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2016.3.14 フクシマ、原発再稼働、復興など (2016年3月15、16、17、18、21、23日追加)

 汚染範囲  2016.3.12Huffintonpost  2016.3.12 放射性セシウム  放射性物質体内蓄積
                              農業新聞    食品基準

  原発事故による世界の日本食品輸入規制 (日本人なら、命をかけても食べて応援すべきか?)

(1)エネルギーの変換が必要なのである
 *1-1のように、「パリ協定」に基づいて政府がまとめた「2050年までにCO2を80%削減する」という目標はよいのだが、そのために原発をベースロード電源として2030年時点の原発比率を「20〜22%」とし、電源の柱の一つに位置付けたのは、思考停止の重大な問題だ。

 その点、*1-2のように、元米原子力規制委員長のグレゴリー・ヤツコ氏は、「大規模発電は今世紀限りで、新規制基準に適合していても事故は起きないという保証はできない」「原子力は非常に高価な技術で、来世紀には使われていないだろう」と明言しておられ、これが率直な論理的帰結である。

 また、*1-3のように、台湾では、5月に新政権を発足させる民進党の蔡英文次期総統が、2025年に原発の完全廃止の方針を掲げており、東京電力福島第1原発事故から5年に合わせて台北市などで3月12日に反原発デモが行われたそうだ。韓国も女性大統領であるため、勇気を出して原発の完全廃止方針を掲げてもらえると有り難いのだが・・。

(2)水素発電について
 原発にかわる二酸化炭素を出さずに発電できるエネルギーは自然エネルギーで、これを貯蔵するには、蓄電池のほか*2の水素も利用でき、必要な時に発電して電力を取り出す水素発電を政府が支援するそうだ。

 しかし、水素燃料による発電が燃料電池車で既に行われているのに、2020年までに民間実験炉を作るなどと言うのは、やる気のなさを感じる。さらに、政府が支援例として、液体水素輸送船や新型ガスタービン開発などを想定しているのも、水素は電力で作って国内で自給できるエネルギーであることを考慮しておらず、的外れだ。

(3)大津地裁の高浜原発運転差止仮処分決定
 *3-1のように、①大津地裁は高浜原発の運転を差し止める決定を出し ②関電は想定外の即時停止を迫られ「承服しがたい」としたが、その背景には、弁護団に第一人者の弁護士が入り、裁判官にも原発事故を直視する人が各地にいるようになったことがあるだろう。今後、野党は、国会で変な印象付けをするような質問をするのではなく、原発再稼働を推進する政府の甘さを論理的に追及して、エネルギー変換に繋げて欲しいと私は考える。

 また、*3-2のように、大津地裁が関電高浜原発3、4号機の運転差し止めを命じた判決は、動いている原発を司法が止めた初めての判決だが、「仮処分での主張や説明の程度では」との文言を何度も繰り返しているので、ともかく説明さえすれば判決が変わったのか心配になる。

 なお、裁判官の間に従来のように国の手続きの適否にとどまらず安全に関する審理を本格的に行うべきだという「改革論」が浮上していたそうだが、手続きの適否と安全性に関する真実とは無関係である上、従来“原子力の専門家”と呼ばれてきた人たちは原発再稼働と利害関係のある人が多く、煮詰まっているため信用できない。しかし、国民は、どうしても真実の根拠に基づく安全を必要とするため、福島原発事故の真の原因を究明した上で、他の原発にはその危険性がないのか否かを真摯に判断してもらいたいのだ。そのため、「多くの市民が求めているのは安全であり、規制基準ではなく安全基準だ」というのは、当たり前の話である。

(4)原発の本当のコスト
 まだ、「原発は安い電源だ」と主張する人がいるが、*4-1でロイターが掲載しているように、城南信用金庫の吉原理事長が、「①原発のコストの方が低いという人は、会計原則ぐらい勉強していただきたい」「②原発は、今あるウランを使うだけなら原価は低いが、それには廃炉費用、使用済核燃料の保管料・処理費用、工事費、人件費、地代を入れていない」「③事故が発生したら天文学的なコストがかかり、これに対して正確に引当金を積み立てると、とんでもない金額になる」「⑤これは不採算なのであり、国家ぐるみの壮大な粉飾決算だ」「⑥原発の将来に発生する未計上のコストをちゃんと計上して原発を再稼働させたら、もっと値上げをしなければならない」と述べておられ、私も全くそのとおりだと考える。

 また、自然エネルギーを使った発電による新電力が勃興してくれば、モノづくりのコストダウンに繋がるとともに、大量のエネルギー代金を海外に支払う必要がなくなり、その分、国民の暮らしが豊かになる。

 そのため、新エネルギーが新しい経済活力を生み出すとして、その開発に融資する金融機関があるのは理屈に合っており、環境に配慮した事業を行う組織には「グリーン・マーク」を作って付与したいところだ。なお、現在の消費者ニーズは脱原発が主流であり、消費者の教育レベルが高くなって洗練されればされるほど、消費者主権の方が外国追随型の官僚主導よりも新しいニーズに速やかに応えられる。

 そして、「⑦東京電力を生かすことが公共性ではない。安全でコストの安い電力サービスを継続的・安定的に保証することが公共性だ」というのも、全くそのとおりだ。

 なお、*4-2のように、英フィナンシャル・タイムズは、「福島原発事故の費用を東電は20%しか負担しておらず、日本の納税者の負担は約1000億ドル(約11兆4000億円)になる」と報告しているが、汚染水は未だに垂れ流しで原発事故は続いており、この11兆4000億円は全費用ではなく、賠償金は今後も増える見通しで、廃炉費用も結局は国民か電力使用者が支払うことになる。それでも、「原発のコストは安い」と言う人は、事実から目をそらせて特定の人に利益誘導しているのだ。

(5)原発事故公害と政府・メディアの対応
1)原発事故により発生する病気
 *5-1のように、"原子力ムラ"の言い分が通って原発の危険性に警鐘を鳴らす報道が少なくなっていのは本当だが、福島原発事故後、子どもの甲状腺癌の増加が膨大な人数になっているにもかかわらず、検討委員が科学的根拠もなく原発事故との因果関係を否定したことは驚きだった。そのため、これは、これ以上、損害賠償が増えるのを抑えるため、担当者に政府からお達しが出ているのだと推測する。

 第一に、星福島医師会副会長の「チェルノブイリとの比較の線量の話、あるいは被爆当時の年齢などから考えまして、これらの癌につきましては、放射線の影響とは考えにくいとの見解をこのまま維持する形に、今日の議論としては委員会としてはそうなったと理解しています」というのは、変なコメントだ。

 また、床次弘前大学被曝医療総合研究所教授はじめ検討委員会中間報告最終案では、「これまでに発見された甲状腺癌については、①被曝線量がチェルノブイリ事故と比べてはるかに少ない ②被曝から癌発見までの期間が1年から4年と短い ③事故当時5歳以下からの発見はない ④地域別の発見率に大きな差がない などから、⑤放射線の影響とは考えにくいと評価する」としているが、①は測定していない上、②は必ずチェルノブイリ原発事故と同じカーブを描く必然性はなく、③は、なぜそうなったのかの考察がない。また、④は、実際には線量に応じて地域差が出ているため、⑤の曖昧な言い方はごまかしにすぎない。

 なお、岡山大学大学院の環境疫学の専門家である津田教授を中心とした研究グループも、甲状腺癌の発生率は国内平均の20~50倍で、潜伏期間やチェルノブイリでのデータから今後も増加は避けられないと公表しており、政府や原子力ムラの学者は、甲状腺癌の増加を「過剰診断」や「スクリーニング効果」などと反論している。しかし、「過剰診断」や「スクリーニング効果」の結果か否かは、関西以西で一定数の同じ検査をして比較すれば直ちに結論が出るため、それをやらないのは真実の解明を拒んでいるということである。そして、国際環境疫学会(ISEE)は日本政府に対して「福島県民における甲状腺癌のリスク増加は、想定よりはるかに大きい」と懸念を表明し、リスクの推定をきちんとやるように警告する書簡を送ったそうである。

 なお、このような不誠実な態度に対抗するため、*5-2のように、「甲状腺癌家族の会」が結成されるそうだが、一般市民の原発事故に起因する病気は、*5-3のように、内部被曝・低線量被曝によるものが多く、甲状腺癌だけではない。

2)政府等の対応
 そのような中、*5-4、*5-5、*5-6のように、政府は2020年までの東日本大震災の復興基本方針を閣議決定し、①今後5年間を復興・創生期間と位置付け ②農業関連では農地の復旧を18年度までに完了させ ③農地の大区画化や利用集積を進めるとし ④放射性物質の被害で対応が遅れる地域の農地復旧や“風評被害”の払拭に重点的に取り組むそうだ。

 このうち、①は、国民全員が通常の所得税の2.1%を余計に復興特別所得税として支払っており、居住地の安定しない仮設住宅暮らしは再建の妨げになり、これまでの5年間で速やかに復興すべきだったのに対応が遅すぎるため、やり方の検証が必要である。

 また、②は、原発事故で汚染された地域の産物について、放射能が体内に蓄積することは無視して「放射線量が基準値以下なら安全性が確保される」としているが、その人為的に決めた基準値以下なら長期間摂取しても無害だという証拠はない。そのため、どの地域も農地に戻せばよいわけではなく、農林漁業をあきらめて原生林や野生動物の別天地に戻すなど他の利用法を考えるしかない場所もある筈だ。

 さらに、③は、せっかく農地整備をするならば、農地の大区画化や利用集積は必須であり、間違っても復旧すべきではない。そして、忘れてならないのは、④のように、政府が食品中の放射性物質による内部被曝を「風評被害」などとして真剣に考えないでいると、日本食品全体の安全性が、外国人のみならず日本国民からも信頼されなくなるということだ。

(6)電力会社の信頼性について
 *6-1のように、原発事故から5年を経過した2016年2月24日に、NHKは、「メルトダウンの判断は、事故後3日後には可能だった」とする報道をしている。どうしてそれを今報道するかについてはNHKにも責任があるが、福島第一原発事故で1~3号機の3基で原子炉の核燃料が溶け落ちるメルトダウンが起きたのだとしている点も、まだ不足だと考える。

 何故なら、メルトダウンしただけなら、関東を含む広い地域で放射線量が上がったことは説明できず、このブログの2011.7.27に「衆議院厚生労働委員会での『放射線の健康への影響』についての説明」で書いているとおり、2011年7月27日の衆議院厚生労働委員会参考人質疑で児玉龍彦東大教授が「3月15日に、最初に午前9時ごろ東海村で5μシーベルトという線量を経験して、それを文科省に直ちに通報しました。その後東京で0.5μシーベルトを超える線量が検出され、これは一過性に下がって、次は3月22日に東京で雨が降り、0.2μシーベルト等の線量が降下し、これが今日に至るまで高い線量の原因になっていると思っています」「広島原爆の29.6個分に相当するものが漏出しています。ウラン換算では20個分の物が漏出していると換算されます」と、科学的測定の結果を説明しておられ、児玉教授の説明だけが、*6-3の「透視調査の結果『福島第一原発の原子炉内に核燃料はない』」「4年たった今も溶け落ちた核燃料がどこにあるのか分かっていない」という事実と符合するからだ。

 なお、新潟県の泉田知事は、「事故後、5年もの間、このような重要な事実を公表せず、原発の安全対策の検証を続けている県の技術委員会に対しても真摯に対応して来なかったことは極めて遺憾。メルトダウンを隠蔽した背景などについて今後の調査で、真実を明らかにしてほしい」としている。

 また、*6-2のように、福島民報は、「東電は国や自治体に対して極めて深刻な事態の『炉心溶融』の前段階の『炉心損傷』との説明を続けていたため、福島県民への正確な情報発信ができず、東電の情報公開の在り方に対する県民の不信感は根強い」としており、原発事故にはこのような虚偽の説明が当然になってしまっている。

(7)東電トップの責任
 *7-1、*7-2のように、東電福島第一原発事故で、東電の勝俣恒久元会長ら旧経営陣三人が業務上過失致死傷罪で強制起訴され、公判では、巨大津波の襲来を予測できたか否かが、最大の争点となるそうだ。三被告は「津波の予測は不可能だった」と無罪を主張するが、*7-3のように、2008年には東電社内に15.7メートルの津波が来ると試算していた非公開の内部資料があり、東電の旧経営陣3人が大津波を予見できなかったというのは無理がある。津波の頻度や規模についても、地域の古文書や地層を調査すればわかるため、原発や非常用電源を無防備に「15.7メートル+余裕分」より下に建設したのは、重過失と言える。

 なお、*7-4のように、死者・行方不明者が多かった岩手県陸前高田市も、18mの津波が襲ったにもかかわらず、10mの盛り土をして住宅地にしようとしているが、一度は仕方がないとしても、既に教訓があるのに何度も国民に津波被害の補償をさせないようにして欲しい。そのため、10mの盛り土をして住宅地を作るのではなく、住宅地は高台に造って交換によって移転させ、道路や商業施設もそれに都合がよいように造るべきである。

 そして、使わなくなった旧住宅地は、放牧(津波が来たら高台に逃げるように、家畜をしつけておけばよい)や田園など、津波が来ても人命にかかわる被害にならないような使い方をすべきだ。

(8)驚くような考え方(3月23日追加)
 「①原発事故から5年経ち、福島の人が病気になるという予言を出して危険を煽った人は、福島の農家の復興への想いを踏みにじっている」「②福島県民への差別だ」「③反原発派は福島の復興の最大の障害だ」「④反原発の人は社会の利便性にタダ乗りしている」などと本気で言っている人がいるが、①は、警告したからこそ注意して病気になる人が減ったが、今後どのくらいの人が病気になるか未判明で、甲状腺癌と同じく隠される可能性も高い上、②は、“差別(特定の個人や集団に対して、正当な理由なく不利益を強制する行為)”の意味すらわかっておらず、③は、放射能で汚染されている場所に「戻れ戻れ」と言って復興すればよいという価値観こそ人の命を粗末にしており人道に反する。さらに、④は、まだ原発のコストが安く、原発がなければ社会の利便性が失われると主張していることに驚く。

 そのため、こういうことを自分の頭で判断できないのは、どういう教育を受けてきたのかと思われる。

*1-1:http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=352974&nwIW=1&nwVt=knd
(高知新聞 2016年3月8日) 【温暖化対策計画】長期的な視点に欠ける
 昨年12月に採択された地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に基づき、政府が国内計画をまとめた。2030年までに国内の温室効果ガス排出量を13年比で26%削減する国際公約の実現を図る。パリ協定は、産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑え、今世紀後半には世界の排出量を実質的にゼロとする長期目標を掲げる。政府は新計画に「50年までに80%削減」との長期目標を明記したものの、具体策は示していない。国際社会が目指す脱炭素社会をどう実現するか、長期的な視点に欠けた計画といわざるを得ないだろう。パリ協定は、全ての国が参加する歴史的な枠組みだ。だが、温暖化を食い止めるには、多くの課題を抱えているといってよい。合意を優先させたため、各国の目標達成は義務化されず、仮に全ての国が実現しても気温は2・7度上昇するとの試算もある。2度未満の目標達成には、さらなる対策強化が避けられないといえよう。先進国である日本は、経済発展の過程で温室ガスを排出してきた歴史的な責任を負っている。だが、日本の「13年比で26%削減」の目標は、京都議定書の基準年である1990年と比べると18%の削減にすぎず、世界の環境保護団体などから厳しい評価を受けた。目標を具体化した計画にも、消極さがうかがえる。約40%削減を目指す家庭部門やオフィスビルなどの業務部門は別として、産業界の削減は自主的な計画に委ねられる。特に、排出量全体の4割を占める電力部門には疑問を禁じ得ない。石炭火力の新設容認である。コスト面で優れてはいても、最新型でさえ温室ガスの排出量は天然ガス火力の2倍近くに上る。老朽施設との切り替えで短期的には削減できよう。ただし、温室ガス排出ゼロを目指す段階になって、新設された施設が脱炭素社会への足かせとなりはしないか。林経済産業相は80%削減の長期目標に対し、「新たなイノベーション(技術革新)」が必要とする。従来対策の延長では達成が難しいとしても、人ごとの印象は拭えない。原発が対策の柱の一つに位置付けられたことも疑問だ。政府は2030年の電源構成で「20~22%」を賄うとするが、思惑通りに再稼働が進むかは見通せない。事故から5年を経ても、6割以上の国民が「脱原発依存」を志向する。温暖化対策も、40年を超える老朽原発延命の免罪符にはならない。やはり地道に、再生可能エネルギーを温暖化対策の中心に育てる必要があろう。政府は30年に電源の「22~24%」としたが、環境省は最大35%まで拡大可能と試算していた。パリ協定は5年ごとに各国が目標を見直す仕組みである。温暖化対策は将来のエネルギー像とは不可分といえよう。温室ガス削減はむろん、安全で安心な姿を示すことで、先進国としての責任を果たしたい。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160311&ng=DGKKZO98208100Z00C16A3M12900 (日経新聞 2016.3.11) 〈3・11を胸に〉元米原子力規制委員長 グレゴリー・ヤツコさん 大規模発電、今世紀限り
 福島原発事故の最も重要な教訓は、事故は今でも起こりうるということだ。福島事故前は、原発の事故は決して起きないと信じられていた。市民や産業界、政府は、事故は起こりうることを認めなければならない。除染とは放射性物質に汚染されたものを取り除き、別の場所に移すことだ。どこをきれいにして、どこを汚すかということだ。汚染物質を住宅地から遠く離れた場所に移そうとしても日本のような人口密集国では適地が少ない。特効薬はない。水の汚染は今も続いている。事故は進行中だ。燃料を冷却した水を回収して保管する大量のタンクがつくられたが、最も重要な分析がされていない。水を何年ためておくのか。数十年か、数百年か。不測の事態で何が起きるか、長期的に分析しなければならない。米国は1979年、スリーマイル島原発事故を経験した。事故後、業界団体の米国原子力発電運転協会(INPO)ができ、緊急避難などの対応のために米連邦緊急事態管理局(FEMA)が創設された。原子炉の設計も大幅に変え、安全装置を追加し、中央制御室も再設計した。原子炉(の輸出)を通じ、変化は他国にも広がった。それでも福島で事故は起きた。技術評価をしていないので言及しづらいが、新規制基準に適合していても、もう事故は起きないと保証はできない。これは伝えるべき重要なメッセージだが、原発は安全になったという正反対のことが伝わっている。将来、原発が大規模に稼働しているとは思わない。原子力は非常に高価な技術で、来世紀には使われていないだろう。多くの電力を巨大発電所でつくり、離れた都市や工場などに送電するという仕組みは今世紀限りだ。小規模な天然ガス火力発電所や再生可能エネルギー、水力発電所などで地域の電力需要を満たすのが合理的だ。多くの国で原発依存度は現状維持か減少傾向にある。米国では現在約100基ある原発の多くが15年以内に運転許可の期限を迎え、経済的圧力で運転延長はあまり申請されないだろう。原発は今後15~20年でエネルギー源としての終わりが始まると思う。
*Gregory Jaczko 1999年米ウィスコンシン大院修了。米ジョージタウン大助教授などを経て、2005年に米原子力規制委員、09~12年委員長。ニューヨーク出身、45歳。

*1-3:http://mainichi.jp/articles/20160313/k00/00m/030/071000c?fm=mnm
(毎日新聞 2016年3月12日) 原発ゼロへデモ…福島から5年 次期総統も訴え
 東京電力福島第1原発事故から5年に合わせ台北市などで12日、反原発デモが行われた。福島原発事故を機に台湾の環境保護団体などが毎年3月に実施している。デモ隊は総統府前で集会後、デモ行進し、台湾電力の稼働中の原発の速やかな廃炉や建設が凍結された第4原発の廃止など、原発の全面廃止を訴えた。5月に新政権を発足させる民進党の蔡英文次期総統は2025年に原発の完全廃止の方針を掲げる。蔡氏は同日、フェイスブックで「再生可能エネルギーの発展を奨励し、一歩ずつ原発ゼロに向かって努力していこう。最も困難な問題は使用済み核燃料の処理。次の世代に対する我々の世代の最大の債務だ。党派を隔てず、共に直面する時にある」と呼びかけた。

<水素発電>
*2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/156832
(佐賀新聞 2015年2月15日) 政府、水素発電を支援へ、20年までに民間実験炉
●政府、水素発電を支援へ
 政府は、水素を燃料として環境に優しい発電が可能となる「水素発電所」の商用化に向け民間企業支援に乗り出す。15年度予算に関連事業費約20億5千万円を初めて計上し、水素製造や輸送技術開発などを後押しする。企業が20年までに実験炉をつくり、30年ごろに発電事業を始動させる目標を掲げるが、技術やコスト面で課題も残る。安倍首相は12日の施政方針演説で「水素社会」実現へ決意を表明した。燃料電池車に水素を補給する「水素ステーション」の整備に続き、水素発電所の商用化で水素の流通量拡大と価格低下を狙う。政府は支援例として液体水素輸送船や新型ガスタービン開発などを想定。

<高浜原発訴訟>
*3-1:http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20160309000186
(京都新聞 2016年3月9日) 原告「琵琶湖から脱原発」 高浜運転差し止め決定
 稼働中の原発を司法が初めて止める。福島第1原発事故から5年。大津地裁は9日、高浜原発の運転を差し止める決定を出した。規定路線のような原発再稼働にくぎを刺す決定を京滋の住民らは「画期的」「多くの人の不安を受け止めた当然の決定」と歓迎した。一方、関電は想定外の即時停止を迫られ「承服しがたい」と厳しい表情を見せた。「琵琶湖を守りたいという県民の期待に応える画期的な決定だ」。住民と弁護団が大津市打出浜の市勤労福祉センターで開いた報告会で弁護団長の井戸謙一さん(61)は大津地裁の決定をこう評価。「立地県外の住民が訴訟を起こし原発を止めることが、裁判所で明確に認められたのは重要」と話した。井戸さんは06年に志賀原発2号機(石川県)の運転差し止めを初めて言い渡した元裁判官。退官後は彦根市で弁護士を開業している。井戸さんは「われわれの主張が認められるのは当然のことだ。だが、再稼働が進められているこの時期に、裁判官には強いプレッシャーもあったはずだ。敬意を表したい」と話した。弁護団には井戸さん以外にも各地の弁護士32人が名を連ねる。映画「日本と原発」を制作した河合弘之さん(第二東京弁護士会)は「政治や電力業界などに配慮、遠慮した判決が続いてきたが、原発事故を直視する裁判官が各地にいることが分かってきた。脱原発の運動の成果だ。異議申し立て審に向け裁判官人事などで理不尽な介入がないよう注視したい」と指摘した。出席した支援者たちは「全国の裁判官の心を動かしたのでは」「日本から一刻も早く原発をなくさなければ」との声が相次いだ。住民代表の辻義則さん(69)=長浜市=は「原子力規制委員会にも決定文を読んでもらいたい。各政党も国会で原発再稼働を推進する政府を追及してほしい」と強調した。

*3-2:http://qbiz.jp/article/82366/1/ (西日本新聞 2016年3月10日) 「稼働中の停止」衝撃 政府、各地の訴訟へ影響懸念 高浜運転差し止め 
 大津地裁が、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の運転差し止めを命じた。2基は今年、順次再稼働したが、4号機は先月29日にトラブルで緊急停止したばかり。停止命令に、関電は「予想外だ」と衝撃を隠さず、政府からはほかの同種訴訟への波及を警戒する声も上がる。申立人の住民らが高く評価する決定からは、原発訴訟に対する司法の姿勢変化ものぞく。「動いている原発を司法が止める。本当に例がない。画期的だ」。決定後、大津市内で開かれた記者会見で、住民側の井戸謙一弁護団長は称賛の言葉を並べた。井戸氏は、今回の決定内容がこれまでの裁判に比べて原発事故の危険性に対する主張や説明を、より強く電力会社側に求めたと指摘した。決定の行間からうかがえるのは、関電が審理段階で住民側の訴えに真摯に対応しなかったのではないかという疑念だ。決定理由は関電側の主張を否定する根拠として「仮処分での主張や説明の程度では」との文言を何度も繰り返した。住民側弁護団によると、1年余り審理を続けてきたが、関電が明確な反論をしたのは今年1月末になってからだった。
   □    □
 東京電力福島第1原発事故を機に、裁判官の間には、従来のように国の手続きの適否にとどまらず、安全に関する審理を本格的に行うべきだとの「改革論」が浮上していた。最高裁が2012年1月に開いた特別研究会では、出席した裁判官から訴訟の在り方について問題提起が相次いだ。背景には、原発訴訟で「安全」のお墨付きを与え続け、結果的に未曽有の事故を防げなかったとの反省がある。研究会では「福島事故を踏まえ、従来の判断枠組みを再検討する必要がある」と述べた裁判官もおり、行政追随の判決を繰り返せば、司法の信頼が揺らぐとの危機感がにじむ。裁判所は「『事故のリスクは専門家でなければ分からない』として、原発訴訟で具体的な判断を避けがちだった」(元裁判官)とされ、原発の運転を認めなかった司法判断が確定した例はない。だが、ある法曹関係者は「政府や経済界が原発推進の中、裁判所は最後のとりで。司法の責任は重い」と語る。
   □    □
 電力業界を管轄する経済産業省では、決定の一報に職員から「まさかと思った」と驚きの声も聞かれたが、多くは「新規制基準が否定されたわけではない」(幹部)などと冷静に受け止め、林幹雄経産相も、再稼働を進める方針に変化がないことを強調した。だが別の幹部は「同様の訴えは各地で起こされている。影響を与えないわけがない」と、司法による“原発停止ドミノ”を懸念。関電の中堅社員も「審査に対する取り組みが全否定された。これで(原発が)止められてしまうのなら、打つ手がない」と頭を抱える。政府は30年の電源構成比率で原発を20〜22%に設定。福島事故前より低いものの、原発を基幹電源として使い続ける方針を数値上も明確にしたが、新基準下で再稼働にこぎ着けたのは九州電力川内1、2号機(鹿児島県)と高浜3、4号機の4基のみ。四国電力伊方3号機(愛媛県)が今夏以降に再稼働する見通しだが、その後は不透明だ。大手電力の関係者は「再稼働の勢いにブレーキがかかるのは避けられない」と厳しい見方を示す。記者団から審査への影響を問われた林経産相は「何とも分かりません」と短く答えた。
   ◇   ◇
■市民の不安代弁した判断 明治大准教授 勝田忠広氏
 今回のような司法判断が出るとは思っていなかったので、非常に驚いている。しかも人格権という要素に着目して仮処分決定が出されており、その意義は大きい。東京電力福島第1原発事故から5年になるが、今も多数の被災者が避難を続け、多くの問題が解決されていない。他の原発の避難計画も実効性が疑問視されている。再稼働の前提となる新たな規制基準をクリアし、安倍晋三首相が再稼働にOKを出したところで、多くの市民が今も不安を抱えているのだ。規制基準を踏まえた再稼働をめぐるこれまでの審査は、いってみれば、原子力規制委員会と電力業者だけの「内輪の議論」だった。しかし、多くの市民が求めているのは次元の違う安全であり、規制基準ではなく、あくまで「安全基準」が必要だと考えている。今回の大津地裁の仮処分決定は、そうした市民の不安の根っこを人格権という概念を用いて解き明かした。人格権を軸に下された判断は、5年前の事故直後に大多数の市民が抱いていた思いを代弁しており、そうした意味で評価されていい。今回の判断にはさらに、二つのポイントがある。まず、再稼働が既に決まった原発に対する司法判断であり、新規制基準をクリアしたとする原子力規制委員会の判断は「信用に足りない」として、厳しい異議申し立てをした点だ。非常用電源の整備をはじめ、5年前の原発事故を機に表面化した多くの不備をチェックした上で、再稼働のお墨付きを規制委員会が与えてきたわけだが、大津地裁はそうした実態にも不信を表明しており、規制委には厳しいメッセージだ。今回の判断は、使用済み燃料プールの問題にも触れた。規制基準を作るときも、スプレーなど冷却装置設置の必要性は議論したが、プールそのものが壊れてしまう危険性までは議論をきちんと尽くさなかった。その問題点を突いている。また福島の事故原因の究明も「道半ば」と指摘しており、これは再稼働を急ぐ電力関係者や行政当局への警鐘だろう。もう一つのポイントは、滋賀県の住民が申し立てており、より広範囲な周辺自治体の権利が認められたことだ。他の原発再稼働への波及効果も大きいだろう。北海道函館市が青森県にある大間原発の建設差し止めを求めているが、この訴訟にも影響を与えるのではないか。不安を抱きながらも、諦めかけていた周辺自治体の住民による訴訟が今後、新たに誘発される可能性もある。
   ◇   ◇
■原発の経済性神話崩壊 大島堅一立命館大教授(環境経済学)の話
 今回の仮処分決定で、原子力規制委員会の新規制基準をクリアし再稼働した原発でも、司法の判断によって停止され得るということが明確になった。司法判断次第で原発を運転できなくなるリスクが電力会社に与える影響は計り知れない。何千億円かけて安全対策をしようが原発は経済性が高いという神話が崩壊したと言える。多くの電力会社は同様の訴訟を抱えており、今後も増え続けるだろう。電力自由化を前に経済性の観点で言えば、電力会社は、もはや見通しの立たない原発から撤退していくしかない。
■司法への信頼損ねる 宮崎慶次大阪大名誉教授(原子力工学)の話
 外部電源と非常用電源の役割の違いなど多くの点に事実誤認があり、専門的立場から納得できない。原子力規制委員会の判断を無視し、原発事故後の関係者の努力も一切評価していない。原発にゼロリスクを求める内容だが、仮に夏場に電力供給が滞り工場などの稼働が止まれば社会的リスクも生じる。関西電力側の主張も分かりやすさの点で不十分だったのかもしれない。再稼働を認めた昨年末の福井地裁決定と正反対の内容だが裁判官により判断が二転三転するのは、司法への信頼を損ねるのではないか。
■公平で理詰めの判断 吉岡斉九州大教授(科学史)の話
 関西電力の主張にも一定の合理性を認め住民側の主張には不十分な点もあると指摘した上で、理詰めの判断をしている。双方を公平に比較し、裁判官が自分の頭で考えて是々非々の結論を出した。行政や電力会社は、東京電力福島第1原発事故前の基準を少し厳しくすればいいと考えているのだろうが、裁判官ははるかに厳しい基準で臨まなければならないとの前提に立った。福島の事故の歯止めになれなかったことを悔い、自立して責任ある裁判をやろうとの流れが司法界にあると感じさせる。

*3-3:http://qbiz.jp/article/82562/1/
(西日本新聞 2016年3月12日) 原発止めた司法例外か 大津地裁仮処分決定
 関西電力高浜原発3、4号機の運転差し止めを命じた大津地裁の仮処分決定を受け、稼働中の原発が初めて止まった。裁判の当事者は関電だが、エネルギー政策を担う政府も無関係ではないだろう。ところが、政府は今回の決定を「例外」と評し、真摯(しんし)に受け止めているようには感じられない。「またおかしな裁判官がいた」「イレギュラー(不規則)な決定だ」。政府関係者の受け止めは、予想通りだった。昨年4月、福井地裁が同じ高浜原発について、運転差し止め決定を出したときと同じだ。政府は、「世界最高水準」の新規制基準をクリアした原発は「安全」と言う。「裁判官は原発の素人」とも批判する。その姿勢は、福島第1原発事故を招いた「安全神話」が復活したようで、危ういと感じる。政府が、原発を安定的に発電できる「重要なベースロード電源」(エネルギー基本計画)と位置付けても、司法判断で稼働できないという「想定外」に目を向けていないことも気になる。基本計画の策定過程で、政府は民主党の「原発ゼロ」を無責任と断じ、「責任あるエネルギー政策」を掲げた。原発は安価で、出力が大きいことを重視した。新たな電源構成比率(エネルギーミックス)については、2030年時点の原発比率を「20〜22%」確保すると決めた。事故リスクは多少議論されたが、司法判断による停止という「リスク」は議論されなかった。司法により稼働が左右されるという原発特有の不安定さを、エネルギー供給の観点からどうとらえるのか。20〜22%という数字は現実的なのか。真剣に考えてはどうか。3・11から5年。世論調査では再稼働反対が賛成を上回り、半数を超える。原発に対する国民の不安はなお根強い。九州電力川内原発や玄海原発も含め、原発差し止め訴訟が相次ぎ、係争中は20件ある。原発事故を受け、裁判官から「政府や電力会社を信頼し過ぎた。司法にも責任がある」と悔悟の声を聞いた。決定を「例外」と切り捨てて、思考停止にみえる政府。責任ある姿勢と言えるだろうか。

<原発のコスト>
*4-1:http://jp.reuters.com/article/l3n0na1au-interview-yoshihara-idJPTYEA3H06620140418 (ロイター 2014年 4月 18日) インタビュー:原発は国家ぐるみの粉飾決算=吉原・城南信金理事長
 脱原発路線を強力に主張する異色の地域金融機関トップとして知られる城南信用金庫(本店・品川)の吉原毅理事長が、ロイターのインタビューに応じ、原発コストが安いというのは将来負担を無視した国家ぐるみの粉飾決算に近いとの見解を示した。また、新エネルギーの開発が新しい経済の活力を生み出すとの持論を展開した。東京・神奈川を地盤に信金業界2番手の総資産3兆6000億円を持つ同信金は、地銀中位行に匹敵する規模を誇る。そのトップとして、金融業とエネルギーの政策のかかわりあいに関し、どのような本音を持っているのか聞いた。
――金融機関のトップが、政治的発言をするのが極めてまれだ。
 「金融は、政治にかかわるべきではなないという意見がある。それは本来、権力にかかわることで金融が求めるべき理想がねじ曲げられ、利用されてしまう懸念が生じるために生まれた考えだ」「しかし、金融に限らず企業の目標は、より良い国や社会を構築することだ。すべての企業は、理想の実現のためにある。経営者は、金儲けだけ考えればいいというのはおかしいのではないか」
――国論を二分する1つの側に付くことで、顧客からの不評を買わないか。
 「消費者のニーズに応えることが企業、つまり消費者主権という考えは間違えていないか。例えば当社は、投機のためのゴルフ会員権購入のための融資はお断りする。そういう資金使途には貸せない。健全性とは何かを考え、顧客にも説明していく。それが金融マンの役割だ」。「福島第1原子力発電所の事故で分かったことは、将来の世代に責任を持てないエネルギーということだ。もはや原発は反社会的存在だ。原発を造る金を貸せと言われたら、お断りする」
――電力債は、金融機関の運用手段としても重要だ。
 「東電の株式と社債は、事故後に売却した。金融機関は公共的な存在だ。東電の株式や社債に投資をするわけにはいかない」
――経済界の中には、コストの安い原発を稼働しないと、日本経済が立ち行かないという意見が多い。
 「原発のコストの方が低いという人で、いやしくもビジネスマンや経済に携わる者ならば、会計の原則ぐらい勉強していただきたい。コスト計算には、直接原価と間接原価があり、そこで総合原価計算が行われる。原発は、今あるウランを使うだけならば直接原価は低い」。「では、その結果の間接原価はどうなのか。将来の廃炉費用や、使用済み核燃料の保管料や処理費用、工事費や人件費、地代がカウントされているのか。カウントされていない。われわれは今、時価会計で、将来に発生するキャッシュフローをすべて現在価値化し、負債計上している。原発にはそれが入っていない」「1回事故が発生したら、天文学的なコストがかかる。貸し倒れ引当金の積み立ての考え方を入れれば、とんでもない引き当てを積まなければならない。これは、不採算というのではないか。国家ぐるみの壮大な粉飾決算だ」
――原発の再稼働ができなければ、値上げしなければならない。顧客の中小企業にとっても、それは経営上の困難になるのではないか。
 「まず、原発の将来に発生する未計上のコストをちゃんと計上しなければならない。その上で、原発を再稼働させたら、もっと値上げをしなければならない」「新しい電力産業が勃興してくれば、新産業としてモノづくりの復活にもつながる。例えば、石炭ガス化コンバインド発電やソーラーパネル、さまざまサービスも増える。工事やモノづくりに携わるわれわれの顧客たちにも恩恵がある。原発の再稼働では、新産業は生まれない」
――経常赤字を懸念する指摘もある。
 「燃料の輸入によって、貿易収支が悪化し、経常収支が赤字に陥るのは日本経済にとってマイナスだという指摘は、本当に正しいのか。経常収支が赤字でも成長している国はたくさんある。日本は、黒字を溜め込み、結果的に円高になり、デフレから抜け出せなかった。輸出入のインバランスは、為替で調整される」
――大手銀行は、福島第1原発の事故後に、東電に対して巨額融資を行った。どのように評価する。
 「第2の住専問題だという気がする。当時も、政府が保証するからとみんなが貸して、最後は損失となった。1980年代のバブル時も金融機関は公共性という考えを放棄し、その後、大きなツケを払わさられることになった。金融機関は、引き返す勇気を持つ必要があると思う」
――大手行は公共性を考えて貸しているのではないか。
 「それは、公共性を勘違いしている。東京電力を生かすことが公共性ではない。安全でコストの安い電力サービスを継続的に安定的に保証することが公共性なのではないか。もっと見識を持たなければならない」

*4-2:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO98110430X00C16A3000000/
(英フィナンシャル・タイムズ、日経新聞 2016/3/7) [FT]福島原発事故の国民負担は約11兆円
 日本政府は福島原子力発電所事故の費用は東京電力が負担していると主張しているが、フィナンシャル・タイムズ紙(FT)の試算では、同事故による日本の納税者の負担は約1000億ドル(約11兆4000億円)になる。東日本大震災の津波で冷却用の電源を失い、東電の3機の原子炉で炉心溶融(メルトダウン)が起こってから5年がたとうとしているが、この額は日本国民が事故で発生した費用のほとんどを負担してきたことを示している。これは民間の一企業に原発事故の膨大な費用を負担させることの難しさを浮き彫りにしている。
■東電は全費用の20%を負担
 FTが用いたのは立命館大学の大島堅一教授の試算だ。同氏の試算ではこの事故でこれまでに掛かった費用は13兆3000億円だ。東電の株主が失った株式の価値を見ると、東電の株主が負担することになるのはこの内の20%だけだと分かる。大島教授は「(それ以外の)隠れたコストは主に国民が電気料金か税金の形で負担している」と話す。日本政府は原発事故の費用に関する数字を何一つ発表していない。だが、大島教授はこれまでで最も掛かった費用は企業や避難者に対する賠償金で6兆2000億円、次いで福島原発周辺の除染費用が3兆5000億円、そして、廃炉費用の2兆2000億円だ。賠償金と廃炉費用は東電が払っているが、同社は政府から支払い能力維持のための補助金をもらっている。理論的にはこれは東電やその他の原発事業者への賦課金として政府に戻ることになっているが、最終的にこれを負担するのは電力の使用者であることから、これは別の名目で国民から徴収する税金だといえる。また、4月1日から日本の電力市場で競争が自由化されるのに伴い、これまで通りの賦課金が維持できるかも疑問だ。東電の広瀬直己社長は最近のインタビューで、同社が福島第1原発の廃炉に充てる十分な収入を確保できると主張した。東電の負担状況を把握する一つの方法は株価を見ることだ。株価は過去の損失と市場が予想する今後のすべての負担を反映しているはずだ。東電の株式は原発事故前日の2011年3月10日以降2兆6000億円を失った。債権者は損失を被っていない。このため、東電は全費用の20%をやや下回るほどしか負担しておらず、残りの10兆7000億円は納税者が負担する計算になる。これは概算で、日本の全原子炉の停止による費用は加味されていないため、この全費用と国民の負担は低めに見積もられている。東電と財務省、経済産業省はこの試算についてのコメントを拒否した。政府関係者は東電が最終的には全費用を弁償することになると主張している。

<原発事故による公害と政府・メディアの対応>
*5-1:http://tocana.jp/2016/02/post_8983_entry.html (TOCANA 2016.2.2) 丸川珠代発言こそが日本のホンネか? 福島で甲状腺がんの子どもがさらに増加するも政府、県、メディアは黙殺
 2月下旬の再稼働が確定的となっていた福井県高浜原発4号機で、20日午後、放射性物質を含む一次冷却水が漏れ出していたことが発覚した。高浜原発では1月29日に3号機を再稼働させたばかりで、それから1カ月も経たない4号機の重大事故に衝撃が走っている。だが、当事者である関西電力、そして福井県原子力安全対策課は早々に「大きなトラブルではない」「周辺環境への影響はない」と事故を過小評価するのに必死だ。そして、なぜかこうした"原子力ムラ"の言い分がまかり通り、原発の危険性に警鐘を鳴らす報道はほとんど見られなくなっている。最近もある重大なニュースが無視されてしまった。それは、福島原発事故の後の子どもたちの甲状腺がんの増加だ。2月15日、福島の有識者会議「「県民健康調査」検討委員会」が会見で、事故後、甲状腺がんと診断された福島県の子どもたちは167人に上ると公表したのだ。福島原発事故後の2011年10月から始まった当時18歳以下だった子どもへの甲状腺がんの検査だが、現在は1巡目が終わり2巡目の検査が行われている。そこで新たに甲状腺がんまたはがんの疑いの子ども51人(男性21人、女性30人)が発見され、最初の検査と合計で167人という膨大な人数に膨れ上がっている。しかし驚くのはこの数字だけではない。会見で検討委員たちが次々と発した言葉だ。それらは全て、がん増加と事故のその因果関係を否定したものだった。例えば星北斗・福島医師会副会長はもってまわったような言い方で、福島県の甲状腺がんと事故の因果関係をこう否定した。「チェルノブイリとの比較の線量の話、あるいは被爆当時の年齢などから考えまして、これらのがんにつきましては、放射線の影響とは考えにくいとの見解をこのまま維持する形に、今日の議論としては委員会としてはそうなったと理解しています」。また被爆医療の専門家でもある同委員会の床次眞司・弘前大学被ばく医療総合研究所教授も「総じて言えば福島の事故における甲状腺被ばく線量はチェルノブイリ事故に比べて小さいことは言えるだろうと考えます」と同様の見解を表明している。"チェルノブイリより被爆線量が少ない"そんな根拠だけで、専門家たちが福島事故と甲状腺がん増加の関係を否定したのだ。さらに同委員会は事故から5年に当たる3月に「中間報告」を取りまとめる予定だが、その最終案にも"チェルノブイリとの比較"から甲状腺がんは放射線の影響とは考えにくいと断定している。「これまでに発見された甲状腺がんについては、被ばく線量がチェルノブイリ事故と比べてはるかに少ないこと、被ばくからがん発見までの期間が概ね1年から4年と短いこと、事故当時5歳以下からの発見はないこと、地域別の発見率に大きな差がないことから、放射線の影響とは考えにくいと評価する。但し、放射線の影響の可能性は小さいとはいえ現段階ではまだ完全には否定できず、影響評価のためには長期にわたる情報の集積が不可欠であるため、検査を受けることによる不利益についても丁寧に説明しながら、今後も甲状腺検査を継続していくべきである」。要するに何もわからないけど、でも事故とがん増加は関係ない。無責任にもそう断定するものなのだ。しかも最終案には「数十倍多い甲状腺がんが発見されている」と明記されているにも関わらず、だ。いや正確な発生率はそれ以上という指摘もある。昨年8月には岡山大学大学院の環境疫学の専門家である津田敏秀教授を中心とした研究グループが甲状腺がん発生率は国内平均の20~50倍であり、潜伏期間やチェルノブイリでのデータから今後も増加は避けられないと公表している。これに対し、政府や原発ムラ学者たちは、甲状腺がんの増加を「過剰診断」や「スクリーニング効果」などと反論したが、それでも説明はつかないほどの増加だという。さらに「検討委員会」に先立つ今年1月22日、国際環境疫学会(ISEE)は日本政府に対して「福島県民における甲状腺がんのリスク増加は、想定よりはるかに大きい」と懸念を表明し、リスクの推定をきちんとやるよう警告する書簡を送ったことも明らかになっている。福島県の子供たちに甲状腺がんが多発し、国際機関からさえも指摘を受けているにもかかわらず、政府や"お抱え"学者たちは、決してそれを認めない。今後さらに甲状腺がんが激増しようともその姿勢は変わることはないだろう。もちろん今回の高浜原発4号機事故にしても同様だ。記事直後から「漏洩した放射性物質の量は国の基準の200分の1以下で、作業員も被ばくしていない」などと嘯いているが、高浜4号機では福島原発事故後でも、同様の一次冷却水が漏れる事故が起きていたことも判明している。さらに運転期間が40年を過ぎた高浜1号、2号機においても2月16日に新基準適合検査が終了し、事実上「合格」が確定したが、その審査で大きな問題となっていた地震や津波などへの安全対策は「4号機の審査が終わっているから」としてほぼ無視されたままでの「合格」だった。こうした問題は高浜だけではない。福島原発事故後も福井県美浜原発2号機や北海道泊原発、茨城県東海原発、愛媛県伊方原発など冷却水漏れが続いているが、いずれのケースも今回同様「環境に影響がない」として政府や電力会社は"事故"として認める姿勢が極めて低い。こうした姿勢、本心が露骨に現れた典型例が環境相の丸川珠代議員の発言だ。2月7日、丸川議員は長野県の講演で、東京電力福島第1原発事故後に、国が除染に関する長期努力目標として「年間1ミリシーベルト」と定めていることに関し「何の科学的根拠もない」「反・放射能の人がワーワー騒いだ」と発言して大きな問題となった。さらに衆院予算委員会で発言を追及された丸川議員は一旦はそれを否定したが、後日、一転して謝罪をするドタバタぶりを露呈した。しかしこれは丸川議員個人の問題や見解ではないだろう。原発再稼働や海外輸出をがむしゃらに推し進める安倍政権の"ホンネ"が表れたにすぎない。そして、この姿勢はマスコミも同様だ。前述した甲状腺がんの問題は新聞でもテレビでも大きく取り上げられることはほとんどなかった。唯一『報道ステーション』(テレビ朝日系)だけが3月11日、大々的に特集を放映予定だというが、その「報ステ」も3月一杯で古舘伊知郎が降板し、体制が大きく変わる。東日本大震災から5年、原発報道のこれからを考えると、暗澹とするばかりだ。

*5-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJ395SDYJ39UGTB00S.html?iref=comtop_list_api_n03 (朝日新聞 2016年3月10日) 福島の小児甲状腺がん、家族会発足へ 医療改善など要望
 東京電力福島第一原発事故後に福島県が行っている健康影響調査で小児甲状腺がんと診断された患者の5家族7人が12日、「311・甲状腺がん家族の会」を結成する。突然のがん宣告で不安や孤立に苦しむ家族が交流して情報を共有し、予後の生活や医療の改善を行政に求めていくという。原発事故当時18歳以下の県民と事故後に生まれた乳幼児も加えた約38万人を対象に県が実施する甲状腺検査で、昨年末までに166人が甲状腺がんやがんの疑いとされた。患者の家族会ができるのは初めて。会を結成するのは、甲状腺の切除手術を受け、がんが確定した5人の子どもの親や親族。県が有識者で組織する検討委員会は、これまでに発見された甲状腺がんについて「放射線の影響は考えにくい」としている。しかし、家族の会の親たちは検討委の見解に不安などを感じており、情報共有を進めていくという。

*5-3:http://kaleido11.blog.fc2.com/blog-entry-3941.html
(カレイドスコープ  2015.11.24) 糖尿病の激増とストロンチウム90による内部被曝との関係
 糖尿病が飽食文明の先進国以外の発展途上国で激増。日本では、戦後、膵臓がんが12倍に。ストロンチウム90が壊変して生成されるイットリウム90が、膵臓がんや糖尿病などの内分泌系疾患に大きく作用すると著名な科学者が分析。実際に、そのとおりになっている。臓器不全は、これから増えてくる。それが内部被曝の第二ステージ。(この記事は、「パート1」と「パート2」の2回配信分を、かなり圧縮した形でその一部を公開しています)
●内部被曝の第二ステージ「ストロンチウム90による臓器不全」
・・・チェルノブイリ原発事故後、もちろん心筋梗塞による突然死が一気に増えたことは事実ですが、むしろ急激に増えたのは、「脳梗塞、脳溢血、クモ膜下出血」などの脳血管疾患による「死」です。ウクライナでは、子供の脳梗塞が顕著に増えたとの報告があります。さらに重要視しなければならないのは、やはりチェルノブイリ原発事故後、糖尿病が急激に増えたことです。北ウクライナとベラルーシのゴメリ地域では、1998年、過去最高の糖尿病発症率を記録したことです。1型糖尿病は、糖を筋肉などに取り込む際の媒介役となるインスリンが、膵臓のB細胞(ベータ細胞)がウィルスなどによって破壊されてしまうことによって膵臓からまったく分泌されないか、絶対量が足りなくなってしまうため、常に血液が高血糖の状態になってしまうという病気です。そのため、さまざまな合併症を発症しないように、基本的には生涯、インスリン注射によって外から足りない分を補わなくなはならないタイプです。ただし、1型の糖尿病患者は、糖尿病患者全体のわずか5%程度で、遺伝的素因が影響していると言われています。残りの糖尿病患者全体の95%は2型糖尿病で、いわゆる生活習慣病といわれる典型的な病気です。「高カロリーの食事を続けたり、不規則な生活を長い間、続けることによって、いずれは程度の差はあれ、誰でもがなってしまう病気」と、私たちは教えられてきたはずです。表面化しないのは、自覚症状がないため、本人が病院に行って検査をしないこともあるのですが、「病気」と診断するにはまだ距離があるためです。いわゆる、日本は「糖尿病予備軍」でイモ洗い状態だということです。日本人の膵臓がんは戦後12倍。核実験と膵臓の病気はシンクロしている。アーネスト・スターングラス(Ernest Joachim Sternglass)という著名なアメリカの物理学者が、今年の2月、91歳で亡くなりました。冷戦時代の核実験によって世界中に降り注がれた放射性降下物と、原発から出て来る放射性廃棄物による人体への健康被害について、広範な疫学調査を行い、議会の公聴会に証人としても呼ばれた学者です。そのスターングラス博士が、2006年の2月、初来日し、青森県の六ヶ所村の核再処理施設を視察した後、青森市で講演を行いました。そのときの記録が残されています。
http://fujiwaratoshikazu.com/2011disaster/
・・・以上からわかるように、スターングラス博士は、誰でも入手できる国の公式データから、冷戦時代の核実験によって大気中に放出された放射性物質の量が増えるにつれて、また、原発の稼働率がアップするにつれて、膵臓(すいぞう)がんや糖尿病の発症が劇的な増加をみせていることを指摘しました。つまり、大気圏から地上に降下した放射性物質の量と、原発から漏れ出る放射性物質や核廃棄物の量と、膵臓がんや糖尿病の増加がぴったりシンクロしていると主張しているのです。ここに、スターングラス博士が来日した時のインタビュー記事の翻訳があります。この中で、博士はこのように言っています。「・・・ついでに、もう一つ重大な話をしよう。ストロンチウム90からできるのが、イットリウム90だ。これは骨じゃなくて、膵臓(すいぞう)に集中する。膵臓というのは、糖尿をおさえるホルモンであるインスリンを分泌しているから、ここに異常が出ると糖尿病になる。世界中で、糖尿病が急増しているのは知ってるね。日本は、すでに人口の割合から言えば、アメリカの(糖尿病になっている人の)二倍もいる。そのアメリカだって、イギリスより発症率が高いのだ。日本では、戦後から現在にかけて、膵臓がんが12倍にもふくれあがっている。50年代の終わりにドイツの動物実験で発見されたのが、ストロンチウム90が電子を放出してイットリウム90になると、骨から肺、心臓、生殖器などに移動するのだが、膵臓に最も高い集中見られたということだ。膵臓からインスリンがうまく生産されないようになると、血糖値が上がって糖尿病になってしまうのだ。今までは放射能が糖尿病と繋がっているなんてまったく認知されていないのだ。これで分かっただろう、国際放射線防護委員会(ICRP)は、当初、放射能の影響として、特定のがんと奇形児くらいしか認めなかった。未熟児、乳児の死亡や、肺、心臓、膵臓、これらの部位への影響はすべて無視されてきたのだ。」
(※彼の本の邦訳版『人間と環境への低レベル放射能の脅威―福島原発放射能汚染を考えるために』が出ています。)
・・・ストロンチウム90は、ベータ崩壊後、イットリウム90になって、再びベータ崩壊を繰り返すので二度にわたって細胞を破壊するという「セカンド・イベント理論」があります。イットリウム90の半減期はわずか64時間ですから、その分、単位時間当たり放出されるエネルギーが大きいことになるので、破壊力がある、という理論です。このため一般にストロンチウム90の分析では、対象試料を溶液化した後、イオン交換分離や沈殿分離などの方法を用いてストロンチウムだけを分離し、更にストロンチウム90の子孫核種であるイットリウム90の生成を2週間程度待ってから放射線計測が行われています。ストロンチウム90のβ線を計測するとき、イットリウム90の生成を2週間程度待ってから測る、という意味は、ストロンチウム90はβ崩壊してイットリウム90になった後、再びイットリウム90がβ崩壊してβ線(高速電子)を出すからです。この二度にわたるβ崩壊はストロンチウム90が消えるまで同時に起こっています。つまり、イットリウム90の半減期は、とても短いものの、食べ物から取り込まれたストロンチウム90がβ崩壊するたびに、すかさず膵臓に取り込まれてしまう、というのです。ストロンチウム90は、主に骨に取り込まれてカルシウムに置き換えてしまいます。このため、ストロンチウム90の恐ろしさを想像する時、真っ先に白血病が頭に浮かんできます。しかし、スターングラス博士は、骨に取り込まれたストロンチウム90がβ崩壊を繰り返してイットリウム90になると、骨から肺、心臓、生殖器などに移動し、膵臓に最も高い集中が見られる、というのです。これが、膵臓がんや糖尿病の増加につながっている本当の原因であると博士は言っているのです。ストロンチウム90の物理学的半減期は約29年で、セシウム137とほぼ同じです。しかし、骨に取り込まれてしまった場合のストロンチウム90の生物学的半減期は50年です。なんとセシウム137の100日と比べると182倍も長いのです。50年かかっても、半分しか体外に出て行かないのです。しかも、その50年間の間、まったく放射能に汚染されていない肉、魚を食べ続けることのできる人はいないでしょうから、ストロンチウム90は微量ながらも骨に蓄積される一方です。それが、常にβ崩壊してイットリウム90になって、膵臓に集中するというわけです。このことによって、年中、膵臓のランゲルハンス島という場所にあるβ細胞をイットリウム90が攻撃していることになるのです。膵臓のβ細胞は、血糖値をコントロールするインスリンを分泌するので、この細胞が内部被曝によって破壊されてしまうと、糖尿病になり、最終的には、インスリンが分泌されなくなってしまうことも考えられます。そうなると、人工透析の生活が続くようになってしまいます。
●チェルノブイリ事故後、6年経ってからベラルーシでは糖尿病が劇的に増加した
 スターングラス博士の分析のように、1986年のチェルノブイリ原発事故の後、糖尿病は増えたのでしょうか。ここに、「チェルノブイリの大参事が住民と環境に与えた結果」という2009年の報告書があります。Amazonでは、『Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment, Volume 1181 (Annals of the New York Academy of Sciences」』というタイトルの報告書として入手可能です。日本語版では、『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』が、それに該当します。読書録に、 その報告書の中身が紹介されているように、ロシア科学アカデミー会員のヤブロフ(Alexey V.YABLOKOV)博士と、白ロシア放射線安全研究所の2名のネステレンコ博士(Vassily B. NESTERENKO、Alexey V. NESTERENKOの二人 おそらく夫婦か兄弟)の共著によるものです。幸いにも、pdfファイルが無料公開されているので、そこから放射線被曝と糖尿病との関係について記述されている箇所を抜粋してみます。下のファイルです。全部で327ページあるファイルです。(本:pdfファイルの78ページの小見出し「5.3.1. Review of Endocrine System Disease Data」(5.3.1節(内分泌系疾患データの総括)以降に、糖尿病の増加と放射線被曝との関係が報告されています。
・・・このファイルのデータから明らかなように、特に、ベラルーシ全域では、1型糖尿病の数が著しく増加し、高汚染地域で特に増加した、ということですから、スターングラス博士の分析結果を裏付けることが起こっているのです。深刻なのは、生活習慣病と言われる2型糖尿病ではなく、遺伝的要因が作用していると言われる1型糖尿病が増えているという事実です。
・・・これは、自然界に存在しない何らかの外的な作用が働いたと考える他はありません。それは放射能で間違いないはずです。
●突然死は、突然、起こらない
・・・「異常に喉が渇く」「トイレが近い」「寝ても寝ても体がだるい」「めまいが酷い」「最近、ずいぶん痩せた」「手足がしびれる」「足先がつる」・・・などの症状が出ていたはずなのですが、疲れているだけだから一晩、ぐっすり眠れば治るだろう、と自己診断してしまうのです。それを繰り返していると、健康に対する危機感がなくなって、しまいには重篤な症状を引き起こすことになります。膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンの量が少なくなったり、インスリンが分泌されるタイミングがずれたりすると、インスリンは分泌されていても、各組織でのインスリンの作用が低下(インスリン抵抗性)してしまいます。これが糖尿病(高血糖)の状態です。インスリンが十分、分泌されなければ、エネルギー源となる血中のブドウ糖(血糖)は筋肉にスムーズに取り込まれなくなるので、血中には、血糖があふれかえり、いわゆるドロドロ血の状態になっていきます。筋肉にエネルギーとして糖が取り込まれないのですから、体が「だるい」などの症状が出ます。また、消耗感が続き、外見的には筋肉が少なくなってどんどん痩せていきます。ドロドロの状態の血液を心臓は、なんとかとして心臓から遠い手足の末梢血管にまで行き渡らせようとするので、心臓自体に負担がかかってきます。ちょうど、水鉄砲に、水ではなく、ドロドロの砂糖水を入れて遠くに飛ばすようなものですから、ポンプを押すにも余計な力を必要とするし、やがては水鉄砲の筒(血管に相当)の内側に、砂糖の塊がこびりついて、とうとう詰まってしまいます。また、砂糖の塊が押し出されることによって、筒の内壁を傷つけてまいます。こうして血管は、どんどん傷つけられていくのです。これが、血栓や瘤になると、できた場所によって、「脳梗塞」や「心筋梗塞」、「動脈瘤破裂」などを引き起こして突然死を招くのです。根本的な原因は、血中の赤血球の変形能が失われることによって、血管が詰まってしまうことなのですが、さらに、その大元の原因は、膵臓のβ細胞から、十分なインスリンが出なくなってしまうことなのです。詰まってしまう血管が、足の抹消血管であったりすると、酷い場合は、足先にまったく血液が流れなくなってしまい、同時に神経も麻痺してしまいます。すると、足に怪我をしても、まったく気づかず、傷口から細菌が入っても何も感じなくなってしまいます。高血糖状態によって、すでに免疫が低下しているので、細菌が繁殖するだけでなく、血流が止まっているので、最終的には足が壊死(壊疽)して切断という悲惨なことになる可能性があります。
・・・基本的に、糖尿病自体で死に至ることはなく、血液の異常によって、各臓器に合併症が起こることによって死亡します。
 一般に、医師や薬剤師、管理栄養士は、「し・め・じ」という言葉で、糖尿病の合併症の進行段階を説明します。「し」とは、神経障害のことです。足のしびれがその典型です。「め」とは、目の合併症のことで、「し」の神経障害がさらに進んだ段階で、網膜症を発症します。網膜症は、数ある目の病気でも糖尿病特有の病気で、最悪の場合は失明します。網膜には、微細な血管と神経が網の目のように張り巡らされていますが、これが糖尿病によって、血管に瘤ができたり破れたりして眼底出血を起こします。「じ」とは、糖尿病のもっともひどい段階で、腎臓障害。人工透析を受け続けなければ命を保つことができなくなります。腎臓という臓器も、毛細血管の塊で、この細小血管の流れが悪くなると腎臓病を発症します。目の網膜症も、足の壊疽も、この細小血管が高血糖によってダメージを受けることから起こります。一方、一般に「動脈硬化」によって起こる大血管障害が、「狭心症」「脳卒中」や「心筋梗塞」です。大血管障害は、高血糖や脂質によって引き起こされますが、特に糖尿病の人は正常な人に比べて心筋梗塞になる危険が2倍から4倍になると言われています。連日、有名人の訃報が絶えることはありません。しかし、公表される病名と死因は、「心筋梗塞」「心不全」「多臓器不全」による突然死と急死。本当の病根は明らかにされることはないのです。それは、糖尿病などによる血液の異常です。
●アフリカや東南アジアの展途上国でさえ糖尿病が増えている
 医師たちは、糖尿病の急増を警告しています。しかし、原子力ムラの火消し機関の医療関係者は、糖尿病の専門知識の欠片も持ち合わせていないにも関わらず、「ストレスによって糖尿病を発症する」と今でものたまわっているのです。ストレスが主原因で糖尿病を発症することは「ありえません」。彼らから医師免許を取り上げるべきです。それどころか、今まで糖尿病は「贅沢病」と揶揄さえされてきましたが、それも間違いです。肥満のグルメ三昧、酒豪だけがなる病気でもありません。それが証拠に、アフリカや東南アジアの展途上国でさえ糖尿病が増えているのです。それどころか、現実には、20歳代の若者の糖尿病が増えてさえいるのです。糖尿病は「飽食の先進国で起こるものだ」というマスコミによって刷り込まれてきた“ジョーシキ”の裏側に何があるのか、しっかり考えないと、これからは自分の健康を守ることはできないでしょう。この図から分かる通り、世界中すべての地域で増加していますが、特にアフリカでは今後22年間に約2倍に激増する見込みといいます。糖尿病患者の数は、世界的に恐ろしいスピードで増え続けているのです。世界の糖尿病人口は4億人を突破しました。日本の糖尿病人口は世界第9位です。日本の糖尿病と糖尿病予備群の合計は2,050万人。なんと、国民の5人に1人が糖尿病、もしくは予備軍に該当するのです。したがって、「糖尿病=贅沢病」は、何かを隠す目的で、マスコミを操作するために使われてきたと考えることもできます。
・・・医療関係者は、放射線の内部被曝を考慮していません。
 もちろん、医師たちは、個人的には放射能の内部被曝を疑っています。
しかし、膵臓のβ細胞の破壊と、イットリウム90の関係一つとっても、大規模な疫学データが出て来ない以上、国の医療行政は変更されることはありません。では、私たちは、どうすればいいのか・・・。まずは、病院に行って血液検査と尿検査をやってもらうことです。両方をやってもらうと、約80項目のデータが出そろいます。その中で、「血糖値」、「HBA1c(ヘモグロビンA1c)」、「eGFR(推算糸球体濾過量)」、「CRE(クレアチニン)」などの重要な数値があるので、それを自分でネットで調べても、かなりのことが分かります。これからは、徹底的に早期発見に努めるべきです。そうすれば、不幸にも、体に多少のトラブルがあることが分かっても、重大な事態に至ることなく、あなたは今までどおり、活発に活動できるのです。これからは、食べ物を厳選し栄養バランスを自分で考えた上、摂取したカロリーを適正に消費できる運動を励行しながら、血液検査に最低でも年1回は行ってください。採血のキットは進歩していて、チクリとするのは最初だけで、後は痛みをまったく感じません。安心して病院に行きましょう。最悪、入院ということにでもなれば、病人食の3食に一度は、キノコ類を使った副菜を食べなければならなくなります。管理栄養士のほとんどは、国の基準を信じており、放射能の本当の恐ろしさをまだ理解していないのです。
(※以上は、パート1とパート2の要約です。全文は、この4倍程度あります)

*5-4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36587 (日本農業新聞 2016/3/12) [東日本大震災 5年] 復興基本方針を決定 農地復旧18年度までに 風評払拭も重点 政府
 政府は11日、2020年までの東日本大震災の復興基本方針を閣議決定した。今後5年間を「復興・創生期間」と位置付け、農業関連では、農地の復旧を18年度までに完了させ、農地の大区画化や利用集積を進めるとした。放射性物質の被害で対応が遅れる地域の農地復旧や風評被害の払拭(ふっしょく)も重点的に取り組む。農水省は、大規模化や高収益化などで一段高い農業に押し上げたい考えだが、現状では、経営の安定化や根強い風評被害などへの対応が依然課題として残っている。政府は基本方針で、これまでの集中復興期間で産業の再生が着実に進展したと評価。今後5年間の復興・創生期間では、今後生じる課題や多様なニーズにきめ細かく対応し、被災地の自立につなげるとした。農業分野では、被災農地約2万ヘクタールの74%(今年1月末時点)が復旧し、ハード面の整備は一定程度進んだ。基本方針では、18年度までに復旧を完了させ、農地の大区画化や利用集積を推進するとした。震災前の復旧にとどまらず、大規模化による省力化やコスト削減で成長化を目指す。一方、原子力発電所事故で被災した福島県の農地復旧の進捗(しんちょく)率は33%と宮城、岩手に比べて遅れている。基本方針では、事故被災地域の営農再開に向けて、①除染の進捗に合わせた農地・農業施設の復旧②除染後の農地の保全管理や作付け実証③大規模化や施設園芸の導入など新しい農業への転換――など一連の取り組みを行うとした。被害が深刻な鳥獣害対策を地域の実情に合わせて進めることも基本方針に盛り込んだ。森山裕農相は同日、農水省の地震災害対策本部と原子力災害対策本部の合同本部で「農林水産業、農山漁村が持つ大いなる可能性を示す取り組みを新たな形として作り上げる」と語った。原発事故は政府が目指す輸出拡大にも影響し、香港、台湾、中国などは日本産農林水産物の輸入を規制している。輸出額1兆円の目標達成に向けて規制撤廃が課題となっている。

*5-5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36585 (日本農業新聞 2016/3/11) [東日本大震災 5年] 被災地食品 安全性検査 関心薄く 「風評」は根強い 消費者庁がアンケート
 放射性物質検査など被災地の食品の安全・安心に関わる情報に、消費者の関心が薄らいでいることが、消費者庁が10日に公表したアンケートで分かった。放射線量が基準以下であれば安全性が確保されているなどの評価について、情報がなく判断できないとする層が3分の1を占め、過去最多となった。東京電力福島第1原子力発電所事故の被災地の食品を避ける「風評被害」は依然残っており、同庁は「被災地への理解が薄れてしまっているようだ」と指摘する。産地で食品中の放射性物質検査を行っていること自体知らない人も37%と過去最多だった。「風評被害」が根強く残っている実態も分かった。福島県産の購入をためらう人は前回より減ったものの、1割以上いた。消費者庁や農水省、厚生労働省などは2011年から、消費者に放射性物質の正確な情報の発信に取り組んでいる。同庁は16年度から、PTAや学校給食に携わる人向けの勉強会を新たに開く予定。「消費者が判断できる情報を、より丁寧に伝えていきたい」(消費者安全課)としている。調査は東北3県(岩手、宮城、福島)と、主要な消費地である8都府県(茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫)が対象。20~60代の男女5176人がインターネット上で回答した。

*5-6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12253623.html (朝日新聞原発取材センター長・福島総局長 2016年3月12日) 福島への先入観、捨ててほしい 
 放射線量は高いが、日中は誰でも入れる居住制限区域での風景だ。防護服が必要な帰還困難区域はバリケードで囲われ、住民も許可なく入れない。屋根瓦が路上に落ちたままの場所さえある。原発事故から5年たったが、原発近くでは復興はいまだ遠い。廃炉はさらに大変で、東京電力の担当者は「山登りの準備をしているだけで、まだ登り始めていない」と話す。しかし、同じ県内でも原発から離れれば、ほぼ普通の生活が送れている。風下のため空間放射線量が一時、数十倍になった福島市。除染と自然減衰の効果で5倍弱まで下がった。いわき市や会津若松市は震災前の1・5倍程度。世界を見渡せば自然放射線量がこうした地点より高い地域もある。福島市の仮設住宅に住む伊藤延由さん(72)は居住制限区域となった飯舘村に通っては、研究者の助言を受けつつ放射線量を測り続けている。自生するキノコや山菜は今でも突然、高い数値が出る。しかし、試験栽培している野菜は土壌が多少汚染されていても軒並み検出限界値以下。「市場に出ている野菜や米はさらに安心」と伊藤さんは話す。福島県の農林水産物は出荷前に検査を受けている。2年前、緊張しながら福島市に住み始めた私は、いまでは最も安全が確認されたものを食べていると思っている。もちろん、安心への感覚は人それぞれだ。伊藤さんも「個人の心の問題」と認める。ただ、安全への努力が伝わらないまま「福島=危険」という印象だけが固定化しているのでは、と私は危惧を覚える。

<電力会社の信頼性>
*6-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160224/k10010420291000.html
(NHK 2016年2月24日) メルトダウン判断 3日後には可能だった
 東京電力は、福島第一原子力発電所の事故発生から2か月たって、核燃料が溶け落ちる、メルトダウンが起きたことをようやく認め大きな批判を浴びましたが、当時の社内のマニュアルでは事故発生から3日後にはメルトダウンと判断できたことを明らかにし、事故時の広報の在り方が改めて問われそうです。福島第一原発の事故では1号機から3号機までの3基で原子炉の核燃料が溶け落ちるメルトダウン=炉心溶融が起きましたが、東京電力はメルトダウンとは明言せず、正式に認めたのは発生から2か月後の5月でした。これについて東京電力はこれまで、「メルトダウンを判断する根拠がなかった」と説明していましたが、事故を検証している新潟県の技術委員会の申し入れを受けて調査した結果、社内のマニュアルには炉心損傷割合が5%を超えていれば炉心溶融と判定すると明記されていたことが分かりました。実際、事故発生から3日後の3月14日の朝にはセンサーが回復した結果、1号機で燃料損傷の割合が55%、3号機では30%にそれぞれ達していたことが分かっていて、この時点でメルトダウンが起きたと判断できたことになります。東京電力は事故後にマニュアルを見直し、現在は核燃料の損傷が5%に達する前でもメルトダウンが起きたと判断すれば直ちに公表するとしていますが、事故から5年近くたって新たな問題点が明らかになったことで、当時の広報の在り方が改めて問われそうです。 .メルトダウン認めるまでの経緯今回の発表や政府の事故調査・検証委員会の報告書などによりますと、東京電力は福島第一原発の事故発生から3日後の3月14日に核燃料の損傷の割合が1号機で55%、3号機が30%に達していることを把握しました。さらに翌日の15日には損傷の割合について1号機で70%、2号機で30%、3号機で25%と公表しますが、原子炉の核燃料が溶けているのではないかという報道陣の質問に対して「炉心溶融」や「メルトダウン」とは明言せず、「炉心損傷」という表現を使います。一方、当時の原子力安全・保安院は、事故発生の翌日の12日の午後の記者会見で、「炉心溶融の可能性がある。炉心溶融がほぼ進んでいるのではないだろうか」と発言していました。ところが、その日の夜の会見では担当者が代わり、「炉心が破損しているということはかなり高い確率だと思いますが状況がどういうふうになっているかということは現状では正確にはわからない」と内容が大きく変わります。さらに翌月の4月には、当時の海江田経済産業大臣の指示でことばの定義付けを行ったうえで、1号機から3号機の原子炉の状態について「燃料ペレットの溶融」とふたたび表現を変えます。その後、事故から2か月たった5月になって、東京電力は解析の結果として1号機から3号機まででメルトダウンが起きていたことを正式に認めました。社員「炉心溶融 なるべく使わないようにしていた」メルトダウン=炉心溶融を巡っては、東京電力の社員が、政府の事故調査・検証委員会の聞き取りに対し、「炉心溶融」ということばを使うことに消極的だった当時の状況を証言しています。公開された証言の記録によりますと、事故当時、東京電力の本店で原子炉内の状態の解析を担当していた社員は、事故から1か月近くたった4月上旬の時点の認識として、「1号機については水位は燃料の半分ほどしか無かったため、上半分は完全に溶けているであろうと考えていた」と述べ、核燃料の一部が溶け落ちていたと見ていたことを明らかにしています。そのうえで、「この頃の当社としては、広報などの場面で炉心溶融ということばをなるべく使わないようにしていたと記憶している」「炉心溶融ということばは正確な定義があるわけではないので、誤解を与えるおそれがあるから使わないと言った考えを聞いた覚えがある」と証言しています。福島・楢葉町の住民「憤りを感じる」原発事故の避難指示が去年9月に解除され、住民の帰還が始まっている福島県楢葉町の住民が暮らすいわき市にある仮設住宅では、東京電力に対する憤りや不安の声が聞かれました。今も仮設住宅で避難生活を続けている83歳の男性は、「東京電力はきちんと謝罪をしたのか。憤りを感じます」と話していました。また、72歳の女性は「メルトダウンしたと、本当に分からなかったのか、それとも隠していたのか。今ごろ言われても気分がよくない」と話していました。仮設住宅の自治会長を務める箱崎豊さんは、「楢葉町民が、安全だというお墨付きのもとに帰ろうとしているときに今さらという感じで腹立たしく思う。残念極まりない。企業体質が改めて問われる事態だ」と話していました。福島・大熊町長「発表が遅れた真意は」メルトダウンを巡る東京電力の対応について、福島第一原発が立地し、現在も全町民が避難を続ける大熊町の渡辺利綱町長は、「なぜ発表が遅れたのか、率直に考えて疑問に思う。単純なミスとは考えられないし発表までにだいぶ時間がかかっているので、そのあたりの真意も知りたい。最初からメルトダウンと発表されていれば、町民などの反応も違ったと思う。信頼を築く上でも、正確な情報を迅速に伝えてもらうのが大事なので、引き続き対応を求めていきたい」と話していました。福島県知事「極めて遺憾」東京電力の、メルトダウンを巡る通報などの対応について、福島県の内堀知事は「3月14日の時点で『炉心溶融』という重要な事象が通報されなかったことは極めて遺憾だ。今後、迅速で正確な通報や連絡が徹底されるよう、改めて強く求めたい」というコメントを出しました。新潟県知事「隠蔽の背景など明らかに」新潟県の泉田裕彦知事は、「事故後、5年もの間、このような重要な事実を公表せず、原発の安全対策の検証を続けている県の技術委員会に対しても真摯(しんし)に対応して来なかったことは極めて遺憾。メルトダウンを隠蔽した背景などについて今後の調査で、真実を明らかにしてほしい」というコメントを発表しました。

*6-2:http://www.minpo.jp/news/detail/2016022529114
(福島民報 2016/2/25) 東電 炉心溶融基準気付かず 第一原発事故危機管理甘さ露呈
 東京電力は24日、福島第一原発事故発生時に核燃料が溶け落ちる炉心溶融(メルトダウン)の社内基準があったにもかかわらず、存在に気付かなかったと発表した。基準に従えば事故発生から3日後には炉心溶融状態と判定できた。当時は「判断基準がない」としており、極めて深刻な事態と公式に認めたのは約2カ月後だった。東電の危機管理体制や情報公開の不備があらためて浮き彫りとなった。基準は「原子力災害対策マニュアル」に盛り込まれていた。基準は「炉心損傷割合が5%を超えていれば炉心溶融と判定する」としていた。福島第一原発では平成23年3月14日に原子炉格納容器内の放射線量を測定する監視計器が回復し、3号機の炉心損傷の割合が約30%、1号機が約55%に達していることを確認したが当時、東電は国や自治体に対して極めて深刻な事態の「炉心溶融」の前段階の「炉心損傷」との説明を続けていた。基準は11年に茨城県東海村で起きたJCO臨界事故を受けて15年に作成された。東電柏崎刈羽原発の安全確保について協議する新潟県技術委員会が炉心溶融公表の遅れを指摘したことを受けて社内で調査し、今月になって基準の存在が判明したという。東電は24日に記者会見を開き、マニュアルの中に炉心溶融の基準があったことが分からなかったと説明。東電は会見で陳謝し、「基準を社内で共有できていなかった。今後、調査を行い、気付かなかった経緯を明らかにしたい」とした。
■求められる説明責任
 東京電力は基準を作成しておきながら、福島第一原発事故に生かさなかった。福島第一原発事故直後、経済産業省原子力安全・保安院は炉心溶融の見解を示していたが、東電は「炉心溶融の定義がない」として前段階の「炉心損傷」と説明し続けた。しかし、実際には判断基準が存在していた。震災から3日後の平成23年3月14日には基準を大きく超える割合で炉心が損傷しており、炉心溶融はその時点で判断できたはずだった。基準は事故前に防災訓練で使用しており、事故当時に存在を誰も指摘しなかったとは信じ難い。東電は公表遅れによる影響はなかったとするが、的確に使われていれば県民への正確な情報発信につながったはずだ。東電の情報公開の在り方に対する県民の不信感は根強い。今回の炉心溶融も極めて重大な事態で、原発を抱える電力事業者が今まで存在に「気付かなかった」というのは理解し難い。東電が明確に説明責任を果たさなければ過小評価のための隠蔽(いんぺい)と受け止められかねず、県民の新たな不信を招く。

*6-3:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150319/k10010021671000.html
(NHK福島 2014年3月19日) 透視調査で「原子炉に核燃料なし」 福島第一原発
 東京電力福島第一原子力発電所で行われている、レントゲン写真のように建屋を透視して溶け落ちた核燃料を捜す調査で、1号機では原子炉の中に核燃料が見当たらないことが分かりました。ほとんどの核燃料が原子炉の底を突き抜け、格納容器に溶け落ちている可能性が強まり、廃炉の厳しい現実を改めて示す形となっています。福島第一原発の事故では、3つの原子炉で核燃料が溶け落ちましたが、極めて高い放射線量に阻まれ、4年たった今も溶け落ちた核燃料がどこにあるのか分かっていません。このため、高エネルギー加速器研究機構などのグループは、先月から、さまざまな物質を通り抜ける性質がある「ミューオン」と呼ばれる素粒子を捉える特殊な装置で、レントゲン写真のように原子炉建屋を透視し、核燃料のありかを突き止めようという調査を進めてきました。その結果、1号機では、使用済み燃料プールにある核燃料は確認できましたが、原子炉の中には核燃料が見当たらないことが分かりました。1号機ではこれまで、コンピューターによるシミュレーションでも、ほとんどの核燃料が原子炉の底を突き抜け、その外側にある格納容器に溶け落ちている可能性が高いとみられてきました。今回の調査結果はこうした推定を裏付けていますが、原子炉から溶け落ちた核燃料が多いほど取り出しが難しくなるだけに、廃炉の厳しい現実を改めて示す形となっています。今回の調査を行った高エネルギー加速器研究機構の高崎史彦名誉教授は「原子炉の中で核燃料があるべきところに何も確認できなかったので、おそらく1号機は核燃料がすべて溶け落ちたのではないか。原子炉の底にも燃料の塊らしい形が見られないので、原子炉を突き抜けて格納容器の底に落ちてたまっているのではないか」と話しています。そのうえで、「今回の調査で、格納容器や原子炉、使用済み燃料プールなど、原子炉建屋の内部が外から透視できたことは大きな意味がある。今後、調査の範囲を広げて核燃料がある場所を特定できれば、福島第一原発の廃炉にさらに貢献できると考えている」と話しています。

<東電トップの責任>
*7-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201603/CK2016030102000129.html (東京新聞 2016年3月1日) 巨大津波予測が最大の争点 東電元トップら強制起訴
 東京電力福島第一原発事故で、検察官役の指定弁護士は二十九日、東電の勝俣恒久元会長(75)ら旧経営陣三人を業務上過失致死傷罪で在宅のまま強制起訴した。公判では、全交流電源喪失が起きるほどの巨大津波の襲来を予測できたかが、最大の争点となる。三被告は公判で「津波の予測は不可能だった」などと無罪を主張するとみられ、指定弁護士は難しい立証を迫られる。原発事故の刑事裁判が開かれるのは初めて。強制起訴は二〇〇九年五月の改正検察審査会法施行後、九件目。今回の指定弁護士は強制起訴事件で過去最多の五人で、ネパール人が再審無罪となった東電女性社員殺害事件の主任弁護人を務めた神山啓史(かみやまひろし)弁護士らが担当する。他に起訴されたのは、ともに原子力・立地本部長を務めた武藤栄元副社長(65)と、武黒(たけくろ)一郎元副社長(69)。起訴状では、福島第一原発の敷地の高さ(海抜一〇メートル)を超える津波が襲来し、浸水で重大な事故が起きる可能性を予測できたのに、原発の運転停止を含めた津波対策をすべき注意義務を怠り、東日本大震災に伴う津波で重大事故を引き起こし、四十四人を死なせ、十三人にけがを負わせたとされる。津波の予測をめぐり、指定弁護士の立証のポイントの一つになるのが、東日本大震災の三年前の〇八年三月、福島第一原発に高さ一五・七メートルの津波が押し寄せる、との試算結果の評価だ。国の地震調査研究推進本部(推本)が〇二年七月に出した長期地震予測に基づき、東電が算定した。推本は「福島第一原発の沖合を含む日本海溝沿いでマグニチュード(M)8クラスの津波地震が三十年以内に20%の確率で発生する」と予測していた。昨年七月の東京第五検察審査会の起訴議決によると、東電は当初、試算結果を原発の耐震性向上のための作業に取り入れる方針だったが、原子力担当の責任者だった武藤元副社長の提案で方針を転換。その後も、巨大津波を想定した防潮堤の整備などの津波対策は取らなかった。試算結果について、勝俣元会長は一二年五月の国会事故調の参考人聴取で「私自身まで上がってきた話ではなかった」と関与を否定。東電も株主代表訴訟で東京地裁に提出した書面などで、「津波は従前の研究で想定された波源(津波の発生源)とは比較にならないほどの広範囲で発生し、予測することができない状況にあった」と主張している。他の争点として、津波対策を取っていれば事故を防げたかや、原発事業者の経営トップとしてより高度な注意義務を負うかについても、双方の主張がぶつかると予想される。
◆心からおわび 東京電力広報室の話
 事故により、福島県民をはじめ、広く社会の皆さまにご迷惑とご心配をお掛けしていることを、あらためて心からおわび申し上げる。当社元役員が強制起訴されたとの報道は承知しているが、刑事訴訟に関することでありコメントは差し控える。損害賠償や除染に全力を尽くし、原発の安全性強化対策に、不退転の決意で取り組む。

*7-2:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201603/20160301_63021.html
(河北新報 2016.3.1) <東電元幹部強制起訴>明らかな人災 有罪を
 東京電力福島第1原発事故で、勝俣恒久元会長(75)ら東電の旧経営陣3人が業務上過失致死傷罪で強制起訴されたことに対し、福島県内では29日、「裁判を通して刑事責任を明らかにしてほしい」などと期待する声が上がった。「福島原発告訴団」のメンバーは福島県庁で記者会見。佐藤和良副団長(62)は「告訴・告発から3年8カ月。刑事責任を問える段階まできたことは感慨無量だ」とし「多くの関連死や自殺者を出している原発事故は明らかな人災だ。3人の有罪を勝ち取りたい」と力を込めた。事故から5年を迎える今なお、全域が避難を強いられている自治体は数多い。その一つ、飯舘村から逃れ、福島市の仮設住宅で暮らす無職遠藤由勝さん(71)は「賠償金をもらっても古里は元には戻らない。東電の罪は重く、誰かが責任を取らないといけない」と訴えた。南相馬市の桜井勝延市長は「南相馬市は1万7000人が市内外で避難を強いられている。誰も責任を取らないのは許されない。裁判を通して責任をはっきりさせてほしい」とコメント。浪江町の馬場有町長は「これまで原発事故の原因究明をしっかりやっていない。責任を明確化するために審理してもらいたい」と語った。
          ◇         ◇         ◇
 東京電力福島第1原発事故で、勝俣恒久元会長(75)ら旧東電経営陣3人が大津波対策を怠ったとして、検察官役の指定弁護士は29日、検察審査会の議決に基づき、業務上過失致死傷罪で東京地裁に在宅のまま強制起訴した。未曽有の事故をめぐり、証拠や争点の整理に相当な時間を要するとみられ、裁判の長期化は必至だ。原発事業者に課せられた注意義務の範囲をどう判断するかが焦点。3人は無罪を主張する見通しで、事故の真相解明がどこまで進むかに注目が集まる。

*7-3:http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2722473.html
(TBS 2016年3月10日) 2008年「15m超津波試算」 東電 非公開の内部資料入手
 11日で5年を迎える東京電力・福島第一原発の事故。JNNは、事故が起きる3年前に、東電社内で「15.7メートルの津波」が来ると試算していた非公開の内部資料を入手しました。東電の旧経営陣3人は先月、大津波が予見できたにもかかわらず、注意義務を怠り、原発事故を引き起こしたなどとして、業務上過失致死傷の罪で強制起訴されました。東電は、これまで大津波を「想定外だった」などと説明していますが、JNNは、事故が起きる3年前の2008年に、「高さ15.7メートル」の津波が来るという試算結果が記された東電の内部資料を入手しました。津波のシミュレーションも記されています。また、職員向けの資料には「津波対策は不可避」とも記されていました。
Q.津波の想定はされていたのに対策を取らなかったのでは?
 「これから裁判になりますので、意見を申し上げるのは控えたいと思います」(試算の報告を受けていた 東京電力 武藤栄元副社長 7日)。東電は、「社内で検討する目的で作成された一資料」としています。今夜のNEWS23スペシャルで、さらに詳しくお伝えします。

*7-4:http://www.geosociety.jp/hazard/content0065.html 日本地質学会 
石渡 明(東北大学東北アジア研究センター)
 東日本の太平洋沿岸部の各市町村における今年3月11日の大震災(主に津波)による死者・行方不明者の統計(表1)を見て気がついたこと述べ,今後の防災や土地利用計画の参考に供したい.資料は河北新報と朝日新聞の記事及び河北新報社の「東日本大震災全記録」(2011.8.5発行)に基づく.
1.死者・行方不明者が最も多かったのは宮城県石巻市(4043人)であり,岩手県陸前高田市(2122人)がこれに次ぐ.石巻市は津波の浸水面積が最大であり(73km2),陸前高田市では18mの高さの津波が市街を襲った.死者・行方不明者が1000人以上に達するのは岩手県大槌町から宮城県東松島市までの6つの市町村であり,500人以上は岩手県宮古市から福島県南相馬市までの14の市町村である.この他に福島県最南部のいわき市でも347人,千葉県旭市でも13人の死者・不明者が出た.複数の死者が出た青森県水沢市から千葉県旭市まで(表1の範囲)は直線距離で560kmあり,これはほぼ今回の地震の余震域の長さに対応する.
2.死者・行方不明者の人口比が最も高かったのは宮城県女川町,岩手県大槌町,陸前高田市で,各自治体の人口の8~9%(津波浸水域の人口の12~13%)が亡くなった.死者数が最多の石巻市の人口比は2.5%(浸水域人口の3.6%)であった.北は岩手県野田村から南は福島県大熊町までの25の市町村で人口比0.2%以上の死者・行方不明者が出た.
3.津波による被害が大きかった沿岸部の範囲内でも,岩手県普代村,岩泉町,宮城県松島町,利府町,塩釜市では特に人的被害が小さかった.普代村から岩泉町にかけては20mを超える高さの津波が襲来したが,普代村では高い防潮堤が津波を防ぎ,住民を守った.岩泉町は海岸に平野がほとんどなく,低地に住む人が少なかったことが被害を小さく抑えたと思われる.松島町・利府町・塩釜市は,入口が狭くて多くの島や半島に守られた湾の奥にあるという地形的な利点が幸いしたと思われる.
4.深刻な津波被害を受けた岩手県宮古市から宮城県東松島市までの範囲内では,岩手県大船渡市の人的被害が比較的小さかったことが目立つ.同市綾里(りょうり)の白浜では津波の高さが26.7mに達し,これは宮古市田老の37.9mに次ぐ高さであり,大船渡港にも10mを超える高さの津波が来ていて,これは山田町や釜石,気仙沼と同程度である.死者・行方不明者の数(448人)においても,その人口比(1.0%)においても,大船渡市の被害が周辺市町村に比べて顕著に少なかった理由については,(1)市街地や集落が他の市町村よりも標高の高いところにある,(2)防災教育が徹底していて多くの人が早く高所に避難した,(3)津波の破壊力(流速)が弱かった,などいくつかの可能性が考えられる.大船渡市は,1960年のチリ地震津波で最も人的被害が多かったため(死者53人,全国の死者・行方不明者142人の1/3以上),他の市町村より津波被害の記憶が鮮明で,住宅の高台移転や防災教育に熱心だった.市役所,学校,病院,警察なども高台にあり,低地は商業ビルや工場として利用されていた.郊外でも,大船渡市吉浜では集落を高台に移転し低地は水田にしたため,今回の津波でも人的被害が少なかった(行方不明1人のみ).また,チリ地震後に世界最大級の湾口防波堤が建設され,今回の津波で破壊されたものの,津波の勢いを弱め,市街への到達を遅らせて避難の時間を稼ぐ上で一定の効果があったと考えられる.つまり,津波対策を考えた土地利用,住宅の高台への移転,湾口防波堤の設置などが人命を救ったことがはっきりと数字に表れているわけで,大船渡市は他の三陸市町村の今後の防災・土地利用計画のモデルとなるだろう.
5.東北最大の沿岸都市である仙台は,海岸平野部で多数の死者・行方不明者を出し,津波浸水地域の面積(52km2)では石巻(73km2)に次ぐが,2番目の大都市である福島県いわき市(15km2)よりも人的被害の人口比がやや小さかった.津波の高さは仙台港で7m程度(ただし若林区荒浜では12m以上),いわき市江名港でも7m程度であった.仙台の市街地は内陸の台地や丘陵地に発達し,海岸平野は主に水田や商工業施設,公共施設などに使われている.台地や丘陵地にある都市は坂が多くて生活に不便であるが,津波や洪水に対する防災上は有利であり,この土地利用が仙台市全体の人的被害を軽減したと思われる.これには,伊達政宗が44歳の時に発生した1611年12月2日(旧暦10月28日)の慶長津波の経験が生きているのかもしれない.この時の仙台~岩沼の津波の高さは7m程度,伊達領内の死者は1783人とされる.政宗はその2年後の1613年に慶長遣欧使節を派遣しており,復興は早かったようだ.沿岸市町村では,津波被害軽減のために今後もこのような土地利用に努めるべきだと思う.しかし,浸水域人口比では仙台の方がいわき市の2倍以上の被害があり,これは避難が遅れたことや浸水域内またはその直近に避難場所が少なかったことが原因と思われる.海岸平野の犠牲者を少しでも減らすために, 十分な高さの丈夫な津波避難ビルや高架道路などの建設,避難路や警報機の整備,避難訓練の定期的な実施などが望まれる.そしてこれは,南海トラフ沿いや日本海側を含め,海岸線をもつ全ての市町村が緊急に行うべきことだと思う.
*粗稿を読んで貴重なコメントをいただいた(社)日本石材産業協会技術顧問(元地質調査所)の服部 仁氏,住鉱資源開発(株)の田代寿春氏(大船渡出身),(株)地圏総合コンサルタントの棚瀬充史氏に感謝する.末筆ながら,今回の地震・津波で亡くなられた方々のご冥福をお祈りし,被災された方々にお見舞い申し上げる。


PS(2016.3.15追加):*8のように、地方自治体が水道とセットで自然エネルギー由来の電力を販売するのは、持っている資源を有効活用できるので大変よい。給水用ダムや農業用ダムなど、これまで国の縦割行政のために発電に利用されてこなかったダムも、自治体が音頭をとれば電源として利用できるので、こういう前向きの政策に取りくんでいる自治体には、ふるさと納税で応援したい人も多いだろう。

   
  *8より   2015.12.20      ふるさと納税(納税する自治体を選べる制度)    
           東京新聞
*8:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160315&ng=DGKKASFB08HCU_V10C16A3MM0000 (日経新聞 2016.3.15) 自治体、家庭向けに新電力 地方でも競争促す、水道とセット割/「地産」太陽光活用
 自治体が一般家庭向けの電力販売に乗り出す動きが広がっている。4月の電力小売り全面自由化を見据え、自治体主導で新電力を設立。地元の太陽光発電などから電力を調達し、電力大手より割安の料金で供給する計画だ。首都圏や関西圏など大都市に比べ、地方は新電力参入の出足が鈍い。自治体が料金引き下げの競争環境を醸成し、住民サービスの向上につなげる。福岡県みやま市が筑邦銀行などと共同出資した新電力、みやまスマートエネルギー(同市)は4月から、九州の家庭向けに電力を販売する。料金は九州電力より平均2%程度安く設定。同市内では水道とセットにして割り引く全国でも珍しい試みも始め、月額50円を値引く。2年以上の契約者にはタブレット(多機能携帯端末)を貸与。日々の電力使用量を通知したり、節電に関するアドバイスを提供したりする。同社はすでに市内の太陽光発電設備などから調達した電力を公共施設や病院に供給している。今後は家庭にも売り込み、契約件数は3年後をメドに1万件を見込む。鳥取市が鳥取ガスと共同で設立した新電力、とっとり市民電力(同市)は2016年度中に家庭向け小売りを始める計画だ。電力は市営の太陽光発電所などから調達する。今後は「電気とガスのセット販売で料金を割り引くことも検討する」(市経済・雇用戦略課)。地域エネルギー管理システム(CEMS)などのノウハウを持つNTTファシリティーズと連携するのは浜松市。昨年10月に設立した浜松新電力(同市)は16年度にも家庭向けに電力を販売する。IT(情報技術)機器を活用し、節電に関する助言サービスも提供する方針だ。群馬県中之条町が設立した中之条パワー(同町)は年内にも家庭向け小売りを開始する。料金体系や契約目標、供給エリアなど詳細は今後詰める。同社は「売電による収益は町の再生可能エネルギーの普及や地域活性化策に充てたい」としている。経済産業省に登録した小売電気事業者は現在225事業者に上り、これらの事業者の本拠地は関東、関西、中部の三大都市圏が約8割を占める。新電力の参入が少ない地方では、沖縄電力が4月以降も料金プランを変更しないと公表するなど、料金引き下げ競争は総じて低調だ。自治体は新電力の設立を主導することで、競争環境づくりに一役買う考えだ。地元の太陽光や風力、バイオマス、ごみ焼却発電など再生可能エネルギーの活用を通じ、「エネルギーの地産地消」(みやまスマートエネルギー)によって地域経済を活性化する狙いもある。


PS(2016.3.16追加): *9のように、原子力規制委員会は「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の放射性物質拡散予測は信頼性がない」としているが、本当に信頼性がないか否かは、SPEEDIの予測と直径30kmの同心円のどちらが実際に近いかを福島原発事故の汚染状況で比較すれば一目瞭然だし、単なる同心円よりも地形、風向き、風速を考慮した方が正確になることは誰が考えても明らかだ。また、仮に国民が支払った税金から113億円もの開発費をかけて役に立たないものを作っていたと言うのなら、その責任も問われるべきである。

      
実際の放射能蓄積量   SPEEDI予測値    SPEEDI甲状腺     福島県と国の対応
                              内部被曝予測値
*9:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201603/CK2016031602000240.html (東京新聞 2016年3月16日) SPEEDI「信頼性ない」 規制委、避難で活用の弊害指摘
 原子力規制委員会は十六日、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)を用いた放射性物質の拡散予測について「信頼性はない」との見解で一致、原発事故時の住民避難に活用するのは弊害が多いと結論付ける文書をまとめた。政府は自治体側からの要望を受け、自治体の裁量でSPEEDIの活用を十一日に容認したが、政府自身は活用しない方針を変えていない。規制委がSPEEDIの信頼性にあらためて否定的な見解を示したことで、自治体は難しい判断を迫られそうだ。政府の活用容認は、原発再稼働に対する地元同意を円滑に進めたい思惑が背景にあるが、自治体任せの政府対応に批判が強まる可能性もある。規制委はこの日まとめた文書で、予測に必要な放射性物質の放出タイミングを事前に把握することは不可能と指摘。その上で、予測を住民避難に活用すれば「かえって避難を混乱させ、被ばくの危険性を増大させる」と強調した。田中俊一委員長は会合で「拡散予測が出れば人々は冷静さを失い、われ先にと行動を取りがちだ」と述べた。東京電力福島第一原発事故では、予測の前提となる放射性物質の放出状況などのデータが確保できず、SPEEDIを活用できなかった。そのため規制委は住民避難について、原子炉から放射性物質が放出された後に、地域で測定される放射線量の実測値で判断する仕組みに見直した。全国知事会は「放射性物質の拡散が始まった後の避難では遅い」としてSPEEDIの活用を政府に要望していた。


PS(2016.3.17追加): *10の「原発停止による電力会社のコストは大きい」というのは同意できるが、原発の社会的コストは事故時のコスト、避難訓練などのコスト、電源立地自治体へのリスク料の支払いなど他の電源とは比べものにならないくらい大きい。さらに、「社会として、どこまでリスクを下げればよいのか」などと間抜けなことを言っているが、原発事故が起きると他の事故と異なり広い国土を失い、被害者の数も桁違いに多いため、事故のリスクは0でなければならず、これは手続が不十分でリスク・コミュニケーションが足りないため、私がリスクについて理解していないから言っているわけではない(そもそも、そういう理解をすること自体、女性や国民の科学的思考力を馬鹿にしている)。そして、原発は、0ではない大規模な原発事故リスクに国民を晒し、稼働から40年経過しても廃炉の方法すらできておらず、使用済核燃料処分の目途も立たず、新エネルギー体系の構築を邪魔し、国民負担を膨らませている点から考えて、社会に大きな不利益を与えているため、即時脱原発が妥当であり、この5年間の対応からその結論は既に出ているのだ。

     
 原発事故による甲状腺癌の発生 福島原発事故避難者 廃炉予定の原発  日本の原発立地

*10:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160317&ng=DGKKZO98529860W6A310C1NNS000 (日経新聞 2016.3.17) リスク巡り国民的議論を 長崎大教授 鈴木達治郎氏
 大津地裁の決定が司法判断として適切かどうかはわからないが、稼働中の原発に停止を命じたことは画期的だと受け止めている。停止による電力会社や社会のコストは大きいが、事故が起きた時のコストとの差し引きを判断したと解釈できる。当然、賛否が分かれるだろう。本来、原発の規制基準を決める際の「どこまでリスクを下げれば安全なのか」という考え方自体、技術論や法律論だけでは決められない。利害関係者や市民も含めた議論が必要なはずだ。今回の判断についても意見が分かれるとすれば、社会として「どこまでリスクを下げればよいのか」に関する合意ができていないということではないか。「規制基準を満たしていれば事故は起きない」というのが、東京電力福島第1原発の事故以前の考え方だった。それが十分でなかったことが分かった以上、規制基準を超えてリスクを下げる努力が電力会社に求められる。リスクの受け入れはその利益の大きさとも比べて、社会が判断するものだ。その手続きが十分でないと、今のように政府や電力が再稼働を決定した後に「説明して納得してもらう」あるいは「説得する」ことになる。リスク・コミュニケーションは双方向であるべきで、一方的な説明や説得では信頼が得られない。国民、住民に対話を通じて丁寧に情報を公開し、必要であれば安全対策や規制基準も変えていく姿勢が求められる。原発に限らず司法が科学的課題に判断を示すことは、今後もますます増えるだろう。司法と科学の関係は非常に難しい。科学も不確実であり、司法の判断も主観がどうしても入る。裁判にかかわる科学者の在り方についても、もっと議論があっていい。原発の運転差し止めは国の政策に影響を及ぼしうるが、国民の信頼がなければ政策は円滑に進まない。司法判断も社会の意思決定システムの一部で排除はできない。「国民的議論」を省略したつけが回ってきているのではないか。一見、遠回りにみえるが、意思決定プロセスを再構築し、議論を尽くすことが求められている。
*すずき・たつじろう 米マサチューセッツ工科大、電力中央研究所、東大での勤務を経て14年から現職。政府の原子力委員会委員長代理も務めた。64歳。


PS(2016.3.18追加):*11のように、「太陽光発電など再生可能エネルギーの拡大に伴う家計の負担が大きい」と言うような人は、原価計算のしくみが全くわかっていないため、原価計算を勉強してから(もしくは知っている人に聞いてから)モノを言うようにしてもらいたい。そうすれば、私がこのブログに既に記載したように、再生エネによる発電の原価と請求書で家庭や企業に請求する電気代に上乗せした金額とはあまり関係なく、原発のコストの方が高いことがわかる筈だ。
 また、*12のように、バイオマス発電と称して木材を燃やす発電方法は、薪に逆戻りするようで感心しない。どうしても使えない廃材でも燃やせば不純物を出すため、唐津市佐志のように排気が唐津市を直撃するような場所に立地すれば、住宅や観光地としてのまちづくりを阻害する。さらに、燃やすのは最も付加価値の低い使い方であるため、別の使い道を探し、どうしても使えない廃材は伊万里のごみ焼却炉に持って行って発電しながら焼却すればよいだろう。そして、その“塩漬土地”も、もっとスマートな別の使い方があると私は考える。

*11:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160318&ng=DGKKASFS17H42_X10C16A3MM8000 (日経新聞 2016.3.18) 再生エネ家計負担10倍に 12年度比 16年度から月600円台後半
 太陽光発電など再生可能エネルギーの拡大に伴う家計の負担が一段と膨らむ。標準的な家庭の電気料金の負担は2016年度から月600円台後半になる見通しだ。再生エネの固定価格買い取り制度が始まった12年度の10倍程度に達する。足元の原油安で電気料金は低下傾向にあるが、再生エネの負担が打ち消す形となりそうだ。経済産業省が18日にも16年度の負担額を示す。買い取り制度は太陽光や風力発電の建設などにかかるコストを家庭や企業の電気代に上乗せして賄う。そのため再生エネの導入が増えるほど負担も膨らむ仕組みだ。16年度の標準家庭の負担額は700円近くになり、制度が始まった12年度(月66円)の10倍程度に膨らむ見通しだ。負担総額は2兆円弱となり、昨年策定した30年度の望ましい電源構成(ベストミックス)で想定する4兆円の半額に近い水準となる。負担増の要因は再生エネの導入の9割を占める太陽光設備だ。12年度の10キロワット以上の太陽光の買い取り価格は1キロワット時当たり40円と高額で、設置も手軽だったため企業の参入が集中した。経産省は16年度の10キロワット以上の太陽光の買い取り価格を24円とし、4年連続で引き下げる方針だ。経産省は国民負担の抑制に向け、今国会で再生エネ特別措置法改正案の成立を目指している。17年度以降により安いコストで電気をつくる事業者を優先する入札制度などを導入し、国民の負担を抑えたい考えだ。

*12:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/288301
(佐賀新聞 2016年3月12日) 唐津市・佐志の“塩漬け土地” バイオマス発電活用へ
■唐津市、関連企業誘致へ
 唐津市は30年以上“塩漬け”状態が続き、昨年秋に市土地開発公社から9億4400万円で購入していた佐志鴻巣の土地を処分するため、バイオマス発電の企業誘致を始める。再生可能エネルギーの中でも、バイオマスは廃材利用の観点から伸びており、市は「企業進出が見込め、再生可能エネ推進の条例を掲げる市の理念とも合致する」と話す。売却するのは、塩漬け状態の土地6万4千平方メートルに加え、企業が利用しやすいように、新たに佐志地主組合や個人から800万円で購入した隣接地1万1千平方メートルを含む計7万5千平方メートル。土地売却だけでは、市が負担した9億円の穴埋めは難しいため、企業の長期的な事業計画を重視し、公募型プロポーザル方式を採用した。「固定資産税や法人税収入、そして新規雇用による経済効果で、長期的にみれば市民の損失が出なかったという形にしたい」と市企画政策課。14日から4月15日まで募集する。佐志鴻巣の土地は当初の宅地分譲計画が住宅事情の変化などで当てが外れ、1980年から35年にわたり塩漬け状態が続いた。公社の購入費は全額、金融機関からの融資で、利息払いだけでも計7億8600万円が発生した。


PS(2016年3月21日追加):東日本大震災の津波被害だけなら、高台移転すれば近くに戻ることができただろうが、原発事故で放射性物質が降り注いでしまった所には、命が惜しければ戻るわけにはいかない。復興住宅の建設が遅れたため、*13のように、新しい人間関係の構築が困難になったことは事実だが、3LDKのマンションを「監獄と同じ」と感じるのは贅沢だろう。特に、高齢者が一人暮らしをする場合、離れ離れの住宅に住んで、雪かき、買い物、介護などの問題が出るよりも、まとまってマンションに住んでもらった方がケアしやすいし、交流したい人は娯楽室などで交流できるようにすればよいからだ。なお、東京で子育てする母親は、2LDK程度の狭いマンションに閉じ込められ、「一万円」というのは駐車場代にもならない金額だ。そのため、原発事故の影響で住めなくなった自宅は、東電か国に事故前の固定資産税評価額で買ってもらった上で、今後の人生設計をするのが合理的ではないかと思う。

*13:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201603/CK2016032102000121.html (東京新聞 2016年3月21日) 「ここは監獄と同じ」 ぬくもりない復興住宅
 高速道路のインターチェンジに近い、五階建ての復興住宅は、都会のマンションのような、無機質なにおいがした。表札を出している家はわずかだ。福島県大熊町から会津若松市の仮設住宅に避難していた門馬五子(もんまいつこ)さん(73)は一年ほど前、郡山市内のこの復興住宅に移った。長女宅に近く、東京の息子も来やすいだろうと選んだ。四階の3LDKに一人暮らし。年金から月一万円ほどの家賃を払う。百万円近くかけて家具をそろえ、孫が遊びに来た時のために大きなこたつも買った。だが、表情は晴れない。今年の正月明け、上の階の住人が亡くなった。救急車が下に来るまで、異変に気付かなかった。「ドアの向こうで誰が、どんな暮らしをしているのか。部屋に入ってしまうと、お互い分からない」と嘆く。安倍晋三首相が視察に来たとき、こう言った。「ここは監獄と同じよ」。顔見知りは民生委員の夫婦だけ。会津の仮設で親しかった人は、いったん同じ復興住宅に入ったが、子と同居すると言って引っ越してしまった。ペットは禁止で、事故前から一緒に暮らしていた愛猫は長女に預けた。三十分歩いて会いに行くが、「私の顔を忘れてしまった」と寂しそうに笑う。仮設での暮らしは、つらかった。薄い畳が体を冷やした。壁は石こうボード一枚で、隣の音が筒抜け。窓の結露にも悩まされた。台所は狭く、まな板を置く場所もなかった。大熊町にある築百年の自宅は、避難中に動物に荒らされている。「直すには一千万円じゃきかない。もう住めない」。月十万円の慰謝料は早晩打ち切られ、年金だけが頼りの暮らしになる。家を借りたり買ったりできる余裕はない。復興住宅に入るしかなかった。終(つい)の棲家(すみか)と思い、「私はここで死ぬんだ」と繰り返す。でも、知り合いが多く、濃い近所付き合いがあった大熊町での暮らしは、取り戻せない。避難生活は幕を閉じていない。

| 内部被曝・低線量被曝::2014.4~ | 04:22 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.12.1 今回の選挙では、原発再稼働の是非も重要な争点だということ ← 原発事故の人体への影響から (2014年12月2日、12日、13日、2015年1月3日に追加あり)
     
 2014.11.28NHK  2014.11.24西日本新聞      東京新聞

(1)原発輸出や原発再稼働などの原発回帰は正しい方向ではない
 *1-1にも記載されているように、安倍政権下の2年で「原発回帰」の流れが加速し、民主党政権時に国民的議論から導かれた「2030年代の原発ゼロ」の方向は無視されたが、政権が変わったからといって、その時にパブリックコメントで表明された原発に関する国民の意志が変わったわけではない。

 それにもかかわらず、2014年4月に「原発は重要なベースロード電源」と位置づける新エネルギー基本計画を閣議決定したのは、重要な論点として今回の総選挙で主権者である国民の目に晒されるべきだ。何故なら、税金からカネを出して原発事故の責任を負うのも、平時の原発運転や過酷事故の放射能汚染で健康を害して被害を受けるのも国民自身にほかならないからである。

 一方、公害を出さない再生可能エネルギーに対しては、太陽光発電による電力の買取を大手電力会社が受け入れ中断し、その上で、経産省と大手電力会社が、電力不足を挙げて原発再稼働の必要性を説いている。電源構成は、①公害を出して国民を害することがない ②国民にとって安価である ③日本で自給できる などの視点から、より優れた電源が勝ち残るべきなのであり、電源構成をあらかじめ人為的に定めれば、最も優れた電源が勝ち残る機会は奪われる。

 この際、メディアは、国民の判断を誤らせないため、「原発のコストは安い」「放射能は安全だ」などという虚偽の情報を流してはならない。何故なら、国民が判断を誤れば、その結果は国民負担として国民に返ってくるからである。

 なお、*1-2で、川内原発をエリアとする西日本新聞が、「原発回帰、高まる不信 問われるエネルギー政策」「原発は安全と何万回も聞いたが、安全に絶対はない」という記事を書いている。一方、自民党が前回の衆院選で「太陽光などの再生可能エネルギーを最大限導入する」と公約としたにもかかわらず、九電はじめ大手電力会社5社は、2014年9月、再生エネの接続申し込みが許容量を超えたとして契約手続きを中断した。

 しかし、私が、このブログに根拠を挙げて何度も記載したように、*1-2の「原発停止や円安で電気料金の高止まりが続く」「再生エネの導入を増やせばその分も料金に上積みされる」という解説については、総括原価方式を採用してきた地域独占企業である電力会社には、コスト削減の動機付けも努力もなく、再生エネと火力燃料の値上がり分だけを料金にサーチャージする仕組みもおかしいので、これは正確な原価計算によるコスト比較にはなっていない。

(2)原発事故の人体への影響
 *2-1には、津田岡山大大学院教授(環境医学)が「日本公衆衛生学会」で講演し、国の有識者会議などが支持している「(累積で)100ミリシーベルト以下の被ばくでは、がんの増加が確認されていない」という見解を否定し、「世界保健機関(WHO)が2013年の報告書で、福島県で甲状腺がんや白血病が増える可能性があると予想している」と報告したことが述べられている。「こうした事実が知られていないため、放射線から身を守るための建設的な議論がストップしている」「放射能は県境で遮断されるわけではない」というのも、私は全く同感だ。

 また、*2-2には、18歳以下の子ども1818人の甲状腺検査の結果、「①正常と診断された子どもが672人」「②小さなしこりやのう胞と呼ばれる液体がたまった部分があるものの経過観察とされた子どもが1139人」「③一定以上の大きさのしこりなどがあり、さらに詳しい検査が必要とされた子どもが7人」だったが、この結果について、検査に当たった島根大学医学部の野宗義博教授は、「チェルノブイリ事故の例から見て原発事故から3年余りで甲状腺がんが発生するとは考えにくく、詳しい検査が必要とされた子どもについても被曝による影響とは判定できない」としていると記載されている。

 しかし、*2-2の検査と結論は、1)18歳以下の人しか甲状腺癌が起こらないとしている点 2)どのような被曝線量を浴びても(また浴び続けても)、3年以上経なければ甲状腺癌は発症しないとしている点 3)甲状腺癌だけしか調べていない点 で科学的ではない。

 そのような中、*2-3のように、雑誌『宝島』の2014年10月号に福島県内で急増する「急性心筋梗塞」のレポートが掲載され、各方面から大きな反響があったそうだ。そして、『宝島』11月号では、全ガン(悪性新生物)の死亡者数が増加傾向にある背景について検証している。

 それによると、小児甲状腺ガンは既に多発しており、地域別の発症率は、福島市の「中通り」が一番高くて10万人当たり36.4人、いわき市などの「浜通り」が同35.3人、原発直近の「避難区域等」が同33.5人、原発から80キロメートル以上離れた「会津地方」は同27.7人で最も低く、放射能汚染の度合いが高い「中通り」と、相対的に低い「会津地方」では、同8.7人もの地域差があったのである。

 これに対し、福島県立医科大学はこの地域差を、「被曝の影響とは考えにくい」「福島県で原発事故による健康被害は発生していない」としているが、福島原発事故時、既に誕生していた子どもたちには小児甲状腺ガンが多発しているのに対し、事故の1年後以降に誕生した子どもたち9472人の間では小児甲状腺ガンの発症がゼロだったため、福島県立医科大学の反論は当たらない。

 また、福島県で増えているガンは「甲状腺ガン」だけではなく、ガンごとの潜伏期間は、「【白血病、悪性リンパ腫】0.4年(146日)、【小児ガン(小児甲状腺ガンを含む)】1年、【大人の甲状腺ガン】2.5年、【肺ガンを含むすべての固形ガン】4年」などとなっており、福島県立医大の唱える「発ガンは原発事故発生から4年目以降」という説は、『Minimum Latency Types or Categories of Cancer』から全く相手にされていないそうで、私も、こちらの方が科学的に矛盾がなく、常識的だと考える。

(3)原発に対する国民の意見は?
 原発公害の深刻さがわかった後、*3-1のように、国民に意見を募った「パブリックコメント」で脱原発を求める意見が9割を超えていたにもかかわらず、経産省は基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた。また、2012年に民主党政権が行った「2030年の原発比率に関するパブリックコメント」でも、約9割が「原発ゼロ」を支持しており、これは、政権とは関係なく国民の意志なのである。

 それにもかかわらず、このように民意を無視した政治がおこなわれる理由は、「官僚を使う(麻生財務大臣)」としながらも、実際には官僚のシナリオ通りに使われざるを得ない状況になっている政治家と選挙で応援してくれた産業に有利に予算を配分する政治のためである。これは、(長くは書かないが)根深い問題であり、政治家が身を切る改革をすれば解決するというような簡単なものではない。

 しかし、NHKは、*3-2のように、「原発の再稼働には若い世代に賛成が多い傾向がある」とし、「地元・薩摩川内市では、20代から30代で『賛成』『どちらかといえば賛成』が75%に上り、若い世代で再稼働に賛成の割合が多くなる傾向はほかの地域でも見られた」としている。

 が、これには、1)20代から30代の世代は、小学校で「原発は安全」という誤った知識を副読本で教えられていること 2)彼らが物心ついて以来、メディアからも「原発は夢のエネルギー」「原発は安全」というメッセージを多く受け取ってきたこと 3)ゆとり教育や理科系科目への敬遠の中で、物理学や生物学の知識の乏しい人が多くなっていること 4)それにより、正しい知識や情報に基づく論理的思考ができない状態になっていること などが、理由として挙げられる。

*1-1:http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=329840&nwIW=1&nwVt=k
(高知新聞 2014年11月30日) 【エネルギー政策 14衆院選】国の責任をはっきり語れ
 安倍政権下の2年で、「原発回帰」の流れが加速している。民主党政権時に国民的議論から導かれた「2030年代の原発ゼロ」から方向転換し、ことし4月には原発を「重要なベースロード電源」と位置付ける新たなエネルギー基本計画を閣議決定した。原発再稼働は、安倍首相が衆院選で国民に信を問うアベノミクスの一角を占める政策である。果たして、福島第1原発事故を経た日本に原発は必要なのか。年明けにも九州電力・川内(せんだい)原発の運転再開が視野に入る今、あらためて議論を深める機会としなければならない。「責任あるエネルギー政策」をうたった安倍政権は、原子力規制委員会が新規制基準への適合を認めた原発は再稼働させる方針をエネ計画に盛り込んだ。「国も前面に立ち」地元の理解を得るとも明記し、この衆院選でも公約とした。だが、川内原発の再稼働手続きで、「責任」の曖昧さが浮き彫りになったといえる。安全対策でげたを預けられた形の規制委は、基準の適合性を審査するだけで、必ずしも安全を担保するものではないとの立場を崩さない。地元の鹿児島県などは「国の責任」を挙げ、安全対策では「規制委を信じる」と同意を決めた。安全に対する最終的な責任を押し付け合うようにもみえる構図から、重要な課題もこぼれ落ちた。事故時の避難計画は規制委の審査対象に含まれず、実質的には地元任せだった。実効性を疑問視する声も根強い。広域に被害が及んだ福島の教訓が生かされたとはいいがたく、「安全神話」の復活さえ印象付ける。今後の手続きで「川内方式」がひな型となり、多くの問題を抱えたまま全国の原発が次々と再稼働する恐れがある。国の責任がみえないのは原発に限った話ではない。エネ計画でも示されなかった電源構成からしてそうだ。
●根本的な疑問
 安倍政権は原発再稼働が見通せないと構成決定を先送りしてきたが、長期的な原発維持を明確にすれば、世論の反発を招くとの思惑はなかったか。しわ寄せは大きくなりつつある。再生可能エネルギーでは、太陽光発電の急増で、四国電力など大手電力に受け入れ中断の動きが広がる。普及の切り札、固定価格買い取り制度の見直しは不可避ながら、将来の導入量が未定のために、国民負担の推計が難航して作業が遅れている。地球温暖化対策の国際枠組みの交渉にも影響が懸念される。主要国が次々と温室効果ガスの削減目標を公表する中、日本は目標設定が遅れ、本気度を疑われかねない状況にある。これも排出量全体の約4割を占める電力部門で電源構成が固まらないからだ。政府はようやく、来年夏までに電源構成を決めると明らかにした。ただし、その前に国民に説明すべきことがあるはずだ。そもそも今夏、原発ゼロで需要のピークを乗り切ったのに、原発は本当に要るのか。使用済み核燃料の処理はどうするのか。国民の根本的な疑問は解消されたとはいえまい。与党は再稼働を進めるなら、選挙戦で明確に答える責務があろう。将来的な原発ゼロを掲げた民主党などの野党も、国民的な議論につながる論戦を展開する必要がある。

*1-2:http://qbiz.jp/article/50660/1/ (西日本新聞 2014年11月27日) 原発回帰、高まる不信 問われるエネルギー政策
 「原発は安全と何万回も聞いたが、安全に絶対はない」。九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働が目前に控える中の衆院解散。福島第1原発がある福島県双葉町から鹿児島市に避難した遠藤昭栄さん(71)は、政府が原発の安全性を強調するたびに、憤りを隠せない。双葉町の自宅は原発から約2キロ。事故後は公民館など県内外の施設を転々とした。故郷に戻るめどが立たず、2012年春、妻と愛犬を連れ、長男が住む鹿児島市に身を寄せた。年明けに再稼働する川内原発のほか原子力規制委員会では12原発(18基)が審査中。来年は審査が先行する関西電力高浜原発3、4号機(福井県)や九電玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)なども再稼働が見込まれる。「福島の事故も収束していない。政治は福島を忘れたのか」。故郷を遠く離れた鹿児島で再び原発と向き合う遠藤さんの政治への不信は高まる。
    □    □
 「3・11」から4年足らず。福島の事故が国民に突きつけた原発の課題は、何一つ解決していない。例えば、原発が出す高レベル放射性廃棄物「核のごみ」。政府の原子力委員会が、地下深くに埋設する方法を決めたのが1984年。実験は進んだが、30年たった今も処分場の選定方法さえ決まっていない。問題があらためて注目されるきっかけになったのは、昨秋以降の小泉純一郎元首相による相次ぐ「脱原発」を求める発言だ。小泉氏は昨年11月、日本記者クラブで「首相が決断すれば(脱原発は)できる。再稼働すればまた核のごみが増える」と政府に迫った。小泉氏の強いメッセージ力に危機感を抱いた政府は昨年12月、最終処分場の選定について「国が前面に立つ」と宣言。建設スケジュールなどを盛り込んだ基本方針を今春までに見直す方針を打ち出した。だが、2月の東京都知事選で、小泉氏と共闘する形で立候補した細川護熙元首相が落選すると作業はストップ。基本方針の見直しは宙に浮いている。
    □    □
 自民党が衆院選の公約で「最大限導入する」と明記した太陽光などの再生可能エネルギーの行方も不透明だ。九電をはじめとする大手電力会社5社が9月、再生エネの接続申し込みが許容量を超えたとして、契約手続きを中断した。「衆院選をする暇があれば、一刻も早く解決策を示してほしい」。太陽光発電事業に挑戦するつもりで金融機関から5千万円を借り、既に土地も購入した鹿児島県内の自営業男性(31)は、突然の手続き中断に憤まんやる方ない様子だ。原発停止や円安で電気料金の高止まりは続く。再生エネの導入を増やせば、その分も料金に上積みされる。複雑に絡み合ったエネルギー政策の方向性を示す覚悟が政府に問われている。

<原発事故の人体への影響>
*2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20141108/CK2014110802000179.html (東京新聞 2014年11月8日) 原発事故の健康影響「検査態勢の充実必要」 国見解否定の津田教授講演
 東京電力福島第一原発事故後の健康影響を考える集会が六日夜、宇都宮市の県総合文化センターで開かれ、「ただちに健康影響はない」とする政府見解に異を唱えてきた津田敏秀・岡山大大学院教授(環境医学)が講演した。県内外の医療関係者や放射線に関心がある市民ら約六十人が耳を傾けた。講演は、全国の医師や研究者が集まる「日本公衆衛生学会」(五~七日)の自由集会内で行われた。津田教授は、疫学の専門家である立場から、チェルノブイリの原発事故後のデータなどを基に、国の有識者会議などが支持している「(累積で)一〇〇ミリシーベルト以下の被ばくでは、がんの増加が確認されていない」という見解を否定した。世界保健機関(WHO)が二〇一三年の報告書で、福島県で甲状腺がんや白血病が増える可能性があると予想していることも報告。「こうした事実が知られていないため、放射線から身を守るための建設的な議論がストップしている」と警鐘を鳴らした。福島県に隣接する栃木県についても「放射能は県境で遮断されたわけではない」と、検査態勢を充実する必要性を主張。健診だけでは受診率が下がるため、全市民に手帳を配布するなどして、経過を記録しやすくする方法を提案した。

*2-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141109/k10013058381000.html
(NHK 2014年11月9日) 子どもの甲状腺 今後も検査を
東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて茨城や千葉の保護者などで作る市民団体が1800人余りの子どもたちの甲状腺を検査したところ、このうち7人が「一定以上の大きさのしこりなどがあり、さらに詳しい検査が必要」とされましたが、担当の医師は原発事故の影響とは判定できないとしています。団体では今後も検査を続けることにしています。茨城や千葉の保護者などで作る市民団体「関東子ども健康調査支援基金」は、原発事故で放出された放射性物質が子どもたちの健康に影響していないか調べようと去年10月から希望者を対象に医師の協力を受けて甲状腺の検査を行ってきました。検査は茨城、千葉、埼玉、神奈川、栃木の5つの県で行われ、ことし9月までに検査を受けた18歳以下の子どもたち1818人の結果がまとまりました。それによりますと「正常」と診断された子どもが672人、「小さなしこりやのう胞と呼ばれる液体がたまった部分があるものの、特に心配はなく経過を観察」とされた子どもが1139人、「一定以上の大きさのしこりなどがあり、さらに詳しい検査が必要」とされた子どもが7人でした。今回の結果について検査に当たった島根大学医学部の野宗義博教授は「チェルノブイリ事故の例から見て原発事故から3年余りで甲状腺がんが発生するとは考えにくく、詳しい検査が必要とされた子どもについても被ばくによる影響とは判定できない。今後も定期的に検査をしていくことが大切だ」と話しています。市民団体では今後も希望者を対象に検査を続けることにしています。

*2-3:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140926-00010000-takaraj-soci
(YAHOOニュース 宝島2014年9月26日) 福島県でなぜ「ガン死」が増加しているのか?~誰も書けなかった福島原発事故の健康被害~【第2回】
 先月号(『宝島』10月号)に掲載した福島県内で急増する「急性心筋梗塞」のレポートは各方面から反響を頂戴した。引き続き本号(『宝島』11月号)では、全ガン(悪性新生物)の死亡者数が、これも増加傾向にある背景について検証する。
■小児甲状腺ガンはすでに多発している
 前号では、福島県で多発・急増する「急性心筋梗塞」の問題を検証したが、今回は、原発への賛成・反対にかかわらず、関心の的である「ガン」に注目してみたい。旧ソ連・チェルノブイリ原発事故(1986年)の際に多発が確認されたのが、「子どもたちの甲状腺ガン」である。福島原発事故においても、事故発生当時18歳以下だった福.島県民36万7707人のうち、今年6月末時点で57人の子どもが甲状腺ガンと確定した。甲状腺ガンの疑いがある者まで含めると、実に104人(良性結節1人も含む)に及んでいる。地域別の発症率を見ると、福島市などの「中通(なかどお)り」が一番高くて10万人当たり(注1)36.4人。次いで、いわき市などの「浜通(はまどお)り」が同35.3人。原発直近の「避難区域等」が同33.5人。一方、原発から80キロメートル以上離れた「会津地方」は最も低く、同27.7人だった。放射能汚染の度合いが高い「中通り」と、相対的に低い「会津地方」では、同8.7人もの地域差がある。しかし、小児甲状腺ガン調査を担当する福島県立医科大学はこの地域差を、「被曝の影響とは考えにくい」としている。すでに地域差が表れている点についても県立医大は、会津地方では精密検査が終わっていない子どもたちが多く、甲状腺ガンと診断される子どもが今後増える可能性があるとして、「地域別発症率に差がない」と、かなり強引な解釈をしている。また、被曝の影響を最も受けやすいと見られる0~5歳で甲状腺ガンの発症がまだ一人も確認されていないこと(現時点での最年少患者は6歳)を、県立医大はことさら重視し、調査が進むにつれて甲状腺ガン患者が増え続けていく現状についても、「被曝の影響とは考えにくい」と、オウム返しのように連呼している。ともあれ、彼らの主訴は、“福島県で原発事故による健康被害は発生していない”ということなのであり、「考えにくい」のではなく、安定ヨウ素剤を子どもたちに飲ませなかった責任を追及されるのが怖い──という本音が見え隠れしている。そもそも、県立医大の期待どおりに会津地方でも小児甲状腺ガンが増えていくかどうかは不明である。それに、原発事故による放射能汚染は会津地方にも及んでおり、会津地方でも発症率が高まることが、直ちに被曝の影響を否定することにはならない。国立ガン研究センターの「地域がん登録全国推計値」によれば、子どもから大人までを含む全年齢層における甲状腺ガンの発症率は、10万人当たり年間7~8人だという。また、事故当初、甲状腺の専門医らは、通常時における小児甲状腺ガンの発症率は「100万人に1~2人」(=10万人当たり0.1~0.2人)だと、マスコミ等を通じて説明していた。これらの数字に比べると、福島県の子どもたちだけで「10万人当たり30人以上」という調査結果はかけ離れて高く、まさに「多発」と呼ぶに相応(ふさわ)しい。福島県は原発事故以前から「小児甲状腺ガン多発県」だったという話もない。この「10万人当たり」は、人口を分母にしての値ではない。この値を求める計算式は、分母を「1次検査の受診者数」として、分子が「甲状腺ガンやその疑いがあると診断された者の数」である。「中通り」の場合、受診者数が16万7593人で、甲状腺ガン患者数が61人なので、61÷16万7593×10万人=36.39…となり、小数点以下第2位を四捨五入して「36.4人」になる。
■福島県で増えているガンは「甲状腺ガン」だけではない
 山下俊一・長崎大学教授(現・同大副学長)も内閣府原子力委員会のホームページで書いているように、チェルノブイリ原発事故では発生の1年後、高汚染地域(ベラルーシ共和国ゴメリ州)で4人の子どもたちに甲状腺ガンが発症している。ゴメリ州の甲状腺ガン患者は、2年後に3人、3年後に5人、4年後には15人と増え、その後は爆発的に増加し、98年までに400人を超えるほどの多発状態に陥っていた。米国のCDC(疾病管理予防センター)では、2001年9月の世界貿易センター事件(同時多発テロ事件)を受け、ガンの潜伏期間に関するレポート『Minimum Latency Types or Categories of Cancer』(改訂:13年5月1日。以下「CDCレポート」)を公表している。これに掲載されている、ガンごとの潜伏期間を短い順に示すと、「【白血病、悪性リンパ腫】0.4年(146日)、【小児ガン(小児甲状腺ガンを含む)】1年、【大人の甲状腺ガン】2.5年、【肺ガンを含むすべての固形ガン】4年」などとなっている。小児甲状腺ガンの潜伏期間は1年ほどということになり、前掲の山下報告とも矛盾しない。県立医大の唱える「発ガンは原発事故発生から4年目以降」説など、CDCからは全く相手にされていないのである。にもかかわらず県立医大は、一見して多く見えるのは無症状の人まで調べたことによる「スクリーニング効果」によるものであり、将来発症するガンを早めに見つけているに過ぎない、などと頑(かたく)なに主張している。だが、こうした「スクリーニング効果」説は、科学の定説として確立している話でもなく、単なる仮説に過ぎない。実は、チェルノブイリ原発事故でも「小児甲状腺ガンのスクリーニング」が実施されている。行ったのは、前出の山下・長崎大教授らである。小児甲状腺ガンの発症率を、事故発生当時に0歳から3歳だった子どもたちと、事故後に生まれた子どもたちとの間で比較したのだという。その結果は昨年3月、米国放射線防護協会の年次大会の場で山下氏が報告している。それによると、事故発生時にすでに誕生していた子どもたちの間では小児甲状腺ガンが多発していたのに対し、事故の1年後以降に誕生した子どもたち9472人の間では小児甲状腺ガンの発症がゼロだった――というのである。つまり、「スクリーニング効果」仮説は山下氏によって葬り去られていた。それでも「スクリーニング効果」仮説に拘(こだわ)り続けるという皆さんは、福島原発事故の1年後か2年後くらいに生まれた福島県の子どもたちに対し、山下氏がやったのと同様の「小児甲状腺ガンのスクリーニング」を行い、現在の「多発」状態と大差ない発症が見られることを実証しなければなるまい。それに、原発事故後に福島県で増加が確認されているガンは、何も甲状腺ガンだけではない。【表1】は、事故翌年の12年に福島県内で増加した「死因」を、国の人口動態統計をもとに多い順から並べたものだ。このワースト10には、「結腸の悪性新生物」(第2位。以下「結腸ガン」)と、すべてのガンの合計値である「悪性新生物」(第6位。以下「全ガン」)がランクインしている。大分類である全ガンの数字には当然、結腸ガンの数字も含まれているのだが、ともに右肩上がりの増加傾向が続いている。しかも、全ガンは10年との比較で11年が+19人、12年には+62人と、増加の度合いが年々強まっている(結腸ガンでは11年が+33人、12年は+75人)。そこで私たちは、前回の「急性心筋梗塞」検証に引き続き、「原発事故による被曝と発ガンには関係がない」との仮説の下、それを否定することが可能かどうかを見極めることにした。病気発生の頻度を表す物差しである「年齢調整死亡率」(注2)を、福島県内の市町村ごとに計算した上で、文部科学省による福島県内の「セシウム汚染値」(注3)の濃淡と、相関関係が見られるかどうかを調べたのである(注4)。今回の検証作業でも、福島県内のセシウム汚染分布に詳しい沢野伸浩・金沢星稜大学女子短期大学部教授にご協力いただいた。
(注2)本誌2014年10月号10ページ(注2)および小社ホームページ(http://blog.takarajima.tkj.jp/archives/1921954.html)参照。
(注3)同(注3)参照。
(注4)福島第一原発事故後、高汚染のためにすべての住民が避難した原発直近の7町村(双葉町・大熊町・富岡町・楢葉町・浪江町・飯舘村・葛尾村)は、解析対象から除外した。
 年齢調整死亡率は、原発事故前年の2010のものと、事故翌年の12年のものを、それぞれ計算して求めた。こうすることによって、セシウム汚染によって数値が上がったのか否かの区別がつく。つまり、汚染の高いところで12年の年齢調整死亡率も同時に高くなるという「正比例の関係」が見られれば、被曝との因果関係が強く疑われる――ということになる。逆の言い方をすれば、もし「正比例の関係」がなければ、原発事故とは別のところに原因が存在することを意味する。
■警戒が必要なのは「悪性リンパ腫」
 その解析の結果、結論は「セシウム137の土壌汚染密度分布と『全ガン』年齢調整死亡率の分布との間には、原発事故後、弱いながら統計的には有意(r =0.24)と言える正の相関関係が生じている」というものだ。つまり、「原発事故による被曝と発ガンには関係がない」との仮説を否定する結果となったのである。実数で見ると、福島県で全ガンによる死者は増加傾向にあるものの、年齢調整死亡率で見た場合は原発事故前と比べ、横ばいで推移している。しかし、セシウム汚染との相関を見たグラフは、11年を境に何らかの“異変”が起きた可能性を示している。汚染の濃いところで10年の年齢調整死亡率が高ければ、それは放射能汚染に晒(さら)される前から死亡率が高かったことを意味し、10年のグラフの直線(回帰直線)は右肩上がりになる。12年の年齢調整死亡率がさらに上昇していない限り、「汚染との相関はない」と言える。10年の「全ガン」グラフは、完全な右肩下がり(r =-0.23)──すなわち、放射能汚染に晒される以前は死亡率が低かった地域が多いということを示し、汚染との相関が全くなかったことを表わしている。それが、事故後の12年には右肩上がり(r =0.24)に転じていた。12年に年齢調整死亡率の増加が見られた市町村は、58自治体中33の自治体である。右肩上がりに変わったのは、事故発生の年である11年(r =0.26)からだ。部位ごとにも検証してみた結果を示し、全ガンと似た傾向が見られたのは、「気管、気管支および肺ガン」(r =0.23)だ。全ガンと同様に回帰直線が事故前と事故後で反転している。とはいえ、前出の「CDCレポート」のところで示したように、肺ガンの潜伏期間は「4年」である。原発事故による健康被害が現れるにしても、肺ガンの場合、事故翌年の12年では早すぎるのだ。何が原因であるにせよ、ここまでトレンドが反転するには何らかの相当なエネルギーが必要と思われるが、現時点ではその“エネルギー源”が「原発事故」や「放射能汚染」であると推定するには、かなり無理がある。従って、今回は現時点での検証の途中経過を示すだけにとどめ、13年以降の推移を注視していくことにしたい。白血病や胃ガン、乳ガンでは、現時点で全ガンと似た傾向は見られなかった。12年の死因ランキングで第2位に入っていた結腸ガンは、年齢調整死亡率が年々微増している。セシウム汚染との相関は、11年に「弱い相関」(r =0.23)があったものの、12年には「ほとんど相関がない」(r =0.04)レベルになっていた。気になるのは「悪性リンパ腫」(r =0.12)だ。セシウム汚染とは「ほとんど相関がない」レベルだが、そのr値がわずかながらも増加してきているのである。CDCレポート」では悪性リンパ腫の潜伏期間を「0.4年(146日)」としていることからも、悪性リンパ腫には今後、特に警戒が必要と思われる。そんなわけで、福島県でどんな部位のガンが増えたことで全ガンの増加に至ったのかは、手持ちの人口動態統計データだけでは解明することができなかった。この先の分析作業には、厚生労働省にある人口動態統計の生データが必要になる。ただ、このデータは一般向けに公開されておらず、国から厚生労働科学研究費をもらっているような大学などの研究者でなければ見せてもらえないのが実情だ。ぜひ、厚労省自身の手で解明していただきたい。次回は、福島県内の取材へと駒を進める。(以下、続く) (『月刊宝島』2014年11月号より)

<原発に対する国民の意見>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11450294.html (朝日新聞 2014年11月12日) 「脱原発」の意見、1万7665件で94% エネルギー計画のパブリックコメント
 安倍内閣が4月に閣議決定したエネルギー基本計画をつくる際、国民に意見を募った「パブリックコメント」で、脱原発を求める意見が9割を超えていたことがわかった。朝日新聞が経済産業省に情報公開を求めて開示されたすべてを原発への賛否で分類した。経産省は基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけたが、そうした民意をくみ取らなかった。経産省が昨年12月6日に示した基本計画の原案に対し、対象の1カ月間にメールやファクスなどで約1万9千件の意見が集まった。同省は今年2月、主な意見を発表したが原発への賛否は分類していなかった。開示されたのは全部で2万929ページ。複数ページに及ぶものを1件と数えると1万8711件だった。うち2109件はすでに今年5月に開示され、今回残りが開示された。廃炉や再稼働反対を求める「脱原発」は1万7665件で94・4%。再稼働を求めるなどした「原発維持・推進」は213件で1・1%、賛否の判断が難しいなどの「その他」が833件で4・5%だった。脱原発の理由では「原案は民意を反映していない」「使用済み核燃料を処分する場所がない」などが多かった。「原発維持・推進」の理由では、電力の安定供給や温暖化対策に原発が必要との意見があった。開示文書は、個人情報保護のため名前が消されており正確な把握はできないが、「脱原発」の意見には同じ文面のファクスが数十件あるなど、何度も意見を送った人もいたようだ。経産省は、今回の基本計画をめぐるパブリックコメントのとりまとめでは「団体の意見も個人の意見も1件。それで数ではなく内容に着目して整理作業をした」として、原発への賛否は集計しなかった。民主党政権は2012年、30年の原発比率について国民的議論を呼びかけた。パブリックコメントでは約8万9千件が集まり、約9割が「原発ゼロ」を支持した。

*3-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141108/k10013042661000.html
(NHK 2014年11月8日) 原発の再稼働 若い世代に賛成多い傾向
 NHKが行った世論調査で、鹿児島県にある川内原子力発電所の再稼働について尋ねたところ、地元・薩摩川内市では20代から30代で「賛成」「どちらかといえば賛成」が75%に上りました。若い世代で再稼働に賛成の割合が多くなる傾向はほかの地域でも見られました。NHKは先月31日から4日間、「薩摩川内市」とその「周辺地域」、さらに「福岡市」と「全国」の4地域で20歳以上の男女を対象に、コンピューターで無作為に発生させた番号に電話をかける「RDD」という方法で世論調査を行い、調査の対象になった人のうち、およそ67%の人から回答を得ました。川内原発の再稼働について尋ねたところ、薩摩川内市では、「賛成」「どちらかといえば賛成」が49%、「反対」「どちらかといえば反対」が44%でした。
 年代別に見ますと、
▽20代から30代は「賛成」「どちらかといえば賛成」が75%、「反対」「どちらかといえば反対」が23%。
▽40代は「賛成」「どちらかといえば賛成」が60%、「反対」「どちらかといえば反対」が36%。
▽50代は「賛成」「どちらかといえば賛成」が59%、「反対」「どちらかといえば反対」が38%。
▽60代は「賛成」「どちらかといえば賛成」が44%、「反対」「どちらかといえば反対」が51%。
▽70代以上は「賛成」「どちらかといえば賛成」が42%、「反対」「どちらかといえば反対」47%でした。
 若い世代で再稼働に賛成の割合が多くなる傾向はほかの地域でも見られ、20代から30代の「賛成」「どちらかといえば賛成」と答えた割合は、▽いちき串木野市や出水市などの周辺地域では54%、▽福岡市では44%、▽全国では40%と、いずれもほかの世代と比べて割合が高くなりました。今回の世論調査の結果について、科学技術と社会の関係に詳しい大阪大学コミュニケーションデザイン・センターの小林傳司教授は「今、いちばん経済を支えて働いている世代からすれば、現実に再稼働は大きな要素で、きれい事は言えないということだろう。場合によっては事故は起こるかもしれないけれども、今の経済とのバランスを考えたときに、危険を覚悟のうえで選んだという感じがする。ただ、危ないかもしれないからやめておこうという議論と、危ないかもしれないけれども受け入れようという議論は、どちらが合理的か簡単には決められない問題だ」と話しています。


PS(2014.12.2追加):*4は、2014年5月12日現在の諸外国・地域の日本産食品輸入規制措置で、日本では「食べて協力」「風評被害をまき散らすな」と言われている東北・関東圏の食品が、食品からの内部被曝を予防するために、多くの国で「輸入停止」や「証明書要求」となっている。そして、こちらの方が世界常識であるため、TPPが締結されれば日本産農産物の輸出が増えるというのは甘い展望だ。

*4:諸外国・地域の日本産食品輸入規制措置一覧表(2014年5月12日現在)
   


PS(2014.12.12追加):*5のように、フクシマ原発事故の汚染水問題により福島県など8つの県の水産物の輸入を禁じている韓国政府が、専門家を日本に派遣して現地調査を行い、輸入規制の是非を検討するそうだ。韓国の禁輸措置については、水産庁の幹部が韓国を訪れ、「科学的根拠に乏しい過剰なもの」として直ちに撤回するよう申し入れたり、WTO(世界貿易機関)で日本政府の代表が韓国の不当性を訴えたりしたそうだが、「科学的根拠に乏しい過剰なもの」と言う以上は、その科学的根拠を出して立証する責任は原発事故を起こした日本政府の側にある。しかし、統計数値による疫学的立証はまだできない時期であるため、そのような中で「用心する権利」は誰にでもあり、命を懸けてまで「食べて協力」することを押し付ける人は良識に欠ける。

*5:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141212/k10013913901000.html
(NHK 2014年12月12日) 原発事故で水産物禁輸の韓国 福島など調査へ
農林水産省は、東京電力福島第一原子力発電所の汚染水問題を受けて、福島県など8つの県の水産物の輸入を禁じている韓国政府が輸入規制の是非を検討するため、来週、専門家らを日本に派遣し、福島第一原発などで現地調査を行うことを明らかにしました。農林水産省の発表によりますと、現地調査を行うのは、韓国政府がことし9月に設置した日本の水産物などの輸入規制の是非を検討する委員会の7人の専門家です。調査は今月15日から19日までの5日間の日程で行われ、このうち17日と18日には福島第一原発の汚染水対策の現状や、福島県沖で行われている試験操業の状況などを視察する予定です。韓国政府は、福島第一原発の汚染水問題を受けて、去年9月から福島県など8つの県のすべての水産物の輸入を禁止する措置を取っていますが、日本政府は、科学的根拠に乏しいとして撤回を求めています。専門家らは来年1月に再び日本を訪れて現地調査を行い、それを踏まえて、輸入規制の是非について報告書をまとめることにしています。農林水産省は「今回の現地調査を輸入規制の撤回への足がかりにしたい」と話していて、水産物の安全性について改めて理解を求める方針です。これまでの経緯韓国政府は去年9月、福島、宮城、岩手、青森、群馬、栃木、茨城、千葉の8つの県のすべての水産物の輸入を禁止したほか、8県以外の水産物などについても放射性物質が僅かでも検出されれば、追加で検査証明書の提出を求める措置を決めました。これに対して、水産庁の幹部が韓国を訪れ、「科学的な根拠に乏しい過剰なものだ」として、直ちに撤回するよう申し入れました。また、WTO=世界貿易機関の食料品の検疫措置などを話し合う委員会でも、日本政府の代表団がこれまでに4回にわたり、韓国の不当性を訴えるなど、さまざまな外交ルートを通じて働きかけを続けてきました。こうしたなか、韓国政府はことし9月、輸入規制の是非について検討するため、専門家による委員会を新たに設置しました。今後、日本政府が提出した資料の分析や来週と来年1月の2回にわたって行われる予定の現地調査などの結果を踏まえ、韓国政府が輸入規制を見直すかどうか判断することになります。

  
         *6より                       *7より

PS(2014.12.13追加):TVメディアは、お天気、スポーツ、(推測の多い)刑事事件の報道が先で、それらの報道時間も長く、ニュースのランク付けがおかしいが、このように政策の論点を開示しない報道をしながら、一般の人に「問題意識を持って選挙に行け」と言っても無理な話である。実際には、*6のような深刻な事態が進行しており、外国の報道機関はまともな報道をしているため、日本人よりも外国人の方がフクシマの真実を知っている状態なのだが、癌や心疾患による死亡率が上がってから「そうなるとは知らなかった」では済まされない。そして、日本にも警告を発している人は多いのだ。

*6:http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-feee.html (原文:rt.com/news/tokyo-radiation-fukushima-children-836/) (ロイター 2014年4月21日) 真実を隠す日本政府:福島の放射能で子供や東電社員達が亡くなっている
 破壊された福島原子力発電所に近い双葉町の元町長井戸川克隆は、放射能汚染が、日本の最大の宝である子供達に、悪影響を及ぼしていると、国に警告している。双葉町住民を福島県内の磐城市に移住させる政府計画について尋ねると、井戸川はそうした動きは“人権侵害”だと批判した。チェルノブイリと比較すると福島周辺の放射能レベルは“4倍高いのです”と彼はRTのソフィー・シュワルナゼに語り(英語ビデオ、英語の全文書き起こしあり)“住民が福島県に戻るのはまだ早すぎます”と語った。“政府が何を言おうと、決して安全ではありません。”政府は放射能の危険にもかかわらず、住民を故郷に戻す計画を開始したと井戸川は主張している。“福島県は帰郷キャンペーンを始めました。多くの場合、避難民は帰郷を強いられています。[元町長は、大気の汚染はわずかながら減少しているが、土壌汚染は変わっていないことを示す福島県地図を示した]。井戸川によれば、県内には約200万人が住んでおり、“あらゆる種類の医療問題”を抱えているというが、政府は、こうした状態は福島原発事故とは無関係だと言い張っている。井戸川は、当局の否認を、書面で欲しいと思っている。“当局にその主張を書面で実証するよう要求しましたが、私の要求を無視しました。”井戸川は、1986年4月26日にウクライナを襲った原発の悲劇に再度言及し、日本人は“チェルノブイリを決して忘れてはなりません”と懇願している。しかし、元行政幹部の警告に耳を傾ける人はごくわずかに見える。“現実には、放射能がまだ存在しているのに、人々は政府の言い分を信じているのです。これで子供達が亡くなっています。子供達は心臓病、喘息、白血病、甲状腺炎…で亡くなっています。多くの子供達は、授業の後、ひどくつかれています。体育の授業に出られない生徒たちもいます。ところが、当局は依然、真実を我々から隠しているのです。一体なぜかはわかりません。彼等におこさんはいないのでしょうか? 彼等が、我々の子供達を守ることができないことがわかるというのは、つらいことです。”“彼等は福島県は安全だと言い、それで誰も子供を、どこかへ避難させようとしていないのです。我々はこのことを議論することさえ許されていません。”2020年に予定されている東京オリンピックについて話す際、安倍首相が、本来“人を腹蔵無く遇する”べきことを意味する日本の言葉“おもてなし”を頻繁に使うのは皮肉だと、元町長は考えている。井戸川の考えでは、同じ処遇は、福島に最も密接に結びついている人々には平等に適用されてはいない。除染作業に携わる労働者達だ。“彼らの器具は劣化しつつあります。準備は悪化しつつあります。そこで、彼等は自分達の安全を第一に考え始めざるを得なくなったのです。それが、放射能の本当の危険を理解している人々が退職し始めた理由です。今では、素人達が現場で働いています。彼等は自分たちがしていることが何か実際に理解していません。こうした人々が間違ったポンプを使ったり、そうした類の間違いをしたりするのです。“自分の国を本当に恥ずかしく思いますが、地球を将来清浄に保つには真実を語らなければなりません。井戸川は更に、日本の歴史上、最も悲劇的な出来事の一つとの幾つかの類似点をあげた。第二次世界大戦末、アメリカ合州国による広島と長崎という産業都市への原爆使用だ。“当局は(原子爆弾攻撃の効果について)全員にウソをつきました…当局は真実を隠したのです。そういう状況に我々は暮しているのです。福島だけではありません。日本には暗い歴史があります。これはある種、過去の犠牲です”労働者や一般住民の中には放射能に関連する死者や急性疾患はいないという国連報告の詳細について問うと、井戸川は、危機の頂点で味わった自分自身の体験の一部を語る前に、“全くの嘘です”と切り捨てた。“町長時代、心臓麻痺で亡くなった多くの方を存じていますし、以後も福島で、若い方々にさえ、突然亡くなった方々が多数おられます。当局が、全世界や国連に対し、真実を隠しているのは実に恥ずかしいことです。実際に多くの方々が亡くなっている事実を認めることが必要です。こういうことをいうのは禁じられていますが、東京電力社員も亡くなっています。けれども彼等はそれについては黙して語りません。”そのような状況で実際亡くなった人々の具体的人数を教えて欲しいと言うと、井戸川は“一人や二人ではありません。そのような形で十人、二十人の方々が亡くなっているという話です。”と言って拒否した。1億2600万人の国民向けのエネルギー源として、日本には他にどのような選択肢があるか尋ねると、多数の川があるのに、政府は水力発電を無視していると彼は答えた。理由は何か? “大企業が儲からない!”為だ。井戸川は、驚くほど単純に聞こえる日本のエネルギー需要を満たす為の青写真を示そうとして話を続けた。“投資資金が限られていても、増税せずに多数の人々に電力を送れます。重力を利用するだけで非常に多くのエネルギーが得られますから、もはや原子力発電所は不要です。”
●大災害の予感
 東北日本が地震による津波で襲われた日、2011年3月11日に発電所の原子炉6基中、3基のメルトダウンを引き起こした福島原子力発電所での大事故以前に、井戸川は施設が危険なことを知っていた。“私が何も知らないふりをして、原子力発電所で起きる可能性がある事故について質問すると、私の様々な疑問に彼等が答えられないことがわかりました”と彼は語った。“率直に申しあげて、その時、東電幹部に、緊急時対策がないことに始めて気がついたのです。その時に、原発が危険なことになりうると私は悟ったのです。”津波が襲った日、近くの町にいた元町長は、地震のニュースを聞き、車を運転して双葉に戻ったことを覚えている。ようやく後になって、近づく津波で、すんでのところで命を落とす状態だったことに気がついた。“より大きな津波が来る前に何とか戻ることが出来ました。後になって始めて、津波から生きのびられたことを知りました… 幸運でした。私がその道を運転して過ぎた後、津波が来て、山にまで至ったのです。”30分の帰路、運転しながら、原子力発電所についての疑問ばかり考えていた。“‘地震がこれほど激しいなら、原発で一体何が起きるだろう? もし原子炉が損傷したらどうなるだろう? 水が漏れたらどうなるだろう? 町は何をするだろう? 町長として、何をすべきだろう?とずっと考え続けていました’”町長室に到着した井戸川は窓外を眺め、彼が“恐ろしい光景”と表現するものに直面した。“普通ここからは海は見えませんが、あの時は300-500m先まで見えました”と彼は言う。町長が原子力発電所は恐らく何らかの損傷を受けただろうと気がついたのはその時だった。夜は、携帯電話さえ機能していなかったので、唯一の情報源、テレビのニュース報道を見て過ごした後、井戸川は翌朝早く緊急避難を発令した。ところが、町民全員が緊急放送を聞けたわけではなかった。“後になって、双葉住民全員が私の声明を聞けたわけではなかったことを知りました。申し訳なく思っています…福島県が、時宜にかなう形で、私に全ての情報を教えていなかったことに気がつきました。現在、政府は放射能から住民の安全を確保するいかなる措置も講じていませんし、避難手順の実施も監視していません。”
●原子力を越えて
 井戸川克隆は、よりきれいで安全な形のエネルギー源が得られるよう日本を変えるには、日本の法律を進んで変える意思が必要だと考えている。“日本には様々な法律があります。おそらく多すぎるのです。河川やその利用方法に関する法律があります。農業用水利用に関する法律を変えれば、川を発電用に使用することが始められます。この法律を変えるだけでも、膨大なエネルギーが得られるでしょう。”こうしたこと全て、“地球を汚染せずに”実現可能だ。ところが、そのような大胆な提案は“大企業には受けません。大規模投資が不要で、巨大な発電所を建設する必要がなくなりますから。投資家や、資本家にとっては、さほど儲からないのです。”放射線のおかげで荒廃させられた日本の町の元町長として、井戸川は、世論に大きな変化が起きているのを感じている。日本人は“原子力災害を避ける必要があることを理解し始めましたから、国民の60-70パーセントは自然エネルギー利用に賛成です。”“長い時間がかかりましたが、いつの日か我々も、ヨーロッパの、ドイツの先例に見倣うでしょう。”


PS(2015.1.3追加)*7のように、「福島産米は全袋検査した結果、基準値超えはゼロ」と、いかにも厳密な検査をクリアしたかのように書かれているが、基準値は「1キロあたり100ベクレル以下」なのである。私は、これを1日、2日ではなく、1ケ月、1年、3年、5年と食べ続けてもよいという実験は見たことがなく、蓄積すると悪影響が出るのが普通であるため、この基準さえ守っていれば安全だという科学的証拠があれば示してもらいたい。何故なら、基準や法律で決めたからと言って、科学的に人体に安全になるわけでも、安全であることが証明されたわけでもないからだ。

*7:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11532501.html?_requesturl=articles%2FDA3S11532501.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11532501
(朝日新聞 2015年1月3日) 福島産米、基準値超えゼロ 昨年分、1075万袋検査
 東京電力福島第一原発事故をきっかけに始まった福島県産米の放射性物質検査で、昨年末までに計測した2014年産米約1075万袋全てが国の基準値(1キロあたり100ベクレル)を下回った。収穫した年内の検査で基準値超えゼロを達成したのは初めて。全量全袋検査と呼ばれるこの取り組みは福島県が約190台の検査器を配備して12年に始まった。全ての県産米が対象で1袋ごとに放射性セシウム濃度を調べ、食品衛生法上の基準値以下だと「検査済」のラベルが貼られる。基準値を超えると廃棄される。検査に期限はなく今後も続けられる。基準値超えは、同じく1千万袋以上を調べた12年産米では71袋、13年産米では28袋だった。福島県内の農家は、稲が放射性セシウムを吸収しないよう肥料を工夫するなど試行錯誤を続けてきた。

| 内部被曝・低線量被曝::2014.4~ | 05:38 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.5.18 検証:メディアは真実にどう対応したか? (総括:情報の真実性は民主主義のKeyであり、正確な情報がなければ国民が意思決定を誤るにもかかわらず、多くの日本メディアは、肝心なところでは志がなかった。)
   
                     *2より
(1)「被曝で鼻血」は、「根拠のない風評」ではない
 *1で、安倍首相が、「根拠のない風評に対して国として全力を挙げて対応する」と述べられたそうだが、「被曝で鼻血を出した」という事実は、*3に書かれているように、参議院東日本大震災復興特別委員会等で参議院議員(宍戸隆子議員、熊谷大議員、山谷えり子議員、森まさこ議員)が質問しており、根拠のない風評ではない。当時は、民主党政権だったため、自民党議員が積極的に質問しているが、政権側になったら態度を変えるのではおかしい。

 また、*2には、福島で50年以上、米作りに励む太田さん(72)が、「福島は危ないと言われると、何のために苦労して米作りしているのかと情けなくなる」と言ったこと等が書かれているが、これはまさに、*4に書かれている「原発事故の実害を風評被害にすり替え、加害者に責任を負わせず被害者同士を分断する行為」である。

 そもそも、「風評被害」とは「根拠のない噂のために受ける被害」だが、「被曝で鼻血を出した」等は事実であり、消費者が「食の安心・安全」を重視し、内部被曝を警戒して原発立地周辺地域の農林水産物を避けたり、わざわざそこに観光に行ったりしないのは、基本的人権の行使だ。それによって起こる農林水産業・観光業の被害は、「風評被害」ではなく原発事故による「実害」であり、その責任は国と東京電力にある。そのため、被害者である農林水産業者・観光業者は救済される権利を有するが、補償する主体は消費者ではなく、国と東京電力でなければならない。

(2)水俣病のケースでも、同じことが起こった
 *2には、医療関係者の意見として、日本大学歯学部の野口邦和准教授の「被曝による鼻血が考えられるのは全身に500~1千ミリシーベルトを超える被曝をした場合」、東北大の細井義夫教授の「大量の被曝で鼻血が出るのは、血液を固める血小板が減るためで、その場合は歯茎などからも出血しやすくなる」等の意見が掲載されているが、いずれも外部被曝しか考慮していない。私は、岡山大の津田敏秀教授(疫学)の「因果関係がないという証明がない以上、被曝による鼻血はありうる」というのが本当に科学的な姿勢であり、因果関係はあるに違いないと思っている。

 なお、水俣病のケースでも、最初に原因究明のきっかけを作ったのは疫学調査であり、疫学調査によって目星をつけた後に原因物質(有機水銀)を特定したが、国とチッソは長くそれを認めず、被害者の救済も限定的で時間がかかった。この顛末は、多くの人の記憶に新しいだろうから、まず、自らの身は自ら守るという意識が不可欠である。

(3)憲法では、虚偽や名誉棄損などの不法行為でない限り、「言論の自由」や「表現の自由」が保障されているが、どこが虚偽や不法行為だったのか?
 *1のように、小学館の編集部は、12日発売号のゲラ(校正刷り)を、発売11日前に環境省にメールで送っていたそうだ。確認をするのは自由だと思うが、「多くの方々が不快な思いをしたことについて編集長として責任を痛感」「ご批判、お叱りは真摯に受け止め、表現のあり方について今一度見直していく」というのは、かえってわからない。このようなケースで、行きすぎた自主規制が始まらないことを望みたい。

*1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11141650.html (朝日新聞 2014年5月18日) (時時刻刻)美味しんぼ、苦い後味 編集部見解「表現のあり方見直す」
 「表現のあり方について今一度見直します」―。人気漫画「美味しんぼ」(小学館)の東京電力福島第一原発事故の描写をめぐり、週刊ビッグコミックスピリッツ編集部は19日発売号で見解を示す。鼻血と被曝を関連づけた描写は、放射線リスクや表現の自由をめぐる議論に発展。地元にも波紋が広がっている。
■「被曝で鼻血」両論併記
 「根拠のない風評に対し、国として全力を挙げて対応する」。安倍晋三首相は17日、訪問先の福島市で記者団に述べた。「風評」とされる内容の一つに、被曝の影響とした鼻血の描写がある。同誌の特集では、放射線との因果関係について否定と肯定の双方の意見が掲載された。日本大学歯学部の野口邦和准教授(放射線防護学)は、被曝による鼻血が考えられるのは「全身に500~1千ミリシーベルトを超える被曝をした場合」とし、福島県民の被曝はそこまでではないとした。被曝の専門家には同様の意見が多い。東北大の細井義夫教授(放射線医学)によると、大量の被曝で鼻血が出るのは、血液を固める血小板が減るためで、その場合は歯茎などからも出血しやすくなるという。一方、岡山大の津田敏秀教授(疫学)は特集の中で「因果関係がないという証明はない」とし、被曝による鼻血はありうるとした。また、ストレスなどによって健康影響が生じるとする意見も複数あった。避難者らの相談会を開く小児科医の山田真氏は「不安の中で生きている人が、『放射線のせいじゃないか』と思うのも当然」と指摘。「低線量被曝の影響はわからないことが多い。将来のためにいろいろな症状を記録していく必要がある」と朝日新聞の取材に語った。いわき市の木田光一医師は「健康状態を被曝と被曝以外の影響に分けて考えるのは難しい。被曝との関係は問わず、医療支援を充実させるべきだ」と話す。
■「表現に国介入」不安も
 最新号で完結した「福島の真実」編は、作者の雁屋哲さんが福島県の人々を取材して描かれた。前半は福島の食の安全を訴え、風評被害を憂えた。後半は、なお続く現地での不安を取り上げながら、自主避難者への支援を訴えて終わる。今回の特集で、作家の玄侑宗久さんは、「登場する『四人の鼻血の一致』は信じますが、それだけで福島県全域を危険と見做(な)し、出て行くことも支援するという考え方は、福島の複雑な状況を更に混乱させるもの」と意見を寄せている。元・東電福島原発国会事故調査委員の蜂須賀礼子さんは、主人公の被曝量では鼻血は出ないとして、セリフのやりとりを「医師が放射線と鼻血とを故意に関連づけないようにしている印象を与えます」と記した。閣僚らからの懸念の声に対しては疑問の声もある。漫画文化にくわしい藤本由香里明治大教授は今回の騒動について、「地元からの抗議は当然だが、閣僚らが一斉に遺憾の意を示したことに不安を覚える。国が漫画表現に対して介入する余地を残したのでは」と話す。漫画によるルポ作品は珍しくなく、論の運びも突出してはいないという。ジャーナリストの佐々木俊尚さんは「科学的には、(低線量被曝による鼻血は)あり得ないという知見が積み重ねられている。だが、子供が鼻血を出す経験をしたお母さんは不安だ。社会は不安に思う人がいることを引き受けなければ。作品を『非科学的』と断罪しても不安は消えない。政府などは、不安を和らげる努力を延々と続けるべきだ」と話している。「美味しんぼ」は次号から一時休載に入る。小学館広報によると「以前から決まっていたこと」という。
■発売前、環境省にゲラ 編集部、被曝の影響質問
 編集部が12日発売号のゲラ(校正刷り)を、発売11日前に環境省にメールで送っていたことが同省への取材で分かった。環境省によると、1日に編集部から「被曝が原因で鼻血が出ることがあるか」といった質問が電話とメールであった。その際、12日発売号の全ページが添付されたメールも担当者に送られてきた。同省は「こちらは求めていない。具体的な内容の訂正要求もしていない」としている。7日深夜にメールで回答したという。環境省は「他省庁にも関係する」として、復興庁や内閣府などに12日発売号の内容や編集部の質問内容を伝えたが、ゲラは「未発表の内容」として転送しなかったとしている。また、12日発売号には「大阪府と大阪市が受け入れたがれき処理で焼却場周辺住民が健康被害を訴えている」という内容もあり、環境省は2日に府と市に伝えた。府市は8日、編集部に内容を見せるよう要求。9日に訂正と削除を申し入れ、発売日の12日に抗議した。小学館広報室は「関係者の声を集めた『特集』を組むために関係各所に送った。環境省もそのうちの一つ。12日発売号が出た段階で送ったら、19日発売号の編集作業に間に合わない。検閲ということではない」としている。
■福島、反応は様々
 福島県内の反応は様々だ。福島市の旅館で働く男性(60)は「あれを読めば福島の温泉に行こうと思わなくなる」と影響を心配。県漁業協同組合連合会の野崎哲会長も「福島で生計を立てる我々はどうすればいいのか」と憤る。一方、批判に走る国や自治体に違和感を訴える人も。福島県いわき市で子育て中の女性(45)は「行政は『大丈夫だ』と説得するばかり。それに反することを言うと邪魔だと言われる状況が悲しい」。飯舘村の菅野典雄村長は「ちょっと衝撃的だったが、日本全体で勉強する機会になれば」と話す。
    ◇
 19日発売号に掲載される「編集部の見解」の骨子は以下の通り。
 ◆多くの方々が不快な思いをしたことについて編集長として責任を痛感
 ◆残留放射性物質や低線量被曝の影響についての議論や報道が激減しているなか、あらためて
   問題提起をしたいという思いもあった
 ◆ご批判、お叱りは真摯に受け止め、表現のあり方について今一度見直していく
   ◇
 誌面では「見解」のほかに、有識者13人による賛否の意見や自治体からの抗議文を紹介する特集も掲載している。

*2:http://qbiz.jp/article/37955/1/ (西日本新聞 2014年5月18日) 
美味しんぼ・鼻血描写 「健康事故前と変わらず」 福島県民「行政の情報に不信」
 週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)の漫画「美味(おい)しんぼ」で、登場人物が東京電力福島第1原発訪問後に鼻血を出す場面や、「福島に住んではいけない」などの発言に、福島県や閣僚から批判が相次ぐ。原作者の雁屋哲氏はブログで「真実には目をつぶり、都合の良いうそを書けというのだろうか」と真っ向から反論するが、小学館は19日発売の最新号で「批判を真摯(しんし)に受け止め、表現のあり方について見直す」との見解を掲載する。風評被害を助長する行き過ぎた表現か、真実の告発か−。この問題をどう受け止めればいいのか、福島で考えた。第1原発から北へ約30キロの相馬市赤木地区。一面に広がる水田は田植えの最盛期だ。この地で50年以上、米作りに励む太田定身さん(72)は、美味しんぼに憤りを覚えた一人だ。「福島は危ないと言われると、何のために苦労して米作りしているのかと情けなくなる」。米は全て検査した上で出荷しているが、「今でさえ風評被害がひどいのに、さらにその傾向が強まる」と心配する。さらに原発に近い南相馬市で農業を営む米倉一二さん(61)も「事故前と同じ生活をしている。健康面も以前と変わりない」と戸惑う。漫画では、第1原発がある双葉町の井戸川克隆前町長が「福島に鼻血が出る人や、ひどい疲労感で苦しむ人が大勢いるのは被ばくしたからですよ」と発言する。しかし、両市や福島市内で10人以上に話を聞いたが、事故後に鼻血の症状が出たという人はいなかった。福島県も「鼻血が出る人が増えているという情報は把握していない」(県民健康調査課)。福島市内の医療関係者も「医療現場でそういう話は聞いたことがない」と否定した。風評被害対策を担当する県広報課の吾妻嘉博主幹は「原作者にはいろんな人の意見を取材してほしかった」と語る。
   §    §
 一方で、国や県が放射線被害について「安全だ」とPRすることに、県民は複雑な感情を抱く。国が、震災直後の放射線量のデータを震災から10日以上たってようやく公表したことなどが今も影を落としている。放射線量が高い飯舘村から福島市に避難を余儀なくされている女性(57)は漫画に憤りながらも、「原発事故に関して行政が出す情報にははっきり言って不信感がある」と言い切る。「私はほぼ毎日鼻血が出る。この事実が被ばくと関係ないと立証できるのか」。双葉町の井戸川前町長は自身の体験を訴えた。同町から埼玉県加須市に避難した60代の女性は「井戸川さんは誰よりも放射線の被害について勉強している。うそを言っているとは思わない」と支持する。福島市で花店を営む女性(56)は訴えた。「福島に住む以上、福島産の農産物を食べても健康被害はないと信じるしかない。その覚悟がないと暮らしていけない。それが福島の真実なのよ」

*3:http://takedanet.com/2014/05/post_ae67.html 
(武田邦彦 平成26年5月16日) 自治体の首長は国会議員が怖い?・・・鼻血の記録
 福島県知事、大阪市長などが「美味しんぼ」に被ばくによる鼻血のことが書いてあるということで、猛烈に抗議をしましたが、下の資料の通り、原発事故の後、多くの鼻血がみられるということが国会で4人の議員が質問しています。その時に自治体の首長(福島県など)は異議を申し立てていません。(中略)マスコミも報道する場合、「首長だから」というのではなく、もちろん国会での発言は聞いているのですから、放送や記事を書くときに「被曝と鼻血のことはすでに国会で4人の議員が追及している」とか、そのことに関する取材をして放送法第4条の規定を守らなければならないと思います。NHKも殿様ではないのです。法律に基づいた放送をしなければ受信料は払うことができません。また私へのバッシングも来ましたが、ネットでも「自由に発言できる」という権利とともに、「ウソを言ってはいけない」という義務もあります。ネットでの発言も良く事実を調べて発言しなければならないのは当然です。特に匿名と言う権利をさらに使う場合は、名前を出して発言するより高い道徳が必要とされます。
<資料>
●参議院・東日本大震災復興特別委員会8号(平成23年12月02日)
宍戸隆子議員
 北海道に避難している方たちといろいろ話をしまして、その中で、例えば鼻血なんですけれども、そういうような症状を訴えていたお子さんが非常に多かったです。国は安全だと言う。これぐらいの低線量では身体的な影響は出ないと言います。私も初めはそう思っていました。自分の娘も鼻血を出したりしたんですが、それでもそれを被曝のせいだと私は初め考えておりませんでしたし、今でも疑っているのも事実です。目の前で今まで出したことのないような鼻血を出している子供たちがいたら、皆さんどうしますか。偉い学者さんがどんなに安全だと言っても今起きているその事象を優先しませんか。本当に、お手元に資料配られていると思うんですが、みんな目の前で起こったことを、それを見て避難を決めている方もたくさんいらっしゃいます。
●参議員予算委員会8号 (平成24年03月14日)
熊谷大議員(自民党)
 ある小学校の、県南の小学校の保健便りです。四月から七月二十二日現在の保健室利用状況では、内科的症状で延べ人数四百六十九名。内科的症状では、頭痛、腹痛、鼻出血、これ鼻血ですね、順に多くということ、これ結果で出ているんですね。
●参議員文教科学委員会3号(平成24年03月22日)
熊谷大議員(自民党)
 四月から七月二十日現在の保健室利用状況では、内科的症状で延べ人数四百六十九名が利用しました。内科的症状では、頭痛、腹痛、鼻出血の順に多く、鼻出血というのはこれ鼻血のことですね、外科症状では擦り傷、打撲、虫刺されが順に多かったということで書いてありますが、平野大臣、この事実もう一度、どのようにお考えになりますでしょうか。
●参議員憲法審査会4号(平成24年04月25日)
山谷えり子議員(自民党)
 井戸川町長が雑誌のインタビューでこんなことを言っていらっしゃいます。
放射能のために学校も病院も職場も全て奪われて崩壊しているのです。私は脱毛していますし、毎日鼻血が出ています。この前、東京のある病院に被曝しているので血液検査をしてもらえますかとお願いしたら、いや、調べられないと断られましたよ。我々は被曝までさせられているが、その対策もないし、明確な検査もないという。本当に重い発言だと思います。フランスの原発関係のジャーナリストに聞きましたら、こんなに情報公開がなくて、しかもいろいろな、沃素剤一つ取っても国、県の指示があって初めて服用できるというような、非常に不十分なままほったらかされていたと、この十三条と二十五条、幸福追求権と生存権が妨げられているのではないか。
●参議員東日本大震災復興特別委員会8号(平成24年06月14日)
森まさこ議員(自民党)
 例えば、具体的にこんな心配の声をお寄せいただいています。子どもが鼻血を出した、これは被ばくによる影響じゃないかと心配なんだけれども、それを診察してもらった、検査してもらった、そのお金はどうなるんですかということです。
(国会の記録は読者からご提供いただいたものです)

*4:http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-9431.html
(植草一秀の『知られざる真実』 2014年5月17)  原発事故実害を「風評被害」にすり替える工作
 「風評被害」の意味を「goo辞書」は次のように記述する。「http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/190458/m0u/」根拠のない噂のために受ける被害。特に、事件や事故が発生した際、不適切な報道がなされたために、本来は無関係であるはずの人々や団体までもが損害を受けること。例えば、ある会社の食品が原因で食中毒が発生した場合、その食品そのものが危険であるかのような報道のために、他社の売れ行きにも影響が及ぶことなど。
 『美味しんぼ』が休載になる。言論弾圧の色彩が濃厚である。「福島で鼻血が出た」との描写、作中に登場する井戸川克隆元双葉町長が、「福島に鼻血が出たり、ひどい疲労感で苦しむ人が大勢いるのは、被曝(ひばく)したからですよ」と語る場面が描写された。この描写に対して激しい攻撃が展開され、国や福島県が「風評被害」を引き起こすとして批判した。この攻撃を受けての休載発表である。出版社が権力の圧力に屈したというなら、言論活動を行う資格はないというべきである。福島県双葉町の元町長である井戸川克隆氏は、騒動が起きてから取材に対しても、正々堂々と持論を展開している。発言の正当性を強く訴えている。
 『美味しんぼ』原作者の雁屋哲氏は自身のブログに、「私は自分が福島を2年かけて取材をして、しっかりとすくい取った真実をありのままに書くことがどうして批判されなければならないのか分からない。真実には目をつぶり、誰かさんたちに都合の良い嘘を書けというのだろうか。「福島は安全」「福島は大丈夫」「福島の復興は前進している」などと書けばみんな喜んだのかも知れない。今度の「美味しんぼ」の副題は「福島の真実」である。私は真実しか書けない。」「今の日本の社会は「自分たちに不都合な真実を嫌い」「心地の良い嘘を求める」空気に包まれている。」と記述した。『福島の真実』は、23、24まで続くとあり、5月19日発売号が24にあたるから、予定通り発行を続けて、一段落したところで休載となるということなら当初の予定通りなのかも知れない。しかし、民間人の真摯な言論活動に対して、国家権力、公権力が圧力をかけて、その情報発信を封じようとし、出版社がその圧力に屈して休載を決定したということなら出版社の姿勢が糾弾されるべきである。根拠のないこと、ウソ、でっち上げた情報を流布して、人に迷惑をかけたのなら、その行為は糾弾されるべきだ。
 しかし、「鼻血が出た」「疲労した」「鼻血を出す人が多数いる」との発言があったことは事実であり、捏造でもでっち上げでもない。井戸川氏は鼻血が出ることをネット上でも写真入りで伝えており、ウソを言っているとは思われない。政府や福島県は現在の原発周辺の放射能汚染の現状を「安全だ」としているが、反論を唱える者は専門家のなかにも少なくない。低線量被ばくの健康への影響についても見解は割れている。「安全だ」とする見解だけを流布させて、「危険だ」とする見解を流布させないというのは、言論弾圧であり、人権尊重、民主主義の大原則に反するものだ。
 消費者が放射線による内部被ばくを警戒して、原発立地周辺地域産出の農林水産物を忌避する行動を取ることは、基本的人権の正当な行使である。これを「風評被害」とは言わない。「消費者主権」に属する行為である。消費者が「食の安心・安全」を重視して、原発立地周辺地域産の農林水産物を忌避すれば、当該地域の農林水産業者は被害を受ける。これは「風評被害」ではなく、原発事故による「実害」である。農林水産業者に罪はなく、罪があるのは国と東京電力である。被害者である農林水産業者は救済される権利を有する。その補償を行うべき主体は、消費者ではなく国と東京電力なのである。「風評被害」という言葉は、農林水産業者、あるいは観光事業従事者が被害者で、消費者が加害者とする図式をもたらす言い回しだが、これは、「責任のすり替え」なのだ。国と東京電力が負うべき損害賠償責任を消滅させるために、原発周辺地域を忌避する消費者が悪者であるとの「責任転嫁」を目論む表現なのだ。

| 内部被曝・低線量被曝::2014.4~ | 04:50 PM | comments (x) | trackback (x) |

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