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2014,10,16, Thursday
*1-2より 2014.10.15河北新報より *4-5より (1)「天候で発電量が変わり停電する」という理由で、太陽光エネの受け入れを中断するとは・・ *1-1に書かれているように、北海道、東北、四国、九州、沖縄の電力5社は、「太陽光発電は天候で発電量が変わり、急に増えすぎると送電が不安定になって停電を起こしかねない」として、太陽光発電の新たな受け入れを中断し、経産省が、再生可能エネルギーの普及を後押しする固定価格買い取り制度の新規申請を抑える方向で検討に入ったそうだ。 しかし、太陽光発電の発電量が天候で変わることは最初からわかっており、その解決策もいろいろあるにもかかわらず、風力や地熱など太陽光以外の再生エネに関する電力会社ごとの優先枠を設ける検討をするとのことであるため、その前にまず、使わない原発の送電線を活用した方がよいと考える。 また、*1-2に書かれている「制度に問題があった」というのは、最初はそこまで見通せなかったとしても、環境影響評価は原発にこそ最も重要であり、送配電網の不足は迅速かつ建設的に解決すべきなのである。そして、この際に、日本国内の交流電源の周波数は、明治時代から東日本50ヘルツ、西日本60ヘルツHzと異なり、広域で電力を送る場合には周波数変換ロスが生じるため、遠距離はすべて直流で送電し、直流でも使える仕組みにすると、変換ロスが生じず節電できる。なお、太陽光発電や蓄電池、EV、PC、LED照明などの家電は直流であるため、直流電流を使った方が変換ロスが生じない。 (2)原発訴訟について 政府・自民党が原発に直進しているため、これを止めるには司法を使うしかない。そのため、*2-1のように、脱原発原告団が全国連絡会を発足させ、再稼働反対訴訟で連携することを、10月10日に佐賀地裁で開かれた玄海原発の操業停止請求訴訟の口頭弁論終了後、原告団の長谷川照団長(http://www.data-max.co.jp/2012/02/08/post_16433_ym_1.html 参照、京都大理学博士。専門は原子核理論。佐賀大理工学部教授、理工学部長等を経て、2003~2009年度、佐賀大学学長)が明らかにされたそうだ。連携するのは、それぞれの原告団が持っている知見を集める上で大いに役立つため、頑張って欲しい。 また、連絡会の共同代表、蔦川佐賀大名誉教授は「脱原発が当たり前の社会になるよう交流を深めていきたい」とされ、大飯原発訴訟の中嶌原告団代表は意見陳述して、運転差し止めを認めた福井地裁判決について「福島の原発事故後に全国に広がった(脱原発の)世論の結晶」として「過疎地域に原発を押しつける差別構造についても玄海原発訴訟の司法判断で深めてほしい」と求められたのは心強い。 なお、玄海原発訴訟には、いろいろな分野の専門家が入っており、*2-2のように、9月10日の11次提訴で原告が8500人超になるほどの共感を呼んでいる。政府・自民党は、原発や政治とは全く利害関係のない原発地元のいろいろな専門家を含むこれらの人々の意見を真摯に受け止めるべきである。 そして、*2-3のように、鹿児島、宮崎、熊本県などの住民が九電川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働停止を国や九電に求める訴訟でも、新たに237人が追加提訴し、原告数が26都道府県の計2479人になったそうだ。鹿児島、宮崎、熊本は、農林漁業の盛んな地域であり、原発より農林漁業の方がよほど重要である。 (3)原発再稼働に対する一般国民の意見 *3-1のように、原子力規制委員会は9月10日、九州電力川内原発1、2号機の審査書案についての意見公募(パブリックコメント)の概要を明らかにし、火山噴火の監視の難しさや耐震設計について批判的な意見が多かったにもかかわらず、規制委は表現の一部を修正しただけで、1万7819件に上った意見の大半は宙に浮いたそうだ。 意見の提出者には、元燃焼炉設計技術者の中西さんのように、科学技術的な立場に立って意見を書いた人が多く、中西さんが「重大事故で核燃料が溶け落ち、原子炉圧力容器が壊れる時間の推計値に問題がある」などを具体的に指摘しても無視されるなど、審査書案の「案」が取れただけで、意見が検討されたとは思えず、規制委の委員からも意見公募の形骸化を危ぶむ声が上がったそうだ。 原発では、このようなことが日常茶飯事として起こるため、*3-2のように、脱原発を訴え、九電川内原発の再稼働に反対する集会が、9月23日、東京都江東区の亀戸中央公園であり、主催者発表で約1万6千人が参加したそうだ。これらの人たちは、よく言われる「左翼運動のプロ」ではなく、一般市民が見るに見かねて立ち上がっているものである。 (4)川内原発再稼働ありきの住民説明会 *4-1のように、九電川内原発の再稼働に向けた地元同意手続きの第1弾となる住民説明会では、原子力規制庁の職員が、国内原発で初めて新規制基準に「適合する」とした審査内容を説明し、住民の関心が高い事故時の避難計画の説明は「主催者の県側から要望がない」として行わないとのことである。また、説明するのは5会場とも設備に詳しい規制庁原子力規制部安全規制管理官だけで、避難計画専門の職員は同行しないそうだが、それでは安全と判断した根拠を説明することも、住民の質問に答えることもできないだろう。 そして、*4-2のように、初めての住民説明会で、会場の川内文化ホールには住民が詰めかけ、ほぼ満員となり、原子力規制庁の市村安全規制管理官が「福島原発事故の教訓をとりいれて、規制を徹底的に見直した」と強調したのに対し、質疑応答で住民の男性が「原子力規制委員会の安全審査は科学的、技術的に厳正とはいえない」とただし、ある女性からは「説明会の参加者を締め出すかのように、抽選とするのはいかがなものか」と説明会の運営に対する疑問が出たそうだ。 原発の地元川内については、原発の30キロ圏の日置市、いちき串木野市の両市議会が9月末、再稼働の同意が必要な「地元扱い」を求める意見書を可決し、出水市は鹿児島市など周辺6市町の首長による地元の範囲についての協議を呼び掛けるそうだが、伊藤知事は同意の必要がある自治体を「鹿児島県と薩摩川内市で十分」との主張を繰り返しているそうだ。 さらに、*4-3のように、九電川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市で9日夜開かれた住民説明会は、会場が1000人を超す市民で埋まって怒りの声が渦巻き、会場では再稼働への賛否も問われず、今回の説明会が再稼働に関する地元判断にどう反映されるかも不透明で、説明会では再稼働の是非自体は議論されず、参加者向けに配布されたアンケートも、説明会に参加して「良かった」か「良くなかった」などを聞くだけの簡単な内容だったそうだ。 なお、原発の安全性を不安視する住民の再三の質問に対しては、原子力規制庁職員が「どんなに努力をしても絶対に事故が起こりえないとは言えない」と答えると、会場からは「説得力がない」「リスクがあるのなら再稼働すべきではない」といった声が上がり、約1時間の質疑の間、質問に立った7人の大半が再稼働への懸念を表明したとのことで、当然である。 *4-4のように、住民説明会をインターネット中継するよう、鹿児島県内の市民団体が6〜7日、鹿児島県に繰り返し要請した件については、鹿児島県は中継しない方針を崩さなかったそうだ。しかし、川内原発の再稼働は他地域の原発の再稼働にも影響を与えるため、日本全国の人が視聴できるよう、住民説明会をインターネット中継して開示するのは当然のことだ。ただし、ここでTVなどの公的メディアは、既に台風災害とスポーツの専用チャンネルと化しており、誰も期待しておらず、報道の自由、言論の自由を標榜するに値しない存在となっており、「報道の自殺」と呼ばれている。 そして、*4-5のように、多くの住民の反対にもかかわらず、薩摩川内市は月内に再稼働に同意する見通しで、伊藤鹿児島県知事は薩摩川内市の議会と市長、県議会と自らの同意を再稼働の条件にしているそうだが、それで不十分なことは誰の目にも明らかである。 (5)どんな時代にも、知識は合理的な思考や判断の必要条件であって十分条件ではない このような中、*5のように、佐賀県教職員組合(佐教組)教育研究集会で、前大阪教育大学長の長尾氏が全国学力テストを取り上げ、「社会で求められる学力そのものの中身が大きく変わっているにもかかわらず、知識量を1点2点の差で評価するのは時代遅れ」と批判したとのことである。しかし、この発言は、学力テストの意味を「知識量を1点2点の差で評価するもの」として、故意に歪めて間違った結論を導いており、意図的である。従って、アホな大阪の真似をしてはいけない。 (1)~(4)で明らかなように、基礎的な科学知識がなければ合理的・論理的にものを考えて判断することができず、基礎的な知識を身につけるために学力テストは欠かせない。つまり、主権在民の国日本で、本当の意味で主権者でありうるためには、一般住民もメディアの記者も基礎的な知識が必要で、そのためには、学力テストが欠かせないのである。 また、長尾氏は、「学力は子どもの生きる力の一部でしかなく、産業界も主体性やコミュニケーションなど実践的な能力を求め、知識だけ詰め込んだらいいという時代が過ぎ去ったことを察知している」と解説したそうだが、これは「知識を得ること」を「知識だけを詰め込んだらいいと考えること」に矮小化して説明し、再度、間違った結論を導いており、論理的でない。 何故なら、知識がなければ、それを土台にして科学的・論理的・合理的な考察をすることはできず、それらの裏付けのない主体性は暴走になりがちだからだ。また、私は、真実の知識と考察の裏付けなきコミュニケーションは、内容がなく、進歩をもたらすこともなく、そもそも面白くないと思っている。 *1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11403720.html?_requesturl=articles%2FDA3S11403720.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11403720 (朝日新聞 2014年10月16日) 太陽光発電の新設抑制 買い取り価格見直し案 経産省方針 太陽光など再生可能エネルギーの普及を後押しする固定価格買い取り制度(FIT)について、経済産業省は、家庭用を除く太陽光発電の新規申請を抑える方向で検討に入った。天候などで発電量が変わる太陽光が急に増えすぎると送電が不安定になり、停電などを起こしかねないためだ。年内に一定の方向性を示す。経産省は15日の新エネルギー小委員会で、見直しの選択肢を示した。有力なのは、太陽光の買い取り価格を切り下げたり、風力や地熱発電の送電網への接続を優先したりする案だ。太陽光の買い取り価格は普及にあわせ、毎年4月に引き下げられる。だが、いまの仕組みでは、事業計画を認定した時点の価格が適用されるため、それより数カ月以上先の電力会社との契約時や運転開始時の価格を適用することで、買い取り価格の引き下げにつなげることを検討する。また、風力や地熱など太陽光以外の再生エネについて、電力会社ごとに導入の優先枠を設けることも検討する。こうした見直しで、申請を抑えたい考えだ。FITは、発電費用に一定の利益を上乗せした価格で、電力会社が電気を買い取る仕組み。事業者の利益が安定し、再生エネの普及が進むとの想定だった。ところが、再生エネのなかでも発電開始までの手続きが短く、買い取り価格も高めの設定になった太陽光に人気が集中。北海道、東北、四国、九州、沖縄の電力5社は、供給が急に増えると停電などを起こす心配があるとして、新たな受け入れを中断していた。 *1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014101690070143.html (東京新聞 2014年10月16日) 「制度設計に失敗」 再生エネ買い取り破綻 経済産業省と有識者委員会は十五日、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の抜本見直しを本格的に議論し始めた。経産省は同日、有識者による新エネルギー小委員会(経産相の諮問機関)に大規模太陽光発電所(メガソーラー)の認定を凍結するなどの素案を提示、再生エネの拡大策の柱となってきた買い取り制度は開始からわずか二年で破綻が明らかになった。制度設計など準備不足が露呈した格好で、委員たちからは「制度に問題があったことは認めなければならない」との指摘が相次いだ。経産省は再生エネ拡大策が太陽光に偏ったとして、風力や地熱による発電の環境影響評価(アセスメント)に必要な期間の短縮や、買い取り価格の見直しも検討課題として提示した。九州電力など大手電力五社が送配電網の不足を理由に発電業者からの買い取り手続きを中断している問題については、十六日から別の専門部会で受け入れ可能量の検証や受け入れ拡大策を検討する方針を説明した。見直し策は年内に方向性を出す。委員の松村敏弘東京大学教授は「(政府が)制度設計に失敗したのは(小委員会も含め)反省すべきだ」と指摘した。佐藤泉弁護士は「制度改善してもまた中断されるのでは、との疑念を発電業者から持たれ、信頼回復は容易ではない」として、「不安を抱える事業者に、早く今後の道筋を示す必要がある」と話した。制度見直しに向けては、経産省側が再生エネの導入と電気料金の上昇について試算し、どこまで負担を引き受けるか国民にアンケートする案を紹介。これに対し、委員の消費生活コンサルタント・辰巳菊子氏が「再生エネだけが高いと思われかねない」として、廃棄物処理なども入れれば実際は高コストとされる原発も含めたエネルギー全体の構成比率と電気料金を試算するよう求めた。固定価格買い取り制度は民主党政権時の二〇一二年に開始、再生エネ拡大のきっかけとなったが、政権交代した自民党が原発重視に転換。再生エネを受け入れるための送電網の強化策や自然条件で一時的に発電量が増え過ぎる場合の出力抑制策、買い取り価格の適正化など全体的な制度設計は停滞してきた。再生エネの発電事業者らは「原発依存に回帰するのでなく、再生エネの導入機運がしぼまないようにしてほしい」(東京都内の太陽光発電業者)と議論を注視している。 <再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度> 太陽光、風力、中小規模の水力、地熱、バイオマスの5種類の発電を、国が決めた価格で買い取る制度。買い取りにかかった費用は「賦課金」として電気料金に上乗せされ、家庭や企業などすべての電力利用者が負担する。4月からの買い取り価格は、企業などが設置する大規模な太陽光発電は1キロワット時当たり32円、風力は22円などとなっている。太陽光の方が高いことや参入への技術的ハードルが低いことから、太陽光に人気が集中、政府の認可件数の9割を占めている。 <原発訴訟> *2-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/113714 (佐賀新聞 2014年10月11日) 再稼働反対訴訟で連携 脱原発原告団が全国連絡会 九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)運転差し止め請求訴訟の2原告団など、全国で提訴されている原発裁判の原告団が、連絡会を発足させた。5月に大飯原発(福井県おおい町)の運転差し止め判決が出たものの、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)では再稼働に向けた準備が進んでおり、原告団同士のネットワークで脱原発運動を強化する。佐賀地裁で10日開かれた玄海原発の操業停止請求訴訟の第10回口頭弁論終了後、原告団(長谷川照団長)が明らかにした。連絡会には現在、全国の22原告団が参加、裁判関連の資料や原告数拡大の広報活動などについて情報交換する。11月に名古屋高裁金沢支部で始まる大飯原発訴訟の控訴審に合わせ、現地で集会を開くほか、川内原発でも再稼働阻止の活動で連携する方針。連絡会の共同代表になった蔦川正義佐賀大名誉教授は「脱原発が当たり前の社会になるよう交流を深めていきたい」と話した。口頭弁論では、大飯原発訴訟の中嶌哲演原告団代表が意見陳述。運転差し止めを認めた福井地裁判決について「福島の原発事故後に全国に広がった(脱原発の)世論の結晶」と強調し、「過疎地域に原発を押しつける差別構造についても玄海原発訴訟の司法判断で深めてほしい」と求めた。 *2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/102973 (佐賀新聞 2014年9月10日) 玄海原発訴訟、11次提訴 原告8500人超に 佐賀をはじめ国内外の反原発の市民が国と九州電力に玄海原発(東松浦郡玄海町)全4基の操業停止を求めている訴訟で、新たに447人が10日、佐賀地裁に追加提訴した。11回目の提訴で、原告は計8517人となった。弁護団は会見で「事故は3年半たっても収束しておらず、約13万人の避難者が故郷に戻れない。避難計画も不十分なままでの再稼働は絶対許されない」とした。 *2-3:http://qbiz.jp/article/45997/1/ (西日本新聞 2014年9月17日) 再稼働差し止め、237人が追加提訴 鹿児島地裁 鹿児島、宮崎、熊本県などの住民が九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働停止を国や九電に求めた訴訟で、新たに19都道府県の237人が16日、鹿児島地裁に追加提訴した。提訴は6回目で、原告数は26都道府県の計2479人になった。川内原発50キロ圏内に4市町がある熊本県から114人が追加提訴し、鹿児島県は54人、宮崎県は12人だった。追加提訴の数が200人を超えるのは第3次提訴以来。森雅美弁護団長は「再稼働手続きが本格化する中、(市民が)関心を取り戻した。この訴えが世論に跳ね返り(再稼働阻止への)力になる」と期待した。11月11日に第7回口頭弁論がある。 <原発再稼働に対する国民の意見> *3-1:http://qbiz.jp/article/45690/1/ (西日本新聞 2014年9月11日) 意見公募1万8000件が宙に 原子力規制委員会は10日、九州電力川内原発1、2号機の審査書案についての意見公募(パブリックコメント)の概要を明らかにした。火山噴火の監視の難しさや耐震設計について批判的な意見が多かったが、規制委は表現の誤りなど一部を修正しただけ。1万7819件に上った意見の大半は宙に浮いた。意見提出者からは「何のための意見募集か」と不満も出た。「審査書案の『案』が取れただけで、われわれの意見が検討されたとは思えない」。元燃焼炉設計技術者の中西正之さん(70)=福岡県水巻町=は規制委の対応を批判する。中西さんは規制委が意見公募の条件とした「科学技術的」な立場に立ち、「重大事故で核燃料が溶け落ち、原子炉圧力容器が壊れる時間の推計値に問題がある」などと具体的に指摘した。それに対し規制委は10日に公表した文書で「(問題がないことを)確認している」と記しただけだった。原発問題への関心の高さを示すように、避難計画や新規制基準そのものを疑問視する意見も少なくなかった。田中俊一委員長は会見で「避難計画へのコメントは多かったが、分担が決まっている。私どもとしてできることをやっている」と、募集条件に合わない意見や提案を除外したことを明かした。規制委の委員からは意見公募の形骸化を危ぶむ声も上がった。大島賢三委員は「意見には(原発の)安全性を高めるための具体案や示唆、提案も含まれている。パブリックコメントが形式的なもので終わってはいけない」とし、寄せられた意見を生かす仕組みを提案。だが、田中委員長は「限界もあるが、できるだけ前向きに取り組む」と述べ、具体的な改善策は明言しなかった。 *3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11366333.html?_requesturl=articles%2FDA3S11366333.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11366333 (朝日新聞 2014年9月24日) 脱原発1万6千人訴え 東京で集会 脱原発を訴え、九州電力川内原発(鹿児島県)の再稼働に反対する集会が23日、東京都江東区の亀戸中央公園であった。主催者発表で約1万6千人が参加。作家の澤地久枝さんは「安倍晋三さんに『原発をやめる』と言わせたい。一緒に歩いて声をあげる以外に道はないが、生き生きと笑って闘おう」と訴えた。澤地さんや作家の大江健三郎さんらが呼びかけた「『さようなら原発』1千万署名 市民の会」が主催した。大江さんは「『3・11直後の強く明確な反原発の国民感情が弱まっているのでは』という悲観的な観測や不安がある」と指摘。そうした背景があって安倍政権が強硬に政策をすすめていると分析し、「私たちは断固として進まねばならない」と呼びかけた。 <川内原発再稼働ありきの住民説明会> *4-1:http://qbiz.jp/article/47327/1/ (西日本新聞 2014年10月8日) 川内原発、9日から住民説明会 避難計画は説明せず 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に向け、地元同意手続きの第1弾となる住民説明会が9〜15日、原発30キロ圏の避難対象地域の5市町で開かれる。原子力規制庁の職員が、国内原発で初めて新規制基準に「適合する」とした審査内容を説明する。住民の関心が高い事故時の避難計画の説明は「主催者の県側から要望がない」(同庁)として、しない方針。説明会は県と開催地の市町の主催で、原発の安全への住民理解を進める狙い。伊藤祐一郎知事は説明会開催を再稼働条件の一つに挙げており、参加者に理解度をアンケートし、再稼働同意判断の材料にする。日程は9日=薩摩川内市▽10日=日置市▽13日=いちき串木野市▽14日=阿久根市▽15日=さつま町。申し込みは既に締め切った。初回以外の4会場は応募期限を5日間延長したがいずれも定員割れ。参加総数は定員の65%の2981人で、30キロ圏の人口約21万5千人の1%にとどまる。規制庁によると、説明するのは5会場とも規制庁原子力規制部安全規制管理官(課長級)。川内原発の審査に携わった事務責任者で、設備に詳しいという。地震や津波に関する審査の担当職員も同行する。避難計画が専門の職員は同行しない。 *4-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASJC09H1S_Z01C14A0000000/ (日経新聞 2014/10/9) 川内原発、初の住民説明会始まる 安全性など議論 九州電力の川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に向け、初めての住民説明会が9日午後7時、同市内で始まった。原子力規制庁の職員が安全審査の経緯などを説明したのに対し、住民からは「審査は科学的に厳正とはいえない」などといった声が上がった。説明会は15日までに県内計5カ所で予定され、県と同市は原発の安全性について住民の理解を得たうえで再稼働同意の手続きに入りたい考えだ。原子力規制委員会が9月10日、川内原発1、2号機に安全審査合格を出し、同原発は再稼働第1号となる見通し。説明会は津波・地震対策など、安全審査の内容を住民に伝えるのが目的だ。10月9日夜は会場の川内文化ホール(同市)に住民が詰めかけ、ほぼ満員になった。原子力規制庁の市村知也・安全規制管理官が冒頭、「福島原発事故の教訓をとりいれて、規制を徹底的に見直した」と強調した。質疑応答では住民の男性が「原子力規制委員会の安全審査は科学的、技術的に厳正とはいえない」とただした。ある女性は「説明会の参加者を締め出すかのように、抽選とするのはいかがなものか」などと、説明会の運営に対する不満の声も出た。再稼働への地元同意は原子力規制委員会の認可手続きと並び、再稼働の条件となっている。立地自治体である鹿児島県と薩摩川内市は同意手続きに入るには、国が関与する形で安全性などを住民に説明し理解を得ることを前提としていた。県内での住民説明会はこの後、日置、いちき串木野、阿久根の各市とさつま町の4カ所で開かれる。その結果を踏まえ、薩摩川内市議会と岩切秀雄市長、鹿児島県議会と伊藤祐一郎知事が再稼働への態度を表明する手続きに入る見通し。同市長、県知事とも従来から早期再稼働を求めており、最終的に同意する可能性が高い。川内原発の30キロ圏には薩摩川内を含めて9市町が立地している。このうち日置、いちき串木野の両市議会は9月末、再稼働の同意が必要な「地元扱い」を求める意見書を可決した。出水市も鹿児島市など周辺6市町の首長による地元の範囲についての協議を呼び掛ける。周辺自治体からは、原発事故が発生した場合に避難が必要になるにもかかかわらず、意思表示の蚊帳の外に置かれていることへの不満が出始めている。伊藤知事は同意の必要がある自治体を「県と薩摩川内市で十分」との主張を繰り返している。県と周辺自治体の溝は今のところ埋まっていない。九電は今月8日、原子力規制委員会に川内1号機の安全対策工事の詳細な設計内容を記した「工事計画」などの書類を提出したが、2号機分は提出できていない。加えて規制委による計画内容の審査や「使用前検査」にも2~3カ月かかるとみられる。地元同意に手間取れば再稼働はさらにずれ込む可能性がある。 *4-3:http://mainichi.jp/select/news/20141010k0000m040095000c.html (毎日新聞 2014年10月9日) 川内原発:「説明根拠、理解できぬ」…市民から怒りの声 1000人を超す市民で埋まった会場に怒りの声が渦巻いた。九州電力川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市で9日夜開かれた住民説明会。川内原発が国の新規制基準に適合した理由を説明する原子力規制庁の職員に対し、再稼働に反対する住民たちは「子供と孫に責任を持てるのか」と迫った。会場では再稼働への賛否も問われず、今回の説明会が再稼働に関する地元判断にどう反映されるのかも不透明なままだ。不測の事態に備え、主催する県や市職員のほか多数の警察官らが警戒する物々しい雰囲気の中で開かれた説明会。原発の安全性を不安視する住民の再三の質問に対し、原子力規制庁職員が「どんなに努力をしても絶対に事故が起こりえない、とは言えない」と答えると、会場からは「説得力がない」「リスクがあるのなら再稼働すべきではない」といった声が上がった。最後に質問した地元商工会関係者が「よく理解できた」と述べると、再稼働に期待する住民から大きな拍手も起きたが、約1時間の質疑の間、質問に立った7人の大半が再稼働への懸念を表明した。県と市が参加者を抽選で絞り、会場での録音を禁止したことにも不満の声が出た。原発から10キロ圏内に住む福山登さん(50)は終了後「説明不足で安全とは思えなかった」と憤慨。薩摩川内市の教員、瀬戸ちえみさん(49)は、専門家が過小評価だと指摘する地震への評価を聞きたくて参加したが、会場で示された根拠について「全く理解できなかった。リスクがあるなら押しつけるなといいたい」と語った。一方、同市峰山地区のコミュニティ協議会会長、徳田勝章さん(76)は日本のエネルギー事情や安全性、避難計画の有効性などを総合的に勘案して再稼働への賛否を「判断したい」と言う。この日の説明会は「判断するうえで重視するものの一つ」だったが、「もっと突っ込んだ説明や回答がほしかった」と残念そうに話した。鹿児島県の伊藤祐一郎知事は、薩摩川内市を皮切りに周辺5市町で開かれる説明会での住民の反応を、再稼働の判断材料の一つにする意向だ。ところが、説明会では再稼働の是非自体は議論されず、参加者向けに配布されたアンケートも、説明会に参加して「良かった」か「良くなかった」などを聞くだけの簡単な内容だった。 *4-4:http://qbiz.jp/article/47328/1/ (西日本新聞 2014年10月8日) 住民説明会ネット中継、鹿児島県は認めず 川内原発 9日から川内原発30キロ圏5カ所で開かれる住民説明会をインターネットで中継するよう、鹿児島県内の市民団体の関係者らが6〜7日、県に繰り返し要請したが、県は中継しない方針を崩さなかった。市民側は離島住民や高齢者、体の不自由な人が説明を聞く機会を保障すべきだと主張。中継しないなら説明会参加者による中継を認めるよう要望した。これに対し、県原子力安全対策課の四反田昭二課長は知事の意向として「説明は会場で直接聞いてもらいたい」と述べ、参加者による中継も認めなかった。原子力規制庁が録画映像を後日、同庁ホームページ(HP)に掲載する方向で検討中で、四反田課長は「HPの映像を見てほしい」とした。要請に参加した開業医の青山浩一さん(53)=鹿児島市=は「1人でも多くの県民が説明を聞けるようにすべきなのに」と憤っていた。 *4-5:http://qbiz.jp/article/47819/1/ (西日本新聞 2014年10月16日) 薩摩川内市、原発再稼働同意へ 月内に議会と市長が意思表明 原発の新規制基準の下、政府が国内で最初の再稼働を目指す九州電力川内原発(鹿児島県)の地元同意手続きで、原発が立地する同県薩摩川内市が月内に同意する見通しとなった。市議会の川内原発対策調査特別委員会(10人)が20日に開かれ、早期の再稼働を求める陳情が採択されることが確実になったため。この後、本会議が月内に招集される見通しだが、市議(議長を除き25人)の過半数は再稼働に賛成の意向。岩切秀雄市長は再稼働容認を掲げて当選しており、議会の判断を受け、間を置かずに同意を表明するとみられる。 伊藤祐一郎知事は薩摩川内市の議会と市長、県議会と自らの同意を再稼働の条件にしている。同市の動きを受け、県議会も11月上旬に臨時議会を招集し、同意するかどうか判断する方向で調整が進んでいる。再稼働をめぐっては国内に根強い反対があるが、地元では同意に向けたスケジュールが一気に動きだしそうだ。薩摩川内市議会特別委は15日、次回の日程を20日に決定し、再稼働をめぐる陳情(賛成1件、反対10件)が一括採決される運びになった。特別委の委員の過半数は西日本新聞の取材に対し「審査には十分な時間をかけた。早く採決すべきだ」などと述べ、再稼働に賛成する意向を示した。特別委の意思表示を受け、岩切市長は月内に臨時議会を開く方針だ。市議の過半数は取材に対し、再稼働への賛成を明言しており、臨時議会でも賛成多数で賛成陳情が採択される見通しだ。薩摩川内市では9日に住民説明会が終了。岩切市長は10日、説明の内容を評価し、臨時議会の招集を検討する意向を示していた。15日の取材に対しては「議会がどうまとめるかを待ちたい」と述べた。県議会の原子力安全対策等特別委員会には、川内原発をめぐる陳情36件が付託されており、27、28日に原子力規制庁や経済産業省の担当者を参考人招致し審査する。関係者によると、11月上旬にも臨時議会を招集し、数日で陳情に対する結論を出す見込みだ。 <どんな時代にも、知識は合理的な思考と判断の必要条件である> *5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/114863 (佐賀新聞 2014年10月15日) 知識量評価の学テ時代遅れ 佐教組教育研究集会 佐賀県教職員組合(佐教組)の第64次教育研究集会が11日、佐賀市の開成小で開かれた。前大阪教育大学長の長尾彰夫氏が講演で全国学力テストを取り上げ、「社会で求められる学力そのものの中身が大きく変わっているにもかかわらず、知識量を1点2点の差で評価するのは時代遅れ」と批判した。長尾氏は「学力テストは点数化することで一見客観的で説得力を持つが、学力は子どもの生きる力の一部でしかない」と強調し、毎年数十億円の巨費を投じて行うことに疑問を呈した。企業が出身大学で採用を判断していた時代は、受験に必要な、自分をコントロールし、与えられた職務を忠実にこなす能力が求められていたと指摘した。「今では産業界も主体性やコミュニケーションなど実践的な能力を求め、知識だけ詰め込んだらいいという時代が過ぎ去ったことを察知している」と解説した。集会には約270人が参加、17の分科会で教科教育や教育現場のさまざまな課題を論議した。核廃絶を訴える高校生平和大使の活動報告もあった。 PS(2014.10.16追加):太陽光促進付加金が大きいかのように報道されているので、うちの東京電力への2011年~2014年の8月使用9月支払い電気料金の年次比較をしたところ、賦課金で大きいのは電力会社が高値買いしている火力発電用燃料の燃料費調整であり、太陽光促進付加金は非常に小さかった。つまり、火力を少なくして太陽光発電に変えた方がよいということだ。また、うちはオール電化ではない普通のマンションで30アンペアであるにもかかわらず、段階料金制度の3段料金としてとられた金額が非常に高いが、それは、家庭用電気料金が贅沢品として高く設定されており、この発想が時代について行っていないからだろう。 <8月使用、9月支払い分の東京電力電気料金比較> 再エネ発電賦課金 使用料(kw) 請求金額合計(S) 燃料費調整(A) 太陽光促進付加金(B) 消費税(T) 2011.9 652 16,495 -65 19 749 2012.9 687 18,757 667.8 192 52 2013.9 700 22,152 1,386 280 1,006 2014.9 532 17,999 1,324.68 425 1,241 基本料金 1段料金 2段料金 3段料金 口座振替割引 1,092 2,144 4,115 8,494 -53 1,092 2,164.80 4,184.7 9,656.39 -53 1,092 2,266.80 4,534.2 11,640 -53 1,123.20 2,331.60 4,663.80 6,943.76 -54 *三段階料金制度:省エネルギー推進などの目的から、昭和49年6月に採用したもので、電気の使用量に応じて料金単価に格差を設けた制度のこと 第1段階:ナショナル・ミニマム(国が保障すべき最低生活水準)の考え方を導入した比較的低い料金 第2段階:標準的なご家庭の1か月のご使用量をふまえた平均的な料金 第3段階:やや割高な料金 PS(2014.10.17追加):*6に、「各電力会社も火力発電の燃料負担が増加しており、2度目の値上げを検討している」と書かれているが、電力会社は燃料負担分を“燃料費調整”として既に顧客から回収しているので、この値上げ理由はおかしい。また、「経産省は、北電の泊原発が再稼働すれば料金値下げを実施することを認可の条件とする」としているが、上のような明細を作る以上は、原発にかかる費用も明細にして区分請求するのが筋である。このように、都合のよい嘘だらけの理由を並べたてるのが原子力ムラの真実だが、何のためにそこまでするのかが重要なのである。 *6:http://mainichi.jp/select/news/20141011k0000m020078000c.html (毎日新聞 2014年10月10日) 北海道電力:値上げ幅 家庭向け平均15.33%に圧縮 小渕優子経済産業相は10日の閣議後記者会見で、北海道電力が認可申請していた家庭向け平均17.03%の電気料金値上げについて、値上げ幅を同15.33%に引き下げることで消費者庁と合意したと発表した。火力発電の燃料費を削減し、値上げ幅を申請より1.7ポイント圧縮する。15日にも値上げを認可し、北海道電は11月1日に値上げを実施する。東京電力福島第1原発事故後、北海道電を含む7社が値上げを実施したが、2度目の料金値上げは初めて。北海道経済への影響が懸念される。また、各電力会社も火力発電の燃料負担が増加しており、2度目の値上げを検討している。東電などが再値上げを実施すれば、景気に悪影響を与えることは確実だ。北海道電は、電力需要のピークとなる冬季の負担増を抑えるため、来年3月までと4月以降の2段階で値上げを行う。家庭向けは来年3月末までは値上げ幅を12.43%に圧縮。平均22.61%を予定していた企業向け料金値上げ幅は20.32%に引き下げ、来年3月までは16.48%にとどめる。値上げ幅圧縮のため、人件費削減や資産売却など約60億円の効率化を行う。今回の値上げで、平均的な世帯の電気料金は現在の月7233円から、来年3月までは約8000円、来年4月以降は8185円となる。経産省は、北海道電の泊原発が再稼働した場合、順次料金値下げを実施することを認可の条件とする。北海道電は昨年9月に家庭向け平均7.73%の値上げを実施。しかし、当初、昨年末を見込んでいた泊原発再稼働の見通しがつかず、代替火力発電の燃料費が増加したため、燃料費の増加分のみを料金改定に反映する「電源構成変分認可制度」に基づき再値上げを申請していた。福島原発事故後の各電力会社の料金値上げで、値上げ幅が10%を超えるのは今回が初めてだ。 PS(2014.10.17追加):*7のように、排気ガスや二酸化炭素を排出して公害を出し、外国から燃料を輸入しながら、国産の自然エネルギーや水素よりも化石燃料を選択する判断は、エネルギー自給率と環境を全く考えておらず、馬鹿としか言いようがない。 *7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141017&ng=DGKDASDZ16HJL_W4A011C1EA2000 (日経新聞 2014.10.17) 石炭火力発電所 国内需要の3割賄う ▽…石炭を燃やして発生したエネルギーを使う発電方式。世界各地で産出され安く安定的に調達できることから、世界の発電量の4割程度は石炭火力でつくられている。原子力発電所と同様に24時間安定稼働する「ベース電源」として使われ、国内需要の3割が石炭で賄われている。東日本大震災前は25%程度だったが、原発の停止を受けて比重が高まった。 ▽…かつては大気汚染物質などの大量排出が問題視されていたが、現在は硫黄酸化物(SOx)などの排出量は天然ガス火力並みに抑えられている。投入したエネルギーを電気に変える効率を示す発電効率も高まっている。現在国内で主流の超々臨界圧発電(USC)は45%程度と1世代前の超臨界圧より1~2割ほど向上している。 ▽…一方、二酸化炭素(CO2)の排出量を抑制するのは難しい。課題克服に向けて石炭ガス化複合発電(IGCC)と呼ぶ最新技術が実用化段階に入っている。石炭を蒸し焼きにして発生させたガスを燃料にガスタービンを回し、廃熱でつくった蒸気でもタービンを回す。2回発電することで同量の石炭から多くの電気を得られる。蒸気タービンだけ回す方式より発電効率は2割ほど高まり、その分CO2の排出も減らせる。 PS(2014年10月22日追加):*8のように、*2-1で玄海原発原告団団長を勤める長谷川佐賀大学元学長と関連する佐賀大学病院で、10月25日、26日、11月1日に停電があるそうだが、九電が再生可能エネルギーの買取拒否をしながら、「原発が再稼働できないから電力が足りない」などと言えば誰もが呆れるだけである。病院はどんな災害時にも重要な拠点となるべき施設であるため、自家発電や新電力によるバックアップなどで、普段から絶対に電気設備がストップしないようにしておくべきものだ。 *8:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/117248 (佐賀新聞 2014年10月22日) 佐大病院25、26、来月1日に停電 佐賀大学医学部附属病院(佐賀市鍋島)は25、26の両日、電気設備の定期点検整備のため停電する。特に、25日正午から午後4時と26日午前8時から午後0時半の時間帯は、救急患者の診察に支障が生じる恐れもあり、ほかの救急病院での受診を呼び掛けている。11月1日も東西病棟で停電作業を行う。エレベーターなどの電気設備がストップし、院内の混雑も予想されるため、いずれの停電日も見舞いをできるだけ控えるよう協力を求めている。 PS(2014.10.23追加):燃料費調整として燃料費増加分を顧客に請求しておきながら、*9の主張は成立しない。そのため、電力会社は、燃料毎に別会社(子会社)にして正確にコスト計算し、それぞれが高値買いしないようコスト削減に努めるのがよいと考える。高値買いせずコスト削減に努めるのは、トヨタをはじめ、通常の会社ならどこでもやっていることだ。 *9:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141023&ng=DGKDASDF23H01_T21C14A0MM0000 (日経新聞 2014.10.23) 火力燃料費12兆円増 経産省試算、震災後の累計 原発停止など響く 経済産業省は原子力発電所の停止に伴う火力発電用の燃料費について、2011年度から14年度の累計で12兆7000億円増えるとの試算をまとめた。原発の停止で、コストの高い液化天然ガス(LNG)や石油などを使う火力発電所の稼働が増えたためだ。14年度の追加燃料費は約3兆7000億円に上る見通しだ。すべての原発が止まったままと想定しているため、大飯原発3、4号機が一時稼働した13年度よりも1500億円増えるとした。燃料費は13年度まで3年間の累計で、すでに9兆円増えている。発電電力量に占める火力発電の比率は、東日本大震災前(10年度)の62%から13年度は原発の停止で88%と大幅に上昇した。増えた分の燃料費は電力会社の収益を圧迫している。経産省によると、震災後の3年間で電気料金は家庭向けで2割、企業向けで3割上昇した。
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2014,10,13, Monday
*1-4より *4-2より (1)フクイチ事故とSPEEDIの使用について *1-1に書かれているように、福島第1原発事故直後の福島県の行為をめぐり、法廷で責任を追及するそうで、その内容は、「福島県がヨウ素剤の服用を指示し、SPEEDI(スピーディー)の情報を公表していれば、子どもたちの被ばくを減らせたはずだが、そうしなかった」というものだ。福島県の重過失のため毎年検査を受けなければならなくなった被害者に対する慰謝料としては、1人10万円は安すぎる上、①慰謝料 ②治療費 ③病気になった場合の損害賠償 は別に考えるべきだろう。 なお、SPEEDIの情報を公開しなかった理由は、「福島県の職員が国から送信されたデータの一部を誤って消してしまった」とされているが、原発の地元自治体の職員がこのような大切なデータの使い方を知らなかったのなら、それは重過失である。重要なことであるため、①本当に国から送信されたのか ②本当に県職員が誤って消したのか ③本当にデータの使い方を知らなかったとしたら、それは何故か について、きちんと調べるべきだ。 福島県浪江町民の間には、SPEEDIの拡散予測が即座に公表されなかったことへの憤りが今もあり、町民の多くが放射能から逃れようと避難した津島地区はより線量が高くて現在も帰還困難区域に指定されている場所だった。そして、「現場の警察官は防護服を着て、福島県は放射能の危険性を認識していた。県の行動で住民は無用な被曝を強いられた」という証言もあり、これは、地元住民がないがしろにされた一事例である。 また、福島第1原発敷地内の地下水をくみ上げ海洋に放出する「地下水バイパス」の実施を前に、東京電力は作業を公開し、国や県の関係者が立ち会ったが、県の職員は、一部作業の写真だけ撮ってすぐ帰り、これでは『監視している』というパフォーマンスにすぎない」との意見もある。このように、原発では危機管理意識が欠如し、住民をないがしろにする行為が普通に行われることが問題なのである。 そのような中、*1-2のように、原子力規制委員会は、10月8日、「SPEEDI(スピーディ)」(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)を、住民避難などの判断に使わない運用方針を決め、その理由を「SPEEDIの使い方が曖昧で、避難計画を作る自治体から明確化を求められたため」「重大事故が起きた段階で5キロ圏内は即避難、30キロ圏は屋内退避したうえで、周辺のモニタリングポストによる放射線量の実測値をもとに避難などの判断をすることにした」としている。 しかし、これは、「鉄砲を使えないから、武器は竹槍に変更した」というのと同じくらい後退であり、鉄砲を使えなければ、①訓練された使い手が間髪をいれずに使えるように改善する ②より使いやすくて正確な鉄砲を作る などが普通の発想だ。 (2)フクイチ事故後の現在の状況 *1-3に書かれているように、台風の影響か、フクイチで異常事態が発生し、2号機付近の井戸で放射線の最高値を観測し、①トリチウム 15万ベクレル(過去最高値、一週間前の観測時に比較して10倍以上に急上昇) ②ストロンチウム(90) 120万ベクレル(過去最高値) という発表を東電が行ったそうだ。その理由は「不明」だそうだが、言えないことは不明で通すのが、東電の信用できない点である。 なお、400億円かけて福島原発の回りに氷の壁を作ると言って始めた工事も当然凍らず、その後、ドライアイスをぶちこんで温度を下げようとしたが、当然凍らず、これが世界に冠たる技術を持つ鹿島建設がやることかと世界中で笑い者になっているそうだが、これでは安全な原発を建設して安全に使いこなせるわけがなく、汚染濃度が過去最高値を更新しているということは、福島原発の状況は悪化しつつあるということだろう。 そして、*1-4のように、フクイチ事故から3年7カ月後、東京湾の放射能汚染について、独協医科大学の木村准教授(放射線衛生学)の協力で海底の土や水を調べたところ、上図のように、河口周辺でかなり高い汚染が広く残っていることが確認され、環境省に河口部の調査をしないのかをただすと「事故前から有害物質の測定をしてきた地点を踏襲している(←ここが馬鹿で、やる気がない)。今後、自治体からの要望があれば、必要に応じて測定点を増やす可能性はあるが、測定点をいくらでも増やすわけにいかない」という答えだったそうだ。 この結果について、木村准教授は「事故で関東平野も汚染され、そこを流れる川の河口付近では、放射性物質がたまる場所があるだろうと予測していたが、予測が裏付けられた。河口付近は生態系が豊かで、放射性物質が生物に濃縮される恐れがあり、海底や水の汚染だけでなく、魚介類もしっかり監視していく必要がある」としている。 (3)中間貯蔵施設の買い取り地価 *2-1、*2-2のように、フクイチの除染で出た汚染土を保管する中間貯蔵施設の建設について、政府は「住宅地は原発事故がない場合の評価額の5割、山林は同7割」とした標準価格を算出し、9月29日に地権者に説明したそうだ。その買い取り価格は国による原発事故の補償ルールに基づいているそうだが、評価額の5割や7割にするルールの妥当性は疑問だ。何故なら、東電に原発事故を起こされて土地や住宅地を放棄せざるを得なくなった人は、事故前の評価額に慰謝料を加えた金額を受け取るのが当然だからである。 なお、政府は、国が福島県外で最終処分するまで土地の所有権を地権者に残したまま、国がその土地を最長30年間使用する「地上権」も示したそうだが、30年後に別の場所で最終処分するというのは、経済的でも現実的でもないため、はじめから適切な価格で土地を購入して最終処分し、中途半端なことをすべきではないと考える。 (4)どうも信用できない最終処分場 *3-1のように、環境省によると、フクイチ事故で発生した指定廃棄物の最終処分場建設をめぐり、候補地の栗原、大和、加美の3市町での現地調査が、当初予定していた9月から10月にずれ込むが、作業手順を効率化することで調査期間を短縮でき、問題ないとのことである。しかし、その調査は、何を目的として、どういう調査を行い、それはどういう意味があるのか不明だ。 また、*3-2のように、環境省が突然、一方的に、栃木県の「指定廃棄物最終処分場」建設候補地として、名水の里である矢板市塩田の国有林野を選定した件については、オール矢板で『一万人集会』や『国会周辺デモ行進』等の反対運動を展開し、政府や環境省に対して最終処分場断固拒否の市民の総意を示して、「大幅な選定プロセスの見直し」が発表通告されたが、まだ完全な白紙撤回ではないとのことである。 (5)九電の再生可能エネルギー受入中断と今後のエネルギー政策について *4-1に書かれているように、九電が再生可能エネルギーによる電力買取の新規受け入れを中断した。太陽光発電は、私が強く提唱していたこともあり、九州では太陽光発電を中心に自然エネルギーの事業計画が多く、原発に代わるエネルギーや地域再生の切り札となっている。しかし、九電が再エネの「全量固定価格買い取り制度」(FIT)を通じた買い取り契約中断を宣告し、これが、北海道、東北、四国の各電力会社にも連鎖して、受け入れが再開されても九電から新たな設備投資などの高いハードルが課されるのだそうだ。 しかし、*4-2にも書かれているように、これはビジネスの信義則に反する。各社ともに、出力10キロワット未満の住宅用太陽光は当面対象外としているが、住宅用でも10キロワット(10アンペア)以下の家庭は少ないため、多くの住宅が除外されることになり、事実上の接続拒否である。電力会社はその理由を、「電力の供給安定化」とし、「太陽光は夜間に発電できず、昼間でも晴天から雨に変わると発電量が急減する」などと、同じ弁を繰り返しているが、電力が余れば、これから燃料電池で使う水素を作ったり、他地域へ送電したり、蓄電池を使ったりなど、やる気があればいかようにも解決できることである。 なお、九電への2014年7月末までの申し込み全量が接続されると、九州の春・秋の昼間の電力需要約800万キロワットを上回り、契約申し込み前の設備認定分も合わせると夏のピーク需要約1600万キロワットも超えるそうで、100%国産の自然エネルギーに、それだけの実力があるということがわかったわけだ。しかし、そこで九州全土で接続拒否することにより、九電が再エネ導入にブレーキをかけ、原発再稼働に備えているのは困ったものである。 (6)「適切なバランス」とは、何を基準に考えるのか *4-3のように、小渕経産相が「再生エネの中でバランスをとることが大事だ」と述べ、地熱や風力の拡大の必要性を示唆したそうだが、単に「このくらいだろう」という目分量で「バランスがよい」などと言われては、真剣に取り組んでいる人たちはたまったものではない。そのため、「バランスをとる」なら、どういう理念に基づいて、どういう基準でバランスをとるのか、そして、それは各方面から考えて合理性があるのかを、明確に検証すべきである。 なお、*4-3には、「政府は、見直しを進めている再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に関し、現在の太陽光発電への偏重を是正して、地熱や風力発電の導入を促進する方針を固めた」と書かれているが、買い取り価格の見直しは進めてよいものの、太陽光発電が普及しているのは、私が進めてきた九州だけであり、日照時間が長くても他地域ではさほど進んでいないため、太陽光発電を抑制すべきではない。 また、地熱発電は安定した大量の電力が得られるためよい電源だが、風力発電は低周波が人間に与える影響を無視できないので、立地可能地域が限られる。つまり、①100%国産(貿易は高値買いの輸入ではなく輸出を考えるべき) ②放射線、排気ガス、低周波等による公害を出さない ③安価である などが、次のエネルギーの必要条件となり、そのために技術の開発・改良を行うべきなのである。 *4-4に書かれているように、「原発はコストが安い。化石燃料で国富が流出している」という決まり文句がいまだに繰り返されているが、実際には、すべての原発が止まっていた今年の夏の電力需要のピーク時にも大規模停電はなく、これには、2011年の夏を乗り越えるために導入した省エネ型設備や省エネ機器が役に立っており、国民の意識はそこまで行っているのだ。 また、経産省は、火力発電の燃料費が13年度に3.6兆円も増加する見込みとの試算を公表したが、この試算の基準になった原発の発電量には事故を起こした福島第一原発の発電量も含まれ、国内の発電に使う化石燃料の輸入数量は実際には4割しか増えておらず、化石燃料自体の価格上昇と円安が費用増大の大きな原因だそうだ。また、いまだに「原子力は安い」と言う人がいるが、原子力は電力会社にとっては安いかもしれないが、立地対策費や事故対策費などの膨大な社会的コストを、税金や電気料金に上乗せする形で国民に負担させており、それらをすべて含めたコストは決して安くないのである。 なお、本当に原発が安いと言い切れるのなら、電力会社は、事故対策費から最終処分、廃炉まで含むすべての原発コストを自ら負担して原発を稼働すればよいだろうが、そんなことをしたら原発事業はなりたたず、このことは経産省も電力会社もよくわかっているため、電力完全自由化の下でも原発を維持できるように原子力で発電した電気の価格を保証することを検討しているのだ。しかし、原発は、稼働し始めてから既に40年も経過しており、まだ独り立ちできないようなら、撤退するのが筋である。 <フクイチ事故後のSPEEDIの使用について> *1-1:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201410/20141004_61011.html (河北新報 2014.10.6) 原発事故対応 批判続く/(1)危機管理/福島知事選「復興の論点」 福島県廃炉安全監視協議会のメンバーによる現場視察。監視体制強化の一環として、県が原発事故後に設置した=7月17日、福島第1原発 東日本大震災と福島第1原発事故後、初めてとなる福島県知事選(26日投開票)の告示が9日に迫った。県の危機管理は機能したのか、除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設はどうあるべきか、暮らしと産業の復興をどう進めるのか。県が直面する課題を検証する。 <国と県を訴える> 「あの日」から3年半。福島第1原発事故直後の大混乱の中で福島県が関与した二つの行為をめぐり、法廷で責任を追及する動きが表面化した。「県がヨウ素剤の服用を指示し、SPEEDI(スピーディー)の情報を公表していれば、子どもたちの被ばくを減らせたはずだ」。「子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト」郡山代表で歯科医師の武本泰さん(56)が、1人当たり10万円の損害賠償を求め8月末に起こした訴訟で、国だけでなく県も訴えた理由を語る。「安定ヨウ素剤」と、「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」の略称「SPEEDI」。前者は甲状腺がんを防ぐ効果、後者は放射性物質の広がりを予測する役割が期待される。ヨウ素剤は、国や県から服用の指示が出ず、実際に服用したのは町独自の判断で配布した三春町民ら一部に限られた。SPEEDIは、県職員が国から送信されたデータの一部を誤って消してしまった。武本さんが県の情報公開で開示した資料などによると、県は県立医大にヨウ素剤を配布し、被ばく医療に携わる医師や看護師が服用した。ところが、被ばく医療とは無関係の職員や学生、家族も服用し、「かん口令が敷かれていた」(医大関係者)ことが判明した。三春町は町独自の判断でヨウ素剤を配布した。県は当時、「国の指示がない」と服用中止を求め、回収を指示した。東北大は8月、「町の判断は正しかった」との調査結果を公表した。武本さんは「県内に原発を10基も抱えていながら、行政としての危機管理能力の低さにがくぜんとする」と話す。原告に加わった母親から「県の責任も大きい」との声が相次ぎ、県を被告に加えることになったという。 <無用な被ばく> 浪江町民の間には、SPEEDIの拡散予測が即座に公表されなかったことへの憤りが今も根強い。町民の多くが放射能から逃れようと避難した町西部の津島地区は逆に線量が高く、帰還困難区域に指定されている。津島出身の馬場績(いさお)町議(70)は「現場の警察官は防護服を着ており、県は放射能の危険性を認識していたはずだ。県の危機意識の欠如で住民は無用な被ばくを強いられた」と訴える。4月16日、福島第1原発敷地内の地下水をくみ上げ海洋に放出する「地下水バイパス」実施を前に、東京電力は作業を公開し、国や県の関係者が立ち会った。「一部の作業の写真だけバシャバシャ撮って、県職員はすぐに帰った。これでは『監視している』というパフォーマンスにすぎない」。現場に居合わせた関係者の1人は、皮肉を込めて当時を振り返る。後手後手に回った県の危機管理対応が、繰り返される恐れはないか。廃炉作業の終了まで40年、県の有事対応は続く。 [安定ヨウ素剤] 放射能を持たないヨウ素(ヨウ化カリウムなど)を含む錠剤。服用して放射能のないヨウ素を取り込んでおくことで内部被ばくを防ぐ。効果が約24時間と短く、適切なタイミングでの服用が必要。 [スピーディー] 原発事故時、原子炉停止時間や放射性物質の放出量などの情報や気象、地形データを基に施設周辺の放射性物質の空気中濃度や被ばく線量を予測する。国や自治体が予測を参考に避難地域などを決める。 *1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASGB851VCGB8ULBJ01N.html (朝日新聞 2014年10月8日) SPEEDI、原発事故の避難判断に使わず 規制委方針 原発などで重大事故が起きた際に放射性物質の広がりを予測する「SPEEDI(スピーディ)」(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)について、原子力規制委員会は8日、住民避難などの判断に使わない運用方針を決めた。すでに、放射線量の実測値をもとに判断する態勢に転換しているが、SPEEDIの使い方があいまいで、避難計画を作る自治体から明確化を求められたためだ。東京電力福島第一原発事故では、予測のもとになる原子炉などの情報が得られないなか、初期の住民避難に活用されず問題になった。規制委は昨年2月に原子力災害対策指針を改め、重大事故が起きた段階で5キロ圏内は即避難、30キロ圏は屋内退避したうえで、周辺のモニタリングポストによる放射線量の実測値をもとに避難などの判断をすることにした。事故前、避難の指標とすると位置づけられていたSPEEDIは、「参考情報」に格下げされた。だが、使い方は具体的に示されておらず、予測結果を避難の判断に使えると受け止める自治体もあった。この日に決めた運用方針で、避難の判断以外の使い方を示すことを明記。放射性物質の放出が収まった後、放射性ヨウ素などの被曝(ひばく)線量の事後評価などの例を示す。対策指針に基づくマニュアルは、重大事故発生時にSPEEDIで計算を始め、結果を公表するとしているが、混乱を招くおそれがあることから、計算自体しないよう修正する。さらに、委託先の職員が24時間常駐する態勢をなくし、緊急時に対応できる程度に縮小する。規制委は来年度予算の概算要求で、維持管理や調査の費用を今年度より7割以上減額し、約1・6億円としている。 *1-3:http://blog.livedoor.jp/nevada_report-investment/archives/4759622.html (NEVADAブログ 2014年10月13日) 異常事態が発生(福島第一原発) しばらく報道がされていませんでした【福島第一原発】の状況ですが、時事通信は東電発表として以下のような報道を行っています。 【2号機付近の井戸で最高値を観測】 トリチウム 15万ベクレル(過去最高値) ストロンチウム(90) 120万ベクレル(過去最高値) トリチウム濃度は一週間前の観測時に比較して10倍以上に急上昇しているとされています。現在、34ケ所の観測井戸があり、異常値になったのはこの内、2号機の東側にある3ケ所の井戸となっており、その理由は『不明』となっています。台風の影響とも言われていますが、それであれば他の井戸にも影響があるはずであり、東側で濃度が急上昇したということは東側の原発(2号機)の壁に先日震度3クラスの地震が連続した影響で亀裂や穴が空いたのかも知れません。今日本国民は福島原発問題は終わったと思っていますが、何ら終わっておらず、そのまま危機的な状況にあるということを認識していません。報道がされなくなったからです。 400億円かけて福島原発の回りに氷の壁を作ると言って始めた工事も全く凍らず、ならばと何をしたかと言いますと、ドライアイスをぶちこんで温度を下げるという、これが世界に冠たる技術を持つ鹿島建設がやることかと世界中で笑い者になっています。結果はそれでも凍ることはなく(当たり前ですが)、そのままになっています。日本のスーバーゼネコンの技術は世界一の水準にあるというのが認識ですが、こんなことをしているようでは、日本の技術水準もかなり落ちているのかも知れません。ドバイのシンボルタワーを建設した企業を見せるコーナーがありますが、韓国企業となっており、日本の姿はありません。 福島原発の状況は汚染濃度が過去最高値を更新するということは、悪化しつつあるということになります。 これをどれだけの国民が知り、危機的な状況を理解するでしょうか?本来は国会で議論すべきことになりますが、今や国会は野党が崩壊しており、うちわがどうこうというどうでもよいことを追求する体たらくであり、あてにはなりません。一人一人が意識を持ちどうすればよいかを考えるだけの時代になっていると言えます。 *1-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014101302100003.html (東京新聞 2014年10月13日) 福島事故放出セシウム 東京湾河口 残る汚染 東京電力福島第一原発事故から三年七カ月が過ぎ、東京湾の放射能汚染はどうなっているのか。本紙は九月、独協医科大の木村真三准教授(放射線衛生学)の協力を得て、海底の土や水を調べた。沖合の汚染は低かったが、河口周辺ではかなり高い汚染が広く残っていることが確認された。木村准教授は、魚介類も含め継続的に監視する必要性を指摘している。調査は九月六、七の両日、東京湾に注ぐ主要河川の河口など九地点で、海底の土と海水の放射性セシウムの濃度を調べた。高い値が出た地点では後日、八地点で土を採取し直し、汚染はその地点だけなのかどうかを確かめた。その結果、沖合では海底土一キログラム当たり高くても数十ベクレルと汚染度は低かったが、花見川(千葉市)河口では、局地的ながら一一八九ベクレルと非常に高い濃度のセシウムが検出された。荒川(東京都)では一六七~三九八ベクレル、東京と神奈川県境の多摩川では八九~一三五ベクレルが検出された。海底付近の水はいずれも不検出だった。花見川は河口や周辺のくぼ地のみ高く、少し上流に入ったり、沖に出たりすると値がぐんと下がった。荒川と多摩川では、河口一帯にかなり広く汚染が残っている様子がうかがえた。魚介類には食品基準(一キログラム当たり一〇〇ベクレル未満)があるが、海底土の汚染に基準はない。だが、福島第一周辺でも、原子力規制委員会が公表している七十五点の調査地点のうち、一〇〇ベクレルを超えるような海底土の汚染は二十二点に限られている。河口周辺は川と海がぶつかり、上流から運ばれてきたセシウムが沈殿してたまりやすいと指摘されてきた。今回の調査で、原発から二百キロ以上離れた東京湾でも、河口周辺は要注意の汚染レベルにあることが判明した。国は東京湾でも十八地点を定期的に調べているが、木更津港などを除けば、いずれも調査地点は沖合に限定されている。担当する環境省に河口部の調査をしないのかただすと「事故前から有害物質の測定をしてきた地点を踏襲している。今後、自治体からの要望があれば、必要に応じて測定点を増やす可能性はあるが、測定点をいくらでも増やすわけにいかない」との答えだった。魚介類への影響が心配されるが、水産庁の本年度のデータでは、河口部で採れたシジミやアサリは一件で三ベクレルを検出したのみ。海水魚では花見川で捕れたウロハゼの八ベクレル弱が最高で、ほとんどは不検出だった。食品基準から考えると、心配ない状況と言えそうだ。調査結果について、木村准教授は「事故で関東平野も汚染され、そこを流れる川の河口付近では、放射性物質がたまる場所があるだろうと予測していた。予測が裏付けられた。河口付近は生態系が豊かで、放射性物質が生物に濃縮される恐れがあり、海底や水の汚染だけでなく、魚介類もしっかり監視していく必要がある」と話している。 <海底の調査方法> ボートから専用の採土器を海底に下ろして土や海底付近の水を採取。着底後、ロープを引っ張ると表面数センチの堆積(たいせき)物が回収できる。東京湾奥の17地点で採取。土は乾燥させた後、独協医大のゲルマニウム半導体検出器で8時間かけて放射性セシウムの濃度を測定した。水はろ過した後、12時間測定した。 <中間貯蔵施設の買い取り地価> *2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140930&ng=DGKDZO77729670Q4A930C1CR8000 (日経新聞 2014.9.30) 福島・中間貯蔵施設用地買い取り、宅地「平時」の半額で、政府、初の地権者説明会 東京電力福島第1原発事故後の除染で出た汚染土を保管する中間貯蔵施設の建設を巡り、政府は29日、福島県大熊、双葉両町の建設予定地の地権者を対象に、用地補償に関する初めての説明会をいわき市で開いた。土地の買い取りについて、政府は「住宅地は原発事故がない場合の評価額の5割、山林は同7割」とした標準価格を算出。施設建設への理解を求めた。29日の説明会には約150人の地権者が出席した。買い取り価格は国による原発事故の補償ルールに基づき、不動産鑑定士の知見に従って算出した。原発事故前の土地価格をもとに、事故のない平常時を仮定した現在の評価額を求め、避難によって土地が使えない期間や周辺の土地の価格変動などを考慮した。双葉、大熊両町の住宅地は14地域に分け、標準価格は1平方メートルあたり2800~9250円とした。両町の田畑は同1150~1200円、山林は同520円とした。政府は買い取りに加え、国が福島県外で汚染土などを最終処分するまで、土地の所有権を地権者に残したまま国がその土地を最長30年間使用する「地上権」も示した。地上権の価格は買い取りの場合の7割になるとした。国による補償とは別に、福島県は地権者の生活再建を支援するため150億円を大熊、双葉両町に交付することを表明している。国による土地の買い取り価格の目減り分を県が実質的に補う。東電による賠償も別途支払われている。国は地権者向けの説明会を10月12日まで県内外の9カ所で計12回開く予定。環境省は土地の登記簿情報などをもとに少なくとも2365人の地権者を特定。このうち住所が判明した1269人に開催通知を送った。説明会終了後、国は各地権者と個別交渉に入る。 *2-2:http://www.minyu-net.com/news/news/0930/news7.html (2014年9月30日 福島民友ニュース) 農地最大1200円、山林520円 中間貯蔵・地権者説明会 いわき市で29日開かれた中間貯蔵施設の地権者向け説明会で、政府が示した大熊、双葉両町の標準地ごとの土地価格によると、宅地以外の用途では、両町とも農地の価格は1平方メートル当たり1150~1200円、山林の価格は1平方メートル当たり520円と設定された。政府は土地の買い取り額について(1)建設候補地が東京電力福島第1原発事故で帰還困難区域に指定され、土地の利用が一定期間できない(2)将来的に避難指示が解除され、土地価格の回復が見込まれる―などの事情を踏まえ、不動産鑑定士による評価額を基に決めた。建設候補地を含めて原発事故で被害を受けた地域については、東電が土地や建物などの損害を賠償しているが、政府は施設の建設に伴う用地補償はこれらとは別で、東電による賠償に影響を与えないとしている。 <最終処分場について> *3-1:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201410/20141001_11035.html (河北新報 2014.10.1) 最終処分場 現地調査、今月着手も可 環境省 福島第1原発事故で発生した指定廃棄物の最終処分場建設をめぐり、環境省は30日、候補地の栗原、大和、加美の3市町での現地調査について、当初予定していた9月着手が10月に1週間程度ずれ込んでも問題はないとの見解を示した。作業手順を効率化することで調査期間を短縮できるという。調査は地下水、地質など十数項目。掘削が必要で10日程度かかる項目もあるが、候補地間で効率的に機材を使うことなどで、3候補地全体の調査期間を1カ月半弱に短縮できると判断した。同省の担当者は10月以降の着手でも「11月中下旬の降雪前に終えられる」と説明する。現地調査に関しては井上信治前副大臣が「物理的に9月下旬がデッドラインになる」と発言。同省は9月中の着手に向けて準備を進めていた。3市町などへの事前告知について、同省担当者は「前副大臣が既に8月に詳細調査着手を3市町に伝えており、あらためて調査時期を知らせる必要はない」と話している。 *3-2:http://info.yaita-doumeikai.net/ (指定廃棄物最終処分場候補地の白紙撤回を求める矢板市民同盟会 2014.3.27) 指定廃棄物最終処分場候補地の白紙撤回を求める矢板市民同盟会主催、選定プロセスの見直しを受けての緊急市民集会 昨年の9月3日、環境省により突然で一方的に栃木県における「指定廃棄物最終処分場」の建設候補地として、矢板市塩田字大石久保の国有林野が選定されました。早いものであれから半年が経過致しました。この間、市民の皆様の絶大なるご協力のもと、『一万人集会』や『国会周辺デモ行進』等の反対運動を展開し、政府及び環境省に対して、オール矢板で最終処分場『断固拒否』の市民の総意を示すことが出来たものと確信致しております。そして、先月の25日、井上環境副大臣が栃木県庁及び矢板市役所を訪問され、この度の問題に関して、「大幅な選定プロセスの見直し」を発表通告がされました。私ども矢板市民同盟会と致しましては、完全なる白紙撤回が実現していない以上、今後も反対運動を展開して参る所存でございます。この度の緊急市民集会は、市民の皆様方の英知を結集し、市と議会と強く連携し、完全なる白紙撤回を貫徹するために開催致します。多くの市民の皆様のご参集をお待ち致しております。 <九電の再生可能エネルギー受入中断と今後のエネルギー政策> *4-1:http://mainichi.jp/select/news/20141007k0000m040123000c.html (毎日新聞 2014年10月6日) 再生エネ:九電受け入れ中断 「詐欺と同じ」憤る住民 九州電力が再生可能エネルギーで作った電力の新規受け入れを中断した。日照時間が長く土地代も比較的安価な九州では、太陽光発電を中心に大規模な計画が目白押しで、原発に代わるエネルギーや地域再生の切り札として期待されてきた。だが、九電の突然の発表を受けて各事業者は計画の見直しを迫られ、影響は一般家庭にも及んでいる。「昔は芋や稲作が盛んでこの辺も田畑が広がっていたんですけど」。五島列島の北端にある長崎県佐世保市の宇久島。島在住の市議、大岩博文さん(61)が雑草が生い茂る土地の前で言った。近くには計画中の大規模太陽光発電所(メガソーラー)で使う太陽光パネルの見本が立っている。かつて1万2000人が暮らした島の人口は現在2377人。救世主として登場したのが世界最大規模のメガソーラー計画だった。今年6月、京セラや九電工など5社が合同で発表した計画は、島の面積の4分の1、東京ドーム134個分にあたる約630ヘクタールの土地に約172万枚の太陽光パネルを敷き詰め、一般家庭約13万8800世帯分の電力(出力43万キロワット)をまかなうという壮大なものだ。九州本土との間に約60キロの海底ケーブルを敷設して九州電力に売電する計画で、2015年度着工、18年度完成予定という。「太陽光パネルは高さ数メートルの支柱の上に設置するのでパネルの下で営農も可能」「保守管理で150人の雇用を生む」−−。夢のような話に島は沸き、8月までに地権者約1000人との間で土地の賃借契約が完了した。九電の発表3日後、島の旅館に大岩さんら住民約20人が集まった。「島の将来に絶対必要。やってもらわないと困る」。九電からの説明がない中、住民らは同席した地元の事業関係者に対し、口々に計画の続行を求めた。現段階で計画が白紙になったわけではない。だが、受け入れが再開されても九電側からは新たな設備投資などの高いハードルが課される見込みで、事業者の1社は「事業として定まっているものではない」と、見直しの可能性を示唆する。 *4-2:http://toyokeizai.net/articles/-/50377 (東洋経済 2014.10.13) 再エネに冷や水浴びせる電力会社の契約中断、太陽光発電の買い取りを止めた九州電力 「電力会社にも、国にも、裏切られたような気持ちだ」。九州電力が10月1日に福岡県で開いた事業者向け説明会。そこでは詰めかけた数百人の再生可能エネルギー事業者から厳しい声が相次いだ。九電による電力買い取りを当て込んで太陽光パネルに投資した個人事業主は、「投資が無駄になったらどうしようかと毎日不安。慰謝料は考えてくれるのか」と訴えた。事の発端は9月24日、九電が再エネの「全量固定価格買い取り制度」(FIT)を通じた買い取り申請への回答を、翌日から数カ月間「保留する」と発表したことだ。突然の“契約中断”宣告は、30日には北海道、東北、四国の各電力会社にも連鎖した。各社ともに、出力10キロワット未満の住宅用太陽光は当面対象外としたが、10キロワット以上の住宅用も少なくない。九電の説明会では、「太陽光を含めローンを組んで家を着工したが、契約中断で工事を中断している」「マンション屋上に太陽光パネルを設置する計画が頓挫した。顧客にどう説明すればいいのか」といった苦情も聞かれた。 ■「電力の供給不安定」を理由に拒否 今までも各管内の一部エリアや沖縄では、「送電線の容量不足」を理由に、接続の拒否や高額な接続工事費の請求を行う、ローカルネックの問題はあった。だが今回は管内全域が対象。自治体からも「九州全土とは想定外。福岡県は再エネ導入量全国1位だが、ブレーキになりかねない」(福岡県総合政策課エネルギー政策室)と懸念が広がる。九電によれば、今年3月だけで、FITの買い取り単価引き下げ直前の駆け込みもあり、従来の1年分に匹敵する、約7万件の太陽光の接続契約申し込みが殺到。詳細を確認した結果、7月末までの申し込みの全量が接続された場合、総量は春・秋の昼間の電力需要約800万キロワットを上回る。契約申し込み前の設備認定分も合わせると、夏のピーク需要約1600万キロワットをも超えるという。電力を安定供給するには、需要と供給を常時一致させる必要がある。もし、太陽光を含む発電の供給が需要を大きく上回れば、周波数が上昇、場合によっては自動的に発電機が停止し、大規模停電が発生するおそれがあるというのが、電力会社の回答保留の理由だ。太陽光は夜間に発電できず、昼間でも晴天から雨に変わると発電量が急減する。安定供給には太陽光以外の電源が不可欠とも強調する。今後は再エネの受け入れ可能量を数カ月かけて見極める方針。結果的に受け入れ拒否となる事業者が多数出る可能性がある。FIT法では、電気の円滑な供給確保に支障の生ずるおそれがあれば、受け入れを拒める。事業者の損害を補償する義務もない。だが問題は電力会社が再エネの受け入れ可能量を増やすための対策だ。要は、昼間に太陽光の発電で需要をオーバーする分を、どこまで調整・転用できるかである。第一には揚水発電。昼間に太陽光の電気を使って、揚水運転を行い(水を上部のダムにくみ上げ)、夕方や夜間に水を落とし発電する。通常のやり方と昼夜の運転が逆だが、これを行うことで、夜間の火力発電もセーブできる。第二は地域間連系線を使った管外への送電である。現在の連系線の空き容量を活用し、電力会社間の送受電を増やすものだ。ほかにも、太陽光の出力抑制や、蓄電池の活用といった方法が考えられる。 ■原発再稼働にらみ、再エネを減らす? そもそも今回の回答保留には疑問点も多い。一つには、接続申請が集中した3月から今回の発表まで、約半年もかかったことだ。電力側は、申し込み内容の詳細確認に時間がかかったというが、もっと早くできなかったのか。また九電の場合、7月末の再生エネの設備認定容量(政府認可)は1900万キロワットに及ぶが、導入容量(運転開始済み)は400万キロワット弱にすぎない。「この状態で唐突に回答を保留することは、通常のビジネス常識では考えられない」(大林ミカ・自然エネルギー財団事業局長)。気になるのが原子力発電との関係だ。事業者からも「川内(せんだい)原発が再稼働するから再エネの枠が減ったのでは」との質問が出た。これに対し九電は「再エネのみでは安定供給できない。ベースロード電源としての原発と、調整可能電源としての火力発電も入れた前提で、再エネの接続可能量を見極めたい」と説明。ただ川内原発1、2号機の計178万キロワット、玄海原発3、4号機の計236万キロワットの再稼働を前提にすれば、おのずと再エネの入る枠は狭まる。この点はまさに再エネに対する、国としての姿勢が問われる。欧州では再エネの優先給電が欧州連合(EU)指令で義務づけられ、再エネの出力を抑制する前に、火力や原子力を抑制しなければならない。結果としてベースロード電源が消滅に向かっているともいわれる。もちろん、電力系統の安定が大前提ではあるが、日本はまだFIT法によっても、再エネの優先義務が徹底されていない。電力会社にとっては「厄介な代物」との意識が根強く、受け入れ対策も後手後手の印象が強い。「系統接続に厳しさがあり、受け入れ容量拡大が必要なことは、FIT開始前からわかっていたはず。揚水発電の設備利用率は低く、連系線を通じた他地域への供給もあまり行われていない。本当に受け入れ枠はいっぱいなのか」と、高橋洋・富士通総研主任研究員は疑問を投げる。日本の全発電量に占める再エネの比率は、欧米に比べて低く、普及の本格化はこれから。FIT導入で、住宅用の太陽光発電の導入コストは急速に低下し、2016年には家庭向け電気料金より安くなる可能性も指摘される。低コストでエネルギー自給率を高めるためにも、電力会社が先進国の需給調整ノウハウを見習い、そして政府も再エネの推進姿勢をより明確にする必要があろう。 *4-3:http://qbiz.jp/article/47651/1/ (西日本新聞 2014年10月12日) 政府、地熱や風力の導入促進へ 再生エネ、太陽光偏重を是正 政府は12日、見直しを進めている再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に関し、現在の太陽光発電への偏重を是正して、地熱や風力発電の導入を促進する方針を固めた。小渕優子経済産業相は同日、視察先の山梨県甲州市で記者団に、「再生エネの中でバランスをとることが大事だ」と述べ、地熱や風力の拡大の必要性を示唆した。再生エネは、買い取り価格が高い太陽光に事業者の参入が集中。九州電力や東北電力など電力5社が、送電網の能力の限界から、受け入れを中断する事態になっている。政府は、太陽光に比べて発電コストが安く国民負担の拡大抑制が期待される地熱、風力の比率を高めることを目指す。小渕経産相は「再生エネを最大限導入する方針は変わっていない。年内には一定の答えが出てくると思う」と強調した。15日の総合資源エネルギー調査会新エネルギー小委員会で議論を本格化させる。地熱は開発費用はかかるが、発電にかかる費用が安価なほか、天候に左右される太陽光などと異なり安定的に発電できるメリットがあるとされる。開発期間が地熱で約10年、風力でも約5年かかり事業参入が思うように進んでいないため、てこ入れを図る。6月末の認定設備の内訳は、太陽光が6896万キロワットと再生エネ全体の96%を占め、風力は121万キロワット、地熱はわずか1万キロワットにとどまる。政府は、地熱や風力発電所の環境影響評価(アセスメント)の審査短縮などで導入促進を図る考えだ。 *4-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11357434.html (朝日新聞 2014年9月19日)原発のコスト 国富流出の試算に疑問 大島堅一(立命館大学教授、環境経済学) すべての原発が止まった状態で初めて迎えた今年の夏。電力需要のピーク時期は、大規模停電などがないまま無事過ぎた。一方で、九州電力川内原発の再稼働に向けた手続きが着々と進められている。そんな今、改めて日本のエネルギー政策を考えてみたい。今夏、政府は、エネルギーを自由に使いたい産業界に配慮してか、数値目標のない節電要請でお茶を濁した。私は「大丈夫だろうか」とかなり心配だった。しかし、結果的に、電力不足は生じなかった。元々、発電施設が過剰だった上に、2011年夏の電力危機の際に、各工場や家庭で導入された省エネ型の施設や機器が今でも節電効果を生み続けているためだろう。しかし、さらなる省エネ機器の導入を企業や家庭に促すためにも、政府は数値目標付きの節電要請をすべきだったと思う。一部に、老朽化した火力発電設備を稼働させての綱渡り操業で、「いつ大停電が起きてもおかしくない状態だった」との指摘もあった。しかし、いくつかの原発依存度が低い電力会社は高効率の火力への更新を進めており、決してすべての電力会社が綱渡りだったわけではない。経済産業省は火力発電の燃料費が13年度に3・6兆円も増加する見込みという試算を公表した。原発を稼働させず火力に頼ることで、国富が海外に流出しているという印象を内外に広めた。だが、この試算はおかしな点がある。この「3・6兆円」の試算の詳しい根拠は公表されていないが、基準になった原発の発電量には事故を起こした福島第一原発も含まれている。また、国内の発電などに使う化石燃料の13年度の費用は、10年度に比べて2・3倍になっているが、輸入数量は4割しか増えていない。つまり、化石燃料自体の価格上昇と円安が費用増大の大きな原因だ。原発が停止していることによる直接的影響は費用増のうち3分の1程度である。裏を返せば、福島以外の全ての原発を稼働させていたとしても、2兆円以上、燃料費が増えていた計算になる。何もかも原発停止のせいにして、原発を再稼働すれば巨額の貿易赤字が解消されるかのように言うのはおかしい。いまだに、「原子力は安い電力だ」と言う人がいるのには驚かされる。確かに、電力会社にとっては安いかもしれないが、それは立地対策費や事故対策費など社会的コストを、税金や電気料金に上乗せする形で国民に転嫁しているからで、それらを含めたコストは決して安くない。政府の検討小委員会は11年、使用済み核燃料の処分や廃炉の費用を含めて「1キロワット時8・9円以上」という数字を出している。事故後の最新事情を考慮して私が試算し直してみると、1キロワット時9・4~11・6円になる。本当に原発が安いと言い切れるなら、電力会社は事故対策費を含むすべてのコストを自ら負担して原発を稼働すればよい。しかし、そんなことをしたら、原発事業は到底なりたたないだろう。このことは経産省も電力会社もよくわかっている。実際、8月に開かれた経産省の原子力小委員会で、電力完全自由化の下でも原発を維持できるように、原子力で発電した電気の価格を保証することを検討している。これこそ、究極の原発生き残り策で、国民には「原発の電気は安い」と言っておきながら、一方で、原子力の膨大なリスクとコストを国民に負担させようとするのものにほかならない。これはとんでもない二枚舌だ。本来、「原子力は経済性はなくリスクも大きい。事故を起こせば巨額のコストがさらに発生する。それでもかくかくしかじかの理由から、原発は稼働させる」と国民にきちんと説明してこそ、説明責任を果たすことになるというものだ。 PS(2014.10.14追加):*5のように、原発事故に備えて自治体の防災計画作成を支援するため、内閣府に専従職員50人を配置した新しい部署が発足したそうだが、これも個別企業のために税金を使っているものであり、許し難い。また、「原発事故に備えた自治体の避難計画作り」とのことだが、使用済核燃料の捨て場もないのに原発を再稼働して、再度大きな事故を起こされるのは御免である。原発よりも、長い時間をかけて切り開いた農地や海の方がよほど大切な財産だ。 *5:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141014/k10015380811000.html (NHK 2014年10月14日) 原発事故時の防災計画作成支援で新部署 原子力発電所の事故に備えた自治体の防災計画の作成を支援するため、内閣府に専従の職員50人を配置した新しい部署が発足しました。発足したのは、局長級をトップに、50人の専従職員からなる原子力防災の担当部署で、原発事故に備えた自治体の避難計画作りへの支援などを担います。望月原子力防災担当大臣は「避難計画への国民の関心の高さは改めて言うまでもない。福島の事故の教訓を忘れず、自治体と共に計画作りに取り組んで欲しい」と述べました。原発事故に備えた防災計画や避難計画を巡っては、これまで内閣府が自治体に助言をしたり、作成の手引きを示したりしてきましたが、専従の職員はおらず、原子力規制庁の職員およそ30人が兼務していたため支援体制が不十分だと指摘されていました。今回発足した部署では、規制庁の職員が出向したり、ほかの省庁の職員が常駐したりして、専従で業務に当たるということです。原子力防災の支援は、これまで原子力規制委員会の審査がもっとも早く進んだ鹿児島県の川内原発の周辺地域に重点が置かれてきましたが、今後は、そのほかの原発がある地域への支援が本格化することになり、それぞれの実情に合わせたきめ細かい支援を行って避難計画の実効性を高めていけるかが課題になります。 PS(2014.10.15追加):*6について、これまで40年以上に渡り原発に数兆円の税金を投入し、これからも天文学的金額の税金を投入せざるを得ないにもかかわらず、まだ始まって10年前後の再エネの買取価格はすべて電気料金に上乗せして税金での補助を行わない理由を、国民が納得できるように説明しなければ、政府及び経産省の信用はさらに下がって地に落ちるだろう。そもそも、会計上、明確に区別して集計できるようにすれば、後は電力の需要者が選択する。また、*7は全くそのとおりで、*8は、農業団体から陳情するのがよいだろう。 *6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141015&ng=DGKDASDF15H05_V11C14A0MM0000 (日経新聞 2014.10.15) 再生エネ、入札制を検討 買い取り価格柔軟に、経産省、国民負担を抑制 経済産業省は再生可能エネルギーの買い取り価格を柔軟に見直せるようにする。発電コストの安い事業者を優遇する入札制度の導入、価格の改定時期を1年ごとから半年ごとに短くする案などを検討する。国民が負担する費用を抑えると同時に、太陽光発電に偏重した再生エネ制度を見直し、新規契約の中断に揺れる現状の打開策を探る。経産省は15日に開かれた総合資源エネルギー調査会新エネルギー小委員会で、「固定価格買い取り制度」の見直しに向けた論点を正式に示した。太陽光発電への新規参入や発電施設の新増設の凍結など当面の対策も盛り込んだ。小委員会の議論を踏まえ、年内に具体策をまとめる。再生エネの参入の9割以上は、電力会社が買い取る価格がほかの発電に比べ高く、事業者に有利な太陽光発電に集中している。そのコストは毎月の電気料金に上乗せされ、利用者に転嫁されている。経産省は国民負担の抑制策の一つに、スペイン、ドイツが採用している入札制度の導入をあげた。事業者間のコスト引き下げ競争を促す効果が期待できる。そのほか、価格を決める際に最もコストの低い事業者を基準にすること、価格改定の頻度を上げ、機動的な価格下げを可能にすることも検討課題とした。太陽光発電への参入集中に歯止めをかける対策としては、買い取り量が政府が目標とする一定の水準を超えた段階で、優遇価格から他の電源と同水準に切り下げる仕組みなどを検討する。太陽光に代わる電源として、地熱発電を重視、発電した電力を地域内外に送る際、地熱向けを一定程度確保する案などもあがっている。経産省は議論を踏まえ、年内に具体的な対応策を打ち出す。同制度を抜本的に見直すことになった場合、経産省は省令を改めたり、2015年以降の国会で再生可能エネルギー特措法の改正を検討することになる。再生エネをめぐっては推進論と見直し論が交錯しており、制度見直しは難航が予想される。経産省は小委員会の下に作業部会を設け、電力各社の受け入れ能力の検証も進める。初会合を16日に開き、現在の送電網による受け入れ能力の拡大を検討する。具体的には電力会社が発電事業者から電力を受け入れなくてもいい期間を現在の30日から長く設定し、電力会社が需給の調整をしやすくする案などを検討する。不安定な太陽光で発電する電気をためるための蓄電池や送電網を増強して受け入れ能力を拡大するのも検討する。固定価格買い取り制度は再生エネで発電した電力を一定の価格で最長20年にわたり電力会社に買い取りを義務付けている。12年の開始以降、買い取り価格が高く設置が容易な太陽光発電所に事業者が殺到し、国が認定した設備容量の9割超が太陽光に集中している。九州など電力5社は急増した再生エネが送電線の受け入れ能力を超えるとして、10月以降、受け入れを止めている。国が同制度の適用を受ける太陽光発電の認定を拡大したことで、国民負担の増大が懸念されている。再生エネを買い取る原資は電気料金に上乗せする形で年2700円(一般家庭)を徴収。認定済みの事業者が全発電所を稼働すれば家庭の負担が1万円を超すことが見込まれる。 *7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014101502000241.html (東京新聞 2014年10月15日) 政府、長期展望欠く 電力会社、なお原発優先 再生エネ買い取り 再生可能エネルギーの拡大に貢献してきた固定価格買い取り制度が、開始からわずか二年余りで大きな見直しを迫られることになった。これは再生エネを導入するために必要な長期展望を欠いた政府と、原発の再稼働を優先する電力会社の非協力的な姿勢が背景にある。政府は民主党政権時の二〇一二年に固定価格買い取り制度を始めて再生エネを増やす目標を掲げた。しかし、政権交代した自民党が原発重視にかじを切ったことで、再生エネの位置付けがあいまいになった。欧州各国では、再生エネの発電量が導入から十年で数十倍に跳ね上がっており、制度開始後に爆発的に増えるのが常識となっている。日本の場合、今後の見通しが二倍になっただけで抜本的な見直しを迫られたのは、どこにどの程度の再生エネ発電所を誘致するのか、それを吸い上げるためにどれだけ送電網を準備するのかといった長期展望を描かず、必要な対策も怠ったためだ。また、今回はまず九州電力が九月二十五日に受け入れ手続きを中断。同三十日には、東北電力など大手四社が、それぞれ状況が異なるにもかかわらず、電力需要に対しどれぐらいの買い取り申請が積み上がっているのかといった情報を開示しないまま、一斉に中断を表明した。再生エネを地域振興の柱としていた自治体や、発電を計画していた事業者、発電設備の販売会社など幅広い関係者は衝撃を受け、不信感を強めている。経産省は十六日から、別の専門家部会をつくって電力各社の主張が妥当なのか検証するほか、将来的に再生エネを拡大するための方策を検討する。東京都内で新規のメガソーラーを検討していた業者は「はしごを外すような政府の対応に腹が立つ。再生エネの導入機運がしぼまないよう、前向きに議論してほしい」と議論の行方を注目している。 *8:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30287 (日本農業新聞 2014/10/15) [波紋 再エネ契約中断 上] 小水力 米農家支援 足踏み 山形県酒田市、高知県香美市 電力5社(北海道、東北、四国、九州、沖縄)が、小水力や太陽光など再生可能エネルギーの固定価格買取制度に基づく契約の受け付けを中断したのを受け、売電を計画していた農山村地域に波紋が広がっている。契約できない事態になれば、見込んでいた売電収益が得られないからだ。現場の実情を報告する。 ●実現へ時間 計画後手に 山形県酒田市の日向川土地改良区。農業用水を活用した出力118キロワットの小水力発電施設を整備しようと、2年前から準備してきた。今年度末にも東北電力と買取契約を完了する。そんな見通しが立った矢先、新規契約の一時中断を突きつけられた。「先行きがまったく見えなくなった。何もしなければただの水の流れ。それが“宝の流れ”になるはずだったのに……」。同改良区の富樫善弘理事長は、歯がゆさを募らせる。日向川から取水した農業用水を約5600ヘクタールに供給する土地改良区は、その水資源に着目。総工事費約4億円をかけ、発電施設を整備する計画を打ち出した。工事費の85%を国や県、市町村が負担し、残り15%を土地改良区が金融機関からの融資で捻出する。既に県が事業主体となり施設の詳細設計にも入った。売電収入は年間約2200万円を見込む。農家経営は米価下落、電気・燃料代高騰で厳しい。それだけに売電収入を土地改良区の施設の維持・管理に充て、農家負担を少しでも減らしたいと、長い時間を費やし計画を具体化してきたのだ。富樫理事長は「これから地域で小水力を導入しようと考える農業者が萎縮しかねない」と不安視する。東北電力が新規契約を一時中断したのは、出力50キロワット以上の発電設備だ。管内の再エネ発電設備の認定量(5月末時点)が1149万キロワットに達し、全てを受け入れると、「管内の電気の需要量を超え、電気の安定供給に支障をきたす恐れがある」(東北電力電力システム部)からだ。背景には太陽光発電設備の急増がある。実際に認定量の93%を太陽光が占める。約半年で簡単に建設できるとあって、契約の申し込みが殺到した。これに対し、小水力は水路に合った専用の発電機を設計・製作しなければならない。後手に回らざるを得ないのだ。小水力での発電が見込める量が全国8位の山形県は「太陽光の急増で出はなをくじかれた。小水力の場合、計画から最低でも2年はかかる」(農村整備課)と指摘する。農業用水路などを活用した小水力発電を2016年度までに計1400キロワット整備する目標を掲げ、100地点の発電候補地の選定と優先順位づけに取り組むだけに、危機感が強い。他の電力会社管内でも、小水力発電の計画に支障が出ている。中国四国農政局によると、四国で計画中の4カ所のうち愛媛県西条市、高知県香美市の2カ所が契約申請前にある。その一つ、香美市の山田堰井筋土地改良区は、16年の運用開始を目指し、出力90キロワットの発電施設の設計を発注しようとしていたところだった。売電収入は年間1200万~1300万円を見込み、水利施設の補修費や人件費の一部に充てたいと準備してきたという。植野寛事務局長は「小水力発電は、地域の水を守る公共の意味合いが強い。その点を十分に考慮し、計画通りに進むよう、対応してほしい」と訴える。
| 原発::2014.8~10 | 05:25 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2014,10,06, Monday
*2より *3-4より *3-3より *3-1より (1)電源構成比率は、自由主義経済では人為的に決めるべきではない *1-1に書かれているように、4月に閣議決定された政府の「エネルギー基本計画」で、原発は「重要なベースロード電源」と位置づけられ、小渕経産相は「欠点のないエネルギーはないため、将来の電源構成比率をできるだけ早期に設定したい」とたびたび答弁しているが、初動時のインフラとして送電線を整え終えれば、その後はどれかの電源に多額の補助金をつけて推進するのは不公正であると同時に、よりよいものを残していくための市場を失敗させることになる。そのため、環境の見地から公害を出さないエネルギーに補助し、公害を出すエネルギーからは税金を取って、外部不経済を内部化すること以外は、本来、政府がやるべきではない。 (2)火山群近くにある川内原発が安全だとするのは、科学的に無理がある 日本の火山と温泉 日本の活火山 プレートと火山 火山ができる仕組み (火山は、プレートに押されて上がってくるマグマによるため、東日本大震災前後に活発化したようだ) *1-2に書かれているとおり、火山は、いつ、どこで、どんな噴火を起こすか分からないにもかかわらず、巨大噴火は予知できるとして火山群の近くにある川内原発を再稼働するのは、新規制基準を通っていても危険だ。「万が一事故が起きた場合は関係法令に基づき、政府が責任を持って対処する」と言っても、個人的に責任をとる人はいないため、結局は国民への付けになる。 また、原発の専門家を中心とする原子力規制委員会は、御嶽の噴火後、「巨大噴火は平均9万年に一度。今回より大規模な噴火に遭っても原発に影響はない。噴火の予兆は監視しており対処できる」との考えを示しているが、火山の専門家は「巨大噴火の予知は今の研究レベルでは不可能」としており、「巨大噴火は平均9万年に一度」という根拠もない。現に、新燃岳、桜島、阿蘇山は、噴火し続けている。 このような中、*1-3のように、原子力規制委員会の田中委員長が、「規制基準は安全を守る最低レベル。安全性向上は事業者が自らの責任で取り組む必要があり、その考えを共有したい」として原発の安全対策について電力会社トップの心構えを確認する意見交換会を行うとのことだ。原子力規制庁は「意見交換は審査とは直接関係ない」と位置付けているが、九電の川内原発1、2号機は再稼働の前提となる審査が最終段階に入っており、瓜生社長の発言が注目される。そして、ここでの火山対策と関連する「保安規定」に関する開示は、注目に値する。 (3)再生可能エネルギーと原発は、同じくらいの欠点がある電源なのか *1-1で、小渕経産相は、経産省が準備した原稿どおりの答弁で、「欠点のないエネルギーはないため、バランスが大切」と繰り返し、「将来の原発依存度を決める必要があるが、いまの段階で何%かを示すことはできない」としている。しかし、100%国産で燃料費がかからず公害も出ない再生可能エネルギーと、このブログの2014.10.3の(1)にも記載しているとおり、事故を起こせば大変な環境汚染を起こす原発が、同じくらいの欠点があるとは言えない。そのため、それぞれの欠点を列挙し、ありうる解決法を示した上で、環境負荷や財政負担の大きすぎるエネルギーは除外するのが当たり前である。 なお、2014.10.3付のこのブログの*2-1に記載されているとおり、原発を再稼働させたい電力会社は、「太陽光発電は天候によって発電量が大きく左右され、受給バランスが崩れると大規模停電が起きる可能性がある」と繰り返し、小渕経産相も、答弁でそれを何度も繰り返した。しかし、*2のように、気象衛星で太陽光量を把握して発電量・太陽熱利用・農作物の収穫量の予測を可能にする方法を東大が開発しており、欧米では、日射量や風量などの気象予測を利用して問題を克服し、国内の総発電量の50%以上を再生可能エネルギーが占めても安定供給に問題は起きていないのだ。 つまり、政治家がやるべきことは、電力会社や行政が言いたてるネックをオウム返しに繰り返すことではなく、よりよい解決策を政策にすることなのである。 (4)高レベル放射性廃棄物の処分について *3-1に書かれているとおり、九電川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査が最終盤に入り、9日から地元説明会が始まるそうだが、再稼働させればまた増える高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分問題は解決のめどがまったく立っていない。 これに対して、経済産業省の地層処分技術ワーキンググループが、処分場の選定をめぐって避けるべき条件を「①火山から15キロ以内」「②過去10万年の隆起量が300メートル超」とまとめたが、とてもそれで十分とは思えないため検証が必要である。さらに、*3-2に書かれているように、原発を使った分だけ生じる高レベル放射性廃棄物は、10万年程度は閉じ込めておく必要があるが、その処分地選びは行き詰まっているのだ。 そのため、*3-2のように、学術会議の報告書は、「地上施設で30年間暫定保管し、それは各電力会社の管内ごとに設けることを議論の出発点にするのが望ましい」としたそうだが、地上の場合は、地震・津波などの自然災害だけでなく、テロや戦争による攻撃についても原発と同様の考慮が求められる。また、空冷ではむき出しで保管することになるため、周囲への放射能の影響をどうするのか、まず明確にすべきだ。 また、*3-3のように、国内の原発では行き場のない使用済核燃料が溜まり続け、電力各社は主に原発建屋内の水を張ったプールに一時貯蔵しているが、日本原子力発電を含む電力会社10社の貯蔵容量2万810トンに対し、貯蔵量は1万4330トンと7割近くに達している。九電玄海原発の場合は、既に8割以上埋まっており、ここに対する災害やテロ・戦争による攻撃があれば西日本は壊滅する。そして、これを、特定秘密にすれば解決する問題だと考えるのは論外であり、使用済核燃料の問題は地下300メートル以上の地下水の来ない最終処分場に処分しなければ解決しないのだ。 なお、*3-4、*3-5に書かれているとおり、使用済核燃料のプールでの保管は、不測の事態に対して非常に弱く甚大な放射線被害が起きる危険性が高いことが福島第一原発事故で浮き彫りになった。また、政府は、「核燃料サイクル事業」で原発燃料として再利用することを前提としていたが、それも、実際には高速増殖炉「もんじゅ」と「プルサーマル計画」で、技術面及び採算面で行き詰まっている。 (5)中間貯蔵の安全性について *4-1のように、福島県内汚染土壌を中間貯蔵する法案が閣議決定され、その内容は「①同施設の安全確保など国の責務を明記」「②使用開始後30年以内に県外での最終処分を完了させる」との内容だそうだが、中間貯蔵施設の構造で①の安全確保は守られるのか、最も危険な時期の最初30年を中間貯蔵して30年以内に県外で最終処分する②は合理的か について、国会は十分に検討すべきだ。 *4-2に書かれているように、保管する土壌は放射性セシウム濃度に応じて、1型、2型、それ以上という分類があるそうで、内容は以下の通りだが、これではとても安全とは言えず、どこが駄目かは、私は既にこのブログで記載している。 1)1型:放射性セシウム濃度が1キログラムあたり8000ベクレル以下 放射性物質の濃度が比較的低く、地下水を汚染する恐れがないため、低地に埋める。汚染土を 埋めた後、上面に汚染されていない土で覆うことによって放射性物質が外に飛び散る外部被曝を 防ぐ。草木などの可燃物は減容化施設で焼却して灰にして量を減らす。 2)2型:放射性セシウム濃度が1キログラムあたり、8000ベクレル以上、10万ベクレル以下 底面に遮水シートや水を通しにくい地層などを備えて丘陵地や台地に置く。雨水などは排水管を 通じて水処理施設に集め、放射性物質を取り除いてから河川に放出する。汚染土を埋めた後、 上面に汚染されていない土で覆うことによって放射性物質が外に飛び散る外部被曝を防ぐ。草木 などの可燃物は減容化施設で焼却して灰にして量を減らす。 3)放射性セシウム濃度が1キログラムあたり10万ベクレルを超えるもの 専用のドラム缶に入れ、鉄筋コンクリート構造等の遮蔽効果がある廃棄物貯蔵施設で保管する。 (6)女性大臣にのみ女性目線の素晴らしいアイデアや信念を求めるのも女性の昇進差別に繋がる 女性初の経産相となった小渕氏は、「何が女性目線、男性目線なのかわからない」と答えるなど“気負いがない”そうだが、この原発政策や放射性廃棄物の処分政策に賛同しているのであれば、周囲の空気に合わせているだけであるため、特に女性目線の主張はしておらず、経産省という男社会で作られた政策をしゃべっているだけである。 そのため、周囲の人から見れば抵抗がないためやりやすく、それが経産相に抜擢された理由だろうが、男性にもそのような人は多いため、女性大臣にのみ女性目線の素晴らしいアイデアや信念の貫徹を求めると、女性にだけ高いハードルを課すことになり、女性の昇進差別に繋がる。本当は、政治家が行政の書いたシナリオに沿ってしか政策を語れないのが、日本の民主主義にとって致命的なのである。 <電源構成について> *1-1:http://jp.reuters.com/article/domesticJPNews/idJPKBN0GZ16520140904?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0 (ロイター 2014年 9月 4日) 将来の原発依存度、「できるだけ早期に設定したい」=小渕経産相 4月に閣議決定した政府の「エネルギー基本計画」では、原発について「重要なベースロード電源」と位置づける一方で、「可能な限り依存度を低減させる」としており、矛盾した内容との批判がある。小渕氏は、将来の原発依存度は3割を下回る水準が基本方針かとの質問に対して、「30%を切るのか切らないのか、いまの段階で何%かを示すことほはできない」と述べた。 <初の女性経産相、原子力で試される力量> 第2次安倍改造内閣の最年少閣僚で、女性初の経産相となった小渕氏。内閣改造で話題となった女性の積極登用について聞かれると、「何が女性目線、男性目線なのかわからない」と答えるなど、気負いはみせない。とはいえ、課題の先送りを長年続けたことで、東京電力福島第1原発で最悪の事故を招く温床となった原子力政策にメスを入れ、質的向上に本気で取り組むことは、老練なベテラン政治家にも容易ではない。特に、原発から出る放射性廃棄物の最終処分場のめどが立っていない実態は、長年、「トイレなきマンション」と揶揄され、原子力政策の先送り体質の象徴だ。小渕経産相は、最終処分場の確保について、「いまの時代を生きる世代の責任として解決していかなければいけない課題。国が主体的にかかわる」と述べた。原子力賠償制度の見直しについても、「国の責任のあり方については、関係省庁が参加して原子力賠償制度の見直しに関する副大臣等の会議で検討がされている」と語った。最終処分場と賠償制度の見直しに関する小渕氏の言及は、すでに政府が方向性としては示している内容にとどまる。これらの課題をどう具体化させるのか。小渕経産相の在任中の課題となりそうだ。 *1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014100602000139.html (東京新聞 2014年10月6日) 原発再稼働 御嶽噴火は新たな教訓 火山は、いつ、どこで、どんな噴火を起こすか分からない-。御嶽山は教えている。巨大噴火は予知できると、火山群近くにある川内原発の再稼働を急ぐのは、科学的に正しいことなのだろうか。九州電力川内原発が新たな規制基準に「適合」と判断された後、地元の薩摩川内市長と鹿児島県知事は、政府から経済産業相名の文書をそれぞれ受け取った。「万が一事故が起きた場合は関係法令に基づき、政府が責任を持って対処する-」。だが、どのような事故を想定し、具体的に何ができるのかは定かでない。むろん原発事故は、電力会社や自治体の手に負えるものではない。だが、政府の力も到底及ばないことを福島の事故は教えている。原状回復や補償はおろか、後始末さえままならない。原発事故の責任を負える者など、この世には存在しない。万が一にも、あってはならない事故なのである。川内原発再稼働のハードルは、地元合意を残すのみだとされている。周辺住民へ安心をアピールするためとしか思えない。ところが地元や周辺住民は、白煙を上げる御嶽山と、噴火被害の甚大さを知って、新たな不安を募らせているのではないか。川内原発は火山の群れの中にある。九電も原発の半径百六十キロ以内に、将来、噴火活動の可能性が否定できない火山が十四あると認めている。原子力規制委員会は御嶽の噴火後も「巨大噴火は平均九万年に一度。今回より大規模な噴火に遭っても原発に影響はない。噴火の予兆は監視しており、対処はできる」との考えを変えてはいない。「巨大噴火の予知は今の研究レベルでは不可能」とする火山噴火予知連絡会の見解と食い違う。かつて御嶽は活動を終えた死火山と考えられていた。有史以来の噴火が起きたのは一九七九年。つい最近と言っていい。今回も新しいタイプの水蒸気爆発という。三年前に噴火した霧島連山・新燃岳の場合、前兆はあったが正確には予知できなかった。地震同様、火山や噴火の正体を、科学はまだまだとらえてはいない。安倍晋三首相は先日の所信表明で「(規制委の)科学的・技術的な判断を尊重し再稼働を進めます」と、原発回帰を宣言した。規制委の判定は十分科学的だと言えるのか。川内原発の適合をより多くの見地から見直す方が、科学的だと言えるのではないか。 *1-3:http://qbiz.jp/article/47170/1/ (西日本新聞 2014年10月5日) 九電社長の心構えを確認 規制委、29日にも意見交換会 原子力規制委員会が、原発の安全対策について電力会社トップの心構えを確認する意見交換会の第1弾として、29日にも九州電力の瓜生道明社長を招く方針を固めた。九電の川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)は再稼働の前提となる審査が最終盤に入っており、瓜生社長の発言が注目される。規制委は8月、意見交換会を今秋から順次実施する方針を決定。田中俊一委員長は「規制基準は安全を守る最低レベル。安全性向上は事業者が自らの責任で取り組む必要があり、その考えを共有したい」と、その狙いを説明していた。川内原発は、原発の基本的な設計方針や安全対策を記した「設置変更」の申請書が9月に承認されるなど、全国の原発で最も審査が進んでいる。意見交換は「審査とは直接関係ない」(原子力規制庁)位置付けだが、火山対策と関連のある「保安規定」や機器の耐震設計を記した「工事計画」が残っており、今後の審査に影響を及ぼす可能性もある。意見交換には規制委の委員5人が参加。九電からは瓜生社長のほか、原子力担当の山元春義副社長が出席する見通しだ。 <再生可能エネルギー> *2:http://qbiz.jp/article/47183/1/ (西日本新聞 2014年10月6日) 気象衛星で太陽光量把握 東大開発 発電量の予測可能に 気象衛星「ひまわり」の観測データから、雲やちりによる太陽光の反射、散乱を想定し、地上に届く太陽光の量を高い精度で把握する技術を、東京大学大気海洋研究所の中島映至教授らのチームが5日までに開発した。天候に左右されやすい太陽光発電を大規模に導入する場合に不可欠とされる発電量の予測に活用できる技術で、電力の安定供給に役立つ可能性がある。同研究所の竹中栄晶特任研究員は、ひまわりのデータから太陽光の反射や散乱の影響を分析し、日本や周辺の地上や海に届く太陽光の量を、1キロ四方ごとに短時間で計算するモデルを開発した。千葉県の太陽光発電施設で、モデルによる推定発電量と実際の発電量がほぼ一致すると確かめた。太陽熱利用や農作物の収穫量の予測に関する実証実験も進めている。また雲の動きや、太陽光の量の変化を分析することによって、6時間程度先の発電量の予測が可能になると見込めるという。太陽光発電は固定価格買い取り制度の導入によって国内で急増。安定供給に支障があるなどとして、電力買い取り中断を発表する電力会社が相次いだ。だが発電量の変化が予測できれば、火力発電の運用を小刻みに変えるなどし、太陽エネルギーを最大限利用することができるとみられる。7日に打ち上げ予定のひまわり8号による観測が始まると、データの更新間隔が短くなり予測精度が増すという。チームは「電力の分野でも気象情報を活用する時代だ。結果的に化石燃料代を減らし、二酸化炭素排出量の削減にも役立つだろう」としている。 ●欧米活用 再生エネ拡大 再生可能エネルギーを利用した発電は天候により出力が変動しやすく、電力供給網への大量導入は難しいとの指摘がある。だが欧米では、日射量や風量などの気象の予測を利用して問題を克服しており、国内でも積極的な活用を求める声が強まっている。世界自然保護基金(WWF)ジャパンなどによると、再生可能エネルギー導入の先進国のドイツやスペインでは、短時間とはいえ、国内の総発電量の50%以上を再生可能エネルギーが占めることがあるが、安定供給に問題は起きていない。気象情報を活用し、発電量の変動をかなり正確に予測しているためで、再生可能エネルギーによる電力が不足すると見込まれる場合は、火力発電を準備して補うといった運用をしているという。仮に供給能力が需要量を上回ったとしても、今回、東京大のチームが開発したような太陽光発電量を把握するシステムを活用すれば、いつ、どの程度の電力が供給過剰になるかを予測し、一時的に太陽光発電を電力供給網から切り離すといった方法で対応できる可能性がある。 <放射性廃棄物の処分について> *3-1:http://qbiz.jp/article/47202/1/ (西日本新聞 2014年10月6日) 「核のごみ」現状と課題は 最終処分場 九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査が最終盤に入り、9日からは地元説明会も始まる。審査がすべて終了し、地元同意が得られれば政府は再稼働させる方針だ。東京電力福島第1原発事故を踏まえて策定された新規制基準下では初となるが、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分問題は解決のめどがまったく立っていない。「トイレのないマンション」と批判される原発の課題を検証する。 ◆最終処分場 核のごみの最終処分関係閣僚会議が昨年12月、処分場探しの「前面に立つ」との方針を掲げてから9カ月半たったいまも、国は具体的な選定方法を示せずにいる。同会議は9月末に開いた会合で、有識者の作業部会によってさらなる選定条件の検討に入ることを確認したが、「いつまでにまとまるかは、議論次第」(資源エネルギー庁)という状況で、見通しは立っていない。「政治の責任として、処分地選定を最大限前進させるべく一丸となって取り組んでほしい」。9月30日、首相官邸で開かれた関係閣僚会議の第2回会合。冒頭にあいさつした菅義偉官房長官の言葉には、川内原発の再稼働が迫りながら、核のごみ対策が進んでいない現実への危機感がにじんでいた。処分場の選定をめぐっては、経済産業省の地層処分技術ワーキンググループが今年5月までに避けるべき条件を議論。「火山から15キロ以内」「過去10万年の隆起量が300メートル超」などの条件をまとめた。それに沿う適地は実に国土の7割に及ぶ。このため、国は、核のごみの輸送ルートや人口密度、現在の土地利用の状況など新たな条件を早急に設定。有望地を数カ所に絞り込んで、選ばれた地域に対して処分場建設の検討を申し入れたい考えだ。作業部会は今月中にも検討作業に入る。ワーキンググループの委員長を務めた原子力安全研究協会の杤山(とちやま)修氏(処分システム安全研究所長)は「絞り込みの過程で不公平さを指摘されるなど、困難な作業になる」と懸念する。ただ、いつまでも悠長には構えていられない。使用済み核燃料を再処理する日本原燃(原燃)は、工場が立地する青森県と同県六ケ所村と「最長50年間の管理期間終了時点で(高レベル放射性廃棄物を)搬出する」とする協定を結んでいる。原燃は1995年に高レベル放射性廃棄物の受け入れを開始。期限(2045年)までは31年ある。ただ、核のごみの処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)は、処分場建設に「調査開始から30年必要」としており、実は残された時間はほとんどない。原発を動かす上での最大の懸案をいつまでも決めきれない政府に六ケ所村幹部はこうくぎを刺す。「すぐにでも調査に入らないと処分場建設は間に合わない。協定の見直しは許されない」 *3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11367784.html (朝日新聞 2014年9月25日) 原発ごみ、宙に浮く提言 学術会議「最終処分見直し、暫定保管を」 政策反映めどなし 原発を使った分だけ生じる高レベル放射性廃棄物。10万年程度は閉じ込めておく必要があるが、処分地選びは行き詰まっている。日本学術会議は2年前、従来の政策を白紙に戻して見直すよう提言。近く具体策をまとめた報告書を公表する。だが、提言が政策に反映される見通しは立っていない。これまでの政策方針や制度を原点に立ち返って考え直す――。2012年9月、学術会議は、原発から出る「核のごみ」をめぐる方針の大幅な方向転換を求める提言をまとめた。国は、使用済み核燃料で生じる高レベル放射性廃棄物は、地下300メートル以深に10万年程度閉じ込める「地層処分」の方針で、02年に最終処分場選びに向けた調査地の公募が始まった。しかし応募は広がらず、国の原子力委員会が10年、打開策を探るための検討を学術会議に依頼していた。提言は、翌年に起きた東京電力福島第一原発事故も踏まえてまとめられた。処分をめぐる科学や技術の限界を認め、原発のあり方も含めて広く国民が問題意識を共有する必要があると指摘。社会の合意が得られるまで処分を進めない「暫定保管」と、廃棄物を一定以上増やさない「総量管理」の考え方を打ち出した。 ■地上施設で30年 学術会議はその後、技術、社会の2分科会で具体化を検討。今夏、報告書案がほぼまとまった。暫定保管は地上施設で30年間。施設は最終処分地とは別に、各電力会社の管内ごとに設けることを議論の出発点にするのが望ましいとした。分科会は、最大300年までの期間と、地上施設と地下施設のメリット、デメリットを検討した。地上の場合は、地震や津波などの自然災害について原発と同様の考慮が求められる。保管が50年を大幅に超えると、建て替え工事や地元との協議も必要になる。一方、地下は最終処分に準ずる地盤や地質の確認が必要で、時間や費用が増える。その場所が最終処分場になる懸念が出て設置が進まないおそれもある。報告書案では、福島第一原発でも津波や地震の被害を免れた空冷式の地上施設を選んだ。期間を30年としたのは、将来に負担を先送りせず、原発を使ってきた現世代で責任を持って方向性を決めるためという。「現世代の責任を果たす観点で、全員が当事者として考え直さなければ」「事業主体は電力会社が適切。これまで原発が55基できたのは、良くも悪くも電力会社ががんばったからだ」。社会の分科会では、こんな意見が交わされた。各地に施設を設けるのも、現世代の責任と、廃棄物を生み出してきた電力会社の「発生者責任」を重視したためだ。さらに原発の再稼働は暫定保管施設の確保を条件にすべきだと踏み込み、中立的な委員会で合意形成を主導するよう提案する。「行き当たりばったりではなく、責任を持って考えるべきだ。倫理や負担の公平性の問題を考えないと、打開できない」(分科会委員長だった舩橋晴俊・法政大教授=8月死去)というのが報告書案の趣旨だ。 ■政権は冷ややか だが、現実の政策に反映される見通しは立っていない。学術会議の提言後に政権が交代、原子力委員会も役割が変わった。安倍政権が今年4月に閣議決定した「エネルギー基本計画」も暫定保管に触れず、自民党小委員会による6月の提言も「これ以上、最終処分を先送りすべきではない」として暫定保管を否定した。暫定保管を数十年から数百年とした2年前の提言に比べて報告書案の期間は大幅に短く、経済産業省からも「そもそも30年では、現政策の使用済み燃料の中間貯蔵と変わらない」と冷ややかな声が出ている。 *3-3:http://qbiz.jp/article/47205/1/ (西日本新聞 2014年10月6日) 貯蔵率、玄海は8割超す 使用済み燃料 国内の原発では、行き場のない使用済み核燃料がたまり続けている。電力各社は主に原発建屋内の水を張ったプールに一時貯蔵しているが、日本原子力発電を含む電力会社10社の貯蔵容量2万810トンに対し、貯蔵量は1万4330トンと7割近くに達する。九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)のように既に8割以上埋まっている原発もある。国の見立てでは、使用済み核燃料は貯蔵プールで一定程度冷やした後、日本原燃の工場(青森県六ケ所村)に運んで再処理。取り出したウランとプルトニウムをMOX燃料として加工して、原発で再利用する。再処理の後に残る廃液はガラスと混ぜて固め、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)として300メートル以下の地中に埋設する。いわゆる「核燃料サイクル」の流れだが、その鍵の一つである再処理工場が操業のめどが立たず、サイクルは回っていない。使用済み核燃料がたまり続けているのは、そのせいだ。原発が再稼働すれば、使用済み核燃料はまた増える。仮に玄海原発が再稼働した場合、約1年ごとの定期検査で使用済み核燃料は1基につき20トン前後発生する。満杯になれば原発に新たな核燃料を入れられず、運転を止めざるをえない。九電は急場をしのぐため、2010年に玄海原発3号機のプールの容量を2倍にする拡張工事を国に申請した。しかし、認可直前で東京電力福島第1原発事故が発生し、審査はストップしたままだ。電力各社は、使用済み核燃料を一時的に保管する「中間貯蔵施設」を新たに建設して、時間を稼ぐ作戦に出ようとしているが、これも抜本的な解決策とはいえない。 *3-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11357420.html?_requesturl=articles%2FDA3S11357420.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11357420 (朝日新聞社説 2014年9月19日) 核燃サイクル 限界が迫っている 現在、日本には使用済み核燃料が全国18カ所の原子力発電所などに保管されている。合計で1万7千トン、大半が使用済み燃料プールに入っている。プールでの保管は、災害やテロなど不測の事態に対しては非常に弱く、甚大な放射線被害が起きる危険が高い。福島第一原発の事故は、この問題も浮き彫りにした。ところが、使用済み燃料の保管や処分をめぐる論議は進んでいない。16日に開かれた経済産業省の原子力小委員会も「使用済み燃料問題」を議題に据えていたのに、議論は深まらなかった。なぜなのか。一番大きな原因は、政府が「核燃料サイクル事業」の継続方針を変えないことにある。確かに、この計画は使用済み燃料を全量、高速増殖炉や既存の原発の燃料として再利用することが前提なので、実現すればプール保管の問題は解消する。しかし、実際には高速増殖炉「もんじゅ」にしろ、既存原発で再処理した燃料を使う「プルサーマル計画」にしろ、技術面でも採算面でも行き詰まりは明白になっている。一方で震災後、内閣府の原子力委員会は、再処理より直接処分するほうが安上がりであるとの試算を示している。さらに、当面の間、使用済み燃料を安全な容器に入れて地上保管する「乾式貯蔵」についても、燃料プール保管の危険を回避する手段として有効なことが日本学術会議などで指摘されている。こうした処理方法を具体化するためには、現行の核燃サイクル事業の見直しに着手する必要がある。これまで再処理施設を受け入れてきた青森県との関係も見直しとなるが、そこに着手しないかぎり、プール保管の危うさは解決の糸口が見えてこない。現在、使用済み核燃料は財務上「資産」として扱われているが、廃棄物となれば「負債」として会計処理する必要がある。こうした課題を含めて、政府はまず、核燃サイクル事業の客観データを示して、政策転換を打ち出すべきだ。このまま原発再稼働が進めば、原発内のプールは一番早いところで、3年で容量の限界に達する(経産省試算)。さらに、16年には電力小売りが全面自由化され、規制料金制度の撤廃も予定されている。プルサーマル計画は、原発をもつ電力会社が財務的に支える形となっており、自由化の重荷になることは明らかだ。政府の持ち時間は限られている。 *3-5:http://qbiz.jp/article/47204/1/ (西日本新聞 2014年10月6日) トラブル連続、後引けず もんじゅ 約1万点の機器の点検漏れが発覚し、昨年5月に原子力規制委員会から事実上の運転禁止命令が出された高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)。運転再開は見通せず、核燃料サイクルの中核という位置づけも揺らいでいる。もんじゅを運営する日本原子力研究開発機構は2014年度内の命令解除を目指し、今年11月に規制委に保安規定変更などを申請する予定。だが、運転禁止命令を解除する審査には先例がなく、「審査にどのくらい時間を要するか分からない」(原子力規制庁)のが現状だ。消費した以上の燃料を生み出すため「夢の原子炉」と言われたもんじゅだが、1994年の初臨界以降、ナトリウム漏れ事故などトラブルの連続だった。約1兆円の事業費を投じながら稼働はわずか250日。稼働しなくても維持管理費や人件費など約240億円が毎年かかっている。政府が今年4月に閣議決定したエネルギー基本計画では、高レベル放射性廃棄物の量を減らす「減容化」などの国際的な研究拠点化と位置づけられ存続を容認。運転再開も位置づけも不透明なままだが、もんじゅに代わる施設はなく、後に引けない状況になっている。 <中間貯蔵の安全性について> *4-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGG03002_T01C14A0EAF000/?n_cid=TPRN0006 (日経新聞 2014/10/3) 福島県内汚染土壌の中間貯蔵法案を閣議決定 政府は3日、福島県内の汚染土壌を保管する中間貯蔵施設の関連法案を閣議決定した。同施設の安全確保など国の責務を明記したうえで、使用開始後30年以内に県外での最終処分を完了させるとの内容。政府は来年1月に施設の使用を始める計画で、今国会での成立を目指す。法案は、ポリ塩化ビフェニール(PCB)を無害化する処理施設を全国で運営する国の全額出資会社「日本環境安全事業」の関連法を改正する。社名を「中間貯蔵・環境安全事業」に変え、中間貯蔵施設の整備や運営管理を担う。同社の全株式を政府が保有するよう義務付ける。県外での最終処分の法制化は地元が受け入れ条件として求めている。望月義夫環境相は同日の閣議後の記者会見で「(県外処分を)法律で規定することで、しっかりとやっていく」と述べた。中間貯蔵施設の建設を巡っては、建設予定地の福島県大熊、双葉両町で「最終処分場になるのでは」との懸念が根強い。法制化で県外での最終処分を明確に打ち出す。 *4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140926&ng=DGKDASGG22H0Y_U4A920C1TJN000 (日経新聞 2014.9.26) 保管30年、土壌浄化探る、福島の中間貯蔵施設建設へ 地層生かし汚染防ぐ 政府は福島県内の除染で出た汚染土壌などを最長30年にわたって保管する中間貯蔵施設の建設に乗り出す。総事業費が1兆円規模に達する大型プロジェクトで、2015年1月からの搬入開始を目指す。30年後には県外での最終処分を約束しており、汚染土の量や放射性物質の濃度を大幅に減らす技術開発も進めていく。中間貯蔵施設は双葉、大熊両町にある東京電力福島第1原子力発電所周辺の用地に整備する。施設の総面積は16平方キロと羽田空港を上回る広さだ。今月1日に県が建設を容認する意向を政府に伝えた。政府は3千人規模とされる地権者を確定し、補償額などを伝える説明会を29日から順次、開く予定だ。 ●1日トラック数千台 県内43市町村にある800カ所以上の仮置き場や、5万を超える庭先などの現場に置かれる除染に伴う汚染土や側溝の汚泥、草木、落ち葉などを保管する。環境省の推計だと総量は1600万~2200万立方メートルで、羽田空港D滑走路の埋め立てに使った千葉県の山から運び出した砂の量とほぼ同規模だ。運搬には1日数千台のトラックを使う。中間貯蔵施設に運び込まれた汚染土などはまず受け入れ・分別施設に搬入、重量や放射線量を測定し分別する。土壌は土壌貯蔵施設に貯蔵する。保管する土壌の放射性セシウム濃度に応じて1型と2型がある。1型は低地に設置、1キログラムあたり8000ベクレル以下と放射性物質の濃度が比較的低く、地下水を汚染する恐れがない土壌を埋める。2型は丘陵地や台地に置き、底面には遮水シートや水を通しにくい地層などを備える。雨水などは排水管を通じて水処理施設に集め、放射性物質を取り除いてから河川に放出する。1型、2型とも汚染土を埋めたのち、上面に汚染されていない土で覆うことによって放射性物質が外に飛び散る外部被曝(ひばく)を防ぐ。草木などの可燃物は減容化施設で焼却して灰にし量を減らす。このうち、放射性セシウム濃度が1キログラムあたり10万ベクレルを超えるものは専用のドラム缶に入れ、鉄筋コンクリート構造などで遮蔽効果がある廃棄物貯蔵施設で保管する。中間貯蔵施設内には、このほかに研究棟や管理棟、情報公開センターなどもある。敷地の境界には緩衝緑地を設け、周辺の安全に配慮する。候補地付近は「大年寺層」と呼ぶ主に泥岩からなる硬い地層が分布し、施設の建設が可能と判断した。地下水については、水面よりも上位に施設を置くことなどで影響が回避できるとした。谷や台地などの地形を最大限活用し、環境負荷の低減や工期の短縮を目指す。用地取得や施設の着工を進める一方で、県外での最終処分に向けた準備にも着手しなければならない。環境省は29日から始まる臨時国会で関連法の改正案を提出する。ただ、実現に向けては法整備以上に技術開発の進展が課題となりそうだ。 ●8割の除染が可能 放射性セシウムの濃度は放っておいても「自然減衰」と呼ぶ現象によって30年後には4割まで減る。これに技術開発が加われば、相当の量の放射性物質を減らすことができ、県外処分も決して不可能ではない、というのが環境省の見立てだ。まず、国内外の研究動向を把握し、放射性物質の効果的な分離技術や、土壌を土木資材として再資源化する技術、施設からの取り出し技術などの開発を進めていく。すでにいくつかの技術が候補として実証されている。セシウムが粒度の小さい粘土に付着しやすいという特性をいかし、土壌をふるいにかけて研磨や洗浄をし、小さな粘土だけを分離する方法がある。シュウ酸と熱で土壌の有機分を分解したのちにセシウムを分離させ、それを吸着材で回収する化学処理もある。反応促進剤を使いながら土壌を熱し、セシウムを昇華させてフィルターで分離する熱処理もある。いずれの技術も除染効果は8割以上。ただ、それぞれの技術には使用条件などに制限がある。コスト面でも実用化を阻む。小規模な実証段階では1立方メートル処理するのに数万から数十万円かかっている。福島県内には今回建設する中間貯蔵施設が「中間」ではなく「最終」の施設になってしまうのではないかという不安の声が大きい。中間貯蔵施設を巡る国と福島県との交渉でキーパーソンになった自民党の大島理森東日本大震災復興加速化本部長は「30年以内で完了するのかという疑念を払拭するには、(政府が)今後のスケジュールをきちんと示すべきだ」と話している。 PS(2014/10/6追加):*5については、国民は、そうまでして原発を継続して欲しいとは思っていないし、原発が稼働し始めてから40年も経ちながら想定外が多すぎ、廃炉準備引当金も十分に引き当てていないなど、普通の企業では考えられない甘えが多い。そして、メディアも、くだらないことは熱心に報道するが、このような事実は十分に報道しない体質なのが民主主義の問題である。 *5:http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20141002-00049348-toyo-nb (東洋経済オンライン 2014/10/2) 原発優遇策をねだる、電力業界の本末転倒 「競争環境下で原子力発電をこれまで通り民間が担っていくには、予見性を持って事業に取り組める環境整備が大事。費用が確実に回収されることが大事だ。そのための官の支援を是非ともお願いしたい」。9月19日の定例記者会見で、電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)はそう訴えた。国に求める支援策として八木会長は、「廃炉に絡む財務・会計リスク緩和措置」、「原子力燃料サイクル事業における新たな官民の役割分担」、「規制や政策の変更、電力システム改革による競争の進展といった環境変化を踏まえた措置」を挙げた。 ■英国の“原発版FIT”が議論の俎上に 一方、経済産業省はすでに、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会において新たな原発支援案の議論を始めている。8月21日に開かれた第5回の原子力小委では、「競争環境下における原子力事業の在り方」が議論された。この会議では、英国において導入が決まった「差額決済契約(CfD=Contract for Difference)」と呼ばれる原子力支援制度が、英国エネルギー・気候変動省の担当者からかなりの時間を割いて説明された。CfD(FIT-CfDとも呼ぶ)という制度は、電気の値段を固定価格で一定期間、保証するという点で、日本でも再生可能エネルギーを対象に導入されている固定価格買取制度(FIT=Feed in Tariff)に似ている。英国では、これを再エネ発電だけでなく、原子力発電にも導入することが昨年決まった。具体的な仕組みは、廃炉や使用済み燃料の処分費用も含めた原子力のコスト回収に必要な電気料金水準として「基準価格」を決め、その基準価格がマーケット価格を元に算定される「市場価格」を上回っている場合、その差額を全需要家から回収し、原発事業者に対して補填する。逆に、基準価格が市場価格を下回った場合には、原発事業者が差額を全需要家に支払う。そうすることで、原発事業者の損益を平準化させ、財務・会計面でのリスク軽減を図るものだ。英国政府はこのCfDを、フランス電力公社(EDF)がイングランド南西部のヒンクリー・ポイント原子力発電所で進めている新増設計画(160万キロワット×2基、2023年に竣工予定)に導入することを昨年10月に決めた。基準価格は1キロワット時当たり15.7円(1ポンド=170円換算)。これは、火力発電などを含めた現在の市場価格の約2倍に相当する。陸上風力の基準価格である15.3円を上回り、大規模太陽光の17円と比べても大差ない。また、保証期間は35年間と、再エネの15年間を大幅に上回る。これでEDFは、ヒンクリー・ポイントCという新設原発の運営において、長期にわたってコストを確実に回収することが見込める。まさに、原発を維持推進するための国家保護策といっていいだろう。 ■経産省は既設原発への適用も検討 このCfDを議論の俎上に載せるということは、経産省は明らかに日本への導入を視野に入れているはずだ。しかし、日本政府は現状、「原発の新増設、リプレース(老朽原発の建て替え)はまったく想定していない」というのが正式見解だ。その方針を変えるのか。経産省資源エネルギー庁原子力政策課の担当者は「英国政府の担当者とアポイントが取れたので、諸外国における例示の1つとしてプレゼンテーションをしてもらっただけ。日本での原発新増設を念頭においたものではない」と説明する。ただ、「既設の原発を対象として、日本に合った形でモディファイ(部分的に修正)して導入することも含め、今後の検討課題」とも話す。年内にも専門家によるワーキンググループを作って具体的に議論していく方針という。 PS(2014.10.9追加):*6の最終処分場候補地は、名水の里だ。つまり、その地の長所を台無しにする選択を国が地方に押し付けているのであり、環境省がこういう選択をするのは、農業、漁業、自然の軽視が甚だしく、呆れてものが言えない。国会では、①選定理由 ②選定方法 ③適地か否か について、しっかり検証すべきである。 *6:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201410/20141009_13013.html (河北新報 2014.10.2) 最終処分場候補地調査に「不意打ち」と猛反発 指定廃棄物の最終処分場をめぐり、環境省が候補地での現地調査に入った8日、栗原市、加美町、大和町の住民から怒りの声が挙がった。現地調査を拒否する構えを示してきた加美町は「不意打ち」と猛反発した。猪股洋文加美町長は町役場で記者会見し「調査開始の事前連絡がなかった。強引で姑息(こそく)なやり方に憤りを感じる。まさに暴挙」と批判した。「強引に調査を行うなら法廷闘争に持ち込まざるを得ない。ずさんな候補地選定過程と国の不正を明らかにする」と、法的手段を検討する考えをあらためて示した。加美よつば農協など地元42団体による反対グループの高橋福継会長(72)は8日朝に調査開始を知り候補地に駆け付けた。「加美町に事前連絡せずに調査に入るのはまさに不意打ち。汚いやり方だ」と怒りをぶつけた。栗原市と大和町には7日に事前連絡があったが、反対運動を避けるため加美町にはなかったとみられる。「ルールを守って運動してきた。住民の切なる訴えを正面から受け止めないのは許し難い」と批判した。栗原市でも反発の声が挙がる。栗駒文字地区住民グループの菅原敏允会長(81)は「不愉快な話だ。どう進展していくか気がかり。対応を早急に話し合う」と不安げ。市民グループ「放射能から子どもたちを守る栗原ネットワーク」の鈴木健三代表(71)は「市民に公開し、堂々と調査入りすべきだった」と語った。佐藤勇栗原市長は「3市町同時に調査が実施されたことは、前進するために意義のあること。深山嶽がいかに自然災害の恐れがあり不適地であるか、候補地内外をしっかりと踏査してほしい」とのコメントを発表した。浅野元・大和町長は「いよいよかという感じ。調査実施はやむを得ないが、下原が建設地に適さないことを続けて訴えたい。今後の調査でも事前連絡があってしかるべきだ」と環境省に注文した。浅野町長は8日、町役場で町議会と行政区長に現地調査開始を報告。区長からは「通告翌日の調査入りは急すぎる」と苦言が挙がった。
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2014,10,03, Friday
*3-2より 民間事故調報告書 脱原発デモ、川越・北海道 2014.10.4(土) (1)福島原発事故で日本は壊滅状態と紙一重だったということ - 東電撤退と菅元首相の現場視察 *1に書かれているように、菅元首相が、福島第一原発事故に関して「①私が非常に強く感じたのは、吉田調書で最も重要なところのメディアの重要視の仕方が足らない。吉田さんは『東日本が壊滅する』危機状態にあると話されたが、当時私も福島第一、第二合わせて10基の原発と11の使用済み核燃料プールが制御できなくなったらチェルノブイリの何十倍という放射性物質が出て、まさに東日本が壊滅する、そのぎりぎりだったという実感がある」「②250キロ圏の5000万の人が何十年間もその地域から避難しなくてはいけないことになっていたら、日本という国は長い間、壊滅的な状況が続いたと思う。本当にそうならなくて良かった。本当に紙一重だった。それでも原発を続けるのか、他の手段に変えていくのか、そこにつなげていってもらいたい」と話されており、私も同感だ。 また、東電の福島原発からの全面撤退問題について、菅氏は、「最初に撤退の話が出たのは東電の清水社長から。決して経産相からでも、官房長官からでも、私からでもない」と説明し、「テレビ会議でも清水社長が『今しかるべきところと撤退について話をしている』と、つまり官邸に了解を求めていると示唆する発言が公開されている」と語られたそうで、民間事故調の報告書にもそう記載してある。 さらに、「①現場の情報がちゃんと伝わってこない中で、一度現場の責任者と話をすることが必要だろうと判断した」「②原発そのものをどうするか、ベントする、海水を入れる、それは事業者である東電が判断するが、周辺住民の避難、それは原子力災害対策本部が判断する」「③私以外の人間が現場に行く選択肢もあったが、私は大学時代は物理を学んで文系政治家よりは原発事故に多少は詳しい。それで12日の朝一番のヘリコプターで行った」とする菅元首相の行動に、突然の現場視察で事態を悪化させたという批判もあるが、間によくわかっていない人が入ってわかりにくくなった情報は、現場で直接とって指示するのが最も早く適格であるため、私は菅元首相の判断は正しいと考える。また「大学時代は物理を学んで文系政治家より原発事故に詳しい」と本人が言ったのを「謙虚でない」として叩いた人もいたが、事実であるため批判する方が的はずれであり、妬みに基づく批判は聞くに堪えない。 (2)電力会社が再生可能エネルギーの買い取り契約を中断 このような中、*2-1のように、九電は、太陽光発電などの再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に基づく新規契約を9月25日から中断し、既に申し込みを受け付けた分についても回答を保留すると発表したため、大騒ぎになっている。九州は太陽光発電の導入が進んでいるため、九電管内で太陽光発電の導入が急速に進み、申し込み分すべてを受け入れれば発電量が春と秋のピーク需要(800万キロワット)を上回る。しかし、九電は「太陽光発電は天候によって発電量が大きく左右されて受給バランスが崩れると大規模停電が起きる可能性があるため新規契約中断と回答保留に踏み切った」としている。 九電へのFITに基づく契約申し込みは7月末で、約40万件1260万キロワットに上り、このうち約31万件390万キロワットは既に契約済みだが、保留になるのは接続承諾通知書などの送付済み分を除く6万9397件540万キロワット分と、申し込み前で接続を検討している2372件680万キロワット分だそうだ。 *2-2、*2-3、*2-4、*2-5、*3に書かれているように、九電が“凍結”するのは太陽光、風力、水力を含む再生エネルギー全般で、これが日本全国に広がっているため、小水力発電、ゴミ焼却熱、バイオマスなどによる発電を進めている自治体や工事業者も困っている。この解決方法には、送電網を充実したり、余った電力で燃料電池用の水素を作るなどの方法があるだろう。 送電網については、私が、このブログに何度も書いたとおり、①遠隔地への送電は、鉄道や高速道路に超伝導電線を引く ②小売用には地方自治体が上下水道の近くに送電線を引く(電気代を安くすれば企業誘致に有利)、ガス会社がガス管の近くに送電線を引く、電力会社の送電部門を別会社にして上場する 等、いろいろな方法が考えられる。 (3)政治と行政のあるべき対応について *4-1、*4-2に書かれているように、政府は、固定価格買い取り制度の抜本改定に着手したそうだ。確かに買い取り単価が高すぎたと思うが、認定を受けたものを取り消すのは信義則違反だ。また、送電網の増強に数兆円かかるとの試算もあるが、原発のコスト負担の多くを国で行い、再生可能エネルギー普及のコストは電力料金に上乗せするというスキームは不公正であり意図的でもある。 そのため、景観、環境、農業との両立という視点から設置規制を行う以外は、しばらく国が再生可能エネルギーを後押しするのが筋だろう。それと同時に、すでに建設し始めてから40年も経過している原発の補助金は減らしていくべきだ。 (4)この間の原発の動き *5-1のように、電力業界でつくる電力中央研究所が「原子力リスク研究センター」を設置し、原発で起こり得る故障や異常が、重大事故に至るまでを網羅的に分析して対策に生かす「確率論的リスク評価(PRA)」の本格導入を目指すそうだが、原発事故は、飛行機事故・鉄道事故や津波などの自然災害と異なり、一度重大事故が起きれば、長い時間放射性物質が存在し、国が危うくなるほどのものである。そのため、事故のリスクは確率論的に低ければよいわけではなく、0でなければならない。 なお、*5-2に書かれている浜岡原発(静岡県御前崎市)は、御嶽山の近くの富士山の麓にあり、南海トラフ地震でも危ういため、対策工事費に3,000億円もかけるのではなく、廃炉にすべきだ。 (5)御嶽山の噴火にみる火山噴火の大変さ 火山噴火のリスクを無視して川内原発が再稼働に驀進している中、*6-1のように、長野、岐阜両県にまたがる御嶽山の噴火により死者が47人も出た。これにより、火山の噴火は予知できないだけでなく、噴火すれば水蒸気爆発であっても逃げるのは大変で、捜索にも苦労することが明らかとなった。 また、*6-2のように、雨が降ると火山灰は重い泥状になって捜索や救出をさらに難しくするほか、土石流などの2次災害が起こる危険も高まる。また、火山灰には硫化物が多く含まれるため、水が加わると、成分の硫酸とカルシウムが化学反応を起こして石こうの主成分である硫酸カルシウムに変わり、ぬれているとドロドロで乾くとセメントのように固まるとのことである。 2000年の三宅島(東京都)噴火では、土石流が住宅地を襲って被害を拡大し、1977年の有珠山(北海道)噴火では、約1年後に大規模な土石流が発生して犠牲者を出した。土石流が起こると下流の川がせき止められ、洪水が起こる可能性もあり、火山は複合災害で、降灰があった周辺地域も警戒が必要だそうだ。 (6)しかし、火山の熱と火山灰は使える ドロドロした火山灰は、有田焼のうわぐすりに似ていたため調べたところ、新燃岳、三宅島の火山灰から美しいガラス製品ができていた。また、桜島の火山灰を使った石鹸や浅間山の火山灰を使った陶器、新燃岳の火山灰を使った煉瓦もあった。マグマが噴出した火山灰にはレアメタルが入っているかもしれないし、少なくとも、安く舗装する方法はできそうであるため、本格的な研究が望まれる。 さらに、火山の近くは、地熱発電に向いた場所であろう。 日経新聞2014.9.27より 桜島火山灰石鹸 三宅島火山灰ガラス 新燃岳火山灰ガラス 新燃岳火山灰煉瓦 浅間山火山灰陶器 <福島原発事故で日本は壊滅状態と紙一重だったこと> *1:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141001-00000003-wordleaf-pol (YAHOOニュース 2014年10月1日) 菅直人元首相「福島原発事故で日本は壊滅状態と紙一重だった」一連の批判について語る THE PAGEは30日夜、菅直人元首相を招き、「吉田調書、メディア、原発」をテーマにトーク番組をライブ配信した。その中で、菅氏は福島第一原発事故に関して「日本は壊滅状態と紙一重だった。それほど大変な事故だった」と述べ、原発を継続するのか、別の手段を考えるのかと訴えた。聞き手はジャーナリストの武田徹氏。東日本大震災当時の首相だった菅氏は、福島第一原発事故をめぐる一連の対応などをめぐって批判にさらされた。そうした批判や、吉田調書をめぐる報道、メディアについて、菅氏が語った。30日夜に生配信されたトーク番組「菅直人に生で聞く 吉田調書、メディア、原発」 ■吉田調書、メディア、原発 朝日新聞の誤報問題などを受け公開されることになった「吉田調書」。菅氏は「吉田さんの調書はこの事故の解明や将来に向けて非常に重要な調書。公開されてよかった」と公開を評価した。ただ、吉田調書をめぐる報道には疑問も感じたという。私が非常に強く感じたのは、吉田調書で最も重要なところのメディアの重要視の仕方が足らない。吉田さんは『東日本が壊滅する』危機状態にあると話された。当時私も福島第一、第二合わせて10基の原発と11の使用済み核燃料プールが制御できなくなったらチェルノブイリの何十倍という放射性物質が出て、まさに東日本が壊滅する、そのぎりぎりだったという実感がある。(吉田さんの)その言葉の意味を受け止めていく必要がある」。一方で、朝日新聞の吉田調書報道は当初はスクープ記事だった。朝日新聞に情報が流れたということになるが、これに関連して菅氏は次のように否定した。「週刊誌的な報道では、私が流したんじゃないかと一種のイメージ操作をする。中には『菅さんが朝日に書けと言った』と真顔で言う人がいる。私は政府事故調をつくることをお願いした立場だが、いっさい誰を聴取したとか、調書を見せろとか総理時代に言ったことはない。持ってもいないしコピーもないので私からどうこうすることはない」。また、福島第一原発事故がいかに大変な事故であったかを重ねて語った。「あの事故がどれだけ大きな事故であったか。250キロ圏の5000万の人が何十年間もその地域から避難しなくてはいけないことになっていたら、日本という国は長い間、壊滅的な状況が続いたと思う。本当にそうならなくて良かった。もちろん現場の東電や自衛隊、警察や消防の皆さんが頑張ったが、実はいくつかの幸運な偶然があった。本当に紙一重だった。次に起きたときに神のご加護があるか分からない。それでも原発を続けるのか、他の手段に変えていくのか、そこにつなげていってもらいたい」。 ■東電撤退問題 東電の福島原発からの全面撤退問題について、菅氏は「最初に撤退の話が出たのは東電の清水社長から。決して経済産業相からでも、官房長官からでも、私からでもない」と説明する。「15日の午前3時ごろ、東電の清水社長から海江田経済産業相に撤退について了解を求めて何度も電話があったと。私は仮眠していたが、枝野官房長官らが集まり、相談したいとやってきた。東電の関係者が撤退してしまったら、その後、いろいろなオペレーションをできる能力を持っている人がいないので、何としてもぎりぎり頑張ってもらいたい、ということで清水社長を呼んでそのことを言い、その後、東電に行って同じことを大勢の前で言った」。菅氏は、清水社長からの連絡は「もうこれ以上打つ手はない。だから福島第一から撤退したいという趣旨だと、海江田氏や枝野氏は受け止めた」といい、「テレビ会議でも清水社長が『今しかるべきところと撤退について話をしている』と、つまり官邸に了解を求めていると示唆する発言が公開されている」と語った。 ■突然の現場視察 12日朝の菅氏の福島第一原発への視察は事態を悪化させたとの批判もある。それに対して、菅氏は「現場の情報がちゃんと伝わってこない中で、どうしようかと考え、一度現場の責任者と話をすることが必要だろう」と判断したと語る。「原発そのものをどうするか、ベントする、海水を入れる、それは事業者である東電が判断すること。ただ、周辺住民の避難、それは原子力災害対策本部が判断する。私以外の人間が現場に行く選択肢もあったが、私は大学時代は物理を学んで文系政治家よりは原発事故に多少は詳しい。それで12日の朝一番のヘリコプターで行った」。吉田所長と実際に会ったのは45分間。菅氏はそのことによって2つの意味があったという。一つは、福島原発が危険な状態だと分かったので、その後の対応はそれを前提に行ったこと。もう一つは吉田所長に会って明確にものを言う人だと知り、その後のやり取りにプラスになったこと。菅氏は、住民避難の判断という観点からこう強調する。「45分とはいえ、吉田所長に時間をとらせ負担をかけたが、住民の避難について、所長はそこまで考え切れないと調書でも言っているし、法律的にも事業者が命令する仕組みになっていない。住民避難を考えないといけない当時の総理である私としては、(東電)本店がちゃんと間で情報をつながない以上は現場に行って聞くしかないし、聞いたことは今でも良かったと思っている」。 <再生可能エネルギー買取契約の中断> *2-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/107783 (佐賀新聞 2014年9月25日) 買い取り保留県内3485件 九電25日から契約中断 九州電力は24日、太陽光発電など再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)に基づく新規契約を25日から中断し、既に申し込みを受け付けた分についても回答を当面保留すると発表した。回答留保の対象は佐賀県内が3485件、管内全体で7万1769件に上る。太陽光発電の導入が急速に進み、申し込み分すべてを受け入れた場合、発電量が春と秋のピーク需要を上回り、安定供給が困難になるため。10キロワット未満の家庭用の太陽光などは対象外とする。九電はこれから数カ月をかけ、九州外への送電の可能性や受給バランスの改善策を含め、再生エネルギーをどの程度受け入れられるかを検討する。中断するのは、新たな契約の受け付けと、既に受け付けを済ませたが、契約には至っていない分。九電が指定する時間帯に送電を停止・抑制するなど出力調整できる施設は、個別協議に応じるとしている。九電によると、FITに基づく契約申し込みは7月末現在、約40万件、1260万キロワット。このうち約31万件、390万キロワットは既に契約済み。回答保留となるのは、未契約のうち接続承諾通知書などの送付済み分を除く、6万9397件、540万キロワットと、申し込み前で接続を検討している2372件、680万キロワット分。佐賀県内では、申し込み済みで未契約の3407件、19万3千キロワット分と、接続検討分の78件、10万9千キロワット分が保留対象になる。FITをめぐっては、2014年度から太陽光発電の買い取り価格が1キロワット時当たり36円から32円(10キロワット以上)に値下げされ、13年度末に、それまでの1年分となる7万件を超える申し込みが殺到した。7月末までの申し込み分が接続された場合、春のピーク時約800万キロワットを超える1260万キロワットになり、さらに接続検討分を含めると13年夏のピーク1600万キロワットをも上回る約1940万キロワットになるという。太陽光発電は、天候によって発電量が大きく左右され、受給バランスが崩れると大規模停電が起きる可能性があるため、新規契約中断と回答保留に踏み切った。九電は県内の説明会を10月1日午後2時から佐賀市の佐賀支社で開く。 *2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/107779 (佐賀新聞 2014年9月25日) 九電、再生エネ新規契約中断 自治体、企業に困惑 九州電力が再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)に基づく新規契約の“凍結”を発表した24日、県内の自治体や企業から影響を懸念する声が広がった。小水力発電の設置計画を進める唐津市は、九電側と例外規定の個別協議に望みをつなぐ。工事業者は「新規契約できるかどうかは死活問題」とし、情報収集を急いでいる。2012年に県内の自治体で初めて再生可能エネルギーを推進する条例を制定した唐津市。土地開発公社が保有する3カ所を太陽光発電用地として公募する計画だが、九電の方針に市の担当者は「厳しいかもしれない」と影響を危惧した。九電が“凍結”するのは太陽光だけでなく、風力や水力を含む再生エネルギー全般。市は藤ノ平ダムに小水力発電を設置する計画も進めている。担当者は「まだ申し込みはしていないが、太陽光に比べれば水力は安定性もある。これまで九電側と協議も続けてきており、何とか個別協議に応じてくれるのでは」と例外措置に期待を込める。一方、FITを前提に設置工事を進めてきた県内の業者には、顧客らから「今後どうなるのか」と問い合わせが相次いでいる。ある設置業者は、九電との契約に至っていない10キロワット以上の物件を約200件抱える。うち約30件は設備を導入するなどすでに経費が発生しているが、顧客からの支払いは完成後。九電は保留期間を「数カ月間」としているが、電力需給の状況に変化がなければ、長期化する恐れもある。「このままでは顧客からの支払いが遅れ、運転資金が不足しかねない。死活問題だ」と担当者は頭を抱える。県内にメガソーラー13施設(合計出力1万3千キロワット)を建設している九電工(福岡市)は、さらに5施設を新設する計画で、うち2施設が契約に至っていない。「契約中断に該当するかどうかまだ分からない」と情報収集を急いでいる。また、伊万里市の県有の工業団地にバイオマス発電施設を建設する日本新電力(東京)は「供給先をきちんと確保し、事業化に向けて九電と協議していきたい」として、計画継続の方針を示した。 *2-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014092502100014.html (東京新聞 2014年9月25日) 九電、再生エネ購入中断 企業は多額投資 自治体も推進 九州電力は二十五日、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に基づく契約の受け入れを、九州全域で中断した。対象は新規受け入れに加え、申請を済ませたが契約に至っていない約七万件も含める。十キロワット未満で自家消費している家庭用の太陽光などは対象外とした。九電によると、電力の安定供給には需要とのバランスを保つ必要があるが、太陽光発電の急増で供給力が需要を大幅に上回ると、自動的に発電が停止するなど支障が出る恐れがあるという。今後他の電力管内への送電などを検討し、再生エネをどの程度受け入れられるか見極めるとしている。太陽光発電は全国的に増えており、北海道電力や沖縄電力も購入に上限を設けている。今回の九電の中断を受け、政府は買い取り制度の見直しを加速させる可能性が出てきた。二十四日の記者会見で九電の山崎尚(たかし)電力輸送本部長は「電力を安定供給する責任があり、このまま無制限に受け入れられない。ご理解いただきたい」と述べた。申請中の事業者が計画見直しを迫られることが想定されるが、金銭面の補償はしないとしている。川内(せんだい)原発(鹿児島県)の再稼働と中断は「関連性はない」と強調した。九電は十月一日から七県で順次説明会を開く。 九電によると、二〇一四年度から買い取り価格が下がったため、今年三月だけで過去一年分に当たる約七万件の申し込みが殺到した。 買い取り制度では国の認定も必要で、九州の太陽光・風力発電の認定状況は五月末で千七百八十七万キロワット。鹿児島が四百三十四万キロワットと最も多く、次いで熊本、宮崎、大分と、この四県で九州全体の四分の三を占めている。 ◆「川内原発より送電網を」 再生可能エネルギーを使う発電事業や計画は九州各地で進んでおり、九州電力が買い取り契約の受け入れを中断した影響が広がりそうだ。買い取りを前提に多額の投資をしてきた企業や、導入促進を掲げる自治体もあり、関係者は「今更買い取れないなんて」と困惑している。長崎県佐世保市の宇久島では、京セラ(京都市)や九電工(福岡市)など五社が世界最大規模となる四十三万キロワットの大規模太陽光発電所(メガソーラー)建設を検討。二〇一五年度中の着工が目標で、受け入れの中断が長引けば影響を受ける可能性がある。京セラは今後開かれる九電説明会に出席する予定で、広報担当者は「情報収集を急ぎたい」と話す。四千キロワットのメガソーラー建設を目指している鹿児島市の男性(50)は会社を設立しことし三月、九電に新規契約を申請した。既に土地代などに約一億円を投資。男性は、再稼働へ手続きが進む川内原発を引き合いに「原発への投資ではなく、送電網に投資するべきだ。多くの企業が反発するだろう」と語気を強めた。二〇年度までに県内全家庭の電力消費量相当分を省エネで減らした上ですべてを再生可能エネルギーで賄う目標を立てているのが熊本県。県によると、着工していないメガソーラー計画が六件残ったままだ。村井浩一エネルギー政策課長は「全体の目標に大きな変更はない」とする一方で「県として再生エネ導入の旗振り役を担ってきたが、電力需給のバランスまで考えが及ばなかった」と肩を落とした。 <再生可能エネルギー> 太陽光や風力、水力などで生まれるエネルギーを指す。石油などを燃やす火力発電、ウランを燃料とする原発と異なり、資源が枯渇せず繰り返し使えるのが特徴。地球温暖化の原因になる二酸化炭素(CO2)の排出量も極めて少ない。ただ、政府によると、発電コストは火力や原子力より高い。政府は2012年、電力会社が再生エネによる電気を買い取る制度を義務化、普及を後押ししている。 *2-4:http://qbiz.jp/article/46917/1/ (西日本新聞 2014年10月1日) 再生エネ甘い見通し 契約中断拡大普及に水差す 電力各社が再生可能エネルギーの受け入れを中断する動きが一気に拡大、地域活性化のために導入を推進してきた自治体や事業者に衝撃が広がった。九州電力に加え30日、四国電力、北海道電力、東北電力、沖縄電力の4社が、電力買い取り契約の手続きを供給管内全域で中断すると発表した。政府の無計画ぶりや固定価格買い取り制度の不備が露呈した形で、再生エネ政策は岐路に立っている。東日本大震災からの復興事業の一環で再生エネの導入計画が相次ぐ被災地では、東北電力の契約中断に動揺が広がる。「復興への取り組みに水を差す対応だ」。2040年度までに県内のエネルギーを再生エネですべて賄う目標を掲げた福島県担当者は憤る。東北電は手続き中断を数カ月と説明したが「計画を進めている案件は多く影響は甚大」と懸念する。岩手、宮城両県の沿岸部では、津波に遭った跡地の利用計画が今後具体化する見通しだ。再生エネでの活用も期待されるが、「事業者がちゅうちょして導入が停滞しないか心配だ」(宮城県)と不安が高まっている。九州電力は9月25日から契約を中断した。鹿児島県指宿市で地熱発電事業の準備を進めるジオネクスト(東京)は、既に建設用の土地を確保済み。「事業の行方は九電の出方次第で、しばらく様子見だ」(経営企画管理本部)と肩を落とす。 ▽責任転嫁も 「こうなることは分かっていた。手を打つべきだったのに、恥ずべきことだ」。30日に経済産業省で開かれた審議会では、手をこまねいていた経産省に有識者から批判が相次いだ。「数カ月の間には結論を出したい」(四国電力の千葉昭社長)。買い取り契約の手続きを中断すると表明した電力会社は、一時的な対応と説明する。だが数兆円規模の新規投資が必要とされる送電網の強化といった抜本策を早期に講じるのは難しく、混乱を収束させる見通しは立たない。安倍政権は4月に策定したエネルギー基本計画で、再生エネの導入加速を掲げたばかり。制度が早々と行き詰まり、焦りの色が濃い経産省は「なぜ導入できないのか、最大限の取り組みができているのか検証する」と電力会社に責任転嫁する構えすら示す。 ▽本音は抑制 6月末までに政府から認定された再生エネの発電設備がすべて運転を始めると、再生エネの発電比率は約2割となり、計算上は政府目標をほぼ達成することになる。「事業者の参入をいったん抑制したいのが本音」(政府関係者)。原発推進派の間では、再生エネの問題点が噴き出したことで、原発再稼働に賛同が得られやすくなるとの思惑もくすぶる。審議会では、政府による設備認定を中断し、制度自体を凍結すべきだとの意見も出た。これに対し、東京財団の平沼光研究員は「再生エネ導入に向けた具体像を十分に示してこなかった政府の責任が大きい」と批判、抜本的な導入促進策を求めた。 *2-5:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201409/20140930_72018.html (河北新報 2014.9.29) 東北電も再生エネの新規契約中断 あすから 東北電力は29日までに、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に基づく発電事業者からの契約受け付けを10月1日以降、当面中断する方針を固めた。30日に正式発表する。メガソーラー(大規模太陽光発電所)など再生エネを利用する発電設備急増を受けた措置で、送電網の受け入れ容量不足への具体的な対応策を今後検討する。全国の電力会社では25日に発表した九州電力に続き2例目。東北電の海輪誠社長は25日の定例記者会見で「基本的な傾向は(九電と)同様。何らかの対策が必要だ」と中断も視野に入れ、検討していると明らかにしていた。太陽光、風力発電は天候による出力変動が大きい。需要を大幅に上回る供給や、出力の急激な変動に送電設備が対応しきれず、最悪の場合は大規模停電を招くリスクがある。東北電によると、管内(新潟を含む東北7県)で国が買い取り制度の対象に認定した発電設備の総出力は5月末時点で1149万キロワット時。太陽光と風力が1073万キロワットを占め、全てが送電網に接続した場合、供給力は低需要期の最大需要(800万~900万キロワット)を上回るほか、今夏の最大需要(1360万キロワット)に対しても約8割に達する。このため海輪社長は、蓄電池の活用、管外への余剰電力供給といった具体的な対応策の検討を急ぐ考えを示していた。政府は買い取りを中断する動きが広がり始めた事態を受け、買い取り制度の抜本改定に乗り出している。 <地方自治体の対応> *3:http://qbiz.jp/article/46434/1/ (西日本新聞 2014年9月24日) 進む九電離れ 九州全県・政令市の庁舎、新電力が供給へ 九州の7県と3政令市の本庁舎が2014年度下半期(10月〜15年3月)、すべて特定規模電気事業者(新電力)から電力の供給を受けることが分かった。14年度上半期は、10自治体のうち福岡県だけが九州電力から供給を受けていたが、下半期は初めてゼロになる。九電が13年に電気料金を値上げしたのを機に、新電力が攻勢を強めている。電力小売りは以前、大手電力会社の独占事業だったが、00年から事業者向けに段階的に自由化され、新電力が参入した。新電力は大手より柔軟な価格設定ができるとされ、九州の自治体庁舎にもイーレックス(東京)や新日本製鉄(現新日鉄住金エンジニアリング、同)が供給を開始。九電も電気料金を下げて契約を取り返すなど一進一退の攻防を繰り広げてきた。05年度以降は全10自治体が庁舎への電気調達に一般競争入札を導入しており、九電との契約は4〜7自治体で推移。12年度は過去最多の8自治体になり、13年度は5自治体だった。14年度は九電が8年連続で落札していた佐賀、鹿児島両県を丸紅(東京)が奪い、業界最大手のエネット(同)も4自治体で落札。10月に契約更新する福岡県はFパワー(同)に、宮崎県はイーレックスに、熊本市は丸紅に決まった。近年の“争奪戦”の背景には、東京電力福島第1原発事故以降の変化がある。事故後、原発停止で全国的に電力が不足し、自前の電源が乏しい新電力は、発電設備を持つ工場などの余剰電力が購入できなくなり、供給力が減退。福岡県では12年度の入札に新電力の参加がなく、九電と随意契約を結んだ。しかし、九電が13年春に自治体や企業向けの電気料金を平均11・94%値上げしたため、新電力が参入できる余地が拡大。新たな発電設備や太陽光などの再生可能エネルギーが増えてきたことも、追い風になっているという。自治体庁舎での落札の減少について、九電は「値上げを受けて、新電力の営業活動が活発化しているのではないか」(報道グループ)としている。16年に予定されている家庭向けの小売りの全面解禁で競争が激しくなるのは必至で、九電は料金プランの練り直しなどの対抗策を迫られている。 <政治と行政のあるべき対応について> *4-1:http://qbiz.jp/article/46703/1/ (西日本新聞 2014年9月27日) 再生エネ、固定買い取り見直しへ 契約制限、全国に波及 政府は26日、送電網の容量限界から電力会社が再生エネルギーの買い取りを中断する動きが広がり始めた事態を受け、固定価格買い取り制度の抜本改定に着手した。再生可能エネルギー特別措置法は3年ごとの見直しを定めているが、政府は早急な対策が必要と判断、改定を前倒しする。この問題では九州電力が25日から九州全域で買い取り契約の受け付けを中断。東北電力も同日、中断の検討を発表した。さらに東京電力が一部地域で受け付け制限を始めたほか、四国電力も対応策の検討に入った。原発停止の穴を埋めると期待された再生エネルギーの普及にブレーキがかかる可能性がある。小渕優子経済産業相は26日の閣議後記者会見で「電力系統の現状を精査する必要がある。再生エネルギーの最大限の導入に向け、あらゆる角度から検証する」と述べ、再生エネルギーの導入促進に関する有識者会議の中に専門部会を立ち上げることを明らかにした。改定では(1)買い取り量の上限設定(2)買い取り価格の水準や算定方法−などが焦点になる見通し。電力各社は、予想される最大電力需要に対応できる容量の送電網を整備している。仮に認定を受けた大規模太陽光発電所(メガソーラー)などをすべて接続すると、容量オーバーとなり大規模停電を招く恐れがある。送電網の増強には数兆円かかるとの試算もあり、改定議論ではコスト負担のあり方も検討課題になりそうだ。電力各社の管内で買い取り認定を受けたメガソーラーなどの容量を、電力使用が増える夏の最大電力需要と比較すると、九電は認定容量が最大電力需要を上回り、東北電は9割に接近している。固定価格買い取り制度は東電福島第1原発事故を受け、原発依存からの脱却を目指してつくられた。高い価格で原則全量を買い取るため、政府・電力会社の想定を超える事業者が参入した。買い取り中断の動きに、メガソーラー事業者の間では「事業計画を見直さざるを得ない」など動揺が広がっている。 ■固定価格買い取り制度 太陽光や風力など再生可能エネルギーの導入を推進するための制度。再生エネ事業者が発電した電気を、国が定めた固定価格で長期にわたり買い取るよう大手電力会社に義務付けている。買い取り費用は電気料金に上乗せされる。固定価格は、発電設備の導入コストの動向を踏まえ、経済産業省の委員会が毎年見直している。 *4-2:http://qbiz.jp/article/46702/1/ (西日本新聞 2014年9月27日) 再生エネ、送電網の壁 費用膨大で設備増強に遅れ 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度は太陽光や風力発電の普及を後押ししたが、電力会社が運営する送電網の受け入れ能力は限界に近づいている。再生エネをさらに増やすには、送電網の能力増強に莫大(ばくだい)な費用が掛かり、国民の負担増につながりかねない。経済産業省は固定価格買い取り制度の抜本改定に乗り出したが、再生エネの普及拡大と国民負担の抑制を両立できるか、難しい判断を迫られている。有識者からは「再生エネの発電量などを精密に予測する技術を開発し、送電網への投資を抑えて再生エネを増やす方策を探るべきだ」との声も出ている。経産省によると既に認定された再生エネの発電設備がすべて稼働を始めれば、総発電量の2割超とする政府目標にほぼ達する。欧州などに比べ買い取り価格は高く、再生エネの事業者に有利な仕組みとしているためだ。一方、送電網の能力拡大は遅れている。送電網は電力会社が運営するが、原発の長期停止が経営を圧迫しており、資金を能力拡大に回す余裕がないことも響いている。経産省が2012年に公表した試算によると、再生エネが総発電量に占める比率を25%、原発も25%と仮定した場合、送電網の能力増強に約7兆円の費用が掛かる。電力中央研究所の朝野賢司主任研究員は送電網の受け入れ能力を見極めず、再生エネの発電設備の認定を続けた経産省の対応を批判する。「経産省は認定作業を中断すべきだ」と強調する。ただ、安倍政権は4月に策定したエネルギー基本計画で、原発再稼働と併せて再生エネの導入加速の方針を掲げたばかり。認定を停止すれば「再生エネの導入に消極的と受け取られかねない」(政府関係者)。結論は政治的な思惑にも左右されそうだ。 <この間の原発の動き> *5-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014100101001691.html (東京新聞 2014年10月1日) 原発リスク確率評価の拠点設置 電中研、所長に前米規制委員 電力業界でつくる電力中央研究所は1日、原発の自主的な安全性向上に必要な研究開発の拠点として「原子力リスク研究センター」を設置した。原発で起こり得る故障や異常が、重大事故に至るまでを網羅的に分析して対策に生かす「確率論的リスク評価(PRA)」の本格導入を目指す。研究センターは約110人で発足。非常勤の所長にはPRAの権威で米原子力規制委員会(NRC)のジョージ・アポストラキス前委員が就任し、顧問にリチャード・メザーブ元NRC委員長も迎えた。アポストラキス氏は1日午後、小渕優子経済産業相と会談し「原発の安全責任は事業者が負うべきだ」などと述べた。 *5-2:http://aichi.thepage.jp/detail/20140214-00000010-wordleaf (THE PAGE 愛知 2014.2.14) 中部電力が「脱・浜岡」できない理由 中部電力は14日、国の要請を受けて運転停止中の浜岡原発(静岡県御前崎市)4号機について、新規制基準への適合性確認の審査を原子力規制委員会に申請した。同じく停止中の3号機も来年度中に申請、再来年の津波対策工事の完了を踏まえて再稼働を目指す。午前中、阪口正敏副社長が国に申請書類を提出したのを受け、名古屋市の本店で会見した増田博武・原子力部長は「今回はあくまで再稼働とは切り離した申請。現時点で再稼働については申し上げられない」とした上で、最新の地震、津波対策に火山、竜巻対策まで盛り込んだ今回の申請内容について「新基準には適合していると思っている」と自信をのぞかせた。安倍政権での原発再稼働方針、都知事選での脱原発2候補の落選などの強い「追い風」。とはいえ巨大地震のリスクを抱える「世界最悪の立地」であることに変わりはない。電力各社の中でも原発依存比率の低い中部電力が「脱・浜岡」に踏み切れないのはなぜなのだろうか。 ■対策工事費3,000億円、かさむ燃料費 浜岡原発は1976年に1号機の営業運転を開始。80年代以降、福島第一原発と同型の沸騰水型軽水炉(BWR)の3、4号機に加え、改良型(ABWR)の5号機も増設、合わせて約362万kWの発電能力を備えた。それでも火力発電、水力発電と比べ、中部電全体の発電量比率では1〜2割に過ぎなかった。福島での事故を受け、2011年5月6日に当時の菅直人総理が浜岡全機の運転停止を要請。直後の夏は企業活動や市民生活への影響が懸念されたが、節電努力と旧式火力の運転継続などで乗り切った。ただし12年7月には新潟の上越火力発電所(出力238万kW)が稼働を開始。高効率化を図る西名古屋火力発電所7号系列(同231.6万kW)も、3年後の17年の稼働を見込んでいる。浜岡ではその間、国が求める津波対策として、高さ18mの防潮堤建設を着工。建屋内外の浸水対策や非常用発電機の増設も進め、海抜40mの高台にまでガスタービン発電機を設けた。ところが12年3月末、国の有識者会議が出した南海トラフ沿いの大地震による被害想定の見直しで、防潮堤をさらに22mにかさ上げする必要に迫られる。新規制基準でフィルター付きベントの設置も求められた。対策の総費用は約3,000億円に上る見込みだ。天然ガスを中心とした燃料費は円安で増加の一途。1月末には3年連続の赤字決算を公表、14年3月期の連結業績予想も100億円下方修正し、750億円まで赤字が拡大すると見込んだ。4月からはついに家庭用を含む電気料金の値上げに踏み切る。 <御嶽山の噴火> *6-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141002&ng=DGKDASDG01H1L_R01C14A0MM8000 (日経新聞 2014.10.2) 死者47人 戦後最悪 御嶽山噴火、捜索継続へ 長野、岐阜両県にまたがる御嶽山の噴火で、長野県警は1日、新たに35人の死亡を確認し、死者は計47人になったと発表した。1991年に43人の死者・行方不明者を出した雲仙・普賢岳(長崎県)の火砕流を上回る戦後最悪の火山災害となった。ほかにも登山者が残されている可能性があり、警察や自衛隊などは2日以降も捜索を続ける。警察や自衛隊、消防は1日早朝、火山性微動の振幅が小さくなっており入山可能と判断し、約千人体制で捜索を再開。山頂付近に取り残されていた心肺停止状態の35人を大型ヘリコプターなどで麓に搬送したが、全員の死亡が確認された。長野県などによると、9月27日の噴火からこれまでに捜索できていない登山道などに登山者が取り残されている可能性があるという。気象庁によると、火山性地震の回数は減っているが、噴煙の高さは1日夜も火口から400メートルを観測し、「活発な活動が続いている」(火山課)とみている。 *6-2:http://mainichi.jp/select/news/20140930k0000e040206000c.html (毎日新聞 2014年9月30日) 御嶽山噴火:雨降ると火山灰が重い泥状に 土石流の危険も 御嶽山では噴火以降、おおむね好天が続いているが、30日から天候が不安定になって雷雨に注意が必要との予報も出ている。雨が降ると火山灰は重い泥状になって捜索や救出を難しくするほか、土石流など2次災害が起こる危険も高まる。火口周辺は硫黄臭が立ちこめており、火山灰には硫化物が多く含まれるとみられる。野上健治・東京工業大教授(火山化学)によると、火山灰に水が加わると、成分の硫酸とカルシウムが化学反応を起こして石こうの主成分である硫酸カルシウムに変わる。石こうはぬれているとドロドロに、乾くとセメントのように固まってしまうという。伊藤英之・岩手県立大教授(火山砂防)は「今回降った火山灰は粒が細かく、かなり粘土質のようだ」と指摘する。遭難者の上に火山灰が降り積もると、全身が粘土に覆われて体温が奪われるといい、一刻も早い救助を訴える。悪天候下での作業は視界が利かず足場も悪いため滑りがちで、くぼみに滞留した火山ガスへの注意も必要という。大雨の場合、積もった火山灰が斜面に沿って一気に流れ落ちる土石流が起きる危険もある。過去の噴火では、降灰後の雨がたびたび2次災害を起こしてきた。全島民が避難した2000年の三宅島(東京都)噴火では、土石流が何度も住宅地を襲い、被害を拡大した。1977年の有珠山(北海道)噴火では、約1年後に大規模な土石流が発生し温泉街で死者2人、行方不明1人の犠牲を出した。野上教授は「土石流が起こると下流の川がせき止められ、洪水が起こる可能性がある。火山は複合災害で、降灰があった周辺の地域も警戒が必要だ」と注意を促す。 PS(2014/10/3追加):広い牛舎の屋根に太陽光発電を取りつけたり、地熱や風力を利用したりなど、北海道は、その雄大な自然を活かした発電が最もできそうな場所だ。それにもかかわらず、*7のように、北電の電気料金値上げに右往左往しているのは、生産現場の工夫も足りないと思う。また、牛の飼料は、電力で乾燥させる以外に方法がないのだろうか。 *7:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30118 (日本農業新聞 2014/10/3) [現場から] 北海道電力 再値上げへ 農家の負担さらに 対策望む声噴出 北海道電力(北電)が農家など事業者向けの電気料金を再値上げする動きに、道内の農家から不安の声が上がっている。昨年も値上げがあっただけに、さらなる負担増は農家経営にとって大きな痛手だ。電気使用量の多い酪農をはじめ、生産現場からは北電や国による影響緩和策を求める声が強い。「必要なものの値段が何もかも上がっている。このままだと新しい投資ができず、牛も収入も増やせない」。豊富町の酪農法人・さくら牧場の社長、岡本健吾さん(36)は危機感をあらわにする。事業者・企業向けの電気料金を昨年平均11.0%値上げした北電が、今年7月に平均22.61%の再値上げ方針を全国で唯一、示したからだ。酪農では搾乳するパーラーや生乳を冷やして保管するバルククーラー、扇風機などに電気を使う。搾乳牛250頭を飼養する同牧場の電気料金は月平均35万円。2割値上げされれば月7万円、年間で80万円以上もの負担増となる。円安などで配合飼料や燃油、資材の高騰が続く。岡本さんは昨年の値上げ時、パーラーの蛍光灯を発光ダイオード(LED)に替えるなど節電に向けて投資をしたが、牛舎全体に行き渡らせるほどの余力はない。所得を上げるには増頭と個体乳量増しかないが、資材高で億単位の投資に踏み切りにくい。人手にも余裕はない。岡本さんは「投資するには先行き不安が大き過ぎる。打開策を北電にも国にも考えてほしい」と訴える。離農跡地の資源を吸収し、酪農地帯を支える大型法人でさえ、度重なるコスト増でメリットが薄れている。道内一の生乳生産1万6500トンを誇る(有)ドリームヒル(上士幌町)は、再値上げで年間500万円負担が増える。小椋幸男代表は「地域を背負いリスクを負って大型化を進めてきたのに、コスト削減に全くつながらない」と憤る。野菜・畑作、稲作地帯でも困惑の声が上がる。JAむかわは、北電から料金が来年4月以降、JA施設平均で16.3%上がるとの説明を受けた。年2000万円だった料金は300万円膨らむ。電気料のうち75%を占めるのが、穀類の乾燥調製施設や選果場といった農業関連施設。出荷する作物の品質を左右する施設だけに節電も難しい。JAは「1年で大幅に再値上げするのは、見通しの甘さを感じる」(総務部)と指摘する。こうした状況を受け、JA北海道中央会は北電に対し、再値上げをしないよう求めている。 <メモ> 北電は家庭向けの50キロワット未満は平均17.03%、事業者向けの50キロワット以上は平均22.61%引き上げたいとしている。事業者向けの値上げは国の認可が不要。農業用では一部、契約期間によって値上げ開始時期が異なる。使用量により、事業者ごとの値上げ幅には差が出る。
| 原発::2014.8~10 | 01:44 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2014,09,30, Tuesday
無料画像集より *4-1より *3-4より *4-2より <御嶽山の噴火関係> <川内原発関係> (1)フクシマの教訓は生かされたか 政府は原発再稼働に向けて進んでいるが、原子力規制委員会は「原発は安全だ」とは言っておらず、原発は新基準に適合はしているが安全が確認されたわけではない。また、*1-1に書かれているとおり、原発事故の報道に関しては、放出された放射線の量や人体に対する影響が正しく報道されなかったため、住民が自ら身を守る行動をとれなかったり、避難した人が周囲から不当に責められたり、避難することについて家庭内で意見が対立して苦労させられたりして、人為的な損害を受けたのである。 なお、原発事故の報道には、原子力関係の学識者だけでなく、飛散した放射性物質に関する正確な情報が提供された上で、医学、生物学、農学、生態学の専門家の意見が必要である。また、今後の再稼働については、地震学者、火山学者の意見も重要だが、原発の専門家と言えば、原子力の専門家か放射線の専門家に偏り、原発自体の機械的な問題ばかりを考えているのは、事故時に環境汚染によって引き起こされる人間の健康や農林漁業の問題を無視している。 なお、フクシマ原発事故の真実は、「わからない」として明かされていない部分が多いため、その教訓も生かされていない。そのため政府に対する不信感は大きく、このようなアプローチをしているようでは原発には付き合えないため、*1-2のように、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働阻止を訴える大規模集会が鹿児島市で行われても、全国各地から7500人もが参加するのである。 そこで、福島県川内村の西山元村議が「福島では甲状腺がんが発生し、まだ安全ではない」と言っているのは事実であるし、「御嶽山の噴火も予知できないのに、火山のリスクをはらんでいる川内原発の再稼働は許されない」というのも、全くそのとおりだ。 (2)川内原発の地元は、どこまでか *2-2、*2-3に書かれているように、九州電力川内原発1、2号機をめぐる原子力規制委員会の主要な審査が終わり、田中委員長は「法律が求めるレベル(ここが重要)の安全性が確保されることを確認した」とした。そのため、今後は地元同意に向けた手続きが本格化し、どの範囲までを地元として同意を求めるかが焦点になるそうだが、私は、事故時に汚染されて損害を受ける範囲はすべて地元として合意がなければならないと考える。 川内原発が新規制基準に適合しているとする審査書決定をめぐっては、*2-1のように、鹿児島県薩摩川内市で長く原発に反対してきて審査書案へのパブリックコメントで「基準地震動の設定が不適切」と意見を寄せた鳥原さんは、「1万7千件も意見が集まったのに、締め切りから1カ月もたたずに決定とは。国民の意見が反映されていない」と憤り、薩摩川内市の山之口自治会会長の川畑さんは「世界一厳しい基準はまやかしだ。田中俊一委員長自らが『安全だと申し上げない』と言った」と強調したそうだが、全くそのとおりである。 (3)原発の建設に、火山の噴火は想定外だったのである *3-1に書かれているとおり、原子力規制委員会は原発に影響を及ぼす巨大噴火に備えた「基本的な考え方」の案を示し、「前兆の可能性がある火山の異常を検知したら、空振りも覚悟の上で原子炉の停止や燃料の運び出しを電力会社に求める」としているが、①異常を検知できたとしても、誰がどこに運び出すのか ②異常は100%検知できるのか など、いつもどおりの甘すぎる原発推進論(原発安全神話の源)である。 そのような中、*4-1のように、長野県と岐阜県にまたがる御嶽山が噴火し、水蒸気爆発でも周辺では降灰による農作物などの被害が出ており、登山者には多くの不明者がいるが、自衛隊や警察などの捜索隊は二次災害を防止しながら捜索している状況だ。そして、多くの火山学者が、巨大地震の後には火山が噴火しやすく、噴火の予知や予測は難しいため、噴火に警戒を呼び掛けている。 そのため、*3-2、*3-3に書かれているように、九州には、桜島や阿蘇山など日本を代表する火山が集中し、近年も人的被害のある活発な活動が続いており、桜島と口永良部島新岳(鹿児島県)では、気象庁の噴火警戒レベルが入山規制を行う3となり、桜島では2009年以降活動が活発化して翌年から4年連続で噴火回数が800回を超え、霧島連山・新燃岳(宮崎、鹿児島県境)は2011年に爆発的噴火が起きてから小康状態だが警戒レベルは2だそうだ。 そのため、鹿児島県の反原発団体が、鹿児島市で九電川内原発(同県薩摩川内市)の再稼働に反対する集会を開き、「川内原発の周辺には霧島連山や阿蘇山があり、日本でも活火山が多い地域だ」として再稼働への懸念を示したのはもっともである (4)それでも川内原発再稼働とは、どういうことか *4-1では、日経新聞が「御嶽山の噴火で、噴火の予知や予測は一部の火山を除けば難しく、巨大地震の直後には火山が噴火しやすい」との認識を示し、「列島には110の活火山があり、うち47火山は噴火の恐れが強いため、監視を強め、対策を早急に総点検すべきだ」としているが、火山学者には「現在の火山学で、噴火の予知は極めて困難」との意見が強い。 しかし、*4-2のように、菅官房長官は、9月29日午前の記者会見で、「御嶽山の噴火を予知できなかったことは、火山の集中地帯にある九州電力川内原発(鹿児島県)の再稼働方針に影響しない」との考えを示し、予知できなかった御嶽山の噴火後も、政府は新規制基準を満たしたとする原子力規制委員会の審査結果を見直さないそうである。 川内原発は「最も火山の危険が高い原発」と言われているが、原子力規制委は「観測によって噴火の予知は可能」という九電の主張を容認し、火山学者が「現在の火山学で噴火の予知は極めて困難」と言っているのに、政府が再稼働を進めようとしているのである。これは、再稼働ありきの原子力規制委員会審査だったからにほかならないだろう。 <フクシマの教訓は生かされたか> *1-1:http://www.minyu-net.com/news/news/0926/news3.html (2014年9月26日 福島民友ニュース) 「学識者の評価など不足」 原発報道で田中氏が指摘 福島民友新聞社など新聞社や放送局などでつくるマスコミ倫理懇談会全国協議会の第58回全国大会が25日、松江市のホテルで始まった。初日は分科会などが開かれ、田中淳東大総合防災情報研究センター長が原発事故報道に関し、放射線影響への学識者の評価などの報道が不足していたと指摘するなど、約100社280人の編集責任者や記者らが震災報道の在り方を考えた。26日まで「岐路に立つ社会でメディアに求められるもの」を主テーマに報道や広告の課題を話し合う。田中氏は「震災報道をいかに継続していくか」についての分科会で、1959(昭和34)年の伊勢湾台風から一連の災害報道の変遷について解説した。震災では「市町村機能の低下が顕著で、阪神大震災以上に突き付けられた」と問題提起。特に原発事故直後の報道について「どのメディアも原子力関係の学識者との関係が構築できておらず、あまり報道されなかった。これはマスコミがあえて原子力関係の学者と距離を置いていたため」と分析、今後の課題と位置付けた。復興報道については「何を伝えるのか、今もひな型といえるものがない。特に福島は『復興』とはいえない。何か別な言葉で置き換えるべきだ」と主張した。 *1-2:http://qbiz.jp/article/46729/1/ (西日本新聞 2014年9月29日) 再稼働「NO」に7500人 鹿児島市で反原発集会 全国の原発で再稼働へ向けた地元手続きが最も早く進む九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働阻止を訴える大規模集会が28日、鹿児島市であった。全国各地から7500人(主催者発表)が参加し、集会の後、同市の繁華街約2キロをデモ行進した。鹿児島市の市民団体「ストップ再稼働! 3・11鹿児島集会実行委員会」が「地元から反対の声を上げよう」と主催。集会ではルポライターの鎌田慧さんが「安倍政権が進める再稼働は、人間が死んでももうかればいいという論理。国民への挑戦だ」と批判。福島第1原発30キロ圏の福島県川内村の西山千嘉子元村議は「福島では甲状腺がんが発生し、まだ安全ではない」と被災地の現状を訴えた。デモ隊は「原発要らない」と唱えながら、南九州最大の繁華街・天文館から鹿児島中央駅前までの目抜き通りを約2時間かけて行進。右翼団体の街宣車がデモ隊に並走し、騒然となる一幕もあった。鹿児島県警は多くの警察官を沿道に配置してトラブルを警戒した。薩摩川内市からデモに参加した男性(66)は「御嶽山の噴火も予知できないのに、火山のリスクをはらんでいる川内原発の再稼働は許されない」と話した。 <川内原発再稼働に地元は?> *2-1:http://qbiz.jp/article/45643/1/ (西日本新聞 2014年9月10日) 審査書「決定」、川内原発の地元は 川内原発が新規制基準に適合しているとする審査書決定をめぐり、原発が立地する鹿児島県では10日、近づく再稼働への不安と期待、反発と歓迎が交錯した。同県薩摩川内市で長年、原発に反対してきた鳥原良子さん(65)は、審査書案へのパブリックコメントで「基準地震動の設定が不適切」と意見を寄せた。「1万7千件も意見が集まったのに、締め切りから1カ月もたたずに決定とは。国民の意見が反映されていない」と憤った。同市の自治会で初めて再稼働反対陳情を市議会に提出した山之口自治会。会長の川畑清明さん(58)は「世界一厳しい基準はまやかしだ。田中俊一委員長自らが『安全だと申し上げない』と言った」と強調した。原発の北東25キロに住む福祉施設職員原恵美さん(26)=同県さつま町=には7歳と3歳の子どもがいる。「事故の際、幼児を連れての避難に不安がある。避難計画が不十分なまま再稼働しないでほしい」。一方で、薩摩川内市の商工関係者は審査書の決定を歓迎した。不動産業本間広幸さん(67)は「ようやく再稼働が間近になった。市は今後も原発を活用していく必要がある」。民宿を営む御幸(ごこう)博文さん(61)は「年内再稼働なら、大きなクリスマスプレゼントになる」と声を弾ませた。鹿児島県の伊藤祐一郎知事は取材に応じず、談話のみ発表する。県関係者は「知事はあらぬ発言が再稼働の障害になることを極度に警戒している」と語った。 *2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11344639.html (朝日新聞 2014年9月11) 川内、地元同意手続きへ 原発再稼働、年明け以降 主要審査終了 九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)をめぐる原子力規制委員会の主要な審査が終わった。規制委は10日、新規制基準を満たすとする審査書を正式に決め、法に基づく設計変更の許可を九電に出した。今後、地元の同意に向けた手続きが本格化し、どの範囲まで同意を求めるかが焦点になりそうだ。年明けにも見込まれる再稼働に向けた動きは新たな段階に入る。規制委がこの日決定したのは安全設計の基本方針をめぐる審査書で、九電に許可の書面が手渡された。東京電力福島第一原発事故を受けて作られた新基準で初めての許可となる。田中俊一委員長は会見で「法律に基づいて求めてきたレベルの安全性が確保されることを確認した。この後たくさんの審査を控えているので着実に進めたい」と話した。今後も、より詳しい設計を記した工事計画などの認可手続きは残る。九電の必要書類の提出が9月末以降にずれ込んでいるうえ、その後の設備の検査にも1~2カ月はかかる見通しで、法的な手続き上、再稼働が可能になるのは早くても年明けになりそうだ。一方、原発の大きな変更はこれまで地元に同意を得てきた経緯がある。新基準にもとづく再稼働は、地元同意の手続きも事実上必要になる。鹿児島県と地元の薩摩川内市は再稼働に前向きで、伊藤祐一郎知事は県、薩摩川内市の首長と議会の同意で足りるとの考えを示している。だが、原発の30キロ圏にはほかに8市町があり、意見を聞くよう求める声も出ている。どこまで反映されるかが焦点だ。九電の中村明上席執行役員は地元同意について「丁寧にご理解を得るように努めていきたい」と話した。菅義偉官房長官もこの日の会見で「政府として立地自治体関係者の理解と協力を得るように取り組む」と後押しする考えを示した。県は10月9日から30キロ圏内の5カ所で審査結果の説明会を開く。規制委も求めに応じ、出向く考えだ。一方で、この日は審査書案に対する意見募集に寄せられた1万7819件の概要も公表された。巨大噴火や航空機の衝突をめぐるリスクなどのほか、自治体がつくる住民避難計画についての指摘も目立ったという。ただ、避難計画や原発の是非などは意見募集の対象外とされ、ほかも文言や表現の修正にとどまった。他に再稼働に向け審査を申請しているのは12原発18基。規制委は川内原発をひな型に、審査を本格化させている。 *2-3:http://qbiz.jp/article/46177/1/ (西日本新聞 2014年9月19日) どこまで地元? 鹿児島揺れる 「再稼働の同意対象に」陳情続々 九州電力川内原発の再稼働へ向けた地元手続きが本格化した鹿児島県で、再稼働の条件となる「地元同意」の対象範囲拡大を求める陳情が地方議会に相次いでいる。避難対象となる原発30キロ圏自治体は9市町。陳情を受けたいちき串木野市議会は、伊藤祐一郎知事への意見書を30日に可決する見通し。日置市議会も同様の方向で調整を進めている。伊藤知事は18日の県議会でも「同意対象は(立地自治体の)県と薩摩川内市で十分」と持論を曲げなかったが、「リスクに見合った同意権を」との周辺自治体の圧力はさらに高まりそうだ。「あの山の向こうはすぐ原発ですよ」。議員が窓の外を指さすと、傍聴の住民がうなずいた。17日のいちき串木野市議会総務委員会。原発との近さを強調する意見が相次ぎ、陳情は全会一致で趣旨採択となった。議会の動きは市民のぬぐえない不安感を反映している。市は30キロ圏に全域が含まれ、ほぼ年間を通して原発の風下に当たる。市内の団体が募った再稼働反対署名は人口の半数を超えた。背景には、立地市に比べて原発の恩恵が少ない不満もある。2013年度までに市に入った原発関連の交付金は35億円で、薩摩川内市の8分の1。17日の審議では議員から「(市も同意対象になれば)それなりの交付金も求めたい」と本音も飛び出した。薩摩川内市を除いた30キロ圏の8市町で、同意対象の拡大を求める陳情を付託したのは7議会。唯一付託していない姶良市議会は今年7月、原発再稼働に反対する意見書を可決している。市の北半分が30キロ圏に入る日置市では、陳情を趣旨採択した上で意見書を本会議に上げるかどうか調整中だ。審議した総務企画委員会の中島昭委員長は「事故が起きれば、立地市並みの被害を受ける。国や県は、日置市民の理解も得る努力をしてほしい」と話す。長島町議会は通常、町外在住者からの陳情は付託していないが、今回は「特例扱い」(議会事務局)で審議に乗せた。「重要な内容だ」との議員の意見が多数を占めたためだ。県議会も18日、同様の陳情を付託した。30日の特別委員会で審議する。そうした流れを見越してか、伊藤知事は12日の記者会見では「周辺自治体の意見を無視するわけにはいかない」と述べ、薩摩川内市以外の自治体と何らかの協議の場を設置することにも言及した。30キロ圏内の声をどこまで反映するか、知事の判断が注目される。 <想定外になっていた火山の噴火> *3-1:http://sp.mainichi.jp/opinion/news/20140908k0000m070170000c.html (毎日新聞社説 2014年9月8日) 原発と火山災害 巨大噴火を侮るなかれ 原発に影響を及ぼす巨大噴火に備えた「基本的な考え方」の案を原子力規制委員会が示した。前兆の可能性がある異常を検知したら、「空振りも覚悟の上」で原子炉の停止や燃料の運び出しを電力会社に求める。そのための判断基準についても、有識者を集め、検討を進めるという。規制委が新規制基準に適合していると判断した九州電力川内1、2号機(鹿児島県)は、巨大噴火に襲われる危険性が全国の原発の中で最も高い、というのが専門家の一致した見方だ。本来なら原発の安全審査の前に、こうした検討を進めておくべきだった。日本は世界有数の火山国であり、規制委や電力会社は、噴火の脅威を侮ってはならない。川内原発周辺には、阿蘇や鹿児島湾など、マグマの大量噴出で土地が陥没したカルデラ地形が複数ある。日本ではカルデラ式の巨大噴火が1万年に1回程度起きている。昨年施行された原発の新規制基準は、原発から160キロ圏の火山の影響調査を電力会社に義務付けた。運用期間中に噴火が起き、火砕流や溶岩流が到達する恐れがあれば、立地不適格で原発は稼働できない。九電は、川内原発の運用期間中にそうした噴火が起きる「可能性は十分低い」と評価し、桜島の噴火で火山灰が15センチ積もる場合を想定すれば足りるとした。巨大噴火が起きるとしても、数十年前からマグマの蓄積が生じるので、地殻変動などを監視すれば事前に察知できるという。規制委は安全審査で、九電の考え方を基本的に了承した。しかし、その後開かれた規制委の有識者検討会では「巨大噴火の時期や規模の予知は困難」との指摘が相次いだ。原発に影響する火山活動の監視では「電力会社任せにせず、国レベルの体制を作るべきだ」との意見も出された。噴火の影響を受ける恐れのある原子力関連施設は日本各地にある。川内原発は、それらの施設の火山対策の試金石となる。規制委の島崎邦彦委員長代理は、巨大噴火に関する判断基準の策定について「どこまでできるか分からない」と述べた。だが、安全サイドに立った基準をあらかじめ作成しておかなければ、異常が検知された時の対応に混乱が生じかねない。そもそも、巨大噴火が起きれば日本という国の存亡にかかわる。内閣府の検討会は昨年5月、東日本大震災をきっかけに火山活動が活発化する恐れがあるとし、監視体制の強化や避難計画の早期策定を提言した。巨大噴火に関する研究の遅れも指摘している。「想定外」を避けるためにも、規制委による判断基準の検討を、巨大噴火に関する研究や対策を促進する契機としたい。 *3-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014092902000182.html (東京新聞 2014年9月29日) 「周辺に活火山 危険」 「川内」再稼働の反対集会 鹿児島県の反原発団体は二十八日、九州電力川内(せんだい)原発(同県薩摩川内市)の再稼働に反対する集会を鹿児島市で開いた。参加者は「反対の民意を踏みにじる再稼働は許さない」と訴えた。実行委員会によると全国から約七千五百人が集まり、集会後は市内をデモ行進した。集会には菅直人元首相も出席し、御嶽山の噴火に言及。「川内原発の周辺には霧島(連山)や阿蘇山があり、日本でも活火山が多い地域だ」とし、再稼働への懸念を示した。福島県川内(かわうち)村から埼玉県志木市に避難している元村議の西山千嘉子さん(66)は「福島事故の被害やその現状を忘れないでほしい」と強調。川内原発だけでなく、全国にある原発の再稼働を阻止する必要性を訴えた。 *3-3:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/kagoshima/article/116921 (西日本新聞 2014年9月27日) 九州の火山も要注意 桜島、口永良部は入山規制 [鹿児島県] 桜島や阿蘇山など日本を代表する火山が集中し、人的被害にも見舞われてきた九州では、近年も活発な活動が続いており、警戒が必要だ。現在、九州の火山で気象庁の噴火警戒レベルが最も高いのは、桜島と口永良部(くちのえらぶ)島の新岳(ともに鹿児島県)。5段階のうち、入山を規制する3となっている。桜島では2009年以降、活動が活発化し、翌年から4年連続で噴火回数が800回を超えた。今年は58人の死者・行方不明者が出た「大正大噴火」から丸100年。京都大防災研究所火山活動研究センター(鹿児島市)は「同規模の噴火が起きる可能性もある」とみている。新岳は今年8月3日、34年ぶりに噴火し、島民135人のうち64人が一時島外に避難した。今回の御嶽山と同じく、噴火時の警戒レベルは1(平常)だった。気象庁などが火口近くに設置している観測機器の一部は壊れたままという。阿蘇山(熊本県)は8月30日に噴火が確認され、警戒レベルが1から2(火口周辺規制)に引き上げられた。11年に爆発的噴火が起きた霧島連山・新燃(しんもえ)岳(宮崎、鹿児島県境)は小康状態だが、警戒レベルは2。雲仙岳(長崎県)や九重山(大分県)は1で、今のところ噴火の兆候はないという。 <それでも川内原発再稼働か> *4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140929&ng=DGKDZO77669940Z20C14A9PE8000 (日経新聞社説 2014.9.29) 突然の噴火に備え火山防災の総点検を 長野県と岐阜県にまたがる御嶽山(おんたけさん)が噴火し、多くの登山者が巻き込まれた。山岳災害として国内で最悪規模になる恐れがある。周辺では降灰による農作物などの被害も出ている。今回の噴火は、地下のマグマに地下水が触れて起きる水蒸気爆発とみられ、27日昼前に突然始まった。御嶽山周辺は紅葉シーズンに入り、多くの入山者がいた。政府は危機管理センターに連絡室を設け、自衛隊や警察などが不明者の捜索や救助にあたっている。水蒸気爆発はなお続く恐れがあり、噴火活動の拡大にも予断を許さない。捜索隊は二次災害の防止に細心の注意を払いつつ、人命救助に全力を挙げてもらいたい。周辺の住民は引き続き、噴石への注意が要る。雨が降り、火山灰が泥になって山腹を下る泥流の発生も懸念される。火山灰は風で運ばれて飛行機の運航にも悪影響を及ぼす。航空会社などは安全確保に万全を期してほしい。今回の噴火は突然だったとはいえ、なぜこれほどの被害を招いたのか、徹底的な検証が要る。気象庁は9月に入って御嶽山周辺で火山性の弱い地震を観測していた。だがその後、微動は収まり、同庁は警戒情報を「レベル1(平常)」にとどめていた。警戒を「レベル3(入山規制)」に引き上げたのは、噴火後だった。噴火の予知や予測は一部の火山を除けば難しい。とはいえ、変調をとらえた段階で、住民や登山者に周知できなかったのか。気象庁は警戒レベルの引き上げには、マグマの動きが観測されるなど一定の基準を満たす必要があるとしている。そうした基準が妥当なのか、きちんと検証すべきだ。列島には110の活火山があり、うち47火山は噴火の恐れが強いとされる。それらの監視を強め、対策を早急に総点検するときだ。巨大地震の直後には火山が噴火しやすく、3年半前の東日本大震災後、多くの火山学者が噴火に警戒を呼び掛けている。火山灰や火砕流などの到達範囲を予測したハザードマップが作られ、住民に配られているか。予兆が観測されたら、どの段階で住民に避難を指示するのか。火山に近い自治体は重ねて点検すべきだ。火山の研究者が減り、監視体制の弱体化も指摘されている。専門家をどう育て、地元と連携して日ごろから対策をどう練るか。国もこれらを真剣に考えるときだ。 *4-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014092902000214.html (東京新聞 2014年9月29日) 水蒸気爆発 予知困難でも… 川内再稼働「影響せず」 菅義偉(すがよしひで)官房長官は二十九日午前の記者会見で、御嶽山の噴火を予知できなかったことが、火山の集中地帯にある九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)の再稼働方針に影響しないとの考えを示した。今回の噴火が、川内原発の再稼働方針に影響するかとの記者団の質問に「ないと思う」と明言した。菅氏は「今回のような水蒸気(爆発)は、予測が極めて難しいと従来、言われている」と指摘。川内原発をめぐっては、周辺の火山が噴火する危険性が心配されている。しかし、予知できなかった御嶽山の噴火後も、政府は新規制基準を満たしたとする原子力規制委員会の審査結果は見直さないとした。川内原発は「最も火山の危険が高い原発」と言われている。原子力規制委は「観測によって噴火の予知は可能」という九電の主張を容認したものの、火山学者には「現在の火山学で、噴火の予知は極めて困難」との意見が強い。 *5より *6より PS(2014年9月30日追加):*5のように、いちき串木野市と日置市の市議会は、9月30日、それぞれの市を「再稼働の条件となる地元」に加えるよう求める意見書案を可決したそうだが、他の周辺自治体も意見書を出すのがよいと思う。また、姶良市議会は、既に7月に、川内原発再稼働に反対し廃炉を求める意見書を可決しており、私も賛成だ。 *5:http://qbiz.jp/article/46853/1/ (西日本新聞 2014年9月30日) 川内再稼働、同意拡大 いちき串木野、日置市議会が意見書可決 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の避難対象となる30キロ圏にある同県いちき串木野市と日置市の議会は30日、再稼働の条件となる「地元同意」に、それぞれの市を加えるよう求める伊藤祐一郎知事宛ての意見書案を可決した。再稼働の地元同意をめぐり、30キロ圏自治体の議会から参画を求める意思表示は初めて。伊藤知事は、同意判断を下す自治体について「立地自治体である県と薩摩川内市で十分」との考えを示している。意見書に法的拘束力はないが、今後の知事の対応が注目される。両市議会の意見書は、同意への参画を求める根拠について、国の原子力災害対策指針により、原発30キロ圏の自治体が重大事故対策の責任を負わされていることを挙げた。いちき串木野市議会は、医療機関や社会福祉施設の避難計画策定が困難なことも言及した。両市議会は10月9日から30キロ圏内である住民説明会の前に意見書を知事に郵送する。いちき串木野市は市の全域、日置市は北半分が30キロ圏に入る。両市は川内原発の南東に位置し、ほぼ年間を通じて原発の風下になり、事故の際は放射性物質が飛来する恐れもある。両市議会はこうした不安を背景に住民から提出された陳情を趣旨採択し、議員提案の意見書にまとめた。一方で再稼働反対を求める陳情はいずれも継続審査とした。政府は川内原発について新規制基準下で国内初の再稼働を目指している。原発30キロ圏では、議会に同意範囲拡大の陳情が相次ぎ、鹿児島、出水市など5市町議会が継続審査とした。姶良市議会は7月、川内原発再稼働に反対し廃炉を求める意見書を可決している。 PS(2014年9月30日追加):「国の責任で同意範囲を決めるべき」「国の責任で再稼働の判断をすべき」というのは、住民の権利を無視して責任を国に丸投げし、国民主権や地方自治を放棄することになるため、市も判断に必要な資料を入手して市議会で議論すべきだ。なお、鹿児島県・宮崎県は農業・漁業・観光業も重要な産業であるため、何が一番大切かをよく考える必要がある。 *6:http://qbiz.jp/article/46892/1/ (西日本新聞 2014年10月1日) 地元同意、見えぬ着地点 他の市町は対応割れる 原発を動かす判断はどんな枠組みで下すべきか−。九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)再稼働の条件となる「地元同意」への参画を求め、原発30キロ圏の同県いちき串木野、日置の両市議会が30日、伊藤祐一郎知事宛ての意見書を可決した。伊藤知事はその30分後に談話を出し「同意範囲は県と薩摩川内市」との従来の考えを強調。再稼働の同意権をめぐる綱引きは激しさを増してきた。ただ、30キロ圏の市町の対応は割れており、問題がどう決着するかは不透明だ。「(原発からの距離で考えると)市は原発立地自治体に値する。考え直してほしい」(下迫田良信いちき串木野市議長)。「事故時には日置市民も被害を受ける。市の意見も聞くよう市一体で求めたい」(宇田栄日置市議長)。両市の議長は可決後、伊藤知事にきっぱりと方針転換を迫り、反旗を翻した。意見書には同意権を求める理由がつづられていた。「年の大半が原発の風下に当たる」(いちき串木野市)、「30キロ圏の自治体は国に事故対策を求められ、責任も負う」(日置市)。だが、両市とも議会と市長の足並みはそろっていなかった。いちき串木野市の田畑誠一市長と日置市の宮路高光市長はいずれも「可決は重く受け止めるが、現時点で同意参画は求めない」と、議会に比べて及び腰だった。30キロ圏の他の市町の対応も一様ではない。阿久根市の西平良将市長や長島町の川添健町長、さつま町の日高政勝町長は「再稼働を判断する専門性を自治体は持ち合わせていない」と、同意参画は求めない考え。議会でも、鹿児島市など5市町は同意範囲拡大の陳情を継続審査とした。一方で伊藤知事は、この日の談話で「さまざまな意見があることは承知している」とし、30キロ圏へ一定の配慮もにじませた。ある県議は伊藤知事の心境をこう推し量る。「同意範囲の拡大はしたくないが、意見書を無視すれば県民の反発を生み、逆に再稼働への理解を得られなくなる。どこまで譲歩するか、知事は悩んでいるはずだ」。
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2014,09,27, Saturday
再生可能エネ 2014.9.25西日本新聞より 再生可能エネルギーの進歩と展開 (1)朝日新聞のフクシマ報道は嘘だったのか? *1-1に書かれているように、朝日新聞社の第三者機関「報道と人権委員会(PRC)」が、朝日新聞が5月20日付朝刊で「所長命令に違反 原発撤退」という見出しで報じた記事について、関係者からのヒアリングなどを行い、本格的な審理に入ったそうだ。しかし、*1-2に書かれているとおり、朝日新聞を叩いてフクシマや原発事故の本質をかすませることは、国民やフクシマ周辺住民に対する人権侵害である上、これまでの政府の情報開示のやり方についても検証する必要がある。 また、*1-2に書かれているとおり、朝日新聞が、政府が公開する前に吉田調書を独自に入手して報じたのは褒められるべきことであり、吉田調書の「本当は私、2F(第2原発)に行けと言っていないんですよ」という発言を引用して「所員の9割が吉田氏の待機命令に違反し、福島第2原発に撤退した」と書いたのは、*2に書かれているとおり、命令違反に焦点を当てた点はおかしいとしても嘘とは言えず、今回の朝日報道で「われわれのイメージは東日本壊滅ですよ」「腹を切ろうと思っていた」といった吉田氏の生々しい言葉や原発事故の真の過酷さを明るみに出したことはアッパレである。 (2)薩摩川内市議会の再稼働に関する判断について 朝日叩きで脱原発派の言論を抑えながら、*3のように、現在、九電川内原発の再稼働に必要な「地元同意」が焦点となっている。伊藤祐一郎鹿児島県知事は市議会、市長、県議会の順に地元同意を進める考えで、薩摩川内市の市議が最初に判断を下すことになるそうだが、判断基準は「金」「みんなで渡れば怖くない」などフクシマ事故依然と変わっておらず、「再稼働に結論を出すの地方議会の役割か」と、当事者である地域の市議が責任を回避する発言をするのは問題だ。 報酬をもらって地域のために働いている現職の市議である以上、「重圧」「毎日もんもんとしている」などと言っているのは論外であり、吉田調書、その解説である*2、政府事故調・国会事故調の報告などを読み、これまでの政府の情報開示の仕方を理解した上で、市議会でまともな議論をして再稼働の是非を決めるべきで、日本全国の人がその状況を見ている。つまり、まともな議論ができる人を市議、市長、県議、知事に選んでおくべきであり、鹿児島県ならそれができる筈なのだが・・。 *1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11367967.html (朝日新聞 2014年9月25日) 報道と人権委、本格審理入り 朝日新聞「吉田調書」報道検証 朝日新聞の「吉田調書」報道を検証している朝日新聞社の第三者機関「報道と人権委員会」(PRC)は24日、関係者からのヒアリングなどを行い、本格的な審理に入った。審理対象は、東京電力福島第一原発で事故対応の責任者だった吉田昌郎(まさお)所長(故人)が政府事故調査・検証委員会に答えた「吉田調書」について、朝日新聞が5月20日付朝刊で「所長命令に違反 原発撤退」などの見出しで報じた記事。朝日新聞社は今月11日に木村伊量(ただかず)社長が記者会見して記事を取り消して謝罪する一方、PRCに検証を申し立てていた。審理は非公開となっている。現在の委員は、早稲田大学教授(憲法)の長谷部恭男氏、元最高裁判事で弁護士の宮川光治氏、元NHK副会長で立命館大学客員教授の今井義典氏。 *1-2:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/113868 (西日本新聞 2014年9月13日) 朝日叩き、かすむ本質 政府の姿勢も検証不可欠 朝日新聞は12日付朝刊で、東京電力福島第1原子力発電所の吉田昌郎元所長(昨年7月死去)が政府に事故当時の状況を説明した「聴取結果書(吉田調書)」に関する記事を取り消した経緯を掲載。先に撤回した慰安婦報道についても、11日の木村伊量(ただかず)社長の記者会見でのやりとりを載せ、あらためて説明した。だが、朝日の説明にはなお疑問が残る。一方で、報道が朝日批判に集中するあまり、原発、慰安婦をめぐる本質的な問題が置き去りにされる恐れがある。 ■吉田調書 朝日は、政府が公開する前に吉田調書を独自に入手。5月20日付朝刊で「所員の9割が吉田氏の待機命令に違反し、福島第2原発に撤退した」と報じた。記事はその根拠として「本当は私、2F(第2原発)に行けと言っていないんですよ」との発言を引用。だが、調書にはこの発言に続き「よく考えれば2Fに行った方がはるかに正しいと思ったわけです」などの発言がある。朝日はこれらの発言をネットに載せたが、紙面には出さなかった。朝日側は11日の会見で「所長の発言の評価を誤った。事後的な感想ということで(紙面から)割愛した」と説明した。だが、この部分を削除するのは理解に苦しむ。「命令違反」という記事の骨格と矛盾する発言を意図的に削除した疑いは消えない。一方で、吉田調書などに基づく政府の事故調査委員会報告書が出された2012年7月当時から、原発の専門家は「吉田調書などを公開し、事故検証や新たな原発の規制に生かすべきだ」と指摘していた。報告書には、吉田調書で明らかになった「われわれのイメージは東日本壊滅ですよ」「腹を切ろうと思っていた」といった吉田氏の生々しい言葉はなく、原発事故の真の過酷さは伝わらない。政府が2年以上公開しなかった吉田調書は、朝日報道がなければ永久に国民の目に届かなかった可能性がある。政府は、国民の判断材料となる吉田調書を公開することなく、原発を再稼働しようとしていた。NPO法人原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「本来は政府が自発的に調書を公開すべきだった。政府の姿勢も問われるべきだ」と指摘する。(以下、慰安婦問題のため略) <政府事故調について> *2:事故原発への管理と対応がいったん放棄された事実を確認しなければならない (原発事故情報公開請求弁護団 弁護士 海渡 雄一) -3月15日午前中に行われた、福島第1原発作業員650名の福島第2原発への移動は誰の指示によるものであり、どのような意味を持つものなのか- 第1 結論 1 問題の設定 650名の2Fへの移動が、吉田所長の「関係のない人は退避させる。」「IFに近い線量の低いところで待機」という指示と矛盾していないかどうかという点がポイントである。私は明らかに矛盾していると考える。 2 事故時の実人員と緊急対策本部体制 事故発生当時、この原子炉では、東京電力の社員が755人、協力会社の社員5660人ほどの作業員がいた。15日早朝の時点でも、この中の720名程度の作業員が残り、事故対策に当たっていた。そして、この原子炉の緊急対策に必要な緊急対策本部の要員数は400人と定められていた(吉田020 10ページ)。この数字は、残された人員で十分な対策がとれたかを判断するうえで、重要な数字である。 3 政府官邸と東電側とのやりとりと吉田供述をどのように統一的に理解できるか 14日夜から、2号炉は圧力が上昇し、水が入らず冷却が不能状態に陥り、東京電力の清水社長以下の最高幹部は、官邸(海江田経産大臣、枝野官房長官、細野剛志首相補佐官)に対して、「全面的な撤退(退避)」についての了解を取ろうとしていた。このことは、東電のテレビ会議録画でも、「最終的避難についてしかるべきところと詰めている」と報告されている。官邸側の政治家の証言は、例外なく全面的な撤退の申し出であったとする点で一致している。官邸(菅総理大臣)は、15日未明に清水社長に対して、撤退は認めないと宣告し、清水社長もこれに同意した。しかし、15日の朝5 時30 分頃の段階で、菅総理が東電本店に来たあと、IFの現場で爆発が生じ、1Fの現場も、官邸に詰めていた武黒フェローも、班目原子力安全委員長も2号炉は完全に冷却不能となっており、メルトダウンは不可避で、水蒸気爆発などによって、大量の放射性物質が、拡散する事態は避けがたいと考えていた。吉田所長は、全員撤退は考えていなかった、自分は残るつもりだったし、必要な要員は残すつもりだった、必要でない要員は1Fに近いところで待機するよう指示したと述べている。私の推測では、東京電力最高幹部らは、吉田所長の指示とは別個に、70名程度の要員を残し、緊急事故対策にも必要な者を含む、残りの職員・作業員650名は2Fに退避するオペレーションを、官邸の意向にもかかわらず実施したのだと考えると、前後の事態が合理的に説明できるように思われる。 4 吉田調書は当時の現場の混乱を如実に示している。 吉田所長が「本当は私、2Fに行けと言っていないんですよ。」「伝言した人間は、運転手に、福島第二に行けという指示をしたんです。」「よく考えれば2Fに行った方がはるかに正しいと思ったわけです。」と述べた(吉田077-1-1 55ページ)。2Fに行けと言っていないという点こそが、明確な指示であり、2Fに行った方がはるかに正しいというのは、あとからの判断である。この供述自体は、このことが、論争になる前の2011年8月段階での供述であり、さまざまなバイアスがかかる前の証言で信用性が高い。この本社指示と思われるオペレーションを、現場指揮者として、あとから追認したものであると評価できるが、部下が移動した先を把握していないという深刻な事態が発生し、所長の指示が末端まで伝わらないほど原発の現場が混乱していたことを示している。問題は、この時点で吉田所長の下に残された70名程度の要員で、緊急事態を深めている4機の原発の事故管理、対応が可能だったのかと言う点こそが、日本国民の命運のかかった事実であり、最大のポイントである。事故時には、高線量地域に近寄り、弁の開閉など何らかの機器操作を行うためにも、多人数の作業員による人海戦術が必要であった。このような対応が可能な状況にあったのかが問われなければならない。 5 パラメーターもとれなくなっていた 15日の段階で1Fの1,2,3,4は中央操作室に常駐できないほど線量が高かった。定期的に人を送ってデータをとっていた(吉田051 58ページ)。「中央操作室も一応、引き上げさせましたので、しばらくはそのパラメータは見られていない状況です。」(吉田077-1―4 56ページ)。東電HPに公表されているプリントパラメータデータ アーカイブによると、3月15日午前7時20分から11時25分まで、約3時間にわたって、プラントデータの記録すらできていない。同時に4つの原子炉で深刻な事態が発生していた14-15日の状況では、むしろ1000人単位の作業員を追加して、集中的なオペレーションをしなければならない状況だったはずである。しかし、そのような状況で、東電の最高幹部らは、吉田所長の指示にも反して、バスを手配し、事故対応の判断に不可欠なGMレベルの幹部を含む650人の作業員を2Fに移動させたのだと考えざるを得ない(吉田077-1-4 54ページ)。この点に関する14-15日の状況について、吉田調書の原文は次のようになっている。(吉田077-1-4 49ページ)。「完全に燃料露出しているにもかかわらず、減圧もできない、水も入らないという状態が来ましたので、私は本当にここだけは一番思い出したくないところです。ここで何回目かに死んだと、ここで本当に死んだと思ったんです。これで2号機はこのまま水が入らないでメルトして、完全に格納容器の圧力をぶち破って燃料が全部出ていってしまう。そうすると、その分の放射能が全部外にまき散らされる最悪の事故ですから。チェルノブイリ級ではなくて、チャイナシンドロームではないですけれども、ああいう状況になってしまう。そうすると、1号、3号の注水も停止しないといけない。これも遅かれ早かれこんな状態になる。そうなると、結局、ここから退避しないといけない。たくさん被害者が出てしまう。勿論、放射能は、今の状態より、現段階よりも広範囲、高濃度で、まき散らす部分もありますけれども、まず、ここにいる人間が、ここというのは免震重要棟の近くにいる人間の命に関わると思っていましたから、それについて、免震重要棟のあそこで言っていますと、みんなに恐怖感与えますから、電話で武藤に言ったのかな。1つは、とんな状態で、非常に危ないと。操作する人間だとか、復旧の人聞は必要ミニマムで置いておくけれども、それらについては退避を考えた方がいいんではないかという話はした記憶があります。その状況については、細野さんに、退避するのかどうかは別にして、要するに、2号機については危機的状態だと。これで水が入らないと大変なことになってしまうという話はして、その場合は、現場の人聞はミニマムにして退避ということを言ったと思います。それは電話で言いました。ここで言うと、たくさん聞いている人聞がいますから、恐怖を呼びますから、わきに出て、電話でそんなととをやった記憶があります。ここは私が一番思い出したくないところです、はっきり言って。」 (吉田077-1-4 55-56ページ)。「○あと、一回退避していた人間たちが帰ってくるとき、聞いたあれだと、3月15日の10時か、午前中に、GMクラスの人たちは、基本的にほとんどの人たちが帰ってき始めていたと聞いていて、実際に2Fに退避した人が帰ってくる、その人にお話を伺ったんですけれども、どのクラスの人にまず帰ってこいとかいう。 ○回答者 本当は私、2Fに行けと言っていないんですよ。ここがまた伝言ゲームのあれのところで、行くとしたら2Fかという話をやっていて、退避をして、車を用意してという話をしたら、伝言した人間は、運転手に、福島第二に行けという指示をしたんです。私は、福島第一の近辺で、所内に関わらず、線量の低いようなととろに一回退避して次の指示を待てと言ったつもりなんですが、2Fに行ってしまいましたと言うんで、しょうがないなと。2Fに着いた後、連絡をして、まずGMクラスは帰ってきてくれという話をして、まずはGMから帰ってきてということになったわけです。 ○質問者 そうなんですか。そうすると、所長の頭の中では、1F周辺の線量の低いととろで、例えば、パスならパスの中で。 ○回答者 今、2号機があって、2号機が一番危ないわけですね。放射能というか、放射線量。免震重要棟はその近くですから、ここから外れて、南側でも北側でも、線量が落ち着いているところで一回退避してくれというつもりで、言ったんですが、確かに考えてみれば、みんな全面マスクしているわけです。それで何時間も退避していて、死んでしまうよねとなって、よく考えれば2Fに行った方がはるかに正しいと思ったわけです。いずれにしても2Fに行って、面を外してあれしたんだと思うんです。マスク外して。 ○質問者 最初にGMクラスを呼び戻しますね。それから、徐々に人は帰ってくるわけですけれども、それはこちらの方から、だれとだれ、悪いけれども、戻ってくれと。 ○回答者 線量レベルが高くなりましたけれども、著しくあれしているわけではないんで、作業できる人間だとか、パックアップできる人間は各班で戻してくれという形は班長に。」 6 事故対応に必要な要員も2Fに撤退していた 現時点でわかっていることは、15日の正午ごろから順繰りに作業員を戻しているということである。東電が公表しているプラントデータでも午前11時25分までの3時間、原子炉内の水位や圧力の計測ができていない。いったん事故原発は管理を放棄された状態に陥っていたのである。戻した人員の中にはGMレベルの職員や運転員まで含まれている。吉田氏は「作業ができる人間だとか、バックアップできる人間は各班で戻してくれという形は班長に」と述べている(吉田077-1-4 49ページ)。事故対応の作業を続けるために必要な人間までが2Fに撤退してしまっており、吉田氏の発言からも明らかで所長の指示に反した事態が生じていたのである。 7 朝日新聞報道は誤報といえるか疑問 650人の作業員の大半の者たち、とりわけ下請け作業員らにとっては、吉田所長の必要な要員は残るという指示は徹底されておらず、東電社員の指示に従って移動したという認識であり、朝日新聞報道によって「所長の命令違反」と言われたことに、違和感があったことは理解できる。しかし、所長自身が「しょうがないな」というように、所長の指示には明らかに反した状態になっているのである。そして、問題の本質は、15日の午前中の1Fは、沈み行く船と運命を共にする覚悟を固めた所長と、これに従う少数の作業員だけを残し、事故対応のために不可欠なデータもとれない、絶望的な状況に陥ったと言うことである。吉田所長の「死を覚悟した、東日本全体は壊滅だ」というイメージこそ、国民的に共有しなければならないことである。朝日新聞の報道は、このような事故現場の衝撃的な混乱状況を「所長の命令違反の撤退」と表現したのであり、これは、取り消さなければならない誤報とまでいえるだろうか。私は大変疑問に思う。 8 線量が絶望的な状態のまま継続しなかった理由はわからない このような絶望的な状況が現実のものとならなかった理由は何か。15日の昼の段階で、吉田所長らが予測したように、現場に近寄れなくなるほどの線量の上昇が継続するような事態にはいたらず、いったんは10000マイクロシーベルト/hに達していた線量は当日の午後2時には10000マイクロシーベルト/hを切り、その後必要不可欠な要員を徐々にではあるが、呼び戻すことができたこと、東京消防庁、警察、自衛隊などの協力により、必死の冷却作業が遂行され、最悪の事態が避けられたからである。しかしながら、現場に近寄れなくなるほどの線量の上昇が数時間でおさまり、その後徐々に下がっていった理由は解明されておらず、まさに僥倖であったというほかない。このまま、吉田所長らが予測どおりに線量の上昇が継続していれば、吉田所長以下の要員は1F内で、急性放射線障害によって死にいたり、現場には他の作業員も戻ることはできず、2号機以外の原子炉も次々に最悪の事態を迎え、4号機の使用済み燃料プールも冷却不能によって燃え出していただろう。近藤最悪シナリオメモのに記述されたような最悪の事態が現実のものとなった可能性が差し迫ったものであったと言うこと、このことを確認することが、決定的に重要である。 9 その他の問題点 吉田調書には事故対応だけでなく、中越沖地震の対応、津波想定の問題など重要な問題が含まれている。今回吉田調書以外にも、政府関係者、専門家らの調書が公表された。しかし、他の東電の役員らや政府機関職員の調書は全く公開されていない。今回は、撤退問題以外の問題は時間の関係で検討できなかった。これらの論点については、次の機会を期したい。 第2 基礎的な事実関係整理のためのデータ 1 吉田調書の原文<補足> 先に引用した部分の中間の部分を引用する。 077-1-4 53-54ページ ○回答者 撤退というのは、私が最初に言ったのは、全員撤退して身を引くということは言っていませんよ。私は残りますし、当然、操作する人間は残すけれども、最悪のことを考えて、これからいろんな政策を練ってくださいということを申し上げたのと、関係ない人関は退避させますからということを言っただけです。 ○質問者 恐らく、そこから伝言ゲームになると、伝言を最後に受ける菅さんからすると、ニュアンスの伝え方があると思うんですね。 ○回答者 そのときに、私は伝言障害も何のあれもないですが、清水社長が撤退させてくれと菅さんに言ったという話も聞いているんです。それは私が本店のだれかに伝えた話を清水に言った話と、私が細野さんに言った話がどうリンクしているのかわかりませんけれども、そういうダプルのラインで話があって。 ○質問者 もしかすると、所長のニュアンスがそのまま、所長は、結局、その後の2号機のときを見てもそうですけれども、円卓のメンバーと、運転操作に必要な人員とか、作業に必要な人員を最小限残して、そのほかは退避という考えでやられているわけですね。 ○回答者 そうです。 ○質問者 菅さんは、それもまかりならんという考えだったのかもしれませんけれども、撤退はないとか、命を賭けてくださいとか、遅いとか、不正確とか、間違っているとか、あるいは、これは日本だけではなくて世界の問題で、日本が潰れるかどうかの瀬戸際だから、最大眼の努力をしようとか、そんなのが延々と書かれてあるんですよ。ニュアンス的にはそういうニュアンスですか。 ○回答者 そんなニュアンスのことを言っていましたね。 ○質問者 来られたのは、閣僚というのは、海江田さんとかは来られたんですか。 ○回答者 菅さんと、官房長官が来たのかな、海江田さんはあのときいたのかな、よく覚えていないです。ここは、済みません、どっちかというと、私の記憶より本店にいた人間の記憶の方が正しいと思います。 ○質問者 本店の人が記憶どおりきちっと勇気を持って言っていただくのが一番いいんですけれどもね。 ○回答者 言わないですね。 ○質問者 もう少し私のことを信用してくれればいいんです。 ○回答者 そのメモは、ほとんどそのようなことをおっしゃっていると思っていただいていいです。そのタイミングで、うちはうちで、例の2号機のサプチェンがゼロになって、音が関こえたので退避しますと。さっき言った意味でですね。必要ない人間は退避しますという騒ぎが朝あったときに、ちょうど菅さんが来ているときに、テレビ会議で、その辺でとりあえず(・・・) ○質問者 2号機に異変が生じて、必要人員残して退避というような、その状況のときに、例えば、菅さんなりがテレビ会議を通じて、こっちに状況を聞いてくるとか、そういうことはなかったんですか。 ○回答者 このときはそれ以上のことはなくて、細野さん、これは危ないですというか、まだ水が入る前ですね。水が入らなかったらえらいことになると。炉心が溶けて、チャイナシンドロームになりますということと、そうなった場合は何も手をつけられないですから、1号、3号と同じように水がなくなる、同じようなプラントが3つできることになりますから、凄まじい惨事ですよという話はしていました。 ○質問者 それは細野さんに対して、電話でですか。 ○回答者 電話しました。 2 東電幹部らは全面撤退を官邸に求めたか 事故後の事故調査の過程で、事故後の経過の中で、その評価が著しく分かれていた点の一つは東京電力が事故収束作業中に一旦,撤退を決定することなどにより作業の停滞を招いたかどうかをめぐる論争である。 すなわち,清水ほか事故当時の取締役らは,収束作業中の2011年3月14日夜ないし15日未明,現場職員全員の退避もあり得る旨を官邸閣僚に報告し,東京電力が福島第一原発から全面撤退することの了解を求めようとしたかどうかが争われている。 3 政府事故調の認定 政府事故調の認定は次の通りである。「3 月14 日夜、吉田所長は、2 号機の圧力容器や格納容器の破壊等により、多数の東京電力社員や関連企業の社員に危害が生じることが懸念される事態に至っていたことから、福島第一原発には、各号機のプラント制御に必要な人員のみを残し、その余の者を福島第一原発の敷地外に退避させるべきであると考え、東京電力本店に設置された緊急時対策本部と相談し、その認識を共有した。 他方、清水正孝東京電力社長(以下「清水社長」という。)は、同日夜、吉田所長が、前記のとおり、状況次第では必要人員を残して退避することも視野に入れて現場対応に当たっていることを武藤副社長から聞かされ、同日夜から15 日未明にかけて、順次、寺坂保安院長、海江田経産大臣、枝野官房長官に電話をかけ、「2 号機が厳しい状況であり、今後、ますます事態が厳しくなる場合には、退避も考えている」旨報告し、その了承を求めた。この時、清水社長は、「プラント制御に必要な人員を残す」旨を明示しなかった。 清水社長からの電話を受け、東京電力が福島第一原発から全員撤退することを考えているものと理解した枝野官房長官、海江田経産大臣らは、協議の上、この全員撤退の申入れを受け入れた場合、福島第一原発周辺のみならず、より広い範囲の国民の生命・財産を脅かす事態に至ることから、同月15 日未明、その場にいた福山官房副長官、細野補佐官及び寺田補佐官に加え、班目委員長、伊藤危機管理監、安井保安院付らを官邸5 階の総理応接室に集め、「清水社長から、福島第一原発がプラント制御を放棄して全員撤退したいという申入れの電話があった」旨の説明を行うとともに、今後の対応について協議した。その結果、この協議においては、「プラント対応について、まだやるべきことはある」との見解で一致した。 この協議は、同月14 日深夜から翌15 日3 時頃にかけて行われたが、その頃の福島第一原発2 号機の状況は、同日1 時台から、原子炉圧力が継続的に注水可能な0.6MPa gage 台を推移するようになり、依然として危険ではあるものの、注水の可能性が全くないという状態ではなく、更に安定的注水が可能と考えられていた0.6MPa gage 以下に減圧するため主蒸気逃し安全弁(SR 弁)の開操作が試みられていた。しかし、官邸5 階にいたメンバーは、このような2 号機の状況や対処状況を十分把握しないまま前記協議を行っていた。 枝野官房長官らは、原子炉の状態が依然として極めて危険な状態にあるとの認識の下、引き続き事故対処に当たる必要があるものの、清水社長の前記申入れを拒否することは福島第一原発の作業員を死の危険にさらすことを求めるという重い問題であり、最終判断者である菅総理の判断を仰ぐ必要があると考え、同日3時頃、総理執務室において、菅総理に報告した。 これに対し、菅総理は、東京電力が福島第一原発から全員撤退した場合、福島第一原発の各原子炉等のみならず、福島第二原発のそれも制御不能となり、その結果、大量の放射性物質が大気中に放出される事態に至る可能性があると考え、即座に、「撤退は認められない」旨述べた。菅総理ら総理執務室にいたメンバーは、総理応接室に移動し、ここには、松本龍内閣府特命担当大臣(防災担当)、藤井裕久内閣官房副長官らも加わって、改めて協議を行い、全面撤退は認められないことを確認した。これを受け、菅総理は、東京電力の意思を確認するため、清水社長を官邸に呼ぶよう指示した。また、菅総理は、この時の撤退(退避)申入れを契機として、東京電力の事故対応についての考え方に強い不信感を抱いたが、それ以前においても、東京電力から事故に関する十分な情報提供が受けられておらず、また、東京電力との間で十分な意思疎通ができていなかったことから、適切に事故対応に当たるには、東京電力本店に統合本部(後に設置された福島原子力発電所事故対策統合本部。以下「統合本部」という。)を設置し、そこに詰めて、情報収集に努めるとともに、東京電力と直接意思疎通を図ることが必須であると考え、この協議の同席者に対し、その旨述べた。その後、菅総理は、同日4 時頃、前記メンバーが同席する中で、官邸に到着した清水社長に対し、東京電力は福島第一原発から撤退するつもりであるのか尋ねた。清水社長は、「撤退」という言葉を聞き、菅総理が、発電所から全員が完全に引き上げてプラント制御も放棄するのかという意味で尋ねているものと理解し、「そんなことは考えていません。」と明確に否定した。<この発言の正確性には以下に述べるとおり、疑義がある>さらに、菅総理は、前記のとおり、政府と東京電力との間の情報共有の迅速化や意思疎通を図る一方法として、東京電力本店内に政府と東京電力が一体となった統合本部を設置して福島第一原発の事故の収束に向けた対応を進めていきたい旨の提案を行い、清水社長は、これを了承した。同日5 時30 分頃、菅総理らは、東京電力本店2 階の本店緊急時対策本部を訪れ、同本部にいた勝俣恒久東京電力会長、清水社長、武藤副社長その他の東京電力役員及び社員らに対し、自らを本部長とし、海江田経産大臣と清水社長を副本部長とする、統合本部の立ち上げを宣言するとともに、「日本が潰れるかもしれない時に撤退などあり得ない。命がけで事故対処に当たられたい。撤退すれば、東京電力は必ず潰れる」旨強い口調で述べた。」(政府事故調202-204ページ)。この認定では清水社長が撤退について官邸に了解を取ろうとした際に一部の要員を残すという留保は付けられていなかったことが認定されている。木村英昭『官邸の一〇〇時間』では、清水社長が「「そんなことは考えていません。」と明確に否定した。」とされている部分について、菅首相が「撤退などあり得ませんから」と告げたのに対して「はい、分かりました」と答えたとされている。周りにいた、海江田大臣、伊藤哲朗、安井正也らは清水社長は撤退したいとあれだけ述べていたのにと不審な思いを抱いたと証言しているという(241-242ページ)。官邸の誰もが、東京電力は全面撤退を計画しており、総理にこれをとめてもらおうと考えていたことがわかる。 4 国会事故調査報告書の認定とテレビ会議録画との矛盾 これに対して、国会事故調は「3.1事業者としての東京電力の事故対応の問題点」において、「発電所の現場は全面退避を一切考えていなかった」、「テレビ会議システムで繋がっていたオフサイトセンターにおいても全面退避が議論されているという認識がなかったこと等から判断して、全面撤退は官邸の誤解であ」ると断じている(国会事故調査報告書251頁)。また、「9)「全面撤退」か「一部退避」か、その真相」の項において、官邸は東京電力が全面退避の相談を申し出たものと捉え、他方、東京電力は「作業に直接関係のない人員」の退避を申し出たのにすぎず、「両者の見解は食い違っている」とある(国会事故調査報告書 276頁)。そして、「福島第一原発の現場においては、当初から全員の撤退は考えていなかったものと認められ」るとしている(国会事故調査報告書313頁)。しかし、これらの認定は、次項において紹介する官邸側の証言者の調書と矛盾するだけでなく、最も客観的な証拠である東電テレビ会議録画と矛盾している。 3月14日の午後から夜の部分を引用する。 16:57清水「最悪のシナリオを描いたうえで対応策をしっかり把握して報告してください」 17:45清水:OFCから移動中の武藤副社長に電話 19:28 OFC小森「退避基準の検討を進めて下さい。」 19:45武藤副社長→原・退避手順の検討指示(ヒアリング及び国会事故調での発言) 19:55高橋「武藤さん、これ、全員のサイトからの退避っていうのは何時頃になるんですかねえ。」 20:16高橋「今ね、1Fからですね、いる人達みんな2Fのビジターホールに避難するんですよね。」 20:20清水「現時点で、まだ最終避難を決定している訳ではないということをまず確認して下さい。それで、今、然るべきところと確認作業を進めております。」「プラントの状況を判断・・あの、確認しながら・・決めますので。」 ここで清水社長が述べている「最終避難」という言葉は要員のほとんどの引きあげを意味するとしか考えられず、「しかるべきところ」とは官邸にほかならない。その清水社長はその日午前4時17分、官邸に着き、菅総理と一対一で会った。菅総理は、「ご苦労さまです。お越し下さり、すみません」とあいさつしたあと、いきなり結論を述べた。「撤退などあり得ませんから」と。これに対して、清水社長は、「はい、わかりました」と応じたと言う。清水社長は決して「そんなことは考えていません」とは述べていないのである。このやりとりに続いて、官邸は、東電本社内に政府と東電の統合本部を作り、細野補佐官が常駐するという体制を清水社長に提案し、了承を取り付けている。多くの東京電力社員や関連企業の社員の生命の危機に際して、企業のトップとして社員の命と安全を考えたことは責められないかもしれない。全面撤退の計画はなかったとした国会事故調の野村修也委員は、東京電力側の「一部退避」に過ぎなかったという主張を鵜呑みにしている。しかし、野村委員はテレビ会議の記録を見た上で「最悪の場合は10名ぐらいかなというような様子が見受けられる」とあり、これを清水も認識していたという(国会事故調査報告書 会議録 392頁)。緊急対策メンバーを残すといっても、清水社長が考えていたのは、10名程度であり、それでは福島第1原発の6機とりわけ危機的な状況に陥っていた1ないし4号機の過酷事故状況には全く対応できなかったことは明らかである。事故発生当時、この原子炉では、東京電力の社員が755人、協力会社の社員5660人ほどの作業員がいた。15日早朝の時点でも、この中の720名程度の作業員が残り、事故対策に当たっていた。高線量下では、ひとつの弁を操作するだけでも、10人単位の作業員が必要であった。この「緊急対策メンバー」とは、残されたとしても、線量が上がってくれば生き残る可能性はほとんど皆無だったわけであり、吉田所長の死を覚悟していたとの発言からも残留する者たちは、いわば沈没する船と船長が生死を共にするという覚悟を示す発言ではあり得ても、事故の緊急対策は実質的にほぼ放棄された状態であったとはいえる。 5 650名の退避により、事故対応作業に支障が生じたか ここで、問題は次のように特定できる。650名の退避によって緊急対策メンバーは残すという吉田所長の意図に反する事態が生じたかどうかが問われなくてはならない。まさに、現場ではプラントデータすらとれない状態が生じていた。15日の段階で1Fの1,2,3,4は中操に常駐できないほど線量が高かった。定期的に人を送ってデータをとっていた(吉田051-58ページ)。プラント関連パラメータ(水位、圧力、温度など) | アーカイブ(2011年)によると、東電が公表しているプラントデータでも午前11時20分までの数時間、原子炉内の水位や圧力の計測ができていない。いったん事故原発は管理を放棄された状態に陥っていたのである。3月15日の午前9時には11000マイクロシーベルト/Hという異常な高線量を示したものの、午後0時25分に1000マイクロシーベルト/H台に、午後1時50分台に1000マイクロシーベルト/H以下に下がってきた(東電HPに掲載されているモニタリングデータより)。この時に放出された放射性物質が大規模な環境汚染をもたらしたものであるが、その後この数値は少しずつ下がっていった。同時に4つの原子炉で深刻な事態が発生していた14-15日の状況では、むしろ1000人単位の作業員を追加して、集中的なオペレーションをしなければならない状況だったはずである。しかし、そのような状況で、東電の最高幹部らは、吉田所長の指示にも反して、バスを手配し、事故対応の判断に不可欠なGMレベルの幹部を含む650人の作業員を2Fに移動させたと考えるほかない。後から戻した人員の中には運転員まで含まれている。吉田氏は「作業ができる人間だとか、バックアップできる人間は各班で戻してくれという形は班長に」と述べている(吉田077-1-4 55-56ページ)。事故対応の作業を続けるために必要な人間までが2Fに撤退してしまったことは、吉田氏の発言からも明らかなのである。650人の作業員の大半の者たち、とりわけ下請け作業員らにとっては、吉田所長の必要な要員は残るという指示は徹底されておらず、東電社員の指示に従って移動したという認識であり、朝日新聞報道によって「所長の指示違反」と言われたことには、違和感があったことは理解できる。しかし、問題の本質は、14日の午前中の1Fは、沈み行く船と運命を共にする覚悟を固めた所長と、これに従う約70名の作業員だけを残し、事故対応のために不可欠なデータもとれない、絶望的な状況に陥ったと言うことである。吉田所長の「死を覚悟した、東日本全体は壊滅だ」というイメージこそ、国民的に共有しなければならないことである。 6 菅、海江田、福山、細野調書は全面撤退の計画を裏付けている (1)菅元総理大臣の供述要旨 −−東電が撤退するようだということは、どういういきさつで聞いたのでしょうか。 菅氏 15日の午前3時ごろに秘書官が来て、(海江田万里)経産大臣から話があると。東電が撤退し たいと言ってきている、どうしましょうかと。 −−誰も1Fからいなくなるという認識だったのですか。 菅氏 経産大臣や他のメンバーもそういう認識でした。 −−東電の本店に行って、関係者を激励し、打ち合わせをしたと。 菅氏 私なりの気持ちを込めて話をしました。(原発を)放棄した場合、すべての原発、核廃棄物が崩壊することになり、日本の国が成立しなくなる。皆さんは当事者。命をかけてください。日本がつぶれるかもしれない時に、撤退はあり得ない。撤退したら東電は必ずつぶれる。 (2)枝野元官房長官の供述要旨 私あてに東電の清水正孝社長から電話がかかってきた。生の言葉は記憶していないが、間違いなく全面撤退の趣旨だった。『必要のない人は逃げます』という話は官房長官にする話じゃないので勘違いはあり得ない。人命にかかわることで、私は菅さんほど腹が据わってなかったので、『撤退はあり得ない』とは言えず、『私の一存ではいとは言えない』と答えた。『東電が全面撤退の意向を政府に打診した』という報道があり、3月18日の会見で質問されたが『承知していない』と答えた。さすがにこの段階では言えなかった。『そんな打診もあったが断った』と言ったら、いろいろな意味でもたない。 (3)海江田元経産大臣供述要旨 記憶では(最初に)清水正孝社長から『退避』という言葉を聞いた。『撤退』という言葉ではない。そこで『何とか残ってください』『そうですか』みたいなやりとりをした。東電に対する不信感が頂点に達した時ではないか。僕は全員(退避してしまうのか)と思った。総理が『東電に行こう』と言ったから、もろ手を挙げて大賛成した。 (4)細野首相補佐官の供述要旨 清水正孝・東電社長から海江田万里・経済産業相に電話があったが、海江田さんは全面撤退と解釈していた。それに(官邸に詰めていた)武黒一郎・東電フェローも撤退するしかないという話をしていた。東電本店と武黒さんの連絡がうまくできていなかった可能性もあると思う。吉田さんが全面撤退を否定しているというのならば私は信じるが、当時の官邸は枝野(枝野幸男・官房長官)さんも海江田さんも、東電が全員持ち場を離れさせようとしている前提でずっと話をしていた。650人が退避した後、人員が戻らなければ原発はコントロール可能だったかを解明すべきである。過酷事故対応は、中央制御室にいる運転員のみではできず、事故時に設置される緊急対策室などの中央制御室以外の組織及び人員との連携動作が主になるとBWR運転訓練センターのヒアリングにある。さらに、東京電力においても「過酷事故に実技訓練に対するニーズはなかった」としている(国会事故調査報告書(2012年7月5日)191頁)。これに対して、東京電力側の「一部退避」に過ぎないという主張について、野村委員はテレビ会議の記録を見た上で「最悪の場合は10名ぐらいかなというような様子が見受けられる」とあり、これを清水も認識していたという(国会事故調査報告書 会議録 392頁)。このように、東京電力においては、「一部退避」として緊急対策メンバーを残すといっても、10名程度であり、それでは福島第1原発の6機とりわけ危機的な状況に陥っていた1ないし4号機の過酷事故状況には全く対応できなかったことが明らかである。すなわち、「緊急対策メンバー」とは、緊急対策本部400人の中のごく一部であり、残されたとしても、線量が上がってくれば、生き残ることができた可能性はほとんど皆無だった。緊急対策メンバーとして誰が残留することになっていたのか、その人員でどのような対応が可能であったのか、退避した650名には、緊急対策メンバーとして吉田所長が必要だと考えた人員は含まれていないのかが明らかにされる必要がある。なぜ高線量が続かなかったのかは解明されていない。しかしながら、現場に近寄れなくなるほどの線量の上昇が数時間で下がりだし、継続しなかった理由は解明されておらず、まさに僥倖であったというほかない。このまま、予測どおりに線量の上昇が長期に継続していれば、吉田所長以下の少数の要員は1F内で、急性放射線障害によって死にいたり、現場には他の作業員も戻ることはできず、2号機以外の原子炉も次々に最悪の事態を迎え、4号機の使用済み燃料プールも冷却不能によって燃え出していただろう。近藤最悪シナリオメモに記述されたような最悪の事態が現実のものとなった可能性が差し迫ったものであったと言うこと、このことを確認することが、決定的に重要である。 <薩摩川内市議会の再稼働に関する判断について> *3:http://qbiz.jp/article/46691/1/ (西日本新聞 2014年9月27日) 最初の判断、市議重圧 薩摩川内市、迫る「地元同意」 九州電力川内原発の再稼働に必要な「地元同意」が焦点となる中、立地自治体の鹿児島県薩摩川内市の市議たちが苦悩している。同県の伊藤祐一郎知事は市議会、市長、県議会の順に地元同意を進める考えで、最初に判断を下すことになる市議たち。全国からのはがき攻勢など有形無形の圧力を受け、支持者の賛否も二分する中、あと1カ月余りで「苦渋の選択」(中間派市議)が待ち受ける。「日本で最初に判断しなければならない。毎日もんもんとしている」。賛否を決めていない市議はそう吐露した。市議は26人。別の中間派の市議は同僚との距離を測りかねている。「市議同士でも、うっかり原発の話はできない。誰がどんな考えか分からないから」。2012年10月の市議選で西日本新聞は立候補者に再稼働の賛否を尋ねた。当選した26人中、賛成8人、反対2人で、16人は「どちらとも言えない」だった。その後、賛成に転じた市議は「現時点で原子力エネルギーは必要だ。責任を取るのかと問われれば『はい』と言うぐらいの覚悟が必要だ」と力を込める。一貫して反対する市議は「今が剣が峰。賛成派の市議もプレッシャーを感じているはずだ。ただ、みんなで渡れば怖くないと、まとまって行動するかもしれない」と警戒する。「女性市議だから反対して当然だ」「賛成するのは金目でしょ」。賛成派や中間派と目される22人には毎日十数通、全国から再稼働反対を訴えるはがきが届く。中には「(再稼働させて)殺人鬼になりたいですか」と過激な表現もあった。ある市議は「はがきが届くのが怖い。身の危険すら感じる」と打ち明けつつも「賛否の採決からは逃げない」と語る。市内ではがき運動を展開する鳥原良子さん(65)は「市議の方々に原発の危険性をきちんと考えてほしいからで、それだけ私たちは真剣だと受け止めてほしい」と説明する。一方で、市議たちには国への不満が高まる。「国は責任を取ると言いつつ、われわれに押しつけようとしている」と口をそろえる。中間派の市議は「国のエネルギー政策は尊重するが、再稼働に結論を出すのが果たして地方議会の役割か」と疑問を投げかける。原発30キロ圏の他の議会では、自分たちの議会の同意も再稼働の条件に加えるよう求める動きが広がる。薩摩川内市議の一人がつぶやいた。「同意判断を下す議員は、原発を動かすかどうかの重い責任を負うと分かっているのか」 。 PS(2014年9月28日追加):*4のうち、「①政府の事故調検証委員会が関係者から聞き取り調査をしてまとめた聴取結果書公開の年内完了が困難になった」「②調書は非公開を前提に関係者の任意の協力を得て作成されたから」というのは、事故の真実を知るための事故調書は国民の財産であり、*3のような原発再稼働の判断やエネルギー政策に影響を与えることを考えればおかしい。また「③実際の事故現場に携わった関係者の多くが退職したり住所を変更したりして返答が得られない」というのも、現場にいた人なら健康管理が必要であるため変だし、返答が得られない人のうち何割かは亡くなっているかも知れないが、亡くなった人の割合やその原因も重要なデータであるため追跡調査すべきである。 *4:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140928-00000090-san-soci (産経新聞 9月28日) 原発調書、年内の公開完了困難 関係者数百人と連絡つかず 東京電力福島第1原発事故に関し、政府の事故調査・検証委員会が関係者から聞き取り調査してまとめた「聴取結果書(調書)」の公開が難航し、目標としていた年内までの完了が困難になっていることが27日、政府関係者への取材で分かった。これまで公開されたのは対象者772人中19人だけで、数百人とされる事故現場関係者の居場所がつかめないことなどが原因。しかし、過酷な現場に携わった関係者の証言は事故の教訓として生かす必要があるため、全面公表が望まれている。これまでに公開されたのは、事故発生時に所長として対応した吉田昌郎氏(平成25年7月死去)や菅直人元首相ら。政治家や行政関係者らがほとんどで、東電関係者は吉田氏しかいない。772人の対象者の内訳は公表されていないが、事故現場の作業員を含む東電関係者と政府関係者が大半を占める。事故調書は当初、非公開を前提に関係者の任意の協力を得ながら計約1500時間のヒアリングを経て、作成された。5月に朝日新聞が吉田氏の調書を独自に入手し報道したことから、政府は6月、本人の同意が得られた場合、順次公開する方針に転換。年内までに内閣官房のホームページで公開する予定だった。しかし、政府関係者によると、6~8月にかけて文書発送などで実施された関係者の意向確認で、返答があったのは1割ほど。特に実際の事故現場に携わった関係者の多くが退職したり住所を変更したりして、返答が得られないという。政府関係者は「本人のプライバシーを尊重しており、大々的に追跡調査すると迷惑をかけてしまう」と及び腰。東電広報部も「個人の意思を尊重し、会社として公開の是非を示唆することはしない」として、個人の判断に任せているという。原発の再稼働に向け審査を受けている電力会社関係者は「事故が進展する中で、作業員がどう判断し、どう動いたかは事故の再発防止の上でぜひ知りたい情報だ」と話している。
| 原発::2014.8~10 | 10:29 AM | comments (x) | trackback (x) |
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2014,09,23, Tuesday
*2-3より *4-2より *5-1より (1)フクシマ汚染水の海への流出について *1-1のように、小渕優子経産相が、9月7日、東京電力福島第1原発を視察して、「汚染水は、全体としてコントロールされていると考えている」と述べたそうだが、これは、安倍首相の見解をなぞっただけである。そして、実際には、*1-3のように、米原子力規制委員会のグレゴリー・ヤツコ前委員長が、「汚染水は制御不能で、地下水はコントロールできない」「問題をここまで悪化させたことが驚きだ」と述べており、私もそのとおりだと思う。そして、これは、海産物を通じて関東はじめ日本全国に影響があるため、単に安倍首相の見解を踏襲するだけでは、群馬県選出の幼い子どもの母親でもある女性衆議院議員が閣僚になった意味は小さくなる。 また、*1-2のように、東電の資料から、2013年8月~2014年5月にかけて港湾内の1~4号機取水口北側で測定したストロンチウム90とセシウム137の平均濃度を基に試算した、ストロンチウム90とセシウム137の1日当たりの流出量は合わせて2兆ベクレルを超え、事故直後からの累計では相当の数値になり、これが港湾内にのみ留まって海への影響がないわけがない。そのため、*1-4のように、福島第1原発の地下水放出に、漁業者が反発しているのだ。 (2)フクシマの放射線被曝と補償 *2-1のように、東京電力福島第1原発事故による健康への影響を調べている福島県は、甲状腺検査の途中経過を公表し、「現時点で放射線の影響はみられない」という従来通りの見解を示した。しかし、甲状腺検査では、甲状腺癌の「確定」が57人、「疑い」が46人となっており、10代の甲状腺癌の「100万人に1~9人」いう通常の頻度よりかなり高い割合となっている。また、チェルノブイリ原発事故では、甲状腺癌が急増したのは4~5年後で、消化器、呼吸器、泌尿器の癌、免疫機能低下、心筋異常などの疾患も見られ、低線量被曝には未解明な点が多い。さらに、フクシマは、被曝線量を推計に頼っているため、原発事故による健康被害について、「今までも、現在も、将来も問題ないと約束する」とは言えない。 そのため、*2-2のように、日本学術会議は9月19日、「事故直後の放射性物質の拡散をめぐる情報がまだ十分公開されていない」として、「政府や研究機関は関連する情報を直ちに公開すべき」と訴えたそうだが、国民を護るつもりがあるのなら、公開するのが当然である。そして、それを踏まえなければ、避難者の帰還判断や除染について、科学者が地域の決定や住民の選択を正しく支援することはできない。 また、*2-3のように、住宅の除染を計画した東北、関東の74市町村のうち計画分を未完了としているのは、6月末時点で半数超の40市町村に上り、少なくとも計約31万1700戸分に上ることが、毎日新聞のアンケートで分かったとのことである。これ以外にも、埼玉県のように線量を全県で3か所しか測定しておらず、除染計画が全くない県もある。自民党政権になった後の経産相は、茂木氏(栃木県選出)と小渕氏(群馬県選出)だが、地元からの要望はないのだろうか、それとも要望を無視してきたのだろうか。 (3)原発地元での再稼働反対例 *3のように、原発の地元では、日本で初めて原子力の火が灯った茨城県東海村でさえ「脱原発集会」が開かれ、「JCO臨界事故から十五年、原発再稼働を許すな」をテーマ掲げ、事故時に自身の判断で住民避難を決めた元村長の村上達也さん、JCO健康被害訴訟元原告の大泉恵子さん、各地の原発訴訟に詳しい弁護士の青木秀樹さんの三人が意見を交わし、デモ行進も行うそうである。そして、これは一例に過ぎない。 (4)意図的な試算と原発政策への誘導 *4-1に書かれているとおり、小渕経産相は9月21日のNHK日曜討論で、「資源の乏しい日本はエネルギーについて良いバランスを取っていくことが大事で、原子力を持たない選択をするということは難しい」と述べたが、これは10~50年前から同じことを言っており、経産省のペーパーを暗記して語ったにすぎない。現在では、資源の採掘方法や発電方法が進歩したため10年前と同じでもなく、経産省が意図的で遅れているのだ。また、“バランス”と言う人も多いが、現在、蒸気機関車の割合が殆ど0であるのと同様、何でも少しずつあるのがバランスがよいわけではなく、時代によって0になる技術もあるのだ。 しかし、小渕経産相は「原子力規制委員会の安全審査に合格した原子力発電所を再稼働させていく」という政府の方針を暗記しているかのように改めて述べ、「古くなった火力発電所をフルに使ってエネルギーを作り出しているので、決して安心できる状況ではない」とも語ったが、原発か火力かという選択こそ変えるべきなのであり、それは今なら可能である。 さらに、小渕経産相は、「化石燃料の輸入増が電気料金の上昇につながり、中小企業などの経営を圧迫している」とも述べたが、これは、*4-2、*4-3に記載されているとおり、原発停止の影響を過大評価しており、実際には原発再稼働の効果は小さい上、*4-4のように、米国の試算では「再生可能エネルギーのコストの低下で、原発による電力は風力より高く、太陽光発電(公害がない)と同レベル」になっているのだ。 (5)電力自由化に逆行して大規模事業者を優遇する経産省 *5-1のように、経産省は、2016年4月に家庭向け電力小売りを自由化する際、「消費者を保護するため」と称して、小売りに参入する企業を審査して十分な供給能力がない企業の販売を認めない規制を行うそうだ。また、太陽光や風力など、気象条件で供給力が変わる発電所に依存する企業は、供給を安定させるため、(蓄電池ではなく)火力発電所を確保しているかを審査するそうで、これは、消費者保護と称する既存電力会社保護策であり、独占禁止法に違反するとともに、電力自由化にも逆行する。 また、*5-2のように、経産省は総合資源エネルギー調査会の小委員会に、大手電力など原発事業者の優遇策を提案したそうだが、これは原発由来の電力に優遇策を与え、電力小売り自由化の趣旨に反している。経産省は、エネルギー基本計画で「原発は運転コストが低い」と位置付け、「重要なベースロード電源」として再稼働推進を打ち出したのであるから、こんどの提案は自己矛盾だ。 (6)原発事故時の補償は、メーカーを免責する(!?) *6-1のように、原発を持つ国同士が重大事故時の賠償金を支援する「原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)」承認案を29日に召集される臨時国会に提出するそうだが、この条約は異常に巨大な天災の場合を除き、賠償責任は全て事故発生国の電力会社が負い、加盟国は事故発生国に対して支援金を支払う仕組みである。そのため、輸出先が加盟国なら、原発メーカーは免責され事故時の損害賠償リスクが減るが、その分は国民のリスクが高まるのだ。なぜ、そこまでして原発を輸出しなければならないのか、そこが今、明確にして議論すべき問題である。 また、*6-2-1のように、原発事故の賠償を裁判外で解決する手続き(原発ADR)を巡り、原発事故による避難で死亡した場合の慰謝料は「一律に50%」で算定しており、これは、*6-2-2のように、原発賠償の算定基準そのものだそうである。その内部文書には、「死亡慰謝料を低めにする必要はないか」など、被災者にとって看過できない記載もあり、すべて非公開の内容ばかりであるため、早急に開示して地元住民に対する説明が必要だろう。 (7)経済成長を助けるのは、どういう女性か *7で、米ジョージタウン大の女性・平和・安全保障研究所所長 メラニー・バービアー氏が述べているとおり、世界で女性が経済成長を促していることは事実で、女性の社会進出は様々な場所で見られ、女性が職場で働くことによって国内総生産(GDP)が上がり、女性が自らの収入を自分のコミュニティーや健康維持、家族、子供たちの教育に振り向ける傾向が強い結果、その社会の生活水準が上がるという意見に、私は全く同感だ。しかし、女性の起業家にも、社会の意識、銀行、行政、司法など多数のバリアがあり、賃金格差は女性差別のほんの一例にすぎない。 そのような中、人口の半分を占める才能(女性)が自由に能力を発揮できるようにしなければならないのは当然だが、管理職以上に推挙される女性は、とかく小渕優子経産相のように男性が作った枠からはみ出さない人が多い。これは、男性が自分の想定内で動く女性を推挙するからだろうが、それでは女性が大臣になっても、原発を推進して再生可能エネルギーによるイノベーションを抑えるというように、経済成長を促さず、雇用も増えない。そのため、もう、このパラドックスにも目を向けるべきである。 <フクシマ汚染水の海への流出について> *1-1:http://www.newsweekjapan.jp/headlines/business/2014/09/133911.php (Newsweek 2014年9月8日) 小渕経産相、福島第1原発の汚染水問題「コントロールされている」 小渕優子経済産業相は7日、東京電力福島第1原発を就任後初めて視察した。視察後、記者団に対し、汚染水問題がコントロール下にあるかとの質問に対して「全体として状況はコントロールされているものと考えている」と述べた。小渕経産相は「個別の事象は発生しているが、モニタリングの結果、発電所の港湾内で放射性物質の影響は完全にブロックされている」と話した。1年前にブエノスアイレスで行われた国際オリンピック委員会(ICO)総会での2020年東京五輪誘致スピーチで安倍晋三首相は、福島第1原発の汚染水問題について「アンダー・コントロール」と発言した経緯がある。今月3日に経産相に就任したばかりの小渕氏だが、最重要課題のひとつである汚染水問題で従来の政府見解を踏襲した形だ。 *1-2:http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014090700093 (時事ドットコム 2014/9/8) 海流出、さらに2兆ベクレル=ストロンチウムとセシウム-福島第1 東京電力福島第1原発から放射性物質が海に流出している問題で、今年5月までの10カ月間に第1原発の港湾内に出たストロンチウム90とセシウム137が計約2兆ベクレルに上る可能性が高いことが7日、東電の資料などで分かった。二つの放射性物質だけで、第1原発の事故前の放出管理目標値の10倍を超える。事故に伴う深刻な海洋汚染が続いていることが浮き彫りとなった。第1原発では、汚染された地下水が海に流出しているほか、高濃度汚染水がたまった建屋のトレンチ(ケーブルなどの地下管路)から直接港湾内に漏れている可能性も指摘されている。東電の資料によると、昨年8月から今年5月にかけ、港湾内の1~4号機取水口北側で測定したストロンチウム90とセシウム137の平均濃度を基に試算した1日当たりの流出量は、約48億ベクレルと約20億ベクレル。10カ月間の総流出量はそれぞれ約1兆4600億ベクレルと約6100億ベクレルの計算になる。合わせると2兆ベクレルを超えるが、汚染水には他の放射性物質も含まれており、港湾内の汚染はより深刻とみられる。 *1-3:http://www.sponichi.co.jp/society/news/2013/09/24/kiji/K20130924006679480.html (スポニチ 2013年9月24日) 「汚染水は制御不能」米規制委の前委員長が指摘 米原子力規制委員会(NRC)のグレゴリー・ヤツコ前委員長は24日、日本外国特派員協会で記者会見し、東京電力福島第1原発の汚染水問題について「東京に影響はないが、汚染水は制御不能だ」と述べた。ヤツコ氏は、安倍晋三首相が国際オリンピック委員会総会で「状況はコントロールされている」などと発言したことに「現場では努力しているが、事態は制御不能なところまで来ている。地下水はコントロールできない。できることは影響を和らげることだけだ」と指摘、監視強化の必要性を訴えた。さらに、汚染水が海に流出し続けている現状を踏まえ「問題をここまで悪化させたことが驚きだ。なぜもっと力を注いでこなかったのか」と、政府と東電の対応を批判した。 *1-4:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201409/20140919_63008.html (河北新報 2014年9月19日) 福島第1・地下水放出に漁業者反発 東電説明 東京電力が福島第1原発の汚染水対策として建屋周辺の井戸「サブドレン」から地下水をくみ上げ、最終的に海に放出する計画で、福島県漁連は18日、いわき市漁協の組合員を対象に説明会を同市内で開いた。東電の説明に漁業者から反発が相次いだが、県漁連の野崎哲会長は終了後、報道陣に「計画の必要性はかなり高い。執行部として組合員に理解を求めていきたい」と述べ、容認に前向きな考えを示した。漁業者約100人が参加し、東電福島復興本社の新妻常正副代表らが計画を説明。参加者からは「試験操業の魚種が増え、前に進もうとしているのに、トラブルが起きたら立ち直れない」「東電には不信感しかない」など反対の声が続出した。狭い会場に入れない組合員が多数いたため、説明会は途中で打ち切られ、後日、あらためて開くことになった。野崎会長は終了後、「廃炉作業の進展と漁業の復興は車の両輪だ」と述べ、計画に理解を示した。一方、建屋内などの高濃度汚染水については「浄化後も海洋放出は認められない」と述べた。いわき市四倉の佐藤芳紀さん(55)は取材に「東電は半年間ぐらいデータを集め、足場を固めるべきだ。現状では納得できない」と強調。同市永崎の作山浩之さん(50)も「今回の計画を認めたら、いずれ建屋に入った汚染水の放出につながりかねない」と批判した。相双漁協の組合員向けの説明会も相馬市で19日に開かれる。 <フクシマの放射線被曝と補償> *2-1:http://www.shinmai.co.jp/news/20140826/KT140825ETI090007000.php (信濃毎日新聞 2014年8月26日) 被ばく検査 これからが大切になる 現時点で放射線の影響はみられない―。東京電力福島第1原発の事故による健康への影響を調べている福島県が、甲状腺検査の途中経過を公表し、従来通りの見解を示した。国連放射線影響科学委員会や国際がん研究機関といった専門機関も、事故の影響には否定的だ。半面、長期にわたる継続的な調査の必要性も訴えている。何より、被ばくした住民の多くが今も健康不安を抱えている。国は福島県を積極的に支援し、甲状腺に限らず、住民が希望する診療を受けられるよう、体制の拡充に努めなければならない。甲状腺検査は、震災発生時18歳以下だった37万人を対象に2011年10月から続けている。1次検査の結果が出た約30万人のうち、甲状腺がんの「確定」は57人、「疑い」は46人となっている。10代の甲状腺がんは「100万人に1~9人」とされた震災前の頻度より割合は高いが、検査の精度が高まったためという。当初から問題が多かった。甲状腺がんの原因となる放射性ヨウ素の半減期は8日間と短い。検査が始まった時点でほぼ消失していて、被ばく量は推計に頼らざるを得ない状況だった。検査の順番がなかなか回ってこない、検査結果が書面で通知されるだけで医師から説明を受けられない―。住民の不満は強く、自費で検査や再検査を受けた人たちも少なくない。国の責任は重い。健康調査は福島県に任せきり。被ばくした人は他県にもいるのに、十分に対応していない。血液や尿など検査項目を増やすよう求める医療関係者の声にも応えてこなかった。東京五輪招致に当たり、安倍晋三首相は、原発事故による健康被害について「今までも、現在も、将来も問題ないと約束する」と国際社会に言い放った。福島の医療現場からは「被災者と国、自治体との信頼関係の回復が急務」との嘆きさえ聞かれる。検査はこれからが大切になる。チェルノブイリ原発事故で甲状腺がんが急増したのは4~5年後だった。消化器や呼吸器、泌尿器のがん、免疫機能低下や心筋異常などの疾患もみられるという。低線量被ばくには未解明な点が多い。予断を持たず検査を続け、住民の受診率を高め、病気の予防、早期発見を徹底する必要がある。国が前面に立って体制を強化すべきだ。東電任せにした汚染水問題のように、中途半端に推移を見守るのでは無責任すぎる。 *2-2:http://www.minyu-net.com/news/news/0920/news8.html (2014年9月20日 福島民友ニュース)「初期被ばくの解明」提言 日本学術会議が公表 日本学術会議(大西隆会長)は19日、東京電力福島第1原発事故の発生当初のモニタリングデータなど、時間経過に伴い新たに明らかになった情報に基づき、事故に伴う初期被ばくの実態解明を目指すべきだとする内容を盛り込んだ提言を公表した。提言では、被ばくによる健康影響の解明などに向け、行政や科学者集団に望まれる役割を指摘している。放射性ヨウ素などによる事故直後の初期被ばくはいまだ不明な部分が多いが、提言は、昨年6月に米国エネルギー省の調査に基づくヨウ素線量マップが公開されたことなどを指摘。こうした新たに追加された情報に基づき、当時の放射性物質の放出状況や初期被ばくの状況を再度検討し、結果を県民の健康調査などに反映させるべきとした。また、事故直後の放射性物質の拡散などをめぐる情報がまだ十分公開されていないとして、政府や研究機関は関連する情報を直ちに公開すべきと訴えた。県民健康調査は続けるべきとしたが、調査体制の在り方、調査結果の伝え方などについて、住民との対話を踏まえながら不断の改善を図るべきだと指摘。避難者の帰還の判断や除染の目標値をめぐっては、科学者集団が地域の決定、住民の選択を支援すべきとした。原子力規制委員会の下に府省横断的な学術調査・研究の組織を置き、科学者集団が科学的知見や助言を規制委に提供する仕組みを確立することも求めた *2-3:http://mainichi.jp/select/news/20140922k0000m040114000c.html (毎日新聞 2014年9月22日) 住宅除染:過半が未完了…74市町村計画、進捗に地域差 東京電力福島第1原発事故に伴い、市町村による除染を国が財政支援する汚染状況重点調査地域に指定され、住宅の除染を計画した東北、関東の74市町村のうち計画分を「未完了」としているのは、6月末時点で半数超の40市町村に上り、少なくとも計約31万1700戸分に上ることが、毎日新聞のアンケートで分かった。このうち2町は住宅除染に着手できておらず、進捗(しんちょく)率の地域差も浮き彫りになった。同地域に指定された8県(岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉)104市町村(うち4市町村は指定解除)に7〜8月、優先してほぼ終了した学校や公共施設などを除き、住宅、道路、農地、森林の除染についてアンケートし、全市町村が回答した。このうち住宅除染を計画したのは74市町村。未完了とした40市町村の県別の内訳は、実施戸数の多い福島県が29と大半を占め、少なくとも28万6002戸の除染が終わっていなかった。他は栃木・宮城各4、茨城2、群馬1で計2万5719戸。今後の除染予定戸数について、3市町村は「集計中」などとして回答しなかった。宮城県山元町(予定戸数1495戸)と福島県新地町(同600戸)は「進捗率0%」だった。作業が進まない理由として「除染土の仮置き場確保が困難を極めている」(福島県いわき市)など多くが仮置き場不足を挙げた。また、「関係者が膨大で、同意取得に日数を要している」(栃木県那須町)など地権者同意に手間取っている例も複数あった。このほか、計画分は終わったが、軒下などの放射線量が比較的高い場所の除染を「今後も継続実施する必要がある」と答えたところも岩手・茨城各2、福島1の計5市町村あった。環境省の担当者は「福島県は実施戸数が多く、計画完了は2015〜16年度末がめどでほぼ想定通りのペースだ。他県は戸数を基準にすると約9割が終了した」と説明する。一方、京都精華大の山田国広名誉教授(環境学)は「国は除染方法の大枠を指針などで定めているが、その運用は自治体に任され、地域差が生じている。計画分を終えてもホットスポットなどの問題が残る場合もあるが、今後の具体的な方針を国はまだ示していない」と指摘する。 <原発地元での反対意見> *3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/20140921/CK2014092102000167.html (東京新聞 2014年9月21日) JCO臨界事故から15年 東海村から「脱原発を」 28日に集会 東海村の核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所で一九九九年、作業員二人が死亡する臨界事故が発生してから三十日で十五年。これに合わせ、脱原発を訴える集会が二十八日、東海村石神内宿の石神コミュニティセンターで開かれる。「JCO臨界事故から十五年、原発再稼働を許すな」をテーマに、事故時に自身の判断で住民避難を決めた元村長の村上達也さん、JCO健康被害訴訟元原告の大泉恵子さん、各地の原発訴訟に詳しい弁護士の青木秀樹さんの三人が意見を交わす。水戸地裁で行われている日本原子力発電東海第二原発運転差し止め訴訟の報告などもある。集会は午後一時半から。午後三時半からJR東海駅まで約二・四キロにわたりデモ行進も行う。参加無料。問い合わせは茨城平和擁護県民会議=電029(221)6811=へ。 <意図的な試算結果と政策> *4-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS21H03_R20C14A9NN1000/ (日経新聞 2014/9/21) 小渕経産相「原子力持たない選択は難しい」、NHK番組で 小渕優子経済産業相は21日のNHK番組で「資源の乏しい日本はエネルギーについて良いバランスを取っていくことが大事。原子力を持たない選択をするということはなかなか難しい判断ではないか」と述べ、原子力規制委員会の安全審査に合格した原子力発電所を再稼働させていく政府の方針を改めて強調した。小渕氏は「原発がなくても我々の生活は回っているじゃないかという話をいただくが、古くなった火力発電所をフルに使ってエネルギーを作り出している。決して安心できる状況ではない」と指摘。化石燃料の輸入増が電気料金の上昇につながり、中小企業などの経営を圧迫している現状にも懸念を示した。 *4-2:http://toyokeizai.net/articles/-/48133 (中村 稔 :東洋経済 編集局記者 2014年09月22日)原発停止だけじゃない、電気料金上昇の真相、震災前に比べて4割近くも値上がり これまで東電を含め7社が震災後に改定値上げを実施。北海道電力は再値上げを申請した東日本大震災以降、電気料金の上昇が目立っている。原子力発電所の停止による影響が大きいと見る向きが多いが、実際はどうか。画像を拡大東京電力の家庭用モデル料金で見ると、震災が発生した2011年3月分は6251円だった。それが2014年9月分は8477円まで上昇している。上昇幅は2226円、率にすると35.6%増だ。内訳は、口座振り替え割引額の増加が1.5円の値下げ要因となった一方、2011年4月から導入された太陽光発電促進付加金で14円、2012年8月導入の再生可能エネルギー発電促進賦課金で217円、同年9月の料金改定で359円、2014年5月分からの消費税率引き上げの影響で230円の上昇となった。それ以外の1407円が燃料費調整制度(燃調)を通じた値上がりだ。 ●燃調とは何か 燃調とは、火力発電の燃料である原油や液化天然ガス(LNG)、石炭の価格変動を毎月自動的に電気料金へ反映する制度。2011年3月分の料金に反映された平均燃料価格(貿易統計実績)は1キロリットル当たり3万2800円だったが、2014年9月には5万5100円と68%も上昇している。これは、ドルベースで原油価格が33%上昇し、それに連動してLNG価格も50%上昇した影響が大きい。加えて、為替が1ドル=83円から102円へ大きく円安に振れた影響も甚大だ。LNG高の一部は日本の原発停止に伴う需要増大の影響も考えられるが、原油高や円安は原発停止とは基本的に関係ない。原発停止との関係が深いのは、料金改定値上げだ。東電の場合、原発の発電収入がなくなった反面、原発の代替となる火力発電の燃料費が大幅に増加。燃料単価の上昇は燃調で料金へ反映されるが、使用量の増加による燃料費増大は料金に反映されない。燃料費は原価全体の4割強を占めるだけに業績は急悪化。そのため、人件費削減など合理化を前提に値上げを政府に申請し、平均8.46%(モデル家庭は5.1%)の値上げが認められた。 ●料金改定の影響は小 ただ、震災後の値上げ幅のうち、料金改定による影響は2割にも満たない。値上げ要因の大半は燃調を通じた燃料単価高、円安といえる。東電は料金改定による来年以降の再値上げの可能性も示唆している。前回の値上げ時に、今年7月からの柏崎刈羽原発の再稼働を前提に置いていたが、今もそのメドが立たないためだ。現在、合理化の加速による値上げ回避を模索しているが、なお不透明だ。今後の見通しについて、富士通総研経済研究所の高橋洋主任研究員は、「燃料価格上昇や増税、再エネの賦課金増加などが値上がり要因となる反面、(2016年度からの)電力小売り完全自由化による競争が値下がり要因となりうる」と語る。すでにエネットなどの新電力会社は、大手より割安な企業向け料金でシェアを拡大している。家庭分野が自由化されて競争がさらに激化すれば、大手電力への値下げ圧力も高まる可能性がある。 (なかむら みのる:東洋経済 編集局記者企業情報部編集委員、エネルギー業界担当) *4-3:http://qbiz.jp/article/45910/1/ (西日本新聞 2014年9月15日) 「原発抜き」国の試算過大 「火力燃料費3.6兆円増」……実は2.4兆円 原発停止に伴い、不足する電力を火力発電のたき増しで補った結果、火力の燃料費増加額として年間約3兆6千億円が余計に必要になったとした政府試算に対し、専門家から「高すぎる。原発停止の影響を過大に見積もっている」と批判する声が出ている。廃炉が決まった東京電力福島第1原発を含め東日本大震災前の原発を維持することを前提に、その分を火力で補った場合で試算している上に、節電の実績も反映されていないからだ。実績に基づく民間試算では3分の2の約2兆4千億円に圧縮される。経済産業省資源エネルギー庁は8月下旬、今後の原発政策を議論する審議会で委員の指摘を受け、「燃料費増加分の要因分析」とする資料を提出。3兆6千億円の内訳を初めて明示した。それによると、同庁は福島原発事故(2011年3月11日)による電力供給の影響がほとんど出てない10年度と、関西電力大飯原発を除く原発が停止した13年度の燃料費を比較し、3兆6千億円が余計にかかったと説明している。同庁は08〜10年度平均の原発による発電量2655億キロワット時を、13年度も維持することを前提に、その分を火力で補った場合で試算。廃炉が決まった福島原発も稼働中という、現実にはあり得ない前提だ。その上で、内訳は火力の燃料となる液化天然ガス(LNG)や石油などの使用量が増えた「数量要因」が7割(2兆6千億円)とする一方、残りの3割(1兆2千億円)は、燃料単価の上昇や、燃料輸入の際のアベノミクス政策を受けた円安による「価格要因」。それらを合算し、原発のウラン燃料の削減効果(約3千億円)を差し引き、おおむね3兆6千億円と計算した。しかし、13年度の火力発電の増加量(12年度実績から推計)は、節電が進んだこともあり、政府見込みよりも約3割少なく推移。脱原発を目指し、政策提言を行う自然エネルギー財団(東京)が、それに基づいて試算したところ、13年度の燃料費増加分は政府試算の3分の2の約2兆4千億円。価格要因を除けば、約1兆6千億円まで圧縮された。九州大の吉岡斉(ひとし)教授(原子力政策)は「福島事故前と同じ規模で原発を稼働させるという政府試算の前提が実態とかけ離れている。廃炉になりそうな原発はまだあり、原発が再稼働すれば3兆6千億円の国民負担が解消するという言い方は誤りだ。再稼働の経済効果は政府が言うより小さいとみるべきだ」と話す。同財団の分山達也研究員は「LNG価格は福島原発事故前から上昇してきた。円安を含め、価格要因まで含めて原発停止の影響とするのは妥当ではない」と指摘する。 *4-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014091601001012.html (東京新聞 2014年9月16日) 原発電力は風力より高い、米試算 太陽光発電と同レベル 原発の発電コストは世界的には1キロワット時当たり平均14セント(約15円)で太陽光発電とほぼ同レベル、陸上風力発電や高効率天然ガス発電の8・2セントに比べてかなり高いとの試算を、エネルギー問題の調査機関として実績のある米国企業系「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」(BNEF)が16日までにまとめた。東京電力福島第1原発事故後の安全規制強化もあって建設費や維持管理にかかる人件費などが世界的に高騰していることが主な理由。再生可能エネルギーのコストの低下が続く中、原子力の優位性が薄れていることを印象付ける結果となった。 <電力自由化に逆行して大規模事業者を優遇する経産省> *5-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140923&ng=DGKDZO77422100T20C14A9PP8000 (日経新聞 2014.9.23) 電力小売りで消費者保護 経産省 供給力不足、参入認めず 経済産業省は2016年4月に家庭向けの電力小売りを自由化した際に消費者を保護するための制度を固めた。経産省が小売りに参入する企業を審査し、十分な供給能力がない企業の販売を認めない規制が柱だ。安定した電力供給の能力がない企業を排除し消費者が電力供給を受けられなくなる事態を回避する。6月に成立した改正電気事業法により、16年4月から経産省に登録さえすれば誰でも家庭に電気を売れるようになる。従来は東京や関西など10電力会社が地域ごとに電力販売を独占してきた。家庭向けの電力小売りへの参入を視野に経産省に届け出た企業は9月時点で350社を超えた。商社や通信大手の参入意欲が強い一方、「十分な供給能力を持っていない企業も多い」との見方がある。新規参入企業と契約した消費者を保護する策が課題となっていた。このため経産省は新たに小売りに登録する企業に条件を設け、省令に盛り込む方向だ。企業が電気を売る地域で見込む最大需要を経産省に提出させる。経産省は企業が需要に見合った発電所との契約や、他社から受電する見通しがあるかをチェックして不十分なら登録を拒否する。太陽光や風力など気象条件で供給力が変わる発電所に依存する企業は、供給を安定させる火力発電所などを確保しているかを審査する。企業が小売りを始めてから供給力が不足すると、経産省が改善命令を出す。改善が見られなければ登録を抹消する制度にする。 *5-2:http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201409220006.html (愛媛新聞 2014年9月22日) 原発の電気に優遇策 小売り自由化の趣旨に反する 経済産業省が総合資源エネルギー調査会の小委員会に、大手電力など原発事業者の優遇策を提案した。電力自由化が進み、市場価格が下がった場合に備え、原発で発電した電気の価格を保証する仕組みの導入を目指す。具体的には、廃炉や使用済み核燃料の処分に必要な費用も含めて国と大手電力が「基準価格」を設定。市場価格が下回れば、差額を電気料金に上乗せするなどして全国の消費者に負担させる。逆に上回れば差額を還元するが、「原発の電気は安価」としてきた国の見解と矛盾する可能性が高いと言わざるを得まい。市場価格にかかわらず、大手電力が原発にかかる巨額の費用を確実に回収できるとなれば、新増設に道を開くことにもなろう。さまざまなコストを電気料金に転嫁する「総括原価方式」の撤廃を見越した代替措置とさえ映る。事業者間の競争を阻害し、小売り全面自由化の趣旨に逆行する優遇策は到底容認できない。エネルギー基本計画との整合性も問われる。安倍政権は今春「原発依存度を可能な限り低減させる」と計画に明記した。具体的な数値目標などを検討する気配が見えないばかりか、原発温存の枠組みを強化するかのような優遇策に懸念と憤りを禁じ得ない。東京電力福島第1原発事故を経験し、国民の半数以上が原発に依存しない社会を望んでいる。共同通信の先月の世論調査でも、原発再稼働に57.3%が反対し、賛成の34.8%を大きく上回った。廃炉や使用済み核燃料処分が、結果として原発に頼ったわれわれ世代の責務であることは否定しない。原発事業者の経営悪化などで廃炉が進まない事態は避けねばならないが、そもそも電気料金とは切り離して論じるべきだ。国民に負担を求めるなら脱原発方針の明確化が不可欠。新増設に理解は得られないとくぎを刺しておきたい。エネルギー基本計画は、原発を「運転コストが低い」と位置付ける。「重要なベースロード電源」として再稼働推進を打ち出したのも、低コストの前提があればこそだ。しかし、事故後の規制強化や廃炉などを考慮した総合的な分析は十分とは言い難い。原発のコストの優位性は多くの研究で揺らいでいる。米国の調査機関は1キロワット時当たり平均15円と試算した。太陽光と同レベルで、天然ガスや陸上風力の1・7倍、地熱や小規模水力のほぼ2倍に相当する。しかも、試算には廃炉費用は含まれていないのだ。国が目指す優遇策は「原発の電気は高くつく」と認めたに等しい。再稼働推進の根拠を自ら否定するからには、エネルギー基本計画を抜本的に見直し、原発に依存しない社会実現を急がねばならない。 <原発事故時補償、メーカーを免責> *6-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014092202000223.html (東京新聞 2014年9月22日) メーカー免責の原発賠償条約 臨時国会に承認案 菅義偉(すがよしひで)官房長官は二十二日午前の記者会見で、原発を持つ国同士が重大事故時の賠償金を支援する「原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)」の承認案を二十九日に召集される臨時国会に提出する考えを明らかにした。この条約は異常に巨大な天災の場合を除き、賠償責任は全て、事故発生国の電力会社が負い、加盟国は事故発生国に対して支援金を支払う仕組み。輸出先が加盟国なら、日本製の原発でもメーカーは免責される。日本の原発メーカーはリスクが減る分、輸出しやすくなる。米国が中心となり、条約発効に向けた準備を進めている。日本が加盟すれば、発効要件を満たすため、米国から強い要請がある。菅氏は、山口俊一科学技術担当相が二十一日にモニズ米エネルギー長官に条約の承認案を国会提出する考えを伝えたと説明。「東京電力福島第一原発の廃炉、汚染水対策を進める上で、知見のある海外企業の参加を後押しすることに役立つ」と述べた。しかし、日本弁護士連合会は「原発輸出の推進が目的で、原発による人権侵害を他国に広める」などと反対している。 <原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)> 米国、アルゼンチン、モロッコ、ルーマニア、アラブ首長国連邦の5カ国が加盟するが、「原発の熱出力が計4億キロワット」の要件を満たさず未発効。米国は日本に、民主党政権当時から加盟を強く求めてきた。同種の国際条約には欧州が中心のパリ条約、東欧や中南米を中心としたウィーン条約がある。 *6-2-1:http://mainichi.jp/select/news/20140830k0000m040199000c.html (毎日新聞 2014年8月30日) 原発賠償:原発ADR「一律5割」 国の説明、二転三転 「文書はない」。否定からわずか1カ月、コピーを示されると一転して存在を認めた−−。原発事故の賠償を裁判外で解決する手続き(原発ADR)を巡り、国の「原子力損害賠償紛争解決センター」が死亡慰謝料を「一律5割」とする内部文書を作成していた問題。センターは他にも、賠償額を算定するために多数の文書を作成しているが、公開していない。「すべて開示すべきだ」。被災者側の弁護士から批判の声が上がっている。7月25日、センターの実務を担当する原子力損害賠償紛争和解仲介室の団藤丈士室長は、取材に訪れた記者にA4判1枚のペーパーを手渡した。原発事故による避難で死亡した場合の慰謝料を「ほぼ一律に50%」と算定していることを指摘した7月9日の毎日新聞の記事に対する反論だった。「正しい理解を欠き、客観的事実にも反する内容で遺憾」と記載。「一律50%のルールは一切ありません」と語った。記者が文書の有無を確認したところ「そんなものございません」と言い切った。ところが、毎日新聞が「一律5割」と明記された内部文書を入手すると説明を一変させた。8月7日、コピーを示された団藤室長は「文書にはクレジット(作成者の名前)がないからよく分からないが、私が見ていなかったのかもしれない」と後退した。さらに「文書の管理ができていない。(センターは)弁護士の集合体なので行政文書(としてきちんと管理する)概念がない。どんな書類が行き来しているか問われても(分からない)」と開き直りとも言える主張を展開した。文書の存否を明言しないため確認を求めると、後日、団藤室長の部下の職員から記者に電話があった。「文書はありました。複数の調査官が持っている」。公文書管理法は「職務上作成し、組織的に用いるものとして保有するもの」を行政文書と定めており、情報公開請求の対象となる。複数が所持しているなら、行政文書に該当する可能性が高い。このため、記者が「行政文書であり開示すべきだ」と言うと、職員は「個人の興味(で作成されたメモ)の可能性もある」と述べ、開示対象とならないとする。 *6-2-2:http://mainichi.jp/select/news/20140830k0000m040201000c.html (毎日新聞 2014年8月30日) 原発賠償:「一律5割」の内部文書 算定基準そのものだ 原発事故の賠償を裁判外で解決する手続き(原発ADR)を巡り、毎日新聞が入手した内部文書には、国の「原子力損害賠償紛争解決センター」が死亡慰謝料を「一律5割」とする、「死亡事案に関するパネル間協議で異論がなかった」との記載がある。「パネル」とは和解案を作成する仲介委員を意味する。記載から、仲介委員たちが、今後の慰謝料額を決めるために話し合い、その結果をまとめた文書であることが分かる。関係者は「仲介委員は、自分だけが突出した金額の和解案を出すのは嫌がる」と証言する。平等な救済を目指し、協議結果を文書に落とし込むのは自然な成り行きだ。つまり、文書は仲介委員が金額を算定する際に参考にする基準そのものだ。その証拠に、内部文書には「独自の基準」との記載さえある。原子力損害賠償紛争解決センター側は(1)センターの上部組織である「原子力損害賠償紛争審査会」が策定した指針(2)センター内部で決めた「総括基準」だけしか基準はなく、内部文書は基準ではないと抗弁する。しかし、(1)と(2)だけで判断できるなら、パネル間協議など不要であり、納得できる説明ではない。文書には「死亡慰謝料を控えめ(低め)にする必要はないか」など被災者にとって看過できない記載もある。すべて非公開の内容ばかりであり、早急に開示するとともに、十分な説明が必要だ。 <経済成長を促すのは、どういう女性か> *7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140922&ng=DGKDZO77345920Q4A920C1TCR000 (日経新聞 2014.9.22)女性は経済成長の源泉 米ジョージタウン大 女性・平和・安全保障研究所所長 メラニー・バービアー氏 今日の世界において、女性が経済成長を促していることは紛れもない事実だ。女性の社会進出は様々な場所で見られ、国連や世界銀行といった公的機関にとどまらず、ゴールドマン・サックスやマッキンゼーなど民間でも目にすることができる。彼女たちが職場で働くことによって、国内総生産(GDP)が押し上げられていることを示すデータは数多い。ダボス会議を主催する世界経済フォーラムが現在、百数十カ国を対象に実施している「ジェンダー・ギャップ・リポート(性差報告書)」によれば、健康、教育、政治・経済へのかかわり度合いなどの分野の中で、健康、教育に関して男女間の差はかなり縮まっている。一方で、政治への関わりはかなり低い。経済面でいえば、女性の社会進出を許容している国家の方がより競争力があり、繁栄している。それには「多重効果」を持つと言われる女性の消費性向が大いに関係している。彼女たちはパートナーの男性に比べて、自らの収入を自分のコミュニティーや健康維持、家族、子供たちの教育に振り向ける傾向が強い。結果として、その社会の生活水準は上がり、より多くの価値を持つことになるのだ。今後の課題を言えば、日本の安倍晋三首相も指摘しているように、女性の起業家たちを増やすことだ。女性による起業を阻むバリアーが多数、存在することはわかっている。しかし、私たちはそれに向かって前進していくことができるはずだ。たとえば、米小売り大手のウォルマート・ストアーズでは海外の女性起業家たちからの仕入れ額を2倍にすることを決めている。もちろん、米国においても多くの課題が残っている。賃金の男女格差は一例にすぎない。クリントン政権にいた当時、大統領はいつも「国民には良き職業人だけでなく、良い両親になってもらわなければならない。その二つのことに摩擦があってはならないのだ」と言っていた。そのためには子供たちをいかにして育てていくか、という課題と向き合わなければならない。女性たちは同時に、高齢者介護という課題にも直面している。我々は常に経済成長を望んでおり、多くの雇用を創出したいと思っている。その結果として、多くの人が繁栄を享受できることを願っている。そのためには人口の半分を占める才能(女性)を解放してあげなければならない。この点において、政府の責務は大きい。性差別に基づく法体系や各種の規制は当然、見直しが求められる。法律、規制に加え、心理的なものや、文化的なものに(性差別が)由来することも確かだが、政治がこれまで以上にこの問題に取り組む必要があることは間違いない。 *Melanne Verveer 1997~2000年に米クリントン政権の大統領補佐官とヒラリー・クリントン氏の首席補佐官を務めた。09~13年に国際女性問題担当大使。 PS(2014.9.24追加):*8に書かれているように、「日本はまだ、女性が十分に力を伸ばせる環境が整っていない」というのは事実であり、早急にそれを改善する必要がある。しかし、「女性は昇進への意欲が低い」というのは、教育、社会、組織の中で女性に対してそういう圧力が働いているからであるため、それをやめるべきなのだ。また、「すぐに仕事を辞める」というのは事実ではなく言い訳であり、現在は、結婚退職ではなく保育園や学童保育の不足により、子育てでやむなく退職している人が多い。最後の「もちろん、女性自身が仕事への意欲を高めることは言うまでもない」というのは女性に対して失礼千万であり、その前に、日経新聞はじめ日本企業が、女性にモチベーションの上がる仕事のさせ方をしてきたか否かをよく考えてから書くべきである(これは経営学の基礎)。 *8:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140924&ng=DGKDZO77436580U4A920C1PE8000 (日経新聞社説 2014.9.24) 企業は女性の力伸ばす職場改革を競え 男女問わず、意欲と能力のある人が力を発揮しやすい職場をつくる。労働力人口の減少が懸念されるなかで、企業の競争力を高め、社会・経済に活力をもたらすためには、欠かせないテーマだ。とりわけ女性の力を生かすことは焦眉の課題だ。すでに自主的に、女性の育成や登用に向けた行動計画を策定する企業は増えている。政府も秋の臨時国会に、行動計画づくりを企業などに求める法案を提出する方針だ。日本の職場が大きく変わる後押しになることを期待したい。日本はまだ、女性が十分に力を伸ばせる環境が整っているとはいえない。男女共同参画白書によると、組織の管理職に占める女性の割合は欧米では3~4割が中心だが、日本は1割程度にとどまる。「女性は昇進への意欲が低い」「すぐに仕事を辞める」。企業からはときに、そんな声が聞こえてくる。しかし、防ぐための方策は十分にとられているだろうか。女性の管理職やその候補者が少ない原因は企業によって様々だ。男女で仕事の与え方に違いがあったり、硬直的な長時間労働で仕事と子育ての両立を阻んだりする。残念ながら、そんな職場は今も珍しくない。女性の採用が少ないことが原因の企業もあるだろう。よりよい行動計画づくりの最大のカギは、各社が現状をしっかりと分析し、課題を浮かび上がらせることだ。それにより、取り組むべき対策も異なってくるだろう。気をつけたいのは、目先の計画づくりにとらわれ、本質的な改善に向けた道筋を見失うことだ。例えば、数値目標は分かりやすい指標となるが、しっかりした現状分析に基づくものでなければ、かえって弊害が生じかねない。女性の育成と登用に熱心だが、あえて数値目標は示さない企業もある。政府は指導的地位に占める女性の割合を、2020年に30%にする目標を掲げている。だが個々の企業が具体的にどんな計画を立てるか、目標を数値で示すかなどは、企業の自主的な判断が生かせるよう十分な配慮が必要だ。人材の育成や長時間労働の是正といった働き方の見直しに、王道はない。トップが女性活用の旗を掲げること、そしてその意義を社員一人ひとりが理解することが欠かせない。特に若手の育成を担う中間管理職の役割は大きい。もちろん、女性自身が仕事への意欲を高めることは言うまでもない。 PS(2014.9.25追加):*9は、「日本では朝方まで仕事をしている人が偉いという文化がある」というのが間違いである。何故なら、日本でも、不規則な勤務をしていれば全体として生産性が下がって成果が出ないため、評価されないからだ。但し、特殊な公務員、新聞記者、医師、看護師、イカ釣り漁師、トラックやタクシーの運転手など、夜に働かざるを得ない仕事もあるので、組織としてローテーションを組むなど、工夫して行うべきなのである。そのため、クリントン氏の「これだけ働いているから偉いんだという発想だと思う」という答えもあまり意味がなく、外国でも働く人は働いているので、働く人を非難する文化を作って日本人を怠け者にすると、人材で負けることになる。 *9:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11367949.html (朝日新聞 2014年9月25日) ヒラリー氏「午前様、家庭への責任放棄」 安倍首相と米で対談 帰宅が午前様では「責任放棄」。発想を改めて――。ヒラリー・クリントン前米国務長官と安倍晋三首相が24日、米ニューヨークで開かれた女性支援のイベントで対談し、働きすぎを尊ぶ日本の企業風土には改革が必要との考えで意気投合した。クリントン氏は2016年の米大統領選で民主党の最有力候補になるとみられている。対談は「女性が輝く社会」を掲げる首相に、クリントン氏がインタビューする形で行われた。首相が「日本では朝方まで仕事をしている人が偉いという文化がある」と日本の企業風土を説明。クリントン氏は「これだけ働いているから偉いんだという発想だと思うが、『どういう責任を果たすべきか』ということとは両立しない。親であれば子供に責任がある。高齢者に対する責任もある」とバッサリ。働き方の文化そのものを変える必要があるとの持論を展開した。
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2014,09,14, Sunday
2014.9.12日経新聞より 2014.9.11西日本新聞より (*但し、3号機は本当は水素爆発ではない) (1)吉田調書をめぐる朝日新聞の報道について *1-1のように、朝日新聞は、「命令違反し撤退」と吉田調書を大きく報道した記事を取り消した。同時に、慰安婦を巡る記事も取り消しているが、私は、ここでは、事故後毎日、東電の記者会見に出席していた日隅弁護士(元産経新聞記者、このブログの2012年6月13日参照)からも情報を入手し、ある程度の事実を知っているフクイチ事故のみについて記載する。 朝日新聞の報道があった後、*1-2に書かれているように、政府は、政府事故調が関係者から聞いた「聴取結果書(調書)」のうち、吉田元所長ら計19人分を公開し、同時に、菅直人元首相、枝野幸男元官房長官など事故発生当時の政権幹部らの調書も公開された。 しかし、これまでこの政府事故調の調査結果が開示されることなく、「原発は重要なベースロード電源」とされ、新規制基準を作って原発再稼働に向かって進んできたことに、私は違和感を覚えている。そのため、記事のタイトルが事実に反していたとしても、政府事故調の調査結果を入手して報道し、開示にこぎつけた朝日の取材に対して、私は、NHKや日経の報道よりも感謝する。つまり、この記事を批判して原発再稼働を推進するばかりのメディアは、主権者である国民の知る権利に資するというメディア本来の社会的責任を果たしていないのである。 なお、*1-2によれば、吉田氏は2011年3月14日夕から15日朝の2号機の様子について、「完全に燃料露出しているにもかかわらず減圧もできず、水も入らない」「水が入らずにメルトダウンすれば、完全に格納容器をぶち破って燃料が全部出ていってしまう」「そうすると、その分の放射能が全部外にまき散らされる最悪の事故になる」「我々のイメージは東日本壊滅」と当時の状況を語っており、この辺が公表されなかった吉田調書の重要な部分だ。 また、朝日新聞が、命令違反で撤退したのがいけないかのように書いていることについては、熟練した人が多い組織では、緊急時に現場で行う臨機応変の対応の方が正しく、報告を聞いて発する上司の指示の方がおおざっぱで時間遅れの場合もあるため、「上司の命令が絶対で命令違反がいけない」という考え方がおかしかったのである。軍隊や官僚組織、トップしか技術や知識のない中小企業と東電とは異なるため、組織によって合理的な意思決定の手法は違うことを、記者も勉強しておくべきだった。 朝日新聞が虚偽の報道をしたとして問題になっている部分は、「吉田氏は収束作業に必要な人員を残して免震重要棟から第一原発近辺の線量の低い場所へ退避を指示したが、多くの所員が第二原発に退避し、吉田氏はそれを事後承認していた」という部分である。これについては、東電の清水社長(当時)が「全員撤退もありうる」と菅元首相に連絡していたことが、枝野元官房長官などの証言でわかる。そして、これが菅元首相が発破をかけにフクイチの事故現場へ行った理由の一つだろう。 吉田氏は、「所員が40何人亡くなっているのであれば、そこで腹を切ろうと思った」と事故当時の心境を語っている。しかし、それでは、住民の生命と健康はどうなるのか、フクイチの所員が亡くなったからといって、腹を切られては住民がたまったものではない。つまり、東電、政府、多くのメディアにないものは、東電と政府が原因で発生した原発事故で、事故前後に無用な被曝をさせられた住民の視点である。 なお、*1-3で吉岡元九大副学長が語っているとおり、この朝日新聞記事に関する論争は、最も重要な論点を外した論争で、あまり面白くないものであるため、今後はこの事故調査報告書の調査結果が全面公開され、事故の真実が浮き彫りになることが望まれる。 さらに、*1-4のように、日経新聞など多くのメディアが、鬼の首をとったかのように朝日の謝罪ニュースばかりを流し、「吉田調書の教訓を原発の安全に生かせ」などとしているが、事故調の調査報告書を開示することすら要求せずに、事故の教訓を原発の安全に生かしたか否かを検証することはできるわけがないため、メディアとしては、原発再稼働を推進する前に、まず事故調査報告書を開示させ、新基準や審査の妥当性について言及すべきで、こちらこそ原発被曝者の立場から人権委員会にかけてもらいたい。 (2)政治家や専門家の調書概要について *2-1に、政治家や専門家の調書内容がまとめられているが、菅元首相は、「撤退問題では全面撤退との受け止めだった」としており、これについて、枝野元官房長官も、原発作業員の撤退問題について東電の清水元社長から撤退の了承を求める電話があったことを認めた上で、「間違いなく全面撤退の趣旨だった」と証言している。 そして、菅元首相は、「吉田調書と私の調書を重ね合わせれば、事実関係がはっきりする。撤退を最初に言い出したのは、清水社長であることが明らかだ。現場視察は住民避難を判断するため、現場と話す必要があった。所員の調書やテレビ会議の全面公開が必要だ」としているが、重要な情報を未だに公開できないのは、何故だろうか。 なお、当時の記者会見で、枝野元官房長官が放射線の影響について「直ちに人体に影響を及ぼす数値ではない」と表現していたことについては、「急性被曝では全然問題になる数字ではないが、相当高いから累積被曝では問題になるということは自分でわかっていた」とその理由を説明した点について、そこまできちんと報道すべきで、そうしていれば国民は馬鹿ではないため、関東まで含む住民の無駄な被曝が避けられたと考えている。 福山元官房副長官は、「事故がいかに過酷であったか、実態がよく伝わるだろう。今後の原発政策に大きな教訓となる。当時の住民避難や事故対処のオペレーションについての反省が、原発再稼働の準備が進む中で生かされているかどうか、改めて検証が必要だ」としているが、もう遅すぎるくらいだ。 また、*2-2で、近藤元原子力委員長が、「事故が拡大して放射能汚染が広がれば、東京都も含む半径250キロ圏内の住民が避難対象になる『最悪シナリオ』を政府は事故発生2週間後に作成していたが、一番危機だったときに作るべきなのにと思った」と証言しているが、フクイチでは、パニックを恐れて必要な情報も開示せず、その結果、住民の生命や健康を危険に晒したことが最も大きな人権侵害である。 なお、*2-3のように、日経新聞は、「官邸と現場がちぐはぐだった」「一刻を争う現場の責任者に首相が初歩的な質問を投げかけた」など、的外れの菅元首相批判をしているが、これは権力を批判したふりであっておかしい。 他方、東京新聞は、*2-4のように、「国会事故調は政府から独立して事故原因を究明するために2011年12月に設置され、12年7月に報告書を公表したが、非公開の部分については、国会議員すら閲覧できない状態が続いている」としている。そうであれば、早急に公開して、これまでの避難体制や損害賠償、原発政策、新基準が十分だったか否かを検討すべきだ。 (3)報道と人権 *3-1のように、朝日新聞が5月20日付朝刊で「所長命令に違反 原発撤退」の見出しで報じた記事が、名誉毀損等の人権侵害など記者倫理に触れる行為があったかどうかを審理するそうだ。確かに事実に反してこのようなことを書かれた人にとっては名誉棄損だろうが、東電の清水社長、吉田所長、現場の行動のちぐはぐぶりでは、それを真実と信じる相当の理由があったのかも知れない。一方で、原発爆発の真実を報道しなかったメディアが、無用な被曝をさせた住民に対して行った人権侵害については、報道倫理を審理するのが妥当である。 そのような中、朝日新聞の記事が嘘だったとしても、それと同時に、*3-2のように、九電、川内原発の基準適合が正式に決定され、再稼動に向けて進んでいるのは偶然とは思えないが、周辺住民の人権はどうなるのだろうか。 <吉田調書をめぐる朝日新聞報道について> *1-1:http://www.asahi.com/articles/DA3S11346594.html?ref=mail_0912y_01 (朝日新聞 2014年9月12日) 朝日新聞社、記事取り消し謝罪 吉田調書「命令違反し撤退」報道 朝日新聞社の木村伊量(ただかず)社長は11日、記者会見を開き、東京電力福島第一原発事故の政府事故調査・検証委員会が作成した、吉田昌郎(まさお)所長(昨年7月死去)に対する「聴取結果書」(吉田調書)について、5月20日付朝刊で報じた記事を取り消し、読者と東京電力の関係者に謝罪した。杉浦信之取締役の編集担当の職を解き、木村社長は改革と再生に向けた道筋をつけた上で進退を決める。 ■慰安婦巡る記事、撤回遅れを謝罪 朝日新聞社は、「信頼回復と再生のための委員会」(仮称)を立ち上げ、取材・報道上の問題点を点検、検証し、将来の紙面づくりにいかす。本社は政府が非公開としていた吉田調書を入手し、5月20日付紙面で「東電社員らの9割にあたる約650人が吉田所長の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発に撤退した」と報じた。しかし、吉田所長の発言を聞いていなかった所員らがいるなか、「命令に違反 撤退」という記述と見出しは、多くの所員らが所長の命令を知りながら第一原発から逃げ出したような印象を与える間違った表現のため、記事を削除した。調書を読み解く過程での評価を誤り、十分なチェックが働かなかったことなどが原因と判断した。問題点や記事の影響などについて、朝日新聞社の第三者機関「報道と人権委員会」に審理を申し立てた。朝日新聞社が、韓国・済州島で慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏(故人)の証言を虚偽と判断し、関連記事を取り消したこと、その訂正が遅きに失したことについて、木村社長は「おわびすべきだった」と謝罪した。元名古屋高裁長官の中込秀樹氏を委員長とする第三者委員会を立ち上げ、過去の報道の経緯、国際社会に与えた影響、特集紙面の妥当性などの検証を求める。 ■池上氏連載判断「責任を痛感」 木村社長は、慰安婦特集について論評した池上彰氏の連載コラムの掲載を見合わせた判断については、「言論の自由の封殺であるという思いもよらぬ批判があった」「責任を痛感している」とした。 ■朝日新聞社の報道を審理・検証する各委員会 ・「吉田調書」報道/報道と人権委員会(PRC) ・慰安婦報道/有識者による第三者委員会 ・信頼回復/信頼回復と再生のための委員会(仮称) *1-2:http://www.asahi.com/articles/DA3S11346601.html (朝日新聞 2014年9月12日) 吉田調書、政府が公開 福島第一原発事故 政府は11日、東京電力福島第一原発事故に関して、政府の事故調査・検証委員会が関係者から当時の状況を聞いた「聴取結果書(調書)」のうち、吉田昌郎元所長ら計19人分を公開した。この日開示されたのは吉田氏のほか、菅直人元首相、枝野幸男元官房長官ら事故発生当時の民主党政権幹部らの調書。菅義偉官房長官は11日の記者会見で「吉田元所長のヒアリング記録の一部のみ、断片的に取り上げられた記事が複数の新聞に掲載され、独り歩きとの本人の懸念が顕在化した」と公開した理由を述べた。 吉田氏の調書によると、吉田氏は2011年3月14日夕から翌朝の第一原発2号機について、「完全に燃料露出しているにもかかわらず、減圧もできない、水も入らない」状態と説明。「このまま水が入らないでメルトして、完全に格納容器の圧力をぶち破って燃料が全部出ていってしまう。そうすると、その分の放射能が全部外にまき散らされる最悪の事故」「我々のイメージは東日本壊滅」と当時の危機的状態を振り返っている。15日朝、吉田氏は収束作業に必要な人員を残して免震重要棟からの退避を指示した。多くの所員は第二原発(2F)に退避したが、吉田氏は「本当は私、2Fに行けと言っていない」「福島第一の近辺で、所内に関わらず、線量の低いようなところに一回退避して次の指示を待てと言ったつもり」と明かしている。ただ、指示通りに第一原発近辺に退避すれば「みんな全面マスクしているわけです。それで何時間も退避していて、死んでしまう」と指摘。「よく考えれば2Fに行った方がはるかに正しいと思った」と所員の行動を評価した。 *1-3:http://www.asahi.com/articles/DA3S11346489.html (朝日新聞 2014年9月12日) 無理にニュースに仕立てた印象 吉岡斉氏 吉田調書をめぐる朝日新聞社報道 朝日新聞の吉田調書に関する報道について、これまで見た限りでは、新しい情報は見あたらなかった。相当無理をしてニュースに仕立てているような印象だった。「命令違反」とまでは言えないとも思っていた。あまりおもしろい視点はなく、むしろ欠乏感さえ感じていた。そもそも吉田所長自身、事故時は全体状況を完全に把握しないまま対応していたと思っている。その話に真実が不足するのは当然だろう。どこまでの命令が出ていたかもあいまいだし、地獄のような現場で、できるだけ遠くに逃げるという判断は正しかったと思う。ただ、朝日新聞が今回、「命令違反で撤退」の指摘を誤りと認めたことは、ある程度、評価はしたい。現地調査の時に、吉田所長に短時間だがお会いしたが、聴取は小部屋のようなところで人数も制約されていた。参加できる委員は相当限られていたこともあり、私自身は吉田所長の聴取に参加していない。政府が、吉田調書をはじめほかの調書を公開したことについては、事故から3年半たったとはいえ、喜ばしい。本来は、聴取時点で「事故調の報告書公開後は、調書を公開してよい」と同意をもらっておき、一気に公開した方が望ましかった。今後、ほかの証言も次々に公開されるのが切に望まれる。聴取対象者は東京電力関係者や役所の人が多かった。そうした人たちが今後どの程度、調書の公開に同意するかによって、関係者の歴史への責任感を示す物差しともなる。政府事故調は時間もマンパワーも限られた中での調査だった。聴取にしても、多くても対象者1人当たり2、3回しか時間がかけられず、詰め切れないところは多かった。今後は常設の事故調査組織を国会か政府につくって、いままでの資料や証言をそこに統合し、さらに新しい資料や証言を積み上げていくべきだ。特に原子炉建屋内の調査は重要だ。 * よしおか・ひとし 東京大理学部物理学科卒業。1994年から九州大教授。2010年から今春まで同大副学長。政府事故調委員を務めた。 *1-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140913&ng=DGKDZO77042860T10C14A9EA1000 (日経新聞社説 2014年9月13日) 吉田調書の教訓を原発の安全に生かせ 政府は東京電力・福島第1原子力発電所事故をめぐり、政府の事故調査・検証委員会が関係者から聞き取った記録のうち吉田昌郎元所長(故人)ら19人の聴取結果書(調書)を公開した。調書からは事故対応にあたった東京電力や政府の混乱ぶりが改めて確認できる。情報共有の欠如が相互不信を生み、不信が事故現場への不要な介入を招いた悪循環が浮き彫りになっている。証言には不明確な記憶に基づき感情的にすぎる言葉遣いも散見される。予断や誤解が紛れ込んでいる可能性も否定できない。読み比べ、他の資料ともあわせて検証し、教訓をくみ取る必要がある。吉田氏は3号機の爆発後、「四十何人亡くなっているのであれば、そこで腹を切ろうと思った」と当時の心境を語っている。爆発が起きたのは、免震重要棟にいったん退避していた所員らに現場に戻るよう、吉田氏が命じた直後のことだった。事故の拡大を食い止める必要がある。同時に部下たちの生命を守らねばならない。吉田氏は2つの重責の板挟みにあった。吉田氏は人並みはずれた能力をもつ英雄ではなかったろう。企業の管理職でありひとりの技術者だった。その吉田氏を極限状況に追い込んだのは電力会社や政府の過信だ。深刻な事故は起きないとし十分な備えを怠った。吉田氏自身も過信を生んだ輪の中にいた。九州電力・川内原発(鹿児島県)を先頭に原発が再稼働に向かうなか、過信はもう許されない。安全は常にもっと安全にしようとする継続的な努力から生まれる。これで十分ということはない。電力会社は過信を捨て、二度と事故を繰り返さないとの決意の下、原子力規制委員会の規制基準をスタートラインととらえて自主的な安全対策を積み増す努力が求められる。ひとたび大きな事故が起きれば多くの人の生命と健康が脅かされる。原発は火力発電所など他の産業施設とは違う。政府はこの点を直視し、電力会社や地元自治体に安全確保を丸投げにしない誠意ある姿勢を示すべきだ。また官民ともに万一の事故に備え危機管理能力を磨く必要もある。目に見える努力が原発政策への国民の支持につながる。一連の調書、とりわけ吉田氏の証言は、原発にかかわるすべての人に読んでもらいたい。 <政治家・専門家の調書概要> *2-1:http://www.asahi.com/articles/DA3S11346567.html (朝日新聞 2014年9月12日) 政治家・専門家の調書概要〈1〉 福島第一原発事故 政府は11日、東京電力福島第一原発事故の政府事故調査・検証委員会の調査を受けた約770人のうち、第1弾として計19人の証言を公開した。菅直人元首相ら当時の政権中枢のメンバーらは、未曽有の過酷事故をどう振り返り、何を語ったのか。 ◇ 調書は内閣官房のホームページ(http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/hearing_koukai/hearing_koukai.html)で公開 ■菅直人・元首相 「視察、現場と話すため」 菅元首相は2011年3月12日朝、第一原発をヘリで視察に訪れた意図や、東電本店に直接乗り込み、政府と東電の対策統合本部を立ち上げた経緯などを語った。撤退問題では、全面撤退との受け止めだったと強調している。 * 菅氏は視察を決めた理由について「福島原発の状況がなかなかコミュニケーションがスムーズにいかない中で、現場の責任者と会って話をした方がいいと判断した」と説明。官邸で当初説明役を務めた経済産業省旧原子力安全・保安院の寺坂信昭元院長を「ちゃんとした説明ができない」、東電の武黒一郎元フェローも「十分な情報を持っていなかった」と語っている。本来ならば住民避難の司令塔となるオフサイトセンター(福島県大熊町)が地震被害で機能不全になっており、菅氏は「(センターが)全部機能して動いていれば、必ずしも行くという判断をしていない」とも述べた。自ら赴いたことには、「放射性物質を使った実験ぐらいは学生実験でやったことがある。普通の文系政治家よりは理解できる」と理系の自負心をのぞかせている。武黒氏が官邸の了解を得ていないとの理由で福島第一原発の吉田昌郎元所長に海水注入を中止するよう求めた一件について「(海水注入で)塩が固まってくる。金属などに長期的に影響するという専門家の指摘はあった」としつつ、「緊急時だから、水がなくなれば海水しかない」と考えていたと断言した。また、武黒氏の指示を無視して海水注入を続けた吉田氏については「立派だったと思う」と評価した。「撤退」問題が浮上した直後、菅氏は東電に乗り込む。本店と第一原発をつなぐテレビ会議システムの存在を「初めて知った」といい、統合本部の設置は「非常に良かった。第一サイトと全部ツーカー」とした。撤退問題では、東電側の意向は全面撤退と受け止めていたと繰り返し強調した。3月15日未明、官邸で海江田万里元経産相と枝野幸男元官房長官から、東電が撤退の意向を打診してきているとの報告を受けたという。「経産大臣やほかのメンバーもそういう(全面撤退との)認識だった」といい、その場で「全部放棄することはできない」との意見で一致した。東電の清水正孝元社長を官邸に呼んで面会した際、菅氏が清水氏に撤退を認めない旨を伝えると反論はなく、「やはり(全面撤退と)思っていたんだなと思う」と当時の感想を述べている。直後に本店に乗り込み「撤退したら東電はつぶれる」などと社員を前に発言したことを明かし「それ以来、撤退の話は全く聞かなくなった」と自賛した。「後世の人たちに伝えたいことは何か」との事故調委員からの質問には「原発はちょっとやめておいた方がいい。世界にとっても」と明言。理由について「首都圏を含む3分の1に近いところはある期間住めなくなるリスクを考えた時、どんな安全対策をやっても、リスクを完全にカバーできる安全対策はあり得ない」と強調している。 * <菅氏のコメント> 吉田調書と私の調書を重ね合わせれば、事実関係がはっきりする。撤退を最初に言い出したのは、清水社長であることが明らかだ。現場視察は住民避難を判断するため、現場と話す必要があった。所員の調書やテレビ会議の全面公開が必要だ。 ■枝野幸男・元官房長官 「東電社長、全面撤退求めた」 当時、官房長官だった枝野幸男衆院議員は、避難区域の設定といった事故対応のほか、首相官邸での記者会見を通じて、連日、原発の状況や放射線量などの説明にあたった。 * 枝野氏は、東電側が「一部撤退」と主張し、官邸側と証言が食い違う11年3月14日夜から翌未明にかけての原発作業員の撤退問題について、東電の清水元社長から撤退の了承を求める電話があったことを認めたうえで「間違いなく全面撤退の趣旨だったと、これは自信があります」と証言した。「ほかの必要のない人は逃げますという話は、別に官房長官に上げるような話ではないですから。勘違いとかはあり得ないですね」と述べた。15日に、政府と東電の対策統合本部を設置した理由についても、枝野氏は「撤退問題が最後の決め手だと思います」と説明。「(菅直人元首相は)とにかく直接グリップしないと、どこまで行くのかがわからないということだったんだと思います」と述べ、「少なくとも実体としての東電に、当事者意識も能力もない」と強調した。当時の記者会見で枝野氏が放射線の影響について「直ちに人体に影響を及ぼす数値ではない」と表現していたことについて「この間は急性被曝(ひばく)を気にしていました。急性被曝では全然問題になる数字ではないけれども、相当高いから累積被曝では問題になるということは自分でわかっていましたから」とその理由を説明した。一方、官邸が炉心溶融(メルトダウン)を把握しながら、隠していたのではないかとの指摘について、枝野氏は「(メルトダウンが)していない情報ばかりが入ってきているんです。メルトダウンしているという分析が上がってくれば、ちゅうちょなく説明しています」と強調。官邸の情報公開の姿勢について「データは全部出せということの認識はずっと一貫しています。それだけに、若干いろいろなところで言われていることについては、正直に言って不本意です」と述べた。 * <枝野氏のコメント> 検証を国民的視点でやる上で、情報公開は大変喜ばしい。ただ、私の調書は私が求めた何倍もの黒塗りが政府によってされている。他の人も必要以上に黒塗りされている可能性がある。さらに情報公開が進むことを期待する。 ■細野豪志・元首相補佐官 「班目氏、もう手はないと言った」 首相補佐官として首相官邸で事故対応にあたり、政府と東電本店の統合本部に入った細野豪志衆院議員。最も危機感を募らせたのは11年3月14日の夜だ。吉田氏との電話で「常に『まだやれる』という返事だった人が、弱気になっていたから、本当にだめかもしれないと思った」。 * 翌15日未明、官邸では福島第一原発からの「撤退」が議論された。東電の清水元社長から電話を受けた海江田元経産相の理解は「完全に撤退すると解釈していた」と説明した。電話を受けた枝野元官房長官も同じ認識だったという。「(東電元フェローの)武黒さんがしょんぼりして、もう何もできませんみたいな話をしたから、『あんた、責任者だろ。しょんぼりしていないで何か考えろ』と言った覚えがある」。さらに「あのとき班目(春樹・元原子力安全委員長)さんが、もう手はありませんから撤退やむなしと言った。一番の専門家だと思っていたから、本当に愕然(がくぜん)として」。しかし、菅氏を交えた会議で「瞬時に、撤退はあり得ないだろうという話になった」。事故発生後、細野氏は菅氏に進言し、近藤駿介・元原子力委員長に依頼して最悪の事態を想定したシナリオを作成した。「これだけ最悪のシナリオを想定しても、現時点においては避難範囲が20キロで十分だということで、非常に胸をなでおろした」。しかし、シナリオは公表しなかった。その理由については「例えば2炉心分がすべて露出をした場合に10ミリシーベルトに達するのが70キロ。ただ、それに達するまでには、1カ月程度の時間がある」と説明した。細野氏は菅氏の事故対応には「総理が政治家で、原災法上の指示権を持っているからこそ、できたことはある」と振り返る。ただ、発生直後に現場を視察することには反対だった。5月中旬に福島第一原発を訪れた際、吉田氏に視察がベントを遅らせたのではないかと確認したという。「総理が来ようが来まいがそのときはベントはとてもできなかったと聞いて、すごくほっとした」 ■海江田万里・元経産相 「事業者任せでいいのかと反省」 当時、経済産業相だった海江田万里・民主党代表は事故直後、首相官邸に詰めて、菅氏らと対応にあたっていたが、東京電力本店などとのやりとりには混乱が生じていた。 * 政府は、11年3月12日早朝、原子炉の圧力を下げるため、放射線量の高い蒸気を原子炉の外に出すベントをすることを発表した。しかし、2時間以上たっても東電から何の報告もなかった。当時の状況について、「とにかく、何でベントができないのだろうかとずっと思って、とにかく現場に電話してみなければいけないというので、電話で何回かつなげたら、最後に吉田所長と連絡がついた」と振り返っている。結局、ベントが成功したかはわからず、1号機は同日午後には水素爆発する。「ああいう緊急事態で、すべて実施主体を事業者に任せておいていいのかというのは、反省として僕はあると思う」と述べている。14日夜から15日未明にかけ、東電が全員撤退を申し出たかどうかをめぐる清水元社長とのやりとりも詳細に語っている。当時、清水社長から受けた電話の内容について、「僕が覚えているのは『撤退』という言葉ではない。『退避』という言葉。第一発電所から第二発電所へ退避させたい」と語った。 海江田氏は、東電が退避を考えていることを、すぐに菅氏と枝野氏に伝えた。その時の退避の認識について「僕は全員だと思った」という。吉田氏が現場から離れるつもりはなかったことについては、官邸に「伝わっていないですね」としている。実際、この後、東電への不信感から、菅氏らと東電本店に乗り込んだ。また、当時の退避の状況については、「あのとき何かいろいろな混乱があったらしいですね。あのとき間違って全員出ようとしたとかという話もまたあるのですね。それはちょっと、現場の話でないとわかりませんけれどもね。バスが来て、みんなそこで乗り込もうとしたとか、それはいろいろあるらしいですね」と推測している。 * <海江田氏のコメント> 私たちが経験したのは我が国、世界にとって未曽有の原子力災害だった。私たちがどう対応したのかを明らかにすることを通じて、二度とこうした悲惨な原子力の事故が起きないよう、そのための糧としてもらいたい。 ■福山哲郎・元官房副長官 「炉が不安定、屋内退避を選択」 原発事故で住民避難策の中心を担った福山哲郎元官房副長官の調書からは、首相官邸が事故の初動対応時に、当初から広域避難を検討しながら、原発近くの住民の避難を最優先し、原発の状況悪化のたびに避難指示区域を広げていった経緯が読み取れる。 * 政府は11年3月11日午後9時23分、原発から半径3キロ圏内に避難を指示。その後、1号機格納容器の圧力が上がり爆発の危険性が示されたため、12日午前5時44分に対象を10キロ圏に拡大。午後3時36分には1号機建屋で水素爆発が起き、政府は午後6時25分に避難対象を20キロ圏に拡大した。この際の意思決定を、福山氏は「一遍に20キロにすると、一気に避難の人数、人口が増えます」「遠い人たちが逃げるとそこで渋滞する」「リスクがある近場の人が逃げ遅れる可能性がある」と説明した。15日午前6時過ぎには4号機の建屋で爆発が発生。政府は午前11時、20~30キロ圏の6万2千人に対し、避難ではなく屋内退避を指示した。福山氏は「逃がすのに何日ぐらいかかるかという議論をしたら(中略)4~5日かかると」「炉の不安定な状況の中でいつ爆発するかわからないのだったら屋内退避にしようという判断をした」と語った。一方、政府は事故から1カ月経った4月19日、県内の学校施設の利用基準を年間の被曝線量20ミリシーベルト以下と定めた。調書では、福山氏はその際の政府内での議論について、「10(ミリシーベルト)にしろという議論がありました。大人よりも子どもの方が小さい、(中略)半分くらいにすべきではないかと」と明かしている。この前の4月11日、政府は原発から20キロ圏外に避難指示区域を設定する際の基準を年20ミリシーベルトと定めていた。このため福山氏は、「10にしたらほかに絶対波及します。ほかの市町村がうちは10を超えているのにいいのかと絶対に言い出します」「やはり社会不安をあおらないということも並行して重要だった」などと、整合性や社会的影響を考慮した点も述べている。 * <福山氏のコメント> 事故がいかに過酷であったか、実態がよく伝わるだろう。今後の原発政策に大きな教訓となる。当時の住民避難や事故対処のオペレーションについての反省が、原発再稼働の準備が進む中で生かされているかどうか、改めて検証が必要だ。 ■長島昭久・衆院議員 「米国側、非常に困っていた」 長島昭久・衆院議員は、主に米国側との調整を担当した。情報不足や4号機の燃料プールについて、米側が強い危機感を持っていたことを証言している。12年2月2日の聴取によると、11年3月18日に日本に派遣された米原子力規制委員会(NRC)の人たちが東京電力に来た。「どこへ行けば正確な情報が入るのか、どこで意思決定されているのかがなかなかつかめない。非常に困っているということだった」。その後、米国のルース元大使らを交えて会談したが、米側が最も関心を持っていたのは4号機の燃料プールの状況だった。「使用済み核燃料のストックされているプールが地震によってもう崩壊している。その影響で水素爆発が連鎖的に起こっているというような見立てだった」。後で振り返ると、燃料プールはしっかりしていたし、米側は過度な疑いを持っていたという。「断片的な情報しか出てこないのは、もしかしたら隠していると思ったかもしれない。日本側には当時そんな隠す意図はなかったと思う。SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)以外は」と証言している。 ■池田元久・元経産副大臣 首相の視察「まずいのでは」 現地対策本部長として福島に出向いた池田元久・元経済産業副大臣は、菅直人元首相が11年3月12日、福島第一原発を視察したことについて、「これは困ったな。全体の未曽有の災害対策としてはまずいのでは」と証言した。津波被害で行方不明者の数も分からない状態。「人命救助は72時間が鉄則。72時間はしっかりと人命救助に努力すべきだと」「通信手段もあるし、東京にいた方が事故対応がしやすいのでは」と振り返った。福島に来てバスに乗りこんだ菅氏は、東電の武藤栄元副社長と並んで座り、「いきなりそこで怒鳴りつけた」。免震棟に移ってからも、作業員らが大勢いる前で「何でおれがここに来たと思っているのだ」と怒鳴ったという。菅氏の態度を「大変遺憾だ」とし、「審議官とか武藤とか副知事には申し訳なかったと謝った。それくらい大変な激昂(げきこう)でした」。「本当にあきれた」と批判した。 ■鈴木寛・元文科副大臣 「SPEEDI出せと言った」 放射性物質の拡散状況を予測する「SPEEDI」(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)のデータがすぐに公表されなかった問題について、所管していた文部科学省の責任者が証言している。鈴木寛・元文部科学副大臣は12年2月23日と3月7日の聴取で、判断は全体状況を知る原子力安全委員会が行うべきだったとの認識を示し、安全委の対応能力の欠如を批判している。「SPEEDIを早く出せということは、我々は安全委に何度も言った。とにかくまず記者会見をやれと、毎日のように言い続けてきた」。しかし会見が開かれないため、委員や事務局職員らについて「法律で定めている任に堪えないという認識を抱いた」。安全委については「権限を行使し得る人的体制になっていない」と指摘している。 ■高木義明・元文科相 高木義明・元文科相は12年1月31日の聴取で、「公表について、災害対策本部の方の、まさに政府としての判断だと思っていた」と証言。「データを出すのは別に私たちはとめることでもない。かえって不安を助長するから、あるものは出すという基本に私たちはあった」と述べている。 ■聴取書(調書)が公開された19人(肩書は事故当時) 【東京電力福島第一原発】 吉田昌郎所長 【官邸】 菅直人首相 枝野幸男官房長官 福山哲郎官房副長官 細野豪志首相補佐官 【経済産業省】 海江田万里経産相 池田元久経産副大臣 森山善範・原子力安全・保安院原子力災害対策監(聴取時) 【政府・与党(民主党)】 北沢俊美防衛相 中野寛成国家公安委員長 高木義明文部科学相 鈴木寛文部科学副大臣 長島昭久衆院議員 【原子力委員会】 近藤駿介委員長 【研究者・その他】 首藤伸夫東北大名誉教授 鈴木篤之・元原子力安全委員長 松浦祥次郎・元原子力安全委員長 藤城俊夫・高度情報科学技術研究機構参与(聴取時) 松本宜孝・内閣府主査 *2-2:http://www.asahi.com/articles/DA3S11346503.html (朝日新聞 2014年9月12日)政治家・専門家の調書概要〈2〉 福島第一原発事故 政府が「調書」を公開した人の中には、原子力規制や津波の専門家も含まれている。福島第一原発事故による「最悪シナリオ」はどうやって作成されたのか、津波の想定や、過酷事故対策がなぜ後手に回ったのかなどがつづられている。 ■近藤駿介・元原子力委員長 最悪想定「一番の危機に作るべき」 事故が拡大して放射能汚染が広がれば、東京都も含む半径250キロ圏内の住民が避難対象になる――そんな「最悪シナリオ」を政府は事故発生2週間後に作成していた。当時の原子力委員長で、専門家として作成にあたった近藤駿介氏は「一番危機だったときに作るべきなのにと思った」と証言していた。シナリオが作られたのは、2011年3月25日。その3日前に、総理執務室で菅直人首相(当時)から作成依頼を受けたという。「私は総理から、『そろそろ事故状況が落ち着いてきたから、最悪シナリオを考えてくれ』と言われ、本来であればそのような最悪シナリオは3月16日の一番危機だったときに作るべきなのにと思った」。近藤氏が事故調に提出したメモによれば、「状況が悪化した場合に直ちに関係者に進言できるように」と、自分で3月15日から専門家に声をかけて検討を始めていたという。16日の段階では、4号機の使用済み燃料プールで核燃料が再臨界したり、無事だった5、6号機の状況が悪化したりすることを懸念。依頼を受けた22日段階では、水素爆発などで事故の復旧作業が止まるのを警戒。「いつでもどこでもポンポン水素爆発が起きると考えて行動するべき」と進言したという。シナリオは、4号機の使用済み燃料プールの水が減り、燃料が溶けることを想定。原子炉建屋の爆発でプールがむき出しになっており、復旧作業が止まれば14日程度で放射性物質が大量放出されると推定した。ただ、首相補佐官だった細野豪志氏にシナリオを渡した際には、事態が悪化するまで時間がかかり、対策が間に合うとして「結果としてここに示すような結果になることはないと思われる」と伝えたという。近藤氏は、事情聴取後に提出した補足文書で「私の最大の誤り」として、原発の安全目標の議論で周辺の人の過剰な被曝(ひばく)を指標に選んだことを挙げた。「命を守ることが安全だと思い込んでいた」。土地汚染を指標とせず、汚染によるコミュニティー崩壊の深刻さなどの教訓をチェルノブイリ事故から学ばなかったことは「本当に不覚であった」と反省した。 ■首藤伸夫・東北大名誉教授 津波対策「電力会社は改良嫌う」 福島第一原発は、東電の想定を上回る津波に襲われ、非常用ディーゼル発電機や配電盤が水没した。原発の津波想定や対策にかかわった専門家や国の担当者はどう考えていたのか。土木学会の原発の津波想定の指針づくりにかかわった首藤伸夫・東北大名誉教授は「電力会社は、一旦(いったん)出来上がったものの改良を行うことを嫌う」と答えた。東電の想定は2002年、土木学会の指針策定を受けて、従来の3・1メートルから2倍近い5・7メートルに引き上げられた。過去に襲った最大の津波のほぼ2倍の高さになるとされたが、想定外の津波への対処などには踏み込んでいなかった。首藤氏は、予測の不確実さや、想定外の対策の必要性に触れなかった理由を問われ、「千年に一度かどうかもわからないようなものを対象に設備投資をしたいと主張しても、株主は納得しない」と振り返った。 ■森山善範・元保安院幹部 同じ02年、国の地震調査研究推進本部は、福島沖でも三陸のような津波地震が起きる可能性があるとする見解を発表。過去に仙台平野などを襲った貞観津波も次第に実態が明らかになっていく。しかし、対策には反映されなかった。経済産業省原子力安全・保安院の課長として原発の審査を担当した森山善範氏の調書によれば、貞観津波を認識したのは09年6月24日ごろにあった地震・津波対策を評価する作業部会での専門家の指摘だった。ただ、東電の津波の再評価については「文書による要請をやろうと思えば可能であったが、そこまでは踏み込まなかった」。その後、東電の試算で敷地の高さを超える結果になると部下から知らされた。ただ、専門家の検討には委ねず、津波高を部下や有識者に尋ねることもしなかった。「貞観津波に関する話は熟度が低いと考えており(中略)認識が甘かった」。 ■松浦祥次郎・元原子力安全委員長 「電源担保、どこかに記載あれば」 原発事故をどう防ぎ、事故が起きたときにどう対処するか。国の指針を定める役割は原子力安全委員会が担っていた。その委員長を事故前に務めた専門家2人の調書も公開された。福島第一原発は電源を失い、原子炉の冷却ができなくなった。だが、指針では、すぐに復旧できることから長期間の交流電源の喪失は考慮する必要はない、とされてきた。2000~06年に委員長を務めた松浦祥次郎氏は、聴取に「影響が大きいので、交流電源を担保すべきという記載がどこかにあれば防げたと今では思う」と回答した。「雷によって停電してもすぐに復旧する」ことや、指針を作った専門家が「実績と深い専門知識を持っており、信頼していた」ことから「不審とは思っていなかった」。一方で、電源があっても冷却ができたのかという疑問も呈した。「海水冷却ポンプが動かないと冷却できない。かなり頑丈な構造体に入れるとか、陸側に貯水タンクをつくっておくなどの対応が必要であろう」 ■鈴木篤之・元原子力安全委員長 原子炉の燃料が著しく損傷するような過酷事故対策も、事故前は電力会社の自主的な取り組みとされてきた。事故後につくられた原発の新規制基準では、国による審査の対象になった。なぜ自主的な取り組みにとどまっていたのかについて、06~10年に委員長を務めた鈴木篤之氏は「本格的に取り組みだしたらどこまでやるのかが問題になるし、地元の人たちもやはり原子力施設は危ないのだと受け取ってしまう」と答えていた。事故対策は、国ごとに事情、社会の仕組みが異なるとした上で、「日本で本格的にやろうとすると、途方もない作業になり、収拾がつかない」とした。 *2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140912&ng=DGKDASFS11H24_R10C14A9EA2000 (日経新聞 2014.9.12) 人災回避へ 教訓重く、 吉田調書公開 官邸と現場、ちぐはぐ 政府が11日公開した東京電力福島第1原子力発電所の主要関係者証言は、東京電力の事故想定の甘さや危機管理で迷走した首相官邸の混乱を浮き彫りにした。折しも九州電力川内原発(鹿児島県)を皮切りに原発の再稼働が動き出す。事故に人災の面があったことは否めない。教訓は何か。(肩書はいずれも当時)。 「座った時点でかなり厳しい口調でどういう状況になっているんだということを聞かれた」。2011年3月12日朝、ヘリコプターで福島第1を訪れた菅直人首相は吉田昌郎所長に詰め寄った。調書によると菅首相はその後も電話で「水素爆発とはどういうメカニズムで起こるんだとか、水蒸気爆発とちがうのかといったご質問をなさっていた」。一刻を争う現場の責任者に首相が初歩的な質問を投げかけるなど官邸と現場のやりとりはちぐはぐだった。高放射線量の暗闇の中、現場は原子炉格納容器の爆発を防ぐためガスを抜く「ベント」の作業に取り組んだが成功しない。官邸は「東電はベントを嫌がっている」(細野豪志首相補佐官)と不信感を募らせ督促した。「命令してできるんだったらやってみろと、そういう精神状態になっていますから現場が全然うまくいかない状況です」。吉田氏は告白している。日本の危機管理のあいまいさは事故後も残る。米国は連邦緊急事態管理庁主導で事故に対応し、最高責任者には経験豊富な管理庁長官が就く。仏では事故が起きると即時に「事故後指揮委員会」をつくり電力公社に代わって指揮する。日本でも、こうした仕組みづくりが浮上したが改革機運はしぼみ縦割り色が強まる。 *2-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014091302000119.html (東京新聞 2014年9月13日) 吉田調書 「国会事故調も公開を」 幅広く検証要求の声 東京電力福島第一原発事故をめぐり、国会が設置した福島原発事故調査委員会(国会事故調)が故・吉田昌郎(まさお)元福島第一所長から非公開で聞き取った記録を公開するよう求める声が出ている。政府事故調の「吉田調書」が十一日に公開されたためだが、国会事故調の記録の取り扱いは決まっていない。国会事故調は政府から独立して事故原因を究明するために二〇一一年十二月に設置され、一二年七月に報告書を公表した。政府や東電の幹部ら三十八人から公開で聞き取りし、約千二百人の関係者から非公開で聞き取った。公開の聞き取りは全文が報告書に盛り込まれたが、非公開については原則、掲載されなかった。食道がんで入院していた吉田氏からは病室で約一時間、話を聞いた。非公開だったため、吉田氏の証言はごく一部が引用されたにすぎない。国会事故調は政府事故調と違った視点で調査を進めており、福島第一原発事故を幅広く検証するため、記録の公開を求める声が出ている。しかし、国会事故調は解散後の資料の扱いを決めておらず、非公開での聞き取り記録など段ボール約六十箱分の資料は国会図書館に保管されたまま。行政府ではない国会は情報公開法の対象ではなく、国会議員すら閲覧できない状態が続いている。超党派議員でつくる「原発ゼロの会」は昨年二月、衆参両院の議院運営委員長に取り扱いのルールを決めるよう要請。議運委の下にある図書館運営小委員会が検討を始めたが、一年半以上たった今も結論は出ていない。ルールの早期策定を求める水野賢一みんなの党幹事長は「非公開のヒアリング記録は丁寧に扱う必要があるが、一律に公開されないのはおかしい」と批判した。 <報道と人権> *3-1:http://www.asahi.com/articles/DA3S11346554.html (朝日新聞 2014年9月12日) 「報道と人権委員会」、吉田調書をめぐる朝日新聞社報道を審理へ 朝日新聞社の第三者機関「報道と人権委員会」(PRC)は11日、「吉田調書」をめぐる朝日新聞の報道について、朝日側がPRCの見解を求めた申し立てについて、審理の対象とすることを決めた。対象となるのは、東京電力福島第一原発で事故対応の責任者だった吉田昌郎所長(故人)が政府事故調査・検証委員会に答えた「吉田調書」について、朝日が5月20日付朝刊で「所長命令に違反 原発撤退」などの見出しで報じた記事。 ◆キーワード <報道と人権委員会(PRC)> 朝日新聞社と朝日新聞出版の記事に関する取材・報道で、名誉毀損(きそん)などの人権侵害、信用毀損、朝日新聞社行動基準などの記者倫理に触れる行為があったとして、寄せられた苦情のうち、解決が難しいケースについて審理する第三者機関。調査、審理の結果は見解としてまとめ、公表することができる。2001年に発足した。苦情申立人のほか、審理対象となる朝日新聞社や朝日新聞出版からも、審理を要請することができる。最近では、いわゆる「ロス疑惑」をめぐる名誉毀損訴訟の判決報道に関し、遺族側の申し立てについて、今年6月に判断。この訴訟自体は朝日新聞側が勝訴したが、PRCの見解は、判決で朝日側の主張が認められなかった部分も含めて、「正確に報道することが公正な態度」との考え方を示した。これを受けて、朝日側は、見解を反映させた記事を再掲載した。これまでに、朝日新聞や朝日新聞出版に何らかの是正を求めた見解は10件を超える。現在の委員は、早稲田大学教授(憲法)の長谷部恭男氏、元最高裁判事で弁護士の宮川光治氏、元NHK副会長で立命館大学客員教授の今井義典氏の3氏。 *3-2:http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0H505T20140910?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0 (ロイター 2014年 09月 10日) 九電・川内原発の基準適合を正式決定、再稼動は越年の公算=規制委 九電は昨年7月、川内原発が新規制基準に適合しているかどうかに関する審査を申請。1年間の審査を経て規制委は7月16日、川内原発の安全性確保に関する基本方針・対策に関する「設置変更許可申請」に対し、「基準に適合していると認められる」とする「審査書案」を了承した。 <巨大火山噴火リスク、懸念退ける> その後、1カ月間にわたる意見募集を行い、約1万7000件が集まった。原子力規制委員会は、これらの意見を精査した上で最終的な審査書に反映させるかどうか検討を進めた。川内原発については、火山噴火リスクを軽視しているとの批判が火山学者から上がっていた。火砕流の到達距離が数百キロに及ぶ巨大なカルデラ噴火が発生し、高温の火砕流が原発の重大事故につながりかねない。審査書案に対する意見募集でも、火山リスクに対する意見が多数寄せられた。しかし、規制委側は、1)川内原発の運用期間中に破局的噴火が発生するリスクは十分に小さい、2)監視体制の強化によって前兆を捉えることができる──とする従来の見解を変えなかった。 PS(2014年9月14日追加):2014年8月30日に報道ステーションのディレクターが亡くなった事件は、早々に自殺とされたが、そのディレクターは、ニュースのうちTVで伝えられない部分を、*4のようにブログで日々レポートしていた人だった。 *4:http://blog.iwajilow.com/?eid=1070906 (つぶやきいわぢろう 2011.03.19) TVディレクターがメディアでは伝えられないニュースの裏側を日々レポート。 ●本当は何が起こっているのか 東京電力の素敵な情報公開はこの期に及んで、(東電上層部の方々は)自分のことを一番と考えているんだなぁと思い、ここまで、自分がかわいがれるのは、ある意味才能だなぁと感心するばかりです。本当は何が起こっていて、これから何が起こるのか? 東芝の元原子炉格納容器設計者、後藤政志さんが、17日午前、参議員議員会館で院内集会がありました。その時の僕のメモをそのままここに載せます。 以下、取材メモです。 非常用のディーゼルも立ち上がらない。冷却機能が損なわれている。冷却ができなくなると、水が蒸発します。水位がどんどん下がってきます。外から水を入れないので燃料がすごく高温です。問題は冷却できるかどうか。ほかのシステムで何とかやりくりしながら水を入れようとトライをしています。格納容器の近くに圧力抑制室がある。これは配管が破綻したとか原子炉で事故があると、その蒸気がここのプール(水のプール)に吹いて、温度が下がって体積が縮まるという仕組み。(圧力抑制室は容器内の水蒸気を水に戻して、圧力を下げる役割がある)その圧力抑制室もだめになっている。今回は格納容器の圧力が想定の2倍にまで上がった。何かトラブルがあっても最後は格納容器でがんばれるから放射能は漏れないという設計なのに格納容器自体がだめになっている。穴が開いている可能性がある。外の配水系も津波でやられている可能性がある。ディーゼルも津波でやられている。津波で相当厳しいものがあって同時にいろいろなものを壊している。安全システムはいっぱい作っているが地震は同時にたくさん壊れる。冷やすためには水を入れる水源が必要、ポンプが必要、ポンプを動かすにはエネルギーが必要。この3者がないと動かない。しかも放射能があるので大変作業が厳しい。チェルノブイリでも上空からまこうと思ってパイロットが被曝してみんな死んでいる。みんな決死隊。被曝しながら作業を行っている。それを考えたらたまらない。原子力の危険性に対してきちんと認識した上で対策を考えるべきである。それを踏まえた上で冷静に対応する必要がある。簡単に収束はできない。なぜかというと、もうポンプは動いていない。水があるだけ。水があるから何とか維持している。水は蒸発するのでまた水を入れる必要がある。冷えるまでそれを繰り返していかなければならない。1号機と3号機については建物の中で水素爆発が起こった。現在使用済み燃料プールがむき出しになっている。ここには非常に多くの使用済み燃料がある。使用済みというのは放射能が減っているわけではない。原子力というのは核反応を進めると非常に多くの放射能を出すようになる。それがたくさんある。それは非常に怖い。 2号機において爆発があった。格納容器が破損している可能性がある。圧力が1気圧になっているのでツーツーになっている。格納機能を失っている。ものすごい大きな穴が開いているのではないかもしれない。普通は24時間圧力を計算します。そういうオーダーで漏れがないということを確認して運転をするがそれをとっくに超えている状態。これだけですめばいい。ここから先が問題。 もし仮に水の供給ができなくなると燃料が溶ける。それをメルトダウンという。そうすると溶融物がたまる。この溶融物はものすごく高温です。水素が出るので水素爆発の危険性がある。もうひとつは蒸気爆発の危険性もある。溶融物に水を注ぐあるいは水のプールに溶融した金属を落とすと、一気に蒸発して、爆発する。これが蒸気爆発でものすごいエネルギーです。火山の溶岩が水に入るときと同じ現象です。または溶けた鉄を間違ってこぼして下に水があると爆発する。溶融金属扱うところでは水と接触させるのは最悪だと知っている。蒸気爆発が起こるというのは怖い。普通は蒸気爆発を防ぐためには水を入れないんです。しかし原子炉では水をかけないと冷やせないんですよ。蒸気爆発を覚悟して冷やすんです。蒸気爆発をおきないように冷やさなければいけない。 事故というのは最悪の組み合わせ。皆さんにお伝えするときに、最悪はこういうことが起きます。でも今はそういうところまで行っていませんというのが大事。今情報がちゃんと出ているとは思えません。問題なのはそういう状況にあるときにどうするか、避難させるときに理由を言わずに非難させるのはおかしい。ありえないというこという人はいますけどこれとこれがあったら可能性が非常に小さいものであってもそれは確率の問題であって、起きるときにはちゃんと起きるんです。何十年というレベルではわからない。何万円、何十万年というデータを取ってはじめてわかるんです。2号機は穴が開いたので水素がたまらなかったのかもしれない。ただ燃料プールがむき出しになっている。そこに使用済みの燃料がおいてあります。冷却機能が失われている。水位が下がっている。地震によって水が外に出て水位が下がっているのかもしれないし、蒸発しているのかもしれない。燃料プールはコンクリートでできているがこれが大きな爆発とか地震が原因で亀裂ができて、コンクリートはもれますから薄い鉄板をしいていますが、これが切れているとそこからどんどん水が漏れる。それが危惧されている。そうすると漏れている量に対して注入している量が多くなければ水は減っていく。今冷却に成功しているのではなくて決して安心できる状態ではない。何とかがんばっている状態だと思う。 溶融はすでに始まっている。溶融物はやがて格納容器をつきぬける。この段階で大量の放射性物質が出る。冷却に失敗すると、水蒸気爆発、最悪のシナリオは再臨界。核燃料が入っていて運転が止まっていたということは制御棒が入っていたということ。それが溶けて落ちると制御棒と燃料がうまく止まるように混ざってくれているいいが、そうでないとある容積になると、ただあるだけで核反応がまたおこる。制御できない状態で原子炉が再起動するということになる。JCO事故の巨大なものが起きるということ。物理的な可能性としてはありえる。私が心配したのは水蒸気爆発と再臨界。ホウ酸を入れているのは再臨界を防ぐため。爆発すると規模によるが核燃料が遠くまで飛ぶ。今のままの状態が続いて爆発を起こさない場合は時間とともに徐々に出て行く。事象はマイルドだがずーっと出るという事態に追い込まれる。これどこの段階で止めるかが問題。 いったん外に出た放射線は消えない。濃度は薄まるけどどこかにある。爆発的にボンと行いのと徐々に出るのは違うが地下水にも入るだろうし、生態系にも入る。ただし現在、急速な人体に対する影響はない。影響はあるのは間違いないができるだけ浴びないほうがいいのは事実。 PS(2014年9月14日追加):従軍慰安婦の像を世界に設置され、事あるごとに引き合いに出されるのはまいるが、私も、*5のように、従軍慰安婦については日本軍が慰安所の設置や管理に関与したと考えている。一証言が嘘だったからといって、その事実自体がなかったことにはならないだろう。 *5:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-231521-storytopic-11.html (琉球新報社説 2014年9月13日) 朝日新聞誤報問題 負の歴史は否定できない 朝日新聞の木村伊量社長が記者会見し、従軍慰安婦に関する報道と東京電力福島第1原発事故の「吉田調書」をめぐる報道の誤りを謝罪して記事を取り消した。特に慰安婦の問題は報道機関の歴史認識や言論の自由に対する姿勢が問われるもので事態は深刻だ。韓国・済州島で、慰安婦を強制連行したという故吉田清治氏の証言を朝日新聞が初めて報じたのは1982年だった。92年に証言に疑義を呈する報道があったのに検証の機会を逸し、訂正まで32年を要した。木村社長が認めるように「訂正するのが遅きに失した」と言わざるを得ない。しかも、この問題を論評するジャーナリスト池上彰氏のコラムの掲載を拒否した。自由な言論を守るべき報道機関の使命を放棄したに等しく、重大な過ちだ。木村社長が「読者の信頼を損なうような結果に責任を痛感している」と謝罪したのも当然だといえよう。吉田証言は虚偽だったが、朝鮮半島の女性を慰安婦として戦地に駆り出した重大な人権侵害があった事実は変わらない。記事取り消しに乗じて負の歴史を否定する動きが広がることを危惧する。従軍慰安婦に関してはさまざまな証言がある。沖縄戦においても首里城地下に置かれた32軍司令部壕に朝鮮の女性たちがいたことが学徒の証言で分かっている。慰安婦問題に関する93年の河野談話は、日本軍が慰安所の設置や管理に関与したことや、本人の意思に反した慰安婦の募集があったことを認めている。強制連行に関する一証言が否定されても、広義の強制性は否定できない。国立公文書館は昨年、強制連行したオランダ人女性を慰安婦とした旧日本軍将校の裁判記録を開示した。日本兵の性のはけ口となることを女性たちに強いた証言があり、歴史の事実として無視できない。安倍晋三首相はラジオ番組で「(誤報によって)国際社会で日本の名誉が傷つけられたことは事実」と述べた。しかし、負の歴史から目を背けては国際社会から信頼を失う。安倍内閣は河野談話を継承する以上、慰安婦問題の全体像を明らかにすべきだ。そのことが国際社会の信頼を得ることにつながる。「吉田調書」の誤報について木村社長は「記者の思い込みと、チェック不足が重なった」と説明した。同じ報道機関として自戒しながら、朝日新聞の検証作業を見守りたい。
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2014,08,30, Saturday
2014.8.30東京新聞より (1)どちらが真実か – フクイチで原発技術者は待機命令に背いて撤退したのか *1-1でスポニチが報じているように、産経新聞が、朝日新聞が報じていた吉田調書の内容のうち「福島第1原発にいた所員の9割が、吉田所長の待機命令に背いて福島第2原発に撤退した」という記事を、調書の一部を独占入手して、「所員が吉田所長の命令に違反して勝手に現場を離れたことはなく、朝日新聞の言う撤退はなかった」と報じ、雑誌等にも朝日新聞を攻撃する論調の記事が多い。 しかし、*1-2で、読売新聞が報じているように、吉田所長は第一原発内での退避を指示したにもかかわらず、所員の多くが第二原発に避難したのであるから、所員の9割が、その時点の吉田所長の待機命令に背いて第2原発に撤退したというのが正しい。 なお、9割撤退の適法性・妥当性については、全員が第一原発に残っている必要はなかっただろうし、もし技術者が第一原発に残っていれば、*3-2の電離放射線障害防止規則第4条に規定されている「事業者は、管理区域内において放射線業務に従事する労働者(以下「放射線業務従事者」という。)の受ける実効線量が5年間につき100mSvを超えず、かつ1年間につき50ミリシーベルトを超えないようにしなければならない(フクシマ事故後、250mSvに緩和された)」に反するため、東電の経営者は技術者全員に撤退を指示したのかもしれない。そのため、菅首相(当時)が、「全員撤退なんてあり得ない」と言って現場に乗り込んだのだと思われるが、この辺の話のあやが、一連の出来事の原因だろう。 また、*1-3の神戸新聞に書かれているとおり、吉田調書は、未曽有の原発被害をもたらした事故に関して、国民が共有すべき公共財であり、事故の解明に重要なものであるため、公開されるのが当然で、これまで非公開とされてきたのがおかしいと考える。 (2)原子力関係者は、常に危険で命のかかった仕事に従事しているという認識と覚悟が必要 *2の西日本新聞記事は、原子力の復活の為には、原発への負のイメージで就職志望が激減したら困ると記載されている。しかし、既に原発を稼働させていながら廃炉や使用済核燃料の最終処分技術は開発途上というのは「優秀な人材」からは程遠い無責任さで、事故後も吉田調書等の突き合わせにより事故原因を究明して解決策を考えるということはなかった。そのような中で、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけることこそ、無責任で希望のないことである。 そして、これまでは高いレベルの人材を維持してきたということだが、それでも嘘と秘密が多く事故原因の究明すら速やかにできない原子力分野に、これからも優秀な人材を投入して人材を腐らせるのは賢い選択ではない。むしろ、今後は、数少ない優秀な人材は過去の分野で殺すのではなく、新しい分野に誘導するのが望ましいと考える。 (3)被曝の許容限度と被曝管理 *3-1より ヘルファンド医師の発言 *3-1で、2011年6月16日にNHKが放送しているように、原発作業員は被曝に直面し、被曝すれば健康を害するので、被曝管理が必要である。また、*3-2の電離放射線障害防止規則第9条では 「事業者は、一日における外部被ばくによる線量が1センチメートル線量当量について1ミリシーベルトを超えるおそれのある労働者については、前条第1項の規定による外部被曝による線量の測定の結果を毎日確認しなければならない」と規定されている。そして、これは、現在、関東の一般住民よりも低い値だ。 <フクイチで原発技術者は撤退したのか> *1-1:http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/303306/ (スポニチ 2014年8月21日) 慰安婦報道に続き朝日Wパンチ…福島原発「撤退誤認」リーク元は政府か 過去の従軍慰安婦報道について事実誤認を認めた朝日新聞が、さらなる窮地に陥った。18日付の産経新聞で、先に朝日新聞が報じた「吉田調書」の内容について明確に否定する内容が報じられたのだ。吉田調書とは、2011年3月11日の東日本大震災で東京電力福島第1原発が危機的状況に陥った際の、吉田昌郎所長(享年58)と政府のやりとりを記した極秘文書だ。朝日新聞は5月20日付の紙面で「所長命令に違反 原発撤退」というタイトルで、震災直後の3月15日に第1原発にいた所員の9割に当たる約650人が、吉田所長の待機命令に背いて10キロ南の福島第2原発に撤退したと報じた。これに産経新聞は調書の一部を独占入手した上で、吉田所長の命令に違反し所員が勝手に現場を離れたことはないと断定。吉田所長から「退避」は指示されたものの、朝日新聞の言う「撤退」はなかったと強調した。8月19日の朝日新聞デジタルは、朝日新聞社が8月18日付で朝日新聞社の名誉と信用を傷つけたとして、産経新聞の東京編集局長と産経新聞に記事を書いたジャーナリストに抗議書を送ったと報じた。朝日新聞といえば、従軍慰安婦の存在を広めながら、最近になって「確認できなかった」と一部の記事が事実誤認であることを認めたばかり。その矢先に吉田調書でも大失態を演じたことから、ネット上では「また朝日か」「いい加減にしろ」と大ブーイングが飛び交っている。事実、慰安婦の事実誤認以降、年間購読している一般購読者の解約が後を絶たないという。同紙関係者は「一般読者だけでなく、企業も『慰安婦の誤報は許せない』と広告出稿を控える事態になっている。社内でも深刻な問題として捉えている」と話す。しかも、今回の産経新聞の記事は、政府がお膳立てしなければ成立しない内容。別の関係者によると「吉田調書は安倍政権下のトップシークレット。それが漏れるということは政府が産経に橋渡ししたとしか思えない。政府が朝日新聞を潰そうとしているのでは」と推測する。慰安婦報道に続き、吉田調書でダブルパンチを食らった朝日に明日はあるのか――。 *1-2: http://www.yomiuri.co.jp/politics/20140829-OYT1T50151.html (読売新聞 2014年8月30日) 原発事故調書、吉田元所長「全面撤退」強く否定 東京電力福島第一原子力発電所事故を巡り、政府の事故調査・検証委員会が吉田昌郎(まさお)元所長(昨年7月死去)から聴取した記録の全容が29日、明らかになった。吉田氏は事故発生4日後の2011年3月15日に、所員が福島第二原発に避難したことを正しい判断だったと証言。東電が「全面撤退」を検討したという事実は強く否定した。政府は9月上旬にも吉田氏の調書を公開する予定だ。吉田氏への聴取は11年7月から11月、事故収束作業の拠点「Jヴィレッジ」と福島第一原発の免震重要棟で計13回、延べ27時間以上にわたり行われた。調書は、質問に吉田氏が答える形で、A4判で約400ページにまとめられた。こうした証言をもとに政府事故調は報告書を作成した。 *1-3:http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201408/0007272516.shtml (神戸新聞 2014/8/26) 吉田調書/「公共財」の公開は当然だ 原発事故で政府の事故調査・検証委員会が関係者から集めた聴取結果書(調書)が、公開されることになった。公開に否定的だった政府が姿勢を一転させた。事故当時、東京電力福島第1原発所長だった故吉田昌郎氏の調書が複数の報道機関に断片的に取り上げられ、偏った内容が独り歩きする懸念が強まったためだとしている。事故調が聴取した関係者は772人に上り、これらの証言によって2012年7月、政府の事故調査報告書が作成された。しかし、各調書が公開されることはなかった。未曽有の被害をもたらした事故に関する証言は国民が共有すべき公共財であり、公開されるべきものだ。非公開としてきた政府の対応はおかしい。吉田氏は事故の最前線で陣頭指揮したキーパーソンである。11年3月11日の地震発生と津波の襲来、全電源喪失による1~3号機の炉心溶融、さらに1、3、4号機の水素爆発、放射能拡散など、経験したことのない原発事故と向き合い、文字通り死を賭して闘った。吉田氏への聴取は11年7月から11月にかけて計13回、30時間近く行われた。官邸にいた東電や原子力安全・保安院(当時)の幹部らは情報収集や、どう対応すべきか判断する能力に欠けていた。そのため、菅直人首相が原発に出向き、吉田所長から直接、状況を聞くに至った。吉田調書には、首相とのやりとりや、本店の命に反して海水の注水を続行させた経緯、福島第1の所員たちに発した退避命令と意図しなかった所員らの行動などについても語られているとみられる。吉田氏の記憶の曖昧な部分も含め利害得失によらない証言を明らかにすることは、真相究明と再発防止に不可欠だ。他の調書と照らし合わせ突き詰めることで、より真相に近づくこともできるだろう。原発事故には依然、未解明な点が多い。高濃度汚染水に阻まれ、原子炉内の様子がはっきりしない。政府事故調が報告書で求めた原子炉建屋内の地震動の影響調査も手つかずになっている。汚染水対策の出口も見通せない。要するに、原因究明も事故の後始末もこれからなのだ。重要なのは、調書の公開を真相究明に役立てる政府の姿勢である。原発の再稼働を急ぐ安倍政権に、その意思があるかないかが問われる。 <原子力産業には負のイメージは当然> *2:http://qbiz.jp/article/44598/1/ (西日本新聞 2014年8月26日) 原子力産業、負のイメージに就職志望が激減 ◆人材不足 福島の原発事故以降、原子力産業には負のイメージがつきまとう。ただ、原発の廃炉や使用済み核燃料の最終処分などの技術開発は途上で、今後も多くの人材が必要。関係者からは「原発が動かない状況が続けば、やりがいや魅力のある仕事だと感じてもらえず、優秀な人材が集まらなくなる」と将来を憂う声が出ている。日本原子力研究開発機構の原子力人材育成センター(茨城県東海村)によると、福島の事故以降、全国の大学で原子力を学ぶ学生は目立って減ってはいないが、就職先として原子力業界を志望する学生は激減。特に、電気や機械など原子力以外の分野を学んだ学生の間で原子力離れが進み、就職セミナーを開いても参加者が集まりにくいという。九州で唯一、原子力のカリキュラムがある九州大学工学部エネルギー科学科。前身の応用原子核工学科時代から、電力会社や電機メーカーに多くの卒業生を送り出してきたが、講義を持つ九大大学院工学研究院の出光一哉教授(原子力工学)は「原子力を学ぶ学生たちがやる気や使命感を持ち続けるのは、簡単ではない」と声を落とす。「今だからこそ原子力を学びたい」と進学してくる学生もいるが、福島の事故以降、一部の原子力燃料メーカーや原子炉点検会社は新卒採用を中止。専門分野を生かせる就職先の減少が、入学希望者の減少につながりかねないと心配する。4月に閣議決定された中長期的なエネルギー政策の指針となる国の「エネルギー基本計画」は、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけながら「依存度は可能な限り低減させる」とあいまいな表現にとどめた。困難な作業となる福島第1原発の廃炉作業に加え、老朽原発の廃炉時代到来に備え「高いレベルの原子力技術・人材の維持が必要」としているが、国が原発の将来像の議論を避けたままでは、人材育成や技術開発に支障が出る可能性がある。 <被曝の許容限度と被曝管理> *3-1:http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/87038.html (NHK 2011年6月16日) 時論公論 「原発作業員 被ばく管理強化を」 ●福島第一原発で働く作業員の被ばくが深刻になってきている。国の被ばく許容限度の250mSvを超える大量の被ばくをした可能性のある作業員は、今週6人増えて8人に。今後さらに増えるおそれもあり、作業員が十分に確保できなければ収束作業に影響がでることが心配。なぜ作業員は大量の被ばくをすることになったのか、東京電力の被ばく管理体制のどこに問題があったのか、今夜の時論公論は作業員の被ばく管理について水野倫之解説委員。 ●東電によりますとこれまでに許容限度の250mSvを超えたか、その可能性が高い作業員は8人、今回の事故が起こる前の原発作業員の上限値の100mSvを超えている作業員は100人に。 ●被ばくには放射線がからだの外から当たる外部被ばくと、体内に取り込んだ放射性物質による内部被ばくがある。内部被ばくの方が影響が続くため危険性は高いとされている。許容限度を超えた作業員はいずれも内部被ばくが大半を占め、最大で678mSvに。8人はいずれも東電の社員で、1号機がメルトダウンした事故当日から数日間、中央制御室などで計測機器の復旧作業を行っていた。 ●ではなぜ大量の被ばくをしてしまったのか。そこには東電の、想定や被ばく管理体制の甘さが。当時原発はすべての電源が失われ、中央制御室も含めて真っ暗に。電源が長期間、喪失することが想定されていなかったため、放射線量や放射性物質の濃度を自動的に測定できなくなり、発電所内がどれだけ汚染されているのか十分に把握されなかった。こうした中でも、原子炉は一刻も早く冷却しなければならず、作業員たちは様々な作業を強いられた。今回のように燃料が溶融する事故では大量の放射性物質が放出され、防護服を着ても放射線は透過してくるため、外部被ばくは避けられない。これに対して放射性物質を取り込む内部被ばくは、規則に従ってマスクやゴーグルをきちんとすればほぼ完全に防ぐことができる。つまり今回の大量被ばくは適正に被ばく管理が行われていれば防げた。しかし作業員は事故直後、マスクを適切にしていなかった可能性があり、その際に放射性のヨウ素などを吸い込んだと見られている。また放射性のヨウ素は、被ばくが予想される前にヨウ素剤を服用することで体内にとどまることを防ぎ、被ばくを減らす効果があるが、今回作業員が服用したのは事故の2日後、1号機が水素爆発を起こした後だった。被ばくの管理者は作業員に対してマスク着用の指示をしたのかどうか、いつ指示をして徹底されていたのかどうか、ヨウ素剤服用のタイミングは適切だったのかどうかなどについて事故調査委員会の場で早く検証して今後にいかしていかなければならない。 ●では600ミリシーベルトをこえる被ばくは人体にどんな影響があるのか。放射線の影響については一度に大量に被ばくした場合に白血球が減少するなどすぐに現れる急性の影響と、がんになる確率が上がるといった将来の影響がある。今回は一度に大量に浴びたわけではなく、これまでのところ作業員に健康上の問題は見つかっていない。内部被ばくで問題になるのは将来の影響。原爆で被爆した人たちの追跡調査から、累積で100ミリシーベルトを超えると、将来がんになる確率が0.5%上がることが分かっており、600mSvでは3%程度上がることになるものと見られる。今、健康に問題がないからといって油断することなく、将来にわたってがん検診など継続的に健康診断をしていくことが重要。その際、作業員個人に任せるのではなく東電が検診の機会を設けたり費用を負担するなど、責任を持って対応していくことを求めたい。 ●しかしそれ以上に今回の問題が深刻なのは、いまだ作業員の被ばくの全体像が把握できておらず、今後さらに多くの被ばく作業員を出しかねない状況にあること。現場での作業にはこれまでにおよそ7800人が携わってきました。東電はこのうち放射性物質が大量に放出された3月に作業していた3726人の内部被ばくの検査を優先して進めているが、事故から3か月たっても全員の検査は終わっていない。いまだに1400人の作業員は正確な被ばく状況が不明なまま作業を続けており、今後の検査結果によっては大量被ばくの作業員が増える恐れも。 ●ではなぜ検査が遅れているのか。内部被ばくの測定にはホールボディカウンターと呼ばれる、体内にとりこまれた放射性物質が出す放射線をセンサーで測定する大がかりな装置が必要。福島第一原発にもともと設置されていた装置は事故で使えなくなり、東電は、福島第2原発に設置されているものと、研究機関から借り受けたあわせて4台で対応。しかし1人の測定に数十分、結果が出るまでに1週間かかることもあって、なかなか進んでいない。 ●ただ測定に手間がかかることはもともとわかっていたこと。しかし東電が、ホールボディカウンターによる検査を本格的に始めたのは4月に入ってから。収束作業を優先させ、作業員の安全管理についての対応が後手にまわってしまったため、いまだに1400人について測定結果が得られていない。東電は厚生労働省の指導を受けて、内部被ばくが100mSvを超えた作業員については現場の作業から外すことにしているほか、マスクの指導を徹底させたので今後、大量被ばくの作業員が大幅に増えることはないとしている。 しかし今週も、作業員がマスクに放射性物質を取り除くフィルターを付けずに作業したため、内部被ばくしたことが明らかに。フィルターがついていないのは外見ですぐにわかるが、被ばく管理を行う社員が装備のチェックをしたのかどうかはっきりしない。 ●今後、大量被ばくの作業員を出さないためにも被ばく管理体制を強化することが重要。そのためにもまずは測定器を増やして被ばく量を把握する必要があるが、装置は大掛かりですぐに配備するのは難しい状況。ただ全国には電力や研究機関や病院などにあわせて100台余りのホールボディカウンターがある。これらの空き時間に福島の作業員の測定をすることが考えられる。ただ測定器を扱える技術者が足らない。放射性物質の特性やグラフの読み取りなどある程度専門的な知識をもった人材を育成する必要。茨城県にある原子力機構ではこうした人材を育成する研修を適宜行っており、政府が主導し、東電の社員などに研修を受けさせて人材を確保する取り組みが求められる。また、福島第一原発では被ばくの管理を行う社員は80人余りしかおらず、作業員全員の装備をチェックしたり、すべての作業現場に同行するのが難しい状況。東電はほかの電力会社の被ばく管理者に応援を依頼するなどして、体制を充実させていくことが求められる。 ●福島第一原発では現在も1日およそ2400人の作業員が収束に向けた作業に当たっている。過酷な状況が続けば、作業員の確保が難しくなり、来年1月までに事故を収束させるという工程にも影響が出かねない。作業員の安全を優先した収束作業を求めたい。 *3-2:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S47/S47F04101000041.html 電離放射線障害防止規則 (昭和四十七年九月三十日労働省令第四十一号) 最終改正:平成二五年七月八日厚生労働省令第八九号 労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)及び労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)の規定に基づき、並びに同法を実施するため、電離放射線障害防止規則を次のように定める。 第一章 総則(第一条・第二条) 第二章 管理区域並びに線量の限度及び測定(第三条―第九条) 第三章 外部放射線の防護(第十条―第二十一条) 第四章 汚染の防止 第一節 放射性物質(事故由来放射性物質を除く。)に係る汚染の防止(第二十二条―第四十一条の二) 第二節 事故由来放射性物質に係る汚染の防止(第四十一条の三―第四十一条の十) 第四章の二 特別な作業の管理(第四十一条の十一―第四十一条の十四) 第五章 緊急措置(第四十二条―第四十五条) 第六章 エツクス線作業主任者及びガンマ線透過写真撮影作業主任者(第四十六条―第五十二条の四の五) 第六章の二 特別の教育(第五十二条の五―第五十二条の八) 第七章 作業環境測定(第五十三条―第五十五条) 第八章 健康診断(第五十六条―第五十九条) 第九章 指定緊急作業従事者等に係る記録等の提出(第五十九条の二) 第十章 雑則(第六十条―第六十二条) 附則 第一章 総則 (放射線障害防止の基本原則) 第一条 事業者は、労働者が電離放射線を受けることをできるだけ少なくするように努めなければならない。 (定義等) 第二条 この省令で「電離放射線」(以下「放射線」という。)とは、次の粒子線又は電磁波をいう。 一 アルフア線、重陽子線及び陽子線 二 ベータ線及び電子線 三 中性子線 四 ガンマ線及びエツクス線 2 この省令で「放射性物質」とは、放射線を放出する同位元素(以下「放射性同位元素」という。)、その化合物及びこれらの含有物で、次の各号のいずれかに該当するものをいう。 一 放射性同位元素が一種類であり、かつ、別表第一の第一欄に掲げるものであるものにあつては、同欄に掲げる放射性同位元素の種類に応じ、同表の第二欄に掲げる数量及び第三欄に掲げる濃度を超えるもの 二 放射性同位元素が一種類であり、かつ、別表第二の第一欄に掲げるものであるものにあつては、同欄に掲げる放射性同位元素の種類に応じ、同表の第二欄に掲げる数量を超えるもの。ただし、その濃度が七十四ベクレル毎グラム以下の固体のもの及び密封されたものでその数量が三・七メガベクレル以下のものを除く。 三 放射性同位元素が二種類以上であり、かつ、そのいずれもが別表第一の第一欄に掲げるものであるものにあつては、次のいずれにも該当するもの イ 別表第一の第一欄に掲げる放射性同位元素のそれぞれの数量の同表の第二欄に掲げる数量に対する割合の和が一を超えるもの ロ 別表第一の第一欄に掲げる放射性同位元素のそれぞれの濃度の同表の第三欄に掲げる濃度に対する割合の和が一を超えるもの 四 放射性同位元素が二種類以上であり、かつ、前号に掲げるもの以外のものにあつては、別表第一の第一欄又は別表第二の第一欄に掲げる放射性同位元素のそれぞれの数量の別表第一の第二欄又は別表第二の第二欄に掲げる数量に対する割合の和が一を超えるもの。ただし、その濃度が七十四ベクレル毎グラム以下の固体のもの及び密封されたものでその数量が三・七メガベクレル以下のものを除く。 3 この省令で「放射線業務」とは、労働安全衛生法施行令 (以下「令」という。)別表第二に掲げる業務(第五十九条の二に規定する放射線業務以外のものにあっては、東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則 (平成二十三年厚生労働省令第百五十二号。以下「除染則」という。)第二条第七項第一号 に規定する土壌等の除染等の業務、同項第二号 に規定する廃棄物収集等業務及び同項第三号 に規定する特定汚染土壌等取扱業務を除く。)をいう。 4 令別表第二第四号の厚生労働省令で定める放射性物質は、第二項に規定する放射性物質とする。 第二章 管理区域並びに線量の限度及び測定 (管理区域の明示等) 第三条 放射線業務を行う事業の事業者(第六十二条を除き、以下「事業者」という。)は、次の各号のいずれかに該当する区域(以下「管理区域」という。)を標識によつて明示しなければならない。 一 外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量との合計が三月間につき一・三ミリシーベルトを超えるおそれのある区域 二 放射性物質の表面密度が別表第三に掲げる限度の十分の一を超えるおそれのある区域 2 前項第一号に規定する外部放射線による実効線量の算定は、一センチメートル線量当量によつて行うものとする。 3 第一項第一号に規定する空気中の放射性物質による実効線量の算定は、一・三ミリシーベルトに一週間の労働時間中における空気中の放射性物質の濃度の平均(一週間における労働時間が四十時間を超え、又は四十時間に満たないときは、一週間の労働時間中における空気中の放射性物質の濃度の平均に当該労働時間を四十時間で除して得た値を乗じて得た値。以下「週平均濃度」という。)の三月間における平均の厚生労働大臣が定める限度の十分の一に対する割合を乗じて行うものとする。 4 事業者は、必要のある者以外の者を管理区域に立ち入らせてはならない。 5 事業者は、管理区域内の労働者の見やすい場所に、第八条第三項の放射線測定器の装着に関する注意事項、放射性物質の取扱い上の注意事項、事故が発生した場合の応急の措置等放射線による労働者の健康障害の防止に必要な事項を掲示しなければならない。 (施設等における線量の限度) 第三条の二 事業者は、第十五条第一項の放射線装置室、第二十二条第二項の放射性物質取扱作業室、第三十三条第一項(第四十一条の九において準用する場合を含む。)の貯蔵施設、第三十六条第一項の保管廃棄施設、第四十一条の四第二項の事故由来廃棄物等取扱施設又は第四十一条の八第一項の埋立施設について、遮蔽壁、防護つい立てその他の遮蔽物を設け、又は局所排気装置若しくは放射性物質のガス、蒸気若しくは粉じんの発散源を密閉する設備を設ける等により、労働者が常時立ち入る場所における外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量との合計を一週間につき一ミリシーベルト以下にしなければならない。 2 前条第二項の規定は、前項に規定する外部放射線による実効線量の算定について準用する。 3 第一項に規定する空気中の放射性物質による実効線量の算定は、一ミリシーベルトに週平均濃度の前条第三項の厚生労働大臣が定める限度に対する割合を乗じて行うものとする。 (放射線業務従事者の被ばく限度) 第四条 事業者は、管理区域内において放射線業務に従事する労働者(以下「放射線業務従事者」という。)の受ける実効線量が五年間につき百ミリシーベルトを超えず、かつ、一年間につき五十ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。 2 事業者は、前項の規定にかかわらず、女性の放射線業務従事者(妊娠する可能性がないと診断されたもの及び第六条に規定するものを除く。)の受ける実効線量については、三月間につき五ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。 第五条 事業者は、放射線業務従事者の受ける等価線量が、眼の水晶体に受けるものについては一年間につき百五十ミリシーベルト、皮膚に受けるものについては一年間につき五百ミリシーベルトを、それぞれ超えないようにしなければならない。 第六条 事業者は、妊娠と診断された女性の放射線業務従事者の受ける線量が、妊娠と診断されたときから出産までの間(以下「妊娠中」という。)につき次の各号に掲げる線量の区分に応じて、それぞれ当該各号に定める値を超えないようにしなければならない。 一 内部被ばくによる実効線量については、一ミリシーベルト 二 腹部表面に受ける等価線量については、二ミリシーベルト (緊急作業時における被ばく限度) 第七条 事業者は、第四十二条第一項各号のいずれかに該当する事故が発生し、同項の区域が生じた場合における放射線による労働者の健康障害を防止するための応急の作業(以下「緊急作業」という。)を行うときは、当該緊急作業に従事する男性及び妊娠する可能性がないと診断された女性の放射線業務従事者については、第四条第一項及び第五条の規定にかかわらず、これらの規定に規定する限度を超えて放射線を受けさせることができる。 2 前項の場合において、当該緊急作業に従事する間に受ける線量は、次の各号に掲げる線量の区分に応じて、それぞれ当該各号に定める値を超えないようにしなければならない。 一 実効線量については、百ミリシーベルト 二 眼の水晶体に受ける等価線量については、三百ミリシーベルト 三 皮膚に受ける等価線量については、一シーベルト 3 前項の規定は、放射線業務従事者以外の男性及び妊娠する可能性がないと診断された女性の労働者で、緊急作業に従事するものについて準用する。 (線量の測定) 第八条 事業者は、放射線業務従事者、緊急作業に従事する労働者及び管理区域に一時的に立ち入る労働者の管理区域内において受ける外部被ばくによる線量及び内部被ばくによる線量を測定しなければならない。 2 前項の規定による外部被ばくによる線量の測定は、一センチメートル線量当量及び七十マイクロメートル線量当量(中性子線については、一センチメートル線量当量)について行うものとする。ただし、次項の規定により、同項第三号に掲げる部位に放射線測定器を装着させて行う測定は、七十マイクロメートル線量当量について行うものとする。 3 第一項の規定による外部被ばくによる線量の測定は、次の各号に掲げる部位に放射線測定器を装着させて行わなければならない。ただし、放射線測定器を用いてこれを測定することが著しく困難な場合には、放射線測定器によつて測定した線量当量率を用いて算出し、これが著しく困難な場合には、計算によつてその値を求めることができる。 一 男性又は妊娠する可能性がないと診断された女性にあつては胸部、その他の女性にあつては腹部 二 頭・頸部、胸・上腕部及び腹・大腿部のうち、最も多く放射線にさらされるおそれのある部位(これらの部位のうち最も多く放射線にさらされるおそれのある部位が男性又は妊娠する可能性がないと診断された女性にあつては胸部・上腕部、その他の女性にあつては腹・大腿部である場合を除く。) 三 最も多く放射線にさらされるおそれのある部位が頭・頸部、胸・上腕部及び腹・大腿部以外の部位であるときは、当該最も多く放射線にさらされるおそれのある部位(中性子線の場合を除く。) 4 第一項の規定による内部被ばくによる線量の測定は、管理区域のうち放射性物質を吸入摂取し、又は経口摂取するおそれのある場所に立ち入る者について、三月以内(一月間に受ける実効線量が一・七ミリシーベルトを超えるおそれのある女性(妊娠する可能性がないと診断されたものを除く。)及び妊娠中の女性にあつては一月以内)ごとに一回行うものとする。ただし、その者が誤つて放射性物質を吸入摂取し、又は経口摂取したときは、当該吸入摂取又は経口摂取の後速やかに行うものとする。 5 第一項の規定による内部被ばくによる線量の測定に当たつては、厚生労働大臣が定める方法によつてその値を求めるものとする。 6 放射線業務従事者、緊急作業に従事する労働者及び管理区域に一時的に立ち入る労働者は、第三項ただし書の場合を除き、管理区域内において、放射線測定器を装着しなければならない。 (線量の測定結果の確認、記録等) 第九条 事業者は、一日における外部被ばくによる線量が一センチメートル線量当量について一ミリシーベルトを超えるおそれのある労働者については、前条第一項の規定による外部被ばくによる線量の測定の結果を毎日確認しなければならない。 2 事業者は、前条第三項又は第五項の規定による測定又は計算の結果に基づき、次の各号に掲げる放射線業務従事者の線量を、遅滞なく、厚生労働大臣が定める方法により算定し、これを記録し、これを三十年間保存しなければならない。ただし、当該記録を五年間保存した後において、厚生労働大臣が指定する機関に引き渡すときは、この限りでない。 一 男性又は妊娠する可能性がないと診断された女性の実効線量の三月ごと、一年ごと及び五年ごとの合計(五年間において、実効線量が一年間につき二十ミリシーベルトを超えたことのない者にあつては、三月ごと及び一年ごとの合計) 二 女性(妊娠する可能性がないと診断されたものを除く。)の実効線量の一月ごと、三月ごと及び一年ごとの合計(一月間に受ける実効線量が一・七ミリシーベルトを超えるおそれのないものにあつては、三月ごと及び一年ごとの合計) 三 人体の組織別の等価線量の三月ごと及び一年ごとの合計 四 妊娠中の女性の内部被ばくによる実効線量及び腹部表面に受ける等価線量の一月ごと及び妊娠中の合計 3 事業者は、前項の規定による記録に基づき、放射線業務従事者に同項各号に掲げる線量を、遅滞なく、知らせなければならない。 第三章 外部放射線の防護 (照射筒等) 第十条 事業者は、エックス線装置(エックス線を発生させる装置で、令別表第二第二号の装置以外のものをいう。以下同じ。)のうち令第十三条第三項第二十二号 に掲げるエックス線装置(以下「特定エックス線装置」という。)を使用するときは、利用線錐の放射角がその使用の目的を達するために必要な角度を超えないようにするための照射筒又はしぼりを用いなければならない。ただし、照射筒又はしぼりを用いることにより特定エックス線装置の使用の目的が妨げられる場合は、この限りでない。 2 事業者は、前項の照射筒及びしぼりについては、厚生労働大臣が定める規格を具備するものとしなければならない。 (ろ過板) 第十一条 事業者は、特定エツクス線装置を使用するときは、ろ過板を用いなければならない。ただし、作業の性質上軟線を利用しなければならない場合又は労働者が軟線を受けるおそれがない場合には、この限りでない。 (間接撮影時の措置) 第十二条 事業者は、特定エックス線装置を用いて間接撮影を行うときは、次の措置を講じなければならない。ただし、エックス線の照射中に間接撮影の作業に従事する労働者の身体の全部又は一部がその内部に入ることがないように遮へいされた構造の特定エックス線装置を使用する場合は、この限りでない。 一 利用するエックス線管焦点受像器間距離において、エックス線照射野が受像面を超えないようにすること。 二 胸部集検用間接撮影エックス線装置及び医療用以外(以下「工業用等」という。)の特定エックス線装置については、受像器の一次防護遮へい体は、装置の接触可能表面から十センチメートルの距離における自由空気中の空気カーマ(次号において「空気カーマ」という。)が一回の照射につき一・〇マイクログレイ以下になるようにすること。 三 胸部集検用間接撮影エックス線装置及び工業用等の特定エックス線装置については、被照射体の周囲には、箱状の遮へい物を設け、その遮へい物から十センチメートルの距離における空気カーマが一回の照射につき一・〇マイクログレイ以下になるようにすること。 2 前項の規定にかかわらず、事業者は、次の各号に掲げる場合においては、それぞれ当該各号に掲げる措置を講ずることを要しない。 一 受像面が円形でエックス線照射野が矩形の場合において、利用するエックス線管焦点受像器間距離におけるエックス線照射野が受像面に外接する大きさを超えないとき。 前項第一号の措置 二 医療用の特定エックス線装置について、照射方向に対し垂直な受像面上で直交する二本の直線を想定した場合において、それぞれの直線におけるエックス線照射野の縁との交点及び受像面の縁との交点の間の距離(以下この号及び次条第二項第三号において「交点間距離」という。)の和がそれぞれ利用するエックス線管焦点受像器間距離の三パーセントを超えず、かつ、これらの交点間距離の総和が利用するエックス線管焦点受像器間距離の四パーセントを超えないとき。 前項第一号の措置 三 第十五条第一項ただし書の規定により、特定エックス線装置を放射線装置室以外の場所で使用する場合 前項第二号及び第三号の措置 四 間接撮影の作業に従事する労働者が、照射時において、第三条の二第一項に規定する場所に容易に退避できる場合 前項第三号の措置 (透視時の措置) 第十三条 事業者は、特定エックス線装置を用いて透視を行うときは、次の措置を講じなければならない。ただし、エックス線の照射中に透視の作業に従事する労働者の身体の全部又は一部がその内部に入ることがないように遮へいされた構造の特定エックス線装置を使用する場合は、この限りでない。 一 透視の作業に従事する労働者が、作業位置で、エックス線の発生を止め、又はこれを遮へいすることができる設備を設けること。 二 定格管電流の二倍以上の電流がエックス線管に通じたときに、直ちに、エックス線管回路を開放位にする自動装置を設けること。 三 利用するエックス線管焦点受像器間距離において、エックス線照射野が受像面を超えないようにすること。 四 利用線錐中の受像器を通過したエックス線の空気中の空気カーマ率(以下「空気カーマ率」という。)が、医療用の特定エックス線装置については利用線錐中の受像器の接触可能表面から十センチメートルの距離において一五〇マイクログレイ毎時以下、工業用等の特定エックス線装置についてはエックス線管の焦点から一メートルの距離において一七・四マイクログレイ毎時以下になるようにすること。 五 透視時の最大受像面を三・〇センチメートル超える部分を通過したエックス線の空気カーマ率が、医療用の特定エックス線装置については当該部分の接触可能表面から十センチメートルの距離において一五〇マイクログレイ毎時以下、工業用等の特定エックス線装置についてはエックス線管の焦点から一メートルの距離において一七・四マイクログレイ毎時以下になるようにすること。 六 被照射体の周囲には、利用線錐以外のエックス線を有効に遮へいするための適当な設備を備えること。 2 前項の規定にかかわらず、事業者は、次の各号に掲げる場合においては、それぞれ当該各号に掲げる措置を講ずることを要しない。 一 医療用の特定エックス線装置について、透視時間を積算することができ、かつ、透視中において、一定時間が経過した場合に警告音等を発することができるタイマーを設ける場合 前項第二号の措置 二 受像面が円形でエックス線照射野が矩形の場合において、利用するエックス線管焦点受像器間距離におけるエックス線照射野が受像面に外接する大きさを超えないとき。 前項第三号の措置 三 医療用の特定エックス線装置について、照射方向に対し垂直な受像面上で直交する二本の直線を想定した場合において、それぞれの直線における交点間距離の和がそれぞれ利用するエックス線管焦点受像器間距離の三パーセントを超えず、かつ、これらの交点間距離の総和が利用するエックス線管焦点受像器間距離の四パーセントを超えないとき。 前項第三号の措置 四 第十五条第一項ただし書の規定により、特定エックス線装置を放射線装置室以外の場所で使用する場合 前項第四号から第六号までの措置 (標識の掲示) 第十四条 事業者は、次の表の上欄に掲げる装置又は機器については、その区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる事項を明記した標識を当該装置若しくは機器又はそれらの付近の見やすい場所に掲げなければならない。 装置又は機器 掲示事項 サイクロトロン、ベータトロンその他の荷電粒子を加速する装置(以下「荷電粒子を加速する装置」という。) 装置の種類、放射線の種類及び最大エネルギー 放射性物質を装備している機器(次の項に掲げるものを除く。) 機器の種類、装備している放射性物質に含まれた放射性同位元素の種類及び数量(単位ベクレル)、当該放射性物質を装備した年月日並びに所有者の氏名又は名称 放射性物質を装備している機器のうち放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和三十二年法律第百六十七号)第十二条の五第二項に規定する表示付認証機器又は同条第三項に規定する表示付特定認証機器(これらの機器に使用する放射線源を交換し、又は洗浄するものを除く。) 機器の種類並びに装備している放射性物質に含まれた放射性同位元素の種類及び数量(単位ベクレル) (放射線装置室) 第十五条 事業者は、次の装置又は機器(以下「放射線装置」という。)を設置するときは、専用の室(以下「放射線装置室」という。)を設け、その室内に設置しなければならない。ただし、その外側における外部放射線による一センチメートル線量当量率が二十マイクロシーベルト毎時を超えないように遮へいされた構造の放射線装置を設置する場合又は放射線装置を随時移動させて使用しなければならない場合その他放射線装置を放射線装置室内に設置することが、著しく、使用の目的を妨げ、若しくは作業の性質上困難である場合には、この限りでない。 一 エックス線装置 二 荷電粒子を加速する装置 三 エックス線管若しくはケノトロンのガス抜き又はエックス線の発生を伴うこれらの検査を行う装置 四 放射性物質を装備している機器 2 事業者は、放射線装置室の入口に、その旨を明記した標識を掲げなければならない。 3 第三条第四項の規定は、放射線装置室について準用する。 第十六条 削除 (警報装置等) 第十七条 事業者は、次の場合には、その旨を関係者に周知させる措置を講じなければならない。この場合において、その周知の方法は、その放射線装置を放射線装置室以外の場所で使用するとき、又は管電圧百五十キロボルト以下のエックス線装置若しくは数量が四百ギガベクレル未満の放射性物質を装備している機器を使用するときを除き、自動警報装置によらなければならない。 一 エックス線装置又は荷電粒子を加速する装置に電力が供給されている場合 二 エックス線管若しくはケノトロンのガス抜き又はエックス線の発生を伴うこれらの検査を行う装置に電力が供給されている場合 三 放射性物質を装備している機器で照射している場合 2 事業者は、荷電粒子を加速する装置又は百テラベクレル以上の放射性物質を装備している機器を使用する放射線装置室の出入口で人が通常出入りするものには、インターロックを設けなければならない。 (立入禁止) 第十八条 事業者は、第十五条第一項ただし書の規定により、工業用等のエックス線装置又は放射性物質を装備している機器を放射線装置室以外の場所で使用するときは、そのエックス線管の焦点又は放射線源及び被照射体から五メートル以内の場所(外部放射線による実効線量が一週間につき一ミリシーベルト以下の場所を除く。)に、労働者を立ち入らせてはならない。ただし、放射性物質を装備している機器の線源容器内に放射線源が確実に収納され、かつ、シャッターを有する線源容器にあつては当該シャッターが閉鎖されている場合において、線源容器から放射線源を取り出すための準備作業、線源容器の点検作業その他必要な作業を行うために立ち入るときは、この限りでない。 2 前項の規定は、事業者が、撮影に使用する医療用のエックス線装置を放射線装置室以外の場所で使用する場合について準用する。この場合において、同項中「五メートル」とあるのは、「二メートル」と読み替えるものとする。 3 第三条第二項の規定は、第一項(前項において準用する場合を含む。次項において同じ。)に規定する外部放射線による実効線量の算定について準用する。 4 事業者は、第一項の規定により労働者が立ち入ることを禁止されている場所を標識により明示しなければならない。 (透過写真の撮影時の措置等) 第十八条の二 事業者は、第十五条第一項ただし書の規定により、特定エックス線装置又は透過写真撮影用ガンマ線照射装置(ガンマ線照射装置で、透過写真の撮影に用いられるものをいう。以下同じ。)を放射線装置室以外の場所で使用するとき(労働者の被ばくのおそれがないときを除く。)は、放射線を、労働者が立ち入らない方向に照射し、又は遮へいする措置を講じなければならない。 (放射線源の取出し等) 第十八条の三 事業者は、透過写真撮影用ガンマ線照射装置を使用するときは、放射線源送出し装置(操作器(ワイヤレリーズを繰り出し、及び巻き取る装置をいう。)、操作管(ワイヤレリーズを誘導する管をいう。)及び伝送管(放射線源及びワイヤレリーズを誘導する管をいう。以下同じ。)により構成され、放射線源を線源容器から繰り出し、及び線源容器に収納する装置をいう。以下同じ。)を用いなければ線源容器から放射線源を取り出してはならない。 2 事業者は、前項の規定にかかわらず、放射線装置室内で透過写真撮影用ガンマ線照射装置を使用するときは、放射線源送出し装置以外の遠隔操作装置を用いて線源容器から放射線源を取り出すことができる。 第十八条の四 事業者は、放射線源送出し装置を有する透過写真撮影用ガンマ線照射装置を使用するときは、次に定めるところによらなければならない。 一 伝送管の移動は、放射線源を線源容器に確実に収納し、かつ、シヤツターを有する線源容器にあつては当該シヤツターを閉鎖した後行うこと。 二 利用線錐の放射角が当該装置の使用の目的を達するために必要な角度を超えないようにし、かつ、利用線錐以外のガンマ線の空気カーマ率をできるだけ小さくするためのコリメーター等を用いること。ただし、コリメーター等を用いることにより当該装置の使用の目的が妨げられる場合は、この限りでない。 (定期自主検査) 第十八条の五 事業者は、透過写真撮影用ガンマ線照射装置については、一月以内ごとに一回、定期に、次に掲げる事項について自主検査を行わなければならない。ただし、一月を超える期間使用しない当該装置の当該使用しない期間においては、この限りでない。 一 線源容器のシヤツター及びこれを開閉するための装置の異常の有無 二 放射線源のホルダーの固定装置の異常の有無 三 放射線源送出し装置を有するものにあつては、当該装置と線源容器との接続部の異常の有無 四 放射線源送出し装置又は放射線源の位置を調整する遠隔操作装置を有するものにあつては、当該装置の異常の有無 2 事業者は、前項ただし書の装置については、その使用を再び開始する際に、同項各号に掲げる事項について自主検査を行わなければならない。 第十八条の六 事業者は、透過写真撮影用ガンマ線照射装置については、六月以内ごとに一回、定期に、線源容器のしやへい能力の異常の有無について自主検査を行わなければならない。ただし、六月を超える期間使用しない当該装置の当該使用しない期間においては、この限りでない。 2 事業者は、前項ただし書の装置については、その使用を再び開始する際に、線源容器のしやへい能力の異常の有無について自主検査を行わなければならない。 (記録) 第十八条の七 事業者は、前二条の自主検査を行つたときは、次の事項を記録し、これを三年間保存しなければならない。 一 検査年月日 二 検査方法 三 検査箇所 四 検査の結果 五 検査を実施した者の氏名 六 検査の結果に基づいて補修等の措置を講じたときは、その内容 (点検) 第十八条の八 事業者は、透過写真撮影用ガンマ線照射装置を初めて使用するとき、当該装置を分解して改造若しくは修理を行つたとき、又は当該装置に使用する放射線源を交換したときは、第十八条の五第一項各号に掲げる事項及び線源容器のしやへい能力の異常の有無について点検を行わなければならない。 (補修等) 第十八条の九 事業者は、第十八条の五若しくは第十八条の六の定期自主検査又は前条の点検を行つた場合において、異常を認めたときは、直ちに補修その他の措置を講じなければならない。 (放射線源の収納) 第十八条の十 事業者は、第四十二条第一項第四号の事故が発生した場合において、放射線源を線源容器その他の容器に収納する作業に労働者を従事させるときは、しやへい物を設ける等の措置を講じ、かつ、鉗子等を使用させることにより当該作業に従事する労働者と放射線源との間に適当な距離を設けなければならない。 (放射線源の点検等) 第十九条 事業者は、放射性物質を装備している機器を移動させて使用したときは、使用後直ちに及びその日の作業の終了後当該機器を格納する際に、その放射線源が紛失し、漏れ、又はこぼれていないかどうか、線源容器を有する当該機器にあつては放射線源が確実に当該容器に収納されているかどうか及びシャッターを有する線源容器にあつては当該シャッターが確実に閉鎖されているかどうかを放射線測定器を用いて点検しなければならない。 2 前項の点検により放射線源が紛失し、漏れ、若しくはこぼれていること、放射線源が確実に線源容器に収納されていないこと又は線源容器のシヤツターが確実に閉鎖されていないことが判明した場合には、放射線源の探査、当該容器の修理その他放射線による労働者の健康障害の防止に必要な措置を講じなければならない。 第二十条 削除 第二十一条 削除 第四章 汚染の防止 第一節 放射性物質(事故由来放射性物質を除く。)に係る汚染の防止 (放射性物質取扱作業室) 第二十二条 事業者(第四十一条の三に規定する処分事業者を除く。以下この節において同じ。)は、密封されていない放射性物質を取り扱う作業を行うときは、専用の作業室を設け、その室内で行わなければならない。ただし、漏水の調査、昆虫による疫学的調査、原料物質の生産工程中における移動状況の調査等に放射性物質を広範囲に分散移動させて使用し、かつ、その使用が一時的である場合及び核原料物質(原子力基本法 (昭和三十年法律第百八十六号)第三条第三号 に規定する核原料物質をいう。以下同じ。)を掘採する場合には、この限りでない。 2 第三条第四項及び第十五条第二項の規定は、放射性物質取扱作業室(前項の作業室及び同項本文の作業に従事中の者の専用の廊下等をいう。以下同じ。)について準用する。 (放射性物質取扱作業室の構造等) 第二十三条 事業者は、放射性物質取扱作業室の内部の壁、床その他汚染のおそれがある部分については、次に定めるところに適合するものとしなければならない。 一 気体又は液体が浸透しにくく、かつ、腐食しにくい材料でつくられていること。 二 表面が平滑に仕上げられていること。 三 突起、くぼみ及びすきまの少ない構造であること。 (空気中の放射性物質の濃度) 第二十四条 事業者は、核原料物質を坑内において掘採する作業を行うときは、その坑内の週平均濃度の三月間における平均を第三条第三項の厚生労働大臣が定める限度以下にしなければならない。 第二十五条 事業者は、放射性物質取扱作業室及び核原料物質を掘採する坑内を除く事業場内の週平均濃度の三月間における平均を第三条第三項の厚生労働大臣が定める限度の十分の一以下にしなければならない。 (飛来防止設備等) 第二十六条 事業者は、放射性物質を取り扱うことにより、放射性物質の飛沫又は粉末が飛来するおそれのあるときは、労働者とその放射性物質との間に、その飛沫又は粉末が労働者の身体又は衣服、履物、作業衣、保護具等身体に装着している物(以下「装具」という。)に付着しないようにするため板、幕等の設備を設けなければならない。ただし、その設備を設けることが作業の性質上著しく困難な場合において、当該作業に従事する労働者に第三十九条第一項に規定する保護具を使用させるときは、この限りでない。 (放射性物質取扱用具) 第二十七条 事業者は、放射性物質の取扱いに用いる鉗子、ピンセツト等の用具にその旨を表示し、これらを他の用途に用いてはならない。 2 事業者は、前項の用具を使用しないときは、汚染を容易に除去することができる構造及び材料の用具掛け、置台等を用いてこれを保管しなければならない。 (放射性物質がこぼれたとき等の措置) 第二十八条 事業者は、粉状又は液状の放射性物質がこぼれる等により汚染が生じたときは、直ちに、その汚染が拡がらない措置を講じ、かつ、汚染のおそれがある区域を標識によつて明示したうえ、別表第三に掲げる限度(その汚染が放射性物質取扱作業室以外の場所で生じたときは、別表第三に掲げる限度の十分の一)以下になるまでその汚染を除去しなければならない。 (放射性物質取扱作業室内の汚染検査等) 第二十九条 事業者は、放射性物質取扱作業室内の天井、床、壁、設備等を一月を超えない期間ごとに検査し、これらの物が別表第三に掲げる限度を超えて汚染されていると認められるときは、その限度以下になるまで汚染を除去しなければならない。 2 事業者は、前項の物の清掃を行なうときは、じんあいの飛散しない方法で行なわなければならない。 (汚染除去用具等の汚染検査) 第三十条 事業者は、第二十八条若しくは前条第一項の規定による汚染の除去又は同項の物の清掃を行つたときは、その都度、汚染の除去又は清掃に用いた用具を検査し、その用具が別表第三に掲げる限度を超えて汚染されていると認められるときは、その限度以下になるまでは、労働者に使用させてはならない。 2 事業者は、前項の用具を保管する場所に、その旨を明記した標識を掲げなければならない。 3 第二十七条第二項の規定は、第一項の用具について準用する。 (退去者の汚染検査) 第三十一条 事業者は、管理区域(労働者の身体若しくは装具又は物品が別表第三に掲げる限度の十分の一を超えて汚染されるおそれのあるものに限る。以下この条及び次条において同じ。)の出口に汚染検査場所を設け、管理区域において作業に従事させた労働者がその区域から退去するときは、その身体及び装具の汚染の状態を検査しなければならない。 2 事業者は、前項の検査により労働者の身体又は装具が別表第三に掲げる限度の十分の一を超えて汚染されていると認められるときは、前項の汚染検査場所において次の措置を講じなければ、その労働者を管理区域から退去させてはならない。 一 身体が汚染されているときは、その汚染が別表第三に掲げる限度の十分の一以下になるように洗身等をさせること。 二 装具が汚染されているときは、その装具を脱がせ、又は取り外させること。 3 労働者は、前項の規定による事業者の指示に従い、洗身等をし、又は装具を脱ぎ、若しくは取りはずさなければならない。 (持出し物品の汚染検査) 第三十二条 事業者は、管理区域から持ち出す物品については、持出しの際に、前条第一項の汚染検査場所において、その汚染の状態を検査しなければならない。 2 事業者及び労働者は、前項の検査により、当該物品が別表第三に掲げる限度の十分の一を超えて汚染されていると認められるときは、その物品を持ち出してはならない。ただし、第三十七条第一項本文の容器を用い、又は同項ただし書の措置を講じて、汚染を除去するための施設、放射性物質取扱作業室、貯蔵施設、廃棄のための施設又は他の管理区域まで運搬するときは、この限りでない。 (貯蔵施設) 第三十三条 事業者は、放射性物質を貯蔵するときは、外部と区画された構造であり、かつ、扉、蓋等外部に通ずる部分に、鍵その他の閉鎖のための設備又は器具を設けた貯蔵施設において行わなければならない。 2 事業者は、貯蔵施設の外側の見やすい場所に、その旨を明記した標識を掲げなければならない。 3 第三条第四項の規定は、第一項の貯蔵施設について準用する。 (排気又は排液の施設) 第三十四条 事業者は、放射性物質取扱作業室からの排気又は排液を導き、ためておき、又は浄化するときは、排気又は排液がもれるおそれのない構造であり、かつ、腐食し、及び排液が浸透しにくい材料を用いた施設において行なわなければならない。 2 前条第二項の規定は、前項の施設について準用する。 (焼却炉) 第三十五条 事業者は、放射性物質又は別表第三に掲げる限度の十分の一を超えて汚染されていると認められる物(以下「汚染物」という。)を焼却するときは、気体が漏れるおそれがなく、かつ、灰が飛散するおそれのない構造の焼却炉において行わなければならない。 2 第三十三条第二項の規定は、前項の焼却炉について準用する。 (保管廃棄施設) 第三十六条 事業者は、放射性物質又は汚染物を保管廃棄するときは、外部と区画された構造であり、かつ、とびら、ふた等外部に通ずる部分に、かぎその他の閉鎖のための設備又は器具を設けた保管廃棄施設において行なわなければならない。 2 第三条第四項及び第三十三条第二項の規定は、前項の保管廃棄施設について準用する。 (容器) 第三十七条 事業者は、放射性物質を保管し、若しくは貯蔵し、又は放射性物質若しくは汚染物を運搬し、保管廃棄し、若しくは廃棄のために一時ためておくときは、容器を用いなければならない。ただし、容器に入れることが著しく困難なものについて、外部放射線を遮蔽するため、若しくは汚染の広がりを防止するための有効な措置を講じたとき、又は放射性物質取扱作業室内において運搬するときは、この限りでない。 (以下略) PS(2014.9.10追加):*4のように、原子力規制委員会が、「安全とは言わない」としながら、「安全対策が新規制基準を満たしているとの審査書を正式に了承した」→「再稼働に向けた安全審査の合格第1号となる」というのは論理的ではなく、何が何でも再稼働しようとする姿勢だ。また、「稼働すれば西日本の電力事情は改善しそうだ」とも書かれているが、九州電力管内は原発なしで既に2夏越しており、九州は自然エネルギーが豊富な上に、夏の方がエネルギーを使うため、原発は不要である。 *4:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGG10003_Q4A910C1MM0000/ (日経新聞 2014/9/10) 川内原発、冬にも再稼働 規制委が審査書を了承 原子力規制委員会は10日、九州電力川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県)の安全対策が新規制基準を満たしているとの審査書を正式に了承した。再稼働に向けた安全審査の合格第1号となる。一般からの意見募集では火山の噴火を心配する意見などが寄せられたが、可能性は「十分小さい」などとして結論を変えなかった。政府は地元自治体の同意を得やすくするための支援を進めており、今冬にも再稼働する見通しだ。規制委は申請を受け昨年7月に川内原発の審査を始め、九電が示した地震・津波対策や重大事故への対応策などを検討してきた。九電が過去の地震を考慮して川内原発の最大の揺れは620ガル(ガルは加速度の単位)、最大の津波の高さは6メートルと見積もったことについて、規制委はいずれも妥当と判断した。炉心が損傷するような重大事故への対策も十分だとし、審査書で新基準に「適合している」と結論づけた。残る手続きとして、九電は川内原発の改造工事の認可を規制委から取り付け、規制委による現場の検査も受けなければならない。すべての事務的な手続きを終えるには数カ月かかるとみられる。7~8月にかけて実施した国民からの意見募集では「火砕流が到達する可能性がある」などの意見が寄せられた。規制委は「火山事象が敷地に到達する可能性は十分小さい」などと回答した。また「放射性物質の大量放出をもたらす事態を検討しておらず防止策もない」との意見もあった。これについては「総放出量はできるだけ小さくとどめるものであると確認している」などと説明、審査書案の表現の一部を変更するにとどめた。規制委による安全審査が終了し、今後の焦点は自治体や政府の再稼働に向けた判断に移る。再稼働にあたっては、鹿児島県など地元自治体の同意が必要だ。規制委は10月中旬以降、川内原発周辺で開く住民説明会で審査の内容や安全対策などを説明する予定だ。再稼働は冬以降になりそうだ。政府は規制委の審査を合格した原発から順次稼働させる方針だ。川内原発1、2号機は1984年と85年に相次ぎ運転を開始し、2基で九電の全電力供給の1割弱をまかなえる。稼働すれば西日本の電力事情は改善しそうだ。これまでに10電力会社が13原発20基について再稼働に向けた安全審査を規制委に申請している。
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2014,08,26, Tuesday
フクイチ1号機爆発 3号機爆発 フクイチ爆発による汚染状況 (1)フクシマ原発事故の吉田調書について *1-3に書かれているとおり、フクシマ原発事故に関して政府事故調が行った東電の吉田元所長(故人)からの聴取記録が、第三者の権利や利益、国の安全に関する部分が黒塗りという条件付きではあるが、9月に公開されることになった。吉田氏は生前、自分の発言が独り歩きする懸念から、内容を非公開とする上申書を提出していたそうだが、国民の税金を使って調査している政府事故調に話しているのであり、フクシマ原発事故の原因や今後の日本のエネルギー政策に重要な意味のある国民の資産となるものである以上、公開されることを前提に話すべきだった筈だ。そして、聴取記録を読む人も馬鹿ばかりではなく、複数の証言や証拠と突き合わせて判断するため、独り歩きする問題はないだろう。 なお、*1-1、*1-2に書かれているとおり、原発周辺の13市町村長(当時)と福島県知事は、取材に応じた11人中8人が公開を求め、とりわけ、福島第一原発のある双葉、大熊、浪江町、南相馬市、楢葉町、川内村、葛尾村、いわき市などの8首長(当時)が公開を求めているそうだ。このようにして、言論の力で公開にこぎつけたフクシマ原発事故に関する朝日新聞の報道は、フクシマ原発事故の真実に迫るために有用であり、勇気ある行動だったと私は評価している。 (2)フクシマの現実と驚くべき解決策 *2-1に書かれているとおり、福島事故直後、日本政府が作成していないと発表していた議事録を、米国政府は作成しており、それが、アメリカ連邦情報公開法に基づく開示決定で公開されたそうだ。また、米国NRCは、近藤駿介氏の1535本の燃料棒が溶融するとされる最悪シナリオよりも多い2000本以上の燃料棒が96時間以内に溶ける事態を想定していたことが判明し、同心円上ではなく風向きまで予想した内容(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム《SPEEDI》でわかる)となっていた。 しかし、これらSPEEDIの情報は日本では公開されず、*2-2のとおり、フクシマ原発事故の恐ろしさを肌身で知る福島の人たちが、特定秘密保護法に関する公聴会で、「秘密より情報公開が重要だ」として特定秘密保護法案への懸念を語り、「SPEEDIの情報が適切に公開されず、町民が放射線量の高い地域に避難した」「情報公開がすぐに行われていれば低線量被曝を避けることができた」などの問題を述べている。 にもかかわらず、*2-3のように、フクシマ原発事故で初期の住民避難に活用されなかったとして、原子力規制委員会は「SPEEDI」の来年度予算を半額以下に大幅減額する方針だそうだが、これは、活用しなかった人が悪かったにすぎない。また、大幅減額の理由は、放射性物質の広がりを即座に予測できないためとされ、代わりに放射線量を実測するシステムを強化するとのことだが、実測は事後にしかできないため、実測より予測の方が速いのは明らかである。原子力規制委員会は、こういうレベルか・・・。 さらに、SPEEDIの予測は、各地点のモニタリングポストで実測した数値を入れていくことで、事実に基づいた実測にしていくことができ、逆算すればどれだけの分量の放射性物質が放出されたかもわかる筈だが、そのSPEEDIを辞めて、周辺のモニタリングポストなどの実測値のみをもとに避難させれば、それだけローテクになって被曝リスクが上がり、住民の安全は守られない。 なお、SPEEDIの予測は、原発が稼働していなくても、廃炉時や放射性物質を含むゴミ焼却時(本当は、放射性物質を焼却して空気中に放出してはいけない)の放射性物質の拡散予測にも役立つ。 (3)特定秘密保護法について *3-1に書かれているとおり、国民の反対を押し切って2013年12月に成立した特定秘密保護法は、政府に不都合な情報が恣意的に隠蔽され「国民の知る権利」が制限されかねないとの指摘が多いにもかかわらず、政府は、秘密を漏らした公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法の運用基準に関する素案をまとめ、その実際の運用は各府省の判断に委ねるとのことである。 そして、監視機関は、*3-2に書かれているとおり、内閣官房に「内閣保全監視委員会」、内閣府に「独立公文書管理監」を設置するそうだが、是正要求に強制力がない上、どちらも政府内の官僚組織であるため、内部統制や内部監査程度の役にしか立たず、政府(=行政)を監視することはできないため、監視機関に独立性があるとはとうてい言えないものである。つまり、行政のやりたい放題となり、内部通報窓口や秘密指定の対象制限などは、それらが秘密に運用される以上、何の役にも立たないのだ。 つまり、「議事録を作りたくないから、会議を開かない」とか「放射線被害の実態を知られたくないから、SPEEDIを活動不能にする」などというのが、現在実行されつつある驚くべき事態で、それに特定秘密保護法が加わるわけである。 (4)秘密保護に関する世界基準と日弁連の意見 *4-1に書かれているように、世界の潮流は、「ツワネ原則」に示されているとおり、国家機密の必要性は認めながらも、国が持つ情報の公開原則とのバランスに配慮すべきだと勧告しており、公開の規制対象は国防計画、兵器開発、情報機関の作戦や情報源などに限定して、①国際人権・人道法に反する情報は秘密にしてはならない ②秘密指定の期限や公開請求手続きを定める ③すべての情報にアクセスできる独立監視機関を置く ④情報開示による公益が秘密保持による公益を上回る場合には内部告発者は保護される ⑤メディアなど非公務員は処罰の対象外とする としており、もっともである。 また、情報を秘密にする正当性を証明するのは政府の責務で、秘密を漏らした公務員を行政処分にとどめず刑事訴追できるのは、情報が公になったことが国の安全に「現実的で特定できる重大な損害」を引き起こす危険性が大きい場合に限るとしているが、日本の特定秘密保護法案をめぐる審議に、この新しい国際的議論の成果は反映されていない。 さらに、法案の狙い(!)である違反者への厳罰化も疑問で、欧米では敵国に国家機密を渡すスパイ行為は厳罰だが、これに該当しない秘密漏えいの最高刑は英国が禁錮2年、ドイツが同5年までで、日本の法案と同じ最高懲役10年の米国(2010年に過剰機密削減法成立)は、欧州諸国と比べて厳しすぎるとの指摘があり、欧米は近年、むしろ情報公開を重視する方向に進んでいるのである。 また、*4-2のとおり、日弁連は、会長声明を出して、特定秘密保護法案に反対し、ツワネ原則に則して秘密保全法制の在り方を全面的に再検討することを求めている。 (5)次は、放射線の安全神話(!) *5に、「福島の37万人を調査した結果、フクシマ原発事故で、子どもの甲状腺癌の発症割合は、第一原発周辺で避難などの措置がとられた「13市町村」では0.034%。県中央の「中通り」は0.036%、沿岸部の「浜通り」は0.035%と地域差はなかった」「原発から一番遠い会津地方は0.028%とやや低めだったが、医大は検査を終了した子どもが、ほかの地域に比べ少ないためと説明した」「国立癌研究センターなどによると、10代の甲状腺癌は100万人に1~9人程度(0.0001~0.0009%)とされてきたが、自覚症状のない人も含めた今回のような調査は前例がないので比較が難しい」などとしている。 ここで分析の間違いを列挙すると以下のとおりだ。 1)フクシマ県内の13市町村という、いずれも放射能汚染された地域同士で甲状腺癌の発症割合 を比較して、「地域差はなかったため、この甲状腺癌は原発事故の影響ではない」としている 2)原発から一番遠い会津地方の低めの数値を、母集団に対する割合で比較せず検査終了児の 割合が低いせいにしている上、そもそも事故から3年半も経過しているのだから、本来、全員、 検査終了しておくべきである 3)甲状腺癌の発見率が、10代の平均の40~300倍以上もあることについては、「自覚症状のない 人も含めた今回のような調査は前例がないので比較が難しい」として、統計の取り方のせいに している これらは、放射線の安全神話を造るための結論ありきの調査分析であり、本当は、フクシマ事故で放射能汚染されていない大阪以西の地域で、20,000~100,000人くらいの同年齢の全児童を検査し、比較対象とすればすぐに明確になることだ。この際、食物からの内部被曝もしていない地域を選ぶのがよいため、大都市は避け、食品の地産地消が進んでいる九州の農漁村がよいだろう。 <フクシマの吉田調書について> *1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11309241.html (朝日新聞 2014年8月21日) 吉田調書、8人「公開を」 福島原発事故県内の14首長 福島第一原発事故を調査した政府事故調査・検証委員会が吉田昌郎元所長(故人)を聴取した記録(吉田調書)について、原発周辺の当時の13市町村長と福島県知事に公開すべきかを聞いたところ、取材に応じた11人中8人が公開を求めた。朝日新聞は、原発から20キロ圏内の警戒区域や、20キロ圏外で放射線量が年20ミリシーベルト超の計画的避難区域などの指定を受けた市町村長13人と、福島県の佐藤雄平知事を取材した。政府事故調の委員を務めた川俣町の古川道郎町長と、広野町の山田基星前町長は取材に応じず、富岡町の遠藤勝也前町長は取材依頼中の7月に亡くなった。福島第一原発のある双葉、大熊両町のほか、浪江町、南相馬市、楢葉町、川内村、葛尾村、いわき市の8首長(当時)は吉田調書の公開を求めた。佐藤知事と田村市長、飯舘村長は判断を保留した。11人中6人が聴取されたと答え、5人は自身の調書の公開を認めると答えた。政府は約770人分の調書について、聴取対象者に意向を確認中。民主党政権の関係者では、細野豪志元原発相らが調書の公開を容認する考えを明らかにしている。本人の同意があり、第三者の権利を侵害したり、国の安全に関係したりする部分を除き、年内に公開する。ただ、吉田調書については本人が非公開を求めているとして開示しない方針だ。 *1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11175493.html?ref=reca (朝日新聞社説 2014年6月6日) 吉田調書 国民の財産を隠すな 政府は誰のために活動しているのか。国民のためであろう。政府が集めた情報は、国民の財産である。福島第一原発の事故後、政府の事故調査・検証委員会は当時の吉田昌郎所長(故人)をはじめ772人もの関係者から聴取をした。なのに政府事故調が短期間で活動を終えた後、政府は貴重な証言を死蔵し、聴取対象者も開示していない。改めて主張する。政府は証言類をただちに最大限、公開すべきだ。菅官房長官はきのう「本人の同意が得られたものは必要な範囲で開示したい」と述べ、関係者の意思確認を指示した。しかし、吉田氏の聴取結果書(吉田調書)は非開示の方針を崩していない。「本人が上申書で非開示を求めている」との理由だが、納得できない。吉田氏は現場責任者である。本来なら国会など公の場で自ら詳しく証言すべきところ、病気と死去でかなわなかった。今となっては、吉田調書は最も貴重な国民の財産だ。吉田氏自ら聴取の冒頭で「ほぼそのままの形で公にされる可能性がある」と説明され、「結構でございます」と答えている。後に事故調に提出した上申書で吉田氏は記憶違いを心配しているが、他の証言などと照らせば明らかになる。他者の評価などを率直に語っている点も、調書の開示ルールを作れば済み、全体を非公開とする理由にはならない。朝日新聞が入手した吉田調書をみると、事故調の分析は不十分とわかる。最終報告書は「東京電力が全員撤退を考えていたかどうか」との観点から証言に触れているが、所長の指示・命令が守られず、現場で指揮に当たる職員まで10キロ以上離れた福島第二原発に一時退避したという指摘は無視された。当時、何が起きていたのか。関係者がどう判断し、どう動いたのか、動かなかったのか。そもそも事故調は全容解明にはほど遠いことを認め、調査継続を強く求めていた。政府による事実上の調査打ち切りは、国民の期待に反している。閣僚などの立場で事故の対応にあたった民主党関係者の多くも「自らの調書を公開していい」と表明している。政府は証言者の意思確認で公開の意義を強調し、積極的に同意を求めるべきだ。特に事故対応に深くかかわった人は公開が原則でなければならない。証言類を幅広く公開することで、悲惨な事故が改めて多角的に分析されるはずだ。 *1-3:http://mainichi.jp/select/news/20140825k0000e010192000c.html (毎日新聞 2014年8月25日) 原発事故・吉田調書:官房長官「9月に公開」一部黒塗りで 菅義偉官房長官は25日午前の記者会見で、東京電力福島第1原発の事故を巡り、政府の事故調査・検証委員会(政府事故調)が行った吉田昌郎元所長(故人)の聴取記録について「9月のできるだけ早い時期に公開する」と発表した。公開内容については「第三者の権利や利益、国の安全に関する部分は黒塗りにしたい」と述べ、部分的に非開示にする考えを示した。吉田氏は生前、提出した上申書で内容を非公開とするよう求めており、政府はこれまで公開してこなかった。しかし、朝日新聞や産経新聞が聴取内容を報道。菅氏は方針転換の理由について「一部のみを記事にした複数の報道があり、(自分の発言が)『独り歩き』するとの吉田氏の懸念がすでに顕在化している。非公開とすることが本人の意思に反する」と説明した。政府は、政府事故調から聴取を受けた他の東電や政府関係者にも意向を確認し、本人の同意が得られたものから順次、公開する方針。菅氏は「年内には(公開を)全て終えたい」と述べた。 <フクシマの現実と驚くべき解決策について> *2-1:http://echo-news.net/japan/usnrc-disclosed-fukushima-criss-proceedings (echo-news 2013.11.21) 日本政府にない福島第1事故の議事録、米国が保有 アメリカ情報公開法で公開 アメリカNRC最高決定機関・時系列議事録福島事故直後に、日本政府が作成していないと発表していた議事録を、米国政府が作成していたことが判明しました。アメリカ連邦情報公開法に基づく開示決定で、本紙編集長の江藤貴紀などに公開しました。さらに、米国NRCは、別の文書も情報公開。近藤駿介氏の1535本の燃料棒が溶融するとされる最悪シナリオよりも多い2000本以上の燃料棒が96時間以内に溶ける事態を想定していたことも判明。加えて、同心円上ではなく風向きまで考慮したより危険な内容となっています。 *2-2:http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_gnavi#Edit2 (朝日新聞社説 2013年 11月 26 日)秘密保護法案―福島の声は「誤解」か 特定秘密保護法案を審議する衆院の特別委員会がきのう福島市で地方公聴会を開いた。福島第一原発の事故は日本にとって近年最大の危機だった。その恐ろしさを肌身で知る福島の人たちは公聴会で、口々に法案への懸念を語った。秘密より情報公開が重要ではないか――。そんな意見が相次ぎ、自民党の推薦者を含む全員が法案に反対した。与党である自民、公明両党は、この事実を重く受けとめるべきだ。「情報公開がすぐに行われていれば低線量の被曝(ひばく)を避けることができた」。浪江町の馬場有(たもつ)町長は、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の情報が適切に公開されず、町民が放射線量の高い地域に避難した問題を取り上げた。自民、公明両党の委員は「誤解がある」「今回の法案の対象ではない」と反論したが、そう単純な話ではない。危急の時にあっても行政機関は情報を公開せず、住民の被曝につながった。その実例を目の当たりにしたからこそ、秘密が際限なく広がりかねない法案のあり方に疑問を投げかけているのではないか。法曹関係者は公聴会で「(秘密の範囲について)拡張解釈の余地をきちんと狭めるべきだ」と指摘した。特別委員会の審議で明らかになった、こんな事実もある福島第一原発の事故直後、現場の状況を撮影した情報収集衛星の画像を、政府が秘密保全を理由に東京電力に提供しなかったというのだ。東電には秘密保全措置がないから、画像は関係省庁だけで利用した。代わりに商業衛星の画像55枚を4800万円で購入して東電に提供したという。情報収集衛星は災害目的にも使われるはずだった。それが肝心のときに「秘密」にされた。公聴会の出席者に自民党議員は「どうぞ信頼していただきたい」と述べた。どう信頼すればいいのか。反対意見を真摯に受け止めるべきだ。地方公聴会を、みんなの党、日本維新の会を含めた4党による衆院通過に向けたアリバイづくりにしてはならない。福島県議会は10月、法案への慎重対応を求める意見書を出した。「もし制定されれば、民主主義を根底から覆す瑕疵(かし)ある議決となることは明白である」と訴えている。与党はもう一度、考えたほうがいい。福島の人々の懸念は、ほんとうに「誤解」なのか。 *2-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11315477.html (朝日新聞 2014年8月25日) SPEEDI、予算大幅減 事故時の放射線量、予測困難 来年度方針 東京電力福島第一原発事故で初期の住民避難に活用されず問題になった「SPEEDI(スピーディ)」について、原子力規制委員会は来年度予算を半額以下に大幅減額する方針を固めた。放射性物質の広がりを即座に予測するには技術的な限界があるため、代わりに放射線量を実測するシステムを強化する。SPEEDIを頼りにしてきた自治体の避難計画は見直しを迫られることになる。福島の事故時、SPEEDIによる予測のもとになる原子炉などのデータが得られず、放射線量を予測できなかった。規制委は事故発生直後の住民避難の指標としてきた位置づけを2013年に改定した原子力災害対策指針で「参考情報」に格下げしており、予算の上でも明確にする。実測システムの強化は、改定指針が周辺のモニタリングポストなどの値をもとに、原発30キロ圏内の緊急時の避難を判断する方針に転換したのを踏まえた。大量の放射性物質が放出されるおそれが生じた時点で、5キロ圏は放出の有無にかかわらず即避難。5~30キロ圏は屋内退避を原則とし、実測値をもとに避難の必要性とタイミングを地域ごとに判断する。不確実な予測よりも迅速で的確に対応できるとの考え方が背景にある。規制委は今年度から、実測値の情報を即時に官邸や道府県と共有するシステムの導入を始めている。避難などの判断根拠となるデータを、関係者がそれぞれの端末の画面でリアルタイムで見られるようにする。集約作業や紙でのやりとりを省き、事故時の混乱を防ぐ狙いで、国側の監視態勢や維持の費用にSPEEDIの予算を振り向ける。自治体には、定められた避難の区域ごとに少なくとも1カ所のモニタリングポスト整備が求められる。居住地や山地の別や放射性物質の拡散傾向を踏まえ、5キロ間隔を目安にする。SPEEDIは14年度も保守管理の事業委託費用に約5億円が充てられている。事故発生直後の予測だけでなく、事前の避難計画づくりや訓練にも使われ、福島の事故では実測値をもとに広範囲の汚染状況を推定するのにも使われた。自治体には引き続き活用を求める声もある。人件費などを圧縮することで事故時に最低限の計算はできるよう維持するが、参考情報としてどう扱うかはあいまいなままだ。自治体は実測値の扱いなど詳細な検討が必要になる。 ◆キーワード <SPEEDI> 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム。原発などの事故時に、原発から放出された放射性物質の量や空間放射線量、被曝(ひばく)線量などを気象条件や地形をもとにスーパーコンピューターで予測し、地図上に示す。旧日本原子力研究所が開発し、原子力安全技術センターが1986年に運用を始めた。震災後、文部科学省から規制委に移管。開発や維持に2010年度までで約120億円の国費が投入された。 <特定秘密保護法について> *3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140718&ng=DGKDZO74419540Y4A710C1PP8000 (日経新聞2014.7.18)特定秘密、監視機関の独立性課題 55項目指定対象 政府は17日、機密を漏らした公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法の運用基準に関する素案をまとめた。秘密を指定する機関を政府の19機関に限定し、指定対象を55項目とした。秘密の範囲が無制限に拡大することに一定の歯止めを示したが、実際の運用は各府省の判断に委ねられる部分がなお多い。監視機関によるチェックの実効性確保などが課題となる。「秘密の取り扱いの客観性と透明性がよりいっそう進展することが期待される」。政府が17日に開いた「情報保全諮問会議」(座長・渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長)の冒頭で安倍晋三首相はこう語った。座長の渡辺氏も「報道、言論などを不当に規制することがないようになかなか配慮されている」と述べた。政府は7月中に素案の意見公募(パブリックコメント)を始め、同会議での議論を経て9~10月にも閣議決定する。特定秘密保護法は12月の施行予定だ。昨年12月に成立した特定秘密保護法は政府に不都合な情報が恣意的に隠蔽され「国民の知る権利」が制限されかねないとの指摘が多かった。素案はこうした批判を念頭に「必要最小限の情報を必要最低限の期間に限って指定する」と明記。法律の段階はあいまいだった秘密の指定や解除、監視に関する具体的な手続きを示した。法律の施行令の素案は、秘密を指定する機関を政府の61機関のうち外務・防衛両省や国家安全保障会議(NSC)など19機関に限定。指定した年月日や指定期間などを記した管理簿を作る。秘密の指定や管理が適切でないと思われた場合に内部通報できる窓口も各機関内に置く。法律の別表は秘密指定の対象は防衛、外交など4分野の大枠を示すのみだったが、素案はこれを細分化し「武器、弾薬、航空機などの性能」「衛星などを用いて収集した電波、画像情報」など55項目を示した。しかし、これらの項目に該当しているかどうかの判断は役所側に任されており、何を秘密に指定するかを巡り、政府の恣意性は残る。監視機関によるチェックの実効性を確保できるかが法律運用のカギを握る。一方、監視機関については内閣官房に「内閣保全監視委員会」、内閣府に「独立公文書管理監」を設置する。ただ、両組織が出す是正要求に強制力はない。いずれの機関も官僚組織であり、どこまで独立性が担保されるかも今後の運用次第だ。運用基準は有識者の意見を踏まえて作成するとしていたが、今回の情報保全諮問会議を開くのは1月の初会合以来、半年ぶり。この間、事務局と同会議の委員でやりとりし、素案のたたき台の意見聴取などを行った。政府はやりとりの資料はウェブサイトに載せたが、委員の中には「議事録を作りたくないから会議を開かなかったのではないか」と透明性を疑問視する声もある。 *3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11249761.html (朝日新聞 2014年7月18日) 秘密法、弱い監視権限 運用基準55項目、大臣らに拒否権 政府は17日、特定秘密保護法の運用基準を公表した。防衛、外交、スパイ活動防止、テロ防止の4分野に55項目を挙げたが、定義が抽象的なため、省庁の判断で秘密の範囲が広がる恐れは残った。また、不正を防ぐために政府内につくるチェック機関は、各省庁に特定秘密を開示させる強制力がないなど、権限は限られている。政府が、有識者でつくる「情報保全諮問会議」(座長=渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長・主筆)に示した運用基準では、特定秘密に指定する情報を秘密法で示した23項目から55項目に細分化した。しかし、秘密指定の具体的な判断は、各省庁に委ねられる。秘密指定が適正かチェックする機関として、「独立公文書管理監」と、事務局の「情報保全監察室」を内閣府に新たに設ける。管理監は、各省庁の大臣らに特定秘密を含む資料の提出や指定解除を要求できる。しかし、大臣らは「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼす」と判断すれば資料提出を拒否できる。管理監は、不都合な情報が隠された場合の内部通報の窓口になるが、通報を受けた調査でも、各省庁は情報開示を拒否できる。安倍政権にとって、特定秘密保護法と、安保政策で「官邸主導」を確立する国家安全保障会議(日本版NSC)、そして集団的自衛権の行使容認は、「安保強化の3本柱」といえる。NSCは集団的自衛権行使を含む安保政策の司令塔であり、NSCを機能させるために情報管理を徹底する手段が秘密法だからだ。 <秘密保護に関する世界基準と日弁連の意見> *4-1:http://mainichi.jp/opinion/news/20131125k0000m070099000c.html (毎日新聞社説 2013年11月25日) 秘密保護法案を問う ツワネ原則 ◇世界の流れも知ろう 国家機密の保護をめぐる規定は各国さまざまだが、一つの指針として今年6月にまとまった50項目の「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」が注目されている。国連関係者を含む70カ国以上の専門家500人以上が携わり、2年以上かけて作成された。発表の場が南アフリカの首都プレトリア近郊ツワネ地区だったため「ツワネ原則」と呼ばれる。人権問題などを協議する欧州評議会の議員会議が10月、この原則を支持する決議を採択した。ツワネ原則は、国家機密の必要性を認めながらも、国が持つ情報の公開原則とのバランスに配慮すべきだと勧告している。公開の規制対象は国防計画、兵器開発、情報機関の作戦や情報源などに限定し、(1)国際人権・人道法に反する情報は秘密にしてはならない(2)秘密指定の期限や公開請求手続きを定める(3)すべての情報にアクセスできる独立監視機関を置く(4)情報開示による公益が秘密保持による公益を上回る場合には内部告発者は保護される(5)メディアなど非公務員は処罰の対象外とする−−などを盛り込んだ。また、情報を秘密にする正当性を証明するのは政府の責務であり、秘密を漏らした公務員を行政処分にとどめず刑事訴追できるのは、情報が公になったことが国の安全に「現実的で特定できる重大な損害」を引き起こす危険性が大きい場合に限るとしている。日本の特定秘密保護法案をめぐる審議に、この新しい国際的議論の成果は反映されていない。法案の狙いである違反者への厳罰化も疑問だ。欧米では敵国に国家機密を渡すスパイ行為は厳罰だが、これに該当しない秘密漏えいの最高刑は英国が禁錮2年、ドイツが同5年までだ。日本の法案と同じ最高懲役10年の米国は、欧州諸国と比べて厳しすぎるとの指摘がある。欧米は近年、むしろ情報公開を重視する方向に進んでいる。米国では2010年、機密指定の有効性を厳格に評価する体制作りなどを定めた「過剰機密削減法」が成立した。秘密情報が増えすぎて処理能力を超えたことが逆に漏えいリスクを高めているという反省もある。また英国では3年前、秘密情報公開までの期間が30年から20年に短縮され、議会監視委員会の権限が今年から強化された。こうした世界の流れから日本は大きくはずれている。審議中の法案は廃案とし、国家機密保持と情報公開の公益性のバランスについて十分な議論を尽くすべきだ。 *4-2:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2013/131115.html (日本弁護士連合会会長 山岸憲司 2013年11月15日) 特定秘密保護法案に反対し、ツワネ原則に則して秘密保全法制の在り方を全面的に再検討することを求める会長声明 国が扱う情報は、本来、国民の財産であり、国民に公表・公開されるべきものである。「特定秘密の保護に関する法律案」は、行政機関が秘密指定できる情報の範囲を広くかつ曖昧に設定し、かつ、運用の実態は第三者がチェックできない一方で、このような情報にアクセスしようとする国民や国会議員、報道関係者などのアクセスを重罰規定によって牽制するもので、まさに行政機関による情報支配ともいうべき事態である。当連合会では、本年9月12日に「『特定秘密の保護に関する法律案の概要』に対する意見書」を、同年10月23日に「秘密保護法制定に反対し、情報管理システムの適正化及び更なる情報公開に向けた法改正を求める意見書」を公表し、同月25日に「特定秘密保護法案の閣議決定に対する会長声明」を公表した。当連合会の相次ぐ意見表明に対して、新聞やテレビ、ラジオ、雑誌、インターネットニュースなどがこぞって法案を問題とする報道を行うようになったこともあり、多くの国民が法案に関心を抱くとともに、法案の賛否に関わらず早急な成立を望まない声が日増しに強くなっている。このような国民の意向を受けて、政府及び国会には、法案の慎重審議が強く求められている。ところが、政府及び与党は、法案を慎重審議するどころかむしろ短期間で成立させようとしている様子さえ窺える。政府及び与党が我が国における法案の重要性を強く認識するのであれば、尚更のこと、国民の理解と納得を得られるよう、法案の内容を検討し直すべきである。「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(以下「ツワネ原則」という。)は、自由権規約19条等をふまえ、国家安全保障分野において立法を行う者に対して、国家安全保障への脅威から人々を保護するための合理的な措置を講じることと、政府の情報への市民によるアクセス権の保障を両立するために、実務的ガイドラインとして作成されたものであり、本年6月、南アフリカ共和国の首都・ツワネで公表されたものである。 当連合会では、これまでの提案を踏まえ、ツワネ原則による法案の見直しと撤回を求める。以下、ツワネ原則に則して特定秘密保護法案の問題点を指摘する。 1 ツワネ原則1、4は国家秘密の存在を前提にしているものの、誰もが公的機関の情報にアクセスする権利を有しており、その権利を制限する正当性を証明するのは政府の責務であるとしている。しかし、法案にこの原則が明示されていない。 2 ツワネ原則10は、政府の人権法・人道法違反の事実や大量破壊兵器の保有、環境破壊など、政府が秘密にしてはならない情報が列挙されている。国民の知る権利を保障する観点からこのような規定は必要不可欠である。しかし、法案には、このような規定がない。 3 ツワネ原則16は、情報は、必要な期間にのみ限定して秘密指定されるべきであり、政府が秘密指定を許される最長期間を法律で定めるべきであるとしている。しかし、法案には、最長期間についての定めはなく、30年経過時のチェックにしても行政機関である内閣が判断する手続になっており、第三者によるチェックになっていない。 4 ツワネ原則17は、市民が秘密解除を請求するための手続が明確に定められるべきであるとしている。これは恣意的な秘密指定を無効にする上で有意義である。しかし、法案はこのような手続規定がない。 5 ツワネ原則6、31、32、33は、安全保障部門には独立した監視機関が設けられるべきであり、この機関は、実効的な監視を行うために必要な全ての情報に対してアクセスできるようにすべきであるとしている。しかし、法案には、このような監視機関に関する規定がない。 6 ツワネ原則43、46は、内部告発者は、明らかにされた情報による公益が、秘密保持による公益を上回る場合には、報復を受けるべきでなく、情報漏えい者に対する訴追は、情報を明らかにしたことの公益と比べ、現実的で確認可能な重大な損害を引き起こす場合に限って許されるとしている。しかし、法案では、この点に関する利益衡量規定がなく、公益通報者が漏えい罪によって処罰される危険が極めて高い。 7 ツワネ原則47、48は、公務員でない者は、秘密情報の受取、保持若しくは公衆への公開により、又は秘密情報の探索、アクセスに関する共謀その他の罪により訴追されるべきではないとし、また、情報流出の調査において、秘密の情報源やその他の非公開情報を明らかすることを強制されるべきではないとしている。しかし、法案にはこのような規定がないどころか、第23条ないし第26条の規定によって広く処罰できるようにしている。この原則の策定には、アムネスティインターナショナルやアーティクル19のような著名な国際人権団体だけでなく、国際法律家連盟のような法曹団体、安全保障に関する国際団体など22の団体や学術機関が名前を連ねている。この原則には、ヨーロッパ人権裁判所やアメリカ合衆国など、最も真剣な論争が行われている地域における努力が反映されている。起草後、欧州評議会の議員会議において、国家安全保障と情報アクセスに関するレポートにも引用されている。当連合会は、政府が安全保障上の理由によって一定の事項を一定の期間、秘密とする必要があると判断し対応していることを、全面的に否定するものではない。しかし、このような対応を許容することによって、国民の基本的人権である言論の自由、プライバシー権が侵害されるべきではない。法案に上記のような構造的な問題点があることが明らかであるから、政府は、法案を一旦白紙に戻し、現存する国家公務員法や自衛隊法などの中に含まれる秘密保全法制も含めて、秘密保全法制の在り方を根本的に見直すべきである。 <放射線の安全神話へ> *5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014082502000184.html (東京新聞 2014年8月25日) 【福島原発事故】子ども、甲状腺がん57人 福島の37万人調査 東京電力福島第一原発事故による健康への影響を調べている福島県は二十四日、震災当時十八歳以下の子ども約三十七万人を対象に実施している甲状腺検査で、甲状腺がんと診断が確定した子どもは五月公表時の五十人から七人増え五十七人に、「がんの疑い」は四十六人(五月時点で三十九人)になったと発表した。福島市内で開かれた県民健康調査の検討委員会で報告した。地域による発症率に差がないことも報告され、委員会の星北斗座長は、現時点で放射線の影響がみられないことが裏付けられたとした上で、「今後、詳細な分析が必要だ」と述べた。調査を担当する福島県立医大は、今回初めて県内を四つに分けた地域別の結果を公表。検査を受けた子どものうち、疑いを含めた甲状腺がんの発症割合は、第一原発周辺で避難などの措置がとられた「十三市町村」では0・034%。県中央の「中通り」は0・036%、沿岸部の「浜通り」は0・035%と地域差はなかった。原発から一番遠い「会津地方」は0・028%とやや低めだったが、医大は検査を終了した子どもが、ほかの地域に比べ少ないためと説明した。国立がん研究センターなどによると、十代の甲状腺がんは百万人に一~九人程度とされてきたが、自覚症状のない人も含めた今回のような調査は前例がなく、比較が難しい。疑いも含めた甲状腺がんの子ども計百三人のうち、最年少は震災当時六歳。原発事故から四カ月間の外部被ばく線量の推計値が判明した人のうち、最大は二・二ミリシーベルトだった。 ◆個人被ばく量 分析急務 福島県で相次いで見つかっている甲状腺がんが、東京電力福島第一原発事故による放射性物質の影響かどうかを明確にするためには、地域間のがん発症率の比較だけでなく、個人被ばく線量との関連の分析が必要となる。二十四日に福島市で開かれた県民健康調査の検討委員会では、集計が終わっていない一部地域を除き、疑いを含めた甲状腺がんの割合は、空間の放射線量が異なる地域間で差がなかったと報告された。がんが放射線の影響とは考えにくいとする従来の県の見解を裏付けるものだ。だが、被ばく線量は個人差が大きく、地域間の比較だけでは不十分だ。検討委員会は結果を多方面から慎重に検討するとしているが、現状では個人被ばく線量のデータ収集は進んでいない。県民全員の被ばく線量を推計する調査では回答率が約26%と低迷。また、県は市町村が管理する内部被ばくの実測値と外部被ばく線量などとの個人データの一元化を始めたが、こちらの進捗(しんちょく)状況も芳しくない。今後本格化する二巡目以降の甲状腺検査で結果を正確に評価するためにも、個人被ばく線量との関連を分析する体制整備が急務だ。 PS(2014.8.28追加):このブログの2011年7月30日に記載しているとおり、2011年7月27日の衆議院厚生労働委員会参考人質疑で、参考人として招かれた児玉教授(東京大学先端科学技術研究センター教授 東京大学アイソトープ総合センター長)が、「今回の福島原発の問題はチェルノブイリと同様、原爆数10個分に相当する量と原爆汚染よりもずっと多量の残存物を放出したことを前提としなければならない」と話しているとおり、*6は、3号機の爆発が水素爆発ではなく核爆発であり、環境に大量の核燃料を放出したことを意味している。そのため、吉田調書で、吉田所長が「爆発音がした。水素爆発だと思うけど・・」と連絡していたのは、事実確認前の話であり、事実ではないだろう。 *6:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014082701001722.html (東京新聞 2014年8月27日) 茨城のちりからウラン検出 原発事故の溶融燃料 東京電力福島第1原発事故直後に約170キロ離れた茨城県つくば市で採取した大気中のちりから、核燃料や原子炉圧力容器の材料のウランや鉄などを検出したとの研究結果を東京理科大と気象庁気象研究所のチームが27日までにまとめた。事故で溶けたウラン燃料が原子炉内の他の物質と混ざった状態で外部に放出されたことを裏付ける結果で、同大の中井泉教授は「事故直後の炉内や放射性物質の放出状況の解明につながる」とさらに詳しい分析を進めている。チームは、2011年3月14日夜から翌朝にかけてつくば市の気象研究所で採取された高濃度の放射性セシウムを含む粒子に着目し分析してきた。 PS(2014.8.28追加):*7のように、福島県立医大の教授は、「甲状腺がんの子供に原発影響は考えにくい」 としているが、このブログの2014.2.24に記載したとおり、東京の甲状腺専門の伊藤病院の岩久医師らは、日本甲状腺学会で関東の子どもの甲状腺異常の増加を発表している。そのため、原発の影響ではないとするのなら、その根拠を科学的に説明すべきだ。 *7:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG2803U_Y4A820C1CR8000/ (日経新聞 2014/8/28) 甲状腺がんの子供「原発影響考えにくい」 福島の検査で学会 福島県立医大の鈴木真一教授は28日、東京電力福島第1原発事故を受け福島県が実施している甲状腺検査で、がんの疑いが強いと診断、手術した子供の具体的な症例を横浜市で開かれた日本癌治療学会で報告した。がんは原発事故の影響とは考えにくいとの見方を示した上で、過剰診断や必要のない手術との声が上がっていることに触れ「基準に基づいた治療だった」と強調した。福島県の甲状腺検査は震災発生当時18歳以下の約37万人が対象。これまで甲状腺がんと確定した子供は57人、「がんの疑い」は46人に上る。子どもの甲状腺がんが急増した1986年のチェルノブイリ原発事故と比較し、鈴木氏は「症状も年齢分布もチェルノブイリとは異なる」とした。がんの57人のうち県立医大が手術した54人について、8割超の45人は腫瘍の大きさが10ミリ超かリンパ節や他の臓器への転移などがあり、診断基準では手術するレベルだった。2人が肺にがんが転移していた。残る9人は腫瘍が10ミリ以下で転移などはなかったが、7人は「腫瘍が気管に近接しているなど、手術は妥当だった」。2人は経過観察でもよいと判断されたが、本人や家族の意向で手術した。手術した54人の約9割が甲状腺の半分の摘出にとどまった。福島の甲状腺がんをめぐっては一部の専門家から「手術をしなくてもいいケースがあったのではないか」との指摘があり、患者データの公開を求める声があった。 PS(2014.8.30追加):上記のように、SPEEDIによる放射性物質の拡散予測や環境への放射性物質の放出量がわかっているにもかかわらず、それを公表して避難に役立たせることをせず、防げる被曝をさせたのだから、*8の訴訟は当然で、人の命がかかっていることを考えれば、1人当たり10万円の慰謝料は安いくらいだ。 *8:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014082901002106.html (東京新聞 2014年8月29日) 福島、被ばく対策不十分と提訴 親子88人、健康に深刻な不安 原発事故の被ばく防止対策が不十分で精神的苦痛を受けたとして、事故時に福島県に住んでいた親子88人が29日、国や県に対し、1人当たり10万円の慰謝料を求め、福島地裁に提訴した。訴状によると、国や県は事故発生後、空間放射線量の正確なデータを速やかに伝えないなど、住民の被ばくをできる限り抑える職務上の義務を怠り、子どもに無用な被ばくをさせた。その結果、親子に今後の健康へ深刻な不安を抱かせたとしている。原告のうち、今も福島県に住み小学校や中学校、特別支援学校に通う計24人は、居住地の自治体に対し安全な環境で教育を受ける権利があることの確認も求めた。
| 原発::2014.8~10 | 10:59 AM | comments (x) | trackback (x) |
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