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2017.4.24 国の予算の使い方 (2017年4月25、26、27、28、30、5月4、20、27日追加)
 書くべきことは多いが、今日は、国の予算の使い方とそれを左右する基本的意思決定について記載する。なお、私は、前のパソコン(PC)にwindows XPを入れていて、そちらの方が使い勝手がよかったため最近まで使っていたが、XPではアクセスできないHPが増えたので、仕方なくwindows8.1が入っているPCを使うよう変更した。そうすると、ブログ写真の解説文字の位置が変わってしまう上、蓄積されたデータの移管にも苦労が多かった。そのため、ソフト会社は新ソフトを開発して「売らんかな」の販売戦略をとるのではなく、PCを事務作業や研究に使って価値あるデータをPCで蓄積している人の身になって考えて欲しいと思った次第である。

  
      フクイチの現状      諫早干拓地       玄海原発
        2016.6.30毎日新聞 ランドサット撮影  2017.4.13西日本新聞

(1)“国の責任”となる膨大な原発事故費用
1)フクイチの廃炉・賠償費用とその無駄遣い部分
 経産省は、2016年12月9日、*1-1のように、フクイチの廃炉・賠償などの費用総額が21兆5000億円にのぼるという見積もりを公表し、これまでの11兆円から倍増させた。

 その理由は、①廃炉費が2兆円から8兆円 ②賠償費が5兆4000億円から7兆9000億円 ③除染費が2兆5000億円から4兆円 ④中間貯蔵施設整備費が1兆1000億円から1兆6000億円に膨らんだ などだが、溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出し方法などの詳細が決まっていないため、経産省は合理的な見積もりが困難としてそれを含めていない。これなら、また2倍になるのも時間の問題のように見えるが、④は最初から最終処分をすれば節約できる金額で、核燃料の取り出し費用も石棺にすれば不要だった。また、廃炉に長期間かけ、原子炉建屋のカバーを外して環境を汚し続けているのは、殺人に近い。

 さらに、経産省は、賠償総額7兆9000億円のうち2400億円程度を新電力にも負担させるようにして、巨額の事故処理費用を賄う方針だ。しかし、これでは、原発事故には責任のない会社や個人が原発事故の費用負担をすることとなり、電力市場が不公正な市場となって電力自由化の効果もそがれるため、事故を起こした会社が蓄えた資産を売却して廃炉費用を賄うのが筋である。

 なお、*1-2のように、2013年9月3日、フクイチから高濃度の放射性物質を含む汚染水が漏れているため、政府は約470億円(凍土壁建設費:320億円、浄化装置開発費:150億円)の国費を投じ、政府主導・国の全額負担で、①原子炉建屋への地下水の流入を遮断する凍土壁を設置し ②汚染水浄化装置を増設し ③汚染水漏れが見つかった急造タンクは溶接のしっかりしたタンクに入れ替え ④建屋に流れ込む地下水をくみ上げ ⑤地下坑道(トレンチ)にたまっている高濃度汚染水を除去し ⑥汚染水の海への漏洩を抑えるための地盤改良をする とした。

 しかし、それから約3年6か月後の現在も、原子力規制委員会が国際原子力事象評価尺度(INES)でレベル3(重大な異常事象)に相当するとした汚染水問題は、課題のまま解決していない。これだけの国費を投入しても片付かない理由は、「総額470億円を投入。うち2013年度予算の予備費を210億円使い、対策を前倒し」というように使う金額を先に決め、汚染水問題の解決よりも景気対策が目的であるかのような予算の使い方をしているからだ。このように、事の重大性が全く理解できずに優先順位が滅茶苦茶な人は多いが、これなら石棺にすれば、汚染水問題は生じず、この470億円やタンクの設置費用は不要だったのである。

2)国は原発事故でどういう責任をとれるのか
 フクイチの場合は、これまで政府・電力会社が「原発は絶対に壊れず、安全でクリーンだ」と強く宣伝してきたため、政府や電力会社の宣伝を信じてきた住民に罪はない。そのため、原発事故の責任は、虚偽の宣伝をしてきた政府・電力会社にあり、住民は政府・電力会社に完全に復旧してもらい、復旧までに生じた損失についての損害賠償や慰謝料を受ける権利がある。ただし、実際には、除染しても完全には復旧できない地域が多く、そこに住んでいた人は損害賠償・慰謝料に加えて移転費用も請求できるわけである。
 
 しかし、*1-3のように、原発を再稼働して起こる今後の原発事故に対しては、「原発は絶対に壊れないので、安全でクリーンだ」と住民が信じれば、それは交付金目当てのご都合主義の信頼になるだろう。

 また、「万一事故が発生した場合、国は責任を持って対処する」と繰り返しているが、(1)1)の状況で、国が責任を持って対処しているとは言えず、故郷が汚染され復旧していないのに避難指示を解除されて困っている被害者も多い。さらに、原発事故は、復旧すること自体が困難で、その費用も高くつくというのが現実で、国民は、何度も原発事故処理費用のような後ろ向きの費用は負担したくないし、できないのである。

(2)玄海原発再稼働について
 佐賀県議会は、*2-1のように、過半数を占める自民党議員が「再稼働容認」、民進党は「条件付き再稼働容認」として、最稼働容認決議案を可決した。佐賀県知事は、「県民代表としての県議会決議を重く受け止め、再稼働に同意する見通し」で住民投票には否定的だが、佐賀新聞社が昨年秋に実施した県民世論調査では、反対が賛成を上回ったそうだ。私は、県議会議員選挙は原発再稼働のみを争点にして行うわけではないため、原発再稼働のみを争点とし、その賛成及び反対理由を明らかにして住民投票するのが、これからの方針を決め、それを遂行する覚悟を決める上で重要だと考える。

 なお、佐賀県内の3首長は原発再稼働に反対の意思を表明し、事故が起きれば県境は関係ないため、長崎県、福岡県からも反対・不安・懸念の表明が相次いでいる。

 このような中、*2-2、*2-3のように、2017年4月22日、世耕経産相が九電の瓜生道明社長の案内で玄海原発を視察し、午後に佐賀県庁で山口知事と会談し、山口知事は記者団に「大臣から国として責任を持つとの強い決意の言葉を頂いたので、(地元同意の判断は)できるだけ早くと思っている」と述べ、週明けにも地元同意を表明するそうだ。山口知事(東京大学法学部卒、総務省出身)は「手続きが大事」とよく言われるが、西日本新聞が書いているとおり、再稼働するための“儀式”は一歩ずつ進んでいるが、原発再稼働による住民リスクは親身に考えられていないように見える。

 そして、*2-4のように、山口知事は24日午後、「熟慮に熟慮を重ねた結果、原子力発電に頼らない社会を作るという強い思いを持ちつつ、現状においては(再稼働は)やむを得ないと判断した」として、九電玄海原発の再稼働に同意する考えを表明し、これで地元同意手続きが完了したそうだ。しかし、「手続きさえ踏めば、真実はどうでもよい」という発想が法学部卒の人に多く、「裁判で手続きさえ踏めば、無実の人を犯人に仕立て上げてもよい」という結果も招いているため、法学部教育は手続主義から真実追及主義に変更すべきである。

 なお、住民リスクの内容を重視する大学の元教員や医師らでつくる「福岡核問題研究会」の有志は、*2-5のように、「玄海原発が新規制基準に適合すると認めた原子力規制委員会の許可は不当だ」として、規制委員会に異議を申し立てる審査請求をすることを決めたそうだ。その理由は、①フクイチ後、フランスは総勢300人の緊急対応部隊を新設したが日本の新規制基準には対応する措置がなく、世界基準に程遠いこと ②規制委が重大事故時の住民避難などの対策の有効性を審査の対象にしていないこと などが、「法律が求める責務からの責任逃れであり違法」などとして、主に8項目を挙げているそうだ。また、*2-6のように、反原発団体も、「県民を犠牲にするな」と経産相に抗議している。

 さらに、2017年4月14日、*2-7のように「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」が発足し、会見で小泉元首相は「国民全体で原発を止めていこうという強いうねりが起きているのを実感している」とし、「いずれ国政選挙で脱原発が大きな争点になる時がくる」と力を込められたそうで、やはり感がよいと思う。会長その他の役員は「顧問:細川護熙元首相、会長:城南信用金庫吉原毅相談役、副会長:中川秀直元自民党幹事長、島田晴雄(前千葉商科大学長)、佐藤弥右衛門(全国ご当地エネルギー協会代表理事)、事務局長:河合弘之(脱原発弁護団全国連絡会共同代表)、事務局次長:木村結(東電株主代表訴訟事務局長)、幹事:鎌田慧(ジャーナリスト)、佐々木寛(新潟国際情報大教授)、香山リカ(立教大教授)、三上元(元静岡県湖西市長)、永戸祐三(ワーカーズコープ理事長)」だそうだ。

(3)諫早干拓について
 *3-1、*3-2のように、諫早湾(長崎県)を鋼板で閉め切ってから20年が経過し、国の干拓事業で国内最大級の干潟は農地になり、諫早湾を含む有明海は漁業不振が深刻化した。そのため、2002~2016年度に、海底に砂を入れて耕したり、干潟に潮の流れをよくする水路を築いたりする工事をして、498億円という多額の公費を投入したが海は再生しなかった。自然の流れを壊した上で、海底に砂を入れて耕したり、干潟に潮の流れをよくする水路を築いたりするのが無意味なことは、やってみなくても明らかである。

 そのほか、国と自治体を合わせると、352億円の公費が投じられ、下水道を整備したり、水質を浄化したりして、調整池の水質改善を続けているそうだ。下水道の整備は干拓しなくても必要だが、水質浄化までしても調整池は富栄養化し、毎夏のようにアオコが大量に発生して、海の再生も池の水質改善も十分な効果が上がっていないのは、水が外に流れ出ないからである。逆に、有明海の方は貧栄養化して、養殖海苔が色落ちしたり、漁業不振になったりしているわけだ。

 そのため、調整池のアオコの調査を続ける熊本保健科学大の高橋徹教授(海洋生態学)は「病気なら検査して、診断し、効果のある治療法を選ぶ。有明海の異変では検査にあたる開門調査をしていない。それ抜きでは効果的な対策も不可能なのに、あてどもなく血税が投じられている」と述べている。

 この干拓事業をめぐっては複数の訴訟があり、干拓が有明海の漁業不振の原因だと疑う漁業者らは開門を求めて国を提訴し、2010年には福岡高裁で開門を命じる判決が確定したが、その後、長崎地裁が干拓地営農者の主張を認めて、国に開門を差し止める仮処分決定を決定したため、国は確定判決を履行できなくなり、2014年6月から「罰金」として漁業者側に間接強制金を支払っている。

 諫早湾干拓工事は1952年に、約1万ヘクタールの湾全体を農地にする大干拓構想として浮上し、米余り時代になって規模を縮小したものだ。そして、畑地開発や高潮・洪水防止に目的を変え、1989年に着工して、1997年4月14日に、ギロチンを思わせる293枚の鋼板で湾の3分の1が閉め切られ、長さ7キロの堤防内側は干潟が陸地になり、672ヘクタールの農地に変わった。総事業費は、2530億円(3.7億円/ヘクタール)だ。

 造成された農地は長崎県の公社が国から51億円で買い取り、2008年から営農が始まって、個人・法人計40事業者が農地を借りて野菜などを作っている。1ヘクタールあたり約3.7億円かけて造成された農地だが、リース料は年20万円/ヘクタールで、総事業費をカバーし終わるまでには1850年かかる。そのため、1事業者の面積は平均16.7ヘクタールと大規模経営でよいが、国の事業としての費用対効果は低かったと言わざるを得ない。

 しかし、私は、公共事業は短期的に見れば費用対効果が悪くても、将来の地域振興を考えると必要なものもあり、「費用対効果が悪いから、その公共事業はやらない」と即座に言うべきではないと考えている。それでも、諫早湾の干拓工事は、戦後の米不足時代に湾全体を農地にする大干拓構想として浮上し、米余り時代になってから規模を縮小し、目的を畑作や高潮・洪水防止に変更して行っているもので、一度決めたら何があっても中止しない国の公共工事のあり方とそれによる膨大な無駄遣いが問題なのである。さらに、食料自給率向上のためには、畑作もよいが漁業も大切であるのに、農水省や国土交通省は、これまで水産業(海の環境保全が必要)は眼中にないかのような政策をとってきており、それが間違いだったのだ。

 政府の公共事業費は、景気対策のためと称して、1990年代に毎年のように当初予算で9兆円台を計上し、1998年度は当初と補正の合計が15兆円近くに達して、「大型公共事業=環境破壊、税の無駄遣い」と批判された。東日本大震災の復興事業においても、本当に必要な公共事業だけをなるべく安い価格で行うのではなく、国民の血税を使って高い価格で行う有害無益な公共事業も含まれているのが残念だ。

 これらの状況は、宮入長崎大名誉教授が言われるように、「農水省は諫早湾干拓事業の費用対効果を算出する際、失われる干潟の浄化能力や漁業被害を勘定に入れなかった。そのつけを今払っており、終わりの見えない国民の血税による後始末」になっており、調和した自然の大きな力を無視した公共事業は、国民に無限の負担を強いるのである。

 なお、*3-2に書かれている諫干開門差し止め請求訴訟判決骨子で、開門反対派は、 ①開門すれば農地に塩害など重大な被害が発生する恐れがある ②開門で漁場環境が改善する可能性は高くない ③開門調査で堤防閉め切りと漁獲量減少の関連性解明の見込みは不明 と主張し、判決も、開門で堤防内の調整池に海水が入り込み、農地に塩害や潮風害、農業用水の一部喪失が発生する恐れがあるため、生活などの基盤に直接関わり重大」と指摘している。

 しかし、①については、半島・島・有明海の他の干拓地では堤防が無くても農作物ができているので根拠がなく、②③は、本明川、田古里川、船津川、境川、深海川、二反田川、有明川、西郷川、神代川、土黒川などから流入していたミネラルが海へ拡散するのを堤防の閉め切りで不自然に止めてしまったことが原因であることは誰が見ても明らかである。そのため、それを確認するために開門調査をしようとしているわけなのだ。

 さらに、開門しても、諫早湾には多くの川が流れ込んでいるため、調整池は完全な塩水にはならないが、仮に塩水になったとしても、*3-3のように、「ウオータープラザ北九州」は海水と下水から飲用水レベルの真水を精製する技術も確立しており、諫早市は下水道を整備しているため、その下水道から農業用水を作ることは容易で、むしろ精製しすぎずに窒素やリンが少し残っている方が、肥料が節約できそうである。

(4)これだけ1000億円単位の無駄遣いが多いのに、福祉・教育だけは消費税を上げなければ財源がないとするのはおかしいこと
 そもそも、保険とは、「将来起こるかもしれないリスクに対して、予測される発生確率に見合った一定の保険料を加入者が負担して万一の事故に備える制度で、さまざまな事故や災害から生命・財産を守る為の合理的な防衛策」とされている(http://www.nihondaikyo.or.jp/insurance/08.aspx 参照)。

1)介護保険の負担増について
 2017年4月15日、*4-1のように、与党が、高所得者のサービス利用時の負担割合を2割から3割に引き上げ、大企業社員や公務員らの保険料負担を増やす内容の介護保険関連法案の採決を強行した。この間、TVは森友学園問題や殺人の容疑者(犯人と確定していない)が捕まったという話ばかりをいっせいに行い、介護保険関連法案に関する報道は極めて少なかった。
 
 しかし、痛みがあるか否か以前に、将来起こるかもしれないリスクに対して、そのリスクが発生する確率に見合って保険料を支払っているのに、保険給付が行われる段階になって給付額に所得制限を設けるのでは、保険とは言えない。その上、介護保険で言っている“現役並み所得”というのは、「単身世帯で年収383万円以上、夫婦世帯では年収520万円以上」と、夫婦で医療費や介護費を負担しなければならない高齢者夫婦にとって、高所得とは言えない金額だ。

 そして、これによって節約されるのは、健康な生産年齢人口の人のために、景気対策と称して政府が行った1000億円単位の無駄遣いのほんの数%なのだから、どこか大きく間違っている。

 つまり、厚労省管轄の保険設計は、保険料の支払い時と給付時の両方において所得で差をつけており、とても保険とは言いがたく、税だとすれば二重課税になっているのである。

2)“こども保険”構想?
 自民党の小泉進次郎衆議院議員を中心とする若手議員でつくる小委員会が、*4-2のように、2017年3月29日に、「少子化に歯止めをかけるため」として、「こども保険」構想を発表したそうだ。

 「こども保険」を子育て支援の財源にするという根拠は、子どもが必要な保育・教育などを受けられないリスクをなくすことだそうだが、子どもが必要な保育・教育を受けられなければ、その子は稼ぎ手になれず、国の発展にも寄与できないため、それは個人のリスクというよりも、政府の予算の使い方における優先順位の問題である。つまり、教育や保育は、本人のためであると同時に国の礎でもあるため、1000億円単位や1兆円単位の無駄遣いをしながら、「財源がない」などと言って疎かにすべきものではないのだ。

 私自身は、幼児教育は3歳から始め、それ以前を保育として、幼児教育以降は義務教育として無償化するのがよいと考える。そして、3歳未満(0、1、2歳)の保育は、夫婦で交互に育児休暇をとれば家庭で行うという選択肢もできるため、高くない保育費を徴収するのがよいだろう。また、義務教育は高校卒業の18歳までとし、中学・高校は一貫校として行く学校を選択でき、入試を受ける形式にするのがよいと考える。

 そのため、「子ども保険」は不要で、保育・教育の費用は、堂々と一般財源から出せばよい。

<膨大な原発事故費用>
*1-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS09H0H_Z01C16A2000000/ (日経新聞 2016/12/9) 福島廃炉・賠償費21.5兆円に倍増 経産省が公表
 経済産業省は9日午前、東京電力福島第1原子力発電所の廃炉や賠償などの費用総額が21兆5000億円にのぼるとの見積もりを公表した。廃炉費用が8兆円に上振れしたことなどにより、これまでの想定の11兆円から倍増した。賠償費用の一部を新たに新電力にも負担させるようにして、巨額の事故処理費用を賄う。経産省が9日示した見積もりでは、廃炉は従来の2兆円から8兆円に、賠償は5兆4000億円から7兆9000億円に、除染は2兆5000億円から4兆円に、中間貯蔵施設の整備費用は1兆1000億円から1兆6000億円にそれぞれ膨らむ。このうち廃炉費用は原子力損害賠償・廃炉等支援機構が国内外の有識者へのヒアリングに基づく試算として示した。ただ、溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出し方法など廃炉の詳細はまだ決まっておらず、経産省は合理的な見積もりは現段階で困難としている。東京電力ホールディングスは9日午前に開かれた「東京電力改革・1F問題委員会」で送配電や原子力事業で再編・統合を検討する方針を示した。両事業の再編で企業価値を高め、廃炉費用を捻出する。国は東電向けの無利子融資枠を今の9兆円から13兆5000億円に引き上げるほか、廃炉費用を積み立てて管理する基金をつくり、長期に及ぶ廃炉や賠償が円滑に進むようにする。賠償総額7兆9000億円のうち、新電力による負担は2400億円程度になる。新電力が40年かけて支払う場合、新電力を利用する標準家庭の電気代に月平均で18円が上乗せさせる計算となる。

*1-2:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDF03004_T00C13A9MM0000/ (日経新聞 2013/9/3)福島原発、汚染水対策に470億円 政府が基本方針、遮水壁、建設前倒し
 東京電力福島第1原子力発電所から高濃度の放射性物質を含む汚染水が漏れている問題で、政府は3日、約470億円の国費を投じ政府主導で解決する方針を固めた。国の全額負担で原子炉建屋への地下水の流入を遮断する凍土壁を設置するほか、汚染水を浄化する装置も増設する。東京電力主体の従来の対策よりも前倒しで事態を解決できるようにする。3日に開いた原子力災害対策本部で汚染水対策の基本方針を示した。安倍晋三首相は「世界中が注視している。政府一丸となって取り組みたい」と述べた。対策費は凍土壁の建設費で320億円、浄化装置の開発費で150億円と見積もった。対策費のうち約210億円は2013年度予算の予備費でまかない、年度内に対策に取りかかる。約2年の工期がかかる凍土壁の建設を前倒しする。対策費は概算で、凍土壁や浄化装置の開発が難航すれば上振れする可能性がある。凍土壁は建屋のまわりの土を冷却剤の循環により凍らせて地下水の浸透を防ぐ設備。原発内にたまった汚染水を浄化する多核種除去設備(ALPS)も、東電が設置する3系統に加え、国が高機能な浄化設備を増設する。汚染水漏れが見つかった急造タンクは溶接のしっかりしたタンクに入れ替える。汚染水対策に向けた体制も強化する。従来は経済産業省や原子力規制庁が汚染水問題に対処していたが、国土交通省や農林水産省も加えた関係閣僚会議を発足させる。地下水や土壌改良の専門家を集め、政府一丸で対策にあたる態勢を整える。東電や地元との連携を深めるため、国の現地事務所も新設。福島第1原発の周辺に常駐する担当官を増やし、情報収集や対策協議を密にする。基本方針には、▽建屋に流れ込む地下水くみ上げ▽地下坑道(トレンチ)にたまっている高濃度汚染水の除去▽汚染水の海への漏洩を抑えるための地盤改良――などを盛り込んだ。個々の対策の実施計画も明らかにし、早期解決に向けた姿勢を内外に示す。東電は7月下旬、福島第1原発から汚染水が海洋に流出している可能性を認め、流出量を1日300トンと推計した。対策は後手に回り、8月には汚染水をためるタンクからの漏洩が見つかるなど事態は悪化の一途をたどっていた。原子力規制委員会は汚染水問題が、国際原子力事象評価尺度(INES)でレベル3(重大な異常事象)に相当するとの評価を決定。国内外に懸念が広がっているため、政府は「対策を東電任せにせず、国が前面に立つ」(安倍首相)との姿勢を打ち出していた。
<政府の主な汚染水対策>
■体制・資金
・経済産業省や国土交通省などが関係閣僚会議を設置。東京電力や地元と連携する現地事務所を新設し、国の担当官が常駐
・総額470億円を投入。うち2013年度予算の予備費を210億円つかい、対策を前倒し
■対  策
・建屋を凍った土で覆う遮水壁の設置(320億円)
・汚染水から放射性物質を取り除く装置を新設(150億円)

*1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/424128 (佐賀新聞 2017年4月24日) 玄海再稼働へ、事故時対応約束 今村氏発言後引き、「国が責任」に疑念
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に同意するかどうか、佐賀県知事の最終判断が目前に迫った。万一事故が発生した場合、国は「責任を持って対処する」と繰り返すが、福島第1原発事故の自主避難者の帰還を巡って「本人の責任、判断だ」と発言して撤回した今村雅弘復興相の言動が後を引き、国への疑念はくすぶる。福島事故への対応は、原発事故に対する国の責任の取り方の先例になるだけに、厳しい視線が注がれている。
▽故郷が汚染 
 「今村さんって佐賀出身でしょ? ふるさとが放射能に汚染されてみないと、私たちの痛みは分からないんでしょうか」。福島市から佐賀市に自主避難している渡辺弘幸さん(55)は、ため息交じりにつぶやいた。事故直後、原発から約60キロ離れた福島市にも放射性物質が飛来した。国の避難指示は出なかったが、持病が心配で、母親を連れて避難することを決意した。だが、母親は「どうせこの先、長くないから」と残り、1人でふるさとを離れた。1年半前、事故で足を骨折して仕事を続けられなくなった。自主避難者に対する住宅の無償提供支援が3月で終了し、家賃が重くのしかかる。「自分の判断で避難したから、自己責任と言われればそうかもしれないが、原発を推進してきた国の責任はどうなる」
▽にじむ距離感 
 事故の翌年、2012年6月にできた「原発事故子ども・被災者支援法」は、被災者の生活支援を、原発を推進してきた国の責務として行うと定め、自主避難者も救済対象にしている。衆参両院の全会一致で可決され、今村氏も賛成した。避難者の支援活動に取り組み、法案作りに関わった福田健治弁護士は「今村氏は行政トップとして法を誠実に執行する立場なのに、支援法の規定を知らなかったんだろうか」と嘆く。
政府は「福島への帰還こそが早期復興につながる」として、避難指示の解除を段階的に進め、避難者への生活支援策を縮小していった。支援法も、具体的な施策を決める段階で対象者が限定され、支援の中身が形骸化していった。今村発言の半月前の3月17日、避難住民らが起こした集団訴訟で前橋地裁(群馬県)は、原発事故の国の過失責任を認める判決を出した。放射性物質への恐怖や不安にさらされずに暮らす「平穏生活権」が侵害されていると指摘した。国は引き続き争う姿勢で、避難者との距離感がにじむ。
▽切り捨て 
 福島原発事故による広域避難の実態を、鳥栖市などで調査してきた立教大学の関礼子教授(社会学)は懸念する。「社会の中で、事故の記憶とともに被災地への関心が薄れていっている。そうした中、政府が示す姿勢は、被害を受けた人たちを切り捨てようとしているようにも映る」。その上で、今村氏の発言は避難者だけに関わる問題ではないと強調する。「原発の再稼働を進めたい国が『責任を取る』と言った場合の、責任の取り方とはどういうものなのか、今の対応が先行事例になる。原発立地地域の人たちは自分の身に引き寄せて、見ておく必要がある」

<原発再稼働>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/421590 (佐賀新聞 2017年4月14日) 県議会の玄海再稼働容認、住民の安全最優先に判断を
 九州電力玄海3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関し、佐賀県議会が同意した。過半数を占める自民党の「再稼働容認」とする決議案が賛成多数で可決された。既に原発のある玄海町は同意している。決議を「極めて重く受け止める」とした知事は同意する見通しだが、不安や反対の声は根強い。判断を下す際の十分な説明が必要だ。臨時県議会では3本の決議案が提出された。自民などは、電力の安定供給といった観点から「再稼働の必要性が求められる」と提案し、避難計画の充実や地域振興などを国に求めた。民進などは、条件付きながら「再稼働せざるを得ない」、共産などは「拙速な判断と同意をしないよう強く求める」と主張した。しかし十分な議論が尽くされたのか、疑問も残る。知事は再稼働に同意するかどうかの判断の前提として、県議会の意思表示を求めていた。臨時県議会の12日の質疑でも、県民の代表としての議会の意見が大切であることを繰り返し表明。住民投票に否定的な答弁をしたのは、その裏返しともいえよう。地方自治を支えているのは首長と議員を住民が直接選挙で選ぶ「二元代表制」で、間接民主主義をとっている。原発再稼働というテーマが、多数決になじむのかという論議もあろう。再稼働に前向きだった自民党の案が通るのは予想された。しかし、県民にはいろいろな意見があり、佐賀新聞社が昨年秋に実施した県民世論調査では、反対が賛成を上回った。不安に感じる県民がいる以上、知事は十分に留意する必要がある。県主催の住民説明会、知事と県内20市町長との懇談会も開催した。伊万里市長ら3首長が再稼働に反対の意思を表明し、ここにきて長崎、福岡県から反対や不安、懸念の表明が相次いでいる。事故が起きれば、県境は関係ない。地元同意の範囲をめぐる議論が起きるのも、当然といえる。地元同意に法律上の明確な規定はない。このため臨時県議会の質疑では、議員から知事に対し、現在より広い範囲の同意を必要とするよう、法的な整備も含めて国に求める意見が出た。知事も「根本の議論が必要」と応じた。今後の判断に際し、隣県も含めた住民や首長の声を真摯(しんし)に酌(く)んでほしい。与野党を問わず、避難計画を実効性のあるものにすべきという主張は根強い。20市町長との懇談会でも、多くの首長が条件付きで再稼働に賛成する立場を表明した上で、福島原発事故の被害の長期化とともに、事故時の避難者の受け入れに不安を訴えた。「道路が混雑し、地震の場合は住民の避難も困難になる」「道路も整備しないとパニックになる」などと、懸念と対策を求める声が相次いだ。県議会の質疑では、避難計画は国が審査して同意を与える法整備が必要との提案があった。「それも一考に値する」として知事は、国にどういう提言ができるか検討すると答弁した。原発は国策である以上、国がしっかり対応すべき課題ではあるが、任せるだけではいけない。県レベルでも周知や渋滞などの対策が求められる。再稼働へ向けた手続きは進んだ。ひとたび原発が動けば、後戻りはできないとの覚悟がいる。知事は住民の安全を最優先に慎重に判断してほしい。

*2-2:http://qbiz.jp/article/108174/1/ (西日本新聞 2017年4月22日) 世耕経産相が玄海原発視察
 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働に向けて、世耕弘成経済産業相は22日、九電の瓜生道明社長の案内で同原発を視察し、原子力規制委員会が新規制基準適合を認めた安全対策を確認した。午後には佐賀県庁で山口祥義知事と会談する。山口知事は世耕氏との会談で再稼働や事故時などの「国の責任」を再確認し、週明けにも地元同意を表明する方針。一方、玄海原発30キロ圏の8市町のうち半数の同県伊万里、長崎県松浦、平戸、壱岐の4市長は反対を表明している。世耕氏は玄海原発で、東京電力福島第1原発事故後に配備した移動式大容量ポンプ車や格納容器が破損した場合に放射性物質の飛散を防ぐ放水砲などを見て回った。山口知事との会談後には鹿児島県薩摩川内市で九電川内原発も視察する。

*2-3:http://qbiz.jp/article/108179/1/ (西日本新聞 2017年4月23日) 玄海原発、24日にも再稼働同意 佐賀知事、経産相と会談
 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働に向けて、佐賀県の山口祥義知事は22日、世耕弘成経済産業相と県庁で会談した。山口知事は会談後、記者団に「大臣から国として責任を持つとの強い決意の言葉を頂いた。(地元同意の判断は)できるだけ早くと思っている」と述べ、週明けの24日にも同意を表明する考えを示した。山口知事は、同意を判断する際の最終手続きとして世耕氏との会談を国に要請していた。会談で世耕氏は「原子力政策に政府として責任を持つ」と述べ、再稼働への理解を求めた。山口知事は「言葉は重く受け止める」と評価した。知事は、住民説明会では反対の声が大半で、県内の市長3人も反対していると伝え、使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物の最終処分での取り組み加速▽原子力に依存しない経済社会の確立▽避難計画の充実、原子力災害対策の継続的見直し−など6項目を求めた。国が避難計画策定を義務付ける玄海原発30キロ圏の8市町のうち、同県伊万里、長崎県松浦、平戸、壱岐の4市長は反対している。事実上、県と玄海町に限られている地元同意の範囲拡大について、世耕氏は記者会見で「同意は法律上、再稼働の要件とはなっていない」と否定的見解を示した。会談に先立ち、世耕氏は玄海原発を訪れ、福島第1原発事故後に配備した移動式大容量ポンプ車などの安全対策を確認した。山口知事との会談後には、鹿児島県薩摩川内市で九電川内原発も視察した。
●再稼働へ“儀式”着々
 佐賀県玄海町の九州電力玄海原発再稼働に向け、同県の山口祥義知事が「地元同意」を判断する際の最終手続きとして国に求めた世耕弘成経済産業相との会談が22日、終わった。国が避難計画策定を義務付ける原発30キロ圏の4市長が反対し、県庁前で住民団体の約100人が「再稼働やめろ」「県民の話を聞け」と声を響かせる中、知事は24日にも再稼働同意を表明する見通しで、世耕氏との会談にはセレモニー色がにじんだ。会談で山口知事は「県民から寄せられた意見のほとんどは再稼働に反対」と訴え、福岡、長崎両県にも不安や反対の声が多いと強調したが、世耕氏が「政府として責任を持ってエネルギー政策、原子力政策を進める」と応じると「大臣の発言は重く受け止める」とあっさり評価。「今後も地元の意見に真摯(しんし)に向き合っていただきたい」と述べ、約25分間で会談は終了した。佐賀県では1月以降、県の住民説明会や第三者委員会、県内全ての首長との懇談、担当大臣との会談など、知事が同意を判断するための意見集約が進められてきた。しかし、玄海原発の再稼働は山口知事が初当選した2015年1月の知事選の公約。知事は今月13日の県議会の容認決議を重視する考えも示していた。会談後、山口知事は記者団に判断条件は出そろったかと問われ「そうですね。あとは今日、話を頂いたことを考えて説明したい。できるだけ早く」と述べた。世耕氏は「佐賀県の皆さんに再稼働を進める政府方針を説明する良い機会になった」と満足そうに話した。府方針を説明する良い機会になった」と満足そうに話した。

*2-4:http://www.nikkei.com/article/DGXLASJC24H32_U7A420C1000000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2017/4/24) 玄海原発再稼働に同意、佐賀知事「重い決断」
 佐賀県の山口祥義知事は24日午後、同県庁で記者会見を開き、九州電力玄海原子力発電所3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働に同意する考えを表明した。山口知事は「熟慮に熟慮を重ねた結果、原子力発電に頼らない社会をつくるという強い思いを持ちつつ、現状においては(再稼働は)やむを得ないと判断した」と述べた。知事の表明で、再稼働に向けた地元同意の手続きは完了。福島原発事故を受けて新規制基準が導入された以降では、鹿児島県(川内原発)、愛媛県(伊方原発)、福井県(高浜原発)に続き4例目となった。地元同意をめぐっては立地自治体の玄海町が3月初旬までに同意を表明し、佐賀県議会も13日に容認決議を行った。ただ、福島の事故の大きさゆえに、県民の不安の声は根強く、「非常に重い判断だった」と知事。「県民83万人全員が同じ方向を向くことはない。我が国のエネルギー事情を考えたとき、火力発電がフルパワーで稼働して環境問題もある中で、総合的に判断した」と最終判断の理由を説明した。山口知事は会見に先立ち、世耕弘成経済産業相に電話で再稼働同意を伝達。22日の会談で国側が示した原発政策の実行に加え、「自然エネルギーの普及促進を改めてお願いした」と述べた。今後の焦点は玄海原発3、4号機がいつ稼働するかに移る。原子力規制委員会が現場で設備を確認する使用前検査などが必要で、稼働は今秋メドになる見通しだ。

*2-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/422599 (佐賀新聞 2017年4月18日) 玄海原発、基準適合は不当 福岡の研究会が規制委に異議申し立てへ
 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県東松浦郡玄海町)が、新規制基準に適合すると認めた原子力規制委員会の許可は不当だとして、大学の元教員や医師らでつくる「福岡核問題研究会」の有志は、規制委員会に異議を申し立てる審査請求をすることを決めた。研究会の有志5人が、行政不服審査法に基づき、許可の取り消しや、執行停止(再稼働の停止)を求める。審査請求期限の18日までに手続きする。理由として、福島第1原発事故の後、フランスは総勢300人の緊急対応部隊を新設したが、日本の新規制基準には対応する措置がなく、「世界基準に程遠いこと」や、規制委がそもそも重大事故時の住民避難などの対策の有効性を審査の対象にしていないことが、「法律が求める責務からの責任逃れであり違法」などと主に8項目を挙げている。研究会メンバーが17日、佐賀県庁で会見を開き、豊島耕一佐賀大学名誉教授は「県議会は安全性が認められたとしているが、実際には程遠い状況」と批判した。

*2-6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/423954 (佐賀新聞 2017年4月23日) 反原発団体、経産相に抗議「県民犠牲にするな」
「県民を犠牲にするな」。玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働を巡り、山口祥義佐賀県知事と世耕弘成経済産業相が22日面会した県庁の前では、反原発の市民団体が抗議行動した。原発再稼働に前のめりの姿勢を示す国や手続きを着々と進める山口知事に対し、集まった約150人が怒りの声を上げた。午後2時18分、世耕経産相を乗せた車が急速度で正門から中に入り、参加者は「合意なき国策を押し付けるな」と声を張り上げた。県平和運動センターの原口郁哉議長は「知事は反対や疑問の声に答えずに再稼働へのステップを積み重ねている」と批判した。知事と面談して経産相が県庁を後にする午後3時10分まで約50分にわたり、「無責任な同意は許さない」などとシュプレヒコールした。参加した徳光清孝県議(社民)は「知事の同意後も再稼働まで時間がある。阻止するため粘り強く取り組む」、武藤明美県議(共産)も「福島の原発事故や自主避難者に対する復興相の失言で明らかなように、国も電力会社も原発に責任は取れない」と非難した。玄海原発の運転差し止め訴訟を続ける市民団体の石丸初美代表は「命や生活が脅かされ、核のごみも未来に押し付ける原発を続けられるわけがない。大臣は知事ではなく県民に説明するべき」と訴えた。経産相が視察した玄海原発の前でも抗議活動が行われた。

*2-7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201704/CK2017041502000133.html (東京新聞 2017年4月15日) 原発ゼロ・自然エネ連盟 発足 小泉元首相「国民運動に」
 各地で活動する脱原発や自然エネルギー推進団体の連携を目指す全国組織「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」が十四日発足し、東京都内で記者会見を開いた。顧問に就任した小泉純一郎元首相は「自民党と革新勢力双方の支持者を巻き込んだ国民運動にしていく」と訴えた。福島第一原発の事故後に全国で進められた脱原発の運動は、連携がなく広がりを欠いていたとの判断から設立を決めた。全国組織として事務所を置き、講演会や意見交換会の開催、政府への提言、優れた活動をした団体の表彰などを行う。会見で小泉氏は「国民全体で原発を止めていこうという強いうねりが起きているのを実感している」と強調。その上で「いずれは国政選挙においても脱原発が大きな争点になる時がくる」と力を込めた。会長には、経営者として脱原発を訴えてきた城南信用金庫の吉原毅相談役が就任。吉原氏は「原発が経済的にも採算が合わないのは明らかで、自然エネルギー化は世界の流れだ。日本全国の声を結集していく」とあいさつした。連盟には約百五十の団体が参加する予定。主な役員は次の通り。
 顧問=細川護熙(元首相)▽副会長=中川秀直(元自民党幹事長)島田晴雄(前千葉商科大学長)佐藤弥右衛門(全国ご当地エネルギー協会代表理事)▽事務局長=河合弘之(脱原発弁護団全国連絡会共同代表)▽事務局次長=木村結(東電株主代表訴訟事務局長)▽幹事=鎌田慧(ジャーナリスト)佐々木寛(新潟国際情報大教授)香山リカ(立教大教授)三上元(元静岡県湖西市長)永戸祐三(ワーカーズコープ理事長)

<諫早干拓>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12878773.html
(朝日新聞 2017年4月6日) 諫早、止まらぬ税金投入 国の干拓事業、湾閉め切り20年
 国の干拓事業で、諫早湾(長崎県)を鋼板で閉め切った「ギロチン」から14日で20年。国内最大級の干潟は農地になったが、湾を含む有明海は漁業不振が深刻化し、海の再生などに多額の公費投入が続く。巨費を投じた大型事業は、今も先が見えない。
■海再生498億円/判決守れず「罰金」
 2008年に完成した干拓事業。今も続く支出のうち、最も規模が大きいのが有明海再生事業だ。湾が閉め切られた3年後の00年、有明海特産のノリが大凶作に見舞われた。干拓事業との因果関係を調べるため、農林水産省の第三者委員会は、短・中・長期の開門調査を提言した。だが、農水省は中長期の開門をしない代わりに再生事業を始めた。02~16年度の事業費(予算ベース)は計498億円。海底に砂を入れて耕したり、干潟に潮の流れをよくする水路を築いたりしている。もう一つの大きな支出は堤防の内側の調整池の水質改善だ。淡水化され、干拓地の農業用水になるが、生活排水などが流れ込むと水質が悪化しやすい。そこで長崎県などが下水道整備や水質浄化を進めてきた。04~15年度に国と自治体合わせて352億円(決算ベース)の公費を投じた。それでも池では毎夏のようにアオコが大量に発生している。海の再生も池の水質改善も十分な効果が上がらないまま、毎年続いている。調整池のアオコの調査を続ける熊本保健科学大の高橋徹教授(海洋生態学)は「病気なら検査して、診断し、効果のある治療法を選ぶ。有明海の異変では検査にあたる開門調査をしていない。それ抜きでは効果的な対策も不可能なのに、あてどもなく血税が投じられている」と話す。公金投入は、こうした事業だけにとどまらない。干拓事業をめぐっては複数の訴訟が争われている。干拓が有明海の漁業不振の原因と疑う漁業者らは開門を求めて国を提訴。10年に開門を命じる福岡高裁判決が確定した。一方、長崎地裁は干拓地の営農者の主張を認め、国に開門を差し止める仮処分決定を出した。国は確定判決を履行できなくなり、14年6月から「罰金」として漁業者側に間接強制金を支払っている。現在は1日あたり90万円、3月10日時点で総額7億6500万円に上る。判決を履行するまで積み上がり、このままだと年内に10億円を超える。仮に開門すると、国は農業者側に罰金を支払う義務も負っていて、どちらに転んでも支払いは続く。漁業者らは強制金を海の再生のための基金に積み立てている。その一人、佐賀県太良町の平方宣清(のぶきよ)さん(64)は言う。「国の役人は自分の懐が痛まないから、こんな異常な状況を放置しておける。納税者としては納得できない」
■低い費用対効果
 諫早湾干拓は戦後間もない1952年、約1万ヘクタールの湾全体を農地にする大干拓構想として浮上した。その後、米が余る時代になり2度、規模を縮小。畑地開発や高潮・洪水防止に目的を変え、89年に着工した。97年4月14日、ギロチンを思わせる293枚の鋼板で湾の3分の1を閉め切った。長さ7キロの堤防の内側は干潟が陸地になり、672ヘクタールの農地に姿を変えた。総事業費は2530億円。造成された農地は長崎県の公社が国から51億円で買い取った。2008年から営農が始まり、個人・法人の計40事業者が農地を借りて野菜などを作る。1ヘクタールあたり約3億7648万円をかけて造成された農地。リース料は1ヘクタールあたり年20万円(標準額。当初は15万円)だ。1事業者の面積は平均16・7ヘクタールの大規模経営で、11年度の県の調査ではタマネギやニンジンなど主力5品目で計約2万3千トンの収穫があった。ただ、リース料の未納などでこれまでに9事業者が干拓地を去った。事業の費用対効果は農水省の試算で0・81。当初は1・03だったが難工事のため事業費が予定の倍近くに膨らみ、望ましいとされる1を割り込んで費用が事業効果を上回っている。
■大型事業、復活の動き 震災復興やアベノミクスで
 政府の公共事業費は、バブル崩壊後の90年代半ばから00年代初めがピークだった。自民党政権は景気対策のため毎年のように当初予算で9兆円台を計上。98年度には当初と補正の合計が15兆円近くに達した。一方で長良川河口堰(かこうぜき)(三重県)の反対運動が呼び水になり、大型公共事業が「環境破壊」「税の無駄遣い」と批判の的になる。01年には「構造改革」を掲げた小泉政権が発足し、公共事業費は削減に転じた。09年、「コンクリートから人へ」を掲げた民主党に政権交代すると、「事業仕分け」などにより削減が進んだ。だが、11年の東日本大震災後、野田政権は一転、復興費を含む公共事業費を増やした。高速道路や新幹線など、凍結していた大型事業の復活も認めた。安倍政権は「アベノミクス」の「第2の矢」で財政出動を掲げる。「国土強靱(きょうじん)化」をうたい、防潮堤や道路など災害に備えたインフラの整備が進む。当初予算は14年度から6兆円弱での微増が続く。関門など全国6海峡をトンネルや橋で結ぶプロジェクトなど凍結された事業の復活を、防災の名の下でめざす動きも活発だ。
■教訓学びとって
 宮入興一・長崎大名誉教授(財政学)の話 農水省は、諫早湾干拓事業の費用対効果を算出する際、失われる干潟の浄化能力や、漁業の被害を勘定に入れていなかった。そのつけを今払っているということだろう。国民の血税による終わりの見えない後始末だと言える。公共事業が無限の国民負担を強いることもあるという、最悪の事例だ。この教訓を、国も納税者も学びとらなければならない。

*3-2:http://mainichi.jp/articles/20170417/k00/00e/040/253000c (毎日新聞2017年4月17日) 諫早訴訟:開門差し止め命じる判決 長崎地裁
 国営諫早湾干拓事業(諫干、長崎県)の干拓地の営農者らが国に潮受け堤防の開門差し止めを求めた訴訟で、長崎地裁は17日、開門差し止めを命じる判決を言い渡した。松葉佐(まつばさ)隆之裁判長(武田瑞佳裁判長代読)は、もし開門すれば「農地に塩害などの重大な被害が発生する恐れがある」として、事前対策工事によって被害は防げるとする国の主張を退けた。諫干を巡る訴訟で、開門差し止めを命じる判決は初めて。2010年に国に5年間の開門調査を命じた福岡高裁判決が確定しているが、確定判決と逆の請求を認める判決は極めて異例。堤防閉め切りから今年で20年を経て“司法判断のねじれ”は一層深まった。国側補助参加人の漁業者側は控訴の意向を示したが、国が2週間以内に控訴しなければ判決が確定することから対応が注目される。判決は開門で堤防内の調整池に海水が入り込み「農地に塩害や潮風害、農業用水の一部喪失が発生する恐れがある。生活などの基盤に直接関わり重大」と指摘。これに比べ、国が主張する開門による漁場環境の改善効果は高くなく、開門調査で漁獲量減少との関連性を解明できる見込みは不明だと判断した。潮風害などを防ぐ事前対策工事も「実効性に疑問があるものがある」と結論づけた。判決を受け、山本有二農相は「判決内容を詳細に分析し関係省庁と連携しつつ適切に対応したい」とコメントした。訴訟は11年、福岡高裁確定判決への対抗措置として営農者らが起こした。長崎地裁は13年、営農者らが申し立てた開門差し止めの仮処分を認める決定を出し、国が不服を申し立てた異議審(15年)でも決定を支持した。開門差し止め訴訟を巡っては長崎地裁が16年1月に開門しない前提の和解を勧告したが今年3月に和解協議が決裂した。
●諫干開門差し止め請求訴訟判決骨子
・国に開門差し止めを命じる
・開門すれば農地に塩害など重大な被害が発生する恐れがある
・開門で漁場環境が改善する可能性は高くない
・開門調査で堤防閉め切りと漁獲量減少の関連性解明の見込みは不明
【ことば】国営諫早湾干拓事業
 大規模農地造成や低平地の水害対策を目的に1997年に湾内を全長7キロの潮受け堤防で閉め切った。2008年に完成し、総事業費約2530億円。約670ヘクタールの農地は、長崎県が全額出資する県農業振興公社が国から約51億円で購入し、営農者(個人・法人計40)に貸し付け、野菜や麦が栽培されている。農業産出額は年間計34億円。

*3-3:http://qbiz.jp/article/105683/1/ (西日本新聞 2017年3月16日) 南アで真水化事業へ 北九州市が日立と覚書
 北九州市は15日、南アフリカ東部のダーバン市で新たな水ビジネスを始める日立製作所(東京)と連携協力する覚書を結んだ。同社は、北九州市が民間企業に無償貸与している研究施設「ウオータープラザ北九州」(小倉北区西港町)で海水と下水から飲用水レベルの真水を精製する技術を確立しており、今後、ダーバン市で実証事業を手掛け、北九州市が現地スタッフを同研究施設に招き人材育成に当たる。記者会見した同社などによると、ダーバン市関係者が2013年に同研究施設を視察したことをきっかけに実証事業のオファーが来た。現地は少雨による慢性的な水不足に陥っているという。同社は飲用水の供給を依頼されており、現地施設を19年9月に完成させ、1日6250トン(2万〜3万人分)を精製。将来的に商用化して10万トン(40万〜50万人分)の供給につなげたい考えだ。11年に開業した同研究施設は、海外の89カ国を含め7700人が視察。今後、ダーバン市の海水や下水の水質に近づけた条件での実験も行っていく。北橋健治市長は「水資源が乏しい他国への普及も考えられ、官民の連携をさらに深めたい」と話した。

<財源は消費税とする福祉・教育、他の税収は何に使うのか>
*4-1:https://www.ehime-np.co.jp/article/news201704165417 (愛媛新聞社説 2017年4月16日) 介護法案強行採決 国民に視線を向けて議論尽くせ
 衆院厚生労働委員会で、与党が介護保険関連法改正案の採決を強行した。民進党議員が質疑で森友学園問題を取り上げたことに、与党が反発した結果だ。法案は、高所得者のサービス利用時の負担割合を2割から3割に引き上げ、大企業社員や公務員らの保険料負担を増やすなど、国民への影響は大きく、十分な審議が欠かせない。痛みを強いる内容でもあり、理解を得るには丁寧な説明が必要だ。にもかかわらず、その責務を放棄して、不都合なことにふたをするような身勝手な国会運営は到底容認できない。与党は「法案以外の質問をするのは、十分に質疑をしたという証拠だ」と正当化するが、実質合意していた採決予定日まで2日を残していた。議論を尽くしていないことは、与党側も認識していたはずだ。この後、衆院本会議が見送られるなど国会は混乱。貴重な審議時間も失われてしまった。「法案以外の質問」を理由に審議を打ち切り、採決することがまかり通れば、民進党議員が非難したように「言論封殺」と言わざるを得ない。ましてや、今回の強行採決の背景に、森友学園問題に関わる「安倍晋三首相擁護」があったことは想像に難くない。首相に都合が悪い質問は許さないとばかりの与党の姿勢は、「言論の府」として看過できない。首相には国民の疑問に対し、正面から向き合い答える義務がある。安倍内閣の支持率は高水準を維持し、自民党内で首相の座を脅かす有力な対抗馬は見当たらないのが現状だ。首相や政権はこの状況に甘んじ、説明責任をなおざりにしていると言われても仕方あるまい。周囲も首相の意思を忖度(そんたく)しすぎではないか。国会議員が視線を向けるべきは時の権力者ではなく、国民であるという基本をいま一度認識すべきだ。介護法案は18日に衆院通過の見通しで、審議の場を参院に移す。「良識の府」である参院は政争が目に余る衆院を反面教師に、「数の力」に頼むのではなく議論を重ねてほしい。自民党の政権復帰、第2次安倍内閣の発足から4年4カ月。政権や与党による国民軽視や、議論封じ込めの「暴走」は今回が初めてではない。今なお懸念が根強い特定秘密保護法、安全保障関連法などでも強行採決。沖縄県の米軍普天間飛行場移設では、反対する沖縄の民意をよそに、政府が名護市辺野古沖で基地建設を強行する。政権の傲慢(ごうまん)な姿勢に、危うさが募る。今国会では「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案、衆院小選挙区の新区割りに関する公選法改正案など、与野党の激しい対立が予想される法案が残っている。介護法案と同様の手法で採決をごり押しするようなことは断じて許されないと、政権や与党は肝に銘じなければならない。

*4-2:https://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2017_0405.html(NHK 2017.4.16) ビジネス特集:子育て世帯の負担軽減?“こども保険”構想
 増える待機児童、広がる教育格差。子どものいる家庭にとって心配事は増える一方です。自民党の小委員会は、子育て世帯を支援するため、今の公的年金の仕組みのように、働く人や企業などから保険料を徴収して子育て世帯の負担の軽減に充てる新たな仕組み、「こども保険」構想を発表しました。働き盛り世代に重くのしかかる子育ての出費。その軽減につながるのでしょうか?
●社会全体で支える「こども保険」
 自民党の小泉進次郎衆議院議員を中心とする若手議員でつくる小委員会は、3月29日、少子化に歯止めをかけるため、新しい社会保障制度として「こども保険」構想を発表しました。「年金、医療、介護には社会保険があるが、喫緊の課題である子育てに社会保険がない」として、子どもが必要な保育や教育などを受けられないリスクをなくそうと、社会全体で支えるとしています。具体的には「公的年金」や「介護保険」の仕組みのように、保険料を徴収して社会全体で子育て世代を支援する新たな保険制度をつくろうというものです。今の厚生年金や国民年金の保険料に上乗せする形で、働く人と企業などから幅広く徴収します。徴収した財源は、小学校入学前の子どもがいる世帯に対し、児童手当に上乗せしたり、待機児童の解消に向けて保育所の整備に充てたりするとしています。当面の案として、企業と働く人から賃金の0.1%ずつの保険料を集める案が考えられています。国民年金の加入者の場合、月160円を徴収します。小委員会によると、子どもが2人いる30代の世帯では、年収400万円の場合、月に240円の保険料の負担増となり、子どもが2人(高校生の場合は児童手当はない)いる50代の世帯では、年収800万円の場合、月に500円の保険料負担の増加になると試算しています。「こども保険」によって、およそ3400億円の財源が確保できることから、児童手当に上乗せする場合、子ども1人当たり月5000円を加算することなどが可能だとしています。
●幼児教育や保育の無償化も視野に
 小委員会は、医療や介護の改革が同時に進めば、企業と働く人から徴収する、「こども保険」の保険料率をそれぞれ0.5%まで引き上げ(国民年金の加入者は月830円に引き上げ)、財源の規模をおよそ1兆7000億円まで増やせるとしています。この場合、例えば小学校に入学する前の子どもがいる世帯には、子ども1人当たり2万5000円が支給できるようになるため、児童手当と合わせると、幼児教育や保育を実質的に無償化できるとしています。小委員会のメンバーは「医療・介護保険料は高齢化で今後も徐々に引き上げられることが予想されるが、改革を行うことで給付の伸びを抑えることはできる。まずは、なんとか0.1%の保険料でも導入したい」と話しています。小委員会では今の社会保障制度が高齢者偏重ではないかという問題意識もあり、「こども保険」の創設を「全世代型社会保険」の第一歩としたいという思いもあるといいます。厚生労働省によりますと、「待機児童」は去年10月の時点で、全国で4万7738人。2年連続で増えており、東京は1万2232人と4分の1を占めています。国は女性の就業率の向上なども念頭に十分な保育の受け皿を確保することを目指していますが、財源などの面で険しい道のりであることは言うまでもありません。今回の「こども保険」は、子育て支援の安定財源になり得るのではないかという期待も出ているのです。
●負担だけが増える世帯も
 しかし、小さな子どもがいない世帯にとっては、「こども保険」の保険料の負担だけが増えることになるため、実現に向けて慎重論が出ることは確実。小委員会でも、子どもがいない人たちの理解をどのように得るかが実現のカギになるとみていて、「子どもがいない人も、将来、社会保障の給付を受ける側になる。社会保障制度の持続性を担保するのは、若い世代がどれだけいるかだ。若い人を支援するということは、子どもがいる、いないに関係なく、社会全体の持続可能性につながる」と説明しています。また、政府内では「保険制度は、自分にふりかかるリスクに対し、個々が保険料を納めて制度として成りたっているので、子育て支援の財源は、保険制度にはなじまず、一般財源でやるべきではないか」という意見や、「保険料の徴収の対象が勤労者と事業者となっていて、『全世代型の社会保障』といいながら、高齢者からの徴収がないのは疑問だ」などという指摘も出ています。
●保険方式浮上の背景に財源問題
「こども保険」構想の背景には、「教育格差」の問題が指摘される中、与野党で「教育無償化」を進めようという議論が出ていることもあります。これまでに財源として消費税や国が使いみちを教育に限定した新たな国債「教育国債」を発行する案などが浮上しています。しかし、消費税を10%に引き上げた場合の使いみちはすでに決まっているほか、さらなる引き上げがいつになるかわからず、財源として当てにできるものではありません。「教育国債」の発行も「名を変えた赤字国債だ」という慎重論が根強く、実現に向けてハードルの高さが指摘されているのです。こうした中で出てきたのが、保険の仕組みというわけです。とはいえ「こども保険」は、まだ構想段階。使いみちなど、制度の詳細が決まったわけではなく、今後、自民党内に新たに特命委員会を設けて検討していくことになっています。「少子化対策」が言われて久しいですが、抜本的な対策は待ったなし。今後どういう議論が展開されていくのか注目していきたいと思います。


<予算から見た辺野古埋め立て>
PS(2017年4月25日追加):誰もが望む普天間基地の返還のためなら、既に滑走路のある離島は多く、そこに基地を移転すれば埋め立てなど不要で予算も少なくてすむ。にもかかわらず、*5-1、*5-2のように、辺野古でも大量の予算を使うことが目的であるかのように誰のメリットにもならない埋め立て工事が始まり、その結果は、諫早干拓事業と同様に、大量の血税を使って自然を壊し回復不能にして、沖縄の資産を破壊する結果になると思われる。

   
  辺野古の海   2016.12.28東京新聞 2017.4.25沖縄タイムス 2016.12.27朝日新聞

*5-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK4S7HDWK4STPOB009.html?iref=comtop_8_06 (朝日新聞 2017年4月25日) 辺野古埋め立て護岸工事始まる 政府、5年で完了めざす
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設計画で、政府は25日午前、名護市辺野古沿岸部を埋め立てる護岸工事を始め、海に砕石が沈められた。工事が進めば、原状回復は困難になる。日米両政府が普天間返還合意をしてから21年が経ち、大きな節目を迎えた。辺野古の大浦湾に面した米軍キャンプ・シュワブ北側の浜辺では、午前9時20分ごろ、砂浜に設置された大型クレーンが動き出し、網に入れられた数十個の砕石をつり上げて、波打ち際に沈めた。護岸造成の地盤として海底に敷く捨て石とみられ、計5袋が海に入れられた。その後、午前11時時点までに目立った動きはない。この日着工したのは、埋め立て予定地の最も北に位置する場所。沖縄防衛局は今後、予定地の外側を囲む護岸を造成し、海を囲み終えた場所から年度内にも土砂の投入を始め、5年間での埋め立て完了を目指す。政府は当初、今月中旬の護岸工事着工も想定していたが、安倍政権と翁長雄志(おながたけし)知事の両者が支援する候補の一騎打ちとなったうるま市長選(23日投開票)が終わってからの着手となった。一方、県には25日朝、沖縄防衛局から「きょう着工する」と連絡があり、情報収集に追われた。基地問題を担当する県の吉田勝広・政策調整監は現地で工事の様子を確認し、「まるで沖縄の声を聞かない強引なやり方だ」と憤った。翁長雄志知事は、埋め立て工事に必要な「岩礁破砕許可」の期限が3月末に切れていると主張しており、工事により海底の岩礁が破壊されているのが確認されれば、工事差し止め訴訟を検討している。埋め立て承認の撤回や、県民の民意を改めて示す「県民投票」の可能性も模索している。普天間移設計画は、1995年の米兵による少女暴行事件を機に浮上した。日米は96年、普天間の返還に合意。計画は曲折を経て、辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部を埋め立てて、滑走路2本をV字形に配置する現行案になった。県内で反対運動が続く中、13年12月、当時の仲井真弘多(ひろかず)知事が政府からの埋め立て申請を承認。しかし、「辺野古阻止」を掲げて当選した翁長知事が15年10月にこの承認を取り消し、政府が県を提訴。16年12月の最高裁で県の敗訴が確定し、政府は護岸工事着工に向けて準備工事を急いでいた。

*5-2:http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/80555 (沖縄タイムス 2017.4.25) 辺野古の工事再開、知事は「あらゆる手法で」阻止姿勢 違法確認訴訟・敗訴から1カ月 
名護市辺野古の新基地建設を巡る違法確認訴訟の最高裁判決で沖縄県が敗訴してから20日で1カ月となった。敗訴を受け、翁長雄志知事は自身の承認取り消し処分を取り消し、国は昨年12月27日にキャンプ・シュワブ沿岸部の埋め立てに向けた工事を再開した。県は工事開始前の事前協議を求めているが国は応じておらず、本体工事に向けフロートの設置作業を急いでいる。知事は取り消し処分を取り消す一方、新基地建設は「あらゆる手法で阻止する」との姿勢を崩していない。3月で期限を迎える岩礁破砕許可やサンゴを移植する際の特別採捕許可、埋め立て本体工事の設計変更申請の不許可など知事権限を行使する考えだ。現在、県は2013年の埋め立て承認時に付した留意事項に基づく事前協議や岩礁破砕許可の条件が守られているかを確認するため海中に設置するコンクリートブロックの大きさや個数などの報告を求めている。だが、19日までに防衛局から返事はなく、県は国の留意事項違反などを根拠に承認の撤回を検討しているほか、県民投票の実施も視野に入れている。また、31日からは訪米し米議会関係者や有識者らに直接、辺野古計画の見直しを求める。一方、防衛局は抗議する市民らが臨時制限区域に立ち入らないようロープを張る新たなフロートの設置を進めているほか、報道各社に取材船で臨時制限区域に入らないよう呼び掛ける文書を送付するなど、警備態勢を強化している。国は国内最大級の作業船を導入し、早ければ月内にもボーリング調査を開始する予定で、護岸建設などの本体工事着手に向けた態勢を早急に整える考えだ。


PS(2017年4月26日追加):*6-1のように、今村復興大臣が「社会資本の毀損も25兆円という数字があり、まだ東北のほうだったからよかったが、もっと首都圏に近かったりすると莫大な額になる」と述べたのは、首都圏だったら数千兆円の損害になったかもしれないので真実ではあるが、「東北のほうだったからよかった」という言葉は、被害者自身は1人であっても大変なので不要だった。その点、新復興大臣の吉野氏は、東日本大震災復興特別委員長及び環境副大臣等を務め、まさにフクイチの地元である衆院福島5区選出の衆議院議員であるため、より真剣に東北の復興に取り組まれると考える。なお、原発が人口密度の低い地域に建設されたのは、まさに今村氏が述べた理由によるのだが、原発事故が起これば10km圏、30km圏どころか250km圏まで汚染されることが明白になったのである。
 そのため、*6-2のように、再エネによる発電を地域主導・産直で進めると、「原発は避けて再エネの電気を使いたい」という需要を満たすことができる上、エネルギー代金が地域から外に流出せずにすむので、生協だけでなく、全農も発電・配電子会社を作って地域に電力を供給すれば、再エネ開発が進んでよいと考える。

*6-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170425/k10010961341000.html (NHK 2017年4月25日) 今村復興相の後任に吉野正芳氏を起用 安倍首相方針固める
 安倍総理大臣は今村復興大臣が東日本大震災に関連し、被災者を傷つける発言をした責任を取りたいとして辞任する意向を固めたことを受けて、後任に、衆議院の東日本大震災復興特別委員長で、環境副大臣などを務めた自民党の吉野正芳氏を起用する方針を固めました。今村復興大臣は25日、みずからが所属する自民党二階派のパーティーで講演し、東日本大震災に関連して「社会資本などの毀損も、いろんな勘定のしかたがあるが、25兆円という数字もある。これは、まだ、東北のほうだったからよかったが、もっと首都圏に近かったりすると、ばく大な額になる」と述べました。今村大臣はその後、発言を撤回し謝罪しましたが、このあと同じパーティーに出席した安倍総理大臣は「東北の方々を傷つける極めて不適切な発言で、総理大臣として、おわびをさせていただきたい」と述べ、陳謝しました。こうした中、今村大臣は被災者を傷つける発言をした責任を取りたいとして、復興大臣を辞任する意向を固め、26日午前、総理大臣官邸で安倍総理大臣に辞表を提出する見通しです。これを受けて安倍総理大臣は、内閣の重要課題と位置づける東日本大震災からの復興や、国会審議などへの影響を最小限に抑えるため、後任人事の調整に入り、今村大臣の後任に衆議院の東日本大震災復興特別委員長で、環境副大臣などを務めた自民党の吉野正芳氏を起用する方針を固めました。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p40701.html (日本農業新聞論説 2017年4月25日) 再エネ発電 地域主導で産直もっと
 農山村にある太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス(生物由来資源)の再生可能エネルギーによる発電を地域主導でもっと進めたい。これまでは大手企業の地方進出による大規模発電が目立ち、開発トラブルも絶えない。一方で、安全でクリーンな再エネ電気を望む国民は多い。地元での収入確保と消費者との結び付きの両方がかなう、産直型の再エネ発電に挑む価値は大いにあろう。一般家庭が電気の購入契約先を自由に選べる電力自由化が、4月で2年目に入った。大手電力10社の地域独占が崩れ、電気小売り事業に新規参入する企業「新電力」も増えた。だが、この1年で契約を大手電力から新電力に切り替えた家庭は全体のわずか5.4%。しかも、その切り替えは大都市圏に集中し、新電力が少ない地方は低調だ。東京電力福島第1原子力発電所事故以来、「原発は嫌だ」「再エネ電気を使いたい」という安全・安心志向の家庭は多い。それでも契約切り替えが少ないのは、再エネ電気を供給する新電力がごく一部に限られるからだろう。実際、農山村で発電された再エネ電気をいわば産直契約で主体的に扱う新電力は、ほとんど生協系でしか見当たらない。首都圏で先行しているのは、生活クラブとパルシステムの2生協。組合員に野菜や果実、米、肉・卵、牛乳など共に、再エネ電気の共同購入を勧めている。脱原発、地球温暖化防止に向けた実践的な消費者運動との位置付けだ。だが、両生協とも子会社の新電力は採算ベースには乗っていない。供給規模が小さく、薄利多売で利益を得る電力事業では苦戦が続く。農山村側に産直契約をしてくれるところが少なく、今後も組合員への供給量は段階的にしか増やせない。他方、大手企業による地方での再エネ発電は増えているが、売電先は地域の大手電力会社が大半だ。目的が売電利益だけなら、あえて産直型にはしない。結局、地元で再エネ電気を扱う新電力が育たず、消費者が使いたくても購入先がない地域がかなりある。発電では売電先の選定が重要だ。国の再エネ電気の固定価格買取制度を使えば、どこに売っても同額で差がない。ならば、こだわりの消費者とつながる新電力に売る産直型の方が、お互いの顔が見える関係を築ける。地方での購入可能地域の拡大にも役立つ。わが国の2015年度の再エネ発電は電力全体の14%にすぎないが、ここ数年で増加。政府は地球温暖化防止の国際約束として30年度には22~24%にまで高める。農山村での発電は地域主導が望ましい。そのための農山漁村再エネ法施行から3年になるが、実施への基本計画作成は昨年末で29市町村にとどまる。環境先進国ドイツのように、安全・クリーンの価値を認め合う産直連携を広げながら、再エネ発電を増やしたい。


PS(2017年4月27日追加):鹿児島県の川内原発も、過疎地にあるため原発適地とされたよい例だろうが、原発事故時には「風下になった地域では農地が汚染され、長期にわたって農作物が汚染される」「汚染水で付近の海が汚染されて水産業ができなくなる」「汚染範囲は原発の周囲に留まらない」「大地震・津波・大規模な火山噴火が発生する可能性もある」などは考慮されておらず、*7-1のような専門委員会のご都合主義の安全宣言も信頼に値しないことは証明済である。そのため、*7-2のように、少なくとも30キロ圏内の市町村の意見は聞くべきだ。
 さらに、私は、対馬市などの日本海側の関連地域が、韓国の裁判所に提訴することによって、韓国釜山地区にある古里原発等の危険性を問えば、韓国内でも原発の危険性に関する意識が上がるのではないかと考える。

*7-1:http://qbiz.jp/article/107269/1/ (西日本新聞 2017年4月27日) 川内2号機「問題なし」 鹿児島県専門委
 鹿児島県は26日、九州電力川内原発(同県薩摩川内市)の安全性などを議論する専門委員会の本年度第1回会合を開いた。九電が2号機で実施した特別点検と定期検査の結果、特に問題なかったと報告。委員から指摘が出ていた、ゆっくり繰り返す長い揺れ「長周期地震動」についても「影響は及ばない」と回答した。会合後、座長の宮町宏樹鹿児島大大学院教授は「1、2号機の装置は同じ。5月に予定する次回会合で1号機と同様に問題ないと了承する」との見通しを示した。専門委は次回に意見を取りまとめて三反園訓(みたぞの・さとし)知事に提出し、これを基に知事が2号機の稼働の是非を判断するとみられる。2号機は既に定期検査を終え、3月24日に営業運転に復帰している。

*7-2:http://qbiz.jp/article/108270/1/ (西日本新聞 2017年4月25日) 「再稼働、長崎の声黙殺か」 30キロ圏内、住民 憤りと落胆と 玄海原発 佐賀知事同意
 佐賀県の山口祥義知事が玄海原発(同県玄海町)再稼働への同意を表明した24日、原発30キロ圏内にある長崎県内の住民からは「長崎の声は黙殺か」などと憤りや落胆の声が上がった。原発から8キロに位置する松浦市鷹島町にある新松浦漁協の志水正信組合長(69)は「鷹島では住民説明会が1度あっただけ。漁業者として再稼働同意は残念で許し難い。反対の意思を伝える海上デモの準備を進める」と怒りの声。一方、同市議会の高橋勝幸議長は「佐賀県知事は国策を重く受け止めたのだろう。それぞれの立場がある」と述べるにとどめた。30キロ圏内に含まれる平戸市田平町の森文明さん(64)は「国の政策が上意下達され、地方はないがしろにされる政治状況はいかがなものか」と苦言。同市大久保町の障害者支援施設「平戸祐生園」の佐藤慎一郎園長は「国は再稼働を急がず、万一の場合の補償や支援も含め、30キロ圏内の住民に時間をかけて説明してほしい」。同市議会の辻賢治議長は「市民の安全、安心を考えれば、実効性のある避難計画の確立が国の関与で万全なものにならない限り、議会として反対の立場は変わらない」と話した。壱岐市郷ノ浦町の特別養護老人ホーム「光の苑」の武原光志施設長(66)は「入所者が60人いる。再稼働するのであれば避難先などの環境を整えてほしい」と曇った表情。同市で反対活動をしている「玄海原発再稼働に反対する市民の会」の中山忠治会長(69)は「同意の判断は残念。署名活動は4月で終わるが、脱原発を目指し、今後も反対運動を続ける」と強調した。県内では30キロ圏内の松浦、平戸、壱岐、佐世保の4市が連携し、避難計画などへの国・九電の関与を県を通して求めている。中村法道県知事は「佐賀県知事は総合的に判断されたと認識している。関係自治体と連携し、諸課題の解決に努めたい」とするコメントを発表。松浦市の友広郁洋市長は「大型連休明けにも県と4市で協議の場を設けることになった」と話した。
●壱岐市議会も再稼働反対
 壱岐市議会は24日の本会議で、九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働に反対する意見書案を全会一致で可決した。原発から30キロ圏内にある長崎県内の市議会では平戸、松浦両市が既に可決している。意見書では「県は住民説明会で再稼働への理解を求めているが、市民からは安全性や避難への不安をぬぐえないなどの声が相次いでる」「市は30キロ圏内地域の中では最も人口が多い離島で、事故が発生すれば壊滅的な打撃を受ける。離島からの避難は船舶が主で、全島民が避難するには5日半かかる」などと指摘。その上で「国の責任で、原発の安全性検証の手段や実効性ある避難計画などが確立されることがなければ、市民の安全を守ることができないと判断し、市民の理解が得られない限り、玄海原発再稼働に反対する」などとしている。


PS(2017年4月28、30日追加): 「教育無償化のために憲法改正が必要」とする意見があるが、日本国憲法で規定されているのは、*9-1の「第23条:学問の自由」「第26条:教育を受ける権利、義務教育の無償」であるため、3歳~18歳を義務教育と法律に定めれば、憲法を変更しなくても幼児教育から中等教育までの無償化を憲法で規定できる。これにより、16年(現在なら4年制大学まで卒業できる期間)かけて幼児教育から中等教育までを無償で行うため、親の経済力にかかわらず、子は必要な教育を受けることができるようになる。また、3歳くらいの早い時期から始めた方がよい科目も始められ、全体としては充実した内容を、しっかり教育することができる。そして、教育は、国にとっては投資であるため、一般財源からその費用を出すべきだ。
 なお、*9-2のように、教育改革よりも憲法の変更を目的として「高等教育も無償化すべき」と主張する人もいるが、高等教育を受ける必要があるか否かは職業によって異なり、初等・中等教育を充実していれば教養や見識のある市民を育てることができる。そのため、高等教育は、①公立大学の授業料を月額1万円程度まで下げる ②公立大学の入学金も10万円程度まで下げる ③高等教育で学んでもらいたい学生には、性別や国籍を問わず生活費も賄える奨学金を渡す ④安価で質の良い学生寮を整備する などの政策の方が、教育の機会均等や平等には憲法変更より有効だと考える。そして、奨学金は、国や地方自治体だけでなく、高等教育を受けた人材を活用する企業やその大学の卒業生などが作って給付対象者を選別してもよいだろう。

*9-1:http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM (日本国憲法 関連個所抜粋) 
第23条 学問の自由は、これを保障する。
第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける
     権利を有する。
   2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせ
     る義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

*9-2:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170318-00081574-playboyz-pol (Yahoo:週プレNEWS 2017/3/18) 「高等教育無償化」は警戒すべき! 安倍首相が目論む“憲法9条改正”への布石
 安倍首相が次期衆院選を2018年秋以降に先送りする検討を始めたという。その思惑はどこにあるのか?『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、これは安倍首相の“憲法9条改正へのシナリオ”だと警戒する。
* * *
 次期衆院選について、「首相が任期満了ギリギリの2018年秋以降に先送りする検討を始めた」と、新聞各紙が伝えている。次期衆院選はこれまで、今年の秋と予測する声が大半だった。それをさらに1年も先送りにする。これが本当なら安倍首相の思惑はどこにあるのだろうか? その答えを知るカギのひとつが3月5日の自民党大会にあった。この冒頭のあいさつで、首相はこう力説したという。「憲法改正に向け、具体的な議論をリードする。それが自民党の歴史的使命だ」。昨年の党大会では、安倍首相は改憲についてひと言も触れていない。その時と比べると、大きな変化だ。現在、自民は衆参で改正発議に必要な3分の2の議席を持っている。おそらく、首相はその議席数をキープできる来年末までに、憲法改正をやり遂げてしまおうと腹を固めたのだ。ただし、首相が狙う9条改正は容易ではない。平和憲法は広く国民の間に根づいており、そのシンボルである9条の改正には極めて強い抵抗が予想される。そこで首相が新たに持ち出そうとしている改憲項目がある。「教育無償化」だ。憲法26条では、「義務教育は無償」と書かれているが、これを受けて実際に行なわれているのは小・中学校までの無償化である。本来は、今すぐにでも義務教育の範囲を拡大して高校の無償化を実施すればよい。しかし、その前に、憲法の条文を改正して、高校まで入ることを明文化しようというのだ。教育無償化を高等教育にまで拡大するため、憲法改正したいと提案されて、表立って反対できる人は少ないだろう。望めばだれでも国の負担で高等教育を受けられる制度が憲法で保障されることは、良いに決まっている。だが、注目すべきは憲法改正による教育無償化を最も熱心に主張しているのが、「日本維新の会」ということだ。安倍・自民が憲法改正の最初のメニューに教育無償化を打ち出すということは、維新の政策を受け入れたことを意味する。そこに首相の計算が透けて見える。まずは来年の秋までに26条の改憲を実現させることで、教育無償化の言いだしっぺの維新に花を持たせる。国民の憲法改正アレルギーが払拭されるとともに、当然、維新の評価・支持率も高まるだろう。その上で自民、維新で憲法改正の連合軍を作り、次期衆院選を戦う。次の選挙で自民は30前後議席を減らすとの選挙分析があるものの、そのマイナス分を維新が他の政党に競り勝って確保してくれれば、全体としては改正の発議に必要な衆参3分の2の勢力を維持できる。来年9月には首相は3期目の党総裁選に勝利して、21年9月までの長期政権運営に乗り出しているはずだ。衆院選で維新とともに3分の2を取れば、いよいよ、本丸の9条改憲への道筋がはっきり見えてくる。このシナリオに死角があるとすれば、小物感の強い松井一郎府知事の下で維新の党勢がじり貧になっていることだろう。しかし、来年秋までに橋下氏が政界復帰するという観測がここに来て急速に高まっている。維新関係者の希望的観測かもしれないが、橋下氏が登場すれば、維新フィーバー再来も夢ではない。教育費をタダにする――国民が歓迎しそうな改憲メニューを“9条改正”の布石にしようと目論む安倍・自民。警戒を怠ってはならない。
●古賀茂明(こが・しげあき)
 1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して2011年に退官。近著に『国家の暴走』(角川oneテーマ21)。インターネットサイト『Synapse』にて「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中


PS(2017.5.4追加): 100%の人が高等教育を受けるわけではないため、高等教育の無償化はむしろ不公平を招く。また、義務でない場合の無償化は対象者の意思決定に誤った影響を与えるため、サービスを利用する人に少しは負担させる形式の方がよく、これは、誰が対象であれ医療費の無料化も同じである。さらに、憲法をいじる必要のない教育無償化をだしにして、自民党憲法改正草案のような非民主国家に逆戻りさせる憲法改悪が行われるきっかけにされるのは大きな問題だ。首相は「2020年を新しい憲法が施行される年にして、日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだ」と言っておられるが、①どういう新しい国に生まれ変わるために ②現行憲法のどこが不備だから ③どのように変えたいのか を具体的に示すべきである。そうすれば、その夢の適切性や意図どおりになるか否かについて、次のディスカッションができるのだが、「憲法をよく読んだことはないが、(敗戦後に押し付けられた憲法だから)現行憲法を変更すること自体が夢」で、説明は国民を説得するための手段にすぎないというのは論外なのだ。

  
     2016.8.12東京新聞     昭和天皇の御名御璽      ポイント  

(図の説明:これまで「敗戦後に日本の国力を弱めるため米国によって押し付けられた」と説明されることが多かった日本国憲法9条は、実は幣原首相が提案したものだと米上院でマッカーサーが証言していた。その憲法には、①国民主権 ②平和主義と戦力不保持 ③基本的人権の尊重 が記載されており、昭和天皇が深く喜んで交付せしめるとしている)

*10:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170504&ng=DGKKZO16046710U7A500C1PE8000 (日経新聞 2017.5.4) 首相メッセージ要旨 高等教育無償化にも意欲
 安倍晋三首相(自民党総裁)のビデオメッセージの要旨は次の通り。憲法は国の未来、理想の姿を語るものだ。私たち国会議員はこの国の未来像について、憲法改正の発議案を国民に提示するための具体的な議論を始めなければならない時期にきている。例えば憲法9条。今日、災害救助を含め、命懸けで24時間365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く任務を果たしている自衛隊の姿に対し、国民の信頼は9割を超える。しかし、多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が今なお存在する。「自衛隊は違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれ」というのは、あまりにも無責任だ。私たちの世代のうちに、自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置づけ、「自衛隊が違憲かもしれない」などの議論が生まれる余地をなくすべきだ。もちろん、9条の平和主義の理念については未来に向けて、しっかりと堅持していかなければならない。「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という考え方は、国民的な議論に値するだろう。教育の問題。70年前、現行憲法の下で制度化された普通教育の無償化は、戦後の発展の大きな原動力となった。70年の時を経て、社会も経済も大きく変化した現在、子どもたちがそれぞれの夢を追いかけるためには、高等教育についても全ての国民に真に開かれたものとしなければならない。私はかねがね夏季オリンピック、パラリンピックが開催される2020年を未来を見据えながら日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだと申し上げてきた。20年を新しい憲法が施行される年にしたいと強く願っている。自民党総裁として憲法改正に向けた基本的な考え方を述べた。これを契機に国民的な議論が深まっていくことを切に願う。


PS(2017.5.20追加):政府は、子育てや教育にかかる負担を社会全体で分かち合うと称して、*11のように、教育無償化や待機児童対策の財源として年金等の保険料に上乗せして徴収する“こども保険”制度の検討に入るそうだが、教育財源の不足は教育に対する国家予算の優先順位が低すぎるのが問題なので、公的保険等で国民負担を増やして教育費用を賄おうという発想はセンスが悪すぎる。また、今後、子育て費用のかかるリスクがない人(既に自前で子育てを済んだ人やさまざまな理由で子どもを持っていない人)にまで保険料を支払わせるのは不公正である上、保険制度にも合わないため、もし“子ども保険”を作るとすれば、今後、子育てで費用がかかるリスクのある人で保険に入りたい人に限るべきだ。そのため、“子ども保険”を作るとすれば私的保険が適しており、その点は誰もがリスクを有する年金・医療・介護とは根本的に異なる。

*11:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170520&ng=DGKKZO16659010Q7A520C1MM8000 (日経新聞 2017.5.20) こども保険検討へ、教育向け新財源、税・拠出金と比較
 政府は、教育無償化や待機児童解消などをまかなう新たな財源として、年金などの保険料に上乗せして徴収する「こども保険」制度の検討に入る。税金や企業からの拠出金でまかなう案などと比較検討し、早ければ年内にも方向性を出す。少子高齢化が急速に進む中、子育てや教育にかかる負担を社会全体でどう分かち合うのか。財政論を超えて国民的な議論を呼びそうだ。政府は6月にまとめる経済財政運営の基本方針(骨太の方針)でアベノミクスの柱の一つとして教育や子育てといった人材投資の強化を盛り込む。財源として(1)税(2)拠出金(3)社会保険料――の3案を明示する。具体的な検討は今夏にも政府内に「人材投資会議」(仮称)を新設し、教育無償化の範囲などと併せて進める見通しだ。「こども保険」構想はもともとは自民党の小泉進次郎氏ら若手議員が小学校就学前の教育費の負担軽減策として打ち出したものだ。小泉氏らの提言によると、まずは社会保険料を勤労者、事業者とも0.1%ずつ上乗せして徴収。それによって得られる約3400億円で、児童手当を1人当たり月5000円増やすことができるとしている。さらに保険料の上乗せを0.5%まで増やせば、集まる財源は約1.7兆円。小学校入学前の子ども約600万人に児童手当を月2万5000円加算できるため、幼児教育・保育を実質的に無料にできる計算だ。最終的には上乗せ率を1.0%まで引き上げ、財源規模を3兆円規模に増やすことを想定する。「こども保険」の特徴は、現役世代で負担を共有し、将来世代へのツケの先送りを避けられることだ。並行して検討する税金でも消費税ならば国民全体から広く集められるが、すでに10%までの使い道は決まっている。社会保険は税金と異なり他の使途に使われることもなく、給付と負担の関係が明確で、国民の理解が得られやすいとの読みもある。政府が教育や子育て支援に必要な新しい財源の本格的な検討に入るのは、高齢化による社会保障の膨張が避けられない中で、新たな施策へ振り向ける財政的な余裕がなくなっていることがある。これまで日本の社会保障は高齢者優遇に偏っているとの声が強かった。自民党も選挙を意識して社会保障の削減には後ろ向きで、その分、子育てや教育への予算配分がおろそかにされてきた。「こども保険」の検討によって、社会保障の歳出抑制などの議論にも一石を投じる可能性がある。


PS(2017.5.27追加): *12のように、維新の党の提案を入れる形で自民党が進めようとしている高等教育無償化は、憲法9条変更のだしにすぎず、このような動機で憲法を変更すべきではない。また、日本国憲法は26条で義務教育の無償化をうたっているが、高等教育の無償化を禁じてはいないため、高等教育の無償化もやろうと思えばいつでもできる。そして、私は、国民全員を利する教育・社会保障を財源論とセットにして増税のだしに使うべきでもないと考えている。
 なお、どこまでが義務教育で、幼児教育・初等教育・中等教育・高等教育かは時代によって変わってよく、平成20年度で97%を超える生徒が進学している高校は、残る3%の進学できない生徒が人生で不利益を蒙らないためにも、義務教育にすべきだろう。
 そのため、私は、大学以降を高等教育とし、幼稚園から高校までを義務教育として無償化するのがよいと考える。また、大学の奨学金も、(子の方が未来に適合した考え方をする場合が多いのだが)親子で教育に関する考え方が一致するとは限らず、世帯収入が多いからといって100%の親が子の望む進学に金を出すとは限らないため、世帯収入とは関係なく学生全員を対象として渡すべきだと考える。そのよい例は、東大女子学生で、地方出身の女子生徒が東大に進学するのを周囲や社会に阻害されず、生活の心配なく受験できるように、東大女子同窓会が支払う女子学生への奨学金は合格前に内定し、東大が女子寮の便宜を図るようになっている。

*12:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0113953.html (北海道新聞 2017.5.27) 教育の無償化 改憲と切り離すべきだ
 安倍晋三首相が改憲の具体的項目として、9条への自衛隊明記とともに、高等教育までの無償化を挙げた。憲法は義務教育を無償と定めている。これを大学など高等教育まで拡大するよう、憲法に書き込むとの提案だ。貧富の差に関係なく、誰でも大学で学べる社会の実現に異論はない。だが、無償化は改憲しなくても可能だ。事実、民主党政権時代には高校が無償化されている。首相は誰もが賛同する教育無償化とセットにすることで、反対が根強い9条改正に踏み込もうとしているかのようにも映る。無償化が必要と考えるなら、改憲論議と切り離して、すぐにでも取り組むべきである。憲法は26条で義務教育の無償化をうたっている。その対象拡大を禁じているわけではない。だからこそ、民主党政権下で高校無償化法が成立し、公立高校の授業料は免除、私立高校にも就学支援金が支給され、事実上無償化が実現した。これを、選挙目当ての「ばらまき」と批判したのは野党だった自民党だ。事実、政権交代後は所得制限を設け、制度を後退させた。にもかかわらず、突然の「変節」である。教育無償化については、日本維新の会も憲法による規定を求めている。9条改正という目的達成に向け、維新の協力を得るために無償化を「だし」にするような手法であるなら、到底認めがたい。経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本の国内総生産に占める教育機関への公的支出割合は、比較可能な33カ国中32位だ。教育費の多くを家庭が負担している。こうした実態が少子化の一因にもなっている。教育の無償化は喫緊の課題なのだ。幼児教育から高等教育まで無償にすると、年間4兆円以上が必要とされる。財源を巡っては教育国債発行や、社会保険料引き上げによるこども保険創設などが出ているが、いずれも決め手に欠ける。さらに、世帯収入に関係なく全員を対象とするのか、無償化の範囲は幼児教育だけか、高等教育まで含むのか―など、実現に向けては難問が山積みだ。解決には、国会が党派の壁を取り払って、活発な議論を展開することが欠かせない。無償化を本当に実現したいのであれば、対立点の少なくない憲法を絡めて提唱したところで、逆効果ではないか。

| 年金・社会保障::2013.8~2017.4 | 10:46 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.4.10 さまざまな分野のイノベーションとそれを可能にする教育・研究 (2017年4月12、13、14、15、16、17、19、21、23日追加)

      太陽電池        ミニ肝臓       新有田焼    宅急便   
                             2017.4.8   2017.4.5 
                             佐賀新聞    東京新聞

(図の説明:太陽電池は今一つデザインが悪かったが、外壁ユニットに組み込む型や薄膜型太陽電池も現れ、次第に建材の一部として使えるようになってきた。また、バイオテクノロジーではミニ肝臓ができ、再生医療が一歩進んだ。さらに、磁器は、素材を改良することによって複雑なデザインを表現しやすくなった。また、ヤマト運輸は、起業時は輸送におけるイノベーションの先駆者だったが、大企業となって従業員に「寄らば大樹の陰」という意識が出てきた時には、その企業は下り坂になりがちなため、気をつけるべきである)

(1)エネルギー
1)原発について 
 原発は、*1-1のように、東芝がウェスチングハウスの経営破綻を受け、インド・中国・英国の原発事業からも撤退を急いでいる。私は、他国の原発事業者が、フクイチ事故を受けて原発から撤退しようとしていた時に、その原発事業を高値で買収した日本企業は間が抜けており、撤退しようとしていた原発事業者は幸いだっただろうと推測する。

 それでも産経新聞は、2017年3月29日時点で、インドでの原発建設が白紙撤回となることを懸念していたり、「東芝が6割を出資している英子会社ニュージェネレーション株を売却したりすれば日英関係がぎくしゃくする可能性がある」などとしており、理科音痴が技術に鈍感で、とかく過去に戻したがる傾向があるのには呆れるほかない。

 このような中、*1-2のように、もんじゅは1兆円も投じながら殆ど稼働せずに破綻し、政府は昨年12月に廃炉を決めた。そのため、使用済核燃料を再利用するプルサーマル発電で出る使用済MOX燃料を処分する必要が出てきており、現在は原発の使用済核燃料プールに山ほど保管されているが、それは非常に危険であると同時に経済性もない。それでも佐賀県議会は、4月13日に「原発再稼働容認決議」を行うそうで、それは原発交付金が目的だが、これで事故が起これば、それこそ自己責任になるだろう。

2)電力・ガスの自由化
 *1-3のように、4月1日に家庭向けの都市ガス販売が自由化され、電力・ガスの自由化が完了する。これにより、地域の電力やガスの独占状態が和らいで競争が生じれば、これまでのように国民負担させて、エネルギー価格が産業や生活の足を引っ張ることはなくなるだろう。しかし、まだ制度はそこまで行ってはいない。
 
 私は、九電が進めているオール電化と再生可能エネルギーによる発電が定着すれば、海外にエネルギー関連の支払いをする必要がなくなるため、国民はずっと豊かになると考えている。

 また、「太陽光発電は・・・」と念仏のように同じことを言う人がいるが、*1-4のように、シャープは従来機に比べて容量が35%増の6・5キロワット時でありながらサイズをほぼ半分に抑えた蓄電池システムの新製品を発表し、「ゼロエネルギー住宅」への普及を期待しているそうだ。このほか、家庭用スマートメーターも投入するとのことだが、「ゼロエネルギー住宅」や「スマートメーター」は海外でも人気が出るだろう。特に、赤道に近い地域、日照時間の長い地域、戦争で破壊されて街の再生を要する地域でのゼロエネルギー住宅の普及や、高齢化した国でのスマートメーターを利用した見守りサービスは需要が高いと思われる。

(2)バイオテクノロジーと医療のイノベーション
 私が、1990年代の初め、夫に同伴してハンガリーのブダペストで開かれたヨーロッパ脊椎・脊髄病学会に出た時に注目された発表は、マウスの脊髄を一度切って再生させ、そのマウスが歩けるようになったというもので、この研究発表が終わった時には、そこにいた人の全員が立ち上がって(その研究者とマウスに)拍手した。何故なら、「脊髄や神経は再生しない」というのが医学の常識だったからである。

 あれから約25年、今ではヒトでそれができるかと言うと、*2-1のように、2017年2月10日、慶応大学の岡野教授らのグループが他人のiPS細胞を使って脊髄損傷を治療する臨床研究の計画を大学内の倫理委員会に申請した段階だ。しかし、他国では、本人の脂肪幹細胞を使って脊髄細胞を作って治したと言う人もいるし、ES細胞を使ったと言う人もあり、私は、いずれも可能性が大だと考えている。

 このほか、*2-2のように、ドナーを必要とする肝臓移植ではなく、iPS細胞からミニ肝臓を大量製造して肝不全のマウスに移植し、顕著な治療効果を発揮しているため、ヒトに応用できる日も近いだろう。

 また、*2-2、*2-3に書かれているように、複雑であるため造るのが難しいとされている膵臓や腎臓の製造も研究中だそうで、これが実用化されると、糖尿病で苦しみ続けたり、膨大な時間と費用を費やして人工透析を続けたりする必要がなくなるため、患者の福利が増すと同時に、医療費も節減される。

 このほか、*2-4のように、人間の臓器を動物の体内で作る方法も研究されているが、私は3Dプリンターができた現在では、動物の体を借りなくても、元に近い形のヒト臓器を作ることも可能だと考える。そのため、武器の開発よりも、このようなバイオテクノロジー製品の開発に予算をつけた方が、プリウスや自動運転車のように、世界でヒットして日本が株を上げることは間違いないだろう。

(3)中小企業とイノベーション
 それでは、伝統産業は古いままで、中小企業はイノベーションができないのかと言えば、決してそうではない。例えば、*3-1のように、有田焼では、佐賀県窯業技術センターが2014年度から3年がかりで開発して焼成時に縮まない陶土を開発し、薄さ、細さ、軽さを追求するデザイナー製品や収縮率の高い大型品が作れるようになる。これは、佐賀県を挙げて努力した結果だが、欲を言えば、強さや軽さも増してもらいたい。

 そして、*3-2のように、有田・伊万里の窯元・商社16社と気鋭のデザイナー16組が共同で手掛けた伝統と革新を融合させた有田焼は、世界28の国・地域で発行されているデザイン誌「エル・デコ」主催の「インターナショナル・デザインアワード」テーブルウェア部門で、世界的なデザイン賞を獲得したそうだ。新ブランドは2016年10月に販売を始め、現在は国内40社、海外は欧州を中心に10カ国で取引をしているそうで、これも県を挙げての推進の成果である。これは、他の伝統産業や中小企業にも応用できるだろう。

(4)運輸のイノベーション
1)JR北海道とJR九州の経営比較
 北海道旅客鉄道(株)《通称:JR北海道》は、1987年(昭和62年)4月1日に国鉄から鉄道事業を引き継いだ旅客鉄道会社の一つで、鉄道とバス事業を承継し、旅客鉄道株式会社と日本貨物鉄道株式会社に関する法律(JR会社法)による特殊会社で、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構を介して日本国政府がすべての株式を所有している。

 そして、*4-1のように、30年でJR各社の明暗がはっきりし、JR北海道は、地域輸送を含めた基幹的交通機関として鉄道をどの程度必要としているかの役割を再検証し、鉄道をただ残しているだけでは無意味であるため、赤字路線は切るしかないとしているが、こういう解決策しか思い浮かばないのが国営の悪い点なのだ。

 一方、首都圏から同じくらいの遠距離にあるJR九州は、1987年の旧国鉄の分割・民営化によって発足してから29年で、東証1部に新規上場を果たした。もちろん、全体としては黒字だ。

 この結果の違いの原因は、JR北海道が列車やバスを走らせることしか考えていないのに対して、JR九州は、鉄道やそれぞれの街の一等地を所有している強みを活かして周辺不動産の開発を行い、不動産など非鉄道事業の売上高が全体の5割超を占めることである。そして、九州の食や観光を発信する観光列車も走らせており、JR九州の青柳社長が語る成長戦略は「中核である鉄道事業とそこから相乗効果を生み出す事業を両輪として、さらなる成長を目指していくこと」だが、これは北海道でも同じだろう。

 つまり、速やかに需要を把握し、さらに需要を発掘していくことが、国ではなく民が経営することの利点なのである。このよい例は、*4-5のように、ヤマト運輸ができてから、私たちは鉄道のチッキ(送る人は駅まで持って行き、受け取る人は駅まで取りに行かなければならなかった)を使わずに宅配便を使うようになり、さらに新しいサービスが増えて、その便利さからヤマトの宅配便は最高18・7億個となり、送る荷物が増えた(運輸部門のパイが大きくなった)ことである。これには、ITの普及や高齢化社会でインターネット通信販売のニーズが増えたことも影響している。

 そのため、JR貨物も、不便さを顧客に強いるのではなく、宅配便に劣らぬ便利さを持つようにすれば、安価に大量輸送できるため、客が増えると考えられる。

2)ドライバー不足に対するヤマト運輸の解決策は正しいか?
 ヤマト運輸が、*4-3、*4-4のように、宅配便の扱い量を抑えることを検討するそうで、これが、ドライバー不足とネット通販の拡大でドライバーの長時間労働に繋がっていることの解決策とのことである。

 しかし、この解決策は、利益獲得機会を労働力不足というネックで放棄しており、駅やロッカーで預かるのもサービスの低下に繋がる。その一方で、通販で買うものの中には軽いものも多いため、女性配達員を増やしたり、OBの高齢者を再雇用したりすればよい思われる。

 また、時間指定は現在ほど細かくしなくてもよいが、「配達して欲しいニーズの高い時間帯」があり、職場なら9時~17時、自宅なら18時以降か休日が多い筈だ。そのため、配達して欲しいニーズの高い時間帯に絞って荷物を受け付ければ無駄足が減り、生産性が上がると考える。

 なお、お茶・水・ジュースなどのように、重たくて買って帰るのが大変なため、アマゾン・アスクル・楽天などで購入して配達してもらうものもある。これを運ぶのは男性の方がよいかも知れないが、一人でいる家に行っても安全が確実な人なら、外国人でもかまわないだろう。

(5)イノベーション可能な教育・研究
 このようなイノベーションを起こすには、何も知らない人が想像で行うのではなく、知識を持った人が、国内だけでなく世界で起こる刺激に正しく反応して、正解を導くことができる創造力が必要なのである。

 そのため、*5-1のように、小学校から英語を学び、世界の情報を自在に手に入れることができるようになることは重要だ。また、最近では、世界の学会の会報や新聞・雑誌は世界共通語である英語で開示されているため、それを読めれば高校生でも大学生でも、簡単に最先端の情報を手に入れることができる。この点で、日本人は、インド・シンガポール・フィリピンなどの人よりも不利になっている。
 
 また、私の経験では、日本では日本語での教育が徹底しているため、専門用語の英語は別に覚えなければならない。そのため、最初に学ぶ時に日本語と英語の両方を教えるようにするとか、課目によっては英語で授業するようにした方が、苦労少なく世界で通用する人になれるのではないかと考える。

 さらに、*5-2のように、九州産業大学が、九州の伝統工芸品の販売戦略などを調査研究する「伝統みらい研究センター」を4月1日に設立したそうだが、価値ある伝統工芸を現在でも使い勝手の良い製品にするために、これは、自前での研究開発が難しい中小企業が多い業種でとりわけ重要なことである。

(エネルギー)
*1-1:http://www.sankei.com/economy/news/170329/ecn1703290053-n1.html
(産経新聞 2017.3.29) インドや英国の撤退も急ぐ 原発輸出に打撃
 東芝は巨額損失を出し続けてきた米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)の経営破綻を受け、米国のほかインドや中国、英国で手掛ける原発事業からの撤退作業を急ぐ。保有するWHと英原発子会社の株式を早期に売却できるかが今後の焦点だ。インドでは、WHが計6基の原発を建設することで昨年6月に米国とインドの両政府が合意した。今年6月までに契約する方針だが、白紙撤回となる懸念がある。昨年11月にインドと原子力協定を結び、原発輸出をもくろんでいた日本政府も打撃を受けそうだ。東芝は、6割を出資する英子会社ニュージェネレーションを通じて英北西部ムーアサイドに原発3基を建設する計画だったが、WH問題を踏まえて方針を転換し、英子会社株も売却する考えだ。ただ、東芝が手を引けば日英関係がぎくしゃくする恐れもある。中国ではWHが三門原発(浙江省)と海陽原発(山東省)で原子炉を2基ずつ製造している。最も早い稼働予定は三門の1号機だが、当初計画から約3年遅れている。東芝はWH株売却により距離を置く考えだ。

*1-2:http://qbiz.jp/article/107011/1/ (西日本新聞 2017年4月6日) もんじゅ「破綻」後議論なく プルサーマル、課題山積 玄海再稼働13日「決議」へ
 佐賀県議会が13日にも「容認」を決議し、再稼働に向けた最終局面に入る九州電力玄海原発3、4号機。このうち3号機は、使用済み核燃料を再利用する国内初のプルサーマル発電だ。同発電と高速増殖原型炉は国が掲げる核燃料サイクルの2本柱。高速増殖原型炉もんじゅの廃炉が決まり、プルサーマル発電を巡る環境も激変している。3号機の再稼働に向けた議論に核燃料サイクルの「破綻」を受けた視点は抜け落ちている。もんじゅは原発の使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムと、ウランの混合酸化物(MOX)燃料を使い、発電しながら消費した以上の燃料を生み出す「夢の原子炉」。約1兆円を投じながら、トラブル続きでほとんど稼働しないまま政府は昨年12月に廃炉を決めた。一方、プルサーマル発電はMOX燃料を使うところまでは同じだが、使用済みMOX燃料は処分する必要がある。もともと高速増殖炉実用化までの「つなぎ」の位置付けだった。核兵器にも転用できるプルトニウムを日本は48トン保有し、国際社会から厳しい目が注がれる。もんじゅの廃炉で、プルトニウムを消費できるのは事実上プルサーマル発電のみとなった。プルサーマル発電は核燃料サイクルの「つなぎ」から主役に躍り出たと言える。
   §    §
 プルサーマル発電には固有の課題も多い。使用済みMOX燃料は、普通の使用済み核燃料に比べ発熱量が大きいが、国は処分方法をいまだに示していない。当面、原発の使用済み燃料プールに保管するしかない。経済性も疑問視され、資源エネルギー庁の試算によると、1キロワット時当たりのコストは普通の原発に比べ1・5倍。燃料となるプルトニウムは半減期が長い上、毒性が強く体内に取り込まれると発がんの危険性も高いため不安視する声も多い。導入への同意を検討する際には県も安全性を問題視し、2005年に公開討論会を実施。その後、九電による「やらせ問題」が発覚した経緯がある。再稼働への意見を聞く県の第三者委員会の柳瀬映二委員(62)は「プルサーマルは危険性が大きい。公開討論会でやらせがあっただけに不安視する県民の声をしっかり受け止めるべきだが、委員会で議論は深まらなかった」と話す。徳光清孝県議は「使用済みMOX燃料は地元で保管し続けないといけない。県は先行きの議論に絡み、国と協議するべきだ」と求めた。ほぼ全域が玄海原発から30キロ圏内にある同県伊万里市の塚部芳和市長(67)は「プルサーマルの議論はあいまいになったままだ。国策といえど、県に降りかかっている問題であり、あらためて是非を検証するべきだ」と提言した。
*プルサーマル発電 一般の原発で使った使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを分離し、ウランと混ぜたMOX燃料を使う。2009年に玄海原発3号機で国内初の営業運転が始まった。福島第1原発事故前、電気事業連合会は15年度までに全国16〜18基で導入する計画だったが、現在稼働しているのは四国電力伊方原発3号機のみ。

*1-3:http://qbiz.jp/article/106532/1/ (西日本新聞 2017年3月30日) 西部ガスVS九電 対決激化 4月1日 ガス販売自由化スタート
 4月1日に家庭向けの都市ガス販売が自由化される。福岡、北九州の両都市圏に新規参入する九州電力が、ガスと電気のお得なセット割を打ち出すと、西部ガスも対抗値下げに踏み切るなど、早くも対決が過熱している。両社の料金とサービスを比較し、専門家に選択のポイントを聞いた。両社はお互いの現行料金からの割引率を公表しているが、それぞれの新料金プランは比較していない。西日本新聞は4人家族の新料金プランを比べるため、ガスと電気のセット料金の試算を両社に求めた。条件は電気使用量は月420キロワット時(契約容量40アンペア)、ガスは月41立方メートルと設定した。現在のガス料金は、西部ガスの一般契約が月1万301円。電気は、九州電力の従量電灯Bが月1万1280円で、光熱費は月額合計2万1581円となる。新料金メニューでは、西部ガスのガスと電気のセット割を契約した場合、ガス9757円、電気1万1082円で、計2万839円となる。一方、九電のセット割は、ガス9401円、電気1万1140円で、計2万541円。九電が1・43%、298円安い計算になった。年間では、3576円の差となる。ただセット割以外にも、西部ガスにはファンヒーターや床暖房など各家庭で使うガス機器によってお得になるプランが複数ある。九電は、電気代が大幅に安くなるオール電化を顧客に優先的に勧めている。また両社は、暮らし関連の支援サービスを有料で提供している。西部ガスの場合はセット割などの新料金メニューに契約すると、ガス機器が故障した場合の出張料と工賃が無料になる。水漏れやガラス割れ、鍵のトラブルの応急措置も2年間無料。いずれも本来は月324円なので、合わせて月648円お得になる。西部ガスは通常、すべての契約世帯を平均した月23立方メートルで試算。月41立方メートルが4人家族のモデルとは言えないと説明している。
●使用量把握し、自分に合う契約を
 料金プランを選ぶポイントについて、家庭の光熱費や省エネに詳しい消費生活アドバイザー・環境カウンセラーの林真実さんに聞いた。
     ◇   ◇
 電気とガスのセット割が始まる。西部ガスもかなり安くしてきたが、料金面では九電に分があるように見える。ただ、両社が出している料金比較は、あくまで平均的なモデルケースだ。実際は、その人その人で使い方が違う。自分自身の使い方を振り返り、それに合わせて、どちらがお得かを考えてほしい。まず過去の使用量を見てほしい。消費者の中には金額しか見ておらず、使用量を知らない人が多い。時間帯や季節での使用量の違い、機器のエネルギー消費量などを調べてほしい。効率が良く、無駄がないか。見える化することだ。例えば照明をLEDに変えるなど、料金プランより前に安くする方法がある。その上で料金比較サイトでシミュレーションするのがいい。企業独自のサイトもある。さらに、付加サービスもポイントになる。西部ガスの「住まいのトラブルかけつけサービス」2年間無料は、九電にはない。会社の社会的貢献や環境配慮など、社会的な姿勢も重要だ。経営方針、電源構成、ボランティアなど、消費者が勉強してほしい。好き嫌いもあるだろう。消費者が、ガスを購入する企業を選べるようになったのは画期的だ。今までは殿様商売的なところもあったが、消費者を向いてきたのはメリットといえる。ただ、セット割などが出てくる分、非常に複雑になり、自己責任の要素も生まれている。しょっちゅう契約を見直し、変えてもいい。

*1-4:http://qbiz.jp/article/107092/1/ (西日本新聞 2017年4月6日) シャープ蓄電池の販売2倍へ 住宅用新製品でシェア拡大狙う
 シャープは6日、2017年度の住宅用蓄電池の販売台数を1万台に伸ばし、16年度から倍増させることを目指すと明らかにした。エネルギー消費量が実質的にゼロになる省エネ住宅「ゼロエネルギー住宅」の普及が追い風になると期待し、新製品を投入してシェア拡大を狙う。シャープは同日、従来機に比べ容量が35%増の6・5キロワット時でありながらサイズをほぼ半分に抑えた蓄電池システムの新製品を発表。場所を取らずクローゼットなどにも設置できるのが売りだ。変換効率を高めた太陽光パネルや家庭のエネルギー管理システム(HEMS)の新製品も投入する。製品を組み合わせて販売して稼ぐ戦略で、担当者は「ゼロエネルギー住宅に対する国などの補助金も一つの起爆剤になる」と話す。ただ、再生可能エネルギーの買い取り価格下落の影響で太陽光パネルの需要は低調だ。割高で原材料を調達したことも響き、シャープの太陽光事業は赤字が続いている。パナソニックや京セラなどとの競争も激しく、計画通り売り上げが拡大するか不透明な面もある。

<医療のイノベーションとバイオテクノロジー>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK2B4STGK2BULBJ008.html (朝日新聞 2017年2月10日) iPSで脊髄損傷治療、臨床研究を申請 慶応大
 慶応大学の岡野栄之(ひでゆき)教授らのグループは10日、他人のiPS細胞を使って脊髄(せきずい)損傷を治療する臨床研究の計画を大学内の倫理委員会に申請した。2018年前半の手術を目指す。計画では、京都大学iPS細胞研究所の「iPS細胞ストック」から供給される細胞を、神経細胞になる「神経前駆細胞」に変化させ、脊髄の損傷部分に注入する。交通事故などで脊髄損傷を起こしてから2~4週間の患者が対象で、18歳以上の7人に移植し、安全性やまひした手足などを動かす機能の回復具合を調べる。iPS細胞ストックでは、拒絶反応が起きにくい特殊な免疫の型を持つ提供者の血液からiPS細胞をつくり、備蓄している。今後、学内の倫理委員会と他の委員会での技術的な審査を経て、厚生労働省で計画が了承されれば、来年前半にも移植を実施したいという。まずは損傷から時間があまり経っていない患者を対象にするが、将来的には慢性期の患者にも広げたい考えだ。グループは、脊髄損傷を起こした小型のサルのマーモセットにヒトiPS細胞からつくった細胞を移植し、歩けるまでに回復させることに成功している。脊髄損傷は、国内に現在約20万人の患者がおり、毎年新たに5千人がなっているとみられる。リハビリ以外に確立された治療法はなく、岡野教授は「たくさんの患者が待っている。良い細胞を使って、治療につなげられるよう研究をすすめたい」と話す。

*2-2:http://toyokeizai.net/articles/-/59601 (東洋経済 2015年2月3日)移植医療に朗報!「臓器製造システム」の実力、"ミニ肝臓"で肝不全患者を治療へ
 「谷口君、肝臓を作れませんか?」。1989年12月、研修医1年目だった横浜市立大学の谷口英樹教授は、恩師で筑波大学の教授だった故・岩崎洋治氏からこう尋ねられた。岩崎氏は1984年に日本初の脳死患者からの膵・腎同時移植を行い、殺人罪で告訴されるなど波乱の中で移植医療を開拓した臓器移植の第一人者。谷口教授は岩崎氏を間近で見ながら、自ら外科医として肝臓移植などを執刀してきた。「ドナー臓器の不足を抜本的に解決しなくては移植医療の未来はない」――冒頭の問いかけに込められた岩崎氏の強い危機意識を、谷口教授も共有していた。
●iPS細胞からミニ肝臓を大量製造
 その日から25年余り経った今、肝臓をはじめとする臓器の作成は実現可能な夢になりつつある。横浜市立大学の先端医科学研究センター内では、世界唯一の「ヒト臓器製造システム」の構築が進む。全自動ではなく、人の作業をロボットが支援する「トヨタ方式」を採用してiPS細胞(人工多能性幹細胞)から直径5ミリメートルほどの“ミニ肝臓”を大量に作り、将来的に肝不全の治療に役立てる予定だ。谷口教授の研究グループは臓器作りで世界をリードしてきた。2013年にはiPS細胞からの血管構造を持つ人の肝臓の作成に成功。世界初の小さな立体臓器が科学界に与えた衝撃は計り知れない。それまで、世界の研究者はiPS細胞から「肝細胞」を作ることに固執していた。細胞の分化の分子生物学的なメカニズムを基に、iPS細胞にいろいろなタンパク質を段階的に振りかけて肝細胞を作る。それを患者に注射して病気を治そうという考え方だ。だがこの方法には、最終的に作られた細胞の品質がとても低く、大量生産が難しいという難点があった。治療法としても、臓器の機能を失った患者に対し、臓器移植よりも良い結果が得られるのかは不明だった。「外科医としての経験から、細胞を注射することで本当に患者を治せるのか疑問を抱いていた。一方、臓器移植は起死回生の手段であり、瀕死の患者が翌日には回復する高い治療効果を目の当たりにしてきた」(谷口教授)。そこで谷口教授らは発想を転換。「肝細胞」ではなく「肝臓」を作り出すことを目標に据え、胎児内で肝臓が作られるときに起こる細胞同士の相互作用の再現を試みた。iPS細胞から肝細胞になる手前の前駆細胞を作り、そこへ血管のもととなる内皮細胞、接着剤の役割を担う間葉系細胞の2種類の細胞を混ぜて培養。すると、すべての細胞が48~72時間でボール状に集まってきた。これが網目状の血管構造を持つミニ肝臓だ。ミニ肝臓をマウスに移植すると、血液が流れ込み、マウス体内に人に特有なタンパク質が分泌され、人の肝臓でしか代謝されない薬物の代謝産物が産生。ミニ肝臓が人の肝臓の機能を持っていることが示された。また、肝不全のマウスに移植すると、30日後の生存率が何もしなかったマウスの約3割に比べて約9割に向上。ミニ肝臓はマウスにおいて顕著な治療効果を発揮した。
●膵臓や腎臓の製造も研究中
 人での臨床研究は、子どもの肝臓病を対象として2019年をメドに開始する。ミニ肝臓が大量に必要になるため、クラレと量産技術を共同開発中。ほかの企業とも連携して「ヒト臓器製造システム」の整備を進め、臨床研究の準備を行っている。ミニ肝臓の次のフロンティアの一つは、肝臓以外のミニ臓器への展開だ。現実的なターゲットとして、血糖値を下げるホルモン、インスリンを分泌する膵臓や、腎臓の研究が進められている。もう一つは、ミニでない丸ごとの臓器を作ること。線維化して細胞が生着するスペースのない肝硬変のような病気や、全体の構造があって初めて機能を持つ心臓、子宮、肺等の病気などは、ミニ臓器では治療できず、丸ごとの臓器の移植が必要となることが多い。この分野は米国のハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などに莫大な研究資金が投下されており、世界的にも注目が集まる。急ピッチで進む臓器研究だが、再生医療の中で、今まさに人への応用が進んでいるのは細胞が主役の方法だ。昨秋には理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーらによって目の難病である加齢黄斑変性の患者にiPS細胞から作った網膜の細胞の世界初の移植手術が行われた。今後もパーキンソン病や心不全の患者にiPS細胞から分化させた細胞を移植する臨床研究が計画されている。立体臓器が活躍するのはそのさらに先の段階だ。谷口教授は「複雑な臓器形成は再生医療の中では最も困難なテーマの一つ。だが、重い臓器不全の患者には臓器移植以外に既存の治療法がなく、非常に強い医療ニーズがある」と強調する。肝臓移植の場合、ドナー臓器の待機中に死亡する患者は世界で年間2万5000人超。「究極の医療」として、臓器作りにかかる期待は大きい。

*2-3:http://mainichi.jp/articles/20170126/ddm/041/040/155000c (毎日新聞 2017年1月26日) 臓器移植 世界初 ラットで膵臓作り、糖尿病マウスに 異種で作製、治療成功 東大医科研チーム
 マウスのiPS細胞(人工多能性幹細胞)などから膵臓(すいぞう)をラットの体内で作り、その組織を糖尿病のマウスに移植して治療に成功したと、東京大医科学研究所の中内啓光教授らの研究チームが25日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。異なる種の動物の体内で作った臓器を移植し、病気の治療効果を確認したのは世界初という。ラットはマウスより大きく、種が異なる。ブタなどの体内でヒトの臓器を作って移植する再生医療の実現につながる成果で、山口智之・東大医科研特任准教授(幹細胞生物学)は「今後は、よりヒトに近いサルの細胞で臓器を作る研究に進みたい」と話した。チームは、遺伝子操作で膵臓ができないようにしたラットの受精卵に、マウスのiPS細胞やES細胞(胚性幹細胞)を注入し、ラットの子宮に戻した。誕生したラットの膵臓はマウスのもので、一般的なマウスの膵臓の10倍ほどの大きさに育った。育った膵臓から、血糖値を下げるインスリンなどを分泌する膵島(すいとう)を取り出し、糖尿病を発症させたマウスに移植したところ、20日後には血糖値が正常になり、1年後でもその状態が維持された。がん化などの異常は確認されていないという。  ラットの体内で育った膵島を調べたところ、血管にラットとマウスの細胞が混じっていた。しかし、マウスに膵島を移植して約1年後に移植部位を調べると、ラット由来の細胞はなくなっていた。

*2-4:http://digital.asahi.com/articles/ASK2K74SFK2KULBJ01Q.html (朝日新聞 2017年2月23日) 人間の臓器、動物から作る 米で研究先行、日本は禁止
 iPS細胞やES細胞を使い、動物の体内でヒトの臓器を作る研究が進んでいる。1月には米国のグループがヒトの細胞が混じったブタの胎児の作製に成功した。日本では現在、このような研究が指針で禁じられており、改定に向けた議論が続いている。
■ブタ受精卵にiPS細胞
 米ソーク研究所(カリフォルニア州)のチームは1月、ヒトのiPS細胞をブタの受精卵に入れ、ヒトの細胞が混じったキメラ状態の胎児を作製したと発表した。米科学誌セルに掲載された論文によると、ブタの受精卵を、分裂が進んだ「胚盤胞(はいばんほう)」の状態まで成長させ、iPS細胞を注入。子宮に戻した1466個のうち、186個が胎児に成長した。妊娠3~4週間後に調べると、67個の筋肉などで、ヒトの細胞が混じっているのが確認できた。心臓や肝臓、膵臓(すいぞう)、腎臓などの複雑な臓器は、iPS細胞などから直接作ることが難しい。そのため動物の体内を利用して作る研究が世界中で進む。発生の仕組みがよく知られたブタは、ヒトと臓器の大きさが近く、最有力候補だ。東京大とスタンフォード大で、ブタなどでの膵臓作製の研究に取り組む中内啓光教授(幹細胞生物学)らは1月、ラットの体内で、マウスの膵臓を作り、糖尿病マウスに移植して治療することに成功したと発表した。遺伝子改変で膵臓を作れなくしたラットの胚盤胞に、マウスのES細胞を注入し、子宮に戻すとマウスの膵臓を持ったラットが生まれた。ただ、ラットとマウスが同じネズミ科で、受精から誕生までの妊娠期間がほぼ同じなのに対して、ブタの妊娠期間はヒトの半分以下。種としても離れており、キメラを作るのは簡単ではないとみられる。実際、ソーク研究所の作ったブタ胎児で確認されたヒトの細胞はブタの細胞10万個当たり1個程度だったという。中内さんは「成長すれば排除されてしまう可能性もある。改めてブタとヒトのキメラを作る難しさを示した」と指摘する。キメラになる要因の一つは受精卵の分裂速度にある。分裂の速度が違うと、片方だけの個体になったり、排除されたりしてしまう。動物の生殖に詳しい明治大の長嶋比呂志教授(発生工学)は「ブタの発生と整合性を持たせるため、注入するヒトの細胞の分化段階をいかに調整するかが今後の研究のポイントになるだろう」と話す。
■倫理的な懸念
 日本では、クローン技術規制法に基づく文部科学省の指針で、ヒトのiPS細胞やES細胞を入れた動物の受精卵を子宮に戻し、子どもを作ることは禁じられている。ヒトのような意識や人格を持った動物が生まれかねないといった倫理的な懸念があったためだ。そのためソーク研究所が実施したような実験は今のところできないが、規制が厳しいという声もあり、文科省の委員会で改定に向けた検討が進んでいる。昨年1月にまとまった科学的な検討結果では、臓器を作製できる可能性がある点では、iPS細胞などから直接作る他の手法より「優位」とし、子宮に戻すことによる研究の意義が示された。今年1月に了承された倫理的観点のまとめでは、臨床用ヒト臓器を作製する段階までの研究は「社会的妥当性が認められる可能性が高い」とされた。今後、作製が認められる臓器や、使う動物などについて議論する予定だが、「丁寧な説明で国民に許容されるか、総合的な検討が必要」としている。
     ◇
〈キメラ〉 遺伝子の異なる細胞を一つの体にあわせもつ生物。ギリシャ神話に登場するライオンの頭、ヤギの胴、ヘビの尾を持った怪獣に由来する。遺伝子が混じりあってできる雑種とは異なる。例えばオスのロバとメスのウマの交配から生まれるラバは、両方の遺伝子が混じりあった雑種で、キメラではない。

<中小企業とイノベーション>
*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/417521 (佐賀新聞 2017年3月29日) 焼いても縮まぬ陶土 県窯業技術センター開発、薄さ、複雑さ一層追求へ
 佐賀県窯業技術センター(西松浦郡有田町)は28日、焼成時に縮まない陶土を開発したと発表した。複数の鉱物を配合し、変形の原因になる10%程度の収縮を抑えた。薄さや細さを追求するデザイナー製品、収縮率が高い大型品が作れるようになる。担当者は「世界最高の精度を持つ陶磁器材料」と説明し、軽量食器やフィルターなどの新製品開発にもつながりそうだ。県の有田焼創業400年事業の一環で、2014年度から3年がかりで開発した。陶土に配合された複数の鉱物が高温で結晶化し、隙間が埋まらないような働きをして縮まなくなるという。これまで焼成時に割れていた複雑な形状でも製作が可能になるという。0・03ミリ以下の微細な穴が空き、従来の陶磁器より3割軽くなるため、軽量食器にも使える。吸水性にも優れ、アロマ用品やコーヒーフィルター、吸音材にも活用できるとしている。従来の磁器と同じ温度で焼くことができ、既存の設備を使用できる。配合した鉱物も廉価で、陶土の生産コストは変わらないという。県は製法と材料の特許を3月に出願しており、県内窯元など約500社だけが使えるようにする。窯業技術センター陶磁器部の蒲地伸明研究員は「焼成時の変形予測の労力を軽減し、デザイナーが求める創造的な形状に対応できるようにもなる。メーカーにとって恩恵は大きいと思う」と話した。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/420198
(佐賀新聞 2017年4月8日) 有田焼、新ブランドに最高賞 世界的デザイン賞
■伝統と革新「融合」
 有田焼の窯元・商社や国内外のデザイナーが共同開発した新ブランド「2016/」が、世界的なデザイン賞のテーブルウェア部門でグランプリを獲得した。高いデザイン性に加え、伝統工芸と革新的な創作者との「融合」で、産業振興の新たな可能性を示したことが高く評価された。
 世界28の国や地域で発行されているデザイン誌「エル・デコ」が主催する「インターナショナル・デザインアワード」で受賞した。新ブランドは昨年の有田焼創業400年に合わせ、有田や伊万里の窯元・商社16社と気鋭のデザイナー16組が共同で手掛けた。オランダやドイツのデザイナーが佐賀を訪れ、形状や色合いを窯元と調整しながら2年がかりで完成させた。日本時間の7日、イタリアの国際見本市「ミラノ・サローネ」に合わせて授賞式があり、商品を取り扱う2016株式会社(有田町)の百田憲由社長らが出席した。山口祥義知事は「デザインの力が地域を変えると信じてこのプロジェクトに取り組んだ。『2016/』『ARITA(アリタ)』が世界中の人に愛され続けることを祈っている」とコメントを寄せた。同社によると、新ブランドは昨年10月に販売を始め、現在は国内40社、海外は欧州を中心に10カ国で取引をしているという。今年は中国や米国にも販路を拡大する計画で、「受賞を追い風にブランドの確立を加速させたい」と話す。西松浦郡有田町の百田陶園の陶磁器ブランド「1616/arita japan」も2013年、テーブルウェア部門でグランプリを受賞した。

<運輸のイノベーション>
*4-1:http://toyokeizai.net/articles/-/160649 (東洋経済 2017年3月2日) 北海道「本当に残すべき鉄道」はどこなのか、JR30年「公共交通のあり方」再検討も必要だ
 1987年4月1日に国鉄がJRに変わってから間もなく30年になる。国鉄改革は概ね成功したというべきであろうが、ここにきてJR北海道の経営は風雲急を告げている。この連載の記事一覧はこちら 2016年に留萌本線の留萌-増毛間廃止が発表されたところまでは驚かなかったが、同年11月にJR北海道が「単独では維持することが困難な線区」を発表したときには、ついにこの日が来たか、という印象であった。
●30年でJR各社の格差がはっきり
 JR北海道が発表した「単独維持困難な路線」(JR北海道発表の資料をもとに一部簡略化して作成)JR北海道の発表によれば、「単独では維持することが困難な線区」は13線区・1237.2キロメートル、「単独で維持が可能な線区」は11線区1150.7キロメートル(札幌までの北海道新幹線予定区間も含む)とされている。JR北海道は「単独で維持困難」とされた区間全てを廃止すると現段階で明言してはいないが、今後、路線の存廃の議論は不可避である。30年が経過し、JR各社が独自色を打ち出しているのはよいことだが、経営状態の大きな格差は看過できるものではない。JR北海道が抱える経営難にどう対応すべきなのか、国鉄からJRへと分割民営化されたときの法律も見ながら考えてみることにしよう。JRの前身である国鉄は、1964年以降慢性的な赤字に悩まされるようになり、対応策として1980年に日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(以下「国鉄再建法」)が成立する。
○その第1条「目的」では以下のように規定されていた。
この法律は、我が国の交通体系における基幹的交通機関である日本国有鉄道の経営の現状にかんがみ、その経営の再建を促進するため執るべき特別措置を定めるものとする。
○そして第2条では、「経営再建の目標」として、
日本国有鉄道の経営の再建の目標は、この法律に定めるその経営の再建を促進するための措置により、昭和60年度までにその経営の健全性を確保するための基盤を確立し、引き続き、速やかにその事業の収支の均衡の回復を図ることに置くものとする。
○第3条では、そのために「国鉄と国が取るべき責務」として、
日本国有鉄道は、その経営の再建が国民生活及び国民経済にとつて緊急の課題であることを深く認識し、その組織の全力を挙げて速やかにその経営の再建の目標を達成しなければならない。国は、日本国有鉄道に我が国の交通体系における基幹的交通機関としての機能を維持させるため、地域における効率的な輸送の確保に配慮しつつ、日本国有鉄道の経営の再建を促進するための措置を講ずるものとする。
と、それぞれ定められた。
●組織の維持が前提だった再建計画
 国鉄には「我が国の交通体系における基幹的交通機関」としての重要な立場があり、国鉄が破綻した場合の影響は計り知れない。そのためにも膨大な赤字を抱える国鉄の経営再建は急務とされ、国鉄のみならず国にも国鉄再建への責務が確認された。国鉄は組織を挙げて経営再建目標を達成することを求められ、国は「基幹的交通機関」である国鉄の機能を維持させ、地域における効率的な輸送の確保を配慮して経営再建促進の措置を講ずることが責務とされた。国鉄は、国鉄再建法で廃止対象とされた特定地方交通線以外の路線を維持して引き続き国の基幹的交通機関としての役割を担うべきとされ、国もそれを支援せよ、とされたのである。この段階では、未だ国鉄は組織の維持を前提に再建計画が進められることになっていた。ところが経営改善計画は進まず、国鉄のままでは十分な経営改善は図れないと判断されることになり、1986年に分割民営化につながる日本国有鉄道改革法(以下「国鉄改革法」)が成立する。そのことが第1条として以下のとおり書かれている。この法律は、日本国有鉄道による鉄道事業その他の事業の経営が破綻し、現行の公共企業体による全国一元的経営体制の下においてはその事業の適切かつ健全な運営を確保することが困難となっている事態に対処して、これらの事業に関し、輸送需要の動向に的確に対応し得る新たな経営体制を実現し、その下において我が国の基幹的輸送機関として果たすべき機能を効率的に発揮させることが、国民生活及び国民経済の安定及び向上を図る上で緊要な課題であることにかんがみ、これに即応した効率的な経営体制を確立するための日本国有鉄道の経営形態の抜本的な改革(以下「日本国有鉄道の改革」という。)に関する基本的な事項について定めるものとする。国鉄のような全国組織かつ非効率な経営主体に任せていても事業の健全な運営が困難であるので、輸送需要の動向に的確に対応する経営主体の下に国鉄が保有していた鉄道路線を移管させる、と、方針の大転換が図られたのである。
●累積債務30兆円超えからの出発
 そして、国鉄から鉄道事業を継承するJRについては、国鉄改革法第6条及び第7条において、
国は日本国有鉄道が経営している旅客鉄道事業について、主要都市を連絡する中距離の幹線輸送並びに大都市圏及び地方主要都市圏における輸送その他の地域輸送の分野において果たすべき役割にかんがみ、その役割を担うにふさわしい適正な経営規模のもとにおいて旅客輸送需要の動向に的確に対応した効率的な輸送が提供されるようその事業の経営を分割するとともに、その事業が明確な経営責任の下において自主的に運営されるようその経営組織を株式会社とするものとする。とされ、旅客事業は6つの会社に分割することとされた(第7条はJR貨物)。あわせて同日、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(「JR会社法」)が成立し、1987年4月1日のJR発足につながっていく。このとき、JR北海道など経営基盤の脆弱性が懸念される会社には、運用益で経営を支えるための経営安定基金が用意された(JR北海道は6822億円)。なお、JR発足当時、国鉄の累積債務は30兆円を大きく超えるに至っていた。JRが発足したとき日本はバブル経済を享受していた。発足1年後の1988年3月には青函トンネル開業、寝台特急「北斗星」の運転開始などがあり、JRの滑り出しは上々であった。しかし、それから30年が経過し、いまやJR北海道は経営難に直面している。もし、JR北海道のいう「単独で維持することが困難な路線」が、もはや国鉄改革法にいう地域輸送も含めた「国の基幹的交通機関」としての地位を失っていて、かつ回復させる必要もない、といえる路線なのであれば、国鉄改革法の趣旨からすればその路線を維持することに合理性はなく、廃止も一つの選択肢であろう。一方で、その路線が「国の基幹的交通機関」としての地位を未だ失っていないというのならば、その路線を維持することができないJR北海道は、むしろ「国の基幹的交通機関」を維持する組織として国鉄改革法から期待されたその経営能力を喪失しつつあるともいえる。
●JR北海道の「役割」再検証を
 そうだとすると、国鉄改革法が定めていた「主要都市を連絡する中距離の幹線輸送、大都市圏の輸送、地方主要都市圏における輸送、そのほかの地域輸送」という視点からJR北海道の全路線が果たすべき役割を今一度検証し、「その役割を担うにふさわしい経営規模」のもとで、「明確な経営責任の下において自主的に旅客輸送の動向に的確に対応する効率的な輸送を提供」できているかどうか、再検討をするべきであろう。そして、少子高齢化社会の進展に加え、厳しい気候や、人口が広く薄く点在しているという地理的条件など北海道特有の事情からJR北海道の経営が厳しくなるのは仕方がない、というのならば、現状のJR北海道の組織や経営規模がもはや適正ではないということである。全くの私見であるが、JR北海道として維持すべき路線は、民間企業が責任をもって運営できる範囲、すなわち収支がほぼ均衡する輸送密度8,000人以上の札幌圏(札幌を中心にして小樽、旭川、室蘭程度まで)のみに縮小することも考えるべきである。2015年度のデータをもとにすると、札幌圏に限れば、営業係数(100円の売上に必要な経費を示す指数)は管理費を勘案して111、管理費を勘案しなければ96と黒字になる。営業損益は管理費を勘案すると50億円の損失になるが、管理費を勘案しなければ190億円の利益を計上できる。運用益が年に350億円に達する経営安定基金は、50億円の赤字を埋められる程度に一部を残してJR北海道単独での札幌圏の鉄道事業の支援に使うか、上下分離方式を採用したうえで施設保有者に必要な範囲で譲渡する、という方法もあろう。そして、輸送密度8,000人を下回る路線は、鉄道として残すべきか再検討するべきである。巨額の赤字が見込まれ、かつ限定的な域内輸送の役割しか果たせておらず、冬季の状況を考えても代替交通手段で足りるという路線は廃止することになる。その一方、貨物列車や都市間高速列車のために不可欠という理由や、特別な価値があり、公共財としての側面が強く公的資金を投入しても維持するべきとされる路線は、必要な限度で別途の公共企業体などの運営で維持することになる。その場合、経営安定基金はJR北海道から分離される、輸送密度8,000人未満で収支困難な路線のために分割するということも考えられる。
●鉄道を「ただ残しても」意味はない
 もちろん、鉄道をどう維持していくかはJR北海道だけの問題ではない。近年、「交通政策基本法」や「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」が成立し、公共交通機関の活性化推進が地域や国民生活に必要不可欠であることが認識されるようになってはいる。しかし、交通機関の多様化などで残念ながら社会には昔のような「交通機関は鉄道一択」という風潮はない。鉄道をただ残しているだけでは無意味である。この国全体として地域輸送を含めた基幹的交通機関としての鉄道をどの程度必要としているのか、この国の鉄道全体、あるいはその地域ごとの鉄道について、鉄道を使って地域や国全体の利益をどのように維持増進しようとするのか、といったことを、国鉄分割民営化から30年が過ぎる今、公共交通機関のあり方の中から再検討するべきではないだろうか。

*4-2:http://shikiho.jp/tk/news/articles/0/142173 (会社四季報 2016年10月26日) JR九州・青柳社長が記者会見で語った将来への「意気込み」、民営化から29年
 九州旅客鉄道(JR九州・9142)が25日、東証1部に新規上場を果たした。1987年の旧国鉄の分割・民営化によって発足してから29年。もともと強い営業基盤を持ち経営が安定していた東日本や西日本、東海の「本州3社」が民営化から10年以内に上場したのに対し、九州は長い時間を要した。しかし、上場初日には公開価格(2600円)を19%上回る3100円の初値を付け、直後の記者会見で青柳俊彦社長は「上場はゴールではなく、新たなステージへの出発点」との認識を示した。初値について感想を聞かれた青柳氏は「(初めは買い気配で推移し)写真撮影の最中に初値が付いたため、その瞬間は見ていなかったが、その後も非常に活発な売買が行われてよかった。初値はわれわれに対する期待の反映と受け止めている」などと語った。今後の成長戦略については「中核である鉄道事業とそこから相乗効果を生み出す事業とを両輪として、さらなる成長を目指していきたい」という考えを表明。不動産など非鉄道事業の売上高が全体の5割超を占める同社だが、具体的には地盤の九州で新幹線の乗車率向上やインバウンド(訪日外国人客)需要の取り込みを進め、ローカル線でも鉄道ネットワークを維持したうえでマンションや商業施設などを建設することで沿線人口の増加に努めると強調した。九州以外の地域への展開に関しては「ホテルやマンションは今後も東京や大阪など、九州以外でも展開していきたい」と指摘。アジアを中心とした海外事業については「これまで色々と勉強してきている。5年前に中国・上海にレストランを開店し、現在は5店を運営している。今後はそれ以外の都市への展開も考えている」などと述べた。また、同社が始めた豪華寝台列車「ななつ星in九州」が好評で、来年にはJR東日本やJR西日本も参入する計画を打ち出していることについて、「ななつ星も3年目を迎え、来年の予約も順調に入っているようだ。来春に西日本と東日本も参入することによって、日本の旅の楽しさが3倍になることを期待している」などと語り、競争激化に対する警戒よりも、むしろ市場の活性化による相乗効果への期待をにじませた。また、上場までに約30年かかったことについて聞かれた青柳氏は「本当に長い道のりだった。30年前にJR各社が発足した際に、九州が上場することをイメージできた人がどれだけいたか。当初からはっきりした道標があったわけではないが、厳しい事業環境の中で上場できたというのは、これまでの一つひとつの努力が決して無駄ではなかったということだ」とした。また、「当社の上場が北海道や四国、貨物という(まだ上場していない)JR3社の参考になり、励みにもなるのではないか」とも語った。

*4-3:http://www.huffingtonpost.jp/2017/02/22/yamato_n_14950390.html (Huffpost Japan 2017年2月23日) クロネコヤマトの宅配量、抑制検討へ ネット通販拡大でドライバー不足に
 ヤマト運輸が、宅配便の扱い量を抑えることを検討する見通しとなった。宅配量の急増にドライバーの確保が追いつかなくなっており、同社の労働組合が2月上旬、春闘で会社側に要求した。ヤマト運輸によると、ネット通販の拡大などにより、宅配便の量は毎年増加傾向にある。2016年度の配達量は、15年度と比べて8%増え、過去最高の18億7000万個を見込んでいる。同社には約6万人のドライバーが所属しているが、配達量の増加にドライバーの確保が追いつかず、長時間労働に繋がっているという。このため労組は、宅配便の引き受けを抑え、取り扱い個数をこれ以上増やさないようを会社側に要求。終業から次の仕事まで最低10時間空ける「勤務インターバル」の導入なども求めた。ヤマト運輸労働組合は、NHKの取材に対し「今年度は特に荷物の量が増え、現場のしわ寄せが大きくなっている。1年間でサービス内容の見直しなどを進め、きちんと宅配便事業を続けられる体制を整えるべきだと申し入れている」と話した。ヤマト運輸は23日、ハフィントンポストの取材に対し、「ネット通販などにより、配達量が想定以上に増え、ドライバーの確保が追いついていない。集荷量の抑制を含め、労働者の働き方を見直しを検討する」と答えた。長時間労働の是正は、業界全体の課題となっている。ヤマト運輸では2月1日、働き方改革室を新設し、ドライバーの労働環境の改善を図っている。

*4-4:http://www.sankei.com/economy/news/170228/ecn1702280043-n1.html
(産経ニュース 2017.2.28) ヤマト運輸が昼の配達取りやめ検討 来年度にも実施
 ヤマト運輸が宅配サービスを抜本的に見直し、正午から午後2時の時間帯指定の配達を取りやめる方向で検討に入ったことが28日、分かった。現在午後9時までの夜の配達時間を早めに切り上げることも検討する。インターネット通販の普及で宅配個数が急増し、ドライバーを中心に人手不足で長時間労働が慢性化しているため。今後、労使協議で詰め、早ければ来年度の実施を目指す。ヤマト運輸の労働組合は平成29年春闘の労使交渉で、宅配便の荷受量の抑制や、終業から次の始業までに一定の休息を入れる「勤務インターバル」の制度導入などを求めていることに対応する。

*4-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/419708 (佐賀新聞 2017年4月6日) ヤマト宅配便、最高18・7億個、16年度、通販普及で拡大
 宅配便最大手のヤマト運輸は6日、2016年度に取り扱った荷物が過去最高の約18億7千万個だったと発表した。インターネット通信販売の普及で宅配便の利用が急拡大し、これまで最高だった15年度の約17億3千万個と比べ7・9%増えた。荷物をさばく人手の不足が深刻化し、17年度は運賃値上げとサービスの縮小で荷物量や長時間労働を抑制する。ヤマトの宅配便は06年度の約11億7千万個と比べると、この10年間で約59%膨らんだ。特に、ネット通販最大手アマゾンジャパンの荷物を取り扱い始めた13年度には16億個を突破。配達の現場では急速に人手不足が進んだとされている。

<イノベーションを可能にする教育・研究>
*5-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/418011 (佐賀新聞 2017年3月31日) 【教育ニュース】小学英語の教科化を告示 小中の新指導要領
 松野博一文部科学相は三十一日付で、各教科での「主体的、対話的で深い学び」に向けた授業改善の推進や、小学五、六年での英語教科化を柱とした小中学校の新しい学習指導要領を告示した。パブリックコメント(意見公募)を受け、小学校で「聖徳太子(厩戸王(うまやどのおう))」、中学校で「厩戸王(聖徳太子)」としていた表記を、小中とも現行指導要領と同じ「聖徳太子」に戻すなど、歴史用語中心に改定案を修正した。文科省は改定案を公表した二月十四日から今月十五日まで意見公募を実施。一万一千二百十件の意見が寄せられた。社会で教える聖徳太子を巡っては「歴史教育の連続性から、用語を変えるべきではない」といった意見を踏まえた。ただ、中学校では史実を深く学ぶことを重視し、古事記や日本書紀で「厩戸皇子(うまやどのおうじ)」などと表記され、後に「聖徳太子」と称されるようになったことに触れるよう新たに示した。改定案で消えた江戸時代の「鎖国」が小中ともに復活。中学校の「モンゴルの襲来(元寇(げんこう))」も「元寇(モンゴル帝国の襲来)」という現行に近い表記になった。東京電力福島第一原発事故でのいじめや風評被害に絡み、「放射線に関する正しい知識を体系的に指導すべきだ」という意見があり、小中の総則に「災害等を乗り越えて次代の社会を形成する」ための資質・能力を育むとの文言を追加した。中学校の保健体育では武道の内容の取り扱いで、競技人口や国体種目であることなどを考慮し、銃を模した用具を使い互いに突き合う「銃剣道」も例に加えた。小学校では英語より国語に力を入れるべきだとの意見もあったが、双方の充実を盛り込んでいるとして修正しなかった。

*5-2:http://qbiz.jp/article/105394/1/ (西日本新聞 2017年3月12日) 九州の伝統工芸、九産大が支援 研究センター設立へ、販売戦略練る
 九州産業大(福岡市)は11日、九州の伝統工芸品の販売戦略などを調査研究する「伝統みらい研究センター」を4月1日に設立すると発表した。博多織(福岡)や唐津焼(佐賀)、山鹿灯籠(熊本)など国指定伝統的工芸品21品目が対象。記者会見した山本盤男学長は「伝統技術を後世に伝え、持続可能な産業として再生する手法を確立して地域を支援したい」と話した。同大は2004年、有田焼(佐賀)の柿右衛門窯の作品データベース化などに取り組む柿右衛門様式陶芸研究センターを設立。さらに生産額や従業員数が減少している伝統工芸の支援にも手を広げ、センターは博多人形や久留米絣(がすり)(いずれも福岡)などの新商品開発にも関わってきた。新センターはこうした取り組みを拡充し、柿右衛門の研究部門と伝統工芸産業の発展に向けた研究の計2部門で構成。デザインや経営が専門の同大教授らが、まず今後3年間で福岡、佐賀両県の伝統的工芸品9品目の素材、技術などを調査。その後、販売戦略なども練り地域を支援する。新センターの所長に就く釜堀文孝教授は「衰退しつつある伝統工芸を核とした地域産業に貢献するシンクタンクを目指す」と意欲を語った。


PS(2017/4/12追加):*6-1のように、鉄道は、蓄電池や燃料電池による電動化と自動運転によるイノベーションが考えられ、こうすると、JR北海道を含む鉄道の採算がよくなって赤字路線が減る。また、駅舎や高架に太陽光発電を取り付ければ、広い面積で発電してエネルギーを自給することもできる。さらに、鉄道の敷地は連続した送電線を置くのに都合がよいため、例えば北海道の農山漁村で風力発電した電力を都市部に送電して送電料を得ることも可能だ。そのため、いわゆる赤字路線も利用して、現在のニーズに合うシナジー効果の高い事業を子会社で行えば、連結決算で黒字にすることも可能だろう。
 そのような中、東芝や日立などのインフラや鉄道関連製品を作っている会社は、ルールがなければ事業の新陳代謝ができないと言うのではなく、時勢に合った産業に速やかに移行できることが、経営者の能力である。何故なら、イノベーションや新製品は、過去数期間に黒字だったか赤字だったかというような単純なルールで今後の可能性が決まるものではなく、業種によっても状況が異なるため、業務の選択と拡大のやり方を誤らないことが、その企業のリーダーである経営者の役割だからだ。
 なお、*6-2に、農水省が減らない農作業中の農機での事故の原因分析を行うと書かれており、調査・分析をやるのはよいが遅すぎたくらいで、農作業中の事故は、無残で回復不能なものも多く、生産性と安全性を両立した農機具の設計が求められる。なお、実現すれば、これは世界で求められる実需であるため、輸出を伸ばすこともできるだろう。

   
    蓄電池電車     鉄道の敷地に引かれる送電線 太陽光発電付駅舎

*6-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ12H7D_S7A410C1000000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2017/4/12) 老舗重電ライバル 東芝とシーメンスを分けたもの
 東芝が監査の適正意見がない異例の決算を発表した11日、独シーメンスがボンバルディア(カナダ)と鉄道関連事業の統合を検討していることが明らかになった。経営再建中の東芝に対し、シーメンスは不断の事業再編を繰り返し株価も好調だ。両社は日独を代表する老舗重電メーカーで、発電機や医療機器などで競い合ってきた。どこで道が分かれたのか。
■シーメンスは最高値更新
 12日の東京株式市場で東芝の株価は乱高下している。上場廃止の可能性もあり値動きの荒い展開が続きそうだ。方やシーメンスの株価は11日に最高値を更新し、ボンバルディアとの鉄道統合の報道も材料視されている。時価総額は1088億ユーロ(約12兆6200億円)と、東芝(約9300億円)の13倍強に達し、日本の重電の顔である日立製作所の約2兆8000億円も大きく上回る。「電動化、自動化、デジタル化にトレンドにあわせ、当社の中核事業を変えていく」。昨年末、シーメンスのローランド・ブッシュ最高技術責任者(CTO)は自社イベントでこう述べた。同社は近年、産業用ソフトウエアの企業を相次いで買収し、ソフトとサービスの両分野を強化。米ゼネラル・エレクトリック(GE)と競うように「脱・機器売り依存」を鮮明にしている。シーメンスはソフト・サービス関連を買収で内部に取り込む一方、従来型の重電メーカーに象徴される巨額の投資が必要な「重い」事業は柔軟に他社との統合に切り替える。背景にあるのは、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」。自らがデータを集める「面」の広がりが重要で、機器売りの規模自体を追う重要性は下がりつつある。
■鉄道車両の首位浮上も
 最近は世界シェア大手の風力発電機事業をガメサ(スペイン)と統合したばかり。今回報じられたボンバルディアとの鉄道関連事業もこの一環とみられる。シーメンスの鉄道車両を含むモビリティー事業の売上高は78億ユーロ(約9050億円、2016年9月期)、ボンバルディアの鉄道車両事業は76億ドル(約8360億円、16年12月期)。合算すれば、中国国有大手の統合で生まれた中国中車を上回る世界最大の鉄道車両メーカーになる。ただシーメンスが買収・統合だけ続けては肥大化するだけだ。東芝との最大の違いは撤退の早さだろう。社内の「撤退ルール」を持ち、事業の入れ替えを繰り返す。黒字であっても期待収益を下回ったり、中核ではないと判断したりした事業は遠慮なく売却・上場する。特に13年に就任したジョー・ケーザー社長はその傾向が顕著だ。最高財務責任者(CFO)の経験が長く、各部門の収益構造やキャッシュフローには「現業部門よりも詳しい」(同社幹部)。水処理、病院向けIT(情報技術)、補聴器、家電、製鉄機械と相次ぎ売却や合弁化している。
■撤退基準の有無、原子力で明暗
 こうした文化が染みついたシーメンスと東芝の分かれ道は原子力部門の扱いだ。2011年3月の東京電力・福島第1原子力発電所の事故を受け、メルケル独政権はいったん取り下げた「脱原発」に再びかじを切った。軌を一にしてシーメンスは仏アレバとの原子力合弁の株式をアレバに売却。22年に国が原発ゼロになる前に、シーメンスは先に脱原発を果たし、ガス火力発電タービンと、風力発電を核とした再生可能エネルギーに絞り込んだ。もっともシーメンスは政治や世論の圧力で脱原発を決めたわけではない。欧州は再生エネの普及で世界を引っ張っり、「風力発電は火力発電並みの競争力を持つ」との社内の合意が形成された。さらにシェールガス革命で天然ガスを燃料にする火力発電のシェアも高まる。もともと社内では「他の電源と比べ原子力の事業性を疑問視する声があった」(エネルギー部門幹部)。福島の事故は原発の規制コストが上昇するとみて、撤退の背中を押す一因にはなったが、それまでの計算があったから決断も早かった。その後、シーメンスの保有株すべてを引き受けたアレバは業績不振にあえぎ、仏電力公社(EDF)の支援を求める状況だ。結果的にシーメンスはうまく“足抜け”した。一方、東芝は戦略部門と位置づけ買収した原子力子会社、米ウエスチングハウス(WH)の内部統制の不備があり、WHの買収による損失でさらに傷を負った。日本の電力業界では、かつて「原子力ルネサンス」の旗振り役だった経済産業省との密接な関係もあり、東芝側から容易に撤退を言い出せない背景も指摘される。
■医療機器はそろって売却・上場
 東芝は昨年、経営再建の一環で医療機器子会社の東芝メディカルシステムズを売却した。追い込まれて“虎の子”を手放さざるを得なかった。実はシーメンスも稼ぎ頭の医療機器子会社、シーメンス・ヘルシニアーズを年内にも上場させる計画だ。ケーザー社長は「分子診断、先端治療、サービスといった成長分野でより柔軟性を持ち強くなるため」と述べ、外部に切り出すことで医療機器の成長を狙う。平時から事業の撤退ルールをどう作るか。日本企業に広く問われる課題と言えそうだ。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p40594.html (日本農業新聞 2017年4月12日) 事故原因を本格調査 報告書提出促す 農機の状態情報不十分 農水省
 農水省は、農作業事故の原因分析のため、本格的な調査に乗り出した。事故が起きた状況や使用していた農機の状態などの情報収集がこれまで不十分で、都道府県や農機メーカーから報告書の提出を強く求める。事故が大きく減らない中、集まった情報を専門機関で分析し、事故防止により効果的な対策を検討する。同省によると、農作業事故で毎年350人近くが亡くなっており、依然高い水準にある。過半数が農機での作業中の事故で、対策強化が急務となっている。具体策の検討に生かすため、同省は2007年度から農機メーカーに対し、農作業事故が起きた地形や農機の種類、事故原因に関する情報提供を要請。10年度からは都道府県にも対象を広げた。だが、報告書は記述式で記入が煩雑なことが敬遠され、未提出の団体もあるなど情報が思うように集まっていなかった。同省は本格的な調査に乗り出し、報告書の提出を強く促す。この1月には都道府県に対し、事故発生時に速やかに提出するよう求める生産局長名の通知を出した。さらに、報告書を記入しやすいチェックシート形式に改善した。業界団体にも同様の要請を出した。集まった情報は、農研機構・革新工学センターに提供し、専門家の視点での事故分析や農機の安全対策の研究などに役立てる。啓発資料や指導指針の策定、農機の一層の安全設計、メーカーや輸入業者への対応の要請などの活用を想定する。成果情報は同省のホームページや、農機の関係団体でつくる「農作業安全確認運動推進会議」などで報告し、普及につなげる考えだ。同省は「事故がどういう状況で起きたか、まずはデータを多く集めたい。原因を把握し万全な対策をまとめる」(技術普及課)考えだ。


PS(2017.4.13追加): *7に、「欧米の半導体・部品メーカーが自動運転など自動車の次世代技術を持つ企業を相次いで傘下に収めている世界の流れを踏まえ、日本の部品メーカーも積極的に先進技術獲得目的のM&Aを行うべきだ」と書かれている。しかし、自らは先進技術を持たない企業が金にあかしてM&Aを行っても、高いものについただけで破綻しかけているのが東芝のWH買収だ。何故そうなるのかと言えば、本当に先進技術を持つ優良企業は、シャープのような余程の事情がない限り、M&Aで一方的にその先進技術を他国企業に譲ることはないからだ。そのため、先進技術を持つ企業を買収したり、業務提携したりしたければ、自らも相手が欲しがる秀でた技術や販売力を持っている必要があり、それは欧米追随型の技術開発ではできず、日本独自にも役立つ先進技術を開発していなければならないのである。なお、スペインのバルセロナ空港にあったサムスンTVで、見慣れた顔のゴーン氏が「Inovation is exites!(訳:イノベーションは、素晴らしい)」という自動運転の広告をされているのを見たが、EVを世界で最初に作ったのはゴーン氏率いる日産であり、自動運転も最初に手がけられたと記憶している。しかし、日産のEVはデザインが今一つスマートでなく、航続距離も短いため、まだ改善の余地が大きい。

*7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170413&ng=DGKKZO15247030T10C17A4EA1000 (日経新聞社説 2017.4.13) 自動車部品会社は内向き脱せ
 欧米の半導体・部品メーカーが自動運転など自動車の次世代技術を持つ企業を相次いで傘下に収めている。自動車産業が「100年に1度」といわれる転換期に入ったことが背景にある。技術開発で自前主義が強い日本の部品メーカーも、こうした世界の流れをふまえて積極的にM&A(合併・買収)に動くべきだ。半導体大手の米インテルは年内に、自動運転車の「目」となる画像認識システムで先行するイスラエルのモービルアイを153億ドル(約1兆6800億円)で買収する。米クアルコムも車載半導体で世界首位のオランダNXPセミコンダクターズを470億ドルで傘下に入れる。自動運転技術や、通信で情報を外部とやり取りする次世代車が普及すると、自動車に搭載するセンサーや半導体が飛躍的に増える。異業種の企業も自動車分野の事業を拡大する好機となる。歴史が長い自動車関連の企業もM&Aに積極的に動いている。老舗タイヤメーカーの独コンチネンタルは15年間で約100社を傘下に収め、センサーなどの有力企業に成長した。愛知県豊田市のトヨタ自動車本社近くに100人規模の拠点を構え、同社に自動ブレーキの主要部品を供給する。日本に目を向けると、部品メーカーの動きは乏しい。トヨタ系列の部品メーカーは再編を進めてきたが、効率化を目的としたグループ内の事業集約にほぼ終始している。ブレーキ事業の統合に10年超を費やすなど、スピード感にも課題がある。独立系自動車部品メーカーや、半導体・電子部品メーカーを見ても、技術の獲得を目的としたM&Aはわずかだ。自動車もIT(情報技術)分野と同様、付加価値の源泉が部品とサービスに移る「スマイルカーブ現象」が進むとみられている。日本企業も部品の重要性が高まることを認識し、内向きな姿勢を改めて外部から先進技術を積極的に取り込むべきだ。


PS(2017年4月14日追加):*8-1、*8-2のように、食材(特に、水もの・野菜・果物)や日用品を買った時に、その日の夕方までに自宅に配送してくれるサービスがあると、休日にまとめ買いしている健康な人でも重い荷物を持ち帰る心配なく買い物することができるため、買う物が増えるだろう。また、自宅療養している人には、これは必要不可欠なサービスで、中食だけでなく、栄養管理された美味しい弁当を宅配してくれれば、生活の質が上がる。

*8-1:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/421592 (佐賀新聞 2017年4月14日) 食材と日用品、戸配事業統合 JAさがと全農、全国に先駆けサービス
■利便向上へ注文一本化 中山間地などの生活支援
 JAさがと全農は、それぞれが独自に手掛ける食材の戸別配達事業と日用品宅配サービスを統合した「生活総合宅配事業」を全国に先駆けて始めた。併用する利用者が多いことから注文窓口を一本化して利便性を高め、品ぞろえの充実を図る。中山間地などの生活支援を強化する取り組みとして効果を検証した上で、全農を通じて2018年度から県外の地域農協での事業展開を目指す。JAさがの戸別配達事業は、簡単な調理でおかずができる状態に加工した肉・魚や野菜などを家庭に届けるサービス。全農は食用油や小麦粉、加工食品などの日用品を宅配業者を通じて配達しており、県内でそれぞれ約6千人、約1万6千人が利用している。配達サービスは、生協や食材宅配の専門業者に加え、コンビニエンスストアや地場スーパーの参入も相次いでいる。JAグループが扱う農産物を中心に生鮮食品の品質、価格で差別化を図ることで利用者の減少を食い止め、初年度は会員数1万7千人、取扱高15億円を目指す。今月初めに神埼市のJAさが本所食材センターであった出発式では、JAさがの北村正弘生活燃料部長が「近くに商店がなく、買い物に困っている人もいる。地域のインフラとして定着できるよう改善に努めたい」とあいさつ。関係者のテープカットの後に第1便が出発した。総合宅配事業の利用対象者は、会員登録をした組合員と准組合員。専用の注文用紙やインターネットなどで受け付けている。JA全農は「サービスの拡充で地域の暮らしを支えるモデルを佐賀でつくりたい」と話している。

*8-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170414&ng=DGKKASDZ13HZY_T10C17A4MM8000 (日経新聞 2017.4.14) セブン、宅配を外部委託、セイノーから配達員 加盟店の人材確保限界
 小売り大手が宅配網のてこ入れに乗り出す。セブン―イレブン・ジャパンはセイノーホールディングス(HD)と提携。セイノーHDがコンビニエンスストアに配達員を送り、宅配を代行する。ニトリホールディングスは家具を運ぶ提携運送会社向けにトラックを割安に貸し出す。流通業の代表企業が物流の末端まで支援しなければならないほど人手不足が深刻化している。資本力のある大手が先行して配達員の確保策を進めることで、人材獲得競争が一段と過熱する可能性がある。セブンは弁当を中心にコンビニで購入した商品を店員が自宅まで届ける宅配サービス「セブンミール」を全店の7割超の約1万5千店で展開する。店員は接客なども担うため、多くの店では十分な人手を割けなかった。セブンイレブンの各店舗は個人事業主の経営が多く、採用力にも限界があった。セイノーHDはセブンの宅配を代行する全額出資子会社を設立、5月から本格稼働する。まず約100人の配達員をそろえ、広島県など1都7県の約150店を担当する。将来は全国に広げる方針だ。セイノーHDは接客や運転技能に関する社内検定に合格した人のみを派遣する。商品は軽トラックで運ぶが、運転免許以外の資格は必要なく、担当も自宅に近いエリアに限られるため、比較的、配達員も集めやすいとみられる。主婦など女性を積極的に活用する。セブンはセイノーHDに宅配を委託することで配達の頻度を増やせる。5店舗で試行したところ、利用金額は10倍に増えた。関連コストは増える見込みだがメリットの方が大きいと判断した。セブンミールは500円以上の商品を購入した場合の送料は無料で、今後も料金は変更しない。セブンミールの売上高は2017年2月期で266億円。全売上高の1%にも満たないが、高齢者や女性向けに潜在需要は大きいと見込む。ニトリHDは20年までをメドに2トンと10トンのトラックを計1200台購入し、家具を運ぶ約100社の提携運送会社向けに割安に貸し出す。月々のリース料は通常に比べ少なくとも1割程度(数万円相当)抑えることができるとみられる。運送会社の負担を抑え、運転手の人件費確保などにつなげる。小売企業が配送網維持のために、車両のリースまで手がけるのは珍しい。労働人口の減少で人材は建設や小売りなど各業界をまたいで取り合いになっており、トラック運転手は確保しづらい。


PS(2017年4月15、17日追加):*9-1のように、熊本地震で壊れた南阿蘇鉄道の全線復旧費用を沿線自治体が負担しなければ出せないとのことだが、この地域は陸上に現れた大断層の交差点であることが地震で有名になったため、観光地としての価値は上がったと言える。そのため、私は、スイスのマッターホルンのように、居心地のよい観光鉄道を設置し、高すぎない料金で走らせて、世界から観光客を集めるのがよいと考える。ちなみに、マッターホルンの場合は、その基地となるツェルマット村では、1990年代から環境に配慮し、ガソリン車の乗り入れを禁止して村内の交通手段は電気自動車としており、静かな環境と澄んだ空気が保たれている。また、北海道も乗り心地のよい北海道周遊鉄道を走らせれば、夏だけでなく冬も素敵な鉄道旅ができ、北海道の墨絵のような雪景色やスキーは、暑い国に住む人たちにとって憧れになる可能性が高い。
 なお、熊本県の農業は秀でており、首都圏でも多くの農産品が販売されているが、*9-2のように、まだ復旧していない農地があるのなら全力を尽くして早期復旧すべきだ。しかし、私は、この機会に復旧のみを考えるのではなく、どこでも作りたがって余剰している米を減らして他の作物に転作し、付加価値や食料自給率を上げるのがよいと思う。その際に障害となるのが、国が米作偏重で渡している交付金なのだ。


  2017.4.15西日本新聞(*9)より     マッターホルンの鉄道とケーブルカー

(図の説明:南阿蘇鉄道は、眼下に大きな断層を見下ろしながら草地を走る世界でも珍しい鉄道であることを前面に出し、快適に地球の営みを見学する列車を走らせたらどうかと考える。そして、これにはスイスのマッターホルンの例が参考になるが、この鉄道は赤字だろうか?)

*9-1:http://qbiz.jp/article/107652/1/ (西日本新聞 2017年4月15日) 2016熊本地震、南阿蘇鉄道の全線復旧は数十億円 沿線自治体の負担焦点
 南阿蘇鉄道の復旧に向け事業者負担をゼロにするなど、政府が特別な支援策の創設に動きだした。ただ、この支援策では地元自治体が復旧費の50%を負担する必要がある。国土交通省の調査では、復旧費は総額70億〜80億円前後に達する可能性もあり、全線復旧には数十億円に上る自治体の負担軽減が焦点だ。事業者負担をゼロにして国の補助を50%に倍増する制度は、東日本大震災で被災した岩手県の三陸鉄道で活用例がある。復旧費約90億円のうち国が45億円、県と沿線8市町村が計45億円を負担した。ただ各自治体には震災復興特別交付税が支給され、事実上、国が全額負担した形だ。熊本地震の場合、復興特別交付税の制度はない。財政基盤の弱い沿線の南阿蘇村や高森町にとって「数億円の負担も厳しい」(関係者)状況で、特別な交付税の支給や、95%が交付税措置される「補助災害復旧事業債」の活用などを国に求める考えだ。新たな支援策は線路や駅などの鉄道施設を、自治体の所有に移すことが前提になる見通し。自治体と事業者の協議がまとまり次第、政府は支援策の検討を本格化する。南阿蘇鉄道は2016年7月に高森−中松で運行を再開したが、被害が深刻な中松−立野は復旧のめどが立っていない。

*9-2:https://www.agrinews.co.jp/p40613.html (日本農業新聞論説 2017年4月14日) 熊本地震から1年 営農の完全再建急ごう
 熊本地震から1年がたつ。農地や施設の復旧が進み、多くの農家が営農を再開している。しかし被害が深刻な地域では、いまだに農家の1割が営農を再開できていない状況だ。熊本県は2019年度までの完全復旧を目指す。道のりは険しいが、農家が安心して生活し、営農で震災前の所得水準を早く回復できるよう復旧を急ぎたい。国もその間の支援を継続すべきだ。熊本地震では4月14日、16日と2度、最大震度7を観測。震源地が地下10キロと浅く、益城町と西原村を中心に大きな被害をもたらした。13日現在、関連死も含めた死者は225人。熊本県内の仮設住宅に住む被災者は3月末でも4万4000人を超える。高齢者が圧倒的に多い。一刻も早く自宅に帰れるよう、行政は全力を挙げるべきだ。農水省によると、農林水産関連の被害総額は熊本県を中心に1793億円。うち農業関係は7割を占める。1年間で被災した農地や施設の復旧は一定に進んだ。しかし復旧が遅れ、営農再建のめどが立たない地域や農家が多いのも事実だ。農地や水路が絶たれたままで、稲作の再開どころか飲用水すら確保できないケースもある。生活インフラを含め、早期の完全復旧の実現には国の支援も不可欠だ。県やJAの頑張りは評価できる。営農再開を優先させ、水を確保できない水田では復旧に先駆けて大豆作に切り替えた。農家の営農意欲を失わせず、少しでも農業収入を確保してもらう効果は大きかった。こうした臨機応変の対応が重要だ。県は昨年末、19年度までに完全復旧を目指す「食料・農業・農村計画」を策定した。「稼げる農業の加速化」をテーマに掲げ、復旧作業と併せて担い手を育て、効率的に高い品質の農畜産物を生産できる産地づくりを目指す。担い手に8400ヘクタールの農地を集める他、新品種イチゴ「ゆうべに」を125ヘクタールまで広げ、情報通信技術(ICT)を活用した次世代型園芸施設を120ヘクタール設けるなどの構想を描く。復旧の遅れた地域も含め、全県的にビジョンを早く実現してもらいたい。11日に農水省を訪れた蒲島郁夫県知事は、山本有二農相に復旧と営農再開の状況を報告した。まだ1割の農家が営農を再開できていないと指摘、「創造的な復興」に必要な支援の継続を国に要請した。JA熊本中央会の小崎憲一会長も日本農業新聞のインタビューで、行政の震災事業は単年度事業が多いと指摘し「農家の意欲が続くよう、複数年の予算確保を訴えたい」と強調した。こうした声に国は誠意を持って応えるべきだ。JAグループの役割も大きい。熊本中央会は昨年末、県経済連、農林中金と共に、県と連携協定を結んだ。県の復興計画に沿って「創造的な復興」を果たすため、全力を挙げてほしい。全国のJAも引き続き支援をする必要がある。


PS(2017年4月16日追加):沖縄では海に点在する観光地を巡るため、*10のように、クルーズ船が便利だが、そのためには大型客船が入港できる岸壁を造ってハード・ソフトを整備するだけでなく、沖縄を一級のクルーズ船観光基地にする計画が必要だ。そこで、私は、カリブ海・地中海などのクルーズ先輩地域を視察したり調査したり、クルーズの先輩の意見を聞いたりして、しゃれた計画を立てた方がよいと考える。なお、沖縄の場合は海の中が美しいため、クルーズ船に海底が見える床が透明な部屋を準備すると長い船旅にも退屈しないだろう。

*10:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-478409.html (琉球新報社説 2017年4月14日) クルーズ船対応 受け入れ態勢の整備を急げ
 観光に関する調査研究機関・じゃらんリサーチセンターのまとめでは「地元の人のホスピタリティー(もてなしの心)を感じた」のは、沖縄県が2005年以来12年連続で1位を記録している。毎年2位に10ポイント以上の差をつけている。観光客を大事にする県民の意識の高さを示す証しといえる。だが観光地・沖縄としての受け入れ態勢は十分といえない。クルーズ船入港時の混乱を見れば不備は明らかだ。ソフト、ハードの整備に関係機関は今以上に注力してもらいたい。本紙記者の取材によると、那覇港新港ふ頭に大型客船が寄港した11日は約千人が下船したが、船客待合所で多くの人が1時間ほど足止めされた。最後の客がタクシーに乗るまで3時間を要した。新港ふ頭は本来貨物船が使用する岸壁である。15万トンを超える大型客船が入港できる岸壁がないため利用しているだけだ。しかし周囲は貨物運搬の車両が行き交い、観光客、荷役関係者双方の安全のためタクシーの乗り入れが制限されている。市内観光に行くにはタクシーに頼るしかないが、現状は受け入れ態勢の不備で観光客に不便を強いている。クルーズ船寄港は16年に387回で過去最多を記録し、17年度はさらに増えて502回を見込む。県の観光振興基本計画は21年度までの目標として観光客1200万人を掲げている。そのうち海路客は現在の25万人から8倍の200万人に設定している。クルーズ船客は船内で入国手続きを済ませる。下船できるのは8~10時間しかなく、限られた時間で沖縄観光を楽しむ。港を出るまでに1~3時間を消費していては、観光地としての魅力が損なわれるだけでなく、買い物や飲食店などに行く時間が減り、消費面でも機会損失が大きいといえる。大型客船に対応できる岸壁の整備は急務だ。国、県をはじめとする関係機関が早急に対策を打ち出すべきだ。一方でソフト面の整備も課題となる。11日の寄港で対応したボランティアはわずか11人しかいなかった。単純計算で1人のボランティアが90人を相手にしなければならない。那覇市観光協会は語学人材の育成を進めるが、絶対数が不足している。現状では観光地・沖縄の「もてなしの心」は看板倒れに終わりかねない。


PS(2017年4月16日追加):*11のように、「利幅が薄い」などとして家電部門を縮小する会社が多いため、家電の日本製品が少なくなったのは秋葉原の電気街に行けば一目瞭然だ。そして現在、信頼できる日本製家電はパナソニックくらいしかなくなっており、技術は生産している場所でしか受け継がれたり進歩したりしないということを、技術や実績に誇りを持つのではなく、訳もなく傲慢になった日本人は忘れたように見える。そのような中、イノベーションに熱心で先進的な技術を持つシャープが家電市場で存在感を上げようとしているのは歓迎だが、シャープには一つだけ注文がある。それは、「家電は単純な構造で(それは丈夫で生産コストを削減できる効果もあるだろう)、使い易くて手入れしやすい」というのも重要な価値で、私はシャープ製のプラズマ式エアコンを使って快適に過ごしていたが、エアコンクリーニングをする時に専門業者でも掃除ができず、壊れやすい部品もあって2度交換したため、パナソニック製に変えたという事実があることだ。これは、改善した方がよいと考える。

*11:http://digital.asahi.com/articles/ASK4H4Q37K4HPLFA001.html?iref=comtop_list_biz_n01 (朝日新聞 2017年4月15日) シャープ、家電で逆張り勝負 冷蔵庫・テレビ機種増へ
 シャープの戴正呉(たいせいご)社長は15日、国内で売るテレビや冷蔵庫といった家電製品の品ぞろえを、2017年度に大幅に増やす方針を明らかにした。利幅の薄い家電部門を縮小する他社があるなかで、あえて「逆張り」に出て、家電市場での存在感を上げようとしている。戴氏は堺市の本社で開いた退職者の会合にテレビ会議システムを使って参加し、方針を明らかにした。16年度と比べた品ぞろえを高画質の4Kテレビで45%、冷蔵庫で30%、掃除機で180%それぞれ増やし、20機種前後にするという。高機能品に加え、機能を絞って価格を抑えた製品も出す。法人向けは複合機で40%増、電子看板で20%増の35機種程度にする。戴氏はパナソニックやソニーとの比較で「シャープは幅広い家電を持つが、ラインアップが足りない。頑張りたい」などと語った。だが、費用がかさむ一方で、利益が増えない恐れもある。調査会社GfKジャパンの調べでは、16年の国内の家電小売市場は約7兆円で、前年より1・5%減った。シャープが比較的強いテレビなどの音響映像製品は同6%減と縮小。競合他社では品ぞろえを絞る動きもある。また、戴氏は3月末に終わった17年3月期の決算について「予想を達成できると思う」と話した。シャープは現段階で営業損益を474億円の黒字、利息の支払いなどを反映した経常損益を99億円の黒字と予想しており、ともに3年ぶりの黒字転換となる見込みだ。


PS(2017.4.17追加):*12-1のように、3Dプリンターの再生医療への活用が既に行われているのはよかったと思うし、これを可能にする3Dプリンターや作成プロセスが世界で最初に完成すれば日本の得意技として高い世界シェアを獲得できる。しかし、*12-2のように、「そのまま患者に移植できる臓器の再現はかなり先となりそうだ」などとして時間をかけていると、EV・太陽光発電・自動運転車のように、他国に先を越されて好機を逃し、最初に着手した日本には特許権料も世界シェアも手に入らなくなるので注意すべきだ。なお、現在の日本の経済学部出身者は、言っていることが外国で作られた理論の単純な丸暗記に基づいており、イノベーションを考慮できず、言うことがとろいため、経済学部は理系学部に変更した方がよいと思う。

*12-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170417&ng=DGKKZO15375170W7A410C1TJM000 (日経新聞 2017.4.17) 科学技術:3Dプリンター、再生医療に活用 まず移植用組織、東大が皮膚の構造/福岡大は横隔膜の機能
 立体的な部品などを作る3次元(3D)プリンターを使った再生医療の研究が進んでいる。たんぱく質の微粒子や細胞の塊を積み重ね、移植用の組織や臓器を作る。東京大学は治りにくい傷の治療向けに皮膚の立体構造を再現した。福岡大学などは呼吸に欠かせない横隔膜の機能を果たす小さな組織を作り、動物で治療効果を確かめた。臨床応用できれば究極の再生医療の実現に近づく。3Dプリンターは原料の粉末などを少しずつ積み上げて立体構造を作る。再生医療向けでは、専用装置で生きた細胞の小さな集まりやコラーゲンなどのたんぱく質を積み重ねる。材料選びや使うタイミング、積み方などの工夫も研究の重要なテーマとなっている。東大の高戸毅教授と峰松健夫特任准教授は3Dプリンターを活用し、床ずれや糖尿病などで発症する皮膚の治りにくい傷を治療する研究に取り組む。高齢化などで患者は増えており、長期入院を余儀なくされたり治療後に痛みが残ったりして患者の負担となっている。皮膚には表面の表皮と内部の真皮の間をつなぐ役割を持つ微細な凹凸が並んでいる。皮膚の真皮まで傷付くと再生せず、平らになってしまう。高戸教授らは3Dプリンターで「RCP」というたんぱく質の微粒子を積み上げて表面に凹凸のある層を作り、皮膚の構造をまねた。傷を付けたマウスの皮膚に移植すると、表皮の再生を促した。今後はたんぱく質の微粒子の隙間に、脂肪から取り出した幹細胞を入れて、効果を高める。幹細胞が出す物質は皮膚が硬くなるのを抑える働きがあり、皮膚の再生も促せると見込む。損傷した真皮を補うためのスポンジ構造の材料も使い、表皮と真皮の立体構造を模倣した再生医療を目指す。福岡大の柳佑典助教と九州大学の田口智章教授は3Dプリンターで細胞を積み上げる手法を用い、人の皮膚の細胞で1センチ角の組織片を作った。胸と腹を区切る横隔膜に穴を開けたラットに移植した。横隔膜に穴が開くと呼吸に支障が出る。組織片を移植した5匹は横隔膜の穴が塞がり、3カ月以上生き延びた。効果は合成繊維の膜を移植するより高かった。今後はウサギなどでも実験する。横隔膜が生まれつきない患者などの治療に役立てたい考えだ。信州大学の今村哲也助教と九大発ベンチャーのサイフューズ(東京・文京)は、人の骨髄の細胞で数ミリ角の組織片を作った。膀胱(ぼうこう)が傷つき尿がためられないラットに移植すると、健康なラットのように排尿できる状態まで回復した。組織片から出たたんぱく質などが膀胱の再生を促したとみている。膀胱は伸縮する筋肉でできた袋状の臓器で、がんの放射線治療や病気が原因で硬くなると頻尿になる。今後iPS細胞の活用も検討し、10年以内に人への移植を目指す。

*12-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170417&ng=DGKKZO15375210W7A410C1TJM000 (日経新聞 2017.4.17) 科学技術:臓器実現、蓄積地道に
 3次元(3D)プリンターは材料を積み重ね、複雑、微細な立体構造を作るのが得意だ。細胞やたんぱく質に応用できる機種の開発が、再生医療研究を後押ししている。皮膚の難病治療を目指す東京大学の峰松健夫特任准教授は「3Dプリンターができたからこそ研究に着手できた」と語る。再生医療の実用化では細胞をシート状に培養して移植する手法が先行する。動物を「工場」として活用するアイデアもある。ブタなどの受精卵に人のiPS細胞を注入し動物の体内で人の臓器を作る手法だ。ただ、いずれも発展途上で、1つに絞られたわけではない。臓器は血管や神経など様々な細胞が組み合わさり、立体的な構造を作っている。そのまま患者に移植できる臓器の再現はかなり先となりそうだ。小さな組織片の移植など一歩ずつ技術を積み重ねていくことが重要だ。


<観察技術の進歩と理論のイノベーション>
PS(2017年4月19日):肉食恐竜ティラノサウルスの手は、使うには小さすぎると思っていたが、これと似た大きさの手をしているのは飛べない鳥類(エミュー、ダチョウ、鶏など)で、これらの鳥類は顔も恐竜から進化したように見え、足の形は恐竜と同じだ。また、これらの鳥類は、子供の頃は羽がなく毛だけが生えており、「個体発生は系統発生を繰り返す」という原理から考えれば、(化石には残っていないが)ティラノサウルスにもこれら鳥類と同じような毛が生えていたと推測できる。この疑問を解決するには、エミューかダチョウか鶏の卵がかえる時に、卵の中の胎児の変化を観察するのがよいだろう。また、鳥類は、飛ぶ鳥が先に発生したのではなく、飛べない鳥が先に発生した後に進化して飛ぶ鳥が発生し、捕食者との関係で飛ぶ鳥の種の方が多く生き残ったのではないかと思われる。


  ティラノサウルス       エミュー          エミューの卵と雛
 2017.4.19佐賀新聞

   
          ダチョウ            鶏の雛    鶏の手羽

*13:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/422867 (佐賀新聞 2017年4月19日) 肉食恐竜ティラノの分類に新説、トリケラトプスと近縁か
 ティラノサウルスのような二足歩行する肉食恐竜は、首の長い巨大草食恐竜と同じグループに属するという従来の分類よりも、むしろ角を持ったトリケラトプスの仲間に近いとの新説を英ケンブリッジ大などのチームが19日までに英科学誌ネイチャーに発表した。現在の分類では、恐竜は鳥に似た骨盤を持つ「鳥盤類」とトカゲに似た骨盤を持つ「竜盤類」に大きく分けられる。ティラノの仲間である獣脚類は鳥の起源と考えられているものの、これまでディプロドクスなど首の長い巨大草食恐竜が属する竜盤類に分類されてきた。新説ではティラノはトリケラトプスやステゴサウルスなどの鳥盤類と近縁となる。


PS(2017年4月21日追加):リコーが、*14のように、自社設備を拡充して太陽光やバイオマス発電による電力供給を増やし、足りない分は電力会社からグリーン電力を購入して再生エネ100%を目指して、国際イニシアチブ「RE100」に参加するのは、好感の持てる可能な目標だ。私は、鉄道会社がこれを行えば、①運行コストが下がって赤字路線が減る ②環境に貢献する ③鉄道会社の送電技術が進歩し、赤字路線も送電網として機能させることができる など、多くのメリットがあると考える。

*14:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017042101001072.html
(東京新聞 2017年4月21日) 【社会】 リコー、再生エネ100%へ パリ協定の脱炭素実現で
 事務機器大手のリコーは21日、国内外の事務所や工場で使う電力を、2050年までに全て再生可能エネルギーで賄う目標を明らかにした。マイクロソフトなど世界の約90社が参加し、再生可能エネルギー100%を目指す国際イニシアチブ「RE100」に日本企業として初めて加わった。パリ協定が目指す“脱炭素社会”の実現に向け、企業レベルの取り組みを強化する狙い。リコーは自社設備を拡充して太陽光やバイオマス発電による電力供給を増やし、足りない分は電力会社からグリーン電力を購入する。最初のステップとして30年に電力消費の30%以上を再生可能エネルギーにすることを目指す。


PS(2017.4.23追加):*15のような「人工知能(AI)の登場でロボットの存在感が増したら、人間が失業する」という論調はよく聞かれるが、それは間違いだと考える。何故なら、単純作業が自動化されれば人間はより高度で面白い仕事をすることができるようになるだけで、自動化したから人がいらなくなるわけではないからだ。例えば、全自動洗濯機は、これによって洗濯をする人がいらなくなったわけではなく、機械の方が人よりうまくやれる仕事を機械がしている時間に、人はもっと生産性の高い仕事や人にしかできない仕事にシフトすることができたという効果をもたらした。また、機械はあらかじめ導入されたソフトの範囲でしか働けないため、そのソフトを作った人以上の仕事はできない。
 そのため、例えば、弁護士が判例を探すのをAIが手伝えば、判例探しを個人の弁護士の知識と経験のみに頼らなくても済むため、弁護全体の底上げができるだろう。しかし、その判例を、①どう事例に当てはめるか ②過去の判例では対応できない事例ではないのか などの判断は、人間である弁護士の価値観や能力に基づくため、AIでは代替できない。これは、医療において、診断にAIを利用する場合も同じだろう。
 なお、自動車が普及して人力車がなくなった時には、確かに人力車の車夫という仕事はなくなったが、新しい仕事も多くできたため車夫だった人は別の仕事に移っただろう。つまり、教育は、人にしかできない仕事をできる人を育て、時代の変化に応じて仕事を変わることもできる能力を与えておかなければならないのである。


  *15より  会話ロボ 日本橋三越受付ロボ ポーターロボ  EV工場のロボット

(図の説明:いろいろなロボットがあるが、触ると望む方向に進み、飛行機の搭乗券をかざすと荷物を載せて案内しながら出発Gateに行くポーターロボが空港にあると便利そうだ)

*15:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170423&ng=DGKKZO15581470R20C17A4MM8000 (日経新聞 2017.4.23) ロボットと競えますか?日本の仕事、5割代替 主要国トップ
 人工知能(AI)の登場でロボットの存在感が世界で増している。日本経済新聞と英フィナンシャル・タイムズ(FT)が実施した共同の調査研究では、人が携わる約2千種類の仕事(業務)のうち3割はロボットへの置き換えが可能なことが分かった。焦点を日本に絞ると主要国で最大となる5割強の業務を自動化できることも明らかになった。人とロボットが仕事を競い合う時代はすでに始まっている。日経とFTは、読者が自分の職業を選択・入力するとロボットに仕事を奪われる確率をはじき出す分析ツールを共同開発し、22日に日経電子版で公開した。米マッキンゼー・アンド・カンパニーが820種の職業に含まれる計2069業務の自動化動向をまとめた膨大なデータを日経・FTが再集計し、ツールの開発と共同調査に活用した。
■丸ごと自動化も
 調査の結果、全業務の34%に当たる710の業務がロボットに置き換え可能と分かった。一部の眼科技師や食品加工、石こうの塗装工などの職業では、すべての業務が丸ごとロボットに置き換わる可能性があることも判明した。ただ、明日は我が身と過度に心配する必要はない。大半の職業はロボットでは代替できない複雑な業務が残るため、完全自動化できる職業は全体の5%未満にとどまる。19世紀の産業革命に始まる製造業の歴史は、自動化への挑戦そのものだった。200年を経た今、AIの進化が新たな自動化の波を起こしつつある。マッキンゼーによるとエンジンを組み立てる工場労働者の場合、77ある業務の75%が自動化できる。部品の組み立てや製品の箱詰め作業などだ。米ゼネラル・モーターズ(GM)は世界各国に合計3万台のロボットを導入しており、うち8500台のロボットは稼働情報を共有して生産ラインに故障の前兆がないかAIが目を光らせている。自動化の流れは、難しいとされたホワイトカラーや事務系職場にも押し寄せる。米通信大手のAT&Tは顧客の注文の文書化やパスワードのリセット作業など500業務相当をソフトウエアロボットで自動化している。データ抽出や数値計算は人より高速にできるため「2017年末にはさらに3倍に増やす」(同社)計画だ。ホワイトカラーの象徴といえる金融機関でも自動化が進む。事務職では60ある業務のうちファイル作成など65%がロボットに代替できる。米ゴールドマン・サックスでは00年に600人いたトレーダーが株式売買の自動化システムに置き換わり現在は数人に減った。著名投資家のジム・ロジャーズ氏も「AIが進化すれば証券ブローカーなどの仕事は消える」と断言する。一方で意思決定や計画立案にかかわる仕事、想像力を働かせる仕事はロボットの苦手分野だ。最高経営責任者(CEO)など経営幹部には63の業務があるが、ロボット化が可能なのは業務進捗表の作成など22%にとどまる。俳優や音楽家など芸術関連の職業も65ある業務のうち自動化対象は17%にすぎない。
■人手不足の解
 今ある業務が自動化される割合を国別に比較すると、日本はロボットの導入余地が主要国の中で最も大きいことが明らかになった。マッキンゼーの試算では自動化が可能な業務の割合は日本が55%で、米国の46%、欧州の47%を上回る。農業や製造業など人手に頼る職業の比重が大きい中国(51%)やインド(52%)をも上回る結果となった。日本は金融・保険、官公庁の事務職や製造業で、他国よりもロボットに適した資料作成など単純業務の割合が高いという。米国などに比べ弁護士や官公庁事務職などで業務の自動化が遅れている面もある。米国の大手法律事務所では膨大な資料の山から証拠を見つけ出す作業にAIを使う動きが急速に広がっているが、日本はこれからだ。一部の職場ではすでに雇用が失われ始めるなどロボット化には負の側面が確かにある。それでも生産年齢人口が50年後に4割減る見通しの日本では、ロボットに任せられる業務は任せて生産性を高めることが国力の維持に欠かせない。

 この記事は日経とFTの共同プロジェクトの一環として掲載しました。

| 教育・研究開発::2016.12~ | 02:46 PM | comments (x) | trackback (x) |

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