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2014.9.30 御嶽山の噴火と九州電力川内原発の再稼働について (2014.9.30、10.1追加あり)
     
   無料画像集より        *4-1より    *3-4より      *4-2より
      <御嶽山の噴火関係>                <川内原発関係>

(1)フクシマの教訓は生かされたか
 政府は原発再稼働に向けて進んでいるが、原子力規制委員会は「原発は安全だ」とは言っておらず、原発は新基準に適合はしているが安全が確認されたわけではない。また、*1-1に書かれているとおり、原発事故の報道に関しては、放出された放射線の量や人体に対する影響が正しく報道されなかったため、住民が自ら身を守る行動をとれなかったり、避難した人が周囲から不当に責められたり、避難することについて家庭内で意見が対立して苦労させられたりして、人為的な損害を受けたのである。

 なお、原発事故の報道には、原子力関係の学識者だけでなく、飛散した放射性物質に関する正確な情報が提供された上で、医学、生物学、農学、生態学の専門家の意見が必要である。また、今後の再稼働については、地震学者、火山学者の意見も重要だが、原発の専門家と言えば、原子力の専門家か放射線の専門家に偏り、原発自体の機械的な問題ばかりを考えているのは、事故時に環境汚染によって引き起こされる人間の健康や農林漁業の問題を無視している。

 なお、フクシマ原発事故の真実は、「わからない」として明かされていない部分が多いため、その教訓も生かされていない。そのため政府に対する不信感は大きく、このようなアプローチをしているようでは原発には付き合えないため、*1-2のように、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働阻止を訴える大規模集会が鹿児島市で行われても、全国各地から7500人もが参加するのである。

 そこで、福島県川内村の西山元村議が「福島では甲状腺がんが発生し、まだ安全ではない」と言っているのは事実であるし、「御嶽山の噴火も予知できないのに、火山のリスクをはらんでいる川内原発の再稼働は許されない」というのも、全くそのとおりだ。

(2)川内原発の地元は、どこまでか
 *2-2、*2-3に書かれているように、九州電力川内原発1、2号機をめぐる原子力規制委員会の主要な審査が終わり、田中委員長は「法律が求めるレベル(ここが重要)の安全性が確保されることを確認した」とした。そのため、今後は地元同意に向けた手続きが本格化し、どの範囲までを地元として同意を求めるかが焦点になるそうだが、私は、事故時に汚染されて損害を受ける範囲はすべて地元として合意がなければならないと考える。

 川内原発が新規制基準に適合しているとする審査書決定をめぐっては、*2-1のように、鹿児島県薩摩川内市で長く原発に反対してきて審査書案へのパブリックコメントで「基準地震動の設定が不適切」と意見を寄せた鳥原さんは、「1万7千件も意見が集まったのに、締め切りから1カ月もたたずに決定とは。国民の意見が反映されていない」と憤り、薩摩川内市の山之口自治会会長の川畑さんは「世界一厳しい基準はまやかしだ。田中俊一委員長自らが『安全だと申し上げない』と言った」と強調したそうだが、全くそのとおりである。

(3)原発の建設に、火山の噴火は想定外だったのである
 *3-1に書かれているとおり、原子力規制委員会は原発に影響を及ぼす巨大噴火に備えた「基本的な考え方」の案を示し、「前兆の可能性がある火山の異常を検知したら、空振りも覚悟の上で原子炉の停止や燃料の運び出しを電力会社に求める」としているが、①異常を検知できたとしても、誰がどこに運び出すのか ②異常は100%検知できるのか など、いつもどおりの甘すぎる原発推進論(原発安全神話の源)である。

 そのような中、*4-1のように、長野県と岐阜県にまたがる御嶽山が噴火し、水蒸気爆発でも周辺では降灰による農作物などの被害が出ており、登山者には多くの不明者がいるが、自衛隊や警察などの捜索隊は二次災害を防止しながら捜索している状況だ。そして、多くの火山学者が、巨大地震の後には火山が噴火しやすく、噴火の予知や予測は難しいため、噴火に警戒を呼び掛けている。

 そのため、*3-2、*3-3に書かれているように、九州には、桜島や阿蘇山など日本を代表する火山が集中し、近年も人的被害のある活発な活動が続いており、桜島と口永良部島新岳(鹿児島県)では、気象庁の噴火警戒レベルが入山規制を行う3となり、桜島では2009年以降活動が活発化して翌年から4年連続で噴火回数が800回を超え、霧島連山・新燃岳(宮崎、鹿児島県境)は2011年に爆発的噴火が起きてから小康状態だが警戒レベルは2だそうだ。

 そのため、鹿児島県の反原発団体が、鹿児島市で九電川内原発(同県薩摩川内市)の再稼働に反対する集会を開き、「川内原発の周辺には霧島連山や阿蘇山があり、日本でも活火山が多い地域だ」として再稼働への懸念を示したのはもっともである

(4)それでも川内原発再稼働とは、どういうことか
 *4-1では、日経新聞が「御嶽山の噴火で、噴火の予知や予測は一部の火山を除けば難しく、巨大地震の直後には火山が噴火しやすい」との認識を示し、「列島には110の活火山があり、うち47火山は噴火の恐れが強いため、監視を強め、対策を早急に総点検すべきだ」としているが、火山学者には「現在の火山学で、噴火の予知は極めて困難」との意見が強い。

 しかし、*4-2のように、菅官房長官は、9月29日午前の記者会見で、「御嶽山の噴火を予知できなかったことは、火山の集中地帯にある九州電力川内原発(鹿児島県)の再稼働方針に影響しない」との考えを示し、予知できなかった御嶽山の噴火後も、政府は新規制基準を満たしたとする原子力規制委員会の審査結果を見直さないそうである。

 川内原発は「最も火山の危険が高い原発」と言われているが、原子力規制委は「観測によって噴火の予知は可能」という九電の主張を容認し、火山学者が「現在の火山学で噴火の予知は極めて困難」と言っているのに、政府が再稼働を進めようとしているのである。これは、再稼働ありきの原子力規制委員会審査だったからにほかならないだろう。

<フクシマの教訓は生かされたか>
*1-1:http://www.minyu-net.com/news/news/0926/news3.html
(2014年9月26日 福島民友ニュース) 「学識者の評価など不足」 原発報道で田中氏が指摘
 福島民友新聞社など新聞社や放送局などでつくるマスコミ倫理懇談会全国協議会の第58回全国大会が25日、松江市のホテルで始まった。初日は分科会などが開かれ、田中淳東大総合防災情報研究センター長が原発事故報道に関し、放射線影響への学識者の評価などの報道が不足していたと指摘するなど、約100社280人の編集責任者や記者らが震災報道の在り方を考えた。26日まで「岐路に立つ社会でメディアに求められるもの」を主テーマに報道や広告の課題を話し合う。田中氏は「震災報道をいかに継続していくか」についての分科会で、1959(昭和34)年の伊勢湾台風から一連の災害報道の変遷について解説した。震災では「市町村機能の低下が顕著で、阪神大震災以上に突き付けられた」と問題提起。特に原発事故直後の報道について「どのメディアも原子力関係の学識者との関係が構築できておらず、あまり報道されなかった。これはマスコミがあえて原子力関係の学者と距離を置いていたため」と分析、今後の課題と位置付けた。復興報道については「何を伝えるのか、今もひな型といえるものがない。特に福島は『復興』とはいえない。何か別な言葉で置き換えるべきだ」と主張した。

*1-2:http://qbiz.jp/article/46729/1/
(西日本新聞 2014年9月29日) 再稼働「NO」に7500人 鹿児島市で反原発集会
 全国の原発で再稼働へ向けた地元手続きが最も早く進む九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働阻止を訴える大規模集会が28日、鹿児島市であった。全国各地から7500人(主催者発表)が参加し、集会の後、同市の繁華街約2キロをデモ行進した。鹿児島市の市民団体「ストップ再稼働! 3・11鹿児島集会実行委員会」が「地元から反対の声を上げよう」と主催。集会ではルポライターの鎌田慧さんが「安倍政権が進める再稼働は、人間が死んでももうかればいいという論理。国民への挑戦だ」と批判。福島第1原発30キロ圏の福島県川内村の西山千嘉子元村議は「福島では甲状腺がんが発生し、まだ安全ではない」と被災地の現状を訴えた。デモ隊は「原発要らない」と唱えながら、南九州最大の繁華街・天文館から鹿児島中央駅前までの目抜き通りを約2時間かけて行進。右翼団体の街宣車がデモ隊に並走し、騒然となる一幕もあった。鹿児島県警は多くの警察官を沿道に配置してトラブルを警戒した。薩摩川内市からデモに参加した男性(66)は「御嶽山の噴火も予知できないのに、火山のリスクをはらんでいる川内原発の再稼働は許されない」と話した。

<川内原発再稼働に地元は?>
*2-1:http://qbiz.jp/article/45643/1/
(西日本新聞 2014年9月10日) 審査書「決定」、川内原発の地元は
 川内原発が新規制基準に適合しているとする審査書決定をめぐり、原発が立地する鹿児島県では10日、近づく再稼働への不安と期待、反発と歓迎が交錯した。同県薩摩川内市で長年、原発に反対してきた鳥原良子さん(65)は、審査書案へのパブリックコメントで「基準地震動の設定が不適切」と意見を寄せた。「1万7千件も意見が集まったのに、締め切りから1カ月もたたずに決定とは。国民の意見が反映されていない」と憤った。同市の自治会で初めて再稼働反対陳情を市議会に提出した山之口自治会。会長の川畑清明さん(58)は「世界一厳しい基準はまやかしだ。田中俊一委員長自らが『安全だと申し上げない』と言った」と強調した。原発の北東25キロに住む福祉施設職員原恵美さん(26)=同県さつま町=には7歳と3歳の子どもがいる。「事故の際、幼児を連れての避難に不安がある。避難計画が不十分なまま再稼働しないでほしい」。一方で、薩摩川内市の商工関係者は審査書の決定を歓迎した。不動産業本間広幸さん(67)は「ようやく再稼働が間近になった。市は今後も原発を活用していく必要がある」。民宿を営む御幸(ごこう)博文さん(61)は「年内再稼働なら、大きなクリスマスプレゼントになる」と声を弾ませた。鹿児島県の伊藤祐一郎知事は取材に応じず、談話のみ発表する。県関係者は「知事はあらぬ発言が再稼働の障害になることを極度に警戒している」と語った。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11344639.html
(朝日新聞 2014年9月11) 川内、地元同意手続きへ 原発再稼働、年明け以降 主要審査終了
 九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)をめぐる原子力規制委員会の主要な審査が終わった。規制委は10日、新規制基準を満たすとする審査書を正式に決め、法に基づく設計変更の許可を九電に出した。今後、地元の同意に向けた手続きが本格化し、どの範囲まで同意を求めるかが焦点になりそうだ。年明けにも見込まれる再稼働に向けた動きは新たな段階に入る。規制委がこの日決定したのは安全設計の基本方針をめぐる審査書で、九電に許可の書面が手渡された。東京電力福島第一原発事故を受けて作られた新基準で初めての許可となる。田中俊一委員長は会見で「法律に基づいて求めてきたレベルの安全性が確保されることを確認した。この後たくさんの審査を控えているので着実に進めたい」と話した。今後も、より詳しい設計を記した工事計画などの認可手続きは残る。九電の必要書類の提出が9月末以降にずれ込んでいるうえ、その後の設備の検査にも1~2カ月はかかる見通しで、法的な手続き上、再稼働が可能になるのは早くても年明けになりそうだ。一方、原発の大きな変更はこれまで地元に同意を得てきた経緯がある。新基準にもとづく再稼働は、地元同意の手続きも事実上必要になる。鹿児島県と地元の薩摩川内市は再稼働に前向きで、伊藤祐一郎知事は県、薩摩川内市の首長と議会の同意で足りるとの考えを示している。だが、原発の30キロ圏にはほかに8市町があり、意見を聞くよう求める声も出ている。どこまで反映されるかが焦点だ。九電の中村明上席執行役員は地元同意について「丁寧にご理解を得るように努めていきたい」と話した。菅義偉官房長官もこの日の会見で「政府として立地自治体関係者の理解と協力を得るように取り組む」と後押しする考えを示した。県は10月9日から30キロ圏内の5カ所で審査結果の説明会を開く。規制委も求めに応じ、出向く考えだ。一方で、この日は審査書案に対する意見募集に寄せられた1万7819件の概要も公表された。巨大噴火や航空機の衝突をめぐるリスクなどのほか、自治体がつくる住民避難計画についての指摘も目立ったという。ただ、避難計画や原発の是非などは意見募集の対象外とされ、ほかも文言や表現の修正にとどまった。他に再稼働に向け審査を申請しているのは12原発18基。規制委は川内原発をひな型に、審査を本格化させている。

*2-3:http://qbiz.jp/article/46177/1/
(西日本新聞 2014年9月19日) どこまで地元? 鹿児島揺れる 「再稼働の同意対象に」陳情続々
 九州電力川内原発の再稼働へ向けた地元手続きが本格化した鹿児島県で、再稼働の条件となる「地元同意」の対象範囲拡大を求める陳情が地方議会に相次いでいる。避難対象となる原発30キロ圏自治体は9市町。陳情を受けたいちき串木野市議会は、伊藤祐一郎知事への意見書を30日に可決する見通し。日置市議会も同様の方向で調整を進めている。伊藤知事は18日の県議会でも「同意対象は(立地自治体の)県と薩摩川内市で十分」と持論を曲げなかったが、「リスクに見合った同意権を」との周辺自治体の圧力はさらに高まりそうだ。「あの山の向こうはすぐ原発ですよ」。議員が窓の外を指さすと、傍聴の住民がうなずいた。17日のいちき串木野市議会総務委員会。原発との近さを強調する意見が相次ぎ、陳情は全会一致で趣旨採択となった。議会の動きは市民のぬぐえない不安感を反映している。市は30キロ圏に全域が含まれ、ほぼ年間を通して原発の風下に当たる。市内の団体が募った再稼働反対署名は人口の半数を超えた。背景には、立地市に比べて原発の恩恵が少ない不満もある。2013年度までに市に入った原発関連の交付金は35億円で、薩摩川内市の8分の1。17日の審議では議員から「(市も同意対象になれば)それなりの交付金も求めたい」と本音も飛び出した。薩摩川内市を除いた30キロ圏の8市町で、同意対象の拡大を求める陳情を付託したのは7議会。唯一付託していない姶良市議会は今年7月、原発再稼働に反対する意見書を可決している。市の北半分が30キロ圏に入る日置市では、陳情を趣旨採択した上で意見書を本会議に上げるかどうか調整中だ。審議した総務企画委員会の中島昭委員長は「事故が起きれば、立地市並みの被害を受ける。国や県は、日置市民の理解も得る努力をしてほしい」と話す。長島町議会は通常、町外在住者からの陳情は付託していないが、今回は「特例扱い」(議会事務局)で審議に乗せた。「重要な内容だ」との議員の意見が多数を占めたためだ。県議会も18日、同様の陳情を付託した。30日の特別委員会で審議する。そうした流れを見越してか、伊藤知事は12日の記者会見では「周辺自治体の意見を無視するわけにはいかない」と述べ、薩摩川内市以外の自治体と何らかの協議の場を設置することにも言及した。30キロ圏内の声をどこまで反映するか、知事の判断が注目される。

<想定外になっていた火山の噴火>
*3-1:http://sp.mainichi.jp/opinion/news/20140908k0000m070170000c.html
(毎日新聞社説 2014年9月8日) 原発と火山災害 巨大噴火を侮るなかれ
 原発に影響を及ぼす巨大噴火に備えた「基本的な考え方」の案を原子力規制委員会が示した。前兆の可能性がある異常を検知したら、「空振りも覚悟の上」で原子炉の停止や燃料の運び出しを電力会社に求める。そのための判断基準についても、有識者を集め、検討を進めるという。規制委が新規制基準に適合していると判断した九州電力川内1、2号機(鹿児島県)は、巨大噴火に襲われる危険性が全国の原発の中で最も高い、というのが専門家の一致した見方だ。本来なら原発の安全審査の前に、こうした検討を進めておくべきだった。日本は世界有数の火山国であり、規制委や電力会社は、噴火の脅威を侮ってはならない。川内原発周辺には、阿蘇や鹿児島湾など、マグマの大量噴出で土地が陥没したカルデラ地形が複数ある。日本ではカルデラ式の巨大噴火が1万年に1回程度起きている。昨年施行された原発の新規制基準は、原発から160キロ圏の火山の影響調査を電力会社に義務付けた。運用期間中に噴火が起き、火砕流や溶岩流が到達する恐れがあれば、立地不適格で原発は稼働できない。九電は、川内原発の運用期間中にそうした噴火が起きる「可能性は十分低い」と評価し、桜島の噴火で火山灰が15センチ積もる場合を想定すれば足りるとした。巨大噴火が起きるとしても、数十年前からマグマの蓄積が生じるので、地殻変動などを監視すれば事前に察知できるという。規制委は安全審査で、九電の考え方を基本的に了承した。しかし、その後開かれた規制委の有識者検討会では「巨大噴火の時期や規模の予知は困難」との指摘が相次いだ。原発に影響する火山活動の監視では「電力会社任せにせず、国レベルの体制を作るべきだ」との意見も出された。噴火の影響を受ける恐れのある原子力関連施設は日本各地にある。川内原発は、それらの施設の火山対策の試金石となる。規制委の島崎邦彦委員長代理は、巨大噴火に関する判断基準の策定について「どこまでできるか分からない」と述べた。だが、安全サイドに立った基準をあらかじめ作成しておかなければ、異常が検知された時の対応に混乱が生じかねない。そもそも、巨大噴火が起きれば日本という国の存亡にかかわる。内閣府の検討会は昨年5月、東日本大震災をきっかけに火山活動が活発化する恐れがあるとし、監視体制の強化や避難計画の早期策定を提言した。巨大噴火に関する研究の遅れも指摘している。「想定外」を避けるためにも、規制委による判断基準の検討を、巨大噴火に関する研究や対策を促進する契機としたい。

*3-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014092902000182.html (東京新聞 2014年9月29日) 「周辺に活火山 危険」 「川内」再稼働の反対集会
 鹿児島県の反原発団体は二十八日、九州電力川内(せんだい)原発(同県薩摩川内市)の再稼働に反対する集会を鹿児島市で開いた。参加者は「反対の民意を踏みにじる再稼働は許さない」と訴えた。実行委員会によると全国から約七千五百人が集まり、集会後は市内をデモ行進した。集会には菅直人元首相も出席し、御嶽山の噴火に言及。「川内原発の周辺には霧島(連山)や阿蘇山があり、日本でも活火山が多い地域だ」とし、再稼働への懸念を示した。福島県川内(かわうち)村から埼玉県志木市に避難している元村議の西山千嘉子さん(66)は「福島事故の被害やその現状を忘れないでほしい」と強調。川内原発だけでなく、全国にある原発の再稼働を阻止する必要性を訴えた。

*3-3:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/kagoshima/article/116921
(西日本新聞 2014年9月27日) 九州の火山も要注意 桜島、口永良部は入山規制 [鹿児島県]
 桜島や阿蘇山など日本を代表する火山が集中し、人的被害にも見舞われてきた九州では、近年も活発な活動が続いており、警戒が必要だ。現在、九州の火山で気象庁の噴火警戒レベルが最も高いのは、桜島と口永良部(くちのえらぶ)島の新岳(ともに鹿児島県)。5段階のうち、入山を規制する3となっている。桜島では2009年以降、活動が活発化し、翌年から4年連続で噴火回数が800回を超えた。今年は58人の死者・行方不明者が出た「大正大噴火」から丸100年。京都大防災研究所火山活動研究センター(鹿児島市)は「同規模の噴火が起きる可能性もある」とみている。新岳は今年8月3日、34年ぶりに噴火し、島民135人のうち64人が一時島外に避難した。今回の御嶽山と同じく、噴火時の警戒レベルは1(平常)だった。気象庁などが火口近くに設置している観測機器の一部は壊れたままという。阿蘇山(熊本県)は8月30日に噴火が確認され、警戒レベルが1から2(火口周辺規制)に引き上げられた。11年に爆発的噴火が起きた霧島連山・新燃(しんもえ)岳(宮崎、鹿児島県境)は小康状態だが、警戒レベルは2。雲仙岳(長崎県)や九重山(大分県)は1で、今のところ噴火の兆候はないという。

<それでも川内原発再稼働か>
*4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140929&ng=DGKDZO77669940Z20C14A9PE8000 (日経新聞社説 2014.9.29) 突然の噴火に備え火山防災の総点検を
 長野県と岐阜県にまたがる御嶽山(おんたけさん)が噴火し、多くの登山者が巻き込まれた。山岳災害として国内で最悪規模になる恐れがある。周辺では降灰による農作物などの被害も出ている。今回の噴火は、地下のマグマに地下水が触れて起きる水蒸気爆発とみられ、27日昼前に突然始まった。御嶽山周辺は紅葉シーズンに入り、多くの入山者がいた。政府は危機管理センターに連絡室を設け、自衛隊や警察などが不明者の捜索や救助にあたっている。水蒸気爆発はなお続く恐れがあり、噴火活動の拡大にも予断を許さない。捜索隊は二次災害の防止に細心の注意を払いつつ、人命救助に全力を挙げてもらいたい。周辺の住民は引き続き、噴石への注意が要る。雨が降り、火山灰が泥になって山腹を下る泥流の発生も懸念される。火山灰は風で運ばれて飛行機の運航にも悪影響を及ぼす。航空会社などは安全確保に万全を期してほしい。今回の噴火は突然だったとはいえ、なぜこれほどの被害を招いたのか、徹底的な検証が要る。気象庁は9月に入って御嶽山周辺で火山性の弱い地震を観測していた。だがその後、微動は収まり、同庁は警戒情報を「レベル1(平常)」にとどめていた。警戒を「レベル3(入山規制)」に引き上げたのは、噴火後だった。噴火の予知や予測は一部の火山を除けば難しい。とはいえ、変調をとらえた段階で、住民や登山者に周知できなかったのか。気象庁は警戒レベルの引き上げには、マグマの動きが観測されるなど一定の基準を満たす必要があるとしている。そうした基準が妥当なのか、きちんと検証すべきだ。列島には110の活火山があり、うち47火山は噴火の恐れが強いとされる。それらの監視を強め、対策を早急に総点検するときだ。巨大地震の直後には火山が噴火しやすく、3年半前の東日本大震災後、多くの火山学者が噴火に警戒を呼び掛けている。火山灰や火砕流などの到達範囲を予測したハザードマップが作られ、住民に配られているか。予兆が観測されたら、どの段階で住民に避難を指示するのか。火山に近い自治体は重ねて点検すべきだ。火山の研究者が減り、監視体制の弱体化も指摘されている。専門家をどう育て、地元と連携して日ごろから対策をどう練るか。国もこれらを真剣に考えるときだ。

*4-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014092902000214.html
(東京新聞 2014年9月29日) 水蒸気爆発 予知困難でも… 川内再稼働「影響せず」
 菅義偉(すがよしひで)官房長官は二十九日午前の記者会見で、御嶽山の噴火を予知できなかったことが、火山の集中地帯にある九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)の再稼働方針に影響しないとの考えを示した。今回の噴火が、川内原発の再稼働方針に影響するかとの記者団の質問に「ないと思う」と明言した。菅氏は「今回のような水蒸気(爆発)は、予測が極めて難しいと従来、言われている」と指摘。川内原発をめぐっては、周辺の火山が噴火する危険性が心配されている。しかし、予知できなかった御嶽山の噴火後も、政府は新規制基準を満たしたとする原子力規制委員会の審査結果は見直さないとした。川内原発は「最も火山の危険が高い原発」と言われている。原子力規制委は「観測によって噴火の予知は可能」という九電の主張を容認したものの、火山学者には「現在の火山学で、噴火の予知は極めて困難」との意見が強い。

   
      *5より           *6より
PS(2014年9月30日追加):*5のように、いちき串木野市と日置市の市議会は、9月30日、それぞれの市を「再稼働の条件となる地元」に加えるよう求める意見書案を可決したそうだが、他の周辺自治体も意見書を出すのがよいと思う。また、姶良市議会は、既に7月に、川内原発再稼働に反対し廃炉を求める意見書を可決しており、私も賛成だ。

*5:http://qbiz.jp/article/46853/1/
(西日本新聞 2014年9月30日) 川内再稼働、同意拡大 いちき串木野、日置市議会が意見書可決
 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の避難対象となる30キロ圏にある同県いちき串木野市と日置市の議会は30日、再稼働の条件となる「地元同意」に、それぞれの市を加えるよう求める伊藤祐一郎知事宛ての意見書案を可決した。再稼働の地元同意をめぐり、30キロ圏自治体の議会から参画を求める意思表示は初めて。伊藤知事は、同意判断を下す自治体について「立地自治体である県と薩摩川内市で十分」との考えを示している。意見書に法的拘束力はないが、今後の知事の対応が注目される。両市議会の意見書は、同意への参画を求める根拠について、国の原子力災害対策指針により、原発30キロ圏の自治体が重大事故対策の責任を負わされていることを挙げた。いちき串木野市議会は、医療機関や社会福祉施設の避難計画策定が困難なことも言及した。両市議会は10月9日から30キロ圏内である住民説明会の前に意見書を知事に郵送する。いちき串木野市は市の全域、日置市は北半分が30キロ圏に入る。両市は川内原発の南東に位置し、ほぼ年間を通じて原発の風下になり、事故の際は放射性物質が飛来する恐れもある。両市議会はこうした不安を背景に住民から提出された陳情を趣旨採択し、議員提案の意見書にまとめた。一方で再稼働反対を求める陳情はいずれも継続審査とした。政府は川内原発について新規制基準下で国内初の再稼働を目指している。原発30キロ圏では、議会に同意範囲拡大の陳情が相次ぎ、鹿児島、出水市など5市町議会が継続審査とした。姶良市議会は7月、川内原発再稼働に反対し廃炉を求める意見書を可決している。 

PS(2014年9月30日追加):「国の責任で同意範囲を決めるべき」「国の責任で再稼働の判断をすべき」というのは、住民の権利を無視して責任を国に丸投げし、国民主権や地方自治を放棄することになるため、市も判断に必要な資料を入手して市議会で議論すべきだ。なお、鹿児島県・宮崎県は農業・漁業・観光業も重要な産業であるため、何が一番大切かをよく考える必要がある。

*6:http://qbiz.jp/article/46892/1/
(西日本新聞 2014年10月1日) 地元同意、見えぬ着地点 他の市町は対応割れる
 原発を動かす判断はどんな枠組みで下すべきか−。九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)再稼働の条件となる「地元同意」への参画を求め、原発30キロ圏の同県いちき串木野、日置の両市議会が30日、伊藤祐一郎知事宛ての意見書を可決した。伊藤知事はその30分後に談話を出し「同意範囲は県と薩摩川内市」との従来の考えを強調。再稼働の同意権をめぐる綱引きは激しさを増してきた。ただ、30キロ圏の市町の対応は割れており、問題がどう決着するかは不透明だ。「(原発からの距離で考えると)市は原発立地自治体に値する。考え直してほしい」(下迫田良信いちき串木野市議長)。「事故時には日置市民も被害を受ける。市の意見も聞くよう市一体で求めたい」(宇田栄日置市議長)。両市の議長は可決後、伊藤知事にきっぱりと方針転換を迫り、反旗を翻した。意見書には同意権を求める理由がつづられていた。「年の大半が原発の風下に当たる」(いちき串木野市)、「30キロ圏の自治体は国に事故対策を求められ、責任も負う」(日置市)。だが、両市とも議会と市長の足並みはそろっていなかった。いちき串木野市の田畑誠一市長と日置市の宮路高光市長はいずれも「可決は重く受け止めるが、現時点で同意参画は求めない」と、議会に比べて及び腰だった。30キロ圏の他の市町の対応も一様ではない。阿久根市の西平良将市長や長島町の川添健町長、さつま町の日高政勝町長は「再稼働を判断する専門性を自治体は持ち合わせていない」と、同意参画は求めない考え。議会でも、鹿児島市など5市町は同意範囲拡大の陳情を継続審査とした。一方で伊藤知事は、この日の談話で「さまざまな意見があることは承知している」とし、30キロ圏へ一定の配慮もにじませた。ある県議は伊藤知事の心境をこう推し量る。「同意範囲の拡大はしたくないが、意見書を無視すれば県民の反発を生み、逆に再稼働への理解を得られなくなる。どこまで譲歩するか、知事は悩んでいるはずだ」。

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2014.9.28 イスラム教とイスラム圏、「イスラム国」について (2014.10.2に追加あり)
  
                現代のイスラム女性の服装
(1)イスラム教と現代文化の親和性について
 *1-1のように、オバマ米大統領が、ニューヨークの国連総会で中東の過激派「イスラム国」の打倒に向けた国際的な有志連合に加わるよう各国に求めたそうだ。私は、イスラム教徒が世界のあちこちで過激化する理由やシリア空爆と過激派「イスラム国」打倒の関係については、わからない点が多いため、常々、説明してもらいたいと思っていた。

 しかし、*1-2のように、米軍の軍事作戦には、サウジアラビア、ヨルダン、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、カタールなどのイスラム諸国も参加しており、「イスラム国」の本拠地、ラッカやハサカ、デリゾール、アブカマル、アレッポの司令部施設、訓練施設、武装車両、補給トラックなどを対象に空爆したそうだ。また、「欧米への差し迫ったテロ計画があった」として、米軍は国際テロ組織アルカイダ系グループ「ホラサン」の施設も空爆し、シリア政府にも空爆方針を直接伝えて、アサド政権に敵対行為を取らないよう警告していたそうである。

 アルカイダや「イスラム国」過激派の行動には、時代錯誤ではないかと思われる論理が多いため、調べてみたところ、*1-3のように、イスラム教は、中国には「隋」があり、日本では小野妹子が遣隋使として隋へ派遣された607年と同時期の610年にマホメットがアラーの神から啓示を受けて始まった。そして、イスラム教の内容は、①唯一神アラーの前で人は平等 ②女性は肌を見せてはならない ③豚を食べてはいけない ④男性は妻を4人まで持つことが出来るが、平等に愛することが条件 ⑤弱者には無条件で手をさしのべる などが基本で、時代の変化に沿って変化していない部分が多いのである。

 今回、「イスラム国」に入った若者には、欧米に移住したイスラム圏の人の子どもも多いそうだ。彼らは、欧米に住み欧米の高等教育を受けたが、欧米文化とイスラム教文化の間で違和感を感じ、就職も閉ざされて行き場がなく、アイデンティティーを求めて「イスラム国」に入っているように見える。しかし、それでは、貧しい国から移民を受け入れた欧米諸国が危険に晒されることになり不公正である。例えば、日本では、どんなに人手が足りなくても、女性が学校や職場にいる時でさえ必ずスカーフやヒジャブを身につけ、中世のように何をするかわからない恐ろしいイスラム教徒だけは願い下げということになるのだ。

(2)イスラム教のハラールと現代の公衆衛生について
 日本からイスラム教国に食品を輸出しようとする場合、イスラム教の戒律にのっとったハラール認証の取得が必要だが、これはイスラム教徒以外の人が現在の公衆衛生学の視点から見れば、不合理な点が多い。何故なら、現在は、紀元600~700年頃には想定されなかった科学的知見や技術がふんだんに使われており、当時は予想だにされなかった汚染もあるからである。

 もちろん、*2-1のように、ハラールの市場開拓の支援にハラールの専門家を使う方法もあるが、それでは本当に必要な規制が行われず、意味のない規制が続けられて、イスラム教徒自身が不幸である。そのため、イスラム教も、現在の公衆衛生学に基づいて世界標準に近い食品衛生規制への改革をした方が良いと考える。それには、*2-2のような公衆衛生に関するハラールの取り決めを、できるだけ世界基準に合わせる方法があるだろう。

(3)イスラム教における女性の地位と世界基準(女子差別撤廃条約)における女性の地位について
 *3-1に書かれているように、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」がイラク人の著名な人権活動家で女性弁護士のサミラ・ヌアイミさんを拘束して拷問した後、公開で殺害したそうだ。これは酷すぎて理解しかねるが、日本も太平洋戦争に負けて日本国憲法が施行されるまでは、女性の権利はかなり制限されたものだったし、男女とも人権侵害されることは多かった。

 また、*3-3には、イスラム国であるスーダンの女子割礼の解説があるが、女子割礼は、女性が力を持ってはならない男性優位の世界で行われているもので、女子割礼を行う理由は、宗教や習慣という理由だけではなく、女子割礼によって女性の性欲をなくして、ほかの男に走らないようにしようとしているのだそうである。

 しかし、*3-2に書かれているように、世界では「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)」が締結されており、その女子差別撤廃条約は、1979年12月18日に第34回国連総会で採択され、女性に対するあらゆる差別を撤廃し、固定的な性別役割分業を打破することを目的とする女性の人権に関する包括的な条約で、国連に加盟する殆どの国が批准しているのだ。

 それにもかかわらず、実際には、国際人権基準は「留保」という手段で差別の撤廃が形骸化・無力化され、イスラムの女性は、国際人権基準(特に女子差別撤廃条約)に照らして、その地位の低さが問題となる。例えば、イスラム教の聖典コーランでは、「女性は男性より劣位にあって保護されるべき存在」として家族の中で低い地位が与えられ、「弱い女性を保護する」という名目で一夫多妻制が維持されている。また、女性は男性を誘惑するものとされ、その害悪を予防するためにヴェールやブルカなど種々の習慣ができたのだそうで、そのほか、一夫多妻制、結婚と離婚、子の親権、後見、女性に対する暴力(夫による暴力、姦通罪に対する刑罰、名誉の殺人、女子割礼)など、世界基準から見れば驚くほどの状況である。

 もともとイスラム教が一夫多妻を許している理由は、中世の戦争下で寡婦となった多くの女性の経済的扶助目的と社会的再生産目的があったからだとされているが、それは、現在の世界では通用しない。つまり、イスラム教国も信仰の自由を保障し、イスラム教自体も改革を行わなければ、欧米文化とイスラム教文化の間で違和感を感じて就職が閉ざされ、行き場がなくなって過激なイスラム教徒になる若者が出るという悪循環は止まらないと考える。また、人手が欲しい国があっても、イスラム教徒だけは御免だということになるだろう。

*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11367885.html
(朝日新聞 2014年9月25日) 米、「イスラム国」打倒訴え 国連でオバマ氏 各国に連携促す
 オバマ米大統領は24日、ニューヨークで開催中の国連総会で演説し、中東の過激派「イスラム国」の打倒に向けた国際的な有志連合に加わるよう各国に求めた。米国が「自衛権」を根拠にシリアで開始した軍事行動への支持や、イラク政府への支援を各国に呼びかけた。
■シリア空爆、自衛権を主張
 オバマ氏は「『イスラム国』は最終的には打倒されなければならない」と表明し、「米国は幅広い有志連合と共に、死のネットワークの廃棄に取り組む」と軍事行動を続ける決意を示した。「米国は単独では行動しない」と述べ、「すでに40カ国以上がこの連合に加わる意向を示した。この取り組みに参加することを世界に求める」と呼びかけた。オバマ氏の国連演説に先立ち、米国のパワー国連大使は23日、「イスラム国」への空爆をシリア領内で実施したことについて、「国連憲章51条に基づく自衛権行使」だとする文書を国連の潘基文(パンギムン)事務総長に提出した。米国はイラク在住の自国民保護などを理由にイラク空爆を続けてきたが、今回、新たな法的根拠を示し、シリア空爆の正当化を図った形だ。文書によると、「イスラム国」の攻撃にさらされているイラクから空爆を主導するよう要請を受けたとして、他国が攻撃された場合に反撃する「集団的自衛権」を行使したとしている。さらに、米国人記者2人が「イスラム国」に殺されたことや、シリアにいるアルカイダ系武装組織「ホラサン・グループ」の米国などへのテロ計画が最終段階に入っていたとの情報を踏まえ、米国は自国民を守る「個別的な自衛権」を行使したと主張している。シリア領内での軍事作戦には、隣接するトルコのエルドアン大統領が23日、「軍事行動に必要な支援を提供する」と表明。英国も軍事支援を検討するなど国際社会で空爆への支持や容認の空気が広がっている。背景には、「イスラム国」が国際社会全体の脅威であるとの認識が強まっている事情がある。中国やロシアも、自国の反政府勢力の一部が海外のイスラム過激派組織と合流したり、「イスラム国」と関係を持つ過激派が自国内でテロに関与したりする事態への危機感を強める。米国が各国への根回しを進めるなか、当事者のシリアのアサド大統領が「テロと戦う国際社会の努力を支持する」と事実上容認する考えを示したことで、反対論は急速にしぼんだ。だが、温度差もある。フランスはシリアからは支援要請を受けていないことを問題視し、シリアには軍事介入しない姿勢を鮮明にしている。ロシアやイランも「シリア政府の同意か国連安全保障理事会の決議が必要だ」などとして、米国に釘を刺した。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140924&ng=DGKDASGM23H1T_T20C14A9MM8000 (日経新聞2014.9.24) 米、シリア領で空爆 対「イスラム国」 サウジなど参加
 【ニューヨーク=吉野直也】米政府は22日、米軍と複数の有志国が過激派「イスラム国(総合・経済面きょうのことば)」を標的にシリア領内で空爆を始めたと発表した。米中央軍によると、サウジアラビア、ヨルダン、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、カタールの中東5カ国が軍事作戦に参加した。オバマ米大統領は23日、国連総会への出発前にホワイトハウスで声明を読み上げ「米国に危害を加えようとする者に安住の地はない」とテロとの戦いへの決意を表明。「米国単独の戦いではない。一定の時間はかかる」と力説した。米メディアは軍や有志国の空爆の開始時間は米東部時間22日午後8時半(日本時間23日午前9時半、現地時間同日午前3時半)ごろと報じた。イスラム国の本拠地、ラッカやハサカ、デリゾール、アブカマル、アレッポの司令部施設や訓練施設、武装車両、補給トラックなどを対象に14回、空爆した。アレッポ近郊には日本人男性がイスラム国に拘束されているとみられている。戦闘機や爆撃機による攻撃だけでなく、紅海とペルシャ湾に展開した複数の艦艇から巡航ミサイル「トマホーク」を47発発射した。「欧米への差し迫ったテロ計画があった」として米軍は国際テロ組織アルカイダ系グループ「ホラサン」の施設も空爆した。米国防総省のカービー報道官は23日の記者会見で、空爆は「大きな成功を収めた。これは始まりにすぎない」と語った。米統合参謀本部のメイビル作戦部長は空爆にステルス戦闘機F22が初めて参加したと述べるとともに、攻撃の96%が高い命中精度を持つ精密誘導弾だったと指摘した。米国務省のサキ報道官は声明を出し、シリア政府に空爆方針を直接伝えていたと明らかにした。アサド政権には敵対行為を取らないよう警告。「同意は求めていない。軍レベルで攻撃の具体的な時期についても一切知らせていない」と強調した。

*1-3:http://www.uraken.net/rekishi/reki-westasia15.html
第15回 イスラム教の基礎はこうして誕生した
○今回の年表
 570年頃 ムハンマドが生まれる。
 581年 中国で隋が建国される。
 607年 小野妹子が遣隋使として日本から隋へ派遣。
 610年頃 ムハンマド、預言者アラーから啓示を受ける。
 618年 唐が建国され、隋が滅亡。
 622年 ムハンマド、メディナに移住(ヒジュラ)。
○ムハンマド、現れる
 ササン朝ペルシアと東ローマ帝国の抗争が激化すると、アラビア半島西部と海を組み合わせた交易路が発達し、その交易路の中継都市として大きく発展したアラビア西部の都市がメッカです。メッカには、遊牧民の信仰の対象であるカーバの神殿もあり、多くの人を集めていました。この都市を5世紀以降支配していたのが、クライシュという部族です。クライシュ族は更に、カーバ神殿周辺に住む身分の高い部族、その周辺の山麓に住む身分の低い部族ら12の部族に分かれます。570年頃、このクライシュ12部族の名門ハーシム家に生まれたのが、ムハンマド(マホメット)です。ムハンマドは、イスラム教の基礎を作り上げた預言者で、6歳で孤児となった彼は、祖父と叔父に養育され、隊商貿易に従事し、誠実な人柄だったらしく大富豪で未亡人のハディーシャに仕事を任され、これが縁で結婚します。当時ムハンマドは25歳、ハディーシャは40歳でした。二人の間には、三男二女が生まれ(ただし男子はいずれも早世)、幸せ一杯のムハンマドは、メッカ近郊の山中で瞑想をするのが趣味で、よく通っていましたが、610年頃、天使を通じて唯一神アラーの啓示を受けます。驚いた彼が妻ハディーシャに相談すると、励まされ、預言者として活動することになります。
○イスラム教の基本
 さて、唯一神アラーの預言者として活動を開始したムハンマド。その後もアラーからの啓示を受け、次のような教えを大成します。特徴は以下の通り。
・偶像崇拝の禁止&多神教への批判・・・人々の精神の堕落を招くから。
・唯一神アラーの前では、人は種族・階級・貧富・関係なく平等である・・・このため、既得権益からは目の敵にされる。
・六信五行(アラー・天神・経典『コーラン』・預言者・来世・天命&信仰告白・礼拝・断食・喜捨・巡礼)
 ★預言者・・・予言ではなく預言。神の意図を伝えるために送られた存在のこと。 アダムやモーセ、イエス=キリストも含まれるが、ムハンマドがその中で最大とされる。
 ★天命・・・自然界で起こる全ての事象はアラーの意志によって起きる。
 ★信仰告白・・・アラーの他に神はなく、ムハンマドはアラーの使徒である、と唱えること。
 ★断食・・・イスラム暦の9月において、1ヶ月間日の出から日没まで一切飲食を絶つこと。飢えを我慢することによって普段飲食できることを神に感謝するとか。なお、日没後は飲食可能。
 ★喜捨・・・収入に応じた税金。
 ★巡礼・・・なるべく一生に一度、メッカのカーバ神殿にお参りに行くこと。
・ムスリム(六信五行の実践と神に身を捧げた者)の存在。
・経典『コーラン』・・・コーランとは、読誦すべきもの、という意味。7世紀半ばに今の形に。
・安息日は金曜日
・女性は肌を見せないように。
・豚は食べてはいけない。
・男性は妻を4人まで持つことが出来る。ただし、平等に愛することが条件。
・弱者には無条件で手をさしのべる。
ムハンマドが考えたものもあれば、その後少しずつ変容したものもあるかも知れませんが、これがイスラム教の基本のようです。

<ハラールと現代の公衆衛生について>
*2-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30010
(日本農業新聞 2014/9/26) ハラール認証に注目 茶で初の取得 鹿児島・JAあおぞら
 鹿児島県のJAあおぞらは、海外向け販売戦略としてイスラム教の戒律にのっとった「ハラール」認証を特産の茶で取得し、26日から日本国内や東南アジア諸国連合(ASEAN)、中東諸国で販売を始める。茶でのハラール認証取得はJAで初めて。国内で茶の消費が伸び悩む中、世界的な健康志向や和食の世界遺産登録を追い風に、新たな市場開拓に乗り出す。
●国内外 きょうから販売
 JAはリーフ茶を手始めに、黒糖と混ぜたタイプや粉末タイプ、抹茶などの商品も展開していく。イスラム圏での販売や、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け土産用に国内での販売を進める。26日には、内村常夫会長らが東京都内で会見を行う。JAは世界への輸出を視野に、国際標準化機構(ISO)9001やJGAPの取得、総合的病害虫・雑草管理(IPM)などにも積極的に取り組んでいる。JA指導購買課の取違弘一茶業センター長は「東京のハラール認証レストランで提供される他、羽田、成田空港やイスラム諸国で販売できれば、鹿児島県産茶、国産茶の可能性が広がる」と期待する。JAは、ハラールの市場開拓の支援事業を手掛ける非営利一般社団法人ハラル・ジャパン協会の一般会員となっており、海外販路拡大や国内販売のサポートを受ける。同協会は「世界人口の4分の1がイスラム市場。日本食に欠かせない茶が今後、イスラム市場にどのように入っていくのか注目している」としている。今回、認証した機関は、日本国内で認証やハラール関連の支援事業を行うマレーシアハラルコーポレーション(MHC、東京都港区)。アクマル・アブ・ハッサン社長は「来日したイスラム教徒が困るのはハラール認証の食品や商品、飲食店などが少ないこと。東京オリンピックも控え、ハラールはビジネスチャンス」と強調する。ハラール認証は、各国の認証機関などが付与する。認証取得の難易度や期間は国や地域で異なり、中でもサウジアラビアやマレーシアの規格が厳しいという。国内では、社団法人日本ムスリム協会など複数の機関が認証を行っている。
●百貨店はネット使い売り込み
 三越伊勢丹ホールディングス(東京都新宿区)は、「ハラール」認証を取得した食品を取り扱うオンラインショップ「ハラール・フードセレクション」を24日にオープンした。扱う商品は、ステーキ用黒毛和牛や、熊本県の地鶏「天草大王」のローストチキン、しょうゆなど26点。販売動向をみて、さらに商品を増やすか検討する。10月1~7日には、伊勢丹新宿本店の食品売り場で、期間限定でハラール認証商品のコーナーを設ける予定だ。同社は「イスラム圏からの観光客と日本在住者が増え、ハラール認証商品のニーズが高まっている」(広報)と需要に期待する。

*2-2:http://www.maff.go.jp/j/chikusan/shokuniku/lin/l_yusyutu/pdf/j1.pdf
アラブ首長国連邦 行政事務局(GSM) 公衆衛生・環境部 決定第 GSM/32 号 2005 年5 月1 日付
海外においてアラブ首長国連邦を対象とするハラールと畜を監督するイスラム協会又は機関の認証に関する条件及び手順について
・GSM の組織構成については、1980 年改正の連邦最高評議会(FSC)決定第2号に従うこととする。
・食品安全委員会及び獣医学的統制委員会の行う組織規制に従うこととする。
・以下の内容について GSM 評議会の決定に従う。
-海外においてアラブ首長国連邦を対象としたハラールと畜を監督するイスラム協会又は機関の認証規制及び規則に関する決定第3/33/92-3 号(1992 年5 月12 日付)及び第26/33/92-2 号(1992 年5 月26 日付)。
-ハラールと畜証明書の範例(様式)の認証に関する決定第3/33/92-2 号(1992
年5 月12 日付)。
-衛生要件の認証及び UAE におけるイスラム法に関する決定第8/52/2000 号(2000 年2 月9 日付)(食肉処理場の設立及び運用に関する法的及び衛生的要件の指針について)
・イスラム法に従った動物のと畜についての UAE の基準第993/1993 号に従うこととする。
・GSM の関係委員会の勧告に従うこととする。
・GSM 評議会の決定第37/53/2000 号(2000 年4 月19 日付)に従うこととする。
・GSM 評議会の第65 回会合議長と後ほど協議することとする。
・公衆の利益の要求に従うこととする。
第1章
海外においてアラブ首長国連邦を対象とするハラールと畜を監督するイスラム協会又は機関の認証に関する条件について
決定第3/33/92-3 号(1992 年5 月12 日付)及び第26/33/92-2 号(1992 年5 月26 日付)における条件は以下の通り改正する。海外においてアラブ首長国連邦を対象とするハラールと畜を監督することについて、GSM より認証を受けようと希望するイスラム協会又は機関(センター、組織、連盟又はその他類似名称)は、以下の条件を満たすこととする。
1.ハラールと畜を監督するイスラム協会又は機関は、当該機関が存在する国内において、認知又は周知されており(設立されており)、又国内の全ての法的要件に合致していなければならない。
2.起源となる国に永住権を持ち、従業員の責任及び義務、ハラールと畜証明書の署名権限者及び実行者(acting person)の氏名及び役職を記載した業務諸表を有し、自らのロゴマークの入った公的用紙を所有すること。
3.輸出国におけるハラールと畜を実行する食肉処理場の効果的なコントロールに必要な技術及び人的資源のある施設を有すること。
4.イスラム法に従った動物のと畜についての UAE の基準第993/1993 号及び、GSM による動物のと畜について合法的(正当な)要件(決定第8/52/2000 号(2000 年2 月9 日付))に従うこと。
5.決定第 3/33/92-3 号(1992 年5 月12 日付)に従い、UAE により認証されている範例に類似したハラールと畜証明書を発行し、証明書にはシリアル番号を付すこと。
6.当該イスラム協会又は機関はハラールと畜を所管する部局を有し、その部局は業務に関して必要なすべての記録(ハラールと畜の監督者、と畜者、監督されたと畜場、発行されたと畜証明書、必要な時又はGSM の関係委員会から求め
られた時に紹介する関連文書等)についての文書管理システムを有すること。
7.当該イスラム機関はと畜場の検査員及び監督者を独自に有し、それぞれの検査員により監督されると畜場の数は3 を超えてはならない。
8.いかなる営利企業又は個人も、UAE に関連したハラールと畜の監督を任命されてはならない。
9.当該イスラム協会は、検査員及び監督者の選定についてのシステムを有し、彼らに対して労働カード(労働許可)を発行すること。
10.当該イスラム協会は、検査員及び監督者の効率性及び技能向上のためのトレーニングのシステムを有すること。
11.当該協会又は機関は、イスラム教徒に対する慈善、人道支援、援助又はその他の奉仕活動に従事していること。
12.証明書を発行するシステムを有し、スタンプ及びその他の認証のサインを保持(keep)すること。
13.GSM に対してハラール証明書にサインする権限者署名のコピーを送付すること。実行者も同様。
14.当該協会又は機関は、GSM に対し、その活動、業績及び発行したハラール証明書の枚数について記した年次レポートを提出すること。
15.いかなる協会又は機関も、上記条件に同意しない限り認証されず、認証については下記第2章の手続きに従って行われる。
第2章
海外においてアラブ首長国連邦を対象とするハラールと畜を監督するイスラム協会又は機関の認証に関する手順について
海外においてアラブ首長国連邦を対象とするハラールと畜を監督することについて、GSM より認証を受けようと希望するイスラム協会又は機関(センター、組織、連盟又はその他類似名称)は、以下の認証条件及びそれに伴う義務に従うこと。
1.当該イスラム協会又は機関は、第1章で述べた、海外においてアラブ首長国連邦を対象とするハラールと畜の監督をするイスラム協会又は機関の認証についての全ての条件を満たすこと。
2.当該イスラム協会又は機関が要件を順守していることを証明するために必要なすべての書類を添付した上で、公的ルートにより(official channels)GSM に対して申請書類を提出すること。さらに、GSM の関係委員会の代表団が必要とあれば、その協会又は機関のコンプライアンスを確認するために必要となる旅費、宿泊費及び移動に係る経費について全額を支払うことを確約する文書を提出すること。
3.もし申請が要件を満たさない場合、当該イスラム協会又は機関の要求は GSMの関係委員会により、受理するか拒否するかが評価される。
4.もし関係委員会が承認を勧告した場合、本件はGSM 評議会に送付され、当該イスラム協会又は機関が認証されるか、訪問してそのコンプライアンスを確認するための現地訪問が勧告される。その認証については、訪問調査の結果及び訪問した代表団の勧告に基づいて決定される。
5.もし関係委員会の勧告に基づき(3)、又は訪問代表団の調査結果に基づき(4)申請が否認(拒否)された場合、当該イスラム協会又は機関は、公的ルートを通じて、否認または拒否の理由を知らされるものとする。当該イスラム協会又は機関は、拒否の原因を訂正し、要件に合致するようになれば、同様の手順に従って再申請することができる。
6.もし申請が受理された場合、当該イスラム協会又は機関は、GSM 評議会の定める一定期間認証され、GSM から該団体に対し、当該国内でUAE 向けのハラールと畜を監督する権限を付与する認定証が発行される。必要とあれば、GSMの関係委員会は当該団体に対し、当該団体が正当に責務を果たしているかを確認し、又は再評価や認証の更新を行うため、調整又は監督のための現地訪問を行う。
第3章
本決定は、在UAE の在外公館及び海外のUAE 大使館で配布するため、行政当局及び外務省に回付されるべきである。
第4章
本決定は、施行日より発効する。
(署名)
事務総長 ヤシン・モハメド・ビン・ダルビッシュ

<イスラム教における女性の地位と世界基準(女性差別撤廃条約)について>
*3-1:http://www.asahi.com/articles/ASG9V34VWG9VUHBI00M.html?iref=comtop_6_04 (朝日新聞 2014年9月26日) イスラム国、イラクの女性人権活動家を公開殺害
 国連イラク支援団(UNAMI)は25日、イラク北部の主要都市モスルで、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」がイラク人の女性弁護士を拘束、拷問後に公開で殺害したとして、「おぞましい犯罪」と非難する声明を出した。声明によると、殺害されたのは著名な人権活動家でもあるサミラ・ヌアイミさん。「イスラム国」による宗教文化施設の破壊に批判的なコメントをフェイスブックに書き込んだことを理由に、17日に自宅で拘束された。「背教行為」で有罪とされ、5日間の拷問を受けた末、殺害されたという。AP通信によると、ヌアイミさんは、夫と子ども3人と自宅にいたという。「イスラム国」は6月にモスルを制圧後、国家樹立を一方的に宣言するなど、イラクやシリアで勢力を急速に拡大している。

*3-2:http://daigakuin.soka.ac.jp/assets/files/pdf/major/kiyou/19_houritsu4.pdf (法学研究科法律学専攻博士前期課程修了 岩本珠実)イスラムと女性の人権 国連での討議をとおして
はじめに
 本論文では、イスラムにおける女性の人権に関して、国際社会はいかに考え、行動すべきか、国連、特に女性差別撤廃委員会(Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women、CEDAW)における留保に関する議論をとおして考察する。「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(以下、「女性差別撤廃条約」ないしは「条約」と称する)は、1979年12月18日に第34回国連総会で採択された。本条約は女性に対するあらゆる差別を撤廃し、固定的な性別役割分業を打破することを目的とした女性の人権に関する包括的な条約である。現在までに国連加盟国のほとんどが加盟している。その加盟国の多さから、国際社会全体がこの条約の趣旨を支持しているようにみえる。しかし実際は、国際人権基準、ひいては西欧的な価値観に嫌疑を抱く諸国によって留保という手段で本条約は形骸化され、無力化されている。この条約の抱える問題点こそ、多様な宗教観の共存する国際社会において、いかにして共通の人権概念を構築するか、という今日の国際社会が抱える課題なのである。留保問題を考えることが、多文化・多宗教社会の相互理解を見出す糸口になると考える。本稿では、女性観の違いから対立するイスラムと非イスラムの主張を考える。まず第1章では、イスラムにおける女性の状況を述べ、国際人権基準、特に本稿で扱う女性差別撤廃条約の基準に照らして、家族関係における女性の地位の低さが問題となることを指摘する。第2章は、「女性差別撤廃条約におけるイスラムとの衝突」と題し、条約に抵触するイスラムの主張についての委員会の反応とイスラム諸国の対応を見る。第3章では対立の分析と若干の考察を試みることにしたい。
Ⅰ.イスラムにおける女性の人権
 本章では、イスラム女性の人権について、イスラム各国の制度を検討した上で、女性差別撤廃条約との関係で問題となる点を指摘する。
1.イスラム女性の現状、制度
 イスラム教の聖典『コーラン』と『ハディース』では、女性は男性より劣位にあり、保護されるべき存在であるとされている。そのため家族においては低い地位が定められ、弱い女性を保護するという目的で一夫多妻制ができた。また、女性は男性を誘惑するものとされたため、その害悪を予防するためにヴェールやブルカに代表される種々の男女隔離の習慣ができたのである。このように女性に関するイスラム法の記述がある一方で、実際のイスラム諸国の女性に対する地位はいかに規定され、認識されているのだろうか。イスラム国といってもその地域は広く、女性に対する扱いも一様ではない。女性解放が進む地域がある一方で、いまだに慣習に縛り付けられている地域がある。本節では、イスラム法の教えを各国は現在どの程度守り、または改革しているのか、イスラムと女性との問題で特に議論の的となる(1)一夫多妻制、(2)結婚、離婚、後見、(3)女性に対する暴力について、それぞれ述べる。
(1)一夫多妻制
一夫多妻制はイスラム諸国の間でもその是非が分かれる問題である。一夫多妻制について、『コーラン』「女人の章」第3節はこう規定する。「気に入った女性を二人なり三人なり、あるいは四人なり娶れ」。これは、妻を四人まで持つことを肯定しているかのようにみえる。しかし、この後以下の記述がある。「もし妻を公平に扱いかねることを心配するなら、一人だけを娶っておけ。お前たちがいかに切望しても、女たちを公平に扱うことはできない」(第129節)。近代主義者の解釈によれば、この第129節を重視して一夫多妻制は原則的に禁止とされている。しかし、伝統的な解釈を支持する者も多く、いまだひとつの選択肢となっている。現在、中東、北アフリカ諸国で一夫多妻制を明文で禁止しているのは世俗化が進むトルコとチュニジアだけである。トルコ、チュニジアほどではないが、一夫多妻制を制限しようとしている国は多い。二人目以上の妻を娶る際には裁判官の許可を条件としているのは、シリア、イラク、パキスタン等である。すでに結婚している妻の了承を条件とするのはモロッコ、ヨルダン、エジプト、アルジェリアなどである。このように一夫多妻制に関するイスラム法の適用が制限される潮流のなかで、逆にイスラム回帰が進む国もある。イランは1979年のイスラム革命によって、妻は夫の重婚に対して異議を挟むことはできなくなった。ただし、法的に一夫多妻制が認められている国でも複数の妻を持つ男性はきわめて少ない。それには経済的、倫理的規制があるからである。結婚の際には、男性は結納金と住居を用意しなければならないため、一般の男性にとっては一人の女性と結婚することも高いハードルである。複数の妻を持つことができるのは、結納金と住居を用意することのできる裕福な男性だけである。また、倫理的規制としては、イランやサウジアラビアのように法的、社会的に一夫多妻が認められている国でも、重婚をした男性に対する周囲、特に女性の反応は冷ややかである。以上のように、一夫多妻制を法的に規制しようとする国が増えており、また、一夫多妻制に関する法的な規制のない国でも、経済的、倫理的な理由から実質的には一夫一妻制がほとんどである。しかし、一夫多妻制を法的に規制していても二番目の妻との結婚が無効にならない、社会的慣例から使用されない、法的規制のない国では経済的に強みのある男性にとって一夫多妻は自由など、女性にとっては厳しい状況が続いている。
(2)結婚、離婚、後見
① 結婚
 まず、結婚に当たって問題になったのが幼児婚である。イスラム法では男性は12歳、女性は9歳という年齢での結婚が可能である。そしてその場合、自分の意思が反映されることは少なく、親族同士が後見人や代理人として結婚を決めてしまう。嫁ぎ先での女児の権利や発言力はほとんど期待できない。ただし、現在では近代法が取り入れられつつあり、幼児婚も否定されるようになってきている。エジプトでは1924年に女子の最低結婚年齢を16歳にまで引き上げた。また、就学率の上昇と共に婚姻適齢とされる年齢は上がってきている。イランは法律上の最低結婚年齢は女性が9歳だが、実際の平均婚姻年齢は1996年時点で都市で22.5歳、農村部で22・3歳であった。
② 離婚
 コーランの規定によると、離婚は夫が三度離縁を宣言すれば成立する。ムハンマドは身勝手な理由での離縁は戒めていたとはいえ、夫の力は絶大であった。そのため、法改革でこのような夫の一方的な離縁権を規制する国が多い。シリアは1953年、三度の離婚宣言だけの離婚の成立を否定し、チュニジアは1956年、法廷外の離婚はすべて無効となった。一方、妻からの離婚請求は厳しい状態が続いている。イランではイスラム革命により女性からの離婚請求がほとんど不可能になった。エジプトでも、ほとんどの場合、離婚を決めるのは男性である。女性は夫が別の女性と結婚した場合、離婚を請求する権利があるが、離婚後の女性は貧困と戦うことになるため、容易に離婚を請求することはできないのが実情である。
③ 離婚後扶養
 コーランは婚姻にあたって、夫に扶養義務があり、妻に扶養される権利があると規定している。よって、女性は一般的に自活手段をもっていない。そのため、女性だけでは経済的自立が困難で、離婚の際には女性の扶養義務が大きな問題となる。夫からの離婚請求に対して、シリアやチュニジアでは、法律でしかるべき補償を定めている。また、多くの国で慰謝料が支払われることになっている。しかし、ナワル・エル・サーダウィは「一時的な乏しい資格に過ぎず、ちょっとした口実でまもなく停止されるものだ」と指摘している。また、女性の側から離婚を請求するには、逆に夫に多額の慰謝料を払う必要がある。よって経済的にゆとりのある女性以外は、自分から離婚をするのは実質的に不可能である。
④ 子の親権
 イスラム法では、12歳以上の子どもの親権は男親にある。さらに、シーア派の解釈によると男児の場合は2歳まで、女児の場合は7歳までしか女性の親権が認められない。革命後のイランではこのシーア派の解釈がそのまま適用されることになった。ところが、イラン・イラク戦争の激化に伴い、夫の戦死と共に子どもの親権を喪失する母親の問題が深刻化したため、1985年、殉教者の妻には子の養育権が認められることになった。しかし、財産、教育、その他重要な事柄に対する決定権を全て含んだ親権は認められていない。
(3)女性に対する暴力
 イスラム法で規定されている、もしくは規定されていると思われている行為で、女性に対する暴力として特に問題になっているのが、①夫による暴力、②姦通罪に対する刑罰、③名誉の殺人、④女子割礼、である。それぞれについての現状と取り組みを概観する。
① 夫による暴力
 女性に対する暴力を正当化する根拠に挙げられるのは、『コーラン』「女人の章」の「逆らう心配のある女たちにはよく説諭し、寝床に放置し、また打ってもよい」との記述である。家庭内暴力に関する英国の研究によると、ムスリム社会の出身者、生活者であった男性と結婚している女性は、英国の他の女性よりの8倍も配偶者によって殺害される可能性が高いという。また、有川によると、バングラディシュ農村において、既婚女性の約半数が夫による身体的暴力を受けたとしている。また、女性に対する暴力は、イスラムの教えに則ったものとして、被害者である女性自身によってかなりの程度正当化されている。
② 姦通罪に対する刑罰
 イスラム法では既婚者以外の性的関係は厳重に禁じられており、罰則も厳しい。イランやサウジアラビアでは、既婚者の姦通には石打ちによる死刑が行われる。女性への暴力として特に問題となっているのが、レイプ被害者の処刑の問題である。姦通罪を成立させるには四人の男性の証言か、本人の自白が必要である。姦通罪が成立しない場合、逆に訴えた側が中傷罪として処刑されるのである。レイプ被害者が処刑される規程に関しては、反撥が多く、法改正に向けて動き出す国も見られる。パキスタンではこのほど、レイプ被害者が姦通罪に問われてしまう「ハッド法令」を見直す改正案が、賛成多数で下院を通過した。しかし、イスラム原理主義政党は猛反発をし、全議員の辞職を打ち出す等、改革への道のりは容易ではない。
③ 名誉の殺人
 家族の名誉を傷つけたという理由で婚前の若い女性が家族や親族の男性に殺害されるという「名誉の殺人」は、今日でも世界の広範囲で起こっている。イスラエル、パレスチナ、レバノン、トルコ、エジプト、モロッコ、ウガンダ、ブラジル、ヨルダン、サウジアラビア等で報告されている。全世界に広がるこの慣習は、秘密裏に行われ、自殺や事故とされることが多いため、正確な数は把握されていないが、年間5000人とも、6000人とも言われている。「名誉の殺人」はイスラム教と関連付けて考えられていることが多いが、実際はイスラムが広まる以前からの慣習と考えるのが妥当だろう。それは、「名誉の殺人」がイスラム国以外でも見られることから推測できる。また、教義にてらせば、イスラム教では、刑の執行はカリフの権限であり、「名誉の殺人」に見られるような家族による処刑は認められていない。また、婚外交渉は禁止されているが、それは男女を問わず、若い女性だけを狙い打ちにする「名誉の殺人」とは相容れない。このように、多くの点でイスラムの教義と矛盾する。しかし、この慣習のある地域では、「名誉の殺人」をイスラム教徒自身を含め、イスラム教の教義と考えている。
④ 女子割礼
 女性に対する割礼は、広くアジア、アフリカ、中東の各地で見られ、その数は8000万人にも達するとの統計がある。ただ、1982年のレポートでは約8400万人、1993年の調査によれば約1億1400万人と、女児が誕生する限り女子割礼人口は増え続けている。預言者は「割礼せよ」と述べたわけではないのだが、多くのイスラム地域の人々は、女子割礼がコーランに書かれていると思い込んでいる。国際的なキャンペーンによって女子割礼の有害性が指摘されるようになり、法的に規制する国も増えている。しかし、女子割礼が禁止されたとしても、人々の間で意識が変わらなければ密かに続行される可能性は高い。エジプトでは自らの意思で隠れて割礼を受ける女性が増えていると言われている。それは、娘が外に出ることを心配する両親に対して、きちんと割礼を受けたのだから教育を受けさせてほしいとか、外で働かせてほしいとか、自分の決めた人と結婚させてほしいという交渉の切り札として使うためだという。女性を縛るための割礼が逆に女性の解放をもたらすという逆説的な状況が生まれているといえる。
2.女性差別撤廃条約との抵触点
 以上述べたイスラムの慣習については女性差別撤廃条約のレポート審議で女性差別として問題となったものが多くある。前述のとおり、イスラムにおける女性の人権観については各国対応が分かれており、一様ではない。それでも概して、イスラムでは結婚や家族に関する権利の考え方が西欧諸国とはかなり異なっている。よって西欧諸国主導で作成された女性差別撤廃条約の条文とイスラムの価値観の抵触が生まれるのである。本節では前節であげたイスラム法的慣習の女性差別撤廃条約との抵触点を指摘する。まず、一夫多妻制は、第16条1項(a)「婚姻をする同一の権利」に抵触する。親が子の意思に関係なく結婚相手を決める幼児婚は、第16条1項(b)「自由に配偶者を選択し及び自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利」、第16条2項「児童の婚約及び婚姻は、法的効果を有しないものとし、また、婚姻最低年齢を定め公の登録所への婚姻の登録を義務付けるためのすべての必要な措置がとられなければならない」と対立する。男性からの離婚が容易である点は、第16条1項(c)「婚姻中および婚姻の解消の際の同一の権利及び責任」に触れる。子の監護が父親に有利な点は、第16条1項(d)「子に関する事項についての親(婚姻をしているかしていないかを問わない。)としての同一の権利及び責任」、同項(f)「子の後見及び養子縁組又は国内法令にこれらに類する制度が存在する場合にはその制度に関る同一の権利及び責任」に抵触する。女性への暴力については、女性差別撤廃条約に直接の言及はない。しかし、第12条1項「保健の分野における女子に対するあらゆる差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとる」などとの関係により、割礼のように女子の健康に有害となる伝統的慣習を根絶するための「一般的勧告第14」が、1990年第9会期において採択された。また、夫による暴力や名誉の殺人など、女性に対する暴力全般については、1987年に「一般的勧告第12」が、1992年に「一般的勧告第19」が採択された。これにより、女性に対する暴力も、女性差別撤廃条約で禁止されているとの解釈がなされたのである。また、委員会は、締約国に、あらゆる性に基づく暴力を撤廃するために適切かつ実効的な措置をとることを勧告している。この一般的勧告は、委員会による条約解釈の意味を持ち、各国のレポート審議やコメントに当たっての解釈原理となる。このように、特に婚姻・家族関係における差別撤廃を定める第16条に、多くのイスラム法及びイスラム法的慣習が抵触していることがわかる。そしてこの16条こそ、女性差別撤廃条約が最重要視する条項なのである。(以下略)

*3-3:http://www.jca.apc.org/praca/back_cont/02/02Sudan.html 
スーダンにおける女子割礼
 私はレイラ。モスクワ生まれです。父はスーダンの北部出身ですが、母はモスクワ近郊の出身ですので、私の国籍はロシアです。私は、モスリムの女性割礼についてのリサーチャーとしての仕事をしています。特にヨーロッパに在住のモスリム女性の文化的アイデンティティーや、割礼にたいする意識の調査などをおこなっています。昨年、米国ワトソン基金奨学金留学生に選ばれ、今年6月には、米国に向かいます。女子割礼について日本の方はあまりご存じないと思いますので、少し説明させてください。
 割礼そのものは、イスラム教以前からすでにアフリカに存在していました。男子の割礼と異なり、女子割礼は、男性優位の世界の中でおこなわれています。女性は力を持ってはいけないのです。それなのに男性性器の名残として、クリトリスがあります。だからクリトリスは悪魔のシンボルといわれています。出産の時、赤ん坊がクリトリスに触れると、死んでしまうという言い伝えまであります。割礼には約4種類のタイプがあります。スンナ割礼、陰部摘出、陰部封鎖、陰部刺切です。スンナ割礼は、陰核包皮を円周状に切除することです。陰部摘出は、包皮のみでなくその他の部分まで含めて切除します。陰部封鎖は、切除する部分の大きさは地方によって異なりますが、切除した後、膣下端を完全には塞がらないようにしながら、切除部分を縫いあわせたり、癒着させたりします。癒着させるためには割礼を受けた子どもの太股を縛り、何日間かそのままにしておきます。陰部刺切は会陰部を裂いたりもします。女子割礼をおこなうことは、なぜ男にとって必要なのでしょうか。宗教上のこととか、昔からの習慣だともいわれていますが、それだけではありません。男性にとって女性は性欲を持ってはいけないのです。割礼により女性の性欲をなくし、ほかの男に走らないようにしようとしているのです。女性は女性で、男性に快楽を与えるためはこの行為が必要だと思っています。つまり、男はいつでも自由であるのに、女は小さいときから男に従属しなければならないという考え方なのです。割礼を受ける年齢はまちまちで決まってはいません。ただ、女の人がその行為をおこなうので、あまり大きくなると、女では抵抗できないよう体を押さえることができないので、小さいときにおこなうのが普通です。私の従姉妹二人は、12才と14才で受けました。フランスのスーダン人の子供の例ですが、生後3週間で受け、出血多量で死亡したこともあります。また、妊娠後割礼を受ける場合もあります。割礼により死亡する場合もたくさんあります。消毒もしていない剃刀によって感染症となったり、炎症を起したり、出血多量によったりです。あるいは、生理の血が体外に出なくなったためという場合もあります。ただ、割礼後何年も経ってから死亡するようなケースは、それが割礼のためなのかどうかはっきりしないこともあります。割礼による内面的な問題として、母親が娘にそれをおこなうことにあります。そのために、母子関係に精神的苦痛をおよぼし、そのことを引きずっていかなければなりません。そういった意味で、女性同士の友人関係は、表面的になってしまいます。心の奥では相手を信用してはいないのです。はじめにもお話しましたように、私はヨーロッパでモスリムの女性の割礼についてのリサーチをおこなってきました。その結果、ヨーロッパと、スーダン本国との割礼にたいする考え方の興味深い相違についてはっきりしました。ヨーロッパのスーダン人は、貧しい人たちはこの習慣をやめたいと思っているのですが、裕福な人たちは続けたいと望んでいます。その理由として彼女達は、経済的には不自由がなくても、差別されていることをはっきりと感じているのです。そのため、伝統的なほこりを捨てないためにも、割礼をおこなっているのです。それにたいし、スーダン国内では、貧しい人たちは習慣として続けようとしていますが、裕福な上層階級は悪い習慣としてやめたいと思っています。つまり、ヨーロッパ在住の人と、国内にいる人では、とらえかたが全く逆になっているのです。直接ヨーロッパの内にいるか、ヨーロッパの目を気にするかの違いです。ですから、スーダンはイスラム法による政策をおこなっていますが、割礼を法的に認めている場所と、認めていないところとがあります。男優位の世界が割礼をおこなわせているのです。スーダンでは、常に男が一番で女はその次でしかありません。そして子どもたちは一番最後です。ですから子どもたちはいつでも飢えています。兵隊が、ノートや本を買いに行く子どもたちに銃をあて、金を奪うような状態なのです。外国からの援助にかんしてですが、スーダンにいる国連の人たちは、ベンツを乗り回しています。そのベンツのガソリンで、1年分の村の食料がまかなえるのです。彼らはただ、金をつかうだけです。割礼は大嫌いです。でも、日本人にとってスーダンは遠すぎます。スーダンだけではなく、第三世界すべてがそうです。援助はとても難しい問題です。


PS(2014.10.2追加):*4-1のように、インドのタタグループはアフリカの若者を対象に奨学金を実施して、アフリカの大学や大学院に送っており、その中には女子学生も多く、アフリカ女性の社会進出を後押ししているそうだ。また、タタグループは、これを世界で展開する企業の社会的責任と考え、女性の人材育成や登用も行っている。一方、日本では、*4-2のように、何とかかんとか言って女性を待遇の悪い非正規社員や派遣社員とし、女性から搾取してきたが、これは経営者が持っている理念の違いだ。

  
 取締役の女性比率         就業者・管理職の女性比率  

*4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141002&ng=DGKDZO77830500S4A001C1FFE000 (日経新聞 2014.10.2) 世界で社会貢献 「清廉」の信頼感、活力に
 インドのタタグループがアフリカの若者を対象に実施している奨学金。2006年から年間30人程度を奨学生として選び、ネルソン・マンデラ・メトロポリタン大学などアフリカの大学や大学院に送り込む。女子学生も多く、アフリカの女性の社会進出を後押しする。タタが世界で展開する企業の社会的責任(CSR)活動の一環だ。
●慈善財団が株
 タタグループの統括会社であるタタ・サンズ株の66%を握るのはタタ一族の慈善財団。「利益を社会に還元する」という理念に沿い、巨額の配当収益を農村支援や教育、医療、文化などに投じている。この10年で財団や傘下企業が投じたCSR費は800億ルピー(約1400億円)に上る。利益を追うだけでなく、社会貢献を重視する姿勢は、例えば、汚職が横行するインドにあって「清廉なタタ」という評価につながる。タタ製鉄の企業城下町である東部ジャムシェドプールでは、街の整備や水道、電力供給などをタタ自らが手掛け、地域や従業員の求心力を高めてきた。ムンバイにあるタタグループの本拠「ボンベイハウス」。今年で生誕175年となる創業者ジャムセトジー・タタ氏の肖像画とともに同氏の言葉を示した記念の盾が置いてある。「企業にとって、社会はステークホルダーの一つではなく、存在目的そのものだ」。タタグループ総帥のミストリー氏が昨年立ち上げたタタ・サンズの経営諮問機関のメンバーの一人でもあるムクンド・ゴビンド・ラジャン氏は「タタはいまや世界企業だ。良き企業市民であり続けてきたタタの理念とインドで得てきた信頼を世界に広めたい」と言う。今年8月には米国の広告大手JWTと契約し、世界で独自の社会貢献活動を進めようとしている。
●女性登用目立つ
 社会との共生を目指す理念は人材育成にも表れている。タタ・サンズが運営する経営者育成プログラム「タタ・アドミニストレーティブ・サービシズ(TAS)」はグループ総力で“英才教育”を施す取り組みだ。毎年、20歳代の40人程度を選び、100社超の傘下企業のなかで多様な事業や部門を経験させていくが、最近は女性の登用が目立つ。象徴はインドで話題の34歳の女性経営者、アバニ・ダブダさん。米スターバックスとのインド合弁の最高経営責任者(CEO)だ。合弁は12年の事業開始以来、50店以上を開設し、業績も好調で評価も高まっている。タタグループは20年までに少なくとも1千人の女性幹部を育てるという。タタが創業140年余りインドで育んできた独特の企業理念は成長の活力ともなってきた。今後、グローバルな事業展開で国外企業との連携も増える中で、独特の企業文化をいかに生かしていくかも課題になりそうだ。

*4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141002&ng=DGKDASFS01H25_R01C14A0PP8000 (日経新聞 2014.10.2) 女性活躍本部、10日にも初会合
 政府は3日の閣議で、女性の活躍推進の司令塔となる「すべての女性が輝く社会づくり本部(本部長・安倍晋三首相)」の設置を決める。10日にも初会合を開き、非正規社員の待遇改善を後押しする行動計画の策定や母子家庭への支援体制の強化など、来春までに実施すべき女性に関する具体策の骨子案をまとめる。女性の再就職を後押しする行動計画も年内にまとめる方針だ。


PS(2014.10.2追加):イスラム圏からの留学生に、「学生食堂でイスラム教の戒律に沿ったハラル食を出す」「授業の合間にお祈りができる礼拝スペースを設ける」という教育方針は正しいだろうか?私は、イスラム圏からの留学生も、グローバルな人材として、日本を始め世界のどこへ行っても活動できるようになることが留学の目的であるため、ハラール食に固執したり、礼拝スペースがなければやっていけないことを薦めるのではなく、多様な文化があることを学ばせる方が価値があると思う。つまり、「それをしなくても罰は受けないし、より合理的なこともある」ということを学ぶのも、留学の意味なのだ。

*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141002&ng=DGKDZO77824640R01C14A0TCQ000 (日経新聞 2014.10.2) ハラル対応学食、留学生に安心感 イスラム圏から急増、神田外語大、土日は学外に開放 埼玉大、弁当の開発も検討
 学生食堂でイスラム教の戒律に沿った「ハラル食」を提供したり、授業の合間などにお祈りができる礼拝スペースを設けたりする大学が増えている。インドネシアやマレーシアなどイスラム圏からの留学生が急増しているためだ。生活の基本である食について安心できれば留学は充実する。留学生の声を拾い、今どきのキャンパス事情を探った。「どんな調味料なのかわからないからコンビニで食品を買えないし、自炊もできない。食堂でハラルメニューが食べられて、とても助かる」。9月にインドネシアから神田外語大学(千葉市)へ留学に来たフェルリアンディ・ロッビさん(21)はこう話す。この日食べたのはハラル対応のうどんとエビの天ぷら。調味料や調理器具まで、すべてイスラム教徒の戒律に配慮したものだ。食堂を利用するまでは「外食はパンだけだった」といい、ハラル食が食べられることに安堵の表情を浮かべる。神田外語大は今春、学生食堂を改装オープンした。東南アジア各国の食文化を体験できるメニューや内装にしたほか、国内の大学施設では初となる「ムスリムフレンドリー・ハラール認証」を日本アジアハラール協会(千葉市)から取得。「ハラル食」を提供したり、礼拝スペースを設けたりして、イスラム圏からの留学生に配慮した。9月6日からは土日限定で学外の市民にも食堂の開放を始めた。東南アジア各地のセット料理やビールなどを提供するほか、ハラル食が食べられるプレートも用意した。オープン初日には開店前から行列ができ、約420席はほぼ満席の状態。土日の2日間、家族連れなど計1320人が来店した。「想像以上に注目度が高くて驚いている」(神田外語大)。名古屋工業大学(名古屋市)の生協は5月、イスラム教徒の留学生の要望を受け「ハラール推奨メニュー」をつくった。イエローチキンカレーなど2品を日替わりで提供し、毎日約20食が売れる。厳密にハラル食と認定されるためには、食材の加工工場の機械を洗う際にアルコールを使っていないなど、数多くの条件をクリアする必要がある。しかし、学食で実現するには不可能な条件も数多くあったため、チェックリストを作成。留学生にはハラル食の条件を満たしていない項目もあることを理解してもらったうえで、提供している。大学院の博士課程で道路の設計などの創成シミュレーション工学を専攻しているカン・モハマダ・ハンナンさん(26)は2011年にバングラデシュから来日。ハラール推奨メニューが登場するまでは「昼食に食べられるものがなく、シーチキンのおにぎりばかり食べていた」という。5月以降は週に2、3回、食堂でハラール推奨メニューを食べているといい、特にイエローチキンカレーがお気に入り。500円を超える価格だけは「もう少し安くしてほしい」と苦笑いする。埼玉大学は5月、第2食堂部のハラル対応のメニューを扱うコーナーを新設した。真新しい食堂の奥に「食べてみたい ハラールメニュー」と書かれた張り出しがあり、他のメニューと同様、カウンターで注文できる。埼玉大にはイスラム圏からの留学生が50人程度いる一方、ハラルに対応した食べ物が少なく、留学生は食事に苦慮していた。イスラム圏出身の留学生に調理器具や食材などを確認してもらい、カレーや竜田揚げ、しょうが焼きなど、週替わりで3品ずつ販売している。食材が限られるため平均単価は500円前後で、一般メニュー(390円程度)よりやや高い。食堂を運営する埼玉大学生協によると、ハラル食は1日30食程度売れており「一定のニーズがある」(大木島誠専務理事)。メニューを飽きさせない工夫として、9月下旬からはうどんやそばも始めた。食堂の営業時間外でもハラル対応食を食べられるよう、今後は弁当の開発も検討する。

| 外交・防衛::2014.9~ | 05:11 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.9.27 フクシマの真実 –本当は、撤退に近い退避が論じられていた(2014.9.28追加あり)
    
再生可能エネ 2014.9.25西日本新聞より   再生可能エネルギーの進歩と展開

(1)朝日新聞のフクシマ報道は嘘だったのか?
 *1-1に書かれているように、朝日新聞社の第三者機関「報道と人権委員会(PRC)」が、朝日新聞が5月20日付朝刊で「所長命令に違反 原発撤退」という見出しで報じた記事について、関係者からのヒアリングなどを行い、本格的な審理に入ったそうだ。しかし、*1-2に書かれているとおり、朝日新聞を叩いてフクシマや原発事故の本質をかすませることは、国民やフクシマ周辺住民に対する人権侵害である上、これまでの政府の情報開示のやり方についても検証する必要がある。

 また、*1-2に書かれているとおり、朝日新聞が、政府が公開する前に吉田調書を独自に入手して報じたのは褒められるべきことであり、吉田調書の「本当は私、2F(第2原発)に行けと言っていないんですよ」という発言を引用して「所員の9割が吉田氏の待機命令に違反し、福島第2原発に撤退した」と書いたのは、*2に書かれているとおり、命令違反に焦点を当てた点はおかしいとしても嘘とは言えず、今回の朝日報道で「われわれのイメージは東日本壊滅ですよ」「腹を切ろうと思っていた」といった吉田氏の生々しい言葉や原発事故の真の過酷さを明るみに出したことはアッパレである。

(2)薩摩川内市議会の再稼働に関する判断について
 朝日叩きで脱原発派の言論を抑えながら、*3のように、現在、九電川内原発の再稼働に必要な「地元同意」が焦点となっている。伊藤祐一郎鹿児島県知事は市議会、市長、県議会の順に地元同意を進める考えで、薩摩川内市の市議が最初に判断を下すことになるそうだが、判断基準は「金」「みんなで渡れば怖くない」などフクシマ事故依然と変わっておらず、「再稼働に結論を出すの地方議会の役割か」と、当事者である地域の市議が責任を回避する発言をするのは問題だ。

 報酬をもらって地域のために働いている現職の市議である以上、「重圧」「毎日もんもんとしている」などと言っているのは論外であり、吉田調書、その解説である*2、政府事故調・国会事故調の報告などを読み、これまでの政府の情報開示の仕方を理解した上で、市議会でまともな議論をして再稼働の是非を決めるべきで、日本全国の人がその状況を見ている。つまり、まともな議論ができる人を市議、市長、県議、知事に選んでおくべきであり、鹿児島県ならそれができる筈なのだが・・。

*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11367967.html
(朝日新聞 2014年9月25日) 報道と人権委、本格審理入り 朝日新聞「吉田調書」報道検証
 朝日新聞の「吉田調書」報道を検証している朝日新聞社の第三者機関「報道と人権委員会」(PRC)は24日、関係者からのヒアリングなどを行い、本格的な審理に入った。審理対象は、東京電力福島第一原発で事故対応の責任者だった吉田昌郎(まさお)所長(故人)が政府事故調査・検証委員会に答えた「吉田調書」について、朝日新聞が5月20日付朝刊で「所長命令に違反 原発撤退」などの見出しで報じた記事。朝日新聞社は今月11日に木村伊量(ただかず)社長が記者会見して記事を取り消して謝罪する一方、PRCに検証を申し立てていた。審理は非公開となっている。現在の委員は、早稲田大学教授(憲法)の長谷部恭男氏、元最高裁判事で弁護士の宮川光治氏、元NHK副会長で立命館大学客員教授の今井義典氏。

*1-2:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/113868
(西日本新聞 2014年9月13日) 朝日叩き、かすむ本質 政府の姿勢も検証不可欠
 朝日新聞は12日付朝刊で、東京電力福島第1原子力発電所の吉田昌郎元所長(昨年7月死去)が政府に事故当時の状況を説明した「聴取結果書(吉田調書)」に関する記事を取り消した経緯を掲載。先に撤回した慰安婦報道についても、11日の木村伊量(ただかず)社長の記者会見でのやりとりを載せ、あらためて説明した。だが、朝日の説明にはなお疑問が残る。一方で、報道が朝日批判に集中するあまり、原発、慰安婦をめぐる本質的な問題が置き去りにされる恐れがある。
■吉田調書
 朝日は、政府が公開する前に吉田調書を独自に入手。5月20日付朝刊で「所員の9割が吉田氏の待機命令に違反し、福島第2原発に撤退した」と報じた。記事はその根拠として「本当は私、2F(第2原発)に行けと言っていないんですよ」との発言を引用。だが、調書にはこの発言に続き「よく考えれば2Fに行った方がはるかに正しいと思ったわけです」などの発言がある。朝日はこれらの発言をネットに載せたが、紙面には出さなかった。朝日側は11日の会見で「所長の発言の評価を誤った。事後的な感想ということで(紙面から)割愛した」と説明した。だが、この部分を削除するのは理解に苦しむ。「命令違反」という記事の骨格と矛盾する発言を意図的に削除した疑いは消えない。一方で、吉田調書などに基づく政府の事故調査委員会報告書が出された2012年7月当時から、原発の専門家は「吉田調書などを公開し、事故検証や新たな原発の規制に生かすべきだ」と指摘していた。報告書には、吉田調書で明らかになった「われわれのイメージは東日本壊滅ですよ」「腹を切ろうと思っていた」といった吉田氏の生々しい言葉はなく、原発事故の真の過酷さは伝わらない。政府が2年以上公開しなかった吉田調書は、朝日報道がなければ永久に国民の目に届かなかった可能性がある。政府は、国民の判断材料となる吉田調書を公開することなく、原発を再稼働しようとしていた。NPO法人原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「本来は政府が自発的に調書を公開すべきだった。政府の姿勢も問われるべきだ」と指摘する。(以下、慰安婦問題のため略)

<政府事故調について>
*2:事故原発への管理と対応がいったん放棄された事実を確認しなければならない (原発事故情報公開請求弁護団 弁護士 海渡 雄一)
 -3月15日午前中に行われた、福島第1原発作業員650名の福島第2原発への移動は誰の指示によるものであり、どのような意味を持つものなのか-
第1 結論
1 問題の設定
 650名の2Fへの移動が、吉田所長の「関係のない人は退避させる。」「IFに近い線量の低いところで待機」という指示と矛盾していないかどうかという点がポイントである。私は明らかに矛盾していると考える。
2 事故時の実人員と緊急対策本部体制
 事故発生当時、この原子炉では、東京電力の社員が755人、協力会社の社員5660人ほどの作業員がいた。15日早朝の時点でも、この中の720名程度の作業員が残り、事故対策に当たっていた。そして、この原子炉の緊急対策に必要な緊急対策本部の要員数は400人と定められていた(吉田020 10ページ)。この数字は、残された人員で十分な対策がとれたかを判断するうえで、重要な数字である。
3 政府官邸と東電側とのやりとりと吉田供述をどのように統一的に理解できるか
 14日夜から、2号炉は圧力が上昇し、水が入らず冷却が不能状態に陥り、東京電力の清水社長以下の最高幹部は、官邸(海江田経産大臣、枝野官房長官、細野剛志首相補佐官)に対して、「全面的な撤退(退避)」についての了解を取ろうとしていた。このことは、東電のテレビ会議録画でも、「最終的避難についてしかるべきところと詰めている」と報告されている。官邸側の政治家の証言は、例外なく全面的な撤退の申し出であったとする点で一致している。官邸(菅総理大臣)は、15日未明に清水社長に対して、撤退は認めないと宣告し、清水社長もこれに同意した。しかし、15日の朝5 時30 分頃の段階で、菅総理が東電本店に来たあと、IFの現場で爆発が生じ、1Fの現場も、官邸に詰めていた武黒フェローも、班目原子力安全委員長も2号炉は完全に冷却不能となっており、メルトダウンは不可避で、水蒸気爆発などによって、大量の放射性物質が、拡散する事態は避けがたいと考えていた。吉田所長は、全員撤退は考えていなかった、自分は残るつもりだったし、必要な要員は残すつもりだった、必要でない要員は1Fに近いところで待機するよう指示したと述べている。私の推測では、東京電力最高幹部らは、吉田所長の指示とは別個に、70名程度の要員を残し、緊急事故対策にも必要な者を含む、残りの職員・作業員650名は2Fに退避するオペレーションを、官邸の意向にもかかわらず実施したのだと考えると、前後の事態が合理的に説明できるように思われる。
4 吉田調書は当時の現場の混乱を如実に示している。
 吉田所長が「本当は私、2Fに行けと言っていないんですよ。」「伝言した人間は、運転手に、福島第二に行けという指示をしたんです。」「よく考えれば2Fに行った方がはるかに正しいと思ったわけです。」と述べた(吉田077-1-1 55ページ)。2Fに行けと言っていないという点こそが、明確な指示であり、2Fに行った方がはるかに正しいというのは、あとからの判断である。この供述自体は、このことが、論争になる前の2011年8月段階での供述であり、さまざまなバイアスがかかる前の証言で信用性が高い。この本社指示と思われるオペレーションを、現場指揮者として、あとから追認したものであると評価できるが、部下が移動した先を把握していないという深刻な事態が発生し、所長の指示が末端まで伝わらないほど原発の現場が混乱していたことを示している。問題は、この時点で吉田所長の下に残された70名程度の要員で、緊急事態を深めている4機の原発の事故管理、対応が可能だったのかと言う点こそが、日本国民の命運のかかった事実であり、最大のポイントである。事故時には、高線量地域に近寄り、弁の開閉など何らかの機器操作を行うためにも、多人数の作業員による人海戦術が必要であった。このような対応が可能な状況にあったのかが問われなければならない。
5 パラメーターもとれなくなっていた
 15日の段階で1Fの1,2,3,4は中央操作室に常駐できないほど線量が高かった。定期的に人を送ってデータをとっていた(吉田051 58ページ)。「中央操作室も一応、引き上げさせましたので、しばらくはそのパラメータは見られていない状況です。」(吉田077-1―4 56ページ)。東電HPに公表されているプリントパラメータデータ アーカイブによると、3月15日午前7時20分から11時25分まで、約3時間にわたって、プラントデータの記録すらできていない。同時に4つの原子炉で深刻な事態が発生していた14-15日の状況では、むしろ1000人単位の作業員を追加して、集中的なオペレーションをしなければならない状況だったはずである。しかし、そのような状況で、東電の最高幹部らは、吉田所長の指示にも反して、バスを手配し、事故対応の判断に不可欠なGMレベルの幹部を含む650人の作業員を2Fに移動させたのだと考えざるを得ない(吉田077-1-4 54ページ)。この点に関する14-15日の状況について、吉田調書の原文は次のようになっている。(吉田077-1-4 49ページ)。「完全に燃料露出しているにもかかわらず、減圧もできない、水も入らないという状態が来ましたので、私は本当にここだけは一番思い出したくないところです。ここで何回目かに死んだと、ここで本当に死んだと思ったんです。これで2号機はこのまま水が入らないでメルトして、完全に格納容器の圧力をぶち破って燃料が全部出ていってしまう。そうすると、その分の放射能が全部外にまき散らされる最悪の事故ですから。チェルノブイリ級ではなくて、チャイナシンドロームではないですけれども、ああいう状況になってしまう。そうすると、1号、3号の注水も停止しないといけない。これも遅かれ早かれこんな状態になる。そうなると、結局、ここから退避しないといけない。たくさん被害者が出てしまう。勿論、放射能は、今の状態より、現段階よりも広範囲、高濃度で、まき散らす部分もありますけれども、まず、ここにいる人間が、ここというのは免震重要棟の近くにいる人間の命に関わると思っていましたから、それについて、免震重要棟のあそこで言っていますと、みんなに恐怖感与えますから、電話で武藤に言ったのかな。1つは、とんな状態で、非常に危ないと。操作する人間だとか、復旧の人聞は必要ミニマムで置いておくけれども、それらについては退避を考えた方がいいんではないかという話はした記憶があります。その状況については、細野さんに、退避するのかどうかは別にして、要するに、2号機については危機的状態だと。これで水が入らないと大変なことになってしまうという話はして、その場合は、現場の人聞はミニマムにして退避ということを言ったと思います。それは電話で言いました。ここで言うと、たくさん聞いている人聞がいますから、恐怖を呼びますから、わきに出て、電話でそんなととをやった記憶があります。ここは私が一番思い出したくないところです、はっきり言って。」 (吉田077-1-4 55-56ページ)。「○あと、一回退避していた人間たちが帰ってくるとき、聞いたあれだと、3月15日の10時か、午前中に、GMクラスの人たちは、基本的にほとんどの人たちが帰ってき始めていたと聞いていて、実際に2Fに退避した人が帰ってくる、その人にお話を伺ったんですけれども、どのクラスの人にまず帰ってこいとかいう。
○回答者 本当は私、2Fに行けと言っていないんですよ。ここがまた伝言ゲームのあれのところで、行くとしたら2Fかという話をやっていて、退避をして、車を用意してという話をしたら、伝言した人間は、運転手に、福島第二に行けという指示をしたんです。私は、福島第一の近辺で、所内に関わらず、線量の低いようなととろに一回退避して次の指示を待てと言ったつもりなんですが、2Fに行ってしまいましたと言うんで、しょうがないなと。2Fに着いた後、連絡をして、まずGMクラスは帰ってきてくれという話をして、まずはGMから帰ってきてということになったわけです。
○質問者 そうなんですか。そうすると、所長の頭の中では、1F周辺の線量の低いととろで、例えば、パスならパスの中で。
○回答者 今、2号機があって、2号機が一番危ないわけですね。放射能というか、放射線量。免震重要棟はその近くですから、ここから外れて、南側でも北側でも、線量が落ち着いているところで一回退避してくれというつもりで、言ったんですが、確かに考えてみれば、みんな全面マスクしているわけです。それで何時間も退避していて、死んでしまうよねとなって、よく考えれば2Fに行った方がはるかに正しいと思ったわけです。いずれにしても2Fに行って、面を外してあれしたんだと思うんです。マスク外して。
○質問者 最初にGMクラスを呼び戻しますね。それから、徐々に人は帰ってくるわけですけれども、それはこちらの方から、だれとだれ、悪いけれども、戻ってくれと。
○回答者 線量レベルが高くなりましたけれども、著しくあれしているわけではないんで、作業できる人間だとか、パックアップできる人間は各班で戻してくれという形は班長に。」
6 事故対応に必要な要員も2Fに撤退していた
 現時点でわかっていることは、15日の正午ごろから順繰りに作業員を戻しているということである。東電が公表しているプラントデータでも午前11時25分までの3時間、原子炉内の水位や圧力の計測ができていない。いったん事故原発は管理を放棄された状態に陥っていたのである。戻した人員の中にはGMレベルの職員や運転員まで含まれている。吉田氏は「作業ができる人間だとか、バックアップできる人間は各班で戻してくれという形は班長に」と述べている(吉田077-1-4 49ページ)。事故対応の作業を続けるために必要な人間までが2Fに撤退してしまっており、吉田氏の発言からも明らかで所長の指示に反した事態が生じていたのである。
7 朝日新聞報道は誤報といえるか疑問
 650人の作業員の大半の者たち、とりわけ下請け作業員らにとっては、吉田所長の必要な要員は残るという指示は徹底されておらず、東電社員の指示に従って移動したという認識であり、朝日新聞報道によって「所長の命令違反」と言われたことに、違和感があったことは理解できる。しかし、所長自身が「しょうがないな」というように、所長の指示には明らかに反した状態になっているのである。そして、問題の本質は、15日の午前中の1Fは、沈み行く船と運命を共にする覚悟を固めた所長と、これに従う少数の作業員だけを残し、事故対応のために不可欠なデータもとれない、絶望的な状況に陥ったと言うことである。吉田所長の「死を覚悟した、東日本全体は壊滅だ」というイメージこそ、国民的に共有しなければならないことである。朝日新聞の報道は、このような事故現場の衝撃的な混乱状況を「所長の命令違反の撤退」と表現したのであり、これは、取り消さなければならない誤報とまでいえるだろうか。私は大変疑問に思う。
8 線量が絶望的な状態のまま継続しなかった理由はわからない
 このような絶望的な状況が現実のものとならなかった理由は何か。15日の昼の段階で、吉田所長らが予測したように、現場に近寄れなくなるほどの線量の上昇が継続するような事態にはいたらず、いったんは10000マイクロシーベルト/hに達していた線量は当日の午後2時には10000マイクロシーベルト/hを切り、その後必要不可欠な要員を徐々にではあるが、呼び戻すことができたこと、東京消防庁、警察、自衛隊などの協力により、必死の冷却作業が遂行され、最悪の事態が避けられたからである。しかしながら、現場に近寄れなくなるほどの線量の上昇が数時間でおさまり、その後徐々に下がっていった理由は解明されておらず、まさに僥倖であったというほかない。このまま、吉田所長らが予測どおりに線量の上昇が継続していれば、吉田所長以下の要員は1F内で、急性放射線障害によって死にいたり、現場には他の作業員も戻ることはできず、2号機以外の原子炉も次々に最悪の事態を迎え、4号機の使用済み燃料プールも冷却不能によって燃え出していただろう。近藤最悪シナリオメモのに記述されたような最悪の事態が現実のものとなった可能性が差し迫ったものであったと言うこと、このことを確認することが、決定的に重要である。
9 その他の問題点
 吉田調書には事故対応だけでなく、中越沖地震の対応、津波想定の問題など重要な問題が含まれている。今回吉田調書以外にも、政府関係者、専門家らの調書が公表された。しかし、他の東電の役員らや政府機関職員の調書は全く公開されていない。今回は、撤退問題以外の問題は時間の関係で検討できなかった。これらの論点については、次の機会を期したい。
第2 基礎的な事実関係整理のためのデータ
1 吉田調書の原文<補足>
先に引用した部分の中間の部分を引用する。
077-1-4 53-54ページ
○回答者 撤退というのは、私が最初に言ったのは、全員撤退して身を引くということは言っていませんよ。私は残りますし、当然、操作する人間は残すけれども、最悪のことを考えて、これからいろんな政策を練ってくださいということを申し上げたのと、関係ない人関は退避させますからということを言っただけです。
○質問者 恐らく、そこから伝言ゲームになると、伝言を最後に受ける菅さんからすると、ニュアンスの伝え方があると思うんですね。
○回答者 そのときに、私は伝言障害も何のあれもないですが、清水社長が撤退させてくれと菅さんに言ったという話も聞いているんです。それは私が本店のだれかに伝えた話を清水に言った話と、私が細野さんに言った話がどうリンクしているのかわかりませんけれども、そういうダプルのラインで話があって。
○質問者 もしかすると、所長のニュアンスがそのまま、所長は、結局、その後の2号機のときを見てもそうですけれども、円卓のメンバーと、運転操作に必要な人員とか、作業に必要な人員を最小限残して、そのほかは退避という考えでやられているわけですね。
○回答者 そうです。
○質問者 菅さんは、それもまかりならんという考えだったのかもしれませんけれども、撤退はないとか、命を賭けてくださいとか、遅いとか、不正確とか、間違っているとか、あるいは、これは日本だけではなくて世界の問題で、日本が潰れるかどうかの瀬戸際だから、最大眼の努力をしようとか、そんなのが延々と書かれてあるんですよ。ニュアンス的にはそういうニュアンスですか。
○回答者 そんなニュアンスのことを言っていましたね。
○質問者 来られたのは、閣僚というのは、海江田さんとかは来られたんですか。
○回答者 菅さんと、官房長官が来たのかな、海江田さんはあのときいたのかな、よく覚えていないです。ここは、済みません、どっちかというと、私の記憶より本店にいた人間の記憶の方が正しいと思います。
○質問者 本店の人が記憶どおりきちっと勇気を持って言っていただくのが一番いいんですけれどもね。
○回答者 言わないですね。
○質問者 もう少し私のことを信用してくれればいいんです。
○回答者 そのメモは、ほとんどそのようなことをおっしゃっていると思っていただいていいです。そのタイミングで、うちはうちで、例の2号機のサプチェンがゼロになって、音が関こえたので退避しますと。さっき言った意味でですね。必要ない人間は退避しますという騒ぎが朝あったときに、ちょうど菅さんが来ているときに、テレビ会議で、その辺でとりあえず(・・・)
○質問者 2号機に異変が生じて、必要人員残して退避というような、その状況のときに、例えば、菅さんなりがテレビ会議を通じて、こっちに状況を聞いてくるとか、そういうことはなかったんですか。
○回答者 このときはそれ以上のことはなくて、細野さん、これは危ないですというか、まだ水が入る前ですね。水が入らなかったらえらいことになると。炉心が溶けて、チャイナシンドロームになりますということと、そうなった場合は何も手をつけられないですから、1号、3号と同じように水がなくなる、同じようなプラントが3つできることになりますから、凄まじい惨事ですよという話はしていました。
○質問者 それは細野さんに対して、電話でですか。
○回答者 電話しました。
2 東電幹部らは全面撤退を官邸に求めたか
 事故後の事故調査の過程で、事故後の経過の中で、その評価が著しく分かれていた点の一つは東京電力が事故収束作業中に一旦,撤退を決定することなどにより作業の停滞を招いたかどうかをめぐる論争である。
すなわち,清水ほか事故当時の取締役らは,収束作業中の2011年3月14日夜ないし15日未明,現場職員全員の退避もあり得る旨を官邸閣僚に報告し,東京電力が福島第一原発から全面撤退することの了解を求めようとしたかどうかが争われている。
3 政府事故調の認定
 政府事故調の認定は次の通りである。「3 月14 日夜、吉田所長は、2 号機の圧力容器や格納容器の破壊等により、多数の東京電力社員や関連企業の社員に危害が生じることが懸念される事態に至っていたことから、福島第一原発には、各号機のプラント制御に必要な人員のみを残し、その余の者を福島第一原発の敷地外に退避させるべきであると考え、東京電力本店に設置された緊急時対策本部と相談し、その認識を共有した。
 他方、清水正孝東京電力社長(以下「清水社長」という。)は、同日夜、吉田所長が、前記のとおり、状況次第では必要人員を残して退避することも視野に入れて現場対応に当たっていることを武藤副社長から聞かされ、同日夜から15 日未明にかけて、順次、寺坂保安院長、海江田経産大臣、枝野官房長官に電話をかけ、「2 号機が厳しい状況であり、今後、ますます事態が厳しくなる場合には、退避も考えている」旨報告し、その了承を求めた。この時、清水社長は、「プラント制御に必要な人員を残す」旨を明示しなかった。
 清水社長からの電話を受け、東京電力が福島第一原発から全員撤退することを考えているものと理解した枝野官房長官、海江田経産大臣らは、協議の上、この全員撤退の申入れを受け入れた場合、福島第一原発周辺のみならず、より広い範囲の国民の生命・財産を脅かす事態に至ることから、同月15 日未明、その場にいた福山官房副長官、細野補佐官及び寺田補佐官に加え、班目委員長、伊藤危機管理監、安井保安院付らを官邸5 階の総理応接室に集め、「清水社長から、福島第一原発がプラント制御を放棄して全員撤退したいという申入れの電話があった」旨の説明を行うとともに、今後の対応について協議した。その結果、この協議においては、「プラント対応について、まだやるべきことはある」との見解で一致した。
 この協議は、同月14 日深夜から翌15 日3 時頃にかけて行われたが、その頃の福島第一原発2 号機の状況は、同日1 時台から、原子炉圧力が継続的に注水可能な0.6MPa gage 台を推移するようになり、依然として危険ではあるものの、注水の可能性が全くないという状態ではなく、更に安定的注水が可能と考えられていた0.6MPa gage 以下に減圧するため主蒸気逃し安全弁(SR 弁)の開操作が試みられていた。しかし、官邸5 階にいたメンバーは、このような2 号機の状況や対処状況を十分把握しないまま前記協議を行っていた。
 枝野官房長官らは、原子炉の状態が依然として極めて危険な状態にあるとの認識の下、引き続き事故対処に当たる必要があるものの、清水社長の前記申入れを拒否することは福島第一原発の作業員を死の危険にさらすことを求めるという重い問題であり、最終判断者である菅総理の判断を仰ぐ必要があると考え、同日3時頃、総理執務室において、菅総理に報告した。
 これに対し、菅総理は、東京電力が福島第一原発から全員撤退した場合、福島第一原発の各原子炉等のみならず、福島第二原発のそれも制御不能となり、その結果、大量の放射性物質が大気中に放出される事態に至る可能性があると考え、即座に、「撤退は認められない」旨述べた。菅総理ら総理執務室にいたメンバーは、総理応接室に移動し、ここには、松本龍内閣府特命担当大臣(防災担当)、藤井裕久内閣官房副長官らも加わって、改めて協議を行い、全面撤退は認められないことを確認した。これを受け、菅総理は、東京電力の意思を確認するため、清水社長を官邸に呼ぶよう指示した。また、菅総理は、この時の撤退(退避)申入れを契機として、東京電力の事故対応についての考え方に強い不信感を抱いたが、それ以前においても、東京電力から事故に関する十分な情報提供が受けられておらず、また、東京電力との間で十分な意思疎通ができていなかったことから、適切に事故対応に当たるには、東京電力本店に統合本部(後に設置された福島原子力発電所事故対策統合本部。以下「統合本部」という。)を設置し、そこに詰めて、情報収集に努めるとともに、東京電力と直接意思疎通を図ることが必須であると考え、この協議の同席者に対し、その旨述べた。その後、菅総理は、同日4 時頃、前記メンバーが同席する中で、官邸に到着した清水社長に対し、東京電力は福島第一原発から撤退するつもりであるのか尋ねた。清水社長は、「撤退」という言葉を聞き、菅総理が、発電所から全員が完全に引き上げてプラント制御も放棄するのかという意味で尋ねているものと理解し、「そんなことは考えていません。」と明確に否定した。<この発言の正確性には以下に述べるとおり、疑義がある>さらに、菅総理は、前記のとおり、政府と東京電力との間の情報共有の迅速化や意思疎通を図る一方法として、東京電力本店内に政府と東京電力が一体となった統合本部を設置して福島第一原発の事故の収束に向けた対応を進めていきたい旨の提案を行い、清水社長は、これを了承した。同日5 時30 分頃、菅総理らは、東京電力本店2 階の本店緊急時対策本部を訪れ、同本部にいた勝俣恒久東京電力会長、清水社長、武藤副社長その他の東京電力役員及び社員らに対し、自らを本部長とし、海江田経産大臣と清水社長を副本部長とする、統合本部の立ち上げを宣言するとともに、「日本が潰れるかもしれない時に撤退などあり得ない。命がけで事故対処に当たられたい。撤退すれば、東京電力は必ず潰れる」旨強い口調で述べた。」(政府事故調202-204ページ)。この認定では清水社長が撤退について官邸に了解を取ろうとした際に一部の要員を残すという留保は付けられていなかったことが認定されている。木村英昭『官邸の一〇〇時間』では、清水社長が「「そんなことは考えていません。」と明確に否定した。」とされている部分について、菅首相が「撤退などあり得ませんから」と告げたのに対して「はい、分かりました」と答えたとされている。周りにいた、海江田大臣、伊藤哲朗、安井正也らは清水社長は撤退したいとあれだけ述べていたのにと不審な思いを抱いたと証言しているという(241-242ページ)。官邸の誰もが、東京電力は全面撤退を計画しており、総理にこれをとめてもらおうと考えていたことがわかる。
4 国会事故調査報告書の認定とテレビ会議録画との矛盾
 これに対して、国会事故調は「3.1事業者としての東京電力の事故対応の問題点」において、「発電所の現場は全面退避を一切考えていなかった」、「テレビ会議システムで繋がっていたオフサイトセンターにおいても全面退避が議論されているという認識がなかったこと等から判断して、全面撤退は官邸の誤解であ」ると断じている(国会事故調査報告書251頁)。また、「9)「全面撤退」か「一部退避」か、その真相」の項において、官邸は東京電力が全面退避の相談を申し出たものと捉え、他方、東京電力は「作業に直接関係のない人員」の退避を申し出たのにすぎず、「両者の見解は食い違っている」とある(国会事故調査報告書 276頁)。そして、「福島第一原発の現場においては、当初から全員の撤退は考えていなかったものと認められ」るとしている(国会事故調査報告書313頁)。しかし、これらの認定は、次項において紹介する官邸側の証言者の調書と矛盾するだけでなく、最も客観的な証拠である東電テレビ会議録画と矛盾している。
3月14日の午後から夜の部分を引用する。
16:57清水「最悪のシナリオを描いたうえで対応策をしっかり把握して報告してください」
17:45清水:OFCから移動中の武藤副社長に電話
19:28 OFC小森「退避基準の検討を進めて下さい。」
19:45武藤副社長→原・退避手順の検討指示(ヒアリング及び国会事故調での発言)
19:55高橋「武藤さん、これ、全員のサイトからの退避っていうのは何時頃になるんですかねえ。」
20:16高橋「今ね、1Fからですね、いる人達みんな2Fのビジターホールに避難するんですよね。」
20:20清水「現時点で、まだ最終避難を決定している訳ではないということをまず確認して下さい。それで、今、然るべきところと確認作業を進めております。」「プラントの状況を判断・・あの、確認しながら・・決めますので。」
 ここで清水社長が述べている「最終避難」という言葉は要員のほとんどの引きあげを意味するとしか考えられず、「しかるべきところ」とは官邸にほかならない。その清水社長はその日午前4時17分、官邸に着き、菅総理と一対一で会った。菅総理は、「ご苦労さまです。お越し下さり、すみません」とあいさつしたあと、いきなり結論を述べた。「撤退などあり得ませんから」と。これに対して、清水社長は、「はい、わかりました」と応じたと言う。清水社長は決して「そんなことは考えていません」とは述べていないのである。このやりとりに続いて、官邸は、東電本社内に政府と東電の統合本部を作り、細野補佐官が常駐するという体制を清水社長に提案し、了承を取り付けている。多くの東京電力社員や関連企業の社員の生命の危機に際して、企業のトップとして社員の命と安全を考えたことは責められないかもしれない。全面撤退の計画はなかったとした国会事故調の野村修也委員は、東京電力側の「一部退避」に過ぎなかったという主張を鵜呑みにしている。しかし、野村委員はテレビ会議の記録を見た上で「最悪の場合は10名ぐらいかなというような様子が見受けられる」とあり、これを清水も認識していたという(国会事故調査報告書 会議録 392頁)。緊急対策メンバーを残すといっても、清水社長が考えていたのは、10名程度であり、それでは福島第1原発の6機とりわけ危機的な状況に陥っていた1ないし4号機の過酷事故状況には全く対応できなかったことは明らかである。事故発生当時、この原子炉では、東京電力の社員が755人、協力会社の社員5660人ほどの作業員がいた。15日早朝の時点でも、この中の720名程度の作業員が残り、事故対策に当たっていた。高線量下では、ひとつの弁を操作するだけでも、10人単位の作業員が必要であった。この「緊急対策メンバー」とは、残されたとしても、線量が上がってくれば生き残る可能性はほとんど皆無だったわけであり、吉田所長の死を覚悟していたとの発言からも残留する者たちは、いわば沈没する船と船長が生死を共にするという覚悟を示す発言ではあり得ても、事故の緊急対策は実質的にほぼ放棄された状態であったとはいえる。
5 650名の退避により、事故対応作業に支障が生じたか
 ここで、問題は次のように特定できる。650名の退避によって緊急対策メンバーは残すという吉田所長の意図に反する事態が生じたかどうかが問われなくてはならない。まさに、現場ではプラントデータすらとれない状態が生じていた。15日の段階で1Fの1,2,3,4は中操に常駐できないほど線量が高かった。定期的に人を送ってデータをとっていた(吉田051-58ページ)。プラント関連パラメータ(水位、圧力、温度など) | アーカイブ(2011年)によると、東電が公表しているプラントデータでも午前11時20分までの数時間、原子炉内の水位や圧力の計測ができていない。いったん事故原発は管理を放棄された状態に陥っていたのである。3月15日の午前9時には11000マイクロシーベルト/Hという異常な高線量を示したものの、午後0時25分に1000マイクロシーベルト/H台に、午後1時50分台に1000マイクロシーベルト/H以下に下がってきた(東電HPに掲載されているモニタリングデータより)。この時に放出された放射性物質が大規模な環境汚染をもたらしたものであるが、その後この数値は少しずつ下がっていった。同時に4つの原子炉で深刻な事態が発生していた14-15日の状況では、むしろ1000人単位の作業員を追加して、集中的なオペレーションをしなければならない状況だったはずである。しかし、そのような状況で、東電の最高幹部らは、吉田所長の指示にも反して、バスを手配し、事故対応の判断に不可欠なGMレベルの幹部を含む650人の作業員を2Fに移動させたと考えるほかない。後から戻した人員の中には運転員まで含まれている。吉田氏は「作業ができる人間だとか、バックアップできる人間は各班で戻してくれという形は班長に」と述べている(吉田077-1-4 55-56ページ)。事故対応の作業を続けるために必要な人間までが2Fに撤退してしまったことは、吉田氏の発言からも明らかなのである。650人の作業員の大半の者たち、とりわけ下請け作業員らにとっては、吉田所長の必要な要員は残るという指示は徹底されておらず、東電社員の指示に従って移動したという認識であり、朝日新聞報道によって「所長の指示違反」と言われたことには、違和感があったことは理解できる。しかし、問題の本質は、14日の午前中の1Fは、沈み行く船と運命を共にする覚悟を固めた所長と、これに従う約70名の作業員だけを残し、事故対応のために不可欠なデータもとれない、絶望的な状況に陥ったと言うことである。吉田所長の「死を覚悟した、東日本全体は壊滅だ」というイメージこそ、国民的に共有しなければならないことである。
6 菅、海江田、福山、細野調書は全面撤退の計画を裏付けている
(1)菅元総理大臣の供述要旨
−−東電が撤退するようだということは、どういういきさつで聞いたのでしょうか。
菅氏 15日の午前3時ごろに秘書官が来て、(海江田万里)経産大臣から話があると。東電が撤退し
たいと言ってきている、どうしましょうかと。
−−誰も1Fからいなくなるという認識だったのですか。
菅氏 経産大臣や他のメンバーもそういう認識でした。
−−東電の本店に行って、関係者を激励し、打ち合わせをしたと。
菅氏 私なりの気持ちを込めて話をしました。(原発を)放棄した場合、すべての原発、核廃棄物が崩壊することになり、日本の国が成立しなくなる。皆さんは当事者。命をかけてください。日本がつぶれるかもしれない時に、撤退はあり得ない。撤退したら東電は必ずつぶれる。
(2)枝野元官房長官の供述要旨
 私あてに東電の清水正孝社長から電話がかかってきた。生の言葉は記憶していないが、間違いなく全面撤退の趣旨だった。『必要のない人は逃げます』という話は官房長官にする話じゃないので勘違いはあり得ない。人命にかかわることで、私は菅さんほど腹が据わってなかったので、『撤退はあり得ない』とは言えず、『私の一存ではいとは言えない』と答えた。『東電が全面撤退の意向を政府に打診した』という報道があり、3月18日の会見で質問されたが『承知していない』と答えた。さすがにこの段階では言えなかった。『そんな打診もあったが断った』と言ったら、いろいろな意味でもたない。
(3)海江田元経産大臣供述要旨
 記憶では(最初に)清水正孝社長から『退避』という言葉を聞いた。『撤退』という言葉ではない。そこで『何とか残ってください』『そうですか』みたいなやりとりをした。東電に対する不信感が頂点に達した時ではないか。僕は全員(退避してしまうのか)と思った。総理が『東電に行こう』と言ったから、もろ手を挙げて大賛成した。
(4)細野首相補佐官の供述要旨
 清水正孝・東電社長から海江田万里・経済産業相に電話があったが、海江田さんは全面撤退と解釈していた。それに(官邸に詰めていた)武黒一郎・東電フェローも撤退するしかないという話をしていた。東電本店と武黒さんの連絡がうまくできていなかった可能性もあると思う。吉田さんが全面撤退を否定しているというのならば私は信じるが、当時の官邸は枝野(枝野幸男・官房長官)さんも海江田さんも、東電が全員持ち場を離れさせようとしている前提でずっと話をしていた。650人が退避した後、人員が戻らなければ原発はコントロール可能だったかを解明すべきである。過酷事故対応は、中央制御室にいる運転員のみではできず、事故時に設置される緊急対策室などの中央制御室以外の組織及び人員との連携動作が主になるとBWR運転訓練センターのヒアリングにある。さらに、東京電力においても「過酷事故に実技訓練に対するニーズはなかった」としている(国会事故調査報告書(2012年7月5日)191頁)。これに対して、東京電力側の「一部退避」に過ぎないという主張について、野村委員はテレビ会議の記録を見た上で「最悪の場合は10名ぐらいかなというような様子が見受けられる」とあり、これを清水も認識していたという(国会事故調査報告書 会議録 392頁)。このように、東京電力においては、「一部退避」として緊急対策メンバーを残すといっても、10名程度であり、それでは福島第1原発の6機とりわけ危機的な状況に陥っていた1ないし4号機の過酷事故状況には全く対応できなかったことが明らかである。すなわち、「緊急対策メンバー」とは、緊急対策本部400人の中のごく一部であり、残されたとしても、線量が上がってくれば、生き残ることができた可能性はほとんど皆無だった。緊急対策メンバーとして誰が残留することになっていたのか、その人員でどのような対応が可能であったのか、退避した650名には、緊急対策メンバーとして吉田所長が必要だと考えた人員は含まれていないのかが明らかにされる必要がある。なぜ高線量が続かなかったのかは解明されていない。しかしながら、現場に近寄れなくなるほどの線量の上昇が数時間で下がりだし、継続しなかった理由は解明されておらず、まさに僥倖であったというほかない。このまま、予測どおりに線量の上昇が長期に継続していれば、吉田所長以下の少数の要員は1F内で、急性放射線障害によって死にいたり、現場には他の作業員も戻ることはできず、2号機以外の原子炉も次々に最悪の事態を迎え、4号機の使用済み燃料プールも冷却不能によって燃え出していただろう。近藤最悪シナリオメモに記述されたような最悪の事態が現実のものとなった可能性が差し迫ったものであったと言うこと、このことを確認することが、決定的に重要である。

<薩摩川内市議会の再稼働に関する判断について>
*3:http://qbiz.jp/article/46691/1/
(西日本新聞 2014年9月27日) 最初の判断、市議重圧 薩摩川内市、迫る「地元同意」
 九州電力川内原発の再稼働に必要な「地元同意」が焦点となる中、立地自治体の鹿児島県薩摩川内市の市議たちが苦悩している。同県の伊藤祐一郎知事は市議会、市長、県議会の順に地元同意を進める考えで、最初に判断を下すことになる市議たち。全国からのはがき攻勢など有形無形の圧力を受け、支持者の賛否も二分する中、あと1カ月余りで「苦渋の選択」(中間派市議)が待ち受ける。「日本で最初に判断しなければならない。毎日もんもんとしている」。賛否を決めていない市議はそう吐露した。市議は26人。別の中間派の市議は同僚との距離を測りかねている。「市議同士でも、うっかり原発の話はできない。誰がどんな考えか分からないから」。2012年10月の市議選で西日本新聞は立候補者に再稼働の賛否を尋ねた。当選した26人中、賛成8人、反対2人で、16人は「どちらとも言えない」だった。その後、賛成に転じた市議は「現時点で原子力エネルギーは必要だ。責任を取るのかと問われれば『はい』と言うぐらいの覚悟が必要だ」と力を込める。一貫して反対する市議は「今が剣が峰。賛成派の市議もプレッシャーを感じているはずだ。ただ、みんなで渡れば怖くないと、まとまって行動するかもしれない」と警戒する。「女性市議だから反対して当然だ」「賛成するのは金目でしょ」。賛成派や中間派と目される22人には毎日十数通、全国から再稼働反対を訴えるはがきが届く。中には「(再稼働させて)殺人鬼になりたいですか」と過激な表現もあった。ある市議は「はがきが届くのが怖い。身の危険すら感じる」と打ち明けつつも「賛否の採決からは逃げない」と語る。市内ではがき運動を展開する鳥原良子さん(65)は「市議の方々に原発の危険性をきちんと考えてほしいからで、それだけ私たちは真剣だと受け止めてほしい」と説明する。一方で、市議たちには国への不満が高まる。「国は責任を取ると言いつつ、われわれに押しつけようとしている」と口をそろえる。中間派の市議は「国のエネルギー政策は尊重するが、再稼働に結論を出すのが果たして地方議会の役割か」と疑問を投げかける。原発30キロ圏の他の議会では、自分たちの議会の同意も再稼働の条件に加えるよう求める動きが広がる。薩摩川内市議の一人がつぶやいた。「同意判断を下す議員は、原発を動かすかどうかの重い責任を負うと分かっているのか」 。


PS(2014年9月28日追加):*4のうち、「①政府の事故調検証委員会が関係者から聞き取り調査をしてまとめた聴取結果書公開の年内完了が困難になった」「②調書は非公開を前提に関係者の任意の協力を得て作成されたから」というのは、事故の真実を知るための事故調書は国民の財産であり、*3のような原発再稼働の判断やエネルギー政策に影響を与えることを考えればおかしい。また「③実際の事故現場に携わった関係者の多くが退職したり住所を変更したりして返答が得られない」というのも、現場にいた人なら健康管理が必要であるため変だし、返答が得られない人のうち何割かは亡くなっているかも知れないが、亡くなった人の割合やその原因も重要なデータであるため追跡調査すべきである。

*4:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140928-00000090-san-soci
(産経新聞 9月28日) 原発調書、年内の公開完了困難 関係者数百人と連絡つかず
 東京電力福島第1原発事故に関し、政府の事故調査・検証委員会が関係者から聞き取り調査してまとめた「聴取結果書(調書)」の公開が難航し、目標としていた年内までの完了が困難になっていることが27日、政府関係者への取材で分かった。これまで公開されたのは対象者772人中19人だけで、数百人とされる事故現場関係者の居場所がつかめないことなどが原因。しかし、過酷な現場に携わった関係者の証言は事故の教訓として生かす必要があるため、全面公表が望まれている。これまでに公開されたのは、事故発生時に所長として対応した吉田昌郎氏(平成25年7月死去)や菅直人元首相ら。政治家や行政関係者らがほとんどで、東電関係者は吉田氏しかいない。772人の対象者の内訳は公表されていないが、事故現場の作業員を含む東電関係者と政府関係者が大半を占める。事故調書は当初、非公開を前提に関係者の任意の協力を得ながら計約1500時間のヒアリングを経て、作成された。5月に朝日新聞が吉田氏の調書を独自に入手し報道したことから、政府は6月、本人の同意が得られた場合、順次公開する方針に転換。年内までに内閣官房のホームページで公開する予定だった。しかし、政府関係者によると、6~8月にかけて文書発送などで実施された関係者の意向確認で、返答があったのは1割ほど。特に実際の事故現場に携わった関係者の多くが退職したり住所を変更したりして、返答が得られないという。政府関係者は「本人のプライバシーを尊重しており、大々的に追跡調査すると迷惑をかけてしまう」と及び腰。東電広報部も「個人の意思を尊重し、会社として公開の是非を示唆することはしない」として、個人の判断に任せているという。原発の再稼働に向け審査を受けている電力会社関係者は「事故が進展する中で、作業員がどう判断し、どう動いたかは事故の再発防止の上でぜひ知りたい情報だ」と話している。

| 原発::2014.8~10 | 10:29 AM | comments (x) | trackback (x) |
2014.9.26 これも冤罪では?
(1)遺体発見翌日の容疑者逮捕で兵庫県警は何とか面目を保ったが、容疑者は真犯人か?
 *1-1のように、9月11日から2週間近くも行方が分からなくなっていた神戸市長田区の小学1年生、生田美玲ちゃんが9月23日に遺体で見つかり、翌日、近くに住む47歳の男が警察に取り調べられ、容疑が固まりしだい死体遺棄の疑いで逮捕する方針とのことである。そして、すべてのTVチャンネルが、長い時間を割いて、まだ犯人と確定していない男性の悪い噂を探しては報道しているが、これが、我が国のメディアのレベルだ。

 *1-1などのTV報道で、「遺体が入っていた袋の中に、近くに住む47歳の男の名前が書いてある診察券が入っていた」と報じられた時、私は公認会計士として経験を積んだ監査人の直感で、遺体を捨てる袋にわざわざ自分の診察券を入れるのは不自然だと思ったが、これが取り調べを始める決め手となり、同じく袋に入っていた煙草の吸殻のDNAと容疑者のDNAが一致したのだそうだ。つまり、遺体を入れた袋には、犯人特定に必要なすべてのものが入っていたが、遺体は切断されて複数の袋に分けて入れられ、下半身は見つかっていないというのであり、これは普通では考えられない。

 また、*1-2に書かれているように、死体遺棄容疑で逮捕された無職の君野容疑者は、逮捕前に自宅を訪問した警察官を警戒することなく招き入れ、「女児のことは知らない」と話していたそうだが、もし部屋で犯行に及び、部屋に女児の遺体があれば、警戒することなく招き入れることはできない筈である。

 そして、*1-2、*1-3に書かれているように、複数の防犯カメラが不審な男の行動を記録し、服装などから兵庫県警はいずれも君野容疑者とみているそうだが、それはつまり、防犯カメラに顔ははっきり映っていなかったということだ。

(2)真犯人なら、わざわざ遺体の袋に診察券や煙草の吸殻を入れない
 兵庫県警は何度も探したが、その草むらだけは探していなかったとしているが、これは捜査の専門家にしてはおかしな話だ。さらに、本物の犯人なら、わざわざ遺体の袋に診察券や煙草の吸殻を入れたりはしないと思われるので、報道されるたびに、この事件の展開はおかしいと思っていたところ、*2-1のように、「またまた、兵庫県警による大冤罪事件か?」というブログがあった。

 *2-1には、「遺体の入ったポリ袋に唾液の着いた吸殻と診察券。真犯人が君野容疑者に罪を擦り付けるために行った小学生でも判るトリックに騙される低脳」「レイプを隠蔽するため下腹部の隠蔽(精液で犯人を特定されるのを防ぐため)など明らかに捜査の基本を知っている人間の犯行」「冤罪発生装置の兵庫県警と記者クラブ制度で警察発表を鵜呑みで垂れ流すクソマスゴミを許すな」と書いてあり、このシナリオの方が自然に思えた。

(3)冤罪のパターン
 *2-2にまとめられているこれまでの冤罪事件をみると、袴田事件では、事件から1年以上経って味噌樽から発見された5点の衣類が犯行着衣とされ、弁護団の実験では、1年以上味噌樽に付け込んだ衣類は真っ黒になり、発見された時のような状況には、数時間漬け込んだ時になるということだった。そして、それまで何度も捜査をしながら味噌樽からは何も発見できなかったのに、1年以上経過した後に発見され、それが重要証拠となって有罪とされているのが、今回の容疑者の診察券と煙草の吸殻入り遺体袋の発見と似ている。

 なお、冤罪に落とし込むには、周りの反発が少ないため、身寄りがなく無職で孤独な人を選ぶのだと聞いたことがある。君野容疑者はまさにそれにあたるため、弁護士はしっかりしてもらいたいところだが、弁護士も、国選弁護人や交通事故の弁護士として警察から情報をもらうため、容疑者より警察との利害関係が深く、容疑者の立場で弁護するとは限らないところが問題なのである。

<遺体発見と容疑者逮捕>
*1-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140924/t10014824601000.html
(NHK 2014年9月24日) 小1女児遺体遺棄事件 近所の47歳男逮捕へ
 今月11日から行方が分からなくなっていた神戸市長田区の小学1年生、生田美玲ちゃん(6)が遺体で見つかった事件で、警察は近くに住む47歳の男が事件に関わっている疑いがあるとして取り調べていて、容疑が固まりしだい死体遺棄の疑いで逮捕する方針です。取り調べを受けているのは、神戸市長田区の47歳の男です。この事件は、23日午後4時すぎ、神戸市長田区の雑木林で袋に入った子どもの遺体が見つかったもので、警察によるDNA鑑定の結果、24日午前、同じ長田区で今月11日から行方が分からなくなっていた小学1年生の生田美玲ちゃん(6)と確認されました。警察によりますと、遺体が入っていた袋の中には、近くに住む47歳の男の名前が書いてある診察券が入っていたということで、取り調べを始める決め手になったということです。警察は男が事件に関わっていた疑いがあるとして、容疑が固まりしだい死体遺棄の疑いで逮捕する方針です。これまでの調べによりますと、遺体は切断され複数の袋に分けて入れられていました。また、現場からは美玲ちゃんのものと特徴がよく似たサンダルやワンピースが見つかっています。調べによりますと、美玲ちゃんは行方不明になった当日の午後、小学校からいったん帰宅したあと再び外出し、午後3時15分ごろ、家から400メートルほど離れたコンビニエンスストアの防犯カメラに、日傘をさして1人で歩く姿が確認されています。そして午後5時半ごろに、そこから数百メートル離れた高校のグラウンドの近くを1人で歩いている様子が目撃されたのを最後に行方が分からなくなり、警察が付近を捜索していました。警察は遺体の状況などから殺人と死体遺棄の疑いで捜査本部を設置して捜査しており、死因についても調べを進めることにしています。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASG9V31Q1G9VPTIL002.html
(朝日新聞 2014年9月26日) 逮捕前、訪問の警察に「女児知らない」 神戸・遺棄事件
 神戸市長田区で市立名倉小1年の女児(6)の遺体が見つかった事件で、死体遺棄容疑で逮捕された無職君野康弘容疑者(47)が逮捕前、自宅を訪問した警察官に「女児のことは知らない」と話していたことが捜査関係者への取材でわかった。行方不明当日に君野容疑者とみられる男と女児の姿が防犯カメラに映っていたが、事件前の面識の有無は不明だ。兵庫県警が最初に君野容疑者に接触したのは、女児が行方不明となってから5日後の今月16日だった。捜査関係者によると、君野容疑者は警戒することなく捜査員を招き入れた。女児との面識について問われると、「知らない」と説明したという。行方不明当日の11日の自らの行動については「覚えていない」と述べ、事件への関与を否定したという。ただ、複数の防犯カメラが、不審な男の行動を記録していた。11日午後3時15分ごろ、コンビニエンスストアのカメラに、女児の後ろを歩く男が映っていた。コンビニ近くの同級生のマンションに女児が入ったのとほぼ同じ頃にも、マンションの入り口のカメラに男の姿が映っていた。これらの映像を端緒に君野容疑者が浮上したという。これ以降、女児の目撃証言は同日午後5時半ごろまであるが、2人の接触を裏付けるものは見つかっていないという。君野容疑者の自宅アパートの関係者によると、現在の神戸市長田区長田天神町1丁目のアパートに君野容疑者が入居したのは昨年6月。同じ長田区内からの転居だった。一方、女児は今年4月、君野容疑者の自宅からも近い名倉小学校に入学した。夏には近所のマンションから現在のアパートに転居した。場所は君野容疑者のアパートから西へ約100メートル余りしか離れておらず、2人の生活圏は、この時点で非常に接近していた。君野容疑者と女児が以前から面識があったのかは、君野容疑者が黙秘しているため判然としない。事前に面識はなかったとみている捜査関係者もいる。女児の遺体は23日に見つかり、君野容疑者は翌24日に逮捕された。
■運動会開催へ
 神戸市教委は26日、開催の見送りを決めていた名倉小の運動会を10月に開くことを明らかにした。女児の母親から「子どもたちのために開いてほしい」との意向が伝えられたという。運動会は今月27日に予定されていたが、遺体発見を受けていったん見送りを決めていた。名倉小の平井正裕校長が母親にお悔やみの電話をかけた際、運動会についても相談したところ、「開いてほしい」と言われたという。事件前、女児は熱心にダンスの練習に取り組んでいたという。

*1-3:http://www.asahi.com/articles/ASG9T6DBJG9TPTIL01Q.html?iref=comtop_pickup_05 (朝日新聞 2014年9月26日) 複数の防犯カメラに容疑者の姿 神戸・女児遺棄
 神戸市長田区で市立名倉小学校1年の生田美玲(いくたみれい)さん(6)の遺体が見つかった事件で、行方不明になる11日に美玲さんが近所の同級生のマンションを訪れた際、その周辺をうろつく無職君野康弘容疑者(47)=死体遺棄容疑で逮捕=とみられる男の姿が複数の防犯カメラに記録されていたことが兵庫県警への取材でわかった。県警は、君野容疑者が被害女児に関心を持っていたとみて調べている。捜査関係者によると11日午後3時15分ごろ、マンション近くのコンビニエンスストアの防犯カメラに、日傘を差して歩く女児と、その後ろをふらふらした足取りで通り過ぎる不審な男が映っていた。その直後、女児は同級生を訪ねるためにマンション内に入った。ほぼ同じころ、マンションの防犯カメラには、入り口付近にいる似た男の姿が映っていた。さらにコンビニ店の防犯カメラには、マンション方面から戻ってきて立ち止まる男の姿も記録されていた。男は、マンションのほうをうかがうように見たあと、もともと来た北方向に立ち去っていた。服装などから、県警はいずれも君野容疑者とみている。一方、女児は同級生と会えないままマンションを出た。北隣にある公園の防犯カメラに姿が映っているが、コンビニ店のカメラには戻ってくる女児の姿が確認できないことから、公園とコンビニ店の間にある脇道に入った可能性があるとみられている。女児はその後、午後5時半ごろまで近辺を1人で歩く姿が目撃されている。県警は、これ以降に再び君野容疑者と接近した場面があったとみて、2人の詳しい足取りを調べている。
    ◇
 君野容疑者に25日夜、県警本部で接見した弁護士が報道陣の取材に応じた。君野容疑者について「表面上は落ち着いているように見えたが、とにかく疲れた様子だった」と語った。

<冤罪のパターン>
*2-1:http://blog.livedoor.jp/tacodayo/archives/7538708.html
(tacodayoのブログ) またまた、兵庫県警による大冤罪事件か?
 神戸連続児童殺傷事件で無実の中学生を犯人に仕立てあげた前科がありますからね。神戸市長田区の小学1年生、生田美鈴さん(6)の切断遺体が見つかった事件で、遺体発見現場の近くに住む君野容疑者(47)が逮捕されましたが、遺体の入ったポリ袋に唾液の着いた吸殻と診察券。真犯人が君野容疑者に罪を擦り付けるために行った小学生でも判るトリックに騙される低脳馬鹿ザル。真犯人は兵庫県政の大物の子弟か県警幹部周辺人物でしょう。レイプを隠蔽するための下腹部の隠蔽(精液で犯行を特定されるのを防ぐため)など明らかに捜査の基本を知っている人間の犯行。冤罪発生装置の兵庫県警と記者クラブ制度で警察発表を鵜呑みで垂れ流すクソマスゴミを許すな!!

*2-2:http://blog.iwajilow.com/?eid=1071754 (つぶやきいわぢろう 2013.6.16) 
TVディレクターがメディアでは伝えられないニュースの裏側を日々レポ
 「助けてください」冤罪被害者の叫び、「息子は人を殺めていません。無実なんです。私が生んで私が育てたんです。どうか息子を助けてください(涙)」。仙台北稜クリニック事件の守大助さんのお母さんの叫びです。大阪に僕が行っていたのは昨日開かれた「なくそう冤罪 救おう無実の人々」というたんぽぽの会の集会に出席するためでした。クレオ大阪西のホールで開かれたこの集会は、ほぼ満席という盛況ぶりでした。集会では布川事件の桜井さんが司会で、福井女子中学生殺害事件の前川さん、袴田事件の袴田さんのお姉さん、そして守大助さんのお母さんによるパネルディスカッションが行われました。皆さん再審請求審が進められています。
 事件から1年以上経ってから味噌樽から発見された5点の衣類が犯行着衣とされて有罪証拠とされた袴田事件。この5点の衣類は本当に袴田さんのものなのか?事件から1年以上、味噌樽に付けられたものなのか?弁護団の実験では1年以上味噌樽に付け込まれた衣類は真っ黒になり、とても発見された時のような状態ではないことがわかりました。しかも数時間、漬け込めば発見された時のような状況になることもわかりました。それまで何度も捜査をしながら味噌樽からは何も発見できなかったのに、なぜ1年以上経過した後に発見されたのか?不思議でなりません。袴田さんの再審請求審では5月24日。この実験を行った方の証人尋問が行われたそうです。またDNA鑑定でもこの5点の衣類についた血痕が被害者のものでも袴田さんのものでもないことがわかりました。お姉さんはこう言います。「DNA鑑定の結果が出て大変良かったのでこれでしゃべれると思いました。それまでは沈黙を続けていましたが、去年から大いに弟は無実であると訴えています。5月24日に味噌漬実験の証人尋問が終わりました。普通、こういった証人尋問で裁判所に呼ばれることはありません。母親は『もうダメかいね、もうダメかいね』といって死んできました。私は母親を背中にしょっています。その苦しみを少しでも軽くしたいと思っています。すで兄たちも2人が他界しました。亡くなった兄たちのためにも少しでも頑張りたい。裁判所には何を言ってもしょうがないと思っています。ひたすら再審開始を願ってやっています」。袴田さんのお姉さんはすで80歳です。ずっと独身を通してきました。「縁談もないことはなかったのですが、巌のことを承知してもらってくれるというのは何かあると思ってね、そんなことをしなくていいと思って、面倒だと思って独身できました」。検察と警察の悪意は家族の人生もボロボロにします。
 守大助さんのお母さんはこう言います。「有罪を下した唯一の証拠が大阪科捜研の鑑定なんです。去年の12月に三者協議で検察がこの誤りを認めました。それを先延ばしにしているんです。このことに対する怒りを我慢することができません。警察官とすれ違うだけでムカムカします。「本当に悔しい」。
 去年名古屋高裁で再審開始決定が取り消されてしまった前川さん。再審に向けて頑張っていたお父さんの体調はあまり良くないそうです。「本当にショックでかなり堪えたみたいです。未だに僕も信じられません。ただ最高裁でひっくり返る可能性もないことはないとい言うのでそこに向けて頑張っています」。前川さんには事件当夜のアリバイがあります。「その当時家族と一緒にいたんですね。母親が退職してその退職金が入ったのと、それから姉がいるのですがその姉が結婚するので、婚約者と一緒に来ていたんです」。その家族で一緒に食事をしていました。しかし、その姉とも疎遠になってしまっているそうです。桜井さんはこう言います。「検察は目の前の人間を犯人にするためには何をやってもいいと思っているんですね。そして誰も責任を取らない。検察は今もこう言っているんですね。『桜井と杉山はたまたま有罪が立証できなかっただけであいつらは犯人である』。
 今、私は国賠訴訟を起こしていますが、証拠開示を実現したいと思っているんです。税金で集めた証拠をなんで見せてもらえないのか?なんで隠すのかおかしいと思いませんか?検察はこういうんですよね。『証拠を開示する法律はない』。だから開示しなくていいという。確かに『証拠を開示する』という法律はありません。けれども『開示しない』という法律もないんです。これは検察が『証拠を隠す』ということは想定してないんです。まさか、そんなひどいことをしないという前提のもとにあるんです。
 酷いと思いませんか。http://blog.iwajilow.com/manage/?mode=write&eid=1071668 僕は検察、裁判官、警察この司法3公務員の腐敗ぶりは目を覆うばかりだと思います。今もたくさんの冤罪被害者が国家権力に人生を台無しにされています。DJポリスが表彰されるってことは、いかにいつも国家権力が庶民に対して高飛車であるかということの象徴じゃないでしょうか?本当にこの国の司法はどうかしていると僕は思います。

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2014.9.25 ロボットと自動車の発達で面白くなりそうだが、道路や電線の改良もした方がよい (2014.9.26に追加あり)
      
   介護ロボ   ミラタ(写真2)  ローマの建物(写真3)  自動運転車

(1)ロボットについて
 *1のように、パナソニックが、高齢者がベッドから立ち上がる動作や歩行を補助する「介護ロボット」を開発して病院や介護施設向けに発売し、価格は100万円未満に抑えるそうだ。高齢者の呼吸や動きを把握して異常がないかを一括管理する「みまもりシステム」も便利そうなので、これらが世界で売れることは間違いない。

 ロボットは、健常者とコミュニケーションできるキロボやミラタ(写真2)のようなものもできているので、私は、ヨーロッパの街角によく立っている彫刻(写真3)にその機能を持たせ、その彫刻に質問するとその人と同じ言語で、街、建物、彫刻の由来などをガイドするようにすれば、観光客がぱっと増えると思う。ヨーロッパで、あれだけ古代遺産のあるギリシャやイタリアの財政が苦しいのは、遺跡が壊れ放題で廃墟と化しているからで、オリジナルに忠実に復元して彫刻のガイドを置いた方が観光客が増えると、私は考える。

 そして、これは日本の神社仏閣にも言えることで、2020年の東京オリンピックまでに、一部の仏像をロボットガイドにしてはどうだろうか。

   
   マドリッド       ローマ(コロッセオ)     ギリシャ(神殿)   法隆寺仏像 

(2)ロボットに近い自動運転車と道路の進歩について
 *2のように、パナソニックは、画像認識技術を持ち、自動運転関連技術の共同開発を視野に入れて、スペインの自動車部品大手フィコサ・インターナショナルを傘下に収めるそうだ。業種や国を越えて、自動車とIT(情報技術)が融合し、自動車がロボットに近く進化するのは面白い。

 しかし、自動運転には、自動車の進化だけでなく、道路や道路標識の進歩もあるべきだろう。例えば、現在、可視光線だけを発している信号機が電波による信号も発したり、緯度・経度や地名の情報も発して車内のカーナビと連動させることができたり、車線が信号を発したりすれば、自動運転システムも作りやすいし、初めての街に行っても運転しやすい。

 また、車が右側通行だったり左側通行だったりして、走行車線が国によって異なるため、決して間違わないように車が支援してくれると有り難いと思っている人も多いだろう。

(3)送電網の整備も・・
 そのような中、*3のように、送電網が対応できないとして、九州電力が太陽光など再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)に基づく新たな契約の締結を、九州のほぼ全域で中断すると発表した。出力の変動については、送電する側が蓄電池を備えていれば問題ない筈だが、既存の電力会社の送電網をそのまま使用すれば、その電力会社の都合によって送電拒否があることは想定内だった。

 そのため、このブログの2011.11.24に「21世紀の発電・送電システムについて」と題して記載しているように、電力会社の送電部門を送電会社として分社化して中立なものにしたり、上下水道やガス管の近くに新たな送電線を引いたりして、発電事業者や電力の消費者が送電線も選択できるようにする必要がある。また、遠距離送電は、高速道路や鉄道の土地を借りて、超伝導電線を引くのがよいだろう。

*1:http://qbiz.jp/article/46484/1/
(西日本新聞 2014年9月24日) パナが介護ロボット開発 百万円未満、16年度発売
 パナソニックは24日、高齢者がベッドから立ち上がる動作や、歩行を補助する「介護ロボット」を開発したと発表した。2016年度に病院や介護施設向けに発売。価格は100万円未満に抑える。安全性などを確かめて、在宅介護をする一般家庭への販売も検討する。介護施設のベッドに取り付けたセンサーで、高齢者の呼吸や動きを把握し、異常がないかを一括管理する「みまもりシステム」も16年度に発売する。介護ロボットと合わせて20年度に50億円の売上高を目指す。

*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140925&ng=DGKDASDZ24045_U4A920C1MM8000 (日経新聞 2014.9.25) 車部品 欧州大手を傘下に、パナソニック、新分野加速 自動運転視野、車・IT融合進む
 パナソニックはスペインの自動車部品大手フィコサ・インターナショナルを傘下に収める。来年3月までに株式の5割弱を200億~300億円で取得、成長戦略の柱とする自動車分野で初の大型M&A(合併・買収)になる。フィコサは画像認識技術を持ち、自動運転関連技術の共同開発も視野に入れる。業種を越え、自動車とIT(情報技術)の融合に対応する動きが世界で加速する。パナソニックとフィコサは株式の取得額などを年内に詰める。出資比率を引き上げて子会社にする可能性もある。フィコサは自動車ミラーで約2割の世界シェアを握り、2013年12月期の売上高は約1300億円。独フォルクスワーゲンや仏ルノーなど欧州勢を中心に世界の自動車大手に納入している。カメラを使って車両周辺の障害物を認識する技術の開発も手掛けている。カメラでとらえた側方や後方の様子をミラーに映すなど、ミラーは自動運転など運転支援システムでも中核部品の一つになる。パナソニックは車載用センサーに強く、フィコサと連携して新技術開発を急ぐ。高度な運転支援機能や車内でインターネットなどを楽しむための情報端末など、ITが自動車の性能や機能を大きく左右するようになっている。需要増を見据え、自動車部品会社とエレクトロニクス会社の間で提携や買収が相次いでいる。変速機などを手掛ける自動車部品世界9位の独ZFは今月、センサー技術に強い米TRWオートモーティブの買収を決めた。特に従来の自動車の概念を変える自動運転技術には自動車メーカーだけでなく、米グーグルなど異業種企業も参入している。今後の競争軸になるとみて、パナソニックは同分野でも戦える体制を構築する。パナソニックは19年3月期に連結売上高を前期比約3割増の10兆円にする計画を掲げる。自動車分野では同5割増の2兆円をめざし、海外でM&Aを狙っていた。フィコサを通じ、カーナビゲーションシステムなど既存の自社製品でも、手薄だった欧州自動車大手向けの販路を手に入れる。パナソニックは13年3月期までの2年間で計1兆5千億円の連結最終赤字を計上し、プラズマテレビからの撤退など構造改革を進めてきた。前期の連結営業利益は前の期から9割増の3千億円になるなど業績が回復し、成長戦略を加速する。

*3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11367986.html
(朝日新聞 2014年9月25日) 再生エネ、新規購入中断 九電、太陽光急増で 送電網、対応できず
 九州電力は24日、太陽光など再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)に基づく新たな契約の締結を、九州のほぼ全域で中断すると発表した。出力の変動が大きい太陽光発電などが急に増えると、電気を安定的に送れなくなるおそれがあるからだ。ほかの電力会社でも同様な課題があり、経済産業省も対策を検討し始めている。九電は、すべての再生エネについて、出力10キロワット以上を発電する民間事業者が九電の送電設備に接続する新規契約を、25日から当面中断する。一般の家庭が太陽光などの余った電気を売る分については、新規の契約を受け付ける。中断に踏み切ったのは、太陽光の急増に対応しきれなかったからだ。九州では、太陽光パネルを設置する土地が比較的安く手に入り、日照条件にも恵まれ、パネルの設置申請が多かった。このため、買い取り価格が減額される前の3月末までに、「駆け込み」の接続申し込みが殺到。すべて接続すると、太陽光と風力の出力は計1260万キロワットに膨らむことがわかったという。能力ベースでは、九電管内の夏のピーク時の電力需要の約8割にあたるという。太陽光は天候や昼夜の発電量の変動が大きい。九電によると、こうした不安定な電力を大量に送電線に受け入れると、周波数が乱れて電気の質が悪くなったり、停電したりする場合があるという。このため、他電力管内に余った電気を送ることで受け入れ容量を増やす対策などを検討し、どれだけ受け入れられるかを見極めるとしている。
■東電管内も一部制限
 問題を抱えているのは九電だけではない。東京電力は、一部の地域に太陽光発電設備が集中し、送電線の受け入れ容量が足りなくなる地域がでてきた。たとえば、群馬県北部では4月から受け入れを制限したうえで、送電線への接続を希望する複数の企業を対象に、送電網を増強する工事費を多く負担した企業から、順番に接続を認める仕組みを始めた。栃木、茨城、千葉、山梨の各県の一部エリアでも受け入れを制限している。北海道電力は「再生エネの受け入れを保留する考えはない」(広報)としているが、道内の太陽光発電の受け入れ容量は70万キロワット。接続の申請を受け付けた分は208万キロワットに上っており、上限を超えるのは時間の問題だ。風力発電も56万キロワットの受け入れ容量に対し、残りが3・9万キロワットしかなく、上限を超えそうだ。政府は、水力を含む再生エネの割合を約1割という現状から、約2割をさらに上回る水準にする目標を掲げる。FITで利益を出しやすい買い取り価格を設け、太陽光の申請は相次いでいるが、送配電網の容量という物理的な壁が普及の足かせになってきた。経済産業省は、送電網の増強や大型蓄電池の整備に補助金を出す一方、FIT自体も見直す方針で、年末にも一定の結論を出したい考えだ。ドイツやスペインでは、再生エネの導入目標に達したら買い取り価格を大幅に切り下げたり、買い取り価格を年に複数回改定したりしており、こうした事例を参考にする。


PS(2014.9.26追加):*3のように、再生可能エネルギーが余るほどある中で、*4のように、温暖化対策の必要性が増して米国・中国も前向きになっているのに、1997年の京都議定書の中心となった日本の関電は、*5のように、原発でなければ石炭火力だそうである。石炭火力もCO2を地中に埋める技術やCO2を使う技術もあるが、それをやるかどうかは記載されておらず、環境を軽んじ、核か燃焼かしか思いつかない電力会社やメディアは、かなり遅れている。

*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140926&ng=DGKDZO77546210W4A920C1EA1000 (日経新聞社説 2014.9.26) 温暖化対策は言葉だけでなく行動を
 地球温暖化対策について各国の首脳級が討議する気候変動サミットが、ニューヨークの国連本部で開かれた。温暖化ガスの二大排出国である中国と米国が、2020年以降の温暖化対策の国際協調体制づくりに前向きに関与する姿勢を示した。明るい兆しといえる。中国の張高麗副首相は温暖化ガス排出の総量抑制に、同国高官として初めて言及した。これまでの「国内総生産(GDP)当たりの削減目標」から踏み込んだ。世界最大の排出国であることを考えれば総量抑制は避けて通れない。中国は先進国だけが温暖化ガスの削減義務を負うべきだと主張し続けている。産業革命以降の歴史を踏まえれば先進国の責任は免れない。しかし今や世界の4分の1を排出する中国の責任も重い。総量抑制の幅や時期を早期に示し応分の責務を果たすべきだ。オバマ米大統領は国内の石炭火力発電所に厳しい規制を課すなど、温暖化をもたらす二酸化炭素(CO2)の排出削減に意欲的である。米議会には温暖化対策に消極的な意見が根強く、政治的に難しい制約があるなかで対策を強めている点は評価したい。ただ、大統領の任期はあと2年ほど。米国として前向きな姿勢が後戻りしないよう、国内の合意をしっかり固めてもらいたい。米国は1997年の京都議定書合意の際に積極的な役割を果たしたが、国内の意思統一ができず議定書から離脱した。その経緯を世界は忘れていない。安倍晋三首相は人材育成などで途上国支援を強めることなどを約束したが、肝心のわが国の20年以降の排出削減目標については「できるだけ早期に提出を目指す」と述べるにとどまった。今回、中国は来年3月末に削減目標を決める方針を示した。日本の対応は国際社会の議論から周回遅れになりつつある。提出期限を明確にしたうえで、目標づくりの国内議論を急ぐべきだ。世界各地で豪雨や干ばつなど異常気象が増えている。洪水などによる多数の難民の発生や、穀物生産の減少、熱帯病の流行が予測されている。温暖化は世界の安全保障への危機といえる。それぞれ国内事情はあろうが、待ったなしの対応が求められている。各国首脳は国連で誓った言葉を具体的な政策にし、確実に行動に移すべきである。

*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140926&ng=DGKDASDC2500A_V20C14A9MM8000 (日経新聞社説 2014.9.26) 
関電、首都圏向け火力 仙台に発電所 域外初、自由化にらむ
 関西電力は宮城県に石炭火力発電所を新設する方針を固めた。伊藤忠商事子会社で新電力の伊藤忠エネクスが計画する発電所建設に参画する。2016年度に電力小売りが全面自由化されるのをにらみ、大手電力会社やエネルギー会社などが首都圏での電力販売拡大を目指している。関電は自社の供給エリア以外で小売り向けでは初となる電源を確保して、競争を優位に進めたい考えだ。伊藤忠エネクスは仙台港に石炭火力発電所を建設する計画で、15年秋に着工する。関電の全額出資子会社で新電力の関電エネルギーソリューション(大阪市)と伊藤忠エネクスの子会社が折半出資で特別目的会社(SPC)「仙台パワーステーション」を設立し、同発電所の建設を担う。発電所の出力は11.2万キロワットで事業費は約300億円。17年秋の運転開始を目指す。関電は発電した電力を首都圏を含む東日本の企業や家庭に、伊藤忠エネクスは企業向けに販売する計画だ。関電は今年4月から関電エネルギーソリューションを通じ、首都圏でオフィスビルなどに電力販売を始めている。電力小売りが自由化されれば市場はさらに広がるが、電力の安定供給には自前の電源が不可欠と判断、東日本で発電所を造る機会を探していた。国内需要の3割が集中する首都圏の電力市場は、自由化をにらんだ競争が激化している。ただ販売量の拡大には安定して電力を確保する必要があることから、自ら発電所を建設する動きが広がっている。中部電力は三菱商事などと静岡県内に出力約10万キロワットの石炭火力発電所を造る。中国電力もJFEスチールや東京ガスと東京湾岸に大型発電所を計画している。

| 資源・エネルギー::2013.10~2014.10 | 03:04 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.9.23 小渕優子経産相の原発への対応と女性閣僚の意味 (2014.9.24、25日追加あり)
   
  *2-3より        *4-2より       *5-1より

(1)フクシマ汚染水の海への流出について
 *1-1のように、小渕優子経産相が、9月7日、東京電力福島第1原発を視察して、「汚染水は、全体としてコントロールされていると考えている」と述べたそうだが、これは、安倍首相の見解をなぞっただけである。そして、実際には、*1-3のように、米原子力規制委員会のグレゴリー・ヤツコ前委員長が、「汚染水は制御不能で、地下水はコントロールできない」「問題をここまで悪化させたことが驚きだ」と述べており、私もそのとおりだと思う。そして、これは、海産物を通じて関東はじめ日本全国に影響があるため、単に安倍首相の見解を踏襲するだけでは、群馬県選出の幼い子どもの母親でもある女性衆議院議員が閣僚になった意味は小さくなる。

 また、*1-2のように、東電の資料から、2013年8月~2014年5月にかけて港湾内の1~4号機取水口北側で測定したストロンチウム90とセシウム137の平均濃度を基に試算した、ストロンチウム90とセシウム137の1日当たりの流出量は合わせて2兆ベクレルを超え、事故直後からの累計では相当の数値になり、これが港湾内にのみ留まって海への影響がないわけがない。そのため、*1-4のように、福島第1原発の地下水放出に、漁業者が反発しているのだ。

(2)フクシマの放射線被曝と補償
 *2-1のように、東京電力福島第1原発事故による健康への影響を調べている福島県は、甲状腺検査の途中経過を公表し、「現時点で放射線の影響はみられない」という従来通りの見解を示した。しかし、甲状腺検査では、甲状腺癌の「確定」が57人、「疑い」が46人となっており、10代の甲状腺癌の「100万人に1~9人」いう通常の頻度よりかなり高い割合となっている。また、チェルノブイリ原発事故では、甲状腺癌が急増したのは4~5年後で、消化器、呼吸器、泌尿器の癌、免疫機能低下、心筋異常などの疾患も見られ、低線量被曝には未解明な点が多い。さらに、フクシマは、被曝線量を推計に頼っているため、原発事故による健康被害について、「今までも、現在も、将来も問題ないと約束する」とは言えない。

 そのため、*2-2のように、日本学術会議は9月19日、「事故直後の放射性物質の拡散をめぐる情報がまだ十分公開されていない」として、「政府や研究機関は関連する情報を直ちに公開すべき」と訴えたそうだが、国民を護るつもりがあるのなら、公開するのが当然である。そして、それを踏まえなければ、避難者の帰還判断や除染について、科学者が地域の決定や住民の選択を正しく支援することはできない。

 また、*2-3のように、住宅の除染を計画した東北、関東の74市町村のうち計画分を未完了としているのは、6月末時点で半数超の40市町村に上り、少なくとも計約31万1700戸分に上ることが、毎日新聞のアンケートで分かったとのことである。これ以外にも、埼玉県のように線量を全県で3か所しか測定しておらず、除染計画が全くない県もある。自民党政権になった後の経産相は、茂木氏(栃木県選出)と小渕氏(群馬県選出)だが、地元からの要望はないのだろうか、それとも要望を無視してきたのだろうか。

(3)原発地元での再稼働反対例
 *3のように、原発の地元では、日本で初めて原子力の火が灯った茨城県東海村でさえ「脱原発集会」が開かれ、「JCO臨界事故から十五年、原発再稼働を許すな」をテーマ掲げ、事故時に自身の判断で住民避難を決めた元村長の村上達也さん、JCO健康被害訴訟元原告の大泉恵子さん、各地の原発訴訟に詳しい弁護士の青木秀樹さんの三人が意見を交わし、デモ行進も行うそうである。そして、これは一例に過ぎない。

(4)意図的な試算と原発政策への誘導
 *4-1に書かれているとおり、小渕経産相は9月21日のNHK日曜討論で、「資源の乏しい日本はエネルギーについて良いバランスを取っていくことが大事で、原子力を持たない選択をするということは難しい」と述べたが、これは10~50年前から同じことを言っており、経産省のペーパーを暗記して語ったにすぎない。現在では、資源の採掘方法や発電方法が進歩したため10年前と同じでもなく、経産省が意図的で遅れているのだ。また、“バランス”と言う人も多いが、現在、蒸気機関車の割合が殆ど0であるのと同様、何でも少しずつあるのがバランスがよいわけではなく、時代によって0になる技術もあるのだ。

 しかし、小渕経産相は「原子力規制委員会の安全審査に合格した原子力発電所を再稼働させていく」という政府の方針を暗記しているかのように改めて述べ、「古くなった火力発電所をフルに使ってエネルギーを作り出しているので、決して安心できる状況ではない」とも語ったが、原発か火力かという選択こそ変えるべきなのであり、それは今なら可能である。

 さらに、小渕経産相は、「化石燃料の輸入増が電気料金の上昇につながり、中小企業などの経営を圧迫している」とも述べたが、これは、*4-2、*4-3に記載されているとおり、原発停止の影響を過大評価しており、実際には原発再稼働の効果は小さい上、*4-4のように、米国の試算では「再生可能エネルギーのコストの低下で、原発による電力は風力より高く、太陽光発電(公害がない)と同レベル」になっているのだ。

(5)電力自由化に逆行して大規模事業者を優遇する経産省
 *5-1のように、経産省は、2016年4月に家庭向け電力小売りを自由化する際、「消費者を保護するため」と称して、小売りに参入する企業を審査して十分な供給能力がない企業の販売を認めない規制を行うそうだ。また、太陽光や風力など、気象条件で供給力が変わる発電所に依存する企業は、供給を安定させるため、(蓄電池ではなく)火力発電所を確保しているかを審査するそうで、これは、消費者保護と称する既存電力会社保護策であり、独占禁止法に違反するとともに、電力自由化にも逆行する。

 また、*5-2のように、経産省は総合資源エネルギー調査会の小委員会に、大手電力など原発事業者の優遇策を提案したそうだが、これは原発由来の電力に優遇策を与え、電力小売り自由化の趣旨に反している。経産省は、エネルギー基本計画で「原発は運転コストが低い」と位置付け、「重要なベースロード電源」として再稼働推進を打ち出したのであるから、こんどの提案は自己矛盾だ。

(6)原発事故時の補償は、メーカーを免責する(!?)
 *6-1のように、原発を持つ国同士が重大事故時の賠償金を支援する「原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)」承認案を29日に召集される臨時国会に提出するそうだが、この条約は異常に巨大な天災の場合を除き、賠償責任は全て事故発生国の電力会社が負い、加盟国は事故発生国に対して支援金を支払う仕組みである。そのため、輸出先が加盟国なら、原発メーカーは免責され事故時の損害賠償リスクが減るが、その分は国民のリスクが高まるのだ。なぜ、そこまでして原発を輸出しなければならないのか、そこが今、明確にして議論すべき問題である。

 また、*6-2-1のように、原発事故の賠償を裁判外で解決する手続き(原発ADR)を巡り、原発事故による避難で死亡した場合の慰謝料は「一律に50%」で算定しており、これは、*6-2-2のように、原発賠償の算定基準そのものだそうである。その内部文書には、「死亡慰謝料を低めにする必要はないか」など、被災者にとって看過できない記載もあり、すべて非公開の内容ばかりであるため、早急に開示して地元住民に対する説明が必要だろう。

(7)経済成長を助けるのは、どういう女性か
 *7で、米ジョージタウン大の女性・平和・安全保障研究所所長 メラニー・バービアー氏が述べているとおり、世界で女性が経済成長を促していることは事実で、女性の社会進出は様々な場所で見られ、女性が職場で働くことによって国内総生産(GDP)が上がり、女性が自らの収入を自分のコミュニティーや健康維持、家族、子供たちの教育に振り向ける傾向が強い結果、その社会の生活水準が上がるという意見に、私は全く同感だ。しかし、女性の起業家にも、社会の意識、銀行、行政、司法など多数のバリアがあり、賃金格差は女性差別のほんの一例にすぎない。

 そのような中、人口の半分を占める才能(女性)が自由に能力を発揮できるようにしなければならないのは当然だが、管理職以上に推挙される女性は、とかく小渕優子経産相のように男性が作った枠からはみ出さない人が多い。これは、男性が自分の想定内で動く女性を推挙するからだろうが、それでは女性が大臣になっても、原発を推進して再生可能エネルギーによるイノベーションを抑えるというように、経済成長を促さず、雇用も増えない。そのため、もう、このパラドックスにも目を向けるべきである。

<フクシマ汚染水の海への流出について>
*1-1:http://www.newsweekjapan.jp/headlines/business/2014/09/133911.php
(Newsweek 2014年9月8日) 小渕経産相、福島第1原発の汚染水問題「コントロールされている」
 小渕優子経済産業相は7日、東京電力福島第1原発を就任後初めて視察した。視察後、記者団に対し、汚染水問題がコントロール下にあるかとの質問に対して「全体として状況はコントロールされているものと考えている」と述べた。小渕経産相は「個別の事象は発生しているが、モニタリングの結果、発電所の港湾内で放射性物質の影響は完全にブロックされている」と話した。1年前にブエノスアイレスで行われた国際オリンピック委員会(ICO)総会での2020年東京五輪誘致スピーチで安倍晋三首相は、福島第1原発の汚染水問題について「アンダー・コントロール」と発言した経緯がある。今月3日に経産相に就任したばかりの小渕氏だが、最重要課題のひとつである汚染水問題で従来の政府見解を踏襲した形だ。

*1-2:http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014090700093
(時事ドットコム 2014/9/8) 海流出、さらに2兆ベクレル=ストロンチウムとセシウム-福島第1
 東京電力福島第1原発から放射性物質が海に流出している問題で、今年5月までの10カ月間に第1原発の港湾内に出たストロンチウム90とセシウム137が計約2兆ベクレルに上る可能性が高いことが7日、東電の資料などで分かった。二つの放射性物質だけで、第1原発の事故前の放出管理目標値の10倍を超える。事故に伴う深刻な海洋汚染が続いていることが浮き彫りとなった。第1原発では、汚染された地下水が海に流出しているほか、高濃度汚染水がたまった建屋のトレンチ(ケーブルなどの地下管路)から直接港湾内に漏れている可能性も指摘されている。東電の資料によると、昨年8月から今年5月にかけ、港湾内の1~4号機取水口北側で測定したストロンチウム90とセシウム137の平均濃度を基に試算した1日当たりの流出量は、約48億ベクレルと約20億ベクレル。10カ月間の総流出量はそれぞれ約1兆4600億ベクレルと約6100億ベクレルの計算になる。合わせると2兆ベクレルを超えるが、汚染水には他の放射性物質も含まれており、港湾内の汚染はより深刻とみられる。

*1-3:http://www.sponichi.co.jp/society/news/2013/09/24/kiji/K20130924006679480.html (スポニチ 2013年9月24日) 「汚染水は制御不能」米規制委の前委員長が指摘
 米原子力規制委員会(NRC)のグレゴリー・ヤツコ前委員長は24日、日本外国特派員協会で記者会見し、東京電力福島第1原発の汚染水問題について「東京に影響はないが、汚染水は制御不能だ」と述べた。ヤツコ氏は、安倍晋三首相が国際オリンピック委員会総会で「状況はコントロールされている」などと発言したことに「現場では努力しているが、事態は制御不能なところまで来ている。地下水はコントロールできない。できることは影響を和らげることだけだ」と指摘、監視強化の必要性を訴えた。さらに、汚染水が海に流出し続けている現状を踏まえ「問題をここまで悪化させたことが驚きだ。なぜもっと力を注いでこなかったのか」と、政府と東電の対応を批判した。

*1-4:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201409/20140919_63008.html
(河北新報 2014年9月19日) 福島第1・地下水放出に漁業者反発 東電説明
 東京電力が福島第1原発の汚染水対策として建屋周辺の井戸「サブドレン」から地下水をくみ上げ、最終的に海に放出する計画で、福島県漁連は18日、いわき市漁協の組合員を対象に説明会を同市内で開いた。東電の説明に漁業者から反発が相次いだが、県漁連の野崎哲会長は終了後、報道陣に「計画の必要性はかなり高い。執行部として組合員に理解を求めていきたい」と述べ、容認に前向きな考えを示した。漁業者約100人が参加し、東電福島復興本社の新妻常正副代表らが計画を説明。参加者からは「試験操業の魚種が増え、前に進もうとしているのに、トラブルが起きたら立ち直れない」「東電には不信感しかない」など反対の声が続出した。狭い会場に入れない組合員が多数いたため、説明会は途中で打ち切られ、後日、あらためて開くことになった。野崎会長は終了後、「廃炉作業の進展と漁業の復興は車の両輪だ」と述べ、計画に理解を示した。一方、建屋内などの高濃度汚染水については「浄化後も海洋放出は認められない」と述べた。いわき市四倉の佐藤芳紀さん(55)は取材に「東電は半年間ぐらいデータを集め、足場を固めるべきだ。現状では納得できない」と強調。同市永崎の作山浩之さん(50)も「今回の計画を認めたら、いずれ建屋に入った汚染水の放出につながりかねない」と批判した。相双漁協の組合員向けの説明会も相馬市で19日に開かれる。

<フクシマの放射線被曝と補償>
*2-1:http://www.shinmai.co.jp/news/20140826/KT140825ETI090007000.php
(信濃毎日新聞 2014年8月26日) 被ばく検査 これからが大切になる
 現時点で放射線の影響はみられない―。東京電力福島第1原発の事故による健康への影響を調べている福島県が、甲状腺検査の途中経過を公表し、従来通りの見解を示した。国連放射線影響科学委員会や国際がん研究機関といった専門機関も、事故の影響には否定的だ。半面、長期にわたる継続的な調査の必要性も訴えている。何より、被ばくした住民の多くが今も健康不安を抱えている。国は福島県を積極的に支援し、甲状腺に限らず、住民が希望する診療を受けられるよう、体制の拡充に努めなければならない。甲状腺検査は、震災発生時18歳以下だった37万人を対象に2011年10月から続けている。1次検査の結果が出た約30万人のうち、甲状腺がんの「確定」は57人、「疑い」は46人となっている。10代の甲状腺がんは「100万人に1~9人」とされた震災前の頻度より割合は高いが、検査の精度が高まったためという。当初から問題が多かった。甲状腺がんの原因となる放射性ヨウ素の半減期は8日間と短い。検査が始まった時点でほぼ消失していて、被ばく量は推計に頼らざるを得ない状況だった。検査の順番がなかなか回ってこない、検査結果が書面で通知されるだけで医師から説明を受けられない―。住民の不満は強く、自費で検査や再検査を受けた人たちも少なくない。国の責任は重い。健康調査は福島県に任せきり。被ばくした人は他県にもいるのに、十分に対応していない。血液や尿など検査項目を増やすよう求める医療関係者の声にも応えてこなかった。東京五輪招致に当たり、安倍晋三首相は、原発事故による健康被害について「今までも、現在も、将来も問題ないと約束する」と国際社会に言い放った。福島の医療現場からは「被災者と国、自治体との信頼関係の回復が急務」との嘆きさえ聞かれる。検査はこれからが大切になる。チェルノブイリ原発事故で甲状腺がんが急増したのは4~5年後だった。消化器や呼吸器、泌尿器のがん、免疫機能低下や心筋異常などの疾患もみられるという。低線量被ばくには未解明な点が多い。予断を持たず検査を続け、住民の受診率を高め、病気の予防、早期発見を徹底する必要がある。国が前面に立って体制を強化すべきだ。東電任せにした汚染水問題のように、中途半端に推移を見守るのでは無責任すぎる。

*2-2:http://www.minyu-net.com/news/news/0920/news8.html
(2014年9月20日 福島民友ニュース)「初期被ばくの解明」提言 日本学術会議が公表
 日本学術会議(大西隆会長)は19日、東京電力福島第1原発事故の発生当初のモニタリングデータなど、時間経過に伴い新たに明らかになった情報に基づき、事故に伴う初期被ばくの実態解明を目指すべきだとする内容を盛り込んだ提言を公表した。提言では、被ばくによる健康影響の解明などに向け、行政や科学者集団に望まれる役割を指摘している。放射性ヨウ素などによる事故直後の初期被ばくはいまだ不明な部分が多いが、提言は、昨年6月に米国エネルギー省の調査に基づくヨウ素線量マップが公開されたことなどを指摘。こうした新たに追加された情報に基づき、当時の放射性物質の放出状況や初期被ばくの状況を再度検討し、結果を県民の健康調査などに反映させるべきとした。また、事故直後の放射性物質の拡散などをめぐる情報がまだ十分公開されていないとして、政府や研究機関は関連する情報を直ちに公開すべきと訴えた。県民健康調査は続けるべきとしたが、調査体制の在り方、調査結果の伝え方などについて、住民との対話を踏まえながら不断の改善を図るべきだと指摘。避難者の帰還の判断や除染の目標値をめぐっては、科学者集団が地域の決定、住民の選択を支援すべきとした。原子力規制委員会の下に府省横断的な学術調査・研究の組織を置き、科学者集団が科学的知見や助言を規制委に提供する仕組みを確立することも求めた

*2-3:http://mainichi.jp/select/news/20140922k0000m040114000c.html
(毎日新聞 2014年9月22日) 住宅除染:過半が未完了…74市町村計画、進捗に地域差
 東京電力福島第1原発事故に伴い、市町村による除染を国が財政支援する汚染状況重点調査地域に指定され、住宅の除染を計画した東北、関東の74市町村のうち計画分を「未完了」としているのは、6月末時点で半数超の40市町村に上り、少なくとも計約31万1700戸分に上ることが、毎日新聞のアンケートで分かった。このうち2町は住宅除染に着手できておらず、進捗(しんちょく)率の地域差も浮き彫りになった。同地域に指定された8県(岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉)104市町村(うち4市町村は指定解除)に7〜8月、優先してほぼ終了した学校や公共施設などを除き、住宅、道路、農地、森林の除染についてアンケートし、全市町村が回答した。このうち住宅除染を計画したのは74市町村。未完了とした40市町村の県別の内訳は、実施戸数の多い福島県が29と大半を占め、少なくとも28万6002戸の除染が終わっていなかった。他は栃木・宮城各4、茨城2、群馬1で計2万5719戸。今後の除染予定戸数について、3市町村は「集計中」などとして回答しなかった。宮城県山元町(予定戸数1495戸)と福島県新地町(同600戸)は「進捗率0%」だった。作業が進まない理由として「除染土の仮置き場確保が困難を極めている」(福島県いわき市)など多くが仮置き場不足を挙げた。また、「関係者が膨大で、同意取得に日数を要している」(栃木県那須町)など地権者同意に手間取っている例も複数あった。このほか、計画分は終わったが、軒下などの放射線量が比較的高い場所の除染を「今後も継続実施する必要がある」と答えたところも岩手・茨城各2、福島1の計5市町村あった。環境省の担当者は「福島県は実施戸数が多く、計画完了は2015〜16年度末がめどでほぼ想定通りのペースだ。他県は戸数を基準にすると約9割が終了した」と説明する。一方、京都精華大の山田国広名誉教授(環境学)は「国は除染方法の大枠を指針などで定めているが、その運用は自治体に任され、地域差が生じている。計画分を終えてもホットスポットなどの問題が残る場合もあるが、今後の具体的な方針を国はまだ示していない」と指摘する。

<原発地元での反対意見>
*3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/20140921/CK2014092102000167.html (東京新聞 2014年9月21日) JCO臨界事故から15年 東海村から「脱原発を」 28日に集会
 東海村の核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所で一九九九年、作業員二人が死亡する臨界事故が発生してから三十日で十五年。これに合わせ、脱原発を訴える集会が二十八日、東海村石神内宿の石神コミュニティセンターで開かれる。「JCO臨界事故から十五年、原発再稼働を許すな」をテーマに、事故時に自身の判断で住民避難を決めた元村長の村上達也さん、JCO健康被害訴訟元原告の大泉恵子さん、各地の原発訴訟に詳しい弁護士の青木秀樹さんの三人が意見を交わす。水戸地裁で行われている日本原子力発電東海第二原発運転差し止め訴訟の報告などもある。集会は午後一時半から。午後三時半からJR東海駅まで約二・四キロにわたりデモ行進も行う。参加無料。問い合わせは茨城平和擁護県民会議=電029(221)6811=へ。

<意図的な試算結果と政策>
*4-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS21H03_R20C14A9NN1000/
(日経新聞 2014/9/21) 小渕経産相「原子力持たない選択は難しい」、NHK番組で
 小渕優子経済産業相は21日のNHK番組で「資源の乏しい日本はエネルギーについて良いバランスを取っていくことが大事。原子力を持たない選択をするということはなかなか難しい判断ではないか」と述べ、原子力規制委員会の安全審査に合格した原子力発電所を再稼働させていく政府の方針を改めて強調した。小渕氏は「原発がなくても我々の生活は回っているじゃないかという話をいただくが、古くなった火力発電所をフルに使ってエネルギーを作り出している。決して安心できる状況ではない」と指摘。化石燃料の輸入増が電気料金の上昇につながり、中小企業などの経営を圧迫している現状にも懸念を示した。

*4-2:http://toyokeizai.net/articles/-/48133 (中村 稔 :東洋経済 編集局記者 2014年09月22日)原発停止だけじゃない、電気料金上昇の真相、震災前に比べて4割近くも値上がり
 これまで東電を含め7社が震災後に改定値上げを実施。北海道電力は再値上げを申請した東日本大震災以降、電気料金の上昇が目立っている。原子力発電所の停止による影響が大きいと見る向きが多いが、実際はどうか。画像を拡大東京電力の家庭用モデル料金で見ると、震災が発生した2011年3月分は6251円だった。それが2014年9月分は8477円まで上昇している。上昇幅は2226円、率にすると35.6%増だ。内訳は、口座振り替え割引額の増加が1.5円の値下げ要因となった一方、2011年4月から導入された太陽光発電促進付加金で14円、2012年8月導入の再生可能エネルギー発電促進賦課金で217円、同年9月の料金改定で359円、2014年5月分からの消費税率引き上げの影響で230円の上昇となった。それ以外の1407円が燃料費調整制度(燃調)を通じた値上がりだ。
●燃調とは何か
 燃調とは、火力発電の燃料である原油や液化天然ガス(LNG)、石炭の価格変動を毎月自動的に電気料金へ反映する制度。2011年3月分の料金に反映された平均燃料価格(貿易統計実績)は1キロリットル当たり3万2800円だったが、2014年9月には5万5100円と68%も上昇している。これは、ドルベースで原油価格が33%上昇し、それに連動してLNG価格も50%上昇した影響が大きい。加えて、為替が1ドル=83円から102円へ大きく円安に振れた影響も甚大だ。LNG高の一部は日本の原発停止に伴う需要増大の影響も考えられるが、原油高や円安は原発停止とは基本的に関係ない。原発停止との関係が深いのは、料金改定値上げだ。東電の場合、原発の発電収入がなくなった反面、原発の代替となる火力発電の燃料費が大幅に増加。燃料単価の上昇は燃調で料金へ反映されるが、使用量の増加による燃料費増大は料金に反映されない。燃料費は原価全体の4割強を占めるだけに業績は急悪化。そのため、人件費削減など合理化を前提に値上げを政府に申請し、平均8.46%(モデル家庭は5.1%)の値上げが認められた。
●料金改定の影響は小
 ただ、震災後の値上げ幅のうち、料金改定による影響は2割にも満たない。値上げ要因の大半は燃調を通じた燃料単価高、円安といえる。東電は料金改定による来年以降の再値上げの可能性も示唆している。前回の値上げ時に、今年7月からの柏崎刈羽原発の再稼働を前提に置いていたが、今もそのメドが立たないためだ。現在、合理化の加速による値上げ回避を模索しているが、なお不透明だ。今後の見通しについて、富士通総研経済研究所の高橋洋主任研究員は、「燃料価格上昇や増税、再エネの賦課金増加などが値上がり要因となる反面、(2016年度からの)電力小売り完全自由化による競争が値下がり要因となりうる」と語る。すでにエネットなどの新電力会社は、大手より割安な企業向け料金でシェアを拡大している。家庭分野が自由化されて競争がさらに激化すれば、大手電力への値下げ圧力も高まる可能性がある。 (なかむら みのる:東洋経済 編集局記者企業情報部編集委員、エネルギー業界担当)

*4-3:http://qbiz.jp/article/45910/1/ (西日本新聞 2014年9月15日) 「原発抜き」国の試算過大 「火力燃料費3.6兆円増」……実は2.4兆円
 原発停止に伴い、不足する電力を火力発電のたき増しで補った結果、火力の燃料費増加額として年間約3兆6千億円が余計に必要になったとした政府試算に対し、専門家から「高すぎる。原発停止の影響を過大に見積もっている」と批判する声が出ている。廃炉が決まった東京電力福島第1原発を含め東日本大震災前の原発を維持することを前提に、その分を火力で補った場合で試算している上に、節電の実績も反映されていないからだ。実績に基づく民間試算では3分の2の約2兆4千億円に圧縮される。経済産業省資源エネルギー庁は8月下旬、今後の原発政策を議論する審議会で委員の指摘を受け、「燃料費増加分の要因分析」とする資料を提出。3兆6千億円の内訳を初めて明示した。それによると、同庁は福島原発事故(2011年3月11日)による電力供給の影響がほとんど出てない10年度と、関西電力大飯原発を除く原発が停止した13年度の燃料費を比較し、3兆6千億円が余計にかかったと説明している。同庁は08〜10年度平均の原発による発電量2655億キロワット時を、13年度も維持することを前提に、その分を火力で補った場合で試算。廃炉が決まった福島原発も稼働中という、現実にはあり得ない前提だ。その上で、内訳は火力の燃料となる液化天然ガス(LNG)や石油などの使用量が増えた「数量要因」が7割(2兆6千億円)とする一方、残りの3割(1兆2千億円)は、燃料単価の上昇や、燃料輸入の際のアベノミクス政策を受けた円安による「価格要因」。それらを合算し、原発のウラン燃料の削減効果(約3千億円)を差し引き、おおむね3兆6千億円と計算した。しかし、13年度の火力発電の増加量(12年度実績から推計)は、節電が進んだこともあり、政府見込みよりも約3割少なく推移。脱原発を目指し、政策提言を行う自然エネルギー財団(東京)が、それに基づいて試算したところ、13年度の燃料費増加分は政府試算の3分の2の約2兆4千億円。価格要因を除けば、約1兆6千億円まで圧縮された。九州大の吉岡斉(ひとし)教授(原子力政策)は「福島事故前と同じ規模で原発を稼働させるという政府試算の前提が実態とかけ離れている。廃炉になりそうな原発はまだあり、原発が再稼働すれば3兆6千億円の国民負担が解消するという言い方は誤りだ。再稼働の経済効果は政府が言うより小さいとみるべきだ」と話す。同財団の分山達也研究員は「LNG価格は福島原発事故前から上昇してきた。円安を含め、価格要因まで含めて原発停止の影響とするのは妥当ではない」と指摘する。

*4-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014091601001012.html
(東京新聞 2014年9月16日) 原発電力は風力より高い、米試算 太陽光発電と同レベル
 原発の発電コストは世界的には1キロワット時当たり平均14セント(約15円)で太陽光発電とほぼ同レベル、陸上風力発電や高効率天然ガス発電の8・2セントに比べてかなり高いとの試算を、エネルギー問題の調査機関として実績のある米国企業系「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」(BNEF)が16日までにまとめた。東京電力福島第1原発事故後の安全規制強化もあって建設費や維持管理にかかる人件費などが世界的に高騰していることが主な理由。再生可能エネルギーのコストの低下が続く中、原子力の優位性が薄れていることを印象付ける結果となった。

<電力自由化に逆行して大規模事業者を優遇する経産省>
*5-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140923&ng=DGKDZO77422100T20C14A9PP8000 (日経新聞 2014.9.23) 
電力小売りで消費者保護 経産省 供給力不足、参入認めず
 経済産業省は2016年4月に家庭向けの電力小売りを自由化した際に消費者を保護するための制度を固めた。経産省が小売りに参入する企業を審査し、十分な供給能力がない企業の販売を認めない規制が柱だ。安定した電力供給の能力がない企業を排除し消費者が電力供給を受けられなくなる事態を回避する。6月に成立した改正電気事業法により、16年4月から経産省に登録さえすれば誰でも家庭に電気を売れるようになる。従来は東京や関西など10電力会社が地域ごとに電力販売を独占してきた。家庭向けの電力小売りへの参入を視野に経産省に届け出た企業は9月時点で350社を超えた。商社や通信大手の参入意欲が強い一方、「十分な供給能力を持っていない企業も多い」との見方がある。新規参入企業と契約した消費者を保護する策が課題となっていた。このため経産省は新たに小売りに登録する企業に条件を設け、省令に盛り込む方向だ。企業が電気を売る地域で見込む最大需要を経産省に提出させる。経産省は企業が需要に見合った発電所との契約や、他社から受電する見通しがあるかをチェックして不十分なら登録を拒否する。太陽光や風力など気象条件で供給力が変わる発電所に依存する企業は、供給を安定させる火力発電所などを確保しているかを審査する。企業が小売りを始めてから供給力が不足すると、経産省が改善命令を出す。改善が見られなければ登録を抹消する制度にする。

*5-2:http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201409220006.html
(愛媛新聞 2014年9月22日) 原発の電気に優遇策 小売り自由化の趣旨に反する
 経済産業省が総合資源エネルギー調査会の小委員会に、大手電力など原発事業者の優遇策を提案した。電力自由化が進み、市場価格が下がった場合に備え、原発で発電した電気の価格を保証する仕組みの導入を目指す。具体的には、廃炉や使用済み核燃料の処分に必要な費用も含めて国と大手電力が「基準価格」を設定。市場価格が下回れば、差額を電気料金に上乗せするなどして全国の消費者に負担させる。逆に上回れば差額を還元するが、「原発の電気は安価」としてきた国の見解と矛盾する可能性が高いと言わざるを得まい。市場価格にかかわらず、大手電力が原発にかかる巨額の費用を確実に回収できるとなれば、新増設に道を開くことにもなろう。さまざまなコストを電気料金に転嫁する「総括原価方式」の撤廃を見越した代替措置とさえ映る。事業者間の競争を阻害し、小売り全面自由化の趣旨に逆行する優遇策は到底容認できない。エネルギー基本計画との整合性も問われる。安倍政権は今春「原発依存度を可能な限り低減させる」と計画に明記した。具体的な数値目標などを検討する気配が見えないばかりか、原発温存の枠組みを強化するかのような優遇策に懸念と憤りを禁じ得ない。東京電力福島第1原発事故を経験し、国民の半数以上が原発に依存しない社会を望んでいる。共同通信の先月の世論調査でも、原発再稼働に57.3%が反対し、賛成の34.8%を大きく上回った。廃炉や使用済み核燃料処分が、結果として原発に頼ったわれわれ世代の責務であることは否定しない。原発事業者の経営悪化などで廃炉が進まない事態は避けねばならないが、そもそも電気料金とは切り離して論じるべきだ。国民に負担を求めるなら脱原発方針の明確化が不可欠。新増設に理解は得られないとくぎを刺しておきたい。エネルギー基本計画は、原発を「運転コストが低い」と位置付ける。「重要なベースロード電源」として再稼働推進を打ち出したのも、低コストの前提があればこそだ。しかし、事故後の規制強化や廃炉などを考慮した総合的な分析は十分とは言い難い。原発のコストの優位性は多くの研究で揺らいでいる。米国の調査機関は1キロワット時当たり平均15円と試算した。太陽光と同レベルで、天然ガスや陸上風力の1・7倍、地熱や小規模水力のほぼ2倍に相当する。しかも、試算には廃炉費用は含まれていないのだ。国が目指す優遇策は「原発の電気は高くつく」と認めたに等しい。再稼働推進の根拠を自ら否定するからには、エネルギー基本計画を抜本的に見直し、原発に依存しない社会実現を急がねばならない。

<原発事故時補償、メーカーを免責>
*6-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014092202000223.html
(東京新聞 2014年9月22日) メーカー免責の原発賠償条約 臨時国会に承認案
 菅義偉(すがよしひで)官房長官は二十二日午前の記者会見で、原発を持つ国同士が重大事故時の賠償金を支援する「原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)」の承認案を二十九日に召集される臨時国会に提出する考えを明らかにした。この条約は異常に巨大な天災の場合を除き、賠償責任は全て、事故発生国の電力会社が負い、加盟国は事故発生国に対して支援金を支払う仕組み。輸出先が加盟国なら、日本製の原発でもメーカーは免責される。日本の原発メーカーはリスクが減る分、輸出しやすくなる。米国が中心となり、条約発効に向けた準備を進めている。日本が加盟すれば、発効要件を満たすため、米国から強い要請がある。菅氏は、山口俊一科学技術担当相が二十一日にモニズ米エネルギー長官に条約の承認案を国会提出する考えを伝えたと説明。「東京電力福島第一原発の廃炉、汚染水対策を進める上で、知見のある海外企業の参加を後押しすることに役立つ」と述べた。しかし、日本弁護士連合会は「原発輸出の推進が目的で、原発による人権侵害を他国に広める」などと反対している。
 <原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)> 米国、アルゼンチン、モロッコ、ルーマニア、アラブ首長国連邦の5カ国が加盟するが、「原発の熱出力が計4億キロワット」の要件を満たさず未発効。米国は日本に、民主党政権当時から加盟を強く求めてきた。同種の国際条約には欧州が中心のパリ条約、東欧や中南米を中心としたウィーン条約がある。

*6-2-1:http://mainichi.jp/select/news/20140830k0000m040199000c.html
(毎日新聞 2014年8月30日) 原発賠償:原発ADR「一律5割」 国の説明、二転三転
 「文書はない」。否定からわずか1カ月、コピーを示されると一転して存在を認めた−−。原発事故の賠償を裁判外で解決する手続き(原発ADR)を巡り、国の「原子力損害賠償紛争解決センター」が死亡慰謝料を「一律5割」とする内部文書を作成していた問題。センターは他にも、賠償額を算定するために多数の文書を作成しているが、公開していない。「すべて開示すべきだ」。被災者側の弁護士から批判の声が上がっている。7月25日、センターの実務を担当する原子力損害賠償紛争和解仲介室の団藤丈士室長は、取材に訪れた記者にA4判1枚のペーパーを手渡した。原発事故による避難で死亡した場合の慰謝料を「ほぼ一律に50%」と算定していることを指摘した7月9日の毎日新聞の記事に対する反論だった。「正しい理解を欠き、客観的事実にも反する内容で遺憾」と記載。「一律50%のルールは一切ありません」と語った。記者が文書の有無を確認したところ「そんなものございません」と言い切った。ところが、毎日新聞が「一律5割」と明記された内部文書を入手すると説明を一変させた。8月7日、コピーを示された団藤室長は「文書にはクレジット(作成者の名前)がないからよく分からないが、私が見ていなかったのかもしれない」と後退した。さらに「文書の管理ができていない。(センターは)弁護士の集合体なので行政文書(としてきちんと管理する)概念がない。どんな書類が行き来しているか問われても(分からない)」と開き直りとも言える主張を展開した。文書の存否を明言しないため確認を求めると、後日、団藤室長の部下の職員から記者に電話があった。「文書はありました。複数の調査官が持っている」。公文書管理法は「職務上作成し、組織的に用いるものとして保有するもの」を行政文書と定めており、情報公開請求の対象となる。複数が所持しているなら、行政文書に該当する可能性が高い。このため、記者が「行政文書であり開示すべきだ」と言うと、職員は「個人の興味(で作成されたメモ)の可能性もある」と述べ、開示対象とならないとする。

*6-2-2:http://mainichi.jp/select/news/20140830k0000m040201000c.html
(毎日新聞 2014年8月30日) 原発賠償:「一律5割」の内部文書 算定基準そのものだ
 原発事故の賠償を裁判外で解決する手続き(原発ADR)を巡り、毎日新聞が入手した内部文書には、国の「原子力損害賠償紛争解決センター」が死亡慰謝料を「一律5割」とする、「死亡事案に関するパネル間協議で異論がなかった」との記載がある。「パネル」とは和解案を作成する仲介委員を意味する。記載から、仲介委員たちが、今後の慰謝料額を決めるために話し合い、その結果をまとめた文書であることが分かる。関係者は「仲介委員は、自分だけが突出した金額の和解案を出すのは嫌がる」と証言する。平等な救済を目指し、協議結果を文書に落とし込むのは自然な成り行きだ。つまり、文書は仲介委員が金額を算定する際に参考にする基準そのものだ。その証拠に、内部文書には「独自の基準」との記載さえある。原子力損害賠償紛争解決センター側は(1)センターの上部組織である「原子力損害賠償紛争審査会」が策定した指針(2)センター内部で決めた「総括基準」だけしか基準はなく、内部文書は基準ではないと抗弁する。しかし、(1)と(2)だけで判断できるなら、パネル間協議など不要であり、納得できる説明ではない。文書には「死亡慰謝料を控えめ(低め)にする必要はないか」など被災者にとって看過できない記載もある。すべて非公開の内容ばかりであり、早急に開示するとともに、十分な説明が必要だ。

<経済成長を促すのは、どういう女性か>
*7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140922&ng=DGKDZO77345920Q4A920C1TCR000 (日経新聞 2014.9.22)女性は経済成長の源泉 米ジョージタウン大 女性・平和・安全保障研究所所長 メラニー・バービアー氏
 今日の世界において、女性が経済成長を促していることは紛れもない事実だ。女性の社会進出は様々な場所で見られ、国連や世界銀行といった公的機関にとどまらず、ゴールドマン・サックスやマッキンゼーなど民間でも目にすることができる。彼女たちが職場で働くことによって、国内総生産(GDP)が押し上げられていることを示すデータは数多い。ダボス会議を主催する世界経済フォーラムが現在、百数十カ国を対象に実施している「ジェンダー・ギャップ・リポート(性差報告書)」によれば、健康、教育、政治・経済へのかかわり度合いなどの分野の中で、健康、教育に関して男女間の差はかなり縮まっている。一方で、政治への関わりはかなり低い。経済面でいえば、女性の社会進出を許容している国家の方がより競争力があり、繁栄している。それには「多重効果」を持つと言われる女性の消費性向が大いに関係している。彼女たちはパートナーの男性に比べて、自らの収入を自分のコミュニティーや健康維持、家族、子供たちの教育に振り向ける傾向が強い。結果として、その社会の生活水準は上がり、より多くの価値を持つことになるのだ。今後の課題を言えば、日本の安倍晋三首相も指摘しているように、女性の起業家たちを増やすことだ。女性による起業を阻むバリアーが多数、存在することはわかっている。しかし、私たちはそれに向かって前進していくことができるはずだ。たとえば、米小売り大手のウォルマート・ストアーズでは海外の女性起業家たちからの仕入れ額を2倍にすることを決めている。もちろん、米国においても多くの課題が残っている。賃金の男女格差は一例にすぎない。クリントン政権にいた当時、大統領はいつも「国民には良き職業人だけでなく、良い両親になってもらわなければならない。その二つのことに摩擦があってはならないのだ」と言っていた。そのためには子供たちをいかにして育てていくか、という課題と向き合わなければならない。女性たちは同時に、高齢者介護という課題にも直面している。我々は常に経済成長を望んでおり、多くの雇用を創出したいと思っている。その結果として、多くの人が繁栄を享受できることを願っている。そのためには人口の半分を占める才能(女性)を解放してあげなければならない。この点において、政府の責務は大きい。性差別に基づく法体系や各種の規制は当然、見直しが求められる。法律、規制に加え、心理的なものや、文化的なものに(性差別が)由来することも確かだが、政治がこれまで以上にこの問題に取り組む必要があることは間違いない。
*Melanne Verveer 1997~2000年に米クリントン政権の大統領補佐官とヒラリー・クリントン氏の首席補佐官を務めた。09~13年に国際女性問題担当大使。


PS(2014.9.24追加):*8に書かれているように、「日本はまだ、女性が十分に力を伸ばせる環境が整っていない」というのは事実であり、早急にそれを改善する必要がある。しかし、「女性は昇進への意欲が低い」というのは、教育、社会、組織の中で女性に対してそういう圧力が働いているからであるため、それをやめるべきなのだ。また、「すぐに仕事を辞める」というのは事実ではなく言い訳であり、現在は、結婚退職ではなく保育園や学童保育の不足により、子育てでやむなく退職している人が多い。最後の「もちろん、女性自身が仕事への意欲を高めることは言うまでもない」というのは女性に対して失礼千万であり、その前に、日経新聞はじめ日本企業が、女性にモチベーションの上がる仕事のさせ方をしてきたか否かをよく考えてから書くべきである(これは経営学の基礎)。

*8:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140924&ng=DGKDZO77436580U4A920C1PE8000 (日経新聞社説 2014.9.24) 企業は女性の力伸ばす職場改革を競え
 男女問わず、意欲と能力のある人が力を発揮しやすい職場をつくる。労働力人口の減少が懸念されるなかで、企業の競争力を高め、社会・経済に活力をもたらすためには、欠かせないテーマだ。とりわけ女性の力を生かすことは焦眉の課題だ。すでに自主的に、女性の育成や登用に向けた行動計画を策定する企業は増えている。政府も秋の臨時国会に、行動計画づくりを企業などに求める法案を提出する方針だ。日本の職場が大きく変わる後押しになることを期待したい。日本はまだ、女性が十分に力を伸ばせる環境が整っているとはいえない。男女共同参画白書によると、組織の管理職に占める女性の割合は欧米では3~4割が中心だが、日本は1割程度にとどまる。「女性は昇進への意欲が低い」「すぐに仕事を辞める」。企業からはときに、そんな声が聞こえてくる。しかし、防ぐための方策は十分にとられているだろうか。女性の管理職やその候補者が少ない原因は企業によって様々だ。男女で仕事の与え方に違いがあったり、硬直的な長時間労働で仕事と子育ての両立を阻んだりする。残念ながら、そんな職場は今も珍しくない。女性の採用が少ないことが原因の企業もあるだろう。よりよい行動計画づくりの最大のカギは、各社が現状をしっかりと分析し、課題を浮かび上がらせることだ。それにより、取り組むべき対策も異なってくるだろう。気をつけたいのは、目先の計画づくりにとらわれ、本質的な改善に向けた道筋を見失うことだ。例えば、数値目標は分かりやすい指標となるが、しっかりした現状分析に基づくものでなければ、かえって弊害が生じかねない。女性の育成と登用に熱心だが、あえて数値目標は示さない企業もある。政府は指導的地位に占める女性の割合を、2020年に30%にする目標を掲げている。だが個々の企業が具体的にどんな計画を立てるか、目標を数値で示すかなどは、企業の自主的な判断が生かせるよう十分な配慮が必要だ。人材の育成や長時間労働の是正といった働き方の見直しに、王道はない。トップが女性活用の旗を掲げること、そしてその意義を社員一人ひとりが理解することが欠かせない。特に若手の育成を担う中間管理職の役割は大きい。もちろん、女性自身が仕事への意欲を高めることは言うまでもない。


PS(2014.9.25追加):*9は、「日本では朝方まで仕事をしている人が偉いという文化がある」というのが間違いである。何故なら、日本でも、不規則な勤務をしていれば全体として生産性が下がって成果が出ないため、評価されないからだ。但し、特殊な公務員、新聞記者、医師、看護師、イカ釣り漁師、トラックやタクシーの運転手など、夜に働かざるを得ない仕事もあるので、組織としてローテーションを組むなど、工夫して行うべきなのである。そのため、クリントン氏の「これだけ働いているから偉いんだという発想だと思う」という答えもあまり意味がなく、外国でも働く人は働いているので、働く人を非難する文化を作って日本人を怠け者にすると、人材で負けることになる。

*9:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11367949.html
(朝日新聞 2014年9月25日) ヒラリー氏「午前様、家庭への責任放棄」 安倍首相と米で対談
 帰宅が午前様では「責任放棄」。発想を改めて――。ヒラリー・クリントン前米国務長官と安倍晋三首相が24日、米ニューヨークで開かれた女性支援のイベントで対談し、働きすぎを尊ぶ日本の企業風土には改革が必要との考えで意気投合した。クリントン氏は2016年の米大統領選で民主党の最有力候補になるとみられている。対談は「女性が輝く社会」を掲げる首相に、クリントン氏がインタビューする形で行われた。首相が「日本では朝方まで仕事をしている人が偉いという文化がある」と日本の企業風土を説明。クリントン氏は「これだけ働いているから偉いんだという発想だと思うが、『どういう責任を果たすべきか』ということとは両立しない。親であれば子供に責任がある。高齢者に対する責任もある」とバッサリ。働き方の文化そのものを変える必要があるとの持論を展開した。

| 原発::2014.8~10 | 08:47 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.9.20 日本政府に不足しているのは、「自然や生態系の維持は、生態系の一部である人間のためでもある」という発想だ
    
   鯨のおば      鯨の刺身    鯨の竜田揚げ   鯨のステーキ

(1)生物資源管理としての捕鯨の制限について ← 鯨の数は、元にもどったのか
 *1-1、*1-2のように、国際捕鯨委員会(IWC)は、科学委員会に続き、総会でも、日本が南極海で行っている調査捕鯨の再開を先延ばしすることを決議し、日本が調査捕鯨する際に出している計画を科学委員会だけでなく総会にも提出するよう要求したが、日本はそれに従わず、捕鯨再開の方針を変えないとのことである。これに対し、日本が国際ルールを無視していると批判されるのは当然だ。

 しかし、日本政府関係者は、*1-2のように、「日本は、今回の決議で、少なくとも次回2016年の総会まで南極海での調査捕鯨ができなくなったため、今後は、反捕鯨国に対して、国会議員や大使ら政府関係者が個別に働きかけ続けて、日本の方針への理解を求めていく」としている。

 私は、(動物愛護からではなく)人間の捕獲によって鯨の数が減り、日本近海だけでは十分な数の鯨が獲れなくなったため南極海まで行って捕鯨しているのだから、この日本政府の方針には反対だ。日本人の食文化としての鯨の捕獲なら、調査捕鯨ではなく商業捕鯨そのものであり、日本の近海で鯨を捕獲できるだけの鯨資源があった時代に成り立っていた食文化であるため、そういう状況になってから捕鯨を再開するのが筋である。

(2)「鯨を食べるのは日本の食文化」という主張は、どこまで通るのか
 *1-3に書かれているように、日本が世界中の非難を受けながらも捕鯨再開にこだわる理由は、①科学的根拠に基づく資源管理はしている ②鯨食は日本の食文化である ③捕鯨が日本の主張や愛国主義の象徴になっている などだそうだ。しかし、①については、江戸時代に日本近海で鯨を捕獲していた頃ほど鯨資源が回復したわけではないので成立しないし、②についても、今では子どもの頃に鯨を食べていた50歳以上の人にしか通用しないため、成立していない。さらに、③については、このようなことで横車を押していると、尖閣諸島についても、日本の方に正当性がないかのように他国に思われるため、その方が重大な問題である。

 また、*1-3で、「日本人は英語が不得意だから世界の世論を理解できていない」とされているのは、「日本人は、英語が不得意な人が多く、日本語の情報しか入手しないため、日本は特別な国で日本が中心だという発想をしがちだ」というのが正しいだろう。

 なお、ここで捕鯨にこだわる「日本」とは、一部の日本人と、その一部の日本人を代表する政治家や官僚、その太鼓持ちになっている日本のマスコミである。

(3)“調査捕鯨”は、商業捕鯨の抜け穴にすぎない
 *1-3には、「生物資源に関しては、持続可能な利用と保全の両立を基本的目標にするという持続利用原則が広く受け入れられており、我々は無規制で乱獲につながるような捕鯨の再開、絶滅が危惧されるような鯨種の捕獲を求めているわけではない」「捕鯨に反対する人の中には、すべての鯨類が絶滅に瀕しており,捕鯨国がそれを捕り尽くそうとしていると単純に誤解している人も多い」「捕鯨国が持続的に資源の豊富な鯨類を利用することを認めて欲しい」等が、書かれている。

 しかし、“調査捕鯨”とは、そもそも調査のための捕鯨であって商業捕鯨ではないため、食文化や生物資源の持続可能な利用・保全とは関係がない筈である。それにもかかわらず、*2-2のように、「調査」という名目の抜け穴を使って商業捕鯨を行い、1年間で何百頭ものクジラを捕殺するというのは、国が率先してとるべき行動ではない。また、DNA鑑定や遠隔監視ができる時代に、科学者が大量の鯨を捕殺して行わなければならないような科学的調査はない。

 また、*2-3に書かれているように、販売されている鯨肉のDNA鑑定をしたところ、1966年以来保護されているザトウクジラなども交じっており、生物資源の持続可能な利用・保全をしているとも言えないそうだ。そして、このような嘘や言葉のトリック、抜け穴を許さないのは、「感情的な反捕鯨派」にとどまらず、人類共通の倫理観である。

(4)日本人は、今、どうして鯨を食べる必要があるのか
 鯨食派の人は「鯨は美味しい」と言うが、鯨は南氷洋から運ばれて来るので、刺身も冷凍物であり、野生動物として泳ぎまわっていたのだから、筋肉質で固い。そして、鯨と牛の大和煮の缶詰を食べ比べてみればわかるように、牛の方が格段に美味しいのである。

 50~60年前は、牛や豚が少なく、高くて滅多に食べられなかったため、その代用品として鯨を食べていたにすぎない。上の写真の鯨の脂肪をさらした「おば」は安い食べ物の代表だったし、学校給食に出ていた鯨の竜田揚げは、独特の匂いがして固く、はっきり言ってまずかった。また、私は、鯨のステーキを食べたことはないが、野生動物である以上、国産牛のような味と柔らかさは期待できないだろう。

 従って、牛、豚、鶏、その他の動物性蛋白がふんだんに手に入る日本で、江戸時代ほど鯨が増えたわけでもないのに、家畜として日本近海で飼っているならともかく、わざわざ国際ルールを犯してまで南氷洋に鯨を取りに行って、鯨を食べなければならない理由はないと考える。

< 南極海の捕鯨継続派の意見>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140919&ng=DGKDZO77260320Z10C14A9EE8000 (日経新聞 2014.9.19) 
調査捕鯨、先延ばし決議 IWC総会 日本は「再開」変えず
 スロベニアで開いている国際捕鯨委員会(IWC)の総会は18日、ニュージーランドが提案した調査捕鯨の計画への評価や手続きを厳しくする決議を過半数の支持で採択して閉幕した。決議は日本の南極海での調査捕鯨の再開を事実上、先延ばしするように求めた。日本は調査捕鯨を再開する方針を変えていないが「総会決議違反」との批判は避けられなくなる。水産庁によると、決議に賛成したのは35カ国。米国やオーストラリア、チリ、メキシコなどが含まれるとみられる。反対は日本など20カ国にとどまり、棄権が5カ国あった。決議は日本が調査捕鯨をする際に出している計画をこれまでのIWC科学委員会だけではなく、総会にも提出するように要求している。これに従うと毎年開く科学委員会と違って総会は2年に1度しか開かないため、調査捕鯨の再開は最短で2年後の2016年となる公算が大きい。決議には法的拘束力はない。このため日本政府は予定通り、2015年度から南極海での調査捕鯨を規模を縮小したうえで再開する方針だ。ただ反捕鯨を掲げる欧米諸国が「日本は国際ルールを無視している」などとして反発を一層強めるのは必至とみられる。

*1-2:http://www.yomiuri.co.jp/world/20140918-OYT1T50172.html
(読売新聞 2014年9月18日) IWC調査捕鯨先延ばし決議…日本従わない方針
 国際捕鯨委員会(IWC※)総会は最終日の18日、日本の南極海での調査捕鯨開始を遅らせることを狙ったニュージーランドの決議案を賛成多数で採択し、閉幕した。決議に拘束力はないため日本は従わず、来年12月頃に調査捕鯨船団を出港させる方針を改めて表明したが、今回の総会で反捕鯨国との亀裂がさらに深まる結果になった。決議案は16日に提案された。日本政府関係者によると、豪州や米国、南米諸国、日本などが修正協議を行っていたが、特に南米の姿勢が強硬で交渉は決裂した。現在の手続きでは、日本は来年5月のIWC科学委員会で新しい調査計画の審査を受ければ、来冬から南極海の調査捕鯨を始められる。これに対し、決議では同委員会の審査に加え、隔年で開催される総会でも計画内容を議論し、総会が何らかの勧告を出すまで調査をしないよう求めている。決議に基づけば、日本は次回の16年の総会で新しい調査計画が議論されるまで、南極海での調査捕鯨ができない。さらに過半数の反捕鯨国が調査捕鯨に猛反対する総会では、日本に厳しい勧告が行われることになる。ただ、決議には拘束力がなく、日本は16年総会での議論を待たずに、来冬に南極海の調査捕鯨を実施する。一方、沿岸域でミンククジラ17頭を捕獲する商業捕鯨を求める日本の提案も審議され、4分の3の賛成が得られずに否決された。今後、日本は16年総会までの2年間に反捕鯨国に対し、国会議員や大使ら政府関係者が個別に働きかけを続け、日本の方針への理解を求めていく。しかし、反捕鯨国との対立が緩和されない限り、16年総会ではさらなる反発が出ることも予想される。日本は、国際社会の逆風を受け続けてまで調査捕鯨を継続するのか、決断を迫られる可能性もある。

*1-3:http://www.e-kujira.or.jp/whaletheory/morishita/1/
(水産庁森下丈二参事官 2007年12月20日) どうして日本はここまで捕鯨問題にこだわるのか?
 このコーナーへの投稿の第一弾として,「日本はどうして世界中の非難を受けながらも捕鯨再開にこだわるのか」という疑問についての考えを私なりにまとめてみたい。この疑問は様々な機会に呈されてきたが,その答えも様々である。捕鯨を支持する立場からは,科学的根拠に基づく資源管理を支持するから,日本の文化だからといったものが主張され,捕鯨に反対する立場からは,捕鯨関係者の政治力が強いから,一部官僚の独走,捕鯨が愛国主義の象徴となっているといった意見が聞かれる。日本人は英語が不得意だから世界の世論を理解できていない,もっと一般の日本人を啓蒙すべきだという記事もオーストラリアの新聞に掲載されたことがある。ここで,捕鯨にこだわる「日本」が,日本人一般なのか,一部の日本人なのか,日本のマスコミなのか,日本政府なのかによって,その答えは千差万別であろうが,本文は,あくまで私自身の立場から見た考え方である。
 まず明確にしなければならないことは,我々は無規制で乱獲につながるような捕鯨の再開や,絶滅が危惧されるような鯨種の捕獲を求めているわけではないということである。資源が豊富な鯨種を,持続的に(すなわち銀行の預金の利子だけを使い,元金を減らさないような方法で),国際規制の下で利用したいと求めているのである。これに対して,全ての捕鯨は破壊的であり規制などできないという捕鯨性悪説の主張があるが,そうした主張については次の機会に詳しく議論したい。我々が捕鯨問題に「こだわる」理由をあえてまとめれば,次のような観点がある。
(1)捕鯨問題は持続的利用の原則の象徴
 生物資源に関しては,持続可能な利用と保全の両立を基本的目標とするという持続利用原則が広く受け入れられている。これは,1992年のリオ会議(地球環境サミット)で確立し,『環境と開発に関するリオ宣言』や『アジェンダ21』に具体化された原則である。言い換えれば,漁業資源を含むすべての生物資源について,資源状態の悪いものについては保全措置をとり,資源が豊富なものについては持続的に利用して良いということが,世界的な常識となっている。他方,いわゆるカリスマ的生物(クジラやゾウなどのアピール性の強い生物)については,資源が豊富に存在しても,イコン(偶像,象徴)として手付かずで保護すべきとの考え方がある。捕鯨に反対する人の中には,すべての鯨類が絶滅に瀕しており,捕鯨国がそれを捕り尽くそうとしていると単純に誤解している人も多いが(仮にそうであれば捕鯨は非難されるべきである),そうではなく,クジラは特別な動物なので,いかなる場合でも保護すべきとの主張があるということである。現に強硬な反捕鯨国である豪州などは,IWCの場において,いかなる状況下であっても(資源が豊富でも,持続的管理が可能でも,充実した監視取締措置を導入しても)捕鯨に反対であるとの立場を公言している。この考え方には,誰が,どのような基準で「特別な動物」を決めるのか,「主要国」が特別な動物を決めれば,それを他の国に強制することが出来るのか,「特別な動物」が次々に増えていくことに対する歯止めはあるのかといった重大な問題が含まれる。インドが,ウシは特別な動物だから牛肉を食べるべきではないと国連などで主張し,これを経済制裁などで他の国に強制すれば,その異常さは誰の目にも明らかである。他方,クジラについてはまさにこれが行われているが,「世界の世論」として受け取られる。クジラは野生動物だから保護すべきとの主張もあるが,漁業対象の多くの魚は野生動物であり,世界人口のかなりの割合が陸上野生動物を捕獲し利用している。ちなみに,くだんの豪州は野生動物であるカンガルーを年間に数百万頭(数百頭ではない)捕獲し,食肉やペット(ドッグ)フードとして販売している。持続的な捕鯨を支持するということは,持続的利用の原則を支持するということであり,その持続的利用原則に恣意的な例外を作らないということであり,一部の「主要国」のわがまま(これには環境帝国主義という名前が付けられている)を認めないということであり,国際的な交渉においてはカリスマ性といった感情論ではなく科学と国際法を尊重するということなのである。捕鯨支持にこだわるのは当然ではないだろうか。
(2)理不尽な反捕鯨の主張
 反捕鯨の主張を理不尽な押し付けと捉える人は多い。日本を含む持続的利用支持派は,反捕鯨国が自国の水域内や,自国国民に対してクジラを完全に保護することを否定しているわけではなく,ホエールウォッチングも認めている。ただ,捕鯨国が持続的に資源の豊富な鯨類を利用することを認めて欲しいと求めている。他方,反捕鯨勢力は,捕鯨国の主張は受け入れず,自分たちの主張を全ての国が受け入れることを強く一方的に求めている。そこには相互の考え方を尊重し,妥協を受け入れるとの観点はきわめて希薄である。本年(2007年)のアンカレッジでの第59回IWC年次会合で,日本は捕獲頭数を空欄にして日本の沿岸小型捕鯨地域に対する捕獲枠を要請する提案を行った。これは,捕獲頭数について交渉をする用意があるとの意思表示であり,たとえば,論理的には誰が見ても資源に悪影響を与えない捕獲頭数(極端にいえば1頭などという象徴的な捕獲も議論としてはありえる)を提示し,捕鯨問題の本質を浮き彫りにしたいという意図もあった。反捕鯨国はこの提案を明確に拒否した。主な理由は,日本の沿岸小型捕鯨には商業性があり,同じアンカレッジ会合で認められた米国やロシアの先住民生存捕鯨とは異なるというのである。IWCが開催されたまさにそのホテルでは,アラスカ先住民が捕獲したホッキョククジラのヒゲや骨などの工芸品が一点数十万円という値段で販売されていたが,反捕鯨国によれば,このような工芸品の販売は商業性があるとはみなさず,一方では,日本の沿岸小型捕鯨地域で鯨肉が地域住民や市場に販売されれば商業性があって認められないというわけである。商業性をこれほど罪悪視すること自体も問題であるが,そもそも反捕鯨国のいうような「商業性」の定義(工芸品はいいが肉はだめ)はいかなる常識でも正当化し得ない。ここに,「日本には何があっても捕鯨はさせない」という基本方針があると疑うのは過剰反応であろうか?このような反捕鯨国の主張を理不尽と感じながら,「世界の世論」として受け入れるべきであろうか?日本の海外での評判という国益のために,捕鯨はあきらめるべきであろうか?捕鯨問題に関する街頭インタビューなどで,「反捕鯨国はウシを食べておきながらクジラを食べるなというのはけしからん」という意見を良く聞く。これに対しては,ウシは家畜でクジラは野生動物だから比較できないといった反論があるだろうが,一般市民が感じ,見抜いている捕鯨問題の理不尽さを端的に表した意見ではないだろうか。
(3)持続的利用を支持する国やNGOからの支持
 日本は捕鯨問題について国際的に孤立しており,IWCで日本を支持するのは援助で買われた開発途上国だけだという批判がある(これについても別の機会に詳細に書くこととしたい)。しかし,持続的捕鯨は広い方面から支持されている。まず国としては,西アフリカ,アジア太平洋,カリブ中米などの開発途上国約30カ国に加えて,ロシア,中国,韓国,ノルウェー,アイスランドなどがIWCにおいて管理された捕鯨の実施を支持している。特に,開発途上国は自国の漁業資源などの自然資源への依存を背景に,持続的利用の原則堅持を強く主張している。中国,韓国は捕鯨に従事していないが,やはり持続的利用の原則支持の立場から基本的に持続的捕鯨を支持している。また,NGOとしては,現在は活動を休止しているが,捕鯨の伝統のある世界の先住民の団体である世界捕鯨者連盟(WCW)があり,カナダの先住民,ニュージーランドのマオリ族などもメンバーとして参加している。また,生物資源の持続的利用を支持し,ゾウの問題などについて活動している国際NGOであるIWMC(国際野生生物管理連盟)は,1982年から1990年までワシントン条約事務局長を務めたユージン・ラポワント氏が率いるワシントン条約に関する専門家集団である。豪州に本拠を置くSMS(生物種管理専門家集団)も,元ワシントン条約動物委員会議長ハンク・ジェンキンス氏がリーダーを務めるワニや爬虫類管理などの専門家グループであり,ヨーロッパで持続的利用を支持するNGOのEBCD(欧州保全開発組織)は欧州議会やIUCNと強いつながりを有する。これら持続的捕鯨を支持するグループは,捕鯨問題を生物資源の持続的利用という大きな流れの中の問題として捉えており,捕鯨を持続的利用原則の立場から支持し,捕鯨問題における後退は,持続的利用原則の後退そのものと捉えているという点である。彼らの主要関心事項がゾウやワニやタイマイであることがこれを明確に示している。捕鯨問題が彼らの関心事項と深いつながりがあるとの認識が無い限りは,捕鯨を支持する理由は無い。彼らの中では,これらの問題を Wise-use という考え方と Non-use という考え方の対立と位置付けている。Wise-use とは保全を図りつつ資源を持続的に利用するということであり,Non-use とは動物愛護運動に代表されるような自然には一切手をつけるべきではないという考え方である。
 さらなる特徴は,自然資源の利用に生活を依存している先住民や開発途上国がクジラの利用を支持しているということである。彼らには,自然資源の利用が科学的な裏づけも無く制限や否定されることへの強い反発と危機感があり,捕鯨問題にその象徴を見ている。それを裏付けるように,IWCでの彼らの発言には食料安全保障や資源利用に関する国家主権などの話題が頻繁に登場する。反捕鯨運動は,独立国が主権に基づいて資源の持続的利用を実現し,開発につなげるという姿勢・考え方に対する攻撃と捉えられており,とりわけ開発途上国にとっては重大問題である。捕鯨問題は原理原則の問題であるといわれる。一部の関係者の利害を越えた,裾野の極めて大きな問題であるからこそ短期的な損得ではなく,より広い視野から資源管理のあり方の原則に沿った対応に,我々はこだわるのである。

<鯨保護派の意見>
*2-1:http://news.goo.ne.jp/article/jiji/business/jiji-140916X102.html (Gooニュース 2014年9月16日) 捕鯨継続への理解焦点=日本、沿岸捕獲枠を提案―IWC総会開幕
 国際捕鯨委員会(IWC)の総会が15日(日本時間同)、スロベニアのポルトロジュで4日間の日程で始まった。国際司法裁判所(ICJ)による南極海調査捕鯨の中止命令を踏まえ、日本は新たな計画を策定し、調査捕鯨を継続する方針を表明する。日本の主張がどの程度の理解を得られるかが焦点だ。総会開催は2年ぶり。IWCによると、初日は加盟88カ国のうち63カ国が参加した。参加国の過半数は反捕鯨国とされ、日本に対する反発が一段と強まる事態も予想される。初日の15日の討議で日本は、網走(北海道)や鮎川(宮城県)などで行われている沿岸小型捕鯨をめぐり、ミンククジラ17頭の捕獲枠の設定を提案。沿岸小型捕鯨に関する提案は過去何度も否決されてきたが、日本は今回、IWC科学委員会が昨年行った試算に基づき、商業捕鯨の例外として捕獲枠を新たに求めた。これに対し反捕鯨国からは、「(商業捕鯨を一時停止している)モラトリアムの抜け道だ」(ニュージーランド)といった厳しい意見が相次ぎ、16日以降も審議を続けることになった。

*2-2:http://www.ifaw.org/japan/our-work/whales/
(IFAW) 「調査」捕鯨の真実
 捕鯨の全面禁止にもかかわらず、国際捕鯨委員会(IWC)のモラトリアムは「科学許可による捕鯨」として知られる大きな抜け穴を含んでいます。この許可によって捕鯨船は調査の名目でクジラを捕獲することが許可されています。この抜け穴は1946年以来、国際捕鯨取締条約に含まれ、1986年に捕鯨モラトリアムが成立した後も残っています。しかし、これには科学的な要素は何もありません。
 •科学許可による捕鯨では鯨肉を利用する必要があり、鯨肉を販売するなり、あげるなりして、利用しな
  くてはいけません。つまり、科学許可は鯨肉の販売許可と大差ないのです。
 •科学許可による捕鯨は申請した国によって認可されます。つまり、日本は外部の精査や説明の必要も
  なく、自国の調査捕鯨を自国で認可しているのです。
 •調査捕鯨を行う国だけが鯨肉市場の開拓に熱心であることは偶然ではありません。日本の調査捕鯨
  プログラムによって、2009年だけで何百頭ものクジラが捕殺されました。
 •大量虐殺の原則に基づいて行われる科学的調査など、他の種では考えられません。
●調査捕鯨の代替案
 DNA鑑定や遠隔監視の時代に、科学者が調査目的でクジラを捕殺する必要はありません。クジラが脱皮する皮、脂肪、糞便からサンプルを採取することも可能です。科学者はクジラが噴気孔から息を吐き出す時にサンプルを採取して、病原体を検出することもできます。IFAWの調査船「ソング・オブ・ザ・ホエール」号の科学者は、クジラに危害を加えずに研究する技術と手法を開発しました。

*2-3:http://www.ifaw.org/japan/our-work/whales/
(IFAW) DNA鑑定が提示する違法捕鯨の証拠
 1995年以降、IFAWの定期的な調査は、日本と韓国による絶滅危惧種のクジラの違法捕鯨及び鯨肉販売の有力な証拠を明らかにしてきました。販売されたクジラ肉のサンプルのDNA鑑定によって、各サンプルの種と地理的起源が特定できます。サンプルには以下の鯨肉が含まれていることがわかりました:
 •ザトウクジラ:1966年以来保護されています。今日市場で見つかったザトウクジラの肉がこれほど
  古いはずはありません。
 •ナガスクジラの肉:1991年までアイスランドから輸入されていましたが、その後輸入は数年間停止
  されました。そしてごく最近、取引再開を目指して少量のナガスクジラの肉が再びアイスランドから
  日本に輸出されました。しかし、近年アイスランドで捕殺されたナガスクジラの肉の大半は買い手
  が付きません。ナガスクジラの肉は一部、日本と韓国で備蓄されていますが、現在の市場の供給
  量は需要をはるかに上回っています。
 •ニタリクジラとシャチの肉:ニタリクジラは1987年から2000年まで、シャチは1997年以降ずっと保護
  の対象になっています。
 •イワシクジラ:1979年以来、南半球では捕獲されていません。
●抜け穴のための抜け穴作り…
 IFAWの捕鯨調査が1995年に公表された後、日本はクジラが「偶然」日本の漁師の網にかかった際の「偶然捕獲されたクジラ」の販売を合法化しようとしました。この抜け穴を認めたIWCは、保護されたクジラの販売を原則的に認可したのも同じです。

| 環境::2012.12~2015.4 | 03:20 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.9.18 地方における雇用創出と農業、地域資源の発掘、産業化について (2014.9.21に追加あり)
     
    *2-2より                 女性の農作業着例

(1)地方人口の増加対策(?)について
 *1-1に、「政府は、人口減少対策や地域再生の司令塔となる『まち・ひと・しごと創生本部』を作り、地方雇用創出に全力 を上げ、長期ビジョンと5カ年計画の総合戦略を年内に策定し、臨時国会に基本的理念を定める『まち・ひと・しごと創生法案』を提出する」と書かれている。

 その目的が「農業・農村の所得増大」というのはもっともだが、人口減少克服を目的にすると、*1-3のように、「女性は結婚していなければ発言権がない」「女性は子どもを産み育てなければ発言権がない」等々、東京都議連会長でさえ「産めよ増やせよ」と考えるのを正当化することになり、女性に対する間接差別がさらに増える。そのため、「(1)若い世代の就労・結婚・子育ての希望の実現」は、そうしたい人ができる社会を実現するのだということを明文で明確にしておくべきだ。

 しかし、「(2)東京一極集中の歯止め」と「(3)地域の特性に則した地域課題の解決」は、人口減がなくても当然のことである上、地方から東京圏に人口が一極集中したため、東京圏が住みにくくなったという現状もある。住みにくさの事例は、①土地や住宅はじめ物価が高い ②狭い住宅に住み通勤時間もかかる などである。

 私は、*1-2の「文部科学省は年内にも学校規模の適正化を進めるため、小学校と児童の自宅との距離がおおむね4キロ以内としている現行の規定を見直し、「通学時間1時間以内」などを案に新たな指針を作る」としているのには驚いた。何故なら、これは、東京で私立校に通う生徒の通学時間であり、これでは一日2時間もの時間の無駄遣いがあり、可哀想で異常だと思うからである。つまり、小中学生に通学時間1時間は長すぎるのであり、小学校では15分、中学校でも30分以内が適正で、スクールバスを使えば渋滞のない地方では十分に広い範囲がスクールゾーンとなるため、このくらいを目安にすべきだ。そして、自然の中を(燃料電池)バスが走る教育効果と、職住接近した居心地の良さを地方に住むメリットの一つにすべきである。

 なお、*1-2によれば、文科省は「離島など統廃合が難しい地域における教育の質確保を検討したい」としているが、離島に住んでいる子どもでも学年や学級の人数が少なすぎるのは、いろいろな点で問題である。そのため、離島の住民からは、「離島の一つ一つに学校や病院を作れない場合は、舟(バスと同じ交通機関)で送り迎えするので、学校や病院を港近くに移して欲しい」と言われたことがある。これは、実際に離島に住んでいる人からの貴重な意見であるため、学校の再編時には実現してもらいたい。

 *1-1の「地方での雇用、医療、介護環境の整備に集中的に取り組む」というのは、高齢化先進地域となっている地方や離島では特に重要である上、医療や介護に必要な食品を生産すれば農業や食品産業での雇用も生まれるため、「地域に根ざした民間の創意工夫」を後押しすることは重要だ。

 しかし、*1-4に書かれているように、「農地転用権限を市町村へ移譲」するのは、市町村長が選挙で建設会社等の後援会の影響を大きく受けていることを考えれば賛成できない。それよりも、複数の農業委員からなる*1-5の農業委員会が、地域振興の理念を共有した上で、人口減・食糧難の時代にむやみな農地の転用は避け、必要最小限の転用で地域振興するのが安定的な運用ができると考えるし、農業委員会のメンバーには、そういう人を選ばなければならない。

(2)女性の活躍について
 *2-1のように、規制改革会議が再開され、地域活性化を規制改革の主要な検討課題に位置付けるそうだが、再び農業改革を議論の俎上に上げて、「企業への農地売却を可能にする」「農協が諸悪の根源であるため農協の力を弱める」といった単純な議論にするのは感心しない。しかし、女性が活躍できる分野として農業をとらえるのは、現実にあっていてよい。

 そこで、*2-2のように、安倍首相夫人も参加して、山口県立大学の学生らが、「おしゃれでカラフルな作業着で農業を盛り上げよう」と、女性が農業をしたくなるようなおしゃれな農作業着をまとい同県長門市の棚田で稲刈りをしたそうだ。農作業着は、農作業が終わったら都会の女性と同じ容姿で活動できるように、日焼け、爪の土汚れ、手荒れなどを防止した上で、ファッショナブルでなければならない。つまり、女性が喜んで農業に従事できるようにするためには、農作業着を、実用的であると同時にファッションとしてもかっこよくしなければならないのである。

(3)攻めの農林水産業へ
 農水省は、*3-1のように、「攻めの農林水産業実行本部」を発足させ、政府・与党の「農林水産業・地域の活力創造プラン」を実行に移して、農家所得を向上させる具体策を検討するそうだ。農家の所得が大きくなければ農業への新規参入はなく、当然、若い人も参入しないため、省を挙げて「輸出拡大」「6次産業化」「担い手への農地集積」「国内外の需要拡大」「需要と供給をつなぐバリューチェーンの構築」「生産現場の強化」「多面的機能の維持・発揮」などを進めるのは当然のことである。

 また、私は、輸出はその気になれば増やせると思うので、「高めの輸出目標を作る」のはよいことだと思うし、離農した小規模農家の就業機会の確保も、農業における熟練労働者の維持の目的から重要である。また、農家所得を増やすには、「農家が他産業と組んで価格決定権を持つ仕組みが必要」というのも、そのとおりだろう。

 このような中、*3-2のような医福食農連携は、既に健康づくりが進み健康長寿社会を実現している日本の農産物に新たな付加価値を付け、今後の世界に輸出可能性の高い産業を作れると考える。さらに、高齢者や障害者の雇用の場として農作業を活用し、国産原料を使った高付加価値の介護食品を開発し、冷凍技術を進歩させることも重要である。

(4)地域資源の発掘と産業への利用
 *4-1のように、フランス・ローヌ・アルプ州では私有林の有効活用を進め、森林経営者委員会のジャンルイ・ダビッドさんが、所有者の依頼を受けて、土地台帳を基に衛星利用測位システム(GPS)で私有地を確定する作業を続けているそうだ。私有地の確定すらできていない状況は、日本でも同じであるため、価値ある仕事を無償でやる必要はないが、誰かが私有地を確定する作業をやらなければならない。

 そして、森林には、木材、薬草、山菜、野生動物など利益をもたらす林産物が多いため、これを利用してよい産物を作ることができれば、地域の産業にできる。フランスの行政も、ヴォージュ産木材を建材に使えば資材の2%を補助するなど森林活用を後押しして、農林業と観光業を柱にした地域活性化が進み、環境や生物多様性を意識する住民が増えて、2011年には「ジオパーク」の認定を受け、住民の地域づくりへの意欲が高まったそうだ。

 また、*4-2のように、イノシシやシカが田畑を荒らすとして有害獣として駆除するだけではもったいなく、大分県豊後大野市の姉妹も3年前にわな猟免許を取得して、獣肉加工施設「女猟師の加工所」を開設し、捕獲したイノシシの精肉の販路開拓に取り組んでいる。私は、シカやヤギ(イノシシも?)の皮は、牛皮より薄くてしなやかなため、女性用バッグ等の高級品を作るのに適しており、フランスやイタリアのようにファッション系の人材がデザインを洗練させれば、Made in Japanの高級品ができると考えている。

(5)地域製品の世界展開
 有田焼は、積み出し港の名前“伊万里”と銘打って江戸時代には欧州を席巻していたが、現在は、売上高の減少で悩んでいる。そのため、*5のように、欧州復権を狙って窯元と商社8社が、フランス・パリで開催中の国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」に出展し、 “復権”を目指す取り組みをしているのは、大変よいことである。有田焼は、400年の伝統があるわけだが、伝統の技術を踏まえながらも21世紀の技術を加え、現代の需要にマッチした製品に進化しようとしているのがよい。

 売上高の減少で悩んでいる多くの伝統的地場製品に共通することだが、伝統の技術を踏まえながらも、そこに21世紀の技術を加えて21世紀の需要にマッチした製品を作ることが必要不可欠である。

<地方人口の増加対策>
*1-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=29795 (日本農業新聞 2014/9/13) 地方雇用創出に全力 5カ年計画年内に策定 臨時国会へ基本法 創生本部初会合
 政府は12日、人口減少対策や地域再生の司令塔となる「まち・ひと・しごと創生本部」(本部長=安倍晋三首相)の初会合を開き、安倍政権が最重要課題に掲げる「地方創生」に向けた基本方針を決めた。長期ビジョンと5カ年計画の総合戦略を年内に策定する他、今秋の臨時国会には、基本的な理念を定める「まち・ひと・しごと創生法案」を提出する。農業・農村の所得増大も大きな論点になりそうだ。会合では、人口減少克服と地方創生に向けた基本的視点として(1)若い世代の就労・結婚・子育ての希望の実現(2)「東京一極集中」の歯止め(3)地域の特性に則した地域課題の解決――を掲げた。地方から東京圏への人口流出に歯止めをかけるため、地方での雇用、医療、介護環境の整備に集中的に取り組む。西川公也農相は、農山漁村の所得を向上させ、地域のにぎわいを取り戻すことが重要とし、積極的に地方創生に取り組む考えを示した。同本部の検討項目として「地方に仕事をつくり安心して働けるようにする」「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」などを柱に議論する。関連施策を進めるに当たり、数値目標を定めて「ばらまき型」の投資をしないよう徹底。各府省庁の縦割りを排除する。地方の自主的取り組みを基本に「地域に根ざした民間の創意工夫」を後押しするとの基本姿勢も確認した。農外・地域外からの企業の農業参入加速など規制改革を検討する可能性もあるが、地元農業者らの所得増大につながることが欠かせない。安倍首相は「地方の意見も聞きながら、従来とは異次元の大胆な政策をまとめていく」と述べ、国を挙げ地域活性化に取り組む姿勢を強調した。今秋の臨時国会に提出する法案について石破茂地方創生相は同日の閣議後会見で、「一種の基本法的なものになる」と説明、早急に内容を検討する考えを示した。その他、自治体の取り組みを支援する地域再生法改正案も提出する。
●改革色濃い人選 創生会議民間議員
 政府は12日、「まち・ひと・しごと創生本部」の下に設置した「まち・ひと・しごと創生会議」の民間議員に、元総務相の増田寛也・東京大学公共政策大学院客員教授、建設機械大手コマツの坂根正弘相談役ら12人を内定したと発表した。同会議は、安倍晋三首相が議長、地方創生相と官房長官が副議長を務める。議員には、経済財政担当相や少子化担当相、農相ら関係閣僚の他、学者や企業経営者、自治体首長らを起用。農業関連では、規制改革会議農業ワーキング・グループの専門委員を務める農業生産法人サラダボウルの田中進代表が入り、改革色の濃い人選となった。内定者の一人、経営コンサルタントの冨山和彦・経営共創基盤代表取締役CEOは、規制改革会議の大田弘子副議長(政策研究大学院大学教授)と政策提言グループをつくり、農業関連の規制改革で政府・与党の決定内容を上回る農業生産法人・農地制度の見直しを迫っている。地方創生でも国家戦略特区をはじめ規制改革を進める動きがあり、地方が逆に疲弊しないか警戒が必要だ。石破茂地方創生担当相は「地方創生のためにはあらゆる分野を総動員しなければならない。全体的なつながりも念頭に議論いただけると思っている」と期待を述べた。
 その他の民間議員は次の通り。
▽池田弘・公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会会長▽伊東香織・岡山県倉敷市長▽大社充・NPO法人グローバルキャンパス理事長▽奥田麻衣子・島根県海士町、隠岐島前高校魅力化コーディネーター▽清水志摩子・NPO法人全国商店街おかみさん会理事長▽中橋恵美子・NPO法人わははネット理事長▽樋口美雄・慶応義塾大学商学部教授▽山本眞樹夫・帯広畜産大学監事、前小樽商科大学長

*1-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=29687
(日本農業新聞 2014/9/7) 小学校 通学「1時間以内」 過疎に拍車懸念も 文科省指針案
 文部科学省は年内にも、学校規模の適正化を進めるため小学校と児童の自宅との距離 がおおむね4キロ以内としている現行の規定を見直し、「通学時間1時間以内」などを案に新たな指針を作る。人口の減少に対応して小規模校の統廃 合をさらに進め、学校運営の効率化や予算の確保、教育の質向上につなげる狙いだ。ただ、農村部では学校が地域住民を結 び付ける核として機能している側面もあり、専門家や地方自治体からは、過疎に拍車を 掛けるとして、懸念の声が上がる。同省は現在、学校規模適正化関係法令の中で、適正規模は小学校の場合、1学年当たり2、3学級、中学校が同じく4~6学級と設定。通学距離は小学校が4キロ以内、中学校が6キロ以内などとしている。過疎化などで生徒数の少ない学校が増える中、同省は学校規模を適正化しようと、スクールバスの整備などを進め、距離だけでなく通学時間に着目した新たな指針作りに着手した。通学時間の案として「1時間以内」などが挙がっている。統廃合については、設置者である各市町村の判断によるが、同省は各市町村の判断の参考になる指針を提示し、統廃合を進めやすいように教職員体制やスクールバスの充実、カリキュラム開発などの支援策も示す方針だ。ただ、過疎化が進む集落では、地域住民と学校が密接に連携して大規模校にない教育を進めている事例もある。専門家からは「集落の過疎化に追い打ちをかける」などと懸念する声もある。同省は「離島など統廃合が難しい地域における教育の質確保を検討したい」(同)としている。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11355510.html
(朝日新聞 2014年9月18日) 「結婚したらどう、と平場では言う」 都議連会長、発言を陳謝
 女性蔑視のヤジ問題で揺れた東京都議会が再び混乱している。再発防止のための会合が16日に開かれたが、会長に選ばれた自民党の野島善司都議(65)が「結婚したらどうだとは僕だって言う。平場では」と発言。他会派の反発を招き、野島都議は17日、「会長の立場で不適切だった」と陳謝した。都議会では6月、塩村文夏都議(36)の質問中に、自民党都議が「早く結婚した方がいいんじゃないか」とヤジを飛ばした。再発防止に向けて16日、超党派でつくる男女共同参画社会推進議員連盟が開かれたが、野島都議は会合後、報道陣に「公の場で発言者個人に言ったのが問題。まだ結婚しないの、と平場では言いますよ。平場とはプライベート」と述べた。議連は17日、急きょ臨時役員会を開催。野島都議は、会長の立場で取材を受けながら個人的な信条で発言したとして「大変申し訳ない」と語った。会長は続け、議連でセクハラ研修などを開くという。一方、塩村都議ら野党会派の都議4人は17日、ヤジ問題を考える市民との集会に参加。集会後、塩村都議は「公私に関係なく発言自体が女性差別。会長には問題をしっかり理解した人が就任すべきだ」と批判した。

*1-4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=29807
(日本農業新聞 2014/9/13) 農地転用権限 市町村への移譲迫る 地方分権有識者会議
 内閣府の地方分権改革有識者会議は11日夜、農地・農村部会の第10回会合を開き、農地転用に関する事務・権限の国から地方への移譲について議論した。出席した有識者が、地方が転用許可を担うべきだと主張。開発が横行した場合、農地が減少する恐れもあるが、部会構成員からも分権に前向きな意見が出た。部会は今後、農地保全を担保する具体策について検討を進める方針だが、実効性のある策が示せるかが問われそうだ。農地転用は現在、4ヘクタール超の大規模な場合は農相の許可を要する他、2ヘクタール超4ヘクタール以下の場合も都道府県知事が農相と協議する必要がある。食料の安定供給に不可欠な農地を確保するためで、地方自治体の首長が開発を優先する場合でも一定の歯止めをかける効果がある。同日の会合には、地方公共団体情報システム機構の西尾勝理事長が出席。土地開発に関する規制について、欧米諸国では自治体に権限があるとして「転用に国の許可を要する現行制度は国際的に見てあまりにも異常」との持論を展開。早期の地方分権を求めた。ただ、欧州は「計画なくして開発なし」との理念で厳格な土地利用計画を前提にしており、そうした違いを無視した指摘には異論の声もある。柏木斉部会長(リクルートホールディングス相談役)は「農地確保の重要性は国も地方も共通に認識している」としながらも、「市町村に権限を移譲していくべきということは、(構成員間の)意見がかなり近い」と説明。現行の食料・農業・農村基本計画で定める農地の総量確保目標が現実と乖離(かいり)していることを理由に挙げ、市町村の積み上げ目標とするよう求めた。一方、農水省は、転用が農地減少の主因となっていることから、分権に慎重な姿勢を示している。無秩序な転用を抑えるため、地元の地権者や進出企業の意向を受けにくい国などが権限を持つのが適切との認識で、仮に市町村へ権限移譲する場合も、農地の保全を十分に担保する機能が必要としている。2009年に施行した改正農地法の付則で、施行後5年をめどに転用許可の主体を検討するとしていることから、同部会は年内に結論を得る方針。分権ありきではなく、農地保全を担保する具体策を示すことが求められる。

*1-5:http://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/iinkai.html
(農林水産省 24年5月15日) 農業委員会について
農業委員会について農業委員会は、農地法に基づく売買・貸借の許可、農地転用案件への意見具申、遊休農地の調査・指導などを中心に農地に関する事務を執行する行政委員会として市町村に設置されています。 農業委員会については、外部から、審議が形骸化しているのでないか等の指摘を受けていることから、農業委員会に対し、判断の透明性・公平性を確保するとともに、事務処理が迅速になされるよう指導を行っています。(「農業委員会の適正な事務実施について(適正化通知)」(平成21年1月23日付け20経営第5791号経営局長通知)) (以下略)

<女性の活躍>
*2-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=29809 (日本農業新聞 2014/9/13) 農業改革 再び議論も 来年6月めどに答申 規制改革会議再開へ担当相
 有村治子規制改革担当相は12日の報道各社のインタビューで、近く規制改革会議を再開して3期目となる規制改革の議論を始める方針を明らかにした。安倍晋三政権の重要政策である地域活性化を規制改革の主要な検討課題に位置付ける考えで、再び農業改革が議論の俎上(そじょう)に上る懸念が強まってきた。来年6月をめどに答申をまとめる。有村担当相は規制改革会議について「趣旨は既得権益の岩盤を打ち破るという安倍内閣の方針を実現すること」と、踏み込んだ規制改革を進める決意を強調。第3期の主要課題について「女性が活躍できる多様な働き方を実現する規制改革、地域活性化に資する規制改革など積極的に検討する」と説明した。同会議が6月上旬にまとめた答申を踏まえて政府は6月末、農協改革などを盛り込んだ「規制改革実施計画」を決定した。有村担当相は「今まで議論した改革をさらに仕上げ洗練していく」と述べ、同計画の着実な実現へ進捗(しんちょく)状況も監視していく考えも示した。同計画では来年の通常国会に農協法改正案を提出するとしており、政府はそれまでに政府・与党で具体的な制度設計を詰める考えだ。焦点の中央会制度の見直しについて有村担当相は「最も重要なのは、汗を流して頑張っている農業者の所得向上に向けた活動を農協が積極的に行えるか、そういう組織になっていけるか。その改革が実現できるよう対応したい」と述べるにとどめた。

*2-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=29846
(日本農業新聞 2014/9/17) おしゃれに 農業楽しく 山口県立大が収穫イベント 首相夫人も参加
 おしゃれでカラフルな作業着で農業を楽しく盛り上げよう――。山口県立大学(山口市)の学生らは16日、女性が思わず農業をしたくなるような、おしゃれな農作業着をまとい同県長門市の棚田で稲刈りをした。女子大生と共に農作業着の研究に携わったのは安倍昭恵首相夫人。同日、自前のつなぎを着て登場した。10月12日には同市で有名モデルを招いた農作業着のファッションショーも計画している。収穫イベントは、山口県立大学の水谷由美子教授が実行委員長を務める「アグリアート・フェスティバル2014」の一環で開いた。農業にファッションの要素を取り入れて新しいイメージを発信し、女性に農業への関心を深めてもらうのが狙い。安倍昭恵さんも共同研究者となり、同大学の学生らと13年から取り組んでいる。大学生や地元の農家らが米を収穫した長門市油谷地域は、全国的に珍しい海に接した棚田で、「日本の棚田百選」にも選ばれている。同地域では東後畑営農組合が、棚田での農薬と化学肥料を使わない自然栽培を実践。今回、自然栽培米の認知度アップに向け、大学と連携して収穫イベントを企画した。農作業着のデザインを手掛けた、同大学の荒木麻耶さん(20)は「動きやすさとかわいさを両立させ、通常の外出時でもおしゃれに見えるデザインに仕上げた」とポイントを語った。安倍昭恵さんも「おしゃれな農作業着を発信することで、若い人が農業に関心を持つきっかけになってほしい」と意義を語った。東後畑営農組合の大田寛治さん(59)は「棚田は景観の良さだけでなく治水効果があり、防災上、重要な役割がある。このイベントを通して農業の大切さを若い人にもっと知ってもらいたい」と期待を込めた。

<具体的なプラン>
*3-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=29718
(日本農業新聞 2014/9/9) 「活力プラン」具体化 所得増大へ実行本部 攻めの農業で農水省
 農水省は8日、「攻めの農林水産業実行本部」を発足させた。政府・与党の「農林水産業・地域の活力創造プラン」を実行に移し、農家所得を向上させる具体策を検討する。本部長を務める西川公也農相は、農家の高齢化に歯止めがかからない現状から「所得を大きくして農家の取り分を増やせば、若い人は戻ってくれる」と強調。省を挙げて新たな需要開拓を進める方針だ。「2020年に1兆円」を目指す農林水産物の輸出額目標は、さらに高い水準の目標設定を検討する。本部の体制は阿部俊子、小泉昭男両副大臣が副本部長、中川郁子、佐藤英道両政務官が本部長補佐を務める。事務局長には皆川芳嗣事務次官が就いた。活力創造プランでは「農業・農村全体の所得を今後10年で倍増させる」という大目標を掲げている。「国内外の需要拡大」「需要と供給をつなぐバリューチェーン構築」「生産現場の強化」「多面的機能の維持・発揮」の4本柱を提示。具体策には輸出拡大や6次産業化、農地中間管理機構(農地集積バンク)を通じた担い手への農地集積などを挙げる。西川農相は、この日の初会合で「プランを着実に実行したい」と強調。その上で「市場開拓に省を挙げて取り組みたい」と述べ、農家の所得増大には新たな 需要開拓が不可欠との認識を示した。需要開拓の一環で、輸出の拡大を重点的に進める考え。これまでの照準だったアジア市場に加え、人口5億人の欧州、3億1000万人の米国の市場開拓を検討する。現在の輸出額目標は「20年までに1兆円」の達成を目指す。欧州、米国を新たな開拓先に位置付けることで「高めの輸出目標をつくりたい」(西川農相)と、目標の上乗せも検討する。西川農相は就任当初から「個別の農家の所得が増えても農村のにぎわいは回復できない」との考え。担い手への農地集積だけでなく、離農した小規模農家の就業機会の確保も課題に挙げる。一方、農家所得を増やすには「他産業と組み、農家が価格決定権を持てる仕組みが必要」と指摘しており、実行本部の論点になる見込みだ。

*3-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=29623
(日本農業新聞 2014/9/3) 医福食農連携を 新たな市場に期待 農水省がシンポ
 農水省は2日、医療・福祉分野と食料・農業分野の連携をテーマにしたシンポジウムを開き、関連施策を説明した。事業者による事例報告もあった。政府が決定した農林水産業・地域の活力創造プランでは、6次産業化の発展形として医福食農連携に着目しており、新たな市場開拓、農業の成長産業化につなげていきたい考え。同日は各省庁、事業者間の報告を通じ、関係者の連携強化が重要だと確認した。同省は、医福食農連携に関連する14年度の取り組みを説明。機能性農林水産物の実用化に向けた研究の支援、高齢者の健康づくりや障害者の雇用の場として農作業を活用する取り組みの支援などを通し、食と農を基盤とした健康長寿社会を構築することを目指していると報告した。また地域農産物を活用した介護食品の開発なども重要な柱。医療・福祉分野との連携の推進により健康や介護など時代のニーズを捉え、新たな国内需要に対応していく。事業者による公開討論では医福食農連携への取り組み事例を紹介した。養命酒製造(株)の小山忠一生産管理部専門課長は、製品の原料となる生薬を国内で栽培する取り組みを説明。山口市などと協力して、栽培に乗り出したことを報告した。生薬の栽培は、耕作放棄地を利用して行っていることから、取り組みは地域活性化にもつながるとの考えを示した。この他、国産原料を使った高付加価値の介護食品の開発、障害者の農業分野での就労、野菜由来で冷凍食品の品質保持などに活用できる「不凍タンパク」開発の取り組みが紹介された。

<地域資源の発掘と産業化>
*4-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=29393
(日本農業新聞 2014/8/20) 森林活用 フランス ヴォージュ組合
 フランス・ローヌ・アルプ州で、地域づくりに取り組む地域自然公園(PNR)ヴォージュ組合の課題は、個人所有が多い森林の有効活用だ。ヴォージュ山塊内の森林所有者は約1万2000人。近年は、管理が行き届かない森林で鹿が増え、植林地や農地での食害が目立つ。自然を活用した農林業、観光業の振興に取り組む組合にとって、森林所有者の理解は地域づくりの成否を左右する。
●所有者の理解が鍵 建材消費へ行政も支援
 フランスでは、1804年制定のナポレオン法典で、土地の相続は均等分割が原則となった。森林も相続を繰り返す中で所有者が増大。数平方メートルの所有者も少なくない。山塊内の森林面積は5万1000ヘクタール、そのうち3万ヘクタールが私有林だ。同組合森林経営者委員会のジャンルイ・ダビッドさん(65)は、所有者の依頼を受け、土地台帳を基に衛星利用測位システム(GPS)で私有地を確定する作業を続ける。森林内を歩く地道な仕事を無償で引き受けるが、「森林に興味を持つ所有者が増えたのは良いことだ」と話す。個人の権利と義務が尊重されるフランス。同組合の活動も森林に限らず土地所有者の承諾が必要になる。40ヘクタールの森林を所有するダビッドさんは、「シャトラール町で林道整備を進めた時、所有者1人の反対で1年間計画が止まった」と話す。木材や薬草、山菜、野生動物など利益をもたらす林産物が多い森林には、同委員会の他、森林組合や製材所組合、木材販売業者など州や県、市町村単位で組織が乱立。共有林と私有林の連携もなく、「森林活用は停滞していた」(ダビッドさん)。同組合の設立を機に、森林関連団体が組合に参加することで団体再編が進んだ。しかし、個人所有者の参加判断は個人に委ねられたまま。経営者委員会の元会長で、同組合の副組合長を務めるアルベール・ダルベルさんは(59)は、「(組合への加入などを)所有者一人一人に説明して回った」と、当時を振り返る。標高500メートル以上の森林には建材で使われるホワイトウッドが豊富に育つ。人口増や地域の経済が活発化することで木材需要が高まる中、経営者委員会の働き掛けで地域づくりに賛同する森林所有者は増えている。行政も、ヴォージュ産木材を建材に使用すれば、資材の2%を補助して、森林活用を後押しする。組合設立から来年で20年。農林業と観光業を柱にした地域活性化が進み、環境や生物多様性を意識する住民が増えた。2011年には国連教育科学文化機関(ユネスコ)の支援を受けた国際機関が地質的に特徴のある地域を認定する「ジオパーク」の認定を受け、住民の地域づくりへの意欲は高まる。1980年代に人口減少で活気を失っていた山塊を知るダルベルさんは語る。「古くから受け継がれた自然、文化が宝物だったことに気付くことができた。まだ組合は若く、個人所有が多い森林などで課題はある。目指すのは、持続可能な資源の活用で地域を盛り立てることだ」

*4-2:http://qbiz.jp/article/45809/1/
(西日本新聞 2014年9月12日) 有害獣駆除、加工して販売
 中山間地の田畑を荒らすイノシシやシカから農作物を守ろうと、大分県豊後大野市の姉妹が女性に狩猟免許取得を勧めている。姉妹は3年前にわな猟免許を取得し、今年1月には獣肉加工施設「女猟師の加工所」を開設。捕獲したイノシシの精肉の販路開拓にも取り組む。2人は「先輩に学べば、女性も猟師の世界に踏み込めます。古里の田畑を守りましょう」と呼び掛けている。姉妹は、田北たず子さん(62)と東藤(とうどう)さき代さん(58)。勤務先の病院を早期退職後、実家が所有する山の竹林を整備し、自生するタケノコを出荷しようと考えた。ところがイノシシの被害に遭い、近くの水田やクリ畑でも被害が相次いだことから、狩猟免許の取得を決意した。イノシシの通り道の判別法やわなの仕掛け方などには、猟友会のメンバーに指南を受けた。免許取得後、餌でおびき寄せて中に入ると扉が閉まる「箱わな」と、通りがかった動物の足をワイヤで縛る「くくりわな」を駆使し、これまでにイノシシとシカ約110頭を捕獲した。解体した肉は家族で食べたり、知人に配ったりしていたが、一頭が数十キロもあり、消費し切れず限界に。「有害獣の駆除とはいっても命をいただく行為。せめて多くの人においしく食べてもらおう」(田北さん)と、冷凍庫や真空パック機などを備えた加工所を実家の敷地内に開設した。猟師からの持ち込み分は1キロ100円で買い取っている。肉は市内の「道の駅」2カ所で販売し、獣肉卸会社や大分市のイタリア料理店にも出荷している。「豚肉とはうまみやこくが違う。臭いが出ないよう、捕獲直後の血抜きには気を使う」という。月に7万〜27万円の売り上げがあり、加工所の運営費などに回している。東藤さんは「女性の仲間を増やしながら、あと10年は頑張りたい」と話している。

<地域製品の世界展開>
*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/102444
(佐賀新聞 2014年9月9日) 有田焼欧州復権狙う 国際見本市に窯元・商社8社
 有田焼創業400年事業の一環で、窯元・商社8社が、フランス・パリで開催中の国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」に出展している。江戸時代に欧州を席巻した有田焼の“復権”を目指す取り組み。見本市のために開発した試作品を含む大皿や酒器など約100点を展示。来場者からは「伝統を引き継ぐ高い技術に感激した」など好意的な反応が寄せられている。見本市は5~9日の5日間、パリの会場で開かれている。染付の大皿や球体状の重箱、草花を描いた酒器などを並べた。伝統的な有田焼だけでなく、釉薬(ゆうやく)を工夫して金属的な雰囲気を出した商品など、欧州市場の感触をつかもうとする意欲的な商品を集めた。来場者からは「有田を訪れたい」「サイズを大きくできないか。資料を送ってほしい」「商品の価格帯は」といった感想や反応が聞かれたという。県は5日、現地でレセプションを開いた。古川康知事が、1900年のパリ万博で有田焼の花瓶が金賞を受賞したことに触れながら、「400年の歴史を刻んできた有田焼が、世界最高の舞台で大きく花開く姿を見届けていただきたい」と欧州での有田焼復権をアピールした。県は、2015年9月、16年1月の見本市にも出展する。


PS(2014.9.21):(1)に、学校規模の適正化と離島の学校の問題を書いたが、*6のように、通学できる範囲を無制限にして寮を作り、小中一貫校や中高一貫校として少人数教育などで良さを出せば、離島は農業と漁業の両方を近くで見ることができ、自然とのアクセスも抜群の場所であるため、外国の日本人学校や都会からも生徒が来るだろう。なお、子どもが勉強したり、体力づくりをしたりするのに、コンビニやゲームセンターは邪魔でしかなく、ゲームでせこせことタマゴッチなんかを育てているよりも、本物のアワビ、ウニ、魚、海藻などを取ったり、米や野菜を育てたりする方が、体力がつくとともに面白く、命に関する間違った認識も無くなる。そのため、*6はアッパレだ。

*6:http://www.asahi.com/articles/ASG9N53H3G9NUTIL00L.html?iref=comtop_6_06
(朝日新聞 2014年9月21日) 離島の高校、「逆転の発想」でV字回復 島留学に人集う
 中東ドバイの日本人学校から、日本海に浮かぶ隠岐諸島の高校へ。双子の兄弟の岩井元(げん)さん、玲(れい)さん(16)が2年前に選んだ道だ。2人が通う島根県立隠岐島前(どうぜん)高校は、松江市からフェリーで3時間かかる。日本の大学に行くためには日本の高校がいいと考え、祖父から高校のことを教わった。夏休みに帰国。いくつかの高校を見て回った。生徒が目を合わせてあいさつしてくれたのが島前高校だった。温かさを感じたのが決め手だった。「高層ビルが立ち並ぶドバイとは正反対の、隠岐の自然の豊かさに驚いた。地域全体が学校。ドバイの学校より小さいけど広い」。隠岐島前高校は離島ながら、生徒数が2008年度の89人から今年度の156人へとV字回復し、注目されている。高校はかつて統廃合の崖っぷちに立っていた。97年に77人いた入学者は08年には28人に落ち込んだ。高校が消えれば、15歳以上の若者がいなくなる。地域にとっては、死活問題だった。「島の最高学府を守れ」。島前の3町村長や住民らが08年に立ち上がり、高校の魅力化構想をつくった。通いたい高校にすれば生徒は増えるはず。「ピンチはチャンスだ」と考えた。いくつもの試みが「逆転の発想」から生まれた。「小さいことはよいことだ」と10人前後の少人数習熟度別授業を始めた。「田舎は都会にはない自然や人のつながりがある」と地域に根ざしたカリキュラムをつくった。生徒は船のダイヤ改定案から、島の太陽光発電まで考える。「仕事がないから島に帰れない」ではなく、「仕事をつくりに帰りたい」人を育てようと、課題を解決する力をつける教育を目指した。島にはコンビニもゲームセンターもない。「だからこそ工夫する力や粘り強さが磨かれる」と都会から生徒を受け入れる「島留学」を始めた。この春入学の「留学生」は31人。8月の島での見学会には全国から親子140人が参加した。島根県立大学連携大学院の藤山浩(こう)教授(中山間地域研究)は話す。「日本の高校は『蜘蛛(くも)の糸』の主人公のように、成長神話の糸にすがり、人より先に上へ上へと上がっていけと教えてきた。『東京すごろく』をよしとして生徒を都会に送り続けた。島前高校は人とつながり地域で生きる別のモデルをつくっている」。高校がいま取り組むのはグローバルな視野を持ちながら、足元のローカルな地域社会をつくる「グローカル人材」の育成だ。10月には2年生がシンガポールに5日間出かけ、シンガポール国立大生に島の課題を英語で発表する。離島での資源リサイクルは、冬場に観光客に来てもらうには……。「都会の島のシンガポールで、田舎の島の高校生が挑む。おもしろいじゃないですか」と常松徹校長。なぜ、この高校は人を引きつけるのか。カギは、都会から移住した人々の知恵を借りたことにあった。

| 農林漁業::2014.8~2015.10 | 02:25 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.9.17 ユーグレナの可能性と佐賀市の契約 - 循環型社会に向けて理念を通す
      
「ユーグレナは世界を救う」マーク     2014.2.9佐賀新聞より

(1)ミドリムシは食料問題に多様な解を与えるが、環境問題はどうか?
 昨日、会計人東大会で、ユーグレナ社長の出雲氏をお招きして話を聞いた。出雲氏は、*2に書かれているように、大学時代にバングラデシュに行き、おなかをすかせている子どもはいなかったが栄養が偏っているのを見て、ミドリムシで世界の食料問題を解決しようと、東大で文学部から農学部に転部して研究し、ベンチャー企業を興した人である。

 そして、*1に書かれているように、2005年12月に世界で初めて沖縄県石垣島でミドリムシ(学名:ユーグレナ)の屋外大量培養に成功し、2008年に最初の取引相手である伊藤忠商事の出資が決まるまでの3年間は取引を断られ続けて苦労したものの、伊藤忠商事の出資をきっかけに、石油会社、航空会社、ゼネコンなどが次々と手を挙げてくれて事業が軌道に乗り、2012年12月には、ユーグレナ社を東証マザーズに上場したとのことである。

 ミドリムシは、昆布やワカメの仲間の藻の一種で、動くことも光合成することもできる動物と植物の両方の性質を備える生物で、植物と動物の両方の栄養素を持つため、人間に必要なビタミン、ミネラル、アミノ酸、不飽和脂肪酸など59種類もの栄養素を作り出すことができる上、油脂分を作り出すこともできるため、食料問題に多様な解を与えるとともに、ジェット燃料の開発にも期待されているのだ。

 しかし、私自身は、ジェット燃料ならミドリムシより水素の方が、さらに環境適合性がよいため、燃料系は水素か電気にして、ミドリムシには、コストダウンが求められる家畜や養殖魚の餌を含む食料への貢献を期待したい。

(2)佐賀市の挑戦はあっぱれだ
 *2のように、ユーグレナ社と佐賀市は、ジェット燃料などの大量生産、低価格化を目指す共同研究を行うことになり、佐賀市の秀島市長が、石垣島(沖縄県)に次ぐ第二の拠点となる共同研究契約を締結したそうである。そして、今回の研究では、下水処理水や清掃センターで回収する二酸化炭素(CO2)を佐賀市が提供し、従来「じゃまもの」だった下水処理水やCO2を原料に使って燃料開発などに繋げるのはあっぱれで、この研究が成功すれば、他の自治体でも応用できるだろう。

 今後は、工場開設などの生産拠点化が可能かどうか検討し、新たな食品などへの応用を探るそうだが、この機会に玄海、有明海の養殖魚や家畜の餌の研究もし、餌をコストダウンさせることに成功して欲しい。私がそういう質問をしたところ、出雲社長は、養殖魚や家畜の餌に関しても積極的だったため、関係者は話をしに行ってもらいたい。

(3)神鋼環境ソリューションがユーグレナの本格培養を開始
 そのような中、*3のように、神鋼環境ソリューションが、閉鎖型の 1m3培養槽を設置し、従属栄養培養方式によるユーグレナの培養を本格的に開始して、ユーグレナ由来のバイオマスなどのサンプルをキログラム単位で提供する体制が整って、バイオ燃料、食品/化粧品、下水処理に加え、化成品などの商品化検討を開始するそうだ。今後は、培養する方法や種類について、(人間の食べ物でなければ遺伝子組み換えもできるため)目的に応じて更なる改良を進めることができるだろう。

*1:http://mainichi.jp/feature/news/20130118org00m020003000c.html
(毎日新聞 2013年1月22日) 社長インタビュー:出雲充 ユーグレナ社長
<いずも・みつる  広島県呉市出身。2002年東京大学農学部卒業、東京三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。05年8月、大学時代の後輩ら2人とともにユーグレナ10+件を設立し、社長就任。同年12月、ミドリムシの屋外大量培養に成功した。33歳。>
◇ミドリムシで食料・環境課題を解決する
 ユーグレナは2005年12月、世界で初めて沖縄県石垣島でミドリムシの屋外大量培養に成功したバイオベンチャー。13年9月期決算の見通しは、売上高が22億9000万円(前期比44.5%増)、営業利益が3億5200万円(同14.4%増)。社員は38人。12年12月20日、東証マザーズに上場した。
─ ミドリムシ(学名ユーグレナ)について教えてください。
出雲 その名前からイモムシのような虫の仲間と誤解されやすいのですが、ワカメや昆布と同じ藻類です。ただ、ワカメや昆布とは違い、水中で植物のように光合成をする一方、細胞を変形させて動くという、植物と動物の両方の性質を持つ珍しい生物です。ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸など59種類もの豊富な栄養素を含み、二酸化炭素を吸収して成長するという特性から、昔から食料問題や環境問題解決に活用しようと各国で研究されてきました。日本でも1980年代から00年まで、国家プロジェクトとして研究されていましたが、大量培養には至らず頓挫した経緯があります。
─ 大量培養はなぜ難しい?
出雲 培養している間に、他の微生物が侵入してきてミドリムシを食い尽くしてしまうからです。ヨーグルトや日本酒のように、発酵や培養は目的とする菌以外の増殖をいかに防ぐかが重要なのですが、ミドリムシは栄養価があらゆる微生物の中でトップクラスに多いので、その分、他の微生物に最も狙われやすい。そのため、屋外での大量培養は、従来はできなかったのです。
─ 成功した秘訣は何ですか。
出雲 まず、研究者の先生方に過去になぜ大量培養に失敗したのかを教えていただきました。すると、どの先生方も同じ方法で失敗していたことがわかりました。簡単に言えば、失敗していたのは「蚊帳方式」、つまり外敵が中に進入しないようブロックする方法。これに対して私たちは発想を転換し、「蚊取り線香方式」を考えました。培養液に独自の工夫を加え、微生物の進入を阻止する方法です。この培養液の工夫に偶然にたどり着き、大量培養の成功に至りました。
─ それから事業化までが大変だったとか。
出雲 創業前にライブドア社長(当時)の堀江貴文さんと知り合い、お金もオフィスもなかったので創業時には出資を受け、オフィスも間借りしていました。ところが06年1月にライブドアに強制捜査が入り、それをきっかけにそれまで協力してくれていた企業が一斉に当社から手を引いてしまったのです。それ以降、ミドリムシをあらゆる企業に売り込みましたが、協力してくれる最初の1社を見つけるまでに約3年かかりました。08年に伊藤忠商事の出資が決まったことをきっかけに、石油会社、航空会社、ゼネコンなどが次々と手を挙げてくれ、ようやく事業が軌道に乗りました。日本企業は、ベンチャーに出資する最初の1社になるのを躊躇します。しかし、いざチームを組むと、ものすごく協力的です。これまで門前払いをしていた企業も声をかけてくる。とにかく極端ですね。
◇ジェット燃料も開発
─ 現在は、どのような事業を手がけているのですか。
出雲 収益のほとんどがサプリメントなど機能性食品や化粧品などのヘルスケア事業で、自社製品の販売のほかOEM(相手先ブランドによる受託生産)や原料供給もしています。これに加え、様々な企業と共同でジェット機の燃料開発、家畜の飼料開発、水質浄化技術開発の研究も進めています。
─ ジェット燃料の開発が有望視されています。
出雲 バイオ燃料の中で、ミドリムシから取れる油はジェット燃料に性質が適していて、地球環境問題の解決にミドリムシは大きな可能性を持っています。そこで、JX日鉱日石エネルギーなどと共同で、ミドリムシからジェット燃料を作り出すための研究開発をしています。日本航空と全日本空輸の2社が使用する燃料は年9000億トンとされますが、その1割を将来的にミドリムシ由来で賄う計画を立て、18年度に事業化の実現を目指しています。 ただ、現在ある石垣島の培養設備のみでは規模が小さく、ジェット燃料に活用するにはコストが高すぎます。実用化が頂上だとすれば、現在は3合目ぐらい。実際に飛行機を飛ばすことができて6合目、採算性を示すことができて7合目、頂上は900億トンを毎年安定的に生産できる体制が確立した時と考えています。
 そのためにまず、巨大な培養設備が必要です。将来的には光合成に適した赤道直下や国内の耕作放棄地などの活用も含めて、現在の100倍の容量の設備を作ることを目指しています。上場で得た資金で、その場所を確保する予定です。
─ 上場時の初値は、公開価格の1700円に対し、2.3倍をつけました。
出雲 ミドリムシに注力している会社は他になく、その点で注目されている面があると思います。一方で期待に応えられないと、その評価はすぐ剥落するでしょう。いったん期待が逆回転したら2度目のチャンスはないと思うので、技術で株主の期待に応えていきたいです。

*2:http://www1.saga-s.co.jp/news/saga.0.2622486.article.html
(佐賀新聞 2014年2月9日) ミドリムシからジェット燃料 佐賀市と研究
 世界で初めてミドリムシの屋外大量培養に成功し、その体内から燃料を抽出する技術を持つバイオベンチャー企業「ユーグレナ」(本社・東京都)と佐賀市が、ジェット燃料などの大量生産、低価格化を目指す共同研究に乗り出すことになった。石垣島(沖縄県)に次ぐ第二の拠点を探す同社に、全国の自治体から共同研究の依頼が舞い込む中、佐賀市を研究パートナーとして選んだ。8日、同社の出雲充社長が秀島敏行市長と共同研究契約を締結した。自治体との共同研究契約は初めて。ユーグレナは2005年8月に設立。高タンパクのミドリムシを培養し、ミドリムシクッキーやサプリメントなど機能性食品の企画・販売などで成長している。抽出物質のバイオジェット燃料への応用も手掛け、20年の事業化を目指している。今回の研究では、下水浄化センターから排出される有機物を多く含む処理水や、清掃センターから回収する二酸化炭素(CO2)を佐賀市が提供。同社は従来「ごみ」となってきた処理水やCO2を原料に使い、市場コストに見合う燃料開発などにつなげるステップとする考え。今春にも研究に着手し、佐賀市に研究室を設けることも視野に、工場開設など生産拠点化が可能か検討する。ミドリムシは約100種類と多く、ジェット燃料のほか、新たな食品などへの応用も探る。研究者の人数や詳細な日程については「競合が多い分野なので控えたい」とした。出雲社長は「明治維新の原動力となった佐賀で循環型社会構築に向けたスタートを切ることができ、縁を感じている。しっかり取り組みたい」と話した。
■佐賀市と共同研究「ユーグレナ」社長が講演
 8日、佐賀市と共同研究契約を締結したバイオベンチャー「ユーグレナ」。出雲充社長(34)が同日、佐賀市内で講演し、ミドリムシの研究を始めるきっかけから今後の展望までを熱っぽく語った。講演要旨を紹介する。
   ◇   ◇   ◇
 大学時代、世界の最貧国バングラデシュに行った。土産に栄養補助食品を持って行ったが、おなかをすかせている子どもはいなかった。子どもたちはカレーを食べていた。しかし、カレーに具はない。動物性タンパク質の不足から、おなかがポコッと出ている子どもも多かった。腹ぺこ状態ではなく、炭水化物以外の栄養素が不足する「栄養失調」で困っている人が世界に10億人もいる-。現状の一端を垣間見た。「世界の栄養失調を解消したい」という思いが原点。しかし、世界にはそれだけの人が食べる卵や野菜を作る土地、農地がない。帰国して栄養価が高い食べ物について調べた。そこで出合ったのがミドリムシだった。その語感から、よくイモムシのようなものを想像されることが多いが、体長0・1ミリの微生物ミドリムシは植物の仲間で、ワカメやコンブなど海藻の親戚に当たる。植物だけではなく動物の栄養素も持ち合わせ、人間に必要な栄養素59種類を作り出すことができる。ただ、害虫からも狙われるミドリムシを育てる環境整備は非常に困難で、最初は大学の研究室に1カ月泊まり込んで育てても、できるのはスプーン1さじ程度だった。安く大量に育てる技術を世界で初めて発明したのは2005年。沖縄県の石垣島で大量に育てている。2006年からは食品展開を始めた。食品だけではない。ミドリムシからバイオ燃料、特にジェット燃料を生み出す研究も続けている。化石燃料の使用による二酸化炭素の排出が気候変動を引き起こし、昨年も大型台風が国内外を襲った。こうした状況は人類にとって、大きなリスクだ。農地を使わず、ジェット燃料を作り出すことができれば、地球に優しい新しい飛行機が作れる。私たちは今日から佐賀で、燃料や食料の面で日本や世界を救う研究に取り組む。前例がないことをやろうとしている人をぜひ応援してほしい。そして東京オリンピックの20年、ミドリムシからできた燃料を積んだ飛行機で、佐賀空港から東京に向かいましょう。

*3:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140910-00000131-mycomj-sci
(YAHOO 2014年9月10日) 神鋼ソリューション、ユーグレナの本格培養を開始
 神鋼環境ソリューションは9月8日、技術研究所内に閉鎖型の 1m3培養槽を設置し、従属栄養培養方式によるユーグレナの培養を本格的に開始致したと発表した。これにより、ユーグレナ由来のバイオマスなどのサンプルをキログラム単位で提供する体制が整ったため、バイオ燃料、食品/化粧品、下水処理に加え、化成品等の商品化検討を開始する。ユーグレナの培養方法は一般的に光合成培養と従属栄養培養がありますが、閉鎖型の培養槽における従属栄養培養は、光合成培養と比較すると、単位面積当たりのバイオマス獲得量が数百倍程度となると共に、気候等外部環境(日光、気温等)に影響されない安定した培養を継続することが可能です。このたび、筑波大学と共同で見出したユーグレナの新規株の培養をフラスコ規模から段階的にスケールアップし、培養槽(1m3)においても、バイオ燃料として有望と考えられてきたユーグレナ・グラシリスZ株と比較してバイオマス生産性が2倍以上であることを改めて確認できたという。ユーグレナから得られるパラミロンが嫌気状態にて、バイオ燃料のもとになりうるワックスエステルを生成することも確認されており、バイオマス乾燥重量当たり 70~80%のパラミロンを蓄積する培地成分や培養条件も確立しているとのこと。バイオマスの成分分析結果では、ビタミン・ミネラル・必須アミノ酸・必須脂肪酸の含有が確認されており、アミノ酸スコアは100となっている。なお、これらの培養成績は、日本農芸化学会2014年度大会にて発表された。同社は今後、培養方法について更なる改良を進めると共に1m3培養槽の培養実績を積み重ねていくとしている。また、培養槽の大型化に必要な最適設計条件を把握し、2015年度には10m3培養槽での大量培養を計画しており、この10m3培養槽が完成すれば、パラミロンの製造設備としては、世界最大レベルになる見込みだという。

| 環境::2012.12~2015.4 | 03:11 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.9.16 雇用をはじめ、あらゆる場面における女性に対する間接差別について
   
   図1      図2         図3             図4

(1)女性の管理職登用には、間接差別も法規制すべきである
 図1、図2、図3でわかるように、日本では、就業者に占める女性の割合は他国に比べて突出して低くはないが、管理職(課長相当以上)に占める女性の割合は10%ちょっとにすぎず、役員以上は1.23%しかおらず、世界で突出して低い。その理由を、*1-2は、①長時間労働で仕事と家庭の両立が難しく、子どもを持つ段階で仕事か家庭かの二者択一を迫られて退職する女性が多い ②一度職場を離れると非正規以外の好条件での再就職が難しい ③カギを握るのは長時間労働を見直して職場環境を変えること ④フレックスタイムや在宅勤務など柔軟な働き方を広めること ⑤時間ではなく成果で評価する仕組みをつくること ⑥男性はもっと家庭に と説明しており、こういう説明は多い。

 私は、①はもっともで、それだからこそ保育所・学童保育・家事サポートサービスの充実が必要であり、②の理由で女性労働からの搾取が起こっているため改善すべきだが、③④については、職場の全員を巻き込まなくても、そうしたい人がそうすればよいと考える。その際に大切なことは、⑤の公正な評価が行われることであり、日本企業はこれができていないのが問題なのだ。なお、⑥も、そうしたい人がそうできる職場であればよいが、日本企業では公正な評価が行われていないので、これもやりにくい。

 私がこう考える理由は、*1-1に書かれているように、ワークライフバランスの問題は、「男性は家計、女性は家事育児に主たる責任がある」という「家庭内の伝統的性別役割分業」が働く女性に仕事と家庭の役割の二重負担を強いることにより起こるのであり、それを解決すればよいからである。そして、本当は、男女とも、寝る間も惜しんで仕事に没頭し、仕事が面白くなるから能力がついて成功するという事例が多く、そのくらいでなければ国際競争力の出ない仕事が多い。

 また、*1-1は、①勤続年数が同じでも男女の昇格に大きな差がある ②大卒女性より高卒男性の方が課長割合が高い ③女性のみ長時間労働が昇進率に大きな影響を与える と結論しており、これが、1982年から公認会計士・税理士・国会議員等としてずっと働き続けてきた私の肌感覚と一致する。

 つまり、*1-1に書かれているように、厚生労働省の企業アンケート調査では、日本で指導的地位につく女性の割合が低いのは、①現時点で必要な知識や経験、判断力を有する女性がいないと過半数の企業が挙げている ②将来管理職に就く可能性のある女性はいるが、現在管理職に就くための在職年数などを満たしている者はいない ③勤続年数が短く管理職になるまでに退職する としており、企業から見ると「女性は経験不足だから」という理由だが、実際には、i)勤続年数が同じでも管理職への昇進率は女性が著しく低い ii)高卒男性の方が大卒女性より課長以上の割合が高く、女性は高学歴でも昇進しない など、教育や努力ではなく性差で社会的機会が決まっており、iii) 労働時間も女性にのみ長時間労働が管理職資格要件となっている iv) 女性は人事考課の結果によらず昇進率の低い職に配置される などの「間接差別」があるという結果になっている。

 さらに、*1-1では、v)組織内に伝統的性別役割分業意識があり、「男性はリーダー役、女性は補佐役に適任」という固定観念により、本来は「個人の適材適所」で考えるべき人事に性別がからんで大多数の女性を一般職として管理職候補から外したり vi)男性は管理職への昇進率が高いポジションに女性は管理職への昇進率の低いポジションに配置したりする慣行がはびこり vii)組織内の伝統的性別役割分業意識が女性の管理職昇進や企業内での意思決定参加を阻んできた と書かれているが、これも私の肌感覚と一致しており、本来、このようなことは、企業アンケートをとった厚労省が同時に調査・分析を行うのが当然なのである。

 しかし、2002年の最高裁事務総局の通達でも、「同期同給与年齢の男女間に8対2の昇格比率の差があっても、男女職員間の全体的な昇格比率は、それだけで差別を根拠づけるものとは言えない」としているそうで、全体として、日本政府は、これまで女性を管理職として登用する気はなく、その理由は後からこじつけたもので、働く女性に対しては搾取と嫌がらせこそあれ配慮などはなかったため、これらをすべて直さなければ女性が遣り甲斐を持って生き生きと働き続けられる社会にはならないということだ。

 そのため、*1-1に書かれているとおり、女性の活躍には、組織内の伝統的な性別役割分業の根本的見直しが必要で、それと同時に、既に存在する様々な間接差別的制度を法的に禁止することが重要である。なお、2006年の法制化時は、私が中心になって行い、女子差別撤廃条約違反や差別の意図がなくても男女差別を生み出す間接差別も禁止しようとしたが、自民党内からの突拍子もない反対のための反対が多く、間接差別という言葉を入れるだけで精一杯だった。しかし、自民党という与党にいたから間接差別という言葉だけでも入れることができたというのも事実だ。

 今は、*1-3のように、佐賀県でも、企業や社会の意識改革を進めるべく「輝く女性応援会議in佐賀」が開かれる時代になったが、その内容は、「人材派遣(“柔軟な働き方”と称する管理職にはなれず、使い捨てにされる女性の搾取労働)」「育児・家事支援の施策や制度整備」が中心だ。また、松尾建設の担当者が営業や設計部門への女性登用について、「現場経験のなさが逆に顧客目線での営業につながって評判もいい」と報告しているのは、「女性が優れている部分は現場経験がないからだ」という女性蔑視の固定観念があり、顧客として、及び仕事の両面で現場経験が豊富だからこそよいアイデアが出ている女性に対して失礼千万である。

 なお、私が国会議員として佐賀新聞主催の催しに出席した際にも、佐賀新聞社は、私を“一般の人(普通の人?)”と同列に扱って他の男性議員よりも冷遇したし、佐賀新聞記事の中にも事実に反する女性蔑視の失礼な“評価”や描写が多かった。これらは、既に管理職に登用されている女性に対してさえメディアが行っている女性蔑視(女性差別)の典型であり、一般の人の先入観を作って選挙や評価に影響し、間接差別を助長するため、早急に改善されるべきである。

 また、*1-3で、行政や社会への注文として「少子化で企業にとって人こそ財産。経営者は辞めさせない覚悟を持つべき」などの意見が出ていたと書かれているのは、ただでさえ*2-1、*2-2、*2-3のような考えの人が多い中、能力と公正な評価で女性を登用してもらうのであり、どんな人でも終身雇用する時代ではないため、甘えすぎだ。原則として、企業は、価値ある仕事ができる人材は辞めさせないが、実力もないのに要求ばかりしている女性は、他の女性の足まで引っ張ることになるため、どんな時代になっても甘えるのはいい加減にすべきである。

 なお、*1-4のように、女性目線で新風を吹き込むため、農水省も「女性の職業選択肢に農家を加える」との目標を掲げており、よいことだとは思うが、農業・水産業は食品製造業であり、女性の視点が特に役立つにもかかわらず、これまで経営や農協理事・漁協理事として活躍する女性が少なかったのは、異常なくらいだ。

(2)女性登用目標についてのよくある反対意見
 *2-1のとおり、「a.女性登用の目標は男性に不公平で、女性3割にこだわると上位の男性より下位の女性が採用されて、公務員全体の能力が低下する」「b.政権が指導的地位に占める女性の割合を30%に引き上げるという目標を立てたのも、女性の割合ありきで納得できない」「c.採用後の昇進や昇格も、男女の別なく能力で決めるべきだ」という意見があり、このような意見は多い。

 これについては、女性は戦後、高等教育を受ける機会や働く機会を与えられて働き続けてきたが、(1)に記載したとおり、社会や組織内にある伝統的性別役割分業意識によって差別され、管理職は10%程度しかおらず、女性管理職3割というのは図4の他のアジア諸国と比べても男性差別になるほど高すぎる目標ではないこと、また、(3)に書く理由から女性管理職が増えれば公務員全体の能力はむしろ上がること、及び、採用後の昇進・昇格を男女の別なく能力で決めるべきというのは全くそのとおりだが現在そうなっていないのが問題なのであること、そのため、これらが改まるまで女性管理職割合の最低目標を決めるべきだというのが、その答えである。

 また、*2-2の「A.女性の管理職の比率向上を目標にする人事は、企業の本来の目的とは必ずしも一致しない」「B.企業にとって不変のルールは『適材適所』」「C.企業が行うべきは、女性に能力を発揮する機会を提供すること」「D.労働環境の整備、成果に対する公正な評価と透明性の確保が重要」というのも、*1-1に書かれているとおり、現在は組織内の性別役割分担意識から適材の女性でも登用されにくく、同意識から公正な評価も行われないため、管理職の女性割合が増えて、その考え方が改まるまで最低目標を決めるべきだということなのである。

 なお、*2-3では、「女性幹部の増加より雇用促進」と題して、「イ.指導的地位に占める女性の割合を30%に引き上げるという目標が、なぜ日本を成長させるのか分からない」「ロ.女性の就業希望者は全国に328万人おり、既に職に就いている人の中から複数人を幹部にするより、まず、この328万人の女性に働く機会を作り、働きやすい環境を整えることこそ、安倍政権が優先して取り組むべき課題だ」としている。しかし、指導的地位に占める女性割合の目標を定める意味は上記のとおりで、指導的地位に占める女性割合が増えれば、その328万人の女性の働く機会は増えることがあっても減ることはないため、この論は何とか女性の登用を止めたいばかりの意味のない論理だ。

(3)男性中心で作った愚策の事例
 *2-1で、「女性3割にこだわると上位の男性より下位の女性が採用されて、公務員全体の能力が低下する」と書かれているが、そもそも公務員は、男性に下駄をはかせて男性優先で採用してきたため、現在でも優秀な女性が意思決定できる立場に少なく、男性中心で作った愚策が多いのである。そのため、ここでは、その中のごく一部を紹介する。

1)気仙沼の巨大防潮堤計画
 *3-1の巨大防潮堤計画は、陸から海への栄養塩の流れを止めて生態系に悪影響を与えるとともに、景観を損ね、津谷川をさかのぼる津波には意味がない。そのため、私がこのブログの2011.4.19には既に記載し、2013.7.7にも再記載しているとおり、住民が高台移転し、高速道路を防潮堤として利用して、高速道路より海側は耕作や牧畜等の生産地帯にするのが合理的なのだが、景気対策と称して税金を湯水のように使う巨大防潮堤計画ができ、宮城県の担当者は反対意見には耳を貸さない。

2)東日本大震災から3年半後も、8.9万人が仮設住宅住まい
 *3-2のように、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の49市町村で、毎週国会議員が現地を訪問しているにもかかわらず(現地を訪問しているというアピールだけなら、時間と旅費の無駄遣い以外の何物でもない)、まだ仮設住宅で約8万9千人が暮らしている。完成のめどが立たない復興住宅もあり、避難している人はいつ定住できるかわからない。民間借り上げ住宅、公営住宅、移住など、より被災者の立場に立った対応がある筈だと思うが、時間ばかりかけた結果、体調不良を訴える被災者も出ており、よいことは何もない。

3)国家予算
 *3-3のように、来年度は、消費税を10%に上げ、景気対策に1兆円を確保して、大規模な公共事業や中小企業向けの補助金など経済対策のためなら自由に使うことができる財源を用意するということだ。しかし、その前に、デフレ脱却として称して金融緩和を行い、毎年2%以上の物価上昇を作り出した上、円安により34%(106/79%-100%=34%)の輸入物価上昇も起こったため、生活者は購買数量を減らしても購買金額が増え、表面的には買い控えの影響が低く出るが、経済学的にはそんなわけがない。

 このように、男性中心で作った政策は、「本当に必要なものは何か」というアイデアに乏しいため、生産性や付加価値が低く、その結果、我が国企業の利益率も低くなっている。そして、それをカバーするために大々的な景気対策を行いながら生活を犠牲にするという政策を繰り返してきたが、意思決定者が30%女性になれば、生活の現場に役立つ付加価値の高い生産を、時間ばかりかけずに行い、もっと実のある政策を実行できると考える。

<女性登用への取り組み>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140829&ng=DGKDZO76284210Y4A820C1KE8000 (日経新聞 2014.8.29) 企業の間接差別、法規制を、山口一男 シカゴ大学教授
〈ポイント〉
○勤続年数が同じでも男女の昇格に大きな差
○大卒女性より高卒男性の方が課長割合高い
○女性のみ長時間労働が昇進率に大きな影響
 2030年までに政治や経済で指導的な地位に就く人の女性割合を30%にするという政府の計画にもかかわらず、女性活躍の進展は極めて遅い。管理職の女性割合は、経済協力開発機構(OECD)諸国の中では米国が43%と高く、欧州諸国の多くは30~40%なのに対して、日本は約10%と低い。本稿では日本でなぜ指導的地位につく女性の割合が低いのか考えてみたい。
 厚生労働省の企業アンケート調査によると、女性の管理職がいない・少ない「3大理由」とされるものがある。第一の理由が「現時点では、必要な知識や経験、判断力を有する女性がいない」というもので過半数の企業が挙げている。第二、第三は「将来管理職に就く可能性のある女性はいるが、現在管理職に就くための在職年数などを満たしている者はいない」「勤続年数が短く、管理職になるまでに退職する」というもので、共に勤続年数の短さを挙げている。企業から見れば「女性は経験不足だから」というわけだが、それは事実だろうか?
 図1は経済産業研究所が09年に行った調査データの分析を最近筆者が「日本労働研究雑誌」(14年7月号)に発表したもので、ホワイトカラーの正規雇用者に限った結果である。勤続年数が同じでも、男女の管理職への昇進率は著しく異なる。女性正社員が31年以上その企業に勤めて達成できる課長以上割合(20%)を、男性正社員は11~15年目に達成している。また係長以上では、女性正社員が31年以上勤めて達成できる割合(50%)を、男性正社員は6~10年目に達成してしまう。ただ、この分析は男女の教育差を考慮していないという批判があるだろう。かつて女性は短大卒が多く、大卒割合は男性よりはるかに低かった。その疑問に答えるのが図2である。結果は驚くべきことに、高卒男性の方が、大卒女性よりはるかに課長以上割合が高い。社会学では生まれによる属性で社会的機会が定まるのが前近代社会、教育など達成の属性で定まるのを近代社会というが、わが国はこの点で近代社会とはいえない。
 ちなみに米国で管理職になるには、大卒や経営学修士(MBA)など、学歴が性別によらず最も強く影響する。筆者の前記論文での分析では、日本で男女の教育・年齢・勤続年数の差で説明できる男女格差は係長以上割合では30%、課長以上割合ではわずか21%であった。男女格差を説明するほかの要因に、労働時間、特に通常週49時間以上働いているか否かがある。労働時間差をさらに説明要因に加えると、男女格差を説明できる度合いは係長以上割合で43%に、課長以上割合で39%へと大幅に増大する。また長時間働くほど管理職の割合が高まる関係は女性の方が男性より強い。
 この事実と関連し、男女の管理職格差の原因について、加藤隆夫・米コルゲート大学教授と川口大司・一橋大学教授、大湾秀雄・東京大学教授の最近の企業内人事についてのパネル調査データ分析は、以下の二つの重要な事実を明らかにした。
 一つは、長時間労働は男性の昇進率を高めないが、女性では昇進率に大きく影響するという事実である。これは長時間労働が女性にのみ管理職資格要件となっていることを示唆する。二つ目の発見は、高い人事考課結果が男性では昇進率を高めるのに、女性では高めないという事実である。これは、女性には人事考課の結果によらず昇進率の低い職に配置するという「間接差別」の結果と考えられる。企業による配置を通じた女性への昇進差別は米国でも1970年代には多くみられたが、後述する間接差別への強い法規制もあり、現在はほとんどない。ただし職業選択の性差による男女の職業分離は米国でも残り、男女の賃金差の一因となっている。筆者は女性の活躍についてワークライフバランス(WLB=仕事と生活の調和)の達成できる社会の重要性を訴えてきた。WLBの欠如のため女性の6割以上が結婚・育児を理由に離職し、正規雇用が新卒者優先のわが国で、彼女たちの再就職の大半はキャリアの進展性のない非正規雇用になる。また離職を理由に企業が女性を男性と同等に扱わない慣行が女性の継続就業意欲を奪い、結果として離職率を高めるという「予言の自己成就」ともなっている。今回、長時間労働が女性にのみ管理職登用への条件として重要視されるという、WLB達成と矛盾する企業慣行の存在も明らかになった。成果でなく長時間労働が主な基準なら、女性の管理職登用推進は難しい。WLB問題は「男性は家計に、女性は家事育児に主たる責任がある」という「家庭内の伝統的性別役割分業」が、働く女性に仕事と家庭の役割の二重負担を強いることが根本原因だが、日本の職場は特に女性管理職にその負担を強めている。
 さらに、WLB問題とは別の大きな障害があることも明らかになった。それはいわば「組織内の伝統的な性別役割分業」ともいえるもので「男性はリーダー役に、女性は補佐役に適任」という固定観念である。その意識によって、本来「個人の適材適所」を考えるべき人事判断に性別が大きくからむ。大多数の女性を一般職として管理職候補から外すコース制や、男性は管理職への昇進率の高いラインポジションに、女性は有能でも管理職率の低いスタッフポジションに配置というような慣行がはびこる。そして女性の管理職昇進や企業内の意思決定参加を阻んできたと考えられる。その結果、女性は人事考課が優れていても昇進せず、高卒男性の方が大卒女性よりも管理職昇進率が高いという世界的にみて異常な状態を生み出してきたのだ。女性の活躍には、このような組織内の伝統的な性別役割分業の根本的見直しが必要であり、同時に、既に存在する様々な間接差別的制度を法的に禁止することが重要となる。わが国は06年の雇用機会均等法の改正で間接差別について法制化したが、わが国も批准した女子差別撤廃条約や、米国や欧州連合(EU)の法制度と異なり、差別の意図がなくてもその効果において男女格差を生み出す機能を持つ制度を間接差別とはしていない。それどころか02年の最高裁事務総局の通達では「同期同給与年齢の男女間に八対二の昇格比率の差があった場合、非合理な差別が存在しているといえるか」という仮想質問に対して「男女職員間の全体的な昇格比率というものは、それだけで差別を根拠づけるものとは言えず」とお墨付きを与えている。米国では、資格の同等な男女で女性の採用率や昇進率が男性の80%に満たない場合、企業の制度が格差を生んだと判断する「80%ルール」を確立し、その後、仮に80%以上でも統計的に有意な格差があれば同様に判断できる「有意ルール」という基準も採用している。ルール違反の場合、企業が正当な理由を提示できなければ、提訴された場合に損害賠償責任が生じる。間接差別についてわが国の司法上の規定や通念は世界から逸脱している。女性活躍の推進のためには、企業の間接差別的慣行の自主的廃止とともに、法改正が強く望まれる。
*やまぐち・かずお 46年生まれ。経済産業研究所客員研究員。専門は社会統計学

*1-2:http://www.nikkei.com/article/DGKDZO74837100Y4A720C1PE8000/
(日経新聞 2014/7/28) 女性登用には働き方改革が必要だ
 管理職や役員になる女性を増やそうと、行動計画を立てる企業が増えてきた。具体的な数値目標をあげる企業も目立つ。企業の「本気度」を社内外にアピールし、女性の登用や育成を着実に進めていくための手段として、前向きに評価できる。ただ、それには、長時間労働の見直しなど、働き方の抜本的な改革が不可欠だ。男女ともに当事者となり、職場を変えていくチャンスとしたい。
●管理職なお1割程度
 女性の登用を後押しする動きが相次いでいる。経団連は会員企業に自主行動計画をまとめるよう呼びかけ、まず約50社分をホームページで公開した。「女性管理職数を2020年に3倍、30年に5倍に」(トヨタ自動車)、「20年度までに女性役員2人以上」(全日本空輸)などの目標が並ぶ。政府も6月の成長戦略で、女性の活躍推進を柱に据えた。実効性を高めるために、企業に行動計画づくりなどを促す新しい法律を制定する方針も打ち出した。日本の女性はどこまで職場で活躍しているのか。足元の数字は厳しい。14年の男女共同参画白書によると、就業者に占める女性の割合は、日本は欧米各国に比べて著しく低いわけではない。しかし管理的な立場の人に限ると、1割程度の日本に対し、米国は4割を超える。フランスやスウェーデンなども3割を超えており、日本のかなり先を行っている。政府は指導的地位に占める女性の割合を20年に30%にする目標を掲げている。日本の現状との隔たりは大きい。男女問わず意欲と能力のある人が力を発揮できるようにすることは、企業の成長にとって欠かせないテーマだ。単に労働力不足を補うためではない。多様な経験と価値観を持つ人材がいる職場は、より創造性の高い職場になりうる。もちろん、すべての働き手が管理職を目指すわけではないだろう。しかし意欲を阻む壁があるなら取り除いていくことが必要だ。まずは育成に向けた地道な取り組みを進めたい。管理職向けに女性社員の育て方を教える研修を開いたり、女性を対象にキャリア意識向上の研修を開いたりする企業は多い。特に管理職の役割は重大だ。同じように接しているつもりでも、つい男性の部下にだけ目を向けたり、女性に過剰な配慮をして能力を伸ばせなかったりすることもあるからだ。取り組むべき課題は、さらにある。女性管理職が少ない理由としてよく「本人が希望しない」という声が聞かれる。しかし女性側の意識の問題だけなのだろうか。背景をよく見ていくと、長時間労働や、仕事と家庭の両立が難しいことが、女性を尻込みさせている例も少なくない。そもそも子どもを持つ段階で仕事か家庭かの二者択一を迫られ、退職する女性は今なお多い。一度職場を離れると好条件での再就職は難しい。これでは管理職候補となる女性の数は限られてしまう。良質な保育サービスの拡充が就業継続の支えになることはもちろんだが、それだけでは不十分だ。カギを握るのは、長時間労働を見直し、職場環境そのものを変えていくことだ。子育てによる時間的制約があっても、仕事の内容や進め方を見直し、効率的に働けるような工夫をすることはできる。
●男性はもっと家庭に
 フレックスタイムや在宅勤務など柔軟な働き方を広めることや、時間ではなく成果で評価する仕組みをつくることもあわせて必要になる。再雇用制度や中途採用などにより、女性の再チャレンジを後押しすることも大事だろう。同時に、男性がもっと家庭で役割を果たせるようにすることも欠かせない。日本の男性が育児や家事にかける時間は、欧米に比べ短い。育児休業からの復帰セミナーに夫婦そろっての参加を呼びかけたり、男性社員に短期間であっても育児休業の取得を促したりする企業もある。こうした取り組みはもっと広がっていい。高齢化が進む日本では、今後、男女問わず親の介護に直面する働き盛りの人が増える。女性が育児や家事、介護を担い、男性が長時間労働に没頭する。このモデルではもはや乗り切れない。女性の登用に向けた取り組みは、女性のためだけではない。時間的な制約の有無を含め、様々な属性を持つ人材がそれぞれの力を発揮できるよう、職場環境を変えていくことにつなげたい。多様性を包み込む、柔軟で力強い職場にしていくための一里塚だ。

*1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10103/102428
(佐賀新聞 2014年9月9日) 企業、社会の意識改革を 「輝く女性応援会議in佐賀」
 企業などで活躍する女性と支援する関係者らが意見を交わす「輝く女性応援会議in佐賀」(内閣官房、内閣府、県主催、佐賀新聞社共催)が8日、佐賀市内で開かれた。銀行やホテル、人材派遣会社、農業法人で働く女性ら8人が登壇。企業や社会の意識改革を求め、子育て支援メニューの充実など、女性が能力を発揮できる環境づくりに必要な方策を探った。同会議は、安倍政権の成長戦略の中核に掲げている「女性の活躍促進」を図ろうと、佐賀を含む全国5カ所で開催。県内外から約280人が参加した。内閣府男女共同参画局の武川恵子局長が基調講演。女性の就業率上昇や登用推進に向け、育児・家事支援の施策や制度整備などの取り組みを紹介した。この後、佐賀新聞社の富吉賢太郎編集局長をコーディネーターに、佐賀や福岡、長崎の企業などで働く女性4人と、女性の雇用や子育て支援に取り組む企業の関係者4人が自身の経験や会社での取り組みを報告。働く女性からは「結婚や出産を機に希望しない異動を受け、女性への理解不足があると感じた」「農家の嫁は夫の付属品みたいな扱いで、人と違ったことをすると、自分だけではなく夫も非難された」などと赤裸々な経験談も出された。働く女性支援の取り組みでは、松尾建設(佐賀市)の担当者が営業や設計部門への女性登用について紹介し、「現場経験のなさが逆に顧客目線での営業につながって、評判もいい」と報告。湯江タクシー(諫早市)は、保護者に代わって子どもの保育園や病院などへの送り迎えを請け負う「子育てタクシー」事業を説明し、「企業を含め、社会の中に子育て支援のメニューがもっとあっていい」と提言した。行政や社会への注文では「少子化で、企業にとって人こそ財産。経営者は辞めさせない覚悟を持つべき」などの意見が出ていた。

*1-4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=29789  (日本農業新聞 2014/9/12) 女子目線で新風を 地域の活力創造協議会 取り組み成果報告 農水省
 農水省は11日、農林水産関係団体らでつくる全国農林水産業・地域の活力創造協議会で、「農業女子プロジェクト」の成果を報告した。「女性の職業選択肢に農家を加える」との目標を掲げ、昨年11月の発足以来、181人の女性農家が参加。一般企業と連携し、女性目線で使いやすさを追求した軽トラックの開発、女性向けの農業機械研修などの実績を紹介した。安倍政権は「女性の活躍」を重要課題に位置付けており、同省としても同プロジェクトなどを通して活躍の場づくりを支援していく考え。プロジェクトに参加する農家数は昨年11月の発足時点で37人だったが、今年9月1日現在で181人になった。メディアで取り上げられることも多く、9カ月間で5倍近くに増えた。年齢制限は設けておらず、農業女子のホームページから希望者が自分で登録する。年齢構成は30代が42%とトップ。次に40代が29%、20代が18%と続き、40~20代の若手主体で構成する。農家の息子と結婚した人や実家の農業を継いだ人、農外からの新規就農者が多い。これまでの成果として、自動車メーカーのダイハツ工業と連携した「農業女子的軽トラック」を紹介。「車高を下げる」「収納スペースを増やす」などの要望を出し、女性農業者にとって乗りやすい軽トラックの開発に協力した。「農機の研修会は夫が参加することが多く、自分は参加しにくい」との声を受け、農機メーカーの井関農機と連携し、農機の使い方やメンテナンスの研修会も開いた。農水省は「女性農業者の存在感を高めて、女性の職業選択肢に農家を加えたい」(女性・高齢者活動推進室)と意気込む。現在、13社と個別に企画を進めており、女性目線で農業の魅力を広く発信していく考えだ。

<女性登用への反対意見>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11265454.html?ref=reca
(朝日新聞 2014年7月26日) 声:無職 本市信長(茨城県 76) 女性登用の目標は男性に不公平
 安倍政権は国家公務員の採用数の3割を女性にする方針のようだが、私は反対だ。男女雇用機会均等の面から見てもおかしいと思う。男女を問わず、採用試験の上位から必要数を採用すべきだ。最初から、女性の数を決めるのは、男性側から見れば不公平だ。女性3割にこだわると、上位の男性より下位の女性が採用されて、公務員全体の能力が低下し、国の損失につながる。政権は成長戦略で「指導的地位に占める女性の割合を30%に引き上げる」という目標も立てた。これも、まず女性の割合ありきで納得できない。採用後の昇進や昇格も、男女の別なく能力で決めるべきだ。一方、政権の成長戦略を受けて、経団連も役員企業47社の女性登用計画をまとめて発表した。約6割にあたる27社で、女性管理職を2020年に3倍にするといった目標が掲げられている。「人口減少で働き手が少なくなり、女性の登用は企業にとって戦略上欠かせないから」だという。これは、民間企業にとって深刻な問題なので、国家公務員の採用、処遇とは分けて考えるべきだろう。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11265455.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2014年7月26日)声:経営コンサルタント 久野厚夫(千葉県 73) 企業は先を見た女性活用策を
 アベノミクスの成長戦略の一つに女性の活用が挙げられています。この動きを受けて、経団連は会員企業に対し、女性登用計画をつくるよう呼びかけました。企業の側も急激に進む生産年齢人口の減少を考えれば、女性の登用は今や待ったなしの状況にあります。ただし、女性の管理職の比率向上を目標にする人事は、企業の本来の目的とは必ずしも一致しないのではないでしょうか。企業にとって不変のルールは「適材適所」。欧米などを基準にした比率の改善を急ぐ必要はありません。今、企業が行うべきは、女性に能力を発揮する機会を提供すること、労働環境の整備、成果に対する公正な評価と透明性の確保です。そのために現状の検証も必要です。さらに、女性社員の能力を高められるような、新たな企業価値の醸成です。将来、企業環境が激変して経営が苦境に陥った時、早々と女性登用の看板を下ろすような底の浅い人事施策であってはなりません。経営者はじっくりと腰をすえて、「人づくり百年の計」を見据え、女性登用策に取り組んで欲しいと思います。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11265453.html?ref=pcviewpage
(朝日新聞 2014年7月26日) 声:無職 藤丸善基(埼玉県 76) 女性幹部の増加より雇用促進
 安倍政権が成長戦略で「指導的地位に占める女性の割合を30%に引き上げる」という目標を立て、率先垂範とばかり、中央省庁の幹部に女性を積極登用した。経団連も企業側に女性登用を促しているようだ。しかし、これがなぜ日本を成長させるのか。私には、さっぱり分からない。総務省の最新データによると、女性の就業希望者は全国に328万人いるそうだ。既に職に就いている人の中から複数人を幹部にするよりも、まず、この328万人の女性に働く機会を作り、働きやすい環境を整えることこそ、安倍政権が優先して取り組むべき課題ではないだろうか。行政や民間企業の女性幹部、管理職を増やしたとしても、その数は知れている。だが、328万人が働けるようになれば、この新たな雇用で、今は収入のない女性たちが収入を得ることができる。それは消費の増加につながるだろう。納税額、社会保険料なども増えて、よほど経済の成長につながると思う。行政や民間企業の幹部を増やすより、ずっと難しいだろう。しかし、どちらが日本の成長に寄与するかは明らかだ。

<男が作った愚策集>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014091002000240.html (東京新聞 2014年9月10日) 気仙沼の巨大防潮堤計画 急ぐ行政、募る住民不満
 東日本大震災後に計画された宮城県内で最も高い14.7メートルの防潮堤建設をめぐり、予定地の気仙沼市本吉町で住民と行政との考え方の溝が埋まらないままだ。震災から11日で3年半。国の集中復興期間の2015年度末をにらみ建設を急ぐ県に対し、住民の間には「生活再建で手いっぱいだった時期に計画が進められてしまった」との不満がくすぶっている。「夕方来るのが好きなんです。娘たちとも買い物の帰りに立ち寄っていろんな話をしたり」。同市本吉町小泉地区の中島海岸で風を受けながら、菅原圭子さん(48)は、いとおしそうに海を見つめた。震災時、この海岸を二十メートル超の津波が襲った。津波は津谷川をさかのぼり、海岸から約五キロ離れた本吉町津谷地区の菅原さんの自宅周辺も被害に遭った。小泉、津谷両地区で五百七十三戸が流失、五十一人が亡くなった。防潮堤も壊れた。震災直後は防潮堤整備に疑問を感じなかった。県が事業費約二百三十億円をかけて、高さ一四・七メートル、幅九十メートルの防潮堤を建設する案を示したのは二〇一二年七月。その後、七回ほど開かれた住民説明会の開催案内は、菅原さんたちの津谷地区には届かなかった。不安を覚えたのは昨年三月、会員制交流サイトでの議論を見てから。震災では高い防潮堤で海の様子が見えなかったために逃げ遅れた人がいること、震災後ようやく戻ってきた砂浜や生態系が壊される恐れが強いこと…。「避難道を整備して訓練することや、経験を伝えていくことの方が大切では」と思い始めた。しかし、説明会では住民組織の振興会長らが早々に賛意を示し、県は昨年十一月「住民合意が得られた」と結論づけた。防潮堤建設に際して、隣の岩手県は、国が示した高さの基準をたたき台にしながらも、住民の意向や高台移転の計画などを考慮して二十カ所で高さを見直した。同県でまちづくりに取り組むNPO法人東北開墾の高橋博之代表理事(40)は「住民の意見への耳の傾け方が事業の進捗(しんちょく)の差につながっている」と指摘する。菅原さんがメンバーの「小泉海岸及び津谷川の災害復旧事業を学び合う会」は、既にかさ上げして造られた高速道などを防潮堤とみなすことなどを提案してきたが、宮城県の計画に反映されることはなかった。
◆高校生の意見、説明会で罵声
 七月の最終説明会では、着工を急ぐ県の姿勢が際立った。男子高校生が建設に反対する立場で意見を述べると、罵声が飛び、失笑が漏れた。多くの人が意見を言おうと手を挙げたが、県の担当者の「時間切れですのでこれをもって終了いたします」との言葉で会は閉じられた。急ぐ理由を県は「復興の遅れにつながる」とする。だが、菅原さんは「高台移転や避難道の整備などをまずやった上で、それでも防潮堤が必要かどうか検討するべきでは」と疑問を投げ掛ける。宮城県など被災地の知事らは七月、国に集中復興期間の延長を求める要望書を提出した。菅原さんは「復興期間の延長が認められれば、計画見直しもできるのではないか。焦って造ろうとせず意見に耳を傾けてほしい」。仲間らと五百人以上の署名を集め、今月中にあらためて、県知事に申し入れる予定だ。
<被災地の防潮堤建設> 東日本大震災を受け、国は数十年から百数十年に一度の「頻度の高い津波」に対応できるよう整備方針を決定。2011年7月、政府の中央防災会議の方針に基づき、高さの基準を各県に通知した。計画地は東北の被災3県で約450カ所、総延長約400キロ。15年度末までの集中復興期間内の国の予算を使うため、各県は同年度末までの整備を目指している。現在の着工率は宮城県が263カ所中56%、岩手県が134カ所中78%。

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11344637.html
(朝日新聞 2014年9月11日) 仮設住まい、今も8.9万人 東日本大震災3年半
 東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の49市町村では、プレハブ仮設住宅約4万1千戸に約8万9千人が暮らす。阪神大震災では仮設住宅が5年で解消されたが、東日本大震災では5年を超える見通しだ。復興庁の6月末現在のまとめでは、仮設を建てた市町村のうち、震災から5年となる2015年度までに復興住宅や集団移転地の整備が終わる見込みなのは18市町村。他の市町村について内閣府は「移る先の住宅が整わなければ仮設住宅を1年ごとに延長する」という。被災世帯が最多の宮城県石巻市は、7660戸分の宅地と復興住宅を用意する予定だが、15年度までにできるのは53%。集団移転地の造成が終わるのは17年度と見込まれ、「それまで仮設を残さざるを得ない」と担当者は話す。福島県では、13市町で用地交渉が終わらないなど完成のめどが立たない復興住宅がある。原発周辺地域では除染やインフラ復旧が進まず、仮設に避難する人がいつ帰れるのかもわからない。仮住まいの被災者は、3県で民間借り上げ住宅や公営住宅の「みなし仮設」約3万8千戸にも約9万人いる。仮設入居期間は本来2年。11日に震災発生から3年半となるなか、プレハブ仮設は老朽化が進み、体調不良を訴える被災者もいる。

*3-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140821&ng=DGKDZO75938840R20C14A8MM8000 (日経新聞 2014.8.21) 
来年度予算、景気対策に1兆円確保、消費税10%に備え政府検討
 政府は2015年度予算で、経済対策に使える予備費を1兆円程度計上する検討を始めた。15年10月に消費税率を10%に引き上げた際に、景気に悪影響が広がらないように機動的に経済対策を実施できるようにする。消費増税は安倍晋三首相が今年12月初めにも最終判断する。安全網をあらかじめ用意して、増税の判断に向けた環境を整える。政府は今月内にまとめる概算要求など来年度予算の編成作業を進めている。今回検討する経済対策予備費は、年度途中に景気が冷え込む場合に備え、財源をあらかじめ用意しておく措置。大規模な公共事業や中小企業向けの補助金など、経済対策のためであれば自由に使うことができる。このため、経済状況にあわせて柔軟に政策を打ち出せるという利点がある。過去には08年のリーマン・ショックを受け、当時の麻生太郎政権が09年度の当初予算に1兆円の経済対策予備費を計上。その後誕生した民主党政権も、日本経済が長いデフレに苦しむなか、同様の費用を予算に組み込んできた。デフレからの出口がようやくみえてきたこともあり、第2次安倍政権は13年度、14年度の経済対策予備費計上を見送った。15年度は年度途中の10月に消費税率を8%から10%に上げる予定がある。消費の落ち込みによる景気の悪化を避けるため、3年ぶりの計上を検討することにした。財政健全化と両立させるため、今回の経済対策予備費は1兆円程度にとどめる見通し。15年度は、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を10年度比で半減するという健全化目標があるためだ。増税後の景気低迷が予想より大きく予備費だけで足りない場合、14年度予算の使い残しや税収の上振れ分も活用した大規模な補正予算を組むことも別途、検討する。増税を判断する際には足元の景気情勢が重要な材料となる。4月の消費増税による消費の反動減などで、4~6月の実質国内総生産(GDP)が前期比年率で6.8%減少。民間予測では年後半に緩やかな成長軌道に戻る見通しだが、次の消費増税の影響を不安視する声は政権内にも残る。1兆円規模の予備費計上を検討する背景には、景気の下振れに対する安全網をあらかじめ用意することで、過度な悲観論を抑える狙いもある。甘利明経済財政・再生相は20日、都内で記者団に次の消費増税について「ベストシナリオは予定通り上げること」と述べた。増税を見送った場合も「無期限延期はあり得ない」と語った。
▼予備費 自然災害や急激な景気悪化など不測の事態に政府が柔軟に対応できるよう、あらかじめ使い道を決めずに予算に計上しておく費用。国会審議が必要な補正予算に比べて素早く財政出動でき、使い方は内閣の裁量で決められる。

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