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2013.9.27 原発の本当のコストの一つ、人間に対する健康被害と環境監視費用
(1)生産年齢人口に当たる人も病気で働けなくなり、GDPと税収・保険料の払い込みが落ちる
 *1のように、がんにかかったことで、通院で会社を休んだり、仕事の生産性が落ちたりして、年間最大約1兆8千億円の労働損失が生まれている可能性が、厚生労働省研究班の研究でわかったそうだ。会社を休むだけで済むならまだよいが、退職したり、亡くなったりする人もいることを考えれば、病気で働けなくなることにより、本人の損失が大きいのは当然のことながら、国としてもGDPや所得税収・保険料の払い込みが落ちた上、医療費・介護費が増える。

(2)年金、医療・介護費用を、何とか減らそうとしている政府の態度
 年金、医療、介護の費用を、何とか減らそうとしているのが現在の政府だが、それには、病気にならなくてよい人を病気にせず、健康で働いてもらうようにすることが必要である。

 しかし、*4のように、「定年どころか年金支給年齢をとっくに超えたじじぃとばばぁが、(中略)未来のことも(こども)たちを抱えた日本中の人々からふんだくり、綺麗事をいうせいじ(政治)。復興は不要だと正論を言わない政治家は死ねばいいのにと思う(2011年9月25日)」「老人の老人による老人のための『やきう(野球)、ますこめ(マスコミ)、せいじ(政治)』がこの3年間、日本を滅ぼすか、日本が老人を駆逐するか瀬戸際だとまじでパパは思っている」「〈ブログ上にコピーした高齢女性のテレビ映像にコメントして〉早く死ねよ、まだ死なないか、ただのバケモノだよ。(13年8月24日)」と記載した経済産業省のキャリア官僚がいる。

 これが、この人のみの特殊な考え方であればまだ問題はないが、この人は、経済産業省から選ばれて2015年のミラノ国際博覧会で日本政府代表を務める予定だった人であり、この考え方が経済産業省では特殊ではなく政策の根底にあることは、経産官僚が出してくる政策を見ればわかる。つまり、仕事上の本音が出ただけという可能性が高いのである。そうして出てきた政策を、メディアが疑問も感じずに大々的に吹聴してしているのを見れば国民の劣化が心配だし、これら官僚が出してきた政策を、「決める政治」として党議拘束して政治が決定していくのも、民主主義からかけ離れており、大きな問題である。

 なお、この人は、自分の両親や祖父母もその「じじぃ」「ばばぁ」であり、自分も20年後には「じじぃ」になり、年をとっても安心して暮らせる社会を作っておかなければ、子どもも含めて自分の家族も不幸なのであって、それは他人も同じだということに思慮が及んでおらず、あまりにも軽率である。この人の軽さは、ブログで書いている内容だけでなく、使っている言葉にも表れている。

 この人を「エリートだから」と評した人もいるが、このように知識がなく、思慮の浅い人間を「エリート」と呼ぶのは、本物のエリートに対して失礼だ。また、このような人間を親として育った子どもの価値観がどうなるかには、恐ろしいものがある。

(3)地方自治体は環境放射線量監視システムに支出せざるを得なくなる
 *2によれば、佐賀県は、玄海原発(東松浦郡玄海町)の環境放射線量を監視する測定システムを充実させるとして、放射性物質のセシウムやヨウ素から出るガンマ線の空間放射線量を測るために、関連予算約3億4300万円を県議会に提案したそうだが、県民にとっては、これも原発のコストだ。

(4)セシウム・ヨウ素のみ、及び空間放射線量のみを測ることに、どれだけ意味があるのか
 私が、このブログの2013年9月22日に記載した通り、原発が排出する放射性物質で病気を引き起こすものには、セシウム・ヨウ素だけではなく、トリチウム・ストロンチウム・プルトニウムなど多数がある。また、放射性物質は微粒子になるため、空間に留まってはおらず、地表に落ち、空間線量よりも地表線量の方が高くなる。

 そのため、空間放射線量のセシウム・ヨウ素のみを測っても、その計測値は実際に身体が影響を受ける放射線量よりもかなり小さく出る。これでは、市民の健康を守る目的で環境放射線量を監視しているとは言えず、市民の安全のために計測するのならば、最大値となる地面や溝を測るべきである。

 また、事故時には、*3のようにフィルター付きベントがあっても住民が数百ミリ被曝すると言われており、フクシマで明らかなように、一時的に避難すれば、すぐに元の場所に戻れるというものではない。

(5)ここまでして原発を維持する理由
 このブログの2013年9月25日の*1で、原発技術者が、「電気を起こすだけなら原発にこだわる必要はない」と述べている。それでは、何のために原発を維持し続けるのかといえば、プルトニウムを生産するためかも知れない。これは、安全保障と他国との関係で、世界が解決すべきことだ。

*1:http://digital.asahi.com/articles/TKY201309230485.html?ref=pcviewpage
(朝日新聞 2013.9.23) 「がんで働けない」損失、最大1.8兆円 厚労省研究班推計
 がんにかかったことで、通院で会社を休んだり、仕事の生産性が落ちたりして、年間最大約1兆8千億円の労働損失が生まれている可能性が、厚生労働省研究班の研究でわかった。こうした推計は国内で初めて。働く意欲のある患者を支援する動きもあり、研究班は「対策を取ることで損失を減らせるかもしれない」と指摘する。国立保健医療科学院の福田敬・上席主任研究官らは2011年度の国の統計をもとに、20~69歳で働いている人ががんになった際の労働損失を推計。対象は最大40万人と見積もった。入院や通院で会社を休んだ場合など治療による直接的な損失は約4500億円。うち女性の乳がんは約550億円と最も多かった。乳がんは40~50代の働き盛りの年代で発症する人が多い上、術後も通院期間が長いことが理由として考えられる。治療日以外についても、一般の人と同じ程度に働けるかどうか、仕事を辞めていないかなどの間接的な労働損失を推計。仮に全員が辞めてしまった場合の損失は約1兆3800億円となり、治療による損失と合わせると最大1兆8千億円になる可能性があるとした。

*2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2555154.article.html
(佐賀新聞 2013年9月25日)  玄海原発、環境放射線量監視システムを更新
 佐賀県は、玄海原発(東松浦郡玄海町)の環境放射線量を監視する測定システムを充実させる。県内各地のモニタリングポストで測定したデータを佐賀市の県環境センターに送る通信網について、従来の有線回線に衛星回線を加えて多重化するなど、システムを更新する。福島第1原発事故を受け、県は本年度、これまで原発から10キロ圏内に18基設置していたモニタリングポストに加え、緊急防護措置区域の30キロ圏内に8基を増設して監視態勢を強化した。ただ、従来のモニタリングポストの通信回線が有線単独だったため、無線回線を加えて多重化する。
 測定するのは、放射性物質のセシウムやヨウ素から出るガンマ線の空間放射線量で、測定数値は県環境放射線モニタリングシステムのホームページ(HP)に掲載している。
 今回のシステム更新では、これまでHPで30分刻みで掲載していた測定データを10分ごとに細分化。さらに、2画面に分かれていた従来の18基と増設8基の測定データを1画面に統合し、計測単位も増設基で新たに導入した「マイクログレイ」に統一する。新システムは、本年度末の運用開始を目指す。県は関連予算約3億4300万円を開会中の県議会に提案している。財源は全額、国の放射線監視等交付金を充てる。

*3:http://mainichi.jp/select/news/20130926k0000m040047000c.html
(毎日新聞 2013年9月25日) 柏崎刈羽原発:フィルター付きベントでも数百ミリ被ばく
 東京電力の広瀬直己社長は25日、柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)で設置を計画中の「フィルター付きベント(排気)装置」を使用した場合、原発の敷地境界で住民に数百ミリシーベルトの被ばくが生じ得るとの試算結果を明らかにした。この日会談した泉田裕彦・新潟県知事の指摘などを受けて答えた。健康に影響が生じ得る被ばく量で、今後、同原発と同じくフィルター付きベント装置の設置を計画している全国の沸騰水型原発で住民の避難計画作成の重要性が高まりそうだ。知事は会談で「県の試算では『甲状腺等価線量』で260ミリシーベルトだ」と指摘。これに対し広瀬社長は県の結果を認めながらも「敷地境界にじっとしていた場合の数字で例外的」と主張。会談後に「数字はいくつかあるが(甲状腺等価線量でなく全身線量で)数百ミリシーベルト」とした。一方、知事は会談で「中越沖地震の際は渋滞で車が進まなかった。じっとしているのは例外ではない。ベントの前に避難できるのか」と懸念を示した。

*4:http://digital.asahi.com/articles/TKY201309250884.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2013.9.25) 経産キャリアのブログ騒動 「復興は不要、もともと過疎」 仕事記述で身元ばれる
 復興は不要だと正論を言わない政治家は死ねばいい――。2年前、匿名ブログに書き込まれた一文が、ここ数日、インターネット上に広まり、騒ぎになっている。閲覧者らが身元を割り出し、筆者が経済産業省のキャリア男性官僚(51)であることがばれたためだ。事態をつかんだ経産省も「遺憾であり、速やかに対応する」として、処分を検討し始めた。この男性は経産省の課長などを務め、今年6月から外郭団体に出向している。復興に関わる部署ではないという。ブログでは匿名だったが、過激な書き込みが目立ち、仕事にかかわる記述から閲覧者らが身元を割り出したとみられる。24日午後から、実名や肩書がネット上にさらされた。「復興は不要だ」との書き込みは2011年9月のもの。被災地が「もともと過疎地」だというのが根拠だ。今年8月には高齢者に対して「早く死ねよ」などと書き込んだ。同7月には「あましたりまであと3年、がんばろっと」などと天下りを示唆する内容も記した。男性は朝日新聞の取材に、ブログは「私的なものとして思うところを書いた」と説明。ただ、被災地についての記述は「不徳のいたすところです」と述べた。ブログは25日夜現在、閲覧できなくなっているが、ネット上で次々と転載されて広まっている。経産省は25日に本人から事情を聴いた。仮に処分する場合は、出向先から経産省にいったん異動させることになる。官僚によるネット上の問題記述では、6月中旬、復興庁の参事官がツイッターで「左翼のクソども」などと、市民団体や国会議員を中傷するツイートを繰り返していたことが発覚。この参事官は停職30日の懲戒処分を受け、出向元の総務省に異動した。総務省は6月下旬、各府省庁に対し、国家公務員がツイッターなどソーシャルメディアを私的に利用する際、個人・団体への中傷を禁じるなどの注意事項を通知していた。
■被災者ら反発
被災地からは反発する声が相次いだ。「現地を知らない人の言葉だ。頭はいいかもしれないが人間の心がない」。岩手県大船渡市の仮設住宅に住む建設業の新沼幸司さん(59)は憤る。宮城県気仙沼市の仮設商店街で飲食店を営む女性(60)は本格再建のめどがたたない。「築いてきたものを取り戻そうと努力しているのに。一人でもこういう人がいる限り、復興できるわけがない」。岩手県大槌町の碇川豊町長は「不要な場所にならないためにどうすればいいのか考えるのが官僚の仕事。仕事を放棄している」と残念がった。
■ブログでの主な書き込み
▽もともと、ほぼ滅んでいた東北のリアス式の過疎地で定年どころか、年金支給年齢をとっくに超えたじじぃとばばぁが、既得権益の漁業権をむさぼるために そいつらの港や堤防を作るために、そいつらが移住をごめる(ごねる)ためにかかる費用を未来のことも(こども)たちを抱えた日本中の人々からふんだくり、綺麗事をいうせいじ(政治)。復興は不要だ と正論を言わない政治家は死ねばいいのにと思う (2011年9月25日)
▽老人の老人による老人のための「やきう(野球)、ますこめ(マスコミ)、せいじ(政治)」がこの3年間、日本を滅ぼすか、日本が老人を駆逐するか瀬戸際だとまじでパパは思っている。
〈ブログ上にコピーした高齢女性のテレビ映像にコメントして〉早く死ねよ まだ死なないか ただのバケモノだよ。(13年8月24日)
▽パパの会社は年毎にどんどん劣化して、救いようのない組織と仕事になっているのだが、それを巧みに避けながら自分のやりたいことだけやらしてもらっているのは、気のせいでなくパパはもっていたのかぁ~、と改めてありがたかった。あましたり(天下り)まであと3年、がんばろっと。(13年7月13日)
※文中のカッコ内は朝日新聞が補足

| 原発::2013.9~11 | 11:12 AM | comments (x) | trackback (x) |
2013.9.25 原発の本当のコストの一つ、食品の安全性と信頼性の低下
   
                    玄海原発
(1)原発の先行的再稼働など恥である
 *3には、「原発安全審査申請2カ月 玄海“先行組”に」というように、原発再稼働を先行することがあたかも進んでいてよいことだというような記事があり、*4には、佐賀県の商工会議所連合会が原発再稼働を要望し、特に唐津商工会議所の宮島会頭が「電力の安定供給のため、玄海原発の再稼働に向けて尽力してほしい」と要望したとされているが、いつまでも時代遅れの技術にしがみついて新しい技術の発展を妨げ、さらに佐賀県の農林水産物や食品の付加価値を下げるのはやめてもらいたい。

 食品を輸出すべき現代は、原発のある国とない国の食品安全に関する取り組みの違いは明白という印象であり、私は、選択可能な場合は、原発のない国、ニュージーランドやオーストラリア産の食品を購入するようにしている。従って、視野を大きく持って、あらゆる影響を考えるべきである。

 そうすれば、*1の記事にあるように、「電気を起こすだけなら原発にこだわる必要はなく、原発に関係する人の半分は原発に疑問を持っている」というのが正解であろう。

(2)福島第一原発事故は地震が最初の原因である
 *1のように、東芝で原発の設計をしていた技術者の証言で、「原発は津波だけでなく、長時間振動の地震も想定していない」とされている以上、玄海原発もかなりのリスクがある。原発事故時に原子力安全委員長だった班目春樹氏(65)が、東芝で班目・渡辺プロジェクトとして、さまざまな想定地震を設定して解析をやったのだそうだが、これで、当時の原子力安全委員長の班目氏が、「この事故はなかったことにしたい」と言った意味がわかった。

 なお、*2のように、世界の地震の90%は(About 90% of the world's quakes occur in the region.)、環太平洋の(the Pacific Ocean)この地域で起こっており、日本では、現在、地震が頻発している。そして、福島原発事故に関する正確な情報は、日本のメディアよりも海外のメディアの方がポイントを突いた正確な報道をしているのだ。そのような状況の中で、本質をつかない机上の空論のような安全基準や審査を通ったからといって、玄海原発も安全と言えないことは明白である。

*1:http://digital.asahi.com/articles/TKY201309230481.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2013.9.24) (プロメテウスの罠)追いかける男:14 なんでも津波のせい
 「津波と違って地震は避けようがないからね。だから今回の事故で地震のことはタブーになっているんですよ。なんでも津波のせいにして、地震の影響を隠そうとしている」。避けようがないからこそ、造るときには地震に気をつかっていた。
 東大卒業後、1971年に東芝入社。格納容器の設計に携わる。福島第一の3、5号機、浜岡の1、2、3号機、女川1号機を担当した。「たとえば浜岡は津波のことは完全に欠けてた。地震を考え、非常用ディーゼルは地下に造るのが当たり前だと思ってた。重くて回転するものは下に置くのがいいと」。しかし想定する地震に長時間振動はなかった、と明かす。「パンチ一つには耐えられるように設計してるんですよ。ところが4分続く揺れに耐えられるようには設計していない。福島ではそれが起こったと思います。疲労破壊です」。社の同僚に震災当時の原子力安全委員長、班目春樹(65)がいた。「一緒に原発の安全性を解析したんです。僕らが中心だったんで班目・渡辺プロジェクトって呼ばれたんですけどね。想定地震を設定してさまざまな解析をやった。原発の安全解析は彼と僕が先駆者です」。
 ぶ厚い報告書を出したら、米国のゼネラル・エレクトリック(GE)社に1年行かせてくれた。GEは敦賀1号機や福島第一1号機の原子炉を設計した原発の草分けだ。「前々から行きたいってお願いしていて。当時はまだGEに学ぶって雰囲気があったんです。夢のような1年だった。すごく勉強した」。帰国して1年たった79年、スリーマイル島の原発事故が起きる。そして86年、チェルノブイリ事故。「いったん事故が起こったらこうなるんだ。こりゃだめだ、と原子力に対する熱が全部冷めました」。合理化の熱にも嫌気が差して91年に原子力部門を離れる。05年に静岡の沼津高専准教授となり、12年教授で退職。13年2月、推されて上野原市長選に出て落選する。「努力すればなんでもできると思ってたけど。選挙は努力してもだめだなあ」。現事務所は父親がやっていた理髪店。「上野原義塾」と名付けて子どもたちに論語を読ませている。「原発に関係する人の半分は原発に疑問を持ってるんじゃないかな。電気を起こすだけなら原発にこだわる必要はないから」。  【プロメテウス】人類に火を与えたギリシャ神話の神

*2:http://www.usatoday.com/story/news/world/2013/09/19/japan-fukushima-nuclear-plant/2835493/#rpctoken=1483849681&forcesecure=1 (USA Today 2013.9.19) Magnitude-5.3 earthquake hits Japan's Fukushima ー DENVER (AP)
A magnitude-5.3 earthquake has hit the Japanese prefecture that is home to the nuclear power plant crippled in the March 2011 earthquake and tsunami.
The U.S. Geological Survey says the quake struck early Friday at a depth of about 13 miles under Fukushima Prefecture and about 110 miles northeast of Tokyo. The Pacific Tsunami Warning Center did not issue an alert.
The Japanese news agency Kyodo News reported that the plant's operator, Tokyo Electric Power Co., observed no abnormality in radiation or equipment after the quake.
Japanese Prime Minister Shinzo Abe on Thursday ordered TEPCO to scrap all six reactors at the Fukushima Dai-ichi plant and concentrate on tackling pressing issues like leaks of radioactive water.
The 2011 disaster caused three reactors to melt and damaged a fuel cooling pool at another. Officials have acknowledged that radiation-contaminated groundwater has been seeping into the Pacific Ocean since soon after the meltdowns.
The region lies on the "Ring of Fire" — an arc of earthquake and volcanic zones that  stretches around the Pacific Rim. About 90% of the world's quakes occur in the region.

*3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2554445.article.html
(佐賀新聞 2013年9月24日) 原発安全審査申請2カ月 玄海“先行組”に
 新たな規制基準に基づく原発の安全審査が進んでいる。電力会社4社が原子力規制委員会に6原発12基の審査を申請してから2カ月余り、「先行組」と、それ以外がはっきりしてきた。九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)はトップグループを走っており、27日には現地調査に入る予定だ。新基準は7月8日に施行され、12基がほぼ同時に審査に入った。規制委は2カ月余りで、20回以上の会議を開いている。
▼専門チーム90人
 九電は90人体制の専門チームを東京に送り込み、ヒアリングなどに対応。規制委は各原発を三つのチームで審査してきたが、ここにきて進ちょく具合は大きくばらついてきた。既に事故時の拠点となる緊急時対策所を備えた免震重要棟を設けた四国電力伊方原発3号機(愛媛県)が最も先行しており、九電の川内原発1、2号機(鹿児島県)と玄海原発も後に続いている。二極化が進み、先行組はこれまでの書類による審査に加えて現地調査へと進んだ。書類だけでは把握しにくい部分を直接、審査する狙いで、13日の伊方を皮切りに、20日には川内、27日には玄海原発を訪れる。これまでの書類審査では、起こり得る重大な事故を具体的に想定し、そこで生じる事態にどう対処するか、時系列で細かく検討してきた。玄海原発では、配管やダクトなどのひび割れや局所的な腐蝕について「1週間以内で補修可能」とした九電に対し、「(重大事故時に)非常に長くないか」「通常は視覚や聴覚、触感で場所を特定できるだろうが、事故時に探し当てられるか」などの厳しい指摘があった。九電は「ごく小さいものは当然見つけられない可能性もある」としつつも、「影響はものすごく小さい」と主張。審査官から「ここでの要求は除去、あるいは修復できるということ。影響が小さいからどうのこうのではない」といさめられる場面もあった。非常時の対応にどれだけの時間がかかるかという見積もりでも、訓練で作業員が全面マスクを着けていない点が問題視された。保安検査官は「全面マスクをすると、かなりやりにくい。本当にこの時間でできるか分からない」と指摘、九電は「今後、訓練で実証したい」と応じた。19日の会合では代替緊急時対策所の電源系統が問題視された。非常時に備えて代替電源を3台準備しているが、それをつなぐ電源系統は1系統だけ。「火災などで同時に機能喪失も考えられるのではないか」と甘さを指摘された。
▼膨れ上がる資料
 規制委が安全性を確認するまでの期間は当初、半年程度との見方もあったが、2カ月がたって、なお先行きは見通せない。申請時に出された書類は玄海原発関連だけでも約1万4千ページに及ぶ。審査が進むにつれ、資料は追加に次ぐ追加で、さらに膨れ上がっている。「審査完了まで、登山に例えれば何合目か」という報道陣の質問に、規制庁幹部も「私たちにも分からない」と返答した。だが、政府は「安全を確認した原発から再稼働する」との方針を掲げており、電力各社とも規制委による“お墨付き”が得られ次第、一気に再稼働へと向かう構えだ。

*4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2554720.article.html
(佐賀新聞 2013年9月24日) 原発再稼働など要望 県商工会議所連合会
 佐賀県商工会議所連合会(井田出海会長)は24日、県庁を訪れ、古川康知事に経済対策11項目を要望した。原発再稼働や有田焼400年事業の財政支援などを求めている。井田会長ら県内8商議所の会頭らが古川知事を訪ねた。唐津商議所の宮島清一会頭は「電力の安定供給のため、玄海原発の再稼働に向けて尽力してほしい」と要望。併せて再生可能エネルギーの普及促進も求めた。有田商議所の山口隆敏会頭は「市場がグローバルになり、規制緩和が進むと厳しい面もある。400年を契機に、担い手が夢を持てる産業にしたい」と述べ、有田焼創業400年に向けた県の事業、財政支援を求めた。
 古川知事は原発再稼働について「厳しい基準で規制委員会がチェックした上で、再稼働かどうかのステージになる。現時点では、国がどう関わるか分からず、過程が見えない」と述べた。有田焼については「コスト競争の波に飲まれると、活路を見いだすのは難しい。400年を契機に、ブランドの再構築を進めたい」と語った。2015年の世界遺産登録が期待される三重津海軍所跡(佐賀市)も話題となり、古川知事は「来てみたら『しょぼかった』とならないようにすべき。観光ルートに組み込まれるような仕掛けを考えたい」と話した。

| 原発::2013.9~11 | 10:54 AM | comments (x) | trackback (x) |
2013.9.22 マスゴミが掲載しない福島の大惨事と原発の本当のコスト(2013年9月23日最終更新)
  
                      秋の果物
(1)国民にとっての原発発電コストは高い
 私もこのブログの2012.9.2に書いているが、*1に記載されており、原発の発電コストは平時でも1kwhあたり15円くらいであり、他の発電方法と比べて高い。さらに、これには、原発立地自治体への交付金、廃炉費用、核燃料の最終処分費用、事故の後始末及び補償の費用は含まれていない。

(2)原発の安全神話は嘘である
 *1に記載されているとおり、事故後も、日本の電力会社、原子力安全保安院、メディア、御用学者は、「日本の事故は、格納容器、鉄筋コンクリートの建屋があるので、チェルノブイリより軽微だ」と主張していた。しかし、格納容器があっても内部の圧力が高まれば爆発するし、事故時にはベント配管から環境に放射能をまき散らさない限り、事故の収束は図れないとのことである。しかし、フクシマ以前に、このような説明を聞いていた人が何人いるだろうか。

(3)フクシマはどれだけの放射性物質を放出したのか
 *1で、「東電や規制機関は、事故で飛散した放射能の量はチェルノブイリの方がフクシマよりも多いと言っているが、フクシマは4基で出力は280万kw、チェルノブイリは1基で100万kwであり、フクシマの場合は、これに加えて3号機の使用済み核燃料プールも損傷しているため、フクシマの方が飛散した放射能の量は多い筈だ」と述べているが、私も種々の証拠から、*1の見解は正しいと思う。

 そして、飛散した放射能が多いほど環境が汚染され、チェルノブイリの最汚染地帯であるナロブリャ地区ドゥリャドイ村は1,850万ベクレル/㎡で、大熊町東平は3,000万ベクレル/㎡(両者ともセシウム137)であって、大地の汚染データは、まさにそれを裏付けている。

(4)内部被曝を恐れるのは、風評被害か
 「外部被曝と内部被曝は同じ」と言う御用学者や「基準値以下のものを食べない人は風評被害を撒き散らしている」と言う人もいるが、*1で小野氏が述べているように、ヒーターの前で体を温める(外部被曝)のと、灼熱した石炭を食べる(内部被曝)くらいの差があるほど、内部被曝は危険だ。

 しかし、日本政府及び日本のメディアは、癌や心疾患などフクシマに起因する疾病を発症した人や動植物の畸形、土壌汚染について、正確な調査に基づいた報告をせず、風評被害であって実害はないとしているのだから、その意図は明らかと言うほかない。

 これについては、本当に重要なことについては的を得た「言論の自由」「表現の自由」を駆使しない日本メディアの報道より*2の方が説得力があり、「福島周辺における放射性元素の生物濃縮は、今後何世代もの日本人に打撃を与え、太平洋も漏出する放射能を含んだ水で汚染され続けよう」というのが、医学的・生物学的にまっとうな意見であり、具体的には下のような病気を引き起こすので要注意である。

 ①トリチウムは、ベータ粒子を放出し、人体に入り込むとDNA内で分子と結合して、突然変異を引き
  起こす。動物実験で、トリチウムは、先天性異常、脳や卵巣を含む様々な器官の癌を引き起こし、
  低線量で精巣萎縮や知能発育不全を誘発する。また、トリチウムは有機的に食物中に取り込まれ、
  魚、野菜、その他の食品の中で濃縮し、放射能寿命が120年以上ある。汚染された食品を摂取す
  ると、10パーセントが人体中で結合してそのまま残り、長年細胞を照射し続ける可能性がある。
 ②セシウムは、カリウムの疑似物質で、心臓、内分泌器官と筋肉に凝縮し、心臓の異常、心臓発作、
  糖尿病、甲状腺機能低下症、甲状腺ガン、横紋筋肉腫と呼ばれる悪性の筋肉癌を引き起こし、
  セシウムの放射能は300年間持続して食物連鎖で濃縮する。
 ③ストロンチウム90も300年間有毒で、カルシウムに類似しており、草と牛乳に凝縮し、更に、骨、
  歯、母乳へと移動し、そこで骨癌、白血病や乳癌を引き起こす可能性がある。
 ④プルトニウムは、体内で鉄のように振る舞うので、吸入された場合、肺癌や肝臓・骨・精巣・卵巣の
  癌を引き起こす。

 なお、「日本の医師達は、患者には病気が放射能に関連しているとは言わないよう上司から命じられている」と書かれているが、そのおおもとの”上司”はどこだろうか? 患者にとっては、これらの病気を、生活習慣の悪さや加齢、家系の遺伝、ストレスなどと説明されることこそ、不当に傷つけられ、ストレスを与えられる行為である。そのため、医師が遠慮なく本当の病因を言い、研究者も放射能の影響について正確に研究できる土壌を作るべきだ。

*1:http://tanakaryusaku.jp/2013/08/0007660 (田中龍作ジャーナル 2013.8.5)
原発安全神話のウソを告発し続ける東電出身の医師
 「目からウロコ」とはこのことだ。原発事故をめぐってマスコミが真実を報道せず、政府がウソをつき、専門家が的外れな解説をしていることがよく分かる。元東電技術者にして医師の小野俊一氏がきのう都内で講演した。東大工学部を卒業後、東京電力に入社した小野氏は、福島第2原発に配属された後、本店の原子力技術課(安全グループ)に勤務した。7年間の東電勤務で身をもって知ったのは、原発安全神話がデタラメで、原発の発電コストは火力・水力と比べるとズバ抜けて高いということだった。
 チェルノブイリの事故後、日本の新聞と電力会社は「日本の原発には、格納容器、鉄筋コンクリートの建屋があるので、チェルノブイリのような事故は起きない」と吹聴していた。ところが当時、東電ではシビアアクシデント対策でベント配管の増設が、検討されていたのである。いくら格納容器があっても内部の圧力が高まれば爆発する(実際、福島の事故はそうなった)。格納容器があるから放射能を環境に放出することはないというのはウソであることが分かった。事故時にはベント配管から放射能をまき散らさない限り、事故の収束は図れないのである。原発の発電コストが他に比べて高いことは、福島の事故後、立命館大学の大島堅一教授などが明らかにした。だが、小野氏はそれより20年以上も前から知っていた。入社早々、先輩から教えられたのである。「高いに決まっているだろ。安いはずがないだろ。そんなの当たり前だ」「放射線管理区域があるだろ。効率は悪いし、被曝はするし、一つ一つの機器も火力と比べると倍以上するんだぞ。これで安かったらおかしいよ」。小野氏が在職中の東電社内資料によると1kwh発電するのに福島第一原発は15円を要した。火力は2~3円。(1995年頃)
 事故発生から間もない頃、記者会見する武藤栄副社長(当時)は、小野氏が原子力技術課時代、直属の上司(課長)だった。事故で飛散した放射能の量は、チェルノブイリの方が、福島よりも多いとの説がある。東電や規制機関がこの説をとる。小野氏は おかしいと指摘する。「福島は4基で出力は280万kw、チェルノブイリは1基で100万kw」というのが主な根拠だ。しかも福島の場合、3号機は使用済み核燃料プールも損傷していると見られる。稼働から40年の福島原発は、稼働わずか3年のチェルノブイリ原発よりも放射能で汚れていることも加味しなければならない。飛散した放射能が多いほど当然、環境は汚染される。チェルノブイリの最汚染地帯であるナロブリャ地区ドゥリャドイ村は1,850万ベクレル/㎡で、大熊町東平は3,000万ベクレル/㎡(両者ともセシウム137)。大地も福島の方がはるかに汚染されているのだ。
 「外部被ばくと内部被ばくは同じ」とする御用学者もいる。だが小野氏は「ヒーターの前で体を温める(外部被ばく)のと、灼熱した石炭を食べる(内部被ばく)くらい違う」と指摘する。マスコミがほとんど報道しない動植物の畸形についても、小野氏は福島県浪江町で見つかった「耳なしウサギ」なども写真つきで紹介した。「畸形は地震の揺れによるストレスが原因とみられる」とする御用学者の珍説も加えて。
 東電技術者として原子力発電に携わった小野氏の“内部告発”は、迫力満点で、講演時間の60分はあっという間に過ぎた。医師として指摘する内部被曝の危険性は説得力に富んでいた。
小野氏は今後の見通しを次のように示す―
   ●人類には原子の火を止めることはできない。
   ●今後も再臨界を何度も起こす。
   ●収束方法は誰も知らない~汚染水処理施設などこの世のどこにもない~
 絶望的な状況なのだが、小野氏はそれでも「あきらめたらお終い。イナゴの精神で戦い続けよう」と私たちを励ます。イナゴ(の群れ)は一匹、二匹殺しても止まらない。全部殺さなければならない。
◇本稿は小野氏の講演を基に近著『フクシマの真実と内部被曝』を参考にして執筆しました。

*2:http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2013/09/post-38ae.html
(2013年9月21日) マスコミに載らない海外記事 終わりのない福島大惨事
 何世代もの健康が危機にさらされている。ヘレン・カルディコット医師は、核や環境の危機を是正するため最もはっきり物を言う、市民運動の熱心な擁護者の一人だ。2013年8月23日、原子力規制委員会が撮影したこの新聞発表用写真は、原子力規制委員会の委員達を含む、防護服を着た原子力監視機構のメンバーが、福島県、大熊町の東京電力福島第一原子力発電所の汚染水タンクを検査する様子が写っている。福島周辺における放射性元素の生物濃縮は、今後何世代もの日本人に打撃を与え、太平洋も漏出する放射能を含んだ水で汚染され続けよう。しかし依然として、日本政府による良い解決策は存在していない。2011年3月11日に、津波が福島の原子炉施設に大変な勢いで進入する映像を見て、世界は変わってしまったのを実感した。巨大な水の波の中に溺れても、破滅的結末をもたらさずに耐える原子炉など存在しない。当時、三基の原子炉が核分裂を起こしていたが、四号炉だけは、放射性物質の炉心は空になっており、核燃料は、現在、地上30メートルの建屋屋上、遮蔽もない冷却プール内にある。地震の間、原子炉への電源供給は停止し、原子炉地下の補助ディーゼル発電機は、冠水して故障し、400万リットルもの冷却水を、各原子炉に送っていたポンプも故障した。
 数時間のうちに、第一号炉、第二号炉と第三号炉中の極めて高熱の放射能をもった炉心が溶け始めた。溶解する際、ウラン燃料棒表面のジルコニウム金属クラッディングが水と反応し、水素を発生させ、それが第一号炉、第二号炉、第三号炉と第四号炉建屋で、大変な激しさで爆発し、膨大な量の放射性元素を大気中に放出した。3月15日だけで、10京ベクレルのセシウム、40京ベクレルのヨウ素、更に40京ベクレルの不活性希ガス(キセノン、クリプトンやアルゴン)が漏出したものと推計されている。長期にわたり、チェルノブイリでの、2.5倍から、3倍の希ガスが大気中に放出された。希ガスは、X線によく似た、極めて強力なエネルギーのガンマ放射体で、外部から人体に貫通し、吸入されると、肺から吸収され、性腺を含む脂肪組織に蓄積され、周辺の器官を、ガンマ線放射能に曝す。セシウムとヨウ素131は、ガンマと、ベータ放射体でもあり、吸入と摂取で人体に入る。しかし事故後の数週間、数ヶ月間に、100種以上の他の放射性元素も放出され、何千人もの人々が放射能の雲に曝された。破損した原子炉は、現在も放射性浮遊物質を放出し続けている。2013年8月22日の東京電力撮影の新聞発表用写真には、福島県、大熊町の東京電力福島第一原子力発電所汚染水タンク周辺の放射能レベルを測定する東京電力の作業員が写っている。幸いなことに、最初の数日間、風は太平洋方向に吹いており、放射性降下物の80パーセントを運び出し、その大半は太平洋に落ちた。しかし、3月15日頃に風向きが変わり、北西方向に吹き、東京の一部を含む、日本の広い領域が酷く汚染された。約2百万人の人々が、依然、福島県や他の都県の酷く汚染された地域で暮しているが、こうした地域は、放射能で非常に汚染されており、チェルノブイリ事故で同様に人口が密集していた地域は、ソ連政府により、速やかに避難させられた。
 福島原発事故時には、空前の量のひどく放射能に汚染された水も太平洋に流れ込んだ。だが、それは止まっていない。東京電力は、300トンもの汚染水が、30カ月前の事故以来、毎日太平洋に漏洩しており、これまで270,000トンもの水が流されたことを認めた。それぞれ120から130トンの重量がある3つの溶融炉心が、原子炉容器の15センチの鋼鉄から溶け出しただけでなく、炉心は今や、ひどくひび割れした格納建屋のコンクリート床上に溜まっているか、あるいは大地そのものの中に溶けだしてしまっていることが明らかになっている。これは原子力業界用語で‘溶融からチャイナ・シンドローム’と表現されるものだ。原子炉施設が、山脈底部の古代河床上に建てられている為、山から流れおりてくる膨大な量の水が(毎日1,000トン)これらの高放射能の炉心周辺を循環し、放射性元素の膨大な濃縮を薄めている。
 東京電力は、この放射性の水が、海に流れこまないように、海に面した所に、一種のコンクリート・ダムを建設した。しかし、絶えず流れ込む水が、ダムの背後に溜まり、太平洋に溢れ出ている。それぞれの原子炉炉心には、広島規模の原爆が放出したものの1,000発分の放射能が入っており、その寿命が、数秒から何百万年に至る、200種以上の様々な放射性元素を含んでいる。
●医学的な意味
 福島原発前の湾の水はトリチウムで高度に汚染されていて、その濃度はずっと上昇しており、今や1リットル当たり4,700 ベクレルもの値となっており、海水中で記録されたものとして最高だ。更には、総計20兆から40兆ベクレルのトリチウムが、太平洋に放出されてしまった。一ベクレルというのは、一秒に一回の放射能崩壊ということだ。トリチウムは放射性の水素、H3だ。酸素と化合して、トリチウム水、HTOとなるが、これは非常に危険だ。トリチウムは、電子つまりベータ粒子を放出するが、万一人体に入り込むと、極めて強力だ。トリチウムは、DNA内で分子と結合し、突然変異を引き起こす。様々な動物実験で、トリチウムは、先天性異常、脳や卵巣を含む様々な器官の癌を引き起こし、驚くほどの低線量で、精巣萎縮や知能発育不全を誘発する。トリチウムは、有機的に食物中に取り込まれ、魚、野菜や、他の食品の中で濃縮するが、放射能寿命は120年以上ある。汚染された食品を摂取すると、10パーセントが人体中で結合し、そのまま残り、長年細胞を照射し続ける可能性がある。主要な放射性元素の一つセシウムは、カリウムの疑似物質で、心臓、内分泌器官と筋肉に凝縮し、心臓の異常、心臓発作、糖尿病、甲状腺機能低下症や、甲状腺ガンや、横紋筋肉腫と呼ばれる、極めて悪性の筋肉の癌を引き起こす可能性がある。セシウムの放射能は、300年間持続し、食物連鎖で濃縮する。
 もう一つの極めて危険な元素は、ストロンチウム90で、これも300年間有毒だ。カルシウムに類似しており、草と牛乳に凝縮し、更に、骨、歯、母乳へと移動し、そこで骨癌、白血病や乳癌を引き起こす可能性がある。
 他の多くの放射性元素の中で、海に漏れだしたことがほぼ確実なものとして、放射能が240,000年間持続し、最も強力な発癌性物質の一つで、わずか100 万分の 1グラムで癌を引き起こすプルトニウムがある。それぞれの原子炉炉心には、225キロのプルトニウムが含まれているが、プルトニウム/ウラン燃料棒が、炉心内に実験として挿入されている為、第3号原子炉のプルトニウムは更に多い。体内で、プルトニウムは鉄のように振る舞うので、吸入された場合、肺癌や、肝臓、骨、精巣や卵巣の癌を引き起こす。鉄類似物として、胎盤を簡単に通り抜け、サリドマイドで引き起こされたのと同様な極端な先天性奇形を引き起こす。生殖器を照射するあらゆる放射性元素は、精子と卵子中で突然変異を引き起こし、糖尿病、嚢胞性線維症、血友病、血鉄素症や、他に6000種の、遺伝的疾患の発生率を、将来の世代にわたって増加させる。こうしたものは、太平洋と大気を汚染している100種以上の致命的な放射性毒物のごく一部で、そのそれぞれに、食物連鎖や人体に入る独自の経路がある。放射性元素は無味、無臭で、目に見えず、癌や、他の放射能に関連した病気が顕在化するには長年かかり、大半の癌では、5年から80年を要する。
 子供は、放射能の発がん効果に対し、大人よりも10から20倍敏感で、胎児は、何千倍も敏感だ。妊婦の腹部に、一回、X線を照射すると、赤ん坊の白血病の可能性は二倍になる。女性は、あらゆる年齢で、男性より敏感だ。放射能は累積し、安全な放射線量というものはなく、人が線量を受けるごとにで、癌が発生するリスクを増す。非常に懸念されるのは、福島では、18歳未満の子供の小児甲状腺ガンが、既に18症例、診断されており、更に25症例が疑われているという事実だ。これは癌としては驚くほど短い潜病伏期であり、こうした子供達がほぼ確実に、極めて高い線量のヨウ素131を受け、更に、過去に、そして、いまも他の発癌性放射性元素を吸入し、摂取していることを示している。チェルノブイリ被害者では、甲状腺ガンは、4年間発症しなかった。甲状腺ガンが、幼い子供達で見つかることは稀だ。ヨウ素131の放射能寿命は100日であり、強力な発がん性物質だ。一方、ヨウ素129の放射能は数百万年続く。350,000人以上の子供が、依然高放射能の地域に住み、学校に通っており、小児甲状腺ガンが増加しているのと同様、白血病の症例数も、およそ今から二年後に増加し始め、様々な器官の固形癌は、およそ11年後に診断されよう。これらは、今後70 -80年間にわたって、頻度は増加しよう。
 汚染された地域の食物は、土壌から、放射性元素を、生物濃縮し続けるので、何百年にもわたり、放射性を含んだままとなり、将来、何世代にもわたり、日本人を、癌発生率の増加が襲うことは確実だ。日本の医師達は、患者には、患者達の病気が放射能に関連しているとは言わないよう、上司から命じられていると報告している。
●水と太平洋
 原子炉施設に話を戻そう。東京電力は依然、毎日、何百トンもの塩水を、溶融した原子炉炉心を注ぎ込み、更に1,000トンの地下水も、破損した原子炉の中を流れている。この恐るべき状況をコントロールしようとして、東京電力は、毎日300から400トンのこの酷く汚染された水を、原子炉施設近くの、1,060基の巨大な保管タンクにくみ上げている。こうしたタンクは、現在、350,000トンの水を擁しており、この果てしない水の流れを収容するために、毎週更なるタンクが増設されつつある。東京電力は元々、この水をろ過する多核種除去設備(Advanced Liquid Processing System=ALPS)を使って 放射性汚染物質の一部を除去しようとしていたが、タンクの一つが腐食して、今年6月に停止した。タンクは、過去二年間、慌ただしく建設されたもので、継ぎ目にゴムをあてたものや、金属ボルトを使ったものもあるが、ボルトは腐食しつつあり、しっかり溶接されているものはごく僅かだ。最近、作業員達が、高放射能の水が漏れだしていて、タンク現場を汚染していることを発見した。タンクから漏れている300トンの水は、一時間、100ミリシーベルト、10レムと測定されたが、 こうした水の一部も海に流出している。原子力作業従事者は、年間5レムの被曝が許容されている。これが見つかった為、現在の事故レベルは、1から、3に上げられたが、元々の事故のレベルは7で、チェルノブイリと同等で、あり得る最悪のケースだ。更に多くのタンクが漏れているものと推定されている。最近まで、東京電力ではわずか二人に、不十分なガイガー・カウンターを持たせて、1,060基のタンクを一日二回、パトロールさせていた。新たな測定器が与えられると、一時間当たり1,800ミリシーベルト、180レムという放射能が、他のタンクで漏れた水の中で検知され、数日後には、一時間当たり2,200ミリシーベルト、220レムという数値が検知された! これは大半がベータ放射能で、作業員達の衣服を貫通しないものと推測された。ところが高レベルのガンマ線が、タンクから常時発せられており、ガンマ線は、X線同様、妨害されずに、人体を貫通する。つまり、被曝した人々の半数が亡くなる半数致死量は、250レムだ! 作業員達が大きな危険にさらされているだけでな、東京電力は、100年以上継続する可能性があるこの惨事に対処するのに必要な人員に、急激な不足をきたしている。東京電力は、井戸から採取した水の中のトリチウムのレベルは、放射能を含んだ水の多数の保管タンクの数値に近く 9日曜日、同じ場所での4,200ベクレル/リットルから、9月10日火曜日、1リットル当たり64,000 ベクレルへと上昇したと述べている。タンクを更に設置する場所は足らなくなりつつあるが、水は流れ込み続けており、もしここで次のリヒター・スケールで6以上の地震があれば、タンクとタンクをつないでいるプラスチック配管そのものが破断し、中味を海に放出しかねない。もし地震が起きなかったら、日本は一体この水をどうするのだろう? 太平洋に放出するしかないだろうことは明白だ。ところが最近、山の帯水層が、ドッと押し寄せ、損傷した炉心を襲うのを防ぐ為、施設の背後と周囲に、長さ1.45km 深さ30メートルの凍土壁建設に、政府は470億円投入すると安倍首相は発表した。
 原子力技術者のアーニー・ガンダーセンは、 サイトを片づけ、状況をコントロールしようとするには少なくとも50兆円はかかると推計しており、凍土壁は水をブロックする十分な深さがない可能性があると語っている。更に、凍土壁の維持には、莫大な量の電力を必要とし、原子炉はすべて閉鎖されるだろうから、おそらく石炭で発電されることになろうが、それによって、地球温暖化は促進され、停電するようなことがあれば、凍土が溶けるだろうことは明らかだ。100年以上、凍土は無傷のままでなければならないのだから、良い解決策とは言えない。政府はまた、海に流せるようにすべく、水から放射性元素を除去するという、成功裏になし遂げることは、事実上不可能なギリシャ神話のシーシュポスの様な果てしのない無駄仕事の為に、150億円投入することを計画している。解決策が無い他の問題もある。原子炉施設全体が、びしょ濡れの土地上に立っており、土地は今や不安定で、ぬかるみ、あるいは液状化している。敷地そのものが毎日多数の小規模地震に見舞われているが、リヒター・スケールで6ないし7以上の地震が起きるようなことがあれば、建屋の一棟か複数棟が崩壊し、必ず悲惨な結果になるだろう。
(*本コラムの記述、見解、意見は、全て著者のものであり、必ずしもRTのそうしたものを表すものではない。 記事原文のurl:rt.com/op-edge/fukushima-catastrophe-health-japan-803/ )


PS(2013.9.23追加):*3は、2013年9月23日の日経新聞社説だが、あまりにも非科学的で、馬鹿じゃないかと思った。何故なら、被曝線量を年1ミリシーベルト以下にするとした目標が高すぎる地域なら、放射線の身体への影響に妥協はないため、そこに人が帰還することこそが、非現実的だからである。また、いくら住宅地や農地を除染しても、森林や原野と空気・水で繋がっているため、森林や原野を除染していなければ放射性物質の濃度が次第に平準化してきてすぐにまた汚染され、そこに人は住めない。従って、安全性と除染費用は天秤にかけられないのだ。さらに、年間被曝線量が20ミリシーベルト(5年で100ミリシーベルトに達する)もある地域で、いくら住民の健康管理をしてもDNAの損傷を防ぐことはできず、被曝を減らす努力をしても限度がある。従って、現実的な計画に練り直すとすれば、除染しても線量が下がらない地域の住民には移住政策を進めて安心して生きていけるようにすべきであり、それは事故直後からできた筈だし、やらなければならなかったのだ。

*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130923&ng=DGKDZO60070130T20C13A9PE8000 (日経新聞社説 2013.9.23) 帰還促す現実的な除染計画に
 福島第1原子力発電所の周辺で除染が進んでいない。原発に近い11市町村の除染は国が直轄で実施し、来年3月末までに終える予定だった。だが7市町村でそのメドが立たず、環境省は今年末までに計画を見直すとした。除染が遅れているのは、汚染土を運ぶ仮置き場や中間貯蔵施設を確保できず、住民の合意を得るのに手間取っているためだ。長期的に被曝(ひばく)線量を年1ミリシーベルト以下にするとした目標も、自治体などから「目標が高すぎて非現実的だ」と批判が出ている。
 住民の帰還や復興には除染が欠かせず、国が責任をもって加速しなければならない。一方で、森林や原野を含めて徹底的に除染するとなると、費用が巨額に膨らむ。線量がある程度下がった地域では、住民の健康管理や被曝を減らす対策に力点を移し、現実的な計画に練り直すべきだ。まず住宅地や農地の除染を急ぎたい。福島県飯舘村では宅地の3%、農地の1%しか除染がすんでおらず、住民の帰還や生活再建の足かせになっている。中間貯蔵施設を早く造る必要もある。環境省は大熊町などを候補地に挙げた。地元に安全性や必要性を丁寧に説明し、計画通り2015年の稼働をめざすべきだ。
 住民の帰還の目安となる年間被曝線量を20ミリシーベルト以下、長期的に1ミリシーベルト以下とした目標も、それで妥当なのか改めて議論が要る。年20ミリシーベルトは国際機関が「健康影響を回避する出発点」と定めた数字であり、それを満たすだけでは住民の不安を拭えない。日々の被曝線量をチェックし、放射線が高い場所に近づかないようにするなど、被曝管理が重要になる。除染一辺倒の対策ではなく、住民に線量計を配ってデータを集め、相談窓口や健康診断の体制を拡充する支援策が欠かせない。原子力規制委員会は専門家チームを設け、住民の健康管理に関する支援策づくりを始めた。環境省はそれも踏まえ、住民が安心して帰還できる計画を作ってほしい。

| 原発::2013.9~11 | 10:28 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.9.17 福島第一原発事故の真の原因は地震だという証言と日本政府の対応について(2013.9.19最終更新)
  
2013.8.21朝日新聞より     *3より              *4より  
    
(1)原発の込み入った配菅が、あの大地震で故障しなかったわけがない
 原発には、きゃしゃで細長い無数の配管が張り巡らされており、日本の電力会社におけるその管理は、あのようなタンクに汚染水を貯蔵して汚染水を垂れ流したり、ネズミの侵入で停電を起こさせたりするようなレベルである。そのため、私は、*1の福島第1原発事故発生時に1号機で働いていた一人の男性作業員が神戸新聞に対して話した*1の証言は、本当だろうと思う。

(2)日本政府のやり方なら正しいのか疑問
 *2に記載されているように、レベル7の爆発事故を起こしたチェルノブイリ原発4号機はコンクリートで固められ「石棺」にされているが、同じレベル7のフクシマは水素爆発であり核燃料はメルトダウンしたものだとして、「水棺」にして冷やし続けている。そのため、2年半も放射性物質による汚染水が海に漏えいし続け、天井が開けっ放しであることによって、放射性物質が空中にも放出され続けているという恐ろしい事態なのである。

 また、*2のように、ウクライナでの年間被曝線量と管理方法は ①原発から30キロ圏内は立ち入り制限、②年間5ミリシーベルト以上は強制的な移住と耕作禁止、③年間1ミリ~5ミリシーベルトは希望者には移住支援し耕作は可能、④年間1ミリシーベルト以下でも汚染の監視となっており、区域区分の根拠になっている汚染度の基準には、セシウム137以外のストロンチウム90などの量も含まれる。

 一方、日本では、*3のように、放射線量が年間20ミリシーベルト以下なら「避難指示解除準備区域」であり、20~50ミリシーベルトでは「居住制限区域」であって、耕作禁止区域は特にない。また、除染も遅れており、いい加減だが、そもそも除染は、一年以内に終わっていなければ次に進めないものである。また、計測されているのは空間線量のみであり、それもセシウムによる汚染のみである。ここに見えるのは、旧ソ連よりも人権を無視している日本政府の姿だ。

(3)予算獲得と新組織作りしか能がない政府
 そのような中、*4のように、安部首相は、ブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会で、「汚染水についてはまったく問題はない」と言い、実際には、高濃度汚染水が外洋に流出し続けているため、政府は、470億円の予算をつけ、新しい会議や委員会を作った。しかし、それは、消費生活アドバイザーの秋庭悦子委員が「組織が乱立して、責任がどこにあるのか見えにくくなっており心配だ」と語っている状況なのである。

(4)福島近海の魚介類が安全なわけがない
 *5のように、東京電力は、16日午後、台風18号の大雨で、汚染水をためているタンク周囲の堰の内側にたまった水の放出を始め、ストロンチウムなどの濃度が法で定める放出限度(1リットルあたり30ベクレル)より低いため緊急措置だと説明している。しかし、それは、*6のように17万ベクレルもある汚染水漏えい域の高放射能のタンク近くのものであり、その汚染水保存タンクの制作はお粗末きわまりなかった。つまり、放射性物質を閉じ込めようという決意は、最初からなかったと判断できるのである。

 *7のように、韓国が、この汚染水問題で、9月9日から青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の各県産水産物の輸入を全面的に禁止したので、日本の水産庁が、韓国に輸入規制撤回要求を行い、その理由は「韓国側の措置は科学的な根拠に乏しい過剰なもの」ということだそうである。しかし、食品や薬品は、安全が確認されるまでは口にしないのが当たり前であり、立証責任が逆である。

 つまり、安全性の追求や製造物責任は、農林水産物でも非常に重要であり、それをないがしろにすれば、今まで培ってきた日本製品すべての安全・安心の信頼やブランドに傷がつくのであって、日本政府や水産庁がやるべきことは、韓国に苦情を言うより、汚染水漏えい元に苦情を言って、安全な魚介類を提供できるようにすることである。それは、韓国以前に、日本国民に対する誠実さでもある。

 なお、福島近海の魚については、少ない検体を調べたデータ(http://www.jfa.maff.go.jp/j/housyanou/pdf/1304-06_result.pdf 参照)があるが、基準値を超えているもの、超えないまでもセシウム濃度の高いものが、低層の海水魚や淡水魚に散見され、ここでもストロンチウムなど、セシウム以外の放射性物質は測定されていない。そして、日本政府は、このデータを外国には報告したが、国内では特に報告せず、報道もされないという状況なのである。

 さらに、*8のように、国際原子力機関(IAEA)の科学フォーラムで、気象庁気象研究所の主任研究官が、「原発北側の放水口から放射性物質のセシウム137とストロンチウム90が1日計約600億ベクレル、外洋(原発港湾外)に放出されている」と報告し、これは、総量規制のない基準の作り方そのものの問題点も含め、多くの国民にとって重要な問題だが、日本のメディアは台風被害と”選挙違反”とされた未決案件の報道しかしていない。これで、日本政府や日本のメディアを信頼できるだろうか?

*1:http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201309/0006327170.shtml
(神戸新聞 2013/9/11) 地震で配管落下 続く場当たり体質 福島第1元作業員の「遺言」
 東日本大震災から11日で2年半。節目の日を前に、福島第1原発事故発生時に1号機で働いていた一人の男性作業員が亡くなった。全身に転移したがんと、石綿(アスベスト)が原因とみられる肺線維症(じん肺)に侵されていた。男性は5月下旬、神戸新聞の取材に応じていた。事故後の東京電力の対応を批判し、「このまま日本各地で原発を再稼働すれば『安全神話』が復活するだけだ」と危機感をあらわにした。福島県郡山市で暮らしていた木下聡さん。原発の電気設備を専門にする技術者で、東電の3次下請けに当たる同県大熊町の会社に40年間勤め、昨秋に退社した。その直後、肺線維症と診断され、肺がんも判明。8月5日、65歳で亡くなった。男性は、原発事故の原因となった全電源喪失について、東電が地震の揺れとの関連を否定することに憤った。「地震発生時、老朽化が進んでいた無数の配管やトレーが天井からばさばさと落ちてきた。下敷きにならなかったのは奇跡。あれだけの破壊で『無事』なんてあり得ない」。最近も、同原発では汚染水漏れやネズミの侵入による停電などが相次ぐ。場当たり的な体質は変わらない。「素人工事の結果だ。熟練作業員が線量オーバーで現場に入れなくなっており、同様の原発事故は今後も起きるだろう」と強調した。「簡単には死ねない。話せるうちに体験を伝えたい」と話していた男性。この時の取材が「遺言」となった。

*2:http://www.nikkei.com/article/DGXBZO59625270S3A910C1000000/?dg=1
(日経新聞 2013/9/16)  放射能半減、その後の世界 フクシマは何を学ぶべきか チェルノブイリ27年後の転機(1)
 チェルノブイリ原発事故から27年が過ぎた。同原発がようやく本格的な解体作業に入ろうとする一方、原発があるウクライナの国内では拡散した放射性物質が自然減衰し、避難地域の見直しが議論され始めた。チェルノブイリは大きな転機を迎えているが、事故の傷痕は容易に癒えない。ウクライナの姿は福島や日本の将来と重なってみえる。
■ようやく住民は戻ってきたが……
 爆発したチェルノブイリ原発4号機はコンクリートで固められ「石棺」になっている。「放射線量を政府は計測したが、公表されていない。私たちは知らされていない」。ウクライナ科学アカデミー社会科学研究所のリディア・アムジャディーン博士は話す。秘密主義が横行した旧ソ連時代の話ではない。いまのウクライナでのことだ。ウクライナ政府は原発事故に伴う避難区域の地域指定を見直す検討を始め、8月までに各地で空間放射線量を測ったという。ただその結果は現時点で未公表。多くの国民は避難区域がどのように分類し直されるのか、今は想像するしかない。避難区域は4つのゾーンに分けられている。段階に応じて居住や耕作が制限され避難者への生活補助も決まる仕組みだ。地域指定は1991年に確定した後、これまで一度も見直されてこなかった。ただ主要な汚染物質であるセシウム137の半減期が30年であるため、27年間の自然減衰によって汚染地の空間線量は確実に下がっている。ウクライナ政府が見直しを考えた理由のひとつはここにある。実はこの動きには反発がある。首都キエフの北西約150キロにあるコロステン市。ボロディーミル・モスカレンコ市長は「単純な指定見直しには反対だ」と話す。同市はチェルノブイリ原発から100キロ以上離れているが汚染を受け、事故から数年が過ぎてからゾーン3(自主的な避難の対象)の地域に分類された。事故直後から市民の移住や児童の疎開が始まっていたが、指定後は医師や教師など専門職の市民を中心に転出する人が相次ぎ、一時は人口が約40%減ってしまった。

<ウクライナにおける4段階の区域指定 ①区域区分 汚染度(1平方メートル当たりのセシウム137) ②想定される被曝線(ひばく)量(年) ③管理の仕方>
第1ゾーン ①原発から30キロ圏内 ③立ち入り制限
第2ゾーン ①55万5千ベクレル以上 ②5ミリシーベルト以上 ③強制的な移住、耕作禁止
第3ゾーン ①18万5千~55万5千ベクレル ②1ミリ~5ミリシーベル ③希望者に移住支援、耕作可
第4ゾーン ①3万7千~18万5千ベクレル ②1ミリシーベルト以下 汚染の監視 ③移住支援はなし
 *区域区分の根拠になっている汚染度の基準には、セシウム137以外のストロンチウム90などの量も含まれる。

 そこで国や州政府の産業育成支援を受け復旧に努めた。家屋の屋根や道路を除染した結果、今は人口約6万6千人。事故前の7万2千人には及ばないものの、人々がかなり戻り新しい住民も移住してきた。出生率も上昇し、復興の優等生とみなされるまでになった。指定見直しがあれば、コロステン市はゾーン4(汚染監視のみ)に分類されるとみられる。復興にさらに弾みが付くようにも思えるが、「生活補助がもらえなくなり、被災者への社会的保護がなくなるのは困る」と市長は言う。補助には汚染地で働く手当(毎月約10.5グリブナ=約130円)のほか、医療費や学校給食費の減免、有給休暇の割り増しなど様々な種類がある。86~93年に居住していた市民に権利があり、人口の約86%(約5万7千人)が補助を受け取っている。

■国家予算の約2割を食いつぶす経費
 市長はさらに続ける。「科学者が調べているのはセシウムだけでストロンチウムやプルトニウムに関してはわからない」。低線量被曝の健康影響に関する不安も口にする。見直し反対の意見は、市のあるジトミール州議会を通じて中央政府に伝えたという。同市医学診断センター所長のセルゲイ・チョルニイ医師(小児科)も見直しに反対する一人だ。「補助金はたいして大きな額ではないが、やめること自体が被災者に対しひどい仕打ちになる」。指定見直しが空間線量に基づいて判断され、住民が実際に浴びる線量が考慮されていないのは「おかしい」とも言う。一方で見直しに対して積極的な意見もある。市民の心の相談にあたる同市コミュニティー開発センターのセルゲイ・ヴィジフスキー所長は「ゾーン4に指定されれば、町の外からの投資を呼び込むのに有利になり長期的にみて町の発展につながる」と話す。市民は収入や家族に関し様々な悩みや不安を抱えている。放射能はその一部にすぎず、むしろ放射能の問題は「相対的に比重が小さくなっている」。補助を続けることが「市民の自立心を損なう」とも言う。所長は事故直後に高汚染地で働いたリクビダートル(事故処理作業者)のひとり。いったん町を離れたがすぐに戻った。避難地域見直しは重い政治的課題をはらむ。政府が放射線量計測の結果をすぐに公表しないのも、対立をあおるのを心配してのことかもしれない。
 そもそも補助金支給などを盛ったチェルノブイリ支援法は91年のウクライナ独立後に制定された。その内容は旧ソ連時代に固まっていたのである。現在のウクライナに比べれば「財政的に豊かな旧ソ連時代の約束が基礎になっている」と国立戦略研究所のオレグ・ナスビット主任専門官は指摘する。現実問題として、ウクライナ政府はこの法律で定めた補助の満額をすでに支払えないでいる。何十種類もの手当や補助があり、どの程度が未払い状態なのか正確な数字はわからない。ナスビット氏によると、支援法が求めるチェルノブイリ関連の経費はウクライナ国家予算(4120億グリブナ=約5兆円)のおよそ2割にあたる巨額なもの。数え方にもよるが、同国でチェルノブイリ被災者と呼ばれる人は200万人以上にのぼる。避難地域の指定見直しによって、支払い負担を軽減したいとの思惑が政府の側にあるのは間違いない。ただ反対を押し切ってまで踏み切れるのか、未知数だ。
 一方日本へ目を向けてみると、福島では避難区域の見直しがすでに始まった。ウクライナに比べて日本は豊かな国だが、避難指定が解除され住民が帰還した場合、やはりウクライナと同様に一定期間が過ぎれば補償金はなくなる。帰還は強制すべきものではない。かといって住民が帰らなければ地域の再生はむずかしい。真の復興につなげるには何が必要で、どのような道筋を経るべきか。少なくとも住民や自治体が納得の上で進めないと、禍根を残しかねない。ウクライナでは「補助は要らない。ただ故郷に戻りたい」としてゾーン2(強制移住の対象)の汚染地域にさえ自主的に戻る住民がいるという。政府はそれを黙認しているそうだ。こじれてしまった生活支援と帰還の関係。「福島では繰り返さないでほしい」(ヴィジフスキー所長)との言葉が重く響いた。

*3:http://digital.asahi.com/articles/TKY201309100634.html?ref=comkiji_redirect&ref=nmail  (朝日新聞 2013.9.10) 
除染終了時期、示せず 福島7市町村で作業延長 環境省が示した新たな除染工程
 環境省は10日、福島県の11市町村で行う国直轄の除染について、今年度中に一律で作業を終えるとしていた工程表を撤回し、7市町村で作業を延長すると発表した。終了時期は示しておらず、住民の帰還時期や復興計画に影響が出そうだ。延長するのは、南相馬市と飯舘村、川俣町、葛尾村、浪江町、富岡町、双葉町の7市町村。環境省は各自治体と協議して、年内にも終了時期も含めた除染計画をまとめる。2012年1月に公表した工程表は、11市町村のうち放射線量が年間20ミリシーベルト以下の「避難指示解除準備区域」と、20~50ミリシーベルトの「居住制限区域」について、今年度中に除染を終了するとしていた。だが、計画通りなのは、すでに終了している田村市のほか、楢葉町、大熊町、川内村の計4市町村だけ。浪江町と富岡町はまだ作業に入っておらず、双葉町については除染計画すら策定されていないなど、作業は大幅に遅れている。
 環境省は原因の一つに、仮置き場の設置が進まない問題を挙げ、「除染した土壌などを保管する中間貯蔵施設の見通しが立たないなかで、仮置き場に放置されるのではないかという不信感がある」と説明。地元の理解を得るのに時間がかかっているとした。また汚染の度合いや除染対象の面積など地域によって事情が異なるにもかかわらず一律に作業を終えようとした工程表のずさんさもあった。石原伸晃環境相は閣議後の会見で「当初の混乱の中で見切り発車で作った工程だった」と釈明した。環境省はこの日、一度除染をした場所で再び放射線量が上昇した場合の追加的な除染の実施や、森林の除染範囲の拡大についても正式に発表した。
■住民「本当に帰れるのか」
 工程表の見直しで、今年度末だった除染の終了時期が延長され、終了のメドが立たなくなった飯舘村。原発事故以降、伊達市に避難している農業菅野宗夫さん(62)は「もう、待てない」と嘆く。「生活を奪われたまま、帰還を先延ばしにされている我々村人の間には、国への不信と、本当に帰れるのかという不安が充満している」と胸の内を語った。菅野さんは村で牛を飼い、高原野菜を作っていた。集落営農組合の組合長も務め、コメや野菜、みその宅配が軌道に乗ってきた矢先の事故だった。早ければ14年秋に、村は全村避難している住民の帰村を宣言する復興計画を立てていた。工程表の見直しを受け、今年度の復興計画改訂で帰村宣言の時期を見直すことも検討する。村の住宅の除染は、対象の3%しか終わっていない。「当初の計画が無理なことは国もわかっていたはずだ。なぜもっと早く伝えてくれなかったのか」。菅野さんはそう憤る。当初の工程表にこだわってきた環境省への不信は、地元自治体にも根強い。飯舘村の菅野典雄村長は「現場の除染の大変さが分からない人たちの机上の空論だった」と批判する。川俣町は以前から、環境省の除染計画の見通しの甘さを批判してきた。独自の「町で考える除染終了時期」を、環境省の当初目標より1年後の15年3月に設定。直轄除染の対象となっている山木屋地区の復旧・復興計画を作った。古川道郎町長は工程表の見直しについて、「除染の延長は当然だが、仮置き場の確保も含めて国の責任なのに、今度は終了時期も明確にしない。これでは帰還のメドが立てられない」と反発する。原発事故前は同地区で牧場を経営し、いまは町内の仮設住宅に避難している菅野経芳(つねよし)さん(72)は、環境省の除染の方法についても「非現実的だ」と話す。環境省は牧草地の除染を「表土はぎ取り」だけ行い、覆土はしない方針だ。「環境省の担当者は『代わりに深く耕してくれ』という。表土のすぐ下に岩盤がある山間での農業を全く知らない」。菅野さんは「国が除染を終えたからって、その場所で農業や生活が再開できるとは思えない」と話す。
■費用負担、枠組み限界
 除染が遅れることで、費用がさらにかさむおそれがある。だが、東電が持続的に負担していけるような仕組みは整っていない。政府は昨年11月から計404億円を東電に請求したが、支払い済みは67億円。法律で決まっている東電の負担範囲があいまいで東電が支払いを渋っている面がある。広瀬直己社長は「東電1社ですべてを負担するのは相当無理がある」とし、国に肩代わりを求めたい考えをにじませる。東電は原発事故で経営が行き詰まり、賠償や除染費用を自力で出せない。政府は東電に5兆円を限度に貸し付け、何十年もかけて返させる仕組みをつくった。しかし、賠償費用だけで東電はすでに3・8兆円の枠を使った。残りの1・2兆円では、総額5兆円以上に膨らむとされる除染費用は到底まかなえない。東電は昨年11月、賠償や除染の枠組みを見直すよう政府に求めたが、当時の民主党政権だけでなく、安倍政権も対応はにぶかった。ただ、汚染水対策に政府が国費投入を決め、状況は変わってきた。茂木敏充経済産業相は10日の会見で「国の追加対策がどれくらい必要になるか。こういうものも含め、法的枠組みが必要か見極めたい」と話し、枠組みの見直しに含みを持たせた。

*4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013091702000125.html
(東京新聞 2013年9月17日) 危うい対策組織乱立 「コントロール」首相約束受け
 東京電力福島第一原発事故の汚染水問題に対応するための組織を政府が最近、多数発足させた。「状況はコントロールされている」とする安倍晋三首相の発言が事実と異なり、既存の組織では問題の解決が難しいことを示している。似た組織が乱立することにより、責任の所在があいまいになり、いざという場合の指揮系統の混乱を招くという指摘も出ている。
 首相はブエノスアイレスで七日に開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会の東京五輪招致演説で、汚染水について「まったく問題はない」と明言した。しかし、高濃度汚染水が外洋に流出した可能性が新たに浮上するなど、問題解決の道筋はまったく見えていない。首相は帰国後の十日、五輪招致に関する閣僚会合で「私がブエノスアイレスで約束した汚染水の問題については政府一丸となって責任を果たしていきたい」と、態勢の再構築を指示せざえるを得なかった。政府は同日、汚染水問題の閣僚会議の初会合を開催。関係省庁の実務者による廃炉・汚染水対策チームを傘下につくった。
 原子力規制委員会は十三日、海洋モニタリングに関する検討会の初会合を開催。福島第一原発の現地には、原子力規制庁や東電、復興庁などによる現地調整会議や、各省庁の現場担当者らによる現地事務所も置かれた。だが、汚染水問題に関しては経済産業省や規制委員会などに、中長期的な対策や処理技術を検証する組織などが既にいくつも置かれている。十一日にあった内閣府原子力委員会の臨時会議では、消費生活アドバイザーの秋庭(あきば)悦子委員が「さまざまな会議体がつくられたが、とても心配だ。責任がどこにあるのか、組織ができればできるほど見えにくくなっている」と懸念を示した。

*5:http://digital.asahi.com/articles/TKY201309160123.html?ref=com_top6
(朝日新聞 2013年9月16日) 福島第一、汚染水タンク周囲の水放出 台風で緊急措置
 東京電力は16日午後、台風18号の大雨で、汚染水をためているタンク周囲の堰(せき)の内側にたまった水の放出を始めた。ストロンチウムなどの濃度が法で定める放出限度(1リットルあたり30ベクレル)より低いといい、緊急措置と説明している。水は周囲の土壌に流れ、原発内に降った雨水と一緒になり、最終的には海に流れる可能性がある。東電によると、16日午後0時40分ごろ、「Cエリア」と呼んでいるタンク群のコンクリート基礎部分にあふれる水を流すため、堰の弁を開けた。放射性物質の濃度は1リットルあたり8~24ベクレルという。計7カ所の堰で順次、放出限度未満ならば雨水と判断して排水を始めた。堰の高さは約30センチで排出弁が付いている。300トンの汚染水漏れが発覚する8月まで弁を常時開いていたが、「タンクから漏れた場合、外部に流れ出す」と原子力規制委員会から指摘され、閉める運用に変更していた。今回、弁を開けるのは、水がたまったままだと新たな漏れが発見できない上、たまった水が汚染されてしまうためという。一方、東電は放射性セシウムの濃度は測っていない。「ストロンチウムなどの濃度から十分低いと考えられる」と説明している。汚染水漏れが発覚した「H4エリア」では、たまった水からストロンチウムなど同17万ベクレルが検出された。すでに漏れた放射性物質の影響という。濃度が高い水は放出せず、回収してタンクに移す。台風で15日には「Bエリア」で堰から雨水があふれるトラブルが起きている。

*6:http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2013091600109
(時事ドットコム 2013/9/16) 汚染水漏えい域で高放射能=タンク近く、17万ベクレル-福島第1
 東京電力は16日、福島第1原発でタンクに保管されていた高濃度の放射能汚染水が漏れたエリア内にたまった水を分析したところ、ストロンチウムなどのベータ線を出す放射性物質が1リットル当たり最大17万ベクレル検出されたと発表した。東電は漏えいした放射性物質が地表付近に残っており、採取した水に含まれたとの見方を示している。東電によると、測定したのは15日で、高い濃度が検出されたのは約300トンの汚染水が漏れたタンクのあるエリア北側。東側ではベータ線を出す放射性物質の濃度が同2400ベクレルだった。

*7:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013091601002032.html
(東京新聞 2013年9月16日) 水産庁、韓国に輸入規制撤回要求 汚染水問題で
 東京電力福島第1原発からの汚染水漏えいを理由に、韓国が福島県など計8県の水産物の輸入を全面禁止するなど規制を強化した問題で、水産庁の香川謙二増殖推進部長らが16日、韓国の食品医薬品安全庁を訪れ「韓国側の措置は科学的な根拠に乏しい過剰なものだ」として規制の撤回を求めた。韓国側は水産物の汚染の可能性に対する「臨時特別措置」だとし、「日本が提供したデータや対策をよく分析したい」と返答。双方は日韓の専門家同士で協議を継続していくことで一致した。韓国は9日から青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の各県産水産物の輸入を全面的に禁止した。

*8:http://www.47news.jp/smp/CN/201309/CN2013091801001988.html
(共同通信 2013/9/18) 外洋に1日600億ベクレル放出 福島原発、気象研の研究官報告
 東京電力福島第1原発の汚染水問題をめぐり、気象庁気象研究所の青山道夫主任研究官は18日、国際原子力機関(IAEA)の科学フォーラムで、原発北側の放水口から放射性物質のセシウム137とストロンチウム90が1日計約600億ベクレル、外洋(原発港湾外)に放出されていると報告した。セシウム137の半減期は約30年、ストロンチウム90は約29年。原子炉建屋地下からいったん港湾内に染み出た後、炉心溶融を免れた5、6号機の取水口から取り込まれ、北側放水口から外洋に放出されている。東電は「法定基準以下の濃度と確認して放水しており問題ない」としている。

| 原発::2013.9~11 | 12:18 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.9.13 消費税増税は、増税の為の増税であり、増税理由と使い道は全く一致していないこと(2013.9.16最終更新)
   
         現在、いじめられるのは誰か、また、それでよいのか?
(1)消費税の使い道
1)当初の消費税増税の理由
 「少子高齢化を考えた時、財政再建と社会保障の維持のためには消費税増税が必要で、それをやらない政治家は未来に責任を持っていない」とメディアは大々的に批判した。従って、メディアは、その消費税増税の建前と顛末を、ごまかすことなく包括的に国民に報告する義務がある。

2)実際に増えた国民負担
ア デフレ脱却という名の物価上昇による国民負担
 金融緩和に依るデフレ脱却と称するコストプッシュ・インフレーションでは、物価上昇分だけ国民の可処分所得は減少する。物価が2%上昇すれば、可処分所得は以前の98%(100/1.02)になり、2%の物価上昇が5年続けば、可処分所得は以前の90%になる。つまり、基準年を2012年として2017年にも所得金額が同じであれば、実質可処分所得は90%になっている。それと同時に、1000万円あった貯金も、5年後の2017年には、900万円の価値になっているというわけだ。

イ 消費税増税による国民負担の増加
 3%の消費税増税を行えば、購入者にとっての物価は3%上がるため、可処分所得が3%減ったのと同じ効果になる。2017年に今より5%の消費税増税が行われているとすれば、基準年2012年と比べて、収入金額が同じ人は、アと合わせて2017年の実質可処分所得は約85%(90-5)になっている。従って、2%の物価上昇が5年間続き、その時に消費税が10%になっていれば、*3の人たちをはじめとして、収入の全額を支出している人は、収入の15%が、現在より負担増になっているのである。

ウ 国の歳出はどうか
 *1、*2によれば、①安倍首相は国の財政悪化を受け、来年4月に消費税率を5%から8%に予定通り引き上げる方針を固め ②10月1日に増税方針と経済対策を同時に表明して財政再建とデフレ脱却を両立させる姿勢を示す構えであり ③消費税率の上げ幅である3%のうち2%分(1%あたり2.7兆円)に相当する5兆円超を経済対策にあてるよう関係閣僚に指示した とのことである。③は、実質的な負担増を1%程度に抑えて景気の腰折れを防ぐ狙いだそうだ。

 そして、消費税増税分の大半は、景気対策という名目で、i)住宅ローン減税、ii)5千億円以上の設備投資減税と補助金、iii)賃上げ実施企業の減税、iv)法人実効税率引き下げ、v)固定資産税の減免 等に支出されるということだ。また、家計の負担軽減策は、住民税非課税世帯(約2400万人)に1人当たり1万円の現金を給付する案を軸に検討しているとのことである。

 しかし、*4のように、高校無償化に所得制限を設けたり、医療・介護の利用者負担を増やしたりしているため、社会保障給付は削減される。これでは社会保障は負担増・給付減となっておかしいため、メディアをはじめとして消費税増税キャンペーンを張った人たちは、全体を見据えた論理的な説明を、責任を持って行うべきである。

エ その結果、金融緩和と消費税増税で何が起こるか
 ア~ウの結果、金融緩和と消費税増税で、一般国民の実質可処分所得や預金が、2017年には85%となり、国民負担が収入の15%分増えている。また、景気対策としてなされる歳出は、その殆どが社会保障とは関係のない支出であるため、貧しい国民の所得や財産が、国と企業に移転されることになる。

 ウのii)5千億円以上の設備投資減税と補助金及びvi)固定資産税の減免は、企業の設備投資を優遇し、固定資産の保有税を下げて新規設備投資を促すということだろうが、企業が日本国内で新規設備投資をして意味があるのは、製品が日本国内で売れて利益が上がる場合のみであって、税金が安くなったからといって、売上があがる目途も立たないのに新規設備投資を行う企業はない。また、iii)賃上げ実施企業の減税については、一時的に減税してもらってできる賃上げはその減税の範囲内であり、需要がなければ売上があがらないため、企業は、人員削減と低賃金化せざるを得ないのである。

 国民の可処分所得を下げて需要を減らし、旧来型の企業を守っていれば、新しいことは起こらず需要も減るため、民間企業の新規設備投資は増えない。そのため、新規設備投資は政府が担わざるを得ないことになるが、政府の選択は、有効性・効率性が低く、市場の選択よりも時代遅れの場合が多いのが問題なのである。また、iv)法人実効税率の引き下げは、利益の上がった企業にのみ意味があるものであり、現在、わが国の法人税率は、先進国間の比較では高くないので不要であろう。

(2)国民の基礎教育を軽んじ、スポーツは奨励するが勉強は奨励しない日本の行く末
 *5では、「夢を持つ子供、増えれば」と柔道の松本選手がオリンピック招致を歓迎して述べているが、招致の是非はともかく、夢がスポーツだけで、自分でもの考える知識がなく、単純なルールに従って集団行動をとるだけの人間は、21世紀にはロボットで代替され、有用な労働力になれない運命にあるだろう。そして、有用な労働力になれない人が増えれば、生産年齢人口内でも、少ないエンジンで大きな車体を動かさなければならない事態になり、一人当たりのGDPが下がって貧しくなる。

 従って、学ばなければならない知識が増えた現在では、*4のように、高校までは義務教育と同じと考えて無償化し、大学、大学院も給付型奨学金を充実するのが、全員のためになると思う。仮に親の所得が多くても、子どもの教育には不熱心だったり、子どもの希望と異なる選択を強いたりする場合もあるため、子どもへの給付であることを徹底して、親の所得による制限は設けない方がよいと考える。

(3)日本の経済学者について
1)フリードマンの貨幣数量説
 日本の経済学者は、ミルトン・フリードマンの貨幣数量説「MV=PY(M:貨幣供給量、V:貨幣の流通速度、P:価格水準、Y:産出物の数量)」により、日銀が貨幣供給量Mを上げると、貨幣の流通速度Vが一定であるとすれば、価格水準Pが上がることを重視し、その結果、金融緩和がなされた。

 しかし、貨幣量が増えただけでは、景気が良くなったという錯覚により、一時的に産出物の数量Yも上がるかも知れないが、産出物の数量Yの増加は、購買力や必要性から出る需要がなければ長くは続かないため、長期的には調整される。また、国民負担が増えれば、国民の購買力が落ち需要は減少する。

 なお、金融緩和しても、貸出先がなければ、貨幣の流通速度Vが下がるか、わが国のバブル時代及び*6のように、あぶく銭となって投機等で消えることにより調整される。

2)ケインズ経済学
 国民負担を上げれば、国民の需要はその分だけ下がる。「ケインズ経済学」では、有効需要は市場メカニズムに任せた場合には不足することがあるが、これは減税・公共投資などの政策により投資を増大させるように仕向けることで回復可能であるとし、現在、日本政府が行おうとしているのはこれである。

3)これらの理論の中で不足しているもの
①外国で作られたマクロ経済学の理論に基づいているだけで、社会学的調査をして日本の需要と供給
  の行動分析をした理論に基づいているのではないため、理論に実証性がない。
②単純な公式上に出てこない要因は、すべて与件となっており、全体としてのよりよい解決策が考えら
  れていない。例えば、国民の教育水準や意識の変化、環境政策による新しい需要の創出、技術進
  歩、国内資源開発の可能性、今まで使っていなかった資源の資源化などのイノベーションは考慮さ
  れていない。
③人口動態、平均寿命、地球での人類のポジションの変化など、大きくて長い潮流を見る視点もない。

4)では、どうすればよいのか
 経済学を専攻する人は、多くが文系であり、経済学の中で駆使される数学や統計学を理解する基礎がないため、簡単な数式や”権威ある”他者の意見の暗記で勝負しており、臨機応変にすべての要素を考慮して結論を出すということをしていない。しかし、経済学者は、疫学、社会学で行っているような個の行動を基に統計学を使って多変量解析し、原因分析して最適解を出す能力が必要であり、それには、これから起こるイノベーションも理解できなくてはならない。そのため、経済学部は、数学、理科を必修とする理科系から学生を採り、科学的に調査研究させる授業をする必要があると思う。

*1:http://qbiz.jp/article/23444/1/
(西日本新聞 2013年9月12日) 消費税、来年4月に8%
 安倍晋三首相が、来年4月に消費税率を5%から8%へ予定通り引き上げる方針を固めたことが12日分かった。増税による景気腰折れを防ぐ経済対策は、税率上げ幅3%のうち2%分に当たる5兆円規模とする方向。今月末にかけて政府が具体策をまとめ、首相は10月1日に増税方針と対策を同時に表明して、財政再建とデフレ脱却を両立させる姿勢を示す構えだ。景気関連の指標が軒並み改善し、消費税増税法の付則で税率上げの条件となっている「経済状況の好転」がほぼ確認されたと判断した。2020年夏季五輪の東京開催が決まり、経済効果が期待できることも増税判断を後押しした。国の財政悪化を受け、政府、与党でも増税を容認する意見が大勢を占めていた。政府関係者によると、首相と菅義偉官房長官、麻生太郎財務相、甘利明経済再生担当相らが10日に官邸で消費税増税を協議した際、麻生氏が5兆円規模の対策を提案。甘利氏はその半分以上を減税で実施するべきだと主張し、総額の上積みが可能かどうかも含めて両大臣を中心に詰めることになったという。
 首相ブレーンの本田悦朗内閣官房参与は、景気に配慮して増税の延期や税率の上げ幅を年1%ずつにする案を主張している。税率2%分を経済対策の形で国民に還元する案が浮上したのは、実質的な上げ幅を本田氏らが主張する1%に近づけ、景気への影響を少なくする狙いがある。首相は10日の閣僚懇談会で経済対策を今月末をめどにまとめるよう指示。柱は低所得者の負担軽減策で、1人当たり1万円を給付する案を軸に調整している。住宅ローン減税を補完するため、住宅購入者に最大30万円を給付する措置も実施。与党で議論している設備投資減税や、賃上げを実施した企業への減税措置の拡充も検討する。9日に発表された4〜6月期の実質国内総生産(GDP)改定値は年率換算で前期比3・8%増と高い伸びを示し、麻生氏や甘利氏も増税に向けた環境が整ってきたとの認識を示していた。

*2:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1202F_S3A910C1MM8000/?dg=1
(日経新聞 2013/9/13) 14年度にも法人税率下げ 経済対策は5兆円超
 政府は2014年4月に消費税率を8%に引き上げることを前提に、法人税の実効税率を14年度にも引き下げる調整に入った。安倍晋三首相は経済対策を5兆円超とするよう関係閣僚に指示した。消費税率の上げ幅である3%のうち2%分(1%あたり2.7兆円)に相当する。実質的な負担増を1%程度に抑えて景気の腰折れを防ぐ狙いだ。
 首相は成長戦略の一環として、主要国に比べて高い法人実効税率(約38%)の引き下げに意欲を示す。14年度までの3年間は東日本大震災の復興特別法人税として法人税額の10%を上乗せ課税しており、同税の1年前倒しでの廃止も視野に入れる。廃止すれば、法人実効税率は2%強下がる。ただ被災地の反発が予想されるため、自民党税制調査会では「法人実効税率下げは15年度以降の中期的な課題として検討すべきだ」との声も強い。
対象を限定した法人向け減税では、自民党税調が賃上げや設備投資を促す法人減税の拡充や固定資産税の減免などの検討を本格化しており、月内にも具体策をまとめる。設備投資に関しては、減税と補助金を合わせた対策規模を5千億円以上とする方向で調整する。
 経済対策は来年度前半に予想される駆け込み需要の反動に備えた家計や企業の負担軽減策が柱となる。麻生太郎副総理・財務相と甘利明経済財政・再生相を中心に9月中に骨格案を取りまとめ、消費増税の最終判断の材料として首相に示す。
 首相はデフレ脱却の実現が消費増税で遠のかないようにするには、国民の実質的な負担増を和らげることが不可欠との認識だ。財務省は2兆~3兆円の財政支出であれば国債を追加発行せずに対応可能と主張してきたが、首相官邸は大幅な上積みが必要と判断した。
 家計の負担軽減策では、低所得層向けの簡素な給付措置として住民税非課税世帯(約2400万人)に1人当たり1万円の現金を給付する案を軸に検討している。所得税を支払っている世帯にも時限減税や給付金の形で負担増を和らげるべきだとの声もある。
 首相は消費増税について10月1日に日銀が発表する9月の全国企業短期経済観測調査(短観)などを分析したうえで最終判断する。首相が判断すれば、政府は11月をめどに今年度補正予算の編成に入り、経済対策の内容や規模を確定。来年の通常国会に補正予算案を提出する方針だ。

*3:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130911/k10014444161000.html
(NHK 2013年9月11日) 震災避難者の8割超 生活費増
 東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、福島県を離れて避難生活を送っている人を対象に支援団体が行った調査で、8割を超える人が震災前と比べて生活費が増えたと答えていることが分かり、支援団体では、「避難者の生活不安は強まっている」と指摘しています。この調査は、ことし3月から4月にかけて、福島県から東京都と埼玉県に避難している人たちを対象に、被災者の支援団体が郵送で行ったもので、全体の12%にあたる499人から回答を得ました。このうち震災後の職種の変化をみますと、正社員の数は、震災前の半分以下に減少しました。また、無職の人は震災前の2.3倍に増えました。その一方で、生活費については、81%が「増加した」か「どちらかというと増加した」と答えていて、支援団体では、「避難者の生活は、決して安定したとは言えず、逆に不安は強まっている」と指摘しています。福島県双葉町から埼玉県加須市に避難している鵜沼友恵さん(38)は、震災後、職を失ったうえに、茨城県日立市で働く夫と離れて暮らすようになり、光熱費などの生活費や夫に会いに行く際にかかるガソリン代などの負担が増えているといいます。鵜沼さんは、「この先、どうしてよいか分からないまま2年以上過ぎたので、ますますつらくなっています。自分のライフプランが全然立てられないのは、精神的にきついです」と話しています。

*4:http://www.the-miyanichi.co.jp/contents/index.php?blogid=5&catid=15
(宮崎日日新聞社説 2013年9月8日) 高校無償化に所得制限
●人材育成へ国庫負担継続を
 自民、公明両党は高校授業料無償化の対象を世帯年収910万円未満とする所得制限を設けることで合意した。秋の臨時国会に高校無償化法改正案を提出し、2014年度実施を目指すという。当時の民主党政権が導入したとはいえ、無償化は定着してきたと言っていい。日本の将来を支える人材育成のための教育に今更所得制限を設けることは疑問だ。特に本県のように高校卒業後は県外の大学や専門学校等へ多くの生徒が進学する地方では、所得の多い一部の家庭でも教育費の負担は増えることになる。自宅から通える大都市との教育費の差は現在でも甚しく、地方の視点からも無償化は継続すべきだ。
■線引きで財源を捻出■
 高校授業料無償化は、公立高校の授業料を国庫から負担する制度で所得制限も設けていない。国立、私立、高等専門学校の生徒には、高等学校等就学支援金として授業料について一定額(年額11万8800円)を支給し、さらに保護者の所得に応じて一定額加算されている。自民党は所得制限のない無償化を「ばらまきだ」と批判、7月の参院選でも所得制限導入を打ち出していた。線引きについて自民党は900万円、公明党が930万円を主張していたが、双方歩み寄って910万円に落ち着いた。この結果、無償化の対象は約358万人から約280万人に減り、約22%が対象から外れる。年間約490億円の財源が捻出される見通しだ。財源は、返済義務のない給付型奨学金の創設や、私立高校生への就学支援金の拡充などに充てられる。だが、こうした捻出方法は本来の姿ではない。「取りやすいところから取る」という安易な方法を教育に導入するのは間違いだ。
■大都市とは違う環境■
 日本は、世界人権宣言の内容を踏まえて条約化した国際人権規約を1979年に批准した。規約の中では教育に関わる権利を規定しているが、日本は中等教育(中学・高校)と高等教育(大学など)について「無償教育の漸進的導入」の規定適用を受け入れてこなかった。批准から33年後の昨年9月、やっと適用を受け入れ、高等教育まで無償化に向けて努力することを世界に表明した。高校無償化で一足先に国際人権規約の規定を実現したのに、所得制限の導入は時計の針を戻すことになってしまう。高等教育機関が少なく多くの人材が県外に流出する本県では、現在でさえ家庭は仕送りに多額の出費を強いられている。大学などが集中する大都市とは環境が違っているのだ。「所得が多いから負担は当然だ」という与党の考えは地方のことが考慮されていない。日本は先進国の中でも教育への公的支出は最低水準にある。国が教育へ投資して国民の教育費の負担軽減を図ることが、次代の日本の発展につながるはずだ。

*5:http://digital.asahi.com/articles/TKY201309080052.html?ref=com_top6_1st
(朝日新聞 2013.9.8) 「夢を持つ子供、増えれば」 柔道・松本薫
 ロンドン五輪柔道女子57キロ級金メダルの松本薫(フォーリーフジャパン)は、「いま、夢を持てない子どもたちが多くなっていると聞きます。東京に五輪が来ることで、夢を持つ子供が1人でも増えればいいな、と思う」と願った。自身も小さい時は明確な夢を持てずに悩んだ。「ケーキ屋になりたい、とかそういうのはあったけど、いつもコロコロ変わっていて。いつか私は路頭に迷っちゃうんじゃないかって思ったときもありました」。それでも、中学生の時に本格的に柔道をはじめ、「五輪に出たい」と夢が定まった。指導方法が合わず、高校で転校を経験するなど悪戦苦闘しながら、世界の頂点に立った。ロンドン五輪で明確に覚えているのは、選手村の空気の流れだという。「緊張感と、ついにここまで来たんだ、という喜びが混じっていた。独特の空気感でした」。その空間を共有した他競技の選手との交流は、いまも続いている。2020年まで現役でいられるかは分からないが、「東京五輪で、アスリートの夢を日本のみんなと共有出来れば、本当にすごいと思います」。7年後に思いをはせ、黒目をきらきらと輝かせていた。

*6:http://digital.asahi.com/articles/TKY201309150272.html?ref=pcviewpage
(朝日新聞社説 2013年9月16日) 危機から5年 マネー頼みの矛盾なお
 「100年に一度」の大不況を引き起こした米大手証券リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)から15日で5年がたった。震源地の米国経済は徐々に回復してきたが、一方で新興国の経済は変調をきたしている。なによりマネー資本主義の矛盾があらわになり、低成長と雇用喪失が世界中に格差と貧困を拡散させた。この難題を克服する手立てはあるのか。世界は、なお手探りのままだ。
 振り返れば、リーマン危機にとどめを刺される形で住宅バブルがはじけた米国と、対米投資の多い欧州で金融危機と経済収縮の連鎖が起きた。さらに、欧州では銀行救済にギリシャの財政粉飾が重なり、財政と金融の複合危機に発展する。ここを支えたのが新興国の内需拡大、とくに4兆元(約60兆円)の景気対策を打った中国だった。ところが、それが不動産バブルや過剰な投資を加速させ、中国内の金融システムを揺さぶる懸念が生じている。米中間でバブルがリレーされていたと見ることもできる。中国の金融安定には銀行への資本注入なども必要になろう。バブルの調整が急激で深刻になれば世界が動揺する。国際社会との協力が求められる。
 先進国が頼った金融緩和の後始末も難しい。米国の量的緩和で新興国へあふれ出たマネーは逆流しつつある。米連邦準備制度理事会(FRB)は、緩和縮小でバブル防止に筋道をつけたいようだが、世界全体への目配りも欠かせない。世界経済はいびつさの度合いを深めている。とりわけ企業収益や株価の回復と、雇用の低迷とのギャップが際だつ。グローバル競争の激化が、人件費を減らして収益をあげる流れを加速させている。ことに先進国では、産業界が雇用を創出し、生活水準を底上げする機能は衰えるばかりだ。格差や貧困を是正するのは、所得の再分配を担う政府の仕事だが、どの国も財政に余裕はない。これで本当の経済再生は可能なのか。前向きな動きとして注目されるのは、ユーロ加盟の有志国が導入を決めた金融取引税だ。危機の処理コストを金融界に負担させ、同時に過剰な投機も抑える狙いがある。グローバル企業の国境をまたいだ税逃れ対策で、各国が結束する機運も生まれている。マネーの流れに網をかけ、地に足のついた経済構造をつくるために、世界は足並みをそろえなければならない。

| 消費税増税問題::2012.8~2014.11 | 04:23 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.9.12 第二次東京オリンピックを機会に、乗り物を新エネルギーに転換し、住み心地のよい21世紀の環境都市を実現して、海外の人に見せたい。
  
        蓄電池電車                EV          燃料電池バス

(1)交通機関の燃料を水素や電気に転換する(もう化石燃料は使わない)
 自動車・バス・トラック・電車の燃料を、電気や水素ガスに転換すれば、排気ガスが出ないのでクリーンなだけでなく、燃料を輸入して国富を海外に出す必要もない。その電気や水素ガスを、わが国で無尽蔵の自然・再生可能エネルギーで作れば、安価で環境に負荷をかけない燃料となり、環境・経済の両面でプラスとなる。そうなると、道路が地下や建物の中を遠慮なく走ることができるので、東京は、CO2を50%以上削減し、すすけた古い都市から、クリーンな新しい都市に、21世紀の街づくりができるだろう。

(2)では、いつ転換するか
 7年後のオリンピック時に海外の人が来た時には、東京都内は、殆どがクリーンエネルギーの乗り物になっているようにして見せたい。その為には、地下に作る高速道路や建物の中を走る道路は、クリーンエネルギーの乗り物しか通さないことにすればよい。そうなると、クリーンエネルギー車の方が便利になるため車輛の更新が進むからだが、これは、大阪、京都、名古屋、福岡などの地方都市でも同じだ。

(3)技術はできており、あとはシステムの問題
 *1~*4のように、電気自動車や燃料電池車の技術は既にできており、中小企業の参入機会も多い。後は、充電システムや発送電システムなど、旧来型との摩擦があって、わが国では進みにくいシステムの部分が遅れているだけだが、すでに長い間、転換のメッセージを出しているので、もう対応すべき時期である。

    
                      EV及び燃料電池車
*1:http://qbiz.jp/article/23415/1/ (西日本新聞 2013年9月12日) 小中大地場中小と連携し開発や人材育成 西日本工大に自動車研究所
 地場の中小企業などと連携し、自動車部品の研究開発や人材育成を担う西日本工業大の「自動車・ロボット研究所」の開所式が11日、福岡県苅田町新津の同大おばせキャンパスであり、自動車関連企業や行政の担当者など約30人が出席した。研究所は工学部の建物内に設けられ、スタッフは金型の設計や電気自動車のバッテリー開発の専門家など10人。10月からは、研究生として企業の技術者の受け入れを始める。式で菊池重昭学長は「生産現場の問題解決のため、研究スタッフの技術やノウハウを活用していただきたい」とあいさつ。坂田豊所長が「電気自動車の運転支援システム」など、研究目標を説明した。出席者は、プレス加工機など研究所の設備を見学。行橋市の自動車部品製造会社16社でつくる「市自動車産業振興協議会」の宮西健司会長は「いろいろ相談に乗ってもらい、地場企業の力を上げたい」と述べた。

*2:http://qbiz.jp/article/23322/1/ (西日本新聞 2013年09月11日) JR九州「蓄電池電車」試験運転 日田彦山線に17年度導入予定
 JR九州は10日、電化されていない北九州市小倉南区の日田彦山線・城野−石原町で、開発中の蓄電池電車を試験運転し報道陣に公開した。来年3月まで試験運転を続ける。2017年度をめどに、若松線に2両編成の車両を3編成導入することを検討している。蓄電池電車は、非電化区間を走るディーゼルカー(気動車)の代替車両として昨年4月に開発に着手。開発費は約1億4千万円で、既存の車両を改造して今年5月から電化区間で試験走行を行い、今月6日から非電化区間で試験を始めた。電化区間で蓄電池に充電し、停車中の8分間の充電で約30キロ走行できるという。この日は、城野−石原町の往復約18キロを蓄電池の電力で走行。消費電力量を測定し、非電化区間の走行に必要な蓄電池の容量などを確認した。交流電化方式での蓄電池電車の開発は国内初。実用化できれば、燃料費などの運行経費や二酸化炭素(CO2)排出量を削減できる。

*3:http://digital.asahi.com/articles/TKY201307290503.html?ref=reca
(朝日新聞 2013年7月30日) 車大手4社、EV充電網整備へ連携 1万2千基増が目標
 トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、三菱自動車の4社は29日、電気自動車(EV)などの充電スタンドの普及を共同で進めると発表した。政府の補助金を生かし、ライバルが手を結んでインフラ整備を急ぐ。充電スタンドは自動車の販売店などに各社が用意しているが、公共施設などへの設置には1基数百万円とされる費用が足かせとなっている。EVの量産車が発売されてから約4年で、数十分でフル充電できる急速型が全国に約1700基、数時間かかる普通型が3千基にとどまる。政府はEVの普及を後押しするため、2012年度の補正予算で1005億円の補助金を計上した。充電器の価格と工事費の最大3分の2を補助する仕組みで、申請は来年2月まで。4社は、来年10月をめどに「急速」を4千基、「普通」を8千基それぞれ増やして、いまの3倍以上にするのを目標に連携する。ショッピングセンターや高速道路のパーキングエリア、道の駅、ガソリンスタンドなどに、政府の補助を生かしての設置を呼びかける。導入費用や維持費の一部は4社でも負担する考えだ。現在は充電器を設けたメーカーなどの陣営ごとに、課金手続きなどがばらばらだが、将来は1枚のカードを使って、どこででも充電できるような仕組みづくりも目指す。 電気を動力とする自動車をめぐっては、日産と三菱自がEVを手がける一方、トヨタとホンダは、家庭で充電ができ、エンジンと併用するプラグインハイブリッド車(PHV)の普及に力を入れる。各社の戦略は異なるものの、インフラ整備では連携が必要だと判断した。日産の川口均・常務執行役員は記者会見で「個別の社でできることには限界がある。車は競争が激しい業界だが、インフラでは力をあわせたい」と語り、協力しあう意義を強調した。

*4:http://www.nikkei.com/article/DGXNASGV12001_S3A910C1000000/?dg=1
(日経新聞 2013/9/12)  [FT]独自動車各社、エコカー量産へ一斉に本腰
(2013年9月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
 ドイツの大手自動車各社がついにエコカー市場に本格参入する姿勢をみせ始めた。電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)の普及を促すため、先行する各社も(ライバルを出し抜こうと念じつつ)歓迎の意向を示している。世界の主要メーカーが一斉にEVやHVモデルを採用する意向を示したのは初めて。自動車業界が転機を迎えていることを示している。
■エコカーで首位狙うフォルクスワーゲン
 フォルクスワーゲン(VW)はフランクフルト国際自動車ショーでEV2モデルを展示し、2014年までにEVやHV14モデルを発売すると発表した。18年にはエコカー市場で首位に立つ構想も掲げ、これまでの同市場に対する消極姿勢を転換した。BMWは小型EV「i3」とスポーツカータイプのプラグインハイブリッド(PHV)「i8」を発表。ダイムラーとポルシェも高級PHVモデルを展示した。今回の自動車ショーでは、エコカーの展示が圧倒的多数を占めた。「わずか3年前にPHVなんて愚かだと言っていたVWが、今年は世界最大のPHVメーカーになると意気込んでいる。我々は正しかった」。07年にEV生産を表明した日産自動車のアンディ・パーマー副社長は胸を張った。ドイツ各社のエコカー市場への本格参入は、日産やトヨタ自動車、米ゼネラル・モーターズ(GM)などの代替燃料車の売り上げ増加や、米テスラ・モーターズなど新興勢力の台頭に追随する動きだ。VWのマルティン・ヴィンターコーン社長は「絶好のタイミング」でEV量産に乗り出すことになると強調した。EVの世界販売台数は自動車市場全体からみれば、まだほんのわずかだ。調査会社のブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスによれば、13年1~3月期のEV販売台数は約4万台だった。ただ、同社は「(13年の)EV販売台数が前年比倍増することをあらゆる兆候が示している」とも指摘している。BMWの販売・マーケティング担当トップを務めるイアン・ロバートソン氏は「我々は転機を迎えている。電気モーターを搭載する『i8』は(BMWの)ブランドイメージを一新するモデルになる」と語った。

| 環境::2012.10~11 | 03:03 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.9.11 五輪招致のプレゼンテーションでの「汚染水の影響は、港湾内で完全にブロックされているので、まったく問題はない」という安部首相の発言には、私も違和感を覚えた。(2013.9.14日経新聞の図を追加)
    
 2013.8.29朝日新聞より    2013.9.14日経新聞より   2013.9.11日経新聞より

(1)2020年に東京で行うのは、妥当だったのか?
 影響を与えないよう決定前には書かなかったが、私は、*3に書かれているように、「東日本大震災の世界中からの支援に感謝しつつ、復興を成し遂げた姿を世界中に見てもらう」という意義があるのなら、1回遅れても、東日本大震災の被害を受けた東北(宮城県)で、復興を記念して夏季五輪を行うのがよかったと思う。

 しかし、2020年夏季五輪の開催都市が東京に決まったことで、*4のように、東京及びその周辺の人は喜んでおり、それは、このようなことがなければ、東京のような都市の再開発や街づくりがしっかりと進む目途が立たないからである。しかし、この7年間は、*5を見ればわかるとおり、東北の復興と関東のオリンピック準備でバブルが再来しそうであり、わが国の公共事業は単価が高くなって、国民の税金1円当たりの成果は、その分低くなる。

(2)夢や自信や希望は、スポーツからでいいのか?
 *4には、猪瀬東京都知事が、「バブル崩壊からの20年間、どこかに消えていた自信や希望や夢を7年後に向けて育んでいく必要がある」と言った旨、書かれている。しかし、1990年代始めにバブルがはじけて以来、その後始末と構造改革に苦労してきたのであり、すべては55年体制とバブルが原因だった。それを、オリンピックというお祭りで忘れさせ、バブルを再来させるのは、学習能力がなさすぎる。

 また、スポーツは人工的に作られた単純なルールに基づいてその場で勝ち負けを競うだけのものであり、知識の習得や科学的研究のように、その後により大きな成果を生んでくるものではない。そのため、スポーツが夢や自信や希望であり、そのスポーツで全エネルギーを発散するというのは、一部の国民がそうであってもよいが、多数の国民がそうであっては困るのである。

 さらに、金融緩和によるコストプッシュ・インフレーション・消費税増税・年金支給額削減・医療や介護費用の自己負担額増加などによる生活苦からの不満を、オリンピックという祭りで、麻生財務大臣が言ったように、パーッと「ええじゃないか、ええじゃないか」と、エネルギーを発散させて忘れさせようというのでは、明治維新の時代ではあるまいし、論外である。

 今の日本で人材たりうるためには、体力だけではなく知力・判断力が必要なのであり、主権在民を根付かせるためにも、メディアはオリンピック馬鹿な報道をすることなく、正確な情報を開示して、国民に本物の知識と判断力を身につけさせなければならない。

(3)スポーツ庁は不要
 2020年の夏季オリンピック開催都市が東京に決まったことに気を良くした人が、「『スポーツ庁』を作ろう」と言っているが、必要性が明らかで作った消費者庁でさえ真に消費者のためには働いていない状況であるのに、そもそも「スポーツ庁」なるものは必要性がなく、またもや税金の無駄遣いである。国民の知力・体力・精神力の育成は、スポーツ馬鹿を作らないよう文部科学省が責任を持ってやるべきだ。

(4)リニア新幹線は、もう作るべき時
 *4に記載されている27年開通予定のリニア新幹線については、JRと言っても地域毎に別会社であるため、「五輪前に名古屋まで」とケチなことを言わなくても、五輪前に北海道から九州まで通じさせることも可能だろう。この時、日本海側など、新幹線とは異なる地域を走らせれば、新幹線との間で二重投資にならず、天災に対しても代替的輸送手段ができ、原発がなければやっていけなかった地域を本当の意味で発展させることができる。また、工事費についてもいろいろな工夫ができ、波及効果は大きい。

(5)誰が言ったかではなく、内容が真実か否かが重要なのである
 *1によれば、安倍首相は、報道陣に「汚染水については完全にブロックされていると伝わったと思う。(汚染水問題は)数日前から私の口からはっきり伝えようと思った」と話したそうだが、事情を知っている人は、皆、安部首相の発言の信ぴょう性の方に疑問を持っただろう。何故なら、自分の命にも関わる問題であるため、問題意識を持っている人なら、*2の状況は把握していたからである。シルトフェンスと呼ばれる薄い幕で海水を港湾内に密閉し、完全に放射性物質をろ過して、海水だけを外洋に出しているとでも言うのだろうか。

 つまり、誰が言ったから信じるか否かではなく、事実はわかっているので、その人の発言の信ぴょう性の方を判断するという段階なのである。

*1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013090802000137.html (東京新聞2013年9月8日)首相強弁「汚染水問題ない」 IOC委員質問に回答 実際は外洋漏えいも
 二〇二〇年夏季五輪の開催都市を決めるIOC総会で、安倍晋三首相は東京電力福島第一原発の汚染水漏えい問題について、「まったく問題はない。汚染水の影響は、港湾内で完全にブロックされている」と強調した。安倍首相はプレゼンテーションで「東京は世界で最も安全な都市の一つ」とアピール。福島第一原発事故について「状況はコントロールされている。東京にダメージを与えることは許さない」とした。この発言に対し、IOC委員が質疑応答で、東京に影響がない根拠を尋ねた。首相は「汚染水の影響は、福島第一原発の港湾内の〇・三平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」と断言。近海のモニタリングの結果、「数値は最大でも世界保健機関(WHO)の水質ガイドラインの五百分の一。日本の食品や水の安全基準は世界で最も厳しい基準だ」とアピールした。
 だが、福島第一原発では毎日汚染水を含む大量の地下水が漏えいしている。先月には地上タンクから約三百トンの処理水が漏出。外洋につながる排水溝に沿って、処理水と同じ特徴を示す高濃度の放射性ストロンチウムなどを含む水が確認され、外洋に漏れた可能性が極めて高い。港湾内の水についても、東電は、外洋と完全にブロックされた状態ではなく、水が行き来していると説明している。首相は「日本のどの地域でもこの基準(食品や水の安全基準)の百分の一であり、健康問題については、これまでも今も将来もまったく問題ないことを約束する」とし「抜本解決に向けたプログラムを私が責任をもって決定し、すでに着手している」と強調した。
 プレゼンテーションを終えた安倍首相は、報道陣に「汚染水については完全にブロックされていると伝わったと思う。(汚染水問題は)数日前から私の口からはっきり伝えようと思った」と話した。

*2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013091102000110.html
(東京新聞 2013年9月11日) 「完全遮断できない」 首相 汚染水「約束を実行」 戸惑う東電
 安倍晋三首相は十日、二〇二〇年夏季五輪の東京招致が決定した国際オリンピック委員会(IOC)総会での自らの発言に関し、東京電力福島第一原発の汚染水問題に政府の責任で対応する考えを重ねて強調した。しかし、当事者の東電は発言の趣旨を政府に確認するなど戸惑いを隠せていない。首相は、官邸で記者団に「ブエノスアイレスで約束した福島の汚染水対策を責任を持って実行していきたい」と強調。この後、開催決定を受け開いた閣僚会議でも「政府一丸になって、しっかり責任を果たす」と述べた。七日のIOC総会では首相が汚染水問題に触れ「汚染水の影響は原発専用港内で完全にブロックされている」と表明、対策に全力を挙げる考えを世界に示していた。これに対し、東電の今泉典之原子力・立地本部長代理は九日の会見で、首相の発言趣旨を、経済産業省資源エネルギー庁に確認したことを明らかにした。その上で、1~4号機の取水口などにはシルトフェンスと呼ばれる薄い幕が張られているものの、港湾内の海水は毎日半分が入れ替わり、放射性物質の流出は完全には止められないと明言。「外洋への影響が少ないという点では、(首相と)同じような認識」と苦しい答えに終始した。首相の「汚染水問題の状況はコントロールされている」との発言に対する考えを問われると、今泉氏は「一日も早く安定した状態にしたい」と言葉を濁した。

*3:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2546663.article.html
(佐賀新聞 2013年9月9日) 政府、五輪準備を本格化 / 10日に閣僚会議開催
 政府は2020年夏季五輪の東京開催決定を受け10日に全閣僚出席による関係閣僚会議を開き、政府の準備作業を本格化させる。政府筋が9日明らかにした。菅義偉官房長官は9日の記者会見で「最高の大会を開催できるように関係省庁が一体となって最大限の支援をしたい」と表明した。東京開催について「東日本大震災での世界中からの支援に感謝しながら、復興を成し遂げた姿を世界中に見てもらう面もある」と意義を説明。「東京都と緊密に連携しながら、政府全体として取り組みたい」と述べた。被災地の復興に関して「五輪がある、ないは別にして復興には内閣として全力で取り組む」と強調した。

*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130911&ng=DGKDASDC1000U_Q3A910C1EA1000
(日経新聞 2013.9.11) 走り出した東京五輪(1)  今日から始めてほしい
 「日本に戻ってきて、本当に国民の皆さんに喜んでいただいたなと実感できました」。10日午前、首相の安倍晋三(58)はブエノスアイレスの国際オリンピック委員会(IOC)総会から帰国後の第一声で、2020年東京五輪の開催を勝ち取った高揚感を漂わせた。疲れを考慮して午後2時からと遅めに設定された閣議では、立ち上がって拍手する18人の全閣僚に迎えられた。「閣僚全てが20年五輪に向けてそれぞれのつかさで対応していただきたい」と指示。さらに念を押した。「今日から始めてほしい」。
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 首相は東京五輪を金融政策、財政政策、成長戦略に続くアベノミクスの「『第4の矢』の効果がある」と位置付ける。官房長官の菅義偉(64)は同日、札幌市内の講演で「この国を発展させる最高のチャンスを得た」と胸を張った。「9月8日(日本時間)は新しい歴史がつくられた日だ。歴史教科書にも載せるべきだ」。10日夕、もう一人の立役者、東京都知事の猪瀬直樹(66)は成田空港の到着ロビーに両手を振って登場し、雄弁に語った。フェンシングの北京・ロンドン五輪銀メダリスト、太田雄貴(27)やパラリンピック選手の佐藤真海(31)ら、IOC総会の最終プレゼンテーションに臨んだメンバーとともに帰国。猪瀬の高揚は続く。「バブル崩壊からの20年間、どこかに消えていた自信や希望や夢を7年後に向けて育んでいく必要がある」。東京の勝利は、4年前の惨敗を教訓に、政府と都ががっちり手を組み「オールジャパン」体制を構築したことが大きい。その表れが、総会で実現した高円宮妃久子さまのあいさつ。「日本の皇族は常にスポーツを支援してきました」と述べられ、委員らの心を捉えた。作家として「ミカドの肖像」などの著書がある猪瀬は、昨年12月の知事就任直後から皇室の協力を得ることに注力。道路公団の民営化推進委員会などで面識があった国土交通省出身の宮内庁長官、風岡典之(66)を再三訪ねて働き掛けた。官邸も動き、文部科学相の下村博文(59)は自ら風岡に要請した。憲法の規定を踏まえ政治と距離を置くため、久子さまは9月7日の総会ではスピーチ後に降壇予定だったが、下村は10日、「降壇していただくと(IOC委員に)マイナスイメージになりかねないと私の方で判断して最後までお座りいただいた」と舞台裏を明かした。
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 都の試算によると、東京五輪の経済波及効果は今後7年間で3兆円。期間中に東京が受け入れる観客や大会スタッフは1010万人と見込まれる。産業界は動き始めた。帝国ホテルは9日午前、帝国ホテル東京(東京・千代田)の宿泊やレストラン部門などのトップを集めた会議を急きょ開催。社長の定保英弥(52)は「我々のおもてなしを世界に発信していこう」と指示した。1964年の東京大会でIOC委員らが泊まった実績もあるだけに期待を込める。JTBは、グループ内に五輪に向けた専門組織などを構築する準備に入った。社長の田川博己(65)は「訪日する世界の方々に新しい交流の場をつくっていく」という。公共事業の追加への期待は湧き上がっている。28競技のうち、15競技が行われる東京都江東区は臨海部への地下鉄新設をもくろむ。副区長の佐藤哲章(65)は「先頭を切って動いてほしい」と部下に指示。9日、五輪・パラリンピック開催準備担当部を設けた。64年大会直前に開通した東海道新幹線に思いをはせ、27年開通予定の中央リニア新幹線が五輪前に「せめて名古屋まで乗れるようになれば」と夢を語ったのは、経団連会長の米倉弘昌(76)だ。大手ゼネコン各社は、総工費1300億円で建て替えられるメーン会場「新国立競技場」の受注に向けた水面下の動きを活発化させている。58年竣工の現・国立競技場の工事を手掛けた大成建設は「積極的に狙ってくるはず」(大手幹部)。一方で鹿島や大林組、清水建設、竹中工務店といった各社も色めき立つ。ただ、22の競技場や選手村の整備費用は4500億円に上る。インフラ整備は計画が固まっているものだけで6300億円超。16日間のスポーツの祭典のための財政負担はどこまで可能か。「スポーツ庁」を設置する構想が現実味を帯びつつあり、文科省幹部は「予算も人員も他省庁との交渉も今より力を持つ」と語るが、行政は肥大化しないか。安倍のプレゼンで、東京電力福島第1原子力発電所の汚染水対策は国際公約になった。7年後に向けた課題も山積している。

*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130911&ng=DGKDASDC1000S_Q3A910C1EA1000
(日経新聞 2013.9.11) ゼネコン株活況 大手4社売買高、バブル期超す 個人マネー、五輪特需にらむ
 2020年夏季五輪の東京開催決定を受け、株式市場でゼネコン(総合建設会社)株の取引が急拡大している。開催決定後、大成建設や鹿島といった大手4社の株式売買高は、1980年代後半のバブル期を上回る水準にまで膨らんだ。インフラ整備が業績に追い風になるとみた個人投資家の資金が流入している。関連株を買うため新たに証券会社に口座をつくる動きも活発になってきた。10日の東京株式市場では前日に続き大手建設株が大幅に上昇。大手4社の合計株式売買高は前日の倍近い4億株超に上り、2日連続でバブル期の記録を上回った。4社だけで東証1部の商いの1割強を占め、そろって年初来高値を更新した。東証1部では値上がり率上位30銘柄のうち22銘柄が建設業。「中小の建設会社株を買う動きも広がった」(国内証券)。これら五輪関連株への資金流入が支えとなり、日経平均株価の終値も前日に比べ218円13銭(1.54%)高い1万4423円36銭と約1カ月ぶりの高値水準となった。
 五輪の開催決定を機に関連株に投資を始めたいという人も増えている。カブドットコム証券では銀行経由で証券口座を即時開設できるサービスの申し込みが、前週までの2~3倍に拡大。松井証券では今週に入り、証券口座への入金金額が開催決定前の数倍になった。カブドットコム証券の荒木利夫執行役は「大型イベントの開催で景気が良くなるという期待感が強まっている」と話す。もっとも、ゼネコン大手の株価は2日間で1~3割上昇。短期では過熱感を警戒する声もある。SMBC日興証券の川嶋宏樹シニアアナリストは「株価の急上昇に見合う利益を上げられるかどうか慎重に見極める必要がある」と指摘する。

| 原発::2013.7~9 | 05:21 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.9.8 女性が社会で普通に働き、成果によって差別なく昇進するのは、本来は当たり前のことだが、日本ではまだそれができていないのだということ
    
サッチャー首相    メルケル首相   ハリス司法長官    朴大統領   インラック首相
 (イギリス)       (ドイツ)      (アメリカ)        (韓国)     (タイ)

(1)社会で意志決定する立場の女性が少ないディメリットの一例(*1参照)
 食品表示法改正に加工食品も含む原産地表示がなければ、食品を選択することができないため困る。また、栄養成分表示がなければ液肥で作った野菜と有機栽培で作った野菜は、液肥で作った方が見かけはよいだろうが味も栄養も有機栽培に劣り、外見は区別がつかないため困る。また、加工食品に栄養表示がなければ、慢性病で療養中の人は加工食品を利用することができないので困るのである。

 これらは、家族の健康に気をつけながら買い物をする女性ならすぐわかることだが、この議論が紛糾したり、困ったことに対する改善案が浮かばなかったりするのは、議論の参加者に女性が少なく、問題意識が欠如していることが原因ではないかと思う。何故なら、女性は誰でも、中学、高校の家庭科で栄養学を勉強し、栄養士は大学でも専門的に勉強しており、栄養学は科学であるため、知らない人が議論に参加して意見を言っても、あまり意味がないからである。

 栄養表示について、現場の労力やコスト増に直結する不満が噴出し、栄養士の斉藤久美子さんが「業者にとって負担は大きい」と指摘したそうだが、農業者や食品業者に対しては、近くの保健所において、高くない価格で、放射性物質の含有量や栄養価を測定すればすむことである。そのくらいの設備が保健所になければ、これからの保健所は機能を果たさないし、測定は、栄養士や看護師などが担当すれば簡単な筈で、都道府県の収入にもなる。

(2)日本は、社会での女性の活躍が遅れている(*2、*3参照)
 女性も努力して職業能力を得て頑張っているのであるため、男性と同じ条件で評価され昇進しなければ、やり甲斐はない。そのため、女性を踏み台にして男性に下駄をはかせるのは、止めるべきである。外国ではすでに、*2のメルケル首相や上のサッチャー首相、ハリス司法長官、朴大統領のように、いろいろな分野で能力ある女性が活躍し、意志決定する立場への女性の昇進も進んでいる。

 一方、日本では、*3のように「女性政策にいよいよ『本気』になった日本政府?」と書いている程度であり、男女共同参画担当大臣は最も軽い大臣ポストで、女性の活躍には「保育所の整備」と「男性の育児参加が重要だ」とこぞってメディアがまくしたてている程度だ。はっきり言っておくが、女性の活躍には、女性自身の能力開発が最も重要であり、そのために長期に仕事を中断しなくてすむ手段として「保育所の整備」等があるにすぎない。そのため、能力開発やキャリア形成のやり方は、人によってさまざまであってよく、変な圧力をかけると、かえって女性の職場での立場をやりにくくするだろう。

(3)女性の能力開発やキャリア形成に必要なこと(*4、*5、*6参照)
 *5のように、「女子学生に研究者を志してもらおうと、九大女性研究者キャリア開発センターが、学内の女性研究者を紹介する冊子を作成」「各分野で輝く女性研究者を知ることで、高校生たちが興味のある分野で頑張るきっかけになればと期待している」というのは、高校、大学、大学院の段階で、女性が将来輝くために進路選択を行うにあたり、重要なことである。何故なら、高校、大学、大学院の段階で基礎を作っておかなければ、職場で、男性と同じ条件で昇進することなど、とてもできないからである。

 また、高校、大学、大学院の段階で基礎を作っても、それを磨く舞台が得られなければ、時が経つにつれて腐るだけである。そのため、遅ればせながら、*4のように、「女性管理職拡大へ」と、職場で、女性の管理職への昇進を前提とした育成が九州でも進められ始めたのはよいことだ。

 しかし、1979年の第34回国連総会において、*6のように女子差別撤廃条約が採択され、1981年にそれが発効して、世界がその方向で努力してきたことと比較すれば、建前と本音を分けてきた日本の感覚と成果は、世界に約30年遅れている。そして、それは、実際に公認会計士としてBig4の国際事務所であるプライスウォーターハウス・クーパースやKPMGで働き続けてきた私の肌感覚とも一致している。

*1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=23238
(日本農業新聞 2013/9/7)  消費者庁の「食品表示法」説明会が終了 現場の負担増 支援必要
 消費者庁は6日、食品の表示ルールを一元化する「食品表示法」について説明会の全日程を終えた。説明会では、これまで任意だった加工食品の栄養成分表示が原則義務化されることに、加工業者や6次産業化を進める農家から不安の声が噴出、現場の実態に沿った対象事業者の範囲や経費負担の在り方をめぐって意見が相次いだ。また、食の安全・安心確保に向け、加工食品の原料原産地表示拡大にも根強い要望があった。
●全事業者対象に不安 「原料原産地」検討急げ
 説明会は、8月22日の福岡を皮切りに6日の仙台まで、全国7カ所で開いた。同法で定められた表示のポイントを解説、今後の検討課題となっている項目などについて参加者から意見を聞いた。参加者から関心が特に高かったのは、加工食品の栄養成分表示を義務化する業者の対象範囲だ。直売所をはじめ、小規模な事業者が手掛ける加工食品にまで義務化されるのかなど、現時点では詳細は決まっていない。消費者庁は今後、関係省庁や消費者委員会の意見を踏まえて原案を示す方針だ。「どんな準備が必要なのか」「栄養成分の検査費用や検査器具の導入に助成はあるのか」。説明会では消費者に分かりやすい表示を目指す一方で、現場の労力やコスト増に直結する不満も噴出した。群馬県桐生市の栄養士、斉藤久美子さん(51)は「業者にとって負担は大きい。一般への周知も足りない」と指摘。福岡市の中小食品業者も「景気回復の実感もなく、経費削減している中で表示の義務化は経営悪化に拍車が掛かる。制度の詳細が決まらなければ、不安は増幅するばかりだ」と懸念を示した。
 また、新法と切り離して検討課題となった加工食品での原料原産地表示の拡大にも、強い要望が上がった。参加した東京都練馬区の石黒昌高さん(82)は「加工食品も産地表示されれば、日本の農家にとって大きなPRになり、消費者にとっては安全・安心の確保につながる」と強調。この他、各地で「検討が進んでいないのはおかしい」「国の責任で制度化すべきだ。現場でのコスト増も政府が食の安全を確保する必要経費として、助成してほしい」との意見が出た。
消費者庁は説明会での意見に対し「制度の詳細は決まっていない。加工食品の栄養成分表示の義務化の対象は、小規模事業者の活動の妨げにならないことも論点に検討する」(食品表示企画課)と説明する。検討が始まっていない加工食品の原料原産地表示の義務化や遺伝子組み換え(GM)食品の表示規制強化といった課題には「検討の場を準備中で、時期などは明言できない」と述べるにとどまっている。説明会での意見に対し、食の安全・安心財団の中村敬一理事事務局長は「新たな表示ルールや検討課題の周知が不十分な証拠だ」と指摘。また、「こうした国民の不安に応えるため、相談窓口などの体制を消費者庁が早急に整備するべきだ」と訴える。
〈ことば〉食品表示法 食の安全性や品質などの表記を分かりやすくするため表示ルールを一元化する目的で6月に公布。今後2年以内に施行し、現行で任意の加工食品の栄養成分表示の原則義務化は、施行後5年以内を予定する。

*2:http://digital.asahi.com/articles/TKY201309020042.html
(朝日新聞 2013.9.2) 「脱原発、正しかった」 メルケル独首相が福島に言及
 ドイツのメルケル首相は1日、22日の総選挙に向けたテレビ討論で、東京電力福島第一原発の放射能汚染水漏れを念頭に「最近の福島についての議論を見て、(ドイツの)脱原発の決定は正しかったと改めて確信している」と述べた。独メディアは汚染水漏れについて批判的に報じている。
メルケル氏はまた、ドイツが米国主導のシリア攻撃に参加しないとの方針を表明。アサド政権による化学兵器使用は「途方もない犯罪」と批判したが、国際社会が共同で対応する必要があると強調した。国際的な対応について、国連安保理やロシアでの主要20カ国・地域(G20)首脳会議でロシアや中国にも合意を働きかけると述べた。発言は、ドイツ連邦軍の海外派遣に消極的な国民世論を考慮したもので、討論に臨んだ最大野党・社会民主党の首相候補、シュタインブリュック前財務相も軍事行動への不参加を表明した。

*3:http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130418/246868/?bpnet
(日経BP 2013年4月19日) 女性政策にいよいよ「本気」になった日本政府? もはや不可欠、やり方次第ではEUにも勝てる
 民主党政権時代、最も「軽い」大臣ポストの1つが男女共同参画担当大臣だった。3年3カ月の間にこのポストに就いたのは官房長官の事務代行を除いても8人。少子化対策担当大臣の9人に次いで頻繁に交代したポストだった。男女共同参画担当という大臣が初めて置かれたのは森喜朗内閣時代の2001年。主として官房長官の兼務ポストだったが、第1次安倍晋三内閣で内閣府特命大臣として上川陽子氏が任命された。以後、中山恭子氏、小渕優子氏と引き継がれた。自民党時代はほぼ1内閣1人だった。民主党も最初は女性議員の福島瑞穂氏を据えたが、その後は他の大臣の兼務ポストとなり「たらい回し」の状況になった。民主党はイメージとは違って「男女共同参画」や「少子化対策」を政策としてはあまり重視していなかったということなのだろう。
 安倍内閣になって、がぜんこのポストの重みが増している。第1次安倍内閣同様、女性議員を大臣に据え、少子化対策と消費者及び食品安全担当を兼務させた。任命されたのは森まさこ参議院議員である。実は「男女共同参画」や「少子化対策」は、経済の再生を目指すアベノミクスと密接に関係している。関係しているというよりもアベノミクスの主要政策の1つと言ってもいいものなのだ。昨年末、安倍自民党が総選挙を戦った際、政権公約の細目である「自民党政策BANK」を公表した。その中に、「女性力の発揮」という項目があるのだ。それも「経済成長」の具体策の1つとして盛り込まれている。そこにはこう書かれている。
●「にぃまる・さんまる」に込められた目的
 「社会のあらゆる分野で2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上とする目標(“20年30%”〈にぃまる・さんまる〉)を確実に達成し、女性力の発揮による社会経済の発展を加速させます」。この「にいまる・さんまる」という数字自体は、民主党政権時代の2010年に作られた男女共同参画基本計画に盛り込まれていたもので、安倍自民党のオリジナルというわけではない。だが、安倍首相は自らの強いリーダーシップで実現に向けて具体策を打っていこうとしている。その背景には、アベノミクスの目的がある。強い日本経済の再生には女性力の活用が不可欠だという認識がある。安倍氏の「本気度」は政権発足直後の人事にも表れた。前述の通り、男女共同参画担当相に森氏を起用したほか、規制改革担当相に稲田朋美氏を当てた。首相を含む19人の閣僚のうち女性が2人というのは、民主党政権時代を通じて「標準的」な水準だが、党人事ではサプライズを演出した。自民党の3役人事で、政調会長に高市早苗氏、総務会長に野田聖子氏を抜擢したのだ。自民党3役に女性を当てたのは野党時代の小池百合子・政調会長の例があるが、与党としては初の起用。しかも3役のうち2人、つまり「過半数」が女性というのは自民党の歴史始まって以来の初めての事である。当選回数でみれば適齢期とも言えるが、2人とも無派閥。総裁の決断がなければ実現できない人事だった。記者会見で安倍氏は「女性の力を生かしていく。自民党が変わったことを理解していただけるのではないか」と述べた。

*4:http://qbiz.jp/article/22757/1/
(西日本新聞 2013年8月30日) 女性管理職拡大へ、福岡の15社・団体が数値目標
 女性の社会進出や管理職への登用を進める「女性の大活躍推進福岡県会議」は30日、福岡県、福岡市、TOTO(北九州市)、岩田屋三越(福岡市)など15社・団体が女性の管理職を増やす数値目標を新たに設定したと発表した。同会議は、企業や団体への働きかけを強め、2013年度内に目標導入を100社・団体に、14年度末には500社・団体に増やしたい考え。同会議には福岡県内の企業や自治体など約60団体が参加。女性の活躍の拡大に向けて育児支援などの環境整備や啓発活動に取り組むほか、将来的には九州全域に活動を発展させる方針。数値目標は「17年度に管理職に占める女性比率10%」(TOTO)などで、15社・団体が自主的に設定した。福岡市で記者会見した松尾新吾共同代表(九州経済連合会名誉会長)は「女性の活躍については、企業や社員、社会全体の意識がまだ低い」と指摘。久留百合子共同代表(ビスネット社長)も「女性管理職が珍しくない社会になるよう、積極的に情報発信していく」と話した。

*5:http://qbiz.jp/article/22841/1/
(西日本新聞 2013年9月2日) 女性研究者の卵を増やそう 九大が高校生向け冊子作成
 女子学生に研究者を志してもらおうと、九州大学(本部・福岡市東区)が学内の女性研究者を紹介する冊子「ブリランテ」を作成した。研究概要だけでなく、一日の過ごし方や好きな国なども紹介し、研究者たちの“素顔”が分かる内容。5千部を九大のイベントで配ったり、九州・山口の高校に送ったりする。制作したのは九大女性研究者キャリア開発センター(愛称・ソフル)。「女性研究者の卵を増やそう」と高校生向けの冊子の刊行を企画し、スタッフ7人が、文系理系を問わず、各世代の研究者や大学院生計15人にインタビューした。ブリランテはイタリア語で「輝く」という意味。カラー40ページで副題は「女性研究者のキラキラの素、届けます」。プラズマ研究で著名な伊藤早苗副学長や新種ブドウを開発した酒井かおり助教らが登場し、それぞれの研究内容や魅力、仕事に欠かせない道具、落ち込んだときの対処法、尊敬する人などを語っている。大学院生は3人で、進路選択の経緯や日ごろの研究、後輩へのアドバイスなどをつづった。九大によると、学内の女性教員は280人。年々増えているが、教員全体の12%にとどまる。菊川律子センター長は「各分野で輝く女性研究者を知ることで、高校生たちが興味のある分野で頑張るきっかけになれば」と期待している。

*6:http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/
 女子差別撤廃条約は、男女の完全な平等の達成に貢献することを目的として、女子に対するあらゆる差別を撤廃することを基本理念としています。具体的には、「女子に対する差別」を定義し、締約国に対し、政治的及び公的活動、並びに経済的及び社会的活動における差別の撤廃のために適当な措置をとることを求めています。本条約は、1979年の第34回国連総会において採択され、1981年に発効しました。日本は1985年に締結しました。(以下略)

| 男女平等::2013.5~2013.11 | 04:04 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.9.7 汚染水と食品汚染(特に漁業)について(2013.9.9最終更新)
  
     汚染水の海への流出経路       2013.8.1東京新聞より  フクイチの港湾
(1)消費者のリスク回避行動を風評被害と言えるのか
 *1によれば、「韓国政府が、福島など8県の全水産物を輸入禁止にした」そうだが、もっともである。私は、リスクを理解しているからこそ、残念ながら食卓のバラエティーは減ったが、この地域の海産物は原発事故以降、口にしていない。原発事故以降、汚染水はずっと漏れ続けていたのであり、メディアを通じた東電や日本政府の発表は信用できなかったからである。

 *1には「福島県は原発事故翌月の2011年4月から魚肉の放射線量の調査を続けているが、数値は減少しつつある」と書かれている。また、*2には、「取れた魚介類は放射性物質検査で検出限界値未満であることを確認したうえで、13府県の市場に出荷していた」「福島県では週1回、水産物のモニタリング結果を公表しており、セシウム134と同137の合計、ヨウ素131についてコウナゴなど全部を食べる魚はそのまま、ヒラメなどは筋肉部分をゲルマニウム半導体分析器で測定。8月28日に公表された分では海産物55種158検体、川や湖の魚5種9検体、内水面の養殖魚5種7検体を調べ、国の基準値1キロ当たり100ベクレルを超えたのはコモンカスベ(エイ)のセシウムだけだった」と記載されている。しかし、これでわかることは、週に1回、セシウムしか測っておらず、検体数も一種につき3個体程度であり、統計として全体を推測できる数ではないということである。

 従って、サンプルに偏りはないのか、どういう測定器を使って測っているのかも疑問だが、限られた個体のセシウムのみを測って、それが国の基準値1キロ当たり100ベクレルまたは検出限界値以下であったとしても、何年食べ続けても健康を害さないという保証は決してない。正確には、汚染が0でない限りは身体に負担をかけ、食べ続ければ心筋梗塞や癌になるリスクがあると考えるのが普通だ。

 このような杜撰な検査をした上で、「福島県は原発事故翌月の2011年4月から、魚肉の放射線量の調査を続けているが、数値は減少しつつある」と言われても意味がないのであり、その地域の海産物がすべて安全とは決して言えず、当事者が楽観的にものを考えている限り、消費者は口にしないのが賢明なのである。これを風評被害と言うのは、誰にも決して実害がないことを実証してからにすべきだ。

(2)日本のメディア、東電、日本政府の意識
 *2に「今、急に漏れたのではなく、海中の放射性物質のデータを見れば、原発事故当初から流出は続いていた。どの研究者も同じ見解を持っていた」「2011年4月には、2号機取水口付近から大部分を防波堤に囲まれた発電所専用港湾内へ高濃度汚染水が流れ出た」「1日に湾内の海水の44%が湾外と交換されていることが分かり、試算した11年6月から12年9月の間だけで17・1兆ベクレルのセシウム137が湾外に出たことになる」と書かれているが、誰でもそう思っていただろう。港湾内の水は港湾外の海水とは混じらないと言われて信じる人というのは、どういう人なのだろうか。

 *3に、「全国漁業協同組合連合会の岸宏会長が9月6日、原子力規制委員会の田中俊一委員長が『(汚染水を基準値以下にした後に)海に放出することは避けられない』と発言したことを受け『漁業者としては到底受け入れられない』と批判した」と書かれているが、基準値以下に薄めれば大量の汚染水を放出しても問題ないと考える人はいないだろう。もちろん、放射性物質が0なら問題はないが、放射性物質は総量でどれだけ出したかが問題なのである。

 *4には、「東京電力福島第1原発の汚染水漏れ問題で中断した福島県漁連の試験操業が、今月末に再開する見通しになった。検査結果に問題がない以上、流通も試験操業の一環。黙って反応を探るより、動いて確かめたい」「いわき市漁協の矢吹正一組合長は『延期が続けば、福島の漁業のイメージが薄れる。漁師の根性を見せたい』と述べた」と書いてあり、気持ちはわかるが、ここは根性よりも安全・安心の科学的根拠を示すことが重要である。そうでなければ、何も信じられなくなり、せっかく戻っていた魚食から消費者が離れるだろう。

(3)では、どうすればよいのか?
 *5の食品表示法だが、農産物の栄養表示、産地表示、放射性物質の含有に関する表示は、消費者が選択する上で大変重要であるため、行うべきである。それにより、手をかけてよい製品を作った人が報われる。また、海産物についても、産地表示、養殖・天然の別、栄養表示、放射性物質の含有に関する表示は必ず行ってもらいたい。

 現在は、缶詰、外食、加工品では、放射性物質の含有に関する表示も原産地表示も行われていないため、リスクを回避するには、危なそうな海域に住む魚はすべて買わない、外食は控える、日本産は買わないというような方法しかないのである。

*1:http://digital.asahi.com/articles/TKY201309060065.html?ref=comkiji_txt_end_kjid_TKY201309060065
(朝日新聞 2013.9.6) 福島など8県の全水産物、韓国が輸入禁止へ 汚染水問題
 韓国政府は6日、東京電力福島第一原発の汚染水漏れを受け、福島など8県の水産物の輸入を9日から全面禁止すると発表した。これまでは輸入禁止を50種に限ってきたが、汚染水による水産物への影響が見通せないことから、対象を全水産物に拡大した。韓国政府によると8県は福島のほか茨城、群馬、宮城、岩手、栃木、千葉、青森。この8県の水産物は今後、放射能汚染の有無と関係なく韓国内での流通が全面的に禁止される。昨年の日本産の輸入量は約4万トンで、うち8県からの輸入は約5千トンという。8県以外の水産物についても、放射性物質のセシウムが微量でも検出されれば、他の放射性物質の検査証明書を追加で要求することを決定。韓国政府関係者は「追加検査には時間がかかるため、微量でも放射性物質が検出された水産物は事実上、遮断される」としている。さらに、日本産が国内産と偽って流通されることを防ぐため、国内産食品の放射能検査基準を強化し、日本産に適用している基準と同じにするとしている。一連の措置について韓国政府は、海への汚染水流出に対する韓国国民の懸念が強まっている▽日本政府から提供された資料だけでは今後の事態を正確に予測することが難しい――などを理由として挙げた。韓国では、日本の汚染水流出が連日報道され、市場で日本産水産物の販売が不振になったり、韓国内の魚の消費にも影響が出始めたりしていた。
 農林水産省のまとめでは、福島の事故を受け、韓国や中国、米国、欧州連合(EU)、ロシアなどが福島県などの水産物の輸入を規制していた。事故直後は全面停止の国が多かったが、2011年6月から今年3月にかけ、ニュージーランド、カナダ、マレーシアが完全に解除。米国も一部の魚種以外は、事故直後から米国内で検査することを条件に規制を解いた。EUは12年10月に対象県を減らすなど緩和した。一方、中国は7月末現在、福島、宮城、千葉など10都県の水産物について、放射性物質の数値を問わず輸入を停止したままだ。他道府県には、日本政府の放射能検査証明書と原産地証明書の提出を求めている。水産物の輸出量は、震災前の10年は約56万5千トンだったが、11年は25%減の約42万4千トン。水産庁は原発事故による輸出規制の影響とみている。福島県は原発事故翌月の11年4月から、魚肉の放射線量の調査を続けているが、数値は減少しつつあるという。

*2:http://mainichi.jp/feature/news/20130903dde012040014000c.html
(毎日新聞 2013年9月3日) 福島第1原発の汚染水漏れ 食卓の魚は大丈夫か
◇放射性物質は減少傾向/サンマ、心配なし/じゃこ、海藻がお勧め
 東京電力福島第1原発から放射性汚染水はやはり海に漏れていた−−。専門家は「当然の事態」と口をそろえるが、消費者の不安は増すばかりだ。次々に新しい事実が公表され危機の深刻度が高まる中、食卓に上る魚たちは大丈夫なのだろうか。福島県漁業協同組合連合会(県漁連)は8月28日、9月初旬から同県沖で再開予定だった相馬双葉漁協といわき市漁協の試験操業を延期することを正式決定した。いわきの試験操業は原発事故後、初めてとなるはずだった。「東電が『汚染水が海に流出したかもしれない』と言っている今、見送りはやむを得ない」と県漁連の復興担当者は嘆く。福島県沖では、昨年6月から比較的汚染が少ないとされる県北部の相馬双葉漁協が試験操業を開始。対象を16魚種に拡大し、海域も双葉町沖から広野町沖にまで広げた。取れた魚介類は放射性物質検査で検出限界値未満であることを確認したうえで、13府県の市場に出荷していた。
 福島県では週1回、水産物のモニタリング結果を公表している。セシウム134と同137の合計、ヨウ素131についてコウナゴなど全部を食べる魚はそのまま、ヒラメなどは筋肉部分をゲルマニウム半導体分析器で測定。8月28日に公表された分では海産物55種158検体、川や湖の魚5種9検体、内水面の養殖魚5種7検体を調べ、国の基準値1キロ当たり100ベクレルを超えたのはコモンカスベ(エイ)のセシウムだけだった。今年6月以降、汚染水問題は深刻化の一途をたどってきた(別表)。「後出しじゃんけん」のように相次ぐ東電の発表に不信感を強めるのは、魚を食べる消費者も同じだ。
 福島沿岸で2011年夏から調査を継続中の東京海洋大の神田穣太(じょうた)教授は「汚染水漏れのニュースが出始めてから特に魚の汚染が悪化したわけではないと捉えています」と語る。しかし、だから安心という話ではない。「今、急に漏れたのではなく、海中の放射性物質のデータを見れば、原発事故当初から流出は続いていた。どの研究者も同じ見解を持っていました」。11年4月には、2号機取水口付近から大部分を防波堤に囲まれた発電所専用港湾内へ高濃度汚染水が流れ出た。神田教授は同港湾内の海水中のセシウム137の減り方から海水の動きを分析。1日に湾内の海水の44%が湾外と交換されていることが分かった。試算した11年6月から12年9月の間だけで17・1兆ベクレルのセシウム137が湾外に出たことになる。公には「海への流出はない」とされていた時期に、である。

*3:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDF0600J_W3A900C1EE8000/
(日経新聞 2013/9/6) 全漁連、汚染水の海洋放出「受け入れられず」
 全国漁業協同組合連合会の岸宏会長は6日、東京電力福島第1原子力発電所の汚染水問題の早期収束を求める要望書を茂木敏充経済産業相に手渡した。岸氏は原子力規制委員会の田中俊一委員長が「(汚染水を基準値以下にした後に)海に放出することは避けられない」と発言したことを受け「漁業者としては到底受け入れられない」と批判した。茂木氏は「いかなる状況でも汚染水の海への安易な放出はしない」と応じた。岸氏は韓国政府が福島県など8県の水産物の輸入を全面禁止した措置について「輸出に大きな影響が出ることを憂慮している」と述べた。一方、茂木氏は同日、福島第1原発周辺の同県楢葉、大熊、富岡、双葉4町の町長らとも会談した。楢葉町の松本幸英町長は、東電の汚染水対策への監視を強化したり、対策の進み具合を地元住民に分かりやすく説明したりすることを求めた。茂木氏は「情報を迅速、的確に発信できる体制をつくりたい」と応じた。

*4:http://mainichi.jp/select/news/20130907k0000m040055000c.html
(毎日新聞 2013年9月6日) 福島第1原発事故:県漁連、試験操業再開へ…汚染水で中断
 東京電力福島第1原発の汚染水漏れ問題で中断した福島県漁連の試験操業が、今月末に再開する見通しになった。相馬双葉漁協といわき市漁協などの代表者が6日、会合を開き方針を決めた。操業海域で県が実施した海水の放射性物質検査で汚染水の影響が見られなかったことなどから、対象魚種や海水の検査を強化して再開する。相双漁協の佐藤弘行組合長は会合後、「検査結果に問題がない以上、流通も試験操業の一環。黙って反応を探るより、動いて確かめたい」と話した。いわき市漁協の矢吹正一組合長は「延期が続けば、福島の漁業のイメージが薄れる。漁師の根性を見せたい」と述べた。

*5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=23225 (日本農業新聞 2013/9/6) 食品表示法 不安の声 根強く 消費者庁説明会 消費者、業者とも懸念
 消費者庁は5日、東京都内で、加工食品の栄養成分表示を義務化する「食品表示法」の説明会を開いた。食品関連事業者や消費者ら350人が参加。会場からは「栄養成分の検査や表示費用がかさみ経営を圧迫する」といった不安の声が上がった。原料原産地表示の義務拡大や遺伝子組み換え(GM)表示の検討が始まらないことに不満の声も相次いだ。同庁は、食品表示に関する三つの法律(食品衛生法、JAS法、健康増進法)を一元化する意義を説明。「安全性や品質などの表記を分かりやすくするため、原材料や添加物、食品表示のルールの統一が不可欠」とした。
 大きく変わる点として、加工食品の栄養成分表示の義務化を挙げた。食品の加工業者などからは「表示の義務化は、どの規模の事業者までなのか」といった質問が出た。消費者からは、加工食品の原料原産地表示の義務化拡大や、GM表示の規制強化について同庁の検討が始まらないことに業を煮やし、「なぜ(検討を)進めないのか」といった厳しい質問も出た。これに対し、同庁は「今後関係者の意見を聞きながら検討したい」と答えるにとどまった。説明会後、千葉県の70代の農家男性は「安い海外の原材料を使って日本で作ったから、日本製と表示する業者もある。原料原産地表示は絶対に必要だ」と強調した。

PS(2013.9.9追加):*6のように、私もオリンピック誘致のためとはいえ、「状況はコントロールされている」という回答には納得できなかった。さらに、「汚染水は港湾内に排出されたから、外洋には出ない」というのも、潮の満ち引きで海水が入れかわるのに、誰が考えてもあり得ないだろう。

*6:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013090801001923.html
(東京新聞 2013年9月8日) 汚染水めぐる首相発言に批判の声 福島の漁業者ら「あきれた」
 「状況はコントロールされている」。安倍晋三首相は、国際オリンピック委員会(IOC)総会で、東京電力福島第1原発事故の汚染水漏れについて、こう明言した。しかし、福島の漁業関係者や識者らからは「あきれた」「違和感がある」と批判や疑問の声が上がった。「汚染水の影響は福島第1原発の港湾内0・3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」とも安倍首相は説明した。だが、政府は1日300トンの汚染水が海に染み出していると試算。地上タンクからの漏えいでは、排水溝を通じて外洋(港湾外)に流れ出た可能性が高いとみられる。

| 原発::2013.9~11 | 01:10 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.9.3 汚染水は完全に人災である。そして、この程度の危機管理しかできない当事者が、原発再稼働を言うなど、ずうずうしいにもほどがある。
   
   朝日新聞2013.8.29より          朝日新聞2013.9.1より  

(1)処理後の汚染水は、どの程度汚染されているのか?
 もともと原発事故現場の汚染水は、アレバ社製の浄水装置によって、汚染水でなくなっていた筈だが、実際には、セシウムのほんの一部しか除去されておらず、高度汚染水がタンクに溜められていたわけである。そして、*2のように、東電は政府(旧原子力安全・保安院)の承認を得てコンクリート堰の排水弁を全て開け、*3のように、配管の作りは杜撰で、しっかりした管理もしていなかったということだ。ここに、放射性物質からの安全管理の視点は全くない。

 従って、まず、アレバ社製の浄水装置にいくらかけ、どのくらい浄水されていたかをここで明らかにすべきであって、絶対に、それを不問に付すべきではない。何故なら、これにより、①どういう事故が起こり ②どういう核種が汚染水に含まれ ③今後、どの程度、それを浄化できるかがわかるからである。それらを明確にできない人間が、*1のように、「多核種除去設備で処理後の海洋放出に理解を」などと唱えても空虚であり、賢明な人間なら誰も信用しない。

 また、原発内のタンクから汚染水が漏れ出した問題に関し、*1のように、原子力規制委員会の田中俊一委員長が、「一番大事なことは国際社会に適切な情報を伝えること」と言ったと書かれているが、一番大事なことは、日本国民に適切な情報を伝え、日本国民の命や健康を守ることである。それができれば、当然、他国民の命や健康を守ることもでき、国際社会に理解され、信用され、安心されもするのだ。

(2)国の判断なら正しいのか?
 *2には、「高濃度汚染水が漏れた地上タンク群を囲むコンクリート堰で排水弁を全て開けていた運用について、旧原子力安全・保安院の承認を受けていた」と書かれている。つまり、今までの対応やこれからやろうとする対応を見れば、国民の人権に対する国の意識はその程度だと判断できるため、脱原発が必要不可欠なのである。

 また、*3には、タンクや配管から汚染水が漏出した事故を受けて「東電は見回りの作業員を10人程度から60人まで増やす」と書かれているが、線量を測って伝える線量計を多く置いておけば、作業員の数はいらない。つまり、ここには、汚染水の漏出を素早く知って安全を保つという発想はなく、どんな仕事でもいいから人を使って雇用を増やそうという発想しかないのであり、命に関わる放射線管理において全く落第である。ここまで来ると、第二次世界大戦を思い出した。

(3)津波や過酷事故への対策が適切に実施されていれば事故は避け得たのか?
 このような中、*4には、日本原子力学会の事故調査委員会(委員長=田中知・東京大教授)は2日、「津波や過酷事故への対策が適切に実施されていれば事故は避け得た」などとする最終報告書原案を提出すると書いてあるが、「すべての機能は電源があることが前提となっていた」「その作業も杜撰」など、これまでの行動を見て、私は、放射線の危険からの安全管理の欠如、危機管理意識のなさが大きな原因であり、そのために必要な準備も後始末もなされないのだと思っている。

 また、事故後の現場対応についても、(1)(2)で述べたような情報をつかんで伝えられるだけの知識と経験がなければその現場で十分に働くことはできず、「問題点は認められるが、総合的には標準以上」という評価は、現場に甘すぎるだろう。

(4)320億円かけたら、凍土壁で地下水を遮水できるのか?
 *5に記載してあるように、東電は、四方遮水壁を作るのに1000億円かかるので、これを断念したそうである。私は、単なる構造物を作るのに1000億円は高すぎると思うし、それが高すぎるため四方遮水壁をやめ、岸壁近くの海側地盤に薬液を注入して水を通しにくくする遮水壁を造り、それで地下水を止められると思ったというのにも、開いた口がふさがらなかった。

 その破綻した地下水の処理のため、*6のように、今度は国が前面に出て、福島第一原発の汚染水対策に470億円をかけ、予備費も使って、土を凍らせた遮水壁の建設を前倒しするそうである。常に16度前後を保っている大量の地下水を凍らせ続けるために、どのくらいの運用費がかかるかの試算はしていないそうだが、いくらかけても自然の大量の地下水を凍らせ続けることはできないと断言する。しかし、無理に冷却し続けることで、周囲の地下水の温度が下がり、それが海水の温度まで下げて、近くの生態系を狂わせることは明らかだ。

 また、汚染水から放射性物質を取り除く装置の新設に150億円かけるそうだが、メディアは、これがアレバ社製の最初のものよりどこが優れており、どの程度の核種を除去でき、海に流せる程度に浄水できるのか否かを報道すべきだ。何故なら、結果が出なければ、誰かの道楽で、”財政再建中”の国費を湯水のように使うことになるからである。

*1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS02020_S3A900C1PP8000/
(日経新聞 2013/9/2) 汚染水「処理後の海洋放出に理解を」 規制委委員長
 原子力規制委員会の田中俊一委員長は2日、日本外国特派員協会で記者会見した。東京電力福島第1原子力発電所で放射性物質を含む汚染水がたまっている問題では、放射性物質を基準値以下にした後に「海に放水することは避けられない」との見解を改めて示した。「精いっぱいの努力をしているので理解いただきたい」と話した。汚染水を海洋放出する場合は約60種類の放射性物質を取り除くことができる「多核種除去設備(ALPS)」で事前に処理することを説明。装置で除去できないトリチウムについては「希釈なりをして放出することになると思う」と話した。また「世界中の原子力施設から、そういったものは通常の場合でも出ている」と説明。「歴史的には核実験などで大気中の放射能レベルが今より数万倍高かった時期もある」とも指摘した。
 原発内のタンクから汚染水が漏れ出した問題に関しては「一番大事なことは国際社会に適切な情報を伝えること」と指摘。「状況は日々変わっており、客観的な情報を丁寧、的確に提供することを原子力規制庁の職員にも指示した」と述べた。

*2:http://www.minyu-net.com/news/news/0825/news9.html
(2013年8月25日 福島民友ニュース) 「旧保安院が開口承認」 排水弁運用で東電が謝罪
 東京電力の相沢善吾副社長・原子力・立地本部長は24日、県庁で内堀雅雄副知事に会い、高濃度汚染水が漏れた地上タンク群を囲むコンクリート堰で排水弁を全て開けていた運用について「間違い」と認め、謝罪する一方、旧原子力安全・保安院の承認を受けていた経緯も明らかにした。東電、旧保安院が堰の役割を十分認識して運用していれば外部漏出は最小限に抑えられた可能性が高い。相沢副社長は「(人員確保のため)現場の判断があった。(弁を)閉めていると雨が降るたびに水を出しにいかなければならない」と述べた。タンクの見回りは8人の作業員で1日2回だったが、人員不足を背景に作業員の負担軽減のため開けていた可能性がある。今後、人員増強など具体策を詰めるとしている。

*3:http://digital.asahi.com/articles/TKY201309010256.html
(朝日新聞 2013年9月2日) 配管からも汚染水漏出 福島第一、タンク見回りを増員
 東京電力福島第一原発の4カ所のタンク付近から高い放射線量が検出された問題で、東電は1日、このうち1カ所で新たな汚染水漏れを確認したと発表した。タンク間をつなぐ配管の継ぎ目からで、タンク本体だけでなく、配管にも危険が潜む現状が浮き彫りになった。東電は2日以降、見回りの作業員をこれまでの10人程度から60人まで大幅に増やす。漏れが見つかったのは、先月19日に約300トンの汚染水漏れが分かったタンクがある「H4」と呼ばれる区画から、南西に約100メートル離れた「H5」区画。31日に見回り中の作業員が継ぎ目部分の外側の保温材を押したところ、水滴が落ち、床面を測ると毎時約230ミリシーベルトを検出。保温材を外したところ、配管とタンクをつなぐ継ぎ目部分から約90秒に1滴の割合で漏れているのを見つけた。継ぎ目のボルトを締めると漏れは止まったという。また、31日に表面で毎時1800ミリシーベルトが検出された「H3」区画のタンクを1日にあらためて調べたところ同1100ミリシーベルトだった一方、同じタンクの反対側で同1700ミリシーベルトを検出した。ただ、主に透過力が弱いベータ線で、防護すれば遮蔽(しゃへい)できる。東電は今後、このタンクの汚染水を別のタンクに移す方針。

*4:http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130902k0000e040158000c.html
(毎日新聞 2013年9月2日) 福島第1原発:事前の対策に不備 原子力学会が最終報告案
 東京電力福島第1原発事故を調べている日本原子力学会の事故調査委員会(委員長=田中知・東京大教授)は2日、「津波や過酷事故への対策が適切に実施されていれば事故は避け得た」などとする最終報告書原案の概要を東京都内で開いた会員向けの説明会で公表した。3日から青森県で開かれる大会でも報告し、会員からの意見を踏まえて年内にも最終報告書をまとめる。学会事故調は昨年6月に発足。約50人の専門家が既存の公表データを中心に事故進展や現場対応、事前の備えなどを調査した。原案では、事故の直接原因について、津波や過酷事故への事前の対策の不備を挙げた。機器などの設計で「すべての機能は電源があることが前提となっていた」ことを「根本的過ち」と指摘。最初に水素爆発を起こした1号機の非常用復水器(IC)が機能しなかった要因について「ICの機能への認識があいまいで、作動経験に乏しかったため」と結論付けた。
 こうした事前の備えの不備の背景として、事業者や規制当局の安全意識の欠如に加え、「専門家が狭い専門に閉じこもり、システムとしての安全に見落としがあった」ことなどを挙げた。一方、事故後の現場対応については「問題点は認められるが、極限状況での人間の対応には限界があり、総合的には標準以上」と評価した。

*5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013090302000238.html
(東京新聞 2013年9月3日) 東電、費用公表に難色 「四方遮水壁 1000億円規模」
 東京電力福島第一原発の汚染水問題で、福島県民らでつくる福島原発告訴団は三日、東電が汚染水対策として原発地下の四方に遮水壁を造るのが「最も有力」と位置付けながら、一千億円規模の費用や着工時期を公表しない方針を記していた内部文書を入手したと発表した。遮水壁は結局、海側にしか設置されていない。告訴団は同日、汚染水漏れは管理のずさんさが招いた公害だとして、この内部文書のコピーなどを添え、公害犯罪処罰法違反容疑で東電幹部らの告発状を福島県警に提出した。
 告訴団によると、入手したのは原発事故から約三カ月後の二〇一一年六月に、東電から政府側にあてた内部文書という。発電所の四方に壁を造って遮水する「地下バウンダリ」という対策について、基本仕様や記者発表の対応方針が書いてある。このうち「基本仕様について」と表題のある文書は、1~4号機原子炉建屋などの地中の四方を囲む遮水壁の工事は設計がまとまり次第、着手する予定とし、「高濃度の滞留水(汚染水)をこれ以上海洋に流出させないために、『後追いにならない備え』とする」と明記している。だが、併せて作成されたとみられる記者発表に関する文書では、遮水壁は設計次第で一千億円規模の工事費がかかる可能性があり、「仮に一千億円レベルの更なる債務計上を余儀なくされることになれば、市場から債務超過に一歩近づいたとの厳しい評価を受ける可能性が大きい。是非回避したい」と記述。発表する際は着手時期や費用を「今後の調査・設計次第で不明」とする方針を伝え、政府側に理解を求めている。
 地下の四方に造るはずだった遮水壁は海側にしか造られず、東電側はこの設置費も公表していない。東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は先月の会見で「建屋地下の汚染水は地下水位との微妙なバランスで管理している。不用意に陸側に壁を造ると、バランスを崩す恐れがあった。技術的側面の判断で、決して予算面での判断ではなかった」と強調していた。東電はこの文書について本紙の取材に回答せず、告発状については「コメントは控える」としている。

*6:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDF03004_T00C13A9MM0000/?dg=1
(日経新聞 2013/9/3) 福島原発、汚染水対策に470億円 政府が基本方針 遮水壁、建設前倒し
<政府の主な汚染水対策>
■体制・資金
・経済産業省や国土交通省などが関係閣僚会議を設置。東京電力や地元と連携する現地事務所を新設し、国の担当官が常駐
・総額470億円を投入。うち2013年度予算の予備費を210億円つかい、対策を前倒し
■対  策
・建屋を凍った土で覆う遮水壁の設置(320億円)
・汚染水から放射性物質を取り除く装置を新設(150億円)

 東京電力福島第1原子力発電所から高濃度の放射性物質を含む汚染水が漏れている問題で、政府は3日、総額で約470億円の国費を投じ政府主導で解決する方針を固めた。国の全額負担で原子炉建屋への地下水の流入を遮断する凍土壁を設置するほか、汚染水を浄化する装置も増設する。東京電力主体の従来の対策よりも前倒しで事態を解決できるようにする。3日に開いた原子力災害対策本部で汚染水対策の基本方針を示した。安倍晋三首相は「世界中が注視している。政府一丸となって取り組みたい」と述べた。対策費は凍土壁の建設費で320億円、浄化装置の開発費で150億円と見積もった。対策費のうち約210億円は2013年度予算の予備費でまかない、年度内に対策に取りかかる。約2年の工期がかかる凍土壁の建設を前倒しする。
 凍土壁は建屋のまわりの土を冷却剤の循環により凍らせて地下水の浸透を防ぐ設備。原発内にたまった汚染水を浄化する多核種除去設備(ALPS)も、東電が設置する3系統に加え、国が高機能な浄化設備を増設する。
 汚染水対策に向けた体制も強化する。従来は経済産業省や原子力規制庁が汚染水問題に対処していたが、国土交通省や農林水産省も加えた関係閣僚会議を発足させる。地下水や土壌改良の専門家を集め、政府一丸で対策にあたる態勢を整える。東電や地元との連携を深めるため、国の現地事務所も新設。福島第1原発の周辺に常駐する担当官を増やし、情報収集や対策協議を密にする。
 基本方針には、▽建屋に流れ込む地下水のくみ上げ▽地下坑道(トレンチ)にたまっている高濃度汚染水の除去▽汚染水の海への漏洩を抑えるための地盤改良――などを盛り込んだ。個々の対策の実施計画も明らかにし、早期解決に向けた姿勢を内外に示す。
 東電は7月下旬、福島第1原発から汚染水が海洋に流出している可能性を認め、流出量を1日300トンと推計した。対策は後手に回り、8月には汚染水をためるタンクからの漏洩が見つかるなど事態は悪化の一途をたどっていた。
 原子力規制委員会は汚染水問題が、国際原子力事象評価尺度(INES)でレベル3(重大な異常事象)に相当するとの評価を決定。国内外に懸念が広がっているため、政府は「対策を東電任せにせず、国が前面に立つ」(安倍首相)との姿勢を打ち出していた。

| 原発::2013.7~9 | 04:34 PM | comments (x) | trackback (x) |

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