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2013,12,08, Sunday
*2より *3より (1)特定秘密保護法の不完全さと質の悪さ *1に書かれているとおり、特定秘密保護法は、行政機関の「長」の判断で、重要情報を国民から隠せるため、官僚制には好都合な装置であり、「安全保障」と言いさえすれば何でもできることになる。その欠陥は、次々と出てきており、この法律は、製品に例えれば、リコールに値する。 そのため、*2のような日比谷野外音楽堂での特定秘密保護法案反対集会、*3の市民デモ、*4の戸惑いなど、一昨夜、参院を通過した特定秘密保護法には反対が多いが、私は、そのスジの悪さと不完全性から国民の反対や危惧は当然であるため、この法律は廃止して、ツワネ原則(http://www.news-pj.net/pdf/2013/tsuwanegensoku.pdf)に沿った、民主主義国家として常識的な法律を作るべきだと考える。 (2)適性評価に関する具体的問題点 この法律は、適性評価に関する部分で、不必要なプライバシー侵害や人権侵害があるとともに、精神障害者に対する差別を含んでいるため、以下、その適性評価に関する問題点について指摘する。 1)*5の十二条に、適性評価は、「次に掲げる事項について調査を行い、その結果に基づき実施する」とされており、その事項は、①特定有害活動及びテロリズムとの関係に関する事項(評価対象者の家族(配偶者(事実婚を含む)、父母、子、兄弟姉妹並びにこれらの者以外の配偶者の父母及び子、同居人の氏名、生年月日、国籍(過去に有していた国籍を含む。)及び住所、②犯罪及び懲戒の経歴に関する事項、③情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項、④薬物の濫用及び影響に関する事項、⑤精神疾患に関する事項、⑥飲酒についての節度に関する事項、⑦信用状態その他の経済的な状況に関する事項 とあるが、このうち、①の「並びにこれらの者以外の配偶者の父母及び子」というのは、ずいぶんと範囲が広そうだが正確には意味不明だ。また、③の「情報の取扱いに係る非違の経歴」というのは、その意味と範囲が不明である。さらに、⑤の「精神疾患に関する事項」は、精神疾患にかかった経歴があるから秘密を洩らしやすいわけではないため(例えば、自閉症は話をしない病気であり、治癒すれば普通の人である)、精神疾患に対し、法律でいわれのない差別をしている。 2)「適性評価は、あらかじめ、政令で定めるところにより、次に掲げる事項を評価対象者に対し告知した上で、その同意を得て実施する」とされているが、かなりのプライバシー侵害に当たるため、それを拒否したらどうなるのだろうか。 3)「行政機関の長は、第二項の調査を行うため必要な範囲内において、当該行政機関の職員に評価対象者若しくは評価対象者の知人その他の関係者に質問させ、若しくは評価対象者に対し資料の提出を求めさせ、又は公務所若しくは公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる」とされているが、このような聞き合わせは、職場の正式な業務評価書よりも正確なのだろうか?知人その他の関係者に聞き合わせをされること自体が、よい人間関係を失わせて人権侵害になる恐れがあるため、対象となる組織では、職場の正式な業務評価書に必要事項を織り込んでおき、民間事業者が契約する時には、その業務に関与する人の経歴として、契約の相手方に提出すればすむ話だろう。 4)「警察本部長は、政令で定めるところにより、次に掲げる者について適性評価を実施するものとする」とされているが、警察で特定秘密とされるものは何だろうか。過去の冤罪事件に関する証拠や記録でなければよいと思うが、如何? *1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013120802000138.html (東京新聞社説 2013年12月8日) 特定秘密保護法 官僚制に“鎖”をつけよ 「反対」の声を無視し、成立した特定秘密保護法は、官僚が情報支配する道具だ。国会議員は目を覚まし、官僚制にこそ“鎖”をつけるべきである。 <自らの支配者たらんとする人民は、知識が与える力で自らを武装しなければならない> 米国の第四代大統領のジェームズ・マディソンは、一八二二年に知人宛ての手紙にそう書いた。日本の支配者は、主権者たる国民のはずである。その国民が情報を十分に得られなかったら…。マディソンはこうも書いている。 <人民が情報を持たず、または、それを獲得する手段を持たないような人民の政府は、喜劇への序幕か悲劇への序幕にすぎない> ◆善良でも「省益」に走る 政府には喜劇であり、国民には悲劇である。主権者たる国民は本来、支配者の自覚で、情報がもたらす知識の力で「武装」しなければならない。それゆえ、憲法は「表現の自由」を規定し、国民は「知る権利」を持っている。だが、膨大な行政情報を握る官僚制は、もともと秘密主義をとりたがる。国民に過少な情報しか与えない仕組みになっている。「『職務上の機密』という概念は、官僚制独自の発明物」と看破した社会学者マックス・ウェーバーは、こう述べている。 <官僚制的行政は、その傾向からいうと、つねに公開禁止を旨とする行政なのである。官僚制は、その知識や行動を、できることならどうしても、批判の眼(め)からおおいかくそうとする> これは情報公開制度を使った経験のある人なら、容易に理解するはずだ。「非開示」の通告を受けたり、真っ黒に塗りつぶされた文書を“開示”されたりするからだ。新聞記事すら、黒く塗りつぶして、「公開」と称する。個人として善良な官僚たちでも、組織となると独善に陥り、「省益」を守るべく奔走する。 ◆無力な国会でいいのか 特定秘密保護法は、さらに官僚制に好都合な装置だ。行政機関の「長」の判断で、重要情報を国民の目から覆い隠せるからだ。「安全保障」のワッペンさえ貼れば、違法秘密でも秘匿できる。先進国の中で、官僚制にこれほどフリーハンドを与えている国はあるまい。欠陥がぼろぼろと出てきたため、政府は改善と呼ぶ提案をトランプのカードのように次々と切ってきた。「保全監視委員会」を内閣官房に、「情報保全監察室」を内閣府に…。だが、行政機関を身内の行政機関が客観的に監視できるはずがない。法律本体が欠陥なのだから、取り繕う手段がないのだ。それならば、いったん成立した法律を次の国会で廃棄するのが、最も適切な対応だと考える。首相や与党幹部は、考え違いをしていないか。自民党の石破茂幹事長は「絶叫デモはテロ行為と変わらない」とブログに書いた。同党の町村信孝氏も「知る権利が国家や国民の安全に優先するという考え方は、基本的に間違い」と述べた。憲法を否定し、「主権在民」ではなく、「主権在官」だと言っているのに等しい。国民あっての国家であることを忘れてはいないか。安倍晋三首相が目指すのは「美しい国」だ。世界中の民主主義国家では、多種多様な意見がひしめき合うのを前提に成り立っている。安倍首相の頭には、整然とした統制国家があるのではないかと思える。秘密保護法はまさに情報統制色を帯びている。だから、国民の代表者である国会議員をも処罰する規定を持たせている。特定秘密には国政調査権も及ばない。議員はまるで無力である。国会は政府の言いなりの存在になる。国権の最高機関よりも、行政権が優位に立つ不思議な国の姿になろう。三権分立を崩す法律には、議員こそ反対すべきだった。その反省に立ち、議員らは官僚の暴走を食い止める“鎖”となる仕組みを構築するべきだ。過去の情報漏えい事件は、ずさんな管理が原因のものばかりだ。むしろ、官僚に対して、命令形の用語を使った情報管理システムをつくったらどうか。「情報は国民のもの」という原則で、情報公開法を全面改正する。公文書管理法も改正し、行政に説明責任を果たさせる-。官僚制に“鎖”をつける方法はいくらでもある。 ◆知識で武装するために 首相は「国益」というが、これまでの経験則では官僚が狙うのは「省益」だ。「国民の利益」はいつも置き去りとなる。民主主義を機能させるには、国民は情報がもたらす知識で「武装」せねばならない。少なくとも情報公開法と公文書管理法の抜本改正という、トランプのエースのカードを国民に与えるべきである。 *2:http://www.saitama-np.co.jp/news/2013/12/07/01.html (埼玉新聞 2013.12.7) 民の声なぜ届かぬ 日比谷野音で特定秘密保護法案反対集会 6日深夜の国会で可決成立した特定秘密保護法。国会周辺や日比谷野外音楽堂では6日、廃案を求める多くの市民が怒りの声を上げた。「強行採決に危機を感じる」「戦争時代のようだ」。県民からも未来への不安が噴出した。 ■「戦争の記憶再来」 日比谷野外音楽堂で開かれた秘密保護法廃案を求める集会とデモ。県内からも横断幕やプラカードを掲げた参加者が駆け付け、「国民の声を聞いてほしい」と訴え、集会とデモに参加した。 新座市に住む84歳男性は、国民学校に通っていた頃の思想統制の下での思い出を振り返り、「戦争中の記憶がよみがえってくる。まさに始まりはこんな感じだった。友達同士で監視し合った。まさに治安維持法と同じ。庶民を苦しめてばかりの政治に私は怒っている」と語気を荒げた。 久喜市に住む病院事務の女性職員(55)は、職場の同僚が作った「STOP秘密保護法」のステッカーをかざし、集会に参加。「今の状況は戦争の時代に重なる。子どもや孫から、なんであんな法を通したのと言われないように、何か行動しなければと駆け付けた」 朝霞市などで活動する商工団体事務局で働く紀田千尋さん(34)は、同法が会員の中小業者に影響を与えることを懸念する。「近くに朝霞駐屯地がある。この法案が通ることで地域の業者が不利益を被る恐れがある。こうした反対運動そのものをすることで危険にさらされることも危惧している」 川口市に住む50代男性教員は、法案成立に向けた政府の姿勢を非難。「国民の普通の声が届かない政治だ。とにかくこれだけ反対の声があるのに強行するやり方に危機感を感じる。諦めずに秘密保護法の廃案を目指し、子どもたちに未来のある教育をしていきたい」と語った。 *3:http://mainichi.jp/select/news/20131208k0000m040009000c.html (毎日新聞 2013年12月7日) 秘密保護法:「こんな法律認めない」市民らのデモ続く 特定秘密保護法の成立を受けて、同法に反対する市民らは7日、国会議事堂周辺やJR渋谷駅前で怒りの声を上げ続けた。国会議事堂前では朝から「秘密保護法廃止」と書かれたチラシや看板を持った市民が「こんな法律は認めないぞ」と訴えた。埼玉県蕨市の無職、仲内節子さん(68)は「このまま黙ったら政府の思うつぼ。今日は法律廃止に向けた第一歩だ」と話した。 また、JR渋谷駅前では全国から駆けつけた仏教、キリスト教など宗派を超えた宗教者が集まり「この法律は国民の目、耳、口をふさぐ。みんなで民主主義を守ろう」と呼びかけた。参加した僧侶の武田隆雄さん(61)は「これからが本当の始まり。心の自由を縛りかねない法律に対し、宗教者として反対の意思をはっきり示したい」。静岡県沼津市の神父、河野淳さん(49)も「法律が成立したからといって引き下がるつもりはない」と語気を強めた。 *4:http://qbiz.jp/article/28636/1/ (西日本新聞 2013年12月7日) 特定秘密保護法 九州の民間にも広がる不安 特定秘密保護法が成立し、秘密を取り扱う公務員や民間人に対し「適性評価」が実施されることになる。対象となり得る九州の関係者にも不安や懸念が広がっている。「われわれも適性評価の対象となり、仕事と直接関係ない家族構成や酒量まで調べられるのか」。米海軍基地や海上自衛隊地方総監部がある長崎県佐世保市で艦船整備に携わる会社役員の男性は不安を漏らす。基地側とは長年積み上げてきた信頼関係がある。従業員は基地に入る許可証を持っており、一般に明らかにされない艦船の入港日時を事前に知らされている。エンジンを修理したり、乗組員が寝泊まりする居住区で電気設備を点検したり、外部に漏らせない情報にも触れる。男性は、従業員に適性評価を受けるよう指示する立場になることを懸念している。「技術者に借金の有無を聞き出すなんてことは筋が通らない。できればしたくない」と声を落とす。 医療現場でも、特定秘密に接する可能性がある。福岡県歯科保険医協会の大崎公司会長(56)によると、医師は健康保険証から患者が国家公務員だと知り得る立場にあり、診察時は仕事内容にも話が及ぶことがあるという。実際、海上保安庁の職員から「来週から2週間、韓国の海域近くまで行くので診察に行けない」と打ち明けられたり、原発作業員から「定期点検に入るので2カ月は来られない」と聞かされたりしたことがある。「知らず知らずのうちに秘密に触れ、捜査対象になりかねない恐ろしい法だ」と懸念する。 「多くの自衛官は秘密を墓場まで持っていく覚悟を持っているが、それを民間人にまで死ぬまで言うなと決めていいのか」。九州の部隊に所属する自衛官は、疑問を投げ掛ける。別の元自衛官は「防衛大の志願者が、過去にその親が学生運動をしていたとの理由で不合格になった事例があった」と打ち明ける。「権力側は既に民間人のプライバシーを調べている実態がある。拡大は危険だ」と強調した。 *5:http://digital.asahi.com/articles/TKY201312070583.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2013年12月8日) 特定秘密保護法(全文) 6日に成立した特定秘密保護法の全文は次の通り。(《 》内が衆院での主な修正箇所) 下の「続き▽」をクリックすると、全文が出てきます。 続き▽
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2013,12,07, Saturday
国会風景 2013.12.7毎日新聞、国会前に集った市民 (1)特定秘密保護法の出所は自民党憲法改正草案と同じであるため、これも議論すべきである *4に書かれているように、私も自民党の憲法改正草案を見てぞっとした人の一人である。その理由は、現行憲法は「国民主権」をうたい、国民の人権を尊重したものだが、自民党の憲法改正草案は「国家」による国民の支配・管理を強調したもので、それは、前文冒頭の「日本国民」ではじまる一文が「日本国民」から「民」を外して「日本国」とされ、「国家支配」の一文にさしかえられていることから明らかである。従って、これは、改憲によるクーデターと言っても言いすぎではない。 また、第一章の「象徴天皇」が、自民党の憲法改正草案では「日本国の元首」に変えられている。「元首」とは、共和国なら大統領であり、国の最高責任者であって、現行憲法では、天皇は「象徴」とされているが、それが元首になれば、世襲による交代で絶対的権力をもつということである。これにより、日本は、憲法上、堂々と国民主権ではなくなる。 さらに、現憲法の「第十章 最高法規」の「第九十七条」には、「基本的人権」の大切さを高くうたった条項があるが、これが丸ごと削除されている。これにより、憲法は、国民主権を護り、基本的人権を保障するためのものから、国家が国民を支配し、監視するためのものに変容する。 「元首」としての天皇の実働部隊として働くのが官と呼ばれる官僚であり、それが、今回の特定秘密保護法で大きく権限を拡大した行政である。官僚がもともと優秀でも、見ている方向が国民でないのはこのためだ。そして、自民党憲法改正草案の前文で「天皇を戴く国家」であることを強調することで、その下で働く実働部隊としての官は、民に対して何をしても、国体の維持の為として責任を免れるようになる。 私は、こういう価値観を持っているため、憲法改正を党是とする自民党内で「保守本流ではない」と言われたことがあるが、「保守」というのは現行体制を維持することであるため、このような憲法改正こそ革命(クーデター)だろう。そして、日本国憲法の下で教育を受けた人が大半を占める自民党の国会議員の中で、自民党のこの憲法改正草案にすべて賛成という人は多くない筈だ。他党の議員については言うまでもない。 (2)特定秘密保護法案は、憲法改正前に、その下部法規を作ったものだ・・ *3に書かれている「秘密保護法成立は憲法を踏みにじる暴挙だ」ということに、私も同感である。この法律は国民主権、基本的人権尊重、平和主義という憲法の三大原則をことごとく踏みにじるが、それは、自民党が憲法改正前に、その下部となる法規を作ったものだと考えるとそれなりに頷ける。特定秘密保護法の欠陥である「国民よりも国家を上位に置く点」「国民主権の礎となる『知る権利』を制限する点」「自衛隊の海外での武力行使を前提とする点」などがそれである。 そのため、*3に書かれている情報公開法の改正などの提案はいちいちもっともだが、特定秘密保護法と自民党の憲法改正草案の妥当性を、結びつけて検証することも重要である。 (3)自らの良心に従って行動する議員の意志決定を、単純に造反と呼ぶべきではない 今までこのブログに記載してきたとおり、特定秘密保護法は、国民への人権侵害を許し、日本国憲法に反して民主主義を逆行させ、国会の権限を縮小する法案であるため、*1のように、国連のピレイ人権高等弁務官が懸念を表明するほどのものだ。 *3にも、「今国会では国権の最高機関である国会の地位が脅かされているのに、首相に唯々諾々と従う与党議員の情けない姿ばかりが目立った。議会人の見識はどこに行ったのか」と書かれており、私もその通りだと思うが、官の管理・運用ミスを隠すために行われた社会保障目的と称する消費税増税も同じようなものだった。しかし、採決するにあたり、議員が党の意思決定と異なる行動をした時には、メディアが、*6のように、「造反だ」「党としてまとまっていない」などと騒ぎたてたことは記憶に新しい。 党の決定と異なる行動をする議員は、内容をよく理解した上で、それによって自分が不利な立場になることも覚悟の上で、正義感をもって行動する信念の持ち主が多い(そうでなければ、わざわざそういうことはしない)。郵政民営化の時とは状況が異なるのだ。そのため、メディアが、すべての案件について馬鹿の一つ覚えのように「造反は悪い」という批判をするのは、メディアの幼稚さである。この原因には、記者に集団競技の体育会系の人が多く、知識の深さや視点の鋭さに欠け、本質を見抜けないということがあるらしく、これでは、本物の主権者を育てることはできない。 (4)多くの国民が反対する法案が、大多数の賛成で衆参両院を通過する理由 今回の特定秘密保護法については、メディアは自らの表現の自由に関わるため真剣に報道し、*2のように、多くの国民が反対表明の行動を行った。それにもかかわらず、国民の反対など何の関係もないかのように、特定秘密保護法は、国民の代表である議員多数の賛成によって、衆参両院を通過した。 この理由には、確かに、選挙で国会議員が国民の数と比例せずに選ばれているということがあるし、国民が議員を選択している評価基準もあるだろう。しかし、党の政策に反対すれば「造反者で、離党か除名」という議員に対する強制状態ができているため、自民党内の少ない人数で作った法案でも党内の全議員が賛成せざるを得ず、法案が実態とは乖離した大多数の賛成で国会を通過するという事実がある。 つまり、*5、*6のように、どんな内容でも党の決めた方針に逆らってはいけないという、主権者の代表である議員を子供かサラリーマンのような扱いにする文化が醸成されたことが問題なのだ。何故なら、これでは、議員に主権者の代弁者という本来の職務が勤まらないからである。 *1:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2591584.article.html (佐賀新聞 2013年12月3日) 日本の特定秘密保護法案に懸念 / 国連人権高等弁務官 【ジュネーブ共同】国連のピレイ人権高等弁務官は2日の記者会見で、日本の特定秘密保護法案について「『秘密』の定義が十分明確ではなく、政府が不都合な情報を秘密扱いする可能性がある」と懸念を表明した。ピレイ氏は「日本の憲法や国際人権法が定める情報へのアクセス権や表現の自由に対する適切な保護規定を設けずに、法整備を急ぐべきではない」と指摘。「政府と立法府に対し、国内外の懸念に耳を傾けるよう促す」と述べた。 *2:http://digital.asahi.com/articles/TKY201312060407.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2013年12月6日) 秘密保護法成立、反対訴える声深夜まで 各地で集会 日に日に高まる反対の世論や野党の抵抗を蹴散らすように、政府与党は採決に突き進んだ。特定秘密保護法は6日夜、参院本会議で成立した。「それでも、欠陥だらけの法律を許すわけにはいかない」。戦争を知る世代、若者、子を連れた母親……。反対を訴える市民の声は、深夜までやむことはなかった。採決に先立ち、国会近くの日比谷野外音楽堂で午後6時半から始まった抗議集会には約1万5千人(主催者発表)が参加し、「審議が拙速で乱暴」などの批判が続いた。階段や通路まで人で埋め尽くされ、入れなかった人たちも外で「強行採決を許さない」と声を上げた。主催者側の海渡雄一弁護士が「法案が成立しても、廃止する活動を始めよう」と呼びかけると、大きな拍手が起きた。福島原発事故の刑事責任追及を求める「福島原発告訴団」の武藤類子団長は「(原発事故では)情報を隠されたことでたくさんの人が被曝した。情報が隠されると、命と安全を守ることはできない」と訴えた。 生後7カ月の娘を連れて福岡県筑紫野市から駆けつけた会社員、宮下彩さん(34)は「そそのかしが罰せられるなら、友達づきあいも気にしなければならない。秘密だらけの世の中にしかねない法律は未来に残したくない」と話した。会場に入れなかった横浜市中区の会社員、藤田勇人さん(27)は「外交や防衛にある程度秘密が必要なのは分かるが、第三者機関などチェック機能の議論が雑。国会運営をみても、不安しか残らない」と批判した。 集会では「国会より上に行政が君臨する官僚独裁を導き、憲法と民主主義の転覆を図るクーデター法だ」とする宣言を採択。参加者たちは国会周辺でデモ行進した。 東京都北区の会社役員、野地賢徳さん(40)は息子の賢蔵君(7)とデモ行進に加わった。「国が軍事機密などを守らなくてはいけないのは分かる」としながらも、「自衛隊法など今ある法律でなぜ漏洩(ろうえい)を防げないのか、議論が尽くされていない。施行まで反対の声を上げ続けたい」。 言論に携わる人たちの危機感は強い。日本ペンクラブなどがこの日、国会内で開いたシンポジウムで作家の吉岡忍さんは「透明度の高い政治制度が民主主義のはず。特定の公務員や大臣が、国家とか国益という言葉を持ち出し、世の中のあらゆる情報を秘密にしたら、何をしでかすか分からない」と不安を訴えた。日本雑誌協会の山了吉さんは「常にタブーを追ってきたのが雑誌。秘密保護法ができれば、根底から取材源を断つことになる」と主張した。 東京都三鷹市の国際基督教大学には約250人の学生が集まり、法案の問題点について学識者らと話し合った。成立を急ぐ与党の真意について、一橋大の山内敏弘名誉教授(憲法)は「慎重に審議すると、法案の内容を理解した国民が反対するから、短期間で成立させようと考えたのではないか」などと説明。参加した国際基督教大2年の栗栖由喜(ゆき)さん(19)は「秘密の定義があいまいすぎる『不特定』秘密保護法案には反対です」と話した。 ■大阪・京都・福岡でも 各地でもこの日、抗議の集会やデモが続いた。京都市で市民団体が呼びかけたデモには約120人が参加。「強行採決こそテロだ」と書かれたプラカードを掲げ、JR京都駅周辺を歩いた。団体職員、長谷川幹さん(33)は「納得していない市民がいることを、安倍政権に伝えていきたい」。インターネットでデモを知り、参加したという女性(21)は「傍観者ではなく行動に移さなければ、と思った」と話した。買い物客らが行き交う神戸市のJR三ノ宮駅近くでも、弁護士ら約400人が抗議の列を作った。速水二郎さん(76)は「与党は数の力で暴走した。安倍首相と民意にはズレがありすぎだ」と憤りの声を上げた。大阪市中央区の自民党大阪府連が入るビルの前では前日に続き約70人が集い、大学4年生の藤井藍子さん(22)は「抗議をやめるつもりはありません」と言い切った。福岡市中央区天神の繁華街では、市民グループのメンバーら約10人が法案に反対するビラを配った。500枚を1時間で配りきった。受け取った福岡県宮若市の会社員、豊福明子さん(53)は「民主主義が壊れている感じ。与党が数の力におごり、国民の声を聞いていないように見える」。名古屋市中区の広場には4千人近く(主催者発表)が集まり、「私たちの力で廃案にしよう」などと訴えた。集会は愛知県内の弁護士らでつくる市民団体が主催。先月開いた時よりも参加者が大幅に増えた。事務局の内田隆さんは「与党の国会運営の強引さに危機感を持った人が多いのだろう」と話した。 *3:http://www.saga-s.co.jp/news/ronsetu.0.2593701.article.html (北海道新聞社説 2013.12.7) 秘密保護法成立 憲法を踏みにじる暴挙だ 日本の戦後の歩みに逆行する転換点になってしまうのではないか。政府が指定した機密の漏えいや取得に厳罰を科す特定秘密保護法が参院本会議で成立した。政府・与党が強引な国会運営で押し切った。この法律は国民主権、基本的人権尊重、平和主義という憲法の三大原則をことごとく踏みにじる。憲法に基づき、平和で民主的な社会をつくろうと丹念に積み上げてきた国民の努力を台無しにする。そんな悪法を、数に任せて力ずくで成立させた政府・与党の暴挙に、強い憤りを覚える。 だが、「戦後レジームからの脱却」を主張する安倍晋三首相にとって、これは最初の一歩にすぎない。国民が黙っていれば、首相は今後も巨大与党を背景に、最終目標である改憲と国防軍創設に向け突き進むだろう。秘密保護法廃止の声を上げ続けなければならない。同時に、同法の乱用を防ぐできるだけの手だてを講じ、厳しく監視することが必要だ。新法の欠陥は枚挙にいとまがないが、最大の問題は国民よりも国家を上位に置く点である。 国民主権は国民に情報が開かれていることが前提だ。だからこそ憲法は表現の自由を基本的人権の一つとし、それによって国民の「知る権利」を保障する。ところが新法は官僚が事実上、好きなように情報を特定秘密に指定し、永久に非公開にできる。国民の代表である国会議員にさえ情報を隠せる。国の安全保障のためには、国民の知る権利はいくら制限しても構わないという発想だ。中国の軍拡や北朝鮮の核・ミサイル開発を持ち出せば、国民の理解を得られると踏んだのだろう。首相は今後、集団的自衛権の行使を認める国家安全保障基本法を制定し、自衛隊の海外での武力行使を前提に日米防衛協力のための指針を見直す道筋を描く。その先に見据えるのは国防軍の創設だ。戦前の政府は、軍機保護法などによって国民の目と耳と口をふさぎ、悲惨な戦争に突入していった。安倍政権は、その反省に基づく日本の戦後の歩みをここで折り返し、再び戦争を可能にする道を進もうとしているのではないか。 首相に待ったを掛けるには、秘密保護法廃止に向けた粘り強い取り組みが不可欠だ。ただ、廃止は容易でなく時間もかかる。その間に官僚がやりたい放題をやるのを少しでも抑えなければならない。まず必要なのは情報公開法の改正だ。政府による秘密指定の妥当性を裁判所がチェックする「インカメラ審理」を導入することなどが柱になる。公文書管理法を改正し、秘密指定が解除された文書については廃棄を許さず、一定の保存期間経過後には必ず国立公文書館に移管、公開するようにすべきだ。これらにも増して重要なのは、国会が政府を厳しく監視することだ。今国会では国権の最高機関である国会の地位が脅かされているのに、首相に唯々諾々と従う与党議員の情けない姿ばかりが目立った。議会人の見識はどこに行ったのか。 新法は一般市民の日常も脅かす。国民は自分たちの暮らしを守るためにも反対の意思を示し続けなければならない。首相にはここで立ち止まり、自らの安保政策を根本から考え直してほしい。元毎日新聞記者の西山太吉氏は「情報が国民から遮断され、日本の民主主義が空洞化する恐れがある」と語る。沖縄密約を暴いて有罪判決を受けたジャーナリストの警告を重く受け止めたい。 *4:http://www.labornetjp.org/news/2013/0625kinosita (2013.6.25 木下昌明)天皇もギョッとする? 自民党憲法改正草案 都議選に引きつづき、参院選でも自民党が圧勝する気配が濃厚になってきた。そんななか自民党の憲法改正草案がいよいよ現実味を帯びてきた。わたしは改正草案といっても現憲法を土台にしているのであれば、そんなに変えられるものでもないだろうと高をくくっていた。が、いざ二つを比較してみるとあまりの違いにがくぜんとなった。文字面ではいっけん現憲法をチョコチョコっと手直ししているようにみえたが、中身はまるで月とスッポン。 現憲法は「日本の国民」の主権をうたい、人権を尊重したものだが、草案の方は「国家」による国民の支配・管理を主張したものなのだ。これは「改正」とか「改悪」とかではなく、別の国の憲法だといえる。冒頭前文の「日本国民」ではじまる一文からして「日本国民」から「民」を外して「日本国」として、いっけん現憲法を踏襲しているようにみせて、そっくり「国家」支配の一文にさしかえている。 第一章にあった「象徴」としての「天皇」が、草案では「日本国の元首」に変えられている。「元首」とは何か? 共和国なら大統領である。それも主義主張をとなえ、国民の総意による選挙でえらばれた人物が一定期間(4年なり8年なり)国の最高責任者となる者である。しかし、天皇の場合、主義主張もとなえず、選挙でえらばれるわけでも一定期間だけでもなく、その存在自体が「元首」にしたてられ、最高責任を務めさせられるーーこれは世襲制の君主を意味し、戦後「日本国」が主軸にしていた民主主義とは対立する君主国家となる。 現憲法では、天皇は政治にタッチしない「象徴」に置かれていたが、それが一国の大統領のように権限をもち、代々世襲による交代で絶対的権力をもたされる。これには天皇もギョッとなるのでは? それは現政権が敵対している北朝鮮の世襲による権力移譲体制とそっくりとなる。 ところが奇怪にも「天皇」に責任を負わせるくだりをすっぽり抜かしている。 現憲法の「第十章 最高法規」の「第九十七条」には、「基本的人権」の大切さを高くうたった条項があるが、これがまず丸ごと削除されている。天皇を柱にすえるには「人権」が柱となっては困るからである。その上で「第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し、擁護する義務を負ふ」という箇所を逆転させている。つまり、草案では「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」と国民に「義務」を押しつけている。本来、この条項は、国家の公務に携わる天皇以下の人々に憲法の尊重を指示したものだが、そこから「天皇又は摂政」を削除し、憲法自体を国民のためのものではなく、国家のためのものにひっくり返しているのだ。 戦前の「最高国策の決定機関」であった「御前会議」をわたしは想起した。御前会議とは、天皇を前に閣僚らが会議を開くのだが、天皇は絶対権限をもちながら、その席上での発言をひかえていた。そのことで何か間違いがあっても天皇には責任を負わせないーーそんな奇妙な装置だった。そのからくり仕掛けが、この草案にそのままもちこまれている。これによって頂点にたつ「元首」の責任が問われなくなり、以下の閣僚らの責任も軽減され、「無責任体系」が完成するしくみとなる。そこで草案前文にいう「天皇を戴く国家」を強調することで、その下の実質的権限を握った機関が好き勝手なことをしても責任をまぬがれる国家システムとなる。 その他、この自民党改正草案にはあぜんとすることばかりが羅列されているが、基本は、国民の自由や権利をうたった条項にクギを刺すように、3ヵ所にわたって「公益及び公の秩序」に反してはならないという言葉を使って、国民を抑圧しようと企図していることが歴然としている。 いまや国民は、この「憲法」に呪縛されて原発国家を推進する安倍自民党の奴隷となる日はそう遠くない。 *5:http://digital.asahi.com/articles/TKY201311270533.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2013年11月28日) みんな造反議員、離党に含み 特定秘密保護法案で みんなの党は27日、特定秘密保護法案の衆院採決で棄権した江田憲司前幹事長と、反対した井出庸生、林宙紀両衆院議員から事情聴取した。政界再編の方針や党運営をめぐって渡辺喜美代表と江田氏の対立が深刻化しており、井出氏と林氏が聴取後、離党の可能性に言及するなど、分裂の様相を呈している。山内康一幹事長代理が、3氏と面会し、造反した理由を聞いた。江田氏は「安全保障や知る権利、基本的人権に関わる法案は絶対に強行採決してはならない」と説明。林氏も「党内の議論が尽くされていない」などと訴えた。また、井出氏は「執行部で『党を出て行け』という議論があることは覚悟している」と離党覚悟であることを伝えた。林氏も「議席を返す覚悟をした上で造反した」とした。江田氏は「2人には寛大な措置をお願いしたい。適正な民主的な手続きでやってほしい」と擁護した。山内氏は「党内に持ち帰り、処分を検討する」と述べるにとどめたという。党内には、渡辺喜美代表がトップダウンで賛成を決めた手法に不満がある。参院採決でも造反の可能性があり、執行部は党の引き締めに苦慮しそうだ。 *6:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120624/stt12062401220000-n1.htm (MSN産経ニュース 2012.6.24) 消費税増税法案 民主の「造反」70人規模に 鳩山系に拡大 消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法案の衆院採決で反対する意向の民主党議員が50人に迫ることが23日、わかった。野田佳彦首相周辺も同日、「50人近くが反対し、さらに20人程度が棄権、欠席を含めて造反する可能性がある」と分析し、態度が不明な20人程度の議員を対象に電話による説得工作を続けた。造反者には除籍を含む厳しい処分を下す方針だ。採決で反対する小沢一郎元代表の勢力は、採決後の新党結成を視野に45人分の離党届を取りまとめている。鳩山由紀夫元首相に近い松野頼久、初鹿明博両衆院議員も23日までに鳩山氏に反対する方針を伝えた。首相は23日、訪問先の沖縄県糸満市内で記者団に対し「まだ採決まで(日時が)ある。すべてが一致結束して行動してもらえるように最後まで全力を尽くしていきたい」と述べた。民主党の藤井裕久税制調査会長はBS日テレの番組で「党の方針に反すると言うことは党員として適当ではない、と野田さんが明確におっしゃっている」と語り、小沢氏らを牽制した。
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2013,12,05, Thursday
左から高知新聞、熊日コム、福井新聞、佐賀新聞の2013年12月5日、6日記事より (1)秘密保護法案は言論弾圧に利用できるから問題なのだ *1で述べられているように、特定秘密保護法が成立すれば、国民への開示が必要な情報でも、政府にとって都合が悪ければ秘密指定を行い、それを開示させようとした人を弾圧することができる。例えば、原発関係の情報も、テロや外交・防衛と結び付ければ秘密に指定できるということだ。 また、*2に記載されているように、この法案が示したテロリズムの定義は、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊する活動をいう」とされている。この法案を通したい政府側は、テロとは「殺傷」と「破壊」をさしていると説明しているが、特定秘密保護法が成立してしまえば、法律は一人歩きするため、素直に読んだとおり、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要すること」もテロだと解釈されるだろう。そして、これが、この法律の本当の目的ではないのか? そのため、*1で、日弁連で法案を検証する江藤洋一秘密保全法制対策本部長代行が、「知る権利と秘密の指定のバランスからみると、秘密の必要性が過剰に強調されている」「法案が言論弾圧や政治弾圧に利用される恐れがある」と指摘して廃案を求めているのであり、私も、全くそのとおりだと思う。 (2)国会が自らの権限を縮小する法案を可決するのは愚行だ *3に記載されている「権力はしばしば不都合な事実を隠し、国民や国会を欺く」「それをあばき、過ちを修正する仕掛けや力が社会にあるか」「日本では閣議の議事録さえ残されず、情報公開も不徹底で民主主義の基盤はいまだひ弱である」「そのうえ、三権分立の一つの柱である国会がみずからの使命を投げ出すのか。議員は立ち止まって考え直すべきだ」等々の記述は、全くそのとおりだ。 そのため、国会議員は、党派を超えて自分の良心に従って行動してもらいたいし、メディアは、①どの議員が ②本人はどういう意見を持ち ③どういう理由に基づいて ④どういう行動をとったか について調査し、正確に国民に開示すべきである。 (3)多くの団体が反対表明を行っている 多くの団体がこの法案に反対表明しているが、*1のように、日比野敏陽新聞労連中央執行委員長は、法案で処罰の対象となる「著しく不当な取材」の定義について、「極めてあいまいで、政府側が判断する」と強調している。 また、*4に記載されているように、日本外国特派員協会の報道の自由委員長を務める米国人ジャーナリスト、マイケル・ペンさんは秘密法案を批判し、「国際水準に見合う法律をつくると安倍政権は主張するが、政府の秘密をあばいた記者が刑務所送りになりうるような法律は、米国にはない」として、法案の廃案か大幅修正を求める声明を出した。 さらに、米オンライン誌デイリー・ビースト東京特派員のジェイク・アデルステインさんも「調査報道つぶし法。処罰を恐れ、政府に都合のいい情報を垂れ流す記者ばかりになる」とし、①日本では米国ほど情報公開が進んでいない ②監視する第三者機関が設置されるか不透明 ③米国のように秘密指定の妥当性を裁判所に問うことができない―などの問題点をあげた。 英紙インディペンデント東京特派員デイビッド・マックニールさんは「すでに秘密主義国家の日本で、さらに匿名化が進む」と見ており、「福島第一原発事故後に作業員らに取材してきたが、今後はこうした取材自体が特定秘密に触れる違法行為になりうるのでは」と危惧している。 ドイツ人フリージャーナリストのジークフリート・クニッテルさんは、「ドイツも日本も米国の同盟国だが、米国頼みの日本は、米国に対して無批判すぎる」等々、述べている。 また、*5では、「憲法を考える写真人の会」の田沼日本写真家協会会長が、「表現の自由が制限を受け、取材から発表に至るまで政府が介入する道を開くことになる」として、特定秘密保護法案に反対する声明を発表した。 (4)気の効いたジョークを紹介した山田洋次監督は、面白いだけでなくすごい人だ *6に、言論が統制された戦時中を体験している映画監督の山田洋次さんが「やり切れない思いです。この法律が通れば、この国は旧ソ連のような陰気な国になるのではないか」と語ったと書かれている。山田監督は、「太平洋戦争で、日本軍が負け続けていることは国家機密であって、国民に知らされなかった。沖縄が占領されてもまだ、僕たち日本人は日本が勝っていると思っていた。今思えば本当にナンセンスな時代だった。(現政権は)なぜあの歴史に学ぼうとしないのか」と述べている。 そして、山田監督は、旧ソ連圏の「最高指導者は馬鹿だ」と話した人が逮捕され、「これは侮辱罪か」と尋ねると「国家最高機密を漏らした罪だ」と告げられるというジョークを挙げたそうだ。これは、旧ソ連圏の話であり、決して日本の話ではない(と思う)が、山田監督は真面目でかつ面白い人だ。 *1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013120302000245.html (東京新聞 2013年12月3日) 参考人全員が懸念 秘密法案「弾圧利用も」 参院特別委 参院国家安全保障特別委員会は三日午前、国民の知る権利を侵害する恐れがある特定秘密保護法案に関する参考人質疑を行い、三人全員が、廃案か慎重審議を求めた。日弁連で法案を検証する江藤洋一秘密保全法制対策本部長代行は、「知る権利と秘密の指定のバランスからみると、秘密の必要性が過剰に強調されている」と指摘。市民デモを「テロ」になぞらえた自民党の石破茂幹事長の発言を批判し、「法案が言論弾圧や、政治弾圧に利用される恐れがある」として廃案を求めた。日比野敏陽(としあき)新聞労連中央執行委員長は、法案で処罰の対象となる「著しく不当な取材」の定義について、「極めてあいまいで、政府側が判断する」と強調。捜索や捜査を受けただけで記者や公務員を萎縮させる悪影響が生まれ、国民の「知る権利」も侵害されると訴え、廃案を求めた。江藤、日比野の両氏は野党が推薦した。一方、与党が推薦した瀬谷俊雄元全国地方銀行協会会長は、「行政が独走するのではないかとの懸念はあり得る。恣意的運用の弊害はあるかもしれない」との懸念を示した。法整備には理解を示したものの、「慎重審議は必要だ。顕在化する懸念があるなら、それを防ぐ手だてを講じるべきだ」と述べ、修正などの対応を求めた。 *2:http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_gnavi (朝日新聞社説 2013年12月3日) 秘密保護法案―石破発言で本質あらわ 民主主義への理解を疑わせ、特定秘密保護法案の危うさを改めて浮き彫りにした発言だ。撤回したからといって、見過ごすことはできない。自民党の石破茂幹事長が、国会周辺での法案への抗議活動をとらえ「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます」と自身のブログに書いた。驚くべき暴言である。「テロ」は国際的にも、銃や爆弾による破壊行為とされている。そこには暴力と死の影がつきまとう。国会周辺に人々が集まり、法案や政策に賛否の声をあげることは珍しい光景ではない。秘密保護法案の審議が大詰めを迎えるにつれ、反対を叫ぶ声がより大きくなったのは確かだ。それでも、それを破壊行為と同列に見なす発想は、とても受け入れられない。 石破氏は、抗議活動とテロ行為を結びつけた部分を撤回した。きのうの国会では、菅官房長官が「デモについて、法令の定める範囲内で行われる限りは、やはり言論の自由だ」と火消しに追われた。だが、覆水盆に返らずである。むしろあらわになったのは、法案の危険な本質だ。デモは市民の正当な活動であり、代表制民主主義を補う手段でもある。石破氏にはこうした理解が全く欠けていた。また、自民党政権が、自分たちと異なる意見や価値観を持つ人たちに抱く嫌悪感をもうかがわせた。テロに関する情報は、法案で政府が指定しようとしている特定秘密の4分野のひとつである。法案が示したテロリズムの定義は、国会審議の焦点にもなっている。 条文はその定義をこう記す。「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又(また)は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊する活動をいう」。政府側は、テロとは「殺傷」と「破壊」をさしていると説明する。一方、野党側はこの条文では、他人に何かを強く主張するだけでテロだと解釈されるおそれがあると批判している。石破氏はかつて防衛相を務めた。法案が成立すれば、防衛相は大量の情報を特定秘密に指定する裁量と権限を持つ。その人が、あいまいな条文を根拠にデモをテロと決めつけ、集めた情報を特定秘密に指定したら--。石破氏の発言は、こんな可能性がないとは言えないことを、図らずも示した。 *3:http://www.asahi.com/paper/editorial.html (朝日新聞 2013年12月4日) 秘密保護法案―国会が崩す三権分立 6日の国会会期末にまにあわせるため、与党は特定秘密保護法案の参院審議を早々に切り上げ、採決を急ごうとしている。その姿は実に奇妙だ。成立すれば国会議員はみずからの職責や権限を手放すことにつながるのに、なぜそんなに急ぐのか。法案は、閣僚が「安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがない」と判断すれば、非公開で審議できるよう国会に秘密を提供する、と定める。衆院で、提供「できる」を「する」に改めるなど修正を加えたが、基本構造は変わっていない。省庁の意のままに、国会に審議させたり、させなかったりできる。それでは政府の暴走を防げず、三権分立は形骸化する。 政府の秘密とは何か。内外の様々な事例は、武器の性能や暗号といったものばかりではないことを証明している。ベトナム戦争の経過を含む米国防総省秘密報告書(ペンタゴン・ペーパーズ)を分析した哲学者ハンナ・アーレントは、その本質を「あらゆる種類の嘘」と断じた。嘘は主に国内向けで「とくに議会を欺くことを目的としていた」と指摘した。欺いた例が1964年のトンキン湾事件だ。米政府は、米艦船が北ベトナムの攻撃を受けたと発表し、爆撃に議会の承認をとりつけた。だが実は、先に米側が仕掛けたのを隠し、反撃を装っていた。当時の国防長官はのちに、発表した攻撃の一部はそもそもなかったと認めた。米国の場合は、謀略がはびこる一方、言論の自由や情報公開を重んじてもいる。秘密報告書は、大義なき戦争を止めようとした内部告発者がニューヨーク・タイムズ紙に持ち込んだ。米政府は記事掲載の差し止めを求めて提訴したが、最高裁は認めなかった。裁判官らは「政府における秘密は官僚の誤りを温存するものであり、基本的に反民主的である」などと意見を述べた。内部告発者は罪に問われなかった。大統領の会話は録音され、のちに公開されている。トンキン湾事件当時のジョンソン大統領が、米艦への攻撃が本当にあったのか疑う会話も公になった。 権力はしばしば不都合な事実を隠し、国民や国会を欺く誘惑に負ける。それをあばき、過ちを修正する仕掛けや力が社会にあるか否か。日本では閣議の議事録さえ残されず、情報公開も不徹底。民主主義の基盤はいまだひ弱である。そのうえ、三権分立の一つの柱である国会がみずからの使命を投げ出すのか。議員は立ち止まって考え直すべきだ。 *4:http://digital.asahi.com/articles/TKY201312030201.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2013年12月4日) 外国記者ら秘密法案批判 「記者を標的」「投資家去る」 「記者を標的」「米国への配慮だ」――。安倍政権が成立を急ぐ特定秘密保護法案に、日本で取材活動にあたる外国人特派員らが厳しい視線を向けている。法案のどこに問題があるのか、聞いてみた。「国際水準に見合う法律をつくると安倍政権は主張するが、政府の秘密をあばいた記者が刑務所送りになりうるような法律は、米国にはありません」。法案の廃案か大幅修正を求める声明を出した日本外国特派員協会の報道の自由委員長を務める米国人ジャーナリスト、マイケル・ペンさん(43)は訴える。「著しく不当な」取材をした記者が処罰の対象になりうるとの規定を批判。個人的見解としたうえで「法案は米国からの長年の要請に従ったと言いつつ、安倍首相ら日本の保守政治家が、記者を標的に独自色に染めあげた」と映る。 日本の警察や金融不祥事などの調査報道を手掛けてきた米オンライン誌デイリー・ビースト東京特派員のジェイク・アデルステインさん(44)も「調査報道つぶし法。処罰を恐れ、政府に都合のいい情報を垂れ流す記者ばかりになる」。アデルステインさんは(1)日本では米国ほど情報公開が進んでいない(2)監視する第三者機関が設置されるか不透明(3)米国のように秘密指定の妥当性を裁判所に問うことができない――などの問題点をあげ「日本市場への投資をやめるという外国人投資家もいる。報道の自由のない国では客観的な経済情報がとれず、リスクが大きいからだ」という。 英紙インディペンデント東京特派員デイビッド・マックニールさん(48)は「すでに秘密主義国家の日本で、さらに匿名化が進む」とみる。日本の官僚が取材に応じる際は現在でも匿名を条件にすることが多いが、さらに口が重くなると予測。また、「福島第一原発事故後に作業員らに取材してきたが、今後はこうした取材自体が特定秘密に触れる違法行為になりうるのでは」と危惧する。 「ドイツも日本も米国の同盟国だが、米国頼みの日本は、米国に対して無批判すぎる」とドイツ人フリージャーナリストのジークフリート・クニッテルさん(68)。政治主導を進めるはずの安倍晋三首相が、それに逆行する「官僚の権限強化法」成立を急ぐ背景に、米国への配慮があるとみる。オバマ米政権がメルケル独首相の携帯電話を盗聴した疑惑をめぐり、メルケル氏は公の場で猛抗議した。米国への国際的な批判が高まるなか、クニッテルさんは「同じこと(米の盗聴)が安倍首相に起きても、水面下で処理しようとするのではないでしょうか」。 *5:http://digital.asahi.com/articles/TKY201312040419.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2013年12月4日) 写真家らが反対声明 秘密保護法案 田沼武能・日本写真家協会会長らが呼びかけ人代表を務め120人が加わる「憲法を考える写真人の会」が4日、特定秘密保護法案に反対する声明を発表した。「表現の自由が制限を受け、取材から発表に至るまで政府が介入する道を開くことになる」としている。記者会見した田沼さんは「何が秘密かわからないまま写真を撮っていても摘発されかねない」と述べた。 *6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013120302000243.html (東京新聞 2013年12月3日) 「旧日本軍敗退も国家機密」 言論統制体験の山田洋次監督 言論や表現の自由を制限する恐れが強い「特定秘密保護法案」の衆院採決を与党が強行した。懸念や反対の声が広がっているにもかかわらず、成立の可能性が高まっていることに、言論が統制された戦時中を体験している映画監督の山田洋次さん(82)は「やり切れない思いです。この法律が通れば、この国は旧ソ連のような陰気な国になるのではないか」と語る。この法案では、一般市民や報道機関は何が特定秘密になるかが具体的には分からない。戦争につながる情報も秘密になるのではないかとの不安もあることに「なぜそんなに恐ろしい法律をつくるか、そしてなぜ急ぐのか。その辺のことがさっぱり説明されていない」といぶかしむ。特定秘密は、漏えいすると国の安全保障に著しく支障を与える情報を、閣僚ら「行政機関の長」が指定する。政府は「海外との情報共有をする」必要を強調するが、山田監督は「そんな情報は共有しなくてもいいのではないか。そんなことのために市民やジャーナリストの活動を制約する方がおかしい」。集団的自衛権の行使容認も視野に、戦争に備えるものとの見方もあり「この国は戦争をしない国なのだから『米国は戦争をしても日本はしない』と言うことこそが大事ではないでしょうか。憲法にそう書いてあるでしょう」と山田監督。同法案は「戦後民主主義の否定」とも指摘する。「本当の保守は、今までの遺産を守り抜くこと。それを全部否定しようとしているのはなぜなのか。反対だと多くの人が言っているのだから、安倍さんは民主主義者ならその意見をよく聞いて説得の努力をしてほしい」。太平洋戦争で、日本軍が負け続けていることは国家機密であって、国民に知らされなかった。「沖縄が占領されてもまだ、僕たち日本人は日本が勝っていると思っていた。今思えば本当にナンセンスな時代だった。(現政権は)なぜあの歴史に学ぼうとしないのか」。少年時代、旧満州で迎えた敗戦で「黒いカーテンがぱっと落ちたような不思議な感じ」を味わったという。「閉ざされた世界に今まで生きていたんだと実感しましたね」。山田監督は、旧ソ連圏のこんなジョークを挙げた。「最高指導者はばかだ」と話した人が逮捕され、「これは侮辱罪か」と尋ねると「国家最高機密を漏らした罪だ」と告げられる-。「『秘密』というのは暗い言葉です。人の心には秘めたる思いとか秘密がいくらでもある。だけど国や政治には秘密はない方がいい。それが明るい国なんじゃないかな」。 <やまだ・ようじ> 1931年大阪府生まれ。代表作に「男はつらいよ」シリーズ全48作、「幸福の黄色いハンカチ」など。新作「小さいおうち」が来年1月25日に公開予定。 PS(2013.12.6追加):そのほかに、*7、*8、*9などの反対声明やデモも行われている。 *7:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013120501001801.html (東京新聞 2013年12月5日) アイヌ民族も秘密法反対 官僚、政治家保護と声明 アイヌ民族ら約90人で組織する「特定秘密保護法に反対するアイヌウタリの会」が5日、特定秘密保護法制定に反対、抗議する声明を発表した。「官僚組織や一部の政治家を保護する法律であることは明らかで、処罰対象が一般人に及ぶことも懸念される」と訴えている。声明文を首相官邸や自民党、公明党の本部などにファクスで送信した。アイヌ民族の音楽家が呼び掛け人となり、俳優の宇梶剛士さんや、北海道平取町にある「萱野茂二風谷アイヌ資料館」の萱野志朗館長らが声明文に名前を連ねている。 *8:http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2013120500767 (時事ドットコム 2013/12/5) 秘密保護法案に反対声明=児童書関係者320人 特定秘密保護法案について、児童書出版関係者有志は5日、廃案を求める共同声明を出した。賛同者は320人を超え、「衆院の強行採決に続き、参院でも強引な議事運営が続けられている」として抗議の意を示した。岩崎書店の岩崎弘明社長や児童文学作家の那須正幹さんらの他、新たに詩人のアーサー・ビナードさん、写真家の長倉洋海さんらが賛同。声明は「子供たちにとって、情報へのアクセスを制約されてしまいかねない不自由な社会を私たち大人が残してよいものでしょうか」と訴えている。 *9:http://www.fukuishimbun.co.jp/modules/news0/index_other.php?page=article&storyid=47335&storytopic=1 (福井新聞 2013年12月5日) 福井で秘密保護法案反対パレード 市内の大通り歩き廃案を訴え 特定秘密保護法案に反対するパレードが5日、福井市内で行われた。参加した市民約140人が「国民の知る権利を守ろう」「言論の自由を守ろう」などと声を上げながら大通りを歩き、廃案を訴えた。平和・民主・革新の日本をめざす福井の会(県革新懇)、新日本婦人の会県本部、県民医連など県内23団体でつくる秘密保護法案阻止県連絡会が主催した。参加者は「ストップ特定秘密保護法」「こんな法案おかしいです」などと書かれた横断幕やビラを手に市中央公園に集合。同連絡会の南條光麿事務局長はあいさつで「法案は国民の目や耳をふさぎ、知る権利を奪うものだ」と批判した。一行は同公園から福井地裁、市役所、県庁前を通って西武福井店までパレードし「秘密保護法は要らない」などとシュプレヒコールを上げた。参加した福井市の山田文葉さん(47)は「言いたいことは言いたいし、聞きたいことは聞きたい。それができない日本になってほしくない」と話していた。
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2013,12,03, Tuesday
東京新聞より 2013.12.3日本海新聞 (1)共謀・教唆・そそのかし・扇動の明確な定義と範囲は何か? 特定秘密保護法案では、*1、*2のように、「共謀」「教唆」「そそのかし」「扇動」も刑罰の対象になるが、それならば、これも明確な定義と範囲の確定が必要だ。何故なら、こじつけようと思えば、どうにでもこじつけられるようなことで刑罰の対象になっては、法治国家とは言えないからである。 (2)「特定秘密情報」を漏らしたとして罪に問われたら、どうやって無罪を立証できるのか? *1に記載されているとおり、「特定秘密情報」を漏らしたとして罪に問われたら、法廷でその内容が示される可能性は低いため、被告人は、「本来、秘密にすべきことではない」「基本的人権の侵害だ」というような反論も立証もできず、処罰されることになりかねない。極端に言えば、検察は、根拠がなくても逮捕して処罰させることができるようになるのだ。これは、実質的に、国民が公正な裁判を受ける権利を無視する法律であり、決して通してはならない。 (3)秘密指定に関する第三者のチェック 私は、仮に法案が成立したとしても、国会が委員会を作って秘密指定の妥当性に関するチェックを行うべきだと考えるが、この法律では、「第三者のチェック」は、首相が、首相の指揮監督とは別の観点から、第三者的なチェックをしていくということになった。しかし、行政機関の長であり、秘密指定をする最高責任者である首相が、同時に第三者としてチェックするというのは論理矛盾がある。 また、内閣に情報監察を行う機関を設け、首相に進言して運用の妥当性を的確に判断できるようにする第三者機関を設けるとも言われている。しかし、第三者機関の委員は非常勤で、行政に都合の良い発言をする人を指名することができるのに、有権者の付託を受けている国会よりも第三者機関の独立性の方が信頼できると考えるのはおかしい。 (4)「テロ」の拡大解釈で自由な民主主義国は風前の灯 *3、*4に書かれているように、法案の「テロ」の解釈については、条文を素直に読めば、人を殺傷する目的がなくても「政治上その他の主義主張に基づき、国家もしくは他人に強要する活動」がテロとなり、次の首相になるかも知れない石破氏の主張はこの解釈と同じだ。また、日弁連も同じ解釈をしている。 そうすると、政治的な主張を声高に表明する行為もテロリズムとなり、公安当局はこの法律のお墨付きを得て、さまざまな市民活動を監視しやすくなる。つまり、テロの定義を曖昧にして拡大解釈を可能にしておくと、日本は、自由な民主主義国とは程遠い状況になるのである。 (5)「知る権利」は主権在民(民主主義)の礎だから *5に書かれているように、横浜市でも12月1日に市民がデモ行進し、「国民の知る権利を守れ」と声を上げたそうだ。主権在民が機能するためには、真実を知って選択できなくてはならないからである。行進前には、JR桜木町駅前でデモ参加者が集会を開き、大学教授や横浜弁護士会副会長をはじめとする弁護士ら十三人が法案の問題点を指摘したそうだが、このように、よくわかっている普通の人たちがこぞって反対しているのが、この特定秘密保護法案なのである。 *1:http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_gnavi (朝日新聞社説 2013年 12月 2 日) 秘密保護法案―裁きを免れる「秘密」 特定秘密保護法案には、裁判の公正さの観点からも、大きな懸念がある。「特定秘密」とされた情報を漏らしたり、取得したりしたとして罪に問われたら、どうなるのだろう。裁判では、その情報が本当に秘密とすべきものかどうかが争点になる可能性が大きい。だが、法廷で情報そのものが示される可能性はほとんどない。何が問題か分からないまま、処罰されることになりかねない。共謀や未遂のケースでは、どんな秘密にかかわって罰せられるのか、被告自身が分からないという事態さえ考えられる。 国会の審議で政府は、秘密の内容を具体的に明らかにする必要はないと説明した。秘密の種類、性質、秘密指定の理由などを示せば、秘密に値することは立証できるというのだ。しかし、秘密指定について第三者のチェックがないしくみでは、本来、秘密にするのが適当でない情報が含まれるおそれは強い。種類や性質といった形式的な説明で済む話ではない。たとえば、政府にとっては公になることが不都合な秘密であっても、社会全体の利益を考えれば、国民に広く共有されるべきものかもしれない。その情報を漏らしたり取得したりした行為は、それが社会にもたらした損害と利益に照らして、処罰が必要かどうか検討されるべきである。情報の中身の吟味は不可欠だ。 秘密というにはあまりに取るに足らない情報にかかわって、起訴されることもあるかもしれない。秘密指定したことの行き過ぎが問われないまま、処罰することは許されないだろう。特定秘密を証拠として調べる必要があるかどうかを検討するため、非公開の手続きで、裁判所が検察側に秘密の提示を命じる可能性はある。検察側はそれさえ応じないのではないか。通常の事件なら、このような命令に検察側は対応するのが原則だ。しかし特定秘密をめぐる事件では、秘密を出さないことが有罪の立証よりも優先されかねない。歴史を振り返れば、秘密保護に伴う罰則のねらいは、違反者を有罪にすることより、むしろ政府が秘密にしたい情報に近づこうとする行為を威嚇し、萎縮させるところにあった。有罪に持ち込めなくても、疑わしい人物を逮捕し、捜索、取り調べをするだけで、一定の目的は果たせる。そのような性格が今回の法案にすけて見える。適正な刑事手続きにもたらす影響はあまりに大きい。 *2:http://www.shinmai.co.jp/news/20131202/KT131130ETI090005000.php (信濃毎日新聞 2013年12月2日) 秘密保護法 会期末へ 拙速審議は許されない 臨時国会は会期末まで1週間を切った。政府与党はこの国会中に特定秘密保護法案を成立させる構えでいる。法案は先週から審議の場を参院に移している。政府は衆院と同様、国民の「知る権利」が損なわれないかといった疑問に答えることができていない。このまま成立へと向かうことは容認できない。法案にはほかに、▽政府の勝手な判断で秘密指定できる▽半永久的に隠し続けることも可能―といった問題がある。こうした問題への掘り下げは、参院の審議でも不十分なままだ。 森雅子担当相は迷走答弁を続けている。例えば公務員と報道関係者の接触をめぐる規範新設についての受け答えである。委員会で「規範の新設を検討する」と述べた翌日には「報道機関を萎縮させる。規範を作ることは難しい」と発言。同じ日の午後になると委員会で「さまざまな観点から検討する」と答えている。答弁が首尾一貫しない背景には、法案が生煮えのまま国会に提出された事情がある。 参院審議では、自公の与党と野党のみんなの党、日本維新の会との間で行われた修正協議のいいかげんさも露呈した。運用をチェックする第三者機関について、自民党の担当者は「内閣に情報監察を行う機関を設け、首相に進言して(妥当性を)より的確に判断できるようにする」と答弁した。チェックは首相指揮権の範囲内、との考えだ。これに対し維新の担当者は「首相の指揮監督とは別の観点から第三者的なチェックをしていきたいとの趣旨だ」と述べている。第三者機関の独立性はチェックの信頼性に直結する。見過ごせない食い違いだ。「しっかりチェックする」と言われても、これでは信用するのは難しい。政府が第三者機関のモデルとする米国の情報保全監察局も態勢は貧弱で、増え続ける機密に追いついていないのが実情という。 衆院の採決ではみんなの党が賛成に回り、野党の足並みの乱れを印象づけた。みんなを含む野党7党の参院国対委員長は先日、徹底審議を行うことで合意している。合意の通り一致して法案の欠陥を追及してもらいたい。参院は「熟議の府」「再考の府」とも呼ばれる。衆院と同様に、数の力の横行を許すようでは、参院の存在意義も問われる。 *3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013120202000113.html (東京新聞 2013年12月2日) 「殺傷目的以外でもテロ」 拡大解釈に現実味 国民の「知る権利」を侵害する恐れがある特定秘密保護法案をめぐり、自民党の石破茂幹事長がブログで、市民団体らのデモ活動をテロとみなした。憲法が定める「表現の自由」に基づく市民の政治への訴えを犯罪と同一視する言葉が政権中枢から出たことで、法案が成立すれば国民の権利が抑圧されるとの懸念は現実味を増した。石破氏は、安倍晋三首相を支える自民党ナンバー2の幹事長で、影響力は絶大だ。一日になって、デモを「テロ」と例えたブログの表現は撤回を表明したものの、抗議活動を危険視する姿勢までは改めなかった。法案では「テロ防止に関する情報」も特定秘密の対象としている。漏えいをめぐっては、漏らした公務員だけでなく、そそのかしたり扇動したりした市民も厳罰対象となる。法案の「テロ」の解釈について、森雅子内閣府特命担当相ら政府側は「人を殺傷し物を破壊するための活動」と説明している。だが、条文の解釈によっては、人を殺傷する目的がなくても「政治上その他の主義主張に基づき、国家もしくは他人に強要する」活動がテロとみなされる、と指摘する専門家は少なくない。石破氏の主張もこの解釈と同じで、テロの定義が拡大する恐れがある。森氏は法案について国会審議だけを担当しており、成立後の役割は決まっていない。法案成立後、政権の意向で森氏の説明が覆る可能性がないとは言い切れない。石破氏は講演で「周りの人が恐怖を感じるような音で訴えること」を批判した。「恐怖を感じた」という不明確な基準で、デモがテロ扱いされる解釈にもつながる。石破氏は、自分たちに向けられた平和的な方法による主張を「テロ」と切り捨てた。法案が成立すれば、原発反対のデモを含め市民の訴えを、政権が「テロ」とみなして監視し、取り締まりをしかねない。 *4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013120202000121.html (東京新聞社説 2013年12月2日) 秘密保護法案 思想への介入を許すな 特定秘密保護法案は副作用が極めて強い法案だ。「特定有害活動」など意味のあいまいな言葉を用い、公安当局などが活動しやすい状況をつくっている。国民の思想分野まで介入しないか心配だ。「国家には秘密がある。だから、秘密を守る法律が必要だ」と、単純に考えてはいけない。現在も秘密を守る法律は存在し、新たな法律をつくらねばならない切迫した事実が存在しないからだ。しかも、国民の「知る権利」をより窮屈にし、人権侵害などを引き起こす恐れのある、“欠陥法”をわざわざ制定すべきでない。情報の漏えいを防ぐならば、行政機関が管理を徹底する仕組みを充実させれば済む。国民に権力を向ける法案など不必要なのだ。 国家は初めから秘密を握っているのではない。米軍などからもたらされたり、外交ルートを通じる秘密もある。この法案は、国内の情報収集を活発化するという性質も帯びている。それを担うのが、公安当局などだ。特定有害活動とテロの防止の項目が設けられているのは、そのためだ。前者はスパイ活動を指すと説明されるものの、条文の中には「その他の活動」という文言が入っている。定義を意図的にあいまいにしているのだ。 テロの定義は、人の殺傷や施設の破壊だけではない。「政治上その他の主義主張に基づき、国家若(も)しくは他人にこれを強要」する活動も含まれる。少なくとも、条文の表現はそう読める。日弁連も同じ解釈をしている。そうなると、政治的な主張を声高に表明する行為も、テロリズムとなってしまう。国民の思想分野にも国家が介入しうる、異様な法案といえよう。公安当局がこの法律のお墨付きを得て、さまざまな市民活動を監視することは十分に考えられる。刑事警察は事件の発生から動き始めるが、公安警察は事件性の予知だけで情報収集をする。 在日イスラム教徒の日常生活を詳細に調べた文書がインターネット上に流出した事件があった。警視庁が作成したとみられている。「国際テロ関連文書」とされるが、テロリストとは全く無関係の人々の個人情報が丸裸にされていた。こんな情報収集はプライバシー侵害そのものではないか。非合法の監視手法を合法化しうる危険性が極めて高い法案だ。「官憲」が強権を振るった、暗い時代を思わず想起する。 *5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20131202/CK2013120202000146.html (東京新聞 2013年12月2日) 「知る権利守れ」 横浜で市民350人デモ行進 参議院で審議中の特定秘密保護法案をめぐり、成立に反対する横浜市民らが一日、同市中区のみなとみらい地区でデモ行進し、「国民の知る権利を守れ」と声を上げた。「秘密保護法案絶対反対!」などと書かれたプラカードを持った約三百五十人が参加。ワールドポーターズ前から象の鼻公園まで、約二・六キロを一時間かけて行進した。四歳の長女を連れて参加した同市磯子区の主婦(36)は「子どもに『なぜこんな社会になったの』と聞かれて、答えられない親にはなりたくない。真実を知り、選べる社会にするため、せめて自分の意思を示したい」と力を込めた。行進前には、JR桜木町駅前でデモ参加者が集会を開き、大学教授や弁護士ら十三人が法案の問題点を指摘。横浜弁護士会副会長の本田正男弁護士は「悪夢でも見ているような法案だが、危険性の認識が国民全体に浸透してないのではないか不安がある。地道に訴えることが大切」と説いた。
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2013,12,01, Sunday
(1)特定秘密保護法制定の目的と法案内容の不整合について *3の特定秘密保護法案の最後に、この法律の制定理由を、「国際情勢の複雑化に伴い我が国及び国民の安全の確保に係る情報の重要性が増大するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される中で、我が国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものについて、これを適確に保護する体制を確立した上で収集し、整理し、及び活用することが重要であることに鑑み、当該情報の保護に関し、特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である」と記載されている。 しかし、この制定理由なら、①インターネット(外部通信ネット)に接続するコンピューターを制限して秘密文書を保管するコンピューターを外部ネットに接続しないようにする ②防衛省・外務省・政府など、必要な組織はイントラネット(外部とは隔絶した組織内の専用線を使った通信網)を整備する ③秘密情報を扱う人を制限し、内部統制を強化して守秘義務を課す などが必要なのであって、市民を巻き込んで治安維持法まがいの法律を作り、罰則を強化する必要はないと考える。 また、*3の第1条には、「国際情勢の複雑化に伴い、我が国及び国民の安全の確保に係る情報の重要性が増大した」と記載されているが、これは意味不明だ。何故なら、国際情勢は以前から複雑であって今に始まったことではなく、我が国及び国民の安全の確保に係る情報の重要性が増大したから、何故この法律を制定する必要があるのかについても、論理的飛躍があるからだ。そして、そもそも「情報」とは、漫然と受容しても意味がなく、問題意識を持って集めたり作ったりして、初めて役に立つものである。 さらに、*3第1条に、「高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される」「情報の保護に関し、特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定めることにより、その漏えいの防止を図り、もって我が国及び国民の安全の確保に資することを目的とする」と書かれているのも、上に書いたとおり、安易に外部ネットに接続せず、情報管理の質を高めれば足りるのであって、これは、欧米先進国では20年以上も前から行われていることである。 なお、外部ネットだから、覗いても何をしてもよいということはなく、通信の秘密やプライバシーを守れるようにするための法律こそ作るべきであり、それは今後のインターネット発展のための重要なインフラになろう。 (2)特定有害活動の定義について また、*3の別表に、「特定有害活動の防止に関する事項」というのがあるが、特定有害活動の定義が不明だ。そして、この言い方であれば、誰かが有害と感じさえすれば、デモやチラシの配布など、憲法で言論の自由、表現の自由として認められたどんな活動でも特定有害活動に入れることができるため、そのようなことがないように、「特定有害活動」の定義を明確にすべきだ。 (3)テロリズムの定義について さらに*3には、「テロリズムの防止に関する事項」というのもあるが、この文言だけでは、*2のように、反対する者は何でもテロリストに含めることさえ可能だ。清水勉弁護士は「普通の法律の読み方だと主義主張を強要しただけでテロになる」と指摘しており、このままでは、自民党の石破茂幹事長だけではなく、多くの人がそう思うだろう。そのため、この法律で言う「テロリズム」の定義も、法律内で明確に定義すべきだ。 (4)一般国民の言論の自由、表現の自由、知る権利は担保されていないということ *3に、「第二十二条 この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない」「2 出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする」として、この法案の強力な反対者である報道機関、出版・報道業務従事者の取材行為については、「専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限り、これを正当な業務による行為とする」として、今までどおりの原則免責とした反面、ブログなどで発信している一般市民の言論の自由については強い規制がかかる。 しかし、日本国憲法では、国民すべてに言論の自由、表現の自由が認められているのであり、主権在民の民主主義国家として、知る権利も国民すべてが持っているため、この法律は日本国憲法違反であるとともに、*1に記載されているように、国際基準を逸脱したものでもある。 *1:http://www.shinmai.co.jp/news/20131201/KT131129ETI090014000.php (信濃毎日新聞 2013年12月1日) 市民も処罰 国際基準を逸脱する 安全保障のため国が秘密を持つことと、国民の「知る権利」のバランスをどう取るべきか。国際的に議論されている重い課題だ。特定秘密保護法案の成立にこだわる政府には、その大事な視点が感じられない。世界の安全保障や人権の専門家らによる「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」が6月に示された。70カ国500人以上が2年にわたり会議を重ね、まとめたものだ。南アフリカのツワネで発表されたことから「ツワネ原則」と呼ばれる。50項目から成る原則には、情報は市民の財産という精神が貫かれている。秘密を限定するため、防衛計画や兵器開発、情報源など対象を具体的に示した。無期限の秘密扱いは認めず、最長期間を法律で定めるべきだとした。 知る権利を制限する条件としては、独立した監視機関など職権乱用を防ぐ規定を挙げる。監視機関は全ての情報にアクセスする権利を持つべきだとしている。公務員以外の人が秘密を受け取ったり公表したりしても処罰されないとの原則も記した。これらに照らしてみれば、参院で審議中の法案は国際基準から大きく逸脱している。秘密指定の対象は抽象的で、際限なく広がる恐れがある。指定期間は最長60年とする一方、7項目の例外を設けるため、永遠に秘密になることもある。指定の妥当性をチェックする第三者機関の具体像は、相変わらずはっきりしない。公務員だけでなく、市民も罪に問われる。不安視する声は、国内にとどまらない。表現の自由を担当する国連特別報告者のラルー氏は「行政の透明性を脅かす」と懸念を表明した。「内部告発者や秘密を報じるジャーナリストにとって深刻な脅威となる内容を含んでいる」とも指摘する。ツワネ原則は国会審議でも取り上げられた。安倍晋三首相は「特定の民間団体が示した一つの参考意見として存在する」と受け流している。知る権利と秘密保持を調和させようという国際的な努力への敬意は全くうかがえない。 知る権利は民主主義を支える根幹だ。日本はもともと情報公開の取り組みが遅れている。その上、世界の流れに反する法案を成立させるわけにはいかない。参院はツワネ原則に照らし、法案の問題点を徹底追及する必要がある。 *2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013120102000127.html (東京新聞 2013年12月1日) 「絶叫デモはテロ行為」 石破幹事長 市民活動、テロと同一視 自民党の石破茂幹事長は十一月二十九日付の自身のブログで、デモ活動について「単なる絶叫戦術はテロ行為と変わらない」と指摘した。テロの定義をめぐっては、特定秘密保護法案の条文のあいまいさが問題視されており、弁護士などからテロの範囲が広がりすぎることへの懸念が示されている。法案の審議が続く最中に、市民の活動をテロと同一視した記述は批判を集めるのは必至だ。石破氏は「今も議員会館の外では『特定機密保護法絶対阻止!』を叫ぶ大音量が鳴り響いています」とした上で、「いかなる勢力なのか知る由もありませんが、左右どのような主張であっても、ただひたすら己の主張を絶叫し、多くの人々の静穏を妨げるような行為は決して世論の共感を呼ぶことはないでしょう」と指摘した。さらに「主義主張を実現したければ、民主主義に従って理解者を一人でも増やし、支持の輪を広げるべき。単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます」としている。 特定秘密保護法案のテロの定義をめぐっては早い段階から議論となっている。法案は一二条で、テロについて「主義主張に基づき、国家もしくは他人にこれを強要し、または社会に不安もしくは恐怖を与える目的で人を殺傷し…(後略)」としている。この部分は(1)「主義主張を強要する目的で人を殺傷」した場合と「恐怖を与える目的で人を殺傷」した場合がテロにあたるという解釈と(2)「主義主張を強要」した場合と「恐怖を与える目的で人を殺傷」した場合がテロの二通りの読み方ができる。森雅子内閣府特命担当相は(1)だと主張したが、石破氏の発言は(2)のように主義主張を強要しただけでテロになるととらえているように聞こえる。法案に反対する清水勉弁護士は「普通の法律の読み方だと主義主張を強要しただけでテロになる」と指摘している。 *3:http://digital.asahi.com/articles/TKY201311260565.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞デジタル 2013年11月27日) 特定秘密保護法4党修正案の全文 ◆特定秘密の保護に関する法律案に対する修正案 26日に衆院を通過した特定秘密保護法4党修正案の全文は次の通り。(【】内が主な修正箇所) 目次 第一章 総則(第一条・第二条) 第二章 特定秘密の指定等(第三条―第五条) 第三章 特定秘密の提供(第六条―第十条) 第四章 特定秘密の取扱者の制限(第十一条) 第五章 適性評価(第十二条―第十七条) 第六章 雑則(第十八条―第二十二条) 第七章 罰則(第二十三条―第二十七条) 附則 第一章 総則 (目的) 第一条 この法律は、国際情勢の複雑化に伴い我が国及び国民の安全の確保に係る情報の重要性が増大するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される中で、我が国の安全保障【(国の存立に関わる外部からの侵略等に対して国家及び国民の安全を保障することをいう。以下同じ。)】に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものについて、これを適確に保護する体制を確立した上で収集し、整理し、及び活用することが重要であることに鑑み、当該情報の保護に関し、特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定めることにより、その漏えいの防止を図り、もって我が国及び国民の安全の確保に資することを目的とする。 (定義) 第二条 この法律において「行政機関」とは、次に掲げる機関をいう。 一 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)及び内閣の所轄の下に置かれる機関 二 内閣府、宮内庁並びに内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項及び第二項に規定する機関(これらの機関のうち、国家公安委員会にあっては警察庁を、第四号の政令で定める機関が置かれる機関にあっては当該政令で定める機関を除く。) 三 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する機関(第五号の政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。) 四 内閣府設置法第三十九条及び第五十五条並びに宮内庁法(昭和二十二年法律第七十号)第十六条第二項の機関並びに内閣府設置法第四十条及び第五十六条(宮内庁法第十八条第一項において準用する場合を含む。)の特別の機関で、警察庁その他政令で定めるもの 五 国家行政組織法第八条二の施設等機関及び同法第八条の三の特別の機関で、政令で定めるもの 六 会計検査院 「続き▽」をクリックすると第二章以下が表示されます。 続き▽
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2013,11,20, Wednesday
2013.11.17佐賀新聞より (1)安全保障関係事項はすべて秘密にすべきなのか *1のように、安全保障に関しては特定秘密でもしようがなく、国民の「知る権利」に優先するということに反対する人は少ないが、今年6月にできた安全保障と情報に対する権利の国際原則である「ツワネ原則」は、「あらゆる人は、公的機関が保持する情報にアクセスする権利を有しており、その権利を制限する正当性を証明するのは、政府の責務である」と定めている。もちろん、暗号や作戦などの限られた範囲での情報制限は認めるが、それも政府に証明を負わせる点は重要だ(ツワネ原則全文訳 http://www.news-pj.net/pdf/2013/tsuwanegensoku.pdf 参照)。 ただし、*1の「原発への航空機衝突や火災などの場合について対処法の説明を受けたが、米国側から『秘密だ』と注意され、保安院側は原子力安全委員会にも、電力会社にも伝えなかった」というのは嘘である。何故なら、私は、2006年3月に、九州電力の「玄海原子力発電所3号機で、日本初のプルサーマル発電を実施する」という申し入れに、佐賀県知事が事前了解を出した後、自民党のエネルギー部会でそれについてかなりの議論を行い、その中で、私が「飛行機の墜落やテロには対応できているのですか?」と質問したところ、九州電力が「対応できていません。それは、民間企業ではできません。」と答え、そこには原子力安全保安院(旧)の担当者もおり、その後、警察や海上保安庁が原発の周囲を警戒するようになったという経緯があって、その時には、そのことが秘密だとは全く言われなかったからである。また、このようなことは、米国から言われなくても、現場を知っている当事者がちょっと考えればわかることであるにもかかわらず、このような記事を書くのは、どういう意図か。 なお、私の方は、当時からその程度の警戒で十分だとは思わなかったが、現在と同様、「原発は低コストの安全な電源で、経済成長に不可欠なものであり、シビアアクシデントは起こらない設計だ」という電力会社や専門家の声が多かったし、地元に交付金も出るので容認していたのである。しかし、「原発でシビアアクシデントは起こらない」という説明が嘘だったことは、今回のフクシマで証明された。 (2)透明性は公正性の前提である (1)のように、「秘密指定ができる」となった途端に、事実は変えられ、特定の人をターゲットとして作り話を作ることができ、その検証もできなくなる。また、秘密の範囲も、ご都合主義で自由自在に広げることができるのである。 (3)防衛は秘密の聖域か 防衛分野では、暗号や作戦は、(漏れることはあるかも知れないが)関係者以外に知らせることは、現在でもない。それは当たり前だろう。 しかし、*2のように、「自衛隊の護衛艦くらまが関門海峡で大韓民国籍のコンテナ船に衝突され、乗員6名が負傷し、艦首を損傷・出火し、単独航行が難しい状態になった」「コンテナ船側には負傷者はなかった」というニュースがあり、私が変だと思ったのは、護衛艦がコンテナ船とぶつかって、護衛艦の被害や損傷の方が大きいようでは、護衛艦はどういう作りをしているのか、護衛艦として守る機能があるのかということだった。護衛艦を造船するには、莫大な費用がかかる。また、護衛艦くらまの修理も、「11月9日に、長崎県の三菱重工長崎造船所に随意契約で修理を発注し、2010年初頭から修理されて同年6月9日に修理が完了した。修理費は約9億4,000万円と見込まれる」と書かれているように、防衛費は、競争のない社会で、費用対効果の最大化が図られているとは、とても思えないのだ。 特定秘密保護法案が成立すれば、会計検査院にも、支出された防衛費の内訳が具体的には開示されなくなる可能性が高い。そうなると、防衛費には、チェック機構も主権者の監視も働かなくなり、「何でもあり」という状態になることが容易に想像されるのである。 *1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013112002000162.html (東京新聞 2013年11月20日) 特定秘密保護法案(3) 崖っぷちの「知る権利」 国民の「知る権利」と安全保障は、いわば綱引きのような関係である。政府は「秘密にしたい」と言い、国民は「情報を公開してほしい」と願う。調整をどのように図ったらいいのか。「あらゆる人は、公的機関が保持する情報にアクセスする権利を有しており、その権利を制限する正当性を証明するのは、政府の責務である」。今年六月にできた「ツワネ原則」はそう定めた。安全保障と情報に対する権利の国際原則である。世界七十カ国余りの専門家約五百人で作成した。兵器開発や軍隊の作戦など、限られた範囲での情報制限は認めているが、政府に証明を負わせる点は重要だ。 秘密指定を行政機関の「長」に委ねる特定秘密保護法案と出発点が決定的に異なる。さらにツワネ原則は国際人権法に反する情報など、「何を秘密にしてはならないか」を明確にしている。どこまで秘密に覆われるか不明な日本の法案とは、まるで正反対である。国家の公衆監視も規制し、裁判所で秘密が公開され、審理できる保障も定めている。ことごとく考え方が逆方向なのだ。国連や米州機構、欧州安保協力機構などのメンバーが加わった最先端の原則から、わざわざ踏み外す法案をなぜ政府は作るのか。 秘密に対する日本の官僚のおそまつさを示す一例を挙げよう。二〇〇六年と〇八年に当時の「原子力安全・保安院」の審議官クラスらが渡米した。原発への航空機衝突や火災などの場合について、対処法の説明を受けた。だが、米国側から「秘密だ」と注意された。そのため、保安院側は原子力安全委員会にも、電力会社にも伝えなかった。原発の過酷事故に関する重要情報をせっかく米国から提供されていたのに、全く生かせなかったわけだ。秘密情報であっても、関係機関内で共有され、活用されなくては何の意味もない。重罰で秘匿化をより強める法案は実用的でないうえ、官僚をさらに束縛する。 逆に官僚は公文書の公開には無関心すぎる。一一年度に保存期間が満了した行政文書のファイル約二百三十万件のうち、廃棄された割合は実に92・5%にものぼる。国立公文書館に移管されたファイルは、たったの0・7%にすぎない。このうえ秘密の密封度を高める法案とは何事か。国民の「知る権利」は崖っぷちに立っている。 *2:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8F%E3%82%89%E3%81%BE_(%E8%AD%B7%E8%A1%9B%E8%89%A6) (ウィキペディア 2009年10月27日要点)護衛艦くらま衝突事故(抜粋) 護衛艦くらまが、関門海峡において、大韓民国籍コンテナ船「カリナ・スター」に衝突された。この事故で乗員6名が負傷し、本艦は艦首を損傷・出火したが、10時間半後に鎮火に成功した。この事故により揚錨部(アンカー巻上げ部)も含む艦首部分がほぼ全壊し単独航行は難しい状態になった。「カリナ・スター」側に負傷者はなかった。この事故では、護衛艦くらまおよび誘導していたとする海上保安庁・関門海峡海上交通センターの責任問題が大きく報道されたが、海上保安庁による後の調査によれば、カリナ・スターの韓国人船長が事故について虚偽の供述をしていたことが明らかとなっている。AIS等による航跡の解析などにより、コンテナ船は事故直前まで減速せず、貨物船の後方わずか20-30メートルの距離まで近づき追突寸前となった。そのため左に急旋回し、前方から航行してきたくらまに衝突した。この事故で門司海保は船長の供述が翻ったことから、事故の主因はコンテナ船にあったと断定した。事故後は佐世保に自力で帰港していたが、付近で護衛艦を修理のできる造船所が限られることから、11月9日に随意契約による修理を発注し、2010年初頭から長崎市に所在する三菱重工長崎造船所で修理され、同年6月9日に修理が完了した。この事故での損害は約9億4,000万円と見込まれている。 PS(2013.11.22追加):*3で、変な法律であるにもかかわらず、政府が特定秘密保護法案の成立を急ぐ理由がわかった。東電が今後の核燃料取り出し作業をいちいち公表すれば、福島第一原発事故の真実が明らかになり、それは政府が公表したくない真実だからであろう。 *3:http://www.minpo.jp/news/detail/2013112212284 (福島民報 2013/11/22) 東電、今後の作業公表せず 核燃料取り出し 問われる情報公開の在り方 東電は、燃料を輸送容器から取り出し保管する共用プールでの作業や、2回目以降の移送日程について「核物質の防護上、答えられない。作業終了後に公表する」としている。ただ、容器の落下など緊急時の対応は不透明で、高線量の使用済み燃料を移送する2回目以降、作業工程の危険性はさらに高くなるとみられる。県や双葉郡の首長は「原発周辺の避難区域に立ち入りしている住民の安全を確保するためにも、情報を公開すべき」と指摘しており、今後の情報公開の在り方が問われる。
| 民主主義・選挙・その他::特定秘密保護法関係2013.10~12 | 01:06 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,11,19, Tuesday
(1)民主主義の基礎は、国民の自由と知る権利 私も、メディアが真実ばかりを言っているわけではなく、政策の分析力も今一つで、ニュースの重要性の比重もおかしいと思うことが多々ある。しかし、主権在民である限り、有権者は、政策を知っていなければ正しい投票行動はできず、有権者が正しい投票行動をできなければ、民主主義は機能しない。そのため、*1のとおり、民主主義の礎となる「(正確な情報を)知る権利」を脅かす秘密保護法案には反対だ。 (2)秘密保護法案に、265人の憲法・刑法学者らが反対声明 このような中、*2で、265人の憲法・刑法学者らが秘密保護法案に対して反対声明を出し、「国民主権の形骸化」「人権侵害のおそれ」「国民主権の原理に反する」「平和主義の原理に反する」など、まさに私の危惧が、具体的に、わかりやすく記載してあるので参照されたい。 (3)国会議員は、自ら立法府の立場を弱めるべきではない この法案には、弁護士会と報道が速やかに反応して反対声明を出した。それに対して、政府・与党は、*3、*4のように、弁護士と報道は対象外として、*5、*6、*7のように、何とかこの法案を成立させようとしている。その様子には、国会議員が民主主義を守るという理念がなく、少しずつ妥協して賛成を増やすというテクニックが見えるのみであり、情けない。 さらに、30年後に、それが秘密だったことが不適切だったとわかっても、スパイやテロリストとして逮捕された人の人生は戻ってこない。そのため、そこまでしてやりたいことが何なのか、大いに疑問だ。 *1:http://mainichi.jp/opinion/news/20131105k0000m070107000c.html (毎日新聞社説 2013年11月5日) 秘密保護法案を問う 国民の知る権利 国民が自由に情報を得る機会を持つことは、民主主義の基本だ。知る権利に奉仕するのは報道だけではない。国民は多様なルートで国政についての情報を集める。だが、特定秘密保護法案が成立し、特定秘密にいったん指定されれば、その取得行為が幅広く罰せられる。国民も例外ではない。法案は、社会の情報流通を妨げ、国民の日常生活を脅かす危険性に満ちていると、改めて指摘したい。 憲法や刑事法を専攻する学者300人近くが10月28日、法案に反対する声明を連名で発表した。特定秘密は安全保障に関わる国家機密で、防衛、外交、スパイ活動防止、テロ活動防止の4分野が対象だ。別表で規定された項目は広くあいまいで、行政の判断でいかようにも拡大できる。一方、情報を得ようとする側は、何が特定秘密か分からないまま、取得行為が罰せられる。法学者は、こうした基本的な枠組みに危惧を表明した。国民の人権を侵し、憲法の国民主権の原理に反するというのだ。もっともな指摘だ。声明では、特定秘密の指定が、市民の関心事に及ぶ具体例を二つ挙げた。一つは、原発事故だ。安全性に関わる情報がテロ活動と結びつけられ、特定秘密に指定される可能性が大きいと法学者はみる。もう一つが基地問題だ。防衛省は普天間飛行場の移設先に予定している沖縄県名護市辺野古のジュゴンの環境調査結果を公にしていない。こうした調査でさえ、基地移設と関連づけ特定秘密になり得るという。原発や基地は全国に点在する。地元住民のみならず国民の共通関心事である。そうした重要テーマについて、個人やグループが情報を集め、議論をし、行政対応を求めるのはごく日常的な光景だ。だが、いったん特定秘密に指定されれば、情報に近づくことは、刑事罰に直結する。漏えいや取得についての共謀、そそのかし、扇動行為には、最高で懲役5年が科せられる。未遂の処罰規定もあるから、結果的に情報提供がなくても罰せられてしまう。また、万が一、逮捕・起訴されて裁判になっても、特定秘密の内容が法廷で明らかにされないまま有罪になる可能性を法学者は指摘する。刑事裁判の適正手続きという観点からも大いに疑問が残るのだ。法案が成立すれば、国民の知る権利は守れなくなる。 ◇ 特定秘密保護法案の審議入りが近い。問題点を明らかにしていく。 *2:http://www.tokyo-np.co.jp/feature/himitsuhogo/seimei.html (東京新聞 2013年10月29日) 秘密保護法案265人反対 憲・刑法学者ら声明 憲法・メディア法と刑事法の研究者が二十八日、それぞれ特定秘密保護法案に反対する声明を発表した。声明に賛成する研究者は憲法・メディア法が百四十人、刑事法が百二十人を超えた。憲法の「知る権利」や「国民主権」を損なう法案の実態が明らかになるにつれ、成立を急ぐ政府とは逆に反対の声が広がっている。 反対声明は憲法・メディア法と刑事法の研究者が二十八日、国会内で合同で記者会見して発表した。憲法・メディア法研究者の声明は呼び掛け人が二十四人、賛同者百十八人の計百四十二人。刑事法は呼び掛け人二十三人、賛同者百人の計百二十三人。会見で、憲法・メディア法の呼び掛け人の山内敏弘一橋大名誉教授は「法案は憲法の三つの基本原理である基本的人権、国民主権、平和主義と真っ向から衝突し侵害する」と指摘。刑事法の呼び掛け人代表の村井敏邦一橋大名誉教授は「(軍事機密を守る目的で制定された)戦前の軍機保護法と同じ性格。戦前の影響を考えれば、刑事法学者は絶対反対しなければならない」と呼び掛けた。声明はいずれも法案の問題点として、特定秘密を第三者の点検を受けず政府の判断で指定し、漏えいや取得に厳罰を科して、調査活動をする市民や記者も罪に問われる点を挙げた。その上で「国民の『知る権利』を侵害し憲法の国民主権の基盤を失わせ、憲法に基づいて国民が精査すべき平和主義に反している」などと批判した。憲法・メディア法は奥平康弘東京大名誉教授、東北大や東大などで教授を歴任した樋口陽一氏、杉原泰雄一橋大名誉教授、刑事法は斉藤豊治甲南大名誉教授ら研究者が呼び掛け人、賛同者に名を連ねた。 ◆声明呼び掛け人(敬称略) 【憲法・メディア法研究者】=24人 愛敬浩二(名古屋大教授) 浦田一郎(明治大教授) 服部孝章(立教大教授) 青井未帆(学習院大教授) 浦部法穂(神戸大名誉教授) 水島朝穂(早大教授) 石村善治(福岡大名誉教授) 奥平康弘(東京大名誉教授) 本秀紀(名古屋大教授) 市川正人(立命館大教授) 小沢隆一(東京慈恵会医科大教授) 森英樹(名古屋大名誉教授) 今関源成(早大教授) 阪口正二郎(一橋大教授) 山内敏弘(一橋大名誉教授) 上田勝美(龍谷大名誉教授) 清水雅彦(日本体育大准教授) 吉田栄司(関西大教授) 右崎正博(独協大教授) 杉原泰雄(一橋大名誉教授) 渡辺治(一橋大名誉教授) 浦田賢治(早大名誉教授) 田島泰彦(上智大教授) 和田進(神戸大名誉教授) 【刑事法研究者】=23人 村井敏邦(代表、一橋大名誉教授) 白取祐司(北海道大教授) 前田朗(東京造形大教授) 斉藤豊治(代表、甲南大名誉教授) 新屋達之(大宮法科大学院大教授) 松宮孝明(立命館大教授) 浅田和茂(立命館大教授) 武内謙治(九州大准教授) 三島聡(大阪市立大教授) 安達光治(立命館大教授) 土井政和(九州大教授) 水谷規男(大阪大教授) 海渡雄一(弁護士) 豊崎七絵(九州大准教授) 守屋克彦(弁護士) 川崎英明(関西学院大教授) 中川孝博(国学院大教授) 葛野尋之(一橋大教授) 新倉修(青山学院大教授) 斎藤司(龍谷大准教授) 渕野貴生(立命館大教授) 佐々木光明(神戸学院大教授) 本庄武(一橋大准教授) ◆特定秘密保護法制定に反対する憲法・メディア法研究者の声明の賛同者 青木宏治 (関東学院大法科大学院教授) 榎澤幸広 (名古屋学院大講師) 川岸令和 (早大教授) 浅川千尋 (天理大教授) 大石泰彦 (青山学院大教授) 菊地洋 (岩手大准教授) 足立英郎 (大阪電気通信大教授) 大久保史郎(立命館大教授) 北川善英 (横浜国立大教授) 荒牧重人 (山梨学院大大学院教授) 大津浩 (成城大教授) 木下智史 (関西大教授) 飯島滋明 (名古屋学院大准教授) 大塚一美 (山梨学院大非常勤講師) 君島東彦 (立命館大教授) 池端忠司 (神奈川大教授) 大藤紀子 (獨協大教授) 清田雄治 (愛知教育大教授) 井口秀作 (愛媛大教授) 大野友也 (鹿児島大准教授) 倉田原志 (立命館大教授) 石川裕一郎(聖学院大准教授) 岡田健一郎(高知大講師) 古関彰一 (獨協大教授) 石塚迅 (山梨大准教授) 岡田信弘 (北海道大教授) 小竹聡 (拓殖大教授) 石村修 (専修大法科大学院教授) 緒方章宏 (日本体育大名誉教授) 後藤登 (大阪学院大教授) 井田洋子 (長崎大教授) 奥田喜道 (跡見学園女子大助教) 小林武 (沖縄大客員教授) 伊藤雅康 (札幌学院大教授) 奥野恒久 (龍谷大教授) 小林直樹 (東京大名誉教授) 稲正樹 (国際基督教大教授) 小栗実 (鹿児島大教員) 小松浩 (立命館大教授) 井端正幸 (沖縄国際大教授) 柏崎敏義 (東京理科大教授) 笹川紀勝 (国際基督教大名誉教授) 浮田哲 (羽衣国際大教授) 加藤一彦 (東京経済大教授) 佐々木弘通(東北大教授) 植野妙実子(中央大教授) 金澤孝 (早大准教授) 笹沼弘志 (静岡大教授) 植松健一 (立命館大教授) 金子匡良 (神奈川大准教授) 佐藤潤一 (大阪産業大准教授) 植村勝慶 (国学院大教授) 上脇博之 (神戸学院大大学院教授) 佐藤信行 (中央大教授) 江原勝行 (岩手大准教授) 河合正雄 (弘前大講師) 澤野義一 (大阪経済法科大教授) 榎透 (専修大准教授) 河上暁弘 (広島市立大講師) 清水睦 (中央大名誉教授) 城野一憲 (早大法学学術院助手) 中島茂樹 (立命館大教授) 前原清隆 (日本福祉大教授) 鈴木眞澄 (龍谷大教授) 永田秀樹 (関西学院大大学院教授) 松田浩 (成城大准教授) 隅野隆徳 (専修大名誉教授) 中村睦男 (北海道大名誉教授) 松原幸恵 (山口大准教授) 芹沢斉 (青山学院大教授) 長峯信彦 (愛知大教授) 丸山重威 (関東学院大前教授) 高作正博 (関西大教授) 成澤孝人 (信州大教授) 宮井清暢 (富山大教授) 高橋利安 (広島修道大教授) 成嶋隆 (獨協大教授) 三宅裕一郎(三重短期大准教授) 高橋洋 (愛知学院大大学院教授) 西原博史 (早大教授) 三輪隆 (埼玉大特別教員・名誉教授) 高見勝利 (上智大法科大学院教授) 丹羽徹 (大阪経済法科大教授) 村田尚紀 (関西大法科大学院教授) 田北康成 (立教大助教) 根森健 (新潟大教授) 元山健 (龍谷大教授) 竹森正孝 (大学教員) 野中俊彦 (法政大名誉教授) 諸根貞夫 (龍谷大教授) 多田一路 (立命館大教授) 濱口晶子 (龍谷大准教授) 森正 (名古屋市立大名誉教授) 只野雅人 (一橋大教授) 韓永學 (北海学園大教授) 山崎英壽 (都留文科大非常勤講師) 館田晶子 (専修大准教授) 樋口陽一 (憲法研究者) 山元一 (慶大教授) 田中祥貴 (信州大准教授) 廣田全男 (横浜市立大教授) 横田耕一 (九州大名誉教授) 寺川史朗 (龍谷大教授) 深瀬忠一 (北海道大名誉教授) 横山宏章 (北九州市立大大学院教授) 戸波江二 (早大大学院教授) 福嶋敏明 (神戸学院大准教授) 吉田善明 (明治大名誉教授) 内藤光博 (専修大教授) 福島力洋 (関西大准教授) 渡辺賢 (大阪市立大学大学院教授) 永井憲一 (法政大名誉教授) 藤野美都子(福島県立医科大教授) 渡辺洋 (神戸学院大教授) 中川律 (宮崎大講師) 船木正文 (大東文化大教員) 中里見博 (徳島大准教授) 古川純 (専修大名誉教授) (27日現在、118人=敬称略) ◆刑事法研究者の声明の賛同者 赤池一将 (龍谷大教授) 京明 (関西学院大准教授) 中村悠人 (東京経済大専任講師) 安里全勝 (山口大前教授) 楠本孝 (三重短期大教授) 鯰越溢弘 (創価大教授) 雨宮敬博 (宮崎産業経営大講師) 黒川亨子 (宇都宮大専任講師) 名和鐡郎 (静岡大名誉教授) 甘利航司 (国学院大准教授) 小浦美保 (岡山商科大准教授) 西岡正樹 (山形大准教授) 荒川雅行 (関西学院大教授) 古川原明子(龍谷大准教授) 新村繁文 (福島大教授) 荒木伸怡 (立教大名誉教授) 後藤昭 (一橋大教授) 比嘉康光 (立正大名誉教授) 伊賀興一 (弁護士) 酒井安行 (青山学院大教授) 玄守道 (龍谷大准教授) 生田勝義 (立命館大名誉教授) 坂本学史 (神戸学院大講師) 平井佐和子(西南学院大准教授) 石塚伸一 (龍谷大教授) 佐川友佳子(香川大准教授) 平川宗信 (中京大教授) 石田倫識 (愛知学院大准教授) 櫻庭総 (山口大専任講師) 福井厚 (京都女子大教授) 伊藤睦 (三重大准教授) 笹倉香奈 (甲南大准教授) 福島至 (龍谷大教授) 稲田朗子 (高知大准教授) 佐藤雅美 (神戸学院大教授) 振津隆行 (金沢大教授) 指宿信 (成城大教授) 島岡まな (大阪大教授) 本田稔 (立命館大教授) 上田寛 (立命館大教授) 白井諭 (大阪経済法科大専任講師) 前田忠弘 (甲南大教授) 上田信太郎(岡山大教授) 鈴木博康 (九州国際大准教授) 前野育三 (関西学院大名誉教授) 植田博 (広島修道大教授) 陶山二郎 (茨城大准教授) 正木祐史 (静岡大教授) 上野達彦 (三重大名誉教授) 関口和徳 (愛媛大准教授) 松岡正章 (弁護士) 内田博文 (神戸学院大教授) 高内寿夫 (国学院大教授) 松倉治代 (大阪市立大准教授) 内山真由美(佐賀大准教授) 高倉新喜 (山形大准教授) 松本英俊 (駒沢大教授) 梅田豊 (愛知学院大教授) 高田昭正 (立命館大教授) 丸山泰弘 (立正大専任講師) 岡田行雄 (熊本大教授) 高平奇恵 (九州大助教) 光藤景皎 (大阪市立大名誉教授) 岡本勝 (東北大名誉教授) 武田誠 (国学院大教授) 緑大輔 (北海道大准教授) 大出良知 (東京経済大教授) 田中輝和 (東北学院大名誉教授) 三宅孝之 (島根大名誉教授) 大藪志保子(久留米大准教授) 田淵浩二 (九州大教授) 宮本弘典 (関東学院大教授) 大山弘 (神戸学院大教授) 丹治初彦 (弁護士) 村岡啓一 (一橋大教授) 小田中聰樹(東北大名誉教授) 恒光徹 (大阪市立大教授) 森尾亮 (久留米大教授) 春日勉 (神戸学院大教授) 寺中誠 (東京経済大非常勤講師) 森下弘 (立命館大教授) 門田成人 (広島大教授) 徳永光 (独協大教授) 森久智江 (立命館大准教授) 金澤真理 (大阪市立大教授) 冨田真 (東北学院大教授) 森本益之 (大阪大名誉教授) 神山敏雄 (岡山大名誉教授) 内藤大海 (熊本大准教授) 山田直子 (関西学院大教授) 嘉門優 (立命館大准教授) 永井善之 (金沢大教授) 山名京子 (関西大教授) 金尚均 (龍谷大教授) 中島洋樹 (関西大准教授) 吉村真性 (九州国際大准教授) ※ほかに氏名未公表の賛同者4人 (25日現在、100人=敬称略) 【秘密保護法案に反対 声明要旨】 ◇国民主権を形骸化 憲法・メディア法研究者 法案には憲法の基本原理に照らして看過しがたい重大な問題点があると考える。 一 取材・報道の自由、国民の知る権利などさまざまな人権を侵害する 重要で広範な国の情報が行政機関の一存で特定秘密とされることにより、国民の知る権利が制約される危険が生じる。また、公務員などが萎縮することにより情報提供が狭められ、漏えいへの教唆や取得なども犯罪として処罰されることで、取材活動や市民の調査活動が厳しく制限され、報道の自由や市民の知る権利が不当に侵害されかねない。法案には、「報道の自由に十分配慮する」との規定も置かれているが、この種の配慮規定により、法案の危険性を本質的に取り除くことはできない。このほか、法案は、秘密を取り扱う者に対する適性評価制度を導入しようとしているが、これは個人のプライバシーを広範囲に侵害するもので、内部告発の抑止にもつながりかねない。また、秘密とされる範囲は広範囲に及び、かつ、漏えい等が禁止される事項も抽象的に書かれており、処罰の範囲も不明確であり、憲法三一条が要求する適正手続きの保障に反する疑いも強い。 二 憲法の国民主権の原理に反する 法案が提示しているのは、国民主権の前提に反して、防衛、外交、有害活動防止やテロ防止など国民が大きな影響を受ける重要な情報について、その入手、取材、伝達、報道、意見交換がさまざまな形で制限される仕組みとなっている。これでは、国民主権が拠(よ)って立つ基盤そのものが失われてしまうことになろう。また、法案が制定されることになれば、国会議員の調査活動や議院の国政調査権なども制限を受ける可能性が高く、国民主権の原理はますます形骸化されてしまいかねない。 三 憲法の平和主義の原理に反する 法案は、防衛に関する事項を別表で広く詳細に列記し、関連の特定有害活動やテロ防止活動に関する事項も含め、これらの情報を広く国民の目から遠ざけてしまうことになる。しかも、法案により、現在の自衛隊法により指定されている「防衛秘密」はそのまま「特定秘密」に指定されたものと見なされ、懲役も倍化されるという乱暴なやり方が取られている。政府は、安全保障政策の司令塔の役割を担う日本版NSC(国家安全保障会議)の設置法案とともに法案の制定を図ろうとしている。法案は、想定される武力の行使を見越して秘密保護をはかろうとするものだ。その背後には、日米の情報共有の進展を踏まえた秘密保護強化の要請がある。 ◇人権侵害のおそれ 刑事法研究者 法案は、基本的には一種の軍事立法であり、平和主義、国民主権原理、基本的人権の尊重主義といった憲法の基本原理を脅かし、憲法「改正」の先取りでもある。同時に、刑事法の人権保障をも侵害するおそれが大きいと言わざるを得ない。 一 法案の罰則は罪刑法定主義に反し、憲法三一条違反である 特定秘密保護法の罰則は、文言が曖昧であり、処罰範囲は広汎(こうはん)であって、憲法三一条の適正手続き・罪刑法定主義に反する。罪刑法定主義は、犯罪と刑罰が国会の制定する法律によらなければならないとするもので、政府が刑罰法規を定めることは基本的人権と議会制民主主義の見地から許されない。この法案の特定秘密はそもそもきわめて広範囲であり、具体的な内容は行政機関の長が決定する。このような罰則は、刑法による保護の対象を事実上行政機関の決定に広範に委任するという意味で、それ自体罪刑法定主義の趣旨に反する。処罰の類型も秘密漏えいを中心に、特定秘密の取得行為、独立教唆・扇動、共謀にまで及び、過失による漏えいの処罰も含まれており、悪(あ)しき完全主義に陥っている。ささいな行き過ぎを口実に、報道機関の取材や住民運動の側の調査活動は規制の対象とされ、活動を萎縮させるおそれが大きい。 二 刑事裁判における適正手続きを侵害する 罰則に違反して起訴された場合、裁判官や弁護人に秘密の内容を開示することは認められないおそれがある。その結果、「特定秘密」の内容が裁判官に対してさえ明らかにされないまま審理され、有罪とされることになろう。裁判の公開の制限や、尋問・論告・弁論が制限されるおそれも無視できない。弁護人の活動が特定秘密の取得行為あるいは共謀罪、独立教唆・扇動罪あるいは未遂罪に当たるとして、処罰される可能性がある。被疑者・被告人が弁護人の援助を受ける権利が著しく制限される。 三 報道機関への配慮規定は問題を解決しない 法案は報道・取材に対する配慮規定といわゆる「免責」規定をおいている。これらの条文はメディアをなだめることを意図している。しかし、懲役十年を覚悟して、秘密の情報をメディアに提供する人はほとんどいない。濫用(らんよう)禁止規定が人権侵害に対して効果的な歯止めとなるかは、過去の類似の規定を持つ法律等の運用から見て疑わしい。 *3:http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013110900196 (時事ドットコム 2013.11.9) 秘密提供、弁護人は対象外=「防御権侵害の恐れ」指摘も-保護法案. イージス艦情報漏えい事件で海上自衛隊第1術科学校を家宅捜索し、押収品を車両に載せる神奈川県警の捜査員ら=2007年5月19日、広島県江田島市政府が今国会で成立を目指す特定秘密保護法案は、秘密を扱う公務員らだけでなく、秘密を取得した側も罪に問われかねない内容となっている。起訴されて裁判を受ける場合、同法案では弁護人への秘密の提供は認められておらず、弁護士の間では「被告の防御権が侵害される恐れがある」との指摘も出ている。特定秘密は行政機関の長が指定し、扱えるのは国家公務員や都道府県警の職員、防衛産業関係者らに限定。秘密を漏らすと最高で懲役10年の刑が科され、過失や未遂も処罰の対象となる。また、秘密漏えいを唆したり、暴行や脅迫、不正アクセスなどによって秘密を取得したりした場合も処罰対象となる。法案では、刑事事件の捜査または公訴の維持に携わる警察、検察には特定秘密を提供できるとされる。証拠開示命令を出すかどうかを決めるに当たって必要な場合には裁判所への提供も可能とされるが、弁護人への提供を認める記載はない。 *4:http://mainichi.jp/shimen/news/20131115ddm041010080000c.html (毎日新聞 2013年11月15日) 特定秘密保護法案に言いたい:「報道」の線引きに疑問−−アジアプレス共同代表・石丸次郎さん ◇石丸次郎さん(51) 特定秘密保護法ができれば、報道と秘密保護の摩擦は必ず起きる。立件するかどうか決めるのは警察だ。大手メディアにはすぐには手を出さないだろう。まずターゲットになるのは私たち独立系やフリーランスのジャーナリストではないかと強い危惧を抱いている。政府はフリーランスも「報道従事者」として処罰対象にしないと言っているが線引きするのは権力側。日朝外交の舞台裏をチームで取材し、若いスタッフが外交官に話を聞いたら「特定秘密の漏えい教唆」と見なされるかもしれない。「報道実績がない」と決めつけることも可能だからだ。基地問題などで報道機関に負けない地道な調査を続けている市民がいる。彼らはどうなるのか。 報道とそれ以外という線引き自体が間違っていると思う。何が秘密か分からないのが不気味だ。アジアプレスのメンバーはイラクで自衛隊の活動も取材した。特定秘密保護法ができれば、自衛隊や外交の関係者を取材する時に「相手に迷惑をかけるかもしれない」との思いが働くだろう。「これ以上突っ込むと通報されるかもしれない」という疑心暗鬼にも陥る。踏み込んだ取材には慎重にならざるを得なくなる。長く取材してきた北朝鮮は、路地裏の露天市場の写真や映像すら「国家機密」として外国に持ち出すことを厳罰に処す国だ。非民主的で強権的な国家はやたらと秘密を作りたがり、情報統制によって国民を管理する。安倍政権も同じベクトルを向いているのではないか。 *5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/list/CK2013111002000111.html (東京新聞 2013年11月10日)【特定秘密保護法案】「国家の安全に優先せず」 「法案批判は放送法違反」 「知る権利」が国家の安全に優先するとの考えは間違い。法案に批判的なテレビキャスター発言は放送法違反-。特定秘密保護法案をめぐり、自民党の閣僚経験者や政権幹部から、国民の知る権利や報道の自由を軽視するかのような発言が続いている。法案は知る権利と報道・取材の自由に十分配慮すると規定しているが「うわべだけのものだ」との声も上がる。 自民党の特定秘密保護法案に関するプロジェクトチーム座長を務める町村信孝元外相は、八日の衆院国家安全保障特別委員会で「(知る権利が)国家や国民の安全に優先するという考え方は基本的に間違いがある」と発言。「『知る権利は担保しました、しかし個人の生存が担保できません、国家の存立が確保できません』というのは、全く逆転した議論ではないか」とも述べた。 一方、小池百合子元防衛相は十月二十八日の衆院特別委で、首相の一日の行動を報道する首相動静について「知る権利(の範囲)を超えているのではないか」との認識を示した。「知る権利もあるが、何を知り、何を伝えてはいけないかを精査してほしい」と求めたが、菅義偉官房長官は同日の記者会見で「(首相動静は)特定秘密には当たらない」と火消しに走った。 短文投稿サイト「ツイッター」で盛んにつぶやいているのは、法案を担当する礒崎陽輔首相補佐官。十一月七日にはテレビ報道をめぐり「こういう法案にはファイティングポーズをとらなければならないということなのだろうが、放送の中立性を侵せば、放送法違反だ」「キャスターが『廃案にさせなければならない』と明確に言った。明らかに放送法に規定する中立義務違反の発言だ」と投稿した。 今国会での法案成立を目指す安倍晋三首相は衆院本会議で「国民の知る権利や報道の自由への配慮も重要と認識している。適切に対応する」と述べた。しかし、山口二郎北海道大教授(政治学)は、自民党が七月にTBSの取材を一時拒否したことも挙げながら「安倍政権になってメディアに対するけん制、威嚇はずっと続いており、元閣僚らの発言はその一端だ。配慮規定はうわべだけのソフトな言葉を入れ、法の有害さを隠しているにすぎない」と指摘した。 *6:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2582478.article.html (佐賀新聞 2013年11月18日) 民主の対案、特定秘密を限定 / 外部監査も導入 民主党が検討している政府の特定秘密保護法案への対案に、特定秘密に指定できる対象を外国政府との共有情報に限定し「国際特別管理秘密」との名称にする内容を盛り込むことが分かった。行政機関による恣意的な対象拡大を防ぐため、国会や第三者機関による外部監査制度も導入する。複数の党幹部が18日、明らかにした。政府の秘密保護法案は(1)防衛(2)外交(3)スパイ行為など特定有害活動防止(4)テロ活動防止―に関する情報を「特定秘密」に指定。公務員らが漏らした場合、最高10年の懲役を科す。 *7:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131119/k10013165551000.html (NHK 2013年11月19日) みんな 与党と修正のうえ法案賛成へ みんなの党は、まもなく役員会を開き、「特定秘密保護法案」について、「特定秘密」の指定などで総理大臣の関与を強める修正を行ったうえで賛成する方針を、正式に決めることにしています。「特定秘密保護法案」を巡って、自民・公明両党とみんなの党は、修正協議の実務者が、先ほど国会内で会談し、▽「特定秘密」の指定にあたって統一的な運用を図るための基準案を総理大臣が作成することや、▽指定などについて、総理大臣の指揮・監督権を明記し、必要があれば閣僚らに説明を求め、改善を指示できることなど、18日、大筋で合意した法案の修正内容を確認しました。これを受けてみんなの党はまもなく役員会を開き、与党と共に法案を修正したうえで、賛成する方針を正式に決めることにしています。一方、自民・公明両党と日本維新の会の実務者が、先ほどから国会内で修正協議を行っており、この中では、維新の会が求めている、▽「特定秘密」の指定の妥当性をチェックする第三者機関の設置や、▽すべての情報を30年後に開示することなどを巡って、意見が交わされているものとみられます。
| 民主主義・選挙・その他::特定秘密保護法関係2013.10~12 | 08:37 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,11,10, Sunday
(1)特定秘密保護法は、日本国憲法の民主主義を骨抜きにする *1のように、特定秘密保護法が成立すると、主権者たる国民の「知る権利」を支える「情報公開」や「公文書管理」の理念をなきものにする。何故なら、国の安全保障に支障を与える恐れがあるという理由をつければ、何でも特定秘密に指定することができるからである。そうなると、政府にとって「不都合な真実」は、この法律を使って非公開とし、永久に有権者の目に触れないようにすることも可能だ。 そして、国の防衛や外交上の利益などに重大な支障を及ぼすと行政が判断した場合には、法廷への文書提出も拒否できるとの条文があるため、司法による救済も阻まれており、立法、行政、司法は三権分立ではなく、行政の下に立法と司法が置かれるという結果になる。これは、太平洋戦争以前にあった光景と同じだろう(私も見たことはないが、歴史として知っている)。 (2)何が特定秘密に該当するのか(TPPと防衛の事例から) *2に、特定秘密保護法案を担当する森雅子少子化担当相が、2013年10月29日の記者会見で、「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉内容が同法案で漏洩を禁じる『特定秘密』の対象になりうるとの認識を示した」と書かれている。これまで、TPP関連の情報が何とかかんとか言って公開されなかったことからも、そういうことだろうと推測はできた。 そして、*4に、「政府は、2013年10月31日には、TPP交渉で最大の焦点となっている関税について、撤廃や削減などの品目ごとの扱いを示すオファーを11カ国全てと交換した」「TPP交渉と並行して行っている米国との2国間協議も、直近の第3回交渉会合でTPP交渉と歩調を合わせて年内に妥結しようと精力的に交渉している(外務省)」と書かれている。つまり、積極的に交渉を行っているのは日本のようだが、それより詳しい情報は隠されているため、問題の指摘もしようがないのだ。 これが、まさに*3で、長野県弁護士会の諏訪会長が述べている「TPPへの交渉参加の秘密保持契約が国民主権や国会の最高機関性に反することを懸念する」「国民や国会に情報提供できない協定であれば、直ちに脱退すべき」ということだ。国民が知らないうちに、国民を窮地に陥れるような条約が結ばれては、後で誰が責任をとって辞職しても、取り返しがつかないからである。 また、防衛についても*5のとおり、「防衛省は、防衛装備の国際共同開発に積極参入して民間転用できる装備品を官民一体で国際マーケットに売り込む」「安倍政権は、武器輸出三原則に基づく従来の禁輸政策見直しを進めている」などの変化があり、特定秘密保護法が制定されれば、これにも、予算、技術の両面で、国民の監視が届かなくなる。 (3)特定秘密保護法案は廃案にすべき *6に書かれているように、私も、日本国憲法の主権在民、平和主義、文民統制をないがしろにする特定秘密保護法案は、議員の良識で廃案にすべきだと考える。立法時に納得しやすい事例が秘密にあたる事例として挙げられていても、運用ではどんな情報でも恣意的に秘密にできるのが、この法律である。行政機関の「長」が、一旦「秘密」と判断すれば、何でも国民の目から秘匿できるのでは、民主主義にも、三権分立にもならない。 *1:http://mainichi.jp/opinion/news/20131106k0000m070147000c.html (毎日新聞社説 2013年11月6日) 秘密保護法案を問う 国の情報公開 ◇「不都合」隠される懸念 特定秘密保護法案は、国民の知る権利を支える情報公開や公文書管理の理念から大きくかけ離れる。情報公開法は「国民主権の理念にのっとり、情報の一層の公開を図る」ことを目的とし、公文書管理法は「国の諸活動や歴史的事実の記録である公文書は、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」とうたう。ところが、法案が成立すると、国の安全保障に著しい支障を与える恐れがあるとの理由で、行政機関は大量の情報を恣意的に特定秘密に指定することが可能になる。政府にとって「不都合な真実」も国民の目から隠蔽されかねない。 政府の「隠蔽体質」を如実に物語るのが、1972年の沖縄返還に伴う密約問題だ。日本が米国に財政負担することを両政府が合意した密約について日本政府は一貫して否定し続け、2000年以降に米国立公文書館で密約を裏付ける文書が見つかった後も、その姿勢を変えていない。西山太吉・元毎日新聞記者らが密約文書の開示を求めた訴訟で11年の東京高裁判決は、「沖縄を金で買い戻す」との印象を持たれたくない政府が国民に隠す必要があったと認定し、ばれないように01年の情報公開法施行前に秘密裏に文書を廃棄した可能性を指摘した。開示請求は退けたが、密約文書を「第一級の歴史的価値を有し、永久保存されるべきだった」と国の姿勢を批判したのだ。密約のような行為も行政の思惑次第で指定がまかり通り、外部からのチェックは不可能になる。5年の指定期間は行政の判断だけで更新でき、内閣の承認があれば30年を超える指定も可能だ。国民は半永久的に知ることができなくなってしまう。 特定秘密に指定される情報も、情報公開法や公文書管理法の対象になる見通しだ。ところが、国の安全が害される恐れがあるなどと行政側が判断すれば公開を拒否できるので、特定秘密は事実上開示されないことになる。公文書管理法も、各省庁で保存期間が満了した行政文書は国立公文書館などに移管するか、または首相の同意を得て廃棄することを認めており、廃棄される懸念は消えない。民主党は、訴訟の段階で裁判所が対象文書を調べる仕組みを導入する情報公開法改正案を提出し、知る権利の充実を強調する。しかし、国の防衛や外交上の利益などに重大な支障を及ぼす場合は行政側が法廷への文書提出を拒否できるとの条文があり、実際には機能しない可能性が強い。この改正案と引き換えに法案の成立を許すわけにはいかない。 *2:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131029/plc13102911480013-n1.htm (産経ニュース 2013.10.29) TPPも対象の可能性 秘密保護法案で森担当相 特定秘密保護法案を担当する森雅子少子化担当相は29日の記者会見で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉内容が同法案で漏洩を禁じる「特定秘密」の対象になりうるとの認識を示した。「(法案の)別表に掲げる事項に該当すれば、なる可能性もある」と述べた。政府はこれまで、TPPなどの貿易関連情報は同法案の対象外だと説明してきただけに、整合性が問われそうだ。森氏は「国家や国民の安全保障に関わる事項であれば(特定秘密に)なる。細かい基準を有識者会議で作る必要がある」とも指摘した。 *3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=24135 (日本農業新聞 2013/10/25) 秘密主義 看過できず TPPで意見書 長野県弁護士会長 長野県弁護士会の諏訪雅顕会長は、「TPPへの交渉参加の秘密保持契約が国民主権や国会の最高機関性に反することを懸念する」として声明を発表した。国民や国会に情報提供できない協定であれば、直ちに脱退するよう求めた。「TPPに反対する弁護士ネットワーク」によると、弁護士会会長がTPPに懸念を示したのは全国初めてという。声明は今後、安倍晋三首相や甘利明TPP担当相、長野県選出の国会議員や各政党に送り、声明を周知する。 *4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=24254 (日本農業新聞 2013/11/1) TPP交渉 全参加国に提案完了 年内妥結へ加速恐れも 政府は31日、環太平洋連携協定(TPP)交渉で最大の焦点となっている関税について、関税撤廃・削減など品目ごとの扱いを示す提案(オファー)を11カ国全てと交換したことを明らかにした。TPP交渉と並行して行っている米国との2国間協議も年内の妥結を目指している。最大のヤマ場と見込まれる12月の閣僚会合が7日ごろに始まるとの日程感も見えてきており、年内妥結に向けてTPP交渉が一気に進む恐れもある。同日開かれた自民党の議員連盟「TPP交渉における国益を守り抜く会」で、TPP政府対策本部や外務省の担当者が明らかにした。 米国との2国間協議は、直近の第3回交渉会合で「TPP交渉と歩調を合わせて年内に妥結しようということで精力的に交渉した」(外務省)という。 今後の日程は、シンガポールで閣僚会合が12月7日ごろから数日間行われ、11月中旬には首席交渉官会合と分野別の中間会合が米国西部で開かれる見通しを示した。関税をめぐっては、オファーを全ての国に提示したものの、要求(リクエスト)がまだ全ての国からは返ってきていないという。交渉は、それぞれの品目についてオファー・リクエストを繰り返し、相手国の関心事項を精査して再びオファーするという手順で進めている。同対策本部の担当者は「品目ごとの交渉を積み重ねた結果として高い水準を目指すのが目標」と述べ、必ずしも自由化率を前提にした方法で進めているわけではないことを明らかにした。重要品目の関税撤廃の期間については、「10年を超えた段階的な関税撤廃を含め認めないこと」とした衆参両院の農林水産委員会の決議を受け止めて交渉するとの認識をあらためて示した。 その他の懸念が強い分野について、政府調達は「日本の仕組みを広げるような意見は出ていない」とし、「簡易保険、共済制度の変更も動きはない」という。 *5:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2579027.article.html (佐賀新聞 2013年11月9日) 防衛装備「国産」見直し / 40年ぶり、年度内に新戦略 防衛省は、防衛装備の国産化をうたった1970年当時の防衛庁方針を約40年ぶりに見直し、代わって、国際共同開発への積極参入や、民間転用できる装備品を官民一体で国際マーケットに売り込むことを柱とする新たな戦略を2013年度中に策定する。政府関係者が明らかにした。安倍政権は、武器輸出三原則に基づく従来の禁輸政策見直しを進めており、新戦略は禁輸見直しと連動させる。中国や北朝鮮をにらみ、日本の高度な技術を交渉材料に他国との安全保障関係を強化する狙い。積極的な安保政策の一環との見方もできる。 *6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013110802000161.html (東京新聞 2013年11月8日) 特定秘密保護法案 議員の良識で廃案へ 特定秘密保護法案が衆院で審議入りした。国家が国民の思想の領域まで踏み込む恐れがある。国会議員は今こそ良識を発揮して、廃案にしてほしい。潜水艦の潜水可能な深度、テロ情報収集のための情報源、公電に使われる暗号…。自民党はホームページで、秘密保護法案により漏えいを禁じる特定秘密の具体例を挙げている。国家が秘密にしたい事例として、納得する人も多いだろう。だが、秘密に該当しない情報さえ、恣意的に封殺しうるのが、この法案である。行政機関の「長」が「秘密」というワッペンを貼れば、国民から秘匿できるのだ。 ◆35センチの壁も「防衛秘」 特定秘密の指定の際に、有識者が統一基準を示すというが、あくまで基準にすぎず、個別の情報を調べるわけではない。国会や司法のチェック機能も働かない。これは致命的な欠陥だ。特定秘密は防衛省や外務省、警察庁などが扱い、約四十万件が指定されるとみられる。だが、秘密とするには、実質的に秘密に値する「実質秘」でなければならない。最高裁判例が示している。この膨大な秘密の山は、本当に「実質秘」だけで築かれているだろうか。ある情報開示訴訟で国側が敗訴したケースが、その欺瞞(ぎまん)性を象徴している。海上自衛隊が那覇基地の建物を「防衛秘」としたことに、最高裁が二〇〇一年、秘匿の必要性を認めなかった。国側は「爆撃機の攻撃力を計算して、耐えうる壁の厚さを設計した」などと、もっともらしい主張をしていた。だが、壁の厚さは、たったの三十五センチだった-。要するに行政機関は、隠したいものは何でも隠すことができる。いったん「特定秘密」に指定されてしまうと、半永久的に秘匿されうる。問題点は明らかだ。 ◆崖に立つ報道の自由 法案には防衛や外交の分野のみならず、「特定有害活動」「テロ活動」も加わっている。特定有害活動はスパイ活動を指すが、この項目には「その他の活動」という言葉もさりげなく挿入している。テロは人を殺傷したり、施設を破壊する行為だが、条文を点検すると、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若(も)しくは他人にこれを強要」する活動も含まれると解される。主義主張を強要する活動が「テロ」とするなら、思想の領域まで踏み込む発想だ。原発をテロ対象とすれば、反原発を訴える市民活動も含まれてしまう。秘密を漏らした側にも、聞いた側にも最高十年の懲役刑が科される重罰規定がある。とくに「特定秘密を保有する者の管理を害する行為」を処罰する点は問題が大きい。管理の侵害とは何か、全く判然としていないからだ。しかも、既遂や未遂はむろん、共謀、教唆、扇動も罰せられる。これは秘密に接近しようとする行為に対する事前処罰であろう。刑法の共謀は犯罪の実行行為を必要とするが、この法案はその前段階である「話し合い」を共謀、「呼び掛け」を扇動とみなしうる。刑罰は強い拘束力をもつため、あらかじめ罪となる行為を明示せねばならない。だが、この法案では処罰範囲が、どこまで広がるかわからない。近代刑法の原則から逸脱する懸念が強い。報道の自由について「出版又(また)は報道の業務に従事する者」と限定しているのも、大いに疑問だ。ネット配信する市民ジャーナリストらを排除している。かつ「著しく不当な方法」による取材は、取り締まりの対象だ。不当かどうかの判断は、捜査当局が行う。ここにも恣意性が働く。裁判で無罪となるまで、記者らは長期間、被告人の立場に置かれてしまう。強い危惧を覚える。ドイツではむしろ「報道の自由強化法」が昨年にできた。秘密文書に基づいた雑誌報道に対し、編集部などが家宅捜索を受けた。これを憲法裁判所が違法としたからだ。今やジャーナリストは漏えい罪の対象外である。民主党は情報公開法の改正案を出しているが、秘密保護法案は情報へのアクセスを拒絶する性質を持つ。「国家機密」が情報公開制度で表に出るはずがない。 ◆憲法原理を踏み越える 何より深刻なのは国会議員さえ処罰し、言論を封じ込めることだ。特定秘密については、国政調査権も及ばない。行政権のみが強くなってしまう。重要な安全保障政策について、議論が不可能になる国会とはいったい何だろう。議員こそ危機感を持ち、与野党を問わず、反対に立つべきだ。三権分立の原理が働かないうえ、平和主義や基本的人権も侵害されうる。憲法原理を踏み越えた法案である。
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2013,11,02, Saturday
(1)原発とテロ *1によれば、「特定秘密保護法案を担当する森雅子少子化相が、1日の閣議後記者会見で、『原子力発電所の警備状況は特定秘密の対象になり得る』と述べ、具体的には原発でテロが懸念される場合の警備などを挙げた」ということだが、大臣のこの発言で、原発の警備はテロに対して十分ではなく、公表できるような代物ではないということが明らかになった。これは、特定秘密の漏洩に当たるのだろうか。 そもそも、原発の警備がテロに対して十分でないということは、特定秘密に指定すれば解決するものではなく、原発の構造を見れば誰にでもわかるものである。そのため、そのような構造の原発は、再稼働どころか、多量の使用済核燃料も、早急に原発の上部にあるプールから取り出して空にしなければ危ないのだ。解決方法が、間違っているのではないか? (2)国民が選んだ議員を議会が除名できるのか *2では、自民党の石破幹事長が、「秘密会での情報を漏らしたら議会を除名になるなど、厳しいものを設けるべきだ」と述べているそうだが、仮に、共産党の議員が、「そんなことを秘密にすべきではない」と考えて、党内で議論の上、運動に展開したとすれば、誰が、その人を議会から除名できるのか。国民が選んだ議員を議会の多数派が除名することはできないのが、民主主義である。これは、自民党の議員であっても同じだ。 (3)誰にとって都合の悪いことが秘密なのか *3には、「福島原発周辺の高放射線量地域で、動物の異常、奇形が進行しており、調査をしているのは、外国人ばかり」という記事がある。このような事実はメディアでも報道されていないが、これは最も常識的な生物の放射線被曝による被害であり、人間だけが特別ということはない。だからこそ、SPEEDIによる放射性物質の拡散予測や速やかな避難、徹底した除染、内部被曝の防止が重要だったのだが、これらの対応が悪かったのも、原発が爆発したのも、被曝すれば病気になるのも、特定秘密だろうか? *1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0100I_R01C13A1EB1000/?dg=1 (日経新聞 2013/11/1) 「原発警備は特定秘密の対象に」 森担当相 特定秘密保護法案を担当する森雅子少子化相は1日の閣議後の記者会見で「原子力発電所の警備状況は特定秘密の対象になり得る」と述べた。具体的には原発でテロが懸念される場合の警備などを挙げた。 *2:http://digital.asahi.com/articles/TKY201310310487.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2013年11月1日) 秘密漏洩「国会議員にも罰則を」 石破自民幹事長 自民党の石破茂幹事長は31日、特定秘密保護法案について、憲法上認められた国会の「秘密会」で政府による秘密指定を議論するケースを念頭に、国会規則で議員による秘密漏洩の懲罰ルールを整備すべきだとの考えを明らかにした。石破氏は、BS朝日の番組で「立法府で秘密を扱う場合は、国会議員にも義務、罰則を科そうということになる。それを整備するのが我々の責任だ」と述べ、今後、党として問題提起する考えを示した。石破氏は、政府が恣意的に秘密指定していないかをチェックするため、非公開の「秘密会」で審議するケースを想定。議員が情報を外部に漏らしても、参院は懲罰規定があるが、衆院にはないと指摘して「秘密会での情報を漏らしたら議会を除名になるなど、厳しいものを設けるべきだ」と主張した。 *3:http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=281248&g=132106 福島原発周辺の高放射線量地域で、動物の異常、奇形が進行している 福島第一原発事故から2年半がたった9月11日に、TBSが福島原発周辺で定点観察を続けている、米国、フィンランド、フランスの学者の活動を紹介した。その調査によると、毛虫が蛹から蝶に変態せずに、死滅している。蜂の姿が見えない。野ネズミも消えた。燕にアルビノや尾羽の異常が見つかった。 明らかに、動物の異常や奇形が進行している。 ●以下引用 福島では動植物の奇形や減少が進行している。福島県浪江町は高放射線量地域になっているが、2012年から目に見えて蝶々や蜂が減少しており、今年に入ってからは毛虫が大量死していると言われている。本来はこういった毛虫は鳥が食べるのだが、その鳥すらもやって来ないという。これは、現地で定点観測をしているアメリカのサウスカロライナ大学のティモシー・ムソー教授がそれを指摘しているのだが、高放射線量地域では明らかに異変が起きている。 同じことはパリ第11大学の教授であるアンダース・メラー氏が2012年12月にまったく同じことを指摘していた。(福島の放射能汚染で、鳥類が減り、昆虫が奇形を起こしている)。アンダース・メラー氏はいまだに福島で調査活動を行い続けているが、これからもどんどん哺乳類・鳥類が減少し、「すでに、いなくなった種もあるかもしれない」と言っている。 環境省は、2012年3月には、ツバメの巣から140万ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表しているが、その後、ツバメはどうなっているのだろうか。まず言えるのは、高放射線量地域ではツバメが巣に戻って来なくて空っぽになっているということだ。さらに、捕獲したツバメを見ると、アルビノであったり、尾羽が極端に短い個体があったりして、いよいよ動物の奇形が始まっているようだ。放射線量が高い地域のツバメは羽が白くなるアルビノ現象が起きるということだが、福島のツバメもこのアルビノ現象が起きている。 ●引用終わり 注目するのは、毛虫の大量死です。草木は生い茂っているのに、その枝に、成長した毛虫が大量に死んでいる。昆虫は成長段階で変態という高度な遺伝子発現を行なう。毛虫から蝶への変態です。この変態過程は、さなぎの中で、どろどろのアモルファスの状態になり、そこから蝶という形を作るために、秩序だった遺伝子発現が進行し、形体形成が行なわれる。この最も微妙な遺伝子発現が、放射能汚染のために異常をきたし、毛虫のまま死滅してしまった。遺伝子発現密度の高い、人の胎児や幼児に、異常や障害がでてくることにつながります。最後に残念なのは、定点観測しているのが、海外の研究者であり、日本の生物学者、環境学者からは、まともなレポートが見当たらないことです。権力を取り戻した原子力ムラや原発推進の政府・官僚を恐れて、まともな事実追求をしないのなら、戦後の科学立国はどこに行ったのかと思います。 PS:*4の日本弁護士連合会の意見も出ているが、全くそのとおりだ。 *4:http://digital.asahi.com/articles/TKY201310240321.html?iref=comkiji_redirect&ref=reca (朝日新聞 2013年10月24日) 日弁連「秘密保護法案に反対」 首相らに意見書送付 日本弁護士連合会は24日、今国会に提出される予定の特定秘密保護法案に反対する意見書を、安倍晋三首相と、同法案を担当する森雅子消費者相に送った。意見書では「特定秘密」の範囲があいまい▽特定秘密の指定に官僚の恣意が働く▽言論の自由、知る権利を侵害する恐れが大きい、などと批判。行政機関から国会に示される特定秘密の範囲が、行政機関の裁量に任されている点で「行政への国会の監視機能が空洞化する」と指摘している。 PS(2013.11.5追加):*5の記事は全くその通りで、被害者は福島県民に限らず、私も、首相、衆参両院議長宛の意見書を可決した福島県議会に感謝する。また、SPEEDIの試算結果を事故の初期段階で公表しなかったことについては、健康は不可逆的に害されるので、怒りが収まる時などないと思う。 *5:http://www.minyu-net.com/news/news/1105/news9.html (2013年11月5日 福島民友ニュース) 「原発情報」隠蔽危惧 秘密保護法案めぐり県会意見書 「原発の安全性に関わる問題や住民の安全に関する情報が『特定秘密』に指定される可能性がある」。安全保障上の情報保全徹底を掲げる特定秘密保護法案をめぐり、県議会は10月9日、全会一致で「慎重な対応を求める」とする首相、衆参両院議長宛ての意見書を可決した。東京電力福島第1原発事故直後、放射性物質の拡散について十分な情報開示がなされなかったことへの不信感が根強い。意見書の背景には「重要な情報がまた隠されるのではないか」との危機感がある。原発事故では、放射性物質の拡散を予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」の試算結果が、事故の初期段階で公表されず、住民の避難に生かされなかった。浪江町の一部の住民は、第1原発から放出された放射性物質が大量に流れて、放射線量がより高い地域に避難していたことが後から判明した。国が適切に公表していれば「無用の被ばく」を防げたはずだという住民たちの怒りは、今も収まっていない。 PS(2013.11.7追加):下のように、2011年8月11日に、元防衛庁長官で衆議院議員の中谷元氏が、原子力発電所の警備について、防衛の専門家の目から詳しく書いておられるので、原発の警備状況は今さら特定秘密の対象にはなりませんね。 *6:http://www.nakatanigen.com/modules/archive/details.php?bid=246 (元防衛庁長官、衆議院議員 中谷元 2011-8-11) 質疑③原子力発電所の警備について 現状、国内の原子力発電所の警備について、福島第一原発事故に対する原発警備の脆弱性が指摘されているが、今は、民間の警備会社に委託をし、実弾射撃を許していないため、銃を持たない警備員が警備しているのが実態であり、実に不用心である。重要施設の警備の在り方について、自衛隊や警察を当初より警備に当たらせるべきであると私は考えるが、少なくとも作業員の身元確認は厳格化すべきではないか。相手が、機関銃や手榴弾をもって、襲いかかる可能性もある。その場合、本当に警察の対応だけで大丈夫であるのか。今から、10年前、私が防衛庁長官であった頃、米国の同時多発テロを受け、自衛隊の「警護出動」を規定した法律を改正した。その対象については、原発などの重要施設も当時は実施したかったが、警察サイドの猛烈な抵抗によって、警備できるところは、自衛隊施設や米軍施設のみとなった。発動の要件は、いわゆるテロ行為による施設破壊等のおそれがある場合に発動されるとし、警護出動と治安出動では、「おそれ」がある段階で発動でき、国会の承認等も要しないという違いがあり、治安出動の前段階の準備行為としての警備活動は必要である。原発が、テロリストに襲われた時の被害は甚大なものになってしまうので、早く自衛隊にも武器使用の権限を持たせて、原発などの重要施設の警備につかせる必要がある。
| 民主主義・選挙・その他::特定秘密保護法関係2013.10~12 | 06:33 AM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,10,18, Friday
尖閣での巡視船と中国漁船の衝突 玄海原発 福島第一原発事故現場 (1)特定秘密の範囲はどこまでか *1に、国民の「知る権利」や「報道・取材の自由」への配慮が明記されたため、公明党が秘密保護法最終案を了承し、今国会で成立の可能性と書かれている。*2に、この法案のきっかけは、2010年、尖閣諸島沖で起きた巡視船と中国漁船の衝突映像のインターネット流出事件だと記載されているが、この法律が成立すれば、「原発ホワイトアウト」という告発小説を書いた現役キャリア官僚もこれに該当するのだろう。そのため、秘密保護法で、このような情報流出源を罰しようという行為は、確かに怖い。 また、*2、*3、*4に記載されているように、秘密保護法案は、(1)防衛(2)外交(3)特定有害活動防止(4)テロ活動防止の4分野に関し、武器、弾薬、航空機の数量や性能など具体的な特定秘密を挙げているが、「その他の重要な情報」との文言も盛り込まれているため、政府にとって不都合な情報は何でも秘密にできる。さらに、「特定有害活動」や「特定秘密」の範囲は行政の裁量で決めることができるため、福島第一原発事故、原子力政策、防衛、TPPなど、あらゆる問題を政府の都合で対象にできる。 そして、*5には、自民党の石破幹事長が、特定秘密保護法案について、「これから先、世界のあちこちでテロリストやテロ国家が出てくる危険性がある。その時に一番大事なのは情報だ」と訴えられたそうだが、それでは、主権者である国民の判断のために重要な情報である「実は、原発はテロには対応できていない」ということも特定秘密として国民に知らせてはならないのだろうか。それは、逆だと思うが。 仮に、特定秘密保護法が制定されるとしても、何が特定秘密に当たるのかについて、国会で徹底した議論の上、限定列挙にしなければ、日本は危なくて重要なことは何もしゃべれない暗黒国家になるだろう。 (2)日本国憲法に規定されている民主主義と主権者の「知る権利」 *4に、「特定秘密を判断する主体として有識者会議を設置するが、会議の主な役割は指定の統一基準に意見を述べることに限られ、実際の指定が妥当かどうかはチェックせず、政府に都合のいい判断を排除する仕組みになっていない」と書かれている。私も民主主義は、「主権者たる国民が、状況を知った上で投票行動により決定するもの」であるため、「知る権利」や「(まともな)報道の自由」は配慮されるものではなく、日本国憲法から導き出される国民の当然の権利だと考える。 また、*6の日本弁護士連合会会長声明に記載されているように、この法案は、パブリックコメントの期間を僅か2週間しか設けないという国民不在の手続を強行して国民主権をないがしろにする手法をとり、国会議員に特定秘密が提供された場合でも、国会議員がその情報を議員活動で利用できるか否かについて不明確なままだそうだ。そうすると、国会議員が、主権者である有権者に国政報告をした後で、「それは特定秘密保護法違反だった」とされる可能性すらあり、公職選挙法や税法とともに、主権者である国民を代表する国会議員を行政が支配する強力なツールになるため、日本国憲法で保証された民主主義を揺るがすものである。 (3)内部告発者を守ることはできるのか *2によれば、処罰対象は公務員だけでなく、「秘密」を取得した民間人や国会議員も含むため、民主主義国家の情報公開に逆行し、主権者である国民の「知る権利」を侵害する。さらに、*4に書かれているように、これを漏らした公務員らに対し、罰則として最長10年の懲役が科せられるが、何が特定秘密に当たるかは漠然としている。 そして、防衛は「自衛隊の運用」、外交は「安全保障に関する外国政府との交渉」といった具合であるため、何の限定もないに等しく、行政機関の長の判断次第で、いくらでも特定秘密に指定することができる。また、その指定が妥当かどうかをチェックする公正で強力な主体はないため、有益な情報を開示した者を守ることもできない。 (4)秘密保護法施行の影響 仮に行政内部で特定秘密指定に疑問を持つ公務員がいても、同僚に相談することすらできず、情報を知り得た国会議員も、主権者たる有権者への国政報告どころか党内で議論を交わすことすらできない。そのため、秘密保護法が施行されれば、日本は、言論統制で萎縮した警察国家になりそうである。 PS(2013年10月23日追加):*7で記載されているように、広範な国の情報が行政の一存で特定秘密に指定できることになれば、国民の知る権利が侵され、憲法で定められた主権在民が機能しなくなるとともに、人権侵害も容易になって基本的人権が脅かされる。そのため、私も、この法律の制定に反対なのだが、*8のように、国民の代表である国会が政府の監視役にならなくなるという国会自身が憲法で与えられた役割や権利を放棄し、議院内閣制を形骸化させる法律でもあるため、国会で党議拘束をかけず、議員の良識に従って採決して否決する方法もあろう。 *1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013101801000948.html (東京新聞 2013年10月18日) 公明、秘密保護法最終案を了承 今国会成立の可能性 公明党は18日、機密を漏らした公務員らへの罰則強化を盛り込んだ特定秘密保護法案に関するプロジェクトチーム(PT)で最終的な法案を了承した。同党の修正要求を踏まえ国民の「知る権利」や「報道・取材の自由」への配慮が明記された。公明党は22日の政調全体会議で手続きを終える。政府は25日に閣議決定し、国会へ提出する。今国会で成立する可能性が強まっている。PTでは、礒崎陽輔首相補佐官が、公明党が求めた閣議の議事録作成と公開を義務付ける公文書管理法改正に関し「調整をして前向きに検討したい」と説明した。 *2:http://www.y-mainichi.co.jp/news/23494/ (八重山毎日新聞社説 2013年10月15日) 揺れる国民の知る権利 第66回新聞週間に思う ■問題多い秘密保護法案 きょうから第66回新聞週間がスタートする。国内情勢はこじれた韓国や中国との外交、一触即発の尖閣問題、いまだ抑止できない福島原発の汚染水流出など、難題が山積している。その中で、政府の「特定秘密の保護に関する法律案」(秘密保護法)の国会提出準備が、着々と進められていることに強い懸念が生じている。同法は外交や防衛などに関わる秘密を漏えいした公務員らの罰則を強化して、国を守ろうというものだ。法案のきっかけは、2010年に石垣市の行政管轄・尖閣諸島の沖合で起きた巡視船と中国漁船の衝突映像のインターネット流出事件とされる。元海上保安官がネットに流出させたのが法制定の理由らしい。しかしこの問題は国内法に基づき、逮捕した中国船長を粛々と処理すべき事件だ。それを内部情報が漏れたからといって、新法で情報流出源を徹底的に追及し、罰しようという行為は空恐ろしいものがある。秘密事項が抽象的なあいまい表現では、国に都合の悪いものはすべて闇に葬られかねないのである。 ■あいまいな特定秘密 国民が関心の高い消費税3%引き上げの陰で、秘密保護法はややもすると身近な問題と思われにくいかもしれない。しかし同法が制定すれば国民の関心の高い福島原発をはじめとする原子力政策、防衛、TPPなど、あらゆる問題が政府の都合で「特定秘密」にされる可能性があるのだ。秘密保護法の法案概要は「防衛」「外交」「安全脅威活動の防止」「テロ活動防止」の4分野のうち、国の安全保障に著しい支障を与える恐れがあり、秘匿の必要性が特に高い情報を行政機関の長が「特定秘密」に指定するとしている。だが、何が特定秘密に当たるかをチェックする仕組みがないうえ、不都合な情報を恣意(しい)的に指定したり、国民に必要な情報まで秘匿したりする手段に使われる疑念は依然として残っている。何を「秘密」とするかは行政側の裁量で決められ、処罰対象も公務員だけでなく、「秘密」を取得した民間人も範囲となり、情報公開に逆行、国民の「知る権利」を侵害する恐れがある。 ■沖縄は秘密だらけ 「秘密」に関し、沖縄に住む私たちは日米安全保障に伴い、さまざまな問題を経験してきた。1971年の沖縄返還協定をめぐって、取材上知り得た機密情報を国会議員に漏らしたとして、当時の毎日新聞社政治部記者・西山太吉氏らが国家公務員法違反で有罪となった沖縄密約事件があり、またオウム真理教のテロ事件で、多くの国民に知られた化学兵器のサリンが、沖縄に保管されていたことも明らかになった。いまなお沖縄の米軍情報は機密扱いが大半で、一方的に通知されることが通常化している。県内マスコミが情報公開を訴え続けているのも、周知の通りだ。このような状況下では、仮に普天間基地などが防衛上の特定秘密とされるとどうだろう。公務員は罰則を恐れて口をつぐみ、重大な問題が生じていても内部告発は得られない。取材は困難を極め、重要な情報を入手した記者が逮捕される可能性も否定できない。この秘密保護法をめぐって日本新聞協会や日本弁護士会は「民主主義の根幹である国民の知る権利が損なわれる恐れがある」と反対を表明している。自公政権が圧倒的な数を得たいま、法案採決は容易だ。それだけに懸念の声をあげなければならない。 *3:http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_gnavi#Edit1 (朝日新聞社説 2013年 9月 19 日) 秘密保護法案―知る権利はつけ足しか 安倍政権が、秋の臨時国会に提出する特定秘密保護法案に、「知る権利」と「報道の自由」の明記を検討している。知る権利や報道の自由は国民の重要な権利であり、憲法で保障されたものと考えられている。だが、その理念を法案に加えるからといって、それが実際に担保されるわけではない。秘匿する情報の際限ない拡大を防ぐ具体的な仕組みがなければ、いくら「知る権利」を強調したところで、かけ声だけに終わるのは明白だ。そもそも法案は数々の問題を抱えている。秘匿対象は防衛、外交、スパイ、テロの4分野。行政機関の長が、国の安全保障に著しく支障を与えるおそれがある情報を「特定秘密」に指定する。これを漏らした公務員らに対して、罰則として最長10年の懲役が科せられる。何が特定秘密になるのか。法案別表で示すとしているが、概要段階での別表の書きぶりは漠然としている。防衛は「自衛隊の運用」、外交は「安全保障に関する外国の政府との交渉」――といった具合だ。なんの制限もないに等しい。行政機関の長の判断次第でいくらでも、特定秘密に指定することができてしまう。指定が妥当かどうか、チェックする機能はあまりにも乏しい。仮に行政内部で、指定に疑問を持つ公務員がいても同僚らに相談することはできない。国会議員も法案の対象になるので、秘密を知り得た国会議員は党内で議論することもできないことになる。 米国には秘密指定に関する「省庁間上訴委員会」という制度があり、情報保有者からの秘密指定に関する訴えの裁定にあたる。また、情報公開制度は、大統領の携帯メールの内容でさえ将来的には公開対象となるほど徹底している。こうした仕組みを検討することなく、政権は「秘密保護」にひた走っているようにみえる。「知る権利」を明記した情報公開法改正案が昨年、廃案になった。秘密漏洩を阻止したいというのなら、情報公開も一対のものとして充実させなければならない。それでこそ、「知る権利」は担保される。法案の概要をめぐって一般から意見を求めるパブリックコメントは、わずか15日間で打ち切られた。これだけ問題のある法案なのに短すぎる。国民の懸念を押し切ってまで新たな法制化が本当に必要なのか。安倍政権は根本から考え直すべきだ。 *4:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-213978-storytopic-11.html (琉球新報社説 2013年10月18日)秘密保護法案 民主主義の破壊許されぬ 政府と公明党は機密を漏らした公務員らへの罰則強化を盛り込んだ特定秘密保護法案の修正に基本合意した。国民の安全を確保することを名目にしているが、実態は政府の思うがままに情報を秘密指定して、永久に国民の目に触れさせないようにできる情報隠蔽法にほかならない。 なぜこの時期なのか。政府は「情報漏えいの可能性が増大している」と強調するが、近年の漏えい事件で公務員が実刑になったのは1件だけ。既に再発防止策はとられているので、あえて秘密法を制定する事情は存在しないはずだ。特定秘密の対象は(1)防衛(2)外交(3)特定有害活動防止(4)テロ活動防止-の4分野に関する項目。武器、弾薬、航空機の数量や性能など具体的な特定秘密を挙げつつ「その他の重要な情報」との文言が盛り込まれている。「その他」を挿入することによって政府にとって不都合な情報は何でも秘密にできる。 ではだれが特定秘密を判断するのか。政府は行政機関が都合よく指定するのを防ぐために有識者会議を設置するという。しかし会議の主な役割は指定の統一基準に意見を述べることに限られ、実際の指定が妥当かどうかはチェックしない。政府に都合のいい判断を排除する仕組みになっていない。専修大学の山田健太教授(言論法)は「戦後の憲法体系の理念に反する」と指摘している。かつて日本は軍機保護法をはじめ、政府の情報に国民を近寄らせない法制を敷いていた。「漏らす者とともに、かぎ回る者を罰する法体系」(山田氏)だ。軍機保護法下で朝日新聞記者だったむのたけじさんは「新聞社自体が自縄自縛に陥った」と語り、記者が自己規制して国家の行為に異を唱えられなくなったと証言している。その反省から現行憲法の下では表現の自由、知る権利が保証されている。 秘密法案修正に際し「知る権利」や「報道の自由」への配慮と、取材活動に関して「著しく不当でない限り」原則として罰則の対象外とすることした。おかしな話だ。知る権利や報道の自由は配慮されるものではなく当然の権利だからである。特定秘密の指定期間は5年だが更新可能で、指定期間が終わっても情報保存と公開のルールはなく、破棄される可能性すらある。国民主権、民主主義を破壊するような法案提出は許されない。 *5:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/politics/article/46158 (西日本新聞 2013年10月14日) 石破氏「国家独立に不可欠」 秘密保護法案で 自民党の石破茂幹事長は14日、茨城県常陸太田市で講演し、機密を漏らした公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法案について「本当の情報を手に入れ、国家の独立を守るためにやらなければならないことだ」と述べ、15日召集の臨時国会で成立させるべきだと重ねて強調した。同時に「日本に何か教えたらあっという間に皆にばれてしまう、となればどの国も本当のことを教えてくれない」と指摘。「これから先、世界のあちこちでテロリストやテロ国家が出てくる危険性がある。その時に一番大事なのは情報だ」と訴えた。 *6:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2013/131003.html (日本弁護士連合会 2013年10月3日) 特定秘密保護法案に反対する会長声明 政府は、9月26日、特定秘密保護法案(以下「本件法案」という。)の内容を明らかにした。この時期の公表は、秋の臨時国会への提出及び成立を目指したものである。当連合会では、民主党政権下において情報公開法の改正と併せて秘密保護法制に関する検討が始められた当初から、秘密保護法制の立法化に対しては疑問を呈し、法案の国会提出に強く反対してきた。そして、同月3日から始まった特定秘密保護法案概要に関するパブリックコメントにも、同月12日に当連合会として法案概要の問題点を詳細に指摘した意見書を提出した。 本件法案には、手続面及び内容面において重大な問題がある。本件法案の内容は、統治機構の在り方、国民主権及び国民の諸権利に重大な影響を与えるものであるにもかかわらず、政府は、この問題について国民に秘したまま7年以上にわたり水面下で検討しながら、ようやく1か月前に突如法案の概要を示し、更にまたパブリックコメントの期間を僅か2週間しか設けないという国民不在の手続を強行した。国民主権の否定につながるこのような手法は断じて許されるべきではない。それにもかかわらず、パブリックコメントには、約9万件の意見が寄せられ、しかも、約8割が法案概要に反対するものであったとのことである。政府としては、パブリックコメントに寄せられた意見を分析し、法案の内容を再検討し、さらには法案の提出の断念をも検討すべきであった。ところが、パブリックコメント終了後わずか12日目に本件法案を公表した。寄せられた国民の意見を検討できるはずもなく、またこれを子細に検討し法案に反映させようとの姿勢は全く窺えない。そして、本件法案の内容をみても、当連合会が指摘した問題点がそのまま残されている。すなわち、特定秘密の範囲が広範かつ不明確で、違法秘密や疑似秘密(政府当局者の自己保身のための秘密)の危険性もそのままであり、適性評価におけるプライバシー侵害の問題や、重罰化、共謀・独立教唆の処罰による取材活動の萎縮や知る権利の制約の問題も解消されていない。 また、行政機関の長が特定秘密情報を提供することができる要件について、国会の議院等(以下「国会等」という。)に対しては、行政機関の長の幅広い裁量権が規定されているのに対して、外国の政府や国際機関に提供する場合については、国会等への提供の場合よりも明らかに緩やかなものになっている。そのうえ、国会等に特定秘密を提供した場合に、議員がその情報を議員活動でどのように利用できるかについても不明確なままであり、これでは、国会が国権の最高機関であることを無視するものというほかない。全国民を代表する国会議員によって構成される国会が行政を監視するのではなく、逆に行政によって国会が支配されかねない構造となっており、わが憲法下の統治機構の在り方を根底から蝕むものである。 また、警察庁長官が、都道府県警察が保有する特定秘密の提供を求めることができるものとしている。これは、警察組織の更なる中央集権化を推し進める役割を果たし、戦後の警察組織の民主化を大きく後退させることにつながりかねない。 一方、法案の第20条に「報道の自由」に配慮する旨の規定が盛り込まれたが、「報道の自由」は判例上確立しているから、その文言を改めて規定する意味は特にないのであって、幅広い処罰規定を設け、過失犯まで処罰するという本件法案の重罰化がもたらす憲法の保障する自由権に対する深刻な萎縮効果は何ら拭えないのである。 このような法案は、今国会に提出されるべきではない。その前に、重要な公的情報を適正に保管するための公文書管理法の改正、及び国民の知る権利を充実させるための情報公開法の改正こそが行われるべきである。 2013年(平成25年)10月3日 日本弁護士連合会 会長 山岸 憲司 *7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013101902000125.html (東京新聞 2013年10月19日) 秘密保護法案 人権脅かす 憲法学者24人反対声明 憲法・メディア法学者二十四人が呼び掛け人となり、特定秘密保護法案に反対する声明をまとめた。賛同者を募り、近く発表する。刑事法研究者百二十三人も同様の声明を準備している。政府は来週の閣議で法案を決定したい考えだが、法律専門家の間で反対の声が広がっている。 憲法・メディア法学者の反対声明の呼び掛け人には奥平康弘東京大名誉教授をはじめ、山内敏弘一橋大名誉教授、石村善治福岡大名誉教授、森英樹名古屋大名誉教授、田島泰彦上智大教授ら著名な研究者が名を連ねた。声明は、特定秘密保護法案について「重要で広範な国の情報が行政の一存で指定されることで、国民の知る権利が侵害される」と批判。秘密保護の強化は集団的自衛権の行使容認や自民党草案による改憲の流れと一体と分析し、「基本的人権、国民主権、平和主義の憲法の基本原理を踏みにじる危険性が高い」と反対の理由を説明している。刑事法研究者の声明は日本刑法学会元理事長の村井敏邦一橋大名誉教授ら二十三人が呼び掛け人となり、賛同者を募った。声明は、戦前の秘密保護法制が言論統制の柱になったと指摘。裁判官も秘密自体を確認できないため、適正な刑事手続きが保障されないとして「基本的人権の尊重などの憲法の基本原理を脅かし、刑事法の人権保障も侵害する恐れが大きい」と指摘している。 *8:http://www.tokyo-np.co.jp/feature/himitsuhogo/news/131009.html (東京新聞 2013年10月9日) 【点検 秘密保護法案】 <6>国会 政府監視 自ら放棄 政府が指定する「特定秘密」は、憲法で「国権の最高機関」と位置づけられる国会や国民の代表である国会議員でも原則として中身を知ることはできず、議論もできない。国会には憲法で定められた国政調査権があり、政府は「正当な理由」なく資料提出要求などを拒否できないが、今回の法案は国政調査権より「国の安全保障に著しい影響がある」として、秘密保全を優先している。閣僚などの政務三役は特定秘密を扱えるが、漏えいすれば罰則の対象になり、公務員と同じく最高懲役十年。同じ政党の同僚議員に教えることもできず、議論さえできない。法案では、例外として、非公開の委員会など(秘密会)に提供できるとしている。出席した国会議員がその情報を漏らせば、最高懲役五年だ。ただ、議員の調査活動を補佐する秘書や政党職員に伝えた場合が違法になるかどうかは決まっていない。 さらに問題を複雑にしているのは、「両議院の議員は、議院で行った演説、討論について、院外で責任を問われない」と規定する憲法五一条との関係だ。例えば、秘密会で特定秘密を知った議員が国民に伝えるべきだと判断し、本会議や委員会で明らかにしても罪にならない。政府から見れば秘密会の意味がなく、最初から特定秘密を提供しなくなる恐れがある。 法案に反対する伊藤真弁護士は「国会が行政を監督するのに必要な情報を得られなくなり、議院内閣制は崩れてしまう。情報を持つ者が、持たない者を支配する『官僚政治』が進み、国民が主人公の国ではなくなる」と警戒する。重要な情報が「特定秘密」にされてしまえば、国民の代表が政府を監視する国会の機能は削(そ)がれ、政府の歯止め役にならない。国会がこの法律を成立させることは、自らの手で憲法で与えられた役割や権利を放棄することになりかねない。
| 民主主義・選挙・その他::特定秘密保護法関係2013.10~12 | 03:50 PM | comments (x) | trackback (x) |
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