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2013,06,28, Friday
2013.6.27西日本新聞より 2012.10.29佐賀新聞より 九州に及ぼす影響 SPEEDIによる事故時の放射性物質の広がり *1のとおり、再生可能エネルギーの利用を邪魔しなければ、再生可能エネルギーによる世界の発電量は、2016年に天然ガスによる火力発電を超えるというのが国際エネルギー機関の予測で、すでに原発の発電量は裕に超えている。従って、原発が稼働しなければ電気代が上がり、CO2排出量が増えるというのは原発推進派の方便であり、電力自由化と再生可能エネルギーへの変換を行えば、電気料金は半額程度になると思う。 それにもかかわらず、*3のように、前回の選挙で大勝したのをよいことに、自民党は原発推進を行っているが、選挙は原発のみを争点として行われたのではなく、選挙結果は、経済政策、農業政策、電力自由化、候補者の優位性など、その他の要素が大きく働いて出たのであり、原発推進を多数の国民が望んでいたと考えたら、大間違いである。 それどころか、事故を起こしたのがフクイチであっても、フクイチからわかったことは、①原発を使う電力会社の危機管理意識は非常に低いこと ②平時から人間に有害な物質をフィルターも通さずに環境に排出するような意識だったこと ③事故が起きたら想定外ばかりで後始末もできないこと ④原発には製造者責任が課されていないこと ⑤核廃棄物の捨て場もないこと など、人間や環境を如何にないがしろにし、国策であることに甘えていたかということであった。従って、これは他の原発も同じであり、「このような主体には、原発を作る資格も、運転する資格も、監督する資格もない」というのが結論なのであって、*2の玄海原発も例外ではない。 *1:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2494350.article.html (佐賀新聞 2013年6月28日) 再生エネ発電、ガス火力超える / IEAの16年予測、原発の2倍 再生可能エネルギーによる世界の発電量は、2016年に天然ガス火力発電を超え、石炭火力発電に次ぐ第2の電源になるとの予測を、国際エネルギー機関(IEA)が28日までにまとめた。発電量は約6兆1千億キロワット時に達し、原子力発電の2倍になるという。クリーンなエネルギーを求める声の高まりやコストの低下によって、風力や太陽光発電が世界的に拡大しているため。IEA事務局長は「多くの再生可能エネルギーは誘導策がなくても普及するようになったが、さらに拡大し続けるには中長期的に安定した政策が必要だ」と訴えている。 *2:http://qbiz.jp/article/19707/1/ (西日本新聞 2013年6月28日) プルサーマル発電再開方針 九電玄海3号機 2009年に玄海原発(佐賀県玄海町)3号機で国内初のプルサーマル発電を始めた九州電力は、同3号機を含む原発4基の早期再稼働を目指しており、認められれば、同3号機ではプルサーマル発電を再開する方針だ。九電は09年、同3号機の全燃料193体のうち、MOX燃料を16体装荷してプルサーマル発電を始めた。10年6月に新たにMOX燃料20体を搬入。このうち16体を追加して11年4月から運転する予定だったが、東京電力福島第1原発事故の影響で、玄海3号機の運転再開は見送られたままとなっている。九電は現在、計36体のMOX燃料を保有しており、新たな搬入予定はないという。 *3:http://digital.asahi.com/articles/TKY201306270743.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2013年6月28日)見過ごせぬ、議論なき原発回帰 論説主幹・大野博人 経済の先行きや外交の緊張に目が向きがちだが、参議院選挙では、安倍政権の原発政策を問わないわけにはいかない。昨年末の総選挙の公約で自民党は「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立をめざす」としていた。「脱」ではないが、原発を相対化する姿勢は見せていた。ところがここに来て、それさえうやむやにしつつある。原発の再稼働に傾斜する、核燃料サイクルという考え方にこだわる、インド、トルコ、中欧などに立て続けに原発の売り込みをかける――。参院選の公約からは「脱依存」が消え、かわりに再稼働に向けて地元理解を得るための「最大限の努力」を掲げる。「原発に依存する経済・社会構造」の復活を目指しているように見える。見過ごせないのは、依存への傾斜を真正面から問わず、なし崩しに強めつつある点だ。たとえばエネルギー白書から原発ゼロをめぐる記述が抜けた。議論もせずに依存へと回帰するのは民主的ではない。場合によっては今後3年は国政選挙がない。参院選ではっきりと国民に説明するべきだ。 ■事故原発抱える現実 もし仮に、日本がすべての原発をすみやかになくすと決めても、廃炉作業に手をつけることさえ容易ではない原発がある。福島第一だ。炉内でどうなっているか依然としてわからない燃料の冷却が続く。その冷却水の処理にも四苦八苦だ。除染も出口は見えない。避難した人々の将来の展望も開けていない。現場や周辺地域、行政、避難先で多くの人が今もなお苦闘している。それは今後数十年たっても完全には終わらないだろう。その間、不測の事態が発生するリスクも排除できない。2011年の3月11日から、日本は違う時代に入った。それ以前とは異なり、危険な事故原発を抱える国になった。もう一つ重大な事故が起きる事態に耐える余裕はないだろう。ならば規制基準を厳しくし、事故対策を整えながら、原発をなるべく早く減らしていくしかないではないか。それが今日の日本の身もふたもない現実だ。 ■こっそりと逆行 にもかかわらず、安倍政権が進める政策は、その現実から出発しているようには見えない。自民党の高市早苗政調会長の発言や原発再稼働を求める議員連盟の発足を見ればなおさらである。結局、この政権はエネルギー政策を福島の事故前の軌道に、ほぼそのまま戻したいようだ。できれば事故を、わたしたちの現代史の文脈の中でカッコでくくり、読み飛ばしても許される過去としたいのかもしれない。しかし実際は、日本の針路を決定づける歴史的な出来事のはずだ。福島を論じない選挙にしてはならない。
| 原発::2013.5~7 | 08:05 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,06,27, Thursday
*1より 太陽光発電をつけたハウス 地中熱利用の原理 私も、衆議院議員の時、ハウスみかんの産地である地元を廻っていて、ハウス内で作物を育てると、雨風をしのぐことができ、害虫や汚れが付かないので、管理しやすく農薬も少なくてすむだろうと思っていた。また、ミツバチを使って受粉することもできる。そのため、*1の記事は、納得できた。 これに加えて、日本なら、ハウスに、太陽光発電などの再生可能エネルギーや地中熱利用システムをつけて、安いコストで温度や光を調節することにより、より長く収穫できるのではないだろうか。日本にも、広い畑で穀物栽培をすることが難しい中山間地が多いので、最新のテクノロジーを使う形で参考にしたい。 *1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=21869 (日本農業新聞 2013/6/26) 北イタリアのベリー類栽培 先進協同組合の取り組み報告 全国ブルーベリー産地シンポから 日本ブルーベリー協会が長野県でこのほど開いた全国産地シンポジウムで、北イタリアでベリー類をブランド化したサントオルソラ協同組合の取り組みについて報告があった。日本と同じような山岳地帯の小規模生産者が、均一な品質、鮮度で勝負し、約60億円を売り上げる。講演したマーケティング責任者のサラ・ベリニ博士は、日本の実態も踏まえ栽培や貯蔵などの重点を紹介。中でも雨よけの必要性を強調した。講演要旨を紹介する。 ●品質・鮮度で勝負 雨よけで収量向上 1972年に設立した生産協同組合で、1160人の生産者で組織する。イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、スグリ類、オウトウなどを扱う。冬は生産できないので、南イタリアに組合員を増やし、外国産も別ブランドで扱い周年出荷する。昨年は410ヘクタールで4600トンを生産。国内外での販売量は5500トンだった。30アール以下の兼業農家が多く収入をベリー類が補完する。一般作物栽培が難しい急峻(きゅうしゅん)な渓谷地帯での人口流出を防いでいる。生産者は(1)全量出荷(2)少農薬の総合的病害虫・雑草管理(IPM)(3)出荷物の畑での箱詰め――が義務付けられる。摘み取り観光園は許されない。遮光フィルムでトンネル栽培し、土壌病害を避けるため夏秋イチゴとラズベリーはコンテナやポットで栽培、ラズベリーはポットを冷蔵処理し出荷期を調整する。通路は草生栽培で温度を下げる。品種は1、2品種に絞っている。公立の研究所もあるが、独自の研究開発部門が6ヘクタールの畑を持ち、品種を開発している。大量生産・大量出荷の海外産地に、量では勝てない。鮮度が良く品質のそろった果実が目標だ。果実は畑で収穫、パックに詰め計量する。イチゴは保冷資材を敷く。室温2度、湿度80%で1時間予冷する。果実温が一挙に下がり貯蔵性が増す。コールドチェーンが販売店まで続く。ブルーベリーはピートモスやココヤシピートでマルチする。雨よけは収量が30%増える。品質がそろい、過熟果、ショウジョウバエ、病気の問題がなくなる。雨の日も収穫できる。植栽は列間2.8~3メートル、株間は品種により1~1.5メートルで植える。剪定(せんてい)が重要だ。毎年生産力の高いケーン(主軸枝)を1樹に5、6本残す。ケーンは6年ぐらいが限界だ。若い生産力があるケーンなら収量を持続的に取れ、10アール当たり1.5~2トンになる。レッドカーランツ(赤フサスグリ)は6カ月間、ブルーベリーは3、4カ月間CA貯蔵する。多彩なベリーをファッショナブルに詰め合わせ商品提案し、周年出荷で出荷額を確保している。
| 農林漁業::2013.6~2014.1 | 08:14 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,06,26, Wednesday
*1より 水素ステーションの燃料電池車 燃料電池バス 燃料電池車のトップランナーは日本企業であるため、国際安全基準に日本案が採用されるのは自然だが、環境車については政府の後押しも大きかった。今後、燃焼後に水しか排出せず、パワーもある燃料電池車は、世界で、乗用車だけではなく、バス、トラック、船、飛行機にも採用されていくだろう。そのため、政府は、過去の技術にしがみつくのではなく、次世代のまっとうな技術が発展しやすい政策を採用して、その土俵を整備すべきである。 なお、*2は、DNAなどの生命科学の研究が応用段階に入ったことを示すもので、人工クモ糸は、強度が高く伸縮性に優れる次世代素材であり、色も始めからつけられるため、乗り物に使えば、鉄より強くて軽いものを手間を省いて作ることができ、その乗り物の付加価値がさらに上がるだろう。 *1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDF2200O_S3A620C1MM8000/ (日経新聞 2013/6/23) 燃料電池車、国際安全基準に日本案 米欧など採用 国連部会で各国合意へ 日本や米国、欧州連合(EU)など33カ国・地域は今週、燃料電池車の安全性の国際基準で日本案を採用する。日本車メーカーは国内仕様のまま輸出できる。政府は走行実験の手続きを簡素化してトヨタ自動車や日産自動車などメーカーの開発を促す。約10年で3兆円に拡大すると見込まれる世界市場のシェア獲得に向け日本メーカーが攻勢に出る。燃料電池車は燃料電池で酸素と水素を反応させて電気を作ってモーターを回し、それを動力にする。走行中の排ガスはゼロで次世代自動車のなかでも環境性能が高い。電気自動車(EV)より走行距離も長いと期待されている。普及に向けては水素の爆発を防ぐ安全基準が課題だった。 このほど国連が示した燃料電池車の安全基準は最終案の大部分に日本の提案が盛り込まれた。24~28日にスイス・ジュネーブで開く国連の作業部会で各国が正式に合意する。中国やインドなど新興国も合意する。日本は2005年に主要国で最も早く安全基準を作り、当初から日本案を軸に交渉が進んでいた。国際基準が決まると各国は国内法を制定・改正して国内基準もそろえる。日本案の安全基準は、車に搭載する燃料電池から水を排出する配管内の水素濃度の上限を4%にする。4%に達すると水素の注入を遮断し爆発を防ぐ仕組みを義務付ける。容器内の圧力を高めたり、低くしたりする作業を2万2千回繰り返しても容器が変形しないよう耐久性も検査する。トヨタや日産、ホンダなど各社は日本で15年に本格的な販売を計画している。トヨタは15年に米国でも販売を始める計画だ。日本案が国際基準になると輸出先の国・地域に合わせて仕様を変える必要がなくなる。トヨタは「国際基準が明確になれば量産体制を確立しやすくなる」としている。各社は10年前に1台1億円だった燃料電池車の価格を500万円程度に引き下げて普及させる考えだ。政府は規制緩和で燃料電池車の普及を後押しする。国土交通相の認定が必要な公道での走行実験で、手続きにかかる期間を8週間から6週間に短縮。自動車メーカーの技術革新を後押しする。 *2:http://www.nikkei.com/article/DGXNZO55429530U3A520C1TJ1000/?dg=1 (日経新聞 2013/5/24) クモの糸を量産 慶大発VB、車部品や人工血管に 微生物を活用 慶応大学発ベンチャーのスパイバー(山形県鶴岡市)は24日、クモの糸を人工合成し繊維にする技術を確立、量産に乗り出すと発表した。自動車部品メーカーの小島プレス工業(愛知県豊田市)と工場を新設、2013年中に月間100キロを供給できる体制を整える。クモ糸は強度が高く伸縮に優れる次世代素材とされる。自動車部品や医療素材向けなどに用途開拓を急ぐ。 スパイバーの人工クモ糸は微生物から出る特殊なたんぱく質を原料としている。成分や特性はクモの糸と同様だが、分子や遺伝子の配列を見直して他の素材などと組み合わせやすくしている。微生物も培養効率を高めており、紡糸を含め繊維にするまでの量産技術を開発した。小島プレス工業と連携して約7億5千万円を投じ山形県鶴岡市に生産拠点を新設する。当初は年産1.2トンだが、用途開発を進め15年には年産10トンに能力を拡大する。人工クモ糸による新素材は極めて高い強度があり、ナイロンより高い伸縮性を持つという。低コスト化を進め、自動車用部品、人工血管などの幅広い利用を見込む。スパイバーは07年9月に設立。慶大先端生命科学研究所(鶴岡市)で学生だった関山和秀社長らがクモ糸の特性に注目し、新たなバイオ素材と位置づけて量産技術を開発してきた。海外でも研究機関を中心に実用化に向けた開発が進むものの、基礎研究の段階にとどまるという。スパイバーは既に関連技術を含めて16件の特許を出願している。人工クモ糸を使った青色のドレスを公開した関山社長は「世界で初めての技術を立証でき、工業化が視野に入った」と説明した。 PS(6月27日追加):私は1998年春に、スイスで行われた夫の学会に同伴し、帰りにマッターホルンに登るために、ツェルマットに宿泊したことがある。その時の体験は、下のとおりだ。 マッターホルン ツェルマット駅前と電気バス ツェルマットの位置 1)*3のとおり、ツェルマットの市街地は、環境を考慮して自治体の条例により電気自動 車(EV)か馬車しか走れない。そのため、私が、「電気自動車では馬力が足りないこと はありませんか?」と乗ったバスの運転手に尋ねたところ、バスの運転手が、「環境を 守るために、不便でもそうしているのだからいいのです。」と答えたので、ヨーロッパ、 とりわけスイスの意識の高さに感心した。現在では、日本やドイツで電気自動車や燃料 電池バスが開発されているので、もっと便利にEVを使えるようになっただろう。自然を 大切にすべき観光地では、こういう条例もアリだと思う。 2)マッターホルンの展望台には、ツェルマットから登山鉄道やロープウェイに乗って誰でも 容易に行ける。私は、まずゴルナーグラート鉄道で上り、ハイキングコースを下ってきた が、杖をついた老人が一人でコースを歩いて下っているのを見て驚いた。しかし、これが 最初の高齢者福祉であり、高齢者が元気でいられる源だと思って感心した。 3)スイス国内を列車で走ると、原生林のような場所でさえ草刈りなどの手入れが行き届い ており美しい。また、民家の色調や形状が規制されており、窓辺に花が飾ってあるのも、 素朴な美しさを感じる景色となっている。さすがに歴史ある観光地だと思った。 *3:http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1002/03/news010.html (要点)ツェルマット市街地は自治体の条例によりEV(電気自動車)しか走れないため、市街地を走るのはEVと観光用の馬車のみ。EVの実用化に対する世界的な関心が盛り上がってきたのはここ数年なのに対し、ツェルマットがEV利用に取り組みだしたのは20年以上も前。現在、ツェルマットを走るEVは計500台(EV路線バス6台)で、にわかにEV利用を始めた都市とは歴史の長さが違う。
| 経済・雇用::2012.9~2013.6 | 12:23 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,06,23, Sunday
東京港 三菱造船所 風と電気のハイブリッドは? 私は、公認会計士時代に、通常の監査だけでなく、M&Aにおける監査、組織再編、バブルで多角化した後に大きな借金を抱えた中堅企業の後始末などもしてきた。その実務経験から、「何にでも多角化するという経営方針は失敗することが多い。なぜなら、本業で磨き上げた技術以外は、その企業は素人だからである。そのため、多角化でも、本業で磨き上げた技術を応用するものなら、成功する可能性が高い。」という法則があると考えている。 その私は、*1、*2の記事に関して、造船の場合は、車よりも、エネルギーの変換、ハイブリッド化、省エネ化が遅れている分野であるため、世界で最も進んでいるわが国の環境車の技術やGPS・レーダーを使った自動運転技術を船に活かせば、世界で既存船の置き換え需要が高まり、わが国はトップランナーとなって、造船不況は解決すると思う。この状況は、車や家電で起こったことと同じだ。 なお、現在、エネルギーの変換、ハイブリッド化、省エネ化は重油で港や海を汚しているあらゆる種類の船で待たれている。写真の東京港は、水の色が茶色で汚く、いくら豪華客船に乗っていても、こういう所に停泊していたのでは、「快適」には程遠いだろう。どうして今まで、そういう環境規制がなかったのか不思議なくらいだが、今後、世界でそのような環境規制を導入していけば、既存船の世代交代は、さらに進むと思われる。 *1:http://qbiz.jp/article/19361/1/ (西日本新聞 2013年6月23日) 造船業の多角化進む 厳しい経営環境が背景 かつて日本の“お家芸”とされた造船業に変化の兆しが見える。コストの安い中国、韓国勢の生産拡大、2008年のリーマン・ショック後の受注激減、世界的な供給過剰と、厳しい経営環境にさらされる中、国内建造量の約3割を占める九州では事業多角化の動きが強まっているのだ。生き残りに懸ける各社の取り組みを追った。 ◆ホテル経営やEV開発 ■世界に通用 長崎県西海市沖に浮かぶ大島。周囲25キロ、人口約5500人の旧産炭地に4月、リゾートホテル「オリーブベイホテル」が開業した。新・歌舞伎座を手がけた建築家隈研吾氏が設計し、最高級の客室は1泊1人12万円。ホテルオークラから招かれた諏訪健一総支配人は「建物や内装、家具は超一流。世界に通用する」と胸を張る。建てたのは、島内に工場を持つ大島造船所。船の引き渡しや商談で訪れる世界中の船主らを受け入れていた旧ホテルを取り壊し、新設した。本業以外への大きな投資(額は非公表)には社内でも賛否が分かれたが、「観光客を増やすことで収益強化につなげたい」(幹部)と決断。同社が栽培するフルーツトマトは島外で人気で、出資する第三セクターでの芋焼酎製造とともに、多角化の象徴にする考えだ。一方、同県佐世保市に造船所を持つ佐世保重工業(東京)は3月、トマト栽培に取り組むため11年8月に設立した子会社を清算した。採算性を確保できなかったことが理由だが、今は本業の技術を生かしたガス分離装置の商業化を急ぐなど「新事業で収益力を高めていく」(広報担当者)との方針にぶれはない。 ■町工場から 造船業界の裾野を支えてきた関連業者も動いている。「企業や大学と連携し町工場から技術革新を起こしたい」。こう語るのは、船舶製造機械を手掛ける信栄工業(長崎市)の樫山和久社長。長崎大との連携で電動スクーターの製作に成功、4月からは小型電気自動車(EV)の開発を始めた。さらに「5〜10年後には水素と酸素を化学反応させる燃料電池車を手掛けたい」と意欲的だ。三菱重工業長崎造船所を中心に造船が基幹産業の長崎市。信栄工業も1990年代初めまでは売り上げの8割以上が造船関連だった。しかし、今では1割程度に激減。生コンクリートや鮮魚用製氷工場向けの受注を増やし、年商を維持する。 ■投資を決断 多角化の動きには目もくれず、本業の立て直しを図る社もある。「従来と同じことだけをやっていても駄目だ」。こう力を込めるのは、佐伯重工業(大分県佐伯市)の岩本光生社長。3・7万トン級の貨物船を主力としてきたが、6万トン級も建造できるよう、来年度までに数億円かけて設備を拡充する計画だ。収益環境が厳しい中で同社が設備投資に踏み切るのは、親会社の尾道造船(神戸市)の受注に対応する狙い。円高修正で昨年後半から受注が回復。だが、世界的な供給過剰で船の価格はリーマン前の6割ほどに低迷。足元では円安で鋼材などの仕入れ価格も上昇しつつあり、採算が取れるか予断を許さない。中国、韓国勢との競争はなお激しいが、岩本社長は「省エネ技術や品質で差異化できるチャンスはある」と強調。造船は地域経済を支える基幹産業だけに「雇用を支えるためにも競争力を確保したい」と言い切る。事業多角化や本業立て直しに投じる経営資源は大きく、失敗は許されない。戦後復興の象徴だった造船業界の底力がいま試されている。 *2:http://qbiz.jp/article/19361/2 (西日本新聞 2013年6月23日) ◆世界では供給過剰 国内の造船業は激しい浮沈を経験しながら輸出産業として日本経済を引っ張ってきた。業界を最初に襲ったのは1973年のオイルショック後の第1次不況。87〜92年は円高による第2次不況で受注が激減。造船各社は統合・再編などで経営効率化を図ってきたが、厳しい環境は今も続く。国土交通省の統計によると、第2次不況ただ中の1988年、国内の鋼船建造量は387万9千総トンと、74年比で4分の1に落ち込んだ。2000年代は、中国の成長に伴う輸送需要拡大で建造量が右肩上がりに増え、10年に1962万6千総トンと過去最高を記録。だが、08年秋のリーマン・ショック後に新規受注が激減する。現在は、リーマン前に受注した手持ちの建造船がなくなる「2014年問題」に加え、不安定な為替相場、コストの安い韓国・中国勢が立ちはだかる。日本造船工業会によると、建造量(完工ベース)の世界シェアは84年に53%を占めた日本が99年までの44年間首位を守ったが、00年に韓国が1位に躍り出て、10年からは中国がトップ。12年は1位の中国が40・9%、2位韓国が32・9%、日本は3位の18・3%だ。 リアス海岸の“天然の良港”が多く、国内建造量の約3割を占める九州も実情は同じ。福岡、佐賀、長崎、大分、熊本の5県に大手から中小まで10を超える造船所が集まるが、佐世保重工業(東京)が7月末から全従業員の25%に当たる約250人の希望退職を募るなど構造不況に苦しむ。こうした中、三菱重工業長崎造船所(長崎市)は豪華客船や省エネ船などの高付加価値船を建造しており、苦境を打開する動きも出始めた。九州経済調査協会(福岡市)の小柳真二研究員は「世界的には船舶需要の2、3倍の供給過剰となっている。ただ、今後は世界経済も拡大するとみられ、今は力を蓄える時だ」と指摘する。
| 経済・雇用::2012.9~2013.6 | 08:14 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,06,22, Saturday
私は、「安愚楽(あぐら)牧場」という名前をつける人を見識が高いとは思わないし、安愚楽牧場とは利害関係もないが、この牧場の破綻に関する報道において、やり手であったらしい女性社長を感情的に叩いているものが多すぎると思ったので、この記事を記載する。その叩き方は、「社長をしているような出たがりの女は性格が悪い」と言わんばかりで、ジェンダーに繋がるものである。 (1)破綻の責任は牧場にあるのか? 2011年3月11日に東日本大震災が発生し、3月12日に福島第一原発事故で1号機が水素爆発し、同14日に3号機が爆発した。そして、5月12~24日にかけて、東京電力は、福島第一原発の1~3号機がメルトダウンしていたことを認めた。これにより、東北、関東が放射性物質で汚染されていることは多くの人の察するところとなった。とりわけ、安愚楽牧場は、線量の高い栃木県那須塩原市にあったため、この地域の牧草が汚染され、一方で牛乳や牛肉の取引価格が落ちたり、取引そのものが減ったりしたことは容易に推測できる。そして、この大規模な牧場の経営が大きく傾いていった時期は、2011年7月なのだから、破綻の責任の多くは、原発事故にあったのではないかと思う。 (2)返金できないと分かっていて誘うのは、もちろんよくない。しかし・・。 もちろん、返金できないことがわかっていながら、「なるべく早く振り込んでくれ」と督促するのは、不誠実で悪いことである。しかし、この時期は、金融等に関する知識の少ない社長やスタッフが、必死で資金繰りをしていたことが想像される。また、埼玉県の男性が2011年7月に投資を始めたそうだが、この時期に、この地域の牧場に投資するというのは、半分は寄付する気持ちがあったのではないのかと思われても仕方がない。そして、督促に対し、不審にも思わず100万円を振り込んだというのだから、投資家としての正当な注意にも欠ける。 (3)この記事は、どういう目的で書かれたのか? この記事は、「海江田万里氏も『広告塔』だった」として、まず、大きく海江田氏の名前を出しているが、この時は、東京都議会議員選挙の真最中で、海江田氏は民主党代表として闘っており、6月23日の開票で、民主党は惨敗した。また、農家出身の実直な男性が、「生き物をネタに人をだます行為は許せない。農業の現場で頑張っている生産者への冒とくでしかない」と強調したとしているが、出資対象が生き物だったことと罪の深さとは関係がなく、これは感情論にすぎない。農業への出資対象は、その殆どが生き物であり、むしろ農地であってはならない。全体として、この記事は、人々の感情に訴えて、海江田氏と牧場の女性経営者を、ことさら貶めているように見える。 (3)それでは、何が足りなかったのか? 以下の点で、東電及び国にも責任があるだろう。 1)原発事故の報道が甘かったため、この時期に、この地域の牧場に投資した人がいたこと 2)わが国には、農業会計がないため、農業主体が農業における資産評価(この場合は、牛などの評価) を正確にできず、経営がどんぶり勘定になること。そのため、出資者に対し、財政状態・経営状況を 正確に開示し、投資リスクを透明にできていない。 (4)これから急いでやるべきこと 1)農業経営を合理化するためには、経営の尺度となる農業会計を速やかに導入すべきである。国際 会計基準には農業会計があるが、わが国の会計基準にはこれがない。 2)大規模に農業を営み、多くの投資家から出資を集める農業主体は、農業会計に基づいて正確な会 計情報を作成し、公認会計士の監査を受けて、公表する必要がある。それにより、投資家は正確な 財政状態・経営成績に関する情報を得て投資することができ、経営者も的外れな必要以上の非難か ら免れることができる。 *1:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130618-00000046-mai-soci (毎日新聞 2013年 6月18日) <安愚楽牧場>4200億円集金のヤミ 解明求める声 全国の約7万3000人から集めた約4200億円が返されないままになっている安愚楽(あぐら)牧場に18日、ついに強制捜査が入った。「返金できないと分かっていて誘ったのか」「旧経営陣はせめて真相を語ってほしい」。出資者からは、警視庁の実態解明に期待する声が相次いだ。 【海江田万里氏も「広告塔」だった】 埼玉県の50代の男性が投資を始めたのは2011年7月。同牧場の経営が大きく傾いていた時期だった。経済誌の広告が目に留まり、100万円のコースの契約を結んだのは同月24日。その翌日、「なるべく早く振り込んでくれ」と女性の声で督促の電話があった。「月末が土日だからかな」。特段不審には思わず、26日には100万円を振り込んだ。「何だこれ」。8月2日、新聞で安愚楽牧場がオーナーへの支払いを停止したという記事を見た。すぐにクーリングオフの申し出を郵送したが「対応できない」と応じてもらえなかった。結局、100万円は今も戻ってこない。男性は新潟の農家出身。3歳の時、父親が病気で寝たきりとなり、農業と工事現場で家計を支える母を幼少の頃から手伝った。経理関係の仕事に就いてがむしゃらに働き、少しずつ預金を蓄えた。「自分が育った農業に投資できるような商品はないだろうか」。そう考えて投資したのが安愚楽牧場だったという。男性は「生き物をネタに人をだます行為は許せない。農業の現場で頑張っている生産者への冒とくでしかない」と強調した。
| 農林漁業::2013.6~2014.1 | 06:24 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,06,21, Friday
夫が買ってきた週刊現代に、雅子妃について、概略、下のように掲載されていた。週刊現代の記事は悪くないものが多いが、この記事は、「勉強が出来すぎる女性は不幸だ」「優秀すぎると不都合なことが起こる」というように、一貫して雅子妃のキャリアの高さや優秀さを腐し、馬鹿な女性の方が幸福になると言わんばかりで、その根底には、男性より女性を下に見る女性蔑視やジェンダーの意識を含んでおり、全女性に対して失礼極まりないため、ここで取り上げて批判することにした。 (1)輝いていた人が、ご成婚から20年の月日が経つと評価が真逆のものに変わってしまった原因は、雅子妃の「完璧すぎる経歴」にあるのか? *1の記事は、「完璧すぎる経歴」が悪いと述べている。しかし、正しくは、雅子妃の問題でも皇太子の問題でもなく、宮内庁担当記者も含めた周囲の古さが問題なのである。皇室外交の担い手になる予定で結婚したのに、結婚後に求められたのは男子出産のことばかりで、皇室外交どころか外国にも行けない状態にされ、このような記事を書かれたら誰でも怒るだろう。それが、健康にも悪いのである。なお、私は、雅子妃に皇室外交をさせていたら、皇室のイメージが、国民にとってより自由で好意的なものになり、外国での評判も上がっていただろうと思うし、それが皇太子の期待でもあったと思う。 (2)敵か味方かで人を区別しない人がいるのか? 次に、*1では、「雅子妃は、敵と味方で人を区別し、信頼できない人間は厳しく拒絶するからいけない」と述べている。しかし、これは、自分や子どもの命さえ狙われる可能性のある人であれば、正当な注意である。また、命までは狙われない人でも、このような悪意ある記事を書くことを目的とするような人間を拒絶するのは、自らの身を守るために必要である。つまり、敵か味方か、信頼できるか否かを区別して護身するのは当然のことであり、快く接してもらいたければ、敵にならず信頼を得るようにすることが重要なのである。この記者は、「(妃殿下であっても!)女は敵にもしっぽを振れ」とでも言うのだろうか。 (3)強い意志を捨てずに妥協しないのはいけないことか? *1は、雅子妃は、「皇室外交」のために皇室に嫁いだが、それができず、キャリアウーマンとして培ってきたその強い意志を捨てられずに、一歩も妥協できていない状態だからいけないと述べている。しかし、私は、次の時代の開かれた皇室を作ることができるのは、現在の皇室の雰囲気を変えることができる人であって、順応してやっと受け入れてもらう人ではないと思っている。誰が何と言おうと、強い意志を捨てず、妥協せずにいなければ、物事を変えることはできない。この記者の女性に対するものの考え方は、相当に悪意であり、女性蔑視であるとともに、本人の意識が低いと感じた。 *1:http://kodansha.cplaza.ne.jp/wgendai/article/130617/top_02_01.html (週刊現代 2013年6月29日号)雅子妃の人生「勉強が出来すぎる女性の不幸」(抜粋) -------------------------------------------------------------------------------- 頭がいいことは、本来であれば誇るべきことだ。だがあまりに優秀すぎると、時に不都合なことが起こる。それは、一般社会でも、皇室においても同じこと。才媛・雅子妃が辿る道は、茨の道だった。 -------------------------------------------------------------------------------- ■あんなに輝いていた人が 1)「雅子妃は、美人で笑顔もチャーミング。ファッションセンスもよく、その上才媛でバリバリの現役外交官。非の打ちどころのない完璧な女性として、老若男女から圧倒的に支持されていました。そもそも雅子妃は、外務省入省時から非常に期待が高かった。」(宮内庁担当記者) 2)結婚するまでの雅子妃の経歴には、まさに他を圧倒する迫力がある。雅子妃の父・小和田恆ひさし氏は、東京大学教養学部とケンブリッジ大学大学院を卒業し、事務次官にまで昇りつめた外務省のトップエリート。母親の優美子さんも慶応義塾大学を卒業後、エールフランス航空の東京支社長秘書を経て恆氏と結婚した“エリート専業主婦”。この父母のもとで大切に育てられた雅子妃もまた優秀で、優美子さんの出身校でもある名門・田園調布雙葉学園小学校に編入、高校まで同学園で過ごし、父の仕事の都合でアメリカのボストンへ移住し、ハーバード大学経済学部に進学。 3)こうして、雅子妃は、父と同じ外交官の道へ進み、次代の皇室を担う皇太子妃として、白羽の矢を立てられた。当時、海外暮らしで培った広い見識と聡明さを持つ雅子さんが、皇室に新風を吹き込んでくれるかもしれないという期待も大きかった。 4)ところが、ご成婚から20年の月日が経ち、雅子妃の評価は真逆のものに変わってしまった。その原因は、「完璧すぎる経歴」にあると、別の宮内庁担当記者は語る。「雅子妃ご本人は、『皇室外交の担い手になる』という意気込みで結婚されたのだと思います。実際、それを期待させる言葉で、皇太子は雅子妃を口説き落としている。しかし、いざ結婚してみたら、求められるのは跡継ぎの出産のことばかり。皇室外交への期待の声などほとんどない。前に出て自分を主張し、能力をアピールすることは、皇族らしくない振る舞いとして疎まれ、変人扱いされてしまうのですから、行き詰まって当然でしょう。」 ■敵と味方で人を区別する 雅子さまは、自分が信頼できない人間は厳しく拒絶するからいけない。 ■キャリアアップ? 雅子妃は、「皇室外交」のために皇室に嫁いだが、それができず、キャリアウーマンとして培ってきたその強い意志を捨てられずに、一歩も妥協できていない状態だからいけない。
| 男女平等::2013.5~2013.11 | 05:37 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,06,19, Wednesday
福島第一原発事故による陸地の汚染 (同)海の汚染 *1の高市氏の「原発事故で死者なし」という発言は、事実でないにもかかわらず、原発推進派のいろいろな人から聞いた。そして、自民党内でも高市氏だけがそう思っているわけではないからこそ、高市氏もそう語ったのだ。そのような中で、18日の「誤解されたのであればしゃべり方が下手だったのかもしれない」という言い訳は、「相手が誤解したものである」としている点で、相手に対して失礼であるとともに、誠実さに欠ける。 ここで本当に必要なことは、①福島第一原発事故で死者が出なかったというのは真実か(これまでも死者は出たし、これからも出るだろう) ②真実でないにもかかわらず、「原発事故で死者なし」と主張して国民を欺くのは誰か を明らかにすることである。国民の前で、そう語った議員だけがそう思っているわけではないので、メディアは、議員一人一人にアンケートを取り、その考え方を明らかにして有権者に示すべきだ。何故なら、国民には、それ以外に議員や候補者の人となりを知るすべがないからである。 *1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013061902000104.html (東京新聞 2013年6月19日) 高市氏「原発事故で死者なし」発言 与野党から批判噴出 自民党の高市早苗政調会長は十八日、原発の再稼働について「東京電力福島第一原発事故で死者が出ている状況ではない」として、原発再稼働を主張した自らの発言について「誤解されたなら、しゃべり方が下手だったのかもしれない」と釈明した。 ただ、震災関連死を無視するような言葉だけに、与野党から厳しい批判を浴びている。高市氏は十八日、十七日の講演での言及について「被ばくが直接の原因でなくても体調を崩し亡くなられ、なりわいを失い、自ら命を絶たれた方がいる。(死亡者がいないから)再稼働するなんて考え方は、そもそも持っていない」と記者団に説明した。菅義偉官房長官も記者会見で「前後(の文脈)を見ると問題になるような発言ではなかった」と擁護。「被災者に寄り添う形で東日本大震災復興を加速させるとの政府方針を高市氏も理解していると思う」と語った。しかし、被災者への配慮を欠いた発言に対する擁護論は少ない。自民党の溝手顕正参院幹事長は、夏の参院選への影響を懸念し「この期に及んで余計なことを言わなくてもよい」と指摘。公明党の山口那津男代表は「今なお故郷に帰れない方々が大勢いる中、被災者に共感を持たなければならない。被災者の苦労や苦痛をいかに解消するかに全力を挙げなければならない」と苦言を呈した。 野党では、民主党の細野豪志幹事長が、福島県内で大勢の震災関連死者が出ていることを挙げて「この数字の重さを理解できない人は政権を担う資格がない」と厳しく批判。みんなの党の江田憲司幹事長も「深刻な原発事故への影響の認識が甚だ薄い。政治家を辞めるべきだ」と述べた。みどりの風の谷岡郁子代表は「事故を小さく見せるための無理な考えだ」と発言の撤回を求めた。 ◇ 自民党の高市政調会長の東京電力福島第一原発事故をめぐる発言要旨は次の通り。 ■高市氏発言の要旨 【十七日】日本に立地したい企業が増えているが、電力の安定供給が不安要因だ。原発は廃炉まで考えると莫大(ばくだい)なお金がかかるが、稼働中のコストは比較的安い。東日本大震災で悲惨な爆発事故を起こした福島原発も含めて死亡者が出ている状況にない。そうすると、最大限の安全性を確保しながら(原発を)活用するしかないのが現状だ。火力発電も老朽化し、コストがかかる。安いエネルギーを安定的に供給できる絵を描けない限り、原発を利用しないというのは無責任な気がする。(神戸市での講演で) 【十八日】趣旨を取り違え報道されている。安全基準は最高レベルを保たなければいけないと伝えたかった。誤解されたのであればしゃべり方が下手だったのかもしれない。被ばくが直接の原因でなくても、体調を崩し亡くなられ、なりわいを失い自ら命を絶たれた方がいる。(死亡者がいないから)再稼働するなんて考え方は、そもそも持っていない。(国会内で記者団に)
| 原発::2013.5~7 | 10:51 AM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,06,18, Tuesday
*1の記事があり、様々な職種の被曝限度が記載されていたが、それぞれ意味があって異なるものであるため、日赤の救護隊員の年間被曝限度を1ミリシーベルトとするのは合理的である。むしろ、福島県で、年間線量が20ミリシーベルト以下であれば住民の早期帰還を目指すということの方が人権侵害であるため、以下にその理由を記載する。
【250ミリシーベルト】東京電力福島第一原発事故直後の作業員の緊急被曝限度 ←原発作業員の被曝限度は100ミリシーベルトであり、250ミリシーベルトは本来は 許されないが、上限が100ミリシーベルトでは、福島第一原発の事故対応ができな かったので、急遽、上限を250ミリシーベルトに上げたのである。この250ミリシー ベルトは、本来は違法であり、現在は、元の100ミリシーベルトに戻されている。 そのため、ここで作業した作業員には高い危険手当がついた筈である(さや抜きさ れたかもしれないが・・)。 【100ミリシーベルト】消防隊員の人命救助の際の被曝限度 【50ミリシーベルト】消防隊員の通常活動の年間被曝限度 【10ミリシーベルト】消防隊員の通常活動の被曝限度 ←100ミリシーベルトは、原発事故の際に、それに対応するためにやむなく消防隊員 が被曝する許容限度であり、通常活動の年間被曝限度は50ミリシーベルト、通常 活動の被曝限度は10ミリシーベルトである。また、消防隊員の人命救助はどれも 危険を伴う仕事で、体力に自信のある人がその仕事を選択して訓練を積んでいるの であって、危険手当もついている。 【100ミリシーベルト】原発作業員や放射線科医ら放射線業務従事者の緊急時の被曝限度 【50ミリシーベルト】放射線業務従事者の平常時の年間被曝限度 ←100ミリシーベルトは、緊急時の被曝限度であり、放射線業務従事者は平常時には 50ミリシーベルトが年間被曝限度である。また、震災前、原発作業員の被曝限度は、 年間50ミリシーベルト以下、5年間の累積で100ミリシーベルト以下だった。さらに、 原発作業員や放射線医療関係者は、放射線の危険を承知でその仕事を選択した人 であり、知識を持って普段からなるべく被曝しないように管理を行っている。そして、 *2のように、厚生労働省は、過去35年で10人の原発労働者を労災認定しており、 労災認定された10人のうち、白血病が6人で累積被ばく線量は129・8~5・2ミリシ ーベルト、多発性骨髄腫が2人で、それぞれ70・0、65・0ミリシーベルト、悪性リンパ 腫も2人で、それぞれ99・8、78・9ミリシーベルトだったとのことである。 【20ミリシーベルト】福島で年間線量がこれ以下であることが確実な地区は、住民の早期帰還を目指す ←リスクを承知で仕事を選択した体力ある原発労働者でさえ、5・2ミリシーベルトの被曝 で白血病による労災を認定されているにもかかわらず、老若男女で、体力はさまざまで あり、被曝の危険性を承知して居住地を選択したのではない住民に20ミリシーベルトの 被曝限度を押し付けるのは狂っている。なお、*2で、厚労省が、「がんに対する100ミ リシーベルト以下の低線量被曝の影響は科学的に証明されていない」としているが、科 学的に健康に影響がないことを証明できない限り安全とは言えないのであり、立証責任 が逆である。さらに、いつまでも「証明されていない」とするのも不自然で、マウス等で実 験すれば、哺乳類にどういう影響があるのか、わかる筈だ。 【1ミリシーベルト】日赤の救護隊員の被曝限度、平常時の一般住民の年間被曝限度、福島県での長期的な除染目標の上限 ←日赤の救護隊員は、被曝することを前提として仕事を選択したわけではなく、これから 出産の可能性のある医師や看護師も含まれるため、平常時の一般住民の年間被曝限 度と同じにするのが正しい。むしろ、福島県で年間被曝量が1ミリシーベルトを超える場 所に住民が居住することこそ問題なのであり、このような場所に、医療従事者が居住す ることを選択するだろうか。利害関係で偏っていないプロの判断こそ、重視すべきである。 *1:http://digital.asahi.com/articles/TKY201306120502.html (朝日新聞 2013年6月16日) 日赤、原子力災害時に救護指針「累積被曝1ミリまで」 日本赤十字社が、原子力災害時の医療救護の活動指針を作った。住民の立ち入りが制限される警戒区域内には入らず、累積被曝(ひばく)線量が1ミリシーベルトを超えない範囲で活動すると決めた。1ミリは一般住民の平常時の年間限度。これに対し、被曝医療の専門家から「被災者への救護、対応が十分にできない」と見直しを求める声が出ている。 日赤は法律により、災害時の被災者の救護が業務の一つと定められている。医師1人、看護師3人、運転手1人、事務職員1人が1組の救護班を全国に500組以上、組織している。東日本大震災では延べ900組の救護班が被災地に入ったが、当初、原子力災害への備えがなく、東京電力福島第一原発事故直後の福島県内では、救護班がいない「空白期間」が生じた。その反省から、原子力災害の活動指針を作ったという。救護班は線量計や安定ヨウ素剤を携行し、累積被曝線量が1ミリシーベルトを超える恐れがあれば、安全な地域に退避するとした。 これに対し、原子力災害で首相官邸が助言を求める専門家チームの長瀧重信・長崎大名誉教授(放射線医学)は「医療従事者はけが人や病人を助けるのが使命。警戒区域内の患者の支援を、自衛隊や警察、消防だけに任せるのはおかしい。1ミリは平常時の一般市民の線量限度で、災害時の救護活動では低過ぎる」と、官邸の会議などで批判した。浅利靖・弘前大教授(救急医学)も「1ミリシーベルトを超えて被曝しても健康影響はない。医療従事者がこの基準を使う必要性はない」と話す。 消防隊員の被曝基準では、人命救助では100、通常の活動では10、年間限度は50(5年間では100)ミリシーベルトまでと定められている。放射線科医や診療放射線技師、原発作業員ら放射線業務従事者は緊急時は100、通常は年50(5年で100)ミリシーベルト以下だ。 日赤の活動指針が、全国に1150ある厚生労働省認定の災害派遣医療チーム(DMAT)などの基準作りに影響を与える可能性もあり、長瀧さんは「みなが日赤基準にならったら、警戒区域内の患者や高齢者の避難が混乱し、福島の二の舞いになりかねない」と心配する。日赤の山沢将人・原子力災害対策事務局長によると、内部の議論では「1ミリ」に賛否両論があったが、救護班には事務職員らもいることを考慮したほか、ひとつの救護班の派遣期間は通常1週間以内のため、1ミリが上限でも線量が高い区域で活動できると判断したという。山沢さんは「原子力災害時に被災者を救いたいという前向きな気持ちで作った。必要なら、これをたたき台に改善していきたい」と話す。 ◇ ■様々な線量の目安(単位はミリシーベルト) 【250】 ・東京電力福島第一原発事故直後の作業員の緊急被曝(ひばく)限度 【100】 ・消防隊員の人命救助の際の被曝限度 ・原発作業員や放射線科医ら放射線業務従事者の緊急時の被曝限度 【50】 ・消防隊員の通常活動の年間被曝限度 ・放射線業務従事者の平常時の年間被曝限度 【20】 ・福島で年間線量がこれ以下が確実な地区は、住民の早期帰還を目指す 【10】 ・消防隊員の通常活動の被曝限度 【1】 ・平常時の一般住民の年間被曝限度 ・福島県での長期的な除染の目標の上限 ・日赤の救護隊員の被曝限度 *2:http://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-5175 (共同通信 2011/4/28) 原発労働者のガン 累積被ばく線量 5~130ミリシーベルトで労災認定 厚生労働省は27日、がんになった原子力発電所の労働者のうち、過去35年で10人が累積被ばく線量などに基づき労災認定されていたことを明らかにした。福島第1原発の事故を受け、初めて労災の認定状況を公表した。1976年度以降、労災認定された10人のうち白血病が6人。累積被ばく線量は129・8~5・2ミリシーベルトだった。このほか多発性骨髄腫が2人で、それぞれ70・0、65・0ミリシーベルト。悪性リンパ腫も2人で、それぞれ99・8、78・9ミリシーベルトだった。厚労省によると、がんに対する100ミリシーベルト以下の低線量被ばくの影響は科学的に証明されていないが、線量が増えれば比例して発がん可能性も増すとの仮説があり、同省は「100ミリシーベルト以下での労災認定もあり得る」としている。
| 原発::2013.5~7 | 10:23 AM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,06,17, Monday
福島第1原発3号機爆発 壊れた原子炉建屋 原発事故汚染地域 私は、*1の山下教授、清水教授の説明は下の点でおかしく、津田教授の「(12人は)明らかに多発と言える。原発事故との関係を念頭に、対策を強化するべき」というのが正しいと思う。 1)山下俊一・前県民健康管理調査検討委員会座長、長崎大学大学院教授: 甲状腺がんは、チェルノブイリ原発事故後に放射性ヨウ素を体内に取り込んだ子どもから多く見つかったが、福島原発事故で放出された放射性ヨウ素の量は「チェルノブイリ事故時の数分の一」程度とされている上、汚染された牛乳が早期に廃棄処分されたことなどから、「甲状腺が継続して被曝する状況にはなかったと考えられる。 ←福島原発事故で放出された放射性ヨウ素の量が、チェルノブイリ事故時の数分の一程度であるという証明はされていない。また、放射性ヨウ素を体内に取り込むのは、牛乳からとは限らず、その他の食品や呼吸によって取り込むこともある。フクシマの場合は、汚染された牛乳は捨て、乳児には汚染地域以外で作られたミルクを与えていたのであれば、外に出歩かない乳児の方に甲状腺癌の発症が少なく、検査した中では、9~17歳前後に多いのは自然である。 2)清水一雄・日本甲状腺外科学会理事長、日本医科大学内分泌外科大学院教授: 今回の結果では「甲状腺がんないし、その疑い」とされた子どもの平均年齢が16~17歳前後で、9歳が最年少であることなどから、「乳児が多く発症したチェルノブイリ事故とは明らかに様相が異なる。 ←チェルノブイリ事故と様相が異なるから、原発事故と関係がないとは言えない。さらに、甲状腺癌は、子どもにしか発症しない病気ではないため、子どもにしか超音波検査を行っていないのも間違いである。科学的には、先入観なく全員を調査対象にすべきだ。 *1:http://toyokeizai.net/articles/-/14243 (岡田 広行 :東洋経済 記者 2013年6月9日) 「福島の子ども、12人甲状腺がん」の謎 がん発見率は定説の85~170倍、なのに原発事故と無関係? ●12人の子どもが甲状腺がんの診断、別途15人が疑い 2011年3月の原発事故時に0~18歳だった子どもを対象に実施されている福島県による甲状腺検査で、これまでに12人が甲状腺がんと診断された。12人とは別に、甲状腺がんの疑いのある子どもも、15人にのぼっている。これは、6月5日に福島県が開催した「県民健康管理調査検討委員会」(星北斗座長)で報告された。甲状腺検査の責任者を務める福島県立医科大学の鈴木眞一教授は昨年の『週刊東洋経済2012年6月30日号』インタビューで、「通常、小児甲状腺がんが見つかるのは100万人に1~2人程度。1986年のチェルノブイリ原発事故で小児甲状腺がんが多く見つかったのは被曝の4~5年後からで、発症までに一定のタイムラグがある」と語っていた。 ●がんの発見率は、定説の100倍以上にも だが、今回の調査で甲状腺がんが見つかった子どもの数は「100万人に1~2人」どころか、その85~170倍にものぼる。この倍率は、11年度に1次検査を実施した4万0764人を分母として設定。一方、分子には「悪性、悪性疑い例数11人」(右上表)のうちの、7人(甲状腺がんが確定した子ども)を設定して、計算した場合の数値だ。鈴木教授は記者会見での「(甲状腺がんは)多発と言えるのではないか」とのフリージャーナリストの質問に対して、「最新の超音波機器を用いて専門医が実施したうえでの発見率。想定の範囲ではないか」と述べているが、実際のデータは「100万人に1~2人」という従来の説明からは、乖離がかなり大きいようにも見える。福島県によれば、甲状腺検査の対象となる子どもは全部で、約37万人だ。 11年度からの2年間では、約17万5000人の子どもが超音波検査(一次検査、11年度4万0764人、12年度13万4735人)を受けており、そのうち5.1ミリメートル以上のしこり(結節)が見つかったことなどで精密検査(二次検査)の対象となった子どもは、1140人(11年度分205人、12年度分935人、2つの表参照)にのぼる。そのうち、すでに二次検査を受けた421人から27人が「甲状腺がんまたはその疑い」とされた(11年度11人、12年度16人、2つの表参照)。 もっとも、前ページの下表でもわかるとおり、12年度検査分では、二次検査対象者が935人なのに、実際に二次検査を実施したこどもは255人であり、検査の実施率はまだ3割にも満たない。今後、二次検査の進捗とともに、甲状腺がんと診断される子どもがさらに増加する可能性が高い。 甲状腺がんは、チェルノブイリ原発事故後に放射性ヨウ素を体内に取り込んだ子どもから多く見つかった。福島原発事故で放出された放射性ヨウ素の量は「チェルノブイリ事故時の数分の一」程度とされているうえ、汚染された牛乳が早期に廃棄処分されたことなどから、「甲状腺が継続して被曝する状況にはなかったと考えられる」(山下俊一・前県民健康管理調査検討委員会座長、長崎大学大学院教授)とされてきた。また、今回の結果では「甲状腺がんないし、その疑い」とされた子どもの平均年齢が16~17歳前後で、9歳が最年少であることなどから、「乳児が多く発症したチェルノブイリ事故とは明らかに様相が異なる」と、新たに委員に就任した清水一雄・日本甲状腺外科学会理事長(日本医科大学内分泌外科大学院教授)は説明している。 ●謎に包まれる被曝状況 しかし、最大のカギを握る個々の子どもの被曝状況は、ベールに包まれている。原発事故後、床次眞司・弘前大学被ばく医療総合研究所教授による62人を対象とした測定を除き、精密な機器を用いた甲状腺被曝状況の測定が実施されなかったことから、甲状腺被曝の実態解明は難しいのが実情だ。国連科学委員会(UNSCEAR)は「放射線被曝による甲状腺がんの過剰な発現は考えにくい」との見解を5月31日に公表したが、前提とする甲状腺の被曝線量は、さまざまなデータの寄せ集めに基づく推計値にすぎない。環境疫学を専門とする岡山大学大学院の津田敏秀教授は、「検査によって多く見つかる傾向があるとはいえ、(12人は)明らかに多発と言える。事故後に発症したがんが、検診によって早い時期に見つかった可能性もある。原発事故との関係を念頭に、対策を強化するべきだ」と指摘している。
| 原発::2013.5~7 | 12:48 AM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,06,16, Sunday
医療保険料を支払っている以上、先進医療も含めてすべての治療が医療保険適用とされるのが本来の姿だ。特に抗がん剤などは、外国で効くことが証明されていても、日本で使えない治療薬が多いが、もともと公的医療保険から先進医療を除外するという前提ではなく、また除外されては困るものである。
私は、基本的には、(国民)患者の幸福のためには、先進医療も含めて、すべてを公的医療保険の適用対象にすべきだと考えている。そうでない場合が許されるとすれば、それは、治験の国間タイムラグくらいだ。しかし、現在、先進医療も含め、すべての医療が公的医療保険の適用対象になっているかと言えば、そうではない。それならば、保険適用外の治療をしなければならない局面は、(貧しい人も含めて)誰にでもあり、保険適用外の治療をすれば、適用内の治療部分まで保険適用からはずされるというのは不合理きわまりない。そのため、混合診療で多く採用され、実績を挙げた先進医療は、速やかに公的医療保険の対象として、国間の医療ラグを最小にすることが、患者(国民)の為に必要なのである。 「新しい薬や技術を使う意欲のある医師が多く、それを望む患者もいる」というのは、医師の金儲けのためではなく、患者を治したいからであり、患者もどうしても治りたいからである。このような純粋な気持ちに対して、痛くもない腹を探られるのでは、医師もたまったものではないだろう。 また、「医療費を膨張させないため」「公的医療費の抑制のため個人負担の自由診療を増やすべき」等々の発想は、公的医療保険の保険料を支払っている国民に対して詐欺であり、国民を愚弄している。何故なら、いざという時に最善の医療を安く受けるために、国民は、元気な時から公的医療保険料を支払っているのだからである。そもそも、「公的医療から先進医療は除く」というのは、病気の治療も金次第となし、わが国の公的医療保険制度を実効なきものにする考え方である。 *1:http://mainichi.jp/opinion/news/20130615k0000m070113000c.html (毎日新聞社説 2013年6月15日) 混合診療 医療費の膨張を招く 政府は医療の保険外併用療養を拡大することを盛り込んだ規制改革の実施計画を閣議決定した。専門評価機関を創設し今秋をめどに抗がん剤から拡大を検討するという。「踏み込み不足」との批判もあるが、それは的はずれだ。患者の安全のためにも、医療費を膨張させないためにも、混合診療解禁につながりかねない道へ踏み込んではならない。 現在は保険適用の治療と自由診療を併用すると保険適用分も含めて費用はすべて患者負担となる。混合診療は患者の全額負担を自由診療分だけにすることで、実質的に制限されている自由診療を広めようというものだ。このうち一部の先進医療について国指定の医療機関で有効性や安全性をチェックしながら混合診療を認めているのが保険外併用療養だ。 新しい薬や技術を使う意欲のある医師は多く、それを望む患者もいる。製薬や保険業界はビジネスチャンスの拡大を待望している。公的医療費の抑制のため、個人負担の自由診療を増やすべきだとの主張もある。 ただ、医療は不確実性が高く工業製品を組み立てるようなイメージとは異なる。混合診療が解禁されれば有効性や安全性がよく確認されていない新薬が次々と登場し、自社製品を宣伝する製薬会社の情報が氾濫する中で、医師の裁量によって保険適用の医療と自由診療が混然一体となって行われるだろう。安全性が不確かな薬を使えば付随する検査や副作用を抑える薬の使用も増えるだろう。医療機関のレセプトは診療報酬支払基金などにすべて回され、都道府県ごとの審査委員会で専門の医師らが不適切で過剰な医療行為がないか調べているが、そうしたチェックも利かなくなる。自由診療が増えると公的医療費も増えることを示す調査結果があり、自由診療が幅を利かせる米国の薬価は日本の2倍前後も高い。 製薬会社はあえて厳しい臨床試験を行わなくても高価格の自由診療を選ぶようになり、自由診療の比重が大きくなれば富裕層しか受けられない医療が増える。質の高い医療を受けるためには高額の保険に入らなければならず、米国の企業は従業員に民間保険を提供し、これが経営負担になっているといわれる。 日本では医療の地域偏在や診療科偏在が著しく、都道府県の医療計画に基づく適切な医療供給体制を整えることが検討されている。誰もが必要な医療を受けられるためには公的な規制が必要なのだ。保険外併用療養の拡大を混合診療解禁の布石にしようとする人々もいるだろうが、公的なコントロールが利かなくなると医療費が膨張し深刻な影響が広がる恐れがあることを考えるべきだ。
| 年金・社会保障::2012.4~2013.7 | 02:44 PM | comments (x) | trackback (x) |
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