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2014,08,15, Friday
*1-2より 2014.7.24東京新聞 *2-4より (1)フクシマ3号機の真実が、今までわからなかった筈が無い *1-1、*1-2に、フクシマ3号機の炉心溶融(メルトダウン)は、従来の推定より約五時間早い2011年3月13日午前5時半に始まり、翌2011年3月14日午前7時頃には圧力容器の底を突き破って格納容器に落ち、格納容器床のコンクリートを最大68センチ溶かして容器外殻の鋼板まで26センチに迫っていたと書かれている。しかし、本当に鋼板まで26センチなどと細かくわかるのならば、今まではわからなかったとする方が無理があり、核燃料の位置は出ている放射線量を測定すればすぐわかった筈である。 そして、3号機の爆発は核爆発のようだったため、核燃料が格納容器床のコンクリートを溶かしただけで、コンクリートにはひびも入っておらず、核燃料は容器外には出ていないとするのも無理があろう。 (2)放射能汚染水の処理について そのような中、核燃料の格納容器に地下水が流れ込み、地下水で核燃料を冷やしたため発生した高濃度汚染水は海に流し続けていたと考えられる。何故なら、そうしなければ、メルトスル―したり散らばったりした核燃料を冷やし続けることができないからである。 そして、*2-1のように、最初に導入された「アレバ」製の汚染水処理装置は、トラブルが相次ぎ3か月で停止したまま稼働しない状態となっていたので廃止することが決まったそうだが、この装置にかかった費用は「明らかにできない」とのことで、これは電気料金か税金で賄われたが、とても言えるような金額ではないということだろう。 また、*2-2のように、国と東電は、高濃度汚染水が溜まる地下坑道に金属性の管を設置し、冷却液を流して汚染水ごと凍らせる作業を続けてきたが、その効果が表れないため、先月30日から氷の投入を始め、さらに凍結の“切り札”として7日にドライアイス1tを投入しようとしたところ配管が詰まり、それ以降はドライアイスの投入を見合わせているとのことである。しかし、この結果は、やってみなくても、爆発の真実と小学校の理科を理解していれば予測できるため、この案を承認して実行した人と、そのために使った税金の金額を明らかにすべきだ。 さらに、*2-3には、政府と東電が、汚染水を減らすために、1〜4号機の周りの井戸から汚染された地下水(地下をゆっくり流れる大きな河のようなもの)をくみ上げ、浄化したうえで海に放出する計画を検討しており、そのくみ上げによって建屋への流入を1日200トン減らせると書かれているが、例えば川の水をくみ上げれば、そこに周りの水が押し寄せて水面の高さは同じになるため、地下水のくみ上げによって建屋への流入量を減らせるとは思えない。 さらに、*2-4の汚染水をせき止める海側遮水壁(水は壁では止められない)が完成すれば、地下水は横から出るか、水位が遮水壁より高くなるので、1~4号機の建屋周囲に「サブドレン(subdrain、副排水口)」と呼ぶ四十二本の井戸と護岸沿いの五本の井戸で地下水をくみ上げてタンクにまとめ、新たに整備する除染装置を通して基準値を満たせば原発前の港湾に流すことを予定しているというのも、その効果は限られるだろう。 このような中、*2-5のように、漁業関係者から「新たな風評被害につながる」などと反発が相次いだそうで、反発はもっともだが、それが「風評被害」だと言えるためには、基準値をクリアしているだけでなく、実害はないことを証明できていなければならない。 このように、汚染水対策の全貌を見れば、核燃料に触れて発生した高濃度汚染水が海洋を汚染して水産物も汚染されるという意識が低すぎ、もともと海洋放出ありきの対策を、税金を使い、「努力した」という形を造ってやっているだけのように見える。 (3)除染範囲について *3のように、環境省は、これまで除染の長期目標として個人の年間追加被曝線量を1ミリシーベルトと規定し、1時間当たりの換算推計値は0・23マイクロシーベルトと示してきたが、世界標準は個人の年間被曝線量が1ミリシーベルト以下なのであって、年間追加被曝線量ではないため、「追加」という言葉を加えたことにより年間1ミリシーベルトのごまかしがあった。また、空間放射線量は地面や溝の放射線量よりも低いため、空間放射線量を基準として使用すれば、本当の被曝線量よりも低い数値となる。 その上、空間放射線量が毎時0・3~0・6マイクロシーベルトの地域でも住民の追加被曝線量は年間1ミリシーベルトになったと説明しているが、それには個人差があり、個人で計れば不正確さも大きいため、私は、これは日本国憲法の基本的人権や健康で文化的な生活をする権利に反していると考える。 (4)除染廃棄物の中間貯蔵施設と最終処分場 (2)程度の科学的思考力の人が原発政策を進め、(3)のように国民の基本的人権や健康で文化的な生活をする権利を無視しているため、*4-1、*4-2のように、中間貯蔵施設を造るために総額3010億円の交付金拠出と言われても、その妥当性も検討しなければならない。 そもそも、中間貯蔵(過渡的で仮のもの)の名の下に、簡単な専用容器に入れたり、簡単な防水処理を施して地下に埋めたりするのでは、どの程度の放射性物質防御効果があるのか不明だ。そのため、私は、中間貯蔵ではなく、最大の防御をして、まっすぐ*4-3の最終処分場に入れるべきだと考える。 なお、*4-3では、日本学術会議が「一般の人が理解できる形」を強調したとしているが、(1)(2)(3)のようなことを許しながら、「一般の人が理解できる形」とはおこがましいにも程があり、暫定保管の保管施設も、電力各社に任せていては、原発の二の舞になるだろう。 (5)原発事故は生物(人間も含む)に影響があり、国民の大多数が脱原発である *5-1で、佐賀新聞は「原発事故で生物影響の恐れ」としか書いていないが、日米研究者が専門誌に掲載するということは、人間も含む生物に影響があることが明らかになったということである。 この事実は、原発と強い利害関係のない一般の人は事故当初から理解しており、*5-2のように、エネルギー基本計画を造る際には「パブリックコメント」で、9割超の人が 「脱原発」の意見だった。それでも、運転コストの安さを理由として原発の維持・推進を主張する人は、原発公害も含めたすべてのコストを考慮に入れて考え直すべきである。 <フクシマ3号機の真実> *1-1:http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20140807k0000m040051000c.html (毎日新聞 2014年8月6日) 福島第1原発:3号機炉心溶融、5時間早かった 東電解析 2011年3月の東京電力福島第1原発事故で、東電は6日、3号機の炉心溶融が、これまでの推定より約5時間早く起こっていたとする新たな解析結果を発表した。従来は燃料の約4割は原子炉圧力容器内に残っていると考えられていたが、炉心溶融が早まった分、燃料の損傷度合いも大きくなり、東電は大部分が格納容器の底まで溶け落ちたとみている。今後の燃料取り出し作業が困難になる可能性がある。政府の事故調査・検証委員会が12年に公表した最終報告書によると、3号機では、運転員が11年3月13日未明、非常用冷却装置「高圧注水系(HPCI)」を手動で止め、その後、6時間以上注水が中断した。その結果、同日午前9時すぎまでに炉心溶融が進んだとされた。しかし、東電が原子炉の圧力などのデータを再分析したところ、HPCIは手動停止より約6時間以上前の12日午後8時ごろには機能を失った可能性が高いことが判明。解析の結果、これまでの推定より約5時間早い13日午前5時半ごろには燃料が溶ける2200度に達したと判断した。現在の計画では、原子炉上部から遠隔操作で溶融燃料を回収する。大部分の燃料が格納容器の底まで落下していると、燃料までの距離が長くなるほか、炉内の構造物が障害になり、作業の難航も予想される。東電は「大部分が落下したという条件を加味して、いかに安全に取り出すかを考える」としている。 *1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014080702000128.html (東京新聞 2014年8月7日) 核燃料ほぼ全量落下 福島3号機 廃炉一層困難 東京電力は六日、福島第一原発事故で炉心溶融(メルトダウン)した3号機について、核燃料のほぼすべてが溶け落ちた可能性が高いとする解析結果を発表した。これまでは溶け落ちた量を六割程度とみていた。1号機でもすべての核燃料が溶け落ちたとみられており、廃炉のための核燃料の取り出しは、さらに難しくなった。解析結果によると、3号機では従来の推定より約五時間早い、二〇一一年三月十三日午前五時半に核燃料が溶け始め、翌日の午前七時ごろには圧力容器の底を突き破り、格納容器に落ちた。格納容器床のコンクリートを最大六十八センチ溶かし、容器外殻の鋼板まで二十六センチに迫っていた。これまでは最大63%の核燃料が溶け落ち、床面を二十センチ溶かしたとみられていた。3号機では一一年三月十三日未明、緊急用の冷却装置を運転員が手動で止めた後、ポンプ注水をしようとしたがうまくいかず、冷却の遅れにつながった。その後の調べで、前日の十二日午後八時ごろに冷却できなくなっていたと分かり、東電が解析し直していた。原子炉への注水で温度が下がったことから、東電の担当者は、圧力容器の中に核燃料の一部が残っているとみているが「核燃料の取り出し作業では、相当な量が落ちていることが前提となる」と説明した。一方、2号機では事故当時、炉内の圧力を下げられないまま消防車で注水したため、核燃料と水が反応して大量の水素と熱が発生。注水が中断し、核燃料の溶融を促したと分析した。解析結果と原発の新しい規制基準との関わりについて、原子力規制委員会事務局は「一般論だが、福島事故の教訓として得られる知見があれば、基準の見直しを図っていく」とした。 <汚染水への対応> *2-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140812/k10013742891000.html (NHK 2014年8月12日) 停止中の仏製の汚染水処理装置を廃止へ 東京電力は、福島第一原子力発電所で3年前に導入されたものの、トラブルが相次いで僅か3か月で停止したまま稼働しない状態となっていたフランス製の汚染水処理装置を廃止することを決めました。しかし、この装置にかかった費用は「明らかにできない」としています。東京電力は、福島第一原発の事故発生から3か月後、高濃度の汚染水がたまり続けている対策として、フランスの原子力企業「アレバ」製の処理装置を導入しました。この装置は、化学物質などを使って汚染水に含まれるセシウムなどの放射性物質を取り除くもので、東京電力は導入から3か月間で7万6000トンの汚染水を処理したとしています。しかし、運転を始めた直後からポンプが停止するなどのトラブルが相次いで停止し、その後、別の装置が導入されたこともあり、3年近くにわたって稼働していない状態が続いていました。この装置について、東京電力は、高濃度の汚染水を処理したために放射線量が高く、毎月行われる維持・管理作業のための作業員の被ばくが大きいとして廃止することを決め、近く、原子力規制委員会に申請することにしています。東京電力は「初期の汚染水処理に役だった」としていますが、この装置の導入や維持にかかった費用については「経営にかかわることで公表できない」としています。 *2-2:http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000032457.html (TVasahi 2014年8月12日) “切り札”投入したら「詰まった」東電・福島第一 福島第一原発の汚染水対策として、地下の坑道を凍らせて水を止める工事で、凍結の“切り札”として投入されたドライアイスの効果が表れていないことが分かりました。国と東電は、高い濃度の汚染水がたまる地下の坑道に金属性の管を設置し、冷却液を流して汚染水ごと凍らせる作業を続けてきました。しかし効果が表れないため、先月30日からは氷の投入を始め、今月11日朝までの間に、合わせて222tの氷を投入しました。東電は11日の会見で、凍結の効果について「分からない」としていて、目に見える成果が出ていないことを認めました。さらに、凍結の“切り札”として7日にドライアイス1tを投入しようとしたところ配管が詰まってしまい、それ以降はドライアイスの投入を見合わせているということです。一方、汚染水の発生を減らすため、原子炉建屋の周囲の井戸水をくみ上げて浄化する計画について、東電は、12日に試験的にくみ上げを始め、20日にも浄化を始めることを明らかにしました。 *2-3:http://mainichi.jp/shimen/news/20140807dde001040070000c.html (毎日新聞 2014年8月7日) 福島第1原発:建屋周辺地下水の放出計画 浄化後に海へ 福島第1原発で増え続ける汚染水を減らすため、政府と東京電力が、1〜4号機の周りの井戸から汚染された地下水をくみ上げ、浄化したうえで海に放出する計画を検討していることが、7日分かった。汚染前の地下水をくみ上げて海に放出する「地下水バイパス」は既に実施しているが、原子炉建屋近くの汚染された地下水もくみ上げ、汚染水の抑制を図る。東電などは7月から福島県漁連などにくみ上げに関する説明を始めており、了承が得られれば、9月末にもくみ上げを開始する。井戸は「サブドレン」と呼ばれ、建屋を取り囲むように設置されている。事故以前から、地下水位を調整するため掘られていた27本に加え、新たに15本を新設する。くみ上げる水は、事故直後に地面に降った放射性物質に触れ、放射性セシウムやストロンチウムの濃度が高くなっている。原子炉の冷却で生じる汚染水より放射性物質の濃度は低いが、東電は新たな浄化装置を作って放射性物質を取り除く。浄化後に海へ放出する場合は、放射性物質濃度が基準値以下であることを確認した上で判断する。汚染水は、地下水が原子炉建屋に流入することで1日当たり400トン生じている。汚染水を保管するタンクの増設は限界があり、東電はサブドレンからの地下水のくみ上げを汚染水対策の柱の一つと位置づけ、海洋放出を探ることになった。くみ上げによって、建屋への流入を1日200トン減らせるという。政府関係者は「海洋放出を検討しているが、地元の理解が得られるまでは実施しない」と話している。 *2-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014081202100004.html (東京新聞 2014年8月12日) 東電が排水設備申請 汚染地下水 放出ありき 東京電力福島第一原発の建屋周囲の井戸から放射性物質を含む地下水をくみ上げ、除染後に海に流す計画で、東電は十一日、この計画を約二年前から汚染地下水対策の有力な選択肢としていたことを明らかにした。これまでは「方針は未定」と公にせず、地元への説明を始めたのもつい最近で、「後出し」に地元の不信が強まりそうだ。東電は同日、海への排水設備の設置を原子力規制委員会に申請した。十二日にも試験的にくみ上げを始め、除染の効果を調べる。この水はタンクにため、海へは出さないという。東電の白井功原子力・立地本部長代理は十一日の記者会見で「地下水の行き先はタンクか、排出しかなかったが、方針を明確にできなかった。説明が遅れて申し訳ない」とした。東電の担当者は取材に、地下水のくみ上げを計画し始めた二〇一二年夏ごろから、海への放出は選択肢にあったと認めた。くみ上げる地下水は一日五百~七百トンに上り、ぎりぎりの運用が続く地上タンクにため続けることはできない。タンクの増設計画にも、くみ上げた地下水をためることは盛り込んでいなかった。一方で、護岸に建設中の汚染水をせき止める海側の遮水壁が完成すれば、地下水位が上がって汚染水の行き場がなくなり、地下水のくみ上げは欠かせないことは明らかだった。今回の海への放出計画では、1~4号機の建屋周囲の「サブドレン」と呼ばれる四十二本の井戸と、護岸沿いの新たな五本の井戸で地下水をくみ上げる。いったんタンクにまとめ、新たに整備する除染装置を通し、基準値を満たせば原発前の港湾に流す。東電は今秋にもくみ上げと放出を予定し、七日から地元漁協などに説明を始めた。地下水には高濃度の放射性物質が含まれていることから、反発も予想される。東電は海への放出を「地元の理解が得られなければしない」としている。 *2-5:http://www.minpo.jp/news/detail/2014080917375 (福島民報 2014/8/9) 漁業関係者反発相次ぐ 汚染水浄化放出計画 いわきで東電説明 東京電力福島第一原発事故による汚染水を浄化して海に放出する検討を始めた東電は8日、いわき市の中央台公民館で市漁協に計画の概要を説明した。出席した漁業関係者からは「新たな風評被害につながる」などの反発が相次いだ。反発により組合員向けの全体説明会開催のめども立たない状況だ。計画の説明は冒頭を除いて非公開で行われた。東電の新妻常正福島復興本社副代表らが計画内容を伝えた。終了後、矢吹正一組合長は計画の印象について「いくら浄化するとしても、もともとは汚染水。安易な気持ちで了解するわけにはいかない」と語った。出席者から反発が出たことを明かし、「漁業生命に関わる計画。地下水バイパスは苦渋の決断だったが、生命を懸ける決断となる」と述べた。新妻副代表も明確な反対意見があったことを認めた。「必要な対策と考えており、関係者に丁寧に説明していきたい」と述べ、計画ありきで進めない考えを強調した。 <除染> *3:http://www.minpo.jp/news/detail/2014081217416 (福島民報 2014年8月12日) 半数「理解得られない」 環境省の新除染方針 県内市町村アンケート 環境省が示した個人被ばく線量に基づく新たな除染方針について、汚染状況重点調査地域に指定されている県内40市町村のうち約半数の19市町村が「住民の理解を得られない」と受け止めている。11日までに行った福島民報社のアンケートで分かった。空間放射線量「毎時0.23マイクロシーベルト」が除染の目安として浸透しているなどの理由が目立ち、「国が責任を持って住民に説明すべき」とする指摘も出た。アンケートは6日から11日にかけて実施した。個人被ばく線量に基づいた新たな除染方針に、住民理解が得られるかどうか聞いた市町村別の回答は【表】の通り。「理解が得られない」とした19市町村からは、「毎時0.23マイクロシーベルトが除染の目安として住民に認識されており、方針変更は混乱を招く」とする意見が出た。方針を転換した国が説明の前面に立つべきだとする声も聞かれた。本宮市は「国が直接出向いて住民説明会を開くべき」と注文。同省が新方針で放射線防護策を講じるよう住民に求めていることに対し、西郷村は「(放射線の)自主管理を任せるのは無責任ではないか」と批判した。「どちらでもない」との答えが16市町村に上った。個人によって放射線に対する考え方が異なるため、理解が得られるかどうか判断がつかないとした回答が複数あった。三島町は国に対し、「住民の不安をあおらないよう取り組んでほしい」と求めた。一方、「理解を得られる」としたのは須賀川、相馬、伊達、塙、石川の5市町。「除染の効率化が期待できる」などの意見が目立った。須賀川市は「毎時0.23マイクロシーベルト」について、特定の条件の下で算出した値にすぎないと指摘。個人被ばく線量に基づいた新方針について「より実態に合った考え方」と評価した。 ※環境省の個人被ばく線量に基づく新除染方針 政府は従来、除染の長期目標として個人の年間追加被ばく線量を1ミリシーベルトと規定、1時間当たりの換算推計値は0・23マイクロシーベルトと示してきた。しかし、環境省は1日、福島など4市で行った調査で、空間放射線量が毎時0・3~0・6マイクロシーベルトの地域で住民の追加被ばく線量が年間1ミリシーベルトになったと説明。「0・23マイクロシーベルト」は除染目標でないとして、年間1ミリシーベルトの目標を維持しつつ空間線量から個人被ばく線量に基づいた除染を重視する新方針を示した。 <除染廃棄物の中間貯蔵施設> *4-1:http://qbiz.jp/article/43619/1/ (西日本新聞 2014年8月9日) 中間貯蔵施設、福島に3000億円提示 政府、交付金額で大幅譲歩 東京電力福島第1原発事故に伴う除染廃棄物を保管する国の中間貯蔵施設建設をめぐり、石原伸晃環境相と根本匠復興相は8日、福島県郡山市で佐藤雄平知事や候補地の双葉、大熊両町長と会談し、施設使用の30年間で総額3010億円の交付金を拠出する方針を提示した。中間貯蔵施設の交付金額は政府と福島側の交渉で最大の焦点。来年1月の施設供用開始を目指していたが、金額などをめぐり事態は硬直。政府がこれまで水面下で示してきた金額を3倍に増やし大幅に譲歩したことで、難航している交渉が進展する可能性が出てきた。会談で、石原環境相は「除染と復興を進めるのに必要不可欠な施設。今後、議会で国の対応方針を説明したい。それを踏まえて判断いただきたい」と理解を求めた。提示内容について、佐藤知事は「県として重く受け止める。今後、精査していく」と応じた。大熊町の渡辺利綱町長は「地元の要望をのんだ形だ」、双葉町の伊沢史朗町長は「額が出たことについては前進だ」と語った。3010億円の内訳は、大熊、双葉両町のほか県や両町以外の県内市町村を対象に新たに創設する「中間貯蔵施設交付金(仮称)」に1500億円。県全域の復興を効果的に進める事業に利用できる「原子力災害からの福島復興交付金(同)」を新設し、1千億円。電源立地地域対策交付金の増額分として510億円。交付金の総額は既存の立地交付金も加えると5千億円以上になる。福島県と地元2町は今後、既に政府が示している用地の賃貸借認可や県外最終処分の法制化など他の条件と合わせて、受け入れ是非を判断する。 ■中間貯蔵施設 東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た福島県内の汚染土壌などを最長30年間保管する施設。第1原発周辺の約16平方キロが候補地で、約3千万トンの貯蔵が可能。放射性セシウム濃度に応じ、1キログラム当たり10万ベクレル超の焼却灰や廃棄物は専用容器に入れて建屋で保管。10万ベクレル以下は防水処理などをして地下に埋める。福島県外で最終処分する法制化を国は約束しているが、最終処分場確保のめどは立っていない。 *4-2:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201408/20140809_61015.html (河北新報 2014年8月9日) 中間貯蔵 福島側「内容を精査」 慎重姿勢崩さず 福島第1原発事故に伴う除染廃棄物の中間貯蔵施設建設計画で、国が8日、新たな交付金の総額を3010億円と提示した。福島県と大熊、双葉両町が挙げた受け入れ条件に、国としては全て回答した形で、今後の焦点は福島側の対応に移る。佐藤雄平知事と両町長は、交付金について「前進だ」と評価しつつ、受け入れの是非は慎重に判断していく姿勢を見せた。佐藤雄平知事は会談後の記者会見で「大熊、双葉両町と内容をしっかり精査する。ボールは県にもあり、国にもある」と述べ、即座に受け入れ是非の判断には入らない考えを示した。大熊町の渡辺利綱町長、双葉町の伊沢史朗町長も同じ構えで、渡辺町長は「自由度が高いと言っても、どの程度か分からない。精査する」、伊沢町長は「交付金の中身を一つ一つ検討していく」と語った。国は来年1月の搬入開始を目指しており、9月には内閣改造も控える。石原伸晃環境相は、県議会や両町議会に説明したいとの意向を示し、「早急に検討し、受け入れの是非を判断してほしい」と求めた。ただ、5~6月に開かれた住民説明会では、交付金の規模よりも、用地補償の具体額提示を求める声が多く出た。国の最終回答では、用地補償について「受け入れ判断後に、具体的なイメージを示す」との内容にとどまっている。大熊町の渡辺町長は「原発事故前の評価で用地補償すべきだとの意見は多い。しっかりと要望していく」と話す。双葉町の伊沢町長は、双葉、大熊の両町議会が7月末、「拙速な判断は避けるべきだ」と両町長に申し入れたことを挙げ、「議会の意向を受け止め、慎重に対応する」と語った。 ◎住民不満「使い道分からぬ」「用地補償提示を」 中間貯蔵施設の建設受け入れを求め、国が地元側に3000億円規模の交付金の拠出を提示したことに対し、候補地の福島県大熊、双葉両町の住民からは「具体的な使い道が明らかにされていない」「問題は交付金だけではない」などと不満の声が上がり、住民目線に立った対応を求めた。大熊町から会津若松市に避難している武内正則さん(64)は「いつ町に戻れるか分からないのに、交付金が入っても積んでおくだけだ。放射線量が高くて帰還を断念している町民の方が多いのに、県も町も住民を見ていない」と交付金そのものを批判した。交付金の額に注目が集まる状況に対し、候補地の地権者の一人で大熊町から会津若松市に避難する根本充春さん(74)は「住民にとって重要なのは用地補償の問題。具体的な金額を早急に示してほしい。住民説明会をもう一度開く必要がある」と訴える。補償の行方を懸念する声も聞かれた。双葉町からいわき市に避難する中谷祥久さん(34)は「自宅は施設候補地の区域外にある。町民間で補償に格差が生まれないようにしてほしい」と望んだ。福島県知事選をにらんだ動きと見る向きもある。同町からいわき市に避難する男性(56)は「佐藤雄平知事に自民党が相乗りするためのお土産だ。知事に実績をつくらせる意図があるのだろう」と勘ぐった。 *4-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014081301001643.html (東京新聞 2014年8月13日) 「核のごみ」処分、年内に提言も 学術会議、「暫定保管」報告基に 日本学術会議は13日、原発から出る「核のごみ」の最終処分に関する検討委員会を開いた。取り出し可能な場所での「暫定保管」の課題を整理した二つの分科会の報告書案を基に、早ければ年内にも国への新たな提言をまとめる方針を確認した。最終処分場が決まらない問題で、今田委員長(東工大名誉教授)は国民的議論の喚起を期待。「一般の人が理解できる形」を強調。報告書案は、新たに生じる高レベル放射性廃棄物への対策を明確にしないままの原発再稼働や新増設は「将来世代への無責任を意味し、容認できない」と指摘。暫定保管の保管施設は電力各社の管内での建設が望ましいとしている。 <国民の大多数が脱原発> *5-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10208/94111 (佐賀新聞 2014年8月15日) 原発事故で生物影響の恐れ、日米研究者が専門誌に 【ワシントン共同】東京電力福島第1原発事故に伴って放出された放射性物質が、周辺の鳥類や昆虫に遺伝子異常を引き起こしている可能性があるとする論文を、日本や米国の研究者が14日、米専門誌ジャーナル・オブ・へレディティーに発表した。米サウスカロライナ大のティモシー・ムソー教授は、1986年のチェルノブイリ原発事故後に周辺でツバメの羽毛に白い斑点ができる異常が見つかったと指摘。福島でも白斑のあるツバメが見つかったとの報告があることから「遺伝子レベルの分析や生態系への影響など広範で長期的な調査が必要だ」と訴えた。 *5-2:http://digital.asahi.com/articles/ASG5L0FYJG5KULFA00K.html (朝日新聞 2014年5月25日) 「脱原発」意見、9割超 エネ計画のパブリックコメント 安倍内閣が4月に閣議決定したエネルギー基本計画をつくる際、国民に意見を募った「パブリックコメント」で、脱原発を求める意見が9割を超えていた可能性があることがわかった。朝日新聞が経済産業省に情報公開を求め、開示された分について原発への賛否を集計した。経産省は、そうした意見をほとんど反映しないまま、基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた。経産省が昨年12月6日に示した基本計画の原案に対し、対象の1カ月間にメールやファクスなどで約1万9千件の意見が集まった。経産省は2月に代表的な意見を発表したが、原発への賛否は集計しなかった。朝日新聞はすべての意見の公開を求め、経産省は、個人情報保護のために名前を消す作業が終わった2109件分のメール(2301ページ)を開示した。受け付け順で開示したとしており、残りの開示の可否は9月までに決めるという。内容は、再稼働反対や原発の廃炉を求める「脱原発」が2008件で95・2%、「原発の維持・推進」は33件で1・6%、賛否の判断が難しい「その他」が68件で3・2%だった。脱原発の理由では「原発事故が収束していない」「使用済み核燃料の処分場がない」との声が多かった。原案が民意に背いているとの批判もあった。一方、原発の維持・推進を求める声は、運転コストの安さなどを理由にした。民主党政権は2012年に「30年代に原発稼働ゼロ」の方針を決めた。だが、安倍政権はこれを白紙に戻し、今回の基本計画で原発を再稼働させる方針を明確にした。原発への賛否を集計しなかったことについて、茂木敏充経産相は2月の国会で「数ではなく内容に着目して整理を行った」と説明している。 ◇ 〈パブリックコメント〉 行政機関が政令などを定める際に広く一般から意見を募る仕組み。ウェブサイトなどで原案を公開し、電子メールやファクスで意見を集める。2005年に改正された行政手続法は「意見を十分に考慮しなければならない」と定めている。 PS(2014.8.16追加):*6のように、規制委は、トレンチにたまっている汚染水が海洋に流れ出す恐れを「最大のリスク」と位置付けているそうだが、汚染水は既に海洋に流れ出しているので、何を「最大のリスク」としているのか不明だ。また、東電の白井原子力立地本部長代理が「十分な検討が不足していた」「当初予定していたことができないことはあり得る」としているのも、熱交換の初歩的な原理すらわかっていない人が原子力立地担当者とは呆れるほかない。 *6:http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140814/dst14081408090001-n2.htm (産経ニュース 2014.8.14) 福島第1、凍らない「氷の壁」断念か 別工法も 19日に規制委が検討 東京電力福島第1原発海側のトレンチ(地下道)に滞留する汚染水を遮断するための「氷の壁」が3カ月以上たっても凍らない問題で、7月末から投入している氷やドライアイスに効果が見られないことから、政府が「氷の壁」の断念を検討し、別の工法を探り始めたことが13日、分かった。政府関係者によると、19日に原子力規制委員会による検討会が開かれ、凍結方法の継続の可否について決めるという。氷の壁は、2号機タービン建屋から海側のトレンチへ流れ込む汚染水をせき止めるため、接合部にセメント袋を並べ、凍結管を通し周囲の水を凍らせる工法。4月末から凍結管に冷媒を流し始めたものの、水温が高くて凍らず、7月30日から氷の投入を始めた。しかし氷を1日15トン投入しても効果がなく、今月7日からは最大27トンに増やしたが、凍結が見られなかった。12日までに投じた氷は計約250トンに上る。ドライアイスも7日に1トン投じたものの、小さい配管に詰まってしまい投入を見合わせ、12日に再開した。氷の壁が凍結しないことは、規制委の検討会でも有識者から指摘されており、「コンクリートを流し込んでトレンチを充(じゅう)填(てん)すべきだ」との意見があった。政府関係者によると、19日に予定されている検討会では、氷投入の効果を評価した上で、効果がないと判断されれば代替工法の作業に着手するという。規制委は、トレンチにたまっている汚染水が海洋に流れ出す恐れがあることから「最大のリスク」と位置付けており、早期解決を目指している。特に凍結管の中に冷媒を通して水分を凍らせる技術は、1~4号機周囲の土中の水分を凍らせる「凍土遮水壁」と同じで、氷の壁が凍土壁にも影響しないか懸念を示している。氷やドライアイスの投入について、東電の白井功原子力・立地本部長代理は「十分な検討が不足していたという批判はその通り。失敗を次の糧にしていく。当初予定していたことができないことはあり得る」と話している。
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2014,08,07, Thursday
2014.6.23西日本新聞より フクイチ事故の汚染 薩摩川内原発・玄海原発過酷事故時の汚染範囲 (1)想定内だったフクシマ原発事故 *1のように、東電福島第一原発事故の3年前、勝俣元会長が出席した社内会議で、高さ14メートルの大津波が襲う可能性があると報告されていたが、これまで、勝俣元会長は大津波の可能性を知らなかったと供述していた。これは、法律上、過失は故意より責任が軽いからである。 また、これまでの東電の説明では、「大津波の可能性は原子力部門で試算され、武黒元副社長で留まって、勝俣元会長や他部門の幹部には知らされなかった」としていたそうだが、仮にそれが事実であれば、東電の内部報告システムが問題なのだし、判断する立場になくても現場担当者や技術者からの事故リスクに関する注意喚起は必要であるため、権限が無いから何もしなかったという人に責任がないとするのも変である。つまり、責任回避の構図が目立ち、これでよいわけがない。 (2)原発が人体に与える公害の科学的証拠が、次々と出つつある *2-1に書かれているように、フクシマ周辺で、イネ、チョウ、ウグイス、ニホンザルなどのいろいろな動植物に異常が発見され、研究者は原発事故による被曝の影響と指摘している。そして、放射線被曝をすれば、異常が出るのは当たり前であるため、これは素直に受け入れるべき調査結果だ。 特に、*2-1に書かれているように、土壌汚染レベルが高いところほど、ニホンザルの体内のセシウム蓄積レベルが高く、正常範囲より白血球数、赤血球数ともに減少しており、白血球数は大幅に減少していたというのは、チェルノブイリの子どもたちにも起こった現象だそうだ。また、*2-2に書かれているように、事故を起こしていない玄海原発周辺に「白血病」患者が全国平均の11倍も多いことからも、「原発と白血病には科学的に関連がある」と考える方が自然である。 (3)エネルギーのベストミックスという考え方で市場経済を放棄 このような中、*3-2のように、自民党の電力安定供給推進議員連盟は、2014年7月31日に、原子力規制委員会で原発の安全審査を迅速に進めることやエネルギーのベストミックスを早期に策定することなどを求める提言書をまとめて茂木経産相に申し入れたそうだ。そして、*3-1、*3-3のように、政府は、2014年8月1日、九電川内原発の再稼働を要請する文書を、同県の伊藤知事の求めに応じて提出することを決めたそうだが、これでは安全審査との関係が本末転倒である。 その提言は、原発停止による火力発電の燃料コスト増が年間約3・6兆円に達し経済に悪影響を与えているとしているが、これは、原発による公害を軽視し、原発への国費投入を無視した議論だ。また、エネルギーのベストミックスを市場原理に依らずに決めるのは、市場原理では原発は生き残れないため、市場主義を放棄して計画経済に移行するもののようである。 (4)「死の商人」をするのは、道義的・経済的にマイナス このように、日本での原発新設はおぼつかないため、*4のように、日立は2014年7月30日に、リトアニア政府と原発運営会社設立に向けた協議を再開することで合意したそうだ。しかし、日本が、自然エネルギーの技術ではなく原発技術を売り込むのは、今後の世界の潮流に逆らっており、見識の低い短期的利益目的の「死の商人」と言わざるを得ない。 (5)原子力規制委員会の審査は安全性の根拠にはできない *5-1のように、原子力規制委員会の田中俊一委員長は「薩摩川内原発は、基準への適合は審査したが、安全だとは言わない」と述べている。それでは、何のために審査したのかが不明であるため、「どういう基準に従って審査した結果、どこが十分で、どこが十分でない」という審査報告書を委員長の署名入りで政府及び国会に提出すべきで、それに基づいて初めて、「不十分な点はそれでいいのか」という議論ができる筈だ。 しかし、2014年8月8日に追加した*5-2のとおり、経産省の赤羽副大臣は、審査報告書も提出されないまま、8月7日に行われた衆院原子力問題調査特別委員会の閉会中審査で、「規制委が適合すると認めた場合は粛々と再稼働を進めるのが大方針」とした。これは、規制委が適合すると認めたからといって安全を保証するものでないということの意味を、経産副大臣自身が理解していないということであり、その理解力不足には問題がある。 (6)廃炉と最終処分場の見通しがない *6のように、2014年7月30日、環境省が栃木県内の指定廃棄物最終処分場候補地として塩谷町寺島入の国有地を選定して見形町長に提示したが、そこは名水の里で地下水の豊富な場所であり、環境省の自然への無理解には呆れた。 東電福島第一原発事故で発生した放射性セシウム濃度が1キログラム当たり8000ベクレルを超える焼却灰、下水汚泥、稲わらなどの指定廃棄物は、2014年6月末現在、12都県で計約15万トンに上るそうだが、これを県毎に最終処分場を新設して分散すれば、それぞれの管理は杜撰になることが明らかだ。そのため、フクイチ近くの帰還困難区域に集めて、しっかり管理するしかないと考える。 <想定内だったフクシマ> *1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014080102100003.html (東京新聞 2014年8月1日) 【福島原発事故】大津波の恐れ報告 東電元会長出席の会議 東京電力福島第一原発の事故が発生する約三年前、東電の勝俣恒久元会長(74)が出席した社内の会議で、高さ一四メートルの大津波が福島第一を襲う可能性があると報告されていたことが、三十一日に公表された東京第五検察審査会の議決で分かった。これまでの東電の説明では、勝俣氏は大津波の可能性を知らないとされ、本人も検察に同趣旨の供述をしていたが、検審は「信用できない」と否定、起訴相当と判断した。東京地検は同日、議決を受け、再捜査することを決めた。議決によると、この会議は二〇〇七年七月の新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発(新潟県)が被災したのを受け、〇八年二月に開かれ、福島第一の津波想定を七・七メートル以上に変更する資料が配布された。出席した社員から「一四メートル程度の津波が来る可能性があるという人もいて、考える必要がある」との発言もあった。検察側の捜査資料にあった会議のメモなどから、検審はより詳しい報告や議論もあったと判断。出席していた勝俣氏は大津波の可能性を知りうる立場にあり、「東電の最高責任者として各部署に適切な対応策を取らせることも可能な地位にあった」と結論付けた。これまでの東電の説明では、大津波の可能性は原子力部門で試算され、武黒一郎元副社長(68)でとどまり、勝俣氏や他部門の幹部には知らされなかった、としていた。この会議には武黒元副社長も出席。報告を聞き「(東北電力)女川(原発)や(日本原子力発電)東海(第二原発)はどうなっている」と尋ねていたことが議決から明らかになった。東海第二原発は〇七年に茨城県が公表した津波想定に基づき、ポンプ室の側壁の高さを四・九メートルから六・一メートルにかさ上げ。東日本大震災で五・四メートルの津波が襲ったが、冷却に必要な電源を確保でき、福島第一と明暗を分けた。歴代幹部のうち勝俣、武黒両氏と、武藤栄元副社長(64)の三人が起訴相当と議決された。津波の情報を知っても、判断する立場にない二人は不起訴相当、対策を決める権限がない一人は不起訴不当と議決された。起訴相当の三人については、仮に地検が再び不起訴としても、別の市民による検審が起訴議決すれば、強制起訴される。 <原発公害> *2-1:http://toyokeizai.net/articles/-/13516 (原発と被災地 岡田 広行 :東洋経済 編集局記者) 福島原発周辺で「動植物異常」相次ぐ、チョウやニホンザルなどに異常、研究者が被曝影響と指摘 福島市や全村民が避難を余儀なくされている福島県飯舘村など、福島第一原原子力発電所からの放射性物質で汚染された地域で、動物や植物に異常が多く見られることが研究者による調査で明らかになった。3月30日に東京大学内で開催された「原発災害と生物・人・地域社会」(主催:飯舘村放射能エコロジー研究会)で、東大や琉球大学などの研究者が、ほ乳類や鳥類、昆虫、植物から見つかった異常について報告した。原発事故による生物への影響についての研究報告は国内でもきわめて少ないうえ、4人もの研究者が一般市民向けに報告したケースはおそらく初めてだ。 ●稲の遺伝子に異変 まず生物への影響に関してシンポジウムで最初に報告したのが、筑波大大学院生命環境科学研究科のランディープ・ラクワール教授。「飯舘村での低レベルガンマ線照射に伴う稲の遺伝子発現の観察」というテーマで研究成果を発表した。ラクワール教授は、つくば市内の研究所で育てた稲の苗を、福島第一原発から約40キロメートルに位置する飯舘村内の試験農場に持ち込んだうえで、放射線の外部被曝にさらされる屋外に置いた。そして生長が進んでいる根本から3番目の葉をサンプルとして採取し、ドライアイスを用いて冷凍保管したうえで、つくばに持ち帰った。その後、「半定量的RT-PCR法」と呼ばれる解析方法を用いて、特定の遺伝子の働きを観察したところ、低線量のガンマ線被曝がさまざまな遺伝子の発現に影響していることがわかったという。ラクワール教授らが執筆した研究結果の要旨では、「飯舘村の試験農場に到着してから初期(6時間後)に採取したサンプルではDNA損傷修復関連の遺伝子に、後期(72時間後)ではストレス・防護反応関連の遺伝子に変化が認められた」と書かれている。「稲に対する低線量被曝の影響調査は世界でも例がない。今後、種子の段階から影響を見ていくとともに、人間にも共通するメカニズムがあるかどうかを見極めていきたい」とラクワール教授は話す。動物に現れた異常については、3人の研究者が、チョウ、鳥、サルの順に研究成果を発表した。チョウについて研究内容を発表したのが、琉球大学理学部の大瀧丈二准教授。「福島原発事故のヤマトシジミへの生物学的影響」と題した講演を行った。大瀧准教授らの調査は、日本国内にごく普通に見られる小型のチョウであるヤマトシジミを福島第一原発の周辺地域を含む東日本各地および放射能の影響がほとんどない沖縄県で採集し、外部被曝や内部被曝の実験を通じて生存率や形態異常の有無を調べたものだ。大瀧准教授らの研究結果は昨年8月に海外のオンライン専門誌「サイエンティフィックリポート」に発表され、フランスの大手新聞「ル・モンド」で大きく報じられるなど、世界的にも大きな反響があった。 ※原著論文は右に掲載 http://www.natureasia.com/ja-jp/srep/abstracts/39035 ※日本語の全訳は右に掲載(研究室のホームページ) http://w3.u-ryukyu.ac.jp/bcphunit/kaisetsu.html ●飼育実験で被曝の影響を検証 大瀧准教授は研究の特徴として、1.事故の初期段階からの調査であること、2.事故の影響のない地域との比較研究であること、3.飼育実験により、子世代や孫世代への影響を評価していること、4.外部被曝実験および内部被ばく実験を実施したこと――などを挙げた。 事故から2カ月後の2011年5月および半年後の9月に福島県などからヤマトシジミを沖縄に持ち帰ったうえで、子ども世代や孫世代まで飼育を継続。一方で沖縄で採集したヤマトシジミにセシウム137を外部照射したり、セシウム137で汚染された野草(カタバミ)を、沖縄で採集したヤマトシジミの幼虫に食べさせた。ヤマトシジミの採集地点は東京都や茨城県(水戸市、つくば市、高萩市)、福島県(福島市、郡山市、いわき市、本宮市、広野町)、宮城県(白石市)の計10カ所で、研究に用いたヤマトシジミの数は5741匹に上った。 大瀧准教授の研究では、驚くべき結果が判明した。羽が伸びきっていない羽化不全個体。口吻も巻かれていない(福島市内で採取したエサを食べた個体。大瀧准教授提供)2011年5月の採集で、ほかの地域と比べて福島県内のヤマトシジミでは、羽のサイズが小さい個体が明らかに多いことがわかったのだ。「地面の放射線量と羽のサイズを比較したところ逆相関が見られ、線量が上がっていくにつれて羽のサイズが小さくなる傾向が見られた」と大瀧准教授はデータを用いて説明した。また、捕獲した個体の子どもについて、「福島第一原発に近い地域ほど羽化までの日数が長くなる傾向が見られ、成長遅延が起きていたことがわかった」(大瀧准教授)。「親に異常があった場合、子どもでも異常率が高くなる結果も出た」とも大瀧准教授は語った。ただし、「これだけの実験では、遺伝性(異常がDNA損傷に基づくもの)であると断言するには十分な証拠とは言えない」とも説明した。 ●被曝した個体で生存率が低下 外部から放射線を照射した実験(外部被曝の検証)では、放射線を多く照射した個体ほど羽根が小さくなる傾向が見られ、生存率が低くなっていた。また、汚染されたカタバミを幼虫に食べされた内部被曝に関する実験でも、比較対照群である山口県宇部市の個体と比べて福島県内の個体で異常が多く見られ、生存率も大幅に低くなっていた。内部被曝の研究では驚くべき結果も出た。「沖縄のエサを食べた個体と比べ、福島県内の個体は死に方でも明らかな異常が多く見られた」と、大瀧准教授は写真を用いて説明した。さなぎの殻から抜けきれずに死んだり、成虫になっても羽が伸びきれない事例などショッキングな写真を紹介。「(生体の)微妙なバランスが狂ってしまうと死亡率が上がるのではないか」(大瀧准教授)と指摘した。続いて東京大学大学院農学生命科学研究科の石田健准教授は、「高線量地帯周辺における野生動物の生態・被ばくモニタリング」と題して講演した。 ●通常のウグイスなら、見たこともない「おでき」が… 石田准教授らは、福島県阿武隈高地の中でも特に放射線量が高く、現在、「帰還困難区域」に指定されている浪江町赤宇木地区(福島第一原発から約25キロメートル)で2011年8月に野生のウグイス4羽を捕獲したところ、「うち1羽から今までに私自身、ウグイスでは見たこともないおできが見つかった」(石田准教授)。これまで350羽あまりを捕獲した経験のある石田准教授が驚くほどの病状で、このウグイスには血液原虫も寄生していた。また、捕獲したウグイスの羽毛を持ち帰って放射線量を測定したところ、セシウム134と137を合わせて最高で約53万ベクレル/キログラムもの汚染が判明した。石田准教授はその後も自宅のある埼玉県横瀬町と福島を15回にわたって行き来し、鳥類の定点観測や自動録音による野生動物のモニタリングを続けている(なお、研究成果の一部は、中西友子・東大大学院教授らの編纂した英文書籍で、シュプリンガー社から3月に出版された。電子ファイルは誰でも無料で自由に読める。(こちらからご覧いただけます) ●ニホンザルの白血球数が減少 そして4人目の講演者として登壇したのが、羽山伸一・日本獣医生命科学大学教授。「福島県の野生二ホンザルにおける放射性セシウムの被ばく状況と健康影響」と題した講演をした。 28年にわたってサルの研究を続けている羽山教授は、ニホンザルが北海道と沖縄県を除く全国に生息している点に着目。「世界で初めて原発の被害を受けた野生の霊長類」(羽山教授)として、ニホンザルは被曝による健康影響の研究対象としてふさわしいと判断した。羽山教授は、約3000頭近くが生息する福島市内(福島第一原発から約60キロメートル)で農作物被害対策のために個体数調整で捕獲されたサルを用いて、筋肉に蓄積されているセシウムの量を継続的に調査。性別や年齢、食性との関係などについて検証した。 ●福島と青森のサルを比較すると… 11年4月から13年2月にかけて福島市内で捕獲された396頭のサルと、青森県で12年に捕獲された29頭を比較。土壌中のセシウムの量と筋肉中のセシウム濃度の関係を検証した。その結果、「土壌汚染レベルが高いところほど、体内のセシウム蓄積レベルも高い傾向があることがわかった」(羽山教授)。また、木の皮や芽を食べることが多く、土壌の舞い上がりが多い冬期に、体内の濃度が上昇していることも判明したという。なお、青森県のサルからはセシウムは検出されなかった。「注目すべきデータ」として羽山教授が紹介したのが、血液中の白血球の数だ。避難指示区域にならなかった福島市内のサルについては、外部被ばくは年間数ミリシーベルト程度の積算線量にとどまるうえ、内部被曝量も10ミリグレイ程度にとどまるとみられると羽山教授は見ている。にもかかわらず、ニホンザルの正常範囲より白血球数、赤血球数とも減少しており、白血球は大幅に減少していた。「特に気になったのが2011年3月の原発事故以降に生まれた子どものサル(0~1歳)。汚染レベルと相関するように白血球の数が減っている。造血機能への影響が出ているのではないかと思われる」(羽山教授)という。シンポジウム終盤の討論で羽山教授はこうも語った。「本日の講演内容がにわかに人間の健康への研究に役に立つかはわからない。ただし、現在の福島市内のサルの被曝状況は、チェルノブイリの子どもたちとほぼ同じ水準。チェルノブイリの子どもたちに見られる現象がニホンザルにも起こったことが明らかにできればと考えている」。 *2-2:http://www.asyura2.com/09/genpatu6/msg/396.html (浦田関夫:唐津市議のブログより転載 2010年2月2日) 玄海原発(佐賀県)周辺は「白血病」患者が全国平均の11倍も多い <要点のみ> 昨日の私の一般質問で、玄海原子力周辺で白血病が多いことを質問しました。厚生労働省の「人口動態調査」によると、人口10万人に対し全国は6.0人、佐賀県は9.2人、唐津保健所管内は16.3人、玄海町は61.1人と全国より11倍も多いことが判ったからです。白血病が多い原因は明確ではありませんが、ドイツでは「因果関係」を政府として認めています。テレビを見ていた人から、「なぜ唐津市や佐賀県はこの問題を公表しないのか」と指摘する電話がありました。その人は、「佐賀県と玄海町の比率4倍は誤差の範囲ではない」ことを強調され、興奮気味に電話で話されました。この問題については「専門家に調査をお願いしたい」と総務部長は答弁しました。でも よく考えたら、白血病が増えるのはあたりまえ。だって、原発って周辺に放射能をバラまいてるんですから・・・・・いくら微量って言ってもね。(以下略) <再稼働を進める理由> *3-1:http://mainichi.jp/select/news/20140802k0000m010038000c.html (毎日新聞 2014年8月1日) 川内原発:再稼働要請書、政府が提出へ 政府は1日、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働を要請する文書を、同県の伊藤祐一郎知事の求めに応じて提出することを決めた。菅義偉官房長官は同日の記者会見で「経済産業省で適切に対応するのは当然だろう。再稼働にあたっては立地自治体の関係者の理解が大事だ。国もしっかり説明していく」と述べた。 *3-2:http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/npp_restart/52814.html (福井新聞 2014年7月31日) 原発再稼働の審査迅速化を提言 自民党議員連盟が政府に 自民党の電力安定供給推進議員連盟(細田博之会長)は31日、原子力規制委員会で原発の安全審査を迅速に進めることや、エネルギーのベストミックスを早期に策定することなどを求める提言書をまとめ、茂木敏充経済産業相に申し入れた。提言では、原発停止による火力発電の燃料コスト増が年間約3・6兆円に達し経済に悪影響を与えているとして、原発の早期再稼働は「国家的急務」と指摘。規制委の安全審査を「効率的かつ迅速に行う必要がある」と審査のスピードアップを求めた。エネルギーのベストミックスを早期に策定し、原発の新増設・リプレース(置き換え)の必要性を明確にすることや、高レベル放射性廃棄物の処分場を国が責任をもって具体化することも盛り込んだ。細田会長と高木毅事務局長らが経産省を訪れ、茂木大臣に提言書を手渡した。茂木大臣は「電力の安定供給、コスト低減などさまざまな要素をバランスよく組み合わせたエネルギーのベストミックスを、早急に策定する必要がある」との考えを示した。再稼働の迅速化については「安全性をきちんと早期に確認することがきわめて重要。審査の適正な進ちょくを図るよう、規制委や事業者に要請している」と述べた。同議連による政府への提言は3度目で、4月に国のエネルギー基本計画が策定されてからは初めて。高木事務局長は「原発は重要なベースロード電源と基本計画で位置付けられており、安全性が確認された原発は速やかに再稼働させることが重要だ。茂木大臣にも理解していただけたと思う」と述べた。この日は菅義偉官房長官にも提言書を提出した。近く原子力規制委員会にも申し入れる。 *3-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140802&ng=DGKDASDC0100A_R00C14A8PP8000 (日経新聞 2014.8.2) 川内原発再稼働 地元同意へ手続き動く 経産省、文書化へ 原子力発電所の再稼働に向けて地元同意の手続きが動き出した。鹿児島県の伊藤祐一郎知事は1日、九州電力川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働の必要性を文書で示すよう経済産業省に要請、経産省はこれに応じる意向だ。地元同意の手続きは、国が地元へ理解を求めながら進むことになりそうだ。原子力規制委員会が川内原発の安全審査で事実上の「合格」を与えてから初めて記者会見を開いた伊藤知事。「文書の提出を了承していただかないと県は再稼働の地元同意に動きにくい。再稼働という極めて大きなテーマを地方公共団体に委ねるのは間違いだ」と強い口調で国に迫った。九州電力の瓜生道明社長も7月31日に「安全性をどう評価するかは規制委、原発の必要性については国ということになる」と国の関与を求めた。経産省は再稼働の必要性を説く文書を作る意向だ。原発が安価に動かせる電源で、温暖化ガスも放出しない利点を強調する見通し。8月下旬以降の提出を想定する。菅義偉官房長官も1日の記者会見で「文書でということなので、経産省が適切に対応する」と述べた。鹿児島県は9月下旬以降に住民向け説明会を開く見込み。規制委が審査内容を解説するほか、経産省も要請があれば再稼働の必要性を説明する。文書はこの会などを通じ配ることになりそうだ。これまで伊藤知事は県議会などで「規制委が地元向けに説明会を開けば同意は県と薩摩川内市だけで十分」と繰り返してきた。だが実際に再稼働が近づき、重大事故が起きた場合に避難が必要な30キロ圏の自治体から同意の意思表示に参加できない不満が強まっている。30キロ圏にある姶良(あいら)市議会は7月、再稼働に反対し廃炉を求める意見書を可決した。市は九電と防災協定を結び再稼働に反対していなかった。だが30キロ圏の自治体を同意手続きから遠ざける知事の姿勢に反発を強めている。知事は地元の反発を抑えるには国の関与が必要と、より現実的な姿勢をとり始めた。経産省が文書を出すだけで周辺の反発が収まるかはわからず、手探りの状況が続きそうだ。 <死の商人> *4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140731&ng=DGKDASDZ3006P_Q4A730C1TJ1000 (日経新聞 2014.7.31) 日立、リトアニアと原発協議を再開 運営会社を設立へ 日立製作所は30日、リトアニア政府と原子力発電所を運営する事業会社設立に向けた協議を再開することで合意したと発表した。日立は2011年に同国の原発事業の優先交渉権を獲得したが、12年の国民投票で建設反対が過半数を占めて計画が中断していた。ウクライナ危機を受け、リトアニア政府はエネルギーのロシア依存脱却を狙って再び原発計画を始動する決断に踏み切った。日立とリトアニアのエネルギー省が協議を始めるのは、同国北東部に建設するビサギナス原発。出力約140万キロワットの原発1基を建設し、総事業費は5000億~8000億円。原発設備は日立が受注する予定だ。バルト3国への電力供給を計画し、22~24年の稼働を目指す。合意によると、日立とリトアニア側は原発を運営する事業会社の設立計画を作成。リトアニアが約4割、日立が2割出資する見通しで、ラトビアとエストニアにも出資を呼びかける。バルト3国の首脳交渉を経て、年内の会社設立を見込む。原発計画を再始動した背景には、ウクライナ危機がある。リトアニアは電力の6~7割、ガスのほとんどをロシアからの輸入に頼っている。 <原子力規制委員会の審査> *5-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014073102000252.html (東京新聞 2014年7月31日) 川内再稼働 小泉元首相「どこが安全か」 小泉純一郎元首相は三十一日午前、安倍政権が九州電力川内(せんだい)原発を再稼働させる方針を示していることについて「ちょっと感覚がおかしい。どこが安全なのか」と批判した。都内で細川護熙元首相=同左から2人目=と太陽光発電の展示会を視察した後、記者団に語った。原子力規制委員会は今月十六日、川内原発が新規制基準を満たしていると判断。安倍政権は再稼働させようとしているが、規制委の田中俊一委員長は記者会見で「基準への適合は審査したが、安全だとは言わない。再稼働の判断に私たちは関与しない」と述べた。小泉氏は田中氏の発言を踏まえ「政府は『安全だから(再稼働を)進める』と言っているが、矛盾している。責任があいまいだ」と指摘した。 *5-2(2014.8.8追加):http://qbiz.jp/article/43522/1/ (西日本新聞 2014年8月8日) 再稼働の地元理解、国が前面に 川内原発で経産副大臣 九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働問題で、経済産業省の赤羽一嘉副大臣は7日、衆院原子力問題調査特別委員会の閉会中審査で「立地自治体など関係者の理解を得るために国が前面に出る。事業者の後ろで逃げている認識はない」と述べた。原子力規制委員会が川内原発の基本的設計は新規制基準に適合していると7月16日に判断して以降、初めての国会質疑。赤羽副大臣は「規制委が適合すると認めた場合は粛々と再稼働を進めるのが大方針。(周辺住民の)避難計画は内閣府がしっかり詰めるべきだ」と答弁した。再稼働の同意が必要な自治体について、鹿児島県は「県と薩摩川内市で十分」と考えているが、事故時の対策が必要な30キロ圏内の姶良市議会が再稼働反対の意見書案を可決するなど異論もある。経産省資源エネルギー庁の担当者は「一律に何キロまでと判断するのは適切ではない」とし、磯崎仁彦政務官も「地域に適したプロセスが重要」と述べるにとどめた。 <廃炉と最終処分> *6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014073102000111.html (東京新聞 2014年7月31日) 最終処分場 また突然提示 指定廃棄物「名水の里になぜ」 東京電力福島第一原発事故で発生した「指定廃棄物」の最終処分場について、環境省は三十日、栃木県内の候補地として塩谷(しおや)町寺島入(てらしまいり)の国有地を選定し、見形(みかた)和久町長に伝えた。しかし、事前説明もない突然の提示に住民は反発。国は栃木のほか千葉、茨城、群馬などの県でも最終処分場をつくる方針だが、事故から三年以上がたった今も、首都圏の負の遺産が解消される見通しは立っていない。 国の候補地選びは、一定の面積を確保できる土地を抽出し、生活空間や水源との距離、自然度、指定廃棄物の保管量を点数化して決める。選定が先行していた栃木県の場合、市町ごとに異なる指定廃棄物の保管量も考慮に入れて総合評価し、得点が最も高かった塩谷町寺島入に決めた。環境省は選定後、現地のボーリングなど数カ月の詳細調査をした上で正式決定する。井上信治環境副大臣と会談した見形町長は選定に反対の意向を示した。環境省は二〇一二年九月、栃木県矢板市と茨城県高萩市を候補地に選定したが、突然の提示に二市は拒否の姿勢を示した。その後、同省は安倍政権下で選定のやり直しに着手した。選定に当たっては各県ごとに手順を作り、地元の事情に配慮する姿勢を強調した。しかし、栃木県で二度目となる今回も、反対運動を避けようと経過をこの日まで公表せず、逆に住民の反発を招いた。指定廃棄物は、各県のごみ処理施設や下水処理場、農家の敷地に一時保管されたままになっている。井上氏は「将来的に自然災害の心配もあり、安全に処分できる処分場を早期に設置することが必要」と述べ、処分場づくりを急ぐ方針を強調した。しかし、栃木県では交渉の難航が予想される。千葉県では選定作業に入っているが日程は未定で、茨城、群馬両県では手順すら決まっていない。東京都と神奈川県でも指定廃棄物が出ているが、最終処分場を建設するかどうかは決まっておらず、当面は一時保管が続く見込み。埼玉県にも基準値を超えた放射性物質を含む廃棄物があるが、地元からの申請がないため指定廃棄物として認められていない。 ◆栃木・塩谷町 住民反発「自然が売り」 豊かな湧き水を誇る町が、最終処分場建設の候補地に-。栃木県塩谷町役場前では三十日、町内の土地が候補地に選ばれたことを知った百人以上の町民がプラカードなどを手に集まり、「水を守れ」「建設反対」などと怒りの声を上げた。塩谷町は、千七百メートル級の連山の中腹から流れる尚仁沢(しょうじんざわ)湧水で知られる。豊かな水量を誇り、一九八五年には環境庁(現環境省)の名水百選にも選ばれた。住民によると、尚仁沢湧水一帯から候補地までの直線距離は四キロほど。町によると、湧き出た水は町内の湖に注いだ後、近隣自治体にも流れており、一帯の水源となっている。町内の自宅から駆けつけた農家の男性(75)は「こんなに清らかな水が湧いている土地に処分場を造るなんて、納得できない」と憤った。役場前では、次の訪問先に向かう井上信治環境副大臣の車を町民が「処分場建設は許さない」などと叫んで取り囲み、一時騒然となった。一方、候補地近くに住む七十代の男性は「何の説明も受けていない」と困惑顔。「水田をやっているので、水の安全が心配。建設に反対だが、どうやって反対すればいいのか」と途方に暮れた様子だった。町内の五十代女性は「町は自然を売りに観光客を呼ぼうとしてきた。選定によるイメージダウンは計り知れない」と、声を落とした。 <指定廃棄物> 東京電力福島第一原発事故で発生した、放射性セシウム濃度が1キログラム当たり8000ベクレルを超える焼却灰、下水汚泥、稲わらなど。6月末現在、12都県で計約14万6000トンに上る。放射性物質汚染対処特措法などでは、発生した各都県内で国が処分することを定めている。宮城、千葉、茨城、群馬、栃木の5県では、国が県ごとに最終処分場を新設する。 PS(2014.8.9追加):*7のように、日経新聞は、それでも再稼働を心待ちにし、命の重みに対する道徳感の感じられない論調である。どういう教育をすると、こういう人間ができるのだろうか? *7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140809&ng=DGKDASDF08H13_Y4A800C1PP8000 (日経新聞 2014.8.9) 玄海の地震想定値 了承 規制委 再稼働「第2陣」有力に 原子力規制委員会は8日、原発の審査会合を開き、九州電力の玄海原発(佐賀県)を襲いうる地震の揺れの想定値について了承した。地震の想定値は審査の最大の焦点となり、決着したのは玄海が3カ所目。これで審査は最終段階に進むことになり、川内原発(鹿児島県)に続く再稼働の第2陣の有力候補となる。九電は昨年7月に玄海原発の審査を申請した際、地震想定値を540ガルとしていた。審査でより厳しく見積もるよう指摘を受け、620ガルに引き上げることで最終的に規制委から了承を得た。2011年の東日本大震災で、東京電力の福島第1原発を襲った揺れが最大550ガル。玄海原発は当初想定よりも揺れ幅を大きくしたが、九電は「大きな耐震補強工事は必要ない」としている。昨年7月に審査を申請した6原発のうち、九電の川内原発が今年3月に最初に地震想定値の了承を得た。これを受けて規制委は合格証明書にあたる「審査書案」を7月に作成済みだ。また5月には関西電力の高浜原発(福井県)も了承を得た。規制委は今後、電力会社からの書類提出を受けて高浜と玄海の審査書案作りにも乗り出す見通し。ただ、九電は川内原発を実際に再稼働させるまでに詳細な工事計画などを規制委に提出する必要がある。作業が追いついていないため、玄海原発の再稼働は来年以降になるのが確実な情勢だ。 PS(2014.8.9追加):環境権は、憲法では基本的人権等で説明でき、一般法では平成5年11月19日に公布され平成26年5月30日に最終改正された「環境基本法(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H05/H05HO091.html 参照)」に詳しく書かれているので、*8のように、環境権を憲法に書く必要はない。それよりも、環境基本法やその他の環境関連法令に足りない点があればそれを改正し、その法令をしっかり順守していくのが筋であり、もう憲法改正は不要と考える。 *8:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140807/stt14080717220004-n1.htm (産経ニュース 2014.8.7) 秋から改憲項目絞り込み 自民・憲法改正推進本部長「9条には抵抗が出てくる」 自民党の船田元・憲法改正推進本部長は7日、秋の臨時国会から憲法改正の具体的項目を与野党で協議する意向を表明した。同時に、9条改正について「相当な抵抗が出てくるので1回目の改正で実施するのは難しい」と時間をかける必要性を指摘した。国会内で記者団の質問に答えた。環境権に関しては「日本でも環境権は大事だという意識が高い」と語り、優先的に扱われるとの見通しを示した。大規模な自然災害や外国からの攻撃発生に備える緊急事態条項は「必要だが、どこまで規定するのか、まとめるのは容易でない」と述べた。 PS(2014.8.11追加):*9のように、「議論を踏まえて再稼働」という増田氏のような意見は少くないが、単なるガス抜きではないまともな議論をすれば、私が2011年7月からこのブログに記載してきたとおり、決めるべきことは原発の再稼働ではなく、一日も早い廃炉と最終処分場への使用済核燃料の埋設だということがわかる筈だ。 *9:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10204/92433 (佐賀新聞 2014年8月9日) 柏崎刈羽原発、議論踏まえ再稼働、東電社外取締役の増田氏 東京電力の社外取締役に就任した増田寛也元総務相は9日までに共同通信のインタビューに応じた。柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働に関し「国全体でエネルギーの将来像が示されていない」と話し、政府が進める原発を含めた電源構成の比率の議論を見ながら慎重に取り組む考えを示した。政府は4月に閣議決定したエネルギー基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、再稼働を進める方針を明記した。増田氏は基本計画に関し「決めるべきことが多く残っており、不十分だ」と指摘した。
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2014,07,18, Friday
*1-1より *3-1より 2014.7.17日経新聞より (1)原発の新規制基準の問題点 *1-1に書かれているとおり、原子力規制委員会が7月16日、九電川内原発1、2号機(鹿児島県)が原発の新規制基準を満たしているとする審査結果案を了承したが、事故収束に当たる作業員を守る作業拠点は建設中で、フィルター付きベント設備や、テロに備える第二制御室も未完成で、これらがない段階でも安全性は保たれると判断した。また、米国では、避難計画が機能することが稼働の条件とされるが、規制委は、各自治体が作る避難計画が妥当かどうかは「権限外」として審査していないそうだ。 しかし、原子力規制委員会の田中委員長は2014年7月16日の記者会見で、*1-3のように、九電川内原発1、2号機(鹿児島県)について「基準への適合性を審査したが、安全とは申し上げない」とした。それならば、監査と同様、①どういう基準に従って審査した結果 ②上のような限定付きで適合を認めた ということを、明確に審査意見書に記載して署名すべきである。 安倍政権は、*1-2のように、エネルギー基本計画で、新基準を「世界で最も厳しい水準」と明記し、「世界一厳しい新基準で、原子力規制委員会が安全確認したら再稼働する」としていたのだから、限定付きの審査意見に基づき、「世界一厳しい基準だったか」「審査を通れば、再稼働できる状態か」について、再度、判断し直すのが筋である。 (2)再稼働に関する責任回避の構図が見えた 原子力規制委員会の田中委員長は、*1-3や*2-1に書かれているように、「安全だということは、私は申し上げない」「再稼働は、事業者、地域住民、政府の合意でなされる」と述べている。これにより、提出書類の分量、審査時間の長さ、既に行ってしまった無駄な工事とは関係なく、原発の安全性は担保していないため、再稼働された原発が事故を起こしても、原子力規制委は責任をとらずにすむ。 また、*2-1のように、安倍政権は、「再稼働に向けて政府一丸となって対応し、できるだけ早く実現したい」としながらも、判断の責任は規制委や電力会社に丸投げしているため、再稼働された原発が事故を起こしても責任をとらなくてすむ。さらに、*2-2で、「立地自治体の理解を得て、再稼働を進める」としているため、再稼働された原発が事故を起こすと、その責任は、規制委、立地自治体、電力会社になる。しかし、フクシマの事例でわかるとおり、原発事故の責任などとれる人はいないため、事故時の損害賠償は、結局、国民負担になる。 さらに、*2-3に書かれているように、経団連、日本商工会議所、経済同友会の経済3団体は、足並みを揃えて、「原発を減らして、低炭素社会にどう向き合うのか」などとまだ言っており、原発停止に伴う電力業界の収益状況や電力料金のことしか考えていないが、これについては、2014年5月26日にこのブログに掲載した大飯原発運転差止請求事件判決で、既に結論が出ている。 (3)人命よりも電力会社の経営優先の構図が見えた (1)(2)の状況でも、*3のように、原子力規制委が九電川内原発1、2号機に事実上の「合格」を出したとし、九電幹部は「再稼働に向けてようやく先が見えてきた」と安堵したそうだ。電気事業連合会は、「他の原発の効率的な審査につながることを期待する」と歓迎し、リスクを踏まえた責任回避が、赤字経営に陥った電力会社を救うために行われていることが明らかである。それでよいのだろうか。 (4)原発地元の反応 *4-1のように、川内原発「合格第1号」は、住民の避難がなおざりにされている。そして、原発の地元は、「国は防災対策を自治体に丸投げせず、自ら担うべきだ」として、責任を国に押し戻そうとしている。つまり、全体として責任回避の連結環になっているのだ。 また、*4-2のように、フクシマ以降、原発の地元は、立地自治体だけではなく、原発から30キロ圏内だけでもなく、250キロ圏内であることが明らかになっている。 そして、*4-3のように、「原発から半径30キロ圏にある医療・福祉施設の9割超は、入院患者や入所者の避難計画が未策定で、在宅のお年寄りなどの移動方法や避難先での医療・ケアの確保も見通せない」「原発再稼働の責任は、国が許可するので国がとるべきだ」とされている。しかし、国が責任をとれば、原発事故時は反対した国民も含めて、国民の税金が支出されるが、国民はそれでよいのだろうか? <新基準の問題点> *1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014071702000146.html (東京新聞 2014年7月17日) 川内原発再稼働「適合」 「厳格審査」に穴 原子力規制委員会は十六日、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)について、原発の新規制基準を満たしているとする審査結果案を了承した。安倍政権は再稼働への動きを加速させるが、事故対策の一部は未完成で、火山想定などの甘さも指摘されている。事故時に周辺住民が安全に避難できることは最重要の対策だが、審査対象になっていない。世界最高水準どころか「欠落」の多い審査といえる。新基準について、安倍晋三首相は「世界で最も厳しい」と繰り返してきた。十六日、規制委が新基準による初の合格判断を示したことを受け、田中俊一委員長は「(川内原発の安全性は)ほぼ世界最高レベルと思っている」と強調した。だが、川内原発の審査結果案を見ると、本当に世界最高水準の基準による、厳しい審査が行われたのか疑問が多い。非常用電源や冷却設備はそれなりに充実され、事故が起きる可能性は下がったかもしれない。しかし、いざ事故が起きたときに事故収束に当たる作業員を守る作業拠点は建設中で、当面は代替の建物を使う。狭くて水道もなく、トイレも仮設だ。作業員が放射能を浴びた場合、シャワーで洗い流して除染するのが通常だが、川内原発ではウエットティッシュで拭く想定になっている。そんな状態にもかかわらず、規制委は妥当と判断した。放射性物質の放出を千分の一程度に抑えながら、格納容器内の水蒸気を抜いて圧力を下げるフィルター付きベント(排気)設備や、テロに備えて通常の制御室が使えなくなった場合に原子炉の冷却を続けられる第二制御室も未完成だ。規制委は、これらがない段階でも一定の安全性は保たれると判断した。事故時に原発周辺の住民が安全に避難できることは最も重要な対策の一つだ。米国では、避難計画がきちんと機能することが稼働の条件とされるが、規制委は避難基準などの指針は定めたものの、各自治体がつくる避難計画が妥当かどうかは「権限外」として審査していない。 *1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASG7J45T4G7JUSPT003.html?ref=reca (朝日新聞 2014年7月17日) 原発再稼働を問う―無謀な回帰に反対する 原発事故が日本の政治と社会全体に投げかけた広範な問いはまだ何も答えられていない。ところが再稼働をめぐる議論はいつの間にか、原発の性能をめぐる技術論に狭められた。事故が起きた時の政府や自治体、電力会社の対応や、避難計画のあり方など、総合的な備えはほとんど整っていない。このままで原発を再び動かそうというのは暴挙である。いまだに収束できない事故から何も学ぼうとしない無責任な態度というほかない。原子力規制委員会が九州電力の川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)について、新規制基準を満たすとの審査書案を出した。1年前に新基準ができて初めてのことだ。意見公募など手続きはまだあるが、規制委による審査は実質的にヤマを越えた。安倍政権は「規制委の専門的な判断にゆだね、安全と認められた原発は再稼働する」と繰り返している。あたかも規制委の審査が原発の安全確保のすべてであるかのように。現実は違う。あまりに多くの問題点が置き去りにされている。規制委の権限が及ぶ範囲にも、その外側にも、である。このままでは、原子力規制のあり方を多少改めた以外、ほとんど何も変わらず、日本は原発依存に逆戻りしかねない。 ■世界一と誇張するな 安倍政権はエネルギー基本計画で、新基準を「世界で最も厳しい水準」と明記した。閣僚や自民党幹部もたびたび「世界一厳しい新基準で安全確認できたら、再稼働する」と口にしてきた。誇張が過ぎ、原発の安全神話を復活させかねない言動だ。確かに新基準は、地震や津波への設備対策を以前より厳しく求めている。だが、それは有数の地震国である日本の特徴を反映したに過ぎない。事故が起きるおそれを数字で表す手法は、欧米では広く採り入れられているが、新基準はそこまで徹底していない。川内原発で注目された火山噴火対策については、火山学者が疑問を投げかけるなか、手探りの火山監視で対応できるという九電の主張を追認した。本質的に重要なのは、新基準への適合は決して「安全宣言」ではないということだ。規制委の田中俊一委員長は「新基準では事故は起きうるという前提だ」と強調してきた。すなわち、事故対策は規制委だけでなく、電力会社や政府、自治体や住民も本気で考えるべきだと訴えてきたのだが、その多くが手つかずのままだ。 ■重要課題が手つかず 何より、事故の際の避難で、現実的な計画が描けていない。規制委が示した原子力災害対策指針を基に、地元自治体がつくることになっている。いきなり難題を突きつけられた形の自治体側は戸惑っている。原子力政策を国策だとしておきながら、政府はなぜ、避難を自治体に丸投げするのか。再稼働の条件に、避難計画は含まれていない。このまま計画の見通しなしに自治体が安直に再稼働に同意しては、政府も自治体も住民の安全を守る責任を果たしたとはいえまい。置き去りのままの重要課題はほかにもたくさんある。3年前の事故が浮き彫りにした課題を何度でも思い返そう。過酷事故、とくに原発密集地での事故は、おびただしい数の住民を被曝(ひばく)の危険にさらし、膨大な土地を放射性物質で汚しかねない。なのに複数原発が集中立地している問題は、規制委でもまともに議論されていない。防災の重点区域が「おおむね30キロ圏内」に広げられたのに、再稼働への発言権は立地自治体だけでいいのか。福島第一原発の吉田昌郎所長(故人)の証言「吉田調書」では、幹部職員の一時離脱が明らかになった。破局の瀬戸際の対応は電力会社任せでいいのか。 ■もっと深い議論を 根本的な問題は、日本社会が福島第一原発事故を十分に消化していないことだ。関係者や組織の責任を具体的に厳しく追及することもなく、かといって免責して事故の教訓を徹底的に絞り出すこともしていない。未公開の吉田調書に象徴されるように、事故の実相は国民に共有されていない。3年前、私たちの社説は「原発ゼロ社会」を将来目標とするよう提言した。幸いなことに、原発がすべて止まっても大停電など混乱は起きていない。関西電力大飯原発の運転差し止めを命じた福井地裁判決は、「原発停止は貿易赤字を増やし、国富流出につながる」という指摘に対し、「豊かな国土に国民が根を下ろして生活していることが国富だ」と断じた。原発を含むエネルギー政策は経済の観点だけでは語れない。人間と自然の安全を長い未来にわたってどう確保するのか。放射性廃棄物の処分問題も含め、広く深い論議を抜きに原発再稼働を進めてはならない。 *1-3:http://www.47news.jp/CN/201407/CN2014071601001601.html (47ニュース 2014.7.17) 川内原発、審査で安全性担保せず 原子力規制委員長 原子力規制委員会の田中俊一委員長は16日の記者会見で、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)が再稼働の前提となる審査に事実上合格したことについて「基準の適合性を審査した。安全だということは申し上げない」と述べ、審査は必ずしも原発の安全性を担保したものではないとの認識を明らかにした。地元首長は安全と受け止めており、再稼働に向け地元が受け入れを判断する際に認識の差が課題となりそうだ。田中氏は会見で川内原発について「一定程度安全性は高まったことは評価するが、これはゴールではない。九電はますます努力する必要がある」と説明した。 <責任回避の構図> *2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11247549.html (朝日新聞 2014年7月17日) (時時刻刻)規制委、見切り合格 川内原発再稼働へ 「安全とは言わぬ」審査に限界 原発が再び動き出す。東京電力福島第一原発事故の教訓から国の基準や審査は厳しくなったが、再稼働の責任の所在もあいまいだ。安倍政権は原子力規制委員会の判断を強調し、矢面に立つことを避けながら、成長戦略の実現に向け再稼働を進めようとしている。「安全だということは私は申し上げません」。九州電力川内(せんだい)原発の審査書案の公表後、規制委の田中俊一委員長は、審査を通ったとしても事故のリスクは残ることを認めた。さらに「再稼働は事業者、地域住民、政府の合意でなされる」と述べ、規制委は原発が新基準を満たすかどうかだけを判断することを強調した。福島の事故を踏まえ、新基準は事故を前提にした基準へ大きく転換。「起こらない」とされてきたメルトダウンなど重大事故への備えを義務づけた。以前に比べて、審査も厳しくなった。川内は60回の公開審査をし、非公開の実務的審査は1900時間に及んだ。「これじゃあ、何も変わらないじゃないですか」。昨年11月の審査会合では、地震想定を従来並みにとどめた九電に、地震学者の島崎邦彦委員長代理が厳しく指摘する場面もあった。原発では、東日本大震災前からたびたび想定を超える地震の揺れが観測されてきた経緯がある。「これまでの反省をどの程度考えているのか」。他の原発にも軒並み見直しを迫った。設備面でも、最新鋭の北海道電力泊原発3号機ですら、事故時の冷却用の配管が基準を満たさないとして大規模工事を余儀なくされた。ただ、新基準は「新しい原発なら時間と金さえかければクリアできる」(電力会社幹部)といい、高すぎるハードルではない。今ある原発への適用を念頭に作られ、福島のように1カ所に多数の原子炉があってもいいかなど、存廃にかかわる論点は先送りされた。重大事故時の手順も、あくまで想定に過ぎない。審査では、集団食中毒が起きても作業員が確保できるかまで確認したが、思い通りにいくかはわからない。テロなどで原発を操作できなくなった場合の「第2制御室」など5年間猶予されている設備もある。審査は目に見える問題に集中しがちだ。福島第一原発では津波や水素爆発など、軽視されてきた部分のほころびが事故拡大を招いた。田中委員長も「これで人知を尽くしたとは言い切れない」と認める。規制委は、福島の100分の1の放射性物質が放出されるような事故が起きる頻度を、1基あたり100万年に1回以下に抑えることを目標とする。ただ、実際にどれだけの頻度で事故が起きるかを審査書案で示したわけではない。川内原発は巨大噴火に襲われるリスクも指摘され、火山の専門家から「本来建ててはいけない場所」との声も出る。日本学術会議で事故の教訓をまとめた矢川元基・東京大名誉教授は「事故が起きるとこうなるという情報や、リスクを示し、国民みんなで議論しなければならない」と指摘する。 ■政権、反省より成長戦略 安倍政権は再稼働の責任を規制委や電力会社に丸投げするが、「本心」は異なる。安倍晋三首相は昨年5月、国会審議で「再稼働に向けて政府一丸となって対応し、できるだけ早く実現していきたい」と明言。規制委の基準を「世界で最も厳しい基準」と扱い、速やかに再稼働を進める方針だ。13日投開票の滋賀県知事選では、「卒原発」を掲げた三日月大造氏が接戦を制したが、政府高官は「再稼働はやる。原発再稼働はそんなに悩んでいない」。審査が順調に進んでも、再稼働は10月が最速で、夏場の電力需要のピークには間に合わない。だが政権が急ぐ理由は他にある。「原発が稼働していないことによって、4兆円近い国富が毎年海外に流れている。国内で企業が安心をして活動を行うには安定したエネルギーが必要だ」。菅義偉官房長官は16日の会見でそう説明した。原発停止による化石燃料の輸入増大が貿易赤字を拡大させ、電力料金の高止まりが製造現場の海外流出を加速する――。政権は「廉価で安定した電力」が、アベノミクスの成長戦略実現の前提として不可欠だと強調する。ただ、国民の反発が根強い再稼働は、政権運営の打撃になりかねない。再稼働に必要な地元同意の「範囲」もあいまいだ。鹿児島県の伊藤祐一郎知事は、県知事と立地自治体の薩摩川内市長、地元議会の判断とし、他の自治体は不要としている。福島では周辺にも被害が広がったが、周辺をめぐる議論は進んでいない。政権は、規制委の次期委員に、原発推進を担ってきた元日本原子力学会長の田中知・東京大教授を選んだ。政財界から不満があった島崎代理は交代させる。政権には事故の反省もあるが、再稼働への焦燥感の方が強い。政府高官は語る。「川内と同型の(加圧水型炉の)原発の再稼働は早いだろう」 *2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140717&ng=DGKDASFS16012_W4A710C1MM8000 (日経新聞 2014.7.17) 首相「地元理解得て再稼働進める」 安倍晋三首相は16日、原子力規制委員会が川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県)の安全審査合格を内定したことについて「一歩前進だ。原子力規制委が審査し、安全だと結論が出れば、立地自治体の理解をいただきながら再稼働を進めたい」と述べた。視察先の宮城県東松島市で記者団の質問に答えた。 *2-3:http://qbiz.jp/article/42186/1/ (西日本新聞 2014年7月18日) 経済同友会、「縮原発」転換へ 川内「合格」引き金 経済同友会は17日、仙台市で開いた夏季セミナーで、原発依存度を下げる「縮原発」方針の見直しを検討することを決めた。原子力規制委員会の審査を受けている九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の「審査書案」が16日に了承されたこともあり、原発活用を推進する路線に転換する。同友会は東京電力福島第1原発事故後の2011年夏、老朽化した原発を順次廃炉にして再生可能エネルギーの推進を目指す「縮原発」方針を掲げ、政府にエネルギー基本計画の見直しを求めてきた。同友会が原発推進路線に転じることで、経団連、日本商工会議所とともに経済3団体が足並みをそろえることになる。企業経営者など約30人が参加したセミナーでは、「原発を減らして、低炭素社会にどう向き合うのか」などと原発の必要性を訴える声が続出。長谷川閑史代表幹事は「当時は(原発の)再稼働が難しく、縮原発でいかざるを得ない状況だった」と述べた。福岡経済同友会代表幹事を務める九電の貫正義会長も出席し、原発停止に伴う電力業界の収益状況などを報告。会場で取材にも応じ、いち早く「合格」が見えた川内原発の審査について、「ありがたいが、(同意が必要な)地元がどこまでなのかという問題もあり、まだまだ先がある」と述べた。 <人命より電力会社の経営優先の構図> *3:http://qbiz.jp/article/42105/1/ (西日本新聞 2014年7月17日) 九電「やっと先が見えてきた」 原子力規制委員会が川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の審査書案を了承したことを受け、九州電力の社内には「再稼働に向けてようやく先が見えてきた」(幹部)と安堵(あんど)感が広がった。審査には想定より大幅に時間がかかったが、2基の再稼働が実現すれば、赤字続きの経営は改善に向かう。九電は玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)も含めた審査対応に引き続き全力を挙げる方針だ。東日本大震災後の原発停止に伴う火力発電燃料費の増大で、赤字経営に陥った九電。昨春には33年ぶりとなる抜本的な電気料金値上げを実施したが、川内、玄海の4基の再稼働が想定より遅れ、赤字をカバーできない状況が続いている。2014年3月期は、人件費も含め大規模な経費削減に取り組んだが、960億円の連結純損失を計上し3年連続の最終赤字。財務状況も急速に悪化しており、8月には政府系の日本政策投資銀行に議決権のない「優先株」を発行して1千億円を調達する異例の資本増強策に踏み切る。しかし、川内の2基が再稼働すれば、九電の年間収支は約2千億円改善する見込み。「川内だけでなく、玄海も動かないと黒字化は難しい」(九電幹部)とされるが、電気料金の再値上げは当面回避するとみられる。玄海の2基が今月の審査会合で、耐震設計の基になる基準地震動が固まり、審査の大きなヤマを越えたのも九電にとっては好材料。九電は川内に続いて玄海を再稼働するシナリオを描くが、川内の再稼働までには地元同意手続きなどのハードルが残る。九電幹部は「川内の再稼働までにあとどれぐらいかかるのかが見えないと、玄海の再稼働も見通せない。地元同意の手続きでは、国が前面に立ってほしい」と話した。 ◆安全確保に万全 九州電力のコメント 当社としては今後とも、原子力規制委員会の審査に真摯かつ丁寧に対応するとともに、さらなる安全性・信頼性向上への取り組みを自主的かつ継続的に進め、原発の安全確保に万全を期していく。 ◆電力各社も期待 原子力規制委員会は16日、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)に事実上の「合格」を出し、同原発は秋以降に再稼働する見通しとなった。電力各社は原発の長期停止による収支改善の遅れに焦りを募らせており、自社の原発審査の加速に期待を強めている。電気事業連合会は「他の原発の効率的な審査につながることを期待する」と歓迎した。新規制基準は昨年7月に施行され、審査は当初、半年程度で終了するとみられていた。しかし規制委が、電力会社の津波や地震対策の審査に厳しく臨んだこともあり、最初の審査申請から1年が経過。電力各社はいら立っていた。各社が再稼働を急ぐ背景には、火力発電所の燃料費が膨らみ、業績悪化に歯止めがかからない現状がある。2014年3月期連結決算の経常損益は6社が赤字を計上。合計の赤字額は前期の3分の1程度に縮まったとはいえ、依然として4359億円と巨額だ。 ■川内原発 九州電力が鹿児島県薩摩川内市に所有する加圧水型軽水炉(PWR)。1号機(出力89万キロワット)は1984年に営業運転を開始し、7月4日で30年を経過した。2号機(同)は85年から稼働。福島第1原発事故後、1号機は2011年5月、2号機は同年9月から停止中。通常運転時は社員300人強、協力会社の従業員は約800人が従事する。隣接の敷地に13年度に着工する予定だった3号機(出力159万キロワット)は、鹿児島県知事が「建設の手続きの凍結」を表明している。 <原発の地元> *4-1:http://mainichi.jp/select/news/20140716k0000e040246000c.html (毎日新聞 2014年7月16日) 川内原発:「合格第1号」住民避難なおざりに 規制対象外 九州電力川内原発が事実上、原発の新規制基準への「合格第1号」となったが、クリアしたのは設備面でのハード対策に過ぎない。新規制基準と住民避難などの防災対策は、原発の安全確保の「車の両輪」(田中俊一・原子力規制委員長)だが、原子力規制委員会の安全審査では前者を厳しくチェックする一方、後者は規制の対象になっていない。国際原子力機関(IAEA)は、原発事故へ対処する国際基準として「深層防護」と呼ばれる5層にわたる多重的な安全対策を定めている。想定外の事故が起きても住民の被ばくを防ぐ「最後のとりで」である第5層の防災対策は、米国では規制の対象だ。原発を稼働する前にNRC(米原子力規制委員会)の認可を受ける必要がある。だが日本では、東京電力福島第1原発事故後も、第5層の防災対策は依然として対象外だ。住民の避難方法や避難場所などを定める地域防災計画や避難計画は、災害対策基本法に基づき自治体の責任で策定し、政府は策定を「支援」するだけ。川内原発では防災対策の対象となる半径30キロ圏の全9市町が策定を終えたが、規制委を含めた政府は計画の実効性を一切チェックしないままだ。規制委幹部は「国が自治体の業務に口を出すことは立場上できない」と繰り返すが、原子力行政に詳しい吉岡斉・九州大教授は「規模の小さい自治体が独自に対処できる問題ではなく、規制に組み込む法改正が必要だ」と指摘する。福島第1原発事故では、放射性物質の拡散情報が住民に伝わらず、入院患者など災害弱者の避難も遅れ、多くの被ばくや関連死を招いた。原発が国策民営で進められてきたからこそ、国は防災対策を自治体に丸投げせず、自ら担うべきだ。事故の最大の教訓の一つである防災対策を「置き去り」にしたままの再稼働は住民の理解を得られまい。 *4-2:http://qbiz.jp/article/42177/1/ (西日本新聞 2014年7月18日) 九電川内原発の再稼働へ 熊本県知事、30キロ圏外にも「説明を」 熊本県の蒲島郁夫知事は17日の定例記者会見で、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)が10月以降に再稼働する見通しとなったことについて「原発から30キロ圏内の住民でなくても敏感になっている状況」とし、再稼働に当たって「政府は、九州全体の人が納得いくような説明をする必要がある」との見解をあらためて示した。県によると、川内原発から半径30キロの緊急防護措置区域(UPZ)に県内は入らないが、水俣市などが約40キロに位置している。また、公害健康被害補償法(公健法)に基づく水俣病の認定申請中であることから、水俣病被害者救済法の救済策に応じなかった人たちを対象に、環境省が何らかの救済措置が取れないか検討すると表明したことに対し「県としてしっかり見守っていく。環境省から県に提案や要望があれば当然、反応していきたい」と述べた。 *4-3:http://qbiz.jp/article/42087/1/ (西日本新聞 2014年7月17日) 避難になお不安 原発の「地元」は 原子力規制委員会は16日、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の安全対策を事実上「合格」とした。再稼働に向けた手続きが大きく進んだ形だが、原発から半径30キロ圏にある医療・福祉施設の9割超は、入院患者や入所者の避難計画が未策定。在宅のお年寄りなどの移動方法や、避難先での医療・ケアの確保も見通せない。備えが整わないまま“見切り発車”にならないか。関係者は不安と焦りを募らせる。「再稼働が現実味を帯びるにつれ、不安が膨らんできた」。同県いちき串木野市の主婦(61)は、母親(84)の介護の手を止めて訴えた。母親は認知症で、介護の必要性が最も高い要介護5。会話はできず、車いすのためトイレ、入浴、食事などは手助けが必要だ。主婦は仕事を辞め、原発の南東20キロの自宅で付きっきりで世話している。市の計画では、在宅の障害者は家族と避難する。母親は、主婦が自家用車で同県指宿市の小学校に連れて行くことになるが、渋滞がなくても2時間半かかる。母親が避難所の共同生活に耐えられるとは思えない。福島の事故では避難先で死亡した患者が少なくなかった。考えるほど「避難しない方がいい」と思う。しかし、家に残っても介護用食材やおむつは手に入るのか。医者は来てくれるのか。そして、どのくらい被ばくするのか。不安は尽きない。夫(64)は九電の関連会社員で県外に単身赴任中。「原発が動かず会社の経営は苦しい」と漏らしていたが、主婦は市民団体の再稼働反対署名に応じた。関係自治体によると、30キロ圏内で、同じように自宅で暮らす高齢者や障害者などは約1万4千人に上る。原発から東に8キロ。薩摩川内市の特別養護老人ホームは県の指導で6月下旬、鹿児島市と同県姶良市の老人ホーム2カ所に移転する計画を作った。入所65人全員が自力で動けない。避難には車いすごと積める福祉車両が32台必要だが、施設に4台しかなく、ピストン輸送すれば職員に何度も被ばくを強いる。「どう対応すれば…」。男性事務長(61)は黙り込んだ。原発の南東22キロにある同県日置市の病院は、入院患者の避難計画作りを始めた。「うちは安心、とアピールしたい」と担当者(62)。策定がセールスポイントになるほど、避難への不安は強い。30キロ圏にある244の医療・福祉施設のうち、事故時の避難先が決まったのは10キロ圏の17カ所のみ。定員1万529人の92%は未定のままだ。 ◆「経済に活気」/「拙速だ」 住民に賛否 九州電力川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市では、再稼働に伴う経済活性化への期待と、根強い反発の声が交錯した。「待ちに待った日が来た。きょう(原子力規制委員会の審査に)合格したのなら明日にでも再稼働してほしいくらいだ」。市ホテル旅館組合の福山大作組合長(63)は手放しで喜んだ。市内72団体でつくる「市原子力推進期成会」会長を務める川内商工会議所の山元浩義会頭(71)は「早期に再稼働し、地域経済の活性化と雇用の安定確保につながることを期待する。今後も原発と共存共栄していく」と強調した。薩摩川内市の岩切秀雄市長は「(再稼働に向けた手続きは)大詰めを迎えた。最終的に厳しい基準をクリアすれば、安全と理解している」と語った。一方、地元の脱原発団体など9団体のメンバー約30人は16日、川内原子力規制事務所を訪れ、規制委の田中俊一委員長宛ての抗議文などを提出した。川内原発建設反対連絡協議会の鳥原良子会長(65)は「国は九電の言い分だけを聞いて、住民の側に立っていない。川内が動けば後はずるずるといってしまう。全国の知恵を集め必ず止めたい」と力を込めた。鹿児島市の繁華街・天文館でも同日夕、県内の反原発団体でつくる「ストップ再稼働! 3・11鹿児島集会実行委員会」が抗議集会を開催。荒川譲共同代表は「規制委の基準に適合したからといって、事故の可能性がないわけではない」と訴えた。チラシを受け取った市内の主婦内田英子さん(54)は「十分な避難計画が策定されていないと聞く。再稼働に向かうのは拙速だ」と話した。 ◆「避難対策 国関与を」 全国知事会議提言 佐賀県唐津市で開催していた全国知事会議は最終日の16日、原発事故時の避難対策に国が積極的に関わるよう求める提言をまとめた。県境を越える広域避難の際、国が避難先を調整したり、大規模な備蓄施設を整備したりすることを要望している。佐賀県の古川康知事は会議後、九州電力玄海原発(同県玄海町)の事故に備えた避難計画について「詰めれば詰めるほど課題が出てくる。国も防災に関与してほしい」と述べた。原子力規制委員会が川内原発の「審査書案」を決定したことについては「時間をかけて審査した結果だ。玄海原発も慎重に客観的に審査してほしい」と語った。 ◆審査の動向注視 伊藤祐一郎鹿児島県知事のコメント 今後、(原子力規制委員会の)審査は継続されることから、その動向を注視するとともに、九州電力においては、安全確保に適切な対応をお願いしたい。 ◆再稼働、責任は国に 岩切・薩摩川内市長 一問一答 原子力規制委員会で審査書案が了承された16日、鹿児島県薩摩川内市の岩切秀雄市長は記者会見し「大詰めを迎えた。再稼働の責任は国にある」などと語った。主な一問一答は次の通り。 −再稼働に向けて大きな節目を迎えたが、心境は? 「いろいろな手続きの関係では大詰めを迎えたと思っている」 −申請してから1年たってまとまった。時間的にはどう思うか。 「厳重な審査基準を作って、厳重な対応をされたわけでやむを得ないと思う。そのことがかえって大前提とする安全につながるのではないか」 −審査書案がまとまったので川内原発は安全という判断か。 「厳しい審査基準をクリアしなければ次に進まないとずっと申し上げており、そのように理解している」 −再稼働の責任の所在はどこにあると思うか。 「それはもう国がとるべきだと思っている。国が許可するわけですから」 −再稼働に対する市長の認識は、2年前の市長選で市民の信託を受けているという考えでいいか。 「はい、再稼働をすることについてはですね。しかし、それは安全が大前提であり、それに基づいて判断する」 −再稼働の是非の判断時期は? 「厳しい審査基準をクリアし、国が市民に説明した後、議会の意向を聞いて判断したい。スケジュール的にいつどうなるかは皆目見当がつかない」 PS(2014.7.19):*5のように、麻生財務相の弟である麻生九州経済連合会会長や石原JR九州相談役から料理屋でごちそうになりながら要請されれば、安倍首相は「何とかする」と答えるしかないのかもしれないが、原発事故で損害を受けるのも、原発事故の危険性がよくわかっているのも、この3人ではない。また、菅官房長官は「安全性は規制委の判断」としているが、規制委の田中委員長は、「安全だとは、言わない」と明言している。どうするつもりだろうか。 *5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140719&ng=DGKDASFS18024_Y4A710C1EE8000 (日経新聞 2014.7.19) 川内再稼働 首相「何とかする」 安倍晋三首相は18日夜、福岡市内の日本料理屋で麻生泰九州経済連合会会長、石原進JR九州相談役らと会食した。石原氏らは原子力発電所の早期再稼働を要請。会食後に取材に応じた石原氏によると、首相は原子力規制委員会が新たな規制基準を満たすと認めた九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)について「川内(原発)は何とかしますよ」と答えたという。安倍政権は規制委が新基準に適合すると認めた原発は再稼働を進める方針。菅義偉官房長官は16日の記者会見で「安全性は規制委に判断を委ねている。個々の再稼働は事業者の判断で決める」と述べていた。 PS(2014.7.20追加):原発事故の際には、立地自治体だけでなく周辺自治体も被害を受けるため、*6-1のように、人口の半数以上が再稼働に反対している自治体もある。また、*6-2では、再稼働に意見を反映させるべき自治体の範囲は、「30キロ圏」の48市町が、「立地自治体のみ」の18市町村を上回っている。そのほか、「安全対策、避難対策のため30キロ圏より広げた方が良い」という意見の市町村もあり、もっともだと考える。 *6-1:http://mainichi.jp/select/news/20140719k0000m040151000c.html (毎日新聞 2014年7月18日) 川内原発:「周辺住民の意見も聞け」反対署名、半数超 川内原発から南に約8キロ。鹿児島県いちき串木野市羽島地区は東シナ海に面した半農半漁の小さな集落だ。6月初旬、地区に住む元教員の冨永優(まさる)さん(83)は、隣の薩摩川内市にある川内原発の再稼働に反対する署名用紙を手に、集落を一軒一軒訪ねていた。旧川内市に原発計画が浮上したのは1960年代。旧串木野市の羽島地区では反対の声が強く、冨永さんは仲間と川内市内で反対運動を繰り広げた。「海が汚染されると思った。『原子力の平和利用』と言われたが安全だとは思えなかった」。頭にあったのは、54年にアメリカの水爆実験で被ばくしたマグロ漁船「第五福竜丸」事件のことだった。周囲には漁業で生計を立てている人も多く、人ごとと思えなかった。しかし、84年に1号機の運転が始まり、串木野市民も雇用などで恩恵を受けるようになると、いつしか原発反対の声を上げる人たちは減っていった。再び表立って反対の声を上げる人たちが増えてきたのは、福島第1原発事故の後だ。「絶対再稼働はいかんぞ」。用紙を手渡すと、そう言いながら署名する人たちがいた。原発からいちき串木野市までは最短で約5キロ。有志によって集められた署名は、同市の人口(約3万人)の半数を上回る1万5464人分に上り、6月24日、市長宛てに手渡された。だが、市民の過半数が反対しても、現状では同市が再稼働判断に関与できそうにない。再稼働に前向きな伊藤祐一郎知事が県と薩摩川内市の同意で足りるとの姿勢を崩していないからだ。福島の事故は、被害が立地自治体にとどまらないことを明らかにした。「なぜ再稼働を急ぐのか。周辺住民の意見も聞くべきだ」と冨永さんは憤る。 *6-2:http://mainichi.jp/select/news/20140719k0000m040046000c.html (毎日新聞 2014年7月18日) 原発再稼働:48市町、地元同意範囲は「30キロ圏」 毎日新聞が国内全16原発の30キロ圏の市町村に実施したアンケートで、再稼働に意向を反映させるべき市町村の範囲を尋ねたところ、「30キロ圏」と答えたのは48市町で、「立地自治体」とした18市町村を上回った。また再稼働にあたり、計40市町村は国が責任を持って判断すべきだとした。毎日新聞は6〜7月、30キロ圏の全135市町村に聞き、134市町村が回答した。政府は原発の再稼働に必要な地元同意の範囲を示していない。九州電力川内原発1、2号機については、実質的な再稼働の判断は電力会社と立地自治体に委ねられる状況となっており、政治判断はしない方針。アンケートでは、範囲を「30キロ圏」と答えた48市町のうち36市町は、30キロ圏が避難計画作成など防災対策を重点的に充実すべきだとされるUPZ(緊急防護措置区域)であることを理由に挙げた。68市町村は「その他」「無回答」だった。 ◇原発30キロ圏市町村が再稼働に意向を反映させるべきだと考える範囲と主な理由 【立地自治体のみ】 <東北電力東通>(電力事業者と立地自治体が結ぶ)安全協定に基づく事前了解を必要とするのは立地自治体のみ(青森県六ケ所村) <北陸電力志賀>原子力政策の進展には立地自治体の理解が不可欠(石川県志賀町) <四国電力伊方>誘致したのは立地自治体。広域の意見は県で集約される(愛媛県伊方町) 【30キロ圏】 <東京電力福島第2>原発事故の影響は立地自治体のみならず広範囲に及ぶ(福島県双葉町) <中部電力浜岡>原発事故が発生した場合、危険を伴うことが予想される(静岡県袋井市) <関西電力大飯、高浜>立地自治体と同様に大きな被害が及ぶ恐れがある(京都府綾部市) <九州電力川内>法的な枠組みはなくても、少なくとも防災対策重点区域であるUPZの意見は聞くべきだ(鹿児島県いちき串木野市) 【その他】 <北海道電力泊>原発の安全対策、住民の避難対策を考えると30キロ圏より広げた方が良い(北海道仁木町) <東北電力東通>範囲を広げすぎると意見の収拾がつかなくなることを懸念(青森県むつ市) PS(2014.7.21追加):日経新聞は、①原発再稼働できないことが経済成長のアキレス腱になっている ②電力会社が瀬戸際で、行政の姿勢に翻弄されると監査法人も困る ③金融危機に相似 ④電気料金28%上昇 など、またまた脅し文句を使って原発再稼働を推進しようとしている。 しかし①については、このブログの2014.6.19に記載したように、電力自由化と再生可能エネルギーを進めれば、新しい街づくりや産業のイノベーションが可能であるため、有意義な経済成長ができる。また、2014.5.14のブログに記載したとおり、大飯原発運転差止判決は、関西電力に対して「人格権(人権)は、経済成長とは比較すべきものですらない」としている。そのため、日経新聞記者は、その判決内容を理解した上で記事を書くべきだ。 また②については、電力会社が瀬戸際なのは、お上頼みの経営体質で経営努力の方向が違うことが原因であり、引き合いに出されている監査法人は、真実が開示されていれば問題はなく、そうでなければ問題であるため、日経新聞記者は、監査について書く以上、会計や監査を理解した上で書くべきだ。 さらに③については、「今後は、原発を電源としない」と決定すれば、このように我田引水の無理な論理を使わなくても、次の方針を決定できる。 最後に④については、電気料金の値上がりは、政府(経産省)が、いつまでも日本を資源のない国と決めつけてエネルギーの自給を図らず、電力会社には総括原価方式をとらせてコスト意識もなくすべてを高値買いさせてきたことが原因であるため、これこそが改革すべきことである。 *7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140721&ng=DGKDASFS17H1I_Y4A710C1MM8000 (日経新聞 2014.7.21) 成長のアキレスけんに 「成長戦略のマイナス要因であることは間違いない」。17日夕、甘利明経済財政・再生相が漏らした。原子力発電所の再稼働の遅れについて記者会見で問われた時のことだ。東日本大震災後に電気料金は産業用で3割、家庭用で2割上がった。原発の停止により石油や天然ガスの輸入を大幅に増やしたからだ。再稼働が進まなければ「産業用の電気料金は震災前より5割上がる」と甘利氏は警戒する。 ●電力、瀬戸際に 昨年9月から続く原発ゼロ。電気料金上昇は、投資拡大や賃上げの勢いを鈍らせ、時間とともに経済への影響が深まる。第一生命経済研究所の試算によると、原発ゼロは1年目に0.2ポイント実質経済成長率を下押しするが、2年目には0.4ポイント、3年目には0.5ポイントと影響が拡大する。日本経済は4月の消費増税による落ち込みを乗り越えつつあるが、足腰は強くない。来年10月に消費税率を再び上げるかの決断も迫る。電気料金上昇はアベノミクスのアキレスけん。政府関係者は「再値上げよりリストラを」とけん制するが、電力会社の経営も瀬戸際に追い込まれつつある。 「現状のまま来年4月1日を迎えるなら繰り延べ税金資産の計上は難しい」。関西電力の関係者は今春、公認会計士との勉強会でこんな厳しい指摘を受けた。繰り延べ税金資産は払った税金が将来戻ってくると見込んで計上する会計上の資産。黒字見通しでなければ計上できないが、関電は2014年3月期まで3期連続の最終赤字だ。5000億円の繰り延べ税金資産の計上を認められなくなれば自己資本比率は15%から1ケタ台に落ち、資金調達も難しくなりかねない。「あの時と似ている」。シティグループ証券株式調査部の野崎浩成マネジングディレクターは03年の金融危機を思い出す。当時、りそなグループが資本不足に陥った原因は、会計士が同社の繰り延べ税金資産の計上に厳しい見方を示したことだ。旧あさひ銀行(現りそな銀行)出身の野崎氏は「当時は金融行政がものすごく動いていた。監査法人は行政の姿勢に翻弄された」と振り返る。電力会社の繰り延べ税金資産の計上にも再稼働や値上げの行政判断がからむとみる。 ●金融危機に相似 金融行政が揺れ動いたようにエネルギー政策の腰も定まらない。4月のエネルギー基本計画は、原発は「重要な電源」とする一方、「依存度を低減する」とした。電力危機は金融危機との相似形を描く。16年の電力小売りの全面自由化をにらみ、経済産業省は有識者会議で「自由化と原発の両立」を検討し始めた。欧米では自由化で競争が激しくなると初期投資がかさむ原発の新増設が難しくなったためだ。電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)は「新たな官民の役割分担を検討してほしい」と語る。足元で再稼働を進めつつ、将来の原発をどう位置付けるか。国は難しい2正面作戦を迫られている。 ●電気料金28%上昇 2010年度から13年度に全国平均の電気料金は企業向けで28.4%、家庭向けで19.4%上がった。 エネルギー問題研究班が担当しました。 PS(2014.7.24追加):①原発が立地する自治体への年間約1000億円の交付金 ②廃炉費用の一部 ③廃炉後の交付金(?) ④使用済核燃料保管費用 ⑤事故後の処理費 なども、全国民が負担している原発のコストである。それでも、原発は安価なエネルギーと主張して継続していくつもりだろうか。 *8:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140724&ng=DGKDASDF23H0I_T20C14A7PP8000 (日経新聞 2014.7.24) 原発廃炉の促進策を検討 経産省、地元が倒産増懸念 経済産業省は古い原子力発電所の廃炉を促す方策の検討に入る。23日に開いた原発をめぐる有識者会議で、老朽原発が立地する自治体から「廃炉で関連企業の倒産が増える」といった懸念が表明されたためだ。国から自治体への交付金の拡充などが焦点となる。年内にも具体策を詰める。古い原発の廃炉問題は2015年にヤマ場を迎える。国内には1970年代に運転を始めた原発が12基ある。特に古い日本原子力発電敦賀原発1号機(福井県)はじめ7基が運転続行するには、15年7月までに原子力規制委員会に申請しなければならない。老朽原発に対する規制委の審査は普通の原発より厳しく、電力会社にとっては安全対策の投資額も大きくなる。今後は老朽原発の廃炉を決める電力会社が相次ぐ見通しだ。現在、原発が立地する自治体には、国が年間で計約1000億円の交付金を配っているが、廃炉すると交付はなくなる。23日の会議には敦賀1号機が立地する福井県敦賀市の河瀬一治市長が出席し、「今まで国策に協力してきて、廃炉になったら(支援が)終わりでは困る」と訴えた。敦賀市と、関西電力美浜原発が立地する福井県美浜町では、東日本大震災後の原発停止により、宿泊や飲食の売上高が計約5.8億円減ったという。敦賀市はじめ原発の立地自治体は、廃炉後の交付金減少を穴埋めする財政支援や、企業誘致のための優遇策を求めた。交付金の財源となる国の電源開発促進税は余力が乏しいため、経産省は慎重に支援策を検討する。 PS(2014.7.25追加):*9のように、やはり凍土壁はできず、トンネルの穴から氷1日5.4トン、ドライアイス1日1トンを投入するそうだが、自然界を流れている地下水の分量は膨大であるため、水道を開放して風呂おけをあふれさせながらコップ一杯の氷やドライアイスを加えているようなもので、事前にこれを計算すらできず、湯水のように金を使って、*10のように、東電への支援は5兆円(消費税年間税収の2.5%分)を突破したのは、わが国の技術者及びその周囲の重大な問題点である。なお、*10には、「今回の追加援助は作物の風評被害の賠償期間延長に対応するのが主な目的」とも書かれているが、食物に人工の核種を含んでいればそれを食べた人は内部被曝するため、風評被害か実害かについては、その科学的根拠を示した上で言葉を選ぶべきで、「わからないから実害は無い」とするのは非科学的すぎる。 *9:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014072402000130.html (東京新聞 2014年7月24日) 氷5トン超 毎日投入 福島第一 難航する凍結止水作業 東京電力福島第一原発の地下トンネルにたまる高濃度汚染水の抜き取り作業が難航している問題で、東電は二十八日から、トンネルに毎日五トン超の氷やドライアイスを投入する。汚染水の温度を下げ、2号機タービン建屋とトンネルの接続部に氷の壁ができやすくする狙い。タービン建屋との水の行き来をなくしてトンネル内の汚染水を抜かないと、再び重大な海洋汚染を引き起こす危険が残る。これまでの計画では、トンネル内に粘土などを詰めた袋をいくつも置き、凍結液を循環させて袋や周辺の水を凍らせて止水し、汚染水を抜いてトンネルをセメントで埋める予定だった。ところが四月末に凍結作業が始まって以降、一部しか凍らなかったり、凍った部分が溶けたりと不安定な状態が続いている。全体が壁のように凍らないと止水できないため、原子力規制委員会が代替策の検討を指示していた。二十三日に開かれた規制委の専門家会合で、東電は現状の汚染水の水温(一五度)を五度まで下げられれば、全体が凍るとの試算を示した。トンネル上部の穴から氷を一日五・四トン、ドライアイスも一トンを投入することで水温が十分に下がり、凍結液を循環させる管も四本増やすことで達成できそうだとする。それでも凍結しない場合は、袋同士が密着していない部分にセメントなどを流し込んで隙間を埋める作業を、八月下旬から実施。ただセメントが固まれば元に戻せなくなるため、東電はあくまでも最終手段にしたい考えだ。検討会で規制委の更田(ふけた)豊志委員は東電側に「氷の投入という極めて原始的な方法だが、やれることは何でもすぐにやってほしい。お盆のころには結果が分かると思うので、朗報を聞きたい」と話した。 *10:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014072402000131.html (東京新聞 2014年7月24日) 東電支援5兆円突破へ 原賠機構に追加申請 東京電力は二十三日、福島第一原発事故の被害者への賠償のため、原子力損害賠償支援機構に対し、五千百二十五億九千五百万円の追加支援を申請したと発表した。申請通り認められた場合、機構による支援額は五兆三千十四億三千九百万円となる。今回の追加援助は、作物の風評被害の賠償期間延長に対応するのが主な目的で、このための資金として三千三百八十億円を計上した。このほか住宅修繕や引っ越し費用の賠償の新基準への対応で千六十億円。墓石の修理費用も新たに盛り込んだ。山林などへの賠償方法が今後決まる見通しで、機構による支援額はさらに膨らむ可能性が高い。 PS(2014.7.26追加):離島は再生可能エネルギーの宝庫であるにもかかわらず、*11のように、電力会社の意思で契約を中断もしくは制限でき、その上で、「太陽光発電は基幹エネルギーにはなれない」などと言っているのだ。そのため、発送電分離は必要不可欠で、送電は、発電とは中立の機関が行うべきである。 *11:http://qbiz.jp/article/42679/1/ (西日本新聞 2014年7月26日) 九電が離島の再生エネ契約中断 対馬など、需給崩れ停電の恐れ 九州電力は25日、長崎の壱岐、対馬など、長崎、鹿児島両県の六つの離島で、再生可能エネルギー発電の固定価格買い取り制度に基づく新規契約を1年程度中断すると発表した。太陽光発電などの導入が進み過ぎれば、大規模停電が生じる恐れがあるためとしている。九電管内では初めての事態で、各家庭の太陽光発電も対象となる。中断するのはほかに鹿児島県の種子島、徳之島、沖永良部島、与論島。他の離島でも、買い取り申し込みが一定に達すれば同様の措置を取る。電力の安定供給のためには需要と供給のバランスが取れていることが必要で、太陽光などの電力買い取りが増えると、供給が過剰になり、停電する恐れがあるという。九電によると、太陽光(出力10キロワット以上)の売電価格が4月に1キロワット時当たり36円から32円に引き下げられるなどしたため、3月中に契約しようと九電への申し込みが殺到。買い取り量が、九電が安定供給のために設けた目安を超える恐れが出てきた。九電は申し込み済みの設備についても出力抑制などを交渉する方針。蓄電池を設置するなど、出力調整に配慮した施設については個別に協議に応じる。固定価格買い取り制度は2012年7月にスタート。家庭や企業が太陽光や風力などで発電した電力を国が決めた価格で電力会社が買い取るよう義務付けた。買い取り価格が高く設定された太陽光が増え電力の安定供給維持が課題となりつつある。 PS(2014.7.27追加):*12には、「事故直後に1号機4階で水が出ていたという作業員の証言は国会事故調の調査で発言を強要するようなことが行われたと聞いている」という北大教授奈良氏の発言が書かれているが、これは、フクイチで津波以前に地震で使用済核燃料プールが壊れて水が漏れたという事実を示すため、日本全国の原発を廃炉にせざるをえなくなる重要な部分だ。 *12:http://mainichi.jp/select/news/20140726k0000e040160000c.html (毎日新聞 2014年7月26日) 原子力規制委:不適切発言の10秒間、公開動画から削除 原子力規制委員会は25日、東京電力福島第1原発事故の原因を調べる検討会で、出席していた外部有識者に不適切な発言があったとして、ホームページで公開している会合の動画から発言部分の音声を消去したことを明らかにした。検討会は18日に開催され、消去されたのは奈良林直・北海道大教授の発言。事故直後に1号機4階で水が出ていたという作業員の証言で、国会の事故調査委員会と規制委の聞き取りで異なっていた点について、奈良林教授は「国会事故調の調査で発言を強要するようなことが行われたと聞いている」と述べた。これに対し、国会事故調の元委員から22日、規制委に対し「発言に根拠がない」などと指摘があり、規制委は同日、動画公開を一時中止。奈良林教授も「不適切な発言とも取られかねない」として削除を要請した。このたため、規制委は23日、当該の約10秒間の音声を消し、「発言者から議事録より削除したい旨連絡があった」と注釈をつけて公開した。 PS(2014.7.28追加):*13 に書かれているとおり、新規制基準は住民の安全を保障していないが、それでも命とこれまで積み上げてきた全財産を犠牲にして原発再稼働に同意するか否かは、過酷事故時に被害を受ける全地域の住民で意思決定すべきである。 *13:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10208/87998 (佐賀新聞 2014年7月27日) 原発再稼働「強行」と批判、菅元首相、松山で講演 原発再稼働「強行」と批判 菅直人元首相が27日、松山市内で講演し、原発再稼働の動きについて、原子力規制委員会の新規制基準が住民の命や避難を対象にしていないと指摘した上で「安倍政権は、規制委の審査を満たせばよいとして強行しようとしている」と批判した。菅元首相は、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)が新規制基準を満たしたことに対し「規制委の審査は、付近の住民の命が本当に大丈夫か、安全に退避できるかなどの重要なことが抜けている」と述べた。講演で菅元首相は、東京電力福島第1原発事故の発生後、原子炉への海水注入をめぐる東電とのやりとりなどを約30分にわたり説明した。
| 原発::2014.5~8 | 09:05 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2014,07,08, Tuesday
*1-3より 2014.6.26毎日新聞より (1)原発の新規制基準は、本当に世界一厳しく、十分な基準になったのか? *1-1、*1-3に書かれているように、原子力規制委員会は、7月9日か16日に九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)の合格証となる「審査書案」を提示する方針を固めたそうだが、新規制基準は想定が甘いと言われ、本当に世界一厳しい基準かどうかは、実際に他国の基準と比較した上で判定すべきだ。また、「規制委が開いた審査会合は122回に上る」とも書かれているが、監査の常識から見ると、電力会社が提出した分厚い書類に目を通すだけで審査終了というのは、形だけの審査で安易すぎる。 そのような中、*1-2のように、昨日、公認会計士協会東京会が主催して、小泉元総理に「日本の歩むべき道」と題して講演していただき、小泉元総理は、「①原子力発電所推進の論理は完全に破たんしている」「②今後も原発ゼロにする国づくりを一歩でも進めていく」「③世界一厳しい安全基準だと政府は主張するが、他国と比較したことはない」「④再稼働できるわけがない」「⑤他の電源に比べて原発コストは安いというのも嘘どころか一番『金くい虫』だ」「⑥最終処分場も原発ゼロ決定後でなければ理解は得られない」という話をされた。私も、①~⑥に全く同感だ。 また、*1-4のように、民主党の菅元首相も、衆院予算委員会の質問で、「①政府のエネルギー基本計画案は、原発拡大計画だ」「②事故以前と全く変わっていない。反省のかけらもない」「③自治体が安全に避難できないから原発は動かさないでくれと言った場合、再稼働しないのか・・、責任を持たないということがはっきりした」「④原発事故当時、東京中から一人残らず逃げなければならないギリギリの状況だった」と批判されており、これらが、実情や経緯を知っている人の率直な感想だ。 (2)福島第一原発事故後の対応について *2-1のように、福島原発事故の影響で拡散した放射性物質を取り除く除染で出た土などを住宅の庭先などに一時的に保管している場所が、福島県内で5万3000か所に上っているが、中間貯蔵施設建設の具体的な目途はたっていないそうだ。原発事故後の対応や政府のエネルギー基本計画を知れば、「政府を信用して協力することはできない」と考えるのは当たり前である。 また、*2-2に書かれているように、「年間追加(ここがポイント)被曝線量の限度は1ミリシーベルト(=毎時0.23マイクロシーベルト)」とすり替えられて伝えられてきたが、正しくは「年間被曝線量の限度は1ミリシーベルト以下」である。これを今認めているのは、関東地方の線量が下がってきたからだろう。これまでは、毎時0.23マイクロシーベルト(年間2ミリシーベルト)前後だった。 さらに、*2-3のように、原子力規制委員会の田中委員長は、一般の食品に含まれる放射性物質濃度を1キログラム当たり100ベクレルとした国の基準について「欧州の10分の1以下(の厳しさ)で非常に疑問だ」と述べ、近く設置する放射線審議会で、基準緩和も含めた見直し議論が必要との認識を示したそうだが、外部被曝を受け、内部被曝は空気中のゴミからも受けている場所で、それらがない地域と同じ食品基準でよいわけがない。原子力規制委員会の田中委員長は、原子力発電の専門家ではあっても医学や生物学の専門家ではないため、単純な比較で食品基準の緩和を言い出すべきではない。 もっと呆れるのは、*2-4の「凍土壁」や汚染水を凍らせ氷の壁を作って止水する莫大な費用をかけた工事だ。これを考えた人は、地下水の分量や流れ方について推測できない人だろうが、地下水の流量と熱交換を考えれば、2か月たった現在も凍らないのが当たり前である。それにしても、いい加減な計画のために莫大な費用を投入している。 (3)このように、原発推進論者の言うことは信用できない このように、原発を推進することと税金を使うこと以外は何も考えていない原発推進論者に任せておくと、命がいくつあっても足りないため、*3-1のように、伊万里市の塚部市長は「国は30キロ圏外にまで被害が及んでいる福島原発事故の検証を真剣にやっているのか。立地自治体とか隣接自治体とか地図上の境界で判断するなんてナンセンスだ」と批判しており、そのとおりだ。 また、*3-2のように、青森県で建設中の大間原発に、津軽海峡を挟んだ対岸にある北海道函館市が建設中止を求めている裁判で、函館市長が「事故が起きると深刻な影響を受ける函館市の同意もないまま、建設を進めるべきではない」と訴えたのも当然である。国や電源開発は、「自治体がこうした訴訟の原告になることは法律上、認められていない」などという手続き論で逃げるのではなく、「何故、いいと思うのか」を論理的に主張すべきだ。 このような状況であるため、*3-3のように、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)再稼働反対を訴える集会が開かれている。一般市民も、よく考えて意見表明すべきだ。 (4)何故、原発輸出を推進しなければならないのか *4-1のように、トルコとアラブ首長国連邦(UAE)に日本から原発の輸出が可能になり、トルコには、安倍首相がトップセールスをして輸出を決めた。また、*4-2のように、「東芝」のグループ会社がブルガリアの原発1基をおよそ5000億円で受注する見通しとなったそうだ。しかし、これは、日本の「原発ゼロ目標」とも矛盾するので、①何故、日本から原発輸出をしているのか ②何故、契約締結に繋がったのか などについて、メディアは明確にすべきである。 <原発政策> *1-1:http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140703/dst14070308050001-n1.htm (産経ニュース 2014.7.3) 川内原発に9日にも“合格証” 原子力規制委 再稼働は10月にずれ込みか 再稼働に向けた安全審査が進む九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)について、原子力規制委員会が早ければ9日にも事実上の合格証となる「審査書案」を提示する方針を固めたことが2日、分かった。計12原発19基の安全審査の申請が出ているが、川内原発は新しい規制基準のもとでの合格第1号になる。今後は意見公募(パブリックコメント)などを経て審査書を確定、さらに地元の同意を得る必要があり、再稼働は10月にずれ込む可能性がある。九電は昨年7月、新規制基準の施行と同時に審査を申請。規制委はこれまで、川内原発だけでも約60回の公開審査会合を開き、昨年9月と今年4月に2度の現地調査を実施した。審査書案は新規制基準に適合しているかを基準項目ごとに記載する。これまでの審査会合で議論になった課題を中心に、規制委の新基準適合性への判定理由が書き込まれる。川内原発で特に大きな課題となったのは、想定される地震の最大の揺れを示す「基準地震動」。九電は当初540ガルで申請したが、規制委の指摘に従い、2回にわたり修正し、620ガルに落ち着いた。想定される基準津波も従来の3・7メートルから5メートルに変更した。ただ、合格の見通しが立ったのは、原発の基本設計や方針を見る「設置変更許可申請」と呼ばれるものであり、そのほか、機器類の詳細を確認する「工事計画認可申請」と、運転管理体制をみる「保安規定変更認可申請」の審査が残っており、すべて終えるのは8月以降になる。その後、鹿児島県や薩摩川内市など地元自治体の同意が焦点となるほか、原発の機器を検査する「使用前検査」が控える。使用前検査も1~2カ月程度かかるとみられる。 *1-2:http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPKBN0FC0VX20140707 (ロイター 2014年 7月 7日) 原発再稼働「できるわけがない」、推進論は完全に破たん=小泉元首相 即時原発ゼロを訴えてきた小泉純一郎元首相は7日、都内で講演し、原子力発電所推進の論理は完全に破たんしていると述べ、「今後も原発ゼロにする国づくりを一歩でも進めていく」と訴えた。世界一厳しい安全基準だと政府が主張する再稼働基準に異論を唱え、「再稼働はできるわけがない」と反論した。講演で小泉氏はあらためて、2011年3月11日の東日本大震災による東京電力 (9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島原発の事故を契機に、「原発ゼロ」に舵を切ったことを説明。いまや「原発推進の論理は完全に破たんしている」と訴えた。安全神話が「嘘」だったことは大事故で判明した。「他の電源に比べて原発コストは安い」との論も「嘘どころか一番の『金くい虫』だ」と反論。「被害の賠償。廃炉までには40年─50年かかること。安全対策。作業員の確保。最終処分場確保にいたってはいまだにない」と述べ、推進論がこれらをコストに入れない「甘さ」を追求した。さらに小泉氏は「国民の税金投入なくして原発は成り立たない。しかも、この負担は、生きている人だけではなく、千年、万年の単位だ。こんな採算のとれない会社はやっていけないと考えるのが賢明な経営者だ」と糾弾した。再稼働にあたって政府が「世界一厳しい安全基準」をもとに判断すると言及している点についても、「米国の原発は住民の避難路を確保していなければ認められない。日本で避難路を作っているところはあるか。ない。これひとつとっても、世界一厳しい安全基準なんて(信じがたい)」と述べ、「再稼働はできるわけがない」と語った。「今後も原発ゼロに向けての国民運動を展開していかなければならない」と訴えた。 <最終処分場、原発ゼロ決定後でなければ理解得られず> 最終処分場の選定について、「ゼロにすることを決定してからでなければ、国民の協力は得られない。再稼働し、これからまた核のゴミが増える段階で、処分場をつくるのに協力してほしいでは、住民の協力は得られない」とも語り、政治決断を行うにも「原発ゼロ」方針の明確化が不可欠だとの認識を示した。 *1-3:http://mainichi.jp/select/news/20140708k0000m040145000c.html (毎日新聞 2014年7月8日) 原発新基準:施行1年 想定甘く審査遅れ 東京電力福島第1原発事故を受け、原発の安全対策を強化した新規制基準が施行されてから8日で1年になる。電力9社が12原発19基で新基準に基づく安全審査を申請したが、福島第1原発と同じ沸騰水型を中心に審査は遅れている。原子力規制委員会は九州電力川内(せんだい)1、2号機について、新基準に適合しているとする審査書案を9日にも示し、事実上の「合格第1号」とする予定だったが、16日以降に先送りすることを決めた。新規制基準では、電力会社の自主的な取り組みに任せていた過酷事故対策を義務付け、地震・津波対策を厳しくした。地震や津波の想定を原発事故前と変えなかった点など、各社の対策の甘さが原因で審査が長期化し、規制委が開いた審査会合は122回に上る。比較的に審査が先行するのは、福島原発と炉の形が違う加圧水型だ。6原発12基が昨年7月に申請を済ませた。規制委は今年3月、地震と津波の想定が最初に確定した川内原発の審査を優先的に進めることを決めた。想定が規制委に認められたのは他に、関西電力高浜3、4号機だけだ。川内1、2号機の審査書案提示を先送りしたのは、田中俊一委員長らが審査書案の精査が必要と判断したためだ。審査書案提示後、意見公募や地元同意の手続きが必要なため、同原発の再稼働は10月以降になる見通しだ。沸騰水型は6原発7基が申請したが、事故時に放射性物質の放出を減らすフィルター付きベント装置の設置が義務化されるなど合格のハードルが高く、審査は進んでいない。南海トラフ地震の津波の来襲が予想される中部電力浜岡4号機や、敷地内に活断層があると規制委の有識者調査団に指摘されている東北電力東通原発など、当面の再稼働が困難とみられる原発の申請も相次ぐ。田中委員長は2日の定例記者会見で、審査の長期化について「(電力会社は)福島の事故が起こったという事実を厳しく受け止める姿勢に欠けている」と批判した。 *1-4:http://digital.asahi.com/articles/ASG2V42FJG2VUTFK004.html?iref=comkiji_redirect&ref=rss (朝日新聞 2014年2月26日) 菅元首相、W元首相に触発 国会質問で原発政策非難 民主党の菅直人元首相が26日、衆院予算委員会の分科会で、首相を退任してから初めて国会で質問に立った。東京電力の原発事故で陣頭指揮をとった菅氏は、政府のエネルギー基本計画案にかみつき「原発拡大計画だ」などと非難した。菅氏は、茂木敏充経済産業相に「事故以前と全く変わっていない。反省のかけらもない」と迫った。茂木氏は「前回の計画は菅首相の時に作られ、原発依存率50%とされた。どう考えても方針は大きく変わっている」と反論。自民党議員から「反省するのは民主党だ」とのヤジも浴びた。それでも菅氏は「自治体が安全に避難できないから原発は動かさないでくれと言った場合、再稼働しないのか」と追及。茂木氏が答弁を避けると、「答えないことで責任を持たないということがはっきりした」とやり返した。菅氏が質問に立ったのは本人の希望という。終了後、菅氏は、細川護熙、小泉純一郎の両元首相がタッグを組んだ都知事選に触れ「原発事故当時、東京中から一人残らず逃げなければならないギリギリの状況だった。それが共有されれば、都知事選の結果も異なる結果だっただろう。これまでに負けず発信していく」と語った。 <放射能汚染と国民> *2-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140606/k10015037141000.html (NHK 2014年6月6日) 除染土の一時保管 5万か所以上に 原発事故の影響で拡散した放射性物質を取り除く除染で出た土などを住宅の庭先などに一時的に保管している場所が、福島県内で5万3000か所に上り、去年12月の時点と比べて5000か所以上増えていることが県のまとめで分かりました。福島県内の除染で出た土などについて、国は中間貯蔵施設を建設し、運び込む計画ですが、設置されるまでの間、県内各地の仮置き場や住宅の庭先などで一時的に保管されることになっています。こうした保管場所について、福島県がことし3月末現在で調べたところ、仮置き場は46の市町村の828か所、住宅の庭先に埋めるなどする現場保管が37の市町村に5万3057か所と、合わせて5万3800か所余りに上ることが分かりました。前回、調査した去年12月末時点と比べ、仮置き場は30か所が増えたほか、現場保管については5600か所余りも増えていました。中間貯蔵施設を巡っては、政府が大熊町と双葉町に建設することを計画し、住民への説明会が開かれていますが、建設の具体的なめどはたっていません。福島県生活環境部の鈴木一夫環境回復推進監は「仮置き場の設置促進に取り組み、現場保管している土などを運び込めるようにしたい」と話しています。 *2-2:http://www.minyu-net.com/news/news/0706/news10.html (福島民友ニュース 2014年7月6日) 「年間1ミリシーベルトこそ長期目標」 除染シンポで環境省 環境放射能除染学会などは5日、郡山市で「放射能除染のための国際シンポジウム」を開き、参加者が県内で進められている除染の課題や今後の方向性について考えた。シンポジウムは同学会と環境省の主催。はじめに、平岡英治環境省大臣官房審議官が登壇し、県内で行われている除染の状況を説明。除染後の目標値とする年間追加被ばく線量「1ミリシーベルト」を達成するため、政府が目安としてきた空間線量「毎時0.23マイクロシーベルト」について、平岡審議官は「丁寧な説明なく言ってきた経緯があり、国も反省しなくてはいけない」と説明。その上で「毎時0.23マイクロシーベルトではなく、年間1ミリシーベルト以下が長期的な目標だということをしっかり伝えていきたい」と述べた。また計画に基づいた除染終了後、さらに必要箇所を除染したり、継続的なモニタリングや住民の個人線量の把握、健康相談などを行う「フォローアップ」の重要性を強調。「復旧・復興と除染の取り組みを連動し、除染から復興へという流れをつくっていく」と述べた。 *2-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014030501002264.html (東京新聞 2014年3月5日) 食品の放射性物質基準、緩和検討 規制委員長「厳格さ疑問」 原子力規制委員会の田中俊一委員長は5日の記者会見で、一般の食品に含まれる放射性物質濃度を1キログラム当たり100ベクレルとした国の基準について「欧州の10分の1以下(の厳しさ)で非常に疑問だ」と述べ、近く設置する放射線審議会で、基準の緩和も含めた見直し議論が必要との認識を示した。放射線審議会は、被ばく線量評価や放射線医学などの専門家10人前後で構成する予定。また田中委員長は、原発事故の発生時に避難を始める放射線量の基準はあるが「(事故収束後に地元に)帰る基準は国際的にも明確じゃない」とし、日本が主導して、新基準を検討する必要があるとの考えを示した。 *2-4:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140707/k10015815941000.html (NHK 2014年7月7日) 汚染水十分に凍らず 具体的対策求める 東京電力福島第一原子力発電所では汚染水が流れ込んでいる地下のトンネルで汚染水を凍らせて氷の壁を作り止水する工事が進められていますが、2か月たった現在も十分に凍っていないことから、原子力規制委員会は東京電力に対し、確実に凍らせる具体的な対策を今月中に示すよう求めました。福島第一原発では、高濃度の汚染水が建屋から「トレンチ」と呼ばれる地下のトンネルに流れ込み、ここから地下水に混ざって海に流れ出しているとみられています。このため東京電力は、ことし4月から2号機のトレンチの入り口に冷却用の配管を打ち込んで1か月程度で汚染水を凍らせ、氷の壁でふたをしたうえで汚染水を抜き取る計画でしたが、2か月たった現在も十分に凍っていません。この問題が原子力規制委員会の専門家の会合で取り上げられ、東京電力は、トレンチ内に汚染水の流れがあることが原因とみられるとしたうえで、対策を行うために汚染水の抜き取りを10月まで3か月延期すると説明しました。しかし、汚染水は1分間に2ミリ程度しか動いていないことから、規制委員会は東京電力に対し、確実に凍らせる具体的な対策を今月中に示すよう求めました。福島第一原発ではこれとは別に、建屋などへの地下水の流入を防ぐため1号機から4号機の周りの地盤を1.5キロにわたって凍らせる「凍土壁」の建設が進められています。このため委員からは「凍土壁も同じような問題を抱えているのではないか」と厳しく指摘されていたほか、凍土壁はトレンチを横切るように設けられることから、建設への影響を懸念する声も上がっています。 <脱原発行動> *3-1:http://qbiz.jp/article/41446/1/ (佐賀新聞 2014年7月8日) 「原発の“地元”は国が明確に」 伊万里市長、エネ庁審議官らの発言批判 九州電力玄海原発(佐賀玄海町)の再稼働に同意を求める自治体について、資源エネルギー庁の後藤収大臣官房審議官など3人が玄海町や県、唐津市を挙げ「その他は地元と相談して決めたい」と発言したことについて、伊万里市の塚部芳和市長は7日の定例記者会見で「言語道断。国が地元を明確にして(九電に)踏み込んだ指導をすべきだ」と批判した。後藤氏らは、2日の県議会原子力安全対策等特別委員会に参考人として招致され、議員の質問に答えた。塚部市長は「国は(30キロ圏外にまで被害が及んでいる)福島原発事故の検証を真剣にやっているのか。立地自治体とか隣接自治体とか地図上(の境界)で判断するなんてナンセンスだ」と批判。伊万里市などのように、ほぼ全域が原発から30キロ圏に含まれる自治体は「地元」とすべきだと主張した。一方、九電との安全協定締結交渉については「唐津市並み(の事前説明)の状況まで引き出せた」とした上で「求めているのは立地自治体並み(の事前了解)。この姿勢は貫く」と述べた。 *3-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140703/k10015722261000.html (NHK 2014年7月3日) 大間原発訴訟で函館市長が意見 青森県で建設中の大間原子力発電所について、津軽海峡を挟んで対岸にある北海道の函館市が建設中止を求めている裁判が、東京地方裁判所で始まり、函館市長が「事故が起きると深刻な影響を受ける函館市の同意がないまま、建設を進めるべきではない」と訴えました。青森県大間町で建設中の大間原発は、東日本大震災で工事が一時中断しましたが、おととし10月に再開され、事業者の電源開発は運転開始を目指して、ことし秋にも安全審査を申請する準備を進めています。これに対し、津軽海峡を挟んで最も近い場所で23キロの距離にある函館市が、国と電源開発に建設中止を求める訴えを起こし、東京地方裁判所で3日から審理が始まりました。原発の差し止め訴訟で初めて自治体として原告になった函館市は、工藤寿樹市長が法廷で意見を述べ、「ひとたび事故が起きれば自治体としての機能が崩壊してしまう。函館市の同意がないまま建設をするべきではない」と訴えました。一方、国や電源開発は「自治体がこうした訴訟の原告になることは法律上、認められていない」などと主張して訴えを退けるよう求めました。函館市長「国は正々堂々戦うべき」函館市の工藤市長は裁判後の会見で、「被告の主張は姑息であり、裁判を入り口で止めたい考えが見え見えだ。国は原発をどうしてもやりたいなら正々堂々と戦うべきだ」と述べ、国と電源開発側の対応を批判しました。また、原告弁護団の海渡雄一弁護士は、「原発事故が起これば、函館市の財産が失われることになり、その財産権は法律でも保護されている」などと述べ、函館市に訴えを起こす資格はあると強調しました。 *3-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014062801001612.html (東京新聞 2014年6月28日) 都内の反原発集会に5千人 「再稼働認めない」 原子力規制委員会が優先的に審査する九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働反対を訴える集会が28日、東京都内で開かれた。参加者は「川内原発も他の原発も再稼働を認めない」「原発ゼロを推進させよう」と声を上げた。会場の明治公園(新宿、渋谷区)には、主催者発表で約5500人が集まった。ルポライターの鎌田慧さんは「福島のみなさんが苦しんでいる今、再稼働させないのは私たち市民に与えられた責務だ」と強調した。鹿児島県で反対運動に取り組む男性が「(事故時の)避難計画はずさん。川内原発を動かさないために一緒に闘ってほしい」と呼び掛けると、拍手が湧き起こった。 <原発輸出> *4-1:http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/534417.html (北海道新聞 2014年4月20日) 原発輸出 無責任すぎる経済優先 トルコとアラブ首長国連邦(UAE)を相手にした原子力協定が国会で承認された。これで日本から両国への原発の輸出が可能になる。トルコについては、安倍晋三首相のトップセールスで決まった輸出を追認した形だ。国内で原発依存度を可能な限り低減するとしながら、成長戦略として海外へ官民一体で原発を売り込むのは、つじつまが合わない。福島第1原発は汚染水漏れなどのトラブルが続く。収束の見通しが立たない現状で、原発輸出を推進するのはあまりに無責任だ。とりわけ、トルコは世界有数の地震国である。さらに問題なのは、トルコとの協定に、核不拡散の抜け道になりかねない記述が含まれる点だ。日本が同意すれば、トルコはウラン濃縮や、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理ができることになっている。このような核兵器転用につながる恐れのある文言は、UAEとの協定には見当たらない。岸田文雄外相は「日本政府が合意することはない」と釈明した。であれば、疑わしい部分は削除しても構わないはずだ。安倍首相は昨年、トルコを2度も訪問し、三菱重工業などの企業連合が原発4基の建設を受注することが固まった。問題の記述は、トルコ側の要望で入れられたという。これでは、首相がまとめた商談を円滑に進めるために、便宜を図ったと疑われても仕方あるまい。民主党が協定締結承認案の賛成に回ったのも理解し難い。政権担当時に原発輸出を進めたと言う理由で、核拡散の疑いさえある協定を認めるようでは、歯止めとしての役割をなさない。「原発ゼロ目標」とも矛盾する。首相は「過酷な事故を経験したことから安全性に強い期待が寄せられている」と述べ、原発輸出を正当化している。しかし、事故原因すら解明されていないのに、事故の経験まで売り物にする姿勢は、なりふり構わぬ経済優先と映る。政府は複数の国と原子力協定の交渉を行っている。この中に事実上の核保有国であるインドが含まれているのも看過できない。首相が先頭に立って売り込んだ原発が事故を起こせば、日本の責任も追及されるだろう。原発輸出を成長戦略の柱に据える安倍政権の方針は、危険で道義的にも許されない。 *4-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140703/k10015705391000.html (NHK 2014年7月3日) 東芝 ブルガリアで原発受注へ 大手電機メーカー「東芝」のグループ会社が東ヨーロッパのブルガリアの原子力発電所1基をおよそ5000億円で受注する見通しとなりました。ブルガリアの原子力発電所を受注する見通しとなったのは東芝傘下の原子力プラントメーカー、「ウェスティングハウス」です。関係者によりますと、受注するのはブルガリアで建設が予定されている原子力発電所で、発電規模は110万から120万キロワット、受注額はおよそ5000億円になるとみられます。また、関係者によりますと、ウェスティングハウスは受注に向けて原発を運営するブルガリアの政府系電力会社の関連会社に対して数百億円の出資を検討しているというということです。大手電機メーカーでは、国内の原発新設が不透明な状況のなか、東芝と日立製作所がそれぞれイギリスで原発を計画している発電会社を買収したほか、日立はリトアニアなどでも受注に向けた交渉を進めていて海外での受注獲得に向けた動きが一段と強まっています。 PS(2014.7.9追加):*5-1のように、原発は膨大な数の作業員を被曝させている。そして、5ミリシーベルト超の被曝をして白血病になったケースでは労災が下りているが、フクシマ原発事故では、一般市民でもそれ以上の被曝をした人は少なくない。さらに、*5-2のように、廃炉時にも高線量を浴びる可能性がある。しかし、*6のように、国は、国策企業による環境破壊に対しては、被害者よりも企業の救済や国の体面を優先する傾向があるため、注意が必要だ。 <原発作業員の被曝> *5-1:http://digital.asahi.com/articles/ASG384W3RG38UUPI001.html?iref=comkiji_redirect&iref=comtop_6_02 (朝日新聞 2014年3月9日) 原発作業員1.5万人、5ミリ超被曝 汚染水対策で増加 東京電力福島第一原発で事故後3年間に働いた約3万人のうち、約1万5千人が5ミリシーベルト超の被曝をしていたことがわかった。作業員の被曝は徐々に減ってきていたが、汚染水問題が発覚した昨夏以降に再び増加。厚生労働省は昨年末に東電を指導したが、被曝対策は今も不十分だ。福島第一原発では1日約3千人が働く。「年50ミリ超、5年で100ミリ超」の被曝で働くことが禁止されるが、この限度内でも健康被害が出ないとは限らない。白血病の労災認定基準は「年5ミリ以上」、放射線管理区域は「年5ミリ超」で、「5ミリ」は被曝管理上の一つの目安だ。東電の集計によると、2011年3月の事故から今年1月までに働いた3万2034人中、累積で50ミリ超を被曝したのは1751人、うち100ミリ超は173人。5ミリ超は半数近い1万5363人に上った。作業員は数カ月単位で働くことが多く、「累積5ミリ」の人の大半は「年5ミリ」の白血病労災認定基準を満たすとみられる。1カ月間で5ミリ超被曝した人は11年3月は2925人だったが、徐々に減って昨年6月は98人に。だが東電が昨年7月に海への汚染水流出を認め、土中の遮水壁などの緊急工事を始めたり、汚染水タンクの見回りを増員したりした後に急増。7月は117人、8月は186人、9月は312人、10月は398人だった。厚労省は被曝が増加に転じたことを問題視し、昨年11、12月に立ち入り調査を実施。放射線遮蔽(しゃへい)板の設置や作業員の短時間交代の徹底を東電に指導した。原子力規制委員会も昨年10月、東電に被曝対策の具体化を指示。東電は今年1月、敷地内の除染▽高線量のがれき撤去▽敷地のアスファルト舗装▽線量表示器50カ所以上、ダストモニター10カ所以上設置▽高線量箇所の遮蔽――を行う考えを示した。ただ完了目標は来年3月で、事故後3年たっても作業環境は改善されていない。東電は「汚染や被曝の元となるがれきの除去をすでに始めている。対策を加速していく」(小野明・福島第一原発所長)としている。 *5-2:http://qbiz.jp/article/32482/1/ (西日本新聞 2014年2月20日) 【廃炉の課題 福島から1】 建屋 作業を阻む高線量 福島第1原発3号機の薄暗い原子炉建屋の1階にロボットのエンジン音が響いている。粉々のコンクリートやシートを一つずつ取り上げ、コンテナに運ぶ。ロボットに搭載したカメラの映像からは、爆発した3年前の惨状が伝わってくる。ロボットの名前は、はさみがついた二つの腕を持つ「ザリガニ」を意味するスペイン語と、「福島に再び美しい空を取り戻したい」という願いを組み合わせた「アスタコ・ソラ」。日立グループが1年かけて小型の重機を基に無線操作型に改良。昨年7月に廃炉作業に投入された。現場は、原子炉格納容器と厚さ1・5〜2メートルのコンクリート壁で隔てられているものの、放射線量は最高で毎時1シーベルト。人間が10時間で死に至るほどの高さだ。運転手は、「ソラ」のカメラの映像を頼りに別の建物から操作する。モニターを通しては距離感がつかみにくく、微妙な動作も難しい。高い集中力と技術が求められ、運転は30分〜1時間ごとに交代する。人が入れる環境なら約1カ月で終わる作業も、ロボットでは5カ月程度かかる。それでも「ソラ」の開発に携わった日立パワーソリューションズの宇佐美靖浩は「自分たちががれきを撤去しなければ廃炉は次に進めない」と前を向く。 □ □ 建屋内のがれき撤去は、廃炉に向けた準備工程にすぎない。爆発で壊れた原発の廃炉で最大の懸案は、1〜3号機に残る溶け落ちた核燃料(デブリ)の回収だ。工程では2020年度から順次着手する予定だが、内部の様子もつかめていないのが実情だ。廃炉作業を推進するためにメーカーや九州電力を含む全国の電力会社などで設立した国際廃炉研究開発機構は昨年12月、デブリ回収技術を公募。今年1月末までに約200件が寄せられた。詳細は明らかにしていないが、同機構は「海外からも相当数の募集があった」と手応えを感じている。デブリは原子炉圧力容器を突き抜け、格納容器の底にたまっている。線量は今でも高い上、格納容器の上部から底まで30メートル以上。回収は困難を極める。デブリの形状や位置を確認するための研究に取り組む筑波大や東京大などの研究チームの一人は「原発内部は3年たった今でもブラックボックス」という。東京五輪が開催される6年後を目指す回収着手への道のりは、始まったばかりだ。(敬称略) × × 東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故から間もなく3年。核燃料の回収が始まり、廃炉がようやく動き始めた。汚染物質の処理や費用などは九州の原発でもいずれ直面する課題だ。福島から現状を報告する。 <水俣病など公害被害者の救済> *6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014070802000126.html (東京新聞 2014年7月8日) 水俣の叫び 「再稼働反対」 川内原発40キロ圏 四大公害病の一つ、水俣病が発生した熊本県水俣市は、再稼働審査が優先的に進む九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)から四十キロ圏内にある。水俣病患者たちは、東京電力福島第一原発の事故を「水俣病と同じ、国策企業による環境破壊」と位置づけ、厳しいまなざしを向けてきた。今秋にも川内原発が再稼働となる可能性があることに「被害者より企業の救済を優先する国の姿勢は変わっていない」と警鐘を鳴らす。「水俣病被害者互助会」会長の佐藤英樹さん(60)は二〇一一年十一月、被災地支援のため福島県飯舘村を訪ね、手にした線量計の数値に驚いた。出会った地元の老夫婦は「私たちはここに残るが、みんないなくなった。寂しい」と嘆いた。福島第一原発と飯舘村の距離は、水俣市と川内原発の距離とほぼ同じ。「水俣でも飯舘村のようなことが起きかねない」と実感し、再稼働に反対するようになった。妻スミエさん(58)とともに、各地の反対集会に出掛けている。佐藤さんのような原発に反対する水俣病患者は増えている。川内原発からの近さだけでなく、福島の人々が抱える困難に水俣と類似点を感じ、人ごとと思えないからという。水俣病患者は、初確認から五十八年が過ぎた現在でも、賠償を求める訴訟が相次いでいる。「水俣病不知火患者会」会長の大石利生さん(74)は子どものころ、近所の海で採った貝を食べて水俣病を患った。足のけいれんや頭痛、五〇度のお湯でも熱さを感じないほどの感覚障害に長年、苦しんできた。しかし、訴訟で和解が成立する二〇一一年まで、行政からの救済措置は受けられなかった。「国は補償に厳しい基準を設け、被害者の申請をほとんど却下してきた」。その歴史が福島で今、繰り返されているという。「国は水俣病の原因となる排水を出したチッソを守ろうとし、被害者を切り捨てた。福島でも東京電力を守ることばかりに国費を使っている。住民の甲状腺に異常が見つかっても、『原発事故とは無関係』と言い切る。ろくに調べようとしていない。国は同じような過ちを繰り返している」。患者らの声の強まりを、水俣市で三十年以上、原発反対を訴えている永野隆文さん(59)も実感する。今年四月、再稼働に反対する市民団体「原発避難計画を考える水俣の会」を新しく立ち上げると、これまで反対運動を控えていた患者らもメンバーに加わった。「ほかの市民より、水俣病の患者は自分たちの経験、教訓を伝えたいという思いが強い。今まではあまり積極的でなかったが、福島の被害を見て先頭に立ちたいと考える人が増えつつある」 <水俣病> 工場から出たメチル水銀で魚介類が汚染され、食べた人らに起きた公害病。手足の感覚障害や視野が狭まるなどの症状が出る。熊本県水俣市ではチッソ水俣工場が排出源。1956年に初めて患者が確認された。国は73年に救済に乗り出したが、77年に厳しい基準を設け、それ以降は患者認定の申請を大量に退けている。患者側が起こした訴訟では国側敗訴が相次ぎ、国は95年に政治解決策、2009年に特措法による救済策を設けた。患者団体などは現在も救済は不十分としている。 PS(2014.7.9追加): このような中、*7-1のように、経団連の会長が「①安全が確認された原発は、速やかに再稼働すべきで、それが国民全体の願いだ」「②原発停止は、経済成長の大きな足かせになる」「③これ以上の安全措置はないというぐらい万全な態勢を敷いている」などと述べている。 しかし、①については、フクイチの原因も分からず後始末すらできない中、再稼働は国民全体の願いではなく、その状況は、このブログの2012.9.15に掲載した国民の意見公募、*3-3のような反原発運動、*7-2のような選挙での意思表示等で示されている。また、②については、このブログの2014.6.16に掲載している「福井地裁大飯原発3、4号機差止訴訟判決」で人権(人格権)と経済成長は比較すらすべきでない旨、論理的に述べられている。その上、③には根拠が無い。そのため、このような原発推進発言をする経団連会長は、見識が低いと言わざるを得ない。 <経団連会長の意見> *7-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11231536.html (朝日新聞 2014年7月9日) 安全確認の原発「再稼働すべき」 経団連・榊原会長 経団連の榊原定征会長は8日、原発の再稼働について、「安全が確認された原発は、速やかに再稼働すべきだ。国民全体の願いでもある」と述べた。東日本大震災の被災地で、東北電力女川原発(宮城県)の防潮堤工事などを視察した後、報道陣に語った。榊原会長は「老朽化した火力発電所を無理に稼働させている今は綱渡り状態。電気料金は家庭用、産業用とも上昇しており、経済成長の大きな足かせになる」と語り、原子力規制委員会による審査を経たうえで、早期の再稼働が必要との考えを改めて強調した。経団連は、原子力規制委員会による審査の作業を早めるよう求める提言を日本商工会議所と経済同友会と共同発表するなど、繰り返し原発の早期再稼働を訴えている。 <原発再稼働に関する世論> *7-2:http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20140708000159 (京都新聞 2014年7月8日) 原発再稼働反対56% 滋賀県知事選世論調査印刷用画面を開く 原発再稼働の賛否 滋賀県知事選(13日投開票)を前に京都新聞社が県内有権者を対象に実施した世論調査で、福井県内の原発が現行の安全基準をクリアした場合の再稼働について、反対と答えた人が56・6%に上り、賛成の35・2%を上回った。福島第1原発事故を受け、隣県に多数立地する原発に対して安全性や防災対策で依然として不安を抱く有権者が多いことが分かった。調査は3~5日に行い、有効回答者数は1009人だった。再稼働の賛否で「分からない・無回答」は8・2%だった。男性は反対が49・8%、賛成が45・3%と差は小さかったが、女性は反対が63・0%に上り、賛成の25・7%の2倍を超えた。年代別では、反対が最も多いのは60代の64・9%で、30代、50代と70歳以上も55~60%に上った。20代は最も少ない49・3%で、賛成が最高の44・2%だった。同じ世論調査で、知事選の投票時に重視する政策や公約(二つまで選択)では、「原発」を挙げた人が25・1%に上り、福祉・医療、景気・雇用、教育・子育てに次ぎ4番目に多かった。知事選は無所属新人の3候補が争い、元内閣官房参事官の小鑓(こやり)隆史候補(47)は「再稼働は原子力規制委員会の判断に委ねるべき」とした上で、非常時に備えた福井県との連携強化を主張。共産党県常任委員の坪田五久男候補(55)は「停止中の全原発の再稼働を許さず、そのまま廃炉に持ち込むのが現実的」として「原発ゼロ」を訴える。元衆院議員の三日月大造候補(43)は「多重防護が実現しない限り再稼働を認めない」とし、できるだけ早期に原発をなくす「卒原発」を掲げている。
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2014,07,02, Wednesday
2014.6.25 2014.6.26 *1より 日経新聞 毎日新聞 (1)再稼働か電力不足かという脅迫による原発再稼働を許すべきでない *1に書かれているように、「政府が夏の節電要請を始めた7月1日、偶然、九州電力と中部電力の大型火力発電所が同時にトラブルで運転できなくなり、節電期間の初日から電力不足の懸念があらわになった」というのは、まだ他の電源を本気で手当てすることなく、原発のかわりに老朽火力をフル稼働して原発再稼働の時期を覗い、再稼働か電力不足かという脅迫による原発再稼働を目論んでいたということであり、呆れるほかない。 (2)安全神話を作っても、責任者が辞めて組織を変えれば終わりでは解決できない *2に書かれているように、日本では、「日本は強い」「絶対勝てる」というような根拠なきムード作りを行い、反対意見は無視し、負けても現実から目を背けて、正確に敗因分析を行って次に生かそうとしない傾向がある。 原発でも、政府や電力業界は「日本で原発事故が起きるはずがない」という“安全神話”を作って事故のリスクに目をつぶった結果、取り返しのつかない惨事を招いた。しかし、これは、原子力安全・保安院を解体して、原子力規制委員会を発足させたことで、解決されたと考えるべきものではない。 (3)低線量被曝の健康被害は、確実にある 低線量被曝の健康被害については、「わかっていない」ということを根拠に(???)、低線量被曝の健康被害について発信する人を「風評被害の発信者」と断定し、放射線の新たな“安全神話”を作ってきた。 そのため、医学・疫学の専門家が、*3の「双葉町等での疫学調査」を行い「報告書」にまとめているので、参照されたい。要点は、事故後1年半経過した平成24 年11 月時点で既に様々な症状が出ており、双葉町・丸森町ともに特に多かったのは鼻血であり、双葉町ではそのほかにも様々な疾患の多発が認められ、これらの症状や疾病の増加は、原子力発電所事故による放射線被曝やその後の避難生活によって起きたものだということである。 そして、事故後3年後の現在、これらの症状や疾病は、より広い地域で進んだと考えるのが自然だ。 *1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140702&ng=DGKDASDF0100X_R00C14A7EE8000 (日経新聞 2014.7.2) 九電・中部電で火力トラブル 西日本、電力需給に懸念 節電期間の初日… 政府が夏の節電要請を始めた1日、九州電力と中部電力の大型火力発電所がトラブルで運転できなくなった。中部を含む西日本は今夏、電力需要に対する供給の予備率が3.4%と安定供給に最低限必要な3%をわずかに上回る状況だ。電力各社は原子力発電所のかわりに古い火力をフル稼働しているが、節電期間の初日から電力不足の懸念があらわになった。九電は1日、相浦発電所2号機(長崎県、出力50万キロワット)が、ボイラーに水を送り込むポンプの不具合で発電できないと公表した。6月30日の起動に向けてポンプを動かしていたところ、異常が見つかったという。九電の瓜生道明社長は1日、記者団に「梅雨明けまでの復旧を目指したい」と説明したが、稼働のメドは立っていない。九電が今夏、想定するピーク需要に対する供給の余力は51万キロワット。仮に相浦2号機がこのまま動かなければ、ピーク時に3%の予備率を確保していた九電管内の余力がほぼなくなる計算だ。中部電力の碧南火力発電所4号機(愛知県、100万キロワット)も1日、ボイラーに空気を送り込む機具の温度が上がったため運転を停止した。中電は冷却後に原因を究明するが「原因の特定に最低数日かかるかもしれない」とし、復旧のメドは立っていない。中部電は今夏、電力需給が特に厳しい関西電力や九電への電力融通が期待されている。碧南火力の停止が長引けば、西日本全体で供給余力が低下することになる。相次ぐトラブルの背景には、原発のかわりに古い火力をフル稼働している実態がある。 *2:http://qbiz.jp/article/41049/1/ (西日本新聞 2014年7月2日) 押せ押せムードと安全神話 (記者:川崎弘 西日本新聞社 経済部所属。担当はエネルギー、中小企業、国際分野など。社内で「経済部にいるけど、足し算できるの?」と質問されることが多く、原因を鋭意分析中。ラグビーと日本酒とカレーとロックを愛する。佐賀市出身) 本田選手の先制ゴールで浮かれたのも束の間。後半に2点を決められ、逆転負け。2戦目は1人少ない相手を崩しきれず、同点。3戦目は、後半に3点を決められ、惨敗。にわかサッカーファンの私も、今回のワールドカップは「きっとやってくれる」と期待しながらテレビで観戦したが、見ていて苦しくなる場面の連続だった。スポーツに勝ち負けは付きものだし、選手たちが精いっぱいやって負けたのであれば、仕方がないと思う。ただ、違和感が残るのは、大会前の新聞やテレビは「日本は強い」「絶対勝てる」といったムード一色だったのに、予選敗退が決まると、何ごともなかったかのように急に話題に上らなくなったことだ。残念な結果に終わったとはいえ、敗因の分析や結果責任を問う声は少なく、反省を次に生かそうとする機運も乏しいように感じる。 スポーツと戦争を比べるべきではないかもしれないが、今回の日本チームの戦いぶりを見ていて、太平洋戦争を連想した。真珠湾攻撃以降は優勢だったが、ミッドウェー海戦とガダルカナル島の戦いで敗れた後は防戦一方。敗色が濃くなっていたが、終戦直前に沖縄を占領され、2度にわたって原爆を投下された。厳しい言論統制下にあったとはいえ、「必ず勝てる」「絶対にうまくいく」といった押せ押せムードが広がるうちに、現実から目を背けてしまう風潮は、今も昔も変わらないように思う。 同じ傾向は、原発にもついても言えると思う。福島第1原発事故の前、政府や電力業界は「日本で原発事故が起きるはずがない」という“安全神話”に陥っていたと言われる。事故のリスクに目をつぶった結果、取り返しのつかない惨事を招いた。福島の事故を受け、原子力安全・保安院が解体され、原子力規制委員会が発足。そして、昨年7月に始まった同委員会の審査では、九州電力の川内原発(鹿児島県薩摩川内市)が最も合格に近く、再稼働第1号になる可能性が高い。今後、地元で説明会が開かれる見通しだが、再稼働への反対の声は大きく、原発をめぐる議論は大きなヤマ場を迎える。九電の瓜生道明社長は6月にあった原発の安全対策についての記者会見で「安全神話から脱却するのが、当然の姿だと思う」と語った。この言葉が本当であれば、説明会の場では、社長自ら、福島の事故の前の九電は、どういうところが問題で、どう変わったのか。事故は二度と起きないと言えるか。そもそも九電は安全神話に陥っていたのか‐といった疑問に対する答えや思いを語ってほしい。原発は、再稼働するにせよ、しないにせよ、多くの問題をはらんでいる。しかも難解だ。それだけに、意見や立場の違いを乗り越え、率直な思いを交わすところからしか、答えは見つからないと思うからだ。少なくとも、戦争や今回のワールドカップのように「ムード」や「雰囲気」や「神話」の中で物事が進むことだけは避けなければならないと思う。 *3:http://www.saflan.jp/info/870 (福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク 2014年5月20日) 双葉町等での疫学調査の「報告書」について 双葉町では、事故から約1年半が経過した平成24年11月に、鼻血等の症状または疾病罹患の多発の有無等について調査が行われています。この調査は、過去の公害・薬害事件の経験を踏まえ、将来的に放射線被ばくと疾病との因果関係が問題になることが予想されることから、SAFLANが提案・コーディネイトを行い、疫学研究の第一人者である岡山大学の津田敏秀教授、頼藤貴志准教授らのグループが主体となって、双葉町等が参加して行ったものです。いわゆる美味しんぼ問題をめぐっては、因果関係や風評被害の有無等について様々な議論がなされていますが、その議論の前提として、まずは当該地域における鼻血等の多発の有無に関する具体的なデータが必要だと考えます。そこで、平成25年9月に双葉町が町民に公表した調査報告書を下記よりダウンロードできるようにしました。本調査結果が事実に基づいた議論の一助になることを願っております。 ■報告書要旨(全文は、上の題名「双葉町等での疫学調査の『報告書』」をクリックすると出てきます) (平成25 年9 月6 日) 低レベル放射線曝露と自覚症状・疾病罹患の関連に関する疫学調査プロジェクト班 低レベル放射線曝露と自覚症状・疾病罹患の関連に関する疫学調査 -調査対象地域3町での比較と双葉町住民内での比較 福島県双葉町、宮城県丸森町筆甫地区、滋賀県長浜市木之本町の3 か所を調査対象地域とし、事故後1年半が経過した平成24 年11 月に質問票調査を行った結果、平成24 年11 月時点でも様々な症状が双葉町住民では多く、双葉町・丸森町ともに特に多かったのは鼻血であった。双葉町では様々な疾患の多発が認められ、治療中の疾患も多く医療的サポートが必要と思われる。これらの症状や疾病増加は、原子力発電所の事故による放射線被曝や避難生活によって起きたと思われる。
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2014,06,26, Thursday
*4-1:川内原発、玄海原発で過酷事故が *5より 起こった場合の放射線物質の飛散 (1)原発には税金が使われている *1のように、九電の株主総会で、瓜生社長が株主への無配を陳謝し、「①川内原発1、2号機と、玄海原発3、4号機の早期再稼働に向けて全力を挙げて対応する」「②自主的な安全性向上に取り組み、安全対策工事に三千数百億円をかけるが、その費用を加えても他の電源より安い」などと述べたそうだ。 しかし、①②について、過酷事故が起こった場合には、上図、*4-1、*4-2のように、30キロ圏内だけが汚染されるわけではないのに、30キロ圏内でさえ有効な避難計画は作れず、避難費用、除染費用、賠償費用などは殆ど税金から支払うことになる。つまり、電力会社と電力需要者はフリーライダー(公害を出して他の人に後始末の費用を出させること)をしているのであり、通常の会社なら株主や債権者が事故の保障をすることになるため、「三千数百億円の安全対策工事の方が安いから、株主に配当するために原発を再稼動させる」という判断には絶対ならないところなのだ。 また、*5のように、川内原発は火山リスクの高い立地であるにもかかわらず、火山のモニタリングをすれば安全という新たな「安全神話」を作り、規制委も火山リスクに目をつぶろうとしている。人間の工学は、地球の営みに比べれば取るに足りないほど微小であることを知っておくべきだ。 (2)本来、日本は資源の豊かな国である *1にある「日本は資源がないので、原発を再稼働することは仕方ない」とする主張は少なくないが、実際には、*2のように、日本近海には原油と成分の似たメタンハイドレートが埋蔵されており、*3-1、*3-2、*3-3のような自然エネルギーも豊富で、これらは今まで未利用だった。しかし、今後は、原発ほど多額の税金を投入しなくても開発できる有望なものである。 従って、成長戦略の1丁目1番地は、国産資源を開発し、それにあわせた技術のイノベーションを遂行して、資源の輸入国から輸出国になることである。これによって、無駄遣いさえしなければ、足りないと言われてきた福祉の資金も容易に捻出できるだろう。 <原発に対する九電の姿勢> *1:http://qbiz.jp/article/40651/1/ (西日本新聞 2014年6月26日) 九電社長、株主総会で「再稼働へ全力」 2年連続の無配陳謝 沖縄電力を除く大手電力9社の株主総会が26日、各地で一斉に開かれた。福岡市であった九州電力の総会では、原発停止に伴う赤字継続で年間配当を2年連続で見送ることについて、瓜生道明社長が「深くおわび申し上げます」と陳謝。原子力規制委員会の優先審査を受け、全国で最も早く再稼働する可能性が高い川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)と、玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の早期再稼働に向けて「国の審査に全力を挙げて対応してまいります」と強調し、理解を求めた。会社側は2013年度事業報告で、昨年4月以降に電気料金を値上げしたものの、原発再稼働が想定より遅れ火力発電燃料費の増大で連結純損益が960億円の赤字となったことを説明。経営安定化に向け、議決権がない「優先株」を日本政策投資銀行に発行し1千億円の資本増強を行うことを報告。関連の定款変更議案を提出、承認された。質疑では、株主から原発に依存する経営姿勢や、無配が続くことへの批判があった。株主からは、原発再稼働について「実効性ある避難計画が策定されたと判断されるまでしない」とする定款変更案など5議案が事前に提出されたが、いずれも取締役会が反対しており、否決。総会は閉会した。総会には午前11時現在、昨年の同時刻より102人少ない573人が出席。会場のホテル周辺では、脱原発を訴える市民団体などがデモ行進するなどし、再稼働阻止などを呼び掛けた。大手電力9社の株主総会には、過去に一度も株主提案がなかった北陸電力を含め、全社で脱原発を求める株主提案が出された。事前の株主提案は9社で計69件に達し、原発再稼働に向けて原子力規制委員会の審査が進む中、脱原発の声が根強いことを示した形となった。 ●電気料金下がる 安全、保証ない 株主ら 福島第1原発事故発生から4度目となる電力会社の株主総会。九電は、原発再稼働に向け「全力を挙げる」と強調したが、会場内外では賛否双方の声が上がった。総会には事前に原発に関連する質問が多く寄せられた。再稼働を急ぐよう促す注文に加え、目立ったのが安全性を問う質問で、役員らが順に答弁した。「自主的な安全性向上に取り組む。安全対策工事に三千数百億円をかけるが、その費用を加えても他の電源より安い」。 原発担当の山元春義副社長は、原発のコスト面での優位性を強調。国内第1号の再稼働に向けて国の審査が進む川内原発(鹿児島県薩摩川内市)が、火山被害を指摘されている点についても、「大規模噴火は、数十年前から兆候を確認できる」などとした。だが、会場からは「根拠は何か」などの声が飛んだ。出席した株主は、再稼働を望む人が多数を占めたようだ。福岡県朝倉市の男性(68)は「原子力は5年、10年は使わないと社会が回らない。再稼働すれば電気料金も安くなる」と指摘。同県春日市の男性(75)も「日本は資源がない。安全性に配慮しつつ再稼働することは仕方ない」と話した。ただ「安全が確認されれば再稼働してもいいが、将来的には原発に頼らない経営を望みたい」(福岡市南区の64歳男性)との意見もあった。一方、会場となった福岡市中央区のホテル前には、約100人(主催者発表)の市民団体関係者が集まり「再稼働反対」などとアピール、同市天神地区をデモ行進した。九電消費者株主の会、深江守事務局長(57)は「福島事故以降も九電の体質は変わっていない。川内原発近くの鹿児島県いちき串木野市では、再稼働反対の署名が市民の半数を超えた。九電はその声を誠実に受け止めるべきだ」と話した。福岡市東区の保育士、浜崎織絵(おりえ)さん(43)は「子どもたちに原発の危険なツケを回してはいけない。保護者も不安がっている。九州には火山もあるし、絶対安全という保証はない」。佐賀県唐津市の農業、田口常幸さん(62)は「事故時の避難計画が不十分。住民を被ばくさせない責任の所在が曖昧だ」と訴えた。 <メタンハイドレートの存在> *2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10208/77370 (佐賀新聞 2014年6月24日) 和歌山県沖に次世代資源、有望、メタンハイドレート調査 和歌山県は24日、同県潮岬沖約18キロの海域に、次世代資源と期待される「メタンハイドレート」が存在する可能性が高いことが判明したと明らかにした。県は今後、詳細な調査を国に要望していく方針。メタンハイドレートは、天然ガスの主成分であるメタンと水が結合した物質で、氷のような状態で海底に眠っている。県によると、昨年11月から今年2月にかけて、魚群探知機を使って調査したところ、複数の箇所で数百メートルにわたって柱状に湧き上がる気泡が観測された。分析したところ、メタンガスの気泡を含むとみられることが分かり、海底にメタンハイドレートが存在する可能性が明らかになった。県は、調査した潮岬海底谷は地層がむき出しになっており、メタンハイドレートが水に溶け出した際にできる地形の特徴が見られるとしている。和歌山県の出口博之企業政策局長は、今後も詳細な成分分析などが必要になるとしながら、「自主的なエネルギーの確保は日本にとって重要な問題。和歌山県沖で採掘できるようになれば、県民にとって夢のある話だ」と期待を寄せた。和歌山県では2013年から、研究や資源開発の誘致を目的に、メタンハイドレートの分布を把握するため独自の調査をしていた。 <自然エネルギー> *3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140622&ng=DGKDZO73119010R20C14A6MZ9000 (日経新聞 2014.6.22) 海流や潮で発電 急浮上 、再生エネ、天候問わぬ新顔 プロペラのような翼を海中に沈め、海流や潮の満ち引きを利用して発電する「海の風力発電所」が注目を集めている。日本の領海と排他的経済水域(EEZ)の広さは世界6位で、発電に適した場所も多い。太陽光や風力と違い、天候に左右されずに発電できる利点もある。政府も開発を後押ししており、再生可能エネルギーの新顔は主役になる可能性を秘めている。日本の太平洋側を流れる黒潮。水産資源など豊かな恵みをもたらす海流をエネルギー源として使う「海流発電所」を2030年ごろに実現する。そんな壮大な計画に、IHIと東芝、東京大学、三井物産戦略研究所(東京・千代田)が取り組んでいる。直径40メートルの翼を2つつけた発電装置をワイヤで海底に固定。凧(たこ)のように浮遊させながら黒潮の流れを受けて回り発電する。10キロメートル四方に発電装置を400基設け、80万キロワットと小規模な原子力発電所並みの電力を生み出す。海流発電の原理は風力発電と同じだが、風力にはない利点がある。海流は年間を通じて流れるため、安定して発電できる。黒潮の幅は100キロメートルあり、設置できる場所は広い。流れは平均で毎秒1.5メートル前後と比較的遅いが、水の密度は空気の800倍あり、エネルギーは十分に得られる。こうした条件から、海流発電の稼働率を60~70%と見積もった。これに対し、天候に左右される太陽光は10%台、洋上も含む風力は30~40%にとどまるという。IHI技術開発本部海洋技術グループの長屋茂樹課長は「発電コストは1キロワット時当たり20円を目標にしている」と話し、風力発電並みを狙う。海の流れを利用した発電は他にもある。潮の満ち引きで起こる速い流れを使う「潮流発電」だ。明石海峡や鳴門海峡をはじめとする瀬戸内海近海、有明海や八代海を抱える九州西部、津軽海峡などで潮の流れが秒速2~5メートルある。陸上の風力発電のように水車を海底に太い柱で固定するタイプのほか、ワイヤで海底につなぎとめるタイプなどアイデアはさまざまだ。三井海洋開発は潮流発電と風力発電を組み合わせて出力を高めた装置を開発した。今秋には佐賀県唐津市沖で実証試験を始める。ハイブリッド発電装置は海に浮かべるタイプで、全長約70メートルある。海中部分には、丸く曲げた板を組み合わせた特殊な水車を設置。あらゆる方向から来る潮流をとらえて発電する。海上の風力発電も含めると、1基あたりの出力は500~1000キロワット。「設置面積当たりで最高の出力を目指した」と中村拓樹事業開発部長は話す。16年にも実用化する計画だ。海の流れを活用する次世代発電は、船舶や潜水艦で培った技術を生かせる。IHIのほか、川崎重工業など重工メーカーが相次いで参入し、技術開発を競っている。国も環境省などが装置の耐久性や発電効率を確かめる実証試験に助成、開発を後押ししている。だが、課題もある。例えば、海洋発電は陸地から離れた場所に設置するため、発電した電気を送る専用の海底ケーブルは十キロメートルから数十キロメートル必要になる。IHIなどの発電装置はケーブル代も含めると1基あたり10億~20億円かかるという。黒潮が大きく蛇行するおそれもあり、影響の少ない適地を選ぶ必要がある。巨大な水車を水中に設置する影響も不透明だ。専門家は良い影響と悪い影響が両方出る可能性があると指摘する。三井海洋開発は水車が潮流以上の速さで回らないように設計、生態系に影響しないよう配慮する。徳島県が徳島大学に委託した調査によると、鳴門海峡の潮流発電の潜在能力は400万キロワットの電力に相当するが、観光の目玉となっている渦潮が小さくなるおそれがあるという。沿岸域には漁業権が設定されており、漁協との協議も欠かせない。政府は50年までに温暖化ガスの排出量を80%減らす目標を掲げる。4月には「30年に約2割」という参考値のもと、再生可能エネルギーを最大限導入するとした「エネルギー基本計画」も閣議決定した。海流発電や潮流発電は潮目をとらえ、新たな切り札となりうるか、期待が集まっている。 *3-2:http://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/? (日経新聞 2014.6.22) 潮流発電、18年度から 環境省実用化、新エネ開拓 地熱並み可能性 日本近海を流れる潮の巨大な力で電気を作る潮流発電が、2018年度の実用化に向けて動き出す。環境省が14年度から企業を募り、海峡などの速い流れを使う発電施設の開発を始める。東京電力福島第1原子力発電所の事故で、火力発電への依存度が高まっている。温暖化ガスの削減やエネルギーの安全保障へ新たなエネルギー源の開拓を急ぐ。潮流発電は海中に並べた水車で潮の流れを受け止め、発電機を回して電気を生む。川崎重工業などに技術力がある。日本が強みとする機械や造船の技術を生かし、英国やインドネシア、韓国をはじめ世界の需要も開拓したい考えだ。政府は太陽光や風力に続く自然エネルギーの拡大に力を入れている。海洋エネルギーのなかで、潜在能力は2200万キロワットと世界3位の地熱発電並みの可能性があり、天候に左右されない潮流発電を有力候補とする。環境省は企業などに研究開発を委託し、漁業に配慮した環境影響が少ない1メガ(メガは100万)ワット級の商用規模の潮流発電システムを確立する方針。14年度予算案の概算要求で関連費用として6億円を盛り込んだ。18年度までに30億円を超える予算を投じる見込みだ。14年度は潮のエネルギーを効率良く電気にかえる構造や耐久性の向上を研究する。15年度以降は実際の海で技術を試し、周辺環境への影響も調べる。17年度からは採算が合う事業の検討に入る。日本は明石海峡や鳴門海峡をはじめとした瀬戸内海近海、有明海や八代海を抱える九州西部、津軽海峡などで潮の流れが秒速2~5メートルと、潮流発電に向く海域が多い。日本の領海と排他的経済水域(EEZ)の広さは世界6位。潮流や波の力、海水の温度差や遠い海流を使う発電への期待は大きい。政府が4月に国家戦略としてまとめた海洋基本計画は、1キロワット時当たり40円の発電コストを目標に掲げた。太陽光(30~40円)や風力(10~20円)に比べて割高だが、実用化までにコスト低減を図る。潮流は、太陽光や風力と違って年間を通じて安定した発電ができる。沖合の海流と違って潮の流れは沿岸に近く、電源ケーブルの敷設にかかる投資負担も少ないことなどから有望視されている。 ▼潮流発電 海峡などを通る潮の流れのエネルギーを使って、大きさ数メートル以上の水車を回して電気を生み出す仕組み。水車を海底に固定するタイプや、ワイヤで係留し凧(たこ)のように流れに任せるタイプまでアイデアは様々だ。ただ、技術の確立はこれからで、国内では実用化の例がない。海外では欧州が実用化で先行する。英国は2020年までに潮流発電など300メガ(メガは100万)ワットの海洋エネルギーの導入を目指す。オークニー諸島に潮流発電に関する大規模な実験施設を持ち、実証研究を進めている。 *3-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140625&ng=DGKDASDZ240AU_U4A620C1TJ1000 (日経新聞 2014.6.25) 日立、風力発電用一括サービス 資金調達や機材運用・保守 日立製作所は日立キャピタルと連携し、風力発電事業者に資金調達から発電機の運用・保守までを一括して提供するサービスを始める。風力発電で日本市場に再参入を決めた米ゼネラル・エレクトリック(GE)が製品と金融をセットで売り込んでおり、これに対抗する。2015年度までに共同事業の規模を6万キロワット(大型風車30基分に相当)にする計画だ。日立キャピタルは発電事業者に15~17年間の発電機リースを提供。事業者の要望に応じ資金の一部を融資したり、複数の金融機関による融資(プロジェクトファイナンス)をまとめたりする。日立製作所は発電機を納めるだけでなく、運用や保守も手がけるため安定した収入を見込める。両社は共同出資で「日立ウィンドパワー」を設立し、グループ会社内に風力発電機を設置して発電・売電事業も始めた。今後、小規模な風力発電所を15年夏にも東北で2カ所建設する。 <過酷事故時の避難計画> *4-1:http://qbiz.jp/article/40345/1/ (西日本新聞 2014年6月23日) 30キロ圏外でも高放射線量 原発事故時の飛散状況を試算 東京電力福島第1原発事故と同規模の過酷事故が、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)と玄海原発(佐賀県玄海町)で起きた場合、避難が必要とされる高線量の放射性物質が原発から半径30キロ圏外にも飛散する可能性があることが、民間調査会社「環境総合研究所」(東京)の試算で分かった。風向きによっては、国が事前の避難準備を求めるおおむね30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)を越えて鹿児島市や福岡市の一部にも及ぶ計算となり、国に対策の見直しを求める声が強まりそうだ。同研究所は福島原発事故後、最も放射性物質の飛散が多かった2011年3月15日の福島県飯舘村や福島市などの放射性セシウム、ヨウ素の観測データから飛散総量を推定。推定した放射性物質の飛散総量が放射性プルーム(放射性雲)となって移動し、降雨で九州各地に落下した場合の、1時間平均の空間線量率をレベル別に地図に示した。原子力規制庁が12年に公表したのと違い、山や谷などの地形を考慮し、より正確な試算になっているという。それによると、原発周辺で軒並み高線量を算出。風速毎秒2メートル(市街地で日常的に吹いている風)で西南西の風が吹いた場合、川内原発から東に約6キロの医療機関では事故直後、1時間当たり294マイクロシーベルト。国が1週間以内の避難を求める基準値(同20マイクロシーベルト)の15倍に相当する高い値だ。原発周辺で年30日程度観測される北西の風だと、原発から30キロ超の鹿児島市内でも最大24マイクロシーベルトに達した。薩摩川内市、いちき串木野市などの約5万7千人が鹿児島市を避難先に指定されているが、風向き次第で避難が困難となる可能性がある。 玄海原発では、北風が吹けばプルームが30キロ圏の佐賀県伊万里市を越え、約31キロの同県有田町に達し、同町内で線量は43マイクロシーベルトに上る場所があった。西風は年間を通じ少ないものの、建物などがない海上を通ると飛散距離が伸び、福岡市にまで到達。線量は西区内では最大56マイクロシーベルト、早良区32マイクロシーベルト、城南区30マイクロシーベルト、南区29マイクロシーベルトに達した。UPZ内ではない有田町は今のところ、避難計画を独自に策定する予定はない。福岡市は「30キロを越える自治体がどうすべきか、国は早く指針を示してほしい」(防災・危機管理課)と強調する。原子力規制庁は、プルーム通過時の被ばくを避けるための防護措置地域(PPA)をおおむね50キロ圏内とする考えは示しているが、「具体的な対策は今後の検討課題」としている。 ■放射性プルーム 原発事故で、気体や粒子状の放射性物質が環境中に放出され、大気とともに雲のように流れる状態。「放射性雲」とも言われる。飛来方向は風向や地形の影響を大きく受け、地表への沈着は降雨や積雪に左右される。プルーム通過時に体面に付着する外部被ばくと、地表への沈着後に食べ物や呼吸などで体内に取り込む内部被ばくが懸念される。 *4-2:http://qbiz.jp/article/40349/1/ (西日本新聞 2014年6月23日) 圏外自治体、独自の避難計画も 原発事故試算 原発の半径30キロ圏より外側にある自治体に、原発事故への備えを懸念する声が広がっている。国は、防災対策を重点的に進める緊急防護措置区域(UPZ)を「おおむね30キロ」圏内としているが、自治体や民間機関の事故試算で、これを越えて放射性物質が拡散する可能性があることがあらためて分かってきたためだ。住民の不安を払拭するため、独自に避難計画を作ったり、内部被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤を用意したりする圏外の自治体も出てきた。「30キロ圏から来た人の避難先が優先され、市民がどこに逃げるかはまだ決まっていない」。5月末、京都市であった「脱原発をめざす首長会議」の勉強会で、京都府京丹後市の中山泰市長は訴えた。かつて関西電力の原発の候補地にもなった京丹後市は、関電高浜原発(福井県高浜町)から西へ最短で30・9キロ。わずかに30キロを超えるため、府の地域防災計画から除外された。昨年、市独自の防災計画を策定したものの、避難先は関西広域連合との調整が必要で、決められないままだ。一方、府からはより原発に近い2市町の避難先に割り振られた。自分たちの避難と避難者受け入れを両立できるのか、自治体担当者から疑問の声が出ている。高浜原発から最短約45キロの兵庫県篠山市。県が実施した事故試算で高線量の放射性物質の飛来が予測され、2月、独自に全市民4万4千人分のヨウ素剤を市内5カ所に備蓄した。市民安全課の西牧成道課長は「ヨウ素剤備蓄について他の自治体から問い合わせも多い。住民向けの使用説明会を進めていきたい」と話す。福岡市は九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)から最短で約37キロ。京丹後市と同様に、福岡県の地域防災計画からは外れているが、独自に50キロ圏に入る市民の避難計画(暫定版)を4月に策定した。50キロ圏の人口は約56万人。市は半分近い約27万人分のヨウ素剤を確保しており、残りは3年かけて用意するという。同川内原発(鹿児島県薩摩川内市)北部にある熊本県水俣市も最短約37キロにある。環境総合研究所(東京)の試算で、風向きによっては高線量の放射性物質が及ぶとの結果だった。同市は、30キロ圏の鹿児島県出水市からの避難先となっているが、一部市民から、独自の避難計画の策定を求める声が強まっている。国は2012年、原発事故時の住民避難区域を8〜10キロ圏から30キロ圏に拡大した。それでも網羅できない「備え」の負担は、自治体に重くのしかかる。「原子力防災」の著書がある元四国電力社員の松野元さん(69)は「風向きによって50キロ圏でも避難が必要になるというのは、福島事故の教訓として当たり前のこと。それに備えた準備が必要で、国が早期に対処方針を示すべきだ」と指摘する。事故時の放射性物質の拡散予測は、原子力規制庁が12年10月に全国16カ所の原発を対象に公表したことがある。ただ、この時は山や谷などの地形を反映していなかった。環境総合研究所の青山貞一顧問は「山間部よりも谷間に放射性物質が流れやすいなど地形で経路は大きく左右される」とし、規制庁の試算は不十分だとみる。地形を考慮すると、試算の計算量が数十万〜数百万倍違うという。同研究所は、国土地理院の地形情報も踏まえて試算。風速が毎秒2メートルだと、放射性プルーム(放射性雲)となった放射性物質は1時間で約7・2キロ移動し、4時間強で30キロ先に到達する計算。行政の試算によると、川内、玄海両原発では30キロ圏内の住民が圏外に避難するまでに24時間前後かかるとされ、一定量の被ばくは避けられそうにない。 <原発に対する火山リスク> *5:http://mainichi.jp/select/news/20140626k0000e040260000c.html (毎日新聞 2014年6月26日) 川内原発:火山対策、予知頼みの無謀 専門家警告 ◇火砕流で原子炉爆発の恐れ 原子力規制委員会による九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)1、2号機の適合性審査が、大詰めを迎えている。安倍政権は「再稼働1号」と期待するが、周辺は巨大噴火が繰り返されてきた地域だ。このまま通して大丈夫なのか。他にも同様のリスクを抱える原発がある。東大地震研究所火山噴火予知研究センターの中田節也教授(火山岩石学)に聞いた。規制委が川内原発の審査を優先したのは、九電による地震や津波の想定を「妥当」と評価したからだ。火山については「稼働期間中に巨大噴火が起こる可能性は十分低い」という九電の説明を、大筋で了承した。だが、川内原発のある南九州は、図のように巨大噴火による陥没地形「カルデラ」の集中帯だ。「カルデラ噴火は日本では1万年から数万年に1回起きており、同じ場所で繰り返すのが特徴です。姶良(あいら)カルデラは前の噴火から約3万年、阿多カルデラも約10万年が経過しており、両カルデラのある錦江湾の地下にマグマがたまっているというのは火山学者の常識。そろそろ何かの兆候があっても不思議はありません」。中田教授はそう警告する。昨年7月に施行された新規制基準では、原発の半径160キロ以内にある火山の火砕流や火山灰が到達する可能性を調べ、対応できないと判断されれば「立地は不適」として廃炉になる。こうした火山リスクは、福島第1原発事故の前にはほとんど議論されなかった。その理由を中田教授は「近年の日本の火山は異常に静かだから」と言う。「日本ではカルデラ噴火どころか、1707年の富士山、1914年の桜島、1929年の北海道駒ケ岳の後は大きな噴火は起きていません。原発が日本に導入されたのは1950年代なので、真剣に考慮されることはなかったのです」 もし今、カルデラ噴火が起きたらどうなるのか。 「軽石や火山灰が火山ガスと一緒に火山の斜面から流れ下る火砕流に巻き込まれれば、原子炉建屋は破壊されます。炉自体の破壊は免れても、火砕流内の温度は推定400度以上と高熱ですから炉内の冷却水は蒸発してしまい、暴走して結局は爆発する。いずれにしろ大量の放射性物質が大気中に放出されるのは避けられないでしょう。実際、川内原発と玄海原発の近くでは火砕流堆積(たいせき)物が見つかっています」と中田教授。姶良カルデラ噴火を上回る規模だったとされる阿蘇カルデラ噴火(約9万年前)の火砕流は、四国西端の伊方原発がある場所近くまで到達したと考えられているのだ。洞爺カルデラに近い北海道・泊原発などにも同じリスクがある。九電は当初、過去の巨大噴火で川内原発に火砕流は到達していないとしていたが、3月の審査会合で約3万年前の姶良カルデラ噴火による火砕流が川内原発に到達していた可能性を初めて認めた。火砕流が到達しなかったとしても、火山灰のリスクがある。九電は桜島の大噴火で火山灰が敷地内に最大15センチ積もると想定。電源や食料を確保するほか、換気設備や発電機のフィルターは交換、除灰で対応するとしている。「施設から火山灰を取り除く対策は工学的には正しい。しかし火山灰が数センチ積もれば車が動かなくなります。灰が降り積もる中で、除灰する人の確保や物資の運搬をどうするのか」。昨年2月、週刊誌に中田教授を含む火山学者らが巨大噴火を警告する記事が掲載された。その直後、中田教授は規制委の事務局である原子力規制庁に呼ばれた。「私は『GPS(全地球測位システム)で地殻変動などを観測していれば噴火の前兆はつかめる。ただ、噴火がいつ来るのか、どの程度の規模になるかは分からない』と説明しました。しかし、規制庁は『前兆はつかめる』という点に救いを見いだしたのでしょう。いくら時期も規模も分からないと繰り返しても『モニタリング(監視)さえすれば大丈夫』との姿勢を崩さなかった」。九電は巨大噴火の前兆を把握した場合、社外の専門家を含めて本当に噴火するのかを検討し、原子炉を止めて核燃料を別の場所に運び出すとの方針を打ち出した。規制委は「搬出先や搬出方法は電力会社が決める」との立場を取っている。米原発メーカーで原発技術者を18年間務めた佐藤暁さんは「稼働中の原子炉から取り出した使用済み核燃料を搬出する前に、まず原子炉建屋内の冷却プールで5年以上貯蔵しなければならない。さらに搬出作業にも輸送用容器の手配などが必要で、とても数カ月では完了しない。搬出中に噴火が起これば貯蔵中よりも危険。噴火が迫ってからやるべきことではない」。中田教授が「安全に核燃料を運搬するために数年前に噴火の予兆を把握することなど無理だし、保管場所も決まっていない。詰めるべき点はたくさんある」と批判するように、机上の空論なのだ。国際原子力機関(IAEA)で原発立地と火山に関する安全指針の作成に関わった経験を持つ中田教授は、規制委が「火山影響評価ガイド」をまとめる際にも意見を求められた。ガイドは、火山活動の影響で原発の安全性が損なわれない設計であることを確認するものだ。だが策定まで約3カ月しかなく、既に方向は決まっていた。「火砕流などが原発に到達しないことを学問的に厳密に詰めなくても、モニタリングに頼って審査を通そうというガイドになってしまった。原発を動かしたい人の習性が反映された内容」と手厳しい。そして、こう懸念するのだ。「噴火で原発に被害が出れば責任は火山学者に押し付けられるだろう。東日本大震災で地震学者の責任が追及されたのと同じ構図になるかもしれない」。九電は24日、川内原発の原子炉設置変更許可申請の再補正書を規制委に提出した。記載漏れなどの不備があったためで、審査が通り地元の同意が得られれば再稼働は9月以降となる見通しだ。「川内原発はあの場所に造るべきではなかった。今も不安材料があるのだから、再稼働には慎重になるべきだ。どうしても動かしたいなら、政府は核燃料の搬出先の確保など安全対策に積極的に関与しなければ。モニタリングを重視するなら火山研究者を増やしたり、財政的な支援をしたりしなければならない。そこまで政府は腹をくくっていますか?」。火山のモニタリングをすれば安全という新たな「安全神話」が誕生している。 ◇東大地震研究所火山噴火予知研究センター・中田節也教授(火山岩石学) なかだ・せつや 1952年、富山県出身。金沢大大学院理学研究科修了。九州大に助手として雲仙普賢岳の噴火研究を最前線で続けた。これまでに三宅島、新燃岳など国内外の火山を研究。国際火山学・地球内部化学協会会長も務めた。
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2014,06,18, Wednesday
2014.6.14東京新聞より *4-1より (1)フクイチ事故では首都圏も放射能汚染されているが、報道されていない *1に書かれているとおり、埼玉県西部にある秩父市内で捕獲されたシカに含まれる放射性セシウム濃度は、捕獲場所付近の空間放射線量が毎時0.05~0.07マイクロシーベルトだったにもかかわらず、モモ肉からは1キログラム当たり189.4ベクレル、肺からは54.9ベクレル検出された。その理由は、セシウム濃度の高い地面の土が風で巻き上げられて吸い込んだもので、住宅地の放射性セシウムが山林より低いとしても、人間も同じ傾向にあるだろう。 なお、*1だけではなく、このブログの2014.6.16の*4-2の西東京市の農場にあるモモの樹も汚染されていたことで、首都圏の放射能汚染も確実だが、これはTVでは報道されず、サッカー、お天気、殺人事件などの報道ばかりがなされており、TVは、「民は依らしむべし、知らしむべからず」という民主主義以前の姿勢を維持しているようだ。成人の日本国民は全員1票持っているため、これでは、選挙しても候補者が正当に評価されて当選しないのは当然である。 (2)原発攻撃への備えと最終処分場 *2-1のように、外務省は、1984年、日本国内の原発が攻撃を受けた場合の被害予測を研究し、原子炉や格納容器が破壊された場合と東電福島第一原発事故と同じ全電源喪失を想定し、大量の放射性物質が流出して最大1万8千人が急性死亡するという報告書を作成したが、反原発運動の拡大を恐れて部外秘扱いにして公表しなかったそうだ。「依らしむべし、知らしむべからず」では、こうなるのである。 なお、テロ・攻撃・天災なども過酷事故の発生リスクとして認めれば、現在、原発の使用済核燃料プールいっぱいに保存されている使用済核燃料も、早々に処分しなければ危険である。しかし、*2-2に書かれているとおり、2007年に高知県東洋町が候補地として名乗りをあげた時は反対が多く、それを言いだした町長は出直し町長選で負け、反対派が2倍以上の得票で当選したため、候補地への応募を撤回し、現在も最終処分場の建設候補地選定はできていないという経緯があるのだ。 (3)原発事故時に被害を受ける範囲は30キロ圏内だけではない 福井地裁大飯原発3、4号機差止訴訟判決では、原発事故時に被害を受ける範囲を250キロ圏内とし、それは、上の(1)でも証明されている。このように、原発事故時に被害を受ける範囲は、30キロ圏内よりもかなり広い範囲だ。 *3-1では、玄海原発の操業停止を九州電力と国に求めている「原発なくそう!九州玄海訴訟」の原告団が、原発事故で放射性物質がどこまで拡散するかについて風船を飛ばして実験し、冬は強い偏西風の影響で、玄海原発から554キロ離れた奈良県まで飛んだそうである。 また、*3-2のように、茨城県は、「30キロ圏外でも原子力事故による被災地となることを体験をもって明らかにしている」として30キロ圏にとらわれない原子力災害対策等を要望している。 さらに、*3-3のように、北大名誉教授の小野氏は、講演で、「泊原発が事故を起こしたら、北海道はすべてを失う」「上空にはいつも西風が吹いており、放射性物質が流れてくる。日高山脈も越えるのは容易で、釧路にも影響を及ぼすだろう」としている。 (4)有効な避難計画はできているのか *4-1に書かれているように、福岡、佐賀、長崎3県が示した周辺住民の避難時間推計において、試算の前提条件に、現実性に乏しい甘い前提の項目が多く含まれていることが分かったそうだ。こういう前提にした理由を、三菱重工業は「佐賀県と協議して決めた」「米国では避難シミュレーションに不確定要素を取り込まないのが通例」と説明しているが、30キロ圏内に限っても行政の自己満足程度の避難計画しかできていないのである。 また、*4-2のように、再稼働に向けた審査が全国の原発の中で最も早く進んでいる九電川内原発では、鹿児島県が発表した重大事故時の避難時間推計が、渋滞やガス欠、病院や施設入所者などについて全く考慮しておらず、「お粗末すぎる」との専門家の批判が相次いでいる。しかし、そもそも30キロ圏内の人が一時的に避難すれば、帰って元どおりの生活に戻れるという前提は甘すぎるのである。 さらに、*4-3には、「地元市長がJR九州に打診し、川内原発の避難に新幹線の活用を探っている」と書かれているが、原発の過酷事故が起これば、せっかく開通した新幹線も高線量で運行できなくなる可能性が高い。 (5)原発再稼働の推進団体と阻止団体 *5-1のように、原子力推進を訴える「(社)原子力国民会議」の第1回九州集会が福岡市のホテルで開かれ、九州の経済界、大学、自治体からの出席者が、「原発停止に端を発する電気料金値上げで産業や生活が圧迫され、経済の重大な懸念材料になっている」として、集まった約500人に原発の必要性を訴えたそうだ。 しかし、これについては、このブログの2014.5.26に掲載している大飯原発再稼働差止判決が、「個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益は、人の生命を基礎とする憲法上の権利であるため(13条、25条)、我が国の法制下ではこれを超える価値を他に見出すことはできない」「被告は、原発の稼動が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるようなこと自体、法的には許されないと考えている」「原発から250キロメートル圏内に居住する者は、原発の運転によって直接的にその人格権が侵害される具体的な危険があると認められる」と明快に結論付けており、そのとおりだ。 さらに、フクイチでは、原発では絶対に起こらないとされていた過酷事故が起こり、その原因も影響範囲も未だ明らかにされていない。そのため、当然、解決もされておらず、「一度失敗したらだめ」というよりは、大きな事故で、「これまでの楽観論では駄目」ということが明白になったと考えるべきである。 そのため、*5-2のように、北海道や九州で原発廃炉訴訟などを起こしている原告団が、東京都内で記者会見して、全国の原発関連訴訟の原告団が連携する「脱原発原告団全国連絡会」の結成を表明し、全国の弁護団も「連絡会」を結成して、お互いに知識のブラッシュアップや裁判期日が入った裁判所における傍聴などで協力するそうだ。 また、*5-3のように、鹿児島県内では、九電川内原発の再稼働について、「いのちの会」が再稼働の是非を問うアンケートをとったところ、回答した1001人のうち85%が再稼働反対だったそうである。 <フクイチで汚染された範囲> *1:http://radiation7.blog.fc2.com/blog-entry-3265.html (東京新聞 2014.2.2) 報道されない首都圏の放射能汚染、秩父のシカのモモ肉189.4ベクレル、肺54.9ベクレル、汚染物質を吸い込んだ証拠 東京電力福島第一原発事故後、食品に含まれる放射性物質の濃度などを調べている「みんなの測定所in秩父」(秩父市黒谷)を運営する市民団体が、市内で捕獲された野生シカ二頭の部位ごとの放射性物質量を調べた結果をまとめた。福島県内では家畜で同様の調査が行われた例はあるが、県内でのデータは珍しいという。同団体は「今後の対策を考える資料にしてほしい」と話している。秩父市内の野生シカからは一般食品の基準値(一キログラム当たり一〇〇ベクレル)を超える放射性セシウムが昨年も検出されており、県内全域で捕獲されたシカの肉の出荷・販売の自粛が続いている。市民団体が調査したのは、昨年十一~十二月に秩父市大滝で捕獲された三歳前後のメス(体重四八キロ)と、七~八カ月のオス(同三〇キロ)。捕獲場所付近の空間放射線量は、毎時〇・〇五~〇・〇七マイクロシーベルトだった。モモ肉や内臓など約三十の部位のセシウム濃度を調べたところ、モモ肉から一キログラム当たり一八九・四ベクレルが検出された。他の家畜調査の結果と同じく、骨格筋にセシウムがたまりやすい性質が確認できたという。また、メスの肺からは比較的高い五四・九ベクレルが検出された。市民団体の関根一昭代表は「セシウム濃度が高い腐葉土が風などで巻き上げられ、シカが吸い込んだ可能性がある」と分析している。 <原発攻撃への備え、最終処分場> *2-1:http://www.asahi.com/special/10005/TKY201107300615.html (朝日新聞 2011年7月31日) 原発への攻撃、極秘に被害予測 1984年に外務省関連トピックス東京電力 原子力発電所 外務省が1984年、日本国内の原発が攻撃を受けた場合の被害予測を極秘に研究していたことがわかった。原子炉や格納容器が破壊された場合に加え、東京電力福島第一原発の事故と同じ全電源喪失も想定。大量の放射性物質が流出して最大1万8千人が急性死亡するという報告書を作成したが、反原発運動の拡大を恐れて公表しなかった。欧米諸国は原発テロを想定した研究や訓練を実施しているが、日本政府による原発攻撃シナリオの研究が判明したのは初めて。1981年にイスラエルがイラクの研究用原子炉施設を爆撃した事件を受け、外務省が財団法人日本国際問題研究所(当時の理事長・中川融元国連大使)に想定される原発への攻撃や被害予測の研究を委託。84年2月にまとめたB5判63ページの報告書を朝日新聞が入手した。報告書は(1)送電線や原発内の電気系統を破壊され、全電源を喪失(2)格納容器が大型爆弾で爆撃され、全電源や冷却機能を喪失(3)命中精度の高い誘導型爆弾で格納容器だけでなく原子炉自体が破壊――の3段階に分けて研究。特定の原発は想定せず、日本の原発周辺の人口分布とよく似た米国の原発安全性評価リポートを参考に、(2)のケースについて放射性物質の放出量を今回の事故の100倍以上大きく想定。様々な気象条件のもとで死者や患者数などの被害予測を算出した。緊急避難しなければ平均3600人、最大1万8千人が急性死亡すると予測。住めなくなる地域は平均で周囲30キロ圏内、最大で87キロ圏内とした。(3)の場合は「さらに過酷な事態になる恐れが大きい」と記した。ところが、外務省の担当課長は報告書に「反原発運動への影響を勘案」するとして部外秘扱いにすると明記。50部限定で省内のみに配り、首相官邸や原子力委員会にも提出せず、原発施設の改善や警備の強化に活用されることはなかった。当時、外務省国際連合局審議官としてかかわった遠藤哲也氏は「報告書はあくまで外務省として参考にしたもので、原子力施設に何か対策を講じたわけではなかった」と話す。外務省軍備管理軍縮課は「調査は委託したが、すでに関連資料はなく、詳しい事情は分からない」としている。二ノ方寿・東工大教授(原子炉安全工学)は「日本では反対運動につながることを恐れ、テロで過酷事故が起こることはあり得ないとされた。攻撃もリスクの一つとして認め、危険性や対策について国民に説明すべきだ」と話す。 *2-2:http://www.yomiuri.co.jp/economy/20140607-OYT1T50099.html (読売新聞 2014年6月7日) 「核ごみ」機構、トップ更迭…処分場選び加速へ 政府は、原子力発電所から出る「核のごみ」の最終処分場の選定や建設を担う「原子力発電環境整備機構」の山路亨理事長(65)を、任期途中で退任させる方針を固めた。後任には前原子力委員会委員長の近藤駿介氏(71)が起用される見通しだ。トップ交代により、最終処分場の候補地選びを加速させるのがねらいだ。近藤氏は7月にも就任する見込みだ。機構は2000年に設立された。これまで、高知県東洋町が候補地として名乗りをあげたが、その後取り下げ、選定作業は難航している。政府は昨年12月、地方自治体側の立候補を待つ従来の方針を、国主導で処分場を選定する方向に転換させた。機構に対しては「待ちの姿勢で組織としての危機感が欠如している」(政府関係者)などと批判を強めていた。東京電力出身の山路理事長は06年12月に就任し、現在、8年目。16年まで約2年の任期を残して退任することになる。 <原発事故時に被害を受ける範囲> *3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/73331 (佐賀新聞 2014年6月12日) 風船調査まとめ出版 脱原発団体がブックレット 玄海原発の操業停止を九州電力と国に求めている「原発なくそう!九州玄海訴訟」の原告団が、原発事故で放射性物質がどこまで拡散するか風船を飛ばして調べた活動をブックレットにまとめ出版した。調査は2012年12月から1年間、季節別に計4回実施。原発が立地する東松浦郡玄海町から毎回、風船を1千個程度飛ばした。140~430キロ離れた地点まで飛来が確認され、特に冬場は強い偏西風の影響で、玄海原発から554キロ離れた奈良県で見つかった。ブックレットには調査結果のほか、全国から訴訟に参加している作家らが文章を寄せた。プロジェクトリーダーの柳原憲文さん(43)は「過酷事故が玄海原発で起きた場合の恐ろしさを実感できる。二度と繰り返さないために、本を通して脱原発が必要なことを伝えていきたい」と話す。A5判125ページ。1部千円(税別)。問い合わせは佐賀中央法律事務所、電話0952(25)3121。 *3-2:http://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=14029276486184 茨城新聞 2014年6月17日) 原発30キロ圏外も対策を 県南6首長、県に要望へ 東京電力福島第1原発事故に伴う放射性物質の汚染状況重点調査地域に指定されている県南地域の6市町村は16日、県の原子力災害対策について、国に安全審査を申請した日本原子力発電東海第2原発(東海村)の30キロ圏内にとどまらず、全県に拡大すべきとする要請書をまとめ、橋本昌知事に提出することを決めた。要請書をまとめたのは牛久、稲敷、龍ケ崎市と阿見、利根町、美浦村で構成する「稲敷地区6市町村放射能対策協議会」(会長・池辺勝幸牛久市長)。いずれも国から汚染状況重点調査地域に指定され、除染や食品などの放射性物質検査に追われている。同日夕、牛久市役所で協議会を開き、代理人出席を含めて全首長が要請書に合意した。福島第1原発事故で6市町村の放射線量が高くなったことから、要請書は「30キロ圏外でも原子力事故による被災地となることを体験をもって明らかにしている」「30キロ圏内のみを対象としている県の原子力災害対策は事故の教訓を軽視していると言わざるを得ない」と指摘。その上で、(1)30キロ圏にとらわれない原子力災害対策(2)事故発生の通報体制や安定ヨウ素剤の整備(3)原子力安全協定にかかわる重大問題についての情報提供と意見表明の機会-を県内全域を対象に求めた。要請は原電と東海第2の立地・周辺11市町村で進められている原子力安全協定の見直しを念頭に置いており、16日の協議会後の会見では首長らから「住民に説明責任がある中、県からは東海第2原発の安全審査などの情報が入らない」「30キロ圏内外にかかわらず、県全域で対応すべき」などと、不満の声が上がった。 *3-3:http://www.news-kushiro.jp/news/20140615/201406155.html (釧路新聞 2014年6月15日) 泊原発「釧路にも影響」/釧路集会でリスク語る 脱原発への思いを広げようと「さようなら原発1000万人アクション」IN釧路集会が14日、釧路市内で開かれ、泊原発の廃炉をめざす会代表の小野有五さん(北大名誉教授)が原発のリスクや事故の問題点などについて語った。釧路集会は平和運動フォーラム釧根地域協議会、いのちとくらしを守る釧路市民会議、脱原発ネット釧路による実行委員会の主催。講演の中で小野さんは「泊原発が事故を起こしたら北海道はすべてを失う」とし、「上空にはいつも西風が吹いており放射性物質が流れてくる。日高山脈も越えるのは容易で、釧路にも影響を及ぼすだろう」と述べた。 <避難計画> *4-1:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_sougou/article/95034 (西日本新聞 2014年6月15日) 玄海原発事故時の3県推計 「避難時間」甘い前提で試算 [福岡県] 「避難車両の交通事故やガス欠は想定しない」「避難行動は原発から半径30キロ圏内でのみ発生する」-。九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)での重大事故を想定し、福岡、佐賀、長崎3県が示した周辺住民の避難時間推計で、試算の前提条件に、現実性に乏しい項目が数多く含まれていることが分かった。3県は試算で半径30キロ圏の住民約27万3千人が避難するには約17~43時間が必要と発表したが、防災の専門家からは「最悪の条件によるシナリオに基づかなければ十分な備えはできない」と有用性を疑問視する声も出ている。西日本新聞は3県から試算業務を請け負った三菱重工業(東京)が佐賀県に提出した報告書を、情報公開請求して入手した。それによると、三菱重工業は自社開発のプログラムを用い、約2600万円をかけて5キロ圏の住民を優先的に避難させるケースなど52パターンを検討した。避難時間を算出するため設定した前提条件は27項目。東京電力福島第1原発事故が発生した際の避難実態に照らすと、現実的な避難者や緊急車両の動きを反映していない設定がある。福島県原子力安全対策課によると、地震と津波の複合災害となった福島事故では、道路や橋にできた亀裂で避難車両がパンクして動けない事例が続出。避難指示区域となった原発から20キロ圏の大半が停電し、信号機が停止したり、ガソリンスタンドで給油できずに車がガス欠したりした。50~60キロ圏でも県外に自主避難する人が相次いだという。しかし、福岡、佐賀、長崎3県の避難時間推計の前提条件は「避難行動は30キロ圏内でのみ発生する」と設定。事故の収束作業のため原発に向かう緊急車両があるのは確実だが、「新たな30キロ圏外からの車両の流入はない」とした。避難道路の状況も、信号機は「平日日中の信号管制が継続する」とみなし、通行止めなどの発生は「避難開始前に住民に周知され、規制誘導は必要ない」と設定した。こうした前提条件にした理由を三菱重工業広報グループは「佐賀県と協議して決めており回答できない。ただ、米国では避難シミュレーションに不確定要素を取り込まないのが通例」と説明。佐賀県消防防災課は「27万人の動きを予測するにはある程度、設定を単純化しなければならない。これまでに避難時間の指標となる推計はなかったので、一つの目安として考えている」としている。 ■行政の自己満足 河田恵昭関西大学教授(防災・減災学)の話 避難時間を推計する際は、最悪の被災シナリオを考慮することが重要だ。今回の前提条件は福島原発事故の教訓を反映しておらず、行政の自己満足にすぎない。住民の命にかかわるリスクを厳しく捉えなければ、推計の意味が問われる。現実の事故はさまざまな事象が重なり、複雑。せめて原発から放射性物質がどう分布し、この地域は何時間以内に退避しなければ危ないといった情報が必要だ。 *4-2:http://qbiz.jp/article/38828/1/ (西日本新聞 2014年5月30日) 「具体性ない」住民不信、川内原発の避難時間推計 鹿児島県、市町別の試算せず 「想定が甘すぎる」「再稼働ありきの机上の空論だ」−。鹿児島県が29日発表した九州電力川内原発(同県薩摩川内市)の重大事故時の避難時間推計。市町別の時間を試算しないなど、推計方法や想定の在り方に、住民や自治体関係者から批判や疑問が相次いだ。「最も厳しい想定をした」と県の担当者は胸を張るが、再稼働に向けた審査が全国の原発の中で最も早く進む中、住民の原発不信を深める推計となった。市の全域が30キロ圏に入る同県阿久根市。原発避難計画の周知を図ろうと、市は6月9日まで5回の説明会を予定する。同市の花木俊宗さん(82)は地元であった説明会で、避難先となっている熊本県芦北町までの渋滞時の所要時間を尋ねたが、市の回答は「県の推計が出たら説明する」。花木さんは「住民が一番知りたい市町別の避難時間がないとは。推計の意味がない」と憤る。市の担当者も「今後開く3回の説明会では県の推計も説明するが、住民は納得しない」とこぼした。鹿児島県出水市の説明会に出席した主婦福島直子さん(61)は、推計発表後に再度説明会を開くよう求めた。市が推計を参考に避難計画を見直すと答えたからだが、「この推計で計画を改善できるのか」と疑問を口にする。渋谷俊彦市長は「住民の疑問に答える内容になっていない。今後、避難先までの所要時間をさまざまな具体的パターンで算定するよう県に要望したい」と推計の不備を強調した。推計は、病院や施設入所者の避難時間も示さなかった。原発から5キロ圏にある薩摩川内市高江町の高齢者福祉施設「わかまつ園」は、入居者や利用者が約70人いる。浜田時久園長(63)は「推計を施設の避難計画の改善に役立てようと思っていたが、具体性がなく期待はずれ」と不満を語った。推計結果に不安を訴える声も上がった。原発から23キロの同市入来町で自治会長を務める石塚政揮さん(76)は、最長29時間近くかかるとの結果に「県はおおむね妥当と言うが、地域にはお年寄りが多い。長時間、緊張感を強いられるのはこたえるはずだ」と懸念する。 ◆「お粗末すぎる」専門家が相次ぎ批判 鹿児島県による九州電力川内原発の重大事故時の避難時間推計には、専門家からも批判が相次いでいる。佐賀県が4月末に発表した九電玄海原発(同県玄海町)の避難時間推計は、川内原発の推計の4倍に上る52パターンを想定。市町別の避難時間や圏内住民全員の退去完了時間も推計したほか、最もひどい渋滞が予想される圏内の住民全員が行政の指示を待たずに避難を始めるケースや、5キロ圏の施設入所者や入院患者の避難も想定に入れた。佐賀県消防防災課の川内野修参事は「県によって事情は違う」とした上で「住民に分かりやすいように、国が基準として示す想定より踏み込んだ」と振り返る。鹿児島県は「国の基準に沿った」と説明している。東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害・リスク心理学)は、川内原発の想定を「お粗末すぎる」と酷評。特に、5キロ圏の避難が優先的に進むとの想定を「あり得ない」と指摘し、「30キロ圏はおろか、広い範囲で住民が避難を始め、推計よりはるかに激しい渋滞が発生するのは目に見えている」と話す。「行政の避難指示から最大2時間で住民が避難を開始する」との県の想定も「訓練を受けた軍隊でなければ不可能。情報をすぐ受け取れない住民も多くいるはずだ」と批判する。避難計画に詳しい環境経済研究所(東京)の上岡直見代表も「他の原発の推計と比べ著しくレベルが低い。再稼働を前提とした都合のいい想定しかしていない」としている。 *4-3:http://qbiz.jp/article/39020/1/ (西日本新聞 2014年6月3日) 川内原発、避難に新幹線の活用探る 地元市長がJR九州に打診 鹿児島県薩摩川内市の岩切秀雄市長は2日の記者会見で、九州電力川内原発での過酷事故に備え、九州新幹線での住民避難への協力をJR九州に打診したことを明らかにした。避難計画では現在、新幹線の活用は想定されていないが、同社は「可能な限り協力していきたい」(鉄道事業本部)との立場。ただ、原発事故時の運行についての具体的マニュアルはない上、高線量下では運行そのものができなくなるとみられ、実効性は不透明だ。JR川内駅は同原発から12キロ弱にあり、新幹線駅としては全国で最も原発に近い。九州新幹線(6〜8両編成)は、一度に450〜650人規模を運ぶことが可能。岩切市長によると、5月19日に同社の唐池恒二社長を訪ねた際、避難時の協力の可能性を尋ねた。唐池社長も「(正式に)要請があればいつでも受ける。ただ、課題もあるので研究する」と応じたという。国土交通省も昨年12月、交通事業者に対し、原発事故時に自治体側から避難の支援要請があった場合は協力するよう内閣府と連名の文書で依頼。国の原子力災害対策指針では、空間線量がそれほど高くない場合、原発から5〜30キロ圏の住民は屋内退避後1週間ほどかけて避難することになっており、こうしたケースなどでの利用が想定される。ただ、JR九州は現在、空間線量がどの程度上昇すると新幹線の運行を止めるのかなど、大雨や地震時のようなマニュアルを策定していない。また、自前の線量計測装置を持たず、データは行政に頼るしかないほか、車両の汚染検査や除染の態勢を独力で事前に整えておくことも難しいなど、原発事故時の安定運行には課題が山積している。JR九州は今後、原発事故を想定した運行マニュアルを整備するというが、時期は未定。「空間線量が高く即時避難となれば、社員の安全確保の観点からも新幹線の運行はできないだろう」(鉄道事業本部)との見通しを示した。鹿児島県も「新幹線を使った避難については今後の課題」(原子力安全対策課)としている。中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)から20キロ圏に新幹線駅を持つJR東海は「運転停止の数値基準はないが、危険な地域には新幹線を進入させられない」と慎重な構えだ。 <再稼働推進の動き> *5-1:http://qbiz.jp/article/38952/1/ (西日本新聞 2014年6月2日) 原子力推進訴え「九州集会」 経済界や識者ら500人 原子力推進を訴える一般社団法人「原子力国民会議」(東京)の第1回九州集会が1日、福岡市のホテルであり、九州の経済界や大学、自治体からの出席者が、集まった約500人に原発の必要性を訴えた。集会では、国民会議の石原進共同代表(九州経済同友会代表委員)が原発停止に端を発する電気料金値上げに触れ「産業や生活を圧迫し、経済の重大な懸念材料になっている」と主張。福岡大の永野芳宣客員教授は「技術は進歩しているのに、原発反対の動きは一度失敗したらだめという日本の悪い風潮の表れだ」と訴えた。東日本大震災で自動停止した宮城県の東北電力女川原発の幹部が、事故対応を語る講演もあった。国民会議は4月に発足し、6月2日までに東京や北海道など4カ所で集会を初開催。終了後、安倍晋三首相に早期の原発再稼働を促す要望書を提出する。 *5-2:http://mainichi.jp/select/news/20140603k0000m040061000c.html (毎日新聞 2014年6月2日) 原発訴訟原告団:全国組織を設立へ 10月に全国大会 北海道や九州で原発廃炉訴訟などを起こしている原告らが2日、東京都内で記者会見し、全国の原発関連訴訟の原告団が連携する「脱原発原告団全国連絡会」の結成を表明した。原告団の全国組織設立は初めてで、10月に最初の全国大会を開く。現時点で約10訴訟の原告ら約3万人が参加予定という。住民らが国や電力会社などを相手取った原発訴訟では、2011年7月に全国の弁護団が「連絡会」を結成しているが、原告団の全国組織はなかった。記者会見では、呼びかけ人の一人で「原発なくそう!九州玄海訴訟原告団」の蔦川正義・久留米原告団団長(76)が「人数の多い原告団も少ない原告団もあるが、創意工夫を学び合っていきたい」と抱負を語った。「脱原発弁護団全国連絡会」共同代表の河合弘之弁護士は「弁護団の全国的な連携が、運転差し止めを命じた大飯原発訴訟の福井地裁判決に結実した。原告団も連携することで闘いの輪を広げよう」と訴えた。今後は、原発訴訟の裁判期日が入った裁判所に全国の原告団が駆けつけて支援するなど協力を図る。 *5-3:http://qbiz.jp/article/40028/1/ (西日本新聞 2014年6月17日) 「85%が再稼働反対」 川内原発 市民団体がアンケ結果報告 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の重大事故に備えた入院患者や福祉施設入所者(要援護者)の避難計画策定について、同県内で反原発を主張する三つの市民団体は17日、伊藤祐一郎知事が「(県地域防災計画に明記された)原発30キロ圏までの策定は不可能。作らない」と発言したことに抗議する知事宛ての申し入れ書を県に提出した。団体は、原発ゼロをめざす県民の会(井上森雄筆頭代表委員)▽さよなら原発いのちの会(堀切時子代表)▽川内原発建設反対連絡協議会(鳥原良子会長)。申し入れ書では、知事発言を「人命軽視もはなはだしい暴言」と批判し「策定が不可能と認識するなら、川内原発の再稼働は認めないでほしい」と求めた。「いのちの会」は、薩摩川内市の街頭や郵送で5月中旬から募った再稼働の是非を問うアンケートで、回答した1001人の85%が「反対」とした結果も示した。応対した県保健医療福祉課の鎮寺裕人課長は、取材に「策定が非常に困難なのは事実」とする一方、「知事から策定の必要はないとの指示はなく、県として地域防災計画通りに作る方針に変わりはない」と述べ、知事発言に困惑していた。
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2014,06,16, Monday
日本の脱原発集会 台湾の脱原発デモ (1)福井地裁大飯原発3、4号機差止訴訟判決と 環境白書の原発事故は最大の環境汚染という記述は重要である *1-1で日弁連会長が解説しているように、福井地裁は関西電力に対し、大飯原発から半径250km圏内の住民の生存権・人格権に基づき、3、4号機運転差止を命じる判決を言い渡した。この判決は、福島原発事故の反省の上に立って、国民を放射性物質の危険から守るという視点からなされた画期的判決で、他の原発にもあてはまるということで、私も賛成である。 また、*1-2のように、今年の環境白書が、原発事故による放射性物質の放出を最大の環境問題と位置づけ、除染や被災者の健康管理を迅速に進めていく必要があることを指摘したのは、行政が原発事故を最大の公害であると認めた点で重要だ。さらに、*1-2には、福島県内の除染土などを保管するため、中間貯蔵施設を設置することが除染の加速化や復興の推進に必要不可欠とも書かれている。 (2)福島第一原発事故爆発の真実とまだ続いている放射性物質の放出 *2-1に書かれているように、細野氏の証言で、東電福島第一原発事故で格納容器の圧力が異常に上昇した2011年3月15日午前2~3時頃、東電の人たちは「原子炉はもはや制御不能」と語り、作業員の撤退もやむを得ないという雰囲気が官邸内に広がって、原子力安全委員会の班目委員長ら専門家たちも一様に「打つ手無しの状態」だったそうで、最後は菅首相の判断で撤退は認めない方針が決まったとのことである。 この原発爆発の結果、*2-2のように、事故直後、原発20キロ圏内に住む121世帯380人が国の指示で避難し、3年後の2014年4月、国は避難指示を解除したが、家の裏山側に線量計をかざすと毎時0.73マイクロシーベルト(0.73x24時間x365日=年間6.4ミリシーベルト)の放射線量があり、一般人の被曝限度である年間1ミリシーベルト(1000マイクロシーベルト/365日/24時間=0.114マイクロシーベルト/時)と比較して、かなり高い。そのため、若い夫婦が子どもを連れて戻るわけにはいかず、本当は大人も危険である。 また、原発爆発の結果、東京電力は、*3-1のように、「地下水バイパス」計画で3回目の海洋放出を実施したが、5月26日には基準値(1リットル当たり1500ベクレル)を上回る1700ベクレルのトリチウムが検出され、くみ上げを停止している専用井戸の1カ所で、29日に採取した水からも同じ濃度が検出され、現在は残る11カ所の井戸で地下水のくみ上げを続けているとのことである。しかし、流れ出す分量は、濃度ではなく総量で計るべきなので、全体では膨大な量になると思われ、アルプスが故障続きであるため、トリチウム以外は取り除かれているかどうかも不明だ。 さらに、*3-2のように、長野県林務部が、2014年5月16日、長野市で採取したコシアブラから国基準値の1キロ当たり100ベクレルを超える340ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表し、長野県は長野市全域をコシアブラ採取の自粛対象とした。このように、原発爆発で大きく広がったまま除染されていない放射性物質の影響を、長野県のコシアブラ、コゴミ、タラノメなどの山菜が示しているのだ。 (3)放射性物質が農業に与える影響に関する科学的研究 1)放射性物質汚染地域の屋内で飼育された豚と放射性物質に関する調査研究 *4-1のように、東大大学院農学生命科学研究科助教が、福島第一原発20キロ圏内の警戒区域で約3か月間飼育された原種豚を、東京大学の附属牧場に移送して調査研究し、空気中の放射性セシウムによって汚染されて、①救済してきた豚26頭のうち11頭が病死 ②排卵をしていない、繁殖周期が正常ではない、黄体ホルモンが正常に出ていないなどの生殖異常があった ③奇形の子が4頭 ④救済された豚で赤血球が少なかった などの結果が出ており、空気からの被曝で豚が影響を受けたことが明らかになった。これは、人間にも類似して当てはまるだろう。 2)果樹におけるセシウム汚染の経路に関する調査研究 *4-2のように、東大大学院農学生命科学研究科助教が、果樹の古い組織に蓄積した放射性物質が新しい組織に移行したり、土壌から新しく入ってきたりする果樹内での放射性セシウムの移行を調査した結果、福島県内と西東京市の農場にあるモモの樹で、事故当時には出ていなかった組織(果実、葉、新梢)からも放射性セシウムが検出され、内側の材よりも樹皮で濃度が高く、圧倒的に最も外側の表皮で高いことが分かったということだ。非汚染の樹(モモ、ブドウ)を福島県に持って行き、汚染された土壌で栽培すると、事故以降でも土壌から放射性物質が移行し、土壌に被覆をすることで土壌中の濃度は1/7~1/6まで抑えられるものの、果実の濃度はほぼ同じで、土壌からの移行は空気に依る移行と比べて、ごくわずかだと考えられるそうだ。 従って、基準内であっても汚染された食物を食べ続け、空気からの被曝も受けている人間は、健康でなくても不思議ではなく、不安をなくす目的ではなく、病気を予防したり、早期発見したりすることが目的の情報公開や健康管理を行うべきであり、医学もしっかりした調査をしてもらいたい。 参考資料: <福井地裁大飯原発3、4号機差止訴訟判決について> *1-1:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2014/140521_2.html (日本弁護士連合会 会長 村越進 2014年5月21日) 福井地裁大飯原発3、4号機差止訴訟判決に関する会長声明 福井地方裁判所は、2014年5月21日、関西電力株式会社に対し、大飯原子力発電所(以下「大飯原発」という。)から半径250km圏内の住民の人格権に基づき、同原子力発電所3号機及び4号機の原子炉について、運転の差止めを命じる判決を言い渡した。本判決は、仮処分決定を除くと、2011年3月の福島第一原発事故以降に言い渡された原発訴訟の判決としては初めてのものである。従来の原子力発電所をめぐる行政訴訟及び民事訴訟において、裁判所は、規制基準への適合性や適合性審査の適否の視点から、行政庁や事業者の提出する資料を慎重に評価せず、行政庁の科学技術的裁量を広く認めてきた。また、行政庁や事業者の原子力発電所の安全性についての主張・立証を緩やかに認めた上で、安全性の欠如について住民側に過度の立証責任を課したため、行政庁や事業者の主張を追認する結果となり、適切な判断がなされたとは言い難かった。これに対し本判決は、このような原子力発電所に関する従来の司法判断の枠組みからではなく、技術の危険性の性質やそのもたらす被害の大きさが判明している場合には、その性質と大きさに応じた安全性が認められるべきとの理に基づき、裁判所の判断が及ぼされるべきとしたものである。その上で、原子力発電所の特性、大飯原発の冷却機能の維持、閉じ込めるという構造の細部に検討を加え、大飯原発に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しの下に初めて成り立ちうる脆弱なものとし、運転差止めを認めたものである。本判決は、福島第一原発事故の深い反省の下に、国民の生存を基礎とする人格権に基づき、国民を放射性物質の危険から守るという観点から、司法の果たすべき役割を見据えてなされた、画期的判決であり、ここで示された判断の多くは、他の原子力発電所にもあてはまるものである。当連合会は、昨年の人権擁護大会において、いまだに福島第一原発事故の原因が解明されておらず、同事故のような事態の再発を防止する目処が立っていないこと等から、原子力発電所の再稼働を認めず、速やかに廃止すること等を内容とする決議を採択したところである。本判決は、この当連合会の見解と基本的認識を共通にするものであり、高く評価する。政府に対しては、本判決を受けて、従来のエネルギー・原子力政策を改め、速やかに原子力発電所を廃止して、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させるとともに、原子力発電所の立地地域が原子力発電所に依存することなく自律的発展ができるよう、必要な支援を行うことを強く求めるものである。 *1-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140606/t10015018491000.html (NHK 2014年6月6日) 環境白書 原発事故は最大の環境問題 今年の環境白書は、原発事故による放射性物質の放出を最大の環境問題と位置づけ、除染などを迅速に進めていく必要があると指摘しています。6日の閣議で決まったことしの環境白書は、東京電力福島第一原子力発電所の事故で大量の放射性物質が放出されたことについて、今なお、最大の環境問題になっていると位置づけています。そのうえで、除染や被災者の健康管理などを迅速に進めていく必要があると指摘しています。このうち除染では、福島県内で取り除いた土などを保管するために、政府が建設を計画している中間貯蔵施設について初めて触れ、この施設を設置することが、除染の加速化や復興の推進に必要不可欠だとしています。また、被災者の健康管理では、被ばく線量の把握が重要で、不安に応える情報の充実が求められているとして、福島県が行っている健康調査や相談に応じるための人材育成の取り組みなどを紹介しています。 このほか、白書では、被災地で進められている、環境への負荷を低減した「グリーン復興」という取り組みが今後の地域づくりの1つの目指すべき方向だとして、福島県が進めている県民参加型の太陽光発電事業や、福島県飯舘村が打ち出している、再生可能エネルギー施設の整備を柱とした復興計画などを紹介し、このような動きを加速させていく必要があるとしています。 <福島第一原発事故の真実について> *2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASG5Z520RG5ZUUPI004.html (朝日新聞 2014年6月2日) 「原発もはや制御不能」 東電、震災4日後に 細野証言 東京電力福島第一原発の事故に首相補佐官として対処した細野豪志氏が朝日新聞のインタビューで、2号機の原子炉格納容器が壊れる危機に直面した2011年3月15日未明、首相官邸に詰めていた東電の人たちが「原子炉はもはや制御不能」と語り、作業員の撤退もやむを得ないという雰囲気が官邸内に広がったことを明らかにした。当時の官邸が公式記録や報道で伝えられてきた以上に緊迫していたことを示す証言だ。 ●細野証言の詳細 「もはや東電では制御不能なんだと」 東電の「制御不能」発言が出たのは、原子炉格納容器の圧力が異常に上昇していた15日午前2~3時ごろ。東電本店からは武黒一郎フェロー、川俣晋原子力品質・安全部長ら数人が官邸に派遣されていた。細野氏は発言者は明かさず、「誰かというより、官邸に来ていた東電チームとしての発言だった」と語った。細野氏は「東電から制御不能という言葉があったのは衝撃的だった。原子力の専門家が制御不能と言っているものを『制御しろ』とは言えない」と語った。さらに「ここで専門家が何も言えないのはいかん、意気消沈して肩を落としている場合ではない、と東電に言った」「何とかしなきゃならないんで、とにかく手を考えてくれと強めに言った」と振り返った。しかし具体案は出なかった。東電に加え、その場にいた原子力安全委員会の班目春樹委員長ら専門家たちは一様に「打つ手無しの状態」だったという。細野氏は「何もできなかったことへの強烈な無力感みたいなものがあった」と語った。作業員の撤退は原子炉の制御を完全にあきらめることを意味する。細野氏は前日夜に現場責任者の吉田昌郎・福島第一原発所長との電話で「頑張ります」「踏ん張れる」という強い言葉を聞いていたが、東電の「制御不能」発言後、官邸に撤退やむなしの雰囲気が広がったという。細野氏は「全体の雰囲気として撤退を絶対に止めないといけないと思いながらもその根拠というか、どうやったらいいか……。手がないという話だから、そういう雰囲気があった」と話した。結局、撤退について意見はまとまらなかった。細野氏は撤退に傾く東電本店より、現場にとどまる吉田氏の判断を尊重するよう進言。最後は菅直人首相の判断で撤退は認めない方針が決まった。 *2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11154340.html (朝日新聞 2014年5月25日) (プロメテウスの罠)帰還の現実:1 別れるしかなかった 新緑の山々に囲まれた福島県田村市の都路地区。東京電力福島第一原発の西にある農村地域だ。事故の直後、原発20キロ圏に住む121世帯380人は国の指示で避難した。それから3年。政府は4月1日、都路20キロ圏への避難指示を解除した。曲がりくねった林道の先に家がある坪井幸一(65)は仮設住宅を離れ、妻(65)と2人で帰ってきた。ちょうどひと月たった5月1日、杉の木が茂る家の裏山側に線量計をかざし、記者に示して見せた。「ほら、まだこんなにある」。毎時0・73マイクロシーベルトの放射線量。一般人の被曝限度は年間1ミリシーベルトが平常時の基準だ。毎時にすれば0・23マイクロ。それを上回る地点が、まだあちこちに残っている。国による地域の除染は昨年6月までに一通りすんだ。仮設住宅に残る息子の秀幸(36)はあきれ顔だ。「とてもじゃないが、子どもたちを連れて戻るわけにはいかない」。秀幸には10歳の長女、3歳の次女、1歳になったばかりの三女がいる。線量の高い地点が残っていては安心して子育てできないという。幸一は息子の言葉にうなずく。「そのほうがいい。若い夫婦や子どもにとっては体が心配だ」。親子は原発で配電設備の仕事に長く携わってきた。だから、放射線の危険性は身をもって知っている。一家が離ればなれになるのはつらいが、そう決断するしかなかった。昨年12月20日。住民が望むレベルの除染が実現されないまま、安倍内閣は福島の「復興加速化」を掲げて新たな指針を閣議決定した。早く帰還する住民には1人90万円の賠償金上乗せを検討する。被曝線量は従来の空間線量による推計から、住民が個人線量計で自ら測る方式に見直す、と伝えられた。息子の秀幸は首を振る。「原発作業員でもない一般の住民が、線量計をぶら下げながら生活するなんて……」。結局、カネを積んで住民を早く帰還させ、かたちばかりの復興を急ごうということじゃないのか――。避難指示の解除準備区域は第一原発周辺の11市町村に広がっていた。都路地区は解除の第1号になる。父の幸一は眉をひそめた。「なし崩しの解除では、あとに続く地域にも響きかねないのだが」。 ◇ 【プロメテウス】人類に火を与えたギリシャ神話の神族:避難指示の解除をめぐり、翻弄(ほんろう)された住民たちの姿を伝えます。 <現在も続いている放射性物質の放出について> *3-1:http://www.minpo.jp/news/detail/2014060316072 (福島民報 2014/6/3) 3回目の海洋放出833トン 福島第一原発地下水バイパス 東京電力は2日、福島第一原発の「地下水バイパス」計画で、3回目の海洋放出を実施したと発表した。排水量は833トン。同日午前10時19分に開始し、午後1時42分に完了した。放射性物質濃度が東電の排出基準を下回ったため、一時貯留タンクから放出した。これまで、5月21日と27日に、それぞれ561トンと641トンを放出した。26日に基準値(1リットル当たり1500ベクレル)を上回る1700ベクレルのトリチウムが検出され、くみ上げを停止している専用井戸の1カ所で、29日に採取した水からも同じ濃度が検出された。現在は残る11カ所の井戸で地下水のくみ上げを続けている。 *3-2:http://www.shinmai.co.jp/news/20140521/KT140520FTI090022000.php (信濃毎日新聞 2014年5月21日) 「市全域が対象」戸惑い 長野でコシアブラ採取の自粛要請 長野市の山林で採取されたコシアブラから国基準値を超える放射性セシウムが検出され、県が市全域をコシアブラ採取の自粛対象としたことに、地元飲食店などから「市内全域が危険と思われかねない」と戸惑う声が出ている。県は市町村単位での対応を求める国の方針に沿ったとするが、合併で市域が広がっていることもあり、消費者からは「どこで採れた物なのか、判断材料がほしい」との声が上がる。自主的に検査機関で検査して安全性をPRしようとする農産物直売所も出ている。「長野市といっても広い。コシアブラ以外の山菜でも客に出して大丈夫か」。大型連休に市内で採ったコシアブラやコゴミ、タラノメなどを冷凍保存する同市の飲食店の女性店員は戸惑う。県林務部は16日、長野市で同日採取したコシアブラから国基準値1キロ当たり100ベクレルを超える同340ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表。東京電力福島第1原発事故の影響とみており、同市のコシアブラの採取や出荷、摂取の自粛を呼び掛けた。県内産の山菜から国基準値を超える放射性セシウムが検出されたのは、北佐久郡軽井沢町でいずれも昨年6月に採取したコシアブラ1検体、タラノメ2検体に続き4検体目。長野市内の野草を食材に使う菓子店の店主は、採取の自粛範囲を市内全域としたことに対し「市内の農林産物全てが避けられかねない」と主張。上水内郡信濃町で放射性物質を検査する「黒姫駅前みんなの測定所」を開く住民有志の1人、吉村まきさん(43)は「県は持っている情報をきちんと知らせてほしい」と話す。20日までに県長野保健福祉事務所や長野市保健所などに市民らから寄せられた問い合わせは計20件以上。採取場所の問い合わせが多いという。県林務部は、基準値を超える検査結果が相次いだ場合、政府の原子力災害対策本部による出荷制限の指示が市町村単位で行われるため、「自粛要請も市町村単位でなければ食い違いが生じる」とする。林野庁は「指示は行政の最小単位として市町村に出すことになる。狭い範囲で指示を出しては、『その範囲で大丈夫か』と消費者の不安も招きかねない」と説明する。放射性物質の分析装置がある民間の「科学技術開発センター」(長野市)は県の16日の発表以降、長野市外の農産物直売所や個人からタラノメなど数件の検査依頼を受けた。毎週月曜日に開いている「黒姫駅前みんなの測定所」にも、19日は個人などからコシアブラなどが持ち込まれた。長野市信州新町の道の駅は、今週中に全ての山菜のサンプル検査を市薬剤師会に依頼すると決めた。コシアブラの受け入れは17日に中止。既にコシアブラ入荷のピークは過ぎ、現在はワラビやフキなどが並ぶ。運営する第三セクターの土田剛弘社長(65)は「信州新町の山菜は安全とアピールしたい」としている。 <放射性物質が農業に与える影響に関する科学的研究> *4-1:http://www.frc.a.u-tokyo.ac.jp/information/news/140216_report.html 放射性物質汚染地域の屋内で飼育された豚と放射性物質に関する調査研究 李俊佑、東京大学大学院農学生命科学研究科附属牧場助教 ●背景 福島第一原発20キロ圏内の警戒区域で約3か月間飼育された原種豚を、東京大学の附属牧場に移送して調査研究しました。豚の居た区域の土壌中放射性セシウム濃度は1kg当たり2万から5万ベクレルで、空間線量は一時間当たり1マイクロから2マイクロシーベルトであったと推測されています。東大附属牧場は福島第一原発から西南約130キロのところにあり、移送時の空間線量は一時間当たり0.1マイクロから0.2マイクロシーベルトでした。豚は屋内で飼育しており、餌は牧草ではなく、トウモロコシやダイズ、ミネラル等を混合した濃厚飼料を使います。しかも、飲水は地下水なので、豚は飼料と飲水による放射性物質と接する機会はあまりない環境で育てられたことになります。 ●東大附属牧場に移送した豚にはどのくらいの放射性セシウムが含まれていたか 移送した豚は五種類で、デュロック種(雄3頭雌8頭)、大ヨークシャー種(雄4頭雌2頭)、中ヨークシャー種(雄2頭雌4頭)、ランドレース種(雄1頭雌1頭)、バークシャー種(雌1頭)、合計26頭です。豚は爪が弱いという特徴があります。移送して73日目の9/9に、割れた爪から菌が入り病気になってしまった豚を解剖し、臓器中の放射性セシウム濃度を調べました。すると、生殖器から約160ベクレル/kgの放射性セシウムが検出されました。個体は異なりますが、その後に調べた豚の生殖器中の放射性セシウム濃度は、時間が経つほど低くなっていきました。同様に、脾臓や肝臓、腎臓、筋肉、尿、血液中の濃度も低くなっていました(脾臓と肝臓では9/9より9/30の計測で高濃度だったが個体差と思われる)。部位ごとでは、最も高濃度が検出されたのは筋肉で、低いのは尿と血液でした。屋内で飼育され、濃厚飼料を与えていたのになぜこのように汚染されていたのかというと、豚舎に設置されている換気扇を通して空気中の放射性セシウムが豚舎内に入ったからではないかと考えています。 ●警戒区域内で殺処分された豚ではどうだったか 警戒区域内で殺処分された家畜の中に含まれる放射性物質について調べました。南相馬市で調べた豚では、各部位から1kg当たり千単位の濃度の放射性セシウムが検出されました。附属牧場に救済した豚では百単位の濃度だったので、その10~20倍の濃度ということです。 ●移送した豚の繁殖能力・子孫への影響等について 附属牧場に移送した豚を使って、繁殖性を含む健康状態等の調査研究を行いました。ひとつ注意してもらいたいのは、この研究は周到に準備して行ったものではないということです。比較できる対象動物が居ない中で調べたので、この研究から得たデータから「放射線の影響だからこういうことになった」とは必ずしも言えないということになります。事故後の水不足や餌不足の影響、長い距離を移動したというストレスもあるかと思います。従って、このデータは参考として提供したいと思います。移送して3か月後には、体重は元通りになり、最も重いもので270kgになりました。発情した豚については種付けし子供を産んでもらいました。16頭のうち7頭が合計13回分娩しました。中には2回、3回、4回分娩した豚もいました。生まれた子供は雄が72頭、雌が73頭でした。奇形は4頭でした。平均でどのくらいの頻度で奇形が出るのかデータがなかったので比較はできませんが、今第2世代についても調べ始めています。第2世代は今のところ2頭が分娩し、雄が13頭で雌が10頭生まれました。奇形は出ていません。移送してきた雌16頭のうち9頭がなぜ分娩しなかったのかについて調べました。そうした豚の卵巣機能を調べたところ、排卵をしていない、繁殖周期が正常ではない、黄体ホルモンが正常に出ていない等の原因があることが明らかになりました。血液検査については、近隣の農家で育てられていた豚のデータと当牧場で生まれ育てられた第2世代のデータと比較したところ、赤血球等で有意な差がありました。赤血球は救済された豚の方で少ない傾向がありました。 ●結果のまとめ 警戒区域内から東大附属牧場に救済してきた豚26頭のうち11頭が病死しました。救済された豚は南相馬市での累積外部被ばくは2.2ミリシーベルトであると推測されました。東京とニューヨークの往復フライトは約0.2ミリシーベルトで、自然放射線量の世界平均が2.4ミリシーベルトということを考え合わせると、この放射線量の値は安全域であると言えます。ただし、救済された豚が事故後にどの程度の放射性ヨウ素の被曝を受けたかは分かりません。豚は人間への臓器の異種移植の研究が盛んに行われていたことからも分かるように、人間のモデル動物としても幅広く活躍しています。今回は極めて不幸な事態から生じた調査用豚であるが放射線の人間への影響を知るに当たって極めて貴重なデータを与えてくれるのではないかと思い、引き続き研究を続けていきます。 *4-2:http://www.frc.a.u-tokyo.ac.jp/information/news/140216_report.html 果樹におけるセシウム汚染の経路 高田大輔、東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構助教 背景 福島県は果物の生産が盛んで、モモは全国2位、カキは4位、リンゴは6位の生産量です。果樹のような永年性植物は、単年性植物とは異なり、事故後一年だけでなくその翌年も、古い組織に蓄積した放射性物質が新しい組織に移行する、土壌から新しく入ってくることを考えなければなりません。果樹内での放射性セシウムの動きについては何も分かっていないという状況でした。 ●放射性セシウムはモモの樹のどこに移行しているか 福島県内と西東京市の農場にあるモモの樹について、モモを収穫した後に、葉、枝、幹、根を部位ごとに採取し、放射性セシウム濃度を測定しました。各部位での放射性セシウムの相対的な濃度は、福島県と西東京市でほぼ同じでした。事故当時には出ていなかった組織(果実、葉、新梢)でも放射性セシウムは検出されました。最も多く検出されたのは古い枝(旧枝)です。根からはほとんど検出されませんでした。本試験のモモの樹の重量比は、果実:葉:枝・幹:根で1:1:4:4になっています。濃度に重量を掛けると、各部位の放射性セシウムの含量を求めることができます。すると、枝と幹で含量がとても多いことが分かりました。さらに、枝のどの部分に放射性セシウム濃度が高いのかを層ごとに調べたところ、内側の材よりも樹皮で濃度が高く、圧倒的に最も外側の表皮で高いことが分かりました。この調査は事故後の8月に行ったものですが、最近の調査では材からも検出されるようになっています。材の放射性セシウム濃度は高くありませんが、重量は大きいので、含量としては辺材で最も大きくなりました。 ●モモの樹の中に残った放射性セシウムはどのように再分配されるか 2012年1月に福島県内の果樹園で栽培されていたモモの樹を掘り起こし、土と細根を取り除き洗浄し、汚染されていない土に植え替えました。そうして栽培した後、先ほどと同じように部位ごとに採取し、各部位に含まれる放射性セシウム濃度を計測しました。汚染されていない土で育てたので、各部位に含まれる放射性セシウムは元々樹の中に含まれていたものと考えることができます。結果としては、濃度は葉と新根で多くなりました。含量は果実と葉で多くなりました。樹全体に5000の放射性セシウムが含まれているとすると、新生器官(果実、葉、新梢)にはその約2%である106が、旧器官には4849が、土壌には45が再分配されました。 ●土壌からの移行はどの程度あるか フォールアウトを受けていない非汚染の樹(モモ、ブドウ)を福島県に持っていき、汚染された土壌で栽培しました。その結果、モモの移行係数は3.6~5.4×10^-4で、ブドウは2.0×10^-3でした。これらの値は野菜やイネと比べると低いですが、事故以降も土壌から放射性物質が移行しているので決して無視はできないということになります。事故時に土壌を被覆して栽培していたモモの樹と被覆せず栽培していたモモの樹を比べました。被覆をすることで土壌中の濃度は1/7~1/6まで抑えられましたが、果実の濃度はほぼ同じでした。従って、土壌にフォールアウトしたものからの移行は、直接樹にフォールアウトしたものと比べて、ごくわずかであると考えられます。植物の根の深さによる傾向を考えました。根の浅いイチジクは根の上の方から根が出やすく、根が浅くない(モモと同じくらいの)ブドウは全面から根が出ます。イチジクとブドウについて、二種類の土壌の汚染状況を作り、栽培しました。一つは表層が汚染されていて、下層は汚染されていない状況。もう一つは、表層は汚染されていなく、下層が汚染されている状況です。ブドウについては、下層が汚染されている方が果実中の放射性セシウム濃度は高くなりました。移行係数は表層汚染では0.00168で、下層汚染では0.00397で、下層汚染で約2倍となりました。イチジクについては、表層が汚染されている方が果実中の濃度は高くなりました。移行係数は表層汚染では0.0266、下層汚染では0.0071でした。ブドウとイチジクで全く逆の結果になりましたが、それは根の存在する位置が違うためであると考えられます。結果として、根の浅くない樹種では土壌表層の放射性セシウムを吸収しにくく、根の浅い樹種では土壌表層の放射性セシウムを吸収しやすい傾向がありました。モモは根が表層から10~20cmのところに多く発生しますので、土壌からの移行はそこまで多くないと考えられます。 ●モモ果実中の放射性セシウム濃度は予測できるか 果樹内での放射性セシウムの動きはこの3年間の研究で大分明らかになった部分もありますが、放射性セシウムの動きを一つ一つ明らかにし、濃度予測をするまでの道のりはまだ遠いと言えます。しかし、大切なのは、濃度予測ではなく、国が決めた基準値等の濃度を確実に下回るか判別することです。そのためには、果実の発育期間中の放射性セシウム濃度の変化を把握し、こうした変化が毎年同じかどうかを明らかにすることが必要です。残念ながらチェルノブイリ事故時には初年度のデータが不足しており、二年目以降のデータと比較することが不可能です。一緒に研究をしている福島県果樹研究所の2011年のデータによると、満開後30日からモモ果実中濃度を調べたところ、満開後30日が最も高濃度で、50日で激減し、その後は緩やかに低くなっていきました。2012年と2013年のデータも同様の傾向を示し、満開後50~60日で大体濃度は下がりきっていました。この時期は、果実発育第二期に当たり、果実の肥大が一旦止まる時期でもあります。果実肥大は年ごとの様々な条件に左右されやすいので、この時期に濃度を計測することで、肥大の年次間差の影響を避けやすくなります。また、果実を選別する摘果作業を行う時期でもあるので、濃度を測定するための果実を採取することの影響が少なくなります。そこで、果実発育第二期に採取した果実を使って、成熟果の濃度を予測できるか確かめました。 ●満開後60日の果実を使って、成熟果の濃度は予測できるか JA伊達みらい管内をはじめとした26の果樹園で、あかつきというモモの品種を3樹ずつ選び、満開後60日の果実と、成熟果の濃度を測りました。その結果、満開後60日の果実と成熟果の濃度の相関係数はこの分野としては非常に高く0.9近くとなりました。これほど高い相関係数であっても、外れ値は存在します。そこで、満開後60日の果実と成熟果の濃度のグラフに1:1の線を引いて考えることにしました。この線は、満開後60日の果実が30ベクレルであれば成熟果は30ベクレルであることを示します。グラフ上でこの線よりデータが下にあれば、成熟果の濃度は満開後60日の果実の濃度より低いことになります。1:1の線より上にも(成熟果の濃度が満開後60日の果実の濃度より高い)ぽつぽつとデータがありました。そこで、仮に規制値の10%である10ベクレルを安全側にとり、Y=X+10という線を引くと、全てのデータが線の下に収まりました。安全係数をいくつにするのかという問題はありますが、こうした手法を使えば、放射性物質濃度の高い樹体をピックアップし、そうした樹体の満開後60日果実の濃度を計測することで、成熟果濃度の予測が可能になり、労力の分散に繋がります。
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2014,05,26, Monday
2014.5.21西日本新聞より 2014.5.22日経新聞より *3-6より (1)隠されている真実 *1-1のようなことが書かれている吉田調書を、*1-2のとおり、政府事故調等をふまえて新規制基準を決め、再稼働の審査をしている筈の規制委委員長は、「読んでいない、知らない」と答えた。それで「全部考慮してやっている」と言われても、「それは不可能だ」としか言いようがない。原発には、このような変なことが多いが、それは、真実を語れば、誰も原発の再稼働を認めなくなるからである。 (2)福井地裁による大飯原発再稼働差止判決の格調高さとそれに対する関係者の反応 *2-1及び*4(大飯原発差止判決要旨全文、長いため最後に掲載)に書かれているように、福井地裁は、「大飯原発の安全技術と設備は脆弱なものと認めざるを得ない」として運転の差し止めを命じた。大飯原発は、新規制基準に基づく原子力規制委員会の再稼働に向けた審査を受けたとはいえ、その新規制基準は(1)のようなものであるため、福井地裁が、福島第一原発事故を踏まえて、「生存を基礎とする人格権は憲法上の権利であり、法分野において最高の価値を持つ」「差止の判断基準は新規制基準への適否ではなく、福島事故のような事態を招く具体的な危険性があるか否かである」としたのは、的を射ている。 また、大飯原発再稼働差止判決は、使用済核燃料貯蔵プールについて、「使用済核燃料も原子炉格納容器と同様、堅固な施設で囲われて初めて万全の措置と言えるが、むき出しに近い状態になっている」としており、実情はそのとおりである。関電が「原発の稼動が電力供給の安定性、コストの低減に繋がる」と主張した点については、「多数の人の生存権と電気代の高低の問題等とを並べて論じること自体、法的に許されない」「国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である」としたのも全くそのとおりで、これまでの原発に関する議論と比較して格調高い。 さらに、大飯原発再稼働差止判決は、「原子力発電所の稼動がCO2排出削減に資するもので、環境面で優れていると主張するが、原子力発電所でひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染はすさまじいもので、福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである」と述べており、そのとおりである。それにもかかわらず、昨日、一昨日のNHKスペシャルでは、「ドイツは脱原発で電気代が高くなり、企業が電気代の安い近くの国に移動した(←企業は主に電気代で立地を決めるわけではない)」「再生可能エネルギーの普及で、原発電気の需要増加という話もある(←不確実で根拠がないのに、無理に言っている)」「原発は石炭に比べて環境によいエネルギー(←この二者択一にするのがおかしい)」などとしていたが、原発を語るメディアの記者や編集者は、少なくとも大飯原発再稼働差止判決を読んで、内容を理解しておくべきである。 この判決が画期的だったため、日弁連は、*2-2のように即座に会長声明を出し、「本判決は、技術の危険性の性質やそのもたらす被害の大きさが判明している場合には、その性質と大きさに応じた安全性が認められるべきとの理に基づき、原子力発電所の特性、大飯原発の冷却機能の維持、閉じ込めるという構造の細部に検討を加え、大飯原発に係る安全技術及び設備は、確たる根拠のない楽観的な見通しの下に成り立ちうる脆弱なものとして運転差止めを認めた」「福島第一原発事故の深い反省の下に、国民の生存を基礎とする人格権に基づき、国民を放射性物質の危険から守るという観点から、司法の果たすべき役割を見据えてなされた画期的判決であり、他の原子力発電所にもあてはまる」と、福井地裁判決を評価している。 また、日弁連会長声明は、「政府に対しては、本判決を受けて、従来のエネルギー・原子力政策を改め、速やかに原子力発電所を廃止して、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させるとともに、原子力発電所の立地地域が原子力発電所に依存することなく自律的発展ができるよう、必要な支援を行うことを強く求める」とも述べている。 一方、この判決を受けても、菅官房長官が「原子力規制委員会が新規制基準への適合を認めた原発の再稼働を進めるという従来の政府方針について全く変わりない」としているのは、勉強不足に過ぎる。 関電は、*2-3のように、「当社の主張が理解いただけなかった」として、判決の翌日、名古屋高裁金沢支部に控訴したが、事の重大性を理解していないのは関電の方だ。 さらに、日経新聞も、*2-4のように、電力会社の主張を繰り返し、「原発に100%の安全性を求め、絶対安全という根拠がなければ運転は認められないと主張しているのに等しい判決は疑問が多い」「上級審ではそれらを考慮した審理を求めたい」としているが、原発は、一旦事故が起これば取り返しのつかない大きな被害をもたらすため、原発には100%の安全性が求められる。 (3)他の原発の地元では・・ 佐賀地裁で玄海原発の運転差し止めを求める訴訟を争う玄海訴訟原告団は、*3-1のように、福井地裁判決に対し、「画期的」「衝撃」と評価し、「もう原発を再稼働すべきではない」としている。全国最大8千人近い原告が、佐賀地裁で玄海原発の操業停止を求めている訴訟の原告団長を務める長谷川照・元佐賀大学長(京都大学大学院理学系研究科出身)は、「安全神話から決別し、原発事故後の今とマッチしたすばらしい判決」としてこの判決を高く評価されたそうで、私も全く同感である。 福井地裁の大飯原発再稼働差止判決が、「地震大国日本で基準地震動を超える地震が来ないというのは楽観的過ぎる」「地震という自然の前に、人間の限界を示しており、信頼できる根拠は見いだせない」としている点について、長谷川団長は「基準をクリアするかどうかで原発の安全を判断する規制委員会の考え方を否定した」とその意義を強調されたそうだが、新基準は(1)のようなものであるため、これは重要なポイントだ。弁護団共同代表の板井弁護士も、「二度と事故を繰り返さない立場に立った、すべての原発に通じる判断。玄海原発の訴訟にもいい影響を与える」としている。 さらに、判決が、「憲法上、最高の価値ある人格権を広範に奪うのは、大きな自然災害、戦争以外では原発事故しかない」と断じたことについて、「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」の石丸初美代表は、「命や健康が最優先という我々の主張と重なり、勇気づけられた」「九電も再稼働すべきではない」と語ったそうだ。 九電は、川内原発(鹿児島県)の再稼働に向けた国の審査が最優先で行われており、今回の判決に対して、「具体的な内容を把握しておらず、コメントは差し控える」としているが、川内原発も同じである。 関西電力大飯原発の運転差し止めを命じた福井地裁判決に対し、玄海原発が立地する佐賀県内の首長からは「衝撃的」と驚きの声が上がる一方で、「住民の不安を認めた結果」と理解を示す声もあり、再稼働をめぐるそれぞれの立場で反応が分かれた。しかし、下級審の判決であっても、この判決は論拠が明快で的を得ているため、上級審でも支持されて全国の原発に影響を与えてもらいたい。 なお、*3-2のように、「脱原発をめざす首長会議」は、「いのちを守る避難計画はできるのか」と題する原発事故に備えた防災計画の勉強会を京都市内で開いたそうだが、30キロ圏内だけでも避難は困難を極めるのに、日本で250キロ圏内の人の避難などできるはずがない。 さらに、*3-5、*3-6に書かれているように、原発再稼動第一号を目指している川内原発のケースでは、安全神話に乗った上で工事目的の対応をしており、これは、従来と全く変わっていない。 *1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASG5N5JY6G5NUUPI004.html?ref=nmail (朝日新聞 2014年5月21日) 発表要請「絶対にだめだ」 原子炉危機、周知に壁 住民が知らないうちに大量被曝の恐れのあるドライベントが実施されていたかもしれない――。東京電力福島第一原発で事故直後に実際に起きたことは、原発再稼働の前提となる住民の避難計画づくりの重要な教訓となるはずだ。東電がドライベントを検討していたのは、情報規制の最中だった。「いまプレスをとめてるそうです」。2011年3月14日午前7時49分。福島第一原発には東電のテレビ会議システムを通して本店の官庁連絡班からそんな報告が届いた。3号機の原子炉圧力が急上昇している事態について、当時の原子力安全・保安院が報道機関に発表してはならないという情報統制を敷いているというのだ。政府事故調の報告書などによると、その数分後、原子炉の圧力が設計上の最高使用圧力を超えたとの連絡があった。原子炉の危機が高まっていた。東電は報道発表について首相官邸の了解を得るため、官邸に派遣されていた本店社員が保安院の担当者を探し回り、手間取っていた。また、福島県も住民へ周知するため報道発表をしたいと要請していたが、保安院は「絶対にだめだ」と返事をした。保安院は圧力が下がり原子炉に冷却水が注入できるようになることを期待していた。住民に危機を知らせるより、原子炉の暴走を止めることを優先したのだ。原子炉の状況が自治体や住民に的確に伝わらないなかで、住民が安全に避難することは難しい。企業統治に詳しい久保利英明弁護士は「ドライベントのような重大な決断は検討段階から住民に知らされるべきだ。深刻な事態では、企業は住民に対する安全保護義務を負っている。3年以上たっても東電も国も責任を明確にしない中で再稼働の議論には入れない」と語った。 ■ベント判断は各社任せ 原発事故当時、国にはどのような状況でベントの実施が許されるのかというルールがなく、電力会社に任せていた。東電の事故時操作手順書では「格納容器圧力が最高使用圧力の2倍」または「温度200度」に達した場合に、緊急時対策本部長(発電所長)の最終判断でベントをすることになっていた。福島第一原発で最終判断をする吉田昌郎(まさお)所長は、圧力が2倍に達しなくてもドライベントをするべきだという趣旨の発言をテレビ会議でしていた。ベントの際には周辺住民の避難情報を確認することが必要で、東電は「国や自治体等の関係機関と最大限に情報を共有しながら、実施について調整していく」としていた。しかし東電の資料によると、実際には1、2、3号機のウエットベント実施の際に「通信手段の不調」で連絡できなかった自治体もあった。原発事故を受け、原子力規制委員会は13年、原発を運転する前提となる新しい規制基準を作った。新たにフィルター付きベント設備の設置が義務づけられるなど設備面の強化策は打ち出された。しかし、どのような状況でベントの実施が許されるかという運用については相変わらず、自治体と電力会社が結ぶ「安全協定」という法律に基づかない協定に委ねられたままだ。このため、福島第一原発の事故のように一刻を争う中で緊急避難的に実施される場合は、住民が避難する時間的余裕がなくなってしまうことが今後も起きうる。東電柏崎刈羽原発の再稼働に慎重な新潟県の泉田裕彦知事は「(ベントに)どういう性能を持たせるかは避難計画とセット」として、ベントは避難する地元住民に影響がないことを保証しない限り実施しないこと、避難について自治体と協議することを東電に求めている。 *1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASG5N0Q5VG5MULBJ01G.html (朝日新聞 2014年5月20日) 原子力規制委員長「吉田調書読んでいない、知らない」 東京電力福島第一原発で事故対応の責任者だった吉田昌郎氏(故人)が政府事故調査・検証委員会に答えた「聴取結果書」(吉田調書)について、原子力規制委員会の田中俊一委員長は19日の朝日新聞の取材に「読んでいない。知らない」と答えた。規制委は政府事故調などをふまえ、原発の新しい規制基準を決めた経緯がある。田中氏は「全部考慮してやっている。(調書が表に)出れば読ませていただきたい」と語った。これに関連して菅義偉官房長官は20日の会見で調書を開示しない方針を示したうえで、「吉田氏は外部への開示を望んでいない。本人からは書面での申し出もある」と説明した。菅氏の説明によると、吉田氏は政府事故調の聴取後に体調を崩し、その後の国会事故調による聴取の求めに応じられなかった。このため国会事故調が政府事故調にヒアリング記録の提出を要求。政府は①第三者に向けて公表しない②国会事故調でヒアリング記録を厳重管理する③調査終了後は政府事故調へ返却する――ことを条件に、吉田氏から国会事故調への提出の許可を得たという。自民党の石破茂幹事長は会見で「極限の事案の時にどう対応するかは危機管理だ。生命の危険があると逃げた時に、法的にどう裏打ちされたものなのか政府で検証されるものだ」と注文した。新潟県の泉田裕彦知事は、会見で「事故の検証のためにも公表すべきだ」と語った。小野寺五典防衛相も会見で「内容が事実であれば明らかにしなければならない」と述べた。小野寺氏は福島第一原発の所員が吉田氏の命令に違反して撤退したことについて「そのようなことがもしあったなら大変残念だ。内容に問題があるなら、担当大臣がしっかりした対応を取られると思う」と語った。 *2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11148418.html (朝日新聞 2014年5月22日) 大飯原発再稼働認めず 福島事故後初の判決 地震対策の不備認定 福井地裁 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)をめぐり、住民らが関電に運転の差し止めを求めた訴訟の判決が21日、福井地裁であった。樋口英明裁判長は「大飯原発の安全技術と設備は脆弱なものと認めざるを得ない」と地震対策の不備を認定し、運転差し止めを命じた。関電は22日にも控訴する方針。2011年3月の東京電力福島第一原発の事故後、原発の運転差し止めを求めた訴訟の判決は初めて。大飯原発は13年9月に定期検査のため運転を停止し、新規制基準に基づく原子力規制委員会の再稼働に向けた審査を受けている。この判決が確定しない限り基準に適合すれば大飯原発の運転は可能だが、世論の大きな反発も予想される。福島第一原発事故を踏まえ、まず樋口裁判長は「生存を基礎とする人格権は憲法上の権利であり、法分野において最高の価値を持つ」と述べ、差し止めの判断基準として「新規制基準への適否ではなく、福島事故のような事態を招く具体的な危険性があるか」を挙げた。そのうえで大地震が来た時に原発の冷却機能が維持できるかどうかについて検討。05年以降、安全対策の基準となる「基準地震動」を超える大きさの地震が東日本大震災を含めて5回原発を襲ったことを指摘し、大飯原発の基準地震動を700ガル(ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)とした関電の想定を「信頼に値する根拠はない」とした。関電は、基準地震動の1・8倍にあたる1260ガルに達しない限りメルトダウンには至らないと主張したが、判決は「その規模の内陸地殻内地震は大飯原発で起きる危険がある」と退けた。次に、使用済み核燃料を貯蔵するプールについても、樋口裁判長は福島第一原発事故で建屋の壁が吹き飛ぶなどして、周辺住民の避難が計画されたことを指摘。「使用済み核燃料も原子炉格納容器と同様に堅固な施設によって囲われてこそ初めて万全の措置と言える」と、関電の対応の不十分さを批判。「関電は、原発の稼働が電力供給の安定性につながるというが、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題とを並べた議論の当否を判断すること自体、法的には許されないと考える」と結論づけた。裁判は、福井県民ら計189人が原告となっていた。判決は、福島第一原発の使用済み核燃料プールをめぐるトラブルで250キロ圏内の住民の避難が検討されたことを踏まえ、大飯原発から同じ距離圏内に住む原告166人について差し止め請求を認めた。(太田航) ■政府方針「不変」 判決を受け、菅義偉官房長官は21日の記者会見で、原子力規制委員会が新規制基準への適合を認めた原発の再稼働を進めるという従来の政府方針について「全く変わりません」と述べた。 ■コスト論より人格権優先 《解説》この訴訟で示された判決は、大飯原発の運転の是非にとどまらず、地震国で原発を持つことができるのかという本質的な問いを突きつけた。判決では、大飯原発を襲う最大の地震の揺れを想定することはできず、住民の安全を確保できないとした。阪神大震災をきっかけに、国は2006年に耐震指針を見直し、地震の揺れを見積もるやり方を厳しくした。しかし、その後も想定を上回る地震の揺れが各地の原発を襲った。判決では大事故ほど混乱で思うような収束は難しいと指摘。政府の福島原発事故調による「吉田調書」でもその事実が裏付けられた。さらに、原発のあり方についても論を展開している。優先すべきは「生存にかかわる人格権」で、発電の一手段でしかない原発はそれよりも優先度を低く置くべきだとしている。「原発の稼働がコストの低減につながる」といった、電気代と住民の安全を同列で考えるべきではないと指摘。安全性を確保できなければ、原発を運転すべきではないと判断した。原発の再稼働に向けた準備が大詰めを迎えている。しかし、判決は福島事故で厳しくなった原発の規制基準の是非を論ずる以前に、原発の安全性に対する考え方を根本から見直すべきだとした。これは再稼働に向けた国の審査に影響を与えることになる。福島事故を起こした日本が原発を持つ意味とは何か、その資格はあるのか。判決は、私たちに改めて考えるよう求めている。 *2-2:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2014/140521_2.html (日本弁護士連合会会長 村越進 2014年5月21日) 福井地裁大飯原発3、4号機差止訴訟判決に関する会長声明 福井地方裁判所は、2014年5月21日、関西電力株式会社に対し、大飯原子力発電所(以下「大飯原発」という。)から半径250km圏内の住民の人格権に基づき、同原子力発電所3号機及び4号機の原子炉について、運転の差止めを命じる判決を言い渡した。本判決は、仮処分決定を除くと、2011年3月の福島第一原発事故以降に言い渡された原発訴訟の判決としては初めてのものである。従来の原子力発電所をめぐる行政訴訟及び民事訴訟において、裁判所は、規制基準への適合性や適合性審査の適否の視点から、行政庁や事業者の提出する資料を慎重に評価せず、行政庁の科学技術的裁量を広く認めてきた。また、行政庁や事業者の原子力発電所の安全性についての主張・立証を緩やかに認めた上で、安全性の欠如について住民側に過度の立証責任を課したため、行政庁や事業者の主張を追認する結果となり、適切な判断がなされたとは言い難かった。これに対し本判決は、このような原子力発電所に関する従来の司法判断の枠組みからではなく、技術の危険性の性質やそのもたらす被害の大きさが判明している場合には、その性質と大きさに応じた安全性が認められるべきとの理に基づき、裁判所の判断が及ぼされるべきとしたものである。その上で、原子力発電所の特性、大飯原発の冷却機能の維持、閉じ込めるという構造の細部に検討を加え、大飯原発に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しの下に初めて成り立ちうる脆弱なものとし、運転差止めを認めたものである。本判決は、福島第一原発事故の深い反省の下に、国民の生存を基礎とする人格権に基づき、国民を放射性物質の危険から守るという観点から、司法の果たすべき役割を見据えてなされた、画期的判決であり、ここで示された判断の多くは、他の原子力発電所にもあてはまるものである。当連合会は、昨年の人権擁護大会において、いまだに福島第一原発事故の原因が解明されておらず、同事故のような事態の再発を防止する目処が立っていないこと等から、原子力発電所の再稼働を認めず、速やかに廃止すること等を内容とする決議を採択したところである。本判決は、この当連合会の見解と基本的認識を共通にするものであり、高く評価する。政府に対しては、本判決を受けて、従来のエネルギー・原子力政策を改め、速やかに原子力発電所を廃止して、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させるとともに、原子力発電所の立地地域が原子力発電所に依存することなく自律的発展ができるよう、必要な支援を行うことを強く求めるものである。 *2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/66092 (佐賀新聞 2014年5月22日) 大飯原発差し止め、関電が控訴、「安全性主張していく」 関西電力は22日、大飯原発(福井県おおい町)3、4号機の運転差し止めを命じた福井地裁判決を不服として、名古屋高裁金沢支部に控訴したことを明らかにした。関電は「当社の主張が理解いただけなかった。控訴審で安全性について主張していく」と説明している。福井地裁の判決をめぐっては、原告団のメンバーらが22日午前、関電本店(大阪市北区)を訪れ、控訴をせず判決内容に従うよう申し入れていた。 *2-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140523&ng=DGKDZO71644930T20C14A5EA1000 (日経新聞社説 2014.5.23) 大飯差し止め判決への疑問 関西電力大飯原子力発電所3、4号機について、福井地裁が運転再開の差し止めを命じた。東京電力福島第1原発の事故後、同様の差し止め訴訟が相次いでいるなかで初めての判決だ。裁判では、関電が想定する地震の揺れの強さが妥当か、事故時に原子炉を冷やす機能を維持できるのかなどが争点になった。判決は「(関電の対策は)確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに成り立つ脆弱なもの」と断じた。疑問の多い判決である。とくに想定すべき地震や冷却機能の維持などの科学的判断について、過去の判例から大きく踏み込み、独自の判断を示した点だ。判決は関電の想定を下回る揺れでも電源や給水が断たれ、重大事故が生じうるとした。地震国日本では、どんなに大きな地震を想定しても「それを超える地震が来ない根拠はない」とも指摘した。これは原発に100%の安全性を求め、絶対安全という根拠がなければ運転は認められないと主張しているのに等しい。国の原子力規制委員会が昨年定めた新たな規制基準は、事故が起こりうることを前提に、それを食い止めるため何段階もの対策を義務づけた。「多重防護」と呼ばれ、電源や水が断たれても別系統で補い、重大事故を防ぐとした。判決はこれらを十分考慮したのか。大飯原発は規制委が新基準に照らし、安全審査を進めている。その結論を待たずに差し止め判決を下したのには違和感がある。関電は判決を不服として控訴した。原発の安全性をめぐる科学的判断に司法はどこまで踏み込むのか、電力の安定供給についてどう考えるのか。上級審ではそれらを考慮した審理を求めたい。一方で、判決が住民の安全を最優先したことなど、国や電力会社が受け止めるべき点もある。安全審査が進むなか、住民の避難計画づくりが遅れている。安全な避難は多重防護の重要な柱だ。自治体の計画づくりを国が支援し、電力会社も説明を尽くすべきだ。 *3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/65965 (佐賀新聞 2014年5月22日) 「画期的」「衝撃」評価と驚き 玄海訴訟原告団 大飯原発3、4号機の再稼働にノーを突きつけた21日の福井地裁判決。福島第1原発事故を教訓に「原発の危険性と被害の大きさは十分明らかになった」とする司法判断に、佐賀地裁で玄海原発の運転差し止めを求める訴訟を争う原告からは「画期的な判決。もう原発を再稼働すべきではない」との声が上がった。「安全神話から決別し、原発事故後の今とマッチしたすばらしい判決」。全国最大の8千人近い原告が、佐賀地裁で玄海原発の操業停止を求めている訴訟の原告団長を務める長谷川照・元佐賀大学長は、判決を高く評価した。「3・11」以前から、全国の原発周辺の住民らが数々の運転差し止め訴訟を起こしてきた。しかし、住民側が勝訴したのは2006年に金沢地裁が志賀原発2号機について「想定を超える地震で被ばくする可能性がある」とした1例だけ。この判決も上級審で逆転敗訴し、司法は国の原発政策を追認してきたのが実情だ。福井地裁の判決では、国が再稼働を審査する上で大前提となる基準地震動の設定について「地震という自然の前に、人間の限界を示しており、信頼できる根拠は見いだせない」とした。長谷川団長は「基準をクリアするかどうかで原発の安全を判断する規制委員会の考え方を否定した」とその意義を強調した。判決はまた、「地震大国日本で基準地震動を超える地震が来ないというのは楽観的過ぎる」「使用済み核燃料プールに、原子炉格納容器のような堅固な設備がない」など、原発そのものの危険性を指摘。弁護団共同代表の板井優弁護士は「二度と事故を繰り返さない立場に立った、すべての原発に通じる判断。玄海原発の訴訟にもいい影響を与える」と分析する。さらに判決は「憲法上、最高の価値がある人格権を広範に奪うのは、大きな自然災害、戦争以外で原発事故しかない」と断じた。約780人が原告となり、玄海原発の運転差し止めなどを求めた訴訟を起こしている「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」の石丸初美代表は「命や健康が最優先という我々の主張と重なり、勇気づけられた。九電も判決を見習って再稼働すべきではない」と語気を強めた。九電が抱えるもう一つの原発の川内原発(鹿児島県)は再稼働に向けた国の審査が最優先されている。九電は今回の判決に「訴訟の具体的な内容を把握しておらず、コメントは差し控える」とした。 ■県内首長 受け止めさまざま 関西電力大飯原発の運転差し止めを命じた21日の福井地裁判決に対し、玄海原発が立地する佐賀県内の首長からは「衝撃的」と驚きの声が上がる一方、「住民の不安を認めた結果」と理解を示す声もあり、再稼働をめぐるそれぞれの立場で反応が分かれた。夕方、佐賀市内で記者団の取材に応じた古川康知事は「これまで下級審では(差し止めを)認める判決もあった。裁判官が独自の審理で出された判決だと思う」と淡々と受け止めた。電力会社の主張をことごとく退けた判決内容には「驚いた」とした上で、玄海原発訴訟への影響には「独立して審理されている。参考にされるだろうが、それについて述べるのは控えたい」と言及を避けた。政府の原子力政策に対しても「下級審の判決を見て、再稼働などの是非を判断することにはならないだろう」との認識を示した。玄海原発の再稼働は「原子力規制委員会に国民の信頼に足る審査を行ってもらうことに尽きる。(再稼働などは)その後の判断になる」と従来の考えを強調した。玄海原発が立地する東松浦郡玄海町の岸本英雄町長は東京都内で原発立地自治体の首長らが参加する会議に出席していた。「司法の判断なのでコメントする立場にない」としつつ、「判決が玄海原発の再稼働にどのように影響するのか現時点では未知数。規制委には粛々と審査を進めてもらうしかない」と話した。玄海原発に隣接する唐津市の坂井俊之市長は「衝撃的な判決だ。判決内容の詳細はまだ把握しておらず、福井地裁が(原発の)どういう部分を否定したのか、しっかり分析したい」と述べた。九州電力に立地自治体並みの安全協定締結を求めている伊万里市の塚部芳和市長は「原発250キロ圏内の住民の不安を司法が認めた結果であり、国には重く受け止めてもらいたい」と国に注文。「周辺地域住民の原発に対する不安は非常に大きい。国は再稼働を進めるのであれば、住民が安心できるような防災対策への支援とともに、電力事業者との立地自治体並みの安全協定の締結にも配慮してもらいたい」とコメントした。 *3-2:http://qbiz.jp/article/38455/1/ (佐賀新聞 2014年5月25日) 「複合災害の避難計画遅れ」 脱原発首長会議が勉強会 全国の市町村長などでつくる「脱原発をめざす首長会議」(95人)は24日、「いのちを守る避難計画はできるのか」と題する、原発事故に備えた防災計画の勉強会を京都市内で開いた。愛媛県や京都府などの、原発周辺自治体の4市長が避難計画の策定状況などを報告。地震などとの複合災害が想定されておらず、避難先の確保が難しいなど、十分な計画にはほど遠い現状を明らかにした。「計画は作ったが、機能するのかと言われれば難しく、矛盾を抱えている」。四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)から南東に最短約13キロに位置する同県西予市。三好幹二市長は、勉強会で「地震が発生すれば道路が使えない恐れがあるが、複合災害はまだ想定できていない」と話した。同県宇和島市も30キロ圏内の緊急防護措置区域(UPZ)に含まれるが、石橋寛久市長は「避難計画は問題だらけ。再稼働には慎重にならざるを得ない」と指摘した。一方、関西電力高浜原発(福井県高浜町)から最短30.9キロという京都府京丹後市。中山泰市長は「30キロをわずかに超えるため独自に避難計画を策定中。30キロ圏を外れると、予算で国の支援も得られず、避難先の確保も進まない」とUPZの線引きに疑問を呈した。勉強会ではこのほか、避難計画に詳しい専門家からも課題の指摘があった。 PS(2014.5.27追加):*3-3のように、原子力規制委員会の優先審査で再稼働に最も近いとされる川内原発に関し、鹿児島県と薩摩川内市が開催した住民説明会で、参加者から、関西電力大飯原発運転差止を命じた福井地裁判決を引き合いに、「再稼働より人命が大事だ」との声が上がったとのことである。鹿児島県は農業、漁業が盛んで、最近は九州新幹線により「福岡⇔薩摩川内」間が1.5時間程度で結ばれ、薩摩川内市は、原発が無い方が地域振興できる場所になったため、再稼働は不要だ。 *3-3:http://qbiz.jp/article/38545/1/ (西日本新聞 2014年5月27日) 「再稼働より人命」住民から不満の声 川内原発避難説明会 鹿児島県は26日夜、九州電力川内原発が立地する同県薩摩川内市で、原発事故時の避難計画などについて、市とともに住民説明会を開催した。川内原発は原子力規制委員会の優先審査で、再稼働に最も近い原発とされる。参加者からは、関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じた福井地裁判決を引き合いに、「再稼働より人命が大事だ」との声も上がった。県は原発から半径30キロ以内(緊急防護措置区域=UPZ)で、現地の市町とともに順次、説明会を開いている。この日は原発から東へ約23キロの入来文化ホール(同市入来町)であり、対象地区の住民約2万1千人に対し約70人が参加した。市と県は避難指示が出た後の行動の手順などを説明。これに対し、参加者からは「避難計画は夜間を想定しておらず、机上の空論だ」「再稼働ありきの説明会だ」などの反論が出た。市は「計画を立てて住民の安全確保を図ろうとしている」などと理解を求めた。県はUPZ圏内の全9市町で、6月中をめどに説明会を終える予定。 PS(2014.5.27追加):*3-4のように、津軽海峡を挟んで大間原発の対岸30キロ圏内にある函館市は、事業者であるJパワーと国を相手取って、大間原発建設差止訴訟を東京地裁に起こした。函館市は、五稜郭などの歴史遺産がある場所で、農水産資源と観光資源がその地域の富であり、原発事故が起こればそのすべてを失う。そのため、自治体に原告適格があるかというような論点に終始せず、また、眼先の発電能力や根拠なき“安全性”に依拠することなく、原発の建設差止が認められるべきである。 *3-4:http://digital.asahi.com/articles/ASG4341HTG43UTIL021.html (朝日新聞 2014年4月3日) 函館市、大間原発建設差し止め提訴 自治体、初の原告 北海道函館市は3日、青森県大間町で建設中の大間原発について、事業者のJパワー(電源開発)と国を相手取り、建設差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こした。原発差し止め訴訟で自治体が原告になるのは初めて。訴状を提出した工藤寿樹市長は「危険だけを押しつけられて、(建設の同意手続きの対象外のため)発言権がない理不尽さを訴えたい」と語った。函館市は津軽海峡を挟んで大間原発の対岸にあり、市域の一部は原発事故に備えた避難の準備などが必要な30キロ圏の防災対策の重点区域(UPZ)に入る。東京電力福島第一原発事故では深刻な被害が30キロ圏に及んだ。函館市は「大間原発で過酷事故が起きれば、27万人超の市民の迅速な避難は不可能。市が壊滅状態になる事態も予想される」と訴え、「市民の生活を守り、生活支援の役割を担う自治体を維持する権利がある」と主張する。その上で、立地市町村とその都道府県にある建設の同意手続きが、周辺自治体にはないことを問題視。同意手続きの対象に30キロ圏の自治体を含めるべきで、国が2008年4月に出した大間原発の原子炉設置許可は、福島原発事故前の基準で不備があり、許可も無効と指摘する。今回の提訴は、函館市議会が今年3月に全会一致で認めた。弁護団の河合弘之弁護士は「市長が議会の承認を得て起こした裁判で、その重さは裁判官にも伝わるだろう」と語った。弁護団は「3年で判決を得たい」とした。函館市は訴訟費用を年間約400万円と見込んでおり、それを賄うため全国に募金を呼びかけ、2日までに109件514万円が集まった。大間原発の建設は提訴後も続く見通しだ。Jパワーは「裁判を通じて計画の意義や安全対策の考えを主張していく。函館市に丁寧に情報提供や説明をしながら計画を推進していきたい」とのコメントを出した。大間町の金沢満春町長は「他の自治体が決めたことにコメントはできない。町は今まで通り『推進』ということで地域一丸になって頑張る」とコメントした。菅義偉官房長官は記者会見で「自治体などの理解を得るために事業者が丁寧に説明を行うことはもちろん、国としても安全性を説明していきたい」と述べた。 ◇ 〈大間原発〉津軽海峡に面する青森県・下北半島の北端で建設が進む。使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜた燃料(MOX燃料)を100%使う世界初の「フルMOX原発」として2008年5月に着工。建設工事は東日本大震災で中断したが、12年10月に再開した。工事の進捗(しんちょく)率は37・6%、完成予定は未定。完成すれば出力は約138万キロワット。 PS(2014年5月29日追加):*3-5のように、公害を出しながらその処理費用を支払わない民間企業に対して、国がシェルター整備のために税金から補助金311億円を交付し、「原発のコストは安い」などと言うのは筋が通らない。何故なら、原発のコストとは、これらすべての費用を含むものだからである。また、事故時は、住民がしばらく避難していれば、戻ってきて住居・田畑・里山・海が元どおり使えると考えているのも、原発公害を過小評価しすぎている。 *3-5:http://qbiz.jp/article/38738/1/ (西日本新聞 2014年5月29日) 原発シェルター、「川内」5キロ圏内5カ所整備へ 原発事故が起きても、30キロ圏外にすぐには逃げられない高齢者や障害者らが被ばくを避ける場所として、全国の原発周辺でシェルター(一時的屋内退避施設)が整備されている。国はこれまでに整備の補助金311億円を交付。九州電力川内、玄海両原発を抱える九州では本年度中に計24施設が整備される。シェルターを訪ね、課題を探った。壁や天井はコンクリートと鉛の板で覆われ、窓もすべてふさがれている。中に入ると、圧迫感を感じる。九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)から南に2・9キロの寄田小学校跡にシェルターの一つがある。体育館だった建物の舞台部分を取り払い、床面積は約90平方メートル。52人を収容できる。放射性物質除去フィルター付きの換気装置に加え、放射性物質の侵入を遮断するため屋内の空気の圧力を屋外より高くする機能も備える。非常用発電機は、給油しなくても4日間連続して使用できるという。東京電力福島第1原発事故では、周辺の病院の入院患者が避難の途上で48人亡くなったとの報告もある。薩摩川内市防災安全課の角島栄課長は「高齢者や障害者はすぐに逃げられない。しばらくはとどまらざるを得ない」と話す。事故時は即時避難が求められている5キロ圏の4地区(寄田、滄浪(そうろう)、水引、峰山)には在宅の要援護者91人が暮らす。4地区には要援護者と付添人が一時退避できるよう、旧寄田小跡を含めシェルターが本年度中に計5カ所整備される予定だ。1施設の建設費は2億円。国が全額を補助する。川内原発から1・4キロにある、認知症の84〜99歳の男女18人が暮らすグループホーム「お多麻(たま)さんの家」は、寄田小跡のシェルターへの一時退避を決めた。最終的には30キロ圏外の鹿児島市の施設に車で避難する計画にしているが、管理者の瀬戸口眞知子さん(62)は「急激な環境変化や長距離移動は高齢者には大変な負担になる」と判断した。30キロ圏に拡大すれば、要援護者の数は急増する。5〜30キロ圏にもシェルターを求める声は多い。原発から約12キロに住む同市東郷町斧淵の片平和代さん(62)は自力では動けない要介護5の母(90)と暮らす。「行政は『バスが集合先の小学校に来る』と言うが、着の身着のままの避難は母には無理」と訴える。だが、地元行政で5〜30キロ圏内に整備する議論は今のところない。鹿児島県は「シェルター整備の条件が5キロ圏内、および30キロ圏内の離島、半島などとなっている」と説明している。 PS(2014年5月29日追加):また、*3-6のように、避難経路も放射性物質の拡散の仕方を考えておらず、「過酷事故は起こらない」という安全神話の上に成り立っている。 *3-6:http://373news.com/modules/pickup/index.php?storyid=57160 (南日本新聞 2014 5/28) 原発事故時避難計画 放射性物質拡散考えず 九州電力川内原発1、2号機(薩摩川内市久見崎町)の重大事故を想定し、原発から30キロ圏の9市町が策定した住民避難計画は、放射性物質の広がり方や方向を左右する風を考慮しておらず、避難先は1カ所しか指定していない。県や当該市町は「事故の状況を踏まえて対応する」としているが、住民の不安を払拭(ふっしょく)するには程遠い。住民の不安は避難先や経路が風下に当たる恐れがあるのに、複数の避難先が確保されていないからだ。避難は自治会・地域単位が基本。避難先の自治体は複数であっても、自治会に割り当てられた避難所は1カ所なのが現状だ。 *4:http://www.news-pj.net/diary/1001 (NPJ 2014年5月21日) 【速報:大飯原発運転差止請求事件判決要旨全文】を掲載していますが、長いので、下の「続き▽」をクリックすれば出てくるようしています。 続き▽
| 原発::2014.5~8 | 12:03 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2014,05,02, Friday
*1-1より (1)甘い想定を重ねて成り立っている原発の“安全性” *1-1のように、佐賀県が進めていた玄海原発事故時の避難時間シミュレーションが公表され、30キロ圏外への避難が最長で30時間半という結果になったそうだが、これは、避難途中の食事・トイレ、保育園・学校へのお迎え、入院患者・施設入所者などの災害弱者に関しては考慮されていないとのことである。そして、専門家は、佐賀県のシミュレーションは、「単に物理的な移動時間を示しただけで、実際の避難にかかる前後の時間を考慮しておらず、想定に無理がある」と指摘している。 なお、最大の甘さは、30km圏内の住民だけが避難すればよく、「避難した住民は、事故が収まれば、すぐに帰宅して元の生活に戻れる」と想定しているところにあり、実際には、豊かだった土地や海が半永久的に使えなくなり、住民は、そのまま避難し続けるか、どこかへ移住しなければならないのである。 (2)玄海原発の周辺自治体である伊万里市の攻防とメディアの役割 *1-1のように、伊万里市の塚部市長は、「伊万里市は防災行政無線が整備されておらず、初動体制に不安が残る。もっと現実的な計画が示されない限り再稼働は難しい」と強調したそうだが、これは、原発周辺自治体からの具体的な問題点の指摘だ。 また、*1-2のように、西日本新聞記者が、「塚部市長の意見は、自治体の首長として正論であり、喝采を送るのは市民ばかりではない」「伊万里市長は正論を貫くか」と書いており、私も同感である。しかし、「市長は歴史という法廷の被告人席に座らされている」かもしれないが、その歴史の法廷は原発再稼働問題だけで市長に判決を下すわけではなく、伊万里市のよりよい発展という視点から判決を下す。そして、伊万里市は、産業振興では工業化を進めており、経産省、九州経済団体、九電から有形無形の圧力がかかる可能性があるので心配だ。 そのような中、伊万里市長が正論を通せるか否かは、西日本新聞や佐賀新聞などのメディアが、原発の危険性に関する正しい情報を報道して主権者に知らせるか否かにかかっており、これが民主主義社会におけるメディアの役割であって、既存の権力や広告料に弱いメディアでは民主主義は守れない。 (3)そのほかも甘い想定ばかりである *2-1では、九州工業大学原子核物理学の岡本名誉教授が、「九電は、炉心溶融は起きえないと本心では考えているのではないか」と指摘するように、原発の過酷事故対策は甘い。 また、*2-2のように、地震・津波という自然現象についても、九州大学地球科学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所の辻健准教授らのグループが、「南海トラフ地震の発生源とされる巨大断層が、従来の想定より約30キロ沖まで延びている」とする調査結果をまとめており、これまでの巨大断層の想定が過小だったことがわかる。 さらに、*2-3のように、「脱原発をめざす首長会議」は、原子力規制委が審査を進めている九電川内原発1、2号機の再稼働反対や避難計画の問題点などを訴える決議を採択し、川内原発については、巨大噴火の被害を受ける恐れを指摘するとともに、原発の新規制基準についても、コアキャッチャーを義務付けておらず「世界一厳しい基準とは言えない」と批判しており、事故時の避難計画に関しては、「避難者の受け入れ計画とセットでなければ円滑な避難はできない」としており、もっともである。 (4)川内原発の周辺地域も頑張らないと *3のように、九電は4月30日に川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)再稼働の前提となる審査の申請書類について、原子力規制委員会の指摘を反映した内容に作り直して再提出したそうだ。過酷事故対策として格納容器内の水位を正確に測るための水位計増設に取り組むそうだが、このような子ども騙しの対策で過酷事故が防げると思っているのだろうか。 川内原発周辺の鹿児島、宮崎、熊本各県は、豊かな自然と農林漁業を有する日本の南の食糧庫であり、天孫降臨伝説のある高千穂の近くでもある。原発で発電することと、これらの資産を守ることのどちらが大切かは、再度書くまでもないだろう。 *1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2672991.article.html (佐賀新聞 2014年5月1日) 原発の避難時間推計 患者搬送に不安の声 玄海原発の事故時の大渋滞を想定し、佐賀県が作業を進めていた避難時間シミュレーションがようやく公表された。30キロ圏外への避難が最長で30時間半という結果に、住民からは「想像以上」の声が上がる一方、長時間に及ぶ患者搬送などの課題も浮上している。県試算の“最悪”ケースは、原発に近い場所ほど周辺部の渋滞で逃げ遅れるという想定で、5キロ圏内から30キロ圏外に出るまで30時間半。玄海町内の自営業男性(67)は「避難するのに1日ほどかかるのは覚悟していたが、予想以上。別の避難道を造るなどして1時間でも早く避難する方法を考えて」と訴えた。原発から十数キロ離れた唐津市中心部でも16時間かかるとみられ、七山経由で神埼市に避難することになる女性(61)は「避難に半日かかれば、食事やトイレの問題も出てくる。学校へのお迎えで混雑するだろうし、交通誘導をよほどうまくやらないと、もっと時間がかかる」と指摘した。シミュレーションは地域ごとの推計を出しておらず、自治体の詳細な分析はこれから。唐津市は西九州自動車道を使った福岡県経由の避難で、県内の渋滞が緩和できることに着目。岡本憲幸総務部長は「福岡方面への避難が早いことがシミュレーションでも証明された。秋の訓練までには避難ルートや避難場所の見直し作業を終え、市民に周知できれば」と語った。ただ、入院患者や施設入所者など“災害弱者”対策となると、5キロ圏内のみで、5~30キロ圏は示されていない。伊万里市の山元記念病院の山元章生理事長は「患者の状態が避難中に悪化することもある。要支援者を避難させるには、もっと細かな想定が必要で、医療関係者も交えて避難シミュレーションを考えるべきだ」と県に注文をつけた。昨秋の予定が半年遅れての結果公表。国の原発安全審査が最終段階に近づくなか、再稼働の“条件整備”という見方も少なくない。玄海町の岸本英雄町長は「避難時間は想定の範囲内」とした上で、「安全対策工事も進んでおり、推計結果は直接、再稼働に影響するものではない。避難計画の精度を高める材料に生かしたい」と受け止めた。一方、市民の30キロ圏外避難が、基本ケースで7時間以内という結果が出た伊万里市の塚部芳和市長は「本当にそうなら一安心だが、大丈夫だろうかという思いが強い」と語り、玄海原発の再稼働について「伊万里市は防災行政無線が整備されておらず、初動体制に不安が残る。もっと現実的な計画が示されない限り再稼働は難しい」と強調した。玄海原発の廃炉を求め提訴している市民団体の石丸初美代表は「そもそも避難先の受け入れ態勢を含め、防災計画は不備だらけ。避難時間の予測自体できるわけがない」と厳しく批判した。 ■「想定に無理ある」 専門家指摘 準備時間考慮されず 玄海など国内全原発の住民の避難時間を独自試算している民間団体「環境経済研究所」(東京都)の上岡直見代表は、県のシミュレーションを「物理的な移動時間を示しただけで、実際の避難にかかる前後の時間を考慮していない」と不十分さを指摘する。3月に原子力規制庁と統合した原子力安全基盤機構による避難時間の定義は、「避難準備時間」「移動時間」「避難完了確認時間」の総和になっている。しかし、県のシミュレーションは、避難指示までに避難準備が整い、指示と同時に移動を開始したと想定。「実際に大事故が起きたときにそのようなスムーズな行動ができるのか。想定として無理がある」と疑問を呈す。これに対し、県消防防災課は「現実的には準備できない人もいるだろうが、準備時間については事故のケースによって大きく変わるので想定は難しい」とし、円滑な避難準備ができるようになるため、今後広報や訓練を通じて体制の充実を図るとしている。上岡さんは「住民の被ばくの可能性について全く触れないなどほかにも問題点はあるのに、県は安全に避難できることが確認できたと言っている。現時点でそこまで言う立地自治体はほかに聞いたことがない」と話した。 *1-2:http://qbiz.jp/article/36891/1/ (西日本新聞 2014年5月2日) 伊万里市長は正論を貫くか 前任地という縁もあり、佐賀県伊万里市の動向が気になっている。玄海原発(佐賀県玄海町)から最短で12キロ。市は九州電力との原子力安全協定に原発立地自治体並みの権限である「事前了解」を盛り込むよう求めているが、九電側が難色を示しており、原発30キロ圏の自治体で唯一、九電と協定を結んでいない。塚部芳和市長は昨年3月、本紙のインタビューにこう語っている。「福島第1原発事故で、私の意識は大きく変わりました。放射性物質は広範囲に拡散し、事故が立地自治体だけの問題ではないことが分かりました。玄海原発で事故が起きると、とんでもないことになる。市民の生命、財産を守る首長として、危機意識を強く持つようになりました」。 自治体の首長の意見としては正論であり、喝采を送るのは市民ばかりではあるまい。だが、一方の九電は伊万里市との協定に立地自治体並みの権限を盛り込むのは難しいとの立場。県と玄海町に限っている「地元」の範囲を広げると原発再稼働がやりにくくなる上、唐津市などと既に締結している協定との整合性がとれなくなるためとみられる。原子力規制委員会が玄海原発3、4号についても再稼働の前提となる審査を進める中、このまま両者の協議が平行線をたどるとどうなるか。2基が審査に合格したとしても九電は、伊万里市と協定を結ばないまま再稼働に踏み切れるだろうか。再稼働の地元了解プロセスは国が明示していないが、九電にとって難しい判断になるのは間違いない。再稼働を強行すれば、伊万里市内外から「乱暴なやり方だ」といった批判が集まることが想定される。 北海道函館市は4月、電源開発(Jパワー)が青森県大間町に建設中の大間原発の建設中止を求めて提訴に踏み切った。伊万里市が同様の行動に出る可能性も否定はできない。 一刻も早く原発再稼働を実現させたい九電としては協議の“落としどころ”を見いだしたい。しかし、4月に4選を果たしたばかりの塚部氏にも、譲歩の余地は少ない。思い起こされるのは昨年12月、協定について「交付金を取るための駆け引きの道具」と発言し、謝罪に追い込まれた経緯。仮に九電側からカネを引き出す形で事態を収束しようとすれば、市長も九電も「市民の安全をカネに代えるのか」といった批判は免れない。「市長は常に歴史という法廷の被告人席に座らされている」。かつて、原発とは関係のない、ある問題で重要な決断を迫られたときの塚部市長の言葉だ。今回の問題は原発再稼働に絡むだけに、さまざまな角度から有形無形の圧力がかかることも想像に難くない。歴史の判決を受けるべく、市長が正論をどこまで貫き通すか注目している。 *2-1:http://qbiz.jp/article/36615/1/ (西日本新聞 2014年4月27日) 原発過酷事故備え万全か 懸念残る九電シナリオ 溶融物冷却できるか 原発の過酷事故対策が不十分ではないか−。専門家から、そんな疑問の声が上がっている。事故で冷却機能が失われ、原子炉内の核燃料が溶融し、炉を覆う格納容器を破壊して大量の放射性物質を放出させる「過酷事故」。安倍政権は原子力規制委員会の新規制基準を「世界一」と強調するが、世界ではそれを上回る安全性を整えた新設炉が建設されている。新基準では、格納容器内の圧力が高まった際、爆発を避けるため、放射性物質を含む気体を外部に排出させるベント(排出口)と呼ばれる最終手段も、九州電力などの加圧水型軽水炉(PWR)では設置の先送りが認められた。「コアキャッチャーの設置は求められていなかった。(略)。格納容器の圧が高まっていた。溶け出した核燃料が圧力容器(原子炉)を破壊し、格納容器のコンクリートと反応し、大量の水素と一酸化炭素が発生している証左であった。ベントを行うしかなかった…」。現役国家公務員が「若杉冽(れつ)」のペンネームで原発政策の問題点を告発した小説「原発ホワイトアウト」終盤の一節。東京電力福島第1原発事故後の新規制基準と電力会社の対応がなお不十分で、過酷事故に見舞われるという設定だ。小説に出たコアキャッチャーとは、原子炉から溶け出した3千度弱の炉心溶融物を受け止め、近接する貯留部に誘導して冷やすなどする設備だ。フランスのアレバ社は、フィンランドや中国、フランスで建設中の次世代原子炉(欧州加圧水型炉)に設ける。ホワイトアウトが指摘した、溶融物とコンクリートとの反応で、容器を爆発させるような事態を回避するためだ。だが規制委の新規制基準にコアキャッチャーの設置義務はない。では、九電などPWR保有各社の対策はどのようなものか−。規制委の審査で九電は、配管の破断で原子炉に冷却水が送れず、電源も失われた過酷事故対策を説明してきた。何とか移動式発電機をつないで格納容器への注入を再開するなどし、原子炉下のキャビティーと呼ばれるスペースに水をため、落下する溶融物を徐々に冷やすシナリオだ。この対策に、疑問の声が出ている。「溶融物がキャビティーに徐々に落ちると、水中で小さい粒になる。粒は膜に覆われ熱を保ち続け、膜が何かのきっかけで連鎖的に破け始めると、最も破壊力がある水蒸気爆発につながる可能性がある」。元燃焼炉設計技術者の中西正之さん(70)=福岡県水巻町=はこう指摘する。一方、水をためなければ「ホワイトアウト」の展開通り、コンクリート反応で水素や一酸化炭素が発生するリスクが高まるという。燃料溶融で発生する水素で建屋が爆発したとされる福島原発3号機。ただ、国会事故調の報告書では、爆発直前にオレンジ色の閃光(せんこう)が確認されたことに触れ「一酸化炭素の不完全燃焼と推論すると理解しやすい」と、複合要因の可能性を指摘している。キャビティーに水をためれば水蒸気爆発、水をためないとコンクリートと反応し一酸化炭素などによる爆発の懸念が残る。九州工業大の岡本良治名誉教授(原子核物理学)は「格納容器の爆発を防ぐには最終的にはベントで放射性物質を外に逃がして減圧するしかない」と説明。ただ、格納容器が大きいPWRは、気体の密度が高まりづらく爆発の危険性が比較的低いとして、ベント設置は5年間猶予された。「九電は、炉心溶融は起きえないと本心では考えているのではないか」。岡本名誉教授は指摘する。東電は、柏崎刈羽原発を抱える新潟県からの「コアキャッチャーを設置しないのか」との質問に、「格納容器下部に耐熱材を敷設するなど、浸食を軽減させるさらなる安全性向上策を検討中」と、新基準を上回る独自の追加対策を示唆している。 *2-2:http://qbiz.jp/article/36702/1/ (西日本新聞 2014年4月29日) 南海トラフ断層、30キロ長かった 九大グループが構造解明 九州大カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所の辻健准教授(地球科学)らのグループは、南海トラフ地震の発生源とされる巨大断層が、従来の想定より約30キロ沖まで延びているとする調査結果をまとめた。辻准教授によると、この断層の構造が解明されるのは初めて。国際学術誌「アース・アンド・プラネタリー・サイエンス・レターズ」(電子版)に発表した。辻准教授によると、調査は1944年の東南海地震の震源となった紀伊半島沖で実施。沖合約100キロの南海トラフ付近から日本列島方向へ約60キロの線上で、海上から海底に向けて音波を発信して断層の亀裂内の水圧を調べた。亀裂内の水圧が高い箇所ほど活発に動くと考えられており、高水圧が連続する巨大断層とみられる層を確認。従来、地震を引き起こす巨大断層は陸側から南海トラフの手前約30キロにかけて延びていると考えられていたが、南海トラフ付近までつながっていることが分かったという。周辺の断層群は巨大断層から分岐したものと考えられるという。辻准教授は「地震発生前は断層内の水圧の数値が変化する可能性が高く、継続して水圧を調べることで地震や津波が予測できる可能性がある」としている。南海トラフは東海沖から九州沖の海底にある深さ約4千メートルの細長い溝状の地形。政府はマグニチュード9の巨大地震が発生した場合、津波などで最大33万人以上が死亡するとの想定を発表している。 *2-3:http://qbiz.jp/article/36616/1/ (西日本新聞 2014年4月27日) 川内再稼働に反対 脱原発首長会が決議 火山リスク問題視 鹿児島、佐賀など39都道府県の現職の市町村長やOBなどでつくる「脱原発をめざす首長会議」(94人)は26日、神奈川県小田原市で総会を開き=写真、原子力規制委員会が優先的に審査を進めている九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働反対や避難計画の問題点などを訴える決議を採択した。再稼働に反対する川内原発については、巨大噴火の被害を受ける恐れがあると指摘。東京電力福島第1原発の事故を受けた原発の新規制基準も、溶けた核燃料を受け止める設備(コアキャッチャー)を義務付けておらず、「世界一厳しい基準ではない」と批判した。事故時の避難計画に対しては、「避難者の受け入れ計画がセットでなければ、円滑な避難ができない」と主張。総会に参加した福島県双葉町の井戸川克隆前町長は、長期化する避難生活を紹介して「私たちの悲惨な経験が何も生かされていない」と訴えた。九州から加盟する9市町村長は欠席したが、玄海原発がある佐賀県玄海町民の避難先となっている同県小城市の江里口秀次市長は、取材に対し「避難が長期化した際の受け入れ態勢を市町村に求められても不可能。原発を再稼働させるのなら、国は住民の避難にも責任を持つべきだ」と話した。 *3:http://qbiz.jp/article/36856/1/ (西日本新聞 2014年5月1日) 川内再稼働、九電が申請書再提出 九州電力は30日、川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働の前提となる審査の申請書類について、原子力規制委員会の指摘を反映した内容に作り直して再提出(補正申請)した。最大規模の揺れ(基準地震動)や最大規模の津波の想定(基準津波)を厳しく見直し、安全対策を追加した。九電は基準地震動を540ガルから620ガルへ、基準津波を約3・7メートルから約5・4メートルへ引き上げたほか、津波対策として海抜15メートルの防護壁の設置を追加。格納容器内の水位を正確に測るため水位計を増設するなど、過酷事故対策にも取り組む。全対策の工事費は約1300億円、工事終了は6月末の予定。規制委は今後、判断をまとめた審査書案を策定し、意見募集などを行う。機器の耐震評価の審査など全ての手続きが順調に進んでも、再稼働は8月以降になる見通し。 PS(2014.5.2追加):*4のような人間の不注意や操作ミスもありますが、空調設備とポンプのスイッチを間違うなどということは普通の会社でもありませんので、本当は故意ではないでしょうね。 *4:http://www.47news.jp/CN/201405/CN2014050201002093.html (47ニュース 2014/5/2) 汚染水誤送、スイッチ間違えたか 東電福島第1原発 東京電力福島第1原発で使う予定のないポンプが動き、移送先ではない建屋に高濃度汚染水が流入した問題で東電は2日、建屋で作業していた社員が空調設備を動かそうとした際、誤ってポンプのスイッチを入れた可能性が高いとの調査結果をまとめ、原子力規制委員会に報告した。この問題では、「プロセス主建屋」と「焼却工作建屋」の二つの建屋にあるポンプ4台が動き、本来の移送先ではない焼却工作建屋に汚染水が流入した。東電は、プロセス主建屋の水位が3月20日以降急上昇しているため、同日、ポンプ電源が入ったと推定。社員への聞き取りで、空調設備の電源を入れた社員がいたことを確認した。 PS(2014.5.16追加):*5のように、川内原発再稼働の動きがあり、九州の経済団体連合会は再稼働を要請しているが、自社を原発から遠く離れた場所に置きながら、「原発は安全だ」と称して再稼働を推進するのはエゴが過ぎる。そのため、「原発は安全だ」と主張する会社は、外部企業との関係が少ない本社管理部や経理部、工場を玄海町や薩摩川内市に移してもらいたい。玄海町(福岡市に近い)や薩摩川内市(鹿児島市に近い)及びその周辺にも住民は多くいるのであり、農林漁業を中心とする産業もある。そこに、いくつかの製造業が移転してくれば、そもそも玄海町や薩摩川内市は原発を再稼働する必要もなくなるし、現在は、原発を誘致した時代とは違って、どちらもちょっと手を入れれば便利な地域になる。 *5:http://qbiz.jp/article/37842/1/ (西日本新聞 2014年05月16日) 川内原発再稼働、9月以降か 申請書再提出は5月末に 九州電力は15日、川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働の前提となる審査で、原子力規制委員会から42カ所の記載漏れを指摘された申請書類の出し直し(再補正)が5月末になる見通しを示した。審査会合で九電の中村明上席執行役員は、これまで同月末に提出するとしていた工事計画などほかの申請書類の提出について「作業的に厳しくなり、6月にずれ込む」と述べた。この影響で審査終了は7月以降になり、地元了解を取り付けて再稼働するのは9月以降になる可能性が高まった。
| 原発::2014.5~8 | 02:54 PM | comments (x) | trackback (x) |
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