左のCATEGORIES欄の該当部分をクリックすると、カテゴリー毎に、広津もと子の見解を見ることができます。また、ARCHIVESの見たい月をクリックすると、その月のカレンダーが一番上に出てきますので、その日付をクリックすると、見たい日の記録が出てきます。ただし、投稿のなかった日付は、クリックすることができないようになっています。
2017,12,07, Thursday
財政 日本の2017、2018年度予算案 サウジアラビアの財政 (図の説明:一番左のグラフのように、国と地方の歳出は消費税増税を行っても税収を大きく上回り、税収と歳出の差額を公債で賄っているため、債務残高がうなぎ上りに増えている。そして、左から2番目の2017年度予算案を見ると社会保障費が最も多いが、社会保障は保険料で賄われているため、発生主義で積立金を積んでおけば、本来は税金投入が不要だったものである。また、左から3番目の図のように、2018年度予算案でも税外収入が少なく、税収と歳出との差額分が国債で賄われているため国債費が多いが、一番右のグラフのように、サウジアラビアは政府歳出が政府石油収入で賄われているため税がない。日本も多くの資産や資源を持っているため、本来は工夫次第で税外収入を増やせるにもかかわらず、政府が高いエネルギー価格の負担を国民に押し付け、社会保障を減らすことに専念しているのは、自らの責任を放棄して国民の生命線を切っているものであり、無能すぎるとともに憲法25条違反だ) 所得税増税案 社会保障費の推移と医療・介護の変更案 アジア諸国の人口ピラミッド (図の説明:政府は、一番左の図のように種々の増税に専念し、左から二番目・三番目の図のように医療・介護費用を削減のターゲットにしているが、病気は最初の診断がその後の治療成果を左右するため、最初こそ大病院でしっかり検査して治療方針を決めることが重要だ。それにもかかわらず、最初に大病院に行くのを難しくしたり、急性期病棟の報酬要件を厳しくしたりしているのは、変更内容に疑問が多い。また、今でも十分でない介護サービスをさらに削減すれば、国民の生命線を切ることになり、憲法25条違反である。なお、人口構成は、どの国も死亡率が下がった後で出生率が下がる形で変化するため、ピラミッド型からつぼ型への人口構成の変化が起こり、日本では1980年代にはその変化を見通すことができたし、現在の開発途上国でも同じことが起こる。しかし、日本政府はその準備を怠ったのだ。なお、人口構造が変われば需要構造が変わるのであり、高齢者割合が増えたから経済成長しないというメッセージは浅学すぎる) (1)国の杜撰な国有財産管理と無駄な歳出 1)国有財産の管理について *1-1の「森友学園」に対する国有地売却に関する土地評価額は、埋設されたごみの量が8億2千万円の値引きの根拠になっているが、証拠資料がないため妥当とは言い難い。しかし、財務省の管轄下に国税庁があり、国税庁は民間企業に対して譲渡資産の評価には正当な根拠とそれを立証する証拠資料の7年間の保存を求めているため、財務省が税務調査に対応できる程度の資料を揃えておくことは、技術的には簡単である上、国民の血税を使っている省庁として当然のことである。 従って、この契約に関する資料の一部が廃棄され、売却価格の妥当性が確認できなかったということは、その国有財産の売却価格(評価額)は適切でなかったという推測ができる。そのため、こういう場合に国税庁ならどう取り扱うかを、財務省は国税庁に聞いてみればよい。しかし、ここで問題なのは、国税庁も会計検査院と同じく、財務省に予算の配分をしてもらう立場であるため、完全な独立性はないことである。 そのため、*1-2のように、今更、「重要文書の保存期間を原則1年以上とする」などという新指針を出すのは馬鹿げているのだが、私は、安倍首相など特定の政治家をつぶすために、森友・加計問題のみをとりあげて追究する野党の姿勢には賛成しない。何故なら、このような国有財産の低廉譲渡は、年金資金や郵政資金で作られたホテルはじめ、多くの国有財産でこれまでも行われてきたことで、森友・加計だけが問題なのではなく、そういうことが起こる背景が問題だからである。 2)放置される国の膨大な無駄使い このほか、国の歳出には、*1-3の「原子力事業の環境整備」に代表されるような時代錯誤の支出も多い。これは、古くから既得権益を持っている相手に対する誤った配慮だが、債務保証であっても偶発債務を国が引き受けることになるので、国に膨大な支出をさせる可能性が高い。そのため、40年経っても民間で完結できないほどリスクが高いのなら、原子力事業はすっぱり止めるのが、国民負担が最も少なく、よほど安上がりなのである。 (2)国への公会計制度の導入の必要性 これらの国有財産の低廉譲渡や膨大な時代錯誤の支出を無くして賢く使えば、国民に痛みを強要せずに経済発展することは可能だ。しかし、国有財産の低廉譲渡や膨大な時代錯誤の支出は、思いつきでいくつか指摘すればすむようなスケールではなく、網羅性・検証可能性を担保する複式簿記による公会計制度を国に導入して、(民間では当たり前の)資産・負債、発生主義などの概念をすべての省庁に徹底させ、つぶさに行政評価する必要があるのだ。 何故なら、①固定資産の管理という意識がないため、各省庁は国有財産を低廉譲渡しない動機付けがなく ②価格交渉は「トラブルを起こす」として、むしろ嫌がり ③特定の政治家に媚びても、自らの省庁の政策を通す方が賢いことになり ④それによって国民に損をさせても、管理も公開もしていないのでうやむやにできる のが現状だからである。 私は1995年前後から公認会計士としてこのことについて指摘しており、2005~2009年の衆議院議員時代は予算委員会の分科会で、①網羅性・検証可能性のある複式簿記による公会計制度導入 ②それに基づいた行政評価 ③我が国の財政状態 等について質問形式で提言している。 しかし、国はなかなか重い腰を上げず、地方自治体が先に導入し、地方自治体は、現在、複式簿記・発生主義会計による公会計制度に移行しつつあり(http://www.soumu.go.jp/main_content/000379748.pdf#search=%27%E7%B7%8F%E5%8B%99%E7%9C%81+%E8%A4%87%E5%BC%8F%E7%B0%BF%E8%A8%98%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E5%85%AC%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%88%B6%E5%BA%A6%E5%B0%8E%E5%85%A5%E6%99%82%E6%9C%9F%27 参照)、公会計制度導入の必要性は、*1-4にも記載されているとおりだ。 従って、技術的には十分可能で、民間企業はどこでもやっていることであるため、国も速やかに複式簿記による公会計制度に移行すべきである。 (3)税と社会保障の一体改革(増税と社会保障削減のセット)では解決できないこと 1)森林環境税の新設 *2-1のように、森林環境税が2024年度から国に導入されるそうだが、森林環境税は地方税(県民税)として既に導入されている。これも、国がなかなか環境税を導入しなかったので、地方自治体が先に導入した税の一つだ。しかし、私は、国が森林環境税を導入するのは、人口が少なく森林の多い県だけでなく、人口が多いのに森林が少ない県からも税を集めて、全体の緑の割合に応じて支出できるメリットがあるため、前進だとは思っている。 しかし、国に公会計を導入して無駄使いされないことを保障できなければ、国民負担増と政府の放漫財政の規模が大きくなるだけであるため、複式簿記による公会計制度の導入とそれを前提とした使い方のチェックが必要不可欠である。そして、国が集めた森林環境税の配分方法には徹底した公正性と無駄遣いの排除が求められる。 なお、国が森林環境税を導入する時には地方税の森林環境税は廃止すべきであり、その時は、地方は国がまだ逡巡している環境税を導入すればよいと考える。 2)観光促進税の新設 *2-1には、2019年4月から日本を出国する全ての人から、「観光促進税」として1000円徴収することが記載されている。しかし、訪日客が急増すれば法人税・所得税が増える筈で、その増収分を観光インフラの整備に当てられるため、観光促進のために「観光促進税」を徴収する根拠は考えにくい。 つまり、国は、国有財産を低廉譲渡したり、稼げる資産で稼がなかったりしながら、くだらない歳出をしたい放題して、増税するという理念なき政策をやめるべきなのである。 3)所得税増税 *2-2-1のように、政府・与党は、サラリーマンの給与所得控除を一律10万円引き下げ、控除上限額も現在の「年収1000万円以上で年220万円」から「800万円以上で年190万円」に引き下げ、基礎控除は、現在の年38万円から年48万円に引き上げて、年収800万円超の会社員は増税とするそうだ。 しかし、物価が上昇している中で、「年収800~1000万円」は、転勤が多くて共働きができない上、都会の市場価格で住宅費を支払わなければならないサラリーマンにとって高給ではないし、配偶者控除の年間38万円や48万円で配偶者を養えるわけではない。そのため、私は、フランスのように、N分N乗方式(https://kotobank.jp/word/N%E5%88%86N%E4%B9%97%E6%96%B9%E5%BC%8F-183863 参照)を選択できるようにするのがよいと考える。 さらに、*2-2-2のように、政府の税制改正は、働き方の違いによる不公平や所得格差を是正するものだとしているが、子育てや介護世帯の負担が増えないようにすればさらに煩雑化して税法の理念である公正・中立・簡素から程遠くなり、増税になる人が会社員は全体の約5%、年金受給者は全体の約0.5%と少ないのなら増税の効果は小さい。また、ここで公務員を除くのも意味不明だ。 4)社会保障の削減 そのような中、「無駄遣いは、社会保障」とばかりに、*2-3のように、2018年度予算編成に向けて、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が、①医師の技術料 ②介護報酬 のマイナス改定等の歳出改革の提言を公表したそうだが、①②とも、もともと少なすぎることが問題になっている分野である。さらに、このブログの2017.1.5にも記載しているとおり、どれも働いている期間には保険料を支払ってきたものであるため、発生主義で引当金を積んでおけば、団塊の世代が退職し高齢化したからといってあわてる必要のないもので、すべての原因は厚労省・財務省の無知と無責任にあるのだ。 にもかかわらず、「低金利が続き借金の利払い費が伸びづらく、歳出改革への危機感は広がらない」などという社会保障の削減を目的とするような考え方は重大な問題であり、抜本的に改革すべきは各省庁とメディアの姿勢である。 また、地方自治体に複式簿記・発生主義会計による公会計制度が導入された現在では、国より地方自治体の方が本当の意味で効率的・効果的な予算編成ができる素地ができたため、地方に配る地方交付税を削減するのなら、消費税は全額地方税にするなどの税源移譲をした方がよいと考える。さらに、都道府県や市区町村が積み立てた基金の総額は21.5兆円と過去最高だなどとしているのは、発生主義による引当金・積立金の発想がないからなのである。 なお、*2-4のように、高齢になるほど改善が難しく自立できにくくなるため、高齢者自身のためにも家族の負担軽減のためにも、生活援助サービスは必要不可欠であり、介護サービスこそ本当の需要だ。それにもかかわらず、財務省は介護報酬を全体でマイナス改定するよう求めているが、それならば機器や薬剤の価格が他国と比較して高すぎることにメスを入れるべきで、診療報酬は他国に比べて低く、介護報酬は国内の他産業と比べても低いことを忘れてはならない。 <国の杜撰な財産管理と歳出> *1-1:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171122-00000074-asahi-soci (YAHOO、朝日新聞 2017/11/22) 地中のごみ量、最大7割減 森友問題、値引き根拠揺らぐ 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地の売却経緯を調べた会計検査院は22日、調査内容を国会に報告した。地中のごみの量について、国が売却契約時に推計の理由としたデータは根拠が不十分としたうえで、独自に試算した結果、最大で約7割減ることなどを指摘した。ごみの量は8億2千万円の値引きの根拠となっており、売却価格の妥当性があらためて揺らぐことになった。検査院は、契約に至るまでの資料の一部が廃棄されるなどで、価格決定の詳しい経緯が確認できなかったとも指摘した。国の財産処分が適切に行われたかどうかが検証できない状態で、「適正」と繰り返してきた政府の姿勢が厳しく問われることになる。問題の国有地は、2016年6月に学園側に売却された。鑑定価格は9億5600万円だったが、学園側が地中深くにごみがあると申告したことから、売却価格はごみの撤去費用として8億2千万円などを差し引き、1億3400万円とされた。こうした大幅な値引きのうえ、公開が原則の売却価格が非公表だったことなどから、契約の経緯が問題となっていた。今年3月に国会の要請を受けた検査院は、売却契約の窓口になった財務省近畿財務局や、土地を所有していた国土交通省大阪航空局などへの調査を実施。主に価格の決定経緯について調べを進めてきた。調査では、国が1万9520トンと認定した地中のごみの量は、推計の理由とされた混入率や深さに十分な根拠が確認できなかった。そこで検査院は混入率や深さを算定しなおし、ごみの量を独自に試算。その結果、少ない場合だと6196トン、多くなる場合でも1万3927トンとなり、国の推計を7~3割下回った。国は売却時、1トンあたり2万2500円の処分単価をごみの量に掛け合わせて処分費用を算出した。検査院はこの処分単価についても調べたが、どのような内訳で見積もられたのかを示す資料がなく、詳細な内容は確認できなかった。このため、適切な売却価格は示せなかった。また、学園側との具体的な交渉内容が確認できる資料などが廃棄されていたことから、検査院は「会計経理の妥当性の検証が十分に行えない」と指摘。検証ができないのは適切でないとして、行政文書の管理について改善を求めた。 ◇ 〈会計検査院〉国などの会計経理を監督する機関。憲法90条で設置が定められ、会計検査院法で「内閣に対し独立の地位を有する」とされている。国会は会計検査院に対し、特定のことについて調べて結果を報告するよう求めることができる。 *1-2:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/153217 (佐賀新聞 2017.11.27) 首相、公文書管理で新指針、森友、加計批判受け表明 安倍晋三首相は27日の衆院予算委員会で、学校法人「森友学園」と「加計学園」の問題で批判を受けた公文書管理を巡り「国民の信頼を一層高いものにするように、行政文書管理のガイドラインの改正を年内に行う」と表明した。公文書管理法の改正も検討する考えも示した。森友問題で文書管理の改善を求めた22日の会計検査院による報告も踏まえた対応。重要文書の保存期間を「原則1年以上」とすることで理解を得たい考えだ。首相は公文書管理のガイドラインに関し、各府省庁間で打ち合わせを行った際の記録作成と、相手方との相互確認などで文書内容の正確性を確保するよう義務付けると明言した。 *1-3:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171130/k10011241521000.html (NHK 2017年11月30日) 東京電力 原子力事業で国に環境整備を要請へ 東京電力は、原子力事業をほかの電力会社と共同で進めていくため、国に対し、債務保証などの事業の安定化に必要な環境整備を要請する考えを明らかにしました。東京電力は、福島第一原発の廃炉や賠償などに必要な費用の総額が21兆円余りに膨らむことを受けて、原子力事業のほか、送電や配電の事業を再編して収益力の向上を図る新しい事業計画を、ことし5月に策定しました。東京電力が30日に明らかにした計画の今後の進め方によりますと、原子力事業では、青森県で建設する予定の東通原発の事業をほかの電力会社や原子力関連のメーカーと共同で進めるため、具体的な協議に入るとしています。そのうえで、原子力事業は、電力小売りの自由化で長期的な採算が見通しにくくなっているとして、国に対し、債務保証などの事業の安定化に必要な環境整備を要請するとしています。また、送電や配電の事業では、ほかの会社と海外展開などで共同事業を進めるための協議に入るとともに、国に対して規制の見直しを求めていく考えです。会見した東京電力の文挾誠一副社長は「原子力事業はいろいろなリスクがあり、今後の予見性を高められる制度をお願いしたい」と述べました。 *1-4:http://sinwagroup.jp/wp/p-account/pa-corner/post99.html (新和会計グループ 2008年9月16日) 新和会計グループは企業と地域社会の発展に貢献していきます。 - 第01回 なぜいま公会計改革か 今回、地方公共団体における公会計制度の整備の推進により、すべての地方公共団体に、連結ベースでの新たな財務4表の作成、公表が求められていますが、この背景に、行政の役割の拡大に伴う行政の肥大化、地方債などストック化の進行があります。更には、今後、少子高齢化の進行が必至で右肩上がりを前提とした財政運営はできないという事情があります。今回の地方公会計整備は、複式簿記の技術ないしその考え方の導入と純資産変動計算書に特徴がありますが、それだけでなく、行財政運営の本質に迫るものを含んでおり、「公会計改革」といわれるゆえんでしょう。 1 なぜいま公会計改革なのか (1) 全体が見えない -ストック情報の欠如とフロー情報の不備 行政の決算は、公金の使途、収支を明確にすることを目的としており、減価償却や引当金なども含めた赤字・黒字や資産・負債・純資産の把握を目的としていないため、現在どうなっていて・これからどうなるのかの財務ポジションがつかめず、財政の全体の姿が見えません。更に、行政には、特別会計や企業会計、独立行政法人など複雑な仕組みがあり、国から地方への補助金等財源移転の仕組みもあるため、ますます分かりにくいものとなっています。増税が必要だとしても、これでは国民はいつも半信半疑になります。更には行政への不信や不安が拡がります。つまり、行政と住民との信頼を培う財政情報に不備があると見られます。年々の税収増が期待できる右肩上がりの時代には、これでも問題がなかったといえますが、既に基礎的収支もあやうく、長期債務が累増し、少子高齢化が必至の状況においては、これを補う必要があります。フロー、ストックの全体状況を分かりやすく示す新たな財務情報が必要です。これが第一の課題です。 (2) 将来計算ができない -マネジメント情報の不備 発生主義、複式簿記の大きな特徴は、フロー(損益)とストック(資産負債)が緊密な連絡を保って、体系をなしている点です。従って、民間企業においては、どれだけの設備投資をすればそれが将来どれだけのコスト圧力となり、将来どれくらいの建替え需要が生じるかの計算が可能で、いつでも将来貸借対照表、将来損益計算書、将来資金繰り計算書を計算することができます。しかし、行政の収支決算システムには、この仕組み・体系がありません。即ち、財政の将来計算の仕組みがないということです。これは将来に対する共通の認識を欠くことになります。これは少子高齢化が進行する中で、将来を図り、計画的に財政を運営する上で大きな課題となります。これが第2の課題です。 (3) 行政コストが捉えられない -コスト情報の欠如 しばしば「役所にはコスト意識がない」といわれますが、今日の収支決算システムにはむしろ「コスト意識を持つ仕組み」がありません。費用測定の仕組みが不完全であるために、全コスト(フルコスト)や将来にわたるコスト(ライフサイクルコスト)の把握が不完全なままで政策選択をすることになります。したがって、行政の効率化の観点からは、これを仕組みとして行政に埋め込む必要があります。これが第3の課題です。 2 行政は赤字か黒字か 役所の決算時期になると、今年は「○○円黒字」だったとか・「○○円赤字」だったとか報道されます。これは普通「実質収支」のことです。「形式収支」や「実質収支」が「○○円」赤字だとか・黒字だとかいう言い方もしますが、いずれも(収入-支出)で捉えた収支差額のことです。下記は、「会計君」の家計簿と役所の捉え方を対比して示したものです。会計君は収支がトントンでも毎年100万円の赤字になっていて、財産がそれだけ減っているのを認識しています。事態を正しく認識するために何が必要かはおのずと明らかです。発生主義会計を取り入れるとは、こういうことであり、財政運営の基本にかかわることです。 <増税と社会保障削減> *2-1:http://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/267228 (福井新聞論説 2017年12月3日) 二つの新税導入へ、国民の痛み感じているか 「用を節して人を愛す」とは2500年も前に孔子が説いた財政の眼目だ(「論語」)。政治に携わる者は、税金を元に仕事をしているのだから費用を節約し、人民の福利増進を図れというのである。外国人旅行者や日本人が出国する際に徴収する「観光促進税」が2019年4月から、また森林の間伐費用などを賄う「森林環境税」が24年度から、それぞれ導入される方向になった。恒久的な国税の新設は、土地バブル対策のため1992年に導入された「地価税」以来。孔子の金言は生かされるだろうか。 ■1人当たり千円■ 観光促進税は、航空機や船舶を問わず日本から出国する全ての人から1人当たり千円を徴収する内容だ。航空機利用ならチケット代に上乗せし、船舶の場合は実態を踏まえた徴収方法を採用するという。導入の背景には訪日客の急増がある。16年は2404万人と5年前に比べて3倍近くに増え、消費額も3兆7476億円で約3・5倍となった。国は東京五輪・パラリンピックの20年に4千万人、30年には6千万人の達成を目標に掲げている。そのためには観光インフラの整備など観光立国実現に向けた各種施策が必要になる。その財源として浮上したのが観光促進税である。使途には出入国手続きの迅速化や標識の多言語対応、地方の観光振興などを見込んでいる。一方の森林環境税は、二酸化炭素の削減や土砂災害防止を目的として、約6千万人が負担する個人住民税に1人当たり年間千円を上乗せして徴収する。森林面積などに応じて自治体に配分し、荒廃した森林の整備に充てる。 ■取りやすいところから■ どちらの新税導入も、理由はもっともである。だが、疑問や課題も少なくない。特に観光促進税である。「受益者負担」の原則から懸け離れていないかとの指摘は傾聴に値する。まず、出国する日本人には千円を負担するだけのメリットはあまりない。いまでもそれほど待たずに出入国できるし、まして標識の多言語化には関係ないからだ。そこで、税を負担する対象を外国人に限ることも検討されたようだが、各国と結ぶ租税条約などに「国籍無差別」の原則があるため立ち消えになった。結局、海外旅行を楽しむぐらいの経済力がある人たちだから許容範囲とみたのではないか。税金は取りやすいところから取る、という典型例だろう。もっとも、訪日外国人であっても全員に十分な利益があるわけではない。2割はビジネス目的だからで、税の投入で観光関連施設が整備されても負担に見合う受益はなさそうだ。 ■無駄遣いの恐れ■ 二つの税を導入すると、税収はどうなるか。16年の出国者は訪日外国人と日本人を合わせて約4千万人なので、観光促進税で約400億円。観光庁の17年度当初予算の2倍近くになる。もう一つの森林税は、個人住民税を支払っている約6千万人に千円を掛けて約600億円だ。いずれも特定の目的に使うだけに、税収を1年ごとに使い切ろうとして無駄遣いされる恐れがある。かつてのガソリン税がそうだった。道路整備のための財源だったのに、マッサージチェアの購入などに使われた。先日あった自民党の税制調査会では早速、二つの新税を巡って想定以上の使い道を求める声が上がった。「用を節して…」の金言とは無縁の様相である。現パナソニック創業者の松下幸之助にも政治家を戒める言葉がある。「税金を取るのは当然と考えるばかりか、増税することに痛みを感じない為政者は失格である」。安倍晋三政権はどうなのか。 *2-2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13259273.html (朝日新聞 2017年12月5日) 会社員増税、年収800万円超 政府・与党が最終調整 20年1月目標 所得税の見直しについて、政府・与党は、年収が800万円を超える会社員を増税とする案で最終調整に入った。2020年1月の実施をめざす。5日にも自民・公明両党の税制調査会の非公式幹部会に示し、与党内の議論を経て、14日にまとめる税制改正大綱に盛り込む。この案によると、会社員向けの給与所得控除を一律で10万円引き下げる。さらに控除額の上限もいまの「年収1千万円以上で年220万円」から「800万円以上で年190万円」に引き下げる。一方で、すべての納税者が受けられる基礎控除は、いまの年38万円から年48万円に引き上げる。この結果、年収800万円以下の人は、給与所得控除の縮小額と基礎控除の増加額が同じになり、増税にならない。年収800万円超から増税になり、900万円で年3万円、1千万円で年6万円の負担増となる。ただし、22歳以下の子どもや、体が不自由で介護が必要な人がいる世帯は増税にならないようにする。基礎控除は年収2千万円を大幅に上回る人から段階的に縮小し、2500万円超でゼロにする方向だ。年金受給者向けの「公的年金等控除」は、控除額を一律で10万円減らし、年金以外の収入が1千万円超の人は控除額をさらに減らす。年金収入が1千万円超の人や年金以外に年1千万円超の収入がある人は増税になる。今回の見直しによる増税対象者は給与所得者の5%程度で、全体で1千億円超の増税になる見込みだ。 ■給与所得控除と基礎控除の見直しによる負担増額 <給与収入> <負担増額> 800万円以下 なし 850万円 1.5万円 900万円 3万円 950万円 4.5万円 1000万円 6万円 1500万円 8.6万円 2000万円 8.6万円 3000万円 33.5万円 5000万円 36.9万円 (金額は年間ベース。3000万円以上は基礎控除の段階的縮小・廃止の影響を含む) *2-2-2:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/156333 (佐賀新聞 2017.12.6) 所得増税、会社員全体の5%、給与1千万円で6万円 政府が2018年度税制改正で検討する所得税の改革案が5日判明した。基礎控除と給与所得控除、年金控除を見直して、働き方の違いによる不公平や所得格差を是正。子育てや介護世帯の負担が増えないようにしつつ、年収800万円を超える会社員や高収入の年金受給者を増税、自営業やフリーで働く人らを減税とする。増税となるのは会社員で全体の約5%、年金受給者は20万人程度で全体の約0・5%と想定しており、20年1月からの実施を目指す。公務員を除く会社員全体の5%で単純計算すると200万人余りとなる。年間の増税額は年収1千万円の会社員で6万円となる見込みだ。 *2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171130&ng=DGKKZO24040570Z21C17A1EE8000 (日経新聞 2017.11.30) 歳出削減に政治の壁、社会保障・公共事業…財制審提言、改革迫る 2018年度予算編成に向け、財務省と各省庁が本格的な調整を始めた。財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が29日、歳出改革の提言を公表。医師の技術料などの診療報酬本体や介護報酬のマイナス改定などを求めたが、関係省庁や与党の族議員などの反発は強い。低金利が続き借金の利払い費が伸びづらく、歳出改革への危機感は広がらない。18年度の政府予算案は12月22日に閣議決定する見通しだ。財制審の提言を受け、財務省は各省庁との調整を急ぐ。財制審は各分野にわたり抜本的な改革を求めるが、関係省庁や与党の族議員の反発などで実現が見通せないものも多い。例えば高齢化で国の歳出が膨張する社会保障。財制審は診療報酬本体で「一定程度のマイナス」を求め、企業や個人の保険料負担の上昇を抑えるため介護報酬も引き下げを訴えている。だが自民党の厚労族議員はプラス改定を主張。安倍政権は日本医師会と距離が近く、本体はプラス改定との見方が政府内で大勢だ。財務省は報酬の抑制だけでなく、患者負担の引き上げなども訴える。代表的なのが所得の多い75歳以上の高齢者の窓口負担の引き上げだ。高齢者の反発を恐れる厚労族などから反発は強く、実現は見通せない。国が地方に配る地方交付税の削減も焦点だ。都道府県や市区町村が積み立てた基金の総額は21.5兆円と過去最高だ。財務省は交付税を減らしても自治体の財政運営は成り立つと考えているが、総務省の反発は大きい。教育分野では、政府・与党は全大学生を対象にした出世払い方式も中期的なテーマとして検討している。在学中は授業料を納めず卒業後に所得が一定水準以上の場合は授業料の相当額を後払いする仕組みだ。ただ、財制審は高所得者にも恩恵が及ぶ点や制度設計の難しさなどを理由に「導入は不適切」としている。与党内からは公共事業の上積みを求める声が強い。内閣府によると、7~9月期の国内総生産(GDP)速報値から試算した日本経済の需要と潜在的な供給力の差を示す「需給ギャップ」はプラスだ。すでに需要が供給を上回っている状態で追加需要を作っても経済への効果は限定的といえる。にもかかわらず、17年度補正予算案で公共事業関係費が膨らみそうだ。財政運営では、財制審は国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化の早期達成を求めた。政府は消費増税の使途変更により20年度の黒字化目標を事実上、断念した。財制審は「財政規律がこれまでにも増して強く問われている」と訴えるが、政府内には早期の黒字化目標の設定に慎重論がくすぶる。 ▼財政制度等審議会 予算編成や財政運営の基本的な方針について議論し財務相に提言を出す。現在の会長は経団連の榊原定征会長が務める。年末に建議を示し、政府の予算編成作業へ反映を目指す。財政再建を重視し、厳しい歳出改革を求めることもある。 *2-4:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20171126/KT171125ETI090012000.php (信濃毎日新聞 2017.11.26) あすへのとびら 社会保障をどう守る 一時しのぎは通用しない 一口に社会保障と言っても分野は幅広い。医療、介護、年金、失業手当、生活保護、児童や障害者への手当…。何らかの事情で日常の暮らしの維持が困難になった際、憲法に記された文化的生活を続けられるよう支えるのが社会保障である。この仕組みが機能不全に陥りつつある。高齢化が進んで医療や介護の費用は増大し、地域社会や家庭、雇用の環境の変化もあって、現役世代も重くなる負担を背負い切れなくなっている。来年は診療報酬と介護報酬を同時に改定する6年に1度の年。政府は支出を抑えようと躍起で、息苦しい調整が続く。これからますます、高齢化率は上がり、労働人口は減るというのに、一時しのぎを繰り返すしか手はないのだろうか。介護報酬を巡る議論を取り上げてみたい。貫かれているのは「自立」という考え方だ。例えば、厚生労働省は、介護が必要な高齢者の自立支援で成果を上げた事業所への報酬を増やす方針を示している。通所介護(デイサービス)で、リハビリ専門職と連携して身体機能の訓練を行う事業所には手厚くし、消極的な事業所は引き下げる。訪問介護でも、掃除や洗濯、調理を担う生活援助には短期で養成するヘルパーを充てて報酬を減らす。その分、現行のヘルパーによる身体介護は高くする。こんな案も浮上している。国が評価指標を用意し、高齢者の自立支援や要介護度の維持・改善に取り組み、実績を上げた市町村に新設の交付金を支給する―。いずれも、要介護度の重い人を減らすことで費用の抑制を狙う。 <不安を高める議論> 「高齢になるほど改善は難しくなる」「高齢者が家に閉じこもるのを防ぎ、家族の負担を軽くする役割は評価しないのか」「生活援助で気持ちに余裕が持てたのに、使えなくなると困ってしまう」。介護事業所の職員や利用者からはそんな声が聞かれる。財務省は、介護報酬を全体でマイナス改定するよう求めている。他の産業に比べ、給与が著しく低い介護職の待遇改善のため、この4月の臨時改定で報酬を引き上げたばかりだ。また減らすことになれば、人手不足に拍車を掛けることになりかねない。厚労省は今月、世帯ごとに発行している健康保険証の番号を個人ごとに割り当て、個々人が受診履歴や健康診断の結果を閲覧できるようにする、との方針を打ち出した。2019年度から発行を始めるとしている。国民の健康意識を高める目的というが、それだけか。いわば医療版「マイナンバー制度」で、健康に関する情報を国が一元管理することになる。プライバシーがさらされ、医療費抑制の名の下、健康増進への統制色が濃くならないか懸念される。暮らしの悩みを解消するはずの社会保障の議論が、国民の不安を高めているように感じられる。安倍晋三首相も、その不安を大きくした。社会保障制度の安定に使う計画だった消費税増税分を幼児教育の無償化に回すとし、衆院解散の理由にした。高齢者に偏っている社会保障を「全世代型」に転換することに異存はない。が、真っ先に着手すべきは幼児教育の無償化なのか、財源を消費税に求めるのが適当なのか。疑問の多い判断だ。年間の医療費は45兆円、介護費用は10兆円に上る。団塊の世代全員が75歳以上となる25年には、医療費は4割増え、介護費用は倍になると試算されている。サービスの効率化を図ることも大切だけれど、改定のたびに報酬を増減させ、利用者の負担割合を見直す対症療法で、超高齢社会を乗り切れるとは思えない。 <政治の責任は重く> 政治の責任は重い。国民に構想を示し、負担=痛みから逃げずに議論する。それは政治にしかできない。安倍首相、そして与野党にその覚悟はあるのか。一向に将来が見通せない状況に、国民は不安を感じている。人口減少だけではない。非正規雇用の割合が高まり、格差が広がって、社会保障を担ってきた中間層が疲弊している。地域や家庭で支え合う関係は薄れ、人々の社会的孤立が問題になっている。こうした現実を見据え、国民、政府、自治体、企業の役割と負担のあり方を見直すこと。地縁や血縁に代わる地域のセーフティーネットの拡充も求められる。首相が言う全世代型への転換も、全体像を欠いては説得力がない。自立した生活を望まない人はいない。それができなくなったときの支え合いとして、社会保障はある。原点を忘れず、時代に見合う仕組みの構築を急いでほしい。 <増税・社会保障削減・貧困と無駄遣いの負のスパイラル> PS(2017.12.8、2018年1月10、11日追加):*3-1のように、高校公民の教諭が「アクティブラーニング(主体的学習)」を学んだことは、民主主義国の主権者たる有権者を育てる上で重要だ。しかし、発展途上国の貧困を取り上げて、できる支援について話し合っただけなら、日本の主権者教育としては不足である。何故なら、日本にも貧困家庭は多いのが現実で、現状と政府の政策の妥当性を冷静な目で判断できる有権者が民主主義には必要だからだ。 一例は、*3-2のように、文系のエリートと思われる日経新聞記者が、病院が介護施設などの代わりをしている高知市の社会的入院の事例を「日本の未来」として取り上げているのだが、これは未来ではなく過去の話で、病院のベッドしか居場所のない可哀想な高齢者をなくすために、自宅療養を可能にする介護制度を設けたり、施設を個室にする政策を行ってきたからだ。つまり、介護を後退させれば、病院のベッドしか居場所のない高齢者がまた増えるにもかかわらず、虚実をごちゃまぜにした質の悪い記事を書き、財政悪化の懸念を言い立てるようなことをしているのである。しかし、*3-4のような数千億円規模の無駄遣いは枚挙にいとまがなく、この記者が国民に求める①「自助」「共助」の範囲 ②それを行う主体 ③その実行可能性 などを具体的に検討すれば、現在の「公助」は足りないくらいであり、少なからぬ人が現場の実態に基づかずに、論理性も実現可能性もない議論をしている不都合な真実がわかる筈である。 なお、*3-3のように、無年金の高齢者に対する生活保護費の見直しで、厚労省は「生活扶助」も引き下げる方向で検討に入ったそうだが、これも過去の年金制度・年金保険料の徴収法・年金積立金の管理に関する不備・不手際によるところが大きいため、憲法25条違反になるような生活を強いることのないようにすべきだ。 さらに、診療報酬のマイナス改定や物価上昇による人件費・材料費の上昇が続き、*3-5のように、公立病院は2016年度で約6割が赤字だそうだ。しかし、民間病院も含む病院の赤字は、私が衆議院議員をしていた2005~2009年頃には既に多数言われており、その状況が激しさを増したと思われるが、特に公立病院や拠点病院はその地域の人が先端医療にアクセスできるか否かを左右し命に関わるため、民営化して収益性の低い診療科を廃止したり、経験のないスタッフに変えたり、非正規労働者を増やしたりすればよいわけではない。つまり、一定地域内に経験と技量のある医師や必要な質・量を満たすスタッフを確保しておくことが必要で、合理化して経営改善しさえすればよいわけではないのである。そして、総務省が2017年末に病院改革の報告書で述べている地域医療の再編を促すネットワーク化は、市町村を超えて経験と技量のある医師やスタッフを確保し、どこに住んでいても30分以内でどの科の先端医療にもアクセスできる状況を最低のコストで実現するために私が提唱して佐賀県では既に終わっているものだが、これだけ病院や医師を標的にした診療報酬のマイナス改定、物価上昇による人件費・材料費の上昇、消費税増税が続けば、その効果もかき消されただろうと考えている次第だ。 このように、国民の命綱になっている社会保障を1千億円単位で節約しながら、*3-6のように、民間企業である日立製作所が英国で進める原発事業に日本が融資する1兆1千億円分に日本政府が保証(=偶発債務)をつけ、原発事業のリスクを肩代わりするそうだが、原発は、今でも安くて安全なエネルギーという触れ込みなのである。これは、第二次世界大戦の際に、先進国は戦闘機の時代に入っていたにもかかわらず、日本軍は巨艦主義の過去から脱せず、理論的・科学的思考を排して精神論で闘い、国民を犠牲にして敗戦したのと酷似している。従って、ここは、民間企業が脱原発を決意するのが賢明だろう。 厚労省の生活保護実態調査 2017.12.8日経新聞(*3-2より) (図の説明:現在、社会的入院をしたり、施設に入ったり、介護を受けたりしている高齢者は、右の写真のように孫の世話ができるお爺さん・お婆さんではなく、自分のこともできなくなったひいお爺さん・ひいお婆さんの年代であるため、*3-2の写真は現実とは異なる。つまり、自助ができず、共助にも負担がかかるようになった人を、公的にサポートしているのだ) *3-1:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/157328 (佐賀新聞 2017.12.8) 高校公民教諭が主体的学習事例学ぶ、7日、佐賀北高で研修会 次期学習指導要領に盛り込まれた「アクティブラーニング(AL)」をテーマにした高校教諭向けの研修会が7日、佐賀市の佐賀北高で開かれた。新設される公民の必修科目「公共」や主権者教育での活用が期待されるALの実践事例を学んだ。島根県立大客員研究員で、秋田県内の高校で教える市川聖教諭が、発展途上国の貧困を取り上げた授業を報告した。映像も活用して途上国の現状を詳しく学んだ後、自分たちにできる支援について話し合い、それぞれが意見を発表することで理解を深めた。市川教諭は「途上国について知りたいという探求心が芽生えてきた」と成果を語った。指導要領は、ALを「主体的・対話的で深い学び」と位置付けて授業改善を求めている。公開授業を行った春田久美子弁護士も交えたパネル討論で、市川教諭は「普段の授業から、クラスの生徒全員に質問して対話に務めている」と紹介した。主権者教育に関しては「公民科の教員にとどまらず、学校全体で取り組むことが必要」と課題を指摘した。県高校公民部会が主催し、約30人が参加した。 *3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171208&ng=DGKKZO24396610X01C17A2MM8000 (日経新聞 2017.12.8) 2030年への責任(4)不都合な現実 今こそ直視 痛みは分かち合うもの 日本の未来を探るため、取材班がこだわってきた地域がある。人口当たりの病院や病床数、医療費が常に上位に入る高知市。街を歩いて病院やクリニックの看板を数えるとすぐ両手に余る。「病院が介護施設などの代わりをしていた」と岡崎誠也市長。高齢化が全国平均の10年先を行くのに、介護で済む人を入院させていれば、医療費がどんどん膨らむのは自明だ。 ●病院に変化も 高知の手ぬるい医療財政が破綻を免れるのは、公的保険という大きな器の一部にすぎないからだ。だが足元で変化が始まっている。「病院は機能の向上を求められるようになった。さもなくば淘汰だ」。JR高知駅前に病院を展開する近森会の近森正幸理事長は神妙に語った。医療保険の配分ルールがじわりと厳しくなり、治療の必要の乏しい長期入院は認められにくくなった。業態転換を余儀なくされる病院があり、退院を促される高齢者がいる。許されていた甘えが少しずつ通用しなくなってきた。では、いまの高知のように日本全体で3人に1人が高齢者になると何が起きるのか。団塊の世代が80代になる2030年の試算が衝撃を告げる。年金や医療、介護の隠れた債務はおよそ2000兆円。国が抱える1000兆円の借金の2倍もの負担が将来世代にのしかかる。人類が経験したことのない状況を迎える。厳しい未来予想図を前に、私たちはいまどうすべきだろう。取材班はヒントを求めてこの1年以上、現場を歩いてきた。話を聞いたのは有識者から公務員、年金受給者や高校生まで延べ数百人。ほとんどの人たちと「このままでは持たない」という思いを共有した。 ●刻々と財政悪化 いま必要なのは世代や立場を超えた痛みの分担だ。公的サービスである「公助」の領域が小さくなり、不便を感じる人も出てくるはずだ。そのぶん皆が自己責任の「自助」に努め、周囲が手を差し伸べ合う「共助」を広げる。地道な取り組みが求められている。ところが目の前の政治には厳しい未来への責任が感じられない。高齢者に偏る社会保障を全世代に広げるという掛け声で進むのは保育所や幼稚園の無償化。2兆円もの税金を使って公的サービスの範囲を広げる。03~04年に厚生労働次官を務めた大塚義治氏が今日と似た風景に接したのは若手官僚だった1970年代。老人医療費が無料化された。「医療費が大爆発し、財政が大変なことになった。30年余りの仕事の大部分は高齢化対策だった」。退官から13年、財政はいまも刻々と厳しさを増す。医療と介護、生活保護や福祉。安心網の柱をなす諸制度が2018年春から同時に改まる。一斉点検は30年に1度しか来ない。不都合な現実から目をそらさず、厳しい選択に向き合う。私たち一人ひとりがそう思うところから始めるしかない。 *3-3:http://qbiz.jp/article/124190/1/ (西日本新聞 2017年12月8日) 貧困高齢者の暮らし窮迫 食費切り詰め「もう追い込まないで」 生活保護引き下げ検討 5年に1度の生活保護費見直しで、厚生労働省は一部世帯について、食費や光熱費などに充てる「生活扶助」を引き下げる方向で検討に入った。受給世帯の過半数を占める65歳以上の高齢者では、単身世帯の多くが対象になる見通しだ。社会保障費を抑制したい国の思惑が透けるが、現状でも切り詰めた生活を送る高齢者らは「これ以上、追い込まないで」と訴える。スーパーで半額になったヒレカツ190円、キャベツの千切り58円、まとめて炊いておいた白米とみそ汁−。東京都大田区の都営住宅に住む浜井清見さん(79)のある日の夕食だ。「外食は一切しない。お金がもたない」。多めに買った牛スジを大根とコンニャクと煮て、3日間しのぐこともある。9年前に妻を亡くし、現在は1人暮らし。中学卒業後、配管工として働いてきたが年金に加入せず、貯金は脳梗塞で倒れた妻の医療費で底を突いた。5年ほど前までは水道工事などで生計を立てていたが、体力的に厳しくなって無職に。やむなく生活保護を申請した。毎月7万5千円弱の生活扶助が支給されるが、光熱水費や電話代、新聞代で月3万円は消える。食費はやりくりしても2万〜3万円。消耗品などを買えば数百円残るかどうかで、常にぎりぎりの生活だ。おととし広島県に住む母親が亡くなったが、役所に頼んでも交通費の支給が認められず駆けつけられなかった。さまざまなことを制限される老後の日々。「千円減るだけでも大きな差だよ」と、さらなる引き下げに不安を募らせる。各地で訴訟も。生活保護の受給世帯は今年9月時点で約164万世帯を超え、20年間で約2・7倍となった。このうち1人暮らしの65歳以上の高齢者が48%と大半を占める。年齢や病気で就労が困難な人のほか、浜井さんのような「無年金」や、保険料の納付期間が足りず満額を受け取れない「低年金」の人の増加が背景にある。生活保護費は国と自治体が全額公費で賄い、国費分だけでも約3兆円(2018年度予算概算要求)に上る。このため、支給基準の抑制圧力は年々強まっている。前回の13年度改定では生活扶助が世帯平均で6・5%減額された。憲法が保障する最低限度の生活を維持できないとして各地で違憲訴訟も起きている。負のスパイラル。今回の引き下げの根拠は、生活保護を受給していない低所得世帯の消費支出に比べ、受給水準が上回るとの調査結果に基づく。だが、そもそも生活保護が必要な人のうち、約2割しか実際には受給していないという専門家の指摘もあり、実態を反映していない恐れがある。元厚生官僚で生活保護制度に詳しい尾藤広喜弁護士は「年金の支給水準も下がり、下流老人、老後破産といった言葉に象徴されるように、高齢者の生活は全体的に窮迫している。生活扶助を引き下げるのは負のスパイラルで、受給者の生活が破壊される」と指摘。「『最低限度の生活』とは何かという議論を無視し、最初から引き下げの結論ありきで、政府が誘導しているとしか思えない」と話している。 *3-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171207&ng=DGKKZO24330990W7A201C1EE8000 (日経新聞 2017.12.7) もんじゅ廃炉、30年で 原子力機構が計画提出 費用3750億円、上振れ必至 日本原子力研究開発機構は6日、原子力規制委員会に高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の廃炉計画を提出した。2018年度に着手し47年度までに廃炉を終えるとしている。費用は3750億円を見込むが、国内では高速炉の廃炉経験はなく技術も確立していない。放射性廃棄物の取り出し後の処分場も決まっておらず、今後費用の上振れは必至だ。原子力機構が6日に提出した計画では22年度末までに核燃料の取り出しを終える。最大の難関は原子炉内のナトリウムの取り出しだが、今回の計画では具体的な時期の明記は見送った。ナトリウムは水や空気に触れると爆発する恐れがあるため取り扱いが難しい。原子力機構の伊藤肇理事は「コスト面でもできる限り削減を検討する」と話すが、今後の技術開発には大きなコストがかかる。また福井県の外に搬出するとする核燃料やナトリウムの取り出し後の処分場も決まっていない。今後、原子力機構などが選定作業に着手するが、ナトリウム処理と同様に費用が上振れする要因になりそうだ。核燃料サイクル施設関連では、同じ原子力機構が持つ東海再処理施設は廃止費用が70年で1兆円に上ることを明らかにしている。 *3-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180109&ng=DGKKZO25434510Y8A100C1NN1000 (日経新聞 2018.1.9) 公立病院、6割が赤字 16年度、材料・人件費重荷 総務省がまとめた2016年度の公立病院の経営状況によると、経常収支が赤字の病院は全体の61.7%だった。比率は6年連続の増加で、8年ぶりに6割を超えた。人件費や材料費の上昇、診療報酬のマイナス改定などが響いている。病院数は15年度比で1.5%減の873と過去最少だった。同省の調査研究会報告書によると、独立行政法人を含めた公立病院の経常損益は831億円の赤字。15年度は542億円の赤字で赤字幅は1.5倍に拡大した。人手不足や、機材・材料費の高騰が経営を圧迫している。ただ公立病院の多くは地方のへき地など過疎地域の医療体制の維持には不可欠だ。全国の病院のうち公立病院数は11%にとどまるが、へき地医療の拠点病院に限れば62%を占める。地方では医師不足も問題で、赤字比率が高止まりすれば地域医療の維持も難しくなる。総務省は17年末に病院改革に向けた報告書をまとめ、地域医療の再編を促すネットワーク化の推進や外部人材の活用などで経営改善を目指すことなどを提言した。 *3-6:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13307475.html (朝日新聞 2018年1月11日) 日立製作所が英国で進める原発事業をめぐり、日英両政府が官民で総額約3兆円を投融資する資金枠組みについて大筋で合意したことが分かった。出資額4500億円のうち、日立の出資は3分の1にとどめ、日英で折半する融資額2兆2千億円の日本分には政府保証をつけるなど、異例の手厚い政府支援で原発事業のリスクを肩代わりする。ただ、事業で損失が出れば国民負担につながりかねない。複数の関係者によると、両国政府は昨年末、今回の枠組みについて書簡を交わして確認した。対象となるのは日立が英西部アングルシー島で計画する原発2基の事業で、2020年代半ばの運転開始をめざす。日立は12年、英国の原子力事業会社ホライズン社をドイツの電力会社から約900億円で買収したが、今回の枠組みはこのホライズン社の事業への投融資が柱だ。出資額は日立と日立以外の日本側、英国側の3者が1500億円ずつで、日本側の出資は政府系の日本政策投資銀行や大手電力会社などが想定されている。1兆1千億円にのぼる日本側の融資の主体は政府系の国際協力銀行や3メガバンクが見込まれる。政府系の日本貿易保険が融資の全額を保証する方向で検討している。先進国向けの貿易保険で全額保証は異例だ。日立は事業を進めるかどうかの最終判断を20年夏にする方針だ。その判断基準として挙げているのが、ホライズン社への出資比率を現在の100%から50%未満まで下げることだ。東芝が米国の原発事業で行き詰まり、経営危機に陥った事態を踏まえ、事業を日立本体の連結対象から切り離すためだ。枠組み通りに進めば、日立の出資比率は33・3%になる計算だ。一方、安倍政権は原発や新幹線技術などのインフラ輸出を成長戦略の柱に掲げる。とりわけ日立の英事業は「先進国で原発が成立するかしないかの最大の試金石」(経済産業省幹部)と位置づけ、英政府と支援策を交渉してきた。国内で原発の新増設が見通せない中、海外で実績を重ね、人材や技術を維持する思惑もある。とはいえ、東京電力福島第一原発事故以降、先進国では原発の建設コストが高騰している。日立の英事業も当初の総事業費は「1・5兆~2兆円」とされたが、為替変動などもあって3兆円に膨らんだ。英国政府はこの原発で発電される電気の買い取り価格をまだ決めていない。日本の大手電力は出資に応じるかも決めておらず、事業の先行きは不透明さをはらむ。 <生産性が低くて無駄遣いの多いのが日本の役所> PS(2017年12月9、24日追加):*4-1のように、11月末に北海道松前町沖で見つかり、函館港沖に曳航されて海上で巡視船に横付けされていた北朝鮮の木造船が、12月8日、事情聴取していた警察官が巡視船に引き揚げた後にエンジンを動かして巡視船から離れ、海上保安本部が元の位置へ戻したそうだが、粗末な木造船に8人も乗せたまま10日以上も海上においているような①日本の警察の仕事の遅さと判断の悪さ ②10日以上も一つの舟に横付けしている巡視船の暇さ(ほかにも仕事はあるのに・・) ③人権意識の低さ に呆れた。北朝鮮船は松前小島に一時接岸し、島から家電などが無くなったそうだが、乗組員と船を陸に上げて調べればよい。 一方で、*4-2のように、北朝鮮の拉致問題は蓮池さんたちが帰国してから15年経っても1mmも進んでおらず、選挙には利用するが解決する気は無いように見え、そのようなことを訴え続けたい人はいないのに時間ばかりかけて、引き裂かれた人々の台無しにされた人生や人権には思いをいたしていないように思われる。 さらに、尖閣諸島については、*4-3のように、最近は尖閣諸島付近の領海周辺への中国船侵入が恒常化しているのに、巡視船が警告するだけで報道が少なくなった。そこで、*4-4のように、沖縄県石垣市の中山義隆市長が同諸島の地名を「石垣市尖閣」とする議案を12月の市議会に提出し可決される見通しだそうだが、「石垣市尖閣」の後は、一年間も議論しなくても、久場島、大正島、魚釣島などの各島名にすればわかりやすいのではないだろうか。 また、*4-5のように、中国は東シナ海でガス田の開発をしており、大人口を抱える中国の第一の目的は明らかに資源獲得で、日中中間線の中国側にガス田の“構造物群”を作っているので、中国の程駐日大使が「中間線から西は双方の意見に食い違いがない海域で、日本から異を唱えられる余地は全くない」と発言したのは正しい。つまり、日中中間線から西側は中国の裁量下にあり、*4-6の菅官房長官の「指摘はまったく当たらない」という反論の方が間違っているのだ。なお、日本政府の言う東シナ海の資源開発に関する2008年6月の日中合意はあるが、日本側には共同開発する気配も意欲もないため、いつまでもは待たないのが世界常識である。そして、税外収入を得るのではなく、くだらない予算を分捕ったり、資源を外国から輸入したりすることしか考えていない日本の経産省が、将来を展望しておらず、情けないのだ。 結論として、最も生産性が低いのは役所であるため、ここが大量の資金を使うと役に立つ投資への資金投入や経済成長が小さくなるわけである。 なお、*4-7のように沖永良部島沖海底で金・銀・鉛などの鉱物を含む海底熱水鉱床を新たに見つけたのは頑張った成果であり、希少金属(レアメタル)も含んでいるのは有望だが、レアメタルの存在が明らかになっても採掘技術の開発を急がず、2020年代半ばまで事業を開始しない真剣みのなさと生産性の低さが日本の役所の問題点だ。そして、排他的経済水域内の海底は国有財産であるため税外収入を得られる筈だが、採掘権も無料で民間企業に譲ってしまうのが、ビジョンなき日本政府の特徴なのである。 北朝鮮の木造船と日本の巡視船 拉致被害者家族 日中中間線付近のガス田開発 *4-1:http://www.sankei.com/photo/story/news/171208/sty1712080011-n1.html (産経新聞 2017.12.8) 北朝鮮木造船、かじ故障しているのに逃亡? 松前小島の被害額800万円 北海道松前町沖で11月末に見つかり、函館港沖にえい航されて巡視船に横付けされていた北朝鮮の木造船が8日午後3時25分ごろ、男性乗員10人のうち8人が乗った状態でエンジンを始動し巡視船から離れた。第1管区海上保安本部(小樽)によると、船につながれたロープが外れており、別の船艇が再びロープをつないで停止させ、約2時間半後に元の位置へ戻した。逃亡を図ったとみて経緯を調べている。北朝鮮船は、松前町の無人島、松前小島に一時接岸していた。島から家電などが無くなり、道警は窃盗の疑いで乗員全員から任意で事情聴取。松前さくら漁協は8日、避難小屋の発電機やボイラーも壊されて被害総額が800万円近くに上ることを明らかにした。 ●突然前進 捜査関係者によると、木造船の前部と後部が巡視船とロープでつながっていた。事情聴取していた道警の警察官が巡視船に引き揚げた直後、突然前進を始めたという。木造船のかじは故障しているが、エンジンに問題はなく、動きだした際は8人が木造船にいた。 *4-2:https://mainichi.jp/articles/20171013/ddm/041/040/074000c (毎日新聞 2017年10月13日) 北朝鮮・拉致問題:北朝鮮から帰国15年 解決一刻も早く 蓮池さん「拉致は夢と絆奪う」 北朝鮮による拉致被害者5人が帰国して、15日で15年になるのを前に、被害者の一人、蓮池薫さん(60)が新潟県柏崎市内で毎日新聞のインタビューに応じた。蓮池さんは「私や家族にとって、かけがえのない15年だった」と振り返った。その一方で「被害者家族の高齢化が進んでいる。秒読みとも言っていいような切迫した問題」と今も故郷の地を踏めずにいる被害者の早期帰国を訴えた。「帰国してからの15年間は自分の意思で人生を自由に切り開いていけた日々だった。北朝鮮にいた24年間とは対照的な時間で、それは私の子どもたちにも言えることだと思う」。蓮池さんは中央大学法学部に在学中だった1978年7月31日、当時交際していた妻祐木子さん(61)と新潟県柏崎市の海岸で拉致された。北朝鮮では日本の出版物を翻訳する仕事を命じられ、招待所と呼ばれる施設での生活を強いられた。「帰国したいという思いはあったが、考えてもつらくなるだけだったから、ずっと抑え込んできた」と振り返る。風穴が開いたのは、2002年9月の日朝首脳会談だった。北朝鮮は日本人の拉致を認め、翌10月に蓮池夫妻、地村保志さん(62)、富貴恵さん(62)夫妻、曽我ひとみさん(58)の5人が帰国を果たした。「故郷に帰った瞬間、抑え込んできた気持ちがあふれ出した」。蓮池さんは北朝鮮には戻らない、という決断を下す。しかし、北朝鮮に長女(35)と長男(32)を残したままだった。家族が離ればなれになることに祐木子さんは猛反対したが、「自分で人生を選ぶ生き方は北朝鮮ではできない。リスクはあるかもしれないが、政府を信じ、日本で子どもたちの帰国を待つべきだ」と考えたという。子どもたちの帰国は1年半後に実現した。蓮池さんは柏崎市役所に臨時職員として勤めながら、一家4人での生活を取り戻した。それでも、気持ちは落ち着かなかった。「自分の人生の『居場所』が見つけられなかった」ためだ。「拉致される前は法学を勉強していたが、今から学び直して、法律で生きていくことはできない」。自分に何ができるかを模索していた時、知人から韓国の書籍の翻訳の仕事を紹介された。周囲の協力もあって05年5月に出版にこぎ着けた。「あの国の言葉を武器に生きていく」--。翻訳という仕事が蓮池さんが見いだした「居場所」だった。沈黙を守っていた拉致問題に対し、声を上げるようになったのもそのころからだ。「日本政府は核・ミサイル問題を解決するために独自の寄与をしつつ、日朝交渉では拉致問題を最優先にすべきだ」「全てが解決すれば国交正常化交渉の開始などを盛り込んだ平壌宣言の履行という『未来』を示すことも必要だろう」。今では、新潟産業大で准教授を務める傍ら、各地の講演などで政府への提言もする。「帰ってきた喜び、生きがいが大きいからこそ、他の人が帰って来られない状況がもどかしい」。蓮池さんは「人生には夢と絆が必要だ」と語る。夢とは自由に人生を生きる選択肢を持つことであり、絆とは家族とのつながりだという。二つを引き裂いたのが、拉致事件だ。「拉致問題は被害者が帰ってきて終わりではない。その後に夢と絆を取り戻すには、時間が必要になる。だから、一刻も早く解決しなければいけないのです」。蓮池さんはそう訴え続ける。 ■北朝鮮による拉致事件 1970~80年代に日本人が不自然な形で、相次いで行方不明になった。北朝鮮の工作員らの関与が指摘され、2002年の日朝首脳会談で北朝鮮は日本人の拉致を認め、謝罪した。日本政府が認定した被害者17人のうち蓮池薫さんら5人が同年に帰国。しかし、北朝鮮は横田めぐみさん(行方不明時13歳)や有本恵子さん(同23歳)ら8人については「死亡」と主張、松本京子さん(同29歳)ら4人は「未入国」としている。 *4-3:https://mainichi.jp/articles/20170925/ddg/041/010/006000c (毎日新聞 2017年9月25日) 沖縄・尖閣諸島:中国船4隻、領海周辺に侵入 25日午前10時10分ごろから、沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に中国海警局の船4隻が相次いで侵入した。中国当局の船が尖閣周辺で領海侵入したのは21日以来で、今年24日目。第11管区海上保安本部(那覇市)によると、1隻は機関砲のようなものを搭載。領海から出るよう巡視船が警告した。 *4-4:https://mainichi.jp/articles/20170922/ddp/041/010/034000c (毎日新聞 2017年9月22日) 沖縄・尖閣諸島:地名「石垣市尖閣」に 市長が変更案提出へ 尖閣諸島を行政区に抱える沖縄県石垣市の中山義隆市長は、同諸島の字を変更し地名を「石垣市尖閣」とする議案を市議会12月定例会に提出する方針を示した。同市が明らかにした。賛成多数で可決される見通しという。現在の尖閣諸島の地名は「石垣市登野城(とのしろ)」。中山氏は開会中の市議会9月定例会で19日、「住所に『尖閣』の文言を入れ込むため、どのような字名を付ければいいか内部で検討している」とし、字を「尖閣」とする意向を表明。その上で「12月議会には必ず(議案を)上程し、住所として『尖閣』の言葉が入るようにしたい」と明言した。市の担当者は「住所を見ただけで、その場所が尖閣諸島だと分かるようになる」と話した。尖閣諸島の字の変更は、昨年から市議会で議論されていた。 *4-5:http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/223968.html (NHK 2015年7月29日) 時論公論 「東シナ海 中国のガス田開発の狙いは何か?」 東シナ海の「日中中間線」付近で、中国がガス田開発の構造物の建設を着々と進めていることが明らかになりました。そこには、エネルギー資源の獲得だけではない、したたかな中国の戦略が垣間見えるように思います。今夜は、ガス田開発をやめようとしない中国の狙いと日本政府の対応について考えます。 ■(ガス田構造物群) 政府の発表によりますと、中国が建設した洋上の構造物は、日本が東シナ海の境界線にすべきだと主張している「日中中間線」のすぐ西側に集中しています。あわせて16基が確認されていて、この2年間だけで12基も増えました。 ■(日中中間線とは?) はじめに、「日中中間線」とはどういうものなのか整理しておきましょう。 そこで日本が提案したのがこの「中間線」です。地理的に中間にある線を境界線にするべきだとの主張でしたが、中国はこれを受け入れず、200海里よりもさらに深く日本側に入り込んだ「沖縄トラフ」が境界線だと主張しています。そして中間線ぎりぎりのこの位置にガス田の“構造物群”をつくってきました。 ■(日中中間線付近のガス田問題の経緯) 日中はかつて、中間線付近でのガス田開発で合意に達したことがあります。中国が2004年、中間線のすぐそばで「白樺」と呼ばれるガス田の施設の建設を始めたことがきっかけで問題化しました。その後、協議の末、2008年6月、白樺ガス田を共同開発することなどで合意しました。境界が確定するまでは互いに協力するなどとした合意で、日本が提案していた中間線の考えを中国側も尊重したものと受け止められていました。ところが、同じ年の12月、中国の法執行機関の船が尖閣諸島の日本の領海に初めて侵入。さらに2010年、尖閣諸島沖合で、中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突する事件も起きて、以来、交渉は中断したままになっています。 ■(損なわれる日本の海洋権益) 中国側の構造物は、中間線からはみ出してはいませんが、ここで重要な点は、日本は「中間線」を提案してはいるものの、境界が画定されていない以上、200カイリまでの海域の権益を放棄したわけではないという点です。ところが今回確認された構造物のほとんどは、この係争海域につくられていて、中国の一方的なガス田開発によって日本の権利は損なわれている状態です。 ■(16基のガス田構造物の現状) 今回撮影された14枚の写真を見ると、多くの構造物は海底にのびる細い「掘削用のパイプ」が確認でき、このうち5基の構造物からは、ガスを生産する際に発生する炎が噴き出しているのが見えます。先月、存在が確認されたばかりの土台だけの構造物もあり、この海域でガス田開発をさらに拡大させていく姿勢をうかがわせています。 ■(中国ガス田開発の狙い) さて、中国が中間線付近でガス田の開発を続ける狙いはどこにあるのでしょうか。指摘されているのは、主に次の3つです。1つは文字通り「エネルギー資源の確保」、「軍事目的の利用」、そして、「海洋権益の拡大」です。ひとつずつ見ていきます。 ■(エネルギー資源の確保か) エネルギー資源の確保は、急速な経済発展で需要が増している中国にとっては喫緊の課題です。実際、中間線付近のガス田の一部からは中国本土に天然ガスが送られ、上海で消費されているといわれています。中国では、エネルギー資源のおよそ60%余りを石炭に依存しています。石炭は、深刻な大気汚染の原因になっているため、中国政府は、その比率を減らし、天然ガスや石油を増やしていこうとしています。しかし、石油や天然ガスは、多くを輸入に頼っていて、特に石油を運ぶ中東からの海上輸送ルートはアメリカ海軍の影響力が大きく、中国としてはこのルートを使わずに済む中国近海でのエネルギー資源の開発を目指しています。中国が東シナ海と南シナ海の海底資源に強い関心を持つのはこのためです。しかし、これまでのところ、中国が期待する大規模なガス田の存在は確認されていません。 ■(軍事目的の利用か) 一方、防衛省は、「軍事目的」に使われる可能性を指摘しています。例えば、ヘリコプターや無人機の洋上の基地となることです。また、軍事専門家は、レーダーが設置されるかどうかに注目しています。現在、東シナ海に中国軍機の飛行を支援するレーダー施設はなく、ガス田の構造物に航空管制レーダーが設置されれば、中国空軍の行動半径は大きく広がることになるからです。 ■(狙いは「海洋権益の拡大」か) そして、政府関係者や多くの専門家がこぞって指摘するのは、中国の真の狙いは「海洋権益の拡大」だというものです。 (中略) ■(日本の対応は?) さて、こうした中国の海洋権益の拡大の動きに対して日本政府は、どのように対応してきたでしょうか。中国による構造物建設の状況を、上空からの監視飛行によってつぶさに把握する一方、先週までその詳細を公表してきませんでした。公表に踏み切ったことについて菅官房長官は「中国の開発行為が一向に止まらないことや、中国の一方的な現状変更に関する内外の関心が高まっていることなどを総合的に判断して公表した」と説明しました。中国と交渉を進める上で様々な「外交的配慮」が必要だったにせよ、中国の海洋進出の実態を世界に発信して、国際的な世論を味方につけ、中国と交渉するという手段もあった筈だと批判する声もあります。また、安全保障法制の国会での議論を有利に進めるためにこのタイミングで公表したとのではないかと訝る声もあります。一方、中国の程永華駐日大使は、「中間線から西の部分は双方の意見に食い違いがない海域で、日本から異を唱えられる余地は全くない」と発言しました。私には、「東シナ海の半分はすでに裁量のもとにある」と言っているかのように、聞こえました。この問題をめぐって中国は話し合いを続ける立場を示しています。日本としては、中間線付近では互いに協力することで一致した「2008年の合意」に戻るよう求め、対話による解決の糸口を探っていく方針です。中国による既成事実化と現状変更の試みに対して、今後、効果的な手段をどのように繰り出していけるのか、日本の外交力が問われています。 *4-6:https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS23H0E_T20C15A7EAF000/ (日経新聞 2015/7/23) 官房長官、中国の非難に反論 東シナ海ガス田写真で 菅義偉官房長官は23日午前の記者会見で、中国による東シナ海のガス田開発の写真公開をめぐって、中国外務省が主権の範囲内だと非難したことについて「指摘はまったく当たらない」と反論した。日本政府として一方的な開発行為の中止や、東シナ海の資源開発に関する2008年6月の日中合意に基づく協議再開を中国に求めていると強調。「中国側が日本側の呼びかけに応じて建設的に問題を解決するよう期待したい」と語った。 *4-7:http://qbiz.jp/article/125146/1/ (西日本新聞 2017年12月24日) 沖永良部沖に海底鉱床 金多く含み希少金属も 鹿児島県・沖永良部島沖の海底で金や銀、鉛などの鉱物を含む海底熱水鉱床が新たに見つかった。調査、発見した独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は「国内の他の海底鉱床より金、銀の含有量が多く魅力的な鉱床。今後、鉱石の全体量や金属の資源量を詳しく調べる」としている。JOGMECによると、調査は経済産業省の委託を受け、2016年11月〜17年2月に実施。水深1100メートルの海底で、長さ300メートル、幅100メートルの範囲で熱水を噴出する様子を、無人探査機を使い確認した。鉱物が冷えて沈殿した煙突状の構造物「チムニー」も多数発見。最高220度の熱水を噴出する高さ約30メートルの巨大チムニーもあり、一定期間活動を続けている鉱床とみられる。同島の洞窟「銀水洞」にちなみ「銀水サイト」と名付けられた。採取した鉱石の分析では、鉱石1トン当たり金13・6グラムが含まれ、これまでJOGMECが沖縄本島沖などで発見した5カ所の鉱床よりも含有量が多いという。レアメタル(希少金属)のガリウムも微量ながら検出した。海底の鉱床から鉱石を大量採掘する技術は開発中で、JOGMECは今夏、鉱石をポンプで吸い上げる試験に世界で初めて成功した。国は20年代半ばに鉱石の採掘事業開始を目指している。 <森林環境税等について> PS(2017.12.10、17追加):*5-1に、「1人当たり年1000円で総額年620億円にもなる森林環境税を、①私有林の面積や林業就業者数などに応じて市町村に配分し ②私有林の間伐のための林道整備や放置された私有林の整備などに使う」と書かれている。しかし、①は、国有林や公有林は森林環境税とは別に予算を取るということであり、②は私有林の世話(それも道路整備)だけに使うということであるため、国民全体で負担する意義が見い出せない。 私は、森林保全のために森林環境税を徴収するのなら、国有林・公有林(税外収入の宝庫)の維持管理費用もそれで賄い、私有林についても間伐のための道路工事だけではなく、里山の持続的な利用を可能にする政策を行っていくべきだと考える。そのため、各地域大学の農学・林学・水産学等の研究室に、①現在、その地域で何が足りないか ②地域の森林にどういう手入れをすれば、豊かな自然を守って持続可能に利用していけるか などを報告してもらい、必要な予算を積み上げて森林環境税の個人負担額を決め、負担と効果を毎年チェックすべきだ。 なお、*5-2のように、九大の研究者でつくる「豪雨災害調査・復旧・復興支援団」が、九州豪雨被災地で出された住民の意見を集落ごとに空撮地図上に記入した新聞を住民に配布し、住民から「まとまっていて次の議論に生かせる」「集落の未来図が分かりやすい」と好評だそうだ。このように、住民にフィードバックして住民の意見を集約していくことは大変重要だが、未来の街を造るためいろいろな学部からアドバイスを提示するのもよいだろう。これは、東日本大震災の復興はじめ都市の再開発などの街造りに大学の知を活かすよい機会であり、学生が現場の事例を参考にしながら具体的なニーズを知って研究する機会にもなるため、それぞれの地域の大学が行うのがよいと思われる。 *5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171210&ng=DGKKZO24464740Z01C17A2EA2000 (日経新聞 2017.12.10) 森林環境 使途限定が課題 森林保全に使う森林環境税は2024年度から導入する方向だ。1人当たり年千円を個人住民税に上乗せして課税する。23年度までは東日本大震災からの復興事業費として、住民税に千円上乗せしている。24年度から代わりに導入し、途切れなく徴収する格好だ。対象は住民税を納める約6200万人。単純計算で年620億円の増収になる。私有林の面積や林業就業者数などに応じて、市町村に配分する。お金は間伐などによる林道整備や放置された森林の整備などに使う。ただ使い道を特定の政策目的に限ると、無駄遣いを生みやすく、効果が不明瞭なバラマキに陥る恐れがある。国際観光旅客税にも同じ懸念があるが、森林環境税は都市部の納税者に利点がみえにくいのが難点。独自に実施する自治体では住民に二重の課税を強いる可能性がある。 *5-2:http://qbiz.jp/article/124410/1/ (西日本新聞 2017年12月17日) 復興アイデア新聞 朝倉市と東峰村 九大支援団製作 九州大の研究者でつくる「豪雨災害調査・復旧・復興支援団」が、九州豪雨被災地の福岡県朝倉市と東峰村の住民集会で出された意見を集落ごとに新聞にまとめ、住民に配布している。集落の空撮地図上に意見などを記入。住民から「まとまっていて次の議論に生かせる」「集落の未来図が分かりやすい」と好評だ。 ●「集落の未来図 分かりやすい」 朝倉市、東峰村は、いずれも来年3月に復興計画を策定する予定。これに住民意見を反映させようと集落や地区ごとの集会が活発化する中で、新聞が生かされている。朝倉市では、松末(ますえ)地区の集落集会などに九大の教授や学生が参加。出た意見を島谷幸宏大学院教授の研究室スタッフがパソコンで空撮地図上に書き込み、A3判1枚の新聞にして集落ごとに配っている。10月から製作を始め、現在は松末、林田、白木各地区などで7種を製作した。このうち松末地区の乙石、中村、石詰3集落の意見をまとめた「乙石川復興新聞」は、表の面に集会の合意項目などを表にしてまとめた。裏面は空撮写真上に新たに住宅や田んぼが望ましいと思う位置が一目で分かるよう色分けして描いた。他にも、主要道路に「洪水時でも通れるよう(中略)片側1車線以上は確保」などと記載。新聞の内容は集会のたびに更新される。石詰集落区会長の小嶋喜治さん(62)は「新聞を見ながら家族で話せるし、次へ進む知恵が出る。復興へ前向きになれる」と語る。一方、東峰村では、4地区ごとに地域住民協議会が開かれているが、こちらは三谷泰浩大学院教授の研究室が製作を担当。協議会で出された意見を空撮地図上に書き込み、次の協議会の場で配布している。島谷教授は、新聞が復興計画策定時に住民意見として活用されることに期待。「住民だから分かる情報も入っている。私たちが(復興策を)行政などにアドバイスする際にも役立つ資料」と話す。今後、他集落から要請があれば新たな新聞を製作したい考え。 <日本における水素社会の意味> PS(2017.12.10追加):*6のように、神戸市は水素燃料で発電した電気や熱を公共施設に供給する実証実験を始めるそうで良いことだ。しかし、「水素は発電時には二酸化炭素(CO2)を排出しない」と書かれているように、水素を都市ガスや天然ガスから作ればCO2や他の廃棄物が出る上、料金を海外に支払わなければならない。そのため、水が豊富な日本は、自然エネルギー由来の電力で水を電気分解して水素と酸素を作るのが最も安価で環境に良いのだが(海の水を使えば、同時に塩も分離できそうだ)、外国に金をばら撒くことでしか日本の存在感を示せない能無しの経産省が、高い燃料を輸入して国民に負担を強いたがるのは困ったものである。 *6:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/158129 (佐賀新聞 2017.12.10) 水素発電施設が神戸で完成、世界初、市街地へ供給実験 来年1月に神戸市で、水素を燃料として発電した電気や熱を病院などの公共施設に供給する実証実験が始まるのを前に、水素発電のプラントが同市中央区のポートアイランドに完成し10日、記念式典が開かれた。市などによると、市街地での実証実験は世界初という。実験は来年1月下旬から3月中旬までの予定で、市が進める水素を活用した都市づくりの一環。水素は発電時には二酸化炭素を排出しないため、クリーンなエネルギーとして注目されている。プラントの敷地は約3700平方メートル。水素だけを燃焼させたり、天然ガスを混ぜて発電したりして、安定して運用できるかを調べる。 <民間企業は工夫次第の筈> PS(2017年12月11日追加):*7-1に、「①過疎地の店舗網を存続させるため、銀行支店の営業日を週2日に」という提言を佐銀の頭取が行い、「②日銀のマイナス金利政策による低金利の影響で銀行の収益環境が悪化した」と書かれている。しかし、銀行は一般企業に貸付を行って収益を挙げるのが本来の業務であるため、それをしっかり行えば日銀のマイナス金利は銀行にはプラスに働く筈であり、②は誤りだ。それでは、どうしっかり行えばよいかについては、自然エネルギー・PFIによる鉄道高架化・電線地中化・都市の再開発・工場や事務所のオートメーション化・介護施設建設などの時流にそった投資に貸付を行ったり、銀行自身のルーチンワークを徹底的にオートメーション化して余剰人材を営業や接客にまわしたり、子会社を作って中小企業の経理を代行したりすれば、生産性が上がり、新しいニーズも見えてくる筈である(例えば、眞子様のご結婚にあたり、美智子皇后がお持ちのものと同じか少し色違いの佐賀錦の帯を完全機械織りで作って差し上げるなど、現代に合った高度なオートメーション化もあってよい)。 また、郵便局も、*7-2、*7-3のように、郵便が減少していることを悔やんでばかりいても仕方がないので、資産であるネットワークを活かして便利な宅配便を作ったり、建物が便利な場所にあることを活かして、*7-1のような銀行業務を受託・代行したり、建物の中にクリニック・介護施設・保育施設・ショッピングセンターなどを入れてもよいだろう。そして、このような工夫は、郵政省の管轄下ではできなかったが、民営化後の現在は、先入観にとらわれずに他の業種と提携すれば簡単に行えるのである。 *7-1:http://qbiz.jp/article/123873/1/ (佐賀銀行 2017年12月11日) 「支店営業は週2日に」 佐賀銀・陣内頭取 過疎地の店舗網存続へ提言 銀行支店の営業日を週2日に−。経営合理化で銀行の支店網が全国的に見直される中、佐賀銀行の陣内芳博頭取は過疎地の店舗網存続に向けてこんな構想を打ち出した。銀行法は原則、平日に休業日を設けることを認めていないが、陣内氏は「顧客に不便をかけずに合理化を進めるためには規制緩和が必要」と唱える。陣内構想は、同じ顔触れの行員グループが1週間に2日ずつ、複数の店舗を移動しながら勤務する。これなら「行員を増やさず、過疎地の店舗網を維持することができる」とした。同行も拠点網の再編を進めている。来年8月には、水ケ江支店(佐賀市)の犬井道出張所と東与賀出張所を市内に新設する拠点に集約する。ただ、両出張所の統廃合はせず、同居の形で存続させるという。顧客が口座番号を変えずに済むといい、これまでも同じ対応を取ってきた。拠点数は福岡、佐賀、長崎、東京の4都県で計91カ所と1減になるが、支店・出張所は計103カ所を維持できるという。銀行業界では日銀のマイナス金利政策による低金利の影響で収益環境が悪化。みずほフィナンシャルグループが国内拠点の約2割削減を表明するなど、拠点再編の動きが広がっている。陣内氏は11月29日の記者会見で「銀行の支店は社会インフラだ。むやみに閉めていいとは思わない」とし、全国地方銀行協会の佐久間英利会長(千葉銀行頭取)にも構想を提言したという。 *7-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24414940Y7A201C1000000/ (日経新聞 2017/12/11) 「ゆうパック」年末危機 ヤマト値上げで殺到 「ゴルフバッグの送料は往復で820円上がった。嫁に怒られる」。ヤマト運輸や佐川急便が10~11月に相次ぎ実施した宅配便値上げが家計を直撃している。その分、来年3月まで料金をすえ置いている日本郵便「ゆうパック」に日本中の荷物がシフトしている。だが日本郵便も喜んではいられない。 ■来年2月まではゆうパック 札幌市に住む50代の主婦は、東京で一人暮らしをする娘に宅配便で食品を仕送りしている。10月のヤマトの値上げで、段ボール箱の縦・横・高さの合計が100cmの荷物を送る運賃は1620円から1793円に上がった。「食品も値上がりしているからお財布に響く」。同じ条件なら1500円で済むゆうパックに切り替えた。ゴルフが趣味という都内在住の50代男性は、週末になるとヤマトを使って長野県のゴルフ場にゴルフバッグを送っていた。料金は1404円から1814円に上がった。往復では820円の負担増だ。日本郵便なら、今なら片道1400円で送れる。10月1日、ヤマトは個人向け運賃の定価となる基本料金を引き上げた。佐川も11月21日に値上げを実施。日本郵便も追随するが、値上げ時期は来年3月1日とした。個人向けの値上げはヤマトが消費増税時をのぞいて27年ぶり、佐川が13年ぶりなのに対し、日本郵便は2015年に値上げしたばかり。日本郵便だけが年越しとなったのはこうした背景もあるが、「大手3社の中では最下位の日本郵便が、先行2社の動向を見極めた」とも言われている。16年度のシェアはヤマト47%、佐川31%、日本郵便16%で、一気に追い上げるチャンスだ。いずれにせよ、年末の繁忙期に1社のみ運賃をすえ置いたゆうパックに、日本中の荷物がシフトしている。個人向けだけではない。実は宅配便の総量のうち、個人向けが占めるのは1割に満たない。9割を超えるのが、アマゾンジャパン(東京・目黒)などに代表される大口顧客向けだ。個人向けと違い、大口顧客向けは宅配の総量が圧倒的に多く、価格も定価がなく、料金は相対で決まるブラックボックスだ。荷主企業を取材してみると、ヤマトや佐川が強硬な値上げを要求している実態がわかった。 ■中小通販会社の悲鳴 「もう決まったこと、の一点張りで、とりつく島がなかった」。千葉県の中堅倉庫会社の社長は憤る。同社は通販会社の商品を倉庫で預かり、発送を代行している。ヤマトと契約して宅配便で商品を発送しているが、9月に一方的に値上げを通告された。同社の場合、荷物1個当たりの平均料金は300円台だったが、ヤマトの営業担当から提示された見積もりは2倍超の700円台。しかも運賃改定の実施日は1カ月後の10月だという。値上げ幅の圧縮と延期を求めたが「こちらの主張はまったく聞いてもらえない」。契約を打ち切るわけにはいかず、泣く泣く値上げを受け入れた。 *7-3:https://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2017_1002.html (NHK 2017.12.11) 民営化10年 郵便局は変わったか 130年以上にわたって国が行ってきた郵政事業が民営化され、1日で10年を迎えました。民営化の大きな狙いは、金融事業が抱える巨額の資金を民間に回し、経済を活性化させること。一方で、赤字体質の郵便事業は効率化が進められ、過疎地のサービスが低下すると懸念されました。全国におよそ2万4000ある郵便局は、民営化から10年でどう変わったのか。各地の郵便局を訪ねてみました。「民営化でよくなったことはない」。茨城県北部の大子町。福島・栃木の両県に接し、観光名所の「袋田の滝」で知られる山あいの町は人口が年々減少し、現在およそ1万7000人。65歳以上の高齢者が40%を超え、過疎化と高齢化が進んでいます。大子町にある「上小川郵便局」は、ことしで開局90年を迎えた職員5人の郵便局。周辺のおよそ1000世帯をカバーしています。1日に訪れる客はおよそ30人。近くに金融機関やコンビニがなく、ATM=現金自動預け払い機を利用するために訪れる人も多いといいます。石井義孝局長は、10年前の状況を「お客様から見たら郵便局は郵便局のままなのに、急に制度だけが変わって当初は苦情も多かった」と振り返りました。民営化からの5年間は、窓口業務は「郵便局会社」、集配業務は「郵便事業会社」と別会社が行う形態でした。上小川郵便局の窓口にいる職員は全員が「郵便局会社」の所属。集荷の依頼や郵便の問い合わせは受けられなくなり、利用者には30キロ以上離れた別の郵便事業会社に電話してもらうことになりました。実は、壁1枚隔てた窓口の裏には、集配を担当する職員がいたため、窓口で利用者の依頼を聞き取ってメモで手渡したこともあったといいます。民営化に伴って、手続きも厳格化。窓口で預金を引き出す際、“顔パス”で済ませていた本人確認も、毎回、書類を提出してもらうことが必要になりました。この10年、石井局長が懸念していた郵便局の統廃合はありませんでしたが、預金や保険の契約をとるなどの“営業目標”が厳しくなったといいます。「職員にとっては、民営化でよくなったことはないと思います。ただ、民営化して何か変わらないといけないという危機感があったのも事実です」と複雑な心境を語ってくれました。 ●新たな役割 新たな活路 全国一律のサービスの維持を法律で義務づけられている郵便事業は、慢性的な赤字体質からの脱却が課題です。売り上げの大幅アップが難しい過疎地の局では、地域の課題にあわせたサービスに活路を見いだそうとしています。その1つが、「高齢者の見守りサービス」です。大子町の郵便局ではことし4月、町と連携して75歳以上の1人暮らしのお年寄りを対象に、月に1度、自宅を訪問する取り組みを始めました。体調や暮らしぶりを尋ね、回答をタブレット端末に入力。役場と家族にメールで報告するもので、およそ150人が利用しています。利用料は町が負担しています。利用者の85歳の女性は「近所の人も施設に入ってしまい、話し相手がいないので、郵便の方が来てくれるのは楽しみ。これからも続けてほしい」と、笑顔で話していました。日本郵便は、この高齢者の見守りを1日から、月額2500円の有料サービスとして全国およそ2万の郵便局で始めました。コストの要因となっている郵便局を収益の上がる存在に変えるチャレンジ。今後さらに増加が見込まれる1人暮らしの高齢者を支える社会インフラになれるかが問われます。 ●若い世代を取り込め! “高齢者の支え”に活路を見いだそうという郵便局がある一方、若い世代の取り込みに力を入れる郵便局もあります。千葉市美浜区にある大型商業施設「イオンモール幕張新都心」の一角に、この7月、郵便局ができました。全国で17局目となるショッピングモールの中の郵便局。周辺に大きな住宅地がなく、高齢者も少ないため、従来の考え方では郵便局にとって不利なエリアです。しかし、買い物に訪れた家族連れなど、いわゆる「いちげんさん」を引きつけることに成功。オープンからの3か月で保険商品の契約金額は、半年分の目標を達成したということです。好調の秘けつは、郵便局の施設にあります。平均的な郵便局の2倍ある広いスペースには、子ども用の小さな机といす。そして、描いた絵を壁に映すことができるプロジェクター。子どもが絵を描くことに夢中になっている間に、母親に貯金や保険の商品をすすめる戦略です。2歳の子どもと一緒に訪れた40代の母親は「家の近くにも郵便局はありますが、何か用事がないと行くことはありません。このモールには週に1回は来るので、ついでにちょくちょく立ち寄っています」と話していました。「イオンモール幕張新都心内郵便局」の田中義明局長は「赴任する前は、お客さんは来ないと思っていたが、予想外に売り上げが伸びている。カウンターの外に立って、モールに来たお客さんに声をかけて営業する『攻めの姿勢』を心がけています。ハロウィーンやクリスマスなど季節のイベントにあわせたキャンペーンを展開して、さらに売り上げを伸ばしていきたい」と意気込みを語っていました。「まだ1合目か2合目」。民営化10年の節目を控えた9月29日。グループを束ねる持ち株会社「日本郵政」の長門正貢社長は記者会見を開きました。「現状に点数をつけるとしたら?」という質問に対しては、「立派な業績を挙げてから採点したい。郵便事業はもうけることを前提とせずに、140年近くやってきた。いろんなところにコストがかかっていて、それを跳ね返さないといけない。富士山ならまだ1合目か2合目」と述べました。そのうえで長門社長は「世の中の動きが早く、未来永劫、安泰と言われる事業はない。10年、20年先を見据えながら、強い成長戦略を描いてくことが急務だ。次の中期経営計画でグループ全体の成長戦略を示せるよう努力したい」と決意を語りました。メールに続いてSNSが急速に普及し、“手紙離れ”には歯止めがかかりません。民営化から10年、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の金融事業の収益が郵便事業を支える構図は変わっていません。昨年度は、海外事業の業績悪化が響いて、初の最終赤字に転落した日本郵政。全国にある郵便局の不動産やネットワークをいかに収益に結びつけ、自立した経営を実現するか。各地の郵便局の試みに、今後も目を向けていきたいと思います。 <教育はすべての基礎> PS(2017年12月12、21日追加):*8-1のように、「①歴史の変遷を説明するのに必須ではない」として、「②教える歴史用語を絞って授業時間を確保し歴史の流れなどの考察力育成を促す」とするグループがあるそうだが、①は、定義や背景とともに用語を覚えていなければ記憶に残らずコミュニケーションすることもできないため、②の考察以前になる。ちなみに、中国の高校中国史は日本の1.5倍くらいあり、日本が勉強しない方向への改革ばかりしているのは、全分野の人材を劣化させるためよくない。 そのため、高校までは広範囲の知識を覚えることが必要条件で、その知識を教える際に、ただの丸暗記ではなく流れや相互関係として理解できるよう、先生自身がそれを理解して解説し、生徒の質問にも適格に答えられるなど、教える人に能力(知識と論理性)が必要なのである。そして、授業時間の確保は、中学・高校で同じことを2回教えているのをやめ、中高一貫校で日本史と世界史を2年間ずつ教え、概略は小学校で教えておけばよいのだ。この時、*8-2の人づくり革命で、小学校を3歳児以上とし、高校までを義務教育とする政策が効いてくるのであり、財源は、カンフル剤的な景気対策を節約して作らなければならない。 なお、歴史の流れを理解するには、世界史なら人類の発生、移動とその原因、その際に起こった戦い、民族による価値観の違いとその理由、王家同士の関係、文化の融合などを解説できなければならず、その真実は人類の壮大な歴史スペクタクルである。また、日本史なら、古代も含めて世界や周辺諸国と日本との関係もごまかさずに教えなければ背後関係がわからず、役に立たない丸暗記となる。そのため、先生の報酬は上げ、優秀な人が先生になるようにすべきだ。 従って、NHKの大河ドラマも、戦国時代と明治時代ばかりを繰り返して放送するのではなく、中国や朝鮮の歴史と絡んだ日本の古代史を放送してもよいのではないかと考える。 なお、世界史で人類の移動とその理由、その際に起こった既存民族との戦いなどを勉強しておけば、国際関係について現状維持が最善とするのではないもっと深い報道ができる筈だ。その事例の一つに、*8-3の「トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認め、国連総会(193カ国)が米国に撤回を求める決議案を採決することを受けて、決議案に賛成した国には援助を打ち切ることをトランプ大統領が示唆した」というのがある。エルサレムは、紀元前20年にはヘロデ大王によって統治され、その神殿を取り巻いていた外壁の西側部分が、現在「嘆きの壁」として残っている。しかし、紀元135年にローマがイスラエルの地を「パレスチナ」と改称し、1191年にユダヤ教徒は十字軍に追われて世界に散り辛酸を舐めることとなり、1946年にパレスチナにはアラブ人が130万人、ユダヤ人が70万人住んでいたが、1947年の国際連合によるパレスチナ分割決議によって、1948年にイスラエルが国として独立し、世界に散っていたユダヤ人も故郷に戻れた。この時、その地は本来は誰の故郷かという問題になっているのだ。 *8-1:http://qbiz.jp/article/124371/1/ (西日本新聞 2017年12月12日) 脱暗記で歴史用語半減を提言へ 教員有志、龍馬・信玄も入らず 大学入試で問われる歴史用語が多すぎる影響で高校の歴史教育が暗記に偏っているとして、大学、高校教員有志でつくる研究グループが、教科書本文で扱うべき重要用語を精選した案をこのほど公表した。「歴史の変遷に関する説明に必須か」などの観点から選び、用語を現状の半分程度にとどめており、日本史では坂本龍馬や吉田松陰、武田信玄、上杉謙信ら著名な人物でも案に入らなかった。案をまとめたのは、高校や大学教員ら約400人でつくる「高大連携歴史教育研究会」(会長・油井大三郎東大名誉教授)。用語を絞って授業時間を確保し、歴史の流れなどの考察力育成を促すのが狙い。 *8-2:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20171212/KT171211ETI090010000.php (信濃毎日新聞 2017.12.12) 人づくり革命 持続性ある政策なのか 安倍晋三政権が、幼児教育や保育、高等教育の無償化を柱とする「人づくり革命」の政策パッケージを閣議決定した。少子化対策が急がれる。ただ、巨額の予算を投じるからには、子育て世代の要望を踏まえ、持続性のある財源を確保して臨まなければならない。パッケージの中身は現場の声を優先したとは言い切れず、財源も曖昧なままだ。教育費の無償化や減免は、10月の衆院選で与野党がそろって公約していた。パッケージをたたき台に、国会で精度の高い内容に練り上げてほしい。柔軟に議論に応じるよう安倍政権に求める。幼児教育・保育では原則3〜5歳児の全員を、0〜2歳児は住民税非課税世帯を対象とする。高等教育でも、入学金や授業料を免除するなど低所得世帯の学生を支援する。私立高校授業料の無償化は所得制限を設けて実施する。気掛かりなのは財源だ。政府は消費税再増税の増収分のうち1兆7千億円と、企業の拠出金3千億円を充てるとする。掲げた政策を全て実現するとなると、この2兆円では足りない。社会保障給付費は年115兆円に上っている。教育費の無償化をもって安倍首相は「全世代型の社会保障への転換だ」と言う。高齢化に伴い、給付の増大が見込まれるのに、逆進性の高い消費税に財源を絞ることに無理がある。企業や会社員、自営業者らから保険料を徴収し「こども保険」を創設する―。自民党若手議員の提言は検討したのか。それぞれの社会保険が一定額を出し合う「子育て支援連帯基金」の案もあったはずだ。前提として「子どもを社会で育てる」との理念を根付かせることも政治の役割だろう。現場の要望との不一致も気になる。母親たちは「保育所の整備と質の向上が先」と訴える。国は保育士の確保へ賃金を月3千円引き上げるとしたが、現場は「焼け石に水」と指摘する。高等教育関係者からも「教育の質を高めることが優先」との声が聞かれる。大盤振る舞いにも映る構想を、衆院選から2カ月足らずで固めた理由として、来年に控える自民党総裁選、憲法改定を見据えた公明党との連携を意識した、との見方も出ている。少子化対策は社会の根幹に関わる重要な課題だ。それだけに党派を超えて知恵を持ち寄り、中身の濃い計画に仕上げなければならない。政局と混同してはならないことは言うまでもない。 *8-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13284425.html (朝日新聞 2017年12月21日) トランプ氏、援助停止示唆 エルサレム決議、賛成なら 米トランプ政権がエルサレムをイスラエルの首都と認めた問題で、国連総会(193カ国)が米国に撤回を求める決議案を採決することを受けて、トランプ大統領は20日、「我々に反対する投票をさせておけばいい。我々はたくさん節約する」と語り、決議案に賛成した国には援助を打ち切ることを示唆した。米国の方針に反対する国を脅迫するかのような外交姿勢に反感が高まるのは必至だ。国連総会は21日(日本時間22日午前)に緊急特別総会を開いて、決議案を採決する予定。採択には投票国の過半数の賛成が必要だが、多数の賛成で採択される見通しだ。トランプ氏は20日、ホワイトハウスで開いた閣議の冒頭で「何億ドル、何十億ドルも(米国から)受け取る国が、我々に反対票を投じる」と不満をあらわにし、「我々は投票を見守る」と強調。「米国民は(他国に)利用されるのにうんざりしている。これ以上利用されない」と警告した。またトランプ氏の発言に先立ち、米国のヘイリー国連大使は「大統領は米国に反対した国についての報告を求めている」とする書簡を国連加盟国に送付した。国連総会の採決で加盟国には、「賛成」、「反対」、「棄権」のいずれかのボタンを押すか、そもそも採決に参加しないという選択肢がある。国連総会のライチャーク議長は20日に開いた会見で、トランプ氏を名指ししなかったが、「それぞれの考え方を示すのは加盟国の権利であり責務だ」と強調した。一方、国連関係者からは、米国ににらまれることを恐れて、採決に参加しない国が増えると予測する声も出ている。米国がトランプ氏の発言通りに援助を打ち切るかは不透明だが、実行すれば米国から多額の経済援助や軍事支援を受ける中東諸国にとっては大打撃になる。 <教育の質> PS(2017.12.13、14《図》追加):*9-1の教育の質(教育内容・供給者・供給体制)は、人材を育てる上で決して無視してはならない課題だ。また、*9-2の大学トップが挙げる重点課題のうち、「能動的学習や対話型授業」が行われていないのは、大教室で教授の言うことを書き留めて覚えることを主とする文系学部の教育で、これでは創造的な技術を導入できる人材を育てることができない。「課題解決型学習」は、国や地方自治体がかかえる課題を近くの大学に投げかけて解を出させ、結果をフィードバックすれば、お互いに有効に機能するだろう。 なお、*9-3のように、政治とは関係ない筈のオリンピックでロシアが差別されるのは目に余るが、ロシアの選手はバレエの素養があるためか、フィギュアスケートや体操等では技術が確かな上、表現も魅力的だ。つまり、しっかりした基礎をつけておけば何をやってもうまくなるものであるため、私は、小学校を3歳からにして、素人の教諭ではなく専門家が、語学・バレエ・絶対音階・楽器・スポーツなどの基礎となる素養を、子どもを楽しませながら教える仕組にするのがよいと考える。ちなみに、日本のアイドルは、芸がお粗末すぎて鑑賞に堪えない。 幼児教育 2017.12.13日経新聞 (図の説明:小学校を3歳から始めると、これまで時間が足りないためできなかった教育を全員に行うことができる。また、現在は、音楽や英語などの専門家も多くなっているため、専門家が本物の教育をすることが可能だ。さらに、教育の専門家である教諭がやらなければならない仕事とサポートの仕事を分けて分担することによって教育の生産性が上がり、必要な人には相応の報酬を支払うことが可能になって教諭の質を上げることができる) 2017.12.13日経新聞 2017.12.14日経新聞 (図の説明:能動的学習や課題解決型の学習がこれまで行われていなかったことがむしろ驚きだが、高等教育ではグローバルに通用する人材を作らなければならない。ただし、これには留学してMBA等をとってきた人材を関係部署に配置して育てるのではなく、別の仕事をさせてつぶし、社員全員を「何もできない人」にするような日本企業の人の使い方にも問題がある) *9-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171213&ng=DGKKZO24533460S7A211C1EN2000 (日経新聞 2017.12.13) 教育改革に必要な供給側の質 幼児・高等教育の無償化の大枠が決まった。経済的理由で子供を持てない、あるいは貧しい家庭の子供たちが進学を断念するといった状況の解消に主眼が置かれている。子供と子育て世代に大胆に政策資源を投入するこれらの政策は、待機児童解消などと並び、社会保障制度を高齢者だけでない全世代型に改革していく第一歩といえよう。ただし、幼児教育、高等教育の課題はこうした需要側だけではない。教育改革では供給側の質も同時に問われなければならない。幼児期は、能力開発、人格形成、情緒と道徳心の涵養(かんよう)などにとって極めて重要な時期であり、教育の役割は重大だ。幼児期の教育が将来の所得向上をもたらすとの研究結果も広く受け入れられつつある。従って、待機児童解消や幼児教育無償化の次に問われるべきは、幼児教育の中身である。だが、教師の質の向上や教育内容充実の議論は、これまでのところあまり行われていない。高等教育の質の重要性はいうまでもない。日本の学生の質の低下が懸念されているが、同時に教育の供給側の質の向上も待ったなしだ。大学側からは入学時の学生の質を問う声が多く聞かれるが、ならば入学時から卒業まで学生の力がどれだけ伸びたかを客観評価し、大学教育の質を問うのも一つの手法である。地方には、偏差値はさほど高くないが、卒業生が引く手あまたの私立大学もある。就職後に必要技能を学ぶ「リカレント教育」も同様だ。長寿化時代でライフステージが複線化するだけでなく、IT(情報技術)、人工知能(AI)がイノベーションを加速させる社会では、リカレント教育のあり方が今まで以上に問われる。単なる教養講座に終わらせず充実させるには、今後、教育機関と産業界、行政が連携を進め、産業界のニーズなどを踏まえた教育プログラムを組み、教育人材の確保、再就職支援にまで取り組む必要がある。企業も社内教育だけでなく、社外教育の活用を視野に、人事制度や雇用のあり方にまで踏み込んで、本気で働き方改革を進めることを求められる。真に教育改革を進めるなら、今回の教育改革で議論の対象になっていない義務教育も含め、一気通貫で教育の質を問い直す場を設けるべきである。 *9-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171213&ng=DGKKZO24535880S7A211C1TCN000 (日経新聞 2017.12.13) 教育改革が重点課題 大学トップが当面の重点課題と考えていることは何か。選択肢から5つまで選んでもらったところ、最も多かった回答は「教育改革」(85%)で、「研究力の向上」(71%)や「国際化の推進」(68%)が続いた。 学部教育の改革で重視する項目としては60%が「能動的学習や対話型授業の拡大」、39%が「課題解決型学習の拡大」を挙げた。「評価の改善や学習成果の可視化」(38%)、「海外留学の促進」(37%)も多い。ほかは「教養教育」(22%)、「カリキュラムの体系化」(18%)など。低所得層の高等教育無償化が決まり、教育の質の確保が求められているが「進級・学位認定の厳格化」は7%にとどまる。社会人の学び直しニーズへの対応に関わる「既卒者や社会人の受け入れ」も4%と少ない。能動的学習などはきめ細かな指導が必要だが、学生・教員比率(S/T比)の改善について尋ねたところ、36%が「教員数を増やしたい」と答えた。教員増・学生減のどちらも考えていない大学が59%を占め、「学生の削減と教員の増加をともに実施したい」としたのは1%(2校)だった。 *9-3:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/158998 (佐賀新聞 2017.12.12) ロシア選手、平昌五輪参加へ、個人資格で、大統領支持 ロシア・オリンピック委員会(ROC)は12日、モスクワで総会を開き、来年2月の平昌冬季五輪に同国選手が国旗や国歌を使用できない個人資格で参加することを支持すると全会一致で決めた。ジューコフ会長が発表した。ペスコフ大統領報道官は、プーチン大統領も決定を支持すると表明。この結果、国際オリンピック委員会(IOC)が、ドーピング違反がないことなどを認めたロシア選手は五輪に参加できる見通しとなった。ジューコフ氏は記者会見で「IOCの決定は多くの点で不公平だが、ロシアの栄誉のために勝利をつかまねばならないとの意見で一致した」と説明した。 <“化石”は地球環境と経済の両方に有害> PS(2017年12月16、19日追加):*10-1-1のように、EV・燃料電池車等の環境対応車や自動運転車は日本が先頭だったが、メディアを巻き込んだ逆噴射によって外国に後れを取り、他国の進歩を見て追随している情けない状態だが、これは、「EVは、エコカーだから走る喜びはない(?!)」などと言うような科学的判断のできない人々の責任である。 また、*10-1-2の「三菱重工業の火力発電所向けガスタービンが不振」というのも、世界の化石燃料離れから今後も回復する見込みはない。しかし三菱自動車は、世界で最初に燃料電池車を作った会社であるため、工業用・個人用の水素燃料による発電、燃料電池による航空機・船舶を作っていれば、トップランナーでいられ、従業員の転用を行う時間も十分あった筈で、経営者が直ちに正しい意思決定をできることが重要なのである。ちなみに、「ゆっくりした方がよい」などと言うのは、世界中で日本だけだ。 さらに、*10-1-3の「A重油の値上がりが農漁業に打撃を与えている」という課題も、私が衆議院議員をしていた2005年当時から農漁業関係者に言われていたため、私はエネルギーの変換や省エネが不可欠だと考えて取り組んできた。そのため、10年以上も同じことを言って国民に負担ばかりかけるのではなく、農業なら自家発電・ハウスの省エネ・EV化などを既に進めて終わっていてもよい時期で、燃料費が漁業経費の3割に達する漁業もまた同じである。 そして、人件費や化石燃料価格が高いのに、運転手付きディーゼルカーを走らせているJRの損益分岐点が高止まりするのは尤もで、*10-1-4のように、JR九州は来年のダイヤ改正で九州新幹線や在来線の運行本数を1日当たり現状より117本減らすそうだが、既にこのブログで書いてきたように、鉄道の経営体質を強化する方法は退却ばかりではない。 なお、広島の住民が四電伊方原発3号機の運転差し止めを求めた仮処分の即時抗告審で、広島高裁は、*10-2-1のように、阿蘇の巨大噴火の危険性と火砕流到達の可能性が小さくないことにより立地不適として2018年9月末まで運転停止を命じる決定をしたそうだが、これまで苦労を重ねてこられた弁護士はじめ関係者の皆様には敬意を表する。私も、原発は事故を起こせば膨大な被害になるため、事故の確率が0でなければ積算した被害額は大きくなり、速やかに廃炉にしてもらいたいと考えている。 そのような中、地元四国の新聞はこの司法判断について称賛の記事が多いのに、日経新聞は、*10-2-2のように、「九電瓜生社長は『伊方原発差し止めは残念だ』『火山の状況はモニタリングしている』『マグマの状況など科学的な説明を示して安全性を訴える』と述べた」と書いている。しかし、火山学者は「噴火予知はできない」と言っているので、次は地震・火山・断層・津波に関する安全神話を作らないようにすべきだ。また、*10-2-3のように、2017年12月19日には、政府の地震調査委員会が、「北海道東部沖太平洋で、海抜20m超の大津波を伴うM9級の超巨大地震の発生が切迫している可能性が高い」と予測し、「近畿から西に延びる中央構造線断層帯は、四国を横切って大分県に及ぶ」と改めたそうだが、プレートの境界を見ると阿蘇山から霧島連山も含んでいると考えた方が自然である。 2017.12.16日経新聞 2017.12.14、19東京新聞 (図の説明:世界は自然エネルギーに方向転換し、環境に悪い化石燃料や危険な原発は過去のエネルギーとなりつつある。日本でも、自然再生可能エネルギー・水素燃料・電気エネルギーを使うのが、最もエネルギー自給率を上げ、経済と環境によいだろう) *10-1-1:http://qbiz.jp/article/124671/1/ (西日本新聞 2017年12月16日) EVや燃料電池車ずらり AI搭載の自動運転車も 福岡モーターショー クルマと変えよう暮らしの未来」をテーマに開幕した福岡モーターショー2017。会場には最先端の電気自動車(EV)や水素で走る燃料電池車(FCV)、人工知能(AI)を搭載した自動走行車など計204台が並び、大勢の自動車ファンたちが車の将来像に思いをはせた。 世界的な環境規制強化で「EVシフト」が鮮明になる中、注目を集めたのはEVのコンセプトカー。ホンダのスポーツカー「ホンダ・スポーツ・EV・コンセプト」は車体の重心が低く、EVが得意にする加速時の安定走行を可能にする。EVはエコカーのイメージが強いが「EVの世界でも走る喜びを提供する」(広報担当者)。ダイハツ工業は、低床で広い室内空間を確保した商用EV「ディーエヌ プロカーゴ」を出展している。トヨタ自動車は、3分程度の水素充填(じゅうてん)で約千キロの走行を目指すFCVのコンセプトカー「ファイン−コンフォート ライド」を展示。FCVは水素ステーション数が少ないなどの理由で普及が遅れているが、航続距離や充電時間などでEVより優位に立つ。先行開発推進部の内藤了輔主任は「FCVの得意分野は長距離なので、EVとのすみ分けが起きてくる」と分析する。各自動車メーカーは、AIを活用した自動運転技術もアピールする。三菱自動車は、AIが運転手に路面状況などを伝え、運転操作をアドバイスするコンセプトカー「ミツビシ e−エボリューション コンセプト」を披露。日産自動車もAIなどを搭載し完全自動運転を目指すコンセプトカー「ニッサン IMx」を展示している。IMxが自動運転モードに切り替わると、ハンドルが格納される様子を見ていた熊本市の会社員野崎大貴さん(23)は「自動運転の技術が急速に発展している気がする。実現化が待ち遠しい」と目を輝かせた。会場では発売予定の最新型車のほか、高級車やバイクなども間近に見ることができる。 *10-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171216&ng=DGKKZO24704800V11C17A2TJ2000 (日経新聞 2017.12.16) 三菱重、火力不況が直撃、主力重電「低迷2年続く」 欧米大手、リストラ先行 三菱重工業の屋台骨がきしんでいる。15日には宮永俊一社長が主力の火力発電所向けガスタービンの不振が少なくとも今後2年は続く見通しを明らかにした。営業利益の7割を稼いだ主力部門の失速は、MRJや造船の不振とは影響の大きさが違う。世界の需要が半分以下に縮む「火力不況」で、先行して大胆なリストラ策を打ち出した欧米大手に対抗できるか。15日、7カ月ぶりに開いた記者会見で宮永氏は「パワー(発電所向け)があれほど急激に落ちたのは想定外だった」と危機感をあらわにした。温暖化ガスの削減義務を新興国にも求めるパリ協定の成立で、太陽光や風力など再生エネルギーの普及が加速。同社が得意とする出力30万キロワット超の大型ガスタービンは市場の収縮が止まらない。環境急変に対応し、独シーメンスは11月に6900人の人員削減を発表。米ゼネラル・エレクトリック(GE)も12月に入って1万2千人の大規模なリストラを公表した。ただ宮永氏は「日本の企業にレイオフはなじまない」とリストラを否定する。全国5カ所にある製造拠点の再編や効率化に活路を見いだす考えという。だが、悠長に構えている余裕はない。2018年3月期のパワー部門の受注高は前期比2割減の1兆4500億円の見通し。当初のプラス想定を5千億円引き下げた。「GEがあり得ない価格で出してくる」(関係者)というライバルの安値攻勢にも手を焼き、採算も悪化。営業利益は当初想定の3分の2の1千億円にとどまるとみている。ガスタービンを手がける三菱日立パワーシステムズ(MHPS)の安藤健司社長は「大胆な価格を提示して、少し無理をしてでも取りにいく」と採算度外視の受注もあると強調する。しかし、肝心の需要が出てこない。シーメンスによると大型ガスタービンの世界需要は年間110基程度。これに対して世界の生産能力は4倍近い年400基に達し、供給能力の過剰感が目立つ。三菱重工は巨額損失を計上した豪華客船や納入延期を繰り返すMRJなど負の連鎖が続く。だが、ガスタービンは同社の屋台骨。17年3月期には旧エネルギー・環境部門(現パワー部門)が営業利益の7割を稼いだ。客船やジェット機など「夢のある事業」(関係者)でつまずいても、後ろに控える安定感抜群のガスタービンが安心材料だった。14年には仏アルストムの重電部門買収で「打倒GE」を旗印にシーメンスと組み、敗れはしたものの存在感を示した三菱重工。それから、わずか3年の市場急変だ。GEでは8月に就任したジョン・フラナリー最高経営責任者が電光石火でリストラを加速している。世界は待ってくれない。宮永氏は来春で就任5年の節目を迎える。祖業の造船部門の分社など改革を断行した5年を「この会社に足りないのは意思決定のスピードだと感じた」と振り返った。何よりスピードが求められているのは今なのかもしれない。 *10-1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171216&ng=DGKKZO24702360V11C17A2QM8000 (日経新聞 2017.12.16) A重油、3カ月で18%上昇 農漁業に打撃 ビニールハウスの暖房や漁船燃料に使うA重油が値上がりしている。国内スポット(業者間転売)価格は1リットル56.8円前後(海上物)と前月比で2%、3カ月前に比べ18%高い。漁業者への卸価格も上がっている。例年より早い寒波の到来に原油高が重なり、農家や漁師の負担が増えている。農林水産省によると、A重油購入などの光熱費は農業経営費の2~3割を占める。ピーマンは26%、バラは31%が燃料代だ。「今年は寒くなるのが早く2週間ほど早めに需要期を迎えた」(全国農業協同組合連合会)。漁業への影響も出始めている。全国漁業協同組合連合会(東京・千代田)のA重油販売価格は前年同月比で2割高く、漁師から悲鳴が聞かれるという。燃料費は漁業経費の3割に達する。今年はイカやカツオ、サンマが不漁だったため、A重油価格の上昇が打撃になっているという。一度に3キロリットル程度給油するという岡山市の洋ラン農家は「1円上がっただけでシーズンの出費が数万円増える」と話す。価格がさらに上がると温度を下げざるをえず、出荷遅れを懸念する。長崎県佐世保市のミカン農家は「燃料費がかさむと栽培可能なギリギリの温度に設定するため品質に関わる」とこぼす。 *10-1-4:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/160489 (佐賀新聞2017.12.16) JR九州 運行117本減 過去最大、佐賀は7本、来年3月ダイヤ改正 JR九州は15日、来年3月17日のダイヤ改正で、九州新幹線や在来線の運行本数を1日当たり現状より117本減らして3011本とすると発表した。九州全7県が対象で減少規模は過去最大。佐賀県関係は7本削減のほか、始発や最終便の時間繰り上げなどがある。沿線の人口減少を踏まえた鉄道事業の合理化が狙いで、運転区間の短縮や運行日の見直しも行う。ただ、利便性が損なわれることになり、さらなる利用減を招く可能性もありそうだ。博多(福岡市)―鹿児島中央を結ぶ九州新幹線は6本減らして119本とする。在来線では、特急が24本減の277本、快速と普通列車が計87本減の計2615本となる。佐賀県関連では、筑肥線(唐津-伊万里)の最終列車を上下とも約1時間半繰り上げる。唐津線は多久-西唐津の早朝1本の運転を取りやめ、佐賀-西唐津の始発を現行より22分遅くする。長崎線は肥前山口発の最終列車の運転区間を短縮し、諫早行きを肥前大浦まで、多良行きを肥前浜までに変更。肥前山口-佐世保の最終も23分繰り上げる。博多-長崎の特急は、平日の利用が少ない午前10時台~午後3時台の上下各2本を土、日曜日、祝日だけの運行とする。佐賀発の上りの最終や、下りの午後10時台の1本を取りやめ、前後の運転時間の変更などで利便性を確保する。2017年3月期の連結売上高は鉄道事業が4割超を占める。単体での鉄道事業の営業損益は会計処理に伴う費用軽減分を考慮しなければ87億円の赤字となる。福永嘉之鉄道事業本部副本部長は「他事業の黒字で埋めればいいものではなく、鉄道事業を永く続けるために経営体質を強化しなければいけない」と説明する。改正内容では、「早朝や深夜、昼間など利用が少ないところを見直し、通勤、通学の時間帯は(できるだけ)現状のままにした」と語った。佐賀県は今後、県内沿線の影響を把握するとともに、JR九州に利便性の確保を要望する。副島良彦副知事は「公共交通機関に頼っている地域もあって非常に厳しく、本数が減るのは誠に遺憾。県の実情や沿線の声をいろんな形でJR九州へ届けていく」と述べた。 *10-2-1:http://www.kochinews.co.jp/article/145907/ (高知新聞 2017.12.14) 【伊方原発】運転差し止め決定は重い 原発の安全性について、あまり注目されてこなかった角度から司法が疑問を呈した。広島の住民らが四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求めた仮処分の即時抗告審で広島高裁は、来年9月末まで運転停止を命じる決定をした。最大の理由は、阿蘇の巨大噴火の危険性だ。火砕流が到達する可能性が十分小さいとは言えないとして、立地を不適とした。3号機は昨年8月に再稼働し、ことし10月から定期検査のため停止している。来年1月に運転を再開する四電の計画は事実上不可能になったといってよい。原発の再稼働を巡っては、伊方を含め、各地で運転差し止めの仮処分申請が相次いでいる。地裁段階では判断が分かれているが、高裁が運転停止を命じたのは初めてだ。火山は全国各地に存在する。大きな課題を突き付ける、重い決定といえよう。政府や電力企業、安全審査を担う原子力規制委員会も深く受け止める必要がある。決定で広島高裁は、約9万年前に阿蘇で発生した「カルデラ噴火」に触れ、四電の火砕流シミュレーションの甘さを指摘した。研究では、この時の噴火は火砕流が100キロ先まで到達し、山口県に達したことも分かっている。阿蘇の火砕流が海を越えて伊方に到達する危険性は、簡単に想像できるものではない。違和感を持つ人もいるだろう。思い返したいのは東京電力福島第1原発事故だ。大津波の襲来を過小評価し、悲劇を招いた。自然の脅威を謙虚に受け止めることが大きな教訓である。火山の影響も軽んじることはできない。だが、原発回帰は進んでいる。規制委トップが新規制基準に適合しても「絶対安全とは言わない」と主張している中で、だ。決定はこうした現状に改めて疑問を投げ掛けるものでもあろう。広島高裁は他方で、地震や津波など火山被害以外の新規制基準、四電の想定は「合理的」とした。伊方原発は北側に巨大活断層の中央構造線が走る。原告は、四電が耐震設計の目安となる基準地震動を過小評価しており、新規制基準の実効性の不十分さも主張してきた。決定は、地震と火山とでは明らかに判断が異なっている。大きな疑問を残したといえよう。伊方3号機の運転差し止めを求める仮処分を巡っては、今後も司法判断が続く見込みだ。松山地裁の却下決定を受けた高松高裁の即時抗告審のほか、大分地裁、山口地裁岩国支部でも審理が続いている。四電は広島高裁に対し、早急に異議申し立ての手続きを取る方針だ。裁判長は近く定年退官するため、新裁判長による審理が注目される。福島第1原発事故のような惨劇を繰り返してはならない。安全を求める住民の当然の権利に対し、司法の責任は重い。 *10-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171216&ng=DGKKZO24697760V11C17A2EA6000 (日経新聞 2017.12.16) 九電社長、伊方原発差し止め「残念」 火山の状況注視 九州電力の瓜生道明社長は15日、都内で開いた記者会見で、広島高裁による四国電力伊方原子力発電所3号機(愛媛県)の運転差し止めに対して「残念だ」と述べた。高裁は熊本県の阿蘇山が過去最大規模の噴火をした場合の安全性の観点から伊方原発の立地を不適当だと判断した。九電は熊本県と同じ九州の佐賀県と鹿児島県に原発を持つ。瓜生社長は原発運転期間中に高裁が指摘したような噴火が起こる「確率は非常に低いと思っているし、確認のために火山の状況はモニタリングしている」と説明。自社の原発に対する差し止め訴訟では「地下のマグマの状況など科学的な説明」を示して安全性を訴えるとした。神戸製鋼所のデータ改ざんを受けて玄海原発(佐賀県)の再稼働時期を延期した問題で、神戸製鋼への損害賠償請求は「(するかしないかも含め)弁護士と相談中だ」と述べた。再稼働が遅れると原発の代わりに稼働させる火力発電所の燃料費がかさむが、2017年度業績については「発表(した予想)どおりになるよう全社をあげて対応する」とした。 *10-2-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017121901001512.html (東京新聞 2017年12月19日) 北海道東部沖で「M9切迫」 政府調査委、大津波も 政府の地震調査委員会(委員長・平田直東京大教授)は19日、北海道東部沖の太平洋で、大津波を伴うマグニチュード(M)9級の超巨大地震の発生が「切迫している可能性が高い」との予測(長期評価)を公表した。道東沖では340~380年間隔と考えられる超巨大地震が約400年前に発生。北海道大の研究では、この時の津波は海抜20メートルを超え、沿岸から4キロ内陸まで浸水したと推定されている。同時に四国地域にある主な活断層の長期評価も公表。近畿から西に延びる「中央構造線断層帯」は四国を横切り、大分県に及ぶと評価を改めた。断層帯の長さは360キロから444キロになった。 <燃料電池と太陽光発電、次の展開へ> PS(2017年12月22、26日追加):*11-1の仏ルノーのゴーン会長兼最高経営責任者退任は寂しいが、後継者として欧州エアバスのブレジエ最高執行責任者の名前が挙がっているのは、エアバス社が航空機に燃料電池や電動を取り入れる準備が進みそうで期待が持てる。是非、ゴーン氏も何らかの役職に留まって企業連合全体を統括してもらいたいものだ。 なお、EV・燃料電池と太陽光発電を組み合わせれば、我が国は「資源のない国」どころか「エネルギー自給率の高い資源大国」になれる。そして、EVと同様、太陽光発電も1995年前後に私が経産省に提案してから20年以上が経過し、最初は100%日本製だったにもかかわらず、現在では、*11-2のように、2016年のシェアで上位5位以内に日本勢は1社も入っておらず、スリム化することしか思いつかない状況なのである。この原因には、非科学的・感情的思考が多い文系出身者の理系教育の不十分さとそれによる世界競争を考慮しない視野の狭い競争と反発のような次元の低い思考過程がある。 *11-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171222&ng=DGKKZO24921130R21C17A2EA1000 (日経新聞 2017.12.22) ゴーン氏、ルノーCEO退任観測 仏紙報道 来年任期 仏ルノーのカルロス・ゴーン会長兼最高経営責任者(CEO、写真)が退任するとの観測が浮上している。レゼコー、フィガロなどの現地メディアは21日までに、ヘッドハンティング会社による後継者の選定が始まったと報じた。改選期を迎える2018年の株主総会に向けた駆け引きが激しくなりそうだ。ゴーン氏のルノー取締役としての任期は18年6月15日に開かれる株主総会で切れるため、CEO職の去就に注目が集まっていた。CEOを交代する場合、株主総会までに後任を選ぶ必要がある。ルノーは2月に経営委員会を招集し、候補者を決めるとみられる。現状では人材会社に社内人材の評価や外部人材のヘッドハンティングを依頼し、候補者を選んでいる段階とされる。現地メディアでは後継候補として、ルノーでものづくりを統括するチーフ・コンペティティブ・オフィサー(CCO)のティエリー・ボロレ氏や販売担当責任者のティエリー・コスカス氏の名前が挙がっている。ルノーの広報担当者は報道についてコメントを避けた。外部の人材では、欧州エアバスのファブリス・ブレジエ最高執行責任者(COO)らの名前が取り沙汰されている。同氏の名前は2~3年前から挙がっている。自動車業界では、トヨタ自動車のディディエ・ルロワ副社長、仏グループPSAのカルロス・タバレスCEOらの名前も挙がる。タバレス氏は元ルノーでゴーン氏の懐刀的存在だった。ただ、外部の人材はよほどの逸材でないと難しいとの見方が強い。仏政府は外国人CEOを避けたがっているとの観測もある。1999年に始まったルノーと日産自動車の提携関係は20年近くに及ぶが、16年に新たに企業連合に加わった三菱自動車を含め、各社の成長は今もゴーン氏のリーダーシップに依存している側面がある。ルノーのCEOを退任する場合にもゴーン氏はなんらかの役職にとどまり、日産や三菱自の会長職も続けながら企業連合全体を統括するとみられる。 *11-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171226&ng=DGKKZO25048780V21C17A2TI1000 (日経新聞 2017.12.26) 太陽電池、日本勢スリム化 シャープ、子会社移管 パナソニック、国内を縮小 日本の太陽電池メーカーが事業の抜本改革を急いでいる。シャープは2018年春に開発や設計、保守、海外営業など本体の数百人の人員を販売子会社に移管し、蓄電池や家電を組み合わせた提案営業を強化する。パナソニックや京セラは生産を縮小する。日本企業のシェアは中韓勢に押され下がり続けており、事業をスリム化して収益を確保できる体質をめざす。2005年時点の太陽電池の世界シェア(生産量)は、上位5位中4社が日本企業だった。だが再生エネルギーの買い取り価格引き下げや中韓勢の低価格品の流入で日本勢の劣勢が続く。16年のシェア(出荷量)では上位5位以内に日本勢は1社も入っていない。シャープは太陽電池の研究開発や保守管理を手がける葛城工場(奈良県葛城市)の社員などを販売子会社シャープエネルギーソリューション(SESJ、大阪府八尾市)に移管する。開発や間接部門から営業への異動など、配置転換も含めて検討する。今後は住宅や建材メーカーに太陽光パネルを供給するだけでなく、開発部隊などが営業に同行して現場の需要動向に即応できる体制にする。シャープの太陽電池事業は、16年8月に鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入って以降、原料であるシリコンの調達価格契約の見直しにより17年3月期に営業黒字に転じた。だが同期の売上高は1036億円とピーク時(14年3月期)の4分の1程度になっている。12年に始まった再生エネの固定価格買い取り制度(FIT)の見直しで価格が当時の半分程度まで下落しており、シャープ以外も事業見直しを急いでいる。パナソニックの太陽電池事業は17年3月期に初めて赤字に転落した。国内市場の落ち込みにより、「セル」と呼ぶ中核部材を作る二色の浜工場(大阪府貝塚市)は停止中で、島根工場(島根県雲南市)も稼働率が低迷している。太陽光パネルの組み立て工程を担ってきた滋賀工場(大津市)は17年度内に生産を終了する。国内シェア首位の京セラも採算性改善のため生産再編で選択と集中を進めてきた。太陽光パネルに関しては三重県伊勢市と米工場での生産を中国と東近江市に集約した。太陽電池の製品販売も補助金優遇が進むタイなど東南アジアへのシフトを進めている。営業担当者も異動などで海外を増やしている。 <科学的・論理的思考の欠如と集団主義が根本原因> PS(2017年12月24日追加):*12-1に、博多発東京行き「のぞみ」の台車に亀裂があった問題で、「①小倉駅を発車して乗務員が焦げたような匂いに気付き、福山-岡山間で乗客から車内にもやがかかっていると申告があり、岡山から検査班が乗り込んで確認して『異常なし』と告げた」「②JR西の乗務員は新大阪駅でJR東海の乗務員に引き継ぐ際にも『異常なし』と口頭で報告した」「③JR西には、走行中に異常音があったらすぐに停車するなどを定めたマニュアルがあるが、異臭については決められていなかった」と書かれている。また、*12-2に、「④2日に1度、目視による台車検査を実施するが、ファイバースコープや超音波による非破壊検査は実施していない」「⑤JR西は列車数に余裕がないため、列車交換ができなかった」というその原因が記載されている。 しかし、①②のように、明らかに異常があるのに「異常なし」として列車を使い続ける安全よりも社内の人間関係を重視する誤った価値観、③のマニュアルに書いてなければ安全だとする思考力の欠如、④の目視だけで検査できると考える非科学性、⑤の列車交換も可能にしておくセキュリティー概念の欠如 など、時間の正確さを損なわずに安全を維持する工夫がない。そして、その根本には、ゆとり教育と推薦入学で必要な知識を持たず、甘い価値観を持った人間が見え隠れする。つまり、基礎教育不十分が根本原因であるため、こういうことが、命に関わる医療やメディアを始め全分野で進んでいるという恐ろしい事態なのだ。 *12-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201712/CK2017122002000238.html (毎日新聞 2017年12月20日) 【社会】新幹線亀裂「異常なし」引き継ぎ 新大阪駅でJR西乗務員 博多発東京行き新幹線のぞみの台車に亀裂が見つかった問題で、JR西日本の乗務員が新大阪駅でJR東海の乗務員に引き継ぐ際、「異臭はあったが異常はない」と口頭で報告していたことが二十日、JR東海への取材で分かった。両社が具体的なやりとりを調べている。JR西は十九日の記者会見で、新大阪駅でJR東海に運転状況と車両状況が引き継がれたと説明し、「内容については調査中」としていた。異常音や異臭を感知していたが結果的に運行は続いており、指令所と車掌のやりとりの中では走行を止めるという判断はされなかったという。JR東海などによると、のぞみは十一日午後四時ごろ新大阪駅に到着。福山(広島県福山市)-岡山(岡山市)間で乗客から車内にもやがかかっていると申告があったが、JR西の乗務員は交代時に「岡山駅から検査班が乗り込み、異常がないかどうか確認した」として、「異常はない」と告げていた。JR西によると、新幹線の走行中に異常音があった場合はすぐに停車するなどのマニュアルがあるが、異臭については特に決めていないといい、担当者は「今回は異臭や異常音がずっと続いたわけではなく、直ちに支障が出るものではないと判断した」としている。のぞみは十一日午後に博多駅を出発し、小倉駅(北九州市)を発車した際、乗務員が焦げたようなにおいに気付いた。さらに岡山駅を過ぎてうなり音が確認され、名古屋駅で運行を取りやめた。 *12-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2492306021122017TJ1000/ (日経新聞 2017/12/21) JR西新幹線トラブル 運行と検査の体制に穴 JR西日本が東海道・山陽新幹線ののぞみで台車に亀裂が入ったまま運行を続けたトラブルは、2つの問題を浮き彫りにした。一つは異常に気がついても列車を止められなかった運行体制。もう一つが亀裂の予兆を見落とした検査体制だ。「新幹線は遅らせてはいけないという深層心理がある」。JR西の関係者は打ち明ける。JR西はJR東海より新幹線の列車数に余裕がなく、車両繰りに苦労している。新幹線のトラブルでの重大インシデントは今回が初めて。博多駅を出発した列車が運行中に異音やにおいが発生しているにもかかわらず走り続け、JR東海が名古屋駅で台車の亀裂を発見。岡山駅で乗り込んだJR西の保守担当が異常を感知したが停止させなかった。JR西の来島達夫社長は「運行ダイヤ優先ではない」と否定する。だが新幹線は鉄道収入の5割を稼ぐ主力事業。在来線は異常が見つかればすぐに停止して点検する。一方、新幹線は運行中に年100件程度の異音が報告されるが、列車を止めて点検をすることはほとんどない。JR西は2005年に乗客106人が死亡する福知山線脱線事故を起こした。事故を受けて「安全性向上計画」を策定し、自動列車制御装置の導入など年1000億円規模の安全投資を続ける。ヒューマンエラーの研究なども進めてきたが、安全優先の意識が現場まで徹底できたかどうか。もう一つの問題が点検体制の不備だ。JR西と東海は2日に1回のペースで目視による台車検査を実施する。一定期間走行した後も部品などを取り外してより精密な目視検査を行う。だが、今回亀裂が起きた場所は力が集中しない場所と判断し、細かいキズの有無を確認する非破壊検査を実施していなかった。JR西は当面、運行の合間に新たに非破壊検査を実施する。将来は振動センサーを台車部分に設置して運行中でも運転席から異常を検知できるシステムの導入を目指す。JR東海も目視で確認しにくい狭い場所に入り込めるファイバースコープや素材内部も確認できる超音波など、非破壊検査の対象拡充を検討する。今回の重大インシデントの原因は国土交通省の運輸安全委員会で調査を進める。JR西と東海は抜本的な解決策は結果が出てからとしている。
| 経済・雇用::2016.8~2017.12 | 04:10 PM | comments (x) | trackback (x) |
|
PAGE TOP ↑