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2014,08,30, Saturday
2014.8.30東京新聞より (1)どちらが真実か – フクイチで原発技術者は待機命令に背いて撤退したのか *1-1でスポニチが報じているように、産経新聞が、朝日新聞が報じていた吉田調書の内容のうち「福島第1原発にいた所員の9割が、吉田所長の待機命令に背いて福島第2原発に撤退した」という記事を、調書の一部を独占入手して、「所員が吉田所長の命令に違反して勝手に現場を離れたことはなく、朝日新聞の言う撤退はなかった」と報じ、雑誌等にも朝日新聞を攻撃する論調の記事が多い。 しかし、*1-2で、読売新聞が報じているように、吉田所長は第一原発内での退避を指示したにもかかわらず、所員の多くが第二原発に避難したのであるから、所員の9割が、その時点の吉田所長の待機命令に背いて第2原発に撤退したというのが正しい。 なお、9割撤退の適法性・妥当性については、全員が第一原発に残っている必要はなかっただろうし、もし技術者が第一原発に残っていれば、*3-2の電離放射線障害防止規則第4条に規定されている「事業者は、管理区域内において放射線業務に従事する労働者(以下「放射線業務従事者」という。)の受ける実効線量が5年間につき100mSvを超えず、かつ1年間につき50ミリシーベルトを超えないようにしなければならない(フクシマ事故後、250mSvに緩和された)」に反するため、東電の経営者は技術者全員に撤退を指示したのかもしれない。そのため、菅首相(当時)が、「全員撤退なんてあり得ない」と言って現場に乗り込んだのだと思われるが、この辺の話のあやが、一連の出来事の原因だろう。 また、*1-3の神戸新聞に書かれているとおり、吉田調書は、未曽有の原発被害をもたらした事故に関して、国民が共有すべき公共財であり、事故の解明に重要なものであるため、公開されるのが当然で、これまで非公開とされてきたのがおかしいと考える。 (2)原子力関係者は、常に危険で命のかかった仕事に従事しているという認識と覚悟が必要 *2の西日本新聞記事は、原子力の復活の為には、原発への負のイメージで就職志望が激減したら困ると記載されている。しかし、既に原発を稼働させていながら廃炉や使用済核燃料の最終処分技術は開発途上というのは「優秀な人材」からは程遠い無責任さで、事故後も吉田調書等の突き合わせにより事故原因を究明して解決策を考えるということはなかった。そのような中で、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけることこそ、無責任で希望のないことである。 そして、これまでは高いレベルの人材を維持してきたということだが、それでも嘘と秘密が多く事故原因の究明すら速やかにできない原子力分野に、これからも優秀な人材を投入して人材を腐らせるのは賢い選択ではない。むしろ、今後は、数少ない優秀な人材は過去の分野で殺すのではなく、新しい分野に誘導するのが望ましいと考える。 (3)被曝の許容限度と被曝管理 *3-1より ヘルファンド医師の発言 *3-1で、2011年6月16日にNHKが放送しているように、原発作業員は被曝に直面し、被曝すれば健康を害するので、被曝管理が必要である。また、*3-2の電離放射線障害防止規則第9条では 「事業者は、一日における外部被ばくによる線量が1センチメートル線量当量について1ミリシーベルトを超えるおそれのある労働者については、前条第1項の規定による外部被曝による線量の測定の結果を毎日確認しなければならない」と規定されている。そして、これは、現在、関東の一般住民よりも低い値だ。 <フクイチで原発技術者は撤退したのか> *1-1:http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/303306/ (スポニチ 2014年8月21日) 慰安婦報道に続き朝日Wパンチ…福島原発「撤退誤認」リーク元は政府か 過去の従軍慰安婦報道について事実誤認を認めた朝日新聞が、さらなる窮地に陥った。18日付の産経新聞で、先に朝日新聞が報じた「吉田調書」の内容について明確に否定する内容が報じられたのだ。吉田調書とは、2011年3月11日の東日本大震災で東京電力福島第1原発が危機的状況に陥った際の、吉田昌郎所長(享年58)と政府のやりとりを記した極秘文書だ。朝日新聞は5月20日付の紙面で「所長命令に違反 原発撤退」というタイトルで、震災直後の3月15日に第1原発にいた所員の9割に当たる約650人が、吉田所長の待機命令に背いて10キロ南の福島第2原発に撤退したと報じた。これに産経新聞は調書の一部を独占入手した上で、吉田所長の命令に違反し所員が勝手に現場を離れたことはないと断定。吉田所長から「退避」は指示されたものの、朝日新聞の言う「撤退」はなかったと強調した。8月19日の朝日新聞デジタルは、朝日新聞社が8月18日付で朝日新聞社の名誉と信用を傷つけたとして、産経新聞の東京編集局長と産経新聞に記事を書いたジャーナリストに抗議書を送ったと報じた。朝日新聞といえば、従軍慰安婦の存在を広めながら、最近になって「確認できなかった」と一部の記事が事実誤認であることを認めたばかり。その矢先に吉田調書でも大失態を演じたことから、ネット上では「また朝日か」「いい加減にしろ」と大ブーイングが飛び交っている。事実、慰安婦の事実誤認以降、年間購読している一般購読者の解約が後を絶たないという。同紙関係者は「一般読者だけでなく、企業も『慰安婦の誤報は許せない』と広告出稿を控える事態になっている。社内でも深刻な問題として捉えている」と話す。しかも、今回の産経新聞の記事は、政府がお膳立てしなければ成立しない内容。別の関係者によると「吉田調書は安倍政権下のトップシークレット。それが漏れるということは政府が産経に橋渡ししたとしか思えない。政府が朝日新聞を潰そうとしているのでは」と推測する。慰安婦報道に続き、吉田調書でダブルパンチを食らった朝日に明日はあるのか――。 *1-2: http://www.yomiuri.co.jp/politics/20140829-OYT1T50151.html (読売新聞 2014年8月30日) 原発事故調書、吉田元所長「全面撤退」強く否定 東京電力福島第一原子力発電所事故を巡り、政府の事故調査・検証委員会が吉田昌郎(まさお)元所長(昨年7月死去)から聴取した記録の全容が29日、明らかになった。吉田氏は事故発生4日後の2011年3月15日に、所員が福島第二原発に避難したことを正しい判断だったと証言。東電が「全面撤退」を検討したという事実は強く否定した。政府は9月上旬にも吉田氏の調書を公開する予定だ。吉田氏への聴取は11年7月から11月、事故収束作業の拠点「Jヴィレッジ」と福島第一原発の免震重要棟で計13回、延べ27時間以上にわたり行われた。調書は、質問に吉田氏が答える形で、A4判で約400ページにまとめられた。こうした証言をもとに政府事故調は報告書を作成した。 *1-3:http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201408/0007272516.shtml (神戸新聞 2014/8/26) 吉田調書/「公共財」の公開は当然だ 原発事故で政府の事故調査・検証委員会が関係者から集めた聴取結果書(調書)が、公開されることになった。公開に否定的だった政府が姿勢を一転させた。事故当時、東京電力福島第1原発所長だった故吉田昌郎氏の調書が複数の報道機関に断片的に取り上げられ、偏った内容が独り歩きする懸念が強まったためだとしている。事故調が聴取した関係者は772人に上り、これらの証言によって2012年7月、政府の事故調査報告書が作成された。しかし、各調書が公開されることはなかった。未曽有の被害をもたらした事故に関する証言は国民が共有すべき公共財であり、公開されるべきものだ。非公開としてきた政府の対応はおかしい。吉田氏は事故の最前線で陣頭指揮したキーパーソンである。11年3月11日の地震発生と津波の襲来、全電源喪失による1~3号機の炉心溶融、さらに1、3、4号機の水素爆発、放射能拡散など、経験したことのない原発事故と向き合い、文字通り死を賭して闘った。吉田氏への聴取は11年7月から11月にかけて計13回、30時間近く行われた。官邸にいた東電や原子力安全・保安院(当時)の幹部らは情報収集や、どう対応すべきか判断する能力に欠けていた。そのため、菅直人首相が原発に出向き、吉田所長から直接、状況を聞くに至った。吉田調書には、首相とのやりとりや、本店の命に反して海水の注水を続行させた経緯、福島第1の所員たちに発した退避命令と意図しなかった所員らの行動などについても語られているとみられる。吉田氏の記憶の曖昧な部分も含め利害得失によらない証言を明らかにすることは、真相究明と再発防止に不可欠だ。他の調書と照らし合わせ突き詰めることで、より真相に近づくこともできるだろう。原発事故には依然、未解明な点が多い。高濃度汚染水に阻まれ、原子炉内の様子がはっきりしない。政府事故調が報告書で求めた原子炉建屋内の地震動の影響調査も手つかずになっている。汚染水対策の出口も見通せない。要するに、原因究明も事故の後始末もこれからなのだ。重要なのは、調書の公開を真相究明に役立てる政府の姿勢である。原発の再稼働を急ぐ安倍政権に、その意思があるかないかが問われる。 <原子力産業には負のイメージは当然> *2:http://qbiz.jp/article/44598/1/ (西日本新聞 2014年8月26日) 原子力産業、負のイメージに就職志望が激減 ◆人材不足 福島の原発事故以降、原子力産業には負のイメージがつきまとう。ただ、原発の廃炉や使用済み核燃料の最終処分などの技術開発は途上で、今後も多くの人材が必要。関係者からは「原発が動かない状況が続けば、やりがいや魅力のある仕事だと感じてもらえず、優秀な人材が集まらなくなる」と将来を憂う声が出ている。日本原子力研究開発機構の原子力人材育成センター(茨城県東海村)によると、福島の事故以降、全国の大学で原子力を学ぶ学生は目立って減ってはいないが、就職先として原子力業界を志望する学生は激減。特に、電気や機械など原子力以外の分野を学んだ学生の間で原子力離れが進み、就職セミナーを開いても参加者が集まりにくいという。九州で唯一、原子力のカリキュラムがある九州大学工学部エネルギー科学科。前身の応用原子核工学科時代から、電力会社や電機メーカーに多くの卒業生を送り出してきたが、講義を持つ九大大学院工学研究院の出光一哉教授(原子力工学)は「原子力を学ぶ学生たちがやる気や使命感を持ち続けるのは、簡単ではない」と声を落とす。「今だからこそ原子力を学びたい」と進学してくる学生もいるが、福島の事故以降、一部の原子力燃料メーカーや原子炉点検会社は新卒採用を中止。専門分野を生かせる就職先の減少が、入学希望者の減少につながりかねないと心配する。4月に閣議決定された中長期的なエネルギー政策の指針となる国の「エネルギー基本計画」は、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけながら「依存度は可能な限り低減させる」とあいまいな表現にとどめた。困難な作業となる福島第1原発の廃炉作業に加え、老朽原発の廃炉時代到来に備え「高いレベルの原子力技術・人材の維持が必要」としているが、国が原発の将来像の議論を避けたままでは、人材育成や技術開発に支障が出る可能性がある。 <被曝の許容限度と被曝管理> *3-1:http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/87038.html (NHK 2011年6月16日) 時論公論 「原発作業員 被ばく管理強化を」 ●福島第一原発で働く作業員の被ばくが深刻になってきている。国の被ばく許容限度の250mSvを超える大量の被ばくをした可能性のある作業員は、今週6人増えて8人に。今後さらに増えるおそれもあり、作業員が十分に確保できなければ収束作業に影響がでることが心配。なぜ作業員は大量の被ばくをすることになったのか、東京電力の被ばく管理体制のどこに問題があったのか、今夜の時論公論は作業員の被ばく管理について水野倫之解説委員。 ●東電によりますとこれまでに許容限度の250mSvを超えたか、その可能性が高い作業員は8人、今回の事故が起こる前の原発作業員の上限値の100mSvを超えている作業員は100人に。 ●被ばくには放射線がからだの外から当たる外部被ばくと、体内に取り込んだ放射性物質による内部被ばくがある。内部被ばくの方が影響が続くため危険性は高いとされている。許容限度を超えた作業員はいずれも内部被ばくが大半を占め、最大で678mSvに。8人はいずれも東電の社員で、1号機がメルトダウンした事故当日から数日間、中央制御室などで計測機器の復旧作業を行っていた。 ●ではなぜ大量の被ばくをしてしまったのか。そこには東電の、想定や被ばく管理体制の甘さが。当時原発はすべての電源が失われ、中央制御室も含めて真っ暗に。電源が長期間、喪失することが想定されていなかったため、放射線量や放射性物質の濃度を自動的に測定できなくなり、発電所内がどれだけ汚染されているのか十分に把握されなかった。こうした中でも、原子炉は一刻も早く冷却しなければならず、作業員たちは様々な作業を強いられた。今回のように燃料が溶融する事故では大量の放射性物質が放出され、防護服を着ても放射線は透過してくるため、外部被ばくは避けられない。これに対して放射性物質を取り込む内部被ばくは、規則に従ってマスクやゴーグルをきちんとすればほぼ完全に防ぐことができる。つまり今回の大量被ばくは適正に被ばく管理が行われていれば防げた。しかし作業員は事故直後、マスクを適切にしていなかった可能性があり、その際に放射性のヨウ素などを吸い込んだと見られている。また放射性のヨウ素は、被ばくが予想される前にヨウ素剤を服用することで体内にとどまることを防ぎ、被ばくを減らす効果があるが、今回作業員が服用したのは事故の2日後、1号機が水素爆発を起こした後だった。被ばくの管理者は作業員に対してマスク着用の指示をしたのかどうか、いつ指示をして徹底されていたのかどうか、ヨウ素剤服用のタイミングは適切だったのかどうかなどについて事故調査委員会の場で早く検証して今後にいかしていかなければならない。 ●では600ミリシーベルトをこえる被ばくは人体にどんな影響があるのか。放射線の影響については一度に大量に被ばくした場合に白血球が減少するなどすぐに現れる急性の影響と、がんになる確率が上がるといった将来の影響がある。今回は一度に大量に浴びたわけではなく、これまでのところ作業員に健康上の問題は見つかっていない。内部被ばくで問題になるのは将来の影響。原爆で被爆した人たちの追跡調査から、累積で100ミリシーベルトを超えると、将来がんになる確率が0.5%上がることが分かっており、600mSvでは3%程度上がることになるものと見られる。今、健康に問題がないからといって油断することなく、将来にわたってがん検診など継続的に健康診断をしていくことが重要。その際、作業員個人に任せるのではなく東電が検診の機会を設けたり費用を負担するなど、責任を持って対応していくことを求めたい。 ●しかしそれ以上に今回の問題が深刻なのは、いまだ作業員の被ばくの全体像が把握できておらず、今後さらに多くの被ばく作業員を出しかねない状況にあること。現場での作業にはこれまでにおよそ7800人が携わってきました。東電はこのうち放射性物質が大量に放出された3月に作業していた3726人の内部被ばくの検査を優先して進めているが、事故から3か月たっても全員の検査は終わっていない。いまだに1400人の作業員は正確な被ばく状況が不明なまま作業を続けており、今後の検査結果によっては大量被ばくの作業員が増える恐れも。 ●ではなぜ検査が遅れているのか。内部被ばくの測定にはホールボディカウンターと呼ばれる、体内にとりこまれた放射性物質が出す放射線をセンサーで測定する大がかりな装置が必要。福島第一原発にもともと設置されていた装置は事故で使えなくなり、東電は、福島第2原発に設置されているものと、研究機関から借り受けたあわせて4台で対応。しかし1人の測定に数十分、結果が出るまでに1週間かかることもあって、なかなか進んでいない。 ●ただ測定に手間がかかることはもともとわかっていたこと。しかし東電が、ホールボディカウンターによる検査を本格的に始めたのは4月に入ってから。収束作業を優先させ、作業員の安全管理についての対応が後手にまわってしまったため、いまだに1400人について測定結果が得られていない。東電は厚生労働省の指導を受けて、内部被ばくが100mSvを超えた作業員については現場の作業から外すことにしているほか、マスクの指導を徹底させたので今後、大量被ばくの作業員が大幅に増えることはないとしている。 しかし今週も、作業員がマスクに放射性物質を取り除くフィルターを付けずに作業したため、内部被ばくしたことが明らかに。フィルターがついていないのは外見ですぐにわかるが、被ばく管理を行う社員が装備のチェックをしたのかどうかはっきりしない。 ●今後、大量被ばくの作業員を出さないためにも被ばく管理体制を強化することが重要。そのためにもまずは測定器を増やして被ばく量を把握する必要があるが、装置は大掛かりですぐに配備するのは難しい状況。ただ全国には電力や研究機関や病院などにあわせて100台余りのホールボディカウンターがある。これらの空き時間に福島の作業員の測定をすることが考えられる。ただ測定器を扱える技術者が足らない。放射性物質の特性やグラフの読み取りなどある程度専門的な知識をもった人材を育成する必要。茨城県にある原子力機構ではこうした人材を育成する研修を適宜行っており、政府が主導し、東電の社員などに研修を受けさせて人材を確保する取り組みが求められる。また、福島第一原発では被ばくの管理を行う社員は80人余りしかおらず、作業員全員の装備をチェックしたり、すべての作業現場に同行するのが難しい状況。東電はほかの電力会社の被ばく管理者に応援を依頼するなどして、体制を充実させていくことが求められる。 ●福島第一原発では現在も1日およそ2400人の作業員が収束に向けた作業に当たっている。過酷な状況が続けば、作業員の確保が難しくなり、来年1月までに事故を収束させるという工程にも影響が出かねない。作業員の安全を優先した収束作業を求めたい。 *3-2:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S47/S47F04101000041.html 電離放射線障害防止規則 (昭和四十七年九月三十日労働省令第四十一号) 最終改正:平成二五年七月八日厚生労働省令第八九号 労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)及び労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)の規定に基づき、並びに同法を実施するため、電離放射線障害防止規則を次のように定める。 第一章 総則(第一条・第二条) 第二章 管理区域並びに線量の限度及び測定(第三条―第九条) 第三章 外部放射線の防護(第十条―第二十一条) 第四章 汚染の防止 第一節 放射性物質(事故由来放射性物質を除く。)に係る汚染の防止(第二十二条―第四十一条の二) 第二節 事故由来放射性物質に係る汚染の防止(第四十一条の三―第四十一条の十) 第四章の二 特別な作業の管理(第四十一条の十一―第四十一条の十四) 第五章 緊急措置(第四十二条―第四十五条) 第六章 エツクス線作業主任者及びガンマ線透過写真撮影作業主任者(第四十六条―第五十二条の四の五) 第六章の二 特別の教育(第五十二条の五―第五十二条の八) 第七章 作業環境測定(第五十三条―第五十五条) 第八章 健康診断(第五十六条―第五十九条) 第九章 指定緊急作業従事者等に係る記録等の提出(第五十九条の二) 第十章 雑則(第六十条―第六十二条) 附則 第一章 総則 (放射線障害防止の基本原則) 第一条 事業者は、労働者が電離放射線を受けることをできるだけ少なくするように努めなければならない。 (定義等) 第二条 この省令で「電離放射線」(以下「放射線」という。)とは、次の粒子線又は電磁波をいう。 一 アルフア線、重陽子線及び陽子線 二 ベータ線及び電子線 三 中性子線 四 ガンマ線及びエツクス線 2 この省令で「放射性物質」とは、放射線を放出する同位元素(以下「放射性同位元素」という。)、その化合物及びこれらの含有物で、次の各号のいずれかに該当するものをいう。 一 放射性同位元素が一種類であり、かつ、別表第一の第一欄に掲げるものであるものにあつては、同欄に掲げる放射性同位元素の種類に応じ、同表の第二欄に掲げる数量及び第三欄に掲げる濃度を超えるもの 二 放射性同位元素が一種類であり、かつ、別表第二の第一欄に掲げるものであるものにあつては、同欄に掲げる放射性同位元素の種類に応じ、同表の第二欄に掲げる数量を超えるもの。ただし、その濃度が七十四ベクレル毎グラム以下の固体のもの及び密封されたものでその数量が三・七メガベクレル以下のものを除く。 三 放射性同位元素が二種類以上であり、かつ、そのいずれもが別表第一の第一欄に掲げるものであるものにあつては、次のいずれにも該当するもの イ 別表第一の第一欄に掲げる放射性同位元素のそれぞれの数量の同表の第二欄に掲げる数量に対する割合の和が一を超えるもの ロ 別表第一の第一欄に掲げる放射性同位元素のそれぞれの濃度の同表の第三欄に掲げる濃度に対する割合の和が一を超えるもの 四 放射性同位元素が二種類以上であり、かつ、前号に掲げるもの以外のものにあつては、別表第一の第一欄又は別表第二の第一欄に掲げる放射性同位元素のそれぞれの数量の別表第一の第二欄又は別表第二の第二欄に掲げる数量に対する割合の和が一を超えるもの。ただし、その濃度が七十四ベクレル毎グラム以下の固体のもの及び密封されたものでその数量が三・七メガベクレル以下のものを除く。 3 この省令で「放射線業務」とは、労働安全衛生法施行令 (以下「令」という。)別表第二に掲げる業務(第五十九条の二に規定する放射線業務以外のものにあっては、東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則 (平成二十三年厚生労働省令第百五十二号。以下「除染則」という。)第二条第七項第一号 に規定する土壌等の除染等の業務、同項第二号 に規定する廃棄物収集等業務及び同項第三号 に規定する特定汚染土壌等取扱業務を除く。)をいう。 4 令別表第二第四号の厚生労働省令で定める放射性物質は、第二項に規定する放射性物質とする。 第二章 管理区域並びに線量の限度及び測定 (管理区域の明示等) 第三条 放射線業務を行う事業の事業者(第六十二条を除き、以下「事業者」という。)は、次の各号のいずれかに該当する区域(以下「管理区域」という。)を標識によつて明示しなければならない。 一 外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量との合計が三月間につき一・三ミリシーベルトを超えるおそれのある区域 二 放射性物質の表面密度が別表第三に掲げる限度の十分の一を超えるおそれのある区域 2 前項第一号に規定する外部放射線による実効線量の算定は、一センチメートル線量当量によつて行うものとする。 3 第一項第一号に規定する空気中の放射性物質による実効線量の算定は、一・三ミリシーベルトに一週間の労働時間中における空気中の放射性物質の濃度の平均(一週間における労働時間が四十時間を超え、又は四十時間に満たないときは、一週間の労働時間中における空気中の放射性物質の濃度の平均に当該労働時間を四十時間で除して得た値を乗じて得た値。以下「週平均濃度」という。)の三月間における平均の厚生労働大臣が定める限度の十分の一に対する割合を乗じて行うものとする。 4 事業者は、必要のある者以外の者を管理区域に立ち入らせてはならない。 5 事業者は、管理区域内の労働者の見やすい場所に、第八条第三項の放射線測定器の装着に関する注意事項、放射性物質の取扱い上の注意事項、事故が発生した場合の応急の措置等放射線による労働者の健康障害の防止に必要な事項を掲示しなければならない。 (施設等における線量の限度) 第三条の二 事業者は、第十五条第一項の放射線装置室、第二十二条第二項の放射性物質取扱作業室、第三十三条第一項(第四十一条の九において準用する場合を含む。)の貯蔵施設、第三十六条第一項の保管廃棄施設、第四十一条の四第二項の事故由来廃棄物等取扱施設又は第四十一条の八第一項の埋立施設について、遮蔽壁、防護つい立てその他の遮蔽物を設け、又は局所排気装置若しくは放射性物質のガス、蒸気若しくは粉じんの発散源を密閉する設備を設ける等により、労働者が常時立ち入る場所における外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量との合計を一週間につき一ミリシーベルト以下にしなければならない。 2 前条第二項の規定は、前項に規定する外部放射線による実効線量の算定について準用する。 3 第一項に規定する空気中の放射性物質による実効線量の算定は、一ミリシーベルトに週平均濃度の前条第三項の厚生労働大臣が定める限度に対する割合を乗じて行うものとする。 (放射線業務従事者の被ばく限度) 第四条 事業者は、管理区域内において放射線業務に従事する労働者(以下「放射線業務従事者」という。)の受ける実効線量が五年間につき百ミリシーベルトを超えず、かつ、一年間につき五十ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。 2 事業者は、前項の規定にかかわらず、女性の放射線業務従事者(妊娠する可能性がないと診断されたもの及び第六条に規定するものを除く。)の受ける実効線量については、三月間につき五ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。 第五条 事業者は、放射線業務従事者の受ける等価線量が、眼の水晶体に受けるものについては一年間につき百五十ミリシーベルト、皮膚に受けるものについては一年間につき五百ミリシーベルトを、それぞれ超えないようにしなければならない。 第六条 事業者は、妊娠と診断された女性の放射線業務従事者の受ける線量が、妊娠と診断されたときから出産までの間(以下「妊娠中」という。)につき次の各号に掲げる線量の区分に応じて、それぞれ当該各号に定める値を超えないようにしなければならない。 一 内部被ばくによる実効線量については、一ミリシーベルト 二 腹部表面に受ける等価線量については、二ミリシーベルト (緊急作業時における被ばく限度) 第七条 事業者は、第四十二条第一項各号のいずれかに該当する事故が発生し、同項の区域が生じた場合における放射線による労働者の健康障害を防止するための応急の作業(以下「緊急作業」という。)を行うときは、当該緊急作業に従事する男性及び妊娠する可能性がないと診断された女性の放射線業務従事者については、第四条第一項及び第五条の規定にかかわらず、これらの規定に規定する限度を超えて放射線を受けさせることができる。 2 前項の場合において、当該緊急作業に従事する間に受ける線量は、次の各号に掲げる線量の区分に応じて、それぞれ当該各号に定める値を超えないようにしなければならない。 一 実効線量については、百ミリシーベルト 二 眼の水晶体に受ける等価線量については、三百ミリシーベルト 三 皮膚に受ける等価線量については、一シーベルト 3 前項の規定は、放射線業務従事者以外の男性及び妊娠する可能性がないと診断された女性の労働者で、緊急作業に従事するものについて準用する。 (線量の測定) 第八条 事業者は、放射線業務従事者、緊急作業に従事する労働者及び管理区域に一時的に立ち入る労働者の管理区域内において受ける外部被ばくによる線量及び内部被ばくによる線量を測定しなければならない。 2 前項の規定による外部被ばくによる線量の測定は、一センチメートル線量当量及び七十マイクロメートル線量当量(中性子線については、一センチメートル線量当量)について行うものとする。ただし、次項の規定により、同項第三号に掲げる部位に放射線測定器を装着させて行う測定は、七十マイクロメートル線量当量について行うものとする。 3 第一項の規定による外部被ばくによる線量の測定は、次の各号に掲げる部位に放射線測定器を装着させて行わなければならない。ただし、放射線測定器を用いてこれを測定することが著しく困難な場合には、放射線測定器によつて測定した線量当量率を用いて算出し、これが著しく困難な場合には、計算によつてその値を求めることができる。 一 男性又は妊娠する可能性がないと診断された女性にあつては胸部、その他の女性にあつては腹部 二 頭・頸部、胸・上腕部及び腹・大腿部のうち、最も多く放射線にさらされるおそれのある部位(これらの部位のうち最も多く放射線にさらされるおそれのある部位が男性又は妊娠する可能性がないと診断された女性にあつては胸部・上腕部、その他の女性にあつては腹・大腿部である場合を除く。) 三 最も多く放射線にさらされるおそれのある部位が頭・頸部、胸・上腕部及び腹・大腿部以外の部位であるときは、当該最も多く放射線にさらされるおそれのある部位(中性子線の場合を除く。) 4 第一項の規定による内部被ばくによる線量の測定は、管理区域のうち放射性物質を吸入摂取し、又は経口摂取するおそれのある場所に立ち入る者について、三月以内(一月間に受ける実効線量が一・七ミリシーベルトを超えるおそれのある女性(妊娠する可能性がないと診断されたものを除く。)及び妊娠中の女性にあつては一月以内)ごとに一回行うものとする。ただし、その者が誤つて放射性物質を吸入摂取し、又は経口摂取したときは、当該吸入摂取又は経口摂取の後速やかに行うものとする。 5 第一項の規定による内部被ばくによる線量の測定に当たつては、厚生労働大臣が定める方法によつてその値を求めるものとする。 6 放射線業務従事者、緊急作業に従事する労働者及び管理区域に一時的に立ち入る労働者は、第三項ただし書の場合を除き、管理区域内において、放射線測定器を装着しなければならない。 (線量の測定結果の確認、記録等) 第九条 事業者は、一日における外部被ばくによる線量が一センチメートル線量当量について一ミリシーベルトを超えるおそれのある労働者については、前条第一項の規定による外部被ばくによる線量の測定の結果を毎日確認しなければならない。 2 事業者は、前条第三項又は第五項の規定による測定又は計算の結果に基づき、次の各号に掲げる放射線業務従事者の線量を、遅滞なく、厚生労働大臣が定める方法により算定し、これを記録し、これを三十年間保存しなければならない。ただし、当該記録を五年間保存した後において、厚生労働大臣が指定する機関に引き渡すときは、この限りでない。 一 男性又は妊娠する可能性がないと診断された女性の実効線量の三月ごと、一年ごと及び五年ごとの合計(五年間において、実効線量が一年間につき二十ミリシーベルトを超えたことのない者にあつては、三月ごと及び一年ごとの合計) 二 女性(妊娠する可能性がないと診断されたものを除く。)の実効線量の一月ごと、三月ごと及び一年ごとの合計(一月間に受ける実効線量が一・七ミリシーベルトを超えるおそれのないものにあつては、三月ごと及び一年ごとの合計) 三 人体の組織別の等価線量の三月ごと及び一年ごとの合計 四 妊娠中の女性の内部被ばくによる実効線量及び腹部表面に受ける等価線量の一月ごと及び妊娠中の合計 3 事業者は、前項の規定による記録に基づき、放射線業務従事者に同項各号に掲げる線量を、遅滞なく、知らせなければならない。 第三章 外部放射線の防護 (照射筒等) 第十条 事業者は、エックス線装置(エックス線を発生させる装置で、令別表第二第二号の装置以外のものをいう。以下同じ。)のうち令第十三条第三項第二十二号 に掲げるエックス線装置(以下「特定エックス線装置」という。)を使用するときは、利用線錐の放射角がその使用の目的を達するために必要な角度を超えないようにするための照射筒又はしぼりを用いなければならない。ただし、照射筒又はしぼりを用いることにより特定エックス線装置の使用の目的が妨げられる場合は、この限りでない。 2 事業者は、前項の照射筒及びしぼりについては、厚生労働大臣が定める規格を具備するものとしなければならない。 (ろ過板) 第十一条 事業者は、特定エツクス線装置を使用するときは、ろ過板を用いなければならない。ただし、作業の性質上軟線を利用しなければならない場合又は労働者が軟線を受けるおそれがない場合には、この限りでない。 (間接撮影時の措置) 第十二条 事業者は、特定エックス線装置を用いて間接撮影を行うときは、次の措置を講じなければならない。ただし、エックス線の照射中に間接撮影の作業に従事する労働者の身体の全部又は一部がその内部に入ることがないように遮へいされた構造の特定エックス線装置を使用する場合は、この限りでない。 一 利用するエックス線管焦点受像器間距離において、エックス線照射野が受像面を超えないようにすること。 二 胸部集検用間接撮影エックス線装置及び医療用以外(以下「工業用等」という。)の特定エックス線装置については、受像器の一次防護遮へい体は、装置の接触可能表面から十センチメートルの距離における自由空気中の空気カーマ(次号において「空気カーマ」という。)が一回の照射につき一・〇マイクログレイ以下になるようにすること。 三 胸部集検用間接撮影エックス線装置及び工業用等の特定エックス線装置については、被照射体の周囲には、箱状の遮へい物を設け、その遮へい物から十センチメートルの距離における空気カーマが一回の照射につき一・〇マイクログレイ以下になるようにすること。 2 前項の規定にかかわらず、事業者は、次の各号に掲げる場合においては、それぞれ当該各号に掲げる措置を講ずることを要しない。 一 受像面が円形でエックス線照射野が矩形の場合において、利用するエックス線管焦点受像器間距離におけるエックス線照射野が受像面に外接する大きさを超えないとき。 前項第一号の措置 二 医療用の特定エックス線装置について、照射方向に対し垂直な受像面上で直交する二本の直線を想定した場合において、それぞれの直線におけるエックス線照射野の縁との交点及び受像面の縁との交点の間の距離(以下この号及び次条第二項第三号において「交点間距離」という。)の和がそれぞれ利用するエックス線管焦点受像器間距離の三パーセントを超えず、かつ、これらの交点間距離の総和が利用するエックス線管焦点受像器間距離の四パーセントを超えないとき。 前項第一号の措置 三 第十五条第一項ただし書の規定により、特定エックス線装置を放射線装置室以外の場所で使用する場合 前項第二号及び第三号の措置 四 間接撮影の作業に従事する労働者が、照射時において、第三条の二第一項に規定する場所に容易に退避できる場合 前項第三号の措置 (透視時の措置) 第十三条 事業者は、特定エックス線装置を用いて透視を行うときは、次の措置を講じなければならない。ただし、エックス線の照射中に透視の作業に従事する労働者の身体の全部又は一部がその内部に入ることがないように遮へいされた構造の特定エックス線装置を使用する場合は、この限りでない。 一 透視の作業に従事する労働者が、作業位置で、エックス線の発生を止め、又はこれを遮へいすることができる設備を設けること。 二 定格管電流の二倍以上の電流がエックス線管に通じたときに、直ちに、エックス線管回路を開放位にする自動装置を設けること。 三 利用するエックス線管焦点受像器間距離において、エックス線照射野が受像面を超えないようにすること。 四 利用線錐中の受像器を通過したエックス線の空気中の空気カーマ率(以下「空気カーマ率」という。)が、医療用の特定エックス線装置については利用線錐中の受像器の接触可能表面から十センチメートルの距離において一五〇マイクログレイ毎時以下、工業用等の特定エックス線装置についてはエックス線管の焦点から一メートルの距離において一七・四マイクログレイ毎時以下になるようにすること。 五 透視時の最大受像面を三・〇センチメートル超える部分を通過したエックス線の空気カーマ率が、医療用の特定エックス線装置については当該部分の接触可能表面から十センチメートルの距離において一五〇マイクログレイ毎時以下、工業用等の特定エックス線装置についてはエックス線管の焦点から一メートルの距離において一七・四マイクログレイ毎時以下になるようにすること。 六 被照射体の周囲には、利用線錐以外のエックス線を有効に遮へいするための適当な設備を備えること。 2 前項の規定にかかわらず、事業者は、次の各号に掲げる場合においては、それぞれ当該各号に掲げる措置を講ずることを要しない。 一 医療用の特定エックス線装置について、透視時間を積算することができ、かつ、透視中において、一定時間が経過した場合に警告音等を発することができるタイマーを設ける場合 前項第二号の措置 二 受像面が円形でエックス線照射野が矩形の場合において、利用するエックス線管焦点受像器間距離におけるエックス線照射野が受像面に外接する大きさを超えないとき。 前項第三号の措置 三 医療用の特定エックス線装置について、照射方向に対し垂直な受像面上で直交する二本の直線を想定した場合において、それぞれの直線における交点間距離の和がそれぞれ利用するエックス線管焦点受像器間距離の三パーセントを超えず、かつ、これらの交点間距離の総和が利用するエックス線管焦点受像器間距離の四パーセントを超えないとき。 前項第三号の措置 四 第十五条第一項ただし書の規定により、特定エックス線装置を放射線装置室以外の場所で使用する場合 前項第四号から第六号までの措置 (標識の掲示) 第十四条 事業者は、次の表の上欄に掲げる装置又は機器については、その区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる事項を明記した標識を当該装置若しくは機器又はそれらの付近の見やすい場所に掲げなければならない。 装置又は機器 掲示事項 サイクロトロン、ベータトロンその他の荷電粒子を加速する装置(以下「荷電粒子を加速する装置」という。) 装置の種類、放射線の種類及び最大エネルギー 放射性物質を装備している機器(次の項に掲げるものを除く。) 機器の種類、装備している放射性物質に含まれた放射性同位元素の種類及び数量(単位ベクレル)、当該放射性物質を装備した年月日並びに所有者の氏名又は名称 放射性物質を装備している機器のうち放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和三十二年法律第百六十七号)第十二条の五第二項に規定する表示付認証機器又は同条第三項に規定する表示付特定認証機器(これらの機器に使用する放射線源を交換し、又は洗浄するものを除く。) 機器の種類並びに装備している放射性物質に含まれた放射性同位元素の種類及び数量(単位ベクレル) (放射線装置室) 第十五条 事業者は、次の装置又は機器(以下「放射線装置」という。)を設置するときは、専用の室(以下「放射線装置室」という。)を設け、その室内に設置しなければならない。ただし、その外側における外部放射線による一センチメートル線量当量率が二十マイクロシーベルト毎時を超えないように遮へいされた構造の放射線装置を設置する場合又は放射線装置を随時移動させて使用しなければならない場合その他放射線装置を放射線装置室内に設置することが、著しく、使用の目的を妨げ、若しくは作業の性質上困難である場合には、この限りでない。 一 エックス線装置 二 荷電粒子を加速する装置 三 エックス線管若しくはケノトロンのガス抜き又はエックス線の発生を伴うこれらの検査を行う装置 四 放射性物質を装備している機器 2 事業者は、放射線装置室の入口に、その旨を明記した標識を掲げなければならない。 3 第三条第四項の規定は、放射線装置室について準用する。 第十六条 削除 (警報装置等) 第十七条 事業者は、次の場合には、その旨を関係者に周知させる措置を講じなければならない。この場合において、その周知の方法は、その放射線装置を放射線装置室以外の場所で使用するとき、又は管電圧百五十キロボルト以下のエックス線装置若しくは数量が四百ギガベクレル未満の放射性物質を装備している機器を使用するときを除き、自動警報装置によらなければならない。 一 エックス線装置又は荷電粒子を加速する装置に電力が供給されている場合 二 エックス線管若しくはケノトロンのガス抜き又はエックス線の発生を伴うこれらの検査を行う装置に電力が供給されている場合 三 放射性物質を装備している機器で照射している場合 2 事業者は、荷電粒子を加速する装置又は百テラベクレル以上の放射性物質を装備している機器を使用する放射線装置室の出入口で人が通常出入りするものには、インターロックを設けなければならない。 (立入禁止) 第十八条 事業者は、第十五条第一項ただし書の規定により、工業用等のエックス線装置又は放射性物質を装備している機器を放射線装置室以外の場所で使用するときは、そのエックス線管の焦点又は放射線源及び被照射体から五メートル以内の場所(外部放射線による実効線量が一週間につき一ミリシーベルト以下の場所を除く。)に、労働者を立ち入らせてはならない。ただし、放射性物質を装備している機器の線源容器内に放射線源が確実に収納され、かつ、シャッターを有する線源容器にあつては当該シャッターが閉鎖されている場合において、線源容器から放射線源を取り出すための準備作業、線源容器の点検作業その他必要な作業を行うために立ち入るときは、この限りでない。 2 前項の規定は、事業者が、撮影に使用する医療用のエックス線装置を放射線装置室以外の場所で使用する場合について準用する。この場合において、同項中「五メートル」とあるのは、「二メートル」と読み替えるものとする。 3 第三条第二項の規定は、第一項(前項において準用する場合を含む。次項において同じ。)に規定する外部放射線による実効線量の算定について準用する。 4 事業者は、第一項の規定により労働者が立ち入ることを禁止されている場所を標識により明示しなければならない。 (透過写真の撮影時の措置等) 第十八条の二 事業者は、第十五条第一項ただし書の規定により、特定エックス線装置又は透過写真撮影用ガンマ線照射装置(ガンマ線照射装置で、透過写真の撮影に用いられるものをいう。以下同じ。)を放射線装置室以外の場所で使用するとき(労働者の被ばくのおそれがないときを除く。)は、放射線を、労働者が立ち入らない方向に照射し、又は遮へいする措置を講じなければならない。 (放射線源の取出し等) 第十八条の三 事業者は、透過写真撮影用ガンマ線照射装置を使用するときは、放射線源送出し装置(操作器(ワイヤレリーズを繰り出し、及び巻き取る装置をいう。)、操作管(ワイヤレリーズを誘導する管をいう。)及び伝送管(放射線源及びワイヤレリーズを誘導する管をいう。以下同じ。)により構成され、放射線源を線源容器から繰り出し、及び線源容器に収納する装置をいう。以下同じ。)を用いなければ線源容器から放射線源を取り出してはならない。 2 事業者は、前項の規定にかかわらず、放射線装置室内で透過写真撮影用ガンマ線照射装置を使用するときは、放射線源送出し装置以外の遠隔操作装置を用いて線源容器から放射線源を取り出すことができる。 第十八条の四 事業者は、放射線源送出し装置を有する透過写真撮影用ガンマ線照射装置を使用するときは、次に定めるところによらなければならない。 一 伝送管の移動は、放射線源を線源容器に確実に収納し、かつ、シヤツターを有する線源容器にあつては当該シヤツターを閉鎖した後行うこと。 二 利用線錐の放射角が当該装置の使用の目的を達するために必要な角度を超えないようにし、かつ、利用線錐以外のガンマ線の空気カーマ率をできるだけ小さくするためのコリメーター等を用いること。ただし、コリメーター等を用いることにより当該装置の使用の目的が妨げられる場合は、この限りでない。 (定期自主検査) 第十八条の五 事業者は、透過写真撮影用ガンマ線照射装置については、一月以内ごとに一回、定期に、次に掲げる事項について自主検査を行わなければならない。ただし、一月を超える期間使用しない当該装置の当該使用しない期間においては、この限りでない。 一 線源容器のシヤツター及びこれを開閉するための装置の異常の有無 二 放射線源のホルダーの固定装置の異常の有無 三 放射線源送出し装置を有するものにあつては、当該装置と線源容器との接続部の異常の有無 四 放射線源送出し装置又は放射線源の位置を調整する遠隔操作装置を有するものにあつては、当該装置の異常の有無 2 事業者は、前項ただし書の装置については、その使用を再び開始する際に、同項各号に掲げる事項について自主検査を行わなければならない。 第十八条の六 事業者は、透過写真撮影用ガンマ線照射装置については、六月以内ごとに一回、定期に、線源容器のしやへい能力の異常の有無について自主検査を行わなければならない。ただし、六月を超える期間使用しない当該装置の当該使用しない期間においては、この限りでない。 2 事業者は、前項ただし書の装置については、その使用を再び開始する際に、線源容器のしやへい能力の異常の有無について自主検査を行わなければならない。 (記録) 第十八条の七 事業者は、前二条の自主検査を行つたときは、次の事項を記録し、これを三年間保存しなければならない。 一 検査年月日 二 検査方法 三 検査箇所 四 検査の結果 五 検査を実施した者の氏名 六 検査の結果に基づいて補修等の措置を講じたときは、その内容 (点検) 第十八条の八 事業者は、透過写真撮影用ガンマ線照射装置を初めて使用するとき、当該装置を分解して改造若しくは修理を行つたとき、又は当該装置に使用する放射線源を交換したときは、第十八条の五第一項各号に掲げる事項及び線源容器のしやへい能力の異常の有無について点検を行わなければならない。 (補修等) 第十八条の九 事業者は、第十八条の五若しくは第十八条の六の定期自主検査又は前条の点検を行つた場合において、異常を認めたときは、直ちに補修その他の措置を講じなければならない。 (放射線源の収納) 第十八条の十 事業者は、第四十二条第一項第四号の事故が発生した場合において、放射線源を線源容器その他の容器に収納する作業に労働者を従事させるときは、しやへい物を設ける等の措置を講じ、かつ、鉗子等を使用させることにより当該作業に従事する労働者と放射線源との間に適当な距離を設けなければならない。 (放射線源の点検等) 第十九条 事業者は、放射性物質を装備している機器を移動させて使用したときは、使用後直ちに及びその日の作業の終了後当該機器を格納する際に、その放射線源が紛失し、漏れ、又はこぼれていないかどうか、線源容器を有する当該機器にあつては放射線源が確実に当該容器に収納されているかどうか及びシャッターを有する線源容器にあつては当該シャッターが確実に閉鎖されているかどうかを放射線測定器を用いて点検しなければならない。 2 前項の点検により放射線源が紛失し、漏れ、若しくはこぼれていること、放射線源が確実に線源容器に収納されていないこと又は線源容器のシヤツターが確実に閉鎖されていないことが判明した場合には、放射線源の探査、当該容器の修理その他放射線による労働者の健康障害の防止に必要な措置を講じなければならない。 第二十条 削除 第二十一条 削除 第四章 汚染の防止 第一節 放射性物質(事故由来放射性物質を除く。)に係る汚染の防止 (放射性物質取扱作業室) 第二十二条 事業者(第四十一条の三に規定する処分事業者を除く。以下この節において同じ。)は、密封されていない放射性物質を取り扱う作業を行うときは、専用の作業室を設け、その室内で行わなければならない。ただし、漏水の調査、昆虫による疫学的調査、原料物質の生産工程中における移動状況の調査等に放射性物質を広範囲に分散移動させて使用し、かつ、その使用が一時的である場合及び核原料物質(原子力基本法 (昭和三十年法律第百八十六号)第三条第三号 に規定する核原料物質をいう。以下同じ。)を掘採する場合には、この限りでない。 2 第三条第四項及び第十五条第二項の規定は、放射性物質取扱作業室(前項の作業室及び同項本文の作業に従事中の者の専用の廊下等をいう。以下同じ。)について準用する。 (放射性物質取扱作業室の構造等) 第二十三条 事業者は、放射性物質取扱作業室の内部の壁、床その他汚染のおそれがある部分については、次に定めるところに適合するものとしなければならない。 一 気体又は液体が浸透しにくく、かつ、腐食しにくい材料でつくられていること。 二 表面が平滑に仕上げられていること。 三 突起、くぼみ及びすきまの少ない構造であること。 (空気中の放射性物質の濃度) 第二十四条 事業者は、核原料物質を坑内において掘採する作業を行うときは、その坑内の週平均濃度の三月間における平均を第三条第三項の厚生労働大臣が定める限度以下にしなければならない。 第二十五条 事業者は、放射性物質取扱作業室及び核原料物質を掘採する坑内を除く事業場内の週平均濃度の三月間における平均を第三条第三項の厚生労働大臣が定める限度の十分の一以下にしなければならない。 (飛来防止設備等) 第二十六条 事業者は、放射性物質を取り扱うことにより、放射性物質の飛沫又は粉末が飛来するおそれのあるときは、労働者とその放射性物質との間に、その飛沫又は粉末が労働者の身体又は衣服、履物、作業衣、保護具等身体に装着している物(以下「装具」という。)に付着しないようにするため板、幕等の設備を設けなければならない。ただし、その設備を設けることが作業の性質上著しく困難な場合において、当該作業に従事する労働者に第三十九条第一項に規定する保護具を使用させるときは、この限りでない。 (放射性物質取扱用具) 第二十七条 事業者は、放射性物質の取扱いに用いる鉗子、ピンセツト等の用具にその旨を表示し、これらを他の用途に用いてはならない。 2 事業者は、前項の用具を使用しないときは、汚染を容易に除去することができる構造及び材料の用具掛け、置台等を用いてこれを保管しなければならない。 (放射性物質がこぼれたとき等の措置) 第二十八条 事業者は、粉状又は液状の放射性物質がこぼれる等により汚染が生じたときは、直ちに、その汚染が拡がらない措置を講じ、かつ、汚染のおそれがある区域を標識によつて明示したうえ、別表第三に掲げる限度(その汚染が放射性物質取扱作業室以外の場所で生じたときは、別表第三に掲げる限度の十分の一)以下になるまでその汚染を除去しなければならない。 (放射性物質取扱作業室内の汚染検査等) 第二十九条 事業者は、放射性物質取扱作業室内の天井、床、壁、設備等を一月を超えない期間ごとに検査し、これらの物が別表第三に掲げる限度を超えて汚染されていると認められるときは、その限度以下になるまで汚染を除去しなければならない。 2 事業者は、前項の物の清掃を行なうときは、じんあいの飛散しない方法で行なわなければならない。 (汚染除去用具等の汚染検査) 第三十条 事業者は、第二十八条若しくは前条第一項の規定による汚染の除去又は同項の物の清掃を行つたときは、その都度、汚染の除去又は清掃に用いた用具を検査し、その用具が別表第三に掲げる限度を超えて汚染されていると認められるときは、その限度以下になるまでは、労働者に使用させてはならない。 2 事業者は、前項の用具を保管する場所に、その旨を明記した標識を掲げなければならない。 3 第二十七条第二項の規定は、第一項の用具について準用する。 (退去者の汚染検査) 第三十一条 事業者は、管理区域(労働者の身体若しくは装具又は物品が別表第三に掲げる限度の十分の一を超えて汚染されるおそれのあるものに限る。以下この条及び次条において同じ。)の出口に汚染検査場所を設け、管理区域において作業に従事させた労働者がその区域から退去するときは、その身体及び装具の汚染の状態を検査しなければならない。 2 事業者は、前項の検査により労働者の身体又は装具が別表第三に掲げる限度の十分の一を超えて汚染されていると認められるときは、前項の汚染検査場所において次の措置を講じなければ、その労働者を管理区域から退去させてはならない。 一 身体が汚染されているときは、その汚染が別表第三に掲げる限度の十分の一以下になるように洗身等をさせること。 二 装具が汚染されているときは、その装具を脱がせ、又は取り外させること。 3 労働者は、前項の規定による事業者の指示に従い、洗身等をし、又は装具を脱ぎ、若しくは取りはずさなければならない。 (持出し物品の汚染検査) 第三十二条 事業者は、管理区域から持ち出す物品については、持出しの際に、前条第一項の汚染検査場所において、その汚染の状態を検査しなければならない。 2 事業者及び労働者は、前項の検査により、当該物品が別表第三に掲げる限度の十分の一を超えて汚染されていると認められるときは、その物品を持ち出してはならない。ただし、第三十七条第一項本文の容器を用い、又は同項ただし書の措置を講じて、汚染を除去するための施設、放射性物質取扱作業室、貯蔵施設、廃棄のための施設又は他の管理区域まで運搬するときは、この限りでない。 (貯蔵施設) 第三十三条 事業者は、放射性物質を貯蔵するときは、外部と区画された構造であり、かつ、扉、蓋等外部に通ずる部分に、鍵その他の閉鎖のための設備又は器具を設けた貯蔵施設において行わなければならない。 2 事業者は、貯蔵施設の外側の見やすい場所に、その旨を明記した標識を掲げなければならない。 3 第三条第四項の規定は、第一項の貯蔵施設について準用する。 (排気又は排液の施設) 第三十四条 事業者は、放射性物質取扱作業室からの排気又は排液を導き、ためておき、又は浄化するときは、排気又は排液がもれるおそれのない構造であり、かつ、腐食し、及び排液が浸透しにくい材料を用いた施設において行なわなければならない。 2 前条第二項の規定は、前項の施設について準用する。 (焼却炉) 第三十五条 事業者は、放射性物質又は別表第三に掲げる限度の十分の一を超えて汚染されていると認められる物(以下「汚染物」という。)を焼却するときは、気体が漏れるおそれがなく、かつ、灰が飛散するおそれのない構造の焼却炉において行わなければならない。 2 第三十三条第二項の規定は、前項の焼却炉について準用する。 (保管廃棄施設) 第三十六条 事業者は、放射性物質又は汚染物を保管廃棄するときは、外部と区画された構造であり、かつ、とびら、ふた等外部に通ずる部分に、かぎその他の閉鎖のための設備又は器具を設けた保管廃棄施設において行なわなければならない。 2 第三条第四項及び第三十三条第二項の規定は、前項の保管廃棄施設について準用する。 (容器) 第三十七条 事業者は、放射性物質を保管し、若しくは貯蔵し、又は放射性物質若しくは汚染物を運搬し、保管廃棄し、若しくは廃棄のために一時ためておくときは、容器を用いなければならない。ただし、容器に入れることが著しく困難なものについて、外部放射線を遮蔽するため、若しくは汚染の広がりを防止するための有効な措置を講じたとき、又は放射性物質取扱作業室内において運搬するときは、この限りでない。 (以下略) PS(2014.9.10追加):*4のように、原子力規制委員会が、「安全とは言わない」としながら、「安全対策が新規制基準を満たしているとの審査書を正式に了承した」→「再稼働に向けた安全審査の合格第1号となる」というのは論理的ではなく、何が何でも再稼働しようとする姿勢だ。また、「稼働すれば西日本の電力事情は改善しそうだ」とも書かれているが、九州電力管内は原発なしで既に2夏越しており、九州は自然エネルギーが豊富な上に、夏の方がエネルギーを使うため、原発は不要である。 *4:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGG10003_Q4A910C1MM0000/ (日経新聞 2014/9/10) 川内原発、冬にも再稼働 規制委が審査書を了承 原子力規制委員会は10日、九州電力川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県)の安全対策が新規制基準を満たしているとの審査書を正式に了承した。再稼働に向けた安全審査の合格第1号となる。一般からの意見募集では火山の噴火を心配する意見などが寄せられたが、可能性は「十分小さい」などとして結論を変えなかった。政府は地元自治体の同意を得やすくするための支援を進めており、今冬にも再稼働する見通しだ。規制委は申請を受け昨年7月に川内原発の審査を始め、九電が示した地震・津波対策や重大事故への対応策などを検討してきた。九電が過去の地震を考慮して川内原発の最大の揺れは620ガル(ガルは加速度の単位)、最大の津波の高さは6メートルと見積もったことについて、規制委はいずれも妥当と判断した。炉心が損傷するような重大事故への対策も十分だとし、審査書で新基準に「適合している」と結論づけた。残る手続きとして、九電は川内原発の改造工事の認可を規制委から取り付け、規制委による現場の検査も受けなければならない。すべての事務的な手続きを終えるには数カ月かかるとみられる。7~8月にかけて実施した国民からの意見募集では「火砕流が到達する可能性がある」などの意見が寄せられた。規制委は「火山事象が敷地に到達する可能性は十分小さい」などと回答した。また「放射性物質の大量放出をもたらす事態を検討しておらず防止策もない」との意見もあった。これについては「総放出量はできるだけ小さくとどめるものであると確認している」などと説明、審査書案の表現の一部を変更するにとどめた。規制委による安全審査が終了し、今後の焦点は自治体や政府の再稼働に向けた判断に移る。再稼働にあたっては、鹿児島県など地元自治体の同意が必要だ。規制委は10月中旬以降、川内原発周辺で開く住民説明会で審査の内容や安全対策などを説明する予定だ。再稼働は冬以降になりそうだ。政府は規制委の審査を合格した原発から順次稼働させる方針だ。川内原発1、2号機は1984年と85年に相次ぎ運転を開始し、2基で九電の全電力供給の1割弱をまかなえる。稼働すれば西日本の電力事情は改善しそうだ。これまでに10電力会社が13原発20基について再稼働に向けた安全審査を規制委に申請している。
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2014,08,27, Wednesday
(1)人口減が第一の政策課題ではないだろう
*1-1のように、全国知事会議でも人口減を問題とし、少子化問題を出産減問題に矮小化して議論しているようだが、わが国では、*1-2の広島市安佐南区八木地区のように、扇状地の斜面に這い上がるようにして住宅を建てたり、川の中州に家を建てたりする場合も多く、①人口密度が高くて住宅に適した土地にない住宅が多い ②条件の良い土地は高すぎて買えない ③狭い住宅で暮らしている ④都市の住環境が悪い など、人間の幸福や安全を無視した政策のつけが現われている。 従って、本当の政策課題は、まず、いる人間が、安全で幸福を実現できる住宅に住めるようにすることだが、そのためには、人口密度が高すぎる都市への産業集中から、人口密度の低い地方への産業の移転や産業振興が必要なのだ。 しかし、実際には、人口減が政策課題であるかのようなプロパガンダが多いため、*1-3のように、議会で女性議員が発言した時に、「早く結婚すればいい」「子どもを産めないのか」と言われるような本末転倒で野蛮な事態となっている。これについては、指導的立場に立つ女性を軽視し、女は家で子どもを産み育てるべきだとする男性中心の文化にどっぷり染まっている人は、男女を問わずその異常性に気付かないのだろうが、米議会報告書がセクハラやじに言及し、日本の女性登用戦略に難題があることを指摘しているのが、当たっていて面白い。 (2)今の日本の現実 *2-1のように、今ごろ、「国土交通省が、人手の足りない造船業で女性や高齢者の活用を促す」というのが、日本の女性登用の現実である。しかし、「女性」と「高齢者」を、壮年期の男性より一段劣った二級の働き手として“活用する”という言葉を使って表現するのは失礼だ。何故なら、機械化が進んだ現在では、腕力で勝負する仕事は少なく、女性が船舶の設計、造船、インテリアなどに携われば、できた船の付加価値はより高くなるだろうし、高齢者のニーズは高齢者自身が一番よく知っているため、高齢者も職場にいた方が需要の多い製品を作ることができるからである。 さらに、*2-2のように、産経新聞が、客船セウォル号沈没事故当日の朴大統領の男性との密会の噂に触れ、「名誉毀損で出頭要請を求められたことは理解に苦しむ」としているのは、このブログの2014年8月20日にも記載した通り、日本のメディアが指導的立場に立つ女性を軽視している事例である。 (3)女性閣僚と女性議員 このような中、*3に書かれているように、安倍首相は閣僚や自民党役員の人事で女性の登用を探っているそうで、それはよいことだが、よく名前の出る小渕優子氏は、小渕元首相の娘で選挙に強い以外は、他の女性議員より特に勝っている点はなく、元首相の娘で子どもを産んだからという理由で閣僚になれるのなら、閣僚は誰でもよいということになり、閣僚のポストに重みが無くなる。 なお、日経新聞は、「衆院で当選4回以上、参院で当選3回以上は11人いるが、・・・男性議員からの不満を招く」等とも記載しているが、ここでおかしいのは、議員になった後の年数による年功序列にすれば、能力との相関関係は無いことである。また、女性議員そのものを増やすことも重要だが、女性議員はもともと差別というハードルを超えて難関突破した人であるため、男性議員以上の割合で登用される人がいるのは自然であり、母集団の数に対する割合を見れば、それでも登用された人の割合は小さいのだ。 (4)男女平等の意識について *4-1の「夫の家事参加伸ばすには 妻の褒め言葉大切」という調査結果と記事に、私は、時代遅れで驚いた。何故なら、それは、「家事は本来は女性の仕事だが、機嫌がよければ夫も手伝ってやる」というスタンスだからである。もちろん、性的役割分担をして妻が家事を分担している家庭ならそのとおりだろうが、両方とも必死で働いている家庭では、妻も仕事で疲れて帰って来るため、家には休みに帰って来るのであって、そこで家事をやってもらうために人に気を使っていたら、くたびれて長続きしないだろう。 そのような状況を敏感に感じてか、*4-2のように、福岡市が実施した男女共同参画社会に関する意識調査では、「男は仕事、女は家庭」という考えに肯定的な人の割合が、20年以上続いた減少傾向から初めて増加に転じたそうだ。しかし、九州は、まだ「家事は女性の仕事だが、妻も働いているので少しは夫が手伝ってやる」「家事は女性の仕事なので、妻が働いていても夫は手伝わない」というレベルであるため、とてもやっていられないのかも知れない。 <人口減が問題と称する女性差別> *1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10202/84082 (佐賀新聞 2014年7月15日) 人口減に危機感強調、全国知事会議が開幕 全国知事会議が15日、人口減少問題や地方分権改革を主なテーマに佐賀県唐津市で2日間の日程で始まった。山田啓二会長(京都府知事)はあいさつで人口減に関して「少子高齢化の問題が、はっきりわれわれの前に姿を現しているが、国の対策が大幅に講じられたことはなかった。日本は死に至る病にかかっている」と危機感を強調した。会議には42都道府県の知事が参加。農地を工場や宅地に転用する許可権限の市町村への移譲など、分権改革に関する国への提言をまとめる。農地転用に関しては佐竹敬久秋田県知事が「地方に転用の自由度を与えてもらわないと、有効な産業政策が滞る」と述べた。 *1-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140827/k10014119141000.html (NHK 2014年8月27日) 土砂災害1週間 死者70人 捜索難航 広島市の土砂災害は27日で発生から1週間になり、これまでに70人の死亡が確認されました。行方不明になっている人は18人に上っていて、警察と消防、自衛隊が3400人余りの態勢で捜索を続けています。今月20日に起きた広島市の土砂災害では、これまでに70人の死亡が確認され、18人が行方不明になっています。現場では警察と消防、自衛隊が27日も合わせて3400人余りの態勢で捜索に当たっています。このうち、被害が大きかった安佐南区の八木地区では時折、雨が降るなか、重機を使って、がれきや大きな石を取り除いたり、手作業で土を掘り返したりしていました。行方不明者の捜索は、雨のため二次災害のおそれがあるとして、26日までに何度も作業が中断しているほか、地盤が緩んでいて安全を確認しながらの作業になっているため、難航しています。地元の気象台によりますと、27日の広島市内は雲が多く、時折、雨が降る天気だということで、警察などは引き続き天気を確認しながら、捜索を続けることにしています。 *1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/93623 (佐賀新聞 2014年8月13日) 米議会報告書でセクハラやじ言及、日本の女性登用戦略に難題指摘 米議会調査局が、女性登用を推進する安倍政権の成長戦略「ウーマノミクス」に関する報告書をまとめたことが13日分かった。女性の社会進出を阻んでいる要因として男性中心の職場文化を分析、セクハラやじ問題にも言及し、「戦略を成功させる上で難題がある」と指摘した。報告書は、東京都議会で女性都議が「早く結婚すればいい」「子どもを産めないのか」とやじを受けたと指摘。国政レベルでも女性議員の割合が小さいとし、「指導的立場に立つ女性を軽視し、彼女らは家にいるべきだとの政治文化が根強い」と強調した。 <日本の現実> *2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140731&ng=DGKDASDF30H0D_Q4A730C1PP8000 (日経新聞 2014.7.31) 造船業、女性活用を 力仕事支える機器普及 国交省支援 国土交通省は人手が足りない造船業で女性や高齢者の活用を促す。未熟練者が技術を学べる研修センターを増やすほか、溶接などの力仕事を支える機器の普及を進める。地方経済を支える造船業が必要な人材を確保できるようにし、安定して受注できる環境を整える。企業幹部や大学教授が参加する検討会を8月1日に立ち上げる。人材確保や育成に関する支援策を同月中にまとめ、2015年度予算の概算要求に必要経費を盛り込む。女性や高齢者の就業を促すため、技術を磨いたり、安全に関する技能を身につけたりする研修センターを増やす。現在は兵庫県と広島県の2カ所にあるが、国交省は数年かけて5カ所以上に増やす考えだ。体に装着して力作業の負担を軽減する「パワーアシストスーツ」の普及も促す。 *2-2:http://mainichi.jp/select/news/20140810k0000m030036000c.html (毎日新聞 2014年8月10日) 韓国:産経支局長へ出頭要請…ソウル地検、大統領記事巡り 韓国の朴槿恵政権が、4月の客船セウォル号沈没事故当日の朴大統領の動静に関する疑惑追及に神経をとがらせている。当日の動静と関連して朴大統領の男性関係についてネット版のコラムで言及した産経新聞には、青瓦台(大統領府)が「民事・刑事上の責任を問う」と表明。9日付の産経新聞によると、名誉毀損の疑いで市民団体からの告発を受けたソウル中央地検は8日、記事を書いたソウル支局長に、12日に出頭するよう求めた。発端は、金淇春青瓦台秘書室長が7月7日に行った国会答弁。大統領が、事故当日の午前10時に書面報告を受けてから午後5時過ぎに対策本部を訪れるまでに「空白の7時間」があることが明らかになった。その後、大統領はその間に24回の報告を受けたものの、すべて書面だったことが分かった。朴大統領は普段から直接聞くより書面での報告を好むとされる。金室長は、秘書官の部屋が大統領と別棟で「少し離れているので」と釈明した。これに関連し、韓国紙・朝鮮日報が同月17日、金室長の答弁で「大統領がひそかに誰かといた、といううわさが出た」と指摘するコラムを掲載。産経新聞(電子版)は今月3日、コラムの紹介に加え、「証券街の関係筋」の話として男性関係をめぐるうわさに触れた。韓国では、名誉毀損容疑での告訴や告発が多く、捜査機関が告発を受ければ、調べを始めるのが一般的だ。 ▽小林毅・産経新聞東京編集局長の話 記事は韓国国会でのやりとりや朝鮮日報コラムの紹介が中心で、記事を理由に名誉毀損容疑で出頭を求められるというのは理解に苦しむ。 <女性閣僚と女性議員> *3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140821&ng=DGKDASFS20H16_Q4A820C1PP8000 (日経新聞 2014.8.21) 女性閣僚 積極登用探る、最多は小泉政権5人 内閣改造、バランス腐心 安倍晋三首相は9月の内閣改造・自民党役員人事で、女性の積極登用を探っている。女性閣僚は歴代内閣で過去最多となる5人を上回る起用を視野に入れ、高市早苗政調会長らの入閣が浮上している。女性の社会進出を推進する姿勢を明確にする狙いだが、男性議員に比べて数が少ない女性議員からの人選は容易ではない。適材適所のバランスに腐心しそうだ。山梨県の別荘で夏休みを過ごす安倍首相が手元に置いて繰り返し熟読している内部資料がある。党内の女性議員の政策的な立場や希望のポストなどを一覧表にしたもので、女性の閣僚候補を選ぶために首相官邸が自民党の各派閥の幹部らを通じて内々に聞き取り調査したものだ。政府は2020年までに指導的地位に占める女性の割合を3割にする目標を掲げる。首相は改造後の内閣でも、18人の閣僚枠で女性比率が3割になるよう6人程度の起用を目指している。しかし、衆参で400人超に上る自民党全体で、女性議員は40人と約1割にすぎない。現内閣では2人の女性閣僚が登用されているが、首相周辺は「男女の議員のバランスを考えれば、6人の女性を起用するという目標達成は難しい」と話す。これまでの検討作業では高市政調会長らの入閣が浮上。党三役に2人の女性を起用した首相は、今回の党役員人事でも女性を積極登用したい考えだ。小渕優子衆院文部科学委員長や稲田朋美行政改革相らを処遇するとの見方が出ている。女性閣僚を巡っては、小泉政権が01年の組閣で田中真紀子外相ら5人を起用したのが過去最多。しかし、このときは5人のうち2人は民間からの登用だった。女性議員の数が大きく伸びているわけでもない中で、今回の改造で一気に5人以上を政治家から起用するのはそう簡単ではない。現在の自民党の女性議員をみると、衆院で当選4回以上、参院で当選3回以上は11人いるが、すでに6人が閣僚を経験済みだ。女性閣僚を大幅に増やすには、閣僚経験者の再登板や若手の抜てきを視野に入れなければならない。女性閣僚を増やせば、女性登用を推進する意味ではアピールする効果は高い半面、党内多数派の男性議員からの不満を招くジレンマもある。特に、第2次安倍政権で初となる今回の改造人事は、衆参で約60人に上る入閣待機組の不満解消を図る狙いもある。能力以上に女性を過大評価しすぎているとの批判が出ないよう適材適所のバランスをどう取るかが鍵を握る。実際、自民党の脇雅史参院幹事長は記者会見で「大事だが、無理は禁物だ。急に結果を求めるべきではない」と女性の優先的な閣僚起用にクギを刺した。政府内にも「女性議員そのものを増やすことに力を入れるべきではないか」との声もある。 <意識調査> *4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140812&ng=DGKDASDG1102V_R10C14A8CR8000 (日経新聞 201r4.8.12) 夫の家事参加伸ばすには 妻の褒め言葉大切 民間調べ 夫の家事参加を伸ばすには妻の褒め言葉が有効――。旭化成ホームズの「共働き家族研究所」の共働き夫婦の家事に関する意識調査で、妻のひと言が夫の家事意欲を大きく左右する姿が浮かび上がった。意識調査は今年3月にインターネットで行い、999人の回答を得た。共働き世代の中心である30代で、妻に「ダメ出し」をされたことのある夫は79.0%。「洗濯物を畳むとき、へたくそと言われ、二度とやるもんかと思った」「皿洗いをしたとき、用途の違うスポンジを使ったと責められ、悲しい気分になった」など、妻のひと言でやる気を失ったとの声が多く寄せられた。一方、「朝早く洗濯物を干したとき、寒い中ありがとうと言われた」と妻の言葉で家事へのやる気を高めた夫、「子供が喜ぶと言うと(夫は)急にやる気になる」とうまく夫を操る妻もいた。調査担当者は「夫がうれしくなる妻のひと言は、実は妻も夫や子供から言われたい言葉。お互いへの思いやりと感謝の言葉が大切」と話した。 *4-2:http://qbiz.jp/article/42693/1/ (西日本新聞 2014年7月26日) 「男は仕事」「女は家庭」意識逆行? 福岡市の意識調査 「男は仕事、女は家庭」−。福岡市が実施した男女共同参画社会に関する意識調査で、こうした考えに肯定的な人の割合が、20年以上続いた減少傾向から初めて増加に転じた。2013年の調査では、賛成派は女性47・2%、男性56・2%となり、08年の前回調査から女性で15ポイント、男性では20ポイントも伸びた。専門家はこの“揺り戻し”の背景について「働く環境の悪化」を挙げ、懸念を示している。市は13年8〜9月、無作為に抽出した男女計4500人に郵送で調査。1948件の回答があった。市が、男女の固定的な役割分担に関する意識調査を始めたのは1986年。男女雇用機会均等法の公布や女子差別撤廃条約の批准があった翌年だった。当時の調査で「男は仕事、女は家庭」という考えに「同感する」と回答したのは男性では7割超、女性でも6割以上に上った。それ以降、こうした考えに対する肯定意見は年を追うごとに低下していた。ところが2013年調査では一転し、15年前の水準に逆戻りした形だ。内閣府が12年に実施した全国調査でも、1992年の調査開始以来初めて増加に転じている。社会全体の平等感については、全国調査では「男性が優遇」が69・8%で前回(2009年)の71・6%からやや下落したが、福岡市では13年調査で74・5%となり、前回(08年)から1・9ポイント増加した。NPO法人「福岡ジェンダー研究所」理事の倉富史枝さんは福岡市での傾向を「非正規雇用が増え、女性の処遇も改善されない中、『働くよりも家にいるほうがいい』と思う人が増えているのではないか」と分析。「男女共同参画の実現には意識と制度の両方が必要。男性の働かされ方が変わらなければ、状況は変わらない」と述べた。
| 男女平等::2014.7~2015.5 | 03:29 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2014,08,26, Tuesday
フクイチ1号機爆発 3号機爆発 フクイチ爆発による汚染状況 (1)フクシマ原発事故の吉田調書について *1-3に書かれているとおり、フクシマ原発事故に関して政府事故調が行った東電の吉田元所長(故人)からの聴取記録が、第三者の権利や利益、国の安全に関する部分が黒塗りという条件付きではあるが、9月に公開されることになった。吉田氏は生前、自分の発言が独り歩きする懸念から、内容を非公開とする上申書を提出していたそうだが、国民の税金を使って調査している政府事故調に話しているのであり、フクシマ原発事故の原因や今後の日本のエネルギー政策に重要な意味のある国民の資産となるものである以上、公開されることを前提に話すべきだった筈だ。そして、聴取記録を読む人も馬鹿ばかりではなく、複数の証言や証拠と突き合わせて判断するため、独り歩きする問題はないだろう。 なお、*1-1、*1-2に書かれているとおり、原発周辺の13市町村長(当時)と福島県知事は、取材に応じた11人中8人が公開を求め、とりわけ、福島第一原発のある双葉、大熊、浪江町、南相馬市、楢葉町、川内村、葛尾村、いわき市などの8首長(当時)が公開を求めているそうだ。このようにして、言論の力で公開にこぎつけたフクシマ原発事故に関する朝日新聞の報道は、フクシマ原発事故の真実に迫るために有用であり、勇気ある行動だったと私は評価している。 (2)フクシマの現実と驚くべき解決策 *2-1に書かれているとおり、福島事故直後、日本政府が作成していないと発表していた議事録を、米国政府は作成しており、それが、アメリカ連邦情報公開法に基づく開示決定で公開されたそうだ。また、米国NRCは、近藤駿介氏の1535本の燃料棒が溶融するとされる最悪シナリオよりも多い2000本以上の燃料棒が96時間以内に溶ける事態を想定していたことが判明し、同心円上ではなく風向きまで予想した内容(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム《SPEEDI》でわかる)となっていた。 しかし、これらSPEEDIの情報は日本では公開されず、*2-2のとおり、フクシマ原発事故の恐ろしさを肌身で知る福島の人たちが、特定秘密保護法に関する公聴会で、「秘密より情報公開が重要だ」として特定秘密保護法案への懸念を語り、「SPEEDIの情報が適切に公開されず、町民が放射線量の高い地域に避難した」「情報公開がすぐに行われていれば低線量被曝を避けることができた」などの問題を述べている。 にもかかわらず、*2-3のように、フクシマ原発事故で初期の住民避難に活用されなかったとして、原子力規制委員会は「SPEEDI」の来年度予算を半額以下に大幅減額する方針だそうだが、これは、活用しなかった人が悪かったにすぎない。また、大幅減額の理由は、放射性物質の広がりを即座に予測できないためとされ、代わりに放射線量を実測するシステムを強化するとのことだが、実測は事後にしかできないため、実測より予測の方が速いのは明らかである。原子力規制委員会は、こういうレベルか・・・。 さらに、SPEEDIの予測は、各地点のモニタリングポストで実測した数値を入れていくことで、事実に基づいた実測にしていくことができ、逆算すればどれだけの分量の放射性物質が放出されたかもわかる筈だが、そのSPEEDIを辞めて、周辺のモニタリングポストなどの実測値のみをもとに避難させれば、それだけローテクになって被曝リスクが上がり、住民の安全は守られない。 なお、SPEEDIの予測は、原発が稼働していなくても、廃炉時や放射性物質を含むゴミ焼却時(本当は、放射性物質を焼却して空気中に放出してはいけない)の放射性物質の拡散予測にも役立つ。 (3)特定秘密保護法について *3-1に書かれているとおり、国民の反対を押し切って2013年12月に成立した特定秘密保護法は、政府に不都合な情報が恣意的に隠蔽され「国民の知る権利」が制限されかねないとの指摘が多いにもかかわらず、政府は、秘密を漏らした公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法の運用基準に関する素案をまとめ、その実際の運用は各府省の判断に委ねるとのことである。 そして、監視機関は、*3-2に書かれているとおり、内閣官房に「内閣保全監視委員会」、内閣府に「独立公文書管理監」を設置するそうだが、是正要求に強制力がない上、どちらも政府内の官僚組織であるため、内部統制や内部監査程度の役にしか立たず、政府(=行政)を監視することはできないため、監視機関に独立性があるとはとうてい言えないものである。つまり、行政のやりたい放題となり、内部通報窓口や秘密指定の対象制限などは、それらが秘密に運用される以上、何の役にも立たないのだ。 つまり、「議事録を作りたくないから、会議を開かない」とか「放射線被害の実態を知られたくないから、SPEEDIを活動不能にする」などというのが、現在実行されつつある驚くべき事態で、それに特定秘密保護法が加わるわけである。 (4)秘密保護に関する世界基準と日弁連の意見 *4-1に書かれているように、世界の潮流は、「ツワネ原則」に示されているとおり、国家機密の必要性は認めながらも、国が持つ情報の公開原則とのバランスに配慮すべきだと勧告しており、公開の規制対象は国防計画、兵器開発、情報機関の作戦や情報源などに限定して、①国際人権・人道法に反する情報は秘密にしてはならない ②秘密指定の期限や公開請求手続きを定める ③すべての情報にアクセスできる独立監視機関を置く ④情報開示による公益が秘密保持による公益を上回る場合には内部告発者は保護される ⑤メディアなど非公務員は処罰の対象外とする としており、もっともである。 また、情報を秘密にする正当性を証明するのは政府の責務で、秘密を漏らした公務員を行政処分にとどめず刑事訴追できるのは、情報が公になったことが国の安全に「現実的で特定できる重大な損害」を引き起こす危険性が大きい場合に限るとしているが、日本の特定秘密保護法案をめぐる審議に、この新しい国際的議論の成果は反映されていない。 さらに、法案の狙い(!)である違反者への厳罰化も疑問で、欧米では敵国に国家機密を渡すスパイ行為は厳罰だが、これに該当しない秘密漏えいの最高刑は英国が禁錮2年、ドイツが同5年までで、日本の法案と同じ最高懲役10年の米国(2010年に過剰機密削減法成立)は、欧州諸国と比べて厳しすぎるとの指摘があり、欧米は近年、むしろ情報公開を重視する方向に進んでいるのである。 また、*4-2のとおり、日弁連は、会長声明を出して、特定秘密保護法案に反対し、ツワネ原則に則して秘密保全法制の在り方を全面的に再検討することを求めている。 (5)次は、放射線の安全神話(!) *5に、「福島の37万人を調査した結果、フクシマ原発事故で、子どもの甲状腺癌の発症割合は、第一原発周辺で避難などの措置がとられた「13市町村」では0.034%。県中央の「中通り」は0.036%、沿岸部の「浜通り」は0.035%と地域差はなかった」「原発から一番遠い会津地方は0.028%とやや低めだったが、医大は検査を終了した子どもが、ほかの地域に比べ少ないためと説明した」「国立癌研究センターなどによると、10代の甲状腺癌は100万人に1~9人程度(0.0001~0.0009%)とされてきたが、自覚症状のない人も含めた今回のような調査は前例がないので比較が難しい」などとしている。 ここで分析の間違いを列挙すると以下のとおりだ。 1)フクシマ県内の13市町村という、いずれも放射能汚染された地域同士で甲状腺癌の発症割合 を比較して、「地域差はなかったため、この甲状腺癌は原発事故の影響ではない」としている 2)原発から一番遠い会津地方の低めの数値を、母集団に対する割合で比較せず検査終了児の 割合が低いせいにしている上、そもそも事故から3年半も経過しているのだから、本来、全員、 検査終了しておくべきである 3)甲状腺癌の発見率が、10代の平均の40~300倍以上もあることについては、「自覚症状のない 人も含めた今回のような調査は前例がないので比較が難しい」として、統計の取り方のせいに している これらは、放射線の安全神話を造るための結論ありきの調査分析であり、本当は、フクシマ事故で放射能汚染されていない大阪以西の地域で、20,000~100,000人くらいの同年齢の全児童を検査し、比較対象とすればすぐに明確になることだ。この際、食物からの内部被曝もしていない地域を選ぶのがよいため、大都市は避け、食品の地産地消が進んでいる九州の農漁村がよいだろう。 <フクシマの吉田調書について> *1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11309241.html (朝日新聞 2014年8月21日) 吉田調書、8人「公開を」 福島原発事故県内の14首長 福島第一原発事故を調査した政府事故調査・検証委員会が吉田昌郎元所長(故人)を聴取した記録(吉田調書)について、原発周辺の当時の13市町村長と福島県知事に公開すべきかを聞いたところ、取材に応じた11人中8人が公開を求めた。朝日新聞は、原発から20キロ圏内の警戒区域や、20キロ圏外で放射線量が年20ミリシーベルト超の計画的避難区域などの指定を受けた市町村長13人と、福島県の佐藤雄平知事を取材した。政府事故調の委員を務めた川俣町の古川道郎町長と、広野町の山田基星前町長は取材に応じず、富岡町の遠藤勝也前町長は取材依頼中の7月に亡くなった。福島第一原発のある双葉、大熊両町のほか、浪江町、南相馬市、楢葉町、川内村、葛尾村、いわき市の8首長(当時)は吉田調書の公開を求めた。佐藤知事と田村市長、飯舘村長は判断を保留した。11人中6人が聴取されたと答え、5人は自身の調書の公開を認めると答えた。政府は約770人分の調書について、聴取対象者に意向を確認中。民主党政権の関係者では、細野豪志元原発相らが調書の公開を容認する考えを明らかにしている。本人の同意があり、第三者の権利を侵害したり、国の安全に関係したりする部分を除き、年内に公開する。ただ、吉田調書については本人が非公開を求めているとして開示しない方針だ。 *1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11175493.html?ref=reca (朝日新聞社説 2014年6月6日) 吉田調書 国民の財産を隠すな 政府は誰のために活動しているのか。国民のためであろう。政府が集めた情報は、国民の財産である。福島第一原発の事故後、政府の事故調査・検証委員会は当時の吉田昌郎所長(故人)をはじめ772人もの関係者から聴取をした。なのに政府事故調が短期間で活動を終えた後、政府は貴重な証言を死蔵し、聴取対象者も開示していない。改めて主張する。政府は証言類をただちに最大限、公開すべきだ。菅官房長官はきのう「本人の同意が得られたものは必要な範囲で開示したい」と述べ、関係者の意思確認を指示した。しかし、吉田氏の聴取結果書(吉田調書)は非開示の方針を崩していない。「本人が上申書で非開示を求めている」との理由だが、納得できない。吉田氏は現場責任者である。本来なら国会など公の場で自ら詳しく証言すべきところ、病気と死去でかなわなかった。今となっては、吉田調書は最も貴重な国民の財産だ。吉田氏自ら聴取の冒頭で「ほぼそのままの形で公にされる可能性がある」と説明され、「結構でございます」と答えている。後に事故調に提出した上申書で吉田氏は記憶違いを心配しているが、他の証言などと照らせば明らかになる。他者の評価などを率直に語っている点も、調書の開示ルールを作れば済み、全体を非公開とする理由にはならない。朝日新聞が入手した吉田調書をみると、事故調の分析は不十分とわかる。最終報告書は「東京電力が全員撤退を考えていたかどうか」との観点から証言に触れているが、所長の指示・命令が守られず、現場で指揮に当たる職員まで10キロ以上離れた福島第二原発に一時退避したという指摘は無視された。当時、何が起きていたのか。関係者がどう判断し、どう動いたのか、動かなかったのか。そもそも事故調は全容解明にはほど遠いことを認め、調査継続を強く求めていた。政府による事実上の調査打ち切りは、国民の期待に反している。閣僚などの立場で事故の対応にあたった民主党関係者の多くも「自らの調書を公開していい」と表明している。政府は証言者の意思確認で公開の意義を強調し、積極的に同意を求めるべきだ。特に事故対応に深くかかわった人は公開が原則でなければならない。証言類を幅広く公開することで、悲惨な事故が改めて多角的に分析されるはずだ。 *1-3:http://mainichi.jp/select/news/20140825k0000e010192000c.html (毎日新聞 2014年8月25日) 原発事故・吉田調書:官房長官「9月に公開」一部黒塗りで 菅義偉官房長官は25日午前の記者会見で、東京電力福島第1原発の事故を巡り、政府の事故調査・検証委員会(政府事故調)が行った吉田昌郎元所長(故人)の聴取記録について「9月のできるだけ早い時期に公開する」と発表した。公開内容については「第三者の権利や利益、国の安全に関する部分は黒塗りにしたい」と述べ、部分的に非開示にする考えを示した。吉田氏は生前、提出した上申書で内容を非公開とするよう求めており、政府はこれまで公開してこなかった。しかし、朝日新聞や産経新聞が聴取内容を報道。菅氏は方針転換の理由について「一部のみを記事にした複数の報道があり、(自分の発言が)『独り歩き』するとの吉田氏の懸念がすでに顕在化している。非公開とすることが本人の意思に反する」と説明した。政府は、政府事故調から聴取を受けた他の東電や政府関係者にも意向を確認し、本人の同意が得られたものから順次、公開する方針。菅氏は「年内には(公開を)全て終えたい」と述べた。 <フクシマの現実と驚くべき解決策について> *2-1:http://echo-news.net/japan/usnrc-disclosed-fukushima-criss-proceedings (echo-news 2013.11.21) 日本政府にない福島第1事故の議事録、米国が保有 アメリカ情報公開法で公開 アメリカNRC最高決定機関・時系列議事録福島事故直後に、日本政府が作成していないと発表していた議事録を、米国政府が作成していたことが判明しました。アメリカ連邦情報公開法に基づく開示決定で、本紙編集長の江藤貴紀などに公開しました。さらに、米国NRCは、別の文書も情報公開。近藤駿介氏の1535本の燃料棒が溶融するとされる最悪シナリオよりも多い2000本以上の燃料棒が96時間以内に溶ける事態を想定していたことも判明。加えて、同心円上ではなく風向きまで考慮したより危険な内容となっています。 *2-2:http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_gnavi#Edit2 (朝日新聞社説 2013年 11月 26 日)秘密保護法案―福島の声は「誤解」か 特定秘密保護法案を審議する衆院の特別委員会がきのう福島市で地方公聴会を開いた。福島第一原発の事故は日本にとって近年最大の危機だった。その恐ろしさを肌身で知る福島の人たちは公聴会で、口々に法案への懸念を語った。秘密より情報公開が重要ではないか――。そんな意見が相次ぎ、自民党の推薦者を含む全員が法案に反対した。与党である自民、公明両党は、この事実を重く受けとめるべきだ。「情報公開がすぐに行われていれば低線量の被曝(ひばく)を避けることができた」。浪江町の馬場有(たもつ)町長は、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の情報が適切に公開されず、町民が放射線量の高い地域に避難した問題を取り上げた。自民、公明両党の委員は「誤解がある」「今回の法案の対象ではない」と反論したが、そう単純な話ではない。危急の時にあっても行政機関は情報を公開せず、住民の被曝につながった。その実例を目の当たりにしたからこそ、秘密が際限なく広がりかねない法案のあり方に疑問を投げかけているのではないか。法曹関係者は公聴会で「(秘密の範囲について)拡張解釈の余地をきちんと狭めるべきだ」と指摘した。特別委員会の審議で明らかになった、こんな事実もある福島第一原発の事故直後、現場の状況を撮影した情報収集衛星の画像を、政府が秘密保全を理由に東京電力に提供しなかったというのだ。東電には秘密保全措置がないから、画像は関係省庁だけで利用した。代わりに商業衛星の画像55枚を4800万円で購入して東電に提供したという。情報収集衛星は災害目的にも使われるはずだった。それが肝心のときに「秘密」にされた。公聴会の出席者に自民党議員は「どうぞ信頼していただきたい」と述べた。どう信頼すればいいのか。反対意見を真摯に受け止めるべきだ。地方公聴会を、みんなの党、日本維新の会を含めた4党による衆院通過に向けたアリバイづくりにしてはならない。福島県議会は10月、法案への慎重対応を求める意見書を出した。「もし制定されれば、民主主義を根底から覆す瑕疵(かし)ある議決となることは明白である」と訴えている。与党はもう一度、考えたほうがいい。福島の人々の懸念は、ほんとうに「誤解」なのか。 *2-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11315477.html (朝日新聞 2014年8月25日) SPEEDI、予算大幅減 事故時の放射線量、予測困難 来年度方針 東京電力福島第一原発事故で初期の住民避難に活用されず問題になった「SPEEDI(スピーディ)」について、原子力規制委員会は来年度予算を半額以下に大幅減額する方針を固めた。放射性物質の広がりを即座に予測するには技術的な限界があるため、代わりに放射線量を実測するシステムを強化する。SPEEDIを頼りにしてきた自治体の避難計画は見直しを迫られることになる。福島の事故時、SPEEDIによる予測のもとになる原子炉などのデータが得られず、放射線量を予測できなかった。規制委は事故発生直後の住民避難の指標としてきた位置づけを2013年に改定した原子力災害対策指針で「参考情報」に格下げしており、予算の上でも明確にする。実測システムの強化は、改定指針が周辺のモニタリングポストなどの値をもとに、原発30キロ圏内の緊急時の避難を判断する方針に転換したのを踏まえた。大量の放射性物質が放出されるおそれが生じた時点で、5キロ圏は放出の有無にかかわらず即避難。5~30キロ圏は屋内退避を原則とし、実測値をもとに避難の必要性とタイミングを地域ごとに判断する。不確実な予測よりも迅速で的確に対応できるとの考え方が背景にある。規制委は今年度から、実測値の情報を即時に官邸や道府県と共有するシステムの導入を始めている。避難などの判断根拠となるデータを、関係者がそれぞれの端末の画面でリアルタイムで見られるようにする。集約作業や紙でのやりとりを省き、事故時の混乱を防ぐ狙いで、国側の監視態勢や維持の費用にSPEEDIの予算を振り向ける。自治体には、定められた避難の区域ごとに少なくとも1カ所のモニタリングポスト整備が求められる。居住地や山地の別や放射性物質の拡散傾向を踏まえ、5キロ間隔を目安にする。SPEEDIは14年度も保守管理の事業委託費用に約5億円が充てられている。事故発生直後の予測だけでなく、事前の避難計画づくりや訓練にも使われ、福島の事故では実測値をもとに広範囲の汚染状況を推定するのにも使われた。自治体には引き続き活用を求める声もある。人件費などを圧縮することで事故時に最低限の計算はできるよう維持するが、参考情報としてどう扱うかはあいまいなままだ。自治体は実測値の扱いなど詳細な検討が必要になる。 ◆キーワード <SPEEDI> 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム。原発などの事故時に、原発から放出された放射性物質の量や空間放射線量、被曝(ひばく)線量などを気象条件や地形をもとにスーパーコンピューターで予測し、地図上に示す。旧日本原子力研究所が開発し、原子力安全技術センターが1986年に運用を始めた。震災後、文部科学省から規制委に移管。開発や維持に2010年度までで約120億円の国費が投入された。 <特定秘密保護法について> *3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140718&ng=DGKDZO74419540Y4A710C1PP8000 (日経新聞2014.7.18)特定秘密、監視機関の独立性課題 55項目指定対象 政府は17日、機密を漏らした公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法の運用基準に関する素案をまとめた。秘密を指定する機関を政府の19機関に限定し、指定対象を55項目とした。秘密の範囲が無制限に拡大することに一定の歯止めを示したが、実際の運用は各府省の判断に委ねられる部分がなお多い。監視機関によるチェックの実効性確保などが課題となる。「秘密の取り扱いの客観性と透明性がよりいっそう進展することが期待される」。政府が17日に開いた「情報保全諮問会議」(座長・渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長)の冒頭で安倍晋三首相はこう語った。座長の渡辺氏も「報道、言論などを不当に規制することがないようになかなか配慮されている」と述べた。政府は7月中に素案の意見公募(パブリックコメント)を始め、同会議での議論を経て9~10月にも閣議決定する。特定秘密保護法は12月の施行予定だ。昨年12月に成立した特定秘密保護法は政府に不都合な情報が恣意的に隠蔽され「国民の知る権利」が制限されかねないとの指摘が多かった。素案はこうした批判を念頭に「必要最小限の情報を必要最低限の期間に限って指定する」と明記。法律の段階はあいまいだった秘密の指定や解除、監視に関する具体的な手続きを示した。法律の施行令の素案は、秘密を指定する機関を政府の61機関のうち外務・防衛両省や国家安全保障会議(NSC)など19機関に限定。指定した年月日や指定期間などを記した管理簿を作る。秘密の指定や管理が適切でないと思われた場合に内部通報できる窓口も各機関内に置く。法律の別表は秘密指定の対象は防衛、外交など4分野の大枠を示すのみだったが、素案はこれを細分化し「武器、弾薬、航空機などの性能」「衛星などを用いて収集した電波、画像情報」など55項目を示した。しかし、これらの項目に該当しているかどうかの判断は役所側に任されており、何を秘密に指定するかを巡り、政府の恣意性は残る。監視機関によるチェックの実効性を確保できるかが法律運用のカギを握る。一方、監視機関については内閣官房に「内閣保全監視委員会」、内閣府に「独立公文書管理監」を設置する。ただ、両組織が出す是正要求に強制力はない。いずれの機関も官僚組織であり、どこまで独立性が担保されるかも今後の運用次第だ。運用基準は有識者の意見を踏まえて作成するとしていたが、今回の情報保全諮問会議を開くのは1月の初会合以来、半年ぶり。この間、事務局と同会議の委員でやりとりし、素案のたたき台の意見聴取などを行った。政府はやりとりの資料はウェブサイトに載せたが、委員の中には「議事録を作りたくないから会議を開かなかったのではないか」と透明性を疑問視する声もある。 *3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11249761.html (朝日新聞 2014年7月18日) 秘密法、弱い監視権限 運用基準55項目、大臣らに拒否権 政府は17日、特定秘密保護法の運用基準を公表した。防衛、外交、スパイ活動防止、テロ防止の4分野に55項目を挙げたが、定義が抽象的なため、省庁の判断で秘密の範囲が広がる恐れは残った。また、不正を防ぐために政府内につくるチェック機関は、各省庁に特定秘密を開示させる強制力がないなど、権限は限られている。政府が、有識者でつくる「情報保全諮問会議」(座長=渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長・主筆)に示した運用基準では、特定秘密に指定する情報を秘密法で示した23項目から55項目に細分化した。しかし、秘密指定の具体的な判断は、各省庁に委ねられる。秘密指定が適正かチェックする機関として、「独立公文書管理監」と、事務局の「情報保全監察室」を内閣府に新たに設ける。管理監は、各省庁の大臣らに特定秘密を含む資料の提出や指定解除を要求できる。しかし、大臣らは「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼす」と判断すれば資料提出を拒否できる。管理監は、不都合な情報が隠された場合の内部通報の窓口になるが、通報を受けた調査でも、各省庁は情報開示を拒否できる。安倍政権にとって、特定秘密保護法と、安保政策で「官邸主導」を確立する国家安全保障会議(日本版NSC)、そして集団的自衛権の行使容認は、「安保強化の3本柱」といえる。NSCは集団的自衛権行使を含む安保政策の司令塔であり、NSCを機能させるために情報管理を徹底する手段が秘密法だからだ。 <秘密保護に関する世界基準と日弁連の意見> *4-1:http://mainichi.jp/opinion/news/20131125k0000m070099000c.html (毎日新聞社説 2013年11月25日) 秘密保護法案を問う ツワネ原則 ◇世界の流れも知ろう 国家機密の保護をめぐる規定は各国さまざまだが、一つの指針として今年6月にまとまった50項目の「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」が注目されている。国連関係者を含む70カ国以上の専門家500人以上が携わり、2年以上かけて作成された。発表の場が南アフリカの首都プレトリア近郊ツワネ地区だったため「ツワネ原則」と呼ばれる。人権問題などを協議する欧州評議会の議員会議が10月、この原則を支持する決議を採択した。ツワネ原則は、国家機密の必要性を認めながらも、国が持つ情報の公開原則とのバランスに配慮すべきだと勧告している。公開の規制対象は国防計画、兵器開発、情報機関の作戦や情報源などに限定し、(1)国際人権・人道法に反する情報は秘密にしてはならない(2)秘密指定の期限や公開請求手続きを定める(3)すべての情報にアクセスできる独立監視機関を置く(4)情報開示による公益が秘密保持による公益を上回る場合には内部告発者は保護される(5)メディアなど非公務員は処罰の対象外とする−−などを盛り込んだ。また、情報を秘密にする正当性を証明するのは政府の責務であり、秘密を漏らした公務員を行政処分にとどめず刑事訴追できるのは、情報が公になったことが国の安全に「現実的で特定できる重大な損害」を引き起こす危険性が大きい場合に限るとしている。日本の特定秘密保護法案をめぐる審議に、この新しい国際的議論の成果は反映されていない。法案の狙いである違反者への厳罰化も疑問だ。欧米では敵国に国家機密を渡すスパイ行為は厳罰だが、これに該当しない秘密漏えいの最高刑は英国が禁錮2年、ドイツが同5年までだ。日本の法案と同じ最高懲役10年の米国は、欧州諸国と比べて厳しすぎるとの指摘がある。欧米は近年、むしろ情報公開を重視する方向に進んでいる。米国では2010年、機密指定の有効性を厳格に評価する体制作りなどを定めた「過剰機密削減法」が成立した。秘密情報が増えすぎて処理能力を超えたことが逆に漏えいリスクを高めているという反省もある。また英国では3年前、秘密情報公開までの期間が30年から20年に短縮され、議会監視委員会の権限が今年から強化された。こうした世界の流れから日本は大きくはずれている。審議中の法案は廃案とし、国家機密保持と情報公開の公益性のバランスについて十分な議論を尽くすべきだ。 *4-2:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2013/131115.html (日本弁護士連合会会長 山岸憲司 2013年11月15日) 特定秘密保護法案に反対し、ツワネ原則に則して秘密保全法制の在り方を全面的に再検討することを求める会長声明 国が扱う情報は、本来、国民の財産であり、国民に公表・公開されるべきものである。「特定秘密の保護に関する法律案」は、行政機関が秘密指定できる情報の範囲を広くかつ曖昧に設定し、かつ、運用の実態は第三者がチェックできない一方で、このような情報にアクセスしようとする国民や国会議員、報道関係者などのアクセスを重罰規定によって牽制するもので、まさに行政機関による情報支配ともいうべき事態である。当連合会では、本年9月12日に「『特定秘密の保護に関する法律案の概要』に対する意見書」を、同年10月23日に「秘密保護法制定に反対し、情報管理システムの適正化及び更なる情報公開に向けた法改正を求める意見書」を公表し、同月25日に「特定秘密保護法案の閣議決定に対する会長声明」を公表した。当連合会の相次ぐ意見表明に対して、新聞やテレビ、ラジオ、雑誌、インターネットニュースなどがこぞって法案を問題とする報道を行うようになったこともあり、多くの国民が法案に関心を抱くとともに、法案の賛否に関わらず早急な成立を望まない声が日増しに強くなっている。このような国民の意向を受けて、政府及び国会には、法案の慎重審議が強く求められている。ところが、政府及び与党は、法案を慎重審議するどころかむしろ短期間で成立させようとしている様子さえ窺える。政府及び与党が我が国における法案の重要性を強く認識するのであれば、尚更のこと、国民の理解と納得を得られるよう、法案の内容を検討し直すべきである。「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(以下「ツワネ原則」という。)は、自由権規約19条等をふまえ、国家安全保障分野において立法を行う者に対して、国家安全保障への脅威から人々を保護するための合理的な措置を講じることと、政府の情報への市民によるアクセス権の保障を両立するために、実務的ガイドラインとして作成されたものであり、本年6月、南アフリカ共和国の首都・ツワネで公表されたものである。 当連合会では、これまでの提案を踏まえ、ツワネ原則による法案の見直しと撤回を求める。以下、ツワネ原則に則して特定秘密保護法案の問題点を指摘する。 1 ツワネ原則1、4は国家秘密の存在を前提にしているものの、誰もが公的機関の情報にアクセスする権利を有しており、その権利を制限する正当性を証明するのは政府の責務であるとしている。しかし、法案にこの原則が明示されていない。 2 ツワネ原則10は、政府の人権法・人道法違反の事実や大量破壊兵器の保有、環境破壊など、政府が秘密にしてはならない情報が列挙されている。国民の知る権利を保障する観点からこのような規定は必要不可欠である。しかし、法案には、このような規定がない。 3 ツワネ原則16は、情報は、必要な期間にのみ限定して秘密指定されるべきであり、政府が秘密指定を許される最長期間を法律で定めるべきであるとしている。しかし、法案には、最長期間についての定めはなく、30年経過時のチェックにしても行政機関である内閣が判断する手続になっており、第三者によるチェックになっていない。 4 ツワネ原則17は、市民が秘密解除を請求するための手続が明確に定められるべきであるとしている。これは恣意的な秘密指定を無効にする上で有意義である。しかし、法案はこのような手続規定がない。 5 ツワネ原則6、31、32、33は、安全保障部門には独立した監視機関が設けられるべきであり、この機関は、実効的な監視を行うために必要な全ての情報に対してアクセスできるようにすべきであるとしている。しかし、法案には、このような監視機関に関する規定がない。 6 ツワネ原則43、46は、内部告発者は、明らかにされた情報による公益が、秘密保持による公益を上回る場合には、報復を受けるべきでなく、情報漏えい者に対する訴追は、情報を明らかにしたことの公益と比べ、現実的で確認可能な重大な損害を引き起こす場合に限って許されるとしている。しかし、法案では、この点に関する利益衡量規定がなく、公益通報者が漏えい罪によって処罰される危険が極めて高い。 7 ツワネ原則47、48は、公務員でない者は、秘密情報の受取、保持若しくは公衆への公開により、又は秘密情報の探索、アクセスに関する共謀その他の罪により訴追されるべきではないとし、また、情報流出の調査において、秘密の情報源やその他の非公開情報を明らかすることを強制されるべきではないとしている。しかし、法案にはこのような規定がないどころか、第23条ないし第26条の規定によって広く処罰できるようにしている。この原則の策定には、アムネスティインターナショナルやアーティクル19のような著名な国際人権団体だけでなく、国際法律家連盟のような法曹団体、安全保障に関する国際団体など22の団体や学術機関が名前を連ねている。この原則には、ヨーロッパ人権裁判所やアメリカ合衆国など、最も真剣な論争が行われている地域における努力が反映されている。起草後、欧州評議会の議員会議において、国家安全保障と情報アクセスに関するレポートにも引用されている。当連合会は、政府が安全保障上の理由によって一定の事項を一定の期間、秘密とする必要があると判断し対応していることを、全面的に否定するものではない。しかし、このような対応を許容することによって、国民の基本的人権である言論の自由、プライバシー権が侵害されるべきではない。法案に上記のような構造的な問題点があることが明らかであるから、政府は、法案を一旦白紙に戻し、現存する国家公務員法や自衛隊法などの中に含まれる秘密保全法制も含めて、秘密保全法制の在り方を根本的に見直すべきである。 <放射線の安全神話へ> *5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014082502000184.html (東京新聞 2014年8月25日) 【福島原発事故】子ども、甲状腺がん57人 福島の37万人調査 東京電力福島第一原発事故による健康への影響を調べている福島県は二十四日、震災当時十八歳以下の子ども約三十七万人を対象に実施している甲状腺検査で、甲状腺がんと診断が確定した子どもは五月公表時の五十人から七人増え五十七人に、「がんの疑い」は四十六人(五月時点で三十九人)になったと発表した。福島市内で開かれた県民健康調査の検討委員会で報告した。地域による発症率に差がないことも報告され、委員会の星北斗座長は、現時点で放射線の影響がみられないことが裏付けられたとした上で、「今後、詳細な分析が必要だ」と述べた。調査を担当する福島県立医大は、今回初めて県内を四つに分けた地域別の結果を公表。検査を受けた子どものうち、疑いを含めた甲状腺がんの発症割合は、第一原発周辺で避難などの措置がとられた「十三市町村」では0・034%。県中央の「中通り」は0・036%、沿岸部の「浜通り」は0・035%と地域差はなかった。原発から一番遠い「会津地方」は0・028%とやや低めだったが、医大は検査を終了した子どもが、ほかの地域に比べ少ないためと説明した。国立がん研究センターなどによると、十代の甲状腺がんは百万人に一~九人程度とされてきたが、自覚症状のない人も含めた今回のような調査は前例がなく、比較が難しい。疑いも含めた甲状腺がんの子ども計百三人のうち、最年少は震災当時六歳。原発事故から四カ月間の外部被ばく線量の推計値が判明した人のうち、最大は二・二ミリシーベルトだった。 ◆個人被ばく量 分析急務 福島県で相次いで見つかっている甲状腺がんが、東京電力福島第一原発事故による放射性物質の影響かどうかを明確にするためには、地域間のがん発症率の比較だけでなく、個人被ばく線量との関連の分析が必要となる。二十四日に福島市で開かれた県民健康調査の検討委員会では、集計が終わっていない一部地域を除き、疑いを含めた甲状腺がんの割合は、空間の放射線量が異なる地域間で差がなかったと報告された。がんが放射線の影響とは考えにくいとする従来の県の見解を裏付けるものだ。だが、被ばく線量は個人差が大きく、地域間の比較だけでは不十分だ。検討委員会は結果を多方面から慎重に検討するとしているが、現状では個人被ばく線量のデータ収集は進んでいない。県民全員の被ばく線量を推計する調査では回答率が約26%と低迷。また、県は市町村が管理する内部被ばくの実測値と外部被ばく線量などとの個人データの一元化を始めたが、こちらの進捗(しんちょく)状況も芳しくない。今後本格化する二巡目以降の甲状腺検査で結果を正確に評価するためにも、個人被ばく線量との関連を分析する体制整備が急務だ。 PS(2014.8.28追加):このブログの2011年7月30日に記載しているとおり、2011年7月27日の衆議院厚生労働委員会参考人質疑で、参考人として招かれた児玉教授(東京大学先端科学技術研究センター教授 東京大学アイソトープ総合センター長)が、「今回の福島原発の問題はチェルノブイリと同様、原爆数10個分に相当する量と原爆汚染よりもずっと多量の残存物を放出したことを前提としなければならない」と話しているとおり、*6は、3号機の爆発が水素爆発ではなく核爆発であり、環境に大量の核燃料を放出したことを意味している。そのため、吉田調書で、吉田所長が「爆発音がした。水素爆発だと思うけど・・」と連絡していたのは、事実確認前の話であり、事実ではないだろう。 *6:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014082701001722.html (東京新聞 2014年8月27日) 茨城のちりからウラン検出 原発事故の溶融燃料 東京電力福島第1原発事故直後に約170キロ離れた茨城県つくば市で採取した大気中のちりから、核燃料や原子炉圧力容器の材料のウランや鉄などを検出したとの研究結果を東京理科大と気象庁気象研究所のチームが27日までにまとめた。事故で溶けたウラン燃料が原子炉内の他の物質と混ざった状態で外部に放出されたことを裏付ける結果で、同大の中井泉教授は「事故直後の炉内や放射性物質の放出状況の解明につながる」とさらに詳しい分析を進めている。チームは、2011年3月14日夜から翌朝にかけてつくば市の気象研究所で採取された高濃度の放射性セシウムを含む粒子に着目し分析してきた。 PS(2014.8.28追加):*7のように、福島県立医大の教授は、「甲状腺がんの子供に原発影響は考えにくい」 としているが、このブログの2014.2.24に記載したとおり、東京の甲状腺専門の伊藤病院の岩久医師らは、日本甲状腺学会で関東の子どもの甲状腺異常の増加を発表している。そのため、原発の影響ではないとするのなら、その根拠を科学的に説明すべきだ。 *7:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG2803U_Y4A820C1CR8000/ (日経新聞 2014/8/28) 甲状腺がんの子供「原発影響考えにくい」 福島の検査で学会 福島県立医大の鈴木真一教授は28日、東京電力福島第1原発事故を受け福島県が実施している甲状腺検査で、がんの疑いが強いと診断、手術した子供の具体的な症例を横浜市で開かれた日本癌治療学会で報告した。がんは原発事故の影響とは考えにくいとの見方を示した上で、過剰診断や必要のない手術との声が上がっていることに触れ「基準に基づいた治療だった」と強調した。福島県の甲状腺検査は震災発生当時18歳以下の約37万人が対象。これまで甲状腺がんと確定した子供は57人、「がんの疑い」は46人に上る。子どもの甲状腺がんが急増した1986年のチェルノブイリ原発事故と比較し、鈴木氏は「症状も年齢分布もチェルノブイリとは異なる」とした。がんの57人のうち県立医大が手術した54人について、8割超の45人は腫瘍の大きさが10ミリ超かリンパ節や他の臓器への転移などがあり、診断基準では手術するレベルだった。2人が肺にがんが転移していた。残る9人は腫瘍が10ミリ以下で転移などはなかったが、7人は「腫瘍が気管に近接しているなど、手術は妥当だった」。2人は経過観察でもよいと判断されたが、本人や家族の意向で手術した。手術した54人の約9割が甲状腺の半分の摘出にとどまった。福島の甲状腺がんをめぐっては一部の専門家から「手術をしなくてもいいケースがあったのではないか」との指摘があり、患者データの公開を求める声があった。 PS(2014.8.30追加):上記のように、SPEEDIによる放射性物質の拡散予測や環境への放射性物質の放出量がわかっているにもかかわらず、それを公表して避難に役立たせることをせず、防げる被曝をさせたのだから、*8の訴訟は当然で、人の命がかかっていることを考えれば、1人当たり10万円の慰謝料は安いくらいだ。 *8:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014082901002106.html (東京新聞 2014年8月29日) 福島、被ばく対策不十分と提訴 親子88人、健康に深刻な不安 原発事故の被ばく防止対策が不十分で精神的苦痛を受けたとして、事故時に福島県に住んでいた親子88人が29日、国や県に対し、1人当たり10万円の慰謝料を求め、福島地裁に提訴した。訴状によると、国や県は事故発生後、空間放射線量の正確なデータを速やかに伝えないなど、住民の被ばくをできる限り抑える職務上の義務を怠り、子どもに無用な被ばくをさせた。その結果、親子に今後の健康へ深刻な不安を抱かせたとしている。原告のうち、今も福島県に住み小学校や中学校、特別支援学校に通う計24人は、居住地の自治体に対し安全な環境で教育を受ける権利があることの確認も求めた。
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2014,08,23, Saturday
*2より 2014.8.5日経新聞より 2014.8.5日経新聞より (1)九大と福岡県が次世代型燃料電池と下水汚泥由来水素の開発へ *1-1のように、九州大学と福岡県は、セラミックスを使った次世代型燃料電池を共同で開発して実用化に取り組む方針で、これは、主要部品の電解質に薄いセラミックス(焼き物)を使う「固体酸化物形」と呼ばれ、発電効率が高いそうだ。 また、水素は、太陽光や風力発電を使って製造したものを「水素ステーション」に貯蔵し、同時に、*1-2に書かれているように、福岡市、九州大、豊田通商等が、下水処理施設の汚泥から水素を取り出して燃料電池車の燃料として供給する実証実験を始めるそうだが、この技術開発は国土交通省の先端事業に採択されており、実用化できれば他の自治体でも活用できる。 (2)欧州の水素ビジネスも発進している *2のように、欧州企業は燃料電池車の普及をにらんで、燃料となる水素関連ビジネスに本腰を入れており、上の左図のような取り組み方をするそうだ。燃料電池車の開発も日本が最初で、1994年頃から始めているため、今頃、日米欧の主導権争いが激しさを増す構図というのは遅すぎて情けないが・・。 (3)次世代型セラミックス燃料電池と磁器の可能性 *3-1のように、日本ガイシが、世界No.1のがいしメーカーとして、これまでに培ってきたファインセラミック技術を最大限に活かして、次世代型セラミックス燃料電池(SOFC)の開発に着手している。また、*3-2のように、京セラも家庭でのエコロジー活動に適したシステムとして家庭用燃料電池のファインセラミックスの開発に力を入れ始めているが、どちらも、もともとは磁器メーカーである。 (4)佐賀県は次世代型燃料電池で製造業を育成して雇用を造ることができるのでは? *4-1のように、九州、佐賀県の自動車産業の現状と今後の展開を考える講演会が27日午後1時半から、佐賀市の県工業技術センターで開かれるそうだが、確かに、次世代自動車の普及に伴う産業構造の変化を踏まえた地場企業の参入戦略は重要だ。 私は、どんな形にでも成形でき、義歯にも使われている佐賀県有田町や伊万里市のファインセラミック技術を、日本ガイシや京セラと同様、次世代型セラミックス燃料電池に使えば大量に生産して利益を上げることができるため、佐賀県で製造業を育成して雇用をつくり、人口を維持するのに役立つと考える。 もちろん、*4-2のように、「有田焼」の名称が中国で事前に商標登録され、本場の佐賀県有田町の窯元が「有田焼」という名前を中国で使えなくなったようなことにならないよう、「有田焼ファインセラミック(made in Japan)」というような明確に区別できる特許や商標を世界で登録しなければならないのは言うまでもない。 *1-1:http://qbiz.jp/article/44238/1/ (西日本新聞 2014年8月20日) 燃料電池に特区推進費を活用 九州大と福岡県、次世代型の実用化めざす 九州大と福岡県は19日、同大伊都キャンパス(福岡市西区)で、国の総合特区推進調整費を活用し、次世代型の燃料電池の実用化に取り組む方針を明らかにした。同大とメーカーが発電などに使う燃料電池を共同で開発し、2017年の製品化を目指す。燃料電池は、酸素と水素の化学反応を利用して電気をつくり、水を排出する「究極のクリーンエネルギー」とされる。同大では、主要部品の電解質に薄い焼き物(セラミックス)を使う「固体酸化物形」と呼ばれるタイプの次世代型を研究。発電効率が高く、家庭用から火力発電の代替用まで幅広い用途が期待されている。同キャンパスには、13年1月に開所した「次世代燃料電池産学連携研究センター」があり、TOTO(北九州市)や西部ガス(福岡市)など16社が研究所を設置するなど燃料電池分野の研究拠点となっている。本年度、新たに国から17億5千万円の助成を受け、発電に対応する産業用(約250キロワット)や業務用(約5キロワット)の燃料電池を開発。耐久性や発電効率の向上に取り組む。太陽光や風力発電を使って製造した水素を同キャンパスの「水素ステーション」に貯蔵し、同大が購入する燃料電池車に供給する事業も行う。同大工学研究院の佐々木一成主幹教授は「九大が核となり最先端の研究をしたり、企業の製品開発を支援したりできるような態勢を整備したい。未来の社会を伊都キャンパスで実証して世界に発信したい」と話している。 *1-2:http://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/? (日経新聞 2014.8.20) 福岡市など実証実験 汚泥で水素製造 燃料電池車向け 福岡市や九州大、豊田通商などは4日、下水処理施設の汚泥から水素を取り出し、燃料電池車(FCV)の燃料として供給する実証実験を始めると発表した。都市部で多く排出される汚泥を有効活用する技術として2年後をめどに実用化を狙う。市によると、汚泥から水素を取り出し、燃料としてFCVに供給するまでの一連の事業は世界で初めて。福岡市の下水処理施設で2015年度末まで実験。1日3700立方メートルの水素を製造し、燃料電池車約70台分を満タンにできるという。同事業は国土交通省の先端事業に採択された。実用化に成功すれば他の自治体での技術活用を見込む。 *2:http://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/? (日経新聞 2014.8.20) 欧州、水素ビジネス発進 燃料電池車普及にらむ ダイムラーなど、供給拠点整備へ パイプライン敷設も 欧州企業が燃料電池車の普及をにらみ、燃料となる水素関連のビジネスに本腰を入れている。独ダイムラー、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルなどは2023年までに、「水素ステーション」をドイツに400カ所設けると発表した。欧州勢は水素の充填装置やパイプライン整備などでも先行しており、周辺ビジネスで主導権確保を狙う。次世代エコカーの本命とされる燃料電池車は水素と酸素を反応させてつくる電気を動力に使う。走行時に二酸化炭素(CO2)を排出しないのが特徴。水素の充填時間はガソリン車並みに数分で済み、フル充填で500キロメートル走行できるが、インフラの整備とコスト低減が課題になっている。ダイムラー、シェルは、産業ガスの仏エア・リキードと独リンデ、エネルギー大手の仏トタルとオーストリアOMVの4社と共同で約3億5千万ユーロ(約460億円)を投じ水素ステーションの整備に乗り出す。独国内の水素ステーションは現在15カ所。6社は23年時点で高速道路「アウトバーン」沿いで90キロメートルごとに1カ所、大都市には最低10カ所を設ける計画。参加各社はすでに水素関連ビジネスで実績を持つ。ダイムラーは燃料電池車200台を公道で走らせ研究開発を進めてきた。今年1月には日産自動車、米フォード・モーターと技術提携し、17年に数十万台規模で量産を始める予定だ。産業ガス世界首位のエア・リキードと同2位のリンデは、化学や半導体の工場などで使う水素の製造や配送のノウハウが豊富。燃料電池車の燃料に求められる純度の高い水素の低コスト生産を狙う。シェルなどは水素ステーションの実証実験をしており、ガソリンスタンド併設型の開発などで導入コスト削減を図る。中でもリンデは水素充填装置で約8割の世界シェアを握る。「近年はアジアからの受注が多く、出荷は前年比2~3割増」(同社)としており、日本のほか米国、韓国向けの受注が増える見通しだ。欧州ではノルウェーが、自国で生産する天然ガスを改質した水素を融通する長さ580キロメートルのパイプラインを整備済み。国営石油会社のスタトイルが燃料電池車向けの水素供給事業で他国に先駆ける。欧州は各地にガスパイプラインが張り巡らされており、他国でも新規に水素インフラの整備も進めやすい。日米欧の自動車大手は15年以降に燃料電池車を市販する計画で、20年代に本格普及する見通し。日本でも関連技術の開発が進んでおり千代田化工建設が大型の水素供給基地を15年度にも建設し、川崎重工業が水素輸送船を開発する。今後は日米欧の主導権争いが激しさを増し、普及に向けて水素や関連設備のコスト削減も進む見通し。 *3-1:http://www.ngk.co.jp/invest/energy.html (日本ガイシ) 電力エネルギー分野の研究開発、次世代のエネルギー技術を創る ●NAS電池 日本ガイシの原点であるエネルギー分野では、世界No.1のがいしメーカーとして、送電電圧100万Vの超大型がいしをはじめ、落雷の被害を防ぐ避雷装置、配電自動化システムなど、電力の安定供給のために、さまざまな製品やシステムを提供してきました。現在、これまでに培ってきたファインセラミック技術を最大限に活かし、イオン伝導セラミックス・導電セラミックス・構造セラミックスをキーマテリアル、成形・焼成・加工・評価技術をキーテクノロジーとして、エネルギー分野の新たな柱となる事業フィールドへの積極的な進出を図っています。すでに量産を開始した電力貯蔵用のNAS電池システムをはじめ、セラミックスを利用した燃料電池(SOFC)などの開発に着手しています。 ●SOFCについて 近年、クリーンで高効率な発電システムとして燃料電池が注目されています。燃料電池の中でも、セラミックス製の燃料電池(固体酸化物形燃料電池:SOFC)は最も発電効率が高いため、次世代の高効率発電システムとして期待され研究が盛んに行われています。日本ガイシでは、SOFC発電システムの基幹発電部品であるSOFCモジュールの開発に取り組んでいます。全てにセラミックスを採用した当社独自の設計により、高効率発電と高耐久性の両立を可能にします。SOFCは、酸化物イオンのみを透過するイオン伝導性セラミックス(固体電解質)を多孔質の導電性セラミックス電極(空気極と燃料極)で挟み込んだ構造になっています。固体電解質で仕切られた片側に空気を供給し、反対側に燃料ガス(例えば水素や一酸化炭素を含むガス)を供給すると、1)空気中の酸素が酸化物イオンになり、2)その酸化物イオンが固体電解質中を移動し、3)燃料中の水素や一酸化炭素と反応して水や二酸化炭素になりますが、その際に電子を放出するため起電力が生じ、発電することができます。 *3-2:http://www.kyocera.co.jp/fcworld/consent/clean_energy.html (FINE CERAMICS WORLD) 家庭用燃料電池の心臓部で活躍するファインセラミックス 家庭用固体酸化物形燃料電池(SOFC)システム 家庭用燃料電池とは、電気を作る発電ユニットと、発電時に発生する熱でお湯を作る給湯ユニットの2つで構成されています。エネルギー効率が高く、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出や、窒素酸化物(NOX)、硫黄酸化物(SOX)などの発生が極めて少ない、家庭でのエコロジー活動に適したシステムとして、今後の普及が期待されています。 *4-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10103/96056 (佐賀新聞 2014年8月21日) 自動車市場参入拡大可能性探る 27日、佐賀市で講演会 九州、佐賀県の自動車産業の現状と今後の展開を考える講演会が27日午後1時半から、佐賀市の県工業技術センターで開かれる。地域の産業事情に詳しい研究者2人が電気自動車など「次世代自動車」の市場動向を交え、地場企業の参入拡大の可能性を探る。東京大教授の田中敏久氏、九州大准教授の目代武史氏が講演。田中氏はトヨタ自動車で部品の調達や販売業務に従事、北九州市参与(自動車産業担当)も務めた。次世代自動車の普及に伴う産業構造の変化を踏まえ、部品の電子化やユニット化による地場企業の参入戦略、大学や自治体との連携のあり方を解説する。目代氏は、自動車産業を対象とした技術経営や経営戦略を研究。九州や中国地方などの部品供給事情に詳しく、地場の中小企業に求められる取り組みについて話す。関連企業でつくる県自動車産業振興会(吉村正会長)が主催。定員50人で、会員以外は参加費2千円が必要。申し込み、問い合わせは県新産業・基礎科学課、電話0952(25)7129へ。 *4-2:http://qbiz.jp/article/43811/1/ (西日本新聞 2014年8月13日) 有田焼、中国でやっと商標登録 日本を代表する伝統工芸の「有田焼」の名称が、中国で勝手に商標登録されていた問題で、佐賀県有田町の窯元らでつくる県陶磁器工業協同組合は12日、名称とロゴを中国であらためて商標登録したことを明らかにした。創業400年が2年後に迫る中での解決に、関係者は「世界へのPRと大市場・中国への進出の大きな追い風」と歓迎している。登録したのは「有田焼」の名称と、色絵磁器の人間国宝だった故十四代酒井田柿右衛門さんが書いた「有田焼」のロゴ、「有田焼」が使用できない間、中国での展示会で使用した「有田瓷器(じき)」のロゴの計3件。組合によると、2010年秋に上海で開催した日本佐賀産品展の際、中国人事業者が04年11月に「有田焼」を商標登録していたことが発覚。このため窯元などは「有田瓷器」での出展を余儀なくされた。中国の商標法では3年間使用されない商標は、登録者以外でも取り消しを申請できる。町は12年4月に取り消しを、同時に組合が3件の商標登録を申請していた。今後は、窯元などが組合に申請すれば中国国内で有田焼として販売できる。組合の百武龍太郎専務理事は「有田焼のブランドを守るため監視体制も強化する」と話した。 PS(2014.8.24追加):*5のように、生物学の進歩で、微生物にクモの遺伝子を組み込んで、世界で最も強いと言われるクモ糸蛋白質を微生物に大量生産させることにも成功しているが、このようなことは、もともとは常識ではなかった。しかし、技術進歩で、このたんぱく質が容易に手に入る価格にまでなれば、自動車部品や車体などの工業製品にも使用でき、軽くて強い国産資源となるのである。 *5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11307562.html (朝日新聞 2014年8月20日) (ザ・テクノロジー)第3部・バイオ編:下 最強の糸、編み出す微生物 山形県鶴岡市の田園地帯にガラス張りの美しい建物が立つ。なかの「実験室」への出入りは厳しく制限されている。室内にあるのは、筒状のガラス容器だ。「企業秘密のため写真でしかお見せできませんが、これがクモの糸になるんです」と担当者は言う。ガラス容器のなかでは、ドロドロの黄色の液体が発酵している。まるで小さなビール工場のようだ。31歳の代表執行役、関山和秀が率いる慶応大発のバイオベンチャー企業「スパイバー」が目指すのは、人工的にクモの糸を合成し、量産化することだ。創業のきっかけは10年前の飲み会だった。慶応大4年だった関山は研究室の仲間らと「最も強い昆虫は何か」という話になった。「強力な毒を持つスズメバチだ」「それを捕食するクモの方がすごい」。議論は「捕食に使われるクモの糸はすごいらしい」という方向に。それが3年後の2007年、起業につながった。 * クモの糸は鋼鉄を超える強度とナイロンを上回る伸縮性を持ち、「世界で最もタフな繊維」と呼ばれる。車体や防弾チョッキ、人工血管など様々な分野に応用できそうで、次世代の素材の注目株だ。しかし、実用化には壁があった。クモは縄張り意識が強く共食いする。一度に多く飼育できず、糸の大量生産ができないのだ。「クモの糸」は、特殊なたんぱく質でできている。同社は、微生物を利用して、そのたんぱく質を再現できないか知恵を絞った。微生物は、細胞のなかの遺伝子がさまざまなたんぱく質をつくっている。スパイバーは微生物のなかに、別の遺伝子を組み込むことで、クモの糸と同じたんぱく質を、効率よく大量につくる基礎技術の開発にこぎつけた。スパイバーの強みは「自ら遺伝子を設計し、生産効率の高い遺伝子を作製できる点にある」と取締役の東憲児は語る。自前でさまざまな遺伝子を作って微生物に組み込む実験を繰り返し、大量生産が可能な組み合わせに行き着いた。昨年11月、トヨタ自動車系の部品製造会社「小島プレス工業」と共同で、試作研究施設を造った。来年から年間10トンの生産態勢に入る予定だ。スパイバーが取り組む手法は「合成生物学」と呼ばれる。米欧ではベンチャー企業から世界的大手までが入り乱れ、激しく争っている。
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2014,08,20, Wednesday
(1)産経新聞の朴大統領をめぐる噂の報道について
*1-1のように、韓国大統領府の尹広報首席秘書官が、「朴大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」と題する記事を掲載した日本の産経新聞に対し、民事・刑事上の責任を問う方針を示したそうである。私も、衆議院議員時代、日本の雑誌や新聞に事実と異なる失礼千万な女性蔑視記事を書かれることが多かったため、朴槿恵大統領には、ここでしっかり闘ってもらいたいと思っている。 これに対し、*1-3のように、産経新聞は、「東京本社にインターネット記事削除の要請があったが応じていない」とし、産経新聞東京編集局長が8月9日の紙面で、「問題とされた記事は韓国国会でのやりとりや朝鮮日報コラムの紹介が中心であり、この記事を理由に名誉毀損容疑で出頭を求められるというのは理解に苦しむ」としたそうだ。また、インターネットでは、「朝鮮日報のコラム書いたやつ逮捕しないの? あれが大元だろ」「言論統制そのもの」「こういうのをファシストと呼ぶ」などといった産経新聞を擁護する書き込みが少なくないそうだ。 一方、中国のメディアは、*1-2のように、「産経新聞がセウォル号沈没後、韓国の朴大統領が7時間以上にわたり行方不明となり、その間、男性と密会していた疑惑を報じた」「日本では、報道をめぐって外国メディアの記者が捜査対象にされるのは異例なのに、韓国政府は感情的になっていると報道された」「朴大統領の当日の行動に関する説明は不十分といった日本のメディアから批判的な声が聞こえている」などとしている。 しかし、産経新聞も、記事にして報道する以上は、内容の真実性に責任を負わなければならないし、韓国国会でやりとりがあったとしても、その書き方には責任がある。また、記事の内容が真実でない場合は、大統領であっても提訴する権利はあり、提訴されたことをもって感情的と逆ギレすべきではない。特に、朴大統領の場合は、「国と結婚する」と言って独身でいる人であるため、この報道によるダメージは大きい上、実際には、(若くは見えるが)62歳の朴大統領が朝9時から変な意味で男性と密会していたというよりは、人と会って秘密にしなければならないような会議をしていた可能性の方が高い。 (2)笹井氏と小保方氏の場合 STAP細胞論文の共同執筆者で、理化学研究所発生再生科学総合研究センターの笹井副センター長(52)が8月5日、先端医療センター研究棟内で首を吊って自殺した。 これを、*2-1では、7月27日に放送されたSTAP細胞問題に関する「NHKスペシャル」で、理研の調査委員会に提出された笹井氏と小保方氏のメールのやりとりのうち、「小保方さん本日なのですが、東京は雪で、寒々しております。小保方さんとこうして論文準備ができるのを、とてもうれしく思います」などの個人的なメールが暴露されたことが原因で、笹井氏は、「交際疑惑までささやかれていた」「すべてを他人の責任にしてリセットできる人は自殺しない。自殺は責任感の極まるところ」などとしているが、この個人メールの内容は、上席研究員が部下の女性研究員に部下を持ちあげる丁重なメールを送ったもので、どう見ても性的な関係のある男女間のメールではない。 そして、*2-2のように、笹井氏が妻と兄に宛てた遺書には、自殺する理由について「マスコミなどからの不当なバッシング、理研や研究室への責任から疲れ切ってしまった」「今までありがとう」「先立つことについて申し訳ない」などの言葉が記されていたそうだ。普通の人はそれまでの仕事の積み重ねによる実績を背景に現在及び将来の仕事のネットワークを作っているものだ。そのため、全てを他人のせいにしたり、リセットしたりできる人は、マッチポンプの記者か役人くらいしかいないにもかかわらず、実績ある人の実績を否定して破滅に追い込み、責任の一端すら感じないメディアや評論家の言動には呆れる。 (3)両者に共通するものは、女性蔑視だ 両者は、活躍している女性を貶めるための下品な性的スキャンダルであるという点で共通している。 朴大統領の場合は、全体として、すでにトップに立っている女性を目障りと感じる者が叩き落とそうとしてでっちあげたものだろう。私は結婚しており、そのようなことに非常に気をつけていたので、衆議院議員時代にそういうケチのつけられ方をすることはなかったが、そのかわりに週刊文春やインターネットによるキャリア・ウーマン叩きの嘘記事で、これまで作ってきた実績をなきものされた。それは、被害者にとっては、過去の被害ではなく、現在の被害であり、未来に影響している被害なのである。 また、小保方氏の場合は、部下としてかわいがってもらわなければ自らの研究が進まない上司である笹井氏とのよい関係を男女関係としてバッシングされたもので、それにより、女性研究者の協力者となった優秀な男性研究者もバッシングされ、「女性研究者と一緒に仕事をするのはこりごりだ」という風潮ができてしまい、こういうことは、男女の機会均等を阻む要因となる。そして、これも、私が公認会計士として働いていた頃、能力を評価して引き上げてくれた男性上司との関係を変に言われたり、たまたま乗り合わせたエレベーターから一緒に降りてきただけで「どういう関係か」と言われたりして、理解ある男性上司の方に嫌な思いをさせることがあったので経験済だ。 そして、このような低レベルで品のない憶測記事は、女性が輝きながら働くのを妨げる敵の一つであるため、必ず駆逐しなければならないと考えている。 <朴大統領の場合> *1-1:http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2014/08/07/0400000000AJP20140807002200882.HTML 【ソウル聯合ニュース 2014/8/7】 朴大統領めぐるうわさ報道 産経新聞に「責任問う」=韓国 韓国青瓦台(大統領府)の尹斗鉉(ユン・ドゥヒョン)広報首席秘書官は7日、「朴槿恵(パク・クネ)大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」と題する記事を掲載した日本の産経新聞に対し、民事・刑事上の責任を問う方針を示した。この記事は朝鮮日報のコラムと証券街の情報などを引用し、朴大統領の私生活に関するうわさを報じており、外国のマスコミが他国の首脳を侮辱したと物議を醸していた。尹秘書官は「口にするのも恥ずかしいことを記事にした。うそを書いて読者を増やせるのかもしれないが、とことんまで厳しく対処していく」と述べた。また、市民団体がすでに産経を告発したことも明らかにした。これと関連し、最大野党・新政治民主連合の安敏錫(アン・ミンソク)国会議員は同日の人事聴聞会で、社会副首相兼教育部長官に指名された黄祐呂(ファン・ウヨ)氏に対し「朴大統領が所在不明だった7時間の間に何らかの不適切な行為をしたといううわさを産経が掲載した」と述べた。また「もしもわれわれが日本の首相や天皇について同じような記事を書いたなら、(日本は)黙っているだろうか。プライドもないのか」と追及した。 *1-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140820-00000031-rcdc-cn (YAHOOニュース Record China 2014年8月20日より) 産経の朴大統領報道、韓国検察は「重罪」を検討、日本では「韓国は感情的」と反発の声―中国メディア 2014年8月20日、環球時報(電子版)は「韓国、産経記者に重罪を検討」と題し、産経の朴槿恵(パク・クネ)大統領報道に関して、韓国検察側の姿勢と日本メディアの反応を伝えた。産経新聞は今月3日、セウォル号が沈んだ当日の朴大統領の動向について、韓国紙・朝鮮日報のコラムなどを引用しながら、「朴大統領が7時間以上にわたり行方不明となっていた。その間、男性と密会していたのではないか」という疑惑を報じた。同報道に韓国は国家元首の名誉棄損と批判し、18日には産経新聞のソウル支局長・加藤達也氏がソウル中央地検で事情聴取を受けた。韓国・国民日報によると、検察側は加藤達也氏に対し情報通信網法の名誉毀損罪の適用を検討している。同罪が適応されれば、7年以下の懲役、10年間の資格はく奪または5000万ウォン(約500万円)の罰金が言い渡される。一方、韓国の検察側の姿勢に日本メディアからは批判的な声が聞こえている。日本では、「報道をめぐって外国メディアの記者が捜査対象になるのは異例。韓国政府は感情的になっている」「朴大統領の当日の行動に関する説明は不十分」といった報道が見られた。 *1-3:http://www.j-cast.com/2014/08/09212789.html (Jcastニュース 2014/8/ 9) 産経新聞ソウル支局長に出頭要請 朴大統領めぐる報道で「名誉毀そん」の疑い 産経新聞がインターネットに掲載した記事で韓国の朴槿恵大統領の名誉を毀そんしたとの市民団体の告発を受けて、ソウル中央地検が同社ソウル支局の加藤達也支局長(48)に事情聴取のため出頭するよう求めたことがわかった。産経新聞は2014年8月9日付朝刊で、加藤支局長が12日に出頭するよう求められていることを明らかにした。8月3日、「MSN産経ニュース」に掲載された「追跡~ソウル発 朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」の記事が問題視されている。 ●「名誉毀そん容疑で出頭。理解に苦しむ」 記事は、4月16日に起きた旅客船・セウォル号の沈没事故の当日、朴大統領の姿が7時間にわたって確認できなかったことをめぐり、その間の行動などに韓国国内で論議が高まっているという内容。セウォル号事故などをきっかけに、6割前後だった朴大統領の支持率が4割に落ち込んだことを引き合いに、「こうなると吹き出してくるのが大統領など権力中枢に対する真偽不明のウワサだ。こうした中、旅客船沈没事故発生当日の4月16日、朴大統領が日中、7時間にわたって所在不明となっていたとする『ファクト』が飛び出し、政権の混迷ぶりが際立つ事態となっている」との書き出しではじまる。韓国の国会内での議論やうわさ、地元紙、朝鮮日報に掲載されたコラムなど公開されている情報をもとに、それらを紹介するかたちで書かれている。ウェブサイトへの掲載後、産経新聞には韓国大統領府からソウル支局に抗議があったほか、在日本韓国大使館から東京本社に「名誉毀そんなどにあたる」として記事削除の要請があったが、同社は記事の削除に応じていない。小林毅・産経新聞東京編集局長は8月9日付の紙面で、「問題とされた記事は韓国国会でのやりとりや朝鮮日報コラムの紹介が中心であり、この記事を理由に名誉毀損容疑で出頭を求められるというのは理解に苦しむ」とコメントしている。インターネットでは、「朝鮮日報のコラム書いたやつ逮捕しないの? あれが大元だろ」「言論統制そのもの」「こういうのをファシストと呼ぶ」などといった産経新聞を擁護するカキコミが少なくない。 <笹井氏と小保方氏の場合> *2-1:http://news.livedoor.com/article/detail/9122028/ (livedoor NEWS) 笹井氏悲劇の裏に「裏切りリーク」「小保方氏とのメール暴露」 笹井芳樹悲劇の裏には一体、何が!? STAP細胞論文の共同執筆者で、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB=神戸市)の笹井芳樹副センター長(52)が5日、同センターの施設が入る先端医療センター研究棟内で首をつっているのが発見された。現場には遺書が残されており、自殺とみられる。同論文主著者の小保方晴子研究ユニットリーダー(30)も大きなショックを受けているという。それにしても日本有数の再生医学の権威は、なぜ死に場所にあえて研究棟を選んだのか?理研の広報室などによると午前8時40分ごろ、笹井氏が首をつっているところをセンター関係者が発見。ただちに警察と消防に通報し、隣接する神戸市立医療センター中央市民病院に運ばれたが、午前11時3分に死亡が確認された。現場状況から事故や他殺の可能性はないという。5日午後、笹井氏の自宅に人の出入りはあったものの、報道陣への応対はなかった。笹井氏は遺書とみられる書面を4通残し、3通が自殺現場にあった。小保方氏宛てのほか、部下やCDBの竹市雅俊センター長(70)への謝罪、さらに理研の関係者宛てに、残された家族に対してのことが書かれていたという。また、笹井氏の研究室内にある秘書の机には、総務課長らへの遺書があったという。関係者によると、小保方氏宛てのものには「STAP細胞を再現してください」という趣旨の言葉が記されていた。ノーベル賞候補と称されたこともあるエリート研究者の自殺の裏側には何があったのか。理研の関係者は「笹井さんは裏切られたと話していました」としてこう語った。「笹井さんは味方も多いが、敵も多かった。その反笹井派がやったNHKを筆頭にしたマスコミへのリークが度を越えていた」。度を越えたリークとは、個人的なメールの暴露で、それもかなりひどい状況だったようだ。理研から与えられたアドレスで小保方氏と行ったやりとりが、調査で公表していない部分まで全て漏れていたというのだ。笹井氏は6月に「自分が出したメールがバラまかれている。その内容をコピーしたものを添えて、私をバカにするような内容のメールが届いた」と、あるジャーナリストに明かしていた。確かに先月27日に放送されたSTAP細胞問題に関する「NHKスペシャル」では、理研の調査委員会に提出された笹井氏と小保方氏のメールのやりとりが放送された。「小保方さん本日なのですが、東京は雪で、寒々しております。小保方さんとこうして論文準備ができるのを、とてもうれしく思います」と男性のナレーションで笹井氏のメールを紹介。続けて女性の声に変わり「また近いうちにご相談にうかがわせていただけないでしょうか」との小保方氏のメールが、画像をバックに読み上げられた。「騒動が過熱してからは笹井さんも小保方さんも理研のアドレスを一切、使用しなくなった。メールの盗み見とリークについては、小保方さんも笹井さんも『そんなことまでするのか』と疲弊していました」(前出の関係者)。ましてや2人には交際疑惑までささやかれていたから、なおさらだ。理研内部の何者かの裏切りリークに心を痛めつけられたことが、自らの命を絶つ引き金になった可能性は否定できない。自殺場所として選んだのは、自宅でもなく、研究拠点である発生・再生科学総合研究センターでもない。自分の研究室がある先端医療センター研究棟2階でもなく、iPS細胞の研究もしている先端医療センター研究棟5階の階段部分だった。メールをリークした裏切り者へ「なぜそこまでする?」という抗議の意図があったのだろうか。精神科医の東京・銀座泰明クリニックの茅野分(ちの・ぶん)院長は、こう指摘している。「STAP細胞やiPS細胞の研究をしていた場所で自殺をしたのは、内心STAP細胞が本当にあるのかと疑問に思いつつも、わが命を懸けてでも最後の責任を取り、誠意を表したいと思ったのでは。殉死したという印象。武士の切腹に近いものを感じる」。また、一方で「すべてを他人の責任にしてリセットできる人は自殺しない。自殺とは責任感の極まるところ」と茅野氏は、笹井氏の自責の念が自殺という選択肢を引き出してしまったのでは、ともみている。笹井氏が心理的なストレスで3月に入院していたことも、5日に明らかにされた。本紙もその当時、笹井氏の精神不安を報じている。小保方氏も大きなショックを受けており、騒動の発端となったSTAP細胞論文に影響も出そうだ。自殺で失ったものは計り知れない。 *2-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140812-00000107-mai-soci (毎日新聞 8月12日) <笹井氏自殺>家族宛て遺書も 遺族「絶望しか見えない」 STAP細胞論文の著者の一人で、自殺した理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の笹井芳樹副センター長(52)の遺族の代理人弁護士が12日、大阪市内で記者会見し、家族宛ての遺書の概要を明らかにした。自殺する理由について「マスコミなどからの不当なバッシング、理研や研究室への責任から疲れ切ってしまった」との趣旨の記述があったという。代理人の中村和洋(かずひろ)弁護士によると、遺書は妻と兄宛て。いずれも「今までありがとう」「先立つことについて申し訳ない」などの言葉が記されていた。笹井氏の状況について、遺族は中村弁護士に「論文の疑惑が指摘された今年3月ごろから心労を感じていた。6月にセンター解体の提言を受け、相当ショックを受けていた。精神的に追い込まれ、今回の事につながった」と話したという。遺族は中村弁護士を通じて出したコメントで「突然の出来事を受け入れることができずにいます。今は絶望しか見えません」と心境を明かした。理研の職員や研究者には「おわびのしようもありません。一日も早く、研究・業務に専念できる環境が戻ることを切に願うばかりです」としている。 PS(2014.8.22追加):*3に「科学論文ではどんな仮説を立て、実験でどう検証し、結論に至ったかを具体的なデータを示し理路整然と説明しなければならない」と書かれているが、それは科学論文だけではなく、新聞記事でも同じだ。にもかかわらず、日経新聞を筆頭とする日本の新聞は、消費税増税、原発事故、年金削減の影響などについて、具体的なデータを出して理路整然と説明することなく、意図的に政策誘導している役所の広報をまる写しして嘘の多い報道をしているため、このようなことを書くとおこがましいのだ。新聞等のメディアがこのような報道しかできなければ、国民は、選挙権のある主権者として当然持っておくべき知識や情報を知ることができず、民主主義が形骸化するので、問題なのである。 なお、「万能細胞はES細胞か、iPS細胞しかありえない」と考え、そのための証拠探しに時間を費やすような研究者は、これまでの常識にとらわれすぎて常識を覆すような大発見はできない。しかし、ES細胞やiPS細胞も最初は常識を覆す大発見だったのであり、できないという考えをいくら述べても、科学の進歩を妨げこそすれ、世の中の役には立たない。 *3には、「笹井氏は、嘘は避けつつ曖昧さの残る書き方が目立つ」とも書かれているが、ES細胞やiPS細胞も最初の論文からすべてPerfectにわかっていたわけではなく、新事実を発見して実用化していく場合には、段階的に解明していくのが当たり前だ。なお、新聞は、データを無視して平気で嘘を書いているため、「研究者は嘘は書かない」という点を見習うべきである。 また、「笹井さんほどの人が、なぜ小保方氏以外にも再現実験させなかったのか」とのことだが、第一線の研究所では、(女性であれ、男性であれ、また年齢がいくつであれ)研究者が自らの研究者生命を危うくするような捏造データを出してくるとは疑わないのが普通であり、そのような画期的な発見について他の研究者に再実験をさせると、秘密を守れない可能性があるとともに、誰が(教科書に載るような)最初の発見者かわからなくなってマナー違反であるという理由が考えられる。 *3:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO75986690S4A820C1SHA000/?dg=1 (日経新聞 2014.8.22) STAP、悲劇防ぐためにも徹底究明を(真相深層) 理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の笹井芳樹副センター長が自殺し、STAP細胞の論文不正を巡る真相究明が危ぶまれている。笹井氏は最初から、いくつかの不自然な点に気づいていたともいわれる。残されたデータや共同研究者らの聞き取りをもとに、論文作成の経緯を丁寧にたどる必要がある。 ■論文の土台に 「ひどい書き方だった」。英科学誌「ネイチャー」に載った小保方晴子研究ユニットリーダーが数年前に書いた論文を見た研究者は振り返る。笹井氏の指導を受けて見違えるほどよい出来栄えに仕上がり、ネイチャー論文の土台となった。科学論文ではどんな仮説を立て、実験でどう検証し、結論に至ったかを具体的なデータを示し理路整然と説明しなければならない。笹井氏はSTAP細胞の存在を示す画像やグラフをそろえるよう小保方氏に次々と指示、同氏は手際よくデータを出したとみられる。画像などの出どころはチェックされないまま作業は進んだ。「笹井さんほどの人が、なぜ詳しく検証せず、小保方氏以外にも再現実験させなかったのか」と、笹井氏と仕事をした経験のある研究者は首をかしげる。ネイチャーのSTAP論文は2本ある。発表当初、多くの研究者が驚いたのは、笹井氏が責任著者の一人となった短い方の論文の冒頭にある画像だ。STAP細胞から作ったとされる胎児マウスの体、それを包む羊膜、胎盤などがすべて緑に光っているように見えた。緑の光はSTAP細胞があらゆる組織に育ったことを示す証拠となる。胚性幹細胞(ES細胞)など他の万能細胞は羊膜や胎盤を作らないとされており、笹井氏らは記者会見などでこの画像をもとに、STAP細胞の優れた性質を強調した。論文の不正が明らかになりSTAP細胞の存在が揺らいでからも、この画像は謎とされた。STAP細胞が作られていなかったとしたら、なぜ胎盤や羊膜が光ったのか。 ■謎残されたまま 医科学系の若手研究者は「ES細胞を使った場合でも光って見える可能性がある」と指摘する。ES細胞は羊膜の一部にはなれる。胎盤にある母体から入った細胞や血管も光り、論文の画像のように見えることもある。論文はES細胞が胎盤部分に見いだされるのは「まれ」と記述し、これらに「ならない」とは書いていない。STAP細胞は胎盤や羊膜などに「寄与した」としながら、どこにどう寄与したかは明記していない。嘘は避けつつ、あいまいさの残る書き方が目立つ。笹井氏は画像がSTAP細胞の万能性を示す証拠として「弱い」と気づきながら、問題点をオブラートで包むように慎重に書いたのではないかとの見方が出ている。STAP細胞の主張が虚構だったのかを知るうえで重要な点だ。ES細胞を使って実験し、詳しく検証する必要がある。もう一方の論文の謎も残る。マウスの血液細胞から作った「STAP幹細胞」に、もとの血液細胞の「痕跡」があることを示す遺伝子解析データがないことだ。これでは、成熟した細胞が受精卵に近い状態に戻り「初期化」したといえない。CDBの自己点検検証委員会は笹井氏らが論文発表前にこの問題を話し合った事実をつかんだ。「論文の一番の弱点だ。引き返すチャンスはあった」と委員長を務めた鍋島陽一・先端医療振興財団先端医療センター長は残念がった。笹井氏は細胞の一部を新しい培地に移すことを繰り返すうちに痕跡が消えたと解釈し、詳述を省いた。重大な問題を素通りするよう笹井氏をせき立てたのは何か。論文掲載が年度内に間に合わないと、予算上の不都合があったのか。米国で特許出願し、内容が既に公開されていたために競争を意識して急いだのか。笹井氏は論文撤回に抵抗した共同研究者のチャールズ・バカンティ米ハーバード大学教授との交渉の窓口にもなっていた。特許問題などを巡り、どんなやりとりがあったのか。「笹井氏はCDBを守るために犠牲になった」という声を若手研究者から聞いた。STAP論文ができた経緯を深追いしない空気も出ているようだが、逆だろう。悲劇を繰り返さないためにも詳細な調査が必要だ。
| 男女平等::2014.7~2015.5 | 05:48 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2014,08,17, Sunday
2014.8.10西日本新聞 *3より *6より 施設園芸 (1)自給率より自給力で意味があるのか? *1-1、*1-2のように、観念的な農業論を展開する大新聞は、農地を守るためには「食料自給率」よりも「いざというときに食料増産ができる潜在的な生産力、食料自給力が必要なのだ」としている。 その理由の一つを、2013年度の食料自給率がカロリーベースで4年連続39%であり、数値目標を掲げても改善する気配がないからとしているが、目標に達しないから目標を下げるのでは目標を掲げた意味がない。また、「50%の目標に妥当性はない」というのも、私がこのブログの2014年1月8日に記載したとおり、他の先進国と比較すれば、80%程度の食料自給率を確保しても当たり前なのである。 また、日本で食品ロスが多いのは事実だが、それを実際に減らして食料自給率を上げることが必要なのであって、食品ロスが多いから食料自給率の目標を下げてよいというのは本末転倒だ。さらに、耕作放棄地が多いのは、現在、農業が本当の意味で儲かる産業になっていないからであり、それを変えるために、生産性の向上や付加価値の増加を促しているのである。 *1-2には、「自給率の引き上げにこだわりすぎれば、効果の乏しい政策に巨費を投じることになり、その代表例は、コメの生産調整(減反)とセットで進めてきた麦や大豆などへの転作奨励策で、費用対効果があいまいなまま、転作補助金が膨らむ」とも書かれているが、そう言う人は、安全な麦や大豆をずっと輸入し続けられると考えているのか、答えてもらいたい。必要になってあわてて増産しようとしてもそうはいかないのが農業であり、現に耕作放棄地が増え続けている理由は、(長くは書かないが)麦や大豆への転作奨励ではない。 なお、現在、日本人は、小麦も多く消費しているので、「主食は米」という考え方もおかしい。農業は産業であるため、必要なものを作らなければ国内でも売れないし、外国では、料理の仕方や食事の中での位置づけが異なるため、誰でもジャポニカ米がとりわけ美味しいと感じるわけではないのである。 (2)農協改革に異論が噴出するのは当然である *2のように、自民党幹事長会議では、政府が進める農協改革について、地域経済の再生に逆行しているとして、決定内容の見直しを求める意見が噴出したそうだが、確かに、規制改革会議など政府の審議会では、農業地域を廻ったことすらない民間議員が政策決定を主導し、その改革案には、私がこのブログの2014年7月12日に記載しているように、農協が諸悪の根源という的外れの思い込みがあった。 自民党は、与党時代が長かったため、地方議員にネットワークができており、そこから要望が上がってくる仕組みがあるが、規制改革会議は東京人の先入観と都合で政策を決めて突き進むため、こういうことになるのである。 (3)佐賀県における新規就農者の増加 *3のように、佐賀県内では、新規就農者が増え続け、そのうち農業法人への就業者が多く、他の仕事を経験してから家業を継ぐ「Uターン」も伸びた。佐賀県は、私が衆議院議員になってすぐの2005年から、規模拡大や転作を言い始めて、すぐにそれを実行したため、他の地域よりも改革が進んで農業に明るさがある上、「青年就農給付金事業」が実施されているのが功を奏したと思われる。 また、現代農業は、IT、機械、設備をふんだんに使うため、農業に従事する前にそれらの製造業・サービス業に従事して、その仕組みを身につけておくのは有意義である。 (4)農業が成長産業になるための女性農業者の役割 *4のように、農水省の「輝く女性農業経営者育成事業」で、日本能率協会が、女性の就農人口を拡大し、地域農業を引っ張るリーダーを育成するために、女性農業者を対象とした「女性農業次世代リーダー育成塾」を開講したそうだ。 農業が真の成長産業になるためには、(男性と同じ年齢でよいが)需要・食品・栄養に詳しい女性が、農業の現場で意見を述べ、意思決定できる立場に多くいることが重要だ。しかし、男女別に研修を行うと、人的ネットワークの形成という意味で効果が半減すると考える。 *1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140806&ng=DGKDASFS05H0J_V00C14A8EE8000 (日経新聞 2014.8.6)農地守る「自給力」議論を 食料自給率、4年連続39% 農林水産省が5日発表した2013年度の食料自給率は、カロリーベースで4年連続で39%だった。農水省は00年につくった農政の基本計画から自給率向上の数値目標を掲げているが、いっこうに改善する気配はない。自給率を高めるために、もっと対策を手厚くすべきなのだろうか。基本計画の改訂は5年に一度で、来年はちょうど改訂年にあたる。すでに関係の審議会で議論が始まっており、自給率の向上を最優先の課題にすることを批判する声が出ている。例えば「50%の目標に妥当性はない」といった意見だ。そもそもいまの自給率に本当に危機感を持つべきなのだろうか。農水省によると、日本の食品ロスは推計で年500万~800万トンと、世界の食糧援助量の約2倍。「飽食」としか言いようがない食生活を維持することを前提に、自給率の向上を目標に掲げることには疑問符がつく。一方で危機はべつの面から迫っている。高齢農家がこれから大量に引退し、耕作放棄が急増する可能性が高まっているのだ。とくに深刻なのが消費が減り続け、収益性が落ちている稲作だ。そこで農水省は、家畜のエサにする飼料米の生産の旗をふる。一見すると、田んぼを守り、しかも日本の自給率を押し下げている飼料をつくるので一石二鳥。だが飼料米は巨額の補助金に支えられており、いまの財政事情で大幅に増産するのは無理がある。求められているのは、少ない労力とコストで農地を守る方策だ。もし食料問題が起きたら、そこで最も必要な作物をつくる。いざというときに食料を増産できる潜在的な生産力を、次代につなぐという発想だ。これに関連し、基本計画を論議している審議会では「自給率より自給力が重要」という意見が出ている。飼料米と比べ経費のかからない牧草を生やし、家畜を放し飼いにするといった方法が課題になるだろう。「息をのむほど美しい棚田の風景」。安倍晋三首相は日本の農業と農村の魅力をそう表現する。だが将来の世代に食料の生産基地としての農地を残すには、日本の田園風景が変わることまで視野に入れた政策転換が必要になっている。 *1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11303315.html (朝日新聞社説 2014年8月17日)食料の確保 自給率一辺倒をやめよ 昨年度の食料自給率は39%(カロリー換算)で、4年続けて横ばいだった。政府が目標とする50%への道筋は、全く見えないのが実情である。カロリー換算では、国産牛でも飼料を輸入に頼れば「100%自給」ではなくなる。消費者が安さを求め、価格では海外産に太刀打ちできない品目が少なくない現状を考えると、カロリー換算の数値を絶対視することは賢明だろうか。国内での生産をできるだけ増やそうとする姿勢は大切だが、自給率の引き上げにこだわりすぎれば、効果の乏しい政策に巨費を投じることになりかねない。その代表例は、コメの生産調整(減反)とセットで進めてきた麦や大豆などへの転作奨励策だろう。減り続けるコメの消費に合わせて生産を絞る。余った田んぼで輸入頼みの作物を作れば、自給率も上がる。一見合理的だが、「費用対効果」があいまいなまま、転作補助金は膨らみがちだ。安い外国産に押される麦や大豆の生産は頭打ちで、現に耕作放棄地は増え続けている。政府はコメ政策を転換すると決めた。県ごとに置く機構を通じて田の集約と生産コスト削減を進め、4年後には国は減反から手を引く。それでも、需要に合わせて作るという考え方はそのままだ。麦や大豆から家畜に食べさせる飼料用米に力を入れる方針だが、非効率な補助金行政が温存されかねない。減反政策がもたらした「おいしくて高級」に偏ったコメ作りを多様化し、「より安く」も追求する。競争力を高めることが輸出への道を開き、国内生産の基盤を守ることにつながる。主食であるコメを中心に、そうした取り組みを進めるべきだ。海外からの調達が安定するよう相手国との関係を強め、廃棄や食べ残しによる「食品ロス」を減らすことも欠かせない。その意味で、日豪経済連携協定(EPA)に「輸出規制を新設・維持しないよう努める」といった規定を盛り込んだことは注目に値する。豪州以外の農畜水産物の輸出国からも同様の約束を取り付けてほしい。食品ロスは政府の推計で年500万~800万トンとされ、コメの生産量にも匹敵する。賞味期限から逆算して商品の受け取りに厳しく臨む小売業界の慣行を見直し、家庭での食生活を改めるなど、ただちに取り組めることは少なくない。食の確保は、自給率頼みでなく、多角的に考えたい。 *2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=29163 (日本農業新聞 2014/8/6) 農協改革に異論噴出 地方選影響も 自民党幹事長会議 自民党は5日、都道府県連の幹部を集めた全国幹事長会議を党本部で開いた。来春の統一地方選に向けて結束を図るのが狙い。集まった県連幹部からは政府が進める農協改革について、地域経済の再生に逆行し、統一地方選にも悪影響を及ぼしかねないとして、決定内容の見直しを求める意見が噴出した。農協改革をめぐっては、政府が6月末に決定して以降、同党の地方組織からは党本部に再考を求める要望が相次いでいる。来春の地方統一選が近づくにつれて、一段と懸念の声は強まりそうだ。全国幹事長会議に続いて行われた「政策説明会」であいさつした安倍晋三首相(党総裁)は統一地方選について「衆院選、参院選に続く大切な選挙だ。まなじりを決して戦い抜く」と決意表明した。全国幹事長会議では石破茂幹事長が「地方組織あってこその自民党だ。統一地方選で勝利して初めて政権奪還が完成する」と強調。選挙公約の主要テーマに「地方創生」を掲げる方針を示し結束を呼び掛けた。ただ、出席した県連幹部からは、政府が進める政策への懸念や不満の声が少なくなかった。特に目立ったのが成長戦略の柱に位置付けられている農協改革。会議は石破幹事長らのあいさつを除いて非公開だったが、出席者によると宮城、富山、福井、和歌山、福岡など複数の県連幹部から意見が出たという。ある県連幹部は農協改革について「唐突感があり、スピードも早く生産現場はついていけない」と性急さを批判。「食料自給率が上がらなかったのは政府の責任で、それを現場に押し付けている。農水省と現場と互いに改革を進めるべきで、今回のやり方は一方的過ぎる」と決定内容の見直しを求めた。別の県連幹部も、規制改革会議など政府の審議会に経済界寄りの民間議員が大勢入り、政策決定を主導していることについて「(選挙で選ばれていない)外部の人に振り回されるべきではなく、政策をきちんと分かっている党議員で進める必要がある」と指摘、決定内容の再考を求めた。 *3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10103/94418 (佐賀新聞 2014年8月16日) 給付金事業成果183人 「Uターン」伸び87人 佐賀県内の2014年(13年6月~14年5月)の新規就農者数は183人で、平成に入って以降でみると、12年の186人に次いで2番目に多かった。就農前後、生活費を支援する青年就農給付金事業などが一定の成果を上げているようだ。準備の進め方、営農の工夫などを就農者に聞いた。2014年(13年6月~14年5月)の新規就農者は、前年比16人増の183人だった。農業法人への就業者が過去最多となり、他の仕事を経験して家業を継ぐ「Uターン」が伸びたことが要因。県農産課は「景気は回復してきたが、雇用環境や賃金体系は改善しておらず、農業への期待感が高まっているのではないか」とみている。法人就業は前年比4人増の58人で、13年と10年の54人を上回って過去最多となった。21~25歳が15人で最も多く、31~35歳が14人、15~20歳が11人、26~30歳が10人。野菜や果樹、米麦、畜産が目立っている。Uターンは87人(前年比15人増)で、過去最多だった12年(88人)より1人少なかった。31~35歳が19人で、26~30歳、36~40歳がいずれも17人だった。野菜や米麦栽培が半数近くを占めている。新規参入は前年比6人減の21人。31~35歳が6人、26~30歳が5人、36~40歳4人で、他の世代はいずれも1人だった。ほとんどが収入が安定しやすい野菜栽培となっている。一方、新規学卒は前年より3人増えて17人となったが、過去3番目に少なかった。15~20歳が10人、21~25歳が6人、26~30歳が1人。施設野菜や果樹が中心となっている。全体の平均年齢は33・3歳で、前年から0・7歳上昇した。地域別にみると、ミカン栽培が盛んな藤津地区が前年比20人増の47人と大幅に増え、タマネギ生産が多い杵島地区が40人(同4人増)、東松浦地区が31人(同2人減)と続く。法人就業が伸びた背景については「国が生産規模の拡大、農業法人の支援に力を入れたことが影響している」と県農産課。45歳未満の就農希望者に研修中や独立後5年間、年150万円を給付する「青年就農給付金事業」が12年度から実施されており、「生活費を気にせず、農業に打ち込める。異業種から参入はもちろん、農業後継者づくりにも一役買っている」と指摘する。 *4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=28832 (日本農業新聞 2014/7/19) 女性の就農引っ張れ リーダー育成塾開講 選抜20人意気込む 日本能率協会 日本能率協会は18日、東京都港区で会見を開き、全国の女性農業者を対象に「女性農業次世代リーダー育成塾」を開講したと発表した。女性就農人口の拡大や、地域農業を引っ張る次世代のリーダーを育成することが狙い。90人の応募者の中から選抜した20人の塾生が参加し、地域農業への思いを語った。年齢に縛られないで地域のリーダーを育成しようと、参加する女性農業者の年齢は「非公表」(同協会)とした。育成塾は座学だけではなく、毎週土曜日に東京・六本木で開くヒルズマルシェに参加する他、来年3月には食品・飲料の展示会「FOODEX JAPAN(フーデックス・ジャパン)2015」でブース出展を予定するなど、実践にも力を入れるのが特徴だ。育成塾は、農水省の「輝く女性農業経営者育成事業」の一環で、今年度を第1回とし、16年度の第3回まで予定している。塾に参加した秋田 県横手市の米農家、佐藤愛生さんは「育成塾で学んだことを地元に持ち帰り、地域全体のレベルアップを目指したい」と意気込みを語った。静岡市の茶農家、鈴木まゆさんは「塾生のメンバー全員、地域農業のために何かしたいという意識が高く、刺激を受ける。このメンバーで頑張っていきたい」と笑顔で語った。同省女性・高齢者活動推進室の佐藤一絵室長は「農業が成長産業になるためには、若い女性がリーダーとして引っ張ることが必要だ」と激励した。 PS(2014.8.18追加):*5のように、米麦ではなく、果樹・野菜・花などを作れば、気候や高度差を利用して出荷時期をずらすことができるため、「中山間地=条件不利地」とは限らない。必要なのは、地形、気候、高度差を活かせる作物を探して付加価値の高いものを作ることで、秋田県の取り組みは評価できる。 *5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=29344 (日本農業新聞 2014/8/18) 中山間地の水田を無償で畑地化 秋田県が支援事業 米どころ秋田県が、今年度から中山間地域の農家が負担ゼロで水田を畑地化できる支援事業をスタートした。人口減少を食い止めるため、条件不利地でも一定の所得確保ができる基盤づくりが急務と判断。市町村ごとにプラン策定を進め、圃場(ほじょう)の排水対策や土層改良をして、園芸や畑作物への転換を進める。4カ年で20地区程度の事業実施を見込む。農業産出額の64%を米が占める秋田県では、米の需要減退や米価の下落傾向に農家の不安が募る。県は「稲作への依存を続ければ人口減少につながる」(佐竹敬久県知事)として、今年度からの県農林水産ビジョンでは園芸振興を強く掲げ、米の産出額の割合を今後4年間で50%(961億円)に引き下げる。平場に比べて作業効率が悪い中山間地域では、米偏重への懸念が特に強い。県はビジョンに畑地化事業を盛り込み、県農業の構造改革に本腰を入れ始めた。支援事業は、国の農業基盤整備促進事業をベースに、通常、畑地化工事に必要な農家負担分(7.5%)を、県がかさ上げする内容だ。事業利用によって、工事費負担は国55%、県35%、市町村10%になる。県は「これまで自己負担分が事業利用の足かせになっていた。中山間地でてこ入れしたい」(農山村振興課)と期待する。事業は客土、暗きょや用排水施設などの工事を実施しやすくする。また、国では対象外になる200万円以下の小規模工事でも、県が費用の半額を助成することにした。県によると「既に中山間地でプラン策定に動きだす市町村が5~7出てきている」という。山林が8割以上を占める五城目町もその一つだ。稲作が盛んな同町では60年前のピーク時に比べ、人口が半分の約1万人に減り、過疎化が県内でも速いペースで進んでいる。町内の農業者はそうした状況に危機感を感じている。農事組合法人山ゆりの小林正志代表は「米だけに頼っていては先細りだ」と訴え、大豆やエダマメへ転換をいち早く進めてきた。だが水田転作では水はけが悪く、大豆は10アール収量が150キロと低め。小林代表は「排水性を改善し、収益性を高める」と畑地化事業を活用するつもりだ。県は「厳しい生産条件でも、地域の特性に合った作物を振興して、担い手確保や6次産業化につなげてほしい」と話す。 PS(2014.8.20追加):*6のように輸出を伸ばすのは良いが、現在の国際空港である成田に輸出拠点を設けても、付近に優良な農産物を産出する産地が少ないため、それらの産地に近い地方空港や倉庫を利用した方が輸送費が安い上、投資効率がよいと考える。なお、上図に記載されているように、海外で「和食の方が優れている」とアピールしすぎるのは、日本で「フランス料理やイタリア料理の方が優れている」とアピールされすぎるのと同様、相手国にとっては、あまり気持ちのよいものではないことを認識しておくべきだ。それぞれの国には、先祖から伝わる気候に合った自慢の食文化があり、よいものを選びながら、それが歴史と共に進歩しているものだからである。 *6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140820&ng=DGKDASFS19H19_Z10C14A8PP8000 (日経新聞 2014.8.20) 国際空港近くに農産物の輸出拠点 農水省が要求、低温施設に補助 農林水産省は19日、2015年度予算案の概算要求に盛り込む重点事項をまとめた。20年に農林水産物・食品の輸出額を1兆円に倍増するために、成田空港など国際空港の近くに野菜や果物、花きなどの輸出拠点を設ける構想を進める。業者が輸出用の野菜などを長い間保存しておける低温貯蔵施設をつくる場合に補助する案も盛った。農林水産物・食品の輸出額は13年に約5500億円と過去最高となった。今年も記録を更新する勢いで増えているが、輸入額も年間で9兆円前後あり、圧倒的な輸入超過が続いている。成田空港など国際空港の近くに輸出拠点を設けるのは、野菜や果物などを鮮度を保ったまま海外に届けられるようにする狙いだ。政府はこれまでも農産物の輸出促進策をとってきたが、国内の生産コストや輸送費が高く、うまくいっていない。東アジアの富裕層のニーズをくみ取る取り組みが欠かせない。
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2014,08,15, Friday
*1-2より 2014.7.24東京新聞 *2-4より (1)フクシマ3号機の真実が、今までわからなかった筈が無い *1-1、*1-2に、フクシマ3号機の炉心溶融(メルトダウン)は、従来の推定より約五時間早い2011年3月13日午前5時半に始まり、翌2011年3月14日午前7時頃には圧力容器の底を突き破って格納容器に落ち、格納容器床のコンクリートを最大68センチ溶かして容器外殻の鋼板まで26センチに迫っていたと書かれている。しかし、本当に鋼板まで26センチなどと細かくわかるのならば、今まではわからなかったとする方が無理があり、核燃料の位置は出ている放射線量を測定すればすぐわかった筈である。 そして、3号機の爆発は核爆発のようだったため、核燃料が格納容器床のコンクリートを溶かしただけで、コンクリートにはひびも入っておらず、核燃料は容器外には出ていないとするのも無理があろう。 (2)放射能汚染水の処理について そのような中、核燃料の格納容器に地下水が流れ込み、地下水で核燃料を冷やしたため発生した高濃度汚染水は海に流し続けていたと考えられる。何故なら、そうしなければ、メルトスル―したり散らばったりした核燃料を冷やし続けることができないからである。 そして、*2-1のように、最初に導入された「アレバ」製の汚染水処理装置は、トラブルが相次ぎ3か月で停止したまま稼働しない状態となっていたので廃止することが決まったそうだが、この装置にかかった費用は「明らかにできない」とのことで、これは電気料金か税金で賄われたが、とても言えるような金額ではないということだろう。 また、*2-2のように、国と東電は、高濃度汚染水が溜まる地下坑道に金属性の管を設置し、冷却液を流して汚染水ごと凍らせる作業を続けてきたが、その効果が表れないため、先月30日から氷の投入を始め、さらに凍結の“切り札”として7日にドライアイス1tを投入しようとしたところ配管が詰まり、それ以降はドライアイスの投入を見合わせているとのことである。しかし、この結果は、やってみなくても、爆発の真実と小学校の理科を理解していれば予測できるため、この案を承認して実行した人と、そのために使った税金の金額を明らかにすべきだ。 さらに、*2-3には、政府と東電が、汚染水を減らすために、1〜4号機の周りの井戸から汚染された地下水(地下をゆっくり流れる大きな河のようなもの)をくみ上げ、浄化したうえで海に放出する計画を検討しており、そのくみ上げによって建屋への流入を1日200トン減らせると書かれているが、例えば川の水をくみ上げれば、そこに周りの水が押し寄せて水面の高さは同じになるため、地下水のくみ上げによって建屋への流入量を減らせるとは思えない。 さらに、*2-4の汚染水をせき止める海側遮水壁(水は壁では止められない)が完成すれば、地下水は横から出るか、水位が遮水壁より高くなるので、1~4号機の建屋周囲に「サブドレン(subdrain、副排水口)」と呼ぶ四十二本の井戸と護岸沿いの五本の井戸で地下水をくみ上げてタンクにまとめ、新たに整備する除染装置を通して基準値を満たせば原発前の港湾に流すことを予定しているというのも、その効果は限られるだろう。 このような中、*2-5のように、漁業関係者から「新たな風評被害につながる」などと反発が相次いだそうで、反発はもっともだが、それが「風評被害」だと言えるためには、基準値をクリアしているだけでなく、実害はないことを証明できていなければならない。 このように、汚染水対策の全貌を見れば、核燃料に触れて発生した高濃度汚染水が海洋を汚染して水産物も汚染されるという意識が低すぎ、もともと海洋放出ありきの対策を、税金を使い、「努力した」という形を造ってやっているだけのように見える。 (3)除染範囲について *3のように、環境省は、これまで除染の長期目標として個人の年間追加被曝線量を1ミリシーベルトと規定し、1時間当たりの換算推計値は0・23マイクロシーベルトと示してきたが、世界標準は個人の年間被曝線量が1ミリシーベルト以下なのであって、年間追加被曝線量ではないため、「追加」という言葉を加えたことにより年間1ミリシーベルトのごまかしがあった。また、空間放射線量は地面や溝の放射線量よりも低いため、空間放射線量を基準として使用すれば、本当の被曝線量よりも低い数値となる。 その上、空間放射線量が毎時0・3~0・6マイクロシーベルトの地域でも住民の追加被曝線量は年間1ミリシーベルトになったと説明しているが、それには個人差があり、個人で計れば不正確さも大きいため、私は、これは日本国憲法の基本的人権や健康で文化的な生活をする権利に反していると考える。 (4)除染廃棄物の中間貯蔵施設と最終処分場 (2)程度の科学的思考力の人が原発政策を進め、(3)のように国民の基本的人権や健康で文化的な生活をする権利を無視しているため、*4-1、*4-2のように、中間貯蔵施設を造るために総額3010億円の交付金拠出と言われても、その妥当性も検討しなければならない。 そもそも、中間貯蔵(過渡的で仮のもの)の名の下に、簡単な専用容器に入れたり、簡単な防水処理を施して地下に埋めたりするのでは、どの程度の放射性物質防御効果があるのか不明だ。そのため、私は、中間貯蔵ではなく、最大の防御をして、まっすぐ*4-3の最終処分場に入れるべきだと考える。 なお、*4-3では、日本学術会議が「一般の人が理解できる形」を強調したとしているが、(1)(2)(3)のようなことを許しながら、「一般の人が理解できる形」とはおこがましいにも程があり、暫定保管の保管施設も、電力各社に任せていては、原発の二の舞になるだろう。 (5)原発事故は生物(人間も含む)に影響があり、国民の大多数が脱原発である *5-1で、佐賀新聞は「原発事故で生物影響の恐れ」としか書いていないが、日米研究者が専門誌に掲載するということは、人間も含む生物に影響があることが明らかになったということである。 この事実は、原発と強い利害関係のない一般の人は事故当初から理解しており、*5-2のように、エネルギー基本計画を造る際には「パブリックコメント」で、9割超の人が 「脱原発」の意見だった。それでも、運転コストの安さを理由として原発の維持・推進を主張する人は、原発公害も含めたすべてのコストを考慮に入れて考え直すべきである。 <フクシマ3号機の真実> *1-1:http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20140807k0000m040051000c.html (毎日新聞 2014年8月6日) 福島第1原発:3号機炉心溶融、5時間早かった 東電解析 2011年3月の東京電力福島第1原発事故で、東電は6日、3号機の炉心溶融が、これまでの推定より約5時間早く起こっていたとする新たな解析結果を発表した。従来は燃料の約4割は原子炉圧力容器内に残っていると考えられていたが、炉心溶融が早まった分、燃料の損傷度合いも大きくなり、東電は大部分が格納容器の底まで溶け落ちたとみている。今後の燃料取り出し作業が困難になる可能性がある。政府の事故調査・検証委員会が12年に公表した最終報告書によると、3号機では、運転員が11年3月13日未明、非常用冷却装置「高圧注水系(HPCI)」を手動で止め、その後、6時間以上注水が中断した。その結果、同日午前9時すぎまでに炉心溶融が進んだとされた。しかし、東電が原子炉の圧力などのデータを再分析したところ、HPCIは手動停止より約6時間以上前の12日午後8時ごろには機能を失った可能性が高いことが判明。解析の結果、これまでの推定より約5時間早い13日午前5時半ごろには燃料が溶ける2200度に達したと判断した。現在の計画では、原子炉上部から遠隔操作で溶融燃料を回収する。大部分の燃料が格納容器の底まで落下していると、燃料までの距離が長くなるほか、炉内の構造物が障害になり、作業の難航も予想される。東電は「大部分が落下したという条件を加味して、いかに安全に取り出すかを考える」としている。 *1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014080702000128.html (東京新聞 2014年8月7日) 核燃料ほぼ全量落下 福島3号機 廃炉一層困難 東京電力は六日、福島第一原発事故で炉心溶融(メルトダウン)した3号機について、核燃料のほぼすべてが溶け落ちた可能性が高いとする解析結果を発表した。これまでは溶け落ちた量を六割程度とみていた。1号機でもすべての核燃料が溶け落ちたとみられており、廃炉のための核燃料の取り出しは、さらに難しくなった。解析結果によると、3号機では従来の推定より約五時間早い、二〇一一年三月十三日午前五時半に核燃料が溶け始め、翌日の午前七時ごろには圧力容器の底を突き破り、格納容器に落ちた。格納容器床のコンクリートを最大六十八センチ溶かし、容器外殻の鋼板まで二十六センチに迫っていた。これまでは最大63%の核燃料が溶け落ち、床面を二十センチ溶かしたとみられていた。3号機では一一年三月十三日未明、緊急用の冷却装置を運転員が手動で止めた後、ポンプ注水をしようとしたがうまくいかず、冷却の遅れにつながった。その後の調べで、前日の十二日午後八時ごろに冷却できなくなっていたと分かり、東電が解析し直していた。原子炉への注水で温度が下がったことから、東電の担当者は、圧力容器の中に核燃料の一部が残っているとみているが「核燃料の取り出し作業では、相当な量が落ちていることが前提となる」と説明した。一方、2号機では事故当時、炉内の圧力を下げられないまま消防車で注水したため、核燃料と水が反応して大量の水素と熱が発生。注水が中断し、核燃料の溶融を促したと分析した。解析結果と原発の新しい規制基準との関わりについて、原子力規制委員会事務局は「一般論だが、福島事故の教訓として得られる知見があれば、基準の見直しを図っていく」とした。 <汚染水への対応> *2-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140812/k10013742891000.html (NHK 2014年8月12日) 停止中の仏製の汚染水処理装置を廃止へ 東京電力は、福島第一原子力発電所で3年前に導入されたものの、トラブルが相次いで僅か3か月で停止したまま稼働しない状態となっていたフランス製の汚染水処理装置を廃止することを決めました。しかし、この装置にかかった費用は「明らかにできない」としています。東京電力は、福島第一原発の事故発生から3か月後、高濃度の汚染水がたまり続けている対策として、フランスの原子力企業「アレバ」製の処理装置を導入しました。この装置は、化学物質などを使って汚染水に含まれるセシウムなどの放射性物質を取り除くもので、東京電力は導入から3か月間で7万6000トンの汚染水を処理したとしています。しかし、運転を始めた直後からポンプが停止するなどのトラブルが相次いで停止し、その後、別の装置が導入されたこともあり、3年近くにわたって稼働していない状態が続いていました。この装置について、東京電力は、高濃度の汚染水を処理したために放射線量が高く、毎月行われる維持・管理作業のための作業員の被ばくが大きいとして廃止することを決め、近く、原子力規制委員会に申請することにしています。東京電力は「初期の汚染水処理に役だった」としていますが、この装置の導入や維持にかかった費用については「経営にかかわることで公表できない」としています。 *2-2:http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000032457.html (TVasahi 2014年8月12日) “切り札”投入したら「詰まった」東電・福島第一 福島第一原発の汚染水対策として、地下の坑道を凍らせて水を止める工事で、凍結の“切り札”として投入されたドライアイスの効果が表れていないことが分かりました。国と東電は、高い濃度の汚染水がたまる地下の坑道に金属性の管を設置し、冷却液を流して汚染水ごと凍らせる作業を続けてきました。しかし効果が表れないため、先月30日からは氷の投入を始め、今月11日朝までの間に、合わせて222tの氷を投入しました。東電は11日の会見で、凍結の効果について「分からない」としていて、目に見える成果が出ていないことを認めました。さらに、凍結の“切り札”として7日にドライアイス1tを投入しようとしたところ配管が詰まってしまい、それ以降はドライアイスの投入を見合わせているということです。一方、汚染水の発生を減らすため、原子炉建屋の周囲の井戸水をくみ上げて浄化する計画について、東電は、12日に試験的にくみ上げを始め、20日にも浄化を始めることを明らかにしました。 *2-3:http://mainichi.jp/shimen/news/20140807dde001040070000c.html (毎日新聞 2014年8月7日) 福島第1原発:建屋周辺地下水の放出計画 浄化後に海へ 福島第1原発で増え続ける汚染水を減らすため、政府と東京電力が、1〜4号機の周りの井戸から汚染された地下水をくみ上げ、浄化したうえで海に放出する計画を検討していることが、7日分かった。汚染前の地下水をくみ上げて海に放出する「地下水バイパス」は既に実施しているが、原子炉建屋近くの汚染された地下水もくみ上げ、汚染水の抑制を図る。東電などは7月から福島県漁連などにくみ上げに関する説明を始めており、了承が得られれば、9月末にもくみ上げを開始する。井戸は「サブドレン」と呼ばれ、建屋を取り囲むように設置されている。事故以前から、地下水位を調整するため掘られていた27本に加え、新たに15本を新設する。くみ上げる水は、事故直後に地面に降った放射性物質に触れ、放射性セシウムやストロンチウムの濃度が高くなっている。原子炉の冷却で生じる汚染水より放射性物質の濃度は低いが、東電は新たな浄化装置を作って放射性物質を取り除く。浄化後に海へ放出する場合は、放射性物質濃度が基準値以下であることを確認した上で判断する。汚染水は、地下水が原子炉建屋に流入することで1日当たり400トン生じている。汚染水を保管するタンクの増設は限界があり、東電はサブドレンからの地下水のくみ上げを汚染水対策の柱の一つと位置づけ、海洋放出を探ることになった。くみ上げによって、建屋への流入を1日200トン減らせるという。政府関係者は「海洋放出を検討しているが、地元の理解が得られるまでは実施しない」と話している。 *2-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014081202100004.html (東京新聞 2014年8月12日) 東電が排水設備申請 汚染地下水 放出ありき 東京電力福島第一原発の建屋周囲の井戸から放射性物質を含む地下水をくみ上げ、除染後に海に流す計画で、東電は十一日、この計画を約二年前から汚染地下水対策の有力な選択肢としていたことを明らかにした。これまでは「方針は未定」と公にせず、地元への説明を始めたのもつい最近で、「後出し」に地元の不信が強まりそうだ。東電は同日、海への排水設備の設置を原子力規制委員会に申請した。十二日にも試験的にくみ上げを始め、除染の効果を調べる。この水はタンクにため、海へは出さないという。東電の白井功原子力・立地本部長代理は十一日の記者会見で「地下水の行き先はタンクか、排出しかなかったが、方針を明確にできなかった。説明が遅れて申し訳ない」とした。東電の担当者は取材に、地下水のくみ上げを計画し始めた二〇一二年夏ごろから、海への放出は選択肢にあったと認めた。くみ上げる地下水は一日五百~七百トンに上り、ぎりぎりの運用が続く地上タンクにため続けることはできない。タンクの増設計画にも、くみ上げた地下水をためることは盛り込んでいなかった。一方で、護岸に建設中の汚染水をせき止める海側の遮水壁が完成すれば、地下水位が上がって汚染水の行き場がなくなり、地下水のくみ上げは欠かせないことは明らかだった。今回の海への放出計画では、1~4号機の建屋周囲の「サブドレン」と呼ばれる四十二本の井戸と、護岸沿いの新たな五本の井戸で地下水をくみ上げる。いったんタンクにまとめ、新たに整備する除染装置を通し、基準値を満たせば原発前の港湾に流す。東電は今秋にもくみ上げと放出を予定し、七日から地元漁協などに説明を始めた。地下水には高濃度の放射性物質が含まれていることから、反発も予想される。東電は海への放出を「地元の理解が得られなければしない」としている。 *2-5:http://www.minpo.jp/news/detail/2014080917375 (福島民報 2014/8/9) 漁業関係者反発相次ぐ 汚染水浄化放出計画 いわきで東電説明 東京電力福島第一原発事故による汚染水を浄化して海に放出する検討を始めた東電は8日、いわき市の中央台公民館で市漁協に計画の概要を説明した。出席した漁業関係者からは「新たな風評被害につながる」などの反発が相次いだ。反発により組合員向けの全体説明会開催のめども立たない状況だ。計画の説明は冒頭を除いて非公開で行われた。東電の新妻常正福島復興本社副代表らが計画内容を伝えた。終了後、矢吹正一組合長は計画の印象について「いくら浄化するとしても、もともとは汚染水。安易な気持ちで了解するわけにはいかない」と語った。出席者から反発が出たことを明かし、「漁業生命に関わる計画。地下水バイパスは苦渋の決断だったが、生命を懸ける決断となる」と述べた。新妻副代表も明確な反対意見があったことを認めた。「必要な対策と考えており、関係者に丁寧に説明していきたい」と述べ、計画ありきで進めない考えを強調した。 <除染> *3:http://www.minpo.jp/news/detail/2014081217416 (福島民報 2014年8月12日) 半数「理解得られない」 環境省の新除染方針 県内市町村アンケート 環境省が示した個人被ばく線量に基づく新たな除染方針について、汚染状況重点調査地域に指定されている県内40市町村のうち約半数の19市町村が「住民の理解を得られない」と受け止めている。11日までに行った福島民報社のアンケートで分かった。空間放射線量「毎時0.23マイクロシーベルト」が除染の目安として浸透しているなどの理由が目立ち、「国が責任を持って住民に説明すべき」とする指摘も出た。アンケートは6日から11日にかけて実施した。個人被ばく線量に基づいた新たな除染方針に、住民理解が得られるかどうか聞いた市町村別の回答は【表】の通り。「理解が得られない」とした19市町村からは、「毎時0.23マイクロシーベルトが除染の目安として住民に認識されており、方針変更は混乱を招く」とする意見が出た。方針を転換した国が説明の前面に立つべきだとする声も聞かれた。本宮市は「国が直接出向いて住民説明会を開くべき」と注文。同省が新方針で放射線防護策を講じるよう住民に求めていることに対し、西郷村は「(放射線の)自主管理を任せるのは無責任ではないか」と批判した。「どちらでもない」との答えが16市町村に上った。個人によって放射線に対する考え方が異なるため、理解が得られるかどうか判断がつかないとした回答が複数あった。三島町は国に対し、「住民の不安をあおらないよう取り組んでほしい」と求めた。一方、「理解を得られる」としたのは須賀川、相馬、伊達、塙、石川の5市町。「除染の効率化が期待できる」などの意見が目立った。須賀川市は「毎時0.23マイクロシーベルト」について、特定の条件の下で算出した値にすぎないと指摘。個人被ばく線量に基づいた新方針について「より実態に合った考え方」と評価した。 ※環境省の個人被ばく線量に基づく新除染方針 政府は従来、除染の長期目標として個人の年間追加被ばく線量を1ミリシーベルトと規定、1時間当たりの換算推計値は0・23マイクロシーベルトと示してきた。しかし、環境省は1日、福島など4市で行った調査で、空間放射線量が毎時0・3~0・6マイクロシーベルトの地域で住民の追加被ばく線量が年間1ミリシーベルトになったと説明。「0・23マイクロシーベルト」は除染目標でないとして、年間1ミリシーベルトの目標を維持しつつ空間線量から個人被ばく線量に基づいた除染を重視する新方針を示した。 <除染廃棄物の中間貯蔵施設> *4-1:http://qbiz.jp/article/43619/1/ (西日本新聞 2014年8月9日) 中間貯蔵施設、福島に3000億円提示 政府、交付金額で大幅譲歩 東京電力福島第1原発事故に伴う除染廃棄物を保管する国の中間貯蔵施設建設をめぐり、石原伸晃環境相と根本匠復興相は8日、福島県郡山市で佐藤雄平知事や候補地の双葉、大熊両町長と会談し、施設使用の30年間で総額3010億円の交付金を拠出する方針を提示した。中間貯蔵施設の交付金額は政府と福島側の交渉で最大の焦点。来年1月の施設供用開始を目指していたが、金額などをめぐり事態は硬直。政府がこれまで水面下で示してきた金額を3倍に増やし大幅に譲歩したことで、難航している交渉が進展する可能性が出てきた。会談で、石原環境相は「除染と復興を進めるのに必要不可欠な施設。今後、議会で国の対応方針を説明したい。それを踏まえて判断いただきたい」と理解を求めた。提示内容について、佐藤知事は「県として重く受け止める。今後、精査していく」と応じた。大熊町の渡辺利綱町長は「地元の要望をのんだ形だ」、双葉町の伊沢史朗町長は「額が出たことについては前進だ」と語った。3010億円の内訳は、大熊、双葉両町のほか県や両町以外の県内市町村を対象に新たに創設する「中間貯蔵施設交付金(仮称)」に1500億円。県全域の復興を効果的に進める事業に利用できる「原子力災害からの福島復興交付金(同)」を新設し、1千億円。電源立地地域対策交付金の増額分として510億円。交付金の総額は既存の立地交付金も加えると5千億円以上になる。福島県と地元2町は今後、既に政府が示している用地の賃貸借認可や県外最終処分の法制化など他の条件と合わせて、受け入れ是非を判断する。 ■中間貯蔵施設 東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た福島県内の汚染土壌などを最長30年間保管する施設。第1原発周辺の約16平方キロが候補地で、約3千万トンの貯蔵が可能。放射性セシウム濃度に応じ、1キログラム当たり10万ベクレル超の焼却灰や廃棄物は専用容器に入れて建屋で保管。10万ベクレル以下は防水処理などをして地下に埋める。福島県外で最終処分する法制化を国は約束しているが、最終処分場確保のめどは立っていない。 *4-2:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201408/20140809_61015.html (河北新報 2014年8月9日) 中間貯蔵 福島側「内容を精査」 慎重姿勢崩さず 福島第1原発事故に伴う除染廃棄物の中間貯蔵施設建設計画で、国が8日、新たな交付金の総額を3010億円と提示した。福島県と大熊、双葉両町が挙げた受け入れ条件に、国としては全て回答した形で、今後の焦点は福島側の対応に移る。佐藤雄平知事と両町長は、交付金について「前進だ」と評価しつつ、受け入れの是非は慎重に判断していく姿勢を見せた。佐藤雄平知事は会談後の記者会見で「大熊、双葉両町と内容をしっかり精査する。ボールは県にもあり、国にもある」と述べ、即座に受け入れ是非の判断には入らない考えを示した。大熊町の渡辺利綱町長、双葉町の伊沢史朗町長も同じ構えで、渡辺町長は「自由度が高いと言っても、どの程度か分からない。精査する」、伊沢町長は「交付金の中身を一つ一つ検討していく」と語った。国は来年1月の搬入開始を目指しており、9月には内閣改造も控える。石原伸晃環境相は、県議会や両町議会に説明したいとの意向を示し、「早急に検討し、受け入れの是非を判断してほしい」と求めた。ただ、5~6月に開かれた住民説明会では、交付金の規模よりも、用地補償の具体額提示を求める声が多く出た。国の最終回答では、用地補償について「受け入れ判断後に、具体的なイメージを示す」との内容にとどまっている。大熊町の渡辺町長は「原発事故前の評価で用地補償すべきだとの意見は多い。しっかりと要望していく」と話す。双葉町の伊沢町長は、双葉、大熊の両町議会が7月末、「拙速な判断は避けるべきだ」と両町長に申し入れたことを挙げ、「議会の意向を受け止め、慎重に対応する」と語った。 ◎住民不満「使い道分からぬ」「用地補償提示を」 中間貯蔵施設の建設受け入れを求め、国が地元側に3000億円規模の交付金の拠出を提示したことに対し、候補地の福島県大熊、双葉両町の住民からは「具体的な使い道が明らかにされていない」「問題は交付金だけではない」などと不満の声が上がり、住民目線に立った対応を求めた。大熊町から会津若松市に避難している武内正則さん(64)は「いつ町に戻れるか分からないのに、交付金が入っても積んでおくだけだ。放射線量が高くて帰還を断念している町民の方が多いのに、県も町も住民を見ていない」と交付金そのものを批判した。交付金の額に注目が集まる状況に対し、候補地の地権者の一人で大熊町から会津若松市に避難する根本充春さん(74)は「住民にとって重要なのは用地補償の問題。具体的な金額を早急に示してほしい。住民説明会をもう一度開く必要がある」と訴える。補償の行方を懸念する声も聞かれた。双葉町からいわき市に避難する中谷祥久さん(34)は「自宅は施設候補地の区域外にある。町民間で補償に格差が生まれないようにしてほしい」と望んだ。福島県知事選をにらんだ動きと見る向きもある。同町からいわき市に避難する男性(56)は「佐藤雄平知事に自民党が相乗りするためのお土産だ。知事に実績をつくらせる意図があるのだろう」と勘ぐった。 *4-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014081301001643.html (東京新聞 2014年8月13日) 「核のごみ」処分、年内に提言も 学術会議、「暫定保管」報告基に 日本学術会議は13日、原発から出る「核のごみ」の最終処分に関する検討委員会を開いた。取り出し可能な場所での「暫定保管」の課題を整理した二つの分科会の報告書案を基に、早ければ年内にも国への新たな提言をまとめる方針を確認した。最終処分場が決まらない問題で、今田委員長(東工大名誉教授)は国民的議論の喚起を期待。「一般の人が理解できる形」を強調。報告書案は、新たに生じる高レベル放射性廃棄物への対策を明確にしないままの原発再稼働や新増設は「将来世代への無責任を意味し、容認できない」と指摘。暫定保管の保管施設は電力各社の管内での建設が望ましいとしている。 <国民の大多数が脱原発> *5-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10208/94111 (佐賀新聞 2014年8月15日) 原発事故で生物影響の恐れ、日米研究者が専門誌に 【ワシントン共同】東京電力福島第1原発事故に伴って放出された放射性物質が、周辺の鳥類や昆虫に遺伝子異常を引き起こしている可能性があるとする論文を、日本や米国の研究者が14日、米専門誌ジャーナル・オブ・へレディティーに発表した。米サウスカロライナ大のティモシー・ムソー教授は、1986年のチェルノブイリ原発事故後に周辺でツバメの羽毛に白い斑点ができる異常が見つかったと指摘。福島でも白斑のあるツバメが見つかったとの報告があることから「遺伝子レベルの分析や生態系への影響など広範で長期的な調査が必要だ」と訴えた。 *5-2:http://digital.asahi.com/articles/ASG5L0FYJG5KULFA00K.html (朝日新聞 2014年5月25日) 「脱原発」意見、9割超 エネ計画のパブリックコメント 安倍内閣が4月に閣議決定したエネルギー基本計画をつくる際、国民に意見を募った「パブリックコメント」で、脱原発を求める意見が9割を超えていた可能性があることがわかった。朝日新聞が経済産業省に情報公開を求め、開示された分について原発への賛否を集計した。経産省は、そうした意見をほとんど反映しないまま、基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた。経産省が昨年12月6日に示した基本計画の原案に対し、対象の1カ月間にメールやファクスなどで約1万9千件の意見が集まった。経産省は2月に代表的な意見を発表したが、原発への賛否は集計しなかった。朝日新聞はすべての意見の公開を求め、経産省は、個人情報保護のために名前を消す作業が終わった2109件分のメール(2301ページ)を開示した。受け付け順で開示したとしており、残りの開示の可否は9月までに決めるという。内容は、再稼働反対や原発の廃炉を求める「脱原発」が2008件で95・2%、「原発の維持・推進」は33件で1・6%、賛否の判断が難しい「その他」が68件で3・2%だった。脱原発の理由では「原発事故が収束していない」「使用済み核燃料の処分場がない」との声が多かった。原案が民意に背いているとの批判もあった。一方、原発の維持・推進を求める声は、運転コストの安さなどを理由にした。民主党政権は2012年に「30年代に原発稼働ゼロ」の方針を決めた。だが、安倍政権はこれを白紙に戻し、今回の基本計画で原発を再稼働させる方針を明確にした。原発への賛否を集計しなかったことについて、茂木敏充経産相は2月の国会で「数ではなく内容に着目して整理を行った」と説明している。 ◇ 〈パブリックコメント〉 行政機関が政令などを定める際に広く一般から意見を募る仕組み。ウェブサイトなどで原案を公開し、電子メールやファクスで意見を集める。2005年に改正された行政手続法は「意見を十分に考慮しなければならない」と定めている。 PS(2014.8.16追加):*6のように、規制委は、トレンチにたまっている汚染水が海洋に流れ出す恐れを「最大のリスク」と位置付けているそうだが、汚染水は既に海洋に流れ出しているので、何を「最大のリスク」としているのか不明だ。また、東電の白井原子力立地本部長代理が「十分な検討が不足していた」「当初予定していたことができないことはあり得る」としているのも、熱交換の初歩的な原理すらわかっていない人が原子力立地担当者とは呆れるほかない。 *6:http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140814/dst14081408090001-n2.htm (産経ニュース 2014.8.14) 福島第1、凍らない「氷の壁」断念か 別工法も 19日に規制委が検討 東京電力福島第1原発海側のトレンチ(地下道)に滞留する汚染水を遮断するための「氷の壁」が3カ月以上たっても凍らない問題で、7月末から投入している氷やドライアイスに効果が見られないことから、政府が「氷の壁」の断念を検討し、別の工法を探り始めたことが13日、分かった。政府関係者によると、19日に原子力規制委員会による検討会が開かれ、凍結方法の継続の可否について決めるという。氷の壁は、2号機タービン建屋から海側のトレンチへ流れ込む汚染水をせき止めるため、接合部にセメント袋を並べ、凍結管を通し周囲の水を凍らせる工法。4月末から凍結管に冷媒を流し始めたものの、水温が高くて凍らず、7月30日から氷の投入を始めた。しかし氷を1日15トン投入しても効果がなく、今月7日からは最大27トンに増やしたが、凍結が見られなかった。12日までに投じた氷は計約250トンに上る。ドライアイスも7日に1トン投じたものの、小さい配管に詰まってしまい投入を見合わせ、12日に再開した。氷の壁が凍結しないことは、規制委の検討会でも有識者から指摘されており、「コンクリートを流し込んでトレンチを充(じゅう)填(てん)すべきだ」との意見があった。政府関係者によると、19日に予定されている検討会では、氷投入の効果を評価した上で、効果がないと判断されれば代替工法の作業に着手するという。規制委は、トレンチにたまっている汚染水が海洋に流れ出す恐れがあることから「最大のリスク」と位置付けており、早期解決を目指している。特に凍結管の中に冷媒を通して水分を凍らせる技術は、1~4号機周囲の土中の水分を凍らせる「凍土遮水壁」と同じで、氷の壁が凍土壁にも影響しないか懸念を示している。氷やドライアイスの投入について、東電の白井功原子力・立地本部長代理は「十分な検討が不足していたという批判はその通り。失敗を次の糧にしていく。当初予定していたことができないことはあり得る」と話している。
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2014,08,11, Monday
(1)「コピペ=悪」というのは誤りである
*1~*3に書かれているように、新聞は、「コピー&ペースト(略してコピペ)」を批判している。しかし、安倍首相も小保方氏も、文屋(ブンヤ)とは異なり、命をかける本来の仕事は文章を書くことではない。そして、安倍首相の場合は政策を選択して実行するのが仕事であり、小保方氏の場合は新しい研究を完成させることが仕事であって、その手段として、挨拶をしたり、論文で経過報告をしたりしているにすぎない。つまり、文章に命をかけているのではなく、文章は必要なことを伝える手段にすぎないのだ。 そのような中、最近、記者の視点から、*1、*2のように、「コピペ=悪い」という論調が多いが、平和記念式典の歴史的経緯や式典の目的が変わらない以上、そこで述べるべき内容が、毎年、大きく変わるわけはないと、私は思う。何故なら、私も、衆議院議員時代、よく地元の戦没者追悼記念式典で追悼の辞を述べたが、最初にその歴史的経緯や式典の目的をよく調べて最善の追悼の辞を考えておけば、よりよい内容を思いつかない限り、次の年もあまり変更せずに使うことになったからだ。そのため、「コピペ=悪」というのは、国会議員や首相の本当の仕事や行動を知らない“ブンヤ”の発想だと思うのである。 なお、式典で挨拶する時は、事前にその式典の歴史的経緯や目的を調べ、それにあった挨拶をするのが当然で、一日にいくつもの式典や行事に列席して挨拶するために、私は、それらを調べて下書きするところまでは秘書(部下)にさせ、最後にレビューして自分の考えを入れて仕上げ、文責を自分にできるようにしていた。一般社会では、部下に調査や下書きをさせるのは普通だが、それを、私が部下に書かせて自分で書いていないなどという批判があったのは、人を馬鹿にするにも程があると思って呆れた次第だ。 (2)デジタル時代の省力化・効率化はコピペから始まる デジタル社会となり、情報がせっかくデジタルで手に入るようになったのだから、いろいろなHPから情報をとって文章を繋げ、自分のレポートの一部に採用するのは、省力化・効率化の有効なツールである。そのため、「すべてのコピペは悪い」とするのはおかしい。 もちろん、参考文献も示さずに、他人の文章を自分の考えであるかのように書くのはお粗末だが、そういう人は表明したい自分自身の考えのない人であり、最も可哀そうな人である。しかし、自分の考えを表明する前に、一般論の部分をコピペで記述するのは、現在、多くの人が行っている普通の方法であり、私も、コピペで間に合う文章を、いちいち打ち直すような時間の無駄はしない。 (3)研究論文の場合、重要なのは内容・文責・出典の明記だ そもそも、研究論文はビジネス文書とは異なり、内容に新しさがなければ、その論文を出す意味がない。そのため、コピペだけで価値のある論文を書くことはできず、コピペの部分は過去に他の人が書いたことであるため価値がない。つまり、論文の重要な部分は、新しく述べる内容とその科学的根拠、発見者・文責であり、他人の知識や研究を前提として、その上に議論を展開する場合は、前提とした論文や著書について、その出典を明記しなければならないのである。 そのため、小保方氏の論文の冒頭部分が、アメリカ国立衛生研究所(NIH)サイト上にある文章と類似していたとしても、それが一般的な知識であったり、出典が明記されていたりすれば、その論文の肝の部分ではないため、(自分なりに咀嚼して変えておくのが普通ではあるが)問題はない。また、参考文献のリストもコピペだったという批判があるが、前提とした他人の論文や著書を参考文献として記載するのだから、参考文献のリストの一部がコピペになる場合もある。 つまり、*3の批判のうち「コピペ」「流用」については、内容の本丸を科学的に攻めることができずに、手続きにいちゃもんをつけているだけのくだらない批判なのである。しかし、「不適切な加工」というのは、STAP細胞の科学的根拠が怪しくなったため再実験をしているということで、テクニックがあって本人しかできない場合もあるため、本人がやってはいけないということはない。 *1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/92466 (佐賀新聞 2014年8月9日) 昨年と酷似、長崎も「コピペ」?首相あいさつに批判続出 原爆投下69年の6日に広島市で開かれた平和記念式典でのあいさつが「昨年のコピペ(文章の切り貼り)」と指摘された安倍晋三首相は9日、長崎市の平和祈念式典でも昨年と酷似した文章を読み上げ、被爆者から「がっかり」「使い回しだ」と批判の声が上がった。長崎市の式典で安倍首相はあいさつの冒頭、「被爆の辛酸をなめた私たちは、にもかかわらず、苦しみ、悲しみに耐え立ち上がり、祖国を再建し、長崎を美しい街としてよみがえらせた」と昨年と同じ言い回しを使った。「被爆68周年」「68年前の本日」の数字部分がそれぞれ「69」に変わっただけだった。 *2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014081002000119.html (東京新聞 2014年8月10日) 「ずさんすぎる」怒り 長崎も文章使い回し? ほぼ半分、昨年と同じ 安倍晋三首相が九日に長崎市で開かれた平和祈念式典で行ったあいさつは、文章のおよそ半分が昨年と同じ表現だった。六日に行われた広島の平和記念式典のあいさつに対しては、「コピペ(文章の切り張り)だ」と批判を受けたが、同じような事態が長崎でも繰り返され、被爆者からは怒りの声が上がった。長崎でのあいさつの冒頭は、原爆の犠牲者を悼み、長崎を復興させた人たちの努力に触れた。この中で昨年と表現が違うのは原爆投下からの年数のみ。昨年のあいさつで「六十八年前」だったのが、「六十九年前」と直されただけだ。核兵器廃絶への誓いを述べる末尾の部分も、昨年とほとんど同じだった。広島でのあいさつが批判された後、加藤勝信官房副長官は「一年一年、中身を吟味しながら、犠牲者や平和に対する思いを盛り込んで作っている」と釈明していた。しかし、長崎でも昨年と同じような表現が目立ったことで、あいさつ文作りがおざなりである印象が強まった。こうした式典でのあいさつは通常、秘書官や担当省庁が作成し、首相が最終的な文言調整を指示して完成させることが多い。施政方針演説などのように閣議決定を経るわけではないため、安易に使い回された可能性がある。長崎の被爆者からは早速、批判が相次いだ。式典後、首相と被爆者五団体との面談では、長崎原爆遺族会の正林克記(まさばやしかつき)会長は、首相に直接「私もちょっとがっかりというか、被爆者みんながびっくりした状態だ」と伝えた。式典で首相のあいさつを聞いた長崎原爆被災者協議会の山田拓民(ひろたみ)事務局長は、本紙の取材に「秘書官が書いたのか首相が書いたのか知らないが、そっくりそのまま読ませる方も読ませる方だし、読む方も読む方だ。ずさんすぎる」と批判。「被爆者のことを少しでも意識していれば、同じあいさつをするわけがない。広島の式典でも追及されたのに、長崎でも繰り返すのはわれわれを侮辱している」と怒りを隠さなかった。 *3:http://diamond.jp/articles/-/51158 (高橋大樹 2014年4月4日) STAP細胞をめぐるコピペ騒動は他人事じゃない!もう一度学びたい「安全なビジネス文書」のつくり方 STAP細胞をめぐる小保方晴子さんへのバッシング報道は、止まることを知らない。今やSTAP細胞の存在自体に疑義が呈されているが、目下小保方さんが真に問われるべきは、故意にせよ過失にせよ、データや文章の「コピペ」「流用」「不適切な加工」などを行ってしまったことのモラルについてだろう。こうした資料やレポートの作成に対する法的、倫理的感覚の欠如は、何も学生や研究者に限ったことではない。ビジネスマンにとっても、他人事ではないはずだ。学者の論文とビジネス文書とでは製作過程も性質も違うが、「人に自分の考えを正しい方法でアピールし、認めてもらう」というコンセプトは同じだ。STAP細胞騒動を教訓にして、新人や若手社員をはじめ、ベテラン社員もいま一度文書のつくり方を学び直してみたらどうだろうか。「コピペ」に頼らず、自分のビジネススキルを最大限に活かすための「安全で刺さるビジネス文書」のつくり方をお伝えしよう。 ●「コピペ」「流用」「不適切な加工」、小保方さんが真に問われるべき責任、いったいなぜ、こんな事態に陥ってしまったのか――。 理化学研究所発生・再生科学総合研究センター 細胞リプログラミング研究ユニットで、研究ユニットリーダーを務める小保方晴子さんが、全ての生体組織と胎盤組織に分化できる多様性を持った万能細胞「STAP細胞」の存在を発表したのは、今年1月のこと。世界的な大発見とあって注目度は大きく、報道が過熱。「割烹着」「女子力」「リケジョ」など、研究成果と直接関係のない分野にまで話題は広がり、「オボちゃんフィーバー」が巻き起こった。ところが2月から3月にかけて、状況は一変。英国の科学誌『ネイチャー』に掲載されたSTAP細胞の論文に関して、ネット上での検証を皮切りに、複数の疑惑が発覚したのだ。一部の画像については不適切な加工や、STAP細胞10+ 件とは関係のない小保方さん自身の博士論文からの流用が、また一部の文章については他者の論文からのコピペ(コピー&ペースト)が指摘されている。さらに、この騒動に乗じて持ち上がったのが、かつて小保方さんが執筆した博士論文の内容の一部が、他の文章からコピペされていたのではないかという疑惑だ。冒頭部分の約20ページが、アメリカ国立衛生研究所(NIH)サイト上にある文章と類似していることが指摘された。これらの疑惑が広まり始めると、報道は一気に小保方さんバッシングへと傾いた。説明を求められた理化学研究所の調査委員会は、3月末に発表した報告書で「小保方さんによる不正行があった」と指摘したが、小保方さんは代理人弁護士を通じて「承服できない」とこれに反論している。
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2014,08,07, Thursday
2014.6.23西日本新聞より フクイチ事故の汚染 薩摩川内原発・玄海原発過酷事故時の汚染範囲 (1)想定内だったフクシマ原発事故 *1のように、東電福島第一原発事故の3年前、勝俣元会長が出席した社内会議で、高さ14メートルの大津波が襲う可能性があると報告されていたが、これまで、勝俣元会長は大津波の可能性を知らなかったと供述していた。これは、法律上、過失は故意より責任が軽いからである。 また、これまでの東電の説明では、「大津波の可能性は原子力部門で試算され、武黒元副社長で留まって、勝俣元会長や他部門の幹部には知らされなかった」としていたそうだが、仮にそれが事実であれば、東電の内部報告システムが問題なのだし、判断する立場になくても現場担当者や技術者からの事故リスクに関する注意喚起は必要であるため、権限が無いから何もしなかったという人に責任がないとするのも変である。つまり、責任回避の構図が目立ち、これでよいわけがない。 (2)原発が人体に与える公害の科学的証拠が、次々と出つつある *2-1に書かれているように、フクシマ周辺で、イネ、チョウ、ウグイス、ニホンザルなどのいろいろな動植物に異常が発見され、研究者は原発事故による被曝の影響と指摘している。そして、放射線被曝をすれば、異常が出るのは当たり前であるため、これは素直に受け入れるべき調査結果だ。 特に、*2-1に書かれているように、土壌汚染レベルが高いところほど、ニホンザルの体内のセシウム蓄積レベルが高く、正常範囲より白血球数、赤血球数ともに減少しており、白血球数は大幅に減少していたというのは、チェルノブイリの子どもたちにも起こった現象だそうだ。また、*2-2に書かれているように、事故を起こしていない玄海原発周辺に「白血病」患者が全国平均の11倍も多いことからも、「原発と白血病には科学的に関連がある」と考える方が自然である。 (3)エネルギーのベストミックスという考え方で市場経済を放棄 このような中、*3-2のように、自民党の電力安定供給推進議員連盟は、2014年7月31日に、原子力規制委員会で原発の安全審査を迅速に進めることやエネルギーのベストミックスを早期に策定することなどを求める提言書をまとめて茂木経産相に申し入れたそうだ。そして、*3-1、*3-3のように、政府は、2014年8月1日、九電川内原発の再稼働を要請する文書を、同県の伊藤知事の求めに応じて提出することを決めたそうだが、これでは安全審査との関係が本末転倒である。 その提言は、原発停止による火力発電の燃料コスト増が年間約3・6兆円に達し経済に悪影響を与えているとしているが、これは、原発による公害を軽視し、原発への国費投入を無視した議論だ。また、エネルギーのベストミックスを市場原理に依らずに決めるのは、市場原理では原発は生き残れないため、市場主義を放棄して計画経済に移行するもののようである。 (4)「死の商人」をするのは、道義的・経済的にマイナス このように、日本での原発新設はおぼつかないため、*4のように、日立は2014年7月30日に、リトアニア政府と原発運営会社設立に向けた協議を再開することで合意したそうだ。しかし、日本が、自然エネルギーの技術ではなく原発技術を売り込むのは、今後の世界の潮流に逆らっており、見識の低い短期的利益目的の「死の商人」と言わざるを得ない。 (5)原子力規制委員会の審査は安全性の根拠にはできない *5-1のように、原子力規制委員会の田中俊一委員長は「薩摩川内原発は、基準への適合は審査したが、安全だとは言わない」と述べている。それでは、何のために審査したのかが不明であるため、「どういう基準に従って審査した結果、どこが十分で、どこが十分でない」という審査報告書を委員長の署名入りで政府及び国会に提出すべきで、それに基づいて初めて、「不十分な点はそれでいいのか」という議論ができる筈だ。 しかし、2014年8月8日に追加した*5-2のとおり、経産省の赤羽副大臣は、審査報告書も提出されないまま、8月7日に行われた衆院原子力問題調査特別委員会の閉会中審査で、「規制委が適合すると認めた場合は粛々と再稼働を進めるのが大方針」とした。これは、規制委が適合すると認めたからといって安全を保証するものでないということの意味を、経産副大臣自身が理解していないということであり、その理解力不足には問題がある。 (6)廃炉と最終処分場の見通しがない *6のように、2014年7月30日、環境省が栃木県内の指定廃棄物最終処分場候補地として塩谷町寺島入の国有地を選定して見形町長に提示したが、そこは名水の里で地下水の豊富な場所であり、環境省の自然への無理解には呆れた。 東電福島第一原発事故で発生した放射性セシウム濃度が1キログラム当たり8000ベクレルを超える焼却灰、下水汚泥、稲わらなどの指定廃棄物は、2014年6月末現在、12都県で計約15万トンに上るそうだが、これを県毎に最終処分場を新設して分散すれば、それぞれの管理は杜撰になることが明らかだ。そのため、フクイチ近くの帰還困難区域に集めて、しっかり管理するしかないと考える。 <想定内だったフクシマ> *1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014080102100003.html (東京新聞 2014年8月1日) 【福島原発事故】大津波の恐れ報告 東電元会長出席の会議 東京電力福島第一原発の事故が発生する約三年前、東電の勝俣恒久元会長(74)が出席した社内の会議で、高さ一四メートルの大津波が福島第一を襲う可能性があると報告されていたことが、三十一日に公表された東京第五検察審査会の議決で分かった。これまでの東電の説明では、勝俣氏は大津波の可能性を知らないとされ、本人も検察に同趣旨の供述をしていたが、検審は「信用できない」と否定、起訴相当と判断した。東京地検は同日、議決を受け、再捜査することを決めた。議決によると、この会議は二〇〇七年七月の新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発(新潟県)が被災したのを受け、〇八年二月に開かれ、福島第一の津波想定を七・七メートル以上に変更する資料が配布された。出席した社員から「一四メートル程度の津波が来る可能性があるという人もいて、考える必要がある」との発言もあった。検察側の捜査資料にあった会議のメモなどから、検審はより詳しい報告や議論もあったと判断。出席していた勝俣氏は大津波の可能性を知りうる立場にあり、「東電の最高責任者として各部署に適切な対応策を取らせることも可能な地位にあった」と結論付けた。これまでの東電の説明では、大津波の可能性は原子力部門で試算され、武黒一郎元副社長(68)でとどまり、勝俣氏や他部門の幹部には知らされなかった、としていた。この会議には武黒元副社長も出席。報告を聞き「(東北電力)女川(原発)や(日本原子力発電)東海(第二原発)はどうなっている」と尋ねていたことが議決から明らかになった。東海第二原発は〇七年に茨城県が公表した津波想定に基づき、ポンプ室の側壁の高さを四・九メートルから六・一メートルにかさ上げ。東日本大震災で五・四メートルの津波が襲ったが、冷却に必要な電源を確保でき、福島第一と明暗を分けた。歴代幹部のうち勝俣、武黒両氏と、武藤栄元副社長(64)の三人が起訴相当と議決された。津波の情報を知っても、判断する立場にない二人は不起訴相当、対策を決める権限がない一人は不起訴不当と議決された。起訴相当の三人については、仮に地検が再び不起訴としても、別の市民による検審が起訴議決すれば、強制起訴される。 <原発公害> *2-1:http://toyokeizai.net/articles/-/13516 (原発と被災地 岡田 広行 :東洋経済 編集局記者) 福島原発周辺で「動植物異常」相次ぐ、チョウやニホンザルなどに異常、研究者が被曝影響と指摘 福島市や全村民が避難を余儀なくされている福島県飯舘村など、福島第一原原子力発電所からの放射性物質で汚染された地域で、動物や植物に異常が多く見られることが研究者による調査で明らかになった。3月30日に東京大学内で開催された「原発災害と生物・人・地域社会」(主催:飯舘村放射能エコロジー研究会)で、東大や琉球大学などの研究者が、ほ乳類や鳥類、昆虫、植物から見つかった異常について報告した。原発事故による生物への影響についての研究報告は国内でもきわめて少ないうえ、4人もの研究者が一般市民向けに報告したケースはおそらく初めてだ。 ●稲の遺伝子に異変 まず生物への影響に関してシンポジウムで最初に報告したのが、筑波大大学院生命環境科学研究科のランディープ・ラクワール教授。「飯舘村での低レベルガンマ線照射に伴う稲の遺伝子発現の観察」というテーマで研究成果を発表した。ラクワール教授は、つくば市内の研究所で育てた稲の苗を、福島第一原発から約40キロメートルに位置する飯舘村内の試験農場に持ち込んだうえで、放射線の外部被曝にさらされる屋外に置いた。そして生長が進んでいる根本から3番目の葉をサンプルとして採取し、ドライアイスを用いて冷凍保管したうえで、つくばに持ち帰った。その後、「半定量的RT-PCR法」と呼ばれる解析方法を用いて、特定の遺伝子の働きを観察したところ、低線量のガンマ線被曝がさまざまな遺伝子の発現に影響していることがわかったという。ラクワール教授らが執筆した研究結果の要旨では、「飯舘村の試験農場に到着してから初期(6時間後)に採取したサンプルではDNA損傷修復関連の遺伝子に、後期(72時間後)ではストレス・防護反応関連の遺伝子に変化が認められた」と書かれている。「稲に対する低線量被曝の影響調査は世界でも例がない。今後、種子の段階から影響を見ていくとともに、人間にも共通するメカニズムがあるかどうかを見極めていきたい」とラクワール教授は話す。動物に現れた異常については、3人の研究者が、チョウ、鳥、サルの順に研究成果を発表した。チョウについて研究内容を発表したのが、琉球大学理学部の大瀧丈二准教授。「福島原発事故のヤマトシジミへの生物学的影響」と題した講演を行った。大瀧准教授らの調査は、日本国内にごく普通に見られる小型のチョウであるヤマトシジミを福島第一原発の周辺地域を含む東日本各地および放射能の影響がほとんどない沖縄県で採集し、外部被曝や内部被曝の実験を通じて生存率や形態異常の有無を調べたものだ。大瀧准教授らの研究結果は昨年8月に海外のオンライン専門誌「サイエンティフィックリポート」に発表され、フランスの大手新聞「ル・モンド」で大きく報じられるなど、世界的にも大きな反響があった。 ※原著論文は右に掲載 http://www.natureasia.com/ja-jp/srep/abstracts/39035 ※日本語の全訳は右に掲載(研究室のホームページ) http://w3.u-ryukyu.ac.jp/bcphunit/kaisetsu.html ●飼育実験で被曝の影響を検証 大瀧准教授は研究の特徴として、1.事故の初期段階からの調査であること、2.事故の影響のない地域との比較研究であること、3.飼育実験により、子世代や孫世代への影響を評価していること、4.外部被曝実験および内部被ばく実験を実施したこと――などを挙げた。 事故から2カ月後の2011年5月および半年後の9月に福島県などからヤマトシジミを沖縄に持ち帰ったうえで、子ども世代や孫世代まで飼育を継続。一方で沖縄で採集したヤマトシジミにセシウム137を外部照射したり、セシウム137で汚染された野草(カタバミ)を、沖縄で採集したヤマトシジミの幼虫に食べさせた。ヤマトシジミの採集地点は東京都や茨城県(水戸市、つくば市、高萩市)、福島県(福島市、郡山市、いわき市、本宮市、広野町)、宮城県(白石市)の計10カ所で、研究に用いたヤマトシジミの数は5741匹に上った。 大瀧准教授の研究では、驚くべき結果が判明した。羽が伸びきっていない羽化不全個体。口吻も巻かれていない(福島市内で採取したエサを食べた個体。大瀧准教授提供)2011年5月の採集で、ほかの地域と比べて福島県内のヤマトシジミでは、羽のサイズが小さい個体が明らかに多いことがわかったのだ。「地面の放射線量と羽のサイズを比較したところ逆相関が見られ、線量が上がっていくにつれて羽のサイズが小さくなる傾向が見られた」と大瀧准教授はデータを用いて説明した。また、捕獲した個体の子どもについて、「福島第一原発に近い地域ほど羽化までの日数が長くなる傾向が見られ、成長遅延が起きていたことがわかった」(大瀧准教授)。「親に異常があった場合、子どもでも異常率が高くなる結果も出た」とも大瀧准教授は語った。ただし、「これだけの実験では、遺伝性(異常がDNA損傷に基づくもの)であると断言するには十分な証拠とは言えない」とも説明した。 ●被曝した個体で生存率が低下 外部から放射線を照射した実験(外部被曝の検証)では、放射線を多く照射した個体ほど羽根が小さくなる傾向が見られ、生存率が低くなっていた。また、汚染されたカタバミを幼虫に食べされた内部被曝に関する実験でも、比較対照群である山口県宇部市の個体と比べて福島県内の個体で異常が多く見られ、生存率も大幅に低くなっていた。内部被曝の研究では驚くべき結果も出た。「沖縄のエサを食べた個体と比べ、福島県内の個体は死に方でも明らかな異常が多く見られた」と、大瀧准教授は写真を用いて説明した。さなぎの殻から抜けきれずに死んだり、成虫になっても羽が伸びきれない事例などショッキングな写真を紹介。「(生体の)微妙なバランスが狂ってしまうと死亡率が上がるのではないか」(大瀧准教授)と指摘した。続いて東京大学大学院農学生命科学研究科の石田健准教授は、「高線量地帯周辺における野生動物の生態・被ばくモニタリング」と題して講演した。 ●通常のウグイスなら、見たこともない「おでき」が… 石田准教授らは、福島県阿武隈高地の中でも特に放射線量が高く、現在、「帰還困難区域」に指定されている浪江町赤宇木地区(福島第一原発から約25キロメートル)で2011年8月に野生のウグイス4羽を捕獲したところ、「うち1羽から今までに私自身、ウグイスでは見たこともないおできが見つかった」(石田准教授)。これまで350羽あまりを捕獲した経験のある石田准教授が驚くほどの病状で、このウグイスには血液原虫も寄生していた。また、捕獲したウグイスの羽毛を持ち帰って放射線量を測定したところ、セシウム134と137を合わせて最高で約53万ベクレル/キログラムもの汚染が判明した。石田准教授はその後も自宅のある埼玉県横瀬町と福島を15回にわたって行き来し、鳥類の定点観測や自動録音による野生動物のモニタリングを続けている(なお、研究成果の一部は、中西友子・東大大学院教授らの編纂した英文書籍で、シュプリンガー社から3月に出版された。電子ファイルは誰でも無料で自由に読める。(こちらからご覧いただけます) ●ニホンザルの白血球数が減少 そして4人目の講演者として登壇したのが、羽山伸一・日本獣医生命科学大学教授。「福島県の野生二ホンザルにおける放射性セシウムの被ばく状況と健康影響」と題した講演をした。 28年にわたってサルの研究を続けている羽山教授は、ニホンザルが北海道と沖縄県を除く全国に生息している点に着目。「世界で初めて原発の被害を受けた野生の霊長類」(羽山教授)として、ニホンザルは被曝による健康影響の研究対象としてふさわしいと判断した。羽山教授は、約3000頭近くが生息する福島市内(福島第一原発から約60キロメートル)で農作物被害対策のために個体数調整で捕獲されたサルを用いて、筋肉に蓄積されているセシウムの量を継続的に調査。性別や年齢、食性との関係などについて検証した。 ●福島と青森のサルを比較すると… 11年4月から13年2月にかけて福島市内で捕獲された396頭のサルと、青森県で12年に捕獲された29頭を比較。土壌中のセシウムの量と筋肉中のセシウム濃度の関係を検証した。その結果、「土壌汚染レベルが高いところほど、体内のセシウム蓄積レベルも高い傾向があることがわかった」(羽山教授)。また、木の皮や芽を食べることが多く、土壌の舞い上がりが多い冬期に、体内の濃度が上昇していることも判明したという。なお、青森県のサルからはセシウムは検出されなかった。「注目すべきデータ」として羽山教授が紹介したのが、血液中の白血球の数だ。避難指示区域にならなかった福島市内のサルについては、外部被ばくは年間数ミリシーベルト程度の積算線量にとどまるうえ、内部被曝量も10ミリグレイ程度にとどまるとみられると羽山教授は見ている。にもかかわらず、ニホンザルの正常範囲より白血球数、赤血球数とも減少しており、白血球は大幅に減少していた。「特に気になったのが2011年3月の原発事故以降に生まれた子どものサル(0~1歳)。汚染レベルと相関するように白血球の数が減っている。造血機能への影響が出ているのではないかと思われる」(羽山教授)という。シンポジウム終盤の討論で羽山教授はこうも語った。「本日の講演内容がにわかに人間の健康への研究に役に立つかはわからない。ただし、現在の福島市内のサルの被曝状況は、チェルノブイリの子どもたちとほぼ同じ水準。チェルノブイリの子どもたちに見られる現象がニホンザルにも起こったことが明らかにできればと考えている」。 *2-2:http://www.asyura2.com/09/genpatu6/msg/396.html (浦田関夫:唐津市議のブログより転載 2010年2月2日) 玄海原発(佐賀県)周辺は「白血病」患者が全国平均の11倍も多い <要点のみ> 昨日の私の一般質問で、玄海原子力周辺で白血病が多いことを質問しました。厚生労働省の「人口動態調査」によると、人口10万人に対し全国は6.0人、佐賀県は9.2人、唐津保健所管内は16.3人、玄海町は61.1人と全国より11倍も多いことが判ったからです。白血病が多い原因は明確ではありませんが、ドイツでは「因果関係」を政府として認めています。テレビを見ていた人から、「なぜ唐津市や佐賀県はこの問題を公表しないのか」と指摘する電話がありました。その人は、「佐賀県と玄海町の比率4倍は誤差の範囲ではない」ことを強調され、興奮気味に電話で話されました。この問題については「専門家に調査をお願いしたい」と総務部長は答弁しました。でも よく考えたら、白血病が増えるのはあたりまえ。だって、原発って周辺に放射能をバラまいてるんですから・・・・・いくら微量って言ってもね。(以下略) <再稼働を進める理由> *3-1:http://mainichi.jp/select/news/20140802k0000m010038000c.html (毎日新聞 2014年8月1日) 川内原発:再稼働要請書、政府が提出へ 政府は1日、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働を要請する文書を、同県の伊藤祐一郎知事の求めに応じて提出することを決めた。菅義偉官房長官は同日の記者会見で「経済産業省で適切に対応するのは当然だろう。再稼働にあたっては立地自治体の関係者の理解が大事だ。国もしっかり説明していく」と述べた。 *3-2:http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/npp_restart/52814.html (福井新聞 2014年7月31日) 原発再稼働の審査迅速化を提言 自民党議員連盟が政府に 自民党の電力安定供給推進議員連盟(細田博之会長)は31日、原子力規制委員会で原発の安全審査を迅速に進めることや、エネルギーのベストミックスを早期に策定することなどを求める提言書をまとめ、茂木敏充経済産業相に申し入れた。提言では、原発停止による火力発電の燃料コスト増が年間約3・6兆円に達し経済に悪影響を与えているとして、原発の早期再稼働は「国家的急務」と指摘。規制委の安全審査を「効率的かつ迅速に行う必要がある」と審査のスピードアップを求めた。エネルギーのベストミックスを早期に策定し、原発の新増設・リプレース(置き換え)の必要性を明確にすることや、高レベル放射性廃棄物の処分場を国が責任をもって具体化することも盛り込んだ。細田会長と高木毅事務局長らが経産省を訪れ、茂木大臣に提言書を手渡した。茂木大臣は「電力の安定供給、コスト低減などさまざまな要素をバランスよく組み合わせたエネルギーのベストミックスを、早急に策定する必要がある」との考えを示した。再稼働の迅速化については「安全性をきちんと早期に確認することがきわめて重要。審査の適正な進ちょくを図るよう、規制委や事業者に要請している」と述べた。同議連による政府への提言は3度目で、4月に国のエネルギー基本計画が策定されてからは初めて。高木事務局長は「原発は重要なベースロード電源と基本計画で位置付けられており、安全性が確認された原発は速やかに再稼働させることが重要だ。茂木大臣にも理解していただけたと思う」と述べた。この日は菅義偉官房長官にも提言書を提出した。近く原子力規制委員会にも申し入れる。 *3-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140802&ng=DGKDASDC0100A_R00C14A8PP8000 (日経新聞 2014.8.2) 川内原発再稼働 地元同意へ手続き動く 経産省、文書化へ 原子力発電所の再稼働に向けて地元同意の手続きが動き出した。鹿児島県の伊藤祐一郎知事は1日、九州電力川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働の必要性を文書で示すよう経済産業省に要請、経産省はこれに応じる意向だ。地元同意の手続きは、国が地元へ理解を求めながら進むことになりそうだ。原子力規制委員会が川内原発の安全審査で事実上の「合格」を与えてから初めて記者会見を開いた伊藤知事。「文書の提出を了承していただかないと県は再稼働の地元同意に動きにくい。再稼働という極めて大きなテーマを地方公共団体に委ねるのは間違いだ」と強い口調で国に迫った。九州電力の瓜生道明社長も7月31日に「安全性をどう評価するかは規制委、原発の必要性については国ということになる」と国の関与を求めた。経産省は再稼働の必要性を説く文書を作る意向だ。原発が安価に動かせる電源で、温暖化ガスも放出しない利点を強調する見通し。8月下旬以降の提出を想定する。菅義偉官房長官も1日の記者会見で「文書でということなので、経産省が適切に対応する」と述べた。鹿児島県は9月下旬以降に住民向け説明会を開く見込み。規制委が審査内容を解説するほか、経産省も要請があれば再稼働の必要性を説明する。文書はこの会などを通じ配ることになりそうだ。これまで伊藤知事は県議会などで「規制委が地元向けに説明会を開けば同意は県と薩摩川内市だけで十分」と繰り返してきた。だが実際に再稼働が近づき、重大事故が起きた場合に避難が必要な30キロ圏の自治体から同意の意思表示に参加できない不満が強まっている。30キロ圏にある姶良(あいら)市議会は7月、再稼働に反対し廃炉を求める意見書を可決した。市は九電と防災協定を結び再稼働に反対していなかった。だが30キロ圏の自治体を同意手続きから遠ざける知事の姿勢に反発を強めている。知事は地元の反発を抑えるには国の関与が必要と、より現実的な姿勢をとり始めた。経産省が文書を出すだけで周辺の反発が収まるかはわからず、手探りの状況が続きそうだ。 <死の商人> *4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140731&ng=DGKDASDZ3006P_Q4A730C1TJ1000 (日経新聞 2014.7.31) 日立、リトアニアと原発協議を再開 運営会社を設立へ 日立製作所は30日、リトアニア政府と原子力発電所を運営する事業会社設立に向けた協議を再開することで合意したと発表した。日立は2011年に同国の原発事業の優先交渉権を獲得したが、12年の国民投票で建設反対が過半数を占めて計画が中断していた。ウクライナ危機を受け、リトアニア政府はエネルギーのロシア依存脱却を狙って再び原発計画を始動する決断に踏み切った。日立とリトアニアのエネルギー省が協議を始めるのは、同国北東部に建設するビサギナス原発。出力約140万キロワットの原発1基を建設し、総事業費は5000億~8000億円。原発設備は日立が受注する予定だ。バルト3国への電力供給を計画し、22~24年の稼働を目指す。合意によると、日立とリトアニア側は原発を運営する事業会社の設立計画を作成。リトアニアが約4割、日立が2割出資する見通しで、ラトビアとエストニアにも出資を呼びかける。バルト3国の首脳交渉を経て、年内の会社設立を見込む。原発計画を再始動した背景には、ウクライナ危機がある。リトアニアは電力の6~7割、ガスのほとんどをロシアからの輸入に頼っている。 <原子力規制委員会の審査> *5-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014073102000252.html (東京新聞 2014年7月31日) 川内再稼働 小泉元首相「どこが安全か」 小泉純一郎元首相は三十一日午前、安倍政権が九州電力川内(せんだい)原発を再稼働させる方針を示していることについて「ちょっと感覚がおかしい。どこが安全なのか」と批判した。都内で細川護熙元首相=同左から2人目=と太陽光発電の展示会を視察した後、記者団に語った。原子力規制委員会は今月十六日、川内原発が新規制基準を満たしていると判断。安倍政権は再稼働させようとしているが、規制委の田中俊一委員長は記者会見で「基準への適合は審査したが、安全だとは言わない。再稼働の判断に私たちは関与しない」と述べた。小泉氏は田中氏の発言を踏まえ「政府は『安全だから(再稼働を)進める』と言っているが、矛盾している。責任があいまいだ」と指摘した。 *5-2(2014.8.8追加):http://qbiz.jp/article/43522/1/ (西日本新聞 2014年8月8日) 再稼働の地元理解、国が前面に 川内原発で経産副大臣 九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働問題で、経済産業省の赤羽一嘉副大臣は7日、衆院原子力問題調査特別委員会の閉会中審査で「立地自治体など関係者の理解を得るために国が前面に出る。事業者の後ろで逃げている認識はない」と述べた。原子力規制委員会が川内原発の基本的設計は新規制基準に適合していると7月16日に判断して以降、初めての国会質疑。赤羽副大臣は「規制委が適合すると認めた場合は粛々と再稼働を進めるのが大方針。(周辺住民の)避難計画は内閣府がしっかり詰めるべきだ」と答弁した。再稼働の同意が必要な自治体について、鹿児島県は「県と薩摩川内市で十分」と考えているが、事故時の対策が必要な30キロ圏内の姶良市議会が再稼働反対の意見書案を可決するなど異論もある。経産省資源エネルギー庁の担当者は「一律に何キロまでと判断するのは適切ではない」とし、磯崎仁彦政務官も「地域に適したプロセスが重要」と述べるにとどめた。 <廃炉と最終処分> *6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014073102000111.html (東京新聞 2014年7月31日) 最終処分場 また突然提示 指定廃棄物「名水の里になぜ」 東京電力福島第一原発事故で発生した「指定廃棄物」の最終処分場について、環境省は三十日、栃木県内の候補地として塩谷(しおや)町寺島入(てらしまいり)の国有地を選定し、見形(みかた)和久町長に伝えた。しかし、事前説明もない突然の提示に住民は反発。国は栃木のほか千葉、茨城、群馬などの県でも最終処分場をつくる方針だが、事故から三年以上がたった今も、首都圏の負の遺産が解消される見通しは立っていない。 国の候補地選びは、一定の面積を確保できる土地を抽出し、生活空間や水源との距離、自然度、指定廃棄物の保管量を点数化して決める。選定が先行していた栃木県の場合、市町ごとに異なる指定廃棄物の保管量も考慮に入れて総合評価し、得点が最も高かった塩谷町寺島入に決めた。環境省は選定後、現地のボーリングなど数カ月の詳細調査をした上で正式決定する。井上信治環境副大臣と会談した見形町長は選定に反対の意向を示した。環境省は二〇一二年九月、栃木県矢板市と茨城県高萩市を候補地に選定したが、突然の提示に二市は拒否の姿勢を示した。その後、同省は安倍政権下で選定のやり直しに着手した。選定に当たっては各県ごとに手順を作り、地元の事情に配慮する姿勢を強調した。しかし、栃木県で二度目となる今回も、反対運動を避けようと経過をこの日まで公表せず、逆に住民の反発を招いた。指定廃棄物は、各県のごみ処理施設や下水処理場、農家の敷地に一時保管されたままになっている。井上氏は「将来的に自然災害の心配もあり、安全に処分できる処分場を早期に設置することが必要」と述べ、処分場づくりを急ぐ方針を強調した。しかし、栃木県では交渉の難航が予想される。千葉県では選定作業に入っているが日程は未定で、茨城、群馬両県では手順すら決まっていない。東京都と神奈川県でも指定廃棄物が出ているが、最終処分場を建設するかどうかは決まっておらず、当面は一時保管が続く見込み。埼玉県にも基準値を超えた放射性物質を含む廃棄物があるが、地元からの申請がないため指定廃棄物として認められていない。 ◆栃木・塩谷町 住民反発「自然が売り」 豊かな湧き水を誇る町が、最終処分場建設の候補地に-。栃木県塩谷町役場前では三十日、町内の土地が候補地に選ばれたことを知った百人以上の町民がプラカードなどを手に集まり、「水を守れ」「建設反対」などと怒りの声を上げた。塩谷町は、千七百メートル級の連山の中腹から流れる尚仁沢(しょうじんざわ)湧水で知られる。豊かな水量を誇り、一九八五年には環境庁(現環境省)の名水百選にも選ばれた。住民によると、尚仁沢湧水一帯から候補地までの直線距離は四キロほど。町によると、湧き出た水は町内の湖に注いだ後、近隣自治体にも流れており、一帯の水源となっている。町内の自宅から駆けつけた農家の男性(75)は「こんなに清らかな水が湧いている土地に処分場を造るなんて、納得できない」と憤った。役場前では、次の訪問先に向かう井上信治環境副大臣の車を町民が「処分場建設は許さない」などと叫んで取り囲み、一時騒然となった。一方、候補地近くに住む七十代の男性は「何の説明も受けていない」と困惑顔。「水田をやっているので、水の安全が心配。建設に反対だが、どうやって反対すればいいのか」と途方に暮れた様子だった。町内の五十代女性は「町は自然を売りに観光客を呼ぼうとしてきた。選定によるイメージダウンは計り知れない」と、声を落とした。 <指定廃棄物> 東京電力福島第一原発事故で発生した、放射性セシウム濃度が1キログラム当たり8000ベクレルを超える焼却灰、下水汚泥、稲わらなど。6月末現在、12都県で計約14万6000トンに上る。放射性物質汚染対処特措法などでは、発生した各都県内で国が処分することを定めている。宮城、千葉、茨城、群馬、栃木の5県では、国が県ごとに最終処分場を新設する。 PS(2014.8.9追加):*7のように、日経新聞は、それでも再稼働を心待ちにし、命の重みに対する道徳感の感じられない論調である。どういう教育をすると、こういう人間ができるのだろうか? *7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140809&ng=DGKDASDF08H13_Y4A800C1PP8000 (日経新聞 2014.8.9) 玄海の地震想定値 了承 規制委 再稼働「第2陣」有力に 原子力規制委員会は8日、原発の審査会合を開き、九州電力の玄海原発(佐賀県)を襲いうる地震の揺れの想定値について了承した。地震の想定値は審査の最大の焦点となり、決着したのは玄海が3カ所目。これで審査は最終段階に進むことになり、川内原発(鹿児島県)に続く再稼働の第2陣の有力候補となる。九電は昨年7月に玄海原発の審査を申請した際、地震想定値を540ガルとしていた。審査でより厳しく見積もるよう指摘を受け、620ガルに引き上げることで最終的に規制委から了承を得た。2011年の東日本大震災で、東京電力の福島第1原発を襲った揺れが最大550ガル。玄海原発は当初想定よりも揺れ幅を大きくしたが、九電は「大きな耐震補強工事は必要ない」としている。昨年7月に審査を申請した6原発のうち、九電の川内原発が今年3月に最初に地震想定値の了承を得た。これを受けて規制委は合格証明書にあたる「審査書案」を7月に作成済みだ。また5月には関西電力の高浜原発(福井県)も了承を得た。規制委は今後、電力会社からの書類提出を受けて高浜と玄海の審査書案作りにも乗り出す見通し。ただ、九電は川内原発を実際に再稼働させるまでに詳細な工事計画などを規制委に提出する必要がある。作業が追いついていないため、玄海原発の再稼働は来年以降になるのが確実な情勢だ。 PS(2014.8.9追加):環境権は、憲法では基本的人権等で説明でき、一般法では平成5年11月19日に公布され平成26年5月30日に最終改正された「環境基本法(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H05/H05HO091.html 参照)」に詳しく書かれているので、*8のように、環境権を憲法に書く必要はない。それよりも、環境基本法やその他の環境関連法令に足りない点があればそれを改正し、その法令をしっかり順守していくのが筋であり、もう憲法改正は不要と考える。 *8:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140807/stt14080717220004-n1.htm (産経ニュース 2014.8.7) 秋から改憲項目絞り込み 自民・憲法改正推進本部長「9条には抵抗が出てくる」 自民党の船田元・憲法改正推進本部長は7日、秋の臨時国会から憲法改正の具体的項目を与野党で協議する意向を表明した。同時に、9条改正について「相当な抵抗が出てくるので1回目の改正で実施するのは難しい」と時間をかける必要性を指摘した。国会内で記者団の質問に答えた。環境権に関しては「日本でも環境権は大事だという意識が高い」と語り、優先的に扱われるとの見通しを示した。大規模な自然災害や外国からの攻撃発生に備える緊急事態条項は「必要だが、どこまで規定するのか、まとめるのは容易でない」と述べた。 PS(2014.8.11追加):*9のように、「議論を踏まえて再稼働」という増田氏のような意見は少くないが、単なるガス抜きではないまともな議論をすれば、私が2011年7月からこのブログに記載してきたとおり、決めるべきことは原発の再稼働ではなく、一日も早い廃炉と最終処分場への使用済核燃料の埋設だということがわかる筈だ。 *9:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10204/92433 (佐賀新聞 2014年8月9日) 柏崎刈羽原発、議論踏まえ再稼働、東電社外取締役の増田氏 東京電力の社外取締役に就任した増田寛也元総務相は9日までに共同通信のインタビューに応じた。柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働に関し「国全体でエネルギーの将来像が示されていない」と話し、政府が進める原発を含めた電源構成の比率の議論を見ながら慎重に取り組む考えを示した。政府は4月に閣議決定したエネルギー基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、再稼働を進める方針を明記した。増田氏は基本計画に関し「決めるべきことが多く残っており、不十分だ」と指摘した。
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2014,08,06, Wednesday
*1-2より 全面太陽光発電ハウス *3-2より (1)街づくりと省エネ・節電技術の関係 *1-1のように、住宅メーカーは、省エネルギー型住宅「スマートハウス」への切り替えを進めており、積水化学、パナホーム、大和ハウスは、現在でも注文住宅の多くに、太陽光発電とHEMSを備えているそうだ。また、国は、2020年までに省エネ設備の導入を含む新しい省エネ基準を住宅に義務化するとのことであり、よいと思う。 マンションについては、太陽光発電装置を置くのに一定の傾斜が必要という規制があるため見た目よく取り付けられず、また、ビル用の太陽光発電装置の進歩も遅いため、現在は、*1-2のような電気代節約目的の高圧一括受電を行うのが精一杯だ。しかし、マンションやビルも、自家発電でインフラを動かせなければ安心して居住することはできないため、建材と一体化したスマートな太陽光発電装置の開発が望まれる。 このような中、*1-3-1、*1-3-2のように、福岡県みやま市と住宅設備のコンサルティング会社「エプコ」が、市内2千世帯の電力使用状況を把握して節電に繋げる取り組みを始め、電力小売り完全自由化後には、みやま市は自治体による電力供給事業も視野に入れているそうだ。上下水道やゴミ処理も自治体が行っているため、市は、電線をひくのも電力を供給するのも容易だろうし、HEMSを高齢者家庭の見守りに利用するのも、プライバシーの侵害にならない程度なら、よいアイデアである。そのため、他の自治体も参考にすればよいと考える。 (2)自然エネルギーの利用は進んできたが、機器の進歩が遅い *2-1のように、オリックスが、三菱化学物流の倉庫7棟の屋根を賃借して出力2.5MWの太陽光発電所の運転を開始し、今後、全国148カ所で、屋根を利用した太陽光発電を計画して、合計出力は68.9MWに達するそうだ。このほか、駐車場に太陽光発電の屋根をつければ、自動車が風雨に晒されず、電力の供給もできるため、一石二鳥だろう。 また、*2-2のように、北海道内には風力発電の適地が多いけれども、鳥の衝突死が絶えないということだが、これは、鳥が飛びこまない細かさの網で覆ったり、羽のない風力発電機を造ったりなど、機器を改良すれば解決する話だ。 (3)自然エネルギーの利用、鉄道の進歩と街づくりの関係 *3-1のように、松浦鉄道は、国の補助金が3割減となったため、2287万円分を基金から取り崩し、燃料費の高騰などを理由に運賃の改定を前倒しするそうだ。しかし、いつまでも重油を使って列車を走らせながら、国の補助金で燃料費を補填したり、運賃を上げたりするのは賢い経営とは言えない。例えば、デザインの良い蓄電池電車を使い、*3-2のJR西日本のように、駅の電力使用量を50%以下にして太陽光発電や回生電力で電力を賄って余った電力を販売するなど、先見性のある前向きな投資をすべきである。 なお、電力が余るほど発電するためには、高架にして一階部分の壁に太陽光発電装置を取り付けるなど、いろいろな工夫があり得る。また、1階部分を駐車場、店舗、物置などとして貸し出したり、鉄道の敷地に超電導電線をひかせて土地の賃料をとったりなど、連続した膨大な土地や駅近の便利な土地を所有している鉄道会社だからこそ可能なアイデアがいくらでもある筈だ。 (4)教育・医療・介護・福祉は、街づくりのソフト部分だ 魅力ある街づくりの重要な部分に福祉がある。そして、近年、病院に社会的入院せず、自宅で療養したり、自宅介護を受けたりする人が増えている。これは、生活の質(Quality of Life)を上げるとともに、医療費削減にも貢献しているが、それでも安心して暮らせる社会インフラを整えることは必要条件である。 なお、自動車の運転ができない高齢者や障害者に、*4のように、タクシー利用の助成を行うのはよいと思う。例えば、高齢者がタクシー乗車券で出掛ける機会が増えれば、介護需要が減るため、このための事業費増加は、医療費・介護費の減少と同時に論じるべきだろう。 <省エネ型まちづくり> *1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140731&ng=DGKDZO75007210R30C14A7TI0000 (日経新聞 2014.7.31) 分譲全戸 省エネ型に、積水化学とパナホーム 電力値上げで需要 住宅メーカーが省エネルギー型住宅「スマートハウス」への切り替えを進めている。戸建て5位の積水化学工業は2016年度に分譲する住宅を原則、すべてスマートハウスにする。パナホームも18年までに販売する全住宅を替える。電力料金の上昇が続くなか、スマートハウスは補助金などの制度を使って電力コストが削減できる。次の消費増税も視野に消費者の節約志向に訴える。積水化学のスマートハウスは太陽光発電と家庭の電力の使用状況が確認できる「HEMS(家庭向けエネルギー管理システム)」を標準装備しており、現在、分譲する戸建ての約8割を占める。価格は延べ床面積が120平方メートルの2階建ての場合、一般の住宅が3千万円に対して3300万円。太陽光で発電した電力を自宅で使うとともに、再生エネルギーの電気を電力会社が高く買う固定価格買い取り制度を使って売れば、一般的な住宅に比べて光熱費を年間で32万円抑えられるという。スマートハウスへの切り替えとともに16年度までに宅地開発に計1千億円を投じる。郊外を中心に全国で開発する計画で、1カ所に最大で100戸強を建てられるようにする。主に30代から40代の夫婦の購入を見込み、13年度に年間1800戸だったスマートハウスの分譲戸数を16年度には5000戸にする。パナホームは現在、太陽光発電を備える分譲住宅の割合が6割。18年には全商品をHEMSを備えたスマートハウスにする。大和ハウス工業も今年4月、自分の土地に建てる注文住宅のすべてを太陽光発電とHEMSを備えるようにした。再生エネの固定価格買い取り制度の利用に加え、電力会社から買う電力量を自宅での発電量が上回る「ゼロエネルギー」の状態になると、国から最大350万円の補助金も受けられる。13年度の国内の戸建て着工戸数は分譲と注文を合わせて約48万戸。マンションの12万戸を大きく上回る。14年度は消費増税後の反動減で受注額が前年同月比で1~3割減っている。各種制度を活用すればスマートハウスに割安感があることを訴えていく。国は20年までに一定の省エネ設備の導入を含む新しい省エネルギー基準を住宅向けに義務化する見込み。各社がスマートハウスへの切り替えを急ぐ背景には、新基準に対応する狙いもある。 *1-2:http://qbiz.jp/article/43178/1/ (西日本新聞 2014年8月2日) 電気代節約、マンションごとに 「高圧一括受電」普及が加速 値上げ機に自衛策 マンション全体で電気を一括購入して、電気代を安くするサービスの利用が増えている。1世帯当たりの料金は一般的な契約に比べて5〜10%安くなるため、今年3月末の全国の利用戸数は首都圏と関西を中心に前年同期比で4割増。原発の長期停止などで電気料金が上昇する中、九州電力グループが7月に参入するなど九州でも普及が加速しそうだ。サービスは「高圧一括受電」。2000年の電力小売り一部自由化を契機に、電気料金の「格差」に目を付けた事業者が始めた。電気には、企業など大口向けの「高圧」と、変圧器で家庭向けに電圧を下げ、その分料金が高い「低圧」がある。一括受電は、事業者が割安な高圧(6600ボルト)で電力会社と契約し、低圧(100ボルト、200ボルト)に変えて入居者に配電する仕組みだ。対象のマンションは「40戸以上」が一つの目安。事業者が電力会社に代わって変圧器やメーターを設置するため、入居者は初期投資の必要がない。最大手の中央電力は2004年にサービスを開始。オリックス系のオリックス電力、ジュピターテレコム子会社のアイピー・パワーシステムズ、NTTファシリティーズ(いずれも本社は東京)の計4社が事業規模で先行する。各事業者にとっては、11年の東京電力福島第1原発事故以降の電気料金値上がりが追い風になった。原発の運転停止が長期化し、電力各社の収支が悪化。加えて円安などの影響で火力発電所の燃料となる石油や液化天然ガス(LNG)の価格も上昇した。九電によると、モデル家庭の月額料金は11年2月の6226円から、14年8月は7567円へ21・5%上がる。一括受電事業は逆に12年秋以降急成長。先行4社の契約数は、3月末現在で前年同期比43%増の計約21万1300戸に増えた。これを見て大手電力会社も相次いで参入。東電と関西電力は昨年春、子会社を通じて新築マンション向けサービスを開始した。九州では、05年設立のM・E・M(福岡市)が九州を中心に全国約2万戸にサービスを提供。九電グループの九州通信ネットワーク(QTNet、福岡市)も7月に事業を始めた。電力業界は16年の小売り全面自由化で競争が厳しくなる。中央電力の平野泰敏副社長は「今はまだ認知度が低いが、自由化で一括受電が広く知られるようになれば、利用はさらに増える」と期待する。 *1-3-1:http://qbiz.jp/article/42919/1/ (西日本新聞 2014年7月30日) みやま市、2千世帯で大規模HEMS事業 電力自由化見据え エプコとみやま市のニュースリリース 福岡県みやま市と住宅設備のコンサルティング会社「エプコ」(東京)は30日、市内2千世帯の電力使用状況を把握して節電につなげる取り組みを始めると発表した。各家庭に電気の使用状況が一目で分かる家庭用エネルギー管理システム(HEMS=ヘムス)を設け、官民でデータを管理。1〜2割の節電効果を見込む。HEMSを活用した地域単位の事業としては国内最大級。同市は、2016年に自由化される予定の家庭向け電力小売りへの参入を視野に入れているという。経済産業省が本年度から40億円かけて取り組む「大規模HEMS情報基盤整備事業」の一環。首都圏、中部、東北、九州の4地区計1万4千世帯で実施し、九州はみやま市だけ。同市の取り組みに国の補助金など9億円を投じ、1台の価格が5万〜10万円程度するHEMSを設置する。設置した家庭は、パソコンやタブレット端末などで電力の使用状況が確認できる。市とエプコはデータを集めて地域や時間帯に応じた能率的な使い方を分析。最も節電効果が高まる家電の利用や、生活スタイルをアドバイスする。電力の使用状況に基づき、1人暮らしの高齢者の安否確認にも活用する。9月から市内で説明会を開催し参加世帯を募集。来春からは無料でサービスを開始し、16年度からサービスの一部を有料化する。全国4地区で集約したデータは、複数の大手通信会社などで整備するプラットホーム(情報拠点)に集約。データを活用し宅配業者が在宅世帯を効率的に回れるほか、警備会社が突然電気を使わなくなった世帯の安否を確認できる。一方、空き巣などの犯罪に悪用される懸念もあり、電力データの利活用や取り扱い方の指針を定める。みやま市が参入を検討する家庭向け電力小売りは、現在は九州電力(福岡市)の独占事業。16年の自由化後に自治体として参入すれば、注目を集めそうだ。みやま市の西原親市長は「経済性が高く、生活に役立つ新サービスを提供したい」。エプコの磯部達取締役は「他地域のモデルケースになるよう、取り組みを成功させたい」と語った。 *1-3-2:http://qbiz.jp/article/42958/1/ (西日本新聞 2014年7月31日) 「2千世帯HEMS」のインパクトは、規模だけじゃない 地方自治体単位では国内最大規模の「HEMS(エネルギー管理システム)」導入を30日発表した福岡県みやま市の取り組みは、近年叫ばれている「エネルギーの地産地消」が現実味を増したという意味で、インパクトが大きい。まずは、その規模。HEMSを導入するのは2千世帯で、市内全世帯の14%、7軒に1軒に及ぶ。共同で事業を進めるコンサルティング会社エプコ(東京)によると、国内最大規模。北九州市・東田地区など限られた範囲で同様の取り組みを進める地域が増えているが、みやま市ほど「地域ぐるみ」の例はないという。さらに、関係者が注目することがある。同市とエプコが連名で発表したリリース文には、「みやま市においては、(電力)小売り完全自由化後の自治体による電力供給事業も視野に…(後略)」と明記。「(前略)地方都市が、なぜ電力小売りの先端実証事業に選ばれたのか?」とまで書いている。どういうことなのか。「HEMS」は一義的には、クラウド技術を駆使し、リアルタイムで地域の電力需給を自動制御し、全体の節電効果を高める仕組みを指す。だが、今回の取り組みの最大のポイントは、自治体主導による「電力小売り事業」を視野に入れていることだ。現行制度では、自治体主導で電力をつくり、集めても、一般家庭には供給できず、九州電力に売電するしかないが、完全自由化後は参入が可能となるためだ。みやま市はすでに、市が出資する会社「みやまエネルギー開発機構」を設立。市有地を使ったメガソーラー開発を積極的に進めている。関係者によると、このほか風力や水力、バイオマスなどの再生可能エネルギー由来の電力を、市が主導的に調達・生産し、家庭に供給する「電力事業者」としての役割も視野に入れており、リリース文にも明記した。さらにIT技術を駆使するHEMSでは、電力だけでなく、高齢者家庭の見守り・健康チェックなどの医療福祉サービスにも活用できるため、今回の実証事業にも組み込んでいる。関係者は、こうした仕組みを「自治体版電力小売り・制御パッケージ」として他の自治体にも広げたい、としている。人口約4万人という小規模な都市だからこそ成立する新たな「公共エネルギーサービス」のモデルとなるのか、注目を集めそうだ。 <自然エネルギー> *2-1:http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1407/22/news079.html (スマート ジャパン 2014.7.22) 物流施設は太陽光向き、7棟の屋根に2.5MW オリックスは2014年7月、三菱化学物流の倉庫7棟の屋根を賃借し、出力2.5MWの太陽光発電所の運転を開始したと発表した。同社は全国148カ所で、屋根を利用した太陽光発電を計画しており、合計出力は68.9MWに達する。鹿島灘を望む鹿島臨海工業地帯は150社以上が集まる茨城県最大の工業地帯だ。鹿島港を中心に大小の製造業が立地している。三菱化学物流の鹿島物流センター(茨城県神栖市奥野谷、3万765m2)はこの工業地帯に位置する(図1)。物流倉庫の平屋根が太陽光発電システムの設置に向き、再生可能エネルギーの普及促進による環境配慮につながることから、同社はオリックスに倉庫7棟の屋根を貸すことになった。オリックスは企業や自治体などが保有する大型施設の屋根を活用する「屋根設置型太陽光発電事業」を進めており、倉庫7棟を利用した太陽光発電所の建設を2013年12月に開始、2014年7月に運転を開始した(図2)。発電所の規模は直流出力2.518MW。太陽電池モジュール(出力245W)を1万276枚設置した形だ。倉庫の屋根面積は敷地面積にほぼ等しい。年間発電量は262万3890kWhを予定し、これは一般家庭730世帯分に相当するという。発電した電力は固定価格買取制度(FIT)を利用して、全量を20年間、東京電力に売電する。オリックスは2014年4月に自社が手掛ける太陽光発電事業の状況を発表している。2014年3月期末(2014年3月末)時点において、全国214カ所、合計出力425.1MWの開発に着手していた。そのうち、今回の取り組みを含む「屋根設置型太陽光発電事業」は148カ所、合計出力68.9MWを占め、2014年3月末時点で50カ所、合計出力25.4MW分の発電を開始していた。 *2-2:http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/553654.html (北海道新聞 2014.7.28) 風力発電の立地 環境への配慮欠かせぬ 持続的な社会を築くために再生可能エネルギーの普及は避けて通れない。ただし、自然環境に過大な負荷をかけないのが前提だ。道内の風力発電計画が、行政や自然保護団体から相次いで見直しを求められている。既設地で鳥の衝突死が絶えない。にもかかわらず貴重な野鳥の生息地が建設予定地と重なるケースがあるためだ。風量などから、道内には適地が多い。せっかくの自然エネルギーだ。住民とあつれきが生じないよう、事業者には立地場所を探す段階から野鳥や景観への影響などについて最大限の配慮を求めたい。道は環境影響評価条例で総出力5千キロワット以上の風力発電計画をアセスメントの対象にしている。より規模の小さい発電計画や将来、想定される洋上風力にも対応できるよう、条例見直しを急ぐべきだ。根室市内では2年以上にわたって、風力発電計画への反対運動が続いてきた。最大15基の建設を目指す電源開発(東京)の予定地が、絶滅危惧種のオジロワシやオオワシの生息地で、日本野鳥の会や市民団体が衝突を心配して声を上げた。結局、事業者が今月、中止を発表して計画は立ち消えになった。宗谷管内猿払村と浜頓別町にまたがるエコ・パワー(東京)の建設計画にも疑問符がついている。オジロワシの生息に加え、コハクチョウの越冬地として知られるクッチャロ湖が風車で囲まれる形になるからだ。湖はラムサール条約登録湿地であり、国際社会からの批判も免れまい。道、環境省、経済産業省がこぞって見直しを求めたのは当然である。事業者は耳を傾け、計画を変更すべきだ。こうした事態が続く以上、道は不適地をあらかじめ地図で示し、事業者に避けてもらう「回避地図」の作成を考えるべきだ。参考になるのは長野県の取り組みだ。風力発電に適さない「除外すべき地域」、「慎重に検討すべき地域」を地図上に記している。道内でも北海道鳥類保全研究会が2009年に全道を網羅した試作版を作ってノウハウがある。トラブル回避に役立つはずだ。風がよく通る場所は鳥も飛翔(ひしょう)に利用するから風力発電では野鳥への配慮が必要になる。どこまで許容されるか。既設風車の衝突率を検証しつつ、発電事業と折り合いをつけていく。こうした地道な作業には行政や専門家、市民、環境保護団体を交えた見極めが欠かせない。 <鉄道の整備と自然エネルギー> *3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/87598 (佐賀新聞 2014年7月26日) 基金崩して整備費補てん 松浦鉄道自治体連絡協 第三セクター松浦鉄道(MR、本社佐世保市)の沿線自治体などでつくる自治体連絡協議会は25日、総会を開き、施設整備事業で国の補助金が3割減額となったため、2287万円分を基金から取り崩すことを承認した。またMR側は燃料費の高騰などを理由に、運賃改定を前倒しして検討する考えも示唆した。MRは本年度、検査や枕木の交換、通信線新設などの整備費に2億2874万円を計上。補助率上限の3分の1(7624万円)を国に要望したが、要望額の70%(5337万円)に減額された。JR北海道の整備不良放置が問題となった余波で、全国の鉄道事業者から施設整備の補助金申請が増え、国の予算枠を大幅に上回ったため、優先順位に応じた減額配分となったという。財務省の財源調整後の配分のため、補正予算を組むことは難しいが、連絡協議会では「次年度以降のために訴えるべき」として、国交大臣宛てに満額交付を求める要望書を提出することを決めた。MRの藤井隆代表取締役会長兼社長は経営状況報告で燃料費の高騰に強い懸念を示し、「経営改善計画で2019年に予定していた運賃改定を検討する時期にきていると思う」と述べた。同社は前年度、当期純利益で4年ぶり黒字を計上した。本年度予算では、人件費と燃料費の増加を要因に、990万円の赤字を見込んでいる。 *3-2:http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1406/23/news022.html (スマート ジャパン 2014.6.22) 新しい駅の電力使用量を50%以下に、回生電力や太陽光発電で JR西日本は2016年春に神戸市で開業する新駅の電力使用量を同規模の駅と比べて50%以下に抑える。電車のブレーキ時に発生する回生電力を駅のエレベータやエスカレータに供給するほか、駅舎の屋根に太陽光パネルを設置する計画だ。回生電力によって削減できる電力量は10世帯分になる。JR西日本は2016年春から2019年春にかけて、近畿圏で5つの新駅を開業する計画である。その第1弾になる神戸市の「まや駅(仮称)」に各種のエコ・メニューを導入する。特に大きな効果を発揮するのが電車の回生電力を活用することで、導入に向けて富士電機と共同で「直流電力変換装置」を開発中だ。回生電力は電車がブレーキをかけた時に発生させることができる。通常は近くを走っている加速中の電車に送って利用しているが、それだけでは電力が余る。直流の回生電力を交流に変換するのが直流電力変換装置で、変換した電力は駅舎内の電気機器で利用できるようになる。 *4:http://qbiz.jp/article/43361/1/ (西日本新聞 2014年8月6日) 高齢者乗車券、タクシー適用も検討へ 福岡市議会委が助成請願を採択 保健福祉などを所管する福岡市議会第2委員会は5日、高齢者に対するタクシー利用の助成制度創設を求める市民団体や市タクシー協会からの請願を全会一致で採択した。同市では70歳以上の市民に対し、バスや電車、地下鉄の交通費の一部を助成。ICカードなどを「高齢者乗車券」として交付しているが、市高齢社会政策課は委員会採択を受け「タクシー利用を含めた高齢者乗車券の在り方を検討したい」としている。請願は、9月定例会本会議で審議予定。採択されれば、議会側は、市に請願内容への対応について経過や結果の報告を求めることができる。高齢者乗車券は現在、所得に応じて年間最大1万2千円分を交付。高齢者の外出や社会参加を促す目的で、本年度の交付対象者は16万1855人、事業費は11億4432万円となる見込み。請願では「高齢者乗車券でタクシーが利用できれば、もっと出掛ける機会が増えるという声は多い」などと主張している。市によると、タクシー利用の助成を実施した場合、事業費が約2割膨らむ見込みという。現在、政令市でタクシー利用の助成を行っているのは浜松市と広島市。 PS(2014.8.7追加):離島は、風力発電や潮流発電にも適地だが、電線をひくのは一苦労という事情があるため、燃料電池向けの水素を生産して船で出荷するという案もあるだろう。 *5:http://qbiz.jp/article/43360/1/ (西日本新聞 2014年8月6日) 離島の再生エネ契約中断問題 九電、壱岐で説明会 壱岐、対馬など長崎、鹿児島両県の六つの離島で、再生可能エネルギー発電の新規契約を1年程度中断することについて、九州電力は4日、壱岐市で説明会を開いた。発電事業者や電気工事関係者など約60人が参加した。九電本社の担当者が、壱岐での電力買い取り量が、安定供給のため設けた目安を上回る見通しで、7月26日以降の申し込みを対象に出力抑制を交渉する、と説明した。参加者からは「今後、出力抑制の対象を段階的に広げるのではないか」「すでに買い取り契約済みの場合も出力抑制の対象になるのか」などの質問が出た。九電の担当者は「対象は今の段階では新規申し込みの500キロワット以上の設備」「契約済みの場合は不利益にならないように対応する方針」と答えた。九電によると、太陽光などの電力買い取りが増えると、供給が過剰になり電力の需給バランスが崩れ、停電が起きる恐れがあるという。 PS(2014.8.9追加):太陽光発電による電力の買取制度ができたからといって、*6のようなメガソーラーは、1)太陽光発電設備下の動植物を殺して水質を悪化させる 2)その結果、動植物が住めない環境にする 3)景観を悪化させる など、環境を破壊するため許可すべきではない。そもそも、太陽光発電設備は、住宅・畜舎・倉庫の屋根や壁に地道に設置していき、空いた空間を利用して省エネしながら賢く発電するために考えたものなので、公害を出しながら大規模発電する必要はなく、このような設置の仕方には環境影響評価を行うべきである。なお、どうしてこういうことを同時に考えられないのか、疑問だ。 *6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140809&ng=DGKDASDZ0705B_Y4A800C1TJ2000 (日経新聞 2014.8.9)ウエストHD、水上に太陽光発電所 発電量、陸上より1割増 太陽光発電施工大手のウエストホールディングス(HD)は、池などの水面に太陽光パネルを並べる「水上太陽光発電所」の建設事業を始める。パネルなど資材調達から発電所の建設までまとめて請け負う。大規模太陽光発電所(メガソーラー)の適地が不足していることから水上の需要が高まるとみている。最初の施設を2015年1月に着工し、年間で出力3万キロワット分の建設を目指す。発電能力1000キロワットあたり、3億円程度の価格で請け負う方針だ。調整池をもつ地方自治体などからの需要を見込んでいる。価格は陸上につくる場合と同等に抑える一方、発電量は冷却効果によって陸上より1割増す見通し。プラスチック製品のキョーラク(大阪市)と、太陽光パネルを水上に浮かべる土台となる浮体式架台の金型を共同開発した。海外製の類似製品を使用する場合に比べ、2割近く価格を低減。総投資額で陸上並みのコストに抑えられるようにした。架台はキョーラクが国内で生産する。太陽光パネルは中国企業からOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受ける。太陽光パネルは熱で発電効率が落ちるため、冷却効果が見込める水上の注目が高まっている。ウエストHDが昨夏に埼玉県桶川市で自社向けに建設した水上のメガソーラーでは、陸上に比べ発電量が約1割多い実績が出ているという。発電能力1000キロワットのメガソーラーの場合、陸上に比べて売電収入が年間300万円程度増す計算だ。発電所の大きさはメガソーラーから小規模まで自由に選べる。海上には建設できないが「多少の塩分には機材は耐えられる設計にする」(ウエストHD)という。ウエストHDによると愛知、福岡、佐賀、香川、埼玉各県の10市程度から発電能力の合計2万キロワットを超える水上発電所の建設の引き合いがきている。
| まちづくりと地域振興::2014.4~2015.4 | 12:07 PM | comments (x) | trackback (x) |
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