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2013.5.7 日本は、労働条件や社会意識における男女平等で、他国より30年遅れている。(2013年5月14日最終更新)
        
      農業で働く女性        パイロットの女性     ハリス州司法長官(アメリカ)

 *1、*2、*3は、比較的、雇用における女性差別の問題点を正しく指摘しているが、以下のように、女性差別の原因を本人や家族の努力不足、理解不足のせいにしている点で正しくない。その理由は、女性差別は、正確には、雇用の調整弁として行われ、安価な労働力を確保するために便利に使われてきたものであり、うまく搾取されてきた女性やその家族に問題があるのではないからである。また、私が、このブログの2012年10月27日に記載しているとおり、世界では女子差別撤廃条約が1979年に第34回国連総会において採択され、1981年に発効して、わが国は1985年に最初の男女雇用機会均等法を作って、同年、その条約に批准した。そして、その後、他国は真面目にその対応を行ったにもかかわらず、わが国では、それを骨抜きにするための行動が多かったため、わが国の男女平等は他国より30年遅れた。その間、厚生労働省や労働基準監督署がこの骨抜きに対抗するため尽力したかと言えば、全く尽力していない。その総合的な結果が、現在の状態を導いたのである。

(1)「女性の社会進出=パートタイマー、時間と場所を選ばずに仕事ができる環境」は正しいか?
 *3に、「主婦の能力を引き出すには、時間と場所を選ばずに仕事ができる環境を整えることも必要」「主婦が働くことに対し、夫など家族が理解する機運も重要」と書かれているが、これは、安価な労働力として主婦を使う方法を正当化している。何故なら、多くの主婦は、他の選択肢があってパートタイマーになっているのではないからである。また、その底には、「主婦の女性は家庭責任を負っており、仕事は夫の手助け程度」という前提があるが、実際には、夫婦のどちらがより大きな「家庭責任を負うか」「所得獲得責任を負うか」は、働いた場合の夫婦の所得獲得能力の違いや社会の受入態勢で決まっており、主婦が働くことを夫が理解しないのではなく、家庭全体の所得を考慮した結果が出ているのだからである。

(2)なぜ、わざわざ「なでしこ」と命名しなければならないのか?
 *1の「東京証券取引所が女性社員を積極的に登用し、経営効率も高い「なでしこ銘柄」として花王など17社を選定した」というのはよいことだと思う。しかし、ここにどうしてわざわざ「なでしこ」と命名したのだろうか。そう命名した理由は、多分、社会進出をして上昇志向の女性は、「大和なでしこ(日本女性を可憐で繊細だが、心は強いナデシコの花に見立てて言う美称)」ではないという批判があるからだろうが、日本女性がすべて「可憐」で「繊細」であるわけがなく、それを押し付ける文化こそジェンダーであって、なくすべきものなのである。例えば、私自身は、毅然としてことに当たり、細かいことにはこだわらないが、これは公認会計士というプロフェッショナルとして重要な資質であるため、「繊細で可憐だが心だけ強い」などという先入観があれば、それは公認会計士としての能力と矛盾し、迷惑なわけである。

(3)管理職比率に男女差が生じることに女性の責任があるか?
 *2に、「なぜ管理職比率の男女差が生じるのか。採用や配置、仕事配分、人事評価など雇用の本質部分に、男女を差別する考え方が根強くはびこっている現実が透けて見える」と書かれており、これは正確な事実だ。それだからこそ、改正男女雇用機会均等法では、採用、配置、昇進、退職で差別してはならないと義務付けた。しかし、その男女雇用機会均等法改正後、企業は、女性労働者をパートタイマーにしたり、派遣労働者に置き換えたりして、男女雇用機会均等法で守られるべき女性の範囲を狭めたのである。そして、それを是として支える制度及び文化が、(1)及び(2)なのだ。

 *2の「周囲の目を気にして女性が管理職登用を辞退するケースもある。女性の側にも、責任ある立場を敬遠しないなど、男女共同参画社会に向け新たな一歩を踏み出す覚悟が必要だろう」というのは、責任転嫁の居直りも甚だしい。気にしなければならない「周囲の目」があるとすれば、それが女性差別を是とするジェンダーであり、なくすべきものはそれなのである。

 また、「女性の側にも責任ある立場を敬遠しないなど、男女共同参画社会に向け新たな一歩を踏み出す覚悟が必要だろう」と、女性に積極性、上昇志向、責任感がないかのような批判も述べられているが、私は、完全に積極性も上昇志向も責任感もあり、男性以上に努力もした上で、評価上の差別を受けたことがある。つまり、賃金格差や管理職割合の格差があることの責任を女性に転嫁するのは、すべての取り扱いが平等になってからにすべきだということだ。

*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130416&ng=DGKDASFS15046_V10C13A4EA2000
(日経新聞 2013.4.16)女性の登用、情報開示促す 内閣府・5証取、役員数など企業に要請
 内閣府と東京証券取引所など全国5証券取引所は企業で働く女性の活躍ぶりを示す情報の公開を強化する。全国の証券取引所が上場企業に提出を義務付けている「コーポレート・ガバナンス報告書」の中で、女性役員の人数や役員会における男女別の割合などの情報の開示を推奨する。女性登用の「見える化」に向け、各証取は近く全上場企業に要請を始める。
 現在、同報告書で情報を開示するのは女性の登用に積極的な一部の企業に限られる。経済同友会が大企業を中心に昨年実施したアンケートでは取締役のうち女性は2.6%、管理職(課長級以上)も4.6%にとどまった。東証などは今月中にも新たに公表を求める項目の様式をまとめたガイドラインの送付を始める。実際に情報を公開するかは企業側の判断に委ねるが、女性を登用する企業ほど株式市場で評価される仕組みを整え、浸透を促す方針。政府は女性の活躍の場を広げるには情報開示を通じた「企業トップや社会全体の意識改革が必要」(内閣府男女共同参画局)とみている。情報開示が進めば、投資家が女性登用の具体的な取り組みを把握しやすくなり、投資する際の目安にもなる。東京証券取引所は2月から、女性社員を積極的に登用し、経営効率も高い「なでしこ銘柄」として花王など17社を選定し、個人投資家などを市場に呼び込むプロジェクトも実施。政府は資本市場の動きも通じ、女性の登用を促す。各証取の動きに合わせて、内閣府は今年度から全上場企業を対象に働く女性に関する情報公開のモニタリング調査を初めて実施する。

*2:http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2013/04/20130422s01.htm
(河北新報 2013年4月22日) 男女賃金格差/「4月15日」の現実を知ろう
 日本をはじめ世界約100カ国に活動拠点を置く女性団体・国際BPW(ビジネス・プロフェッショナル・ウーマン)が「イコール・ペイ・デー」という世界共通の基準を作り、男女の賃金格差是正に向けキャンペーンを展開している。「イコール・ペイ・デー」は「同じ賃金を手にする日」と訳される。男性が1年間働いて得られる賃金を、女性はどの程度働けば手にできるかを分かりやすく表す指標だ。日本BPW連合会によると、2013年の日本の「イコール・ペイ・デー」は4月15日だった。
 男性が昨年12月末まで1年間で得た賃金を、女性は1年働いただけでは得られず、男性より3カ月と15日間、余計に働いてようやく手にできるという計算だ。女性の賃金が男性に比べいかに低い水準にあるかを、実感を伴って教えてくれる。昨年が「4月16日」だったので、1日分だけ男女格差が縮まったことにはなるが、先進国の中ではスイス(3月7日)、フランス(同15日)、ドイツ(同23日)、米国(4月12日)などに後れを取っている。日本の男女賃金格差は、厚生労働省も頭を悩ます社会問題だ。企業と経済界はもう一段高い意識レベルを持ち、格差解消に真剣に取り組むべきだ。厚労省の統計によると、昨年の月額平均賃金は男性32万9000円に対し、女性23万3100円と10万円近い開きがあった。男性賃金に占める女性賃金の割合は70.9%にとどまる。
 賃金格差を生む大きな原因とされるのが、男女間における平均勤続年数と管理職比率の違いだ。賃金の男女差別は違法行為であり、各職場とも制度面では男女平等の原則が確立されているが、運用面では依然として改善の余地が多いと言える。女性の勤続年数が男性より短いのは、結婚や出産・子育てで退職する人が多いためだ。育児休業制度の普及で、仕事と子育てを両立する環境は整いつつあるものの、職場によっては、育児休業を取得しにくい状況が続いているとみられる。
 一方、企業の課長担当職以上や管理的公務員といった管理職のうち、女性の占める割合は10年の統計で10.6%だった。米国は42.7%、ドイツは37.8%、英国は34.6%に上り、日本は他の先進国に大きく水を開けられている。なぜ、管理職比率の男女差が生じるのか。採用や配置、仕事配分、人事評価など雇用の本質部分に、男女を差別する考え方が根強くはびこっている現実が透けて見える。経済団体が先頭に立ち、企業トップの意識改革を大胆に図ることが根本的な改善に不可欠ではないか。小さな職場では、周囲の目を気にし、女性が管理職登用を辞退するケースもあるという。女性管理職に理解ある職場の雰囲気づくりが重要なのはもちろん、女性の側にも、責任ある立場を敬遠しないなど、男女共同参画社会に向け新たな一歩を踏み出す覚悟が必要だろう。

*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130506&ng=DGKDZO54695670V00C13A5TJE000
(日経新聞 2013.5.6)労働参加見劣り 7割弱 30代女性
 政府は4月、成長戦略の一環として「女性の活躍」を掲げた。保育所の充実などを通じ、出産や育児で離職しがちな女性の就業率を高める。「少子高齢化が進むなか、女性の潜在力を引き出すことは企業や社会の活力につながる」(厚生労働省雇用均等政策課)。総務省の調査によると、日本の女性の労働参加の割合(労働力率)は2010年に30~34歳と35~39歳がいずれも60%台。70%を超す20代後半、40代、50代前半に比べると低い。30代は子育てなどに忙しい時期だが、欧米やシンガポールなど70~80%台の国も多い。
 政策に加え、企業側も産前産後や育児のための休暇の充実やキャリア形成の支援を進めるとともに主婦らを戦力に生かす工夫が求められる。「主婦が働くことに対し、夫など家族が理解する機運も重要」(福井ナビット社長)という。人件費などコストを大手企業ほどかけずに質の高い商品やサービスを提供することで成長をめざすベンチャー企業にとって、十分に発掘しきれていない主婦の活用がカギになる可能性がある。主婦の能力を引き出すには、時間と場所を選ばずに仕事ができる環境を整えることも必要だ。クラウドワークス(東京・渋谷、吉田浩一郎社長)は企業から注文を受けた業務をインターネットを通じて在宅者らに依頼する「クラウドソーシング」を手がける。同社は4月、ベネッセコーポレーションが運営する子育て中の主婦ら400万人が登録するコミュニティーサイト「ウィメンズパーク」で仕事の情報の提供を始めた。

| 男女平等::2011.12~2013.5 | 06:50 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.5.4 支援という名の人権侵害 ― 最近、何かと精神病扱いが多くなったことが問題なのだ。
      

(1)雅子妃は、本当に“適応障害”という“病気”なのか? 
 東京大学法学部に学士入学した経歴が雅子妃と重なる*3の茂木氏も、雅子妃の“適応障害”という“病気”について、「適応というのは環境との相互関係なので、環境にも問題があるのではないか」と述べておられるが、私も全く同感である。何故なら、私は、東大卒のキャリアウーマンとして社会で働き続けていたため、同じ東大に在籍したことのあるキャリアウーマンだった雅子妃が、日本の皇室の新たな時代を開き、日本の新しい女性の象徴になることを期待して見ており、“適応障害”とされるまでの経過を知って、おかしいと感じていたからである。つまり、宮内庁や日本社会の空気は、雅子妃を雌鳥と同じ基準で評価し、ケージに閉じ込めて、その経験と資質を活かす形で敬意を払って接しては来なかったのだ。

 その結果、雅子妃は資質を活かしてさらなるキャリアを積むことはできず、後退して“適応障害”と言われるまでになった。ここで敢えて「後退した」と書いたのは、雅子妃は、現在の姿よりもご成婚前の颯爽とした姿の方が、余程、素敵だったからである。上の写真の王族の中で最もやぼったい服装をしているのが雅子妃だが、「適応障害」などという病名をつけられ、皆からくさされて自信なくケージの中で過ごしていれば、颯爽とした気持ちにはなれず、おしゃれもしないため、そうなるのが当たり前だろう。おつきのデザイナーも、本人の長所を活かしておらず、悪いと思う。

 なお、*1、*2では、雅子妃は笑顔だったり嬉しそうだったりしたそうだが、“適応した”というのは、何をされても笑顔でいることではない。心からの笑顔ではない無理な作り笑いは、見ている方でも痛々しいし、見苦しくもあるので、本物の笑顔が自然と出るような環境にすべきだということである。

 また、“適応”には、環境に合わせるという行動だけではなく、次の時代に向けて毅然として環境を変えるという行動もあり、大正天皇の皇后である貞明皇后は、慣例を破って日本の一夫一婦制の確立に寄与されたそうだし、現在の美智子皇后も、明治以降初めての民間出身者で自分で子育てをした皇后であり、どちらも、その時代の皇室を変革した。私は、女性が社会進出する時代に、雅子妃という皇太子の選択は全く適格だったと思うが、雅子妃本人が反論できないのをいいことに、遅れたメディアによる後ろ向きのバッシングは大変なものだったと記憶している。しかし、私は、現在の皇室を次の時代に向けて変革できるのは、雅子妃であって、紀子妃ではないと思う。

(2)正常と異常の堺
 精神病には、症状を聞けば、誰でも多少はそういうところがあると感じるものが多いが、問題は、正常と異常の堺である。そのような中、*4の朝日新聞記事は、「アスペルガー症候群(AS)」の分類が消え、重い自閉症からASまでを「自閉症スペクトラム障害」に一本化されるので、広義のASに適切な支援が受けられなくなる人が出るという不安が出たと残念そうに述べている。しかし、私は、やっと少しはまともになりつつあると思った。そもそも、言葉の遅れもなく、知的障害もほとんど見られない人を“病気”に仕立てて、何の“支援”をするつもりだろうか。人権侵害もはなはだしい。

 もし、「表情や身ぶりで意思を示したり、視線を合わせたりといった行動が取れず、仲間が作りにくい」というような相対的な関係が、どちらか一方の“病気”というのであれば、誰でもいつでも病気に仕立て上げることができるということを忘れてなならない。

*1:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130430-00000144-jij-soci (時事通信2013年4月30日) 皇太子ご夫妻、新国王即位式に=雅子さまも笑顔で参列―レセプションも・オランダ
 オランダ公式訪問中の皇太子ご夫妻は30日午後(日本時間同日夜)、首都アムステルダムの新教会で行われたウィレム・アレクサンダー新国王(46)の即位式に参列された。10年4カ月ぶりの外国公式訪問となった雅子さまは、28日のオランダ入り後初めて同国の公式行事に臨んだ。 皇太子さまはえんび服にホワイトタイ(白いちょうネクタイ)、雅子さまは淡いクリーム色の帽子に丈の長いドレス姿。午後1時ごろ、バスでホテルを出発したご夫妻は、新教会に到着すると、笑顔で手を振ったり、並んで撮影に応じたりしてから中に入った。会場では、他の招待客とにこやかに談笑する場面もあった。ご夫妻はその後、王宮で各国の王族とともに新国王夫妻を囲み、記念撮影。引き続き行われたお祝いのレセプションにも出席し、午後5時ごろにホテルに戻った。 

*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130504&ng=DGKDASDG03003_T00C13A5CR8000 (日経新聞 2013.5.4) 外国訪問、笑顔で終える 皇太子ご夫妻が帰国 宮内庁、雅子さま公務復帰に慎重姿勢影
 オランダを公式訪問し新国王即位式に出席した皇太子ご夫妻は3日午前、東京・羽田空港に到着、帰国された。病気療養中の雅子さまの11年ぶりの外国公式訪問は無事に終了した。公務復帰への一歩とはなったが、今回はオランダ王室との親密な関係や配慮の積み重ねで実現。宮内庁は今後の完全復帰に慎重姿勢を崩していない。雅子さまはこの日、約11時間のフライトにもかかわらず、皇太子さまとにこやかに言葉を交わしながらタラップを降りられた。お住まいの東宮御所に着くと、長女の愛子さまにうれしそうに手を振り、ご一家で仲むつまじく会話をされた。 オランダ滞在中の雅子さまは、現地空港に着いた際に皇太子さまを呼び止め、お二人並んで報道陣に笑顔で手を振られるなどリラックスした様子。即位式ではアイボリー色のドレス姿で登場し、宿泊先のホテルで同国在住の両親と懇談した際には、ほっとした様子だったという。
 2004年に「適応障害」と病名が公表されてから今年で10年目。今回の訪問でも曲折があり、オランダ側に正式に出席を伝えたのは出発6日前の4月22日。重要行事出席に伴う雅子さまの負担などが課題となった。オランダは06年に今回退位したベアトリックス元女王の招きを受け、ご一家で約2週間の静養に訪れるなど親交の深い国。王室側は負担軽減のため即位式などに絞った参加を提案し、各国の皇族・王族の宿泊先に日系のホテルを用意するなどの配慮もされた。宮内庁側も、雅子さまの主治医を同行させ、公式行事の前後に1日置いた余裕のある日程を組んで、訪問を支えた。ただ雅子さまは4月30日午後の即位式などへの出席以外はホテルから外出せず、ほとんどの日程を来客もなく静かに過ごされたという。体調の波が今もあるといい、宮内庁幹部は「一つできたからといってすべてできるわけではない」と話す。

*3:http://kenmogi.cocolog-nifty.com/qualia/2013/04/post-dbf5.html
(茂木健一郎 クオリア日記 2013/04/14)皇太子妃雅子さまについて
 皇太子妃の雅子さまに関する報道には、大変関心がある。雅子さまは、私にとってもちろん遠い存在だけれども、たまたま、東京大学法学部に学士入学したという経歴が重なっている。雅子さまは、私よりも一年後のご入学だった。当時お目にかかることはなかったけれども、秀才の誉れ高かった。その後、外務省に入られ、英国のオックスフォード大学に留学され、皇太子妃になられるまでの経緯は、よく知られているところである。ご成婚の際、多くの人が、雅子さまが、その経験と資質を活かされて、皇室外交とご公務にご活躍されると期待したのではないだろうか。後に、私がケンブリッジ大学に留学した時、友人の英国人が、雅子さまがハーバード、オックスフォードで学ばれたことを指して、「Ah, she has seen the world」と評したことを印象深く覚えている。雅子さまには、日本の皇室の新時代を開く、という期待が寄せられていた。
 その雅子さまが適応障害でいらっしゃるという一連の報道には、心が痛む。ここで考えておかなければならないことは、適応というものは主体と環境の関数であって、その要因は、主体側にのみでなく、環境にもあるかもしれないということである。週刊誌などの報道を見ると、ともすれば、適応障害の要因を、雅子さまに帰そうという傾向があるように思うが、それではバランスを欠くように思う。皇太子さまが、雅子さまを大切にされていらっしゃることはもちろんであるし、東宮の方々も、また宮内庁も、いろいろとご配慮下さっていることは確かだと思うけれども、「適応障害」の要因の一端は、「環境」側にもあるのかもしれない、という視点は、必要なのではないだろうか。英国人がShe has seen the worldと評した雅子さまの資質が活かされるようなかたちで、皇室のご公務、外交が行われたら、すばらしいことだと思うし、日本の未来も、明るくなると思う。しばらく前、新国立劇場のオペラ上演の際に、皇太子さまがいらっしゃったのをお見かけした。その隣に、雅子さまがいらっしゃらなかったことを、とても寂しく感じた。私は、雅子さまが適応障害で苦しんでいらっしゃることを、私自身を含めた、日本の環境の問題であるとも感じている。自分自身の痛みとして、雅子さまの不在を受け止めたい。
 日本は、雅子さまのような、国際的なキャリアを積まれた女性にとって、そのポテンシャルを活かしやすい国になっているだろうか。皇室という特別な環境の問題は、そのまま、私たちの意識、社会の空気の課題に、つながっているのではないだろうか。

*4:http://digital.asahi.com/articles/TKY201304290366.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201304290366 (朝日新聞 2013.4.29) アスペルガー、分類消える 発達障害の一種、自閉症に一本化 米の診断基準改訂紙面で読む 
 日本でも広く使われている米精神医学会の診断の手引(DSM)が5月に改訂され、発達障害の一種「アスペルガー症候群(AS)」の分類が消える見通しだ。「適切な支援が受けられなくなる人が出る」などの不安が米国で出ており、日本の臨床現場への影響も出そうだ。 ASは、言語発達の遅れや知的障害はないが、対人関係を築くのが苦手なのが特徴で、「アスペルガー障害」とも呼ばれる。「軽い自閉症」と見なされることもあり、19年ぶりに改訂されるDSM第5版では、重い自閉症からASまでを連続的に捉える「自閉症スペクトラム(連続体)障害」に一本化される。診断に使う項目も改訂版では、「社会コミュニケーションの障害」「限定した興味や反復行動」に絞る。改訂に関わったグループは「第4版の基準は医師によって診断名が違ってくる」などとし、「より正確な診断が可能になる」としている。だが、米エール大の研究グループが、第4版でASと診断される人のデータを第5版で診断し直したところ、4分の3の人が、自閉症スペクトラム障害に該当しなくなった。そのため、今後は同じような障害を抱えていても診断で除外され、コミュニケーション技術の支援教育などが受けられない可能性があるという。さらに、現在、ASと診断されている人の間でも、診断名がなくなることへの不安の声が出ている。
■適切な支援、失う恐れ
 日本の発達障害情報・支援センターによると、ASの人は約4千人に1人と言われている。ただ、障害が軽くて厳密には自閉症と診断されないが、ASと似た状態を含む広義のASは、数百人に1人とされる自閉症よりも多いという。「ニーズに合った適切な支援が望ましい」とされるが、日本自閉症協会会長で精神科医の山崎晃資さんは「臨床の現場でどのような影響が出るか注意深くみていく必要がある」と話す。発達障害は多様な障害を含み、何度も診察して診断する必要がある。山崎さんは今回の改訂で「よく診察されず、『自閉症スペクトラム障害』と診断される人が逆に増えるかもしれない」といい、適切な支援が遠のく可能性を危惧する。国立精神・神経医療研究センターの神尾陽子・児童・思春期精神保健研究部長は「診断基準を理解しやすくするため、学会が指針を作成したり、診断が難しい場合に評価、助言をする専門機関を整備したりするべきではないか」と話す。
 ◆キーワード
<自閉症とアスペルガー症候群> 自閉症は、他人への関心の薄さや、言葉の遅れ、興味や行動のパターン化などが特徴。幼児期に気づかれることが多く、しばしば知的障害を伴う。アスペルガー症候群は、自閉症と違って言葉の遅れはなく、知的障害もほとんど見られない。しかし、表情や身ぶりで意思を示したり、視線を合わせたりといった行動が取れず、仲間が作りにくいといった点は自閉症と共通。社会に出て仕事や対人関係がうまくいかないことがある。「自閉症スペクトラム障害」は、自閉症に近い状態を一連のものとして扱う考え方で、日本の専門家の間でも定着してきている。

| 男女平等::2011.12~2013.5 | 03:45 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.4.17 サッチャー元英首相の死を惜しむ - 同時に社会で活躍している女性に対する評価上の差別についても語ろう
  

 サッチャー元英首相は、*1、*3のように、1947年にオックスフォード大学化学科を卒業した後、弁護士になっている。これは、当時、同学科を卒業した女性に未来を約束できる適切な仕事が与えられなかったからだ聞いたことがあるが、それは、その30年後の1977年に、日本で東大医学部保健学科を卒業した後、公認会計士となって働いてきた私と状況が似ているので、前から親近感を感じていた。

 サッチャー氏の偉い点は、一つは、親の七光りではなく自分の力で首相になったことで、こういう女性はアジアにはまだ出ていない。また、何を言われようと断固として経済改革をやり抜き、英国を英国病から回復させたことも立派だ。そして、旧ソ連のゴルバチョフ氏を、「一緒に仕事ができる人」と会ってすぐに評価し、英米と旧ソ連との東西冷戦を終結に導いたことは、歴史を大きく進めた卓越した業績である。

 *2については、側近が、「ローマをつくったのはサッチャーじゃなかったからな」と答えたのは面白いが、男性の首相が亡くなった時に、このような毒舌の別れをするだろうかと、私は疑問に思った。私は、どの国も、大した業績のなかった首相でも、送る時には褒め言葉で送るので、イギリスでも、まだ信念を持った強い女性への偏見があるように感じた。また、ベテラン議員が「サッチャー氏に会った私の妻は、彼女の感じの良さに魅入られた」と振り返りながら、「閣僚との関係は決してそうではなかったよ」と真顔で語り、笑いを誘ったとも書かれているが、第三者に感じよくするのは当たり前である一方、部下に好かれることが目的の上司はいないため当然のことだ。しかし、女性上司には、リーダーシップと部下への感じの良さの両方を求めるという、男性上司には求めない矛盾した要求をつきつけている点で、イギリスもまだ本当の男女平等にはなっていないなと思い、再度、サッチャー氏の苦労に敬意を表した次第である。

*1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASGU0800Y_Y3A400C1MM8000/
(日経新聞 2013/4/8) サッチャー元英首相死去 「鉄の女」小さな政府推進
 「鉄の女」と呼ばれ1979年から11年間、英国の首相を務めたマーガレット・サッチャー氏が8日、脳卒中のため死去した。87歳。強い指導力で国営企業の民営化や規制緩和を進め、英国経済を復活に導いた。「小さな政府」の下で経済の自由化を実現する政策はサッチャリズムと評され、他の先進国の経済改革に大きな影響を与えた。1925年、英イングランド中部に生まれた。オックスフォード大卒業後、59年に下院議員として初当選。1975年に保守党党首に選ばれ、79年の総選挙に勝って英史上初の女性首相に就任した。頻発していたストライキを規制し、肥大化した財政支出を大幅に削減した。1979年、英首相に就任した当時のサッチャー氏。その後11年間にわたって英首相を務めた。民営化を通じた競争原理の導入で活力を引き出したほか、ビッグバン(金融市場大改革)など市場に多くを委ねる大胆な改革を打ち出した。周囲の反対にあっても信念を貫き、長期低迷で「英国病」と皮肉られていた経済をよみがえらせた。1982年のアルゼンチンとのフォークランド紛争では軍艦を派遣するなど力による外交を展開。米国のレーガン大統領(当時)とは同じ保守主義者として「特別な関係」を築き、反共産主義を鮮明にした。英米の連携が旧ソ連との東西冷戦の終結に道を開いた。

*2:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1100E_R10C13A4000000/?dg=1
(日経新聞 2013/4/11) 「鉄の女」に毒舌の別れ 英国で特別議会招集
 【ロンドン=共同】8日死去したサッチャー元英首相を追悼するための特別議会が10日、招集され、議員らはユーモアと毒舌交じりの英国流スピーチで「鉄の女」と呼ばれた歴史的宰相に別れを告げた。冒頭、キャメロン首相は「サッチャー氏は女性に対する偏見を打ち破り、英国を再び偉大な国にした」と称賛するとともに思い出を披露。サッチャー氏の命令で慌ただしく働く側近に、同僚が「ローマは一日にして成らず」と落ち着いて仕事をするよう忠告したところ、側近は「ローマをつくったのはサッチャーじゃなかったからな」と話し、何事にも性急なサッチャー氏の下で働く身の上を嘆いたエピソードで議場を沸かせた。各党の議員も次々とスピーチに立ち、特別議会は7時間以上に及んだ。閣僚に対する厳しい要求で知られたことを指摘したベテラン議員は「サッチャー氏に会った私の妻は、彼女の感じの良さに魅入られた」と振り返りながら、「閣僚との関係は決してそうではなかったよ」と真顔で語り、笑いを誘った。一方、サッチャー氏の強硬な労働組合対策などに、今も反発する労働党議員の多くは欠席した。

*3:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC (マーガレット・サッチャー)
(ポイント)1925年、リンカンシャーグランサムの食糧雑貨商の家に生まれた。1947年、オックスフォード大学の化学科卒業。1951年に10歳年上のデニス・サッチャー(en:Denis Thatcher)と結婚して法律の勉強を始め、1953年に弁護士資格を取得。なお、この当時は女権拡張について強く訴えていた。
 1959年に下院議員に初当選し、1970年からヒース内閣で教育科学相を務めた。1975年2月に保守党党首選挙が行われ、エドワード・ヒースを破って保守党党首に就任。ソビエト連邦の国防省機関紙「クラスナーヤ・ズヴェーズダ」が、1976年1月の記事で、サッチャーを鉄の女と呼び非難したが、この「鉄の女」の呼び名はサッチャー自身も気に入り、その後あらゆるメディアで取り上げられたため、サッチャーの代名詞として定着した。1979年の選挙で、イギリス経済の復活、小さな政府への転換を公約に掲げ、保守党を大勝に導いた。選挙後、女性初のイギリス首相に就任した後、イギリス経済の建て直しを図り、政府の市場への介入を抑制する政策を実施。
 1982年に、南大西洋のフォークランド諸島でフォークランド紛争が勃発し、アルゼンチン軍の侵略に対して、サッチャーは間髪入れずに艦隊、爆撃機をフォークランドへ派遣し、多数の艦艇を失ったものの2ヶ月の戦闘の結果6月14日にイギリス軍はポート・スタンリーを陥落させ、アルゼンチン軍を放逐した。サッチャーの強硬な姿勢によるフォークランド奪還は、イギリス国民からの評価が極めて高い。この際、「人命に代えてでも我が英国領土を守らなければならない。なぜならば、国際法が力の行使に打ち勝たねばならないからである」と述べた。イギリス経済の低迷から支持率の低下に悩まされていたサッチャーは、戦争終結後、「我々は決して後戻りしない」と力強く宣言し、支持率は73%を記録。フォークランド紛争をきっかけに保守党はサッチャー政権誕生後2度目の総選挙で勝利し、これによりサッチャーはより保守的な経済改革の断行を行った。

| 男女平等::2011.12~2013.5 | 02:04 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.2.22 労働市場における男女差別に対し、厚生労働省や労働基準監督署は時代に会った対応をしてきたのか
    図の説明 (*2より: ILO第98回総会(2009年)報告書「ディーセント・ワークの中心にあるジェンダー平等」から作成。報告書掲載国中、ILO100号条約(同一価値労働同一賃金)未批准国を除いて作成。なお、アメリカは、未批准国だが除外せず)

 私は、*1の「女性の賃金は平成元年には男性の60%の水準でしたが、去年は70%と男性との格差がこれまでで最も少なくなり、女性は現在の方法で調査を始めた昭和51年以降、最も高くなりました」というNHKの報道を見た時に違和感を感じたが、それは、如何にも女性にとって福音であり、労働市場における男女差別がなくなったかのような言い方だったからである。
 
 しかし、真実は、*2のように、「日本のように男女の賃金格差が30%以上ある国は世界では少なく、2007年のILO総会では日本の男女賃金格差の問題が議論された」「日本は、同一価値労働同一賃金を定めたILO100号条約にもとづく格差是正が求められる状況である」「ILO総会で、同一価値労働に対する同一の報酬を、法律上も事実上も積極的に促進するようにという強い要請が日本政府に対して行われた」「2008年3月にも、ILO条約勧告適用専門家委員会が日本の男女賃金格差問題に対し、批判と勧告を出している」という状況なのである。NHKを始めとする日本のメディアは、このようなことには全く触れないが、この男女間の報酬格差が、まさか、男女の職業能力の差に比例してきたとか、女性にチャレンジ精神や働く意欲、リーダーシップがなかったなど、女性の側に起因してきたとは言えるまい(皮肉)。

 また、*1によると、厚生労働省は「依然として9万円余りの男女の賃金格差があるのは、フルタイムで働く女性には賃金が低い非正規の人が多いためだ。しかし、正社員の女性も増えており、徐々に格差が減少しているのではないか」と楽観的な分析をしており、①男女の労働者の賃金格差が非常に大きい状態を放置し ②非正規社員も女性が多くなるように放置し ③同一価値労働同一報酬の原則を十分に反映した法律案も作らず、④日本には、同一価値労働同一報酬の原則を反映するために必要な職務・労働の客観的要素にもとづいての比較が実施されていないことに対して、厚生労働省の労働基準監督署が正面から対応して改善した形跡もない。

 そして、*3のように、非正規社員としてしか採用されないような人が独立して行っている事業の「賃金未払い」や「長時間労働批判」ばかりを行ってきたのであるが、現在は蟹工船の時代とは状況が全く変わっているため、現在の矛盾を正していくべきだったのである。

*1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130221/k10015688551000.html
(NHK 2013年2月21日) 女性の賃金が過去最高に 格差縮小
    
 月給から時間外手当などを除いた去年の賃金は、女性が平均で23万円余りとこれまでで最も高くなり、男性との賃金格差が最も少なくなったことが厚生労働省の調査で分かりました。 
 厚生労働省は従業員が10人以上いる全国の4万9000余りの事業所を対象に、月給から時間外や休日出勤の手当などを除いた去年6月分の賃金を調査しました。その結果、フルタイムで働く正社員と非正規の人の賃金は、平均で29万7700円で前の年よりも9000円増え、5年前のリーマンショックで大きく下落したあと3年連続で増加しました。男女別では、男性は32万9000円、女性は23万3100円で、女性は現在の方法で調査を始めた昭和51年以降、最も高くなりました。女性の賃金は平成元年には男性の60%の水準でしたが、去年は70%と男性との格差がこれまでで最も少なくなりました。
また、短時間勤務やパートで働く人の1時間当たりの賃金は、男性は前の年より2円上がって1094円、女性は前の年より13円上がって1001円で、女性は初めて1000円を超え、男女、共に過去最高となりました。
 厚生労働省は「依然として9万円余りの男女の賃金格差があるのは、フルタイムで働く女性には賃金が低い非正規の人が多いためだ。しかし、正社員の女性も増えており、徐々に格差が減少しているのではないか」と分析しています。

*2:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-06-06/2009060605_01_1.html
男女の賃金格差 日本の異常くっきり ILO報告書にみる
 日本の女性と男性の賃金の格差は深刻だと、国際機関から批判されていますが、開会中の国際労働機関(ILO)第98回総会に提出されている報告書でも、日本の実態を浮き彫りにするデータが示されています。
<男女間賃金格差 30%以上は、世界で少数>
 報告書のタイトルは、「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の中心にあるジェンダー(男女)平等」。そのなかで、国別の男女賃金格差の指標が世界地図入りで紹介されています。国際労働組合総連合(ITUC)が作成したものです。これまで世界規模のデータはなく、ITUCによって、初めて、職業別男女間の平均賃金格差に関する世界的なデータ収集が試みられたとしています。日本の場合、男性の賃金を100とすると、女性はその66・6%しかなく、世界地図には、賃金の男女格差(100から66・6を引いた)33・4%が記載されています。この指標が大きいほど格差が大きいということになります。日本以外の“経済先進国”を見ると、カナダが27・5%、アメリカが22・4%、EU(欧州連合)が平均で15・9%、オーストラリアが14・1%となっています。
 「日本のように、男女の賃金格差が30%以上あるのは、世界では少ない。2年前の2007年のILO総会では、日本の男女賃金格差の問題が議論されました」と話すのはILO駐日代表の長谷川真一さん。日本は、同一価値労働同一賃金を定めたILO100号条約を批准しており、条約にもとづく格差是正が求められます。この総会では、同一価値労働に対する同一の報酬を、法律上も事実上も積極的に促進するようにという強い要請が、日本政府に対して行われました。2008年3月にも、ILO条約勧告適用専門家委員会が、批判と勧告を出しています。世界の多くの国が平均して男性の賃金の7割から9割の水準にあり、格差は1~2割程度です。さらに格差の是正をめざしています。長谷川さんは、「条約にもとづく同一賃金の徹底が求められています」と強調します。

<2008年のILO勧告>
2008年3月に、ILO条約勧告適用専門家委員会から出された批判と勧告の内容は次の通りです。
●男女労働者の賃金格差が非常に大きい状態が放置されていること
●政府によるパートタイム労働法とその改正が、男女の賃金格差の削減に役立っているかどうか
  疑問があること
●日本には、同一価値労働同一報酬の原則を十分に反映した法律が存在しないこと、日本には、
  この原則に必要な、男女の職務や労働を、客観的要素にもとづいての比較が実施されている
  かどうか疑問があること
●委員会として、日本政府に対し、男女同一価値労働同一報酬の原則を規定するための法改正
  の措置をとることを求めること
●間接差別の排除についても、日本の現状には、政府の決めた指針の内容も含めて、大きな問
  題点があること

*3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2323426.article.html
(佐賀新聞 2012年11月6日) 賃金不払い容疑、総菜店経営者を書類送検
 佐賀労働基準監督署は6日、最低賃金法違反(賃金不払い)の疑いで、総菜販売業を営んでいた小城市牛津町内の男性(61)を佐賀区検に書類送検した。書類送検容疑は昨年9月~今年6月までの間、従業員=当時=12人に対し、賃金総額約431万円を支払わなかった疑い。同労基署によると、男性は小城市内で営業していた。売り上げが落ち込み、今年6月に廃業した。

| 男女平等::2011.12~2013.5 | 10:01 AM | comments (x) | trackback (x) |
2013.2.13 「かわいい」を女性の魅力とする“日本文化”は変であること (2013.2.15最終更新)
 私も*1の意見に近く、峯岸みなみさんが丸刈りになって謝罪したことについて、①何故、謝罪したのか ②誰に謝罪したのか ③謝罪すると恋愛の相手に失礼ではないのか ④丸刈りになると謝罪したことになるのか ⑤それは他の理由で丸刈りになっている人に失礼ではないのか と感じて、いくらアイドルでも、その教養のなさにがっかりしました。

 下の方もいろいろ書いていらっしゃいますが、私は、最近のアイドルの歌は、歌というより舞台の上で運動しながら歌も歌っているというように見え、全く魅力を感じません。率直に言えば、芸術性や深さがなく、「元気さ」やステレオタイプの「かわいさ」だけで売ろうとしているため、魅力に欠けるのです。

 一方、外国の歌手は、歌の下手な人はテレビには出ていません。現在の日本には、歌や楽器や踊りの素養のある人はいくらでもいますので、その中からアイドルを選べば、芸術性のある芸を楽しみながら、他の魅力も享受できるだろうにと、日頃から思っている次第です。これは、テレビ番組が世界に衛星放送されている現代、日本のイメージアップにとっても重要なことです。

 なお、「Pretty(かわいい)」を女性の魅力とする国は日本くらいでしょう。もともと、「Pretty(かわいい)」は、子どもへの褒め言葉であり、大人の女性への褒め言葉ではありません。大人の女性への称賛は、「Attractive(人をひきつける魅力のある)」「Beautiful(美しい)」「Intelligent(知的な)」「Graceful(優雅な《年配の女性向き》)」「Charming(魅力的な《10代の女性向き》)」「Sexy(性的魅力のある)」などであり、欧米の人は、実際にそう言います。

 つまり、ここで、私が書きたかったのは、日本女性は、「女、子ども」と総称され、「かわいい(独立的でない、子どもっぽい)」ことが女性の魅力だと強制される文化の中で生きていますが、それは、女性の魅力の国際標準ではなく、国際会議の場に行けば、欧米の女性は20代でも颯爽としているのに対し、日本女性は、かわいく(幼く)見せるように振る舞う癖がついてしまっており、堂々としていないのです。そして、そうしなければ、日本国内では生意気だと言われるので仕方がない面もあるのですが、これは、働く女性がリーダーシップを持って管理職などへ上昇していく時に、女性に対して矛盾した要求を突きつけ、余計にやりにくくしているものです。

*1:http://blogos.com/article/55857/
(宮武嶺 2013年2月9日) AKB48 峯岸みなみさんの丸刈り謝罪事件 恋愛禁止は人権侵害ではない しかし・・・
(ポイント)週刊誌で男性アイドルとの交際が報道されたAKB48の峯岸さんが2013年2月1日付で研究生に降格処分となり、動画サイト「YouTube」のAKB48公式チャンネルに丸刈りにした頭で登場し、「私の記事のせいでメンバーやファンのみなさん、スタッフさん、家族、たくさんのみなさまにご心配をかけて本当に申し訳ございません」と涙ながらに謝罪した事件から1週間が過ぎ、私が思い出したのは、ナチスのユダヤ人収容所で丸刈りにされた女性たちでした。昨年末に観たばかりのレ・ミゼラブルのファンテーヌ役のアン・ハサウェイを思い出してもおかしくなかったのですが、峯岸さんの表情はファンテーヌさえ超えていました。
 わたし、もともと秋元康グループが嫌いなんです。ちょうどわたしの大学時代にオールナイトフジのオールナイターズとか夕やけニャンニャンのおニャン子クラブとかに周囲の友達が夢中になっていまして。カラオケに行っても、男が集団でおニャン子クラブの歌を振付付きで歌うという惨状で。それから、30年も経っても、まだ男どもは秋元の仕掛けに乗せられるか?!まだ魔法にかかっとるのか!!?? という感じで辟易していたんですよね。・・中略・・
 この事件が秋元康的なものの終わりの始まりにならないといけないと思います。ただ、人権派の方々がおっしゃる「丸刈りは体罰」「恋愛禁止ルールが人権侵害」かというと、それは違うと思うんです。どうせ人権派弁護士じゃないので、はっきり言ってしまいますが、アイドルは夢を売る商売。AKBファンの男の子たちは彼女たちに処女性みたいなものを求めている(それがいい悪いは置くとして)。また、年頃の女性たちが多数集まっているからこそ、恋愛自由だと収拾がつかなくなる。だから、恋愛禁止をルールとするし、そこに所属する子たちも、スターになるためにルールに納得して入っていく。だとしたら、そのこと自体がそんなに問題だとは思わないんです。他の仕事と違って、アイドルは恋愛しないという必要性・合理性が非常に高く、AKB48の場合、恋愛しないこと自体が、それがないとグループが成り立たないくらいの仕事の一部と言ってもいいほどのものなので、恋愛禁止というルールが公序良俗違反とは言い難いのです。宝塚歌劇団は少なくとも結婚禁止ですが、これも普通の企業なら違法です。あまり芸能界に興味のない人権派の人には、たぶんここが理解しがたいところなのです。・・中略・・ 
 それでも、なにか物凄く後味の悪い、嫌な感じが残るのはなぜなのか、1週間考えていました。 もう30年も秋元氏の仕掛けに乗せられているわが日本男児が、まず情けない限りです(同一人物がずっとファンとは限らないけれど)。確かに素晴らしい個性と容姿のアイドルたちが何十人もまとまっていて、物凄く努力しているわけで、魅力を感じるのはわかるのですが、しょせんは仕掛ける側のお仕着せのアイドルです。・・中略・・
 秋元氏が出てくる前のアイドルは、南沙織にしても、天地真理にしても、山口百恵にしても、もっと天然素材の魅力があったような気がします。秋元氏やつんく氏のやったことは、欲得づくのアイドルの管理化で、夢を手あかにまみれたものにして、アイドルをつまらなくしてしまっただけのような気がするのです。アイドルの道具化、完全な商品化。モー娘やAKB以降、彼らの縮小再生産アイドルグループが次々出てくるのを見ていると、はああ、日本の芸能界がどんどんつまらなくなるという感想を持っています。それは日本が、みな管理されたがる、目先の利益にこだわる、つまらない国になってきたということのような気がします。

| 男女平等::2011.12~2013.5 | 07:18 PM | comments (x) | trackback (x) |
2013.2.9 男性の最高裁判事の評価基準は仕事上の実績なのに、女性の最高裁判事の評価基準には、何人の子どもの母親か、家庭をどう守りながら仕事をしたかなどのプライバシーが含まれる国は、男女平等ではない。(2013年2月10日、最終更新)
 多くの新聞で、鬼丸かおるさんが、最高裁で戦後5人目の女性判事に6日付で就任したことが報じられたが、*1のように、「2男1女の母」「満員電車に揺られながら訴訟の書面を考え、夕方には保育園へ子供たちの迎えに走った」等々、家事と育児を両立して最高裁判事になったことを伝えている。しかし、はっきり言うが、自分で保育園に子どもの迎えに走れたのは、弁護士として自由業に近い仕事をしていたからであり、最初から裁判官であれば、続いていなかった可能性が高い。そのため、生え抜きの裁判官ではなく、弁護士を、戦後5人目の女性判事に就任させたのではないのか?

 なぜなら、医師、記者、教員、行政官、看護師など、転勤や残業で仕事を優先にしなければ社会的使命を果たせず、社会的使命を果たせなければ、自己実現はおろか仕事を継続することすらできない職業も多いからである。一方で、最近、*2のように、「男女共同参画」と言えば、必ずワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を持ち出す論調が多いが、仕事を優先にしなければなりたたない仕事も多く、その人たちは、本人の能率が悪いから仕事と生活の調和を崩してまで仕事をしているわけではないため、このワンパターンの論調はやめるべきである。

 また、*1のように、女性が最高裁判事になると、何人の子どもの母親か、仕事と生活をどう調和させ、家庭をどう守りながら仕事をしたかなどを記載した記事が散見されたが、男性が最高裁判事になった時に、このようなプライバシーを書いた記事は見たことがなく、仕事は実績で評価されていると考えるし、また、そうでなければ裁判所を利用する人が困る。つまり、女性の評価にのみ家庭生活というプライバシーを含めるのは、男女平等ではない社会の典型なのである。

 なお、私は、1977年に大学を卒業し、自己実現するために公認会計士となってBig4に勤務し、結婚はしても子どもは持たないという選択をして、一直線に働いてきて現在に至っているが、これは、地方出身の医師と公認会計士の夫婦が共働きをするにあたり、自分たちだけで「夕方には保育園に子どもの迎えに行く」「子どもが病気になったら仕事を休む」「保育園から呼び出されたら仕事を放りだして保育園に子どもを迎えに行く」「子どもが小学校に上がったら、仕事は半日勤務にする(学童保育の不備に対する皮肉)」などということが不可能だったからである。つまり、女性が正社員として働くための社会インフラが整っておらず、それは、1977年以前の私が学生の時から言われていたにもかかわらず、なかなか進んでいなかったことが原因なのである。そして、その頃に保育園を必要とした子どもたちが親になる時期になっても、まだ同じ命題を語っているのには、呆れるほかない。

 なお、わが国には、もう一つ、キャリアをもって一生懸命働こうとする女性にとって重大なやりにくさがあったし、今でもある。それは、お手伝いさんを雇って子どもの世話をさせると、(パートナーからではなく)世間一般から非難されることである。また、お手伝いさんが同居できるような住環境でもない。しかし、私が、1990年頃(今から20年以上前)、公認会計士として世界規模の研修に1週間くらい出ていた時、シンガポールの女性が、「子どもが2人いる」と言いながら、何事もないようにその研修に出席していたので、私が「どうしてそれができるのか?」と聞くと、「家に昼夜交代で2人のお手伝いさんが住み込みで働いていて、子どもの世話をしているから、私がいなくても問題ない」と言っていたので、羨ましく思ったものである。また、アメリカでも、そのようなお手伝いさんを雇いやすいと聞いている。

 研究者、プロフェッショナルなどの高学歴で本当に真面目な女性たちは、中途半端に働くのではなく、世界の男女と競争して勝ち、実績を挙げて自己実現したいと思って頑張っているのである。そのため、*2のような「男女共同参画=仕事と生活の調和」などというワンパターンの論調は、速やかにやめるべきだ。「自己実現も出来ないのに、単に家計補助のためにアルバイトするくらいなら、働かなくてもすむ夫を見つけた方が懸命だ」という判断はもっともだし、高学歴女性は、それも可能なのである。

 また、*2には、「1986年の男女雇用機会均等法施行以来、女性は頑張ってきた」とも書かれているが、これは、頑張って働いてきて問題提議し、第一次男女雇用機会均等法を作った働く女性たちに対して失礼極まりない。なぜなら、1986年には第一次男女雇用機会均等法が施行されたが、均等法施行後に初めて女性が頑張り始めたのではないからだ。その前の、採用、配置、定年において、女性が堂々と差別されていた時期には、働く女性は男性の3倍働いても同等と見てもらえるかどうか危ういようなハンディを持たされた中で頑張り、男女雇用機会均等法を成立させた。そのため、「1986年の男女雇用機会均等法施行以来、女性は頑張ってきた」などというのは、「パソコンが普及した後の世代だけがコンピューターを使っている」と言うのと同じくらい的外れなのだ。パソコンが普及する前からコンピューターを使いこなしていた人は多いし、パソコンを開発したのは、それらの中でも特に優れた人々だったのと同じである。

*1:http://mainichi.jp/opinion/news/20130207k0000m070116000c.html
(毎日新聞 2013年2月7日) ひと:鬼丸かおるさん 最高裁判事に就任
 最高裁で戦後5人目の女性判事に6日付で就任した。これで現在の15人の判事のうち3人が女性となり、三つある小法廷すべてに女性がそろう。「男女の区別が意識されなくなれば良いですね」。男女差を埋める活動に力を注いできた弁護士としての感想だ。大学助手だった母は結婚で家庭に入った。「女は主婦しか仕事がないの?」。子供心に母の無念を探った。女性が社会で男性と渡り合っていくのは簡単でない。まず資格を取り、社会に根付く男女格差を何とかしたい、と弁護士を志した。
 ひとつの裁判が胸に残る。生後すぐ保育器で高濃度の酸素を投与され、失明した患者による「未熟児網膜症」訴訟。弁護士1年目から病院側弁護団のメンバーに加わり、病院勝訴で決着した。提訴時に幼児だった原告は成人し、一家は離散していた。長年闘って誰も幸せになれない不条理。本心では喜べない勝訴だった。
 2男1女の母。満員電車に揺られながら訴訟の書面を考え、夕方には保育園へ子供たちの迎えに走った。「女性はダメと言われたくなかった」。育児が一段落すると、司法研修所教官として後進を指導した。教えを受けた女性弁護士は「細身で明るい色のスーツ姿でさっそうと歩く姿があこがれだった」と話す。「子供には後ろ姿だけ見せてきた。進む道は自分で決めなさいと」。長女は3年前、裁判官になった。「憲法の番人」となる母の背を「頑張れ」と押してくれた。
【略歴】鬼丸かおる: 「男女の区別が意識されなくなれば」と語る新最高裁判事。東京都出身。東大卒。75年弁護士登録。「訴訟相手からよく『鬼だ』と言われる」。疲れた頭は休日のヨガで無にする。64歳。

*2:http://www.saga-s.co.jp/news/ronsetu.0.2392797.article.html
(佐賀新聞 2013年2月7日 ) 男女共同参画 仕事と生活の調和を  
 「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」-。内閣府がこのほど発表した男女共同参画社会に関する世論調査で、この考えに賛成の人が51・6%、反対が45・1%だった。1992年の調査以来、賛成は一貫して減ってきたが、初めて増加に転じた。特に20代の賛成が大幅に増えた。この「揺り戻し」をどう考えたらいいだろう。実は、この「揺り戻し」は佐賀県でも起きている。県の県民意識調査で、「男は仕事、女は家庭」という性別役割分担に賛成する人は97年は男女とも6~7割に達していたが、2004年調査で初めて反対派が賛成派を逆転。しかし、09年調査では賛成派が増加に転じている。詳細な分析はまだ出ていない。しかし、人々の意識が社会・経済状況や雇用環境などから影響を受けているのは容易に想像できる。バブル崩壊以降の長引く不況と就職難の中で、女性が正職員として働いていても残業があって負担が大きかったり、家に帰れば家事や育児がのしかかる。やむなく離職する人がいる。
 1986年の男女雇用機会均等法施行以来、女性は頑張ってきたが、「もう限界」と疲れているのかもしれない。家庭に入りたいとの専業主婦志向の背景には、子育てと両立しにくい雇用・労働環境、育児休業制度の恩恵を受けない非正規の増加、女性の昇進の難しさなどが潜んでいるとみていい。特に日本では結婚や出産を機に労働市場から退出する女性が多く、子育てが一段落すると再び参入するという特徴がある。しかし、再び仕事に戻る際に、正規雇用のハードルが高い。仕事と育児の両立は大きな課題だ。
 日本の女性は高学歴で、能力発揮が期待される。この国の持続的成長のカギはこれが握っている。女性が家庭に入ったままというのは社会の損失だ。もっと柔軟に女性の能力を生かす方策が必要だし、保育所の拡充など子育て支援策をもっと充実させたい。また性役割分担意識は強すぎると、男性にとっても重圧になり、過重労働や自殺などに追い詰められることにもなる。大事なのはワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の実現だ。これを進めるには、労働生産性を高めて労働時間を短くする必要がある。男女とも早く家に帰って、つくりだした時間は家事や育児、地域社会活動などに使える。男女共同参画を進める上で、この実現は欠かせない。「ワーク・ライフ・バランスはコストがかかる」と考える経営者は多い。しかし、長期的に継続することで経常利益にプラスの影響を与えるという研究データもある。従業員の満足度が上がれば、企業への貢献意欲が出て、結果的に企業の成長に寄与するという好循環が生まれる。
 「イクメン(子育てする男性)」という言葉があるが、男性の家事や育児などの時間を全国比較した調査(11年度、総務省)では、佐賀県は石川県と並び最下位。ただ、6歳未満の子どもがいる夫でみると16位。若いお父さんたちはまだ頑張っている。男女共同参画社会とはすべての人々に「出番」と「居場所」のある社会のこと。そんな多様性のある社会を目指して、さまざまなレベルで改革を進めたい。

| 男女平等::2011.12~2013.5 | 02:43 PM | comments (x) | trackback (x) |
2012.12.3 首長や議員に女性が必要である理由
 *1、*2のように、日本では、社会全体の雰囲気として、まだ性的役割分担意識が大きく、女性を意思決定する立場に置かない傾向がある。(ただし、私の夫は、大学時代からの同志であり、全くそういう価値観の人ではないので、彼の名誉のために断っておく。)

 そして、日本人男性の多くは家計を妻に任せているため、家計は誰かがやりくりすれば魔法のように成り立つと考えている人が多い。そして、消費税を増税した上、インフレにすれば経済が回復するという経済政策は、もともと自分は消費者ではないと考えている男性から発したもので、そこには企業の名目利益を増加させようという発想はあるが、ぎりぎりでやっている家計が成りたたなくなるという視点はない。

 また、輸出して外から稼がなければ日本は成り立たないと言う人もいるが、実際には、日本には需要があるのに供給がないため消費されない財・サービスも多い。それは、女性が社会進出して、家族の形態が変ったために必要となった介護、保育、家事代行系の財・サービスで、これを供給すれば国内総生産が上がるにもかかわらず、苦労しながらここを改革しているのは、女性たちが中心だ。

 財政についても、「10年間で200兆円支出する」などと言う候補がいるが、これは、支出すること自体が目的になっており、多くの女性は呆れるだろう。家計を預かったことのある人なら、その支出を一石三鳥くらいで如何に有意義に支出するか、如何に少ない支出でより高い効果を出すかを考えない人はいない。多くの女性は、毎日、これを考えながら何を買うか決めているのに、そのなけなしの家計から分捕った税金を、このようにいい加減に使われたのではたまったものではないと感じるのである。そのため、同じ公共事業への支出でも、一石三鳥の有意義さを出すように工夫したり、少ない支出でより高い効果を出すように努力したりして、税金からの支出も最小の費用で最大の効果を出すように、きちんとした積算根拠をもって支出額を決めて欲しいと考えるのだ。

 *3のBSEや農薬・化学肥料・界面活性剤を使った洗剤の不使用、今回の原発事故における内部被曝への警戒など、環境や食の安全についても、女性の方が意識が高く、具体的行動をしている。その理由は、女性の方が食に関する知識が多いことや、環境悪化の影響を感じやすいからだろうが、農林水産省でさえ、「食料自給率」を述べる時に米穀の自給率だけしか述べないのは、中学校の義務教育から栄養学や料理を学び、人は米穀だけでは生きていけないことをよく知っている女性なら誰でも驚くだろう。

 つまり、いろいろな知識や経験を反映した政策が作られるためには、現実に女性議員の数も多く必要なのであり、そこで求められるのは、見せかけだけのマドンナ候補、男性から人柄がよいと言われるだけの従順候補、知名度が高いだけのパンダ候補ではなく、独自の視点を持って社会を変えられる知識と経験と意思を持つ実力候補である。しかし、メディアは、日頃から、ニュースの報道ぶりやドラマでの女性の描き方において、リーダーにふさわしい実力のある女性の存在を明らかにし、それに対して敬意を払っていない(つまりジェンダーがある)ため、実力候補が当選しにくい。メディアの論調は、国民(有権者)の潜在意識や”文化”を作ってしまうため、重要なのだが・・。

*1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012120302000132.html
(東京新聞 2012年12月3日) 女性の国政進出 未来のため増やしたい
 四日公示の総選挙で女性議員を増やせるだろうか。国政は原発事故の対応をはじめ、この国の未来を左右する問題が山積みだ。多様な民意を反映させなければならない。女性の力が必要だ。二十九日に告示された都知事選には九人が立候補したが、女性は一人もいない。女性の視点があまりにも示されなかったことに落胆した有権者は少なくないだろう。男女共同参画社会だと言われながら、今なお政治の場で女性は少数派だ。戦後改革で女性に参政権が認められて以来、国会議員は大量当選した時期もあったが、解散前の割合で11%。地方議会では比較的多い市議会でもその割合は全体で15%ほどにすぎない。国や身近な街の問題を話し合い、将来像を決める場に、有権者の半数を占める女性の経験や感性が生かされないのでは、議論の幅や厚みを失わせてしまう。議員としてでなくても、地域の問題に取り組んでいる女性は大勢いる。福島第一原発事故後は放射能の被害から子どもを守ろうと、地元の行政や議会に働きかけ、放射能を自主的に測ったりして、懸命に行動する人が目立っている。
 女性の国政進出が伸び悩んだ原因には、男女の性によって役割が決められがちで、政治も他の公的分野と同様に、女性が頼りにされないような風潮もあっただろう。だが、最たる原因は各政党に女性議員を増やそうとする努力が足りなかったことだ。世界では男女差をなくすために「クオータ(人数割り当て)制」を導入し、議員や候補者の一定割合を女性にするように決めた国が多い。政党法や選挙法の改正によって、比例代表の女性比率を一定以上にしたり、名簿に載せる候補者の半数を女性にしたり、奇数順位を女性にしたりする。韓国では二〇〇五年に女性議員の比率が一割を超え、今では15%近い。北欧やドイツなどは女性の国会議員が三割を超えている。
 一九八九年の参院選で当選し、その後、千葉県知事を務めた堂本暁子さんは、「国の意思決定の場に女性が存在することの意味、予算と権限を持つことの意味」を実感したという。震災や原発事故をきっかけに暮らしや命に寄り添った政治に変えようといううねりが始まった。社会保障も、経済対策も、安全保障も、教育も、どの分野でもその解決に女性の視点はなくてはならない。女性議員をもっと増やすよう、各党は競い合ってほしい。

*2:http://203.139.202.230/?&nwSrl=295169&nwIW=1&nwVt=knd
(高知新聞 2012年11月5日) 【男女平等101位】変われない日本でいいのか
 先進国として「ありえない」評価だ。世界経済フォーラムの2012年版「男女格差報告」で、日本は135カ国中101位と3桁台に転落した。11年(98位)から2年連続で順位を落とした。日本が男女格差の解消に不熱心な国とのレッテルは、半ば定着している。国際社会からの信頼をつなぎ留めるためにも、改善への努力を見せる必要がある。同フォーラムは、各国の女性の地位を、「経済」「教育」「政治」「健康」の4分野で分析し、数値化したものを総合ランキングで公表している。
 「最も格差が小さい」1位のアイスランドをはじめ、上位は今回も北欧勢が占めたが、ドイツ(13位)、英国(18位)、米国(22位)といった主要国の中でも日本の異質ぶりが際立つ。 日本は75位まで上昇した09年を除いて、ここ数年は90位台に甘んじている。課題ははっきりしている。女性の議員の少なさと、経済分野への進出の乏しさだ。2010年の国会議員に占める女性の割合は衆院で11・3%で、日本より下位だった韓国(14・7%)にも抜かれている。国政レベルで女性を一定割り当てる「クオータ制」を導入している国は、昨年3月現在で80カ国を超えている。格差解消に努める世界の流れから、日本は完全に取り残されているといってよい。思い切った対策を講じない限り、浮上するのは難しい状況だ。
 雇用の分野もしかりだ。雇用者に占める女性の割合は、4割を超えるまでになった一方、賃金の男女格差や長時間労働の改善は進んでいるとは言えない。男女雇用機会均等法の施行から四半世紀が経過した今なお7割近い女性が出産後、退職している現実がある。世界的にも高い教育レベルにある日本の女性が、教育投資に見合うような活用をされないまま、キャリアを中断させている。国内経済にとっても、これほどもったいないことはない。近年、国内において、女性の社会進出を促す法整備が進みながら実効性に乏しかったのは、国の「本気度」が足りなかったからと批判されても仕方ないだろう。
 世界でも例をみないスピードで高齢化が進む日本である。女性の活用なくして、企業も社会も成り立たなくなる時代が迫っている。「変われない日本」のままでいいはずがない。一日も早く汚名を返上すべきだ。

*3:ttp://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2323395.article.html 
(佐賀新聞 2012年11月6日 ) 牛肉の輸入緩和方針を正式決定 / 米国など4カ国と協議へ
 厚生労働省は6日、牛海綿状脳症(BSE)対策として実施している牛肉の輸入規制で、米国などからの輸入を認める牛の対象月齢を現行の「20カ月以下」から「30カ月以下」に緩和する方針を正式に決めた。内閣府の食品安全委員会が10月に「30カ月以下に緩和しても人への健康影響は無視できる」と答申したのを受けたもので、同省がこの日、薬事・食品衛生審議会部会に報告、了承された。厚労省は今後、米国、カナダ、フランス、オランダの4カ国と月齢管理のための体制整備などをそれぞれ協議し、最終的に同審議会に報告した上で、来年初めにも輸入規制を緩和する。

| 男女平等::2011.12~2013.5 | 11:32 PM | comments (x) | trackback (x) |
2012.10.27 日本の男女差別の結果は、日本経済にプラスだったのか?
        
        日本のGDP成長率の推移           2012年版男女格差報告(東京新聞より)

 *1、*2のように、「世界経済フォーラム」が「経済・教育・政治・健康」の4分野で、各国の女性の地位を分析したところ、日本は、政治・経済の分野で決定権のある管理職や役員女性の割合が極端に低く男女格差が大きいという結果だった。これは、大学卒業後ずっと働く女性をしてきた私の経験とも一致しており、女性の教育レベルは上がり、就業率も上昇しているので、「決定権を与えられるような女性の人材はいない」という言い訳は成り立たず、わが国の多くの組織が、女性就業者を決定権のある管理職や役員に育てることに消極的だったことを意味する。これは、わが国の内閣府男女共同参画局から出ているHPの政策・方針決定過程への女性の参画をめぐる状況 (http://www.gender.go.jp/pamphlet/pamphlet-main/pdf/2011_12.pdf )でも明らかにされている。

 1979年に第34回国連総会において女子差別撤廃条約が採択されて後、わが国は、1985年に最初の男女雇用機会均等法を作り、同1985年にその条約に批准したが、最初の男女雇用機会均等法は、制度創設時に努力義務という骨抜きのものにされた。そして、同じ1985年、厚生年金にサラリーマンの専業主婦に対する3号被保険者制度という「専業主婦の奨め」を行う制度が創設されたのである。この時点で企業がとった行動は、女性雇用者を総合職と補助職に分け、補助職の女性には男女平等の扱いを適用しないとしたことであった。そして、1997年に(私発で)男女雇用機会均等法が改正され男女平等の扱いが徹底して義務化された後は、企業は、多くの女性労働者を非正規や派遣労働者に切り替えて、男女平等の扱いを骨抜きにした。この間、メディアは、ドラマ、歌謡曲、報道を通して、「結婚したら仕事を辞めて専業主婦になる女性」を推奨し、「自分では判断力がなく馬鹿な女性が男性について行く」イメージを放送し続けて、国民の”常識”を作り上げた。そして、この”常識”を受け入れた女性を”大人の女性”と呼ぶようにしてしまったのである。しかし、他国は、この間、真面目に問題解決に取り組んでいた。

 そのような行動の結果、何がもたらされたかと言えば、上の左図のように、わが国は、外国の真似ではなく需要から経済政策を作っていかなければならなくなった1975年以降、経済成長率が伸びなくなった。なぜなら、電車と車が好きで、家庭の資金繰りに参加したことがなく、職の確保と所得の額にしか関心のない男性ばかりで意志決定を行った結果、国の予算は、鉄道・道路などの公共事業と経済効果の小さな景気対策にまわされ、本物の需要が増加した保育・学童保育・介護を経済に取り込むことができず、衣食住や環境への意識が低くなり、国民生活を犠牲にして財政赤字を増やすばかりとなったからである。つまり、人口のうちの男性だけという特殊な半数の中から有用な人材を選抜したため、人材の半分しか活用できず、生活・生存系の問題解決や実需からのアプローチが苦手になっていたのである。

 そして、*3を見てもわかるように、内部被曝、低線量被曝のリスクから逃れるべく、父親はついて来ずに母子だけで自主避難している人に対して、「放射能は安全だ」「“風評被害”をまき散らすな」と決めつけた主張をしているのは多分男性である。男性は食品や健康に関して無頓着な人が多いが、女性は、食品や健康に関する知識を持ち、これらに注意しながら家事を担当している人が多い。そのため、女性が発言権を持つことは、大変重要なのである。本来は、その性的役割分担ももっと見直すべきだが、今のところ、非常に偏った知識と感性で意志決定がなされているということだ。

 従って、立法、行政、司法もそうだが、私の経験では、報道にも、ものすごいジェンダーを含んだ歪んだものが多く、決して中立ではない。そして、これは、国民が真実を知る権利にはむしろ害となっている。そのため、それぞれの報道機関における分野毎の責任ある地位にいる女性記者・管理職・役員の割合やこれまでの採用・配置・昇進・退職及び編集の方針など、都合の悪い情報も含めて公表し、真摯に今後の対応策を考えるべきである。また、社内にチェック機関を設ける必要もあろう。その判断の基準は、上位圏にある国のやり方を真似すればよい。他国は進んだため、もう真似する相手ができたのだから・・・。

*1: http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye5164563.html (TBS 2012年10月24日) 「男女平等」101位、働く日本の女性は
(ポイント)24日、世界135か国で「男女平等」がどれだけ実現されているか、ランキングが発表されました。上位を北欧の国々が占めています。アメリカは22位、中国は69位、そして日本は101位と昨年の98位から後退し、先進国の中では最下位でした。135か国中101位。24日発表された「世界男女格差報告書」で、日本は依然として「男女の格差が大きい」と指摘されました。
 「ダボス会議」などを主催する「世界経済フォーラム」が、各国の女性の地位を「経済・教育・政治・健康」の4分野で分析。各分野で男女格差の8割以上を解消した北欧諸国が、例年通り上位を占めます。アメリカは前年より順位を5つ下げて22位。中国は69位、女性の労働参加が高いことが順位を押し上げました。世界では、政治と経済の分野で女性の進出が続きます。日本の敗因はまさに、この分野にありました。現内閣の中で女性大臣はただ1人。女性議員数そのものが減るなど、男女格差が広がっています。女性の就業率は上昇しました。しかし、決定権がある管理職や役員となると、とたんに女性の数は減ってしまいます。政府は2020年までに「指導的地位の女性割合を30%にする」と目標を掲げますが、いまだほど遠い状況です。

*2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121024-00000052-cnippou-kr
(中央日報日本語版 10月24日)男女平等度、韓国は世界最下位圏の108位…日本は101位
 韓国社会の男女平等度が世界最下位圏であることが調査で分かったと、韓国メディアが24日報じた。報道によると、世界経済フォーラム(WEF)は23日(現地時間)、年次男女格差報告書を発表し、韓国の男女平等度は調査対象国135カ国のうち108位で、昨年より順位が一つ落ちたと伝えた。これはアラブ首長国連邦(107位)、クウェート(109位)、ナイジェリア(110位)、バーレーン(111位)などアラブ・アフリカ国家と似たレベル。指標別に見ると、韓国女性の経済参加度と参加機会指数(116位)はもちろん、教育程度指数(99位)と健康・生存指数(78位)、政治力指数(86位)も下位圏にとどまった。
 一方、世界男女平等度1位はアイスランドで、フィンランド、ノルウェーなどが後に続くなど、北欧国が上位に並んだ。最下位圏はアフリカ・チャド(133位)、パキスタン(134位)、イエメン(135位)など。アジア太平洋地域ではニュージーランド(6位)、フィリピン(8位)、豪州(25位)、スリランカ(39位)、モンゴル(44位)などの順に高く、中国は69位、日本は101位にとどまった。

*3:http://mytown.asahi.com/fukushima/news.php?k_id=07000131210090001 
(朝日新聞 2012年10月10日) 自主避難への理解
 「こういう人たちが、県外で風評被害をまき散らしているんです」 県総合計画の見直しで、県が各地で開いている地域懇談会で出た発言だ。総合計画審議会委員の一人が、母子だけで自主避難している人についてそう言い放った。「経済的にも余裕がある人たちです」「正しい知識をもってもらいたい」。二重生活の出費に耐えられる、という点では「余裕がある」かもしれない。だが、取材した限り、出費を切り詰めギリギリの生活を続けている家庭が大半だ。前向きに新天地で暮らす人たちがいる半面、「風評被害をまき散らす」どころか、いじめや嫌がらせを恐れ、「福島から来た」とも言えず、身を隠すように暮らし、福島を思って涙する。そんな人も多い。県総合計画は来年度から8年間、復興計画も含めて県の施策の指針となる。この委員がどの程度、見直しにかかわるか知らないが、県は人選をもう少し考えた方がいい。


PS:*4の海洋生物学者レイチェル・カーソンも女性だ。私も環境税の創設等々、環境系の政策提言を多く行ったが、佐賀三区内の農協を訪問した時に、女性職員が、界面活性剤の入っていない洗剤を使うようにしようと朝礼で呼びかけていたのを聞いて、「農業地域は、そこまで気をつけて農産物を作っているのだな」と感心したものである。

*4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012102102000148.html  (東京新聞社説 2012年10月21日) 週のはじめに考える 「沈黙の春」と原子力
 先日、農協が原発と農業は共存できないと宣言しました。それは農業に限らないでしょう。私たちは自然なくして生きられず、共に暮らしているのです。自然環境について言えば、今年は、あのアメリカの海洋生物学者レイチェル・カーソン(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%B3)が「沈黙の春」を出版してからちょうど五十年になります。その本は述べます。食料増産の中で農薬が大量に使われ、鳥や虫などが死に、春は黙りこくってしまった、と。
◆巻き起こった大論争
 誤解のないように説明をしますと、彼女は農薬一切の使用禁止を言ったのではありません。その毒性、生命体に対する極めて強い影響力について、農民、国民によく知らせないまま使わせているのはおかしい、と言ったのです。アメリカでは大論争を巻き起こしました。農薬散布を勧めていた政府や、農薬を製造する化学工業界などが強い圧力をかけました。同調する学者もいました。「殺虫剤の使用をやめたら害虫の支配する暗黒の時代がやってくる」と。当時のケネディ大統領は、大統領科学諮問委員会に農業委員会を特に設け調べると約束しました。その調査の結果、委員会は、カーソンの告発が出るまで、国民は農薬の毒性を知らされていないことが明確になった、と報告したのです。悪い情報も開示せよ、と求めたのです。よい効能ばかりを聞かされてきたアメリカ国民は、やっと危険性を知らされるわけです。半世紀も前のことですが、それが今の原発問題と、何と似ていることか、また似ていないことか。似ているのは、国民が危険性をよく知らされなかったこと。それが政府や業界、御用学者らによっておそらくは覆い隠されてきたこと。似ていないこととは、悪い情報の開示が日本ではなお不十分だと思われることです。
◆国を内から滅ぼすもの
 国が運転の許認可をしている以上、国民にはその良い面と悪い面を知る権利があります。
また、政府が十分だと見なしても、国民の大方が不十分と考えれば、それは十分ではないのです。政治家は説明責任という言葉をよく口にしますが、軽々に使われては困ります。それは悪い情報も開示した上で、論理的に相手に通じなければなりません。
 カーソンに話を戻せば、「沈黙の春」出版のずっと前、一九五三年八月、彼女の投書がリーダーズ・ダイジェストに載りました。訴えはこうでした。「…自然界の真の富は、土壌、水、森林、鉱物、野生生物等、この大地の恵みの中にあります。将来の世代のためにこれらを確実に保存しなければならず、利用するには、広範囲の調査に基づく緻密な計画を立てねばならない。これらのものの管理は政治の問題とは全くちがったものなのです」(ポール・ブルックス著「レイチェル・カーソン」新潮社より)
 それは工業化社会へ急速に向かうアメリカ、また世界への警告でした。投書は、また彼女の元上司を解雇する非を指摘します。当時の大統領は、共和党に担ぎ出されたアイゼンハワー。彼は防衛産業に強くGM社長のウィルソンを国防長官に、国際派の弁護士ダレスを国務長官に任命するなど財界、民間人を登用(この時期に軍産複合体制が確立)。その中でクビを切られたのが、キャリア三十五年、人望篤(あつ)く公共の自然の収奪に断固反対してきた魚類野生生物局長アルバート・デイ氏。クビを切ったのはビジネス界から来た内務長官。投書はこう結ばれていました。「自然保護の問題は国家の死活にかかわります。政治(政略)的考えの行政官は資源の乱用と破壊の暗黒時代に引き戻す。国防に熱心な一方、内側から国を滅ぼすものに無関心ではいられない」内側から国を滅ぼすとは、何と厳しい警告でしょう。しかし彼女の学者としての真剣さがそう言わせるのです。
◆告発から半世紀を経て
 同じように、福島原発事故を経験、また見聞した農業従事者らは思わざるをえないでしょう。都市生活者が恐れるべきは、その体感のなさかもしれません。農協の将来的な脱原発宣言とは、そういう意味合いを日本に与えています。殺虫剤の代表格DDTは大多数の国で使用禁止になりました。他方、原発事故で降る放射性物質は自然をひどく、かつ長く汚染し、核のごみは半永久的に残ります。「沈黙の春」の告発から半世紀。その教示を、私たちはずいぶん学んできましたが、まだ学びきれていないものもあります。それは核のもたらす汚染であり、カーソンなら国を内側から滅ぼすもの、というかもしれません。

| 男女平等::2011.12~2013.5 | 08:53 AM | comments (x) | trackback (x) |
2012.8.24 選挙制度改革について ← 日本全体の比例に、2030年には一方の性の割合が40%未満にならないようにするというポジティブ・アクションを段階的に加えることを提案します。
(1)日本全国を同じ票の重さにしながら、死票をなくすには?

 「1票の格差」問題は、「選挙権が0.5票しかないとは何事だ」という都市部の苦情から始まったが、その一方で、人口が少ない地方は、「それでも自分たちの声を中央に届けるためには一定数の代表が必要だ」というニーズを持っている。地方は、人口がマイノリティーでも、国土の広い面積を占め、食料生産、水や酸素の供給など、生命に関わる生産を担っている重要な地域であるから、地方の意見を国政にどうやって反映するかは大きな課題である。

 また、地方の有権者は、「少ない代表者でも国政に地方のニーズを届けたい」という意向が働くため、政権与党か第二政党くらいまでの候補者に投票する傾向が強く、小選挙区制度では少数政党の候補者は当選しにくい。そのため、現在、マイノリティーに当たる政策を持つ政党を支持する有権者に死票が多くなる。そこで、民主党案は「0増5減」に加え、比例定数の40削減と連用制を盛り込んでいるが、この制度の欠点は、投票時に、有権者が自分の投票の結果を予測することができず、わかりにくいことだ。

 そのため、私は、日本全体(又はブロック毎)の比例方式とし、政党が全体としてどういう人を候補者として選び(この場合、候補者それぞれの出身地、プロフィール、主張を有権者に正確に開示することが必要)、自分の地域の代弁をしてくれる人が名簿にどう掲載されているかまで勘案して、有権者がその政党に投票できる拘束名簿方式(又は一部被拘束名簿方式)を採用するのがよいと思う。なお、今のままでは、こうすると無所属の人は被選挙権がなくなってしまい、憲法違反になるため、無所属で国会議員経験のない人でも、1人で簡単に政党を作ることができるように、政党要件を大きく緩和する必要がある。

(2)政治の世界でマイノリティーになっている女性の割合を増やすには?

 私は、公認会計士から政治の世界に入った時、政治の分野における女性の割合や地位は、公認会計士の分野よりも30年も昔に戻ったような気がした。しかし、本当は、政治は、生活者の実感を知っており、食品、健康、子育て、介護などに知識と関心が大きく、「○○ムラ」に所属していない人材が多く、命を大切にする女性の発想が重要な分野であるため、女性の割合を増やすべきだと思っている。そして、本来は、人口の50%もいる女性の中から、議員にも30%や40%は女性がいてもよさそうなものだが、それを邪魔する要素も多いので、「100年河清を待ってもどうかな」と、今では思っている次第である。

 女性の社会進出国際比較、女性差別撤廃条約、男女共同参画基本法、男女雇用機会均等法などのKey Wordで探せば、資料1~6のように、いろいろな資料を探すことができるが、男女平等や男女雇用機会均等を保障する法律を作っても、わが国の産業界は、いろいろな方法を考えてこれを骨抜きにしてきた歴史がある。

 そのため、わが国のリーダーである政治の世界におけるグラスシーリングの解消策として、まず、下の資料3のように、国会議員にポジティブ・アクション(クォータ制)を導入して計画的に女性を増やしていくのがよいと思う。そのため、私は、現在(2009年の選挙結果)の衆議院議員に占める女性割合約10%を、資料3のように、2020年で30%、2030年以降は、どちらかの性が40%未満にならないように当選させるスケジュールを作るのがよいと考える。それには、次回の総選挙から、女性当選者の割合を15~16%くらいにはしなければ目標達成できない。そして、それぞれの政党は、女性候補者をそれなりの数入れておかなければ当選者が少なくなるわけである。これなら、無理なく目標達成ができるだろう。
 <下のようなイメージ>
 2009年衆議院議員選挙       衆議院議員当選者に占める女性割合 約10%
 2012年衆議院議員選挙       衆議院議員当選者に占める女性割合 15~16%
 2016年衆議院議員選挙       衆議院議員当選者に占める女性割合 22%
 2020年衆議院議員選挙       衆議院議員当選者に占める女性割合 30%
 2024年衆議院議員選挙       衆議院議員当選者に占める女性割合 34%
 2028年衆議院議員選挙       衆議院議員当選者に占める女性割合 38%
 2030年以降              衆議院議員当選者に占める女性割合 40%以上

      
         国会           財務省への要望活動        議員懇親会
  (私が現職の頃も、衆議院議員に占める女性の割合は10%程度で、周りは殆ど男性だった)

資料1: http://www.gender.go.jp/positive/siryo/po04-2.pdf#search='女性議員の割合%20国際比較'   女性議員割合の推移

資料2: http://blog.goo.ne.jp/our_freedom/e/45df45ad9e8640b923a40c89a174d31a   恥ずかしい日本の女性議員比率  世界142カ国中97位

資料3: http://www.gender.go.jp/whitepaper/h23/zentai/pdf/h23_001.pdf#search='2012%20年衆議院議員に占める女性の割合'    ポジティブ・アクションの推進―「2020 年30%」に向けて―

資料4: http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/seisaku09/pdf/01.pdf#search='男女の賃金格差%20国際比較'   男女間の賃金格差レポート(厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 2009年9月)
1)我が国の男女間賃金格差(一般労働者の男女間所定内給与格差)は、長期的には縮小傾向にあるが国際的に見て格差は大きい。
2)男女間賃金格差の発生原因は多種多様であるが、最大の要因は男女間の職階(部長、課長、係長などの役職)の差であり、勤続年数の差も影響している。このほか家族手当などの手当も影響している。
3)男女間賃金格差は多くの場合、賃金制度そのものの問題というよりは、人事評価を含めた賃金制度の運用の面や、職場における業務の与え方の積み重ねや配置の在り方等賃金制度以外の雇用管理面における問題に起因していると考えられる。

資料5: http://www.ba.tyg.jp/~yokoyama/EqualEmployment.pdf#search='女性のグラスシーリング%20国際比較'   日本および欧米における男女の雇用均等

資料6:http://www.jichiro.gr.jp/jichiken/report/rep_yamagata28/jichiken_bunkakai/kihonteki/danjo/danjo_3.htm   性に偏る職種 ― 国際比較

*1: http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2012081702000109.html (東京新聞 2012年8月17日)「1票の格差」是正 本格審議へ 衆院選時期に影響
(ポイント)衆院の「1票の格差」を是正する選挙制度改革法案が来週から、国会で本格的に審議される。民主、自民両党は5県で小選挙区数を各一減らす「0増5減」を含む法案を提出している。先の野田佳彦首相と自民党の谷垣禎一総裁の党首会談で「近いうち」の衆院解散・総選挙で合意したが、法案が成立すれば小選挙区の区割りを変えなければならず、その作業には3カ月かかるとされる。審議の行方が衆院選の時期に影響することになる。選挙制度改革法案のうち、「1票の格差」を是正するのは衆院選挙区画定審議会(区割り審)設置法改正案。まず各都道府県に小選挙区の議席を一ずつ配分してきた「1人別枠方式」を廃止し、山梨、福井、徳島、高知、佐賀各県の定数を三から二に減らす。民主、自民両党案ともこの点では一致している。民主党案は「0増5減」に加え、比例定数の40削減を盛り込んでいる。民主、自民両党案のうち、いずれかが成立すれば、現在、小選挙区で2.48倍ある一票の格差は2倍未満となる。成立すると、有識者からなる区割り審が再開し、選挙区の線引き作業を開始。0増5減の対象となる五県のほか、全体で約40選挙区の線引きを見直すことにしている。一票が最も「軽い」のは首相の地元である千葉4区。これまで千葉県船橋市全体で一つの選挙区だったが、今回は格差是正のため、市内の一部が別の選挙区に移る見通しだ。線引きは地元の事情に精通していないとできないため、実質的な作業は地元の自治体が担い、区割り審は首長らの意見を聴いて妥当か判断する。区割り審は週一回のペースで開かれる予定で、首相へ新しい区割りを勧告するには「急いでも3カ月かかる」(総務省幹部)とされる。勧告を受け、政府は公職選挙法改正案を提出。改正法が施行されると、新選挙区での選挙が可能になる。ただ、有権者には新選挙区の周知期間が必要。具体的な日数は決まっていないが、「1カ月は必要」(民主党幹部)というのが与野党の一致した見方だ。では、周知期間はいつから始まるのか。区割り審が新選挙区を首相に勧告した時点で、有権者は新しい選挙区を知ることができるため、勧告をもって周知期間が始まるという意見もある。また、憲法で衆院解散から投票まで40日以内と定められている。衆院選の公示から投票までの選挙期間は12日間。解散から公示まで最大で28日間ある。これを一カ月程度とされる周知期間にすれば、改正法施行後、すぐに解散できるという解釈もある。

*2: http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012082301001036.html
(東京新聞 2012年8月23日)選挙法案、野党欠席で審議 衆院特別委
衆院政治倫理・公選法改正特別委員会は23日午前、民主党が提出した衆院選挙制度改革関連法案の質疑を実施した。強引な審議に抗議し自民党など野党は22日に続き欠席した。民主党は月内にも法案を衆院採決し参院に送付する方針で、野党の反発は必至だ。民主党は質疑開始前、野党に出席を呼び掛けたが応じなかった。関連法案は(1)小選挙区「0増5減」(2)現行の小選挙区比例代表並立制に連用制を一部導入(3)比例40削減―を盛り込んだ内容。自民党も0増5減に絞った関連法案を提出している。選挙制度改革関連法案は22日の特別委で、民主党が提案理由説明を行い審議入りした。

| 男女平等::2011.12~2013.5 | 11:41 AM | comments (x) | trackback (x) |
2011.12.29 雇用における男女の募集、採用、配置、教育・訓練、昇進・降格、退職などの差別をなくすことはGoodだが、原子力潜水艦や原子力空母はやめてほしい・・・。
 英軍では、潜水艦への女性勤務が始まったそうである。取っ組み合いのような、筋力で勝負する
戦争をしない限り、男女に戦闘力の差があるとは言えないので、雇用における女性の就職、配置、
昇進、退職差別の禁止を具体化する上で、よい方向への転換だと思うが、私は、前から、どの国も、
空母や潜水艦への原子力の利用は、止めて欲しいと思っていた。  四葉

 その理由は、戦争に使う以上、撃沈されるリスクが高いからである。そして、沈没させられれば、
核燃料が海に流れ出し、海水を汚染して水産業に悪影響を与える。それは、ひいては食料不足を
招き、さらなる戦争の誘因となる。

 燃料は、原子力しかないわけではないのだから、わざわざ、このような道具に核燃料を使わな
くてもよいはずである。21世紀の道具は、環境、農林漁業、食料への影響も考えて作って欲しい。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111229-00000061-jij-int
(時事通信 12月29日(木):潜水艦にも女性進出へ=「平等」推進で英軍)
 
【ロンドン時事】「男の職場」だった英軍の潜水艦が、女性に開放されることになった。職務の
男女平等を推進する一環で、2013年から女性も潜水艦に乗艦する。ハモンド国防相は、 「兵
士の能力を最大限に生かす軍の伝統に沿った措置だ」と意義を強調している。
 国防省によると、潜水艦勤務となる最初の女性は士官クラスになる見通しだ。核ミサイル・ト
ライデントを搭載した原子力潜水艦に乗り込み、15年からは下士官クラスも勤務。16年には、
最新鋭原潜「アスチュート」にも女性が配属される予定だ。
 英海軍で働く女性は現在、約3400人で、海軍全体の1割にも満たない。また接近戦に関わ
る任務などに女性が就くことはできず、海軍の仕事のほぼ30%は依然、女性に門戸を閉ざし
ている状態だ。
 英紙によれば、英国と同じく北大西洋条約機構(NATO)に加盟するノルウェーはNATOで
初めて女性の潜水艦勤務を認め、現在では全ての職務に男女とも就くことが可能だ。一方で、
フランスは潜水艦への女性乗艦を禁じている。 

http://www.rengo-osaka.gr.jp/opinion/seisaku/syuntou2009/shiryou/5kakusa/5-2-2-1.pdf#search='
(我が国の男女雇用機会均等法 厚生労働省:雇用における男女の募集、採用、配置、教育・
訓練、昇進・降格、退職などの差別禁止等)


| 男女平等::2011.12~2013.5 | 10:12 AM | comments (x) | trackback (x) |

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