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2016.2.19 「マクロ経済とミクロ経済は別」という考え方は、翻訳経済学を丸暗記した細切れの知識の集合で、ご都合主義の論理になっているため、日本の経済政策は長く間違っていたのだということ (2016年2月20、21《本文》、22、25、26、28日、3月2日に追加あり)
    
  戦後経済成長率       2015.1.16          2015.7.26     一人当たりGDP
     の推移           日経新聞            日経新聞      (購買力平価) 

   
   名目賃金と実質賃金       平均世帯所得     最低賃金        2016.2.16  
      の推移              の推移        国際比較      西日本新聞(*1-3)

(1)実は、成熟期以降の日本経済は成功していない
 1段目の1番左のグラフのように、日本の経済成長率は、1956年~1973年の平均で9.1%、1974年~1990年の平均で3.8%、1991年~2008年の平均では1.1%となり、次第に下がっている。なお、このグラフは、名目の数値を単純平均しており、その間の物価上昇率はたいへん大きかったため、実質成長率はもっと低く、高い経済成長率を示したのは、国民が戦後の廃墟に家を建て、先進国を手本にして家電などを揃えた1956年~1973年の開発期のみである。

 なお、1974年~1990年はバブル期の狂乱物価時代を含むため、実質成長率は1991年~2008年とあまりかわらず低いと思われる。つまり、日本は、欧米に追いつくため真似をして、安い人件費で大量生産した時代には成長率が高かったが、自ら必要なものを開発して販売しなければならない成熟期段階になると、振るわなかったのだ。

 そのような中、日本政府は、景気対策と称して財政支出を繰り返し、GDPと比較して異常な額の財政赤字を作ったが、その多くが生産性を上げない(下げる場合もある)支出であったため、上の3番目のグラフのように、日本の実質成長率はどんどん下がって0に近くなった。また、上の1番右のグラフのように、購買力平価による一人当たりGDPは、アジアの中でも順位が落ちている。

 また、1段目の左から2番目のグラフのように、景気対策と称して貨幣を過剰に供給もしたが、必要以上の貨幣供給は(デフレ脱却と呼ばれる)インフレを起こしたと同時に、貨幣の流通速度を落とし、2段目の左から1番目、2番目、3番目のグラフのように、実質賃金を落とした。それと同時に、年金が減額され、利子率も低くなって高齢者の実質収入が減ったため、1世帯当たりの消費支出が減少したのである。

 そして、これらは、*1-4のアベノミクスの窮地というよりも、また暖冬や中国経済の鈍化という小さな理由でもなく、金を民から官に巻き上げて生産性を高くしない支出に充ててきたという一貫して日本政府(行政が主?)が採ってきた政策の結果であり、気分で消費が伸びないなどという気楽な話ではない。

(2)成熟期以降の日本経済が成功しなかった理由

        
   日本の財政収支    消費税率の推移   社会保障給付国際比較   人口ピラミッド 

1)社会保障の削減とそのアピール
 *1-1のように、「財政赤字の主因は、高齢化に伴う医療・年金・介護といった社会保障費の増加であるから、世代間の不均衡是正のためには『社会保障と税一体改革(=高齢者向け社会保障の削減+消費税増税)』が必要だ」という論調は多い。しかし、上の1番左と左から2番目のグラフのように、実際には消費税を上げても財政収支は改善せず、財政収支の改善は政府の意志の問題であることがわかる。

 そして、*1-1は、「①社会保障費を賄う安定財源としての消費税を10%超上げる必要がある(「社会保障費の財源は消費税」と決めつけている点が罠である)」「②所得や資産にゆとりのある高齢者に負担を求める(“ゆとりがある”の定義が問題)」「③診療報酬を下げる(既に世界でも低い方であり、赤字病院や倒産する病院が少なくない)」「④高齢者向けの歳出を抑える(保険料を支払ってきた人が給付を受ける段になって給付削減を連呼する点が問題)」「⑤浮いた財源を子ども・子育て支援に振り向ける(高齢者と若者を分断して本当の問題点を隠す議論)」などとする。

 しかし、実際には、上の左から3番目のグラフのように、日本の社会保障はヨーロッパに比べて高くはなく、年金についても、その年の12月31日には出生数が決まり、一番右の人口ピラミッドのように次第に高齢化率が高くなっていくことがわかっていたのに、厚労省は真摯に変化に対応せず、年金資産の無駄遣いが多いなど管理も杜撰であったこと等々が、現在の年金資産不足の原因なのだ。そのため、これこそ国が責任を採るべきであり、身を切る改革と称して国会議員数を減らしても消費税増税の根拠にも何にもならず、民の代表を減らせば官が喜ぶだけである。

 なお、上の1番右の人口ピラミッドを見ればわかるように、高齢者の生まれた時代も次第に変わるため、「高齢者は消費しない」というアピールも事実ではなく、世代毎にコホート分析すれば、その消費行動がさらに明らかになるだろう。そして、人口に占める高齢者の割合はますます増えるため、変な意図を持って年金削減や高齢者の社会保障削減をすることがなければ、高齢世代はフロンティアで重要な新しいマーケットとなり、高齢化社会でクールに暮らすための本物の需要と供給が創出されていく筈だ。

 それにもかかわらず、高齢者が多いのが困るかのような議論やアピールばかり行った結果、*1-2のように、勘違いした福祉系の若者が、介護付き有料老人ホームで入所者を殺害したり、入所者に暴力をふるったりしている。これらの事件の大きな理由は、福祉施設を雇用の場(労働供給の場)としてしか捉えず、ケアされる高齢者の需要にあった福祉を行うという姿勢が疎かにされていることである。

2)遅れている行政の感覚と経済を妨害する政策
 日本経済が、欧米の真似をし、安い人件費で大量生産できた開発期には成長率が高かったものの、自ら必要なものを開発して販売しなければならない段階になって振るわなくなった理由は、他国でも安い人件費を使っての製造業が振興されてきたこと、経産省をはじめとする行政が世界の変化・需要構造の変化・技術の変化などを織り込めないことにある。そして、経済学も、これらを与件として考慮していない。

 その具体例は、環境でも自給率でも文句のない再生可能エネルギーや水素があるのに無理に原発を残すエネルギー政策を行ったり、電気自動車や燃料電池車ができたのにガソリン車に固執したり、福祉サービスはフロンティアの大きな需要になるのに意図的に疎かにしたり削ったりするようなことである。このようなことをすれば、本来は起こるべき投資行動も起こらなくなるのが当たり前なのだ。

(3)年金は保険料を支払い、積み立てしてきているもので、社会保障のお恵みではない ← 元の積立方式に戻すべきで、賦課課税方式への変更は厚労省のサボリをごまかすためのものである
 年金は途中で一方的に賦課課税方式に変更されたものの、もともと積み立て方式で行って来たものであるため、元の積立方式に戻し、一般企業と同様に退職給付会計を取り入れて積立必要額を計上すべきだ。そして、現在の積立額とあるべき積立額との差額は、今のうちに国債(0金利かマイナス金利)を発行して、債務として計上すべきである。

 そして、年金(老後資金)を特定の世代に2重負担させることなく、その国債は地下資源による収益で返済するか、50年くらいに渡って地道に返済するかすべきで、これが最もまともな景気対策になる。

<誤った政策のオンパレード>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151225&ng=DGKKZO95520520V21C15A2EA1000 (日経新聞社説 2015.12.25) 縦割り排し社会保障・税一体改革を
 政府が2016年度予算案を決めた。予算総額は96兆7千億円程度と過去最高を更新した。税収増を見込み、新規国債発行額を抑える結果、借金で歳出をどれくらい賄うかを示す国債依存度は35.6%まで下がる。日本の借金残高は国内総生産(GDP)の2倍を超え、財政は先進国で最悪の状態にある。単年度の財政赤字を前年度より小さくしたのは前進だが、財政健全化の道筋が整ったとはいえない。 
●世代間の不均衡是正を
 財政赤字の主因は、高齢化に伴う医療や年金、介護といった社会保障費の増加だ。16年度は前年度比の増加額を4400億円強にとどめた点はひとまず評価できるものの、歳出は切り込み不足だ。医療の公定価格である診療報酬は8年ぶりに引き下げられる。しかし、診療報酬のうち、医師、歯科医師、薬剤師の技術料部分、いわゆる本体は引き上げられた。診療所の収益は増えているのに本体部分をプラス改定したのは、来年の参院選を意識して医師会などに配慮した結果と疑わざるを得ない。地方財政も、国からの自立を促す改革を素通りしている。政府は国と地方をあわせた基礎的財政収支を20年度に黒字にする目標を掲げている。金融市場で日本の国債への信認が疑われると長期金利が上昇し、事実上の財政破綻につながるリスクが高まる。経済成長を確保しつつ堅実な財政運営が求められるのは、この心配をなくすためだ。社会保障費を賄う安定財源としての消費税はいずれ10%を超えて上げる必要があるだろう。ただ、社会保障費の膨張に歯止めをかけなければ、際限のない増税を強いられかねない。だからこそ社会保障制度の効率化は急務となる。こうした観点からみると、16年度予算案は及第点に達しない内容だ。3つ問題がある。第1は所得や資産にゆとりのある高齢者に負担を求める改革に踏み込んでいないことだ。医療では、70歳以上の高齢者の窓口自己負担が原則1~2割にとどまり、現役世代の3割より低く抑えられたままだ。年金では、受給者が現役世代の所得控除より手厚い税制優遇措置を受けている。そのうえ高所得の年金受給者についても、基礎年金の半分に税金が投じられている。所得や資産が比較的豊かな高齢者にも優遇措置を続ければ、世代間の給付と負担の不均衡はいっこうに是正されない。今回も痛みを伴う改革を先送りし、この点では「決められない政治」が続いた。第2は子ども・子育て支援だ。幼児教育無償化の対象を広げたりひとり親家庭に配る児童扶養手当を増やしたりするのは妥当だ。しかし、安倍晋三政権が合計特殊出生率をいまの1.4台から1.8に上げる目標を掲げている割には小粒な内容だ。少子化への対応は息の長い取り組みが要る。そのためには高齢者向けの歳出を抑え、浮いた財源を思い切って子ども・子育て支援に振り向ける、といった歳出の抜本的な組み替えが必要だ。今回の予算案はその難題を避けた。15年度補正予算案では低所得者のうち年金受給者だけを対象に給付金を大盤振る舞いする。高齢の有権者が増えるほど、高齢者を優遇する政策がまかり通る「シルバー民主主義」の弊害は目に余る。
●勤労税額控除も一案
 第3に、真に支援が必要な低所得者向けの対策だ。17年4月の10%への消費増税時には軽減税率を導入することが決まった。それでも、国民年金や国民健康保険(国保)といった社会保険では、税以上に低所得者の負担が相対的に重い「逆進性」の問題が残っている。改善策として例えば、税と社会保障の共通番号(マイナンバー)を使い、勤労税額控除のようなしくみを導入するのは一案だ。働いても所得が低い間は社会保険料負担を減免し、手取りの所得を増やせるような誘因策はあっていい。働く意欲を持つ人々を下支えする施策は、生活保護の改革などとあわせ安全網を再構築するうえで重要になる。日本では、税は自民党税制調査会と財務省、社会保険は厚生労働省と縦割りでバラバラに制度設計をしてきた結果、効率性や効果に乏しい制度を温存してきた。社会保障制度を持続可能にするとともに、財政健全化の道筋を固める。そのためには社会保障制度と税制を一体的に抜本改革する必要がある。安倍政権はその課題から逃げてはいけない。

*1-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG15HHG_V10C16A2000000/
(日経新聞 2016/2/16) 転落死事件で元職員を逮捕 殺人容疑、川崎老人ホーム
 川崎市の介護付き有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で2014年11月、入所者の男性(当時87)をベランダから突き落として殺害したとして、神奈川県警は15日、殺人の疑いで、横浜市神奈川区、施設元職員、今井隼人容疑者(23)を逮捕した。施設では同年12月、他の入所者2人もベランダから転落死した。今井容疑者はいずれの時間帯にも勤務していた。逮捕容疑は14年11月3日午後11時ごろから同4日午前1時50分ごろまでの間、入所者の男性を4階ベランダから突き落とし、内臓破裂で殺害した疑い。今井容疑者は昨年9月、取材に「自分が(関与を)疑われているなという自覚はあったが、突き落としてはいない」と話していた。「Sアミーユ川崎幸町」では4階で暮らしていた当時87歳の男性が14年11月に死亡したほか、同年12月9日には4階にいた女性(同86)、同月31日にも6階に入所していた女性(同96)がそれぞれ転落して死亡した。いずれも認知症や記憶障害があったという。川崎市は昨年、職員から暴力を振るわれたとする入所者家族からの訴えで施設を監査。職員4人が暴言を吐き、頭をたたいていたことが判明した。入所者の女性(86)が暴行を受ける様子を家族が撮影して公開し、問題となった。神奈川県警は昨年12月、転落死した女性とは別の女性入所者に暴行したなどとして、元職員3人を暴行や業務妨害の疑いでそれぞれ書類送検している。施設は11年11月に開設した。6階建てで居室は80室あり、支援や介護が必要な高齢者が入所。介護事業大手「メッセージ」(岡山市)と系列会社が運営しており、同社は居住者の転落死や虐待を受け、昨年12月に第三者調査委員会による報告書を公表している。

*1-3:http://qbiz.jp/article/80812/1/
(西日本新聞 2016年2月16日) 昨年の家計消費支出2・7%減 2年連続でマイナス
 総務省が16日発表した2015年の総世帯の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は1カ月平均24万7126円で、物価変動を除いた実質ベースで前年比2・7%減となった。14年に続き2年連続の減少となり、消費の回復が鈍いことが裏付けられた。14年1〜3月期は消費税増税前の駆け込み需要でかさ上げされており、15年はその反動が出た。暖冬で冬物衣料への支出が減ったことも響いた。マイナス幅は消費税増税の影響が長引いた14年の3・2%減よりは縮小した。単身世帯を除く2人以上の世帯の消費支出は28万7373円となり、実質で2・3%減少した。2人以上世帯では、全10費目のうち9費目が減少した。被服・履物が7・2%減と大きく落ち込んだ。パソコンや外国パック旅行などの教養娯楽のほか、食料も減った。一方、光熱・水道は増えた。
 
*1-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201602/CK2016021502000054.html (東京新聞 2016年2月15日) アベノミクスの窮地鮮明 GDP年1.4%減
 内閣府が十五日発表した二〇一五年十~十二月期の国内総生産(GDP、季節調整値)の速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0・4%減、この成長が一年続くと仮定した年率換算で1・4%減となり、二期(六カ月)ぶりにマイナス成長に転じた。GDPの約六割を占める個人消費が落ち込んだことが響いた。政府は一五年度の実質成長率の目標(経済見通し)を1・2%としているが、実現には一六年一~三月期で前期比年率8・9%の大幅な伸びが必要になり、達成は極めて困難な状況だ。一五年十~十二月期は個人消費が前期比0・8%減と二期ぶりにマイナスに陥り、成長率全体を押し下げた。物価上昇に賃金の伸びが追いつかず、消費者心理が冷え込んでいる。暖冬で冬物衣料や灯油などの販売が振るわなかったことも響いた。住宅投資は1・2%減。一四年四月の消費税増税で大きく落ち込んだ後は回復基調が続いていたが、住宅価格の高騰で再び買い控えの傾向が強まった。企業の設備投資は1・4%増で二期連続のプラスとなったが、公共投資は二期連続マイナスの2・7%減と大幅に落ち込んだ。輸出は船舶や半導体製造装置などが伸びず0・9%減とマイナスだった。物価変動をそのまま反映した名目GDP成長率は前期比0・3%減、年率換算で1・2%減だった。同時に発表した一五年一年間の実質GDP成長率は、前年比0・4%増と二年ぶりにプラスに転じた。名目成長率は四年連続プラスの2・5%増。
◆個人消費・輸出不振 「好循環」回らず
<解説> 二〇一五年十~十二月期の実質国内総生産(GDP)成長率がマイナスに転じたのは、GDPの約六割を占める個人消費が低迷。輸出や民間住宅投資など主要項目が軒並み悪化したためだ。安倍政権の経済政策「アベノミクス」は金融緩和で円安・株高を誘導、企業収益を上げて設備投資や賃上げにつなげる経済の好循環を狙ったが、導入から三年近くを経て「日本経済の成長を押し上げる」という最も重要な効果は上がっていないことがはっきりしてきた。個人消費は、暖冬という特殊要因も押し下げたが、物価上昇分を差し引いた昨年の実質賃金は四年連続のマイナス。消費税増税などで家計の負担が増す中、賃金の伸びが生活必需品などの物価上昇のペースに追いつかず、消費者の節約志向はなお根強い。企業業績は過去最高の水準に達し、設備投資は持ち直しつつあるものの、内需も先細る中で「企業は今後も大掛かりな投資はしにくい」(エコノミスト)状況だ。輸出もアジアや米国向けなどが振るわず、二・四半期ぶりに減少した。さらに、年明けからは中国経済の減速や原油安など、世界経済の不透明感から円高・株安が急激に進行。先行き不安が増す中で個人消費の回復のカギを握る賃上げは企業が慎重な姿勢を示しており、暗雲が立ち込めている。日銀のマイナス金利政策の効果も不透明で、このまま円高・株安が進むと企業の業績に冷や水を浴びせかねない。安倍政権は今年も企業側に賃上げを求めたが、賃上げムードが停滞すれば個人消費の回復は一層遠ざかる可能性がある。

<インフレ政策による所得再配分>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150501&ng=DGKKASDF30H25_Q5A430C1MM8000 (日経新聞 2015.5.1) 物価2%達成、後ずれ、日銀展望、16年度前半ごろ 総裁「基調改善は着実」
 日銀は30日に開いた金融政策決定会合で、消費者物価指数(CPI)の見通しを引き下げた。原油価格の低迷に加え、個人消費の回復が遅れているためだ。2015年度と16年度の予想を下方修正し、目標に掲げるCPI上昇率2%の達成時期を従来の「15年度を中心とする期間」から「16年度前半ごろ」に後ずれさせた。ただ黒田東彦総裁は会合後の記者会見で「物価の基調は着実に改善している」と強調し、デフレ脱却と2%目標の実現に改めて自信を見せた。日銀は30日の金融政策決定会合で現状の金融緩和の継続を賛成多数で決め、半年ごとにまとめる「経済・物価情勢の展望」(展望リポート=総合2面きょうのことば)を公表した。生鮮食品を除いたCPIの前年度比上昇率と実質経済成長率の今後3年の見通しを政策委員9人の中央値として示した。15年度のCPIは0.8%、16年度は2.0%で、従来の見通しからそれぞれ0.2%分引き下げた。新たに公表した17年度は消費税率を10%に引き上げる影響を除いて1.9%と見込んだ。黒田総裁は物価見通しを下方修正した理由について、「個人消費の改善に若干鈍さがみられ、(物価の基調に影響する)需給ギャップの改善がやや後ずれしている」と発言。「2年程度」と説明していた物価上昇率2%の達成時期も、就任当初となる13年4月の量的・質的緩和の導入以降で初めて明確に後退させた。日銀は2%の達成が多少遅れても、日本経済がデフレから脱却しつつある状況は変わらないとみる。総裁は「15年度後半にかけて物価が再び上昇していく」とし「物価の基調は着実に改善しているうえ、これからも改善する」と明言した。原油価格の低迷で物価上昇率がしばらく0%前後に押し下げられても、好調な企業業績や人手不足を背景に賃上げや商品の値上げが進むため、緩やかに物価が上がっていくとみる。日銀は13年4月に量的・質的緩和を導入した際に「物価上昇率2%を2年程度の期間を念頭に置き、できるだけ早期に実現する」との大目標を掲げた。強気の目標をあえて示し、約15年続いたデフレから脱却できるとの意識を企業や家計に植え付ける狙いだった。日銀は2%の達成時期は後ずれさせるが、この目標は堅持する。見直してしまえば、デフレ脱却が危ういとの誤解を与え、高まり始めた企業や家計の脱デフレ期待を揺るがす恐れがあるからだ。総裁は物価の基調が崩れたら「ちゅうちょなく政策の調整を行う」と繰り返し、追加緩和の可能性も示唆する。「予測は前に行ったり後ろに行ったりするもの」と言うが、脱デフレのシナリオが揺らがないようにするためにもより丁寧な説明が問われそうだ。物価目標の達成時期を巡っては政策委員の間でも見方が割れている。30日の会合でも9人のうち3人が反対を表明した。木内登英、佐藤健裕の両委員は17年度までに2%に達しないと主張した。白井さゆり委員は「16年度を中心とする期間」と範囲を広げるように訴えた。

*2-2:http://qbiz.jp/article/59995/1/
(西日本新聞 2015年4月10日) 株価2万円、その先は。「金融緩和バブル」懸念も
 日経平均株価が約15年ぶりに2万円の大台を一時回復した。円安による大企業の業績改善が主因だが、急激な株価上昇の背景には世界的な金融緩和によるバブルが発生しているとの懸念もある。景気の先行指標とされる株価に経済実態が追いついてくるのか、予断を許さない状況だ。日本経済は過去最高益を更新する勢いの上場企業がけん引し、昨年4月の消費税増税による落ち込みから回復しつつある。ただ、個人消費は足踏みが続き、地域経済も回復の実感は乏しい。金融緩和は経済を下支えするのに不可欠な政策手段だが、行き過ぎると大量のマネーが市場に流れ込んでカネ余りを生む副作用がある。1980年代後半にはこうしたカネが泡(バブル)のように膨らみ、株価を史上最高値に押し上げた。現在、世界の主要な中央銀行は金融緩和で大量の資金を供給し、国債の価格で決まる金利は歴史的な低水準となった。国債運用よりも高い利益を求める世界の機関投資家のマネーが、比較的状況の良い日本市場に流れ込む構図になっている。原油市場ではこうした投資マネーが一気に流出し、価格急落を招いた。日本から資金流出が起きる前に景気を本格的な回復軌道に乗せられるかが、経済再生の行方を左右しそうだ。
●三菱UFJモルガン・スタンレー証券の嶋中雄二景気循環研究所長の話
 株価は景気の先行指標とされ、実体経済は後から追いついてくるはずだ。中期的には株高が続き、年末には2万3000円台に乗せる可能性もある。ただ、今の株価上昇は、日銀の追加金融緩和を期待した外国人投資家により支えられている面が大きい。追加緩和がなければ失望売りが広がって、急激に株安、円高となるリスクもはらんでいる。中国経済が失速気味で、自動車などの輸出が伸びない可能性がある。米国経済も弱い。5月にかけては調整局面になるとみられ、短期的な取引の動きにも注意する必要がある。
■10日、終値は前日比30円09銭安の1万9907円63銭

*2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151225&ng=DGKKASFS25H0F_V21C15A2MM0000 (日経新聞 2015.12.25) 雇用堅調、消費は低迷 求人倍率1.25倍、23年ぶり水準、11月家計支出は2.9%減、基調判断下げ
 雇用が底堅い動きを続けるなか、個人消費の低迷が続いている。厚生労働省が25日発表した11月の有効求人倍率は1.25倍と23年10カ月ぶりの高い水準となった。一方、総務省の11月の家計調査は物価変動の影響を除いた実質の消費支出が前年同月比2.9%減と3カ月連続のマイナスだった。冬物衣料や耐久財の消費が振るわず、総務省は基調判断を「弱い動き」に引き下げた。11月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は値動きの激しい生鮮食品を除く総合指数が103.4と前年同月から0.1%上昇して5カ月ぶりのプラスとなったものの、ゼロ付近で伸び悩んでいる。有効求人倍率(季節調整値)は前月より0.01ポイント上昇した。1.25倍は1992年1月以来の高い水準だ。有効求人数は前月比1.2%増の246万4485人だった。有効求職者数も186万8567人と0.2%増えたが、求職者の増加を上回って企業の求人が増えた。業種別の新規求人数では宿泊・飲食サービス業(前年同月比19.6%増)、教育・学習支援業(同14.2%増)が大きく伸びた。11月の完全失業率(季節調整値)は3.3%だった。条件の良い仕事を求めて自発的に離職する人が増えた結果、前月より0.2ポイント上昇したが、およそ20年ぶりの低い水準が続く。さえないのは個人消費だ。2人以上世帯の実質消費支出は27万3268円で、前年同月比2.9%減だった。テレビやパソコンなど教養娯楽が5.8%減、4月の軽自動車の増税が響く自動車購入費など交通・通信が1.9%減となり全体を押し下げた。暖冬の影響で冬物商品が売れず、洋服などの被服及び履物は13.8%と大幅に減った。実質消費支出の季節調整値は91.8と比較可能な2000年以降で最も低くなった。前月と比べても2.2%減で、総務省は基調判断を「横ばいの状況」から「弱い動き」に下げた。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは、「耐久財の買い替え需要が出ておらず、消費の弱さは暖冬という天候要因だけでは説明できない」と指摘する。消費者心理に影響する物価はゼロ近辺の動きが続く。生鮮食品を除く総合指数が5カ月ぶりのプラスとなったのは食料などが上昇したため。ただ原油価格は下落が続いており、この先も弱含みで推移する可能性が高い。生鮮食品を除く食料は前年同月に比べ2.3%上昇した。新米の売れ行きが好調で、コメ類が0.3%上昇した。牛肉、フライドチキンなど肉類、チョコレートなど菓子類が上がった。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は101.7と、前年同月から0.9%上昇した。

*2-4:http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=332297&nwIW=1&nwVt=knd
(高知新聞 2015年1月23日) 【異次元緩和】功罪の点検が欠かせない
 日銀が2015年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率見通しを従来の1・7%から1・0%へと大幅に引き下げた。黒田総裁の下で13年4月から始まった大規模な量的緩和が目指した2年程度で2%の物価上昇は事実上、達成が困難になった格好だ。最近の原油価格の急落が物価を下押ししていることは否めない。しかし開始から2年近くたっても目標達成のめどが立たないことは、「異次元緩和」という政策が正念場を迎えていることを示している。15年度の消費者物価指数の上昇率について、日銀は昨年7月時点では1・9%と見通していた。それを3カ月後に1・7%に下方修正し、今回の金融政策決定会合でさらに下げた。修正の要因は原油安で、日銀は物価を15年度は0・7~0・8ポイント程度押し下げるとみている。それでも原油安の影響は一時的とし、大規模な金融緩和の現状維持を賛成多数で決めた。黒田総裁も2%の物価上昇の達成は「15年度を中心とする期間」との基本姿勢は変えていない。原油安さえなければ所期の目標達成も可能だった、とのニュアンスもあるが、今、求められるのは量的緩和の功罪を点検することではないか。日銀が市場を通じて長期国債を購入し、潤沢な資金を供給する量的緩和に初めて踏み切ったのは2001年3月のことだ。当時の速水総裁はデフレ対策であることを強調し、「通常なら踏み込まない政策。目標を達成したらやめる」とも述べている。そんな非常手段を大掛かりに展開するのが異次元緩和だ。物価上昇につながる可能性がある一方、円安による材料費の高騰、低く抑え込んだ長期金利の反転上昇、国の財政赤字を中央銀行が支える財政ファイナンスの懸念などの負の要素もある。そんなリスクを内包しながら異次元緩和は1年9カ月続いてきたが、日銀が目標とする2%の物価上昇の道筋は見えていない。リスクに見合う政策なのか点検が欠かせない。黒田総裁は「企業や個人のデフレ意識の転換は着実に進展している」との認識も示した。確かにそんな傾向があるかもしれないが、大半の中小企業や地方にそうした実感は乏しい。賃上げはないのに物価は上昇、という現実に不安を抱く人は少なくない。

<消費税増税とGDP>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151116&ng=DGKKZO94049840W5A111C1MM0000 (日経新聞 2015.11.16) GDP実質年0.8%減、7~9月、2期連続マイナス 設備投資が低調
 内閣府が16日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.2%減、年率換算で0.8%減となった。年率0.7%減だった4~6月期に続くマイナス成長となった。世界経済の不透明感から企業が投資を先送りし、設備投資が2四半期連続で減少した。輸出や個人消費も力強さを欠き、景気の足踏みが長引いていることを示した。2四半期連続のマイナス成長は、8%への消費増税の影響が色濃く出た2014年4~6月期と7~9月期以来。市場の事前予測の中央値(年率0.3%減、QUICK調べ)を下回った。個人消費は実質で前期比0.5%増と2四半期ぶりのプラス。夏場の猛暑でエアコンや夏物衣料の販売が伸びたほか、好天に恵まれた大型連休には旅行や外食などサービス消費も活発だった。ただ4~6月期に0.6%減った分を取り戻すほどの力強さはなかった。企業の設備投資は1.3%減と、4~6月期からマイナス幅が0.1ポイント拡大した。8月に中国発の世界同時株安が起きたことなどをきっかけに、企業心理が弱気に傾いた。計画している設備投資の実行をいったん見送る動きが出て、工場に新しい機械を導入したり、オフィスビルを新築したりするための投資などが低迷した。住宅投資は1.9%増と3期連続のプラスだった。14年度の補正予算の効果が小さくなり公共投資は0.3%減と2期ぶりにマイナスになった。個人消費や設備投資といった国内需要は前期比でGDPを0.3ポイント押し下げ、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の登場以降、国内景気を支えてきた内需の勢いは弱くなっている。財・サービスの輸出は2.6%増と、2期ぶりのプラスだった。中国やアジア向けが低迷する一方、欧米向けの輸出額が上向いた。ただ数量ベースではいずれの主要地域向けも減少しており、世界経済の減速の影響が及んでいる。訪日外国人客の増加でサービスの輸出は増え、訪日客の消費はGDPを0.1%分押し上げた。輸入は国内消費の持ち直しを背景に1.7%増えた。企業が手元に抱える在庫の増減を示す民間在庫はGDPを0.5ポイント押し下げた。消費持ち直しで小売店が抱える在庫がはけたことが背景にある。在庫減少はGDP統計上は押し下げ要因になる。物価の影響を加味した名目GDPは前期比0.01%増、年率で0.06%増で、実質GDPを上回った。全体の物価動向を示すGDPデフレーターを算出する際、輸入品の価格の変化は差し引かれる。原油安で輸入品の価格が低下したため、GDPデフレーターが押し上げられた形だ。

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151124&ng=DGKKASFS24H0T_U5A121C1MM0000 (日経新聞 2015.11.24) 軽減税率、生鮮食品軸に、消費増税時 首相、財源4000億円念頭 公明と詰めの調整へ
 安倍晋三首相は24日午前、自民党本部で谷垣禎一幹事長や宮沢洋一税制調査会長と会談し、消費増税時に導入する軽減税率の財源について「安定財源の観点から社会保障と税の一体改革の枠内で議論するように」と指示した。財源は4000億円程度が念頭にあり、対象品目は生鮮食品などが軸になる。谷垣氏らは首相指示をもとに公明党との協議に臨む。首相は軽減税率に関して(1)国民の理解が得られる制度設計をする(2)事業者の混乱を招かないように配慮する(3)財源は社会保障と税の一体改革の枠内で議論する――の3点を指示した。谷垣氏は24日の記者会見で、一体改革の枠内で捻出できる財源は4000億円が限度かと問われ「基本的に首相もそういう考えだ。ない袖は振れないからその枠内で議論してほしいということだ」と答えた。約4000億円の財源は消費増税にあわせた社会保障の充実策の一部を見送ることで捻出する。低所得者世帯向けの総合合算制度が対象に決まっている。自民党は12月10日にまとめる来年度税制改正大綱に軽減税率の制度内容を盛り込む。軽減税率を消費税率2%分とすると、コメや精肉、鮮魚などを含む生鮮食品が対象なら約3400億円で済む。公明党はパンや麺類など加工食品も加えるよう主張。少なくとも約8200億円の財源が必要で、両党の溝は埋まっていない。自民党執行部の一人は「軽減税率の導入で財政再建の目標にしわ寄せがあってはいけない」と語り、公明党に大きな譲歩はできないとの考えを示した。谷垣、宮沢両氏は公明党の井上義久幹事長、斉藤鉄夫税調会長と週内に会談し、詰めの調整に入る。谷垣氏は記者会見で、首相と公明党の山口那津男代表の党首会談の可能性について「上にあげていけばいいということではない」と述べ、幹事長レベルで決着をめざす考えを強調した。

*3-3:http://qbiz.jp/article/59186/1/
(西日本新聞 2015年3月31日) 増税は「炭素税にすべきだった」 日本にスティグリッツ氏
 ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ米コロンビア大教授は30日、ニューヨークの国連本部で開かれた討論イベントで昨年4月の日本の消費税増税は「時期尚早」だったと述べ、安倍晋三首相は増税するなら「炭素税を導入すべきだった」との見方を示した。炭素税は、温暖化の原因となる温室効果ガスの排出に対する課税。スティグリッツ氏は「(炭素税なら)炭素排出削減への投資を刺激し、最終的には需要増につながっていただろう」と語った。「アベノミクス」の「三本の矢」にも言及、金融緩和については「非常に良く機能し、非常に迅速だった」と評価した。質疑応答の際、日本国連代表部幹部からの質問に答えた。スティグリッツ氏は「(日本には)非常によく教育された女性たちがいる。しかし、女性の労働参加状況は他の国ほど良くない」とも語った。イベントは雇用と経済成長などをテーマに、経済社会理事会が開いた。

<年金の減額>
*4:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/191984
(佐賀新聞 2015年5月29日) 年金減額「違憲」と一斉提訴、13地裁に1500人超
 2013年10月に始まった年金額の引き下げは生存権を侵害し違憲だとして、年金受給者1549人が29日、国の減額決定取り消しを求め13地裁に一斉提訴した。今後も各地で提訴し、原告は45都道府県の計3千人に上る見通し。訴状によると、年金額は物価変動を反映するが、前年に物価が下落した00~02年度は特例で据え置かれた。12年の改正法により特例措置がなくなり、13年10月~今年4月、段階的に2・5%減額された。原告側は、介護保険や国民健康保険の保険料が増えているのに受給額が減ると、憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」は送れないと主張している。


PS(2016年2月20日):原発に途方もない金をつぎこまず、日本にある地熱、太陽光、風力、潮流などの自然エネルギーやメタンハイドレートを使えば、福祉はいくらでもできる上、環境にも自給率にも適合した筈だ。そのため、*5のようなのを「馬鹿につける薬はない」と言う。

*5:http://www.saga-s.co.jp/column/genkai_pluthermal/20201/279796 (佐賀新聞 2016年2月17日) 原子力機構、もんじゅ廃炉に3000億円、12年に試算 作業30年と想定
 高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)を運営する日本原子力研究開発機構が、もんじゅを廃炉にするには30年間で約3千億円の費用が必要との試算を2012年にまとめていたことが16日、分かった。馳浩文部科学相が閣議後の記者会見で明らかにした。原子力機構はこれまで廃炉費用を公表していなかった。1兆円を超える費用を投入しながらトラブル続きで運転実績がほとんどないもんじゅの維持には今後も年間200億円程度が掛かるとされ、廃炉を選択する場合でも巨額の費用が発生することになる。文科省によると、内訳は解体に約1300億円、原子炉からの燃料取り出しに約200億円が掛かるほか廃炉の作業期間となる30年間の維持管理費を約1500億円と見込んでいる。経済産業省の資料では、通常の原発の廃炉費用は360億~850億円程度。関西電力は美浜原発1、2号機(福井県美浜町)の廃炉に計約680億円を見込む。もんじゅは冷却材にナトリウムを使うほか、施設が大型なことなどから、通常の原発より割高となる。馳文科相は「過去の試算であり、さまざまな前提条件を含んだ不確かな数字」と説明したが新たな試算を求める考えはないとした。もんじゅをめぐっては、原子力規制委員会が昨年11月、原子力機構について「運転を安全に行う資質を有していない」として運営主体の変更を馳文科相に勧告。文科省の検討会で議論が続いている。
■ズーム
 もんじゅ プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使い、高速の中性子で核分裂を起こし、発電しながら消費した以上のプルトニウムを生み出すことから高速増殖炉と呼ばれる。出力は28万キロワット。政府は「夢の原子炉」として、使用済み核燃料の再処理工場とともに核燃料サイクルの両輪と位置付け、多額の国費を投入して研究開発を続けてきたが、事故やトラブルが後を絶たず運転実績はほとんどない。2012年には大量の機器の点検漏れが発覚、原子力規制委員会が13年5月、事実上の運転禁止命令を出した。


PS(2016年2月22日):*6のように、「電力自由化の競争の先はバラ色か?海外では失敗例」という題名になること自体、市場経済に反して経産省主導の独占や寡占を奨励しており、日経新聞は今から共産主義を奨励する気かと問いたい。そして、「1990年代に自由化の先陣を切った英国では、新規参入が増え料金が下がったのは当初だけで、2000年代に入るとM&A(合併・買収)で発電、小売市場の寡占化が進み、各社は燃料高騰を理由に値上げを繰り返して、2015年の一般家庭の電気料金は2004年の2.4倍に急騰し、企業向け料金も欧州全体の平均より6割高となった」と記載されているが、それは何の市場にも起こりうることで、そのために独占禁止法があるのだ。さらに、電気料金は、政府主導の地域独占を貫いた日本の方が、その間の殆どの期間で英国より高く、エネルギー自給率は低いのである。
 また「天候頼みの再生エネの発電量は不安定で安定確保への費用増で電気料金は上昇傾向。料金、安定供給、電源の構成のバランスはどこにあるのか」とも書かれているが、消費者のニーズに合った物を供給せず、技術進歩もさせずに、同じ問いを何年も繰り返して政府が勝手な電源バランスを決めようとするのが、政府主導の最も大きな弱点であり、これが共産主義経済がうまくいかなかった理由である。
 しかし、(私の提案で実現しつつある)電力自由化により消費者の選択を徹底させるためには、公正中立な配電系統が複数ある方がよいのは確かだ。

    
2016.2.22日経新聞  電気料金の国際比較    家庭用・産業用国際比較   エネルギー自給率

*6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160222&ng=DGKKZO97533350S6A220C1MM8000 (日経新聞 2016.2.22) 電力自由化(下)競争の先はバラ色か 海外では失敗例
 電力の小売り自由化をにらみ17日、経済産業省が開いた説明会。市場の番人の大役を担う電力取引監視等委員会の稲垣隆一委員は8兆円市場の開放に沸く関連産業に言い含めるように強調した。「消費者の主体的な選択こそが、電力改革の重要な推進力だ」。戦後60年以上続いた大手電力による小売市場の独占。それを崩す制度改正のきっかけは、2011年の東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故だ。震災直後の東電の計画停電は利用者に不自由を強いた。原発停止で全国の家庭向け電気料金も震災前より25%上がった。自由化による競争で料金を下げ利用者の負担を減らさねば――。世論を意識する政府はそう判断した。「消費者の約8割が電力会社の切り替えを検討していると聞く」。安倍晋三首相は成果に自信を示すが、自由化後の世界はバラ色なのか。
●不当な契約監視
 政府は自由化を進めるにあたり2つの補助輪をはかせた。一つが電力監視委で、消費者に不利益を与えかねない契約などに目を光らせる。もう一つが電力広域的運営推進機関。大規模な災害時の停電などを防ぐため、電力各社による電力の融通を促す調整役だ。これで公正な競争と安定供給への「器」がまずは整ったが、これで安心とは言い切れない。1990年代に自由化の先陣を切った英国。新規参入が増え、料金が下がったのは当初だけ。00年代に入るとM&A(合併・買収)で発電、小売市場の寡占化が進んだ。各社は燃料高騰を理由に値上げを繰り返し、15年の一般家庭の電気料金は04年の2.4倍に急騰。企業向け料金も欧州全体の平均より6割高となった。「もう英国で鉄はつくれない」。電力を多く消費する鉄鋼業界からは悲鳴があがる。自由化はコストを電気料金に転嫁できた寡占市場のぬるま湯体質を変えるきっかけとなる。だが市場の監視を抜かれば、大手業者の逆襲で寡占がむしろ進みかねない。
●米企業から忠告
 電力の安定供給が脅かされたのは米国だ。「エンロンのような業者に気をつけろ」。1月下旬、米カリフォルニア州。日本の電力市場への進出を促そうと電力関係者を回った経産省幹部は逆に忠告を受けた。90年代後半に電力自由化を進めた同州。猛暑で需要が増えると、後に破綻することになるエンロンなどの電力卸売業者は価格つり上げを狙い電気を売り渋った。これが00年から01年にかけて大規模な停電が相次ぐ原因となった。その後、ニューメキシコやアーカンソーなど多くの州が自由化の計画を撤回。米国で自由化の機運は急速にしぼんた。自由化と両立させるべき課題はまだある。例えば国際公約となった温暖化ガスの排出削減だ。ドイツ第3の都市、ミュンヘン市。風力など再生エネルギーを主体とする新興勢力のシェアは2割を超えた。こうした例はドイツ全土で広がる。ただ天候頼みの再生エネの発電量は不安定。安定確保への費用増で電気料金は上昇傾向だ。料金、安定供給、電源の構成――。そのバランスはどこにあるのか。電力自由化の号砲とともに利用者と国と業者の大いなる実験が始まる。


<研究開発は予算さえつければよいのではなく、研究環境づくりが大切>
PS(2016年2月25日追加): *7-1に、「STAP細胞論文の共著者チャールズ・バカンティ氏が、論文撤回後もSTAP細胞作製に向けた再生医療の研究を続けており、万能性を示す遺伝子の働きを確認したものの、まだ細胞作製には成功していない」ということが小馬鹿にしたように書かれているが、アメリカは、その研究を続けさせるところが偉いのである。一方、日本では、「ヒト幹細胞、再生医療=iPS細胞」と決めつけたような論調で他の再生医療法を排除して、イノベーションに繋がる研究や新発明の機会を奪っているが、こういう害になる人(文系?)こそ、いらないのだ。
 その上、*7-2のように、「企業における発明は経営リスクをとって研究を進め、情報を蓄積し、事業化する企業が存在して初めて可能になる」として企業が特許法の改正を訴えているが、新発明をする人の多くは、企業の中でも結果が出なければ大変なことになるリスクをとって逆風の中で研究していることが多いため(理由:新しいことに賛成する人は多くないから)、「職務発明は法人帰属」となれば、企業内でリスクをとって新しい研究をする人よりも、周囲に迎合し組織にぶら下がって言われたことだけをやる人の方が有利で賢いということになり、イノベーションに繋がる研究や新発明を阻害して生産性が低くなる。
 そして、それらを含めた総合的な結果が、一番上の右のグラフにおけるシンガポールの購買力平価による一人当たりGDPの伸びと、日本の低迷の差になっているのだ。

      
 世界の人口百万当たり論文数  日本は頭打ちの論文数  「再生医療=iPS細胞」のような説明

*7-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160224&ng=DGKKASDG23H6T_T20C16A2CR8000 (日経新聞 2016.2.24) STAP細胞研究、論文撤回後も継続 共著者のバカンティ氏
 STAP細胞論文の共著者チャールズ・バカンティ氏が、論文撤回後もSTAP細胞作製に向け、研究を続けていたとの記事を米誌ニューヨーカー電子版が22日、掲載した。同誌の取材に対し「(STAP細胞は)正しいと確信したまま墓場に行くだろう」と話したという。記事によると、論文に不正があるのではないかと問題になった際、バカンティ氏は著者の小保方晴子氏に「データの捏造(ねつぞう)はしてないのか」と尋ね、「それならこんなに時間をかけて実験はしない」との回答を得たという。バカンティ氏は論文の問題が指摘された後、2014年夏から1年間米ハーバード大を休職。大学は「復職後も再生医療の研究を続けている」としていた。記事によると、同誌は昨年7月にバカンティ氏に取材。共著者の小島宏司医師と実験を続けていると説明。既に分化を終えた細胞にさまざまな刺激を与える手法で、どんな細胞にも分化できる万能性を獲得できるかどうかを検証した。万能性を示す遺伝子の働きを確認したが、実際に万能性がある細胞の作製には成功していないという。

*7-2:http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/etc/20130807.html
(日経BP 2013.8.7) 「職務発明は法人帰属にすべき」、特許法第35条改正に向けた取り組み
 青色LEDの特許をめぐる2004年の中村裁判の東京地裁判決は衝撃的だった。東京地裁は、企業に所属する研究者の発明に対して200億円の支払いを命じた。その判決は、特許法第35条に基づいている。その後、中村氏と日亜化学工業は東京高裁に控訴したが、日亜化学工業が中村氏に対して特許対価約6億円を含む8億4000万円を支払うことで2005年1月11日に和解が成立した。中村裁判の後も、研究者が出身・所属企業を相手に訴訟を提起し高額な職務発明対価を獲得していった。こうした中で、企業は特許法第35条改正の必要性を訴え、職務発明は誰のものかといった問題を提起している。発明は個人によって行われる行為だが、企業における発明は経営リスクをとって研究を進め、情報を蓄積し、事業化している企業が存在して初めて可能になる。現在、特許庁は知的財産研究所において「職務発明制度に関する調査研究委員会」を立ち上げ、特許法第35条の改正を視野に議論を進めている。同委員会の委員でもある日本経済団体連合会知的財産委員会企画部会部会長代行(三好内外国特許事務所副所長)澤井敬史氏、日本製薬工業会知的財産委員会委員長(武田薬品工業知的財産部長)奥村洋一氏、日本知的財産協会職務発明タスクフォースリーダー(新日鐵住金知的財産部企画室主幹)清水尚人氏が、職務発明制度の現状や特許法第35条の問題点に関して議論した。(以下略)


PS(2016年2月26日追加):JR九州が無人駅を増やすのは仕方ないかもしれないが、自動券売機に多言語で音声案内をつけたり、多言語の会話ロボットを置いたりすれば、ロボットと会話するために駅に人が集って無人駅の安全性も高まるのではないだろうか。また、蓄電池電車や燃料電池車の自動運転車両を使ってコストダウンを図り、九州を「先端ロボットワールド」にするのも面白い。

   
  MIRATA  その他人型ロボ   受付ロボット(東芝製)      小田急新宿駅のペッパー

*8:http://qbiz.jp/article/81500/1/
(西日本新聞 2016年2月26日) JR九州 過半数が無人駅へ
 JR九州は25日、在来線9駅を3月26日付で無人化すると発表した。全567駅のうち計291駅が無人となり、初めて無人駅の数が有人駅を上回ることになる。同社は昨年3月にも計32駅を無人化した。無人駅を増やす理由について同社は「鉄道事業の環境が厳しく、長期的にネットワークを維持するため」と説明。各駅では自動券売機や遠隔放送装置、防犯カメラなどを整備するという。無人化される駅は、鹿児島線西牟田駅(福岡県筑後市)▽筑肥線加布里駅(同糸島市)▽日田彦山線石田駅(北九州市)▽日豊線幸崎駅(大分市)、豊前善光寺駅(大分県宇佐市)▽豊肥線緒方駅(同豊後大野市)▽長崎線肥前白石駅(佐賀県白石町)▽佐世保線三間坂駅(同武雄市)▽指宿枕崎線山川駅(鹿児島県指宿市)。


PS(2016年2月28日追加):*9-1、*9-2のように、海底資源はこれまで「掘り出すのが困難」として採掘してこなかったため有望である上、海底は国有地で採掘料を徴収して歳入に加えることができるため、研究するだけではなく迅速に商業採掘を始めるべきだ。また、日本には、国際会計基準にある“鉱業に関する会計基準”がないので、国際会計基準を参考にして“鉱業に関する会計基準”を導入すべきである。このように、歴史は単に繰り返すものではなく、技術や文明の進歩でステージが進むものであるため、実現できるように方針を立てて、環境への悪影響が少ない場所で進めることが重要だ。

*9-1:http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1601/27/news041.html 
(スマートジャパン 2016年1月27日) 夢の天然ガス資源「表層型メタンハイドレート」、日本近海700カ所以上に存在か
 国産の天然ガス資源として注目を集める「メタンハイドレート」。資源エネルギー庁は日本近海に眠る表層型メタンハイドレートの埋蔵量の把握に向けて調査を進めている。島根県・新潟県沖で調査を行った結果、表層型メタンハイドレートが存在する可能性がある海底部の特異構造を700カ所以上発見したという。資源エネルギー庁は「海洋基本計画」に基づき、表層型メタンハイドレートの資源量把握に向けて、2014年度から約3年にわたって日本近海の調査を実施している。2015年度は、表層型メタンハイドレートが存在する可能性がある特異的な構造(ガスチムニー構造)の内部におけるメタンハイドレートの様子をより詳しく把握するため、島根県隠岐周辺および新潟県上越沖で、合計約30カ所の掘削調査を行った。この調査により取得した地質サンプルを観察した結果、メタンハイドレートは、厚さ数十cm(センチメートル)~数m(メートル)以上の柱状で採取された部分がある一方、泥に混ざって、直径1cm未満~数cmの粒状で存在している部分もあるなど、さまざまな形状を示すことが分かった。また、同一のガスチムニー構造から取得されたサンプルであっても、サンプル毎のメタンハイドレートの存在の形態(深度、形状、量)は、取得された場所によって大きく異なることも明らかになった。さらに隠岐周辺、上越沖、秋田・山形沖で実施した詳細地質調査では、自律型巡航探査機(AUV)に設置された機器から音波を発信し、より精緻な海底地形や海底下浅層部の地質構造、海底面の状態のデータを取得している。詳細地質調査と同じ海域で行った環境データ取得のための基礎調査では、無人探査機による海底観察により、海底付近の微地形、表層型メタンハイドレートの産状、海底付近の生物の生息状況などを解明するとともに、海水や海底表層の堆積物を採取して成分を分析した。また、以前設置した長期モニタリング装置を回収している。今後の予定としてはこれまでに収集したさまざまな測定データや地質サンプルなどを利用し、専門家による分析作業、解析作業を加速する。これによりメタンハイドレートの商業化に最低限必要となる埋蔵量および分布状況などの検証を行うとともに、その結果を踏まえて表層型メタンハイドレートを回収する技術の調査や技術開発手法を検討していく計画だ。メタンハイドレートとは、メタンと水が低温・高圧の状態で結晶化した物質。日本の周辺海域には相当の量が存在していることが見込まれており、将来の天然ガス資源として期待されている。

*9-2:http://mainichi.jp/articles/20160227/k00/00e/040/233000c?fm=mnm
(毎日新聞 2016年2月27日) 海底の金銀、採取成功 沖縄沖の熱水鉱床
●1トン当たり金1.35グラム、銀数百グラム、銅45キロ
 海洋研究開発機構などの研究チームは25日、国内最大規模の熱水鉱床が広がっている沖縄本島沖の海底を掘削し、金や銀の採取に成功したと発表した。海底下の資源は掘り出すのが困難とされていたが、チームは「人工的に噴出口を作ることで、極めて低コストで資源回収を実現できる可能性が開ける」としている。同日の英科学誌サイエンティフィック・リポーツに成果が掲載された。熱水鉱床は、岩石中の金属などが海底下で熱せられた海水に溶け込んだ鉱脈。海底までの裂け目があると熱水とともに噴出して金属などが海底に煙突状に沈殿する。銅、亜鉛などのほか、ガリウムやビスマスなどレアメタルを含むため、次世代の海洋資源として各国の探査が活発化している。同機構が掘削したのは、那覇市の北北西約190キロの海域「伊平屋北海丘」。2010年、地球深部探査船「ちきゅう」で水深約1000メートルの海底に直径50センチの穴を掘り、定期的に観察した。その結果、約310度の熱水が噴き出して人工的にできた鉱床は1日0.11トンのペースで高さ7メートル以上に成長し、13年の成分解析では1トン当たり金1.35グラム、銀数百グラム、銅45キロを含んでいた。今井亮・秋田大教授(鉱床学)によると、今回の金の含有量では採算を取るのは難しいが、銅やレアメタルも多く含まれれば価値は上がるといい「日本の領海内で資源を確保しておく意義は大きい」と話す。同機構は3月17日まで、再び近海を採掘して観測装置を設置し、高濃度の金属を含む鉱床を効率よく形成させる実験をする。川口慎介研究員は「実験を通して金属がどのように沈殿し蓄積して鉱床を作るのかを調べたい」と話す。


PS(2016年3月2日追加):「燃油代が高くて漁に行けない」と言われて10年以上経つが、それを解決するのが自然再生可能エネルギー由来の電気船や燃料電池船であり、自然再生可能エネルギーを使えば環境負荷が小さく、エネルギー自給率も高まる。それにもかかわらず、*10のように、燃料電池船はまだ開発段階とのことで、このように、いつまでも過去の技術にしがみついて新しい技術による根本的解決をしなかったのが、日本の経済敗戦(ゼロ金利やマイナス金利にしなければ投資が起こらないほど利益率が低かったり、インフレを起こして国債の実質価値を目減りさせたり、実質賃金や実質年金支給額を減らしたりしなければならないような状態)の理由だ。

*10:http://qbiz.jp/article/81837/1/
(西日本新聞 2016年3月2日) 燃料電池船を長崎県が開発へ 五島市での国事業を継承
 長崎県は2016年度、県内の造船事業者などと連携して水素を燃料とする燃料電池船の研究開発に取り組む。環境省が五島市の椛島(かばしま)沖で実施してきた国内初の実証事業が15年度で終了するため、県が福江島の崎山漁港に水素ステーションを移設(一部新設)し、新たな燃料電池船の開発と実用化を目指す。16年度一般会計予算案に8216万円の事業費を盛り込んだ。環境省の実証事業は、戸田建設と長崎総合科学大、日本海事協会が受託して船を開発した。同じく椛島沖で進めてきた「浮体式洋上風力発電実証事業」による余剰電力を使って水素を製造。船内のタンクに詰め、外気の酸素と反応させて発電し、モーターを動かして走らせる。船は全長12・5メートル、航行速度は20ノット。450リットルの水素を補充でき、2時間航行できる。二酸化炭素(CO2)の排出削減と海洋再生可能エネルギーの普及促進が期待されている。県は県内の造船事業者とプロジェクトチームをつくり、譲り受けた船を走らせてデータを集める方針。県グリーンニューディール推進室の担当者は「環境配慮型の船はこれから必要とされる。燃料電池船の開発で、新しい産業の創出と県の基幹産業である造船業の振興につなげたい」と話している。

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 11:45 AM | comments (x) | trackback (x) |
2016.2.14 ふるさと納税とそのお礼 (2016年2月16日、18日、3月4日に追加あり)
    
2016.2.6西日本新聞(*2)  2014年上位    2015年上位    田んぼの白サギ

    
ツルの越冬地 鹿児島県出水市のツル      蔵王の白鳥          天草のイルカ

(1)2014年と2015年のふるさと納税額順位
 (私の提案でできた)ふるさと納税は、*1に書かれているように、2014年は長崎県平戸市が約13億円でトップだったが、2015年は宮崎県都城市が約35億超を集めてトップとなり、2位は静岡県焼津市の約35億円、3位は長崎県平戸市の約27億円となるそうだ。

 そして、*2のように、2015年度のふるさと納税総額は、2014年度の389億円の3倍を超す1500億円に達する見込みで、ブームを盛り上げているのはお礼の特産品であり、全体の8割を超す約1500自治体が地域ブランドの肉や海産物、地酒、菓子、工芸品などの返礼品を用意し、寄付した人は好みの物が選べるとのことである。

 「お礼を渡すのは本来の趣旨から外れており、邪道」と言う人もいるが、商工会や自治体が推薦するその地域の特産品をお礼にすれば、その自治体への寄付が増えて財源が潤うだけでなく、その特産品の価値が知られて知名度が上がり、地元業者の販路拡大に繋がるため、一石二鳥の効果があると、私は考えている。なお、地域の特産品は、地元の人が考えている以上に、都会で喜ばれるものが多い。

(2)ふるさと納税をしてみて感じたこと
 2015年は、私も夫の所得からふるさと納税した。いろいろやった結果、玄海町と小城市は、納税後の手続きが速やかで気合が入っており、これも人気の秘密だろうと思われた。伊万里市、唐津市、太良町は少し遅かったが、米、伊万里牛、佐賀牛、みかん、海産物などのお礼の品は美味しかった。伊万里市は、鍋島焼などのお礼の品もあったが、もう少し日常的に使うお茶碗などの品ぞろえがあればと感じた。

 夫の所得から納税するので、当然、長野県松本市と塩尻市も見たが、どちらも農林水産物やその加工品を今一つ活かしていないと思われた。長野県出身で首都圏に在住している人には、松本城の無料入場券よりも、米、信州蕎麦、りんご、葡萄、とれたて野菜、信州味噌、漬物、ハチミツ、ジャム、おやき、もち、信州サーモン、鯉の味噌づけ、木曽漆器などの方が人気が出ると、私は思う。

    
 みやき町、佐賀牛    伊万里鶏      平戸干物        小城米     唐津みかん
                          <お礼の品の例>
(3)こんなお礼も・・!
 *3のように、佐賀県に50万円以上寄付すると、佐賀市にあるホテルニューオータニ佐賀で開かれる「知事感謝の夕べ」に招かれて、佐賀県産アスパラガス、有明海・玄界灘産の魚介類、佐賀牛、有明鶏など佐賀県自慢の食材を使ったおいしい料理を食べながら、知事と歓談できるそうだ。

 他の地域に出た佐賀県出身の人は、現在の佐賀県の状況や方針を聞く機会が少ないため、佐賀県知事と食事をしながらそのような歓談ができるのは貴重であり、よく考えたと思うが、50万円以上の寄付というのは高すぎて、該当者が極端に限られるのではないだろうか。

*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160210&ng=DGKKASDG09H9N_Z00C16A2CR8000 (日経新聞 2016.2.10) ふるさと納税、トップは宮崎・都城市35億円 昨年、減税拡大で大幅増の自治体多く
 2015年に「ふるさと納税」が一番多かった自治体は宮崎県都城市で、寄付額が35億2718万円に上ったことが9日、分かった。ふるさと納税のポータルサイト「ふるさとチョイス」がまとめた。寄付額は、14年にトップだった長崎県平戸市の約13億円の2.8倍だった。15年の2位は静岡県焼津市の34億9280万円、3位は平戸市の26億7716万円。4月から減税対象の寄付額の上限が2倍に引き上げられた効果で、大幅に増加している自治体が目立った。都城市は、特産の宮崎牛や地元の焼酎を中心とした特典が人気を集め、繰り返し寄付をする人が増えているという。担当者は「地元業者の販路拡大にもつながっており、大きな経済効果が出ている」と話す。焼津市は14年10月から特典を始め、現在はマグロなどを中心に500種類以上をそろえる。担当者は「当初は3億円程度と予想していた。想定以上だ」と話した。平戸市は海産物の詰め合わせの特典が人気で、発送まで半年以上かかるものもあるという。4位は山形県天童市、5位は長崎県佐世保市だった。順位と金額は、ふるさとチョイスがアクセス数の多い自治体に問い合わせて集計した。

*2:http://qbiz.jp/article/80232/1/
(西日本新聞 2016年2月6日) ふるさと納税急増1500億円 15年度推計、特産品の返礼人気
 出身地や応援したい自治体に寄付をすると、居住地の住民税が減額される「ふるさと納税」の2015年度の総額は、前年度の3倍を超す1500億円に達する見通しであることが分かった。寄付の返礼品が人気を集めていることや、制度改正で利用しやすくなったことが要因とみられる。総務省によると、15年度上半期(4〜9月)の寄付額は453億円で、前年度同期の約4倍。既に14年度1年間の389億円を上回っている。例年、年度後半に増加する傾向があり、15年度下半期も同じようなペースで伸びれば、年度総額は1500億円に達すると推計される。ブームを盛り上げているのは寄付のお礼の特産品。全体の8割を超す約1500自治体が地域ブランドの肉や海産物、地酒、菓子、工芸品などの返礼品を用意しており、寄付した人は好みの物が選べる。自治体への寄付が増えれば自主財源が潤うだけでなく、特産品の知名度が上がり、地域経済にもメリットがある。総務省は15年度から制度を見直し、税の控除が受けられる寄付額の上限を2倍に引き上げた。寄付先が5自治体までなら、給与所得者は確定申告の手続きが不要になった。ふるさと納税は08年度、都市と地方の税収格差是正などを目的に始まった。初年度の寄付額は81億円、東日本大震災後の11年度は121億円だったが、14年度から急増している。

*3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/278780
(佐賀新聞 2016年2月14日) 知事、ふるさと納税に食事でお礼
 ふるさと納税で県へ50万円以上寄付した人を招待した「知事感謝の夕べ」が13日、佐賀市のホテルニューオータニ佐賀で開かれた。関東や県内の5組11人が県産品を使ったおいしい料理を食べながら、山口祥義知事と歓談した。同夕べは、多額の寄付をしてくれた個人に感謝の気持ちを伝えようと初めて開催。ふるさと納税のお礼として知事と会食する取り組みは全国的にも珍しく、昨年7~12月に50万円以上を寄付した13人のうち、5人が参加を希望した。会では、山口知事が「熱い思いのふるさと納税ありがとうございました。いろんな話をしてアドバイスももらいたい」とあいさつ。参加者は、県産アスパラガスや有明海・玄界灘産の魚介類、佐賀牛、有明鶏など県自慢の食材を舌鼓を打ちながら、山口知事との会話を楽しんだ。県へのふるさと納税は2012年度1588万円、13年度3032万円、14年度4488万円と推移。昨年7月に佐賀牛など県産品をお礼としてもらえる制度ができてから急激に伸び、15年度は5億4144万円(昨年12月末現在)となっている。


PS(2016年2月16日、18日追加):*4-1、*4-2の「サイトウ・キネン・フェスティバル松本(現セイジ・オザワ松本フェスティバル)」は、ふるさと納税の使い道でチョイスできるようにし、このような市民の取り組みを支援して芸術を育てる方法もあるし、無理してチケットを入手して東京から聞きに行く人も少なくないため、よい席をふるさと納税のお礼にするのも良く、ふるさと納税制度の使い方はいろいろある。

*4-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/279282
(佐賀新聞 2016年2月16日) 小澤征爾さんにグラミー賞、最優秀オペラ録音部門
 世界最高峰の音楽の祭典「第58回グラミー賞」の発表・授賞式が15日(日本時間16日)、米ロサンゼルスで開かれ、日本からは指揮者の小澤征爾さん(80)が最優秀オペラ録音部門で受賞した。小澤さんの受賞作品は2013年に長野県で開かれた音楽祭「サイトウ・キネン・フェスティバル松本(現セイジ・オザワ松本フェスティバル)」で指揮した歌劇「こどもと魔法」を収めたアルバムで、演奏はサイトウ・キネン・オーケストラ。小澤さんは1960年代からたびたびグラミー賞の候補になっていたが、小澤さん名義のアルバムが受賞したのは初めてという。

*4-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12214183.html
(朝日新聞社説 2016年2月18日) 文化と地域 息長い市民参加の開花
 受賞作には、長野県松本市で開かれた「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」で上演した歌劇「こどもと魔法」が収録されている。地元のアマチュア歌手や子どもたちも参加した。小澤さんはきのうの記者会見で「みんなでつくったものがこういう形になり、松本でやってよかった」と語った。小澤さんが総監督を務めるこの音楽祭は、松本市で1992年から毎年開かれている。昨年、「セイジ・オザワ松本フェスティバル」に改称した。海外から著名な音楽家が多く訪れる一方、小中学生向け演奏会にも力を入れる。例年、9万近い人たちが音楽に触れる。市民の参加も活発だ。チケットを買う行列を整理したり、そばを打って海外からのゲストをもてなしたりと、様々な場面で音楽祭を応援する。松本市は市役所に「国際音楽祭推進課」を置き、14年は総予算約8億円のうち1億3千万円を負担した。市の調査では、音楽祭は地域の誇りとなり、子どもたちの芸術への関心の高まりや、地域のイメージアップに貢献している。経済効果は10億円を超えるという。有名人を招く地方イベントは珍しくないが、継続する催しは限られる。一過性のにぎわいではなく、文化として浸透するには、幅広い市民の参加意識と愛着が重要だ。松本市の例は各地の参考になるだろう。地方を拠点にした国際芸術祭の先駆けは、演出家の鈴木忠志さんが82年に始めた「利賀フェスティバル」(富山県南砺市)だ。山深い地に世界的な演劇人が集う催しは今日まで続く。昨夏は約1万人の観客を集め、市は、芸術と産業振興とを結びつける努力も始めた。埼玉県の「彩の国さいたま芸術劇場」では、演出家の蜷川幸雄さんが主宰する平均77歳の劇団「さいたまゴールド・シアター」が10周年を迎える。「生活者の老い」を表現に昇華し、海外でも高い評価を得る。〈芸術家+地元の人々の理解と参加+行政の支援〉という足し算に、長い時間を乗じる「かけ算」によって、文化は地域の財産になる。今、各地をリードしている大御所たちを継ぐ人を育てることも含めて、大事なのは、やはり息長い取り組みである。そんな試みが広がるといい。


PS(2016年2月18日追加): *5-1、*5-2のように、下水に含まれる成分を有効活用して、家畜・養殖魚の飼料や肥料を作るこの取り組みにも、私は一票を入れたい。これも、ふるさと納税の使い道でチョイスできるようにすれば、寄付金が集まって佐賀市の支出分くらいは出るのではないだろうか。

   
   佐賀市の下水処理システム         *5-2より          *5-1より

*5-1:http://qbiz.jp/article/80931/1/
(西日本新聞 2016年2月18日) ミドリムシ培養施設が稼働 佐賀市、下水のCO2有効利用検証
 下水処理時に発生するバイオガスから抽出した二酸化炭素(CO2)と処理水を使って、藻類ミドリムシを培養する佐賀市と民間企業の共同事業の実証施設が、全国で初めて市下水浄化センター(同市西与賀町)内に完成し17日、稼働を始めた。事業は、下水汚泥を減らす過程で生じるCO2や下水処理水が含む窒素やリンを、ミドリムシの培養に活用する。官民の6団体が進め、CO2の回収技術を持つ東芝や、藻類の培養や活用を手掛ける東京のベンチャー企業「ユーグレナ」などが参加している。施設は、CO2の分離・回収装置や藻類培養設備などで構成。広さ約470平方メートルの藻類培養設備は、ミドリムシの光合成に必要な採光のための透明な壁の建屋に千リットルの培養槽9基を配置。バイオガスから抽出したCO2を供給し、ミドリムシの安定的な培養に必要なCO2濃度や気温、光量などを検証する。ミドリムシは家畜や養殖魚向けの飼料、肥料としての活用を探る。同日あった式典で、秀島敏行市長は「自然環境の改善のため貢献できれば」と期待。ユーグレナの出雲充社長は取材に「バイオテクノロジーは急激に進歩しており、何としても成功させたい」と意気込みを語った。

*5-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/280031
(佐賀新聞 2016年2月18日) 全国初の藻類培養施設が佐賀市で稼働、下水からCO2回収
 佐賀市や東芝など6者による下水処理で発生する二酸化炭素(CO2)を分離、回収して藻類培養に利用する全国初の実証施設が17日、市下水浄化センター内に完成、稼働を始めた。下水処理に伴う環境負荷を減らすとともに、高付加価値資源として注目される藻類の培養技術の確立・品質向上を研究する。事業には佐賀市、東芝、ユーグレナ、日環特殊、日水コン、日本下水道事業団の6者が参加している。国土交通省のプロジェクトの一環で事業費は10億円。下水処理過程で発生するバイオガスからCO2を分離・供給し、藻類の光合成を促進して培養する技術の確立を検証する。培養施設は470平方メートルの敷地内にあり、1千リットルの培養槽が9槽ある。隣接する種株培養槽から本培養槽に移し、CO2や窒素、リンを含んだ脱水分離液を供給して培養を促す。窒素やリンを含む培養液は、赤潮の発生原因となるため通常は再処理して排水するが、藻類に供給することで窒素、リンが低減される。藻類は食品、燃料などに利用できるため、食糧やエネルギー分野で注目されている。施設の落成式で秀島敏行市長は「地球環境の改善に向かって努力しないといけない時代になっている。佐賀の取り組みが全国に広がってほしい」と述べた。


PS(2016年3月4日追加):*6-1の環境保全型農業は、農業や野生鳥獣のみならず水産業にも重要で、以前は沢山いた日本鰻が天然記念物に近くなったのは、川を汚染したり、川に堰をつくって遡上を妨げたりしたからだ。また、*6-2のように、ハチなどの生物が農業にもたらす利益は年間約4,700億円に上り、リンゴ、サクランボ、ウメなど果樹栽培への貢献が大きいそうだ。しかし、最近は、ハチミツも百花混合より、レンゲ、クローバー、アカシア、菜の花、蕎麦、サクラ、ウメ、ミカン、メロン、ローズマリー、タイムなどの花種別に分けた方が花や果物の香りがして付加価値が高いため、地域単位でハチを使って受粉すれば、高付加価値のハチミツという副産物もできるだろう。

   
  *6-1より       清流のヤマメ             ボラ           遡上中のウナギ

*6-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36503
(日本農業新聞 2016/3/4) 安全・安心志向を重視 環境保全型農業 農林水産省調査
 農薬や化学肥料を一切使わない有機農産物や、5割以上減らした特別栽培農産物などに取り組む農業者の4割が、今後生産を拡大する意向であることが農水省の調査で分かった。安全・安心を求める消費者ニーズを背景に、「エコ栽培」に力を入れようとする農業者が依然少なくない。有機や特別栽培農産物の需要が今後「拡大する」と答えた流通加工業者も約5割に上った。同省が2014年にまとめた「有機農業の推進に関する基本的な方針」によると、現在の有機農業の取り組み面積の割合は、全国の耕地面積のわずか0.4%程度。同方針では18年度までに1%に倍増させる目標を掲げており、この達成には生産拡大のペースを引き上げることが必要になる。調査は農薬や化学肥料の使用を減らす環境保全型農業に対する、生産現場の意識を把握するのが目的。昨年11月に農業者モニター1269人を対象にアンケートを取り、9割から回答を得た。
・5年後に拡大4割
 環境保全型農業に取り組む農業者450人のうち、おおむね5年後に規模拡大する意向を示したのは30%に達した。その理由として「消費者の信頼を高めたい」との回答が70%と最多で、「より良い農産物を提供したい」(52%)が続いた。また全体の規模は「現状維持」するが、環境保全型農業の割合を増やしたいと考える農業者も全体の12%いた。同省は「拡大できなくても高単価を魅力に感じ、有機や特別栽培の割合を増やそうとする意欲が高まっている」とみる。同省は流通加工業者と消費者にも環境保全型農業への意識調査を実施。流通加工業者で有機農産物を取り扱い中か、取り扱う意向を示したのは63%、特別栽培農産物では72%となり、販売意欲が高いことが分かった。消費者の購入理由として、約9割が安全面を重視しているとした。

*6-2:http://qbiz.jp/article/81170/1/ (西日本新聞 2016年2月22日) 生物の貢献4700億円 授粉のハチ、コウモリ、サル… 農業環境技術研 年間試算
 花粉を運び、受粉に貢献するハチなどの生物が日本の農業にもたらす利益は年間約4700億円に上るとの試算を、農業環境技術研究所(茨城県つくば市)の研究グループが22日までにまとめた。このうち約70%が野生生物によるもので、リンゴやサクランボ、ウメなど果樹栽培への貢献が大きい。花粉を運ぶ生物の経済的価値を、野生も含めて全国規模で推定した初の例。同研究所の小沼明弘主任研究員は「欧米ではミツバチなどの減少が問題になっている。日本でもこのようなことが起こると農業生産量の減少や生産コストの増加につながる恐れがある」として保護の重要性を訴えた。グループは2013年の都道府県別の農業生産額や、各種の作物が実を付けるのに、昆虫などによる授粉にどれだけ依存しているかを調べたデータなどから、花粉を運ぶ生物の農業生産への経済的な貢献額を試算。総額は約4731億円で農作物の総生産額の8・3%。果樹のほかメロンやスイカ、トマトやナス生産への貢献が大きかった。都道府県別ではリンゴ生産への貢献度が高い青森県が約592億円と最高。2位はサクランボなどの山形の約412億円、3位はカボチャやメロンなどの北海道の約378億円で以下、長野(リンゴなど)、茨城(メロンや野菜など)、熊本(メロンやスイカなど)の順だった。人間が飼育するセイヨウミツバチとマルハナバチの貢献が計約1056億円だったのに対し、昆虫を中心とした野生生物の貢献が約3330億円と大きく、保護するメリットが大きいことが示された。

| 農林漁業::2015.10~ | 03:32 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.2.8 東芝不適切会計の原因、監査、後処理の妥当性について
           
  これまでの      歴代社長の粉飾決算への関与      当初指摘された         
  東芝の実績                              企業統治の形骸化
2015.7.22西日本             2015.7.24西日本  2015.7.21日経

       
      東芝の部門別売上       東芝の組織図      原子力事業

(1)東芝の不適切会計について(当初の報道による説明)
 2015.7.21の日経新聞は、*1-1のように、「東芝の歴代3社長が、経営判断として現場に圧力をかけ、2008~2014年度12月期までに計1562億円の不適切会計を行った」「経営トップらを含めた組織的な関与」「歴代3社長が辞任して今後の再発防止策などを説明する」と報道した。

 そして、不適切会計の方法は、①例えばパソコン事業では経営トップが社内カンパニーに対して「チャレンジ」と呼ぶ過大な収益目標と損益改善要求を課し、それを達成するために翌期以降の利益を先取りした ②そういう不適切会計を余儀なくさせる状況に追い込んだ ③現場に上司の意向に逆らえない企業風土があった ④内部統制が十分に機能していなかった ⑤監査法人に対して正しく説明せず、外部から発見されにくい手法で不適切会計がなされていた としており、従って、1)経営監査部、リスクマネジメント部の内部統制に問題があった 2)取締役会や監査委員会による監督機能が働かなかった などが問題で、再発防止には「チャレンジ」の廃止が必要だ と結論づけている。

 また、*1-2は、「東芝の取締役会は16人のうち社外取締役が4人おり、監査委員会は生え抜きの取締役が委員長を務めて3人の社外取締役が加わっていたが、高い収益目標達成を求める歴代トップによるプレッシャーで組織ぐるみの隠蔽が行われ、さらに、東芝を担当する新日本監査法人の監査もすり抜けたため、今後、取締役会の過半数を社外取締役にするほか、監査委の委員長に社外取締役の伊丹敬之東京理科大教授を選任した」としている。

 さらに、*1-3も、「a)不適切な会計処理が『チャレンジ』と呼ばれて全社に広がった」「b)高い収益目標達成がプレッシャーだった」としているが、チャレンジやプレッシャーがいけないという価値観は日本人の生産性を下げるためよくない。このような場合は組織ぐるみで不正を行うのではなく、その収益目標が合理的で達成可能か否か、収益改善のためには何が必要かを皆で考えることが必要なのだ。

 なお、*5にも、「社外取締役の監督機能が働かなかったため、強化に向けた指針を策定する」と記載されているが、東芝の不適切会計は、本来の監督組織である監査委員会や取締役会だけでなく、社外取締役の監督機能も骨抜きになっていたのが問題なのであるため、社外取締役の法律上の監督機能を強化しても機能を骨抜きにすることは同様に可能だ。そのため、本当に検討すべき問題は、「①監査委員会・取締役会などの監督組織に不正を見抜く能力や経営者からの独立性があるか否か」「②不正があれば発見して経営者にアドバイスするのがよいと考える姿勢があるか否か」だが、実はないのである。

 さらに、社長の経営判断による粉飾に内部統制が効かないのは、内部統制組織は社長の下部機関であるため当然だが、「損益の改善要求をされれば粉飾し、その異常性を指摘しない」という体質は問題で、このような場合は、目標の達成可能性や社長の指示の妥当性などを議論すべきである。

 しかし、これらの事象や記事で使われている「チャレンジ」という言葉は、「目標に達しない数字をごまかすこと」になってしまっており、本当のChallenge(=やりがいのある難問に挑戦すること)ではないため、この言葉使いが日本人の常識として蔓延すれば、世界の常識から外れるとともに、日本では本当の意味のChallengeをする人もいなくなって問題だと考える。

(2)ウェスチングハウスの損失
 (1)に関する記事では全く触れられていないが、大きな損失を出しそうなのは、「東芝が社運をかけて、2006年に企業価値の3倍(約6千億円)で買収した米国大手の原子炉メーカー、ウェスチングハウス」で、最大9千億円の損失になると、*2-1に記載されている。

 私は企業価値の3倍以上も支払うのを上手な買い物だとは思わないが、「のれん代」として認識される企業価値との差額4千億円は、①原発ビジネスの急激な成長見込み ②燃料サイクル推進 ③官民一体の原発輸出計画 等を期待して支出したもので、フクシマ原発事故で原発事業が落ち込み、世界の原発市場も縮小するという急激な環境変化もあって、経営の足を引っ張ったようだ。

 確かに、世界の原発事業は欧米を中心に市場が縮小しており、「アメリカで建設キャンセルが続き、チェコやハンガリーでも形にならず、その影響でフランスの原子炉メーカー・アレバも約6千億円の巨額負債を抱えて倒産した」という状況だ。そのため、第三者委員会が報告した1562億円の損失はまだ過小で、重要なのはウェスチングハウスののれん代減損4千億円なのだが、そうなると2011年3月期に計上された5千億円の繰延税金資産を取り崩す必要性が出るため、「4千億円+最大5千億円=合計9千億円」という新たな巨額損失となって、東芝が債務超過になる可能性もあるそうだ。

 *2-2で、日経BP社は、「不正会計の動機は、三菱重工業が2000億円で買収しようとしていた米国原子力発電機器大手ウェスチングハウス(WH)を 6600億円という過大な価格で買収したことだった」としている。また、*2-3も、「原発事業」は世界的に衰退し始めているのに、外国では買い手を探している原発事業を過大な価格で買ったのは、経営意思決定の誤りだとする。

 そして、フクシマ以降、先進国市場では原発ビジネスが終焉に向かい、巨額の案件を受注してきた大手メーカーがプロジェクトの破綻で泥沼にはまりつつあるのは東芝だけではなく、三菱重工も同じで、こちらはサンオノフレ原発の配管破損事故をめぐって75億7000万ドル(約9300億円)という巨額の損害賠償請求されている。また、原発大国フランスでも国有原子力大手アレバも2014年12月期に48億ユーロ(約6170億円)の最終赤字を計上して事実上破綻している。

 にもかかわらず、*2-4のように、東芝は、2029年度までに64基の原発を新規に受注するという事業計画を発表し、原発部門の幹部でさえ「その計画は非合理的だ」と考えているにもかかわらず、苦し紛れに基数を増加させているのだそうだ。東芝は「全世界で約400基の新設計画がある」として原子力事業の利益が2018年度以降に急増するとするが、*2-5のように、東芝初の原発輸出は受注から6年経っても建設できず、ウエスチングハウスののれん代の減損が懸念材料になっており、今後15年で64基受注という計画は楽観的過ぎるだろう。また、*3のように、日本に好意的な国に、その国の国民の反対を押し切って官民で原発を押し付けると、後世に禍根を残すと考える。

 なお、*2-6のように、2016年2月4日、NHKは「東芝は不正会計の問題の後、パソコンや家電事業の構造改革にかかる費用が増加したことなどから、今年3月期の1年間のグループ全体の最終損失は7100億円の赤字になった」と伝えた。しかし、これまで記載してきた理由から、不正会計の根源は、原発を作っていることにより不買運動されたパソコンやテレビ等の販売不振が主ではないだろう。

(3)監査法人による外部監査について
 毎日新聞が、*4-1のように、「①利益水増しによる決算の下方修正額は2248億円(しかし、これでも過小だろう)に上り、歴代3社長が辞任した」「②新日本監査法人は会計監査を担当しながら適切な処理だと認めていたため、金融庁が公認会計士監査審査会の勧告により、公認会計士法に基づいて業務改善命令などの行政処分を行う」「③新日本監査法人はオリンパスの損失隠し事件でも金融庁から業務改善命令を受けている」と報じている。

 また、日経新聞は、*4-2のように、「i)金融庁は東芝の会計不祥事をめぐり、利益操作を見抜く注意を怠ったという理由で新日本監査法人への行政処分を出した」「ii)3カ月間、新規業務の受注などを禁じるほか監査法人には初となる課徴金も科す」「iii)監査法人は、書面チェックだけでなく監査先企業の倉庫などを通告なしに調査するといった足を使った監査がいっそう求められる」としている。

 しかし、実地棚卸の立会や外部確認などの事実とのチェックは、監査基準に定められ必ず実施することになっている監査手法であるため、書面だけで監査している監査人はいない。そのため、異常性を把握した時に、それを異常と感じる能力や疑う姿勢(専門用語:職業的猜疑心)に問題があったと考えられる。

 なお、このケースは経営者の不正を見抜かなければならないので、経営者とざっくばらんに話をしてビジネスの現況や粉飾決算を行う動機の存在を予測し、その部分に気をつけて監査を行う必要があるが、原発事業への日本政府の対応や世界の対応に関する新聞はじめメディアの報道は、経営者の話を聞いて粉飾の可能性や話の真偽を判断すべき監査人の常識を醸成する上で、役立つものではなかった。

(4)間違った選択と集中
 このように、ウェスチングハウスの損失は問題にされず、半導体、テレビ、パソコンにおける粉飾決算のみを問題にしてきたため、*6-1のように、東芝は「主力の半導体関連事業で工場の一部売却や閉鎖を行う方向で調整し、これに伴って希望退職を募り、人員削減規模は数千人に上る」とのことである。

 そして、*6-2は、「東芝は家電の国内撤退の可能性もある」とし、*6-3のように、東芝、富士通、ソニーのパソコン部門が独立したVAIO(バイオ、長野県安曇野市)3社が、パソコン事業を統合する検討に入ったと伝えているが、家電や半導体をここまで統合してしまうと、瞬間的に規模だけは大きくなるものの、多様な長所や発展の可能性がなくなり、我が国のお家芸だった家電や半導体の選択肢は小さくなってしまうと考える。

 つまり、リストラすべきは原発関連事業であり、お家芸の家電や産業の米である半導体は残しておかなければ、これまで東芝が蓄積してきた技術や人材を失って、東芝は稼げない会社になってしまうだろう。

<不適切会計の内容>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150721&ng=DGKKASGD20H0G_Q5A720C1MM8000 (日経新聞 2015.7.21) 東芝、組織的に利益操作 不適切会計で第三者委報告、1562億円、トップ関与 歴代3社長辞任へ
 東芝は20日、不適切会計を調べてきた第三者委員会(委員長=上田広一・元東京高検検事長)がまとめた調査報告書を受理し、要約版を公表した。歴代3社長が現場に圧力をかけるなどして、「経営判断として」不適切な会計処理が行われたと断定。「経営トップらを含めた組織的な関与があった」と責任を厳しく指摘した。利益操作は2008年度から14年度の4~12月期まで計1562億円にのぼる。21日に田中久雄社長らが記者会見し、辞任を表明する見通しだ。東芝は21日午後に報告書の完全版を公表し、夕方に田中社長らが会見して、今後の再発防止策などを説明する。田中社長と前社長の佐々木則夫副会長の辞任を発表する予定。前々社長の西田厚聡相談役も辞任する方向だ。報告書によると、08年度からの決算修正額(税引き前利益ベース)は、第三者委が認定した1518億円に加えて、東芝の自主チェック分が44億円。長期プロジェクトの採算を管理する工事進行基準と呼ぶ会計処理で損失計上を先送りするなどしていた。この間の東芝の税引き前利益は5650億円で、不適切会計の金額は3割近くに相当する。報告書では、経営トップらが「見かけ上の当期利益のかさ上げ」を狙い、担当者らがその目的に沿う形で不適切会計を継続的に行ってきたと判断。原因を様々な角度から分析した。例えばパソコン事業では、経営トップが社内カンパニーに対して「チャレンジ」と呼ぶ過大な収益目標と損益改善要求を課していた。それを達成するために実質的に翌期以降の利益を先取りするなど、不適切な会計処理をせざるを得ない状況に追い込んだという。現場についても「上司の意向に逆らえない企業風土があった」と指摘。さらに監査法人などに対して正しく説明せず、不適切会計は外部から発見されにくい巧妙な手法でなされていた。こうした状況を把握し、是正すべき内部統制が十分に機能していなかった点も原因に挙げた。経営監査部、リスクマネジメント部の内部統制に問題があったうえ、取締役会や監査委員会による監督機能が働かなかった。再発防止には「チャレンジ」の廃止などが必要と指摘し、トップと現場の意識改革を強く迫った。そのうえで、少なくとも幹部職員(例えば部長職以上)については、関与の程度などを十分に検証して懲戒手続きを含む人事上の措置を適切に講じることが望ましいと踏み込んだ。報告書を受けて東芝は過去の決算を訂正するとともに、14年度決算を確定する。1562億円とは別に、事業の収益性の低下を反映させ、12年度決算を中心に半導体やパソコン事業などで計700億円規模の減損損失を計上する可能性がある。証券取引等監視委員会や金融庁は、不適切会計が金融商品取引法の違反(有価証券報告書の虚偽記載)にあたると判断し、課徴金処分を検討する。東京証券取引所は内部管理に問題ある企業として投資家に注意喚起を促す「特設注意市場銘柄」に指定する見通しだ。

*1-2:http://qbiz.jp/article/67482/1/
(西日本新聞 2015年7月25日) 【東芝 巨大企業の闇】〈下〉会計不正 「極秘の相談がある」
 「サラリーマンなので期待に応えてしまう」(東芝グループ社員)。高い収益目標の達成を求める歴代トップによるプレッシャーが、巨額の利益水増し問題に発展した東芝。どの企業でも起こりかねない構図は、日本企業の会計への信頼を大きく揺るがしている。
■機能不全
 「極秘の相談がある」。社長を辞任した田中久雄氏は2013年9月、久保誠副社長(当時)にパソコン事業の利益のかさ上げを要求。会計問題を調査した第三者委員会の報告書は、組織的に不適切な会計処理を隠していた実態を描き出した。東芝は「委員会等設置会社」に早くから移行するなど社内のチェック体制の改革に積極的に取り組んだ。「正直言って驚いている」(JFEスチールの柿木厚司社長)との声が上がるほどで、水増し問題が発覚するまでは「企業統治の優等生」と期待されていた。しかし社外取締役らで構成する監査委員会は機能せず、利益水増しは長期間、社外に漏れなかった。東芝元幹部は「委員会は追認するだけの機関だった」と振り返る。「日本を代表する企業が組織的に利益を水増ししており、それなりに衝撃を受けた」。田中氏ら歴代3社長が辞任した21日に記者会見した第三者委員会の上田広一委員長は淡々と語った。
■プロ欺く
 組織ぐるみの隠蔽(いんぺい)は、東芝を担当する新日本監査法人の監査もすり抜けた。第三者委は「事実と異なるストーリーを組み立てた資料を提示し、事実確認が困難な状況を巧みに利用した」とプロの目もごまかした手法を報告書で分析した。第三者委は監査の適否について評価を避けたが、麻生太郎金融担当相は「会計士は何をしていたのか」と苦言を呈した。証券取引等監視委員会が検査する東芝だけでなく、監査法人も責任を問われる可能性がある。
■信頼失墜
 社会貢献を経営の理念に掲げ、財界や政府の要職にも人材を輩出した巨大企業の信頼は地に落ちた。東芝はチェック体制が機能しなかった反省から社外取締役の割合を増やすなど改革を急ぐが、外部の目は厳しい。投資家向け広報に詳しい戦略的グローバルIR協会のマイケル・オーエン代表理事は「米国なら経営トップは逮捕されている」と指摘。麻生金融担当相は東芝への不信感が募ると「日本のマーケットが信用されなくなる」と警告する。トップの意向をくみ取り、組織的にルールを破りかねない−。東芝の失態は、日本企業のイメージ悪化につながる恐れがある。 東芝のチェック体制 東芝の取締役会は、21日に8人が退任するまで16人の取締役のうち、元外務官僚や大学教授などの社外取締役が4人いた。執行役の職務が適正に行われているかをチェックする監査委員会は、生え抜きの取締役が委員長を務め、3人の社外取締役が加わっていた。利益水増し問題を受け、取締役会の過半数を社外取締役にする方針のほか、監査委の委員長に社外取締役の伊丹敬之東京理科大教授を選任した。

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150721&ng=DGKKASDZ20HAW_Q5A720C1NN1000 (日経新聞 2015.7.21) 東芝に「利益至上主義」、第三者委報告 「必達」トップが圧力 上司に逆らえぬ企業風土
 東芝の第三者委員会の調査報告書では同社の利益至上主義や予算必達を求めるトップの圧力が不適切会計を招いたことが明らかになった。リーマン・ショックや東日本大震災など事業環境の変化で売上高を伸ばせないなか、目先の利益にこだわるトップの意向を受けて不適切な処理が全社に広がっていった。調査報告書は「コーポレートの経営トップら、または社内カンパニーのトップらが『見かけ上の当期利益のかさ上げ』を行う目的を有していた事実が認められる」と断じた。田中久雄社長や前社長の佐々木則夫副会長は第三者委の調査に損失計上の先送りの意図は無かったと否定しているが、現場は実質的な指示と受け止めた。
●「チャレンジ」
 本体の社長らがカンパニートップや子会社社長と面談する「社長月例」では「チャレンジ」と称した収益改善の目標値を設定。とりわけ佐々木副会長が社長を務めた2011、12年度は過大な目標が示されていた。報告書は「各カンパニーのトップらは目標を必達しなければならないというプレッシャーを強く受けた」と指摘した。これが不適切会計を助長する要因になったようだ。営業努力では不可能な数字を出すために各カンパニーは来期以降の利益を先取りしたり、当期の費用計上を先送り。その反動で次の期はさらに多額の不適切会計に染まるという泥沼に陥った。東芝OBは「リーマン・ショック後に広がった利益至上主義がこうした事態を招いた」とみている。東芝はリーマン前に7兆円を超えていた売上高が主力の半導体事業の不振もあり、一時は5兆円台後半まで沈んだ。東日本大震災でもう一つの柱と期待した原子力事業も国内外で原発新設計画が凍結され、先行きが不透明になった。将来の成長事業より目先の利益という風潮は広がる一方だった。「上司の意向に逆らうことができない企業風土が存在した」。報告書では上意下達が厳しい東芝の企業体質を指摘。「ルールに基づく会計処理よりも、上司の承認を得られなければ実行できないという事実上のルールが存在した」と批判した。
●操作は経営判断
 なぜ過ちを防ぎ、正すことができなかったのだろうか。報告書は会計処理の担当者から事業部長、社長に至るまで利益を優先し、「適切な会計処理に向けた意識が欠如していた」としている。企業会計についても一部で「十分な知識を有していない状況がみられた」という。不適切処理を想定した内部統制も構築されていなかった。第三者委は前々社長の西田厚聡相談役、前社長の佐々木副会長、田中社長と直近3代のトップに直接聞き取り調査した。予算必達への圧力が強まったのは西田氏の社長時代からで、佐々木社長時代にその傾向がより強くなった。田中氏はこれを追認したかたちだ。報告書では不適切会計が組織的に実行され、継続したと断定。「経営判断として行われたものと言うべきで、是正は事実上不可能だった」と結論づけた。

<ウェスチングハウスの損失>
*2-1:http://dot.asahi.com/wa/2015072100110.html (週刊朝日 2015年7月31日号より抜粋 ) 9千億円の“巨額損失”が新たに発生? 東芝を食い潰した日米の原発利権
 名門企業・東芝が揺れている。不適切な会計は当初500億円強とされたが、それは枝葉末節の話。東芝が社運をかけて2006年、企業価値の3倍の約6千億円で買収した米国大手の原子炉メーカー「ウェスチングハウス」が3.11以降、不良債権化。最大で9千億円の“損失”になるという。社長らの進退問題に発展した疑惑の裏で蠢(うごめ)く原発利権を追う。東芝は「ウェスチングハウス」に相場の3倍以上をも投じたが、その内訳はどうなっていたのか。会計評論家の細野祐二氏が説明する。「実体価値は2千億円ほど。そのほかは、のれん代などが4千億円だったとされています」。のれん代とは、ノウハウや顧客との関係など、無形の固定資産のこと。買収先企業の「見えない価値」への投資であり、6千億円が適正な金額と言えるのか。ただ、東芝は買収によって、原発ビジネスが約2千億円から15年には約7千億円、20年には約9千億円に拡大すると計画していた。「06年に経産省が『原子力立国計画』を発表し、既存原発の60年間運転、30年以降も原発依存度30~40%を維持、核燃料サイクルの推進、原発輸出を官民一体で行うとぶち上げました。東芝はその先陣を切ってコケた。計画を当時まとめたのが現在、安倍首相の秘書官として出向している経産官僚らです」(元政府高官)。しかし、原発事業は東日本大震災による福島原発事故を契機に落ち込んだ。世界の原発マーケットも冷え込み、大きく歯車が狂い、結果的に6千億円という過大投資が経営の足を引っ張る原因になったと見ていい。東芝の稼ぎ頭だった原発事業だが、欧米を中心に原発ビジネスのマーケットは縮小傾向だ。環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏は言う。「アメリカでは建設のキャンセルが続いているし、チェコやハンガリーでは建設しようとしても、なかなか形にならない。その影響でフランスの原子炉メーカー・アレバは約6千億円の巨額負債を抱え、事実上倒産しました。フィンランドのオルキルオト原発などは原発ビジネスがうまくいかない代表的なケースで『原発経済界のチェルノブイリ』と呼ばれています」。オルキルオト原発3号機は、アレバとドイツのシーメンスの合弁で09年の試運転を目指していた。しかし、当初の予算額をオーバーするなどして、シーメンスが撤退。いまだに営業運転のメドが立たない。「コストアップの要因は、安全設備の複雑化にあります。原発では、小さなものを含めれば山のように事故が起きています。よって、規制が厳しくなり、それに対応するためのコストが増していくのです」(飯田氏)。原発輸出に展望は見いだせない状況なのだ。細野氏は言う。「第三者委員会が言っている1500億円だとかいう金額は枝葉末節のこと。本丸はウェスチングハウスの減損です。原発事業が落ち込むなか、ウェスチングハウスののれん代などの4千億円は減損しなければならないでしょう」。減損すれば大赤字だ。そうなると、11年3月期に計上されていた5千億円の繰り延べ税金資産も取り崩す必要性が出てくる。繰り延べ税金資産は将来的に黒字になることを前提に資産に計上できる。赤字が続くと計上が認められなくなり、資産が一気に減る。「4千億円+最大5千億円で、合計9千億円のマイナスで新たな巨額損失となります」(細野氏)。ウェスチングハウスを減損すると繰り延べ税金資産が大幅に減り、債務超過となる危険性もある。原発事業の損失を他部門で埋めようとした焦りが、今回の利益水増しの動機になったとみられるのだ。

*2-2:http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/100463/090200027/?rt=nocnt
(日経BP 2015.9.2) 東芝不正会計、過大な原発事業計画が失敗の原点
 組織的に利益を水増ししていた「不適切会計」問題の責任をとり、東芝の田中久雄社長をはじめ歴代の3社長が7月21日付で辞任したことは以前の本コラムで書いた。この9月末から新体制が発足し、取締役会を構成する11人の取締役のうち、社内取締役が4人、社外取締役が7人で、半数以上が社外からとなる。
●新体制発表も有価証券報告書提出を再延期
 新たな社外取締役に三菱ケミカルホールディングス会長の小林喜光氏、アサヒグループホールディングス相談役の池田弘一氏、資生堂相談役の前田新造氏といった有力企業の社長経験者3人のほか、会計士2人、弁護士1人が就任する。新しい経営体制を発表し、イメージを刷新すると東芝が打ち出したのは8月中旬のことだが、8月31日、この日に予定していた2015年3月期の決算発表を再度延期した。米国子会社での不適切な会計処理など約10件が新たに判明したためだ。従業員の内部通報や監査法人の監査でわかったという。31日に都内の本社で会見した室町正志社長は「改めて深くお詫びする」と陳謝するとともに、9月7日までに決算発表と有価証券報告書の提出ができない場合には「進退も含めて考えたい」と述べた。
●「不正会計の原点はウェスチングハウス買収」(日経ビジネス)
 東芝の不正会計を調査した第三者委員会の報告書(7月20日発表)によると、2009年3月期から2014年4~12月期で計1518億円の税引き前利益を水増ししており、さらに568億円の追加修正額(8月18日発表)が明らかになっている。辞任した歴代社長が「チャレンジ」と称して各カンパニー社長に収益改善の目標値を示し、その達成を迫ったという。また経営陣はメールや電話で「工夫をしろ」などと圧力かけて利益のかさ上げを迫るなどして、多くの事業部門が不正の会計を組織的に行ってきたとされる。なぜ「名門」「老舗」と呼ばれた東芝がこんな過ちを犯したのか。その謎に迫る記事が、日経ビジネス8月31日号の特集「東芝 腐食の原点」に掲載されている。特集第2部の「不正の動機は何か 6600億円買収の誤算」と題したリポートだ。記事によれば、東芝が不正会計を処理するようになった原点は、米国の原子力発電機器大手ウェスチングハウス(WH)の買収だったという。2006年、東芝はウェスチングハウスを約5400億円で買収、後の追加出資分を含めると買収総額は6600億円になった。実は当初、ウェスチングハウスは三菱重工業が買収しようとしていた。その買収額は2000億円程度だったが、結局は買収を見送っている。この2000億円と比べれば、東芝の買収総額がいかに高いかが容易に想像できる。(以下、略)

*2-3:http://www.huffingtonpost.jp/foresight/toshiba-nuclear-power_b_8131564.html (Huffpost Japan  2015年9月14日) 「東芝」だけではない「原発事業」の世界的衰退
 9月7日、粉飾決算問題の渦中にある東芝が4カ月遅れでようやく発表に漕ぎ着けた2015年3月期決算。同日の夕刊各紙は1面トップで「東芝、利益減額2248億円」(日本経済新聞)、「東芝、不正会計2248億円」(朝日新聞)などと過去7年間の利益水増しの総額を見出しに取っていた。だが、重電業界担当のアナリストたちの注目の的は、同社の電力・社会インフラ部門、中でも原子力発電事業での損失計上の有無だった。案の定、米テキサス州で手がけていた原発建設プロジェクトで同社は新たに410億円の減損を余儀なくされた。4年前の東京電力福島第1原発事故をきっかけにパートナーの企業が相次ぎ撤退し、事実上頓挫したにもかかわらず、「誰も諦めたわけではない」と東芝幹部が強弁を続けてきた、いわくつきの案件である。
●「品揃え効果」の案件だったが......
 正式名称は「サウス・テキサス・プロジェクト(STP)」。米電力大手NRGエナジー(ニュージャージー州)がテキサス州ヒューストン市近郊に出力134万kWの原発2基(3号機と4号機)を増設するという計画で、2008年3月に東芝が受注。建設費は100億ドル(約8000億円、外貨の円換算は公表当時の為替レートによる、以下同)、2015~2016年の運転開始を目指していた。このプロジェクトが東芝にとってとりわけ重要だったのは、受注した2基は沸騰水型軽水炉(BWR)の改良バージョン(ABWR)であり、加圧水型軽水炉(PWR)を専門とする子会社の米ウエスチングハウス(WH)ではなく、東芝自身の原発部門が初めてモノにした海外案件だったからだ。世界初の商用原発は、英国が1956年にカンブリア州コールダー・ホールで稼働させたマグノックス炉(黒鉛減速炭酸ガス冷却型原子炉)だったが、構造が複雑で頻繁な燃料交換が必要といった難点があった。1960年代半ば以降は減速材や冷却材に水を使う軽水炉が主流となり、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が世に送り出したBWRと、WHが開発したPWRが市場を席巻。日本勢では歴史的にGEと関係の深い東芝と日立製作所がBWRを、三菱重工業はWHと提携してPWRをそれぞれ手がけてきた。そんな業界の構図を一変させたのが、2006年に54億ドル(約6400億円)の値がついた東芝のWH買収である。BWR陣営の東芝がPWR陣営の旗頭であるWHを傘下に収めたわけで、社長の西田厚聰(71)はじめ当時の東芝経営陣は、「これで原子炉の品揃えが広がり、受注を取り逃がすことがなくなる」と胸を張ったが、そうした「品揃え効果」をまざまざと見せつけたのが、このSTP案件だった。
●トップ判断で迷走
 ところが前述のとおり、2011年3月11日に起きた福島原発事故がプロジェクトを暗転させる。実は、STPではNRGが22億ドル(持ち株比率88%)、東芝が3億ドル(同12%)を出資して「ニュークリア・イノベーション・ノース・アメリカ(NINA)」という事業会社を設立していたのだが、このNINAに東京電力が最大2億5000万ドル(約200億円)出資することが2010年5月に決まっていた。NRGはリスク分散を目的にジャパン・マネーの積極的導入に動き、(今となっては皮肉なことに)3.11以前は最優良企業だった日本の電力最大手に出資を持ちかけ、海外進出を次世代戦略に掲げていた東電も快諾していたのだが、福島原発事故で破綻に瀕した同社はそれどころではなくなり、出資を凍結。さらに事故から1カ月余り後の4月19日には、NRGが「株主に対してこれ以上の投資を正当化することができなくなった」(デイビッド・クレインCEO=最高経営責任者=)として、STPからの撤退を表明したのである。その後の東芝の往生際の悪さに比べると、当時のNRGの対応の素早さには刮目すべきものがある。撤退表明に伴い、NRGは2011年1~3月期に、すでに発注済みだったSTP原発3号機と4号機に関する減損を行い、4億8100万ドル(約400億円)の特別損失を計上した。事業会社NINAの88%の株式を保有していたNRGが撤退し、将来約10%を出資予定だった東電の事業参加も絶望的になったのだから、当然のことながら東芝もこの時プロジェクトを断念(少なくともNRGと同様にSTP関連資産の減損を実施)すべきだったのだが、「新たな提携先と交渉中で減損の必要はない」とし、その後もずるずると決断を先送りにしていった。当時の東芝社長は、今回の粉飾決算問題で「首謀者の1人」として辞任に追い込まれた前副会長の佐々木則夫(66)。原発部門出身でWH買収でも立役者の1人だった佐々木は、福島事故に続くSTPの頓挫が自身の権力基盤を揺るがし、この頃すでに兆候のあった前任社長の西田との主導権争いで不利に働くことを懸念していたらしい。結局、「STP案件は継続」とのトップ判断で、このプロジェクトは迷走を始める。
●監査法人の「甘さ」
 その端緒が垣間見えるのは、2年後の2013年9月。東芝は米テキサス州でシェールガス液化事業を手がける「フリーポートLNGプロジェクト」の権益を取得したと発表。同プロジェクトは3系列に分かれ、第1系列は中部電力と大阪ガスが、第2系列は英BPがそれぞれ取得済みで、東芝は韓国SKグループと組んで第3系列に触手を伸ばした。契約期間は2019年から20年間で、輸入量は年間220万トン、取得金額は非公表だった。当時はシェールガス・ブームの真っ盛り。ある業界誌は「衝撃!米LNGを輸入する東芝のしたたかな戦略」(「エネルギーフォーラム」13年12月号)とこのニュースに飛びつき、東芝は「世界の天然ガス火力市場へと営業を拡大していく」などと論評したが、社内事情に詳しい関係者は、真の狙いが「STP案件を延命させること」と密かに指摘していた。というのも、2013年当時、東芝は会計監査を委託している新日本監査法人から、STP案件の減損処理を執拗に迫られていた。「NRGに代わる新たな投資家を見つける」と減損を回避したい東芝は釈明を続けていたものの、2年が経過してもSTPの新たなスポンサーは一向に現れない。そこで東芝は、電力を大量消費するシェールガスのLNGプロジェクトに目をつけた。仮にSTP3、4号機が完成に漕ぎ着け、運転を開始した暁には、この原発が生み出す電力を購入してもらうことを条件にLNGの権益を取得したというわけだ。フリーポートは「STPの一助になればと考えて始まった案件」と、当時の関係者はすでに認めていた(「週刊ダイヤモンド」2014年1月25日号)。ただ、それでも新日本監査法人は完全に納得はせず、2014年3月期に東芝はこの時点でSTPに投じていた出資と融資の総額約600億円のうち、310億円の減損処理を余儀なくされた。NRGが撤退した2011年4月時点で、STP関連減損(総額4億8100万ドル)に占める東芝の持ち分は1億5000万ドル(約120億円)といわれていた。その後の2年間で東芝にとってのSTP関連のリスク資産は120億円から600億円へと5倍に膨らんでいたことになる。新日本の甘さは、フリーポートLNGという将来の電力の「買い手」が1社見つかったというだけで、プロジェクトとしてのSTPの頓挫が誰の目にも明らかだったにもかかわらず、310億円の減損で矛を収めたことにある。結局、粉飾発覚後の今回、東芝は2015年3月期にSTPについて410億円の追加減損(東芝は「現状での売電/投資の交渉経過を評価し、出資及び貸付金等で全額(減損を)実施」と説明)を計上した。2度の減損の総額は720億円。4年前の120億円の6倍である。
●巨額訴訟に直面した三菱重工
 欧米の先進国市場で原発ビジネスが終焉に向かっていることは否定しようがなく、巨額の案件を受注してきた大手メーカーがプロジェクトの破綻で泥沼にはまりつつあるのは東芝のケースに限らない。三菱重工が米カリフォルニア州のサンオノフレ原発の配管破損事故をめぐり、事業会社の米電力大手サザン・カリフォルニア・エジソン社(SCE)から巨額の損害賠償を請求されている問題もその1つ。事実関係は拙稿(「『廃炉』で訴訟される三菱重工――『原発輸出』のリスクとは」2013年7月31日)に詳しいが、かいつまんで説明すると、三菱重工が納入した同原発3号機の蒸気発生器の配管で2012年1月に異常な磨耗が発生して原子炉が緊急停止、放射性物質を含む微量な水が漏れ出した。その後、2号機でも同様な磨耗が確認され、米原子力規制委員会(NRC)は2基(ともにPWR)の原子炉の稼働を禁止するとともに、同年6月になって「三菱重工の不十分なコンピュータシミュレーションの分析が設計ミスを招いた」という調査結果を公表。その後、2基の原子炉に設置されている蒸気発生器にある約3万9000本の細管のうち、約3400本に擦(こす)れや振動による異常な磨耗が見つかり、破損箇所は1万5000カ所以上に上ったことも明らかになった。SCEは周辺住民の強い反対で再稼働を断念。2基の原発を廃炉にすることを決め、三菱重工に損害賠償を求める方針を明らかにしていた。廃炉の決定は2013年6月。これまでSCEは賠償金額を「40億ドル(約4000億円)以上」としていたが、今年7月27日、SCEは国際商業会議所(パリ)に証拠書類を提出し、正式に仲裁を申し立てた。提示された請求額はなんと75億7000万ドル(約9300億円)。三菱側はSCEの請求額について「交渉の経緯、契約履行の事実を正確に反映していない不適切な内容」とし、契約上の同社の責任は「1億3700万ドル(約169億円)が上限」という従来の立場を崩していない。だが、百戦錬磨の米電力大手が起こした訴訟だけに、株式市場ではこのニュースが伝わった7月28日以降、三菱重工株の急落を招いた。
●前途多難の仏国有「アレバ」
 原発大国フランスでは、フランス国有の原子力大手アレバが2014年12月期に48億ユーロ(約6170億円)の最終赤字を計上して事実上破綻。8割超の株式を保有するフランス政府は今春、アレバを原子炉部門と核燃料部門に解体し、このうち原子炉部門の株式の過半をやはり政府が8割強の株式を持つフランス電力公社(EDF)に譲渡して再建に取り組ませる方針を打ち出した。しかし、前途は多難だ。9月3日にEDF社長のジャン=ベルナール・レヴィは、フランス北部でアレバが建設を進めていたフラマンビル原発3号機の完成が従来の予定より1年以上遅れて2018年第4四半期にずれ込み、建設費も従来金額を24%上回る105億ユーロ(約1兆4000億円)に膨れ上がるとの見通しを明らかにした。フラマンビル原発3号機は、フィンランドで建設中のオルキルオト原発3号機と同じように、アレバが鳴り物入りで世界に売り込んだ最新鋭の欧州加圧水型原子炉(EPR)を採用。だが、いずれも工事が難航して進まず、建設費は嵩むばかり。フラマンビル3号機は工期が6年遅れて建設費は当初の33億ユーロから85億ユーロ、さらに今回105億ユーロに膨張。オルキルオト3号機も工期は9年遅れ(現在は2018年完成予定)、建設費は30億ユーロから85億ユーロ(約1兆1300億円)へと約3倍になり、それでも完成のメドが立たず、建設費の予算超過をめぐって発注元であるフィンランド産業電力(TVO)との間で係争が続いている。もはやリスクに見合うビジネスとはいえず、まともな経営者なら「一刻も早く逃げ出したい」というのが本音ではないか。(敬称略)

*2-4:http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/120100165/?n_cid=nbpnbo_twbn&rt=nocnt (日経ビジネス 2015年12月2日) スクープ 東芝、原発幹部さえ疑う「64基計画」、経営幹部の電子メールを入手、不正会計問題は経営問題に発展へ 
 東芝がようやく米原発子会社ウエスチングハウスでの減損の詳細を開示し、事業計画を発表した。2029年度までに64基の原発を新規に受注するという計画は、原発部門の幹部さえ“非合理的”と認識していた。日経ビジネスはこれを裏付ける電子メール記録を入手した。東芝の不正会計問題は経営問題に発展してきた。東芝は11月27日、米原発子会社ウエスチングハウス(WH)の減損問題について記者会見し、新たな事業計画を発表した。2029年度までの15年間で、新たに「64基」の原発建設を受注するのがその骨子だ。2011年の東日本大震災以降、東芝・WHは原発の新設受注で苦戦している。にもかかわらず64基という極めて高い目標を掲げた裏側には、WHでこれ以上の減損を回避しなければならないという事情がある。東芝社内でさえこの目標が“非合理的”であると認識していることが、日経ビジネスが入手したWH首脳宛ての電子メール記録で判明した。そもそも東芝が不正会計に手を染めたのは、事業全体で稼ぐ力が弱体化しているため。社長の室町正志が「売却できる事業は売却する」と会見で述べるなど、否応なしに構造改革が迫られている。この状況で、WHがさらなる減損に追い込まれれば、東芝の屋台骨が揺らぐことになる。
●「苦し紛れ」に基数を増加
 東芝は本誌(日経ビジネス)が指摘するまでWHの経営状況を開示せず、2012年度と2013年度に巨額減損を計上し、赤字に陥っていたことを隠蔽してきた。室町は会見で「不十分な開示姿勢を深くおわびしたい」と陳謝。2006年の買収以降、WHが2億9000万ドル(約350億円)の累積営業赤字に陥っていることも明らかにした。一方で2014年10月の「減損テスト」の結果、東芝が連結で抱えるのれんについては減損が不要であると説明した。そのうえで発表したのが、冒頭の64基計画である。ただこの計画も、内部資料を基に分析すると“結論ありき”で策定されたものと言わざるを得ない。下のグラフで示したように、東芝は原子力事業の利益が2018年度以降に急増するとしている。電力・社会インフラ事業グループを所管する副社長の志賀重範は「全世界で約400基の新設計画がある」と強調。WHが米国と中国で計8基を建設している実績が、有利に働くと説明した。

*2-5:http://toyokeizai.net/articles/-/94709?utm_source=Twitter&utm_medium=social&utm_campaign=auto (東洋経済 2015年12月5日) 東芝、初の原発輸出が今も「塩漬け」だった、米国でWH以外にも厳しい案件が残っている
 東芝初の原発輸出が、受注から6年経った今も建設が行われず、損失を出し続けている。この案件だけで2013年度310億円、2014年度410億円の合計約720億円の減損損失を計上。2006年に買収した、米原子力会社ウエスチングハウス(WH)社ののれん代(約3441億円)の減損が唯一の懸念材料と思われていたが、東芝自身の原子力事業も暗雲が漂っている。720億円もの減損損失を計上したのは、米テキサス州マタゴルダ郡でABWR(改良型沸騰水型原子炉)を2基建設する「サウス・テキサス・プロジェクト(STP)」だ。東芝は2009年2月、プラントの設計、調達、建設を一括受注。これを足がかりとして、原発輸出の加速を目指していた。当初の計画では、2012年に建設運転許可(COL)が下り、2016年~2017年に運転を開始するはずだった。ところが、2011年3月の東京電力・福島原発事故を受けて、米原子力規制委員会(NRC)が、稼働中の全原発について安全性確認の実施を決定。東芝とともに計画を進めていた、独立系発電会社で米電力大手のNRG社は、新規原発建設の認可獲得に時間とコストがかかることを懸念し、2011年4月に追加の投資中止を決定。早々とSTPに見切りを付けた。
●代わりの出資者が見つからない
 STPは東芝とNRGの合弁会社が担当(当初の持分比率は、NRG88%・東芝12%)。NRGは2011年1月~3月期決算で、4.81億ドル(当時約400億円)の特別損失の計上を決定、うち1.5億ドル(当時約120億円)が東芝の負担だ。本来であれば、東芝も2011年度に減損すべきだったが、「新たな提携先と交渉中で、減損の必要はない」とし、損失を計上してこなかった。2013年度になり、急に減損したことを考えると、監査法人から迫られたことは想像に難くない。NRGが想定した通り、STPのCOL審査は長引き、2016年1月に建設許可が下りる見通しだ。東芝の志賀重範副社長は、「全ての審査が終了している」と説明するものの、肝心の出資者が見つかっていない。米国では外資100%出資の建設には制限があるため、東芝はNRGに代わるパートナーを、必ず見つけなければならない。とはいえ、NRGに続く出資者が4年も出てこないのは、福島原発事故の影響だけでない。STPの建設を計画しているテキサス州は、天然ガスが採掘できるため、原発のコスト優位性が低下しているのも一因だ。例えば三菱重工業も同じテキサス州で、2009年から別の原発建設に関わっていたが、2013年にCOL申請を中断。「米国市場での(原発に対する)減速などもあり、現地の電力会社が総合的に判断した」(三菱重工)と見切りをつけたのである。海外原発に詳しい研究者も、「天然ガスが多く採掘できるテキサス州で、原発は採算に合わないと判断したようだ」との見解を示す。
●今後15年で64基受注という計画は楽観的過ぎる
 事業説明会後、記者団に取り囲まれる室町社長出資者が見つからず、費用だけがかさむ状況下でも、東芝は「1月に建設許可が下りれば、建設の可能性を追求していく」(志賀副社長)と強気の姿勢は崩さない。東芝初の原発海外輸出だけに、諦めるわけにはいかないのだろう。11月27日に開かれた原子力事業説明会でも、東芝はアグレッシブな計画をぶち上げた。WHを含めた東芝全体の原子力事業で、2017年度に売上高6400億円(2014年度6178億円)、営業利益500億円(同29億円損失)、今後15年間で64基の建設をするというものだ。現在、WHが中国と米国で各4基の計8基を建設中だが、これらの案件は福島原発事故以前の2007年~2008年に受注したもので、事故後に建設を開始できた原発は一つもない。それどころか世界を見渡しても、2014年に新規着工された原発は、わずか3基にとどまる。それでもWHのダニエル・ロデリック社長は、「原子力の需要は高まっている。来年にはインドで契約が結べると考えている」と自信を見せる。だが、STPのほか、現状を鑑みるに、新たな64基受注計画も厳しいことは疑いない。東芝のあまりにも楽観的すぎる見通しに対し、今後ものれん減損など不安材料がつきまとう。

*2-6:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160204/k10010397131000.html
(NHK 2016年2月4日) 東芝の最終赤字 過去最大の7100億円に拡大見通し
 東芝は、不正会計の問題のあとパソコンなど家電事業の構造改革にかかる費用が増加したことなどから、ことし3月期の1年間のグループ全体の最終損失がさらに拡大して、7100億円の過去最大の赤字になる見通しとなりました。東芝が4日、発表した去年4月から12月までの9か月間のグループ全体の決算によりますと、売り上げは4兆4216億円と前の年の同じ時期と比べて6.4%減少したほか、本業のもうけを示す営業損益は2295億円の赤字に転落しました。これは、不正会計の問題のあと構造改革の対象となっている、パソコンやテレビの販売不振が続いていることや、主力の半導体事業も販売価格の下落などにより、収益が悪化したことなどによるものです。そのうえで、パソコンなど家電事業の構造改革にかかる費用が増加したことや、電力などのインフラ関連の不採算事業で損失の費用を計上したことなどから、ことし3月期の1年間の最終損失はさらに膨らみ、これまで予想していた5500億円の赤字から過去最大の7100億円に拡大する見通しとなりました。このため、東芝は、これまで行っている役員報酬の一部返上に加えて、課長級以上の管理職についても給与の減額を行うことを合わせて発表しました。HDDやヘルスケアで早期退職募集や配置転換東芝は構造改革の一環として、収益が悪化している「ハードディスクドライブ事業」や事業の見直しを決めている「ヘルスケア事業」について、早期退職の募集や配置転換を行うと発表しました。それによりますと、パソコンなどのデータの記憶に使われるハードディスクドライブ事業は今後、市場の縮小が見込まれるとして、国内事業に携わっているおよそ150人を対象に早期退職の募集や配置転換を行います。また、医療機器の製造や販売を行うヘルスケア事業についても、中核的な子会社の「東芝メディカルシステムズ」の株式の過半数を売却することをすでに決めていることから、国内事業に携わっているおよそ200人のうちおよそ90人を対象に、早期退職の募集や配置転換を行うということです。東芝は、今年度、家電や半導体の事業などで、国内で5800人の人員削減の計画をすでに決めています。これとは別に今月末から早期退職を募集する予定で、「希望者には、再就職の支援も行いたい」としています。室町社長「今年度、うみを出し切る」東芝の室町正志社長は会見で、ことし3月期の決算の見通しを過去最大の7100億円の最終赤字に下方修正したことについて、「大変遺憾であるが、業績予想を修正することになった。業績見通しを公表してから1か月余りで大きな修正となったことを深くおわびしたい」と陳謝しました。さらに室町社長は、「今年度なんとしてもうみを出し切って、来年度、業績をV字回復させたい」と述べたうえで、「金融機関からもうみを出し切るように言われている。また金融支援については全力を尽くすという話をいただいている」として、金融機関から新たな融資を受ける方向で調整していることを明らかにしました。西室氏と岡村氏 相談役を退任へ東芝の室町正志社長は、いずれも東芝の元社長で現在、日本郵政の社長を務めている西室泰三氏と日本商工会議所の前会頭の岡村正氏が相談役を退任することを明らかにしました。このうち、西室氏は来月末で、岡村氏は6月の株主総会を経て退任し、新たに設ける「名誉顧問」とすることにしています。これにより、東芝の相談役制度は廃止となり、室町社長は、「名誉顧問には、会社の経営とは一線を画し、社外の活動で、東芝の存在感の維持向上を図ってほしい」と述べました。

<日印原子力協定>
*3:http://digital.asahi.com/articles/ASHDD5GMCHDDULFA00Q.html
(朝日新聞 2015年12月12日) 日印首脳、原子力協定に「原則合意」 原発輸出可能に
 安倍晋三首相は12日、インドのニューデリーでモディ首相と会談した。両首脳は、日本からインドへの原発輸出を可能にする原子力協定について「原則合意」した。インドは核不拡散条約(NPT)に加盟しておらず、日本が非加盟国と協定を締結すれば初の事例となる。また、両首脳はインドの高速鉄道計画をめぐり、一部区間で日本の新幹線方式を採用することも確認した。日印の原子力協定交渉は民主党政権時代の2010年に始まった。唯一の被爆国である日本は核廃絶を目指す立場から、核実験を1998年以来、一時停止しているインドが実験を再開した場合、日本の協力を停止する措置を盛り込むことを求めてきた。だが、この日公表された共同声明や別途署名された原子力協定に関する覚書にはこうした措置は盛り込まれておらず、今後の交渉に委ねられた。NPT非加盟のインドと協定を締結すれば、核不拡散を掲げる日本の原子力政策は大きな節目を迎えることになる。両首脳が会談後に発表した共同声明で、原子力協定については「技術的な詳細が完成した後に署名されることを確認」とした。安倍首相は会談後の共同記者発表で「日印間の平和的目的の原子力協力に基礎を与える協定につき、原則合意に至った」と述べた。日本側の説明によると、安倍首相は首脳会談で、万が一インドが核実験を行った場合は協力を止めることを伝えたという。日本政府はこの発言がインドへの歯止めになるとしている。また、会談では商業都市ムンバイとアーメダバード間(約500キロ)の路線で、日本の新幹線方式を採用することを確認。日本は総事業費約1兆8千億円のうち、最大81%の円借款を低金利で供与する。新幹線が導入されれば海外では台湾に次ぎ2例目となる。このほか、両首脳は海洋進出を強める中国を念頭に南シナ海情勢について「変化に留意する」との認識で一致。防衛装備品・技術移転や秘密軍事情報保護の協定も結び、安全保障分野で協力を進めることを確認した。
■日印共同声明の骨子
 ●防衛装備品・技術移転協定、秘密軍事情報保護協定の締結歓迎
 ●日印米・日印豪3カ国対話など促進
 ●原子力協定の合意歓迎。技術的な詳細が完成した後に署名されることを確認
 ●日本の新幹線システム導入に関する覚書署名を歓迎
 ●南シナ海における変化に留意。地域の緊張につながる一方的な行動回避を呼びかけ
 ●核兵器廃絶に向けたコミットメントを再確認

<外部監査>
*4-1:http://mainichi.jp/shimen/news/20151119dde001020034000c.html?fm=mnm(毎日新聞2015年11月19日)東芝:不正会計問題 監査法人、処分へ 金融庁、改善命令など検討
 東芝の不正会計問題で、金融庁が同社の会計監査を担当していた新日本監査法人に対し、公認会計士法に基づく行政処分を行う検討に入ったことが19日分かった。監査法人を指導・監督する公認会計士・監査審査会が年内にも金融庁に対し、新日本への処分を勧告し、これを受け金融庁が処分する見通し。業務改善命令などを検討している模様だ。東芝は今年9月、2009年3月期以降の決算を修正した結果、利益水増しによる決算の下方修正額は2248億円に上り、歴代3社長が辞任した。新日本はこの間の会計監査を担い、適切な処理だと認めていたため、不正会計を見抜けなかったとして責任を問う声が出ている。公認会計士・監査審査会は9月から新日本への立ち入り検査を開始。業界団体の日本公認会計士協会も調査を進めている。同審査会は新日本について、東芝に対する監査の適正さを確保する体制が十分でなかったとみている。新日本は12年にも、オリンパスの損失隠し事件で監査に不備があったとして、あずさ監査法人とともに金融庁から業務改善命令を受けている。

*4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151224&ng=DGKKZO95464410U5A221C1PE8000 (日経新聞社説 2015.12.24) 監査法人はなれ合い排し虚偽を見抜け
 金融庁は東芝の会計不祥事をめぐり、同社の会計監査を担当した新日本監査法人への行政処分を出した。利益操作を見抜く注意を怠ったことなどが理由だ。3カ月間、新規業務の受注などを禁じるほか、監査法人に対しては初となる課徴金も科す。新日本監査法人は2012年にもオリンパスの粉飾事件に関連して、金融庁から業務改善命令を受けている。大企業の虚偽記載を相次いで止められなかったという事実は重い。監査法人としての信頼回復が急務となる。今回の問題を、新日本監査法人だけの話にとどめてはならない。東芝という著名な大企業の不祥事は、日本全体への国際的な信用に影響しかねない。経済の重要なインフラである監査制度の改革を進めるため、市場関係者が知恵を出し合うときだ。何よりも重要なのは、監査法人として不正な会計処理を見抜く力を高めることだ。米国ではエネルギー大手エンロンの粉飾事件をきっかけに、公認不正検査士という資格を持つ会計士が増えている。犯罪捜査の知見を備えた監査人のことで、世界各地にネットワークを持つ。日本の監査法人もこうした専門職を積極的に育成すれば、利益操作を見抜くだけでなく、不正を抑止する力も高まることになる。公認会計士を証券取引等監視委員会に研修に出し、不正摘発の実務を経験させることも有効だ。書面チェックだけでなく、監査先の企業の倉庫などを通告なしに調査するといった、足を使った監査がいっそう求められる。企業とのなれ合いを排する必要もある。日本では企業との緊張関係を保つため、監査人が一定期間で交代しなければならない。さらに、海外には欧州のように監査法人そのものを定期交代させる制度の導入に動く地域もある。今後、欧州の事例などを注意深く検証し、監査の実効性を高める仕組みづくりを進める必要がある。監査法人は企業が支払う監査手数料を収入源の一つとする。このため企業に遠慮して強くモノが言えないことがある。しかし、厳正さを欠いた監査は長い目で見て企業の利益を損なう。業績の水増しを続けてきた東芝が1万人もの人員削減や事業売却に迫られる事態を見れば、企業にとって厳しい監査が不可欠なことは明白である。

<誤った論点>
*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150722&ng=DGKKASDF21H0F_R20C15A7MM8000 (日経新聞 2015.7.22) 監督機能を明確に 社外取締役、内部通報窓口など 政府指針
 政府は社外取締役の機能強化に向けた指針を策定する。社外取締役の主な役割を、会社の業務や取締役会に対する「監督」と明確にすることで、会社に対するチェックに集中できるようにする。東芝の不適切会計問題では社外取締役の監督機能が骨抜きにされていたため、実効性を持たせるための具体的な事例集も作る。会社法の新たな解釈指針として、経済産業省が週内にも発表する。法務省も参加する経産省内の研究会で、昨年12月から指針を検討していた。会社法では社外取締役は日々の業務執行に関わらないことが原則だ。しかし、業務執行以外での役割や責任の範囲は法律上明確ではなく、本来業務とそれ以外の線引きが難しかった。指針ではこれまでの判例や学説などを踏まえ、社外取締役の主な役割は主に経営陣や業務執行に対する「監督」にあることを明記した。そのうえで監督の中身を例示した。具体的には、会社から独立した内部通報の窓口になることや、不祥事が発生した場合の内部調査委員会のメンバーになることなどを挙げた。社内の法令順守体制を向上させることも役割として例示した。東芝の不適切会計問題では、社外取締役に情報が伝えられておらず、監督機能が無効化されていたことが第三者委員会の報告書で明らかになっている。そうした事態を防ぐための対策を取り上げた事例集も作る。社外取締役との連絡役の社内取締役を置き、社内の情報が常に伝わるようにする仕組みなどを紹介する。

<間違った選択と集中>
*6-1: http://mainichi.jp/select/news/20151024k0000e020203000c.html?fm=mnm
(毎日新聞 2015年10月24日) 東芝:画像半導体売却へ ソニーに 人員削減数千人規模か
 不正会計問題で業績不振に陥っている東芝が、主力の半導体関連事業で工場の一部売却や閉鎖を行う方向で調整していることが24日分かった。デジタルカメラなどに使われる半導体の画像センサーを製造している大分工場の一部をソニーに約200億円で売却する方向。家電などに使われる単機能半導体などを製造する他工場の生産ラインも一部閉鎖を検討している。これに伴い希望退職を募り、人員削減規模は数千人に上る可能性がある。10月末にも正式決定する。東芝の半導体などの電子デバイス部門の売上高は2015年3月期で1兆7687億円。全体の約4分の1を占め、営業利益は2166億円に上る。収益の柱は、スマートフォンなどに使われる記憶装置「NAND型フラッシュメモリー」で、他の半導体事業は赤字になるなど業績が低迷している。同社では「主力の半導体事業でも利益の水増しが行われ、不採算部門のリストラが全く行われていなかった」(関係者)との指摘が出ていた。画像センサーで東芝のシェア(市場占有率)はわずかで事業拡大が見込みにくいため、同センサーで強みを持つソニーへの売却を検討している。一方、単機能半導体などは「買い手を見つけるのさえ難しい」(関係者)として生産ラインを閉鎖する方向だ。東芝の半導体事業では子会社も含めて国内に6カ所の工場があり、約1万2500人が勤務。うち大分工場では従業員約2600人を抱えている。東芝の室町正志社長は10月1日の毎日新聞などのインタビューに対し、半導体事業などのリストラ策の検討を進める意向を示したうえで「場合によっては従業員対策も必要。どこまで踏み込むべきか議論している」と述べ、人員削減も検討していることを明らかにしていた。人員削減は数千人規模に膨らみそうだ。半導体以外でも、家電では海外製造拠点の集約や撤退などの構造改革を進める方針。テレビやパソコンなど他の事業でも事業の大幅な縮小を検討し、財務基盤の強化を図る考えだ。
◇東芝大分工場
 東芝大分工場は、同社の国内有数の半導体生産拠点の一つで、1970年7月に操業を始めた。敷地面積は、東京ドームの8個分にあたる38万3000平方メートルで、従業員は約2600人。スマートフォン(スマホ)やカメラの画像センサー、車や医療機器関連のシステムLSI(大規模集積回路)などを生産している。東芝は九州・山口で、2012年に当時の円高と新興国との競争激化を理由に北九州工場(北九州市)を閉鎖している。大分工場の売却先として検討されているソニーは、九州に画像センサーを主力に製造する完全子会社のソニーセミコンダクタ(熊本県菊陽町)がある。生産拠点は大分県国東市、鹿児島県霧島市、長崎県諫早市など国内7カ所あり、最近はスマホ関連需要の増大を背景に生産を拡大している。
◇東芝の不正会計問題
 インフラ関連工事、半導体、テレビ、パソコンなど東芝の主要事業で利益の水増しが行われていた問題。損失計上を先送りしたり、売り上げを過大計上したりするなどの不正処理が判明し、東芝は2009年3月期以降の約7年間の損益(税引き前)について、計2248億円下方修正した。東芝が設置した第三者委員会は7月、不正会計で組織的な関与があったと認定。現場に対する強い業績改善圧力が指摘され、歴代3社長は引責辞任した。

*6-2:http://www.nikkei.com/markets/kigyo/gyoseki.aspx?g=DGXLASGD14HAV_14092015MM8000&dg=1 (日経新聞 2015/9/14) 東芝、家電国内撤退も 4~6月最終赤字122億円
 東芝の室町正志社長は14日記者会見し、不振が続いているパソコン・家電事業で「国内撤退の可能性もある」と述べ、抜本的な合理化を急ぐ考えを示した。同日発表した2015年4~6月期の連結決算は最終損益が122億円の赤字(前年同期は167億円の黒字)。家電をはじめ主要部門すべてで損益が悪化し、不適切会計の陰で構造改革が遅れていた実態が浮き彫りになった。4~6月期の連結売上高は1兆3498億円と前年同期に比べ5%減った。営業損益は109億円の赤字(前年同期は476億円の黒字)。営業、最終損益とも3年ぶりの赤字になった。中でも不振が深刻なのが、洗濯機や冷蔵庫などの白物家電、パソコン、テレビを手掛けるライフスタイル部門だ。15年3月期決算で1000億円を超える部門営業赤字を出し、4~6月期も206億円の赤字(同51億円の赤字)だった。室町社長は「白物家電は製品の競争力そのものに問題がある」と分析。海外生産比率が高いため円安が足かせになっており、「中国やインドネシアなど海外の製造拠点の集約が必要」と話した。電力・社会インフラ部門では原子力や火力、水力など発電関連が苦戦して106億円の赤字(同100億円の黒字)。屋台骨の半導体も営業利益が27%減少し、全体を支えきれなかった。会計不祥事は東芝にとって「創業以来最大のブランドイメージの毀損」となった。室町社長は「今回の件で顕著に売り上げが落ちているとの認識はない」と話し、販売面への影響については明言を避けた。

*6-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151204&ng=DGKKASDZ03HSY_T01C15A2MM8000 (日経新聞 2015.12.4) パソコン3社 事業統合、東芝・富士通・VAIO交渉へ 国内シェア首位浮上
 東芝、富士通、ソニーのパソコン部門が独立したVAIO(バイオ、長野県安曇野市)の3社はパソコン事業を統合する検討に入った。実現すれば国内シェアで3割強とNECレノボグループを抜いて首位のパソコン企業が誕生する。会計不祥事を受けて東芝が進めるリストラを機に、日本のパソコン勢が生き残りをかけて結集する再編が動き出す。3社は近く統合に向けた具体的な交渉に入る。年内にも基本合意し、来年4月に新体制を発足させたい考え。実現すれば国内のパソコンシェアで計3割強とNECレノボグループ(26.3%)を抜いて首位に躍り出る。VAIOが存続会社となり、各社が出資して事業を移管する案が有力。関連する人員も移し、国内外で開発から製造、販売までを一体運営する案を軸に検討するもようだ。東芝、富士通とVAIOの筆頭株主である投資ファンド、日本産業パートナーズ(JIP、東京・千代田)はそれぞれ3割前後を出資する意向とみられる。東芝は世界初のノートパソコンを世に送り出し市場をリードした老舗メーカー。現在も「ダイナブック」ブランドのノートパソコンが主力だ。富士通も個人向けの「FMV」ブランドやタブレット(多機能携帯端末)などを持つ。東芝は中国・杭州の製造子会社や海外販社を持ち、北米市場に強い。富士通は島根県出雲市やドイツに製造子会社があり、欧州市場が得意だ。2014年7月にソニーが切り離して発足したVAIOもブランド浸透度が高く、根強い人気がある。米調査会社IDCによると、14年の世界のパソコン出荷台数は3億836万台。中国レノボ・グループ、米ヒューレット・パッカード(現HP)、米デルが市場の約半分を占める。富士通と東芝、VAIOの3社のシェアは約6%で世界6位の米アップル(6.3%)に迫る。東芝のパソコン事業の売上高は14年度に6663億円だったが、白物家電などとともに赤字が続く。不適切会計問題が発覚した09年3月期から14年4~12月期のパソコン事業の利益水増し額は578億円にのぼり、事業の売却を含めた大幅リストラを検討していた。一方、富士通はパソコン事業を来年春に分社すると10月下旬に発表済み。14年度に470万台だったパソコン出荷実績は15年度は420万台に減る見通し。2社の事業とVAIOを統合することで間接費の削減や部品調達の交渉力を高める。3社は統合に向けてリストラ素案を作成中。統合効果が乏しいと判断すれば、白紙に戻る可能性もある。

| 経済・雇用::2013.7~2014.6 | 04:55 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.2.2 後始末のできないこれだけの事故を見ても、原発を推進したがるのは何故か? (2016/2/4、8、10、12、16、17に追加あり)
     
      2015.12.29       2016.1.1     2015.12.20     2015.12.21
      西日本新聞        西日本新聞      日経新聞        東京新聞

  
         2016.2.1             2016.2.1          日本の社会保障費  
         愛媛新聞              日経新聞         (スペード社会保障は必要経費で
                                             あるため、国庫負担分から 
                                             資源収入で賄うようにしよう)    
(1)国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)と世界の動向
 COP21は、*1-1のように、途上国を含む全世界が「今世紀後半までに排出と吸収を均衡させる」という目標を掲げる「パリ協定」を採択し、化石燃料に頼らない社会を目指すことを宣言した。これを、CO2の排出削減を痛みを分かち合う制度と捉えれば発展性はないが、より快適なエネルギーを使うための産業革命と捉えればエネルギー関連の投資を拡大して、コストダウンすることができる。

 そして、日本でも自然エネルギーが普及し、*1-2のように、四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)が全基停止して記録的な寒波に見舞われても、電力供給力に占める需要の割合は90%に達した平日は昨年12月以降、3日間だけで、電力の安定供給に影響はなかったそうだ。そして、*1-3のように、四国電力は企業や家庭から買い取る太陽光発電の発電量が上限に達したため、電力供給が過剰となった場合には、買い取り制限するとしているくらいだ。

 それにもかかわらず、日経新聞は、*1-4のように、パリ協定を受けて長期戦略を描く時だとしながら、理由も書かずに突然、「①原子力は今後も維持していく必要がある」「②安全性の高い設備に更新するのが望ましい」「③原子力の信頼回復を急げ」「④中国電力の島根原発3号機など建設半ばで足踏みする原発も稼働への道筋をつけるべき」「⑤放射性廃棄物の最終処分について政府や電力会社は具体的な道筋を示す責任がある」と記載している。しかし、世界銀行は、すでに原発には融資しない方針を定め、世界は既に脱原発に舵をきっているのだ。

 *1-4の記事は、①②の結論が先にあって、③のように、「フクシマの事実を隠しても原子力の信頼回復を急げ」としていることが明らかだ。また、④は現在でも多くの証拠で否定されている上、今後は自然エネルギーのコストがどんどん下がると予想される。その上、⑤のように個別の企業が使った危険性の高い産業廃棄物を原発稼働から40年経った今でも原発の近くの使用済核燃料プールに大量に保管し続け、最終処分の目途すら立たずに政府に頼っている電力会社は、他の産業ではあり得ない怠惰な状況なのである。

(2)電力自由化について
 電力会社が他産業ではあり得ない怠惰な状況でもやってこられたのは、地域独占体制に守られていたからである。そのため、電力自由化で電力の供給に競争原理を導入すれば、*2-1のように、より便利で安く公害の出ない電力供給へと電力の需要側から圧力をかけることができる。電力自由化に対する反対意見もあったが、荷物を送る手段が鉄道のチッキしかなかった頃と比較すれば、宅急便の参入で荷物を送るのが簡単で便利になった結果、市場が拡大したり、これまでできなかったことができるようになって新市場ができたりしたのと同じ成果が現れる筈だ。

 そのため、*2-2のように、九州でも26社が電力小売りに参入する予定で、このうち地場が11社あるというのは、喜ばしいことである。電気エネルギーを地元で作れれば、エネルギー代金が外に奪われることなく地元で還流するため、財政が豊かになることは確実であり、これは、国の規模でも同じだ。

 また、*2-3のように、一般企業も、これまで自家発電を行ってきたため発電能力のある企業が多く、新しい事業者として有望である。そして、*2-4のように、九州では既に九電から特定規模電気事業者(新電力)に切り替えた九州内の企業や自治体が7628件あり、九電離れが原発1基分超あるそうだ。

(3)送配電システム
 *1-3のように、四国電力は「企業や家庭から買い取る太陽光発電の発電量が上限に達したため、今後は電力供給が過剰となれば金銭的な補償なく買い取りを制限する」としており、これは九州電力はじめ大手電力会社で同じである。

 しかし、これでは再生可能エネルギーの足を引っ張る。そのため、*3の電線地中化を行う際に、地方自治体が、上下水道と電力供給のインフラを一緒に設置すれば、①簡単に送配電設備を設置して公平中立な送配電を低価格で行うことができ ②地方自治体に送配電料という収入が入り ③安い電気料金を提案できる自治体は地場産業や新たな企業の誘致に有利となる。

(4)原発事故と後始末
 NHKは、2015年12月18日になって、*4-1のように、「東京電力は、フクシマ3号機からの放射性物質の放出は格納容器が機能を失い、直接外部に放出されたとした」と放送している。しかし、3号機爆発の真実は爆発直後から映像でわかっていた筈で、爆発直後の公表と現在の公表では住民の予防の徹底度が異なるため、病気の発症割合が異なる。そのため、住民の命を最も大切にはしない判断が行われたということだ。

 さらに、*4-2-1のように、フクシマ原発事故に伴って自治体が受けた損害に対する賠償は、事故から4年8カ月近くたっても、福島県内56市町村が請求した553億3900万円に対し、東電が支払ったのは11.4%にすぎないとのことである。

 また、*4-2-2のように、岡山大大学院の津田敏秀教授(生命環境学)が6日付の国際環境疫学会の医学専門誌「エピデミオロジー(疫学)」に論文を発表し、「福島県が福島原発事故当時に18歳以下だった県民を対象に実施している健康調査の結果を分析したところ、甲状腺癌の発生率が国内平均の20~50倍だった」「福島県では甲状腺がんの過剰発生がすでに検出されており、多発は避けがたい」として、今後、患者数が爆発的に増える可能性を示唆したそうだ。このように、次第に出てくる結果を見れば、フクシマの爆発状況は推定されるのである。

 また、*4-2-3のように、福島県は、フクシマ原発事故当時18歳以下だった約38万人を対象に実施している甲状腺検査で、2915年7月から9月末までの3カ月間に新たに11人が癌と診断されたと発表したが、甲状腺癌のリスクは、当時18歳以下だった人のみにあるのではなく、県境でリスクが変わるわけでもないため、この検査範囲では不十分だ。さらに、フクシマ原発事故による病気のリスクは、甲状腺癌だけでなく、いろいろと弁解は多いものの、*4-2-4のような白血病や心臓病もあるのである。

 さらに、*4-3-1、*4-3-2のように、「Nature(ネイチャー)」などが日本政府の福島第一原発への対応を批判しており、①漏れた汚染水の放射線量が最初に報道されていた状況よりも18倍も高かったこと ②報道が遅れたこと ③監視体制の甘さなどを挙げている。また、汚染水が海洋生物にどのように影響があるかを調べる専門家もおり、日本が他国から多くの専門家を呼び込むべきだとしている。

 なお、*4-4のように、南相馬市除染推進委員会の委員長を務める児玉東大教授(医師)は、2013年の同市産米から国の基準(1キロ当たり100ベクレル)を超える放射性物質が検出された問題で、現地の水源や水田の調査をせず、科学的検討も行わずに「福島第1原発のがれき処理が原因でない」と因果関係を否定した原子力規制委員会の田中俊一委員長の発言を強く批判した。私は、児玉教授の見解がもっともだと考える。

 さらに、多くの日本人は、「風評被害」と信じ込まされているが、*4-5のように、EUは2016年1月9日から食品の輸入規制を一部緩和したのである。そして、これは、低線量の外部被曝を受け続けたり、呼吸による内部被曝を受けたりしておらず、他の食品は全く汚染されていない、人体にとっては日本よりずっと好条件の国の話なのだ。

(5)原発のコスト
 従って、*5-1のように、原子力発電は高くつくため、原発ゼロに向かって再考すべきであることは、フクシマ原発事故以来、誰の目にも明らかになった。さらに、汚染水一つ後始末できず、病人を増やし、国土を狭め、農林漁業も不能になることが明白になった。そして、*5-3のように、原発事故後5年たっても故郷に戻れぬ原発避難者は、2015年末で6900件が移住を余儀なくされている。そのため、持続可能で豊かな社会に向けて、そろばんを弾き直すことに、私も賛成である。

 そのような中、*5-2のように、経団連会長は、「原発停止は国の損失」「全国で停止中の原発を再稼働させるべき」などとしているが、第一線の経済人が、このようなそろばんのはじき方をしているようでは、日本経済や日本企業が本質的に回復することなどあり得ない。そのため、いつまでも、カンフル剤にしかならない財政支出をして国民に迷惑をかけ続けるしかないだろう。

<COP21と世界の動向>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12116852.html  (朝日新聞 2015年12月15日) <視点>実質排出ゼロ社会、新技術が導く 温暖化対策、パリ協定採択
 国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は12日夜(日本時間13日未明)、2020年以降の地球温暖化対策の国際枠組みを定めた「パリ協定」を採択した。先進国だけに温室効果ガスの削減を義務づけた京都議定書に代わり、途上国を含むすべての国が削減に加わる。開幕には約150カ国・地域の首脳が集まったこの会議で「今世紀後半までに排出と吸収を均衡させる」という目標も掲げた。排出を実質ゼロにすることであり、石炭や石油など化石燃料に頼らない社会を目指すことを宣言したに等しい。1997年のCOP3で採択された京都議定書は、世界が科学の声を聞き入れ、温暖化を招いた先進国が率先し、欲望を抑える「痛みを分かち合う」制度と受け止められていた。経済活動で増える排出量を抑えるのが、政府の役割と考えられていた。今回のパリ協定は、違う文脈でとらえられている。米ホワイトハウスは、ただちに「合意は、ここ数年のエネルギー関連の投資を相当拡大することになるだろう」との声明を発表。欧米の経済界からは歓迎のツイートが相次いだ。風力発電は18年前の50倍に、太陽光発電は原発の設備容量の半分までに成長した。爆発的な普及に伴ってコストは急激に下がり、途上国でも火力発電を下回るようになってきた。低炭素経済への移行は、温暖化対策に後ろ向きとみられた新興国でも進む。中国は世界一の自然エネルギー大国であり、インドも22年までに風力を6千万キロワット、太陽光を1億キロワットにする計画を掲げる。多くの国で経済成長と二酸化炭素(CO2)排出は連動しなくなり始めた。昨年、世界経済は3%成長したのに、CO2排出量は横ばいだった。今年の排出量は下がると見られている。196カ国・地域の意思が詰まったパリ協定は、こうした経済の動きを伸ばそうとしている。削減目標の達成までは義務化されていないので、実効性に疑問を持つ声もある。ただ、目標の作成と報告は義務づけられ、世界が見ているなかで5年ごとに点検する。さぼることは難しいだろう。世界初の量産ハイブリッド車「プリウス」はCOP3に合わせて発売された。パリ協定が生まれた今日、より多くの低炭素技術が生まれている。日本は50年に80%削減の目標を持ちながら、実現への政策手段を持ち合わせていないままだ。日本がまずやるべきは、いまある削減技術への投資と普及、次に新たな技術の開発と新しいライフスタイルの確立だ。

*1-2:http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20160131/news20160131227.html
(愛媛新聞 2016年1月31日) 伊方原発全停止、4回目の冬 安定供給に影響なし
 四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)が全3基停止した状態で迎えた4回目の冬。県内は1月、記録的な寒波に見舞われたが、電力需給に関しては供給力に占める需要の割合を示す使用率が90%に達した平日は昨年12月以降、3日間だけ。おおむね80%台で推移し安定供給に影響は出ていない。使用率が90%と「やや厳しい需給状況」になったのは松山で最高気温が10度を下回り7.2度だった1月13日に加え、県内で大雪を伴う氷点下の地点が続いた25、26日の3日間。最大需要の記録は松山で最高気温が3.3度までしか上がらなかった1月19日の481万キロワットだった。一方、昨年12月の使用率は78~88%で推移。四電によると、四国4県の県庁所在地の平均気温は平年比プラス2.0度、前年比プラス3.6度と暖かく、需要減につながった。四電によると例年、冬季の最大需要が発生するのは2月が多い。一般的に、寒い日が連続すると需給状況が厳しくなる傾向があるといい、安定供給へ「気は抜けない」としている。

*1-3:http://www3.nhk.or.jp/lnews/takamatsu/8035461111.html
(NHK 2016.2.1) 四電、太陽光が制限枠に到達
 四国電力は企業や家庭から買い取る太陽光発電の発電量が上限に達したと発表しました。
今後も買い取りの契約は受け付けますが、電力の供給が過剰となった場合、金銭的な補償なく買い取りを制限することになります。再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社が買い取るよう義務づけた国の制度では、太陽光発電を中心に申し込みが急増したため、去年、電力会社が買い取る発電量に制限が設けられました。四国電力の発表によりますと、発電事業者や家庭などからの買い取り量は、すでに契約済みの分と申し込みが来ている分の合計が、先月22日に、上限の257万キロワットに達したということです。四国電力は今後も買い取り契約の申し込みは受け付けるものの、上限を超えた分については、発電量が電力の需要を上回るなど供給が過剰になる場合、買い取りを制限することなります。また、買い取りを制限した場合も電力会社側からの金銭的な補償はないということです。太陽光発電の受け入れが上限に達したのは、大手電力会社の中では北海道電力などに続いて4社目です。四国電力では、「無制限に買い取り続けた場合、逆に安定供給に支障が起きることもある。ぜひご理解いただきたい」と話しています。

*1-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160201&ng=DGKKZO96762260R00C16A2PE8000 (日経新聞 2016.2.1) パリ協定受け長期戦略を描くとき
 21世紀後半までを見通す息の長い日本のエネルギー戦略について国をあげて議論を始めるときだ。昨年12月に開いた国連の会議で地球温暖化の抑止を目指す「パリ協定」が採択された。国民世論を二分する原子力発電の扱いをはじめ難しい問題はあるが、政府は腰を据え長期の戦略づくりに取り組む覚悟を固めてもらいたい。
●見え始めた低炭素社会
 パリ協定は人間の活動による二酸化炭素(CO2)排出を今世紀後半にゼロにするよう世界各国に求めている。化石燃料の消費を世界全体で大きく減らし、「低炭素社会」へと向かう潮流がはっきり見えてきた。日本はCO2の排出量を2030年時点で13年に比べ26%減らす目標を掲げているが、その先は明確でない。パリ協定を誠実に履行するには、30年以降の長期のエネルギー政策の方向性をはっきりさせ、日本社会や産業をどこまで「低炭素化」できるか具体策を考える必要がある。発電所や送電線などエネルギー関連の設備投資や技術開発には時間がかかる。30年は遠い未来ではない。今から手立てを尽くしておかねばならない。まず目指すべきは、エネルギーを効率よく使う社会の実現だ。現在の原油の安値は消費者にはとりあえず恩恵といえるが、省エネには逆風となる。ここで省エネの手綱を緩めるのは望ましくない。燃料価格が再び高騰することもあるだろう。化石燃料の価格がどうあれ、工場や住宅の省エネ努力や、バイオや水素など化石燃料に代わる新エネルギーの普及の足取りを滞らせてはいけない。省エネは化石燃料の輸入を減らし、エネルギー安全保障の観点からも意義が大きい。化石燃料の消費を継続的に減らすには、CO2排出をコストとして経済活動に取り込む仕組みも有効だ。例えば化石燃料の消費に課税する炭素税がある。既存の地球温暖化対策税は炭素税の体裁をとっているものの、消費抑制の効果が薄い。補助金の財源になっているだけだ。見直してはどうか。再生可能エネルギーは果たす役割が大きくなる。再生エネの電気を電力会社が買い取る制度によって太陽光発電などの導入が進んでいる。問題は設置が容易な太陽光が先行し、風力や地熱発電の拡大が遅れバランスを欠く点だ。買い取り制度を維持するため消費者が電気料金の一部として払う賦課金の額も膨らむ。制度は見直しを迫られている。ただし太陽光の発電コストは着実に下がり、賦課金の負担もやがては減る。風力や地熱も立地を妨げる規制を緩和し、普及を後押ししてもらいたい。電力会社間の連系線を柔軟に運用して電力を融通し合えば、再生エネを受け入れる余地は広がる。再生エネを電力供給を支える基幹電源の一つに育てていくべきだ。原子力は今後も維持していく必要がある。東京電力福島第1原発の事故後、政府は原発依存度を下げるとしてきたが、ゼロにするのは現実的でない。活断層などの不安を抱え、老朽化して採算性の良くない原子炉を電力会社は積極的に廃止し、安全性が高い設備に更新するのが望ましい。中国電力の島根原発3号機など建設半ばで足踏みする原発も稼働への道筋をつけるべきだ。
●原子力の信頼回復急げ
 原子力維持の最大の課題は国民の信頼をいかに回復するかだ。事故から5年近くになるが、なお道遠しと言わざるを得ない。原子力規制委員会の厳格な審査に加え、電力会社自身が規制基準を上回るまでに安全性を高めることが極めて大事だ。だがその努力は十分とはいえない。放射性廃棄物の最終処分についても政府や電力会社は具体的な道筋を示す責任がある。火力発電は設備の新陳代謝を急ぐ必要がある。再生エネの出力変動を機敏に補うため火力発電は要るが、発電効率が悪くCO2排出が多い設備をそのままにはできない。発電量あたりのCO2排出が少ない最新鋭設備への置き換えを進めてほしい。一方で電力の自由化が進みコスト競争が激しくなる。再生エネや原子力を必要なだけ維持するにはどうすればいいか、知恵を絞る必要がある。なすべきことは多い。

<電力自由化>
*2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201512/CK2015122002000132.html (東京新聞 2015年12月20日) 
都民6割「東電以外」検討 電力自由化 より安く/原発の電気いや
 来年四月に始まる電力の小売り自由化で、電気の購入先を東京電力から新しい電力販売業者に代えようと考えている東京都民が六割に上ることが、本紙と新潟日報の合同世論調査で分かった。料金がより安いところがあれば代えたいという理由が最も多いが、「原発でつくられた電気を使いたくない」を理由に挙げた人は二番目に多かった。また東京、新潟とも七割が将来的には原発をゼロにし、再生可能エネルギーを軸に取り組むべきだとの意思を示した。調査は、東電福島第一原発事故から五年を前に、原発に関する意識を調べるために実施。今月十二日から十六日までの五日間、十八歳以上を対象に、東京と新潟でそれぞれ一千人、計二千人から有効回答を得た。電力の小売りが自由化されると、これまでは地域の大手電力会社に限られていた電気の購入先が、一般家庭でも自由に選べるようになる。購入先を切り替えるかどうか尋ねたところ、東京では6%が「切り替える」、56%が「すぐではないが検討する」と答えた。合わせて六割超の人が、東電から別の事業者に購入先を切り替えようと考えているとの結果が出た。「切り替えない」「当面は切り替えない」は計約三割にとどまった。切り替えを考えている人たちにその理由を聞いたところ、うち35・3%の人が「より安い電気を使いたい」と答え、二番目は「原発を保有しない電力会社の電気を使いたい」(28・2%)だった。東北電力管内の新潟では「切り替える」「検討する」が計四割弱、「切り替えない」「当面は切り替えない」が計五割弱だった。原発に対する考え方では東京、新潟とも「すぐゼロにするべきだ」「徐々に減らし将来はゼロ」が合わせて七割に上り、脱原発を望む声の大きさがあらためて明らかになった。逆に「今まで通り活用」「徐々に減らすが、一定数は活用」はともに三割弱にとどまっている。今後、力を入れるべきエネルギーを二つ選んでもらう問いでは、東京、新潟とも太陽光や風力、バイオマスなどの再生エネを軸に、水力や火力、原子力との組み合わせを挙げる人が八割いた。原発推進の考え方を持つ人に絞っても、六割超の人が再生エネを軸にすべきだと答えた。
<電力の小売り自由化> 来年4月からは、地域の電力会社の独占が崩れ、消費者は、国に「小売電気事業者」として登録したさまざまな業者から電気を購入できるようになる。契約先を切り替える際、メーターを新型のスマートメーターに取り換える必要があるが、原則費用負担はない。12月7日現在、登録業者は全国で73。ガス会社、石油会社、リース会社、商社などが参入するほか、再生可能エネルギーを中心にする業者、地域限定の業者もあり、選択肢は大幅に広がる。

*2-2:http://qbiz.jp/article/79739/1/
(西日本新聞 2016年1月31日) 電力小売り、九州26社が参入予定 地場は4割11社
 一般家庭でも電気の購入先を選べるようになる4月1日の電力小売り全面自由化後、九州では26社が電力小売り事業への参入を予定していることが分かった。参入業者は今後さらに増える可能性もある。26社のうち地場企業は約4割の11社。九州都市ガス最大手の西部ガス(福岡市)や石油販売大手の新出光(同)などは、ガスや石油などと合わせて電力を販売。ケーブルテレビ最大手ジュピターテレコム(JCOM)の子会社ジェイコム九州(福岡市)はインターネットなどとのセット割引で顧客獲得を狙う。九州外の企業では、KDDI(au)やソフトバンクなどが参入を予定している。すでに料金プランを発表したのは6社。新規参入業者が料金設定の目安とする九州電力が新プランを発表したことを受け、残る各社も今後相次いでプランを公表するとみられる。ただ準備に時間がかかることなどから、4月時点で電力供給を始めるのは15社前後にとどまる見通しだ。

*2-3:http://qbiz.jp/article/77862/1/
(西日本新聞 2016年1月1) 電力、消費から供給へ 鉄鋼や製紙大手、発電事業を強化
 2016年4月の電力小売り全面自由化を前に、大規模工場で電力を大量消費する鉄鋼や製紙大手が、電力供給事業を強化している。自家発電の運営経験を生かせるほか、本業の需要低迷による生産縮小で生じた遊休地を活用する狙いもある。「阪神大震災後の電力インフラ強化に貢献したかった」。神戸製鋼所の北川二朗執行役員は参入の経緯を振り返る。震災と同じ1995年に電気事業法が改正され、一般企業も電力事業に参入できるようになった。神戸製鋼所は総工費2千億円を投じ、神戸中心街に近い神戸製鉄所に計140万キロワットの石炭火力発電所を建設した。鋼材の製造過程で大量の電力を使う鉄鋼業は、電気代節約のため自家発電機などを備え、大半の電力を自前で確保。11年の東日本大震災後の電力不足では、余剰分を供給に回してきた。
   ■    ■
 神戸製鋼所は、神戸市の電力需要の約7割に当たる電力を関西電力に販売しており、年間150億円前後の経常利益を安定的に生み出す。さらに神戸製鉄所の高炉跡地に計130万キロワットの石炭火力、栃木県真岡市に計120万キロワットのガス火力の発電所を建設する計画で「電力は屋台骨を支える事業」(幹部)との認識だ。新日鉄住金やJFEスチールも遊休地を活用する。鉄鋼需要の減少で高炉の休止など合理化を迫られており、発電施設を設置できる広い土地が各地にある。東京電力が募集した火力発電の電力卸供給は、15年8月末に新日鉄住金が他との共同案件を含む2案件を落札した。製鉄所は燃料を直接荷揚げできる港湾施設などが充実。発電施設の運営ノウハウもあり「競争力がある」(関係者)という。ただ石炭火力は二酸化炭素(CO2)の排出が伴い、温室効果ガス削減への対応が課題になる。
   ■    ■
 売上高500億円へ−。日本製紙は15年5月に発表した17年度までの経営計画で、電力事業を新たな経営の柱に据えた。紙の国内需要も縮小しており、生産縮小による遊休地の活用を進める。徳島県小松島市で太陽光、熊本県八代市でバイオマスの発電施設を稼働させたほか、宮城県石巻市に石炭とバイオマスによる13万5千キロワットの発電設備を建設する計画だ。王子ホールディングスは、宮崎県日南市や北海道江別市でバイオマス発電の運転を順次開始。北海道や静岡県の水力発電所の発電効率も高める。バイオマス発電は、成長の過程でCO2を吸収する木を使うため、発電による温室効果ガスはゼロとみなされる。製紙大手は間伐材の調達ルートを持っており「有力な発電事業者になる」(関係者)とみられている。

*2-4:http://373news.com/modules/pickup/index.php?storyid=72451
(南日本新聞 2016 /1/17) 「九電離れ」原発1基分超 新電力へ企業・自治体7628件
 九州電力から特定規模電気事業者(新電力)へ切り替えた九州内の企業や自治体が、7628件(2015年11月1日時点)に上ることが16日分かった。新電力が割安な料金で顧客を奪っている構図で、4月からは一般家庭向けを含めた電力小売りが全面自由化となり、“九電離れ”はさらに広がりそうだ。電力小売りの自由化は、安価な電力供給を目指す国の電力システム改革の一環として、00年から段階的に開始。現在は需要が一定規模以上の工場やスーパーなどが対象で、自由に電力会社を選べる。九電からの切り替えは、11年3月1日時点では1508件(31万3000キロワット)だったが、15年3月には5321件(77万キロワット)と3倍以上に膨らんだ。ここ数年は前年比1.5倍ほどのペースで、東京など各地の新電力への移行が進んでいる。契約電力ベースでみると、昨年再稼働した薩摩川内市の川内原発(出力89万キロワット)の1.2基分の約109万5000キロワットが移った格好だ。

<送配電>
*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151225&ng=DGKKZO95528320V21C15A2MM0000 (日経新聞 2015.12.25) 電線地中化、減税で促す 政府・与党方針、固定資産税3分の2 災害対策や景観維持
 政府・与党は2016年度から無電柱化を税制面で後押しする。16~18年度の間に、新たに地中に埋めた電線やケーブルにかかる固定資産税を4年間にわたって3分の2にする。道路法で道路上に電柱を立てることを禁じた地域では2分の1にまで減らす。来年1月4日召集の通常国会に提出する税制改正関連法案に盛り込み、今年度中の成立をめざす。政府は、地震で倒れた電柱が緊急車両の通行の妨げになることを防いだり、景観を維持したりするため電線の地中化を進める。予算面では16年度予算案に1兆円強を計上した地方自治体向けの防災・安全交付金で無電柱化を促す。13年6月には道路法を改正し、道路を管理する国や自治体の判断で道路上に電柱などを立てられない区域を指定できるようにもした。税制面での後押しをめぐっては、1986~05年度の間にも電線の地中化を促す固定資産税の減税措置があった。20年の東京五輪に向け、無電柱化の機運が高まったことから税制優遇を復活させた。国土交通省によると、今回の減税規模は約10億円だという。日本の無電柱化は諸外国に比べて遅れが目立つ。ロンドンやパリなど主要都市で電線の地中化が完了する一方で、東京23区は14年度末時点で7%にとどまる。大阪市内は5%。全国ベースでは1%にすぎない。政府は市街地を中心とした全国の主な幹線道路2万4000キロメートルでの無電柱化を急いでおり、14年度末に16%だった地中化率を20年度までに20%にまで引き上げたいとしている。

<原発事故と後始末>
*4-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151218/k10010345211000.html
(NHK 2015年12月18日) 福島第一原発 格納容器機能失い放射性物質放出か
 東京電力福島第一原子力発電所の事故で環境を汚染した原因の1つである3号機からの放射性物質の放出について、東京電力は放射性物質を閉じ込める「格納容器」と呼ばれる設備が機能を失い、直接外部に放出されたと考えられるとする見方を示しました。東京電力は福島第一原発の事故で起きた放射性物質の放出の原因などについて、新たにまとまった検証結果を公表しました。核燃料が溶け落ちた福島第一原発3号機では放射性物質を閉じ込めるため、原子炉を覆っている「格納容器」内の圧力が上がり、破損するおそれがあったため、水蒸気などを放出する「ベント」と呼ばれる操作を繰り返し行いました。これについて、東京電力はデータを改めて確認した結果、3月13日の午後9時に行った3回目のベント以降は圧力の下がり方が緩やかなことなどから、ベントは成功していないという見方を示しました。このため、14日の夜から16日にかけて引き起こされた環境への汚染は核燃料の熱で3号機の格納容器が放射性物質を閉じ込める機能を失い、直接放出されたのが原因と考えられるとしています。これについては、ベントの状況によっては圧力が緩やかに下がることもありうるほか、操作の前後で圧力が変動しているのはベントによる可能性があるという指摘が専門家の間から出ていて、現在も検証が続いています。 .

*4-2-1:http://www.minpo.jp/news/detail/2015110126389
(福島民報 2015/11/1) 支払い依然1割 財政運営に影響 自治体賠償
 東京電力福島第一原発事故に伴う自治体賠償で、県内56市町村が請求した553億3900万円に対し、東電が支払ったのは11・4%の62億8900万円にとどまる。事故から4年8カ月近くがたっても東電との交渉は進まず、自治体の財政運営に影響を与えている。福島民報社の調査で分かった。30日までに全59市町村から回答を得た。各市町村の請求総額と、東電からの支払総額は【表】の通り。請求総額の平均は9億8820万円で、10億円を超えたのは11市町。双葉町の192億5335万円が最も多く、次いで郡山市71億8933万円、福島市59億970万円、いわき市35億1508万円となっている。一方、請求総額に対する東電の支払総額の割合は11・4%。平成25年8月の前回調査7・0%(請求総額342億3000万円、支払総額24億1000万円)を4・4ポイント上回るが依然として低率だ。請求額の多くは人口減に伴う住民税や固定資産税の減収分、原発事故対応の職員増に伴う人件費など。東電は支払いが進まない理由を「請求額が膨大で精査に時間がかかっているため」としている。「賠償金の未払いが市町村の財政運営に影響を与えているか」との質問では、10市町村が「大きな影響を受けている」、26市町村が「影響を受けている」と回答した。「大きな影響がある」と回答した桑折町は請求総額に対して支払いが23・1%。「未払い分は一般財源を充てており、他の事業も抑制を余儀なくされている」として、このままなら事業の遅滞や町民サービスの低下を招きかねないとみる。富岡町は「帰町に向けて施設の復旧に取り組むところだが、賠償が決まらず、財源確保に苦慮している」と訴えた。このような状況を踏まえ、15市町村は裁判外紛争解決手続き(ADR)による原子力損害賠償紛争解決センターへの和解申し立ての検討に入った。請求額の多い市部や避難区域が設けられた町村に目立つ。福島市と桑折町は既に申し立てを行い、水道事業などの賠償で東電と和解合意している。残る39市町村は「予定なし」としているが、須賀川市は「他市町村の動向を見ながら対応する」としており、今後、検討する自治体は増える可能性がある。東京電力は「具体的な算定基準が策定できた項目から賠償金請求を受け付け、早期支払いに取り組んでいる。それ以外の項目も請求を受けた場合は事情を聴きながら適切に対応している」と説明している。
※支払総額と請求総額、合計は1000円以下切り捨て。下郷、柳津、三島の各町は賠償請求の手続き準備中。ADRの○は既に申し立てを行い、和解合意した。●は申し立てを検討している

*4-2-2:http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/165762
(日刊ゲンダイ 2015年10月9日) 福島の甲状腺がん発生率50倍…岡山大・津田教授が警告会見
 岡山大大学院の津田敏秀教授(生命環境学)が6日付の国際環境疫学会の医学専門誌「エピデミオロジー(疫学)」に発表した論文に衝撃が広がっている。福島県が福島原発事故当時に18歳以下だった県民を対象に実施している健康調査の結果を分析したところ、甲状腺がんの発生率がナント! 国内平均の「50~20倍」に達していた――という内容だ。8日、都内の外国特派員協会で会見した津田教授は「福島県では小児や青少年の甲状腺がんの過剰発生がすでに検出されている。多発は避けがたい」と強調した。福島県で原発事故と子どもの甲状腺がんの因果関係を指摘する声は多いが、権威ある医学専門誌に論文が掲載された意味は重い。国際的な専門家も事態を深刻に受け止めた証しだからだ。津田教授は会見であらためて論文の詳細を説明。原発事故から2014年末までに県が調査した約37万人を分析した結果、「二本松市」「本宮市」「三春町」「大玉村」の「福島中通り中部」で甲状腺がんの発生率が国内平均と比較して50倍に達したほか、「郡山市」で39倍などとなった。津田教授は、86年のチェルノブイリ原発事故では5~6年後から甲状腺がんの患者数が増えたことや、WHO(世界保健機関)が13年にまとめた福島のがん発生予測をすでに上回っている――として、今後、患者数が爆発的に増える可能性を示唆した。その上で、「チェルノブイリ原発事故の経験が生かされなかった」「事故直後に安定ヨウ素剤を飲ませておけば、これから起きる発生は半分くらいに防げた」と言い、当時の政府・自治体の対応を批判。チェルノブイリ事故と比べて放射性物質の放出量が「10分の1」と公表されたことについても「もっと大きな放出、被曝があったと考えざるを得ない」と指摘した。一方、公表した論文について「時期尚早」や「過剰診断の結果」との指摘が出ていることに対しては「やりとりしている海外の研究者で時期尚早と言う人は誰もいない。むしろ早く論文にしろという声が圧倒的だ」「過剰診断で増える発生率はどの程度なのか。(証拠の)論文を示してほしい」と真っ向から反論。「日本では(論文が)理解されず、何の準備もされていない。対策を早く考えるべき」と訴えた。「原発事故と甲状腺がんの因果関係は不明」とトボケ続けている政府と福島県の責任は重い。

*4-2-3:http://digital.asahi.com/articles/ASHCZ61VFHCZUGTB00P.html
(朝日新聞 2015年11月30日) 福島の11人、新たに甲状腺がんと診断 合計115人に
 福島県は30日、東京電力福島第一原発事故当時18歳以下だった約38万人を対象に実施している甲状腺検査で、今年7月から9月末までの3カ月間に11人が新たにがんと診断されたと発表した。甲状腺がんが確定したのは合計115人になった。昨年3月末までの1巡目検査でがんの疑いがあると診断され、手術を受けた2人と、昨年4月以降の2巡目検査でがんの疑いが見つかり手術を受けた9人が新たにがんと確定した。1巡目検査の2人は、本人の都合で確定診断に必要な手術がこの時期になった。これで、がんが確定したか疑いがあるとされた人は1巡目114人、2巡目39人で計153人になった。2巡目でがんや疑いがあると診断された39人のうち、2人は、1巡目検査で一定の大きさ以上のしこり(結節)があり、それががん化したとみられるという。19人は1巡目検査では「何もない」とされており、新たにがんが発生したと考えられるという。県検討委員会の星北斗座長は「分かる範囲では、推定される福島県民の甲状腺の内部被曝(ひばく)線量はチェルノブイリの住民より低く、放射線の影響を受けやすい乳幼児にがんが発生していないことから、今見つかっている甲状腺がんは放射線の影響とは考えにくい」と述べた。

*4-2-4:http://digital.asahi.com/articles/ASHBJ7DNSHBJULBJ014.html
(朝日新聞 2015年10月20日) 原発事故後の被曝、初の労災認定 白血病の元作業員男性
 労災が認められたのは北九州市在住の男性(41)。男性によると、2012年から13年まで、東京電力の協力企業の作業員として、3号機や4号機周辺で、構造物の設置や溶接の作業に当たり、14年1月に急性骨髄性白血病と診断された。累積の被曝線量は福島第一原発で約16ミリシーベルト、定期点検の工事で12年に約3カ月間働いた九州電力玄海原発で約4ミリだった。男性の労災申請を受けた富岡労働基準監督署(福島県)が業務内容や被曝実態を確認し、被曝の専門家らで構成する厚労省の検討会で被曝と白血病の因果関係を検討、「業務上(業務由来)」と結論づけた。これを受け同労基署が20日付で労災と認定した。医療費と休業補償が支払われる。1976年に定められた国の放射線業務従事者の労災認定基準では白血病の場合、年5ミリシーベルト以上被曝し、最初の被曝を伴う作業から1年超経って発症した人は、白血病を引き起こす他の要因の影響が排除できれば労災が認められる。厚労省は20日の会見で、「今回の認定により科学的に被曝と健康影響の関係が証明されたものではない。『年5ミリ以上の被曝』は白血病を発症する境界ではない」とした。白血病の認定基準については「労災保険の精神に基づき、労働者への補償に欠けることがないよう配慮し、また、76年当時の一般公衆(住民)の被曝限度が年5ミリだった点も考慮して決まった」と説明した。福島第一原発事故の対応にあたった後、被曝と関係する病気になった人の労災申請は今回を含め8件。3件は不支給、1件は本人が取り下げ、3件は調査中で、がんの種類など詳細は明らかにされていない。東京電力によると、事故から今年8月末までに福島第一原発で働いた約4万5千人のうち、約2万1千人は累積被曝量が5ミリを超え、20ミリ以上も9千人を上回る。今年4月から8月末までの5カ月間に働いた約1万5千人でみても、約2200人が5ミリ超の被曝をした。現場では被曝を伴う作業が長期にわたって続き、労災申請が増える可能性がある。

*4-3-1:http://www.huffingtonpost.jp/2013/09/07/nuclear_error_nature_n_3884364.html?utm_hp_ref=tw (The Huffington Post 2013年9月7日) 汚染水漏れ 「Nature(ネイチャー)」が日本政府の福島第一原発の対応を批判
 ネイチャーの指摘する内容はどのぐらい厳しいものなのか。記事は「Nuclear error」と題され、「日本はもっと世界に助けを求めるべきだ」という副題がついている。福島第一原発事故の事故は東京電力の手に負えないほどのものとした上で、政府が先頭に立って対応するということを決めた時期が遅すぎると非難している。また、漏れた汚染水の放射線量が、最初に報道されていた状況よりも18倍も高かったことや、報道が遅れたこと、監視体制の甘さなどを挙げ、情報に精通した海外の専門家に助けを求めるべきと助言している。日本が海外の力を借りるべきとする意見を出しているのは、ネイチャーだけではない。ドイツ出身のエネルギーコンサルタント、マイケル・シュナイダー氏は、ハフィントン・ポストUK版の取材について、「現在の課題は、彼ら(日本政府)の現実逃避的な姿勢を崩すことだ。これは組織的な現実逃避だ。ここでは日本の持つプライドが問題になっているが、プライドが現実逃避の態度へと変わってしまうと、このような問題は本当に危険なものとなる。彼らは人々を、高まり続けるリスクにさらしている」と述べている。アメリカの科学者、チャールズ・ファーガソン氏も、ロシアやノルウェーには、汚染水が海洋生物にどのように影響があるかを調べる専門家がいることなどを挙げ、日本が他の国から多くの専門家を呼び込むべきだということに同意している。また、ロシアの国営原子力発電所操業会社ロスエネルゴアトムの第一副社長、ウラジミール・アスモロフ氏は、「原子力業界はグローバル化しており、事故が国内でとどまることはない。国際的な問題だ」と述べ、ロシアとしても支援する用意があると述べたという。ネイチャーは、福島沖の海洋汚染の問題を挙げ、安倍首相が掲げる科学振興に言及して次のように述べている。安倍首相と政権は、科学振興を推進すると述べている。世界中の研究者が、(汚染された海洋データを)調査しシェアしていくことを支援するべきではないか。チェルノブイリの事故後にはこのような機会がなかった。しかし、福島ではまだ遅くはない。東京電力は、相澤善吾副社長が8月21日の記者会見において、海外を含む国内外の叡智を結集して汚染水の対応にあたると話している。一刻も早い対応が期待される。

*4-3-2:http://www.nature.com/news/fukushima-leaks-18-times-worse-than-first-thought-1.13626 (nature 29 August 2013 ) Fukushima leaks 18 times worse than first thought 、New revelations from stricken plant’s operator add to claims that it cannot cope with clean-up operation.
 Pressure continued to mount on the owner of Japan’s crippled Fukushima Daiichi nuclear plant on 1 September after it admitted that recent leaks of contaminated cooling water contained 18 times the levels of radiation previously reported.The Tokyo Electric Power Company (TEPCO) said that one hot spot was found to be giving off 1,800 millisieverts per hour — much more than the 100mSv initially quoted and enough gamma radiation to kill a human within four hours. It also emerged that the pipe from which the water was leaking had been sealed with plastic tape.The company vowed to launch an investigation of the leak and “take any appropriate countermeasures immediately”, adding that only 1mSv of the radiation was made up of gamma rays, with the rest being less penetrating beta radiation.But the new revelations will heap pressure on the Japanese government to intervene in the clean-up of Fukushima after experts voiced fears that TEPCO is unable to cope with the operation, which has seen hundreds of tonnes of radioactive water escape into the Pacific Ocean. Analysts warned that if the government fails to act, prime minister Shinzo Abe’s pro-nuclear stance may be jeopardized.“It’s clear that TEPCO is unable to solve the problems on its own,” said Tsutomu Toichi, managing director and chief economist at the Institute of Energy Economics in Tokyo. “The government has to step in to ensure these problems are solved quickly. It is going to have to provide funds, as well as a plan for moving forward, and explain this to the public in a way that is easy to understand.”Wiktor Frid, a nuclear expert with the Swedish Radiation Safety Authority in Stockholm, added, “That water leaked from a tank unnoticed for several days is alarming and extremely embarrassing for TEPCO”.The leaks have also led to renewed concerns over ocean contamination and food safety, with local fishing cooperatives suspending trial catches and one oceanographer saying that further leaks would have “severe” consequences for marine life.
●Incident upgrade
 The leak of some 300 tonnes of partially treated water that had been used to cool melted nuclear rods from the destroyed reactors was reported by TEPCO on 19 August. The radioactivity of the water stands at about 80 megabecquerels per litre, about 1% of what it was before treatment by an on-site purification system. Japan’s Nuclear Regulation Authority initially labelled the incident a level 1 event (known as an ‘anomaly’) on the International Nuclear Event Scale, but on 28 August upgraded it to level 3 (‘serious incident’), citing the large amount of contaminated water leaked and the fact that a safety buffer was not available for the water tank in question.At present, TEPCO is storing more than 300,000 tonnes of radioactive water on the site of the destroyed Fukushima Daiichi plant. Radioactive caesium isotopes are being removed from the water by an advanced liquid-processing system built after the accident, but a facility for removing strontium isotopes is not yet ready. Tritium, another harmful radionuclide, cannot be safely removed by any known purification system because it is incorporated within water molecules.The leaked water is thought to have seeped into the ground and will eventually reach the sea adjacent to the plant. The storage site near Fukushima’s reactor 4, where the leak was discovered, lies some 50 metres above sea level and is just a few hundred metres from the coast.Measures proposed so far to prevent the polluted water from flowing into the sea — such as freezing or excavating the soil surrounding the storage site — seem to be either very expensive or technically unfeasible, says Joachim Knebel, a nuclear expert and chief science officer at the Karlsruhe Institute of Technology in Germany.“We can’t really assess the situation from far away,” he says. “But it appears to me that none of the proposed measures would work. TEPCO would be well advised to seek international expertise in coping with the problems.”Several countries, including Russia, have offered to assist with the company’s clean-up efforts, and TEPCO said last week that it will consider accepting outside help. On Monday, it also announced a series of measures, including the installation of a new central control system, to mitigate the risk of future leaks.
“Some tanks have automatic monitoring equipment and some don’t,” says Yo Koshimizu, a TEPCO spokesman. “We are currently determining whether to add such equipment to all of the tanks.”
●Storage situation
 Some 400 tonnes of cooling water are being collected in tanks each day. The growing fleet of storage tanks — which currently stands at about 1,000 — is a source of alarm for experts, who fear that huge amounts of contaminated water will eventually have to be dumped into the ocean. Worse still, some 300 tonnes of groundwater highly contaminated with caesium-137, which has a 30-year half-life, are thought to be flowing from beneath the destroyed reactors into the sea every day.The potential for harm is huge, says Jota Kanda, an oceanographer at the Tokyo University of Marine Science and Technology who monitors radionuclide distribution in sediments and biota off Fukushima1.“The effects of one relatively small leak may be insignificant,” he says. “But there are huge amounts of radionuclides in these tanks and the water may have to be stored for a long time to come. If more leaks were to occur the consequences might be severe.”The Fukushima nuclear accident resulted in the largest ever accidental release of radioactivity to the oceans. Some 80% of all the radionuclides released from Fukushima ended up in the Pacific2. In some local fish, high residual levels of radioactivity were measured two years after the accident. Commercial fishing in the area is still banned.But it is unclear how much residual radioactive contamination is still entering the sea from leaks around the Fukushima plant, says Scott Fowler, a marine ecologist at Stony Brook University in New York who has been involved in previous assessments of contamination levels in the ocean near Fukushima.To track changes in coastal waters and predict when seafood species in the region may be safe to consume, it will be necessary to establish a ‘temporal data set’ — that is, to measure the levels and distributions of contaminant radionuclides at a given location over time, he says.“Even if one assumes that leaks from the plant into the sea will eventually be stopped, residual contamination would continue to be present in the adjacent marine ecosystem for many years,” he says. “So the contamination of long-lived radionuclides in different organisms in the local marine food webs needs to be monitored continually.”

*4-4:http://mainichi.jp/articles/20151225/ddl/k07/040/190000c (毎日新聞 2015年12月25日) 福島第1原発事故 南相馬・汚染米問題 除染推進委員長、規制委員長発言を批判 「現地を調査せず」 /福島
 南相馬市除染推進委員会の委員長を務める児玉龍彦・東大教授は24日、2013年の同市産米から国の基準(1キロ当たり100ベクレル)を超える放射性物質が検出された問題で、福島第1原発のがれき処理が原因でないと因果関係を否定している原子力規制委員会の田中俊一委員長の発言を強く批判する見解を発表した。児玉教授は、田中氏が除染していない山林から流れたセシウムが原因の可能性があるとの見方を南相馬市の桜井勝延市長と10月に会談した際に示したことについて、「田中氏は現地の水源や水田の調査をしておらず、科学的検討を行った発言ではない」と批判。(1)汚染は複数の水源を持つ複数の水田で確認された(2)前年収穫されたコメに汚染はなく14年以降も国の基準値を下回っている(3)発言の根拠とする放射性物質飛散の実験値は実測値との乖離(かいり)が指摘されている−−などと反論した。さらに児玉教授は、「規制委は放射性物質の飛散防止に全力を挙げる責任があることを深く自覚」するよう求めた。田中氏は桜井市長と会談した際、汚染とがれき処理との因果関係を否定したうえで「除染が終わっていない山から流れてくる水に(放射性)セシウムが溶け込んでいる場合があると思う。今後もそういう事例が出てくる可能性は否定できない」と発言。国が1キロ当たり100ベクレル以下を基準としていることについても、「何で100にしたのか。500でよかった。それでも国際基準より厳しい」として政府の対応を批判していた。

*4-5:http://mainichi.jp/articles/20160108/k00/00m/020/135000c
(毎日新聞 2016年1月7日) 福島原発事故、EUが9日から食品の輸入規制一部緩和
 農林水産省は7日、欧州連合(EU)が東京電力福島第1原発事故を受けて実施している日本産食品の輸入規制のうち、福島県産の野菜や牛肉などが9日に緩和されることになったと発表した。福島産はこれまで酒類を除く全品目が規制対象だった。EUは昨年11月に緩和の方針を示しており、手続きが完了した。EUは現在、規制対象に対して放射性物質の検査証明書の添付を義務付けている。今回、野菜や牛肉などの畜産品のほか、柿を除く果実、そば、茶などを規制対象から外す。コメやキノコ、大豆などは引き続き規制の対象となる。また青森、埼玉両県を規制対象の地域から外し、全ての品目で検査証明書を不要とする。これでEUによる規制対象が残るのは、福島を含めて13県となる。このほかに岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、千葉の6県のコメや大豆、そばなど一部を規制対象から除外する。一方で、これまで規制対象外だった秋田や山形、長野のゼンマイなどを新たに対象に加える。

<原発のコスト>
*5-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015111902000128.html (東京新聞 2015年11月19日) 原発ゼロへ再考を 原子力は高くつく
 きょうは原発推進の人たちにとくに読んでいただきたい。原子力発電は結局、高くつく。そろばんを弾(はじ)き直し、原発ゼロへと考え直してみませんか。やっぱり金食い虫でした。原子力規制委員会が日本原子力研究開発機構に示した、高速増殖原型炉「もんじゅ」の運営を「ほかの誰かと交代せよ」との退場勧告は、その操りにくさ、もろさ、危険さを、あらためて浮かび上がらせた。そして、本紙がまとめた「核燃料サイクル事業の費用一覧」(十七日朝刊)からは、もんじゅを核とする核燃料サイクルという国策が、半世紀にわたって費やした血税の大きさを実感させられる。
◆巨費12兆円を投じて
 原発で使用済みの核燃料からプルトニウムを抽出(再処理)し、ウランと混ぜ合わせてつくったMOX燃料を、特殊な原子炉で繰り返し利用する-。それが核燃料サイクルだ。その上もんじゅは、発電しながら燃料のプルトニウムを増やしてくれる。だから増殖炉。資源小国日本には準国産エネルギーをという触れ込みだった。それへ少なくとも十二兆円以上-。もんじゅの開発、再処理工場(青森県六ケ所村)建設など、核燃サイクルに費やされた事業費だ。国産ジェット機MRJの開発費が約千八百億円、小惑星探査機「はやぶさ2」は打ち上げ費用を含めて二百九十億円、膨らみ上がって撤回された新国立競技場の建設費が二千五百二十億円…。十二兆円とはフィンランドの国家予算並みである。
◆1日5500万円も
 ところが、もんじゅは事故や不祥事、不手際続きで、この二十年間、ほとんど稼働していない。止まったままでも一日五千五百万円という高い維持管理費がかかる。もんじゅは冷却に水ではなく、大量の液体ナトリウムを使う仕組みになっている。ナトリウムの融点は九八度。固まらないように電熱線で常時温めておく必要がある。千七百トンのナトリウム。年間の電力消費量は一般家庭約二万五千世帯分にも上り、電気代だけで月一億円にもなるという。発電できない原子炉が、膨大な電力を必要とするという、皮肉な存在なのである。もんじゅ以外の施設にも、トラブルがつきまとう。さらなる安全対策のため、再処理工場は三年先、MOX燃料工場は四年先まで、完成時期が延期になった。MOX燃料工場は五回目、再処理工場に至っては、二十三回目の延期である。研究や開発は否定しないが、事ここに至っては、もはや成否は明らかだ。これ以上お金をつぎ込むことは是とはされまい。核燃料サイクルが、日本の原子力政策の根幹ならば、それはコストの面からも、根本的な見直しを迫られていると言えそうだ。欧米で原発の新増設が進まないのは、3・11以降、原発の安全性のハードルが高くなったからである。対策を講ずるほど費用はかかる。原発は結局高くつく。風力や太陽光など再生可能エネルギーにかかる費用は普及、量産によって急速に低くなってきた。国際エネルギー機関(IEA)の最新の報告では、太陽光の発電コストは、五年前より六割も安くなったという。ドイツの脱原発政策も、哲学だけでは語れない。冷静に利益を弾いた上での大転換だ。原子力や輸入の化石燃料に頼り続けていくよりも、再生エネを増やした方が、将来的には電力の値段が下がり、雇用も増やすことができるという展望があるからだ。
◆そろばん弾き直そう
 核燃料サイクル事業には、毎年千六百億円もの維持費がかかる。その予算を再エネ事業に振り向けて、エネルギー自給の新たな夢を開くべきではないか。電力会社は政府の強い後押しを得て、核のごみを安全に処理するあてもまだないままに、原発再稼働をひたすら急ぐ。金食い虫の原発にこのまま依存し続けていくことが、本当に私たち自身や子どもたちの将来、地域の利益や国益にもかなうのか。政治は、その是非を国民に問うたらいい。持続可能で豊かな社会へ向けて、そろばんをいま一度弾き直してみるべきだ。

*5-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS15H2R_V10C16A1EE8000/
(日経新聞 2016/1/15) 経団連会長「原発停止は国の損失」 柏崎刈羽の再稼働要請
 経団連の榊原定征会長は15日、新潟県の東京電力柏崎刈羽原子力発電所を視察した。柏崎刈羽6、7号機を含めた全国で停止中の原発を再稼働させる必要性を改めて訴えたうえで「原発が止まっているのは国として損失だ。早期に動かして(企業と家計の)電力コスト削減につなげてほしい」と強調した。榊原氏は安倍晋三政権になってから円高など経済の「6重苦」は解消しつつあるが、「最も対応が必要なのはエネルギー問題だ」と指摘。東日本大震災後、電気料金は家庭用で2割、産業用で4割上がったとして「もともと世界で電力コストが一番高い日本でさらに高くなった。成長と投資、発展の大きな障害になっている」と強調し、時期への言及は避けつつも再稼働を重ねて訴えた。視察には東電の広瀬直己社長も同席。榊原氏は東電が取り組む安全対策に対して「中越沖地震と福島の事故の教訓を受け、考えられる限りの対策をしていると感じた」などと評価した。九州電力の川内原発(鹿児島県)など西日本が先行する形で、震災以降に止まっていた原発に再開の動きが少しずつ出てきた。ただ東日本の原発は柏崎刈羽原発を含めて東電福島第一原発と同型の沸騰水型軽水炉が多く、先行きを見通しにくい面が多い。

*5-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201601/CK2016013102000111.html (東京新聞 2016年1月31日) 震災5年 故郷戻れぬまま 原発避難者 移住6900件
 東京電力福島第一原発事故で住まいを追われた福島県の避難住民が、二〇一一年三月の事故後、政府の制度を利用し県内や首都圏などに新たに土地や住宅を買って移住するケースが、毎年増え続けていることが本紙の独自調査で分かった。累計の移住件数は、一五年末現在で約七千件。元の住まいに戻れる見通しが立たず、避難先などで生活再建を図ろうとしている実態が浮かんだ。移住しても、住民票はそのままにしている避難住民が多いため、どれくらいの人が移住したのか実態はつかみにくい。本紙は、避難指示区域の住民が移住先で不動産を買うと不動産取得税が軽減される特例がある点に着目。福島県のほか、避難者の多い十一都道県に適用件数を聞き取りし、主な状況を調べた。その結果、一一年度末では六十六件だったが、一二年度末には累計で七百四十五件に増え、一三年度末は二千百九十件、一四年度末には四千七百九十一件にまで増えた。一五年度は昨年末時点ながら、六千九百九件にまで増えた=グラフ。このほか、他の府県での制度の適用例や特例を使わないケースもあるとみられる。移住用に家や土地を購入した先は、全体の約九割が福島県内(六千八件)。次いで多いのが、隣接する茨城(二百八十五件)や栃木(百五十六件)、宮城(百十五件)の各県だった。いずれの都道県でも毎年増えている。政府は帰還困難区域を除く避難指示区域を一六年度中に解除する方針を示しているが、福島第一周辺はいまだに広く汚染されている。仮に避難指示が解除される状況になっても、放射線の影響への不安があるほか、商店や病院、学校など暮らしの基盤がどこまで元のような姿になるのか見通すのは非常に難しい。五年近い避難の中で、新たな仕事や通学の関係から、避難先に根づき、生活再建しようとする住民も多い。福島県の担当者は「避難先での基盤が固まってきた一方、故郷に戻ろうにも生活の厳しさがある。事故後五年を迎え、帰る、帰らないの判断をする時期に来ており、今後も移住が増えていくのでは」と分析している。大阪市立大の除本理史(よけもとまさふみ)教授(環境政策論)は「元通りの暮らしを期待して故郷に戻りたい住民、人口減を何とか食い止めたい避難元の自治体、避難者の数を少しでも減らしたい政府、と三者で思惑にずれがある。避難者のニーズにそったきめ細かい施策が必要だ」と強調している。
<福島県からの避難住民> 政府の統計では、福島第一原発事故の避難者数は2016年1月14日現在、自主避難含め9万9000人とされる。このうち、県外への避難者は4万3000人に上り、北は北海道から南は沖縄まで全都道府県に及ぶ。特に多いのが東京都(6000人)などの首都圏と、福島県に隣接する山形、宮城、新潟県。ピーク時の16万4000人(12年5月)から減っているが、数多くの人が先行きの見えない暮らしを送っている。


PS(2016/2/4追加):*6-1のように、政府は、原発再稼働を進めるため、「電源立地地域対策交付金」を原発を再稼働させた自治体に手厚く払うようにして再稼働への同意を促した。その結果、再稼働した原発地元の道県・市町村は、新たに原発1基当たり年間最大5億円を支払われるそうだ。また、*6-2のように林経済産業大臣は、「原子力の問題や事故が起きたら、政府が責任をもって対応する」としている。このように、原発には電力会社が発電コストに入れていない多額の税金が投入されている。
 なお、*7のように、原油先物相場が下落したとして、原油が出ない国の日本人が中東など産油国の財政を心配しているのはおかしい。何故なら、サウジアラビアなど富裕な産油国は、日本のような税はない上、公共料金・医療・福祉が原油代金で賄われて無料というめぐまれた状態で、「増税しても年金・医療・介護・福祉を削減しなければやっていけない」などと言っている日本とは雲泥の差だからだ。しかし、日本も自然再生可能エネルギーにエネルギーを転換したり、LNGを掘り出したりすれば、油田を発見したのと同じ効果がある。

<原発への政府の支出と推進>
*6-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/268020
(佐賀新聞 2016年1月13日) 原発再稼働で交付金手厚く 来年度から、政府が配分見直し
 政府が原発の再稼働を進めるため、立地自治体に対する財政面からの誘導を強めている。交付金の分配の在り方を見直し、2016年度分から再稼働した原発の立地自治体に手厚く支払うようにするなど、「アメとムチ」で再稼働への同意を促す狙いだ。立地道県や市町村に支払う「電源立地地域対策交付金」は原発で発電した電力量に所定の単価を掛けるなどして算出する。従来は定期点検などで原発が停止中でも自治体の財政が維持できるよう稼働率を一律81%とみなして支払われてきた。16年度からは、再稼働した原発は実際の稼働率で計算する。停止中の原発は、福島事故前10年間の平均稼働率を採用するが、同期間の全国平均稼働率(68%)以上は認めない。再稼働した場合は、原発1基当たり年間最大5億円を立地自治体に支払うインセンティブを与える。一方、再稼働を進める上で国民の間に不安が根強い老朽原発の廃炉を進めるため、交付金の激減緩和措置を用意した。「みなし稼働率」は03年に導入され、当初は100%に設定されていた。しかし実態に比べ高すぎると見直しが入り、10年に81%に引き下げられた。翌年、東京電力福島第1原発事故が発生。その後、全国の原発が停止した中でも、このみなし稼働率で交付金が払われてきたが、政府は再稼働の進捗を踏まえ、みなし稼働率の在り方をあらためて見直した。地元の原発の再稼働が見通せない自治体では大幅減収になる可能性が高い。政府は16年度の当初予算案で立地交付金を15年度当初比4・8%減の868億円に抑えた。東電柏崎刈羽原発の地元、新潟県柏崎市によると、震災前10年間の同原発の平均稼働率は47%。市は今回の見直しで、15年度約26億5千万円あった交付金が16年度は3億円程度減ると試算する。市担当者は「稼働率が低かったのは東電のトラブル隠しや中越沖地震が原因で、自治体のせいではない」と指摘。「見直しの影響は大きい」と訴えている。

*6-2:http://www3.nhk.or.jp/lnews/fukui/3054441721.html
(NHK福井 2015年12月20日) 西川知事と林経産大臣が会談
 関西電力・高浜原子力発電所3号機と4号機について林経済産業大臣が西川知事と会談し、「原子力のさまざまな問題や事故が起きた際には政府が責任をもって対応する」と述べ、高浜原発の再稼働に理解を求めました。高浜原発3号機と4号機は、現在、再稼働に向けて最終段階の検査を受けているほか今月(12月)に入って、高浜町長と県議会が再稼働に同意するなど、再稼働へ向けた手続きは知事の判断が焦点となっています。こうしたなか林経済産業大臣が20日、西川知事と会談しました。このなかで林大臣は、西川知事が政府に求めていた再稼働を判断するための5つの条件について▼原子力に対する国民理解を促進するため、全ての都道府県でシンポジウムを開くことや▼福島の原発事故を教訓とした事故の制圧体制の強化のため、政府として訓練や改善に取り組むなどと応えました。そのうえで林大臣は、「原子力のさまざまな問題や事故が起きた際には政府が責任をもって対応します」と述べ、高浜原発の再稼働に理解を求めました。これに対して西川知事は「国が責任をもって進めていきたいという方針が示され、評価させて頂きたい」と述べ、国からの説明に一定の理解を示しました。知事との面談を終えた林経済産業大臣は高浜原発の再稼働について「ある程度の理解が得られたのではないか」と述べ、今後、原発の重要性、必要性について国民に丁寧に説明していく考えを示しました。

<原油高騰に日本が懸念 ?!>
*7:http://mainichi.jp/articles/20160103/k00/00e/020/113000c
(毎日新聞 2016.1.3) 昨年3割下落 中東諸国の財政に打撃
 2015年のニューヨーク原油先物相場は年間で約30%下落し、46%下げた前年に続く大幅下落となった。原油価格の長期低迷で中東などの産油国の財政は急激に悪化しており、各国は政府支出や海外投資の圧縮に懸命だ。オイルマネーの縮小が世界の金融市場を不安定化させる懸念も出ている。12月31日のニューヨーク市場で、指標の米国産標準油種(WTI)2月渡しは前日比0.44ドル高の1バレル=37.04ドルで取引を終えた。14年末の53.27ドルから約30%の下落。米国のシェールオイル増産や中国経済の減速による需要減で、供給過剰に陥っているのが原因だ。この影響で、中東・北アフリカの11産油国の原油輸出総額は、15年の1年間で3600億ドル(約43兆2000億円)も激減した。歳入の大半を占める原油収入の落ち込みで、財政収支は、サウジアラビアが国内総生産(GDP)比15%の赤字に落ち込むなど、15年は11カ国平均で同10%前後の赤字となる見通しだ。過去の原油収入の積み立てで、直ちに財政危機に陥る懸念は低いが、今後、米国の原油輸出の解禁などで一段の価格下落の可能性もあり、国際通貨基金(IMF)は「包括的な財政調整が不可欠」と警告している。サウジアラビアは12月28日、公務員給与の削減などで16年の歳出を前年比14%削減すると発表。クウェートも軽油価格を値上げしたほか、バーレーンもガス料金や医療保険料を値上げするなど、各国は相次いで財政引き締め策を導入した。ただ、サウジなどの富裕な湾岸産油国は、11年に始まった民主化要求運動「アラブの春」の波及を食い止めるため、公共料金無料化や公務員増員などのバラマキ政策を実施してきた。「国内の不安定化につながりかねない大胆な緊縮策は取りにくい」(英調査会社)のが実情だ。産油国は原油収益を先進国の株式や土地などに投資しているが、英紙フィナンシャル・タイムズによると7〜9月期に少なくとも190億ドル(約2兆2800億円)が産油国に引き揚げられた。IMF中東・中央アジア局のマザレイ次長は「資金の撤退が市場の大きな変動をもたらす可能性がある」としている。


PS(2016/2/8追加):*8のように、汚染された木くずを日本全国にばら撒き、堆肥を製造して農産物を作れば日本全体の農産物が汚染されるが、これを「風評被害」と呼ぶのは日本だけである。なお、汚染木材を家の新築にも使うそうだが、ここまでくると呆れてものが言えない。

<放射性廃棄物の処理>
*8:http://www.chibanippo.co.jp/news/national/302919
(千葉日報 2016年2月7日) 汚染木くず千葉県にも 大津地検が捜査資料開示
 東京電力福島第1原発事故で放出された放射性セシウムに汚染された木くずが滋賀県高島市などに不法投棄された事件で、木くずは滋賀のほかに茨城、栃木、千葉、山梨、鹿児島の各県にも搬出されていたことが6日、大津地検が部分開示した捜査資料で明らかになった。開示は5日付。開示資料によると、木くずは2012年12月~13年9月、計約5千トンが計12ルートで6県に運ばれた。運搬には栃木、埼玉、千葉、山梨各県の業者が関わっていた。京都市の無職男性(75)が昨年2月に捜査資料の閲覧を地検に請求したが、3月に不許可とされたため、大津地裁に準抗告。地裁は7月、自治体名を含めた閲覧を認め、地検に開示を命じる決定を出した。地検は特別抗告し、最高裁は12月14日に「搬出先が特定され、風評被害などで経済損害が発生する恐れがある」として地裁の決定を一部取り消し、市町村名などを除いて閲覧を認める決定を出した。これを受け、地検が今月5日に資料を男性に部分開示した。高島市の木くずはその後、前橋市の産業廃棄物処理業者の施設で破砕され、中間処理された。不法投棄をめぐっては、東京のコンサルタント会社社長(当時)の男性が、高島市に木くずを持ち込んだとして産業廃棄物処理法違反の罪で14年12月に大津地裁で有罪が確定。男性は各地の搬出先には汚染について伝えず「堆肥製造のため」などと説明し、木くずは野ざらしの状態だった。


PS(2016.2.9追加):*9-1のように、丸川珠代環境大臣が、長野県松本市で、「『反放射能派』で、どれだけ下げても心配だという人は世の中にいるが、そういう人たちがわあわあ騒いだ中で何の科学的根拠もなく、時の環境相が1ミリシーベルトまで下げると急に言った」と述べたのは、単に無知であるだけでなく、環境大臣になったから環境に詳しいという本末転倒の自負がある。その上、「そういう言い回しをした記憶はない」「誤解を与えたなら言葉足らずだった」としているのは誠実さに欠ける。
 また、*9-2に、「年間1~20ミリシーベルトの幅で適切な防護をしながら長期的に1ミリシーベルトを目指すという国際放射線防護委員会(ICRP)の考え方に基づく」という専門家の指摘があるが、人間の体にとって長期的とはどのくらいの期間かという問題が未だ棚上げされている。私は、「短期的とは、速やかに脱しはしたが事故で仕方なく陥った状態の最短期間」であり、癌が発症し始める5年は十二分に長期であり、短期的・長期的という言葉を使って放射線安全神話を作ってはならないと考えている。
 なお、*9-3のように、丸川環境大臣がその発言をした松本市は、信州大学医学部助教授などを経てチェルノブイリ原発事故後、ベラルーシの放射性物質汚染地域で医療支援活動にあたった菅谷氏を市長に選んでいる地域で、講演を聞きに来た一般市民には丸川環境大臣よりも放射線防護に詳しい人も多かったと思われるため、よりによって松本市でそういう発言をしたのは喜劇の部類に入る。

*9-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201602/CK2016020902000243.html (東京新聞 2016.2.9) 丸川環境相「被ばく上限、根拠ない」 国会追及で陳謝
 丸川珠代環境相が、東京電力福島第一原発事故後に国が定めた年間被ばく線量の長期目標一ミリシーベルト以下について「何の根拠もない」と発言したと、九日の衆院予算委員会で指摘された。丸川氏は発言の記憶がないとしながら「誤解を与えたなら、言葉足らずだったことはおわびする」と述べた。丸川氏は七日、長野県松本市であった自民党の若林健太参院議員の集会で講演した際に「『反放射能派』というと変だが、どれだけ下げても心配だという人は世の中にいる。そういう人たちがわあわあ騒いだ中で何の科学的根拠もなく、時の環境相が一ミリシーベルトまで下げると急に言った」と発言した。民主党の緒方林太郎氏が九日の衆院予算委で問題だと追及。丸川氏は「記録を取っていないし、そういう言い回しをした記憶はない」と釈明した上で陳謝。「数字の性質を十分に説明し切れていなかったのではないかという趣旨のことを申し上げた」と述べた。福島第一原発の事故後、当時の民主党政権は、自然放射線などを除いた一般人の通常時の年間被ばく線量限度を一ミリシーベルトとした国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に基づき、長期的な目標を一ミリシーベルトとした。

*9-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016020901002341.html
(東京新聞 2016年2月9日) 専門家からいぶかる声 丸川環境相の線量発言
 東京電力福島第1原発事故後、国が「年間被ばく線量1ミリシーベルト」と定めた除染の長期目標をめぐり、丸川珠代環境相が講演で「何の根拠もなく時の環境大臣が決めた」などと発言した問題で、放射線の専門家からは9日、「根拠はある。発言の真意がよく分からない」といぶかる声が上がった。鈴木元国際医療福祉大教授(放射線疫学)は、1ミリシーベルトの目標は「事故で出た放射性物質と共存する状況にあって、年間1~20ミリシーベルトの幅で適切な防護をしながら長期的に1ミリシーベルトを目指すという国際放射線防護委員会(ICRP)の考え方に基づく」と指摘。

*9-3:http://mainichi.jp/articles/20151217/ddl/k20/010/150000c
(毎日新聞 2015年12月17日) 松本市長選 菅谷氏が出馬表明 4選目指し /長野
 任期満了に伴う松本市長選(来年3月6日告示、13日投開票)で、現職の菅谷昭氏(72)は16日、4選を目指し立候補すると表明した。同日閉会の12月市議会で「引き続き市長の使命を果たすべきだと決断した」と述べた。信州大医学部助教授、県衛生部長などを歴任。2004年に初当選し3期目。チェルノブイリ原発事故後、ベラルーシの放射性物質汚染地域で医療支援活動にあたった。「健康寿命延伸都市宣言などの施策は道半ばだと、市民から続投の強い要請を受けた。私を育んだ松本のまちづくりを引き続き担うのも道である」と語った。市長選には、いずれも新人で、団体役員の鈴木満雄氏(65)、前市議の増田博志氏(63)が立候補を表明。前市教育委員の小林磨史(まふみ)氏(61)、元NHK解説委員の臥雲義尚氏(52)が立候補の意思を示しており、過去最多の5人による争いとなる可能性がある。

      
2016.2.10東京新聞    2016.2.12NHK     2015.10.12、2015.11.20佐賀新聞 
                                     (http://no-genpatsu.main.jp/上参照)

PS(2016年2月12日追加): *10-1で、原発由来の物質であるセシウム137が多いほど、人間以外の生物も白血病の傾向があることがわかる。しかし、NHKは、*10-2のように、原発から遠い地域に住んでいる人も含めた3600人ばかりのアンケート調査により、①電気料金が安い ②地球温暖化など環境への影響が少ない ③安定して十分供給できる ④安全に発電できる などとするフクシマ原発事故前の“常識”を理由に、原子力発電所を「増やすべき」「現状を維持すべき」が合わせて29%だったと強調し、「すべて廃止すべきだ」だけでも22%あるにもかかわらず、これについては表題に記載せず重視もしていない。そして、「不安の程度はやや和らいだものの、まだほとんどの人が不安を感じている」などと、原発による公害や原発のコストには言及せず、「不安」という情緒論に終始している。この分析力と報道力が、NHKの能力だとしても企業文化だとしても、どちらにしても問題だ。

*10-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016021101001336.html
(東京新聞 2016年2月11日) 福島のヤマメに貧血傾向 放射性物質多いほど
 東京電力福島第1原発事故で影響を受けた家畜や野生動物をテーマにしたシンポジウムが11日、東京都文京区の東京大で開かれた。東北大大学院の中嶋正道准教授(水産遺伝育種学)は、福島県内の河川で採取した魚の調査で、筋肉中に含まれる放射性物質の量が多いヤマメに貧血傾向がみられると報告した。中嶋氏によると、同県浪江町を流れる請戸川など県内の三つの河川で2012年末~14年にヤマメを採取し、血液などを調べた結果、筋肉中のセシウム137の量が多いほど、赤血球1個当たりのヘモグロビン量が減少するなど貧血傾向にあることが確認された。

*10-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160211/k10010405331000.html
(NHK 2016年2月11日) 原発「現状維持」26% 「減らすべき」49% NHK調査
 東日本大震災の発生から5年になるのを前にNHKが行った調査で、今後、原子力発電所をどうすべきだと思うか尋ねたところ、「増やすべきだ」と「現状を維持すべきだ」が合わせて29%だった一方、「減らすべきだ」が49%、「すべて廃止すべきだ」が22%でした。NHKは、去年12月、全国の16歳以上の男女3600人を対象に、調査員が訪問して調査用紙を配る「配付回収法」による世論調査を行い、調査の対象になった人の71%に当たる2549人から回答を得ました。この中で発電について最も重要だと思うことを尋ねたところ、「電気料金が安いこと」が13%、「地球温暖化など環境への影響が少ないこと」が30%、「安定して十分供給できること」が28%、「安全に発電できること」が29%でした。原発事故が起きた2011年の12月に行われた調査と比べると、「安全に発電できること」が13ポイント減った一方、「地球温暖化など環境への影響が少ないこと」が11ポイント増えました。「今後、原発をどうすべきだと思うか」という質問に対しては、「増やすべきだ」が3%、「現状を維持すべきだ」が26%、「減らすべきだ」が49%、「すべて廃止すべきだ」が22%でした。過去の調査との比較では、「増やすべきだ」と「現状を維持すべきだ」と答えた人は、前回2013年より6ポイント増え、2011年と同じ水準でした。「減らすべきだ」は、前回より3ポイント増え、2011年より2ポイント減りました。「すべて廃止すべきだ」は、前回より8ポイント減りましたが、2011年より2ポイント増えました。原発から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のゴミ」の最終処分場の問題について、今後原発をどうすべきかを考えるにあたって、どの程度考慮するかという質問に対しては、「大いに考慮する」が52%、「ある程度考慮する」が35%と考慮するという答えが87%を占め、「あまり考慮しない」が10%、「全く考慮しない」が2%でした。今回の調査では、福島県と宮城県それに岩手県の3県でも同時に16歳以上の1368人を対象に同様の方法で調査を行い、72%に当たる987人から回答を得ました。この中で、廃炉作業が進められている福島第一原発の現状について尋ねたところ、「不安だ」が50%、「どちらかといえば、不安だ」が42%で、合わせて92%の人が不安に感じていると答え、「どちらかといえば、不安ではない」が6%、「不安ではない」が1%でした。2013年の調査と比べると、「不安だ」が12ポイント減って「どちらかといえば、不安だ」が10ポイント増え、不安の程度はやや和らいでいるものの、まだほとんどの人が不安を感じていることがうかがえます。


PS(2016年2月13日追加): *11のように、丸川環境大臣が1ミリシーベルトの除染基準について、「何の科学的根拠もない」などと根拠もなく発言し、2月12日に「福島をはじめ、被災者に改めて心からおわびしたい」と謝罪したそうだが、詫びの内容はまだ矮小化されている。何故なら、「何の科学的根拠もない」という発言は、被災者だけでなく、科学的根拠を持って行動している人の人格権を傷つけた上、無知なのは丸川大臣本人だからだ。そのため、「無知で思考力がなかったため、科学的根拠を持って行動している人を逆に根拠もなく誹謗中傷して、大変申し訳なかった」と明確に詫びたとしても、許すか否かは人格権を傷つけられた側が決めるものだ。
 なお、原発労働者の白血病労災認定基準は「年間5ミリシーベルト以上」で、チェルノブイリ原発事故によるウクライナの移住権利区域も「年間5ミリシーベルト以上」であるのに、「日本の一般住民の被曝限度は、年間1~20ミリシーベルトでよい」と主張する人もいるが、それでは甘すぎるため、そう主張する人は、被災者の立場になって物事を考えられるよう、家族を連れてこのような場所に移住すべきで、それには原発推進派の議員、経産省・厚生労働省、NHKをはじめとするメディア、電力会社・原発推進企業の本社機能などが該当するだろう。

*11:http://mainichi.jp/articles/20160213/k00/00m/040/113000c
(毎日新聞 2016年2月12日) 被ばく線量発言を撤回 被災者におわび
 丸川珠代環境相は12日の記者会見で、東京電力福島第1原発事故後に定めた除染などの長期目標について「何の科学的根拠もない」などとした発言を撤回した。これまで「記憶がない」と発言を事実上否定していたが、5日後になってやっと自分の発言と認め、「福島をはじめ、被災者に改めて心からおわびしたい」と謝罪した。閣僚の辞任は否定した。丸川氏は「福島の皆さんと信頼関係を保つ上で、撤回すべきだと判断した。福島の思いに応えるのが私の責任だ」と述べた。これ以上、発言を否定し続ければ、福島県など被災自治体との関係がさらに悪化するうえ、野党も国会で追及を強める構えを見せており、発言撤回で事態を収拾させる思惑がある。丸川氏は7日、長野県松本市内で開かれた自民党参院議員の会合で講演し、除染の長期目標について「科学的根拠もなく、時の環境大臣が決めた」と述べたことが報じられ、発覚した。当時の環境相は民主党の細野豪志政調会長で、民主党が閣僚辞任を求めていた。国会答弁などでは「そういう言い回しを使ったか記憶にない。伝えようとした趣旨が伝わらず、言葉足らずで申し訳ない」と述べていたが、12日になって発言を記録したメモを点検し、会合出席者の証言から「自らの発言」と確認をしたという。福島県知事にも電話で謝罪した。長期目標は民主党政権時に定められ、自然放射線などを除いた一般人の通常時の年間被ばく線量を1ミリシーベルト以下にすることを目指して除染などを進めるとしている。丸川氏は「1ミリシーベルト」について「達成に向けて政府一丸で取り組む」と述べ、引き続き長期目標として維持する方針を強調した。


PS(2016年2月16日追加): *12-2のように、国際放射線防護委員会(ICRP)勧告は、公衆被曝線量限度を、1977年勧告で年間5ミリシーベルト以下としているが、1985年勧告では数年間は5ミリシーベルト以下を許容しその後は年間1ミリシーベルト以下とし、1990、2007、2012年勧告では数年間の5ミリシーベルト以下という文言もなくなって年間1ミリシーベルト以下としている(http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/etc/13-10-3Nitiben.pdf#search='WHO+%E5%B9%B4%E9%96%93%E5%85%AC%E8%A1%86%E8%A2%AB%E6%9B%9D%E7%B7%9A%E9%87%8F%E9%99%90%E5%BA%A6 参照)。従って、ICRPの公衆被曝線量限度は年間1ミリシーベルト以下であるにもかかわらず、「追加被曝線量の長期目標を年間1ミリシーベルト」とするのも国際基準より甘く、丸川大臣の言葉はもちろん軽すぎるため、どういう志を持って環境大臣をしているのか聞きたい。
 また、*12-1のように、島尻沖縄北方大臣が北方領土の一部である歯舞群島の「歯舞」を読めなかったというのは、北方領土交渉の重要なKey Wordであって単なる固有名詞の読み方の問題ではないため、どういう意思を持って北方領土交渉を行っているのか(もしくは何もやっていないのか)を聞きたいところだ。そして、この傾向は、女性大臣だけでなく、男性大臣にもある。

*12-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12210350.html
(朝日新聞社説 2016年2月16日) 丸川環境相 撤回しても残る「軽さ」
 国が追加被曝線量の長期目標として示した年間1ミリシーベルトについて、7日の講演で「『反放射能派』と言うと変ですが、どれだけ下げても心配だという人は世の中にいる。そういう人たちが騒いだ中で、何の科学的根拠もなく時の環境大臣が決めた」などと発言した。翌日の信濃毎日新聞が報じた。放射性物質の除染や、追加被曝の抑制などは、安倍内閣の最重要課題の一つである。原発事故からまもなく5年。除染だけでは長期目標の達成が難しい地域がまだ残り、住民の帰還が進まない現状がある。長期目標は、国際放射線防護委員会が原発事故から復旧する際の参考値とする「年1~20ミリシーベルト」の最も厳しい水準だ。1ミリシーベルトに決まった背景には、安全や安心を求める地元福島の要望もあった。一日も早い帰還を願う住民の思いと、長期目標をどう整合させるか。さまざまな複雑な要素を考慮して決められ、いまなお試行錯誤が続く難題である。丸川氏がそうした経緯を知らなかったとすれば、不勉強と言われても仕方がない。それとも、経緯を知ったうえで、決定当時の民主党政権をおとしめるための発言だったのか。さらに深刻なのは発言が報じられて以降の二転三転ぶりだ。国会質問や取材に「こういう言い回しをした記憶は持っていない」などと答え続け、一転して「言ったと思う」と認めたのは12日朝、発言を撤回したのはその日夕方になってからだ。本当に発言内容を忘れたのか。記憶がないと言っていれば、いずれ国民が忘れてくれると思ったのか。いずれにせよ、閣僚としての適格性が疑われる発言というほかない。丸川氏だけではない。安倍内閣の言動の「軽さ」を印象づける場面は他にもある。島尻沖縄北方相は記者会見で、北方領土の一部である歯舞(はぼまい)群島の「歯舞」を読めず、秘書官に問う場面があった。安倍首相も、自民党のインターネット番組で、2014年に北朝鮮が拉致被害者らの再調査を約束した「ストックホルム合意」を、中東和平の「オスロ合意」と間違えた。確かに、言い間違いや思い違いは誰にでもある。ただ、原発事故対応や北方領土、拉致問題はいずれも安倍内閣が重要課題に掲げるテーマだ。閣僚の資質とともに、内閣としての姿勢が問われかねない。

*12-2:http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-04-01-08
<概要>ICRP(国際放射線防護委員会)による線量限度は、個人が様々な線源から受ける実効線量を総量で制限するための基準として設定されている。線量限度の具体的数値は、確定的影響を防止するとともに、確率的影響を合理的に達成できる限り小さくするという考え方に沿って設定されている。水晶体、皮膚等の特定の組織については、確定的影響の防止の観点から、それぞれのしきい値を基準にして線量限度が決められている。がん、遺伝的疾患の誘発等の確率的影響に関しては、放射線作業者の場合、容認できないリスクレベルの下限値に相当する線量限度と年あたり20mSv(生涯線量1Sv)と見積もっている。公衆に関しては、低線量生涯被ばくによる年齢別死亡リスクの推定結果、並びにラドン被ばくを除く自然放射線による年間の被ばく線量1mSvを考慮し、実効線量1mSv/年を線量限度として勧告している。


PS(2016年2月17日追加):*13の「みやまスマートエネルギー」は、環境負荷が少なく、好意が持てる。今後は、見守り・その他のサービスもセットにできるだろう。

*13:http://qbiz.jp/article/80823/1/ (西日本新聞 2016年2月17日) 電力の半分は地元太陽光 みやまスマートエネルギー 水道とのセット割プランも
 福岡県みやま市などでつくる電力会社「みやまスマートエネルギー」は16日、4月から開始する家庭向け電力販売の料金プランを発表した。調達する電力のうち約半分を地元の太陽光発電分が占めるのが特徴で、離島を除く九州全域に販売する。一般的なプランでは、使用量の多い家庭ほど料金が割安になる。17日から予約を受け付ける。一般的なプランは、契約容量30アンペア以上が対象。月間の基本料金を九州電力よりも低く抑え、300キロワット時を超える分の単価を割安にした。みやま市内約2千世帯の電力使用データを基にしたモデル家庭(契約容量60アンペア、年間使用量6472キロワット時)では、九電の現行プラン「従量電灯B」に比べ、年間約4千円お得になると試算。休日の電気料金が割安になるプランとオール電化向けプランもある。親子間など親族との一括契約で基本料金を割り引くほか、市内世帯向けに水道と電力とのセット割引も設けた。また、電気料金の支払額に応じて独自ポイントを付与。たまったポイントで、インターネット上の仮想商店街にある約100店舗から地元の農産物などを購入できる。みやまスマートエネルギーは九州全域での契約目標を掲げていないが、みやま市内では3年後に約1万4千世帯のうち約7割への供給を目指す。磯部達社長は「『地産地消』電力を多くの人たちに勧めていく。太陽光だけでなく、水力や風力など再生可能エネルギーの比率を高めたい」と述べた。

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