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2012.9.7 原発維持派・推進派の屁理屈に注意せよ! ― 国の保護を受けた地域独占企業である電力会社の企業努力が如何に足りないかがわかる事例(2)
  
      天然ガス価格比較(日本・韓国・中国)       原発事故後に帰るか否か(河北新報)

 下の*1、*2の記事は、全くそのとおりである。それに加えて、上の左のグラフのように、現在、LNGを日本は高値買いしており、価格交渉はしていない。その理由は、電力会社は総括原価方式で会計処理を行い、原価に一定の利益を上乗せして料金を決めることができるため、燃料を安く買って原価を削減するというインセンティブが働かないからである。そして、「原発を止めたら、燃料費が高いため、電力料金の大幅値上げが避けられない」「それでは、製造業が出て行き、わが国は空洞化して雇用がなくなる」と屁理屈を言っているのだ。

 また、右の表は、福島第一原発事故後、ふるさとを失った人たちに「帰るか否か」というアンケートをとったもので、帰ることが可能な状況ではないにもかかわらず、帰ると答えている人も多い。原発事故は、一度起こせば、これだけ多くのものを失うということを忘れてはならない。

 そこで、電気料金を下げる方法は、電力会社の地域独占を廃して健全な電力市場を作ることである。そうすれば、他産業と同様、企業は、如何にニーズに合ったよい製品を作って安く販売するかを工夫し、企業の社会的責任として環境に配慮するようになる。何故ならば、そうしなければ、生き残れないからだ。

 わが国の製造業が国内で成り立たなくなった理由は、円高、電力料をはじめとする公共料金の高止まり、作り出すものの付加価値や生産性を超える賃金水準である。そして、これを解決する方法は、言うまでもなく、原発の維持・推進ではない。それでは、何でしょうか? 解答は、夏休みの宿題です。

*1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012090202000106.html (東京新聞 2012年9月2日) 【社説】週のはじめに考える 「エネルギー選択」の虚構
 今年の夏は「原発ゼロ」でも大丈夫でした。政府は近く、二〇三〇年のエネルギー選択を提示する予定ですが、今夏の実績をどう受け止めるのか。まるで拍子抜けするような結果です。政府や電力会社は夏を前に「原発が動かなければ大停電になる」とか「日本経済が大混乱する」と言い続けてきました。野田佳彦首相が「仮に計画停電を余儀なくされ、突発的な停電が起これば、命の危険にさらされる人も出ます」とまで言い切って、関西電力大飯原発の再稼働を決めたのは六月八日です。
◆夏の電力は余っていた
 ところが本紙報道(八月二十九日付一面)によれば、関電管内では二十六日までの八週間で事前の需要予測を10%も下回り、原発なしでも余力があったことが分かりました。関電の広報担当者は「節電効果があり、現時点では原発がなくても供給力は維持できた」と認めています。
これは予想とか分析ではなく、「はっきりした事実」です。政府の見通しは外れました。さてそうなると、多くの人が次のように考えるのは当然です。「今年の夏が大丈夫だったなら、なにも無理して原発を動かさなくてもいいのでは?」それほど原発事故の怖さは身に染みました。なにより故郷を追われた十六万人の「さまよう人々」が、いまも不安ややり場のない怒りと葛藤しているのです。素朴な疑問こそ本質を突いている。政府は人々の問いに真正面から答える必要があります。政府は六月末、三〇年の原発依存度を「0%にする」「15%にする」「20~25%にする」という三つの選択肢を示しました。これを基に、近くエネルギー戦略をどうするか決める予定です。
◆倒錯している政策手順
 どんな場合でも、将来の政策を考えるには、まず現状が前提になります。いまの時点で電力は足りているのかいないのか。原発の安全はきちんと担保されているのか。それが議論の出発点です。関電の電力需給は「余力があった」と判明しました。それだけではありません。独自に問題を検証している大阪府市・エネルギー戦略会議の調査では、西日本の六電力合計で約一千万キロワット分も余剰電力があったことが分かっています。万が一、関電だけでは足りなくなっても、各社でやりくりすれば十分な数字です。そうであるなら、三〇年を待たずに「いますぐゼロ」という選択肢だってあるはずです。少なくとも、議論のテーブルに上がっていなくてはおかしい。
 そもそも安全を担保する体制を整えないまま、三〇年の原発依存度を数字で決めようという姿勢が根本的に間違っています。原発を再稼働するなら安全を最優先にしなければなりません。ところが大飯原発を再稼働させた基準は泥縄式で決めた暫定措置でした。野田首相自身が記者会見で「これから三十項目の安全対策をやる」と言っています。それ自体、とんでもない話なのですが、それに加えて十八年後の原発依存度まで決めてしまおうとしている。先に数字を決めてしまったら、目標達成が最優先になって肝心の安全基準作りや基準順守がなおざりになる懸念がある。それでは元のもくあみです。原発を動かすなら、まず安全確保体制を整えて、それから国民の理解を得る。依存度が決まるのは結果にすぎません。つまり手順が完全に逆なのです。15%などの数字を決めた政府の審議会も形ばかりでした。それは議論をしている最中に、野田首相が「原発は単に夏の電力確保のためだけでなく、社会全体の安定と発展のために引き続き重要だ」と発言した一件で明白です。「先に結論ありき」なのです。
 こういう政策手順の倒錯は消費税引き上げの経過ともよく似ています。本来、増税しようというなら、まず政府の無駄や非効率を改め使途を明確にして、国民に理解を求めなければなりません。ところが実際は公約破りに加えて、肝心の社会保障制度改革を後回しにした。その揚げ句、増税法案が成立したとたんに最初の話になかった公共事業拡大の大合唱です。だから国民は政府を信用しない。それが野田首相には分からないのでしょうか。
◆過小評価の原発コスト
 「原発を止めたら電力料金の大幅値上げが避けられない」という話も「増税しないと国債が暴落する」話にそっくりです。大本の燃料コスト削減に傾注すべき政策努力を棚上げして、脅し文句を並べるのはやめていただきたい。政府のコスト試算には被災者への賠償や除染、廃炉にかかる費用も極端に過小評価されています。議論の出直しが必要です。

*2:http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201209072810.html (愛媛新聞社説 2012年9月7日) 新エネルギー政策 原発ゼロの時期明示が必要だ
 政府は、近く決定する新しいエネルギー政策で「原発ゼロ」の目標を打ち出す検討を進めている。 その課題や影響に関する試算が政府の「エネルギー・環境会議」で示されたのだが、電力需給の切迫で国民負担が倍増するといった難題ばかり強調されている。意見聴取会などで明らかになった「原発ゼロ」を求める国民の多数意見に冷水を浴びせる内容だ。 財界が反発し、民主党内にも早期の「原発ゼロ」への慎重論が根強い。政府は、2030年時点の原発比率を15%以下に引き下げ、最終的に「ゼロ」を目指す曖昧な決着に傾きかけている。だが、これでは原発依存復活の余地を残す結論先送りだ。
 根源的なことを忘れていないか。東京電力福島第1原発で事故は実際起きた。巨大な放射能災害が進行中だ。地震列島に「絶対安全」はない。核のごみは何万年も厳重管理しなくてはならない。 こういう事態を生んだ社会の在り方を反省し、社会を変えるための「原発ゼロ」だ。いつまでにゼロにするか、政府には決める責任がある。時期を明示し、どう実現させるか、結論から逆算して責任ある工程を描かねばならない。 2030年に原発をゼロにした場合、家計の光熱費は、2010年と比べて倍増し月額3万2000円、再生エネ拡大や省エネ投資は計150兆円に上ると政府は試算したが、経済産業省の従来試算の焼き直しで疑問を感じざるを得ない。民主党内からも不満が出たのは当然だ。 再生エネや省エネの技術革新や普及が進めば、コストダウンやエネルギー消費低減が進むだろう。効果を精査するべきだ。その上で、地域独占の電力会社がコストに利益を上乗せできる総括原価方式を見直し、発電と送配電の分離など電力自由化を急ぎ、料金抑制にも努める必要がある。
 使用済み核燃料をどうするかは、より根本的な課題だ。原発ゼロで核燃料サイクル政策の存在理由がなくなれば、再利用を前提に青森県が受け入れてきた使用済み核燃料は「核のごみ」になり、各原発に返還される可能性がある。 そうでなくても、多くの原発は使用済み燃料プールが満杯になりつつある。問題を先送りしてきたツケだ。既に破綻している核燃サイクルから撤退し、「核のごみ」をどう最終処分するか、場所や技術開発について、全国が当事者となって正面から向き合わねばならない時期が来ている。
 そのためにも、政府は原発ゼロの時期を明示して、覚悟を決めなくてはならない。 この夏、電力は足りた。国民の節電努力の結果であるとともに、過剰な電力消費生活と決別する意思の表れでもあろう。原発ゼロ社会の素地はできている。

| 原発::2012.8~9 | 06:46 AM | comments (x) | trackback (x) |
2012.9.6 国の保護を受けた地域独占企業である電力会社の企業努力が如何に足りないかがわかる事例(1)
   
             西日本新聞記事(*2)より               東京新聞より                  

 *1のように、出光興産と国際石油開発帝石が、最大出力7万キロワットの地熱発電を、秋田県湯沢市の「栗駒国定公園」内に作るそうだ。日本は火山国なので、地熱発電資源が豊富であるにもかかわらず、今まで燃料費無料の地熱発電を行わなかったところに、9月2日に書いたとおり、電力会社の総括原価方式による落とし穴がある。また、電力会社が、地域独占企業として送電線を所有しているため、他産業が発電事業に参入しても、作った電気を自由に売れなかったという事情もある。

 このような中、*2の記事に、九州電力は、火力発電所のトラブルや老朽化により、原発を再稼働しなければ、九電内で、今冬に向けた供給体制や赤字拡大への懸念が広がっていると書いてある。これを見て、皆さんはどう思われただろうか?

 九州は、阿蘇、桜島、新燃岳(東日本大震災以降、さっぱり報道されなくなったが、今も噴火中)、別府など、燃料費無料の地熱資源が豊富な場所だ。また、冬も北海道・東北などに比べて大変暖かい。つまり、夏の電気使用量の方が多い場所なのだ。そこで、どうして地熱発電も行っている九州電力が地熱資源を活用せずに、愚痴を並べ立てているのだろう。これは、国の保護を受けた地域独占企業にのみ許される行為だ。そのため、私は、早急に健全な電力市場を作る必要があるとともに、九州は、真っ先に、地熱、太陽光、国産天然ガスなどの豊富なエネルギーを利用すべきだと思う。

*1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0502E_V00C12A9MM8000/ (日経新聞 2012/9/6) 国定公園初の地熱発電 秋田に最大7万キロワット
 国立・国定公園の中で規制を緩和して地熱発電所の建設を認める第1弾の事業が、秋田県湯沢市の「栗駒国定公園」になることが固まった。政府は出光興産と国際石油開発帝石が手がける3万~7万キロワットの計画を許可する方針。両社は今秋にも掘削を始める。政府は2013年度に地元温泉業者などへの補助金を創設し、地熱発電の全国展開を後押しする。政府は太陽光、風力に続く電源として地熱を重視している。

*2:http://www.minpo.jp/news/detail/201209053480 (西日本新聞 2012年9月6日) 九電、電力の安定供給を懸念 今冬「再要請」も
 九州電力は「原発ゼロ」で今夏の需要期を乗り切った。だが、火力発電所には運転開始から30年程度の設備が多く、法定点検を先送りするなど「綱渡り」の状態で電力不足を回避した面もある。原発再稼働の見通しが立たない中、九電内では今冬に向けた供給体制や赤字拡大への懸念が広がっている。
節電期間中、九電の発電所で発生した10件のトラブルの主な原因を、九電は「施設の老朽化と稼働率の上昇」とみる。8月17日に運転停止した新小倉発電所5号機(北九州市)は従来、点検などで月2回程度運転を止めていたが、原発停止に伴い昨年6月から連続運転中だった。同日、トラブルで出力を半減した苅田発電所新2号機(福岡県苅田町)は廃止予定の設備で、電力不足を補うため、運転を再開していた。
 九州の原発が再稼働しない場合、再び需要が高まる12月以降の電力供給は「この夏以上に厳しい」との見方もある。九電は昨秋から今春にかけて実施予定だった火力発電5基(出力合計237万5千キロワット)の法定点検を先延ばしし、今夏の供給力を維持した。法定点検は2カ月程度かかり、これから点検に入ると今冬に間に合わない発電所もある。九電は必要に応じて3基の点検先延ばしを国に再申請する方針だが、それだけトラブル発生のリスクが高まる。
九電にとっては、火力発電の燃料費増や他電力からの融通、電力取引所での調達増に伴う赤字拡大も懸念材料だ。
 例えば、九電の販売単価を4~6月の販売実績などで単純計算すると、1キロワット時当たり15円程度。一方、日本卸電力取引所(東京)のピーク時間帯の平均取引価格(8月)は同約21円で、販売単価を6円程度上回る。「電力を供給した分だけ赤字が増える」(九電関係者)状況だ。九州の「原発ゼロ」に伴う九電の赤字拡大は、電気料金の値上げにも直結する。今秋以降、冬の節電再要請と、値上げに向けた議論が本格化しそうだ。

| 原発::2012.8~9 | 12:18 PM | comments (x) | trackback (x) |
2012.9.5 国会を無視した首相の原子力規制委人事断行は誰の後押しによるものかを、皆さん、それぞれ自分で考えて下さい。
 *1のように、問題視する声が民主党内からも起きている原子力規制委人事を、首相が任命できるという例外規定を用いて、国会の同意得ずに、首相が任命するそうである。この例外規定は、現在の状況を予見して、あらかじめ書き加えたものに見える。

 しかし、日本弁護士連合会が会長声明として出しているように(*2参照)、原子力規制委員会委員長及び委員候補には、欠格要件に明らかに該当する者が含まれていることが明らかである。野田首相は、この不法行為を首相の一存で断行するつもりなのか? そのようなことが許されていいわけがない。

*1:http://www.asahi.com/politics/update/0905/TKY201209040789.html (朝日新聞 2012年9月5日) 原子力規制委人事、首相が任命へ 国会の同意得ず
 新たに原発規制を担う原子力規制委員会の発足に向け、野田佳彦首相は初代の委員長と委員4人を国会の同意なしに任命する方針を固めた。いずれも国会同意人事だが、会期末の8日までの採決が見送られるため法律に基づく例外規定を適用する。内閣の人事案に与党から異論が出たためで、これに首相が任命権を行使する異例の事態だ。
原子力規制委の設置期限は26日に迫る。野田内閣は発足をこれ以上遅らせられないと判断。規制委設置法の付則には国会同意がないまま閉会した場合に首相が任命できる例外規定があり、これを適用する。今月中旬にも初代委員長に田中俊一・前内閣府原子力委員長代理を任命。ほかの委員4人も政府案通り決める。
 人事案は内閣が7月26日に衆参両院に提示。だが、田中氏らを「原子力ムラの住人」と問題視する声が民主党内からも起き、党執行部が採決を先送りしてきた。民主党の城島光力国対委員長は4日、今国会中の採決に「極めて困難になった」と断念を表明した。

*2:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2012/120803_3.html (日本弁護士連合会会長声明 2012年8月3日) 原子力規制委員会委員の人事案の見直しを求める会長声明 四葉
 政府は、本年7月26日、国会に原子力規制委員会の委員長及び委員の人事案を提示した。しかし、この人事案には、原子力規制委員会設置法(以下「設置法」という。)及び内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室名義の本年7月3日付け「原子力規制委員会委員長及び委員の要件について」(以下「7月3日要件」という。)が定めた原子力規制委員会委員長及び委員の欠格要件に明らかに該当する者が含まれていることが明らかとなった。
下 長いので、以下の文章は、下の「続き▽」をクリックして見て下さい)

続き▽
| 原発::2012.8~9 | 10:58 AM | comments (x) | trackback (x) |
2012.9.2 国民が負担する原発の本当のコストは、決して安くなく、実は膨大であるということ
(1)原発の本当のコスト
 よく出される発電方式別発電コストの比較は信用できない。何故なら、水力、石油火力、LNG火力、石炭火力、原子力、太陽光、風力のコスト比較は、経済産業省のエネルギー白書から抜粋されることが多いが、これは実績値ではなく、モデルプラントを想定して費用を集計したもので、恣意性の入る余地が大きく検証可能性がないからである。そして、原発の発電コストは、実際には他の電源の発電コストより高いという研究結果が、立命館大学の大島堅一教授によって出されており、これによれば、1970年度から2007年度までの実績値で10.68円/kWhであり、それは当時の火力や水力よりも高い。この違いが出た理由は、経済産業省の数字が原発のモデルプラントを想定して発電に要する費用を集計したものであるのに対し、大島教授の推計は、電力各社が公表している『有価証券報告書』に基づいた実績値を使ったためということだが、コストとは、普通、実績値を言うものである。さらに、『有価証券報告書』に基づくこの実績値は、福島原発事故処理費用、損害賠償費、今後の原発の安全対策費等を含んでいないのだ。

 これに加えて、原子力発電のコストは、電力会社が支出しているコストだけでなく、東電福島第一原子力発電所事故に伴う費用を除いても、平時に、下の①の金額を国から支払っている。そして、この費用には、今後必ず必要になる原発の廃炉費用、中間処理施設・最終処分場の建設のための費用を含んでおらず、これらは、現在、手つかずの状態であるため、今後、いくらかかるかもわからない。
①平成24年度の一般会計原子力関係経費政府予算案(http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2012/siryo06/siryo2.pdf#search='平成24年度原子力関係予算案')より
 一般会計から1,065億円、エネルギー対策特別会計電源開発促進勘定から2,829億円(内訳:電源立地対策1,448億円、電源利用対策1,034億円、原子力安全規制対策347億円)の合計3,864億円を支出している。そして、電源立地対策1,448億円には、電源立地地域対策交付金1,059億円、電源立地等推進対策交付金163億円、電源立地等推進対策補助金92億円、原子力施設等防災対策等交付金87億円、その他47億円が含まれている。また、電源利用対策1,034億円には、(独立行政法人)日本原子力研究開発機構運営費837億円、軽水炉等改良技術確証試験等委託費85億円、放射性廃棄物処分基準調査等委託費41億円、原子力発電関連技術開発費等補助金24億円、使用済燃料再処理技術確立費等補助金21億円、その他26億円が含まれる。さらに、原子力安全規制対策347億円には、(独立行政法人)原子力安全基盤機構運営費206億円、原子力施設等防災対策等交付金62億円、原子力施設等防災対策等委託費55億円、その他24億円が含まれている。
②東電福島原子力発電所事故に伴う費用-平成24年度原子力関係経費政府予算案(1)より
 内閣府2億円、警察庁4億円、外務省3億円、文部科学省264億円、厚生労働省14億円、農林水産省37億円、経済産業省26億円、環境省本省(放射性物質除染、汚染廃棄物処理等)4,513億円、環境省原子力規制庁80億円、その他2億円の合計4,945億円である。
③ 東電福島原子力発電所事故に伴う費用-平成24年度原子力関係経費政府予算案(2)より
 そのほか、他の予算の内数として入っているものは以下のとおりである。農林水産省29億円、環境省26億円、消費者庁4億円、内閣官房0.03億円の合計59億円である。

 上記①の3,864億円は、原発事故とは関係なく、原発が立地し、原発を運転するだけで、平時に、毎年、国が支払っている原発のコストだ。これは、原発が危険施設であるため、立地自治体に国から支払っているものであり、原発がなければいらない歳出なのである。この金額の一部を回せば、再生可能エネルギーの推進や新しい電力ネットワークの構築は必ずできる。また、②③の合計5,004億円は、東電福島第一原子力発電所事故に伴うコストであり、平成24年度政府予算案に計上されている分のみである。従って、平成23年度分及びこれからかかる分は入っていない。今後、廃炉、除染、人や農林漁業に対する損害賠償、健診、関連疾患の治療費も合わせれば、全体としてはこの10~20倍(5~10兆円)の金額がかかると予想されるが、これも原発がなければ不要な歳出だったのである。

(2)電力産業の問題点と今後必要な政策
1)総括原価方式から通常の会計基準への変更
 総括原価方式は、公共料金を決める際に用いる方法の一つで、商品やサービスを提供するために必要な原価に、一定の利益を上乗せして料金を設定するものである。この方式を用いると、公共料金を決定する際の根拠が明確になり、事業者・消費者双方が過大な損失・負担を強いられることが無いと言われているが、本当だろうか?電力会社は、これまで、総括原価方式により、発電所、送電線、変電所などへの長期的な設備投資がやりやすかったというメリットがあった。しかし一方で、地域独占の企業が総括原価方式で料金を決める限り、コストを削減する誘因は働かず、むしろコストがかかった方が事業者の利益が上がるというディメリットがある。つまり、総括原価方式は、電力インフラの創造期には有用な方法であったかも知れないが、現在は、原子力発電設備などの多額の設備投資を行ったり、燃料を高く仕入れたりすることによって、むしろ利益が多くなる逆のインセンティブが働いているのである。そのため、早急に通常の会計基準を適用するように変更することが必要である。そして、超電導電線や次世代送配電網などの新しい電力インフラは、鉄道・道路・ガスなどのインフラと合わせ、電力会社とは全く別の組織が作って運営することが、電力会社の地域独占を排し、他産業の発電事業への参入障壁を低くして、電力自由化を完全なものにする上で不可欠である。

2)地域独占の排除と電力自由化の必要性
 電力会社は、地域独占により消費者不在の経営体質になっている。東京電力を例に挙げれば、以下のとおりである。
①東京電力の電気料金
 日本経済新聞2012年5月24日付記事の「東電、いびつな収益構造 家庭向け、利益出しやすく」に書かれているように、経済産業省の「電気料金審査専門委員会」に出された資料によると、2006~2010年度平均で、東電は電気事業の利益の91%を家庭や中小商店向けで稼いだ。これは、家庭や中小商店向けは電力会社が独占的に電力を供給しており、自由化が進んでいる企業部門は、大口需要家に電気を小売りする新電力の参入が相次いで、値下げ圧力が働いているからである。
②燃料の高値買い
 朝日新聞2012年3月13日社説には,震災前から電力会社を中心とした日本勢がLNGを高値買いし続けていると書かれている。現在、天然ガス市場は大転換期を迎え、シェールガスという岩層に豊富なガスが各地で採掘可能になって、アメリカでは劇的に値段が下がり、現在、日本の輸入価格の6分の1ほどで流通している。それに伴い,世界のガス市場価格も低落傾向にある。しかし、日本勢は原油価格に連動した値決め方式で買い続けているため,LNGをガス市場の実勢からかけ離れた高値で買っている。欧州勢は産出国と粘り強く交渉し、市場を使いやすくする努力を続けて日本の70%前後の価格で仕入れており、韓国勢も2012年1月に米国とシェールガス売買契約を締結し、船賃などを加えても調達コストが大きく下がった。しかし、日本の電力会社は、高値で仕入れても、料金に転嫁してより大きな利益を出せるため燃料の調達原価を下げる交渉をせず、高値で買ってコスト削減努力は行っていない。これが、現在の電力会社の行動様式になっているのである。東電に限らず、日本の電力会社による「LNGの高値買い」は、「総括原価方式」で守られて醸成された経営体質であり、電力会社が取引先全般にとって「よい顧客」である理由はこれなのである。そして、こうした取引関係を通じて、電力会社は、日本の産業社会全体を縦横に支配する力を持っているのであるが、その資金は、総括原価方式で計算される電気料金という形で、顧客から集めたものである。
③料金の設定における地域独占企業の横暴
 東電は、自由化が進んだ産業用電力は安く提供しているのに対し、家庭や中小商店向け電力の価格は高く設定しており、家庭や中小商店向けから全利益の9割を上げているが、これができるのは、家庭や中小商店向けが地域独占だからである。さらに、東電は、福島第1原発事故を起こした後、電気料金値上げの申請について「電気事業法にもとづく事業者の義務というか権利だ」と言ったり、事故に関する情報を正確に出さずに東北・関東の住民を危険に晒したりしたが、これも、それでも通る地域独占企業に醸成された行動様式であるため、地域独占を速やかに排することが必要である。

3)発送電分離の必要性
 読売新聞2012年7月13日付の記事に、「発送電分離を明記、小売り全面自由化…経産委案」として、経済産業省の有識者会議である「電力システム改革専門委員会」が、電力会社の発電事業と送配電事業を分ける「発送電分離」や、電力小売りの全面自由化、電力卸市場の強化などを、2012年7月13日に発表する取りまとめ案に盛り込んだと書かれている。この発送電分離案では、広域的な送配電網を管理する全国機関を創設した上で、①電力9社の営業区域ごとに独立系統運用機関(ISO)を設置し、送配電設備の運用や設備投資計画を委託する「機能分離」案、②9社が送配電部門を分社化し、各地域の送配電網を運用する「法的分離」案の2案を併記し、どちらの案を採用するかは年内に結論を出すとも書かれている。
 しかし、私は、地熱発電、汐潮発電、太陽光発電、風力発電、小水力発電、天然ガス発電などの発電方法を使えば、今や電力は、クリーンで国内自給できる安価なエネルギーとなりうるため、沖縄電力も含めて10社ある電力会社が、それぞれ一つの発電事業者として、他の発電事業者と対等の競争を行い、コスト削減に凌ぎを削る状況にすることが、我が国の他産業を支え、豊かな暮らしを作る基礎になると考えているため、機能分離、法的分離だけでお茶を濁すことなく、既存の電力会社とは資本関係等の完全に独立した会社が送電会社になることにより、特定の発電会社に有利にならないようにすべきだと思っている。

4)その他
 この原稿は、2012年8月28日に、公認会計士集団のプロトコルに掲載するために書いた原稿であるため、原発のコストや、電力会社の組織、経営を重点として書いた。しかし、エネルギー政策決定のポイントは、コストのみではなく下のような要素があるため、それについては別の機会に詳述したい。
①エネルギー・資源の自給率向上
 軍事上のみならず経済上の安全保障のためにも、エネルギー・資源の自給率は高ければ高いほどよい。そして、再生可能エネルギーは100%国内資源であり、輸入資源によって創られるエネルギーは国内資源でないことは言うまでもない。そのため、できるだけ再生可能エネルギーを大きな割合で利用すべきであるし、また、我が国にはその技術がある。さらに、我が国の領海は世界で6番目に広く、天然ガスは領海内に多く存在する資源であるため、いつまでも輸入に頼ることなく、むしろ輸出するくらいにしたいものである。
②安全性
 原発は、事故が起きた際の被害が莫大であり、事故の影響が広域かつ長期に及ぶエネルギーである。そして、核は、多くの人間の生命を危うくする危険性をはらむ上、技術に100%安全ということはないので、使うべきではない。
③地球環境への影響
 火力発電はCO2を出すので地球温暖化に繋がり、地球環境によくないと言われる。しかし、地球環境によくないものはCO2だけではないため、火力の代替として原子力というのは間違っている。何故なら、原発による被曝の影響は、平時でも原発労働者や付近の住民に出ており、事故時には広く放射性物質を散乱させるからである。そして、放射性物質が散乱した地域は、長期に人が住めなくなるばかりでなく、農林漁業もできなくなり、生態系に悪影響を与える。つまり、核は生物と共存できない、もっとも地球環境に悪い物質なのである。
④発電コスト
 電力などの光熱費は、他の全ての産業に響く基礎的コストであるから、コストが安いということは重要である。車も電気自動車となり、ゼロエミッション住宅が標準となり、超電導電線(電気抵抗0の電線)やスマートグリッドを使った新電力網構想もできているので、後は、再生可能な自然エネルギーで如何に安く発電できるかに我が国の命運がかかっている。その時、あらゆる産業が知恵を出して賢い発電方法を編み出し、発電コストを下げるための規制改革は、早ければ早いほどよい。

 このような中、日経新聞は、2012年8月31日に、下記の社説を掲載している。皆さまは、嘘を並べて何とかかんとか言い、要するに原発を推進しているこの新聞の情報を、今後とも信用しますか?
* http://www.nikkei.com/article/DGXDZO45577540R30C12A8EA1000/ (日経新聞 2012/8/31) 原発ゼロを性急に選んでいいのか
 政府は2030年に向けたエネルギー・環境戦略を決めるにあたり、原子力発電の全廃を選択すべきではない。私たちは福島第1原発事故を契機にエネルギー・環境政策を大きく変える必要があると主張してきた。原発の新設は難しくなり、原子力への依存は下がる。
■エネルギー自給率4%
 その代わり自然エネルギーを可能な限り増やし、環境影響に配慮しつつ化石燃料を賢く利用する必要がある。エネルギーの利用効率を高め、ムダをなくすことで総使用量を減らす努力も重要だ。
しかし原子力を選択肢からはずすのは賢明ではない。日本のエネルギー自給率は約4%(原子力除く)。国産は自然エネ以外にわずかな石油と天然ガスだけだ。1970年代の2度の石油危機を通じ、ひとつのエネルギー源に依存しすぎる危うさを学んだ。政府が原発ゼロを選べば資源国が日本の足元をみるのは避けがたい。多様なエネルギーの選択肢を手中にとどめおくことこそ、広い意味で国の安全保障にほかならない。地球温暖化への対処もある。原子力は温暖化ガスの排出削減に有効だ。世界第3の経済国である日本が世界共通の課題解決に背を向けることはできない。
 自然エネルギーの実力は未知数だ。発電コストは下がるのか。電力の安定供給に支障はないか。当面は自然エネ拡大に全力を投じるにしても、普及に伴う利害得失を常に点検し、もし限界が見えたら戦略を見直す柔軟さが要る。そのためにも選択肢は多い方がいい。石炭資源を有しエネルギーのおよそ3割を自給するドイツも昨年に脱原発を決めるまで長く曲折した議論を経た。スウェーデンは逆に80年代に決めた原発全廃の方針を今は凍結している。様々な試行錯誤がある。
 原発をすべて止め火力発電で代替したと仮定すると、石油や天然ガスの輸入額が年間約3兆円余分にかかる。これは東日本大震災前の10年度に国内の全製造業が稼ぎ出した経常利益(約16兆円)のおよそ5分の1に相当する。化石燃料の輸入が増え続ければ、19年度にも日本の経常収支が赤字に転じる可能性があると、日本経済研究センターは試算する。燃料調達費の増大と電力不足は日本経済に多くの面でマイナスの影響を与える。企業の生産能力の低下やコスト上昇につながり工場の海外移転を加速する恐れが大きい。雇用や所得の減少をもたらし国民生活を圧迫するのが心配だ。
 家計は電気料金があがっても節約で支払いを減らし、賄えるかもしれない。しかし製造業、とりわけ円高などでぎりぎりの経営を強いられてきた中小・零細の工場にとりエネルギーコストの上昇は死活問題だ。電力は暮らしや産業の基盤であり電気は現代社会の「血液」といえる。万が一にも途絶すれば、経済や社会がまわらなくなる。原子力利用は安全確保が大前提だ。従来の安全規制に問題があったのは間違いなく、国民の多くが憤りを感じている。原子力規制委員会の発足を制度刷新の機会とし信頼回復を急がねばならない。
■廃棄物問題に道筋を
 政府や国会の福島事故調査委員会は、安全神話と決別し「事故は起きうる」との認識にたち規制を厳正にするよう求めた。政府や電力会社は原発に多重の安全対策を施したうえ、「事故」を「災害」に拡大させない防災面での対策を充実させる重い責任を負う。使用済み核燃料や廃棄物の処分について政府は早期に道筋を示さねばならない。明確な方策がないまま、長く原子力を使い続けることに抵抗感を抱く人は多い。世界では427基の原発が稼働し75基が建設中だ。多くは電力需要が増える新興国などに建つ。世界は原子力を必要としており、安全の向上に日本の技術と経験を役立てられるはずだ。政府が主催した意見聴取会などには原発ゼロを求める声が多く寄せられた。原発ゼロに慎重とされる30代以下の意見が少なく、世代間の偏りも指摘される。いずれにしても意見集約の結果は政策決定にあたって踏まえるべき材料の一つにすぎない。最後は政治の判断だ。何が本当に国民の安全・安心につながるのか。政府は大局的な観点から責任ある判断を下してもらいたい。

| 原発::2012.8~9 | 01:55 PM | comments (x) | trackback (x) |
2012.9.1 真実に基づいて裁判してもらわないと救いようがないため、改善してもらわなければ困りますが、何故、今までそういうことがまかり通っていたのかが、重要な問題です。(2012年9月3日に追加あり)
 下の記事について、判断基準も判断する人の意識もいい加減な中で、それを問い正すための裁判であったにもかかわらず、今まで「手続きさえ経ていれば安全だ」などという判決を出していたのは、裁判所は真実を求める追求をしない場所だったと言わざるを得ません。そして、それは、日本国憲法の三権分立に違反しています。さらに、これは原発訴訟だけの問題ではないのですが、何故、「原発訴訟に限って改革する」と今年の1月に言ったのでしょうか? あらゆる分野の裁判における、これまでの被害者は数知れないでしょうから、重要な問題です。

*1:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2275921.article.html (佐賀新聞 2012年8月31日) 原発訴訟、安全性本格審査を / 最高裁研究会で改革論
最高裁が今年1月に開いた原発訴訟をめぐる裁判官の研究会で、国の手続きの適否を中心としてきた従来の審理にとどまらず、安全性をより本格的に審査しようという改革論が相次いでいたことが30日、共同通信が情報公開請求で入手した最高裁の内部資料などで分かった。裁判所はこれまで原発訴訟のほとんどで「手続き上適法」などとして訴えを退けてきた。改革論が浮上した背景には、東京電力福島第1原発事故を踏まえ、このままでは司法の信頼が揺らぎかねないとの危機感があるとみられる。原発訴訟の審理の在り方に変化が起きる可能性がある。

*2(9月3日追加分):http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201209032672.html (愛媛新聞 2012年9月3日) 原発訴訟改革論 本格審査で司法の責任果たせ
 最高裁が開いた原発訴訟に関する研究会で、裁判官たちから、安全性をより本格的に審査しようという改革論が相次いでいたことが分かった。 評価すべき兆候である。だが、裏を返せば、今までの審査が不十分だったことの現れだ。これまでの原発訴訟のほとんどで、裁判所は「手続き上適法」などと深入りを避けて国や電力会社寄りの判断を重ね、原発安全神話の構築に加担してきた。
 そんな中で起きた東京電力福島第1原発事故は、国民の生命や財産を脅かす最大級の人権侵害事件になった。責任の一端は司法にもある。福島の事故は、司法に姿勢を改めるよう事実をもって求めている。内輪の研究会にとどめず実際の訴訟改革につなげなければならない。「福島後」の原発訴訟に関わる裁判官は、何のために国民から司法権を負託されているか問われているとも言えよう。以前のように国策や原子力ムラを守る側ではなく、国民の生命の番人として安全性審査に踏み込んでいかねば、司法の責任は果たせない。 過去の原発訴訟は、裁判所が安全審査の対象を基本設計に限定したり、高度な技術問題については専門家の意見を踏まえた国の裁量判断を広く認めてきたりしたため、事実上、原子力ムラ追随の判決を重ねた経緯がある。
 しかし、研究会では「福島事故などの経験から社会的には裁判所が実質的な内容に踏み込むべきだとの声が高い」「放射能汚染の広がりや安全審査の想定事項など、従来の判断枠組みを再検討する必要がある」と、これまでの司法の消極姿勢に対する反省をうかがわせる提案がなされた。肝心なのは、その問題意識を訴訟にどう生かすかだ。伊方原発訴訟など各地の裁判で争点になっている地震や活断層、福島事故の知見など、専門的・科学的な審理は裁判官にとって困難を伴うだろう。だが、やり方はある。 高速増殖炉もんじゅ訴訟の名古屋高裁控訴審では、約1年にわたり毎月1回、原告・被告双方の専門家が主張を説明し、これに裁判官が自由に質問できる審理の場を設け、裁判官の理解度を高めた。
 国策を否定する判断に消極的といわれる司法が、2003年、国のもんじゅ設置許可処分を無効とする判決を出したことからも本格的な実質審理がいかに重要かが分かる。逆に、05年に判決を覆した最高裁は国の判断を尊重して実質審査に踏み込んでいない。 要は、憲法で独立を保障された裁判官が、法と事実と良心に従い判断をすることだ。一度起きれば巨大な放射能災害になる原発事故が現在進行中である事実を踏まえ、疑わしきは安全側に立つ、当たり前の姿勢を貫くべきである。

| 原発::2012.8~9 | 10:47 PM | comments (x) | trackback (x) |
2012.8.30 原発比率への国民の意見は0なのに、野田首相は安保に絡めて逃げているが、それならどう安保にからむのか説明すべきである。また、被曝年1ミリシーベルト超の地域は、移住の自由を補償するとともに、公的費用で除染して、その費用は原発のコストに含めるべきだ。
  
      時事通信より                    朝日新聞より

 *2のIPPNWが出した勧告は、全くもっともである。そのため、私は、被曝年1ミリシーベルト超の地域は、移住の自由を補償するとともに、住む人には公的費用で除染して、その費用は原発のコストに含めるべきだと思う。上の図の大熊町はじめ、東北・関東地域の認定は、認識が甘すぎる。

 そのような時、*1の野田首相の「原発ゼロは安保に絡むため簡単に言えない」という逃げには、全く呆れるとともに、消費増税という政策しか打ち出せなかった野田首相の問責決議は当然だと思う。

 また、*3の記事で、「原発ゼロで困るのは、電力会社と立地自治体、原発メーカー」と答えているが、こう答える人が出てこられる時代になったことは、市民の多方面からの努力の成果だ。

*1:http://www.jiji.com/jc/zc?k=201208/2012082801040&g=pol (時事ドットコム 2012/8/28) 原発ゼロ、簡単に言えぬ=野田首相「安保絡む」
(ポイント)野田佳彦首相は28日夜、都内の焼き鳥店で衆院当選1回議員15人と会食した。原発依存度を将来ゼロにすべきだとの意見が出たのに対し、首相は「安全保障の問題が絡むので、簡単に原発ゼロとは言えない」と否定的な見解を示した。

*2:http://www.jiji.com/jc/zc?k=201208/2012082900430 (時事ドットコム 2012/8/29) 被ばく年1ミリシーベルト以下に=ノーベル平和賞団体が勧告-東京
(ポイント)1985年にノーベル平和賞を受賞した核戦争防止を求める医師や学者らの国際団体「核戦争防止国際医師会議」(IPPNW)が29日、東京都内で記者会見を開き、子どもや妊婦の被ばく線量を年間1ミリシーベルト以下に抑えることなどを日本政府に勧告した。IPPNWは28日に福島県を視察。勧告では、子どもや妊婦の被ばくが年1ミリシーベルト超と予想される場合、移住を希望する人の住居や雇用、教育などを支援するよう求め、東京電力福島第1原発事故で1ミリシーベルト超の被ばくをした人の登録制度を早期に確立することも要望した。さらに、「原子力ムラの腐敗した影響力が広がっている」と指摘。放射線の健康影響について、正確な情報の公開が妨げられているとの懸念を表明した。

*3:http://mainichi.jp/select/news/20120813k0000m040111000c.html (毎日新聞 2012年8月12日) 討論型世論調査:「原発ゼロで誰困る?」…民間主催で開催
(ポイント)将来のエネルギー政策の策定に向け、学識者らの民間グループが独自に進める「討論型世論調査(DP)」の討論会が12日、東京都内で開かれた。平均47歳の川崎市民57人が参加し、政府が示した30年の原発比率0%▽15%▽20〜25%の3案について議論した。討論会は10人程度ごとのグループ討論と全体会が行われ、「原発が2基しか稼働していない今夏も乗り切れている」などの意見や素朴な疑問が出された。質問には、国のエネルギー政策に関わる5人の専門家が答えた。会社員の女性(39)は「原発ゼロになると誰が困るのか」と質問。鈴木達治郎・原子力委員会委員長代理は「電力会社と立地自治体、原発メーカー」と答え、辰巳菊子・日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会理事は「原発を推進してきた側」と述べた。

| 原発::2012.8~9 | 02:47 PM | comments (x) | trackback (x) |
2012.8.27 原子力ムラに所属しない国民は適格に国益を判断しているのだから、原発の再稼働はせず、安全な廃炉と速やかな核廃棄物の生物界からの隔離を議論すべき時である。消費税増税より脱原発こそ、不退転の決意で行うべき政策だ。(8.29追加あり)
    
                 朝日新聞より                        東京新聞より

 消費税増税については、「決める政治が大切」「不退転の決意で」などと言って、民意を無視して誤った方針を決めた野田首相は、*1、*2、*3の民意を見ても、やはり「脱原発依存」という暗記した文言を繰り返すばかりで、決断できないようである。それだけではなく、「その民意の解釈が難しい」などと言っている人もいるので、呆れてしまう。

 決める際に大切なのは、何をどう決めるか、そう決めてよいか否かの判断であり、野田首相は、あまりにもこのセンスに欠けている。小泉元総理や小沢代議士は、政策選択のセンスがよいのだが、これは官僚の僕になったか、政治主導をしているかの違いである。官僚の僕にならず、政治主導をすると苦労するというわけなのだ。

*1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012082790135709.html (東京新聞 2012年8月27日)原発「ゼロ」7万6800件 意見公募 集計結果
(ポイント)二〇三〇年時点の原発依存度をめぐる国民的議論の結果を検証する政府の第二回専門家会合が二十七日開かれ、パブリックコメント(意見公募)の集計結果が報告された。無効票を除いた八万八千二百八十件のうち、約七万六千八百件(87%)が原発ゼロシナリオ(案)を支持した。同一人物・団体が一つの案に誘導するために複数回にわたって意見を出したような形跡もほとんどないといい、15%案を模索していたとされる政府に大きな影響を与えそうだ。意見公募は七月二日から八月十二日まで、メールや郵送、ファクスで受け付けた。二十二日の初回会合では約七千件の集計経過が発表され、89・6%が原発ゼロ案を選択しており、全集計結果とほぼ同様となった。原子力の安全や健康被害に不安を抱く声も四万七千件超あった。政府が提示した原発依存度の選択肢のうち、15%案支持は1%、20~25%案は8%にとどまり、原発を維持する両案を足し合わせても全体の一割に満たなかった。この意見公募では「コピペ」とみられる文章はほとんどなく、「思いがそれぞれの言葉で書かれていた」(内閣府事務局)とのことである。「やらせ」ではない「原発ゼロ」の重い民意をどこまで政府が受け止めるかが、今後の大きな焦点となっている。

*2:http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-08-27_38260 (沖縄タイムス 2012年8月27日) [「原発ゼロ」最多]具体的な工程表を示せ
(ポイント)手法の違う複数の調査を通じて民意が鮮明になった、ととらえるべき数字である。将来のエネルギー政策をめぐり、政府が国民論議と位置付けた「討論型世論調査」、意見聴取会、意見公募の三つすべてで、2030年の電力に占める原発比率をゼロにする案の支持が最も多かった。野田佳彦首相は「脱原発依存」が基本的な方針というが、東京電力福島第1原発事故に対する国会事故調などの調査結果が出ていない段階で関西電力大飯原発3、4号機(福井県)を再稼働させた。脱原発依存を具体的にどう実現するかとなると、あいまいな態度のままである。政府は来月に新たなエネルギー政策を決定する。民意を踏まえ、30年に原発比率をゼロにする道筋を工程表で示すべきだ。そうでなければ何のためにわざわざ3種類の調査をしたのか分からない。政府は30年の原発比率について、「0%」「15%」「20~25%」の3案の選択肢を示していた。全国11都市で実施した意見聴取会では意見表明を希望した人のうち「0%」を支持したのは68%と、他の2案を大きく引き離した。意見聴取会は那覇市でも7月に開かれ、9人が意見表明し、8人が「0%」、残りの1人は3案以外の「即脱原発」を訴えた。「経済より命」「再生可能エネルギー普及」などの理由を挙げた。7~8月の意見公募には約8万9千件が寄せられ、即時廃止を含む「0%」が計89・6%を占め圧倒的だった。注目されるのは、政府として世界で初めて導入した討論型世論調査でも同じ結果を示したことだ。電話世論調査に答えた人のうち、希望者285人が東京都内に集まり、学習した上で、専門家との質疑応答、議論を重ねながら理解を深めた。いわゆる「熟議」を経た民意が、どう変化するかを探る米国生まれの手法だ。電話世論調査、討論前、討論後の計3回にわたって、同じ質問を繰り返し、意見の変化を調べた。「0%」支持は、当初の32・6%から46・7%に大きく伸びた。これに対し、「15%」は減り、「20~25%」は横ばいだった。エネルギー政策で何を最も重視するかについても「安全確保」が67・0%から76・5%に増え、「エネルギーの安定供給」「コスト」を上回った。学習し、議論すればするほど原発の安全性に対する疑問が広がったということだ。政府は「15%案」に期待していた節がある。30年までになるべく早く廃止する「0%」、一定程度維持する「20~25%」に対し、「15%」ははっきりしない。30年以降、15%を維持するのか、減らすのかあいまいだ。「15%」は稼働率を高く想定しており、実際は原発の新増設が必要との指摘がある。政府は中長期的に原発ゼロとする目標を新しいエネルギー政策に盛り込む検討に入ったという。原発ゼロを求める声の強さに押された形だが、見直し条項や達成時期をぼかした複数の文案が出ており、骨抜きの懸念が消えない。

*3:http://www.asahi.com/politics/update/0825/TKY201208250470.html (朝日新聞 2012年8月26日) 国会議員「原発ゼロ」支持42% 朝日新聞アンケート
(ポイント)2030年時点の原発割合など新しいエネルギー政策について、朝日新聞社は全国会議員を対象にアンケートを実施した。原発割合「0%」を支持する意見が全体の42%。民主党でも40%を占め、「脱原発」の志向が強まっていることがわかった。ただ、自民党はわずか4%にとどまった。 7月下旬から衆参両院の721人に書面で質問し、25日までに記者会見などでの取材を含め計434人(60%)から回答を得た。 政権が示した30年の原発割合をめぐる三つの選択肢では、「0%」が42%、「15%」が11%、「20~25%」が3%となった。東京電力福島第一原発事故を契機に、「原発ゼロ」への転換を目指す意見が目立つ。

PS:2012.8.29 『五訓』の教えに元気づけられた!
 先日、佐賀県の人から、「強靭にして挫ける勿れ 」「闊達にして偏る勿れ」「勇敢にして臆する勿れ」「誠実にして怠る勿れ」「謙虚にして傲る勿れ」という『五訓』の教えを伝えられ、私にぴったりと響きました。深い内容を感じ、全くそのとおりだと思ったのです。

| 原発::2012.8~9 | 08:34 PM | comments (x) | trackback (x) |
2012.8.23 本当に後押しすべき産業はどれで、政府の遅すぎる切り替えは、何故起こるのか?
         
      *1関係記事より         太陽光を集めて使う太陽光発電

 最近、*2、*3のように、世界で初めて太陽光発電を作ったOnly Oneとも言える貴重な企業であるシャープが存亡の危機にあるという報道がなされている。シャープは家電にも進出しており、機能がよいので、私も使っている。

 政府は、原発には、福島第1原発事故が起こる前の平時でさえ毎年約4000億円の予算を割いてきた(*4参照)。そして、福島第1原発事故が起こった後は、事故関連費だけで、平成23~24年度予算で調査費や健康診断等々の費用を1年間で約5000億円、2年間で1兆円近く使い、今後、本格的な除染や損害賠償、廃炉、中間処理施設、最終処分場の建設費やその地元への交付金を国民の税金から払っていくことになる。そして、それは、全体では10兆円を超えるかも知れない金額になるのだから、「原子力発電のコストは安い」という説明は嘘である。コストの比較をする場合は、どこまでをコストと考え、どういう方法で計算したのか、そして、それは検証可能な数値なのか否かを明示すべきだ。

 一方、太陽光発電はじめ自然エネルギーによる電力は、電力会社に購入させる仕組みであるため、国の予算は設置補助金しか使っておらず、電力会社の意志で買取するか否かが決定されてきた。そのため、自然エネルギーによる発電者には、送配電の段階でハードルがあった。

 そして、政府は、東京電力を破綻処理させずに再生させようとしている。電力会社は、日本に10社もあり、現在、地域独占の状態であるが、本当は地域独占させる理由はなく、その他の事業者も発電に自由に参入できた方が、工夫のきいた安い電力が得られる。そのため、東京電力や関西電力がなくても、電力のユーザーが困るわけではない。

 どちらが、今後の日本経済にプラスの要素をもたらす有用な企業なのか、それに対し、政府は何をしてきたのか、金融機関、経済団体は何をしているのか、そして、その構図は、なぜできているのか? 私は、その答えを敢えて具体的には書かないが、それは、現在、日本経済が低迷している根本的な原因であり、速やかに解決しなければならない重要で経済効果の高い政策課題であり、すでに遅すぎた感もあることなのだ。

*1:http://www.asahi.com/news/intro/TKY201208220732.html
(朝日新聞 2012年8月23日)原発ゼロで、電気代半額の道も〈創エネ省エネ〉
(ポイント)原発がゼロになっても電気代は現在の半分近くに減る。科学技術振興機構の戦略センターがこんな試算結果をまとめた。政府がまとめた電気代の試算は現行の2倍前後だった。同センターが「政府の試算は非現実的」と独自の分析をしたところ、電気代を大幅に下げることがわかった。

*2:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD210CO_R20C12A8TJ0000/ (日経新聞 2012/8/22) シャープ、希望退職3000人 近く労組と協議
(ポイント)シャープは本社や工場などを対象に9月にも約3000人の希望退職を募る方針で、近く労働組合と協議に入る。業績悪化を受けて今月2日、国内外で5千人の人員を今年度中に減らす計画を表明したが、このうち希望退職について人数を詰めていた。

*3:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2001L_Q2A820C1000000/ (日経新聞 2012/8/22) シャープ再建、主力銀は「事業切り売り」迫るのか  編集委員 西條都夫
(ポイント)シャープの経営再建の行方が注目されているが、経営不振に陥る企業はいつの時代にも存在する。それを誰が立て直すのか。企業再生の担い手や形態は投資ファンドから同業他社による買収まで様々だが、日本において再生の主導権を握ってきたのは銀行だ。だが、このところ再生がうまく進まず、途中で法的整理に切り替えるような事例も目立つ。

*4:http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2012/siryo06/siryo2.pdf#search='平成24年度%20原子力関係経費政府予算案'

| 原発::2012.8~9 | 11:43 AM | comments (x) | trackback (x) |
2012.8.20 広島と長崎の平和祈念式典における核廃絶のメッセージとそれに続くアクションに感謝します。
      
   脱原発デザインで優勝した       広島平和祈念式典      長崎平和祈念式典
  北海道脱原発連合のポスター
  (↑こういう素敵なデザインの買物袋があると、女性が持ち歩いて意思表示をするのにいいですね)

 今年の広島、長崎の平和宣言には、*1のように「人類は核とは共存できない」として、脱原発のメッセージも入れられたことに感謝したい。ここから世界に発信してくれれば強い声になるからだ。また、*2のように、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)の世界大会が22日から広島市で開かれるのに合わせて、若手医師や学生が、長崎市から広島市まで自転車をこぎ、核廃絶や原発事故による健康被害を訴える「ピースバイク」を行うそうだが、こういうスマートでかっこいい訴え方もあることがわかったので、他の業種の方も参考にしてもらいたい。

 なお、次の総選挙は、「脱原発を速やかに行って、わが国がグリーンエネルギー革命を先導するか否か」「消費税増税をこのまま実行させるか否か」を争点にして行ってもらいたい。領土問題への対応は、「尖閣諸島が日本固有の領土である」という点については政党間に違いはないので、それではどう対応するのかを、マニフェストに明確に書いてもらえば足りると思う。私自身は、本当にわが国の領土であることが証明される限り、国境離島をしっかりと守って日本の領海を維持するとともに、漁業、天然ガス資源などの基地にしなければならないと思っている。

*1:http://www.nagasaki-np.co.jp/news/ronsetu/2012/08/10111055.shtml
(長崎新聞 2012/08/10) 長崎平和宣言 力強さを失っていないか
(ポイント)9日の平和祈念式典で田上富久長崎市長が読み上げた今年の「長崎平和宣言」は、核兵器の非人道性に対する国際的理解の広がりに言及しつつ、「核兵器禁止条約(NWC)」の締結に向けた具体的な一歩を国際社会に求め、政府には被爆国としてのリーダーシップを発揮するよう要請した。
また、福島第1原発事故に関連して「これからも福島に寄り添い、応援し続ける」と表明。「放射能に脅かされることのない社会を再構築するための新しいエネルギー政策の目標と、そこに至る明確な具体策」を政府に求めた。・・中略・・また宣言は、放射能に脅かされることのない社会の「再構築」を訴えた。言葉尻をとらえるようだが、こうした社会は「再び」ではなく「新たに」築かれなければならないはずだ。原発の安全神話は「神話」でしかなく、しかも崩壊したのだ。・・中略・・30年前の82年には、自らの立脚点を「原爆の残酷さと死の恐怖を体験し、苦しみと絶望の極限に立つ者こそが、誰よりも戦争を完全に否定し、心から平和を求める境地に到達しうる」と表現している。平易な口語体が基調の今の平和宣言とは語り口から違う。しかし、そこを差し引いても、長崎の平和宣言は今、この力強さを失っていないか。世界のどの場所よりも戦争を憎み、核兵器を憎み、核の惨禍を超えた体験と確信に基づいて「人類と核は共存できない」と声を限りに訴え続けなければならない。被爆地にはその責任がある。

*2:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/317989
(西日本新聞 2012/8/11)核廃絶、自転車で訴え 若手医師ら「ピースバイク」
国際NGO、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)の世界大会が22日から広島市で開かれるのに合わせ、若手医師や学生が長崎市から広島市まで自転車をこぎ、核廃絶や原発事故による健康被害を訴える「ピースバイク」を行う。9日に長崎市を出発、福岡市など途中の都市でシンポジウムやポスター展を開く。ピースバイクは2006年、フィンランドのIPPNW世界大会を機に始まり、4回目。日本では初開催で、約20ヶ国40人ほどが参加する。今回のテーマは「競争から共生へ~今、私たちができること」。原爆を投下された長崎・広島、原発事故があったチェルノブイリ、福島など核の被害を訴えるポスター50枚を途中の都市のアーケードなどに展示する。福岡市では12日午後6時半からアクロス福岡(中央区天神)で、ピースバイクと連携する市民団体が企画した国際シンポジウムに参加。核廃絶や環境問題を考えるパネル討論に加わる。実行委員長で長崎大学病院の医師茅野龍馬さん(27)は「核問題に関心を持ってもらい、若い人たちを中心に議論する環境を根付かせたい」と話している。広島市には20日に到着する予定。シンポジウムの問い合わせは、092(715)0070

| 原発::2012.8~9 | 06:16 PM | comments (x) | trackback (x) |
2012.8.10 日本とアメリカの危機管理能力、問題解決力の違い
 *1のウォールストリートジャーナル記事のように、アメリカでは、福島第1原発事故を受けて、使用済核燃料への対応が連邦環境基準に合致していないとの判決が出て、解決策が出ない限り原発の認可はしないとしている。 四葉

 一方、日本では、*2のように、経済団体(=経済産業省)が「日本が安全性の高い原発の建設に貢献する必要があるため、原発ゼロは国益にかなわない」と主張しているが、我が国は、政府も事業者も、福島第1原発事故が自国で起こったにもかかわらず、アメリカのような検討をすることもなく、*3、*4のように危機管理に甘く、事故原因も「わからない」としており、原発を使う資格などないのである。

 このような倫理観を持ち、原発を安全に運転するための基本的認識すら持っていない国が、より安全性の高い原発の建設で世界に貢献することなどできるわけがない。そのため、原発にかかる膨大な予算も考えれば、日本の立場を活かして、原発・原爆の両方について世界で核廃絶をリードしていく方が、よほど人類に貢献できると考える。

*1:http://jp.wsj.com/US/node_491135 
(ウォールストリートジャーナル 2012年 8月 8日) 米NRC、原発認可手続きを停止 
(ポイント)コロンビア特別区巡回控訴裁判所は6月、NRCの使用済み核燃料への対応は連邦環境基準に合致していないとの判断を示した。・・中略・・控訴裁判所は、必要になれば最終処理場が建設されると見るべき「合理的な保証」があるとしたNRCの見解を退けた。また、使用済み核燃料は原発の認可期間を超える60年間にわたり、プールあるいはキャスク(使用済み燃料用容器)の中で安全に貯蔵できるだろうとするNRCの主張も認めなかった。同裁判所は、プールからの漏れはこれまで害がなかったとNRCが考えたとしても、NRCはこれまで以上の漏れやその他の事故の可能性とその結果を評価しなければならないとした。・・中略・・原発業界の業界団体である原子力エネルギー協会(NEI)のゼネラルカウンセル、エレン・ギンズバーグ氏は、連邦政府は電力会社の使用済み核燃料問題を解決するための「法令上の義務を果たしていない」と強調した。 NRCの広報担当者によると、NRCスタッフは今後数週間のうちに、判決に対処するためのいくつかの選択肢をNRCの5人の委員に送るという。原発運営会社はこれまで、使用済み核燃料は長期間置いておいても安全であることを請け合うために、原発敷地内での貯蔵を増やす用意があるとしている。これらの企業は、NRCがこの方法を選択すれば、これが業界全体の基準になるだろうと期待している。環境保護活動家らは、プールの漏れや、火災などでプールの水が沸騰して蒸発したり、流出したりする危険性があるとしている。こうした懸念は福島第1原発事故のあと、一段と深刻なものとなった。

*2:http://www.asahi.com/business/update/0808/TKY201208080473.html 
(朝日新聞 2012年8月8日)「原発ゼロ、国益にかなわない」 経済同友会が意見書
 経済同友会は8日、政府が示した原発依存の割合の3選択肢について、意見書をまとめた。中長期的には依存度を一定水準まで下げる「縮・原発」が望ましいとしつつ、2030年に原発を0%とする案は「採るべき道筋ではない」と否定した。15%案と20~25%案には言及しなかったが、原発の必要性は打ち出した。 長谷川閑史代表幹事は記者会見で「日本が原発をやめようにも、海外には原発があり増設もされる。より安全性の高い原発の建設に貢献する必要があり、今の段階で原発ゼロを選ぶのは国益にかなわない」と述べた。 政府は8月末までに結論を出す方針だが、同友会は決定を急がないように要望。経済や国民生活の観点から、今は「原発ゼロ」が難しいと国民に納得してもらう努力をするよう迫った。

*3:http://www.asahi.com/national/update/0808/TKY201208070837.html
(朝日新聞 2012年8月8日) 東電、水素爆発確認せず広報 「保安院が言ってるから」
 東京電力福島第一原発3号機の爆発をめぐり、東電が確証のないまま政府の発表を追う形で「水素爆発」と広報していたことが、報道機関向けに限定開示したテレビ会議の加工映像からわかった。事故直後の混乱の中で、国民への説明責任を軽視していた東電の姿勢を示すものだ。昨年3月12日に1号機が水素爆発したのに続き、14日午前11時1分に3号機で爆発が発生した。問題の場面はその後、午前11時半ごろの本店の映像だ。記者発表の文面を検討する中、本店で清水正孝社長の隣に座る高橋明男フェローの次の発言が映像に残っている。「要はさ、1号機を3号機に変えただけだってんでしょ。それで水素爆発かどうかわからないけれど、国が保安院が水素爆発と言っているから、もういいんじゃないの、この水素爆発で」・・・

*4:http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20120807-OYT1T00260.htm (読売新聞 2012年8月7日) 東電本店、吉田所長に「なんか知恵ないの?」
 東京電力が6日に公開した福島第一原子力発電所事故直後のテレビ会議映像には、2、3号機の初期注水の失敗に至った過程が生々しく描き出されていた。政府の事故調査・検証委員会が指摘した、後手後手に回った対応が詳細に浮かび上がった。(肩書は当時)
◆3号機
 大津波の襲来後ほとんど注水できず、昨年3月12日に水素爆発を起こした1号機と異なり、3号機は13日まで外部電源がなくても稼働する高圧の注水系(HPCI)で原子炉を冷やしていた。そのためビデオ映像からは緊迫感は伝わらない。設備損傷の恐れがあったため、現場の当直が同日午前2時42分にHPCIを手動停止し、その約1時間後に吉田昌郎第一原発所長が本店に報告。原子炉の生命線である注水が途切れる緊急事態だったが、本店は「いったん停止、了解」など淡々とした対応に終始した。第一原発、本店ともに積極的に対応策を議論した形跡はなかった。現場に緊張が走ったのは同5時58分。既に1時間半以上前に燃料が露出し始めていたという試算結果に、吉田所長が「えっ、そんなに前なの?」と驚いた。さらに、炉内の圧力が高すぎて消防車では注水できないことを認識するなど、対応は後手に回った。そして、減圧に必要な弁を開くために必要なバッテリーを作業員の車からかき集めようとしたが、敷地内の放射線量が上がり、防護マスクが足りず車にさえ近づけなかった。政府事故調が問題視する約6時間半の「注水の空白」の実態がうかがえた。
◆2号機
 2号機のかろうじて動いていた高圧の代替注水系(RCIC)の異変は14日昼頃に見え始める。吉田所長は同日午後1時過ぎに原子炉の水位低下を確認し、計器類の点検などを指示した。「(1、3号機と)同じ思いをしたくない」との気持ちがあった。しかし、現場の連絡体制は混乱。海水注入の準備状況がつかめない事態に、吉田所長が「ドアホ。ったく。訳のわかんないのに聞くな」と、罵声を響かせる場面もあった。ただ、現場は「焦るような状態じゃない」と楽観視する雰囲気も漂っていた。午後4時34分、事態の深刻化が決定的になる。3号機と同様に、消防車による注水に不可欠である原子炉の減圧作業に入るが、「圧力の低下が見られません」との報告が現場から上がる。吉田所長は「もっと真剣に対応してくれよ」といらだちを募らせた。減圧できない状況は想定しておらず、本店の高橋明男フェローが「なんか、知恵ないの?」と発言。八方ふさがりの行き詰まった状況が浮かび上がる。同8時過ぎに「5分くらい前から水が入り始めたようです」と吉田所長は話したが、すでに炉心損傷は深刻で、同9時18分には圧力容器の損傷に至ったとされる。

| 原発::2012.8~9 | 01:02 AM | comments (x) | trackback (x) |

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