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2015.6.29 天文学的コストの原発に回帰し、安価な再生可能エネルギーへの転換を遅れさせて、エネルギー自給率を落とす愚策は、日本の技術進歩と経済成長の邪魔をしているだけだということ (2015年6月30日、7月1日、2日に追加あり)
     
   2015.6.18NHK           2014.12.14宝島    2014.12.27そもそも総研

(1)政府による電源構成比率の決定は、技術を妨害する計画である
1)政府の電源構成決定
 *1-1の経産省の有識者会議が了承した電源構成の報告書案で、①発電コストが安く(?)運転が安定しているため(?)経済成長に資する(?)として原発の総発電量を20~22%を確保し、②原発再稼働に向けて国が前面に立って自治体の理解と協力を得るよう取り組み(!?)、③発電が天候に左右されるとして太陽光や風力の伸びは抑え(??)、④地熱・水力・バイオマスは自然条件に関係なく安定して発電できると評価して将来は原子力にかわる電源として積極的に拡大する(?)とし、⑤太陽光と風力を大量に導入すると火力のコスト負担も生じる(?) などとしているのは、技術進歩を考慮できず、技術進歩を妨害して、経済成長を妨げるものである。 ぷん

2)原発は本当に市場競争力のある安い電力か?
 *1-2のように、政府は、高経年化した原発が発電する場合に限って「原子力発電施設立地地域共生交付金」を出すこととしており、長期運転の原発を抱える自治体に最長5年間で最高25億円交付するだそうだが、これらの交付金は原発のコストであり、危険受忍の奨励であり、公正な市場競争では原発が成立しないことの証でもある。

 なお、薩摩川内市は、原子力発電施設立地地域共生交付金を貴重な財源と位置付けているそうだが、これまでも原発立地による電源立地地域対策交付金が入っていたのに、まだ企業誘致や産業活性化・福祉ができていないのであれば、これらの交付金が地域振興を促すとは考えにくく、交付金をあてにして無駄遣いしてきたと思われても仕方がなく、それよりも、開通した九州新幹線を活用することを、地域で考えた方が地域振興にプラスである。また、*1-3のように、30年超運転に向け、原子力規制委員会が九電に速やかな対応を求めるなどというのは論外である。

3)原発再稼働と世論
 *1-4、*1-5のように、電力会社の株主総会でも「脱原発の世論を直視すべき」として原発依存体質に怒りが噴出したが、各社とも原発再稼働の必要性は譲らなかったそうだ。これは、(1)1)2)のような政府による原発推進に起因しており、政府の愚鈍で硬直的な責任が大きい。

 そもそも、世論の通り(普通に考えれば誰でもわかるのだが)、*1-6のように、原発ゼロを決断すれば一部を再稼働するよりも電力会社だけを考えても発電コストが下がって電気料金は安くなるだろう。まして、国が支払う交付金、使用済核燃料保管のリスクと費用、核廃棄物の処理費も考慮すれば、原発をゼロにすれば国民負担が大きく減るのは明らかである。その上、再生可能エネルギー技術が進歩して、これによる経済成長があるとともに、エネルギー自給率も上がって、ホルムズ海峡の機雷が我が国の存立危機になるなどという馬鹿なことはなくなるのである。

(2)川内原発再稼働のための課題は解決したのか?
 *2-1、*2-2、*2-3のように、九電の瓜生社長は株主総会後に記者会見し、川内原発1、2号機の再稼働で5年連続の赤字を回避できる可能性があるとしたそうだ。しかし、九電の黒字や九電株主の早期復配のために、原発の安全性に関する懸念や核廃棄物の処理などの原発のあらゆる課題と不合理を無視して、次世代につけを残しながら、川内原発を再稼働することは許されない。

 また、*2-4のように、市民らが、地震対策の不備や情報公開の不十分さを指摘して、九電川内原発1号機の工事計画認可の取り消しを求め、原子力規制委員会に異議申し立てをしている。

 それにもかかわらず、*2-5のように、電事連が、「電力自由化で競争が進めば、発電のコストを電気料金に上乗せできる総括原価方式がなくなる上、福島第一原発事故の影響で原発の安全規制が強化されると、原発運営のコストが膨大になる懸念がある」という理由で、核燃料サイクル事業に国の資金的関与を求めているのは、原発は発電コストが安いのが長所としている論拠が虚偽であることを、自ら認めているものだ。

(3)原発事故汚染の影響とまだ金額に換算されていないコスト
 *3-1のように、WHOが「福島県でガン多発」という報告書を公表したが、広告料で首根っこを押さえられているのか、記者クラブはこれを無視して国民には報道しなかった。日本の専門家会議も、WHOの健康リスク評価に対して、「過大評価の可能性がある」として無視し続けたそうである。

 そのWHO報告書は、「東電・福島第一原発事故で深刻な放射能汚染に晒された原発近隣地域の住民の間で、甲状腺ガンをはじめとしたガンが増加し、特に若い人たちの間でガンが多発する」と明言し、主な「評価対象」は避難が遅れた浪江町と飯舘村に暮らしていた住民で、過小評価を避けるための仮定を積み重ねた上で住民の推定被曝線量を出したとのことである。確かに、避難までに4カ月はかかっておらず、汚染された福島県産の食材を食べ続けたわけでもないが、その後も高線量の場所で暮らしている上、日本政府が食品からの内部被曝に鈍感なことは、*3-2の対応を見ても明らかだ。本来なら、日本政府が、*3-4のような検査を関東も含む汚染地域全体で行って正確な結果を出すべきなのである。

 なお、韓国では、*3-3のように、釜山地裁が女性の甲状腺癌について「原発付近に居住し、相当期間、原発から放たれた放射線にさらされた。このため、甲状腺がんと診断を受けたとみるのが相当だ」として原発と甲状腺がんの因果関係を認めたそうだ。その判決がポイントとして挙げたのは、①甲状腺がんの発生には、放射線にさらされることが決定的な要因として作用することが知られている ②その女性は原発から10キロ圏に20年近く暮らし、放射線に長期間さらされてきた ③女性の甲状腺癌の発生には、原発から放出された放射線以外に、原因があると思える明確な材料がない ④原発周辺地域の住民の疫学調査の結果、原発から5キロ~30キロ離れた地域でも、遠く離れた地域よりも1・8倍高い発生率を示している ⑤他の癌と異なり、甲状腺がんの場合、原発からの距離と発生率とに相関関係があるという調査結果が出ている などだそうである。

 また、釜山地裁は、「加害企業は、技術的・経済的に被害者よりもはるかに原因の調査が容易な場合が多いだけでなく、原因を隠蔽する恐れがあるため、加害企業が有害な原因物質を出し、それが被害者に及んで損害が発生すれば、加害者側が無害だと証明できない限り、責任を免れられないとみることが社会均衡の理念にあう」としたそうで、もっともだ。

(4)安全神話を除いた原発のコストは安いのか?
 *4-1のように、政府はお盆前に避難指示を解除して、原発事故は大したことはなかったのだという印象をつけようとしているが、除染で線量が十分に下がっているわけではないため、これも安全神話だ。

 また、*4-2のように、東電の株主が歴代経営陣に賠償を求めている裁判でも、原告は、「事故の3年前に津波対策は不可避だと認めていたのに先延ばしにしていた」と主張している。

 さらに、*4-3のように、東電福島第1原発事故を総括した国際原子力機関(IAEA)の最終報告書は、「原発の安全神話を過信し、必要な対策を怠ったことが過酷事故につながった」として、国や東電の認識の甘さと安全対策の不作為を厳しく批判している。

 そして、まともにこれらの安全対策を行い、被害者に原発由来の病気の補償をした上でも、原発のコストが安いわけではなく、これらは、まだ金額が算出されていないか、曖昧にされているにすぎないのだ。

(5)再生可能エネルギーの技術進歩に対する経産省の妨害

    
  2015.6.24          現在の太陽光発電            2015.6.22    2015.6.20  
  西日本新聞                                   日経新聞      日経新聞

 *5-1のように、九州・沖縄では、太陽光発電関連が伸びて建設業売上高は上位10社が増収したが、太陽光関連は九電による再生可能エネルギーの新規契約一時中断などの影響が避けらず、政府が電源構成比率を決定して原発を基幹電源とし、太陽光・風力発電を抑えたことが普及を邪魔している。

 確かに、メガソーラーは景観が悪く、土地の使い方ももったいないが、ソーラーフロンティアが、*5-2のように、ガラスではなく高機能フィルムを採用して建物の曲面に張るなど用途拡大が期待でき、設置作業も容易で、13%台の高効率で発電する太陽電池を、2018年に発売するそうだ。私は、あらゆる理由から、こちらを伸ばすべきだと考えている。

 また、*5-3のように、九大が、弱い風でも効率よく発電できる小型風車の開発にメドをつけ、これは、騒音が少ないため公園、住宅、学校、工場などに設置しやすいとのことで、このように、太陽光発電、風力発電及び畜電技術は、日進月歩で進み、世界で競争しているのだ。

 そのような中、*5-4のように、2014年に世界で建設された太陽光・風力などの再生可能エネルギー発電設備容量は9700万キロワットに上り、総容量は13年比約17%増の6億5700万キロワットに達し、新設された発電設備の約6割は再生エネで、その成長ぶりは顕著だそうだ。そのうち太陽光発電は1年間に4千万キロワット建設され、中国の1060万キロワットが最多で、昨年は世界の経済成長に伴ってエネルギー消費も増えたが、二酸化炭素排出量は13年と変わらず、中国などでの再生可能エネルギーの急拡大がその一因という状況なのである。

<政府の原発推進>
*1-1:http://www.asahi.com/articles/DA3S11785829.html
(朝日新聞 2015年6月2日) 原発重視、政府案を了承 太陽光・風力は抑制 電源構成
 経済産業省の有識者会議は1日、2030年度の電源構成(エネルギーミックス)の報告書案を了承した。発電コストが安く運転が安定していると位置づけた原発は、総発電量の20~22%を確保する一方、発電が天候に左右される太陽光や風力の伸びは抑えた。7月にも政府案として正式決定する。同省の「長期エネルギー需給見通し小委員会」でまとまった。2日にも広く意見を求める「パブリックコメント」にかける。3年ごとに検討する国のエネルギー基本計画にあわせ、必要に応じて見直すという。報告書案では、経済成長を続けるために発電にかかるコストを抑える考え方を打ち出し、原発を重視する方針を明確にした。原発の再稼働に向けて、国が前面に立って自治体などの「理解と協力を得るよう取り組む」との方針も、新たに盛りこんだ。再生可能エネルギーでは、地熱や水力、バイオマスは、自然条件に関係なく安定して発電できると評価。将来は「原子力を置き換える」電源として「積極的に拡大」するとした。22~24%とした再生エネの5割以上を、これらの電源で見込む。太陽光と風力は天候で出力が大きく変わり、大量に導入すると、発電量が足りない場合に運転する火力のコスト負担も生じるなどと指摘。「コスト負担が許容可能な範囲で最大限導入する」と位置づけ、計8・7%にとどめた。委員会では、委員の橘川武郎・東京理科大大学院教授が「政権の『原発は可能な限り低減させる』という公約と違う。(原発の)20~22%の実現は難しい」としてただ一人、報告書案に反対を表明した。委員長の坂根正弘・コマツ相談役は「意見が合わないところはあると思うが、3年後の見直しで議論する機会がある」と引き取った。報告書案について、九州大の吉岡斉教授(科学技術史)は「震災前に戻すかのように原発と石炭は維持して、再生エネは軽んじられている」と批判した。一方、日本原子力産業協会の服部拓也理事長は、原発割合について「想定の範囲内」とし、「原子力の価値をもう一度きっちり議論する必要がある」と語った。

*1-2:http://qbiz.jp/article/64603/1/ (西日本新聞 2015年6月17日) 原発共生交付金活用へ、鹿児島県が検討 30年経過、川内再稼働見越し 
 九州電力川内原発1、2号機が立地する鹿児島県が、運転開始から30年がたち高経年化した原発がある都道府県に交付される「原子力発電施設立地地域共生交付金」の申請を検討していることが分かった。1号機は昨年7月に運転30年を超え、2号機も今年11月に30年に達する。交付は「発電する施設」が条件だが、近づいてきた川内原発再稼働を見越して、申請準備に入ったとみられる。交付されれば九州の県で初となる。共生交付金は長期運転の原発を抱える自治体を支援するため、2006年に導入された。最長5年間で最高25億円が交付される。申請する都道府県が、関係自治体の(1)地域活性化(2)福祉対策(3)公共用施設整備(4)企業導入・産業活性化−に資する事業を対象にした「地域振興計画」を策定し、国の承認を得る必要がある。川内原発がある薩摩川内市は合併から10年が経過し本年度から地方交付税が段階的に縮減されるため、交付金を「貴重な財源」と位置付ける。13年8月の県との協議では、再稼働が不透明なこともあり県は動かなかったが、今年4月以降、県と市で制度の仕組みなどの確認に入ったという。市は「県にぜひ申請してほしい。行政へのニーズに対応する財源として使いたい」と期待する。一方、九電玄海原発が立地する佐賀県は、2号機が1981年の運転開始から30年以上経過し、交付対象になって4年になるが、まだ申請していない。県は「25億円は貴重な財源であり、申請はする方向だ。地域振興にどのような使い道が有益か、内部で検討を重ねている段階」とする。立地する玄海町との調整はまだしていないという。共生交付金は既に福井、島根、茨城、愛媛県が受給している。静岡県は08年度に最初の交付を受けたが、中部電力浜岡原発1、2号機の廃止により1年で打ち切られた。

*1-3:http://qbiz.jp/article/64524/1/
(西日本新聞 2015年6月16日) 川内原発30年超運転へ「早期対応を」 規制委、九電に要求
 原子力規制委員会は15日、運転開始から30年前後が経過した九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)をめぐり、機器や設備の中長期の保守管理について議論した。30年超運転に向け必要な申請が遅れており、規制委側は九電に速やかな対応を求めた。運転開始から30年を超える原発は、劣化状況の評価と中長期の保守管理方針策定が義務付けられている。1号機は昨年7月に運転30年を超えたが、基準地震動(想定される最大規模の揺れ)など、再稼働に向けた審査結果を反映する必要があり、規制委は特例として手続きの延長を認めていた。九電は今年3月中旬に1号機の「工事計画」の認可を受けた後も、中長期の保守管理に関する書類を提出していない。15日の会合で九電側は「漏れをなくすため工事計画の資料を読み込んでいた」と釈明、1号機は7月上旬、2号機は9月上旬に必要な書類を提出する考えを示した。九電は8月中旬にも1号機を再稼働させる方針で、30年超の運転に必要な保守管理方針の認可は再稼働後になる可能性がある。規制委側は「今後10年間で実施する中長期の対策なので再稼働とは直接関係ないが、だらだらと時間をかけるべきではない」としている。

*1-4:http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201506/0008154771.shtml
(神戸新聞 2015/6/26) 「世論を無視」原発依存体質に怒り噴出 関電株主総会
 関西電力の株主総会に出席後、報道陣の質問に答える久元喜造神戸市長=25日午前、神戸市中央区港島中町6(撮影・後藤亮平)  25日に一斉に開かれた電力9社の株主総会。関西電力の八木誠社長らが赤字決算や電気料金の再値上げを謝罪した一方で、各社とも原発再稼働の必要性は譲らず、脱原発をめぐる議論は最後まで平行線をたどった。来年4月の電力小売り全面自由化を見据えた戦略も見えにくく、株主の怒りが噴出した。「原発反対の世論を無視している」「なぜ原発推進の話ばかりするのか」。関電の総会では怒りに満ちた株主の発言が相次いだ。各社の会場周辺には反原発の市民団体が詰め掛け、会社関係者らと言い争う場面もあった。神戸市の久元喜造市長も「再値上げは市民生活を圧迫しており、極めて遺憾」と怒りを表した上で「原子力以外の多様なエネルギー源の活用を含めた最適な電源構成を示せ」と迫った。原発をめぐっては福井地裁が関電の高浜3、4号機(福井県)の再稼働を差し止める仮処分を決めたが、九州電力では川内1号機(鹿児島県)の8月再稼働に向けた準備が進む。世論調査では再稼働反対の意見が多数派だが、電気料金の値上げに苦しむ家計や企業、原発の立地自治体には再稼働を待ちわびる声もあり、世論は割れている。電力9社の総会では、脱原発の株主提案が議題となったが、いずれの提案も否決された。
【経営崖っぷち】
 電力各社の業績は一様ではない。2015年3月期連結決算は燃料価格下落の効果もあり、9社のうち6社が経常黒字を確保した。一方、北海道と関西、九州の3電力は4年連続の赤字となり、崖っぷちに立たされている。明暗が分かれた背景には、原発依存度の違いがある。東京電力の福島第1原発事故が起きる前の10年3月末を見ると、発受電電力量に占める原発比率が北海道は35%、関西45%、九州42%と他社に比べて高めとなっている。原発が止まると、代わりを埋める火力発電の燃料費負担が他社より大きくなった。北海道電や関電の社長は経営不振をわびる一方、原発再稼働で経営を立て直す考えを強調。関電の株主から「原発(依存)を高めたことが(財務の)悪化につながった。反省の弁が一言もない」との批判も出た。
【見えない戦略】
 一方、政府が進める電力システム改革は来年4月の小売り全面自由化で大きな節目を迎える。異業種からの新規参入企業を迎え撃つ大手電力にとって重要な経営課題のはずだが、総会での議論は低調だった。関電の株主総会後の記者会見で八木社長は「大事なことは料金の競争力を上げることと新たなサービスを提供することの二つ。(通信会社などとの)提携も検討していきたい」と意欲を語ったが、具体的な説明は乏しかった。東北電力は13年9月の電気料金値上げ後、約1700の顧客が流出した。この日社長に就任した原田宏哉氏は「引き続き家庭やビジネスの場で利用してもらいたい」と話すのがやっとだった。

*1-5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015062602000153.html (東京新聞社説 2015年6月26日) 電力株主総会 脱原発の世論直視を
 原発の再稼働がこの夏に迫る中、電力会社が開いた株主総会では脱原発を求める株主の声が相次いだ。再稼働ありきの政府、電力会社は、鎮まることのない脱原発の世論を直視すべきだ。原発依存度が高く四年連続赤字の関西電力の総会では、株主が「原発の再稼働にすがるのは愚かな経営だ」「中長期の経営方針として脱原発を明確にすべきだ」と訴えた。中部電力でも株主が運転停止中の浜岡原発の廃炉を求めたが、会社側は「安定的なエネルギーの確保には原発の活用が不可欠だ」と反論。東京電力も含め、原発を保有する大手九社の総会は脱原発に絡む提案をすべて否決した。再稼働の見通しが立たない中で開かれた昨年の株主総会から一年。この間に政府は、二〇三〇年の原発の発電割合を20~22%とするエネルギーミックス案を決定。安全が確認された原発は再稼働させる方針に基づいて、この夏に予定される九州電力・川内原発1号機に続き、関西電力や四国電力が早期の再稼働をめざしている。だがその一方で、いくつもの重要な変化があったことを指摘しておきたい。原発停止で火力発電用の液化天然ガス(LNG)などの輸入が急増し、「国富流出」の危機が声高に論じられた。しかし、昨年後半からの原油価格の急落、価格の安定ですっかり影をひそめている。節電意識は確実に定着し、今年の夏も原発ゼロで電力不足は避けられる見通しだ。太陽光発電では買い取り制度をめぐる混乱が起きたが、再生エネルギーに対する一般の理解は一段と深まっている。こうした変化の中、原発をめぐる世論はどうなっているのか。今月中旬の調査(日本世論調査会)をみると、再稼働に賛成が31%に対し、反対は63%に達している。新聞など各種の調査でも、再稼働に反対し、脱原発を求める世論が弱まる気配はない。電力各社による再稼働方針の根幹には、準国産エネルギーに位置付けている原発を一定程度確保しておきたいという政府のエネルギー安全保障政策がある。しかし世論は、福島第一原発の事故の反省から再稼働に反対し、政府に対しては中長期的に脱原発を実現する知恵と努力、エネルギー政策の転換を求めていることは明らかだ。政府も電力会社も、国民の声に耳を塞(ふさ)いではならない。

*1-6:http://qbiz.jp/article/64808/1/
(西日本新聞 2015年6月19日) 原発ゼロで電気料金安く? 再稼働との比較を試算
 原発ゼロを決断すれば一部を再稼働するより電気料金は安くなる−。原発のコスト研究を続ける立命館大の大島堅一教授(環境経済学)が、そんな試算をまとめた。電力各社は再稼働に向け、稼働させていない原発に多大な維持費(修繕費や作業員の人件費など)を投入している。ゼロを決断して維持費をなくすと、各社が数基を再稼働し、代替の火力発電の燃料費などが抑制される分を上回る経費削減効果があると指摘。大島氏は「再稼働すれば電気料金は安くなると単純には言えない」と問題提起する。大島氏は、関西電力のデータを基に試算。関電は原発再稼働の遅れを理由に6月から、東京電力福島第1原発の事故以降、2度目の値上げに踏み切った。国の料金審査の際、最新の発電原価のデータを開示した。試算によると、関電の原発全11基(4月に廃炉が決まった美浜1、2号機を含む)には、稼働しなくても必要な維持費が年間総額約1943億円掛かっている。関電は高浜3、4号機の2基が原子力規制委員会の審査基準に適合し、今年11月から再稼働できると見込む。高浜3、4号機を1年間稼働させ、燃料費がかさむ石油火力で補っている発電を減らすと仮定しても、節約効果は年間約1千億円。つまり、原発の維持費をゼロにした方が差し引き900億円超、節約できる。実際には関電は原発依存率が高く、高浜原発を稼働しないと他社からの電力購入などで需要分を補う必要があり、その分は最大見積もっても約500億円。それを考慮しても原発ゼロを実現した方が、なお節約効果が約400億円上回る。また、関電が高浜3、4号機に加え、大飯3、4号機を再稼働したとしても、料金は値上げ前の5月の水準に戻る程度だという。原発の一部再稼働による料金引き下げ効果は限定的だ。関電の八木誠社長も4月末、衆院の委員会に参考人として出席し、原発ゼロを決断すると「(修繕費などの負担が減り)恐らく短期的には(経費が)マイナスの方向に働く」と述べた。 大島氏は「九州電力を含め、原発比率の高い電力会社はどこも同じ傾向。『再稼働準備状態』ではなく、本当に原発ゼロにした場合との料金比較も国民に示し、原発政策を考えていくべきだ」と強調する。

<川内原発再稼働について>
*2-1:http://qbiz.jp/article/65384/1/
(西日本新聞 2015年6月26日) 九電、復配なお微妙 黒字化へ再稼働が鍵【社長会見詳報】
 九州電力の瓜生道明社長は25日の株主総会後に記者会見し、川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に向けた「使用前検査」について「おおむね順調に進んでいる」との見方を示し、2基の8月中旬以降の再稼働に自信をうかがわせた。九電は2基の再稼働で5年連続赤字を回避できる可能性があるとみており、検査対応に全力を傾けている。ただ、その工程は準備不足などでたびたび遅れており、再稼働時期はなお予断を許さない。株主が求める復配が2016年3月期末で実現するかは微妙だ。原発停止の影響で15年3月期が4年連続の最終赤字となったことが報告されたこの日の総会。配当が3年連続で見送られていることから、株主からは早期復配を求める声が相次いだ。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/ASH6M7QH4H6MTIPE054.html
(朝日新聞 2015年6月20日)川内原発に核燃料搬入、7月7日から 九電が工程見直し
 再稼働を控えた九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)で、原子炉への核燃料の搬入作業が7月7日に始まる見通しとなったことが、19日わかった。九電が原子力規制委員会に伝えた。4日に始める予定だったが、よりスケジュールに余裕を持たせるため工程を見直す。1号機の再稼働は、これまで通り8月中旬を目指している。川内原発1、2号機は再稼働前の最終段階となる規制委の設備検査を受けている。1号機では19日、核燃料を原子炉に入れるために必要な検査を終えた。今週以降に始まる2号機との共用設備の検査は7月3日に終わる見通し。これまでは、4日から約150本の核燃料の搬入作業を始める計画を立てていた。しかし、作業には下請け企業も含めて数百人が関わり、準備に時間がかかることなどから、3日ほど遅らせることになった。搬入は7日から4日ほどで終わり、その後約1カ月の規制委の設備検査を経て再稼働する。ただ、九電はこれまで検査への対応に手間取るなどして再稼働の時期を何度も遅らせており、想定通りに進むかは不透明だ。

*2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/201462
(佐賀新聞 2015年6月26日) 九電株主総会 原発再稼働に懸念の声、安全対策めぐり質問集中
 九州電力が25日開いた株主総会で、原発再稼働に反対する一部株主が、社長解任など7議案を提案した。いずれも否決されたが、原発依存への批判や安全性に関する不安や懸念の声が続出。経営改善のため早期の再稼働を目指す経営側との溝は埋まらなかった。「動かない原発に年間1000億円もの費用を投じて維持してきたから赤字が膨らんだ。早く脱原発にかじを切っていれば利益が出たのではないか」。3年連続で株主配当を見送った責任を問い、社長解任を求めた株主の男性は、原発に依存する九電の姿勢を批判した。唐津市肥前町の田口常幸さん(63)は「原発を推進するために立地・周辺自治体に支払った補償金や協力金は株主にも知らされず、やぶの中。健全な共存関係とはいえず、地域の自立も阻害している」と訴えた。川内原発1号機(鹿児島県)の再稼働が迫る中、安全対策や使用済み核燃料の処分をめぐる質問が相次いだ。経営側は安全性を強調する一方、放射性廃棄物に関しては「適切に検討、対応する」と繰り返した。原発政策をめぐる住民説明会の開催にも否定的だった。新規制基準に適合するための安全対策費は川内と玄海で3千数百億円。会場から「発電コストは本当に安いのか」「終わりなき安全の追求に一体、いくらかかるのか」の意見が出た。株主提案には廃炉を安全に進めるための社内検討委員会設置も。再稼働に賛成する会社役員(71)は「建設的な意見で、経営側はもう少しくみ取っていい。独り善がりの姿勢がやらせメールにつながった。再稼働目前で、しっぺ返しを食わないようにしてほしい」と注文した。

*2-4:http://qbiz.jp/article/65480/1/
(西日本新聞 2015年6月27日) 原子力規制庁に市民が意見陳述 川内異議申し立て
 九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の工事計画認可の取り消しを求めて原子力規制委員会に異議申し立てをした市民らが26日、事務局の原子力規制庁に意見陳述をした。意見陳述は非公開。会見した市民らによると、申し立てた25人のうち12人が意見陳述に参加し、地震対策の不備や情報公開の不十分さを指摘したという。異議申し立ては行政不服審査法に基づき5月に行った。規制庁によると、申し立て通り工事計画認可を取り消すかどうかを記した決定書を出す時期は未定。申立人代表の一人、福岡市の北岡逸人(はやと)さん(47)は「結論が出ないまま原発が動けば、異議申し立てや行政不服審査法の意味がない」と批判した。

*2-5:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150608-00000005-asahi-bus_all
(朝日新聞デジタル 6月8日) 「原発継続へ、核燃サイクルに国が関与を」電事連会長
 大手電力10社でつくる電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)が朝日新聞のインタビューに応じた。電力自由化後も原発を続けられるよう、民間が担う「核燃料サイクル事業」の費用を国が一部負担したり、費用負担の新たな制度をつくったりして、国の関与を強めるよう求めた。八木氏は、2030年度の原発の割合を20~22%とした政府の電源構成(エネルギーミックス)案を「原子力の確保すべき一定の規模が明示されたことに意義がある」と評価したうえで、原子力発電を続けられる環境を国が整えるよう要望した。具体的には、使用済み核燃料を処理して再び燃料として使う核燃料サイクル事業を挙げ、「国と役割分担するという考え方もある」と語った。電力自由化で競争が進めば、発電のコストを電気料金に上乗せできる「総括原価方式」がなくなるうえに、福島第一原発事故の影響で原発の安全規制が強化されると、原発運営のコストが膨大になる懸念があるという。

<原発事故汚染>
*3-1:http://tkj.jp/takarajima/contents/blog/p/1016/
(宝島 2014年12月14日:全文は『宝島』2015年1月号に掲載) 【告発スクープ】 “WHO「福島県でガン多発」報告書” 国と記者クラブが無視! ~誰も書けなかった福島原発事故の健康被害 【第3回 前編】~ガンのアウトブレイクに備えよ――汚染地域に暮らしていた(もしくは暮らし続けている)若年層における甲状腺ガン、白血病、乳ガン、固形ガンの多発を予測するWHO報告書はなぜ無視され続けるのか? (前編)
■日本の「専門家」はなぜWHO報告書を嫌った?
 10月20日、環境省が所管する「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」(以下、専門家会議)の第12回会議が東京・港区で開かれた。この日、専門家会議は、世界保健機関(WHO)と原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の2つの国際機関から出されていた線量評価報告書のうち、「福島での被曝によるガンの増加は予想されない」というUNSCEAR報告書のほうが「より信頼性が高い」として絶賛。そして、
●福島第一原発事故の被曝線量はチェルノブイリ原発事故よりもはるかに少ない
●懸念されるのは甲状腺(こうじょうせん)ガンだけであり、そのリスクも疫学的にかろうじて増加するかどうかという程度としたUNSCEARの健康リスク評価について「同意する」と表明した。これぞ“我が意を得たり”ということのようだ。一方、WHOの健康リスク評価に対しては、昨年2月の同報告書公表以来、専門家会議は「過大評価の可能性がある」と敵視し続けてきた。そしてこの日、WHO報告書を事実上無視する構えを鮮明にしたのだった。そのWHO報告書はこれまで、「がん疾患の発症増加が確認される可能性は小さい」(『毎日新聞』2013年2月28日)「大半の福島県民では、がんが明らかに増える可能性は低いと結論付けた」(『朝日新聞』同年3月1日) などと報じられてきた。報道を見る限り、UNSCEAR報告書の内容と大差はなく、専門家会議がそこまで嫌う理由が全くわからない。そこで、WHO報告書の原文を取り寄せ、精読してみたところ、驚くべき「評価内容」が浮かび上がってきた。
■WHOは若年層での「ガン多発」を明言していた
 WHOは昨年2月28日、東京電力・福島第一原発事故で被曝した福島県民たちには今後、健康面でどのようなリスクがあるのかを検証した『WHO健康リスク評価報告書』(注1)を発表していた。英文で160ページ以上にも及ぶ同報告書では、ガンと白血病の発症リスクを詳細に評価。その結果、深刻な放射能汚染に晒(さら)された原発近隣地域の住民の間で、甲状腺ガンをはじめとしたガンが増加し、特に若い人たちの間でガンが多発すると明言している。この報告書をまとめるにあたり、主な「評価対象」とされたのは、避難が遅れた浪江町と飯舘村の「計画的避難区域」に暮らしていた住民たちだ。評価では、汚染地帯から避難するまでに4カ月かかったと仮定。他にも、汚染された福島県産の食材を食べ続けたと仮定するなど、過小評価を避けるための仮定を積み重ねたうえで、住民の推定被曝線量を弾き出している。WHO報告書によると、多発が極めて顕著なのは小児(注2)甲状腺ガン。被災時に1歳だった女児の場合、浪江町では事故発生からの15年間で発症率は9倍(被曝前の発症率0.004%→影響を考慮した発症率0.036%)に増え、飯舘村でも15年間で6倍(同0.004%→同0.024%)に増えると予測した(同報告書64ページ。【図1】)。もともと幼少期の甲状腺ガン発症率は非常に低い。従って、幼少期に被曝した場合のリスクを、原発事故発生からの15年間に絞って計算すると「小児甲状腺ガンと被曝との関係性がより明白になる」と、WHO報告書は言う。ひょっとするとこの部分が、原発事故による健康被害は「ない」とする評価を続ける環境省や専門家会議の癇に障ったのかもしれない。多発が予測されたのはそれだけではない。小児甲状腺ガンほどではないにせよ、小児白血病も多発するという。被災時に1歳だった男児の場合、浪江町では事故発生からの15年間で発症率は1.8倍(同0.03%→同0.055%)に増え、飯舘村では15年間で1.5倍(同0.03%→同0.044%)に増える。1歳女児の場合、浪江町では事故発生からの15年間で発症率は1.6倍(同0.03%→同0.047%)に増え、飯舘村では15年間で1.3倍(同0.03%→同0.04%)に増える(同報告書62ページ。【図2】)。そして、乳ガンも増える。被災時に10歳だった女児の場合、浪江町では事故発生からの15年間で発症率は1.5倍(同0.01%→同0.015%)に増え、飯舘村では15年間で1.3倍(同0.01%→同0.013%)に増える(同報告書63ページ。【図3】)。さらには、固形ガンも増える。被災時に1歳だった男児の場合、浪江町では事故発生からの15年間で発症率は1.14倍(同0.08%→同0.091%)に増え、飯舘村では15年間で1.08倍(同0.08%→同0.086%)に増える。1歳女児の場合、浪江町では事故発生からの15年間で発症率は1.24倍(同0.08%→同0.099%)に増え、飯舘村では15年間で1.14倍(同0.08%→同0.091%)に増える(同報告書62~63ページ。次ページ【図4】)。つまり、福島県の若年層におけるガンは、甲状腺ガン、白血病、乳ガン、固形ガンの順に増加すると、WHO報告書では予測している。
(注1)同報告書の英語名は『Health risk assessment from the nuclear accident after the 2011 Great East Japan Earthquake and Tsunami』。URL はhttp://apps.who.int/iris/bitstream/10665/78218/1/9789241505130_eng.pdf?ua=1
(注2)本稿中の「小児」の定義は、0歳から16歳までとする。
■「過大評価」したのか?それとも「過小評価」か?
 WHOの健康リスク評価では、原発事故発生からの1年間に被曝したと思われる推定線量をもとに、地域を4つのグループに分けている。12~122ミリシーベルトの被曝とされた浪江町と飯舘村が「グループ1」。3~48ミリシーベルトの被曝とされた葛尾村、南相馬市、楢葉町、川内村、伊達市、福島市、二本松市、川俣町、広野町、郡山市、田村市、相馬市が「グループ2」。1~31ミリシーベルトの被曝とされた他の福島県内の自治体や福島県以外の都道府県が「グループ3」。そして、0.01ミリシーベルト(=10マイクロシーベルト)以下の被曝とされた近隣国が「グループ4」だ。問題は、福島第一原発の立地自治体である双葉町と大熊町、そして大熊町に隣接する富岡町の3町が、どのグループにも入っておらず、評価の対象から外されていることである。これらの町の住民は「速やかに避難」したからなのだという。しかし、3町の住民もまた、避難開始前から環境中に漏れ出していた放射能によって相当な被曝をしていた。具体例を挙げよう。福島第一原発の直近から避難してきた一般市民が被曝していることが判明し始めた2011年3月12日、放射線測定器で1万3000カウント(CPM。1分ごとのカウント)以上を計測した人のすべてを「全身の除染が必要な被曝」とみなし、シャワーで体を洗い流していた。この日、全身の除染が必要とされた住民は3人。そして翌3月13日、福島県は、原発の3キロメートル圏内から避難してきた19人にも放射性物質が付着していたと発表する。住民の被曝は22人となった。だが、翌3月14日、福島県は突然、除染基準を引き上げる。国が派遣したという「放射線専門家」の意見を聞き入れ、基準を7倍以上の「10万CPM以上」としたのだ。そしてこの日以降、「今日は何人の市民を除染」といった類いの情報が、報道から消えていた──。コントロール不能に陥っていた原発から、事故発生からの数日間だけで77京ベクレル(77×10の16乗ベクレル)にも及ぶ放射能が漏れ出す中、防護服もゴーグルも防塵マスクも着けずに避難していた彼らを評価に加えていないところが、この健康リスク評価における「過小評価」部分であり、最大の欠点でもある。人によっては、前掲の「発ガンリスク」以上の健康リスクを背負わされている恐れがある。しかも、放射線被曝による健康被害はガンばかりではない。甲状腺疾患(機能低下や良性結節など)や視覚障害(水晶体混濁や白内障など)、循環系疾患(心臓や脳血管の疾患)、生殖器官の機能不全、催奇性(さいきせい)リスク、遺伝子への影響、高線量の被曝に伴う急性放射線障害などもある。だが、これらの疾患は「発生の増加は予想されない」として、WHOの報告書では詳細評価の対象外としていた(注3)。つまり、専門家会議が危惧する「過大評価」どころか、その正反対の「過小評価」に陥っている懸念さえあるのだ。(注3)WHOが詳細評価の対象外としていたからといって、ガン以外の疾患を舐(な)めてかかってはならない。飯舘村の高汚染地域に調査目的で何度も滞在した後、白内障に罹(かか)っていた人が相当数いることを、筆者は具体的に知っている。高レベルの汚染が判明している地域に立ち入るのを極力控えるか、それとも防護服姿で訪問するかしないと、こうした疾患のリスクは減らしようがない。

*3-2:http://qbiz.jp/article/64956/1/
(西日本新聞 2015年6月21日) 食品輸入規制の緩和へ協議 日中局長級、関係悪化後初
 東京電力福島第1原発事故を受けて中国が続けている日本産食品の輸入規制の緩和に向け、日中両国が北京で19日に局長級の協議を開いたことが21日分かった。この問題での日中局長級の協議が表面化したのは、2012年9月の沖縄県・尖閣諸島の国有化で日中関係が悪化して以降初めて。日中両国は昨年11月以降の2度にわたる首脳会談を経て、今月には約3年2カ月ぶりに日中財務対話も開催。経済分野を中心に関係改善が始まっており、規制緩和についても実務レベルから協議が動きだした形だ。日中関係筋によると、農林水産省の担当局長が19日、中国で食品の品質検査を担当する省庁幹部と北京で会った。日本側は食品の安全性を訴え、中国に対して輸入規制の緩和を要請。今後はさらにハイレベルの協議も模索するとみられる。中国は宮城や福島、長野、東京など10都県で生産した食品の輸入を禁じており、中国の百貨店やスーパー店頭、飲食店などでは原発事故後、日本産食品が大幅に減った。ただ中国では日本産食品の人気が高く、日本を訪れた中国人が菓子などを大量に買う「爆買い」現象も起きている。中国の高級料理店では航空便の手荷物として中国に持ち込んだ日本酒や、密輸したとみられる高級和牛も出回っており、日本産食品の需要は大きい。日本産食品の輸入規制をめぐっては、オーストラリアなど十数カ国が実質的な全面解除に応じる一方、中国や韓国など約40カ国・地域が現在も何らかの規制を継続している。中国の日本食品輸入規制 中国は福島第1原発事故を受け、日本産食品の輸入を厳しく規制した。現在も宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、新潟、長野の10都県産の食品の輸入を禁止。他の道府県の野菜や果物、乳製品、茶葉についても放射性物質の検査証明書などの提出を輸入の条件にしている。日本の農林水産省によると、2014年の日本から中国への農林水産物の輸出額は約620億円に上り、香港、米国、台湾に次ぐ4位。近年、中国では日本産食品の人気が高まっており、輸入規制の緩和が進めば日本からの輸出はさらに増えるとみられている。 

*3-3: http://www.asahi.com/articles/ASH685SK9H68PTIL02K.html
(朝日新聞 2015年6月25日) (核リポート)「甲状腺がんは原発のせい」韓国訴訟の輪
 「甲状腺がんは、原発のせいだ」。韓国の裁判所で、こんな判決が出たのをきっかけに、原発周辺に暮らす甲状腺がん患者やその家族が続々と、原発を動かす公営企業を相手に裁判を起こしている。韓国で最初にできた釜山市の古里(コリ)原発。1978年に1号機が稼働を始め、現在は6基の原子炉建屋が日本海(韓国名・東海)沿いに並ぶ。この原発から約7・7キロのところに20年ほど暮らす李真燮(イ・ジンソプ)さん(51)の一家が起こした裁判が、甲状腺がん患者らが次々と立ち上がる「起爆剤」になった。2011年、東京電力福島第一原発事故が起きたころ、李さんは直腸がんになった。約1年後には妻(49)も甲状腺がんと診断された。長男は先天性自閉症の障害を持って生まれた。韓国でも連日報じられた福島の原発事故の惨状を見て、李さんは「家族の病気や障害は、原発がまき散らした放射性物質のせいではないか」と考えるようになった。事故翌年の12年、李さん一家は韓国にあるすべての原発を管理運営する公営企業「韓国水力原子力(韓水原)」を相手に、損害賠償の支払いを求める裁判を釜山地裁に起こした。支援者もほとんどいない「孤独な闘い」を約2年続け、14年10月、判決の日を迎えた。しかし、「当然敗訴するだろう」と思われたのか、取材に来るメディアも支援する環境保護団体のメンバーもいなかったという。「被告は、1500万ウォン(168万円)を妻に支払え」。裁判長は、李さんと長男の訴えは「原発の放射線放出との間に因果関係を認めるには証拠が足りない」として退ける一方、妻の甲状腺がんについては「原発付近に居住し、相当期間、原発から放たれた放射線にさらされた。このため、甲状腺がんと診断を受けたとみるのが相当だ」として原発と甲状腺がんの因果関係を認めたのだ。福島の原発事故を機に、韓国では原発周辺の住民が詳しい健康診断を受けるようになった。2012年2月に甲状腺がんと診断された李さんの妻も、そうした一人だった。釜山地裁判決がポイントとして挙げたのは次のような点だ。
 ○甲状腺がんの発生には、放射線にさらされることが決定的な要因として作用することが知られている。
 ○女性は原発から10キロ圏に20年近く暮らし、放射線に長期間さらされてきたとみられる。
 ○女性の甲状腺がんの発生には、原発から放出された放射線以外に、原因があると思える明確な
   材料がない。
 ○原発周辺地域の住民の疫学調査の結果、原発から5キロ~30キロ離れた地域でも、遠く離れた
   地域よりも1・8倍高い発生率を示している。女性が暮らしてきた地域を、原発から流出した放射
   線の影響を受けない地域とみなすのは困難だ。
 ○ほかのがんと異なり、甲状腺がんの場合、原発からの距離と発生率とに相関関係があるという
   調査結果が出ている。
 さらに、韓国の司法関係者が注目したのは、別の公害訴訟で大法院(最高裁)が示した加害企業の賠償責任に関する判断基準を、原発にもあてはめたことだ。裁判所は「加害企業は技術的、経済的に被害者よりもはるかに原因の調査が容易な場合が多いだけでなく、原因を隠蔽(いんぺい)するおそれがある。このため、加害企業が有害な原因物質を出し、それが被害者に及んで損害が発生すれば、加害者側で無害だと証明できない限り、責任を免れられないとみることが社会均衡の理念にもあう」と指摘した。今回、古里原発は、福島のような重大事故を起こしたわけではないが、裁判所は、原発の稼働そのものが「放射線の放出」という被害を生み出していると認めた。さらに、原発が「無害だ」と証明できない限り、賠償責任が生じると断じたのだ。

*3-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20150614/CK2015061402000147.html(東京新聞2015年6月14日)民間の甲状腺検査 幼児ら80人受ける 原発事故不安で那須塩原
 東京電力福島第一原発事故を受け、民間の甲状腺検査が十三日、那須塩原市の三島公民館で行われ、幼児や小学生ら約八十人が検査を受けた。十四日も行われる。事故から四年以上が経過した今も、放射線に対する子育て世帯の不安の根深さが浮かび上がった。一九八六年のチェルノブイリ原発事故では、周辺地域で甲状腺がんの多発が報告された。今回の検査は、二〇一三年から各地で甲状腺検査を続ける「関東子ども健康調査支援基金」(茨城県守谷市)が催した。基金は受検者一人につき千五百円程度の協力費と、民間からの寄付などで運営されており、ボランティアの医師の協力でこれまでに二千三百人超を検査。県内では過去に那須塩原、矢板両市で催され、いずれも定員を上回る希望者があった。来月四日には益子町でも予定され、希望者が定員の百十人に達したという。この日は、県が設置している「放射線による健康影響に関する有識者会議」の鈴木元(げん)座長が基金の検査を初めて視察。「保護者が医師から丁寧な説明を受けられる環境が整っているようだ」との感想を述べた。

<安全神話>
*4-1:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201506/20150618_61018.html
(河北新報 2015.6.18) <避難解除>一方的で時期尚早 楢葉住民反発
 避難指示の解除時期について説明する高木経産副大臣 避難指示をお盆前に解除する政府方針に対し、福島県楢葉町議会の全員協議会では「一方的だ」などと批判が相次いだ。行政区長らも「時期尚早」などと不満を漏らし、国との認識の違いが浮き彫りになった。町議会では議員が「医療や福祉、買い物など生活環境が整っていない。唐突な提案だ」などと反発。「準備宿泊を3カ月は延ばし、住民の意見を聞いて判断すべきだ」と国に迫った。行政区長会議でも、区長の一人は「準備宿泊をしても寂しくて、買い物も不自由な状態だ」と訴えた。町側には生活環境が一定程度、復旧した後に解除を望む声が強い。国が今回示した楢葉町の復興状況は、準備宿泊が始まった4月から大きな進展はない。青木基町議会議長は「生活環境が整わない中で唐突に解除時期が示され、違和感がある。秋には環境に変化も出てくる。宿泊を3カ月は延ばすべきだ」と強調する。これに対して国側は町議会などで「帰還を強制はしない。帰りたい人が帰れるようにすることが大切。避難指示のさまざまな悪影響を取り除くことが新たな復興段階に必要」と説明した。こうした強気の背景には、精神的賠償(慰謝料)を一律2018年3月まで支給するとした政府の福島復興指針がある。全町避難の楢葉町では、空間放射線量や住環境などで個人差が大きいが、帰還時期にかかわらず同額の慰謝料を約束した。高木陽介経済産業副大臣は町議会後、「多くの人が避難する楢葉の解除で、浜通り全体の復興が加速する」との考えを示した。町の大半は警戒区域に指定され、12年8月10日に避難指示解除準備区域に再編された。町議の一人は「国は再編から3年という節目に合わせようとしているではないか」と推察。行政区長の松本哲雄さん(67)は「準備宿泊を始めて3カ月目に入ったら、解除の話が出てきた。ストーリーが決まっているようだ」と冷めた見方をした。

*4-2:http://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20150618/5495621.html
(NHK 2015年6月18日) 東電株主「対策先延ばし」主張
 福島第一原子力発電所の事故で東京電力の株主が歴代の経営陣に賠償を求めている裁判で、原告側は、東京電力が新たな内部資料を証拠として提出したことを明らかにし「事故の3年前に津波対策は不可避だと認めていたのに先延ばしにしていた」と主張しました。この裁判は、東京電力の株主50人あまりが歴代の経営陣らに対し「安全対策を怠ったために事故が起きた」として、合わせて5兆5000億円を会社に賠償するよう求めているものです。東京地方裁判所で行われた18日の審理で、原告側は、東京電力が裁判所の勧告に応じて、新たな内部資料を証拠として提出したことを明らかにしました。原告側によりますと、資料は平成20年9月に福島第一原発で当時の所長などが参加して開かれた会議のもので、政府の地震調査研究推進本部が、福島県沖を含む日本海溝沿いで大地震が起きると想定していたことについて「完全に否定することが難しく、現状より大きな想定の津波対策は不可避だ」と記されていたということです。同じ資料にはこの想定を2、3年かけて検討する方針が示されていて、原告側は「津波対策は不可避だと認めていたのに先延ばしにしていた証拠だ」と主張しました。一方、東京電力側は、この資料について「津波が現実的に襲来する危険性があるという意味ではない」とした上で「地震調査研究推進本部の想定は具体的な根拠がなく、専門の学会にあらためて津波の想定を委託するなど改善策に取り組んでいた」と主張しています。原告の代理人の海渡雄一弁護士は、審理の後で会見を開き「東京電力が、最終的には津波対策の工事をするしかないと認識していたことがはっきりした。老朽化した福島第一原発の運転を続けるため、問題を先延ばしにしていたと考えられる」と述べました。東京電力は、18日の審理について「訴訟中につきコメントを控えさせていただきます」としています。

*4-3:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/191687
(佐賀新聞 2015年5月29日) IAEA報告書
◆安全過信の指摘受け止めよ 
 原発の安全神話を過信し、必要な対策を怠ったことが過酷事故につながった-。東京電力福島第1原発事故を総括した国際原子力機関(IAEA)の最終報告書は、国や東電の認識の甘さと安全対策の不作為を厳しく批判した。「原発回帰」へ前のめりになっている安倍政権は、報告書の指摘を重く受け止めるべきだ。報告書の指摘は痛烈だ。東電に対しては、福島県沖でマグニチュード(M)8・3の地震が発生すれば最大約15メートルの津波が第1原発に達すると試算していながら対策をとらなかったと批判。原子力安全・保安院も迅速な対応を求めなかったと行政の危機意識の希薄さも問題視した。IAEAでは、過酷事故につながるすべての可能性を把握する確率論的安全評価(PSA)の運用を勧告していた。2007年の訪日調査では「日本には設計基準を超える事故を検討する法的規制がない」と指摘し、保安院が中心的役割を果たすよう求めた。これらの指摘に対して抜本的な対策を講じることなく、事故に至った。「原発が技術的に堅固に設計されており、十分に防護が施されているとの思いこみが何十年にもわたり強められてきた」。報告書では原発の安全神話への過信をこう指摘する。自然災害などのリスクに対する原発のぜい弱性を精査し直す視点が欠けていたのも、この過信がもたらしたといえる。さらに関係機関、組織間の連携不足も指摘した。原発の安全に関する問題に迅速に対応する方法について「どの組織が拘束力のある指示を出す責任と権限を持つのか明確ではなかった」と問題視し、原発事故と自然災害への対応では「国と地方の計画がばらばらだった」と課題をえぐり出している。事故を踏まえて原発の新たな規制基準が設けられた。安倍政権は「世界で最も厳しい」と胸を張り、この基準に合格すれば再稼働を進めるとの方針を示している。ここに新たな安全神話の落とし穴が生まれはしないか。審査する原子力規制委員会の田中俊一委員長は「基準への適合性を見ており、安全とは申し上げられない」と言明し、原発の安全性を保証するわけではないという認識を示している。安全への責任の所在があいまいなまま再稼働に突き進んでいるという印象がぬぐえない。IAEAが指摘した関係機関の連携不足の課題も置き去りにされているようにも映る。これで日本は国際的な信用を得られるだろうか。さらに事故に備えた避難計画のチェック体制にも不安が残る。避難計画は規制委の審査対象になっておらず、作成する自治体任せになっている。実効性を客観的に検証する仕組みが必要だ。報告書は9月の年次総会に提出される。事故の教訓を踏まえた提言も含まれており、今後、各国の安全対策に活用される。「過酷事故を前提とした訓練の実施」「従来の事故想定を疑い安全意識を向上する」「電力事業者、国や地元の当局の間で緊急時の役割と責任を明確化する」などはいずれも傾聴すべき内容だ。川内原発(鹿児島県)や伊方原発(愛媛県)の再稼働の手続きが大詰めを迎えている今こそ、立ち止まってIAEAの指摘に向き合うべきだ。

<再生可能エネルギー>
*5-1:http://qbiz.jp/article/65134/1/ (西日本新聞 2015年6月24日) 建設業売上高で上位10社増収 太陽光発電関連が伸びる、九州・沖縄
 東京商工リサーチ福岡支社(福岡市)が23日発表した2014年の九州・沖縄の建設業売上高ランキングによると、集計対象となった売上高50億円以上の108社の売上高合計は、前年比18・5%増の1兆4854億1300万円。上位10社は全社が増収だった。純損益の合計は、同2・5倍の287億9300万円の黒字。ランキングは各社の14年1〜12月期決算を集計した。対象が100社を超えたのは6年ぶり。太陽光発電の関連工事や消費税増税前のマンション建設需要で、好業績につながった企業が多かったとみられる。増収率上位10社には太陽光関連の4社が名を連ねた。県別の売上高増減を見ると、鹿児島県の前年比69・1%増をはじめ、大分が55・3%増、宮崎が30・7%増など、九州全県で前年を上回った。同支社は15年の見通しについて、太陽光関連では九州電力による再生可能エネルギーの新規契約の一時中断などの影響が避けられないと指摘。「市場は縮小しつつある。減収が見込まれる企業もあり、ランキング登場社数は再び減少に転じる可能性がある」としている。

*5-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150622&ng=DGKKZO88346940R20C15A6TJC000
(日経新聞 2015.6.22) 高効率 曲がる太陽電池 ソーラーフロンティア、電気変換13%台
 昭和シェル石油子会社のソーラーフロンティアは、光を電気に変える効率が高く、曲げることができる太陽電池=写真=を2018年に発売する。ガラスではなく高機能フィルムを採用し、建造物の曲面に張るなど用途拡大が期待できる。軽くて薄く、設置作業も容易になる。発売時に発電事業者の設置コストを現在より3割減らすことを目標にしている。光を電気に変える効率について、新開発品は13%台とガラスを使った同社の主力製品並みを確保した。フィルムを活用する太陽電池はすでに他社が開発しているが、高効率の確保が課題だった。10%超の性能を持つ曲がる太陽電池の投入は世界大手では初めて。新開発品は1枚が幅1メートル、長さ1.3メートル。重さは6キログラムとガラスを使った現行品より7割軽くし、薄さは1.5ミリメートルと9割薄くした。水蒸気を通さずに光を通す高機能フィルムを採用した。シンガポールの港湾運営大手と組み、データ測定を始める。

*5-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150619&ng=DGKKASGG17H2T_Z10C15A6MM0000
(日経新聞 2015.6.19) 弱風でも発電 小型風車 九大、開発にメド 低騒音 住宅・学校向けなど
 九州大学の大屋裕二教授らは弱い風でも効率よく発電できる新型風車の開発にメドをつけた。騒音が少ないため公園や住宅、学校、工場などに設置しやすい。照明などの電力を供給できる。今秋までに開発を終え、1年ほどかけて実証実験を進める。専門機関の認証が得られれば、2016年度中に同大発のベンチャーを通じて発売を目指す。新型風車は羽根の周囲にリングを取り付け、通常の風車よりも強く風を引き込むことで発電量を通常タイプの2.5倍に高める。リングが風を集めるレンズのような働きをするため「レンズ風車」と呼んでいる。小型で騒音が少なく、設置しやすい利点もある。研究チームは英ストラスクライド大学と協力。秋までに直径約3メートルのレンズ風車を3機組み合わせ、公園や住宅に電力を供給するために必要な出力10キロワットを発電できるシステムを完成させる。九大構内などで実証実験をして性能や安全性などを確かめる。16年夏をメドに販売に必要な認証を一般財団法人・日本海事協会に申請する予定だ。販売は九大発ベンチャーのリアムウィンド(福岡市)が担う。システムは800万円以下で、3年後に年間500台の販売を目指す。

*5-4:http://qbiz.jp/article/64730/1/
(西日本新聞 2015年6月18日) 世界の再生エネ17%増 中国の伸び顕著
 2014年に世界で建設された太陽光や風力など再生可能エネルギーの発電設備容量は9700万キロワットに上り、総容量は13年比約17%増の6億5700万キロワットに達したとの調査結果を、エネルギーの専門家らでつくる「21世紀の再生可能エネルギーネットワーク」(REN21、本部ドイツ)が18日、発表した。新設された発電設備の約6割が再生エネで、成長ぶりは顕著。REN21は「昨年、世界の経済成長に伴ってエネルギー消費も増えたが、二酸化炭素排出量は13年と変わらなかった。中国などでの再生可能エネルギーの急拡大がその一因だ」と分析した。太陽光発電は、1年間に4千万キロワット建設され、1060万キロワットの中国が最も多かった。固定価格買い取り制度で導入量が増えた日本は970万キロワットと2位だった。風力発電は5100万キロワット建設された。デンマーク、スペイン、ポルトガル、ニカラグアなどでは、国内の電力需要の20%以上を風力でまかなった。大型水力を除いた14年末現在の再生可能エネルギーによる発電総容量は6億5700万キロワット。日本の容量は3100万キロワットと世界5位で、中国(1億5300万キロワット)、米国(1億500万キロワット)、ドイツ(8600万キロワット)には大きく水をあけられている。報告書によると、14年に再生可能エネルギー開発に投資された金額は2700億ドル(約33兆円)と過去2番目の規模。投資額は中国の833億ドルが最も多く、2位が米国の383億ドル、3位が日本の343億ドルだった。


PS(2015年6月30日追加):現在の太陽光発電は、全体としてデザインが悪くなるため、今後、デザインも含めた改良が必要だ。なお、*6はもっともで、他の地域にもこういう場所はあるだろう。

   
    屋根設置型         農地設置型          駐車場の屋根型   抽象デザイン型
*6:http://qbiz.jp/article/65712/1/
(西日本新聞 2015年6月30日) メガソーラー、条例で規制 富士山景観を優先、静岡
 静岡県富士宮市議会で30日、富士山の景観を保全するため大規模太陽光発電所(メガソーラー)の設置を規制する条例が全会一致で可決、成立した。世界遺産に登録された富士山の眺望を損ねるとして、再生可能エネルギーの普及より優先させる。須藤秀忠市長は記者団に「富士山は世界の宝。景観を守るのは地元の責任だ」と強調した。同様の条例は山梨県や大分県由布市が制定している。富士宮市には、市内6カ所に千平方メートルを超えるメガソーラーが設置されている。市は「富士山を見渡した時、真っ黒なメガソーラーが目に入ると景観が台無しになる」と懸念した。


PS(2015年7月1日追加):真夏の最も電力を使う時に、太陽光発電の出力は最大になる。そのため、*7のように、九電が①太陽光発電による電力の受け入れを制限した上 ②高い火力発電燃料を輸入して古い火力発電を稼働させながら ③原発を再稼働させるために供給体制が綱渡りなどと吹聴するのは、経産省と組んだ地域独占企業の傲慢かつ怠慢な態度にほかならない。

*7:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/203230
(佐賀新聞 2015年7月1日) 節電の夏、九電綱渡り きょうから協力要請
◆火力発電トラブルが頻発
 九州電力は7月1日から管内の一般家庭や企業に対し、生活や生産活動などに支障がない範囲で節電への協力を要請する。九電は原発の再稼働がなくても、他社からの電力融通で安定供給は可能としているが、最近火力発電所のトラブルが相次いでいる。今夏も供給体制は綱渡り状態となりそうだ。要請期間は7月1日~9月30日の平日午前9時から午後8時まで(8月13~14日を除く)。九電の火力発電所では、新大分発電所(大分市)の発電機1基が5月末に停止。6月に入ってからは苓北発電所1号機(熊本県苓北町)、苅田発電所新1号機(福岡県苅田町)が止まった。新大分は7月中旬、苓北1号機は7月上旬に復旧する見通し。苅田新1号機は既に運転を再開した。九電は必要に応じて他電力からの融通を積み増し、安定供給に最低限必要な予備率3%を確保する方針。さらに他の発電所でトラブルが発生すれば需給が急速に切迫する恐れもある。川内原発(鹿児島県薩摩川内市)が再稼働すれば、8月の予備率は融通がなくても5~10%程度を確保できるとしており、瓜生道明社長は「川内原発の一日も早い再稼働に取り組んでいる」と強調する。九電は8月中旬に川内原発の再稼働を予定している。これまで再稼働のスケジュールは度々遅れており、夏場の需要期に間に合うか予断を許さない。


PS(2015年7月2日追加):*8で言う低線量とは、1年間に5ミリシーベルト程度であるため、日本でフクシマに住んでいる人たちが白血病等の病気にかかるリスクは、さらに高い。そのため、フクシマ近郊や関東、その他の原発近くでも正確に調査すべきだ。

*8:http://www.kahoku.co.jp/naigainews/201507/2015070201000814.html
(河北新報 2015.7.2) 放射線低線量でも白血病リスク 欧米30万人調査
 低線量の放射線を長期間にわたって浴びることで、白血病のリスクがごくわずかだが上昇するとの疫学調査結果を、国際がん研究機関(本部フランス・リヨン)などのチームが1日までに英医学誌ランセット・ヘマトロジーに発表した。欧米の原子力施設で働く30万人以上の被ばく線量と健康状態のデータを分析した。低線量被ばくの健康影響を統計的に示した研究は少なく、東京電力福島第1原発などで働く作業員や、放射線機器を扱う医療従事者の健康管理に役立つ可能性がある。

| 資源・エネルギー::2015.5~2016.12 | 04:27 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.6.26 マイナンバー制度による国民の管理しすぎは人権侵害に繋がるということ
   
       2015.6.11西日本新聞     非正規社員数の増加  2015.6.20日経新聞
                                 上
    (注:男女の均等待遇を義務化した改正男女雇用機会均等法が1997年に成立し、
       1999年4月に施行された後の2000年から、派遣社員が目立って増加した)

(1)マイナンバーのリスクについて
1)マイナンバー制度とは
 *1-1に書かれているとおり、政府が導入を決めたマイナンバーは、国民一人一人に番号を割り当て、税・年金・医療・介護等の情報を一括して管理する制度である。最初は、社会保障・税・災害などの3分野に限定していたが、改正法案では、予防接種・検診情報・預金口座への適用を盛り込み、将来は、戸籍・パスポート・証券分野まで拡大を目指すそうだ。

 しかし、プライバシーは、一度漏れたら「覆水盆に返らず」で、頭を下げられたからといって損害が回復するものではなく、多くの情報をまとめればまとめるほどそれが漏れた時の被害は大きい上、その情報を入手したいという動機づけは等比級数的に大きくなる。さらに、その情報を取り扱う人は、日本年金機構から大量の個人情報が流出した事例を見ればわかるように、非正規雇用・派遣社員・契約社員が多い上、正規職員の危機意識も高くはなく、サイバー攻撃の技術と対策はいたちごっこなのだ。

 なお、*1-2のように、日本年金機構は社会保険庁時代から、国民が支払った年金保険料が記録にない「消えた年金」問題があったり、*1-3のように、国民年金の納付率を60%台のまま放っておいたりなど、民間企業では考えられないずさんさがあるが、第一次安倍政権時代にはこれを回復しようとしていたのであるため、これらについて安倍首相が悪いわけではない。この頃、(私の提案で)本人に確認するための年金特別便や年金定期便が送られ始めたことを国民は知っている筈だ。つまり、日本年金機構に、「年金資産は国民から預かった大切な資産だ」という意識が乏しいのが原因であり、その時、たまたまトップにいた政治家を叩いても改善はできないのである。

 それにもかかわらず、*1-6のように、経団連会長は、「マイナンバー制度は生活の利便性と経済性を考えると非常に重要。計画通り遅滞なく進めてほしい」と述べたそうだが、*1-3のように、東京商工会議所もサイバー攻撃を受けて大量の個人情報が流出しており、私は、マイナンバー制度の枠組みと広すぎる連結範囲を見直して、少なくとも税・年金・金融などの所得把握系と医療・介護・教育・保育・生活保護などのサービス給付系の社会保障は、番号を分けるべきだと考えている。

2)マイナンバー制度で、個人情報の守秘義務は保たれるのか 
 *1-4のように、サイバー攻撃は日々巧妙化し、情報セキュリティーを維持するためのシステム構築は非常に遅れており、個人情報が漏れれば、憲法で保障された人権を侵害する可能性が高い。また、情報処理推進機構(東京)の調査によると、2013年度にウイルスに感染、または発見した企業の割合は約7割に上り、情報セキュリティー大学院大の田中教授は「コンピューターウイルスに感染することは避けられず、適切な処理で実害を防ぐことが重要」としている。

 しかし、サイバー攻撃への対策は、攻撃そのものよりも一歩遅れるのが通常である上、完璧な防護システムを作っても人的な情報漏出はなくならない。そのため、個人情報に関する守秘義務が護られるためには、個人情報にアクセスできる人をその情報の重要性と意味が理解できる専門的担当者に限定して守秘義務を課すべきなのである。例えば、市役所の職員、税務職員、年金保険機構の職員、金融機関の職員などが、医療に関する個人情報にアクセスする可能性があるような制度にするのは間違いであり、介護職員に医療情報を開示する場合でさえ、本当に必要な担当者に限定すべきなのである。

3)では、どういうシステムにすべきか
 日本年金機構の事例で述べると、①データベースをインターネットに接続しない ②地方支部との接続は専用線で行う ③個人情報の意味を理解し守秘義務を守れる担当者を使い、非正規社員、アルバイト、派遣社員などの流動性の高い社員を守秘義務のある情報に近づかせない ④守秘義務のある情報の取り扱いに関するマニュアルを定めた上で職員の教育を徹底する などが考えられる。

 これに対し、*1-5のように、標的型攻撃を受けてから、①初期潜入 ②侵入範囲拡大 ③端末内の情報の窃取の3段階に分けて各段階で不正通信の遮断の方法を示し、④事後的に攻撃者を特定しやすくするため、インターネット接続事業者に接続通信履歴を最長1年保存するよう要請する などとしているのは、「国民の情報漏出は、覆水盆に返らずの人権問題である」という意識に欠けており、甘すぎる。

(2)高齢者福祉削減が目的の負担増・給付減について
 *2-1のように、マイナンバー制度を活用して医療費の高所得者負担増が検討されており、金融資産の保有状況を考慮した仕組みを検討して、医療費や介護サービスの利用料に関して、高所得者に負担増を求めるそうだ。しかし、所得の再配分は、所得税・相続税・保険料の支払いで果たされるため、(保育料もその例だが)同一のサービスを提供する時に利用者の負担額を変えるのは、税や保険料の二重負担となって理論的に誤りである。

(3)医療費などの社会福祉と税の連結の妥当性について
 *2-2のように、日経新聞でマイナンバー制を使って医療費控除の領収書を不要にすると書かれている。これは、税務当局がマイナンバー(税と社会保障の共通番号?)でひも付けられる健康保険のデータを使うことでのみ実現するが、本人の許可なく税務当局が健康保険のデータを閲覧できるようにすると、(1)2)で述べた問題が生ずるので、適切ではない。

<政府のセキュリティー意識>
*1-1:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-244338-storytopic-11.html
(琉球新報社説 2015年6月16日) マイナンバー 拙速な導入は危な過ぎる
 政府が安全性を強調すればするほど、疑念は膨らむ。立ち止まって考えるべきではないか。国民一人一人に番号を割り当て、税や年金などの情報を管理するマイナンバー制度の法改正案が国会で審議中だ。マイナンバー法は2013年に成立し、来年1月に運用開始の予定だが、政府は運用前に適用範囲を拡大する法改正案を提出した。当初は社会保障と税、災害の3分野に限定していた。だが改正法案では予防接種や検診の情報、預金口座への適用も盛り込んだ。安倍晋三首相は「(将来は)戸籍、パスポート、証券分野までの拡大を目指す」とまで言い切った。日本年金機構から大量の個人情報が流出したばかりだ。新たに適用を目指す分野は個人にとって秘匿したい分野ばかりである。ひとたび流出すれば被害はこれまでと比較にならないほど甚大だろう。政府は「仮に一つの機関から漏えいしても他の情報が芋づる式に漏れる制度設計にはなっていない」と説明する。だがこうした情報漏えいはいつも対策と攻撃のいたちごっこだ。現状では芋づる式に引き出せないとしても、未来永劫(えいごう)そうだとは限らない。情報が関連づけられれば、それだけリスクが高まると見るのが自然ではないか。現状でも、例えば一部情報を基に偽造免許証が造られることもあるのは、過去の犯罪で実証済みだ。偽造免許証を基に住所などの情報を書き換えれば、本人に成り済ますことも可能である。対象情報の大幅拡大は危険過ぎる。年金機構は制度の中軸ともいえる機関だ。そこからですら簡単に流出したのである。過去には財務省、農水省、外務省からも流出した。今後は絶対に流出しないなどと、どうすれば信じられるだろう。加えて、今後は民間分野も対象になる。企業にとって対策は人手や資金の面で負担が重い。県内企業でも現時点で対策を取っているのは2割にすぎず、情報漏えい防止策に限れば0%だ。こんな状態で拙速に導入する必要がどこにあろう。プライバシーは「覆水盆に返らず」である。ひとたび流出すれば被害の完全な回復は不可能だ。サイバー攻撃が巧妙化する現在、もはや攻撃は防ぎ得ないとの前提に立つべきだ。国民を守れない制度の安易な導入は許されない。法改正は見送り、来年の施行も延期して必要性をもう一度吟味すべきだ。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015060302000136.html
(東京新聞 2015年6月3日) 「消えた年金」幕引き直前 国民の不信 再燃も
 安倍政権は日本年金機構の年金情報約百二十五万件の外部流出に神経をとがらせている。第一次安倍政権は、支払った年金保険料が記録にない「消えた年金」など年金記録問題が打撃になって退陣した。記録回復に向け設置した組織を廃止する矢先の新たな問題発覚に対し、安倍政権は官邸主導で対応する方針だ。菅義偉(すがよしひで)官房長官は二日の記者会見で「機構の認識の甘さがあった。責任は免れない」と批判した上で「受給者の皆さんになりすましなどで迷惑を掛けないよう、政府を挙げて対応策に全力で取り組んでいる」と検証委員会などを立ち上げ、原因究明や再発防止策を徹底する考えを強調した。機構を所管する厚生労働省任せにせず官邸主導で問題解決に乗り出すのは、安倍政権にとって年金問題は苦い記憶があるためだ。第一次政権の二〇〇七年、持ち主不明な「宙に浮いた年金」約五千万件などの年金記録問題が発覚。旧社会保険庁の不祥事が次々と明るみに出る中、政権の対応が遅れ国民の不信が高まった。安倍首相は「最後の一人まで記録をチェックし年金を支払う」と理解を求めたが、同年の参院選で惨敗し退陣につながった。国民からの記録回復の申し立てを審査する総務省の第三者委員会は六月末で廃止する。「消えた年金」問題に幕引きを図ろうとしていたところだけに、今回の情報流出がきっかけとなって、国民の年金不信が再燃する可能性がある。国民一人一人に番号を割り振るマイナンバー制度でも、情報流出への懸念が高まる。一六年一月の制度開始に向け、国会で審議が進むマイナンバー法改正案に関し、菅氏は「今回の件はあったが、対応策を取る中で、早期成立に努力していきたい」と述べた。
◆情報流出問題をきょう集中審議
 衆院厚生労働委員会は二日の理事懇談会で、日本年金機構の年金情報が流出した問題に関し、三日に集中審議を実施すると決めた。民主党など野党は塩崎恭久厚労相らの監督責任や、日本年金機構の対応などを厳しく追及する構えだ。与党は当初、審議中の労働者派遣法改正案の質疑を求めたが、情報流出の実態解明を優先すべきだとの野党の主張を受け入れた。

*1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/201663
(佐賀新聞 2015年6月26日) 国民年金の納付率60%台、2年連続、14年度
 厚生労働省は26日、2014年度の国民年金保険料の納付率は63・1%で前年度から2・2ポイント改善したと発表。2年連続で60%台に乗り、上昇は3年連続。景気の回復に加えて、未納者への督促強化が上昇に結び付いたとしている。ただ、所得が低く納付の全額免除や猶予を受けている人が加入者全体の3分の1に当たる602万人いる。免除者などを含めて計算した実質的な納付率は40・6%にとどまる。全都道府県で13年度よりも納付率が上昇。島根の76・7%が最も高く、新潟75・3%、富山74・4%と続いた。最低は沖縄の45・2%で、大阪54・0%、東京58・8%だった。

*1-4:http://qbiz.jp/article/64147/1/
(西日本新聞 2015年6月10日) 標的拡大、遅れる防御 サイバー攻撃巧妙化、東商PC感染
 東京商工会議所が日本年金機構と同じくメールを使ったサイバー攻撃を受け、大量の個人情報が流出した。石油連盟も同様の攻撃を受けていたことが発覚、ハッカーの標的は省庁や大企業から業界団体や中小企業に広がってきた。手口も巧妙化し、防御策は追い付いていないのが実情だ。
@標的型メール
 「職員への教育が不足していたと言わざるを得ない」。10日に記者会見した東商の高野秀夫常務理事は、沈痛な表情で謝罪した。東商の会員は主に中小企業で、情報セキュリティー対策が十分でない会社も多い。東商はサイバー攻撃の防止策などのセミナーを開き、専用窓口も設けて会員を指導してきた。それだけに、今回のウイルス感染は「恥ずかしい」(担当者)との声が漏れる。特定の部署や職員を狙いウイルスを忍び込ませたメールを送る「標的型メール」は、年金機構に対する攻撃と同じ。受け取る側の業務に関連した表題や内容に偽装しているため、不用意に開けてしまうことが多い。東商では個人情報を保管するファイルにパスワードが設定されていなかったという甘さもあった。
@踏み台に利用
 東商や石油連盟のような業界団体は、多くの加盟企業や関係者の名簿を保有、管理している。情報セキュリティーの専門家の間では、攻撃者はそうした情報が狙いだったとの見方が出ている。また、攻撃対象は中小企業にも広がっている。大企業と取引がある一方で、セキュリティー対策は大企業より甘いとされ、中小を「踏み台」に大企業のシステムへの侵入を図るといわれる。独立行政法人の情報処理推進機構(東京)の調査によると、2013年度にウイルスに感染、または発見した企業の割合は約7割に上る。従業員300人未満の企業に限っても6割弱と高水準で、企業規模にかかわらず被害は広がっている。中でも、同機構に寄せられた標的型メールに関する相談件数は、13年の97件から14年は509件と5倍以上になった。「同僚や取引先からのメールを装うなど、開封させるための文面が巧妙になっている」と同機構は指摘する。
@「感染不可避」
 菅義偉官房長官は10日の記者会見で「(東商が)原因の分析や対処をしっかりするように、経済産業省を通じて指導していく」と述べた一方、「政府も気を引き締めて対応していく必要がある」と強調した。国会では連日のように年金情報流出問題の集中審議が開かれ、再発防止策を求める声も強い。情報セキュリティ大学院大の田中英彦教授は「コンピューターウイルスに感染することはもはや避けられない。いかに早く、適切な処理で実害を防ぐかが重要だ」と話す。攻撃を受けた企業や組織は、積極的に情報を開示すべきだとも田中氏は指摘する。「攻撃が広範囲に及び、類似の手口やウイルスが見つかることもある。サイバー攻撃対策は、官民一丸で取り組まなければならない」
◆セミナー名簿など1.2万人分の情報流出
 東京商工会議所は10日、延べ1万2139人分の会員企業の個人情報が流出した恐れがあると発表した。ウイルスに感染した電子メールの添付ファイルを開封したことが原因とみられる。警視庁公安部は不正指令電磁的記録供用容疑などを視野に捜査を始めた。東商の高野秀夫常務理事は東京都内で記者会見し「多くの方々に迷惑、心配をかけ、深くおわびする」と謝罪した。サイバー攻撃の一種で、メールに添付されたファイルを開くとウイルスに感染する「標的型攻撃」とみられる。日本年金機構(東京)の年金情報が大量に外部に流出した問題もウイルスメールが原因だった。流出した疑いがある個人情報は氏名や住所、メールアドレスなどで、銀行の口座番号といった金融関連の情報はないという。東商の国際部が主催したセミナーの参加者名簿が主体で、一部に会員企業以外の個人も含まれる。東商によると、ウイルスメール1通が送られ、職員1人が開封し、この職員のパソコン(PC)1台が感染した。5月11日にセキュリティー関連の専門機関から不審な信号を検知したと指摘を受け調査を依頼。22日に感染が判明した。6月3日に警視庁丸の内署に相談した。東商は東京23区内の中小企業が加盟する経済団体で会員数は3月末現在で約7万7千。経営支援や政策提言などを業務としている。

*1-5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150622&ng=DGKKASFS22H0M_S5A620C1MM0000 (日経新聞 2015.6.22) 情報盗むメール、全機関で遮断 政府がサイバー新防衛策 通信事業者は履歴を最長1年保存
 日本年金機構から年金情報が流出した問題を踏まえた政府のサイバー対策が明らかになった。攻撃者がコンピューターから情報を抜き出すウイルスを秘めた「標的型メール」を送った場合、それを遮断する措置を特殊法人を含めたすべての政府機関に徹底させる。政府が月内にも閣議決定するサイバーセキュリティ戦略に盛り込む。年金情報の流出問題では日本年金機構の職員がインターネットに接続した端末で個人情報を扱うなど情報管理の甘さが指摘されている。政府機関向けの対策は内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が指針を作成。各省庁だけでなく日本年金機構など特殊法人や独立行政法人にも順守するよう求める。指針は政府機関の端末がウイルス感染したことを前提とし、端末から情報が流出しないよう対策の手立てを示す。具体的には、標的型攻撃を(1)初期潜入(2)侵入範囲拡大(3)端末内の情報の窃取――の3段階に分け、各段階で不正通信の遮断の方法を示す。攻撃者がファイアウオールを破って機関内のパソコンに侵入した場合、ほかのパソコンと遮断する手法を示している。政府は攻撃者を特定しやすくするため、インターネット接続(プロバイダー)事業者には、個人利用者がインターネットに接続した通信履歴を最長1年保存するよう要請する。総務省の指針を月内にも改正する。ネットに接続する際に必要となるIPアドレスをプロバイダー事業者が割り当てた記録を消去しないよう求める。保存期間は原則として半年、必要に応じ1年とする。

*1-6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150609&ng=DGKKASFS08H4T_Y5A600C1EE8000 (日経新聞 2015.6.9) 経団連会長「計画通りに」
 経団連の榊原定征会長は8日の記者会見で、日本年金機構の個人情報流出問題に関して「まさにあってはならない問題。国民への説明をしっかり果たしてほしい」と強調した。今年秋に個人番号の通知が始まる社会保障と税の共通番号(マイナンバー)制度については「生活の利便性と経済性を考えると非常に重要。計画通り遅滞なく進めてほしい」と述べ、年金問題の悪影響が広がることがないように、政府に万全な対応を求めた。

<高齢者福祉が標的の負担増・給付減>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/198237
(佐賀新聞 2015年6月16日) 医療費、高所得者の負担増検討、骨太方針の原案判明
 政府が策定している経済財政運営の指針「骨太方針」の原案が16日、分かった。医療費や介護サービス利用料に関し、高所得者に負担増を求める方向性を明記。国民に番号を割り当てるマイナンバー制度を活用し「金融資産の保有状況を考慮した仕組みを検討する」ことも盛り込んだ。2020年度の財政健全化目標に向けて、経済成長による税収増と歳出抑制策の両面を挙げたものの、歳出に関する具体的な数値目標は明記を見送る。政府は22日の経済財政諮問会議で示し、月内に閣議決定する。富裕層の負担アップは17年の消費税再増税を控え、幅広い層への影響を避けながら財政再建を進めるのが狙い。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150619&ng=DGKKASFS30H76_Y5A610C1MM8000 (日経新聞 2015.6.19)
医療費控除 領収書不要に、17年メド、マイナンバー活用
 政府は家族の医療費が一定額を超えた場合に税負担を軽くする医療費控除(総合2面にきょうのことば)を使いやすくする。現在は1年分の領収書を保存、確定申告の際に提出しなければならないが、税と社会保障の共通番号(マイナンバー)制度で集積する医療費のデータを使うことで、大半の領収書は出さなくてよくなる。インターネットで手続きする場合でも領収書の内容を入力する必要がなくなる。2017年夏をメドに始める。6月中にまとめる新しい成長戦略に盛り込む。来週、加藤勝信官房副長官を座長とする政府の検討チームが発表。財務省は医療費控除の法令改正の準備に入る。医療費控除の対象になるのは、1年間の家族の医療費から保険で補填された額を引いた額が10万円を超える場合だ。基準から超えた額を所得から差し引き、課税所得を減らせるため、税負担が減るメリットがある。現在は領収書の保存の煩わしさや医療機関名や投薬の内容、自己負担額などの入力の手間が面倒で、申告を諦めている人が多いという。毎年約700万人が使っているが大幅に増えそうだ。領収書を不要にする役割を果たすのがマイナンバー。17年夏までに健康保険のデータが、マイナンバーにひも付けられる。これが今回の仕組みの土台となる。現在は国民健康保険や健康保険組合から郵便などで届く「医療費通知」が、マイナンバーの個人用サイト「マイナポータル」に送られるようになる。利用者はこのデータを税務署にネット経由で送れば、領収書を出さなくてよくなる。ドラッグストアで購入した市販薬の代金や、通院のためのタクシー代なども医療費控除の対象だが、医療費通知からは漏れるため、これまで通り、領収書の保存と提出が必要だ。厚生労働省はこれにあわせて健保加入者に通知する医療費通知の基準を統一する。税務署がネット経由で受け取った医療費通知に対応できるようにするためだ。マイナンバーは10月から通知を開始。来年1月に導入する。17年7月からは国や地方自治体の情報を連携する。日本年金機構の情報流出問題で、年金分野へのマイナンバーの適用が遅れる可能性はあるが甘利明経済財政・再生相は「全体のスケジュールは予定通り進める」としている。政府は多額の税金をかけて構築するマイナンバーを有効活用するため、医療費控除以外の利便性向上策も併せてまとめる。低所得者や学生らが国民年金の保険料の減免手続きをする際、マイナンバーの個人用サイトから簡単にできるようにする。税と年金保険料の納付はネット上で、クレジットカードで一括でできるようにする。

| 日本国憲法::2013.4~2016.5 | 03:45 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.6.20 「決められない政治」が終わり、人を大切にしない法律が次々と決められているが、誰がそういうふうに「決める政治」を望んでいたのかが重要である。
       
労働者派遣法改正案 変更内容     同イメージ      衆院決議の様子
        <2015年6月19日、20日の西日本新聞より>   

(1)労働法制の変更について
 *1によれば、①企業の派遣社員受入期間上限を撤廃する労働者派遣法改正案が衆院厚労委員会と本会議で可決し ②時間ではなく成果で賃金を払う内容の労働基準法改正案の成立は見通せず(通称「残業代ゼロ」法案) ③病院のベッド(病床)削減に向け病院統合を促す医療法改正案 を先に審議入りする とのことだ。

 しかし②については、ホワイトカラーを中心とする業種は、時間ではなく成果で賃金を支払った方が、「成果を出すより、だらだらと仕事をした方が得だ」という状況ではなくなって妥当なケースも多いが、それが経営者の都合に振り回されず公正に行われるためには、年収や専門職か否かではなく、労働時間と成果を正確に把握して公正に貢献度を評価するシステムが必要である。そして、そのように評価した結果は、残業代がゼロになるのではなく、だらだらして長時間かかった分は支払われないだけだ。これは、監査法人や税理士法人では前から行われていたことだが、日本企業では、労働者の貢献度合いを公正に評価する制度になっていないため、経営者本位のご都合主義の改悪になる可能性が高い。

 また、③については、これから高齢者が増加する時に、既にあるベッド(病床)をわざわざ強制的に削減し、後から足りなくなってまたベッド(病床)を準備するような無駄なことをしてはならないし、高齢者が難民にならないための準備は、犠牲者を出した後の事後ではなく事前に行っておくべきである。

(2)①の労働者派遣法変更について
1)派遣労働者の定義と立場
 派遣労働とは、英語ではContingent work(不慮の仕事)で、産休や病気で休んだ社員の変わりの人や国際会議・国際学会の同時通訳など、常時必要ではないが急に必要となって派遣してもらう場合に使う雇用形態だ。そのため、日本でよく言われる「高度、専門的な技能を有する労働者を必要な時期に雇用したいと考える企業がある一方で、一般の雇用制度にとらわれず自己の能力、都合に合わせて働きたいと考える労働者が存在し、両者を仲介する人材派遣業が成立した」というのは、派遣会社や企業に都合のよい法律をつくるための説明にすぎない。

 また、派遣労働者は、「人材派遣会社と労働契約を結び、その業務命令によって他社で働く者」であるため、派遣先の企業でどんなに頑張っても、派遣先の正社員と同じ待遇や研修・配置・昇進が保障されるわけではなく、それでも文句は言わないという法的立場なのである。

 そのため、*2-2の「労働者派遣法改正案が生涯派遣に繋がる」というのは本当であり、年齢が増して企業にとっての労働者としての価値が下がれば下がるほど、正社員になる可能性は低くなる。また、均等待遇を求めないのが派遣労働者の法的立場であるため、格差が埋まらないのは当たり前だ。さらに、企業は他社の社員である派遣労働者には多くを期待せず、正社員のコストを払いたくないからこそ派遣社員を使っているというのが本音であるため、派遣社員はスキルアップもやりにくい立場なのである。

2)労働者派遣法の変更について
 (1)①の派遣法については、*2-1、*2-2のように、企業の派遣労働者受け入れ期間の制限をなくす労働者派遣法改正案が2015年6月19日の衆院本会議で可決された。

 しかし、今後、企業は3年ごとに人を交代させるなどすれば、その派遣労働者を恒久的に使えることになるため、派遣法の改正により、労働基準法や男女雇用機会均等法はザル法化される。このように、働く人を正社員ではなく非正規社員・派遣社員・契約社員などと区分して、労働基準法や男女雇用機会均等法をザル法化させる国は日本以外にはないだろう。

 一方、他国では、正社員でも解雇することが日本よりも容易だ。このような時、日本では嫌がらせなどの陰湿な方法を使って辞めさせるが、裁判で不当解雇として解雇無効の判決が出た場合には労働者はその企業に戻って働くことができる。しかし、その企業に戻っても、再度、嫌がらせを受けるだけと予想される場合には、当該労働者の選択で企業側に金銭を支払わせることにより雇用を終了することができる解決金制度が検討されており、これは必要なことだと私も考える。なお、私が監査に従事していた外資系企業では、通常の3倍の退職金を支払って希望退職を募っていたのを見たことがあるが、これがフェアな会社都合解雇の方法であろうし、解雇もフェアに行わなければならないのだ。

(3)トヨタ自動車の外国人女性役員を批判する目的の逮捕報道が目に余る
 *3-1、*3-2のように、女性や外国人の登用を進める“目玉人事”として抜擢され、トヨタ自動車の常務役員に就いたばかりのジュリー・ハンプ氏は、役員として本格デビューした翌日に、麻薬取締法違反容疑で警視庁に逮捕され、翌日、豊田章男社長が都内で記者会見し、「世間を騒がせて申し訳ない」「今後の捜査で法を犯す意図がなかったことが明らかになると信じている」と話した。

 ハンプ氏は2012年にトヨタ米国法人に入り、4月の就任会見で、「身が引き締まる思いで、役割を託されたことにわくわくする」「トヨタの女性活躍の一翼を担いたい」など意欲を示したそうだが、そのハンプ氏の容疑が、米国から麻薬成分「オキシコドン」を含む錠剤を国際宅配便で輸入した疑いとのことなのだ。

 しかし、結論から言って、私は、日本では麻薬に指定されているが、米国では医師が処方する鎮痛剤として幅広く使われているオキシコドンを、ハンプ氏は使い慣れた鎮痛剤として使っただけだと考える。それが、*3-3のように、日本国内では、医師の診断書を添えて厚労相に申請して許可を得ることが必要なので、そのややこしさを回避しようとしたのだろう。つまり、日本で処方してもらった薬を中国に持って行ったら、麻薬の密輸として死刑判決を受けたようなものである。

 また、*3-4に、「ハンプ“容疑者”が日本に密輸した疑いが持たれているオキシコドンはアヘンから抽出した成分を原料とした医療用麻薬で、服用時に得られる多幸感を目的とした乱用が問題となっている」と書かれているが、ハンプ氏は、トヨタ自動車の女性初の常務役員になっており、仕事で十分に多幸であるため、多幸感を得るために麻薬を必要としたとは考えられず、また麻薬の密輸で稼がなければならないほどカネに困っていた筈もないため、鎮痛剤として使う目的だったと考えるのが自然なのだ。

<労働法制の変更>
*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150620&ng=DGKKASFS19H41_Z10C15A6EA2000 (日経新聞 2015.6.20) 派遣法改正、成立へ 労働改革ようやく前進、脱時間給、労基法は不透明
 企業が派遣社員を受け入れる期間の上限を事実上なくす労働者派遣法改正案が19日の衆院本会議で自民、公明両党と次世代の党の賛成多数で可決された。維新、共産両党は反対した。政府・与党は24日までの今国会会期を2カ月超延長する方針で、成立は確実だ。改正案は安倍政権が岩盤規制改革とみなす労働法制見直しの柱。過去2回の国会で廃案になったが、実現に向けて前進した。
●19日、衆院で派遣法改正案が可決され、拍手する安倍首相
 派遣法改正案は19日午前に衆院厚生労働委員会で可決。午後に衆院本会議に緊急上程された。改正案に反対の民主党は緊急上程に反発し、生活、社民両党とともに本会議の採決前に退席した。強行採決にはならなかった。野党で民主に次ぐ勢力の維新が、自公の国会運営に協力したからだ。維新は自公と共同修正した同一労働同一賃金推進法案の成立と引き換えに、派遣法改正案の採決に応じた。19日の衆院本会議では同一労働法案も自公と維新、次世代の賛成多数で可決された。労働法制見直しのもう一つの柱、労働基準法改正案は成立が見通せない。時間ではなく成果に賃金を払う「脱時間給」制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)を盛り込んだ内容で、民主党などは「長時間労働を助長する」と反発している。政府・与党は野党の理解を得やすい法案の審議を優先する構え。衆院厚労委では社会福祉法人の経営改革を促す社会福祉法改正案や、病院の過剰なベッド(病床)の削減に向け病院統合を促す医療法改正案などが先に審議入りする見通しだ。

<労働者派遣法について>
*2-1:http://qbiz.jp/article/64858/1/
(西日本新聞 2015年6月19日) 派遣法案、衆院通過 会期延長で今国会成立へ
 企業の派遣労働者受け入れ期間の制限をなくす労働者派遣法改正案は19日の衆院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決され、衆院を通過した。今国会で成立する見通しだ。安倍政権は、野党が「残業代ゼロ」と批判する法案の審議や安易な解雇につながりかねないルール導入の議論も加速させる。労働法制は働く人保護のための規制強化から、企業活動を重視する規制緩和路線への転換点を迎えた。安倍政権は現状の雇用ルールを「岩盤規制」と問題視。規制緩和による企業活動活性化で経済成長を目指す。派遣法の改正は、こうした政策の第1弾と位置付けられる。改正案は、現在は原則3年までとなっている企業の派遣労働者受け入れ期間の制限を撤廃。企業が3年ごとに人を交代させるなどすれば、派遣労働者をずっと使える。派遣法の次に控えるのは、年収の高い専門職を労働時間規制の対象外とし「残業代ゼロ」とする労働基準法改正案だ。審議入りしていないものの、政府、与党は大幅な会期延長に踏み切る方針で、今国会中の成立も視野に入り始めた。派遣法改正案が成立すれば、雇用が不安定な派遣労働者が増える可能性がある。「残業代ゼロ」が実現すれば長時間労働が横行しかねないと労組は懸念。働く人の処遇が改善しないと消費が伸びず、景気回復の足を引っ張りかねない。民主党などは労働法制見直しを徹底追及する構えだ。裁判で解雇無効の判決が出た場合などに、企業側が金銭を支払うことで雇用を終了できる解決金制度の導入検討も政府の規制改革会議が打ち出した。民主党政権は日雇い派遣を原則禁止する法改正に踏み切るなど働く人の立場を重視したが、安倍政権で様変わりした。派遣法改正案は19日午前、衆院厚生労働委員会で自民、公明両党の賛成多数で可決され、民主党、維新の党、共産党は反対した。午後の本会議で可決されて衆院通過。民主党などは採決前に本会議を退席した。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11816545.html
(朝日新聞 2015年6月20日) 派遣法改正案、衆院可決 民主など採決欠席
 労働者派遣法改正案が19日、衆院本会議で自民、公明と次世代の賛成多数で可決された。今後は参院で議論され、政府・与党は早期の成立をめざす。一部の野党は「『生涯派遣』につながる」などとして徹底抗戦の構えで、対立は深まっている。改正案は昨年から出されていたが、条文ミスや衆院解散で2度廃案になった。今回も年金の個人情報流出問題で一時、審議が進まなかった。その後、維新、民主、生活の党が出した賃金格差是正のための同一労働・同一賃金推進法案について、「待遇の均等の実現を図る」という文言を「均等と均衡」に変えることで維新と与党が修正合意。待遇の差を認める余地を残した内容だが、合意で両法案の可決の流れができた。衆院本会議では、派遣法改正案の採決が始まると民主、生活、社民が退席。維新と共産は出席した上で反対したが、与党などの賛成多数で可決した。同一賃金法案も、修正した上で与党と維新、次世代が賛成して可決。両法案とも同日中に参院に送られた。国会会期は延長される見通しで、菅義偉官房長官は19日の記者会見で「早期成立に全力で取り組む」と述べた。一方、退席した3党は国会内で集会を開き、民主の枝野幸男幹事長が「まだ闘いは道半ば。党派を超え、衆参を超えて、全力を挙げて闘っていく」と表明した。民主などは参院でも時間をかけて審議するよう求める方針だ。
■「格差埋まらない」 労組や派遣社員反発
 政府は、派遣法改正で、派遣社員の待遇を改善し、正社員化の道を開くと強調する。しかし労働組合や派遣社員らからは批判の声が上がる。労組の中央組織、連合は19日夕、東京・新橋で街宣し、改正案が衆院で可決されたことを非難した。神津里季生事務局長は「『生涯派遣』になって低賃金がさらに進む。改悪の方向に流れている」と述べた。全国労働組合総連合も同様に国会前で抗議した。法案の衆院通過を受けて厚生労働省で会見した派遣社員の50代女性は「どうスキルアップしたって正社員になんてなれない」と述べた。月収16万円ほどで、新人正社員の約20万円より低い。同一労働・同一賃金法案について「『均衡』では弱い。同じ賃金にしないと罰則があるような厳しい法律を」と訴える。会見に同席した日本労働弁護団の棗(なつめ)一郎弁護士も「賃金も低いし、交通費も福利厚生もない。そういう正社員との格差を縮めて欲しいという人たちの願いが裏切られた」と憤る。(平井恵美、牧内昇平、細見るい)
■労働者派遣法改正案のポイント
・同じ派遣先の職場で働ける上限を3年に
・人を代えれば企業は派遣社員をずっと受け入れ可能に
・派遣会社に無期雇用される派遣社員は同じ派遣先の職場でずっと働ける
・派遣会社に派遣社員への「雇用安定措置」を義務づけ
・派遣事業をすべて許可制に

<報道は、外国人の女性役員批判目的>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150620&ng=DGKKASDZ19I0X_Z10C15A6EA2000 (日経新聞 2015.6.20) トヨタ、外国人役員逮捕で社長陳謝 人材戦略に試練 麻薬密輸疑い
 トヨタ自動車の豊田章男社長は19日、都内で記者会見し麻薬取締法違反容疑で同社常務役員のジュリー・ハンプ容疑者(55)が18日に逮捕されたことについて「世間を騒がせて申し訳ない」と陳謝した。同社は4月、米国籍のハンプ容疑者を初の女性役員として起用したばかり。多様な人材を活用し競争力を高めるトヨタの戦略が試練に直面した。東京本社の記者会見の冒頭で豊田社長は深々と頭を下げ「捜査に全面協力する」と強調した。逮捕容疑は米国から麻薬成分「オキシコドン」を含む錠剤を国際宅配便で輸入した疑い。国際宅配便は6月8日ごろ、米ミシガン州から発送されていたことが捜査関係者への取材で分かった。ハンプ容疑者は容疑を否認しているという。豊田社長も「今後の捜査で法を犯す意図がなかったことが明らかになると信じている」と同容疑者を擁護した。逮捕翌日に経営トップが記者会見した理由を問われると同社長は「私にとっては役員も従業員も子どものような存在。迷惑を掛ければ謝るのも親の責任」と説明した。2009年の米国の品質問題で対外的な説明が後手に回り、批判を招いた反省を生かしたようだ。海外メディアの関心も高く米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)などが記者会見を詳細に報じている。英紙フィナンシャル・タイムズ(同)は海外人材登用のリスクを指摘した。事業への影響について豊田社長は「動向を見守る」と述べるにとどめた。関東の販社幹部は「報道が長引いて影響が出ないか心配」と語った。トヨタは今回の逮捕で19日に予定していた新型ディーゼルエンジンの記者説明会を延期した。ハンプ容疑者は12年にトヨタ米国法人に入り、4月に役員に就任した。豊田社長は「性別や国籍に関係なく適材適所で人材を起用する」ことを目指してきた。グループ内からは「人材多様化への焦りがあったのでは」との声が出ている。グローバル人材の活用は日本企業にとって共通の課題だ。世界の最新の経営手法を吸収する窓口でもあり、採用を広げる企業は増えている。それだけに今回のトヨタのつまずきが経済界に与えた衝撃は大きい。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの藤井恵チーフコンサルタントはグローバル人材採用のリスク管理について「経歴を厳しくチェックするほか、以前勤務していた会社から人柄を聞くことも必要」と指摘する。

*3-2:http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/150618/evt15061819180040-n1.html (産経新聞 2015.6.18) 常勝トヨタに衝撃 目玉人事が一転…女性役員、逮捕前日に本格デビューしたばかり
 麻薬取締法違反容疑で18日、警視庁に逮捕されたトヨタ自動車常務役員のジュリー・ハンプ容疑者(55)は今年4月に女性初の役員に就いたばかりだった。女性や外国人の登用を進める“目玉人事”として抜擢(ばってき)されたハンプ容疑者の逮捕は、トヨタの企業イメージにも打撃を与えそうだ。ハンプ氏は米国出身でゼネラル・モーターズなどを経て平成24年6月にトヨタの北米子会社に入社し、副社長に就任。今年4月、女性初の役員として本社の常務役員に就き、広報部門のトップを務めていた。4月の就任会見では「身が引き締まる思いで、役割を託されたことにわくわくする」と述べ、「トヨタの女性活躍の一翼を担いたい」と意欲を示していた。

*3-3:http://www.sankei.com/affairs/news/150618/afr1506180037-n1.html
(産経新聞 2015.6.18) 「麻薬」指定のオキシコドン、がんの痛み緩和などで使用
 麻薬取締法違反(輸入)の疑いで逮捕されたトヨタ自動車常務役員のジュリー・ハンプ容疑者。密輸したとされる麻薬成分を含む錠剤「オキシコドン」は、医療機関などで使われる鎮痛剤で、乱用すれば依存してしまう恐れがあるため、国内では「麻薬」に指定されている。国内の医療現場では通常、鎮痛剤が効きにくい、がんの強い痛みを緩和するなどの用途で使われ、一般的な痛みの治療には用いられない。厚生労働省監視指導・麻薬対策課によると「細かい制度は国によって違うが、多くの国で規制されている成分だ」といい、国内の医療機関などでは厳重に管理され、医師の処方なしに入手は難しい。治療のためであれば個人が自身の荷物として輸入することは可能だが、その場合は事前に医師の診断書を添えて厚労相に申請し、許可を得ることが必要だという。

*3-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150620&ng=DGKKASDG19H9X_Z10C15A6EA2000 (日経新聞 2015年6月20日) オキシコドン、米で乱用問題に
 ジュリー・ハンプ容疑者が日本に密輸した疑いが持たれている「オキシコドン」はアヘンから抽出した成分を原料とした医療用麻薬。米国では医師が処方する鎮痛剤として幅広く使われる一方で、服用時に得られる多幸感を目的とした乱用が問題となっている。米保健省の2013年の調査では、医療目的以外で1年以内に新たに使った人(12歳以上)は43万6千人に上る。17日にはニューヨーク州の薬剤師が20万錠を病院から盗んだとして、懲役5年の判決を受けた。闇市場で1錠30ドル(約3700円)で販売できるという。09年に死亡したマイケル・ジャクソンさんも常用していたとされる。日本の関東信越厚生局麻薬取締部によると、日本では主にがん患者の痛みを和らげる目的で使われており、許可を得た医療機関や薬局しか取り扱うことができない。海外から日本国内に持ち込むには、医師の診断書などを添えて事前に地方厚生局長の許可を得る必要があり、郵送などでの輸入は認められていない。東京税関は密輸入を防ぐため、海外から届く貨物や郵便物を麻薬探知犬やX線で検査。疑わしい場合は開封して成分を調べている。

| 経済・雇用::2014.6~2015.10 | 04:43 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.6.18 オリンピック・パラリンピックに使用する国立競技場について (2015年6月19、23、24、27日、7月1、15、18日に追加あり)
   
  ザハ・ハディド氏の設計      坂茂氏の設計      その他の例     建設地域

(1)新国立競技場建設の状況
 *1-1のように、新国立競技場の改築計画が、建設費の高騰や工期の遅れで、基本設計を変更したり見直しを求められたりしているそうだが、舛添東京都知事は、国立競技場の改築費のうち500億円程度を都に負担してもらいたいという国の要請を断り、都民が納得できる説明をするよう求めている。

 そして、*1-2のように、森喜朗氏が「五輪をやりたいと言ったのは東京都だから支出を求める」としているのは、舛添知事に気の毒だろう。何故なら、2020年に東京でオリンピック、パラリンピックを是非やりたいとしていたのは、石原知事、猪瀬知事であって、舛添知事ではないからだ。

(2)そこで提案
 しかし、*1-1のように、基本設計を縮小したり、開閉式屋根の設置を大会後に延ばしたり、可動席を手動や仮設で対応するくらいなら、ザハ・ハディド氏設計のどこかパソコンのマウスのような形をした国立競技場の建設は中止し、*2-1、*2-2のように、国立競技場の後背地にある明治神宮の森の景観を壊すことなく、周囲の環境を活かしてこれに溶け込む国立競技場を建設することにして、「成熟国家日本が、世界にポジティブな変革を促し、それを未来へ継げる」という基本コンセプトから、プリツカー賞を受賞した坂茂氏のデザインを使ったらどうかと考える。

(3)木材の利用
 また、現在の日本は、*3-1、*3-2のように、森林・林業白書で、国産材の利用推進・輸出推進・木材産業の役割などが強調されている時代だ。そして、木材は直交集成板などの新技術により建材としての新たな需要を作り出し、木材製品に加工したりして、付加価値を高めることが期待されている。

 そして、*3-3のように、九州北部3県は杉の原木を中国に伊万里港から共同輸出する事業に乗り出し、福岡県の森林組合などが同港まで原木を運ぶ経費を一部負担して支援するそうだ。

 さらに、*3-4のように、大分県の日田市も「川上(森林・林業)」から「川下(木材産業)」までの関連業種やまちづくり団体等が連携して新ビジネスの創出・日田材の付加価値向上などに繋げようとしている。しかし、せっかく育てた森林資源をバイオマスの燃料にして燃やしてしまってはもったいない。

 そのため、木材を使って最先端の環境技術を備え、長く使える国立競技場を建設し、座席や家具にもなるべく木材を利用して、木材がいろいろな点で優れた材料であることを示すのがよいと考える。また、木材関係だけではなく、家具関係の会社にも座席や部屋の家具などを大量かつ安価に作ってもらったり、寄付部分があればそれを税額控除可能にしたりして、一定以上の金額を寄付してくれた会社や個人は、寄付額に応じ、まとめて寄付者のネームプレートを開示したりするようにすればよいと考える。

 なお、東京の国立競技場に使うのであれば、木曽ひのき始め近くに優れた木材が多く、国産材の利用を推進しながら、成熟国家日本が環境を大切にポジティブな変革を未来に継げる象徴にできると考える。

<新国立競技場>
*1-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150609/k10010108001000.html
(NHK 2015年6月9日) 新国立競技場 「責任の所在不明確が問題」
 新国立競技場の改築計画が建設費の高騰や工期の遅れの問題などから変更されていることについて、IOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長が懸念を示したことに関連して、下村文部科学大臣は閣議の後の記者会見で、「全体的な責任者というのがはっきりわからないまま来てしまったところもあるのではないか。工期に間に合わないかもしれないと報告が来たのはことし4月なので、もうちょっと早く報告があればもっといろんな柔軟な見直しというのもあり得たのではないかと思う」と述べ、責任の所在の不明確さに問題があったという認識を示しました。そのうえで、「国際的な信用を失墜させることなく、まだ4年あるので、十分、間に合うように対処する」と話しました。また、下村文部科学大臣は、東京都の舛添知事が、国立競技場の改築費の一部を都に負担してもらいたいという国の要請に反発していることに関連して、東京都に負担を求める根拠となる法律の整備を検討する考えを示しました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる国立競技場を巡って、国は、改築費のうち500億円程度を東京都に負担してもらいたい考えですが、東京都の舛添知事は、「都からの支出が法的に認められるのは50億円程度だ」などと述べて、都民が納得できる説明をするよう求めています。これに関連して、下村文部科学大臣は、9日の閣議のあとの記者会見で、「根拠法を明確につくる準備をしたい」と述べ、都に対して国立競技場の改築費の一部の負担を求める、根拠となる法律の整備を検討する考えを示しました。下村大臣は、改築費の積算根拠を都に説明する時期について、「舛添知事は、『途中経過は聞かない』と言っているので、改築費の積算結果が出てから詳しく説明にいきたい。来月上旬までには施工予定業者と契約を締結したいと思っているので、それまでにはまとめていくよう努力したい」と述べました。 .新国立 改築巡る問題の経緯と焦点改築される国立競技場は、2020年東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる施設で、2019年のラグビーワールドカップの開催に間に合わせるため2019年3月の完成を目指して工事が進んでいます。改築を巡っては、2012年11月、イラク人の女性建築家、ザハ・ハディドさんのデザインが採用されました。競技場は、観客席を8万人規模に増やし開閉式の屋根をつける構想で、競技場を運営する文部科学省所管の独立行政法人、「JSC=日本スポーツ振興センター」は、費用の見込みは当初、「1300億円」としていました。その後、2020年東京大会決定後の2013年10月、ハディドさんのデザインを忠実に再現した場合、費用が当初の2倍を超える3000億円に上ることが判明しました。経費がかかりすぎるうえ、巨大すぎて神宮外苑の景観にそぐわないと建築家や市民グループから批判が相次いだことを受けて、下村文部科学大臣は当初のデザインより縮小する方向で検討する方針を示しました。そして、去年5月にまとまった基本設計案では、当初のデザインと比べ、立体型の通路を見直し延べ床面積を25%程度縮小、高さも5メートル低くし、建設費も1625億円の見込みとなりました。この時点では、屋根は開閉式で、サッカーやラグビーなどの試合では、座席がピッチサイドまで自動でせり出す可動式になっているのが特徴としていました。ようやく計画がまとまったものの、今度は解体工事を巡って入札の不調や談合の疑いなどたび重なる問題が発生しました。去年12月に3回目の入札で業者がようやく決定し、当初の予定からおよそ半年遅れたことし1月から解体作業に入って順調に進み、ことし10月から建設工事を始める予定となっていました。こうしたなか、工事を請け負う予定の建設会社の試算で、建設資材の高騰なども加わり、このままの計画では総工費が大幅に増え、工期も間に合わないことが分かりました。このため下村大臣は、先月に入って、開閉式の屋根の設置を大会後に先延ばし、フィールドに向けてせり出すおよそ1万5000席の可動席を自動ではなく手動による仮設で対応することを明らかにしたうえで東京都に対して500億円程度を負担するよう要請していました。現在は、JSCがさらなるコスト削減を目指して建設会社側と来月上旬までの契約に向けて詰めの交渉を進めていますが、総工費がどの程度圧縮できるのか、変更後の総工費やデザインなどの詳細を、いつ、どのような形で明らかにするのかが今後の焦点となります。

*1-2:http://www.huffingtonpost.jp/2015/06/04/mori-talks-on-new-national-stadium_n_7507938.html (The Huffington Post 2015年6月4日 ) 新国立競技場の問題に森喜朗氏「五輪やりたいと言ったのは東京都」支出求める
 建設計画をめぐって混乱が続いている新国立競技場の問題で、2020年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は、東京都が費用を支出するのは当然、との考え方を示した。6月3日に内外情勢調査会が開いたイベントに登壇し、語った。新国立競技場の費用を巡っては、下村博文文科相が東京都に580億円の支出を要請。舛添要一東京都知事は「説明不足」などとして断っており、国と東京都の溝が深まっていた。この状況をオリンピック組織員会の会長で、自民党の有力者でもある森喜朗氏が間をとりなした形だ。「東京都が(オリンピックを)やりたいといったんでしょ。東京都が場所を全部用意するのは当たり前のことなんです。知事が『俺は知らん』と言うのはおかしな話なんです」と森氏は語り、東京都も支出すべきとの考え方を示した。また、落選した2016年オリンピックの招致活動の際、石原慎太郎元都知事と競技場について、国と都で折半すると約束していたことも明かしている。新国立競技場は当初、2012年にコンペで選ばれたイギリスの建築家、ザハ・ハディドさんがデザインした案で建設される予定だった。この案では天候にかかわらず使用できる開閉式屋根と、約8万人を収容できるスタンドを備えていたが、設計通りに作ると、当初の予算の1300億円を大幅に超える、3000億円まで工費が膨らむことが判明した。日本スポーツ振興センター(JSC)はハディドさんの原案のまま建設することを諦め、原案のテイストを残しつつ、大幅に規模を縮小し、総工費1692億円の修正案で建設することを決めた。しかし、資材の値上がりで総工費がさらに上回る可能性が高く、工期も2019年のラグビー・ワールドカップに間に合わないことから、整備費の減額や工期短縮を図るために、さらに建設プランを変更することになった。下村文科相は5月18日の舛添知事との会談で、新国立競技場の屋根の建設はオリンピック終了後となる見通しを示した。また、当初計画していた8万人収容の一部を仮設スタンドとし、オリンピック後に5万人規模へ縮小されるという。下村文科相は舛添知事に、周辺整備にかかる費用500億円の負担を要請。これに対し、舛添知事は「説明不足」などを理由とし、文科省担当者の説明を断わっていた。

<建築家・坂茂氏>
*2-1:http://news.livedoor.com/article/detail/10152161/ (Livedoor News 2015年5月25日) 迷走する新国立競技場。今こそ建築家・坂茂氏を推したいこれだけの理由
 2020年に開催の迫る東京オリンピック・パラリンピック。そのメイン会場である新国立競技場の建設計画が、揺れている。建設計画の目玉であった開閉式の屋根が、オリンピック開催に間に合わないというのだ。5月18日、下村文部科学相は東京都の舛添都知事と会談し、開閉式屋根の設置を五輪後とすることや観客席の一部を仮設スタンドとして規模を縮小することなどを伝える一方、周辺整備にかかる費用500億円の負担を求めた。国が都に対し「納期に間に合わない。しかし費用負担はお願いしたい」と、なんとも無様なお願いをした格好だ。今回の建築案には、選定当初から様々な疑問が呈されてきた。「アンビルドの女王」とも揶揄されるザハ・ハディド氏の当初プランは、あの自転車用ヘルメットのような奇抜な外観もさることながら、規模も費用もあまりにも大きすぎたのだ。また、安藤忠雄氏が主導する選定過程にも、合理性のなさや不透明さを指摘する声が絶えない。しかし安藤氏や事業主体の一つである日本スポーツ振興センターは、責任のなすり合いに終始し、これらの批判に向き合っていない。こうした中、一部有識者からは、計画の白紙撤回を求める声も上がりつつある。すでに、旧・国立競技場は解体され全くの更地になっている。新しいスタジアムを作らねばならない以上、この際、ザハ案を白紙撤回し、選定作業からやり直すというのも合理的な選択肢の一つだろう。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の公式サイトに掲載された「ビジョン」(http://tokyo2020.jp/jp/vision/)によれば、2020年東京オリンピックの基本コンセプトの一つは、「成熟国家となった日本が、今度は世界にポジティブな変革を促し、それらをレガシーとして未来へ継承していく」ことだそうだ。国立競技場の後背地には、日本が世界に誇る明治神宮の人工自然林がある。「明治神宮御境内 林苑計画」が当時の森林学の最新知見を集めてまとめられたのが、1921年(大正10年)。ちょうどオリンピックから100年前のこと。計画段階から「およそ100年後には広葉樹を中心とした極相林(人の手によらず自然の力だけで森林が維持でき、自生する植物の構成が安定する状態)になる」ことを目指して造営された。それから100年。明治神宮の森は、「成熟都市・東京」のシンボルのような存在だ。コンセプトに照らし合わせて考えると、新しい国立競技場は、この明治神宮の森の景観を壊すことなく周囲の環境に溶け込む必要があるだろう。また、「東日本大震災からの復興」も東京オリンピックの大きなテーマの一つだ。2013年に行われたオリンピック誘致のための最終プレゼンは、高円宮妃久子殿下による「世界から寄せられた東日本大震災被災地支援への感謝の言葉」からスタートしている。安部首相も「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。」と発言し、東日本大震災や福島第一原発事故はオリンピック開催の障害にはならないことを「保証」した。で、あるならば大会のシンボルである新国立競技場も、「震災からの復興」を象徴するものでなければならないはずだ。そこで、注目したいのが、坂茂(ばん しげる)氏がコンペにあたって提出したプランだ。日本スポーツ振興センターが公開している応募作品集に残る坂氏の外観パース図には、「周囲の環境に溶け込む小さなモジュール構造と開閉式屋根」との注釈が添えられている。また、他の応募作品に比べて、特筆して緑が多いのも氏のプランの特徴だろう。プラン立案にあたって、氏が、明治神宮の森をはじめとする神宮外苑エリアの地域特性を考慮した様子がうかがえる。また「震災からの復興」というテーマからも、坂氏の作品は注目に価する。坂茂氏は、2014年、「建築界のノーベル賞」とよばれるプリツカー賞を受賞した。審査委員長を務めた英国のピーター・パルンボ卿は「自然災害などで壊滅的な打撃を受けて家を失った人々に対して、自発的な活動を展開する」ことを、受賞理由の一つとしてあげている。つまり、坂氏は「復興建築の第一人者」としてプリツカー賞を受賞しているのだ。氏は1994年にルワンダ難民キャンプへシェルターを提供したことを皮切りに、阪神淡路大震災、四川省大地震、ニュージーランド地震そして東日本大震災と、紛争地・被災地にシェルターや仮設住宅を建て続けてきた。東日本大震災では、女川町に仮設住宅を建設。平地が少ない立地特性にあわせ、「コンテナを多層的に組み合わせる」解決策を打ち出したこの仮設住宅は、被災者からも「仮設とは思えない」「出て行きたくないほど快適」との声が聞こえるほど、好評を博している。また、東日本大震災における津波被害の一つのシンボルとも言えるJR石巻線・女川駅の復興駅舎を設計したのも坂氏だ。オリンピックのテーマの一つが震災からの復興であるならば、実際に東日本大震災の被災者での活動実績があり世界的な評価も高い坂氏のプランこそ、新国立競技場にふさわしい。そう思えてならないのだ。

*2-2:http://president.jp/articles/-/12514 (PRESIDENT 2014年5月9日) 建築界のノーベル賞」が志向する、建築家の大切な使命とは、 プリツカー賞建築家・坂茂氏インタビュー
●被災地支援にも高い評価
 坂茂のプリツカー賞受賞は、胸のすくような快事だった。ハイアット財団が”建築界のノーベル賞”を坂に与えた事実は、権力や富に依存する建築家像を大きく変えた。「社会の役に立つ」ことが建築家の大切な使命として真正面から見直されたのである。ポンピドゥー・センター・メス(photo by Didier Boy de la Tour)坂は、高校卒業後、単身米国に渡り、名門クーパーユニオンの建築学科で学んだ。素材・構造・デザインの三位一体となった建築の王道を歩み、東京とパリを一週間おきに往復する。欧州最大の現代美術館、ポンピドゥー・センターの別館「ポンピドゥー・センター・メス」は坂の代表作のひとつだ。一方で、1994年にルワンダ難民キャンプへシェルターを提供したのを皮切りに阪神淡路大震災、四川省大地震、カンタベリー地震、東日本大震災、フィリピン台風災害……と被災地にいち早く入り、仮設住宅を建ててきた。材料には厚紙の再生紙を耐火、防水加工した「紙管」や貨物用の「コンテナ」などを使う。こちらはすべてボランティアだ。王道建築と仮設建築、この車の両輪のような活動が国際的に高く評価されて受賞に至った。じつは、2007~2009年にかけて坂はプリツカー賞の審査委員を3回務めている。賞の重さと意味を熟知する彼自身、今回の受賞をどう受けとめているのだろうか。「今年1月末に賞のエグゼクティブ・ディレクター、マーサ・ソーンから受賞内示の電話がかかってきました。車で移動中だったのですが、彼女とは昔から親しくて、よく電話し合っていたので、最初、冗談を言っていると思いました。まったく予想してなくて、驚いた。で、正式発表まで絶対に誰にも言うな、と。それから2カ月くらい、ずうっと、みんなに、パートナーにも黙ってなくちゃいけなくて、けっこうキツかったな(笑)。賞って怖いじゃないですか。驕ったら終わりだし、チャンスも、仕事も増える可能性が高いけど、それに飛びついて自分の時間を失くしてボランティアができなくなったら意味がない。だから、この受賞は、今までどおりに続けなさいという奨励だととらえています」
●リーズナブルな紙管のポテンシャル見出す
 実際、坂が世界各地で講演をすると、「ボランティアの仲間に入れてほしい」と声をあげる若い建築家や学生がどんどん増えている。次世代がめざす建築家像は変わりつつある。「僕らが学生のころは、スター建築家になりたい、大きなディベロッパーの仕事で巨大な建物を建てたいという人が多かったけれど、変わってきていますね。建築の社会的有用性に若い世代は目を向けている。もしも、その先駆的や役割を僕が果たせたのだとしたら、この賞はそういう人たちの励ましにもなるでしょう」。坂が紙管に着目したのは、建築の仕事が少なくて展覧会の構成ばかりしていた80年代だった。無造作に積まれた反物の芯を「もったいない」と眺めていて、「コレだ!」と閃く。厚紙の管は長さも大きさも変えられて強度もある。研究を重ねて建築の材料にした。坂に初めて私が長いインタビューをしたのは1997年。坂は阪神淡路大震災で焼失した聖堂の代わりに「紙の教会」を、家を失ったベトナム人のために行政の規制を突破して「紙のログハウス」を公園に建てた後だった。なぜ、こんな活動をするのか、と不躾に訊ねると「建物が崩壊して人が亡くなるのを見てね、建物をつくる建築家として責任を感じた」とポツリと言った。ただ、被災地神戸でのボランティア活動は難行苦行の連続だった。心身は消耗し、どことなく「もうこりごり」と辟易しているようにも見えた。だが、坂は、その後も被災地に寄り添い続ける……。「もともと一般的な建築とボランティアの災害支援、両方を自分の仕事としてバランスをとりたいと考えていました。それが最近は、別々のものじゃなくて、つながってきた。唯一違う点は、設計料をもらっているか、いないかです(笑)。仮設住宅でも、お金のある人の家でも、自分自身の仕事としての満足度や取り組む情熱は、まったく変わりません。(photo by Hiroyuki Hirai)たとえば東日本大震災後に宮城県女川町に建てた仮設住宅。平らな土地が十分にないので、コンテナを重ねて3階建てにしました。特殊な解でしたが、部屋のレイアウトや木の利用、断熱、防音など工夫しています。いま行くと、住民の皆さん、ずっと住み続けたいと言ってくれます。仮設ですからローコストです。でも手抜きの安普請にはしていません。特権階級が財力や権力を社会に見せるために建築家が雇われて、モニュメンタルな建物はつくられてきました。それを否定するつもりはありませんが、お金のない社会的弱者の仮設でも建築家の技能は生かせると信じてやってきた。ところが、クライストチャーチで『紙のカテドラル』を完成させて、両者の境目はなくなったんです」。2011年2月のカンタベリー地震でニュージーランドの首都、クライストチャーチの大聖堂は深刻な被害を受けた。坂は現地の紙管とコンテナで三角形の断面を構成する「紙のカテドラル」を設計。13年8月に700人収容できる紙の大聖堂が出来上がった。「ボランティアでつくったけれど、完全に街のモニュメントになりました。教会の行事だけでなく、コンサートやコミュニティ・サービス、イベントにも使われ、復興のシンボルとして旅行社のパンフレットにも載っています。仮設でもモニュメンタルな建物になるんです。現実的な話をすると、事務所のパートナーはお金の入らない仕事ばかりでヒヤヒヤしてる。スタッフの給料を払うには他のプロジェクトもしっかり遂行しなくてはいけません。全体が滞ります」
●新国立競技場コンペの舞台裏
 建築家・坂茂氏これまで日本の建築界は、必ずしも坂を正当に評価してはこなかった。紙管を一瞥して「堅牢性のないアレが建築か」と見下す建築家もいた。狭い建築家ムラは坂を異端視することで奇妙な序列を保とうとしてきた。その建築家ムラが、2020年東京五輪に向けた「新国立競技場」の国際コンペでザハ・ハディドの巨大で複雑な形状のデザインが選ばれたことで揺れている。日本人で二人目のプリツカー賞受賞者の槇文彦が「緑豊かで歴史的文脈の濃い風致地区が損なわれる」と問題提起し、賛同した建築家約100人が計画縮小の要望書を文部科学省と東京都に提出。事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は、床面積を25%縮小し、建設費を約1800億円に抑えると発表したが、まだ判然としない。この騒動を坂はどう眺めているのだろう。「まず、オリンピックの開催地選考で、絶対にイスタンブールにすべきだと思っていました。やはり中東、イスラム圏で最初の五輪になりますからね。イスタンブールはヨーロッパともアジアともつながっていて、素晴らしい街です。こんなに最適な場所はない。それが、まぁ東京に決まった。仲間の建築家の批判はしたくないし、ザハだってよく知っている。先日、わざわざ、『受賞おめでとう』と手紙をくれました。彼女はもともとコンテクストを考える建築家ではないし、自分なりの案を出したわけで、選んだほうの問題です。どう考えたって、あんな巨大なものを……選んだほうの問題です」。ザハは、1950年にイラクのバクダッドで生まれている。父はリベラル派の政治家で、サダム・フセインが政権を掌握した後、家族とともにバクダッドを脱出した。1972年に渡英し、ロンドンの建築学校で学ぶ。彼女はコンセプトを重視し、空想的なものを現実空間に現出させる「脱構築派」の建築家といわれる。新国立競技場の話をしていて、坂の口から驚くような言葉が飛び出した。「あのコンペに僕も案を出したんですよ。見事に落ちましたけど(笑)。神宮の森と競技場を溶け込ませる配慮は当然です。規模も小さくなります。それは、僕だけじゃなく、他の提案者もしています。当たり前のことなのです。そのうえで、僕の案は、予算(当初の予定価格は1300億円)の8割ぐらい。もっと簡単にドームの開閉ができるプランです。従来の開閉式ドームは、建設にもメンテナンスにもすごくお金がかかる。一回一回の開閉が大変で、時間もかかります。そこを簡単な構造で、スピーディにできるようにしました。オリンピック用の競技場って、競技結果を公式記録とするために地面の風速は秒速何メートル以下とか、厳しい基準があるんですけど、そのコントロールもできるシステム。既存の技術で可能です。詳しく喋ると真似されちゃうので言えませんが、今度、どこかで競技場のコンペがあったら、やろうと思っています」
文科省や東京都の五輪担当者たちは、坂の発言をどう受けとめるだろうか。

<木材の利用推進>
*3-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=33493
(日本農業新聞 2015/5/30) 木材産業に焦点 14年度林業白書
 政府は29日、2014年度の森林・林業白書を閣議決定した。国産材の利用推進などの点で、林業と実需者を結ぶ木材産業の役割が重要だと強調。木材産業が直交集成板(CLT)をはじめとする新技術の開発などで新たな木材需要をつくり出すことや、国産材を木材製品に加工し、付加価値を高めて輸出することへの期待を示した。白書で木材産業を特集するのは初めて。国内の人工林が利用期を迎え国産材の供給量が増える中、原木の販売先となる木材産業は森林整備の観点からも欠かせない存在として焦点を当てた。需要に応じた木材製品の製造・販売を担い、林業の成長産業化にも貢献するという。

*3-2:http://qbiz.jp/article/63291/1/
(西日本新聞 2015年5月29日) 木材輸出、円安背景に45%増 14年度林業白書
 政府は29日、2014年度の「森林・林業白書」を閣議決定した。14年の木材輸出額が178億円と、前年比約45%増と大幅に伸びたことを紹介。為替の円安傾向などが背景だ。20年までに輸出額を250億円に伸ばす目標の達成に向け、国産材の普及活動に取り組む姿勢を強調した。日本の木材輸出は、12年は93億円にとどまっていた。その後、円安のほか、中国などの木材需要の増加が寄与して、13年には約32%増の123億円となっていた。14年の輸出先は中国が最も多く、韓国、台湾、フィリピンといったアジア諸国が上位を占めた。品目別では丸太が特に増加した。白書は「新興国での経済発展や人口増加により、今後も木材需要が増加することが見込まれている」と指摘した。13年の木材自給率は、国産材の供給量が増加したことなどから、前年比0・7ポイント増の28・6%となった。過去最低だったのは02年の18・2%。白書ではこのほか、木材産業の現状や課題が取り上げられた。競争力強化のために、消費者らの需要に応じた木材製品の生産や販売が必要だとした。

*3-3:http://qbiz.jp/article/63797/1/
(西日本新聞 2015年6月5日) スギ原木を中国へ共同輸出 九州北部3県が事業計画
 円安を追い風に、福岡、佐賀、長崎3県が本年度、スギの原木を中国に向けて共同輸出する事業に試験的に乗り出す。経済成長が続く中国では貨物を保護する梱包(こんぽう)材や建築用構造材の需要が急拡大。各県単独では輸送船に見合う一定量の確保が難しいことから、合同集荷で安定供給を図る。財務省貿易統計によると、日本のアジア向け原木輸出は2010年ごろから増え始め、14年の輸出量は約51万8千立方メートルと、ここ5年で約8倍に膨らんだ。輸出先の5割以上を中国が占めており、3県の共同輸出も主に中国市場を狙う。全国有数の林業地帯の九州南部では、すでに森林組合などが原木輸出に取り組み、輸出量を伸ばしている。九州北部3県ではスギやヒノキの人工林の7〜8割が伐採の適齢期を迎えているが、国内需要が低迷しており、利用先の確保が課題になっている。ただ3県は林業規模が小さく、県単位では中国向けの輸送船に見合う量(1回の航行当たり1千立方メートル程度)を定期的に確保するのは難しいのが現状。3県が連携して集荷することで安定的な量を確保できれば、販路を開拓しやすくなる。中国向けは需要に応じて主にスギの低級材を、韓国にもヒノキを輸出する。佐賀県の伊万里港から輸出する予定で、福岡県は森林組合などが同港まで原木を運ぶ経費を一部負担して支援する方針。3県は「安定供給の仕組みを構築し、価格交渉力をつけて各県産材の需要拡大につなげたい」としている。

*3-4:http://qbiz.jp/article/60425/1/ (西日本新聞 2015年4月17日) 日田市、20年ぶり林業振興ビジョン 業種横断的な連携目指す
 大分県日田市は林業振興の指針となる「新しい日田の森林・林業・木材産業振興ビジョン」をまとめた。基幹産業の再生に向けた鍵は「業種横断的なネットワークの形成と強化」にあると指摘。「川上(森林・林業)」から「川下(木材産業)」までの関連業種、観光やまちづくりの団体などが連携し、新ビジネスの創出や日田材の付加価値向上などにつなげたいとしている。ビジョン策定は1993年の「新日田林業構想」以来、約20年ぶり。市が設置した林業や行政関係者、学識経験者らでつくる策定委員会と、川上と川下の関係者でつくる二つの専門部会で議論を重ねてきた。振興ビジョンでは、森林・林業・木材産業の現状と課題を整理した上で、森林の適正な整備や保全を図る「森林(もり)を守り・育てる」▽伐採期を迎えた森林資源を有効活用する「森林を活(い)かす」▽担い手育成や市民の関心を高める「森林でつながる」−の三つの目標を掲げ、実現に向けた具体例を示している。例えば、木質バイオマスの燃料を安定供給するため、市有林を活用した早生樹種の育成、現代の生活スタイルに合ったデザイン性の高い木材製品の開発、「森林浴ツアー」など、地域資源を生かした観光プログラムの開発などに取り組むとしている。振興ビジョンは市のホームページから閲覧できる。原田啓介市長は「ビジョンをどう具体化させていくかが問われる。市民と協働しながら基幹産業の再生に取り組みたい」と話している。


PS(2015年6月19日追加):*4の「寄付を募ってもよい」「稼ぐ発想が不可欠」という各競技団体の意見はもっともであるとともに、いろいろな団体が世界大会を誘致して世界に注目されれば、地球環境を護る方法や健康維持対策を世界の多くの人に発信することができる。ただ、オリンピックのように大量の金が動く場合は、きちんと管理され公正に使われていることについて、監査法人の監査を受けて監査証明をもらっておくことが、国民のため及び運営に関するいちゃもんづけに対応するために必要だ。

*4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11814678.html
(朝日新聞 2015年6月19日) 新国立、競技団体も物申す 「寄付募ってもいい」「稼ぐ発想不可欠」
 新国立競技場の建設は最近、国と東京都の対立ばかりに注目が集まり、政治問題のように取り上げられる。でも、2020年東京五輪・パラリンピックで使い、大会後の活用法を考えるべき主役はスポーツ界のはず。サッカー、陸上、ラグビー界に聞いた。
■問われる発信力
 サッカー界が見据えるのは、2度目のワールドカップ(W杯)日本開催。だから、小倉純二・日本サッカー協会名誉会長は憤る。「安倍総理が五輪招致のプレゼンで立派な国立を造ると約束した。国際公約を破る損失は計り知れない」。当初の計画通り、五輪後も可動式の客席を備えた8万人規模の維持を日本協会が求めるのは、国際サッカー連盟(FIFA)の規定で、W杯開催にはその規模の競技場が必須とされているからだ。小倉氏自身、国際オリンピック委員会(IOC)委員でもあるブラッターFIFA会長らに新国立の魅力を力説し、東京支持を訴えてきた。ザハ・ハディド氏のデザインを採用した国際コンペにも審査委員として参加した小倉氏は、「コンペの過程では建築の専門家も入り、技術的に難しい部分を何十カ所もチェックして2千億円を超える案は外した。その予算の範囲で出来ると思っていたら、突然数千億円とは……」。50年までに再び日本でW杯を開いて優勝するという目標がかすみかねないが、前向きな提案もある。「使う団体が払っても、寄付を募ってもいい。W杯をまた見たい人なら、寄付をしてくれる」。日本陸連の横川浩会長は新国立建設は「意味のある社会投資だ」と訴える。常設か仮設かで結論が出ないサブトラック問題も、常設にして一般開放すれば、1964年東京五輪で選手村の練習場だった通称「織田フィールド」のように、市民に親しまれる存在になると考える。「陸上の大会だけで新国立の維持費(年間約35億円)を賄えるとはとても言えないが、使ってもらえばそれなりの収入になる。五輪の余韻が冷めないうちに、世界陸上も招致したい」。新国立の本格的な「こけら落とし」は、19年秋開幕のラグビーW杯日本大会の開幕戦。決勝の舞台にもなる。日本ラグビー協会は、8万人の観客で満杯にすることを見込んでいる。一方、新国立にほど近い秩父宮ラグビー場は、五輪期間中は駐車場になる予定だ。日本協会幹部は「秩父宮が使えない期間は、ファンが離れないよう別会場の整備などで自治体と交渉したい」と話している。元IOC委員で日本サッカー協会会長などを歴任した岡野俊一郎氏は、ポスト五輪を見据えて提案する。「国立競技場のスポーツクラブをつくるべきだ。プールやレストラン、医療施設など、スポーツや健康にかかわるものがすべてそろうのが理想。都心の一等地にあるのだから、年会費10万円でも需要は見込める。民間の知恵を借りて、稼ぐ発想が不可欠」。求める水準の競技場を建てるためにも、スポーツ界には有益な活用法に向けた知恵を出し合い、世論を喚起する発信力が問われる。

PS(2015年6月23、24日追加):東京は容積率を緩和して再開発が済んでいる東京駅近郊でさえも、下の写真のように皇居以外は申し訳程度にしか緑がなく、再開発しても環境がよくなっていない。また、スカイツリ―(そもそも、これを“ツリ―”と呼ぶのは可哀想な感覚である)周辺には殆ど緑がなく、川や川べりも見るに堪えない。一方、海外では、道路に占める並木や緑の面積が大きくて、町全体が目を覆いたくなるようなものではなく心を潤すものが多く、都市の気温上昇を抑えている。私は、東京も環境都市になる計画を立てて、東京オリンピックまでに関連地域を変えていくのがよいと考える。
 また、*5のように、経産省は、「買い取り費用が電気料金に上乗せされて国民負担が増える」ことを理由として太陽光発電を抑制するそうだが、国民負担・環境への悪影響リスクが原発は無限大であり、自然エネルギーとは比較にもならない。そして、東京など大都市のビルや道路で、建材に溶け込む形で太陽光発電を行えば膨大な電力が得られると同時に、電気に変換されたエネルギーは熱にならないため、都市の気温上昇が緩和される。そのため、このような電源構成比率を定めて技術進歩を妨害する経産省の科学的合理性のない思考力・判断力が重大な問題なのである。

    
  再建済の東京駅     東京駅周辺     スカイツリー周辺    イギリスの並木道

   
  米国の並木道   パリ、凱旋門付近の並木道  ドイツの並木道  チリ、サンチアゴの自転車道

*5:http://qbiz.jp/article/65192/1/
(西日本新聞 2015年6月24日) 経産省、太陽光偏重の見直し着手 再生エネ買い取りで
 経済産業省は24日、有識者委員会を開き、太陽光など再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の再見直しに着手した。太陽光に偏らず、地熱や小規模水力などをバランス良く普及させるための価格設定の在り方を検討し、安定した運用につなげる。年内にも方向性を示す見通しだ。政府は2030年の電源構成比率で再生可能エネルギーを現在の約2倍の22〜24%にする目標を掲げており、制度の再検討で達成を後押しする。事業化に時間がかかる地熱などの拡大に向け、年度ごとに算定する買い取り価格を長期間据え置くなど価格設定の方法についても議論した。太陽光は買い取り価格が高く設定され、太陽光に偏って導入が進んだ経緯がある。普及に伴い、買い取り費用が電気料金に上乗せされて国民負担が増える懸念もあり、負担抑制策も検討を続ける。制度をめぐっては高い買い取り価格で認定を受け、太陽光パネルの値下がりを待ってから発電を始める事業者がいるとも指摘される。設備が整い電力会社と売買契約した段階で買い取りを認めるなど、チェック態勢強化も今後の焦点だ。買い取り制度は12年7月に始まった。太陽光の増加が想定を超え、電力5社が新たな契約手続きを一時、中断したことから経産省が今年1月に制度を見直し、発電抑制の要請をしやすくした。


PS(2015年6月27日追加):都市に、並木、緑地帯、公園を増やして、やすらぎや楽しさのある街を作るには、里山から大きな木を運んだり、里山で木を栽培したりすることが必要不可欠であるため、*6はよいと思う。私は、クリスマスに銀座で、並木がモミの木のクリスマスツリーになっていたのを見てびっくりしたことがあるが、並木や緑地帯の木は、街の雰囲気にあわせて、いろいろな季節にそれぞれの花を咲かせる木の需要が高いと思うので、都市の街づくりと木の需要を調査して栽培すればヒットすると考える。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/201946
(佐賀新聞 2015年6月27日) 武雄市“売れる木”植え住民管理 里山再生で雇用創出
■高齢者の生きがいにも
 荒れた山を開墾して苗木を植え、高齢者に管理を任せて生きがいづくりと所得向上につなげてもらう武雄市の「里山再生プロジェクト」が26日、始動した。北方町の市有山林にサカキとシキミの苗木を植えた。育った木は挿し木用に無償で提供し、新たに里山を開く取り組みを広げる。過疎化や高齢化に伴う里山の荒廃対策として考えた。人が入らなくなった山を開墾し直して苗木を植え、管理は地域の高齢者に任せる。市は市場調査などを通じて流通ルートを開拓し、植栽に取り組む人が増える環境をつくる。里山再生と地域活性化、高齢者の健康づくりと所得向上、産業としての雇用創出を目指す。第1弾として北方町西宮据地区の市有山林約2千平方メートルを開墾した。神事に需要があるサカキの苗木140本、仏事に使うシキミの苗木60本を1千平方メートルずつ植えた。地区の60~70歳代の11人が「緑の会」をつくって管理する。2年ほどで挿し木用の苗木がとれるようになる。苗木は山で栽培を考える人たちに無償で配り、里山再生を拡大する。本年度の事業費は、苗木購入やイノシシ防護柵、管理委託費など計100万円。植栽式で小松政市長は「サカキは武雄の山にも自生しているが、市場にあるのはほとんどが輸入物といわれている。国産をしっかり供給することで所得向上や里山保全につなげ、雇用創出にも広げたい。武雄の宝を発掘して第2、第3弾を考えたい」と意気込みを語った。


PS(2015年7月1日追加): *7-1、*7-2のように、東京オリンピック・パラリンピックで使用する新国立競技場は巨大アーチを維持して、オリンピック史上最高の2520億円の整備費をかけることになったそうだ。私も、女性建築家のザハ・ハディド氏のデザインが取り入れられた当時は祝福したが、近い将来、首都直下地震が想定される中、鉄骨製の重たい巨大アーチは耐震性に問題がある上、このデザインは、「環境」という視点でのメッセージ発信力もなく、2520億円もの建設費は他と比較して高すぎる。そのため、迅速に変更するのがよいと考える。

*7-1:http://qbiz.jp/article/65194/1/
(西日本新聞 2015年6月24日)新国立競技場の巨大アーチ維持 整備費2520億円に
 政府は24日、2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場の整備費について当初予定を800億円以上も上回る2520億円とする方針を固めた。屋根を支える2本の巨大なアーチ構造を特徴とするデザインは維持する。近く建設業者と工事契約を結び、10月に着工する予定で、19年のラグビー・ワールドカップ日本大会までの完成を目指す。景観を阻害し、コストも掛かりすぎるとして、建築家や市民からデザインの見直しを求める声が上がっていたが、政府は工事の遅れにつながる大幅な設計変更は困難と判断した。財源確保策が今後の焦点となる。資材や人件費の高騰、消費税増税の影響などで、整備費は大幅に膨張した。東京五輪の準備に携わる主要団体の調整会議で29日、報告する。文部科学省と事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は建設費1625億円、旧国立競技場の解体費67億円を含めて当初1692億円としていた整備費が膨らむのを抑えるため、観客席の一部を仮設にするなどコスト削減に向けた計画見直しを続けていた。文科省は今後、東京都にも見直しの内容を説明、費用の一部として500億円の負担を受け入れるよう求めたいとしている。巨大アーチのデザインは、12年にJSCが実施した国際公募で選ばれた。だが、技術的に難しくコスト増や工事の遅れにつながるなどと建築家らが反発、デザインの見直し案も提案していた。

*7-2:http://thepage.jp/detail/20150626-00000005-wordleaf?utm_expid=90592221-37.fVZ9WgkFQES3eBF2lg39IQ.0&utm_referrer (The Page 2015.6.26) 新国立競技場の計画見直し 責任はどこにあるのか? 大杉覚・首都大院教授
 東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の建設計画が迷走している。総工費が当初予定よりも1000億円近く膨らみ、政府は東京都に費用の一部負担を求めているが、都側は反発し、解決の糸口は見えていない。この迷走の責任はどこあるのか。原因は何なのか。都市行政が専門の大杉覚(おおすぎ・さとる)首都大学東京大学院教授に寄稿してもらった。2020年東京五輪の会場整備が急ピッチで進められています。都心に会場を集中させる「コンパクト五輪」をコンセプトとした当初計画は、東日本大震災の復興事業等の影響で建設資材費・人件費の高騰に見舞われて変更を余儀なくされたものの、さいたまスーパーアリーナ(バスケットボール)や江ノ島(セーリング)など首都圏各地の既存施設を活用することで、ようやくほとんどの競技で会場確保の見通しがつきました。そうしたなか、要となるメインスタジアム、新国立競技場の建設計画が混迷を極めています。なぜでしょうか。何が問題で、この混迷の原因と責任はどこにあるのでしょうか。
●これまでの経緯と問題点
 新国立競技場の建設計画に対しては、これまでに様々な立場からの批判が提起されています。まずは膨大な建設費を要することであり、建築構造上に欠陥や技術的な困難があること、あるいは、神宮外苑という歴史的な景観にそぐわないデザインであることなどです。これらの批判は、国際コンペで最優秀賞として採用された、世界的に著名な建築家ザハ・ハディド氏による、アーチ状の構造に巨大な可動式屋根を配した奇抜なデザイン案に由来するといってよいでしょう。ただし、混迷の「原因」はより根深いものです。一言で言えば、事業構想から計画、実施に至る事業プロセスに「不透明な構図」が伺えるのです。これまでの経緯を振り返りながら、問題点を確認しましょう。新国立競技場のデザイン案決定は、国際コンペ方式で行われました。建築家安藤忠雄氏をトップに据えた審査委員会が設けられ、公募が開始されたのが2012年7月、審査結果を受けて、国立競技場将来構想有識者会議がハディド氏のデザイン案を決定したのが同年11月のことです。ハディド案に対する批判をいち早く唱えた建築家の槇文彦氏は、大規模な事業にもかかわらず、公募条件が緩く、国際コンペの進め方が粗雑であったため、ハディド案のような景観面で配慮を欠いた巨大な建築物のデザインが提示されたのではないかと、初期段階での取組の問題点を指摘しています(『新国立競技場、何が問題か』平凡社)。また、審査過程についても問題が指摘されています。公募段階での総工費は約1300億円と想定さていました。ところが、翌13年9月に東京五輪開催が決定され、改めて発注者である日本スポーツ振興センター(JSC)がハディド案をもとに試算したところ、一挙に3千億円にまで跳ね上がったのです。ロンドンをはじめ過去の夏季五輪メインスタジアムの整備費はいずれも1千億円に及ばなかったことを考えると、そのコストがいかに突出したものかがわかります。少なくとも、安藤氏ら建築の専門家を中心としたチェックが甘かったと言わざるを得ないでしょう。本来、現実的ではない建設費を要する案は審査過程を通じて退けられたはずです。その後、さすがにJSCは規模を縮小して総工費の圧縮を図り、1625億円に修正して基本設計の承認を有識者会議から得ますが(2014年5月)、旧国立競技場の解体着手(2015年3月)後の試算では総工費は再び膨張し、2500億円あるいはそれ以上の費用を要する見通しが示されました。下村博文文部科学大臣が都庁を訪問し、正式に500億円の費用分担協力を舛添要一都知事に要請したのもこのタイミングでのことでした(同年5月18日)。


PS(2015年7月15日追加):文科省とJSC現行案を変更できない理由は、①女性建築家ザハ・ハディド氏のデザインを基にするとした「国際公約」に反すること ②一九年のラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会に間に合わないこと だそうだが、①のハディド氏のデザインを基にするか否かは国内で決めるべき問題であって国際公約ではない上、「カネをかけないオリンピックを行う」というオリンピックのコンセンサス違反でもある。さらに、建物のデザインを考えるのは小学生のお絵かきではないため、あらかじめ耐震設計やコストを考慮しておくのが当然で、受注価格が当初の予定を大きく上回り、耐震性も保証できないのであれば、ハディド氏と何らかの契約があったとしても破棄する理由になるだろう。また、②については、横浜スタジアムの改装や東北に新しいスタジアムを建設するなどの代替案もあり、それらは、ハディド氏のデザインを変更すれば費用の捻出も容易だ。

*8:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015071502000124.html
(東京新聞 2015年7月15日) 新国立問題で公開質問状 市民団体が文科相らに
 二〇二〇年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場(東京都新宿区)の工費が二千五百二十億円に高騰した問題で、計画の見直しを求めている市民団体「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」は十四日、下村博文文部科学相と事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)の河野一郎理事長に対し、工費の内訳など十四項目の公開質問状を郵送した。文科省とJSCは現行案を変更できない理由として、女性建築家ザハ・ハディド氏のデザインを基にするとした「国際公約」に反することや、一九年のラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会に間に合わないことなどを挙げる。質問状では、これらの根拠を尋ね、ハディド氏との契約書の公開を要求。完成後の設置となる開閉式屋根などの費用を含めた「ほんとうの総工費」や、計画の責任者が誰かも明らかにするよう求めている。会は、「現行案を承認しない」とする同会の主張がネット上で四万七千人超の賛同を得ていると強調。公開質問状には二十八日までの回答を求め、内容は会のホームページでも公開するとしている。JSCは九日、施工業者の大成建設とスタンド部分の一部資材の発注契約を結んだが、会の共同代表の建築家大橋智子さんは「今からでも止められる」と話す。会は計画見直しを求める請願を国会に提出するため、八月末までに二十五万人を目標に署名を集める。


PS(2015年7月18日追加):これまで新国立競技場建設計画の変更を決断できなかったのは、①森元首相が「たった2500億円出せないのか」という発想で“夢”を追い駆けるタイプの人である ②首相はじめその周辺には旧森派が多く、世話になったため森氏には気を使う ③変更すると違約金発生などの問題が生じる可能性があり、変更決定前にそれらをクリアにする必要があった 等が理由だろう。
 しかし、首相の最終結論である現在の新国立競技場建設計画の白紙撤回は英断であるため、素直に褒めるべきであり、これを批判するようであれば「国が一度決めたことは、どんなに不都合が明白になっても決して変更できない」ことになってしまう。なお、安保関連法案が衆議院を通過した直後の決定だったことは、メディアが、安保関連法案について、感情論や政争に落とし込まずにポイントをついた理論的な議論をわかりやすく淡々と展開すればよく、報道するからにはその能力が求められるのである。

*9:http://qbiz.jp/article/67069/1/ (西日本新聞 2015年7月18日) 支持率に陰り、新国立白紙で英断演出 首相、安保審議への影響懸念
 安倍晋三首相は17日、巨額の総工費問題に揺れた新国立競技場(東京都新宿区)建設をめぐり現行計画の白紙撤回に踏み切った。2020年東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会会長を務める森喜朗元首相との会談を経て、トップダウンによる政治決断を演出した。見直し期限を過ぎつつあった局面での突然の方針転換は、巨額費用に対する国民の強い批判に追い込まれた形だ。安全保障関連法案の強引な審議と併せ、政権批判が増幅しかねないとの「焦り」(官邸筋)も透ける。
◆「先月から検討していた」
 「このままでは、みんなに祝福される大会にすることは困難だ」。首相は17日午後、官邸で記者団を前に現行計画を全面的に見直す意義を強調した。競技場の建設を所管する文部科学省を中心に計画見直しを始めたのは、政府の説明では「1カ月ほど前」(首相)。負担をめぐり下村博文文部科学相と開催都市の東京都の舛添要一知事が言い合う姿が連日のように報道された。首相は周囲に、巨額の総工費に関し「絶対におかしい」として新たな計画づくりを指示したという。だが、こうした動きが現実のものとして表面化したのは今週だ。報道各社の世論調査で計画見直しを求める声が高まり、与党内からも不満が噴出。15日には首相が「白紙に戻す」という言葉を17日の発表の際に盛り込むことを決めたという。
◆説得工作
 首相にとって、見直しを進めるには避けては通れない道があった。実現には、19年5月とした完成を遅らせることが不可欠で、鍵を握るのは大会組織委会長を務め、首相の大先輩に当たる森喜朗元首相だった。日本ラグビー協会会長も6月まで10年間務めた森氏が主導し、19年秋のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会を招致した。主会場は新国立競技場で、それに間に合わせるとの制約が「見直しのネック」(官邸筋)に。W杯での使用断念へ説得工作が必要だった。首相への援護射撃もあった。自民党の二階俊博総務会長が15日のBS番組で競技場について「節約する方法はないのか」と問題提起をすると、公明党幹部も含め見直し論が相次ぎ、森氏説得の舞台は整った。17日午後の官邸執務室。「ゼロベースで計画を見直したい。ラグビーのW杯は間に合いません」。首相がこう告げると、森氏は「残念ですね」と言うよりほかなかった。
◆突貫工事
 「白紙」発表の決断の大きな要素として、安保法案をめぐる首相の政治姿勢に、世論の批判が集中したことがあるのは間違いない。報道各社の内閣支持率も低落傾向で、政府、与党内に「これ以上問題を抱えれば、政権が持たない」(官邸関係者)との危機感が募ったのは事実だからだ。本格検討に入ったのはいつか。政府関係者は「約1週間前だ。首相の表明に向けて突貫工事だった」と内幕を明かす。森氏は、首相との会談で「20年の五輪までにできなかったら、大変なことになりますよ」と忠告した。唐突な変更には関係者から「朝令暮改はやるな」(舛添氏)との不満がくすぶる。野党は「世論の反発に押され、見直しを迫られた」(今井雅人維新の党政調会長)と捉え、同様に反対が根強い安保法案とともに国会論戦で追及する構えだ。国際オリンピック委員会(IOC)や建築家、建設業者らの思惑も交錯する。政府高官はこうつぶやく。「白紙撤回は、パンドラの箱を開けるようなものだ」
◆森氏「たった2500億円出せないのか」
 2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場の建設計画が白紙となったことを受け、大会組織委員会の森喜朗会長は17日、東京都内の組織委オフィスで取材に応じ「施設に掛けるお金は都が3千億円。組織委が五輪に掛けるお金はその比ではない。国がたった2500億円も出せなかったのかねという不満はある」と語った。コスト削減を促す国際オリンピック委員会(IOC)の五輪改革の趣旨に沿う判断と認めつつ「日本スポーツの聖地としていろいろと生み出していけると夢を描いていただけに大変残念」と思いを吐露した。本番前に設備や運営をチェックするための「テスト大会がどういう日程でできるか。一番気になるのは完成時期」と懸念を示した。安倍晋三首相に新たなデザインとして12年の国際公募の優秀賞、入選の2作品を検討するように進言したものの「そちらの方が(工費が)高いのでゼロからやる」との返答があったことも明かした。下村博文文部科学相に対しては「これまで責任があるっていったって何もやってやしない。今度は少し本気になってやらなきゃ」と注文を付けた。
   ◇   ◇
 森喜朗元首相は17日のBS朝日番組収録で、新国立競技場の総工費が2520億円に膨張する大きな原因となった屋根を支える2本の巨大なアーチ構造のデザインについて「見直した方がいい。もともとあのスタイルが嫌だった」と述べた。「生がきみたいだ。(東京に)合わないじゃないか」とも語った。
◆抜本見直し、否定の末
 安倍晋三首相は新国立競技場の建設計画を「1カ月ほど前から見直せないかを検討してきた」と語った。だが、政府が建設費を約2520億円と発表した6月29日以降も、首相や閣僚は見直しに否定的な発言を重ねていた。首相は10日の衆院平和安全法制特別委員会で、建設計画を見直せば「(五輪に)間に合わない可能性が高い」と答弁。菅義偉官房長官も16日の記者会見で「工期の問題が現実的にある」と述べた。下村博文文部科学相は12日の会見で「斬新なデザインを招致に使ってきた。『お金がないからやめた』では国際的な信用の問題にも関わる」と話し、デザイン変更を否定している。6月29日の建設計画発表を受け、7月7日には新競技場の整備主体である日本スポーツ振興センターの有識者会議が実施計画を了承した。首相が言う「1カ月前」から、見直しを具体的に検討した形跡は見当たらない。政府高官は「文科省に聞いてみたが、見直しを検討する話はなかった」と打ち明ける。菅氏は17日の会見で「下村氏から今月中に判断すればぎりぎり五輪本番に間に合うと、きょう報告を受けた」と説明。下村氏は会見で根拠を問われると「専門家に詳しく聞いた結果」と述べるにとどめた。週末は世論調査が予定されている。「安保法案と新競技場への批判が重なれば数字はボロボロだ。週末をまたぎたくなかったので、駆け込みで見直したのだろう」。自民党関係者は方針転換の背景をこう解説した。

| 環境::2015.5~ | 01:56 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.6.15 論点を間違えている集団的自衛権に関する批判、及び安保関連法案は解釈改憲ではなく違憲であること (2015年6月16、24、26日、7月15日に追加あり)
       
安保法制案の全体像   同組立   想定事例(??)      憲法9条 

(1)集団的自衛権の定義
 *1-1、*1-2のように、集団的自衛権とは、国連憲章第51条で加盟国に認められている自衛権の一つで、ある国が武力攻撃を受けた場合、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、密接な関係にある他国が共同して防衛にあたる権利で、行使に当って国連加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならないとされている。

 そのため、日本も主権国として国連憲章第51条により個別的及び集団的自衛権の双方をを有しているが、憲法9条で戦争放棄と戦力不保持を規定しているため、これまで集団的自衛権は憲法の容認する自衛権の限界を超えると解され、行使しないとされてきたのだ。

 そして、*1-1のように、平成26年(2014)7月に自公連立政権の閣議決定により従来の憲法解釈を変更して、一定の要件を満たした場合に集団的自衛権の行使を容認する見解が示されたとされ、武力行使が許容される要件には、①日本と密接な関係にある他国への武力攻撃により日本の存立が脅かされ、国民の生命・自由・幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある ②日本の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない ③必要最小限度の実力を行使すること が挙げられた。

 私は、「日本も主権国として国連憲章第51条により個別的及び集団的自衛権の双方を有しているが、憲法9条の範囲内でのみそれを行使することにしている」というのが正しいと考える。

(2)それでは、憲法9条の範囲内とはどこまでか(ここが重要)
 結論から言って、日本の領土・領海・領空を占領する目的で武力攻撃が行われた場合には自衛権を行使することができ、それは個別的であるか集団的であるかを問わないと考える。つまり、警察官が駆けつけてくるまで夫と協力して自分の家に入った強盗とは闘うが、隣の家やまして遠くの家に出かけて行ってまでは闘わないということだ。

 しかし、これまで個別的自衛権のみが憲法9条の範囲内だと主張されていたのは、「集団的自衛権=日本が外国を護るために外国で闘うこと」と解釈されていたからであり、日本を護るのを外国に手伝ってもらうことや隣近所と力を合わせて日頃から周辺を警備しておくことを集団的自衛権行使の範囲に入れていなかったからである。

 なお、*1-3のように、公明党は6月12日に集団的自衛権を使える範囲を日本周辺の有事に限定したうえで認めるかどうかの検討を始めたそうだが、私も、現行憲法下では、日本の領土・領海・領空を武力攻撃された場合と力を合わせて周辺を警備する場合に限るべきだと考えている。

(3)審議中の安保関連法案は、解釈改憲ではなく違憲である
 *1-2の国連憲章により、日本も主権国家として国連憲章第51条により個別的及び集団的自衛権の双方を有しているが、日本国憲法9条の範囲内でのみその行使は容認され、それは専守防衛であるため、*2-1のように、現在審議中の安保関連法案は違憲である。

 また、憲法は最高法規であり一般法より上位であるため、*2-2のように、下位法で改憲することは許されない。しかし、私は、現在の自民党の「憲法改正草案」はお粗末な上、変更点が多岐にわたり、改正後の国家観は現行憲法よりも劣るため、これなら憲法の変更はしない方が余程よいと思っている。

 憲法変更の理由とされている「現行憲法は敗戦後に短期間で作られ連合国に押しつけられた」というのは事実とは異なり、日本国内では英語を学ぶことすら禁止されていた終戦前から、連合国は終戦後の統治を考えて日本文化を調べあげ草案を練っていたことを、ルース・ベネディクトが著書「菊と刀」にかなり正確な日本文化の分析とともに記載している。そのため、8日間くらいの短期間で作ったものではなく、連合国が理想とする国民主権、基本的人権の尊重、平和主義のようなわが国の終戦前と比べれば民主主義への革命的な変更が憲法に織りこまれ、これらは敗戦でなければフランスなどのように国民同士が血を流して闘いとらなければならなかった理想的規範なのである。

 なお、「孫子の兵法」で有名な孫子も、「敵を知らず己を知らざれば百戦あやうし。敵を知り己を知れば百戦百勝す」「百戦百勝は善の善なるものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」などの現代にも通じる有名な言葉を遺している。

(4)国民の意見
 *3-1のように、集団的自衛権行使を容認し、自衛隊の活動範囲を広げる安保関連法案への反対を訴える集会やデモ行進が2015年6月13日、九州各地であった。また、*3-2のように、長野駅近くで、赤いスカーフやTシャツ、帯などを身に着けた女性約70人がデモ行進し、憲法を学ぶ会もできている。さらに、*3-3のように、神奈川県内の鉄道やトラック、港運などの労働者でつくる労働組合「神奈川県交通運輸産業労働組合協議会(神奈川交運労協)」も、同日、「われわれは戦争のための輸送はしない」と訴えながらデモ行進している。

(集団的自衛権とは)
*1-1:https://kotobank.jp/word/%E9%9B%86%E5%9B%A3%E7%9A%84%E8%87%AA%E8%A1%9B%E6%A8%A9-77203 【集団的自衛権】
 国連憲章第51条で加盟国に認められている自衛権の一。ある国が武力攻撃を受けた場合、これと密接な関係にある他国が共同して防衛にあたる権利
[補説]日本は主権国として国連憲章の上では「個別的または集団的自衛の固有の権利」(第51条)を有しているが、日本国憲法は、戦争の放棄と戦力・交戦権の否認を定めている(第9条)。政府は憲法第9条について、「自衛のための必要最小限度の武力の行使は認められている」と解釈し、「個別的自衛権は行使できるが、集団的自衛権は憲法の容認する自衛権の限界を超える」との見解を示してきたが、平成26年(2014)7月、自公連立政権下(首相=安倍晋三)で閣議決定により従来の憲法解釈を変更。一定の要件を満たした場合に集団的自衛権の行使を容認する見解を示した。武力行使が許容される要件として、(1)日本と密接な関係にある他国への武力攻撃により日本の存立が脅かされ、国民の生命・自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある、(2)日本の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない、(3)必要最小限度の実力を行使すること、を挙げている。

*1-2:https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/unch.htm
国際連合憲章(要点のみ)
署名
1945年6月26日(サン・フランシスコ)
効力発生
1945年10月24日
日本国
1952年3月20日内閣決定、6月4日国会承認、6月23日加盟申請、
1956年12月18日効力発生、12月19日公布(条約第26号)
 われら連合国の人民は、われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し、正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進すること、並びに、このために、寛容を実行し、且つ、善良な隣人として互に平和に生活し、国際の平和及び安全を維持するためにわれらの力を合わせ、共同の利益の場合を除く外は武力を用いないことを原則の受諾と方法の設定によって確保し、すべての人民の経済的及び社会的発達を促進するために国際機構を用いることを決意して、これらの目的を達成するために、われらの努力を結集することに決定した。よって、われらの各自の政府は、サン・フランシスコ市に会合し、全権委任状を示してそれが良好妥当であると認められた代表者を通じて、この国際連合憲章に同意したので、ここに国際連合という国際機関を設ける。
第1章 目的及び原則
第1条〔目的〕
国際連合の目的は、次の通りである。
1 国際の平和及び安全を維持すること。そのために、平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること並びに平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること。
2 人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること並びに世界平和を強化するために他の適当な措置をとること。
3 経済的、社会的、文化的又は人道的性質を有する国際問題を解決することについて、並びに人種、性、言語又は宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成すること。
4 これらの共通の目的の達成に当って諸国の行動を調和するための中心となること。
第2条〔原則〕
この機構及びその加盟国は、第1条に掲げる目的を達成するに当っては、次の原則に従って行動しなければならない。
1 この機構は、そのすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている。
 すべての加盟国は、加盟国の地位から生ずる権利及び利益を加盟国のすべてに保障するために、この憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならない。
2 すべての加盟国は、加盟国の地位から生ずる権利及び利益を加盟国のすべてに保障するために、この憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならない。
3 すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない。
4 すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。
5 すべての加盟国は、国際連合がこの憲章に従ってとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ、国際連合の防止行動又は強制行動の対象となっているいかなる国に対しても援助の供与を慎まなければならない。
6 この機構は、国際連合加盟国でない国が、国際の平和及び安全の維持に必要な限り、これらの原則に従って行動することを確保しなければならない。
7 この憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく、また、その事項をこの憲章に基く解決に付託することを加盟国に要求するものでもない。但し、この原則は、第7条に基く強制措置の適用を妨げるものではない。
(中略)
第51条〔自衛権〕
 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。
(以下略)

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/ASG6D64K7G6DUTFK017.html
(朝日新聞 2014年6月13日) 集団的自衛権、公明に限定容認論 72年見解を根拠に
 公明党は12日、集団的自衛権を使える範囲を日本周辺の有事に限定したうえで認めるかどうかの検討を始めた。党幹部の中に、集団的自衛権の行使を朝鮮半島有事など極めて狭い範囲に限ることで、党内や支持者の理解が得られないかとの意見が出始めたためだ。ただ、行使容認そのものに慎重な意見もなお根強く、党内がまとまるかは予断を許さない。山口那津男代表、北側一雄副代表ら幹部は12日、国会内などで断続的に集団的自衛権の行使を認めるかどうかを協議した。1972年に自衛権に関する政府見解で「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」に限り自衛措置が認められるとした部分を根拠に、集団的自衛権が使えるか議論することにした。与党協議のメンバーの一人は、使える場合を「生命や権利が根底から覆される」という日本人に直接影響が出るケースに限定することで、政府が示した朝鮮半島有事から避難する邦人を乗せた米輸送艦を守る事例だけが容認されるとみる。別の幹部も「首相が想定する米国に向かう弾道ミサイルの迎撃や、中東のホルムズ海峡での機雷除去はできなくなる」と話す。だが、72年の政府見解は同時に、「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」と結論づけている。公明が、限定的とはいえ見解を行使の根拠とすれば矛盾することになる。安倍晋三首相が集団的自衛権の行使へ、今国会中の閣議決定を指示したことから、公明内には「反対するだけではすまない」(幹部)との声も上がっており、限定的な容認を検討することにした。政府・自民内には、公明内に容認に向けた動きが出てきたことから、22日が会期末の今国会中の閣議決定見送りを容認する意見も出ている。

<解釈改憲ではなく違憲>
*2-1:http://www.shinmai.co.jp/news/20150611/KT150610ATI090029000.php
(信濃毎日新聞 2015年6月11日) 安保法案「法治国家として危うい」 日弁連、19日に反対要請
 日本弁護士連合会の村越進会長(64)=上田市出身=は10日、都内で信濃毎日新聞の取材に応じ、今国会で審議中の安全保障関連法案に反対するため、長野県弁護士会など全国52の弁護士会の会長がそれぞれの地元選出国会議員に法案廃案を訴える一斉要請を19日に行うと明らかにした。日弁連は18、19日に都内で理事会を開く予定。これに合わせて各弁護士会長が法案反対の声明などを携えて衆参両院の議員会館を回る。日弁連が安全保障関連法案について反対の国会議員要請を行うのは初めて。村越会長は「弁護士会は会員それぞれの政治的信条を超えて、立憲主義を守る法律団体として法案は違憲だと考えている」と強調。衆院憲法審査会で自民党推薦を含む憲法学者3人が関連法案を「違憲」と明言した意味は重いとし、「その法案が国会多数の賛成で通ってしまうことになれば最高法規としての憲法の意義が失われる。法治国家として危うい」とした。政府に対しては「改憲論者も含め、政府解釈を理解した上で違憲だと指摘した。政府は自分たちの解釈はこうだと繰り返すのではなく、憲法学者の意見を真摯に受け止めるべきだ」と求めた。憲法審査会での憲法学者の発言をきっかけに、各論に入りつつあった国会審議が「そもそも合憲なのか違憲なのか、原点に立ち返ったのは好ましい」とし、「さらに議論が深まることを期待したい」と述べた。

*2-2:http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201505/0008016555.shtml
(神戸新聞社説 2015/5/12) 2段階改憲/「お試し」と呼ぶしかない
 自民党は、大災害などに備える緊急事態条項と環境権、財政規律条項の3項目について改憲を優先的に議論してはどうかと提案した。改憲の本命は9条だが、その前に各党の協力を得やすい項目に絞って実現を目指す2段階戦略を描いている。9条改正への抵抗感を和らげ、国民に改憲に慣れてもらう。そんな狙いが透けて見える。「お試し改憲」と呼ぶしかない。自民党の船田元・憲法改正推進本部長は「全ての憲法改正は真剣だ」と「お試し」を否定する。だが、「各党が関心事項として挙げているところから議論を始めるのは自然な流れ」とし、国論を二分する9条を後回しにしたことは認めている。9条改正の正面突破を避けるやり方はこれまでも繰り返されてきた。安倍晋三首相は第2次政権が発足した直後、憲法改正の国会発議要件を緩和する96条改正に意欲を示した。中身の議論を棚上げし、改正手続きのハードルを下げる。強引な戦術には国民の反発が強く、撤回するしかなかった。一方、政府は昨年7月の閣議決定で9条の解釈を変更し集団的自衛権の行使を容認した。それを反映した安全保障関連法案を国会に提出する構えで、憲法の空洞化も同時に進んでいる。審査会では、維新の党が緊急事態条項について「早急に検討すべき」とし、次世代の党も同調した。民主党は、「押しつけ憲法」を改正の理由とすることについて、「議論の前提として各党の考え方を確認すべき」とけん制し、「お試し改憲」も批判した。共産党は「国民の多数は憲法改正を求めていない」と反対する。公明党は環境権など新しい権利を加える「加憲」を主張しているが、審査会では「冷静かつ慎重な議論を進めるべきだ」と、改憲論議の加速化にはくぎを刺した。改正の発議には衆参両院の3分の2以上の賛成が必要になる。そのため自民党は公明党や野党と一致できる枠組みづくりを優先させる。2017年の国会発議などとスケジュールが語られ、改憲ありきの姿勢が目立つ。議論が深まる前に「簡単なところから」と「お試し」を画策する。あまりに危うい動きだ。

<国民は>
*3-1:http://mainichi.jp/select/news/20150614k0000m040062000c.html
(毎日新聞 2015年6月13日) 安保法制:九州各地で反対集会「戦争法案いらんばい」
 集団的自衛権の行使を容認し、自衛隊の活動範囲を広げる安全保障関連法案への反対などを訴える集会やデモ行進が13日、九州各地であった。福岡県弁護士会は、福岡市中央区の市民会館で「憲法違反の集団的自衛権に反対する市民集会」を開き、弁護士200人を含む約1700人が参加した。日本弁護士連合会憲法問題対策本部の伊藤真副本部長が講演。集団的自衛権の行使が容認されれば、交戦権を認めていない憲法9条が空文化されると指摘して「どんな国にしたいのかは私たち自身が決めること。憲法の番人は私たち国民だ」と訴えた。集会後は市内中心部をデモ行進し、「戦争法案いらんばい」とシュプレヒコールした。佐賀県鳥栖市では、市民団体が主催する「戦争立法に反対する学習会」があり、約30人が参加した。同県弁護士会の東島浩幸弁護士が集団的自衛権について「行使したら国際紛争の当事国となり、相手から攻撃を受ける可能性がある」と指摘した。参加した鳥栖市の無職、山元睦美さん(63)は「戦争は絶対にいけない。外交で解決していくべきだ」と話していた。一方、長崎県佐世保市では、陸上自衛隊相浦駐屯地と海上自衛隊佐世保教育隊などの約630人が商店街をパレードした。恒例行事で新入隊員の市民へのお披露目が目的だが、佐世保地区労などはパレードに反対する集会を開催。参加者約100人は「戦争にいかせたくありません」などのプラカードを掲げた。今夏までに安保関連法案の成立を目指す政府に対し、地区労の豊里敬治議長は「政府は隊員の命や人権をもっと見つめるべきだ」と批判した。

*3-2:http://www.shinmai.co.jp/news/20150614/KT150613FTI090002000.php
(信濃毎日新聞 2015年6月14日) 安保法案論議 母親立つ 県内 デモや憲法学ぶ動き
 安倍政権が安全保障関連法案の早期成立を目指す一方、法案に反対の意思表示をしたり、憲法を学び直したりする動きが長野県内の女性たちに広がっている。国会審議では複雑な法解釈や主張が飛び交うが、女性たちは子どもを産み、育てる立場から、基本となる憲法や集団的自衛権について理解を深めようとしている。13日は、同法案に反対を訴える女性たちが長野市でデモ行進した。「女は戦争を許さない」「子どもを守ろう」。この日、同市の長野駅近くをデモ行進したのは、赤いスカーフやTシャツ、帯などを身に着けた女性約70人。新日本婦人の会県本部などが呼び掛けた「レッドアクション」で、1970年代にアイスランドの女性たちが地位向上を求めて赤いストッキングを履いた運動をモデルに全国に広がっているという。「安倍首相は『徴兵制は絶対にない』と言うけれど、20年後はどうか」。参加した市内の会社員女性(31)は3人の男の子を育てる。「子どもの将来を考えると、米国の戦争に協力できるような法案には反対したい」と話した。長野市では昨年6月、憲法を学ぶ「自分で考えるために学ぶ会」ができた。東京電力福島第1原発事故を機に子どもの食の安全を考えてきた母親らが、集団的自衛権の行使容認に疑問を感じて発足。ほぼ毎月学ぶ会を開き、10人ほどで憲法と自民党の改憲草案を読み比べている。会員の西林薫さん(37)も2児の母。「最低限の力として自衛隊は必要」と考えるが、自民党が改憲草案で「国防軍」と記したことに不安を感じた。安保関連法案の説明で、政府が中東・ホルムズ海峡の機雷掃海が可能になると例示したことも、「資源獲得のために武力を使っていいのか」と疑問。「今までいかに政治を『お任せ』してきたか分かった。母親として見過ごせない」と話した。6歳と2歳の男児を育てる松本市職員の今井留衣さん(39)は、信州大大学院法曹法務研究科の成沢孝人教授(憲法学)を講師に7月11日から全5回の憲法学講座を開こうと準備を進めている。子どもの未来に関わると感じて安保関連法案の国会中継を見るようになった。ただ、法案の合憲性論議では「72年政府見解」「砂川事件判決」といった言葉が飛び交い、「よく分からないことばかり」。ママ友との話題にもなりにくい。「賛否を決める前にまずお父さん、お母さんが気楽に学び合える場をつくりたい」と意気込んでいる。下伊那郡阿智村では昨年10月、40~70代の女性10人ほどが「女性のための平和学習会」をつくった。今年5月下旬には憲法や集団的自衛権を分かりやすく解説する紙芝居を発表。老人クラブや婦人会の会合で上演している。事務局の原佐代子さん(68)は「紙芝居を見たお年寄りから『孫を戦争に取られないか心配』との声を聞く。子育て教室などでも上演したい」と話している。

*3-3:http://news.nifty.com/cs/domestic/societydetail/kanaloco-20150614-102526/1.htm (niftyニュース 2015年6月14日) 横浜で安保法案反対デモ 「武器運びたくない」
 県内の鉄道やトラック、港運などの労働者でつくる労働組合「神奈川県交通運輸産業労働組合協議会(神奈川交運労協)」は13日、国会で審議中の安全保障関連法案に反対するデモを横浜市内で行った。参加者は「憲法違反の戦争法案を許すな」「われわれは戦争のための輸送はしないぞ」と訴えながら約2キロを練り歩いた。デモに先立つ集会では、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に批判が集まった。安保政策における専守防衛の基本を大転換させた解釈改憲が新たな安保法制の前提となっていることから、神奈川交運労協の本間秀明議長は「安倍政権は勝手な憲法解釈を国民に押しつけようとしている。これを許せば、日本は戦争国家になってしまう」と強調した。デモには約720人が参加(主催者発表)し、トラック運転手の男性(49)は「戦争に使う武器をわれわれが運ぶことになるかもしれない。そうした仕事はしたくない」と切実さを込めて話した。別のトラック運転手の男性(59)は「(集団的自衛権が行使できるよう安保法制を)変えたいのなら、国民に問うという手順を踏むべきだ」と批判した。


PS(2015年6月16日追加): *4-1、*4-2のように、自民党は、他国からの武力攻撃や大災害・感染症の際に、首相の権限を強化する緊急事態条項を衆院憲法審査会などで最優先に議論する方針を固めたそうだが、他国からの武力攻撃と災害・感染症は全く性質の異なる事態であるため、①何を緊急事態とするのか ②その際の首相の権限をどう強化するのか ③それがBestな方法なのか について議論すべきだ。何故なら、それによって、自民党が本音では何をしたいかがわかるからである。

*4-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015052301001447.html
(東京新聞 2015年5月23日) 緊急事態条項を最優先 憲法改正、自民党方針 
 自民党は憲法改正に関し、他党の賛同が得やすいとみる緊急事態条項、環境権、財政規律条項の中で緊急事態条項を衆院憲法審査会などで最優先に議論する方針を固めた。自民、公明両党内に慎重論がある他の2項目に比べ、合意形成が見込めると判断した。自民党幹部が23日、明らかにした。26日に審議入りする安全保障関連法案をめぐり与野党対立の激化が予想され、審査会での改憲議論は停滞する可能性もある。緊急事態条項は、大災害や他国からの武力攻撃の際、首相の権限を強化することなどが柱。

*4-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015052701001671.html
(東京新聞 2015年5月28日) 参院憲法審、改正で各党が見解 自民、緊急条項新設訴え
 参院憲法審査会が27日、国会内で開かれ、各党が憲法改正をめぐり見解を表明した。自民党が最優先で議論を進めたいとしている大規模災害などに対応する緊急事態条項について、同党はあらためて必要性を訴えた。他の党からは、一定の理解を示しつつも、慎重論議を重ねるべきだとの意見が出た。自民党の佐藤正久氏は「緊急事態には、外国からの攻撃や感染症などが想定される。個別の法律で対処するのは限界がある」と主張。緊急事態条項の憲法明記へ議論を急ぐよう求めた。公明党の西田実仁氏は、同条項を取り上げる必要性は認めた上で「人権制限が行われる懸念がある」と指摘。


PS(2015年6月24日追加): *5のように、(他地域も同様だろうが)長野県内の36市町村議会が、国会審議中の安全保障関連法案について廃案や慎重審議を求める意見書案を可決したそうで、私は、こちらの方が正しいと考える。特に原発や使用済核燃料をかかえている市町村議会の意見を知りたい。

*5:http://www.shinmai.co.jp/news/20150624/KT150623ATI090031000.php
(信濃毎日新聞 2015年6月24日) 県内意見書可決 計36市町村会に 安保法案「反対」「慎重に」
 中野市、千曲市、上伊那郡箕輪町、木曽郡上松町、東筑摩郡朝日村、下水内郡栄村の6議会は23日、国会審議中の安全保障関連法案について廃案や慎重審議などを求める意見書案を可決した。安倍晋三首相らに提出する。県内市町村議会の6月議会で同様の可決は少なくとも36件になった。中野市議会は議員提出の「国民的合意のないままに、安全保障体制の見直しを行わないことを強く求める」意見書案に、議長を除く19人中18人が賛成。安保法制の整備は「国際紛争の場に自衛隊を派遣するということ」とし、「憲法9条に逸脱している」と主張している。千曲市議会は、十分な国民的議論と国会での慎重審議を求める議員発議の意見書案を全会一致で可決した。「国民の間には政府の考える『(集団的自衛権の)行使の対象・範囲』など具体的な事例に対して、十分な理解が得られていない」としている。箕輪町議会は、法案の今国会での成立断念を求める意見書案を全会一致で可決。「自衛隊が戦争に巻き込まれる」「歯止めのない自衛隊の海外活動が展開される」といった不安が広がっていると主張している。上松町議会は法案の撤回・廃案を求める意見書案を全会一致で可決。法案は「戦争を放棄した平和国家日本の在り方を根本から変えるもので、容認できない」とした。朝日村議会は、慎重審議を求める議員発議の意見書案を全会一致で可決した。「国の根幹に関わる重要法案にもかかわらず、現在国民の間で十分理解されているとは考えられない」とし、「今国会での強行成立は避け、広く国民の合意を形成するよう要請する」としている。栄村議会は法案の慎重審議を求める意見書案について、議長とこの日欠席した議員を除く10人全員が賛成。「拙速な議論ではなく、徹底的な審議と多面的な検討」を求めている。一方、下伊那郡阿智村議会は、沖縄県名護市辺野古への米軍基地移設問題に絡み、地方自治の尊重を政府に求める意見書案を全会一致で可決した。沖縄県民が移設に反対の意を表しているのに「国の姿勢は県民の自主性や自立性を尊重しているか疑問」としている。県内市町村議会での6月定例会で同様の可決は少なくとも4町村となった。


PS(2015年6月26日追加): *6-1、*6-2のように、百田氏が、集団的自衛権の行使容認に賛成の立場を表明した上で「沖縄の2つの新聞はつぶさないといけない。沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」と主張した見識の低さには呆れる。木原稔議員は通常はリベラルな人なのだが、講師に百田氏を招いた責任はあるだろう。そして、「憲法改正に悪影響を与えている番組を発表し、スポンサーを列挙し、経団連に働きかけて広告料収入がなくなるようにしてマスコミを懲らしめて欲しい」と発言した人の方が重大な問題であり、その人も国民に選出された現職の国会議員であるため、その人の名前を報道するか、この人たちにTVの前で話をさせるのがよいと考える。何故なら、主権者である国民は、事実(ここが重要)を知って選択と判断をすべきであり、メディアはそのためのインフラだからだ。
 
*6-1:http://www.asahi.com/articles/ASH6T5W6FH6TUTFK00X.html
(朝日新聞 2015年6月25日) 「経団連に働きかけ、マスコミ懲らしめを」 自民勉強会
 安倍政権と考え方が近い文化人を通し、発信力の強化を目指そうと、安倍晋三首相に近い若手議員が立ち上げた勉強会「文化芸術懇話会」(代表=木原稔・党青年局長)の初会合が25日、自民党本部であった。出席議員からは、広告を出す企業やテレビ番組のスポンサーに働きかけて、メディア規制をすべきだとの声が上がった。出席者によると、議員からは「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番。経団連に働きかけて欲しい」「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」など、政権に批判的な報道を規制すべきだという意見が出た。初会合には37人が参加した。官邸からは加藤勝信官房副長官が出席し、講師役に首相と親しい作家の百田尚樹氏が招かれた。同会は作家の大江健三郎氏が呼びかけ人に名を連ねる「九条の会」などリベラル派に対抗するのが狙い。憲法改正の国民投票まで活動を続けたい考えだという。

*6-2:http://www.nikkansports.com/general/news/1497679.html
(日刊スポーツ 2015年6月25日) 百田尚樹氏「沖縄の2つの新聞はつぶさないと」発言
「文化芸術懇話会」の初会合で講演する作家の百田尚樹氏(右)(共同) 安倍晋三首相に近い自民党の若手議員約40人が25日、憲法改正を推進する勉強会「文化芸術懇話会」の初会合を党本部で開いた。安全保障関連法案に対する国民の理解が広がらない現状を踏まえ、報道機関を批判する意見が噴出した。講師として招いた作家の百田尚樹氏に助言を求める場面も目立った。出席者によると、百田氏は集団的自衛権の行使容認に賛成の立場を表明した上で、政府の対応について「国民に対するアピールが下手だ。気持ちにいかに訴えるかが大事だ」と指摘した。出席議員からは、安保法案を批判する報道に関し「マスコミをこらしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働き掛けてほしい」との声が上がった。沖縄県の地元紙が政府に批判的だとの意見が出たのに対し、百田氏は「沖縄の2つの新聞はつぶさないといけない。あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」と主張した。懇話会は木原稔青年局長が代表で、首相側近の加藤勝信官房副長官や萩生田光一・党総裁特別補佐も参加した。出席者の一連の発言について、自民党中堅は「自分たちの言動が国民からどのような目で見られるか理解していない。安保法案の審議にマイナスだ」と指摘。公明党幹部は「気に入らない報道を圧力でつぶそうとするのは情けない。言葉を尽くして理解を求めるのが基本だ」と苦言を呈した。


PS(2015年7月15日追加):違憲の法律は安保関連法案だけでなく、他にも多い。そのため、現在は限定的にしか運用されていない違憲立法審査権(法律・命令・規則・処分が憲法に適合するか否かを審査する裁判所の権限で、最高裁判所が終審裁判所)を使いやすくし、三権分立がもっと有効に働くようにして、問題のある一般法を見直すべきである。

*7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015071502000125.html
(東京新聞 2015年7月15日) 反安保 大学にも拡大 「憲法を無力化」「今声上げねば」
 安全保障関連法案に反対する動きが各地の大学に広がっている。「民意や立憲主義に反し、戦争につながる」と教員有志が危機感を募らせ、緊急声明や集会を重ねている。十四日は市民団体や学者グループによる声明も相次いだほか、実戦となる恐れもあったイラクへの自衛隊派遣の検証を求める声も上がった。十四日昼、東京都港区の明治学院大の教室で「声明を語る会」が開かれ、教職員と学生ら計二十人が集まった。教員有志十五人は六日、「憲法の平和主義が無力化される」と法案への反対声明を発表。学内に掲示し、百七十人超の賛同人を集めている。「語る会」はこの日を含め四回開催。昼休みにランチを食べながら、日本の戦後責任や九条、言論への圧力といった問題をテーマに挙げた。今後も続ける予定で、呼び掛け人の猪瀬浩平准教授(文化人類学)は「法案は多様な問題を含む。開かれた対話の場としての大学の役割を果たせれば」と語る。国会審議が本格化した六月から、法案に反対する大学有志の声明が出始め、東京大でも今月十日、学生や教職員、OBらによる抗議集会に三百人が集まった。国際基督教大の稲(いな)正樹客員教授(憲法)は十三日、政治学、国際関係学の異分野の三人で声明を発表。「法の支配の根本が覆される事態。今声を上げなくては、研究を続けてきた意味がない」と危機感を募らせる。立命館大の法学部と法科大学院の教員有志六十四人も同日、「戦争準備法の性格を持つ」と法案に反対する声明を発表。他学部の教員が入り、全学で賛同を募る活動もインターネットで始まった。憲法学者の多くが「違憲」とする法案を強行しようとする政権の動きに、小松浩教授(憲法)は「専門知を軽視し、学問を侮辱する政権への憤りが広がっている」と厳しく批判した。東京学芸大の教員有志七十八人は十四日、法案の撤回を求めて緊急アピールを発表。とりまとめた教育学部の及川英二郎准教授(近現代史)は「強行採決を何としても阻止したいと賛同を募った」。十六日に学内集会を開く。
◆学者9000人「廃案を」「採決反対」市民団体 
 ■「安全保障関連法案に反対する学者の会」は14日、緊急要請行動として会の呼び掛け人14人が
   衆院特別委員会の自民、公明、民主、維新、共産各党の理事や委員の議員室を衆院議員会館に
   訪ね、強行採決せず廃案とするよう訴えた。参加したのは佐藤学・学習院大教授(教育学)ら。
   思想家の内田樹氏ら4人は与党側筆頭理事を務める江渡聡徳前防衛相(自民)の議員室を訪れ
   「9000人以上の学者が法案に我慢しきれず反対の意思表示をしている事実を重く受け止めて
   ほしい」と秘書に伝えた。社会学者の上野千鶴子氏は江渡氏の議員室を訪ねた後に「憲法に違反
   する法律をつくったら、立法府まるごと、議員全員が憲法違反を犯すことになりますよ」と強調した。
   会には6月の発足からこの日までに、呼び掛け人61人、賛同者9766人の計9827人の学者が
   名を連ねている。
 ■海外で人道支援や協力活動をする団体の有志がつくった「NGO非戦ネット」は14日、自衛隊が
   海外で武力を行使すれば、非政府組織(NGO)の活動環境は著しく危険になるなどとして、安全
   保障関連法案の採決に反対する声明を発表した。声明では、安保法案は日本を戦争ができる国
   にしようとするもので、憲法の平和主義に反すると指摘。非軍事の国際貢献が必要だとしている。
 ■市民団体のピースボート(東京)と韓国の環境NGO「環境財団」は14日、安全保障関連法案の
   採決に反対する共同声明を出した。声明は「憲法解釈を変えて集団的自衛権行使を容認する
   ことは相互不信を増幅し、アジアの緊張を高める」と政府を批判。近隣諸国の市民の声に耳を
   傾け、立憲主義を尊重するよう求めている。

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2015.6.12 唐津焼・武雄焼から、地場産業の高度化について(2015/6/12、13、15に追加あり)
    
         唐津焼の皿             唐津焼茶器         唐津焼花瓶

   
 唐津焼一輪ざし    唐津焼焼き締め   唐津焼素焼き     武雄の唐津焼

 今日は、地場産業を高度化し発展させることによる産業振興の話です。なお、上は、Bestの画像を掲載したとは限りません。

(1)現在の唐津焼と武雄焼
 *1-1のように、4月29日から~5月5日に「唐津やきもん祭り」を開いて、多彩なイベントや陶芸家との交流を促したり、唐津市民会館で有名人のディスカッションをしたり、*1-2のように、外国人観光客に焼き物の魅力を伝えるための唐津焼英語版ホームページ(HP)を制作したりと、唐津市も唐津焼を売り出す努力をし始めた。日本人(特に地元の人)は、既に唐津焼を持っている人も多いが、韓国人や中国人を含む外国人はまだフロンティアの領域であるため、作品や作陶風景を写真で紹介し、買いたい人はHPを通しても買えるようにすれば、反響がある筈だ。また、梅干しや味噌漬けがおしゃれな唐津焼の入れ物に入っているのも、高級感があってよいかもしれない。

 私は、佐賀三区から衆議院議員になって地元廻りをしていた時、武雄市でも唐津焼を作っているのを知って意外に思ったが、武雄市で作られている焼物は、唐津焼の定番でも有田焼の定番でもなく、唐津焼風の陶器に少し有田焼風の色付けがしてあって、新鮮さがあった。まさに、*2のように、陶器か磁器かにこだわらない、双方の面白さを取り入れた器になっていて、驚くほどだったのである。

(2)工業製品への展開
 しかし、食器を作っている限り、強度を強くしてフロンティア市場を開拓しても需要と利益率には限界がある。そのため、唐津焼も芸術品や食器のジャンルとは別に工業製品のジャンルも開拓すべきだと思う。

 例えば、現在の舗装道路は水を通さないので、雨が降ると水が側溝に集まってすぐに川を氾濫させ、晴れるとあっという間に乾燥してしまうが、歩道に強化して砂を混ぜた唐津焼の素焼きを使えば、雨が降れば地中に浸み込み、晴れると水分が蒸発して道路の温度が上がらずにすむ上、植物にやさしい。また、焼き締めは、有機物がすべて焼き除かれて鉄を中心とする金属成分が多くなっているが、これを応用して大量生産すれば、道路で太陽光発電を行うのも安価になるだろう。そして、これらを東京オリンピックの国立競技場に採用してもらえれば、世界に対して宣伝効果が大きいと思われる。

 つまり、唐津焼も、地場産業のセラミックスに研究開発を加え、次世代の工業製品として大量に作ることを考えると、地域振興に繋がると考える。

*1-1:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150419-00010004-nishinp-l41
(西日本新聞 4月19日)‎ 唐津やきもん祭り、29日開幕
 唐津市の市街地で29日~5月5日に開かれる「第4回唐津やきもん祭り」は、展示会から食事会、音楽会まで多彩なイベントが催される。食と器の縁結びがテーマで、坂本直樹実行委員長は「風情のある町をゆっくりと歩きながら、陶芸家と触れ合い、お気に入りの器を見つけてみませんか」と話している。唐津観光協会=0955(74)3355。100の唐津焼展 5月5日まで、市近代図書館。400年前の古唐津を中心に御用窯で焼かれた献上唐津、人間国宝・中里無庵の名品を展示。無料。唐津の祭と囃子(はやし) 5月3日午後3時、唐津市民会館。唐津の伝統文化に触れてもらおうと唐津ケーブルテレビジョンが開く。篠(しの)笛奏者の佐藤和哉さんのミニライブや唐津くんちの曳山(やま)囃子、小川島鯨骨切り唄などを実演する。無料。テーマ展「食と器の縁結び」 期間中、旧唐津銀行。酒器をテーマに新作を展示。無料。唐津焼シンポジウム 5月5日午後3時、唐津市民会館。「古陶のある暮らし 日常の贅沢(ぜいたく)」と題して脳科学者の茂木健一郎さん、古美術月刊誌編集長の白洲信哉さん、骨董(こっとう)店店主の勝見充男さんらが意見を交わす。無料。まちなか展示即売 期間中、唐津中央商店街など。空き店舗や町屋で人気作家、若手の焼き物を販売。日本酒やワイン、ビールを唐津焼の器で味わうイベントもある。唐津焼・料理のコラボ 期間中、老舗旅館やレストラン、カフェなどが窯元、作家とタイアップし、唐津焼の器で料理を提供する。要予約の店も。4日午後0時半から唐津シーサイドホテルで篠笛奏者、佐藤和哉さんのランチショー。春のお呈(てい)茶席 29日~5月6日、唐津城(有料)。5月3日~5日、埋門ノ館(同)。やきもんバス 5月3日~5日、唐津-有田(有田陶器市)を結ぶ臨時バスを運行する。大人千円、子ども500円。

*1-2:http://qbiz.jp/article/64223/1/
(西日本新聞 2015年6月11日) 唐津焼を英語で紹介 外国人客増に対応、市がHP作成へ
 佐賀県唐津市は、外国人観光客に焼き物の魅力を伝えようと唐津焼の英語版ホームページ(HP)を初めて制作する。市内70の窯元に協力を依頼し、賛同を得られた窯元を特集する。作家のこだわりや作陶風景を写真を用いて紹介する。市文化振興課によると、唐津を訪れる外国人観光客は近年、増加傾向にあり、伝統工芸品の唐津焼への関心も高い。観光協会や旅館には、外国人が見学できる窯元に関する問い合わせも寄せられているという。そこで「外国人にも唐津焼を分かりやすく紹介しよう」と英語版の制作を決めた。HPへの掲載を承諾した窯元の紹介文を、2013年度に制作した日本語の唐津焼HPを参考にしながら英語に翻訳する。制作はデザイナーやHP制作業者に発注する予定で事業費は98万円。来年3月の完成を目指す。同課の担当者は「海外では有田焼が有名だが、欧州などで唐津焼にも注目が集まっている。外国人観光客にも窯元に足を運んでもらい、日本の美を感じてほしい」と話している。

*2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/196718
(佐賀新聞 2015年6月12日) 磁器と陶器競演 12日から、凌山窯で窯開き
 武雄市若木町川古の凌山窯で12日から3日間、窯開き展がある。磁器の松尾重利さん(80)=日展会友=、陶器の松尾潤さん(54)=日本工芸会正会員=親子が約300点を展示する。重利さんは「食と器の大切さを見直してほしい」という気持ちで、大きさや文様などに気を配った使いやすいカップや皿などを提案する。染付、青白磁、釉裏紅(ゆうりこう)の花器やつぼ、茶道具なども並ぶ。潤さんは赤い焼締作品に力を入れた。灰がかからない部分に生まれる赤にこだわった茶わんや湯飲み、鉢などのほか、塩釉の花器、唐津や粉引の食器など多彩だ。「カップや湯飲みなど、自分のものにこだわっている人も多い」と、普段使いの作品も多い。窯は若木小近く。抹茶の接待もあり、周辺のアジサイも見ごろになっている。同窯の電話は、0954(26)2422。


PS(2015/6/12追加):*3の国土形成計画は、地域間の人、物、金、情報が双方向に流れる「対流促進型国土」を形成し、「コンパクト化」と「ネットワーク化」を進め、再生可能エネルギーや農林水産業等の地域資源を活用して雇用・所得の創出を目指すという点で賛成だが、地場産業を高度化して自立できる地域を増やすことも加えたい。なお、政府は今後、この計画に対する国民からの意見を募集するそうだ。

*3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=33565
(日本農業新聞 2015/6/6) 「小さな拠点」推進 国土形成計画 国交省が最終案
 国土交通省は5日、国土審議会計画部会に今後10年の国づくりの指針となる新たな「国土形成計画」の最終案を提示した。人口減少に対応するため「個性あふれる地域づくり」を目指し、地域間の対流を促す。農山村では「小さな拠点」を広げ地方移住を活発にする。一方、住宅や施設などを中核都市に集約する「コンパクトシティー」の推進も盛り込んだ。最終案では(1)安全で豊かさを実感できる国(2)経済成長を続ける活力ある国(3)国際社会の中で存在感を発揮する国――を目標として提示。国土の基本構想に地域間の人、物、金、情報が双方向に流れる「対流促進型国土」の形成を掲げた。生活に必要な各種機能を一定の地域に集約する「コンパクト化」と各地域をつなげる「ネットワーク化」を進める。農山村では、小学校区など複数の集落が集まる地域に買い物や医療、福祉などのサービスを集め、各集落を結ぶ交通手段を確保する「小さな拠点」づくりに取り組む。再生可能エネルギーなど地域資源を活用した雇用と所得の創出を目指す。農林水産業では輸出や農業経営の法人化、農家を主体とした6次産業化の推進を明記。担い手への農地集積も進める。都市部では中核都市の人口を増やし、生活サービスを集約化するコンパクトシティーを広げる。同計画にはこの他、文化、観光、交通体系、情報通信、防災、環境保全、共助社会づくりの実現に関する各種基本的施策も記した。座長を務めた中京大学の奥野信宏教授は「農山村の切り捨てではなく、人口減少の中で知恵を絞り、切り開いていく必要性を計画に打ち出した」と述べた。政府は今後、同計画に対する国民からの意見を募集。8月上旬までに閣議決定したい考えだ。閣議決定を受け、各省庁や都道府県、市町村は同計画に基づき、具体的な支援策を講じる。


PS(2015/6/13追加):*5-2のように、後期高齢者が急増する東京圏で医療・介護施設や人材不足が危機的状況になるため、(医療・介護に余力のあることのみを魅力として??)高齢者の地方移住を推進するというのは東京圏の身勝手である。そのため、*5-1のように、佐賀県知事が、「せっかく全国で地方が素晴らしいという雰囲気が盛り上がっている中で高齢者は地方移住となると、押しつけと受けとめられる」として否定的な見解を示したのはもっともだ。また、都市部にいる高齢者は、多様な地域から出て来た人が婚姻関係を結んでいるため、そのうち一人のふるさとに移住すればよいというものでもない。

 しかし、*4のように、地場産業を高度化したり農林漁業を6次産業化して国内外に販路を開拓したりするには、都市部で食品会社や商社等に勤務していた高齢者や熟年層が必要な能力・経験・人的ネットワーク等を持っているため、同窓会や県人会などを使って必要な人材を探すのがよいと考える。

 
              *4より                    *5-2より
*4:http://qbiz.jp/article/64422/1/
(西日本新聞 2015年6月13日) 【点検・佐賀県予算】(下)産業振興 農業「磨き上げ」図る
 地域の活力に欠かせない産業振興をどう図るか。山口祥義知事は県政運営の軸に「佐賀らしさを磨く視点」を掲げており、補正予算案でも農林水産業や地場製造業の振興策が並んだ。農林漁業者が生産、加工、販売などを一体的に手掛ける「6次産業化」はビジネスチャンスを広げる可能性があるとして県が取り組みを進めるが、新たに食品加工業者などに向けた支援事業(1億1474万円)を打ち出した。これまで生産者への支援策は行ってきたが、なかなか6次産業化に結びついていない。国の支援が得られる事業計画を策定した事業者は18件(5月29日現在)と、九州で最も少ない。「6次産業化は販路開拓や加工技術が鍵で、生産者がノウハウを持たずに二の足を踏む例もある。『2次』や『3次』の事業者との連携を後押ししたい」(県新産業・基礎科学課)。設備投資に対する補助や、企業と生産者と引き合わせる場を提供していく。生産者向けの新たな支援策も設ける。“農の夢”応援プロジェクト(1976万円)は4カ年事業で、農業者が先進的な知識や経営を学ぶ目的の研修や、新規就農希望者が地域の農家に実地訓練を受ける研修場「トレーニングファーム」の整備に取り組む。ものづくり産業支援では、人材育成の基金創設(10億円)が目玉だ。県内には機械製造や金属加工、窯業など製造業が多いが、県内の工業高卒業生の約4割が県外に就職するという。ものづくりの魅力を教育現場に伝えることや、技術の磨き上げに取り組む企業を支援していく。知事は「かつてものづくり、人づくりで世界をリードした佐賀を再興したい」と強調する。基金事業は4年間の予定で、産学官の研究会を立ち上げてさらに施策を練る方針。地場産業を再評価する機運を高める「種」はまかれるが、従事者が増える「芽」につなげるための実効性ある政策も問われてくる。

*5-1:http://qbiz.jp/article/64413/1/
(西日本新聞 2015年6月13日) 佐賀知事、高齢者地方移住の「押しつけ」懸念
 民間の政策提言機関「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)が提言した東京圏の高齢者の地方移住について、佐賀県の山口祥義知事は12日の定例会見で「あまりその話には乗りたくない」と否定的な見解を示した。九州の知事で明確に異を唱えたのは初めてとみられる。山口知事は提言について、「せっかく全国で地方が素晴らしいという雰囲気が盛り上がっている中で、唐突に高齢者は地方移住で、となると、地方への押しつけと受けとめられるのではないか」と懸念を表明。財政上の負担の問題も挙げ「施設はどうなるのか。財源は国がしっかり持ってくるのか」と疑問を示し、佐賀県では子どもから高齢者まで快く暮らせるような施設を整えたいとして、「高齢者に絞って議論されない方がいい」と述べた。

*5-2:http://qbiz.jp/article/63809/1/
(西日本新聞 2015年6月5日) 東京圏高齢者の地方移住を提言 医療・介護「深刻化」
 有識者でつくる日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)は4日、後期高齢者が急増する東京圏で医療・介護の施設や人材の不足が危機的状況になるとして、高齢者の地方移住の推進などを国や自治体に求める提言を発表した。医療・介護に余力のある「2次医療圏」として、北九州市や大分県別府市など全国41地域を示した。東京都内で記者会見した増田氏は、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県)で2025年までの10年間に、75歳以上の後期高齢者が推計175万人増えると説明。その結果、介護施設の収容能力は全国平均を下回り、「高齢者が施設を奪い合う事態になる」と述べた。医療・介護に携わる人材不足も深刻になる。25年時点で介護職や看護職などを80万〜90万人増やす必要に迫られる。東京圏外から人材が大量に流入すれば、地方の人口減少が加速すると警鐘を鳴らした。具体的な対策として挙げたのは、東京圏の高齢者の地方移住、外国人介護人材の受け入れ推進、4都県の政策連携など。地方移住に関連して、会議メンバーの高橋泰国際医療福祉大大学院教授は、緊急な重病に対応できる病院の近さ、75歳以上の介護ベッド数などを基に「医療・介護に余力のある41地域」を紹介した。九州は8地域で、関東と東海はゼロ。高橋氏は「自治体は魅力に気付いて、積極的に動いてほしい」と移住者の受け入れを促した。増田氏は「東京一極集中のリスクは地震だといわれていたが、膨大な高齢者が集積することの方が脅威になる」と話し、日本全体の問題ととらえるべきだと強調した。
◆医療・介護に余力のある地域(九州分)
 福岡県北九州市、福岡県大牟田市、佐賀県鳥栖市、長崎市、熊本市、熊本県八代市、大分県別府市、鹿児島市
■日本創成会議 中央省庁の事務次官経験者、産業界の代表者、大学教授らで構成し、2011年に発足。昨年5月、40年時点で20〜39歳の若年女性が10年と比べ半分以下になる自治体が全体の約5割に当たる896市区町村に上るとの試算を公表。「将来的に消滅の可能性がある」と指摘、人口減少問題への関心を集めた。


PS(2015/6/15追加):*6の解決法は、道路整備にかかる時間と費用を削減し、整備の効果を最大限に発揮させることだ。そこで、道路を作るのに時間と金がかかっている土地の収用と建設を省力化するため、JR唐津線を高架にして一階を道路にすれば、鉄道の複線化と道路建設の両方の問題が一度に解決する。国は、現在の交通量を調べて必要性を検討したいとしているが、鉄道や道路は、それが先に整備されてから周囲に住宅や工場ができるものであり、工場や住宅ができてから鉄道や道路を整備すべきものではない(東京の地下鉄も、建設当初は大赤字だったそうだ)。そのため、最近はまちづくりにも進出している九州JRと協力しながら、21世紀の緑あふれる都市計画を作り、全体としては低コストで鉄道と道路のインフラを同時に作って佐賀空港まで繋げるのがよいと考える。ただし、これには国土交通省が都市局、道路局・鉄道局・航空局と分かれているのがややこしくなりそうであるため(http://www.mlit.go.jp/page/kanbo01_hy_002577.html 参照、本来はインフラ整備をまとめて政策の総合性とコスト削減を考えた方がよいと思う)、地方自治体が総合企画をする必要がある。

     
     *6より      (参考)福岡空港周辺の3階建道路  杜の都、仙台の街並み
*6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/197421
(佐賀新聞 2015年6月14日) 佐賀唐津道路 計画指定20年 開通4割 完成いつ
■国は西九州道、有明海沿岸道優先 沿線自治体「福岡へ流出続く」
 佐賀市と唐津市を結び、南北の大動脈として期待される「国道203号佐賀唐津道路」が地域高規格道路の指定を受けて20年が過ぎた。昨春、厳木バイパスが全線開通し、多久市から唐津市相知町まで16キロの整備を終えたが、全長約40キロのうち、開通区間は4割ほど。西九州自動車道や有明海沿岸道路の整備が着々と進む中、沿線自治体からは「早く佐賀と唐津を結ばないと福岡への流出が続くばかり」と不満も出ている。唐津市役所で5月18日に開かれた整備促進期成会総会には沿線5市町の首長や議長らが顔をそろえた。多久以南は工事未着手で、小城市の江里口秀次市長は「市内が整備区間指定を受けて、もう12年目。早期の着手を心待ちにしている」と事業主体である国や県に求めた。県内の幹線道路は長崎自動車道(1990年に県内全線開通)に加え、北は西九州自動車道、南は有明海沿岸道路の整備が進む。この東西を貫く3本の道路を南北に結ぶのが佐賀唐津道路で、沿線自治体関係者は「ネットワーク効果は非常に大きい」と訴える。
■アピール弱い
 ただ、整備する国交省としては、西九州、有明海沿岸に続く“第三の道路”の位置付け。福岡や長崎につながる二つの道路と比べれば優先順位は低い。佐賀国道事務所の柳田誠二所長も総会で「県内の主要都市を結び、時間短縮になるというだけでは国へのアピールは弱い」と指摘し、「たくさんの事業を抱えるなか、佐賀唐津道路にどうやってお金を回すか、大変厳しい」と現状を説明した。未着工区間は相知から西九州自動車道唐津インターまでの約10キロと、多久市から佐賀市嘉瀬周辺に予定されている沿岸道路ジャンクションまでの約15キロ。県は佐賀空港への波及効果や渋滞状況も踏まえ、多久-佐賀間を優先する方針。2023年には佐賀国体を控えており、国道34号以南については県が事業主体となり、整備を急ぐ考えだ。
■早期整備求め
 多久-佐賀間は本年度中に環境影響調査の評価書をまとめ、都市計画を策定し、来年度にも具体的な設計や用地買収に向けた準備に入る。一方、昨年3月に厳木バイパスは完成したものの、相知-唐津の延伸は白紙状態。国は「まず、現在の交通量を調べ、必要性を検討したい」と述べるにとどめており、唐津市側は「後回しにされれば、いつ完成するか分からなくなる」と危機感を募らせる。隣接する東松浦郡玄海町も原発事故時の避難道路として佐賀唐津道路の早期整備を求めている。岸本英雄町長は「西九州自動車道の整備が進んでいる今、避難だけでなく、買い物も産業もみんな福岡に行った方がいいとなる。佐賀との結び付きを強めるためにも間髪入れずやった方がいい」と唐松地区の思いを代弁した。94年10月の国の指定から20年。この間、財政難に伴う公共事業費の大幅カットなどで大きく遅れてきた。残り区間の工事も巨額の支出が予想されるだけに完成は遠い道のりだ。道路網の整備でいかに地域活力を生むか、説得力ある提案が求められている。
■佐賀唐津道路
 佐賀市と唐津市を結ぶ地域高規格道路で、1973年に事業が始まり、94年に有明海沿岸道路とともに計画路線に指定された。西九州自動車道と長崎自動車道、有明海沿岸道路を結ぶ南北約40キロ。全線開通すれば、唐津市から佐賀空港までが1時間圏に入る。多久-佐賀の15キロは本年度中の都市計画策定を目指しており、来年度以降、設計や用地買収に向けた準備に入る。唐津-相知10キロは環境影響調査もまだで、整備のめどは立っていない。

| まちづくりと地域振興::2015.5~ | 11:29 AM | comments (x) | trackback (x) |
2015.6.7 まとめて法案を出すのは、国民や議員の検討・理解を妨害するもので、この方法は “憲法改正”にも使われようとしているため、注意すべきである。(2015年6月9、11、12、14日に追加あり)
    
     体系       全体像    新しい日米防衛協力指針と安保法制  集団的自衛権  

(1)安保法案に関する報道について
 *1のように、集団的自衛権の行使を認めた閣議決定で、武力行使の3要件が新しくなり、一定の「歯止め」はあるものの、日米両政府は防衛協力のための指針を改定し、自衛隊と米軍の地球規模の協力を打ち出した。 ぎょ

 これらの安保関連法案に関する衆院での質疑は一部TV中継されたが、重要な安全保障政策を転換しそうな局面であるため、それぞれの言葉の定義と法律の変更理由、外交防衛委員会等の関連質疑などもTV中継して国民に報道すべきだ。これは、公共の電波を使って、一日中、野球・アメフト・サッカーの試合を中継したり、商業スポーツの不正を暴く報道ばかりしているより、よほど重要なことである。

 その理由は、①各党の方針 ②議員個人の意見 ③質疑内容 ④政策決定過程等を国民が知っておかなければ、国民が選挙で自らの意志に沿う選択をすることはできず、少数の人の意志で政治が動かされてしまうからである。つまり、*5のように投票率の向上のみを叫んでみても、政策内容やそれを主張している議員を正確に把握しておかなければ、主権在民や民主主義は有効に機能しないのだ。

 なお、私も現在は、報道からしか安保関連法案の内容を知ることができないため、これまで法案の全体像や用語の定義が明確でなく論理的に議論できないため、このブログに自分の見解を書かなかった。しかし、このようにして国民の目をくらますことが、大量の法案を一括して提出した本当の意図だろう。

(2)日本政府の説明における集団的自衛権について
1)「存立危機事態で集団的自衛権の行使が可能」というのは正しいか?
①国際法から見た日本政府の説明
 集団的自衛権は、*4で示される国際法上の権利で、その性質は、i)他国の権利を防衛する正当防衛、ii)個別的自衛権の共同行使を行う自己防衛、iii)攻撃を受けた他国の安全と独立が自国にとって死活的に重要な場合に防衛行為をとることが可能 とする3つがあり、現在の通説はiii)だが、国際司法裁判所は、1986年のニカラグア事件判決において、集団的自衛権を行使するためには、iv)攻撃を受けた国による攻撃事実の宣言、v)他国に対する援助要請 が必要としており、これはもっともなことである。

 一方、日本政府は、*2-2のように、2015年5月11日に法案の全体像が示された安全保障法制の中で、i)、ii)、iii)の3要件を満たせば、集団的自衛権による武力行使が憲法上も認められるとしている。しかし、国際法上、集団的自衛権の行使と認められるためには、これに加えて攻撃を受けた国による攻撃事実の宣言と日本への援助要請が必要だ。

②存立危機事態の定義とその妥当性
 日本政府は、存立危機事態を、「i)日本と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、ii)日本の存立が脅かされ、iii)国民の生命・自由・幸福追求権が根底から覆される明白な危険がある事態」と定義し、この場合、iv)他に適当な手段がなく、v)必要最小限の武力行使に留まる範囲で、武力による反撃を可能とした。
 
 しかし、日本と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生して、日本の存立が脅かされたり、日本国民の生命・自由・幸福追求権が根底から覆されたりする危険性は考えにくく、日本政府は、ホルムズ海峡の機雷除去を例として挙げた。そして、*2-3のような電力不足や、*2-4のような天然ガス、原子力発電の燃料、食料、生活物資の不足なども含まれるのだとも言うが、もしそうなら、自国のための物資確保を目的として他国に侵略した太平洋戦争と同じであり、それから進歩も改善もなかったことになる。

 そもそも、*2-5のように、ホルムズ海峡への機雷敷設や食料輸入のストップなどで日本の存立が脅かされ、国民の生命や幸福が覆されたりすることがないように、普段から食料自給率や再生可能エネルギーの割合を高めておくのが、本当の危機管理であり、安全保障だ。

2)政府が説明する集団的自衛権は、日本国憲法の前文や9条の平和主義に適合しているか?
 *3-1のように、我が国は、日本国憲法の前文及び9条で平和主義を定めており、これまで海外での武力行使はせず、平和主義を実行してきた。そして、私は、日本国憲法が健在である限り、自衛隊は、個別的自衛権の行使であれ集団的自衛権の行使であれ、自国の領土・領海・領空を守ることがあっても、外国の領土・領海・領空で武力行使を行うことはできないと考える。

 そのため、*3-2に書かれているとおり、衆議院の憲法審査会で、6月4日に招かれた憲法学者3人の参考人は、今回進められている安全保障法制について全員が憲法違反だと明言したそうだ。そのうち小林氏は「憲法9条2項で軍隊と交戦権が与えられていない。仲間の国を助けるために海外に戦争に行くことは憲法9条違反だ」と強調し、9条改正を訴えたとのことである。

 しかし、札幌弁護士会は、*3-3のように、会長声明で「新安保法制は、我が国が攻撃されていない場合でも、自衛隊による実力行使を認め(自衛隊法、武力攻撃事態及び存立危機事態安全確保法)、周辺事態に当たらない場合でも米軍及び米軍以外の他国軍隊に対する支援を可能とし(重要影響事態安全確保法)、一部の活動については現に戦闘行為が行われている現場での実施も可能にする(国際平和支援法等)ため、恒久平和主義を定める憲法前文や第9条及び立憲主義に反するもので違憲無効であると明確に述べている。

 自民党は、*3-4のように、日本国憲法の変更に関し、緊急事態条項(定義不明)、環境権(現行憲法で読めるため不要であり、実行が必要なのである)、財政規律条項(同)の中で緊急事態条項を衆院憲法審査会などで最優先に議論する方針を固めて違憲状態を合憲にするつもりだが、憲法の前文や9条は、我が国が先の大戦や侵略・植民地支配で国内外に多大な惨禍を与えたことに対する反省と教訓に基づいて戦争や武力行使を放棄しているものであるため、このような戦争を可能にすることが本音の憲法変更は改正ではなく改悪であると、私は考える。

 なお、日本政府は「後方支援は戦争行為ではない」とも説明しているが、後方支援の定義は「兵站=Military logistics」であり、戦闘地域の後方で物資の配給、兵員の展開、施設の構築・維持などを行うものであるため、戦争の重要な一部だというのが国際常識だ。

<安保法制と憲法>
*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150528&ng=DGKKASFS27H4L_X20C15A5EA2000 (日経新聞 2015.5.28) 安保法案攻防、首相が歯止め強調
 自衛隊の海外活動を拡大する安全保障関連法案の実質審議が27日、衆院平和安全法制特別委員会を舞台にはじまった。法案成立後に行使可能になる集団的自衛権を使い、自衛隊はどこまで行動できるのか。武力行使の「歯止め」をめぐり、各党の党首級が論戦を繰り広げた。(1面参照)
■海外派兵の例外「中東の機雷掃海のみ」
●自民党の高村正彦副総裁「海外派兵の例外にあたるのはペルシャ湾の機雷掃海くらいだ」
●安倍晋三首相「現在、他の例は念頭にない」
 海外派兵とは、武力行使の目的で武装部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することだ。一般に自衛のための必要最小限度を超えるため、憲法上許されない。横畠裕介内閣法制局長官は見解に変更がないと答弁した。ただ、憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を認めた昨年7月の閣議決定で、武力行使の3要件は新しくなっている。密接な関係国が攻撃されて日本の存立を脅かす状況にあり、必要最小限度の実力行使にとどまる、などだ。安保法案にも3要件は明記されている。3要件を満たす「例外」の海外派兵が今後増えていくかもしれない。首相はかねて中東のホルムズ海峡での機雷掃海を挙げるが、野党側は例外の拡大を警戒する。高村氏の質問にはそんな疑念を晴らす狙いがあった。首相がさらに「歯止め」を強調したのが、安保法案の採決時の協力を期待する維新の党、松野頼久代表への答弁だ。「相当な危険を伴う。実際のオペレーションは戦闘行為がないときしか行わない」。機雷掃海の実施は事実上の停戦合意後だとして理解を求めた。しかし、海外派兵の例外拡大がなくなったとはいえない。首相は日本人を輸送している米艦を防護するような場合、他国領域で集団的自衛権を行使するかと問われ「慎重な当てはめをしていく」と含みを持たせた。横畠長官も「誘導弾等の基地をたたく以外に攻撃を防ぐ方法がない場合、他国の領域における武力行動は許されないわけではない」と、敵基地攻撃の可能性に触れた。
■「先制攻撃、支援せず」国際法に反すると指摘
 民主党の岡田克也代表「米国が先制攻撃をするとき(日本が)集団的自衛権を行使することはないか」
 首相「ある国がなんら武力攻撃を受けていないのに違法な武力行使をするのは国際法上、認められていない。日本が支援することはない」
 日米両政府は4月に防衛協力のための指針(ガイドライン)を改定し、自衛隊と米軍の地球規模の協力を打ち出した。岡田氏は、日米同盟が深まった結果、米国のしかけた戦争に巻き込まれるのでは、と疑問を投げかけた。「米国は先制攻撃を否定していない国だ。ある国と戦争状態になったとき集団的自衛権行使を認めるのか」。こう迫る岡田氏に、岸田文雄外相は「先制攻撃は国際法に違反する。集団的自衛権で支援することは全くありえない」と答えた。その直後の首相答弁とはニュアンスに若干の違いが出た。首相は「国連憲章上、違法とされる先制攻撃」を支援しないとした。先制攻撃が違法とみなされるかどうかで判断が変わることを示唆したかのようにみえる。岡田氏は「新3要件さえ満たしていれば先制攻撃でも侵略行為でも認めるのか」と詰めた。首相は「違法行為を支援することはない」と繰り返した。

<存立危機事態と武力攻撃切迫事態の定義>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11779496.html (朝日新聞 2015年5月29日) 「事態」論議、答弁あいまい 存立危機・攻撃切迫・重要影響 安保法制
 民主党の辻元清美氏は、日本の存立が脅かされる「存立危機事態」と、日本への直接攻撃が差し迫る「武力攻撃切迫事態」との違いなどを追及。他国への武力攻撃であっても政府が存立危機事態と認定すれば武力行使を認める一方で、武力攻撃切迫事態では武力行使を認めない法律上の根拠を問いただした。中谷元・防衛相は「他国に武力攻撃が発生したかどうかと、我が国が直接武力攻撃を受けたときの判断基準に違いがある」といった説明を繰り返した。辻元氏が中谷氏に同じ質問をたたみかけると、安倍晋三首相が自ら答弁席へ。「総理待って、中谷大臣に聞いている。ダメです」と遮る中、首相がそれぞれの事態を説明。辻元氏はなお、「基準があいまいで、時の政府によって何とでも判断できる」と問題点を指摘した。また、同党の緒方林太郎氏は、政府が他国の領域では集団的自衛権の行使を一般に認めないとする根拠について質問。「武力行使の新3要件」のうち存立危機事態に該当しないためか、それとも自衛のための必要最小限度を超えるためかと問うと、中谷氏は「新3要件から論理的に導かれている」などと答弁。緒方氏は「質問に答えていない」として再度、説明を求めた。日本のために活動する米軍などを地球規模で支援するという「重要影響事態」について、公明党の北側一雄副代表は「どんな基準で判断するのか」と質問。首相は、日本に戦禍がおよぶ可能性など状況に応じて「客観的、合理的に判断する」と答えた。維新の党の江田憲司前代表は、重要影響事態の具体例を迫った。だが、首相は具体的には答えず、江田氏は「地球の裏側まで行けるようにしたいのか。国民が納得しない」と批判した。
■<視点>定義、分かりやすい説明を
 国会論戦で定義があいまいな「事態」が飛び交うのは、安全保障法制の分かりにくさを象徴している。これまで自衛隊に出動を命じる前提となる「事態」は、日本有事を起点に考えられてきた。安倍政権が集団的自衛権の行使を認め、自衛隊の海外派遣の拡大を決めたことで、武力を行使したり他国の戦争を支援したりできる範囲が広がり、それぞれの事態が重なり合うことで、その線引きが不明確になっている。政府与党は状況に応じて判断基準や手続きを定めようと事態を細分化したが、その定義をめぐり混乱が生じることは与党協議の時から懸念されてきた。政権側にあえて事態の定義を明確にせず、政策の選択肢を広げようとする思惑があるとすれば許されない。事態の認定は日本が戦争に関わるかどうかを決める重大な判断であり、国会のチェックや国民の理解が欠かせない。国会論戦で浮上した矛盾や疑問点に対して、政府は具体的な事例で答え、国民に分かりやすい定義を示すべきだ。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11748068.html (朝日新聞 2015年5月12日) 行使、政権の裁量次第 集団的自衛権 国会事前承認、あくまで「原則」
 11日に法案の全体像が示された安全保障法制の中で、中核的な柱のひとつが、武力攻撃事態法改正案に盛り込まれた集団的自衛権の行使だ。改正法案には、安倍内閣が昨年7月に閣議決定した、行使の前提となる新3要件が明記された。与党幹部は厳しい「歯止め」をかけたと自賛するが、行使の判断基準にはあいまいさが残る。政権の裁量次第で、海外での武力行使に道を開くものだ。そもそも集団的自衛権の行使は、国連憲章が加盟国に認めている国際法上の権利だ。日本政府はこれまで「持っているが、使えない」との立場を取ってきた。だが、憲法解釈を変えて行使を可能にしたことで、他国の戦争にどう関わるか、新たな判断が問われることになる。世界的に見れば、集団的自衛権の行使が、後にその是非を問われたケースも多い。米国がベトナム戦争に参戦したり、北大西洋条約機構(NATO)がアフガン戦争に加わったりした根拠も、集団的自衛権の行使だった。個別的にせよ、集団的にせよ、自衛権は各国の判断で行使できる。つまり自衛権を掲げて戦争に加わるかどうかについては、国連決議などは必要ない。今回の安全保障法制では、米軍など他国軍を後方支援する国際平和支援法案や国連平和維持活動(PKO)協力法改正案については、国連決議など国際法上の正当性を保つ「歯止め」が取り入れられた。しかし、武力攻撃事態法改正案による集団的自衛権の行使には、国連決議などは必要とされず、国会の事前承認もあくまで「原則」とされている。
■3要件、判断基準あいまい
 与党協議をリードした両党のトップは11日の会見で、集団的自衛権の行使を可能にした武力攻撃事態法改正案にも触れた。だが、法制化を成し遂げた責任者の言葉としては、奇異なものだった。「集団的自衛権行使の局面が、世界中であるかというと、あるとはとても思えない」。公明党の北側一雄副代表が強調すると、自民党の高村正彦副総裁も「思い浮かばない」と歩調を合わせた。法案に盛り込んだのに「行使の局面はほぼない」と口をそろえたのだ。その念頭にあるのは、今回の改正案に明記された、自衛隊の武力を使う際の「新3要件」の存在だ。日本にとって密接な関係にある他国が攻撃された時に、自衛隊が集団的自衛権を使って侵略国などに反撃する際も、日本の存立に関わるような明白な危険がある事態(存立危機事態)▽外交努力など他に手段がない▽必要最小限度の行使にする――の3点の成立を前提条件とするものだ。昨夏の閣議決定に書かれた文言が、そのまま法案にも踏襲された。2人が強調したかったのは、この3要件を厳格に適用すれば、自衛隊が海外で武力を使えるような事態はめったに発生しないという理屈だ。しかし、自公両党や外務・防衛両省に加え、憲法解釈を担う内閣法制局も絡んで、その利害や思惑を積み木細工のように重ねた新3要件と、それを反映した改正案の条文表現は、様々な解釈が成り立つ。「密接な関係にある国」とはどこか、「存立が根底から覆される事態」とはどんな事態か、「他の手段がない」とはどう判断するのか……。安倍晋三首相はこれまで、中東のホルムズ海峡が機雷で封鎖されたケースを想定例として再三言及。中東に多くを頼る原油輸入がストップするような事態になれば、国民の生活が行き詰まり、集団的自衛権を使える「存立危機事態」に当たるとの見解を示している。公明党はこの見解に一貫して反発している。だが、存立危機事態という法の根幹をめぐる解釈が一致しないまま法制化されることこそ、集団的自衛権を使う判断基準が、時の政権に委ねられた実態を示している、と言えそうだ。
■「存立危機」微妙な定義
 存立危機事態をどの法案に反映させるかについても、ご都合主義的な対応が目立つ。これまで認められてきた個別的自衛権では、日本が直接攻撃にさらされ、国民が少なからず被害を受ける武力攻撃事態が前提だった。このため、武力攻撃事態法と合わせて、国民の権利を制限しても緊急時の避難などを優先する国民保護法がセットで適用されることになっている。一方、今回の存立危機事態については、国民の権利を制限するまでの状況とは考えられないとして、それに合わせた法改正は見送られた。「国民の権利が根底から覆される」ほど危険な状況だから集団的自衛権を行使すると言いつつ、国民の権利制限が必要なほど切迫はしていない、というわけだ。存立危機事態は、そんなあいまいで微妙な定義の上に成り立っている。
◆キーワード
<集団的自衛権> 同盟国などが攻撃されたとき、自国への攻撃と見なし、反撃できる権利。国連憲章など国際法で認められている。日本の歴代内閣は「保有しているが、憲法9条との関係で行使できない」との解釈を示していたが、安倍内閣は昨年7月の閣議決定で、解釈を変更。(1)日本と密接な関係にある他国が武力攻撃され、日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態(存立危機事態)(2)我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない(3)必要最小限度の実力行使――の新たな3要件を満たせば、集団的自衛権による武力行使を憲法上可能とした。

*2-3:http://qbiz.jp/article/62377/1/
(西日本新聞 2015年5月18日) 電力不足も危機事態の要件に該当 首相、参院本会後で表明
 安倍晋三首相は18日の参院本会議で、集団的自衛権の行使要件である存立危機事態について、日本と密接な国が攻撃を受け、国内で電力不足などが発生した場合も該当し得るとの見解を示した。存立危機事態の例として「生活物資の不足や電力不足によるライフラインの途絶が起こるなど、国民生活に死活的な影響が生じる場合」を挙げた。日本の原油輸送ルートである中東・ホルムズ海峡が機雷により封鎖された場合の、機雷掃海のための自衛隊派遣が念頭にあるとみられる。維新の党の小野次郎氏に対する答弁。

*2-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015052002000120.html
(東京新聞 2015年5月20日) 集団的自衛権 「原発燃料不足でも」 防衛相、適用拡大狙う
 中谷元・防衛相は十九日の参院外交防衛委員会で集団的自衛権の行使要件となる「存立危機事態」に関し、日本と密接な他国への武力攻撃で「天然ガスや原子力(発電の燃料)」の輸入が途絶する状況も該当する場合があるとの考えを示した。「食料が確保されない」場合も例に挙げた。安倍晋三首相は十八日の国会答弁で「電力不足」や「生活物資の不足」による影響が要件になり得ると表明した。中谷氏の発言は、首相答弁に沿った形で集団的自衛権の適用範囲を幅広く確保しておきたい狙いがありそうだ。維新の党の小野次郎氏が首相答弁に即して「生活物資」の対象を質問。中谷氏は「日常生活や生命に関する」ものと説明した。「食料も含まれるのか」との問いには「食料が確保されない事態も起こり得る」と答えた。小野氏が「石油以外の電力原料も考えているか」とただすと、中谷氏は「天然ガスや原子力とかそういった部分」と応じた。「天然ガスとかウラニウム(ウラン)もプルトニウムも含まれるのか」と畳み掛けると「その通りだ」と答えた。一方で、中谷氏は、経済活動や通信活動の途絶が該当するかには「金融措置などで国民生活や国家経済に打撃を受けても(要件に)当たらない」と述べた。

*2-5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015060702000158.html (東京新聞社説 2015年6月7日) 週のはじめに考える 原発と二つの安保
 安保論議が盛んです。今は安全保障法案が注目ですが、少し前はエネルギー安保でした。どちらも原子力が関係しますが、原発ゼロが国益のようです。安倍晋三首相は安保法案提出の理由として「北朝鮮は弾道ミサイルを数百発、持っている」「緊急発進が十年前に比べて七倍も増えている」と、日本を取り巻く安全保障環境が厳しくなったとの認識を繰り返し説明しています。エネルギー安保に関しては、安倍首相は「電力不足も存立危機事態」とし、中谷元・防衛相は「石油だけでなく、ウランやプルトニウムの輸送も含まれる」と述べています。
◆余る核燃料
 古い話になりますが、安全保障と原発に関して岸信介首相(当時)は一九五七年、国会答弁で「自衛のための核保有は合憲」との考え方を示しました。福島第一原発事故後、保守派の論客とされる人たちは「原発は安全保障上、必要だ」として再稼働を求めています。残念なことに、これらの話には誤解や矛盾があります。まず、エネルギー安保からみてみましょう。政府は原発が停止し、エネルギーの自給率が5%程度であることを問題にしています。最近、決めた二〇三〇年の電源構成では、純国産エネルギーである再生可能エネルギーを22~24%とし、準国産エネルギーともいわれる原発を20~22%にしました。三〇年には40%程度まで“自給”できるというのです。中谷防衛相が心配した燃料はどうでしょうか。関西電力のホームページには「万が一ウランの輸入がストップしても、原子力発電所に加え、国内の燃料加工工場にあるウランを使えば、約二・四年間原子力発電所の運転を継続できます」と説明があります。
◆世界一危険な原発
 東京電力は先月十九日、新潟県の柏崎刈羽原発にウラン燃料を運び込みました。理由は「燃料メーカーの倉庫がいっぱいになったから」と報道されています。政府は電力にこだわりますが、すでにウラン燃料が国内で余っていることはご存じないようです。次に原発と安全保障の問題を考えてみましょう。その前にクイズを一つ。世界で一番危険な原発はどこでしょう。答えはイランです。理由は、いつ空爆されるか分からないからです。荒唐無稽な話ではありません。イスラエルは一九八一年、イラクにあった完成間近の原発を空爆したことがあります。一方、イスラエルの原発は昨年、パレスチナからロケット弾攻撃を受けました。原発は狙われやすいのです。常に核兵器の開発が疑われるイランですが、自らは「平和利用」と言い続けています。攻撃の口実を与えないためです。直接の攻撃だけではありません。イランでは二〇一〇年、原発などのコンピューター約三万台が「スタックスネット」というウイルスに感染しました。このウイルスはインターネットに接続していないコンピューターにも感染する新種で、米国とイスラエルの共同開発とうわさされています。「科学」四月号によると、ヤツコ元米原子力規制委員会委員長は「アトムズ・フォー・ピース(平和のための原子力)から、今はピース・フォー・アトムズ(原子力のための平和)になった。最大の脅威はサイバーテロだ」と話しているそうです。サイバーテロについては、日本年金機構のお粗末な対応が明らかになったばかりですが、電力会社も意識が高いとは言えません。東電は昨年、経費節減を理由に、危険だと警告されていたウィンドウズXPを使い続けると発表。その後、会計検査院の指摘を受けて、更新計画を前倒ししました。実質国営企業で黒字経営、しかも首都圏の電力供給を担う会社でこれです。東電に対しては福島第一原発事故直後、国際ハッカー集団「アノニマス」がサイバー攻撃を呼び掛けたこともあります。こういう相手には、日米同盟をいくら強化しても抑止力にはなりません。万一、日本が攻撃対象になるような事態が起きたら、国内に原発があるのは、国民の生命や財産にとって明白なリスクです。原発は全基停止を強いられ、一挙に20%もの電源を失うことになります。
◆安保には再生エネ
 二つの安保を重視するなら、原発ではなく、再生可能エネルギーを推進すべきです。コストが問題になりますが、太陽光や風力は原発と同じで、初期投資が大きく、ランニングコストは比較的小さいのです。安全保障のためですから、建設費に防衛費の一部を充てればどうでしょう。反対する国民はあまりいないと考えますが。

<日本国憲法との関係>
*3-1:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html (日本国憲法 要点のみ)
前文
 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
第二章 戦争の放棄
第九条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
02  前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

*3-2:http://www.jiji.com/jc/zc?k=201506/2015060400318&g=pol
(時事ドットコム 2015/6/4) 集団的自衛権行使「違憲」=憲法学者3氏が表明-衆院審査会
 衆院憲法審査会は4日午前、憲法学者3氏を参考人として招き、立憲主義などをテーマに意見聴取と質疑を行った。民主党委員から集団的自衛権の行使容認について見解を問われた3氏全員が「憲法違反だ」と明言した。招かれたのは早大教授の長谷部恭男氏と笹田栄司氏、慶大名誉教授の小林節氏。長谷部氏は、安倍政権が進める安全保障法制整備について「憲法違反だ。従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかないし、法的な安定性を大きく揺るがすものだ」と批判した。小林氏も「憲法9条2項で軍隊と交戦権が与えられていない。仲間の国を助けるために海外に戦争に行くことは憲法9条違反だ」と強調し、9条改正を訴えた。笹田氏は、従来の憲法解釈に関し「ガラス細工で、ぎりぎりのところで保ってきていた」とした上で、集団的自衛権行使については「違憲だ」と述べた。

*3-3:https://www.satsuben.or.jp/info/statement/2015/01.html (札幌弁護士会会長声明 2015年5月3日)集団的自衛権行使等を定めるいわゆる新安保法制に反対する会長声明
 政府・与党は、今通常国会において、集団的自衛権の行使を可能とするために、自衛隊法等を改正するとともに、新法を制定しようとしている(以上を包括して「新安保法制」という。)。新安保法制は、これまで憲法に違反するとして認められていなかった自衛隊の活動を可能とするものである。すなわち、新安保法制は、我が国が攻撃されていない場合にも自衛隊による実力の行使を認め(自衛隊法、武力攻撃事態及び存立危機事態安全確保法)、周辺事態に当たらない場合であっても米軍及び米軍以外の他国軍隊に対する支援を可能とし(重要影響事態安全確保法)、一部の活動については現に戦闘行為が行われている現場での実施も可能にするものである(国際平和支援法等)。そもそも、憲法前文及び第9条は、我が国が先の大戦とそれに先行する侵略と植民地支配によりアジア諸国をはじめ内外に多大な惨禍を与えたことに対する深い反省と教訓に基づき、戦争及び武力行使を放棄し、軍隊を保持せず、交戦権も認めないという徹底した恒久平和主義に立脚している。当会は、昨年7月1日になされた「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」との閣議決定(以下「本閣議決定」という。)について、恒久平和主義を定める憲法前文や第9条及び立憲主義に反するもので違憲無効であるとの会長声明を発し、本閣議決定を前提とする立法の成立阻止に向け取り組むことを表明した。新安保法制は、集団的自衛権の行使を認め、周辺事態以外の事態においても米軍及び米軍以外の他国軍隊の支援を可能にし、自衛隊による戦闘現場での活動などを可能にする点で、まさに本閣議決定を前提とし、その具体化を図るものである。したがって、新安保法制は、これらの点において、本閣議決定と同様、憲法前文や第9条に反し、許されないものである。68回目の憲法記念日に当たって、当会は、社会正義の実現と基本的人権の尊重を使命とする弁護士会として、人権保障の前提である恒久平和主義に抵触する新安保法制の制定に強く反対し、戦後70年を迎えた今、政府・与党が深い反省と教訓に基づき、平和憲法の理念の下に、他国との対話による平和構築に向けた積極的な取り組みをなすことを強く求めるものである。

*3-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015052301001447.html
(東京新聞 2015年5月23日) 緊急事態条項を最優先 憲法改正、自民党方針 
 自民党は憲法改正に関し、他党の賛同が得やすいとみる緊急事態条項、環境権、財政規律条項の中で緊急事態条項を衆院憲法審査会などで最優先に議論する方針を固めた。自民、公明両党内に慎重論がある他の2項目に比べ、合意形成が見込めると判断した。自民党幹部が23日、明らかにした。26日に審議入りする安全保障関連法案をめぐり与野党対立の激化が予想され、審査会での改憲議論は停滞する可能性もある。緊急事態条項は、大災害や他国からの武力攻撃の際、首相の権限を強化することなどが柱。

<国際法>
*4:http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/refer/200901_696/069604.pdf#search='%E9%9B%86%E5%9B%A3%E7%9A%84%E8%87%AA%E8%A1%9B%E6%A8%A9+%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%B3%95'
(松葉 真美) 集団的自衛権の法的性質とその発達
―国際法上の議論―
① 我が国政府は、集団的自衛権(right of collective self-defense)を「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」としている。これまで政府は、日本が集団的自衛権を保有していることを
認めつつ、その行使は日本国憲法第9条により禁じられていると解釈してきた。
② 集団的自衛権は、国際連合憲章第51条に規定された国家の国際法上の権利である。国連憲章は、集団安全保障体制の構築を規定する一方で、個別的又は集団的自衛権の規定を置
いている。集団的自衛権は、国連憲章において初めて認められた権利であるが、国連憲章はその意味については特に規定しておらず、学者や各国の間に一定の共通理解が確立して
いるものの見解は分かれる。
③ 集団的自衛権の制定経緯を振り返ってみると、この権利が、大国の拒否権によって集団安全保障機能が麻痺し、地域的機構の自立性が失われることに対する中小国の危惧から生
み出された権利であることがわかる。集団的自衛権が国連憲章に規定されて以来、これに基づいて数多くの二国間または多国間の集団防衛条約が締結され、集団防衛体制が構築さ
れてきた。
④ 集団的自衛権は、しばしば集団安全保障と混同される。集団安全保障が1つの集団の内部の秩序維持に向けた制度であるのに対し、集団的自衛権は外部の敵による攻撃から自ら
を防衛する権利である。国連憲章下で、集団安全保障と集団的自衛権は、本質的に異なる概念ながら密接な関係を有している。
⑤ 集団的自衛権の法的性質については、⑴他国の権利を防衛するとする正当防衛論、⑵個別的自衛権の共同行使とする自己防衛論、⑶攻撃を受けた他国の安全と独立が自国にとっ
て死活的に重要な場合に防衛行為をとることができるとする議論の3つに分けられる。現在の通説は⑶であるといえるが、攻撃を受けた国と集団的自衛権を行使する国の関係が具
体的に明らかではなく、軍事介入を幅広く認める結果となる恐れがある。
⑥ その点、国際司法裁判所が、1986年のニカラグア事件判決において、集団的自衛権を行使するためには、攻撃を受けた国による攻撃事実の宣言及び他国に対する援助要請が必要
であると判断したことは注目される。
⑦ 実際に集団的自衛権が行使された事例を見てみると、やはりその濫用が疑われてきたことは否めない。そこでは、外部からの武力攻撃の発生の有無と、被攻撃国による援助要請
の正当性が常に論点となってきた。国際秩序の維持のためには、これらを正しく見極めた上での集団的自衛権の行使が必要であり、我が国も集団安全保障体制との整合性を意識し
て今後の議論を進めていくことが望まれる。

<投票率とメディア>
*5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/135854
(佐賀新聞 2014年12月15日) 推定投票率52%、戦後最低に、前回から7ポイント低下
 衆院選の投票率は、共同通信の15日午前1時現在の推計で52・38%となり、戦後最低だった2012年の前回衆院選(小選挙区59・32%、比例代表59・31%)を7ポイント程度下回る見通しだ。期日前投票者数は前回から9・23%増の1315万1966人だったが、14日に投票した有権者が大幅に減った。北日本から西日本の日本海側を中心に大雪が降った影響もあるとみられる。都道府県別の投票率(推定を含む)で最高は島根の59・24%。2位以下は山梨59・18%、山形59・15%が続いた。最低は青森の46・83%で、徳島47・22%、富山47・46%の順だった。


PS(2015.6.9追加):日米安全保障条約は集団的自衛権の行使ではないのか調べたところ、*6-1のように、3条に「締約国は、個別的及び相互に協力して武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる」等が書かれており、まさに個別的自衛権・集団的自衛権双方の行使だった。また、日米安全保障条約には、自国の憲法に従つて共通の危険に対処することも明記されているが、*6-2のように、早急な憲法改正を主張するグループもあるため、平和主義国家の日本を維持するためには、憲法を護るための活動をすることが必要であることを強く認識した。

<日米安全保障条約>
*6-1:http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/jyoyaku.html (外務省)
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
 日本国及びアメリカ合衆国は、両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、また、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的安定及び福祉の条件を助長することを希望し、国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、よつて、次のとおり協定する。
第一条
 締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。
 締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。
第二条
 締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。
第三条
 締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。
第四条
 締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。
第五条
 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
 前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。
第六条
 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。
 前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。
第七条
 この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。
第八条
 この条約は、日本国及びアメリカ合衆国により各自の憲法上の手続に従つて批准されなければならない。この条約は、両国が東京で批准書を交換した日に効力を生ずる。
第九条
 千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約は、この条約の効力発生の時に効力を失う。
第十条
 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。
 もつとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。

 以上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。千九百六十年一月十九日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。
日本国のために
 岸信介
 藤山愛一郎
 石井光次郎
 足立正
 朝海浩一郎
アメリカ合衆国のために
 クリスチャン・A・ハーター
 ダグラス・マックアーサー二世
 J・グレイアム・パースンズ

*6-2:http://www.sankei.com/region/news/150609/rgn1506090009-n1.html
(産経新聞 2015.6.9) 早急な憲法改正を 新潟市で300人集まり結成式
 憲法改正を進める「美しい日本の憲法をつくる新潟県民の会」の結成式が新潟市中央区下大川前通の新潟グランドホテルで開かれた。式には国・県会議員ら約300人が参加。活動方針として、(1)平成28年参院選に合わせた国民投票を目指す(2)県内の賛同者を28年3月末までに12万人集める(3)県市町村議員の賛同署名を総議員の過半数を目指す(4)「国会に憲法改正の早期実現を求める」地方議会議決を目指す-などを決めた。代表委員となった石崎徹衆院議員(自民)は「憲法改正に過半数の賛同を得るには啓蒙(けいもう)・普及活動が大切だ」、塚田一郎参院議員(同)は「現在の北東アジア情勢下で美しい日本を残すには憲法改正しかない」と呼びかけた。式後、杏林大名誉教授の田久保忠衛氏が「憲法改正、最後のチャンスを逃すな!」と題する記念講演を行った。田久保氏は、中国が膨張主義を取る一方、オバマ米大統領は軍事力を使いたくないと考えていると指摘。この状況下では、アメリカと協調しながら、「憲法9条の枠内でできることはやった。憲法を改正して軍の保持を明記しなくてはならない」と訴えた。


PS(2015.6.9追加):*7のように、自民党の村上衆院議員と木村参院議員が自民党内で反対しておられるのは立派であり、他にも同じような考えの人は多いと思われる。私も、「景気回復」「電力自由化」「女性の活躍」などを前面に出して多数を得た政党が、この安保法案で党議拘束をかけるのは、別のテーマで支持されて得た多数の力を使った強引な行為であり、筋が通らないと考える。

*7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015060902000250.html
(東京新聞 2015年6月9日) 自民内部からも異論 憲法学者「違憲」「無視は傲慢」
 自民党総務会で九日、衆院憲法審査会に参考人として出席した憲法学者三人がそろって他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を「憲法違反」と明言したことをめぐり、安全保障関連法案に対してあらためて疑問の声が上がった。谷垣禎一幹事長は、法案採決にあたっては党議拘束をかける意向を示した。総務会では、村上誠一郎衆院議員が「憲法学者の言うことを自民党だけは聞かなくていいという傲慢(ごうまん)な姿勢は改めるべきだ」と指摘。法案採決では党議拘束を外すよう、執行部に求めた。木村義雄参院議員は、砂川事件の最高裁判決を根拠に集団的自衛権の行使を認めるという憲法解釈に対して「短絡的すぎる。そういう主張をしていると傷口を広げるので、これ以上言わない方がいい」と忠告した。一方、谷垣氏は安保法案が国会提出に先立つ事前審査で了承されていることを踏まえ、「党としてばらばらの対応は取れない」と強調した。二階俊博総務会長はその後の記者会見で、党議拘束をかけるかどうかについて、「大きな問題でもあり、国会審議の状況を見ながら方向を定めていきたい」と述べるにとどめた。


PS(2015.6.9追加):*8-1のように、政府・自民党は、「集団的自衛権行使を可能とする安全保障関連法案は、これまでの政府の憲法解釈との論理的整合性や法的安定性を保っており、憲法違反ではない」とする見解を文書で野党に提示したそうだが、日本弁護士連合会は、会長声明で、*8-2のように、「自衛隊が、地理的限定なく、武力の行使、戦争国の支援、停戦処理活動等を行うことの問題点は多岐にわたるが、次に指摘する点は特に重大だ」として、ポイントをついた指摘をしている。

*8-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/195798
(佐賀新聞 2015年6月9日) 政府「合憲」見解を提示、安保関連法案
 政府は9日、集団的自衛権行使を可能とする安全保障関連法案について「これまでの政府の憲法解釈との論理的整合性や法的安定性は保たれている」として、憲法に違反しないとする見解を文書で野党に提示した。4日の衆院憲法審査会で参考人の憲法学者全員が「違憲」と指摘したことに反論した。政府は違憲論争の収束を図り、審議を促進したい意向。だが見解は行使容認へ憲法解釈を変更した昨年7月の閣議決定の論理構成の踏襲にとどまり、野党の理解が得られるか見通せない。政府見解は民主党が要求した。

*8-2:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2015/150514.html (日本弁護士連合会会長 村越進 2015年(平成27年)5月14日)
安全保障法制改定法案に反対する日弁連会長声明
 本日、政府は、自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態法、国連平和維持活動協力法等を改正する平和安全法制整備法案及び新規立法である国際平和支援法案(以下併せて「本法案」という。)を閣議決定した。本法案は、昨年7月1日の閣議決定を受け、また本年4月27日の新たな日米防衛協力のための指針の合意に合わせて、自衛隊が、平時から緊急事態に至るまで、地理的限定なく世界のどこででも、切れ目なく、自らの武力の行使や、戦争を遂行する他国の支援、停戦処理活動等を広汎に行うことを可能とするものである。本法案の問題点は極めて多岐にわたるが、次に指摘する点は特に重大である。まず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされる等の要件を満たす事態を「存立危機事態」と称し、この場合に、世界のどこででも自衛隊が米国及び他国軍隊とともに武力を行使することを可能としている。しかし、これは、憲法第9条に違反して、国際法上の集団的自衛権の行使を容認するものである。次に、我が国の平和と安全に重要な影響を与える「重要影響事態」や、国際社会の平和と安全を脅かす「国際平和共同対処事態」において、現に戦闘行為が行われている現場でなければ、地理的限定なくどこででも、自衛隊が戦争を行っている米国及び他国軍隊に、弾薬の提供等まで含む支援活動を行うことを可能としている。これでは、従前禁止されてきた他国との武力行使の一体化は避けられず、憲法第9条が禁止する海外での武力行使に道を開くものである。さらに、これまでの国連平和維持活動(PKO)のほかに、国連が統括しない有志連合等の「国際連携平和安全活動」にまで業務範囲を拡大し、従来PKOにおいてその危険性故に禁止されてきた安全確保業務や「駆け付け警護」を行うこと、及びそれに伴う任務遂行のための武器使用を認めている。しかし、この武器使用は、自己保存のための限度を超えて、相手の妨害を排除するためのものであり、自衛隊員を殺傷の現場にさらし、さらには戦闘行為から武力の行使に発展する道を開くものである。その危険性は、新たに自衛隊の任務として認められた在外邦人救出等の活動についても同様である。これらに加え、本法案は、武力攻撃に至らない侵害への対処として、新たに他国軍隊の武器等の防護を自衛官の権限として認めている。これは、現場の判断により戦闘行為に発展しかねない危険性を飛躍的に高めるものである。以上のとおり、本法案は、徹底した恒久平和主義を定め、平和的生存権を保障した憲法前文及び第9条に違反し、平和国家としての日本の国の在り方を根底から覆すものである。また、これらの憲法の条項を法律で改変するものとして立憲主義の基本理念に真っ向から反する。さらに、憲法改正手続を踏むことなく憲法の実質的改正をしようとするものとして国民主権の基本原理にも反する。よって、当連合会は、本法案による安全保障法制の改定に強く反対するとともに、基本的人権の擁護を使命とする法律家の団体として、本法案が成立することのないよう、その違憲性を強く訴えるものである。


PS(2015.6.11追加):与党は、*9-1のように、安全保障関連法案の整備理由を「国際情勢の変化」と説明しているが、それは具体的に何か? テロへの対応なら、相手は国でないため、その国の警察が主体となるべきで、それで足りない場合にのみ依頼された国が応援することになる。また、テロと原発を同時に考えれば、危機管理意識の低い日本が戦争に参加して敵を作れば作るほど、国民のリスクは高まる。さらに、ITの進歩による変化では、*9-2のように、インターネットに繋いだパソコンで守秘義務のある情報を扱い、事故が起きてもトップが頭を下げれば水に流すという日本人の甘さが問題なのだ。つまり、技術進歩への対応や危機管理の甘い日本政府とその関係機関が、最も国民の人権や幸福追求の権利を害しているのであり、そういう人権意識の低さを残す“文化”を持つ日本政府の武力行使を安易化するのは非常に危険なことなのである。

*9-1:http://www.sankei.com/politics/news/150517/plt1505170006-n1.html
(産経新聞 2015.5.17) 安保法案 稲田政調会長「必要な法整備」 
 与野党幹部は17日のNHK番組で、自衛隊の役割拡大を図る安全保障関連法案について議論した。自民党の稲田朋美政調会長は、国際情勢の変化に伴う必要な法整備だとした上で、歯止め策も明記されていると強調。一方、民主党の細野豪志政調会長は、自衛隊の安全確保に問題点があると懸念を示した。稲田氏は集団的自衛権について「憲法9条の中で、日本の存立が根底から脅かされている時に行使する。海外でどこへでも行って武力行使できるというのは違う」と指摘。他国軍への後方支援を随時可能とする恒久法「国際平和支援法案」をめぐり、自衛隊が戦闘に巻き込まれるとの批判に対しても「危険だということになれば中止する。自衛隊員の安全確保が規定されている」と述べた。公明党の石井啓一政調会長は「政府は丁寧な説明をしてほしい。今国会成立を期す」とした。

*9-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150609&ng=DGKKZO87851170Z00C15A6EA1000 (日経新聞 2015.6.9) 狙われた年金情報(1)何でこんなに遅いんだ
 6日午後、東京都心のオフィス街にある日本年金機構の年金事務所。明かりを半分だけつけた部屋で、休日出勤の職員が自分の年金情報が漏れていないか、確認に来た人の対応に追われていた。「あまりにずさんだ。インターネットにつないだ端末で個人情報を扱うなんてあり得ない」。怒鳴る男性に職員は「その通りです。申し訳ありません」と頭を下げた。旧社会保険庁時代から約30年働くこの職員はぼやく。「人事交流も少なく、本部のことはよく分からない。でも本部のミスでも謝るのはいつも我々現場の職員だ」。125万件もの個人情報が流出する非常事態にあっても、本部と現場の一体感は見えない。
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 発端は福岡市だった。5月8日、JR博多駅近くにある機構の九州ブロック本部。午前10時半ごろ、公開メールアドレスに1本のメールが届いた。「厚生年金基金制度の見直しについて(試案)に関する意見」。実在する文書と同じ表題に職員は疑いを抱かず、メールの末尾にあったアドレスをクリックした。その直後、首相官邸に近い内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の室内は慌ただしくなった。「厚生労働省が関係するサーバーから異常な量のデータが通信されています」。NISCは同省に「不審通信あり」と通報。ウイルス感染が確認された。機構が解析を依頼したウイルス対策会社は15日に「外部に情報漏洩するタイプではない」と報告。だがその後も攻撃は続いた。18日に東京を中心に大量の不審メールが届き、22日には九州で不審な通信をしているパソコン2台が発覚。NISCは厚労省に2度目の通報をした。それでも機構がネット接続を遮断したのは該当地域だけだった。19日時点で機構は都内の高井戸警察署に捜査を依頼したが、厚労相の塩崎恭久(64)に一報が入ったのは警視庁が情報流出の可能性を指摘した28日になってからだった。「なんでこんなに遅いんだ」。29日昼、個人情報流出の報告を受けた塩崎は周囲にいらだちをぶつけた。「原因究明と再発防止策をしっかりやれ」との号令が国会内の控室にむなしく響く。首相官邸に報告し、NISCから情報セキュリティ緊急支援チームの派遣を受け入れた塩崎は6月1日夕、記者会見を開き、事実を公表した。
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 「警告」は実は4年前から発せられていた。2011年6月、東京都杉並区の日本年金機構本部。有識者でつくる運営評議会で、ネットを通じた個人情報の漏洩対策が議題になった。「(国内外の組織で)最近、外部からの攻撃で個人情報が流出した例が相次いでいる。セキュリティー対策にご尽力いただきたい」。座長で東大教授の岩村正彦(58)らの問題提起に、機構本部の幹部は「考え得るリスクにしっかり対策を取っていく」と応じた。だがこの後、本部が約1万人の職員に厳しく注意喚起した形跡はない。機構を監督する厚労省にも、対策を強化する機会はあった。今年3月18日、政府は12省庁対抗のある競技会を都内で開いた。サイバー攻撃を想定し、情報漏洩の有無や被害端末特定の優劣を競う。厚労省は目標をクリアできなかった6省庁の中でも見劣りし、表彰式で「残念な結果だった役所は猛省してほしい」と官房長官の菅義偉(66)にくぎを刺された。その1カ月半後、今回の問題は起きた。4年前からの警告を素通りし、場当たり的な対応を繰り返した年金機構。政府首脳や自民党の幹部には、持ち主が分からない約5000万件もの年金記録が見つかった07年の第1次安倍政権での悪夢がよぎる。ずさんな実態がさみだれ式に判明。追及を強める民主党に押され、09年の政権交代につながった。「年金機構は旧社会保険庁そのもの。そこを議論しないと根本的な解決にならない」。6月4日、自民党本部で開いた会議で元厚労相の尾辻秀久(74)は力説した。記録問題に直面した当時の首相、安倍晋三が社保庁を「解体」して年金機構をつくったように、今回も怒りをぶつけるような組織論が浮上するのか。塩崎は8日、衆院決算行政監視委員会でこう宣言した。「機構の組織を徹底的に見直す。そのために厚労省の監督も強化する」(敬称略)。
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 125万件もの個人情報が政府機関から流出した。その舞台裏を探る。


PS(2015年6月12日追加):現在62歳の私は、1992年(39歳)頃から、外国のオフィスと英語でメール会議をしていたので、2005年に唐津でスタッフを雇おうとしたら、パソコンを使えない人が多かったのにはまいった。しかし、ネットを使えるか使えないかという話をしているようでは、*9-2のように、セキュリティーの話にはならず、*10が本当なら日本人ホワイトカラーの生産性が低い理由の一つである。

*10:http://qbiz.jp/article/64351/1/
(西日本新聞 2015年6月12日) 60歳以上、ネット未利用67% 高齢社会白書
 政府は12日午前の閣議で、2015年版「高齢社会白書」を決定した。60歳以上の日常生活に関する調査では、インターネットやスマートフォンなどの情報端末を「全く利用していない」「あまり利用していない」が合わせて67.2%に上り、高齢世代には浸透していない実態が浮き彫りになった。情報端末を「利用したい」と答えた人は60〜64歳が59.2%。70〜74歳は30.4%、80〜84歳は16.2%で、年齢が高くなるにつれて割合が下がる傾向にあった。調査担当者は「現役時代にネットを利用したことのない世代は、なじみがないのではないか」と分析している。


PS(2015年6月14日追加): 警察が行ってよいとされる通信傍受は、これまで組織ぐるみの薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的殺人の4分野に限られていたが、現在の国会で審議中の改正案で、詐欺、傷害、放火、児童ポルノ事件などの9分野を加えるそうだ。しかし、本当にそれしか傍受しないという保証などなく傍受結果も何とでも言えるため、政府に都合の悪い主張をする人を戦前のように変な罪で陥れることが容易になる。そのため、全体の流れとしての戦前回帰に注意が必要だ。

*11:http://qbiz.jp/article/64440/1/ (西日本新聞 2015年6月14日) 通信傍受、当事者への通知は半数どまり 291人中150人「人物特定できぬ」
 2014年に全国の警察が犯罪に関係する電話を傍受したのは291人で、このうち傍受の事実を通知したのは約半数の150人にとどまることが、警察庁への取材で分かった。通信傍受法は捜査機関に対し、犯罪と関係があった場合は傍受した当事者への通知を義務付けている。警察庁によると、通知しなかった理由の9割は「人物が特定できない」だった。通知を義務付けているのは、行き過ぎたプライバシー侵害を防ぐため。当事者は通知によって傍受された事実を知り、裁判所に記録の消去を求める不服申し立てができる。警察庁によると、14年に傍受した事件は薬物7件、銃刀法違反3件で、いずれも携帯電話のやりとりだった。この10事件の今年4月1日時点の通知状況を集計したところ、未通知だった141人のうち、人物が特定できなかったのは129人。特定できたものの所在不明だったのは5人、捜査の妨げになるため通知を延期したのは7人だった。警察庁刑事企画課は「未通知者の大半は、容疑者と電話をしていた相手。他人名義の携帯電話が使われていることもあり、個人の特定が難しい」と説明した。13年以前の通知状況は集計していないという。法務省は通信傍受の件数や容疑の罪名などを毎年国会に報告しているが、通知状況の報告義務はない。通信傍受法が施行された2000年以降、傍受の実績は約8万8千回に上るが、85%は事件と無関係だったことが判明している。犯罪と無関係の場合は当事者に通知されない。通信傍受法は傍受の対象を組織ぐるみの薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的殺人の4分野に限定しているが、国会で審議中の改正案が可決すれば、詐欺、傷害、放火、児童ポルノ事件など9分野が加わる。
▼第三者チェックを
 内田博文九州大名誉教授(刑事法)の話 法改正によって通信傍受の対象犯罪が詐欺などの身近な犯罪に広がれば、市民のプライバシーが侵害される恐れは格段に高まる。通知するかどうかを捜査機関が恣意(しい)的に判断することがないように、第三者がチェックする仕組みを導入すべきだ。

| 外交・防衛::2014.9~ | 04:36 PM | comments (x) | trackback (x) |

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