けた業績を評価した。アカデミーは両氏の業績に関して「どのように持続可能な経済成長を実現できるかという問いへの答えに、私たちをかなり近づけてくれる」と説明した。ノードハウス氏は気候変動と経済成長の関係を定量モデルで説明した。炭素税のような政策介入がもたらす効果を説明するのに用いられるという。「気候カジノ」や「地球温暖化の経済学」といった著書がある。ローマー氏は技術革新が経済成長を促すことを示す「内生的成長理論」を確立。新たなアイデアを促す規制や政策に関する研究を数多く生み出した。16〜18年には世界銀行のチーフエコノミストも務めた。授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金900万クローナ(約1億1200万円)を両氏で分ける。

*1-4:http://qbiz.jp/article/135781/1/ (西日本新聞 2018年6月15日) 日銀、大規模緩和を維持 金融政策、米欧と違い鮮明
 日銀は15日、2日目の金融政策決定会合を開き、現行の大規模金融緩和策の維持を決めた。2%の物価上昇目標の達成が見通せない中、短期金利をマイナス0・1%、長期金利を0%程度に抑え、景気を下支えする。景気の現状判断は「緩やかに拡大している」で据え置いた。米連邦準備制度理事会(FRB)は13日、約3カ月ぶりの利上げを決定。欧州中央銀行(ECB)も14日、量的金融緩和政策を年内に終了することを決めた。米欧の中央銀行と日銀の間で金融政策の方向性の違いが鮮明になった。日銀は、個人消費の判断を「緩やかに増加している」、輸出は「増加基調にある」とし、それぞれ判断を据え置いた。4月の消費者物価指数は前年同月比0・7%上昇にとどまり、伸び率が2カ月連続で鈍化した。会合では、景気が堅調にもかかわらず、物価が伸び悩んでいる要因も議論したとみられる。年80兆円をめどとする長期国債の買い増し額や、年約6兆円の上場投資信託(ETF)の購入も維持した。片岡剛士審議委員は現行政策の据え置きに反対した。黒田東彦総裁は15日午後に記者会見を開き、金融政策の運営や景気、物価情勢について見解を示す。

<新技術が生む新市場とその普及を阻む厚労省>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181002&ng=DGKKZO35988110R01C18A0TJ2000 (日経新聞 2018.10.2) がん免疫薬 5兆円市場生む、ノーベル賞に本庶氏 国内外で開発競争
 ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑氏が解明したのは、免疫細胞による攻撃からがん細胞が逃れる仕組みだ。これを応用したのが小野薬品工業の「オプジーボ」に代表されるがん免疫薬で、市場規模は2017年で1兆円とされる。25年にはこれが5兆円まで広がるともいわれ、世界中の製薬会社がこの仕組みを応用した新薬の開発にしのぎを削っている。オプジーボは小野薬品と米製薬大手ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)が共同開発した。小野薬品の19年3月期の連結業績見通しは売上高が2770億円。このうち、900億円をオプジーボの直接的な販売で稼ぐ見通しだ。ほかに提携先などから得られるオプジーボのライセンス収入などは400億円程度あるとみられる。小野薬品の時価総額は15年ごろ1兆5千億円程度だった。これが、オプジーボ発売後の16年には、ピークとなる約3兆円を記録。長期にわたって効果を発揮する特徴があるほか、がんが消失するケースがあることなどから、株式市場でも高評価を得たためだ。オプジーボは発売時、100ミリグラム73万円。仮に1年使用した場合は3000万円以上かかるという試算が出たため、「あまりにも高すぎる」「財政を破綻させる」との批判が噴出した。少子高齢化が進む中、高騰する医療費と薬剤費が社会問題として取り上げられるようになった。その結果、本来2年に1度の薬価改定をまたず、17年2月に突然、オプジーボの薬価は半額に引き下げられた。医療費の抑制だけでなく、薬価制度そのものや社会保障の見直しに向けた議論を活発化させるきっかけにもなった。本庶氏が発見したのは「PD―1経路」と呼ぶ免疫の仕組み。がん細胞がこの仕組みを使って、免疫から逃れていたことを解明した。現在、この成果を生かした研究の方向性は大きく2つ。新しいがん免疫薬そのものを探すことと、すでに存在するがん免疫薬と他の抗がん剤などを一緒に使うことで効果を高める「併用療法」の確立だ。PD―1経路を遮断してがんを弱らせる仕組みを利用するがん免疫薬を扱うのは5陣営あり、このうちトップを走るのが小野薬などのオプジーボだ。このほか、米メルクの「キイトルーダ」、英アストラゼネカの「イミフィンジ」、スイスのロシュの「テセントリク」、独メルクの「バベンチオ」がある。ノバルティス(スイス)なども開発を進めている。国内勢は併用療法が主だ。第一三共は抗体に化合物を結びつけた抗体薬物複合体(ADC)の技術に強みを持つ。開発中の抗がん剤「DS8201」とオプジーボの併用療法の臨床試験(治験)を始める方針。エーザイや協和発酵キリンも自社開発の抗がん剤とオプジーボの併用療法を探る。このほか、創薬ベンチャー企業も名のりをあげており、古い医薬品を含め併用療法について研究している。日本勢では、ブライトパス・バイオ、キャンバス、オンコリスバイオファーマなどが担い手だ。併用療法の狙いは、一部の患者にしか効かないというがん免疫薬の欠点を補うことだ。ベンチャー各社の業績はまだ赤字基調だが、併用療法が実を結べば、恩恵を受ける患者数は格段に増える。その結果、巨額の収益をもたらす可能性がある。一方、がん免疫薬を含む「バイオ医薬品」では日本勢が出遅れているとの指摘がある。17年、世界で最も売れた医薬品である米アッヴィの関節リウマチ治療薬「ヒュミラ」(年間売上高は約2兆円)を含め、売上高の大きい製品ベスト5のうち、4品目がバイオ医薬品だとするデータもある。国内企業では、中外製薬が関節リウマチ治療剤「アクテムラ」、協和発酵キリンが抗がん剤「ポテリジオ」などを独自技術で開発したが、1兆円を超える薬には育っていない。京都大学の山中伸弥教授の功績であるiPS細胞をはじめとする再生医療でも、応用研究では欧米勢が先を行くとの指摘もある。日本発で革新の種が出たとしても、それをいかに育み収益に結びつけていくのか。企業の姿勢も問われそうだ。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13713145.html (朝日新聞 2018年10月7日) 再生医療の監視強化へ 効果不明、多くの「がん免疫療法」も 厚労省方針
 厚生労働省は、再生医療など細胞を用いる治療の監視体制を強める方針を決めた。効果がはっきりしない多くの「がん免疫療法」も対象となる。医療機関が事前審査の内容と大きく異なる治療をした場合、国が把握できる仕組みにして、審査の議事録などをウェブ上に公開させて透明性を高める。がん免疫療法をめぐっては、ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった、京都大の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授の研究をもとに開発された「オプジーボ」などの免疫チェックポイント阻害剤が近年、登場。一部のがんに公的医療保険が適用されている。再生医療安全性確保法=キーワード=が規制する治療法とは別の手法だが、「免疫療法」と、ひとくくりで混同されることもある。細胞を用いる治療は、2014年施行の同法で規制された。iPS細胞の登場を契機に、患者の安全を確保しながら再生医療を発展させる目的に加え、患者自身の細胞を使う根拠が不明瞭な免疫療法や美容医療に網をかける狙いもあった。同法のもと、医療機関は治療の計画をつくり、病院や民間団体が設ける第三者の審査委員会に審査させる。ただ、審査の狙いは安全性の確保で、効果は保証していない。iPS細胞などを用いる「第1種」と比べ、患者の細胞を集めて使うがん免疫療法などの「第3種」は、審査委員会の要件が緩く、国のチェックを受けずに実施できる。東海大の佐藤正人教授(整形外科)の調査によると、第3種のがん免疫療法の届け出は、今年3月までに民間クリニックなどで1279件に上ることがわかった。高額な治療費を請求する施設もあり、問題視されている。同法の省令改正案では、計画に反する事態が起きたときの対応手順を新たに設け、治療に携わる医師に、医療機関の管理者への報告を義務づける。重大なケースは速やかに審査委員会の意見を聞き、委員会で出た意見を厚労省に報告させる。また、審査委員会の要件を厳しくし、第3種では、計画審査を頼んだ医療機関と利害関係のない委員の出席数を現在の2人以上から過半数とする方針だ。
厚労省は早ければ省令を今月中にも改正、公布する。
◆キーワード
<再生医療安全性確保法> 再生医療などの安全性の確保が主な目的で、細胞を用いた治療を広く規制する。計画の事前審査や国への届け出を義務づける。免疫の働きでがん細胞を倒そうとする「がん免疫療法」のうち、免疫細胞を使う手法も対象となる。

<癌治療薬>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20181007&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO36173760V01C18A0MY1000&ng=DGKKZO36173840V01C18A0MY1000&ue=DMY1000 (日経新聞 2018年10月7日) がん免疫薬 ブレーキ解除は逆の発想
 免疫の力を利用する抗がん剤を指す。小野薬品工業の「オプジーボ」や米BMSの「ヤーボイ」など最新のがん免疫薬は、免疫細胞のオン・オフを制御する分子に作用するため「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる。がん細胞が免疫細胞にかけたブレーキを解除し、攻撃開始のスイッチを入れる。従来のがん免疫薬が攻撃力を高めることを目指していたのに対し、逆の発想で開発された。対象患者を増やすため複数の免疫チェックポイント阻害剤や他の抗がん剤を併用する試みが盛んだ。BMSは大腸がん治療でオプジーボとヤーボイの併用療法の承認を取得した。患者ごとにがんの遺伝子変異を調べ、最適な治療薬を探す研究も活発になっている。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20181002&bu (日経新聞 2018年10月2日) がんVS免疫療法 攻防100年、高コストや副作用が課題
 ウイルスや細菌などの病原体から身を守る免疫の仕組みを利用する「がん免疫療法」が注目されている。免疫をがん治療に生かす研究は100年を超す歴史があるが、科学的に治療効果を認められたものはほとんどなく、これまでは異端視されていた。状況を変えたのは2つの新しい技術の登場で、手術、放射線、抗がん剤などの薬物治療に次ぐ「第4の治療法」として定着しつつある。19世紀末、米ニューヨークの病院で、がん患者が溶血性連鎖球菌(溶連菌)に感染し高熱を出した。熱が下がって一命をとりとめると、不思議なことが起きていた。がんが縮小していたのだ。外科医ウィリアム・コーリーは急性症状を伴う感染症にかかったがん患者で似た症例があると気づき、殺した細菌を感染させてみたところ、がんが消える患者もいた。毒性の強い細菌に感染することで免疫が刺激され、がん細胞も攻撃したとみられる。コーリーの手法はがん免疫療法の先がけといわれる。だが副作用で命を落とす患者も多く、定着しなかった。免疫が再び注目されるのは1950年代後半だ。ノーベル生理学・医学賞を受賞したフランク・バーネット氏が「免疫が日々発生するがん細胞を殺し、がんを未然に防いでいる」という説を提唱。60年代以降、結核予防ワクチンのBCGを使う治療法や丸山ワクチンが登場した。その後、免疫細胞にがんを攻撃するよう伝えて活性化するサイトカインという物質や免疫の司令塔となる樹状細胞を利用する方法、ペプチドと呼ぶたんぱく質断片を使うワクチンなども試みられた。効果があると科学的に認められるには、いずれも数多くの患者を対象にした臨床試験(治験)が必要だ。しかも、抗がん剤など従来の治療を受けた患者らと比べて、治療成績がよくなることを示さなければならない。免疫療法でそうした効果を証明できたものはほとんどなかった。「がん細胞は免疫を巧妙にかいくぐっているからだ」と長崎大学の池田裕明教授は説明する。「免疫を活性化する手法ばかり研究していた」ことが失敗の原因とみる。20世紀末、がんが免疫の攻撃を逃れる仕組みの研究が進んだ。その中で見つかったのが「免疫チェックポイント分子」と呼ぶたんぱく質だ。免疫は暴走すると自身の正常な細胞も攻撃してしまうため、普段はアクセルとブレーキで制御されている。がん細胞はこの仕組みを悪用し、免疫にブレーキをかけて攻撃を中止させる。チェックポイント分子の「CTLA―4」や「PD―1」の働きが解明され、2010年代前半にその働きを阻害する薬が開発された。免疫細胞は攻撃力を取り戻してがん細胞を殺す。皮膚のがんの一種の悪性黒色腫で高い治療成績を上げ、肺がんや腎臓がんなどでも国内承認された。CTLA―4を発見した米テキサス州立大学のジェームズ・アリソン教授、PD―1を突き止めた京都大学の本庶佑特別教授はノーベル賞の有力候補といわれる。注目を集める新しい治療法はもうひとつある。「遺伝子改変T細胞療法」だ。患者から免疫細胞のT細胞を取り出し、がん細胞を見つけると活性化して増殖する機能を遺伝子操作で組み込む。増やしたうえで患者の体内に戻すと、免疫細胞はがんが消えるまで増殖する。大阪大学の保仙直毅准教授は「免疫のアクセルを踏みっぱなしにする治療法だ」と説明する。がんを見つけるセンサーに「キメラ抗原受容体(CAR)」を使うタイプはT細胞と組み合わせて「CAR―T細胞療法」とも呼ばれる。新潟大学の今井千速准教授らが米国留学中の04年に論文発表し、スイスの製薬大手ノバルティスが実用化。17年8月、一部の白血病を対象に米国で承認された。治療効果は抜群で、1回の点滴で7~9割の患者でがん細胞が消え、専門家らを驚かせた。日本でも近く実用化される見通しだ。2つのがん免疫療法にも課題はある。免疫チェックポイント阻害剤が効くのは承認されたがんのうちの2~3割の患者で、数百万円という高い投薬費も問題になった。CAR―T療法は塊を作る「固形がん」には効果が薄いとされる。過剰な免疫反応による発熱や呼吸不全などの副作用もある。遺伝子操作や細胞の培養にコストがかかり、治療費は5000万円を超す。課題の克服を目指す研究も国内外で進んでいる。がん免疫療法はこれからが本番だ。

*3-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20181002&c (日経新聞 2018年10月2日) がん免疫療法 末期の患者にも効果
 体に備わる免疫の仕組みを利用し、がんを攻撃する治療法。体内でがんを攻撃する免疫細胞を利用する。京都大学の本庶佑特別教授が見つけた「PD―1」たんぱく質はこの治療法に応用され、抗がん剤、手術、放射線治療に続く第4の治療法として広まった。人間の体では1日に数千個ものがん細胞ができるが、免疫細胞が排除している。本庶氏の発見に基づく免疫療法は、がん細胞がPD―1にブレーキをかけるのを阻止して免疫細胞が働けるようにし、がん細胞をたたく。新薬は従来の抗がん剤などでは治せない末期がんでも高い効果を示している。

<人材>
*4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13688456.html (朝日新聞 2018年9月21日) 教科の数値評価、なくなる? 中教審が議論、通知表に影響か
 学習指導要領の改訂にあわせて、学校現場での評価のあり方を話し合う中央教育審議会のワーキンググループ(WG)が20日にあり、教科ごとに数値評価する「評定」をなくすべきかどうかが議論された。参加した多くの有識者はなくしたうえで、各教科で「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」など項目ごとに「ABC」といった形で評価する「観点別評価」だけにすべきだ、との立場を取った。評定は各教科を総括する位置づけで、児童生徒に渡される通知表や、受験で使われる内申書の元となる。文部科学省は通知で、小学校の中高学年では3段階、中学と高校では5段階でつけるよう求めている。かつては相対評価だったが、2002年度からは絶対評価となった。通知表の形式は学校の判断に委ねられるが、評定が廃止されれば現場への影響は大きい。新指導要領は20年度から小学校などで完全実施される予定。WGは年内に結論を出し、文科省はそれを受けて年度内にも教委などに通知する方針だ。20日の会議では、文科省が評価のあり方について論点整理した資料を提示。評定をなくすべき理由として▽学校ごとに重みづけが異なり、学習状況が適切に反映されていない場合がある▽児童生徒や保護者が数値評価のみに注目し、学習の改善につなげられていない▽きめ細かく一人ひとりを評価するためには、観点別評価の方が有効――とした。一方、維持すべき理由としては▽児童生徒や保護者は学習状況を全体的に把握できると考えている▽高校や大学の入試、奨学金の成績基準などで使われている――などを挙げた。これに対し、有識者からは「評定は数値のため客観的だという誤解がある」「一人ひとり寄り添って見ていくには観点別評価にすべきだ」といった意見が相次いだ。

<継続できる人は何割?>
PS(2018年10月10日追加):ノーベル賞受賞をきっかけに、メディアが「①継続が大切」「②失敗で諦めない」などと、あまりにも的外れた解説を訳知り顔でやっているのには眉をひそめた。何故なら、①については、*5のように、研究者が大学や研究機関に残ったとしても、他産業より低い報酬で短期の雇用契約を結ばされたり、継続的な雇用を得られず他産業に転出を余儀なくされたりするケースが多いからだ。また、②については、「実験したら仮説通りにいかなかった」というのは通常の研究過程であって「失敗」や「諦める」というような言葉は当たらず、これは試行錯誤でもないからだ。

*5:https://webronza.asahi.com/politics/articles/2012042000006.html (鈴木崇弘 城西国際大学客員教授《政治学》 2012年4月20日) ポスドク問題を社会変革のテコに――ある若者の試み
 「ポスドク問題」(注1)が語られて久しい。ポスドク問題とは、次のとおりだ。科学技術振興政策で、博士が多数つくりだされた。しかし、ドクターを取得するころには、年齢がある程度いっているため、企業の採用が難しく、大学などの研究職数も限られて就職先がないため、オーバードクターが問題となった。その問題の対応として、「ポスドク」(「ポストドクター」の略語)に職が用意された(これで、オーバードクター問題は一時緩和された)。しかし、それは大学や研究機関などと短期かつ不安定な形で契約を結ぶもので、正規雇用への保証がなく、低収入で不安定であり、問題の引き延ばしを図っただけのものであった。このように「ポスドク問題」とは、正規の仕事に就職できずに、長期間、非正規雇用を強いられる人材が増えている状況を指す。ポスドクは「高学歴ワーキングプア」ともいわれ、高齢化も進んでいるという。要は、供給者側の論理から科学技術の発展の必要が叫ばれ、それを進める専門的な人材の育成として博士などを多く生み出したものの、需要者側のニーズに合っていなかったのだ。博士号取得は実務とは別のことであり就職とは関係ないという議論もあるが、博士を目指す者の多くは、専門性をもち、社会や時代に貢献したいという気持ちからだと思う。ここでは、科学技術の発展という理想(それ自体は重要だが)だけ声高に訴えても、問題の解決にはならない。では、どうすればいいのか。(以下略)

<地方への海外企業誘致>
PS(2018年10月11日追加):私は外資系企業の監査や税務に従事することも多かったので、*6-2のブリストル·マイヤーズ(当時)には、1980年代後半、外部監査を担当していたプライス・ウォーターハウス(当時)から、ブリストル·マイヤーズ本社から来た内部監査担当者を手伝うために行ったことがあり、堅実な会社だと思っている。
 そのため、*6-1のように、政府が海外企業の国内投資拡大のために努力し、地方に雇用を作って地方を活性化するのはよいことであるとともに、欧米系の会社は女性差別が(ないとは言わないが)少ないため、地方にも女性が差別されずに自由に働ける場所が増えるだろう。
 そこで、唐津市の企業誘致だが、化粧品産業のみに特化すると医薬品と比較して付加価値が低いため、*6-2のような外資系企業を誘致し、九大と組んで世界的な製薬会社を育ててはどうか。労働力は、*6-3のように、外国人の就労も進み始めて、次第に整っていくのだから。

*6-1:http://qbiz.jp/article/141796/1/ (西日本新聞 2018年10月3日) 政府、海外企業誘致で地方支援へ 計画策定で全国24カ所
 政府は3日、海外企業の国内投資を拡大させるため、日本貿易振興機構(ジェトロ)と連携して全国24カ所の自治体による企業誘致計画の策定を支援する方針を固めた。日本への投資は東京を中心とする大都市に集中しており、地方への波及を進める狙いだ。計画は地域色のある農林水産品や観光資源、産業集積などの強みを生かした内容とする予定で、2018年度中の策定を目指している。ジェトロを通じ、海外企業とのマッチングや海外での投資セミナー開催なども支援する。日本は来年以降、国内初開催の20カ国・地域(G20)の首脳会合や、ラグビーの19年ワールドカップ(W杯)日本大会、20年東京五輪・パラリンピックなど、多数の国際イベントを抱えている。政府は全国に経済効果が及ぶ機会と捉えており、地方創生の取り組みを加速させたい考えだ。支援対象に選ぶ北海道旭川地域は豊富な農林資源を生かした家具製造が強み。アジアのデザイン関連企業などと組み、現地での販路拡大を目指している。医療機器関連メーカーが集まる福島県は海外企業を取り込んでさらなる集積拡大を図る。長野県小諸市はリゾート地の同県軽井沢町に近く、IT企業のサテライトオフィス(出先拠点)を呼び込む。佐賀県唐津市は化粧品産業の誘致を目指す。

*6-2:https://www.bms.com/jp/about-us.html (ブリストル·マイヤーズ スクイブ 会社情報)
 ブリストル·マイヤーズ スクイブは、深刻な病気を抱える患者さんを助けるための革新的な医薬品を開発し、提供することを使命とするグローバルなバイオファーマ製薬企業です。ブリストル·マイヤーズ スクイブは、大手製薬企業の事業基盤と、バイオテクノロジー企業の起業家精神と敏捷性を兼ね備えた、スペシャリティ·バイオファーマ企業です。独自のバイオファーマ戦略を推進し、命にかかわる深刻な病気を抱える患者さんに革新的な医薬品を提供するため、日々努力を重ねています。世界中で働く当社の従業員は、ブリストル·マイヤーズ スクイブの全ての活動の原動力であり、患者さんのため、今日も一丸となって取り組んでいます。世界中で何百万人という患者さんを助けるために、当社が注力するのは「がん」「心血管疾患」「免疫系疾患」「線維症」の重点疾患領域です。研究開発を通して、有望な化合物から成る持続可能なパイプラインを構築し、外部のイノベーションによる事業の拡大と加速に向け、積極的にパートナーシップを結んでいます。地球市民として、私たちは責任をもって持続可能な業務の遂行に取り組み、地域社会に還元するよう努めています。また、ブリストル·マイヤーズ スクイブ財団の活動を通じて、医療環境に恵まれない地域に暮らす人々のため、医療における格差をなくすこと、患者さんの転帰を改善することに全力を挙げています。これらの活動は、世界で最も深刻な状況におかれた人々に、新たな希望をもたらしています。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p45316.html (日本農業新聞 2018年9月26日) 外国人の就労 人権と労働環境改善を
 農業現場で働く外国人の受け入れ制度が変わる。外国人技能実習生に加え、10月から愛知県で国家戦略特区を活用した外国人労働者の受け入れが始まり、来年4月には5年間を上限に就労できる新たな在留資格が創設の見通しだ。追い付かないのが人権の確保と労働条件の整備。働き手の目線で改善すべきだ。JA全中や日本農業法人協会などでつくる農業労働力支援協議会は、農業の雇用労働力は7万人不足していると推計する。これを補うのが特区と新たな在留資格の創設というわけだ。農業の労働問題に詳しい特定社会保険労務士の入来院重宏氏は、労働力を補う「蛇口が増えた」とみる。これまで技能実習生という一つの蛇口だけだったが、特区と新たな在留資格という二つの蛇口が加わったことで労働力の供給は一段と増える。懸念されるのは、受け止める器に“穴”が二つ開いていることだ。労働環境が他産業並みに整っていない。一つ目の穴は、1975年から続く労災保険の「暫定任意適用事業」。個人経営の農家の場合、従業員が4人以下であれば労災保険は任意加入となる。保険に入っていなければ、事故に遭った際は経営者が全額補償しなければならない。他産業並みの強制加入にすべきである。二つ目は、農業現場で働く労働者は労働時間、休憩、休日、割増賃金などについて労働基準法の適用除外となっていることだ。技能実習生は「他産業並みの労働環境を目指す必要がある」(農水省)として他産業と同じ労働条件。ところが労働者となった途端、労働時間などが適用除外となり労働条件に差が生じ、混乱を招きかねない。入来院氏は「この穴を早急に埋めないと、外国人も含めて農業に人が来なくなる」と指摘する。法務省によると中長期の在留外国人の数は約256万人(2017年末現在)。前年末に比べ約17万人増え、過去最高を更新した。最多は中国で73万人、韓国(45万人)、ベトナム(26・2万人)、フィリピン(26万人)、ブラジル(19万人)、ネパール(8万人)、インドネシア(5万人)と続く。特にベトナムは3割増、ネパールとインドネシアも2割増えた。だが、この流れも20年までのようだ。日本で働く外国人の実情を紹介した『コンビニ外国人』(芹澤健介氏、新潮新書)で、東京大学大学院で経済を学ぶベトナム人留学生は「いま日本には外国人が増えて困るという人もいますが、東京オリンピックが終わったらどんどん減っていく」と明かす。外国人の受け入れ制度が整っていないためで、多くの外国人が「人手不足で残業が多くなる」と考え、東京五輪後は日本以外の国に切り替えるという。求められるのは、働く者の人権確保と労働環境の整備だ。労働力不足時代を見据え、本丸の担い手育成と省力技術の開発・普及も急ぐべきだ。

<経産省主導のイノベーション妨害>
PS(2018年10月12、15、16日追加):*7-1のように、九電は太陽光などの再エネ発電事業者に「出力抑制」を実施する可能性があると公表した。現在、九州では、太陽光発電の接続量が800万kw程度(原発8基分)あり、さらに拡大しているが、九電は原発4基(約400万kw)を再稼働させた。これは、経産省が、*7-2のように、「2030年のエネルギーミックスを再エネ比率22~24%、原子力比率22~20%」とし、全体としてコストの高い原発による発電を優先して安価な再エネの普及を妨害したことによる。なお、「再エネは不安定」という弁解も、あまりに長期に渡るので聞き飽きたが、広域送電線や*7-3・*7-4のような水素を媒介にする再エネ貯蔵や蓄電池という方法もあるため、技術進歩によるイノベーションを経産省主導の不合理な“ルール”で遅れさせるのは、早急に止めるべきだ。
 なお、*7-5のように、北海道地震で北電の苫東厚真石炭火力発電所が停止したら全道が停電し、酪農家は自家発電装置で搾乳・冷蔵を続けることができたものの、自家発電装置を持たない乳業工場が相次ぎ操業を停止したため、行き場を失った生乳が廃棄を余儀なくされたそうだ。そのため、災害に備えた危機管理体制は必要不可欠で、「集中型電力システム」より「分散型電力システム」の方がリスクが小さいため、それを支える送電線が必要なのである。現在、北海道では、太陽光・風力だけでも160万kw(原発1.6基分)の発電量があり、集中型から地産地消の分散型に転換すれば危機管理と地域経済の両方を改善できるため、全農に電力会社(仮名:全農グリーン電力)を作り、農林漁業で発電した電力を集めて販売したらどうかと考える。
 また、*7-6のように、世界トップレベルのスマート農業の実現に向け、北海道でロボットトラクターやドローンの実証研究が始まり、大学・民間企業・行政などが連携するそうで、これはよいことだと思う。そして、これらの動力も再エネ由来の電力や水素燃料を使えば、これまでのように燃料費の高騰に悩んだり、それに国から補助を出したりする必要がなくなるため、再エネへの転換は素早く進めるべきだと考える。
 確かに、農業の生産性向上には、*7-7のような肥育期間の短縮もあるが、消費者の健康・生産性・付加価値を両立させるには、「ヘルシー佐賀牛」の分類を作って、脂肪割合が小さく蛋白質割合の大きな牛肉を、稲わら・ハーブ・みかんの皮・牧草などの割合を増やして育てたり、放牧したりする方法があるのではないだろうか?

*7-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13719393.html (朝日新聞 2018年10月12日) 太陽光発電抑制、九電が検討 この土日、需給バランス保つため
 九州電力は11日、太陽光など再生可能エネルギーの発電事業者に一時的な発電停止を求める「出力抑制」を、この土日の13、14日に実施する可能性があるとホームページ(HP)で公表した。実施すれば、離島を除いて国内で初めて。4基の原発が再稼働した九州で、再生エネの一部が行き場を失う事態になりそうだ。土日は好天が予想され、出力調整の難しい太陽光の発電量が伸びるとみられる。一方、休日で工場などの稼働が減るうえ、秋の過ごしやすい気温で冷房などの電力の使用量も落ち込みそうだ。需要と供給のバランスが崩れると、電気の周波数が乱れ、発電所が故障を防ぐために停止し大規模停電につながる恐れがある。九電は火力の抑制などをしても需給バランスの維持が難しいと判断し、国のルールに基づき行う。天候次第で停止を見送る可能性もある。抑制の前日に最終判断をし、太陽光で約2万4千件、風力で約60件の契約から、発電を止める事業者を九電が選ぶ。出力の小さな一般家庭は対象外。選んだ事業者には電話やメールで知らせる。日照条件に恵まれた九州では、2012年に始まった再生エネの固定価格買い取り制度(FIT)を受けて太陽光発電の接続量が急増した。九州の需要のピークは1600万キロワット弱。太陽光は800万キロワット程度が接続されており、まだ拡大傾向にある。さらに九電は11年の東京電力福島第一原発事故後、この夏までに原発4基(計約400万キロワット)を再稼働させた。国のルールでは原発の発電を優先することになっており、再生エネの入る余地が狭まっている。今月下旬にも原発が稼働する四国電力でも、出力抑制の可能性がある。専門家からは、大手電力間を結ぶ送電線で余った電気をより多く送ったり、原発を優先するルールを見直したりするべきだとの意見も出ている。

*7-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28676230Y8A320C1000000/ (日経BP速報 2018/3/28) 「再エネ比率22~24%」目標変えず 経産省が事務局案
 経済産業省は、総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会を開催し、事務局案を2018年3月26日に公開した。同案は「エネルギー基本計画」の見直しに関するこれまでの議論を受けたもの。同案では、15年度に定めたエネルギーミックスを前提として、その達成に向けた課題を整理した構成になっている。「再生可能エネルギーの比率22~24%」などの従来の電源構成の目標値を変えない方針を明らかにした。「エネルギー基本計画」は3年ごとに見直すことになっており、前回は14年に改訂した。それを受け、15年に長期エネルギー需給見通し小委員会の場で、「2030年のエネルギーミックス(電源構成)」を議論し、「再エネの比率22~24%」「原子力の比率22~20%」などの目標値を決めた経緯がある。

*7-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20181012&bu=BFBD9496・・(日経新聞 2018年10月12日) 水素プラント、川崎で起工 千代田化工など4社、太陽光の水素ステーション 実証施設、来年中にも
 北陸では初めてとなる水素ステーションの建設に向けた動きも富山県内で着々と進行する。富山水素エネルギー促進協議会は、太陽光発電の電気を使って水素を製造する水素ステーション実証施設の2019年中の設置を目指している。富山市、北酸など官民が連携して、富山市環境センターに施設を建設。太陽光という再生可能エネルギーを使って水の電気分解で水素を発生させ、燃料電池バスや燃料電池車のカーシェアなどへの利用を検討する。18年度の環境省の二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金を申請中。水素製造量は1日当たり燃料電池車2台分と規模は小さいが、同協議会は「導入当初としては十分」とし、20年までに県内に本格的な水素供給拠点を設けるという目標への足がかりとしたい考えだ。

*7-4:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20181012&bu=BFBD9496・・(日経新聞 2017年12月11日) 水素発電実験、神戸で開始へ 世界初、市街に供給
 神戸市で水素を燃料に発電した電気を市街地の複数施設に供給する世界初の実証実験が2018年2月上旬に始まる。市民病院など4カ所に電気と熱を送る計画だ。川崎重工業と大林組が建設した発電所が人工島のポートアイランドに完成した。水素は温暖化ガス削減に向けた次世代エネルギーと有望視されており、地域での有効利用をめざす。神戸市が施設への電気供給などで協力した。

*7-5:https://www.agrinews.co.jp/p45411.html (日本農業新聞 2018年10月6日) 北海道地震1カ月 もろい電源 分散型急げ
 北海道地震に伴う生乳廃棄は人災と言っても過言ではない。北海道の酪農家の率直で切実な訴えである。9月6日未明、北海道胆振地方中東部を震源とした最大震度7を記録した北海道地震から1カ月。厚真町を中心に41人が犠牲になった。日本の食料基地を襲った地震は、全国の生乳生産の半数以上を占める酪農に大きな影を落とした。北海道電力苫東厚真石炭火力発電所の停止による全域停電(ブラックアウト)による搾乳の混乱だ。電源を失った酪農家は、持っていた自家発電装置で搾乳・冷蔵を続けることができたが、装置を持たない乳業工場は相次ぎ操業を停止、行き場を失った生乳は廃棄を余儀なくされた。道によると、6日から10日までの5日間の被害額は、全道で21億円に上った。これが冒頭の「人災」につながるわけだが、犯人捜しをしたいのではない。問題は、災害時の危機管理として、大規模停電を予測できなかったのかということである。災害を機に迅速な対応を取った地域もある。愛媛県のJAにしうわは、2004年9月の台風18号による停電で主力の温州ミカンのかん水に欠かせないスプリンクラーが停止。農家が手作業で水をまいたため、樹体に付いた塩分を落とし切れず、ミカンが大きな被害を受けた。このためJAは、非常時の補助電源として発電機70台を導入した経緯がある。地震発生時、道内の酪農家は自衛手段として自家発電装置を整備し、搾乳・冷蔵ができた。十勝地域のJA大樹町では7割、JAひろおでは8割の酪農家が発電機を導入していたという。一方で、道内の乳業工場39カ所のうち、自家発電設備を持っていたのは2工場だけ。酪農と乳業は「車の両輪」に例えられる。一方のタイヤが正常でももう一方がパンクをしていれば走ることはできない。災害に備えた自衛策は待ったなしである。さらに求めたいのは、停電の原因となった「集中型電力システム」の改善だ。ブラックアウトは、電気の需給バランスが乱れて発生した。地震後も稼働していた再エネ発電所があったにもかかわらず、厚真発電所の一つの停止により、その電力は活用できなかった。現行のシステムのもろさが露呈した格好だ。道内では太陽光、風力、水力、地熱、家畜や森林由来のバイオマス(生物由来資源)による再生エネルギーが盛んに導入されている。太陽光と風力だけを見ても160万キロワットの発電容量がある。これは地震前日の最大需要の4割に相当する。これをもっと活用すべきである。国は、再エネを主力電源と位置付けている。再エネの特徴である地域分散型を生かし、集中型から地産地消型の可能性を追求すべきだ。災害が常態化している今こそ、北海道地震の教訓を生かさねばならない。

*7-6:https://www.agrinews.co.jp/p45485.html (日本農業新聞2018年10月15日)一大拠点へ実証 ロボトラクターやドローン自動飛行 産官学が連携 北海道でスマート農業
 世界トップレベルのスマート農業の実現に向け、ロボットトラクターやドローン(小型無人飛行機)の実証研究が北海道で始まる。大学、民間企業、行政などが連携して、遠隔監視によるロボットトラクターや、ドローンの自動飛行による農薬散布などを試験。最先端のスマート農業技術が集まる一大拠点にする考えだ。14日に更別村で説明会を開き、取り組みが動きだした。内閣府の近未来技術等社会実装事業の一環。同事業は、人工知能(AI)や自動運転、ドローンなどの技術による地方創生を支援するのが狙い。道と同村、岩見沢市の3者が共同提案し、採択された。東京大学や北海道大学、ホクレンなどが参画する。実証する農機の無人走行システムは、北海道大学などと協力し、トラクターに取り付けたカメラの映像を通して、遠隔監視しながら走行させる。農地間の移動も公道を想定して自動運転で走らせる。水田地帯の同市と、畑作地帯の同村で分けて実証を進める。同村では、ドローンの自動飛行による農薬散布も実証する。夜間の自動散布や複数台による編隊散布なども検討しており、農業現場で利用しやすいシステムを検討する。ドローンで測定した生育データは蓄積して、スマートフォンのアプリケーションで活用。AIで生育状態を把握できるようにする。今後、11月中にも関係組織で事業に関する協議会を設立。具体的な実証内容やスケジュールを詰めていく。同村では14日、学や民間企業、JAなどの関係者を集め説明会を開催。JAさらべつの若園則明組合長は「1戸当たりの耕作面積が増える一方、人手不足は深刻。成功してほしい」と期待を込めた。西山猛村長は「未来の農業を開く一歩を踏み出せた。村だけでなく日本の農業を守ることにつなげたい」と意気込みを述べた。

*7-7:http://qbiz.jp/article/142397/1/ (西日本新聞 2018年10月16日) 佐賀牛肥育3カ月短縮 27カ月齢への技術確立 佐賀県畜産試験場
 佐賀牛など佐賀県産和牛の出荷月齢を通常の30カ月から27カ月に早期化しつつ、肉の質と量は良好に維持する技術を、県畜産試験場が確立した。近年、子牛価格と飼料代が高騰しており、出荷の回転率を上げて肥育農家の収益改善につなげる。同様の試みは九州でも広がっており、試験場は本年度中にマニュアルをまとめ、生産者への普及を図る。県によると、和牛の生産は、母牛から子牛を産ませる繁殖農家と、子牛を購入して育てて出荷する肥育農家の分業が一般的。県内では2月現在、繁殖農家468戸が約9200頭、肥育農家202戸が約3万5200頭を飼育する。ただ、県内の子牛価格は平均70万〜80万円と、10年ほど前の約2倍に値上がりした上、飼料代も高騰。試験場によると、肥育農家は収益を上げるのが難しくなっているといい、農家数は5年前より約2割減った。このため、出荷までのサイクルを早めて生産コストを抑えようと、2014年度から研究を始めた。
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 通常、肉用牛の出荷は30カ月ほどかかり、繁殖農家が子牛を育てる9カ月間の「育成期間」と、肥育農家による以後21カ月間の「肥育期間」に分かれる。育成期間は稲わらなど繊維質で低カロリーの餌を与え、肥育期間は肉に霜降りを入れるためにトウモロコシなど高カロリーの穀物を食べさせる。試験場は(1)育成は9カ月間のままで肥育を18カ月間に縮める「肥育期間短縮」(2)繁殖から育成まで一貫経営する農家用に、育成を6カ月間に縮めて肥育開始を早める「早期肥育開始」−の二つの方法の試験に取り組んだ。前者は肥育期間中、月ごとに飼料を増やしていくペースを従来より上げた。後者は生後6カ月から肥育用の飼料に少しずつ切り替え、8〜9カ月から完全に肥育用にした上、増量ペースも上げた。試験の結果、脂肪交雑(霜降りの度合い)を示す数値はいずれの方法も県平均7・2を上回った。肉量は県平均486キロと比べて、前者は483キロと若干少なかったが、後者は508キロと上回った。
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 ただ、新しい技術が生産者に浸透するには時間がかかりそうだ。JAさが畜産部によると、ブランド牛の買い手が品質を判断する上で重視するのは出荷月齢。内田武巳部長は「県内の肥育農家は月齢をかけて牛を大きく育て、肉量を確保して収益を得る傾向にある」と指摘する。牛を大きく育てつつ、脂肪交雑を維持するのはこれまでも課題で、試験場は今回、牛の体調を見ながら飼料を与えるタイミングや期間、量を調整。「肉質は十分維持できている」と太鼓判を押す。一方では、産地間競争も激化している。九州の他県も同様の試みに力を入れており、鹿児島県農業開発総合センター畜産試験場は7月、佐賀より3カ月少ない24カ月齢での出荷技術を確立したと発表した。鹿児島の担当者は「肉の質、量とも従来と遜色ない」としており、佐賀県畜産試験場も24カ月齢出荷の試験を進めている。
*佐賀牛:JAグループ佐賀の生産者が出荷した黒毛和牛の中で、肉質が最上級の5等級か、4等級のうち脂肪交雑(霜降りの度合い)が7以上を指す。佐賀牛を提供するJA直営のレストラン「季楽(きら)」が佐賀、福岡両市、東京・銀座にある。昨年11月に東京であった日米首脳会談に際しての夕食会でも振る舞われた。近年は香港や米国、シンガポールに輸出している。

PS(2018年10月13、19、21日追加): *8-1、*8-2のように、九電は九州7県の太陽光・風力発電事業者計約2万4千件(計475万キロワット→原発4~5基分)を対象に稼働停止を求める出力制御を13日に実施すると発表し、「電力の安定供給のため」と説明しているが、ここが思考停止によるイノベーション妨害なのである。蓄電池・水素生成・地域間送電線を使った電力の広域的運営など、方法はいくらでもあった筈だが、最も高コストでハイリスクの原発再稼働を選択したのが、またもや経産省の失敗である。
 なお、*8-3のように、北海道新聞も、九電が太陽光発電の一部事業者に「出力制御」を実施したことについて、「原発優遇の出力制御が度重なると、再エネの使い勝手が悪くなって普及に水を差すため、政府は現行の原発優先ルール見直すとともに、送電網を増強し、大型蓄電池や地産地消型の分散型電源など、再生エネを無駄にしない仕組み造りをすべきだ」等々と記載しており、全く賛成だ。
 さらに、*8-4のように、九電は、118万キロワットの再エネ出力を20、21日に停止させるそうだが、もったいないことだ。全体の電力料金を下げてエネルギーを(高齢者にとって、より安全な)電力にシフトさせたり、休日の電力料金を下げ労働力をローテーションして休日も工場を稼働させ、電力消費量を平準化する方法もあると思う。

   
      2018.10.13西日本新聞             2018.10.7佐賀新聞

(図の説明:左のグラフのように、九州では太陽光・風力で域内の電力需要をほぼ賄える状況になったが、さらに原発4基を再稼働したため電力が余った。今後は、1番右の図のように、漁業と親和性の高い洋上風力発電設備も据え付けていくため、原発なしでも他地域に送電できる状態になり、蓄電池・水素生成・他地域への送電線・九州域内での製造業のテコ入れなどが望まれる。そして、これは九州だけに特化した現象ではないだろう)

*8-1:http://qbiz.jp/article/142329/1/ (西日本新聞 2018年10月13日) 九電13日に出力制御 九州6県の太陽光9759件停止要請へ
 九州電力は12日、太陽光発電など再生可能エネルギー事業者に稼働停止を求める出力制御を13日に実施すると発表した。原発4基の稼働や再生エネ発電設備の増加などで九電管内の供給力は高まっており、需要と供給のバランスが崩れて大規模停電が起きるのを防ぐのが目的。離島以外では全国初となる。九州7県の出力制御対象は太陽光・風力発電事業者計約2万4千件(計475万キロワット)で、13日は熊本県を除く6県の太陽光発電9759件、計43万キロワット分を想定。九州各地で晴れて太陽光発電が増加する一方、気温低下により冷房などの電力需要が減ると判断した。実施は午前9時〜午後4時の7時間を想え定している。九電によると、余剰電力が最大になる時間帯は正午〜午後0時半ごろで、再生エネや火力、原子力発電などの供給力が1293万キロワットあるのに対し、需要は828万キロワットの見込み。国のルールに沿って、ダムに水をくみ上げる揚水運転や火力発電の出力抑制、他電力会社への送電などを行っても、43万キロワット分の余剰電力が生まれ、再生エネの出力制御が必要になるという。13日早朝の気象予報などで、最終的な出力制御量と対象事業者を確定する。九電の和仁寛系統運用部長は12日の記者会見で「電力の安定供給のために必要な対応であり、ご理解とご協力をお願いしたい」と語った。14日も出力制御を行う可能性があり、13日に実施の可否を判断する。(以下略)

*8-2:http://qbiz.jp/article/142300/1/ (西日本新聞 2018年10月13日) 再生エネ急増でも活用半ば 蓄電、送電は負担重く後手 九電出力制御
 九州電力が13日、太陽光発電の出力制御に踏み切ることになった。再生可能エネルギーの拡大を目的に国が固定価格買い取り制度(FIT)を導入した2012年以降、日照条件が良い九州では全国を上回る勢いで太陽光発電が急増している。政府は7月に閣議決定したエネルギー基本計画で再生エネの「主力電源化」を目指すとしているが、そのために必要となる蓄電池の普及などの対策は進んでいない。東京電力福島第1原発事故を受け「脱原発」の気運が高まる中で導入されたFIT。再生エネの高値買い取りが誘発剤となり、太陽光は爆発的に普及が進んだ。九電によると、FIT導入後の6年間で、管内の太陽光発電能力は7倍に増加している。核廃棄物も二酸化炭素(CO2)も排出しない再生エネだが、弱点もある。太陽光は日照がないと発電できないため、出力変動に備えて火力発電所など他の電源も同時に運用しておくことが不可欠。九電が今秋までに原発計4基を稼働させたことで電力の供給力が底上げされたことに加え、原発は出力調整が難しいこともあり、電力需要が落ち込む時期に再生エネの出力を絞る可能性が高まっていた。こうした状況で再生エネをどうやって拡大させるのか。その一つの方策が、日中の余剰電力をためて夜間などに使えるようにする「蓄電池」だ。国の補助を受けて九電は16年、福岡県豊前市に約200億円を投じて出力5万キロワットの大容量蓄電システムを整備した。しかし、これだけでは「焼け石に水」。九電管内の太陽光は毎月5万キロワット増え続けており、蓄電池だけで増加分に対応していくと仮定すれば、毎月200億円が必要な計算になる。九州で余った電気を、地域間送電線「関門連系線」を使って本州側に流す方法もある。だが、送電可能な再生エネの容量は、九州の太陽光発電能力の8分の1ほど。経済産業省の認可法人「電力広域的運営推進機関」が17年度に連系線そのものの容量倍増を検討したが、費用試算が1570億円に上ることから見送られた。経産省は19年度予算概算要求に蓄電技術の開発支援を盛り込んだほか、IoT(モノのインターネット)を使った需給バランス管理の高度化などを議論する研究会も今月設置する予定。しかし、再生エネ拡大に向けたコストを誰がどう負担するのかといった肝心の制度設計はこれから。経産省幹部は「当面は出力制御で対応することになる」と話す。急成長した再生エネに、制度が追いついていないのが現状だ。
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●「原発再稼働も一因」 九電が会見
 九州電力は12日、出力制御の実施決定を受けた記者会見で、増え続ける太陽光発電に設備面などで対応しきれていない現状を説明、今後も実施は不可避との認識を示した。「設備の増強が追いついていない」。九電の和仁寛系統運用部長は会見で説明した。九州には全国の約2割の太陽光発電所が集まっており、今後も導入が進むのは確実。「(ピーク時の)出力制御にご協力いただくことで再生可能エネルギーの受け入れ量は増える」と述べ、実施に理解を求めた。制御の対象になる事業者については「不公平感が出ないことが最も重要」と強調した。今夏、原発が4基運転体制になり、供給力の調整幅が狭くなったことも影響する。和仁氏は出力制御はさまざまな需給要因を踏まえた「総合的な判断」としながらも、「原子力発電所の再稼働が一因にはなっているかもしれない」と話した。

*8-3:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/239370 (北海道新聞社説 2018年10月19日) 太陽光出力制御 原発優先ルール再考を
 九州電力が太陽光発電の一部事業者に一時的な発電停止を指示する「出力制御」を実施した。太陽光の発電量が増える日中に、電力の供給量が需要を上回り、大規模停電が起きるのを回避するためだという。胆振東部地震に伴う全域停電のような事態は避けねばならないが、問題はそのやり方だ。国のルールでは、原発より先に太陽光や風力の出力を制限すると定めている。だが原発優遇の出力制御が度重なると、再生可能エネルギーの使い勝手が悪くなり、普及に水を差さないか。再生エネを将来の主力電源とする国の方針に逆行する。政府は現行ルール見直しの道を探るとともに、需給バランスを保って出力制御を避ける仕組みづくりを急ぐべきだ。九州は日照条件の良さから太陽光発電の普及が進み、導入容量は原発8基分に相当する。今回は好天で発電量が多くなる一方、週末で工場稼働などが減り電力需要の低下が見込まれた。九電は火力発電を抑え、余剰電力を揚水発電の水のくみ上げや他の電力会社への送電に回したが、調整しきれず制御に踏み切った。見過ごせないのは、九電の原発4基が今夏までに再稼働し、供給力が底上げされていたことだ。そのため、冷房使用が減る今秋の出力制御の可能性が早くから取り沙汰されていた。供給過多が見込まれる中で再稼働が必要だったのか、検証が求められよう。原発は出力を一度下げると、戻すのに時間がかかり、経済産業省は出力調整が難しいと説明する。しかし、ドイツやフランスでは需要に応じて原発の出力を調整しており、不可能ではない。再生エネ事業者は一部を除き、出力制御に無補償で応じなくてはならず、日数の制限もない。発電を止めれば売電収入を失う。制御が頻発すれば収益が圧迫される。欧州でも再生エネの出力制御を行っているが、発電を停止した業者に補償金を支払う国が多い。国は固定価格買い取り制度などで再生エネ導入を促すが、拡大に環境整備が追いついていない。九州と本州を結ぶ送電線「関門連系線」の運用容量は、北海道と本州を結ぶ北本連系線を大きく上回るが、それでも足りなかった。送電網の増強に加え、大型蓄電池開発や地産地消型の分散型電源など、再生エネを無駄にしない仕組みが欠かせない。費用負担のあり方も含め国全体で考える時だ。

*8-4:http://qbiz.jp/article/142753/1/ (西日本新聞 2018年10月20日) 九電、再エネ出力21日も制御 初の100万キロワット超対象
 九州電力は20日、太陽光発電の一部事業者に対し、発電の一時停止を指示する再生可能エネルギーの出力制御を21日も実施すると発表した。先週末と20日に続く措置。制御対象は118万キロワットの計画で、これまでで最大。九州全体で気温が上昇せずに冷房需要が一段と減少する見通しの一方、好天で日中の太陽光の出力増加が見込まれるため。九電によると、20日に実施した再エネの出力制御は当初の計画では70万キロワット程度だったが、事前の想定より再エネの発電量が増えなかったとして、実際は最大で52万キロワット程度になった。制御の対象は13日が43万キロワット、14日が54万キロワットだった。

<ノーベル平和賞:人類発祥に関するゲノム研究が進めば・・>
PS(2018年10月15日追加):今年のノーベル平和賞は、*9-1のように、ISの性暴力を告発したイラクの宗教的少数派ヤジディー教徒のナディア・ムラドさんと、コンゴ民主共和国で性暴力被害者のケアを続けてきたデニ・ムクウェゲ医師に決まったが、2人の命がけの活動に敬意を表する。一方、中東では、レイプも「婚前・婚外交渉」として被害女性を殺害する「名誉殺人」が横行し、中東・アフリカには、レイプの加害者が被害者と結婚すれば罪を免れるという法律も残っているそうだ。このように、今の日本では想像すらできないことが起こる文化圏で、女性の地位向上を訴えるのは、誰であっても命がけであり、圧力が必要になることもあろう。従って、*9-3のように、サウジアラビア皇太子が、女性の運転免許を解禁したり、脱石油依存に舵をきったりしたことなども、多方面から批判されたことが想像に難くなく、このような中で「メディアなら何でも言いたい放題言ってよく、それは妨害されるべきでない」というのは、自らは改革を進めたことがない人の甘い考え方だと思う。
 なお、*9-2のように、『ゲノムが語る人類全史、アダム ラザフォード著』が出版され、現生人類が持っているゲノム分析から、地球上に人類が出現して拡散していった状況が解析されようとしていることがわかる。これは、「我々は、どうやって今ここにいるのか」を追求する究極の科学であり、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスも交雑しており、まだ骨や歯も発見されていない「第四の人類」も存在するそうだ。さらに、文化とDNAの変化による進化(退化)の関係では、人類が農業を始めてからでんぷんを消化するアミラーゼを作る遺伝子が増えたり、乳を飲み続けるようになってからラクターゼを持続的に作り続けるよう遺伝子が変化したりなど、人類は今でも文化的要因に影響を受けながら進化(退化)を続けているわけである。つまり、現生人類の祖先はごく少数の人から始まり、環境に適応しつつ周りと交配したり闘ったりしながら現在に至っていることがわかれば、まずは人種差別がなくなりそうである。

*9-1:https://mainichi.jp/articles/20181006/k00/00e/030/233000c (毎日新聞 2018年10月6日) ノーベル平和賞、性暴力「泣き寝入り」「名誉殺人」に警鐘
 過激派組織「イスラム国」(IS)の性暴力を告発したイラクの宗教的少数派ヤジディー教徒、ナディア・ムラドさん(25)と、コンゴ民主共和国で性暴力被害者のケアを続けてきたデニ・ムクウェゲ医師(63)へのノーベル平和賞授与が決まった。実態が伝わりにくい中東・アフリカの紛争地域で性暴力に立ち向かった勇気が称賛される一方、性暴力に「泣き寝入り」する被害者が後を絶たない現状に国際社会が警鐘を鳴らした格好だ。ムラドさんの兄で、イラク北部クルド自治区の難民キャンプで暮らすホスニさん(37)は5日、毎日新聞の電話取材に「きょうだい6人が殺害され、私とナディアは生き残った。物静かで小さな妹が、大きな勇気を見せた成果。誇りに思う」と話した。ISは2014年8月にムラドさんの故郷コチョ村などに侵攻し、多くの女性をレイプした。戦時下での性暴力は住民に恐怖心を植え付け、支配する手段として使われる。ISはこの手法で暴虐の限りを尽くした。医師のムクウェゲさんは「レイプがコストの安い『戦争の武器』として使われている」と危機を訴え続けた。コンゴでは豊富な鉱物資源を争う中で、住民の恐怖をあおる手段としてレイプが頻発する。一方、女性の純潔が重視される中東諸国では、レイプも「婚前・婚外交渉」として被害者に厳しい視線が向けられるケースが多い。被害女性を「家族の名誉を傷付けた」として殺害する「名誉殺人」が横行する。ムラドさんの親戚のヤジディー教徒タメル・ハムドンさんは「過酷な体験をしながら、どれほど勇気を出したことだろう」と受賞決定の報に声を詰まらせた。被害者の「泣き寝入り」が珍しくない中東・アフリカには、レイプの加害者が被害者と結婚すれば罪を免れるという法律が各地に残る。だが近年、こうした法律も徐々に撤廃されている。モロッコでは12年、両親や裁判官の勧めで加害者と結婚した16歳の少女が自殺。これを機に法律廃止を求める声が高まり、14年に撤廃された。同様の法律はヨルダンやチュニジアでも廃止となった。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは17年、この法律を維持するシリアやリビアなどに撤廃を求めた。

*9-2:http://honz.jp/articles/-/44595 (HONZ 仲野徹 2018年1月27日) 我らが ”サピエンス観” 崩壊! 『ゲノムが語る人類全史、作者:アダム ラザフォード、翻訳:垂水 雄二』
 ここまでわかったのか。あらためてゲノム科学のインパクトを感じる一冊だ。ゲノムとは、ある生物の全遺伝情報を指す。地球上の全生物の遺伝情報はDNAに蓄えられている。うんと簡略化して言うと、ゲノム情報とはACGTという四つの文字が延々と書き連ねられた書物のようなものである。そのサイズは生物によって異なるが、人間の場合は30億文字だ。その配列を決定する方法は猛烈なスピードで進歩してきた。2000年に最初のヒトゲノムが報告された時、13年の年月と三千億円の費用がかかった。それが今や10万円以下、数時間もあればできてしまう。信じられない技術革新だ。従来の酵素を使う方法とは全く異なったナノポアシークエンシングが開発されているが、これに使われる機械の大きさを知ったら、誰もが目を疑うはずだ。なにしろスマホを少し大きくしたくらいなのである。いうまでもなく、ゲノム解析の進歩は、医学に大きな進歩をもたらした。たとえば、数多くの遺伝性疾患の原因が明らかになったし、どのような遺伝子変異が、がんの発症に重要であるかもほぼ解明された。ひと昔前まで、人類進化の研究といえば、基本的に比較形態学、すなわち骨や歯の形の比較であった。しかし、ゲノム解析技術がそのあり方を大きく変えた。第一章のタイトルにもなっている『ネアンデルタール人との交配』が最も有名な例だろう。スヴァンテ・ペーボらが、1856年に発見されたネアンデルタール一号からDNAを抽出し、ゲノム解析を開始したのは1997年のことだ。その研究からわかった最も驚くべきことは、我々、現生人類であるホモ・サピエンスのゲノムに、絶滅したネアンデルタール人の遺伝子が3%近くも含まれていたことだ。なんと、現生人類は、かつてネアンデルタール人と交雑していたのである。ネアンデルタール人は言葉を使えたか、という問題にも大きな進歩があった。喉の構造は、現生人類とネアンデルタール人に大きな違いはない。しかし、それは必ずしも言葉を使えたことを意味しない。チンパンジーと現生人類ではFOXP2タンパクのアミノ酸配列が異なっている、など、いろいろな研究から、言語の能力にはFOXP2という遺伝子が重要であることがわかっている。さて、ネアンデルタール人のFOXP2はというと、現生人類と同じであった。このことは、ネアンデルタール人が言葉を使っていた可能性が非常に高いことを示している。もうひとつ、2006年、シベリア奥地のデニソワ洞窟で発見された、約4万年前に生きていたデニソワ人の話を聞けば、いかにゲノム解析がインパクトある方法であるかが一目瞭然だ。そこで発掘されたのは、歯が一本と小指の先っぽの骨だけだった。当然ながら、それだけでは多くのことはわからない。しかし、骨から抽出されたDNAを用いておこなわれた解析は、驚くべき事実をもたらした。なんと、この女性-女性であることもゲノム解析からわかった-は、現生人類ともネアンデルタール人とも違う「第三の人類」だった。さらに、デニソワ人のDNAの詳細な解析からいくと、どうやら、いまだその骨や歯が発見されていない「第四の人類」も存在していたようなのだ。これからも、ゲノム解析によって人類進化のスキームはどんどん書き換えられていくだろう。当分の間、目が離せない。そんな何十万年も前のことなんか興味がないという人もおられるかもしれないが、この本、章が進むにつれて時代が下ってくるので、心配はご無用。第二章『農業革命と突然変異』では、デンプンを分解する酵素であるアミラーゼの遺伝子が増えたことや、ミルクに含まれる糖分を分解する酵素であるラクターゼの持続的発現といった進化が、一万年前に始まった農業革命によってもたらされた、という話が紹介されている。このことは、人類は、今も進化を続けている。それも、文化的要因に大きな影響を受けながら進化している、ということを示している。逆に、遺伝子が文化的要因に影響を与えることも間違いない。サイエンスはロマンだ。(以下略)

*9-3:https://www.cnn.co.jp/world/35126663.html (CNN 2018.10.7 ) 政府批判のサウジ人記者、行方不明に 在トルコ領事館で殺害か
 イスタンブール(CNN) サウジアラビア政府への批判で知られる同国のジャーナリストが、トルコの最大都市イスタンブールで行方不明になった。米紙によると、同市のサウジ総領事館の中で殺害されたとの情報もある。行方が分からなくなっているのは、サウジ国籍のジャマル・カショギ氏。同氏の婚約者を含む3人の関係者によると、2日にイスタンブールのサウジ総領事館に入ったきり、出てきた形跡がないという。婚約者の女性は総領事館前まで一緒に行ったが、外で待っていたと話している。殺害の情報は、米紙ワシントン・ポストとロイター通信が6日、匿名のトルコ当局者らの話として伝えた。当局者らは今のところ、証拠や詳細を示していない。サウジ側は関与を否定している。ある当局者は、同氏が領事館を訪れた後、まもなく立ち去ったと述べた。ただし、これを裏付ける防犯カメラの映像などは公開されていない。トルコの国営アナトリア通信は、政府が同氏の行方を捜していると伝えた。サウジでは最近、ムハンマド皇太子の主導で、反体制的な聖職者やジャーナリスト、学者、活動化らが次々と拘束されている。ムハンマド皇太子は3日、米ブルームバーグとのインタビューで「隠すことは何もない」と語り、トルコ側による総領事館内の捜索も認めるとの姿勢を示した。カショギ氏は2017年にサウジから米国へ渡り、ムハンマド皇太子の政策を批判する記事などをワシントン・ポストに寄稿していた。

<経産省発の“改革”には人権侵害が多いこと>
PS(2018年10月19、20日追加):*10-1のように、消費税率引き上げに伴う影響緩和策として、経産省の発案で検討されている「キャッシュレス決済」の利用者へのポイント還元案のディメリットは、①クレジットカード保有者やスマホ利用者に限定され、公平性の問題があるだけでなく ②ビッグデータやIT技術を生かすと称して個人の購買活動を勝手に記録し、国民をしつこい広告・勧誘や政府の監視下におく ③従って、第4次産業革命を加速させるより、人権侵害になりやすい ④クレジットカードやスマホ決済は、目の前で金銭が出ていかないため支出額を感じにくくなり、支出のコントロールを失いやすい ⑤スマホ決済はリスク分散ができていないので、スマホを失くしたり盗まれたりすれば一巻の終わり などの欠点がある。
 また、*10-2のように、日本の経産省が米国やEUと国境を越えるデータの流通でルールづくりを目指しているそうだが、それならEUの情報保護規制をそのまま利用した方がよほどマシな規制である。さらに、個人データの利用は、国境を越えた場合のみならず国内でも厳格に本人の了解を求めるのが当たり前であり、それも了解する以外に選択肢がなかったり、了解しなければ不利益を受けるようではいけない。つまり、サイバーセキュリティー対策が不十分な国には、米国や日本も堂々と入っていることを忘れてはならないのだ。
 なお、*10-3のように、日本国憲法は、戦前の経験から、21条で「①集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」「②検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」と明確に定めており、無断のデータ利用や検閲は憲法違反だ。また、言論の自由・表現の自由は、メディアに限らず、すべての国民に保障されているが、人権より優先するものではない。さらに、学問の自由も、23条で保障されている。

*10-1:http://qbiz.jp/article/142660/1/ (西日本新聞 2018年10月19日) 消費増税「還元」高齢者ら置き去り キャッシュレス不慣れ、恩恵不透明 経産省発案、与党も不興
 2019年10月の消費税率引き上げに伴う影響緩和策として政府が検討している「ポイント還元」制度に、早くも疑問の声が相次いでいる。クレジットカードや電子マネーを使った「キャッシュレス決済」の利用者しか恩恵を受けられず、こうした支払いに不慣れな高齢者らが置き去りにされかねないためだ。発案したのは経済産業省。この機に「キャッシュレス決済」拡大を図ろうというあからさまな思惑が、閣僚や与党からも不興を買っている。この制度は、増税後に直前の駆け込み需要から一気に消費が落ち込む「反動減」を緩和する狙い。中小小売店での「キャッシュレス決済」の利用者を対象に、増税幅の2%分のポイントを付与。買い物などに使えるよう還元する仕組みが検討されている。経産省によると、国内のキャッシュレス決済の利用率(15年時点)は18・4%で、韓国の89%や中国の60%を大きく下回る。政府は購買データの活用や、訪日外国人観光客の消費拡大のため、25年までに国内の利用率を40%まで高めることを目指す。ポイント還元は普及の好機だ。7月に産学官で設立した協議会は、スマートフォンを使ったキャッシュレス決済「2次元コード決済」について、18年度内の規格標準化を目指すと打ち出した。経産省幹部は「消費税対策を奇貨として普及させたい」と話す。だが経産省の発想は経済基盤の整備に偏り、消費者側からの視点が抜け落ちた格好。スマホに不慣れな高齢者や、カード審査に通らない人はポイント還元の恩恵を受けられず、不公平な制度設計を疑問視する声が上がる。麻生太郎財務相は16日の記者会見で「田舎の魚屋で、大体クレジットカードなんかでやってる人はいない。現金でばっとやっていくという中で、どれだけうまくいくか」と首をひねった。公明党の石田祝稔政調会長は「システムを導入できなかった事業者、カードを持てなかった人にどういう対策ができるか」と提起した。世耕弘成経産相は16日の会見で「多くのキャッシュレス対応の選択肢を準備することも重要」と強調。対象をキャッシュレス決済に限定する考えを崩していないが、与党内ではプレミアム付き商品券や現金を配布する案も浮上し、臨時国会で議論を呼びそうだ。
   ◇   ◇
●公平性の問題生じうる 
 小黒一正法政大教授(公共経済学)の話 ポイント還元案は(ビッグデータやIT技術を生かす)第4次産業革命を加速させるきっかけにはなる。一方で、キャッシュレス決済ができるのは比較的所得の高いクレジットカード保有者やスマホ利用者に限定され、公平性の問題が生じうる。軽減税率に加え、還元も導入すれば税収増がさらに圧縮されるという財政面のデメリットも抱えている。

*10-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181019&ng=DGKKZO36672510Z11C18A0MM8000 (日経新聞 2018年10月19日) 日米欧で「データ貿易圏」、情報流通へルール作り 台頭する中国を意識
 日本政府が米国や欧州連合(EU)と国境を越えるデータの流通でルールづくりを目指すことが分かった。個人や企業の情報を保護しながら人工知能(AI)などに安全に利用する仕組みをつくる。今年はEUの情報保護規制やフェイスブックの情報流出で米IT(情報技術)大手の戦略にほころびが生じた。台頭する中国とのデータの「貿易圏」争いを意識し、日米欧で連携を狙う。日本政府の目標は個人情報の保護やサイバーセキュリティー対策が不十分な国・地域、企業へのデータ移転を禁じる合意だ。国境を越えた移転には厳格に本人の了解を求め、透明性も高める。世耕弘成経済産業相、ライトハイザー米通商代表らが出席する日米欧貿易相会合で協議する。日本が議長国を務める2019年6月の20カ国・地域(G20)首脳会議までに合意して公表したい考えだ。日本の個人情報保護委員会、米連邦取引委員会(FTC)、欧州委員会司法総局で具体的な内容をまとめ、各国が法整備する。日本では個人情報保護法を改正する。これまでデータの世界はGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)と呼ばれる米巨大企業が圧倒してきた。だがEUが5月、個人情報の保護を強化する一般データ保護規則(GDPR)を施行し、EU域外への個人データの移転を原則禁じたため、GAFAも対応を迫られている。今年はデータ流出事件が相次ぎ、米国内でもGAFAへの規制論があがりはじめた。GDPRとデータ流出でGAFAの覇権が揺らいだわずかな隙に、日本は欧米の橋渡しをしてルールづくりにつなげる構えだ。日本政府関係者は「米政府が欧州のGDPRに準拠した規制に関心を示し始めている」と話す。米国が欧州の基準に歩み寄るかが焦点になる。中国の管理社会型のデータ流通への警戒もある。中国はBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)と呼ばれる企業を前面に立てて国家が情報を吸い上げ、個人が特定された大量のデータが集まる。質も量も高水準なデータを使えばAIの競争力は飛躍的に高まる。既に東南アジアや中東、アフリカに売り込みを始めており、中国モデルのデータの貿易圏が広がりかねない。日米欧は中国に比べると人権に配慮し、ある程度匿名化したデータを使う。そのためにAIの能力で負ける可能性もある。国家主導・管理社会型の貿易圏が次の覇権を握る前に、透明性が高く人権に配慮した貿易圏をつくれば、域内で大量のデータを共有して競争力を高めることができる。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」では、製造業に強みを持つ日本にもチャンスがある。欧米とは産業データも安全に流通させるルールをつくり、成長につなげる考えだ。

*10-3:http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM (日本国憲法 抜粋) 
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
   2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第23条 学問の自由は、これを保障する。

| 経済・雇用::2018.1~ | 07:41 PM | comments (x) | trackback (x) |

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